本当の気持ち3
- 1 名前:ワクワク 投稿日:2005/05/03(火) 22:26
- 第3段!!いったいいつまで駄文を書くんだろう(笑)ここでは引き続き藤高でいきます!
- 2 名前:星になる 投稿日:2005/05/03(火) 22:53
-
一方、日本では・・・
「今日から新学期や!吉澤たちが抜けて、新入生もぎょーさん入ってきた。ハロ高校バスケ部も新体制や。」
「はいっ!!」
顧問の中澤に元気よい返事で応える生徒たち。
「そこで、今年からはキャプテン、副キャプテンとともに部長、副部長という立場を作ろうと思う。」
「ぶ、部長?」
「そーや。今まではキャプテンが兼任しとったんやけどな、今年は人数多くなったからな。部長と副部長も作るんや。」
中澤の代わりに隣りにいた稲葉が生徒たちに説明する。
「っちゅーこっちゃ。わかったか〜?」
中澤は笑顔で生徒たちに問いかける。
「はい!!!!」
生徒たちも稲葉の説明に納得し、頷きながら大きな返事をした。
- 3 名前:星になる 投稿日:2005/05/03(火) 23:08
-
「まずはキャプテン、3年松浦。」
「はいっ。」
松浦は中澤の呼名に一瞬、戸惑った表情を見せたものの、すぐにはっきりとした返事をした。
「あんたはな、正直言ってキャプテン向きやなかった。そやけど、色々あった中で一番キャプテンという立場に近づいたのも松浦、あんたやった。これからはキャプテンとしてみんなを引っ張ってってくれ。」
「わかりました!」
松浦は笑顔で応えた。
「次!副キャプテン、3年新垣。」
「は、はははい!」
こちらは松浦と逆に、返事も表情も驚きに満ちていた。
「新垣、あんたはこれからチームを引っ張っるガードや。松浦が困ったときに助けてやる、それが副キャプテン。新垣はいつでも影で支えとった。それを見込んで副キャプテンに選んだ。肩に力入れすぎんと、いつも新垣でみんなを支えてやってや?」
「(いつものあたしで・・・)はい!!」
新垣はきりっとした表情で返事をした。
- 4 名前:星になる 投稿日:2005/05/03(火) 23:18
-
ザワザワ。
ここで生徒たちがざわつき始めた。
無理もない。次からは今まで存在しなかった役を任せられるのだから。
「次は部長や。この役はな、キャプテンと違って主に学校とバスケ部のパイプ役や。この重要な役を・・・
高橋!!あんたに任せる。」
「あ、あああああーしですか!?」
高橋は大きな目をさらに大きくして驚いた。
「そーや。高橋、あんた、自分ではわかってへんかもしれへんけどな、しっかりしてるんや。まあ、たまに失敗することもあるんやけどな。それでもあんたは諦めんとひたすら努力する。今回、そこを買ってあんたを部長に任命する。」
あ、あーしの努力・・・
「わかったか?」
「あーし・・・がんばります!!!」
「おう!頼りにしてるで?」
「はいっ!」
高橋は大きく頷いた。
- 5 名前:星になる 投稿日:2005/05/03(火) 23:30
-
「よっしゃ。そしたら、最後!!副部長、3年紺野。」
「はい。」
紺野は少し驚いた顔をしたが、冷静な返事を返した。
「あんたは今年から生徒会長として大変やろうけど、高橋を助けてやれんのは紺野、あんたしかおらんのや。どや、やってくれるか?」
「もちろんです。私でよければいつでも力になります!」
「うん、ありがとな。」
紺野の力強い言葉に、中澤と稲葉は目を合わせて笑った。
「以上が今年1年間、ハロ高バスケ部を支える役職や!他のやつらも、みんな力を合わせてやってくでぇ?」
「はいっっ!!!」
ハロ高バスケ部の明るい声が体育館中に響き渡った。
- 6 名前:星になる 投稿日:2005/05/03(火) 23:45
-
「愛ちゃん、愛ちゃん!!」
「なんやぁ〜?あさ美ちゃん。」
練習後、紺野は備品整理をしていた高橋にある雑誌を持って、走り寄った。
「はあはあ・・・」
「はははっ。あさ美ちゃん、そんな疲れるほど全力で走ってこんでも、あーしは逃げんよ?」
高橋は息の切れている紺野に向かって笑顔で言った。
「これ、これ!!」
紺野が雑誌のあるページを開いて、乱暴に指差す。
「もう、なんやの・・・あっ。」
呆れながら紺野の持っている雑誌を見た瞬間、高橋は小さく声を上げた。
「愛ちゃん、知ってた?」
「ううん、全然。」
ふたりが見ているもの。
それは・・・
『藤本美貴、記録への挑戦!!!』
という美貴に関しての大きく書かれた記事だった。
- 7 名前:星になる 投稿日:2005/05/03(火) 23:59
-
「そっか。美貴ちゃん、頑張ってるんやね。」
高橋はダンクシュートを決めている美貴の写真を見ながら、微笑んでいた。
「頑張ってるんやねって、愛ちゃんは美貴ちゃんと連絡とってないの?」
「うん。ほら、あーしが連絡したら美貴ちゃんはバスケに集中できんから。」
あーし愛されてるなぁなんてふざけていっている高橋を紺野は心配そうに見つめた。
「愛ちゃん、寂しいんじゃない?」
高橋は笑うのをやめない。
「あさ美ちゃん、何言ってるんやぁ?あーし、こんなに元気やんかぁ!!」
紺野は高橋を見て、ため息をつく。
「はぁ・・・、愛ちゃんさ、無理しすぎだよ。」
「そんなことないやざ!」
「そんなことあるよ!」
ふたりの違う声がどこからともなく聞こえてきた。
「えっ?」
「愛ちゃんさ、もうちょっと素直になんなよ。」
「ガキさん・・・。」
どこからともなく聞こえてきた声、それは彼女たちの親友である、新垣里沙の声だった。
- 8 名前:星になる 投稿日:2005/05/04(水) 00:10
-
「愛ちゃんはいっつもそーやって我慢するんだよね。」
「我慢なんかしてないもん!!」
「してるよ?愛ちゃん。」
新垣に続き、紺野も言う。
「愛ちゃんは気づいてないかもしれないけどね、愛ちゃん、たまに遠い目してるんだよ?」
「してない。」
「してるよ。」
「してないってば!もう、あーしのことはほっといてよ!!」
高橋は走って行ってしまった。
「・・・はぁ、いつになっても頑固だねぇ。」
新垣がため息をつきながら、バラバラになってしまった備品を拾う。
「しょうがないよ。愛ちゃんが美貴ちゃんに心配かけたくないって言うのもわかる気がするし。」
新垣を見た紺野も一緒に備品を拾う。
「うーん、まあ、そうだけどさ。なんとかできないかなぁ〜。」
「私にいい考えがるの。」
ガシャン!
「ほ、本当に!?」
新垣は驚いて、拾い集めた備品を再びばらまいた。
「あ〜、もう。バラバラになっちゃった。」
「ご、ごめん!!」
新垣が慌てて備品を拾い集める。
- 9 名前:星になる 投稿日:2005/05/04(水) 00:24
-
「で、あさ美ちゃん。今の本当??」
「うん。あ、でもいい考えというほどじゃないんだけどね。」
紺野が笑いながら新垣に応える。
「あのね。」
「うんうん!」
「頼むの。」
「頼むって・・・美貴ちゃんに?」
「ううん。中澤先生に!」
「中澤先生???」
新垣は紺野の考えがわからず、首をかしげる。
「あのね、中澤先生に頼んでエンジェルスを日本に呼ぶの。」
「え・・・えぇぇぇ!?」
「そしたらふたりは会えるでしょ?」
紺野は自慢げな顔をして新垣を見る。
「あ、あさ美ちゃん。いくらなんでもエンジェルスを日本に呼ぶのは無理だと思うけど・・・」
「大丈夫。私の考えによれば完璧です!!」
「そ、そうだね。」
新垣は紺野の言葉になぜか納得をした。
いや、この場合、納得せざるおえなかった。
今、新垣は他の案を思い浮かばない。ということは、紺野の案に頼るしかなかったのだ。
- 10 名前:星になる 投稿日:2005/05/04(水) 00:25
-
***
- 11 名前:星になる 投稿日:2005/05/04(水) 00:36
-
「おい、そこはシュートだろ!!」
「はい!」
ある大学では、バスケに励んでいる少女たちがいた。
「そこっ!だらだらボール持たない!」
「はい!!」
一方、その横で慌ただしく動くマネージャーたち。
「ちょっと、これどこだっけ?」
「それはあっちじゃん??」
「あぁ、そうだったべさ!!」
マネージャーのひとりは置き場を思い出し、そこへと走る。
「あ、やばっ!もうすぐ休憩じゃんか!!」
もうひとりのマネージャーは水汲みへと走った。
ふたりが戻ってくると・・・
「休憩!!!」
「はい!」
ジャストなタイミングで休憩の声がかかった。
「ぷはぁ〜。」
「はい、タオル!」
「あっ、ありがとうございます!!」
ひとりの選手にマネージャーがタオルを渡すと、その選手は立ち上がって申し訳なさそうにお辞儀をした。
- 12 名前:星になる 投稿日:2005/05/04(水) 00:50
-
「おいおい、わざわざお辞儀なんていいよ。おいら、マネージャーなんだしさっ!」
先ほど水を汲みに行ったマネージャーが言う。
「あっ、すいません。高校の癖が抜けなくて。」
「相変わらず柴田は礼儀正しいな。それに比べて・・・」
マネージャーは他の1年生4人を見る。
「なっち〜。」
「うわ!ちょ、ちょっとごっちん!!」
「矢口さ〜ん、水まだっすか?」
「矢口さん、私かわいいかなぁ?」
ひとりはもうひとりのマネージャーに抱きつき、一番大きな選手は自分に向かって水を要求。
3人目のスタイルのいい選手はしきりに鏡を見ている。
「お前ら、柴田を見習え!!!」
小さなマネージャー、矢口真里は3人に向かって叫ぶ。
「やーぐーち!助けてぇ〜!!」
もうひとりのマネージャー、安倍なつみは抱きついている後輩をなんとか剥がそうとしているが、放してもらえないので矢口に助けを求めていた。
- 13 名前:星になる 投稿日:2005/05/04(水) 01:00
-
「ごっつぁん!!そんなになっちに抱きいてると嫌われるよ?」
「んあ!それはやだ!」
矢口の一言で安倍を放したのは後藤真希。この大学の1年だ。
「よっすぃ、水だよな?ほらっ!!」
矢口は大きな選手、吉澤ひとみに向かって水が満タンに入ったボトルを投げた。
「うわっ!いだっ!!」
矢口の投げたボトルが吉澤の顔面にヒット。
「石川!あんたは鏡見過ぎ!!」
「えぇ〜。だって、やっぱりアイドルはいつも可愛くないと。ねっ?」
「ねっ?じゃない!!だいたいあんたはアイドルじゃないだろ!」
「もう、矢口さんったら!!」
「キモッ。」
この大学はバスケで有名な大学。
そんな大学に、ハロ高出身のマネージャーふたり、そして今年から新しく入ったルーキー4人が通っている。
- 14 名前:星になる 投稿日:2005/05/04(水) 01:11
-
このルーキー4人はちょっと・・・とても個性的なのだ。
「休憩終わり!!」
「はい!」
こんな4人でも、バスケになると顔が一転する。
「柴田!!」
「はい。」
柴田がパスを受け取る。この柴田は、高校バスケ界きっての切れ者で、ディフェンスナンバー1だった。
「梨華ちゃん!」
「うんっ。」
柴田からパスの先には石川。
石川は、バスケになるととにかくがむしゃらに動く。そして誰より努力を惜しまない、熱い少女。
「ごっちん。」
「んあ!」
変な声をあげた後藤はとにかくセンスがいい。
パス、ドリブル、シュート。リバウンド以外はなんでもこなす。
「よしこ〜。」
「おう!!」
最後にボールが渡った吉澤。
この選手はハロ高のキャプテン、エースを務めた。まさにナンバー1センターの称号がピッタリだ。
この4人がこの大学のルーキーだ。
そして、このルーキーたちが来たことによって、大学は活気づいていた。
- 15 名前:星になる 投稿日:2005/05/04(水) 01:12
-
更新終了
- 16 名前:ワクワク 投稿日:2005/05/04(水) 01:21
-
名無飼育さま>期待ですか?期待されたからにはがんばらないと(笑)
星龍さま>マウンドに引き続き感想ありがとうございます!これから、両方がんばりますよ。
赤嶺あゆみさま>面白いですか!?そう言っていただけてうれしいです!!
マカロニさま>ほんとマイペースにしちゃってます(苦笑)だれが来るかは・・・もうちょい後で(笑)
七誌さま>ミキティはすごキャラですからね(笑)新人はひっぱりまーす!!
- 17 名前:みきみき 投稿日:2005/05/04(水) 11:12
- ぉ久しぶりです☆☆覚えてますか?
てかもぅ完結したと思ってたケドまた話続いてたんですね!!
作者さんゎセンスいいですね♪面白い!!
更新待ってるYO〜☆★
- 18 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 14:20
-
「ん〜、やっぱ電話・・・しようかな・・・」
美貴はかれこれ1時間ひとり電話とにらめっこをしていた。
電話に手をかける。
「いや、でも美貴のキャラじゃないよね。」
再び電話を置く。
もう1時間もこんなことを繰り返しているのだ。
「いや、やっぱ・・・」
ピリリリリッ♪
美貴が電話をとろうと思うと同時にけたたましく着信音が鳴った。
「うわっ!!」
美貴はいきなりのことで後ろにのけぞる。
も、もしかして・・・
「はいっ!!もしもし!」
美貴は電話の主が愛しの人かもしれないという期待で、勢いよく出た。
『あ、もしもし。裕子やけど・・・』
「なんだ、裕ちゃんか。」
電話から聞こえてきた声は期待とは違う人だったので、思わずため息をつく美貴。
『なんだとわなんやねん!!』
「あぁ、ごめんごめん。で、どーしたの?なんかあった?」
- 19 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 14:41
-
『美貴、あんた、がんばっとるやないか。』
「あ、うん。」
『無理したらあかんで?あんたはすぐ無理するんやから。』
「わかってるよ。裕ちゃん、美貴になんか言いたいことがあるんじゃない?」
『えっ?』
またも、美貴がため息をつく。今度は優しさのこもった、ため息だ。
「あのさ、美貴、裕子ちゃんの親戚だよ?なんか言いたいんだろうなくらいはわかるって。」
『そーか。そやったな。』
電話の向こうで裕子がはははっと笑う。
『あんな・・・』
「うん。」
- 20 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 14:43
-
***
- 21 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 15:01
-
「よっし、今日もがんばるわよー!!」
美貴の隣りで歩くエンジェルスキャプテンのジョアンが気合いを入れる。
「道で騒がないでよ。美貴が恥ずかしいんだからさ。」
「いいじゃない。たまには。」
試合会場へと向かうふたり。
「そうそう、今日から新人も登録したから試合出られるみたいよ。」
「あ、そっか。日本から新人来てるんだったね。」
「そうよ!昨日話したじゃない。」
「そうだったっけ?」
「もー!!ミキ、あんたちゃんと人の話聞きなさいよ!」
「ごめんごめん。あ、ほら、記者たちがいるから。」
美貴は手をヒラヒラしながら、ジョアンの説教を逃れる。
「もう・・・」
ジョアンは一足先を行く美貴の後ろ姿見つめながら、小さく息をはいた。そして、美貴に追いつき、ふたり一緒に記者たちの質問に答えた。
- 22 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 15:13
-
「今日の相手は、ファルコンズだ!一応、俺たちのほうが上だが、油断は禁物。あっちには、素晴らしいセンタープレイヤーがいる。ゴール下要注意だ!」
「オーケー!!」
「よし、それじゃあ今日のスターター発表するぞ。」
監督のジミーがそう言うと盛り上がっていた選手たちが一斉に静かになった。
「センター、マリア。」
「おう。」
「パワーフォワード、サリー。」
「イェス!」
「スモールフォワード、ミキ。」
「うっす。」
「ガード、ジョアン。」
「はい。」
いつものメンバーが次々と読み上げられた。
そして、最後のシューティングガードの名前が呼ばれる。
「シューティングガード、サヤカ。以上だ!」
- 23 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 15:29
-
ザワザワ。
エンジェルス控え室全体がざわつき始める。
そんな中、美貴はひとり首をかしげていた。
「サヤカ??」
今までエンジェルスになかった名前を美貴はつぶやく。
そんな美貴の肩を叩くひとりの選手。
美貴は後ろを振り向く。
「あ・・・」
「よっ!サヤカで〜す。」
サヤカと名乗った選手が笑顔になる。
「・・・えぇぇぇぇ!?な、ななななんで?」
美貴はその選手の顔を指差しながら、弾かれたように壁に引っ付く。
「おいおい、ビックリしすぎだっての。」
サヤカという選手が美貴の驚きように腹を抱えて笑う。
「だだだだだだって!なんで市井さんが・・・」
「いちーさんは昨日から新人でエンジェルスの一員になったわけよ。」
そう、美貴の目の前にいるエンジェルスの新人はハロ高出身で昨年まで日本のプロチームで活躍していた市井紗耶香だったのだ。
- 24 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 16:01
-
「ってなわけで、よろしくお願いしますよ〜。藤本美貴選手!」
市井がポンポンと美貴の肩を軽く叩く。
「は、はあ・・・」
美貴はあ然としながら市井に返事をした。
「サヤカ、ミキ!!そろそろ行くわよー!!」
ふたりのやり取りを微笑みながら見ていたジョアンが声をかける。
「はい!ほら、藤本行こうぜ?」
市井が美貴に手を差し出す。
「はいっ!!」
美貴は差し出された手につかまり、立ち上がると笑顔を見せ、走り出した。
「市井さん。」
「ん?」
「これから、またよろしくお願いしますね?」
「ん〜どしよっかなぁ〜。」
「なんですかそれ。」
「いや、まあこっちこそってことで!」
ふたりは走りながら仲間の待つ、体育館へと向かった。
- 25 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 16:14
-
『さあ、今日も始まります!!エンジェルスの舞台が。相手は強力なセンター、ローサ選手率いるファルコンズです。この試合が終わると2週間、休みとなるのである意味どちらのチームにも重要な試合となるでしょう。』
「いいか、さっきも言ったが、センターには気をつけろ。あとはサヤカ。」
「はい。」
「お前は初めての試合で緊張するかもしれないが・・・」
「監督。」
「なんだ?ミキ。」
監督と市井の会話に突然、美貴が入った。
「市井さんはそんなたまじゃないっすよ。」
「でもな、こっちに来てから初試合なんだぞ?失敗するかも・・・」
「市井さんが失敗しても美貴がその分カバーするから平気ですって。」
「そーか、じゃあサヤカもミキも頼んだぞ?」
「はい!」
「うっす。」
監督はふたりの肩に手を置き、言った。
- 26 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 16:28
-
「みんな、準備はオーケー?」
「おう!!」
円陣になったところで、ジョアンの呼びかけにエンジェルスメンバーが大きな返事で応える。
「それじゃあ・・・」
ジョアンが深く息を吸う。
「レッツゴー?」
「エンジェルス!!!」
かけ声が終わると同時にスターターたちはコートへと駆け出す。
「サヤカ。」
「はい?」
美貴たちがコートへ向かう中、ジョアンが市井に駆け寄った。
「あたしはあなたのプレーを見たことがないわ。」
「・・・そうですね。」
「でもね、あたしは信じてるから。」
「へ?」
ジョアンの思いもよらぬ言葉に市井は目を丸くした。
「ミキのチームメイトだったサヤカを、エンジェルスに入ったサヤカを信じる。」
「ジョアン・・・」
「だから、あなたはいつも通りやればいいのよ。あたしがあなたにパスを出すから!ねっ?」
「はい!パス待ってますよ。」
市井がコートに入る。
ジョアンも新人のあとを追ってコートに入った。
- 27 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 16:59
-
ピピーッ!!
ダンッ。
試合が始まった。
ジャンプボールはマリア対ローサ。
勝ったのは・・・
「くそっ。」
ファルコンズの誇るセンター、ローサだった。
ボールはファルコンズのガードの元へとまっしぐら。
もはやファルコンズスタートだと誰もが思った。
パシッ。
「ナーイス。」
「な、なに!?」
ボールを手に取ったのは、エンジェルスが誇るエース、美貴だった。
「ミキ、そのまま速攻!!」
「オッケー。」
ジョアンが美貴に指示を出し、美貴が応えるように自分でドリブルをしてゴールへ向かう。
ダムダム。
ダダダダダダ!
美貴を見て、エンジェルス、ファルコンズ両チームともゴールへ走る。
「速く!!ディフェンス入って!」
いち早くゴール下でディフェンスについたローサが味方に叫ぶ。
- 28 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 17:09
-
キュキュ。
美貴がゴールに向かっている間に、次々とファルコンズがディフェンスに戻った。
「よしっ!どっからでもくればいいわ!」
味方が3人戻ったのを見ると、ローサは雄叫びをあげた。
テンテンテン。
ダンッ!
美貴はゴール下に敵が3人いるにもかかわらず、飛び上がった。
「ばかね。いくらミキでも私たちが3人いる限りダンクは無理よ!」
ローサは美貴に合わせて飛び上がり、壁を作った。ボールごと美貴を弾き飛ばすつもりだ。
「にししし!」
美貴はピンチにもかかわらず、笑った。
「ふたりとも、左右もあるから気をつけて!」
「わかってる。」
「オッケー。」
ファルコンズの壁3人は連携の確認をする。
「さあ、これでもうあなたの勝ちはないわよ?」
ローサが勝ち誇ったかのように言う。
- 29 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 17:20
-
「だーれが負けるって?」
クルッ。
「な!?」
美貴が空中で半回転した。
シュ。
バシッ!
ボールはある影へと渡る。
「デビュー戦、第一号。」
美貴が言うと同時にボールはキレイな弧を描きながらゴールへ。
シュパン!
デンデンデン・・・
「市井さん、ナイススリー。」
「藤本こそ!ナイスパス。」
バシン。
ふたりはハイタッチを交わす。
「懐かしいな。」
「ですね。」
お互いに笑顔を見せる。
「サヤカーーー!!ナイッシュ。」
「はい!」
ジョアンが市井に笑顔で近づく。
「ちょい待ち。ジョアン、美貴は?」
「今のはサヤカのシュートでしょ。」
「でもパスしたのは美貴。」
「そんなの関係ないわよ。サヤカ〜、よくやったわ!」
「おっす。」
ジョアンと市井は握手を交わす。
- 30 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 17:32
-
「ちぇっ。なんだよ・・・」
美貴はひとりいじけながらもふたりを笑顔で見つめる。
ウワァァァーーー!!
「すげー!すげージャパニーズが来たぞ!」
「ミキと連携ピッタリだよな!」
「ミキもいいけど、あの新人もなかなか面白いな〜。」
こうしてエンジェルス、市井紗耶香の名は瞬く間に広がった。
ファルコンズスタート。
ダムダム。
「一本!!」
「オーケー!」
ファルコンズのガードがボールをキープする。
「さてと、私も負けてられないわね。」
ジョアンがマークにつく。
ダムダム!
「きたわね。エンジェルスガード、ジョアン。」
「・・・。」
「あら、無言?」
ジョアンは何もしゃべらない。
テンテン。
ファルコンズのガードはジョアンをにらみながら、ドリブルをする。
「こっち!」
その時、ファルコンズのひとりがボールを呼んだ。
- 31 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 17:39
-
「オッケ!!」
ヒュ。
ガードがパスを出す。
バシッ!!
「まだまだ甘いわ。」
「あっ・・・」
ジョアンが左手を出してパスを遮断する。
ダムダム。
「こっちの攻撃よ!みんな上がって。」
「イェス。」
ジョアンの声に、エンジェルスがゴールへと走る。
「みんな、ディフェンスよ!」
一方、ファルコンズもディフェンスでゴールへと戻った。
ダンダン。
「ここ一本、じっくり行くわよー!!」
ジョアンがボールをキープしなが味方に声をかける。
そこへ・・・
バッ。
「今度はさせないわ。」
低い姿勢で相手のガードが立ちはだかった。
「そーこなくっちゃ。」
ジョアンはつぶやくと、チラリと白い歯を見せた。
キュキュ。
- 32 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 17:50
-
お互い一歩も譲らず、にらみ合いが続く。
ダムダム。
「よしっ。」
「なっ・・・」
ヒュッ。
ついにジョアンが後ろへとパスを出した。
バシッ。
「ナイスパス!」
市井はジョアンからのパスをハーフライン際で受け取ると、ドリブルで少し進んだ。
その間に、ジョアンはマーカーとともにゴールへと走って行く。
キュキュッ。
市井のマーカーもなにをするかわからない新人を探るようにマークする。
ダンッ。
ヒュン。
「えっ?シュート!?」
市井はゴールめがけてボールを放つ。
そのあまりに意外な行動にマーカーも反応できず、立ち尽くした。
- 33 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 18:00
-
ダンッ!
ひとつの影がゴールに飛び上がる。
「決めろよ?」
ドギュン!!!!
ボールがゴールに押し込まれ、影が着地する。
タンッ。
「おっし。今日の第1弾。」
その影、美貴が軽くガッツポーズ。
「市井さんっ。」
美貴が拳を後方の市井へと向ける。
「おうっ。」
それを見て、市井も拳を美貴に向けた。
「ア、アアアアアリープだぁぁぁ!!」
観客が一斉にざわめく。
「すげ!やっぱミキは最高だぜ!」
「ミキーーーー!!!」
「きたきたぁ!」
「さすがエースだな!」
美貴への声援があちこち飛び交った。
- 34 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 18:07
-
この後も、ふたりに刺激されたエンジェルスメンバーがどんどんと当たり始め、あっと言う間に第1クォーターが終了した。
28対10
エンジェルスはその差を18点とした。
中でも、美貴の得点力は圧倒的なもので、15点、アシストも5回と素晴らしいものだった。
次に活躍したのが新人、市井。
彼女は得点は始めの3点だけだったが、本来はガードということもあって、ボールに絡むことが多かった。
- 35 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 18:15
-
〜ベンチ〜
「いいぞ!!特に、ミキとサヤカ!」
「どーも。」
「うっす!!」
監督は笑顔でふたりを見た。
「あんな連携、よくできたな。」
「まあ〜。」
「だから言ったでしょ?監督。市井さんはそんなたまじゃないって。」
美貴が嬉しそうに監督へ歩み寄る。
「ああ!ミキの言う通り、サヤカはそんなたまじゃなかったよ。」
監督は苦笑しながら頭をかいた。
「だがな、これからが勝負だ!!気を抜くなよ?」
「はいっ。」
5人そろって返事をすると、各自、水を飲んだり、足を休ませたりとフリーな時間になった。
- 36 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 18:25
-
美貴も腰かけ、自分のタオルを手に取り汗を拭く。
「・・・。」
美貴の手がふと、止まった。
愛ちゃん・・・。
美貴は遠く、日本にいる愛しい人を思い出していた。
連絡、とってないな。
もしかして・・・
「嫌われたかも・・・」
「誰に嫌われたって?」
「えっ?あ・・・」
美貴の独り言を市井が聞いていた。
「誰に嫌われたんだよぉ〜。」
「いや、なんでもないです。」
ちゃかす市井に美貴は思いきり否定する。
「あ、もしかしてあれか?」
「はい?」
美貴は嬉しそうに笑っている市井の言いたいことがまったくわからずに首をかしげる。
「高橋に愛想つかされたとか?」
ドキっ。
市井の言葉に美貴の胸が大きく跳ねる。
- 37 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 18:35
-
「は、ははははは・・・」
美貴は渇いたような笑い声を小さくあげた。
美貴のおかしな笑いにさすがの市井も異変に気づく。
「おいおい、まじ?」
「そーかもしんないです・・・」
「そーかもってなんだよ。かもって。」
市井は美貴の仮定形の言葉に安心したのか笑いをもらす。
「連絡・・・ないんですよ。」
「連絡かぁ・・・高橋さ、他に好きなやつできたんじゃん?」
「え?」
「いやさ、藤本はわかんなかったかもしんないけど、高橋、あいつけっこうモテるんだよ。」
ピーッ!!
「おっ、試合だ試合!」
市井は誰よりも早くコートへ向かって行った。
- 38 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 22:13
-
愛ちゃんが・・・他に好きなやつ・・・
「ミキ?行くわよ。」
「え?あ、うん。」
やば。今は試合に集中しないと。
美貴は急いでコートに入った。
ファルコンズスタート。
ダムダム・・・
「このクォーター逆転するわよ!!」
相手のセンター、ローサが叫ぶ。
ビッ。
そのローサにパスが通る。
「よっしゃ!」
「させない!」
ローサにピッタリとマークにつく、エンジェルスの守護神マリア。
ダムダム
「くっ!」
ローサはマリアのマークでうまくシュート体制に入れない。
「ローサ!!」
ローサの後ろにサリーのマークをうまくかわしたフォワードが入ってきた。
「絶対守る!」
マリアはフォワードに反応してパスコースを防ぐ。
- 39 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 22:31
-
「かかったな!」
くるっ。
ローサはパスするふりをしてターンした。
「あっ!!」
パスコースを防ぎにいったマリアのマークが完全に外れる。
シュッ。
ローサはジャンプシュートを打った。
ゴールへ一直線に向かっていく。
「もらっ・・・」
パァーン!!
「ウソーー!?」
ローサのジャンプシュートはゴール手前で見事に弾き返された。
「ミキ、ナイス!」
タタンっ。
「おう!」
ミキのブロックショットによって弾かれたボールはジョアンの手に渡っていた。
「走れ。」
ジョアンの小さな一言でひとつの影が横を通りすぎる。
「いっーーーーけーーーー!!」
影を見たすぐ後に、ジョアンがゴールめがけて遠投した。
- 40 名前:星になる 投稿日:2005/05/05(木) 22:40
-
「なになに?やけ?」
「ジョアンがくるった!?」
観客はジョアンの不可解な行動に首をかしげた。が、次の瞬間、
バシッ。
「人を走らせんなっつーの。」
ゴールでジョアンのパスを受け取った美貴がつぶやいた。
そして
ダンッ。
「本日二本目。」
ドゴッ!!
「ミキ、ナイスカバー!」
「マリア!」
「それにナイスシューよ!!」
「わっ、ちょ、ふたりとも痛いよ〜。」
マリアが美貴の頭をわしゃわしゃとなで、サリーがばしばしと背中を叩いた。
これですでに美貴はダンクを二本決めた。
ジョアンの遠投は、美貴の脚力を利用したパスだったのだ。
- 41 名前:みきみき 投稿日:2005/05/05(木) 22:44
- 更新してる!!市井ちゃんがエンゼルスに来るとゎ
ビックリした♪♪作者さんも色々と考えますね☆
- 42 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/05(木) 23:05
- レスはsageる。
あと、ネタバレ注意。
作者さん、海の方も読んでいるんで、頑張ってください。
- 43 名前:七誌さん 投稿日:2005/05/06(金) 15:41
- 遅いけど更新乙&新スレおめでとうです♪
おぉ〜日本からの新人ってあの人だったんですねw
いや〜美貴とのコンビネーションもすばらすぃ!
- 44 名前:星龍 投稿日:2005/05/06(金) 18:19
- 更新お疲れ様です。
あと新スレおめでとうございます。
新人さんこの人でしたかぁ。
これからが楽しみです。
両方は大変かも知れませんが、頑張って下さい。
- 45 名前:赤嶺あゆみ 投稿日:2005/05/06(金) 21:36
- おもしろいわけないやん!!
バーカ
- 46 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/06(金) 23:37
- 45↑
じゃ見んなやバーカ!!
- 47 名前:みきみき 投稿日:2005/05/07(土) 12:36
- >名無飼育さん
sageってどうしたらいいんですか?
>赤嶺あゆみさん
酷いですよ!!じゃあここに来て読まないで!!
ここゎ本当に読みたい人が来るとこなんだから!!
- 48 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/07(土) 13:15
- メール欄に半角でsageと入れてください
- 49 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/12(木) 14:12
- 新スレにおめでとうございます
今度のは続編なんですね 楽しみです
- 50 名前:うんこ 投稿日:2005/05/13(金) 21:34
- ボケ
- 51 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/13(金) 23:32
- まだかなー
- 52 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/05/15(日) 02:12
- 作者さんファイト
- 53 名前:っヵ± 投稿日:2005/05/18(水) 19:27
- 更新が楽しみデス!!!
- 54 名前:みきみき 投稿日:2005/05/21(土) 11:33
- 更新待ってます!!作者さんのペースで頑張って下さい♪
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/25(水) 23:00
- 作者さんがんがってください。
- 56 名前:まぁー君 投稿日:2005/05/26(木) 21:16
- 更新しろや!!
- 57 名前:知つぁん 投稿日:2005/05/29(日) 12:32
- ↑そうせかさないほうがいいですよ。
ゆっくり待った方がいいと思います。
近々更新してくれると思いますし。
- 58 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/06/11(土) 22:14
- 待ってます
- 59 名前:星になる 投稿日:2005/06/18(土) 02:18
-
「ミキ、ナイス!」
「ちょっとちょっと!ナイスってね、美貴はブロックし終えたすぐ後なのに走らせるなんて〜。なんつう鬼なのさ、ジョアンは!!」
美貴はいつものようにさらりと褒めるジョアンに少し不満そうな顔で言った。
「ん?なによ。ミキは疲れたわけ?」
「当たり前じゃん!ってかこんなに動いてて疲れないやつがいる・・・」
「じゃあパスを出すのやめる?」
「は!?」
美貴はジョアンの思いもよらない言葉に目が点になっていた。
周りにいるメンバーもまた、美貴と同じように目が点になっている。
「疲れたんでしょ?だったら、コートの外で私たちのプレーを見てなさいよ。」
「何言って・・・」
「コートでやれないなら外で見てなさいって言ってるの。」
「・・・」
「それともミキはまたあの時みたいに後悔したいわけ?」
あの時みたいに・・・
「私ね、あの時・・・ミキの目が見えなくなった試合、悔しかった。」
「・・・」
- 60 名前:星になる 投稿日:2005/06/18(土) 02:32
-
「でもそれはね、負けたからじゃないの。」
「え・・・?」
ジョアンは両手をこれでもかというくらい強く握っていた。
「もちろん負けたのも悔しかった。でも・・・でもね、それ以上にまだやれるって言ってる、必死にプレーを続けようとするミキをコートの外に出さなきゃいけなかったことがとても悔しかった・・・。」
「ジョアン・・・」
「こんなにもバスケを求めてるのに、なんで?って思ったわ。だって・・・あの時のミキは私なんかよりずっと勝ちたがって、バスケをやりたがってたから。でも・・・」
「ごめん。」
美貴は何か言葉を続けようとしたジョアンに向かって深々と頭を下げた。
「美貴さ、ジョアンがそんなこと思ってたなんて全然わかんなくて自分勝手なこと言ってたね。」
「ううん。」
「でもさ、美貴はもう負けないよ!!」
「ミキ・・・」
美貴は強く握られているジョアンの手を優しく包んだ。
- 61 名前:星になる 投稿日:2005/06/18(土) 02:40
-
「だって美貴にはこんなすっごい仲間がついててくれんだもん!それにさ、ミキになにかあっても今のエンジェルスなら絶対負けないよ!!」
「・・・」
「でしょ??」
「ふふ、そうねっ!」
ジョアンは顔を上げて嬉しそうに笑った。
「よっしゃ!んじゃあ、どんどんパスプリーズねっ!」
「オーケィ。」
美貴は意気揚々と走って行った。
「まあ、もうミキには絶対ケガさせないけどねっ・・・」
ジョアンは頼もしい背番号1の走って行く姿を見ながらボソッとつぶやいた。
「それはあたしたちも同じよ。」
「えっ!?」
ジョアンは独り言に返事が返ってきたのにビックリして振り向いた。
そこには・・・
「マリア、サリーそれにサヤカも!」
ジョアンの後ろにはエンジェルスのメンバー3人が笑顔で立っていた。
- 62 名前:星になる 投稿日:2005/06/18(土) 02:43
-
「だって美貴にはこんなすっごい仲間がついててくれんだもん!それにさ、ミキになにかあっても今のエンジェルスなら絶対負けないよ!!」
「・・・」
「でしょ??」
「ふふ、そうねっ!」
ジョアンは顔を上げて嬉しそうに笑った。
「よっしゃ!んじゃあ、どんどんパスプリーズねっ!」
「オーケィ。」
美貴は意気揚々と走って行った。
「まあ、もうミキには絶対ケガさせないけどねっ・・・」
ジョアンは頼もしい背番号1の走って行く姿を見ながらボソッとつぶやいた。
「それはあたしたちも同じよ。」
「えっ!?」
ジョアンは独り言に返事が返ってきたのにビックリして振り向いた。
そこには・・・
「マリア、サリーそれにサヤカも!」
ジョアンの後ろにはエンジェルスのメンバー3人が笑顔で立っていた。
- 63 名前:星龍 投稿日:2005/06/18(土) 13:48
- 更新お疲れ様です。
お待ちしておりました。
エンジェルスの仲間意識の強さに感動しました。
これからも作者様のペースで頑張ってください。
- 64 名前:七誌さん 投稿日:2005/06/19(日) 00:40
- 更新乙です。
ミキはいい仲間に囲まれて幸せそうですね。
頼もしい人たちばかりですし。
- 65 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 00:43
-
「あの子は大事な仲間なんだから。」
「そーっすよ!それにいちーの大事な後輩でもあり、先輩でもありますし。」
「まあ、どんな形であれミキを傷つけたくないのはみんな一緒なのよっ。」
最後にチームの大黒柱マリアがミキの背中を見つめながら言った。
そしてその言葉に同意した3人もまた後ろでゆっくりと頷いていた。
「さあ、みんな!ディフェンス一本だよぉ!」
ゴール下から張り切った美貴の声が響く。
「まったく。うちのエースは呑気なもんね。」
ジョアンが呆れたような口調で言った。
「でもそこがいいんでしょ?」
「まぁね!さっ、ディフェンスがんばろっ!」
「おう。」
「よっし!」
「はいっ!」
先に走り出したジョアンに続き、マリア、サリー、サヤカの順でエースミキの待つゴール下へと向かった。
- 66 名前:みきみき 投稿日:2005/06/19(日) 20:53
- 久しぶりの更新お疲れさま♪
これからもファイト
- 67 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 21:32
-
ダムダム
「一本とるわよ!!」
「ディフェンス、ディフェンス!」
「「「「オーケー!」」」」
「守るよ!」
「「「イエッス!」」」
ファルコンズは相手エースミキを要注意人物、エンジェルスは油断禁物と、両チームは改めて気合いを入れ直した。
「ローサ!」
スパンッ。
「ジョアン、ナイスカーッ!」
「うわっ!」
相手ガードが味方にパスしようとしたのをジョアンがカットした。
しかしこぼれ球はそのガードが拾い、まだファルコンズボールだ。
ダンダンダン
「くぉのぉ!!」
ビュン。
バシッ!
「いっただーきー。」
「サヤカナイスよ!」
「おいっす。」
ファルコンズガードが繰り出したパスを今度はサヤカがジャンプしてキャッチした。
「くっ・・・」
ガシャ!!
「ミキナイース!」
ドカッ!
「ナイッシュ。ミキ」
ザシュ。
「さっすが藤本、ナイススリー!」
「ういっす。うし、ディーフェンス!!」
パシッ。
美貴と市井はハイタッチを交わした。
- 68 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 21:46
-
あの後、美貴の勢いは止まるということを知らなかった。
ボールを持てば得点、ボールを持っていなければディフェンスで即ボールを奪う。
一連の動きを美貴はなんの苦もなくやってみせた。
そしてまたファルコンズボールでのリスタートだ。
ダン、ダンダン
「ハアハアッ、ハアッ、ハア・・・」
「ハアーッ、ハアーッ・・・あーもう!いい加減あたしにパスしてよっ。」
ガードが自分にパスを出さないのにシビレを切らし、センターのローサが言った。
「わかってるわよ!ハアッ・・・でもあなたにパス回すと絶対読まれるの!!」
「ハアハァーッ、ハア」
「ハァフゥー・・」
「ッハァ!プハッ・・・」
仲間2人の争いに、ファルコンズのコートメンバーは疲労で見届けることしかできなかった。
- 69 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 21:59
-
「あらら、仲間割れ始まっちゃったよ。どーする、藤本?」
市井が言い争う相手ファルコンズのガードとセンターを指差して笑いながら言った。
「・・・」
(くそぉー、くそぉーっくそぉーっ!!なんで・・・なんで止められてばっかなのよ!ミキのあの顔、デビルスとやってた時みたいに本気の顔じゃないわ。けど・・・けどシュート1本、1本さえ決めれば・・ぜっったい顔つきが変わるはず!あたしのプレーでそれを引き出してやるっ!!)
ファルコンズガードは密かに闘志を燃やしていた。
ダムダム
(このガード、かなりイライラしてるわね。)
キュキュ
ジョアンもまたディフェンスにつきながら相手ガードの心情を察した。
「はいはいはい!そこのガードさぁ〜〜ん。余計なこと考えてないでさっさと攻めたほうがいいんじゃないですかぁ!?ただし、何回独り相撲とっても同じことですけぇどねぇ♪」
「なっ!?」
美貴が白い歯を覗かせつつ、きちんとディフェンス体制になっていた。
- 70 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 22:15
-
キュキュ。
「ハァー・・・また出た。」
ジョアンはミキの言葉に思わずため息をもらした。
「くっそぉぉぉ!!」
ガードはムキになり、そのままドリブルで突っ込もうとした。
パンッ!
「えっ!?」
しかしそこである人物にボールを奪われた。
「ちょ、ちょっとぉ!ローサ!!あんたなにすんのよっ!」
「もうあんたにポイントガードを任せてらんないのよ。」
!?
ボールを奪った人物、それは味方であるローサだった。
「な、なんだ?ローサが味方のボールを奪っちゃったぞ?」
「えっ?え?なになに?」
「なにやってんだよぉ〜。」
ローサの思いもよらない行動に会場全体が頭をかかえた。
ローサがボールを持って前へと突き進む。
ダダダダダ!!
「パワーフォワード、ポスト入ったぁ!!」
パワーフォワードがゴール下に入り、サリーがチェックする。
キュキュ。
ボールを持つローサを美貴がマークした。
- 71 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 22:30
-
ガガ。
ファルコンズパワーフォワードのリタがサリーのチェックに負けじと力でゴール下に行こうとする。
「くっそぉ!あたしは無視かよっ!!」
ボールを奪われたガードのバーバラが悔しそうに叫ぶ。
ガッガッ!
「ローサァァァァァ!!」
ビタッ!!
「くうっ!!」
美貴がローサをピタリとマークする。
「ローサァァァッ!!」
ピタ。
ビッタリ。
「ローサァァァ!!」
バッ。
他のファルコンズメンバーにもエンジェルスのマークがピッタリとつく。
パンパンッ!!
「ローサァァッ!!!」
リタが手を叩いて必死にローサへ合図をする。
「わかってるから!黙って待ってなさい!リタ・・・なっ!?」
ビタッッッ!
「ヘルプにきたぞ・・・」
「にししっ♪市井さんナイス。」
ローサのマークに市井が加わってダブルチームになった。
(笑うなぁーーっ!!)
- 72 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 22:44
-
パンッ!!
「うげっ!!」
「藤本ナイスカーッ!」
美貴がスチールをかけてボールをはじいた。
「くそぉ!!どっから手が出てきてんのよっ!」
(ふんっ、ほら見なさい。あんただってボールとられてんじゃない。)
「・・・」
ジョアンは味方のセンターをじっと見ているガードリタを無言で見つめた。
ダダダダダッッ。
ボールを奪ったジョアンがゴールまで走っていく。
「くうのぉぉぉ!!」
それをセンターローサが必死で追いかける。
「ねぇ。」
「へっ・・・?」
美貴はひとりセンターラインでたたずんでいる相手ファルコンズガードのリタに話しかけた。
「今あんたがとってる態度って、美貴大っ嫌いなプレーなんですよ・・・」
「!?」
ガシャン!!
「ジョアン、ナイシュウ!」
「・・・なっ、なんなのよ!今のはローサが勝手にあたしのボールを・・・」
リタは美貴に抵抗しようとした。
しかしーー
「ジョアーン、ナイス!!」
バシバシ!
「いっ、いたっ!ちょっと、ミキ痛いわよ!」
美貴は既にシュートを決めた味方のもとへと行ってしまっていた。
- 73 名前:ワクワク 投稿日:2005/06/19(日) 22:47
- すいません!
ガード→バーバラ
パワーフォワード→リタでした(ToT)
- 74 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 22:58
-
「・・・」
「バーバラ。」
バーバラに見かねたリタが話しかけた。
「今のあなたは情熱を燃やす方向を間違えてるわよ。」
「なっ!?」
「ハアハァ・・・味方同士で潰し合いしてどうすんのよ。ローサの考え方が気に入らないかもしれない、だけど今は同じチームの5人としてやってるってこと忘れないで。」
リタは息を切らしながらも最後まで言い終えた。
「な・・なによ急に。ーーーっていうかいつからそんなにしゃべるようになったのよ。だいたいあたしとローサの問題なの!あんたはひっこ・・・」
「仲間のミスは全員でカバーする!それができないやつにバスケをする資格はない。それだけ。」
「!?」
タッタッ。
リタは言い終えるとゴール下へと走って行った。
(なに当たり前なこと言ってんのよ。ったく・・・)
バッ!!
再び美貴がバーバラのマークについた。
「・・・」
ジーーーッ。
美貴がバーバラを凝視する。
- 75 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 23:15
-
『あんたがとってる態度って美貴が大っ嫌いなプレーなんですよ』
美貴の言葉がバーバラの頭の中を駆け巡る。
・・・!?
「バーバラ行ったぁ!」
バシッ。
バーバラは美貴に気をとられてボールに反応できなかった。
「だぁーー。ないやってんだぁ!」
「しっかりしてくれよぉ〜。」
「そうよ、そうよ!」
「見応えなくなっちゃうじゃない。」
観客席がざわめく。
ダンダン。
「ルーズよっ!!」
ルーズボールは転がったままだ。
「ハァ・・・ハアハァ」
バーバラはショックで座り込んだままただただコート見つめている。
「アン、ジェシカっ!とれぇ!!」
ローサが叫ぶ。
「!?」
「えっ!?」
声をかけられたファルコンズのふたりは訳が分からず戸惑う。
「いいから、そのルーズとれぇ!!!」
ダダダダっ。
ガシッ!
ふたりはボールを取りに行ったサリーを挟み、取り合いになった。
がっがっ!
- 76 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 23:25
-
「よしっ。」
「・・・」
バーバラはボールの取り合いを見ているだけだった。
と、そこでボールを取りに行ったファルコンズのシューティングガードがボールを取った。
「やったぁ・・・」
「バカ!すぐ入れて!ポストよ!!」
安堵の表情を浮かべたアンにローサからの指示が飛ぶ。
「うあっ!!」
ヒュン。
「くっ!!」
アンのパスに食らいつこうとサリーが飛んだ。
しかしあと一歩届かずにボールはリタへまっしぐら。
「とぉあ!!」
バチーーン!
リタにボールが渡る前にマリアがパスをカットした。
「ぬくぅぅぅああ!」
「とられたぁ!」
「!!」
「くっそぉぉ!!ディフェンスよっ!走れぇ!」
ローサが指示を出しながら全員バーバラを通り過ぎてゴールにダッシュで戻る。
パシッ!
「いったぁい!」
誰かがバーバラの頭を軽く叩いた。
- 77 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 23:36
-
「だぁーー!もう!!あんたも走れちゅーの!」
バーバラを叩いたのはエンジェルス、敵のエースミキだった。
「まぁーだわかんないかな。ガードさん!このプレーはみんなあんたのミスから始まってんでしょーが!!」
キュキュ
キュキュッ。
「つぁっ!!」
「一本とれ!」
(あたしのミスから・・・!?)
「ディフェンス!!」
「ぬぉ!」
バッ。
ダムダムダム。
「こんのぉ!!」
ヒュッ。
ジョアンがパスを出した。
(やばいっ!!)
パンッ。
「ジョアン、ナイスパスです・・・!?」
キュキュ!
「ぬぉぉぉ!!」
パスを受け取った市井にすごい勢いでバーバラがマークについた。
「へへっ♪」
「くぁぁぉ!!」
(バーバラ!!)
ギュ、ギュワン。
市井がドリブルでバーバラを抜きにかかった。
「くっそぉぉっ!!」
(きたぁ。)
くるっ。
「しまっ・・・逆!」
市井はバーバラがきたのを見て逆サイドに切り返した。
- 78 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 23:46
-
ズバッ。
「つあっ!!」
「!?」
抜き去ったかと思うと今度はローサがカバーでチェックについた。
(ローサ!?)
「ディフェンスよ!自分のマッチアップしてる相手だけは絶対抜かせない!!」
ビタッッ!
「オッケー!」
ビタ。
「よし・・・」
ががっ!!
「サヤカ!こっち!」
キツいマークを力で押しながらサリーがボールを呼んだ。
シュッ!
「「おおおおぉぉ!!」」
ローサとバーバラがふたり一緒に叫ぶ。
しかし無残にもボールはサリーのほうへ。
「とぉぉぉぉ!!」
パン!!
「うわぁ!?」
サリーをマークしていたリタがボールを弾く。
パシッ。
「よしっ!」
ルーズボールをローサが取った。
「ハァリィバァーーック !!」
「攻めるわよ!」
ダダダダダ!!
ジョアン、ローサが叫ぶと同時に全員がゴールへ向かって走り出した。
- 79 名前:星になる 投稿日:2005/06/19(日) 23:54
-
(絶対これは決めてやる!!)
ローサは心の中でこのボールは絶対に得点にすると決めていた。
ギュギュ!!
「ここは通しませんよ!」
ビタッッッ!
ピタッッ!
「ダブルチーム!?」
ミキとジョアンがローサにダブルチームでついた。
「ちっ!!」
びた。
ピッタッ!
ガガ!
ローサは味方を見たが全員キツいマークがついていた。
(なんてスピードなの!あっという間にパスコースをつぶっ・・・!?そうだ!あたしにダブルチームに来てるってことは!)
シャッ。
「なっ?」
「へっ?」
ローサはある人物へとパスを出した。
ダンッ。
パシッ。
「シュートよ!!バーバラ!」
そうローサはノーマークの味方、バーバラにパスを出したのだ。
ダンッ!
パスを受け取ったバーバラはレイアップシュートをするために飛び上がる。
- 80 名前:星になる 投稿日:2005/06/20(月) 00:04
-
バコッ!!!
「!?」
「まだまだぁ!!」
(うそでしょ!?)
シュート体制に入ったバーバラからミキがボールを弾いた。
ガシャン!
ボールがゴール後ろのボードに当たる。
「こんのぉぉぉ!!」
「なぁ!?」
リバウンドに飛び上がったマリアの後ろからリタが手を伸ばす。
パシッ!
ボールはリタの手に当たって再びゴールリングへと向かう。
ガンッ!!
ダダダン!
しかしボールはゴールに弾かれ、リバウンドに飛んだマリアとリタは倒れこんだ。
「「決めなさいよ!!リタ!!」」
「なぁ!?」
バーバラ、ローサのふたりが倒れたリタに文句を言う。
「バカ!!ルーズを拾いなさい!!」
ぶん!
「「!?」」
リタがボールを指差すとふたりは慌ててボールを見た。
「そうそう、まだまだ詰めがあまーいっすね!」
そこにはルーズを軽々と拾うミキがいた。
「くっ」
「ああああしまったーーっ!」
- 81 名前:星になる 投稿日:2005/06/20(月) 00:14
-
ズバッ!!
ふたり同時にミキのマークにつく。
「うっひょ〜。」
ヒュン。
しかし時は既に遅く、美貴はバックパスでジョアンにボールを渡した。
「攻めるわよぉ!」
「くそぉあーーっ!」
ローサが悔しがる。
パシ!
「ジョアン、ナイスよ!」
ローサが悔しがっている間にジョアンからゴール下にいるマリアへパスが通った。
くるっ。
「よっしゃ。もらい・・・え?」
ドンッ!
ピピーッ!!
「白、オフェンスチャージ!」
リタがゴール下まで走って、マリアのオフェンスチャージを誘ったのだ。
「よっし!リタよく走った!今のはミスった後全力でディフェンスに戻ったからとれたのよ!!例え、シュートを落としても攻守の切り替え早くして諦めずディフェンスがんばればいいの!」
ローサはゴール下まで走っていたリタを褒めた。
- 82 名前:ワクワク 投稿日:2005/06/20(月) 00:23
- 42名無飼育さま>応援ありがとうございます!海板のほうも近々更新いたしますので!!
49名無飼育さま>今度は続編にしてみました!よろしければお読みください(>_<)
51名無飼育さま>おまたせしました!更新です!
名無しの荒らしさま>応援メッセージありがとうございますっ!!励みになります(^O^)
つか±さま>ほんっとにお待たせしました!!
- 83 名前:ワクワク 投稿日:2005/06/20(月) 00:29
- まぁー君さま>長らくお待たせしてすいませんm(_ _)mこれからまた更新しますので。
知つぁんさま>待っていただいてありがとうございますっ!!
星龍さま>ホントにお待たせしてすいませんでしたm(_ _)m作者のペースでというお言葉うれしいですが、極力がんばります!!
七誌さま>なんか更新遅れてしまってすいません。これからまた更新がんばりますので!
