嵐の夜に
- 1 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/05(月) 23:47
- このお話は「あらしのよるに」という絵本を元にして
書かせてもらったものです。
パクりイクナイ…なのはわかっているのですが、
「もしも「あらしのよるに」をいしよしでやったらどうなるか」
という思いから、ちょっと書いてみたくなりました。
それでも、元のお話からは切り離して、
この話での世界観を理解していただけたらと思います。
よかったら読んでみてください。
- 2 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/05(月) 23:49
- 空は青く
風は澄み
緑は色鮮やかに
天と地の恵み豊かな世界
すべての生き物は世の理に従い
古代より続きし生の連鎖に則り生きる
だがその中に
すべてを越えた純粋な愛というものが
存在することもあったのだと・・・
- 3 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/05(月) 23:51
- 『食う者と食われる者』の関係がこの世界を作り成し、
各々の種族はその存在を保ち続けてきた。
強い者が弱い者を食らい、
その弱い者もまたその下の者を食らっていたのだ。
食われる者はその理を決して悲しまないわけではなかった。
すべての者に家族があり、友があり、そして愛する者がいた。
しかし、そうした悲しみを知る者たちもまた、
どこかで命を食らわなければ、自らの命を繋ぐことはできない。
奪い、奪われることが世の常であると。
しかしそれを思いながらも、食われる者は食う者を嫌い、憎み、恨み、
食う者は食われる者をただ命を育むための「食料」にしか思ってはいなかった。
- 4 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/05(月) 23:52
- この世界では多くの種族が息づいている
その中でも『弱き者を追い詰めることを楽しみ、
肉を食らうその姿は残忍そのもの』と言われ
恐れられた種族がいた。
その種を『オオカミ族』と言った。
オオカミ族は茶黒く毛の深い尾と耳、
口には鋭い牙と爪を持っていた。
嗅覚や視覚も優れており、
他種族の肉のにおいを嗅ぎつけては素早く襲い掛かり、
その牙と爪で切り裂き、食らった。
- 5 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/05(月) 23:53
- そんなオオカミ族が特に好んで食らった種族というのが、
『ヤギ族』だった。
ヤギ族はその姿形は華奢で可愛らしく、白い耳に小さな角を持っていた。
草花を好んで食し、穏やかで優しい種族であった。
- 6 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/05(月) 23:53
- オオカミはヤギを食らい、ヤギはオオカミに食われる。
その理を、こんなにも悲しいと思う時がくるだなんて。
- 7 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/05(月) 23:55
- その日は空が曇り、今にも雨が降り出しそうだった。
若いオオカミの1人である吉澤ひとみは、
仲間のひとりといつものように獲物を求めて彷徨っていた。
根城にしている山深くから、
ヤギたちもいるであろう中腹の牧場に降りてくるのだ。
「空が暗いな…荒れそうだ…」
見上げて呟く声を、仲間の1人が聞きつける。
「よっちゃんさん、今のうちにごはん獲ってきたほうがいいよ」
藤本美貴が舌でペロリと唇を湿らせる。
「うん、そうだね。じゃあ二手に分かれよう」
獲物を得しだいそれぞれ根城に戻ろうと約束し、
2人はそれぞれに駆けていった。
「しかし…こんな天気じゃあヤギたちもきっと
どこかで身をひそめているんじゃないだろうかなぁ」
木々をくぐり、駆けながら、ひとみはぼんやりと考えていた。
- 8 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/05(月) 23:56
- おいしい草花で満ちた広い牧場。
それを照らす太陽も今日はすっかり黒い雲に覆われていた。
ヤギたちは不穏な雰囲気を身に受けながらも、
草に座り込んでいつものように食していた。
「今日はお天気が悪いわねぇ。
太陽の光がないと、草花の味も何だかいつもよりおいしくない気がするわ」
石川梨華は不満そうに草を千切るとむぐむぐと噛んだ。
「アンタそんなぶすくれた顔してたら余計にまずくなるからやめなさい」
梨華の姉的存在である保田圭がたしなめるように言う。
「だって!わたしは青い空が好きなんですもの。
明るい日差しがわたしに元気を与えてくれるんだから」
「まぁ気持ちはわかるけどね」
「……わたし、もっとおいしい草の生えているところまで行ってくるわ。
今日はそれを食べなきゃ、満足できないもの」
梨華が勢いよく立ち上がった。
「こんな日に?もうすぐ雨が降り出しそうよ!?」
やめておけと保田の表情が語っている。
「こんな日だからこそよ、じゃあね保田さん、行ってきます」
「もう!あんまり長居しないで、ちゃんと家まで帰ってくるのよ!
あたしはたぶん先に帰ると思うから」
「はぁい!」
振り返らずに返事をすると、梨華は颯爽と走り去った。
「まったく…危険なのは雨だけじゃないってのに…」
保田の頭に浮かぶのは、天敵であるオオカミの存在だった。
- 9 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/05(月) 23:57
- 保田の親しかった友人は、オオカミに襲われ死んだ。
そして梨華の両親も、梨華が幼い頃にオオカミに食われてしまった。
幼いということが幸だったのか、不幸だったのか。
今まで保田や他の優しきヤギたちに囲まれて育ったことも相まって、
梨華は恨みや悲しみをこぼすこともなくここまで育ってきた。
同時に、オオカミの恐ろしさを、恨むべき気持ちを、
充分に知ることなくきてしまったところもあるのかもしれない。
- 10 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/05(月) 23:59
- 梨華が明るく可愛らしく
周りから愛される存在として育ってくれたことを、
保田はうれしいと思う反面、恐ろしいとも思っていた。
その輝きが、いつか闇を掴んでしまったら……。
「…梨華…」
家路につきながら、保田はやはり梨華を追いかけようか迷った。
その矢先、
黒い空から雫が落ち、それはみるみるうちに数を増した。
「くっ、しかたないわっ。ひとまず家に急ぐしか…!」
梨華を案じながら、保田は家へと帰っていった。
- 11 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/05(月) 23:59
- 夕暮れの時刻と雨が、辺りをみるみるうちに暗闇に沈める。
「まいったなぁ〜こりゃ獲物どころじゃないっ」
ひとみはあっというまにずぶ濡れになってしまった。
根城からはずいぶん離れてしまい、ここから帰るよりも
どこかで雨宿りをした方がいいと思い、
暗闇に目をこらし見回し、走った。
「ふぁ、ふぁ、…ふぁーーーーーーっくしょいっっ!!!
だぁーちくしょー風邪ひいたかもしんない……おっ???」
鼻をこすりこすり、開けた場所に偶然見つけたのは、古くなった山小屋。
「たすかったぁ〜ちょっとあそこで雨宿りしようっと」
ひとみは急いで山小屋に向かった。
- 12 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:02
- 山小屋にしたたかに打ち付ける雨の音を聞きながら、
梨華はポケットに入れておいたおいしい草を噛んでいた。
「やっぱりこっちまで来なきゃよかったのかな…」
保田と一緒に帰ればよかったと、今更ながらに思う。
けれどこうなっては下手に動く方が危険だ。
しばらくここにいれば雨も止んでくるに違いないと踏んで、
偶然見つけた山小屋へ入ったのだった。
中は真っ暗で何も見えない。
踏み入ると木がぎしぎしと不気味な音をたてたが、
この際恐怖をかまってはいられなかった。
- 13 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:03
- 「たくさん草を摘んでおいてよかったわ」
ボロボロの壁にもたれひとりごとを呟いて、草を少しずつ噛んだ。
と。
バァン!!!!ガタン!!!!!バタン!!
「きゃあぁっ!!!」
山小屋の扉が突然開き、何者かが入ってきた気配に、
梨華は悲鳴を上げてしまった。
- 14 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:04
- 「はぁぁっ、まったくひどい雨だったぁ……んっ?」
ひとみはずずっと鼻をひとすすりし、
耳に入ってきたその声の方向を見る。
どうやら完全に風邪をひいてしまったようだ、
熱も少しあるのだろうか。
鼻は効かないし、目も何だか少しかすむ。
何より暗闇が濃くて、誰かがいることはわかっても、
それが誰なのかはわからない。
「あぁ、驚かせてごめんなさい、おじゃましますよ」
ひとみは鼻声で優しく言った。
一体誰が入ってきたのか、梨華もこの暗闇で判断できなかった。
けれど穏やかな優しい声にほっと安心した。
きっと同じくヤギ族の者なのだろう。
「いいえ、あたしこそ、悲鳴をあげてしまってごめんなさいね」
可愛らしい声。ひとみにはついぞ聞いたことがない。
きっと自分のまだ知らないオオカミ族の者なのだろうと、
勝手に納得していた。
- 15 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:06
- 「いやあ、すごい雨ですね。降り出しそうだとは思っていたけど…
おかげでごはんを食べ損ねてしまいましたよ」
「あら、それはいけないわ。
わたし、ここに今食べ物を持っているのだけど、分けてあげましょうか?」
来訪者は戸口のあたりで服や全身の水を掃っているらしい。
水音がぼちゃぼちゃ聞こえる。
部屋の奥で壁にもたれて座りながら、梨華はポケットを探った。
「いやいや、あなたの食料を奪っては申し訳ないし…
それにどうやら風邪をひいてしまったみたいで、
思ったより食欲もないみたいだから、大丈夫ですよ。
それにしても、準備がいいんですねぇ」
ひとみはどかっとそのまま座り込んだ。
声のする方へと顔を向けて、感心しながら話す。
自分も干し肉のひとつやふたつ、
いつもポケットに忍ばせておくべきだなぁと反省した。
- 16 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:09
- 「そんな…今日は偶然なのよ。それにしても、大丈夫?
