先輩はミラクル☆
- 1 名前:明太スパ 投稿日:2005/09/14(水) 03:28
- 久住小春さん主役の話が見つけられなかったので、自分で書いてみようと思いました。
現在のメンバープラス卒業メンバーの一部が登場という形になると思います。
登場人物の学年は結構変えてます。
学園物です。
- 2 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/14(水) 03:31
- 「小春日和」
- 3 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/14(水) 03:33
- 冬の寒さの中でこそ、それは確かに重宝されるけれど、
季節が変われば、当たり前に埋もれてしまう。
小春日和とは、そんな日なのだと思う。
まるで自分みたいだとため息をついて、小春は桜の木を見上げる。
桃色の花びらが穏やかな春風に舞って散った。
東京はもう春だ。
小春の実家である新潟よりもずいぶんと早く、冬は姿を消してしまっていた。
小春と同じ赤色のタイをつけた生徒、つまり中等部の一年生が、
春の喜びを体一杯で表現するように、友達とじゃれ合いながら軽やかに駆けている。
ここ朝比奈学園は、幼稚舎から大学までをエスカレーター式で学べるシステムとなっており、
東京の高騰した地価ではさすがに学園都市を作ることはままならなかったようだが、
それでも一つの地区で全ての施設をまかなうことに成功している。
- 4 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/14(水) 03:34
- 小春は中等部の受験に受かり、この春より朝比奈学園に入学した。
理由の一つは、北陸の田舎町まで轟くような名声に憧れをつのらせたから。
もちろん、周りの親や先生や、それこそ幼稚園からくっついて成長してきた、
数多くの幼馴染たちも応援をしてくれた。
それに加え、生まれ故郷はもうじき、地方の有力都市との合併が予定されており、
どうせ知らない学校に編入させられるくらいならいっそ、というのもきっかけの一つである。
それにしても、と小春は再び深いため息をついた。
小春の目に映る生徒たち、小等部からの持ち上がりが多数であろうが、
彼女たちはどうしてこうも垢抜けているんだろう。
田舎にいた頃は、勉強も、スポーツも、あえて言うならルックスも……。
全てにおいて周りから一目置かれていたと言うのに、
ここではすっかりと埋もれてしまっていた。
ここ数日過ごしてみて、せいぜい自慢できるのは勉強においてくらいだろうか。
得意の数学が授業で置いていかれるなんて屈辱を味あわずにすんだのは、小春とっては救いだったけど、
それも受験勉強というアドバンテージのおかげなんだろうな、とこれまた卑屈な考えにたどり着く。
- 5 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/14(水) 03:35
- 「小春ちゃん、おはよっ!」
「わっ!」
いきなり肩を叩かれて、慌てて振り返ればクラスメイト。
「なになに、暗い顔しちゃって。何か悩み事?」
「そういうのじゃないけど」
悩み事、なのだろうか。
どちらにしろ、友人に聞かせるのも馬鹿馬鹿しいほどくだらないことに思えたので、
笑ってごまかしておく。
「それにしてもいよいよ今日だねえ」
友人がうるうると瞳を輝かせ、小春を見つめてくる。
「へ、なにが?」
「え、なに、忘れたの? ほら、昨日なんてずっと話題に……」
突然友人の声が途切れ、なんだろうと小春も友人を見る。
そしてそのまま、友人の視線をたどっていった。
そこにいたのは、三人組の少女。
その辺りにいた全員が彼女たちに視線を向け、彼女たちの通る道は自然と開いていく。
- 6 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/14(水) 03:36
- 小春は彼女たちを知っていた。
入学して早々、小等部から持ち上がりの生徒たちに誘われ、
中等部のそれぞれの教室まで彼女たちを見に行ったことがある。
それでも、こんな風に間近で見るのは初めてだった。
小春はすぐに彼女たちに目を奪われた。
彼女たちは、小春がコンプレックスに感じ、また憧れてやまない存在そのものだった。
