力無く吐くため息混じりの君の名前

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 14:53



2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 15:00
無邪気なものだ、と真希は思う。


頬杖をついたまま本のページをめくる。彼女が愛読してやまないのは、名
も無き作家の綴る代わり映えしない日常を描いただけの小説だ。
普通に生活し、日常にありうる小さなアクシデントが起こり、そして、ハッピーエンド。

何度も読み返すうちにエピソードのあらかたは覚えてしまっていた。退屈な物語だ、と思う。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 15:06
それでも、同級生という年齢という単純な枠に区切られたこの狭い空間で
名ばかりの友人と時を過ごすよりは、いくらか有意義な時の使い方であると思う。


教室内にちらりと視線を流すが、それはすぐに活字へと戻る。


本当に、無邪気なものだ。



(彼女の興味を引くものはそこにはなかった。ただ、それだけ。)
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 15:08
すう、と世界から音が消えていく。
喧騒も、ざわめきも。
風に吹かれて僅かにぎい、ときしむ窓のゆがみさえ。


本に、落ちていく。


その瞬間が、真希は好きだった。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 15:08





6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 15:18
五月蝿い、と他人は言う。

机は本来の使用方法とは違うであろう使い方により、彼女の腰の下にあった。両腕を軽く組んだ脚の上に置き、ひとみは喋ることに徹していた。
にこにこ。
そんな擬音が聞こえてきそうな笑顔を顔に貼り付かせて、友達と笑い合う。

毎日、毎日繰り返す行為。
同級生という年齢という単純な枠に区切られたこの狭い空間で名ばかりの友人と時を過ごすための、彼女なりの工夫だった。


室内をゆっくりと見渡す。
同じように笑い合うものがほとんどた。


7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 15:21


(違わない、大丈夫だ。うまくやれている)


世界が音に包まれているという安心感。
ざわざわという音、ノイズに溶けていく。

人の中に在る。その恒久のような時がひとみを安心させた。



8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 15:23



『興味が、沸いた』


好意、悪意、親近感、嫌悪感。
そのどの感情にも属さない、ただ、純粋な『興味』




9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 15:24





10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 15:28
ざぁざぁざぁざぁ。

梅雨に相応しく遠慮なく降り注ぐ水滴の中、少女は傘もささず佇んでいた。

ざぁざぁざぁざぁ。


目を細め、灰色の空を仰ぐ。


たくさんの人が、泣いた。



自分も、また。


掌をかたく握り締める。
この選択が正しく無いことなんて、知っている。


「それでも、    」

ざぁざぁざぁざぁ。


――――――
―――――
――――
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 15:28




12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/18(土) 15:31





13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/19(日) 09:10
タイトルが少し気になりましたが(ぇ
今後どうなるか見てみたいと思います。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/23(木) 03:38
「全員席に着け」

担任の耳慣れない真剣な声色に教室の雰囲気が一瞬止まる。
だが次の瞬間には何事もなかったかのように止まった時が動き出す。
担任の発言力などそんなものだ。あるいはあくびをしながら、またあるいは素直に担任の言葉に
従い席につく。
亜弥もまた、同じように席に着いた。
隣に座る麻琴が「なんだろうね?」と視線だけでいってくるのに「さぁ?」
と同じように視線だけで返す。クラスの全員が席に着き終えたところで終
礼が始まる。いつも通りののことなのに何故だろう。空気が痛い。
いつもと、違う。

簡単な連絡が成され、そのあとひとこと担任が告げる。




「一人で、帰らないように。絶対に」



言った後に担任が付け加える。
「最近、変質者が増えているから」

と。

やはり、耳慣れない真剣な声で。
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/23(木) 03:54
「何だろうね?」
「何が?」
「担任だよ」


「うーん、なんか家でもめたとかじゃないのはてな
ほら、アイツんとこやたら奥さんが強いらしいじゃん」
「あぁ…かもね」

亜弥は少し愛想的に笑ってから鞄を肩にかける。
亜弥のそれは好んで使用しているらしく、目まぐるしく変わる生徒たちの
持ち物の中でどこか古びて見えた。

「まこっちゃん、どーする?」

「んぅ?何が?」

「帰りだよ。担任今一人で帰るなっていってたじゃん」

聞いていなかったのかと言うようにため息をつく亜弥に麻琴は頬をかく
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/23(木) 03:56
「亜弥ちゃん、一緒にかえろう?」

