B.D

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 21:47
久しぶりに書いて見ます。
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 21:48
風が止んだ。
砂塵のフィルターを幾重にも重ねた空には、太陽がいつものように丸い影を落としている。
大地には、嵐が描いていった風紋が殺風景な砂漠にアートを残していった。
どこを見渡していても茶色の世界の中で、風紋は唯一変化を見せてくれる景色だ。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 21:48
口の中がジャリジャリする。
顔を覆っていたターバンをずらして、田中れいなは唾を吐いた。
水分の少ないねばっこい唾を吐き出してもなお、口の中は砂だらけだった。

「うがいがしたい」

うがいどころか自分の喉を潤すに十分な水さえないことはわかっている。
でも、口の中の砂は必要以上にのどの渇きを感じさせていた。
マントに包まっていたとはいえ、全身砂だらけだ。
耳の中も鼻の中も閉じていた口の中にさえ細かな砂が入り込んでいた。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 21:49
ゆっくり立ち上がると、全身に積もった砂がさらさらと音を立てて流れ落ちていく。
白い砂の粒が目立つ独特の砂だ。
この辺りは、高層ビルが立ち並んでいた場所なんだろう。
コンクリートなのか、それともあの時ビルの中にいた人々の骨なのかわからないが、
都心のあった辺りは、必ずこの白い砂粒が多く含まれていた。

厚いマントの砂を払い落とし、傷と砂で前の見えなくなってしまったゴーグルを外した。
すぐ横で、小さな砂山がゆっくりとせり上がり始めた。

フレアだ。

駱駝から進化したこの二本足の哺乳動物は、駱駝というより毛のないダチョウのようだ。
進化?その言葉が浮かんだとき、れいなはフンと鼻を鳴らした。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 21:49

化け物だよ。
あたしもあんたも、化け物だよ。

6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 21:50
薄い膜越しに白濁した瞳がれいなを見ていた。
その人を見下したような目つきを、れいなは好きになれなかった。
フレアは薄膜を下に降ろすと長い舌で目玉を舐め始めた。

れいながマントから固形のえさを取り出したが、腹がすいていないのか見向きもしなかった。
最後にえさを与えたのは3日前だ。水は1週間取っていないはずだ。
いくらこの環境に適した生物とはいえ、かなり弱っているはず。
フレアは自分の死を悟ったとき、飲食をしなくなるというが、今ここで死なれては
次の町にたどり着くことすら怪しい。
れいなはフレアのコブを擦ってみた。ごわごわした硬い毛が、ところどころ抜け落ちていた。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 21:51
本当にもう長くないのかもしれない。そうれいなは思った。
放射能に勝てる生き物はいない。それはれいなも例外ではなかった。
左腕はもうずいぶん前から動かなくなっていた。最近では痛みすら感じなくなっている。
左腕の次は左足か?それとも脳がやられてしまうのかも?
不安は募る一方だった。兎に角、時間は限られている。
急がなくてはいけないのはわかっているが、食料も水も底をつき、残されたのは、
このフレアか出す乳しかなかった。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/11(金) 21:51

「んん〜」

トレンチに縛り付けておいた荷物がうめき声を上げて目を覚ました。

「起きた?」
「うん」

あの砂嵐の中で、こんなにも気持ちよく寝ていられるもんだとれいな思った。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/26(土) 21:47
自信なくなったからちょっと休止します
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/28(月) 20:17
再開期待しとく
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/04(月) 01:38
待ってみよう
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/07(日) 17:48
まっとるよ〜☆

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