藤本さんとか矢口さんとか

1 名前:古賀 投稿日:2005/04/08(金) 02:55
この二人が出張ってくると思いますが、この二人が絡むとは限りません。
2 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/08(金) 02:57


「亜弥ちゃんは相変わらず忙しそうだね」
「ちょっとみきたん、さっきのどういう…」
「美貴、梨華ちゃんといるほうが楽しいかも」



3 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/08(金) 02:59


昨日は4月の1日だった。世に言う、エイプリルフール。
昼間はあっちこっちで嘘つき大会が繰り広げられていた。
矢口さんなんかは「今度あな真里が一時から三時までに移動になったんだよー」とか自分の首を絞めるような嘘でかかってきた。
「いやいや、それは亜弥ちゃんに任せて、やぐちひとりに専念してくださいよ」と瞬殺すると、しょんぼりと田中の方へ移動した。
懲りずに今度は「れいなには先に言っておくけど、実は卒業が決まって…」とか洒落にならない嘘をついて、



    /つノノハヽ         
    | ||从 ;` ヮ´;)  < えええええぇぇぇ!!!
  _ヽ_ と__」______      
    
散々大泣きさせ、ひんしゅくを買っていた。
「まりっぺなにしてんの!」
「だ、だってまさか泣くとは思わなかったんだよぉ…」
どっちがお姉さんだかわかりゃしない。

美貴はそんなお祭り騒ぎには参加せず、しばらく会っていない亜弥ちゃんのことを考えていた。
「ミキティは何か嘘ないの?」
梨華ちゃんの説教から解放されたらしい矢口さんが、美貴の腕の間から顔を出し、美貴は我にかえる。
「別にこれといっては…」
「たまにはツッコミじゃなくて斬られてみるのもいいじゃん?」
「気が向いたらそうします」
「何だよノリ悪いなー」
「矢口さんも悪ノリしずぎないようにして下さいね」
下の方で喚く小さなリーダーをスルーし、美貴はまた考え事に耽る。

たまには…ねぇ。
とは言っても別にメンバーに嘘つきたいとも思わないし。そんなことより亜弥ちゃんに会いたいよ。

4 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/08(金) 03:03
その日の夜、亜弥ちゃんと電話をした。
もう12時近かったし、少し眠くもあったけれど、
電話は日課になってしまっていて、これがないと落ち着かない。
他愛のない会話をしながら、ふと話題はエイプリルフールに移った。
「たんは今日何か嘘ついた?」

「いや、別に」
「うーん、冷めてるなぁ。」
「いやいや、嘘つかなきゃいけないわけでもないでしょ?」
「まぁ、ね。アタシはスタッフさん騙したよー」
「何て?」
「衣装にお茶こぼしちゃいました!って」
「あー。可愛い可愛い。」
「えー何その反応?」
「だってウチらの楽屋なんかさぁ…」

今日の出来事を報告しながらも、美貴は少し上の空だった。
皆に冷めてるとか付き合い悪いとか言われた今日。
別に嘘ぐらいつけるけど。つこうと思わないだけで。
でも強要されてすることでもないと思う。
しかし…亜弥ちゃんにまで言われるとは…嘘の一つもつくべきなのかなぁ。
でも、電話で言っても反応声だけだしつまらないんだよなぁ。
亜弥ちゃんとは最近電話でしか話してないし。
コレで相手が梨華ちゃんとかだったら、ちょっと真面目な声で嘘つけばすぐに信じてしかも面白いリアクションが生で見れるのに。
やっぱ…遠いなぁ…。ソロ組との距離。
「…はぁ…」
「たん?」
「…梨華ちゃんだったらなぁ…」
「…たん…?」
ふっと我に返った。あれ、今飛んでた?
いつの間にか報告は済んで、美貴は一人ため息をついていたみたい。
しかも、自分の耳に届いたのは「梨華ちゃんだったら」という自分の台詞。
あー…声に出てたんか…。亜弥ちゃん誤解したかなぁ。したよねぇ。
やばー、フォローしなくちゃ。
…いや、待てよ…
コレを嘘ってことにすればいいのか?
年に一度のエイプリルフールだ、嘘でした、で済むのかな?

あまりにうかつな考えではあったが、美貴はその時ぼんやりしていて、あまり頭が働いていなかった。
さっきの台詞を補うべく、美貴は口を開く。


「亜弥ちゃんは相変わらず忙しそうだね」

5 名前:古賀 投稿日:2005/04/08(金) 03:07
ひとまずここまで
6 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/08(金) 09:55
その後、亜弥ちゃんにあっという間に電話を切られてしまった美貴は、「嘘だよ」というタイミングをすっかり逃してしまった。
その場ですぐに止めるつもりだったのに。急いでかけなおしたが、つながらない。

しかたない、明日ハロモニの収録でちょっと会えるはずだから、そのときに言おう。真っ先にフォローしなくちゃ。



そんなわけで今日。美貴はいつも以上に鋭い目つきで亜弥ちゃんを探していた。
しかし、なかなか忙しくて二人きりになれない。というか、目すらあってない。
姿も1,2回確認できた程度だ。
本当に忙しい人だ。悔しいくらい。



昼休み。
何はともあれ、お昼ご飯もドコで食べてるのかわからない現状ではどうしようも出来ず。することもなくぼーっとしていたら、休憩もそろそろ終わるかという時間に、美貴は梨華ちゃんに呼び出された。




連れてこられたのは、あまり人目につかない給湯室。
狭い空間に二人が納まったあと、梨華ちゃんは美貴にこう言った。

「美貴ちゃん、私と付き合わない?」
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/08(金) 12:03
面白いです!
続き期待しています。
8 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/09(土) 12:22
・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?

「梨華、ちゃん…今…、なんて?」
「だから付き合おう?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?

「誰、が?」
「美貴ちゃんが」

「…誰と?」
「私と」


「付き合う?」
「そう」

・・・・・・・・・・・・・・・駄目だ、頭がついていかない。

「アノ、何故に美貴…?」
「そりゃあ美貴ちゃんが好きだからだよ」





美貴の頭の中から、ここは給湯室だとか亜弥ちゃんに会いたいだとか、そういう事が全て吹っ飛んだ。
9 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/09(土) 12:23
梨華ちゃんは可愛い。
それは間違いない。
一生懸命だし、気配り上手だし、ちょっと後ろ向きな所はあるけどそれも可愛いと思う。
それに打たれ強く、なにより人に気を許させる何かがある。
メンバーの殆どが、先輩であるはずの彼女をイジったりツッコミを入れたりと、気さくな関係を保っているのは彼女の人柄所以だろう。

自由奔放な亜弥ちゃんと違って、同じペースで歩いていけそうな梨華ちゃん。
亜弥ちゃんに振り回されっぱなしの日々に、梨華ちゃんに癒され、彼氏であるよっちゃんを羨ましく思ったことも事実何度もある。

まさか梨華ちゃんに「付き合おう」なんて言われるとは思わなかった。
でも、梨華ちゃんなら…















…いやいやいや、美貴、亜弥ちゃんいるから。
あぶない、一瞬流されるとこだった。
10 名前:古賀 投稿日:2005/04/09(土) 12:24
どうにもペースが遅くて申し訳ない
次は休日明けになるかと
11 名前:マルタちゃん 投稿日:2005/04/09(土) 17:10
初めましてです。
矢口さん大好きなので嬉しいです。
みきやぐ、あるとなお嬉しいです♪
12 名前:古賀 投稿日:2005/04/10(日) 00:40
>>7
ありがとうございます
方向性がギャグなのかシリアスなのかもっと全然違う方向なのか全く定まってませんが…ご期待に沿えるよう頑張ります

>>11
みきやぐ…おいらも好きですよー
この作品はあやみき前提で行こうと思ってるので、次回作で考えてみます
13 名前:知つぁん 投稿日:2005/04/10(日) 20:16
あやみきはやっぱりいいですねぇ〜^^
オイラ初めてりかみきみました!(りかみきでいいのかな?
オイラもやぐっつぁんが大好きなのでやぐみきにも期待します!(エ
次の更新に期待です^^
14 名前:古賀 投稿日:2005/04/11(月) 11:30
楽屋から少し離れた給湯室までは、みんなの喧噪の声は聞こえなくて。
空調の音だけがイヤに大きく感じた。

梨華ちゃんは美貴をまっすぐに見ている。その表情からは真意は読み取れなかった。
美貴は、一瞬でもグラついたコトを心の中で亜弥ちゃんに謝りながら、梨華を見返した。


「…梨華ちゃんは、美貴のコトが好きなの?」
「うん」
「美貴には亜弥ちゃんがいるんだよ?」
「わかってる」
「よっちゃんさんは?」
「…よっすぃーは関係ない、美貴ちゃんがいいの」

一瞬、梨華ちゃんは寂しそうな表情をした。…ように見えた。多分。一瞬すぎて自信ないけど。

「…本当に?」
美貴はまっすぐに、まっすぐに梨華ちゃんを見た。茶化したりは出来ない。真剣に向き合う問題だと思った。
「本当だよ」
今度は淀みなく返ってきた。

「本当に美貴でいいんだね?」
「うん」


美貴は真剣な表情を崩し、微笑んだ。そのまま梨華ちゃんを押し倒す。
「み、美貴ちゃん…?」
「うれしいよ。美貴ずっと梨華ちゃんが好きだったんだから」
「美貴ちゃん…」
梨華ちゃんは抵抗することなく美貴を見上げていた。その表情は、戸惑っているようにも見えた。


「梨華ちゃん…好きだよ」
美貴は梨華ちゃんの口を塞ぐ。
梨華ちゃんは、驚いたように美貴の服を握りしめた。


別にキスくらい、メンバーみんながしてることだし、今更どうというコトもないだろうけど。
でも美貴は普段自分からしないようにしている。…亜弥ちゃんが怖いから。


---つまり美貴は本気だ。
そう梨華ちゃんに伝わったろうか。さっきよっちゃんさんの名前をあげた時に一瞬変わった表情が、引っかかっていた。梨華ちゃんは、本気ではない。そう思ったからこそ、美貴は少し強引に、行動に出てみたのだ。


これは賭だ。


これで梨華ちゃんが拒めばよし、拒まなければ…拒まなければ…それはそれでオイシイけど…っていやいや。






キスしたまま随分長い時間思考していた。
美貴はゆっくりと顔を離し、梨華ちゃんを見た。
15 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/11(月) 11:32





「梨華ちゃん…」

梨華ちゃんは泣いていた。
声を出すでもしゃくりあげるでもなく、ただただ眼から涙が溢れていた。
梨華ちゃんの泣き顔を見ながら、もし美貴が亜弥ちゃんじゃなくて梨華ちゃんと付き合っていたら絶対梨華ちゃんのコト泣かさないのに…とかボンヤリ考えていた。


…ていうか今泣いてるの明らかに美貴のせいじゃ…?


「ご、ごめん!」
我にかえった美貴は慌てて梨華ちゃんの上からどいて、彼女を起きあがらせた。
「ちが…違うの…美貴ちゃんのせいじゃない…」
「…え?」
梨華ちゃんは、美貴の服の裾を掴んだまま、首を振った。
「ごめん…私、どうしたら良いのか…」
そう言って梨華ちゃんは、美貴にしがみつくようにして泣き出した。



16 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/11(月) 11:33
                                   
17 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/11(月) 11:33
                                       
18 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/11(月) 11:33
                                        
19 名前:古賀 投稿日:2005/04/11(月) 11:38
>>13
あやみきいいですよね!
新参者で、無知さが目立つかもしれませんが…;
矢口さんは動かしやすくて好きですねぇ

>>14
タイトルを「四月の初めに」に脳内変換お願いします
20 名前:くれす 投稿日:2005/04/11(月) 12:56
ますますこれからの展開が楽しみです。
がんばってください!
21 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 16:36
                    
22 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 16:36
                  
23 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 16:37
「ねえ、何があったの梨華ちゃん?」
「……」
「…梨華ちゃん?」
「……あのね…」











24 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 16:39
驚いた。まさか梨華ちゃんに泣かれるとは思わなかったし、それより何よりよっちゃんさんがそんなコトを言ったというのが信じられなかった。

梨華ちゃんの話によると、昨日仕事の後に二人で食事に行って、その時よっちゃんさんは紺ちゃんのコトを好きになってしまったと告げたらしい。
しかもその理由が「カントリー娘。で歌ってる姿が可愛かった」という理由だと言うのだ。



「私もカントリー娘。にいたから、だから好きになったのかな…」
おかしい。何かあまりにも理由がおかしい。第一美貴だってカントリーに参加してる。
「でね、じゃあ美貴ちゃんのコトも好きになるの?って聞いたの。そしたら、『ミキティは女として見れない』って」

あぁそうかい。
…いや女だから。

「私、浮気しかえしてやるって思って、なら美貴ちゃんがいいなって」
あの、美貴ちゃんがいいもなにも、美貴彼女いるんですが。

心の中でいちいちツッコミを入れながらも、梨華ちゃんの話を聞く。
25 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 16:41



…にしても何だろうこの苛だち。
二人で話していることの違和感。

よっちゃんさんがいないから?
…あぁ、そうだ。
二人が一緒にいないのがおかしいんだ。梨華ちゃんとよっちゃんさんは一緒じゃなきゃ駄目なんだ。
そんなの、本人が一番わかってるはずなのに。よっちゃんさんは梨華ちゃんの大切さをわかってないんだ。




気づくと美貴は駆けだしていた。
26 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 16:42
「美貴ちゃん!?」
梨華ちゃんの声を背中に、美貴は楽屋という楽屋を開けてよっちゃんさんを捜す。
「わぁ何だミキティ!」
「藤本さん!?」
「きゃー!」
「なんやどうした藤本!?」
「たん!?」
「え、藤本さん?」
娘楽屋、ソロ組の楽屋。開ける楽屋開ける楽屋で悲鳴を受けながら、構わず進む。

よっちゃんさんに聞いてみなきゃ納得できない。
どうしてそんなコトを言ったのか。本心なのか。梨華ちゃんをどう思っているのか。

ついに開ける部屋が尽きた。あと考えられるのは、自販機前かトイレぐらいしかない。
自販機に向かうため階段を降り始めたところで、よっちゃんさんを見つけた。



彼女は階段の踊り場で、紺ちゃんを抱きしめていた。
27 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 16:43
                            
28 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 16:43
                        
29 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 16:43
                            
30 名前:古賀 投稿日:2005/04/12(火) 16:45
>>20
ありがとうございます
早くも苦しいです(^^;)


さーて、修羅場。
31 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 17:10
32 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 17:11

「ちょっとよっちゃんさん!」
「ミキティ?」
思わず語勢が荒くなる。

「何してんの!?」
「何って……ミキティこそ何の用?」
そう言いながら、よっちゃんさんは若干、紺ちゃんをかばうようにこちらを向く。
紺ちゃんは泣いているようだ。

「何で紺ちゃんといるの!」
「何でって…相談にのってただけだよ?ウチらメンバーだし」
「梨華ちゃんだってメンバーだよ!」
「は?いやそうだけど、何で此処に梨華ちゃんが出てくるの?関係ないじゃん」
「関係あるよ!」
「いや、ないよ…どしたのミキティ」
正直。美貴も少し興奮していた。けど、思考は冷静なつもりだ。
よっちゃんさんは怪訝そうに美貴を見ている。ていうかポカンとしてる。
いつにない剣幕の美貴に戸惑っているようだ。

だけど。
33 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 17:12

…こんなに無神経な人だったろうか。
昨日の今日で、こんな人目につく階段なんかで抱き合えるような、そんな無神経な人だったろうか。

第一…
「紺ちゃん、ごっちんはどうしたの?」
「…」
紺ちゃんは黙っている。しかし黙られて諦める訳にもいかない。

紺ちゃんはごっちんと付き合ってるはずだ。
その紺ちゃんがよっちゃんさんと抱き合ってたら、梨華ちゃんだけじゃない、ごっちんの想いだって。

「ねぇ紺ちゃん…」
「良いじゃん紺野が誰といたって。ミキティには関係ないよ」
今度は明らかに不快そうな表情で、よっちゃんさんは美貴と紺ちゃんの間に立つ。

…へぇ。
そう来るならこちらにも考えがある。


「だったら…」
そう言いかけた時だ。背後から声がした。
34 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 17:13

「…よっすぃ…」
驚いて振り向くと、梨華ちゃんが立っていた。どうも後を追って来ていたらしい。
梨華ちゃんは、よっちゃんさんを見ていた。
その顔はとても悲しそうで、不謹慎だけど美貴は綺麗だと感じた。

「梨華ちゃん…?」
よっちゃんさんも驚いているように見えた。それが非常に癪にさわった。
何驚いてるんだ階段なんかで抱き合っといて。

美貴は梨華ちゃんを引き寄せた。
「きゃっ」
「あっ何すんだミキティ!?」
そしてさっき言いかけた台詞を、よっちゃんさんを見据えながら言う。

「だったら、梨華ちゃんと美貴が付き合っても、よっちゃんさんには関係ないよね?」
35 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 17:14
                  
36 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 17:15
                       
37 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 17:16

勿論本心じゃない。美貴には愛しい恋人、亜弥ちゃんがいるのだ。
そりゃ梨華ちゃんは可愛いし、大切な仲間だけど。

よっちゃんさんがどういう反応をするか、それを見るために言った…言わば挑発だ。
もう完全に心変わりしてしまったのか。それとも美貴に嫉妬をするか。

…さっきからこんなことばっかりしてる気がするけれど。
今日美貴大胆?