風邪だなんて…」
がたっと立ち上がるような音を聞き、ひとみは慌てて制した。
「大丈夫ですから。
こんなに暗いと古い山小屋じゃあつまづいたりするといけない。
それに風邪をうつしたくはないから、
あなたはどうぞそこにいてください!」
「…そう…?本当に大丈夫ですか?寒くないですか?」
「大丈夫。それに今濡れた服を脱いでしまっているから、
近づいて見られちゃうと恥ずかすぃ〜ので」
安心させるようにおどけたように言ってみせると、
相手もクスクスと笑ってくれたようだった。
- 17 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:10
- 梨華はもう草を食べるのをやめて、
三角座りで身を縮めて声のほうを見つめていた。
「それにしても、困った大雨ですね。嵐のよう」
「そうですね、でもこんなときはじっとしているに限りますよ」
鼻をすすりすすり、ひとみが言う。
ほんの少し、沈黙が流れた。
何か話さなければいけないだろうかという気持ちになったひとみは
落ち着きなく話題を探した。
- 18 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:13
- しかし先に沈黙を破ったのは梨華の方だった。
「こんな雨の日には、あなたはいつも何をしてる?」
暗闇を割くような、明るくかわいい声。
ひとみはその声から、
オオカミにしてはきっとかわいらしい子に違いないと頭の中で想像しながら、
その姿に返事をした。
「そうだなぁ…雨の日は家でじっとしているけれど…
たまに友人が雨の中訪ねてきて、おしゃべりをしたりしてすごしているかな。
あなたは?」
「わたしも…同じようなものだわ。わたしにはお姉さんがいて…
お姉さんと言っても血のつながりはないのだけれど、一緒に暮らしていて…。
その人は保田さんて言うの。
その人とおしゃべりをしたり、歌を歌ったり…」
「歌!実はあたしも歌うことが好きなんだ!奇遇だね!」
ひとみは、梨華の言葉に頭の奥の方で何かを思い出しかけた。
けれど、歌を好きだと言ってくれたそのうれしさに
『何か』はすぐに消え失せた。
- 19 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:14
- 「1人で歌うこともあるし、もちろん友達と歌うこともある。
歌はいいね、とても好きだよ」
「わたしも、たくさんの歌を知っているわ。保田さんはとても歌がうまくて、
小さい頃からたくさんの歌をわたしに教えてくれた。
でもわたしの歌はいつまでたっても下手くそだって!失礼しちゃうわ」
プンプンと怒る姿がまた想像できて、ひとみはとても楽しくなった。
「アハハハハ!いやいや、あなたはきっといい歌を歌うんだろうね。
わかるよ」
「…どこかバカにしてるでしょ!」
「そんなことないよ!アハハハ」
2人は、楽しかった。
大雨が降っていることも忘れて、
お互いが決して相容れる者ではないことにも気づかず。
まるでずっと仲良しの友達であるかのようであった。
- 20 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:15
- しばらく時を過ごしたのち、雨もだんだんと弱くなってきたようだった。
「ああ、雨も弱まってきたみたいだ。この隙に家まで走ろうかな?」
ひとみがもそもそと半乾きの服に腕を通す。
「あら、いつのまにかわたしたち、とても長い間話していたみたいね」
あまりにも楽しくて、2人ともすっかり時間を忘れていたのだ。
- 21 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:16
- 「ねぇ、よかったら明日、どこかで会わない?」
梨華がはしゃいで言う。
「あっ、でもあなた、風邪をひいていたのだったわね…」
「いや、今晩寝れば治るから。っていうか、治すから大丈夫!」
ひとみが何の保障もなく自信ありげに言うのが面白く、
梨華がふふっと笑った。
「この山小屋から少し行ったところに大きな木が生えていたよね?
明日そこで会おうよ」
「ええ、賛成よ。でも風邪が治らなかったら、無理はしないでね?」
「……ありがとう、あなたは優しいんだね」
そう言ったひとみの言葉の方がとても優しさに満ちていて、
梨華はまだ見えない相手の顔に優しさを加えて想像した。
「そんな…風邪をひいている人にはあたりまえでしょっ」
自分の赤くなった顔が見えるわけはないのに、
なんとなく両手で覆い隠してしまった。
- 22 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:17
- 「じゃあ、あたしは先に失礼するよ。
明日会えること、楽しみにしてるから…」
ひとみは戸口に手をかけ、そしてハッとして振り返った。
「大事なことを忘れてたっ!!!!」
梨華はきょとんとして目をぱっちりと開く。
「あなたの…名前を聞いてなかった…」
「あっ!!」
梨華もその言葉にハッとする。
「あんまりおしゃべりが楽しくて、そっちに夢中だったわ…!
わたしの名前は…石川梨華、って言います」
「あたしは、吉澤ひとみ。改めてよろしく!」
「こちらこそ!」
- 23 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:17
- ようやく互いの名前を知った2人。
じゃあまたね、と、ひとみはまだ小雨の降る中を外へと出て行った。
「ん!?」
外の淡い明かりが、ひとみの影を映し出す。
「…太い尾があったのは、見間違いかしら?」
梨華は少しだけ疑問を抱いた。
- 24 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:18
- けれどそれよりも、今日ひとみに出会えたことをうれしく思い、
そして明日も会える(かもしれない)ことがとても待ち遠しかった。
自分と同じく歌が好きで、時々おもしろくて、
でもそれはわたしを不安にさせないための優しさで…。
明日見るその姿は、きっとわたしの想像通りのステキなヤギに違いない。
梨華はドキドキを心の中に秘めて、
雨がすっかり止んでから山小屋をあとにした。
帰ってから、
梨華が保田に思いっきり叱られたことは言うまでもない。
- 25 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:19
- 「へぇぇっくしょい!!!うあぁぁあ!」
家に着くなり大きなくしゃみひとつ。
ひとみは鼻をすすって、家のドアを開けた。
すると中には、美貴と、友人の後藤真希がいた。
「んあ、おかえりーーよしこ」
「なぁんだよよっちゃんさん遅い!!」
「ただいまーーってかなんでうちにいるんだよ」
苦笑しながら2人を見やる。
「遅いから心配してたんじゃんか!」
「んあ、ミキティがイライラしちゃってほんと困ったよーー」
「うっせ!」
2人のやりとりにまたも苦笑して、
ひとみはどさっとベッドに座り込んだ。
- 26 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:20
- 「よっちゃんさんごはんは?」
「食べてない…ってかちょっと風邪で食欲なくて…」
「んあ、それはいけないねーーー。でもよしこ…なんかいいことあった??」
真希のするどい指摘に、ひとみはドキッとした。
「えー…そんなことないけど、なんで?」
「なんか、ちょっとにやけてない?顔が」
鋭いなごっちん…と心の中で思って、
それでもひとみは梨華のことは言わなかった。
なんとなく、この出会いを、自分の中だけのものにしておきたかった。
何故かはわからないけれど、それは本能だったのだろうか。
- 27 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:20
- 今夜は風邪を治して、明日絶対梨華に会いに行く。
「あたしはもう寝ることにするよ、おやすみ」
ぱぱっと服を脱ぐと、2人を放ったままベッドにもぐりこんだ。
「よっちゃんさんてばもう!」
「まぁまぁ、疲れてるんじゃん、帰ろうミキティ」
怒る美貴をたしなめて、真希と2人、ひとみの部屋を出て行った。
- 28 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:22
- その夜、ひとみは夢を見た。
よく晴れた空のもと、約束の木の下へ行くと、
そこには梨華が待っている。
耳に残るあの可愛らしい声で、「こんにちは」と言ってくれる。
どうしても顔がわからないけれど、とてもかわいい、オオカミの子。
ドキドキしながらも、あの山小屋の夜のように、楽しく2人でお話しして、
大好きな歌を2人で歌って……。
- 29 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/06(火) 00:22
-
本日は、ここまで。
- 30 名前:アイラブ卵 投稿日:2005/09/06(火) 20:17
- なんか二人の雰囲気がかわいくてスゴクぃぃです(*^∀^*)
- 31 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/06(火) 20:28
- がーーーーー!
「あらしのよるに」って読んだことないんです。
だからかもしれませんが...いや、そんなことはない!
きっと作者様の腕が良いからだと思いますが、
すっごくハラハラしてます。
今まで読んだ娘。小説の中でも一二を争うくらいのこの感じ!!
期待してます。おもしろいです。
微妙に長文失礼しました。
...ヤギ石オオカミ吉キャワ!他の人(?)達もキャワ!
- 32 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:17
-
ある晴れた日に
- 33 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:18
- 翌日。
昨夜の雨が嘘のように、青い空が広がっていた。
真っ白な雲は風に乗ってふわふわと流れ行く。
太陽の日差しは山々を照らし、雨の雫がきらりきらりと眩しい。
ひとみはこの日、とてもいい気分で目覚めた。
うぅーーんとひとつ伸びをして、首をこきこきと鳴らす。
風邪はすっかり治っていた。
「さぁ、今日は梨華ちゃんに会いにいくぞっ!」
ひとみは今から胸の高鳴りを抑えられない。
素早くベッドから出ると、顔を洗い、身支度をし始める。
朝食は、ヤギの干し肉の欠片に、冷たい水をごくごくと飲んだ。
「さぁて、あの木のところまでひとっ走りっ!」
勢い勇んでドアを開ける。
- 34 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:19
- 「うわっ!!」
「あっ!!!」
ドアを開けたそのすぐ前に、美貴が立っていた。
「おはようよっちゃんさん!」
「お、おはようミキティ」
面食らってしどろもどろに話すひとみを、美貴は訝しげに見た。
「こんな早くに、どこ行くの?風邪は大丈夫?」
「ああ、もうすっかり治ったよ。
今から…その、ちょっと修行に行ってくるんだ、遠くの山まで!」
咄嗟に「修行」だなんて、言葉を誤ったとひとみは思った。
「修行!?はぁ?」
「や、ちょっと、そう、トレーニング!最近足がなまってるからさ〜」
「あぁ、そうなの?」
ひとみの言葉に美貴はあっさりと納得した。
ひとみは体を動かすことも好きだと知っていることが幸いしたらしい。
「じゃああたしはダラダラしてよーっと。
よっちゃんさん、帰ってきたら一緒にごはんでも食べようね」
「うん、うん!じゃあ、またね!」
ひとみは早々にその場を去った。
「あー捕まっちゃうかと思った!
梨華ちゃんとの2人の約束だから、誰かを連れてくワケにはいかないしね…!」
胸を撫で下ろして、ひとみは風のように速く走った。
- 35 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:19
-
ゆっさゆさ、ゆっさゆさ。
意識の遠くで揺れを感じる。
揺れに揺れているのは、自分の体。
地震…!?
「えっっ!!!」
がばっと布団を跳ね除けて起き上がると、そこには不機嫌な顔をした保田がいた。
「あっ…お、おはようございますぅ…」
「…おはよう!朝食もうできてんだから、早く食べちゃいなさい!」
昨日の怒りがまだ残っているのだと察した梨華は、そそくさとベッドを出た。
- 36 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:21
- テーブルに並んだおいしそうな草をはさんで、保田と向かい合って食べる。
「保田さん…今日ね、お友達と約束をしたから、出かけてくるわね」
草をもぐもぐしながら、保田がじろりと梨華を見る。
「あんた…遊びに行くのはいいけど、ほんとに気をつけなさいよ!?