みなが一様に垢抜けて見える春の都会においてさえ、目を引くような存在感。
そこにいた生徒たちはそれぞれ彼女たちに挨拶をして、また彼女たちもその度に挨拶を返す。
三人が小春たちを追い越していくとき、真ん中の少女、少し背の高いセミロングの少女と目が合った。
確か、この間見たときは髪を二つに結っていたはずだ。
そんなことを思いながらも、背中にしびれるような緊張が走る。
「おはよう」
その少女はにっこりと笑って小春に声をかける。
「お、おはようございますっっ!」
まさか相手から声をかけられるとは思っていなかったから、
小春は軽いパニックに陥ってしまった上に顔も真っ赤になって、
勢いよく頭をさげながら声を張り上げた。
そのうえ語尾のところで声が裏返った。
それをおかしそうに笑いながら、彼女はまた視線を前に戻した。
- 7 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/14(水) 03:37
- 「小春ちゃんいいな……。さゆ様からお声かけていただくなんて……」
隣にいたクラスメイトは両手を胸の前で重ね、うるうると三人を見送っている。
きらきらとした瞳はもう恋する少女のものだ。
小春もそんなクラスメイトのことをどうこうは言えない。
小春もまた、さっきの恥ずかしさと、セミロングの彼女の声を思い出しながら、
ぼうっと三人の後姿を見つめていた。
クラスメイトの言った言葉。さゆ様。
それでようやく小春は彼女の名前を、肩書きと共に思い出した。
中等部前副会長、現生徒会長代理、道重さゆみ。
小春の入学式で、在校生代表の挨拶をした少女だ。
そして隣にいるのは、前生徒会役員、亀井絵里。同じく、前生徒会役員、田中れいな。
「あー!」
「な、なになに小春ちゃん。どうした」
「今日は新生徒会役員発表の日!」
「もー、ようやく思い出したんだ」
呆れたように呟くクラスメイトの視線の先には、下駄箱前の掲示板。
そこにはもうすでに、山のような人だかりが出来ている。
- 8 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/14(水) 03:38
- 朝比奈学園の生徒会選挙は少し面白い形式をしている。
ごく一般に言われる「選挙」とは少しだけニュアンスが違うのだ。
立候補はなし。推薦もなし。
もしかしたら、多少の根回しはあるのかもしれないけど、
少なくとも今年はまったく関係がなさそうだった。
立候補も推薦もなし。さらには先生の介入もない。
じゃあどうやって役員を選ぶのかと言うと、三学年全部を巻き込んだ、人気投票を行うのだ。
そのせいか、毎年変り種の生徒会役員が多数誕生しているが、
彼女たちが、広い意味での憧れの先輩、頼れる同級生、かわいい後輩であることには違いない。
そして、その人気投票の結果が今日、掲示板に張り出されているというわけだ。
- 9 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/14(水) 03:39
- 前生徒会役員である三人の少女もまた、その掲示板に向かっていく。
掲示板の前に出来ていた人垣は、その三人の少女に気付くと、
ゆずるようにして掲示板の前を開ける。
私たちも早く行こう。そういうクラスメイトに手を引かれ、掲示板の前まで行くと、
ショートカットの少女、亀井絵里さんがぷっくりと頬をふくらませていた。
「なーんで私が三位なのぉ!」
そう言って、人差し指で道重さんの頬をぶすぶすとさしている。
そんな亀井さんの膨れた頬が、三人目の少女、田中れいなさんの指で元に戻される。
「後輩に人気ないんでしょ。気付けよ」
「ほー、二年生が偉そうなこと言ってくれちゃうじゃない」
「一歳違うだけでいばるな」
そんな二人のケンカをよそに、道重さんは一人掲示板を見上げている。
「生徒会長……」
ボソリと呟く。
掲示板には、三人の名前が仲良く張り出されていた。
- 10 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/14(水) 03:42
- ―――――――――――――――――――――
一位、三年 道重さゆみ 220票 生徒会長
二位 二年 田中れいな 207票 副生徒会長
三位 三年 亀井絵里 204票 同上
・
・
・
―――――――――――――――――――――
