CMYK

1 名前: 投稿日:2005/04/19(火) 20:43
CMYK。
2 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:44
カメラ
3 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:44
窓から見える桜はもうすっかり葉桜になっている。

桜の花びらっていうのは、一枚一枚は白いのに、みんなが集まるとピンクになるんだ──。
そんなことに気がついた次の瞬間には、もう鮮やかな緑がピンクを押しのけて、
花びらたちはあっさりと地面へと舞い散ってしまった。

葉桜っていうのは、それはそれで元気があっていいなあって思うんだけど、
かわいい女の子が急にマッチョな男の人になっちゃったみたいな違和感があって、
見ているこっちがなんだかクラクラきちゃう。
そんな話を隣に座っているれいなにしてみたんだけど、

「そりゃ、春のせいだね」

なんて言われちゃって、よくわかんないまんま私も「そうかも」なんて生返事をしてる。
れいなはそんな私の様子を見て、腕を組んで唇をきゅっと上げて笑った。
4 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:44
春。
私とれいなは高校生になった。
だからって特別なことはなんにもなくて、今はただこうやって、時間が過ぎていくのを待っている。

「なにかおもしろいこと、ないかな」

私の口をついて出た言葉に、視線も向けないままでれいなは答える。

「そんなん言っとるうちは、なんもなかとね」
「でもせっかく女子高生になったっていうのに、ちっとも変わんないんだもん」
「さゆは部活、入らんの?」
「だって、めんどくさいもん」
「じゃ、ムリっちゃね」
5 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:45
言うなりれいなは床にごろん、と転がった。
天井を見上げて口をぱくぱくさせている。
私もれいなと同じように仰向けになると、口をぱくぱくさせてみる。

「あんまおいしくなかとね」
「なにが?」
「空気」

そりゃ食べられないよ、と言おうと思ったけど、確かにおなかが減っていることに気がついて、
もう一度口をぱくぱくさせてみたけど、やっぱり味はしなかった。

「はらへった」
「さゆ、いきなりなに言うとね?」
「はらへった」
「ちょ、ちょっとぉ! なんばしよっとねぇ!?」
「はらへったー!」

抱きついてちょっとかじってみたれいなは、少しだけ顔を赤らめている。
6 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:45
「れいなおいしくない」
「食べ方が悪いんよ、さゆの」

それなら本格的にいただいてみちゃいましょうか、と思ったとき、後ろでドアの開く音がした。

「人ン家で何してやがんだ、お前ら!」

迫力があるのはいいんだけど、いかんせん声が高いので、正直あんまり怖くない。
声の主で部屋の主のヒトは、土足のまま上がりこむと、私とれいなの頭をひっぱたいた。

「いったぁ〜い」

ふん、と鼻を鳴らして見下ろす美貴さんは、心なしかいつもより目つきがキツい。
頭をさすっている私たちを尻目に、美貴さんは履いていた靴を脱ぐと、玄関にそのまま勢いよく投げ捨てた。

「わっ」

後ろに立っていた絵里は素早く飛んできた靴をよける。
美貴さんが「あ、ごめん忘れてた」さらりと言ってのけると、絵里は笑顔を崩さず「ひどいですよー」と答えた。
このコンビを見ていると、なんとも表現しがたい頼もしい気分になるのはなぜだろう。
7 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:46
絵里はくるっと私たちのほうを向いて、カバンからカメラを取り出した。

「はいはーい、ふたりとももっとくっついてー」

平べったいイントネーションで絵里は言う。
でもカメラを構える手が、その重さのせいでぷるぷる震えている。

「なんのつもり?」

美貴さんが冷ややかな視線を向けても、絵里はいっこうにお構いなし。
ファインダー越しに私たちを凝視したまま、平然と答えてみせる。

「お父さんからもらったんですよ。はいチーズ」

私もれいなも重なり合ったまま動かない。ってか、動けない。
同じ姿勢でいるのはけっこうつらくて、呼吸を止めてガマンする。
れいなの首筋に息がかからないように、ぎゅっと唇を結ぶ。
流れていたはずの時間がだんだん温度をなくしていって、カチンカチンに凍って……。
8 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:46
パチャ、と地味な音がして、時間が再び動きはじめる。
4人が一斉に息を吐き出した。
私とれいなはくっつけたお互いのカラダをゆっくりと離し、絵里はカメラを胸元に戻した。
美貴さんはもーどーでもいーや、と言わんばかりに首を左右に振った。

「デジカメじゃないんだ」
「そ。ふつうのカメラだよ」

一段落ついたところで、4人でテーブルを囲むように腰を下ろした。
手のひらで包むようにカメラを持っていた絵里は、それを丁寧にテーブルに置いた。
まるでクンクン匂いをかぐように、目の前のものをれいなは物珍しそうにしげしげと眺める。

「絵里、これさわってもい?」
「いーよ」

許可をもらうとれいなはカメラはそっと持ち上げた。「意外と重い…」とつぶやくのが聞こえた。
私はれいなの視界に割り込むと、うさちゃんピースをしてみせる。
思ったとおり、れいなは私にレンズを向けた。えくぼができるように笑ってみせる。
9 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:46
「とるよー」

絵里もそうだったけど、れいなの細い腕もやっぱり震えている。
ブレちゃったらヤダな、と思っていたら、シャッターの音が聞こえた。

「なんか、音、地味」

私が言うと、美貴さんは自分のケータイを持ち出して、写メを撮った。
同じ機械の音でも、録音されて再生した音は、しっかりはっきり聞こえる。

「このカメラって、自分のこと撮れないね」
「撮ったのもすぐに見れないのは、不便っちゃね」
「うん」

でも絵里は笑顔でカメラを受け取って、今度は大切そうにそれをひざの上に乗せた。
10 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:47
「今度は美貴に貸して」
「あ、はいー」

カメラを渡された美貴さんは、不意にレンズを窓の外へと向ける。

「もう葉桜だ」

言いながら、シャッターを切った。少しの迷いもなく、一瞬で構図を決めて、美貴さんは写真を撮った。
まあ、いちいちこだわるのは面倒くさいから、テキトーにボタンを押しただけなんだろうけど。

「ほら、こっち見て」

今度はテーブルを囲んでいる私たち3人にレンズを向けた。

「もっと寄らないと入んないよ」
11 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:47
ファインダーを覗き込みながら美貴さんが右手を振る。慌てて私たちは肩を寄せ合う。
やっぱり美貴さんは思い切りよくシャッターを切った。ぎこちない笑顔が瞬間パックされる。
もう1枚、という言葉を期待している私たちに、いたずらっぽく美貴さんが笑いかける。

