ワガママなあいつ
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/11(火) 22:19
- 初めまして。
アンリアルで書かせて頂きたいと思います。
性別が変わっていますので、嫌な方はスルーして下さい。
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/11(火) 22:20
- あいつはとてもワガママだ。
僕はいつも振り回されている。
中学校…。
小学校…。
幼稚園…。
いや、たぶん、生まれた時からずっと。
- 3 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:21
- あいつはとてもワガママだ。
- 4 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:21
- 僕の名前は亀井絵里。高校2年生。
成績普通、運動神経良し、顔も…まあ、良い方かな。
自慢じゃないけど、結構モテるし。
「フニャフニャした笑顔が可愛い」なんて言われてる。
まあ、親友のさゆみたく、「俺って宇宙一イケメンだよな」とまでは思わないけど。
だから、本当なら順風満帆な高校生活を送ってるはずなんだ。
はず、なんだけど…。
- 5 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:22
-
部活が終わり、家へと向かう帰り道。
もうすっかり暗くなっている。
ちなみに、自慢じゃないけど、僕は陸上部のエース。
都内でも1、2を争うくらいのスプリンターだ。
なにせ特技は走る事だし。
駅から自宅までの公園通りは人通りが少なくて、特に今の時間はほとんど誰もいない。
男とはいえあまり安全とは言えないので、なるべく急ぎ足で帰ろうとしたその時…。
- 6 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:23
-
「良い度胸してんじゃん」
…嫌な予感。
声のした方を見ると、二、三人の男達が誰かを囲んでいる。
見ないふり、見ないふり。
関わらない方が身のためだ。
大会も近いことだし、怪我したら困る。
何よりも僕の中の本能が危険を感知している。
- 7 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:24
-
「あんたがぶつかってきたけん、そっちが謝るのが当然と!」
…聞き慣れた博多弁。
嫌な予感的中。
僕は思わず頭を抱える。
どうして、あいつは自分からトラブルを招き入れるんだろう。
僕の本能は正しかった。
ますます関わらない方が良い。
気付かれないように通り過ぎよう。
- 8 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:24
-
「あ!絵里っ!!」
…無視、無視。
「ちょっ、なんで無視すると!?」
…聞こえない、聞こえない。
「か弱い女の子が襲われとるのに、助けんと!?」
…どこがか弱いんだよ。
「絵里!」
「あー!もう、うるさいっ!!」
しつこく呼ぶ声についにキレた僕は、あいつに近づいていく。
- 9 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:25
-
「おい、なんだよ、てめー。邪魔する気かよ?」
いや、別にあんたらはどうでもいいんだけどね。
そこの女がうるさいからさ。
自慢じゃないけど、小さい頃から空手をやっている僕は、ケンカでは負けたことがない。
見た目は弱そうなんだけどね。
…三人か。部活で疲れてるけど、まあ、ちょうどいいかな。
- 10 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:25
-
・
・
・
三人を軽く倒した後、悠々と座り込んでいるあいつを振り返る。
ったく、誰のためにケンカしたと思ってんの?
短いスカート。
だらしなく着崩したブラウス。
茶髪にピアス。
生意気そうな顔。
それじゃ、絡んでくださいって言ってるようなもんだ。
- 11 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:26
-
「あいつら、れいなにぶつかっといて謝りもせんと、ちゃんと謝れって言ってやったと」
自分から絡んでいったんかい!
そういえば、こいつは昔から気に食わない事があると、だれかれ構わずケンカを売ってた。
その度に、なぜか僕が後始末をすることになる。
空手を習い始めたのも、それがきっかけだったっけ…。
「帰るよ」
僕は立ち上がって歩き出す。
宿題もたくさんあるし、腹も減ってる。
見たいTVもあるし。
こんな女に構ってる暇はないのだ。
- 12 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:27
-
「…絵里」
構ってられない。
「…えーりー」
そこまで、お人好しじゃない。
「…腰が抜けて立てん…」
「…」
- 13 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:28
-
ため息を一つついて、あいつの元へと戻る。
よく見ると、膝がガクガク震えているし、目も少し潤んでいる。
ったく、怖いんなら最初からケンカなんて売るなよな。
強気なくせに弱虫で泣き虫な女。
小さい頃からずっとそうだった。
だから、僕がそばにいて後始末してやんなきゃならない。
幼なじみだから、仕方ない。
ほっとけないんだから、仕方ない。
- 14 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:28
-
「ほら」
あいつの前にしゃがんで背中を出す。
「…な、なん?」
「乗りなよ」
しばし沈黙。
そう、こいつはかなりの意地っぱりでもある。
だから、こういう時は黙って待っててやる。
長年の付き合いで得た知恵って奴かな。
- 15 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:29
-
五分くらい経ってから、ようやく背中に温かいぬくもりを感じた。
僕は立ち上がり、再び歩き出す。
「…がと」
普段からは考えられない小さな声。
ありがとうくらい、照れずにちゃんと言えよな。
でも、たぶん、指摘すると怒るだろうから、僕は気付かないふりをして歩き続けた。
背中に感じる確かな温もりにちょっとだけドキドキしながら…。
…それにしても、思ってたよりも胸あるかも…。
- 16 名前:第1話 背中 投稿日:2005/10/11(火) 22:30
-
あいつはとてもワガママだ。
だけど、背中に乗せるのは嫌じゃない。
第1話 背中
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/11(火) 23:25
- レスっていいのかな……?
見事にツボりました(笑
これからも期待して待たせて頂きます。
- 18 名前:作者 投稿日:2005/10/13(木) 02:15
- >>17 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
もちろん、大歓迎です!
期待に応えられるよう、頑張ります。
- 19 名前:第2話 寝顔(前編) 投稿日:2005/10/13(木) 02:19
-
あいつはとてもワガママだ。
- 20 名前:第2話 寝顔(前編) 投稿日:2005/10/13(木) 02:19
-
僕の家は、父さん、母さん、兄ちゃんの四人家族だ。
男兄弟だから、ベタベタと仲が良いわけではないが、悪いわけでもない。
いたって普通の家庭である。
あいつは、母と子の二人暮らし。
おばさんはあいつを産む直前に、福岡から一人で上京してきたらしい。
父親のことはよくわからない。
- 21 名前:第2話 寝顔(前編) 投稿日:2005/10/13(木) 02:20
-
おばさんがあいつを出産した時、近所ではかなり話題になったみたいだ。
女手一つで、ましてや慣れない土地で子供を育てるには、相当の苦労があったのだろう。
だから、おばさんは夜の仕事をするしかなかった。
夜の仕事、派手な服装、未婚の母。
「みんな煙たがっとったけど、絵里君のお母さんだけはいろいろと助けてくれたと」
うちの母さんはわりと男っぽい豪快な人で、世間体とかはあまり気にしない。
弱いものは助けろ!なんて昔の頑固親父みたいなことが口癖だ。
だから、あいつとおばさんをほっとけなかったんだと思う。
その気持ちは、僕にもなんとなくわかる。
- 22 名前:第2話 寝顔(前編) 投稿日:2005/10/13(木) 02:20
-
「絵里、れいなちゃんのとこにこれ届けて」
「ふぇ?」
せっかくの日曜日、お菓子を食べながらゲームをしていた僕を蹴り飛ばす、鬼婆…もとい、母さん。
その手には、昨日父さんが買ってきた土産を持っている。
「なんでだよ、母さんが行けばいいじゃん」
「母さんは町会の会合に行かなきゃなんないの。それともあんたが会合に行くかい?」
冗談じゃない、あんなおばさんの集まりになんか行けるか!
「兄ちゃんは?」
「デートよ!ほら、早く行きなさい!」
結局、抵抗むなしく、僕はあいつに届け物をすることになった。
「あ、今日、おばさん出掛けててれいなちゃん一人だから。襲ったりするんじゃないよ」
…誰が襲うか、あんな貧乳。
- 23 名前:第2話 寝顔(前編) 投稿日:2005/10/13(木) 02:21
-
うちから歩いて十分ほどのあいつの家は、少し古ぼけたアパートの二階にある。
ていうか、日曜の昼間にいるのかよ?
あいつの事だから、渋谷とか原宿に遊びに行ってるんじゃないの?
大体、こんな天気の良い日に家にいるなんて、暗…。
…それ以上考えると落ち込みそうなので、僕はインターホンを押した。
- 24 名前:第2話 寝顔(前編) 投稿日:2005/10/13(木) 02:21
-
しばらく待っても返答がない。
窓から覗いてみると、電気はついているようだ。
おかしいな。
もう一度押してみる。
…やっぱり応答なし。
ドアを押してみると簡単に開いてしまった。
お土産を渡さなきゃいけないんだから、仕方がない。
- 25 名前:第2話 寝顔(前編) 投稿日:2005/10/13(木) 02:21
-
「れーな?」
小さい頃は何度も遊びに来ていたけど、高校になってからは一度もあがったことがない。
あいつの部屋は、確か一番奥の…。
「…ん…、絵…里…?」
「うわっ!…び、びっくりした…」
いるんなら返事してよ…。
リビングのソファで横になっているあいつ。
でも、なんだかいつもの元気がない。
もしかして…。
- 26 名前:第2話 寝顔(前編) 投稿日:2005/10/13(木) 02:22
-
「…れいな、熱、あると…」
やっぱり。
それ以外に、元気がない理由は考えられない。
「計った?」
「…ん、38度ちょい…」
ちょいって適当なんだから。
僕はテーブルに置いてある体温計をあいつに渡す。
「ほれ、もっかい計ってみ」
- 27 名前:第2話 寝顔(前編) 投稿日:2005/10/13(木) 02:22
-
「ん…」
熱は38度4分だった。
「おばさんは?いつ帰ってくるの?」
「…そのまま仕事行くけん、明日の朝…」
そっか。
一瞬、おばさんに連絡しようと思ったけど、やっぱやめとこう。
こいつは、おばさんが出掛けるまで熱がある素振りなんか見せなかったはずだ。
心配かけたくないから。
仕事を休ませるわけにはいかないから。
僕がその気持ちを踏みにじるわけにはいかないじゃん。
- 28 名前:第2話 寝顔(前編) 投稿日:2005/10/13(木) 02:26
-
「ちょっと待ってて」
僕はあいつの家を飛び出すと、薬屋まで猛ダッシュした。
自己新記録が出たんじゃないかってくらいのスピードで。
風邪薬と冷却シート、ドリンクの栄養剤。
風邪薬は、あいつが嫌いな粉の奴じゃなくて、ちゃんとカプセルのものを選んでやる。
冷却シートは肌に優しい子供用。
栄養剤も飲みやすい味のものにしよう。
自慢じゃないけど、あいつの好き嫌いくらいは完璧に把握してるつもりだ。
その通りにするのは癪だけど、熱があるんだから仕方がない。
おばさんが帰ってくるまでに治さないと。
- 29 名前:作者 投稿日:2005/10/13(木) 02:27
-
本日は以上です。
- 30 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/13(木) 02:47
- 絵里君かっけーッス!!