- 11 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/14(水) 03:42
- 一学年240名。
三学年合わせても、720名。
複数投票なしの、白紙投票ありで、今回の有効票は670票だから、
この三人の票の集まり方は異常とも言えるほどのものだった。
白紙票というのは、例年、中等部に入りたての一年生が多く投じるのだが、
この三人の名前は小等部にまで響いていたらしい。
白紙票50票というのは、例年では考えられないほどの少なさだと、
情報通のクラスメイトが言った。
ちなみに、外部生である小春はと言うと、その50票に一役買っている。
- 12 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/14(水) 03:48
- 「にしても」
ケンカをようやく終わらせた亀井さんが、口の端を少しだけあげて言う。
「一年生は該当なし? 情けないなぁ」
「学校始まって一週間なんだから、仕方ないでしょ」
それをフォローするように言った田中さんは、去年一年生ながら、
生徒会の役員に選ばれているらしい。
これもまるで自分が見たかのように、クラスメイトが教えてくれた。
「でも、一年生がいないってのも、ちょっとなあ」
亀井さんはそう言って、キョロキョロ辺りを見回す。
そうして、たまたま目が合ったのが、小春だった。
「赤……ってことは、あなた一年生だよね。どう、生徒会とかやってみない?」
「……は?」
亀井さんの言葉に吸い寄せられるように、田中さんと道重さんが小春を視界に捉える。
そして再び道重さんと目が合ったけど、小春はうつむくことも、
クラスメイトに助けを求めることも出来ず、ただ呆然と立ち尽くすほかなかった。
小春の胸元では、今の小春の顔色と同じ、真っ赤なタイが風に揺れていた。
- 13 名前:明太スパ 投稿日:2005/09/14(水) 04:20
- 更新終わりました。
久住さんがうまく書けてるか不安です。。。
なんかこうした方がいいとかあったら意見ください!
今のところ、テレビで見てて教育係の二人がいいなあって思います。
二人で「チャオ!」とかいってるところがすごくかわいかったです(*^▽^*)
次回は高等部の生徒もたくさん出せればいいなって思います。
よろしければ読んでみてくださいね☆
- 14 名前:はち 投稿日:2005/09/16(金) 00:18
- 更新乙です
いやぁ、なかなかよい作品で
小春が主人公ってのも新鮮で惹かれましたw
がんばってくださいな
- 15 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/17(土) 10:01
- うららかな春の日。
教室の中は、四月特有のざわめいた空気に満ちている。
そんな中、小春は一人、机に突っ伏していた。
何してるんだろう、と様子を見に来た生徒も、小春から漂う負の空気に耐え切れず、
無言でそそくさと席を離れていってしまう。
しかし、例の、ミーハーで情報通のクラスメイトは、
小春の背中が発する無言のプレッシャーを必死に耐え、その肩に手をかけた。
「小春……ちゃん? 平気?」
「平気じゃない……。死にたい」
クラスメイトの言葉にも顔を上げず、小春は呻くように言う。
小春の脳裏には、今朝玄関の前で行われた光景が、
しつこいくらいに繰り返し再生されている。
しかも巻き戻しに全く時間がかからないところを見ると、
ビデオテープではなくDVD仕様だろうか。
そんなこと、ちっとも嬉しくなかった。
- 16 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/17(土) 10:02
- ――話は今朝に遡る。
―――――
―――
―
「……は?」
小春はまじまじと声の主を見る。
しかし、亀井さんは何も語らず、にやにやと小春を見つめている。
「あ、あの、いったい、どういう……」
「だからぁ。生徒会に入らないかって言ってるのっ」
そうやってにっこりと笑う笑顔は、遠目で見るよりもずっとかわいかった。
まるでお人形さんみたいだ。
小春がぽうっと見とれていると、亀井さんは不思議そうに首をかしげる。
それで初めて自分が亀井さんを見つめていることに気付き、慌てて視線を逸らす。