「真ん中の人は魂を抜かれるって言うよね」
「えっ、そんなの聞いてなかとよ」

センターの位置にいたれいなが不安げな声をあげた。ひひひ、と笑う美貴さん。
れいなはからかわれているのに気づかず、私と絵里を交互に見て助けを求めている。

「だいじょうぶだよ、交代で3枚撮ればいいんだから」

私が言うと、れいなはハッと目を丸くして、そして目を細めた。
横から絵里が「ホントは自分を3枚撮ってもらえるって思ったんでしょ」とささやいたけど、
でも本当にそれだけじゃないんだよね。残念でした。
12 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:48
結局それぞれを真ん中に、写真を3枚撮ってもらった。
その後で、私、れいな、絵里の順番で美貴さんひとりを撮った。
それから今度は2人組の組み合わせで撮った。4人のうち2人の組み合わせだから、ぜんぶで6通り。
数学は苦手なんだけど、受験のときにがんばったからちゃんとわかった。

まだフィルムには余裕がある。すると美貴さんが立ち上がって言った。

「みんなカメラを意識しないで撮ってみようよ」

どうしてもレンズを向けると、かわいく撮られたいという意識がはたらいしてしまう。
美貴さんに言わせると、それじゃ面白くないのだそうだ。
「なんでもない瞬間を残してみたいじゃん」と言う美貴さんは、ちょっとお姉さんな笑みを浮かべていた。

美貴さんはカメラを手に取ると、クローゼットの中に消えた。
少しだけ開いている隙間から、「さ、いつもみたいにしゃべってよ」と声がする。
いつもみたいに、と言われても正直困る。
困るよね、と絵里と顔を見合わせていたら、パチャッと小さな音がした。
そしたられいながその細い腕を伸ばして、私たちの間に割り込んできた。
13 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:48
「れいな腕細い。痩せてる」
「高校生になると太るっていうよ」
「えーやだぁ」
「少しくらいぽっちゃりしたほうがいいんじゃない」
「そうだよ、さわり心地いいほうがいいよ」
「さわりごこち?」
「ぷにぷにしてるのがいい」
「肉球みたいなのがいい」
「そりゃふたりはいいかもしれんけど、さわられるだけのれいなはイヤたい」
「生意気言うとさわっちゃうぞ」
「さわっちゃえー」
「あっ」

しばらくそうして話をしていたら、「暑い、苦しい」ってつぶやきながら、美貴さんが怖い目で出てきた。
私たちは慌てて離れた。
14 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:48
それでもまだフィルムがあまったから、セルフタイマーにして4人で撮った。
美貴さんがきちんとセットしてくれて、現像した写真を見たらきっときれいに写っていると思う。

「あんたたちが来ると飽きなくていいわ」
「じゃー毎日来てあげましょーか」
「や、それは困るから」

美貴さんはにべもなく絵里に言い放つ。やっぱりなぜか、このふたりのやりとりは頼もしく思えてしまう。
そうこうしている間に、れいながもう一度カメラに手を伸ばす。
おそるおそる触れようとするその姿は、目の前で動くものに反応する子猫みたいだ。
かわいいから、じっと観察してみる。
れいなはさっきと同じようにカメラを手に取ると、フィルムはもういっぱいなのに、レンズを私に向けてきた。
見えない照準を合わせて、指先に力を込める。

「ばーんっ!」
15 名前:  投稿日:2005/04/19(火) 20:49
CMYK/カメラ   終
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/05(木) 16:07
読ませていただきました。
とても面白いかったので、次のお話も楽しみにしています。
17 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:29
地図
18 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:29
ウーロン茶の入ったコップの周りが、うっすら、びみょーに、汗をかいてる。

午後の日差しはまぶしい光だけじゃなくって、ぬるーい空気まで運んでくる。
とりあえず窓を開けっぱなしにして、ごろんって寝ころがってみた。
日陰でおとなしくしている分にはぜんぜん不快じゃない。
むしろ、そのたくましさというか力強さにほっと安心するくらい。

茶色のサッシに区切られた空は青い。見事なまでに五月晴れだ。
寝ころがっているくせに、このままずっと遠くまで飛んでいけそう、なんて思っちゃう。
でもこのまんま、空を飛べたらすごく便利だよね。疲れないし、お金かかんないし。
知らない街とか遠くの島までひとっとびーなんて、できたらいいな。

19 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:29
そんな具合に楽しく想像力を広げていたときに限ってジャマが入るもんですよ。
「メ〜ルだよぉ〜」と間延びした声。最近売れてきているお笑い芸人の声だ。
れいなのケータイだ。この子は相変わらず、はやりものに弱い。あんなの、つまんないのに。

「おっ、誰からやろ」

雑誌をめくる手を止め、れいなはケータイに手を伸ばす。
ぼーっとれいなを眺めてみる。細い腕。いつかポキッとイっちゃいそう。
逆立ちするたびに密かに心配してるだなんて、きっと気づいてないんだろうな。
20 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:30
れいなはしばらくケータイの操作を続けると「なんだ、さゆか」とつぶやいて、ぱちりとたたんだ。

「さゆ、なんだって?」
「もうあと少ししたら来るとよ。そんだけ」
「ふぅん」

答えて、なんとなく、起き上がる。最近は腹筋をきたえているから、こういう動きもらくちん。
でもれいなからはいきなりガバッと起き上がったように見えたみたいで、驚いた顔つきをされちゃった。

「えり?」
「ん〜ん」

首を横に振ってみせた。そのまま、わざと歯が見えるように笑いかける。
そっか、さゆが来るんだ。そう心の中で反芻してみる。さゆ。さゆみ。
「さゆみ」ってのもちょっと妙な名前。「ゆみ」ならわかるけど、なんで「さ」がつくんだろ。「あ」でもないし。
でもそのヘンなところが、ぽーっとしてるその感じに似合ってて、私は好き。
21 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:30
「……えりにはさゆからメール来んね」
「う」

痛いところを突かれた。そうなのだ、私のところにはなかなかさゆからのメールが来ない。
1コ上だから遠慮とかあるのかな、なんて言い訳をしてる。でも内心はけっこうショックなのだ。
名前を呼び捨てにしてるってことは、けっこう親しい間柄って認めてくれてるはずでしょう?
おっかしいなあ。

「れいなからも言ってよ、たまにはキャメイちゃんにもメール送れば?って」
「うん。ゆっとくよ」

にへへ、とあどけない笑みを浮かべてれいなは言う。ホント、信じてるからさ、頼みますよ。
そんな思いを込めてほっぺたをつっつくと、ぷるんって揺れた。わお、ゼリーみたい。
するとれいなもほっぺたをつっつき返してきた。
22 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:31
美貴さんが帰ってきたのはその応酬がピークを迎えている真っ最中だった。
最初、さゆが来たのかと思ってドアの音に勢いよく振り向いたら、立っていたのはジト目の美貴さん。
あちゃーと顔をしかめてみても、もう遅い。

「あんたたち、ここをどこだと思ってんの?」
「美貴さんチです。」
「そう。ここはあたしんチであって、あんたらの遊び場じゃないの」
「はい……」

ブーツを脱いだ美貴さんはツカツカと歩み寄ってくる。
その足取りを見て、私もれいなも美貴さんの方に素早く向き直って正座。
美貴さんは腕組みして憐れな2匹の子羊を見下ろす。
長い脚と小さい頭がよけいに迫力をかもし出している。キマりすぎ。怒られてるのに、見とれちゃう。
23 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:31
「お待たせぇ〜」