- 31 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/15(土) 22:40
- 最初は意外な感じがしましたが、読んでみるとアリだなぁと。
続き楽しみにしてます。
- 32 名前:作者 投稿日:2005/10/17(月) 21:35
- >>30 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
なんだかんだでワガママを聞いてしまう優しい奴です。
>>31 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
なかなかない設定なので、受け入れて頂けるか心配でした。
「読んでみるとアリ」という言葉はとても嬉しいです。
- 33 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:36
-
あいつの家に戻り、慣れない手つきでおかゆを作る。
味見は…してないけど、まあ、いっか。
「ほら、食べな」
「…絵里が作ったと?」
なんだよ、文句あるの?
「れいな、猫舌やけん。熱いの食べられん」
はいはい、ちゃんと冷やしてあるから食べなよ。
「ほら、薬」
「れいな、粉は嫌いやけん」
はいはい、ちゃんとカプセルの買ってきたから飲みなよ。
- 34 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:37
-
薬を飲むのを見届けてから、冷却シートをおでこに貼ってやる。
朝までに治りますように…。
薬が効いてきたのか、いつの間にかあいつは眠っていた。
…そして、なんだか、僕も眠くなってきた。
一眠りさせてもらうか…。
- 35 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:37
-
・
・
・
目が覚めると、外はもう暗くなっていた。
あいつはまだ眠っている。
何気なく寝顔を見ていると…。
…やばい、なんかドキドキしてきたぞ。
だって、こんなに間近で、こんなにじっくりと顔を見るなんて初めてだ…。
ちょっとタレてる目。
ちょっと上向きの鼻。
いつもの生意気そうな顔とは正反対じゃん…。
- 36 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:38
-
僕もよくアヒル口なんて言われるけど、こいつもアヒルみたいだ。
…あー、やばい、やばい、やばい…。
…ちょっとだけ、ちょっとくらいなら、触っても…いいかな…。
僕は少しずつ、少しずつ、あいつに近づいていく…。
- 37 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:38
-
「…ん、絵里…」
どわぁぁぁぁ!!!
やばい、起きた??
どうしよう、どうしよう…。
「い、いや、れいな、まだなにも…」
慌てて言い訳したものの、あいつは無反応。
…?
…なんだ、寝言か…。
それにしても、どんな夢見てんだよ?
- 38 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:38
-
「…その肉、れいなのやけん…」
夢の中でもワガママ言うなよ!
しかも、肉って…。
自分がしようとしてたことがとてつもなく恥ずかしく情けないことに思えて、僕はあいつから離れた。
『襲ったりするんじゃないよ』
…ごめんなさい、母さん。
もう少しであなたの言う通りになるところでした。
- 39 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:39
-
一人で反省していた時、玄関が開く音が聞こえた。
誰だ?
まさか…。
「あら、絵里君。来とったの?」
「お、お、おばさんっ!仕事は?」
驚いている僕とソファで寝込んでいるあいつを見て、おばさんは優しく微笑んだ。
「れいな、調子悪そうだったけんね。仕事は休んだと。昼はどうしても抜けられなかったけん」
おばさんといい、母さんといい、母親ってすごいなあ。
子供の事、何でもわかってるみたいだ。
- 40 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:39
-
「看病してくれたと?ありがとう」
「いや、まあ、えへへ…」
作りっぱなしのおかゆ、薬やら冷却シートが散乱したリビング。
そして、数分前の僕の行動。
なんだかお礼を言われるのが申し訳ないような気がして、僕は笑ってごまかした。
「あ、じゃあ、これで…」
早くこの場から離れたい…。
「あ、絵里君」
「ふぇ?」
思わず、玄関でずっこけそうになってしまった。
「…れいな、学校でちゃんとやっとる?」
「…」
- 41 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:40
-
おばさんの心配はもっともだ。
あいつは、小学校の時から、どことなく浮いた存在だった。
別にいじめられてるとか、はぶられてるとかそういうんじゃない。
ただ、子供の頃から母子家庭で苦労してきたあいつからすると、同じ年の女の子は幼く見えるんだろう。
みんながバカ騒ぎしている時、一歩ひいて見ているあいつの姿をよく見かけた。
たぶん、高校でも同じような感じだと思う。
でも…。
「うん、ちゃんとやってる。学年違うからあんまりわかんないけど、よく楽しそうなとこ見るよ」
大丈夫。
あいつはちゃんとやってます。
だから、おばさんは心配しないで。
- 42 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:40
-
「そう、良かった。あの子ね、最初、高校行かないで働くなんて言っとってね」
初めて聞く事実。
あいつ、そんなこと…。
「でも、いつだったかな。絵里君が学校の話をしてくれて「れいなも来れば?楽しいよ」って言ってくれてから、行きたいって思うようになったみたい。だから、ありがとう」
「そんな、俺はなにも…」
僕は自分がそんなことを言った事すら覚えていなかった。
あいつにとっては大切な事を、冗談交じりにさらっと言ってしまった自分が情けなかった。
きっと、たくさん悩んでいただろうに…。
「ごめんね。引き止めて。お母さんにもよろしくね」
「うん。じゃあ、また」
僕は、精一杯の笑顔で挨拶して、あいつの家を後にした。
- 43 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:41
-
・
・
・
「絵里!なんでお土産持って帰ってくるの!?このバカ息子!!!」
疲れて帰った僕を待っていたのは、何でもお見通しの鬼婆…もとい、母さんのビンタだった。
…その夜、あいつの寝顔が瞼の裏に張り付いて、なかなか寝付けなかったことは言うまでもない。
- 44 名前:第2話 寝顔(後編) 投稿日:2005/10/17(月) 21:43
-
あいつはとてもワガママだ。
だけど、寝顔は可愛い…かもしれない。
第2話 寝顔
- 45 名前:作者 投稿日:2005/10/17(月) 21:44
-
本日は以上です。
- 46 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/18(火) 01:38
- イイよイイよー作者さん。
もろつぼですよ、おいちゃんの(*´д`*)
亀×田ってなかなか見ることが出来ないからうれしいわ。
楽しみにしてるんで、がむばって下さい。
- 47 名前:作者 投稿日:2005/10/21(金) 00:33
- >>46 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
亀×田も田×亀もどちらも妄想できるのが、れなえりの魅力の一つかなと思います。
期待に応えられるよう、頑張ります。
- 48 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:34
-
あいつはとてもワガママだ。
- 49 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:34
-
「お、絵里、今週の日曜暇?」
風呂上り、チーズを頬張る僕に兄ちゃんが差し出したのは、遊園地のペア招待券。
「なにこれ?」
「なにって、遊園地の券」
いや、そんなの見ればわかるから。
「兄ちゃん、彼女と行くんじゃないの?」
「ああ、まあ…」
なんだか煮え切らない態度。
- 50 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:35
-
一つ年上の兄ちゃん、亀井麻琴はヘタレを絵に描いたような人物だ。
ルックスも、カッコいいというタイプじゃなし、どっちかというと三枚目。
なのに、なぜか校内一の美少女・高橋先輩と付き合ってるんだから、世の中よくわかんない。
その事実が発覚したときは学校中が騒然となったもんだ。
「…緊張するんだよ、二人きりだと。愛ちゃん、すごい積極的だし…」
いいじゃん、いいじゃん。
「前のデートで、キ、キ、キ、キスしそうな雰囲気になって…」
いや、もう高校三年生なんだから、それくらい…。
「俺、二人きりで会ったらどうなるかわかんないよ!頼む、絵里、一緒に来てくれ!!」
…なんで、僕の周りはこんなに面倒のかかる奴ばっかなんだろう…?
- 51 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:35
-
「あと一人は、れいなを誘っといたからさ」
「は?」
このバカ兄貴は、ヘタレのくせにわけのわかんないところで手回しがいい。
…まあ、そこまで言うなら仕方ない。
「じゃあ、よろしく!」
「はいよ〜」
「あ、それと…」
ふぇ?
まだなんかあるの?
「言い忘れてたけど、絵里が食べてるチーズ、ジョン(=家の犬)の餌だよ」
…My shock…。
- 52 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:35
-
本日は晴天なり。
皮肉なくらい、最高のデート日和だ。
自慢じゃないけど、僕は寝起きが悪い。
しかも、待ち合わせに7時間遅れた事があるくらい、時間にルーズだ。
でも、今日は朝からソワソワと落ち着きのない兄ちゃんに叩き起こされた。
しかも、待ち合わせの2時間も前にだよ?
よく見ると、兄ちゃんの目の下にはくっきりとクマが出来ている。
…わ、わかりやすい奴…。
そんなこんなで、時間通りに待ち合わせ場所に着いた。
- 53 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:36
-
駅の改札に立っていると…。
「あ、麻琴ー」
僕達を見つけた高橋先輩が手を振りながら駆け寄ってくる。
やっべー、まじ、可愛い。
初めて見る私服姿に思わずドキドキした。
こんな可愛い人が、なんで兄ちゃんと…。
まあ、そのおかげでこうして一緒に遊園地に行けるわけだから、ヨシとするか。
- 54 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:36
-
「あ、あ、愛ちゃん、お、おはよう」
あーあ、どもっちゃったよ、兄ちゃん…。
「初めまして、かな?絵里君。今日はよろしくね」
「あ、あ、あの、は、はい…」
…あーあ、どもっちゃったよ、僕…。
…血は争えないってって奴か…。
でも、兄ちゃんが緊張する気持ちもわかるよ。
ほんと、可愛いもん、先輩。羨ましいなあ。
- 55 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:36
-
「まこっちゃーん!!」
僕のセンチメンタル(?)な気持ちは、突如聞こえる大声にかき消される。
「おー、れいな!遅いぞー」
「にひひっ、ごめんなさーい」
どもらず話す兄ちゃんと、それに甘えるあいつ。
昔からそうだったけど、あいつは兄ちゃんといる時はわがままでも生意気でもない、普通の可愛い女の子になる。
そして、兄ちゃんもあいつに対して、めちゃくちゃ甘い。
たぶん恋愛感情はないんだろうけど、血のつながりのない高校生の男女としてはおかしな関係だ。
ていうか、ベタベタしすぎだって。
なんか、二人の方が付き合ってるみたいじゃん。
- 56 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:37
-
「まこっちゃんと出掛けるの久々やけん、お洒落してきたと」
おいおい、それってどうなの?
いやいや、嬉しそうに笑ってる場合じゃないだろ、兄ちゃん。
こっそりと高橋先輩の様子を伺うと…あれ?
意外と平気な顔してるや。
大人なんだなあ、先輩。
「初めまして、れいなちゃんだよね?麻琴の彼女の高橋愛です」
た、高橋先輩?