その先には、道重さんがいた。
慌てて逸らす。
田中さんがいた。
とうとう小春はパニックになって視線を四方八方に彷徨わす。
傍目から見れば、ずいぶんと気色悪かったことだろう。
- 17 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/17(土) 10:02
- 「で、どうなの? 入るの? 入らないの?」
ずい、と一歩前に出られると、亀井さんの顔はますますアップになる。
小春は圧力に押されるように、一歩後ろに下がる。
「え、えと、でも、私はその、中学校から入学して、
だから、この学校のことはよくわかんなくて、それで……」
あわわわ、と両手をばたばたさせると、クラスメイトにぶつかった。
クラスメイトも固まっているようで、それに文句も言わずただ無言で三人を見ている。
そこで不意に、亀井さんの視線が小春から逸らされた。
よくよく見れば、亀井さんの肩に誰かの手がかかっている。
- 18 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/17(土) 10:03
- 「絵里、冗談はそれくらいにしな。ごめんね、こいつバカで」
「え、あ、はい。……冗談?」
不思議そうな顔をする小春には目もくれず、亀井さんは忌々しそうな表情で、
肩に乗った手を払った。
「あらら、バカって誰のことぉ?」
「こういう人だかりの中で、冗談ですまない冗談を言うバカなんて、他に誰がいると思う?」
「えー、おもしろくない? これ。こんな冗談も通じないなんて、れいなはお子様ねぇ」
おほほほ、とわざとくさい笑い声を発した亀井さんは、
何事もなかったかのように玄関に向かって歩いていく。
田中さんはその後姿をため息で見送ると、今度は小春に視線を向けた。
「ったく、あのバカは……。そこの一年生、迷惑かけてごめんね」
「あ、いえ、平気です」
田中さんは小春の返答に、口元だけで笑顔を返すと、すぐに視線を外す。
「さゆ、行くよ」
「うん」
そして、亀井さんに続くように二人も玄関に姿を消す。
- 19 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/17(土) 10:03
- 完全に三人が見えなくなった後、小春と同じように固まっていたクラスメイトが、
ようやく我に返った。
「……やっぱり三人とも存在感があるね。それにしてもれいなさま、
一個下なのに全然気にしてないみたい。大物だよねぇ……って、小春ちゃん!?」
今までしゃべれなかった分を一気にしゃべったクラスメイトは、
小春の様子を見て息を呑んだ。
それもそのはず、小春の目からは、まるで漫画にでも出てきそうなほどの涙が、だらだらと流れていた。
「ち、ち、ち、ちぃちゃぁん!」
「どどどどうしたの!? そもそもちぃちゃんって誰!?」
涙を滝のように流しながら抱きつく小春に完全に身を固められた、ちぃちゃん(仮名)は、
他のクラスメイトが小春を引き離すまで、全校生徒のさらし者にされ続けたのであった。
―
―――
―――――
- 20 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/17(土) 10:03
- そのときの感情がぶり返したのか、小春は再び大声をあげて泣き出した。
そして、クラスメイトに抱きつく。
「ちぃちゃーん!!!」
「だから、ちぃちゃんって誰!? もー、泣きたいのはこっちだよぉ……」
聞くに聞けないものの、小春の様子が気になっていたクラスメイトたちは、
突然泣き出した小春と、抱きつかれたちぃちゃん(仮名)に好奇の視線を向ける。
「先輩たちの前でどもりまくった上に、冗談を真に受けて……。もう、穴があったら入りたい!」
「わかった、わかったから落ち着いて! とりあえず泣き止んで。ね?」
「うわぁぁぁん」
「ひー」
結局、小春の涙は、休み時間が終わるまで止むことはなかった。
- 21 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/17(土) 10:04
- 放課後、相変わらずぐずっている小春の元に、例のクラスメイトが寄っていく。
きっと、乗りかかった船というやつなのだろう。
彼女の視線はどこかうつろで、表情は疲れきっていた。
「小春ちゃん、少しは落ち着いた?」