ドアを開け、手を振りながらさゆみが中に入ってきた。
さゆみはまずれいなに微笑みかけ、次いで美貴さんに会釈して、最後に私を見つけた。
美貴さんは深くため息をつくと、キッとさゆを睨んで言った。

「あんたもよ、さゆ。ここはあたしの部屋で、あんたらの遊び場じゃないんだから」
「知ってますよぉ?」

ひらりと受け流すその姿はマタドール。さゆは靴を脱ぐとすたすた私たちの方に歩いてきた。
そしてれいなに向けて、ひらひらと手を振った。美貴さんはその様子にがっくり肩を落とす。

「そうそう、今日はおもしろいもの持ってきたんですよ」

言うやいなや、さゆはカバンから一冊の本みたいなものを取り出した。
24 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:33
「とうきょうとくぶんちず……?」

東京都区分地図。青い表紙に白い字でそう書いてある。
さゆはうなずいて、パラパラページをめくり出した。

「これカラフルでかわいいんですよー」

手を止め、開いたページを私たちに見せた。「品川区」と書いてあるページだ。
確かに、薄いピンクやブルー、オレンジ、グレーできれいに色づけがされている。
ところどころにあるグリーンのかたまりは、公園のようだ。

「いま私たちがいる美貴さんの部屋、ここです。ほら」

見ると赤紫のペンでグリグリと星のマークがついていて、「美貴さんち!」って文字が添えられている。
もしやと思ってほかのページもめくってみると、学校やさゆのお気に入りの店なんかにも、
「美貴さんち!」と同じように赤紫のペンでマークとコメントがつけてあった。
25 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:33
「あ〜あ、直接書きこんじゃって」
「え、でもそうすると便利ですよ」
「さゆはいっつも道にまよってるもんね」
「れいなだってそうじゃん」
「そんなことなかと」
「こないだなんか、渋谷でさんざん歩いて、ヘンなところ行っちゃうし」
「えー、さゆが『こっちだと思う』とか言って勝手に歩くからまよったんよ」

言い争っているように見えて、実はじゃれあっているだけ。このふたりはいつもそう。
いいな。私もあの中に入りたいな。学年とか関係なく、純粋にさゆと話せたらいいのに。

「ねえ、これってさ、さゆみの地図だよね」
「なに言ってんですか美貴さん、当たり前ですよ?」
「や、そーじゃなくってさ、さゆみの毎日のくらしが書きこまれてる地図だってこと」
「え……まあ、そっかなぁ」
「つまりこの地図は、さゆみらしさがいっぱい出てる、さゆみの地図ってことだよ」

美貴さんの言葉に、私はテーブルの上の地図に視線を落とした。
さゆのお気に入りがいっぱいにつまった、一冊の地図帳。
26 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:34
「ねえねえ、れいなも好きなところ、この地図に書いていい?」
「うん、いいよ」

首をちょっと傾けて、さゆが微笑む。それを目にした私は、反射的にヒザ立ちになってた。

「さゆ、私にも書かせてっ!」
「へ? い、いいけど……」

気おされてか、びみょーにかすれた声でさゆが答える。
ちらっとれいなを見たら、目をいっぱいに開いて、うんうんって、笑ってた。

3人同じ色じゃまぎらわしいから、別々の色のペンを用意した。
れいなは黄色のペンを選んだ。私は青を選んだ。
れいなのすぐ隣りで、地図帳にお気に入りの場所を書き込んでいく。
彼女の息づかいが聞こえる。ふふ、と笑みが混じった吐息がすぐそこにある。
悔しいけど、かわいいと思った。私だって負けないように、もっとかわいくならなくちゃ。
私のペンの青は、今日の空みたいに軽やかで鮮やかな色だった。
27 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:34
「あ、美貴さんも書きます?」
「べつに美貴はいーけど」
「遠慮しなくていいんですよぉ」
「はいはい。書きますよ。書かせていただきますよ」

そう言って美貴さんが割りこんできた。手にしているのはいつも使ってるっぽい黒いペン。
オトナってゆーか、味気ないってゆーか。でもまあ、やっぱ、オトナかな。

ネコとかイヌの兄弟が並んでごはんを食べてるみたいに、れいなを真ん中にテーブルで肩を寄せ合って、
私たちは地図に文字を書いていく。4つの色が、カラフルな地図をさらにキラキラと輝かせていく。
28 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:35
「できたあっ!」

できあがった地図は、4つの色がいっぱいにあふれていて、なんか「げーじゅつ」って気分。
そう、この中には、私たちの大切なものが、いっぱいいっぱい書きこんであるんだ。
これからも、もっといっぱい、いろんなところを書きこんでいけるといいね。

4人でぐるっと取り囲んで、1枚1枚ページをめくってできばえを確かめていく。
遠くの街はきれいなままだけど、近所のページはもうぐちゃぐちゃって言ってもいいくらいになっちゃってる。
29 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:35
そのままどんどんめくっていくと、見慣れないページに出くわした。

「島だ」

れいながつぶやく。
イズショトウとかオガサワラショトウとか、東京都なんだけど島、っていう辺りのページだった。

「遠いんだぁ」

伊豆諸島と小笠原諸島、どの辺にあるのか場所を表したところを見て、さゆが言う。
天気予報でおなじみの東京湾のずっとずーっと下の方、まっすぐにタテに島が並んでいた。
上のほうにあるのが伊豆諸島で、下のほうにあるのが小笠原諸島。
私は東京都出身だけど、そんなのぜんぜん気にしたことなかった。

「ねえ、この島がみんな無人島だったらどうする?」
「え、この4人で行ってみるとか?」
「うんうん」

この部屋が、そのまんま無人島にワープしちゃったらどうなるんだろう?
南の島で4人だけ。ぜったい楽しいにきまってるけど、ごはんとかどうしよっか。
30 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:36
「どこがいいかなー」

れいなとさゆはひとつひとつの島を指さして選んでいく。
その様子を眺めているうちに、ふと気がついた。

「あれ」
「なんね?」
「伊豆諸島の島のほうが、小笠原諸島のほうよりも丸い島が多い」
「あ、ホントだ」

ぽこぽこと丸いかたちをしている伊豆諸島。
でも小笠原諸島の海岸線はすごく入り組んでいる。

「どっちのほうがいいのかな」
「丸い島って、つまんなくない? あんまり冒険って感じせんもん」
「でも丸いほうがかわいいと思うの」
「そっかなぁ」
「それに、丸いと、ケンカして反対のほうに走っても、ぐるっと一周して仲直りできるもん」
「あは、それおもしろいね」
「道にまよったりしなさそーだしね」
31 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:36
だけど、盛り上がっている私たちとは対照的に、美貴さんがボソッと言った。

