愛借
- 1 名前:ハラポワ 投稿日:2005/06/18(土) 22:22
- 藤本→吉愛←小川の四角(?)関係なお話。
シリアスですが最後はほのぼのと終わらせるつもりです。
藤本さん辺りが黒くなりそうな予感。
中編ですがよろしければお付き合い下さい。
- 2 名前:気付かない side小川 投稿日:2005/06/18(土) 22:23
- 「愛ちゃん、今度のオフ空いてる?」
「あ、ごめんっ。その日は吉澤さんと約束しとるから・・・。」
―ズキン
「あー、そっか。じゃあしょうがないね。本っ当ラブラブだよねー。」
里沙ちゃんがそう言って隣に居たあさ美ちゃんに「ねェ?」と促した。
恥ずかしがりながらも嬉しそうに笑う愛ちゃん。
それを見て私は、ちょっと胸が痛くなった。
愛ちゃんがああやって笑うのを見ると、何故か胸が苦しくなる。
ここ最近は特に。
なんでかな・・・。
「麻琴!」
―ッ
「・・・麻琴?」
「あ、・・・何?」
「ううん。なんかぼーっとしとったで・・・大丈夫?」
「うん。全然平気。」
私は笑って答えた。
「ならええけど・・・。無理したらあかんよ!」
ニカッと笑って「じゃあまた明日!」と手を振る愛ちゃんに、私は無意識の内に手を振り返していた。
・・・はぁ。
「麻琴も諦め悪いねぇ・・・。」
「何が?」
「しかも鈍い・・・。」
「はぁ?」
- 3 名前:気付かない 投稿日:2005/06/18(土) 22:24
-
愛ちゃんと一緒に里沙も楽屋を出て行って、今は私とあさ美ちゃんだけ。
首を傾げる私に、あさ美ちゃんはやれやれという様子で首を左右に振った。
「まぁいいか。私たちも帰ろっか。」
「・・・?うん。」
その時にあさ美ちゃんが考えてることは全くわからなかったけど、帰り道はいつものあさ美ちゃんやった。
「あー、疲れた。」
部屋に帰るなりベッドの上にボフッと飛び込む。
もうこのまま目を瞑れば簡単に眠りに落ちそうだ。
〜♪
ほとんど眠りに入っていた時だった。
メンバーからの着信音に目を覚ます。
「なんだろ、こんな時間に・・・。」
そう呟いてみたものの、時間はまだ1時。
帰ってきてから30分もたっていなかった。
『いつになったら告白するの?』
は?
里沙ちゃんからのメールはそれだけのものだった。
『誰に?』
眠い頭も里沙ちゃんの突拍子もないメールのせいで起きたかもしれない。
とりあえずまず最初に思ったことを送った。
- 4 名前:気付かない 投稿日:2005/06/18(土) 22:25
- 『えぇ?愛ちゃんに。』
里沙ちゃんからの返事は案外早く返ってきた。
それにしても、「えぇ?」ってこっちが「えぇ?」なんだけど・・・。
『えぇ?なんで私が愛ちゃんに告るの?』
『・・・・・・ヽ('ー`)ノ』
『・・・なんなの?』
『まさかまこっちゃんがそこまで鈍いとは思わなかったよ。』
『意味がわかんないよ。それ今日あさ美ちゃんにも言われたし。』
『だってまこっちゃん本当鈍いよ。自分の気持ちにぐらい気付かないの?』
『自分の気持ち?』
『・・・いや、もういいや。ごめんね、疲れてるのに。』
『別にいいよ。』
『おやすみ。』
『おやすみ。』
一体なんなんだ・・・。
私は携帯を閉じて、また目を瞑った。
それでも里沙ちゃんの言う『自分の気持ち』のことが気になって、さっきみたいにすんなり眠ることは出来なかった。
「明日は雑誌の撮影があるのに・・・里沙ちゃんのバカーっ。」
目を開けたら、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。
もう、朝・・・?
体を起こしてみたら、私は昨日のままの服で、携帯を握り締めていた。
「あー・・・結局わからなかったな・・・自分の気持ち・・・。」
眠い体を無理矢理動かして、私は部屋を出た―
- 5 名前:ハラポワ 投稿日:2005/06/18(土) 22:28
- 一話はここまでです。
これからもこれぐらいの長さで更新していく予定です。
あと>>3の麻琴が「〜やった」って言っちゃってますね_| ̄|○
すいません・・・。
なるべく早く更新していきたいとは思っております。
感想等下さると嬉しいです。
- 6 名前:できない、したくない、する気もない 投稿日:2005/06/19(日) 14:18
-
今日は吉澤さんが家にくる。
久しぶりにオフで会えるせいかすごく楽しみで、いつもより早めに目が覚めた。
ワクワクしながら朝食をとって、歯を磨いて、服を着替えて・・・準備完了。
吉澤さんがくる時間まで、あと2時間・・・。
「早く来んかな・・・。」
ちょっと早く準備しすぎたかな。
あと2時間どうしよう。
テレビをつけても落ち着いて見られず、部屋でも特にすることもなく。
あ、ちなみにお母さんは福井に帰っているので居ません。
―ピンポーン
!・・なんやろ。まだ吉澤さんが来る時間じゃない。
宅急便?
「はーい!!」
一声返事をして、玄関へと走る。
ガチャ
「っ・・吉澤さん!?」
ドアを開けたら、そこには吉澤さんが立っていた。。
「あー・・・ちょっと急いで家出てきたら、早く着きすぎちゃって・・・。」
ごめんね?と恥ずかしそうに言う吉澤さんに、
私は驚きが大きくてすぐに返事が出来なかった。
「や、あ・・・大丈夫ですよ!
私も吉澤さん来るまでどうしようかなって思ってたところです!」
「なら良かった。」
安心したように笑顔になる吉澤さんに、私も自然と笑顔になった。
- 7 名前:できない、したくない、する気もない 投稿日:2005/06/19(日) 14:19
-
「じゃあ、狭いですけど・・どうぞ。」
「うん。お邪魔します。」
「どうぞ〜。」
吉澤さんが来ると思って今日は朝から掃除もした。
そのせいか多少綺麗に見えるような気がする。
吉澤さんはテレビの前の机のそばに座った。
それを見て私は台所へ。
「吉澤さん何か飲みますか?」
「あー、なんでもいいよ。」
冷蔵庫を開けたらコーラのペットボトルが見えた。
それを手に取ってみる。
良かった。まだ開けてない。
それを冷蔵庫から出して、色違いのコップを持って吉澤さんの元へと戻る。
「お、コーラ。」
「はい、どうぞ。」
「ありがと。」
コップにコーラを注いで、吉澤さんに渡してあげた。
「なんかこうやってするのも久しぶりだね。」
「そうですね・・・。」
「浮気してない?」
「ブフッ。」
私は思わず飲んでいたコーラを噴出した。
「うわっ、大丈夫!?」
「あっ、す、すいません・・・!」
私はそばにあったティッシュを数枚取り出した。
- 8 名前:できない、したくない、する気もない 投稿日:2005/06/19(日) 14:20
- 「で、どうなの?浮気、してない?」
「し、してませんよ!!」
「本当〜?」
「するわけないじゃないですかー!」
私がムキになって叫んだら吉澤さんは笑った。
「吉澤さんこそどうなんですか!してませんよね?浮気。」
「ったり前じゃん!!私はいつでも愛ちゃんのこと考えてるよ!」
「そ、そうなんですか。」
いつでも考えてるとか言われて、
嬉しいけど恥ずかしかったからどもってしまった。
でもなんか・・・やっぱりいいなぁ。
吉澤さんと、ずーっとこうやっておりたいな・・・。
「なんか、良いよね・・・こういうの。」
「こういうの・・ですか?」
「うん、最近本当にさ、無かったじゃん。二人でゆっくり過ごす時間。」
「あぁ。」
私は頷いて、コーラを飲んだ。
今の私には、この炭酸は刺激が強すぎる気がした。
「だから・・・なんて言ったら良いんだろ・・
なんか・・・あの〜・・・」
「?」
そこで言葉を詰まらせた吉澤さんは、コーラを一口飲んでから、コップを机に置いた。
「・・・せっかくだから、もっと甘えてきてくれて良いよ?」
「・・・!」
私の方を向いて、でも、視線は少し外して、
顔を赤くしながらそう言った吉澤さんに、私も顔が赤くなるのを感じた。
- 9 名前:できない、したくない、する気もない(side高橋) 投稿日:2005/06/19(日) 14:21
-
「・・じゃあ・・失礼します。」
一言告げて、コーラを机に置いた私は、吉澤さんの隣へ移動した。
そのまま吉澤さんの肩にもたれかかったら、少し上から名前を呼ばれた。
「愛ちゃん。」
「・・・ん・・。」
それにつられて顔を上げたら、吉澤さんにキスをされた。
コーラより甘くて、炭酸より刺激的なキス。
こんなの、吉澤さんとじゃないと味わえない。
「甘い・・。」
「コーラのせいかな?」
「・・・多分、吉澤さんとだからですよ。」
「じゃあ、もっかいしとこっか?」
そう言って吉澤さんは、私の返事も聞かずに、もう一度口付けてきた。
こういう時だけは、いつも強引なんだ、吉澤さんは。
だけどいつも、私はそれに身を委ねて。
「吉澤さん。」
「ん?」
「好きですよ?」
「・・ん、私も。」
そして今度は、私から口付けた―
- 10 名前:ハラポワ 投稿日:2005/06/19(日) 14:22
- 見事にタイトルミスりました_| ̄|○
ミスばかりですいません・・これから減らしていけるよう努力します。
- 11 名前:スキマニア 投稿日:2005/06/19(日) 17:32
- こっこっ恋人の吉愛キタ━━(゚∀゚)━━ヨ
頭の中にグルグル妄想が・・・・・・orz
微妙に大胆な二人GJ!!続きに期待してます!
- 12 名前:ハラポワ 投稿日:2005/06/20(月) 20:38
- >スキマニアさん
感想ありがとうございます!!
くっ付くまでは微妙な吉愛ですが、くっ付いちゃったら大胆に違いない!!