クラスメイトを視界にとらえ、小春は精一杯に笑顔を作ってみせる。
「うん、ごめんね、ちぃちゃん。入学早々迷惑かけて」
「いいってば、友達じゃん。それと私、ちぃちゃんじゃないから」
おせっかいなクラスメイトは一つだけため息をつき、口を開いた。
「あのさ、絵里さまって小等部時代から憧れてる人がたくさんいるんだよね」
小春が、不思議そうにクラスメイトを眺める。
それでも構わずに、クラスメイトは話を進める。
「でもね、学年が二つも上だから、ほとんどの人がまともに話したこともないの。
だから私も、今日三人がいざ目の前にきたら、かちっかちに固まっちゃった」
- 22 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/17(土) 10:04
- 苦笑、といった感じだろうか。
彼女は、少しだけ笑みを浮かべながら、小春には視線を向けずに淡々と話す。
「だからね、例えどんな形でも、絵里さまたちとあんなふうに話せた小春ちゃんのこと、
きっとみんなうらやましいって思ってるはずだよ」
「うらやましい……?」
「うん。小春ちゃんは三人と話せて、嬉しくなかった?」
小春は、ぶんぶんと首を振り、
「う、嬉しかった!」
ぱあっと明るく顔を輝かせた。
それを見たクラスメイトは、やれやれ、といった感じで微笑む。
そうしてようやく落ち着いた二人が教室内を見渡してみると、
ほとんどの生徒が帰宅を済ませていた。
恐らく部活にでも行ったのだろう。
現在はまだ仮入部の期間ではあるが、ほとんどの生徒が、
この期間内からもう、本命の部活動の練習に参加をする。
小等部からの持ち上がりが多いのも、その理由の一つだった。
- 23 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/17(土) 10:05
- 「じゃあ、私たちもそろそろ部活に行こうか。小春ちゃんはどこに入るか決めた?」
「んー、バレーを続けようかなって思ってるけど」
「へぇ、小学校からバレー部に入ってたの? じゃあうまいんだ」
「どうかなぁ、田舎の学校だったから」
小春は小学校時代、バレー部の主将を務めていた。
スポーツにはかなり自信があったし、小学生にしては身長も高かったから、
満場一致での主将就任であり、そこそこ活躍もしたのだが、
東京に来てまで、うまいと言えるほどの自信はどうしてももてなかった。
東京は何をするにしてもレベルが高い。
しかも、朝日奈学園高等部のバレー部は、全国大会でも活躍するほどの強豪だったから、
その下部組織である中等部のレベルもかなり高いものであるはずだった。
- 24 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/17(土) 10:05
- 「そっか、うちの学園、バレーとテニスが有名だもんね。でも、小春ちゃんならきっと平気だよ」
「そうかな」
「うん、私が保証する」
にっこりと笑うクラスメイトの表情を見てると、何故だかやれそうな気がしてくる。
小春はクラスメイトに向かい、無邪気に笑って見せた。
「うん、がんばるよっ! がんばろうね、ちぃちゃん!!」
小春は、クラスメイトの腕をとり、ぶんぶんと勢いよく上下に振り回す。
「そ、そうだね。後、なんかもうどうでもいいんだけど、私ちぃちゃんじゃないよ」
ちぃちゃん(仮名)は腕を振り回されているせいか、声を震わせながら言葉を返す。
一方小春は、今朝からの沈んだ気持ちとはうってかわり、新たな希望で胸が一杯だった。
新しい環境での練習。大好きなバレーボールを強い学校でやれること。
目の前に広がっているたくさんのことがとても素敵に見えて、ほうっと息を吐いた。
幸せだった。
今朝のこともすっかりと振り払い、今ならなんでも出来そうな気がしていた。
だから、この部活の選択が小春を更なる受難に陥れることに、全く気付かなかったとさ。
- 25 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/17(土) 10:14
- 更新終わりました。
握手会久住さん頑張ってたみたいですね〜♪
とても明るい子みたいで、見てて楽しいです(^−^ )
吉澤さんとのやり取りも結構いいかも。。。(笑)
>14 はちさん
読んでくださってありがとうございます!