「美貴は無人島、ちょっと怖いな」
「怖い?」
「ほら、美貴は北海道の真ん中らへん生まれだから」
「はぁ」
「小さい島がぽつーんと大きな海に浮かんでるの、なんか怖い」

言われてもう一度、タテに並んでいる島を見る。
確かに、大きな本州とこんなに離れちゃうと、ちょっと不安になるかもしれない。
すると明るい口調でさゆが言った。

「でもきっと楽しいですよ」
「そーたい、みんなとならへーきたい」
32 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:37
なんだか元気づけられた気がして、私もれいなに続いて言ってみる。

「亀井がついてるからだいじょーぶですよぅ」
「まあね、いろいろやってくれて飽きることはないと思うけどね」
「え、なんかひどーい」

ちらっとさゆのほうを見てみたら、私と美貴さんのやりとりに目を細めていた。
その横でれいなも白い歯を見せていた。

テーブルの上の地図には、「ウチらの島!」って4色のペンで書かれている。
いつか、そのまんまるい島に、みんなでホントに行ってみたいな。
33 名前:  投稿日:2005/05/07(土) 19:37
CMYK/地図   終
34 名前: 投稿日:2005/05/07(土) 19:38
>>16
レス、どうもありがとうございました。面白いかったようで何よりです。
更新のタイミングがレスを待ってた感じになっちゃってイヤーンなんですけど、うれしいです。
レス、フゥ〜ッ!(from レイザーラモン住谷)
35 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/10(火) 13:05
読んでてニンマリしてしまう
こういうお話大好きです
36 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:00

37 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:01
ぱしゃ、ぱしゃ。
アスファルトの水たまりを踏むと、水の玉が飛び出して冠みたいに広がる。
でもすぐに水は音をたてて地面に戻っちゃう。後に残るのは小さな波の模様だけ。
だから私は目を閉じて水たまりを踏むんだ。そして決定的瞬間を狙って目を開ける。
運がよければきれいな冠が見られる。運が悪いと……ちょっとむなしい。

雨の日にはこうして長靴にはきかえて、傘を広げて歩いてみる。
いつもなら遠くの景色まで見えるけど、雨のせいで自分の周りのものしか見えない。
まるでひとりぼっちになっちゃったみたい。ひとりぼっちはさびしい。
でもそのさびしさがあるから、友達って大切だなって、あらためて思えるんだ。

友達が待っている。いつもの部屋で待っている。

38 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:01
美貴さんチのドアを開けたら(さっきメルして開けてもらっておいたんだ)、さゆと絵里がいた。
絵里がなにかいっしょうけんめい話しかけてて、でもさゆは聞き流してるっぽい。
あいかわらずさゆはマイペースだなー。でも絵里も自分のペースって意味で、やっぱマイペース。

さゆと視線が合った。さゆが口もとをゆるめて手を振る。たたんだ傘を持った手で振り返す。
絵里も振り向いてこっちを見る。唇をむにって曲げてる。怒ってる……ってコトはないよね?

「れいな、家帰ってたの?」
「うん。靴はきかえた」

私がそう答えると、ふたりは脱いだばかりの長靴を見つめる。
長靴のとなりにはすっかり濡れている学校指定の革靴が2足並んでいた。
足もとを見ると、ふたりは靴下を脱いで裸足になってた。
39 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:02
「もう、雨ってやだ!」

さゆが高い声で叫んだ。関東地方は梅雨入りして、毎日雨ばっかりが続いてる。

「れいなは雨でも楽しそうでいいね。長靴もなんか似合ってるし」

絵里がため息まじりに言った。声にはなってないけど「高校生なのに」という言葉が聞こえた気がした。
だから私は言ってやる。雨だって、そんなに悪いもんじゃないんだ、って。

「中庭にアジサイ咲いてて超きれいやったよ。カタツムリもおったっちゃね」

そしたらふたりは「わあっ」って一瞬笑って、それから「んー」って一瞬で顔を曇らせた。
つまり、前半のアジサイで笑って、後半のカタツムリでちょっとヤダかもって思ったってわけね。
じゃあ今度は、雨につづいてカタツムリを応援しなくちゃ。
40 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:02
「カタツムリ、かわいいよ。でーんでんむーしむし、って」
「え、れいなはきもちわるくないの? カタツムリ」
「そりゃ手で持ったりするのはヤダけど、見てる分にはかわいいけん、へーき」
「そっかなあ」

絵里は大げさに首をかしげてみせる。さゆは目だけ上に向けて、ぼーっと考えてる。
そして、絵里は言った。

「ちっちゃいころは平気だったけど……。もうあんまりかわいいって感じじゃないなあ」
「そうだよね。絵本とかのカタツムリってかわいいけど、本物はちょっとね」

さゆまで、そんなぁ。
なんだかひとり仲間はずれにされた気がして、急につまんなくなった。
なにも言わずに窓ぎわまで行って、外の景色をながめてみる。

中庭(美貴さんのアパートには中庭ないけど、神社の中庭がすぐそこなんだ)を見下ろすと、
アジサイの青が目に入った。紫っていうより、白みがかった緑のまじった若々しい青。
雨粒がまわりの景色を曇らせている中で、ひときわ輝くように目立ってる。
41 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:03
もうちょっとしっかり見てみたくなって、窓を開けてみた。
と、すぐに雨が風に乗って入り込んできたので、慌てて閉める。なんだか私、バカみたい。
ガラスを1枚へだてた向こう側と、私たちのいるこっち側。音が遠くに聞こえる。

「そういえば、私たち、すっかり雨の日がきらいになっちゃったね」

さゆがつぶやいた。振り返ると、天井から視線を下ろして、もう一度さゆが言った。

「ちっちゃいときって、雨の日には傘さして長靴はいて外で遊んだのにね」
「そうだね。濡れちゃってもべつに平気だったもんね」
「いつから雨の日に遊ばなくなったのか、思い出せないの」

今でも雨の日に散歩する私は、完全に置いてけぼり。
でもふたりはお構いなしに、小さい頃の記憶について楽しそうにしゃべってる。

「雨が降るとさ、庭に水たまりができるでしょ? そこに葉っぱの舟を浮かべたの」
「え、沈んじゃわない?」
「ううん。雨のせいで庭ぜんたいが川でいっぱいみたいになるでしょ」
「なるなる」
「だから流れていく葉っぱを追いかけて、いっしょに歩いてみたり」
「あー、そういえば似たようなこと絵里もやったかも」
「途中で止まっちゃったら、傘の先でそおっと押してあげるの」
42 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:04
話を聞いていて、私も小さい頃に遊んだことを思い出す。
あの頃は、雨が降った庭は、いつもとちがってすごく広く思えた。

「ねえ、その葉っぱの舟に、自分たちが乗ってたつもりになってたよね?」
「うん、なってた」
「そだね」
「なんかさ、自分たちも一緒になって冒険してた気がしてたよね?」
「え……うん、まあ、そっかな」
「うん」
「れいな今もそうなんだけど。雨の庭って、なんか、ちっちゃな地球って感じせん?」
「ちきゅう?」