しかし、よっちゃんさんの反応は美貴の予想外の反応だった。
38 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 17:17

「……は?」
よっちゃんさんは、---思わずツッコミキティ化したいくらい---呆けた表情で美貴を見ている。

「…何その反応」
「いやいや、だってミキティ彼女いるじゃん。え、別れんの?」
「なっ…別れないよ!」
何を言うかと思えば。亜弥ちゃんと別れる?冗談じゃない。

しかしよっちゃんさんは依然として不思議そうな表情を浮かべている。
「え、じゃあ二股?しかも不倫?ミキティ、チャレンジャーだなあ」
「二股言うな!しかも何だ不倫って!」
「だって梨華ちゃんウチのだよ?」

うわ、さらっと言ってのけちゃったよこの人。未だに紺ちゃん腕の中に納めながら。
39 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 17:17
                       
40 名前:四月の始めに 投稿日:2005/04/12(火) 17:17
                            
41 名前:古賀 投稿日:2005/04/12(火) 17:18
きょうはこのへんでしつれいします
42 名前:古賀 投稿日:2005/04/12(火) 17:21

…読みにくいですね…
レスの終わりに一行空けてるつもりだったんですが…
スペース入れないと反映されないんでしょうか…
ためしにやってみよう。
                               
43 名前:四月の終わりに 投稿日:2005/04/12(火) 17:22

「じゃ、じゃあさっき紺ちゃんと抱…!」
「たん!」
そのとき美貴の台詞を遮るように、声が響く。
梨華ちゃんを抱き寄せたままの状態で振り向くと、美貴の「愛しいあの人」亜弥ちゃんと、ごっちんがいた。

あぁ亜弥ちゃんと会うのも本当に久しぶりだなあ。電話は毎日してるけど。


…電話?


亜弥ちゃんは猛然とこちらへ向かってくる。
…マズイ!昨日電話で梨華ちゃんが好きとか言ったんだった!まだフォロー入れてないのにこの状況はマズイ!
                                     
44 名前:四月の終わりに 投稿日:2005/04/12(火) 17:23
                           
45 名前:古賀 投稿日:2005/04/12(火) 17:24

出来た感じ?
失礼しました
         
46 名前:古賀 投稿日:2005/04/12(火) 17:26
>>43>>44
「四月の始めに」に脳内変換お願いします…
何考えてんだ自分…
47 名前:konkon 投稿日:2005/04/13(水) 12:15
初めまして〜、毎回読んでますよ〜♪
修羅場が続いて展開が面白いです。
更新お待ちしてます。
48 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/13(水) 14:04
                                
49 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/13(水) 14:05
                                 
50 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/13(水) 14:06



向かってくる勢いに。テレビドラマのような修羅場を想像して。
平手を覚悟した美貴は思わず目をつぶる。


…が、いつまで経っても痛みは訪れない。
おそるおそる目をあけると、あの亜弥ちゃんをごっちんが羽交い締めにしている光景が見えた。
「まっつー、ちょっと落ち着いて」
「ちょっ…離してよごっちんー」
「このままじゃ喧嘩になるだけだよ」
「だって…!」
「ほら落ち着いて、ね?」
そういうとごっちんは亜弥ちゃんを自分の方に向かせ、頭と背中に手をまわす。

ポンポンと背中をたたくごっちんは何だかとても優しい表情で、紺ちゃんはこうやって可愛がられてるんだなぁとぼんやり思った。
                    
51 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/13(水) 14:07

やはり亜弥ちゃんは昨日の話を真に受けてしまったようで。
多分ごっちんに相談したのだろう。それでごっちんは上手いことなだめてくれてたんだろう。
申し訳ない気持ちでごっちんを見ると、柔らかい笑みが返ってきた。

ああ、バレてる。
エイプリルフールを失敗したことが、バレテルヨー。
         
52 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/13(水) 14:08


にしても何で二人はここにいるんだろう。

さっき楽屋見てまわった時は確かいなかっ…
『わぁ何だミキティ!』
『藤本さん!?』
『きゃー!』
『なんやどうした藤本!?』
『たん!?』←
『え、藤本さん?』
……いたー!!

そうか、ごっちんに相談してるトコに美貴が飛び込んでって、しかも何も言わず飛び出してったんだ。
そりゃ追いかけもするよね…。
                     
53 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/13(水) 14:09



っていうか美貴、亜弥ちゃん見たのに気づかなかったってコト?うっわ最悪…。



  
54 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/13(水) 14:11


「…ねぇ、階段途中でひっついてる姉さん二人と、階段上で抱き合ってるソロ組二人」
「え?」
「いい加減離れてくんない?」
我にかえり下を見ると、よっちゃんさんが不愉快そうにこちらを見上げている。
姉さんて。そりゃ美貴も梨華ちゃんもよっちゃんさんより一個上だけど。
ていうか普通に妬いてんじゃん。


…いや、そんなことより紺ちゃんが上二人をスゴく悲しそうに見てるんですが。
あぁー違うよー、君のごっちんをとったわけじゃないよー…ウチの姫さんが迷惑かけただけだよー…。
  
55 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/13(水) 14:13

そういえばココに三カップルばらけてることに気付いたよ美貴。
なんかオカシイよ。
それぞれひっつきなおせば良いのに。

あぁ、でも姫はご立腹でしたな。さっきから一言もしゃべりゃしねぇ。
ここはごっちんに預けといた方が…

…いやいや自分でフォローしないと。
     
56 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/13(水) 14:14

後「ねぇミキティ」
藤「ん、何ごっちん?」
後「それぞれ組み合わせおかしくない?」
藤「…だよねぇ」
吉「だから離れろってば!」
後「よしこ怒鳴らなくても聞こえるから。うるさいよ」
吉「なっ…!」
石「そうだよよっすぃー」
藤「そうだそうだww」
吉「だからなんでミキティはそんな喧嘩腰なんだよ!」



なんだかこのまま騒がしくなりそうな
---まぁもともと美貴が怒鳴り込んだ辺りからうるさかっただろうけど---
そんな騒がしくなりそうな雰囲気を打破したのは三度目の背後からの声だった。




…とは言っても今度はアニメ声でも愛しい声でもなく、怒りに満ちた三十路声だったけれど。

  
57 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/13(水) 14:14
          
58 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/13(水) 14:14
                
59 名前:古賀 投稿日:2005/04/13(水) 14:16

行け姐さん!
 
60 名前:くれす 投稿日:2005/04/13(水) 17:17

この先どうなるんだ〜
更新楽しみにしています!
61 名前:古賀 投稿日:2005/04/16(土) 00:17
あー……

やぐヲタなんてちょっとビックリしました…。
否定はしません。「かっけー」とすら思います。
単純に寂しさはありますけどね、卒業興行見たかったし。

小説上は、まだまだメンバーとして頑張ってもらうつもりです。
(ネタにも出来ねぇし)

どうかご了承下さい。
62 名前:古賀 投稿日:2005/04/16(土) 00:22
追記&ochi。

次回はまた休日明けの予定。
姐さんと、…矢口も出てきます。
内容は一切変えません。そんな器用なコトできません(笑)

更新したらageます。
63 名前:くれす 投稿日:2005/04/16(土) 10:46
矢口さんの事は本当にビックリしました。
寂しいけどこれからの活動に期待したいです。

続き楽しみにしているのでがんばって下さいね。
64 名前:古賀 投稿日:2005/04/16(土) 22:29
ちょっと脱線します
65 名前:石川 投稿日:2005/04/16(土) 22:30
例えばモーニング娘。がマザーシップなら。


矢口さんが大好きなワンピースっていう漫画のように、私達は様々な場所からこの船に乗り込んできました。
いくつもの荒波を越えて。
沢山の出会いと別れを繰り返して。
途中で下りた人もいました。
道を分かつことになったこともあります。


けれど錨は降ろさない。


終わりはなくて。
果てしがなくて。
けして気楽な旅ではないけど。
自分が信じる航路を目指して。






そして次に訪れる地で、私はこの船を降りる。
66 名前:石川 投稿日:2005/04/16(土) 22:32


私が仲間三人と船に乗り込んだとき、既に七人の船員がいました。
みんな明るくて、強くて、格好良くて。

その中でひときわ小さくて、ひときわ元気な先輩船員がいました。
口が悪かったり、うるさかったりもしたけど、
誰よりも一生懸命で常に全力投球で。

私は彼女に憧れていました。


月日が流れ、本当に沢山のコトがあって、
もうすぐ私もこの船を下りることになります。

当時の船員は
…もう三人しか残っていません。

船長は、今となっては唯一の先輩船員である小さな彼女。
体は小さくても、いつも笑顔で前向きな彼女に船員達は救われてきたのです。

いつだったか、
自分は全ての船員の下船をみてきたんだと言って、笑っていました。

彼女が、この船そのものなのかもしれません。
修繕を繰り返しながら、荒波と戦いながら、必死で乗り継いできた船です。
もう大分ガタが来ている船です。
残ることは、どんなに辛くて、大変で、寂しいことか。

それでも彼女は、いつかくる最後の日まで、それを見届けるまで、
船を下りることはないのだろう。進むことをやめないのだろう。
 
67 名前:石川 投稿日:2005/04/16(土) 22:33

乗船した日に、両手を広げ笑顔で迎えてくれたあなた。
下船する日もあなたはきっと笑顔で見送ってくれるのでしょう。
どれだけ経っても、いつ振り返っても、あなたはそこで笑っているのでしょう。








そう、思っていました。



 
68 名前:あとがき 投稿日:2005/04/16(土) 22:35
石川が入ってから出ていくまで。
ずっと共にいたのは吉澤と矢口。
それは疑うはずのない事実だと思っていました。

歌詞を掲載することは出来ませんが
ブルーハーツの『ナビゲーター』は
もろモーニング娘。の物語だと思います
69 名前:吉澤 投稿日:2005/04/16(土) 22:35
      
70 名前:吉澤 投稿日:2005/04/16(土) 22:36



そりゃあ

ウチが先に卒業するはずはないとは思ってましたよ。
思ってましたけどさ。



 
71 名前:吉澤 投稿日:2005/04/16(土) 22:36
普通半年は前に通知があるでしょう。
例えばこのコンサート中に卒業発表があったとしたって「早すぎる」のに。

事後報告ですか。
72 名前:吉澤 投稿日:2005/04/16(土) 22:37


ウチの師匠でしょう?
弟子には何の相談もなしですか。
ウチは
まだ頼りないですか?

だったらどうして
ウチを残して放り投げたんですか?


 
73 名前:吉澤 投稿日:2005/04/16(土) 22:38


あなたがいないコンサート。
さくら組の時に一度経験しました。

けれど今回はワケが違います。
もう、戻ってこないんですから。

「しょい」はウチがやるんですか?
仕切りはウチがやるんですか?
梨華ちゃんに花束をわたすのは?

 
74 名前:吉澤 投稿日:2005/04/16(土) 22:38
一緒に梨華ちゃんを送り出してやりたかったです。
矢口さんと二人で頑張るから。
まかせとけって。
梨華ちゃんも頑張れって。


そう言いたかったです。
75 名前:あとがき 投稿日:2005/04/16(土) 22:41
今日、矢口抜きのコンサートがありますね。
状況はわかりませんが、メンバーだって寝耳に水な話のハズ。
大丈夫か心配です。突然置いていかれた弟子も、
その弟子が率いることになったメンバーも。

ここにいるぜぇのPVでリーダーが掲げた旗。
強い風の中で、十人が必死で旗を支える構図が頭に浮かびました。

先程の石川の話で例えれば
船長を失い荒海に放り込まれた船みたいな感じか。



…という文を昼間打ちました。
自分が思っている以上に、彼女たちは強いみたいです。
76 名前:藤本 投稿日:2005/04/16(土) 22:42














 
77 名前:あとがき 投稿日:2005/04/16(土) 22:42
ふてくされてます
78 名前:古賀 投稿日:2005/04/16(土) 22:51
えーと、スミマセン。書かないって言ったのに。
何だか書いてく内にどんどん矢口さんを責めているような気分になってきて凹みました。
情報は何も増えないのに、時間の経過と共に感情は広がるばかり。
憶測や煽りも増え、何が真実なのかわからなくなってきました。

しつこいようですが、彼女の決断自体は支持します。
そして今日立派にステージを務め上げた10人も。
みんなかっけーや。

では、本編の更新はまた数日後。
79 名前:古賀 投稿日:2005/04/17(日) 01:07
コンサのレポやMCを聞いてきました。

大丈夫だ。「モーニング娘。」は大丈夫だ。

あとは矢口が笑顔で我々の前に姿をみせてくれる日を
楽しみに待つことにします。

>>くれすさん
レスありがとうございますm(__)m
更新遅くてスミマセン…
80 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:02
             
81 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:02
                    
82 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:02
                  
83 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:03
「いー加減にせぇー!!!!」

あまりの剣幕に六人共が振り向いたまま固まる。


「あんたらココどこだと思てんねん!階段やで!?建物中に響いてるで!?建物内にいんのハローのメンバーだけやないんやで!キッズかて楽屋でおとなし待ってるわ!」

中澤さんは、何故か矢口さんと安倍さんを両脇に抱えた状態で仁王立ちになってこちらを睨んでいた。
84 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:06

矢「ていうか裕ちゃんがうるさいよ」
安「だね」
脇に抱えられたまま、矢口さんと安倍さんは呑気に喋っている。
ていうか中澤さんは三人で遊ぶのに階段の声が邪魔だったんだ。絶対そうだ。

中「そこ喋るな!大体あんたら本体とソロのリーダーならメンバーまとめなあかんやろ!何楽屋で二人でじゃれてんねん!」
矢「いいじゃんかー妬くなよ裕子」
安「ていうかなっちソロ組のリーダーじゃないよー後浦なつみも最年長なだけだし」
中「つべこべいうなー!!」
…あぁ、妬きもちのとばっちりですか。


矢「わかったよウルサイなー」
安「ほら後で報告してあげるから裕ちゃん楽屋に戻ってなよ」
矢「そうだよ血管切れるよ」
中「…っ…誰が血管k…!」
安「ハイハイ行こうねぇー」

流石に対応に慣れてらっしゃる。
安倍さんに背中を押されて中澤さんは楽屋へ戻っていった。

 
85 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:07
しばらくそちらを眺めていた矢口さんだが、ようやく硬直から回帰した美貴たちに気付いてこちらを振り返った。

少し厳しい表情をしていた。


「でも本当にちょっとうるさかったよ。
スタッフさんにも迷惑かかるし、中心メンバーが揃いも揃って大騒ぎしてたんじゃ後輩にも示しつかないよ」
「…すみません」
紺ちゃんが小さくなってる。
いや、多分紺ちゃんはうるさくなかっただろうけど。


「でも何か…楽屋開けまくってたミキティにしても機嫌悪そうなよっすぃーにしても、…そこで沈んでるネガティブ娘も。
何か事情あったんでしょ逆に考えれば。」
「そうだねぇ、これだけ騒いでたってことは喧嘩かなんか?」
安倍さんが戻ってきて矢口さんの肩越しに顔を出す。