という自分の妄想を文にしちゃいましたw
ここから暗くなっていく予感です・・・。
- 13 名前:わからない side藤本 投稿日:2005/06/20(月) 20:39
- ―ピンポーン
お、来たな。
ぼーっと寝転んでいたベッドから降りて、玄関へと向かう。
「いらっしゃい。」
「おぅ。・・で、どうしたの?いきなり家に来てほしいとか。」
「んー、ちょっとね。」
まぁ上がって上がって、と不思議そうな顔をするよっちゃんを美貴の部屋へと促した。
「なんか、機嫌悪い?」
「別に?」
「じゃあ、気分良くない?」
「・・・まぁ、上機嫌ってわけでは無い。」
「やっぱり。」
私、そんなに顔に出ちゃってたのかな。
別にと言ってみたものの、機嫌が悪いのは本当のことだった。
「よっちゃんは・・・機嫌良さそうだね。」
「まぁね。」
「今日も愛ちゃんち行ってたんでしょ?」
「うん。」
通りで機嫌が良いわけだ。
「今日は何してたの?」
「いや、何したって程のことはこれと言って無いけど・・・。」
そうは言いながらも、照れくさそうにえへへと笑うよっちゃんを見て、
私のイライラは増えるばかりだった。
- 14 名前:わからない 投稿日:2005/06/20(月) 20:40
- 「なんか見てて呆れるぐらいイチャイチャしてそうなことだけはわかるよ。」
「いやいやいやいやいやいやー・・・そう見える?」
まんざらでも無さそうに否定した後、すっごい笑顔で同意を求めてくるよっちゃん。
「まぁ、要するに今日も愛ちゃんは可愛かったと。」
私がそう言い切ると、よっちゃんは一瞬顔を赤くした後、コクンと一度だけ頷いた。
「・・・聞かなきゃ良かった。」
「・・ん?何?」
「別に。」
ぼそりと漏らした私の言葉は、よっちゃんには届いてなかったみたいだ。
人のノロケ話を聞くのって、本当イライラする。
「で?さっきからミキティはなんでそんなに機嫌悪いの?」
「何が?」
よっちゃんのせいだよ、バカ。
「なんかあったんなら聞くよ?」
「いいよ。」
「聞いて欲しくて呼んだんじゃないの?。」
「別にそんなつもりじゃ・・・。」
「別にミキティが話したくないんなら無理にとは言わないけど・・・。」
「うん、じゃあ放っといて良いよ。」
「でも、気になるじゃん。」
「美貴は大丈夫だから。」
「何か嫌なことあったんなら言ってくれて良いからね。」
「・・・なんでそんなに気にかけてくるの?」
「だってそんな・・・放っとけないじゃん。」
本気で心配してくれるよっちゃんに、私の中の“何か”が切れた。
- 15 名前:わからない 投稿日:2005/06/20(月) 20:41
- 「愛ちゃんにもそうやって近づいたんだ?」
「・・・は・・?」
最低だ。
今の私はどんな顔をしているんだろう。
「本気で気にかけてるみたいな風に言って、愛ちゃんの心に入り込んだんじゃないの?」
笑ってるような気がして、鏡が見れなかった。
「よっちゃんのそんな態度が・・・美貴のキモチをどれだけ踏みにじってるのかわかる!?」
あれ、駄目だ・・・。
なんか涙出てきた。
「はぁ?・・さっきから黙って聞いてれば・・・!」
私の言葉によっちゃんもキレたようだった。
「私がよっちゃんのこと好きなことには全然気付かないくせに!」
一息でそう叫んで、私はベッドに座り込んだ。
溢れる涙を止められなくて、声を押し殺しながら俯いた。
「・・・今・・なん、て・・・?」
さっきまでとは裏腹に、力なくそう呟くよっちゃんに、私は思わず顔を上げた。
よっちゃんは、今の状況が本当に飲み込めていないようだった。
鳩が豆鉄砲をくらったような顔って、こういう顔のことを言うのかな。
「ミキ・・ティ?」
「・・・何。」
「今、なんて・・・」
「もともと人のノロケ聞くのは嫌いだったけど、よっちゃんと愛ちゃんの話を聞くのは特に嫌だった。
なんでかわかる?美貴が、よっちゃんのこと好きだからだよ。」
一度言ってしまえばもうなんの抵抗もなく、私はこみ上げてくる言葉をそのまま声に出した。
- 16 名前:わからない 投稿日:2005/06/20(月) 20:41
- 「そう・・・だったんだ・・。」
「いっつもよっちゃんはそうだよ。人の好意・・とか、そういうのに全然気付かない。」
「・・・」
「愛ちゃんと付き合ってるくせに、さっきみたいに優しくしちゃダメだよ・・・。」
「・・・でも・・っ」
「優しくされたら、まだチャンスはあるのかな、って・・・
いつまでも諦められずに、勘違いしたままズルズルこの気持ちを引きずっちゃうんだよ。」
私はベッドから降りて、よっちゃんの前に立った。
「キス、しない?」
「・・・は・・?」
「嫌だったら、今すぐ出て行けば良いだけじゃん?」
それに対して意外にも何の反応のないよっちゃんの唇に、私は唇を近づけた。
私が離れるまで、よっちゃんは全然抵抗もせず、逃げようともしなかった。
「なんで・・・なんにも抵抗しないの?」
「これでミキティの気が済むんなら・・それはそれで良いかなと思っただけ。」
「はぁ?」
「何されても私は愛ちゃん以外恋人として愛せないし、もちろん、ミキティも恋人としては見れない。」
真面目に私の目を見てそういうよっちゃんに、私は悲しいとかじゃなくて、苛立ちを覚えた。
「よっちゃんはそれで良いの!?」
気付いたらそう怒鳴っていた。
- 17 名前:わからない 投稿日:2005/06/20(月) 20:47
- 「私とキスして、それで私とのことは解決?また明日から愛ちゃんのことを愛すの?」
「ミキティがそれで納得するんなら、私もそれで終わらすだけだよ。」
「こんなんで誰が納得するかよ!」
「ってかなんでミキティがキレてんの?いきなり告られて、いきなりキスされて、キレたいのはこっちなんですけど。」
「はぁ!?フザけんなよ!!」
私はよっちゃんの襟元を掴んで、こっちを見る目をキッと睨み付けた。
さっきまでの涙はすっかり消えていて、よっちゃんのことを想うキモチも、すっかり薄れていたような気がした。
「何・・・?」
「気に入らない。」
よっちゃんにキスしない?って言った時、私はよっちゃんに逃げてほしかった。
それで、この気持ちはここまでにしようって、そう思ってたのに。
よっちゃんは・・・逃げも・・隠れもせずに、キスをすることで私の気持ちを諦めさせようとした。
私が言うのも変かもしれないし、私が言う権利なんて無いけど・・・それって、やっぱりおかしいよ。
「何が・・?」
よっちゃんの冷たい声に、おさまったかのように見えた涙が、ふたたび込みあがってきた。
「・・・っ・・よっちゃんの態度が。」
「別にミキティに気に入られなくても良いよ。」
よっちゃんは私の手をはたいて、そう言い捨てた。
「さっき出てけって言ってたよね。わかった、ミキティの望みどおり出てくよ。」
呆然とする私を尻目に、よっちゃんは私の家を後にした。
私は、力無くその場に座り込み、ただただ涙を流すだけだった。
- 18 名前:ハラポワ 投稿日:2005/06/20(月) 20:50
- あれ・・・書き終わってみるとなんか・・よっすファンの方ごめんなさい_| ̄|○
次の更新でミキティファンにも謝らなきゃいけないような気がします。
結局あとがきでは謝ってばかりですね、自分。
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/22(水) 00:43
- 楽しみにしてますよ
頑張って下さい
- 20 名前:ハラポワ 投稿日:2005/06/23(木) 20:44
- >名無飼育さん
ありがとうございます!
最近更新止まっちゃっててすいません。
そう長い話になる予定では無いのですが、
最後まで飽きられないよう頑張りたいと思います。
- 21 名前:言い返せない side吉澤 投稿日:2005/06/23(木) 20:45
-
―私がよっちゃんのこと好きなことには全然気付かないくせに!
ミキティの声が頭の中で何度も何度もリピートされる。
あぁ、なんだろうこの変な気分・・・こんなイライラして胸がモヤモヤするのは初めてかもしれない。
ミキティの家を飛び出して、私は当ても無く走った。
どれだけ走ったのかわからないけど、少し息が上がってきたところで公園を見つけたので、そこに立ち寄った。
「あーぁ・・・何が好きなことには気付かないくせに、だよ・・・気づくわけないじゃん・・・。」
目に入ったベンチに躊躇せず腰を落として、私はそう呟いた。
まさかミキティに告られるとは思ってもみなかったなぁ・・・。
キスしよって言われた時は、「私には愛ちゃんがいるから!」って言うつもりだった。
それでも迫ってくるようなら一発ぐらいぶん殴ってやろうかとも思ってた。
でも、いざミキティが迫ってくると、
「ミキティがこれで気持ちを変えることが出来るんならそれでも良いかな」って思った。
今になって思い返すと、本当バカなことしたなって思うけど。
ミキティが、嫌なら出てけばいいって言った時に、私は出て行くべきだったんだ。
なのに私はミキティとキスをして、家を飛び出して、この有様。
結局ミキティにに変に期待させるようになっただけじゃないか・・・。
私とミキティがキスをしたことによって、確かにミキティの気持ちは変わった。
『私にもまだチャンスはある』
そういう風に思えるようになったに違いない。
バカだ。本っ当バカだ。
実際、私だってこんなに悩んでるじゃないか。
私には愛ちゃんがいるのに・・愛ちゃんしかいないのに・・・最悪だ。
そこまで考えて、ふぅ、と一息ついて、空を見上げた。
これからどうしよう・・・。
- 22 名前:言い返せない 投稿日:2005/06/23(木) 20:46
- 明日も仕事あるのになぁ、そう思った時だった。
「あれ?吉澤さん?」
「あー?」
顔を空から正面に戻して、辺りを見回したら、麻琴が見えた。
ちょっと影になってて見にくかったけど、声も背格好も、確かに麻琴だった。
最悪な時こそ最悪な奴に逢ってしまうもんなんだな・・・。
そう思って、私は思わず苦笑した。
「どうしたんですか?こんな時間に、こんな所で。」
「ちょっと・・・色々あってさ。」
「はぁ、そうですか・・。どうしたんです?愛ちゃんと喧嘩でもしちゃいました?」
冗談のように麻琴はそう言って、私の隣に座った。
まだ、そっちのが良かったかも・・。
「で、何があったんですか?」
「・・・ミキティに告られた。」
「・・・・・・はぃ?」
麻琴は私の方を見たまま固まってしまった。
まぁ、それが当然だよね。
私もそうだったし。
「まさかアイツが私のこと好きだったとはなぁ・・・。」
「そー・・・です、ね。」
私がぽつりと呟けば、麻琴も適当に返事を寄こした。
- 23 名前:言い返せない 投稿日:2005/06/23(木) 20:47
- 「それにしても・・・ミキティも勇気あるなぁ。」
「ん?何が?」
「だって、吉澤さんには愛ちゃんがいるじゃないですか。」
「あぁ・・・。」
そうだよ。私には愛ちゃんがいるんだよ。
あー・・・無性に愛ちゃんに会いたくなってきた・・・。
「で?当然断ったんですよね?」
「・・・・・・。」
「吉澤さん?」
「当たり前だろ!」って言おうとした。
でも、その瞬間ミキティのあの言葉とキスの感触が、フラッシュバックのように頭に浮かび上がってきた。
それに・・はっきりとした言葉で断ったわけでもない。
あの場から私は、逃げただけじゃないか。
駄目だ・・・何揺れてんだよ吉澤・・・。
- 24 名前:言い返せない 投稿日:2005/06/23(木) 20:47
- 「吉澤さん、はっきり断ってないんですか?」
「・・こ、断ったに決まってんじゃん・・・。・・でも・・・」
―キスは避けられなかった。
「・・・!!」
私の言葉に、麻琴は目を見開いた。
バカだよね、私。
今でもわからないよ。なんであの時部屋を出ていかなかったのか。
「それは、避けられる状況だったのに・・・ってことですか?」
「そうだよ。」
「っ・・なんで・・・!」
「それが私にもわからないから困ってるんじゃん。」
「そんな・・・っ。」
応援してくれてる麻琴には悪いけど、私・・・ちょっと揺れてるみたい。
「私、愛ちゃんと付き合う資格無いね・・・。」
私がそう呟いたら、麻琴はイスをガンッと殴りつけた。
その音と麻琴にビックリして私が何も言えないでいたら、麻琴は何も言わずに立ち上がった。
「まこ・・・」
「わかりました。」
自分の中で何か決心したかのように麻琴はつぶやき、そして、こう言い切った。
「吉澤さんがそんななら、私が愛ちゃんを幸せにします。」
- 25 名前:ハラポワ 投稿日:2005/06/23(木) 20:49
- 今回の更新はここまでです。
一度決心すると麻琴はカッコイイに違いない(あれ)
自分の小説、「〜に違いない」という信念のもと書かれてるに
・・違いないですね_| ̄|○
- 26 名前:スキマニア 投稿日:2005/06/26(日) 21:43
- 更新乙です!!忙しくて・・・ここもやっと読むことが出来ました。
ミキティー来ましたねwお互いにww
やっぱ吉愛の恋敵と言えば帝サマしかいないでしょうw
この作品の帝サマの描写がとても好きです。楽しみにしています!
- 27 名前:ハラポワ 投稿日:2005/06/28(火) 17:49
- >スキマニアさん
来ましたねーミキティw
ミキティの描写が好きだと言って頂けて嬉しいです。
自分もミキティは書いてて楽しいですね。
更新速度遅くて悪いんですが、暖かく見守ってやって下さい。
- 28 名前:遣り切れない side小川 投稿日:2005/06/28(火) 17:54
-
痛い。
愛ちゃんの家へと走る途中、右手が痛いのに気付いて立ち止まった。
―ハァ、ハァ・・・
自分の息遣いだけが耳に響く。右手は痛いままだ。
『自分の気持ちにぐらい気付かないの?』
メールで言われたのに、私に向かってそう言ってくるガキさんの顔が浮かぶ。
バカだ・・・今になってようやく気付くなんて・・・。
ガキさんの言うとおりじゃん。
本当鈍いよ、私は。
今さら愛たんのことが好きだったことに気付いて、吉澤さんの言動にいちいちキレて・・・
挙句の果てには、愛ちゃんを奪おうとしてる。
自分で自分が嫌になる。
『私、愛ちゃんと付き合う資格ないね・・・。』
痛む右手をギュッと握り締めると、吉澤さんの表情や声が脳裏に響いた。
「ここで何もしなかったら・・・それこそ私は私が嫌いになるんだろな・・・。」
愛ちゃんを説得する自信はあまり無い。
でも、チャンスは今しか無い。
「愛ちゃんは、私が幸せにしなきゃ駄目なんだ。」
今一度決心して、右手の痛みを忘れるぐらい必死になって愛ちゃんの家へと走った。
- 29 名前:遣り切れない 投稿日:2005/06/28(火) 17:55
- 『今から家行くね。』
それだけのメールを信号待ちの間に送って、携帯をポケットにしまった。
車道の信号が赤になり、車が止まったことを確認してスタートを切った。
横断歩道の信号はまだ赤のままだ。
『いきなりどうした?私は大丈夫だけど。』
愛ちゃんの家の前で携帯を見ると、愛ちゃんから返信メールが届いていた。
私はそのまま携帯をふたたびポケットにしまい、玄関のチャイムを押した。
「大丈夫?今コーラしか無いけどそれで良い?」
「あぁ、ありがとぅ。」
ドアを開けた愛ちゃんは、汗だくで息も切れている私を見て、ビックリした様子で慌てて部屋に入れてくれた。
冷蔵庫の方からひょこっと顔を出す愛ちゃんをぼーっと見ながら、私はテーブルのそばに座り込んだ。
- 30 名前:遣り切れない 投稿日:2005/06/28(火) 17:56
-
「あ、これフタ開いとるけど炭酸抜けてないからな。今日開けたばっかやから。」
コーラが半分程入ったペットボトルと、コップ2つを器用に持ったまま、愛ちゃんは私のそばに座った。
「今日飲んだの?」
「うん。今日は吉澤さんが来てたから。」
―!!