私の言葉に、やっぱりふたりはきょとんとしている。
それから少し間をおいて、ふたりそろって「ふふふ」と笑った。

「なにがおかしいと?」
「だってれいな、ホントに子どもみたいなんだもん」
43 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:04
なんだかバカにされた気分。思わず唇がとんがるのが自分でもわかった。
そしたらさゆが、微笑を口元に浮かべたままでフォローしてきた。

「ちがうよれいな、うらやましいの。そんなふうに見えてるってことが」
「そんなふう?」
「大切なものをきちんと持ってる感じがして、いいと思うの」
「そう。濡れたり泥がついたりするのってやだけど、本当は楽しいんだってれいなは知ってる」

うーん、そう言われると悪い気はしない。
ムリして笑顔をこらえていると、さゆと絵里に両側からほっぺたをつっつかれた。
思わず吹き出してしまい、そして3人そろっての笑い声に変わる。
44 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:05
「またあんたたち!」

ドアが開く音と同時に鋭い声がした。
美貴さんが、たっぷり水を含んだ傘を立てかけながら、私たちをにらみつけている。
ブーツまでしっかり水びたしで、ゴトッって低い音をさせて転がった。

「おじゃましてまぁす」

軽やかにさゆが言う。
美貴さんは視線をそらせて乱暴に鼻で息を吐いてから、私たちを見つめ直した。

「雨でうっとうしいってのに、もっとうっとうしいのが3人もいるんだもん」
「うっとうしくないですよぉ。ねー」
「ねー」
「ねー」
「それがうっとうしいの!」
45 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:05
いつも機嫌がビミョーな美貴さんだけど、今日は雨のせいでホントに虫のいどころが悪そう。
どうしようかなと思ってさゆと絵里の様子をさぐると、ふたりはそんなのぜんぜんおかまいなしで、

「美貴さんって、雨キライですか?」
「嫌いにきまってんじゃん。何言ってんの?」
「今みんなで、雨がキライなのって老化のはじまりだって話をしてたんですよ」

ちょっとちょっと、それはさすがにやりすぎなんじゃないの?
雨が嫌いじゃないのは子どもっぽいかも、って話は確かにしていたけど、
だからって雨が嫌いなのは年寄りだ、なんて一言も言ってない。これはちょっとマズいよぅ。
でも、オロオロしてる私をほっぽって、さらにふたりは美貴さんをからかう。

「そういえば美貴さん、お化粧ちょっと濃くなりました?」
「こう湿っぽいと汗かいて崩れちゃって大変ですねえ」
「あ、ほら、おでこにシワが寄ってますよ。お化粧にヒビが入っちゃいますよ」
「怒るとよけいにシワが増えちゃいますよー」
46 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:05
右と左、ステレオで攻めてくる言葉を冷ややかにやり過ごすと、美貴さんは私の方に歩み寄る。
にらみつける目つきは健在で、それがまっすぐ私に向かってくるもんだから、
思わず「ひっ」って声がノドからもれるのが自分でもわかった。

「れいなは──」
「は、はい」
「れいなはそんなこと思ってないよねえー?」

鼻声の裏声で美貴さんが聞いてくる。がくがくと首を縦に振って、それに答える。
すっかりおびえてしまっている私をじっと見つめて、美貴さんはやっと顔をほころばせた。
さゆと絵里もそこでようやくブレーキをかけた。空気がゆっくりといつものあったかさになる。

「しかしまあずいぶんと言ってくれたもんね」
「愛情ですよ、愛情」
「ハァ? なにそれキモイ」
「もう、照れないでくださいよぅ」
「や、照れてないから」

落ち着いて考えてみるとめちゃくちゃだ。
さっきまであれだけひどいことを言っておいて、平然と「愛情だ」なんて言い切って。
美貴さんも美貴さんで、いつのまにかいつもの調子に戻ってるし。
なんか、私だけひとり、取り残されている感じがしちゃう。
47 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:06
「美貴さんは小さいころ、雨の日に庭で遊びました?」

まるで何事もなかったかのように、絵里が尋ねる。
タオルで大ざっぱに全身の水気をふき取りながら、美貴さんは答える。

「えー、あんまそういう記憶ないなあ」
「やっぱり老化が……」
「うるさいよ」

モグラたたきみたいに素早くさゆをシャットアウト。
でもさゆはにこにこして次のチャンスを待ってる感じ。そういうめげないところ、すごいって思う。

「北海道には梅雨ってないし、雪で遊んだことの方が印象強いし」
「なるほどー」

言われてみるとナットク。美貴さんは、私たちとはまたちがう記憶を持っているんだ。

想像してみる。足もとに水たまりはなくって、かわりにふんわりとした雪が積もっている。
踏んづけると「ぎゅ」て音がして、足あとのプリントがきれいに残る。
広い広い北海道は、庭っていうより大地って感じで、どこまでも白い地面が続いている。
そしてその先、うっすらと雲にまじって、山が並んでいるのがかすかに見える。
48 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:06
「──れいな、れいな?」
「ん、なに?」
「ぼーっとしちゃって。どうかしたの?」
「どうもしとらんよ」

さゆも絵里も美貴さんも、なんだか心配そうに私のことを見つめてる。
ぼんやり想像の世界にいたのを見られたのが恥ずかしくって、とっさに別の話題を口走る。

「そうそう、中庭のアジサイ。すごくきれいっちゃね。見てみてよ」

雨粒が入ってこないくらいに、窓を少しだけ開けてみせた。
3人は縦に顔を並べるとそのすきまから外をのぞきこむ。

「あれって、れいながさっき言ってたやつだよね」
「ホントだ。きれい」
「わ、かわいい青!」

よつんばいの絵里、立てひざの美貴さん、背のびするさゆ。3人それぞれ声をあげる。
その様子を後ろからながめて、私はうれしくなってきた。
人のことを子どもみたいだって言ってるけど、みんなだってそうじゃん。
49 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:07
ニヒヒってこっそり笑ったら、急に振り返ったさゆに見つかった。
横から手がのびてきて、右のほっぺたをさゆに、左のほっぺたを絵里につままれた。
そのままぐいん、って引っぱられたはずみで、声がもれた。

「にゃー」

そしたら美貴さん、

「『にゃー』じゃねーよ」

50 名前:  投稿日:2005/06/10(金) 23:07
CMYK/庭   終
51 名前: 投稿日:2005/06/10(金) 23:07
>>35
ひとりでディスプレイに向かってニンマリ、
なんてキモイことさせちゃってごめんなさゆ。
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/11(土) 03:56
ほのぼの6期、すごくいい。
53 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:19
(ナイフのような)キス
54 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:19
正直どうやって家まで帰ったのか、まったく覚えていない。
刺すような日差しに照らされた地面は不思議とふわふわしていて、何度か転びそうになった。
そのたびに呼吸をととのえてから、また歩き出す。肩で息をしている自分に気がついた。