心なしか、「麻琴の彼女」って部分を強調してるような気が…。
それにいつもよりも声が低いっす。
なんだか、大変な一日になりそうだ…。
僕は人知れず頭を抱えた。
- 57 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:37
-
そんな嫌な予想は見事に的中。
空気の読めないあいつは兄ちゃんにベッタリ。
ヘタレでアホな兄ちゃんはデートなのにあいつを突き放すことが出来ず。
そして、高橋先輩は…。
もう、なんだかすごいオーラを発していて。
平和主義者の僕としては堪え難い雰囲気なのだ。
ほんと、気まずいんだって…。
それに加えて、僕以外の三人は絶叫マシーン大好き人間。
ここに来てから連続で乗らされている。
もう、目が回るよ、勘弁して。
- 58 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:37
-
「次、あれ乗ろ!」
あいつが指差したのはこの遊園地の看板ジェットコースター。
…ギブアップ。
「お、俺、あっちで休んでるから!」
そう叫んで逃げ出そうとした時…。
「あたしも、絵里君と待っとるわ」
へ?
「行こ、絵里君」
「は、はあ…」
高橋先輩は、呆然としている僕の手をひいて歩きだした。
- 59 名前:第3話 特別(前編) 投稿日:2005/10/21(金) 00:38
-
本日は以上です。
- 60 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/21(金) 03:06
- なかなか面白い展開になってきましたね。
兄ちゃんのへたれっぷりがよい感じ。
続きが楽しみです。
- 61 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/22(土) 13:09
- おー!この展開にドキドキです。
- 62 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/23(日) 14:27
- どうも>>46です。
確かに魅力の一つですね。
でも最近はやっぱり亀×田の方が好きですね。
ってか、へたれマコキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
この後どうなっちゃうのかしら?
楽しみに待ってます。
- 63 名前:作者 投稿日:2005/10/26(水) 21:42
- >>60 名無飼育さん 様
個人的にもヘタレ兄ちゃんは気に入っております。
>>61 名無飼育さん 様
もっとドキドキして頂けるように頑張ります。
>>62 名無飼育さん 様
ヘタレマコは意外と人気が高いんですね。
自分としても書きやすかったです。
- 64 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:43
-
日陰になっている芝生の上。
少しヒンヤリするせいか、僕達以外は誰もいない。
隣で座っている高橋先輩は、さっきからずっと下を向いている。
あー、気まずいよ〜。
「…麻琴はあたしのこと、あんまり好きじゃないんや」
「ふぇ?い、いや、そんなことないですよ!」
「もう、麻琴なんて知らん。あたしの方から誘ってばかりやし、付き合って二ヵ月なのに手もつないでこんし。もう、ええわ」
- 65 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:44
-
早口で一気にまくしたてる先輩。
兄ちゃん、やばいよー。
僕は必死でフォローするものの、聞く耳持たず。
先輩はただひたすら一人で話し続ける。
終いにはなぜか宝塚云々の話になって…。
僕は途中からほとんど話を聞いていなかった。
「絵里君、彼女おるん?」
何の脈絡もない唐突な質問。
この人、話の展開がすごいなあ。
付き合うの結構大変かも…。
「…いない、ですけど…」
- 66 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:44
-
「ふーん。もてるやろ?三年の間でも噂になっとるよ、麻琴の弟は足が早くて笑顔が可愛いって」
「いやあ、えへへ」
誉められて悪い気がする人間はいない。
そっかあ、やっぱ僕、結構モテるんだ。
「麻琴は全然やけどな」
急に高橋先輩の顔が優しくなった。
「ちっともカッコ良くないわ。アホやし。教室でもおちゃらけてばっかやし。水泳部でも結局万年補欠やったし」
なんだか散々な言われようだなあ…。
「…でも、あったかい人なんや」
…高橋先輩、本当に好きなんだ、兄ちゃんのこと。
外見とかじゃなくて内面をちゃんと見てくれてるんだ。
なんか嬉しいかも。
- 67 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:44
-
「あの、すいません。れいなのこと…」
僕が謝ると高橋先輩はびっくりしたような顔で笑った。
「ええよ。れいなちゃんのことは、麻琴から聞いとるから。麻琴がどれだけ大切に思ってるかってこともわかっとるから」
…大切、かあ。
きっと、兄ちゃんにとっては本当の妹みたいな存在なんだと思う。
「あたしが怒っとるのは、麻琴の態度。なんであんなにビクビクするのか、わからん」
それはたぶん、高橋先輩のことが本気で好きだからです。
ヘタレな兄ちゃんは自分に自信が持てなくて、遠慮してるんじゃないかな。
なんとなく、そんな気がする。
お互いにすごく好きなのに、すれ違う二人。
なにかきっかけがあればなあ。
- 68 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:45
-
その時、ようやく、あいつと兄ちゃんがやってきた。
…よし、ちょっとベタだけど…。
「あ、高橋先輩、なんかついてますよ。目つむってください。僕、取るんで」
「え?早く取ってや」
高橋先輩は素直に目をつむる。
僕はゴミを取る素振りをして顔を近付けた。
そう、兄ちゃんたちから見ると、まるでキスするみたいに。
「絵里ぃ!!俺の愛ちゃんに何してんだぁ、ごらぁぁ!!!」
その瞬間、メガトン級の体当たりが僕を襲った!
- 69 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:46
-
・
・
・
うう、痛い。
あのバカが手加減なしで突っ込んできたせいで、3mほど軽く吹っ飛ばされた。
受け身も取れずに顔から倒れ込み、僕の頬は真っ赤に腫れてしまったのだ。
そんな捨て身の作戦が効いたのか、兄ちゃんと高橋先輩は嘘みたいにラブラブ状態。
「絵里は平気やけん、二人で乗ってきていいと」
というわけのわからないあいつの一言で、今頃はデートを楽しんでいるだろう。
なんか、バカらしい。
いつもこんな役回りばっかだ。
- 70 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:46
-
「あーあ、かなり腫れとうね。ま、自業自得やけん」
あー、もう、憎たらしい!
自業自得ってなんだよ!
僕は兄ちゃんのために…。
「…れいなさあ、兄ちゃんとベタベタしすぎだよ」
「へー、なん?やきもち?」
そんなんじゃないよ!
否定するのも面倒だから、思いきり睨んでやった。
- 71 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:47
-
「…まこっちゃん取られるみたいで、嫌やったけん。でも、ちょっとワガママやったね、れいな。高橋先輩に悪いことした」
あれ?
珍しく反省してるみたい。
なんだか可哀相に思えてきた。
「…兄ちゃんのこと、好きなんじゃないの?」
「好きやけど、恋愛感情はないと」
そっかあ。
恋愛感情じゃないのかあ。
って、なんで僕、安心してるんだろ…。
- 72 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:47
-
「それに、れいな、ちゃんと好きな人おるけん」
「ふぇ?」
す、好きな人いるんだ?
って、なんで僕、ガッカリしてるんだろ…。
年頃の女の子なんだし、恋くらいするよね。
でも、なんだろう。
心がモヤモヤしてる。
なんだか急に意地悪な気持ちになって、ついつい普段は言わないようなことを言ってしまう。
「好きな人には、あんまりワガママ言わない方がいいと思うよ。れいなのワガママはすごいからさ」
…僕は慣れてるからいいけどさ。
あいつは、少し困ったような顔をした。
その表情はなんだかとても大人びていて。
僕は思わず目をそらす。
- 73 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:47
-
「…ワガママ言うのは、絵里だけやけん」
僕だけ…?
「…絵里は特別やけん」
特別…?
「…れいな…」
「お待たせ〜!」
…僕達の微妙な雰囲気は、兄ちゃんのヘラヘラ笑顔でぶち壊し。
嬉しいような、悲しいような。
僕は自分の感情がコントロール出来なくなるのが怖くて、急いで立ち上がった。
- 74 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:48
-
閉園が近づいたため、遊園地を後にして駅に向かう。
あんなことがあったのになぜかあいつと高橋先輩は異様に仲良くなって、「れいな」「愛ちゃん」なんて呼び合ってる。
兄ちゃんはその様子をいつもみたいな優しい目で見守っている。
そして、僕は…。
僕は、芽生え始めた複雑な思いに必死で気付かないふりをしている。
あいつの子供みたいな笑顔を見つめながら…。
- 75 名前:第3話 特別(後編) 投稿日:2005/10/26(水) 21:49
-
あいつはとてもワガママだ。
だけど、特別って言われるのは悪くない。
第3話 特別
- 76 名前:作者 投稿日:2005/10/26(水) 21:50
-
本日は以上です。
- 77 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2005/10/27(木) 17:41
- かわいいなぁ
- 78 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/29(土) 18:43
- 萌えました
- 79 名前:作者 投稿日:2005/10/30(日) 14:14
- >>77
れいなのことかな?
だとしたらすごく嬉しいです。
>>78
ありがとうございます。
また萌えて頂けるように精進します。
- 80 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:15
-
あいつはとてもワガママだ。
- 81 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:16
-
「なあ、一年の田中れいなって知ってる?」
ある日のクラスメイトの会話。
僕は教室では割とおとなしい方で、休み時間はもっぱら自分の机にいる。
ちなみに、自慢じゃないけど、趣味は読書。
と言ったら、さゆに「本読んでるとこなんて見た事ないけど。教科書の事だろ?」なんて突っ込まれた。
まあ、実際、あまり読んでないけど…。
「あいつ、簡単にやらせてくれるらしいよ」
- 82 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:16
-
幼なじみのあいつは、なぜか入学式の翌日からものすごい数の噂が立てられてきた。
ヤンキー。
お水の母親。
ヤクザの娘。
そして、最近よく耳にするのがこの噂だ。
全くの事実無根な噂ではあるが、そう思わせる何かがあいつにあるんだろう。
今までの噂もいつの間にかどっかに消えていたし、必死で否定するのもバカらしい。
だから、僕はいつも聞き流している。
ただの幼なじみだし、基本的に平和主義者の僕としては、あまり関わりたくない。
- 83 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:16
-
「…いいの?あんな勝手な事言わせといて」
僕の目の前で鏡を見ているさゆが小さな声で言う。
「俺、関係ないから」
「ふーん」
さゆは興味なさそうな顔で再び鏡を見る。
ったく、自分大好き人間なんだから。
- 84 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:17
-
「俺さあ、今日、田中の事、呼び出してんだ。うまくいけばやれるかも」
…関わりたくない。
「まじで?俺も行きてー。あいつ、胸ないけど、なんかエロい体してるもんな」
ガタッ。
…やばい、本が落ちた。
さゆがちらっとこっちを見る。
僕は関係ない。
動揺なんかしてないぞ!
「じゃあ、放課後、体育館の裏集合な」
僕は行かない。
絶対に行かない。
- 85 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:17
-
放課後。
…えっと、僕は、なんで…、…僕は何をしてるんだろう今?
