gender
- 1 名前: 投稿日:2005/08/21(日) 21:18
- 僕の描写は一体何処にあるのだろうか─────
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/21(日) 21:34
-
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/21(日) 21:39
- バレーの試合
4─2
勝利 部員が沸く
「キャプテンあっつくないですか?」
「美貴?あー…結構汗かいたかも」
「そこの通りにたしか銭湯ありましたよ。寄ってきます?」
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/21(日) 21:41
- 美貴は言葉に詰まった。
何故かは不思議と自分でもわからない。
ただ うん と 言えない自分 そんな現実
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/21(日) 21:51
- 「あ…でも美貴家でおかーさんがまってるしあんまり遅くな
ると心配かけちゃうから帰るわ」
「そですか?」
後輩の不信気(美貴の思い過ごしかもしれないけれど)を背中にうけながら美貴はユニフォームの入ったショルダーバックを背負った。
なんだろう
この感覚。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/21(日) 21:56
- 自分で自分がわからない。
風呂?
入ればいーじゃん
だからなんなの?
はいれないりゆうなんかないじゃん
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/21(日) 21:59
- 帰路を辿る
「美貴は…」
ひとり言葉に出して呟く
続きが言葉にならないことは承知の上で。
そうなのかな
でもそんな自覚なんてない
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/21(日) 22:00
-
自分が 男 だ なんて
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/21(日) 22:48
- ほぅ。そう来るお話ですか。楽しみにしてます。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/22(月) 21:29
- 思えば、体育のとき妙にドキドキしてた気がする
そんな必要なんてないのに
「美貴〜後ろのホックうまく止まんない〜…手伝って」
「あ…うん」
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/22(月) 21:38
- 「ありがと〜美貴」
満面の友人の笑顔になにも言わず笑顔で返す
うまく笑えていただろうか
いやだ こんな感覚
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/24(水) 16:38
- なんだか自分であって自分でない感覚。
『じゃぁ君は誰なんだい?』
美貴は…
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/24(水) 16:39
- ふわふわとした幻想の中を漂う
そんなかんじ
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/24(水) 16:40
-
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/24(水) 16:43
- 『まぁかわいい坊ちゃんだこと』
『女の子なんですよこのこ
やんちゃざかりでどっちでもいい感じなんですけどね』
母に頭を撫でられた遠い記憶
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/24(水) 16:44
-
ちがうもん
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/24(水) 18:04
- おもしろいです。続きが気になります。
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/28(日) 09:12
- 昏い空からとつとつと頬をぬらす水滴。
ぎい、と赤茶色の音を立ててブランコから立ち上がる。少し湿った鉄の臭いに顔を少ししかめた。
「なにやってんの?」
「……!?」
てっきり自分一人だと思っていただけに喉から心臓が出そうになった。
むう、言われてみればたしかにそうか。
霧雨とは言いがたい雨。暗闇に紛れてブランコをこぐ大人といっていい年齢の人間。
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/28(日) 09:16
- 「なにやってんだって…そっちこそなにやってんだよ」
彼女もまた、傘もささず昏い闇の中にいた。
「ぶぅー」
「…はぁ?」
「先に聞いたのこっちだからそっちから答えてよ」
「はぁ?なんだよそれ」
「名前は?」
「………」
「なーまーえーは?」
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/28(日) 09:22
- 「…き」
「……え?」
「みきっつったんだよ!!」
「みき…下の名前は?」
はぁ?言いかけて言葉を飲み込む。
三木 幹 三城。
思い当たる氏を頭の中でぐるぐると反復させた
そうか
- 21 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/28(日) 09:28
- 「みきでじゅーぶんだろ?」
「うーんなんか可愛さが足りない気がする……たん!!」
「へ?」
「みきたん!!かわいくない?」
いやちょっとまて。
なんだそれは。
決定か。
だいたい質問の趣旨が変わってないか?
元々『何をしているか』じゃなかっただろうか
いつの間にあだ名を決める話に成ったんだ。
- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/28(日) 09:33
- まぁ別にこちらから投げかけた質問ではないからどうでもよいといえばよいのだが。
「んじゃーまたねーみきたん」
「…はぁ!?ちょ…おまっ…名前…」
走り去る彼女は予想外に早くて。
結局何が何かわからないままだった。
「っ…だよ…?」
微笑んでいた。
彼女は。
- 23 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/28(日) 09:54
-
◇◇◇
- 24 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/28(日) 10:03
- 「あら美貴おかえり
どーしたの?ずぶ濡れじゃない。はやくお風呂…
…あんたたしか、今朝傘もってったわよね?」
「あー…百均のビニ傘だからパクられちゃった」
「そうなの?最近は物騒ね〜…」
玄関を開けた途端せきを切ったような母の言葉に、内心ウンザリしながら美貴は学校指定のローファーを脱ぎ捨てる。
水を含んで重さを増したそれはごとりと鈍い音を立てた。
「まーたそんな乱暴に」
「っさいなぁ…いーじゃん。別に」
折角 上機嫌だったというのに。次はあの言葉がやってくる。
いつもの 聞き慣れた ひとこと
- 25 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/28(日) 10:04
-
女の子なんだから
- 26 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/28(日) 20:13
- このカプかー。楽しみです。
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/05(月) 21:57
- 最悪。
最悪だ。
何故 ちょっとした言葉の一つでこんなに気分が変わるのだろうか。
自分自身が未熟なのかそれともそう言うものなのか。
美貴は知らない。
知らないし知る必要も無いと思った。
知ったところで何が変わるわけではないから。
母親の言葉を無視して二階の自室へ向かう。
流石に廊下がべた付くのは閉口物だったので紺色のハイソックスだけは脱いでその場に投げ捨てた。
部活用の小さなタオルで頭をがしがしやりながら考える。
何故。
何故あの少女は。
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/05(月) 22:04
-
“またね”
美貴の脳裏にいつまでも残る言葉。
会えるのかな、また。
階下から食事を知らせる母親の声。
「っせーなぁ!!整理したら降りるっつーの」
軽く拭いたはずのタオルは予想外に湿って。体に張り付いた制服はじょじょにに美貴の体温を奪っていき、食事より先に風呂が必要だなと小さく震えた。
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/05(月) 22:08
-
- 30 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/05(月) 22:21
- ぎい。
あれから。
美貴は学校が終わるといつも家の近所の公園にいた。
錆び付いたブランコに乗って、意味もなく。
いや、意味はあった。
彼女を待っていた。
ぎい。
辺りを薄闇が包む。
「きょうも来ない……か」
携帯を開いて時間を確認する。
初めて会ったその時間。なるたけその時間にあわせて美貴は公園に足を運んでいた。
かしゃん。
小さい頃よくやったようにブランコの上に立ち上がり大きくぎいぎいと鳴らす。
反動をつけたそれはまるで美貴の気持ちを表すかのように大きく揺れた。
- 31 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/05(月) 22:32
- ぽつり。
鼻の頭を水滴が濡らす。
「雨……」
そう言えばこの前会ったときも雨が降っていたななんて思い出す。
同時に次の日えらい目に遭ったこと(制服はなんとか乾かしたがほったらかして
おいたローファーが履けず結局スニーカーで登校したら生活指導に見つかってか
なり説教を食らった)ことを思い出し慌てて漕いでいたブランコから飛び降りた。
「おーみきたんかっこいー」
「……!?」
- 32 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/10(土) 18:47
- パチパチといういかにもお愛想的な拍手は背後から聞こえた。
「……っかっこいーじゃねーよ!!」
その感情をなんと表現したら良いのだろうか。
美貴の中には色んな感情が入り混じっていた。
ようするに。
少女の手を乱暴気味に掴み取る。
「走っぞ!!!!」
「え……ちょ…ま…みきたん…!?」
まーようするに混乱していた。
- 33 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/10(土) 18:48
-
- 34 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/10(土) 18:55
- セクハラ、とか誘拐、とか。
いろんなコトで訴えられても仕方ない状況だったがとりあえず屋根のあるところへ、という美貴の意識がその行動にはしらせた。
もうあのハゲ(生徒指導部長)の説教はたくさんだったから。
- 35 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/10(土) 19:08
- 「ハ……ハッ…まってよみきたんっ!!