「無理。あたし用事あるもん。ほかのひとあたってよ」

素っ気なく、簡潔に言われてどうしようもなく。
麻琴は膝を抱える。
素っ気なく言われてどうしようもない。



17 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/25(土) 13:54




18 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/25(土) 13:57
さんかい。

さんかいくらくなって、さんかいあかるくなった。
そういえば寝てないなぁなんて思う。
体を動かしていないから。
空腹に脇腹が痛むから。
喉が乾いて痛みすら覚えるから。
そして、



―――ここがどこかわからないから。
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/25(土) 14:03
助けて。
助けて。

声をだすことすらできない。
あいつが。
にかいめのくらやみであたしの喉を掻いたから。
鋭利な刃物ですぱりとやるんじゃなくて。
割れたガラスの瓶を押し当てられるような鈍い痛みがずぶずぶと、深く。深く。

視界が赤くにじむあたしを見て、あいつは満足そうに、笑んだ。


喉をその細い指先でなぞって。

次第に強まる痛みに狂う反面、どこか冷静に自分をみていた。

あぁ、この傷じゃ。
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/25(土) 14:06
そとが昏く滲みだす。
あいつが、また帰ってくる。



「――たん」



あぁ、ほら。
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/25(土) 14:06





22 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/25(土) 14:16
「亜弥ちゃん、またひとりでかえるの?」
「なんで?」
「なんでって…危ないじゃん。ほら結局この前担任いってたヤツ。なんか事件らしいって噂だし。」
「あたし、帰り急ぐんだもん」
「急いでいいからあたしたちと一緒に帰ろうよ。早足くらいにはするからさ」
「………」


心配してくれるんだ?
そんな顔。
意外感、驚愕、喜び。
なんともつかない事実だけを伝える表情。

ただ、形としては確実に「笑み」だった。

不思議な笑みに麻琴は一瞬息をのむ。





「――ばいばい、まこっちゃん」
「……っぁ……」
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/25(土) 14:17





24 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/25(土) 14:21
よん。


さん、のつぎは、よん。
たぶん、よん、かいめ。

くらい。




ずっと。


さんからずっと、くらいまま。
あたしは、たぶん、よんをむかえてる。


きょうは。
どこ か な 。
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/28(火) 03:34


26 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/28(火) 03:35



_____ROLL



27 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/28(火) 03:43
どうやら、何か事件が起きたらしい。
どうやら、殺人事件らしい。
どうやら、それはこの学校内のことらしい。


人の噂 というのは伝わるのが早く、また尾ひれ背びれもつきやすい。

特に、女子高生の噂話ほど信憑性の無いものはないと麻琴は思う。
それでも、へぇ、あっそう という態度をとってはいけないのが彼女達のルールだということも、また。


「なんか三年生なんだって」
「あんまり学校に来ないひとだったらしいんだけど」
「三年生の教室行く?なんかおもしろそうじゃなぃ?」
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 13:44
「やめようよ、そゆのさ」
「なんで?」
「だって…不謹慎じゃん」
29 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 13:49
そんな会話が交わされる中。

亜弥はただぼーっと机についていた。


休み時間が早くおわればいいのに


そんな 他の生徒の反感を買いそうなことを考えながら。


何故休憩時間は10分もあるのだろうか
5分ならば帰る時間が20分は早くなるだろうに
30 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 13:54
「亜弥ちゃん」
「ん?なに?」
「なんで………そんなそわそわしてんの?」


亜弥は 笑顔で答えた。にこり とも にやり とも つかない笑顔で。


「そわそわ?」
「してない?」
「なんで?」


麻琴は言葉につまる。
だってそう感じたのは真琴だけかもしれなかったから。

「そわそわなんてしてないよ〜まこっちゃん」

「……うん」
31 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 13:56






32 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 13:57

ろく?