問いかけてみても答えはない。
僕は体育館の裏に来ていた。
もちろん、あいつらよりも先回りして、見つからない場所に隠れたりしてる。
別に気になったってわけじゃない。
あんな話を聞いちゃったんだから、仕方ない。
- 86 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:17
-
しばらくすると、あいつとクラスメイトの二人が来た。
「なん?こんなところに呼び出して」
相変わらず強気なあいつの声。
そんなんだから変な噂が立つんだよ、バカ。
「いやあ、俺達さ、ちょっと、れいなちゃんの噂聞いてさ」
「は?噂?」
「そうそう、結構好きなんでしょ?」
「は?なにが?」
あいつの反応にニヤニヤする二人。
鈍感なあいつは、全くもって何の事か気付いていない。
大体、こんなところに一人で来るなよ!
- 87 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:18
-
「だからさあ、俺達と良い事しようよ」
一人があいつの肩を抱く。
「な、なにしようと!」
あいつは抵抗するけど、あんな弱い力じゃあ、どんな男だってビクともしない。
「いいじゃん、誰でもいいんでしょ?優しくするからさ」
「っや、離すと!」
ついに二人がかりで押さえつけた。
「い、いや、え、絵里!」
なんで僕の名前なんか呼ぶんだよ。
ここにいる事知らないのに。
なんで…。
「絵里!絵里!」
その瞬間、僕は飛び出した。
- 88 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:18
-
・
・
・
「な、なんで亀井が…」
そんな捨てセリフを残して去っていくクラスメイト。
…ああ、僕の平穏な高校生活は終わった。
普段は大人しくて目立たないけど走ってる時はカッコ良い亀井君、を演じてきたのに。
明日から、「田中れいなと亀井絵里の関係」の噂が学校中を駆け巡るだろう。
- 89 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:18
-
「…絵里…」
「…」
「…い、いたんなら、なんでもっと早く助けんと!」
ちょっ、助けてやったのになんだよ!
さすがの僕も呆れて物が言えない。
「バカ!」
あいつは立ち上がって、僕の胸をガンガン叩く。
痛いって、マジで。
「もう、バカぁ〜…」
…手の動きが止まった。
- 90 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:19
-
「…っく、ひっく、…バカ…。…っく、絵里の…バカ…」
僕の腕の中で震える小さな体。
「…バカ…、バカ…」
「…ごめんね、れいな」
…ごめん。
「…れいな、…誰にでもやらせたりなんかしないと…」
「…うん」
わかってるよ。
「そんな子じゃないと…」
「…うん」
わかってるよ、ちゃんと。
幼なじみだから、わかってる。
平気な顔してもホントは傷ついてたんだよね。
わかってたはずなのに、知らないふりしてたんだ。
ごめんね、れいな。
僕は泣き虫なあいつが泣き止むまでずっと、小さな体を抱きしめ続けた。
- 91 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:19
-
・
・
・
やっと泣き止んだ頃。
あたりはすでに真っ暗になっていた。
平静を取り戻したあいつは、僕から離れて上目遣いでこう言った。
「絵里、どさくさにまぎれて胸触ったと!」
…いや、触ってないから。
大体、触るほど…。
「痴漢!スケベ!変態!!」
そう叫んで後ろを向いたあいつの耳が真っ赤な事は、気付かないふりをしておこう。
- 92 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:20
-
あいつはとてもワガママだ。
だけど、噂されているような軽い女じゃない。
- 93 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:22
- 第4話 背中
- 94 名前:第4話 噂 投稿日:2005/10/30(日) 14:23
-
本日は以上です。
92に93を入れるのを忘れましたorz
- 95 名前:作者 投稿日:2005/10/30(日) 14:25
- しかも、背中じゃないですね…。
すいません、「第4話 噂」です。
- 96 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/31(月) 00:32
- うわぁー。れいなが可愛いなぁ。
ここのれなえりに萌えまくりです。
- 97 名前:作者 投稿日:2005/11/03(木) 22:02
- >>96 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
可愛いれいなを書くのが目標なんで嬉しいです。
これからも萌えて頂ければ幸いです。
- 98 名前:第5話 ワガママなあいつ(前編) 投稿日:2005/11/03(木) 22:02
-
あいつはとてもワガママだ。
だけど、僕は…。
- 99 名前:第5話 ワガママなあいつ(前編) 投稿日:2005/11/03(木) 22:03
-
ここ最近、僕は自分の中のどうしようもない気持ちと闘っている。
いや、闘っていた。
そして、僕はついに敗北を認めざるを得なくなった。
つまり、その…、あいつの事が好きだという事にはっきりと気付いてしまったのだ。
- 100 名前:第5話 ワガママなあいつ(前編) 投稿日:2005/11/03(木) 22:03
-
その事をさゆに話すと、深いため息の後にこう言われた。
「絵里、バカじゃないの?昔から、絵里はれいなに惚れてたじゃん」
中学の頃から僕とあいつを知っているさゆからしてみれば、何を今更って感じらしい。
「認めたくなかっただけでしょ?」
確かにそうかもしれない。
僕はいつも、いろんな事に対して、気付かないふりをしてきた。
自分でも無意識のうちに。
認めてしまうと歯止めが効かなくなるかもしれないこの思いが怖かったのかな。
実際、僕はいつでもどこにいても、あいつの事ばかり考えている。
…あー!もう、頭の中があいつでいっぱいだ!!
そして、僕の頭の中のあいつは、やっぱりとてもワガママだった。
- 101 名前:第5話 ワガママなあいつ(前編) 投稿日:2005/11/03(木) 22:04
-
いつもの部活の帰り道。
最近はわざわざあいつの家の前を通って帰ったりしてる。
少し遠回りではあるけど…。
恋を自覚してからは(といってもまだ数日前の事だが)、まだあいつに会っていない。
見飽きたはずの笑顔が見たくて仕方ない。
偶然を装ってでも。
あー、これが恋って奴かあ。
- 102 名前:第5話 ワガママなあいつ(前編) 投稿日:2005/11/03(木) 22:04
-
暗闇の中、アパートの前に二つの影が見えた。
もしかしたら…。
予想通り、影の一人はあいつだ。
もう一人は…ふ、藤本先輩!?
藤本先輩は校内で一二を争うほどの男前で、当然の如く超モテる。
見た目は怖いし口も悪いけど、実はすごくいい人だって兄ちゃんが言ってたっけ。
その藤本先輩が、なんであいつと?
- 103 名前:第5話 ワガママなあいつ(前編) 投稿日:2005/11/03(木) 22:04
-
「じゃあ、返事考えといて」
「あ、あの、れいなは…」
「あー、ストップ。断るにしても、しばらくは夢見させといてよ」
藤本先輩はそう言ってニカッと笑った。
その笑顔は、男の僕でさえカッコいいと思うくらいさわやかで…。
「これ、俺の番号だから。田中ちゃんの気持ちが固まったら電話して?」
「…はい」
恥ずかしそうにメモを受け取るあいつ…。
- 104 名前:第5話 ワガママなあいつ(前編) 投稿日:2005/11/03(木) 22:05
-
藤本先輩が帰った後も僕はその場を動けなかった。
話の流れからして、藤本先輩があいつに告白したらしいって事くらい、いくら鈍感な僕でもわかる。
あいつは、今もうつむいたままで渡されたメモを見つめている。
あんなカッコいい人に告白されたら、誰だって…。
「え、絵里?なにしとうと?」
あいつに気付かれた。
僕はかなり混乱していた。
「…告白されたんでしょ?」
あいつは気まずそうにうなづく。
- 105 名前:第5話 ワガママなあいつ(前編) 投稿日:2005/11/03(木) 22:05
-
「で、でも、れい…」
「いいんじゃない?お似合いだよ、二人」
自分でも信じられないような言葉がこぼれる。
やめろ、それ以上言っちゃだめだ!
だけど、暴走は止まらない。
「付き合っちゃえば?藤本先輩カッコいいし、みんなに自慢でき…」
僕の暴走を止めたのは、あいつの頬を流れる一筋の涙だった。
こんなふうに声を出さずに泣くあいつを見るのは初めてだった。
翌日、あいつと藤本先輩が付き合っているという噂が校内を駆け巡った。
- 106 名前:第5話 ワガママなあいつ(前編) 投稿日:2005/11/03(木) 22:06
-
・
・
・
あれから一週間。
あいつはもう僕にワガママを言わない。
そして、あいつはもうすぐ16歳になる…。
- 107 名前:demizo 投稿日:2005/11/03(木) 22:08
-
本日は以上です。
- 108 名前:demizo 投稿日:2005/11/03(木) 22:10
- 調子に乗ってHNつけてみました。
今後はこの名前で更新させて頂きます。
宜しくお願いします。
- 109 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/03(木) 22:47
- NO-----!!
何やってんのよぉ絵里っ!!
はぁーん、続きが気になるよぉ。
demizoさん、GJ!!
- 110 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/03(木) 23:06
- うあぁー。素直になれよ絵里。
- 111 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/05(土) 15:42
- この話、最高です。
めっちゃれいなにも絵里にも,ときめきます。
更新待ってます。
- 112 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/06(日) 14:44
- 夢に絵里君が出てくるほどはまっちゃったよぉぉぉぉぉ。
- 113 名前:demizo 投稿日:2005/11/11(金) 00:03
- >>109 名無飼育さん 様
ほんと、なにやってるんだって感じですね。
GJってw ありがとうございます。
>>110 名無飼育さん 様
おっしゃる通り。
早く素直になってほしいものです。
>>111 名無飼育さん 様
最高だなんて恐縮です。
絵里君にもときめいちゃうなんて、嬉しい限りです。
>>112 名無飼育さん 様
夢に出てくるなんて嬉しい&羨ましいです。
自分の夢にも出てきてほしいです。
- 114 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:03
-
噂が流れてから、僕は何に対しても無気力になっている。
心配してくれるさゆや兄ちゃんの言葉にも耳を傾ける気にならず、ただなんとなく毎日を過ごしてきた。
明日、11月11日はあいつの誕生日。
いつもならばあいつは強引に僕を呼び出して、
「今日はれいなの誕生日やけん。思いきりワガママ言うと!」
なんて言って、僕を振り回す。
僕は、ワガママなんていつも言ってるじゃんとか思いながらも、あいつの言う事を聞いてやっていた。
そう、誕生日はいつも二人で過ごしていたのだ。
それがどんなに特別な事か、今さらながら痛感する。
明日、あいつはたぶん、藤本先輩と過ごすんだろう。
僕は鳴らない携帯を握りしめながら、ほとんど眠れずに朝を迎えた。
- 115 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:04
-
11月11日。
今日は部活もなく、授業が終わってすぐ帰った僕は、家でゴロゴロしている。
何もしたくない。
何も考えたくない。
我ながら情けないけど…。
突然、聞きなれた着信音が響き渡る。
ディスプレィを見ると『亀井麻琴』。
…兄ちゃん?
- 116 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:04
-
「もしもし?」
『あー、絵里?今から駅においでよ』
は?