誰も読んでないかとドキドキしていたので、すごく嬉しかったです(>▽<)
褒めていただけたみたいなので、調子にのってガンガン書こうと思います(笑)
今回は出せませんでしたが、これからたくさんメンバーを出して行こうと思うので、
よければまた読んでみてくださいね〜!
- 26 名前:はち 投稿日:2005/09/17(土) 13:12
- 更新乙です
最初ってドキドキしますよねぇ
自分もそうでしたw
バレーにテニスで高等部とくれば・・・(ニヤリ
- 27 名前:なまっち 投稿日:2005/09/19(月) 01:50
-
めっちゃタイプのお話はっけんっ//
文章とか表現とか可愛くてかなりスキっぽいです^^
自分も最近この師弟コンビがスキなんで、余計に期待です^^
これからも期待してますんで、頑張ってください。
バレーとテニスの高等部とくれば………?
ちぃちゃん…くじけるな…(ぼそ
- 28 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/28(水) 04:02
- 私立朝比奈学園は、広大な土地を利用して、
幼稚舎から大学に至るまでを一つの地域で賄っている。
しかし、割合田舎とはいっても東京である。
全てを隣接して建てるほどには土地をまとめて購入できなかったため、
最も交流が盛んであろう中等部と高等部のみを同じ敷地内に作った。
とは言え、大学も幼稚舎も、徒歩で移動できる程度には、
近くに建てられているのだった。
そんな、中等部高等部共同の第一体育館の前に、久住小春は立っていた。
中では、女性だけにも関わらず、威勢のいい掛け声が響き渡っている。
入学時に配られた案内書によると、ここはバスケットボール部とバレー部が、
共同で使用しているはずだった。
自分の出身の小学校はともかく、大会で使用した市の体育館と比べても、
随分と立派に見える。
確かにこれならば強豪と言われても不思議ではないな、
と施設だけを見た小春は思った。
- 29 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/28(水) 04:03
- 体育館の中に入ると、体育館の三分の二を使ってバレー部が練習していた。
そしてそれは、小春が想像していた以上のものだった。
まずなにより、小学校の頃とはレベルが一段も二段も違う。
高校生も合同で練習しているのだから当たり前のことではあったが、
それでも小春は目の前の光景に圧倒されてしまっていた。
「なにー入部希望者?」
小春に気付いた一人の女子が面倒くさそうな声を出した。
「美貴、よそ見しない!」
「あーわかってるって」
背が高めのショートカットの先輩が、先程の先輩に声を掛ける。
それに、相変わらず面倒くさそうな声で対応した。
小春はと言うと、いきなりのきつい視線に硬直してしまっていたが、
幸運にもそれがすぐに止んだことで、周りを見渡す余裕が出来ていた。
- 30 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/28(水) 04:03
- 体育館には、恐らく新入生であろう、数十名の女子生徒たちが体育館に一列に並んでいる。
地元の先輩から、中学校の部活はすぐに練習が出来ないとは聞いていたが、
部活に関しても、東京という新たな世界は小春の予想以上のようだった。
小春はどうしていいのかわからず、制服姿のままその列に加わった。
列のほとんどは学校指定のジャージに着替えている。
制服のままでいるのは、部活に遅れてきた生徒の中の、ほんの一部であるようだった。
これはまずい。
小春は焦った。
実力がない、時間を守らない、やる気がない(と先輩には見えるだろう)では、
部活のお荷物ではないか。
パニックになった小春は、まだ得られてもいない名誉を挽回しようと、
必死に叫んだ。
「ナ、ナイスアタッーーーク!!」
しかし、誰もアタックはしていなかった。
- 31 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/28(水) 04:03