 
86 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:10

「……」

どうにもコメントしづらい。
亜弥ちゃんが怒ってるのはもう間違いなく美貴のせいなんだけど、
同じ階段上でも何か微妙な距離感があって。

・最上奥に、安矢
・最上手前に、後松
・中腹に、石藤
・踊り場に、吉紺


…説明しづらいよコレ。
矢口さんに伝えるには全員に聞こえる声で言わなきゃいけない。

亜弥ちゃんもまさかこの場で
「たんが梨華ちゃんに浮気したんですー!」
とは言わないだろうし。

さっきアレだけ憤慨してたよっちゃんさんのことも、イマイチ状況がわからなくなってきた。
あんまり考えたくないんだけど、もしや…っていう嫌な予感が思い浮かんできて。



何だかみんな探り合いみたいな感じで沈黙してしまう。

 
87 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:11

「…あー面倒くさい!アレでしょ?どうせ痴話喧嘩でしょ?こじれちゃったんでしょ?
ほら、話聞いてやるから。場所変えよう。彼氏側はおいら、彼女側はなっち!」
「はーい梨華ちゃん紺ちゃん松浦集合ー。」


…本当手馴れてらっしゃる。

 
88 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:11
 
89 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:12
 
90 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:12
 
91 名前:古賀 投稿日:2005/04/22(金) 14:16
復活しました。
もう平気です。冷静なつもりでもやっぱちょっと感情的になってたみたいです。
出来ることなら64から78まで消したい感じ。

さて、これから更新速度が落ちます。
…4月ってタイトルつけてるからには4月中にはケリつけたいんですがね…(^^;)

出来るだけ頑張ります。
92 名前:古賀 投稿日:2005/04/22(金) 14:29
もうちょっと書いときます
93 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:29
 
94 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:29
 
95 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:29
 
96 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:30



考えたくなかった。
けれどやはり嫌な予感は的中した。


矢口チームと安倍チームは、同じ階のはずれとはずれにある小部屋で話をすることになったのだけど。


つまるところ、
よっちゃんさんもごっちんもエイプリルフールをやりすぎたのだ。

 
97 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:32

「…いや、ちょっとした冗談だったんだよ。
ホラうちらももう長いじゃん?マンネリ化しないために刺激もさぁ」

「で、梨華ちゃんには刺激が強すぎたと」
「言ったこともストレート過ぎたと思うよ、『紺野が好きになった』じゃあなあ。」



「あたしはまっつーと一緒に仕事することが増えて、意外と相性良いかもなぁって思ったって。
あたし普段そういうことしないんだけど、たまにはこういうイベントも参加してみようかなって」

「うーん…相変わらず発想がずれてらっしゃる。普段しないからこそ、真面目な紺ちゃんには効果抜群だろうねぇ」
「ただでさえ活動の場が違って寂しかっただろうしねぇ」

 
98 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:42
矢口さんはともかく、美貴のツッコミまでついてきたのでよっちゃんさんに睨まれた。

ごっちんは「そういうミキティは?」と、普段通りの表情で酷い事を言った。
…散々亜弥ちゃんから聞かされたでしょうに。



「美貴は…会えなくて辛いって、梨華ちゃんといたほうが楽しいって」
「うわ…」
「それは…」
「ははぁ…」

…ひどい。3人が3人とも、それ以上何も言わない。
せめてつっこんでくれたほうが幾らか楽なのに。




「で面白いことに、言われた梨華ちゃんたちは
わざわざ各々こじれる相手のところに相談にいったのか」
「…面白くはないですけどね」(V-V;从
「矢口さん楽しんでません?」(T〜T〇)



(〜^◇^)





でも本当にすごい偶然だと思う。この6人の中で収まっていたのだから。
梨華ちゃんが矢口さんに相談にいくとか、そういう可能性もあったはずなのに。

…おかげでこんなに大きな騒ぎになってしまったのだけど。

 
99 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:44



「しかしこの分だとなっち側はこじれるばっかだろうなぁ…」
矢口さんのつぶやきに美貴たちはハッと顔を見合わせる。

こっちは「なんだお前もかよー」で済んでいるけど、向こうは事実を知らないんだから…



「よっすぃーが紺ちゃんを好きになったって!」
「後藤さんが亜弥ちゃんと相性がいいって!」
「みきたんが梨華ちゃんといた方が楽しいって!」
「「「言うのー!」」」


わぁー…安倍さんゴメンなさい…。

 
100 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:45
  
101 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:45
  
102 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/22(金) 14:45
  
103 名前:くれす 投稿日:2005/04/22(金) 15:00
更新お疲れ様です。

あちゃ〜なっち大丈夫かな?w
ますます続きが気になります。
更新遅くても良いのでがんばって下さいね。
104 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/23(土) 14:10
105 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/23(土) 14:10
106 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/23(土) 14:11


「こりゃ早めに切り上げて集合した方が、被害は少なくて済みそうだな」
そういって矢口さんは立ち上がった。
「やややや矢口さん、集合って?」
よっちゃんさん動揺しすぎ。

「だから、裕ちゃんに報告も兼ねて、梨華ちゃん達にも事実を伝える」
「わーー待って待って!」
「ヤダよ、早く解決させてあげなきゃ可哀想じゃんか」
そうですよね…浮気されたと思ってるんだから。

「巻き込まれてるなっちが」
…あぁ、そうですね…誰よりも安倍さんがかわいそうですね…。


107 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/23(土) 14:12



でも…言うのかぁ…「嘘でしたー」って。
いや、「本気でした」の方がしゃれにならないのは承知してるんだけど。
怒るだろうなぁ…それ以前に悲しませちゃったしなぁ…
驚かせればそれで良かったのに。

あぁ、こんなことしなきゃ良かった。


「言おうよ、正直に」
ごっちんが相変わらず普段通りの表情で言った。

本当に、何でもないコトのように言った。
「言って素直に謝ろうよ」


ごっちんて美貴より若いんだよね。
こういう時オトナだなぁって思うんだけど。
逆に、若いから柔軟なのかなぁとも思う。
どっちにしても羨ましい素直さだなぁ。


108 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/23(土) 14:13


「う゛ー…」
よっちゃんさんがまだ渋っていた。
「観念しなよ、よっちゃんさん」
「ミキティ…」
「怒らせちゃったんじゃなくて、悲しませちゃったんだよ?」

「…そう、だね」
美貴の台詞に、よっちゃんさんは諦めたようだった。




「ん、腹はきまったかね?」
矢口さんがドアに手をかけたまま待っていた。
「ハイ」
「じゃあ裕ちゃんとこ行こうか」
「…へい」

 
109 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/23(土) 14:13
 
110 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/23(土) 14:13





楽屋へと向かう間、よっちゃんがごっちんに愚痴っていた。


「つーか4月1日なんだから、気付けよって話じゃん?」
うん、それは激しく同意。


「んー、でもそこが可愛いんじゃん?」
あぁ、それも激しく同意。




 
111 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/23(土) 14:43
112 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/23(土) 14:43
113 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/28(木) 16:56


楽屋に入って思ったこと。
「なんで中澤さんだけじゃないんですか!?」
思ってませんね。口に出てましたね。

「そりゃアンタ、あれだけ走り回って騒ぎ立ててりゃ『何なんですかー?』ってなるわ」
…確かに。
楽屋には、メロンの皆さんやメンバーも数名、椅子に座って待っていた。
「こんなに大騒ぎにしといて、揉み消すような権利はないで藤本?」
ええ、もちろんそれは承知してます。ただ、よっちゃんさんの恨めしげな視線が痛いです。



「で、アレやな、3・3に別れてたっちゅーことは、痴話喧嘩やな」
「痴話…」
痴話っていうか痴呆…じゃないや、阿呆の失態って感じです。
いや時節柄、馬鹿の方が合ってるかな。4月馬鹿3人。
「それがさ、裕ちゃん…」
矢口さんがかいつまんで説明する。
「そら男側が悪いわ。浮気は赦されんことやで」
「中澤さんが言うと説得力ありますね」
「ていうか裕ちゃんが言っても説得力ないよ」
「うっさいわ」
かつて中澤さんの彼女だった矢口さんは、今は安倍さんの彼氏になっている。
いや、ていうか浮気したわけじゃないんですけど美貴たち。

114 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/28(木) 16:57

「じゃあおいらなっち呼んでくるー」
そういうと矢口さんは楽屋を楽しそうに出て行った。

楽しそうに。

楽しそうだった。

アレは間違いなく楽しんでる。




ちくしょー当事者じゃないからって…
こんど矢口さんが安倍さんと喧嘩したら思いっきり楽しんでやる。

115 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/28(木) 16:58

5人が戻ってくるのを待つ間に、人生の先輩にこういうときの対処法を聞いてみる。

「裕ちゃんやったらどうするか?そんなん謝り倒すしかないわ。平手の一発も受けたらええねん」
あっさりと「謝る」の単語が出てきて、拍子抜けした。

「ていうか平手って…一応アイドルなんですけど」
「大丈夫大丈夫、腫れても明日までにはひくから」
「何ですかその自信」
「経験上。あんたら若いんやしもっと回復早いで」

経験上ね。矢口さんに殴られたのかな、やっぱ。

ていうか矢口さんに振られてんじゃん。
謝り倒しても駄目じゃん。聞いといて何だけど。

116 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/28(木) 16:59
117 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/28(木) 17:02

「ただいまー」
ほどなくして、矢口さんが楽しそうに…多少控えめに、帰ってきた。

後ろに続く4人は、数分前とは随分様子が変わっていた。
安倍さんは疲れ果ててたし、梨華ちゃんは涙ぐんでるし、紺ちゃんは何だかさっきよりスッキリした表情してるし、亜弥ちゃんは、
亜弥ちゃんは…



…怖えー…



ちょっとTVではお目にかかれない憮然とした表情だった。
「石川さん泣いてるよー…」
「ていうか亜弥ちゃんすごい怖い顔してない?」
「みきねぇ何したのかな」
「あれ、コンコンも関係者?」
「ホラ後藤さんが…」

後ろのほうで五六期がヒソヒソ喋っている。



何でこんな公開処刑みたいな展開に…

 
118 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/28(木) 17:07


美貴たち三人の前に亜弥ちゃんたちを立たせると、矢口さんは安倍さんの手を引いてイソイソと移動した。
多分見やすい位置に行きたかったのだろう、中澤さんの後ろ辺りに陣取って、矢口さんは安倍さんの膝の上でゴキゲンだ。
…コニクラシイ。

右によっちゃんさん、左にごっちん。
正面にはドアを背にこちらを向く亜弥ちゃんたち。
三対三で向き合う美貴たちに、好奇の目が無数に集まる。
まるで試合でも始まるかのような雰囲気だが、コチラ明らかに分が悪い。

「…あー…」
言い淀む美貴。

「…」
無言の松浦亜弥。
痛い。突き刺すような視線が痛い。

「…何見つめあってんねん、早よしぃや」
空気を読まない中澤。…さん。


早くも決意は揺らぎはじめていた。
だって怖いよ…。亜弥ちゃんずっと睨んでるんだもん。
後ろめたさから真っ直ぐに亜弥ちゃんを見れない。
けれど視線は感じるワケで。
…針のムシロにいる気分だ。

何だか非常に心細い。
ごっちんは、関係者なのに何だか傍観者みたいな印象だし。
イマイチ味方っていうか共犯には見えない。

もう一人のヘタレはさぞや萎縮しているだろうと、右隣の表情を伺ってみると…、
意外にも厳しい表情をしていた。辛そうにも見えた。
目の前で泣かれているのだから仕方ないだろうけど。

 
119 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/28(木) 17:08
  
120 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/28(木) 17:08
   
121 名前:四月の初めに 投稿日:2005/04/28(木) 17:09
   
122 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/30(土) 04:53
先が気になります。藤本さんのとことか。中澤さんとかww
123 名前:みきみき 投稿日:2005/05/04(水) 11:20
亜弥チャン怖い!!
美貴チャン恐ろしい事しすぎ!!
美貴チャンがぁ‥‥って感じ
124 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/04(水) 18:56
↑ageるな!
更新されたかと思うだろ!
125 名前:みきみき 投稿日:2005/05/05(木) 22:45
すいませんね!!
126 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/05(木) 23:39
>>125
どのスレも見て思うけど、
注意してくれたのにその態度はどうかと…
そしてまたageてますよ。
案内板のFAQを見てから小説を読みましょう。
127 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/06(金) 15:38
128 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/06(金) 15:39
129 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/06(金) 15:39
130 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/06(金) 15:39

「…やぐっつぁんに」
「ひぁっ!?」
「…何…」
「い、いや、続けて?」
…変な声出しちゃったよ…。クールで売ってるのに…。
急に亜弥ちゃんが喋りだしたからビックリ、っていうか正直ビビリ入った。

亜弥ちゃんは怪訝な表情をしたけれど、言葉を続けた。
131 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/06(金) 15:40

「やぐっつぁんに、さっき大丈夫って言われたの」
「大丈夫?」
「アンタたちが悲しむようなコト、あの三人はしないと思うよって」
「…」
「ごっちんもそう言った、たんはアタシを悲しませるようなことしないよって」
「…」
亜弥ちゃんが顔を伏せる。表情は読みとれない。
「そんなこと言われたって、別れなきゃならないならどう考えたって辛いけど」
「…っ…違…」
「だけど、たんがどういう決意をしたとしても、アタシは受け入れようと思ってる」
「…亜弥ちゃん…?」

「たんが一番幸せになる方法を、アタシも応援するから…」
132 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/06(金) 15:41

「だから…」
亜弥ちゃんが顔をあげた。まっすぐ、まっすぐに美貴を見る。
「早く楽にしてくれる…?」
133 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/06(金) 15:43


何を怖がっていたのだろう。
何を寂しがっていたのだろう。
電話でしか話せなくても、美貴がどんなに情けなくても、亜弥ちゃんはこんなにも想ってくれていたのに。


『怒らせちゃったんじゃなくて、悲しませちゃったんだよ?』


さっき自分で言った言葉が、深く心に刺さる。


美貴は、意を決して
口を開いた。

134 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/06(金) 15:43
135 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/06(金) 15:43
136 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/06(金) 15:43
137 名前:古賀 投稿日:2005/05/06(金) 15:47

…ちょっと自分でびっくりしました、「更新されてる!」って(笑)

少しで大変申し訳ないのですが折角のage状態なので更新しておきます。

感想をくださった方も、そして憎まれ役を買って出てくださった方も。
ありがとうございます。頑張らせていただきます。
 
138 名前:知つぁん 投稿日:2005/05/06(金) 21:11
あぁ更新されてる!
今読んじゃいましたが続きが早くみたいですねぇ〜^^
あやみきに大期待^^
139 名前:みきみき 投稿日:2005/05/07(土) 13:02
そおゆー意味で「すいませんね!」って言ったんじゃないんです!!
気に触るような言い方だたら本当にゴメンなさい!!
FAQ読んでみたけどわからないんですケド‥‥。あーし頭悪いんで
140 名前:何無飼育さん 投稿日:2005/05/07(土) 19:38
更新お疲れ様です!
もうすぐで今の状況から変われるか?!
次が待ち遠しいです


>>139
とりあえず、MAILアドレスを入れる所に、
半角英数のsageを入れれば良いんですよ
入れずにレスをしますと、
スレがageられてしまいますので
141 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/08(日) 00:10
>>139
うぜー。わからんかったら書くなや
142 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/08(日) 00:10
前の人とかぶりますが、みきみきさん、mail欄に半角英字でsageって入れればいいんですよ。
入れないとコメントしただけで上がってしまいますから。
感想なら、sageのほうが、僕を含め、読んでる方々にはよろしいかと思います。
143 名前:sage 投稿日:2005/05/08(日) 00:12
といいつつ、僕もageてしまいました。
sageます。しかも連続投稿すいません。
144 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/08(日) 00:13
うわっ、また失敗しました!本当すいません。
145 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:18
146 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:19
147 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:21

----------------

その夜、美貴は亜弥ちゃんのところへ泊まった。
夕食も終え、まったりテレビを見て。
お笑い番組を見ながら、ツッコミのシミュレートをしている時、
後ろで亜弥ちゃんがつぶやくのを聞いた。

「けど梨華ちゃん羨ましいなぁ」
「ふぇ?」
「たん…お腹出るよ」
「はっふぇ、ほぁはふいはんはほぅ」
煎餅をくわえたまま振り向くと、亜弥ちゃんが呆れた顔で美貴を見ていた。

148 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:21

「『だってお腹すいたんだもん』じゃないよ…ご飯食べたばっかじゃん!」
よく聞き取れるなー。

美貴は煎餅をお茶で流し込むと、改めて問い直す。
「んで、何が羨ましいの?」
「え?」
「いま言ってたじゃん、梨華ちゃんが羨ましいって」
亜弥ちゃんは「しまった」といった表情を一瞬浮かべた。