みきみきさま>お久しぶりですっ!!これからも書くのでお付き合いしていただけると嬉しいです(>_<)
- 84 名前:ワクワク 投稿日:2005/06/20(月) 00:31
- 読者のみなさま、ホントにお待たせしてしまってすみませんm(_ _)m
諸事情で更新が遅れてしまいました(苦)
これからまた更新していくので、どうかよろしくお願いしますっ!!
- 85 名前:七誌さん 投稿日:2005/06/22(水) 15:15
- 久しぶりの更新どうもっす!(笑
美貴たちもなんか大変ですねぇ。
これからもがんばってくださいね!作者さま!
- 86 名前:星になる 投稿日:2005/06/23(木) 00:28
-
「くぁぁ!今度こそ点取るわよ!!」
ファルコンズボールでリスタートと同時にガードのバーバラが味方に声をかける。ボールを持っているのは、先ほどオフェンスチャージを取ったリタだ。
キュッキュ
「リタ、カモン!!」
必死にジョアンのマークをかいくぐり、バーバラがパスを要求する。
シュッ
パン!
リタがパスを出す。直後にボールと手が接触した音がした。
「なっ!リタ!なんでこっちじゃない・・・」
そうリタのパスはバーバラではない人物に渡ったのだ。
「シュゥゥトよ!!ローサァァァァァァ!!」
「よぉぉし!」
ダンッ!
ローサがシュートの体制で飛び上がる。
「させないっ!!」
「え!?」
そこへ美貴もシュートをさせじと壁で飛ぶ。
「あっ・・・」
と、ローサがシュートの体制から腕を下へと下ろす。
ヒョイ。
そこへ偶然走り込んでいたのは
ピシッ。
- 87 名前:星になる 投稿日:2005/06/23(木) 00:38
-
「バーバラ、打てっ!!」
「ジョアン!!」
ローサと美貴が同時に声を発する。
「よ、よし・・・!?」
「打たせないわよ!」
バーバラがシュート体制に入るが、ジョアンがそれを防いだ。
「バーバラ、あきらめるな!もう1回!!」
逆サイドにいたリタが叫ぶ。
ビュン。
今度はジョアンとゴールに背を向けバーバラがパスを出す。
パシッ!
受け取ったのは・・・
「ナイスパァス!」
がしっ!
「ぜっったい決めなさいよ!ローサ!!」
バーバラが壁になり、ジョアンと美貴をくいとめる。
「とりゃ。」
シャツ・・・
ローサはそこからシュートを放った。
「げっ!!」
「しまった!」
ジョアンと美貴はボールの行方を見つめる。
(来いっ!!)
ローサが心の中で祈る。
ゴン!!
「うそぉぉぉぉ!?」
ローサの願いは届かず、ボールはリングに弾かれて宙に浮く。
- 88 名前:星になる 投稿日:2005/06/23(木) 00:58
-
一方ゴール下では宙に浮いたボールを狙う2人、エンジェルスのマリアとファルコンズのリタが争っていた。
ググッ!
(くっ・・・やっぱりこのセンターは力がある、それにポジショニングいいっ!)
ドンッ!
ダンッ!
「とりゃゃゃゃあーーっ!!」
「くぅのぉぉぉぉぉっ!!」
2人がほぼ同時に宙に浮くボールをめがけて地を蹴った。
ビシッ!
1人がこの争い、リバウンドを征し、ボールを取った。
「2度も続けて・・・」
ドドンッ。
2人が着地した。
「リバウンド負けてられるかってーの!」
リバウンドを征したのはエンジェルスの大黒柱、マリアだった。
「ちっくしょぉ!」
「アン、悔しがってないで早く戻って!!」
悔しがっているアンにバーバラが一喝入れる。
「リターー!!リバウンドはポジショニングで決まるのよ!今のは跳ぶ前に勝負がついてた!」
ローサが走りながらリタにアドバイスを送る。
「はぁ・・ハア、クハッ・・・わかってるっての。」
リタはボソッとつぶやいた。
- 89 名前:星になる 投稿日:2005/06/23(木) 01:08
-
「戻れーーっ!」
ローサがゴールを死守しようと必死に指示を出す。
ダダダダダ!!
まるでその声に合わせたかのようにファルコンズは戻り、エンジェルスは速攻体制になり走っていた。
ダムダム!
「サヤカ!!」
ピュン。
「ほいっす。」
市井はジョアンからのパスを受け取り、一瞬ゴールに視線を向けた。
とそこへーーー
「もう簡単には決めさせないわよっ!」
「うおっ!」
バーバラがマークについた。
ダムダム。
「んじゃあ、勝負ですね。」
「望むところよっ!」
市井とバーバラ。
お互いに闘志むき出しの状態だ。
キュッ!
キュキュキュ。
「行きますよ?」
「こいっ!」
ディフェンスで姿勢が低くなっているバーバラがさらに低い姿勢をとった。
ビッ!!
「えっ・・・!?」
「ただし、いちーじゃない奴が行きますけどね。」
市井はバックパスをした。
- 90 名前:星になる 投稿日:2005/06/23(木) 01:16
-
「ナイスですっ!!」
ダムダム!!
パスを受け取った人物はそのままドリブルで一気にゴール下まで行った。
「ここはあたしの庭よっ!!」
ローサが大きな構えで待ち構える。
ダンッ。
ボールを持った人物はローサを気にも止めずに、地を蹴り、宙へと浮く。
「もらったぁぁぁ!!」
そこへローサがハエたたきのごとく手を伸ばしてきた。
ヒュン。
「なっ!?」
その選手はゴールとローサに背を向けた。
「くるぞっ、サイコーのやつが。」
市井はそれを見てひっそりと小さいが嬉しそうな声で言った。
ドガッッ!!!
テンテンテン・・・
タンッ。
「おっしゃ。」
着地した選手、美貴はローサの頭の上からバックダンクを決め小さくガッツポーズをした。
- 91 名前:星になる 投稿日:2005/06/23(木) 01:21
-
ピピッーーー!!
『おーっとここで試合終了の合図ですっ!!
最後はエンジェルスらしくミキのダンクで終わらしてくれました。
そして結果はーーーー
エンジェルス 98点
VS
ファルコンズ 57点
というエンジェルスの圧倒的な勝利でした!』
こうして試合はミキの大活躍で幕を閉じたのだった。
- 92 名前:ワクワク 投稿日:2005/06/23(木) 01:25
- 少量更新です(-o-;)
七誌さま>お久しぶりですっ!!作者が更新を怠っていたにもかかわらず読者さまのみなみなさんが感想をくださっていたので感激しましたぁ(ToT)
- 93 名前:星龍 投稿日:2005/06/23(木) 14:34
- 更新お疲れ様です。
やっぱり藤本さん、エンジェルスはサイコーですね。
試合の様子が目に浮びました。
- 94 名前:みきみき 投稿日:2005/06/23(木) 22:39
- 最高!!愛チャンわいつ出てくるんだ?
- 95 名前:名無しの荒らし 投稿日:2005/06/24(金) 17:48
- 待ってました
やっぱこの作品良いっすね
- 96 名前:七誌さん 投稿日:2005/06/24(金) 22:56
- 更新乙です♪
やっぱりこの話好きだなぁ。
- 97 名前:星になる 投稿日:2005/06/25(土) 14:51
-
「ミキ!!」
「うっひょー、藤本やるなぁ〜。」
「ナーイス!!」
「やったわね!!」
試合終了と共にエース、ミキに駆け寄るエンジェルスメンバー。
「ハァハァ・・・ぷはぁ!ハア・・」
「フッゥ・・・ハァ・・・」
「・・・ケホッ!フゥ。」
「ハァハァ・・・くそっ・・・」
その一方では、敗北という悔しさを身にしみているファルコンズがいた。そしてそんなファルコンズメンバーに歩み寄るひとつの影。
「ねぇ!」
「ハァ・・・ハア・・・」
その人物は1人の選手の前で立ち止まった。
「ねぇ、聞いてます?」
「・・はあ・・・なによ?」
話しかけた人物、美貴は相手のガード、バーバラが返事をすると相手の目をしっかりと見た。
「美貴はあなたがやるバスケが嫌いでした。」
「!?」
- 98 名前:星になる 投稿日:2005/06/25(土) 15:18
-
『今あんたがとってる態度って、美貴が大っ嫌いなプレーなんですよ』
プレー中の美貴の言葉がバーバラの頭を駆け巡る。
「まじふざけんなって思いましたよ。」
「くっ・・・(確かに、この子が言う通りあたしはバスケットボーラーとして最低なことをした)」
そしてバーバラは自分の不甲斐なさを自覚していた。
「でも・・・」
「えっ?」
美貴がバーバラの腕を持って立たせる。
「後半はディフェンス、オフェンス共にしつこくて嫌だったってやつです。まあ、バスケットをやってる人なら誰だってあのしつこさは嫌がると思いますけどねっ。」
美貴は先ほどの真剣な顔から一転、やわらかな笑顔になっていた。
「あ・・・当たり前じゃない!あたしを誰だと思って・・・」
「ファルコンズ1のしつこい女、バーバラさん・・・でしょ?」
「えっ?」
美貴の言葉にバーバラは目を丸くする。
- 99 名前:星になる 投稿日:2005/06/25(土) 15:32
-
「知ってますよ。エンジェルスに入る前から、いっつもテレビでWNBA見てましたから。」
そう、美貴はエンジェルスのオファーが来る前からいつもテレビでWNBAを見ていたのだ。
そして当然、エンジェルスに入った時からテレビで見ていた選手と対戦する。バーバラ、ローサなどもその中の選手だった。
「バーバラのしつこさはこんなもんじゃないわよ!!」
美貴は声がしたほうに振り返った。そこにはファルコンズのセンター、ローサがいた。
「ローサ・・・」
「あんたたちは運が良かったわね。」
ローサがバーバラと美貴に近づく。
そして疲れきっているバーバラの肩を美貴に代わって支えた。
「普段のバーバラだったらあたしたちファルコンズのほうが勝ってた。」
「にしし!こりゃまた大きく出ましたね。」
美貴は白い歯を見せて笑った。
- 100 名前:星になる 投稿日:2005/06/25(土) 15:47
-
「嘘じゃないわ。」
ローサは真剣な眼差しで美貴を見つめた。
「まぁ、確かに後半の勢いでこられたら美貴たちもヤバかったですけどね。それじゃあ。」
美貴は2人に背を向け、自分の仲間が待つほうへ歩き出した。
「エンジェルスミキフジモト!!!」
「はい?」
美貴は自分の名前を呼ばれ振り返った。
「こ、今度やるときはもっとすごいファルコンズになってるから覚悟してなさい!!」
ローサに支えられているバーバラが力いっぱい叫んだ。
ニコッ。
「待ってますよ。どれだけ強くても美貴は負けませんけど。」
美貴はとびきりの笑顔を見せて仲間の元へ駆け寄った。
「ははは・・・あの子大した子ね。」
「そーね。」
2人はエンジェルスNo1の美貴の背中を見ながら苦笑いした。
「それにあの子、ミキはバーバラのために試合中けしかけたのよ?」
「えぇ、あたしもさっき気づいたわ。ははは!」
「ふふふふっ!」
2人は顔を見合わせる。
「「ミキフジモトは大したエースねっ!!」」
- 101 名前:星になる 投稿日:2005/07/23(土) 00:02
-
「ミキ!!」
「ん?なにさ、ジョアン。」
戻って来た美貴にジョアンが駆け寄る。
「ったく、なにじゃないわよ。試合中、相手にけしかけるクセ!いい加減にやめなさい!!」
「あ、バレてた?」
「バレバレよ!!」
美貴はジョアンが気づいていたことに少し驚きながらも笑顔だ。
「いやさ、あん時あっちの人たちにけしかけなきゃ試合は見えちゃてたじゃん?」
「あー。でも終わってみれば同じ結果でしょ?」
ジョアンは試合を思い返しながら答える。
「まっ、そうだけど。でもさ、あのまま試合終わるのと今みたいに試合終わんのとでは得るもんが違うじゃん。美貴はそれに協力してあげたってやつよ。おわかりかな、ジョアンくん?」
美貴は冗談っぽく笑った。
「(この子はどこまでお人好しなのよ)はいはい。そーですか!」
そんな美貴を心では尊敬していたが、口はまったく逆のことを発したジョアン。
- 102 名前:星になる 投稿日:2005/07/23(土) 00:29
-
「あぁ〜!今バカかこいつって目で見た!」
「見てないわよ!」
「見た見た!ぜーったい見た!」
「見てないってば!」
「うそだ!見たもん!」
「あぁーもう!勝手に・・・」
ジョアンが美貴に付き合ってられないと話を切ろうとした。その時だった。
「あ!いっけない!美貴こんなことしてる場合じゃなかった!」
美貴はそう言うとロッカールームへ駆け出した。
「は?なんなのよ・・・」
ジョアンは思わぬ展開に一瞬動揺したが、すぐに美貴の後を追った。
ジョアンがロッカールームに着くとそこにはすでにスタメン全員が揃っていた。
「相田さ〜ん!!美貴の荷物どこですかぁ?」
美貴が相田という人物に呼びかける。
相田とはつい最近から美貴の専属マネージャーとしてついている相田翔子だ。彼女はCMや雑誌、そしてテレビ番組と多忙な美貴のために急遽雇われた敏腕美人マネージャーなのだ。スケジュール管理だけでなく、バスケの知識もあり、怪我にも対処可能、そしてなにより美貴の良き相談相手だ。
- 103 名前:星になる 投稿日:2005/07/23(土) 00:52
-
「あなたの荷物はそこにあるじゃない。」
相田は慌てる美貴に対して冷静に荷物の場所を教える。さすが敏腕マネージャーだ。
「あぁ!!本当だ!相田さん、サンキュー!」
「いえいえ。」
美貴はまだ慌ててなにかの準備をしている。
「それよりなんでそんなに慌ててるの?」
一連の動作を見ていたジョアンが美貴に問う。
「え?なに?わわわわっ!!」
美貴はユニフォームからチームのジャージに着替えていたため、体勢を崩してこけそうになる。
「ちょ、ちょっと!」
美貴はかろうじてベンチに手をつく。
「ふぅぅ〜。セーフ!!」
「ふぅ。」
美貴の後に続いてチームメイトも肩をなで下ろす。
「で、なんでそんなに急いでるの?今日から1週間、休みでしょ?」
「ん?いや、まあ美貴にもわけってもんがあんのよ。」
なによそれとジョアンは首をかしげる。
- 104 名前:星になる 投稿日:2005/07/23(土) 01:01
-
「まあいいじゃん。あ、市井さん!!」
「なんだよ?」
「市井さんも急いでくださいよっ!」
美貴は着替えながら市井を急かす。
「んー。あのさ」
「早くしないと間に合わなくなっちゃうじゃないですか!」
「いちーはまだ行かないから。」
「えっ?」
市井の言葉に美貴は驚きで固まってしまった。
「いちーは3日後に合流するよ。まだこっちでいろいろやんなきゃなんないことが残ってるしさ。」
「・・・そーですか・・・じゃあ、あっちで待ってますよっ!」
「おぅ!」
美貴はやっとのことでジャージに着替え終わる。
「ちょっと、ちょっと!さっきからなんなのよ!あっちって!」
ジョアンがイライラし始めた。
「あ、美貴ちょっと日本に行ってくるんでよろしく!」
美貴は片手を上げてチームメイトたちに言う。
「・・・はぁぁ!?」
- 105 名前:星になる 投稿日:2005/07/23(土) 01:12
-
「ということですので、藤本が不在になりますがよろしくお願いします。あ、もしなにかありましたら私の携帯は国際電話なので、そちらに連絡を。」
相田が他のチームメイトに一言つけ加える。
「じゃあねっ!」
美貴はそう言うと相田と共にロッカールームを出て行った。
「っていうかさ、ちょっと日本に行ってくるってどーなの?」
「ちょっとっていう距離じゃないわよね・・・」
「まぁミキがやりそうっちゃやりそうだけど。」
スタメンのチームメイトたちがそれぞれ言う。
「まぁいいんじゃない?ミキも久しぶりに日本に帰りたかったんだろうしね。」
ジョアンが話をうまくまとめる。
そして全員がその言葉にうんうんと首を縦に振る。
「あ、あのいちーも3日後日本に帰るんで・・・」
市井は全員に報告した。
「よーし、それじゃあそれまでサヤカは特訓ねっ!」
マリアが気合いを入れる。
「えぇーー!!勘弁してくださいよ〜!」
市井の悲惨な叫び声がロッカールーム内に響き渡った。
- 106 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/23(土) 07:19
- 更新乙です
ミキティ日本に帰国ですか、これからの展開が楽しみです
- 107 名前:星龍 投稿日:2005/07/23(土) 11:25
- 更新お疲れ様です。
帰国ですかぁ〜。
日本での様子も楽しみですね。
作者様のペースで頑張ってください。
- 108 名前:星になる 投稿日:2005/07/23(土) 22:16
-
「相田さん!!早く、早く!!」
美貴が走りながら後方の相田に手招きをする。
「わ、わかったからちょっと待って!」
相田は全速力で走る美貴に追い付けずにいた。仮にも美貴はバスケットボーラーというスポーツ選手だ。一般人の相田が追い付けるはずもない。
「早くしないと飛行機でちゃうよ〜!」
「だ、大丈夫よ!まだ余裕があるから。」
美貴が時計もしていないのに時計を叩くフリをする。そんな美貴に相田も思わず苦笑い。
「よっぽど恋人に会いたいのね。」
相田がボソッと言う。
「な、ななに言ってるんですか!///早くしてくださいよ///」
美貴はたまらず顔をそむける。その顔はどこかほんのりと赤い。
「またまた照れちゃって〜。」
相田がそんな美貴をちゃかすように言う。
「あぁーもう!そんなこと言う前にさっさと走ってくださいよっ!」
「はいは〜い。」
相田はかわいいなぁと思いながら再び走る。
- 109 名前:星になる 投稿日:2005/07/23(土) 22:31
-
〜空港〜
美貴は到着と同時にサングラスを着用する。
「よっし。相田さん大丈夫??」
「はぁはあ・・・ま、まあね・・・はははは。」
まったく疲れていない美貴の横でかなり息を乱している相田。このふたりの差は周りから見ても歴然だ。
「あははは!こんなに相田さんが疲れてんの初めて見るかも!」
相田の疲れも知らずに無邪気に笑う美貴。
横ではまだ息が整わない相田マネージャー。
「もう!わかったから行くわよ!」
美貴を無視して先に歩みを進める相田。
「あ、ちょっと!待ってくださいよ〜!!」
美貴が慌てて相田を追い、空港内に入る。
ガヤガヤガヤ
休日とあってか人の数はかなり多い。
美貴はこの中に日本へ行く人がどれくらいいるのかなどと考えながら相田の後ろを歩く。
その時だった。
- 110 名前:星になる 投稿日:2005/07/23(土) 22:51
-
「あ、あの・・・」
「え?」
ひとりの若い女性が日本語で美貴に話しかけてきた。
「もしかして藤本美貴選手ですか?」
どうやらちょうど日本からの便が到着したところのようだ。
「あ、はい。そうですけど・・・」
美貴は答えてからしまったと思った。
「あたしたちチョーファンなんです!!」
美貴は自分の思った通りの展開に少し苦笑い。
「あぁ、どうもありがとうございます。」
「よ、よかったら握手してもらえませんか?」
女性たちが恥ずかしそうに頬を赤らめながら言う。
「あ、はい。じゃあ・・・」
美貴が手を差し出す。そして女性たちは順順に美貴の手を握っていく。
「キャァア!!あたし藤本選手と握手しちゃった!!」
女性がそう言うとあまりの声の大きさ、そして『藤本』という名に周辺にいた人々が次々と美貴たちを見る。
「げっ。やば・・・」
美貴がそう発するのとほぼ同時に美貴たちの周りは人でいっぱいになった。
- 111 名前:星になる 投稿日:2005/07/23(土) 22:51
-
「あ、あの・・・」
「え?」
ひとりの若い女性が日本語で美貴に話しかけてきた。
「もしかして藤本美貴選手ですか?」
どうやらちょうど日本からの便が到着したところのようだ。
「あ、はい。そうですけど・・・」
美貴は答えてからしまったと思った。
「あたしたちチョーファンなんです!!」
美貴は自分の思った通りの展開に少し苦笑い。
「あぁ、どうもありがとうございます。」
「よ、よかったら握手してもらえませんか?」
女性たちが恥ずかしそうに頬を赤らめながら言う。
「あ、はい。じゃあ・・・」
美貴が手を差し出す。そして女性たちは順順に美貴の手を握っていく。
「キャァア!!あたし藤本選手と握手しちゃった!!」
女性がそう言うとあまりの声の大きさ、そして『藤本』という名に周辺にいた人々が次々と美貴たちを見る。
「げっ。やば・・・」
美貴がそう発するのとほぼ同時に美貴たちの周りは人でいっぱいになった。
- 112 名前:星になる 投稿日:2005/07/23(土) 23:07
-
「まじだよ!まじで藤本美貴だ!」
ひとりの日本人男性が叫ぶ。
それに対して美貴は内心、呼び捨てすんなよと思いながらも顔は笑顔を保った。
「ほんとだぁ〜!」
「「「美貴さぁぁん♪」」」
複数の女の子たちが必死で美貴に手を振り、美貴の名前を呼ぶ。
美貴もそれに笑顔で手を振り返す。
「きゃーーー!!!」
それを見た女の子たちがさらにブンブンと手を振る。
また、別の人たちはしきりに美貴の体を触ってくる。
違うところではサインを求めるなど美貴の周りは混雑していた。
(ど〜しよ・・・)
美貴は周りの混乱ぶりに頭を抱えた。
「はいはーい。すいませんが藤本はこれから仕事がありますのでみなさんそれくらいにしてください!!」
人だかりをかき分けながら美貴に近付き、相田が大声を出す。
そんな相田に周りの人々がえぇ〜と非難の声を浴びせる。
「いずれ公式的にファン交流会を催す予定がありますので、みなさん!藤本に会いたかったらそちらに参加してください!!もちろんかなりのサービス予定です!」
- 113 名前:星になる 投稿日:2005/07/23(土) 23:20
-
「さぁ藤本。行くわよ!」
相田が美貴に耳うちをし、腕をひっぱる。
ファンは観念したのか、その後美貴を追わずにパラパラと散っていった。
「相田さん・・・」
「まったく、藤本は人が良すぎるのよ!」
「すいません・・・」
美貴が頭を下げる。
「まぁそこが藤本の人気のひとつなんだけどねっ。」
相田が笑顔で美貴の肩を叩く。
それに美貴は顔を上げる。
「ただーし!勝手な行動をとるとさっきみたいに大変なことになるから気をつけること!わかった?」
「はいっ!」
美貴は元気よく相田に答えた。
そしてそんな美貴に相田もわかればよしっと元気に言う。
ピンポンパン♪
「ただ今から日本行きの便の受付を始めます。」
日本行きの便のアナウンスが流れる。
「さっ、行くわよ。」
「はい。」
再び相田が先を行き、その頼もしい後ろ姿を美貴が追った。
- 114 名前:ワクワク 投稿日:2005/07/23(土) 23:25
- 少量続き(笑)
名無飼育さま>読者さまの期待に答えられるよう全力を尽します!!
星龍さま>日本に行く前に空港の様子を書いちゃいました(笑)
これからもがんばります!あと、またも空板で新作始めました(^。^;)よろしければそちらもどうぞ!感想付きで(笑)
- 115 名前:星龍 投稿日:2005/07/24(日) 10:53
- 更新お疲れ様です。
藤本さんやっぱり人気者ですね。
新作ですかぁ。
是非読ませて頂きたいと思います。感想つきで(笑)
- 116 名前:みきみき 投稿日:2005/07/28(木) 12:39
- 更新してなかった全然白板きこなかったんで
久しぶりに来たらめちゃ更新されてたから
なんか損した気分になったし!!
- 117 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 18:53
- 続きを楽しみにしていますよ
頑張って下さいね!
今後のCPも、どうなっていくのか見応えありますね
- 118 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/25(木) 22:47
- 作者様の生存報告が知りたいところですね
本当の気持ち1はdat落ちかな?
- 119 名前:星になる 投稿日:2005/09/03(土) 16:51
-
「あーいちゃん!」
「・・・」
「なんでそんなに落ち込んでるのさぁ?」
ここのところずっと落ち込んでいる愛に話しかける紺野、新垣、小川の三人。
「落ち込んでなんかないやざ・・・」
「いやいや、声のトーンが明らかに落ち込んでるからっ!」
新垣が明るく愛の言葉を否定する。
「愛ちゃん、悩みがあるならこのピーマコに相談しなされ〜!」
「いや、まこっちゃんなんか頼りないじゃんか〜!」
小川の言葉にまたもツッコミ隊長の新垣がテンポよく言う。
「えぇ!?がきさんひどいっすよ・・・」
さすがの小川でも新垣のツッコミがこたえたようだ。口数がなくなってしまった。
「まぁまぁ、それより愛ちゃん。ホントに悩みがあるなら聞くよ?」
二人をなだめながら紺野が愛に話しかける。
「大丈夫やよ。あーしなんも悩んどらんがし!」
笑って見せる愛。しかしその笑顔は明らかに無理しているようだった。
「あはは、愛ちゃん。無理してんのバレバレだよ〜!」
小川が苦笑いしながら言う。
「ホントホント!相変わらず分かりやすいんだから!!」
新垣も小川に賛成というように愛に近づく。
- 120 名前:星になる 投稿日:2005/09/03(土) 17:09
-
「ふふふっ。ホントだよ愛ちゃん!」
紺野も愛のほうへと移動し、三人が愛の前に立った。
「本当になんもないって!」
愛が三人に向かって首をブンブンと振る。
「あっ・・・もしかてさ、美貴ちゃんのこと・・・とか?」
ビクッ!
新垣の口から発せられた『美貴』という単語に愛が過剰に反応する。
愛の反応を見た三人は顔を見合わせやっぱりというかのようにため息をついた。
「だろーと思った。愛が悩むなんて美貴ちゃんのことくらいだもんね。」
「なっ!?」
「はいはい。ピーマコにだってそれくらい分かりますからぁ〜!」
小川が得意気にパタパタと飛び跳ねる。
「ていうより私たちなら誰でもわかるよ。ねっ、こんこん!」
「はい。完璧ですっ!!」
愛を見ながら紺野がVサインをした。
「むぅ・・・」
「だから愛ちゃん、正直に話して?」
新垣がうつ向く愛の肩に手を置いた。
- 121 名前:星になる 投稿日:2005/09/03(土) 17:24
-
「あんな・・・」
愛は諦めたのか、一息つくと話し始めた。
「「「うんうん」」」
それに合わせて三人も相づちを打つ。
「美貴ちゃんから連絡が全くないや・・・」
「え?」
「うぇ!?」
愛の意外な言葉に新垣、小川の二人はこれでもかというくらいに驚いていた。
「うーん、美貴ちゃんも忙しいんじゃないかな?」
唯一、前に愛の様子を見ていてもしやと思っていた紺野だけは冷静に返答をした。
「やけどアメリカ行ってから一回もないんやよ!?」
「確かにそれは無さすぎだね・・・」
「やろ?はぁぁぁ・・・」
愛が大きな大きなため息をひとつ、ついた。
「ん〜、愛ちゃんから連絡してみたの?」
やっと落ち着いた新垣が問う。
「してないやよ。美貴ちゃん忙しいやろうから・・・」
「そっかぁ。まあ確かに美貴ちゃんテレビとか雑誌もあるから忙しいだろうしね。」
この言葉を最後に四人は無言になってしまった。
- 122 名前:星龍 投稿日:2005/09/15(木) 17:11
- 高橋さんの悩み解決できるんでしょうか・・・。
これからの展開楽しみにしてます。
ゆっくりまったり待っているので頑張ってください!
- 123 名前:星になる 投稿日:2005/09/17(土) 23:37
-
***
- 124 名前:星になる 投稿日:2005/09/17(土) 23:51
-
ガラガラ
「失礼しまぁす!」
一人の少女が元気よく挨拶をして中に入ってきた。
「おぉ〜。待っとったでぇ!」
この場所に不釣り合いなほどの金髪で関西弁な女性がこっちこっちと少女を手招きする。
「監督。また髪明るくなってるんじゃないですか?」
「なーに言うてんねん!あんた目悪くなったんかいな!!あたしは一個も変わっとらんわ。それに昨日も合ったやろ?」
「いや、中澤監督なら一日で髪の色が変わることが有り得そうですからぁ。」
少女が中澤裕子ににっこりと微笑む。
「相変わらず口だけは達者やな松浦は。」
中澤も抵抗するかのように少女、松浦亜弥に言い放つ。
「それより監督。今日は何ですか?折り入って話があるって・・・」
「あぁ、そやったそやった。まぁそこ座りぃや。」
中澤が自分が座っているイスの向かい側を指さして松浦を座るよう促した。
「失礼します。」
松浦は制服のスカートにシワがつかないよう気にしながら座った。
- 125 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 00:06
-
「あんな、バスケ部があんたらの代になってから練習試合あんまやっとらんやろ?」
「あぁ・・・そういえば・・・」
松浦は自分がキャプテンになってからの試合を思い出す。
言われてみれば、春に都の公式試合が一回と後は練習試合を一回しかしていない。
昨年までのバスケ部はもっと実戦練習という意味で練習試合をばんばんこなしていた。
「やろ?まぁな、うちも昨年の覇者や。練習試合の申込みがないわけやない。むしろ前より増して申込みがぎょーさん来るくらいやし。」
「じゃあなんで練習試合を組まないんですか?」
キャプテンの松浦としてはもっと実戦練習を積んでチームワークをより良くしたいのだろう。
「組もうとは思う。やけどな、うちも人数増えたやろ?せやからわざわざ他んとこに行かんでも仲間内でチームいくつも作って実戦できるやん。」
「そーですけど・・・」
松浦は中澤の言っている事は間違っていないが、それでは自分たちのレベルが上がらないのではないかと思った。
松浦を含むレギュラー五人は仮にもこのハロ高で一番の実力なのだから。
- 126 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 00:29
-
「わかっとる。そやけどなあんたらと同レベルの相手がそうそうおらんのや。どーせやるなら同レベルの相手のほうがええやろ?」
「それはそうですね。」
松浦は強く同意する。自分たちのレベルを上げるには同レベルの相手か自分たちより上のレベルの相手が必要不可欠だ。
松浦がここまで成長したのも同じフォワードに後藤、藤本そして田中など実力者たちが沢山いたということがとても大きかった。
「そ・こ・でや!あたしは考えた。そしてある結果が出てきたんや!!」
中澤がうんうんと一人満足そうに頷く。
「結果・・・?」
松浦が不思議そうに中澤を見る。
「うん。あんな、第一回ハロ高バスケ大会を開こうと思っとるんや!」
まだニコニコと嬉しそうに微笑む中澤。
そんな上機嫌な中澤が松浦は怖かった。
「バスケ大会ですか?」
「そうそう。バスケ大会や!部内でいろんなパターンのフォーメーション作って対戦してくってやつや。もちろんレギュラーもサブもごちゃまぜでなっ!」
- 127 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 00:47
-
「えっ?それじゃあいつもやってるのとほぼ変わらないんじゃ・・・」
そう、いつも練習の後半では必ずと言っていいほどチームを作ってゲームをする。
変わると言えばレギュラーとサブが関係なくごちゃまぜになるくらいだろう。
そんないつもと変わらないことをやってなんの意味があるのだろうと松浦は不思議でならなかった。
「なんや、松浦。なんか不満があるかいな?」
松浦の納得いかないような顔を見て中澤が尋ねる。
「いや、その・・・あんまり普段の練習と変わりがないんじゃないかなぁと思いまして。」
松浦の意見を聞いて中澤がくっくっくっとなにか企んでいるような笑い声をあげた。
「チッチッチッ!松浦はまだまだ甘いわぁ〜。まさにスィートやな。」
松浦は中澤の笑いがなぜなのか未だにわからないで困った顔をしていた。
「はぁ〜。ええか松浦。あたしが意味のないような大会を開こうなんて言うと思うんかいな?」
「いや、そんなことはないと・・・思います・・・けど」
- 128 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 01:01
-
「やろ?実はな・・・その大会にスッペシャルなゲストを準備しとるんや!」
あははははと笑いながら、どうやまいったやろなどと言う中澤。
「スッペシャルなゲストですか!?」
さすがの松浦もこれにはビックリだった。
「ああ、もうな現れた瞬間にみーんなぶっ飛ぶで?」
中澤の企んでいる笑いの意味がやっとわかった松浦はなるほどそういうことかと妙に納得していた。
「しーかーも!この大会は三日間かけてやる予定や。どうせなら全員に経験させてやりたいしな。ゲストにも都合があるやろうし・・・ブツブツ・・・」
中澤の最後の言葉は聞き取れなかったが、それだけ沢山の経験が積めるということだけはわかった。
「このことを今日の部活で発表してくれへんか?あたしは今日出張やし、みっちゃんは講習会あるみたいやから二人とも不在になってしまうねん。」
自分の口から発表できないのが残念というかのようにシュンとする中澤。
「わかりました。全員に伝えておきます。では・・・」
松浦はそう言うと職員室のドアに手をかけた。
「あっ!ただし、まだゲストのことは誰にも言ったらあかんで?サプライズにするんやから。」
「はい!」
元気よく答えるとキャプテンは職員室を出て行った。
- 129 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 01:02
-
***
- 130 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 01:14
-
ガラガラ
はぁ・・・中澤監督は相変わらずすごいこと考えるんだから・・・っていうか早く昼ご飯食べないと昼休み終わっちゃうじゃない!
松浦は監督の行動にやれやれと思いながら教室に入った。
「あぁ〜!!亜弥ちゃんおかえり!」
声のほうを見るとなぜかクラスの違う高橋、新垣が紺野と一緒にお昼を食べていた。
「あれ?二人ともなぁんでうちのクラスにいるの?」
松浦は自分の席にある鞄から弁当を取り出しながら二人に問う。
「だってあさ美ちゃんが中澤監督に亜弥ちゃんが呼び出されたって言うんやもんっ!」
高橋が弁当の箸を止めて松浦に答える。
「そうそう。そんでこりゃ一大事だ!と思ってね。一応あたし副キャプテンで愛ちゃんが部長、んでコンコンが副部長だから亜弥ちゃんを待ってたってわけ。」
高橋の言葉に新垣が付け足す。
「そっかぁ。」
松浦がおそらく自分のために空けられている席に腰を落ち着かせて、弁当を開く。
- 131 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 01:24
-
「で、監督は何て言ってたんですか?」
紺野が心配そうに松浦を見る。
そんな紺野をよそに早く食べ始めなければ時間がなくなってしまう松浦は急いで口に運ぶ。
「ん〜・・・まぁんわぁりつぁいしつぁこつぉじゃあぬぁいよぉ。(あんまり大したことじゃないよ。)」
口をいっぱいにしてしゃべったため、言葉になっていない。
「なぁんだ。じゃああたしらが心配するほどじゃなかったんだぁ。」
唯一松浦の言葉がわかった新垣が安心したようにひと息つく。
「ふぇ?亜弥ちゃんなんて言ったん?」
高橋が不思議そうに目をくりくりしながら新垣を見つめる。
隣では紺野も高橋と同じようにビックリしている。
「あぁ、うんっとね、監督は大したこと言ってなかったんだって。亜弥ちゃんあってるよね?」
新垣が確認で松浦に目線を送ると、箸を必死で動かしながらコクッと頷いた。
「だってさ。」
「ほぇ〜、なんや大したことなかったんかぁ。」
「なら、よかった。」
高橋、紺野は顔を見合わせて笑う。
- 132 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 01:39
-
「ゴクッ。あ・・・でも・・・」
一通り口にあった物を飲み込むと松浦は再び口を開いた。
それに合わせて三人が一斉に視線をそちらに移す。
「なんか大会やるってさ。」
「「「えぇ!?」」」
三人の驚き方は様々だが、声は見事に一致した。
それをよそにまたも箸を進める松浦。
「大会って・・・公式戦ですか?」
「ほぁ〜、練習試合なんかなぁ?」
「やっっったぁ!久々の試合だぁ!!」
公式なのか練習なのかと悩んでいる二人の横で新垣は一人手を上げてこれでもかというくらい喜んでいた。
やっと食べ終えた松浦が付け加える。
「あ、なんかね、うちの部内でごっちゃまぜにしてチーム対抗戦するんだって。」
松浦が弁当を片付けながらみんなに報告する。
「なぁんや、じゃあいつもの練習とあんま変わらんやん。」
高橋がつまらなそうに肩を落とす。
「まぁ私たちの準備が大変になるくらいだね。」
紺野も苦笑い。
「でもさ、ごちゃ混ぜってなんか新鮮だよね〜!」
新垣だけはまだ興奮覚めやらぬ感じで喜んでいる。
- 133 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 01:52
-
「まぁね〜。それに・・・」
「それに??」
新垣がまだあるのかと目を輝かせながら松浦を見る。
「あぁ〜と、1年生とやるのも楽しみ♪」
「だね!だね!!」
松浦は先程中澤に言われたゲストが来るということを危うく言いそうになったが、なんとかごまかした。
「1年生もうまくなってますからね。」
紺野が嬉しそうに頷きながら言う。
「そうやねぇ。2年生もさらぁにうまくなってきとるしね。」
高橋も笑顔で言う。
「チーム分けってどーやるの?」
新垣が松浦に聞く。
「まだそこまで聞いてないんだ。ただ大会開くとしか・・・あ、あとね、大会は三日間らしいよ。」
松浦がそうだそうだと思い出したように付け足す。
「えぇ!?かなりハードですね。」
「またあーしらの仕事増えるんかぁ・・・」
「三日間!?まじで!?そんなに試合出来るなんておまめ感激!!」
さすがバスケ命の新垣、もう涙を流しそうな勢いで喜ぶ。
- 134 名前:ワクワク 投稿日:2005/09/18(日) 02:00
- こーしん!!
星龍さま>やっと更新しました(^。^;)先はまだまだ長いです(笑)
みきみきさま>お久しぶりですっ!!そしてなかなか更新できなくてすいません(>_<)
損した気分だなんてまたまたぁ!(笑)
117名無飼育さま>続き書きましたっ!!今後は他のCPのほうも…お楽しみに!!
118名無飼育さま>生存してますっ!って遅すぎましたね(笑)
1はどうやら落ちてしまったようでございます(^。^;)
- 135 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 14:26
-
***
- 136 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 14:37
-
「よーしーこぉー。」
「・・・やっぱいいよなぁ。」
「よしこってばぁ〜!」
切長の目でスラっとした少女が隣に座っている友人らしき人物をゆさゆさと揺さぶる。
「はぁ・・・」
「ね〜ぇ。」
「だぁぁ!もう!なんだよごっちん!」
揺さぶられていた少女はしびれを切らしたのか、すごい勢いで友人に顔を向ける。
「んぁ、だってよしこがごとーの話聞いてないからさぁ〜。」
切長の目の少女、後藤真希が呑気な顔をして言う。
「も〜!!ごっちんはさ、いいなぁとか思わないわけ!?」
「んあ?なにを?」
「なにって・・・あれだよ、あれ!!」
もうひとりの少女、吉澤ひとみが学食の外を指差しながら叫ぶ。
後藤と吉澤は昼の時間よりも空き時間にこの学食にくることが多い。特に何をするというわけではないが、ここに来て二人で話す。そんな毎日だった。
「あぁ〜、カップルね。」
後藤はあまり興味がないのかチラッと見ただけでまた頬杖をついた。
- 137 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 14:50
-
「あぁーあ、うちもあんなんになりたいよ・・・」
一方の吉澤はまたカップルを見つめて、独り事を言う。
そのカップルは周りから見るととても幸せそうで輝いていた。
「そんなに作りたいなら作っちゃえばぁ?」
今まで興味がなさそうだった後藤が嘘のようにニタニタと笑う。
「なっ///なに言ってんだよっ!!」
そしてそれに気付いた吉澤はあからさまに照れる。
元々白い吉澤の肌は少し赤みかかっていた。
「んぁ!よしこ紅い。」
「う、うるへー///」
後藤が吉澤を見て、面白そうにあはははと笑い声をあげる。
「それにさ、うちは誰でも良いってわけじゃぁないの!!」
それを見た吉澤はふんっと少しすねたように顔を背ける。
「まぁね。じゃなきゃごとーたち今ごろあんなんになってるよ。」
後藤が苦笑しながらさっきの場所を一歩も動いていないカップルを指差す。
「しっかしよしこももったいないことするよねぇ〜。」
「なにが??」
吉澤が不思議そうに横目で後藤を見る。
- 138 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 15:03
-
「た・か・は・し。よしこ結構本気だったんでしょ?」
「あぁ・・・」
吉澤がイチャつくカップルをぼぉーっと見ながら高校のころを思い出す。
「高橋さ、一個下の中ではかなり可愛いほうだったじゃん?学校中でも何気人気あったみたいだったしね。」
後藤の何気ない言葉に吉澤も納得する。
まぁそうだろう。確かに高橋は可愛いし、うちらの学年でも有名になってた。
いつの間にか学校全体で有名になっててみんな純粋で清んだあの子の虜になってた。
もちろん、このよしざーもその中の一人。
でもさ・・・
でもね、
あの子があそこまで輝いて見えたのは隣にいつも『あいつ』がいたからだと思う。
『あいつ』といるときの高橋はとても楽しそうで嬉しそうに笑ってて、『あいつ』といないときは寂しそうに笑ったり、泣いたり・・・とにかく高橋が見せる喜怒哀楽はぜーんぶ『あいつ』がかかわってた。
きっとね
みんなはそんな『あいつ』の隣にいる高橋のことが好きだったんだ。
なによりよしざー自身がそうだから。
だからよしざーにはわかるんだ。
- 139 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 15:22
-
よしざーが恋愛に対して本気になったのがこれで二回目で・・・
そして気付いたんだ。よしざーにとって何が一番大事なモノなのか、よしざーが守りたいのはなんなのか。
「・・・・ぉ」
高橋が
『あいつ』が
よしざーに教えてくれた
大切なモノ。
「よっしっこぉ〜!またぶっ飛んでる〜!」
「あぁ・・・ごめんごめん。」
「まったく〜。」
だからよしざーは二人に幸せになってもらいたいんだ。
高橋も
『あいつ』も
みんなよしざーの大切な人たちだから。
こんなよしざーに一番大事なモノを教えてくれた人たちだから。
よしざーも一番大事なモノを守るから
お前たちも幸せになれよ!
これはよしざーからの挑戦状。
「にしししっ!」
「よ、よしこ?なにいきなり笑ってんの?」
どっちが先に幸せを掴むか競争だ。
「ごっちん、もう行こ!!」
「んあ?」
「おっしゃぁー!!」
吉澤が鞄を掴んで走り出す。
「よ、よしこぉ〜!」
それを慌てて追う後藤。
「ヨーイドンっ!!」
吉澤は空に向かって大きく叫んだ。
- 140 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 15:23
-
***
- 141 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 15:44
-
「しばちゃーん、こっちこっち!!」
大教室でやたらと響く甲高い声。
「あっ、いたいた。」
その声を聞いたいくつもの視線がこちらを向き、なんだか申し訳なくて思わずすいませんと一言言って隣に座る。
「も〜!!しばちゃんおそいよ!」
チャーミー怒っちゃうぞプンプン♪などとどこかの芸能人がやっていたネタをマネする甲高い声の主、石川梨華。
「ちょっと先輩に呼び出されちゃってさ。本当にごめんね。あ、あと席ありがと〜。」
律儀にお礼を言っているのは柴田あゆみ。
先ほど石川の甲高い声で注目を集めた二人。どうやら、まだみんなが見ているようだ。
だが、そんなことも気にせず話を続ける。
こんなに見られるのも二人にとっては日常茶飯事なのだろう。
「なに?なに?またこの前の人〜?」
石川が興味深そうに身を乗り出す。
「ううん。違う人。」
柴田がもう本当困るよと眉間にシワを寄せて苦笑する。
「なーんだぁ、また違う人が来たんだ。」
「そーいう梨華ちゃんも昨日呼び出されてたじゃん!」
- 142 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 15:55
-
「あー、あれね。断っちゃった♪」
えへと可愛い子ぶる石川。周りから見たら本当に可愛いく見えるのだろうが、長い付き合いの柴田はその姿を苦笑して見るしかなかった。
「また断ったの?」
「だって私の好みじゃないんだもーん。」
「もーんって梨華ちゃんね・・・」
柴田は石川の軽さにやれやれといった表情を見せる。
しかし、この軽さがまた梨華の魅力のひとつかもしれないと密かに思う。
「それにね、私は・・・」
「白馬の王子さまを待ってるの♪でしょ?」
もう何回聞いたかわからない石川の口ぐせを石川が言うより先に柴田が言った。
「そう♪」
石川が嬉しそうに頷く。
「はぁ〜。そんで梨華ちゃんの理想の王子さまは?」
柴田はなかば呆れながら石川に問う。
「それはもちろん・・・」
「美貴ちゃんね。もういいや。」
柴田がわかったわかったと言い、自分の鞄から教科書とノートを取り出す。
「えぇ〜!!聞いたのはしばちゃんじゃない!」
「うん。聞いた私がばかだった。」
- 143 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 16:15
-
こりゃこの子を好きになった人たちは苦労するな、なんてちょっと人事に思う柴田。
「しばちゃん?」
「ん?」
呼ばれて教科書とノートからまた石川に視線を合わせる。
「そういえばしばちゃんって好きな人いるの?」
石川の突然過ぎる質問に柴田は言葉を失う。
「だってね、大学来てからしばちゃんもいろいろな人から告白されるのに断ってるでしょ?だからしばちゃんも誰か好きな人いるのかなぁと思って。」
しばちゃん『も』というところにあぁ梨華ちゃん好きな人いるんだなんて勝手に予想する。
「ねぇ!だれなの?」
石川がキラキラした目で柴田を見つめる。
「いないよ・・・」
っていうよりあなたに言ったら広まるから絶対言えません。
「うそうそ!しばちゃんいるくせにぃ〜!」
こいう話をさせたときの石川はとりあえずしつこい。
あーだこーだ言って必ず確信をついてくる。それをわかっている柴田はあえてなにも言わない。下手にこちらからしゃべるとボケツを掘る可能性があるからだ。
- 144 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 16:23
-
「いないよ。梨華ちゃんこそ・・・あ、梨華ちゃんは藤本一筋か。」
わざと話を相手へと持っていってみる。
「んもっ!そうだよ♪私は昔から美貴ちゃん一筋だもーん///」
黒い肌に少し赤が混ざって、赤黒くなる。
ビンゴ。回避成功。
「あははは。梨華ちゃん照れてる、照れてる!」
柴田が石川を指差して可愛いと言いながら笑う。
「もー!しばちゃんまたバカにしてる!」
「してない、してない!!」
柴田が慌てて顔の前で手を振る。
そんな二人を相も変わらず観察して楽しんでいる観衆。
- 145 名前:星になる 投稿日:2005/09/18(日) 16:24
-
こんな平和な毎日を送っている大学一年ルーキー四人組。
- 146 名前:星龍 投稿日:2005/09/29(木) 17:20
- 更新お疲れ様です。
久しぶりにあの4人が出てきましたね。
しかもまたまた面白そうな展開の予感
次の更新も楽しみに待ってます!!
頑張ってください
- 147 名前:星になる 投稿日:2005/10/09(日) 01:28
-
「集合!!!」
「はいっ!」
一人の掛け声に体育館にいた全員が返事をして駆け寄る。
「コホン。えー、今日は監督もコーチも不在だけど練習はみっちりやるからよろしく〜。」
松浦は面倒くさい役を任されたなと思いながらもそれもしかたないと諦め、話しだす。
「えっと、監督からの伝達事項を今日は不在ってことでまつーらから発表します。」
何事かと一斉にざわつき始める。
「はいはい、静かにして!」
パンパンと手を叩きながら必死でざわつきを静めさせる。
「単刀直入に言うと、大会開催が決定しました。大会は三日間をまたいで行い、チームは部内で編成するそうです。」
まるでカンペを見ているかのように伝達事項をすらすらと言い終える。
ザワザワザワ。
またも騒がしくなる体育館。
- 148 名前:星になる 投稿日:2005/10/09(日) 01:36
-
「キャプテン。」
騒がしい中、一人が手を挙げる。すると不思議と全員がそちらを向いて静かになった。
「どーした?田中ちゃん。」
手を挙げたのは二年で現チームエースの田中れいなだった。
「チーム編成ってキャプテンは言いってましたけど・・・そのチームはまだわからんとですか?」
昼間に新垣にされた質問とまったく同じだったので、やはり気になるのかと少しおかしくなった。
「いい質問だね。みんな気になるところだとは思うけど、当日の編成チームはまだ未定。実際まつーら自身も監督から聞かされてないしね。」
みんなの視線が集まるのは珍しいことではないが、少し緊張した。
「はい。じゃあ誰にでもチャンスはあるんですか?」
今度は一年生の注目選手夏焼雅が手を挙げた。
「夏焼ちゃんもいい質問!!もちろん、今回は全員が参加できるようにするからみんなにチャンスが回ってくるよ♪」
- 149 名前:星になる 投稿日:2005/10/09(日) 01:47
-
一年生が手を挙げたことが少し嬉しかった。バスケ名門校ならではの上下関係があり、普段の一年生はあまり主張したがらない。
「大会はどこでやるの?」
今度はチームの柱まで登りつめた里田が問う。
「まいちゃん、そんなのここハロ高体育館に決まってんじゃない。」
里田の簡素な質問にあっさりと答える。
「じゃあさ、いつやるの?」
もう一人のセンター、アヤカが手を挙げながら言う。
「あぁ、言わなかった?今週末の3連休に開きます。」
そう今週末は月曜日がここハロ高の創立記念日で授業がない。普通の高校生には嬉しい3連休であり、部活動のある生徒にはある意味地獄の3連休なのだ。
「3連休にかぁ〜。でも久々の試合だから楽しみなのれすっ!」
辻と加護がたわむれながらワイワイと喜んでいる。
「だけどさ、部内編成チームだったら普段の練習とあんまり変わらないね。」
一番触れてほしくないところに触れてしまった三好。
- 150 名前:星になる 投稿日:2005/10/09(日) 01:54
-
「まぁそれでも一年生が入るわけだから・・・多少は違うと思うよ。」
なんとかカバーをしてみる。
「そぉやんかぁ!!一年生と一緒に試合するなんてめったにあらへんやん。」
カバーの言葉にうまく乗っかってきた岡田。
「まぁそれもそうだね。」
どうやら三好は納得したようだ。
「ふぅ・・・セーフ。」
「なーにがセーフなんやぁ?」
「わっ!?」
背後からにょきっと出てきた部長にびっくりする。
「もー愛ちゃん、びっくりさせないでよっ〜!」
「ごめんごめん。それより・・・今セーフって言わんかった?」
「え?なんのこと?まつーらはそんなこと言ってないよ?」
「そーお?ならいいやざ。」
内心びくびくしながら返答する。本当に面倒くさい役回りだ。
「じゃあ練習開始!」
いつもの掛け声で練習が始まった。
- 151 名前:ワクワク 投稿日:2005/10/09(日) 01:55
- 星龍さま>いつもいつも感想ありがとうございます!
そして今回もまたちょっとばかしの更新ですいません(-.-;)
- 152 名前:星龍 投稿日:2005/10/09(日) 20:47
- 更新お疲れ様です。
いえいえ作者様のペースで大丈夫です。
更新は大変かと思いますが頑張ってください。
- 153 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 17:19
-
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- 154 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 17:43
-
ピピピピピッ!!
「ん〜・・・」
ピピピピピピピッ!!
「う〜・・・うるさい・・・」
ピピピピピッ・・・
バンッ!
枕元に置いてある目覚ましをおもいっきり叩く。
「ふぁぁ〜。」
時計の針が丁度、8を指してした。
「8時かぁ・・・・・・そうそう今日の集合時間は8時で・・・・
って、えぇぇぇぇ!?ち、遅刻だぁぁぁ!!」
当の本人はやっと自分がどんなに頑張っても集合時間に間に合わないことに気が付いたらしい。
「お母さん!なんで起こしてくれなかったのぉ!?」
制服に着替えながら、開けっぱなしのドアから下に叫んだ。
「いつも亜弥が起こすな言うからお母さんは起こさんかったんやんか〜!」
「今日は大事な日なのっ!!」
「そんなん知らんわ。」
階段を降りるとトーストのいい匂いがした。
- 155 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 17:49
-
「あーもう!これもらっていくから!!」
そう言って焼きたてのトーストをかじりながら玄関に向かう。
「こらっ!!朝はしっかり食べんと美人さんになれへんのやで!!」
「いってきまーす。」
パタン。
「人が急いでるのに呑気な母親だよ、まったく。」
カバンを肩にかけて、トーストを掴みながら呟く。
「はぁ・・・やばいなぁ〜。こんなときにキャプテンのまつーらが遅刻するなんて・・・急ごっ!!」
考えるのを止めてとりあえず早く着こうと足を速めた。
- 156 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 17:50
-
***
- 157 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 18:05
-
ガラガラカラッ!!