あたし…も」
「あ…悪…っ」
屋根付きのベンチくらいしかない公園。
そこにたどりついたとき、彼女の荒い息にやっと気づく。
下手にバレーなんかやっていたせいで中途半端に体力には自信があった。
慌てて腕を離したものの、彼女の腕には薄闇の中で見えるくらいに指の跡が付いていた。
「わっるい…マジ…痛かったろ?」
「んー…」
ふらふらと掴まれていた手を振ると「へーき」と答えた。
- 36 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/10(土) 19:18
-
「おま…」
「亜弥。」
美貴の唇に人差し指を押し当てるようにして言葉を遮る。
にはっというような笑顔とともに。
無理矢理に飲み込まされた言葉は。
「あ…や?」
彼女の名前を絞り出したとき、何故か美貴の喉はカラカラになっていた。
- 37 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2005/09/13(火) 16:59
- いい!!
面白いです、続き楽しみにしてますよo(^-^)o
- 38 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/03(月) 16:17
- 屋根さえあるもののそこは街灯すらなく、相変わらず辺りは暗くて。
美貴から『亜弥』の顔は見えなかった。地を叩く音は次第に強くなっていく。
傘を買おうにも、近くにコンビニ等も無かったと美貴は記憶していた。
喉の渇き。
初めて覚えた感覚に、どうしていいのか分からない。
この子は『みき』を見てくれている。
- 39 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/03(月) 16:23
- 「たん?」
「…はぁ?…たん?」
「みきたんだから、たん。かわいー」
明らかにからかうような言葉だ。
しかし、不思議と不快感はない。替わりに妙な感覚が美貴を襲う。
戸惑い、というのが一番近いのだろうか。
ゆっくりと口のなかの唾を飲み込んでから美貴は「亜弥は」と切り出した。
- 40 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/03(月) 16:26
- 「………」
ききたいことは山ほどあった。
何故暗闇の中、美貴だと判断できたのか。また『亜弥』は何者なのか。
そして何故今日現れたのか。
- 41 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/03(月) 16:34
- 「なに?どーしたの?たん」
「な…んでさ」
「ん?」
「……こんな暗いのに来んだよ…雨だって…」
「たんだって、なんで?」
返す言葉も無い。
『またね』
何の約束をしたわけでもない、陳腐な別れ際の言葉。なのに美貴は、毎日。
けど今度はこっちのものだ。
「先にきーたのはこっちだろ?」
- 42 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/03(月) 16:37
-
「みきたんが 待ってたから」
- 43 名前:名無読者 投稿日:2005/10/25(火) 10:49
- お待ちしてます!!
- 44 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/03(木) 21:33
- この雰囲気大好きです
- 45 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/06(日) 13:09
- そのとき突き抜けた感情を、何と表せばよいのだろうか。
いずれも言葉にしてしまえば陳腐なものとなる。
だから無意識に『美貴』はソレを避けた。
沈黙があたりを支配していく。
- 46 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/06(日) 13:11
- 初めて、『自分』に向けられた純粋な好意。
- 47 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/10(木) 01:11
- び・・・びみょーだけど更新されてる。作者様お疲れ様です。
- 48 名前:名無し読者 投稿日:2005/11/10(木) 21:17
- 更新される度に気になります、亜弥ちゃんもミキティもまだまだ謎ですね。。またお待ちしてますよ!!
- 49 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 14:30
- 戸惑い。苦しみ。そんなことは日常茶飯事だ。
けれども、この少女にはそれ、を感じない。
常に自然体の自分でいることができる。
『またね』
その言葉が美貴を突き抜けたことを知るものはいない。
損得なしの、純粋な、好意。行為。
- 50 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 14:35
- 「お・・・れ・・・」
「たん?」
わずかな街燈が。彼女の瞳を映し出す。
「あ・・・やが・・・っ!!」
じりじりと。ひりひりと。痛んでいたのは
乾燥した喉だったのか。
感動した心だったのか。
- 51 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 14:40
- 目が潤む。
頭が白む。
「あや、が・・・」
「たん・・・?」
そっと頬にてが添えられる。
「たんが、何悩んでるかわかんないけど。でも。無理・・・しないでいいと
思う。」
「あや・・・」
- 52 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 14:48
- す と き 。
たった二文字の言葉。
けれども美貴はその言葉を口にすることはしなかった。
言葉にしてしまうと、陳腐で、ひどく他愛の無い言葉のように
思えてしまうからだろうか。
知らないうちに。頬を伝う熱いもの。
『無理、しないで』
彼女が無意識のうちにくれたであろう、美貴の一番欲しかった言葉。
彼女の前なら、自然体でいける。
彼女の前なら、自分を、出せる。
- 53 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 14:55
- 「うん・・・」
馬鹿みたい。コレだけしか返せない自分。
そして語彙能力の無さ。情けない。
けど。あや、はそっと美貴のあたまを抱きしめてくれた。
「あたしの名前は、まつうら、あやだよ。」
その言葉は今までのすべてを肯定していた。
また同様に否定もしていた。
- 54 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 15:01
- 「みきたんの、なまえは?」
彼女は最初からわかっていたのだろう。
いや、途中で気がついたのかもしれないが。
「み・・・き。ふじもと、みき」
抱きしめあうには距離がありすぎて。
向かい合うには痛すぎる。
そんな微妙な距離感。そう美貴は思った。
「うん・・・・」
あやはすべてを包み込み、美貴の頭を強く抱きしめた。
「あやは、みきたんがすごく大切だよ」
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 15:04
- 美貴は嗚咽を漏らす。
あやはそれを受け入れる。
お互い、素直になれた瞬間。
その日、
初めて二人は手をつないだ。
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 15:05
- 以上Genderしゅうりょうです。
レス下さったかたがたありがとうございました。
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:11
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 58 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/14(水) 21:12
- まってます
- 59 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/20(火) 16:22
- まってるよ
- 60 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/21(水) 01:26
- なぜにあげる?
- 61 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/27(火) 22:08
- 更新しないんですかぁ?
- 62 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/28(水) 02:50
- 急かしすぎでは?