「……言った?」
「言ったよ」
間髪入れずに返す。



「本当に言っ…」
「言ったってば」





「聞き間違…」
「じゃないから絶対。」

149 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:22

聞き間違いじゃない。
というか聞きずてならない。
確かに今回、美貴はカッコ悪かったけど。けど。

梨華ちゃんが羨ましいってのは、そりゃああんまりだ。
だってそれって、よっちゃんさんが彼氏なら良かったとかそういう…。
そういう…。

150 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:23

あまりに切羽詰まった顔をしていたのだろうか、
亜弥ちゃんは「参ったな」と頭を掻いて、
「違うよ、浮気とかじゃなくて」とかフォローを入れて。

「じゃあ…」
何が…、と聞こうとして、亜弥ちゃんが気まずそうにしているコトに気づく。

「何か…言いにくいこと?」
「えっ!?あ、ううん」
おそるおそる尋ねてみると、亜弥ちゃんは慌てて首をふる。そして観念したのか話し出した。

151 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:23

「たんが、梨華ちゃんの為に怒ったこと」
「え?」
「梨華ちゃんの為に吉澤さんの所に怒鳴り込みに行ったでしょ?」
「あぁ…」
おかげで大騒ぎになったけどね。結局誤解だったわけだし、改めてよっちゃんさんには謝っておかなくちゃ。
それにしても今日は散々だったなぁ。


----------

「「「ごめん!」」」

打ち合わせた訳でもないのに何故か三人の声が揃った。
自分と亜弥ちゃんの事しか頭になかった美貴は、思いがけないハモリによって置かれている状況を思い出す。

うわぁ…みんなが見てる…

152 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:24

そもそも、皆には簡単に状況説明だけすれば良かったんだ。
「スンマセン痴話喧嘩ですお騒がせしましたー」で。

あとは亜弥ちゃん連れてサシで話せばよかったのに。
二人きりならヘタレ美貴も全力でもってフォローできたのに。

こんな状況じゃ周りの目が気になって、無駄に格好つけそうになる。

…美貴、見栄っ張りなのかなぁ…。

153 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:25

とにかく、突然の謝罪ハーモニーにビックリした様子の梨華ちゃんとか、
覚悟を決めたままの亜弥ちゃんとかに説明しなくてはならない。

「ねぇ、ゴメンて何に対してのゴメンなの、よっちゃん?」
「あ、あのね、梨華ちゃん。そのことなんだけど、こっからは個人間で話し合った方がこじれないと美貴は思うんだけ…」
「いいよミキティ」
「!?」
「ここで、全部話すよ、梨華ちゃん」
妥協案を提示しようとした美貴を制したのは、よっちゃんさんだった。

無駄に、男前な表情で。



…いや、「いいよミキティ」じゃないよ、美貴も巻き込まれんじゃん。
ねぇ、やっぱ避けられないの?この公開処刑?ねぇ?

154 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:26
155 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:26
156 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/08(日) 03:26
157 名前:古賀 投稿日:2005/05/08(日) 03:27
梨華ちゃん卒オメ
158 名前:古賀 投稿日:2005/05/08(日) 03:34
余りの技量不足に、理解していただけるか不安になってきたので
無粋にも解説を入れてみます


前夜



その夜

昼の回想←今ココ

回想終了

???

な感じ。
159 名前:知つぁん 投稿日:2005/05/08(日) 14:50
梨華ちゃん卒おめですね^^
ちゃんと理解できますよ^^
作者さんの書く技術はとてもすごいですから^^

次の更新期待しています^^
160 名前:くれす 投稿日:2005/05/09(月) 12:26
梨華ちゃん卒業おめでとう〜
武道館一面のピンクのサイリウム感動しました。
これから美勇伝での活動楽しみにしています。

更新待ってましたよ〜
毎回楽しく読ませて頂いております。
次回の更新も楽しみに待ってるのでがんばって下さい。
161 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/21(土) 14:05
  
162 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/21(土) 14:05
  
163 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/21(土) 14:07


よっちゃんさんは、多くは語らなかった。
…というか、そう大した内容ではないんだ、考えてみたら。

「美貴たち3人が昨夜した失言は、全てエイプリルフールの悪ふざけでした。」(34字)
ほら、40字足らずで説明できる。


ぽかんとした表情の梨華ちゃん。
俯きワナワナと震える亜弥ちゃん。正直怖い。
紺ちゃんは、何だか困ったような呆れたような顔でごっちんを見てる。
そういえば、この部屋に入って来たときから何だか冷静だった。
途中で察しがついていたのだろうか。「後藤さんが浮気とかそんなことするはずない」とか思ったのだろうか。

美貴もそんなことするはずないんだけどなー、信用ないなー…。


眉を八の字に下げた紺ちゃんは、ため息をつきながらごっちんを見上げる。
「後藤さんまで…」
「そ、たまには良いかなって思っちゃったんだよネ。ゴメンネこんこん」
そう遠慮がちに笑うと、ごっちんは紺ちゃんの頭をくしゃっと撫でる。

羨ましい、この二人。こんな状況でも平和なんて。
しかし「後藤さんまで」の「まで」って何か引っかかるな。

 
164 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/21(土) 14:08



「よっすぃ…」
「…ゴメン、梨華ちゃん」
「……」
梨華ちゃんは目に涙を浮かべてよっちゃんさんを見ている。

…と、突然梨華ちゃんが手を振り上げ、パーンと小気味良い音が響く。
うわ……!
真横だよ真横。今、絶対ビクッてなったよ美貴。
「…っ…」
よっちゃんさんは一瞬歯を食いしばったように見えたけど、すぐに口をへの字にむすんで。涙を目にためて睨んでいる梨華ちゃんを真っ直ぐに見た。

「本当に、ゴメン。悪ノリしすぎた。梨華ちゃんにツライ思いさせて…。気の済むまで殴っていいから」
「……」

梨華ちゃんはそれ以上手をあげなかった。よっちゃんさんの服の両袖を掴むと、しがみつくようにして声を殺して泣いた。


……なーんか格好いいんだよなぁ…さっきまでのヘタレはドコ行った?ズルイなあ…

しかし、よっちゃんさん叩かれ慣れてないか?そして梨華ちゃんも叩き慣れてないか?
あんなに良い音するものなのかなぁ……もしや日常茶飯事?

 
165 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/21(土) 14:08


そんな様子を横目にうかがっていたら、正面から痛いほどの視線を感じ、慌てて亜弥ちゃんの方を向く。

「たんも、今の吉澤さんの言った通りなの…?」
「い、いや、まぁ総括するとそうなんだけど…、ただ微妙にニュアンスが…ですね…」
「……」
「…何でもありません」

妙に言い訳くさくなって自分がイヤになる。観念しようが格好つけようが、格好悪いものは格好悪い。


「アタシも殴って良いかなあ?」
「マジデスカ」
「マジデス」

 
166 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/21(土) 14:09

部屋が静かにざわめく。そりゃそうだ。美貴だし。
一見怖そうなイメージだよね。殴られるとか性に合わないって。

いや、殴るタイプってわけでもないけどさ。


…亜弥ちゃんに手ぇあげられたコトなかったのになぁ…くそぅ梨華ちゃん達のせいだ。


しかし今の亜弥ちゃんの怒りをおさめるのが至難の技だということは美貴にもわかる。
というか、未だかつてないくらい怒ってるっぽい。

「…お手柔らかにお願いします」
ここは「一晩で治る」という中澤さんの言葉を信じて腹をくくるしか無いようだ。


「おっしゃ松浦ぁ!思いっきりやったれぇ!」
たとえ言葉を信じたところで、嬉々として煽る中澤さんに殺意をおぼえるのは仕方ないよね、この場合。

 
167 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/21(土) 14:09
 
168 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/21(土) 14:09
 
169 名前:四月の初めに 投稿日:2005/05/21(土) 14:10
 
170 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/05/29(日) 14:27
やばい面白いです
171 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 03:56
 
172 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 03:56
 
173 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 03:56
こういう時、どういう態度でいたらいいのかわからない。
「足を開けぇっ!歯ァ食いしばれぇっ!」ってのはねぇ…やっぱ違うよねぇ。軍隊じゃないんだし。相手亜弥ちゃんだし。

まぁ口は閉じておこう。目は…どうしよう?
注射とか、見てるとかえって怖いよね。瞑っておいた方が無難かな。

「いつでも良いよ」
美貴は口を結ぶと、静かに目を閉じた。
174 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 03:57
けれどいくら待っても痛みはやって来ない。
どうも踏み切れないようだ。
さっきから何度か、覚悟を決めたような呼吸は聞こえてくるのだけど。

…どうかしたかな。
ふっと、薄目をあけて様子を見ようとした時、そのショボい音は響いた。

ピチッ

「いっ……!」

ホント、間が悪い。
175 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 03:58
物心ついてから今まで、美貴の記憶が確かなら、人に殴られた事はなくて。

多分亜弥ちゃんも、人を殴ったコトはないだろう。


結論。

慣れないコトはするもんじゃない。
地味にすごい痛い。

いかん、軽く泣きそうだ。
176 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 03:59
「……!」

のたうちまわりたいほどの衝撃があったけれど、なけなしのプライドがどうにかそれは押し止める。
頬をおさえてうずくまったまま正面を見ると、しゃがみこんで無言で手をおさえている亜弥ちゃん。

…だよね、痛かったよね今の。絶対当たり所悪かったもん。
177 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 03:59
「亜弥ちゃん…?」
ジンジンする頬をさすりながら立ち上がり、亜弥ちゃんに声をかける。
と、彼女はこちらをキッと見上げ、口を開いた。
「も〜!痛いよ美貴たん!」
「あ、いや、…ゴメン…って、えぇえ??美貴!?」

中腰のまま固まる美貴。
オカシイ。殴られたの美貴なんだけど。何で責められてんの?
「アタシが痛いじゃん!」
「いや、痛いのは美貴だってば」
「アタシが痛かったの!」
「だから、美貴も痛かっ…」
「アタシが痛いの!」
「……」

「もう殴らせるようなコトしないでね!」
「…ハイ」
「ヨシ!」
勝てねえ。
178 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 04:00
 
179 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 04:00
「ハイハイ、一見落着!」

一旦の解決をみたと、先程の緊張感が解けて少し部屋がざわめき始めたところで、
矢口さんがパンパンと手を叩いて大声を出した。

「ただの喧嘩。騒ぎの原因はわかったでしょみんな?後は当人同士の問題だから」

そう言って各々に自室に戻るよう促してくれる。
この人も面白がってるのか心配してくれてるのか。まぁ、お言葉に甘えて部屋を出るコトにする。
180 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 04:01
亜弥ちゃんの手をひいてドアを開けたところで後ろの会話が聞こえた。

「あのー」
「ん、何やエリーゼ亀造?」
「それ混ざってますよぅ」
「…ええから本題言えや」

「あのですねぇ、イマイチ事態が飲み込めないんですよ」
「っちゅーと?」
「藤本さんたちが言ったことは嘘でした、って言うのはわかったんです」
「うん?」
「でも何を言ったのかまではイマイチわからなくて…ほら、さっき中澤さんだけに矢口さん耳打ちしてたから」
「なんや、しゃーないなあ。じゃあここは裕ちゃんがお子様にもわかりやすく……って、怖っ!!」
冗談じゃない。コレ以上広められてたまるか。

「怖っ!!怖いて藤本!!」
181 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 04:02



美貴のすがるような視線に負けたのか、中澤さんは黙ってくれた。
にっこりと笑みを返して部屋を出、戸を閉めた。



「…何が「すがるような」やねん!めっちゃ怖かったわ!」
「駄目だべ裕ちゃん、藤本怒らせちゃ」
「そうだよ、ミキティに勝てんのは師匠ぐらいのもんだよ」
「やぐちー(泣)」
「ていうか蒸し返すなよ、せっかくおいらがまとめたのに」
「冷たっ!!」

182 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 04:03
 
183 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/02(木) 04:03
 
184 名前:古賀 投稿日:2005/06/02(木) 04:04
ちょっとですが
185 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/02(木) 06:18
良いです。更新お疲れ様でした。そしてこれからに期待。
186 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/02(木) 16:24
すがるようなw
あやみきのやり取りいいなあ。
187 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/17(金) 16:19
<その後、泊まりに行って良いか聞いたんだよね美貴。一発殴ったら亜弥ちゃんも落ち着いたみたいだったし>

「   」

<もう弁解する雰囲気じゃなかったし、いつも通り振る舞った方が美貴達らしいしね>

「    」



「……聞いてる?」
「え?」
「どこまで聞いてた?」
我に返ると目の前にいるのはふくれっつらの亜弥ちゃん。
…しまった、交信してた。
「『梨華ちゃんの為に吉澤さんの所に怒鳴り込みに行ったでしょ?』まで…?」
「全然最初じゃん…」
「ゴメンナサイ」

あぁ…今日怒らせてばっかりだ。
そんなに話が進むほどトリップしてたのか、美貴。
「嘘だよ」
「へ?」
「何か考え始めちゃったから喋るの止めて待ってたの」
「…あ、そう」
遊ばれてる。間違いなく。
188 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/17(金) 16:20
「ていうか、それの何が羨ましいのさ」
「だって、自分のためにたんが怒ってくれたんだよ?」
「そんなの、亜弥ちゃんの為にだって、美貴は怒るよ?」
「んんー…、ちょっと違うんだって」
「何が違うのさ」
「怒る人」

「は?」

何が違うんだ?
どっちも美貴じゃん。
「たんが怒ったのは、吉澤さんに対してだよね」
「うん…?」
「吉澤さんは梨華ちゃんの恋人だよね」
「?」
「ココでのたんは、カップルのイザコザに真剣に首突っ込んで怒ってる部外者のたん」
「…」

何か、それヤだなぁ…
すっごく「お呼びでない」じゃん。
189 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/17(金) 16:21
「で、もしアタシの身に何かがあってたんが怒ったとしてら、それは当事者のたん」
「そりゃそうだねぇ…」

言いたいことがイマイチわからない。
部外者になれって?別れろと?

どうにもこうにも要領を得ない。
そんな状況を打破すべく、亜弥ちゃんが出した結論。



「だからね?美貴たんを好きなアタシの為に、自分の損得考えずに美貴たんのコト怒ってくれる…、そんな美貴たんがいたらなぁって」





…えぇと、凄い複雑なコトを言ってる気がしますが松浦さん。
それ、「美貴たん」二人いるよね……?