「はぁはぁ・・・す、すいません。お・・・遅れましたっ・・・」
すごいスピードで走ってきたため、ところどころ息が切れる。
走ったせいで、体が熱い。ブレザーのネクタイを緩めた。
「キャプテン!!おはようございます!」
「おはようございます!!」
一年生が着替えて、モップをかけたり、ボールを磨いたりしていた。
「おはよ。他の三年は?」
松浦の問いに、一年が一斉に一定の方を見た。
「亜弥ちゃん!!遅いやざ!」
「キャプテンが遅刻してどーすんのさ。」
そこには仁王立ちで腕を組んでいる高橋と新垣がいた。
「ご、ごめんね?寝坊して・・・」
「言い訳はいらん!」
「いらんっ!!」
高橋に続いて新垣が松浦に向かって指をさす。
「罰として、一年生と一緒に準備!!」
「えっ?まつーら先生と打ち合わせ・・・」
「なに?亜弥ちゃん反省しとらんの?」
「あっ・・・先生とは一年生の準備が終わってからにしますっ!!」
「わかればよろしい。」
- 158 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 18:27
-
「はぁぁ・・・」
部室で着替えて、扉を開ける。
「愛ちゃん怖かったぁ・・・」
いつもニコニコしている高橋がいつもとは違う笑みをこちらに向けていたときはそうとうなものだった。
「あんなの序の口ですよ?」
「うわっ!?」
「あ、私です。」
そう言って扉の横から顔を出したのは、紺野だった。
「こんちゃんかぁ〜。びっくりさせないでよぉ。」
「すいません。着替え中に入ったら悪いかなと思いまして。」
どうやら紺野は自分が出てくるのを待ってくれていたらしい。
「ありがと。で、どぉしたの?」
「あ、先生が亜弥ちゃんのこと呼んでたから知らせに。」
「あー・・・今はちょっとまずいかも。」
先ほどの高橋を思い出す。
「愛ちゃんならさっき説明しておいたから大丈夫です。」
「ホント?こんちゃんありがとぉ〜!」
思わず紺野に抱きつく。
- 159 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 18:36
-
「ですが、キャプテンたるもの遅刻というのは感心できません。なので、先生との打ち合わせが終わったら準備をやってもらうことにしましたので。」
紺野の体から手を離す。
「あ、あはは・・・ホントに?」
「はいっ!完璧ですっ!!」
「あ、ありがと・・・じゃあまつーらは先生のとこに行ってきまぁす〜・・・」
「??はいっ。」
心なしか松浦が肩を落としながら歩いているように見える。
「はぁ・・・やっぱり遅刻はするものじゃないなぁ。」
遅刻したことをよっぽど後悔しているのか、松浦は職員室まで終始、そんな独り言をもらしていた。
- 160 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 18:37
-
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- 161 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 18:45
-
「失礼します・・・」
「おっ、やっとキャプテンのおでましかいな!んっ?なんや、いつもの松浦より暗ないか?」
「なんや?松浦なんかあったんか?」
中澤と稲葉、同時に二人から心配される。
「いや、そのちょっと遅刻しまして・・・」
いつまでも隠しておくことはできないので正直に話した。
「それで愛ちゃんに怒られました。」
「あはははっ!なんやそんなことかいなっ!」
中澤が松浦の話を聞いた途端に笑いだす。
「そんなことじゃありませんよぉ。まつーら本気で怖かったんですから・・・」
「ふははは!すまんすまん。いや、愛ちゃん・・・高橋も相変わらずやなぁと思うてな。」
「なんや?高橋って昔からそんなんやったんか?」
笑いをこらえる中澤に稲葉が問う。
- 162 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 18:53
-
「ふふ。あ、あぁ。あたしが美貴の家に遊びに行ったときやねんけどな?美貴があの子と遊ぶ約束してたらしいんや。それでも美貴が来んかったもんで家まで来たんや。そしたらな、美貴は寝とって・・・そしたらもうカンカンに怒っとったわ。」
「ははは!そりゃ高橋やなくても怒ってまうやろ!」
「ですねぇ。」
稲葉に同意した松浦が横でうんうんと頷いている。
「でな、あの子が怒ってる理由はな、美貴が遅刻したことやないんやって言ってたんや。」
「えっ?」
「はぁ?じゃあなんで高橋は怒ってたんや?」
「それがな、あの子、『美貴ちゃんが来ないから事故にでもあったんじゃないかって心配したんや!!』って大声で美貴を怒鳴りつけとったわ。よー考えてみてーな。あの子ら、家隣りやねんで?それやのに高橋は心配してたんや。」
「そーなんですか。」
なんとなく、申し訳なくなって声のトーンが下がる松浦。
- 163 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 19:05
-
「まぁ要するに、あの子が本気で怒る=本気で心配してるってことや。そこんとこわかってやってな?」
「はい!!」
さっきとは違ってなんだか心が暖かい。
これはきっと愛ちゃんのおかげだろう。
「あ、そーや、裕ちゃん。あたしら用があって松浦を呼んだんやなかったか?」
「あぁ!そやったそやった!」
そのためにまつーらも来たんですけど・・・あなたたちは忘れてたんですか?
心の中で二人にツッコミを入れてみる。しかしそれを口に出すことはしなかった。
「あんな、今日の試合のことなんやけど・・・」
き、きたっ!!
なぜだか、いつものスタメン発表より数倍、胸がざわついた。
「最初のメンバーどうしよかと思ってな。」
「と言いますと?」
「対戦メンバーや。まだ実はまだ迷ってんねん。」
中澤はあはははと一つ笑い、横の稲葉も苦笑いしていた。
- 164 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 21:59
-
「あの、ゲストはどぉするんですか?」
素朴な疑問。
ゲストが来るということは自然と自分たちのポジションと兼ねて、調節しなければならない。
「あぁ、ゲストのことはまだ気にせんでええわ。とりあえず第一試合はあんたらの中で組もうとしとるしな。」
「はぁ・・・」
早くゲストが誰か知りたい。
無償にそんな想いが頭の中をグルグルと回った。
「松浦はどーしたい?」「あたしは・・・普段組まないようなメンバーでやってみたいです。」
「やっぱそうやんなぁ。あたしらもみんながどんだけ成長してんのか見てみたいしな〜。」
稲葉が「な?」と最後に中澤に問うと、中澤もそれにゆっくりと首を縦に振った。
「そうやな。レギュラーはもちろんやけど、それ以上に下の子らの実力も把握せんとな。」
- 165 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 22:08
-
中澤を最後に三人は沈黙に陥ってしまう。
まぁ無理もない。ハロー高校はバスケの名門校、それに比例するたくさんの部員がいる。
「あー、まぁあたしらで考えてみるわぁ。貴重な意見をありがとな。」
「いえ、お役に立てなくてすいません。」
「松浦の意見は尊重させてもらうよって。」
稲葉がにこっと笑い、松浦の肩をポンっと叩いた。
「失礼しましたぁ。」
「はいよぉ。」
「ありがとな。」
監督とコーチ、二人に笑顔で見送られる。
「あ・・・早く準備行こっかな!」
来るときには苦痛に感じていた試合準備。
だけど、監督の話を聞いた今、試合準備も悪くないかな。なんてことを思っちゃったりしてる。
よーく考えてみるとあたしが一年のときもそんなことやってたしね。
「なんか楽しくなってきたかも♪」
笑顔で廊下を歩くキャプテン松浦だった。
- 166 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 22:09
-
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- 167 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 22:20
-
「あ、夏焼ちゃん!それまつーらがやっとくよ。」
松浦はボールを磨く一年、夏焼雅の隣りに座ってカゴいっぱいのボールを指差した。
「え?あの、これは一年の仕事なんでキャプテンはいいですよ。」
「あ、うん。でもね、たまには一年の仕事やるのもいいかなぁと思ってね。」
「で、ですけど・・・・」
明らかにキャプテンの申し出に戸惑う夏焼。
「そっか、それじゃあ夏焼ちゃんの仕事なくなっちゃうね。」
「はい。」
申し訳なさそうに松浦を見る。
「じゃあ一緒にやろっかぁ?」
「えっ!?」
「二人でやったほうが早く終わるよ。ねっ?」
「はい。じゃあ・・・」
そういうと何回磨いたかわからないくらいボロボロの雑巾を手渡された。
「ありがと♪」
「いえ。」
- 168 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 22:40
-
一年、夏焼雅。
普段は一年らしからぬ落ち着きを持った子。
まつーらの夏焼ちゃんに対してのイメージ。まつーらだけじゃない、きっと他の子たちもそう思ってるだろう。なんとなくそんな気がした。
キュキュ。
ゴシゴシ。
規則正しくボールを磨く二人。
「夏焼ちゃん。」
「はい。」
常に淡々と答えてくる。さっきはちょっとどもってたけど。
こういうところが落ち着いてるんだよねぇ。
「先輩?」
「あ、ごめんごめん。」
「いえ、なんですか?」
「あぁ、夏焼ちゃんってさ、なんでバスケ始めたの?」
一回聞いてみたかったんだよね。
なんでこんな落ち着てる子がわざわざバスケを選んだのか。
「なんでですか?」
「うん。ほら、スポーツならいっぱいあるでしょ?バレーとか水泳とか。なのになんでいろいろある中からバスケを選んだのかなぁと思って。」
- 169 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 22:51
-
「あの・・・あんまり言わないでくださいよ?」
「うん。もーちのろんだよっ!」
どうやら彼女は初めてこの事を人に話すらしい。
「あの、実は桃子ちゃんと親戚なんですよ。」
「桃子ちゃんって嗣永ちゃんでしょ?それなら知ってるよ。」
入部当初、夏焼ちゃんと嗣永ちゃんは親戚だということを監督から聞いた。
まぁ、二人とも性格違うから言われてなかったらわからないだろうけど。
「はい。で、桃子ちゃんと私の親戚が石川さんなんですよ。」
「そっかぁ・・・・・
って石川さん!?」
「はい。」
「石川さんって卒業生の石川梨華さん!?」
「はい。」
「そ、そーだったんだ・・・」
想像もしてなかった。まさか石川の親戚が夏焼ちゃんと嗣永ちゃんなんて・・・。
- 170 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 23:06
-
「びっくりしたぁ〜。」
「よく言われます。」
誰だってびっくりするよ。
だって親戚がハロー高校出身で、しかも全国制覇のメンバーなんだよ?
「石川さんの影響でバスケ始めたの?」
これがあたしの出した結論。
「私、実は一回バスケ辞めてるんです。」
「え?」
「あ、辞めてたって言っても休部ですんだんですけど。」
「まぁたなんで休部なんかしたの?」
言うか言わまいか迷った夏焼は少し悩んだ後、自分の経緯を話し始めた。
「桃子ちゃんは石川さんに憧れてバスケ始めたんです。それで私は桃子ちゃんに誘われて・・・」
「そっか。」
「はい。でもやっぱり目標ないと続けるのってただ辛いだけじゃないですか。」
「う〜ん、確に。」
バスケだけではなく、それはなにを続けるにも必要なこと。
『目標』
これがないと人間は持続することが難しい。彼女はそれを肌で実感したのだ。
- 171 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 23:16
-
「それでバスケは辞めようって決めたんです。」
「でもさ、まだここにいるってことはなにか『目標』ができたんだよねぇ?」
ここに、ハロー高校に夏焼ちゃんがいる。
それは夏焼ちゃんがバスケを続ける『なにか』を見つけたから。
「はい。中二のときに一回部活に行かなくなって・・・そしたら石川さんから桃子ちゃんと一緒に試合見学にきてみないかって誘われたんです。」
「そのころって・・あたしたちが一年のころか。」
「そうです。」
一年のときの自分を思い出す。
あの時は本当にただガムシャラだったなぁ。
「その日、ハロー高校の試合を見て私決めたんです。」
「その試合って?」
気になった。
そこまでの決断を彼女にさせた試合がどんなものだったのか。
「エースナンバーが藤本先輩だった試合です。」
- 172 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 23:27
-
あぁ、やっぱり。
なんとなく予想していた名前が彼女のことを知らない一年から出たことにびっくりはしなかった。
「なんでかはわからないんですけど・・・あの時の藤本先輩は必死でボールを追いかけてました。ケガしてるのに・・・」
「うん・・・」
もうしばらく会っていない藤本の顔がパッと頭に浮かぶ。
「ケガしててもすごいバスケしてみんなを湧せて・・・私もあんな風になりたいって思ったんです。だから今でもここにいます。」
決心を語る彼女の目は真っ直ぐだった。
「じゃあ夏焼ちゃんの憧れは・・・」
「藤本美貴さんです。」
「そっかぁぁ〜。」
嬉しかった。
夏焼ちゃんはみきたんのことを知らないはずなのに、みきたんを・・・あのみきたんを憧れての存在として受け入れていることが。
「みきたん?みきたんはやっぱりすごいよっ。」
天井を見て、遠くで今もバスケをしているはずの彼女に言葉を贈った。
「先輩?」
「さっ、ボール磨きの続きしよっか?」
「はい。」
二人はまた、せっせとボールを磨き始めた。
- 173 名前:星になる 投稿日:2005/11/06(日) 23:59
-
「なーんかさ、亜弥ちゃん楽しそうじゃない??」
新垣の一言で他の三人も松浦を見る。
すると確に夏焼と楽しそうにボール磨きをしていた。
「確に。」
「楽しそうな顔してますね。」
「あれじゃあ罰じゃなくてただのボール磨きじゃん!」
小川が指を差して三人にアピールする。
「あんなんじゃだーめだめ!もっと罰らしい罰を・・・」
「ええんちゃう?」
「あれはあれで亜弥ちゃんのためになってるみたいだし。」
「まこっちゃん残念でしたぁ〜。」
高橋、紺野、新垣はこれ以上の罰を与える気はなかった。
「そんなぁ〜!!あたしのときはあんだけ責められたのにぃ〜!!」
「それは麻琴が遅刻常習犯に仲間入りしたからやよ。」
「そーそー。まこっちゃんは加護ちゃんと辻ちゃんに並ぶ遅刻魔だから。」
「それに比べて亜弥ちゃんは今まで皆勤賞ですから。まぁこれで完璧です。」
「あ、あさ美ちゃんまで!!」
小川はもうどうにもならないこのような状況にガックリと肩を落とした。
- 174 名前:ワクワク 投稿日:2005/11/07(月) 00:03
- いっ、一ヶ月ぶりの更新です(-_-;)
星龍さま>本当に作者ペースで書いてしまいました(苦)
今後は最低でも二週に一回は更新しようと考えているのでお許しをm(_ _)m(_ _)m
っていうかこんなノロノロ更新の駄文に読者さまはいろのだろうか…(-_-)
- 175 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/07(月) 02:28
- 大丈夫ですよー 期待していつも待ってます。
- 176 名前:星龍 投稿日:2005/11/07(月) 13:30
- 更新お疲れ様です。
全然大丈夫ですよ。
これからも楽しみに待っているので頑張ってください。
でも、無理は禁物です。
- 177 名前:星になる 投稿日:2005/11/10(木) 00:22
-
ガラガラ。
「はいはぁい!!一回集まってぇなぁ〜。」
笑顔で入ってきた中澤とその隣でなにやら大きな紙を丸めて持っている稲葉。
「集合〜!!」
二人を見た松浦が即座に集合をかける。
「はい!!」
そしてキャプテンの号令で、一斉に二人の元へ駆け寄る部員たち。
「準備はもう終わったかぁ?」
「あとは体育館のモップかけで終わります。」
監督の質問に松浦が素早く答える。
「そーか。ならみんな一旦休憩も含めてうちらの話をよーけ聞きや?」
「はいっ!」
そう言うと、中澤は稲葉に紙を広げるよう、促した。
「わかっとる、わかっとる。これ貼りたいから・・・紺野はテープ、高橋はそっちもってくれるか?」
「わかりました。」
「はいっ。」
二人は不思議に思いながらも、それぞれ命じられたことをしようと動いた。
- 178 名前:星になる 投稿日:2005/11/10(木) 00:30
-
「テープ持ってきました。」
「おっ、ありがとさん。そしたら高橋、そっち持って広げてくれ。紺野はうちらが広げたやつを落ちひんよーにテープで止めてぇな。」
「はい。」
稲葉、高橋が紙の両端を持つ。そして、稲葉は高橋に後ろへ下がるように指示する。
巻かれていた紙がだんだんと広がった。
「ん。そんじゃあ紺野、テープ。」
「はい。」
紺野が手際よく、まずは四つ角、そして他に落ちないように適度にテープを貼り終える。一方、他の部員たちはその紙に何が書いてあるのか興味有り気に見ようとソワソワしていたが、稲葉たちが作業を終えるまではなかなかその内容がわからなかった。
「おっし。二人ともありがとな。裕ちゃん、できたで〜。」
稲葉が全員を一通り見回していた中澤の肩を叩く。
「あぁ、ありがと。全員、注目!!」
中澤が声をかけると、紙を見ようとしていた部員全員が中澤の顔を見た。
- 179 名前:星になる 投稿日:2005/11/10(木) 00:39
-
「これから、ハロー高校始まって以来の大会を行う!!その大会について、あたしから一言。ここのバスケ部に所属しとるあんたららしい試合を出来るよう、全力で勝ちに行くこと。先輩やからとか、後輩やからとか、そんな遠慮は一切いらん!!これはあくまで大会なんや。いつもの試合と全く変わらん気持ちで各自が挑んでくれ。」
「はいっっ!!」
「うん、ええ返事や。そしたらまずは第1試合。チームの発表をする。呼ばれたもんは前に出てきてくれ。」
緊迫した空気が体育館全体を包む。
「なお、そこに貼ってある紙は、トーナメントやなくて総当たり戦の表だけ作ってある。名前は書いとらんから、終わったら自分たちで記入な。」
部員一人一人の顔がだんだんとこわばってくる。それほど中澤と稲葉が真剣にこの大会を計画したということだろう。
- 180 名前:星になる 投稿日:2005/11/10(木) 00:52
-
「まずはAチーム。1年、夏焼。」
「はい。」
夏焼がぎこちなく前へと出る。
「同じく1年、清水。」「は、はい。」
思わずどもってしまった清水もまた、夏焼と同じように多少ぎこちなく前に出る。
「2年、道重。」
「はぁい♪」
前の二人とは違い、嬉しそうにスキップして前に出てくる。
「3年、辻。」
「はいれす。」
辻は心なしかいつもより落ち着いたトーンで返事をすると、静かに前へ出た。
「3年、里田。」
「はい!」
里田は堂々と前に出る。
「3年、三好。」
「はははい。」
相変わらず緊張の色を隠せないシューター三好。
「3年、小川。」
「ほほ、ほいっ。」
自分の名前が呼ばれると予想していなかったのか、声が裏返ってしまう。
「以上がAチームや。今呼ばれたAチームのやつらはあっちゃんの横に並んどいて。」
Aチームの面々が一斉に稲葉の横に移動する。
- 181 名前:星になる 投稿日:2005/11/10(木) 01:01
-
「次、Bチーム。Aチームの対戦相手やな。」
Aチームで呼ばれたメンバー、そして今か今かと自分の名前を呼ばれるのを待っている部員、その様子を見守っているマネージャー陣。ここにいるすべての人が中澤に注目していた。
「1年、嗣永。」
「え?あ、はい!」
自分の名前が呼ばれたことをやっとのことで理解すると、前に出る。
「同じく1年の菅谷。」「はい。」
菅谷は他の1年に比べるとだいぶ落ち着いているようだったが、それでも緊張していることが伝わる。
「2年、亀井。」
「え、絵里呼ばれたぁ〜!」
よっぽど選ばれたことが嬉しいのか、ほんのりと顔を赤くしながら前に出てくる亀井。
「3年、加護。」
「アイアイサァ!」
この人はずいぶん楽しそうにリズム良く一歩前進する。
- 182 名前:星になる 投稿日:2005/11/10(木) 01:13
-
「3年、アヤカ。」
「オーイェス!!」
彼女らしく喜びを英語と体をフルに使ったジェスチャーで表す。
「3年、あさみ以上や。」
「はいっ!」
あさみは彼女らしく元気に返事をすると、素早く前に出てきた。
ザワザワ
部員たちがざわつき始める。
まぁ無理もない。いつものレギュラーメンバーが里田と三好、最近では活躍の場がめっきり増え始めた辻、そして準レギュラーのあさみ。これだけしかメインと呼べる選手は選ばれていない。
「あ。一個忘れとった。」
何か思い出したのか、中澤がぽんっと手を叩く。
「監督はAチームに松浦、Bチームに新垣な。」
「へっ?」
「うぇ?」
最後の最後で名指しされた二人は顔を見合わせる。
「これも経験や。それじゃあよろしくな!審判はあたしとあっちゃんでやるから心配せんでいいからな。」
笑顔で告げると、再び二人は職員室へと帰って行った。
- 183 名前:星になる 投稿日:2005/11/10(木) 12:32
-
「か、監督!!!」
出て行った二人を急いで呼び止める。
「なんや?新垣。」
少し深呼吸をして、息を整える。
「あ、あの、BチームはAチームよりひとり少ないんですけど・・・」
確に。よくよく数えるとBチームのほうが一人少なかった。
「あぁ、そーやったか。裕ちゃん、なにしてんねんな!」
「すまんすまん。ついついいつものくせでど忘れしてたわ。」
中澤は呑気にあははと笑う。
「あの・・・」
実際、一人でも少ないと戦術も変わってくる。
新垣はすでに選手としてではなく、Bチームの監督として動いていた。
「あ、そしたら・・・Bチームにみうな追加して。」
「わかりました。」
みうなの追加。
これはBチーム、そして新垣にとって大きな追加となった。
タッタッタ。
新垣は挨拶をすると、すぐさま来た道を戻る。
「あいつしっかりしとんな。」
「あぁ。」
その大きくなった背中を中澤、稲葉は嬉しそうに見ていた。
- 184 名前:星になる 投稿日:2005/11/10(木) 20:54
-
「Bチーム集合〜!!」
「はい。」
体育館に戻った新垣がBチームのメンバーを集める。
「あ!あとみうなちゃんもBチームになったからきてっ!!」
「え?あ、はいよ。」
高橋や紺野の手伝いをしようとしていたみうながぴたっと止まり、笑顔で答える。
「こんちゃん、愛ちゃんごめんね?手伝えなくなっちゃった。」
持っていたボトルをおろした。
「いいですよ。がんばって!」
「ええやざ、ええやざ!みうなちゃんもがんばってな!!」
謝るみうなを快く送り出す二人。
「うん!!じゃあ行ってきます!」
二人に手を振って元気よく走って行く。
「みうなちゃんってええ人やよね。よいしょ。」
みうなが持っていたボトルを持ち上げる。
「そうだね。いつも私たちが重い荷物持ってると一番に来てくれるもんね。」
いつもいつも、運べなくて二人が困っているときに来るのはみうなだった。
- 185 名前:星になる 投稿日:2005/11/10(木) 21:41
-
〜Aチーム〜
「よ〜し!!やるからには向こうのチームには負けないよ!」
「はいっ!」
Aチーム監督の松浦が闘志をむき出しにする。
「あやや、燃えてるのれすねぇ〜。」
「そーいう辻ちゃんも燃えてるんじゃないの?」
少し離れたところで自分たちの監督を見ていた辻と里田。
「もちろん。あいぼんに負けるわけにはいかないれす。」
いつになく真剣なオーラをかもし出す辻。
「まぁこっちのほうが有利な感じだけどね。」
にこやかに返す里田。
「ちょっーと!二人もこっちに来てよっ!!」
「はいはぁいれす。」
「ごめん、今行く!」
二人は顔を見合わせ、Aチーム面々を見渡す。
「あー、確にこっちのほうが有利れすね。」
「でしょ?まぁ監督が若干頼りない感じはするけど。選手としてはあれほど頼りになる子はいないんだけどね。」
「そこはなんとかなるれすよ。」
辻は里田より先に松浦たちの元へと向かった。
- 186 名前:星になる 投稿日:2005/11/11(金) 00:24
-
「よし、じゃあ全員集まったところで・・・スタメンどーしよっか?」
「いやいや、まっつーが監督なんだから決めてよね。」
里田がすかさず松浦につっこむ。
「あー、そうでした!!」
「いや、今思い出したのかよっ!」
バシッと軽く監督の肩を叩く。
「ごめんごめん。じゃあまずポジションごとに分けると・・・ガードが清水ちゃん。シューター、三好ちゃん、重さん。センター、まいちゃん。そんでフォワード陣がまこっちゃん、辻ちゃん、夏焼ちゃんだよね?」
やはりここはキャプテン松浦。なんの迷いもなく、全員のポジションを把握していた。
「向こうよりはこっちのチームのほうがメンバー的に有利だと思うんだ。実際、センターのまいちゃんとシューターの三好ちゃんは正規のメンバーだしね。」
「確かに。」
「そうれすね。」
「だよねぇ。」
「まぁそんな感じはしますよね。」
三年全員が揃って松浦の発言に納得する。
- 187 名前:星になる 投稿日:2005/11/11(金) 00:32
-
「あっちが必死でやってくることには変わりないんだけどね。」
最後に付け足されたキャプテンの言葉にチーム全体の空気が引き締まる。
「ってことで、まつーらは勝ちメンバーで行きたいと思います!」
「っていうかさっきまで勝ちメンバーで行く気なかったの?」
ふと浮かんだ疑問を投げかける里田。
「そんなわけなーいじゃぁん!まいちゃんも冗談きっついなぁ〜!」
「ならいいんだけどね。」
なぜか肩を下ろしてほっとするチームメイトたち。
「まずはガード。これはもう一人しかいないから・・・清水ちゃん。よろしく頼むね!」
「えぇ?わわわわ私ですか!?」
「ん?そうだよ。だって他にこのチームでガードできる子いないしさ。」
「そ、そそうですけど・・・」
高校に入ってから一度も試合に出ていない清水にとって、これはかなりのプレッシャーだった。
- 188 名前:星になる 投稿日:2005/11/11(金) 00:40
-
「大丈夫。清水ちゃんは緊張しすぎだよ?試合は自分だけがプレイするんじゃないんだから!」
そんな緊張がピークに達そうとしている清水に、キャプテンいや監督として松浦が優しく声をかけた。
「はい・・・」
「清水ちゃんが失敗しても周りに仲間がいる。そのことはぜっっったい忘れちゃダメ。」
これは松浦が三年間で得た、教訓の一つだった。
「わ、わかりました!がんばってみます!!」
「うん。そーこなくっちゃ!」
元気よく返事をしてくれた一年生が微笑ましい。
「次はシューターの位置には・・・重さん。」
「私ですかぁ?」
「そ、重さんだよ。」
「やったぁ♪」
相変わらず独特のテンションを持っている道重。
「で、センターはもちろん、まいちゃん。」
「任しといて。」
いつものクセで靴ひもを結び直しながら、里田が返事をする。
- 189 名前:星になる 投稿日:2005/11/11(金) 00:49
-
「頼んだよ。最後にフォワード陣なんだけど・・・パワーフォワードにまこっちゃん、スモールフォワードに夏焼ちゃんのメンバーでスタートね。」
「よっしゃ!!」
「はい。」
「待った待った!!ののの出番はまだなんれすか!?」
一歩前に出てきた小川、夏焼の間からにょきっと不満そうな顔で出てきた辻。
「辻ちゃんはね、まだ。でも三好ちゃんと辻ちゃんにはここぞってタイミングで出てもらうから、いつでも出れるようにしといてね?」
「わかりました。」
三好が深く深く頷く。
「・・・」
一方の辻は出たくて出たくてしょうがないのか、下を向いてすねてしまっている。
「のんつぁん。」
そんな辻を見ていた小川が彼女に近づき、肩に手を置いた。
「のんつぁんの出番はきっとくる。それまではこの小川麻琴に任せてよ〜!!」
小川らしいふにゃっとした笑顔で辻に言う。
- 190 名前:星になる 投稿日:2005/11/11(金) 00:58
-
「麻琴ぉ〜・・・」
辻は嬉しそうに肩に置かれた手を掴んだ。
「辻ちゃん、加護ちゃんと勝負したいのはわかるよ?でもね、焦っちゃいけないよ。今はまだそのときじゃないからさ。」
松浦が二人の横に立ち、二人の肩を持つと言った。
「・・・そうれすよね。あややの言う通りれす。ののはちょっと焦ってたのれす。麻琴、ののがコートにいない間、頼んだれすよ??」
「まっかせなぁい!!!」
辻と小川の拳がコツンとぶつかった。
「よーし、じゃあみんなウォームアップに入って!」
「はい!」
Aチームはなんだかんだと言いながらも、キャプテンらしく松浦がうまくまとめ、スタメンは決まった。
そして、三年から一年の各選手たちはそれぞれの役割はどうすべきなのかという考えを胸に置きながら、ウォームアップにかかって行ったのだった。
- 191 名前:星になる 投稿日:2005/11/11(金) 00:59
-
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- 192 名前:ワクワク 投稿日:2005/11/11(金) 01:03
- すこーし更新。
名無飼育さま>待ってると言っていただけと本当に嬉しいです!!これからはもうちょっと大量更新できるようにがんばりますので(>_<)
星龍さま>もういつもいつも感想いただいちゃって、本当申し訳ないです(笑)
いつも星龍さまや他の読者さまの感想を励みにがんばって書いておりますので!!
- 193 名前:星になる 投稿日:2005/12/01(木) 16:18
-
「で?向こうはもうアップ始めちゃってたけど。」
「うん。まぁあれでいいんだよ。」
「えぇ?なに?どーゆーこと?」
「まぁとりあえずこっちはこっちで作戦たてるから。みんな集まって。」
各自、アップやストレッチなどをしていたBチームのメンバーが、監督の新垣の元へと集まってくる。
「まーずは、スタメン発表ね。」
「前置きとかないなの?」
改めてBチームに呼ばれたみうなが問う。
「そーなの。ちょっと急ぎだからね。まずは・・・ガード、あさみちゃんね。」
「はいよ。」
「次、シューターは亀子。」
「絵里でよければぁ〜。」
「センターはアヤカ。」
「はいはぁい。」
「最後にパワーフォワードに加護ちゃん、スモールフォワードに菅谷ちゃん。」
「おっけ。」
「はい。」
新垣は淡々とスタメン発表を終えた。
- 194 名前:星になる 投稿日:2005/12/01(木) 16:44
-
「ますばこのメンバー。向こうはね、多分ガードに清水ちゃんだと思うんだ。」
「えっ??」
メンバー一同が監督、新垣の一言に驚く。
「だから、あさみちゃん。自分からどんどん攻めてっていいからね?」
「うん、わかった。ありがとー!」
新垣のアドバイスにあさみが深く頷く。
「それから・・・シューターは重さん。だから亀子は自分のペースを乱さないよう気を付けること。」
「はい!」
亀井も嬉しそうに頷く。
「あと、センターはどう考えてもまいちゃんだから・・・アヤカは・・・」
「オーケオーケー。ガキさんの言いたいことはわかったよぉ!」
アヤカの言葉に今度は新垣が笑って頷く。
- 195 名前:星になる 投稿日:2005/12/01(木) 17:06
-
「フォワード陣は、パワーフォワードにまこっちゃん、スモールフォワードに夏焼ちゃんだと思う。それぞれ油断はしないこと。はっきり言って、二人とも相手とは相性がいいって踏んでる。だからガンガン攻めていいよ。」
「りょーかい。」
「わかりました。」
「たーだし。その分、リバウンドは4人の中でまこっちゃんがズバ抜けて良い。そこで、加護ちゃんと菅谷ちゃんはリバウンドを気を付けて。特に菅谷ちゃん、1年生だから経験は少ない。けど、あたしは菅谷ちゃんのリバウンドをけっこう評価してるんだ。だから頑張ってね?ただね、プレッシャーを感じなくていいから。」
「はい。」
菅谷はあくまで冷静に答える。
- 196 名前:星になる 投稿日:2005/12/01(木) 17:28
-
「よしっ。」
パンパン!!
新垣が両手を叩く。
「気合い入れて勝ちいこう!!」
「おぅし!」
「はい。」
「よっしゃあ〜。」
「やっちゃいましょー!」
「はいっ!!」
「ビューティフルに勝つわよぉ!」
「やったろー!!」
「よしっ。」
こちらのチームは新垣を筆頭に、それぞれに向上心をつけて、再びコートに散っていく。
「ふぅ。疲れたぁ・・・監督ってのも楽じゃないなぁ。」
メンバーの背中を見つめながら、ひとりポツンと呟く。
「そりゃあ大変ってわかってたけどさぁ・・・」
新垣はひとりブツブツ言いながら、Bチームのベンチに向かった。
- 197 名前:星になる 投稿日:2005/12/01(木) 17:58
-
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- 198 名前:星になる 投稿日:2005/12/01(木) 18:30
-
ガラガラ。
再び体育館の扉が開く。
「も〜そろそろ試合やるでぇ。」
中澤と稲葉が笑顔で入って来た。
「集合!!」
「はいっ!」
それと同時にキャプテンの松浦が集合をかけ、部員全員が集まった。
「お〜。気合い入ってるなぁ。」
試合に選ばれたメンバーを見回して嬉しそうに微笑むコーチの稲葉。
「両チームとも、スタメンは決まったかぁ?」
中澤も楽しそうにメンバーたちを見る。
「まつーらたちはいつでもオッケィです!!」
「うちのチームも大丈夫です。」
松浦に続き、新垣も準備万端だと、監督とコーチに伝える。
- 199 名前:星になる 投稿日:2005/12/01(木) 18:52
-
―――――
―――――
―――――
―――――
「そしたら、これから試合を始める!」
「お願いします!」
両チーム整列をして、一礼する。
そして、その間に中澤と稲葉が笛を持って立つ。
「ルールは簡単や。いつもと同じルールで行う。」
「はい。」
「交代はええけど・・・ただし、両チームの監督は出たらあかんで?」
「それくらいわかってますよ〜!!」
「そんなことしませんっ!!」
両チームのベンチから、両監督がコートに向かって叫ぶ。
「アハハハ。わかってるんなら言うことないわぁ〜。」
中澤がおかしそうに腹を抱えて笑う。
「裕ちゃん、笑ってる場合ちゃうやろ?」
「あぁ、そうやったな。じゃあジャンプボーラー前へ!」
- 200 名前:星になる 投稿日:2005/12/03(土) 11:51
-
Aチームからは当然ながら里田が前へ出る。
同じようにBチームからアヤカが出てくるとBチームのメンバーはそう思っていた。
「なっ・・・」
「え・・・?」
しかしその予想は大きく外れた。
「お願いします。」
Bチームのジャンプボーラーとして出てきたのは、1年の菅谷だった。
里田はアヤカを見る。すると、アヤカは自分の役割を1年生に奪われたにも関わらず、悔しそうなそぶりなどこれっぽっちも見せることはなく、むしろ楽しそうに構えていた。
「やるな。」
「いきなりサプライズとはなぁ。」
中澤と稲葉も嬉しそうに笑っていた。
「よっし、じゃあ二人ともええな?」
「うぃす。」
「はい。」
ジャンプボーラーの二人が頷く。
「じゃあ・・・」
中澤がボールを投げようと、ヒザを曲げ、笛を口にくわえる。
- 201 名前:星になる 投稿日:2005/12/03(土) 12:04
-
ダンッ!!
ボールが宙に浮いた瞬間、里田、菅谷の両者も地を蹴ってその後を追いかける。
「もらったぁ!」
先に指先が触れ、この勝負に勝ったことを確信する里田。
「なっ・・・」
しかし、その確信も数秒で終わった。
菅谷が遅れたにも関わらず、ボールに触れたのだ。
バチッ。
焦った里田はキャッチする体制から、とっさに弾いて味方にボールを託す体制に変えた。
タンッ。
トトン。
二人ほぼ同時に着地。そしてボールが誰の手に渡ったのか、確認する。
「取ったよぉ!!」
小川の声を聞いて里田はホッと一息つく。それとは対照的に菅谷は終始無言だ。
「ふぅ・・・」
「・・・」
ボールを取った小川はガードに渡そうと声を出す。
「清っ水ちゃん!」
シュッ。
そして清水へとボールが投げられる。
- 202 名前:星になる 投稿日:2005/12/03(土) 12:12
-
パシッ。
「ははははい!!」
清水が上手いことボールを受け取った。
「いい行きましょう!」
ダムダム。
ぎこちないながらも、ドリブルをしながら指示を出す。
Aチームのメンバーはそれぞれ各場所へと散り、Bチームのメンバーもディフェンスのポジションへとつく。
「あっ・・・」
そのBチームのディフェンスの形に清水が声をもらす。
パンパン!
Bチームガードのあさみが両手を叩き、味方に声をかける。
「よっし、みんなディフェンスからだよ!!まずは一本!」
「オーケィ!!」
「はい。」
「やったるでぇ!」
「絵里も!!」
あさみのかけ声にBチームのメンバーが答える。
- 203 名前:星になる 投稿日:2005/12/03(土) 12:26
-
「よし。ここまでは予定通り。まずは・・・」
Bチームベンチに座っている新垣が微笑む。
「ボックス・ワンディフェンス。」
Bチームの陣型それは一人にマンツーマンで付き、後はゴール下で四角くディフェンス体型になるボックス・ワンと呼ばれるディフェンスだった。
「うん。いい感じ。」
新垣が座りながら両腕を組む。
「さぁ、こーいう場合はどう出るか・・・あたしだったら・・・・」
新垣はどんな場合でもまずは自分に置き換えて考える。
そこが彼女をここまで成長させたうちの一つだろう。
「あたしなら・・・じゃあ清水ちゃんなら・・・」
今度は清水の立場で考える。
新垣はとても楽しそうだった。
- 204 名前:星になる 投稿日:2005/12/03(土) 12:35
-
「ボックス・ワンだ・・・」
一方、ガード清水もボックス・ワンの体型だとようやく気づいていた。
「バック頼むよ!」
「オッケー!」
あさみの言葉にアヤカが代表して返事をする。
ダムダム。
「くっ・・・」
清水はどうしていいかわからず、とりあえずその場でドリブルをする。
「どーした?攻めないとなーんの意味もないよ?」
そんな清水にあさみが話しかける。
Bチームのボックス・ワンは、清水にあさみをマンツーマンでつけた形だった。
「つっ・・・」
自分はこんなにも焦っているのに、先輩のあさみは冷静なことにまた焦る清水。
ダムダム。
「清水ちゃん!こっち!!」
前方で頼れる先輩、里田が手を上げているのが目に入る。
- 205 名前:星になる 投稿日:2005/12/03(土) 12:44
-
「里田先輩!!」
シュッ。
迷わず里田へとパスを出す。
バッチン。
「え・・・?」
「よし。みんな走れぇ!!」
里田に渡そうとしたボールが途中であさみの手に渡る。
すると、同時にBチームの面々がいっきにゴールへ向かって走り出す。
ダダダダダ。
「速攻だ!みんな速く戻って!!」
Bチームメンバーとほぼ同時に戻っている里田が慌てて声をかける。
「は、はいっ!!」
その声に清水も反応してあさみに背を向ける。
シュ・・・
「え?」
自分の頭の上に気配を感じ、走りながら顔だけ上に向ける。
「あ・・・」
ボールだった。
ボールはどんどんと加速し、ついにはアヤカの手に渡った。
- 206 名前:星になる 投稿日:2005/12/03(土) 12:51
-
「アヤカ。」
「ナイスッ!」
パスを受けたアヤカとパスを出したあさみがアイコンタクト。
「よ〜し!」
ゴール下でシュートの格好を見せる。
バッ!
そこへ立ちはだかる里田という大きな壁。
「アヤカ、悪いけど、そう簡単にはさせないわよ。」
アヤカは改めて里田をすごいと思った。
「フフフ。まいはやっぱりすご〜いね。でも・・・」
スッ・・・
アヤカが横へとボールを差し出す。
「しまっ・・・」
里田もやっとそれに気づき、ディフェンスの手を変えようとする。
「だーからさ、油断は禁物なんだよねぇ〜。」
ボールを受けた加護がジャンプシュートを放つ。
パサッ。
そのシュートはなんの障害もなく、ゴールに入った。
- 207 名前:星になる 投稿日:2005/12/03(土) 13:01
-
「よっしゃあ!!」
「加護ちゃんベリービューティフル!」
加護とアヤカがハイタッチを交わす。
一方、ベンチでも新垣、みうな、嗣永が拍手していた。
「みんな、ナイスプレイ!!」
「ナイスです!」
みうな、嗣永がそれぞれ声援を送る。
「オッケーオッケー。それでいいよ〜。」
新垣が声をかけると、Bチームメンバー全員が新垣を見て、深く頷いた。
「Bチーム、うまくまとまってるやん。」
「あれは新垣が監督やってるからやな。」
審判をしている二人も感心するほどの新垣の統率力。
普段、試合の中でガードとしての役割をきっちり果たしている新垣だからこそ、できる技なのだろう。
「こりゃ思った以上に楽しめそうやな。」
中澤はニヤッと笑った。
- 208 名前:星になる 投稿日:2005/12/03(土) 14:41
-
ダムダム。
Aチームからのリスタート。
「す、すいません!次は一本取りましょう!」
「おっしゃ。」
「さゆにもパスしてねぇ♪」
「小川さんにまっかせなさぁい!!」
まだまだ余裕の感じられる先輩たちを見て、自分がしっかりしなくてはと焦る。
ポンッ。
そのとき、背中を軽く叩かれた。
「佐紀ちゃん、がんばろっ。」
同じ1年で、唯一Aチームの夏焼だった。
「雅ちゃん・・・」
「大丈夫。あたしもパス待ってるしさ、なにより先輩たちがいるんだから。」
普段、口数の少ない夏焼からは考えられないくらいに優しい言葉だった。
「うん・・・」
言葉では言い表せないなにかを夏焼は伝え、ゴール下へと走っていった。
- 209 名前:星になる 投稿日:2005/12/03(土) 14:49
-
ダムダム。
「ふぅ・・・よし。」
一つ、息を吐いて心を落ち着かせる。
さっきは私にあさみ先輩がマンツーマンでついた。っていうことは今度も・・・
一つの考えを持った清水は、注意深く前を見る。
「あ・・・れ?」
しかし、自分の考え、あさみがまた自分にマンツーマンでつくという結論は外れ、あさみはマンツーマンに来ていなかった。
「なんで・・・」
一度立て直した頭が予想外のことに、またも混乱し始める。
ダムダム。
しかし、その混乱した頭でなんとか必死で今の状況を掴もうと、周りのメンバーを見渡す。
- 210 名前:星になる 投稿日:2005/12/03(土) 14:59
-
大抵の場合、ガードは一番初めの陣型でディフェンスが組まれると思う。そしてそれは清水ちゃんも同じこと。
「よーし・・・」
新垣は加護がシュートを決めたとき、あさみを呼び、次の指示を出していた。
「よしよし、完璧。」
コート内のメンバーが指示通りに動いていることを確認し、微笑む。
「ガキさん、よく思いついたね。」
隣から感心しているみうなの声。
「だてにずーっとガードやってませんからね。」
いくら努力しても才能には敵わないという人がいる。
しかし、新垣はそれを大きく覆すような『努力』で才能の部分をカバーしていた。
「バスケはチーム戦で個人戦じゃない。」
新垣が1年のときの初試合で学んだことだった。
- 211 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/03(土) 15:01
- 少量更新。
あーネタなくなってきたぁ(>_<)
- 212 名前:774飼育 投稿日:2005/12/03(土) 15:50
- ネタ切れですかぁ・・・
少しずつでいいんでがんばって下さい
続き楽しみにしてます。
- 213 名前:星龍 投稿日:2005/12/03(土) 17:50
- 更新お疲れ様です。
少しずつマイペースに頑張ってください。
この話大好きなんで楽しみにしてます。
- 214 名前:名無し 投稿日:2005/12/04(日) 17:42
- 更新お疲れ様です。
ゆ〜っくりでいいですよ楽しみに待ってますんで。
- 215 名前:星になる 投稿日:2005/12/08(木) 00:32
-
「でもこれでパスが楽にできる・・・」
清水が予想していた自分にあさみがマークに付くという展開ではなかった。
「ディーフェンスね!!」
またしてもボックス・ワンディフェンスの陣型で守っているBチームのセンターアヤカが叫ぶ。
ダムダム。
「よし・・・」
一呼吸置いて、フリーでボールを持つ清水は考えた。
向こうに先制点は決められた・・・やっぱりここは・・・
ひとつの結論を導き出した若手ガードの清水はドリブルをやめ、ボールを手に持つ。
パシ。
「里田先輩!!」
シュッ!
清水から前方にいる、里田へと二度目のパスが向かってゆく。
- 216 名前:星になる 投稿日:2005/12/08(木) 00:39
-
「あっ・・・」
しかし、里田の思いもよらぬ行動に、清水は唖然とする。
「夏焼ちゃん!頼むからあのパス取って!!」
反対側にいた夏焼に里田が叫ぶ。
夏焼もびっくりして、足が動かない。
なんで?
清水はふと思った。
いつもの里田なら自分に渡されようとしているボールを絶対に逃さない。
なのに・・・
今日は違っていた。
ボールが自分へと渡る前に、自ら放棄を申し出た。
この間にもボールはどんどんと近づいてくる。
「なんで・・・・」
清水は自分が一度目のパスをミスしたから悪いのか、タイミングが合わないのかと、どこがいけなかったのか必死で考える。
ついに里田の前まで、なんの障害物もなくボールがきた。
- 217 名前:星になる 投稿日:2005/12/08(木) 00:45
-
「くっ・・・」
仕方なく里田が手を伸ばす。
しかし、里田の予想通り、それはかなわなかった。
「ダメです!」
里田よりも先にボールに触れる影。
「つっ・・・」
自分よりも一歩前にいるその人物にまんまとボールを取られた。
「絵里のなんですから!」
ボールを死守したのは亀井だった。
亀井は後ろにいる里田をチラッと見ると、ニコリと笑いかけた。
「絵里が取っちゃったから、里田先輩にボール渡りませんでしたね♪」
- 218 名前:星になる 投稿日:2005/12/08(木) 00:52
-
彼女の行動、それはまず、清水がボールを持った瞬間にチームがボックス・ワンの陣型になる。自分はというと、里田を背後からマンマーク。そして、里田にボールが向かってくるときを見計らって里田よりも一歩前に出る。
これが彼女、亀井絵里がとった行動。つまりは新垣の指示通りだ。
「菅谷ちゃん〜!」
ビュ。
前衛に走り出している菅谷へと、遠投。
パシ!
「・・・」
菅谷がジャンピングキャッチで上手いことボールをキープする。
「くっそ・・・」
先ほどは一番に戻っていた里田であったが、亀井に行く手を阻まれ、周りよりもスタートが遅れた。
「アヤカ先輩。」
シュ。
センターがいないのをいいことに、菅谷がゴール下のアヤカへとパスを出す。
- 219 名前:星になる 投稿日:2005/12/08(木) 01:00
-
「ナイス菅谷ちゃん!!」
アヤカがパスを受け取り、フリーでシュート体制に入る。
バッ!!
「させませんよ。」
アヤカとゴールのごくわずかな隙間に割り込む、一人の人物。
「おぅ!ビックリしたね〜!」
アヤカがニコやかにシュート体制のまま、相手を見る。
「くっ・・・」
タン!!
相手、夏焼がジャンプをしてアヤカのシュートを防ごうとする。
「ざ〜んねん。おっしいねぇ。」
パサッ。
夏焼が伸ばした手よりも上を、アヤカの放ったボールが通り、そのままゴールへと入っていった。
「アヤカ〜!!ナイス!!」
コツン。
アヤカとあさみが戻りながら、軽く拳を合わせる。
- 220 名前:星になる 投稿日:2005/12/08(木) 01:07
-
「・・・」
夏焼が、グッと拳を握りしめ、悔しそうにアヤカの背中を見つめる。
「あ!」
何かに気づいたのか、アヤカが笑顔で振り返る。
「夏焼ちゃん、今のけっこういい感じぃだったよ。だけど・・・あのタイミングだったら、あたしやまいちゃんくらいの身長の人は止められないよ?あとジャンプ力のある相手にも通用しない。」
アヤカが夏焼へと忠告をする。
「もし、あのレベルで止められると思ってたなら・・・夏焼ちゃんは絶対にこっちのチーム全員を止められない。」
「っ・・・」
「ファイトォね!」
唇を噛み締めている夏焼に、アヤカが笑いかけ、ディフェンスへと戻っていく。
夏焼は颯爽と遠ざかってゆくその背中を、改めて大きく感じた。
- 221 名前:星になる 投稿日:2005/12/08(木) 01:17
-
またもAチームからの再スタート。
相変わらず、清水がボールを持つ。
ティンティン。
「すす、すいません!一本・・・」
清水は連続で二回もミスしたことに後ろめたさを感じる。
一度目はあさみの実力を測りきれなかった自分。
二度目は自分のことにばかり気をかけ、里田の背後に亀井がいたことを見抜けなかった自分。
どちらも小さなミスではあるが、ガードとしては失格だった。
どうしよう・・・
自分のミスから相手の得点になっているので、一本取りにいこうと気軽に声をかけられない。
「一本取りましょー!!」
「えっ・・・?」
清水の代わりに、大声でチームに声をかけている夏焼。
「あったりまえよ!」
「次よ次!さっきのはあたしが口で言えなかったから・・・今度は言うから!」
「さゆにはいつでもパスしてね♪」
メンバーが清水や夏焼に声をかける。
- 222 名前:星になる 投稿日:2005/12/08(木) 01:26
-
「雅ちゃん・・・先輩・・・」
少し目をうるませながら、たくましい仲間たちを見る。
「佐紀ちゃん!ごめん!!今度は簡単にシュートさせないから!!」
力強く感じる夏焼の言葉。
「うん!私も!!」
Aチームにだんだんとチームワークというものが芽生え始めた。
そして、その中心にいるのは・・・
「うん!頑張ろ!」
笑顔で清水を見ている、1年の夏焼雅という若い選手だ。
ダムダム。
「はぁ・・・」
清水は自分の力を最大限に引き出すため、心を落ち着かせ、今度は冷静に周りを見る。
ティンティン。
「また・・・亀井先輩が里田先輩に付いてボックス・ワンディフェンス・・・か。」
- 223 名前:星になる 投稿日:2005/12/08(木) 01:36
-
「あれ・・・?」
自分のなにかが違うことに違和感を感じる。
「あ・・・そっか。」
今で、初の試合ということで冷静に周りを見ていなかった。
そしてなぜ自分にミスが出たのか、なんとなくではあるが、わかってきたのだ。
「清水ちゃ〜ん♪」
こちらに向かって手を振り、パスを呼ぶ道重。
シュン!
「道重先輩!お願いします!!」
フリーの道重へと、確かな手応えを感じてパスを出す。
パシ。
「ありがとっ♪」
道重が受け取ったボールを見つめ、ニコリと笑う。
「さゆは可愛いから、清水ちゃんもパスくれたんだぁ♪」
相変わらず自分一番の道重。
こんな道重ではあるが、シューターとして、確かなものを持っている。
- 224 名前:星になる 投稿日:2005/12/08(木) 01:45
-
彼女が持っているシューターとしての素質。
「させないよ!!」
加護が慌ててボックスから抜け、道重のマークに付く。
「いっちゃうもん♪」
加護がシュートを防ごうと、ジャンプをする。
「あっ・・・れ?」
しかし、いっこうにボールがくる気配はない。
タンッ。
たまらず、一度着地する。
「あ―――!!!」
着地したと同時に、低空飛行ではあるが、フニャリフニャリと変化をつけて舞っているボールを背後に見つける。
「は〜い♪」
道重が両手を高くあげ、指を三本立てる。
「うさちゃんスリー♪」
さらにその手を頭へと持ってきた。
スパッ。
「・・・・あ」
加護が悔しそうにリングから床に落ちたボールを見た。
「うっさちゃんスリ〜大成功♪」
- 225 名前:星になる 投稿日:2005/12/08(木) 01:55
-
道重が持つ、特質。
それは、シュートのときにボールの回転が普通とは違い独特で、空中に放つと、途端に変化を始めるのだ。
どんなに変化がついても、道重のシュートがゴールを外すことは少ない。
つまり、道重のシュートは、『防ぎにくくて決まりやすい』という相手とっては災難、味方にとっては好都合なのだ。
「重さん、やるでないか〜い!!」
小川が道重へと笑いかける。
「エヘヘヘ♪」
うさちゃんスリーですからと嬉しそうに答える道重。
「よーし!これで取り合えず1点差ね。」
里田が拍手しながら言った。
「清水ちゃんもナイス判断!」
「あああありがとうございますっ!」
思わぬところで話しかけられ、動揺する。
「アハハハ!佐紀ちゃん、動揺しすぎ・・・」
夏焼が横で笑っていた。
- 226 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/08(木) 02:00
- 更新しました☆
774飼育さま>本当に少しですが、更新いたしました!そしてネタがないと言ってはいましたが、なんとなく先まで見えてきましたよ(*^o^*)
星龍さま>こんな話を大好きだと言っていただけるだけで頑張れます(>_<)マイペースですが(苦笑)
名無しさま>更新に時間がかかったり、そうでなかったり…まぁかなりのマイペースですがいつも応援していただけて嬉しいです(^O^)これからも頑張って書いていきます!
- 227 名前:774飼育 投稿日:2005/12/08(木) 02:04
- 更新お疲れ様です
おぉ!!先が見えてきたとは読者にとって
うれしいことでございます。
リアルタイムで読めてちょっと嬉しいです
次回更新も楽しみにして待ってます
- 228 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 06:33
-
「おっしゃあ!!ディフェンス一本!」
チームの柱、里田がゴール下でどんと構え、メンバーに声をかける。
「ほいきたぁ!」
「うさちゃんスリー絶好調♪」
「一本です。」
「つ、次も取りましょう!」
今まで元気のなかったAチームに、だんだんと活気が出てきた。
ダム・・・・
「落ち着いてぇ〜。一本集中!」
「はい。」
「オーイェ!」
「はぁーい!」
「バシバシいこか!」
一方のBチームもやる気が全面に溢れでている。
ダムダム。
あさみがドリブルをしながら、各自のマークをチェックする。
あたしに清水ちゃん、アヤカにまいちゃん、加護ちゃんにまこっちゃん、亀井ちゃんに重さん・・・・ってことは・・・・
キュキュ!
あさみが目をむける。
- 229 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 06:42
-
するとそこには互いに足を動かして相手の動きをうかがっている二人。
「夏焼ちゃんに菅谷ちゃん・・・か・・・・」
キュッ!