少し顔を赤らめて、嬉しそうに愛ちゃんがそう言った瞬間、公園での吉澤さんの表情や声が、ふたたび脳裏によぎった。
あの吉澤さんには・・・愛ちゃんは任せられないよ・・・。
「愛ちゃん。」
「ん?」
「愛ちゃんさ・・・吉澤さんのこと、好き?」
「は?いきなりどうしたん麻琴・・・好き・・だよ。」
「そっか・・・そうだよね・・・。」
この事を言ったところで、愛ちゃんが悲しむだけじゃないのか。
ここまで走ってくる途中、そう考えたこともあった。
でも、やっぱり人間だし、私は私やし、最終的に愛ちゃんと付き合うことになれたら、私はそれで良い。
その後、私が愛ちゃんを幸せにするんだ。
そう決心した上で、私は愛ちゃんの目をしっかり見て、言った。
- 31 名前:遣り切れない 投稿日:2005/06/28(火) 18:34
- 「吉澤さんね・・・美貴ちゃんとキス・・したんだって。」
「・・・っ・・・は?」
「美貴ちゃんにキス迫られて、逃げれたのに逃げないで、キスしたらしい。」
思っていたより、私は落ち着いた声で言うことが出来た。
逆に言えば、想像以上に冷たい声で。
「・・何が、言いたいん?」
「何がも何も・・・ただ事実を言っただけだよ。」
「嘘やろ?」
ここで、ごめんね嘘だよって言えたら、どれだけ楽になれるだろう。
無理に笑顔を作ろうとする愛ちゃんに、私は胸が痛んだ。
「嘘じゃないよ・・・。」
「・・んなん・・・・・っ。」
搾り出すような声でそう言って、愛ちゃんは俯いてしまった。
ごめんね・・ごめんね、愛ちゃん・・・。
今にも泣き出しそうなのに、愛ちゃんは下唇をギュッと噛み締めて、それをこらえているようだった。
胸が苦しい。
苦しくて苦しくて、だんだん吐き気もしてきた。
もう、嘘だよって言う逃げ道は無い。
自分でさっき、それを避けたばかりだ。
- 32 名前:遣り切れない 投稿日:2005/06/28(火) 18:36
- 「嘘じゃないんだよ。・・・吉澤さんが、さっき言ってた。」
「・・や・・っ・・・嘘や・・・!」
首を左右に振りながら愛ちゃんが吐き出した言葉は、語尾が涙で揺れていた。
「なんで・・・泣かないの?」
泣いてくれたら、どれだけ楽になることか。
私がこのことを告げた時、愛ちゃんは泣くだろうと思った。
だから、それなりに私も心の準備はしてたのに。
そんなに、我慢しないでよ。
私まで・・・苦しいよ・・・。
「・・・泣いたら・・それを・・・認めてしまう・・・・。」
ぽつり、と愛ちゃんは言った。
「それは・・嫌やから・・・。」
まだ、・・まだ信じようとしてる。
まだ愛ちゃんは、吉澤さんのことを信じようとしてる。
信じたいのか、自分に言い聞かせているのかはわからないけど。
- 33 名前:遣り切れない 投稿日:2005/06/28(火) 18:36
- これじゃあ・・私が悪者みたいだな。
もう、自分でもどうしたら良いのか、なんて言ってあげれば良いのか、わからなくなっていた。
「・・・ごめん。」
「・・・。」
「言わなかったら、良かったね。」
愛ちゃんは何も言わずに首を左右に振った。
「ごめん・・。私、帰るね。」
そう言って、私は愛ちゃんの返事も聞かずに立ち上がった。
結局私も、吉澤さんと同じじゃないか。
自分に都合が悪くなって、逃げるしか出来ないなんて、・・これでよく、あんなことが言えたものだ。
「麻琴。」
「・・・。」
あと5歩ぐらいで玄関へと辿り着けるという時に、愛ちゃんは私の名前を呼んだ。
「・・ありがとう。」
「!・・。」
なんで?
ありがとうって、そんなこと言わないでよ。
私は最悪なことをしようとしてたんだよ?
このことで吉澤さんが落ち込んでる間に、愛ちゃんを自分のものにしようとしてたんだよ?
「愛ちゃん。」
愛ちゃんの言葉には何も返さずに、私は愛ちゃんの名を呼んだ。
振り向いたら、いつのまにか愛ちゃんはそこに立っていた。
- 34 名前:遣り切れない 投稿日:2005/06/28(火) 18:37
- 「私、愛ちゃんのこと・・好きなんだ。」
「!!・・・。」
「吉澤さんが美貴ちゃんとキスしたって聞いて、今がチャンスだと思った。」
愛ちゃんは、ビックリした様子のまま、何も言わずに私の話を聞いていた。
「今なら、愛ちゃんを私のものに出来る。・・・そう思ってた。」
ちょっと、油断してたかな。
「だけど、私が思ってた以上に、愛ちゃんは吉澤さんのことを想ってたから・・・負ける前に逃げちゃおうと思った。」
でも、あの時「ありがとう」って、私に言ってくれたから。
それで、なんだか勇気がもらえた気がした。
「逃げちゃ、駄目だと思った。」
「・・・!」
「愛ちゃんのことが好き。愛ちゃんが吉澤さんのことをどんなに好きでも、私は・・愛ちゃんが好きだから。」
複雑な面持ちで私の方を見る愛ちゃんに、「それだけは覚えといてね。」と付け足した。
- 35 名前:遣り切れない 投稿日:2005/06/28(火) 18:37
- 「・・・あと、もう一つだけ。」
「・・・。」
「愛ちゃんを、吉澤さんから奪ってみせるから。」
「!!」
吉澤さんが、もし何も行動を起こさないのなら、私が愛ちゃんを幸せにする。
それは、心に誓ったこと。
「じゃあ、また明日ね。」
「・・・あ、・・あぁ・・・。」
愛ちゃんは、今の今まで明日の仕事のことを忘れていたんだろう。
私がそう思うぐらい、曖昧な返事を返してきた。
「おやすみ。」
「お、おやすみ。」
バタン、とドアを閉め、外へ出る。
外は、ひんやりとしていて、今の私にはすごく心地良く感じた。
明日から大丈夫かな・・・。
何に対してそう思ったのかはわからない。
でも、心配事が増えたのは確かだ。
はぁ、と大きくため息をついて、私はドアにもたれたままズルズルと座り込んだ。
- 36 名前:ハラポワ 投稿日:2005/06/28(火) 18:39
- 第五話終了です。
やっぱりタイトルの前に番号つけた方がわかりやすいですかね・・。
次からはage更新にしようかなと目論見中だったりします。
今日中に続き更新できたら良いなぁ・・・。
- 37 名前:F聞きたくない side高橋 投稿日:2005/06/28(火) 23:51
- 今日は雑誌に載せる写真の撮影がある。
まだ、麻琴や吉澤さんとは一度も目を合わせていない。
なんとなく楽屋に居づらくて、里沙ちゃんに一言断って楽屋を出てきた。
「麻琴も吉澤さんも・・美貴ちゃんも・・・私自身も・・よくわからん・・・。」
ぼーっと廊下を歩きながら、ポツリとそう呟いた。
「おーい、愛ちゃんっ。」
「!・・美貴ちゃん・・・?」
「さっき楽屋から出てくのが見えたからさ。」
「・・・。」
なんの用やろ。
私が楽屋から出て行くのが見えて、それをわざわざ走って追いかけてくるなんて。
美貴ちゃん、本当に吉澤さんとキスしたんかな・・・。
私と付き合っとること知っとるのに、なんで・・・。
「あのね、愛ちゃんに頼みたいことがあるの。」
「私に・・・?」
美貴ちゃんは明るい声でそう言った後、さっきまでとは違う笑みを浮かべた。
「悪いんだけどさ、よっちゃんと別れてくれない?」
- 38 名前:F聞きたくない 投稿日:2005/06/28(火) 23:52
- 「・・なっ・・・!」
「美貴、実は前からよっちゃんのこと好きだったんだ。でも愛ちゃんと付き合ってるじゃん?だからずっと我慢してたんだけど、やっぱり無理みたい。」
「そんなこと言われても・・・!」
「別れられない?」
私の言葉を遮ってそう聞いてくる美貴ちゃんに、私は静かに頷いた。
「どーしても?」
「・・・当たり前や。」
「じゃあ、そんな愛ちゃんに良いこと教えてあげる。」
!!
全身にサーッと血が駆け巡るのがわかった。
あのことに違いない。
そんなの・・聞きたくないよ・・・っ。
あかん・・・それ以上先は言わんで・・・!
「私がよっちゃんとキスしたってこと・・知ってる?」
「・・・!」
麻琴から聞いたときは、絶対ありえんと思えたのに、美貴ちゃんが言うと否定しきれんのはなんでや?
この場から走って立ち去りたいのに、足は思うようには動いてくれなかった。
- 39 名前:F聞きたくない 投稿日:2005/06/28(火) 23:52
- そして、何も言えずに居る私に構わず、美貴ちゃんは楽しそうに先を続けた。
「ちゃんと私は嫌だったら逃げてって言ったのに、よっちゃん一歩も動かなかったんだよ?」
「・・・や・・っ!」
嘘や・・・!!
頭の中のどこかでは認めてるのに、心では認めることが出来なくて、もう私には嘘やと思い込むしか無かった。
「ねぇ、よっちゃんさ・・そんなに欲求不満だったのかな・・・?」
「・・嘘や・・・っ!」
楽しそうにそう言う美貴ちゃんの声が聞きたくなくて、吉澤さんが美貴ちゃんとキスしたことを認めたくなくて、
私は耳を塞いでその場にしゃがみこんだ。
「別に嘘だと思うんなら思っとけば良いよ。」
一歩ずつ、美貴ちゃんが近づいてくるのがわかった。
「それで、愛ちゃんの理想の吉澤さんに抱いてもらえば?」
「・・・っ!」
美貴ちゃんの笑いを含んだ、でも、冷たい声に、目から涙がこぼれ落ちた。
「―愛ちゃん・・・!!」
・・吉澤さん・・・!?
- 40 名前:F聞きたくない 投稿日:2005/06/28(火) 23:52
- 「愛ちゃん!大丈夫!?」
「・・まこ、とぉ・・・。」
吉澤さんが助けに来てくれたんかと思ったら、その声の主は麻琴やった。
しゃがみこんでいる私の顔を麻琴が優しく覗き込んで、声をかけてくれた。
そして、何も言わずに美貴ちゃんを睨んだ。
「あれ?まこっちゃんどうしたの?」
「・・それ以上言うのなら・・・相手が美貴ちゃんでも遠慮するつもりは無いよ。」
「へぇー・・?美貴と喧嘩でもしようっての?」
「まだ愛ちゃんに何か言うつもりなら、私が相手になる。」
立ち上がって、美貴ちゃんをなおも睨み続ける麻琴。
あかん・・・あかんよ、麻琴・・・。
「・・・ブッ・・何マジになっちゃってんの?」
私の心配をよそに、美貴ちゃんは笑って一歩下がった。
「まぁ、まこっちゃんが愛ちゃんもらってくれるんなら美貴にはありがたいけど?」
「・・・っ。」
「何も、美貴だって愛ちゃんを傷つけたいわけじゃないよ。」
「・・・。」
「ちょっと、よっちゃんと別れてくれないかなって思っただけ。」
さっきまでとは全く違う表情や声でぺらぺらと美貴ちゃんは喋りだした。
- 41 名前:F聞きたくない 投稿日:2005/06/28(火) 23:53
- 「ごめんね、愛ちゃん。」
美貴ちゃんは私に向かってそう言った後、笑って先を続けた。
「別れる気になったらいつでも言ってね。いつでもよっちゃん呼んできてあげるから。」
「・・・っ!」
そう言って美貴ちゃんはくるりと向きを変え、楽屋の方へと帰っていった。
「・・大丈夫だった・・・?」
「あ、・・うん・・。ありがとぉ。」
ふぅ、と一息ついた後、麻琴が私のそばまで来て目線を合わせてくれた。
「なかなか戻ってこないから心配したよ。」
「・・・ごめん。」
「いやいや、愛ちゃんが謝ることじゃないよ。」
ここじゃ邪魔になるから。って言って立ち上がって、私の方に手を差し伸べてくれる麻琴はすごく優しい。
なんか、カッコイイ。
さっきも助けてくれたし・・・今もなんか・・手を差し伸べられたら、つい差し出してしまうような、そんな感じ。
私は何も言わずに麻琴の手を掴んで、立ち上がった。
- 42 名前:F聞きたくない 投稿日:2005/06/28(火) 23:54
- 「良かったね。メイク前で。」
麻琴が笑って、私の目元をぬぐってくれた。
あ、そうか・・・私、泣いてたんや・・・。
「じゃあとりあえず・・・行こ?」
「うん・・・ごめんな。」
「ううん。何も愛ちゃんは謝らなくて良いんだよ。」
麻琴の一言一言全てが、直接胸に響いてくるような気がした。
麻琴の手に引っ張られて、非常階段のところまで行った。
声はちょっと響くけど、普段は全然人もおらんくて、この暗がりもこれはこれで私は好きやな。
内緒話とか、そういう時にはもってこいの場所。
「まだ、時間あるから。」
「うん。」
麻琴にそう言われた私は、麻琴と手をつないだまま階段に座った。
それを見て、麻琴も私の隣に座った。
- 43 名前:F聞きたくない 投稿日:2005/06/28(火) 23:54
- 「あー・・・昨日はごめんね・・・。」
麻琴が、照れくさそうに言った。
「・・・あ、ううん。」
「吉澤さんが美貴ちゃんとキスしたって聞いて、頭に血のぼったままだったから・・・。」
「ええよ。さっき助けてくれたし・・・さっきの麻琴、本当にカッコ良かったで。」
「・・・あ、そ、そぅ?」
2人して顔を赤くさせて、何も言わずに床をじーっと見つめる。
手は、つないだまま。
なんかちょっと・・疲れたな・・・。
「時間、どれぐらいある?」
「あと1時間ぐらいは余裕あると思うよ。」
「じゃあ、ちょっと・・・。」
「ん?」
不思議そうにこっちを向いた麻琴に構わず、私は麻琴の肩に頭を預けた。
「ちょっとだけで・・ええから。」
「・・・うん。」
そして、そのまま、私は眠りに落ちた―
- 44 名前:ハラポワ 投稿日:2005/06/28(火) 23:57
- なんとか今日中に更新できましたw
ミキティ黒いですね、本当。
基本吉高なのにまこあいっぽくてすいません。
でも吉と藤、小と高という組み合わせでの進行が多くなる・・かもしれないです。
- 45 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/06/29(水) 00:10
- ハァーーー(´‐`з≡
ミキティ黒いよぉ怖いよぉヽ(´口`)ノ
愛ちゃん可愛そうだよぉ(TдT)
麻琴が何気にカッコイイよぉ
- 46 名前:茶龍 投稿日:2005/06/29(水) 11:49
- はじめまして。茶龍です。
更新お疲れ様です。吉高前提の吉藤、小高イイ(σ・∀・)σですっ
まこちがカッコイい…美貴帝が黒いorz
キャラハマりすぎです(*´Д`)=з
作者様更新頑張ってくださいねっ!