190 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/17(金) 16:22
あっちもこっちも美貴たんな話に、どっからツッコんだものか悩んでいたら。
何か言いたげな美貴の表情に気付いたのか、亜弥ちゃんが抗議してきた。
「わかってるよ、自分がおかしなコト言ってるのは」

「何だ、良かった本気かと…」
わざと大げさに安堵してみせると、亜弥ちゃんは恨めしげに美貴を見て、
「だから言いたくなかったんだよー」
とクッションに顔をうずめてしまった。
191 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/17(金) 16:22
恋人でない相手に向ける好意だとか、表情だとかってのは、唯一恋人が触れることの出来ない面で。

梨華ちゃんを想う気持ちに、恋愛感情はない。
その上での、彼女への好意からとった行動。そのとき、…多分この先ずっと、亜弥ちゃんには見せることのない…そんな表情を、美貴はするのだろう。
付き合っていたら必要のないそんな表情も、彼女は欲しいと言うのだろうか。

クッションからのぞく耳が赤い。
無理な相談とは言え、可愛い願望だとは思う。
ていうか本望だ。
192 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/17(金) 16:23
可愛さと嬉しさで顔が緩むのを懸命に堪える。
そろそろ姫を慰めないと。
にやけ顔じゃ説得力がない。

「亜弥ちゃーん?」
「……」
「あーやーちゃーん」
「………」

反応はない。

「……ごーめーんってばー」
「うっさい樽」
「た…!」

絶句。思わず自分の腹を見る。

…大丈夫、きっと大丈夫。今のトコまだ。


思いがけないカウンターを喰らいながらも、美貴はフォローを続ける。
ていうか美貴が慰めて欲しい、むしろ。

193 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/17(金) 16:24
ようやく亜弥ちゃんがクッションから目だけのぞかせる。
あ、可愛い…


こちらにそっと手を伸ばし、美貴の頬に触れる。
「赤み、ひかないね」
「亜弥ちゃん下手なんだもん」
「うるさいなぁ」

「まぁ明日までには治るんじゃない?」
「うん…」
ホッとしたように美貴を見た亜弥ちゃんは、けれど少し残念そうにも見えた。

「どうしたの?」
「アタシのだよって証拠になるのになぁ」
あぁ、亜弥ちゃんのだから手ぇ出すなって牽制になると?
「あはは、じゃあ毎日殴っとく?」

嫌だから。
自分で提案しといて何だけど断固拒否だ。
194 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/17(金) 16:25



たった二日のドタバタ騒動。
色々考えさせられたし、正直散々だった。


だけど。

「あーあ、明日からまたたんと別々かぁ」
「電話するよ、メールもする」
「だけ?」
「んー?…早く終わらせて、ココで待ってるよ」
「…うんっ!」

抱きついてくるこの子がとても愛しいから。

「たん大好きー」

もうそれだけで十分だよね。




「ちょっ…首は目立つから!」
「いいじゃーん」

ね。
 
195 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/17(金) 16:25
 
196 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/17(金) 16:25
 
197 名前:四月の初めに 投稿日:2005/06/17(金) 16:25
 
198 名前:古賀 投稿日:2005/06/17(金) 16:26
ひとまず脱稿
無理矢理感が強いですけど

ちょっと蛇足する予定です
199 名前:古賀 投稿日:2005/06/27(月) 19:05
現実世界での4月3日は日曜日なんですよね。
ライブとかあったのかなぁ?
200 名前:古賀 投稿日:2005/06/27(月) 19:06

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<<四月三日>>side-A

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201 名前:<<四月三日>>side-A 投稿日:2005/06/27(月) 19:07
「修羅場った?」
「んにゃ」

翌朝のごっちんとの最初の会話はそれだった。

「まぁアレだけ愚痴れば、本人に言うことも尽きるよねぇ」
「ごめんねごっちん」
「つーか半分ノロケ混じってたけど」
「…エヘ」
202 名前:<<四月三日>>side-A 投稿日:2005/06/27(月) 19:09
後浦なつみのダンスレッスン。
安倍さんは先日もう終えているそうで、アタシとごっちんの2人だった。

一通りフリを洗い直して、昼には終わった。
次の仕事(番組収録)のために着替えていたら、レッスン後インタビューを受けていたごっちんが帰ってきた。

「あれ、早かったね」
「おー」
「また適当なこと言って流したんでしょ」
「そんなことないよぅ」

そのまま移動時間まで昨日の話になった。
…とはいっても、アタシの話ばかりだったけれど。
203 名前:<<四月三日>>side-A 投稿日:2005/06/27(月) 19:09
「ところで、ごっちん何か疲れてない?」
「そ?」

「無理しないでよー」
「イヤイヤなんのこれしき」

ダンスには別に支障はなかったんだけど、何だか気だるそうに見えたんだよねぇ。


「大河も大変みたいだし」
「まつ、それイヤミ?」
204 名前:<<四月三日>>side-A 投稿日:2005/06/27(月) 19:10
「後藤さん車来たんでそろそろ移動お願いしまーす」


そうこうしているうちにドアの向こうからスタッフさんが呼ぶ。


「ほんじゃ、ごとーさんはハロモニに行って来ますよ」

「たんに宜しくねー」
「おっけー」
205 名前:古賀 投稿日:2005/06/27(月) 19:11

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<<四月三日>>side-M

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206 名前:<<四月三日>>side-M 投稿日:2005/06/27(月) 19:13
ハロモニ楽屋。

衣装に着替えようとTシャツを脱いだとき、急によっちゃんさんが下着をめくってきた。

「うわぁ!!!」
ゴス。


「…てて、何すんのさミキティ」
「こっちの台詞だから!」
207 名前:<<四月三日>>side-M 投稿日:2005/06/27(月) 19:14
「いや、ね?何だその…」
「何」

「ちょっとお腹の辺りを見てみたく…」
「……お前も樽とか言う気かぁっ!!!!」

「違っ…てか樽って何!?」
「うるさい!!!」
208 名前:<<四月三日>>side-M 投稿日:2005/06/27(月) 19:14
「うるさいのはお前だ!」

矢口さん、ダンクじゃないんですからジャンプして頭上から殴るのやめて下さい…。


「少しはトーン下げろよミキティ」
「スミマセン」

「よっすぃも多少セーブしてやらないと。ボケ倒しじゃミキティがもたないぞ」
「ボケたつもりないんですけど…」

209 名前:<<四月三日>>side-M 投稿日:2005/06/27(月) 19:17
「で、なんのつもりよ?」
ヒソヒソ声で聞く。



「昨日、修羅場った?」
「んにゃ」

「あ、割とあっさり?」
「んー、訳わかんないコトは言われたけど」
美貴たん二人事件とかね。


「へぇー」
「そっちは?」

「あー…やっぱちょっと気まずかったね」
困ったようによっちゃんさんが笑う。



「もうあんまり喧嘩とかしたくなかったんだけどねぇ」
「…そうか、梨華ちゃんもうすぐ卒業なんだったね…」

矢口さんと談笑している彼女を見る。とても綺麗な顔をしていた。
この空間から梨華ちゃんがいなくなるのを想像したら、ひどく寂しくなった。



「ていうか『喧嘩とかしたくない』なら『刺激』なんか求めるなよ」
「ごもっとも」
210 名前:<<四月三日>>side-M 投稿日:2005/06/27(月) 19:21

「で、何で美貴の腹?」
「いや、あややのことだから、あの後マーキングの一つもしたかなあって」
亜弥ちゃんは犬か。


「腹にはないよ」
「じゃ、首?」

言うより早く、よっちゃんさんは美貴の髪をかきあげてうなじの辺りを探る。
「うわああぁあっ!!!!」

「うるさいって言ってるだろ!」

美貴がよっちゃんさんを殴るのと(顔は避けて脳天)、矢口さんが美貴の腰に飛び蹴りするのは、ほぼ同時だった。


頭を抱えるよっちゃんさんに、崩れ落ちてる美貴。
仁王立ちの矢口さんは昨日の中澤さんを彷彿とさせて。
同時に、この三人がこれから年長組なコトに一抹の不安も感じて。


とにかく相当沸点が低くなってる矢口さんに睨まれて、ココは一度退散した方がよいと思った美貴。
涙目のよっちゃんさんを引きずって廊下へ出る。


「首とかやめてよね!」
声を殺して頼むと
「…今度は耳の後ろにします…」
なんて真面目な声で返してきやがったものだから、もう一発殴っておいた。
211 名前:<<四月三日>>side-M 投稿日:2005/06/27(月) 19:27
「痕なんかつけないから」
「そうかぁ」
いや、ホントはついてるんだけど。
毎晩殴られるのよりは断然マシだと、左胸の下に。


「それにしてもごっちんのトコは甘かったよねぇ」
「ゴメンね、の一言で済んじゃうんだもんね」
話題をごっちんに逸らしてみた。


「でもさ、意外と紺野て二人きりになったら強そうじゃない?」
「え、じゃあ昨日の夜に何かあったってコト?」
よっちゃんさんの意見を聞いて、楽屋のドアを開けて紺ちゃんの方を見てみる。

特に変わった様子はない。


「…」
「…」
「…今日ごっちん来る日だっけ?」
「多分、そろそろ入り時間」








ドアを蹴破る。
「やいごっちん!」
「んぁあ!」
バス。



着替え中だった。
212 名前:<<四月三日>>side-M 投稿日:2005/06/27(月) 19:29
顔面でごっちんの鞄をキャッチした美貴。
…ほら、やっぱさ、落としちゃ悪いじゃない。避けられなかったんじゃないよ、うん。


「何さ二人とも急に!?」
「ゴメンゴメン、ちょっと聞きたいコトあってさ」
動揺しているごっちんに、笑いながら両手を軽く上げて降参のポーズを返すよっちゃんさん。

「聞きたいこと?」
「そう。ね、ミキティ」

「……」



「…ミキティ?」
「どしたのミキティ?」
おまえら鞄はスルーですか。




しかし亜弥ちゃんといい、矢口さんといい、ごっちんといい、首から上に災難が集中してる気がする、昨日から。
 
213 名前:<<四月三日>>side-M 投稿日:2005/06/27(月) 19:31
「ハイごっちん、鞄」
「ありがとミキティ」

鞄を渡そうとして、異変に気付く。
「あれ?」

「何?」
「目にクマ」
「え、嘘」

「それに何だか疲れて見える」
「アハ、さっきまつにも言われたよ」

やっぱカップルだねぇとごっちんが笑う。



「ごっちん寝てないの?」
よっちゃんさん、そんな露骨にキラキラしないでよ…。



「んー、寝かせてくれなくて」
うわお爆弾発言。もうちょっと含みを持った表現が欲しかったぜ。
 
214 名前:<<四月三日>>side-M 投稿日:2005/06/27(月) 19:39
「で、聞きたいことって?」
ごっちんが首をかしげながら美貴に聞く。

「寝かせてくれないってのは具体的にどのようn(ry」
イヤに食いつきの良いよっちゃんさんをヘッドロックで絞めて。

「昨日あの後、二人になった時があるでしょ?」
「え?うん」
「そういう時紺ちゃんとどういう話すんのかなーって」

「うえー?別に普通だよ?いつも通り」
「紺ちゃんって怒らないの?」
「割とお互いあっさりしてるかなぁと思うよ」
まぁ、アンタはそうでしょうけども。
「紺ちゃんも?」
「うん」
215 名前:<<四月三日>>side-M 投稿日:2005/06/27(月) 19:41

「昨日は!?」
「え?だから寝かせてくれなかっ…(ry」
「何でソコにこだわるんだよお前はよ」
急に会話に混じって話をムシ返そうとするよっちゃんさんをもっぺん絞めて。
ごめんねごっちん、と一言詫びて。


「はぁー、彼氏に寛大な彼女だねぇ…」
と呟くと、ごっちんがちょっとムッとした表情になった。
216 名前:<<四月三日>>side-M 投稿日:2005/06/27(月) 19:48
「どうしたのごっちん」
「別に…」
そういう割には憮然としてる。


「ごとー達だって冷めてるワケじゃないんだよ?」
「それはわかってるよ、ちょっとマイペースなだけでしょ?」
そうフォローすると、少し表情が和らいだ。


「けどさ、みんな誤解してると思うんだよね」
心外だ、といった表情のごっちん。

「何が?」
「だって昨日だってさ、やぐっつぁんとなっちが話聞いてくれたとき、彼氏彼女に分けるって言ったじゃない?」

「言ったけど…何が誤解なの?」
よっちゃんさんが復活してごっちんに尋ねる。
回復早えなオイ。


その後ごっちんの放った衝撃発言は、
矢口さんを切れさせるのには全くもって充分な破壊力があった。

「だから、ごとーが彼女なんだってば」




「「……工工エエェェェエエ工工!!!!!?」」

「うるさいっつってんだろ!!!!」
217 名前:古賀 投稿日:2005/06/27(月) 19:49
終わります。


終わらせてくださいorz
218 名前:古賀 投稿日:2005/06/27(月) 19:51
無理矢理感が漂ってしまったなぁと。
思えば修羅場が書きたくて書き始めた小説で、どう収束させようか途方にくれる毎日でしたw

楽しかったですけどね。



構成とかグダグダとか問題は山積みですが、個人的に課題は「台詞の個別化」だと思っています。誰が誰だかわからない。
とにかく、おかしな関西弁もどきを喋らせてしまった中澤姐さんに一番申し訳ないなと。
あと、田中を出したかったのに、方言がわからなくて出せなかったり。
それから、当方「訛っているのに、訛っている自覚のない」静岡弁圏内に生息しておりまして、
他のメンバーにも知らず知らず静岡弁を喋らせてしまっている気がして非常に不安です。
「こんな喋り方しねぇよ」って箇所がありましたら是非ともご指導ください。
219 名前:無題 投稿日:2005/06/27(月) 19:52




昨夜の電話を思い起こしていた。




 
220 名前:無題 投稿日:2005/06/27(月) 19:53
----------

『アタシ、一生あんたを許さないかも知れないよ』
「…覚悟はできてる」



『覚悟って?』


『いったい何の覚悟?』

 
221 名前:無題 投稿日:2005/06/27(月) 19:53
「みんなが驚くこと」
「みんなが悲しむこと」

「…とかを、辛く思う自分への覚悟」

『…勝手だね』
吐き捨てるような声。


「誤解をうけること」
「歌えなくなること」
「毎晩泣くかも知れない」
「上手くいかないかも知れない」
指折り数えて、少し笑って。

 
222 名前:無題 投稿日:2005/06/27(月) 19:53


「もうどこにも戻れなくなるかも知れない」


『そこまで承知でやりたいの』
「決めたから」



「迷惑かけるね」
223 名前:無題 投稿日:2005/06/27(月) 19:54
『いつ動くの?』
「ラジオが終わる頃」
『ラジオも終わるんだ…』
「……」



『みんなには?』
「まだ…」

 
224 名前:無題 投稿日:2005/06/27(月) 19:54
『ねぇ矢口』
「…何?」
『今度ディナーショウやるんだけどさ』
「うん?」
『ゲストでたんぽぽ歌う気ない?』
「…おい、ら…が?」
『うん』
「カオリ…と…?」
『そう』


「駄目だよそんなの…」

『歌っておきたいの』
「……」
『娘でいるうちは、胸張って娘でいてよ』


「……ありがとう…」


 
225 名前:無題 投稿日:2005/06/27(月) 19:55


----------


目を開けると、いつも通りの喧噪。いつも通りの楽屋。
それはもう、何年も見てきた風景で、そして、随分と変わってしまった風景。


一瞬、目の前の風景と過去の風景がダブる。
それはとても懐かしく、美しく見えた。


目を擦ることも、頭を振ることもせず。
そうして、今を、思い出を、焼き付けるように。私は再び目を閉じた。
226 名前:古賀 投稿日:2005/06/27(月) 19:55
無題<矢口とカオリ>
227 名前:無題2 投稿日:2005/06/28(火) 13:26
『ふーん…』





「…そんだけ?」

『だってもう決めたんしょ?』
「うん」

228 名前:無題2 投稿日:2005/06/28(火) 13:27
『カオリは?』

「一生許さないって」
『ははっ、カオリらしいね』

『福ちゃんの時もそんなこと言ってたよね』
「懐かしいね」
『懐かしいね』

『他に何て?』
「ディナーショウ誘われた」
『あ、ズルい』

「なっちはソロコンあるんだからしょうがないよ」
『違うよ、ディナーショウに呼んで欲しいんじゃなくて』

『矢口をゲストに呼びたいの』

「…そんな良いモンじゃないっスよ」
『知ってるけど』
「酷いなあ」
229 名前:無題2 投稿日:2005/06/28(火) 13:27
『今度慰安会でも開こうか』
「珍しいね」
『何がさ』
「いつもそういうの誘っても来ないじゃんか」
『こんな時ぐらいはね』

230 名前:無題2 投稿日:2005/06/28(火) 13:29
「それさぁ」
『ん?』
「裕ちゃんも呼ぶよね」
『もちろん呼ぶさぁ』



『怖い?』
「そりゃねぇ、だって中澤さんですよ?」
『中澤さんって…』
「最初そう呼んでたじゃんオイラ」
『あー』
「ビクビクしててさ」
『すごくちぢこまってたよね』


「この前ね最初のライブの映像見たんだ」
『うん』
「見ちゃらんなかった、自分」
『うん』
「でも…すごく良かった」
『…うん』
231 名前:無題2 投稿日:2005/06/28(火) 13:29
『今だって良いでしょう?』
「…」
『下の子達だってあの頃のウチらと変わらないよ』


「今日楽屋見てね」
『楽屋?』
「うん、何か泣きそうになった」



「失うって自覚すると、急にいとおしくなるよね」


『卒業組の気持ちわかった?』
「もう少し心苦しいけどね」
『それは仕方ないね』
「わかってる」
232 名前:無題2 投稿日:2005/06/28(火) 13:30
『突然言われる辛さはさ』
『矢口が一番知ってるんだから』
「…ん」


『よっちゃんにはちゃんと話しなよ?』
「うん」
『絶対だよ』
「うん」



『あと裕ちゃんとも』
「…うぅ…」
『昔の「怖い」とは違うんでしょ?』
「うん…」
『それは逃げちゃいけない恐怖だよ』
「そだね」
233 名前:無題2 投稿日:2005/06/28(火) 13:30
『まぁ今日はもう遅いから、とりあえず寝たら?』