夏焼が一歩、菅谷より素早く動きマークを外した。
シュッ。
その瞬間をあさみは見逃していなかった。
「夏焼ちゃん!」
パシッ。
夏焼がボールを持つ。
「きた!!」
「おぉ!?」
「あっ!!」
「お手並み拝見。」
夏焼がボールを持ったと同時にコート内にいる選手、コートの外から見守っている選手、そして監督やコーチ、ここにいる人すべての視線がいっきに夏焼へと注がれる。
ティンティン。
「・・・・」
「・・・・」
夏焼、菅谷がなんの言葉も交さず、ただただボールに集中する。
- 230 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 06:43
-
この二人が対戦するのは初めてではない。
前に一度、たった一度だけ対戦したことがあった。
- 231 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 06:59
-
――――――
――――――
――――――
――――――
「ディフェンス!!」
昨年の夏。
全国大会東京都予選、決勝。
「4番はあたしが付く!!」
そう言って相手の4番をマークしにいったのが全国大会常連で、何回か優勝経験もある名門校、光城中学3年でキャプテン兼エースで全国に名を轟かせているバスケ界ではエリートの中のエリート菅谷梨沙子だった。
ダムダム・・・・
「・・・」
そして無言でドリブルをしている彼女こそ、海南中学3年エースで背番号7番の夏焼雅だった。
海南中学は今まで勝ち上がっても二回戦止まりの超弱小チーム。それが、夏焼が入学したと同時にどんどんと勝つ回数が増えてきた。いわゆる夏焼ひとりのワンマンチームだ。
キュキュ。
菅谷が厳しく当たる。
「はっ・・・」
キュッ!
さすが全国に名を轟かせているだけのことはある、と納得するような動きだ。
- 232 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 07:09
-
ティンティン・・・
「・・・・」
そんな全国区の選手を相手に夏焼も動じず、冷静にドリブルで間合いをとる。
「なかなかやるね。」
「・・・」
この時、点差は10点、残り時間は3分程度だった。
だれもがこのワンプレイで光城中学がボールをカットし、決めて12点差で試合が終了するという結末を頭に浮かべていた。
ダムダム・・・
キュキュ。
「あっ・・・」
突如、夏焼が動き出し、菅谷のスタートが半歩遅れる。
「くっ・・・カバー!!」
菅谷の声でゴール付近にいた光城中学のセンターがカバーで夏焼に付く。
「よし!!」
あの身長差なら圧倒的に自分のチームのセンターのほうに分がある。菅谷がそう確信したそのときだった。
ダンッ!!
夏焼が不利な状況にも関わらず、シュート体制に入った。
- 233 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 07:17
-
「なっ・・・」
「ふんっ!光城のセンターをなめるのもいい加減にして・・・」
センターが馬鹿にしたように言い放つと、ボールに合わせて飛び、弾くために右手を大きく伸ばした。
スッ――・・・
「なめてんのはどっちだかね。」
夏焼が飛んだまま、上半身を後ろに傾け、シュートを放った。
シュ・・・
「あ・・・れは・・・」
菅谷はそのシュートに目を奪われた。
スパン!!
夏焼のシュートがキレイにゴールへとおさまる。
タンッ。
夏焼が何事もなかったかのように着地し、そのすぐ後に相手のセンターも着地した。
「くっそ・・・」
悔しそうに自分のヒザを叩く、センターの選手。
- 234 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 12:27
-
「フェイドアウェイ。」
夏焼は難しいシュートのひとつ、フェイドアウェイをなんなくやってみせた。
「雅ちゃんナーイス!!」
両チームの中で一番声が高いであろう、海南中学の5番嗣永桃子が嬉しそうに、夏焼へと向かっていく。
「あー・・・うん。」
そんな嗣永にクールになんとか回避している夏焼。
「・・・なんで・・・なんでよ・・・」
菅谷は中学でフェイドアウェイを打てる人物を初めて見た。
フェイドアウェイは思っているより、空中での体重移動が多く、なかなか上手くいかない。至難の技だった。
「くっ・・・」
唇を噛み締める。
まさか予選ごときでこんな悔しい思いをするとは思っていなかったのだろう。
他のメンバーを見ても、今の夏焼のシュートに唖然としていた。
- 235 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 14:17
-
「一本・・・一本決めよ!」
キャプテン兼エースとして、この嫌な空気を断ち切るべく、声をかける。
「はい!」
そんな菅谷に仲間たちも返事をした。
残り2分。
さきほどのワンプレイで終わると思っていたのでもう一度、ゴール下から自分たちのボールでスタートするとは思わなかった。
ダムダムダム。
「じっくり時間使っていこう!」
味方のガードが手をあげて声をかける。
その間に海南中学のメンバーがマンツーマンでマークに付く。
菅谷のマークは夏焼だった。
キュッ。
「4番オッケィ。」
必要以上のことは話さない性格なのだろうと容易に予想できるほどの、そっけない口調でマークに付いたことを仲間に知らせる夏焼。
- 236 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 14:28
-
(7番があたしのマーク・・・ね。)
キュ。
何度も足を動かして相手をうかがう。
今度は攻めの分、ディフェンスよりも先手を打つことができる。
タッタッタ。
「こっち!!」
夏焼のディフェンスが半歩ほど遅れたところで、パスを要求。
シュン!
「梨沙子!」
ガードも、この場面ではキャプテン兼エースである菅谷に頼るのが一番だと考えていたのか、すぐに反応してパスを出す。
パシッ。
(よし!!)
ボールをもらって前を見ると、すでに夏焼がディフェンスに戻っていた。
(やるなぁ・・・でも・・・・)
キュキュ!
ドリブルをしてスリーポイントの体制をする。
それに合わせて夏焼も低い体制から、少し高く変わる。
- 237 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 14:36
-
(きたっ!!)
夏焼が自分の動きにつられたのを見て、すかさずドリブルで抜きにかかった。
「・・・・」
(あたしのフェイントに引っ掛かるなんて思ってなかったでしょ?)
夏焼に背を向けながらそんなことを考える。マークが外れて少し油断し、ドリブルを弱めたそのときだった。
バンッ!!
「なっ!スチール・・・」
フェイントに引っ掛かっていたはずの夏焼が菅谷の手にあったボールを弾き返した。
「雅ちゃん、ナイスッ〜!」
そのこぼれ球を海南中、5番の嗣永が拾った。
(うそ・・・さっきフェイントに引っ掛かって・・・)
ボールを取られてしまったので、走りながら考える。
そしてそんな菅谷の目には、何歩か速く走り始めていた夏焼の背中が映る。
- 238 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 14:45
-
夏焼がどの選手よりも先にゴールへと向かっていた。
「雅ちゃん!!」
その夏焼に嗣永からのパスが通る。
パシッ!
ダムダムダム。
そのまま駆けていって、ダンクでもかますのだろうと思っていた。
(でも・・・無理だと思うよ?)
「させない!!」
(ほーらね。)
ゴール前に立ちはだかる光城中のセンター。おそらく彼女は都内いや全国でもトップクラスのセンターだ。
先ほどはフェイドアウェイというシュートで塞ぎきれなかったが、今回は違う。
菅谷がそう思えるほど信頼の置けるチームメイトのひとりだった。
「こいっ。」
菅谷や追いつく前にセンターが異様な威圧感を持って構える。
ピタッ。
「えっ!?」
夏焼がゴールよりかなり手前で動きを止めた。
- 239 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 14:52
-
心なしかセンターの選手も拍子抜けしている。
「しまっ・・・」
ヒュ。
菅谷が必死で手を伸ばすが、届くことはなく、ほとんどフリーの状態で夏焼がシュートを打った。
「・・・・」
パサッ。
テンテンテン・・・
ボールがゴールに吸い込まれ、そのまま床へと転がる。
菅谷がゆっくりと審判のほうを見た。
「カ、カウントスリー!」
「な・・・」
夏焼はスリーポイントラインからシュートを決めた。
点数掲示板を見ると、つい先ほどまでは二桁差あった点が、気づいたら一桁、しかも5点差とかなりの近差になっていた。
タッタッ。
シュートを決めたにも関わらず、喜びもしないで、平然とディフェンスに戻っていく海南中学エースの夏焼。
- 240 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 15:00
-
「なんなの・・・」
今まで、見たことも聞いたこともない毎回たかが一回戦負けのチーム。
そのチームのエースがこんなにも驚異なのかと、菅谷の背筋がゾクッと震え上がる。
「あたしは・・・全国区のエースなんだから・・・」
シュッ。
今度は味方のスリーポイントが放たれる。
「リバウンドォ!!」
「わかってる。」
叫ばれるのよりも早く、ゴール下でポジションを確保。
(リバウンドだけは絶対負けないんだから。)
ガツン!
ゴールリングにボールが当たったのを確認し、両チームが一斉に跳び上がる。
ダンッ!!
菅谷もその中のひとりだった。
(もらった!!)
誰よりも早くボールに手が触れる。
- 241 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 15:10
-
バチィン!!
「うわ・・・」
しかしそんな思いも、あっけなく敗れ去った。
「また7番!?」
そう菅谷がボールに触れた瞬間に、夏焼が背後からボールを床に叩き落としたのだ。
ダン!!
タンッ。
「ルーズは!?」
菅谷、夏焼の両者が地に足を着けたと同時に菅谷が叫んで振り返った。
その間に、またも夏焼が走り出した。
「取ったぁ!」
この声に菅谷が見てみると、やはりボールを持っていたのは海南中の選手だった。
「戻ってぇ!!」
光城中の誰かが叫んだと共に、いっきに反対ゴールへと駆けあがる両チームの選手たち。その中でもひとりだけ飛び抜けて前を行く選手がいた。
「みーや!!」
その選手、夏焼雅へとパスが回る。
- 242 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 15:19
-
「・・・・」
夏焼は無言でパスを受取り、ゴールへと向かった。
バコッ!!
タッタン。
その一連の動作があまりにも早く起きすぎたため、会場全体が静まり返る。
「次、ディフェンスね。」
そんな中、あくまで冷静沈着な夏焼が戻りながら声をかける。
「ダ、ダダンクだぁ―――――――!!」
今の一声で会場がいっきにヒートアップ。
「なんだアイツ!」
「海南ってこんなつよかったっけ!?」
「あの7番!!すげーな!」
いろんな所から夏焼の会話が聞こえてくる。
「なによ・・・ちょっとダンク決めただけじゃん。」
ふと菅谷が点数掲示板を見る。
今ので点差は3点とスリーポイントで同点になっていた。
- 243 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 15:28
-
ティンテン。
光城中ボールでのリスタート。
「ラストラスト!!」
ガードが人さし指を立てて、笑顔でみんなに声をかける。
残り1分。
「じっくり〜!」
(残り1分で追い付くはずがない。)
そしてさらにガードがかけた『じっくり』という言葉。
これはまさに、めいいっぱい時間を使って攻めるということだ。
つまり、どちらにしても相手の海南がこの名門、光城に追い付くことは有り得ないのだ。
「梨沙子。」
パンッ。
またもエース菅谷へとパスが託された。
ダムダム・・・
(こんな無名校に負けるわけないんだ。)
時間いっぱいを使ってシュート体制に入る。それでも確実に入るという自信が菅谷にはあった。
- 244 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 15:34
-
シュッ。
シュートを放つと同時に、夏焼が跳び上がる光景が目に入る。
しかし、ボールはまっすぐゴールへと向かっていった。
「よしっ。」
スリーポイントラインで小さくガッツポーズをする菅谷。
もう諦めたのか、菅谷の前に夏焼の姿は無かった。
ジッとゴールを見つめる。
そしてついにゴールへと吸い込まれていく・・・
ガツン!!
「なっ・・・」
キレイにゴールへ入る予定のボールがリングに当たってはじき返される。
「よぉぉぉしっ!」
そしてそのリバウンドボールを取ったのは海南のセンターだった。
残り15秒。
- 245 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 15:40
-
(・・・7番・・・7番は!?)
こんなときに目立つであろう、海南のエースを探す。
(いたっ!!)
夏焼はここまでの状況をまるですべて把握していたかのように、走ってゴールに向かっていた。
「ミーヤ!!」
時間のない海南はセンターが遠投で夏焼へとパスを出す。
ガシッ。
そのパスをジャンプして受けとる夏焼。
(マズイ!!)
それを見て菅谷が夏焼のほうへと走り出す。
残り3秒。
ヒュォ。
「あっ・・・」
しかし、時はすでに遅く、夏焼はフリーでスリーポイントを放っていた。
- 246 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 15:46
-
――――2―――
――――1・・・・
ピピッピピー!!
パサッ。
ティンテン・・・
審判の笛と、夏焼のシュートがほぼ同時に決まる。
「ゴクッ・・・・」
会場が息をのんで審判の判定を待つ。
「ノ、ノーカウントォ!!」
審判が両手をブンブンと振る。
「ワァァァ――――!!!」
「今年も光城が都代表だぁ!」
「こうじょぉ!こうじょっ!!こうじょっ!!」
会場が光城コールで包まれる。
- 247 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 15:54
-
光城の選手たちはコート中心に集まって喜びを分かち合っている。
「梨沙子ぉ!!」
「キャプテーン!」
「せんぱぁい!!」
仲間たちにもみくしゃにされながら菅谷が輪の中心から抜け出す。
「うぅ・・・・」
「負けたぁ・・・」
「グスッ・・・」
「ウワァァン・・・」
光城とは反対に、海南の選手たちがコートに泣き崩れている。
そんな中、ひとり立って天井を見上げている選手がいた。
「7番・・・」
夏焼雅だった。
彼女は他の選手とは違い、涙を流さず、強く握り拳を握っていた。
「キャプテン!!やりましたぁよ、やりましたぁ!!」
後輩が背後から抱きついてくる。
「あぁ、うん。」
後輩をなだめながら、目は海南中7番、夏焼雅を見ていた。
- 248 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 16:04
-
7番は一言も声を出さず、ただただ天をあおいでいた。
「・・・」
「整列してください。」
審判から声がかかり、センターサークル付近へと集まった。
「77対74で光城中学の勝利。」
「ありがとーございましたっ!!」
「グスッ・・・・」
元気な光城と言葉も出ないほどに泣いてしまっていて、礼しかすることの出来ない海南。
勝者と敗者はだれがどう見ても一目瞭然だった。
「よっしゃあ!!」
挨拶が終わっても、コートで歓喜の声をあげる光城メンバー。
それとは引き換えに、涙を流しながら、ポツポツとコートを去ってゆく海南。
もちろん、その中にエースである夏焼の姿もあった。
「ウワァァン!みっ・・・ヒック・・・ひやびぃちゃぁ・・・グスッ。」
7番に泣き付く海南5番の嗣永。
- 249 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 16:12
-
ポンポンッ。
夏焼が嗣永の背中を軽く叩く。
「桃子ちゃん・・・泣きすぎ。」
「だっ・・・ヒック・・・だっでぇ〜・・・」
「はいはい。悔しいよ・・・あたしだって。」
二人が並んで歩く姿をジッと見つめる菅谷。
「7番!!!」
菅谷自身もなぜ自分がこのような行動をとったのかわからない。
それでも口が勝手に動いていた。
夏焼が振り返る。
「光城が勝った。だけどマンツーマンではあたしがあなたに負けた。」
「・・・」
「だからこの勝負は次に持ち越し!」
「・・・」
7番を指さしながら、自分でもびっくりするようなことを口ばしっていた。
夏焼が少し笑みを浮かべる。
「ははっ・・・」
そして夏焼はこのコートから去って行った。
- 250 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 16:18
-
「あっ・・・・名前聞くの忘れた・・・」
相手が去った後に名前を聞き忘れたことに気づく。
「せーんぱいっ!」
「梨沙子ー?」
「キャップゥ?」
「キャプテン!」
チームメイトに手招きされて、菅谷も再び輪へと戻る。
彼女たち、光城はこの大会、全国制覇を果たした。菅谷はベストスコアラーで、ベストプレイヤー賞授賞。
エリート菅谷梨沙子
無名選手、夏焼雅
二人の選手の夏はそれぞれ幕を閉じたのだった。
- 251 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 16:34
-
――――――
――――――
――――――
――――――
ダムダム・・・
「勝負。」
菅谷がボソリと言う。それに夏焼は、小さくだが、笑った。
夏焼がゴールを見る。
(スリー!!)
視線に気づいた菅谷が跳ぶ。
ヒュ。
「えっ?」
しかし、菅谷の予想は外れ、外にいた亀井へとパスが渡る。
「シュートォ!」
スッ。
亀井が嬉しそうにシュートを放つ。
彼女の持ち味は道重とはま逆の真っ直ぐとゴールに突き刺さる正当派のキレイなシュートだ。
スパァ。
「亀井先輩ナイスです。」
夏焼が駆け寄る。
「うんっ!パス、ありがと!!」
パスをもらえたことがよっぽど嬉しかったのか、ものすごい笑顔の亀井。
- 252 名前:星になる 投稿日:2005/12/11(日) 16:42
-
「絵里、パスもらったくらいで喜びすぎっちゃ。」
亀井と夏焼をコートの外から見ていた田中がひとりぼやく。
「たーなか、亀井取られたからってそんなにすねるなよ。」
「なっ!!れーなはすねてないっちゃ!って・・・・・あぁ!」
田中が聞き覚えのある声に振り返る。
「ん?どーした?」
「ど、どーしたって・・・・なんで・・・・」
するともう一人、ひょっこりと顔を出した。
「なーんかね、ゲストなんだってさぁ。」
現れた人物が自分たちを指さす。
「ゲスト!?」
「そ。ゲストだからビップな対応でよろしく頼むよ田中くん。」
「もー!!なに言ってんの!」
「ハァハァ・・・何もランニングでここまで来ることないでしょ・・・」
「いいじゃんいいじゃん♪」
一番初めに現れた人物が呑気にアハハと笑った。
- 253 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/11(日) 16:45
- 更新しましたぁ!
774飼育さま>ほんっとにリアルタイムで読んでいたとはビックリです(‘o‘)ノ
だいたい構成は出来てきているので更新を頑張っていくだけですわぁ(笑)
- 254 名前:774飼育 投稿日:2005/12/11(日) 16:52
- 更新お疲れ様です
次回はなんだかおもしろそうな(ニヤリ
まってますよ〜
- 255 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/11(日) 16:57
- ぬぁぁ!!
現実のときに、夏焼ちゃんと菅谷ちゃんが全部逆になってる(*_*)
ほんっとすいませんm(_ _)m
- 256 名前:星龍 投稿日:2005/12/11(日) 21:48
- 更新お疲れ様です。
ゲストすっごい楽しみですね。
今回の話もすごく良かったです。
次回が楽しみです。
- 257 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:12
- 突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント「2005飼育小説大賞」
が企画されています。よろしければ一度、案内板の飼育大賞準備スレをご覧になって
いただければと思います。お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 258 名前:星になる 投稿日:2005/12/14(水) 00:37
-
「ね、ねぇ!あれって・・・」
「うわっ!え?」
ザワザワザワ。
試合中にも関わらず、二、三年生はもういないはずの顔の人がなぜここにいるのか、そして一年生は初めて見た先輩たちに魅とれる。
「お、お久しぶりです!!」
Aチームのベンチに座っていた三好がわざわざ挨拶をしにきた。
「おぉ〜。三好、久しぶり。相変わらずいいねぇ〜ここはっ!」
「はい?」
「いやぁさ、ここのバスケ部はうちらがいたころから美人揃いで・・・」
「よっすぃ!!」
「はは、はい!」
周りの人たちより1オクターブくらい高い声に肩をびくつかせる。
「よしこ・・・ばか?」
「こりてないね〜。」
他の二人も呆れたように叱られた人物を見る。
- 259 名前:星になる 投稿日:2005/12/14(水) 00:49
-
「アハハハ。まぁ今回はバスケしにきただけだから安心しなさぁい!!」
得意気な表情で三好にウィンクをする。
「は、はぁ・・・」
ピッピィ!!
その時、笛の音が体育館中に響き渡っていた。
「きりがええからちょっと中断なぁ〜!」
稲葉が笛を吹いて、試合を中断していた。
「おぉ。あんたらよー来てくれたな!忙しかったんちゃうんかぁ?」
4人の姿を懐かしいという目で見ながら、中澤が問う。
「監督に話したら、来年引き抜く逸材をぜひとも見つけてこ〜い!!って快く見送られましたよ。」
この中では一番まともであろう人物が、苦笑いしながら言った。
「ならええわ。あんたらが来てくれたことによってまたおもろくなりそーや。」
「んぁ、そりゃよかったよ〜。」
- 260 名前:星になる 投稿日:2005/12/14(水) 01:02
-
「よっし、知らんやつは少ないやろうけど・・・西鈴大学のバスケ部に今年入学した吉澤。」
中澤が吉澤の肩をポンっと叩く。
「うぃーす。西鈴の吉澤ひとみ参上〜!」
「ちわっす!!」
後輩たちが頭を下げる。
「次、同じよーに西鈴に進んだ後藤。」
今度は後藤の頭をポンっと楽しそうに叩く。
「んあ〜。ごとーです。」
「ちわっす!」
後藤がにこやかに後輩たちを見る。
「コイツはハロ高在学中に一番頼りに出来た柴田。」
柴田の両肩を押し、一歩前へと出さす中澤。
「柴田あゆみです。あたしも二人と同じ西鈴に通ってます。」
「ちわっす!」
律儀に頭を下げる柴田。彼女のくせはまだ抜けていないようだ。
「最後に、石川。こいつも西鈴や。」
「よろしくね〜♪」
いつもより控え目に手を振る。
- 261 名前:星になる 投稿日:2005/12/14(水) 01:09
-
「と、まぁ昨年卒業して西鈴大学に進んだコイツらを今回はゲストとしてここに来てもらった!」
「ゲ、ゲストーー?」
中澤から新たな知らせを聞いて、部員たちは頭が混乱している。
「つ、つまり・・・現部員も先輩たちとプレイできるってことですか?」
新垣が突然のことにビックリしながらも、嬉しそうな声で中澤に聞く。
「あったり前や!そのためにこの4人に来てもらったんやからな。」
中澤が振り返って4人を見る。
「そーいうわけでよしざーたちもバスケしたいと思いま〜す!」
いつものように呑気に笑う吉澤。
「っていうわけや。まぁとりあえず試合に戻るでぇ〜。」
中澤が元に戻るよう、部員たちを促した。
- 262 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 00:29
-
Aチームボールから試合再開。
「よっし、気合い入れて一本!!」
「はい。」
「ほ〜い!」
「ははい!」
「はぁい♪」
吉澤たち西鈴大学のメンバーが現れ、よりいっそう気合いが見えたのは里田だった。
キュキュ。
「こっち!」
里田がポストでボジション取りに成功し、ボールを呼ぶ。
ヒュッ。
「里田先輩!」
今度は1、2度目と違い、うまくパスが通った。
ダムダム!
キュ!
里田がマークのアヤカをかわし、レイアップシュートの体制に入った。
「させないよっ!」
アヤカも必死に防ごうとするが、かわされてからのディフェンスのため、里田についていくことができない。
パサッ・・・・
「おっしゃぁ!!」
シュートを決めた里田が力強くガッツポーズをする。
- 263 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 12:59
-
Bチームボールの再スタート。
ダムダム・・・
「はいよ、一本ね!」
「オッケー!!」
「了〜解!!」
「はい。」
「やっちゃいましょ!!」
あさみがドリブルをしていない左手をあげ、指を掲げる。
そして、そのあさみにBチームの面々は意気揚々と答えた。
キュキュ。
あさみに清水がマークに付く。
「ふっ・・・清水ちゃんもユーキあるね・・・」
ダム・・・
「ま、負けられないんですっ!」
「へぇ?」
「わ、私は・・・この試合にか、勝って・・・OGの先輩たち、新垣先輩やあさみ先輩みたいに・・・す、すごい選手に成りたいんですっ!!」
清水があさみとボールから目を離さずに言う。
- 264 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 13:13
-
「はははは・・・すごい人たちの中にあたしが含まれてるのは嬉しいんだけど・・・」
ダムダム・・・
あさみの右手にあったボールが左手へと持ち替えた。
キュ!!
「あ・・・!」
「そう簡単に止められるわけにはいかないんだよ。」
あさみが清水を抜いて、いっきにドリブルで前へ突き進む。
ギュッ!
しかし、ものすごい勢いであさみの足が止まる。
「くっ・・・」
「こっちだって負けられない戦いなんっすよ〜。」
にこやかな小川が、清水のカバーで、あさみに付いていた。
「清水ちゃん。加護ちゃんに付いて!」
「はははいっ!!」
小川に指示された清水が、小川とスイッチして加護に清水がマークに付く。
- 265 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 13:34
-
「まこっちゃん・・・」
「ふへへへっ。あさみちゃんをマークするなんて滅多にないけどさ・・・」
「確かにそうだね。あたしたちがポジション重なることはないし・・・」
ティンテン・・・
二人が目を合わせて、楽しそうに笑う。
「イッチョやりますか?」
「望むところってね〜。」
ダムダムダム!
あさみがドリブルを強める。
キュッ。
小川がそれに合わせてタイミングを取るように右の足を前後させる。
「あさみっ!!」
あさみと小川を横切って、パスを要求するアヤカ。
キュキュ。
「・・・」
「・・・」
ダム・・・
あさみと小川がチラリとアヤカのほうを見る。
- 266 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 13:49
-
「パスはしないんだね・・・」
「・・・」
小川があさみに目を戻し、うすら笑いを浮かべる。
そう、小川は視線を動かし、マーカーを欺くという、あさみの細やかなワザを見抜いていた。
ティンティン・・・
「まこっちゃん・・・さすが・・・」
キュッ。
「ヘヘヘヘへっ。忘れるわけないよ〜。あんだけ一緒に練習したんだからさっ。」
二人はまたも見つめ合い、微かに笑った。
- 267 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 14:02
-
――――――
――――――
――――――
――――――
ガツッ!!
「はぁはぁ・・・くそっ!!」
200本目のシュートが外れ、Tシャツで汗を拭いながら、ヒザに手をつく。
「・・・なんで・・・入んないんですかぁ!」
独り、ゴールに向かって叫ぶ。
「くっそぉ・・・」
彼女は自分の弱点でもある少し離れたところからのシュートを何本も何本も打って、練習していた。
彼女はゴール下なら、他の選手たちともやり合うことが出来る。
しかし、スリーポイントライン周辺になると、どうしてもシュートを外してしまうのだった。
テンテン・・・
もう一度、スリーポイントラインより少し中に入ったところからのシュートを試みる。
- 268 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 14:26
-
ヒュッ・・・
「・・・・」
ガッシャン!!
「あ゛ぁ゛〜!!」
またもボールがリングに弾かれる。
「ふぅ・・・手首の返し甘い。ヒザが固い。」
後ろから声が聞こえる。
「ふぁ?だ、誰っすかぁ?」
シュートを練習していた彼女、小川麻琴が後ろを振り返る。
キュッ。
「あ・・・」
小川にアドバイスを送った人物は、体育館の扉に寄りかかっていた。
「あ・・・」
「よっ。まーこっちゃん!」
「あさみちゃん・・・」
ガードのベンチメンバー、あさみであった。
タッ。
あさみが体育館内へと入ってくる。
「今のは手首の返しが甘かったんだよ。あとはヒザが固いんだっ。」
あさみがボールを拾って小川のマネをする。
- 269 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 14:50
-
ガンッ!!
「ほ〜ら・・ね?」
「・・・」
小川がじっとあさみを見る。
「だーから、もっとリラックスしてヒザと手首を柔らかく使うと・・・」
シュッ。
小川の目にあさみのキレイなシュートフォームが写る。
ボールはキレイな弧を描いていた。
パサッ・・・
テンテンテン・・・
「こんな風に入るんだよ。」
「すっご・・・」
小川は華麗なあさみのプレイにただただ魅とれていた。
「ほっ・・・」
あさみがボールを拾い、小川にパスを出す。
パンッ。
「わっと・・・」
あさみのパスにびっくりしながらも、普段そのパスを受けているせいか、小川の体は勝手に動いていた。
- 270 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 15:08
-
「練習してたんでしょ?」
「あぁ・・まぁ・・・ね。」
自分の練習は極秘のつもりでやっていたのに、あっさりとあさみにバレてしまったので、小川は思わず苦笑いを浮かべた。
「付き合うよ。」
あさみはシュートの格好をした。
「え?」
「独りでやるより、コーチがいたほうがはかどるでしょ?」
「まぁそりゃ・・・って自分からコーチ名乗り出るんっすか!」
「なんか文句でも?」
「いや、特にありませんわ。」
小川がまた、シュートを放とうと位置につく。
「すでに固いって。」
あさみが小川の固さにふふふと笑う。
「おぃす〜。」
ふうと息を吐いて、肩の力を抜く。
- 271 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 15:25
-
シャ・・・
ガシャ!!
「のわっ・・・」
「ん〜、今のはねぇ、まこっちゃんが悪い。」
「んえぇ!?」
あさみの言葉に小川がびっくりする。
「あ、いや。今のはまこっちゃんの『キモチ』がってことね。」
「キモチ・・・?」
「そ。キ・モ・チ。」
ますます小川の頭に?マークが浮かぶ。
「キモチ・・・キモチ・・・」
「まこっちゃんの場合は上手くならなきゃ上手くならなきゃって願望が現れてんだよね。」
あさみがうんうんと一人頷く。
「上手く・・・ならなきゃ・・・」
小川がシュートを放った両手を見つめる。
「まこっちゃんはさ、どうして外しちゃうのかって考えてたでしょ?」
「あ・・・」
- 272 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/15(木) 15:30
- 少し更新です(>_<)
774飼育さま>こういう感じになってます(笑)次回も更新もがんばっちゃいます(^-^)v
星龍さま>ゲストは…でしたぁ( ^_^)/
まぁここでは言わないでおきますよ(笑)
- 273 名前:774飼育 投稿日:2005/12/15(木) 15:44
- 更新お疲れ様です
いやーヤッパリ出てきましたね ・・・さん
名前はネタバレ防止のため出せませんが・・・
おもしろいですよー 次回も楽しみにしてます
- 274 名前:星龍 投稿日:2005/12/15(木) 22:17
- 更新お疲れ様です。
…さんでしたか。
楽しくなりそうですね。
これからの展開楽しみにしてます。
- 275 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 23:31
-
「今シュートを打つ瞬間、何考えてた?」
「打つ瞬間・・・」
あれやこれやと小川の頭に浮かぶ。
「あ〜・・・・入れなきゃってことかなぁ。」
自分が何を考えていたか、というのが難しくて無難な答えを出す。
「うそでしょ?」
「え・・・?」
「まこっちゃんは他のことも考えてたはずだよ?よーく思い出してみて。」
「う〜ん・・・あ・・・」
小川の記憶から数人の顔が現れる。
「あった?」
「あったあった!えっとね、まずはガキさん。」
「ガキさん?」
「うん。ほら、あっしとガキさんて中学でもチームメイトだったでしょ?それなのにさ・・・ここ二年でガキさんがすっごい成長して・・・気づいたら副キャプでレギュラー張ってるからさ、その・・・」
珍しく小川が口ごもる。
- 276 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 23:39
-
「悔しかったんだ・・・なんか置いてかれた気がして・・・」
「うん・・・」
「あとは・・・美貴・・・ちゃんかな・・・」
「え?美貴ちゃんって・・・」
思わぬ名前に目をクリクリさせて驚くあさみ。
「そ。藤本の美貴ちゃんだよぉ。美貴ちゃんはさ、バスケ始めたのあたしより三年も遅いはずなのに・・・アメリカで活躍してて・・・なんかさ、ガキさんも美貴ちゃんもあたしにはないもの持ってるなって・・・それですーごいあたしも負けてばっかじゃいけないと思った。だから・・・放課後練習以外でもこーして練習してたんだけど・・・なかなかうまくいかなくて・・・」
「うちはただでさえ部員が多いのに、そん中でもフォワードの競争率激しいもんね。」
「うん・・・。」
- 277 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 23:49
-
あさみが落ち込む小川を見て、にっこりと満面の笑みを浮かべる。
「それだよ!」
「うぇ?」
「それがまこっちゃんに、変なプレッシャーを与えちゃってんの。」
「プ・・・レッ・・・シャー?」
「うん。ほら、ガキさんは外から打つシュートってけっこういいでしょ?あとミキティは基本なんでもできるけど・・・あの子もハーフラインからスリーが打てる。これがまこっちゃんに変な固さを与えてるんだと思うよ。」
「あぁ〜・・・」
そう言われてみれば、離れたところのシュートを打つときに毎回登場してくるのは、二人のシュートシーンだった、と改めて思い出す。
「ね?」
「うん。」
「よっし。これで原因解明できたじゃぁん。」
バシ。
あさみが小川の背中を叩く。
- 278 名前:星になる 投稿日:2005/12/15(木) 23:57
-
「あー、後ね。まこっちゃんにアドバイス。」
シュートフォームに入ろうとしている小川にあさみが付け加えた。
「シュートを打つときはなーんにも考えないこと。」
あさみはこれが一番重要だ、と言った。
「なーんにもって・・・なーんにも?」
「そう、なーんにも。つまりは『無心』でシュートを打つ。」
「・・・わかった。やってみ〜ます。」
小川は半心半疑で位置につき、ドリブルをする。
ダム・・・
ダムダム・・・
そしてボールをきちんと持つと、構えた。
(シュートを打つときは・・・・)
一度目を瞑り、深く息を吐いき、また目を開けた。
(無心で・・・)
シュ・・・
(シュートを打つ!)
- 279 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/16(金) 00:00
- 気まぐれにちょいと更新(苦笑)
774飼育さま>ネタバレ防止サンクスです( ^_^)/あ、でも作者はファミマかセンブ派ですが・・・なにか?(笑)
星龍さま>これからまだまだまぁだ、あんなことやこんなこと!?が起こっちゃいますからぁw(^o^)w笑
- 280 名前:774飼育 投稿日:2005/12/16(金) 00:05
- チェックしてますよぉ〜
更新お疲れ様です。
これからどう成長するのかちょっとだけ期待・・・
次の更新も楽しみにしてます
- 281 名前:星になる 投稿日:2005/12/16(金) 13:51
-
ガンッ!!
(やっぱり・・・)
バックボードに当たったボールから目を離し、下を向いてしまう小川。
パサッ・・・
「んぇ・・・?」
ネットの音にもう一度、顔を上げる。
テンテンテン・・・
体育館に一つのバスケットボールが転々と転がる。
「は・・・は・・・」
「だから言ったでしょ?」
あさみが満足そうに小川を見る。
「入ったぁ――――――!!!!」
小川がピョンピョンと飛び跳ね、その場で喜ぶ。
「入ったよ、入った入った!!!あさみちゃん見た!?」
今度はあさみのところへと駆け寄る。
「見たよ。」
「あたしが打ったシュートが入ったんだよね!?そうっすよね!?」
「うん。」
- 282 名前:星龍 投稿日:2005/12/16(金) 13:54
- 更新お疲れ様です。
自分もバスケやってるんで今回の話もすごく納得させられます。
これからこの人たちの成長も楽しみになりましたね。
- 283 名前:星になる 投稿日:2005/12/16(金) 14:09
-
「マジだぁ〜!!!マジであたしがシュート決めたぁ!!!!」
「フフフフッ・・・うん。そうだね。」
小川があさみの手を取り、ブンブンと振る。
「やったよ!!やったぁ――――!」
小川は、あさみの手を離し、天井に高々とガッツポーズをした。
ガラガラ・・・
「オー、イチバン乗りだと思ったのに・・・先約がいましたかぁ〜。」
背の高い、バスケ部部員らしい少女が笑顔で入ってきた。
「あー!!!!アヤカぁ〜!!」
ガバッ!
「ワァオ!マコトォ〜?」
抱きついてきた小川を不思議そうに見下ろすアヤカ。
- 284 名前:星になる 投稿日:2005/12/16(金) 14:19
-
「あっしのシュートがね、入ったんっすよ!!!!」
小川がパァと犬のような笑顔を、自分より上にあるアヤカに見せた。
「オー!!それ本当ぉ?」
「本当本当!!ね、あさみちゃん?」
今度はあさみに笑いかける。
「まぁね。たった今一本入れたところだけど。」
あさみが呆れたように、首を左右に振る。
しかし、その表情はどこか微笑ましそうだった。
「やったぁね!!」
「うん!!!」
「で、なんであさみがここにいるのぉ?」
不思議そうにあさみを見るアヤカ。
「ん?あー、実はあたしも練習しよっかなぁ〜と思って来たんだ。だけどまこっちゃんに先越されてたから・・・まこっちゃんの練習に付き合ってたんだ。」
- 285 名前:星になる 投稿日:2005/12/16(金) 14:32
-
「だったら、今度は三人で練習しますかぁ〜!」
アヤカがあさみの側にあったボールを拾い、指の上でクルクルと回してみせる。
「やりますかぁ。」
「やりましょ!やりましょ!!」
それから
彼女たちは毎日毎日、飽きることもなく、それぞれのレベルを上げるような練習をしてきた。
この練習は、控えのメンバーだから分かり合え、控えのメンバーだからこそ、同じ悔しさを味わっている仲間だからこそ出来る練習だった。
――――――
――――――
――――――
――――――
- 286 名前:星になる 投稿日:2005/12/16(金) 14:50
-
キュキュッ!!
「まだまだぁ!!」
小川の雄叫びが体育館に響く。
「うぉ・・・・」
一度抜いたはずの小川が、また前に立ちはだかる。
「簡単には行かせないっすよぉ!」
小川の目がキラキラと光る。
(あのときの目だ・・・)
あさみは、ふと、小川の目があの時の、シュートを初めて決めた時の目と同じだ、と思った。
「ヘヘヘへ・・・負けてらんないも〜ん、あさみちゃんには。」
「あたしだって、負けらんないから。」
ダムダムダム・・・
あさみが両手交互にボールを持ち替えながら、ドリブルをする。
ダム・・・
キュ!!
「うぉ!?」
右手にボールが来た瞬間、あさみが動いた。
- 287 名前:星になる 投稿日:2005/12/16(金) 15:13
-
ダムダム!!
キキュッ!
「まだまだぁ〜!」
小川の雄叫びが体育館に響く。
ダムダム・・・
一度抜いたはずの小川が再びあさみの前に立ちはだかる。
彼女は、息を切らしながらも必死であさみに喰らい付く。
「こっか・・・ら・・・えっ?」
ヒュ・・・
あさみが後ろに腕を回し、パスを出した。
「のわあぁぁーー!!やられたぁ!」
小川がパスに反応できずに叫ぶ。
「先輩ナイスです!!」
パスの先にいたのはBチームのシューター、亀井だった。
「亀井ちゃん・・・いけっ。」
あさみがパスを出した後に、微かに微笑む。
- 288 名前:星になる 投稿日:2005/12/16(金) 15:36
-
キュッ。
「絵里にはさせないも〜ん!!」
「あっ!さゆ!」
パスをもらった亀井のマークに道重がつく。
ダムダム・・・
それを見た亀井が、ドリブルで左右細かく動く。
「さゆには勝てないの〜♪」
「そ〜んなことないもんっ!」
亀井が意地になってドリブルを止める。
「ちょ・・・ちょっと・・・亀井ちゃん・・・」
加護が思わず駆け寄る。
「絵里は単純なの〜。」
「も〜怒った!!さゆなんかにそんなこと言われる筋合いはないもん!」
亀井がシュートのフォームを見せる。
「あっちゃ〜・・・」
加護が亀井の行動に、渋い顔をした。
- 289 名前:星になる 投稿日:2005/12/16(金) 15:57
-
「絵里のシュートはさゆが止めるちゃうも〜ん!」
タンッ。
道重が亀井の動作に合わせて、ブロックに跳ぶ。
ビッ・・・
「えっ・・・?」
「もうその手にはかからないも〜ん。」
亀井がシュート姿勢から、後方へとバックパスを出した。
「ヘヘェンだぁ!」
亀井が着地する途中で微笑む。
パシッ。
「ナイスです。」
誰もが亀井の予想外のパスに、唖然としていた。
しかし、その中で二人、唯一パスに反応した者たちがいた。
キュッ。
キュキュ。
二つの足音が響く。
「よく反応したね。」
「そっちこそ。」
二人が黙って見つめ合う。
- 290 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/16(金) 16:02
- すっくなぁ更新(苦笑)
774飼育さま>成長…ですかぁ〜(^o^)ある意味、キーポイントですねぇ(笑)
星龍さま>バスケやってる方に読んでいただいてると思うと緊張します(^_^;)
- 291 名前:774飼育 投稿日:2005/12/16(金) 16:14
- 少なくてもうれしいです
少量でもいいんでゆっくり書いてください
次回も楽しみにしてます
- 292 名前:ななし 投稿日:2005/12/16(金) 20:25
- 更新乙です。
おぉ??いい感じに止めてくれちゃいましたねw
そんなわけで楽しみに次回更新を待ってます。
- 293 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 00:10
-
ダムダム・・・
亀井のパスに反応したのは・・・
「勝負。」
「・・・」
1年の菅谷、そして同学年の夏焼だった。
ダム・・・
菅谷が慎重に間合いを取って、様子をうかがう。
キュ・・・
一方、夏焼も自分のリズムを崩されないよう、細心の注意をはらう。
「2回目の・・・勝負だね。」
ダム・・・
「・・・」
「今の菅谷は中学のころとは・・・全然違うんだから。」
自分にいい聞かせているのか、夏焼に注意しているのかわからないが、菅谷は呟いた。
「知ってる。」
キュッ。
そんな菅谷に夏焼はたった一言で返す。それほどバスケットに集中しているのであろう。
- 294 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 00:18
-
ダンッ・・・
菅谷のドリブルが一瞬にして、力強くなった。
キュッキュ!
菅谷に合わせて、夏焼のマークもきつくなる。
「菅谷ちゃん!へいっ!」
菅谷たちの側を通ったあさみがボールを呼ぶ。
バッ・・・
「させない。」
夏焼があさみに気づいて、パスコースを防ぐ。
キュッ。
ダムダムダム。
「くっ!?」
しかし、夏焼の読みは外れ、菅谷はパスフェイクを入れただけで、夏焼がずれてほんの少し出来た隙間からドリブルでいっきに前進する。
「ヘルプお願いします!」
「もう付いてるって!」
菅谷にヘルプで里田が付いた。
「中学よりパワーアップしてるんだ。」
菅谷が一言呟きながらシュートフォームに入る。
- 295 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 00:24
-
ダンッ!!
菅谷にシュートのタイミングに合わせて里田も跳ぶ。
「あたしのマークでシュート打とうなんて・・・まだまだはやぁい!!」
菅谷の前に大きな大きな、里田という壁があった。
「・・・よし。」
シュッ。
「んな・・・バックパス!?」
菅谷のシュートフォームはフェイクだったのだ。
パシッ!
「ナイス♪」
「いっちゃってください。」
「絵里に任せなさぁい♪」
菅谷のパスを受け取っていたのは、Bチームのシューター亀井絵里、彼女だった。
スッ・・・
機械的な彼女のシュートフォームから、ボールが放たれる。
シュ・・・
- 296 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 00:33
-
ボールはキレイに弧を描いてゴールへと向かって行く。
「よっし♪」
亀井は入ったと確信し、ガッツポーズと笑顔を見せる。
バンッ!!
「えぇ?」
しかしそんな亀井の確信も、ほんの数秒で敗れ去った。
ダンッ。
「夏焼ちゃん!?」
そう、亀井の完璧なスリーポイントシュートを、夏焼がものすごい跳躍力で、弾き返していた。
パシッ。
「ソッコォ!!」
ボールを拾った小川が即座に前方へと投げる。
ビッ!!!
ダダダダダダ!
それに合わせてチーム関係なく、ボールに向かって走り出す選手たち。
- 297 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 00:36
-
そして
最前線には・・・
パシッ。
「よっしゃぁ!!夏焼ちゃん、行っちゃえ〜!」
夏焼雅がいた。
Aチーム監督の松浦が叫ぶ。
キュッ!!
「させるかぁ〜!」
夏焼が着くより先に、アヤカがゴール下に戻っていた。
- 298 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 00:42
-
「アヤカの戻りが速い!!」
またも松浦が叫ぶ。
ダムダム・・・
夏焼も松浦の叫ぶ声が聞こえていたのだろう。チラリとアヤカを見たが、気にせずドリブルの勢いを弱めなかった。
ダムダム!
「突っ込んでくるなんて・・・」
ダンッ!!
タンッ!
2人がほぼ同時に跳ぶ。
「あまーい!!!」
またも夏焼の前にアヤカが立ちはだかる。先ほどの場面とは立場が逆だった。
「・・・・」
夏焼はアヤカに怯むことなく、ゴールだけを見据える。
- 299 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 00:54
-
夏焼のココロはただただゴールに飢えていた。
ガシッ。
アヤカの体と夏焼の体がぶつかる。
「このっ!」
アヤカがファウル覚悟で夏焼を止めにいった。
フワッ。
ボールが宙に浮き、夏焼の体が後ろへと流れる。
ドンッ!!
そのまま夏焼は尻餅をついて倒れた。
一方のワザとファウルしたアヤカも着地する。
ピッピピーー!!
「ディフェンスファウル。Bチーム、5番!」
パサッ。
「え・・・?」
手を挙げようとしたアヤカが後ろからした音に、思わず振り返る。
「バスケットカウントワンスロー!!」
アヤカが再び審判の中澤を見ると、指は2点のカウントとなっていた。
- 300 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 01:00
-
座ったままの夏焼が小さく拳を握る。
グッ・・・
「なんで・・・シュートフォームは完全に・・・崩れてたのに・・・」
アヤカはただ呆然としていた。
センターとして、ここで1年の夏焼にカウンターをくらわせるのは避けたい。
そう判断したアヤカは迷わずファウルを選んだ。
勢い付けて2点失うより、ファウルで勢いを止める。
アヤカな中では完全なシナリオが出来上がっていた。にも関わらず、夏焼はそのシナリオを崩したうえに、勢いも点も失わなかった。
「雅ちゃん、大丈夫?」
「うん。」
清水に手を借りて、立ち上がる夏焼をジッと見つめる。
- 301 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 01:07
-
「やるな、アイツ。」
吉澤は、フリースローラインに立っている夏焼を真剣な瞳で見る。
「うん。いい線いってるねぇ、あの子。」
後藤も嬉しそうに笑いながら、吉澤に同意する。
「・・・似てる。」
「しばちゃん?」
柴田の言葉に石川が不思議そうに問う。
「似てるよ、あの目、あのプレー。いや、でもそんなはずは・・・」
「んぁ?しばちゃんどーしたのぉ?」
独りで呟いている柴田に、後藤も心配そうに横にいる柴田を見た。
「似てるよ。」
「なにがぁ?」
「あの1年生。」
柴田がフリースローを決めて、ディフェンスに戻っていく夏焼を指さした。
- 302 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 01:13
-
「だ、か、ら!あの1年生がダレに似てるって言うの!?」
全くわからないのか、石川が柴田を急かす。
「いや、だからね。梨華ちゃん。あの1年生のプレー・・・」
「藤本・・・だな。」
コートで走り回る夏焼から目を離さず、吉澤が言う。
「美貴・・・ちゃん?」
藤本の名前を聞き、石川も夏焼へと視線を走らせる。
「んぁ・・・」
後藤もやっと柴田の言いたいことを理解したのか、コートへと目を戻す。
ダダダダダダ。
キュキュ。
ダムダムダム!
4人は夏焼をしばらく観察していた。
- 303 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 01:20
-
「荒削りだけどさ・・・さっきのブロックショットといい、シュートといい藤本のプレースタイルにそっくりだよ。あの子。」
柴田が再び話しだす。
「確にな。まだ1年だからぎこちない部分が目立つけど・・・所々で藤本にかぶる。」
柴田の意見にいつもはおちゃらけている吉澤も頷く。
「あの子、いい動きしてるよねぇ。ホンット荒削りだけど。」
後藤も納得したようだ。
「うーん・・・美貴ちゃんは比べものにならないほど上手いけど・・・アノ1年生も美貴ちゃんみたいになれる素質はありそうかも。」
石川も夏焼のプレーがどことなく懐かしく感じていた。
- 304 名前:星になる 投稿日:2005/12/25(日) 01:28
-
キュッ!!
「さぁ、こっからこっから!ディフェンス一本止めるよ!!」
パンパン!
里田が手を叩いて、チーム全体のテンションを高める。
「おいっす!」
「はいっ♪」
「よっし!やりましょう!!」
「はい。」
Bチームにやや押され気味だったAチームが、夏焼のここイチバンのプレイで勢いづいた。
「まこっちゃん、あさみチェック!清水ちゃんは加護ちゃん!」
「任せてよ!」
「はいっ!」
先ほどまで、清水があさみで小川が加護のマークだったが、落ち着いている里田がここにきて身長を考えてスイッチさせた。
「重さんと夏焼ちゃんはさっきと同じで2人のチェックね!」
「はぁい♪」
「はい。」
- 305 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/25(日) 01:31
- まだまだクリスマス♪更新です( ^_^)/
774飼育さま>少量更新ですが…また近々大量更新するつもりなので、お許しを(>_<)
ななしさま>いい感じに始めちゃいましたよ?(笑)
なかなか試合自体は進んでませんがね((((((((^_^;)
- 306 名前:774飼育 投稿日:2005/12/25(日) 01:35
- ナヌッ 近々大量更新ですか・・・
楽しみにしてますよ(ニヤリ
あぁ続きが楽しみだねぇ・・・
- 307 名前:星龍 投稿日:2005/12/25(日) 10:47
- 更新お疲れ様です。
この試合すっごい面白いです。
大量更新楽しみにしてます。
お体に気をつけて頑張ってください。
- 308 名前:星になる 投稿日:2006/01/01(日) 23:43
-
石川は自分の親戚、夏焼雅があの『藤本美貴』に似ていると言われたことに内心すごく驚いたが、よくよく考えてみると、そこまで驚くようなことではなかった。
そーいえばあの子は昔っから負けず嫌いだったっけ・・・
桃子ちゃんと雅ちゃんは昔から正反対な二人。
石川自身も親戚の二人のタイプが違うことに気がついていた。
そして、石川が特にそれを感じていたのは、夏焼のほうだった。
「桃子ちゃんはどっちかっていうとあたしタイプなんだけどなあ〜・・・。」
人懐っこく、自分から話すような明るい嗣永は、どこからどう見ても自分の親戚ということが一目でわかる。
じゃあ雅ちゃんは・・・・?
これといって自分との共通点がみつからない。
- 309 名前:星になる 投稿日:2006/01/01(日) 23:44
-
「あ・・・」
ひとつ
たったひとつだけだが、思い当たるふしがあった。
「負けず嫌いなとこがあるじゃん。」
負けず嫌いなところなら誰にも負けない自身がある石川。
そして、試合の合間に見せる夏焼の顔に心当たりがあった。
「肝心なとこを忘れるとこだったあ〜。」
もう一度、試合中の夏焼へと目を向ける。
「美貴ちゃん・・・か。」
- 310 名前:星になる 投稿日:2006/01/01(日) 23:44
-
言われてみれば、自分より彼女のほうが共通するところが多い気がする。
美貴ちゃんも昔から負けず嫌いだった。
どんなときだって・・・・
美貴ちゃんは負けなかった。
それに美貴ちゃんは・・・・
優しかった。
強さと優しさを兼ね備えた人
それが石川にとっての『藤本美貴』だった。
「意外と雅ちゃんは美貴ちゃんとのほうが似てるかもね・・・。」
コートをところ狭しと駆け回る親戚を見つめながら微笑む。
- 311 名前:星になる 投稿日:2006/01/01(日) 23:45
-
「梨華ちゃん、さっきから誰のこと言ってるの?」
横にいた柴田が石川に尋ねる。
「ん〜?あの子のこと。」
例の1年生で自分の親戚、夏焼を指差す。
「なに?梨華ちゃん、あの子のこと知ってるの?」
珍しく自分と柴田の立場が逆転したので、優越感に浸る。
「んふふふ・・・・」
「り、梨華ちゃん?」
にやける石川を見て、柴田が奇妙なものを見るような視線を送る。
そんな柴田を知ってか知らずか、石川が話を続けた。
「しばちゃん。」
「ん?」
「あの子ね・・・」
「なに?あの1年生がどうかした?」
柴田は、まだ石川を、奇妙だという目で見ていた。
- 312 名前:星になる 投稿日:2006/01/01(日) 23:46
-
「あたしの親戚。」
「は?」
「だーから!あの1年生、夏焼雅ちゃんはあたしのし・ん・せ・き!!!」
「はああああああ!?」
石川のあまりに場にふさわしくない発言に、柴田が今まで出したことのないような声を発する。
「えへへ!!驚いた?」
予想以上に柴田の反応がよかったために、少し誇らしくなる。
- 313 名前:星になる 投稿日:2006/01/01(日) 23:47
-
「いや、驚いたとかそういうレベルじゃないと思うけど・・・・。」
「そんなに?」
「そりゃあ・・・ね。まさか梨華ちゃんの親戚がハロ高に入学してるって時点でビックリなのに・・・さらにその子がバスケ部の後輩になったなんて聞いたらさ、驚きも通り越すって。」
石川の何気ない一言にいつも振り回されてしまう柴田。
しかし、今回だけはいつもと『レベル』が違っていた。
「あとね、Bチームのベンチに座ってる1年の子もあたしの親戚。」
「ま、マジで・・・?」
「やだなあ〜しばちゃん!あたしはこんなところでウソはつかないよ〜!」
確かに石川はウソをつくのが下手だった。
「あははは・・・・じゃあホントなんだ・・・。」
柴田が安心したような、呆れたような、なんともいえない笑みを浮かべる。
- 314 名前:星になる 投稿日:2006/01/01(日) 23:48
- 「しばちゃん、信じてる?」
「信じてるもなにも・・・信じるしかないでしょ?」
「さっすがしばちゃん!!」
「はいはい、どーも。」
抱きついてくる石川を渋々受け入れながら、ひとつため息。
「はぁ・・・・」
普段から唐突なことを言い始める石川。
そんな石川にいつも付き合わせられるのが柴田の役目。この役目は石川が近所に引っ越して来て以来、小学校、中学校、高校、そして現在と、四人の中で決められた分担をこなしてきた。
梨華ちゃんはなんだかんだ言われても可愛がられキャラ。
ごっちんは天然で場の空気を和やかにしてくれる子。
よっすぃはみんなを支えてくれる、いわば大黒柱。
- 315 名前:星になる 投稿日:2006/01/01(日) 23:48
- じゃぁ・・・
私は・・・?
