てるてる・ランデブー
- 1 名前:豆もち 投稿日:2005/09/14(水) 03:13
- はじめまして!
こんごま書いちゃいます☆。
レス大歓迎(`・ω・´) bビシッ!
- 2 名前:1 コンビニランデブー 投稿日:2005/09/14(水) 03:21
-
1 コンビニランデブー
- 3 名前:☆ 投稿日:2005/09/14(水) 03:23
- うだるような暑さの夏の日、あたしはいつものように、
クーラーの効かないひとみの部屋で、二人で格闘ゲームをやっていた。
ひとみとあたしの実力は大体互角で、あぐらをかく脚がしびれるのも忘れるぐらい熱中してしまう。
戦況は微妙、どっちが勝つか分からない。
少し額が汗ばんできている。コントローラを握る手、ボタンを押す指が汗で滑りそうになる。
ひとみのキャラのパンチがあたしのキャラの顎をえぐって、KO。
「うがー!!」
あたしはコントローラをほかり投げて、たたんであるひとみの布団に突っぷした。
「ふー、あぶねーあぶねー」
ひとみはクーラーの風がよく当たるところに顔を持っていって、
Tシャツの首元をパタパタ動かして涼んでいる。
- 4 名前:☆ 投稿日:2005/09/14(水) 03:24
- 「今日、結構あたし負けてる気がする」
「そう?」
ひとみは、わかってるけどね、という含みを持たせながらいうのだ。むかつく。
「ちきしょー」
「じゃ約束だし、アイス買ってきて」
「約束してませんけど」
「雪見だいふくね、なかったらシャーベット系」
「話聞いてねー」
あたしは苦笑いして立ち上がると、まあいいや、とつぶやいて短パンを履きはじめる。
今までパンツだったのか、と訊かれれば、そりゃそうだ。
あっつい夏に、クーラーの効きづらい部屋で、パンツ以外のなにで居ろっていうんだ。
「飲み物もついでに買ってくる」
「あー、じゃダカラも買ってきてダカラ」
「はいはい」
玄関の端に転がっていた、ひとみのあんまり可愛くないサンダルをつっかけて、
あたしはうだるような暑さと、まぶしい光が射す、外の世界へ飛び出した。
- 5 名前:☆ 投稿日:2005/09/14(水) 03:25
- 〜
しかし、あっつい。
予想よりはるかに暑い世界に、あたしは正直げんなりなった。
アスファルトの上に広がる街の景色が、時々蜃気楼みたいに揺らぐのだ。
ひとみんちからコンビニまで、そう遠くないとはいえ、
だんだんと不機嫌になってくる。
電話ボックスに無造作につけられてる、キャッシングのチラシにまで腹が立つ。
手のひらで、目の上にひさしを作って、まぶしさをまぎらわす。
茶色の髪に太陽の光があたって、熱を帯びていくのがわかる。
あたしは歩道の柵を飛び越えて、日陰になってる側の歩道に移った。
小学生の男の子二人が、はしゃぎながら横をすれ違っていく。
時間は三時ぐらいだっけ。もう下校か。
平日の昼下がりでもこうしてのんびりとアイスとか買いにいける、
大学生って身分はほんとお気楽だね。
ひとみはひとみでフリーターだから、それもまたお気楽だけど。
- 6 名前:☆ 投稿日:2005/09/14(水) 03:26
- 点々と日陰を作る街路樹からセミの声が響いていて、
それがまたいっそう暑さを感じさせる。
もう限界かも、というぐらいになって、
やっとで青い帯のオアシスが、いやコンビニが、交差点の端に見えた。
額の汗をぬぐうと、少し足を早くして、あたしは冷房の効いたオアシスに飛び込んだ。
冷たいプールに飛び込んだ、とまではいかないけど、
ひんやりした空気で涼みながら、あたしは飲み物を探す。
500ペットのお茶と、ひとみがいってたダカラを、でかい扉の冷蔵庫から取り出す。
パタン、と扉が閉まる、この音があたしはけっこう好きだ。
アイスのところへ行って、ケースの中をがさごそ探る。
雪見だいふくはすぐ見つかったけど、あたしの欲しいアイスの実がない。
あんまり長くケースを開けてるのも悪いので、焦って探す。
あった。奥のほうにひとつだけ残ってた。
つかんで引っ張ったけど、底の氷とくっついてるのか、なかなか取れない。
- 7 名前:☆ 投稿日:2005/09/14(水) 03:26
- 足を踏ん張って、アイスをつかむ右手に力を入れる。
ガガガッ!
氷が削れてアイスが取れた……けど、勢いづいた右手の肘で、
どがっ!