「…なっちぃ」
『何だい?』


「今までありがとう」
『ん』

「今日もありがとう」
『うん』


「明日からもよろしく」
『おう』

234 名前:無題2 投稿日:2005/06/28(火) 13:31
「……じゃ!」
『明日には復活しろよ!泣き虫!』

「なっ…!うるさいイモ!」
『イモって言うな!』
「そっちこそ虫って言うな!」

『矢口!』
「何だよ!」



『星が綺麗だよ!』
「…星?」
235 名前:無題2 投稿日:2005/06/28(火) 13:31
そして電話は切れてしまった。
気付かれていたコトに少し驚きながら、流れる涙をタオルで拭う。

ベランダに出てみると、一面曇り空。
「…何処に星?」
236 名前:無題2 投稿日:2005/06/28(火) 13:32




ふと下を見る。
思わず笑みがこぼれた。


玄関前の道路でニコニコとキラキラと笑いながら、なっちがこちらに手を振っていた。




『泣き虫のために今日は泊まりにきた!』
237 名前:古賀 投稿日:2005/06/28(火) 13:32
無題<虫とイモ>
238 名前:古賀 投稿日:2005/06/28(火) 13:34

最近こんな話しか浮かびません…(苦笑)
いい加減切り替えて別の話も書きたいなぁと思うのですが。
 
239 名前:古賀 投稿日:2005/06/28(火) 13:42
次回は矢藤の予定です
240 名前:イモ虫 投稿日:2005/06/28(火) 13:55


「ミキティィィィイ!」

 
241 名前:イモ虫 投稿日:2005/06/28(火) 13:57
「……何ですか」
「遊ぶぞ!」
「嫌です」
「早っ!」
「……」

連日ライブが続くなか、今日は番組収録でスタジオに来ていた。
出演よりも待ち時間が長いのが番組収録の常である。こんな時間も貴重なインターバルと、美貴はダレるコトに集中していたのに。

そんな美貴の周りで騒ぐ、コノ小さい人。

「何か言えよー」
「美貴疲れてるんですよ…」
「遊べ!」
「嫌ですってば」
「構え!」
「…あっちに加護ちゃんいましたから、構ってもらって来なさい」

「…かーごーちゃーんー!」
「アレーどしたの矢口さんー」
「ミキティが冷たいー」
「おー、ヨシヨシ」

まとわりついていた矢口さんは、構ってくれないとわかるや加護ちゃんの方へ走っていった。
ちょっと日本語では表現出来ないような微妙な奇声をあげながら年下メンバーとじゃれている。

242 名前:イモ虫 投稿日:2005/06/28(火) 13:58
「なーんで、あぁも若いかなあ…」
「ん、矢口さんのコト?」

頬杖をつきながらボンヤリと呟いた一言に、まさか返事が来るとは思わず。

振り返るとよっちゃんさんが微笑みながら矢口さん達を見ていた。
幸せそうに。
いとおしそうに。
何か悟ったかってくらい。

(…娘を見守る父親か?)

矢口さんが2コ上ってのも信じらんないけど、このオッサンが美貴より年下ってのも実に納得がいかない。

243 名前:イモ虫 投稿日:2005/06/28(火) 13:59
「そう、そのぼんぼんちゃん」
「矢口さんねぇ、変わらないねぇ」

おっちゃん…じゃない、
よっちゃんさんは相変わらず笑いながら遠くの喧噪を眺めている。

「変わらない?」
「そう、先輩後輩わけ隔てなく付き合えるでしょ、あの人?」
「え?うん」
「ほら、あの、安倍さんとかだとやっぱ遠慮っていうか、礼儀っていうか…」
「うん、わかるよ」
「そういう壁がね、昔からないっていう」
「あー」

「今よりもっと殺伐としてたからね、娘。」
「だろうね」
「そん中で今みたいに振る舞えてたんだから、もう人柄だよ」
人柄かあ。

244 名前:イモ虫 投稿日:2005/06/28(火) 13:59

…人柄かぁ?違うだろ、アレは。


一瞬納得しかけたが、美貴の思考回路はその考えを否定する。
疑いの目をよっちゃんさんに向けると、よっちゃんさんは繕うように付け足す。
「あー、まぁ、努力もあるかな」
「いや、努力以外の何物でもないよ、ていうか博愛?」
「…手厳しいスね」
「でも、上下関係に拘らないのは尊敬できるかな」
「へぇー」
245 名前:イモ虫 投稿日:2005/06/28(火) 14:00
「よっちゃんさんは?」
「へ?」

「上下関係どう?」
「んー……、ウチら四期が入った頃って、そこまで殺伐とはしてなかったんだけどさ。ただ、モーニングが一応の完成型を見せた後の加入メンバーだから、先輩達とはやっぱ世界観が違うんだよ」
「…うん」
「テレビで見てきた人達と同等に走っていかなきゃいけないワケで、…実際戦いだったな、自分との」

「で?」
「で、その気負いみたいのは未だに残っちゃってて、やっぱ安倍さんはいつまでも安倍さんだし、中澤さんはいつまでも中澤さんだし。でもある程度ぶつかって行けるようになったのは、ごっちんのおかげかなぁ」
「ごっちんかぁ…」

「ごっちんはさ、ウチと同い年だけど、当時は天下のゴマキと新メンなワケじゃん」
「あー、うん」
「もう『後藤さん』なワケよ」
「あ、美貴も!『後藤さん』て呼んでた」
「ごっちん嫌がったでしょ」
「そーそー、嫌がってた」

「その同い年の先輩へのプレッシャーがなくなったら、大分打ち解けられるようになったよ、先輩とは」
「後輩は?」
「それはまぁご覧の通り」
「ナルホド」
246 名前:イモ虫 投稿日:2005/06/28(火) 14:01
「ミキティは?」
「うーん…上下関係かぁ…何とも言えないなぁ…」
「何で?」
「いや、上下も何ももともとソロ組だったから」






「…黒歴史に触れてしまってゴメンナサイ」
「黒くねぇよ」

「そ、そうだよね、輝かしい過去だよね…」
「何故泣く?」

247 名前:イモ虫 投稿日:2005/06/28(火) 14:02
突如挙動不審に陥ったよっちゃんさんを放置して、矢口さん達の方をぼんやりと眺める。
いつの間にか安倍さんも混じって、みんなで騒いでいた。さっき以上に矢口さんは楽しそうだ。あれだけ騒いでライブも人一倍動いてんだから凄いな。

「無駄に仲良いよね、あの2人も」
「無駄ってミキティ…」

「喧嘩とかすんのかな」
「何か子供みたいな大人な喧嘩してたことあるよ」
「…何それ」
「あ、そういやそれがごっちんと仲良くなるきっかけだったんだ」
「ふーん?」

248 名前:イモ虫 投稿日:2005/06/28(火) 14:02
「聞く?」
「ノロケ?」
「ちっ、ちがうよ!」
「まぁ良いや、話して?」

「…でもミキティ途中で寝そうだよね」
「まぁ、つまらなかったら寝るかも」
「えー」
「頑張れ」
「頑張れって…」

しぶしぶながら、よっちゃんさんは話しはじめた。
まぁ結局話したいんだろうけど。


249 名前:イモ虫 投稿日:2005/06/28(火) 14:03
 
250 名前:イモ虫 投稿日:2005/06/28(火) 14:03
 
251 名前:古賀 投稿日:2005/06/28(火) 14:03
まぁ、こんな感じで
252 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/29(水) 01:36
いいです
253 名前:古賀 投稿日:2005/06/29(水) 20:18
ちょっと雑談

TBSの正しい日本語を答えるクイズ番組を見ていまして。
「あああぁ!」と思ったのが『憮然』。
この小説内にも2度使用してますが、明らかに意味違ってます^^;

そういえば学校で学んだ記憶もあるのですが…忘れてるモンですねぇ


姑息とか確信犯とか、これから使用するかもしれないですし気をつけていきたいです。
254 名前:古賀 投稿日:2005/08/31(水) 10:02
後日更新予定です
255 名前:名無し読者 投稿日:2005/10/12(水) 11:27
さめたミキティのキャラが面白い。
これからの展開が楽しみです。
256 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/04(金) 19:17
わりと待ってます
257 名前:古賀 投稿日:2005/11/15(火) 12:15
未だに待っていてくださる方がいるようで嬉しいやら申し訳ないやらなんやらかんやら総括してスミマセンm(__)m
もうちょいお待ちください。
258 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:19
突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
259 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:08


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260 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:08
その日ウチは、楽屋で台本を読んでいた。
これからハロモニの収録があるのだ。学校でいうと今は休み時間。
…とは言ってもやはり仕事だ。授業とは違う。
時間もずれ込むし全員一緒というわけにもいかない。

現に今、楽屋には九人しかいない。中澤さんが単独の撮影に行っていて、そのあと昼休みになる。
だからかなりの時間があり、皆思い思いに時間をつぶしている。

飯田さんは、コラムだろうか、黙々と原稿を書いているし、保田さんは何やら厚い本を読んでいる。イヤホンをしているのは何か聞いているのか、もしかしたらただの耳栓代わりかもしれない。
辻加護は元気に走り回って、後ろからオロオロしながら梨華ちゃんが追っていく。まぁ中澤さんみたいに一喝、という訳にはいかないだろうけど、それにしても弱すぎるよ注意。
261 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:09
そして。ウチの目の前でぴよぴよと幸せそうに寝ているのが後藤さん。同い年の先輩。
この人はいつ見ても寝ている気がする。

…後藤さんとは同い年だ。だけどとてもそうは見えない。
テレビで見ていた時は何でもそつなくこなすクールな人、というイメージを持っていた。

だけど娘に入ってすぐに考えを改めた。彼女は努力家だ。
確かに飄々としているが、黙々と一人練習をこなしていたのもウチは見た。
ただ、クールというイメージは未だ強く残っている。

矢口さんが入ったころに簡単に説明してくれたメンバー情報によると、そう冷めてもいないらしい。
確かに市井さんの卒業の時に大泣きしているのを見て少しイメージは変わった。
けれどウチに対する態度や楽屋での冬眠活動を常に見ていたら、冷めている以外の何ものでもない。
262 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:10
部屋の隅の方では小さな二人の先輩、矢口さんと安倍さんが雑誌を広げて盛り上がっていた。
あの二人も一期と二期だ。まして安倍さんは一期のメインボーカル。
入った頃は先輩後輩の関係であったはずのあの人たちは、どうやってあそこまで近しくなったのだろう。

視線を再び後藤さんへと戻す。
自分と後藤さんも、あの二人のように打ち解けられる日が来るのだろうか。想像できない。
263 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:11



「何、ごっつぁんに惚れた?」
………いつの間にトリップしていたのだろうか。自分の右ワキから矢口さんの首
が出てくるまで、ウチは見られていたことに気づかなかった。

「やややややや矢口さん!」
ちょっと心臓止まった。

「ごっつぁんは大変だぞー」
「何言ってんですか!」
本当に何を言い出すんだこの人は。だけど少し気になった。大変って何が大変なんだろう。後藤さんてどんな人なんだろう。


「矢口さん」
「ん?」
「後藤さんてどんな人なんですか?」
264 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:11

「前に簡単に話したじゃん、よく食べよく寝る可愛い子だよ」
「もっと具体的に…性格とか…」
「えー…?それってヤグチが話しても意味ないじゃん」
「まぁ、そうなんですけど」

「自分で付き合って見つけなよ、メンバーなんだし」
「はい…」

しかし寝てばっかりなんだよなー。
矢口さんはそういいながら後藤さんの頬に指でぐるぐる渦を書く。
くすぐったいのか、少しだけ眉をひそめた後藤さんは、けれどそれ以上の反応をしなかった。
265 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:12

「矢口さんはー」
「え?ヤグチ?」
「安倍さんとどうやって仲良くなったんですか?」

「なっちと?うーん…そりゃあ…」

ウチの前へ人差し指を突き出し、
「ヤグチが頑張ったのだよ!」
と妙に誇らしげな矢口さん。

「先輩後輩ってのは勿論あったけど、年齢近かったし息が合ったんだよね」
「息…」
「そ。で、ヤグチは『絶対仲良くなってやる!』って頑張ったのだ」
「なるほど」
266 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:12

「もともと相性が良かったのかも知れないけどね、敵じゃないんだから好意をもって接すれば応えてくれるよ」
「ウチに出来るのかな…」
「大丈夫だよーヤグチにも出来たんだから」
まぁ少しは喧嘩もするけどね。
そうイタズラっぽく笑うと、安倍さんが呼んでいるところへ戻って行った。
267 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:13



頑張った、か。
やっぱり自分が動かなきゃ物事も動かないよね。


イスに座ると、寝ている後藤さんと顔が近くなる。
まつ毛なげー…。
そっと手をのばして、顔に触れようとしたとき。

「やぐちの…バカ━━━━━━━━!!!」
バシーン!
「痛あっ!!!!!」


イスに座っていたのに、思わず飛び上がっていた。
268 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:14

あまりの大声に騒いでいた辻加護も固まっていた。



筒状に丸めたハロモニの台本(これから収録)を潰れるほどに握りしめた安倍さんと、頭を抱えた矢口さん。
顔を殴らない辺りはやっぱりプロだなー…
…じゃなくて。


「…イテェよなっち!!!」
「バーカ!バーカ!カーバ!!」
「なっ…!」
「馬鹿!この虫!!」
「何だってんだよ急に!!!」
269 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:17


先輩2人の喧嘩だ。ウチなんかが止められる事態じゃあない。ましてそこでオロオロしてる(T▽T)じゃ話にならない。
あぁ、何で中澤さんいないんだ!



「保田さん止めて下さいー…」
「嫌、関わりたくない」
保田さん…弟子が打ちひしがれてますよ…

保田さんへの依頼に失敗した梨華ちゃんの、訴えるような目に負けてウチは飯田さんに依頼してみる。
「あの、飯田さん」
「ゴメン、ちょっと話しかけないで、気が散るから」
…この喧噪は気ィ散らないの…?
270 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:18

にべもない先輩方に途方にくれる新入り。
そんな後輩の困惑にはお構いなしに怒鳴りあってるちっちゃい先輩二人。

…これが「少しは喧嘩もするけどね」だろうか。思いっきり喧嘩してんじゃん。
ふと下に目をやると、眠りを妨げられた後藤さんが少し不機嫌そうに二人を見つめていた。
271 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/14(水) 19:20
あげ
272 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:20

「吉澤さん、ちょっと」
「は、ハイっ!?」

うわ、声裏返ったよカッコ悪。

「あれ、連れてくから手伝って」

そう言うと後藤さんは目の前の喧騒を指差した。
後藤さん、人を指差しちゃいけないんですよ。…とか言ってる場合じゃなくて…
273 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:21

「連れてく?」
「そ」
「…ぇえ?」

疑問に思う間もなく後藤さんはスタスタと二人の前に行き。
おもむろに安倍さんを羽交い絞めにすると矢口さんから引き離した。

「わわっ、ちょ、ごっちん!?」
「何だごっつぁん!?」

慌ててる安倍さんを一瞥すると、後藤さんはウチのほうを見た。そしてアゴで矢口さんを指す。
…ウチにもそれをやれと?
274 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:21

覚悟を決めて3人のもとへ。
「な…なんだよ…」
ちょっと不安げに矢口さんが威圧してくる。
下からの視線は上目づかいにも見えて、全く怖くはないのだけど。弱いもの苛めをしているようで気が引けた。

275 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:22


「ちょっと!よっすぃ!!降ろして!!」
「ゴメンナサイちょっと我慢してください」
結局羽交い絞めはどうしても可哀想だったのでお姫様だっこで矢口さんを抱き上げた。

「ごっつぁんよりヤグチのが先輩なんだけど!!」
「わかってます、わかってますけど…」
「なんだよ!」
「多分これが正しいんです」
「ワケわかんねぇよ!!」
276 名前:イモ虫 投稿日:2005/12/14(水) 19:22


「んでは、ごとーと吉澤さんでこの二人隔離しまーす」
「はぁ!?ちょっとごっつぁん!?」
「ごっちんちょっと!離してってば!!」
「ハイ出発―」

そのまま後藤さんについてウチも部屋を出て行く。
出る間際、視界の端に呆気にとられた梨華ちゃんが見えた。

277 名前:古賀 投稿日:2005/12/14(水) 19:23
少量ですが。
またしばらく冬眠します
278 名前:古賀 投稿日:2005/12/14(水) 19:24
隠し
279 名前:古賀 投稿日:2005/12/14(水) 19:24
隠し
280 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/14(水) 19:38
>>275のダッコにぼわわっちまいました。
これからもがんばってください。
281 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:18
「…で?何をもめてんの?」

まだ眠そうな後藤さんはちょっとTVで見せてはいけない感じのすわった目で二人を睨む。
怖いよ後藤さん。ていうか隔離ってトイレかよ、狭いよ後藤さん。

そんな怖い表情の後藤さんにも一切怯まない二人は、
まるで子供が先生に言いつけるかのように騒ぎ出した。
282 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:18

「だって矢口がなっちの台本の表紙のトコにイモって書くから!
 なっちイモじゃないし!マジひどいっしょー!」

「なんだよーなっち台本に名前書いてなかったからさー、ヤグチ親切でやったのにー。
 どうしてひっぱたかれなきゃなんないのー?」

「だからイモって書くからっしょー!!しかも台本だよ!?」

「そんなに大事な台本、さっき自分で握りつぶしてたじゃん」

「誰の責任だと思ってんだぁー!!」

「痛い痛い痛い!手ぇグーだし!なんですぐ手が出るの?暴力はんたーい」

「矢口が悪いー!!」

283 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:19
なおも殴りかかろうとする安倍さんを後藤さんが、
身を乗り出して抗議する矢口さんをウチが、
押さえつけて引き剥がした。



というか抱きかかえて向かい合ってるウチらって…ペットの見合いみたい。
あ、いかんいかん。真面目に話聞かなきゃ。

「どうでもいいけどさぁ二人とも一人称と呼称が『やぐち』『なっち』で同じだよね。
 あはっ訳わかんないー」


…後藤さん…
284 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:19


上の平和な二人にはお構いなく、小さな二人のバトルは続いていた。

「なっち台本台本騒いでるけどさぁ?
 ヤグチなんか昨日休憩時間寝てたら腕に虫って書かれたんだよ?皮膚に直だよ?
 収録までに洗うの大変だったんだから。ヤグチ怒ってるんだよ?」


285 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:20










286 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:20








「だって虫じゃん」
「何だとコラ!!!!」






287 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:21

あぁ…それで昨日矢口さんトイレからなかなか出てこなかったんだ。

…あれ?


