ブルーレンスを知ってる?
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/09(金) 03:07
- ブルーレンスはとても人なつっこくて、例えばさゆみみたいな子はすぐに仲良くなる。
ブルーレンスの本名はブルー・サバンナアラジェンス・バーボット・レンソンだ。
みんな面倒くさいのでブルーレンスと呼ぶ。
さゆみに至ってはレンスのみで呼ぶ。
ブルーレンスはまるで全てを知っているよう。
それでいて何も知らないよう。
だからさゆみは彼を赤ちゃんのようにあやすこともあり、逆に彼から教えをこうこともある。
ブルーレンスは喋らない。
鳴かない。
一日の半分を寝て過ごす。
昼夜は問わない。
ブルーレンスに時間の概念はない。
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/09(金) 03:09
- 実年齢はともかく、ブルーレンスは老けている。
顔がむっくりとしている。
動きも鈍く――というか、ほとんど動かない。
寝ていない時も、座ってぼーっと空を見つめるばかりだ。
それは貫禄を思わせることもあるけれど、怠け者のようにも見える。
一度絵理がそのことについてブルーレンスを馬鹿にした。
さゆみは絵理に激怒し、その後しばらく彼女達の関係は険悪になった。
さゆみ曰く、ブルーレンスはただ「物思いにふけっているだけ」なのだそうだ。
ブルーレンスは野菜を食べる。
静かに食べる。
ブルーレンスは静かに寝る。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/09(金) 03:11
- さゆみは家に帰ると、まずブルーレンスにキスをする。
「ただいま、レンス」
ブルーレンスは表情一つ変えずそれを受ける。
ただじっとさゆみを見つめる。
しかしさゆみには聞こえる。
「おかえり」
さゆみはにっこり笑ってブルーレンスの頭を優しく撫でる。
それからその日あったことを話す。
「今日はすごいことがあったの。れいなが歌唱大会の地区予選で優勝したの!
そう、あの子だよ。分かるでしょ?うちにも何度か遊びに来たもんね。
すごく歌が上手いの。今度全国大会に出るんだけど、さゆみ、れいななら絶対に優勝すると思うな」
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/09(金) 03:12
- ブルーレンスは黙ってさゆみの話を聞く。
「そうだ、今度ここで歌ってもらおうよ。ね?未来のスターだよ!
そのうち東京に行っちゃうんだから。今のうちに聴いとかきゃ。
レンス、きっと生で聴く機会なくなっちゃうよ。ね?そう思わない?」
ブルーレンスは答えない。
眠そうな目でさゆみを見つめるばかり。
話を聞いているのかどうかも怪しい。
しかしさゆみは満足気だ。
「よし!決まり!来週はここでミニライブだね!絵理も呼んじゃお!」
それからさゆみは夕飯の用意をする。
ブルーレンスはあくびをする。
所定の場所で糞をする。
- 5 名前:ピアス 投稿日:2005/09/10(土) 07:47
- 何だか面白そうで、期待しています。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/14(水) 02:55
- >>5
ありがとうございます!もっと読んでください!
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/14(水) 02:59
- *
ブルーレンスは肉を食べない。
嫌いなのかどうかは分からない。
なぜなら、肉を目の前に出されても特別嫌な顔をするわけではないからだ。
ただ食べないだけだ。
「ねえレンス、あなたはどうしてお肉を食べないの?たまには食べなきゃ」
さゆみがそう言い聞かせても、レンスは一向に肉を食べようとしない。
さゆみは一度、なんとかブルーレンスに肉を食べさせようと、野菜炒めに豚肉を混ぜて出した。
しかしブルーレンスは料理から豚肉だけを器用に取り去り、そうでないものだけを食べたのだ。
「もお」
さゆみは呆れた。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/14(水) 03:01
- さゆみの所属するテニス部は市内でも1,2を争う弱小チームだ。
さゆみと絵理はその部で知り合った後輩先輩の間柄ではあるが、そこに上下関係はない。
運動音痴な二人はすぐに気が合い、仲良くなった。
絵理がさゆみの家に遊びに来た時のことだ。
置物のように部屋の隅に座るブルーレンスを見て、絵理は「冷蔵庫かと思った」と笑った。
絵理の小ばかにしたような言い方が気に入らなかったさゆみはそれに対して怒った。
ムキになるさゆみを面白がった絵理は更にブルーレンスを笑い、それから二人の喧嘩が始まった。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/14(水) 03:03
- ブルーレンスを間に挟んで激しい口論。
結局「猫じゃなきゃ、使えない貯金箱だね」という言葉を最後に、絵理はさゆみ宅から追い出された。
絵理が帰った後、さゆみは泣きながらブルーレンスに抱き着いた。
「ごめんねブルーレンス!きっと傷ついたよね。でもね、絵理のことを怒らないで。
本当はいい子なの。ただ最近色々あって・・・それでイライラしてたんだと思う。
だから、ね?お願い!絵理を許してあげて!」
さゆみは涙を流しながら懇願した。
ところが当のブルーレンスは、いつも通り眠たそうな目でさゆみを眺めているだけだった。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/14(水) 03:04
- さゆみの願いはおろか、絵理とのやり取りすら理解していたのかどうか怪しい。
しかしさゆみはそんなブルーレンスの覇気のかけらも感じられない目をじっと見つめた後、満面の笑みで再びブルーレンスに抱き着いた。
「嬉しいレンス!分かってくれたんだね!」
さゆみにはブルーレンスの声が聞こえたのだ。
他の誰にも聞こえない声が。
その日の夜、さゆみはお詫びの印として、ブルーレンスにごちそうを作った。
国産牛の焼肉に、いつも以上に手をかけたポテトサラダ。
ブルーレンスはサラダだけを食べた。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/01(土) 20:10
- オモシロいですね。続きが気になります。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/24(木) 01:19
- 続きが読みたいです
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 00:06
- >>11
>>12
続き書いたんで、もしまだ見てくれてたら読んでください!