後ろを通り過ぎようとしていた女の子を思い切り殴ってしまった。
「すいません!」
私がとっさに謝った目の前、コンビニのお菓子棚の下で、制服姿の女の子がうずくまる。
お菓子が通路に撒き散らされる中、女の子はお腹を押さえて、うう……とうなっている。
セーラー服のスカートからはだける太ももがやたらとセクシーだけど、
今はそういうことを気にしてる場合じゃない! 助けなきゃ!
「だ、だいじょうぶ?」
弱々しい声で女の子が、目をしぱしぱさせながら、言った。
「コンタクトが……ない」
なんですと? コンタクト?
あたしは足を動かさないようにして見回す。
散乱するお菓子。コンビニの店員さんが近づいてくる。
店員さんに、コンタクト落としたらしいんですいませんけど足元、といい、
あたしもそーっと探しながら、お菓子類を棚に戻し始める。
店員さんも頷き、足元を気にしながら、お菓子類を棚へおさめていく。
「あ、これ」
そう店員さんが言って、そっと指でつまんだ透明のものは、
へにゃっとなったソフトのコンタクトレンズだった。
- 8 名前:☆ 投稿日:2005/09/14(水) 03:27
- 〜
あたしとその女の子は、コンビニ近くの公園に座っていた。
まだあたしの買い物は済んでなかったけど、
かたっぽの目がぼやけたままの女の子は、
コンビニの店内ですら、ふわふわと歩いていて、
あたしは殴った張本人でもあるので、いたたまれなくなってしまったのだ。
だから、なんとなく付いて来てしまった。
女の子はバスで家まで帰るらしくて、
そのバス待ちの間、停留所は日陰なくてあっちいので、
公園の広葉樹が陰を作るベンチで待つことにしたのだ。
聞いたら、降りるバス停から家まではすぐらしい。
だったら大丈夫かなと思った。
「ほんとごめんね」
「いえ、大丈夫です」
「コンタクト、高いんじゃないの?」
「使い捨てのなんで大丈夫です」
女の子は、にこっと笑った。綺麗に膨らんだ胸の下を左手で押さえたまま。
- 9 名前:☆ 投稿日:2005/09/14(水) 03:28
- 「あたしの手、どこあたっちゃった?」
「えっと、みぞおちに」
「うわー、ごめん」
「あんな綺麗に決められたの初めてです」
女の子はちょっと悔しそうだ。
「きめられた?」
「あ、私、空手をちょっとやってて」
「へえー」
意外だった。そんな風に見えない。
どっちかっていうと雰囲気もほんわかしてるし、顔も丸っこいし。
目は大きいけど、人を睨むような感じじゃないし。
……って、顔見すぎた!
女の子もなんか照れて、目線はずしてるし。
そんなこんなしてるうちに、バスの音がした。
あ、きた、と言って女の子は立ち上がると、じゃあ、と短く言って、バスのほうへ走っていく。
なんどかよろけそうになってて危ない、けど、バスにたどり着いた。
- 10 名前:☆ 投稿日:2005/09/14(水) 03:29
- あたしはバスに女の子が乗ったのを確認すると、
コンビニに戻ってちゃかちゃっと目的のもの買って、
ひとみの家までまた暑い中戻っていった。
「おそい!」
あたしが玄関の扉を開けてすぐ、ひとみにそう言われた。
ひとみは、読み古したマンガを読んでいたみたいだ。
「ちょっとトラブってさ」
「ケンカとか?」
「違うって。けど殴っちゃった」
「はあ?」
あたしはかくかくしかじか、ひとみに事情を説明する。
- 11 名前:☆ 投稿日:2005/09/14(水) 03:32
- 「とまあそんな感じ」
「その子、なんて名前?」
「知らない。聞いてないし」
「なーんだ」
「ただ、なんか可愛い子だった」
「聞いとけよバカ!」
ひとみはあたしが、可愛い子、と言った瞬間テンションが上がった。
「そんな気回らなかった」
「あーあー」
「なんだよその残念そうなのは」
「ひと夏の恋が終わったな」
「始まってないし」
そんなこんな言いながら、あたしとひとみはゲームのコントローラーを握る。
再戦だ。
今日はひとみに勝てそうにないな、と思いつつ、
そんな強くはないけど動きの面白いキャラを適当にキャラを選びながら、
「あ、でも」
とあたしは言った。
「ん?」
「その子、脚がすごいセクシーだった」
「羨ましい話だ」
あたしらは、適当に言葉をつないで、そのまままた格ゲーに没頭していった。
その日は、そんな程度の、夏の日だった。
- 12 名前:2 ケーキランデブー 投稿日:2005/09/18(日) 00:33
-
2 ケーキランデブー
- 13 名前:2 ケーキランデブー 投稿日:2005/09/18(日) 00:34
-
まだ夏休みだってのに、今日は大学の夏季特別講座をうけにきた。
めんどくさいけど、これを受けると単位がちゃんともらえるのだ。
単位がアヤシイあたしは、これは受けておこうと食いついた。
というか、食いつかされた?