ふとそんなことを考えた時期があった。彼女なりの悩み。それは、自分がなんの取柄ない、いたって普通の人間だということだった。
そんな中、ある日突然確立された自分のポジション。彼女はこれを守り抜くことに必死だった。必死になりすぎて周りが見えなくなるときもあった。
そんなとき
必ず相談に乗ってくれたよね?
柴田は懐かしい高校時代のことを思い返していた。
今でもハッキリ覚えてる。
そう、あれは熱い夏の日だった・・・
- 316 名前:星になる 投稿日:2006/01/01(日) 23:49
-
****
- 317 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 00:32
-
「あーあ・・・。」
放心状態になった柴田が呆然と空を見上げる。
「やっぱここの空は高いねぇ・・・。」
高校3年の夏のある日、柴田あゆみは屋上のフェンスに寄りかかりながら、ただただ空を見つめていた。
「・・・きっついよ〜・・・。」
右手に握っていたコーヒー牛乳のパックをギュッと潰す。
「・・・あたし・・・どーしたらいいの?」
空に向かって話しかける。
悩んだときにはこうするしか彼女には思いつかなかった。
「あたし・・・もう無理だよ・・・。」
涙を流しそうになりながらも、そこは彼女のプライドが許さなかったのだろう。代わりに、コーヒー牛乳のパックがさらに小さくなった。
- 318 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 00:33
-
「好きな子を応援なんてさ・・・」
「あたしには無理だよ・・・」
もともと自分の感情を表に出すほうではない柴田は、今まで誰にも知られることなく、彼女のことを想い続けていた。
「ほんと・・・ムリ・・・。」
柴田の顔が苦しそうに歪む。
「はぁ・・・。」
両手を大きく広げる。
「でもな・・・」
やっぱり思い返すと、結局は自分がこの役目を捨ててしまったら、何も残らないだろうと思った。
- 319 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 00:35
-
「あ、こここんにちは!!!!」
- 320 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 00:36
-
屋上のドアから大きな挨拶が聞こえる。
「あ・・・。」
昼休みにこんなところに来るのは自分だけだ、と思っていた柴田は絶句する。
「ど、どうも・・・。」
一方、挨拶をしたのはいいものの柴田の笑顔が明らかに引きつっているため、彼女もどうしていいかわからず、その場で立ちつくしていた。
「こんにちは、こんこん。」
柴田が、紺野に向かって挨拶を返した。
「お邪魔でしたよね・・・あ、私は教室に帰り・・・」
「ん、こっちいいよ?こんこんさえよければ・・・だけどね。」
帰ろうとする紺野に、柴田は自分の座っている隣をぽんぽんと叩き、ここにくるように促した。
- 321 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 00:39
-
今思うとなぜ彼女を呼び止めたのかわからない。
ただ・・・
誰かに聞いて欲しかったんだと思う。
今までずっと
ずっと・・・・
溜め込んできていた
あたしのキモチを。
聞いて欲しかったんだ・・・。
- 322 名前:ワクワク 投稿日:2006/01/02(月) 00:47
- あけましておめでとうございます(*^o^*)
今年初更新はみなさんが期待されていた『大量』ではありません((((((((^_^;)
774飼育さま>今回の更新はいつもどーりちょこっと更新ですけど…なにか?(苦笑)
星龍さま>試合中ではありますが、過去のお話もちょこっと入れてみてます(^。^;)どうでしょうか?
読者のみなさまにとってよい年でありますよーに(>_<)
- 323 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 01:31
-
「じゃあ・・・失礼します。」
「はい、どーぞ。」
ぎこちない動作で柴田の隣に座る紺野。そんな紺野を見ながら柴田は微笑んだ。
「こんこんっていつもここに来てるの?」
「い、いえ!私は今日、偶然ここに来ただけです。」
「そっかぁ・・・」
「柴田先輩はいつもここに?」
かけているメガネをクイッと上げて、紺野が柴田に質問をした。
「うーうん。あたしはたまに。」
「たまに・・・ですか?」
「そ、たまに。なんとなくなんだけどさ、ここから見える空ってあたしと似てるなぁって思うんだよね。」
柴田がさっきのように空を見上げる。
「先輩と空・・・ですか?」
柴田に続いて紺野も空を見る。
- 324 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 01:38
-
「こっから真上の空見る人ってさ・・・あんまいないんだよ?」
柴田は知っていた。
屋上に出入りする人間は自分を含めたごくわずかしかいないことを。
「多分あたしくらいだよ。ここから真上の空見るのは・・・。」
ここに来る人間はだいたい決まっている。
ひとつはいわゆる『不良』
もうひとつは『サボリ』
だいたいはこんなものだった。
だから、空をまともに見ているのはきっと自分だけだろうと感じていた。
「先輩・・・なにか悩んでるんですか?」
「へ・・・?」
突然のことで、頭が真っ白になってしまう。
- 325 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 01:45
-
「あ、その、先輩らしくないなって思って・・・間違っていたらすいません。」
紺野の真面目に謝る顔を見て、柴田が苦笑いする。
「・・・んこんには敵わないなぁ・・・。」
勘が鋭いというのはこういうことか
と思う。
「こんこんさ・・・」
「はい。」
「ここから空、見たことある?」
思いきって後輩に質問を持ちかける。
「えっと・・・」
「ないんだ?」
「はい・・・」
柴田に気を遣っていたのか、紺野は素直に、はいと答えず、少し考えてからはいと答えた。
「やっぱりね。こんなとこから誰も空なんか見ないって。」
自分が見ているにも関わらず、一般論を述べる柴田。
- 326 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 01:53
-
「だからかな。あたし、ここの空に共感しちゃうんだよね。」
「え・・・?」
柴田の言っていることが、イマイチよく理解できないでいる紺野。
「空と先輩・・・似てる・・・ですか?」
「アハハ。まぁこんこんにはわかんないかもね。」
単語しか並べられないでいる後輩がおかしくて、思わず笑ってしまう。
「この空みたいにさ、あたしも誰からも見られてないんだぁ・・・ってね。」
「先輩・・・」
「ほら、あたしたちの代ってさ、よっすぃやごっちんそれに梨華ちゃんみたいな秀でた人たちがいてさ、あたし全然フツーの人だから目立たないな・・・って。」
別に目立ちたい訳じゃない。
ただ・・・
誰かに構って欲しかった。
- 327 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 02:01
-
「ほら、ここの空もさ、いっつも存在してるのに人は気にも止めないでしょ?」
自分で言っていても悲しいのか、柴田が苦しそうに笑う。
「・・・」
「あたしもそう。いつも存在してるのに・・・あの子は・・・梨華ちゃんはあたしのことなんか気にも止めてないんだ。」
柴田の脳裏に石川の笑顔が浮かぶ。
「あたしたち4人の中で、あたしだけが個性なくてね。」
「・・・」
紺野はひたすら、柴田の発する言葉を聞いていた。
「いつからかな。あたしのキャラは『優等生でまとめ役』ってなっちゃってたんだ・・・。」
彼女のキャラクターは知らず知らずのうちに定着していた。
- 328 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 02:08
-
「周りの子たちが思ってるあたしは『まとめ役』とか『見守り役』とかそんなんばっかりなんだけどさ、あたし・・・そんないい子じゃないんだよ。」
柴田は右手に握られていたコーヒー牛乳のパックを壁に投げつける。
パシッ・・・
「みんなの思う『あたし』を演じてる『あたし』がいるんだ・・・これがまた結構きつくってね。」
柴田はもうすでに限界を越えかけていた。
「本当の『柴田あゆみ』はどこにいるんだろ・・・?」
「・・・先輩。」
今まで黙っていた紺野が話し始めた。
「ん?」
「先輩は、空と一緒って言いましたよね?」
「あ、うん。」
紺野のいつもと違う声のトーンにやってしまったと思いながら、柴田が答える。
- 329 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 02:18
-
「やっぱり先輩は空とソックリですね。」
「あ、やっぱり。」
紺野がわかってってくれたのは嬉しかったが、それは遠回しに演じてる『柴田あゆみ』がいるという決定打にもなったため、悲しくもなった。
「はい。空は誰が見ていようと見ていまいと、必ず私たちを見守ってくれています。優しく包んでくれます。無意識で。だから・・・先輩とソックリです。」
「こんこん?」
柴田が空から紺野に視線を移すと、そこには柔かな笑顔があった。
「先輩は自分でも無意識のうちにみんなを見守って優しさで包んでいるんです。先輩たちや私たち2年生、1年生、それに・・・石川先輩を。」
「・・・」
「先輩は優しすぎて、自分に疑問を持ってしまってるんです。先輩を誰も見ていない?そんなことはけしてありません。」
「そんなのわかんないよ・・・」
紺野が言いたいことはわかってはいたが、どうしても自分が信じられなかった。
- 330 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 02:26
-
「だって実際に私が先輩を尊敬しています。」
「・・・」
「ガキさんだっていつも『柴田さんみたいなガードになるんだ』って嬉しそうに言うんですよ?」
「え・・・?」
自分を目標とする選手がいることなど、柴田は想像もしていなかった。
「だから、そんなに落ち込まないでください。」
紺野の気持ちがひしひしと伝わってきたが、柴田の顔はまだ浮かないようだった。
「ありがとう。それでも・・・やっぱり辛いや・・・」
柴田がコーヒー牛乳のパックを拾うために立ち上がる。
「好きな子を・・・見守ってるなんてさ。」
- 331 名前:星になる 投稿日:2006/01/02(月) 02:32
-
「好きな子くらい・・・梨華ちゃんくらいは・・・見守るんじゃなくて・・・自分が幸せにしてあげたい。」
コーヒー牛乳のパックを拾いながら、なぜこんなことを後輩に話しているのだろうと疑問に思う。
「先輩・・・」
「見守るって・・・そんなの・・・あんな近くにいたら辛いだけ。」
それでも口は止まらなかった。
「梨華ちゃんが・・・遠い人ならあたしだってガマンできたよ、きっと。だけど・・・あんなに近くにいたら・・・」
今までうちに秘めていた鬱憤を晴らすかのように、言葉が次々と出てきた。
「正直、あたしはそんな・・・見守ってあげられるような・・・優等生じゃない。」
- 332 名前:ワクワク 投稿日:2006/01/02(月) 02:35
- またもちょびちょび更新。
- 333 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 00:04
-
「だったら・・・」
紺野がゆっくりと立ち上がる。
「奪っちゃえばいいんじゃないですか?」
「え・・・?」
紺野の口かららしからぬ言葉が発せられる。
「そんなに石川先輩のことが好きなら奪えばいいんです。」
なおも続けられる紺野の言葉に、柴田は唖然と立っていることしか出来なかった。
「柴田先輩がそう思うなら、我が道を行くべきです。誰がなんと言おうと柴田先輩は柴田先輩のやり方で進む、ただそれだけです。」
「・・・」
いつものフンワリとした後輩はそこにいない。
「私は・・・柴田先輩自身のキモチを優先すべきだと思います。」
代わりに居たのは
「こん・・こん?」
素直にキモチをぶつけるだけの後輩、紺野あさ美だった。
- 334 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 00:13
-
「・・・私の初恋は・・・1年前に、想いを伝えることもなく・・・終わっていきました。」
「え?」
紺野の初恋エピソードを知りもしなかった柴田は、彼女の突然の告白にただ驚いていた。
「私の初恋の相手は・・・私のことなんか全然見ていませんでした。」
全く今の自分と状況が同じだ。
柴田の脳裏に浮かぶ、石川の横顔。
「私は彼女にとってただの友達だったんです・・・。」
紺野が寂しそうに笑う。
まだ完全にふっ切れた訳じゃなかった。
「それでも。彼女は私に優しくしてくれて・・・いつも笑っていてくれたんです。」
「・・・」
「どんなに、自分が辛い状況に居たって必ず・・・私には笑いかけてくれてました。」
- 335 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 00:21
-
自分の頭の中にいる石川の横顔がこちらを向く。
「不思議ですよね。彼女は私のことなんか全然意識していないんですよ?」
カシャ。
不意に紺野がフェンスに寄りかかる。
「なのに・・・」
紺野の顔が一瞬、床のコンクリートを見据える。
しかし、すぐさま柴田に視線を戻した。
「それなのに、彼女に笑顔で『好きだなぁ』とか『可愛い』とか・・・ちょっとでも褒められると・・・私は彼女のことをやっぱり好きだなって思えたんです。」
紺野がにこっと柴田に笑いかける。
一方、柴田の中にいる石川も同時に笑いかけていた。
「私が彼女の隣にいることはすごく苦しかったです。でも・・・彼女の側にいることで私が幸せになれたのも事実です。」
- 336 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 00:29
-
そうだ・・・
あたしも梨華ちゃんの隣にいるだけで幸せだった。
いつからこんなに欲張りになったの?
いつからこんなに
彼女を求めるようになったの?
「幸せの感じ方は人それぞれだと思います。だから・・・」
紺野が言い終わるかどうかのタイミングで自分のポケットからハンドタオルを差し出す。
「こんこん、ありがとね。」
目の前にいる紺野はなぜハンドタオルを差し出されているのか、わからない様子だった。
「これ、よかったら使いなよ。」
さらに柴田はハンドタオルを差し出す。
「え、あ、その・・・」
紺野はまだ理解できていなかった。
「・・・ありがとう。でもね、辛いときは辛いって言っていいんだよ?」
柴田が一歩、紺野に近づく。
- 337 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 00:35
-
「はい、ハンドタオル。」
「あ、ありがとうございます・・・」
わけもわからないまま、差し出されたものを断わることもできず、素直に受け取った。
スッ・・・―――
「せ・・・ん・・・ぱい?」
「こんなに辛いことを思い出してまで・・・あたしに教えてくれて、ありがとう。」
柴田が紺野を抱き寄せる。
「泣くまでして・・・あたしに教えてくれてありがとう。」
片手を紺野の頭にやり、ゆっくりと撫でてやる。
「こんこんは偉いよ。いつも・・・いつでも笑ってたんだから。」
紺野の両手が、柴田のシャツをぎゅっと掴む。
「グスッ・・・せ、せん・・・ぱぁ・・・い・・・」
「うん、こんこんはよくやったよ。」
- 338 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 00:43
-
紺野が柴田の中で微かに、首を横に振る。
「わ・・・たしは・・・彼女を・・・幸せに・・・」
紺野のキモチが痛いくらいに柴田には理解できた。
「その人はきっと幸せだったんじゃないかな。だって・・・こんこんはいつも笑ってたんだから。」
「グスッ・・・で・・・も・・・」
柴田のシャツは紺野の涙でにわかに濡れていた。
「こんこんはよくやったよ。その人のこと・・・本当に大好きだったんだよね?」
「・・・はい・・・」
「うん。だったら、きっと幸せだったよ。その人も。」
「っつ・・・」
紺野の小さな声がもれる。
「しかしバカだね、その人も。」
「・・・」
柴田は紺野を抱きしめながら、背中を摩ってやる。
- 339 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 00:51
-
後輩を優しく包みながら、彼女は空を見上げた。
「こんなに・・・」
「・・・ううっ・・・」
紺野もまた、先輩のシャツに顔を埋めていた。
「こんないい子に想われてんのにね。」
「せん・・・ぱ・・・っ・・・」
「本当、バカだよ。」
このとき柴田は石川に対する想いと、紺野の初恋相手に対する想いはなにも変わらないんだということに気づいた。
「もったいないことしてるよ。」
柴田が紺野を優しく自分の体から引き離す。
「ほら、こんな可愛いのに。」
泣いている紺野の顔に流れる涙を、指で拭いてやる。
「せん・・・ぱい・・・」
柴田がニコリと優しい笑顔を浮かべた。
- 340 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 00:58
-
「いつか後悔するんじゃないかな。」
涙を流しながら、紺野は柴田をじっと見つめる。
「いや、こんこんじゃなくてね。その人が、あーあんな性格良くて可愛い子がいたのにぃ!ってさ。きっと後悔するよ。」
柴田は紺野の隣で、一緒になってフェンスに寄りかかった。
「・・・ですか?」
「ん?」
「そうですかね?」
「もちろん。こんこんはもっと自分に自信を持ちなさい。」
ポンポン。
紺野の頭を優しく撫でてやった。
「先輩も、ですけどね。」
「あ、調子に乗らないのっ。」
「へへへ・・・」
紺野にいつもの笑顔が戻った。
「でも、辛くなったら・・・ガマンばっかりしないで、いつでもあたしのところに来なさい。」
- 341 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 01:05
-
「・・・」
パタッ。
柴田が紺野の前にジャンプをして、振り返る。
「ね?あたしはいつでも相談に乗るから。」
紺野から見る柴田はキラキラと輝いて見えた。
「はいっ。」
紺野の答えに柴田はうんうんと何回か頷いた。
「先輩も・・・」
「ん?」
「先輩も、私でよかったらいつでも相談に乗りますからっ。」
「おー、なんだか心強いよ。」
「完璧です。」
紺野は流れている涙をクイッと拭いた。
「はははっ。じゃあそろそろ授業に行くとしよっか。」
「はいっ。」
柴田も紺野も、お互い晴れやかな顔で屋上を去ったのだった。
- 342 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 01:05
-
***
- 343 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 01:11
-
「あれからだったなぁ・・・紺野があたしにひょこひょこ付いてくるようになったのは・・・」
「しばちゃん、なんか言った?」
「ん〜うん。なんでもない。」
不思議そうに見てくる石川に笑顔で答える柴田。
「ならいいけど。」
そう言って石川はコートに視線を戻した。
「知らないだろーなぁ・・・」
柴田はコートの端で慌ただしく働いている、マネージャーコンビを見る。
「鈍感だから。」
マネージャーコンビを暖かく見守りながら、柴田はまた試合へと意識を戻した。
- 344 名前:ワクワク 投稿日:2006/01/04(水) 01:12
- ちょいとこーしんです((((((((^_^;)
- 345 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 09:40
-
ダムダム・・・
キュキュ。
「そっち行ったよ!」
「あいよ。」
試合はさらに進み、32対32とAチームが追い付いた。
「前半残り1分。」
中澤のコールが響く。
この時点でボールを持っているのは、Aチームのガード、清水だった。
ダム・・・
「こっち!」
菅谷のマークをほんの一瞬外した夏焼がボールを呼ぶ。
シュッ。
「雅ちゃん!お願い!」
もう残り時間少ない、これが前半のラストチャンスだろうと思った清水は夏焼にボールを託した。
前半、夏焼の動きはとにかくすごかった。
オフェンスで自分にボールが来れば必ず決める。またディフェンスに置いては、抜かれることはあったが、すぐにもう一度ディフェンスに付き直すという徹底ぶりだった。
- 346 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 09:50
-
「きたね。」
ダム・・・
ボールを持った夏焼に、もう何度目かわからない、菅谷のマークが付く。
抜かれはしているものの、菅谷のプレーも要所要所で光っていた。
キュッ・・・
菅谷の額をじんわりと汗が滴る。
ティンティン・・・
夏焼もドリブルで警戒しながら、間合いを取る。
ダッ!
ここで夏焼が仕掛けた。菅谷が額の汗を拭ったその一瞬で、抜きにかかった。
ダムダム!!
「くっ!」
菅谷もそれに気づき、ついていこうとするが一歩遅れた。
ダムダム。
一歩後ろに菅谷を引き連れたまま、夏焼はゴール下に向かった。
「こいっ!!」
ゴール下で構えているのはもちろん、Bチームセンターのアヤカだった。
- 347 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 09:57
-
キュッ!
一度アヤカの前で立ち止まる夏焼。
「夏焼ちゃん!残り少ないよ!」
ベンチにいる松浦からの声で、横目に中澤を見ると、ストップウォッチに目をやっているのが見えた。
夏焼は視線を再びゴールへと戻す。
ダム・・・
一度外した菅谷のマークもすでにまた戻っていた。
キュキュッ!
「夏焼ちゃん!」
アヤカが夏焼に気をとられていた分、センターの里田がフリーになった。
「パスっ!」
夏焼が里田をちらりと見て、ドリブルを止めることなく、パスの体制に入った。
それを見た菅谷もパスコースを塞ごうと手を出す。
- 348 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 10:05
-
キュッ。
ダムッダムッ!
「んな・・・」
しかし夏焼は里田にパスを出すことなく、またも菅谷を抜いた。
「何回もやられるかっ!」
夏焼の向かう先には、アヤカとあさみの3年コンビが待ち構えていた。
ダンッ!!
夏焼がゴールに向かって跳び、それを見たアヤカとあさみもブロックするために高く跳び上がった。
ダンッ!
タンッ!
「ここは止めるよ!」
「当たり前!」
「・・・」
ディフェンスの二人がお互いに意識を高め合う。
そんな二人を見ても、夏焼が怯むことはなかった。
スッ――――
ボールを持った手を高く上げる。
- 349 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 10:07
-
ダンクかっ!?
ここにいる誰もがそう思った。
- 350 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 10:16
-
ディフェンス陣はなんとしても追加点を避けようと、神経を研ぎ澄ます。
「・・・」
夏焼はなおも、変わらぬ体制だ。
(ダンクだったら・・・)
ふとアヤカの中にひとつの考えが浮かぶ。
そして、夏焼なら、その考えの通りにやってくるだろうと踏んだ。
「読めた!」
アヤカの手が動く。
夏焼がぴくっと反応した。
スッ――・・・
アヤカの考え、それはダンクならば夏焼より身長のある自分のほうではなく、少し低いあさみのほうにくるだろうという考えだった。
そして、アヤカはあさみの頭の上をカバーするように手を移動させた。
「・・・」
夏焼の持っているボールも、アヤカの読み通り、こちらへと向かってきていた。
- 351 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 10:18
-
(やった!!!)
アヤカは自分の読みが当たり、笑みを浮かべる。
ヒュッ。
「な・・・!?」
しかしその笑みは一瞬にして、驚きの表情へと変わった。
- 352 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 10:25
-
「持ちか・・・え・・・」
スッ―――・・・
あさみのほうへと手を伸ばしているアヤカの背後に、伸びる腕。
パサッ・・・
テンテン・・・
「・・・」
「くっ・・・」
「な・・・」
タンッ。
ドンッ。
トン。
三人がほぼ同じタイミングで着地する。
ピピッ―――!!
「前半終了!」
無情にも中澤の吹く笛の音がこれでもか、というくらいに響く。
全員が中澤を見ると、その指は夏焼のシュートが決まったという証、2点追加とされていた。
- 353 名前:星になる 投稿日:2006/01/04(水) 10:32
-
「今の・・・」
何事もなかったかのように立ち去る夏焼。
そんな夏焼をアヤカとあさみの両選手はじっと見つめていた。
「アヤカ・・・」
「うん・・・」
どうやら二人は今の夏焼のプレーに刺激を受けたらしい。
「夏焼ちゃん!」
二人の視界には、夏焼の頭をワシャワシャと撫でている小川と、それを嫌がっているのか嬉しく思っているのかわからない表情の夏焼がいた。
「後半がんばろ。」
「オッケイ。」
あさみとアヤカは淡々とベンチへ戻っていった。
- 354 名前:ワクワク 投稿日:2006/01/04(水) 10:33
- 更新更新♪(笑)
- 355 名前:774飼育 投稿日:2006/01/04(水) 23:43
- 短期間にちょっとづつ上げているってことで
大量ってことでいいと思いますよ(笑
次回更新も楽しみにしてます
- 356 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/19(木) 00:03
- 待ってるよ
- 357 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/29(日) 23:22
- 待ってますよ
- 358 名前:星になる 投稿日:2006/02/01(水) 01:34
-
***
- 359 名前:星になる 投稿日:2006/02/01(水) 01:34
-
***
- 360 名前:星になる 投稿日:2006/02/01(水) 01:45
-
「くっ・・・そ!」
ドカッ!!
「はぁ・・・」
悔しさをもろに椅子へと向けているアヤカ。
それとはまた別にため息をつきながらガッカリとしているあさみ。
表現の仕方は両極端だが、二人の気持ちは一緒だった。
「なんで・・・なんでですかぁー!!」
「やられたなぁ・・・」
「まぁまぁ。」
「次はなんとかなりますって!」
その二人をなんとかなだめようとするBチームの面々。
「もー、ガキさんもなんとか言ってよぉ〜!」
ここでついにBチーム監督の新垣へと、助けのコールがきた。
- 361 名前:星になる 投稿日:2006/02/01(水) 01:52
-
スッ――――
それまで、静かに座っていた新垣がゆっくりと立ち上がり、二人の前へと立った。
「そんなに悔しい?」
「あったりまえデスよ!」
「悔しい・・・」
間発入れずに答えた二人を見て、新垣は微笑んだ。
「うん、じゃあ後半は夏焼ちゃんをさげちゃおっか。」
「はい?」
「え?」
「はぁ?」
新垣の言ったことを理解しきれないチームメイトたち。
「そ、そんなことできるんですか?」
普段はものわかりのいい菅谷でも、新垣の言葉は理解できていないようだ。
- 362 名前:星になる 投稿日:2006/02/01(水) 02:00
-
「出来る。」
自信に満ちた新垣の顔。
「ガキさんがそこまで言うなら・・・できるんじゃないかな?」
二人の間に入って慰めていたみうなが頷いた。
「できる。あたしたちBチームなら、ね。」
「それどーいうことですかぁ?」
いちばんに反応を見せたのは、意外にも亀井だった。
「ん〜。なんて言えばいいかな・・・Bチームだから出来るっていうか・・・相手があのメンバーだから出来るっていうかなんていうか。」
「よくわかんないですよぉ〜。」
「亀子には難しいかな。まぁ用は夏焼ちゃんをコートから出す方法があるってこと。」
「はぁ・・・」
結局、亀井はわからなかったが、新垣の自信に満ちた顔を見ると安心した。
- 363 名前:星になる 投稿日:2006/02/01(水) 02:08
-
―Aチーム―
パチパチ!!
「よしよっし!夏焼ちゃん、最後ナイッスプレイ!」
「はい。」
ベンチに置いてあるタオルを手に取りながら、夏焼が松浦に返事をした。
「ホンット!夏焼ちゃん、うまいねぇ〜!!」
一緒にコートに入っていた小川も、夏焼の動きに目をキラキラと輝かせていた。
「いや、そんなことないです。」
「またまたぁ!そんな謙遜しないの〜。」
松浦が笑顔で、夏焼の肩をバシバシと叩く。
「ふぅ。でもさ、夏焼ちゃんがあんな動きするなんて予想外だったよ、ホントに。」
里田までもが、タオルで汗をふきながら感心していた。
- 364 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/01(水) 02:09
- 少量ですいません(-o-;)
明日、また更新します!
- 365 名前:星になる 投稿日:2006/02/02(木) 01:03
-
「そんなことないです。」
「もー!夏焼ちゃん、謙遜しすぎぃ!」
笑顔で松浦が夏焼の肩をバシバシと叩く。
「は、はぁ・・・」
「この感じなら後半もいけますね!」
今度は夏焼の隣で水分を取っていた清水が言った。
「だね〜!重さんも調子良いみたいだし!」
松浦は自分の選んだスターターが間違っていなかったと、ほっと一息ついていた。
「よっし。後半もよろしく頼むよ?」
「はいっ!」
「おう!」
「任せなさい。」
「はい。」
「はぁい♪」
松浦の呼び掛けに、Aチームのスターターたちが返事をした。
- 366 名前:星になる 投稿日:2006/02/02(木) 01:07
-
―――――
―――――
―――――
- 367 名前:星になる 投稿日:2006/02/02(木) 01:15
-
ピッピ―――!!
「後半始めるでぇ〜。」
ストップウォッチで時間を計っていた稲葉が、試合再開の合図を出す。
ゾロゾロ・・・
それを確認した両チームの選手たちがセンターサークルへと集まった。
「両チームともメンバーは変わらんのか。」
「はい。」
「そーです。」
両チームを代表して、センターの二人が確認をとる。
「おっしゃ。そしたらジャンパー前へ。」
中澤が意味深な笑顔を浮かべてから、センターサークルでボールを構える。
中澤を中心に、今度は始めとは違い、センターの二人が見合った。
「負けないから。」
「こっちだって。」
お互いに火花を散らしていた。
- 368 名前:星になる 投稿日:2006/02/02(木) 01:22
-
「ほんだら・・・よっ!」
中澤がボールを高々と放り投げた。
ダン!!
ドンッ!!
ハロ高を代表するセンター、里田とアヤカの二人がほぼ同時に跳び上がる。
「はぁぁぁ!」
「オォォォ!」
なんとも気合いの入った声。
お互いに一歩も譲らなかった。
トンッ。
タタンッ。
二人がボールを弾き、着地した。
「ボール!」
「どこ!?」
争っていた本人たちがボールの行方を見失っていた。
キュキュ!!
パシッ。
「取りましたよ!」
ボールを取っていたのは、Bチームのシューター、亀井だった。
「ヨシッ!」
「くっ・・・」
ガッツポーズのアヤカと悔しそうな里田。
なんとも対照的な二人だ。
- 369 名前:星になる 投稿日:2006/02/02(木) 01:29
-
「亀井ちゃん!」
横に並んで走っていたあさみがボールを要求した。
「あさみさん!」
シュ。
「ナイスパス。よーし!まずは一本!!」
ダムダム・・・
「はい。」
「はーい!」
「オッケィ。」
「やったろー!」
Bチームのメンバーがあさみの掛け声に反応し、返事をした。
「させないっすよ!」
キュッ!
「きたね。」
「あたぼーよ。」
ダムダム。
あさみのマークに素早く小川がきた。
「清水ちゃんじゃないんだ。あたしのマークは。」
「清水ちゃんには荷が重すぎってやつ。」
「まこっちゃんにもあたしは荷が重すぎなんじゃない?」
「大きなお世話。」
ダム・・・
- 370 名前:星になる 投稿日:2006/02/02(木) 01:36
-
あさみが予想していた以上に、後半の小川は明らかに違っていた。
「ふーん・・・」
キュッ。
「なんっすかぁ?」
ダムダム!
「まこっちゃんの・・・やっぱいいや。」
「なんだそれぇ!!」
「隙有り。」
ダムダム!
キュッ!
あさみは一瞬、小川がボールから目を離したのを見逃さなかった。
「のぁぁぁぁ!!」
小川は油断したことで、後からあさみを追っていた。
一方のあさみはというと、チームメイトの位置を確認していた。
「加護ちゃん!」
ヒュッ!
そして、タイミングを見計らって、フリーになっていた加護へとパスを出した。
- 371 名前:星になる 投稿日:2006/02/02(木) 01:43
-
パシッ。
「はいよっ。」
加護もなんなくボールを受け取っていた。
キュッ。
「今度は行かせませんっ!」
「ありゃ、とうせんぼさん。」
ちょうど、加護の前に清水が立ちはだかったところだった。
「簡単には行かせません!」
「じゃあ頑張って通してもらうよ〜!」
「だ、だめです!」
戸惑う清水がよっぽどおかしいのか、加護はボールを持つのとは別の手で、腹をかかえた。
「ンハハハ!清水ちゃんっておかしい・・・ハハハ!」
「もらった!」
加護が笑っているので、ドリブルがなんの警戒もされていなかった。
そして、清水がボールへと手を伸ばした。
- 372 名前:星になる 投稿日:2006/02/02(木) 01:49
-
スッ―――・・・
「ンハ・・・おっと、これはダメだよ。」
ヒュッ!
そう言うと、加護はボールをフックパスで味方のほうへと出した。
「あっ・・・」
「ヘへ。清水ちゃんはまだまだ甘いなぁ〜。」
そう加護はそこにいるはずのない、味方が走り込んでくると見込んで、待っていたのだ。
パシッ!
「ナイスパスです!加護さん!」
「はいはぁい!」
加護とパスを受け取った亀井が一瞬、目を合わせた。
ダッ!!
「えぇ!?」
途端に加護が逆サイドへと、亀井とクロスしながら走って行った。
清水は加護の行動に呆気をとられて、スタートが遅れた。
- 373 名前:星になる 投稿日:2006/02/02(木) 01:54
-
「亀井ちゃん!パス!」
それに気づいた加護が再び、亀井へとボールを要求した。
ヒュン!
それを確認した亀井も、見逃すことなく、リターンパスを送った。
パシッ。
「ナイス!」
キュッ。
「ディフェンスは一人だけじゃないですよ。」
加護のチェックにヘルプで夏焼がついた。
「ンハハハ〜!」
すると、追い詰められたはずの加護が夏焼に笑顔を向けた。
「ディフェンスが一人じゃない・・・かぁ。」
加護の笑顔に惑わされることなく、夏焼はじっとボールを見つめていた。
ダムダム・・・
「雅ちゃん!」
後ろから清水が追い付いてくるところだった。
- 374 名前:星になる 投稿日:2006/02/02(木) 02:01
-
「ならさ、こっちも一人じゃないんだ。」
ヒュッ。
「くっ・・・」
「あぁ!!」
加護がバックパスを出した。
その先には
パシッ!
「ナイス。」
「いっちゃえ!」
スリーポイントラインで立つ、あさみがいた。
ヒュッ・・・・
「うん、今日はヒザの調子がなかなか。」
パシュッ!!
見事にあさみはスリーポイントを決めた。
「ナイス、あさみちゃん!」
「そっちこそナイスパスだったよ、加護ちゃん。」
「テヘヘへ!」
このスリーポイントを決めたことによって、Aチームとの差は2ポイント、つまり1ゴールで同点、スリーポイントなら逆に優勢になるという場面になった。
- 375 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/02(木) 02:03
- 更新終了。
短くてすいませぬ(-_-;)
- 376 名前:774飼育 投稿日:2006/02/02(木) 02:05
- いやいや 少量の更新でも大変うれしいです
いやーなんかドキドキしてきました
続きが楽しみです
次回更新待ってますよ
- 377 名前:星になる 投稿日:2006/02/03(金) 00:12
-
ダムダム。
Aチームからのリスタート。
清水がボールを持っていた。
「一本です!」
清水が声をかけると、Aチームの面々が静かに頷いた。
「・・・あ・・・れ?」
そして、清水が周りの異変に気がついた。
「マークが・・・いない・・・?」
そう、清水にマークが一人として、付いていなかったのだ。
ダム・・・・
「なんで・・・?」
先ほどまではあさみという、自分が目標としている一人の先輩がマークで付いていた。
しかし、ここであさみは清水に付いていなかった。
- 378 名前:星になる 投稿日:2006/02/03(金) 00:18
-
「どこに・・・あ!?」
清水があさみの姿を探すと、マークの標的は夏焼になっていた。
キュッ。
キュキュ!
「菅谷ちゃん、そっちは任せるから。」
「はい。」
そして、前半に引き続き、菅谷も夏焼をマークしていた。
「雅ちゃんに二人・・・」
清水は意外な方法に驚いていた。
確かに夏焼は前半、素晴らしい動きをした。
しかし、菅谷もよいディフェンスをしていたし、夏焼にあさみという頭脳的な選手をつけるまでしなくてはならないのだろうか、と。
ダムダム。
「清水ちゃん!」
フリーになった小川がボールを呼んだ。
- 379 名前:星になる 投稿日:2006/02/03(金) 00:23
-
ビッ。
「小川先輩!」
清水はなんの躊躇いもなく、小川へとパスを出した。
パシッ。
「よしっ。」
「なーにがよしっなのさ。」
ボールを持った小川に加護が付いた。
ダム・・・
「ボール貰えたから。」
「ふ〜ん。」
いつもはほのぼのとした雰囲気の二人。
しかし、勝負事となると、顔付きが変わり、いつもより口数が少なくなる。
キュッ。
タタッ。
激しく動きまわる小川に対して、一歩も退かずに堅いディフェンスをする加護。
- 380 名前:星になる 投稿日:2006/02/03(金) 00:30
-
「相変わらず堅いディフェンスでぇ。」
「当たり前や。」
急に立ち止まってその場でドリブルをし、微笑む小川。
対する加護も腰を低く保ちながら、にやりと笑った。
「でも・・・」
シュン!
「な・・・」
「あっしは勝負よりアシストの数が多いってのはお忘れなく。」
小川は目線を変えることなく、パスを繰り出した。
「誰もいないとこに・・・」
「いるよ、っていうか来ますよ。」
パシッ!
ボールが手に収まる音がした。
「んな・・・・」
加護がゆっくりとそちらを向いた。
「ほーらね。」
一方、小川は勝ち誇ったような笑顔を見せていた。
- 381 名前:星になる 投稿日:2006/02/03(金) 00:36
-
キュ。
「きたよ。」
「はい。」
小川のパスを受け取ったのは、前半から目立っている夏焼だった。
「・・・」
ティンティン。
無言でドリブルを繰り返す夏焼。
ギュル!
キュキュ。
そして、その夏焼をマークしているあさみと菅谷の二人は腰を低く構えた。
1年の夏焼に対して、Bチームの頭脳とルーキーが真剣にマークに付いている。
なんとも奇妙な光景だ。
周りにいるだれもがそう感じていた。
- 382 名前:星になる 投稿日:2006/02/03(金) 00:42
-
「おっ、Bチームが動いた。」
コートの外で見守っている吉澤が楽しそうに笑った。
「んあ、ほんとだぁ〜。」
後藤も腕を組みながら、興味津々といった感じでコート内の選手たちを見つめる。
「あー!!雅ちゃん、囲まれちゃってる!」
そんな呑気な二人の間に割って入った石川。
「梨華ちゃん、痛い。」
「いいの!そんなことより雅ちゃん!」
「いいのって・・・よしざーはよくないっつーの。」
「んあ、梨華ちゃん、わざわざごとーたちの間に入いんなくても・・・」
「ここがベストポイントなの!」
もう石川の意識は試合へと入っていた。
- 383 名前:星になる 投稿日:2006/02/03(金) 00:44
-
「ったく・・・」
「はぁ〜・・・」
吉澤と後藤がほぼ同時にため息をついた。
そんな三人を一歩後ろで微笑ましく見ている柴田だった。
- 384 名前:星になる 投稿日:2006/02/03(金) 00:49
-
「しっかしよ、Bチーム、気がついてたんだな。」
「あ〜、そうだね。」
吉澤と後藤のやりとりを二人の間でキョロキョロと見る石川。
「気がついたって?」
どうやら石川だけ気がついていないようだ。
なんの話かわからないといった表情で二人を見つめる。
「あ〜。アレだよアレ。」
「そーそー。よしこの言うアレだよ。」
「アレ???」
アレと言われてわかるほど万能ではない石川。
もっとわからなくなってしまったようだ。眉をへの字にしていた。
- 385 名前:星になる 投稿日:2006/02/03(金) 00:54
-
「ヨッスィ、梨華ちゃんにはアレじゃわかんないから。」
困り顔の石川の背後から、今までのやりとりを見ていた柴田が口をはさんだ。
「ん?あ、そう?」
「アハハァ〜。梨華ちゃんにはわかんないかぁ。」
「なによー!!!」
本当にわからないのかという吉澤、そんな吉澤の反応がおかしくて笑っている後藤、そんな二人を見て石川は少しすねたくなった。
「まあまあ、梨華ちゃん。」
「だってぇ〜!」
「あたしが教えてあげるから。」
「いいもん!私は自分でわかってるから!」
- 386 名前:星になる 投稿日:2006/02/03(金) 00:59
-
「はいはい。じゃあ、あたしが勝手に説明させていただきます。」
どこまでも負けず嫌いな石川の性格。
そんな石川に合わせて、柴田は独り言のように語りだした。
「ヨッスィたちが言ってるアレってのは夏焼ちゃんのことだよ。」
石川もさすがにそれはわかっていたのか、うんうんと頷く。
「そ。うちとごっちんが言ってんのは・・・」
「ストーップ!!ヨッスィ、うるさい!」
「へ?」
「私は考えてるんだから!!」
「あー、はいはい。」
吉澤は石川の負けず嫌いを忘れていた自分に、少し苦笑い。
- 387 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/03(金) 01:00
- またも少量更新(-o-;)
- 388 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 00:17
-
「二人が言ってるのは夏焼ちゃんのプレイスタイルそのもののことなんだよ。」
「プレイスタイル??」
また眉をへの字にする石川。
「そうだよ〜。ごとーたちは夏焼ちゃんのこと、ミキティと似てるって言ったけど・・・ちょっと違うってやつかなぁ。」
後藤がいつものように緩やかな笑顔を見せた。
「似てるけど・・・違う???」
もうなにもかもがごちゃ混ぜになってしまって、わけがわからなくなってしまっている石川。
「そうそう、うちは見ててなんか違和感があってさ。」
先ほどは口を出して怒られた吉澤だったが、今度はすんなりと受けいれてもらった。
- 389 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 00:26
-
「違和感・・・」
石川が吉澤の言葉にぴくりと反応した。
「んああ、ソレ、ごとーも。」
後藤も吉澤に同意した。
「なんかさ、なんだろ?わっかんねぇけど・・・すごい違和感あって・・・ずっとあの1年生、夏焼ちゃん見てたんだ。」
吉澤はバスケのことになると、気になると手を抜かないというタイプなので、自然と夏焼を目で追っていたのだろう。
「ん〜・・・私は全然なにも感じなかったけどなぁ。」
石川が不思議そうに首を傾げた。
- 390 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 00:31
-
「いや、ヨッスィの違和感は間違ってないと思う。あたしも感じたから。」
今度は柴田が吉澤に賛同した。
「しばちゃんも?」
後藤や吉澤だけでなく、柴田までもが違和感を感じているのに対して、なにも感じていない自分がおかしいのかもしれないと石川は思い始めた。
「うん・・・なんだかね。でもその原因がわかった。」
「わかったの!?」
「んあ?」
「なになに!?」
三人がいっきに柴田へと詰め寄る。
そんな三人を見て、柴田は笑った。
- 391 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 00:55
-
「うん。まぁ、わかったよ。」
伊達にバスケ何年もやってないからね、と言おうとしたのを、みんなもバスケ歴は変わらないと気づいてやめた。
「なに!?」
吉澤がずいっと前に出る。
「ハハハ、ヨッスィそんな慌てなくても。」
体をゆさゆさ揺されながら、またも笑う。
「んだよ〜!もったえぶるなよぉ〜。」
よほど気になるのか、さらに柴田の肩を揺らす。
「あ・・・夏焼ちゃんがボール持った。」
ちょうど夏焼が小川からパスをもらったところだった。
- 392 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 01:01
-
すると、吉澤の動きがピタリと止まる。
「なに!?」
そして吉澤は柴田の肩に手を置いたまま、コートに目を向けた。
「このプレイ、見てればわかるよ。」
柴田が落ち着いた声で三人に言った。
- 393 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 01:18
-
ダムダム・・・
「ここは行かせない。」
「・・・」
菅谷の真剣な一言にも反応せず、ただただゴールを見つめる夏焼。
「今度は抜かせさえしない。」
菅谷に続いて、あさみも気合いの入った言葉を発した。
ダム。
しかし、そんな二人を気にもしていないのか、夏焼は一言もしゃべらない。
「菅谷ちゃん、いいね。」
「わかりました。」
何らかの確認を交わす二人。
二人はお互いに頷いた。
- 394 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 01:20
-
その時・・・
キュキュ!!
なんの言葉を交わさなかった夏焼が動いた。
- 395 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 01:25
-
(きたっ!)
(動いた!)
マークについている二人がほぼ同時に反応した。
「そっち!」
「はい!」
夏焼が動いたのは菅谷がいる方だった。
ダムダム!!
ドリブルでいっきに抜きにかかるが、二人もマークがいるためか、なかなかうまくいかなかった。
キュッ。
一度、勢いを落としてその場でドリブルという体制になった。
タタタタタ!
「夏焼ちゃん!!」
そこへ、あさみの背後を走り抜ける里田がきた。
- 396 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 01:27
-
夏焼もパスを出そうとドリブルをやめ、あさみの背後にいる里田のほうへと視線を向けた。
チラッ。
- 397 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 01:29
-
すかさず、あさみが左手を伸ばした。
スッ――――
それが視界に入った夏焼は微かに笑みを浮かべた。
- 398 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 01:32
-
タンッ。
そして何事もなかったかのように地を蹴った。
そう、彼女が里田を見たのはフェイクだったのだ。
スッ・・・
シュート体制に入った夏焼は、いつものように頭の上へとボールを持っていった。
- 399 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/04(土) 01:32
- 今日はここまで((((((((^_^;)
- 400 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 15:42
-
「・・・あっ。」
- 401 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 15:47
-
「させない・・・って!」
バシッ!!
タンッ。
タタタン。
「菅谷ちゃん、ナイス。」
「はい。」
夏焼をマークしていた二人がハイタッチを交わす間もなく、ボールを持って走り出した。
- 402 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 16:00
-
ザシュ。
「おっし。」
またもスリーポイントを決めたあさみがガッポーズをしてから、ベンチのほうへと近づいて行く。
それに続き、菅谷もベンチへと向かう。
タタタタタ!
「さすが。」
「言う通りだったよ。」
パチッ!!
コートの中と外でハイタッチ。
「ナイスだったよ。」
「先輩に教わった通りでした。」
コツン。
今度は中と外で拳をくっつける。
- 403 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 16:05
-
あさみと菅谷、二人は新垣と言葉を交わすと、再びコートへと戻っていった。
「さすがガキさん。」
新垣がその声に振り返ると、そこには柴田を中心にOGの四人が立っていた。
「いや、まだまだです。」
最後に柴田先輩にそう言ってもらえるなんて恐縮ですと加えた。
「今のがしばちゃんたちの言ってた違和感?」
石川はまだ気がついていないのか、眉間にシワを寄せていた。
- 404 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 16:12
-
「そうだよ。ね、ガキさん。」
柴田が嬉しそうに新垣を見た。
「はい。」
新垣もまた、落ち着いた声で返した。
「あ〜っと、うちもまだわかんねぇんだけど。」
吉澤が頭をかきながら、石川の横につく。
「んあ〜、ごとーもぉ。」
今度は後藤が吉澤の肩に顔を置いた。
「ん〜。」
柴田は困ったというように苦笑してみせた。
「今のが・・・」
「きっと次の夏焼のプレイでみなさんわかると思います。」
柴田の困った顔を見かねて、新垣が口を出した。
- 405 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 16:17
-
「次??」
吉澤がすかさず新垣に返す。
「はい。」
一方の新垣はコートを見つめていた。その先にはもちろん、あさみと菅谷に囲まれた夏焼。
「・・・」
OGたちも新垣の視線の先をジッと見つめる。
「まだ何かあるの?」
柴田が新垣に問う。
「いえ、特にはないんですけど・・・」
作戦はないはずなのになぜか勝ち誇った顔の新垣に、柴田は疑問を感じた。
なにかある。
柴田には新垣の顔はそう語っているように見えた。
- 406 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 16:18
-
ドンッ!!!
- 407 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 16:23
-
その時だった。
コート内に大きな衝突音が響いたのは。
ピッピピーー!!
「Aチームファウル!9番!」
中澤の声に、ゼッケン9番を付けた夏焼が静かに手をあげた。
「ファウル?」
全員の視線の先にはファウルをした張本人の手をあげた夏焼と、尻餅をついているあさみの姿。
「なに?なにが起こったの?」
石川が固まっている柴田をユサユサと揺らした。
- 408 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 16:32
-
ブブッーー!
固まっている柴田たちをよそに、ブザーが鳴った。
「交代、Aチーム9番アウト。5番イン。」
ライン上ではゼッケン5番を付けた辻が屈伸をしていた。
「交代・・・」
「亜弥ちゃん、思ったよりも早く代えてきましたね。」
辻に一言かけられながら背中をポンポンと叩かれた夏焼はとても悔しそうだった。
「そーか!!」
何かわかったのか、柴田が大きな声を出して頷く。
- 409 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 16:38
-
「これが狙いだったんだ。」
「ハハハ。バレちゃいました?」
新垣が罰悪そうな表情で笑った。
「これが・・・」
「「「狙い?」」」
吉澤、後藤そして石川が同時にハモる。
「そう、新垣は最初っからこれが狙いだったんだよ。」
「狙いって夏焼ちゃんをコートから出すってこと?」
吉澤が不思議そうに新垣を見た。
「はい。後半ははなっから夏焼ちゃんに引っ込んでもらおうと思いまして。」
新垣が答える。
- 410 名前:星になる 投稿日:2006/02/04(土) 18:00
-
「どーいうこと?」
またも石川が問う。
「つまりね、新垣は前半が終わった時点で夏焼ちゃんの弱点に気がついてたの。」
「それがごとーたちの感じてた違和感の真相〜?」
「そう。」
柴田がコクリと頷く。
「みんなが感じてた違和感は・・・」
- 411 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/04(土) 18:01
- とりあえずここまで(>_<)
- 412 名前:名無し 投稿日:2006/02/05(日) 00:23
- …焦らされて待つのがくせになって来ましたw
- 413 名前:星龍 投稿日:2006/02/05(日) 00:47
- 更新お疲れ様です。
久しぶりに来たら更新されてる!!