「…なんでさ?」
『いいから来いって。どうせ家でダラダラしてるんでしょ?伝言板の前で待ってるから、じゃあな!』
返事をする前に切られた。
兄ちゃんにしては珍しく強引だな。
でも、確かにこのまま家にいてあいつの事ばかり考えているよりは、外に出た方が気が紛れるかもしれない。
- 117 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:05
-
伝言板前に着いたが兄ちゃんの姿はない。
あれ?
待ってるって言ってたのになあ。
…あ、あれ?
…え、まさか、そんな…。
「…絵里」
兄ちゃんの代わりに伝言板の前に現れたのは。
「…れいな」
僕が今一番会いたくて、そして会いたくない、あいつだった。
- 118 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:05
-
「こんなとこで何しとうと?」
「…兄ちゃんに呼ばれて…」
「…れいなは愛ちゃんに呼ばれたと」
二人して、僕達をはめましたね…。
あいつもすぐにその事に気付いたみたいだった。
顔を合わせるのは一週間ぶり。
長い幼なじみ生活の中で、こんなに会わなかったのは初めての事だった。
「…今日は、藤本先輩と一緒じゃないの?」
一番気になる事を聞くと、あいつは思いきり睨んできた。
- 119 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:05
-
「言っとくけど、藤本先輩とはなんでもないと。ただの噂」
…ま、まじで?
「あんな噂信じとるバカの顔が見てみたいと」
相変わらず睨み続けてるあいつ。
そう、僕はバカだ。
噂がどれだけいい加減なものかって事くらい、わかってたはずなのに。
あんな事があって、久しぶりに会って、改めて実感する。
僕はこいつの事が好きだ。
もう誰にも渡したくない。
誰にも、渡したくないんだ…。
- 120 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:06
-
「…た、誕生日おめでとう」
予期せぬ言葉に不意をつかれたのか、あいつは僕から視線を外す。
「…遅いと。れいな、0時ちょうどに言われんと嫌やけん」
久しぶりに聞くワガママに嬉しくなる。
「ごめんね。お詫びに今日はれいなのワガママ聞くよ」
そう、いつもの誕生日みたいに。
僕だけにワガママを聞かせてほしい。
- 121 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:06
-
「…ダイヤと花火…」
「え?」
「やけん、ダイヤと花火!わからんかったら、もう絵里なんかとは一生口きかんと!」
そ、それは困る。
必死で頭の中の思い出を検索する。
小さな頃からずっと一緒に過ごしてきた16年間の思い出達…。
…あ!そうか!
「OK。行こう!」
驚くあいつを促して、僕は改札口へと歩き出した。
- 122 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:07
-
・
・
・
あれは確か去年の誕生日。
例年通りさんざんあいつに付き合わされた後、電車の中から見た観覧車。
「あの観覧車、『ダイヤと花火の大観覧車』って名前らしいと。ネーミングセンスはないけど、綺麗やね」
・
・
・
- 123 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:07
-
黙ってついてきたあいつは観覧車を見つけると、ものすごくはしゃぎ始めた。
「乗ると?あれに乗ると?れいな、夢だったけん。超ヤバイ、超ヤバイ」
そんなあいつを見ながら、僕は重大な決意をしていた。
この観覧車の中で告白しよう。
あいつの笑顔も、あいつの涙も、あいつのワガママも、全部一人占めしたいんだ。
- 124 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:08
-
観覧車に乗り込むと、直前までおしゃべりだったあいつが急に静かになる。
気まずい。
だけど、もう迷いはなかった。
ちゃんと伝える。
そう決めたから。
「お、俺さ、れいなのワガママって、き、嫌いじゃなくて…。なんていうか、その…か、か、可愛いとかって思ったりとかしたりして…。つまり、だから、その…」
「…絵里、何言うとるかわからん」
…おっしゃる通り、面目ない。
「昔っから絵里はそうやね。いつもハッキリせん」
…うう、否定出来ない。
「言いたい事言わんと、頭の中にいろいろ溜め込んで」
なんでわかるの?
「…やけん、れいながそばにおらんと、ダメやろ」
- 125 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:08
-
「…ずっと、そばにおいとって…。…れいなもワガママ言う相手がおらんと、ダメと…」
「…れーな…」
「絵里は、れいなにとって、…おらなアカン存在やけん」
真っ赤な顔でうつむいて、スカートの裾を掴んでるあいつ。
震えてる手。
そう、僕達はお互いを必要としてる。
足りない部分を補いながら、ずっと、ずっと、そばにいたんだ。
そして、これからも。
- 126 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:09
-
「そばにいる。れいなのワガママ、全部受け止めるよ」
れいなが、好きだから。
泣き虫なあいつは、必死に涙を堪えて笑ってくれた。
僕はなんだか堪らなくなって、そっとれいなの頬に手を寄せる。
すごく熱い。
たぶん、僕も。
僕達はゆっくりとゆっくりと顔を近付ける。
- 127 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:10
-
「はーい、一周終わりでーす!」
…元気の良い係員のお兄さんの声で、僕達のファーストキスはおあづけになった。
- 128 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:10
-
観覧車乗り場から離れると、あいつは「にひひっ」と笑った。
「あのお兄さん、れいな以上に空気読めんとー。おにーさーんって叫びそうになったと」
文句言ってるわりに楽しそう。
僕もいつもみたいにフニャッと笑う。
ふと、あいつがシャツの裾を掴んでる事に気付いた。
自慢じゃないけど、こいつの考えてる事くらいお見通しだ。
いや、今度からは自慢してもいいよね?
だって、それは僕にしかわからない事だから。
いつもならば気付かないふりをしてきたけど、もうそんな事はしない。
僕はあいつの手を掴んで歩き出した。
あいつは、小さな手で強く握り返してくれた。
- 129 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:10
-
「絵里ー、喉乾いたとー」
はいはい、駅の自販機で買ってあげるから。
「絵里ー、お腹すいたとー」
はいはい、途中でファミレスでも入ろうね。
「えーりー」
まだ、あんの?
「抱っこー」
…いや、それは、勘弁して下さい。
僕の困った顔を見て、あいつはイタズラっ子のように笑った。
- 130 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:11
-
あいつはとてもワガママだ。
だけど、僕はワガママなあいつが好きらしい。
第5話 ワガママなあいつ
- 131 名前:第5話 ワガママなあいつ(後編) 投稿日:2005/11/11(金) 00:11
-
あいつはとてもワガママだ。
僕はいつも振り回されている。
中学校…。
小学校…。
幼稚園…。
いや、たぶん、生まれた時からずっと。
そして、これからもずっと。
ワガママなあいつ 完
- 132 名前:demizo 投稿日:2005/11/11(金) 00:12
-
本日は以上です。
- 133 名前:demizo 投稿日:2005/11/11(金) 00:18
- 一応、当初考えていた話は以上で終わりです。
初小説のつたない文章にも関わらず読んでくださり、ありがとうございました。
レスも全部すごく嬉しかったのですが、返レスが下手くそでごめんなさい。
今後は、「完」と書きながらも二人のその後の話を書いていきたいと思っています。
また、現在書き溜めている全く別の短編も載せさせて頂きます。
それでは、本当にありがとうございました。
最後になりましたが、田中さん、お誕生日おめでとうございます!
- 134 名前:名無しal 投稿日:2005/11/11(金) 09:02
- 完結お疲れ様でした。
今までコッソリROMらせて頂いておりましたが
とても素敵なお話で毎回毎回感動していました。
その後があるということなので
そちらも楽しみにしています。
- 135 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2005/11/11(金) 23:26
- かわいく初々しい二人に夢中でした。
今日という日に更新とは憎い演出ですね。
いっぱい楽しませてもらいました。
- 136 名前:じゅん 投稿日:2005/11/12(土) 02:39
- 面白かったです。続きと、次の作品がかなり気になります。
- 137 名前:demizo 投稿日:2005/11/13(日) 21:12
- >>134 名無しal 様
素敵な話だなんて最高の褒め言葉ありがとうございます。
今後も楽しんで頂けたら幸いです。
>>135 名無し募集中。。。 様
スレを立てた時から「この話はこの日に更新する」と決めてました。
そこに気付いてもらえて嬉しいです。
>>136 じゅん 様
面白いという言葉が何より励みになります。
今後もよろしくお願いします。
- 138 名前:demizo 投稿日:2005/11/13(日) 21:12
- それでは、「ワガママなあいつ」とは全く関係ない短編を一つ。
赤板の「作者フリー 短編用スレ 5集目」に書かせて頂いた「友達のまま」のその後です。
- 139 名前:理解して! 投稿日:2005/11/13(日) 21:13
-
うーん、一体どうしたんだろう。
いつものように部屋に来てから約二時間。
梨華ちゃんは深刻な顔をして何かを考えてる。
ときどき、決意を込めた目でごとーを見て、やっぱダメだってまた塞ぎ込む。
ごとーはこう見えても気が長い方だから(一年半も片思いしてるわけだし)、こんな梨華ちゃんを見てるのも好きだから何も言わなかったけど。
いい加減、もう飽きた。
- 140 名前:理解して! 投稿日:2005/11/13(日) 21:14
-
「ねえ、梨華ちゃん?なにか言いたい事あるんじゃないの?」
ビクッ。
梨華ちゃんの肩が思い切り震える。
いや、そんなに驚かなくても。
「あー、いや、別にいいんだけどさ。ほら、言いたい事ためとくの、良くないじゃん?」
上目遣いでごとーを見つめる梨華ちゃん。
…あれ?
もしかして、睨まれてるのかな?
ごとー、なんかした?
「り、梨華ちゃん?」
みるみるうちに般若みたいな怒り顔になって。
どうやら梨華ちゃんの頭の中ではどんどん物語が進んでるらしく、知らない間にごとーが悪い事になってるみたい。
となると、次の言葉は…。
- 141 名前:理解して! 投稿日:2005/11/13(日) 21:14
-
「ごっちんのバカ」
ほらね?
予想してたセリフだけど、ちょっと傷つくなあ。
「なんなの、なによ、意気地なし」
うーん、どういう意味なんだろ?
いくら温厚なごとーでもそろそろ怒るよ?
「大体、告白してきたのは、ごっちんじゃない!」
「んあ?」
思わず間の抜けた返事をしてしまう。
- 142 名前:理解して! 投稿日:2005/11/13(日) 21:14
-
そう、ごとーは一年半くらい前から梨華ちゃんが好きだった。
そして、梨華ちゃんに告白して断られたのが約十ヵ月前。
それからも一ヶ月に一度くらいの割合で、猛アタックを繰り返してきた。
なのに梨華ちゃんは一度も頷いてくれなくて。
だから、この数ヶ月はもう諦めの境地に入ってた。
このまま、友達のままで終わる関係だって覚悟決めてたんだよ?
その結果が今のセリフって???