同じクラスの友達、梨華ちゃんに、
「真希ちゃん、これ受けようよ。単位取りやすいらしいし」
「んー……」
「わたしも一緒にやるから、いこ?」
「ん、はーい」
ってなって、夏休みにわざわざ講義を受けてるのだ。
だけど、程よいクーラーと、先生の声で、
あたしは眠くなってしまう。
・・・・・・
・・・・・・・・・。
- 14 名前:2 ケーキランデブー 投稿日:2005/09/18(日) 00:34
- 「真希ちゃん、起きて」
同じクラスの梨華ちゃんが、寝ているあたしの肩をゆすった。
「……んあ?」
「講義終わったよ」
「あー超寝てた」
いつのまにか寝てた。
机の上によだれの後がある。
ボケーっとしたまんま、寝癖のついた髪をてけとーに直して、
梨華ちゃんと一緒に、学食へ昼飯食いに行った。
梨華ちゃんはこの二流大学には珍しいお嬢様で、
なんつーか気立てがよい、っていうのかな、そういう感じ。
いまもあたしの目の前で、上品にチョコチョコと昼飯をいただいてる。
まあちょっと抜けてて天然ぽいけどw
またそこがなんかカワイイ。
- 15 名前:2 ケーキランデブー 投稿日:2005/09/18(日) 00:35
- 「真希ちゃん、このあとどうする?」
なんとなく梨華ちゃんの顔を眺めていたら、突然聞かれて驚いた。
「ん、んあ、ガッキーんとこいこっかな」
ガッキー、ってのは新垣っつって、あたしの友達の女子高生だ。
高校生のくせに、結構いろいろ知ってて、頭はいい感じ。
あたしはよく暇つぶしにガッキー家へ遊びにいってる。
「そっかー」
梨華ちゃんは少し残念そう。
「どったの?」
「あのね、新商品食べてもらいたいなって」
新商品つうのはきっと、梨華ちゃんが働いてるケーキ屋さんのあれだ。
梨華ちゃんは、そのお嬢様ぷりを横においとけば、
いたって成績とかスポーツとかふつーのよい子なんだけど、
菓子作りだけは、なんだかすごいのだ。
何とかーレ? とかいう大会で、高校生のとき賞を取ったこともあるらしい。
- 16 名前:2 ケーキランデブー 投稿日:2005/09/18(日) 00:35
- 「食べに行く」
あたしは笑顔で答えた。
「だいじょうぶ?」
「うん、ガッキーとは別に約束してないしw」
「ありがと」
つーこって、梨華ちゃんと一緒に、梨華ちゃんがバイトしてるケーキ屋にいくことにした。
ケーキ屋は大学からそう遠くないところにあって、
あたしと梨華ちゃんは、大学の校門からなだらかに続く下り坂を、
てくてくと歩いていった。
大学の校門から駅へと続くこのペニー通りには、
食べ物屋に服屋など、いろいろな店が並ぶ商店街にもなっていて、
そこに建つ小さな店が、梨華ちゃんが働くケーキ屋さんだ。
「ついたついた」
梨華ちゃんは、うきうきした感じでそういうと、
ケーキ屋『マンジャーレ』の大き目の、童話に出てきそうなメルヘンなドアを、
よいしょ、っと両手で開いた。
- 17 名前:2 ケーキランデブー 投稿日:2005/09/18(日) 00:36
- そんな広くない店内には、梨華ちゃんが作ったケーキのショーケースがある。
素人のあたしにはよくわかんないけど、苺とかモンブランぽいのとかあって、
かなりおいしそうだ。
テーブルとチェアも窓際においてあって、腰かけて外の景色を眺めながら、
ケーキを楽しめるようになっている。
あたしはチェアにどっかりと腰を下ろすと、店内を見回した。
あれ、、、、いない。
「今日、道重ちゃんはー?」
とあたしは、すでにパティシェスタイルに着替えて厨房を掃除している梨華ちゃんに聞く。
「休みだよー」
「なーんだ」
「なに?w 残念なの?w」
「いや、面白いじゃんあの子」
「かわいいしね」
「かわいいのもある」
- 18 名前:2 ケーキランデブー 投稿日:2005/09/18(日) 00:36
- 道重ちゃんてのは、道重さゆみっていう女子高生で、梨華ちゃんの店でバイトしてる子だ。
かなりカワイイ店員さんで、商店街を通り過ぎる男子学生が、
ついつい店をのぞいてしまうぐらい。
あたしはひそかに道重ちゃんを気に入っていた。
梨華ちゃんにはばれてるみたいだけど。
……っていってもそういうんじゃないよ!