昨日の天気のこともそうだけど…何より…オオカミにはね!」
「はいはい、わかってますからぁ」
「あんたはもっと危機感をもって暮らすべきよ!安全なとこばかりじゃないんだからね!」
しっかりと念を押す姉の言葉を、梨華もわかっていないわけではない。
オオカミが自分を見つければ、きっと素早く捕らえられて食べられてしまうだろう。
もちろんそんなのは嫌だ。死にたいだなんて、誰が思うだろうか。
- 37 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:21
- その気持ちは特に今、梨華の中で大きくなっていた。
昨夜出会った、姿のわからない友達、ひとみ。
今日対面して、これからもっともっと仲良くなれるに違いないと確信していた。
そんな大事な友達とずっとずっと一緒に過ごしたい。
たくさんのことを話して、共に歌って、遊んでいたい。
だから、自分がオオカミにやられてしまうわけにはいかない。
そしてまた、ひとみもずっと無事でいてほしい。
もしもひとみがオオカミにやられてしまったら、
今まで生きてきた中で一番の悲しみに堕ちてしまうに違いないのだから。
- 38 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:22
- 「じゃあ、行ってきます!夕暮れまでには帰るから!!」
「あぁ、待ちなさい梨華!!」
外に出た梨華を保田が追いかけてくる。
「ほら、お弁当持って行きなさい!友達と食べるでしょ!」
保田がピンク色の包みを手渡してくれた。
「ありがとう!行ってきます!」
梨華は満面の笑顔を見せ、そしてまた駆けていった。
「よっぽど楽しみなのね…いいお友達がいるみたいで、よかったわ」
どんどん小さくなっていくその背を、保田はずっと見送っていた。
- 39 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:23
- 昨日2人で過ごした山小屋は太陽の明るい元で見ると本当に古く
今にも崩れそうなほどであった。
「よくあの雨で耐えたなぁ…」
屋根からポタポタ落ちる雫にしばし見とれたあと、ひとみは大きな木を目指した。
山小屋のある丘をひゅうっと駆け下りると、その木が視界に入ってきた。
その木はとても太い幹を持っている。
木のこちら側からは、反対側に誰かがいたとしても見えない。
遠くから見たところ、こちら側には誰もいないようだ。
梨華はまだ来ていないのだろうかそれとも、木の向こう側にいるのかもしれない。
- 40 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:24
- ひとみは木のそばまで来るとゆっくりと歩いて近づいた。
「木の後ろにいるかな?驚かすのもなんだから、呼びかけてみようかな」
ドキドキしながら、ひとみは木に向かって呼んだ。
「梨華ちゃん!」
さぁっと風が吹き抜ける。
と、さくっと地を踏みしめる音が聞こえた。
「ひとみちゃん…?」
昨夜と変わりない、梨華の可愛らしい声にひとみはほっとした。
そして、木の後ろからそっと現れた梨華の姿を見て……唖然とした。
- 41 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:26
- 梨華はほんのり濡れた草の上を滑るように駆けた。
約束の木のところまで来ると、その太い幹の周りを3周した。
どうやらひとみはまだ来ていないらしい。
「風邪、治らなかったのかな…」
木にもたれかかって座り込むと、幾筋もの木漏れ日を受けてふうと息をついた。
空の雲を数えながら待つことしばし。
何者かの気配を背の向こうに感じた。
ひとみが来たのだろうか、息をひそめて少し様子を見る。
「梨華ちゃん!」
その声は、鼻声ではないけれど、ひとみの声であるように思った。
ぎゅっと立ち上がって、呼びかけてみる。
「ひとみちゃん…?」
太い幹に手を触れたまま、我が名を呼んだその方へと姿を現す。
そこにいたひとみの姿を見て……唖然とした。
- 42 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:26
- そのときの互いの表情を、2人は一生忘れないだろう。
ぽかんと開けた口、点になってしまった目。
見つめあったまま、しばらく動くことも言葉を発することもできなかった。
目の前に現れたのはとてもおいしいヤギであり、そして恐ろしい天敵のオオカミだったのだ。
- 43 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:27
- ひとみは思わずごくりと唾を飲み込んだ。
白い耳、小さな角、そして自分よりいくらも華奢で小さな体。
愛らしい姿に、目を奪われる可愛さをたたえた顔。
ヤギ族。
昨夜出会った友達は、いつも食べているヤギだった。
ひとみは頭の中がごちゃごちゃになってしまった。
状況を把握することに時間がかかってしかたがない。
- 44 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:28
- そしてそれは梨華も同様であった。
黒茶色い耳、太いしっぽ。それは紛れもなくオオカミ族。
けれど、今までに聞いていたオオカミのその印象、
そしていつだったか遠くから見たその威圧感ある姿とはまったく違っているということにも驚いた。
凛とした美しい顔といでたち、大きく見開いた瞳には澄んだ輝きをたたえている。
この人が、鋭い牙も爪もその中に隠し持っているというのか。
自分を食らう存在だとは到底思えなかった。
- 45 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:28
- 「ひとみ…ちゃん…」
見つめたまま思わずその名を呟く。
「り、梨華ちゃん…」
つられてひとみも呟く。
「くっ…!!!!アッッッハハハッ!!」
「ふっ…フフフッハハハハアハハッ!!」
互いの呆けに呆けた表情の間抜けさをようやく理解した2人は、腹を抱えて笑った。
- 46 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:29
- 「ハァハァ…そうかぁ、そうだったんだなぁー!」
ひとみが大粒の涙をこぼしながら楽しそうに言った。
「まさか、あなたが…オオカミだったなんてね、わたしてっきり、あなたはヤギだとばかり!」
梨華もようやく笑いを落ち着かせて言った。
「びっくりしたね!」
「ええ、とても!」
2人はにっこりと微笑みあって、どちらともなく握手を交わした。
- 47 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:29
- 決して相容れることはないはずの2人は、こうして改めて友達となった。
ひとみも梨華も、嘘みたいにすんなりと互いを受け入れ、笑いあっていた。
太陽が乾かしてくれた温かな草の上に座り
「あのひとみちゃんの顔ったら、おもしろかったわ」
「いいや梨華ちゃんのほうがおもしろかったよ!」などとしゃべりあっている2人は、
やはりずっと昔からの親友であるかのような強いつながりを感じさせていたのだった。
- 48 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:30
- ひとしきり面白がった後で、梨華がひとつの提案をした。
「ねぇ、これから山の上の方まで行って、一緒にお弁当を食べない?」
「うん、いい考えだね、そうしようか!」
しかし、2人はここでそれぞれによくよく考えをめぐらせた。
ひとみは、お弁当など持ってこなかった。
昨日干し肉でも持っていればよかったと反省したこともあっというまに無駄になった。
第一持っていたとしても、梨華の目の前でヤギの干し肉をかじるのも気がひけることだろう。
そんな状況で、目の前にはおいしいおいしいヤギ…梨華。
梨華は梨華で、保田の持たせてくれたお弁当は言わずもがなおいしい草。
ひとみは草なんて食べるだろうか、いや、きっと食べないだろう。
草は食べないけれど、ヤギは食べるだろう…。
- 49 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:30
- 気まずい沈黙を破り、あわててひとみが梨華を促す。
「大丈夫、あたしは山の頂上でおいしい湧き水を飲むよ、あれ大好きなんだよね!
さぁ、行こうよ!」
「……うん!じゃあ行きましょう!」
- 50 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:31
- 2人は草原を歩き、木の茂る山道を越え、危ない崖の道を進んでいった。
崖の道はひとりずつしか歩けない。
ひとみは梨華を先に行かせ、落ちないように気を配りながらついて歩く。
こうしてずっと歩き続けていると、さすがに空腹を感じ始めた。
ひとみは目の前を歩く梨華を見て、ごくっと唾を飲み込んでハッとした。
『いけない!バカひとみ!梨華ちゃんを食べたいと思うなんて、何考えてるんだよ!』
幅の狭い崖の道でポカポカと自分の頭を叩く。
「うっ、うわぁぁ!!」
その拍子に崖の下へ落ちてしまいそうになったのを、梨華がぐっと手を掴んで助けた。
「あ、ありがとう梨華ちゃん…」
情けなく言ったひとみの瞳の奥がギラリと光ったのを、梨華は見てしまった。
「さ、さぁ、もうちょっとだから頑張って歩こうね!」
ひとみを励ますように声をかける梨華のその心の中は穏やかではなかった。
『ああ、どうしましょう、もしかしてひとみちゃんはわたしを食べようと思っている!?
……いいえ、そんなはずないわ、ひとみちゃんはそんなことしないわ。
わたしの大切なお友達、他のオオカミとは違う。
ごめんねひとみちゃん、こんなことを考えてしまって……』
ひとみを疑ってしまった自分が嫌でたまらなくて、梨華は自分を責めた。
- 51 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:32
- 頂上に着くと、ひとみは湧き水のある泉の方へまっしぐらに向かった。
ごくごくごく…と腹いっぱいに水を飲んだ。
「こ、これでだいぶ保つはずだぁ…」
梨華がピンク色の包みを広げて、泉から戻ってくるひとみを心配そうに見た。
「ひとみちゃん大丈夫?疲れた?」
「いやっ、大丈夫だよ!水冷たくてうまかったなぁ〜…
あっ、ごめん気が利かなくて!梨華ちゃんの分も持ってくる!」
ひとみはまたも泉の方へと駆け出してしまった。
「ひとみちゃーん!わたしがそっちに行くからいいってばぁ!!」
そう声をかけたのも遅く、ひとみは自分の両手で水をたっぷりすくって、
それをこぼすまいと真剣な面持ちでそっと歩いて戻ってきた。
- 52 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:33
- 「ほらっ、梨華ちゃん飲んで!」
無邪気に両手をそのまま差し出すひとみを見て、梨華は少し戸惑った。
「えっ…じゃ、じゃあ、いただきます…」
大きな両手に充分な水が入っている。
ひとみの指先に唇をつけて、梨華はゆっくりと水を飲んだ。
「おいしい…」
頬を赤らめて嬉しそうに言う梨華に、ひとみはドギマギした。
それは、梨華を食べたくてたまらない気持ちではなくて。
けれど胸がドキドキしてたまらないと思った。
「よ、よかった!」
同じく頬を赤らめてそっぽを向いたひとみを、梨華は可愛いと思った。
- 53 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:33
- 「ひとみちゃん、この草おいしいのよ、食べてみてよ」
梨華に草を差し出されて、しかたなくそれを口に入れてみた。
むぐむぐと噛むと、苦くて緑くさいものが口の中に広がる。
「うわおっ、ぐへっがはっ!」
耐え切れずそれを吐き出してしまう。
「こ、こんなんの何がうまいんだよっ!」
涙目になったひとみを見て、梨華は大いに笑った。
- 54 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:38
- お昼を終えると、2人草に仰向けに寝そべって空を眺めた。
風にたくさんの白い雲が流されていく。
「空は…どこまで続いているんだろう…」
ひとみがそっと呟く。
「そうね、どこまでなんだろう…」
「雲に乗ってどこまでも遠くへ行ってみたいと、思うときがあるよ…」
「わたしも、行ってみたいわ…」
むくっとひとみが起き上がると、優しい顔で梨華を見つめた。
「じゃあ遠くへ行くときは、一緒に行こうね」
約束だよと差し出した小指に、梨華も頷いて小指を絡めた。
いつ果たされるとも知れぬ約束にも、2人はとても満足した。
2人の間にそれがある限り、いつまでもそばにいられると思った。
心の中にあたたかいものが広がるのを感じて、2人はまた空と向かい合った。
- 55 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:38
- しばらくすると、ひとみの隣からスースーと穏やかな寝息が聞こえ始めた。
梨華は眠ってしまったらしい。
ひとみはそっと起き上がると、梨華にそっと顔を寄せた。
「……いいにおいがする」
梨華のにおいなのか、ヤギのにおいなのか。
ひとみのおなかがぐうと鳴った。
「……たまらないな…」
ひとみは唇で梨華の頬に触れた。
「ううん…くすぐったいよ…」
クスクスと笑った梨華から、ひとみは手で口を押さえてバッと離れた。
「………何やってんだ…!」
食べたいという気持ちが心を占めたことに自己嫌悪を抱き、ひとみは梨華に背を向けて寝転がった。
「梨華ちゃんを食べたくなんてないんだ…!」
- 56 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:40
- 来たときと同じ道を2人は歩いて帰った。
ひとみはやはり空腹を感じ、だけど梨華をけして食うまいと心に誓っていた。
梨華は、ただひとみを信じていた。
待ち合わせした木のところまで戻ってきた頃には、空が赤くなっていた。
「今日は、ありがとう」
「こちらこそ、それじゃあ、帰るわね」
梨華がひとみに背を向けてゆっくりと歩き出す。
だんだんと2人の間に距離ができる。
梨華は、1度立ち止まると、ひとみを振り返って笑顔で手を振った。
ひとみもそれに答えて大きく手を振った。
ぐうううぅぅ…っとおなかが鳴る。
「ああ……ああっ!!!!」
ひとみは声を上げると、遠ざかる梨華を追いかけて走った。
ひとみはあっというまに梨華に追いつき、梨華の肩を掴んでこちらへ向かせた。
梨華は目をまんまるにして、すぐ目の前ではぁはぁと息をつくひとみを見た。
顔が、とても近い。
唇の端からこぼれた牙が光ったのが見えた。
- 57 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:41
- 「梨華ちゃん…大事なことを忘れてたよ…」
「えっ、…なぁに…?」
少し不安げに、けれど愛らしく見つめる梨華に照れくさくなって、
目をそらして頭をぽりぽりと掻いた。
「あ…あのね…」
「…うん」
「……………今度、いつ会える?」
それは夕焼けの赤だったのか。
頬を赤く赤くしたひとみを見て、梨華は満面の笑顔を見せたのだった。
- 58 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:41
-
本日は、ここまで。
- 59 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:43
- >>30 アイラブ卵さん
読んでくださってありがとうございます。
無邪気で可愛らしい2人だとわかってくださってうれしいです。
元にしたお話でも、とてもかわいらしい狼と山羊を見ることができますよ!