- 143 名前:理解して! 投稿日:2005/11/13(日) 21:15
-
「なんなの、なによ、生返事」
もう完全に突っ走りモードの梨華ちゃん。
こうなったら誰にも止められない。
「ごっちんなんて、買い物付き合ってくれてもつまんなそうだし。映画見ても感動しないし。いつもあくびばっかりだし。買い物は気合なの!」
うわあ、今回のは重症だ。
だって、最後のは全然意味わかんないし。
- 144 名前:理解して! 投稿日:2005/11/13(日) 21:15
-
「私はごっちんと同じ時が過ごしたいの!!」
ん?
- 145 名前:理解して! 投稿日:2005/11/13(日) 21:16
-
「ラブラブがいいの!アツアツの二人がいいの!!」
んんん?
- 146 名前:理解して! 投稿日:2005/11/13(日) 21:16
-
「理解してよ!」
- 147 名前:理解して! 投稿日:2005/11/13(日) 21:16
-
それは、不器用で意地っ張りで頑固でおせっかいで空回りでキショくて、どうしようもなく可愛いお姉さんの精一杯の告白らしい。
つまり、もう友達は卒業していいって事だよね?
梨華ちゃんは、たぶんずっと抑えてた気持ちが一気に溢れ出して、今はもう放心状態。
そして、うわ言の様に一言。
「…キス、キスして…」
そんな大胆な事を言うお姉さんに、視線だけで問いかける。
いいの?って。
この線を越えたら、もうごとーは止まれない。
もう、待てなんて言われても無理だよ?
- 148 名前:理解して! 投稿日:2005/11/13(日) 21:17
-
「いい、いいから…」
お姉さんのお望み通り、ごとーは梨華ちゃんにキスをした。
- 149 名前:理解して! 投稿日:2005/11/13(日) 21:18
-
こうして、ごとーと梨華ちゃんは念願の恋人になれたわけだけど。
「ねえ、梨華ちゃん、その服にそのカバンはどうかと思うけど…」
「なんなの、なによ!ごっちんなんて大嫌い!」
ごとーが梨華ちゃんを理解できる日は、まだまだ先のようだ。
- 150 名前:demizo 投稿日:2005/11/13(日) 21:18
-
以上です。
- 151 名前:demizo 投稿日:2005/11/14(月) 22:47
- 調子にのって連日更新しちゃいます。
- 152 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:49
-
「れいなって好きな人いるの?」
女子高生なら日常茶飯事の会話。
でも、れいなはいつも苦笑いでごまかすしかない。
だって、れいなの好きな人は、女の子だから…。
- 153 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:49
-
田中れいなが同じクラスの亀井絵里と初めて話したのは、夏の終わりだった。
毎年恒例、1年生による2泊3日の遠泳合宿。
それは、心身を鍛えるためだけでなく、クラス内の親睦を深めるために行う。
そのため、グループ分けはくじ引きで決める事になっているのだ。
れいなと絵里は同じグループになった。
れいなはどちらかというと派手な外見で、好きなものもギャル系。
クラスでも一番目立つグループに属していた。
一方の絵里は大人しいタイプ。
天然なのか話す言葉もゆっくりとしていて、れいなとは正反対である。
だから、そのくじ引きがなければ、こんな気持ちを抱く事はなかっただろう。
- 154 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:49
-
その遠泳合宿の最終日前日。
ちょっとした事件が起こった。
クラスの男子が、絵里と、絵里が少し仲良くしている男子の関係をからかったのだ。
それは、れいなのようなハキハキとしたタイプの子からすれば笑い事で済ませる程度のからかい方だったのだが、絵里にしてみれば正しく大事件だった。
言い返すことも出来ずに真っ赤な顔でうつむく絵里。
その時、絵里を助けたのがれいなだった。
「いい加減にすると。いつまでもガキみたいに騒いで、くだらん」
れいなとしては絵里を助けるつもりなどまるでなく、ただうるさいから黙らせただけだったのだが…。
ともかく、その事件が二人の仲を急速に発展させるきっかけとなった。
- 155 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:50
-
れいなが部屋に戻り布団を敷いていると、隣に絵里がやってきた。
「あ、あの、さっきはありがとう」
「別に、亀井さんのためじゃないけん、気にせんで」
れいなはただ、「気にしないで」と言いたかったのだが、どうも余計な言葉を付け加えるクセがあるため、誤解されがちである。
しかし、人一倍鈍感な絵里にはその余計な言葉が伝わっていないらしく、うまい具合に「気にしないで」だけを受け取ったようだ。
「田中さんて、優しいね」
「…そ、そんなことないと」
そんなにストレートに言われると照れくさい。
しかも、そんなに満面の笑みで。
その後、絵里はなぜかれいなの隣に布団を敷いて朝まで話し続けた。
話してみると、正反対の性格でも意外と気が合うもので、二人はあっという間に仲良くなった。
- 156 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:50
-
そんな友情が恋愛感情に変わったのは、いつの事からかわからない。
れいなはいつの間にか絵里に恋をしていた。
絵里が話す相手全てに嫉妬していた。
自分以外の誰かに向けられる笑顔なんて見たくなかった。
だけど、こんな気持ちを抱いている自分に嫌悪感を覚え、れいなは次第に絵里と距離を置くようになっていた。
- 157 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:51
-
ある秋の放課後。
部活に入っていないれいなはいつも通り速攻で帰ったが、途中で財布を忘れたことに気付き、学校へと戻ってきた。
残っている生徒はほとんどいなかったが、教室の前まで来た時、一人で机に向かっている絵里を見つけた。
一瞬、このまま帰ろうかと思ったが、ここまで来て帰るのも癪なので教室へ入った。
絵里がれいなに気付く。
「あー、れーな」
「あー、絵里。…て、一人で何しとうと?居残り勉強?」
「まさかあ、れーなじゃあるまいし」
「は?なんいおうとや?」
良かった。
れいなは普通に話せたことに安堵して、絵里の前の席に座る。
- 158 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:51
-
「文化祭で劇やるでしょ?その脚本」
「絵里が書くと?」
「そうだよー。この間のホームルームで決まったじゃん。れいなは寝てたけど」
まさにその通り。
れいなは学校にいるほとんどの時間、机に突っ伏して居眠りをしていた。
誰もが面倒がる脚本。
モメた末に、演劇部の絵里が書く事になったそうだ。
「そんなん、断ればいいと。面倒やけん」
「んー、まあ、しょうがないかなって」
絵里はフニャっと笑って、れいなはその笑顔にドキっとした。
思わず目をそらしてしまう。
顔が赤いことに気付かれただろうか。
- 159 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:51
-
「ねえ、れーな」
「な、なん!?」
思いがけず大きな声が出た。
「れーな、驚きすぎー」
絵里はまた笑う。
「れいなはー、好きな人いますかあ?」
- 160 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:52
-
笑いながら聞いてくる。
れいなにとって一番されたくない質問。
そして、一番されたくない人。
でも、ここで逃げ出すわけにはいかない。
自分の気持ちを隠すために、努めて冷静に明るく答えた。
「そりゃあ、好きな人の一人や二人おると」
「えー、二人もいたら大変じゃん」
「れいなやけん、いいと。…え、絵里は?」
少しどもってしまったが、相変わらず鈍感な絵里は何も感じていないみたいだった。
- 161 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:52
-
「絵里もいるよー。ちゃんと一人」
ズキ。
れいなは生まれて初めて心臓が痛くなるという事を体感した。
絵里の好きな人。
聞きたい、聞きたくない。
知りたい、知りたくない。
でも、聞くチャンスは今しかない。
「…へ、へえ、誰?」
相手がわかれば諦められるかもしれない。
女の子に恋してしまった、このなんともいえない罪悪感みたいなものから逃れられるかもしれない。
- 162 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:53
-
「んー、じゃあ、恥ずかしいから書くね」
絵里はそう言うと、新しいルーズリーフを引っ張りだした。
ズキ。
ズキ。
心臓が痛い。
早く書いてほしい。
いや、書かないでほしい。
絵里、れいなは絵里の事…
絵里は真新しいルーズリーフのど真ん中に、大きな線を書いた。
そして、その上に『∧』。
つまり、矢印。
- 163 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:53
-
その矢印は間違いなくれいなに向けられていた。
- 164 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:53
-
ドクン。
ドクン。
心臓が高鳴る。
書かれた矢印の真意を掴む事が出来ないれいなは、ルーズリーフをじっと見つめていた。
「れーなは?」
絵里の言葉ではっと上を向く。
絵里はもういつもみたいに笑ってはいなかった。
せつなそうな、今にも泣きだしそうな、だけど、どこか覚悟を決めたような顔をしていた。
絵里の気持ちがれいなに伝染する。
絵里はれーなが好き、れーなが好きだよ
ねえ、れーなは?
込み上げる涙を堪えて、れいなはルーズリーフを手に取った。
- 165 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:54
-
そして、一回転。
矢印は絵里の方を向いた。
- 166 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:54
-
「れ、れいなの好きな人…」
真っ赤になった顔でつぶやくれいな。
絵里は最高の笑顔で、その矢印の告白を受け取ってくれた。
- 167 名前:矢印の告白 投稿日:2005/11/14(月) 22:55
-
その時の一本の矢印が書かれた真新しいルーズリーフは、今でもれいなの生徒手帳の中。
- 168 名前:demizo 投稿日:2005/11/14(月) 22:55
-
以上です。
- 169 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/15(火) 18:39
- 更新お疲れ様です。一人で読んで一人でへらへらしていました。
- 170 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2005/11/17(木) 04:00
- キショく笑いながら読んでる自分に気付かされる深夜……
- 171 名前:demizo 投稿日:2005/11/17(木) 18:31
- >>169 名無飼育さん 様
作者もいつも一人で書いて一人でイライラしております。
うまく表現できないもどかしさに…。
>>170 名無し募集中。。。 様
なんというか…最高の褒め言葉と受け取っておきますw
ありがとうございます。
それでは、「ワガママなあいつ」のその後の話を一つ。
といっても、今回は「あいつ」は出てきませんのでご了承願います。
- 172 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:32
-
無事に付き合い始めた僕達二人の事は、あっという間に噂になった。
「藤本先輩と付き合ってたんじゃないの?」
「何で亀井君と?」
「あの子ばっかりずるい」
一時期はそんな心無い陰口の的になったりもしたけど、一週間ほどで全く聞こえなくなった。
その理由は藤本先輩の一喝。
「俺がフラれただけなんだよ。グダグダ言ってる奴はぶっ飛ばす!」
僕は直接聞いてないけど、かなり人が多い場所で叫んだらしく、それ以来、あいつの噂をする人はいなくなった。
やっぱ、藤本先輩はカッコいいなあ。
あいつ、ホントに僕で良かったのかな…。
何だか自信がない。
- 173 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:32
-
「…り、絵里!」
え?
かなりボケッとしていた僕は、さゆに揺すられてようやく我に返る。
「隣のクラスの子が呼んでるってさ」
隣のクラス?
誰だろう?