道重ちゃんの店員姿をボーっと想像しているうちに、梨華ちゃんが新作ケーキを持ってきた。
「はい、どーぞ」
「お、おおどーもどーも」
不意を突かれたあたしは、丁寧にお礼を言ってしまった。
目の前に置かれたケーキは、黄色い星型をしている。
「最近流行のマンゴーで、ケーキ作ってみたの」
見た目もかわいく香りもよくて色も美味しそう。
あたしの手は勝手にフォークへ伸びて、星をぶっさした。
そのまま口へ運ぶ。
- 19 名前:2 ケーキランデブー 投稿日:2005/09/18(日) 00:36
- 「どう?」
梨華ちゃんが聞いた。
「……うめえ」
「よかったー」
あたしはこういう時遠慮なく意見言うほうなんだけど、
梨華ちゃんのケーキはほんとに美味しいので、うまい、としか言ったことがない。
あたしの好評ぷりに満足したのか、梨華ちゃんはレジんとこでなにやら書いてる。
あたしは勝手に、ショーケースの上においてあるポットから、
あったかい紅茶をかわいらしいカップに注いで、
ふーふー冷ましながら飲んだ。
- 20 名前:2 ケーキランデブー 投稿日:2005/09/18(日) 00:37
- 梨華ちゃんはなにやら集中し始めたらしく、あたしがいることも気にかけてない様子だ。
あたしは梨華ちゃんのこういうところもなにげに好きだ。
あたしも気い使わなくていいし。
「梨華ちゃん、あたし行くね」
「うん」
「おいしかったよ」
「ありがと」
短い言葉で、下を向いたまま答える梨華ちゃんに、くすっと笑ったあたしは、
マンジャーレの扉を開けて外へ出た。
そろそろガッキーが、高校から自分ちに帰ってきてる頃だ。
駅の北側にはあたしと梨華ちゃんが通う大学があるんだけど、
ガッキーんちは駅の南側だから、ここからだと遠いちゃあ遠い。
まあでもあたしは、なんか、その散歩がてらの遠い道も嫌いじゃないのだ。
久しぶりに行ってみっかなー。
- 21 名前:豆もち 投稿日:2005/09/18(日) 00:38
- 今日はここまでです。
こんこんが大分のいちゃってます! 今回出てないし!
早く話を軌道修正しないと……(何
こんごまなのに……┐(´ー`)┌ マイッタネ♪
しかも次回は新垣家っぽいので(ry
コンコンのかわりといっちゃあなんですが、(・ω・`彡 )зアザラシ...。
ではまた次回!
豆もちでした〜。
- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/19(月) 00:42
- 更新おつかれ様です
この喫茶店はまさか・・・
もしそうならこっちの話も好きでしたからまた出会えて嬉しいかも
- 23 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/25(日) 17:55
- こんごまだーw
大スキなカプなんでうれし!