「ごめんね、みきたん。」

なーにが「ごめん」だ、バカ。
バカ。バカ。

すれ違ったオジサンが眉毛を片っぽだけ上げて私のことを見つめていた。
ブツブツつぶやいていたのが、聞こえちゃっていたみたい。
だけど今の私には、そんなバツの悪さも気にする余裕はない。
ゆらゆらと炎天下にさらされてゆらめくアスファルトを、一歩一歩前に進んでいく。
55 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:20
部屋のドアを開けたら、熱のこもった空気が私を包み込む。マジうぜえ。
大股で横切ると、窓を開けた。ゆっくりと、乾いた空気が入り込んでくる。でも暑い。

「バカヤローっ!」

叫んで、バッグを床に投げつける。フローリングで小さくバウンドして、壁にぶつかった。
それから冷蔵庫の扉を開けると、中からお茶の入ったペットボトルを取り出した。
ごきゅ、ごきゅとノドを鳴らしてラッパ飲みすると、思いっきり強く扉を閉めた。

「ごめんね、みきたん。」

なーにが「ごめん」だ、バカ。
バカ。バカ。
56 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:20
すぐに汗が吹き出してきて、額のところにたまって、こめかみを一筋、流れていく。
ああもう、ムカつく。マジやってらんない。
倒れ込むようにして床に寝転がる。はずみで、さっき投げつけたバッグが目に入る。
中身が少しだけはみ出ちゃっていて、定期入れがあるのが見えた。
そこにはふたりで撮った写真が入っている。うわ、まいったなあ、どうしよっかなあ……。
持ってること、思い出したくなかったよ。どうにも思い出のグッズが多くて困っちゃうよ。

あーあ、このまま寝ちゃって、目が覚めたらぜんぶが元に戻ってたらいいのに。
でも、そんなことぜったいにありえない。いつだってそう。現実はいつもキビシイんだ。
幸せだと思っていても、裏切られる。楽しかった分だけ、リバウンドも大きいっていうか。
57 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:20
なんかもう、ぜんぶがムカつく。
夢中になってた自分もムカつくし、バカみたいなこの暑さもムカつくし、汗もムカつくし。

――やってらんない、もう。

カラダいっぱいにぬるい空気を吸い込んで、吐き出す。口を開けて天井を眺める。

「美貴さん、どーしたと?」
「どうもしてない」
「え、でもなんだか元気なかね」
「あったりまえじゃん」
「なんかヤなことあったん?」
「あった」
58 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:21
ホントのこと言うと最初に声がかけられたとき、かなり驚いた。
でも跳ね起きるような気力なんてゼンゼンなかったから、ふつうに答えただけのこと。

「ヤなことねえ。なんやろ……? 大切にしてたお菓子を食べられちゃったとか、そんなん?」
「ハズレ」

私が言うと、れいなは口元に人差し指を当てて、天井を見上げて考える。
それにしてもこのノラ猫は、いったいいつ、どこから入ってきたんだろう?

上半身を起こすと、そのままあぐらをかく。頬杖ついてれいなを見る。
れいなは脚をぴったり閉じたヤンキー座り(そういうのはヤンキー座りって言わないか)。
いかにも興味シンシンといった目でこっちをジロジロ。
もう本当にカンベンしてよ、今はただじっとして何もしないで過ごしていたいってのに。
59 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:21
「泣いてたの?」
「泣いてないよ」
「うそだぁ。アトついてるよ」
「……マジかよ」
「ねー、なんがあったんか、おしえてよ」
「ヤダよ」
「おしえてくれるまで、れいなここを動かんから」

ぺたりと腰を落として、れいなは体操座りになる。
そういえば誰だっけ、さゆみか。さゆみが体操座りはセクシーだって言ってたっけ。
でもれいなは全然セクシーじゃないし。……まあセクシーだからどうってこともないけど。

「ほらほら、れいなに言ってみ? れいなこう見えてたよりになるけん、言ってみ?」
「ふられた。」
60 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:21
私の言葉にれいなは目をいっぱいに開いて、「えっ、えっ」と息を呑み込んだ。
どうやら予想もしていなかった展開に、軽くパニクっているみたい。
だから追い討ちをかけるように、さらに私は続ける。

「ふられたの。大好きだった人から『もう会えない』って言われたの」
「ほぇ……」

背中をのけぞらせてそのままバッタリ仰向けに倒れて、脚をまっすぐ天井に向けて上げると、
勢いをつけてぐるっと後転して、また脚を閉じたヤンキー座りに戻った。

「だからさ、私のことほっといて」
「……うん」

ふつードラマやマンガだったら、ここでれいなが熱っぽく「何言うとると!」とかなるんだろうけど、
実際にはそんなことは全然なくって、れいなは壁際まで後退すると、そのままぺちゃんと座り込んだ。
61 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:22
部屋には床に寝て呼吸するだけの私と、壁に寄りかかって口をぱくぱくさせてるれいなのふたりっきり。
入り込んでくる風は熱を帯びてはいるんだけど、窓を開け放したのが効いて空気が循環しているから、
だんだんと快適な感じになっていく。目を閉じて、汗が退いていくのをじっと味わう。

「れいな」
「なんね、美貴さん?」
「ホントに私のことほっとくんだね」
「だって『ほっといて』って言ったもん」
「まあそうだけど」
「だれだってかまってほしくないときってあるけん、れいなはこうしてだまってそばにおるっちゃね」
「れいな、おとなじゃん」

私が言うと、れいなはにひひと笑顔になって、四つんばいになって近づいてきた。
目の前でぴたりと止まると、耳元で小さくささやいた。
62 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:22
「そんなの、はじめて言われた」
「はじめて? そう?」
「こないだもコドモだってさゆと絵里に言われたけど、オトナって言われたのはじめて」
「ふーん、そっか」

私は天井に向き直ると、深呼吸をする。
するとれいなも寄り添うように寝転がって、一緒に仰向けになる。

「オトナなれいながここにおるけん、美貴さんは安心して泣いてええよ」
「そう言われると逆に、なんだか泣きたくなくなるね」
「美貴さん、強い」
「強かないって」

そう言ってカラダをちょっと動かしたはずみで、ふと、れいなの指が私の手の甲に触れた。
でもそのまま、それだけ。そこから触れる面積が広がることもなければ、離れてしまうこともない。
私はその触れ合った一点だけに神経を集中させて、わずかなぬくもりを心地よく思った。
63 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:23
「私ね、れいなのバランス、好きだよ」
「バランス?」
「そう、人と関わるバランス。遠すぎず、近すぎずっていうかさ」
「んー、ただ嫌われないように気をつけてるだけだけど」
「嫌われないために、距離をおいてるとか?」

思い切って訊いてみた。だってれいなは、たまにふと淋しそうな顔をすることがあるから。
絵里やさゆみといるとき、一歩退いてふたりのやりとりを眺めていることがあるから。