廊下に出てみるとガキさんともう一人、知らない女の子が立っている。
ガキさんとは去年同じクラスで、結構仲が良かった。
割と気が強い女の子でよく怒られてたっけ…。
- 174 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:33
-
「ガキさん、どうしたの?」
「この子が話があるんだって。放課後いい?」
「う、うん、別にいいけど…」
「じゃ、放課後、屋上で」
何だか迫力に押し切られてしまった。
なんかあったのかな?
ちょっと機嫌が悪いみたいだけど。
まあ、いっか。
僕は大して気にも留めず、教室へと戻った。
- 175 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:33
-
六時間目の授業が終わり屋上へと向かう。
ちなみに、僕とあいつはあんまり一緒に帰ったりしない。
二人とも人前でベタベタするタイプでもないし、家も近いし、部活もあるし。
よくよく考えたら噂になる要素なんてないんだけど…。
高校生の情報網はすごい。
そんな事を考えながら屋上のドアを開けると、さっきの女の子が一人で待っていた。
- 176 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:33
-
「あの、ごめんね?待たせちゃって」
「あ、いえ、私こそごめんなさい。呼び出したりして」
女の子は小柄で可愛らしい。
顔は何となく見た事あるけど名前は知らないから、たぶん目立たない子なんだと思う。
「私、…亀井君の事、ずっと好きでした」
え?
「だから、付き合い始めたって聞いてショックで…」
うつむく彼女。
僕は何も言えずに立ち尽くす。
「一日だけでいいから、デートしてくれませんか?」
「ふ、ふぇ!?」
思わず素っ頓狂な声をあげる。
だって、デートって…。
あいつとだってまともにした事ないのに…。
- 177 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:34
-
「い、いや、あの…」
「お願い。それできっぱり諦めるから」
いや、お願いって言われても。
「俺…」
う、うわ!
彼女は突然泣き出した。
まいったなあ、どうしよう…。
でも、一日くらいなら、それで諦めるって言ってるしなあ。
「じゃ、じゃあ、一日だけ…」
「ほんと!約束ね!」
僕が答えると彼女はそれまでの涙が嘘みたいに喜んで、その場から走り去った。
…女の子って怖い…。
- 178 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:34
-
とりあえず、あいつにバレないようにしないと…。
僕は屋上から出ようとした。
その瞬間…。
- 179 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:34
-
な、なんだ?
この恐ろしい殺気は?
後ろからの強烈なオーラに僕は恐る恐る振り返る。
大丈夫。
ケンカなら自信あるし、大丈夫。
覚悟を決めて振り返った僕を待っていたのは…。
- 180 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:35
-
「てめぇ、亀井絵里」
ふ、ふ、ふ…。
- 181 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:35
-
「何考えてんだぁ?ゴルァ?」
ふふふ、ふ、ふ…。
- 182 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:35
-
「ぶっ殺す!」
ふじもとせんぱい!!
- 183 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:36
-
どこからともなく現われた藤本先輩によって、壁際まで追い詰められる。
確かにケンカなら負けないかも知れない。
だけど、僕は全く動けずにいる。
すごい迫力…。
「おまえだよなあ、田中ちゃんと付き合ってんのって」
「は、はい」
「さっき告白されてたよなあ。一日デートだって?」
「は、はい」
「なんではっきり断んねーんだよ!」
藤本先輩のパンチが壁に激突。
…い、痛くないっすか?
うわ、ちょっと血が出てるじゃん…。
- 184 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:36
-
「田中ちゃんが何て言って俺をフったか、教えてやろうか?」
あいつが、何て…?
「おまえじゃないとダメだって。おまえは安心してワガママ言える唯一の存在だって、そう言ったんだよ!」
藤本先輩が僕の胸倉を掴む。
先輩の口から聞かされたあいつの思い。
僕は自分を情けなく思った。
まだ付き合ってもいないうちから強い気持ちで告白を断ったあいつ。
それに比べて彼女がいるくせにデートを承諾してしまった僕。
- 185 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:36
-
「だから俺はきっぱり諦めたんだよ!なのにてめぇは何だ?」
僕は…。
「おまえなんかに田中ちゃんは任せられねぇ!」
そう言うと、藤本先輩は走り出そうとした。
僕は無意識のうちに先輩の腕を掴んでいた。
「何だよ!文句あんのか!」
「…あいつのとこに行くんですか?」
「そうだよ。安心しな。別に今見た事チクるつもりなんかねぇよ」
「行かせない!」
- 186 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:36
-
僕は確かにダメな奴だ。
泣かれたからってあんな約束して。
バレなきゃいいとかそんな問題じゃない。
だけど…。
あいつへの気持ちは嘘じゃない。
藤本先輩には渡さない。
他の誰にも渡さない。
- 187 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:37
-
「…行かせない、だと?偉そうに言える立場か!」
再び僕を押さえつける先輩。
だけど僕だって負けてない。
先輩の胸倉を掴み返す。
「俺はれいなの事が好きなんだ!あんたなんかよりずっと前から!誰にも渡すもんか!!」
怒鳴りちらした僕を見て、藤本先輩は目を丸くした。
そして、そのまま一分間睨み合った後、大きな声で笑い出した。
- 188 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:37
-
「…ったく、やっぱり麻琴の弟だよな」
ひとしきり笑った後、唖然としている僕の頭をはたく。
何だよ、一体…。
「あーあ、バカらしい」
その場に座り込み、裏ポケットから出したのは…タバコじゃん…。
「吸うか?」
「い、いえ、結構です」
僕はスポーツマンだからそんなもの吸わない。
大体、ここ学校だし…。
「まあ、座れよ」
「はあ…」
- 189 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:38
-
さっきまでの勢いはどこへやら、途端に優しい顔つきの先輩。
僕は素直に先輩の隣に座る。
「俺ってさ、結構モテるんだよ」
ええ、知ってますけど。
「ぶっちゃけ、フラれた事なんかないわけ」
はあ…。
「だから、田中ちゃんが初めてだった。かなりショックだったよ。しかも、相手がおまえみたいな奴だし」
「…すいません」
僕はふてくされて答えた。
- 190 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:38
-
「でも、田中ちゃんが選んだだけあるな」
「え?」
「ついでに、麻琴の弟だって事も納得。俺は麻琴には借りがあるからな。あいつには一目置いてんだ」
藤本先輩が兄ちゃんを一目置いてる?
意外だ、意外すぎる…。
高橋先輩の事といい、兄ちゃんてどんな学校生活送ってんだろう?
「ま、おまえならいいよ。田中ちゃんと仲良くな」
タバコの吸殻を律儀に携帯灰皿に入れた藤本先輩は、相変わらずカッコ良く爽やかに笑った。
悔しいけど、この人にはかなわない。
そんな気がした。
- 191 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:38
-
「あの、俺、あの子にはちゃんと断りますから」
屋上のドアを開きかけた先輩の背中に声を掛ける。
「当たり前だ、バーカ」
「俺、れいなの事、ちゃんと…」
「ちゃんと、何だよ?」
「ちゃんと…」
幸せにするとか、そういう類の言葉が言いたかったけど。
僕には何となくまだそれを言う資格がない気がして。
「…バーカ」
藤本先輩には伝わったのかな?
同じ子を好きになった男同士、何となく分かり合えた気がしなくもない。
「じゃあなー」
藤本先輩は血が出てる右手を振りながら、屋上を後にした。
- 192 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:40
-
その後、ガキさん経由であの子の連絡先を聞いて、一日デートをきっぱり断った。
やっぱり泣かれちゃったけど、僕はちゃんと自分の気持ちを伝える事が出来た。
まだ、自信なんてない。
だけど。
あいつが、あの藤本先輩より僕を選んでくれた事、ワガママを言える唯一の存在だと言ってくれた事で、ほんの少しだけ
だけど強くなれた気がする。
だから、もしもあいつが不安になった時は伝えてあげるんだ。
僕は他の誰よりもあいつを選んだんだって事を。
そして、あいつはこんな情けない僕を強い男に変えてくれる、唯一の存在だって事を。
- 193 名前:第6話 恋のライバル 投稿日:2005/11/17(木) 18:40
-
僕は今日、カッコよくて頼もしい恋のライバルから、大切な事を教えられた。
- 194 名前:demizo 投稿日:2005/11/17(木) 18:41
-
本日は以上です。
- 195 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/17(木) 23:53
- もっさんと兄ちゃんの間に何があったのか気になるー
- 196 名前:demizo 投稿日:2005/11/19(土) 20:32
- >>195
ありがとうございます。
その話はいずれ番外編で書けたらいいなと思っています。
では、「ワガママなあいつ」の番外編を一つ。
- 197 名前:番外編 ヘタレな麻琴 投稿日:2005/11/19(土) 20:32
-
麻琴とは一年の時から同じクラス。
いつもニコニコしてて誰にでも優しい麻琴は、男女問わず人気があった。
「まこっちゃんて面白いよねえ」
なんてみんな言ってたけど、それは決して恋愛感情とかじゃなくて。
なんかみんなの弟みたいな感じ。
何言われても何されても、ヘラヘラ笑ってる麻琴。
あたしはなんだかその情けなさにイライラして、麻琴とは全然話さなかった。
だって、男の子はやっぱり強くて頼れる方がいい。
そう、宝塚の世界の男役みたいに…。
- 198 名前:番外編 ヘタレな麻琴(前編) 投稿日:2005/11/19(土) 20:33
-
「まこっちゃーん、モノマネやってー」
「ほーい!」
「マコー、かぼちゃ食べる?」
「うほーい!」
「麻琴ー、掃除代わって」
「いやっほーい!」
…アホ。
あんたにはプライドってもんがないの?
ええように使われてるだけや。
そんなんもわからんの?
情けない男なんて嫌い。
- 199 名前:番外編 ヘタレな麻琴(前編) 投稿日:2005/11/19(土) 20:33
-
一年が終わり、二年になって。
二年が終わり、三年になって。
あたしと麻琴が交わした言葉といえば、挨拶と必要最低限の連絡くらい。
それでも、別に何とも思ってなかった。
あたしは校内では有名な方で、自分で言うのも何だけどよく告白されたりもする。
だけど、付き合いたいと思えるような人はいなくて。
恋人なんかいなくても楽しい高校生活。
だから、このまま恋なんかしないで終わると思ってた高校生活。
そうあの日までは…。
- 200 名前:番外編 ヘタレな麻琴(前編) 投稿日:2005/11/19(土) 20:33
-
「一年にすんごい子が入学してきたらしい」
そんな噂が校内を駆け巡ったのは5月。
田中れいなという名前の女の子は、様々な噂のターゲットになっていた。
あたしは別にそんなことには興味なかったけど、クラスでは結構話題になっていて。
特に男子は、結構遊んでるとかすぐにやらせてくれるとか、そんな下品な話で盛り上がってる。
くだらんなあ。
他にやることあるやろ?
なんであんなにガキなんやろ…。
なんだか憂鬱な気分になって教室を出ようとした時、ものすごい音と悲鳴が聞こえた。
- 201 名前:番外編 ヘタレな麻琴(前編) 投稿日:2005/11/19(土) 20:34
-
な、なに?