- 47 名前:茶龍 投稿日:2005/06/29(水) 21:35
- あげちゃいました…すいませんm(_ _)m
- 48 名前:ハラポワ 投稿日:2005/07/02(土) 01:31
- >名無し飼育さん
次の話からのミキティの心境の変化を感じ取って頂けると嬉しいです。
麻琴カッコイイですか〜?wありがとうございますっ。
ちょっと意識してたのでそう言ってもらえるとありがたいです。
>茶龍さん
初めまして。初書き小説は小高でした、ハラポワです(爆)
カッコイイ麻琴を書くのは自分の中で意識していたので、
これからも頑張っていきたいですね。
キャラハマってますか?ありがとうございますっ。
そう言ってもらえると嬉しいですw
- 49 名前:G変わらない side藤本 投稿日:2005/07/02(土) 01:42
- 愛ちゃん・・泣いてたな・・・。
泣かせるつもりも、あんな風に言うつもりも無かったのに。
よっちゃんのこととなると、つい我を忘れてしまう。
後で謝らないとな・・・謝った方が良いよね・・・?
愛ちゃんとまこっちゃんと別れた後、どうも楽屋に戻る気にはなれなかった。
まだ時間もあるし、しばらく楽屋の近くにある自動販売機のところで座っていようと思い、フラフラと一人で歩いてきた。
イスに座り込み、一点をぼーっと見つめたまま、頭はフル回転。
あんな風に愛ちゃんに言って、よっちゃんと付き合えるようになっても・・全然嬉しく無いよ。
・・・何が欲しいんだろう、美貴は。
「ミキティ!」
「!・・あ、よっちゃん・・・。」
「姿見えないと思ったら、ここに居たんだね。」
「・・・うん。」
よっちゃんは自動販売機に小銭を入れ、コーラのボタンを押した。
昨日あんなことがあったばかりなのに、よっちゃんは意外にもいつも通りで。
こんなに悩んでるのは美貴だけなのかなって、ちょっと不安になった。
- 50 名前:G変わらない 投稿日:2005/07/02(土) 01:43
- 何も言わずによっちゃんをずっと見ていたら、お釣りを取り出し、また自動販売機にそれを入れた。
「コーラで良い?」
「へ、買ってくれるの?」
「うん、元気無いミキティに特別におごってあげる。」
また“特別”とか言って、優しくしてくれるんだね、よっちゃんは。
「ん、どーぞ。」
「・・ありがと。」
「どーいたしましてっ。」
なんでもないという風によっちゃんはそう言って、私の隣に座った。
「・・・。」
「・・・。」
それっきり沈黙が続いた。
遠くでいろんな声はするのに、まるで2人だけの空間のように思えた。
―プシュッ
「!」
隣から缶を開ける音がした。
- 51 名前:G変わらない 投稿日:2005/07/02(土) 01:43
- チラッと目だけで見たら、よっちゃんがゴクゴクとコーラを飲んでいた。
あぁ、よっちゃんがせっかく買ってくれたんだから美貴も飲まないと。
ぼんやりとそう考え、プルタブに指をかけて缶を開けた。
「ねぇ。」
缶に口付けようとした瞬間、よっちゃんが声を出した。
「何?」
そう言って私は缶を持つ手を下げた。
「さっきまで、どこに行ってたの?」
「っ・・・なん、で?」
「なんでも。」
「なんでもって・・・。」
よっちゃんは前を向いたままで、全くこっちを向く素振りを見せなかった。
「・・・愛ちゃん・・も、楽屋に居なかった。」
よっちゃんは俯いて、ポツリと零した。
あぁ、ちゃんと見てたんだね、愛ちゃんのこと。
「麻琴も気付いてたみたいで、しばらくしてから楽屋を出てった。」
そういえばまこっちゃんが愛ちゃんのこと好きだったとは・・・知らなかったな。
- 52 名前:G変わらない 投稿日:2005/07/02(土) 01:43
- 「これは・・ミキティと何か関係ある?」
「・・・もっとはっきり言って良いよ。」
美貴がそう言ったら、よっちゃんはようやくこっちに顔を向けて言った。
「っ・・・じゃあ・・、愛ちゃんと会ってた?」
「うん・・・・って、言ったらどうするの?」
一瞬よっちゃんの表情が曇るのがわかった。
「・・話の内容によってはキレる。」
「じゃあ言わない。」
言ったら怒られちゃうじゃん。
「それは、言ったら私が怒るようなことだから?」
ご名答。
「ミキティ。」
駄目だな。
よっちゃんのこととなると我を忘れるっていったけど、それだけじゃ無いみたい。
よっちゃんが近くに居ると、すごくイライラしてくる。
「ミキ・・・」
「私がよっちゃんとキスしたこと、言ってきた。」
「な・・!!」
よっちゃんがもう一度私に呼びかけようとしていたのを遮り、私はそう言ってのけた。
- 53 名前:G変わらない 投稿日:2005/07/02(土) 01:44
- 「よっちゃんと別れてほしいとも言った。」
よっちゃんは呆然と美貴の顔を見つめたまま、何も言わなかった。
「多分、ヒドイコトも言った。」
「―っ!」
多分どころじゃないけどね、本当は。
いっぱい、ヒドイコト言っちゃったよ。
「私がよっちゃんとキスしたことを愛ちゃんに言った時・・・愛ちゃん、なんて言ったと思う?」
「・・なんて言ったの?」
静かによっちゃんは聞き返してきた。
「『嘘だ』って、言い張って・・泣いてた。」
「・・っ・・・!」
言い張ってたというより・・やっぱり、信じたくなかったんだろうな。
愛ちゃんだって、美貴とよっちゃんがキスしたことが本当だってことはわかってる。
だけど、それを認められなくて、認めたくなくて、・・・そう思うと、今さらになって心が締め付けられるようだった。
あんなヒドイコト言ったのに、謝りになんて行けないや。
- 54 名前:G変わらない 投稿日:2005/07/02(土) 01:44
- 「ミキティ。」
「・・・?」
よっちゃんは私の名前を呼んだ後、両手で握ったままだったコーラの缶をイスに置いた。
「私、あれからずっと考えてた。」
そしてよっちゃんは話し始めた。
「ミキティとキスしたことが間違ってたってことはすぐにわかった。・・でも、私自身の気持ちはわからなかった。」
なおも続く二人だけの空間。
よっちゃんが静かに話しているせいもあって、本当に周りとは別世界のようだった。
「あの後、麻琴と偶然会ったんだけど、ミキティとのこと話したらさ・・怒られちゃったよ。」
まさかアイツに怒られる日が来るとは思ってなかった、と言って、よっちゃんは自嘲気味に笑った。
「『愛ちゃんをもらいます』みたいなこと言われて、それでようやくってわけじゃないけど、なんか、目が覚めた気がした。」
・・・それでさっき麻琴が来たのか。
「このままじゃ麻琴に愛ちゃん取られちゃうし、早く私が結論を出さなきゃって思った。」
「・・・それで、出せたの?結論。」
「うん・・・。やっぱり、私には愛ちゃんしかいないみたい。」
「っ・・そっか・・・。」
こうなることは最初から予想してたし、覚悟もしてるつもりだった。
でも、いざ言われると、胸の辺りがぎゅってなった。
- 55 名前:G変わらない 投稿日:2005/07/02(土) 01:45
- 「ごめん。あの時中途半端なことして。」
「ううん・・。美貴もごめん、よっちゃんにも愛ちゃんにも、いっぱいヒドイ事言った。」
「良いって良いって。なんか、改めて考えることが出来たし・・・」
そう言った後、少しよっちゃんは言葉を濁らせた。
「出来たし・・・?」
美貴が促したら、よっちゃんは美貴から少し目線を外して、先を続けた。
「・・私、本当に愛ちゃんが好きなんだなって、再確認出来た。」
照れくさそうにそう言ってのけるよっちゃんを見て、最初から美貴に勝ち目なんて無かったんだなって思った。
そう思うと、急に自分がバカみたいに思えてきて、つい笑ってしまった。
「・・え、なんか私変なこと言った?」
怪訝そうに美貴の顔を見てくるよっちゃんに違う違うって言って首と手を左右に振った。
「もう、次に何するか考えてるんでしょ?」
「・・・うん。」
「じゃあ行きなよ。」
早くしないと、麻琴に取られちゃうよ?なんてね。
- 56 名前:G変わらない 投稿日:2005/07/02(土) 01:45
- 「愛ちゃん、楽屋に戻ってないんなら、多分麻琴と居ると思う。」
「・・ん、わかった。探してみる。」
「うん。」
よっちゃんは立ち上がって、美貴の方を向いた。
「色々ごめん、ありがとう。」
「・・どっちだよ。」
美貴がつっこんだら、よっちゃんははにかむように笑った。
- 57 名前:G変わらない 投稿日:2005/07/02(土) 01:46
- 「よっちゃん。」
歩き出そうとしたよっちゃんを呼び止めた。
「・・頑張って。」
「・・・うん。」
「美貴のことフッといて、上手くいかなかったら怒るから。」
「了解。」
よっちゃんは軽く敬礼して、廊下を走って行った。
あ、よっちゃんコーラ置いてっちゃったよ・・・どうしよ。
2本も飲めないしなぁ。
よっちゃんのコーラを手に取った瞬間、今まで我慢していたモノがどっと押しあがってきた。
・・・あー・・・ヤバイかも。
「これで幸せにならなかったら、炭酸顔にぶっかけてやる・・・。」
誰に言うでもなくそう呟いて、涙が出てこないようにコーラを一気に飲んだ。
その後出てきた涙は、きっと炭酸のせいだ。
- 58 名前:ハラポワ 投稿日:2005/07/02(土) 01:50
- ミキティ一人称書くのが楽しくなってまいりましたw
ちなみに一人称は同じ順番でぐるぐる回っております。
脳内日本語数(何)が少ないのでタイトル考えるのが難しくなってきました(爆)
- 59 名前:ハラポワ 投稿日:2005/07/02(土) 01:54
- 見事にタイトルの番号ミスってるーorz
しかも前回が既に違いますね。
すいません・・・やっとミス無くなって来たと思ったのに・・・_| ̄| ○
最終更新が第七話です。
- 60 名前:45(@´∇`@) 投稿日:2005/07/02(土) 02:14
- ん〜ミキティーー!!切ない…
そして…よしざーさん!!Go!デスヨ!早く行かないと
∬´▽`)<愛ちゃんは頂いたー!
ってなりますよ!?
- 61 名前:茶龍 投稿日:2005/07/02(土) 08:05
- 更新お疲れ様ですm(_ _)m
これは…昼ドラレベルのドロドロだ…orz自分カミングアウトすると吉高苦手です笑
だけど作者様の吉高はなんかいいっす☆ハマりそうだな…vv頑張ってくださいっ(^^
- 62 名前:スキマニア 投稿日:2005/07/03(日) 09:40
- 更新お疲れ様です!
複雑な4角関係!?どうなっていくのかハラハラですね。
おとぼけキャラのまこっさんがりりしくていい感じ
意外とはまり役なまこっさんに今後の展開が気になりますねw
- 63 名前:ハラポワ 投稿日:2005/07/04(月) 00:46
- >45(@´∇`@)さん
さてよしざーさんは間に合ったのでしょうか!?
その真相は↓でw
>茶龍さん
吉高は苦手でしたかー
茶龍さんが吉高を好きになれるよう頑張りたいと思いますw
同板の短編スレの方でも2つ程吉高書かせてもらってるので、
また良ければそちらの方も読んでみて下さいw
>スキマニアさん
ハラハラして頂けて光栄ですw
これからまこっさんにも存分に動いてもらいますよー
- 64 名前:G信じられない side 吉澤 投稿日:2005/07/04(月) 00:47
-
ミキティと別れた後、ひとまず楽屋に戻ってみることにした。
「あれ?メイクの時間ならまだ大丈夫ですよ?」
楽屋へ駆け込んできた私を見て、私がメイクに間に合わないと思って走ってきたものだと思ったのか、
亀井ちゃんと話していたガキさんがそう言った。
「あ、いや、・・・あー・・うん、OKOK。」
適当に返事を返しながら楽屋をキョロキョロと見回す。
こんこんと重さん・・・田中ちゃん・・・居ない。
どれだけ見ても愛ちゃんと麻琴は居なかった。
「愛ちゃんならまだ戻ってきてないし、まこっちゃんもまだですよ。ちなみに藤本さんも。」
私の方をさっきからじっと見てくるなぁと思っていたら、田中ちゃんが不意に口を開いた。
「そうみたい・・だね。」
私が入ってきた時から思ってたけど、一瞬にして静かになったよねみんな。
「吉澤さん。」
「・・ん?」
これからどうしたものかと考えている時、誰かに名前を呼ばれた。
- 65 名前:G信じられない 投稿日:2005/07/04(月) 00:47
-
「愛ちゃんと、仲直りしてくるんですか?」
私の名前を呼んだのは、亀井ちゃんだった。
「・・うん、ちゃんと話してくる。」
ってかみんな知ってるの?私と愛ちゃんのコト。というより、私とミキティのコト・・か?
