夢の翼

1 名前:遥 ◆2R3SX0QQ 投稿日:2005/03/30(水) 11:38
ファンタジー物
主人公はなっちです。
初心者ですが頑張りますので生暖かく見守って下さい。
2 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 11:44
 年に一度新しい年を迎える日。
人々は唄い躍り良い事も悪い事も全て忘れ新しい年に
希望と願いを込め祈りを捧げる。
いつもは静かなこの神殿と呼ばれるこの建物も溢れんばかりの
人・人・人。
 大人も子供も男女関係無くお祭り騒ぎ。
歌い踊り楽しい音楽が嫌でも耳に入ってくる。
 神様を本当に信じてここに来てる人はきっと一握り程。
それはいつもの神殿の静けさが物語っている。

 …つまらない。
一年で一番つまらない日…

 外に出れない者にとっては関係の無い事。
そう。
なっちは長い間閉じ込められている。
何年も…
眺める事しか出来ない。
何年も何年も同じことの繰り返し。
このひとりぼっちの空間で特にする事もなく
無意味に年月だけが流れてく…

 でも。
今年は何か嫌な予感がする。
ぞわぞわ心に障る何がある。
怖くてしかたがない…
3 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 11:45

 窓の外に見える大きく紅い月墜ちて来そう…
今墜ちて来たらみんな何もかも壊れてしまう。

 そう考えると益々心の奥がザワザワと騒ぐ。

 怖い。恐い。コワイ…
背筋がゾッとしてベッドの毛布を剥ぎ取り背中を
すっぽりと覆い再び格子の入った窓を見つめる。
4 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 11:50

―コンコン

控え目なノックの音。

「誰?」

 こんな所に来るなんていう物好きはあまりいない。
ここは、神殿の最上階。
長い階段をいくつも昇らないといけない。
それに幾重にも封印の呪が施されていてそれを解かないと出入り出来ない。

そう。“忌々しい者”を封印するように。

今日は誰にも会いたくない。
このゾワゾワと湧いてくる不安と恐怖のせい。

5 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 11:51

「圭織だよ。入っても良い?」

「!?…圭織…」

 圭織…飯田圭織は神殿に暮らす巫。
そしてなっちの友達だったヒト。
なっちと圭織は何年も顔も会わさなければ
言葉を交す事もしてない。

立場の違い。

閉じ込めた人と閉じ込められた人という…

「珍しいね…入るなって言っても入るでしょ?」


どうしてわざわざこんなところまで…

「なっち居たんだね。」

そう言いながら部屋に入ってくる。

「ここしか居れる場所無いから、ここに居るだけ」

圭織を見ずに紅い月を見つめそっけなく答える。

6 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 11:53

「気になる?」

「えっ…?」

 きっとこの月の事。
そう思い直してコクりと頷き圭織の顔を数年振りに見つめる。
にっこり圭織は微笑むと直ぐさま入り口へ振り返る。

「封印、解いてあるから。鐘が鳴ったら直ぐに御神木に来て」
――話したい事があるからさ…

圭織はそう言うと部屋を出て行く。

「話って何さ…ここで話せばいいっしょやー…」
7 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 11:54

 とうとう追い出されるのかもしれない…
そう不安がよぎる。
ここに居る限り安全な筈なのに…

さっきとは違う恐怖に体が震えガタガタと音を起てる。
似てる。
あの時の感覚に…
あの時みたいな事になるとどうしよう…
それに今日みたく人の多い時だときっと…
きっとあの時よりも大惨事になる。
自分が恐い。
違う。
自分の意志ではどうにもならない何かを恐れている。
8 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 11:55

―がらーんごろーん

 鐘が鳴り始めた…
新しい年がやって来た。
人々のざわめきが更に大きくなる。

「御神木の所に行かないと…。」

 不安を消すためとりあえずここでの正装であるローブに着替える。
そしてフードを深く被ってそっと扉をひらく。
頬を撫でる風が気持ち良い。
久々に美味しい空気を胸いっぱいに吸い込み
ふぅ〜っとおもいっきり吐き出す。
不安や恐れも一緒に…

9 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 11:57

「久々に飛ぼうかな…」

人に見付からない様にするにはこれしか方法は無い。
見付かると厄介だから…
瞳を閉じて風に気を集中させ一気に飛び降りる。

ふわん

しっかり風を感じ目的の場所を伝える。

「ねぇもっと遊ぼうよ♪」

飛ぶと風が遊びにやってくる。

「今日は君達と遊べ無いの。久しぶりだけどごめんね。」

そう風達に謝る。
素直に離れてくれる子もいれば

「ちぇっ。やっと会えたのにぃ…」

と言って中々放してくれない子もいる。

「今度またゆっくり遊ぶからさ…ね?」
10 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 11:58

そう言うと風はやっとなっちを放してふわりと
目的の御神木のもとに降ろしてくれる。


「ありがと。」

そう言うとイタズラ好きの風がハラリとフードを外してく…

「ヘヘっ。約束だからねぇ」

そう言って風達は御神木近くの寒い時季でも
青々と茂った葉っぱ達と遊び始めたみたい。
ざわざわと楽しそうに歌を奏でている。

 小さな頃からなっちの持ってる力。
自然達と会話する力。
なっちが閉じ込められた理由の一つ。

11 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 12:03

 そっと御神木を撫でる。
御神木は無口でかなりのおじいちゃん。
今日はもう眠っているみたい。
サワサワと葉っぱを揺らして気持ち良さそう…

――カサッ

葉っぱと風のメロディーに邪魔が入る。

「圭織?」

「…なっち。良かった。来てくれて…」

12 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 12:04

「話って何さ?」

棘のある言葉と共に振り返る。

「ここから圭織と一緒に逃げて。なるべく遠くへ」

圭織が哀しげな顔でなっちを見つめそう言う。

「どうして?ここで閉じ籠ってるのが安全な筈っしょ?」

なっちにも世界にとっても…
そう言われてなっちはあの部屋に閉じ込められたのに…
それに圭織と一緒にって…

13 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 12:06

「月がなっちを拐いに来る。そうお告げがあったから…!!」

圭織はそこまで言うと急に体を硬直させて黙り込む。

「交信…?」

圭織は神との交信が出来る力がある。
神に一番近い巫。

「この星は白い翼を求めて居る。月は黒い翼を。
白を染め月に就くのか、黒を薄めこの星に就くのか。答えよ。」

14 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 12:07

「圭織?」

違ういつもの交信とは違う…
恐い…
あの時と同じ…
なっちが閉じ込められる事になったあの時と…

「さぁ。答えるのだ安倍なつみ。いや宇宙を導く者よ。」

15 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 12:07

 分からない。

そんな事言われても…

なっちはなっち。

あの時から変わらない。

答えは変わらない。

嫌だ。

恐い。

助けて…

16 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 12:08

「…ち。逃げ…逃げて…西へ…西の祠へ…」

圭織がふらつく。

「圭織!」

なっちが叫んだと同時に圭織が倒れた。

「圭織!大丈夫!?圭織?」

「…ん。…大丈夫…。圭織疲れたみたい…」

「ちょっ!圭織!?」

17 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 12:10

圭織はそのまま眠りに就いた。
きっとこの数日眠ってないんだろう…
西の祠へ圭織を連れて行けばいいんだよね…。
眠っている圭織を…はぁ〜。
どうしよう…
西の祠まではかなりの距離がある。
そして魔女が住み着いて居るという噂があって
若い娘は近付くなとまで言われている。
なっちが閉じ込められる前に良く言われていた。
でも、あれから何年も経っているし…
きっと大丈夫…だよね

「よしっ。」

悩んでも仕方ないし行こう。
そうだ…圭織どうしよう…
風達に頼めないかな…
18 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/03/30(水) 12:22

でも二人で飛んだ事無いし…
どうしよう
試してみようか…
気を集中させて風にお願いしてみる。

「ん〜今はヤダ。眠いもん」

風はそう言って草木を揺らして遠くに行ってしまう。
はぁ〜。
どうしよう。
西の祠ってかなり遠いっしょ?
圭織背負ってだとどのくらいかかるかな…
「お困りの様ですね。安倍なつみさん。」
「誰!?」