これからどう絡んでくるかマジ楽しみw
次の更新待ってますよー
- 24 名前:3 ミュージックランデブー 投稿日:2005/09/28(水) 06:12
- 3 ミュージックランデブー
- 25 名前:3 ミュージックランデブー 投稿日:2005/09/28(水) 06:13
- 大学最寄の駅を南口から北口へ通り抜けて、
あたしは駅北の住宅街が広がる地域へやってきた。
このへんはそこそこ金持ちが住んでいそうなところだけど、
ガッキーこと新垣の家も結構大きな家だ。
でかいガレージには鉄柵がついていて、玄関前の門も大きい。
あたしはてこてこ歩いて新垣家にたどり着くと
ポンピーン、と呼び鈴を押した。
しばらく間が空いて、呼び鈴のスピーカーから、はい、と声が聞こえた。
ガッキーの声だ。
「後藤でーす」
――あ、はいはーい、どうぞー。
ガッキーが黒くて頑丈そうな扉を開けて出てきた。
「後藤さん久しぶりっすね」
「そだね」
「まーどうぞどうぞ」
掃除のゆきとどいた広めの玄関に入り、丁寧に靴をそろえ、
これまた綺麗にされてるひんやりした床板に足を下ろした。
「部屋行っててください。飲みもん持ってきますんで」
「お茶がいいな」
「ありますよー」
- 26 名前:3 ミュージックランデブー 投稿日:2005/09/28(水) 06:14
- なんども来たことのある新垣家の長い廊下をひたひた歩き、
階段を上って2階に行き、8畳ほどのガッキーの部屋に入った。
相変わらず部屋を綺麗にしてる。
女の子の部屋にしては可愛いものがなく、殺風景だ。
大き目のベッドと机、テレビと本棚、コンポとパソコン。それぐらい。
パソコンはつけっぱなしになっていて、なにやら表のような画面に、
横書きの棒グラフのようなものが出ていた。
これは、えーと、あれだ。まあガッキーが部屋にきたら説明してもらお。
とかなんとかしてるうちに、ガッキーがお茶を持ってきた。
「あー、今作ってたんすよ曲」
「あたしが頼んだやつ?」
「とはまた別なんですけどねー」
とガッキーは言って、表みたいな画面をマウスでカチカチいじりだした。
あたしにはよく分からないけど、これで曲が作れるらしい。
ピアノロール、というピアノが横になったものが画面左にあって、
棒が並んで曲になるらしい。よく分からない。
「なんか、よくわかんないね」
「いいんですよ。後藤さんがする映画の話も、私にゃあんまわかんないですから」
「ガッキー、映画見なさすぎだもん」
「映画興味ないっすー」
- 27 名前:3 ミュージックランデブー 投稿日:2005/09/28(水) 06:16
- ガッキーは遠慮なくそう言い放ち(こういうところが気楽ですき)、
パソコンのマウスを持ってカチカチやりだして、
「そういえば、出てくれる人決まったんですか?」
と聞いた。
出てくれる人ってのは、あたしの撮るやつに出演してもらう人ってことで、
……あれ? 説明してなかったっけ?
あたし後藤真希は、大学てきとーに通いながら、音楽のPVみたいな短いの撮ってて、
それに出てくれる女の子をずっと探してたとこだったんだ。
「梨華ちゃんとこで働いてる子でね。道重ちゃんていんだけど、
すっげーかわいいんだ」
「へーどんな感じっすか」
「背は高めで顔丸っこくてー、なんかお姫様な感じ」
「あー後藤さん、丸顔好きですもんね」
「そこだけかよ!」
「だって好きでしょ」
「うん」
- 28 名前:3 ミュージックランデブー 投稿日:2005/09/28(水) 06:16
- 一通り会話を終えると、ガッキーはパソコンに集中しだした。
あたしは会話もなくなったので暇になってテレビをつけた。
8chが映ってた。
背がちっちゃくて顔パンパンなアナウンサーが喋ってた。
「この人顔パンパンだよね〜」
ガッキーは一瞬だけテレビを見ると、またすぐ、パソコンに目を戻した。
あたしはまたぼーっとテレビを見る。
ガッキーが作業を続けながら、ボソッと言う。
「丸顔じゃないんですか、その人」
「え、チガウチガウ。パンパンじゃんこれ」
「よく違いがわかんないんすけどw」
「顔だけが丸くないと丸顔とは認めない!」
「はいはい」
- 29 名前:3 ミュージックランデブー 投稿日:2005/09/28(水) 06:18
- って、いつものようにあしらわれた。
ガッキーはカタカタっとキーボードを叩くと、
「じゃ後藤さんの曲かけますね」
といって、スピーカーのボリュームを上げた。
あたしはテレビをポチンと切る。
頼んでいたとおりに、ピアノとベースとドラムだけのシンプルな音色でつくられた、
アップテンポな曲が流れ出した。
「おー、いいじゃん」
「イメージどうです?」
「さすがだよガッキー。なんかジャズっぽい」
「テンション多めにつけてみました」
「あーそういえばテンション高いかも」
「いや、違うんですけど……まあいいっす」
ガッキーはまたカタカタとパソコンをいじくりだして、
あたしは家に帰ることにした。
「じゃ帰るー。メールで送っといて」
「はーい」
ガッキー家を出ると夕方だった。
夕暮れで茜色に染まった住宅街は、絵本の中の世界のようで、
あたしはウキウキした気持ちになったのだった。
ちょうどお腹も空いているので家に帰ります。
- 30 名前:豆もち 投稿日:2005/09/28(水) 06:26
- 更新しました▼・ェ・▼
>>22
例のアレの話にオマージュでリスペクトでラブですm9(・∀・)ビシッ!!!