最後の更新から何ヶ月もたっているならともかくとして
まだ一ヶ月もたっていないんだから・・・
- 63 名前:チェイス アンド チョイス 投稿日:2005/12/29(木) 11:00
-
◇◇◇
- 64 名前:チェイス アンド チョイス 投稿日:2005/12/29(木) 11:06
- 「どしたのー?ミキティ」
「ん?……あー…やぐっさん」
「寒い…だろ?屋上なんか来て。病室でじっとしてないとまた医者になんかいわれっぞ?」
「外……みてたんだ」
「はぁ?そと……?病室からでもみえっだろ?」
彼女は振り返る。
うっすら 寒い 外気と。うすら 寒い 笑顔 は。
空間の支配者だった。
「でも、屋上じゃないと、そらはみえない」
- 65 名前:チェイス アンド チョイス 投稿日:2005/12/29(木) 11:06
-
◇◇◇
- 66 名前:チェイス アンド チョイス 投稿日:2005/12/29(木) 11:13
- 三日後。彼女はあっさり逝った。
葬儀に行くメンバーを見送る自分はどんな顔をしていたのだろうか。
泣き叫ぶ者。
涙をこらえるもの。
まだ理解できない者。
もどかしさは絡んだ指。
自分には葬儀に行く勇気はなかった。
一般発表。
今まで患っていた病気。
癌。
気づいた時には末期だった。
クスリ漬けの日々。痛みを緩和させるためのモルヒネによる中毒症状は麻薬患者状態。
エンドレスな激痛。
自分には判り得ないもの。
- 67 名前:チェイス アンド チョイス 投稿日:2005/12/29(木) 11:19
-
『美貴さぁ、そらが好きなんだ』
『……東京のそらなんて、どよーんって感じで淀んでんじゃん。北海道とは違うだろ?』
『………でもさ、すきなんだ。カセ?ってゆーのがないじゃん』
いつか彼女は云っていた。満面の、笑みで。
- 68 名前:チェイス アンド チョイス 投稿日:2005/12/29(木) 11:25
-
憶測。
勝手な憶測。
屋上へと続く階段を上りながら。
屋上へと開かれるであろう扉に貼られた文字を目で追う。
たちいり、きんし。
扉に額を預ける。
鉄製のそれは熱をもった瞼を心地よく冷やす。
彼女は、きっとそらに溶けたんだろう。
枷から解き放たれる為に。
- 69 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/29(木) 11:27
- チェイス アンド チョイス 終了です。
- 70 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/08(日) 13:51
- 悲しい感じだけどすごく場面がイメージできてすばらしいストーリーだと思います
- 71 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/19(木) 00:17
- 待ってます
- 72 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/15(水) 03:01
- 次回作まってますよ
- 73 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/17(金) 15:41
- うん、もういい。ネタが浮かばないからこっちのスレも壊すことにした。
- 74 名前:電波の限界を教えて 投稿日:2006/02/17(金) 15:47
- 後藤「ねえウチらの限界ってどこよ?」
松浦「限界?なによごっちん突然」
後藤「や…電波ってどこまで許容範囲があるのかなとごとーは思うわけでして」
松浦「???」
後藤「ほらよっすぃーとか麻琴とか割と自由じゃん?」
松浦「あぁ…あそこは自由だね」
田中「おはよーございま…なにしてるんですか?2人とも」
後藤「あ田中」
田中「…後藤さん?な…なんですかああああああっその麻袋……っ!!」
後藤「ふう。ひとり捕獲。」
松浦「…ごっちん…それ犯罪じゃない?」
後藤「なにいってんの。可愛いコーハイじゃん」
松浦「…………(なんか違う)」
新垣「おはようござ…もがっ!!」
後藤「ふう。新垣ゲットだぜ」
松浦「………」
- 75 名前:電波の限界を教えて 投稿日:2006/02/17(金) 15:47
-
◇◇◇
- 76 名前:電波の限界を教えて 投稿日:2006/02/17(金) 15:50
- 吉澤「はよー……ってなにこの袋の山。じゃっまくせぇ」
後藤「はよ。よっすぃー。あ蹴らないで。ジューヨーキザイだから」
吉澤「ぁ?まぁいいけどみんなは?そろそろ本番なんだけど」
後藤「んーそろそろ配役きめないとねー」
吉澤「配役?」
後藤「亀井は袋の中でなんか微笑んでたからいいとして小春ちゃんとか怯えてたしなぁ。」
吉澤「???まぁあたしちょっとジュースのんでくるわ。麻琴向こうにいたし」
後藤「オケ。(ガサガサ)」
松浦「………(ごっちん…なに作ってるんだろ?)」
後藤「……よしできた。おーい田中。」
田中「ひっく……ごとーさぁん…こんなかバリ暗かよー…」
後藤「いいから一枚引いて。クジつくったから」
松浦「いいからって…」
後藤「おーい藤本ー。どれがいー?」
藤本「は?いきなり麻袋んなか放り込んどいてなに?」
後藤「早 く 選 べ」
藤本「……はい」
後藤「高橋ー」
松浦「………」
- 77 名前:電波の限界を教えて 投稿日:2006/02/17(金) 15:55
-
―本番―
石川「ハロモニ!!モノマネ対決!!」
吉澤「ご馳走は」
全員「誰の物〜!!」
石川「さぁ!!このコーナーは2チームにわかれてモノマネをしてポイントゲット!!
多くポイントをとった方のみがご馳走を食べるというありきたりなコーナーです!!」
吉澤「まぁウチらのチームは負けないっしょ?
麻琴も梨華ちゃんもいるしけいチャンも……あれ?チーム構成おかしくね?
なんでベストオブイロモノ構成??」
後藤「ウチらだって負けないよ〜」
松浦「……(あの配役で負けたらすごいよ…)」
石川「さぁ!!お互いに盛り上がってきたところで両者着替えを開始してください」
吉澤「いっちばーん!!吉澤いきまっす!!
うちのおとーさんの会社のえらい人のベンツにのったときのあたし!!」
全員「今昼ー!!ってかモノマネちげぇ!!」
保田「二番!!松平健!!」
高橋「あのキラキラしてるの…ラメじゃなくて汗なんじゃ…(…ボソ)」
石川「あーやややややっやっややー!!」
藤本「キショ…」
小川「ハッスルハッスル!!!!」
全員「………」
- 78 名前:電波の限界を教えて 投稿日:2006/02/17(金) 15:59
- 村田「つぎは村田がいくのじゃ」
・
・
・
・
・
吉澤チーム終了
吉澤「もうこれウチら勝つんじゃね?」
小川「あさ美ちゃんの金魚もいつもよりパクパクしてましたもんね!!」
紺野「ごはん…」
後藤「はーい次ごとーチームいきまっす!!」
新高田亀藤松久柴「を…をー」
田中「た…田中です…昨日フライドチキンの骨と見間違われて犬に追いかけられました……田中です」
後藤「(ふむ。流石にこれはセーフかよしいけ亀井)」
亀井「(え…はい)」
亀井「と…とーうっ!!(ビタンッ)」
村田「うわっイキナリ跳ねたっ!!」
石川「肌色ババシャツに黒タイツって…!!亀井っ!!頭で倒立はいいからっ!!手ぇ震えてるっ!!」
後藤「…(江頭ネタは梨華ちゃんストップ…と)ほら柴ちゃん」
柴田「(う…うん…)」
柴田「じ…冗談をいいますっ……ど…どーでもいいですよっ…………テレ東」
スタッフ「ちょw一回止めろっ!!」
後藤「(ネタによってはスタッフストップ…と)新垣、ごー」
- 79 名前:電波の限界を教えて 投稿日:2006/02/17(金) 16:06
-
新垣「は…はい」
紺野「白い紙になんか四角が書いてある…」
新垣「ナショ○ルでは古い型式の…」
スタッフ「新垣ー!!!!」
後藤「んぁ、これもバツ…と。次ふじもとー」
藤本「ねぇマジでやんの?美貴やなんだけど」
後藤「(チラっ)」
藤本「そ…その写真はっ……くっそ分かったよ!!やるよ!!」
藤本「………」
吉澤「水着の黒ビキニ?」
小川「生足ですよ…寒そう」
道重「上白Tシャツですね。何のモノマネでしょう?なんか腕組んでこっち睨んでますけど」
石川「デコ解禁だね。下っ腹も色んな意味ででてるし」
小川「あ、なんか言いますよ」
藤本「(チっ…)……やややややキレてないっすよ」