振り向くと物静かな少女が佇んでいる。
…なっちこの子の事知らない…
19 名前:遥 ◆2R3SX0QQ 投稿日:2005/03/30(水) 12:25
今日はここまでです。
更新はマターリ気味になると思います。
レス大歓迎なので叱咤激励よろしくお願いします。
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/30(水) 14:24
なにか良い感じの始まり方ですね。
続き期待して待ってます。
21 名前:thkioo 投稿日:2005/03/31(木) 20:56
続きがものすごく気になってたまりません。最後に出てきた人は・・いったい
誰なんでしょう。すごく更新されるのを楽しみにしてます。なっちとかおり
この組み合わせすんごく好きです。
22 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/03(日) 17:18
面白そうです。 気になるお話ですね。 次回更新待ってます。
23 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:05

「えっと…どうしてなっちの名前知ってるんだい?」

「月では有名ですよ。」

月では有名…って
もしかしてなっちを拐いに…

「だとしたらどうされますか?」

「えっ…」

今なっちしゃべって無いよね…
どうして?
えっ?
ん?
…しゃべったっけ?

24 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:06

「フフっ。あたし、人の心が自然に読めるんです。」

「えっ?」

人の心が読める?
しかも自然に?
それって…訳分からなくならない?
なっちは自然の声は聴こえるけど…
常に聴こえている訳じゃないしさ…

「まぁ。良いじゃないですかあたしの事は」

25 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:07

「良く無い。だってさ、連れて行くんっしょ?」

「いいえ。今は逆です。連れて行かせたくないんです。」

どういう意味?
さっぱり分かんない…

「つまり。貴方を守るため月から飛び出して来たんですよ。」

「…どうして?」

26 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:08

「今貴方の力は不完全かつ不安定な状態です。
その力を無理矢理引き出したところで月もこの星も滅んでしまいます。
先程飯田さんに降りて来たのはおそらく月のビショップでしょう。
以前同じ事を行った事がありますから」

そう言い圭織の方を見る。
月のビショップが圭織に降りて来たってどういう事?
ビショップって何?
あの時も?
………さっぱり分からない。
スゴく混乱してる。
でも、一つだけわかったのは…

27 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:08

「結局あなたはなっちと圭織に危害を与えに来たんじゃないって事っしょ?」

なっちがそう言うと
ニコッと微笑んで頷いた。

「そうだ。あなたの名前は?」

「申し遅れました。福田明日香といいます。」

そう言ってぺこりと頭を下げる。

「…なっち達の事は知ってるんだよね?」
「えぇ」

「そうだよね。うん。あのさ、これからさどうすんの?」

「先ずは飯田さんのおっしゃられた西の祠へ行きましょう。
そこに魔女がいて力を調節してくれるらしいので…」

28 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:09

そう言うと背中に挿していた剣を鞘ごと外し
地面に不思議な絵みたいな物を書き始める。
きっと魔法陣ってヤツだろうけど今までで一度も見たことの無い形。
円の中に三日月みたいな物が描かれて呪が円に沿って書かれていく。

「それは?」

「空間移動の魔法陣です。」

圭織を魔法陣の上に乗せつつそう言う。

「空間移動…」

「はい。月では頻繁に使われてます。魔法陣の中に入って下さい。」

ちょっと待って…
まさかなっち騙されて無いよね…
こういうのは対の魔法陣があってそこへ出る筈…

29 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:10

「良くご存じですね」

「本はたくさん読んだから」

そう言いキッと睨みつける。

「実はあたし月から飛び出してかなりこの星に居るんですよ。
近くの町に知り合いがいるのでそこへ飛びますよ。
きっと貴方もご存じの方ですよ」

30 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:12

そう言い微笑む。
てかずるい。
なっちの思っている事は筒抜けなのに向こうが
どう思っているのか分からない。

「…信じろとは言いません。とにかくここは危険です。
もうすぐしたら月から貴方を拐いに来ます。」

「…来たらどうなるの?」


「ここに居る人々は恐らく皆さん殺されます。」

悲しげな顔で言う。

「そんな…」

ここの人達は…そりゃさ…
なっちを閉じ込めたり避けたりしたけどさ…
あんな事しでかしたなっちを守ってくれたしさ…
ダメ…誰も死なせない…

31 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:15

「分かった…行くよ。
なっちが居なかったらここは大丈夫って事っしょ?」

「はい。月のビショップは貴方の居場所が分かるみたいですから…」

…それってどこに行ってもバレるって事っしょ?

「大丈夫なのかい?」

「えぇ。あたしが貴方を守りますから」

32 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:16

凄く真剣な顔でなっちをジッと見つめる。
「…信じるよ」

そう言って魔法陣の中へ入る。

「では、時間も無い事ですし行きますよ。準備は大丈夫ですか?」

準備って言われても…
あっ…

「ちょっと待って」


御神木にだけ挨拶してかないと。
近付きそっと手をあて気を集中させる。
33 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:17

「御神木様。どうかこの神殿をお守りください…」

「…ん?…そうか旅立つのじゃな?」

御神木が眠そうな声で言う。

「…はい。もう戻って来ないかも知れないです…」

「…そうか…いやお主の運命―さだめ―じゃからの…そうじゃ。
根元に子供がいるじゃろ?」

御神木の根元を見るとなっちの腰までくらいの細い木が生えている。

「…居ます」

「そいつを連れて行ってくれんか?ここに居ても枯れてしまうからの…」

34 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:18

弱々しくて葉っぱも数える程度付いて居るだけの生まれたての木。
確かにここに居てもダメになる…

「はい。…でもどうするんですか?」

「話しかけてやるんじゃ。したら付いて行ってくれるじゃろ」


…適当っしょやー。
もう。
でも仕方無いか…
そっと手をあてる。

「…ねぇ。」

「なんでちゅか?」

「あのね?なっちと一緒に来てくれないかい?」

「はい。いいでちゅよ」

エッエッエッエッ!?
小さな木はシュルシュルなっちの腕に絡みついてくる。
35 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:18

「どうなってんのさぁ!」

「これでいつもいっしょでちゅ」

…でも痛く無いし…こいつなんか可愛いし…
ってか消えちゃったし…
…まっいいっしょ

「…必ず元気で戻って来るんじゃよ…」

「…はい。いってきます」

36 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:19

御神木にそっと口付けをして魔法陣に戻る。

「ゴメン!お待たせ!」

「…何してたんですか?」

不思議そうになっちを見つめる。

「えっ?御神木とお話をしてたのさ。どして?」

心の声とか聞こえなかったのかな…?

37 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:20

「いえ…その…光に包まれていてこちらからは何も見えて居なかったので…
それに空間が歪んで思念が読み取れなかったんです。」

「えっ?そうかい?」

御神木と話してるとそう言えば不思議な感覚になる。

他の子達とは違って世界に二人(?)っきりしか居ない。
そんな感覚。
でも怖く無いし寂しくも無い。
暖かい感覚。
それでかも知れない…

38 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:21

「そうだ。早く行かないといけなかったんじゃないかい?」

「はい。では行きましょう。飯田さんの手を握っていて下さい。」

言われた通りギュッと圭織の手を握る。
気を集中させて魔法陣に力を注ぎ込んでいる。
そして仕上げの呪を円の外側に書いていく。
長い間暮らした神殿としばらく離れるんだ…
そう思うと少しほんの少し寂しくなる。
魔法陣がボォ〜っと光り始める。