嬉しい限りです。
違和感ってもしかして・・・・。
これからの展開楽しみにしてます。頑張ってください。
- 414 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 00:37
-
「んえ・・・?」
後藤が柴田の告げた言葉にいち早く反応した。
「さすが柴田先輩。」
新垣は自分の考えがわかってもらえたことからくる笑顔と、憧れの眼差しで柴田のことを見ていた。
「・・・うん、あたしもなんだかモヤモヤしてたんだけどやっとスッキリした。」
晴れ晴れとした柴田の表情とは対照的に吉澤、石川、後藤の三人は未だに固まったままだった。
柴田の言った夏焼の違和感。
それは・・・
- 415 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 00:38
-
「夏焼ちゃんは単独プレイヤーなんだよ。」
- 416 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 00:46
-
「あの・・・さ、そのしばちゃんが言う単独プレイヤーって・・・。」
吉澤がやっとのことで口を開いた。
「うん。ヨッスィの思ったまんまだよ。」
「雅ちゃんが・・・単独・・・」
石川は柴田の言いたいことが、そして夏焼のプレイスタイルがなんとなく理解できた気がした。
昔から一匹狼的なところがある親戚の夏焼雅。
そのことから、石川には容易に想像することができた。
- 417 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 00:51
-
「んあ、でもさ、まだ夏焼ちゃんが単独プレイヤーかどうかわかんないんじゃないかな?ハーフしか見てないわけだし・・・」
後藤は前半の半分だけで夏焼のプレイスタイルを決定してしまうのは早いと感じたのだろう。
柴田と新垣の意見にやんわりと反対する。
「いや、間違いないよ。さっきのファウルがイチバンの証拠。」
「んあ、ファウルが?」
後藤は先ほどの夏焼がファウルをした場面を思い出していた。
- 418 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 00:56
-
「後藤さん、さっきのファウル。夏焼ちゃんのファウルした相手は誰だったか思い出してみてください。」
「相手?そんなのあさみに決まってるじゃん。」
後藤がなんの躊躇いもなく新垣に答える。
横で考えていた吉澤や石川もしっかりと頷いた。
「ですよね。じゃあ違う質問です。夏焼ちゃんをマークしてたのは誰ですか?」
「それも簡単だろ。菅谷とあさみのダブルマーク。」
今度は後藤が答えるよりも先に、吉澤が答えた。
- 419 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:02
-
「でも夏焼ちゃんがやったのはよくあるファウルだよ?ディフェンスが厳しくて強引なオフェンスだったからね。」
後藤が不思議なところはない、いったって日常のファウルだと主張した。
「そこがポイントなんですよ。」
「んあ?」
新垣が後藤に指摘するが、後藤自身はまったくわかっていなかった。
もちろん、横にいる吉澤、石川の二人もそうだった。
「そう、夏焼ちゃんに付いた二人のディフェンスはよくあるダブルマークってやつだったんですよ。」
「んなのはわかってんだけどさ・・・」
吉澤が困ったように眉間にシワを寄せる。
- 420 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:08
-
「ん〜、じゃあ三人がもし、ダブルマーク付かれたらどうする?」
新垣の横からフォローに入る柴田。
「ごとーが・・・」
「私が・・・」
「うちが・・・」
「「「ダブルマーク付かれたら・・・?」」」
三人が声をそろえて言った。
そして三人が少し考え込む。
三人とも自分がダブルマークに付かれたときのことを想像しているのだろう、視線は自然と上を見ていた。
「わかりますかね?」
「あの三人だからわかるよ、きっと。」
そんな三人を新垣と柴田は見守っていた。
- 421 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:14
-
「ごとーだったら、まずは周りを確認する・・・かな。」
視野の広い後藤らしい答えだった。
「私は、とりあえずシュートは無理だろうからボールは死守して・・・みんなの位置を見るかな。」
これもまた、シューターの石川らしい解答だ。
「うちの場合はゴール下にいることがほとんどだから、まずはキープだな。そんでうちに二人付いてるわけだから・・・当然誰か一人は空いてるわけで・・・だからそのフリーの味方にパスする。」
吉澤から出た答えもセンターというポジションを務めている大黒柱らしい答えだった。
- 422 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:20
-
「うん、あたしでもダブルチームで付かれた時点で一旦、味方にパスを出して様子を伺うのがベストだと思う。」
「あたしも同意見です。」
柴田と新垣がにっこりと微笑む。
「フツーみんな自分がダメだったらそうするだろ?」
吉澤が疑いなく断言した。
「じゃあですね。みなさんの答えに共通点があるんですけど・・・わかりますか?」
新垣はもう一息で答えが出ると確信したのか、少し前のめり気味で尋ねた。
- 423 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:24
-
「共通点かぁ・・・」
石川は呟きながら、みんなの意見を頭の中で整理していた。
「う〜んと・・・」
後藤も特徴的なアヒル口に人指し指をあて、考え込んでいる。
「共通点共通点・・・」
吉澤は吉澤で腕を組み、共通点という言葉を繰り返し繰り返し唱えていた。
そんな三人を見て、またしても柴田と新垣が顔を見合わせ、クスリと笑った。
- 424 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:25
-
「「「あああっ!!」」」
- 425 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:26
-
三人とも、思いついたのか、同時に声をあげた。
「「「味方!!!」」」
- 426 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:32
-
「そう、キーポイントは『味方』なんです。」
新垣がうんうんと頷く。
「味方ってのがごとーたち全員に共通してるよ!」
後藤がやっとわかって少し興奮しているのか、いつもより声を張っていた。
「でもでも!味方が共通してるってところと雅ちゃんのプレイスタイルには直接結びつかな・・・・あ!」
言っている途中で気がついたのか、石川がポンッと手を叩いた。
「梨華ちゃん、わかった?」
典型的なリアクションを見せた石川に苦笑いしながら柴田が問う。
- 427 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:39
-
「そっかそっか!そーだったのか!」
吉澤もやっとカラクリがわかったことがよっぽど嬉しかったのか、今にも走り出しそうな勢いだ。
「そうなんです。みなさんの考え通り、夏焼ちゃんの頭の中には『味方』という選択肢がないんです。」
はしゃぐ三人の前で新垣は説明しだした。
「さっきの夏焼ちゃんのファウルが典型的な悪い例で、『味方』という選択肢がないために強引なオフェンスになって、ディフェンスのあさみちゃんにぶつかったというわけです。」
新垣はこれも作戦の一部ですけどねと付け加えた。
- 428 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:45
-
「じゃあ・・・その前に菅谷ちゃんがスティールしたのも・・・」
はしゃぎ過ぎて疲れたのか、吉澤が言葉を途切れ途切れに発した。
「あれも作戦です。まずはダブルチームで付き、夏焼ちゃんを徹底的にマークします。そうすることによって向こうのチームの選手たちは『パスをもらわなきゃ』と思うんですよ。あたしたちがダブルチームに付かれたときとは逆の心理で。」
新垣はさらに淡々と説明を続ける。
そして、他の四人も静かにその説明を聞いていた。
- 429 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:51
-
「そして、ここからがダブルチーム特有の利点で『パスをもらわなきゃ』と思った相手が走ってきたのを確認してから一人がパスコースを防ぐ。もちろんこれはパスを出さないとわかっているから、あくまでフリなんですけどね。で、もう一人は相手の行動を観察して次の行動を読む。夏焼ちゃんの場合はドリブルを止めてたんで残りの選択肢はシュートだけ。ここを菅谷ちゃんはブロックした。というわけです。」
新垣がやっと言い終わったと、安心して一息ついた。
「ちょ、ちょっと待った!それじゃあさ、もし夏焼がドリブルを続けてたら読みが難しいんじゃん?」
吉澤が不思議そうに新垣を見た。
- 430 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 01:57
-
「あぁ、それはですね。夏焼ちゃんの性格上、必ずどこかで勝負をしてくるんですよ。まぁバスケはシュートをして点を入れないといけないんで。だからもしドリブルを続けていたとしても、あの場面で一番の勝負所はあさみちゃんがパスコースを防ぐために動いたあの一瞬なんですよ。夏焼ちゃんにとってはマークが一人外れる絶好のチャンスですからね。」
新垣の説明にここまで考えていたのかと、四人はびっくりしていた。
「つまり、『味方』という選択肢がない夏焼ちゃんの勝負所はドリブルをしているいないに関係なく、さっきの場面だったんですよ。」
新垣は一通りの説明を終えて、満足気な表情を見せた。
- 431 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 02:03
-
「ねぇ、しばちゃん。」
「ん?」
石川がベンチに座り直した新垣の後ろ姿を見つめながら、柴田に話しかけた。
「なんか変わったね。」
「変わったって?」
「お豆。」
「あぁ〜。ガキさんね。」
柴田は石川の言いたいことが誰のことか、初めからわかっていたが、後から主語を付け加えてもらったことでより深く頷けた。
「お豆、なんか別人みたい。」
「ガキさんはガキさんだけどね。」
少し苦笑い気味の柴田。
- 432 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 02:08
-
「でもなんかお豆がお豆じゃないよ。」
先ほどの四人を納得させた説明で石川は石川なりに感じ取っていた。
「そりゃ、あたしたちが卒業して、ちょっと経つしね。」
不思議そうな石川に対して、柴田はいつもと同じように冷静だった。
「そうだけど・・・こんなに人って変わるものなの?」
「変わるよ。」
柴田は石川の疑問にあっさりとした一言で答えた。
「現にガキさんがそうでしょ?」
「そーだけどぉ・・・」
石川はまだ何か言いた気だ。
- 433 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 02:13
-
「梨華ちゃんがちょっと寂しいっていいたいのもわかるよ?だけどさ、あたしたちが卒業してガキさんもなんか感じたんじゃないかな。」
「お豆が?」
石川は自分の考えていたことが柴田に見透かれていたことに少し驚いていた。
「うん。ほら、やっぱり自分たちが最高学年になるときってプレッシャーとかいろいろあったでしょ?」
「あー、言われてみれば・・・」
石川も一つ上の市井たちが卒業してから少し変わった自分がいたような気がしていた。
- 434 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 02:18
-
「みんななんとなく、だけど変わったでしょ?」
「うん。」
ちょうど今から一年前の吉澤や後藤、柴田、そして自分を思い出して頷く石川。
「あたしたちの場合はみんなスタメンだったからそんなに変化は見られなかったかもしれないけど。」
一方の柴田も昔を思い出していた。
「私はそこまで生活とか変わってなかったもんね。」
一年のときからスタメンとして使われていた四人にはそれほど大きな変化はなかった。
- 435 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 02:23
-
「でもさ、ガキさんはあたしたちが卒業するまで常にスタメンってわけじゃなかったでしょ?」
「あー。しばちゃんと同じガードだもんね。」
石川は試合に出る度に柴田とのコンビネーションが深まっていったことを思い出す。
あの頃も彼女のパスは絶妙だった、と。
「それに、ガキさんにはあさみっていう同じ学年のライバルがいたからね。」
柴田たちが卒業するまでは、どちらかというと新垣よりあさみが使われるパターンが多かった。
- 436 名前:星になる 投稿日:2006/02/12(日) 02:28
-
「だから、余計に変わったんじゃないかな?あ、もちろんいい意味でだよ?」
柴田が嬉しそうな悔しそうな複雑な表情で、新垣の後ろ姿を見た。
「つまり著しい成長を遂げたってこと?」
「梨華ちゃん、珍しく難しい言葉使うね。」
「もう!からわかないでよ!」
「あー、ごめんごめん。まぁ真面目な話すると、相当な急成長だよガキさんは。」
「だよね〜。」
柴田と石川の二人は少し下がったところで、ベンチから指揮をとる新垣を見守っていた。
- 437 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/12(日) 02:32
- トリノ記念更新!!
なんにも関係ないけど(笑)
名無しさま>焦らすの大好き人間なんですよ(笑)そしてやっと明かしましたナゾを…((((((((^_^;)
星龍さま>なぬ(゜o゜;)もしや違和感の正体はわかってましたか!?だとしたら超人誕生ですよ(笑)
- 438 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/12(日) 03:03
- そろそろ美貴たん出てきますかねぇ?(笑)
- 439 名前:星龍 投稿日:2006/02/12(日) 13:30
- 更新お疲れ様です。
やっぱり違和感ってそうでしたか・・。
自分もバスケやってるんで読んでるうちに
違和感を感じまして・・・。
がきさんさすがですね。
次回の更新も楽しみにしてます。
- 440 名前:星になる 投稿日:2006/02/16(木) 23:21
-
シュパン!
「亀井ちゃん、ナイス!」
「はいっ!」
亀井がスリーポイントを決めた。
夏焼が下がってから、Bチームが勢いづいたのだ。
「くそっ!」
里田が悔しそうに自分の太股を叩いていた。
「まいちゃん、次れすよ!」
そんな里田の肩を辻が元気よく叩いた。
「あぁ、うん。」
Bチームが勢いづいたと言っても、本当に雰囲気が多少変わったくらいのもので、点数自体はスリーポイントの二本分だけだった。
- 441 名前:星になる 投稿日:2006/02/16(木) 23:28
-
にも関わらず、Aチームは辻を除き、全員が焦りを感じていた。
そしてそれはレギュラー選手である、里田もそうだった。
パンパン!!
「みーんな!まだまだ後半始まったばかりれす!焦るのはまだ先れすよ!!」
辻はそんなチームメイトたちに、手を叩きながら、笑顔を向けていた。
「辻さん・・・」
「辻ちゃん・・・」
「そっか・・・」
「のんつぁん・・・」
Aチームの面々は、ハッとして顔をあげる。
- 442 名前:星になる 投稿日:2006/02/16(木) 23:34
-
「取られたら倍で取り返す。そうすればすぐに追い付けるれす!のんにまっかせなさぁい!!」
トンッ。
辻が自分の胸を軽く叩いた。
「そんな簡単には無理でしょ。」
「まいちゃん?」
辻の言葉に割って入ったのは、里田だった。
「辻ちゃんだけじゃ、ね。まぁあたしがフォローするから可能だろうけど。」
里田がニィっと笑って辻の肩に手を回した。
「みんな、攻めるよ〜!」
里田がもう一度、メンバーに気合いを入れる。
- 443 名前:星になる 投稿日:2006/02/16(木) 23:38
-
「アイアイサァ〜!ピーマコに任せなさぁい!」
「いきましょ♪」
「が、がんばります!!」
小川、道重、清水の順番で里田に答えた。
「んし!そんじゃあ、いきますか。」
そう言うと、ボールを出す、道重と清水を残し、三人はゴール前へと爽快に走り出した。
「よっしゃぁーー!」
辻は雄叫びをあげながら。
- 444 名前:星になる 投稿日:2006/02/16(木) 23:46
-
ダムダム。
Aチームボールからスタート。
清水がうまく間合いを取り、周りを慎重に分析していた。
「ちょっとちょっと、清水ちゃん。顔怖いよ?」
夏焼がベンチに戻ったことによって、あさみが再び清水のマークについていた。
「元からです。」
「おー、こわっ。」
あさみは、清水が今までとは比べものにならないくらいに集中していると感じた。
キュ。
足に力を入れる。
今までのは忘れなければならない。
清水の表情は、あさみにそう思わせたほどだった。
- 445 名前:星になる 投稿日:2006/02/16(木) 23:51
-
シュッ。
「道重先輩!」
あさみがそう思った直後、清水は今までになかった速さのパスを道重に出した。
「しまっ・・・」
あさみの反応は一歩遅く、ボールはすでに道重へと渡っていた。
「亀井ちゃん!」
「はぁい!」
道重のマークに付いている亀井へと合図を送る。
そして、亀井もまた、道重にボールが渡ったということを確認し、あさみに返事をした。
キュ!
「んな・・・」
あさみがボールに気を取られている内に、それは起こった。
- 446 名前:星になる 投稿日:2006/02/16(木) 23:51
-
タタタタタタ!!
「こっち!」
- 447 名前:星になる 投稿日:2006/02/16(木) 23:55
-
小さい体で、一生懸命にパスを呼ぶ彼女。
タタタタ・・・
その少女は道重のいるほうとは逆サイドにフリーで走っていた。
「くっ・・・」
それにいち早く気が付いたのは、あさみだった。
タッタッタッ!
あさみもまた、彼女の小さな背中を全速力で追った。
- 448 名前:星になる 投稿日:2006/02/16(木) 23:58
-
シュッ。
「頼んだよっ♪」
道重がまるでわかっていたかのように、彼女へとパスを送る。
「へっ?」
そんな道重の行動を予想していなかった亀井は、ただ唖然とパスを見送っていた。
パシッ!
キュキュッ。
パスを受け取ったと同時に少女はその場、停止。
- 449 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:01
-
「このっ・・・」
ヒュッ。
あさみが防ごうと手を伸ばしたのとほぼ同時に、その少女基、清水はシュートを放った。
「はっいれーーー!!」
清水は自分の放ったボールに向けて、おもいっきり叫んでいた。
- 450 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:05
-
キュ!
「辻ちゃん、まこっちゃん!!リバウンド!」
キュキュッ。
「わかってるれす!」
ギュ!
「りょーかいっ!」
清水がシュートを放ったのを見て、Aチームの里田、辻、小川が一斉にゴール下で構えた。
「させないよっ!」
ガシッ。
「のんには負けん!」
タッ。
「死守です。」
キュル!
Bチームのアヤカ、加護、菅谷も負けじと、それぞれ三人に対抗する。
- 451 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:07
-
シュパッ!!!
タンタンタン・・・
- 452 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:11
-
「んな・・・」
里田とポジション争いをしていたアヤカがただ呆然と、揺れるネットを見つめる。
「あ・・・」
加護も目を点にしながら、転がるボールを見ていた。
「・・・」
そして、Bチーム最年少の菅谷もただただ、リングを見つめていた。
「「「入ったぁ!!」」」
そんな三人をよそに、Aチームのゴール下三人組は笑顔を見せた。
- 453 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:15
-
「清水ちゃん、ナイス!」
「やった!やった!」
タタタタタタ!
辻と小川がものすごい勢いで清水に駆け寄る。
「えっ?」
清水はなにが起こった把握できていないのか、駆け寄って抱きついてくる二人の先輩をぼーっと見ていた。
「やるれすね!清水ちゃんも!」
「ホントホント!まさかスリーポイントをあんなあっさり決めちゃうなんて!」
辻と小川は清水の決めたスリーポイントがよっぽど嬉しかったのか、二人より小さい清水に覆い被さる。
- 454 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:20
-
「え・・・えぇ?わ、私が!?」
やっと自分の置かれた状況に気が付いたのか、清水が慌て始めた。
「え?え?わ、わ、わ私・・・」
本当に自分がここからシュートを決めたのだろうか、と清水は混乱していた。
「清水ちゃん。」
そこへ、二人より遅れて、里田がやってきた。
「ナイススリーポイント。」
笑顔でそう言う里田のおかげで、清水はようやく自分が決めたのだと自覚した。
- 455 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:25
-
「私が・・・」
今まで自信のなかったスリーポイント。
「清水ちゃん、スリーよかったよ♪かわいさはまだまださゆみのほうが勝ってるけど、シュートフォームはさゆみと同じくらいに♪」
清水はシュートを放った自分の両手をじっと見つめ、強く握った。
「ありがとうございます!!」
先輩たちにそう答え、笑顔でディフェンスへと戻って行った。
タタタタタタ!
そしてその後を、四人の上級生たちも追って行った。
- 456 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:26
-
「まずいな・・・」
そう呟くと、ベンチで見守っている新垣が再び動いた。
- 457 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:33
-
「さぁ、ここキッチリ守るよ!」
里田が声をかけていた。
ピッピーー!!
しかし、勢いに乗ろうというとこで笛が鳴った。
「メンバーチェンジ!Bチーム、10番アウト7番イン。8番アウト、9番イン。」
Aチームには嫌なタイミングでBチームのメンバーチェンジが告げられた。
コートから10番を付けた菅谷と、8番を付けた亀井がベンチへと向かい、代わりに7番のみうなと9番の嗣永が入ってきた。
- 458 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:38
-
「ここにきてみうなと嗣永ちゃん?」
里田は不思議だった。
これまでいい動きをしていた菅谷と、上手くパスを出していた亀井の二人に代わり、経験の少ない嗣永と普段からあまり試合に出る機会がないみうな。
フォワード菅谷とシューター亀井の代わりに入ってきた二人は、共にシューターだった。
「守りにきた・・・?」
しかし、里田が見る限り、時間はまだまだ残っている。
守りに入るにはまだ少し早かった。
- 459 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:44
-
「メンバー、代えてきたれす。」
里田の隣に立っていた辻の言葉で、ハッと我に返る。
「マーク、どうしますかい?」
前方にいた小川が里田と辻のところへと駆け寄った。
ピピッーー!!
そこで再び笛が鳴った。
「Aチームメンバーチェンジ。8番アウト7番イン!」
三人がベンチを見ると、松浦が笑顔で三好を送り出していた。
パチッ!
びっくりしている三人をよそに、道重はとびきりの笑顔で三好と一言交わすと、ベンチに下がって行った。
- 460 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:48
-
タッタッタッ。
三好が三人の元へと駆け寄ってきた。
「清水ちゃん。」
着いたと同時に清水を手招き。
「あ、はい!」
少し前の方にいた清水が急いで四人のところへと駆け寄った。
「えっと、監督から伝言。」
全員が揃ったのを確認してから、三好が話しだす。
「まずは清水ちゃん、ナイスシュートだったよ〜。」
「あ、ありがとうございます。」
清水が勢いよく頭を下げた。
- 461 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:54
-
「で、そこの三人。」
「「「あ、はい。」」」
三好の普段見せない表情に、三人は恐縮していた。
「もっとポジション取りは素早く、リバウンドを確実にしないと意味ないでしょ!!なんのために三人がゴール下行ったのよ!今度またあんな中途半端なプレイしたら、どーなるかわかってるよね?だそうです。」
三好は松浦の言葉を一字一句、間違えることなく三人に伝えた。
「おおー怖っ。」
と里田。
「お仕置きはいやれすっ!」
涙目の辻。
「そんなぁ〜。」
小川も少し怯えていた。
- 462 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 00:57
-
「というのは冗談だよ〜。にゃは!さっきのポジション取りは上出来。本当はマークの確認だよ。だそうです。」
「「「ウソかよ!」」」
三人がほぼ同時に三好へとツッコミを入れる。
- 463 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 01:02
-
「えっと、マークはまいちゃんがアヤカちゃん。」
「はいよ。」
三好はツッコミに少し微笑みながら、マークの指示を伝えていく。
「辻ちゃんが加護ちゃん。」
「のんはあいぼんれすね。」
辻は嬉しそうに加護の背中を見つめる。
「まこっちゃんはあさみちゃん。」
「おぉ!りょーかいっですっ!」
小川はガッツポーズを見せる。
「で、清水ちゃんが嗣永ちゃん。私がみうなちゃんです。」
「はい!!」
- 464 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 01:08
-
「さらに監督からの伝言です。」
騒いでいた辻と小川や静かに聞いていた里田や清水も、もう一度三好に耳を傾ける。
「向こうはフォワードの菅谷ちゃんを下げて、シューターを二人にしてきた。スリーポイントは要注意するように。あと、リバウンドは菅谷ちゃんが抜けたから、アヤカと加護ちゃんの二人だと思う。だからまいちゃん、まこっちゃん、辻ちゃんの三人はリバウンドをしっかり確保すること。だそうです。」
「りょーかいっ!」
「はいよっ!」
「わかりました!」
元気よく返事をする辻、小川や清水。
- 465 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 01:11
-
「・・・」
しかし、里田は一人、考えていた。
果たして本当にただフォワードが一人抜け、シューターが二人に増えただけなのだろうか、と。
里田は相手ベンチの方を見る。
すると、ちょうど新垣が菅谷と亀井に言葉をかけているところだった。
「・・・」
ガキさんが・・・
それだけでメンバーチェンジ?
- 466 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 01:15
-
普段のコート内の新垣を知っているだけに、里田は疑問でならなかった。
「まいちゃん。」
そんな里田を見かねて、三好が里田の肩を叩いた。
「ガキさんがそんなことでメンバー交代させるかって思ってたでしょ?」
「え?あぁ、うん。」
里田は一瞬、なぜ自分の考えていることがわかるのか疑問に思ったが、よくよく考えると、コート内での新垣をよく知るのは同じレギュラーである、松浦や三好も一緒なのだと気が付いた。
- 467 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 01:20
-
「私も初めはそう思ったんだけど・・・亜弥ちゃんがね、ガキさんがそんな簡単なことでメンバーを代えてくることはないけど、今のところはその理由しか思いつかないって。私もそう思ったの。」
「だよね。」
里田も松浦と三好の意見に賛成だった。
いくら新垣がなにか考えてこのメンバーチェンジをしたとしても、今の状況では、Aチームが予想できるのは『シューターを二人にした』というところが限度だった。
「とりあえず今はこれで、ね。」
「わかった。」
- 468 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 01:25
-
一方、Bチームは・・・
「フォワード一人・・・?」
メンバーが集まって、フォワードが加護一人になってしまったことに戸惑っていた。
「ちょっと、ガキさんなに考えてんの〜。」
アヤカが頭を抱える。
「ただでさえまいちゃん相手でリバウンドしてんのに・・・。しかも向こうはそれに辻ちゃん、まこっちゃんを加えてリバウンド強いチームなのにこっちが一人減って二人なんて!」
「まぁまぁ。」
そんなアヤカを入ってきたみうなが静かになだめた。
- 469 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 01:31
-
「とりあえず、マークはさっきのまんまで。あ、嗣永ちゃんは清水ちゃんマークで、あさみはまこっちゃんね。後の二人、アヤカと加護はそのまま、まいちゃんと辻ちゃん。」
みうなが冷静に新垣からの伝言を伝える。
「じゃあみうなは・・・」
あさみがみうなへと視線を向ける。
「ん、あたしは三好ちゃん。」
みうなはあさみの心配をよそに、なんの戸惑いもなく答えた。
「あ、大丈夫だよ。なんとかなるから。」
あさみの視線に気が付いたみうなが、最後に付け加えた。
- 470 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 01:35
-
「リバウンドは・・・まぁなんとかなるから。らしいよ。」
新垣の言い方を思い出したのか、みうなが笑いを堪えながら、リバウンド陣のアヤカと加護に伝える。
「んええ!?あいぼんあんまりリバウンド得意じゃないのにぃ!?」
新垣は自分があまりリバウンドを得意としないフォワードだと知っているのに、と加護が少し不安になる。
「二人じゃムリだよ〜!」
アヤカも二人いたところであのリバウンド三人組に対抗できないと考え、さらに頭を抱えた。
- 471 名前:星になる 投稿日:2006/02/17(金) 01:38
-
「まぁさ、ガキさんがなんとかなるって言ってたから・・・なんとかなるよ!」
みなに不安が広がる中、なぜかみうなだけは笑顔だった。
「あ、それとあさみはどんどん切り込んで攻めていいって。」
「あぁ、うん・・・。」
本当に大丈夫なのだろうかとあさみは不安を抱きながら、みうなから伝えたられた新垣の指示に頷いたのだった。
- 472 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/17(金) 01:42
- いつもよりちょっと長めの更新です(笑)
星龍さま>やっぱり星龍さまはエスパーでしたね(笑)
そしてまたもや…が動き出しました( ^_^)/
名無飼育さま>あとチョイって感じですかね((((((((^_^;)
更新遅くてすいません(>_<)
- 473 名前:774飼育 投稿日:2006/02/17(金) 01:55
- 更新お疲れ様でした
長めの更新大変うれしいです
この先どうなるんでしょうか・・・ドキドキw
次回も楽しみにしてますよ
- 474 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/03(金) 18:35
- 待ってます
- 475 名前:星になる 投稿日:2006/03/22(水) 02:32
-
***
- 476 名前:星になる 投稿日:2006/03/22(水) 02:37
-
シュッ!!
「リバウンドォ!!」
シュートを放ったAチームの三好がゴール下の味方に叫ぶ。
ダンッ!!
ゴール下に集まったメンバーが勢いよく、地を蹴っていた。
ガツン!
もう何度目かわからないほど、後半に入ってからのスリーポイント率は両チームとも下がっていた。
ガシッ。
リバウンドを一人が涼しい顔でキャッチ。
それを、周りのゴール下メンバーは着地しながら見ていた。
- 477 名前:星になる 投稿日:2006/03/22(水) 02:38
-
「またみうな!?」
- 478 名前:星になる 投稿日:2006/03/22(水) 02:43
-
そう、後半のメンバーチェンジ以来、リバウンドを敵味方関係なく制しているのは・・・
チームの柱里田
その里田と唯一リバウンドで対抗出来るアヤカ
センターの二人ほどではないが、パワー勝負のリバウンドを得意とする辻
辻と同じようにパワーに自信のある小川
この四人の誰かではなく、本来ならリバウンドを頼りにしてシュートを放つシューターであるはずのみうなだった。
- 479 名前:星になる 投稿日:2006/03/22(水) 02:47
-
「はいっ!」
ボールを持ったみうなを確認したあさみが手を上げる。
「あさみ〜!」
ヒュッ!
みうなはなんの躊躇いもなく、あさみへとロングボールを繰り出した。
パシッ。
前方でボールを受け取ったあさみは、ノーマークでランニングシュートを決めた。
「よっし。ナイスリバン!」
「うん!」
パチッ!!
あさみとみうながセンターライン上で両手でハイタッチを交した。
- 480 名前:星になる 投稿日:2006/03/22(水) 02:57
-
後半開始からもうかなりの時間が過ぎ、残りは10分。
両チームの点差は
Bチーム43点
Aチーム38点
ここに来て、Bチームが少しリードをし始めていた。
「よっしゃ〜!守るでぇ!」
予想だにしなかった展開でも、自分たちが勝っているからか、テンションの高い加護。
それを見ながらクスリと笑うBチームの面々。
それとは対照的に、Aチームは呆気にとられているような、拍子抜けしたような、なんとも言えない表情だ。
- 481 名前:星になる 投稿日:2006/03/22(水) 03:02
-
またやられた。
Aチームのベンチにいるメンバーまでもが心の中でそう呟いた。
まさかみうなが・・・
みうなが入ってきたときは誰も想像しなかった展開。
リバウンドが三人対一人になってこっちに分があるなんて思ったのはほんの一瞬だった。
あまりにも一瞬過ぎてその瞬間をも忘れてしまっているメンバーも、ひょっとしたらいるかもしれない。
- 482 名前:星になる 投稿日:2006/03/22(水) 03:06
-
松浦や里田、三好の感じていた嫌な予感は見事に的中してしまったのだ。
Bチームの刺客、みうなという意外な存在によって。
「暗い暗い!暗過ぎれすよっ!まだまだ追い付けるから!」
Aチームの雰囲気の悪さを察した辻が明るく振る舞う。
「のんつぁん・・・」
いつも明るいキャラのはずの小川までもが、肩をガックリと落としていた。
- 483 名前:星になる 投稿日:2006/03/22(水) 03:11
-
「ん〜もう!まいちゃん、みよっちゃんそれにまーこーともみんな暗いれすよっ!清水ちゃんもっ!」
辻がいつものようにみんなに接するため、パタパタとコートを駆け回る。そして、もと居た場所へと再び戻る。
ダンッッ!!!
「んえ?」
「何して・・・」
何を思ったのか、辻がその場でおもいきりジャンプをし、着地していた。
それに驚いたAチームの面々は、地面を見つめていた視線を、辻へと向けた。
- 484 名前:星になる 投稿日:2006/03/22(水) 03:17
-
「はい、みーんなが注目したところでれすね・・・」
辻がにこっと笑い、右手で高橋と紺野を指さした。
「あ、あーしたち?」
「なな、なんですか?」
辻の突然の行動に、高橋と紺野は思わず目を点にしていた。
辻はというと、二人を指さしたまま視線をメンバーへと戻す。
「時間。まだ10分もあるんれすよ。それに点差はたったの5点。今ののんたちだったら、5点くらいなら3分もあれば簡単に追い付けるのれす。ってことは、逆転する時間は7分もあるんれすよ。」
言い終わった後に、辻はもう一度笑った。
- 485 名前:星になる 投稿日:2006/03/22(水) 03:21
-
「だーから!そんなに焦る必要もなければ、落ち込む必要もないれす。ただのんたちはいつもどぉーりのバスケをしてればいいんれすよ。」
辻の言葉にAチームの面々が小さく頷いた。
「よぉーし!反撃かいしぃ!なのれすっ!」
そんなメンバーを見た辻が満足したような笑みを浮かべながら、拳を高々と掲げた。
- 486 名前:ワクワク 投稿日:2006/03/22(水) 03:23
- 更新遅い上に短くてすいません(._.)
また近々更新いたしますので((((((((^_^;)
- 487 名前:星龍 投稿日:2006/03/22(水) 22:43
- お久しぶりです。そして更新お疲れ様です。
試合だんだんと面白くなってきましたね。
2人の監督と、各チームメンバーには頑張って欲しいです。
- 488 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 02:14
-
パサッ・・・・
タンッ。
- 489 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 02:22
-
「よっしっ!!後1点れす!」
辻がチームメイトに声をかけてから、わずか1分半。Aチームは軽快なパスと辻の活躍でいっきにその差を1ゴール差まで持ってきた。
「ここディフェンスだよ!ディフェンス!!」
ベンチの松浦からも激が飛ぶ。
「ここ1本止めよ!」
コートの中にいる、Aチームのリーダー的存在、里田がディフェンスに付きながらみんなを促す。
- 490 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 02:30
-
一方のBチームもみうなを基点にし、気持ちもプレーも盛り上がっていた。
「よーっし、行くで!のん!」
「どっからでもかかってくるのれす!」
とくに盛り上がってっているのは加護、辻のライバル二人だ。
この二人がゲームの流れに乗り始め、ゲームは終盤の終盤になるまでほとんどわからない状態だった。
- 491 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 02:32
-
そして・・・・
ゲームはどちらも譲ることはなく、ついにラスト2分になっていた。
- 492 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 02:40
-
「落ち着いて。1ゴール決めよ!」
再びBチームボールでリ・スタート。
あさみが前に駆け抜けるメンバーたちに落ち着いていこうと、声をかけた。
ダムダム・・・
Aチームの相手に対するマークはあまり変わらない。
ただ、Bチームにシューターが2人いる分、ここでスリーポイントを決められると痛いので、みうなと嗣永に付いている三好と清水のマークは今まで以上に厳しくなった。
「ナイディフェンス!」
そんな2人を見ていた里田がさらに声をかけた。
- 493 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 02:46
-
ただAチームに有利な点もあって、相手チームにシューターが2人いる分、フォワードが1人減ったので切り込んでくるパーセンテージは普段よりも格段に低くなっていた。
そのために、里田はかなり負担が軽減していた。
「ここ集中!!」
いつもよりも里田がチーム全体にかける声が多くなっていた。
そして、マークに付いている2人も途中出場なので、入ってから今まで、全力を出していても疲れは少なかった。
- 494 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 02:54
-
キュキュ。
全員が激しく動き回るため、床とバッシュの擦れた音が大きくなる。
ダム・・・
「・・・」
あさみはそんな状況を見ながら、ドリブルのまま立ち止まる。
「うぉっ!」
急に動きがストップしたので、あさみをマークしている小川が前のめりに体勢を崩した。
タンッ。
それを見逃さなかったあさみがすかさず地を蹴った。
「しまっ・・・」
フワリと浮いているボールを見ながら、小川は慌てていた。
- 495 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 03:00
-
やられた・・・
スリーポイントだ。
Aチームが今イチバン防ぎたかったスリーポイント。
みうなや嗣永ではなく、ガードのあさみがそれをわかってやってきた。
静かにゴールに向かってゆくボール。
それに気が付いた里田と辻、さらには小川自身もゴール下で構える。その横ではアヤカとみうなも3人とポジションを争うようにして構えていた。
「・・・」
あさみはただ無言でボールの行方を見守った。
- 496 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 03:01
-
パサッ・・・
- 497 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 03:05
-
「くっ・・・」
小川が悔しそうに歯をくいしばる。
「は・・・入ったぁぁぁ!」
そんな小川をしり目に、リバウンド体制をとっていたアヤカとみうなが抱き合って喜んだ。
スリーポイント。
あさみのそれが決まったことによって両チームの差はまた4点差へと広がってしまった。
Bチームには勝利という文字が見え
Aチームには敗北という雰囲気が漂っていた。
- 498 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 03:10
-
ここに来ての4点差。
もうほぼ勝利を確信したのか、Bチームの面々はまだスリーポイントの余韻に浸っていた。
スッ・・・・
そんなBチーム集団を横切った1つの影。
「辻ちゃん!!」
その影のすぐ後に里田がボールを拾って大遠投をしていた。
ビュン!!
「戻って!!」
それにいち早く気が付いたあさみが自分たちのゴールへと駆けていく。
- 499 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 03:15
-
パシッ!
しかし、あさみやBチームの面々が戻りきる前に、ゴール前で辻が里田の大遠投を受け取っていた。
「よし。」
タンッ。
辻はそのままボールを持って飛び上がり、1人のマークもつかないまま、平凡なジャンプシュートを決めた。
「よっし!ディフェンス!!後2点で追い付けるのれすよ!」
シュートを決めたかと思うと、辻は喜びもそこそこにして、ディフェンスへと戻って行った。
- 500 名前:星になる 投稿日:2006/03/23(木) 03:19
-
パンパン!!!
「ラスト1分!ここしっかり止めて!」
思わずベンチを立ち上がり、松浦も身を乗り出している。
「1本!!1本止めるよ!!」
中心後方、ゴールのすぐ下に立っている里田が気合いを入れる。
そんな里田に、周りのメンバーたちもしっかりと頷いていた。
1本止めるんだ。
その気持ちが見ている側にも伝わるほど。Aチームは必死だった。
- 501 名前:ワクワク 投稿日:2006/03/23(木) 03:20
- またも少量ですいません(-_-;)
- 502 名前:星になる 投稿日:2006/04/17(月) 23:29
-
そして本当に最後であろうリスタートが、Bチームボールで始まった。
- 503 名前:星になる 投稿日:2006/04/17(月) 23:51
-
ダムダム・・・
ボールを持つのはコート内で指揮官のあさみ。
「・・・・」
キュ。
自分のマークについている小川にボールを取られないように注意しながら、視線は注意深く状況を観察。
「加護ちゃん、右!嗣永ちゃんは加護ちゃんが動いて空いたとこ!」
二人を指と声で移動させる。
タタタタッ。
二人はコクリと一度頷くと、それぞれ指示の出たポジションへと移動してゆく。
ラスト30秒。
両端に高橋と紺野を従えている電工掲示板がチカチカと早く動いていた。
- 504 名前:星になる 投稿日:2006/04/17(月) 23:51
-
スッ――――
- 505 名前:星になる 投稿日:2006/04/17(月) 23:54
-
ちょうどあさみが電工掲示板を見つめていたまさにその時。
一つの風があさみの真横を通り抜けた。
いや、正しく言うとあさみはそんな気がしていた。
なにしろここは体育館で、風が通り抜けるなんてめったにないことなのだから。
- 506 名前:星になる 投稿日:2006/04/17(月) 23:55
-
「あさみっ!」
- 507 名前:星になる 投稿日:2006/04/17(月) 23:59
-
あさみの気は確かだったらしい。
あさみに向かってパスを要求する人物が前方にいた。
ダム・・・
ヒュッ!
「みうな!」
あさみは迷うことなく、パスを要求したみうなへとボールを出した。
「よし。」
みうなはフリーなワケではなかった。みうなのマークは三好。三好は今までフリーにさせることなく、完全にオフェンスではみうなを苦しませている存在だった。
キュキュッ!
「っつあ!」
それでもみうなは諦めなかった。
- 508 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:04
-
ドリブルで三好を引き付けながら粘る。
ダムッ!!!
「とるっ!!」
「ふはっ!」
三好の気迫のこもったディフェンスと息をきらしながら、これまた気合いと根性で取らせないようにしている、みうな。
タタタタッ。
「あとちょっとですっ!!」
もうここしかチャンスはないと判断したのか、嗣永についていた清水が三好のヘルプに回り、みうなのマークが三好と清水の二人になった。
- 509 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:07
-
「清水ちゃん、ゼッタイ取るよ!」
「ハイッ。」
二人はなんとかボールを奪おうと必死だった。
キュ・・・
キュキュッ!!
三好がみうなの顔をじっと見つめる。
「・・・」
すると・・・
「えヘへっ。」
なぜかみうなはにっこりと笑いかけた。
- 510 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:11
-
「しまっ・・・」
タンッ。
三好が気が付いたと同時にみうなが地を蹴って跳び上がる。
ダンッ!
「くっ・・・」
続いて三好も跳び上がるが、みうなの方が少し身長が高いのと、出遅れたのが重なって、ボール一個分届かない。
「シュートだよっ。」
みうなはパスを出しながら、時間がないと呟いた。
- 511 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:12
-
残り15秒。
- 512 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:13
-
みうなの今日の試合でイチバン最高なパス。
パシッ!
その絶妙なタイミングで出したパスが繋がった。
- 513 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:17
-
「嗣永ちゃん!いけっ!!」
ベンチに座っていた新垣も、興奮して声をあげた。
パサッ!
普段は冷静沈着な菅谷も頭に乗せていたタオルを手で下ろし、ボールを持った嗣永を見ていた。
- 514 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:21
-
グッ。
一度力強くボールを握った。
「・・・」
タンッ。
そしてフリーのままスリーポイントラインの一歩外からシュートを放った。
ヒュッ。
「は・・・入ってぇぇ!!!」
ここまで今日の試合で嗣永が放ったシュートは、これが初めて。
そして最後のシュート。
- 515 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:21
-
残り9秒。
- 516 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:24
-
嗣永のマークからヘルプにいった清水も唖然と立ち尽くしながら、ボールの行方を見ていた。
「・・・」
清水がヘルプに行ってしまったのも無理はない。
何しろ、嗣永のシュートはこの試合で一本もなく、それに対してボールをキープしていたみうながかなりの確率でシュートを決めていたのだから。
- 517 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:25
-
パシュッ・・・
- 518 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:27
-
嗣永の放ったボールがさらに追加点となった。
「入ったぁ!!!」
思った以上に調子が良かったからか、はたまたシュートが入ったからか、嗣永は今まででイチバンの笑顔を見せた。
- 519 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:30
-
タタッタタッ!
残り5秒。
「辻ちゃん!」
しかし、試合はまだ終わっていなかった。
パシ!!!
里田の大遠投が、ちょうどセンターラインまで走っていた辻に繋がった。
ラスト3秒。
辻の目に電工掲示板が写った。
- 520 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:32
-
「うぉ・・・りゃぁあーーー!!!」
その場からゴールに向かって里田よりもさらに力強く大遠投。
残り2秒。
- 521 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:34
-
バンッ!!!
辻の大遠投も虚しく、ボールはバックボードに当たって跳ね返る。
テン!!
テンテンテン・・・
そのままボールは床を転がった。
- 522 名前:星になる 投稿日:2006/04/18(火) 00:39
-
ピッ、ピピッーー!
「終わりや!試合終了!!」
主審をしていた中澤が大きな声でコール。
電工掲示板には
57対52
とわずか5点差でBチームの勝利が示されていた。
- 523 名前:ワクワク 投稿日:2006/04/18(火) 00:40
- 更新です(-_-;)
- 524 名前:774改 投稿日:2006/04/18(火) 02:06
- 更新お疲れ様です待ってました
ゆっくりまったり書いていってください
- 525 名前:星龍 投稿日:2006/04/19(水) 18:02
- 更新お疲れ様でした。
手に汗握る試合ですっごく良かったです。
これからも作者様のペースで頑張ってください。
- 526 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 22:56
-
――――
――――
――――
1時間後・・・
「さ、2試合目始めよか。」
おもむろに中澤が立ち上がる。
「もうやるんですか!?」
そばで他の部員たちの練習を見ていた松浦が驚いていた。
無理もない。まだ1試合目が終わってからそんなに経っていないのだから。
「ああ。さっき出たやつは極力使わんようにはする。」
稲葉がいつものように一言足りない中澤の言葉に付け足した。
- 527 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:03
-
「みんな集合や!しゅーごう!!」
中澤が一人楽しそうな表情で声をかける。
「はい!」
ハロー高校の部員に混ざって、吉澤たちOGも返事をしながら駆け寄る。
「コホン。これから2試合目のメンバーを発表する。」
「はい。」
次は自分かもしれない、という期待を持ちながら監督とコーチを見る部員たち。
何やってんのや、アイツらは!
中澤は内心焦っていた。
- 528 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:09
-
「先ずはそうやな・・・Aチーム発表するか。」
ガラッ。
やっときたか。
焦っていた中澤がほっとため息をつく。
「すいません!この子たちが時間間違えちゃって。」
イチバン背の高い人物が小さいのと、髪が短めな人を指さす。
「相変わらずあんたらは時間にルーズなんやな。」
指さされた当の二人は稲葉にそう言われながら、テヘへとはにかむ。
- 529 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:18
-
二人とは、常習犯の福田と大谷。
「ま、またまたすごいゲストですね・・・」
中澤の目の前にいた松浦は驚きながらも、他の部員たちよりかなり冷静だ。
「すご・・・」
他の部員たちはといえば、キラキラとした目でひたすら日本代表メンバーを見つめたり、サインを貰おうかとざわついたり、ただただ開いた口がふさがらなかったりしていた。
「紹介せんでもわかるやろうけど、代表メンバーの石黒に福田、大谷、斎藤そして村田や。」
- 530 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:22
-
「よろしく。」
五人は軽く頭を下げると、また中澤に視線を向けた。
「こいつらが来て途中になってしもーたけどやな・・・Aチームメンバーの発表や。」
中澤の言葉に珍しく返事が返ってこない。
部員全員がただただ代表メンバーを見つめていた。
「はぁ・・・」
そんな部員を見ていた中澤と稲葉が、やれやれという表情で顔を見合わせる。
代表メンバーたちは、それを不思議そうに見ていた。
- 531 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:26
-
「Aチーム、今来た代表メンバーや。あっ!あとプラスあっちゃんとあたしな。」
「え・・・?」
中澤の思いがけない発言にようやく部員が視線を戻した。
「えぇーー!?」
「いちいちうっさいな。」
中澤や稲葉には、部員たちの反応があらかじめわかっていた。
そのため、二人とも両耳を塞ぐ。
「だ、代表メンバーがAチームなんですか?」
「今そう言ったやろ。」
小川の繰り返した質問にまたも飽きれ顔。
- 532 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:35
-
「はいはい、じゃあ次、Bチームな。」
わざとAチームの話題を流して、相手のBチーム発表に移る。
「まずは大学生ら全員な。あんたらBチーム。」
静かな中澤の横で、今度は稲葉の口から告げられた。
「うちらっすか?」
吉澤が素早く反応する。
部員たちとは違い、驚きは驚きでも、ただ驚いているのではなく、嬉しいあまりの驚きだ。
「ああ。後は・・・松浦、新垣、田中。疲れてるとこ悪いけど・・・里田もチーム入ってくれ。」
「あ、はい。」
自分が呼ばれるはずがないと思っていたのか、里田が慌てて答えた。
- 533 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:39
-
「・・・あほか・・・」
静かだった中澤がそっと呟くが、それは隣りにいる稲葉にしか聞こえないほど小さな声だった。
「・・・とりあえずチーム発表は以上や。後は各自で・・・」
ガラガラガラッ!!
稲葉ば言葉を続けようとしたまさにその時。
代表メンバーたちが入って来たよりも、遥かに大きな音をたてて、体育館の扉が開いた。
- 534 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:40
-
逆光で数人のシルエットが写る。
- 535 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:42
-
「相変わらず派手な登場やな・・・」
見覚えのあるシルエットに、中澤はニッコリと微笑んだ。
- 536 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:44
-
そのシルエットの中でも、明らかに他のシルエットよりも小さな影。
誰だ?
アレ・・・
部員たちの目は思わずそちらへと向けられていた。
- 537 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:46
-
「ここが昔練習してた体育館なんだよ?」
そう言うと一人が、その小さな影に視線を合わせるように屈む。
ガラガラガラ。
その後ろで一人が扉を閉めたため、逆光の眩しさが消えた。
- 538 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:50
-
「すごぉーい!おっきなとこなんだね!」
小さな影の正体は、見知らぬ小さな女の子だった。
「本当によろしいんですか?」
女の子の隣りで心配そうに問う一人の女性。
歳からしておそらく女の子の母親だろう。
「いいんですよ。」
女の子と手を繋ぎながら、目線を合わせていた少女がニッコリと笑った。
- 539 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:51
-
「み・・・みきたん!?」
初めに声をあげたのは松浦だった。
- 540 名前:星になる 投稿日:2006/05/08(月) 23:56
-
「よっ。亜弥ちゃん。」
にこやかな女の子と手を繋いで、笑顔をちらつかせながら部員やOGたちが集合している場所に近づく。
「遅い。それになんやねん、そのチビッコは。」
美貴が遅刻してきたせいか、やけに不機嫌になってしまった中澤。
「すいませんすいません。この子は・・・今日の観客さん。あとこの子のお母さんも。」
監督としてではなく、あくまでも身内の一人として会話を交わす。
- 541 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:00
-
「まぁ・・・ええわ。さっそくやけどいけるか?」
「当たり前じゃないっすか。そのために走ってきました。」
ここで身内から監督と選手の間柄に変わる。
美貴がまたニッコリと微笑み、女の子にねっ?と問いかけた。
少女は意味がわかっているのか、いないのか、うんっ!と元気よく答えた。
それにまた美貴が笑顔になる。
- 542 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:04
-
よく笑うようになったやないか。
稲葉から見た美貴の印象だった。
前よりもかなり顔付きが穏やかに見える。
そう思っていたのは稲葉だけではなかった。
「じゃあ藤本。あんたBチームな。」
「わかりました。」
家にいるときとはかなり違う二人の態度。
それでも二人は違和感などみじんも感じさせない。
- 543 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:08
-
「じゃあ行こっか。アイちゃん。」
「・・・え?」
ここで今まで無言だった高橋がようやく口を開いた。
「うんっ!!!」
しかし、返事をしたのは彼女ではない。
「よっ・・・し!」
美貴は笑顔で少女を抱き上げると、そのままベンチへと向かって行った。
「あ・・・あはは、あーしやなかったんや。」
思わず反応してしまった自分に少し恥ずかしさと切なさを覚えた高橋だった。
- 544 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:12
-
美貴は少女をベンチとは別の端にある椅子に座らせ、その隣りに母親を腰かけさせた。
「相田さん、どうもです。」
そして一旦マネージャーの相田に預けていたバックを受けとる。
「頑張ってね。」
「いつも通りのプレーをするだけですよ。」
そう言いながら更衣室へと足を向けて歩いていく。
- 545 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:13
-
「いつも通り・・・か。」
相田は苦笑しながら、力の入っている美貴の背中を見つめていた。
- 546 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:13
-
***
- 547 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:15
-
ちょうどハロー高校で1試合目が終わったその頃。
美貴はハロー高校に向かっていた。
- 548 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:17
-
ブッブーーー!!
道路から聞こえるトラックの大きなクラクション音。
キキッーー!!
それに続いて今度はブレーキ音。
「危ない!!」
気がついたら体が勝手に動いていた。
- 549 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:19
-
その場で動くことのできない女の子は、ただただ向かってくるトラックに視線を向けていた。
ブッブーーーー!!
さらにクラクションが何度も何度も鳴らさせる。
- 550 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:20
-
バッ!!
ズザザザザッ。
- 551 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:21
-
ブッーーー!!
クラクションを鳴らしながらトラックが通り過ぎて行く。
- 552 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:23
-
「あっ・・・ぶな・・・。」
美貴は少女を抱きかかえ、道路に寝そべっていた。
「あ、アイ!!」
そんな二人に、慌てて駆け寄ってくる一人の女性。
- 553 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:27
-
少女は放心状態だったが、女性の声を聞いてどこか安心したようだった。
「だ・・・いじょぶ?」
美貴が腕をほどいて、抱きかかえている少女を覗き込む。
「う・・・ん・・・」
多少怖張った体を震えさせながら、少女はゆっくりと頷いた。
「よかったぁ・・・」
安心して肩を下ろす。
- 554 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:30
-
先に自分が立ち上がり、少女を両手で起き上がらせてやる。
パンパン・・・
「ゲガない?」
少女の服に付いたゴミをはらってやりながら、屈む。
「だいじょーぶ。」
少女がまた頷いた。
「アイっ!」
後ろからやってきた母親が少女を抱き締める。
少女も思いきり母親に抱きついた。
- 555 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:33
-
「マァマァーー!!」
ここでやっと安心したのか、少女はポタポタと涙を流した。
「ダメでしょ!ママから離れちゃ!」
「ごめ・・・んな・・・じゃい・・・うえっ・・・」
こんな場面で不謹慎ではあるが、美貴にとって目の前の光景が微笑ましかった。
- 556 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:36
-
「あ!ありがとうございました!!うちの子を助けてくださって・・・なんとお礼を言ったらよろしいか・・・」
少女を助けた美貴に気がついた母親が少女を抱きかかえながら、何度も何度も頭を下げる。
「いや・・・お礼なんか・・・体が勝手に動いていただけですし・・・はい。」
何度も何度も頭を下げる母親を前に、美貴も何回か頭を下げた。
- 557 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:40
-
「あ!」
ここでいつの間にか泣きやんでいた少女が美貴を指さす。
「おねーちゃん、ありがとっ!」
「あ、うん。」
満面の笑みでお礼を言われ、美貴は自分の顔が赤くなるのを感じた。
「アイね、おねーちゃん好きなの!」
「え?」
小さな少女からこれまた満面の笑みで大告白。
- 558 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:43
-
「テレビでおはなししてたの、アイ見たのっ!」
少女がテヘへと笑う。
少女が言っているのは、おそらくこの前コメントだけを収録した番組のことだろう、と容易に予想がついた。
「そっか・・・ありがとね。」
「うんっ!」
美貴が少女の頭を撫でると、さらに笑顔になった。
- 559 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:47
-
「もしかして・・・」
母親も子供の言葉でやっと美貴が藤本美貴だと気がつく。
よくよく見ればANGELSのジャージとバック。
どう見てもアノ藤本美貴だった。
「そうだ。アイちゃん、バスケ知ってる?」
「ばぁすけぇ?」
美貴を知っていても、どうやらバスケ自体は知らないらしい。
- 560 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:49
-
「美貴ね、これからバスケってやつをしに行くんだけど・・・アイちゃんも一緒に来る?」
「アイ、行きたいっ!」
美貴が少女に微笑む。
「あ、もちろんお母さんもどうぞ。」
美貴は母親に目線を向けた。
「よ、よろしいんですか?」
かの有名なバスケット選手に自分のバスケットを見ないか、と誘われて戸惑う女性。
- 561 名前:星になる 投稿日:2006/05/09(火) 00:54
-
「あー・・・用事があるなら無理にとは言いませんよ。ほら、美貴、なかなかバスケって小さい子たちはやらないんで・・・興味を持ってくれたらな、と思いまして。」
美貴は照れ隠しに頭をかいた。
「ぜ、ぜひ拝見させて頂きます!」
子供が美貴を見ているということは、母親もファンなのだろう。
彼女は案外あっさりと美貴の申し出を受け入れたのだった。
「じゃあ行きましょう。マネージャーさんも現場で待ってるんで。」
そう言いながら、美貴は再び歩き出した。
- 562 名前:ワクワク 投稿日:2006/05/09(火) 00:54
- 久々過ぎる更新です(-_-;)
- 563 名前:774改 投稿日:2006/05/09(火) 01:04
- 更新キタ━━━━━━ (゚∀゚) ━━━━━━!!!!
ずっと楽しみにしてました
これからもがんばってください
- 564 名前:星龍 投稿日:2006/05/09(火) 18:39
- 更新お疲れ様です。
ずっと楽しみに待ってました。
これからもマイペースに頑張ってください。
楽しみにしてます。
- 565 名前:ピート 投稿日:2006/05/09(火) 19:52
- 更新お疲れ様です!
ミキティなんかカッコイイですね!!
また、更新されたら感想書きに来るのでよろしくっす!
- 566 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/12(金) 08:25
- すみません、1が見つけられないんです。もしよかったらどこを探せばいいか教えてくださーい!!