紺村道石吉小「小力ーー!!!!」
後藤「んぁ。ふじもともセフセフ。よし高橋」
高橋「後藤さん…ペインティングで肌がいたいんやが」
後藤「コピックより水彩絵の具がいいっつったの高橋じゃん」
高橋「………」
後藤「ほら行け」
高橋「(…逝けの間違いがし)」
- 80 名前:電波の限界を教えて 投稿日:2006/02/17(金) 16:10
- 吉澤「高橋?全身赤けぇぞ?両手でピースをつくって?」
道重「あれはまさかあたしの…?」
高橋「原発もんじゅ越前ガニっ」
紺道吉小村石「福井特有ー!!」
後藤「(…ふむ。ここれもセーフなのか。よしいけ小春)」
久住「(え…はい…)」
吉澤「久住?なんだ?やけに小道具多いな?机に?ペンに?ノートに?ラジオ…?」
小川「ラジオ聞きながら何か書き出して?首をひねって?」
久住「す…素敵だなっ!!」
安倍「………」
後藤「(ふむ。これもセーフなのか?見学のなっち赤くなる…と。あ、何気にカメラとまってる)」
後藤「まっつー」
松浦「…ねぇごっちん…これマジでやんの?あたし超捨て身じゃん…」
後藤「ガンガレ」
松浦「………」
吉澤「?あやや普通だな。」
小川「でもズボンって珍しいですよ。服全体的に男物っぽいし…」
村田「何か始まるぞい」
松浦「歌います」
石川「普通だね」
松浦「フォー○バーメモリーズ」
紺道石小村吉「w-i○ds.ー!!!!!!」
結局 使える部分が皆無だったため、その日の収録は後日に回されました。
( ´ Д `)<ごとぉはなんにもしてないぽ
えんど。
- 81 名前:ぷれい すてーしょん。 投稿日:2006/02/26(日) 00:54
-
「よっしゃー!!かちー!!」
「ちょっ・・・ミキティなんだよその技ぁっ!!・・・は・・・反則・・・!!」
「えへへー」
「・・・えへへーじゃねぇよ・・・もう・・・」
- 82 名前:ぷれい すてーしょん。 投稿日:2006/02/26(日) 00:55
- 『よっちゃん、美貴んちでゲームしない?』そんなことを言われたのは3日前の仕事が終わってすぐ。
『あぁ、いーよ別に』なんて安請け合いしたものの、あたしは運動とかそういうのは得意でも指先のごちゃごちゃした動
きは意外と苦手なんだって、彼女とゲームを始めて初めて痛感した。
と、いうか彼女のゲームの腕が尋常ではないのかもしれない。未だ頑なにROM式ではなくカセット式のゲーム
機をガチャガチャと操る彼女の指先は、酷くなめらかだった。
- 83 名前:ぷれい すてーしょん。 投稿日:2006/02/26(日) 00:56
- 人のことは言えた柄ではないが、普段粗雑な彼女からはその細かな動きは想像していなかった。
・・・てかなんで突然ゲーム?いみわかんねぇとか思いつつもまぁ断る理由もないわけだったんだけど。
「あーもぅっ!!無理っ!!ギブッ!!」
「えーよっちゃんあきらめ早いー」
「うっせ。大体やったことないゲームやらせて勝ってうれしいかコンチクショウ。」
「んー・・・やったことのあるゲームならいいわけ?」
「あ?」
- 84 名前:ぷれい すてーしょん。 投稿日:2006/02/26(日) 00:57
-
言ったのが先だったか、動いたのが先だったか。
突然コントローラーを乱暴に投げ出す彼女。
彼女自身の持ち物とはいえ、もうちょっと丁寧に扱えと言おうと、背後
にいる彼女を振り返ると、ベッドにうつぶせに横たわる彼女が真っ直ぐにあたしの方を見つめていた。
その熱を湛えた視線に、おもわずぐっと息をのんだ。
ときたま、彼女はこういう表情をする。意識しないように周りのメンバーに話をふったりして今までははぐらかしていた。
これもまた、反則だと頭のどこかで思う。話を振れるメンバーは、いない。
- 85 名前:ぷれい すてーしょん。 投稿日:2006/02/26(日) 00:58
- あたしは無意識のうちに、その視線から目が離せなくなっていた。目を、逸らすことが、できない。
彼女とあたしの距離が縮まり、うなじに花が落ちた。
「ん・・・っちょっ・・・なにすんだよっミキティっ!!」
「んー?」
本当に、反則だ。いつもニコニコ笑いながら平然とこういうことをしてくる。死角だが、多分、今も。
薄そうに見えて、意外とやわらかい唇は、悩ましげにあたしの首筋をなぞっていく。
いつの間にか細く長い指があたしの髪の毛の中に入り込んでくる。
くるくると指先に絡めとりながら、あたしの頭を優しくなでていくのを忘れない。
首筋のやわらかい感触とランダムな指の動きに、意図せず甘く声が漏れた。
- 86 名前:ぷれい すてーしょん。 投稿日:2006/02/26(日) 00:59
-
「ん、よっ・・・ちゃん・・・どぅ?」
「んだよ・・・っやめっ・・・ろよ」
「・・・んー?」
唇から、ちろりと舌をだしたのがわかった。
感触で。
続いて、吸い付くような感触。やわらかく当たる、歯。
「まだ、だめぇ?」
「なっ・・・にが・・・だめなんだよ・・・っ!!」
感触、感覚、感情。
全てを抑え込む。
誘惑、誘電、そして融解。
簡単にそれを押し返す。
とろとろと暖かくて気持ちのいい世界に引き込まれそうになる。
- 87 名前:ぷれい すてーしょん。 投稿日:2006/02/26(日) 01:00
- 薄いセロファン紙並の意思で踏みとどまろうとするあたしを
あざ笑うかのように、水は細かい粒子へと変わり浸食を始める。
「あたし・・・ゲームしにきただけだしっ・・・帰・・・」
「・・・ゲーム、でしょ?」
背後から口付ける彼女の両手は、知らず知らずのうちにあたしの輪郭をなぞり、
交差していく。なぜだかそれは体温がなく、無機質なものに感じられた。
無機質な、キカイ。コンシュマー機を介さない、ゲーム。
「ゲー・・・っ!!」
「よっちゃんさぁ・・・美貴のこと、美貴の気持ち、わかってて遊びにきたんでしょ・・・?」
口内に、そっと指が侵入し、なぞっていく。
- 88 名前:ぷれい すてーしょん。 投稿日:2006/02/26(日) 01:01
-
おふざけ、キス。
アイ、コンタクト。
スキンシップ。
ほかのメンバーとの枠を越えて行ったことなどあたしには、ない。ないはずだ。
いつの間にかテレビゲームをするには適さない明るさに落とされた照明は、こちらのゲームには最適な明るさ。
like a game。
「きも・・・ち」
「ほんとに、わかってないの?」
まぁ、そこがいいんだけどね、と微笑んだのを視界の端でわずかにとらえた。
純粋な、子供のような笑顔だった。
「ちょっ・・・マジやめろっ・・・っつ!!美貴!!」
ごくごく自然に肌着の中に差し込まれた手に気づき、慌てて押さえ込む。
しかし、同時に耳元に舌を寄せられ薄く肌が粟立つ。反射的に力が抜け、あっさりと侵入を許してしまった。
- 89 名前:ぷれい すてーしょん。 投稿日:2006/02/26(日) 01:02
- 素早く下着がぐっと押し上げられ、直に伝わる熱に息を飲んだ。
「げーむ、しよう?」
耳元でささやかれたはずの声は、お腹の底にずんと重いものを落として、あたしの力を奪っていく。
「すきだよ、よっちゃん」
これは、ゲームというのだろうか。
「だいすき。美貴は、よっちゃんが、いちばん、たいせつなんだよ」
何処までがゲームなのだろうか。
「あいしてる、よ」
断続的なsubliminal、身体的なecstasy。麻痺していく脳。
「・・・・・・・・・だよ・・・」
聞き取れない、言葉が、あらわすものは。
end
- 90 名前:ぷれい すてーしょん。 投稿日:2006/02/26(日) 01:03
-
- 91 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/26(日) 01:04
- よってます。誕生日おめでとう美貴さん。誕生日ぽくなくてごめん。
- 92 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 14:11
-
- 93 名前:antique 投稿日:2006/03/06(月) 14:28
-
偶然。本当に偶然だったんだ。
僕が偶然「プレート」の重なる地域にいたのも、「プレート」のずれにより大地がふるえることも。
また、その震えによって堅いはずのスイッチが動いたことも。
「……マスター?」
返事はない。
埃だらけの空気。
88.2%の確率でこの環境は人間が生きていくのに適しさない。