39 名前:第一章 ―旅立ち― 投稿日:2005/04/06(水) 19:22

「扉よ扉の元へ我等を導け!」

呪を唱えると魔法陣が強く輝く。
圭織の手を握る力が強くなる。
体が軽くなりなっち達は光に飲み込まれる。
そう。
これから始まる運命の波に飲み込まれるように…




第一章 完
40 名前:遥 ◆2R3SX0QQ 投稿日:2005/04/06(水) 19:31

今日はここまでです。
レス返し

>>20
ありがとうございます。
期待に答えられるように頑張って行きます。
>>21
この人でした。気に入って頂けると良いですが…

>>22
これからもよろしくお願いしますね

なお、年齢設定はあまり考えて無いので好きな時期の彼女達を
思い描きながら見て下さい。
41 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/08(金) 19:02
更新お疲れさまです。 福田さんはあまりよく知らない方なんですが、自分の想像する方で読もうかと。三人はこの先誰と出会うのでしょうか? 次回更新待ってます。
42 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:10
「着きましたよ。」

そっと目を開くとちいさい頃良く遊びに来た街だった。

「懐かしいな…」

「貴方の居る場所の目星はつけていたので」

「そうなんだ。なっち昔良く来たんだよ。懐かしいなぁ〜」

最後に来たのはいつだったっけ?
でも、ホント変わってなくって良かったよ…。

「あっ。そうだどう呼べば良い?」

「えっ?あぁ、月では福田さんとしか呼ばれてなかったですが、
この星に来てからは明日香と下の名前で呼ばれる事が多いですね」

「へぇ〜。じゃあなっちもそう呼ぶからさ…」
―なっちって呼んで欲しい…な。

明日香に聞こえるかどうかってくらいの声で呟く。
聞こえてなかったみたいでキョトンとした表情で見つめてくる。

「…出来たらさ…」
43 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:12
「…んっ。なっち…?」

圭織がゆっくり起き上がりながらキョロキョロ辺りを見回している。

「…なっちココは?」

「おはよ。ファースト・タイムの町だよ」

圭織タイミング悪いっしょやー!
ってホントは言いたかったけどまっ何時かゆっくり話せばいいっしょ。

「祠の近くまで来たんだ…。ねぇ、圭織どのくらい寝てた?」

ん〜と延びをしてなっちを見つめる。

「ん?小一時間程かな?ね?明日香」

「そうですね。」

圭織はハッと明日香の方に向く。

「その声は…」

「圭織どした?」

圭織と明日香知り合いだったのかな?

44 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:13
「はじめまして。飯田圭織さん」

「あなた…ずっと圭織達に呼び掛けてたよね?」

…?
あっ。
交信相手か…

「えぇ。やっと信じて頂けたみたいで…」

「ねぇ、圭織。明日香が西の祠へ行けってお告げを?」

「そう。紅い月が墜ちてくる程大きく出た日大変な事が起こるから
なっちを連れて神殿を出て西の祠へ行く様に
って何ヶ月も…」

「そっか…」

明日香はどうしてそんな何ヶ月も伝わるか解らない手を使ったんだろ?
だってさ神殿に足運んだ方がよっぽど早いってなっち思うんだけどさ
45 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:14
「あたし、月が出ていないと行動出来ないんです。
呪いを掛けられているので…」

「明日香さんって言ったっけ?」

圭織がじっと明日香を見つめる。

「はい。月からきました。」

「だと思った。どうしてこの星に来たの?」

圭織が言うと明日香は月の方に目を向けた。

「なっちも詳しく聞きたい」

「えぇ。まぁ。色々と…
長くなるのであたしのお世話になっている所へ行きませんか?」

46 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:14
明日香が言うといぶかしげな表情で圭織はなっちを見つめてくる。

「…どうすんの?」

「ん〜?行くよ。もちろん明日香を信じてるしさ」

それはもうここにいる事で決まって居る答え。

「圭織は?もしさ嫌ならほらアソコに行ってりゃいいっしょ?」

圭織が不安そうな顔でなっちを見つめてくるし
別行動は少し不安だけど仕方無いっしょ。

「ん。ちょっと相談しときたい事もあるしさそうしてみるよ。」

「わかった。…じゃあ明日香なっちを案内してよ。
圭織はちょっと知り合いの所行くってさ」
47 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:15
「フフっ。いいですよ。じゃあ行きましょうか」

「ん。あっ圭織とりあえず話終わったらさ時計台で待っててよ」

「わかった。じゃあ先に行くよ」

圭織はゴメンと言うように手をつけてスタスタと町の西へと向かう。

「では、あたし達も行きますか」

「そだね」

48 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:16
 圭織が向かった方向と逆方向へと向かって明日香が進む。
久しぶりに来たけど余り変わってないこの町。
でも、所々に争った跡のような物がある。
 それに新しい年を迎える日だって言うのに町はシンと静まりかえってる…
ほとんどの人は神殿へ行ってるしもう真夜中だからかな?
でも何か違和感を感じる…

「ねぇ。明日香あのさ…」

「どうしました?」

違和感について聞こうと思ったけどどう伝えればいいんだろ…
後でゆっくり聞けばいいか。
この町の人に聞いた方が良いかもしれないしさ。
あーでも全部丸聞えみたいなものだし…
49 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:17
「あたしも詳しく分からない事ですからその方が賢明な判断ですよ」

「そ…そうだよね…」

何だか慣れないな…

「仕方無いですよ。わざとあたし答えてますから」

もしかしてなっちからかわれてる?
そう言えば圭織との会話はスムーズだったよね…

「からかうと言うか貴方にはチカラの事をしっかり解って欲しいので
貴方はチカラの事をまだあまりにも知らないですから」

50 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:17
魔法と明日香の言うチカラって別物?」

「厳密に言うと近い存在ではありますが別物ですね」

ん〜。
わかんない。
さっぱりわかんないや。

「そうですね…例えば…貴方は風や木と話す事が出来ますよね?」

なっちはコクりと頷く。

「それは誰かに教えてもらって覚えましたか?」

「小さい頃から何気無く…」

なっちがそう言うと明日香はウンと何かに納得した様に頷く。

51 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:18
「要するに持って産まれた特殊なモノがチカラで
教えられ成長する特殊なモノが魔法なのです」

「えっ?でも魔力は持って産まれたモノじゃないの?」

この世界には魔力を持って産まれた人と持って無い人がいる。
前者は魔法が使う事の出来る種を持って居るだけで育てる
意思が無いと使う事は出来ない。
後者は種すら持って居ないためどれだけ頑張っても
魔法は使う事がまったく出来ない。

「そうですね。貴方も仰った通り魔力…つまり
魔法のチカラと書いて魔力ですよね?」

「そっか…なんか解って来たかも…」
52 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:20
育てる意思に関わり、そして教えて貰う事によってより強くなるのが魔法。
育てる意思に関わらないで勝手に使えちゃうのがチカラ…

「えっ?じゃあなっちの翼って一体何?」

「それは貴方が知らない部分にあるチカラです。
貴方の意思で今はどうにもならないチカラ
つまり魔法とも今言ったチカラとも違う謎のチカラが
貴方には隠されて居るのです」

…わかんない…
それに…

「…なっち翼なんか生えて無いのにどうして翼って言われてるのさ…」

53 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/04/22(金) 15:20
「…それは…飯田さんが良くご存じだと思いますよ。
あとこれから会う方が…」

誰だろう…あの時あの場所にいて、今この町に住んでる人って…
…なっちは一人思い浮かぶけど圭織が今行ってる所だし…
だって逆の道に来たよね…
ってあれ?