- そこで小春は自分の過ちを悟った。
自分はこの学園に来れただけで満足ではなかったのか。
身の程をわきまえずにはりきったりするからこういうことになるのだ。
すっかり落ち込んでしまった小春が一人うつむいていると、
どこからかクスクスという笑い声が聞こえてきた。
「面白いね、キミ」
その声に、小春は顔を上げる。
目の前に立っていたのは、小春が今までに見たこともないような美少女だった。
コート外の出来事であるにも関わらず、彼女が出てきたことで、
中等部一年生の視線が一斉に小春の元へと集まる。
「あ、あの、すいません! 練習の邪魔をしてしまって!」
「気にしなくていいよ。元気がよくて、先輩たちも喜んでるんじゃないかな」
ね、と振り向いた先は、先程の目つきの悪い先輩。
小春が恐る恐るその顔を見ると、彼女はふうっと深いため息をついた。
「わかったよもう。それより亜弥ちゃん、そろそろテニス部に戻らなくていいの?」
「うん、あいぼんがいるから少しくらい平気だよ」
にっこりと笑うその姿も完璧で、小春はぼうっと見惚れてしまった。
中等部生徒会の三人の先輩もものすごく綺麗だとは思っていたが、
彼女の可愛さはその三人とはまた違ってとても完璧なものに見えた。
- 32 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/28(水) 04:04
- 「いいなぁ、松浦先輩に気に入ってもらえて」
不意に、隣の少女に話しかけられる。
「さっきの人、松浦先輩って言うんだ」
「え、知らなかったの!? 高等部の生徒会役員だよ?」
「そっか、高等部の」
それを聞いた小春の脳裏には、何故だか道重さんの顔が浮かんでいた。
そっか、道重さんも高校生になれば、あんな風に大人っぽくなって、
もっともっと綺麗になっていくんだ。
そんなことをぽうっと考えていると、コートの中では一通り練習が終わっていたらしく、
ショートカットの先輩が中等部の一年生の元へ近づいてきていた。
最初のときも思ったのだが、小春はこの先輩の顔をどこかで見たことがあった。
「紹介が遅れてごめん。高等部三年の吉澤ひとみです」
吉澤ひとみ。
その名前を聞いて、小春の中でようやく一つの解答にたどり着いた。
聞いたことがあって当然だ。
彼女は小春が愛読していたバレーボール雑誌で、何度も特集が組まれていた高校界のスター選手だった。
高校選抜に選ばれるような人と、まさか一緒のチームに入れるなんて夢にも思っていなかったから、
自分の中の記憶と目の前の現実を、うまく結びつけることができなかったのだ。
- 33 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/28(水) 04:04
- 高校選抜の吉澤先輩と同じチーム。
何かすごいところに入ってしまった気がする。
それに彼女には、目を奪われてしまうような凛々しい美しさもある。
思い返してみれば、美貴と呼ばれた目つきの悪い先輩もすごく綺麗な人だったし、
(テニス部のくせに何故かバレー部に馴染んでいる)松浦先輩もものすごく可愛かった。
場違いな所に来てしまったのではないかという思いが、ますます小春の胸をしめつけた。
「バレー部では、高等部と中等部で合同練習を行っているから、キャプテンはあたし一人ということになってる。
もちろん初心者も多いだろうから、新入部員にはちゃんとコーチをつけようと思ってるけど……」
そこまで言った吉澤さんは、辺りを見渡す。
どうやら、新入部員につけるコーチの適任者を探しているらしい。
すると、ちょいちょいっと美貴先輩が肩を叩き、くいっとバスケットボール部の方を親指で指す。
「ガキさんでいーよ」
「新垣か。んー確かにあいつ、教えるのうまいからな。
でも、あいつもスタメンになったみたいだし、部長に申し訳なくないか?」
「そんなの別に美貴のしったこっちゃないし」
「先輩、私も賛成です」
美貴先輩の案に、松浦先輩がにっこりと同意する。
それが決め手となったのか、吉澤先輩は、よし、とバスケットボール部のコートへ体を向けた。
どうやら、この二人(プラス何故かテニス部の松浦先輩も)がバレー部の中心であるらしかった。