- 60 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/07(水) 15:48
- >>31 名無飼育さん
読んでくださってありがとうございます。
元のお話がとてもおもしろく、興味深く、そして感動的だからこそ、
こうして書くことができるのです(笑)
もちろん丸々丸写しなお話にはしていないので…
ハロメンでやるからこそのおもしろさが作れたらいいなぁと思います。
ぜひ元の絵本を読んでみてください、おススメですよ。
- 61 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/07(水) 23:35
- 更新キタ!今回もハラハラ!
なのに、やっぱりなんだか可愛いですね。ほんわか系。ほんと書き方うまいです!
元の絵本、読んでみます。
あーそしたら、ラストがわかっちゃうから微妙か?
いや、良い映画は原作本を読んでから観ても面白いものだし、大丈夫でしょう!
・・・まだ序盤(だといいな)なのに、褒め過ぎですかね?
でもほんと、作者様の言葉の表現の仕方らいすっきです。
がんがってください。
- 62 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:13
-
雲の切れ間に
- 63 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:15
- 初めて2人が約束をしたあの日から、
ひとみと梨華は何度も会っていた。
お弁当を忘れずに持って、山のてっぺんや川のほとり、緑に包まれた丘で
2人過ごす時間はとても幸せだった。
- 64 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:16
- ある日、いつものようにひとみと梨華は待ち合わせをする。
場所は、木や草が多く繁り、その奥にはきれいな泉もあるという小さな峠。
ヤギやオオカミが踏みならした草の道が通っている。
空は雲がたくさん流れていた。
- 65 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:18
- 梨華が保田に行ってきますを告げてしばらく歩いた道の途中、ひとりのヤギに出会った。
「あら、梨華ちゃん、お出かけ?」
声をかけてくれたのは、柴田あゆみというヤギ族の友人。
あゆみは梨華よりもひとつ年上で、何かにつけ梨華の世話を焼いてくれる、
保田と同じく姉のような存在であった。
「柴ちゃんこんにちは、友達と約束していて、あの峠の方へ行くところよ」
あゆみはまあ、と目を丸くして梨華を見つめる。
「梨華ちゃん、あの峠のあたりはオオカミもよくうろついているのよ?
あたしたちの好きな草が生えているから、そこに来たヤギをオオカミが狙ってくることもあるらしいの」
自分の体を抱きしめるようにしてぶるぶると震えてみせるあゆみ。
「大丈夫よ柴ちゃん!あそこには深い茂みもたくさんあるし、隠れる事だってできるわ。
ちゃんと注意してるから、安心して!」
梨華はひとみのことを思い、少し心が痛くなった。
「うん…でもほんっっとーーーに気をつけるのよ?」
「うんっ!」
じゃあねと手を振り合って、梨華はまた先を急いだ。
走っていく梨華を、あゆみがずっと見ているのが、なんとなく背中でわかった。
- 66 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:19
- 約束の峠に来ると、青い茂みの前でちょこんと座った。
木や草の間から、通ってきた草の道が見える。
「ちょっと早く来すぎたかしら」
キョロキョロと辺りを見回すと、大好きな草が生えていたので少し千切って口に入れて噛んだ。
「むぐっ!!」
梨華は驚き慌て、草を飲み込みそこねてしまった。
というのも、草の道をあゆみがこちらへと向かってくるのが見えたからだ。
- 67 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:20
- あゆみは立ち上がった梨華におーいと手を振りながらどんどんと近づいてきた。
「ちょっと梨華ちゃん!遠くから見てると、あなたの白い耳が丸見えだったわよ!
これじゃあオオカミに見つかっちゃうから、もう少し奥の茂みの方へ入りなさい」
頬をぷくっと膨らませて梨華を軽く叱りつける。
「ご、ごめんね!もっと奥に行くことにするから!」
こうしてあゆみと話しているうちにひとみが来たらどうしようかと気が気でない。
心臓がどくどくいっている。
「ところでお友達はまだ?」
「う、うん!も、も、もしかしたらちょっと奥のほうにいるのかもしれないなぁ〜
だからわたしちょっと行ってみるわね!じゃあね柴ちゃん!」
梨華は半ば無理矢理にあゆみを離れると、茂みを越えて木々の奥へと引っ込んでいった。
「なぁんだか怪しいんだ!梨華ちゃん…恋人でもできたかな?」
フフフと1人笑いながら、あゆみはまた草の道を戻っていった。
- 68 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:21
- もう…柴ちゃんたら、心配してくれるのはうれしいけど…」
遠ざかるあゆみの姿を見ながら、ひとみと鉢合わせしなかったことにひとまずほっとした。
と、草のガサガサと鳴る音が、梨華の耳に聞こえてきた。
音はだんだんと近づいてくる。
- 69 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:22
- 「梨華ちゃぁ〜ん……」
木の後ろからひょいと顔を出し、ひとみは現れた。
「遅くなってごめんね!ちょっと、捕まっちゃって…」
「大丈夫よ、そんなに待ってないから、ね?」
「う、うん…」
ひとみはいつも梨華を待たせてしまうことに罪悪感を感じていた。
しかし家を出た時に必ず美貴に出くわすのだ。
あまりにも最近ひとりで出かけることが多いひとみに対して、さすがに美貴は怪しいと感じ始めていたのだった。
美貴がいろいろと勘繰っている様子だと、ひとみも気づいていた。
しかし、梨華のことは決して言わなかった。言えるはずはなかった。
- 70 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:23
- ひとみは梨華に真希や美貴という友達がいることを話していた。
小さい頃から仲がよくて、きょうだいにように育ってきたと。
一緒に遊んだり話をしたり。
それを聞くたびに梨華は楽しそうだね、いいねと笑っていた。
しかし梨華は内心、複雑だった。
美貴という見たことのないオオカミの人。
幼い頃からひとみのそばにいたことをうらやましくも思い、そして、嫉妬もしていた。
また、こうしてひとみと自分が仲良く会っているということがもしも知れるようなことがあればと思うと、
気が気でないことも確かだ。
- 71 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:23
- 「梨華ちゃん、ほんとは怒ってる?黙っちゃって…」
不安そうな目で梨華の顔を覗き込む。
「ううん!違うよ、なんでもないの」
ひとみに心配させないように、その茶黒い耳をそっと撫でてやった。
ひとみがうれしそうに目を細めるのを見ると、梨華もうれしくなる。
こうしてオオカミのひとみと2人で会うことの不安もモヤモヤした気持ちも、
一緒にいると吹き飛ばせてしまう。
そしてそれはひとみにも同じことだった。
- 72 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:24
- 心のどこかで、相容れない関係である自分たちを不安に思い、知られることへの怖さを抱え、
それでも梨華と会うことをやめられなかった。
梨華との出会いは、おいしいヤギを食べることをひとみから奪った。
しかし、得たものは、幸せな2人の時間、楽しい時間。
今となってはヤギを食べられなくなるよりも、梨華と会えないことのほうが悲しいと思うに違いない。
- 73 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:25
- 「あぁ…急いで走って来たからちょっと喉渇いちゃったな、泉の水を飲みに行こうかな。
梨華ちゃんはどう?」
「わたしは大丈夫かな、ここで待ってるから行ってきていいよ」
「ありがとう、ちょいと行ってきます!」
ひとみは素早く泉の方へと向かっていった。
軽い身のこなしで木々を抜けていく姿が風のようだ。
ふうと一息ついて、梨華があたりを見回す。
と、あの草の道を、あゆみがまたこちらへとやってきているのが見えた。
「!!!!!!」
梨華は大いに慌てた。
今ここにひとみがいなかったのはまだ幸いか。
- 74 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:26
- あゆみがこちらにやってきて、梨華の姿を茂みの奥に見つける。
「そうそう、そういうふうに草に隠れてたらきっと大丈夫よ。わかってるじゃない梨華ちゃん」
「ちょちょちょちょっと柴ちゃん!帰ったんじゃなかったの!?」
「何よその言い方は。まるで帰れって言ってるみたいね」
あゆみが怒ったように言う。
「そ、そういうわけじゃないけどぉ」
「この辺りの草が食べたいんだからいいでしょ!あたしの勝手じゃない!