「やっと気付きましたか?」

「酷いベさ!遠回りするなんて!」

まさか、明日香がここに住んでたなんて考えもしなかったよ…
54 名前:遙 ◆2R3SX0QQ 投稿日:2005/04/22(金) 15:33

今日はここまで。
ちょっと少なめですね…
>>41
次回また新しい人が出てくる予定です。
取り敢えず現旧娘。メンは出てくる予定してるので
いつどんなカタチで出るのか見守ってください。

早ければ来週遅ければ来月中頃更新します。


55 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/24(日) 14:32
更新お疲れさまです。 誰なのか気になりますね。次回更新待ってます。
56 名前:遙 ◆2R3SX0QQ 投稿日:2005/05/14(土) 00:42

「明日香…なっち会えない…」

「大丈夫ですよ。平気です。さっ入りましょう」

明日香はそう言ってドアをノックする。

―コンコン

「ただいま帰りました」

明日香がそう言いながらドアをそっと開く。

「おぉ。おかえり。…なっち。久しぶりだな」

変わらない笑顔で出迎えてくれる。
鼻ピも相変わらずしてる…
なっちあんな事したのにさ…
どして?そんな笑顔で迎えてくれるの?
57 名前:遙 ◆2R3SX0QQ 投稿日:2005/05/14(土) 00:44


「あやっぺ…あの…怪我は?」

あやっぺこと石黒彩は昔神殿に居た神官。
 あの時…
そう
なっちのチカラが暴走したあの日…
確か右肩から左胸に掛けて大きな傷を負わして…

「いいから。そんなものとっくに治ったよ。
さ、圭織がお待ちかねだから入んな」

そう言ってドアを大きく開いてくれる。
58 名前:遙 ◆2R3SX0QQ 投稿日:2005/05/14(土) 00:45


「…でもっ…」

 胸の奥がキュウっと音を立てて罪悪感と共になにかが締め付けてくる。
あの時の事が意識とは別に流れ込んでくる。
 足がガタガタ震える。
意識がなっちの元に戻って来た時のあの悲惨な光景が…

「…とにかく入って下さい。貴方は知るべき事が多くあります。
その事件の事も貴方は知らなくてはならない事ですから…」

明日香はそう小声で言う。
59 名前:遙 ◆2R3SX0QQ 投稿日:2005/05/14(土) 00:46

…どうして…

声にならない…
口をパクパクさせる事しか出来ない…

「やはりまだ無理でしたか…」

「…あぁ…時の流れが止まっているようなものだから…強行するか…」

意識が引いていく寸前に二人のそんなやりとりが聞こえた…



60 名前:遙 ◆2R3SX0QQ 投稿日:2005/05/14(土) 00:46
―――

「なっち。おはよう」

「ん…おはよ。圭織」

 どしたんだろ…圭織がこんな朝早く来るなんて。
…まだ外暗いよ…眠い…

「なっち。直ぐに正装に着替えて聖堂に来て。司祭様が呼んでいるから」

「えっ?うん…」

(喋ろうとしたことと違う言葉が勝手に出てく…何?これ…)

61 名前:遙 ◆2R3SX0QQ 投稿日:2005/05/14(土) 00:48
どうしてだろ?
昨日なんも司祭様言ってなかったベ?

(夢?…違う。不思議な感覚…)

「なっち!早くしないと」

「あっ。うん。わかった。着替えるからさ」

 なっちが言うと圭織は早く来るんだよと念をおして、部屋を出てく。
変な圭織。
いつもとなんだか違うベさ。

(…これってあの日の…)
62 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:50

――――

(わっ。なんか今風景が流れてった!何?)

聖堂の扉を朝早いしあまり音を起てないようにそーっとそーっと開く。
中はまるでこれから儀式を始めるみたくがらんとしてる。
圭織は部屋に書かれている五方星の真ん中に立ってる。
どれだけ見渡しても司祭様はいない。

「司祭様はどこさ。かお…り?」

交信中?
沈みかけのおっきな月に向かって祈りを捧げているみたい…

63 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:51

「圭織。こんな朝っぱらから呼び出すって…ってあれ?
なっちも呼ばれてたんだ」

あやっぺが儀式の時にしか着ない制服を着て中に入って来る。

「そだべさ。圭織は今交信中だよ…」

こうなったらしばらくほっとかないとダメだしさ…

(そっか…これは記憶…確か少しすると圭織に
呼ばれた神官が四人来たんだっけ…)
64 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:51


「なに?あんた達も呼ばれてたんだ」

あやっぺはそう言ってゾロゾロ入ってきた神官に向かってそう言う。

「揃いましたね。」

圭織はすぅーとこちらに向かって来る。
なんか恐い…。
圭織じゃないみたい…

(操られてたから…)

65 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:52


「では、儀式を始めましょう。安倍なつみ」

「へっ?…はい」

 儀式ってなにさ…
そう言おうとしたけどキッっと圭織に睨まれて渋々
さっき圭織の立っていた場所に行く。
そして神官達が星の頂点に各々が立つ。
かなり本格的な儀式みたい…

(やだ。これ以上見たくない…)

66 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:53


 儀式のセリフが長々と続く。
眠い…
んー眠いのとは違う。
頭がボーッとする。
何だか心の中がゾワゾワする。
何か来る…
恐い…でも…体が動かない…

「安倍なつみ
この星は白い翼を求めて居る。月は黒い翼を。
白を染め月に就くのか、黒を薄めこの星に就くのか。
さあ答えよ」

圭織の声がモアモアと流れ込んでくる…
そんな事言われても分からない…
翼って何だべ!

67 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:54


ゾワゾワと何かが湧いて来る…

嫌だ何か来る…

黒いのが…

ヤダ…

恐い

たす…け…て…

からだが…熱い

ヤダ…

どうして…

こんな目に…

止めて…

68 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:55


「さあ答えよ」

分かんない…

なっちは何?

もうヤだ…

みんな無くなれば…

ダメ…

(苦しいよ…なっちまで苦しい…あっ…くぅ…)

パァーン!

69 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:55


―――――

…何?これ…なっちを中心に何かが爆発したみたい…
って…あれっ?あっ…浮いてる
…でも風が浮かしてくれてるのと感覚が違う…
それに…体は自分で動かせないのはかわらないけど、さっきより
意識がはっきりしてる…
下に影が見える…これは翼?

「フフフっ。みんな死んじゃえ!
なっちを苦しめるヤツなんて!エへへ」

手を思い切り振り上げ風を集めて振り下ろすと
剣で斬ったように神官の一人から血が吹き出す。

「クハッ…」

(あっ!ダメ!)
70 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:56


…どうして…風や木が窓を割ってドンドン入ってくる
なっちが止めようとしてもダメ…やっぱり言う事聞いてくれない
水が湧いて来てる。

(あっ!)

「圭織!アンタだけでも逃げな!」

あやっぺはボロボロなのに
オロオロしてる圭織の前に立ちそう言う。‘なっち’はそちらを冷めた目で見つ
め、近づき手を上に掲げる。
71 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:57
何か来る!
心が悲鳴をあげる。
ダメ!離れて!

(あっ!あやっぺ!危ない!)

ブンっと‘なっち’が手をあやっぺに向かって振りかざす

「クッ!…なっち…どう…したんだ?」

「…たす…け…て…」

振り絞るようになっちの口が開きそう言葉が溢れる。
ガクンと体が揺れてストンと崩れ落ちる。
72 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:58

――――

「うっ…」

血の匂い…何?
一体どうしたんだべ…

「あやっぺ!圭織!」

顔上げるとガクガク震えた圭織が血まみれのあやっぺを抱きかかえている。

「こ…来ないで…」

圭織がビクンッとしなっちを怯えた目で見つめている。
73 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:59


「なにさ…どうして?…圭織…」

「悪魔…」

ポツリ。
圭織がそう言う。

「えっ…」

「とぼけないで。あんたが全部っ!」

「ぅ…ウソ…」

これ…全部なっちが…?
74 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:59


「ック…良かった…なっち…」

あやっぺはゆっくり起き上がりながらそう言う。

「あやっぺ喋っちゃダメ!」

圭織があやっぺを抱え止める。

どうしちゃったの?
75 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 00:59
なっちが?

