whispers

1 名前:赤鼻の家政婦 投稿日:2005/08/15(月) 23:22
藤本さん絡みで短い話をいくつか。
更新は不定期極まりないと思われますが、のんびり書いていくつもりなので、
読んでくださる方の暇潰し程度になれば幸いです。
2 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:23




3 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:23
ふたりきりでゆっくり過ごせる時間は、ずいぶんと減ってしまった。

なのに、相手を求める気持ちは会える回数や時間以上に募るばかりで、
そんなふうに感じるたび、美貴の胸がちくちくと痛む。

自分の知らない相手のことを、自分じゃない誰かが知っていることも当然になってきて、
一緒にいられる時間が少ないのだからと、頭で納得出来ても気持ちは落ち着かなくて、
会えたときは、必要以上に求めている気がして、
そしてそんな自分の想いは、相手にはもしかしたら重荷なんじゃないかと思えてきて。
4 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:24
「…亜弥ちゃん、美貴のこと、好き?」

以前なら、こんなことを自分から聞くなんて有り得なかった。

亜弥の気持ちはわかりすぎるくらいに自分のもとに届いていたから、
それがもしかしたら上辺だけのものかも知れないなんて疑うことすら思いつかなくて。

「好きだよ」

自分と同じだけ、いや、自分と同じぐらい好きでいてもらえることの奇跡を、
美貴は、会えない時間が増えてから、やっと思い知った。

「…たんは、まだあたしの気持ちを信じてないの?」

小さく憂いを含んだ大きな瞳に美貴の胸が締め付けられる。
5 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:24
「信じてる」
「ホント?」
「うん。…でも」
「でも?」

ちくちくちくちく。
細い小さな針が、美貴の脆い自信に穴を開けようとする。

「…ときどき、すごい、不安になる」
「不安?」
「…もし、美貴のほかに、亜弥ちゃんに好きなひとが出来たら…って」
6 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:24
目には見えない気持ちに鎖をつけることなんて出来ないから、
たとえば気持ちが薄れてしまってもそれを咎めることは出来ない。

付き合っているから、というのは理由にはならない。
恋人になって得るのは、愛してもらえるという幸せと、相手の自由を奪う者であるという烙印だ。

咎められないとわかっていても、縋ることで、より相手の自由を奪うことになる。
咎められないならせめて、繋ぎ止めておく方法はないかと探し始めてますます自分の気持ちにも自信が持てなくなる。

そばにいない時間が増えれば相手のことで知らない部分も増えて、その知らない部分がまた不安を植え付けていく。
自分で考えたことだから余計に不安の芽は膨らんで、身動き取れなくなるくらい、がんじがらめになる。

だから、その不安を取り除いて欲しくて、何度でも同じことを聞いて、確かめてみたくなる。
7 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:24
「…今更、何言ってんの?」

呆れたような溜め息混じりに亜弥が言って、目線を落とした美貴の額を小突く。

爪の感触に美貴が目を上げると、亜弥は唇のカタチをへの字にしてから、両手を腰に当てて胸を逸らした。

「たんの他に好きなひと? そんなの数え切れないくらいいるよ。当然じゃん」

亜弥はきっと、美貴が欲しい言葉を知っていてわざとそう言ったのだ、ということさえわかるから、また切ない。

「あたしは人形じゃないの。生きてるの。たんとだけ向き合ってるわけじゃないんだから」
「……うん」
「たんだって、あたしのほかにもたくさん好きなひと、いるでしょ?」
「…それは、そうだけど」

呆れの他に少なからずの怒りもあることを感じ取った美貴の視線がまた落ちる。
8 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:25
「でも、その人たちの中ではたんが一番で、たんだけがあたしの特別だよ」

亜弥のその言葉で、不安にまみれていた、細い小さな針で突かれていた自信が大きくなる。

「…うん」
「確かに前みたいにいつも一緒ってワケにはいかないけど、でも、会えない時間があるから、会えたときが嬉しいんじゃんか」
「…うん」
「生きてて良かった、って思えることもあるんじゃんか」

俯いていたせいで、美貴は、亜弥が腕を伸ばしてきたことに気付くのが遅れた。

亜弥の両手に力強く胸倉を掴まれ、その勢いのまま顔をあげた美貴に、亜弥が顔を近づけてくる。
9 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:25
何度も重ねて、カタチも感触も熱さえ覚えているはずなのに、