ところでお友達はまだ?」
「え、ええ、まだなの!もう少ししたら来ると思うから…」
「そうなの?一緒に待ってあげようか?」
と、とんでもない!と叫びたくなるのを梨華はぐっとこらえた。
「大丈夫だから!柴ちゃんは草を食べるんでしょ!はい行った行った!」
あゆみの背を押して追いやる。
「はいはい!くれぐれもオオカミには気をつけなさいよ、お友達とも、ちゃんと隠れてなさいよ」
あゆみはどこかへと消えていった。
- 75 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:27
- 「もう…おせっかいすぎるのよ柴ちゃんは!!」
「おせっかい?」
びくりとして振り返ると、ひとみが戻ってきていた。
「何がおせっかいだって?」
「なんでもない!なんでもないですっ!!」
「?変なの〜ハハッ」
お気楽に笑うひとみに少し腹を立てながらも、あゆみとひとみが出くわさなかったことを思い
心からほっとする梨華だった。
- 76 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:28
- 「梨華ちゃん今日はお弁当は?」
「今日は持ってこなかったの」
そう言うとそばにあったおいしい草を千切った。
「これ、おいしいから」
口に直接口に放り込む。
「うへぇ、そりゃあ困らないね」
「そうでしょ?よっすぃーのお弁当は?」
ひとみはポケットを探ると、干し肉を出した。
「これ、ヤギじゃないからね!」
「わかってるわよ、ひとみちゃんは、ヤギは食べないのよね?」
「うん、もう食べないって決めたんだ」
そう言って「アヒル」の干し肉を噛んだ。
食事を終えると、2人は歌を歌った。
ヤギ族のアイドル「松浦亜弥」の歌を梨華に教えてもらってからひとみはそれがお気に入りになっていた。
梨華が歌ってくれた松浦亜弥の歌を、ひとみはたくさん覚えた。
「渡良瀬橋」は特に切なさがこめられており、ひとみは初めて聞いたとき涙ぐんでしまったほどだ。
- 77 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:28
- 「あぁ…やっぱり歌はいいなぁ、ね、梨華ちゃん」
「そうね、2人で歌うと特にそう思う…わ…!」
梨華の視線はひとみを越えて、草の道の方へ向かっていた。
なんだろうとひとみも振り返ってみると、遠くにヤギがひとり見えた。
「ヤギ!?」
梨華にはよくよく見慣れた姿、あゆみだ。
「ひとみちゃん、あの人わたしの友達なの!!!」
何かを訴えるような梨華の表情。
「ど、ど、どうしよう、こっちに向かってきてるみたいだよね!?」
「ひとみちゃん、ひとみちゃん…」
2人ともおろおろとするばかりで思考が止まってしまっている。
「こっちに来ちゃう、見つかったら、どうなっちゃうだろ…」
「ヤバイ、あのヤギの人こっちに気づいてる!!」
- 78 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:30
- 「梨華ちゃん!まだそこにいたんだぁ〜」
何も知らないあゆみがニコニコしながら2人へと近づいた。
見つかった!と思った瞬間、ひとみはさっと茂みに伏し、傍に置いてあった大きな葉っぱをかぶり尾を隠した。
そして、これは天運だろうか。
空を流れる一際大きな雲が太陽をすっぽりと覆い隠し、木や草の多いこの一帯が暗くなった。
梨華の後方にいるひとみの姿はあゆみからははっきりとは見えなくなった。
- 79 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:31
- 「あっ、お友達会えたんだ、よかったね。こんにちは」
声をかけられるとは思わなかったひとみは焦って挨拶を返す。
「こ、こんにちは、もごもご…」
「い、今草を食べてるとこだから、こんな状態なの!!」
梨華が誤魔化すために必死にフォローを入れる。
「あら、おじゃましてごめんなさいねぇ〜」
そう言うとあゆみは座り込んだ。長居する気かと梨華はハラハラしっぱなしだ。
- 80 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:31
- 「いやぁ、梨華ちゃんに新しい友達ができたんだねぇ、よかったね!
あ、申し遅れました、あたしは柴田あゆみって言います。
ここの草おいしいですよねぇ〜あたしも大好きでね?よくここには来るんですよー」
ぺらぺらとしゃべりだすあゆみ、止まらない。
「こーんなにおいしい草があればもういくらでも食べちゃいますよねぇ。
いやはやしかしこの辺りはオオカミも多いでしょ?それが怖くって怖くって!」
オオカミ、の言葉にひとみはピクリと反応した。
「オオカミは草を食べずにあたしたちを食べちゃうでしょ?もう信じらんないですよねぇ〜
爪と牙であたしたちを切り裂いて、その肉を食らい、血で腕や顔を染めてニヤリと笑うとこなんてもう!
最悪ったらないですよまったく!あんな奴らに食われてたまるかって!ねぇ?」
やってしまった…と梨華は思った。
ひとみがフルフルと震えているのを感じる。
きっと、ぐっとこらえているのだろう、わたしのために。
- 81 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:32
- ひとみは拳をぎゅうっと握り締めていた。
唇に牙がささり、血がにじんでいた。
体中から怒りが沸き立つ。
喉の奥でうううとうなり声が漏れていた。
いっそこのまま襲い掛かって食らってやろうか。
しかし、梨華のためにヤギを食らうことはもうやめたのだ。
それに梨華の友達だというあゆみを食らうなんてもっての他である。
- 82 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:33
- 「し、柴ちゃん、もう、そんなことより…」
梨華が制するのも気にしないであゆみは話を続ける。
「あのでかくて汚いしっぽも黒い耳もダサいったらないですよね!なんだか不潔だしーー
遠吠えはうるさくてたまったもんじゃないですし!」
ぶちり、とひとみの中で何かが切れた気がした。
自分を抑えきれなくなったひとみは勢いよく立ち上がり、大きくひとつ空に吼えた。
「うおおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!」
- 83 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:34
- あゆみはどこから現れたのかわからないオオカミの姿に度肝を抜かれた。
「きゃああああああああああ!!!!!!」
悲鳴をあげると、ガクガクと揺れる足をバタつかせて後ずさりした。
ひとみは鋭い眼で一瞥をくれるとあゆみに襲い掛かることなく走り去った。
梨華は消えていくひとみの姿を見つめるしかできなかった。
ひとまず腰を抜かしてあたふた逃げ惑うあゆみを追って茂みを抜けた。
- 84 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:35
- 「い、いつのまにあんな近くまでオオカミが来てたの…」
あゆみは顔面蒼白で震えていた。
梨華はあゆみに水を汲んできてやった。
「ちょ、ちょっと梨華ちゃん!お友達の姿が見えないみたいよ!?もしかして…!!」
「大丈夫、友達足が速いし、無事に逃げていくのをわたし見たから。
オオカミ、も、なんか逃げちゃったみたいだし、もう大丈夫よ」
あゆみに襲い掛からずに去ったひとみを思うと、梨華は泣きそうになった。
あゆみの言葉はオオカミのひとみを傷つけたに違いない。
きっとものすごく怒っただろうし、悔しかっただろう。
「ひとみちゃん……」
思わず大事な人の名を呟く。
「…ひとみちゃんて、友達の名前?」
「う、うん…」
- 85 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:36
- その後、ひとみを追うために、あゆみには友達を探すと言って別れてきた。
泉の方へ向かうと、ひとみが座り込んで水面を見つめていた。
「ひとみちゃん」
声をかけてもこちらを振り向かなかった。
梨華はゆっくり近寄ると、そっと後ろから抱きしめた。
水面にひとみと梨華が映る。
- 86 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:38
- 「………梨華ちゃん」
弱い涙まじりの声。
「なぁに…?」
抱きしめた腕を離して、ひとみの隣に寄り添って座った。
「やっぱりさ…オオカミってやつは、ヤギにしてみればひどいヤツでさ…。
爪とか、牙とか怖くて。
こんな太くて大きなしっぽも、耳も、汚くて、最悪なんだよね……」
「ひとみちゃん……」
「うん、わかってたよそりゃあね、ヤギを食べちゃうんだもんね」
強がるようにハハッと自嘲する。
「ひとみちゃん…」
「……梨華ちゃんも、やっぱり、怖いよね……
あたしのこと、怖いよね…」
また泣き出しそうな顔で言うひとみが、痛々しかった。
梨華はまたぎゅっとひとみに抱きついた。
「……怖いなんて思ってないよ、怖かったら、こんなふうに傍にいられるわけないでしょ」
ひとみも梨華をそっと、柔らかく抱きしめた。
- 87 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:39
- 「梨華ちゃん…」
「ひとみちゃんはね、大事な人。大好きな人。
わたしのこと、大事にしてくれてる人」
「……うん………ありがとう、梨華ちゃん…」
ひとみも梨華を大好きだと言いたかったけれど、照れくさくて言えなかった。
ただただ、ずっと優しく抱きしめ続けていた……。
- 88 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:39
- 夕暮れ過ぎ、雲の合い間に一番星が光る。
雲たちが赤黒く染まり、そして闇に溶けていく。
いつものように「じゃあまたね」と言い合って2人はそれぞれの家に歩き出した。
- 89 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:40
- ひとみと梨華の間にある壁は、それはとても大きい種族という違い。
それぞれに秘密を抱えることの不安は拭いさることはできない。
けれど、2人は互いに思い合い、支えあっている。
いつまでも大切にしたいという強い思いが、2人に力を与えていた。
「またね」の言葉が、2人の何より大事な約束。
あたたかい気持ちを胸に、ひとみは自宅のそばまで辿りついた。
- 90 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:41
- 「おかえり」
ドアを開けようとしたところに背後からの声。
驚いて振り返ると、そこにいたのは、真希だった。
「よしこ、おかえり」
「…ただいま、ごっちん。
どした?待ってたの?」
こんなふうに外で待っているなんて、何事なのかと戸惑いを隠せない。
「いやぁ、ミキティが、よしこ怪しい怪しいってうるさくてさぁー」
ぬははと困ったように笑う真希。
「あぁ、最近いろいろ突っ込まれるんだよねー」
ひとみは平静に努めた。
- 91 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:41
- 「よしこ…まぁ、気をつけなね?じゃあおやすみぃ〜」
ほにゃと笑顔でそう言うと真希は自宅へ帰っていった。
もしかして何かを悟っているのか、それとも関心がないのかはわからない。
それでも、特別問いつめることをしない真希に、ひとみは感謝した。
次第に雲のはれた夜空に、たくさんの星々がこぼれ落ちんばかりにきらめいていた。
- 92 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:41
-
本日は、ここまで。
- 93 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/13(火) 00:46
- ちょっと括弧が抜けたりして雑になってしまったことをお詫び申し上げます。。。
>>61 名無飼育さん
いつもありがとうございます!
いやあしかしほんと褒めすぎですよw
ステキな原作にはやはりほど遠いし、表現するのが難しくて四苦八苦です。
そのわりにはこんなかんじなので…もっと精進あるのみですね(^_^;)
もっといしよしをイチャイチャからませたいというのも本音ですw
頑張ります☆
- 94 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/13(火) 10:40
- 切ないですね。二人の行く末を見守りたいです。
- 95 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/13(火) 21:41
- 原作本、今探してます〜。
近くの本屋になかなか無い...。
けど見つけるまでの過程もそれはそれで楽しいので吉!
・・・本屋を探している最中、ここのいしよしを思い出してニヤニヤ。
・・・毎日の更新チェック時、読み直してニヤニヤ。
・・・更新キタら、もうニヤニヤどころか最高にアヘアヘ。(w
いそがしい日々で、このひとときがオアシスです。ほんと心が癒されます。
柴ちゃんもきゃわ!ぁゃゃもきゃわ!みんなきゃわ!いしよし特にきゃわす!!
でもお話自体は感動的で、イイ。
- 96 名前:プリン 投稿日:2005/09/16(金) 18:57
- 更新お疲れ様です。
いしよし…イイですねぇw
原作は読んだ事ないんで機会があればw
次回の更新も待ってます。頑張ってください!