ヤダ…

ウソだ…

でも…

助けたい…

助けなきゃ…

(暖かい…そうか。そう確か暖かい何かに包まれて…)

76 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 01:00
――――――

なっちを中心に今度は暖かな光が聖堂を包み
そこらに散らばっていた木や葉っぱがフワフワと浮き上がり
息絶えた神官を包み込む。

「傷が…消えてく…」

圭織は何度も瞬きをして抱えているあやっぺの傷が
無かったようにドンドン綺麗に治って行く様子を信じられない
と言う顔でなっちと見比べている。

77 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 01:01


ふわり

背中に何か感覚がある。
何かが生えたような…

ひらり

羽がフワフワヒラヒラ落ちる。
出たばかりの太陽の光を浴びて…

「綺麗…」

さっきまで辛そうにしてたあやっぺがそう言いなっちの方を見てる。
そっかそれでなっちは閉じ込められただけで済んだんだ…
でもどうして誰もこの事教えてくれなかったんだろ…

「チカラを無理矢理引き出そうとするからこんな事になったんだよ?」

諭すように“なっち”が圭織の方に向かいいう。
78 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 01:01


「圭織は何も…」

「なっちは圭織操った人に言ってんの。
今度あったら許さないし治さないよ」

ビクンッと圭織の後に居る神官がしコソコソ
穴の空いた所から出てくのが見えた
あの娘は…
確か…

「チカラは必要になるときまで封印しとくから安心して…大丈夫。
あとこの暴走の事はきっと覚えて無いから…
あやっぺ思い出して欲しいときは“アレ”なっちにして?」

“なっち”はふわりと微笑んでフラフラと降りて行く。
79 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/05/14(土) 01:02
「もちろん…でもまだ確実に狙える訳じゃ無いし…
戻せるかも分からないから…でも何故なっちがアタシのチカラの事を?」

「へへへ。ソレは秘密…きっとそのうち分かるから。大丈夫。もう帰るからさ…
暫くなっち寝るね…疲れたべさ…
ふわぁ〜」

―――早く帰って戻れなくなるよ?『なっち』
80 名前:遙 ◆2R3SX0QQ 投稿日:2005/05/14(土) 01:12

今日はここまでです。

>>55
この人でした。
いつもありがとうございます。

 ちょっと今回のはややこしかったかも
しれないですね。
次でいろいろ明らかになるとかならないとか…(殴

という訳で(どういう?
来月中頃に出来たら更新したいです。
81 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/16(月) 06:32
更新お疲れさまです。 ははぁ、なんとなく分かりますよ。 まるで地面と水ですね。 続きが気になります。 次回更新待ってます。
82 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/06/25(土) 00:25
―――――――

「なっち!戻って来い!」

「…ん…あやっぺ…」

「あー…良かったぁ〜」

 あやっぺがヘナヘナと座り込む。
 …あれ?
 玄関?
 後ろで支えてくれている明日香は涼しい顔で

「良かった。しかし時間が係り過ぎましたね」

とあやっぺに向かって言う。

「はぁ〜。さすがに堪えたよ…物凄いチカラ取られた…」

「…何したのさ…」

 明日香の支えてくれていた腕を振り払いつつそう言う。
 状況から分かるのはあの日の事をきっとあやっぺに見せられたって事。
 理由は…多分なっちになっちのチカラを見せるため…

83 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/06/25(土) 00:26
「その通りですよ。貴方は悪いだけじゃ無い。
死んでしまった者を生き返らせた。
まあ自分でしたことを直せないトコロ以外は治しただけですがね…」

「…でも…」

「いいから。入りな!あたしも疲れたし、なっちも
けっこう疲れてるはずだしさ」

 あやっぺは壁にもたれかかりながら立ち上がりそう言う。
 そう言えば頭がホワホワして熱っぽい感じがする。

「詳しい事は中で話ますから。さぁ」

「ん…そうする…」

 あやっぺの家はあの日より前は何度か来たことがあるけど
その頃とは随分雰囲気が違う気がする。
 家は変わって無いはずなのに…
84 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/06/25(土) 00:27

「適当に座ってよ。お茶煎れて来るから」

 あやっぺはそう言うとキッチンの方へ向かう。

「結構待ってたんだよ。なっち」

 圭織はソファーで眠そうにしながらそう言う。

「圭織。もしかして圭織…」

 そんなはずは無いと思っていても、巧くいきすぎている感は拭えない。

「座って下さい。揃ってからゆっくり話しましょう」

 渋々圭織の隣に座る。

「圭織は何も知らないの?」

 圭織に小声で聞く。

「あの日の事は知ってるし、全て話すなって言ったのなっちっしょ?
…って記憶無いんだよね…その辺りの…」
圭織はゴメンと頭を下げて言う。
85 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/06/25(土) 00:27


「別にいいんだよその事は…これから詳しく聞くし…
なっちが知りたいのは…今日の事…」

「知らなかったよ。あやっぺに会うまでは…」

「そっか…」

 府に落ちないけど、そう言って部屋を見渡す…あれ?
 あの写真…
 懐かしい…
 何年も前に神殿の御神木の前で撮った写真。
 笑顔がならんでる。
 あやっぺを真ん中に圭織が左なっちが右に、そしてなっち後に隠れるように居

あの日以来行方不明になってしまったあの娘も…
 この写真の頃に戻れるなら戻りたい…

86 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/06/25(土) 00:28

「過去へ戻ってやり直す事は出来ないですよ。
分かっていらっしゃるとは思いますが」

 明日香が何の感情も無いようにそういう。

「…もちろん。ただ…あの娘に戻って来て欲しいだけ…だから…」

「彼女は貴方を裏切ったんですよ?」

「…そだね。でも…」

 あの娘はかけがえのない存在。そう今でも…

「ちょっとあんたもっと他に言い方があるっしょ?」

 圭織がなっちの言葉を遮って明日香を睨みつつそう言う。

「いいの…なっちのせいだって…分かったから…」

「…確かにさ圭織を操ってたのあの娘だよ…
あの娘を結果的に追い出したのはなっちだけど…
なっちにとって誰よりも大事な娘っしょ?」

「…圭織…」
87 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/06/25(土) 00:29


「えっと…微妙な空気だけどお茶でも飲んで落ち着くかい?」

 あやっぺがトレーにカップを4つ載せて戻って来た。
 トレーごとテーブルに乗せ、ひとつカップを取り上げゆっくり一口すする。

「緑茶にしようかと思ってたんだけど、生憎切らしててさ
ミルクティーにしたよ。みんな疲れたろうし甘くしてみた」
―ちょっと甘すぎかも知れないけどね

 あやっぺは微笑みつつ舌をペロッと出してもう一口コクりとミルクティーを飲
む。

「…あやっぺ…」

「どした?なっち。あんたこれ好きだったよね?」

 あの日以前なっちが落ち込んでたり元気が無い時よくあやっぺが
煎れてくれてた甘いミルクティー。
 自分で煎れてもあやっぺの味は出せなくて悔しかったっけ…

88 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/06/25(土) 00:30


「ホントに甘いね」

 出した声は何故かかすれていて甘い後口にショッパさが混じる。

「泣くほど甘かった?」

「…ううん。おいしかったの…」

「ハハハ。でも泣くほどか?」

「へへへ…あの頃と変わらないから。
閉じ込められてから何年も経つのにさ…
変わらない事もあるんだなと思って嬉しくって」

 そっと涙を拭いながらそう言う。
 きっと。
 きっと、沢山変わってしまったのはあるんだろうけどさ…まだまだなっちは
見て無いし、今は見たくない…変わらない昔と変わらない部分だけ見ていたい…

「…変わらないか…だいぶ変わってしまったよ。あたしもこの町も…」

 あやっぺがどこか遠くを見るように目を細める。
89 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/06/25(土) 00:31

 どうして…
 不変を望んではだめかい?

「…そだね。変わったよ。この星も…」

 圭織が頷き、目を臥せる。
 …変わらない事を願ってはいけないの?