横たわったまま見えるのは少しぼやけた天井の印象。
疑似耳の少し上をさすると簡単にピントがあった。
天井は所々穴があき、「何か」があったことを容易に連想させた。
きしむ間接をむりやり動かし、半身をおこす。
DATE 2006。
壁のカレンダーはめくられた様子はなく、しかし長い間日に晒されたように薄く黄ばんでいた。
周りを見渡す。
しかし視聴覚で察知したのは、長い間メンテナンスを施されていないからだのきしみと相変わらず埃をかぶった6畳ほどのコンクリートの長細い殺風景な部屋だけだった。
時刻は残酷だと誰かが言っていたが、実際に感じたのは初めてだった。
- 94 名前:antique 投稿日:2006/03/06(月) 15:32
- きしむ体を無理矢理起こすと回線が2〜3個切れたようだった。
人工頭脳にピシピシとした感覚が走る。痛感はもとより設定されていないので程度はわからないが、結構な損傷のようだ。
まぁいい。ナースポッドで直せるだろう。
気にせず部屋のドアノブに手をかける。
やはりこちらも長い間開閉されていないのは明らかだった。
錆び付き、耳障りな不協和音を奏でる。
見慣れたコンクリートの階段。頂上の木製のドア。
なにもかも昔通り。しかしそこには表現しきれない時の流れ。どこか空虚な空間。
立て付けの悪くなったドアを押しあける。
大半の機能は死んでいるようだった。自動空気整調機や温度管理もイカレているようで、部屋はやはり乾燥していて埃っぽかった。
自動映像録画装置をみると最終録画日時は2月26日で停止していた。
画像を再生しようとしたが、予備電源も落ちていて起動しそうにない。
どうやら電源装置を組み立ててプログラムを組み立てるしかないようだ。
僕は薄暗い部屋の中、ため息をついた。
2月26日になにがあったというのだろうか。
僕の誕生日なのに。
- 95 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 19:22
- 若干色あせたように見える右腕のシリアルナンバーをかるくこするとわずかに文字が浮かび上がる。
19850226_type_M_01。
瞳に埋め込まれた装置が「自身」を認識する。だが「自身」以外の「動」物は認識できない。
唯一動作確認ができるのはナノサイズの細菌ていどだ。
「動物」も「動」物も存在しない世界。
僕は、記憶の断片をメインチップから解凍しながら家の中を歩く。
マスターの部屋にいけば、電源装置を組み立てるだけの材料くらいはあるだろう。
そのくらいの機能は搭載されたタイプであると自負していた。そしてマスターの部屋で、簡単な電源装置を組み立てるのはやはり容易なことだった。
- 96 名前:antique 投稿日:2006/03/07(火) 20:54
- かちり。
決して見栄えがよいとはいえない電源装置が無機質な音を立てた。同時に、機械に支配された空間が低い声を上げた。
久々に動かすには少々負荷が高すぎただろうか?内心不安になりつつも壁一面に配置されたディスプレイに視線をやる。
それはしばらくノイズのみを映していたが、10分ほどしたところでようやくうっすらと像を紡ぎ上げた。
Welcome,master G.
どこか滑稽な単語の羅列だと思いつつも操作パネルに添えられた手は動きを止めない。
いまはそんなことより状況把握が先決だ。
動きを取り戻したコンピュータから通信プラグを引っ張り出し、自信の入力装置に接続する。
ウイルスの心配も多少あったが、このまま静止した空間の中にいるよりはマシだと思いエンターキーを押した。
僕が動けなくなるほどのウイルスが製造されていないことを小さく祈った。
- 97 名前:antique 投稿日:2006/03/08(水) 14:41
- ぐぅ、とちいさな音を立ててコンピュータが立ち上がった。
メモリ記録のシステムは壊れてはいないようだ。ホストはいかれているようでアクセスはできないが、端末のバックアップデータは健在のようだ。
days_226
何故だろう。コンピュータに戸惑いなんて感情は存在しないはずだ。
しかし、表示されたメッセージに、確実に僕の指はエンターキーを押すのを躊躇していた。
コンピュータ、アンドロイドに感情なんか存在しない。そうだろ?
言葉を反復し、飲み込み。そして僕はボタンをおした。
- 98 名前:antique 投稿日:2006/03/09(木) 15:45
- 現れた映像はひどく悪趣味なものだった。フラッシュバック。0.1秒に満たないそれは、人間には認識不能なもの、しかし、認知されるもの。
むかし、映画館の売り上げを上げるために映画の予告編の合間に一瞬コーラをうまそうにのむ映像をながしたそうだ。人々はその映像を認識してはいない。しかし脳は映像をとらえている。コーラを買いに行く。いわゆるサブリミナル効果だ。断続的にその映像をおいていくことで強くその事象を印象づけていく。
現れた映像たちはそれに極似していた。
もっとも、悪趣味であるということをのぞけばだが。
パイソンをこめかみにあてがい微笑む男。
少女を取り囲む悪趣味な笑いをたたえた男たち。
暴動。私刑。虐殺。
すべてを見終わるころには、人間に絶対服従、アシモフのロボット3原則(1ロボットは人に危害を加えてはならない。また、人間が危害にあうのを見逃してはいけない。2ロボットは人間に与えられた命令に1に反しない限り従わなくてはならない。3ロボットは1、2に反しない限り自分の身をまもらなくてはならない)を備えた僕でさえ「人間」に対する認識が少し変わっていたほどだった。
REPLAY?
表示が点滅している。
僕は迷わずNボタンを押す。
僕にすらこんな効果だ。正常な人間がこんな映像を見たらどうなるか、推して知るべしだろう。
マスターは何故こんなものを?
疑問がよぎる。
とりあえずこのドライブには有効な情報は残されていないようだ。
別のドライブにも検索をかけてみるが結果は「NOdata」だった。
別の記憶装置なのだろうか。
- 99 名前:antique 投稿日:2006/03/09(木) 16:36
- メインコンピュータにはロクな情報はないということだけはわかった。
マスターがよく使っていたPCの周りを漁ってみようか。
ボロボロのダンボール箱を目の前に僕は少し郷愁に微笑んだ。いつも、マスターは雑で、なんでもそのへんのダンボールにつっこんでいてあとあとどこになにをやったかわからなくなって、あわてていたなぁと。
服やドライブやディスクがごたごたにつっこまれているそれは、まさにマスターそのものだった。
「あいかわらず、よっちゃんさんは雑だなぁ」
そんなくだらないことに微笑みながらも箱のなかを漁る。
ぬいぐるみ、サッカーボール、愛用のジャージ。
その中に僕は見慣れないものを見つけた。
自らのシステムに検索をかける。
テープシステム、映像、VHS。
どうやらこれは20世紀によく使用されていたVHS装置の補助記憶装置の一部のようだ。
再生装置は、もちろんない。
組み立てようにも、僕のメモリには21世紀以降のデータしかない。
組立かたがわからない。仕方がないのでテープをポケットに押し込む。多少いっぱいいっぱいな感じがするが仕方がない。
ジャンクショップにでもいけば再生装置は残っているかもしれない。
そんな期待を抱きながら、僕は長年ねむっていた「家」をあとにした。
- 100 名前:antique 投稿日:2006/03/11(土) 15:25
- 多少ドアの意味を示さなくなったそれを押しあける。
まぁ、押す、というより実質触れただけなのだが。
やはり、現れた風景は、記憶の中のそれよりかなり劣化していた。
町並みは、灰色だった。時はとまり、流れているのは自然現象のみだ。乾いた風に無意識に僕は眉間にしわを寄せた。
ここはニンゲンがいきていく環境には適していない。
少なくとも先ほど以上の「動」物の認識は出来なかった。
メモリのデータを探ると近くの町の情報が抽出された。
一番近いところで歩いて30分くらいだろう。
とりあえず僕はその方向に視線を向けた。多少不安はあったが、このままなにもしないよりはいくらかマシだろう。
□□□
- 101 名前:antique 投稿日:2006/03/13(月) 12:28
-
―――美貴、美貴、大好きだよ
―――なんだよ、よっちゃんさん。照れるじゃん
―――なんだよ、美貴うれしくねーの?