つまり設定パ(銃声
いやーほんとにあの話大好きなんですよー(*´∀`*)ポワワ
遠く及ばないけど、いい雰囲気で書けたらなと思ってます。
喫茶店のシーン増やそ(マテ
>>23
モキュ━━━━(゚∞゚)━━━━━!!
レスありがとうございます!!
アマアマなこんごまにしたいと思っています!(*゚∀゚)=3ハァハァ
紺野もうちょっと出てこないんですけど……( ̄□ ̄;)
お楽しみに!!
- 31 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:59
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 32 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:08
- 4 ビリヤードランデブー
- 33 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:09
- 電車乗り継いで、あたし、後藤は自分の家に帰ってキマシタ。
台所で母さんが、のほほんと夕飯を作っている。
椅子の上に兄ちゃんの鞄がどかっと置いてあるのを見つけた。
「兄ちゃん帰ってんの?」
「さっき帰ってきたよ。卒論だいたい書けたって」
「部屋いる?」
「いるんじゃない」
兄ちゃんはあたしの2個上で、大学の4年生だ。
いわゆる、一流大学。
あたしは、二流大学。
まあでもそれはいいや。別に気にしてない。
兄ちゃんは昔から頭がよくて、よく勉強も教えてくれてた。
こうなるのは自然な流れってやつなのだ。
- 34 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:10
- あたしは階段をトントンと上って、兄ちゃんの部屋をノックした。
返事も反応もない。戸を開けた。
ゆったりした洋楽が部屋に流れている。
兄ちゃんはベッドに寝っころがってて、あたしに気付いた。
「お、真希。ただいま」
「おかえり」
「なんかひっさしぶりに家帰ってきたら変な感じだな」
「そんなもんかね」
あたしは兄ちゃんの勉強机の椅子に腰掛けて、適当に、机においてある本の中から、
『中東地域における政治的バランサーとしての経済介入』
ていうのを抜き取って開いてみた。
当然、何書いてあるかよくわからない。
- 35 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:11
- 「わかんねー」
とボソッと言ったら、
「俺もあんま分かってねえw」
と兄ちゃんが笑って、洋楽のCDを止めた。
兄ちゃんはもう一回寝そべって背伸びをすると、
「飯くおっかな、もうできてた?」
と聞く。
「あーもう出来てんじゃない」
「おし。あー、真希、飯のあとって暇?」
「暇」
「ビリヤードしに行くか」
「いく!」
「すげ反応いいな」
「前面白かったもん」
「あんときやたら真希が強かったんだよなー」
「兄ちゃん、やってるって言ってたわりに弱かったよね」
「加減したんだっての」
「へーそう」
「今日コテンパンにしちゃうから先に謝っとくわ。ごめんな、ほんと」
「ま、じゃ、ささっと食べて、行きますか」
「無視かよw」
- 36 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:12
- 台所へ下りてったら、ちょうど夕飯が出来ていた。
父さんは、まだ会社から帰ってきてない。いつものこと。忙しい人だ。
ここんとこ父さんと話してない気がするな。
仲悪いわけじゃないから、今度、くだらない親父ギャグに突っ込みいれてあげよう。
ちゃかちゃかっと食べて、兄ちゃんの自転車の後ろに腰かけた。
玄関から兄ちゃんが出てくるまで、脚をぷらぷら。
自分の自転車は、って?
あたしの自転車は駅前でパクられてしまって、出てくるの待ち。
つっても出てこないだろうから新しいの買うことになるんだろうな。
兄ちゃんがビシッと髪を決めて出てきた。
あたしはそれを見て突っ込む。
「そんな決めなくてもいいじゃん」
「この方が調子でるんだよ」
「へー」
とかなんとかやり取りしながら、兄ちゃんが自転車に腰かけた。
あたしは兄ちゃんの肩に両手を置いて、パンパンと叩く。
「よーし、ゴー!」
「うしゃ」
とか変な掛け声をして兄ちゃんがこぎ出した。
- 37 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:12
- ビリヤードができるとこまではそんなに遠くない。一駅分ぐらい。
叔父さんがやってるバーにビリヤード台があるのだ。
どんと設置してあるのはいいんだけど、思ったよりもお客がプレイしてくんないらしい。
だからあたしら兄弟で行ってこないだやったときは、叔父さん嬉しそうだった。
いちおう親戚ってことで、料金は一人分でいいよってことになってる。
きもちいい夜風があたしの脚をかすめていく。
兄ちゃんは力を入れてこいでて暑そうだけど、乗ってるほうもそれほど楽ではない。
バランス取るのがなかなかむつかしい。特に知らないもの同士だと。
信頼感がないと、安心して乗ってられないし、こぐ方も気が気じゃないものだ。
その点あたしらは兄弟だし気も合うし慣れたもんだから、あたしはどっかり座ってる。
横を流れていく風景を、電信柱とか人んちとかを眺めてたら、
女の子が歩いて……あれ、中学のときの同級生の友里!