- 567 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/12(金) 16:33
- >>566
ttp://mseek.xrea.jp/white/1102743950.html
- 568 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/11(日) 01:22
- 続き待ってます
- 569 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/28(水) 00:53
- 小学生・中学生・高校生・大学生・一般と分けた方がいい
- 570 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/28(水) 01:13
- あげない方が良いと思う
- 571 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/28(水) 02:18
- 更新したのかと思ったし
- 572 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/28(金) 02:07
- 待ってますからね
頑張れ
- 573 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/15(火) 18:14
- まったり待ってます。
頑張って下さい
- 574 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/15(火) 21:35
- まったり待つんなら上げるな。
- 575 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 01:17
-
「んで、どーするよ?スタメン。」
美貴が最後に加わったところで、改めてBチームが輪を作る。
そして、第一声は吉澤が発した。
「ん〜。そうだなぁ。とりあえず、藤本は初めから入ってたほうがいいよね。」
次に、このチームの監督的存在になるであろう柴田が答えた。
「ですね。」
その言葉にもう1人の監督的存在、新垣が笑顔で頷く。
- 576 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 01:21
-
ジィーー。
チームの全員が美貴を凝視する。
「え?ちょっと待ってくださいよ。美貴、スタメンなんですか?」
あまりに見られすぎて、かなり戸惑っている。
「当たり前でしょ!みきたん!!」
松浦はこらこらと、美貴に言う。
仮にもWNBAの得点王なのだから、柴田の言ったことは、チームの中では当然なのだ。
- 577 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 01:25
-
「あ、の、ですね。美貴の中でスタメン決めたというか、何というか・・・」
美貴には珍しく、かなり遠慮がちに周りを見ながら発言する。
「えぇ!!?」
当然と言えば当然の反応が、全員から返ってきた。
「いや、その・・・あくまでも美貴の中で。の話なんですけど・・・。」
美貴の頭の中では、完全に勝利までのシナリオが描かれていた。
- 578 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 01:28
-
「なーんだ。なら早く言ってよ!」
意外にも、新垣が安心したかのように、にっこりと笑った。
「とりあえず、そのスタメン言ってみてよ。」
今度は柴田。
案外、2人はこうなることを予想していたのかもしれない。
「まぁ、2人がそう言うなら・・・」
美貴の一言で、チームのざわつきが消え、静かになる。
- 579 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 01:34
-
「んっと、まずセンターは吉澤さん。向こうは監督とコーチを入れても、センターは石黒だと思うんで。」
美貴の言う通り、身長からして、中澤や稲葉がセンターで起用される可能性はないに等しい。
「で、パワーフォワードに後藤さん。スモールで田中ちゃん。」
「えっ?」
ここでチームに悪いというより、不思議だという空気が流れる。
美貴や現キャプテンを起用せず、代わりに現在はシューターの後藤と2年生の田中だと言うのだから、妥当な反応と言えば妥当なのだが。
- 580 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 01:39
-
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!美貴ちゃんは入らないの?」
理解できないのか、慌てて石川が問いかける。
「あー、はい。ここのポジションは、正直、向こうは誰が入ってもおかしくないんですよ。」
全員がAチームの面々を見る。
確かに、石黒をセンターに置いたとしても、他のメンバーは誰でもフォワードが出来そうなメンツばかりだ。
「ね?」
深刻そうな表情になったメンバーたちを見て、美貴がでしょ?というような顔をした。
- 581 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 01:44
-
「そこで・・・あ、ボード貸してもらえますかぁ?」
思い出したかのように、試合の準備をしている部員に、美貴が小さい作戦ボードを貸してくれるように頼む。
「っと、センターは吉澤さんに任せることにして・・・」
作戦ボードを頼み終えると、また、輪の中へと向き直り、説明を続ける。
タッタッタッ!
- 582 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 01:47
-
「はい、これ。」
説明をしている最中に、作戦ボードを差し出される。
「あ。ありが・・・と・・・」
美貴が振り返ると、そこには高橋が立っていた。
あまりに突然すぎて、体が硬直してしまう。
「ん。これ、使うんやろ?」
そんな美貴に、案外、落ち着いている高橋が差し出す。
「あぁ。うん。どーもありがとう。」
慌てて受け取ろうと手を伸ばした。
- 583 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 01:52
-
「あ・・・」
バッッ!!!!
「ごごご、ごめん!!!」
美貴の指先が高橋の指に触れてしまい、またも美貴が慌てて手を離す。
それと同時に、本人の顔が、ボッと効果音が聞こえるくらいに赤くなった。
「・・・これ。あーし、他の仕事もせんといかんから。」
そんな美貴の行動を見て、どこか寂しそうに笑いながら、ボードを渡す高橋。
- 584 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 01:56
-
「あ・・・」
タタタタタ。
ボードを渡され、話しかけようとする美貴を尻目に、高橋は元来た場所へと、小走りで戻ってゆく。
「藤本さん。さっきの説明の続きお願いします。」
「あぁ、うん。」
去っていった彼女を気にかけながらも、先ほどの話しの続きをボードで説明するために、また輪の中へと戻っていった。
- 585 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:00
-
「えっ・・・と、その、向こうは誰がフォワードかわかんないわけですよ。」
パチ。
パチッ。
パチ。
ボードに描かれたコート内に、黒の磁石を5コと、赤の磁石を5コをそれぞれ置く。
「どの人がきても、まあ多少は相手によりますけど・・・大抵の場合は向こうのほうが上なんですよ。」
最後に、ボールに見立てて、黄色の磁石を置く。
- 586 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:04
-
「ってことはですよ?」
パチ。
黄色の磁石が、ゴールからいちばん遠い赤の磁石からゴール下の赤い磁石へと移動する。
「当然、センターにもパスが通りやすくなる。」
ボードを見つめながら、ふんふんと頷く頭がいくつかと、じっと動かないものも多数。
「そこが狙い目というかなんというか。」
美貴がははと笑った。
- 587 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:08
-
「多分、美貴が入っちゃうとミョーに警戒されちゃってセンターに回らなくなるかなぁと思って。あと、ボールをカットすんのとかって割と後藤さんはヒョイと簡単にやっちゃうほうだし。」
美貴は、この試合の全般は吉澤中心に組み立てたほうが無難だろうと考えたのだ。
「それだったらミッキーやあやちゃんも得意なんじゃないの?」
いつからミッキーというあだ名がついたんだよ、と思いながら、問いかけてきた里田を見る。
- 588 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:12
-
「んー、なんて言うのかなぁ。まいちゃんの言うこともハズレじゃないんだけどさ、後藤さんとか田中ちゃんってうまいこと影を消すっていうか、存在を消せるっていうか。」
確かに、美貴や松浦はいやでも目立ってしまうところがあり、存在はタップリだ。
「確かに。ごっちんや田中ちゃんはそういうのうまいよね。」
柴田がうんうんと、人一倍、頷いた。
- 589 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:17
-
「そーなんですよ。それに攻撃面でも、向こうは派手なプレーが目立つだろうから。そういうほうが返って得点しやすかったりするんですよ、こっちは。あとは美貴が入るより、後藤さんと田中ちゃんの組み合わせのほうがやり慣れてるだろうし、吉澤さんもフォローしやすいかなと思って。」
パチンッ。
今度はボード上のセンターにある、黒い磁石が、黄色の磁石を外へとはじき出す。
「でも、ごとー、リバウンド苦手だよ?」
「れなもそんな得意じゃなかです。」
静かに聞いていた2人が口を挟む。
- 590 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:21
-
「あ、そこはダイジョーブ。あっちは確実に決めれるのしか打たないですよ。」
あーとなんだか悔しそうに声を出しながら、その部分は全員が納得。
あちらのメンバーは外すはずがない。相手が格下なら、なおさら。
「まぁ、万が一、リバウンドがきたとしても、そんときは吉澤さんが行けばいいわけですし。」
おいおい、1人でリバウンド行けってか。
吉澤は大変なことをさらっと言われたな、と苦笑。
- 591 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:26
-
「で、ここ。」
トントン。
ボード上の黒い磁石を、美貴が指で叩く。
「シューター。攻撃ではここがチャンスかな、と思います。」
「チャンス?」
松浦が不思議そうに、言葉を繰り返した。
「うん。向こうは、シューター専門っていったら村田さんだし・・・まあ、監督やコーチがくるって可能性もなくはないんだけどね。」
また美貴がアハハと1人で笑う。
- 592 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:29
-
「でも、もしここに村田さんだったら。」
スッ。
黒の磁石と、黄色の磁石を一緒に動かす。
「ここはかなり抜きやすくなる。村田さんは、シューターとしてかなりの技術だし、シューターについたときはほっとんどシュート防ぐしね。」
じゃあダメじゃん。
誰もが落胆の表情でボードを見つめる。
- 593 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:33
-
「ただ、村田さんは縦の動きにはニブいんですよ。つまり・・・」
黄色の磁石をゴールへと移動させる。
「村田さんをうまく抜けば、シューターはその場で打てるし・・・」
また黄色の磁石を元へと戻し、今度は別の場所へと動かす。
「あるいは意志疎通出来れば、パス回しも不可能じゃなくなる。必ず、村田さんが抜かれた時点で誰かがフォローに行きますからね。」
おぉーと感動したかのように声があがる。
これは、美貴が全日本にいたからこそ、わかることだった。
- 594 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:37
-
「ってことで、ここには石川さん。」
「わ、私!?」
この作戦を聞いた時点で、自分はスタメンから外れるだろうと思っていたので、思わず声が裏返る。
「はい。これはまずシューターとして機能を果たしてないといけないんで。」
そういう面では、メンバー内でいくと石川か後藤がベストだった。
- 595 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:41
-
「それに、石川さん、意外と縦の動き、いいんですよ。シューターにはない動きとか、昔はよくありましたし。」
まだ高校に在籍していたときのことを振り返ると、美貴の中で、石川がバッチリ当てはまるのだ。
「監督かコーチがシューターできたら元も子もないですけどね。」
「わかった・・・って、えぇー!!!」
石川の反応を見て、美貴がクスッと笑う。
- 596 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:46
-
「まあまあ。シューターはほぼ村田さんで間違いないでしょうから。」
それでも、石川はまだ1人でブツブツと何か言っている。
「んで、最後にガード。今回はかなり困難ですよ、このポジション。」
トン、トトン。
美貴が不規則に黒い磁石を叩く。
パチッ。
「ん〜・・・」
その磁石を置いたり、外したりしながら考える。
実は、まだ決めかねているのだ。
- 597 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:50
-
「うーん・・・ここは・・・柴田さん、かな。」
「かなってなんだよ、かなって。」
曖昧な言い方をした美貴に、すかさず吉澤が食いついた。
「いや、ここも向こうのメンバーからいくと、かなりのパターンがあるんですよ。だからどーしようか今まで迷ってたんですけど。」
ガシガシ。
頭をかきながら、手に持つ黒い磁石を触る。
パチン。
そして元の位置に置いた。
- 598 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 02:55
-
「しかも、この試合、いつもより視野を広くして、でも1つ1つの動きを細かく見極めなきゃいけないんですよ。石川さんにパスを出すか、それとも後藤さんや田中ちゃんがうまくマークの裏に入ったのを見極めてパスを出すか、とか色々あるんで。」
ボードから目を外し、メンバーを一旦見回す。
「ただ、うちのチームは、かなり未知数すぎて。」
吉澤がえ?と首を傾ける。
- 599 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 03:00
-
「いやね、柴田さんはかなり視野広いし、観察力も鋭いんですよ?ただ、そういうとこではガキさんも負けてないんじゃないかなと美貴は思ってて。」
新垣がすごい勢いで美貴を見る。
「えっ?ええ!?」
尊敬する先輩と対等に比べられたのは初めてだったのか、あたふたあたふたしている。
「いや、本当に。美貴とプレーしなくなってから、かれこれ時間経ち過ぎてて・・・。その間にどんだけ成長したのか考えると余計迷っちゃって。」
困りものだという表情の美貴。
- 600 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 03:05
-
「あと、あえてこのポジションにあやちゃんを持ってくるのもアリかなって。」
今度は松浦が身を乗り出し、なんであたし?と目で訴えかけてくる。
「あやちゃんって意外と周り見えてるし、それに元々フォワードのあやちゃんがここに入ることによって、攻撃面がかなりアップするかなと思ったりもしました。そう考えると、こっちのチーム、かなり未知数なんですよ。パターン的にも色々できちゃって。」
決まってほっとしたのか、はぁとひと息つく。
- 601 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 03:11
-
「あと、藤本がガードで入るパターンもいいよね。藤本の場合はガードの能力も高いし、プラス攻撃面もかなり強化されるだろうし。」
柴田が美貴の意見に付け加える。
「あー・・・それも考えたんですけどね。でもやっぱり、こういう試合はガード慣れしてる人がいいかなっと思って。」
美貴の考えで、最終的に残ったのは、柴田と新垣だった。
「で、メンバー的に柴田さんのほうが場数を踏んでるし、最初はガキさんもベンチで分析したほーがやりやすいかなって。」
確かに、柴田のほうが場数を踏んでいるので、ある程度の応用は効く。
- 602 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 03:14
-
最初はベンチ・・・か。
柴田は、美貴の言葉を聞いて、改めて新垣が自分のポジションまで登ってきていることを自覚した。
「ってとこなんですけど、どーします?ポジション。」
自分の意見を一通り言い終え、他のメンバーを見渡す。
「よしざーは文句ねーよ。」
こういうとき、開口一番なのは、大抵吉澤だ。
- 603 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 03:17
-
コクッ。
そして、大抵のことがなければ、全員納得して頷く。
今回もそのパターンだった。
「あ、あと、このメンバーは固定じゃないほうが向こうもやりにくいと思うんで、バンバン代えていきましょ。」
コク。
今度は美貴の言葉に全員が頷く。
- 604 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 03:20
-
「交代メンバーとかは美貴ちゃんとしばちゃん、それからガキさんで決めてよ。みんなもそれでいいよね?」
石川が全員の顔を見渡すが、1人として反対する者はいなかった。
「はい。じゃあ決まり!」
バンバン。
吉澤がオーバーに手を叩く。
「わかりました。」
美貴も一言返しておいた。
- 605 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 03:24
-
ピピッ!!
「試合を始めまーす!!」
主審を任された生徒が、笛をふいた。
「おっし、円陣。」
昔と同じように、吉澤が率先して、チームで輪を作る。
「えーと・・・ってか、よしざーもうキャプテンじゃねーんだったわ。」
忘れてた忘れてたと、舌を出して、恥ずかしそうに笑った。
- 606 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 03:27
-
「あたしですか?やですよ?」
無言で、現キャプテンの松浦にバトンタッチしようと試みたが、あっさり否定された。
「んじゃあ、ここは監督の藤本で。」
たまたま松浦の隣りで肩を組んでいた美貴。今度は、言葉でバトンタッチ。
「え?美貴、監督なんですか?」
美貴の疑問はまずそこからだった。
- 607 名前:星になる 投稿日:2006/09/13(水) 03:31
-
「あーうん。スタメン決めたの藤本だし。まあいいじゃねーか。さ、ささ。」
明らかに不純な動機ではあるが、さぁと美貴を促す。
「まぁいいですけど・・・。えっと、結構大変な試合になると思いますけど、美貴は負ける気しないんで。なので、みんなで勝ちにいきましょ!!」
「おぉ!」
ダン。
全員で一度足で床を鳴らし、スタメンはコートへと向かった。
- 608 名前:ワクワク 投稿日:2006/09/13(水) 03:33
- かなり久々の更新でもうしわけありません!!!m(_ _)m
色々と話を練っておりました。
本当にお待たせしてしまってすみませんでした。
- 609 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/13(水) 08:54
- やったぁ〜!!
舞ってました・・・失礼待ってましたよ♪
更新お疲れ様です。
みきたんの活躍と未知数ガキさんに期待です。
- 610 名前:774 投稿日:2006/09/13(水) 14:48
- 更新キテタ*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*
ナンカ途中の方忘れかけているので一回読み直しますかねw
これからの展開に期待しております。
- 611 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 01:47
-
「ジャンプボラー、前へ。」
笛をくわえ、主審がボールを持ち、輪の中に入るように促す。
タンッ。
Bチームはもちろん、チーム1の身長の吉澤が前に出る。
キュッ。
一方、Aチームも、美貴の予想通り、センターで入った石黒が輪に入った。
- 612 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 01:51
-
カタン。
Bチームのベンチメンバーが、静かに座る。
「斉藤さんと、大谷さんが外れか。」
美貴がAチームのベンチを見て、ぼそっとつぶやいた。
「美貴ちゃんの言う通り、村田さんが入ったね。」
隣りに座った新垣がにっこりと笑いかけてくる。
それに、美貴は頷くだけで、コートをじっと凝視していた。
- 613 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 01:54
-
―――バンッ!
試合が開始され、ジャンプボールで、吉澤、石黒が対決。
「明日香。」
ここはなんの苦労もなく、Aチームがボールを拾った。
「ディフェンスディフェンス!」
予想通りだったのか、Bチームのメンバーは、素早くディフェンスの陣型になった。
- 614 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 01:57
-
キュッ!
柴田が、ボールを持つ福田に付いた。
福田さんのパスは要注意。
心中で、絶対に油断はするな、と言い聞かせる。
ヒュッ。
「裕ちゃん。」
福田は、柴田が自分に付いたのを確認し、にっこりと笑って中澤へとパスを出した。
パシッ。
中澤もニヤリと笑って受け取る。
- 615 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:01
-
「よっしゃあ。一本かましたろかぁ。」
ガタンッ!!
中澤の声に、美貴がベンチを立った。
まさか・・・
裕チャンが?
美貴の読みは福田がガードのポジションを任される、というものだったが、どうやら違うらしい。
「悪いなぁ、美貴。」
中澤がまたにししと笑った。
- 616 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:04
-
くそっ。
やられた!
美貴の読みの裏をかかれた。
タタタタ!
中澤にボールを任せ、走っていった福田の行く先を目で追う。
「まずいな。」
隣りの新垣が顔をしかめる。
「どーなってんの?」
さすがの里田や松浦も、首をひねった。
- 617 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:06
-
Aチームの布陣は
ガード、中澤。
シューターに福田。
そして本来はシューターの村田とコーチがフォワードの位置。
センターが石黒だった。
- 618 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:09
-
タムタム。
「ほれ、決めたれ。」
あたふたとしているディフェンス陣をあざ笑うかのように、余裕で中澤が村田にパスを出す。
「はい。」
ヒュッ。
フリーの状態で、スリーポイントラインから少し内側からボールを放つ。
シュパ!
シューターの村田が外すはずもなかった。
- 619 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:12
-
「ディフェンスや。」
余裕の表情で、Aチームがディフェンスの陣型に。
一方、予想とは大幅に違う相手のポジションに、気を取られて、パスを出すのが遅れるBチーム。
マズいな。
ボールをつきながら、柴田が不安をよぎらせる。
普段は冷静な柴田が動揺しているのなら、他のメンバーが落ち着いているはずもない。
- 620 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:16
-
「ごっちん!」
とりあえず後藤にパスを出してみるが、うまくかみ合わない上に、真正面から村田にパスをカットされた。
「速攻!」
そんなBチームの動揺を利用し、稲葉が我先にとゴールへ向かって全力疾走。
Bチームも追いつこうと走り始めるが、時はすでに遅く、稲葉がランニングシュートを決めていた。
「よっしゃ。村田ナイス。」
パシッとハイタッチを交わす2人。
- 621 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:20
-
「・・・柴田さん!落ち着いて!!ゆっくり攻めていきましょ!!」
ベンチから新垣が声を出す。
その声に気がつき、柴田がにっこりと笑うが、いつもの笑顔ではなく、どこか失笑な感じだった。
「・・・」
隣りの美貴は、腕を組み、静かに戦況を見ているだけだ。
「美貴ちゃん、どーする?ヤバいよ。このままじゃ。」
前に乗り出していた新垣が振り返った。
- 622 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:22
-
パシッ!
またパスカットされた。
「ねぇ。」
タタタタ!!
バサッ。
今度はスリーポイントラインから福田が鮮やかに決めた。
「ねぇってば!」
ただただじっと見ている美貴に、新垣が詰め寄る。
カタン。
急に美貴が立ち上がった。
- 623 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:27
-
あまりに急で、新垣がびっくりしたのか、目をパチクリと開いている。
美貴が口に両手を当てる。
「オッケー、オッケー!!柴田さんがパス出しやすい場所を意識して!みんな相手を意識しすぎですよっ!相手にのまれてる。田中ちゃん、もっと外開いて!!」
珍しい美貴の大声に、体育館内にいる全員が一瞬固まる。
「あ、はい!」
そんな中、指示を受けた田中がゴール下から外へと開く。
- 624 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:30
-
ヒュ。
それを見た柴田がすかさず田中にパスを送る。
田中に付いているマークは村田だ。
「く・・・」
村田が慌てて田中についてゆく。
確か・・・
村田さんは縦の動きに弱いっちゃよね?
試合前に美貴が言っていたことを思い出す。
ダムダム!
マークが遅れたのを利用して、一気に抜きにかかる。
- 625 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:34
-
「あ・・・」
そして、案外軽く村田を抜けた。
すぐにシュートの体制に。
バンッ!!
そこで、カバーにきた稲葉にボールを弾かれた。
「あぁ!!!」
抜けたことに頭がいっぱいで、カバーが来ていることを確認しなかった。
シュパ!
さらに速攻で攻められ、簡単にシュートを決めさせてしまった。
- 626 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:37
-
そんなに時間も経っていないのに、すでに9点差。
Bチームはまだ0点のままだ。
「こらっ!!抜けたからって余裕かますな!!」
美貴に一喝入れられ、そうでしたと言わんばかりに頭を垂れる田中。
「柴田さん。今のですよ!今の!!さっき言ってたやつ!」
そうだ・・・。
始まる前に藤本が言ってたじゃない。
柴田がゆっくりと頷いた。
- 627 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:40
-
村田さんは縦の動きに弱いんですよ。
それでカバーが来たら、そこも空く。
田中が縦に動き、村田のマークを外した。そしてそこにコーチがカバーで入る。その間、一瞬だが、後藤がフリーだった。
今のがまさにその状態だった。
落ち着いて。
よく考えて攻めればいい。
焦る必要はないんだから。
柴田が自分に言い聞かせた。
- 628 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:43
-
今ので、あたふたしていたチームが、全体的に落ち着きを取り戻した。
「よし。」
それは外から見ていても一目瞭然だった。
トサッ。
一通り言い終えた美貴が、再びベンチに座る。
「・・・」
それを無言で新垣が見ていた。
やっぱりすごいや。
美貴ちゃんは。
嫌でも、改めて実感してしまう美貴という存在。
- 629 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:46
-
ダムッ。
「一本、ゆっくりいくよ!」
柴田が左手でドリブルをし、右手を1にしてみんなに見えるように上げる。
「なっ!?」
村田が思わず声をあげる。
ダダダダッ!!
全員が一気にゴール下まで全力疾走で入ってきたのだ。
Aチームは不意をつかれて、それぞれ反応に遅れる。
- 630 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:50
-
シュ!!
柴田も同時に走り込んで来ており、隙を見つけて、すかさずノーマーク状態になっている後藤へとパスを出す。
「んあ。」
パシ。
パスはなんとか受け取ったが、自分の横まで稲葉が追いついて来た。
あたりを見渡す。
バチッ。
すると、味方の1人と目が合った。
- 631 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:53
-
ヒュッ。
今度は、一歩後ろに飛び、シュートという選択肢を捨て、パスを出す。
しかし、そこには誰もいない。
無人の場所だ。
タタタタ!!
「え・・・?」
しかし、1人がわかっていたかのように逆走。
ゴール下より外に方向転換。
マークしていた相手も思わず見送ってしまう。
- 632 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:55
-
パン。
そして、後藤の出したパスをフリーで受け取った。
「打てっ!!」
ベンチ全員が一斉に声をかける。
パスを取った人物。
田中は、迷わずシュートを打った。
「あっ。」
やっと追いついた村田が手を伸ばすが、まったく届く距離ではなかった。
- 633 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 02:59
-
スパッ。
「やっ・・・たぁぁ!!」
田中が両手の拳を上へ振り上げる。
「田中っち、ナイス。」
ポンポン。
そんな田中の肩を、後藤がゆっくりと叩いて通り過ぎていく。
そう、後藤は田中とアイコンタクトで意思疎通を図ったのだ。
さらに、柴田の1の指は、彼女たちが高校時代に使った、全員ゴール下へというサインだった。
- 634 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:01
-
今の1本は明らかに、Bチームの作戦勝ちだった。
「おりゃ。」
ボールが中に入り、油断しているところを狙って、中澤がロングパスを出す。
「あぁー!!」
田中が途中でそれに気がついたが、その時には村田のスリーポイントが決まっていた。
- 635 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:05
-
「ったく。あんだけ油断すんなって言ったのに・・・」
はぁとため息をつく美貴。
「だね。」
新垣もそれに頷いた。
初得点の2点を取ったのまではよかったが、その後油断して3点を返される。
パターンとしてはあまりよくないことだった。
「みきたん、誰か代える?」
松浦がソワソワと美貴に話しかける。
- 636 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:08
-
「・・・いや、まだやめとくよ。」
一瞬、交代の選択を考えたが、この場面ではまだ早いと思い、頭からその選択肢を消す。
「美貴ちゃん、結構キツいよ、これは。」
美貴の決断に意義を申し立てる新垣。
それにウンウンと頷いている里田。
「・・・」
美貴たちが目を離した隙に結構な差がついていた。
Aチーム21点
Bチーム2点
- 637 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:12
-
「げっ・・・」
「ね?」
美貴の唸りに、新垣が困っちゃうよこの展開はと、頭を抱える。
いくらなんでも、このメンツで、さらに時間帯で19点差はきつい。
明らかにAチームの一方的なゲームになっていた。
バサッ。
話し合っている間に、また2点入れられた。
- 638 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:15
-
タタタ。
「すいません、タイムで。」
急いで副審にタイムを告げる。
ピピッー!!
「Bチーム、タイムアウト!」
リスタートでボールが出される前に、副審が全体にタイムを告げた。
きゅきゅっ。
Aチームは余裕の表情でベンチに下がり、Bチームは険しい顔で戻ってきた。
- 639 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:17
-
「はっはぁ・・・」
精神的にも体力的にも、ガードの柴田にかなりの負担が見える。
他のメンバーもこの時間帯にしては、疲労の色が濃い。
「ちょっ・・・と、ヤバいよ・・・・ね?」
疲れた表情で、柴田が美貴を見る。
彼女もかなり点差を気にしているようだ。
- 640 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:21
-
「今・・・何点差・・・なんだっけか?」
息が続かないのか、途切れ途切れに吉澤が問う。
「さっきので21点差になりました。」
後藤にタオルを渡しながら、松浦が告げる。
「んあ、そんな・・・にっ?」
後藤が不思議そうに得点板を見た。
他のメンバーも得点板を確認する。
- 641 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:24
-
彼女たちは、疲労と混乱、そして展開の早さで、得点を気にしている暇もなかったのだ。
「本当だ・・・」
比較的、疲労の薄い石川が驚く。
いくら全日本の人たちを相手にしていると言っても、自分たちも全国メンバーなのだから、驚くのも無理はない。
「ヤバか・・・ですね・・・」
ふぅーと呼吸を整えながら田中。
- 642 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:27
-
「・・・ちょっと、パニックになりすぎですね、みんな。」
美貴が中を客観視しての意見。
それぞれが見抜かれてしまい、どきっとする。
「うん。あの、あたしが言うのも何かなと思うんですけど・・・守り、かなりあたふたしちゃってますよ、コッチ。」
美貴に続いて新垣が控え目に言う。
- 643 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:31
-
「守備、変えましょう、いっそのこと。」
新垣の言葉にスタメンがギョッとする。
しかし、間髪入れずに新垣が続けた。
「まず、中澤さんがガードなんですけど、あんまり攻めには加わってないですよね?攻めは石黒さん、コーチが中心って感じで。」
淡々と話している新垣を見て、美貴はにやりと笑う。
- 644 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:34
-
「ってことは、中を固めたほーが効率いいんですよ。なので、吉澤さん、後藤さんと石川でゾーン作ってください。」
新垣が3人を見ると、慌てて3人が同時に頷いた。
「それで石黒さんとコーチの攻撃をくい止めます。あと、田中ちゃん。」
「へ?ああ・・・はい。」
水を補給していた田中が、慌てて手を止める。
- 645 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:37
-
「田中ちゃんは村田さんのスリー封じで。あ、でも一応ゾーンに加わって。ただ村田さんとの距離を考えながら動くこと。基本的には3人のゾーンで、それに村田さんを見ながら田中も加わる。いいね?」
「はい・・・」
村田さんとの距離を図って、ちゃね。
疲れた頭に必死で叩きこむ。
- 646 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:41
-
「あと柴田さん。疲れてるでしょうけど、ここ踏ん張りどころですよ。」
柴田が黙って頷く。
「監督と福田さんは必ず至近距離にいるんですよ。多分、なんかあったときには福田さんが補佐するためだと思いますけど。そこで。柴田さんはメイン監督のマークなんですけど、至近距離にいる福田さんにも気を張ってください。それでパスは出にくくなるはずです。」
タオルで汗を拭きながら、わかったと一言で答えた。
- 647 名前:星になる 投稿日:2006/09/14(木) 03:45
-
ピーー!!
「試合再開します!」
主審からのコールがかかる。
「よし、頼みますよ。みなさん。」
コートに向かってゆくメンバーを、手を叩きながら見送る美貴。
「すごいね、ガキさん。」
松浦と里田が美貴を挟んで言う。
「まあね、あの子、抜群の観察力だから。昔っから。」
美貴は自分のことのように嬉しかった。
- 648 名前:ワクワク 投稿日:2006/09/14(木) 03:49
- 連日更新です。
名無飼育さま>本当にお待たせしてしまいましたm(_ _)m
今回も波乱の予感♪笑
774さま>途中を忘れてしまうほど更新できなくてすいません(*u_u)
展開をちょっと進めました(苦笑)
- 649 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 02:23
-
新垣の指示が幸をそうした。
試合開始からボールを取られてしまったが、守備がうまく機能し、中澤が苦し紛れに出した福田へのパスは、柴田がカット。そのまま、前を走る吉澤に出し、得点。
「ファイトォ!」
ベンチのメンバーも盛り上げる。
その後押しの甲斐もあってか、ディフェンスがかなりよく機能し、うまい具合にシュートも決まる。
やっと14点差まで詰め寄った。
- 650 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 02:24
-
「くっ・・・」
- 651 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 02:29
-
しかしながら、前半の3分の2が過ぎたところで、スタートメンバーの運動量が、急激に落ちた。
慣れない試合。
最強の相手。
パンクしそうなくらいに考えた頭。
全てが彼女たちの動きの精細を欠いた。
「・・・」
「美貴ちゃん、代える?」
ベンチも目の当たりにし、慌ただしくなってきた。
「いや、もうちょっといける。」
しかし、美貴は静かに見守っていた。
- 652 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 02:33
-
パシュ。
ガシャンッ!!
ドカッ!
ヒュッ・・・
バサッ。
14点差に迫っていた点差が、ここに来てまた離される。
バコッ!!!
容赦なくAチームはシュートを決めてゆく。
「はぁ・・・はぁ・・・・」
気が付くと
25点差。
タイムを取る前よりも、さらに点差を離されていた。
- 653 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 02:36
-
ピピーーッ!!
「前半終了!ここで作戦タイムとして15分の休憩入れます!!」
主審は中澤から言い渡されていた通りのコール。
ベンチやコート内の生徒もそれに従った。
- 654 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 02:39
-
「ふはっ・・・」
「ぜい・・・ふう〜。」
コート内にいたメンバーは相当疲労が溜まっている。
それは、誰が見ても一目瞭然だ。
「後半。メンバー代えます。」
ちょうど全員がベンチに座ったところを見計らって、美貴が向き合うように前に出る。
カタンッ。
そして、1人1人の顔を見回す。
- 655 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 02:43
-
「ははっ。きっついわね、美貴ちゃんが言ってたより。」
スタートメンバー全員が疲れているはずなのだが、1人だけ明らかに他のメンバーより疲労が薄い。
「あ、そーですか?」
「うん。見ての通り、みんなバテバテ・・・だもん。」
やはり多少は疲れているらしい。
だが、それは彼女にとって普段の試合より、少し息が切れている程度だった。
- 656 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 02:48
-
「あ、監督!!メンバーって何回でも交代オッケーですよね?」
少し遠い余裕の表情の中澤に問うと、すぐにああと答えが返ってきた。
「よし。じゃあガードガキさん。フォワードは亜弥ちゃんと美貴ね。後はセンターまいちゃんで、シューターはそのまま石川さんで。」
そう、唯一疲労が薄かったのは、石川だけ。
彼女の体力は、ここ何年かで相当なものにまでなっていた。
- 657 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 02:52
-
「アップはほどほどに。疲れると困るから。あと、下がったメンバーは各自で試合のチェックしてください。」
石川と美貴以外の名前を呼ばれたメンバーは、すでに各自アップを始めている。
美貴は手首と足首を回しながら、ベンチメンバーへと言う。
「あ、それと、外からの指揮なんですけど・・・」
「あたしが・・・指示・・・ね。」
柴田が水を補給しながら手を上げた。
「はい。疲れてると思いますけど、頼みます。」
チームに固定の監督がいない、というのは、わりかし面倒だった。
- 658 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 02:55
-
タタタタッ。
疲労のある石川は、この時間は全て休憩に使う。
一方、用件を言い終えた美貴はというと、端でダッシュを始めた。
疲れない程度のアップ。
美貴自身がそう言ったので、他のメンバーは軽め。
だが、美貴は違った。
ダダダダッ!!
何度も何度も、端から端へとダッシュを繰り返す。
- 659 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 03:00
-
上下共に、長袖を羽織っているため、多少動きにくいが、それさえも美貴には関係なかった。
25点差か。
高橋と紺野が、電光掲示板のそばで何か話しているのも気にせず、ただただ得点を見た。
52対27
かなりの大差だ。
「ふ〜ん・・・」
しかし、追い込まれた状況を美貴は楽しんでいるかのように、笑った。
- 660 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 03:05
-
ピーーッ!
「試合再開します!」
Aチーム、Bチームの両選手たちがコートへと入ってゆく。
「あ、やば。」
羽織っていたジャージを急いで脱ぎ捨てる。
美貴のユニフォームには、いつものナンバー。
『1』
MIKI
と、青のユニフォームに白ではっきりと書かれていた。
もちろん、胸元にも小さな1と、ANGELSという文字が記されている。
- 661 名前:星になる 投稿日:2006/09/29(金) 03:07
-
グッ。
美貴が小さな1を片手で握りしめた。
「・・・」
目を瞑り、大きく深呼吸を1回。
「・・・よし。」
目を開くと、美貴はコートに入り、仲間たちの元へと向かった。
- 662 名前:ワクワク 投稿日:2006/09/29(金) 03:08
- 少量ですが、キリがよいのでここで更新終了です。
- 663 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/29(金) 23:32
- よっしゃー!
作者さまお疲れ様です!!
たんの出番・・・!?
- 664 名前:星龍 投稿日:2006/10/01(日) 18:52
- 更新お疲れ様です!!
いよいよ始まりましたねえ。
そして次はいよいよ藤本さんの出番ですか?
これからも応援してるので頑張ってください。
- 665 名前:星になる 投稿日:2006/10/02(月) 20:39
-
キュキュッ。
ジャンプボールで里田と石黒が、サークル内に入る。
「メンバー変わったよ?」
「みたいだね。」
新垣が美貴に話しかける。
美貴は少し驚いたようだが、それを表情には出さなかった。
「なんとかするから。」
それだけ答えて、サークル周辺で構える。
- 666 名前:星になる 投稿日:2006/10/02(月) 20:50
-
Bチームが里田、美貴、松浦、石川、新垣。
Aチームは石黒、斎藤、大谷、福田、稲葉。
Aチームはスタートから中澤と斎藤を入れ替えてきた。
ピーーッ!
ダンッッ!!
主審の笛が鳴ったと共に、両チームのジャンプボーラー、石黒と里田が飛び上がった。
- 667 名前:星になる 投稿日:2006/10/02(月) 20:58
-
パンッ!!
「ソッコー!!」
ボールを取った大谷が叫んだ。
ジャンプボールは、ほぼ余裕で石黒の勝利。
「くっ・・・」
反応に遅れたBチームの面々が、次々にゴール下へと走り出す。
「まさお、ナーイパス。」
パサ。
しかし、呆気なく斎藤に決められてしまった。
- 668 名前:星になる 投稿日:2006/10/02(月) 21:51
-
「悪いな、藤本。」
ポンポン。
斎藤にパスを出した大谷が、美貴の肩を笑いながら叩き、去っていった。
「・・・」
にゃろ。
美貴の内心は穏やかとはほど遠いものだった。
「さぁ、1本行くよぉ!」
石川から新垣にパスが渡る。
- 669 名前:星になる 投稿日:2006/10/02(月) 22:00
-
タッタッタ。
それを見たと同時に、ゴール下へと走る。
チラッ。
その瞬間に電光掲示板が目に入る。
「おねーちゃん!がんばれー!!!」
後ろからは、チビッコあいの声。
美貴の目と、彼女の視線がバッチリと合う。
「美貴ちゃん!」
「あ、あぁ。」
パシッ。
ボールを受け取る。
- 670 名前:星になる 投稿日:2006/10/02(月) 22:03
-
いいとこ見せなきゃ。
そう思った。
まだ・・・
まだ愛ちゃんにかっこいいとこ見せてないから。
たったの一度も。
- 671 名前:星になる 投稿日:2006/10/02(月) 22:14
-
「よし!」
「へ?」
美貴がボールを持ったとたんに辺りが暗くなった。
「美貴ちゃん!」
背後から新垣の声が聞こえる。
「こっちも負けらんないんでな。」
大谷がニヤリと笑った。
そう、美貴にパスが回った瞬間に、大谷、福田、斎藤の3人が、美貴の周りを囲んでいたのだ。
- 672 名前:星になる 投稿日:2006/10/02(月) 22:20
-
「よし!」
「へ?」
美貴がボールを持ったとたんに辺りが暗くなった。
「美貴ちゃん!」
背後から新垣の声が聞こえる。
「こっちも負けらんないんでな。」
大谷がニヤリと笑った。
そう、美貴にパスが回った瞬間に、大谷、福田、斎藤の3人が、美貴の周りを囲んでいたのだ。
- 673 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/02(月) 22:22
- 671・672ダブりました\(゜□゜)/
- 674 名前:星になる 投稿日:2006/10/02(月) 22:29
-
パチ。
「ぬぉ。」
彼女を気にしていたせいか、油断してしまい、ボールを取られてしまった。
「やべ・・・」
だだだだっ!
取られてしまったボールと、そのボールを持っている福田を後ろから追いかける。
キュキュ!
やっと追いついて、福田の前に立ちはだかった。
- 675 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/02(月) 22:32
- すごく短い更新です…。
名無飼育さま>毎回短い更新ですいません…。出番は…どうでしょ?笑
星龍さま>いつもいつも感想ありがとうございます!
これからも頑張りますっ!!
- 676 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/03(火) 00:21
- 更新乙です!
がんばってください♪
- 677 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:06
-
キュッ!
福田が、持ち前の小回りで美貴を抜こうと動く。
しかし、それを美貴も阻止にかかる。
キュッ。
「あ・・・」
美貴の力が裏目に出る。
ヒュ。
福田は、自分を抜かせまいと、美貴がついてくることを頭に入れていた。
そして、それの裏をかき、シュート。
パサ・・・
またこれが決まってしまう。
- 678 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:08
-
「くっそ・・・」
あの美貴が思わず表情に出してしまう。
それくらい、久々に悔しい思いをしたのだ。
ポン。
そのとき、肩に手を置かれた。
「焦んない、焦んない。」
新垣だった。
- 679 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:09
-
***
- 680 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:12
-
「愛ちゃーん?そっち、2点プラスだよ?」
Aチームの点が入ったにも関わらず、高橋の手が止まっていたので、たまらず紺野が呼びかける。
「んぇ??あ、し、しまった!」
やっと意識の飛んでいた高橋が戻ってき、Aチームの得点にプラス2される。
「愛ちゃん・・・」
紺野が心配そうな顔で笑う。
- 681 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:16
-
「なにがよ??」
紺野には、福井弁がキツく聞こえる。
といっても、もう長い付き合いなので、そこまで気にすることもなくなった。
「大丈夫かなって。ほら、さっきから心ここにあらずだしさ。」
確かに。
紺野の言う通りだった。
「ん。多分大丈夫やざ。」
自分の頭でも理解、解決しきれていないのか、曖昧な返事を返す。
- 682 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:20
-
「大丈夫じゃないよね、それ。」
今度はテーピング用品がどこにあるのか、と聞きにきた小川が横から口を出す。
「あ、まこと。テーピング用品はBチームベンチ下の医療カバンに入ってるよ。」
高橋より先に、紺野が答えた。
「ありがと、こんこん。で、愛ちゃんはなんでウソつきになってんだよぉ?」
高橋の頬をツンツンと突っつく。
- 683 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:24
-
「やめてよっ!!!」
ふざけていた小川の手が、バシッと思い切り叩かれた。
「あ、や、ごめんごめん。」
あーやばいことしたな。
こういうことは、怒られてから初めて気がつく。
小川のその1人だ。
「・・・」
『無』
今の高橋の表情にイチバン等しい表現だ。
- 684 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:26
-
「あ、こっちまた2点入ったよ。」
福田のシュートを見て、小川が申し訳なさそう教える。
「わかっとる。」
しかし、今度の高橋は気を確かに持っていた。
カチカチ。
素早く2点追加する。
「あの・・・愛ちゃん?」
紺野が恐る恐る高橋の顔を覗き込む。
- 685 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:30
-
「・・・す、素直になったほうがいいんじゃないかな。」
美貴と高橋。
紺野のひと言は2人に当てはまるものだった。
「そーだよ。いや、これは冗談じゃないからさぁ〜。」
小川が、特有のへへへという笑顔を見せる。
「・・・やって・・・」
素直になれない本人がボソッとつぶやく。
- 686 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:33
-
「ん〜?どうしたぁ?」
怒られたのをもう忘れたのか。
そう言いたくなってしまうほど、ニコニコ笑っている小川。
ここも、彼女の良いところのひとつだ。
「何話してええか、わからんし・・・」
本当に久しぶりに見る美貴。
そして、話しもしていなかった美貴。
高橋の意見はごもっともだった。
- 687 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:37
-
「確かにね、美貴ちゃんとあれから連絡取ってなかったし・・・当たり前かな。」
紺野の言う『あれから』というのは、吉澤たちがまだ在学中、アメリカに見学に行ったときのことだ。
そう、美貴と高橋は『幼なじみ』から『恋人』に変わってから、一度も言葉さえ交わしていなかった。
「そーだよねぇー。」
小川もウンウンと頷きながら、何か考えている。
- 688 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:40
-
「でもさでもさ!」
2人と会話ができるように、高橋の隣から、得点板の前へと移動する。
「ちょっと、まこっちゃん、見えないよ。」
紺野の苦情を言われたにも関わらず、退く気配はない。
- 689 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:43
-
「愛ちゃん。」
小川はまだ笑っている。
その笑顔は先ほどとは違い、どこかイタズラっ子を思い出させる。
「そんなこと言ってたらさ、ちっこいライバルちゃんに奪われちゃうよ?美貴ちゃん。」
小川がはははっと声をあげて笑う。
- 690 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:46
-
ちっこいライバルちゃん?
高橋の思考が追いつかず、小川をずっと見てしまった。
「アレだよ、アレ!!」
そんな高橋の反応を予想していたのか、小川が素早く指をさす。
チラッ。
高橋、そして紺野も視線は小川の指す方へ。
- 691 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:48
-
「おねーーちゃああん!!!!」
視線の先には、小さな小さな女の子。
え??
思わず2人とも目を点にしてしまう。
- 692 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:51
-
「ちっさいからって侮るなかれ。あのコ、美貴ちゃんファンだよ?」
2人の意外そうな表情を見て、小川がさらに付け足す。
「でもファンはファンでしょ?それにいくらなんでも小さすぎ・・・」
「ノンノンノーーン!!」
紺野の言葉をあっさりと遮る。
「こんこん、まだまだ甘いなぁ。」
またニヤリと笑う。
- 693 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:54
-
「今はちっさいけど、将来あのコもあっしらぐらいになるわけよ。したら全然アリだよ、きっと。絶対美人さんになるだろうしね。」
言われてみれば、と2人して小さな小さな女の子の顔をまじまじと見る。
「それに、美貴ちゃん自身もすんごい可愛がってんじゃん。珍しく。」
ちょうど小川が言った瞬間に、美貴が女の子へと微笑みかけていた。
- 694 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:56
-
ヤバい。
どないしよ・・・。
なんでよ。
美貴ちゃん。
なんであーしのほう見ないん?
あんな光景を見てしまったら、さすがの高橋も心中穏やかではいられない。
- 695 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 02:59
-
「しかもさ、あのコもあいちゃんって名前なんでしょ?」
小川からの追い討ち。
高橋が落ち込んでいるのを知ってか、知らずか、偶然ってすごいよねぇと笑っている。
- 696 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 03:00
-
美貴ちゃん。
美貴ちゃんはあいちゃんのほうがええん?
あーしより?
可愛ええもんね。
『あいちゃん』
高橋愛やのーて・・・
『あいちゃん』
あたなが手を繋いでた
『あいちゃん』
- 697 名前:星になる 投稿日:2006/10/06(金) 03:02
-
考えれば考えるほど、悪循環。
これも昔からのクセだ。
ねぇ、美貴ちゃん。
あのね・・・
美貴ちゃん。
アナタは・・・
あーしのことスキ?
- 698 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/06(金) 03:04
- こーしぃん。
名無飼育さま>応援ありがとうございます!!今回は早めの更新にしたので、できればお読みを(笑)
- 699 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/06(金) 16:54
- 読みました〜♪
更新乙です!いやはやハラハラしますね〜^^;
マイペースにがんばってください。
- 700 名前:星龍 投稿日:2006/10/06(金) 17:51
- 更新お疲れ様です!
すごく続きが気になる展開に・・・。
これからも楽しみにしてます。頑張ってください。
- 701 名前:星になる 投稿日:2006/10/13(金) 23:46
-
ピッピー!!
不意に笛が鳴り響く。
「タイムアウト。Bチーム!」
主審がそうコールする。
美貴が自身のチームのベンチを見ると、回復したのか、立ち上がって、笑顔の柴田が手招きをしていた。
タッタッタッ。
タイムアウトなので、仕方なくベンチへと向かう。
- 702 名前:星になる 投稿日:2006/10/13(金) 23:50
-
―――カタン。
静寂の中、柴田が動く。
「こらっ。何焦ってるの。」
パシッ。
そう言い、うつむいて顔を拭いていた美貴の頭を、軽く叩く。
「あ・・・」
いきなりのことで、反応しきれていない。
「いつもの藤本じゃないよ。」
久々にそんなことを言われた。
- 703 名前:星になる 投稿日:2006/10/13(金) 23:53
-
わかっていた。
自分でも。
今日は緊張してるって。
あのコを見る度に
足がもつれそうになる。
あのコの視線を感じる度に
息が止まりそうになる。
あのコが笑う度に
試合をしていることを忘れてしまうって。
わかっていたんだ。
- 704 名前:星になる 投稿日:2006/10/13(金) 23:56
-
こんなハズじゃなかったのに。
キミに
かっこいいとこ見せるんだって
思っていたのに。
すべてが空回り。
次第に・・・
キミを見れなくなった。
合わせる顔がないって
こういうことなんだ。
- 705 名前:星になる 投稿日:2006/10/13(金) 23:59
-
「はい、一息置こう。藤本だけじゃなくて、みんなね。」
柴田が深呼吸の動作をすると、それに合わせて、全員が本当に深呼吸を何回か繰り返す。
スーーッ・・・
ハァァーー。
美貴自身も、一度、大きな深呼吸。
- 706 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:03
-
「さ、頑張って36点の差を縮めてきてください。」
わざと柴田があははと笑って見せた。
36点??
美貴が疑問に思って、得点板を見る。
あ・・・
気がつかないうちに、得点差が36点へと、広がっていた。
- 707 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:12
-
ピッピー!!!
再び、試合再開の合図が鳴り響く。
「気負いせずにドカンといけ!ドカンと!!」
最後に吉澤が後押しする。
パンパン。
1人1人ハイタッチを交わし、コートへと向かってゆく。
タッタッ―――
- 708 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:17
-
ちょうど、美貴がコートに向かう途中、Aチームベンチから、大谷が近づいてくる。
「なぁ。」
「はい。」
軽く走りながら、2人並んでコートに向かう。
「大したことないのな、藤本って。」
「え・・・?」
思わぬ大谷の一言に、立ち止まってしまう。
- 709 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:20
-
コートに入った大谷が、振り返り、ニヤリと笑う。
「そろそろ、本気みせたら?」
「・・・・」
言い捨て、チームメイトの元へと走って行ってしまった。
「本気・・・か。」
美貴が自分の手のひらを見つめる。
そして、なにかひらめいたように、ベンチへもう一度戻る。
- 710 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:23
-
「まことっ!!」
そして、不意に、マネージャーたちと話していた小川を呼ぶ。
「藤本何やってんだよ!早くコートに・・・」
「まことぉ!!」
吉澤の忠告も無視し、もう一度小川を呼ぶ。
「あ、あいよ!」
慌てて小川が駆け寄る。
- 711 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:26
-
突然、名前を呼ばれたので、小川があたふたする。
「あ、ああ、あのさ・・・」
「まこと。」
「は、はい!」
美貴の言葉に、わざわざビクッと肩が動く。
「殴って。」
- 712 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:32
-
「んえ?」
小川が不思議そうな顔する。
「美貴の顔、思いっきり殴って!」
今度は、先ほどよりもかなり強い口調で告げる。
「えっ?えええ!?」
びっくりして、目がこれでもか、というくらい見開かれる。
そしてさらに、何歩か後ずさり。
「いいから。ほらっ。」
美貴が目を瞑り、身構える。
- 713 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:38
-
「ホントに?」
「うん、まじ。」
目を瞑ったまま、美貴が答える。
一瞬、小川が考えこむ。
ピッピ!!
「Bチーム、早くしてください。」
主審からの忠告。
そんなものも、美貴は気にせずに、待っていた。
小川は、まだウーンと唸っている。
- 714 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:41
-
「ほら。」
美貴が促す。
「じゃあ・・・」
小川が、意を決したのか、ギュッと握り拳を作る。
「おう。」
美貴がゆっくりと頷く。
ゴクッ・・・
緊張しているのか、手のひらにじわりと汗をかき、喉が鳴った。
- 715 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:44
-
「いくよ?」
「しつこい。」
まだビクビクしている小川が、合図を出した。
「やぁぁぁ!!」
バゴッ!!!!
美貴の顔に、小川の拳がめり込む。
そして、あまりの勢いに、美貴がよろよろとよろめく。
周りが音で気がついたのか、ギョッとしている。
- 716 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:48
-
―――ツツッ・・・
美貴の口が切れたのか、血がたれる。
「だ、大丈夫?」
やった本人が、心配そうに美貴を見る。
「バカッ。強すぎんだよ。」
「ごご、ごめんっっ!」
泣きそうな顔で再びあたふた。
小川のパワーは、現役部内でも、1・2を争う。
美貴もそれをわかっていて、あえて小川を選んだ。
- 717 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:51
-
「でも・・・」
あたふたしている小川に、ニッコリと笑いかける。
クイッ。
ゆっくりと血を拭いた。
「おかげで目が覚めた。」
そう言うと、急かす主審に、一言すいません、と告げ、ポジションにつく。
小川は呆然と美貴を見送る。
- 718 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:55
-
「ちょっと、みきたん!!まこっちゃんとケンカ!?」
コートに入ると早々、松浦が心配そうに近寄ってきた。
「いや、ただ美貴が殴ってって頼んだだけ。」
そう言い、また穏やかな笑顔を見せる。
「そ、そっか。ならいいんだけど。」
前にいる、新垣と目を見合わせる松浦。
2人とも、どうしたんだ、という表情だ。
- 719 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:58
-
「おーい、すんげぇことしてたな。」
美貴のマークなのか、大谷が隣りに並んでくる。
「美貴なりの気合いです。」
ほーと、小さくすんげぇなと呟く。
「見せてあげますよ。」
大谷が、ん?と美貴に疑問を投げかける。
「美貴の本気をね。」
「おっもしれぇ。」
美貴と大谷。
お互い目を合わせ、ニヤリと笑った。
- 720 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 00:59
-
***
- 721 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 01:01
-
「ちょっと!何してるんよ!まことっ!」
美貴が行ってしまったすぐ後に、後輩に得点板を任せた高橋と紺野がやってきた。
「いや、なななにって・・・あっしは美貴ちゃんに頼まれただけで・・・」
小川自身はまったく悪くないのに、なぜか罪悪感を感じてしまっていて、うまく口が回らない。
- 722 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 01:05
-
「頼まれたって、美貴ちゃんに?」
いつも冷静な紺野が、改めて聞き返す。
「う、うん。」
もう、なにがなんだかわからなくなりそうになりながら、必死で返事をする小川。
「美・・・貴・・・ちゃん、なんて?」
気になって気になってしょうがない、そんなオーラをかもし出しながら、今度は高橋が問う。
- 723 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 01:09
-
「いや、ただ、真剣な目で『美貴の顔を殴って』って。ただそれだけ。」
少し落ち着いたのか、美貴の顔を殴った右手を触り、痛いと呟く。
「あーしのこと・・・とか・・・なんか言っとらんかっ・・・た?」
「いや、何も・・・」
そっか、とすこし落ちこんだ表情を見せる。
- 724 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 01:11
-
まこっちゃんのバカ。
紺野は、空気の読めない小川に、改めてため息をついてしまう。
もっとフォローすればいいのに。
- 725 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 01:12
-
「あ、でもでもでもっ!!!」
やっと空気を読み取ったのか、小川がオーバーリアクションで、大声を出す。
紺野も、ホッと一息つく。
- 726 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 01:15
-
「美貴ちゃん、目が覚めたってさ!!!!」
自分の両まぶたを引っ張り、目を大きく見せる。
「だから・・・」
えーっと、えーっと、と手探りながらも、必死でフォローを探し出す。
- 727 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 01:17
-
「きっ、きっといいもの見れるよ!!今からっ!!!」
小川なりの、最高のフォローだった。
きっと
紺野や新垣が小川の立場でも
こうしていただろう。
紺野の自身がそう感じていた。
- 728 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 01:19
-
美貴ちゃん。
痛かったやろ?
なのに・・・
なんで?
なんでそんなフツーにしてられるん?
なんでそんなに
大谷さんと笑ってられるんよ・・・。
あーし
わからんやざ。
- 729 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 01:20
-
ホンマに。
なんで麻琴に殴らせたんか。
なんで笑ってるんか。
ナンデ??