「吉澤さん。」
ガキさんが私の名前を呼んで、私の方へ歩み寄ってきた。
「愛ちゃんのこと、好きですか?」
「!」
予想外の質問に、私は思わず言葉を詰まらせた。
それでもガキさんは、ただ真っ直ぐと私の目を見てくるだけだ。
ゴクっと唾を飲み込み、静かに息を吸った後、私もその目をしっかりと見返して言った。
「好きだよ。」
たった一言だけど、これ以上のことを今言う必要は無いよね。
きっと、これだけでガキさんは分かってくれる。
「それじゃあ・・・愛ちゃんの所、行ってあげて下さい。」
ふっとガキさんの目の力が緩んだ気がした。
- 66 名前:G信じられない 投稿日:2005/07/04(月) 00:48
-
「多分・・非常階段の所に居ますから。」
「!・・・非常階段?」
「はい。場所・・わかりますよね?」
「うん、大丈夫。」
「じゃあ、お願いします。」
ふと周りを見回したら、みんなと目が合った。
みんな、同じ目をしてる。
「わかった、ありがとう。」
そう言って、私は楽屋を後にした。
「ありがとう。」
誰に言うわけでもなく、私はもう一度、噛み締めるように呟いた。
みんな私たちを、私を応援してくれてる。
そう思うと、なんだか胸がじーんとなるようだった。
これが一段落ついたら、ジュースぐらい奢ってやらないとな。
その時のみんなの反応を想像したら笑えてきて、私は静かに口元を緩めた。
「・・それを実現させる為にも、今頑張らなきゃ。」
今一度自分を奮起させ、ぎゅっと口元を結び、非常階段へと急いだ。
- 67 名前:G信じられない 投稿日:2005/07/04(月) 00:49
-
まだ今日は一度も愛ちゃんと話していない。
それどころか、目も合わせていない。
愛ちゃんに全部話して、謝って、謝って、早く・・・抱きしめたい。
この手でしっかり、愛ちゃんを感じたい。
走りながらそう考えて、いつの間に自分はこんなに恋してたんだろう、と苦笑した。
恋とか愛とか、全部面倒くさいと思ってたし、いざ恋してみると、やっぱり苦しいことも多かった。
でも、それ以上に得られる何かがある。
愛ちゃんがそばに居るだけで、すごく癒されたり、心が暖かくなったり・・そういうのは、恋ならではのもの。
そしてその恋を、愛ちゃんにしてるんだってことを、しっかり伝えよう。
いつも言葉で伝えることが苦手な私だけど、今日はごまかさずに、全部話そう。
そう決心した後、非常階段へと踏み込んだ。
なるべく音を立てないように、静かに扉を閉める。
下の方から声が聞こえた。
愛ちゃんと・・麻琴・・・?
何を話しているのかまではわからないけど、とりあえず下に居るようだ。
やっぱり麻琴と一緒か・・・。
- 68 名前:G信じられない 投稿日:2005/07/04(月) 00:49
-
『愛ちゃんは私が幸せにします。』
あの夜の、麻琴の声が脳裏に響く。
悔しいけど、あの時の麻琴には負けたと思った。
いくら私があの時落ち込んでたからと言って、あそこまではっきり言い切れるものなんだろうか。
麻琴は本当に愛ちゃんのことが好きなんだな、とあの時は自嘲気味に笑ったものだ。
でも、私だって愛ちゃんが好き。
これだけは、負けられない。
なるべく2人に気付かれないよう、静かに階段を下りてきた。
下りるごとに2人の声が近づいてきたので、2人が止まっていることはわかっていた。
階段にでも座っているんだろう。
そう思いながら1段、また1段と階段を下り、2人の一階上のところまで来た。
もう少しだけ下りたら、2人の姿が見えそうだな。
そう思った私は、2段だけ下に下りて、下に顔を向けた。
―!!
- 69 名前:G信じられない 投稿日:2005/07/04(月) 00:50
-
私は思わず目を疑った。
手すりを握る右手に力が入る。
言葉が、出ない。
―嘘だろ・・・?
私は元来た階段を少しだけ戻り、すぐに非常階段から出た。
「・・・っ・・なん、で・・!」
バタンッと無造作に閉めた重い鉄の扉を背に、ずるずるとその場に座り込む。
「なんでだよ・・・っ、」
足の上で組む腕に、私は顔を埋めた。
涙で声が滲む。
私は声を押し殺して、唇を噛み締めた。
それでも勝手に溢れ出てくる涙は止められなくて、一粒、二粒・・と、涙はひたすらこぼれた。
自業自得なのかもしれないし、そう言われればそこまでだ。
でも、悔しくて悔しくてたまらなかった。
PKで外した時ぐらい・・いや、それ以上かもしれない。
こんなに悔しくて涙を流すのは初めてだ。
どんなに私が涙を流しても、愛ちゃんと麻琴がキスをしていたという事実は揺るがないのに。
- 70 名前:ハラポワ 投稿日:2005/07/04(月) 00:57
- こういう展開になっちゃいました。
よっすは田中ちゃんじゃなくてれいなだったかな・・とか、
小説を書く上で悩むことの一つが呼び方ですね。
この人はこうやって呼ぶよーみたいなのがあったら
遠慮せずツッコんでやって下さいm(_ _)m
- 71 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/12(火) 01:07
- なんだかすごい展開になってきましたね
続きが楽しみです。
- 72 名前:ハラポワ 投稿日:2005/07/14(木) 00:19
- >名無飼育さん
レスありがとうございます。
次もすごい展開だと思います(苦笑)
更新遅くなってすいません。
テストが終わってさぁ書くかーと思ってる矢先に春コンのDVDが届いたのでつい(爆)
あれはカプヲタ的にも見るべきですね☆
では、続きです↓
- 73 名前:戻らない side小川 投稿日:2005/07/14(木) 00:21
-
私の方に寄り掛かって、愛ちゃんは眠ってしまった。
昨日の夜はぐっすり眠れなかったんだろう。
あまり体を動かさないように、愛ちゃんの顔を覗き見た。
―!
愛ちゃんは泣いていた。
今まで・・我慢してたんだね・・・。
私は右手で涙を拭って、左手で愛ちゃんを抱き寄せた。
私が腕を回せば簡単に抱き寄せることができるこの小さな体に、一体どれだけの重荷が乗っかっているんだろう。
きっとそれは、私の手では抱えきれない程の量で、大きさのもの。
これ以上背負わせたくない。
「ちょっとぐらい分けてよ・・・。」
左手で愛ちゃんの髪を梳きながら、私は呟いた。
誰かが言わないと、どこまでも背負っちゃうもんなぁ・・愛ちゃんは。
泣いてはいるものの、気持ち良さそうに眠る愛ちゃんを見て、私の心も癒されるようだった。
規則的に聞こえてくる寝息でさえ、なんだか可愛く感じる。
この時、本当に私は何も考えちゃいなかった。
体が―勝手に動いた。
その唇に吸い込まれるように、私は自分のそれを重ねた。
- 74 名前:戻らない 投稿日:2005/07/14(木) 00:21
-
「―ん・・・。」
「!!」
唇を離して、眠る愛ちゃんの顔を間近で見つめていたら、愛ちゃんはゆっくりと目を開いた。
「お、起きちゃった・・?」
慌てて愛ちゃんから離れて、なるべく平静を装った。
「いや・・大丈夫・・・。」
愛ちゃんは眠そうに目をこすった後、私の方へゆっくりと視線を移した。
「麻琴、さっき・・・」
ヤバイ・・・。やっぱり私がキスしちゃったことバレてる!!
「っ・・ご、ごめんつい・・・っ・・。」
ついっていうか・・あのー・・・その・・なんっていうか・・・出来心っていうか・・・あぁぁ本っ当ごめん!!
愛ちゃんの言葉を遮って、急にパニックを起こし始めた頭で考えて考えて・・謝った。
「・・・ううん、ええよ。」
「愛ちゃん・・・?」
下げていた頭を上げて、愛ちゃんの表情を伺った。
それぐらい愛ちゃんは穏やかな声をしていた。
- 75 名前:戻らない 投稿日:2005/07/14(木) 00:22
-
「なんかもう・・自分で自分がわからん・・・。」
そう言って苦笑じみた笑顔を見せる愛ちゃんに、私も胸が痛んだ。
結局また、私は愛ちゃんを苦しませることしか出来ないのか。
こんな時、吉澤さんならどうするんだろう。
「愛ちゃん。」
「・・・!!」
愛ちゃんが私の顔を見る前に、私は愛ちゃんを抱きしめた。
「まこ・・っ・・」
「大丈夫。」
「っ・・・。」
「大丈夫だから。」
何が大丈夫なのか、誰に言い聞かせているのか、私にもはっきりとはわからなかった。
でも、私がそう言うと、愛ちゃんは戸惑いながらも私の肩辺りに頭を埋めた。
「愛ちゃんは、一人で荷物を背負いすぎなんだよ。」
そう言って、私は愛ちゃんの方に顎を乗せた。
「もっと・・・頼ってよ。」
「・・・うん・・。」
「泣きたい時は、泣いて良いんだよ。」
「・・・ん・・。」
「泣いて良い時は、泣けば良いんだよ。」
「・・。」
「今、愛ちゃんはどうしたい?」
「・・・っ・・ふ・・ぇ・・・。」
愛ちゃんは静かに嗚咽を漏らし始めた。
- 76 名前:戻らない 投稿日:2005/07/14(木) 00:22
- 肩も小刻みに震えだして、私は顔を少し浮かせた。
肩の辺りが濡れていくのがわかる。
愛ちゃんが私のTシャツの裾を握り締めるのと同時に、私は愛ちゃんの体をぎゅっと抱きしめた。
愛ちゃんとここに座ってから、どれくらいの時間がたったんだろう。
ポケットに携帯は入っていたけど、それを取り出して見るのもなんだか煩わしかった。
まださっきまでと同じ体勢だけど、愛ちゃんはだいぶ落ち着いてきた様子だった。
「麻琴。」
「ん?」
「もう・・大丈夫。」
「ん、わかった。」
愛ちゃんから腕を離して、体を開放してやる。
しばらく俯いたままだった愛ちゃんが、すっと私の方を向いた。
「さっき・・・いや、違うか・・・昨日から・・な、ずっと考えとった。」
「・・・。」
「私・・麻琴のことが好き・・なんかなぁ・・・って。」
「・・・え・・。」
「この好きが、吉澤さんに対するものと同じなんかどうかはわからんけど・・・。」
「う、ん・・・。」
愛ちゃんはそこで一度言葉を切った。
- 77 名前:戻らない 投稿日:2005/07/14(木) 00:23
-
「・・・さっき、麻琴に抱きしめてもらったのとか・・キス・・されたのとか・・・嫌じゃなかった。」
そう言って愛ちゃんは、恥ずかしいのか顔を赤くして、俯いてしまった。
その仕草が、私の言葉を待っているような気がした。
愛ちゃんが頑張ってここまで言ってくれたんだから、私も今思うことを素直に言おう。
「愛ちゃん。」
まだ赤いままの顔を上げて、愛ちゃんは私の目をじっと見てきた。
あんまり見ないでほしいなぁ・・・照れるから・・・。
「あの・・・もう一回キス、しても良い?」
「え・・。」
私の思わぬ言葉に、愛ちゃんは私の目を見たまま黙り込んでしまった。
「・・あ、やっぱり良いや・・・。ご、ごめん・・・。」
そうだよね。やっぱり嫌だよねー・・・。
「あ、ち、違うっ。」
「へ?」
私がちょっぴり凹んでいたら、愛ちゃんは首を横に振って慌てだした。
「ええよ・・・キスしても。」
「・・愛ちゃん。」
愛ちゃんはぎゅっと唇を噛み締めて、首を縦に振った。
「ええよ。」
「・・うん、ありがとう。」
何がありがとうなんだか、と心の中で笑った。
そして、愛ちゃんが目を瞑るのを確認したと同時に私も目を瞑って、愛ちゃんと唇を合わせた。
このキスは、一回目よりも長かった。
「なぁ、麻琴・・・。」
「うん?」
「私・・・」
―吉澤さんと別れる。
愛ちゃんがそう言うのと同時に、上の方で扉が閉まる音がした。
- 78 名前:ハラポワ 投稿日:2005/07/14(木) 00:27
- 愛ちゃんまでやっちゃいました・・。
2回目の時に吉澤さんが見ちゃったわけですね。
これから更新遅くなりそうですが、気長に待って下さると嬉しいです。
- 79 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/14(木) 23:27
- うああ。小高好きとしては
从*´D`)<これはこれでええやん
という感じですが…。
作者様、更新気長に待っております。
- 80 名前:スキマニア 投稿日:2005/07/17(日) 04:10
- どうもです!最近忙しくって・・・やっと読ませていただきました
まこっさん・・・やっぱいい味だしますねw
よっす負けんなやぁ!!と言いたくなるんですが、その微妙さも吉愛ですね。
更新お疲れ様です。共に頑張りましょう!!