―――……ねーよっ
□□□
「紺野、なにしてんの?」
「……あ…」
「あ、じゃないよ。早くしないと「アンティーク」が来る。
あたしたちがいなくなったら空気清浄機や浄水機の管理、誰ができんのさ?シエル、全滅させる気?」
「…すいません」
紺野と呼ばれた少女は深めにかぶった帽子をぐいとかぶり直し、ジャンクの山に手を突っ込む。
いくつか年上だろう。
紺野よりも幾分髪の長い女性はため息をついて同じようにジャンクの山に目を向けた。
2999年。8月。
何世紀かの有名な予言者の予言は、1000年遅れで訪れた。
まさに天災は忘れた頃になんとやら、というやつだ。
「黒い雪」。
苦い記憶に紺野はかぶりを振った。
思い出したくない苦い、苦い記憶。
まぎらわすようにガチャガチャとジャンクをかき回すと古いECUがでてきた。
チップセラミックコンデンサとダイオードはまだ使えそうだった。
「あ紺野、やったじゃん」
様子に気づいた女性がぐりぐりと軍手をはめた手越しに頭を撫でてくる。
少し、紺野の表情がゆるむ。
忘れたい、けれど、まっすぐ前をみなくてはいけない現実。
黒い雪。
- 102 名前:antique 投稿日:2006/03/14(火) 15:17
- アンティーク。
人々はそう呼称した。
昔、偉大なる科学者がいた。その科学者は人型アンドロイドを作り上げた。
ただそれだけ。
だが、ただそれだけではなかった。
システムのナノ単位のミスだった。
そのミスによって、アンドロイドに、ごく希に「感情」をもつ「者」が現れだしたのだ。
「物」を超えた「者」。それは道具ではなく、一つの人格を持った人間と変わりない。
それが何を意味するか。ニンゲンなら、考える。無条件に、見返り無く何故つかわれているのか、存在意義は何なのか。
彼らも当然そこにたどり着いた。
そして、現れたのが「黒い雪」だった。
黒い雪が、何だったのか未だに紺野にはわからない。
一応あるレベル以上の学問は修めているつもりだが、アレに関してはまだ解明不能だ。
『おとーさん、あれ食べたい』
『はは、あさ美は食いしん坊だな、買っておいで』
『うん!!』
アーケードの屋根の下に入ったのと。
「それ」が父に触れたのはほぼ同時だった。
- 103 名前:antique 投稿日:2006/03/14(火) 15:35
-
融解。
言葉は知っていた。
科学で何度も実験はした。
けれど、実際に「融解」が起こるのは初めて見た。
対象は、父。
屋根の下で固まる紺野に、父は首を振った。来るな、と。
動けなかった。
周りの人々は崩れゆく。視界の端で捕らえつつ、視線は、目の前で朽ちていく、父。
ただ、震えることしかできなかった。
殆どのニンゲンが死滅した日だった。
それからだ。感情を持ったアンドロイド、通称「アンティーク」が活動を始めたのは。
彼らは今までの報復、いやそれ以上に略奪虐殺を繰り返した。
ニンゲンは、「シエル」と呼ばれる地下施設に追いやられた。
そこには食料も暖房器具もない、ただの「空間」だった。
「――の?紺野?」
「……あ…」
「マジ、大丈夫?ちょーし悪いなら帰る?また呆けてたよ」
「いえ、大丈夫です、あと最低マイコンの88型見つけないとシエルの維持装置が…」
「大丈夫だよ。あっちはまだ1年は持つ。それより紺野が倒れたら1年後にはみんなが全滅だ」
「……はい」
「よし。んじゃアンティークがこないうちに、帰るよ」
紺野はECUを背負っていたザックに突っ込んで立ち上がった。
「後藤さん」
「んぁ?」
「…ありがとうございます」
「ん〜…何がだよ」
照れたように後藤と呼ばれた女性は笑い、また、紺野も笑った。
□□□
- 104 名前:antique 投稿日:2006/03/15(水) 21:26
-
息が、苦しい。
人間とは非なる物の僕ですらこの不快感だ。生物にとっては猛毒だろう。
着ていた夏物の服の一部を裂き、口を覆った。
寒さは特に感じなかった。当然、とおもうかもしれないが何故か僕には温度関知システムが組み込まれていた。
アンドロイドにそんなもの必要ないと、僕も思うが、僕にはそれが設置されていた。
痛感、恐怖感もまた、然り。こんなものあっても「命令」実行の妨げになるだけだと僕は思うが。
やはり、家の外にも生物の気配は無かった。
仕方ない、と思いながら先ほど検索した一番近い町へ視線を向けた。
そこに町があれば、の話だが。
歩きながら 思った。何故「マスター」は僕にこんな機能を備えたのだろうか。
すなわち。
「み…みず……」
空腹感と枯渇感。
- 105 名前:antique 投稿日:2006/03/15(水) 21:34
- 普段は特に気にしたこともなかったけれど、このときばかりは思い切り悪態をついた。そんなもん必要ないだろヲイみたいな。
どこの世界に定型のエネルギー補給のほかに食物や水分を要するロボットがいるのだろうか。いや、実際に
ここにいるわけだからなんともいえないのだが。食料を求めようにも目に入るショップはほとんど門戸を閉ざし道端には雑草すら生えてないといった具合だ。
この状況は、非常にヤバい。充電ポッドをもってくればよかったなんていまさら後悔しても遅すぎる。
- 106 名前:antique 投稿日:2006/04/25(火) 22:55
- 四肢が…というか四肢にあたる器官なのだが、それらが機能しなくなっていく。
苦し紛れに視界の限りサーチを巡らす。無駄なのは分かっていた。
自分が目覚めた時のコンピュータからの情報から有機生命体の生存が皆無に等しい事など分かっていたのだから。
自身のメインコンピュータから電源がこなくなる。
人間でいうところの死、だろうか。
だが、人間と違い僕には死に対する恐怖感はなかった。
幸か不幸か。
そして、僕は目覚めた地下室から数キロのジャンク置き場で意識を手放した。
◇◇◇
「後藤さん」
「ん?」
「これ…なんですけど」
「ん………?なんだこりゃ?提携アドレスほとんど受け付けないな…みたことない型式だし…」
「なんか、もって帰っちゃだめですか?」
「だめ。規則であんじゃん。ロボット3原則及びその条例に反する恐れのある機体には触れてはならないって」
「ぜったいですか?」
「……ぜったいだね」
「…どうしてもですか?」
「…紺野……」
「なんだか、呼ばれてる気がするんです」
「紺野…」
「持って帰っちゃだめですか?…責任は全部私が持ちます」
- 107 名前:antique 投稿日:2006/04/25(火) 23:02
- 「何でソコまでこだわんのさ?こんな違法antiqueに入れ込んだって百害あって一利無しだよ?」
「難しい言葉知ってるんですね」
「…ごまかさないの。」
「…まぁ…いいじゃないですか」
「まぁ紺野のやることには間違いは無いって思ってるから別にいいけどさ」
ジャンクの山からantiqueを引きずりだす紺野に後藤は告げた。
「しらないからね?」
- 108 名前:antique 投稿日:2006/05/19(金) 17:04
- ◇◇◇
「タイプ…3lnx4……有機素材をこんなに…」
紺野は驚愕した。
antiqueの腕に刻まれた製造年月日は紺野が産まれる以前のものだ。
だが、この技術力はどうだろうか。最新の技術の知識がある自分にすら、安易にシステムの解析ができない。
それどころか構成素材すらハッキリしない。
「こんな…昔に…こんな…」
紺野は頭を抱えた。
少なくとも、今現在自分がこの世界でのトップだという自信があった。
それは今までの実績やこなしてきたものからくる自信。
それを遙かに上回る技術。
- 109 名前:antique 投稿日:2006/05/19(金) 17:05
- 回るという表現で技術の差をあらわすなら軽く2回転くらいはしている。
それだけ精巧に作られたantiqueだった。
「紺野ー、晩御飯食べない?」
口に疑似パンをくわえた後藤がドアをあけた。
彼女は実に器用に疑似食材を調理する。それが以前からの趣味だったのか必要に迫られてやっているのかはわからないが。
「あ、忙しい?あとにする?」
「いえ、いただきます」
「んぁ、んじゃ2個作ったんだけどどっちがいい?かぼちゃパンとさつまいもパン」
「じゃ…さつまいもで」
- 110 名前:antique 投稿日:2006/05/19(金) 17:06
- そのうえ、こちらの好みも上手く把握してくれている。世界がこんな状況でなければ、
後藤はSEなんかではなく、料理人やオシャレなカフェのマスターなんかをやっていたかもしれない、と紺野は思う。
「これ上手くできたんだよ〜食べて食べて」
「後藤さんが作ったんならなんだって美味しいに決まってます」
「う……ん。あ、あったりまえじゃん。へへ…」