何度交わしても、亜弥の唇から伝わる目には見えないモノに胸が締め付けられる。

そのたびに、美貴は、自身がどれほど亜弥を好きでいるのかを思い知る。
たとえば亜弥を失くしてしまったあとの自分がどうなってしまうのかを、考えることすら出来ないくらいに。

「………たんだけが淋しくて不安になってるとか、そんなん思ってるワケ?」

唇が離れて、深く息を吐き出して、美貴の肩に額を預けながら亜弥は言った。

「嫉妬とか、不安とか、そんなのは、たんだけが感じたり持ってたりするもんじゃないよ。あたしだって」

そこで亜弥は一度大きく息を吸い込んだ。

「あたしだって、会えないときは、そばにいないときは、不安まみれだよ」
10 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:25
それまでとは違った頼りなさげな声色に誘われるように、美貴は亜弥の背中へと腕をまわした。

カラダで覚えている亜弥の骨格が美貴の腕にすんなりと馴染んで、
そのまま腕のチカラを強めて抱きしめると、亜弥が吐息のような声を漏らした。

「…いつか、たんはあたし以外の誰かを好きになるかもって、思ったり、するよ?」
「ならないよ」
「言い切るし」
「だって、ならないし」

それを聞いた亜弥が美貴の肩に更に甘えるように額を押し付けて、今度は小さく笑いながら頬をすり寄せる。

「あたしだって、たん以外の誰かが特別なイチバンになんて、ならないよ」

美貴の腰あたりにまわされてきた亜弥の腕が少しずつチカラを強めていく。

「…なんか、あれだね、お互い同じような不安持ってるのに、同じ自信も持ってるんだね」
「他に、誰も好きになったりしないって?」
「うん」
11 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:25
美貴の鼻孔をくすぐる亜弥の甘い匂いがカラダに熱を灯す。

「…でも、好きだからこその、不安、なのかな」

亜弥の声を聞きながら、美貴は亜弥の耳元に唇を押し付ける。

けれどそれは彼女を求めての行為ではなく、むしろ、自分を求めて欲しいという無意識下での欲求だった。

美貴の息遣いを耳のすぐうしろで聞いた亜弥がまた腕にチカラをこめる。
まるで、美貴の気持ちが伝わったと教えるように。

「……このまま、ふたりともが混ざり合って溶け合えたら、そんな不安なんて、なくなるのにね」

灯った熱を煽るように亜弥が言って、顔を上げてキスをする。

「好きだよ」
「……美貴も、好き」

答えて、美貴からもキスを返す。
12 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:26
どんなに触れ合っていても、どんなに気持ちを確かめ合っても、きっと不安はなくならない。
たとえ相手以上に相手のことを知っていたとしても、ふたりが個体である以上は。

目の前にいるのに、手で触れることも出来るのに、
離れているときはまた、同じ不安に足元を掬われて、同じようにまた身動き出来なくなるんだろう。

それがいつか重荷になるのだとしても、それでもやっぱり美貴は亜弥を求めるし、亜弥も美貴を求めてしまうのだろう。
そしてそれらはお互いにとって、何ひとつの間違いもないなんて。

恋が始まった頃は疑念に心を支配されるなんて、考えることすらしなかった。
けれどいま、そんなふうにしか愛せなくなったとしたら、自分たちは、なんて悲しい、苦しい、恋にしてしまったんだろう。