すべてがわからんよ。
- 730 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 01:22
-
昔は・・・
全部わかってたんに。
美貴ちゃんのぜーんぶ。
わからんことなんてなかった。
それなのに
いつからか
わからんようになっとった。
- 731 名前:星になる 投稿日:2006/10/14(土) 01:24
-
あーしがどうしたらいいのか。
美貴ちゃんが何をしようとしてるのか。
わからんよ・・・。
あんなに嬉しいと思わせてくれた
アナタのキモチさえも。
気づいたらわからんようになってた。
- 732 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/14(土) 01:27
- 更新しました。
名無飼育さま>かなりハラハラ、ドッキドキ、マイペースな感じで進んでおります(笑)
星龍さま>先が気になる展開…ですかね?もしそうだとしたら、作者の思惑にハマってますよ(笑)
- 733 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/14(土) 04:27
- うひゃー!!美貴ちゃんカッケー!!!!
愛ちゃんとのすれ違い毎度本当ハラハラですよー。
大暴れしてくれー美貴ちゃんー!!・・・ガキさんも(爆)。
- 734 名前:星龍 投稿日:2006/10/14(土) 12:33
- 更新お疲れ様です。
見事に作者様の思惑にハマってしまいました。(笑)
高橋さんとのすれ違いとかっこいい藤本さんのプレー楽しみにしてます!!
- 735 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 06:57
-
―――15分後。
「うぉりゃあ!」
バゴンッ!!
マークに付いていた大谷、福田を吹き飛ばす、豪快なダンクを決めた美貴。
- 736 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 06:59
-
後半が始まって、美貴のプレーは、宣言通り、明らかな変化を見せた。
Aチームに焦りの色が見え始める。
点差が縮まったのだ。
その差・・・
9点。
- 737 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 07:03
-
一時の36点差から、所々相手に決められてしまいながらも、それ以上の美貴の働きで一気に加点。
今のダンクで、ついにひとケタの点差にしてきた。
「うっしゃ。」
「ナイス。」
パシッ!!
絶妙なパスを出した新垣と、ハイタッチを交わす。
- 738 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 07:08
-
「ヨッシャ!!やれやれぇ!!!」
ベンチからも吉澤を筆頭に、盛り上がりの声が聞こえる。
「ちょっと、よしこ、落ち着け落ち着け。」
もう、あんま興奮すると、鼻血でちゃうよ?とクスクス笑う後藤。
それを言われて、イヤなこと思い出させるな、と興奮しながら、言い返す吉澤。
「仕方ないなぁ。」
その2人をまた横で見つめる柴田は、笑顔だった。
- 739 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 07:12
-
ピーピピッ!!
不意に、主審の笛が鳴らされる。
「Aチーム。」
主審が告げると、ベンチから中澤と村田が立ち上がる。
「福田、斉藤。あたしらと交代や。」
いつもの中澤より、かなり冷静な状況判断だった。
- 740 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 07:15
-
やっときたか。
中澤が出てくるのを見て、美貴が多少、息を切らし、汗を拭いて、その光景をじっと凝視。
「福田さん・・・抜けちゃうのか。」
そして、1人ぽつりとつぶやく。
全日本チームの司令塔がこの場面で抜ける。
それを不信に思わないはずがなかった。
- 741 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 07:18
-
フッと、辺りを見回す。
「はは・・・」
笑うしかなかった。
Aチームは交代の人数は少ないものの、大して息を切らしていない。
それに比べて、Bチームは、疲労の薄い美貴を含めて、全員が肩で息をしていた。
やられた。
Aチームはペース配分を、きっちりと決めてゲームを組み立てているのだ。
- 742 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 07:23
-
美貴が追いつこう追いつこう、と頑張る度に、彼女たちはハイペースになってしまったのだ。
そのために、チーム全体に、疲労感。
―――特に。
「はぁ・・・はぁ・・・・」
「ハァ、大丈夫・・・ハッ・・・ですか?」
前半からフルの石川と、美貴に合わせて、パスを出さなければなからない新垣の疲労感は否めない。
- 743 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 07:26
-
そんな、いっぱいいっぱいの2人を見て、美貴がベンチに視線を移すと、柴田はまだだという風に、首を横に振って見せた。
タッ。
それを確認してから、美貴が一度、全員を集まらせる。
「ちょっと。」
ただ、その一声だけで、チームの全員が、輪になる。
- 744 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 07:30
-
「あのさ、福田さんいないでしょ?あの状況でさ、ガードって誰がやんの?」
まず、美貴は、チームの誰よりも、情報が極端に少ない。
その質問で、全員が、ギョッと、一斉に美貴を見る。
「ちょっと・・・みきたん・・・本気で・・・言ってるの?」
疲れているので、途切れ途切れに言葉を発する松浦。
- 745 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 07:35
-
あぁ、本気だけど?
そう答える。
すると、今度は、全員がため息をついた。
「ゴールデンコンビ・・・はぁはぁ、が、ふっ・・・かつだね。」
今度は里田が口を開いた。
「ゴールデンコンビ?」
そういや全日本OGで、ものすごいコンビが過去にいた、という話を聞いたことがあるな、とやっと思い出す。
- 746 名前:星になる 投稿日:2006/10/19(木) 07:46
-
「コ・・・ーチ・・・と・・・・か・・・ん・・・とく・・・なの・・・。」
かなり息が切れてて、聞き取りにくかったが、なんとか石川の言葉は解釈。
「あの2人が例のか。」
よくよく考えてみると、中澤はただのちょっと仲の良い親戚だし、コーチはコーチだけだし、と2人の過去のことは詳しくは、わからなかった。
- 747 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/19(木) 07:47
- 学校行く前にちょっとばかし更新です。
- 748 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 00:22
-
「じゃあ・・・あの2人のいつものポジションは?コーチはとりあえず、センターかフォワードでしょ。で監督は?」
美貴が今ここにいるのは、稲葉コーチのおかげと言っても言い過ぎではない。
美貴はゴール下のポジショニング、体の入れ方など、徹底的に教わったので、あのプレーからしてコーチはセンターかフォワードだと疑わない。
逆に監督のほうがわかりずらいというのがあった。
- 749 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 00:27
-
監督のポジションを考えながら、でも、センターには石黒さんがいるから、フォワードだな、と確信する。
「違うよ・・・」
少し、落ち着いてきたのか、松浦が息を整えつつ、美貴に否定の言葉を浴びせた。
そんな松浦を、美貴も不思議そうな表情で見つめる。
「コーチは・・・ガード専門。」
- 750 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 00:30
-
「えっ・・・」
ウソだろ。まさかそんなはずがない。
まさにそんなありきたりな反応を見せる美貴。
この状況であれば、だれでも、こうなってしまう。
「コーチがガード・・・監督がフォワード・・・それが、伝説のゴールデンコンビ・・・だよ。」
中澤がフォワード、稲葉はガードなのだ。
- 751 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 00:34
-
ちょっと待て。
じゃあ美貴は
ガードにゴール下のプレーを教わったってこと?
考えてみるだけでぞっとする。
何しろ、稲葉のゴール下はそこら辺にいるセンターよりも力強く、正確だった。
そんな稲葉が、ゴール下メイン、むしろ、ゴール下はほとんど絡む機会のない、ガードなのだ。
美貴には、その事実が恐かった。
- 752 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 00:37
-
ゴール下、あんなすごかったのに・・・
コーチはガードなのか。
しかし、恐ろしいと思う反面、ワクワクする自分自身が存在する。
「そっか・・・そーなんだ。」
勝負だ、と思ってはいるものの、どうしても顔がほころんでしまう。
- 753 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 00:41
-
黙っていた里田が、大きくフゥーと息をはく。
どうやら、できるだけ体力を回復させようと、口を開かなかったようだ。
「だから、マーク、変わるよ、きっと。」
回復させてたからか、他の3人よりは普通な感じの会話になる。
「あ。だよね。」
2人のポジションのことで頭がいっぱいで、マークのことを、すっかり忘れていた。
- 754 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 00:45
-
「マークかぁ。」
こっちのマークも変えなきゃだけど、あっちもマーク変えてくんだろーな、きっと、と1人考える。
「み、きたん・・・」
松浦も、だいぶ、息切れがマシになってきたようだ。
「ん?なに?」
「あたし、ちょっと・・・監督マークはキツい・・・かな。」
珍しく弱気だな、と一瞬驚いてしまう。
- 755 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 00:47
-
「だから・・・みきたん、任せた。」
ポンポンと、肩を何回か叩かれる。
まぁムリもないか。
体力の消耗激しいし。
「わかったよ。じゃあ、美貴、監督マークしまーす。」
疲れた顔をしているメンバーの中で、1人、おちゃらけて挙手してみた。
- 756 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 00:51
-
「はーい!!」
一度、手を下げてから、再度挙手。
「はい、ミッキー。」
すると、うまい具合に里田がノってきてきてくれる。
多分、彼女も彼女なりに、この、疲労に包まれた空気から、脱出したいのだろう。
「他のマークはどーするんですか?」
端から見ていると、授業中の生徒と教師のようだ。
- 757 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 00:54
-
疲れた表情の石川、新垣そして松浦も、さすがにこの光景を見て、クスリと笑ってしまう。
「そうね、そうねそうね。いい質問しました、藤本さん。」
こういうときの里田は、ものすごくうまい。
美貴の突拍子もない行動に、すかさずついてこれるのだから。
- 758 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/20(金) 00:55
- ついに監督登場ー!!中澤さんの活躍、期待してます!!
- 759 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 00:58
-
「とりあえずは・・・ゾーンで・・・どうかな・・・」
いちばん疲労の濃い、石川が告げる。
彼女が、作戦のことに意見をするというのは、あまり見れない。ひょっとしたら、これが初めてかもしれない。
「ほら・・・ボックス・・・ワン・・・美貴ちゃ・・・が・・・監督だ・・・から。」
美貴が、おおそっかと、手をポンと叩く。
- 760 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 01:02
-
「でも、監督・・・攻撃・・・くわ・・・わって・・・来ます・・・かね?」
今度は新垣の意見だ。
監督の考えることはわからない。
これは、ハロ高バスケ部では最も有名な話だ。
そして、それはもちろん、OGの石川も承知の上だった。
「だけど・・・ね・・・」
石川がさらに続けようとする。
- 761 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 01:07
-
「美貴だったらゼッタイ攻めるなぁ〜、この場面。」
美貴のつぶやきに、石川と新垣がえっ?と反応する。
それに気が付いた美貴が、2人に視線を向けた。
「あ、いや、だってさ、あんなにあった点差が9点差よ?有り得なくない?しかもこの短時間で。美貴、相手にそんなことされたらムカつくもん。」
完全なる、美貴の私的な意見に、他のメンバーの目が点になってしまう。
- 762 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 01:10
-
「ゆーちゃ・・・あ、監督も多分そう思ってるよきっと。」
うんうん、とやたら1人で納得。
当然、他の4人はなんでそんなことわかるんだよ的な表情を浮かべる。
「だってさ、だってさ・・・」
そんな痛いほど視線に、美貴が苦笑いしながら、自分を指さす。
- 763 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 01:12
-
「美貴の親戚だよ?あの人。」
あぁそうだった。
一斉に美貴の言葉に頷いてしまう。
そう、仮にも、監督と美貴は親戚なのだ。
- 764 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 01:13
-
「だから強気でくるよ、きっと。」
なぜだかわからないが、美貴には確信があった。
裕ちゃんはそーいう人なんだ。
- 765 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 01:16
-
「再開しますっ!!」
交代の確認が少し手間取っていたが、ようやく主審からの再開コール。
「おっし!!」
いちばん体力の残っている美貴が、声を張り上げる。
- 766 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 01:19
-
「とりあえず、ゾーンで!!いってみよー!!」
最後にまた、ノってきてくれないかな、と淡い期待をしつつ、ふざけてみる。
「や、やってみよーー!!!」
不意をつかれたからか、里田が一瞬どもった。
クスクス・・・
それがまたおかしくて、他の3人に笑みが浮かぶ。
- 767 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 01:20
-
よし、ナイスアシスト!!
内心、チームの空気を和やかにしてくれた里田に、ガッツポーズ。
- 768 名前:星になる 投稿日:2006/10/20(金) 01:21
-
「さぁ、いくとしますか。」
そうして、再び各自が役目を果たすため、コートに散った。
- 769 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/20(金) 01:26
- 本日は2回に分けての更新です。
733名無飼育さま>はい、作者もメンバーには暴れてほしい願望でいっぱいでございます、恋もバスケも(笑)
星龍さま>今回はプレーや恋などなど、いろんなモノをひっぱる回にしてみました(笑)
- 770 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/20(金) 01:27
- 758名無飼育さま>ついにネェさんの登場!!やっとここまでこぎつけました。笑
- 771 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:09
-
『そうやってさ、無理すんの止めなよ。』
昔、そんなことを誰かに言われた。
- 772 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:18
-
ダムダム・・・
「にゃろぉ・・・」
さすがの美貴でも、嘆いてしまう。
ドリブルをした稲葉が指示を出す。
「大谷。外や外!開け。石黒、もうちょい右!」
大谷と石黒が頷き、静かに指定された場所へと移動する。
そんな稲葉のマークは当然、ガードである、新垣だ。
- 773 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:21
-
「はっはっ・・・」
本当に疲れている司令塔。
ダムダムダム!!
「あ・・・」
そんな新垣が稲葉を止められるはずもなく、あっさりと抜かれてしまう。
バッ!!
「おっと。」
しかし、カバーが入り、稲葉の足が止まる。
- 774 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:25
-
「ここは行かせないっすよ。」
美貴だった。
自分のマークである中澤を後ろに置き、美貴が稲葉の真ん前に立ちはだかる。
「ええんか?裕ちゃんをフリーにして。」
稲葉が、いってまうぞ?と、ニヤリ笑みを浮かべる。
「フリーになんかしませんよ。」
美貴は様子を伺いながら、きっぱりそう答えた。
- 775 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:27
-
あー、甘い甘い。
そう言った直後に、コーチからゴール前への、素早いパスが、美貴の脇腹辺りを通り抜ける。
「くっ・・・」
パシッ。
「おーらよっ。」
パサ。
結局、誰も反応しきれずに、中澤があっさりとレイアップを決めていた。
- 776 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:31
-
くそ・・・
クソクソクソッ!
美貴がぎゅっと拳を握りしめる。
タッタッタ。
「これでまた2ケタ差や。」
中澤が通り過ぎるときに、わざとらしく、大きくアハハと笑う。
「・・・はぁ・・・どんま・・・・いどんまい。」
近くにいた松浦が、息を切らしながらも、美貴を慰める。
- 777 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:33
-
なにやってんだよ。
美貴は・・・
松浦や、他のメンバーたちを見渡し、つくづくそう思ってしまう。
今のも、新垣のカバーのつもりで行った美貴だったが、結果的にはアダとなり、中澤に得点されている。
考えろ・・・
考えるんだ。
- 778 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:36
-
今度は軽率な行動に出ないよう、じっくりと動く。
ダム・・・
キュキュッ!
中澤にマークされ、足が止まってしまう。
そこで、一旦誰かに預けようと、空いてる味方を目で探す。
キュッ。
- 779 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:38
-
くっ・・・
しかし、探せど探せど、空いてる味方などいない。
全員、マークに捕まっているのだ。
ダムッ・・・
仕方なく、ドリブルをしながら、ゴールを見る。
「あかんあかん。」
その瞬間に、中澤の声が耳に入る。
スッ―――
- 780 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:42
-
「げ・・・」
ゴールに気が散っている間に、中澤にスチールをかけられた。
パンッ!!!
そして、美貴の手にあったボールは、いつの間にか、稲葉の手によってゴールに吸い込まれていた。
「はい、これで13点差〜。」
また中澤だった。
- 781 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:45
-
美貴があっさりと、ボールを奪われてしまうというのは、珍しいことだった。
「おい、こら。」
稲葉がゴールを決めても、さほど喜ばないで戻ってくる。
一方、13点差と笑いながら言った中澤だったが、一気に表情が曇り始める。
「美貴、あんたやる気あんのか?」
は・・・?
- 782 名前:星になる 投稿日:2006/10/24(火) 01:48
-
やる気だと?
内心、美貴は独特のキレ具合だったが、それは口に出さないように我慢する。
「つまらんぞ。こんなんでずっとやられたら。」
我慢しているとはいえ、そんなことを言われると、やはりカチンときてしまう。
それは、美貴だけでなく、ここにいる誰もがそうだった。
- 783 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/24(火) 01:49
- 少量ですが…。
- 784 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 00:40
-
「何が・・・言いたいんですか。」
怒りを鎮めようとするためか、声が震える。
「何って、あんたのプレー。こんなんか、言うてんねん。」
ヤレヤレと、両手を広げ、美貴に向かってガハハと笑う。
「・・・けんな。」
あぁ?何か言ったかぁ?と、まだふざけた口調の中澤。
さすがにやりすぎだと、稲葉が止めようと間に入る。
- 785 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 00:42
-
「ちょっと・・・止めぇや、裕ちゃん。」
それでも、中澤はいいんやいいんや、と稲葉を押し退ける。
「しょーもないプレーされたら、あたしらが練習に付き合ってる意味ないやろーが。」
笑っているのか、それとも怒っているのか、はたまた呆れているのか、よくわからない顔で美貴を見る。
- 786 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 00:45
-
「・・・っざけんな!!!」
しびれを切らした美貴が、ものすごい勢いで、中澤につかみかかる。
「おーお。こんな元気あるんなら、試合で見せて欲しいわぁ。」
稲葉がまた止めに入ろうとするが、今度は中澤が手で制す。
「ざけんな!!監督だからって!」
美貴の怒りは収まらない。
- 787 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 00:49
-
「あたしは監督やから言っとるんやない。家族としてでもない。コートに立ってる一選手として言ってんねん。ペース考えずに自分勝手なプレーの連発。おまけに周りに気ぃ遣わしてる。それが、わからんのか?」
一呼吸も置かないで、バーッとすべてを言い終えた中澤。
首をつかまれて、少し苦しそうだ。
- 788 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 00:51
-
中澤に言われて、初めて気がついた。
仲間に気を遣わせ、その上、体力を消耗させてしまったのは、自分だったのだ。
「今のあんた、めっちゃ格好悪いで。」
今度は中澤が、キッと睨みつけた。
- 789 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 00:55
-
スッ―――
中澤をつかんでいた手の力が、ゆっくりとなくなってゆく。
そして、力がなくなり、そのままブラブラと下げられた。
「そんなんやから、高橋にも見捨てられるんや。」
俯いている美貴を、さらに落胆させる言葉だった。
- 790 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 00:57
-
「・・・悔しいんやったら・・・」
抜け殻のようになってしまった相手に、中澤は続ける。
「あたしに、あたしらのチームに勝ってみろ。」
最後に、トントンと肩を叩く。
中澤なりの優しさだった。
- 791 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 01:00
-
「・・・すいません、タイムで。」
ピッーー!!
「Bチーム、タイムアウト。」
やっと顔を上げたと思ったら、美貴が主審に歩み寄り、タイムを取った。
スタスタスタ。
そして、1人、足早にベンチに戻る。
- 792 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 01:02
-
「ちょっと、みき・・・たん・・・」
疲れていながらも、様子のおかしい美貴を、走って追いかけるメンバー。
その中から、松浦が美貴の肩をつかんで止める。
「なに?」
「・・・」
美貴の表情は、今までに見たことないくらい、真剣だった。
- 793 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 01:06
-
「ふ、藤本、だいじょ・・・」
黙ってしまった松浦を見かねて、今度は柴田が声をかける。
「大丈夫です。それより次、止まったらメンバー交代してください。」
柴田の心配を遮り、淡々と話す。
その間に、座って靴を脱ぎ、もう一度、履き直す。
そして、腕のリストバンドもいじっていた。
- 794 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 01:09
-
「え?あぁ、うん。わかった。」
どうしたんだろう、という表情で見るが、口調が冷静なだけで、いつもとさほど変わらないので、あまり気にしないようにする。
「とりあえず、ガキさんと梨華ちゃんを交代で、いいよね?」
念のため、美貴と新垣に確認を取る。
新垣がコクリと頷いた。
- 795 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 01:12
-
「いや、美貴以外、交代させてください。」
美貴のあまりの冷静な口調に、柴田がピクリと肩を動かした。
「ちょっと、まっ・・・」
「限界ですよ。みんなの体力は。とりあえず、ガードに柴田さん、シューター後藤さん、センター吉澤さん、あとはフォワードに田中ちゃんを入れてください。」
ちょっと待てと、柴田が言おうとしたところで、また、美貴が遮る。
- 796 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 01:15
-
コキ、コキコキ。
手首、足首、首を回しながら美貴が告げた。
ちょっと待てよ、柴ちゃんが考えてんだろーよ、と吉澤が口を挟む。
「・・・」
今度は、美貴が無言になる。
「藤本、柴ちゃんに任せたんじゃねーのかよ。」
それを何回も何回も繰り返す。
吉澤の意見は最もだった。
- 797 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 01:19
-
後半はまだ、半分以上残っている。
「まだ時間もあんだしよ・・・今はこのまんま・・・」
「ダメですよ。」
屈伸を始めていた美貴が、きっぱりと言う。
「ここ、代えどきなんです。」
疲労しながら、水を飲んだり、タオルで汗をふいたりしている、メンバーたちを見つめ、静かに言った。
- 798 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 01:20
-
「この試合、勝ちに行くんで。」
最後にそう付け加える。
それに、吉澤と柴田はただただ驚いていた。
スタスタ。
そんな2人をよそに、美貴は座っている松浦へと歩み寄る。
- 799 名前:星になる 投稿日:2006/10/25(水) 01:23
-
2人が見守る中、なにやら談義をし、松浦がゆっくりと頷く。
さらに美貴が、隣りに座っている新垣を見ると、新垣も納得したかのように、にっこりと笑った。
「仕方ないみたいだな。」
「だね。」
その光景を見た吉澤と柴田は、羽織っていたジャージを脱いだ。
- 800 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/25(水) 01:24
- またまた少量です。
- 801 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/25(水) 08:27
- 中澤さん、カッケーーー!!!
- 802 名前:星になる 投稿日:2006/10/27(金) 00:50
-
『好きだ』
ただ、それだけを思ってきた。
キミが・・・
大好きなんだよ?
- 803 名前:星になる 投稿日:2006/10/27(金) 00:53
-
ピピーッ!!
Bチームのリスタートのところで、メンバーが、柴田、吉澤、後藤に田中、そして美貴と、ほぼ全員が代わる。
あまりに多い交代なので、また、主審が確認に手間取ってしまう。
- 804 名前:星になる 投稿日:2006/10/27(金) 00:55
-
「監督。」
そんな慌ただしい中、1人だけ違う空気をかもし出す人物がいる。
「なんや?」
ボーっと交代メンバーたちを見ていた中澤が、話しかけてきた美貴に振り返る。
中澤の少し後ろにいた稲葉も、2人を横目で見る。
- 805 名前:星になる 投稿日:2006/10/27(金) 00:58
-
「美貴、さらに本気でやりますから。」
美貴の先ほどより、真剣な宣戦布告。
「あーそうか。」
大した興味を示していない中澤が、はいはいと、適当にあしらう。
「本気です。」
「ふーん。」
まるで、だからなんなんだ、と言いたげだ。
- 806 名前:星になる 投稿日:2006/10/27(金) 01:01
-
「悪いけど、ぶっ潰しますから。Aチームのみなさん。」
軽くあしらわれて、イラついたのか、いつもより、若干、口調が荒くなる。
「できるわけないわ、今のあんたに。」
先ほどの様子を思い浮かべて、中澤が言う。
「やってやります。」
こんな2人のやり取りを、稲葉は黙って見守る。
- 807 名前:星になる 投稿日:2006/10/27(金) 01:06
-
あまりの中澤の態度に、美貴が意を決したかのように、大きな深呼吸を一度、ゆっくりとする。
「Aチームに、監督に勝てなかったら…美貴、バスケ引退して、愛ちゃんとも、会いません。」
「え・・・?」
美貴の思わぬ決断に、中澤ではなく、稲葉が先に反応する。
- 808 名前:星になる 投稿日:2006/10/27(金) 01:08
-
「えぇやろ。」
中澤はたった一言、それだけ告げた。
タッタッ。
美貴が、頷き、メンバーをコートに迎えるため、交代しているところへと駆け寄る。
「ええんか?あんなこと約束させて。」
見ていた稲葉が、焦って中澤に問う。
- 809 名前:星になる 投稿日:2006/10/27(金) 01:12
-
「あの手の選手はな、窮地に追い込まれたほうが強くなれるんや。」
何かを思い出しているのか、美貴の背番号を見ながら、目を細める。
「ほんまか?」
ただ、中澤自身がそう思うだけで、そんなのの確証はどこにもない。
稲葉はそれをわかっていた。
- 810 名前:星になる 投稿日:2006/10/27(金) 01:14
-
「たぶんな。」
そうとしか言いようがない。
「ああ。」
もう、どうにでもなれ。と少し投げやりな気持ちにもなってしまう稲葉。
ただ、美貴ならやってくれる。
美貴ならやるはずだ。
と信じているのも、また事実だった。
- 811 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/27(金) 01:15
- 極小更新…。
- 812 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/27(金) 11:29
- 更新乙です!
ドキミキワクワク・・・無謀で野心的な美貴ちゃんが好きやよー♪
- 813 名前:星龍 投稿日:2006/10/28(土) 09:15
- 更新お疲れ様です。
これからもっとすごい藤本さんが見れるんですね。
高橋さんの為にもガンバレー!!
- 814 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 17:21
-
「いきますよ。」
入ってきたメンバーにしっかり告げる。
吉澤たちが迫力に負け、ゆっくりと頷く。
「田中ちゃん。」
1人歩き出していた田中を、後ろから呼び止める。
「なんですか?」
手首や足首を回しながら、田中らしい、睨みつけるような目で美貴をみる。
- 815 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 17:25
-
普通の人なら圧倒されてしまうのだが、美貴はビクともしなかった。
「頼むぞ。」
「はい?」
思わぬ言葉に、拍子抜けしてしまう。
「田中ちゃん、美貴マジでいくから。遅れとんなって言ったの。」
今度は美貴のほうが前を歩く。
- 816 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 17:27
-
「・・・任してくださいよ、れなを甘く見ないでください。」
反抗するかのような、きつい口調で美貴に返して、ゆっくりと自分のポジションへと向かってゆく田中だった。
- 817 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 17:33
-
Bチームからのリスタート。
ボールを出すのは、後藤。
中では、当たり前かのように、柴田が待っている。
他の3人は、各自のポジションの場所で待っていた。
「柴ちゃん。」
すぐさま、後藤から柴田へとパスが渡り、柴田がゆっくりと前へ前へとボールを運んでゆく。
ダムダムダム・・・
- 818 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 17:37
-
キュキュッ!!
それを見たBチームは、各自で動き回る。
なんとか、相手の隙を作ろうとしているのだ。
ダム!!!
一方、柴田は柴田で、稲葉にマークされているので、ドリブルをしながら、なんとか逃げ回る。
「柴田さんっ!!」
- 819 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 17:41
-
走り回って、中澤を若干離した美貴が手を上げている。
ビッ!!
「藤本!!!」
柴田がうまく、稲葉をかわして美貴にパスが通る。
パシッ。
「おし。」
ボールを手にとり、やっと足を止める。
中澤は、美貴にパスが通るように仕組んでいたのか、美貴がボールを持った途端に、ニヤリと笑った。
- 820 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 17:45
-
それを見て、美貴がキッと睨みつける。
「いきますよ。」
「これるもんなら、来てみぃ。」
また中澤がニヤリと笑った。
ヒュルヒュルヒュル!!
美貴が両手の中でボールを回した。
- 821 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 17:49
-
ダムダム・・・
ゆっくりドリブルを始める。
キュッ!!
中澤も、腰を低くし、美貴の真ん前に構える。
タタタタ!!!
美貴以外、Bチームのメンバーは途中、休憩を入れていたので、まだまだ元気が有り余っている。
- 822 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 17:52
-
ダムダム!!
さらにドリブルを強める。
「はは・・・」
中澤が声を出して笑った。
かっこいいとこなんて・・・
ダダッ!!
美貴がドリブルで前に走る。
- 823 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 17:54
-
見せなくていいんだ!!
チームが・・・
チームが勝てば!
美貴がキッと目を見開く。
- 824 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 17:57
-
「おいおい、そのまま行っても、あたしがボール取るだけやぞ。」
隣りで、美貴に追走している中澤が、そう言うが、美貴本人は動じなかった。
ダムッ。
キュキュッ!
「うおっ。」
いきなりの方向転換に、中澤のマークが、一歩ほど外れる。
- 825 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 18:00
-
ヒュンッ!!
すかさず、パスを送る。
「な・・・パスやと?」
美貴のゴール下でのパスの確率は低い、と読んでいたのにプラスして、このマークを少し外した状況には、いつもの美貴だったら自分で打つ場面だった。
それらが重なり、中澤も驚く。
- 826 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 18:05
-
「いけ。」
美貴がただ一言、そうつぶやく。
ガシッ。
中澤の後方で、パスを受け取った音がした。
「うぉりゃああああ!!」
美貴と同じように、ちょうどマークを半歩外していたのだろう。
パスは案外容易に通った。
カシャン!
そして、リングにスレスレ届かない、レイアップなのか、ダンクなのか、微妙なシュートを決めた。
- 827 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 18:12
-
「ギリ届いてないっつーの。」
美貴がディフェンスに戻りながら言う。
「チッ。次は届きますよ、絶対。」
「そんな易々とダンクさせてもらえないから。」
そんな憎まれ口を叩きながら、互いに手を出す。
「まぁなんにしても、ナイスだ。田中ちゃん。」
「藤本さんも。」
パンッ!
珍しいコンビがハイタッチを交わした。
- 828 名前:星になる 投稿日:2006/10/30(月) 18:13
-
「あいつらめ・・・」
中澤が、後ろからそんな2人を見て、また楽しそうに笑った。
- 829 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/30(月) 18:17
- また少ない更新…。
212名無飼育さま>ドキミキワクワク…笑
今回も少ない更新で申し訳ありません(*u_u)
星龍さま>徐々に徐々に彼女たちが動き出しました。笑
今後の展開はどうなるのか…笑
- 830 名前:212 投稿日:2006/10/30(月) 22:56
- よっしゃー!ヤンキーコンビきたー!!
更新乙です!!ドキミキワクワクしました!!!!
- 831 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 00:51
-
ダムダム。
「一本じっくり行くでぇ!」
Aチームからのリスタートで、稲葉が声をかける。
周りもゆっくりと頷いていた。
キュキュ。
「ん・・・?」
ボールをキープしていると、マークがやってきた。
- 832 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 00:54
-
「2人か。」
柴田と後藤。
2人が稲葉のマークについた。
「ってことは・・・」
自分に2人が来ているということは、必ず誰かがフリーになっているはず。
そう思い、稲葉が周りを見渡すと、1人、ポツンとフリーになっているチームを発見した。
- 833 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 00:58
-
「悪いがもらうぞ。」
微笑みながらそう言うと、柴田の頭をボールが飛んでゆく。
「あ・・・」
少しは反応した2人だったが、そこまで動揺していないのが、やたらと稲葉には印象深かった。
そんなことを思っている間に、フリーでスリーポイントラインに立っている村田へと、ボールが向かってゆく。
- 834 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 01:00
-
パシッ!!
「待ってました。」
- 835 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 01:03
-
「な・・・!?」
その光景を見て、思わず声を発する。
ダムダム!!
稲葉が驚いている間に、ものすごいスピードで通り過ぎてゆくボールを持った、美貴。
その速さは、今までとは比べモノにならなかった。
タタタタッ。
「あっちゃん、ぼーっとするな!」
- 836 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 01:07
-
美貴を先頭に、次に中澤、大谷とAチームで比較的、瞬発力のある2人が後を追う。
Bチームの面々はというと、大谷の後に身軽な田中がやっとついてきているくらいだった。
「あ!」
中澤に声をかけられ、やっと我に返る稲葉。
ようやくみんなの後を追う。
- 837 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 01:09
-
「うぉぉ!!」
「させんわ!」
美貴がゴールに向かって飛び上がる。
ここで、やっと追いついた中澤も、させまいと、ファウル覚悟で手を出す。
バンッ!!
中澤の手が、美貴の腕を叩いた。
美貴はそれにも動じない。
- 838 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 01:13
-
「なんつって。」
美貴がチラリと舌を出して、笑う。
それで、叩いてしまった中澤もやっと気が付く。
「しまっ・・・」
ヒュッ。
美貴が空中で、回転をする。
バサッ。
中澤を体ごと交わしたかと思うと、レイアップシュートを放ち、あっさりと決めた。
- 839 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 01:18
-
タンッ。
美貴が着地。
それとほぼ同時に中澤も着地した。
ピピーー!!
「Aチーム、4番プッシング!ワンスロー!!」
主審が、中澤の着ているゼッケンの番号を読みあげ、ファウルの警告を発した。
「ッチ・・・」
中澤も仕方なく手を上げた。
- 840 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 01:22
-
「よっし。」
フリースローを決め、美貴が小さくガッツポーズ。
これで先ほどの田中の得点を含めて、一気に8点差まで詰め寄った。
「ディフェディフェ!!」
センターに陣取っている、吉澤がヨシヨシと手を叩いている。
それを見て、Bチームの面々がディフェンスに戻ってゆく。
- 841 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 01:24
-
「なんやったんや、今の。」
一連の美貴のプレーは、ボールを取られてしまった稲葉にとって、不可解でしかたなかった。
中澤をマークしているはずの美貴が、村田に出したパスをカットした。
その事実がどうしても、納得できないのだ。
あいつゴール前にいたはずやろ?
- 842 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 01:28
-
そんなことを思っていても、ゲーム自体は進行する。
ダム・・・
また稲葉がボールを持つと、柴田と後藤の2人がマークについた。
「んは。楽しいねぇ、柴ちゃん。」
稲葉を見ながら、後藤が微笑む。
「ごっちん、集中して。」
一方、柴田は神妙な面もちだ。
- 843 名前:星になる 投稿日:2006/10/31(火) 01:31
-
こいつら・・・
なに考えてんのや。
稲葉には、Bチームの動きがさっぱりわからない。
格上相手にフリーの選手を出すし、まだそこまで活躍していない自分をダブルチームで付けてくるし、オマケにそのうちの1人は余裕を持っている。
なんなんや、コイツら。
- 844 名前:ワクワク 投稿日:2006/10/31(火) 01:33
- 第2回更新(笑)
212さま>ドキミキワクワクしてもらえて、本当によかったです!また先を考えないと(笑)
- 845 名前:212 投稿日:2006/10/31(火) 13:05
- やほーい!美貴ちゃんカッコイイ!!
作者さまマイペースでいいのですのでまったり更新まってます!
更新お疲れ様です。
- 846 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 01:54
-
ダム・・・
Aチームボールでのスタート。
今度は、用心深く周囲を見渡す稲葉。
これと言って変わりはない。
「よーし、点取るで。」
稲葉が声をかける。
キュキュッ!
目がどうしても、美貴を追ってしまっている。
- 847 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 01:57
-
先ほどのプレーが、稲葉の目に焼き付いて、離れないのだ。
パシッ!
「あ!」
美貴を気にし過ぎたせいで、自分のマークについている柴田に余裕を見せてしまった。
そのため、柴田にスティールされて、ボールを奪われてしまったのだ。
- 848 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 01:59
-
「ソッコー!!」
柴田がボールを持ったと同時に、叫ぶ。
ダダダダ!!!
声に合わせて、Bチームのだれもが、ディフェンスからオフェンスに切り替えて、走ってゆく。
「はいっ!!」
比較的、オフェンスでは楽な後藤が手を上げて、ボールを呼ぶ。
- 849 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:03
-
その声に反応して、柴田からのパスコースを、稲葉が断ち切る位置へ手を伸ばす。
バン!!
柴田が、パスを出そうかと、片手でボールを取ったが、両手で持ち直し、ドリブルを始める。
ダム・・・
「はい、もう1回、切り替えよ。」
速攻が無理だと判断した柴田が、ゆっくりとボールを運ぶ。
- 850 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:04
-
その間に、美貴と田中、フォワードの2人がちょこまかちょこまかと走り回る。
2人が動くため、マークについている中澤や大谷も仕方なく、ついてゆく。
ダダダダ!!
- 851 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:07
-
「うぉ・・・」
しかし、ここに来て、出ずっぱりだった大谷の足がもつれる。
その間に、田中がまた動く。
「くっそ。」
大谷もついてゆこうとするが、2歩ほど後から追う形になってしまった。
「田中ちゃん!」
すかさず柴田がパスを出そうと試みる。
- 852 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:10
-
「どあほう!そう簡単にさせてたまるか!!」
田中へのパスコースを読んでいた稲葉が、再び柴田に立ちはだかる。
今度は体ごとパスコースに入ってきたので、完全にコースがふさがれる。
「どうや!」
先ほどやられたのがよほど悔しかったのか、パスコースをふさいで、稲葉がニヤニヤと笑う。
- 853 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:13
-
キュッ。
ヒュッ!!
「んえ?」
しかし、柴田は田中にはパスを出さず、バックパスで逆サイドでの展開しようとする。
「そっちはな、裕ちゃんがマーク済みや。」
そちらには、美貴がいるが、美貴は中澤にピッタリとマークされている。
- 854 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:16
-
「美貴、来たぞ。」
横目で視界に入るボールを見て、中澤がわざわざ美貴に知らせる。
パスを通させないつもりのようだ。
タンッ。
美貴が地を蹴った。
「わかってますよ、ボールが・・・」
パシッ。
「来てることくらい。」
空中でパスを受け止めた。
- 855 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:18
-
「おうおう、威勢のええやっちゃ。」
どこからそんな余裕が出てくるのか、中澤が柴田と美貴のパスワークを見て、思わず感心している。
「感心してる場合じゃないっすよ。」
着地した美貴が、またも中澤を睨みつける。
しかし、今度は睨みつけた後に、笑った。
- 856 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:21
-
やれるものなら、やってみろ。
そう言わんばかりに、中澤がクイクイと、手を動かす。
中澤も美貴も、対戦とはいえ、とても楽しそうな表情である。
「じゃあ・・・行きますよ。」
美貴が一呼吸置くと同時に、中澤が低く構えた。
- 857 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:23
-
「うぉりゃ。」
ヒュッ――。
「な・・・」
予想だにしなかった、この場面でのノーモーションの美貴のシュート。
打たれた瞬間、とても驚いた中澤。
入らん。
しかし、すぐにそれを確信。
- 858 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:26
-
確かに、スリーポイントラインから少し離れてはいるが、あまりに力強く投げすぎなのだ。
ありゃあ、ゴール越えるな。
中澤や、他のだれもが、ゴールを越えると確信するほど、美貴のシュートは大きな起動でゴール方面へ。
- 859 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:27
-
「・・・」
だが、美貴は失敗したという表情はしない。
むしろ、これを予想していたような顔だ。
- 860 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:29
-
ボールがリングのちょうど上辺りに来た。
あぁ、これで完全にダメだ。
これじゃあリバウンドもねぇよ。
珍しいミスだな。
ラッキーや。
各自それぞれボールの軌道を見ながら、ホッとしたり、ガッカリしたり様々だ。
- 861 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:30
-
――――ヒュ。
「ん?」
ボールを見ていた中澤が、なにやら変化に気づく。
- 862 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:32
-
ヒュルッ、ヒュルヒュル。
「な・・・なんや??」
中澤は己の目を疑った。
リングの上で、ボールが停止しているのだ。
- 863 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:34
-
いや、よく見ると止まっているのではない。
ボールに逆回転がかかって、止まっているように見えるのだ。
ヒュルヒュル・・・
ヒュ――・・・
次第にボールの逆回転がおさまってゆく。
- 864 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:36
-
ピタッ。
ヒュ・・・・
パサ。
テンテンテン・・・
ついには、ノー回転になり、そのままリングの中へ吸い込まれるように落ち、床でバウンドした。
- 865 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:38
-
「おっし。絶好調。」
美貴がグッと右手を握る。
他の面々はあ然としてしまい、言葉が出てこない。
- 866 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:41
-
「これが、アメリカで学んだ美貴のバスケですよ。」
ゴールを見ている中澤に告げる。
アメリカで、美貴は決して背丈のあるほうではない。
むしろ小さいくらいだ。
そんな美貴が普通にシュートを打っても、自分よりも大きな選手に止められてしまうか、ブッロクショットされるか、のオチだ。
- 867 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:43
-
そこで美貴は考えた。
誰にも触らせなければいいんだ。
そして、完成したのがこのショット。
リングの上まで、高々と上がり、そこからいっきに急降下。
これならばいくら大きい選手でも、止められない。
- 868 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:44
-
しかし、多少の欠点がある。
手首の動作が特殊なために、重りの入ったリストバンドをしていると、打つことが出来ないのだ。
そのため、今までこのショットは封印されていた。
- 869 名前:星になる 投稿日:2006/11/02(木) 02:45
-
「監督のおかげで、やっと披露できましたよ。」
そうつぶやいて、美貴がにっこり笑った。
- 870 名前:ワクワク 投稿日:2006/11/02(木) 02:47
- 夜中更新。
212さま>かなりマイペースな更新にお付き合いいただいて、ありがとうございます。これからも、早め早めの更新を心がけていきます。笑
- 871 名前:212 投稿日:2006/11/02(木) 14:17
- おぉ!更新きてたー!!
作者さまお疲れ様です!!
まったりマイペース更新もウキウキドキミワクワクですよ♪
てか美貴ちゃんカッコイイイイイイ!!!!
- 872 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 01:14
-
「くっ・・・」
バサッ。
「やっぱりバスケはこーでないとアカンな。」
中澤がニヤリと美貴を見る。
美貴のアメリカ産シュートを見せられてすぐの中澤のシュート。
それは平凡なレイアップシュート。しかも、田中からファウルを奪って、結果的に3点プレーになった。
- 873 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 01:17
-
「ハデなプレーだけやないんや。バスケットっちゅーもんわ。」
美貴はハデなプレーが多い。
中澤は地道に点を重ねるタイプ。
今のところ、2人は真逆だった。
「そう簡単にはいかない・・・か。」
今の中澤のプレーを見て、改めて簡単にいかないと感じる。
- 874 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 01:35
-
それから、しばらくは中澤と美貴の点の取り合い。
83対77
美貴の活躍で、6点差まで詰め寄ったが、ここからがなかなか差が埋まらない。
美貴が入れたら、中澤も入れ返してくるので、どちらかというとAチームの中澤のほうが有利なのだ。
- 875 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 01:38
-
美貴がベンチを見る。
ピピーー!!
そこで、タイミング良く主審の笛がなった。
「Aチーム、7番、プッシング。」
大谷が、無理な体制から田中のシュートを防ごうとしたため、プッシングを取られる。
ピピッ!
「Bチーム交代」
田中がラインまで走っていき、代わりに松浦が入ってきた。
- 876 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 01:42
-
「待たせすぎ。」
「まぁまぁ、でもおかげで体力は回復したよ!」
美貴と松浦の会話。
体力を取り戻したのか、松浦は終始笑顔だ。
「おっし、こっから暴れるよ。」
「うん!!」
松浦が入ったことによって、柴田のいるポジションが市井だっただけで、後は最強と唱われたメンバーになった。
いや、ひょっとしたら、このメンバーこそが、最強なのかもしれないと思わせるほど、すごいメンツだ。
- 877 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 01:45
-
もう一度、ディフェンスの確認で全員が集まり、輪になる。
「いいか、ここ勝負どこだ。ミスは許されねぇ。」
このメンバーで集まると、やはり第一声は吉澤だった。
「うん。ミスしたとしても、その後どう動くかが大事。」
続いては柴田。
- 878 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 01:48
-
「ディフェンスはゾーンですよね。」
今、入ってきたばかりの松浦が確認。
「そーだよ。んあ、でも、さっきまで藤本の監督に対するボックスワンがあんまできてなかったよねぇ。」
美貴が、あらゆるところのフォローに入ってしまうため、中澤へのボックスワンは、あまり機能していなかったのだ。
- 879 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 01:51
-
「次からピッタリ付きますよ。その代わり、フォローは遅くなっちゃいますけど。」
美貴が確認のために4人を見渡すと、ほぼ同時に、全員がこくりと頷いた。
「うっし。じゃあ、とりあえず追いつこう。あと6点。」
ディフェンスの確認を終えたところで、オフェンスに戻るため、交代で入った松浦がラインの外に出て、ボールを持った。
- 880 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 01:54
-
ピッ!!
主審の短い笛で試合再開。
Bチームボールでのスローイン。
まずはライン外の松浦から、後藤へとボールが渡る。
「んぁ〜、いくよぉ。」
珍しく、後藤がガードのような形になる。
それを見た柴田は、いつも後藤が立つスリーポイントラインの、反対側にポジショニング。
- 881 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 01:57
-
Aチームのディフェンスはマンツーマン。
後藤には村田、柴田には稲葉とポジショニングが変わっても、相手のマーカーは変わらなかった。
「ごとーさん!」
大谷を背負いながら、松浦がこちらに向かって走ってくる。
それを見た後藤は、何を考えているのか、わからない表情でそこから動かない。
- 882 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 02:01
-
タッタッタ!!
「ムラッチ!スイッチだ!」
松浦の後ろからきた大谷が、マークを入れ替えるぞという声を出したので、松浦と後藤が交差した時点で、2人のマーカーが入れ替わる。
後藤には大谷。
松浦に村田。
大谷が松浦がボールを持っているか、目で追って探す。
後藤が松浦にボールを渡したのか、それとも後藤が持ったままなのか。
- 883 名前:星になる 投稿日:2006/11/09(木) 02:03
-
しかし、松浦の手にはボールがない。
後藤が持ったままか。
ヒュッ!
「あ・・・?」
大谷が振り返ってからの、早いモーションからのシュート。
あまりにも意外過ぎて、大谷は指1本触れさせてもらえなかった。
パサッ。
このスリーポイントが見事に決まる。
さすがシューターの後藤だ。
- 884 名前:ワクワク 投稿日:2006/11/09(木) 02:04
- 少量更新です。
- 885 名前:星になる 投稿日:2006/11/10(金) 01:06
-
83対80。
後藤が決めたことによって、一気に差が3点まで縮まる。
「よぉし!1ゴール差だっ!!」
ディフェンスにいち早く戻っていた吉澤が、グッと拳を突き上げる。
それを見ていた柴田が、クスクスと笑いながら、あと3点か、とつぶやいている。
- 886 名前:星になる 投稿日:2006/11/10(金) 01:09
-
大体さ、なんでこんな差あったんだよ。
Aチームの圧勝って言ってたのだれだよ。
体育館の空気が少しずつ変化してきた。
だれもがAチームの勝利を確信、にも関わらず、気がついたら3点しか差がないのだ。
- 887 名前:星になる 投稿日:2006/11/10(金) 01:10
-
追いつくかもしれない。
そんな空気がコートを包む。
- 888 名前:星になる 投稿日:2006/11/10(金) 01:13
-
Aチームからのボールで、すでに試合は再開されている。
キュキュッ。
「ミッキー!抜かすな!!」
中澤がボールを持ったのを見て、ベンチに下がった里田が叫ぶ。
「わかってる・・・」
ヒュ。
独り言を言おうとした、ほんの一瞬で、中澤から再び稲葉にパスが通る。
- 889 名前:星になる 投稿日:2006/11/10(金) 01:15
-
「ちっ・・・」
中澤が1対1で勝負を挑んでくるものだ、と思っていたので、意表を突かれた。
ダムダム。
今度もまた、稲葉にボールが渡った瞬間に、柴田プラス後藤がマークに加わる。
- 890 名前:星になる 投稿日:2006/11/10(金) 01:17
-
稲葉の目つきが、先ほどよりも鋭いことに、柴田が不安感を抱く。
ピッ!
「うあ!?」
それを見逃さなかった稲葉は、死角である顔のすぐ横を、パスで通す。
柴田は一歩も動けなかった。
- 891 名前:星になる 投稿日:2006/11/10(金) 01:20
-
ガシャン!!
ダァン!
ものすごい音が鳴り響く。
「たたたっ・・・」
尻餅をついた吉澤が小さくうなる。
スタッ。
そんな吉澤を、しばらく平然と見下ろし、リングをつかんでいた手を放す石黒。
稲葉からのパスでアリウープ。
- 892 名前:星になる 投稿日:2006/11/10(金) 01:21
-
5点差・・・か。
美貴が不意に稲葉の後ろ姿をみる。
- 893 名前:星になる 投稿日:2006/11/10(金) 01:25
-
「みきたん。」
ぼーっとしているように見えたのか、松浦が話しかけてくる。
「ん?なした?」
「・・・メニハメヲ。はにぃははーを!!」
わざとカトコトなのだろう、松浦がにっこりと微笑んでいる。
「え?なに?」
言葉の意味はわかるが、松浦のカタコトがおかしくて、もう一度と促した。
- 894 名前:星になる 投稿日:2006/11/10(金) 01:26
-
もー言わない。と松浦が相手ゴール下まで行ってしまう。
「なんだよ・・・面白かったのに。」
そう言いながら、美貴も松浦の後に続いた。
- 895 名前:ワクワク 投稿日:2006/11/10(金) 01:27
- 激小更新(*u_u)
- 896 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:12
-
ダムダム・・・
Bチームスタート。
柴田がボールをもらった直後に、松浦が下がってきてボールを要求。
不思議に思いながらも、柴田が松浦にパスを出し、現在は松浦がドリブルでゆっくり前へと進む。
「いっぽーん!!」
どうやら、松浦はガードを務めようとしているらしく、いつも柴田がやっているような声かえをする。
- 897 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:16
-
相手のマークは、マンツーマンだが、松浦の不思議な行動に疑問を抱いた稲葉は、ゴールに走ってゆく柴田に大谷、松浦の近くにいる後藤に稲葉自身、そして比較的ゴールから遠い松浦に村田が付くように、と指示を出した。
「村田、気ぃつけやぁ!そいつはなにしでかすかわからんぞぉ。」
中澤がガハハとバカにしたような笑い声をあげる。
- 898 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:18
-
ダ・・・・
ンッ!!
ヒュッ。
「え・・・」
村田が付いた直後に、なにを血迷ったのか、松浦がゴールに向かって大遠投。
「いっけぇぇ!」
チームメイトたちも、あまりに突然なことだったので、宙に浮くボールをポカーンと見過ごす。
- 899 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:21
-
タタタタ!
「石黒!!美貴がいくぞ!」
併走してきている中澤の声で、美貴がゴールに向かっているのを確認する石黒。
グッ!!
その瞬間、吉澤に体重をかけて、自分の前に出られないようにした。
吉澤もなんとか前に出ようとするが、そこはさすがナショナルチームのメンバーだ。石黒はビクともしなかった。
- 900 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:23
-
ダン!!
ダダダン!
美貴、中澤がゴールに向かって同時に跳び、それに続いて石黒、吉澤の順で地を蹴った。
「いけぇー!!みきたん!」
後方から聞こえる、松浦の叫び声。
- 901 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:27
-
パシッ。
ボールが左手に納まる。
「目には目を・・・」
松浦がつぶやく。
「歯には・・・」
今度は美貴が小さく囁く。
「「歯を!!!」」
ガジャン!!
2人の声が重なったとき、中澤をも吹き飛ばした美貴が、松浦のパスからのアリウープを決め、ゴールにぶら下がっていた。
- 902 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:30
-
「すごぉい!」
ベンチのそばにいる、小さなほうのアイが立ち上がって大喜び。
それ以外は、物静かな空間。
ピッ・・・
ピピーー!!
しかし、主審の笛で静寂が破られる。
美貴がぶら下がったまま下を見ると、中澤がオフェンスファウルをアピールする格好で、倒れていた。
- 903 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:32
-
オフェンスファウルか。
それとも・・・
ここにいる誰もが緊張に包まれる。
主審さえもが、手に汗を握る状態だった。
- 904 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:34
-
タッタッ!
端にいた主審が駆け寄ってくる。
タン。
それを確認した美貴がゴールから手を離し、着地。
「ディ、ディフェンス4番!!チャージング!」
- 905 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:36
-
「うそやろぉ〜!」
中澤が顔をしかめるが、素直に右手をあげる。
「ワンスロー!!」
主審がコール。
うわぁあぁ!!
体育館中が歓声に包まれる。
- 906 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:39
-
「みきたん!」
そんな中、松浦が美貴に駆け寄ってくる。
「こらこら、あんまりビックリさせないでよ。」
最後に焦ったじゃんか、とグチを言うが、そんなことは2人とも、どうでもよかった。
「「ナイス!」」
パチッ!
美貴の左手に、松浦が右手を当てた。
- 907 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:42
-
短い間だが、お互いに微笑んでから、美貴がフリースローラインに立つと、主審からボールを渡された。
今、5点差か。
もう一度、得点板の差を確認する。
- 908 名前:星になる 投稿日:2006/11/13(月) 01:43
-
よし・・・。
一度、ボールを両手で回し、意を決した。
ヒュッ・・・
ボールを放った。
- 909 名前:ワクワク 投稿日:2006/11/13(月) 01:44
- 更新。
- 910 名前:星龍 投稿日:2007/03/01(木) 01:10
- 続き楽しみにしています。
頑張ってください。
- 911 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/02(金) 02:44
- 同じく楽しみにしてます。
そろそろ続きがこないかなぁと心待ちしてます。
- 912 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/14(水) 00:33
- 自分も楽しみにしています。
- 913 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/02(水) 23:43
- まだまだ待ちますので〜
頑張れ!
- 914 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/21(木) 23:24
- いつまでも待ちますからね
- 915 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/30(月) 16:52
- まだまだまちますからね
- 916 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/05(日) 14:44
- 作者さん頑張れ〜
まだまだ待ちますよ〜
- 917 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/25(木) 04:54
- まだ待ちます
頑張れ!
- 918 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/25(木) 23:44
- ガンバです
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