「そうですね。良くも悪くも貴方が閉じ込められている間に変化しました。
不変の物なんて何処にも無いのです」

 明日香はなっちをジッと見つめ、そう言いカップを取り、そっと包み込む。
 なっちはその明日香の視線を受け止め、ジッと見つめ返す。

――分かってるよ明日香。
 知らなきゃいけない事っしょ?
 なっちだってこの数時間で随分変わったから…大丈夫だよ。

 そう想いを込めた視線を…
 きっと明日香には聞こえている。
 視線が柔らかくなっているから…

「お願い。なっちが閉じ込められている間に一体なにがあったの?
あと、あやっぺ…圭織…あの日の事を教えて?」

「あぁ…。なにから話せば良いのか…」

 あやっぺがモゴモゴとしていると圭織が
あやっぺとアイコンタクトをとり口を開く。
「…あの日…圭織は夜中に目が覚めたの…」
90 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/06/25(土) 00:31

――――

 月ってさいつもは遠くに感じるのにその日はとても近く感じたの。
 で、何かあるなとか思ってさ、声を聞くために交信状態にしてたの。

「…き…い…だ…はやく」

 声をもっと聞くために意識を集中させて話しをしようかと思ってたら

―コンコン

「だれ?」

「あたしぃ〜」

「う〜ん。」

 あの娘だ。でも…とか思ってたら、カチャってドアを開けて入ってきたの。

「良いよねかおり?」

「えっ」

 もうあの娘ったらさぁ〜、ヅカヅカ入って来たと思ったら
人の目の前に来んの。でさ

「さっ。目を見て…すぐ終わらせるから」

 って言って、あの娘目を合わせて来て、あー体取られるなぁ〜って思って
やだなぁって。
 そこから圭織的に強制に眠らされて、きっとうーん。
 ちょっと話しをしたのあの娘と。
 交信状態だったからかもしんないけどね。

91 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/06/25(土) 00:33


「どうしてこんなことするの?」

「あはっ。交信?頼まれたからだよ。チカラが欲しいって…なっちのだけど」

 その時なっちのチカラで分かってたのは
自然と話をしてチカラを貸して貰うという事。
 そのチカラなら、あまり凄い物と言える程じゃない。

「月とこの星どちらかひとつ選べるチカラを持っているって」

「そっか。なっちは月のお父さんとこの星のお母さんの間に…」

「あってはならない。産まれる筈の無い人だから…」

 悲しげに目を臥せてあの娘は首を横に振る。

「…ちょっと喋り過ぎたかも…あぁ後で怒られるな…」

「…誰と繋げるの?」

「まぁ、どうせ消えて貰うしいっか…月の御姫様だよ」

 そう確かにあの娘はそう言った。
 そこから…

―――――

92 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/06/25(土) 00:44

 圭織はそこで言葉を止めてあやっぺに視線を送る。

「そこからは彩っぺの方が知ってるはず…」

 圭織はそう言ってあやっぺ見つめる。

「ちょっと待って下さい。あの娘って言うのは、この星の人ですよね?」

「そだよ?どうかした?」

 なっちが首を傾げつつそう言うと、明日香は腑に落ちないといった様子で

「きっとその方は、月の者にそそのかされたのだと思いますよ」
93 名前:遙 ◆xZ2R3SX0QQ 投稿日:2005/06/25(土) 00:56
 
 今回はここまでです。
 なんとも微妙な切り方ですみません。
 
 >>81
 お待たせしました。

 また名無しさん登場です。
 今までと違って暫く謎な人は謎なままです。ヒントはたまに出していきますが
 誰か分かったらメール欄にでも書いてみてください。
 今度は八月頭頃に更新したいなぁ〜(殴
 
94 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/06/26(日) 12:24
更新お疲れさまです。 あの子ですか・・・気になりますねぇ。 次回更新待ってます。 汚文で申し訳無いのですが、メール欄にどうやって書けばいいんでしょう?
95 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/27(月) 00:48
E-mail欄に書き込むんですよ。
96 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/27(月) 00:51
sageるのわすれてました。
更新乙です。
書いてたのが何故か消えてたorz
すみません。
97 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:46

「そそのかされたって…あの娘は自分から進んで月側についたんじゃ無かったっ
て事?」

 あやっぺが明日香に詰め寄る。

「そう言う事になります。石黒さんの話からすると自発的にしたと
判断していましたが飯田さん側の話を聞くとどうも…」

「もし、勝手に行ったなら話なんてしなかった筈…」

 圭織はそう言ってあやっぺを見つめる。

「弱味を握られたんですよ。
お姫様はそういう駆け引きは卑怯なくらい上手ですから…」
―まさかお姫様本人がここまで関わってきてるとは…

 明日香はそう言うと温くなったミルクティーを飲んで小さく溜め息を吐く。


98 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:47
「…あの娘はそんな事出来るはず…無いよ…
ホント優しい娘だもん…なっちはずっと…あの娘は…あの時なっちが…」

「ゴメン…もっと早く言えれば良かった…あの娘の事を」

 あやっぺはそう言い頭を下げる。

「かおりも…」

 一番背の高い筈の圭織が小さくなってなっちを上目使いで見る。

「いいの…なっちがもっと強かったら…」
 そう。
 もっと自分と言うのを強く持っていれば…
 ココロ乱す事の無い程の強さを持っていれば…

99 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:48

「そうですね。でも悔やんだ所で何も始まらないですよ」

 明日香は呆れたと言う感じでそう言う。

「そだよね…あの娘は生きているんだしさ…
お願いあやっぺ続きを話して。もう二度とあんな事起こしたくないから」

「…あぁ。でもまぁほとんどさっきなっちが観た通りなんだけど」

あやっぺはガシガシと頭を掻き、そのままう〜んと唸って頭を抱える。

「なっちが観てないトコが知りたい」

「あー。きっと眠いって言った後かな…」
100 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:48

―――――――

「あやっぺ成功したよ!なっち戻ったみたい…ふわぁ〜」

“なっち”は如何にも眠そうに目を擦りながらそう言った。

「あのさ…どうなってんの?もう冗談は辞めて!なっち!」

 圭織がもう狂いそうになっていた。傷は全て完治していたけどこびりついた血

真っ白な床や天井服に飛び散ったままになっていて
悲惨な光景の痕跡は残りに残っていたのもある筈。
 他の神官達もあいつに操られていた見たいで、あいつが居なくなったと同時に
糸が切れた様にその場で倒れた。
 それこそ死体の様だったよ…
101 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:48

「ん〜?冗談な訳無いっしょ?ふわぁ〜。もうなっち眠いよ…」

「ならあんた誰?なっちじゃ無いだろ?」

 あたしはそう言うのがやっとだった。
なんと言うか眩しくて遠い存在になっちが見えたから…

「“なっち”だよ?…でもなっちは“なっち”のこと分かんないし
“なっち”も‘なっち’を知らない…でも‘なっち’を感じる事は出来るし
なっちを知る事も出来る。なっち達がみんな知り合えるまで
“なっち”は“なっち”だけどなっちじゃ無い…
って事はやっぱなっちじゃ無いよ…“なっち”って事」

102 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:49

 はっきり言ってそれを聞いた時は意味が分からなかった。
けど、漠然とイメージは頭に入ってきた。
不思議な感覚であの声に溶けそうになってきた。
 何だか夢の中に居るそんな感覚だった。
と言うか圭織はボーッとして交信状態になっていて
きっとあたしもそんな感じだったんだけどさ…

「なっちきっとなんも覚えて無いからさ…何も言っちゃダメだかんね?
ほら。謎は謎にして自分で解く方が楽しいっしょ?」

 そう歌うように軽やかに言われて素直にコクりと頷いて居るあたしがいた。
 今考えると謎だらけでとんでも無い事だと思うけどさ。

「…ふわぁ〜。もうなっち寝るかんね?
後の事は任せたよ圭織。あやっぺ」

 そう言ってなっちは爆睡と言うか気絶するように崩れた。
その後―――――

103 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:50

「とりあえず聖堂に篭った血の匂いと血の跡を片付けて、
あたしはその場の最高責任者と言う事で神殿で得た地位を返してこの町に戻った


 あやっぺはなっちの為に自分の地位を?
 あれだけ喜んでいたのに…
 写真の方に目をやるとだんだん目の前がボヤけてくる…
 あったかい手がぽふぽふ頭を叩く。

「あやっぺ…ごめ…」

「泣くなよ…あたしはさ後悔して無いから。寧ろ良かったと思ってる戻って直ぐ
にこの町は
月の奴らに攻め込まれたんだから…
あたしが居なきゃこの町は無くなって居ただろうしさ」

 あやっぺは自慢げにそう言う。

104 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:50

「嘘はいけないですよ」

 明日香がポツリそう言う。

「嘘じゃ無いって!あんた助けたのはこのあたしだろ?」

「あやっぺ…もぅ…」

 なっちをはさんであやっぺと明日香が口論を始める。
 挟まれてるなっちの身になってよ…
 圭織はやりとりをつまらなそうに見てるだけだし…

「でも、最終的に彼女らを追い払ったのは私ですから」


「あんたがあたしの家の前で丸まって泣いてるのを見付けて今まで置いてやった
だろ?」

「それに関しては否定しませんが彼方が彼女らに負けかけた時にあたしが
彼方を助けたのも事実ですし彼方が…」

「ほう。そんな風に言うんだ…」
105 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:51

あやっぺが少しずつ本気で怒り始めてる。ヤバイ目がマジになってる!