悲しいのに。
苦しいのに。

この恋の終わりは、見たくない。
13 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:26


14 名前:necessary 投稿日:2005/08/15(月) 23:26


END
15 名前:赤鼻の家政婦 投稿日:2005/08/15(月) 23:27
リハビリがてらの藤松。
が、玉砕した気がします、初っ端から重たい話でスイマセン……orz
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/16(火) 01:39
あ、赤鼻の家政婦さんの新作キタ―――(・∀・)――――!
更新乙です
次は旬のよしみきを!とか言ってみたり(苦笑)
17 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2005/08/16(火) 02:04
赤鼻の家政婦さん新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!!
お待ちしておりました。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/16(火) 13:16
夢にまで見た光景です…マイ・エベレスト赤鼻さんだァァァ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
あやみき良いですね。
最近こーゆーの少なくなってきてると思うので…頑張って下さい!
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/16(火) 16:09
赤鼻の家政婦さんキタ━━(゚∀゚)━━!
更新お疲れ様です。あやみき最高!
20 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2005/09/13(火) 16:56
あ、あああ…赤鼻さんだよ━━━━っ!!!!!!ヽ(゚∀゚ )ノ
また赤鼻さんのあやみき読めるなんて、ホント嬉しいです(T∇T)
赤鼻さんのあやみきが今でも1番好きです!!
また妖しげなあやみきお願いしますm(__)m笑
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/18(日) 21:17
あたいのリスペクトしてやまない赤鼻の家政婦さんキタ━━(゚∀゚)━━!
ぅう(涙・・・嬉しいよう
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/21(月) 00:02
ものごっつ待ってます
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/24(木) 03:27
何てこった!今さら気付くとか!
めっちゃくちゃテンション上がりました。
また作者さんのあやみき読めて、すごく嬉しいです。
24 名前:赤鼻の家政婦 投稿日:2005/11/24(木) 23:56

25 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/24(木) 23:57
「ねーぇ、たん」
「…んぅ?」

背中から抱きしめている美貴の腕に頬をすり寄せていた亜弥が、不意に態度と同じぐらい甘えた声を漏らした。
その声は美貴の耳の奥を心地好く震わせ、気分まで好くしてくれる。

適度にエアコンの効いた亜弥の部屋のベッドの上で、
背中から亜弥を抱きしめながらも重心は壁に預け、足は開いて、膝の間に亜弥を座らせる。

顔は見えないけれど、伝わる体温は、エアコンの涼風が心地好さを高めているような気がするほど、気持ちよかった。
26 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/24(木) 23:57
「なに?」

自身の腕を亜弥のカラダに更に巻き付けるようにして抱きしめながら、柔らかな髪に唇を寄せつつ、美貴は問い返した。

「あのね、心理テスト」
「うん…?」
「たん、腕時計のこと、どう思う?」
「…ほぇ…?」

自分でも判るくらい、間の抜けた声を出してしまった。

唐突な問いかけだったせいで抱きしめていた腕のチカラは自然と緩んで、
その隙を突くように、亜弥がするりと美貴の腕の中から逃げ出す。

別に、閉じ込めていたつもりじゃないけれど、
亜弥が離れた途端に逃げ出した熱が美貴をほんの少し、本当に少しだけ、淋しい気持ちにさせた。
27 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/24(木) 23:57
「………どう思う?」

たかが心理テストなのに、まっすぐ美貴を見つめ、どこか真剣な面持ちの亜弥に、美貴は唇を尖らせながらも顎を引いた。

「……うーん」

どんな意図があってこんな質問をしてきたのかはよく判らなかったけれど、
おそらく、美貴の返答によっては、亜弥を喜ばせるか悲しませるか、そのどちらかなのだということは、何となく察しがついた。

けれど、察しがついたのはその点だけで、どう答えれば亜弥を喜ばせることが出来るのかまでは見当もつかなかった。

だから、思ったことを正直に言うことにした。
28 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/24(木) 23:58
「…腕時計って、美貴はあんまり必要ないなあ」
「…え…」

その瞬間、亜弥の目の奥が淋しそうな色を放った。
だからすぐ、この答えは亜弥を悲しませるのだと美貴も気付いた。

だけど、今更訂正しても亜弥はきっと見破ってしまうので、出来るだけ、言葉を選ぶようにしながら、続けた。

「だって、時間なんてケータイ見ればいいことだし。あっても困らないけど、特に必要ってことはないよ」

美貴なりに言葉を選んだつもりなのだけれど、
普段から直接的な単語での表現が多い美貴のその言葉は、お世辞にも『気遣っている』とは解釈しづらい言葉だった。
29 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/24(木) 23:58
「……たんのばか…」

ぷう、と頬を膨らませた亜弥は、拗ねているようにも、傷付いているようにも見えた。

「なんでさー…。てか、何の心理テスト? 答えって何?」

亜弥の顔を覗き込むと、ぷいっ、と顔を逸らされ、そのままベッドからも降りていこうとする。

「待って待って」

何だか怒っているようにもとれて、美貴は少し焦りながら亜弥の腕を掴まえて自身のほうへと引き戻し、
再びその背中から腕の中へと抱きとめた。
30 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/24(木) 23:58
「あーやちゃん? なに怒ってるの?」
「…怒ってないですぅ」
「この膨らんだホッペの、どこが怒ってないって?」