- 97 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:13
-
霧の中で
- 98 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:14
- 秋、夜空に月の美しく映える季節。
「一緒に月を見よう」
ひとみの言葉に梨華は即大賛成した。
「月がきれいに見える丘があるんだ。
だけど、そこは少し危ない、かな」
ひとみが言葉を濁らせる。
「どういうこと?」
梨華は首をかしげてその可愛らしい目でひとみを見つめる。
「…そこは、あたしたちオオカミが住む場所に近いんだ…」
月の美しい丘へ行くまでに谷をひとつ越える。
けれどその谷はオオカミがよくうろつく場所だ。
そこへ梨華を来させることは、とても危ない。
だが梨華はそんなことは苦にならないようだった。
「ひとみちゃんと一緒に、きれいな月を見たいわ。
危ないところかもしれないけど、いざってときはひとみちゃんが助けてくれるよね?」
微笑んで事も無げに言ってみせる梨華に、少々あっけにとられてしまった。
けれどすぐひとみも一緒になって笑う。
「そうだね、あたしが梨華ちゃんを守るよ!梨華ちゃんが呼んだら、すぐに飛んでいくんだから!」
まかせなさい、と、胸をどんとひとつ叩いてみせた。
- 99 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:15
- 月を見ようと約束した日。
ひとみは待ち合わせ場所である谷の近くで梨華を待っていた。
この日辺りは霧に包まれ、視界がとても悪かった。
岩の上に腰掛けると、ひとみは1人ニヤニヤとしていた。
「梨華ちゃん、あたしを信じてここまで来てくれるんだ…危ないには違いないけど、うれしいなぁ〜」
たとえ何があっても自分が梨華を守るぞと、強く決心していた。
待つことしばし、霧の向こうから近づいてくる影に気づいた。
誰だろうと警戒しながら注意していると、どうやらそれは仲間のようだった。
「よっすぃー?」
そう呼びかける声は、とても聞き慣れた姉分のものだった。
「飯田さん!?」
姿を現したのは、ひとみのよく知るオオカミの飯田圭織だった。
すらりと高い背丈、黒く長い髪の毛。
鋭い瞳に宿る言い知れぬ強い力は、どんな者も身をすくませ動けなくさせる。
もちろんオオカミ特有の耳と尾を備えていた。
- 100 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:16
- 「やぁ、こんなとこで霧の中会うなんて奇遇だね」
「そうですね、飯田さん」
ひとみよりも年上で姉分であるオオカミは何人もいたが、飯田もその中のひとりだ。
その関係性から、歳の近い友人たちと接するよりも緊張し、そして丁寧にあたらなければならない。
「最近どう?いいもの食べてる?」
「いやあ、まぁまぁですよ。飯田さんは、どうなんです?」
「フフフ…圭織はね、最近いいの獲っちゃってね〜」
少し不気味さも見える笑顔で、うれしそうに語りだす。
「あれよ、ほら、よっすぃーも大好きなやつ!!」
「ええっ!!!も、ちょ、飯田さん、それってもしや、ヤ…」
恐る恐る言うひとみを不思議そうな目で飯田が見る。
- 101 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:18
- 「どしたの?そんなおどおどしなくたってイイってば〜!
いやあ、おいしかったなぁ〜あのアヒル!」
その味を思い出したのか、うっとりとした表情で舌なめずりをする。
「あ、あ、アヒルっすかぁ〜そうっすか〜あはは!!」
ヤギが食べられたなんて、ひとみにとってはもはやあまり聞きたくはないことだ。
どうしても、梨華を意識しないではいられないのである。
「あ、そういえば、ねぇ、なんかヤギの気配がしない?ヤギ接近中かも。
獲っちゃおっかな〜」
嗅覚よりも何か強い、不思議な力で感知する力が飯田にはあるらしい。
そのレーダーが捉えたのは、きっと梨華。
「そ、そうですか!?あはは、じ、自分にはまだ少しわかりかねますねぇ〜」
このままではまずいかもしれない。
梨華はここへ向かっているのだ。ここから離れるように仕向けたほうがいいかもしれないとひとみは焦りながら思った。
「飯田さん、それじゃあちょいとそこらを見てまわります?あ、あたしも、協力しますから…
あたしはこの辺見ますから、飯田さんはあちらの方へ…」
「よっし!それじゃあ頑張って協力すっか!」
飯田は張り切って霧の中へ消えていった。
「……まずい、これはまずい…」
とにかく梨華を早く見つけることに集中しなければならない。
ひとみもまた霧の中へと走り出した。
- 102 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:18
- 梨華は霧の中をゆっくりと歩いていた。
視界が利かないことは不安だったが、自分の姿を隠す上でも好都合かもしれないと感じていた。
「オオカミとひょっこり出くわしちゃったら逃げられないけどね…」
少々自虐的な発想をしてしまったことに身震いした。
白い毛で覆われた耳が湿気でじっとりとしている。
とことこと不安定な道のりを歩いていると、向かいから誰かが歩いてくるのが見えた。
その影は2人。
梨華は立ち止まって身構えた。
いざというときは地を蹴り素早く動けるように。
次第に明らかになったその姿は、ウサギ族の2人だった。
- 103 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:21
- 「あっ、ウサギ族の!!!」
「そういうあなたはヤギ族の!!」
3人はときどき森や丘で出会う顔見知りだった。
「どうしたんですかーこんなとこで」
驚いているのかいないのかわからない様子でのほほんと話しかけるのは岡田唯。
「こんなとこで会うなんてびっくり!」
目を丸くしているのは三好絵梨香だ。
「こっちもびっくりしたわよーー!誰かと思ったぁ」
梨華は胸を撫で下ろすとふうとため息をついた。
「こんな霧の中でフラフラしてたらオオカミに襲われますよー」
「そうそう、早く帰ったほうが身のため!霧もどんどん濃くなるかもしれないし。
だからわたしたちも帰るところで…」
「そうなの…わたしはこれから約束があるから、もう少し先へ行くとこなのよ」
こんな場所でいったい何の約束をしたのかと、2人は不審な目で梨華を見ていた。
誤魔化していろいろとしゃべるのも逆効果な気がして、梨華は簡単に挨拶を済ませるとさっと逃げるように走り去った。
まさかオオカミの友達と約束をしているとは言いにくい。
「変に思われただろうなぁ…でも早くひとみちゃんに会いに行かなくちゃ!」
たまにごつごつとした地面につまずきながらも、梨華は約束の場所へとむかった。
- 104 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:22
- 飯田はヤギを見つけようと、辺りをうろうろしていた。
アヒルよりもうまいうまいヤギを捕らえることができたら、今日はその肉でパーティだ。
想像するだけでよだれが出てくるのを抑えきれない。
ニヤリとしながら飯田レーダーを張り巡らせる。
と、ヤギとは違う別の気配を捉えた。
これは仲間であるオオカミの気配。
普通のオオカミとは違う、力強いオーラ。
飯田の体に緊張が走る。
のしのしと歩み寄る重く黒い空気を纏ったその存在は、オオカミのボス格である中澤裕子だった。
気だるそうな雰囲気はいつもと同じ。
飯田の姿を見つけると、太い尾をぐんと揺らした。
「…裕ちゃん」
「おー圭織かぁ〜ちょうどいいとこで会うたわ」
「…どうして?」
「いやな、さっき…なんかちらっとヤギがいてるんを見てな」
中澤の言葉に飯田はマイレーダーの確かさを感じた。
「…いるような気がしてたんだあたしも」
「何分この霧のせいで…目も鼻もあんまりはっきりせえへんから、ここは協力せんか?」
「もちろん願ってもないよ!よっすぃーにもさっき会ってね、あいつも今ヤギ探ししてるから」
ほな行こかと中澤が目を光らせると、飯田はさっと風のように消えた。
中澤も辺りに気を配ると、今までの気だるさを一気に吹き飛ばすように気合をこめ、走った。
- 105 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:22
- 約束の岩場に今までひとみが腰掛けていたとも知らず、梨華はその影に隠れるようにしゃがみこんだ。
「ひとみちゃんまだかな……」
霧はいよいよ深く、濃い白が梨華の体にも纏わりつく。
その中を切り裂くように駆けてきた中澤。
このあたりにヤギはいやしないかと近づいてきたその場所は、梨華がいる岩のそばだった。
「・・・・・・しかしこんな日にこんなとこに来るヤギやて…何考えてんねやろな…
食うてください言うてるようなもんちゃうんか…」
その呟きを梨華の耳が逃さなかった。
オオカミが、そこにいる。
じゃり、じゃりと石を踏む音が近づいてくる。
しかし、今動けない。
無駄に気づかれるだけで走り出しても追いつかれるに違いない。
絶体絶命の文字が梨華の心をよぎった瞬間。
待ちわびていた大好きな人の声が聞こえた。
- 106 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:23
- 「中澤さーーん!!!!!」
梨華と入れ違いになったのかもしれないと思ったひとみは岩場へと引き返してきていた。
岩場の影に梨華がいるのを確認すると、それを背にかばうようにして中澤の正面へ対峙した。
「おう、よっすぃー、さっき圭織に会うたで。
ヤギ探しはどないや?」
「……あたし向こうからずっと見ながら来ましたけど、いないみたいでした。
もしかしたらもうこのへんから去ったのかもしれないです」
ひとみはそれがさも残念であるかのようにちっと舌うちをしてみせた。
「そうか…まあこんなとこにヤギがおるほうが不思議やしな」
ハハンと鼻で笑って、金に染められた髪にすっと指を通す。
「せやけど、ヤギが獲れたらええよなぁ〜アヒルやウサギもうまいけど、やっぱヤギにかなうもんはないでぇ〜。
前食うたヤギもな、なんやちっさいサイズやったけど、味はもう抜群やったで!
いや〜あのうまいこと脂肪がついてる感じがたまらんな!酒にもよー合うし!」
うれしそうにぐいっと酒をあおる仕草をしてみせた中澤。
- 107 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:24
- ひとみはとても心苦しかった。
この中澤との会話は、梨華にすべてつつぬけになってしまう。
けれどここは中澤に話をあわせないわけにはいかない。
オオカミのボス格である中澤に「ヤギとお友達になったから食べるなんてありえません」などと言えるわけがない。
ひとみにとって、梨華は大好きな人。一番大切だと思っている。
だがひとみ自身がオオカミであるということは紛れもない事実であり、
同じ一族の中でも年上であり、今まで世話になってきた中澤や飯田には逆らえないこともまた事実だった。
「まったく、ヤギほどおいしいものはないですよね!中澤さんとしては特に酒の肴にはぴったりでしょう?