ろくだったっけ 4のつぎ。ああ違うか。5、だ。

つぎは どこだろ


もう どうでもいいや







殺して
33 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 13:59
視覚
嗅覚
聴覚
あと、ああなんだっけ。
忘れたけどほとんどあたしに残っているものはない。
34 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 14:02
「あ………んぁっ…や…やぁ…っ!!」


残ってるのはこんな感覚
一番要らない 感覚。


「かわいい…もっと…こえだしてよ」


こんな いらない 感覚 だ け
35 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 14:06




36 名前:小川麻琴 投稿日:2005/08/02(火) 14:07
day1

最近 亜弥ちゃんの様子がおかしいきがする 気のせいならいいけど
37 名前:小川麻琴 投稿日:2005/08/02(火) 14:09
day2

亜弥ちゃんと帰ろうとした
でも用事があるとか

寂しいけどしょうがないか。
38 名前:小川麻琴 投稿日:2005/08/02(火) 14:10
day3

きょうのからあげクンはなんだっ!!

半生じゃんっ!
39 名前:小川麻琴 投稿日:2005/08/02(火) 14:11
day4

半休。
どうやら 噂は本当なのかなぁ
40 名前:小川麻琴 投稿日:2005/08/02(火) 14:14
day5

亜弥ちゃんが学校を休んだ。

大丈夫かなぁ あとでお見舞いにいってみよう。

41 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 14:44







42 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 14:47
何も、感じなかった。
知ってる人の



って だけ。


たくさんの生徒が集められて 代表が送辞のようなものを読んだ。
43 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 14:48
あたしは ただそれを左から右へと聞き流していた。
44 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 14:54
大体、生徒全員が参加というこの『行事 』になにかしらの感動を覚える人はい
るのだろうか。
知らない先輩が死んだ。真琴にとってはそれだけのことだ。

テレビの向こうで知らない人の事故状況が流れだに等しい。
45 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 14:58
退屈にまかせて周りを見渡す。
数人の生徒は知り合いなのだろうか泣いていたが、ほとんどの生徒は始業式が終わるのを待つかのような感じで話しを聞き流していた。
46 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/02(火) 15:00
そんななか 違和感を覚えた。何にたいしてかはわからない。
ただ漠然とした


違和感



47 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/26(月) 06:10
待ってます。
48 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/30(日) 22:12
すごくおもしろいです。更新待ってます。
49 名前:小川麻琴 投稿日:2005/11/06(日) 12:25
背中を冷たいものが這う。

視線の先には唇だけが不自然につり上がる『彼女』をとらえていた。



フキンシン、とかそんな感覚ではなく。麻琴は無意識に自らを掻き抱いた。
50 名前:小川麻琴 投稿日:2005/11/06(日) 12:28
今日もまた、彼女は独りで帰る。
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/06(日) 12:29









52 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/06(日) 12:33
じくじく。

じくじく。

躰のそこかしこが痛む。
痛む部分に目をやると決まって赤黒い、跡。

見たくないのに。


ぱっくり開いた傷跡をまじまじと凝視してしまうこどものように。
『美貴』は ソレ から 目が離せなかった。
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/06(日) 12:40
かず。すうじ。ひにち。


わからない。


『彼女』が与えていくのは服従させるには最適な『食事』と



『快楽』。




あぁ、このままでも、みき、いいかも………いいや。


最早抵抗する気もないのか美貴はだらりとしたまま動かない。


「ねぇ…みきたん…あたしが……分かる?感じてよ…もっと………」
54 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/06(日) 12:44
光を無くした、どこか遠くを見つめている彼女に「彼女」は囁く。彼女にはあたししか見えない。彼女はあたしだけを見ている。そんなねじ曲がった思考の中、甘く、甘く、まるで船を誘うセイレーンのように。


「………だいすきだよ…みきたん…」



55 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/06(日) 12:47





56 名前:小川麻琴 投稿日:2005/11/06(日) 12:52
亡くなった、先輩の名前は何といっただろうか───
57 名前:名無し 投稿日:2005/11/06(日) 14:31
まってました。
更新ありがとうございます。
58 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:27
突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。

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