- 34 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/28(水) 04:05
- 「新垣! ちょっとこっち来て!」
吉澤先輩が大声で叫ぶと、その声に気づいた一人の少女が、
手に持ったバスケットボールを近くの人に手渡して、バレー部のコートまで駆けてきた。
間近で見るとその人は意外と小さくて、眉毛がすごくかわいらしかった。
少しだけ息を切らしているせいか、垂れ下げた前髪が微かに揺れている。
そんな彼女が、頬を膨らませて言った。
「なんですかー! バスケ部も練習があるんですよ!」
ぷんすかと怒ったその先輩に対して吉澤先輩が何かを言おうとしたが、
美貴先輩がそれを制し、睨みつける。
「へー、新垣も偉くなったもんだね」
例のあの視線で睨まれたちっちゃな先輩の頬に、たらりと汗が滴り落ちる。
- 35 名前:先輩はミラクル☆「小春日和」 投稿日:2005/09/28(水) 04:05
- 「え、あ、いや」
「ねーよっちゃん、こんなんだったら、昔いじめられてるとこ助ける必要なかったね」
だよねー新垣、なんて美貴先輩は首をかわいらしく傾げてみせる。
それが恐ろしく見えたのは小春だけではないはずだった。
「……なんでしょうか、ワタクシでできることでしたら、何でもおっしゃってください」
「だって。よっちゃん」
ニヤリと口元を上げる美貴先輩とは対称的に、ちっちゃな先輩はがっくしと肩を落としていた。
「じゃあ新垣、毎回悪いけど、新人のコーチお願い」
「ハイ……」
「お願いね、新垣さん」
松浦先輩が駄目押しのようににっこりと微笑む。
そして三人の偉大な先輩方はちっちゃな先輩をほっぽってそれぞれの持ち場へと戻った。
ちっちゃな先輩の周りにはどんよりとした雲が浮かんでいて、
そのせいかはわからないが、外ではざあざあと雨が降り出していた。
- 36 名前:明太スパ 投稿日:2005/09/28(水) 05:02
- 更新終わりです!
時間かかってしまいましたが、人をたくさん出せました〜
>26 はちさん
ありがとうございます!!
おっしゃる通りもうドキドキでしたよ。。。
はちさんも書いてるんですか??
テニス部のキャプテンも出したいなぁと思ってたんですけど、
それは今後のお楽しみということで^^
>27 なまっちさん
ありがとうございます!!
文章可愛いですかぁ?(/ー\)キャッ
めっちゃタイプとか言ってもらえて嬉しいです(*´▽`*)
久住さんと道重さんの師弟コンビいいですよね!!
もっとたくさんテレビに出てくれないかなぁと思ってます。。。
ちぃちゃんは作者も応援しているので、
少しでもいい目を見せたいです(><)
- 37 名前:はち 投稿日:2005/10/01(土) 23:19
- 更新乙です
想像通りで(ニヤリ
この先輩方大好きですw
書いてますよー・・・・4つも・・・勢いで・・・(アホです
- 38 名前:読者〜27 投稿日:2005/10/02(日) 01:20
-
更新お疲れ様です^^
こはのぼけぼけ具合も○(わら
高等部の生徒会役員も気になりつつ…
次回の更新を楽しみにしてますんで、頑張ってください〜
- 39 名前:初心者 投稿日:2005/10/04(火) 22:35
- さゆ×小春の師弟関係はいいですね大好きです
小春もがんばれ、さゆもがんばれ
作者さんも頑張ってください
- 40 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/07(月) 11:35
- 始めて読んだけど面白いです。
更新開いてるみたいだけどがんばってください。
更新楽しみにしてます。
- 41 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 05:00
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
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