- 81 名前:ハラポワ 投稿日:2005/07/27(水) 23:05
- >名無飼育さん
ですねぇ。自分も小高は好きなのでどうにも・・・w
>スキマニアさん
スキマニアさんの方でも言われましたけど本当ここもそちらもあちらも切ないですね。
まこっさんにはもう一仕事して頂くつもりですw
頑張れ吉愛!!
- 82 名前:I敢え無い side高橋 投稿日:2005/07/27(水) 23:07
-
吉澤さんと別れて、じゃあこの話はこれで終わりね。って、ならないことは百も承知だ。
別れて解決する話じゃない。
それはわかってる。わかってるけど・・・。
「愛ちゃん?」
「・・美貴ちゃん。」
楽屋のそばにある休憩所みたいなところのイスに美貴ちゃんは座っていた。
「どうしたの?」
「・・・・・・み、美貴ちゃんには関係無い、やろ。」
さっきひどい態度をとられたんだ。私がわざわざ親しげに話す必要は無いし、そういう風に話すこともできなかった。
当然美貴ちゃんもさっきみたいに接してくると思ったのに、そんなに構える必要は無かったみたいだ。
「・・・ごめん。」
「何が。」
「さっきは、ごめん。」
「・・・。」
静かに謝ってくる美貴ちゃんに、私もキツく言い返すことはできなかった。
予想外の美貴ちゃんの態度に、なんだか一気に拍子抜けした感じだ。
私と別れてから今までの間に、一体何があったんやろう。
- 83 名前:I敢え無い 投稿日:2005/07/27(水) 23:08
- こんなに精神的に弱っている美貴ちゃんは初めてかもしれない。
そう思うと同時に、気付いたら私は美貴ちゃんの隣に腰かけていた。
「ごめん。」
「もうええよ。」
「いっぱいひどい事言った。」
「うん。」
「でもそれだけよっちゃんが好きだったの。」
「・・うん。」
「よっちゃんが他に付き合ってる人が居るのなら奪うまでだ、って。」
「うん。」
「よっちゃんが美貴以外の人が好きなら振り向かせるまでだ、って・・・そう思ってた。」
「うん。」
「でも、いざフられちゃうと・・駄目だね。ショックが大きすぎて立ち直れそうに無いよ。」
「うん・・・。」
「・・・・・・愛ちゃん、話聞いてた?」
「聞いとったよ!!」
いきなり美貴ちゃんが私の顔を覗き込むようにして言ってくるもんだから、つい私はムキになってしまった。
・・ん・・・待てよ。・・・待て、待て待て・・・。
「今なんて言った?」
「やっぱり聞いてなかったんじゃん。」
「っ・・ご、めんなさい。」
「まぁ、いいけどさ。」
- 84 名前:I敢え無い 投稿日:2005/07/27(水) 23:09
-
「もう一回言うからちゃんと聞いててね。美貴だって何度も言いたくないんだから。」
そう言って美貴ちゃんは静かに息を吸った。
それに合わせて、私も今度は聞き逃すまいと唾を飲んだ。
「美貴は見事にフられちゃいました。」
「・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・な、なんか言ってよ。」
「・・ぉ、おぉぅ。」
美貴ちゃんにそう言われても、ビックリしすぎて言葉が出ない。
言葉にならない声が、喉の奥から漏れる感じがした。
「おぉぅ。」
私の声を美貴ちゃんが言葉にして繰り返す。
ビックリしすぎて美貴ちゃんの顔から目が離せなかった私を見て、美貴ちゃんは笑った。
「そんなにビックリした?」
美貴ちゃんの言葉に、私は何度も頷いた。
「美貴もね、ちょっとビックリした。」
「・・・。」
「よっちゃんが、そんなに愛ちゃんのこと好きだとは知らなかった。」
「・・・。」
「今回は、完璧に美貴の負け。」
「・・・勝ったとか負けたとかは関係無いやろ。」
「よっちゃんの愛ちゃんに対する気持ちの勝ちだよ。」
私の言葉に、美貴ちゃんは左右に首を振ってそう言った後、少し笑った。
- 85 名前:I敢え無い 投稿日:2005/07/27(水) 23:09
- そんなに吉澤さんは私のことを想ってくれとるんや。
私は驚きと嬉しさが入り混じる気持ちのせいで、美貴ちゃんに返事を返すことが出来なかった。
吉澤さんは私のことを想ってくれとる。
じゃあ、私は・・・?
「あんな顔のよっちゃん見たら、奪い取るなんてこと出来ないよ。」
吉澤さんがどんな顔やったんか気になるけど、穏やかに話す美貴ちゃんに、私はさすがやなぁと思うことしか出来なかった。
失恋したのに、もうそれを自分の中で上手く処理が出来とるんや、美貴ちゃん。
「美貴のことは、誰かさんのことみたいには愛せないってさ。」
美貴ちゃんは投げやりにそう言った。
「だからもう、美貴は決めたの。」
黙って聞くばかりの私のことは気にせず、普段と同じトーンで美貴ちゃんは話し続けた。
「よっちゃんの恋を応援する。」
そう言い切った美貴ちゃんは、完璧に失恋から立ち直った様子だった。
少なくとも、私にはそう見えた。
「美貴が愛ちゃんに簡単に許してもらえるとは思ってない。それだけひどい事言ったから。」
美貴ちゃんは隣に置いてあったコーラの空き缶を手に取った。
- 86 名前:I敢え無い 投稿日:2005/07/27(水) 23:10
-
「これから言うことも、美貴が言える立場じゃ無いことはわかってる。」
「・・・何?」
「よっちゃんのこと、許してあげてほしいんだ。」
「・・・!」
「私が一方的にキスしただけだから・・よっちゃんは悪くない。」
「でも・・・!」
「ごめん。」
「・・っ。」
美貴ちゃんは手の中の缶を見つめたまま、もう一度ごめんと呟いた。
もう、謝らんといてよ。
美貴ちゃんがごめんと言うたびに、私の感情の捌け口が消えていくような気がした。
「よっちゃんには・・愛ちゃんしか居ないんだよぉ・・・。」
美貴ちゃんの言葉の語尾が少し揺れた。
俯いている美貴ちゃんが泣いているのかはわからなかったけど、美貴ちゃんの手の中の缶が形を変えたことはわかった。
缶が握られるのと同時に、私の胸もぎゅぅと締め付けらた気がした。
「・・・ごめんな。」
「え・・・。」
私はイスから立ち上がり、不思議そうに私を見上げる美貴ちゃんの顔を見た。
- 87 名前:I敢え無い 投稿日:2005/07/27(水) 23:10
-
「私、吉澤さんと別れるつもりなんよ。」
「・・・は?」
美貴ちゃんは、わけがわからないとでも言いたげに眉をひそめた。
「考えれば考えるほど、頭の中がごちゃごちゃになる。」
「・・・。」
「これが自分のわがままで、別れて解決するわけじゃ無いことはわかっとる。」
「・・・。」
「でも、私にはこうするしか思いつかんから・・・。」
「・・・でも・・っ・・あれは美貴が・・・!」
「大丈夫。吉澤さんと美貴ちゃんがキスしたから別れるわけじゃないで。」
勢い良く立ち上がると同時に、必死に言ってくる美貴ちゃんの言葉を首を左右に振ることで遮った。
「じゃあ・・なんで・・・?」
「吉澤さんが美貴ちゃんとキスしたって聞いて、恥ずかしい話やけど・・・身体的にも精神的にも不安定になった。」
「・・・。」
「その時に麻琴が優しくしてくれて、私はその優しさに甘えた。」
「!・・・まさか愛ちゃん・・。」
「・・それさえもわからん。」
麻琴のことが好きになったのかと聞いてくるだろうと予測して、私は静かに首を振った。
「でも、吉澤さんも麻琴も同じぐらい好きなことは確かやし、どっちかを選ぶことなんて出来ない。」
- 88 名前:I敢え無い 投稿日:2005/07/27(水) 23:10
-
麻琴に対する「スキ」が、吉澤さんに対するものと同じじゃないとは、今の私には言い切れない。
「こんな中途半端な気持ちで、吉澤さんとは付き合えへんよ。」
「・・・。」
美貴ちゃんは何も言わずにイスに座り込んだ。
「ごめん。」
俯く美貴ちゃんにもう一度そう言って、私はふたたび吉澤さんを探すために足を踏み出した。
―ガンッ
「―っ!?」
後ろで鈍い音が聞こえて、思わず私は振り返った。
美貴ちゃんは座ったままで、床にはコーラの赤い缶が転がっていた。
その缶の先にはゴミ箱がある。美貴ちゃんが投げて入れようとしたけど、ゴミ箱には入らなかったんだろう。
「愛ちゃんがどれだけ強い思いで別れようと思ってるのか知らないけど、よっちゃんは愛ちゃんのこと好きだから。」
「!!」
「たとえ愛ちゃんと別れても、よっちゃんは愛ちゃんのこと好きだから。」
「・・・。」
「よっちゃんが器用じゃ無いことは知ってるでしょ?」
「・・・うん。」
「それだけは覚えといて。」
転がる缶を見つめたまま淡々と話す美貴ちゃんに。私はありがとうともごめんとも言わずに頭を下げた。
きっとこれは、まだ言う言葉じゃない。
私はそのまま何も言わずに後ろを向いて、何も言わずに歩き始めた。
- 89 名前:ハラポワ 投稿日:2005/07/27(水) 23:15
- 気付いたらミキティが一番可哀想なポジションになってしまいましたorz
最近電子辞書の「逆引き」とやらの存在にようやく気付いたので、
タイトルを考えるのに困らなさそうですw
- 90 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/31(日) 23:27
- 初めて読みました!
つづき気になります。
そして、ここのマコトのファンだったり・・・。
- 91 名前:鮮 投稿日:2005/08/01(月) 22:28
- ずっと読んでましたが、この度初カキコさせていただきます!
いやぁ、切ないですねぇ……
吉高好きなんで2人が幸せになればいいと思いつつ、ミキティとマコトにも幸せになってほしかったり……
続き、期待してマターリ待ってますww
- 92 名前:ハラポワ 投稿日:2005/08/08(月) 01:34
- >>90 名無飼育さん
ありがとうございます。
まこっちゃんファンがなかなか多いようで嬉しい限りです。
まこっちゃん、応援してあげて下さいw
>>91 鮮さん
初カキコありがとうございます。
吉高には幸せになってほしいですね。
みんな幸せになれるよう頑張りますっ。
では、続きです〜。
- 93 名前:J居た堪れない side 小川 投稿日:2005/08/08(月) 01:35
-
―吉澤さんと別れる。
愛ちゃんがそう言った時、私は「そっか。」と言うことしか出来なかった。
愛ちゃんの言葉を聞いた時に真っ先に浮かんだのは「なんで?」だったのに、どこか期待している自分がいた。
愛ちゃんは吉澤さんが好き―
そのことを私はわかっているはずなのに、愛ちゃんが吉澤さんと別れたら私にチャンスがくるかもしれない、そう思うところが私の中にまだわずかにあったんだろう。
でも、実際は私が愛ちゃんと“付き合える”かも、というチャンスがくるだけ。
それ以上の関係にはなれないし、ならない・・・そんな気がする。
愛ちゃんが私と付き合おうが誰と付き合おうが、愛ちゃんの好きな人はずっと吉澤さんだと思うから。
吉澤さんが好きなのに私と付き合って、それで無理して笑う愛ちゃんは見たくない。
愛ちゃんには心から笑っていてほしい。だから、吉澤さんと上手くいってほしい。
そもそも、愛ちゃんが好きなのは吉澤さんで、吉澤さんだって愛ちゃんが好きなんだから、別れる必要なんて無いんじゃないか。
吉澤さんが美貴ちゃんとキスしたことだって、吉澤さんが美貴ちゃんと浮気するつもりでしたわけじゃないことぐらいは、私にだってわかる。
当然このことは愛ちゃんも理解しているはず。じゃあ、なんで愛ちゃんは別れようとしてるんだろう。
- 94 名前:J居た堪れない 投稿日:2005/08/08(月) 01:36
-
「まこっちゃん。」
「!・・美貴ちゃん。」
一人で楽屋へ戻ろうとしていた時、後ろから呼び止められた。
振り向いたら、なんとも言えない、情けない表情で美貴ちゃんは立っていた。
あぁ、多分私も同じような顔してるんだろうな。
「愛ちゃんがよっちゃんと別れるって・・・。」
「私の、せいだ。」
「まこっちゃん・・・。」
「私が愛ちゃんに変に優しくするから・・・。最初から、勝ち目なんて無いのに。」
なんであの時、私は愛ちゃんとキスしちゃったんだろう。
「それは美貴も同じだから。」
「え・・・?」
一瞬、私の気持ちが読まれたのかと思った。
「最初から勝ち目なんて無かったのに、よっちゃんにキスしてさ・・・。そうだよ。元々美貴が悪いんじゃん。美貴がよっちゃんにキスしなかったら、こんなことにはなってないよ。」
自分を責める美貴ちゃんに、むやみに「そんなことないよ」とは言えなかった。
私もそう思ったことはあるけど、今となっては・・私も同罪だ。
結局、誰のせいでもないんじゃないか。
いろんな出来事や精神状態がたまたま同じときにやってきたから、こんなことになっちゃったんじゃないか。
運命って、そんなものなのかもしれない。
- 95 名前:J居た堪れない 投稿日:2005/08/08(月) 01:36
-
そう思った私は、やり切れなさからあふれる気持ちを、壁にぶつけることしかできなかった。
「美貴ちゃん。」
「何?」
「愛ちゃんが、なんで吉澤さんと別れようとしてるのか知ってる?」
「聞いてないの?」
「・・・うん。」
愛ちゃんには吉澤さんしかいないんだってことに、もっと早く気付けてたら・・・私はあの時に理由を聞いて、今ごろは説得していたかもしれない。
でもこれは、今になってどれだけ悔やんでもしょうがないことだ。
「よっちゃんのことも、まこっちゃんのことも・・二人とも好きだから、こんな中途半端な気持ちじゃ、よっちゃんとは付き合えない・・・ってさ。」
「そ、んな・・・」
バカだ。
愛ちゃんはバカだよ・・・。
「愛ちゃんが好きなのは・・吉澤さんに決まってるのに・・・。」
「うん・・。よっちゃんが好きなのも愛ちゃんだよ。」
「だったら、別れる必要なんて・・・。」
「全く無い、よ。」
「っ・・・。」
今、私にできるコト・・・。
「美貴ちゃん。」
「・・・。」
「二人を探そう。」
「・・・うん。」
「二人は別れちゃダメだよ。」
「うん、美貴もそう思う。」
「・・・よし、じゃあ探そう。」
「ん、じゃあ美貴はこっち探すから、まこっちゃんはそっちお願い。」
「わかった。」
美貴ちゃんはさっき来た方へと走って行った。
私もくるりと体の向きを変えて、徐々に足の速度を早めて、楽屋の前も走って通り過ぎた。
愛ちゃんが好きだから、・・・愛ちゃんには幸せになってほしいから、今、私にできる精一杯のことをしよう。
- 96 名前:ハラポワ 投稿日:2005/08/08(月) 01:39
- 珍しく一文が無駄に長いもんだから読みにくいですね・・・。
改行ポイントを学習したいと思います、すいません。
- 97 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/08(月) 17:02
- 藤本さんが切ないです。
次回待ってます。
- 98 名前:ハラポワ 投稿日:2005/08/20(土) 01:06
- >>97 名無飼育さん
藤本さんは切ないですけど頑張ってくれる子だと信じていますw
更新遅くなってしまいすいません。
では、続きです。
- 99 名前:K言葉に出来ない side高橋 投稿日:2005/08/20(土) 01:13
- 吉澤さんを探して、順番に全ての階を回る。
6階にも5階にも吉澤さんは居なくて、4階を見たら一度1階まで行ってみよう、そう思った時だった。
非常階段の扉にもたれて、ぼーっと目の前の白い壁を見つめるだけの吉澤さんを、私は見つけた。
ゴク、と唾を飲み、大きく息を吐いた。
動く様子の無い吉澤さんのそばまで、極力静かに歩いた。
「・・・あの・・」
「・・・高橋?」
久しぶりに『高橋』と呼ばれ、私は何故か胸の辺りが苦しくなった。
吉澤さんの声で名前を呼ばれる。それだけで嬉しい頃もあったのに。
『愛ちゃん』と呼ばれることに慣れてしまっているせい?