「距離をおいてるってゆーか、気をつけてる。ヘンなこと言って困らせたりしないようにって」
「まあ、あのふたりはね。よくヘンなこと言うし」
「さゆも絵里もそういうところ楽しくって好きやけどね」
64 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:23
触れた指が離れる。私たちはまた、ふたつのカラダに戻る。
れいなの顔から笑みが消えた。ほとんど睨みつけるような表情で、天井に視線をおいたまま、

「おせっかいって、れいなキライ。そってしておいてほしいときは、ほうっておいてほしい」

力強く言った。その声は床に響いて、私のお腹にまで振動が伝わった。

「何もしてほしくないのに、ムリヤリかまって、いろいろ言って。そんなん、自己満足しとるだけやん」
「そうだね。自分が力になりたいってのはわかるけど、でもそれって結局、ただのわがままだよね」
「だかられいなは、なんもせんとそばにおるっちゃね。そばにいるってわかってもらえりゃ、それでよか」
「うん」

私はもう一度目を閉じる。
心なしか、部屋に入ってくる風がひんやりとしている。れいなの呼吸が聞こえる。
まるでどこかの高原で、一面の緑に向き合っているみたい。その中に一輪だけ、花が咲いている。
65 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:23
「れいなは優しいね」
「えへへ、そっかなあ」
「私ね、思うんだ。人を傷つけるのは、結局、善意なんだって」
「うん……?」
「悪意が人を傷つけることってほとんどなくて、悪気はないのに傷つけちゃうことの方が、ずっと多いと思う」

いきなりの私のセリフに面食らってか、れいなはじっと黙って様子をうかがっている。
私はそんなのお構いなしに続ける。今はこうして、れいなに甘えたいんだ。

「れいなはそうして何もしないでそばにいることで、傷つけないように気をつけてる。
本当に優しいから、心配しても、きっと元気が戻ってくるって信じて、じっと待つことができるんだ。
私うれしいな、れいながここにいてくれて。今このときに、ここにいてくれて」

一気に言った。言い終わったら、なんだか胸がスースーした。風通しがよくなった、って感じ。
れいなは何度も小さくうなずいて、私の言葉を味わっているようだった。その仕草が、いとおしかった。
66 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:24
「ずっと好きだったんだよ……。そしたらいきなり、『好きな相手がいるの』って。もう目の前真っ暗になった。
今までずっと仲良くしてきてさ。『みきたんは恋人みたいな存在』とか言ってくれてたのにさ。
あんときの言葉は嘘だったの? あの時間はなんだったの? 大切に思ってたのは美貴の方だけだったの?」

自分でも止められなくなって、まくし立てるように言った。涙もこぼれ出した。鼻水も出てきた。
メイクも崩れてずいぶんみっともなくなってるだろうって冷静に考えている自分もいた。
でも構わず、私はれいなに甘えたかった。れいなの腕をつかむと、そのままの体勢で呼吸をととのえた。

頬に温度を感じたのは、そうしてじっとしている最中だった。湿った感触は、私の涙のせいじゃなかった。
視線を移したら、目をゆっくりと開けるれいながいた。いたずらっぽく自分の唇に人差し指を触れ、微笑んだ。

──本当に人を傷つけるのは、悪意じゃなくて善意。
67 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:24
れいなのくれたキスは、唇が私の頬を離れてもまだうっすらと貼りついて、感触をぼんやりと残している。
純粋に、元気づけるつもりでれいなは私にキスをしてきたのだろう。甘えてきたから、それを受け止めたまでのこと。
前言撤回。れいなはまだまだコドモ。ちょっとオトナの気配を見せるようになってきたコドモなんだ。

ああもうなんだか、いろんなことを考えすぎて、アタマの中がごちゃごちゃしてきた。
もう一度アタマを空っぽにして、天井に向き直って、ただ呼吸をする。
68 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:24
そのとき、「メールだよぉ〜」と間延びした声が響いた。れいなのケータイだ。
すべてをぶち壊すようなその声に、かえって救われた気がした。なんかもう、どうでもよくなってしまったのだ。

「美貴さん、さゆと絵里がこれから来るって」

内容を確認したれいなが言った。私は黙ってうなずいた。
頬の感触はまだ残っている。そこだけバンソーコーを貼られたように、ごわごわしているように思える。
半身を起こして、ぷるぷると頭を振った。でもやっぱり、ごわごわした痺れは消えなかった。
69 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:25
「どぉもぉ〜」
「お待たせぇ〜」

ふたりでぼんやりしていたら、絵里とさゆみが部屋に入ってきた。れいなは跳ね起きて、ふたりに抱きつく。
「れいなったら、暑いよう!」なんて口では言ってるけど、ふたりとも笑顔。
それから寝転がっている私に気づいて、3人で静かに寄ってきた。

「美貴さん、お行儀悪いですよ」
「寝てないで、キャメイと一緒に踊りましょうよぉ〜」
「まってまってまって! 美貴さん、そのままにしといてやって」

慌ててれいながふたりを止める。それがすごくいじらしくって、私は起き上がると、れいなの肩に手を置いた。

「いいから」
「美貴さん……?」
70 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:25
れいなは驚いていたけど、すぐに口元を緩めて、うなずいた。
その表情を見てたら、私をふったあの人の善意ってなんだったんだろう、という疑問がふと頭をよぎった。
でもそんなの、もうどうでもいいと思った。そこにはきっと善意があった、それだけでいい。

「み〜きさぁ〜ん」

甘ったるい声に振り返ると、3人が笑っていた。
こいつらが勝手に忍び込んでくる今の生活も、実はそんなに悪いもんじゃないかな、と少しだけ思った。
71 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:25
CMYK/(ナイフのような)キス   終
72 名前:  投稿日:2005/07/17(日) 00:26
CMYK、おしまい。
73 名前: 投稿日:2005/07/17(日) 00:26
>>52
すごくありがとうね。わざわざレスくれて。
74 名前:最後に自己紹介 投稿日:2005/07/17(日) 00:26
名前:凸(「逆さブリーフ」と読む。ちなみに凹は「逆さトランクス」と読もう!)
今までに書いたの:パンツ刑事、エーテル
75 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/17(日) 15:40
この作品に出会えてよかったです。ありがとう。
76 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/17(日) 23:34
パンツ刑事!!
……はともかくこの雰囲気が凄い好きでした
6期サイコーと叫びたいです
77 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/28(木) 14:25
俺もこの雰囲気が凄く好きでした。
良い作品をありがとう、お疲れさまでした。
78 名前:最後に自己紹介 投稿日:2005/08/02(火) 23:11
>>75
読んでもらえてよかったです。ありがとう。
>>76
ともかくとか言うなー
>>77
なんだよ、みんな雰囲気だけかよ!
…とか言ってみたりして。楽しんでもらえてよかった。