あたしにもいつかおいしいヤギにぴったりの酒を教えてくださいよっ!」
ああ、梨華ちゃんは今どんな気持ちであたしの言葉を聴いているのだろうか。
もしかして、嫌われたかもしれない。
ヤギをおいしい「食料」だと。「肴」だとうれしそうに言うこのオオカミを、
梨華が好ましく思うはずがない。
- 108 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:25
- 「どうします中澤さん、ヤギをもう少し探すのですか?」
早く梨華をここから逃がしたい。
そのためには中澤をここから遠ざけなければならなかった。
「そやな…もうちょい歩き回ってみて、帰ろかー」
「はい、それではあたしはもう少しこの辺りを見てみます!!」
「おう、まぁなんかあったら吠えてや、駆けつけるしな」
「わかりました」
ぺこりとひとつお辞儀をし、ゆっくりと去る中澤を見送る。
その後ろ姿が霧に埋もれるや否や、ひとみは岩陰にいる梨華の手をとり、
月のきれいな丘へ向かう道を回り込むようにして素早く走った。
何か空気が大きく動いた。
その気配を、中澤は感じ取っていた。
- 109 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:26
- オオカミであるひとみの足に、ヤギの梨華はついていけない。
梨華に合わせて、かつできるだけ速く2人は走った。
「うおおおおおーーーーーっっ!!!」
遠くでオオカミの遠吠えが聞こえる。
これは中澤の声だ。
もしかして梨華の気配に気づいてしまったのかもしれない。これは飯田を呼ぶために吠えている。
そうとなってはこれから2人がこちらを追ってくるはずだ。
ひとみは梨華と手をつないだまま、走りに走った。
谷は険しく、油断すると谷底へと落ちてしまう。
ひとみは岩や崖に隠れて見えにくい洞窟への道を頭の中で描き、そこへ一直線に向かった。
洞窟のできる限り奥へと進むと、そのまた岩陰に2人でぴったりと身を寄せ合って隠れた。
「はぁ、はぁ…」
全力で走った2人は息も切れ切れ。しばらく言葉もないまま、呼吸を落ち着かせた。
- 110 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:27
- 「…………梨華ちゃん…あの、その…」
散々ヤギのうまさについて語った後に、梨華になんと声をかけていいか戸惑っていた。
「…………よかったじゃない、これで、ヤギをひとりじめできるわよ?」
「えっ……?」
梨華の声は、冷たかった。
- 111 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:28
- あたしをここで食べちゃえば、ひとみちゃんひとりでおいしいおいしいヤギをぜーんぶ食べれるわよ。
よかったわね」
「梨華ちゃんなんてことを!!!!!!!」
思わず怒りに声をあげてしまった。
こんなふうに言うなんて、いつもの梨華じゃない。
「…なんで、なんでそんなこと……」
怒りのあと、ひとみの心にどうしようもない悲しみが沸きあがってきた。
思わず涙が零れ落ちる。
- 112 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:28
- その様子に梨華は驚き、ひとみのその涙をそっと拭った。
「ごめんひとみちゃん!…悪い冗談だったわ」
心配そうな目でひとみの頬にそっと手をあてる。
「り、梨華ちゃぁん…」
「ごめん、ごめんね、ひとみちゃん。
わたしちゃんとわかってる。
ひとみちゃんはわたしを逃がすために、助けるためにああしてくれたのよね」
見つめあったあと、梨華はひとみをそっと抱き寄せた。
その行為がひとみの涙を余計に誘う。
「約束どおりに、ひとみちゃんはわたしを守ってくれた。
…うれしい」
子どものように泣きじゃくるひとみの背をぽんぽんとたたいてやる。
ひとみは梨華をぎゅっと抱きしめた。
- 113 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:29
- 「どうや?この険しい中走った形跡があるで」
飯田と合流した中澤は、2人が逃げた谷の道で立ち止まっていた。
「うん……」
飯田は難しそうな顔をして腕を組んでいる。
「裕ちゃん、ここまで来たけど、よりいっそう霧が深いね」
「そうやな」
「あんまり深追いしても、こっちが誤って谷底に落ちでもしたらシャレになんないよ」
「………しゃーないな。…引き返すか」
夜も近づき、危険さを増している谷ではオオカミの素早さも生かせないと判断した中澤と飯田は
根城へと戻っていった。
- 114 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:29
- 「梨華ちゃんに嫌われたと思った。仲間の前だとは言っても、あんなことを言っちゃあもう信じてもらえないかもって。
不安になった」
ひとみと梨華は肩を寄せて、固く手を繋いで座り込んでいた。
「心配しなくていいのよ。それこそわたしを信じてくれなきゃ!
どんなことがあっても、わたしはひとみちゃんを嫌いになんてならないわ」
梨華の優しい口調にひとみの心は穏やかになった。
安心して微笑み合う2人。
- 115 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:30
- 「ひとみちゃん、もうヤギは食べないのよね?」
「もちろんだよ!」
ひとみは真剣な顔で梨華を見つめ言い切った。
「梨華ちゃんに出会うまでは、そりゃ、ヤギを食べたことはあるし、おいしいと思ってた。
だけど、今はもう、ヤギの‘肉’が好きなんじゃないんだ」
そこまで言うと、ひとみはオオカミに似つかわしくない白い頬を赤く染め、けれど梨華の目をまっすぐに見つめたまま続けた。
「今は…ヤギが……好きなんだ」
- 116 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:30
- きっとものすごく照れているんだろうなと、梨華はわかっていた。
けれど、その大きくきれいな瞳をそらすことなく、ヤギを好きだと言ってくれたオオカミを、
梨華は心からいとおしく思った。
「梨華ちゃん、好きだよ。ずっとあなたを大切にしたい」
「ありがとう、わたしも、ひとみちゃんのこと大切にしたい」
ひとみが梨華の頬へそっと唇を寄せる瞬間にも、梨華はけしてひとみを恐れなかった。
2人の間の信頼が、梨華へのキスでより確かになったような気がしていた。
- 117 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:31
- その後夜もふけた頃、2人は手を繋いで月のきれいな丘へ向かった。
霧がまだ少し残る中で見た月は、今まで見ていたそれよりも何倍も美しいと思った。
そして、2人の心に刻まれた月の光の美しさが永遠であればいいと願った。
- 118 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:31
-
本日は、ここまで。
- 119 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 00:36
- >>94 名無飼育さん
読んでくださってありがとうございます。
2人の行く末を最後まで頑張って書きたいと思います!!!
>>95 名無飼育さん
いつもたくさんのお言葉をありがとうございます。
原作がなかなか見つかりませんか、自分の周りではよく見かけるので、
全国的にそうなんだと勝手に思ってましたw
こちらのいしよしでたくさん楽しんでもらえているなら、それは幸いであります☆
>>96 プリン
読んでくださってありがとうございます。
いしよしヲタな自分は原作から真っ先にいしよしを連想したものですw
頑張りますので最後までよろしくお願いしますね☆
- 120 名前:妄想屋 投稿日:2005/09/19(月) 10:46
- >>119
呼び捨てって!(^^;)
プリンさん、失礼しました・・・
- 121 名前:プリン 投稿日:2005/09/19(月) 13:49
- 更新お疲れ様ですw
いえいえいえ呼び捨てでも全然構いませんよw
この二人ったらも〜w微笑ましいですな。
次回も待ってます♪
- 122 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/20(火) 01:08
- 振り払えない不安な気持ちと罪悪感。
それでも互いの事が本当に大好きな気持ち。
月の場面も本当に綺麗でした。
うーん。頑張れワカゾー!って感じ!(w
そういえば今夜(もう昨夜か)は十六夜らしいですね。
好きな人と見るこんな月は格別美しいだろうなぁ・・・。
あ。本、見つかりました!
まだ“あらしのよるに”と“あるはれたひに”だけなんですけどね。
絵も力強くて好みだし、お話は純粋におもしろかった!
読んだ直後にイッパソの友人に勧めちゃいました。
メイとガブの様な不安定だけど確かな友情、正直羨ましく感じますね。
交信乙です。毎回のレス返しもありがとうございます。
- 123 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:31
-
どしゃぶりの日に(1)
- 124 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:35
- その日、一匹のヤギが血だらけになって帰り着いた。
「さゆっ!!!!」
帰りが遅いと心配していたヤギの絵里は、さゆみの痛々しい姿に驚き、泣きながら他のヤギたちを呼んだ。
怪我の手当てを受け、ベッドに横たわったままのさゆみが目を覚ましたのは翌日の朝だった。
絵里は夜中ずっとさゆみのそばについていたのだ。
「さゆっ!!!よかった、わかる?絵里よ?」
まだうつろなさゆみの目に自らの姿が映るのが見える。
さゆみは絵里を見つめると、目を潤ませてそっと瞼を閉じた。
その目じりから涙がこめかみを伝い、枕へと染み込んでいった。
「さゆ…よっぽど怖かったのね……傷に狼の牙が食い込んだあとがあったわ…痛かったでしょう?怖かったでしょう?」
絵里は力ないさゆみの手を包み込んで優しく語り掛ける。
「もう大丈夫よさゆ…大丈夫だからね…」
「………絵里」
細い声がさゆみの喉の奥から搾り出される。
「…なぁに?」
痛みに苦しそうなさゆみの表情に絵里は喋ることを制そうとしたが、それでもさゆみは声を続ける。
「…………たいへんなものを、見てしまったの」
- 125 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:37
- 寒さも日毎増してくる季節。
不安定な山の天気をたたえる空を見上げ、ひとみの考えることはいつものように梨華のことだった。
この間行った栗拾いは楽しかったな。
栗のとげとげに右往左往する自分を見て、梨華はものすごく笑っていたっけ。
紅葉の色の美しさなんて今まであまり考えなかったけど、梨華はもみじのあたたかい紅色を背負ってまるで紅葉の精みたいだった。
その様が可愛らしくて、今でも目の前にその姿でくるくる動き回る梨華が現れる。
何を思い出しても梨華との楽しい思い出が頭の中にどんどんと浮かんでくる。
こんなにも満たされた思いが日々積み重なっていくことがひとみはとてもうれしかった。
そしてこれからもずっとこんな日が続けばいいのにと願ってやまないのもいつものことだった。
今日も梨華との約束の時間が近づいている。
今日はどこへ行こう、それともゆっくりただおしゃべりしようか。
それを想像するだけでもこんなにもワクワクしている自分がいた。
- 126 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:38
- フフッと自然にこぼれるうれしさに笑いながら目を細めているひとみを、美貴は物陰から見ていた。
めっきり付き合いの悪くなった友人を美貴は相変わらず不審に思っていたが、今日こそはとまた誘いに来たのだった。
「よ〜っちゃんさん!!!」
ひょいとひとみの前に姿を現すと、美貴はその腕をぎゅっと掴んでまん丸になっているその瞳を覗き込んだ。
「ミキティ…どうしたの?」
梨華との想像の世界から一気に引き戻されて、ひとみは動揺を隠しながら笑って見せた。
「今日はヤギ狩りに行きましょ?」
「!!!」
ヤギを食べないと決めたひとみには酷な誘いだった。
「わ、悪いけど、今日はそんな気分じゃないっていうか・・・」
きっとまた断られるだろうと踏んでいた美貴はニヤリと笑う。
「あら?でも今回の狩りは中澤さんからのお達しなのよ〜??あたしとよっちゃんさんとごっちんが誘われてるんだから!」
してやったりという表情の美貴。
ひとみはしかたない、と思った。
ボスである中澤からの誘いとあれば、無下に断るわけにもいかない。
「わかった、行こう…」
美貴に返事をする中で、まず梨華を逃がさなければと頭の中はそれでいっぱいだった。
- 127 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:48
- 「遅いでぇ〜何しとったん!」
中澤と真希がひらひらとこちらへ手を振っている。
ひとみの頭の中は梨華のことでフル回転中で挨拶をする余裕もなかった。
「ほな今日はヤギ狩りがんばっていきまっしょい!!!!」
威勢よく掛け声をあげる中澤に続く3人。
けれどどこか元気のないひとみに、皆は気づいていたのかいなかったのか…。
「あたしはあっちの方へ行きます」
そう言って何も聞かず走り出したひとみはまっすぐ梨華との約束の場所へと向かった。
ヤギを狩りに出たということを梨華に伝え逃がさなければならない。
梨華が無事ならそれでいい、というのが念頭にあるが、できれば梨華の仲間である他のヤギもなるべく傷つかずにいてくれればいいとも感じていた。
- 128 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:49
- ヤギの大好きな草のたくさん生える丘。
梨華は約束どおりそこにいた。
ひとみは辺りに気を配りながら梨華にそっと近づいた。
「梨華ちゃん」
背後から聞こえた大好きな声に、梨華は笑顔で振り向いた。
「ひとみちゃん、こんにちは」
うれしそうに笑う梨華に、ひとみの顔は強張ったままだ。
その様子にいち早く気づくと、梨華の表情も固くなる。
「・・・何かあったの?」
「たいへんだ梨華ちゃん。これからヤギを狩りに、あたしの仲間が動き出した…!」
「ええっ!!」
話しにくそうに、ひとみはなおも続ける。
「…・・・あたしもボスから狩りに誘われたから、こうして動いて狩りのふりをしなくちゃいけない。
ああ、もちろんあたしはヤギを傷つけたりしないから!