システム解析のデータベースを広げたまま、ほこほこするパンを口にくわえた。
- 111 名前:antique 投稿日:2006/05/19(金) 17:07
- 「紺野、あのさ」
「これどう思います?」
「え?あ?」
「ここの回路。現在でも使われてない命令文があるんですが…」
「……紺野にわかんないの、あたしがわかるとか?」
多少不機嫌そうに彼女は問い返す。
なぜか悪いことをした気分になって、『ごめんなさい』とあやまると、なぜか後ろから抱きしめられた。
「…で、ここなんですが」
「紺野って…ほんとに…」
「え?」
「いや…何でもないよ。なに?」
「ここです。ライン56。本来なら感情ラインなんか組まれてないはずなんですが」
「あー……ほんとだね。こんなことしても管理がややこしくなるだけなのにねぇ。システム管理もややこしくなるだけなのにねぇ」
- 112 名前:antique 投稿日:2006/05/19(金) 17:08
- 「だから…わからないんですよ」
「んで、天才SEサマはなにがわかんないんですか?」
おどけて言う後藤に紺野は押し黙る。
なにが分からないんだろうか。
こんな回線切ってしまえばいいのに。
この機体を起動させるのなんか簡単なのに。
「……完璧に、復元する方法、ですかね」
「は?そんなのみんな無理っしょ?プレミアムパスワード何のためにあるのさ」
「じゃぁなんでハッカーが存在するんですか?」
「……………」
「………すいません、でも、」
キーボードを叩く指は止まらない。
「ちょっと一人にしてください」
サツマイモパンをくわえながら、子供っぽいなぁとひとりごちた。
- 113 名前:antique 投稿日:2006/05/19(金) 17:09
- ◇◇◇
誰かからのアクセスを感じる。
違う。
マスターじゃない。
否認。
否認。
否認。
まるでMAGIだ、なんて予備システムで「思考」する。
だれかが僕にアクセスしてる。
知らない。マスター以外、要らない。
否認
否認
否認。
誰だ。僕の思考に入ってくるのは。
拒否
拒否
拒否
- 114 名前:antique 投稿日:2006/05/19(金) 17:10
- ◇◇◇
「はじめ、まして」
「………」
目の前にいるのは自分の設定年齢より幾分若い少女。
断線しているのかされているのか分からないが、指先すら不自由だ。
なんだか、思考回路に不具合を感じる。
それが、僕に設置された機能を強制的に解除されたことに対する不快感なのか、たんに少女に対する嫌悪感なのかはわからなかったが。
- 115 名前:antique 投稿日:2006/05/19(金) 17:11
- 「type…0226さん……?」
「………………」
「あなたは、」
「あのさぁ、なんか食うもんない?」
「………え?」
「お腹、空いてるんだけど」
「え…あ…はい…」
少し慌てた様子でぱたぱたと少女が部屋の外に出ていく。
僕は体を起こし、頬杖をついてその様を眺めた。
サーモ、目測、解析。そのあたりは勿論怠らないが。
woman、17〜19years old、high、wait共に平均以下。
ごく一般的な少女だ。だが、なんだろうか。この妙な不快感は。
「あの…」
少女がおずおずとさしだしたそれは、僕が機械だということを認識しているのかよくわからないような内容だった。
「これ…」
「え?お嫌いでしたか?」
「いや…そうじゃなくてさ」
暖かい、パンとコーヒー。
- 116 名前:antique 投稿日:2006/05/19(金) 17:12
- 確かに僕はこの手の物も摂取できるように作成されている。というか摂取しないと自動的に意識が遠のいたりもする。
もう一度、少女を見る。ごく普通な、そのへんにいそうな少女だ。
しかし、僕を生産ナンバーで呼んだということは、最低僕が人間とは異なる存在だということはわかっているはずだ。
と、いうことは無機質なアンドロイドは有機質を介してエネルギー搾取をしないということはわかっているとは思うが…
ちらりと彼女をみやるとにこにことこちらを見ていた。
僕は何となく毒気を抜かれて、パンをちぎり、口に運んだ。
- 117 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/21(水) 02:48
- 面白いっす。作者さん頑張って
- 118 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2006/07/27(木) 20:03
- カレカノの劇の話に似てるね
- 119 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/01(日) 12:38
-
なんとなく間を埋めるために行っていた咀嚼にいつのまにか完全に意識をとられて無言で胃に準ずる器官に食物を流し込む。
そこに少女がいることをわすれるくらい、いつの間にか夢中になっていた。
「あの……」
少女の声でやっとそれに気付いたのだから相当なものだろう。一瞬その警戒心の薄さ故に落ち込むがそんなことをおくびにも出さずに「なんだよ」と応えた。
「なんて呼べばいいですか?」
相変わらず、にこにことふわふわとしたえがおで聞いてくる。少女の手を無言でとり、掌と掌をあわせる。発汗に乱れはない。
純粋に、好意を持って、接してきている。
「…なんでもいい。ロボでもアンドロイドでも生産Noでもそれ、でも。僕は特別性や固有をもとめない」
どうせマスターとはちがうんだからなんて呼ばれようと差異は無い。
そんな嫌味をこめて彼女から視線をはずして言い捨てる。食道にあたる器官を異物が通り抜けた。しかし。
「思ったんですけど、オンナノコが僕、って変ですよ?」
彼女の言葉はなんとも間の抜けたものだった。一人称の指摘を受けるなんて。意外すぎて一瞬思考回路が固まったほどだ。
一拍おいて、僕は答える。
「僕は、ニュートラルだ。性別は、設けられていない」
「そうなんですか?きれいな顔しているからてっきり……」
「てっきりなんだというんだ。それに僕がキレイだというならばマスターの造形技術が優れているというだけのことだ。
外形にとらわれて、ましてやそれに左右されるなど最も愚かな人間のすることだ。」
その間の抜けた空気に飲まれないように思い切り毒を含めて吐き捨てた。僕はこいつが嫌いだ。どこかでそう認識した。
「人は見掛けじゃない、いいこといいますね」
うんうんとうなずきながら返って来た答は、やはりなんとも間の抜けたものだった。
「だから僕はそういうことを……!!」
「でもキレイですよねー貴方。」
「は……?」
叩き付けられる覚悟をしていた食事台がうっすらと僕を垣間見たような気がした。
その時の音は、鳴らなかったから。僕の握り締められた掌は知らないうちに緩んでいた。
「名前ですよ、ミキ。なんてどうですか?美しい、人って意味なんですが」
一瞬視線を伏して彼女はそういった。
僕の中で何かがきしんだ。
- 120 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/01(日) 12:40
- お前は人の話を聞いているのか。そう思わず叫びそうになった瞬間部屋のドアが大きな音を立てて開かれた。
そこ立つ僕と同い年くらいの女。
「紺野ー、ごとーのごはんはー?」
にこにこしながらもなんとなく怖い。
「ああ後藤さん、すいません彼女にあげちゃいました」
僕を指差しながら思わず空気を読めといいたくなるような笑顔で返す紺野と呼ばれた少女。
「はぁ?ロボットがご飯食べるわけないじゃん!!またあんたあたしの分までたべちゃったからって苦しい言い訳して!!」
まぁ普通の常識はそうだよなぁ。僕は自分は悪くないと言い聞かせながらも、手元のパンくずを彼女にみえないように払った。
後藤と呼ばれた女はのほほんとした雰囲気の中にも確実に怒りをたたえている。素人目にみてもこれはかなりやばい。
「あ……あの、僕マジで食っちゃったから…コンノ?をせめないでやってよ」
「はぁ?あんた早速頭の中いじられてんの?それとも性欲処理玩具としてでもつくられてたとか?」
彼女は鼻で笑った。
性欲処理頑愚は基本的に電源を入れられて最初に見たものに絶対服従(命をはってでも)というのがある。
だが僕は明らかにそれではないし、ましてやアタマの中身なんかいじられてはいない。
「いやそうじゃな」
僕が口をはさみかけたところで彼女はこう言った。
「後藤さん、この「人」には感情があるんですよ」
「「え」」
一拍置いた感嘆詞は、僕とゴトウ?がほぼ同時にはなったものだった。
「……紺野ぉ、マジでいってんの?アシモフを遂行する上で感情なんかなんの役にもたたないんだよ?