「ゆり!」
兄ちゃんが、キュッ、と自転車を止めた。
「あれ、まき! ……あこんばんわ」
友里はあたしに気付いて、そのあと兄ちゃんに気付いて挨拶した。
兄ちゃんも軽く頭を下げる。
- 38 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:16
- あたしは自転車の後ろから降りた。
「久しぶり〜」
「だね〜」
「どこいってたの」
「ちょっとコンビニ。真希は?」
「ちょっとビリヤード」
「へえいいなw」
友里は、あたしと兄ちゃんを見ながら言った。
「あ、友里、メアド変えた?」
「え、変えてないよ。前といっしょ、yuripoo〜のやつ」
「誰かわかんない人からメアド変えましたってメール来ててさw」
「私だったらちゃんと書くしw」
「だよね〜」
「うんw そんじゃまたね」
友里は、兄ちゃんに軽く頭を下げると、てくてく歩いていった。
- 39 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:17
- あたしはまた後ろに乗っかって、兄ちゃんが自転車を漕ぎ出す。
「中学の友達?」
「うん」
「見たことあったかも」
「友里ね、兄ちゃんにあこがれてたんだよ」
「えマジで?」
「嬉しそうな声出すなw」
「急に可愛く思えてきた」
「はいはい」
「苗字なに、苗字。なに友里ちゃん?」
「知らなくていいし。ていうか友里、彼氏いるし」
「なんだよー」
「兄ちゃんだって彼女いるくせに」
「あー、別れた別れた。フラレタ」
「うそ、いつ?」
「一ヶ月ぐらい前か」
「聞いてないし」
「言ってねーし」
「綺麗な人だったのに〜」
「言うなバカ!」
「んでさ、なんてって振られたの」
「なんでも、社会人で好きなやつができたんだと」
「ありゃ」
「リーマンは全員くたばれ!」
「自分だって来年なるくせにw」
「いいんだよ、今のリーマン全員しね!」
「あっはっは」
とかやってるうちに、叔父さんのバーに着いた。
- 40 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:19
- カラコローン、とバーに入る。
「いらっしゃ、お、なんだお前らか」
「こんばんわ。ビリヤード空いてる?」
「残念ながら、空いてる」
「よっしゃ」
兄ちゃんと二人てくてくとビリヤード台のほうへ歩いていくと、
「入ってきたとき、一瞬カップルかと思ったよw」
と叔父さんが言った。これはいつもいうのだ。
「はいはい」
とあたしもいつもどおり返す。
あたしと兄ちゃんはあんまり似てない。
だから、一緒に遊びに行ってるとカップルに間違われることが多い。
それはいやじゃない。
兄ちゃんはイケメンてわけじゃないけどけっこうモテてた。
兄ちゃんが進学校の高校に受かったとき、
友里以外の、何人かの女の子から、お兄さんにおめでとうって伝えて!
とか、よくわからない頼まれごとをされたこともある。
(友里は恥ずかしがりなので、そんな頼みごとはしなかった)
- 41 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:19
- なんやかんやで二人っきりの兄弟だし、あたしには優しいし、
わからないことも教えてくれるし、仲良しだ。
ビリヤードのルールもちゃんと教えてくれた。
あたしは9個のボールを兄ちゃんに習ったように、9を真ん中にしてひし形に置く。
兄ちゃんはキューの先をきゅきゅっとチョークで擦って、すっと構える。
フォームはいい。
フォームもいい、かな。わかんないや。
あたしはまだブレイクがしっかりとできないので、兄ちゃんに先番を譲っています。
兄ちゃんは、フォームかっこいいし、すごいショットも決めるんだけど、
大事なとこで、正直、ポカした、じゃなくてポカすることがたまーにある。
までもさすがにブレイクは、ガッコーン! と綺麗に決めた。
いくつか玉が入った。青い玉が見当たらない。
2番と何番かが入ったみたいだ。
玉が入ったので続けて兄ちゃんのショット。
白玉と、黄色い1番玉と、赤い3番玉が直線に並んでて、良いかたち。
「まっすぐ?」
あたしが聞いた。
- 42 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:20
- 「ちょっとずれてる。こういうのがムズイ」
とかなんとか低く呟きながら、兄ちゃんはスーッとゆっくり白玉を突いた。
ゆっくりと黄色い1番に当たり、それが赤い3番に当たる。
3番がガコッとポケットに入り、1番も入った。
「ラッキーショット」
兄ちゃんは嬉しそうに言って、キュー先にチョークをつける。