連日の仕事で疲れていたのだろう。
安倍さんが何だか不機嫌そうで気になっていた昨日。

収録の関係で、もう終わった組とまだすこし撮る組に別れたので、
解散兼一時間ほどの休憩になった時。
休憩組の矢口さんが帰る組の安倍さんを連れて消えた。
288 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:21



そのまま五十分経過。



もうすぐ休憩も終わる、という時間にやっと楽屋に帰って来たのは安倍さん一人だった。

…朝より不機嫌だった。


矢口さんと一緒じゃなかったんですか?と聞いたら、
知らない!とだけ言って荷物を掴んで帰ってしまい。

その後時間になっても来ない矢口さんを探して回ったら、
トイレから聞こえた矢口さんの返事と水道の音。

しかし待てど暮らせど出てこない。
何度呼んでも「もう少し待って」。
それから時折「あーもう、なっちのアホー!!」

どうも懸命に何かを洗っているようだったが、
入るなと言われた以上後輩の私は入ることが出来ず。
結局私は一人廊下で待ち、やっと出てきた矢口さんは申し訳なさそうにしていた。
その後待たせたメンバーにひたすら謝っていた。
289 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:21


「矢口さん昨日の休憩時間、安倍さんに何かしたんじゃないですか?それで怒らせたりとか」
「!」
「…!!」


途端に顔を赤くして絶句する二人。

いくらぼけたウチでも昨日二人に何があったのか予測はついた。
驚いたけど。何だよノロケかよ。

…まあね、疲れてるトコ無理矢理したんだろうな、
しかもその後寝ちゃったんでしょ、怒るのも無理ないですよ矢口さん。
290 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:22




突如生まれた沈黙。
長引くと思われたそれを最初に破ったのは後藤さんのため息だった。

「こりゃ圭ちゃんが関わりたくないって言ったのもわかるね」

夫婦喧嘩はなんとやらってヤツですね。
291 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:22

「ご、ごっち…」
「やぐっつぁんの野獣〜」
「なっ…!ちげぇよ!なんもしてないよ!」

慌てて否定する矢口さん。
あれ?違ったの?

「何言ってるべさ!あんなトコ連れこんで!二人っきりで!」
「寝ただけじゃん!何もしてないよ!未遂じゃんか!」
「そ、そういう問題じゃないっしょー!」



「…ていうか『未遂』って口走ってる辺りが、
 やぐっつぁん下心バレバレというかヘタレというか」

後藤さんの呆れたような呟きは多分安倍さんには届かなかっただろう。
何もされてない割には安倍さんが怒ってる気がするけど…。まぁ疲れてたんだろうか。
292 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:23


「あぁもう!うっさいイモ虫!!」

苛立たしげに後藤さんが怒鳴り。
ギャーギャー騒いでいた二人はピタリと黙った。
気まずそうにしている二人を後藤さんは見下ろした。

「このさい原因はどうでも良いのさ、とにかく楽屋で派手な喧嘩しないで。
 疲れてる人もいるんだし後輩が動揺するし何よりシメシつかへんやろ」
「………」

こんなに喋る後藤さんを初めて見た。
あまりに正論で、先輩二人も黙り込む。

…終盤関西弁だったのが気になるけど。何故。

「以上、裕ちゃんのウケウリでした」

あ、ナルホド。
293 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:23



「どうしても原因究明したいなら、ここでやって。二人でじっくり」
「…ごめん」

申し訳なさそうに返事をする矢口さん。

「…まぁどんな展開に発展しても責任はとらないけどね。行こ、よっすぃ」
「あ、はい…」

「ちょっ…うぉい!何も起きないから!」
「そうだよ!何にもないんだから!」

後ろで矢口さんと安倍さんが真っ赤になって何やら色々喚いていたけどちっとも怖くなかった。
喚かれてる後藤さんはハイハイごちそう様とか言って手ぇひらひらさせて出ていった。
…もう片方の手でウチの手をひいて。
294 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:24


「…って、えええええ!!?」
「な、なによっすぃ!?」

廊下に出るなり叫んでしまったウチ。
だって、だって今「よっすぃ」って…

表情で伝わったのか、後藤さんは「あ゛ー」とか「う゛ー」とか何とも言えない声を発して

「…だってさ、何かイヤじゃん『さん付け』」

と膨れてみせた。


その顔が何だか年相応で可愛くて。
ウチは無意識に笑っていたらしい。

「あ!笑った!!」

嬉しそうに後藤さんに指を指された。
…だから人を指差しちゃ(略)

途端、我にかえったらしい後藤さんは、しゅるしゅると指していた手を下ろし赤くなった。
そして無理矢理いつもの無愛想な顔に戻すもんだから、
ウチは今度こそ声をあげて笑ってしまった。
295 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:24




296 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:24



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297 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:25





「なんで同時進行みたいな喋り方すんの?」

298 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:25
「…ごめんね説明下手で」

『感想それだけかよ』とでも言いたげなよっちゃんさん。

「いや、面白かったけどね」
「ホント?」
「だってホラ美貴寝てないじゃん?」
「……」
299 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:26


「そういやその後、安倍さんと矢口さんは?」
「すーぐ出てきたよ。原因究明よりごっちんの誤解を解く方が大事だったみたい」

慌てて飛び出して来て顔を真っ赤にしながら騒ぐ矢口さん達と、
せっかくの良い雰囲気を一瞬で壊されて不機嫌そうなごっちんが目に浮かび、美貴は吹き出した。

「何笑ってんの?」
「や、ごっちん頑張ったのに報われないなぁって」
「ええー?だってすぐにウチもごっちんって呼ぶようになったよ?」
「そうじゃなくてさ…」
300 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:26

鈍い上に、微妙にノロケが入ってるおっちゃんに
再度説明するのも馬鹿らしいので話題を変える。

「ぼんぼんちゃん達、すぐに弁解しにきたってのは、やっぱ照れ隠しなんだろうね」

「うーん…でも未遂なのにあれだけ怒ったってコトは、
 安倍さんホントにその気はないんじゃない?」
301 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 02:27
よっちゃんさんから返って来たのは意外な発言だった。

「…ホントにそう思う?」
「それにアレ以来…てかアレ以前も、矢口さんって安倍さんには手ぇ出してないと思うよ」

あの二人が付き合ってるなんて聞いたことないし、と、よっちゃんさんは付け足した。

一般的にはそう見られているのか。
何だか衝撃的だった。


「…美貴はそうは思わない…」
「え、ミキティどういう意味…?」

よっちゃんさんにどう返答しようか思案していると、頭上からふんわりとした声が響いた。
302 名前:古賀 投稿日:2006/01/10(火) 02:27
 
303 名前:古賀 投稿日:2006/01/10(火) 02:27
 
304 名前:古賀 投稿日:2006/01/10(火) 02:28
ちょっと更新
305 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:48



「あれ、どうしたの藤本さん怖い顔ー」
「…いつもの顔ですよ…」

気がつくと、目の前でニコニコと毒を吐く天使。
306 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:48


「安倍さん」
「ん、なんだい?」

「矢口さんとはどういう関係ですか?」
「なっ…!」

とたんに顔を真っ赤にして狼狽える安倍さん。

「や、矢口とは…仲間だよ、そう!仲間!大事な仲間!」
「安倍さん」
「な、何…?」
「そんだけですか?」

「…」
307 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:50


「少なくとも矢口さんには、そう思わせてますよね」

「…よく見てるね」


「美貴は、あの人が好きです」
「!」

「このままで良いなんて甘いコト考えてるなら…」

そこで一旦言葉を切り、安倍さんを見上げる。

「美貴がもらいますよ」
「…っ…」
308 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:51



安倍さんはズルイ。
矢口さんの気持ちを知ってて、その上で気付かないフリをしてる。
自分も好きなクセに、気持ちをごまかしてる。



309 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:51


「…なっちだって…!」
「だって?」

「なっちだって…矢口のコト…」


310 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:52

「なっちぃー」

安倍さんが言いかけたセリフは、向こうから駆けてくる矢口さんの呼び声に遮られた。

「あれー何だよミキティ、なっちとは喋る元気あるんじゃん」

「喋るだけですから」

矢口さん喋るだけじゃ済まないじゃないですか。

「おいらのことも構えよなー」

「えー…」

「ちょっ、何だよそれ!」

「疲れてるんですってば」

「おーまーえーなぁー!」

「…いくよ矢口」
「あ、ちょっとなっちぃ」


矢口さんは一度こちらをちらりと見たけど、すぐに安倍さんを追いかけていった。
その一瞬の表情が、何故かひどく寂しそうに見えたのは、美貴の気のせいだろうか。

いずれにせよ、話しかけてきたよっちゃんさんのおかげで、思考は中断された。
311 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:53

「ミキティはさぁ」
「んー?」
「何がしたいの?」

「矢口さんが欲しい」

「じゃあ何でけしかけるようなことしたの?」

「けしかけてなんかないよ」
「やー、アレはけしかけてるよ」
「違うよアレは宣戦布告」

「へぇ」
「黙ってかっさらったら卑怯じゃん」

口を尖らせてそう言うと、よっちゃんさんは楽しそうに笑った。
312 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:53

「悪者にはならないんだね」
「あんな真っ直ぐな人オトすのに、抜け駆けなんかヤダよ」

「勝ち目は?」
「もう負け試合は見えてる」
「まぁキビしいだろうね」


「でも、安倍さんがあのままなら何も起こらない」
313 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:54




『未遂なのに怒った』
よっちゃんさんはそう言った。
美貴は違うと思う。
『未遂だから怒った』んだ。



314 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:54
「何よっちゃんさん、味方してくれんの?」
「やー、ウチとしては安倍さんでもミキティでもどっちでも良いんだよね」
「え?」

「矢口さんが幸せなら」
「うっわ…」
315 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:54



安倍さんはズルい。
あの人が何年も自分しか見ていないのを知ってる。
愛されているのを知ってる。
なのにあの人をはぐらかす。
寝ちゃったら怒るのに、迫られたら逃げる。


316 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:55
「何そのクサい台詞」
「ウチの大事な師匠ですから」

「浮気じゃんそれ浮気」
「ちげーよ!」
「ごっちんに言いつけたれ」
「ちょ、待った!違うったら!」

「えーと携帯携帯…」
「…っ…わかったって!味方する!味方するから!ミーキーティー!!」
317 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:56



あの人は気遣いの人だから、誰にでも優しい。
美貴にも優しい。
悪く言えば博愛。

だけど一番は安倍さんで、安倍さんが拒むうちはずっと待つのだろう。
もう何年もそうしてきたように。

優しいあの人はずっと待つのだろう。




「あ、ごっちん?久しぶりー」
「ヤメテェェェェエ!!」
318 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:56



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319 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:56



「あー、言えなかったなー…」
「……」
320 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:57
「なっち手伝ってくれるって言ったじゃんよー昨日の夜ー」
「……」

「…やっぱ年長組には話しとかないと…大事な話なんだし…あぁどうしよう…」
「…ゴメン」
「あ、や、なっちが悪いんじゃないんだけどさ、ゴメン」
321 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:58
「…矢口?」
「ん?」

「………」
「なに、なっち?」

「…っ、なんでもない!あ、なっち今日寄るトコあるから!」
「え?あ、ちょっと!」
「じゃね!」
「えー!なんだよー!」
322 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:58




323 名前:イモ虫 投稿日:2006/01/10(火) 15:58







矢口さんが去り際に寂しそうな顔をした理由

それを思い知るのは数日後の話
324 名前:古賀 投稿日:2006/01/10(火) 15:59
 
325 名前:古賀 投稿日:2006/01/10(火) 15:59
 
326 名前:古賀 投稿日:2006/01/10(火) 16:00
作者、相当の新参ヲタで
2004年1月末に安倍さん卒業報道を見た段階では
「なっちって誰よ」状態でした。

今回の話の中間部分は、その七ヶ月後に書いた初めてのお話だったのですが、
今回引っ張り出すにあたって、全て「安部」になっていたことに衝撃を受けました。
327 名前:名無し 投稿日:2006/01/11(水) 13:15
更新お疲れ様です
もっさんガンガレ!なっちもガンガレ!
328 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:34




 
329 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:34



窓の外を見ると真っ赤に染まった空。



330 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:35
急なオフに、することもなくパズルなんか広げて。
いつの間にか夕暮れ。

もうすぐ完成、というところで、1ピース足りないことに気づいた。

あたりを探したけれど
「初めからいなかったよ」と言わんばかりに箱は空っぽだった。
331 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:36
パズルの真ん中にぽつんと穴。
朱く染まった部屋。

何だか無性に寂しくて。

この穴を早く埋めてやらなくちゃ。
そう思って、不足ピースを取り寄せる手紙を書こうと立ち上がった。
と、はずみにパズルの下に敷いた新聞紙を蹴ってしまう。

「あ…」

パズルは簡単に崩れ、バラバラと重なった。
どこのピースがないのか、わからなくなった。

「…何だよもう…」

悪態をつきながら、重なったピースを広げていく。

ほんの一瞬前の出来事なのに。
もう、どこのピースがなかったのかもわからないのだ。
332 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:36

もう一度組み直すか、一瞬迷った時。
浮かれた着信音が部屋に響いた。

333 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:37



 
334 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:37
あまり心地よくはない緊張の中、
通話ボタンを押す。

『矢口さん?』
響いてくる声は至極自然な声。
335 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:37
「…何か用?」
こちらはと言えば、
驚くほど低く掠れ、
微かに震えが混じった。

『冷たいなぁ』
けれどそう言う彼女の声は何だか楽しそうで、
少し肩が軽くなった。
336 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:38
「今日仕事は?」
『もう上がりです』
「そっか」

『…変なの』
「…変だね」
仕事の予定を知らない自分。
ついこの間まであっちにいたのに。
337 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:38
「みんな大丈夫?」
『どうにかこうにかやってますよ、案外みんな図太いですよね』
失礼な言い方にこみ上げる笑いを抑えて。
気がかりなこと。

「よっすぃは…元気?」
『…あの人は、今すごく忙しいから…正直参ってる暇もないみたい』
困ったように彼女が笑った。

「そうか…」
殆ど話も出来なかった。
それだけが悔やまれる。

338 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:38
「ところで、何の…」
用?と聞こうとした台詞は、遮られて。
『ねぇ矢口さん』
「何?」
『会いたい』