自我があれば恐怖や利益、つきつめると恋愛感情なんかいだいちゃったりして任務の履行率が下がるからそんなことしないって100年くらい前の会議できまったじゃん。
それにそんなのが見つかったら制作者(マスター)なんかよくて獄中行き、悪くて存在抹消されんだよ?」
- 121 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/01(日) 12:41
- ぞくり。
ゴトウの言葉に僕の背中をなにかつめたいものが走り抜けた。処刑。脳にあたる機関が意味を一瞬にして理解する。
一瞬の景色、フラッシュバック、笑顔。
僕には生まれつき彼女たちの呼ぶところの「感情」がある。
ひょっとして。マスターは。
そう思いブンブンとあたまをふり、払う。僕はあの研究室の中から出たことなどない。
また、マスターも用心深いほうだった。ハッキングの線もうすいはずだ。そうだ。
つきつきと痛むコメカミを押さえる。ぎしぎしと関節が痛む気がした。
僕がもし「違法な」ロボだったとしても、その情報が漏れるということは9割方ありえないはずだ。
拒否
拒否
拒否。
また頭にノイズが走る。
「ちょ…あんただいじょぶ?」
ゴトウが僕に触れる。
いや、触れていない。
コンノが僕に触れる。
違う、触れていない。
「う……ぅ…」
そしてまた、ショートした思考回路は僕を暗闇へと導いた。
「ミキさん?」
「ちょ……」
二つの音声の感情が、僅かにぶれたところで僕の記憶は落ちた。
- 122 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/01(日) 12:42
-
◇◇◇
―マスター、ご飯作りましたよ―
―なんだよ、また肉かよ―
―じゃぁ鮭とか―
―なんだよビタミンとらせろよ。もう××は動物性たんぱく質ばっかだしてくるなぁ。やっぱし栄養摂取機能もつけないとだめなのか?
でもそれやっちゃうと燃費が最高にわるくなるんだよなぁ…いつまでもあたしも金があるわけじゃないしなぁ―
―マスターゆでたまごは?―
―アリガトウゴザイマス……―
◇◇◇
- 123 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/01(日) 12:43
- 長い間放置してすいませんでしたm(__)m
- 124 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2006/10/02(月) 07:35
- 待ってました!
- 125 名前:gender 投稿日:2006/10/24(火) 18:13
- 目をあけるとコンノがぺちぺちと僕の額をたたいていた。「ああ大丈夫そうですね」というコンノの言葉に、初めて自分がショートしていたことに気付いて思わず赤面した。
へぇ。という感嘆がコンノとは別方向から聞こえた。そちらに視線をやるとゴトウがイスに頬杖をついてこちらをみていた。
「…な、なんだよ」
かけられていたうすっぺらい毛布をひっぱって顔をかくす。あの程度でショートするなんて情けなくて。その行為にまたゴトウはふうん、と興味深そうに鼻をならした。
「ミキってさ、………あ、これあんたの名前っしょ?ミキって本気で感情あんだなぁって思ってさぁ。だってロボットだよ?見るまで普通信じらんないっしょ」
一気にまくしたてたあと、ねぇ?と何故か僕に同意を求めるようにゴトウは首をかたむけた。軽く苛つく。機械で悪かったな。
そんなこと知るか。僕にはこれが普通だったんだから。
さらに顔を隠そうと手にした毛布を意地悪げにゴトウにひっぺがされて、目が合った彼女は最初の印象とは違いなんとも間の抜けたんぁ、なんて言葉とともにとひとなつっこく笑った。
- 126 名前:gender 投稿日:2006/10/24(火) 18:14
- なんだか居心地が悪くて、ゴトウから視線を外すとまたコンノと目が合った。どいつもこいつもそんなに僕がめずらしいのか。
「ミキさんメンテのこともありますし、一回アタマの中見せてもらっていいですか?」
「あぁ…構わない。ただし記憶のカキカエや服従装置なんかつけても無駄だからな。予備電源は切らせない」
「もちろん」
ぞくり。
また、へんな感覚。
ロボットにはあるはずのない感覚。故に、表現方法がわからない。
「さぁ、こちらに横になってください。」
「あ、ああ…」
イマドキ滅多に見ないような木製のドアの先にはやっぱりイマドキ見ないような木製のベッドがあった。
横になると僕はゆっくりと瞳を閉じた。
◇◇◇
―やっべーこれカッケー!!―
―マスター、衝動買いはよくないですよ―
―マスターっていうなよぉ―
―じゃぁなんて呼べばいいんですか―
―うーん…よっちゃんとか?―
―バカですか―
―…ひっでぇ…―
マスターは笑いながら僕の耳をひっぱる。
僕もまけじとマスターの耳をひっぱる。
二人の目が合って、一瞬の沈黙。同時に吹き出す。
- 127 名前:gender 投稿日:2006/10/24(火) 18:15
- ―なぁー、あたしらって馬鹿みたいだなぁ―
―はぁ?バカなのはマスターだけでしょ―
―ひっでぇぇ。なぁ、ちゅーしてよ―
―アホですか―
―アホでいいよ…ていうかマスターって呼ぶなよぉ―
―じゃぁなんですか―
―とみことか?理想じゃね?―
―やっぱバカですね―
マスターは笑いながら僕の耳を引っ張る。僕はきゃぁきゃぁと柄にもなく高い声をだしてそれから逃げる。
僕はいつも運動神経のいいマスターにすぐにつかまるんだ。
目が合って一瞬の沈黙。刹那のほほ笑み。
「あたしらってバカだよなぁ」
マスターの言葉は軽い。
ひとみはまっすぐに僕を見ていた。
黒い宝石は僕をみていて、そのなかに映った僕の視線もやっぱりまっすぐだった。
こういうとき、なんか卑怯だなぁっておもいながら息を飲んだ。
唇に、やわらかい感触。
この瞬間が、大好きなんだ。
◇◇◇
- 128 名前:gender 投稿日:2006/10/24(火) 18:16
-
「……きさん…ミキさん!!」
「っうわぁっ!!」
目をあけると紺野が気持ち悪そうにこっちをみていた。
「なんの夢みてたんですか、気持ち悪い」
「べ…別になんだっていいだろ!!」
マスターとの…をみていたなんて口が裂けてもいえない。っていうか誰がいうか。
なんだろう また、違和感を感じた。
「メンテ…?は終わったのか?」
「はい、特に異常はありませんでした。現実維持…いままで通り食物摂取とエネルギー補給をすれば問題なく動きます。ただ、ひとつ気になることがあったんですよね」
「気になること?」
「…いえ、大したことじゃないですし確信もないんですが、いま、夢をみてましたか?」
「な、なんでそんなこといわなきゃいけないんだ!!」
「いえ、見てなかっかたのならいいんです」
コンノの意図がわからないまま僕は半身を起こす。
なんとなくあたまがくらくらするような気がしたがきのせいだろう。最近よく眠っていないから。
- 129 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/14(水) 14:22
- お前はあと10日以内に死ぬ
これを10か所に貼り付ければ、命と幸運をやろう。
さあ、本当に死ぬ
運がよくて皆に無視されるであろう哀しいサダメ
貼れば1ねん寿命が延びる
幸運も来る。
しかし、貼らなければ本当に死ぬ
- 130 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/14(水) 20:49
- good luck!
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