「あやっぺそんな怒ると皺増えるよ?」

「かっ圭織!」

 あやっぺが圭織に向かってキッと睨みつける。
 ヤバイ。
 この目はマジだよ…
 今にも掴み掛りそうだしさ…

「あやっぺ!圭織!明日香!いい加減にして!!
もぅ〜。なっち怒るよ!」

 …あれ?
 三人とも一言も発しないよ…
 
「…ご…ゴメン…まさかそんなにヘコむとは…」

 なんか小刻にあやっぺの体が揺れてるけど…

「どしたの?あやっぺ?」

106 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:52

 これって・・・

「あ…ちょっとヤバイな…」

 そう言うあやっぺなんだか透けて来てる…

「あ…あやっぺ!体…」

「ごめん…あやっぺ…繋ぎ止めるの限界かも…」

 圭織が肩で息をし始める…
 もしかして…
 圭織のチカラ…神と強い念を持つ者との交信。あと…

「死者との交信…そして霊の実体化…」

「ハハハ…バレないと思ったんだが…」

 あやっぺが照れくさそうに頭を掻きながら言う。

「嘘…なっちのせいで?」

「や…違う。ちょっと…昔みたいだなって思ったんだ…
あんた達が…変わってない…事を…知れてほっとしたのもあるし…
あたしの役目がそろそろ終りみたいだ…」
107 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:53

「なっち…あやっぺはあんたに会いたいって“なっち”との約束を守るために
あっちの世界へ行かなかったんだよ…」

 圭織は辛そうに顔をしかめながらそう言う。

「いつ…」

「あぁ…さっきの奴さ…確かにあたしは戦って…相撃ちだったんだ…相手は軽く
ダメージ受けただけ…だったんだよ…」

 あやっぺがどんどん薄くなる…

「やだ…嘘だよね…」

「残念ですが事実です…」

 明日香が伏し目がちに言う。
 嘘だよ…さっきあやっぺの手暖かかったっしょ?
 それにミルクティーあやっぺの味だったっしょ…
 信じれるハズ…無いよ…

108 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2005/08/18(木) 23:54

「ハハハ…もう世界がボヤけてきた…
なっち…
イツでもあんたの…側に居るから
泣くな笑え…
必要な…ときは…」
―あたしを呼ぶんだよ…

「あやっぺ!やだ!消えちゃダメ…」

 あやっぺの居た場所から光の粒が弾ける。
 あやっぺはもうこの世には居ない…
 そんなの…ヤだ…やだよ…

「なっち…」

「かお…ねぇ…あやっぺ…」

「…間違い無く亡くなったんです…いえ、あたしが殺したんです…」



109 名前:遙 ◆xZ2R3SX0QQ 投稿日:2005/08/19(金) 00:08

 まず始めに頭に更新するとか言ってたのに半ばまで
更新できなかったことをお許し下さいm(_ _)m
語ると長くなるのでその辺は省略いたします。
申し訳ないです。

 では僭越ながら返レスさせていただきます。
>>94
あの娘当人はしばらく出てきませんが、回想の中でちょくちょく
出てきますよ。
あとメル欄はsageって入れるトコです。>>95さんの言ってる所です。

>>95,96
ご親切にありがとうございます。
お心遣い感謝いたします。
メル欄のことはメル欄にて

という訳で
次回はなるべく早い目に更新いたしますので
末永くお付き合いくださいませ
110 名前:遙 ◆xZ2R3SX0QQ 投稿日:2005/08/19(金) 01:13
あちゃ。
メル欄何も書いてないの今気づきました
111 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/08/19(金) 13:33
更新お疲れさまです。 えぇっ( ̄□ ̄;) どういう意味でしょうか?? 気になりますねぇ 次回更新待ってます。
112 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/24(水) 13:23
更新乙
どういうことなんだろう
気になるところで切りなさる
次待ってます
113 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:53
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。

114 名前:遙 ◆xZ2R3SX0QQ 投稿日:2006/01/28(土) 00:04
長い間ほったらかしにしてしまってスミマセン
色々ありまして小説を書く気持ちでなかったので・・・
>>111さん>>112さん
お待たせしてスミマセンでした
来月中には更新できると思いますので
またよろしくお願いします
115 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/23(木) 23:15
2月終わってしまうよ
116 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:04


 …どういう…こと?
 きっと…ほらあやっぺ優しいから…
 明日香のこと守ったんだよね…

「あたしが石黒さんを…殺したんです」

 明日香は口をキュッと結んでなっちの目を見つめる。
 とても真剣な表情で…
 ウソじゃ…無い?
 どうして…
 頭がキーンと嫌な痛みを持ってくる…

「そっかぁ。あぁ〜あ。明日香、計画ダメになりそうだね」


117 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:06


 えっ?
 なに?
 なっち何言ってんの?

「!」

「なっち?どうしたの?」

 圭織が心配そうに除き込む
 なっちが聞きたい。何?これ

「白の…」

「明日香ダメじゃん。あやっぺをちゃんと守んないとさ…でも…ま。無理ないか


 ちょっ!話進めないでよ…ってなっちか…
 いや違うこれはもしかして…

(アッタリぃ〜“なっち”だよ)

 は…はぁ〜。
 変な感覚。自分の頭の中に自分の声が響いてる。

118 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:06

(暫く聞いといて大事なことだから)

 えっ。…でも、なんで?

(企業秘密)

「なっち大丈夫?」

「ん?まぁ大丈夫だよ。ってか圭織“なっち”のこと忘れた?」

 “なっち”はそう言って気を集中させる。

 ひらり

 背中にあったかい感覚。
 これが翼…

「あ…」

 圭織はボケーっと翼を見てる。

119 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:07


「んー。でも圭織ちょっと眠ってて?明日香となっちに秘密の話あるからさ」

 “なっち”がそう言うと草が窓の隙間からスルスル入って来て圭織を包む。
 一瞬圭織は驚いた表情をしたけど気持ち良さげに草に包まれて行く。

『ちょっと!圭織になにすんのさ!』

(圭織には明日頑張って貰わないといけないし、
 あやっぺのでもうチカラ少ないから回復してやらないとね?)