ちょい、と指で軽く頬を押すと、唇を尖らせたまま振り向き、上目遣いに美貴を見た。

「うん?」

ちょん、と、今度は鼻のアタマを撫でる。

「……コイビト」
「え?」
「答え。コイビト」

単語だけのぶっきらぼうな口調では美貴もすぐには理解できなかったけれど、不機嫌の載った亜弥の表情で言葉の意味も判った。
31 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/24(木) 23:59
再び頬を膨らませて美貴を見上げる亜弥に、美貴の中でじわじわとくすぐったい感情が湧き上がってくる。

それは、普段、亜弥がそばにいるときに美貴がいつも感じているもので、
けれど亜弥以外の人間の前ではあまり表現したことのない、どちらかといえば気恥ずかしい感情。

次第にそれは美貴の内面だけでは抑制の効かないものになって、胸と肩がうずうずしはじめる。

「…ふんだ。たんなんか知らない…っ」

つれない口調なのに仄かに頬を染めて美貴から目を逸らしてしまった亜弥に堪えきれなくなって、
美貴はとうとう、両腕を広げて亜弥を抱きしめた。
32 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/24(木) 23:59
「…かわいいっ」
「ふえっ!?」

唐突な抱擁と言葉に亜弥の声が裏返る。

美貴から逃げようとしていたはずの亜弥のカラダは何の反抗もなく美貴の腕の中におさまって、
美貴の鼻先を甘い匂いがくすぐっていく。

「あー、もぉ、なんでこんなかわいいかな、こいつ!」

ぎゅうぎゅうと音がしそうなくらい強く抱きしめて、面喰っている亜弥の頬や額に唇を押し付ける。

「な…、なっ、なにっ? どして?」

いつもはもっと言ってとせがむ褒め言葉なのに、
美貴の腕の中の亜弥は事態を飲み込めていないせいで少しパニックになっているようだ。
33 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/24(木) 23:59
「なんなの? なんで?」
「ほんっと、かわいいなあ、もぉ!」
「わっ、判んないよ!」

かわいいと連呼して抱きしめるだけで、
自分のどこがかわいいのかを教えてくれない美貴に、亜弥は苛立ったように美貴の肩を押した。

「……ひ、必要ない、って…、言ったくせに」

それを言うのは、おそらく亜弥だって不本意なのだろう、さっきまで幾らか強気だった雰囲気が今は幾らか弱くなっていて、
染まる頬と逸らされたままの視線が美貴に亜弥の感じている不安を教える。
34 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/25(金) 00:00
「ただの心理テストじゃん?」
「そ…っ、そうだけど!」
「それにさ、美貴は『腕時計』について思うことを言っただけで、亜弥ちゃんが必要ないなんて、ひとっことも言ってないよ?」
「だからそれは心理テストだから…っ」
「でも、言ってない」

美貴の言葉はなんだか誤魔化しているようで、亜弥は何となく腹立たしくなってくる。

「………そーゆーの、屁理屈っていうんじゃないの?」
「ホントだもーん」

悪びれた素振りすら見せずに言って、美貴はもう一度、亜弥を抱きしめた。
今度は、少し、優しく。
35 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/25(金) 00:00
「………たん、ずるいぃ」

亜弥を抱きしめる美貴の腕のぬくもりを、
亜弥自身がとても好ましく思ってると知っての行為だと判るから、ますます腹立たしくなってくる。

何より、それを抗いたい、と思っていない自分自身が悔しかった。

「そっかな?」

額に優しく口付けされても、亜弥は悔しさでただ唇を尖らせるだけしか出来ない。

「じゃあさ、亜弥ちゃんはなんて答えたのさ?」
「…答える前に答え知っちゃったんだもん」

そんな拗ねた口振りも美貴には愛しい。

その感情に逆らわず、ゆっくりと亜弥のカラダを横たわらせていく。
36 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/25(金) 00:01
「た、たん…?」
「しよ?」