今日は兄ちゃん、本調子らしい。
次々と玉を落としていく。
これはあたしの出番ないかもな〜とか思ってキューをぷらぷらさせていると、
台の上に6、8、9番が残った状態であたしに手番が回ってきた。
「なんじゃこりゃ」
あたしは台を見て、思わず呟いてしまった。
狙うのは6番なんだけど、8番9番がしっかり邪魔してる。
まっすぐ狙えないときは壁に跳ね返して当てるんだけど、
それも角度がむつかしい。
- 43 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:21
- 「狙うならここらへんか」
兄ちゃんは壁の真ん中あたりを指差していた。
あたしも素直にそこら辺を狙う。
息を短く吐いて、スコン、と玉を突いた。
壁に当たった白玉は、どの玉にも当たることなくまた壁に当たって、止まった。
あたしはうなだれる。
兄ちゃんは、あたしの突いた白玉をすっと手に取って、
「ここでフリーショットはおいしい」
と、6番、8番をあっさりポケットに沈めて、
少し難しそうに見えた9番もポケットにインさせてしまった。
「うし」
と兄ちゃんは言って、ビリヤード台近くのソファに座った。
あたしもその横に座る。兄ちゃんのほうを見た。
「兄ちゃん、なんか前よりうまくなってない?」
「そう?」
「そんな気がする」
「前負けたからさ、あれからまた練習はしたけどね。みっちり」
「そんなのしてくるな」
「前油断して負けたのはけっこうショックだったからな……勝ててよかった」
「ちぇ」
「叔父さーん、ソルティドッグ頼む」
兄ちゃんは調子こいてカクテルなんか注文しだした。
あたしも何か飲みたかったけど、オレンジジュースにしておいた。
次勝つためには、アルコールなんかでぼーっとしていられないのだ。
- 44 名前:4 ビリヤードランデブー 投稿日:2005/12/23(金) 06:23
- ……と意気込んだあたしだったけど。
それから三戦三敗。しかもまったく勝てそうな感じなし。
あたしは兄ちゃんに、まいりました、と負けを認めた。
兄ちゃんは嬉しそうだった。単純なやつめ。
ビリヤードを片付けて、兄ちゃんと二人、バーカウンターに腰かけた。
兄ちゃんはビールとかウィスキーとかなんか飲んで、
あたしはリキュールベースのカクテルを一杯飲んだ。
兄ちゃんが叔父さんと小難しい世界情勢の話をしている中、
カウンター近くにあるダーツでヒョコヒョコ遊んだ。
兄ちゃんは卒論終わったってのもあってか、いっぱい飲んだ。
もともと酒には強いのに、それでも酔ってしまったみたいだ。
帰りは、あたしが自転車を押して、兄ちゃんと並んで歩いた。
ちょっとふらつきぎみの兄ちゃんを心配しながら、兄ちゃんの難しい話に適当に相槌を打つ。
「アーミテージの発言はさ、あるべき未来の――」
「ほうほう」
(誰だろ?アーミテージって)
「李登輝の決断は、まだ国内でも――」
「へえ〜」
(リトウキ?)
「結局ブレアのやりたかったのはだ、あの情勢の――」
「なるほどねぇ」
(ブレア、ってどっかの首相だったかな……)
とかなんとかやってるうちに家についた。
兄ちゃんが部屋に入ってベッドに転がったのを確認してから、
シャワー浴びて、ブログ書いて、ビタミンC摂って、あたしも寝た。
- 45 名前:豆もち 投稿日:2005/12/23(金) 06:26
- 更新しましたヽ(´ー`)ノマターリ 。
- 46 名前:豆もち 投稿日:2005/12/23(金) 06:27
- 次回、『5 プリンセスランデブー』
道重と絡みます。たぶん。
- 47 名前:豆もち 投稿日:2005/12/23(金) 06:31
- >>31
ご丁寧にどもm(__)m
小説大賞ですかー。
自分のも一票でももらえることができたら、嬉しいな……。
- 48 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/06(火) 18:44
- もーだめかも知れんけど
これ好きだから続けてほしいなー
- 49 名前:豆もち 投稿日:2006/08/11(金) 23:35
- >>48
嬉しいこと言ってくれますね!;゚(´△`)゚;
ではあなたのためにも続けたいと思います_〆(・_・。)^ カキカキ
いつ次のせれるか未定ですがヽ(´ー`)ノマターリ 待ってもらえると嬉しいです☆
- 50 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/19(月) 20:17
- しつこくまだ待ってるぞー
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