「…“なっち”?」

「何だい?明日香」

 二人は昔からの知り合いみたいな話方をしている。

「ゴメン。守れなかった。それどころかあたしは…」

「いいんだよ。明日香。あの日からやっぱり変わってきてるんだから」

 “なっち”の声が優しく響く。

120 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:07


「これでいいの?石黒さんは…」

「ん〜。まぁまぁかな?一応約束守ってくれたしさ」

 約束の事はきっとなっちに過去を見せる事。でもそれを明日香が知ってるのが

 そっかあやっぺが話したのかな?
 それにしても二人はどうして?
 なっちは明日香を知らないし…明日香も知らないことがあるみたいだし…

『なっちに分かるように話して』

“なっち”にそう呼び掛けてみる

「…なっちに分かるようにかぁ〜。ねぇ明日香いい?」

「でもリスクが有りすぎるよ」

「それもそうだけど変わってしまった部分ならいいかもね
 もう起こるはずが無いからさ」

 リスク?変わってしまった部分?起こるはずが無い?
もしかしてホントに…未来の事?
121 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:08


「おっ!なっち理解したよ」

「自分で分かるように言ってたのに」

「アハハ…だってぇ〜」

 正解したみたい…と言うことは…なっちは“なっち”で“なっち”はなっち?
 あー訳が分からない

「“なっち”はなっちだけどなっちは“なっち”じゃないって事」

 えっ?ん?う〜ん…分かるような分からない様な…

「ややこしくしてるから“なっち”」

 明日香があきれた様に言う。

「明日香。説明お願いぃ〜」

「もぅ…。つまり“なっち”は貴方である事これは変わらない事です。
 ただもう過去をあたしたちが始まりの部分を変えたので貴方が“なっち”にな
るという事はほぼ無いのです」

122 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:09


 そっかそれで“なっち”はなっちだけどなっちは“なっち”じゃないって意味

 ん?でもなっちが“なっち”に成れないならどうして“なっち”は…

「時空間の捻れに明日香が飛込んだから時空に隙間が出来て意識をなっちに飛ば
して操ってるんだよ」

 操ってる?
 それって…

「そだよ。あの娘のチカラ。ちなみになっちの行動見るのにあやっぺのチカラも
使ってるから」

 それって“なっち”のところには二人共居るって事なのかな…

(企業秘密だよ。あっそうそうこれって交信状態の圭織があの娘と喋ったやり方
なんだよ)

 圭織がそういえばさっき言ってた…

「“なっち”喋りすぎ」
123 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:09


「あっ…まだゆぅ…西の魔女wのところには行って無いんだよね」

「ったく…」

 西の魔女…祠か…怖いなぁ。

「そうだ!時間あんまり無いんだよね明日香」

「うん。いい加減ヤバイ時間帯」

 そういえば明日香呪いで月が出てないと動けないとかなんとか…

「明日香。あやっぺをどうして?」

「あの娘にアイツが降りるための器にされそうになったけど石黒さんの意志であ
たしが…」

 あの娘が…アイツって誰?
 空気がフッと変わる。

124 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:10


「ならいいよ。なっちは明日香を恨まないもちろん恨むのはアイツ…‘なっち’
を…」

 “なっち”は‘なっち’を嫌う…そんな半端でなく恨んでいるんだ…
 どうして?元はなっちなんでしょ?“なっち”も‘なっち’も…

「違う。違うの。‘なっち’は…なっちじゃない‘なっち’と名乗っているだけ
 ‘なっち’は…。なっちのチカラが欲しいだけの…あっ…!」

「えっ?」

 あれ…?体が…動く

「どうしたの!“なっち”!」

(ゴメン!こっちの場所アイツにバレた!!戻るね!なっち。必ず1つになるから
…またネ)

 ふわり

 羽が散らばる様に落ちて雪みたいに消える。

125 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:10


「帰ってしまったんですか?」

「…みたい。アイツに場所バレたって…」

「…そう…ですか…」

 沈黙の時間が流れる。
 なっちはどうすればいいの?
 あやっぺ…あやっぺは…

「あの…」

 明日香が申し訳無さそうに言う。

「何?」

「あたし…」

「不思議なんだぁ。なっちね、あやっぺが生きてる気がするの」

 嘘じゃない。あやっぺは生きてる。そう感じる。
 “なっち”はこれっぽっちも思ってなかったみたいだけど。

126 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:11


「確にこの手で…」

「うん。それは理解してるつもり。そういうんじゃ無いの。体はもう無いんだよ
ね?
 魂がまだ消えて無いの。さっき弾けるのみたけどあれは圭織のチカラが薄くな
ったから
 ここじゃ無いでしょ。あやっぺが…肉体が死んだのは」

 こんな事がどうして分かるのか分からない。けど…感じる。
 あやっぺの魂が居るのはホントに居る場所はここじゃ無いって

「…はい。祠…西の祠の近くで…」

「そっ…かぁ〜。違和感感じたのこの家とこの町に」

 そう。違和感の理由は匂い。あやっぺや人の匂い。

「町の人も居ない…きっと…考えたく無いけど…」

 月の兵隊ってのに…

127 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:11


「いえ。町の人はあたしの姿を見て逃げてしまったんです。
 月の出ていない時のあたしの姿を見て…そろそろ見れますよ
ほら…」

 窓の外が少し明るくなってきてる。
 明日香は苦しそうに顔を歪めて立ちあがっている。

「明日香!大丈夫!?」

「な…慣れてる…見ないで…」

「で…でも…」

「お願い…します…」

 苦しそうに明日香は言う。
 放っておけない…でも…ゴメン見てられない…

「…いい…みられ…無い方が…うぁー――――――――――――」

 苦しそうな叫び声…!

128 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:12


「明日香!!」

「っく…ふふっ。気持ち悪いでしょう?」

「…か…か…」

「え?」

「明日香可愛い!もぅ〜すっごい可愛いぃ〜!アハハぁ〜」

 頭に犬の耳が付いて、鼻と口も犬っぽくなっていて、あと手がふさふさしてる

 ちゃんと肉球もあるし足もそんなかんじあと尻尾もフリフリしてるし…

「犬っしょ?かなりめんこいよ明日香。…くっ」

「えっ…犬?可愛い?…もしかして…まさか…」

 明日香は慌てて鏡を覗く。

129 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:13


「あれ?」

 明日香は首を傾げなから体をポフポフ叩く。

「…どうして?…あっ!“なっち”の仕業だ!
くぅ〜。呪い解くの間違えたな…ちょっとまてよ…さては…」

「えっ?なっちなんもしてないよ!」

「もちろん。貴方はまだチカラ解放されて無いので無理です
 呪い解く方法を知ってる人がもう一人居るので…ね。飯田さん」

「…っちぇっ。バレた」

 いつの間にか“なっち”の草から解放された圭織がいたずらっ子みたく笑って
る。
「こんな格好で町歩けないじゃ無いですか!」

 明日香が怒った声でそう言うけどまったく迫力がない。

「そう?なっちは可愛いと思うよ。うんうん」

「カオリもぉ〜」

 圭織がニヤニヤしてる。
 きっとなっちも。
 なんだか楽しい
130 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:21

「…ったく…しかし朝が来ましたね…どうします?休みますか?それとも出かけ
ますか?」

 疲れているはずなのに、全然そんなことは無くって・・・
 なんだろ“なっち”が何かしたのかな??

「カオリは平気だよ。なんだか良く寝たし」

「…ん〜。行く。行きたい!魔女は怖いけど…」

 西の祠へ行ったものは二度と戻って来ない…
 そういう噂が頭をよぎる。
 特に若い女性は…
 でも、そんな事言ってられない。
 なっちたちが行かないといけないんだよね。

「分かりました。でわ、西の祠へ向かいましょう」 

「うん!!」

「いざ!西の祠へ!!!」


131 名前:第二章 −始まりの町− 投稿日:2006/02/26(日) 02:24


第二章 完
         next第三章 西の祠
132 名前:遙 ◆xZ2R3SX0QQ 投稿日:2006/02/26(日) 02:27
更新は以上です。
ホント長期間放置してしまってスミマセンでした。
次は早めに(ry

>>115
お待たせしました。
何とか2月中に更新できました。
133 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/26(日) 15:01
おぉ!更新されてる!
待ってた甲斐がありました作者さんのペースでまた更新待ってます
さてと最初からもう1回読まないと私の頭ではorz
134 名前:遥 ◆xZ2R3SX0QQ 投稿日:2006/09/07(木) 10:30
半年以上の放置すみません
>>133
待っていただきありがとうございます
中々更新出来ずすみません
色々バタバタしてまして小説まで手が回りませんでした
只今更正してますのでもうしばらくお待ち下さい
135 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/15(木) 20:57
更新待ってますよ

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