339 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:41
「…あのさ…」
『寂しい』

どこまでも真っ直ぐで。
ため息をひとつつく。

「家にいるからさ、道、わかる?」
『大丈夫です』

「じゃあついたら連絡し…」
『ついてます』

「…は?」
『ドア開けて?』
340 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:42


----------


 
341 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:43




「普通、いるかどうか確認しない?」
「んー、いなきゃ待ってれば良いかなって」

ドアを開けると本当に彼女が立っていた。

「いつどこで見られてるかわからないんだよ?あんまり長時間外にいたら大変だろ」
「大丈夫ですよー」
「ていうか酒くさっ!おま…まだ夕方だぞ?」
「いーじゃないすか」
「いやいや仮にもアイドルがさぁ…ビール片手に…」
「飲まなきゃ、やってらんないすよ…」
「……」
342 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:43
一瞬の沈黙の後、中に入るよう促す。

いやに荷物が多い。
「泊まってく気?」
「ご名答」
二度目のため息。

343 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:45
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「フラフラする…」
「昼間っから飲んでるせいだろ、たかだか二十の小娘が」
「矢口さんには言われたくない」
「あんだと?」
「下戸じゃん」

「飲みます?」
「いらない」
「まだありますよ開いてないの」
「何本買ったんだよ…」
「まぁ適当に」

「飲みに来たの?」
「そうじゃないですけど」
「とにかく飲めないから。いらないよ」

344 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:46


「矢口さん」
「ん?」

「お腹すいた」






「何か食べたい」






「…何もねぇよ」
「何でも良いです」
345 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:47
台所へ立つ。
えぇと卵に牛乳、粉…

「あ、ホットケーキ以外で」

居間から声。
先に言え。

「……何で?」
「焦がすから」
「失敬な」
346 名前:ちょっと脱線 投稿日:2006/01/11(水) 14:47
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例の黒こげホットケーキ、当時21歳の娘さんとしては非常に問題だと思います。
しかもラジオでの暴露話じゃなく、テレビ電波にて実演垂れ流し。
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347 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:49
手抜きパスタを皿に盛って。
ついでに製氷器からコップへ「主食」を5,6粒。

「わーいシーチキン」
「子供かよ」

氷を口に放る。

「出た、氷食動物」
「どっかの肉食動物さんよりヘルシーですから」
「いやいやヘルシー過ぎだから」


「ヘルシー隊長だし」
「セクシー隊長だろ」

348 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:50


いつの間にか外はうす暗くなっていた。
カーテンで空を隠し、電気をつける。

「ねぇ矢口さん?」

振り向くと、床の一角を不思議そうに見ている彼女。
349 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:51
「あぁ、パズル?さっきまでやってたんだ」
「その割には進んでないですね」

彼女はテーブルから離れ、散らばったパズルの前に座る。
おもむろに1ピースつまむと、今つけたばかりの電気にかざして。

「いや、出来てたんだけど蹴り飛ばしちゃって」
「うわ間抜け」

パチリ。

「一日中コレやってたんですか?」

パチリ。

「うぅん、洗濯とか掃除とかもした」
「…暇な主婦みたいですね」

パチリ、パチリ。

350 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:52

1ピース1ピース、かざしては、はめていく彼女。

つられるように、向かいに座って。
こちらからでは絵が逆さまだけれど。
同じようにはめていく。

パチリ。パチリ。

「…酒くさ」
「大分飲んでますからねぇ」
「しかもその右手のは何だよ」
「ビィール」

床に座ってパズル。
一日やってたパズル。

さっきと違うのは、顔をあげると酔っぱらいがいること。

そしてそれは、何だか随分と落ち着くのだった。

351 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:53


 
352 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/01/11(水) 14:53


 
353 名前:古賀 投稿日:2006/01/11(水) 14:54
05年04月の例の日の直後
雲隠れに借りたアパートでの設定ということで
354 名前:古賀 投稿日:2006/01/20(金) 00:00
ヤグオメ
355 名前:古賀 投稿日:2006/03/01(水) 22:40
統合されてる!
べっくらこいた・・・
356 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/26(日) 14:36
もしろい
357 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:02
一人でやっていた時のような寂しさはなくて。
ひょっとしたら、と淡い期待も抱いたのだけど。


『…お?』

けれどもやはり、
真ん中にはぽつんと穴。
358 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:03



『矢口さん、1ピース足りない』
「うん」

『さっき蹴っ飛ばしちゃったんじゃない?』
「ううん、最初からなかった」


『ふーん…』
気のない反応をしてビールを飲もうとした彼女。
と、缶を耳の辺りで振る。

空になっていたのだろう、
『もーイッポンー』
と立ち上がった。
359 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:03
「お前…明日に響くぞ」
『大ー丈夫きっとー大丈夫ー』

声色どころか振り真似までして。
ゴマキファンと化した酔っぱらいは、ヨタヨタと酒を取りに冷蔵庫へ。

『手ーを握ってぇー』

絶対、明日に引きずると思う。
360 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:04


361 名前:古賀 投稿日:2006/03/27(月) 15:04
ゴマキみうな
362 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:04
 
363 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:06
再び完成した不良品パズルを、ぼんやりと眺め。

「あ、そうだ」
『んー?』
台所から声が返ってくる。

ドコが不足なのか判明したことだし。

『なにしてんですか?』
新しい酒を持ってきたらしい、頭上から声がする。
「んー、ピースの取り寄せをね」

『取り寄せ?』
「この穴の部分」
『……』
364 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:06


型番を書きこんで、どこのピースか調べようとした所で、
突然ハガキが取り上げられた。

「あっ」
見上げると不満気な顔。

「何すんの」
『そんなのかかんで良いですよー』
「何でだよ」
『穴埋めなくて良いってー』

理由のわからないワガママを言う彼女。

「何でよ穴空いてたら埋めるじゃん」
『だって来るのよそ者ですよ』

「は?」
『だから…』


知ってます?
と、前置きをして。
365 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:07


例えばパズルを梱包してる時に、弾みで1ピース違う袋に入ってしまう。
一方はピースが足りず、もう一方はピースが余る。

『けど、そのピースを取り寄せるのは無理なんですよ』
「だろうね」

そんなの、行方を突き止めるだけで大捜査だ。

「…で?」
『だから、そういう取り寄せ用にピースが用意されてるんですよ』
「あー、なるほど」
366 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:07


『穴埋め要員ですよ』
「ほー」

『よそ者ですよ』
「うん?」

『そんなの入れる必要ないですよ』
「……」

『穴あいたままで何でいけないんですか』
「おい…?」

『どうして代わりを求めるんですか』
「……どうした…?」

酔っているのか随分と饒舌になっている。

いつの間にか語勢は強くなり、表情は悲しそうに歪む。

『周りの援助なんか無くたって自分たちで頑張っていけるのに…!』
367 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:07
「…何か、あった?」


『別に…』

そらすように、
目を、伏せて。
怒っているような、泣いているような、苦々しげな表情。
368 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:08
何か、言われたのだろうか。

表向き、取り残されて結束して健気に頑張る姿を見せても。
関係者には苦言やイヤミを言う人もいるのだろう。

己の身勝手さは棚に上げ、酷く腹がたった。

向かいに座っていた彼女が、そのまま真っ直ぐ倒れてくる。
コテンと膝に顔を埋め、勢い、膝枕のようになる。

ポンポンと頭を撫でてやると、モソモソと寝やすい体勢に体を動かした。

「ごめん、ね…」
369 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:08
『謝られちゃったよ』

くぐもった声で彼女は呟いた。

『謝られてるうちは負けなんだよなぁ』
「うん?」
『矢口さんがいなきゃダメだって…思い知らされるじゃないですか』

ハッとした。
謝るのは傲慢だ。

迷惑を承知で行動を起こしたのに。
370 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:09
「…ごめん」
『ほらまた謝る』

「でも、おいらいなくたって大丈夫だよ」
『何でそんな…』
「おいらを過大評価しないでよ」

「ただ先に加入しただけ。そんな大層な存在じゃないよ」

『…辞めたこと後悔させてやるから』
「楽しみに待ってるよ」
371 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:09
 
372 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/03/27(月) 15:09
 
373 名前:古賀 投稿日:2006/03/27(月) 15:10

久々でカギカッコの統一を忘れた・・・
374 名前:古賀 投稿日:2006/05/28(日) 22:34
なかなか書けないなぁ
375 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/29(月) 21:43
焦らすようで悪いんですが
更新待ってますw
376 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/07/04(火) 03:43
 
377 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/07/04(火) 03:43
 
378 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/07/04(火) 03:43
日はすっかり落ちていた。
そして彼女は眠りに落ちた。


あいにくとベットに引きずっていく体力を持ち合わせていなかった。
毛布を持ってくると冷えないようにかけてやり
しばらく思案してから隣に潜り込んだ。


「んん・・・」
「・・・マジ酒くせぇ・・・」
379 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/07/04(火) 03:44
難しい顔のまま寝ている彼女。
額のシワが残りそうで指で押してみる。


明日はきっと二日酔いだろう。
床に直に寝てるから腰痛も来るかも知れない。

明朝のローテンションの彼女を如何にして仕事に送り出そうか
そんなコトを考えながら
久しぶりにあたたかい気持ちで眠りについた。
380 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/07/04(火) 03:44
 
381 名前:夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜 投稿日:2006/07/04(火) 03:44
 
382 名前:古賀 投稿日:2006/07/04(火) 03:48
ひとまずこの話は終わります

・一人称を使わないように
・相手の名前を呼ばないように

とにかくこれだけ気をつけて書いてみました


後日更新します

>>375
気長に待っていただいて恐縮です
放置はしないつもりですので末永くヨロシクお願いします
383 名前:_ 投稿日:2006/07/04(火) 04:05
あやみき

>>2-58 >>80-197 四月の初めに

>>200-204 <<四月三日>>side-A

>>205-216 <<四月三日>>side-M



矢口脱退に寄せて

>>65-79



矢口さんとか藤本さんとか

>>219-226 矢口とカオリ

>>227-237 虫とイモ

>>240-325 イモ虫

>>329-380 夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜
384 名前:古賀 投稿日:2006/07/06(木) 00:04
次は藤本さん視点で行きます
385 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:06
 
386 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:09

「矢口ー」
「お〜、なっち」

「やーちょっと久しぶりじゃない?」
「だね、どーなの元気?」
「元気だよー!矢口は?」
「まあまあかな、ねぇこのあとどう?飯でも一緒に行か…」
「あ、ゴメンこの後別の仕事が入ってるんだ」

「…そっかぁ…」
「…ゴメン、ね……じゃあ!」


どうも安倍さんとギクシャクしているらしい矢口さん。
後ろ姿があまりに寂しそうで思わず声をかけてしまった。
387 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:10

「なんかあったら言ってくださいね」
「うん?」
「話聞くくらいならいくらでも聞きますし」
「ミキティ…」

本当言うと安倍さんの話を矢口さんから聞くのはイヤなんだけど。
でも今の自分にはそれくらいしか出来なかった。

「なっちが…」
「安倍さん?」
「変なんだ、最近」
388 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:10


「変って?」
「なんか…よそよそしいっていうか落ち着かない感じで」

「避けられてるんですか?」
「そういうワケじゃないんだけど…なんか二人になるのを怖がられてるような…」

ふーん…。

「最近っていうのは、4月頃からですか」
「…なんでわかんの?」
「美貴よく見てますから」

嘘。
美貴があの時、安倍さんをけしかけるようなコト言ったからだ。
389 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:11
あの日、よっちゃんさんから話を聞いて確信した。

矢口さんと安倍さんは互いを好きあってる。
そして言い出せない矢口さんと、
矢口さんの気持ちに気付いてるけど進展を拒絶する安倍さん。

美貴、矢口派だから。
矢口さんにツラい想いさせてるなら、矢口さんのコト美貴が奪いますよ?

そんな風に、安倍さんに宣戦布告した。


その後すぐに矢口さんが脱退しちゃったのは予想外だったけど。
安倍さんは知ってたんだろうなあって思ったらやっぱ凹んだけど。
390 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:13

でもそんな美貴以上に、安倍さんや矢口さんの方が不安定になってた。
美貴が現れて、物事が動き出したコトに動揺して、変化に怯えてる安倍さん。
そんな安倍さんの変化を敏感に感じ取って不安気にしてる矢口さん。

ホンのちょっとツツいただけでグラグラと揺れ動く二人。
なんて危うげな人たちなんだろう。
そうやってずっと本心を誤魔化しながら、
傷つかないギリギリのところを生きてきたのだろうか。

二人で。



「矢口さん」
「ん?」
「このあとゲーセン行きません?」
391 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:17


───────────────

 
392 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:18

「こら待て藤本!」
「勝負に待てはありません〜」
「あークソ前の赤いの邪魔ー!」
「ねぇ矢口さん、これドリフトってどうやっ…」
「教えねー」
「うっわ先輩ってば冷たーい」


「ラブマありますよラブマ」
「本当だ!よーし勝負!」
「これバチ軽すぎません?」
「すっぽ抜けて頭に当てるとかナシだぞー」

「ほっ!…え?…よっ!あれ?何で反応しないの?」
「リズム感ないなあミキティ…」
「なっ…ありますからリズム感くらい!歌手ですよ!」
「譜面読めない歌手ねぇ…まあ結果が楽しみですなー」
「くっそー…!」


「矢口さん左半分ね」
「ちょっと待てハンマー一個しか無いぞ」
「……」
「……」
「…矢口さん素手で」
「噛まれるじゃん!」
393 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:19


車だの太鼓だのワニだの。
ギャーギャー騒ぎながら美貴たちはゲームセンターを満喫した。
ほら、やっぱりこの方が矢口さんらしい。
美貴たちはこのノリの方が向いてるよ。

矢口さんが脱退する前には当たり前過ぎてないがしろにしちゃってたけど、
こういう他愛もないやり取りって物凄く大切なんだ。

気晴らしに連れてきたハズが、何だか大事なコトに気付いちゃったなあ。
394 名前:朝焼け 投稿日:2006/07/06(木) 00:20

「あ!コレ知らない!新しいヤツだ」
「覚える程やってんですかUFOキャッチャー」
「ま、見てなよ」

一台のUFOキャッチャーの前で矢口さんはジャラジャラと小銭を取り出す。

「小金持ちー」
「うるさいな」

500円で3回。そう書いてあった。
200円で1回だから500円の方が得だ。

昔は500円入れれば6回くらい出来た気がするんだけど。
ゲーセンなんかにも値上がりってあるんだなぁ。

そんなことをボンヤリ考えてたら、目の前にぬいぐるみを突き出された。
395 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:22

「え?」
「2個取れたから1個あげる」
「ああ、ありがとうござい…2個!?」
「うん、1回しっぱい」
「いや1回って」

500円で2個とったって言うんですか。
6回も出来なくても別に問題ないですね。

「すげぇだろ?すげぇだろ?」

ちょっと胸張って得意気な矢口さん。
『ほめて』と顔が言っている。

こういう時の矢口さんは犬みたいですごく可愛いのだけど。
その表情は大抵あの人に向けられているため、何となく複雑な気分だった。
396 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:22

「無駄にカッコいい一面を見た気がします」
「何だよ無駄って!」
「良い彼氏になれるんじゃないですか」
「…あー…」

美貴の発言に、矢口さんは複雑そうな表情を浮かべる。

「それ、昔なっちに言ったなあ」
397 名前:朝焼け ep.0 投稿日:2006/07/06(木) 00:22
 
398 名前:古賀 投稿日:2006/07/06(木) 00:25
今日はここまでで

↓辺りから微妙に繋がってきてます


>>219-226 矢口とカオリ

>>227-237 虫とイモ

>>240-325 イモ虫

>>329-380 夕焼け 〜ジグソーパズルと酔っ払い〜
399 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/26(木) 23:36
今日、初めて読ませていただきました。
すげぇ気になるとこで終わってる〜。
待ってますよ〜。
400 名前:古賀 投稿日:2006/11/15(水) 16:11
お盆前に携帯がオシャカになりデータが全てふっとびました
ep6までチマチマと進めていたのが台無しです

現在脳内サルベージ中ですのでもうしばらくお待ちくださいorz
401 名前:古賀 投稿日:2007/03/14(水) 15:42
近いうちに…!
頑張ります
402 名前:古賀 投稿日:2007/06/30(土) 18:34
精意修復中。。。
403 名前:ナナシ 投稿日:2007/07/12(木) 14:02
待ってます。
404 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/12(木) 18:50
みんな期待して待ってるからageないようにねー
405 名前:古賀 投稿日:2007/08/27(月) 02:43
矢口さんにしても藤本さんにしても
書きはじめには考えもしなかった方向に現実は進んでいきますね
人間らしさが見えてきた彼女たちをあの頃よりもずっと好きになりました

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