「何?どうしたの?」
・・・違う。
「あ、の・・・。」
「いいから話して。何言われても、多分驚かないから。」
吉澤さんの声なんだけど、吉澤さんの声じゃない。
聞いているだけで気持ちが暖かくなるような、いつもの声じゃない。
胸がギリギリと締め付けられる。
「高橋。」
「っ・・・。」
私は、胸の痛みを押さえ込むように一息で言った。
「一度距離を置きませんか。」
吉澤さんは何も言わずに私の方を見続けてくる。
私も唇をぎゅっと噛んで、その視線を見返した。
- 100 名前:K言葉に出来ない 投稿日:2005/08/20(土) 01:13
-
「うん、いいよ。」
「・・そう・・・ですか。」
あまりにもあっさり肯定され、私はショックを隠しきれなかった。
自分で言っといて何だけど、もうちょっと食い下がってくるものだと思ってたんだけど。
・・・自惚れすぎた・・かな・・・。
「で?一度距離置いてどうすんの?」
「え・・・。」
吉澤さんの言葉の意味がわからなくて、私は言葉を詰まらせた。
そんな私の様子を見て、吉澤さんは少しイライラしているようだった。
私と会う前から様子はおかしかったような気がするけど。
「私と別れて、麻琴と付き合うの?」
「麻琴と・・・?」
なんで私が麻琴と・・・。
確かに今私は麻琴のことで悩んでる。でも、吉澤さんと別れて付き合おうだなんて考えてない。
吉澤さんと距離を置いて、その間に自分の気持ちを整理して麻琴にはちゃんと話そうと思ってる。
「麻琴と付き合うから、私と別れたいんじゃないの?」
「そんな・・・っ。」
「違うの?」
「っ・・・。」
吉澤さんの一言一言がいちいち胸を締め付ける。
どこかよそよそしい感じの話し方に慣れない自分が居た。
「なんでそう思うんですか?」
麻琴と付き合う気は無い。
そう言えば良いものを、口から出てくる言葉はまったく違うものばかりだ。
- 101 名前:K言葉に出来ない 投稿日:2005/08/20(土) 01:14
-
「なんで?そんなのこっちが聞きたいよ・・・。」
吉澤さんの冷たい声が、急に弱気な声になった。
「なんで?なんで麻琴とキスしたの?」
「・・・!!」
私は言葉を失った。
何か言わなきゃ―そう思っても、頭の中で言葉がごちゃごちゃと絡まるだけだった。
「そもそも私がミキティとキスしたのが先だし、そんなにキツく言える立場じゃ無いけどさ・・・」
先とか後とか関係無い。
それに、吉澤さんが美貴ちゃんとキスしたのがわざとじゃ無いってこともわかってる。
そのことを伝えたいと思っても、なかなか上手くいかない。
「よしざ・・・」
「正直ショックだった。」
「っ・・・!」
「愛ちゃんならわかってくれるはずだ、って思ってたから・・・さ。」
無意識で言ったんだろう「愛ちゃん」という呼び方が、私の胸をさらに締め付けた。
・・・悔しい。
吉澤さんは私を信じてくれた。だから美貴ちゃんにもきっぱり断って、私しか愛せないって言ってくれた。
それを、私は麻琴とキスをすることで裏切ったんだ。
麻琴と付き合う気は無い。たぶん、あの時もそんなことは考えていなかった。
なのに・・・私は麻琴とキスをした。
私が悪い。吉澤さんが怒るのも無理は無い。
「ごめんね。ちょっと、自惚れすぎてたみたい。」
吉澤さんは自嘲気味に言った。
そんなこと無い―だなんて、今の私に言う資格は無い。
私は逃げるように吉澤さんから視線を外した。
- 102 名前:K言葉に出来ない 投稿日:2005/08/20(土) 01:16
-
「もともと私が美貴ちゃんとキスしたのが悪いんだし、これでおあいこだね。」
「・・・。」
気づいたら、吉澤さんの声はいつもの吉澤さんの声だった。
見えないし、見れないけど、きっと優しい顔してる。
「ごめんなさい。大好きです。」って、思いっきり抱きついて、ぎゅって抱きしめてもらいたい。
心の底からそう思うのに、そう上手く切り替えることも出来なくて、ただ時が進むばかり。
「高橋。」
「っ・・はい・・・。」
久しぶりに吉澤さんの声で「高橋」と言われた。
それは、吉澤さんがリーダーになる少し前までのものと同じ響きだった。
もう少し、二人きりの時の暖かい声で「愛ちゃん」って言ってもらいたかったな。
私は涙が出そうになるのをぐっとこらえて、吉澤さんの次の言葉を待った。
もう、覚悟は出来てる。
「別れよう。」
私の目をしっかり見て吉澤さんは言った。
私に断る資格は無い。
でも別れたくない。
麻琴とのキスはなんでもない。
別れたくない。
頭の中で、またグルグルと言葉が駆け巡り始めた。
でも、やっぱり私の口から出る言葉はまったく違うもので。
「・・・はい。」
私も吉澤さんの目をしっかり見て、そう返した。
- 103 名前:K言葉に出来ない 投稿日:2005/08/20(土) 01:17
- 涙はなんとか我慢できそうだ。
距離を置こうと言ったのは自分なのに、別れるとなると悲しくて、寂しくて。
大好きなのに言えない。
こんな状況にしたのは自分だ。
悔しい・・・。
「じゃあ、これからはまた仲間として頑張ろう。」
最後まで吉澤さんは優しい。
吉澤さんの優しさが、また私の涙を誘う。
でも、涙は流さない。
ここで泣いたら、吉澤さんは私を心配してくれるから。
- 104 名前:K言葉に出来ない 投稿日:2005/08/20(土) 01:18
- これ以上、吉澤さんを好きになっちゃ駄目だ。
そう自分に言い聞かせて、涙が溢れないようこらえた。
「楽屋戻ろっか。」
「はい・・・。」
吉澤さんの後をついて、楽屋へと戻ろうとした時だった。
「ちょっと待って!!」
「・・・!」
振り向いたら、そこには肩で息をしている麻琴が立っていた。
- 105 名前:ハラポワ 投稿日:2005/08/20(土) 01:20
- 書いてて自分で切なくなってきました。
これからまこっちゃんがどう動いてくれるのか、自分も期待したいところです。
- 106 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/20(土) 02:44
- すごく切ないです…二人とも意地とか張らないで欲しい。。
次は、明るい展開が見えてて欲しいです!!
- 107 名前:ハラポワ 投稿日:2005/09/04(日) 13:16
- 更新遅くて申し訳ないです。
次で完結予定ですがうまくまとまらないorz
もう少しお待ち下さい。すいません。
- 108 名前:ハラポワ 投稿日:2005/09/11(日) 06:45
- 長らくお待たせ致しました。
「愛借」完結です。
- 109 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:45
- ここにもいない・・・。
麻琴はもう見つけたのかな。
連絡をとろうにも携帯は楽屋に置きっぱなしだ。それに、きっと麻琴も持っていないだろう。
段々階段を上るのがつらくなってきた。
なんで私・・こんなに頑張ってるんだろう・・・。
いくらよっちゃんの恋を応援したいからって、私たちがここまで頑張る必要は無いんじゃないか。
そう考えては、つくづく自分が嫌だなぁと思う。
私たちがどれだけ説得しても、最終的に決断するのはよっちゃんと愛ちゃんだ。
でも、その決断を正しいものにしてあげたい。
それが出来るのは、きっと私と麻琴だけだ。
不器用なあの二人だけじゃ、まず無理だろうな。妙なトコいじっぱりだし、二人とも。
とりあえず一旦楽屋に戻ってみようかな・・・そう思い、4階を通り過ぎようとしたときだった。
「ちょっと待って!!」
・・!・・・麻琴?
少し上っていた階段を慌てて駆け下りて、廊下に滑り込んだ。
「美貴ちゃん・・・。」
麻琴は普段じゃ絶対見れない真剣な表情をしていた。
すっと顔をよっちゃんたちの方に戻して、ふたたび口を開いた。
「ちょっと・・待ってください。」
「そんな真面目な顔して・・・どうした?」
よっちゃんは普段と同じように見えた。
でも、無理してる感じがよくわかる。
「二人に話があるんです。」
愛ちゃんはオロオロと私たちとよっちゃんを交互に見てた。
「なんで・・別れちゃうんですか?」
「・・・っ・・なんでってお前・・・!」
「待って下さいっ。・・麻琴のこと、悪く言わないで下さい・・・。」
- 110 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:46
- 麻琴の質問に、よっちゃんは今にも掴みかかりそうな勢いで身を乗り出した。
愛ちゃんがとっさによっちゃんと麻琴の間に入って、よっちゃんをなだめてる。
なんでさっきの麻琴の質問によっちゃんは怒ったんだろう。
あ~・・・状況がいまいち掴めなくてイライラする。
「あれは、私が悪いんです。」
「でも・・っ。」
「いいよ、愛ちゃん。」
「麻琴・・・。」
何?愛ちゃんが悪いの?
愛ちゃん何したの?
「すいません・・・。謝って許されないことだって分かってます。でも・・・」
「もう・・・もういいんだよ。もう私たちは別れたんだから、私に謝らないでよ。」
もう別れた・・・!?
「麻琴、愛ちゃんが好きなんでしょ?愛ちゃんも麻琴のこと気になってるんでしょ?だったら両思いじゃん。」
「ちが・・・っ。」
「何が?何が違うの?両思いだからキスしたんじゃないの?」
っ・・キス!?
愛ちゃんと麻琴が!?
そんな話聞いてないよ!
「じゃあ、吉澤さんも美貴ちゃんと両思いだからキスしたんですか!?」
「―!」
・・・違う。
あのキスに理由なんて無い。
- 111 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:47
- 「なんで・・・なんでさっきから麻琴はそんなに必死になってんの?」
「・・・え?」
「麻琴は愛ちゃんのこと好きなんでしょ?だったら私たちが別れたら好都合じゃん。」
「私も・・・最初はそう思いました。でも、考えたんです。
愛ちゃんとキスして、愛ちゃんが吉澤さんと別れるって言った後、私・・考えたんです。
愛ちゃんが吉澤さんと別れたところで、私のところには来ないんじゃないかって。」
「なんで?だって愛ちゃんは・・・っ」
「愛ちゃんの気持ちは、絶対私のところには来ないんじゃないか・・・そう思ったんです。」
「・・・!」
「残念ながら、私は吉澤さんの代わりにはなれないんです・・・。」
「私の・・・代わり?」
「もう、吉澤さんだってわかってるんでしょう?」
「・・・。」
「・・・愛ちゃんが好きなのは・・吉澤さん以外の誰でもないんだよ!!」
麻琴の言葉と態度に、よっちゃんは動揺を隠し切れない様子で、愛ちゃんは今にも泣き出しそうな顔で麻琴を見ていた。
正直、私も驚いた。
叫んだきり下を向いて肩を震わせる麻琴を見て、私まで泣きそうになった。
麻琴は本当に愛ちゃんが好きなんだ。
さっきの言葉は・・・愛ちゃんが本当に好きじゃないと出てこないよ・・・。
「ねぇ、もう・・素直になんなよ。」
たまらず私は口を開いた。
というか、自然に口が動いて、そう言っていた。
「意地張ってないで、素直になってよ。」
見てるこっちがキツイよ・・。
- 112 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:48
-
私たちのことで――私のことで、こんなに心配してくれてるんだ。
麻琴の気持ちはすごく嬉しいし、こうして私のことをすごく想ってくれる麻琴のことは好き。
でも、麻琴に対するスキと吉澤さんに対するスキは違う。
―・・・愛ちゃんが好きなのは・・吉澤さん以外の誰でもないんだよ!!