ひとまず、安全なところに逃げないといけない」
そう言うやいなや、ひとみは梨華の手をとりさっと走り出した。
オオカミのあまり来ないところへひとまず梨華を連れて行き、様子を見てうちへ帰ればいい。
必死な様子で走るひとみの背中を見ながら、梨華も一生懸命走った。
- 129 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:50
- オオカミの大好物である梨華を、オオカミであるひとみが助けようとしている。
きっと、なんて滑稽なことだろう。
この世界では、ありえないことだ。
けれど、お互いが大切な存在となったひとみと梨華にとって、その思いはもう種をとうに超えていた。
- 130 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:50
- しばらく走ったのち、2人は深い沼のある森へと身を投じた。
「梨華ちゃん、しばらくしたらあたしが3度吠えるから、それを合図にうちに帰るんだ。
わかった?」
「うん、わかった」
柔らかな梨華の手を両手で包んだまま、真剣な面持ちで言って聞かせた。
「でもひとみちゃん、せっかくの2人の時間が…残念だわ」
視線を落とし、ぽつりと呟く。
「…ごめんね梨華ちゃん……」
謝るひとみの声が震えていた。
梨華はハッとして、ひとみの手を包み返した。
「ひとみちゃんが悪いんじゃないわ、ごめんね、こんなこと言って…」
泣き出しそうなひとみの瞳が潤む。
こんなにも、もどかしい気持ちを誰よりも抱えているのは、ひとみ自身なのだと知っていたのに。
梨華は自分のワガママな気持ちと出てしまった言葉に後悔して、ひとみをぎゅっと抱きしめた。
- 131 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:51
- 互いのぬくもりと鼓動がゆっくりと重なったあと、2人はそっと離れた。
そして、梨華の両肩に置かれたひとみの手。
名残惜しそうに何かを言いかけると、ひとみはまっすぐに梨華に顔を近づけ、軽くキスをした。
「じゃあ、合図、忘れないで」
目も合わせないで、ひとみはそう言い残して去っていった。
梨華は、自らの唇に残るぬくもりに指でそっと触れたまま、ひとみの消えていった場所を見つめていた。
「………どういうことなの…!?」
物陰から2人を見ていたものがいることには、到底気づいているはずもなかった・・・・・・。
- 132 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:51
- 「うおおおぉぉおぉ・・・・・!!」
響き渡るオオカミの遠吠えは、ひとみのものではなかった。
オオカミ同士の合図だろうかと梨華はぼんやりと思った。
そしてそのあとに続くいくつかの遠吠えの中に、ひとみの声があった。それは3度聞こえた。
梨華は約束に従って、ひとみの声を3度聞いたあとにうちまで帰った。
ひとみの真剣な表情、悲しげな瞳、唇のぬくもり、そして去り際に頬が赤くなっていたこと。
梨華にはすべてがいとおしく、それらを宝物のように心の中にしまいこんであたたかな眠りについた。
- 133 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:52
-
オオカミに傷を負わせられたさゆみの家にヤギたちが集まったのはこの翌日のことだった。
- 134 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:52
- さゆみはあちこちに包帯を巻いた状態でベッドに座っていた。
傍らに絵里が寄り添う。
話したいことがあると言ってヤギたちを集めたその寄り合いに梨華も保田も参加していた。
「オオカミに襲われたあの時、奇跡的にも殺されずに助かったのはよかったの。
ものすごく怖いオオカミにやられる!と思ったとき、別のオオカミが来て2人はそのままどこかへ行ってしまったの」
さゆみは恐怖を思い出して震える。それの肩を絵里がそっと抱いた。
「だけど、これよりももっと、衝撃的なことに、出会ったの」
集まったヤギたちを見据えて、さゆみはゆっくりと語りだした。
- 135 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:53
- オオカミに襲われる前に、私は、沼の辺りにいた…!」
どくん。
梨華の心臓が痛いほどに鼓動を強め始める。
「本当に偶然だった。そこで、ちょっと休憩していただけだったのだけど」
どくん。どくん。
「そしたら、オオカミがやってきた」
どくん。どくん。どくん。
「だけど、オオカミはひとりじゃなかった。………ヤギと、一緒だった」
- 136 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:53
- 梨華は自分の胸のあたりをぎゅうっと掴んだ。
苦しくて、息ができない。
とても不都合な状況に陥っていると、それだけはわかった。
「なんですって!?そのヤギは誰なの!?」
保田の言葉が、梨華の最後の砦を崩した。
「…………石川さん、です」
さゆみが梨華の名を力強く発した。
もうだめだと、思った。
- 137 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:54
- 「どういうことなの!?あんた、オオカミと何してたのよ!?」
わけがわからないといった様子で梨華の肩をつかんでゆさぶる保田。
誤魔化しようもなかった。
「あれは、…お友達なの……」
ヤギたちから困惑の言葉が口々に漏れる。
「オオカミと友達だって?」
「オオカミはあたしたちヤギを食らう者よ!?」
「友達になんてなれるわけない!!!」
『食う者と食われる者』
それがオオカミとヤギの関係。
それ以外の関係が結べるはずはないと、ヤギたちも、もちろんオオカミたちも思っている。
「なんですって、オオカミが友達だなんて、あんた何考えてるの!?」
保田が感情的になって梨華をせめたてる。
周りのヤギたちも口々にぼやき始めた。
「友達だなんて、……騙されてるのよ!きっとそうよ!」
「オオカミはそのうち梨華を食べようと思ってるに違いない!」
- 138 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:54
- 仲間が皆、ひとみのことを責める。
自分の大切な人を悪く言われることに耐え切れず、梨華は叫んだ。
「あの人は違う!!!あの人は、凶暴で極悪なオオカミとは違うんだから!!!!」
切ない叫びにヤギ一同は黙った。
けれど、そんなことで片付けられるはずもない。
「ねぇ、どうしちゃったの?あんたの親だって、オオカミに殺されてしまったのよ?
そんなヤツと友達だなんて、騙されてるんだって!簡単に信じちゃいけないのよ?」
思い直せと言わんばかりの保田の言葉。
梨華は泣き出しそうな状態でぎゅっと唇を噛んだ。
- 139 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:56
- 「はい!!」
唐突に手を挙げ発言したいと欲したのは、若くしてさまざまな学識のある紺野あさ美だった。
「・・・紺野、何?」
「オオカミが友達であるというならば、いっそその立場を利用するというのはいかがなものかと」
- 140 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:57
- 利用だって!?
梨華は紺野の言い出したことに食って掛かりたかった。
けれど、できなかった。
仲間を裏切っていたに違いないという思いに押しつぶされそうだった。
「オオカミと親しい仲にあるのなら、オオカミ内での事情というのを聞き出すことも簡単なはずです。
ここは石川さんに、いわゆるスパイとして働いてもらうことでその罪を償っていただこうというわけです」
ざわざわとヤギたちもその案に賛成の様子を見せていた。
オオカミの狩場、行動予定などを梨華がひとみから聞き出し、それによってヤギたちの安全を保とうという考えだ。
「どうです?石川さん」
仲間たちの視線を痛く体中に受け、梨華はこくりと頷くしかなかった。
- 141 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 15:57
-
本日は、ここまで。
- 142 名前:妄想屋 投稿日:2005/10/12(水) 16:05
- だいぶ間が空いての更新となりました。。。
>>121 プリンさん
お互いの思いを守りたい、ただそれだけの2人なのですが…。
実際にこんな恋愛をしてる人もきっとたくさんいることでしょうねぇ。。。
>>122 名無飼育さん
元本読んだのですね☆ほんとおススメな一品でしょう?
子ども向けとは思えない内容だと思います、
考えさせられる部分も多いですしね^^
ここではいしよしなので、感情移入も激しかったり(^▽^;)
- 143 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/12(水) 21:18
- 嬉しい更新キター!!!いつも読ませていただいてます。
あらしのよるにシリーズ、読み終えたのですが、ラスト色々な感情が溢れてきて目が潤んでしまいました。
ここでもあの終わりかたなのかなあ・・・?(泣
で...そう、そうなんです。
原作も確かに感動的なのですが、やはりいしよしやその他の配役が絶妙だからこそガッチリハートを掴まれてしまって、
「あー!この台詞、この娘にすごくピッタリ!」なんて、毎回毎台詞感心させられてます。
・・・最後のコンコンとか、本当に言いそうw
私にとって今年一番の純愛物語。楽しみながらがんがってくらさい。
- 144 名前:プリン 投稿日:2005/10/13(木) 16:47
- 更新お疲れ様です。
面白いっす!w
早く原本読まないと!
コンコン出た時笑っちゃったのは自分だけかな…w
- 145 名前:孤独な名無し 投稿日:2005/11/17(木) 16:44
- お待ちしております
- 146 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/02(金) 01:07
- このお話、大好きです
更新待ってます
- 147 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/03(土) 00:10
- もうだめなのかな・・・
- 148 名前:名無し飼育 投稿日:2005/12/05(月) 08:40
- 待ってます
- 149 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:46
- 突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 150 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/24(土) 01:24
- 待ってます。
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