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 00:07
- *
れいなはさゆみのクラスメイトだが、二人の距離が縮まるには、高校入学から四ヵ月もの時間が必要だった。
文化系のさゆみと体育会系のれいなとでは、周りに集まる仲間もまた違うタイプの人間だったのだ。
そんな二人がある日を境に急激に仲良くなる。
きっかけは音楽の時間、歌のテスト。
あまりの音痴で周りの失笑を買ったさゆみとは逆に、れいなの歌声は皆を感心させた。
次の体育の時間に、見学席でれいなと隣になったさゆみは、珍しく自分から声をかけた。
普段は、さゆみは話したことのない人間にはあまり喋りかけない。
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 00:08
- 「田中さんって歌上手だね」
れいなは急に話しかけられて驚いた様子だった。
「うそ」
「いやホントに上手いと思った。みんな言ってたよ」
「やめてよ」
「ホントだよ!さゆみCD聴いてるのかと思っちゃったもん!」
「わ、わかったよ・・」
「マジだって!田中さんは歌が!」
「も、もういーよ!もうわかったよ!なんなの!」
「さゆみに歌を教えて欲しいの」
その日の夕方、さゆみとれいなはカラオケに行き、2人で20曲歌った。
内18曲はれいなだ。
さゆみは最初の2曲を歌った時点で自分に才能がないことを悟り、早々にマイクを手放した。
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 00:09
- それから二人はさゆみの家に行った。
ブルーレンスはちょうど寝ているところだった。
「ペット飼ってんだ。いいな、れいなん家アパートだからダメなんだよね」
「レンスだったら平気だよ。だってずっと動かないんだもん」
話してみるとれいなは見た目のイメージと違って(さゆみはれいなを寡黙で大人っぽい人間だと思っていた)、
無邪気でよく喋る普通の女の子だった。
「さゆは将来何になりたい?」
「どうしてそんなこと聞くの?」
「へん?」
「特にこれと言って」
「大学とか行くの?」
「いやあ無理でしょ。さゆみバカだし・・・」
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 00:10
- 「れいなは?」
「れいなも無理」
「れいなは絶対歌手になるべきだね!だって歌上手いもん!」
「もっと無理だよ」
れいなが帰る時、ちょうどブルーレンスが目を覚ました。
ブルーレンスはまだ寝足りないといった様子で、ぐったりしながら首だけをゆっくり動かし、部屋の中を一通り見渡した。
そしてれいなを見つけると顔をピタっと止め、彼女をじっと見つめた。
「ばいばい、ブルーレンス」
れいなはそう言って手を振ったが、ブルーレンスは何の反応も示さなかった。
「無愛想なやつ。じゃあね、さゆ。また来るね」
「うん。ばいばい」
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 00:15
- その日の夜、さゆみは寝る前にブルーレンスに歌を聴かせた。
「どう?レンス。さゆみ上手い?」
歌い終わってから、さゆみは不安そうにそう聞いた。
ブルーレンスは何も答えず、ぼーっとさゆみを眺めた。
さゆみは得意げに笑ってから、ブルーレンスにキスをした。
「でしょ?さゆみだってやればできるんだから!えへへ。おやすみ、レンス・・・」
さゆみは眠る。
ブルーレンスも眠る。
二人は寝返りを打つ。
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/06(火) 01:03
- 更新お疲れさまです。
ブルーレンスがいったいなんなのか気になります。
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:20
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
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