スレタイの由来が知りたいという人がいたようですね。ググりやがれ。
…というのも不親切なので、ヒント。「地図」のペンの色。「K」がポイントだぜ。

まーあとは、各話のタイトルを英語にして並べてみるとちょっと面白いかもしんないです。

あと、すごくモテたいです。
79 名前: 投稿日:2005/09/28(水) 00:27
まだレスは歓迎してますよ! 倉庫に行って後悔しないうちにつけよう!
80 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/14(月) 10:08
面白かったです。
続きが見たいです。
81 名前: 投稿日:2005/11/15(火) 18:37
ないよ。
82 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/16(水) 22:48
できればの話ですが…
83 名前: 投稿日:2005/11/17(木) 22:21
だってもうネタないもん。というわけで次はあなたが続きを書いてください。
ハンドルネーム「凹」の使用を許可します。
84 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/17(木) 23:30
自分文才とか無いんでいいです。無理なお願いしてすいませんでしたm(_ _)m
85 名前: 投稿日:2005/11/19(土) 10:09
文才なんて自分もないし。書こうという意欲があればいいのだ。
そういうわけで、書け。
86 名前: 投稿日:2005/11/21(月) 22:03
書けってば
87 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/22(火) 00:21
えっ!だったらわざわざスレ立てないで、どこぞの短編スレにでもいって
書けばよかったのに。
88 名前: 投稿日:2005/11/23(水) 21:45
スレ立てないと目立たないでしょ。読まれなきゃ意味ないの。
89 名前: 投稿日:2005/11/30(水) 19:20
案内板でいろいろ言ってる人たちは、
こんなスレをチェックしてる暇があれば自スレ更新すりゃあいいのに。



……ぼくはしないけどね。
90 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/01(木) 01:17
ochi
91 名前: 投稿日:2005/12/01(木) 18:33
落としてへんやん
92 名前: 投稿日:2005/12/01(木) 20:46


        初詣
93 名前:  投稿日:2005/12/01(木) 20:46

とにかくすごい人だかりだった
駅からすごい人、人、人・・・

まぁ、毎年のことだしね

「すんごい人だね」
思わず立ち止まって口に出すごっちん
そっか、こっちの初詣に来んの初めてなんだっけ?
ってか・・・
「ごっちん!立ち止まったらはぐれるー」
もうすでにちょっと流されてるし

「んぁー、ちょ、ちょい待って」
慌てて寄ってくる

94 名前:  投稿日:2005/12/01(木) 20:47

この人混みじゃあ一回はぐれたらなかなか会えない
なかなか前に進めないごっちんの腕を掴まえる


ぐいぃ

引き寄せると、俯く迷子未遂者

な、なんかマズかった?
と、とにかく!
「ほら、行くよ」
「ん」

ぎゅう、と案外強く腕を握りなおされる


95 名前:  投稿日:2005/12/01(木) 20:47

96 名前:  投稿日:2005/12/01(木) 20:47


ちょっと逸れて境内の落ち着いたトコロへ出る

「ひゃー、危なかった」
「よしこゴーインだ」
へ?
しょーがないでしょー、はぐれるわけにはいかないっての

「ごとーちょっとドキドキした」

あはっ、なんて笑いかけてくる
・・・・それは反則ですね、ごとーさん


97 名前:  投稿日:2005/12/01(木) 20:48






お賽銭を投げるためにまた人混みへと向かう

自分からは繋いでこない手を、そっと握り締めて

あー、もう、なんでウチこんなどきどきしてんだよぉ
つか手の平やわっこー・・・・・

「んはは、よしこドキドキしてる?」
「っば!な、なわけ・・・」
「ないの?」
「・・・・・あるけど」
「あはっ、かーわいー」

こっちのセリフだっつの・・・・

98 名前:  投稿日:2005/12/01(木) 20:48

付き合い始めて半年とちょっと
まだまだお互い知らないトコも多くて、
て言っても友達としては付き合い長いからけっこう知ってるんだけどさ

でも、やっぱ手とか繋ぐとドキッとする

「ご、ごっちんだってどきどきしてんしょ?」
苦し紛れにそう言うと
びくっと固まってしまうごっちん
あぁ、もうなんでそんないちいちかわいいかな


99 名前:  投稿日:2005/12/01(木) 20:48





とにかく進んで投げ入れれる距離まで到着
恐らく確認は出来ないであろうけど



ちゃりん、ちゃりん

五円玉を投げ込む

「・・・・・・・ょぅに」

念入りにお願いしてるごっちんに見入ってしまう

キレーな横顔だよな
すげぇ整ってる、うん
そっか、こんなキレーなこがウチの彼女なんだ・・・

100 名前:  投稿日:2005/12/01(木) 20:48

「よしこ?」
「ッは、はひ?」
「どったのー?」
「や、なんでも」
「あはっ、変なよしこー。行こっか」

それでも手を繋ぎにいくのはウチ

温かい手、同時に心もやんわりとなる



「ね、ごっちん。おみくじ引きに行かね?」
「えー、おみくじぃ?」

なんとなく離れてしまった手
さびーなぁ

101 名前:  投稿日:2005/12/01(木) 20:49

「なーにさ、ヤなの?」
「だって去年凶だったし」
「去年の話っしょー。それに・・・」
「それに?」
「ウチがちゃんとお願いしたから」
「へ?」
「ごっちんが今年一年幸せに暮らせますように、ってさ。
だから凶引いても大凶引いてもだいじょぶ!
ってかウチがついてんだから幸せじゃないわけないでしょーが」

一気に言って足りなくなった酸素を足すためにすぅと吸い込む
冬の凍える空気が肺を満たす

うん、ヘタレ呼ばわりされるウチにすりゃじょーできじゃん

102 名前:  投稿日:2005/12/01(木) 20:49







ぎゅう!


「わわっ!」
「よしこ大好き!よしっ!おみくじ引きに行こう!」

そー言って手を繋いできたごっちん
その横顔は真っ赤で
たぶんウチの顔も真っ赤で

103 名前:  投稿日:2005/12/01(木) 20:50


あー、ウチ頑張っただけのことはあったな、と一人納得


ウチにとっても今年はいい年になりそーだよ

今年もよろしくね、ごっちん




end
104 名前: 投稿日:2005/12/01(木) 20:50
季節フライング
105 名前: 投稿日:2005/12/01(木) 21:10
ナイスよしごま。
106 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/01(木) 21:34
二人とも初々しいですね。
107 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:56
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
108 名前: 投稿日:2005/12/12(月) 20:37
>>107

やだ。
109 名前: 投稿日:2005/12/12(月) 22:07
>>108
まぁまぁ、落ち着いて
110 名前: 投稿日:2005/12/16(金) 00:59
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111 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/17(土) 01:13
あらら・・・手間のかかることを。おつかれさま。
112 名前: 投稿日:2006/02/15(水) 23:34
あれ? 顎さん倉庫に送ってくんなかったの?
113 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/16(木) 01:42
うぜーな。だったら自分でやれよ。
114 名前: 投稿日:2006/02/16(木) 18:44
うぜーんだったら見に来んなや。

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