この言葉に、心の中で何かがつながった気がした。
そう叫んだ麻琴は、下を向いて肩を震わせてる。
そうだよね。ツライのは私じゃなくて麻琴なんだ。
なのに私は麻琴に頼ってばかりで、麻琴はそんな私のことを好きで居てくれた。
美貴ちゃんの言う通りだ。私がもっと素直になれてたら、こんなことにはなってなかったかもしれない。
私が意地を張ったことで、一体どれだけ迷惑をかけたんだろう。
麻琴はもちろん、美貴ちゃんや・・吉澤さん・・・ここには居ないみんなにも・・・。
もうこんな私に吉澤さんは呆れてしまっているかもしれない。
今さら謝っても遅いかもしれない。
でも、私は吉澤さんが好きで、このことを満足に伝えられないまま別れるなんて絶対嫌だ。
私は、意を決して口を開いた。
- 113 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:50
-
「ごめ・・なさい・・・。」
不意に、愛ちゃんが呟いた。
泣きそうなのをこらえているせいか、久しぶりに声を出したせいか、
上手く言葉になっていなかったけど確かに愛ちゃんは「ごめんなさい」と言った。
「ごめんなさい、吉澤さん・・・。」
「なんで・・・。」
「吉澤さんのことが・・好きで、大好きで・・・でも、素直になれなくて・・・」
「愛ちゃん・・・。」
別れるつもりなんてなかった。
今さら言ってもどうにもならない。
だけど愛ちゃんと麻琴がキスしてるのを見たときショックは受けたけど・・・別れようとは思わなかった。
これは確かだ。
私だって愛ちゃんが好きだもん。そう簡単に別れられるわけがない。
でも、やっぱり意地張ってたのかな。
愛ちゃんの姿を見たとき、どこかほっとしてる自分が居た。
なのに、私は意地張って冷たく接した。
愛ちゃんに距離を置かないかと言われたとき、愛ちゃんにこんな顔をさせてしまうぐらいなら・・と思って、別れようと言った。
愛ちゃんが麻琴を好きだからキスしてたわけじゃないこともわかってるつもりだった。
愛ちゃんが距離を置こうとしてる理由もわかってるつもりだった。
私がわかってなかったのは、自分自身だ。
- 114 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:51
- 麻琴と私が話している間、ずっと愛ちゃんは今にも泣き出しそうな顔で私たちを見てた。
なんでそんな顔してるんだって、麻琴が来てくれたぞって、
そう言ってあげられるほどの演技力も勇気も・・私にはなかった。
これを言ってしまったら本当に愛ちゃんは麻琴の方へ行ってしまうんじゃないか。
自分から別れを切り出したくせに、ずっとそのことを気にしてた。
一種の賭けだったのかもしれない。
勝ち負けはいたって簡単なもの。
私が愛ちゃんを好きだと言えたら私の勝ち。そうでないものは全て負け。
まだ、勝敗はついていない。
あれだけ麻琴が揺らぐような言葉をぶつけたのに、麻琴は揺らがなかった。
愛ちゃんには私しかいないんだと言ってくれた
そして愛ちゃんも・・・好きだと言ってくれた。
この流れで私が勝ちにいかないでどうするんだよ・・・。
- 115 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:52
- 「もう・・良いよ。」
ずっと黙ったままだった吉澤さんが、不意に口を開いた。
「よっちゃん・・・っ。」
「大丈夫。自分の気持ちは、自分が一番わかってるから・・・。」
吉澤さんは美貴ちゃんにそう言うと、愛ちゃんの方に向き直した。
「ごめんね。」
「・・・!」
「もう一回、やり直しても良い?」
「え・・何を・・・?」
不思議そうに吉澤さんを見る私たちを尻目に、吉澤さんは一歩下がった。
そして、勢いよく頭を下げて言った。
「私は愛ちゃんが・・、高橋愛のことが大好きです・・・!!」
吉澤さんが顔を上げたら、正面には口をぽかんと開けた愛ちゃんがいて。
その顔に可愛いなぁと思ったと同時に、なんだお似合いじゃんか、って・・そう思った。
「意地っ張りで、不器用で、言葉で伝えることが苦手な私だけど・・・、私はちゃんと愛ちゃんが好きだから。」
「・・・はい・・っ。」
「勝手な奴だって思われても構わない。さっき別れたこと・・無かったことにできないかなぁ・・?」
最後の言葉が一番大切なのに、弱ったようにへらっと笑って見せた吉澤さんは少なくともカッコ良くはなかった。
でも、良いんだよね。これでこそ吉澤さんなのかもしれない。
私が美貴ちゃんの方にちら、と目をやったら、美貴ちゃんと目が合った。
美貴ちゃんも私と同じことを思ったのかもしれない。
ちょっとだけ、笑うの我慢してた。
- 116 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:52
- 「一つだけお願いしても良いですか・・・?」
「何?」
ようやく意識が戻ってきた愛ちゃんが少し早口で言った。
「どんなちっぽけなことでも良いですから、一人で抱え込まんといて下さい。」
私の考えていたこととは裏腹に、愛ちゃんは静かにそう言った。
これには吉澤さんもビックリした様子だった。
「娘。のリーダーを・・・こい・・っ・・・す・・好きな人を・・・支えたいんです、私。」
落ち着いているように見えたけど、内心すごくテンパってるみたいだ。
真っ赤な顔して、少し早口で、まさにテッテケテーな話し方に、私は少し笑った。
「・・・わかった。約束する。」
そんな愛ちゃんを見て、吉澤さんも静かに笑ってそう言った。
吉澤さんテッテケテー好きだもんなぁ・・・。愛ちゃんは全然気付いてないけど。
キスするでもなく、抱き合うでもなく、ただ微笑みあうだけの二人を見て、らしいなぁと思ったり思わなかったり。
これで、良かったんだよね・・・。
- 117 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:52
-
「あの〜・・・」
後ろから遠慮がちな声が聞こえた。
仲直りした二人を見てこっちまで幸せな気分に浸っていたってのに誰だ・・・。
「!・・・ガキさん・・っ。」
「ラブラブなところ悪いんですけど・・・そろそろ仕事の方に入ってもらっても良いですかねぇ?」
そこに居たのはガキさんだった。
もうすぐメイクが始まるから来いってことだろう。
「じゃあ行くか、まこっちゃん。」
「おぅ、行こうぜ〜、美貴ちゃん。」
麻琴と目を合わせてニヤリと笑い、ガキさんも巻き込んで3人で猛ダッシュで楽屋へ戻った。
「二人も早く来いよ〜!!」
そう叫んだときに視界の片隅に入った二人はしっかり手をつないでいた。
ちゃっかりラブラブかよ!!
その後二人が楽屋に戻ってきたときは、手なんてつないでなかったんだけど・・・まぁ、それはいっか。
- 118 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:53
-
「あのヤロー・・謀ったな・・・。」
「はかった?」
「でも・・・まぁいっか。今回は許してあげても。」
「?」
「私たちも行く?」
「あ、はいっ。」
楽屋へ向かって歩き出そうとする愛ちゃん。
ふと思い出した私は、左手をぐい、と引っ張った。
「ぉわ・・・っ。」
そして、そのまま体制を崩した愛ちゃんにキスをした。
「っ・・どうしたんですか、いきなり!!」
ようやく戻りかけていた顔色は、ふたたび真っ赤になっていて。
「いや、ちょっと思い出したから・・・消毒?いや、ちょっと違うか。」
「・・消毒・・・?」
「麻琴にキスされたままで仕事するのヤだったんだもん。」
「あ、あぁ・・・って麻琴は毒ですか!!」
「まぁ、私にとっちゃ毒だ。私と愛ちゃんの毒だ!!」
久しぶりに愛ちゃんとキスもできてテンション絶好調だった私がそう言ったら、愛ちゃんはアヒャーとバカウケしだした。
そんな愛ちゃんを見ていたら私もだんだん笑えてきて、二人で思いっきり笑いながら楽屋へ向かった。
バカ笑いするために自然と距離が生まれた手と私たち。
そのまま楽屋に入ったら美貴ちゃんや麻琴に怒られちゃうかなと思ったけど、これはこれで私たちらしいや。
隙間があってもそこに居ると感じられる。
愛ちゃんが居ると思えば頑張れる。
・・・愛ちゃんだけじゃない。
私を支えてくれる人はいっぱい居る。
ま、私の好きな人は一人しか居ないけどね。
- 119 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:53
- そっと隣を盗み見て、愛ちゃんの横顔に口付けた。
「っ・・・、いきなりするのはやめてくださいよ!」
「じゃあいきなりじゃなかったら良いの?」
「そういうわけじゃ・・!!もうっ、吉澤さんのバカっ!」
頬を膨らまして、バカッ!と言いながら私を押しのけてさっさと楽屋の方へ歩いていってしまった。
ごめんごめんっ!と言いながら駆け寄った時に、愛ちゃんが楽屋のドアを開けた。
途端に静かになる楽屋。
私たちを見るみんなはニヤニヤとした笑みを向けてきた。
チラ、と愛ちゃんの方を向いたけど、愛ちゃんはみんなの方を恥ずかしそうに見ていた。
「っあぁ〜・・・もう!みんな早くしないと間に合わないよ!!」
私がヤケになってそう叫べば、どこからともなく「誰のせいだと思ってるんですかぁ〜!!」とぼやかれた。
- 120 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:54
- 「吉澤さん。」
「ん?」
「今日も1日頑張りましょうね!」
「え、あ・・・うん。頑張ろう!」
愛ちゃんは私にそれだけ言うと、楽しそうにガキさんたちの方へと行ってしまった。
あれ・・・?結局いつもと同じ風景・・・?
まぁ、愛ちゃんが楽しそうならそれで良いや。
「よっしゃー!今日はテンション高めでいくぞー!!」
「テンション高いのは良いですけどハメ外さないで下さいよぉ?」
「その時は愛ちゃんがフォローしてくれるから良いの!」
愛ちゃんが居るから、安心してリーダーで居れる。
- 121 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:54
-
そして、これからもずっと―
- 122 名前:Kこれから― 投稿日:2005/09/11(日) 06:56
-
終わり
- 123 名前:オマケ 投稿日:2005/09/11(日) 06:56
-
从 VvV)<どうでも良いけど愛ちゃんはフォローしないと思うよ。
- 124 名前:ハラポワ 投稿日:2005/09/11(日) 07:06
- これで終わりとなります。
最終更新が遅くなってしまい本当に申し訳ありません。
というか吉愛ファンの方、申し訳ないです・・・。
吉愛よりまこあい要素の方が結果的に多くなってしまったようななってないようなで。
最終話でなんとかフォロー・・出来てると良いのですがorz
これからは同板で高橋さん絡み短編でも書いていけたら良いな、と思っております。
多分名前は変わってますが。
では、ここまで読んで下さってありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう。
- 125 名前:ハラポワ 投稿日:2005/09/11(日) 07:22
- 最後の最後までミスってるよ自分_| ̄|○ _| ̄|○ _| ̄|○
最終話はKじゃなくてLですよね すいません・・・_| ̄|○
あぁもう消えてしまいたい・・・!・゚・(ノД`)・゚・。
- 126 名前:吉愛進行形 投稿日:2005/09/12(月) 02:59
- 連載お疲れ様でした。ずっと読んでましたが初書き込みですw
最終話萌えました!
キスするでもなく抱き合うでもなく微笑み合う吉愛。
それまで手を繋いでいたのに皆の前では離す吉愛。
へたれよっちゃんにテッテケ愛ちゃん。
イチャイチャした後に結局いつも通りな吉愛w
すべてハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
よかったです!絶妙な吉愛加減がものっそい好みです!
またハラポワさんの吉愛小説が読みたいです!ぜひ書いてください!新作待ってますからw
- 127 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2005/09/12(月) 20:39
- ↑頼むからネタバレは控えてくれ
- 128 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/10/27(木) 23:20
-
- 129 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/13(日) 01:55
- こっちのスレはもう使わないんですか?
容量めっちゃ余ってますが
- 130 名前:ハラポワ 投稿日:2005/11/14(月) 20:03
- こっちの更新予定は無いです。
このまま沈ませようかなと思っているんですが・・・。
- 131 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/19(土) 18:42
- 自治スレを一読することをお勧めします。
短編だったら森板にするとか。
スレの数に限りがあることとか基本的なルールは知っておきましょう。
- 132 名前:ハラポワ 投稿日:2005/11/19(土) 22:18
- 自治スレは何度も読んだのですが、理解した気でいただけのような気がします。
注意して下さってありがとうございました。
以後このようなことの無いようにします。
- 133 名前:ハラポワ 投稿日:2005/11/19(土) 23:41
-
- 134 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:50
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
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