ちゅ、と軽く音を起てて亜弥の顎に口付ける。

「えっ? ちょっ、ちょっと待って。なんでスイッチ入ってるの?」
「入ったんじゃなくて、入れられたの」
「…あたしに、とか言うワケ?」
「ピンポーン」
「ば…っ」

反論しようとした唇を美貴と同じそれで塞ぐ。
37 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/25(金) 00:01
普段、人前でいるときはとても強引で積極的であけっぴろげなくせに、
ふたりきりでいるときの妖しげな雰囲気にはいまだに少しの抵抗と戸惑いを見せる亜弥が美貴には不思議だった。

人前だと恥ずかしくてついついあしらう態度をとってしまうが、
誰の目も気にしなくていい自宅などでは、こんなふうに美貴から仕掛けることが大半だ。

美貴の態度のほうが一般的だと感じているぶん、亜弥の態度や反応には矛盾を感じてしまうけれど、
それでも、こんなふうに恥じらいや戸惑いを見せているのは自分だけだとも知っているし、
抵抗してみせたって、すぐに美貴の情熱に応えてくれるから、それが亜弥の照れ隠しであることもよく判っている。

だからこそ、こんなときにちゃんと照れて見せる、そんな亜弥も愛しいのだ。
38 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/25(金) 00:01
「優しくするね」
「…たん、オッサンくさい」
「オッサンって…」

ちょっとばかり心外なことを言われて項垂れると、そんな美貴の首へ亜弥がしがみ付いてきた。

「……でも好き」

耳元に届いた、聞き逃してしまいそうな小さな声に美貴の胸が弾む。

「……あんまり煽られると、優しくできるか自信ないんだけど」

思わず綻ぶ口元を隠せず言うと、美貴から少しカラダを離して亜弥は笑った。

「平気だよ。そう言って、たんがあたしを傷つけたことなんて、一度もないもん」

そしてそんな、意識しているようで無意識な言葉にまた、美貴は亜弥に気持ちごと攫われていくのだ。
39 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/25(金) 00:01


40 名前:コイビトノカタチ 投稿日:2005/11/25(金) 00:02

END

41 名前:赤鼻の家政婦 投稿日:2005/11/25(金) 00:02
1本目とは真逆な藤松。
去年の夏に途中まで書いてたんですが、
今の藤本さんと松浦さんからはとうてい想像もつかないふたりな気がして、時間の経過をヒシヒシと感じます…。

>>16-23
たくさんのレス、ありがとうございます。
ひとまとめにしてしまって恐縮ですが、反応があるのはとてもありがたいです。
藤松は今でも勿論大好きなので、書けるときに、のんびり書きたいなあ、と思っています。
42 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/25(金) 01:00
リアルタイムでいただきました〜。
最後の二人の会話なんかとても良かったです。
もっともっと赤鼻さんの小説読みたいので、まったり待ってます!
43 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/28(月) 03:54
あーまたしてもこんな時間に起きててよかった。
そしてここをチェックしててよかった。
32レス目のまんなからへんの藤本さんのセリフには同感です。
甘い二人、ごちそうさまでした。
44 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:11
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
45 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/14(水) 21:12
まってます
46 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/14(水) 22:25
ochi
47 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/18(日) 00:39
まってます
48 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/18(日) 00:46
ochi
49 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/18(日) 12:12
まってます
50 名前:赤鼻の家政婦 投稿日:2005/12/18(日) 12:41
大変申し訳ありませんが、このスレはとうぶん更新の予定はありません。

あと、このスレはochiスレです。
この板の、他のスレの作者さんにも読者さんにも迷惑になりますので、レスしていただけるのならば、ageないでください。
お願いします。
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/02(月) 14:39
いつ頃になったら更新するんですかぁ?
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/03(火) 16:48
>>51
待つのなら静かに待ちましょう。
53 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/01/29(日) 14:02
甘いあやみきありがとうございました+。:.゚ヽ(*´∀`)ノ゚:.。+゚
こんな素晴らしい作品今まで気付かなかったなんて……うちはアホやぁ(´;ω;`)
54 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/29(日) 23:33
めちゃくちゃおもろいやん!
甘いのはやっぱいいねぇ!
また早く読みたいんで更新まってます
55 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/10(金) 23:46
まだまだ粘りますよぉ

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