恐る恐る教室を見ると…。
そこには、噂をしていた男子に殴りかかっている麻琴がいた。
- 202 名前:番外編 ヘタレな麻琴(前編) 投稿日:2005/11/19(土) 20:34
-
「な、なにすんだよ!麻琴!」
「まこっちゃん、やめなよ!」
クラスのみんなが止めてもやめない麻琴。
相手の男子もいきなり殴られたことに怒って、ちょっとした乱闘騒ぎになっている。
ようやく二人を引き離した頃には、麻琴はボロボロになっていて。
それでも、相手の男子をにらみ続けてる。
- 203 名前:番外編 ヘタレな麻琴(前編) 投稿日:2005/11/19(土) 20:34
-
「お、俺が何したってんだよ!」
「れいなを悪く言うな。あいつはそんな子じゃない!」
いつもと違う麻琴の迫力。
「なんだよ、麻琴の知り合いかよ…?」
「幼なじみだよ。あいつは誤解されやすいだけで、噂されてるような子じゃない」
クラス全員が初めて見る麻琴の怒り顔。
- 204 名前:番外編 ヘタレな麻琴(前編) 投稿日:2005/11/19(土) 20:35
-
「なーんだ、まこっちゃんが言うんなら、そんな子じゃないよねー」
誰かが言う。
それにつられたかのように、みんなが口々に言い出す。
麻琴が言うなら間違いない。
「ごめんな、麻琴。俺、何も知らないでさ。もう言わないから」
騒動の原因となった男子も素直に謝ったりして。
なんやろ?
なんなんやろ?
みんなの様子に満足した麻琴は、いつも通り、ヘタレな笑顔を見せた。
その笑顔に、あたしは不覚にもときめいてしまった。
- 205 名前:番外編 ヘタレな麻琴(前編) 投稿日:2005/11/19(土) 20:35
-
そのことがあってから、うちのクラスではれいなちゃんのことを悪く言う人はいなくなった。
そして、あたしは麻琴に対する認識が間違ってた事に気付く。
いいように使われてるとかそんなんじゃなくて。
本当に可愛がられていて、ものすごく人望が厚いんだ。
だから、そんな麻琴が本気で怒った事だから、みんなは納得して…。
…麻琴ってすごい。
そんな麻琴に守られているれいなちゃんを羨ましいと思った。
そして、あたしも同じように、ううん、それ以上に麻琴に守られたいと思うようになっていた。
- 206 名前:番外編 ヘタレな麻琴(前編) 投稿日:2005/11/19(土) 20:36
-
だけど、頑固なあたしは麻琴に素直に接する事が出来ずにいて。
相変わらず挨拶だけのあたし達。
遠くからしか見れない麻琴の笑顔。
ねえ、麻琴。
あたしの存在に気付いとる?
あたしの事、どう思っとる?
その笑顔、あたしにも向けてよ。
気が付けば、あたしは麻琴に夢中になっていた。
- 207 名前:demizo 投稿日:2005/11/19(土) 20:36
-
本日は以上です。
- 208 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/20(日) 23:08
- やる時はやるヘタレまこ萌えw
- 209 名前:demizo 投稿日:2005/11/23(水) 23:00
- >>208
出るたびに大人気のヘタレまこw
自分のイメージでは実際の小川さんもこんな感じです。
- 210 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:01
-
9月。
恋の神様とやらは意地悪なもので、あたしと麻琴はなぜか文化祭の責任者になってしまった。
人が良くて押し付けられた麻琴と、成績が良くて押し付けられたあたし。
うちの学校は衛生上の問題とやらで模擬店とかは出せない事になっている。
だから、ほとんどのクラスは、劇とかお化け屋敷とか、そういう出し物系をやる。
うちのクラスではお化け屋敷をやる事になった。
- 211 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:01
-
「た、高橋さん」
麻琴はあたしと話す時はいつもどもってて。
怖がられてるみたい。
「…何?」
その態度にむかついて、余計に冷たく接してしまうあたし。
「あ、いや、その、だから…」
「…」
二人で過ごす空間は、嬉しくてたまらないはずなのに、ものすごく息苦しいものだった。
- 212 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:02
-
「あ、あのさあ」
ある日、クラスの責任者が集まって行われる会議が終わった後、麻琴から話があると言われた。
内心はドキッとしたけれど、平然を装うあたし。
放課後の教室で二人きり。
相変わらず息苦しいあたし達の空間。
「話って?あたし、早く帰りたいんやけど」
なかなか話を切り出さない麻琴にしびれを切らして、あたしはまた冷たい言葉を投げかける。
こんなにまで強情な自分には呆れるのを通り越して、感心してしまうくらい。
- 213 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:03
-
いつもはこんなあたしの態度にビクビクする麻琴だけど、今日はちょっと違う。
…何だか胸が痛い。
「高橋さんて」
どもらずに話す麻琴。
「俺のこと嫌い?」
初めて目を見て言われたのは、そんな一言だった。
- 214 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:03
-
麻琴はずっと目をそらさない。
耐え切れなくなったのはあたしの方。
思わずうつむいてしまった。
「俺、アホだからさ。知らないうちに、高橋さんの事怒らせちゃったのかなって思って」
優しいんだけど強い声。
「だから、ごめんね」
悪くないのに。
麻琴は何も悪くないのに。
- 215 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:06
-
「…な、何で?何で麻琴が謝るの?」
「ん?だから、高橋さんの気に障るような事したのかなって」
「そ、そんな事ない!」
あたしは思わず叫んでしまう。
「…嫌いなんかじゃない」
「そっかあ、良かったあ」
ちょっとだけ素直になって顔を上げたあたしを待っていたのは、優しい優しい麻琴の笑顔。
- 216 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:06
-
その事がきっかけで、あたし達はだんだん仲良くなっていった。
今まで挨拶しかしなかったのが嘘みたいに。
麻琴の笑顔はあたしの頑固な心を溶かしていく。
どんどんどんどん、素直なあたしになっていく。
- 217 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:07
-
「次は…、あ、あれも買ってかないと」
今日は文化祭でやることになったお化け屋敷の備品の買い出し。
「えー、まだあんの?」
「ほれほれ、早く」
「ふぇーい…」
麻琴は情けない顔でついてくる。
うん、ちょっと可愛いかも。
責任者の上に買い出しまで押しつけられたあたし達は、すでに両手にいっぱいの荷物を抱えていた。
だけど、今日全部買わないと。
- 218 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:08
-
最後の買い物を終えて、なんとか荷物を持とうとしたその時。
急にあたしの右手が軽くなった。
え?
見上げるとあたしの荷物を取り上げた張本人はすでに先を歩いている。
あたしよりもいっぱいの荷物を持ってるくせに、無理しちゃって…。
こういうさりげない優しさがあたしをどんどん夢中にさせてくんよ。
- 219 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:10
-
「高橋さーん、何してんの?早く行こうよー!」
振り返って呼びかける麻琴。
あ、危ない!
小さな男の子が麻琴にぶつかって…。
「おっとっとっ!」
麻琴は荷物を放り投げて男の子を支える。
あーあ。
宙を舞って地面に着地した荷物は、見事に中身が飛び出してる。
それでも麻琴はニコニコ。
「平気かあ?」
「うん、ありがと!お兄ちゃん!」
「おう、ちゃんとお礼言えていい子だな」
男の子にブンブンと手を振って満足そうだけど、それ、どうするつもり?
あたしは呆れながら飛び散った中身を拾い集める。
- 220 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:13
-
アホな麻琴。
ヘタレな麻琴。
だけど、優しい麻琴。
あたしはそんな麻琴が好き。
一片の迷いもなくそう思える。
そんな今だからこそ。
素直になったあたしに怖いものはない。
もう、逃がさんよ、麻琴。
- 221 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:14
-
「あ!ごめん、高橋さん!」
あたしと一緒に荷物を拾い始める麻琴。
「…麻琴は優しいな」
「え?なんか言った」
あたしのつぶやきは麻琴には届かなかったみたい。
だから、もう一回言ってやった。
- 222 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:14
-
「あたし、麻琴が好きやよ」
固まる麻琴。
口をぽかんと開けて、おあづけくらった犬みたい。
- 223 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:15
-
「麻琴、あたしと付き合って」
あたしを麻琴の特別にして。
れいなちゃんみたいに。
あたしを麻琴の彼女にして。
その優しさをあたしだけに。
- 224 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:16
-
ようやくその意味を理解したらしい麻琴は、顔を湯でダコみたいに真っ赤にして。
そして、一言。
「…や、やっほーい!!!!」
その瞬間、せっかく拾った荷物が再び宙を舞った。
…アホ。
- 225 名前:番外編 ヘタレな麻琴(後編) 投稿日:2005/11/23(水) 23:17
-
麻琴はアホ。
麻琴はヘタレ。
だけど、真っ直ぐで優しくてあったかい。
あたしの大好きな大好きな人。
二度と離れんから、覚悟しといてや。
- 226 名前:demizo 投稿日:2005/11/23(水) 23:17
-
本日は以上です。
- 227 名前:ぽち 投稿日:2005/11/24(木) 02:35
- まこあい、最高です。
なんか心が温かくなりました。可愛いな〜二人とも。
- 228 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/25(金) 17:34
- 今日一気に読みました。田亀・小高どっちも大好きです……
まったり頑張ってくださいね、今後も楽しみにしています。
- 229 名前:demizo 投稿日:2005/11/25(金) 21:56
- >>227 ぽち 様
まこあいはなんだかほのぼのしますよね。
小川さんのキャラのせいでしょうかw
>>228 名無飼育さん 様
一気読み、ありがとうございます。
今後とも楽しんで頂ければ嬉しいです。
では、「ワガママなあいつ」の続編です。
- 230 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 21:57
-
午後11時。
そろそろ寝ようかなと思ってた時、珍しくあいつから電話があった。
僕達は今まで、メールも電話もほとんどした事がない。
そんなものを使わなくても、会って話せば良かったし、そもそもそんなに急ぐ用なんてなかったから。
ディスプレィに表示されてるあいつの名前に驚きながら電話に出ると、いつになく緊張気味の声が聞こえた。
「え、絵里?」
いや、僕にかけてるんだから、僕に決まってるじゃん。
- 231 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 21:57
-
「うん、そうだけど」
それでも僕はご丁寧に答えてやる。
…なんて偉そうな事を言ってるけど、実は僕もすごくドキドキしてて。
携帯を持つ手が汗ばんだりしてる。
なんでだろ?
今までこんな事なかったのに。
気まずい沈黙が続く。
- 232 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 21:57
-
「…れいな?」
なんかあったのかな?
今の時間、あいつは一人。
まさか、変な奴が来たとか!?
泥棒?
ストーカー?
僕はあらゆる可能性を考えながら、次の言葉を待つ。
- 233 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 21:58
-
「…んー」
「どうかした?」
「ううん、どうもしとらん」
「ほんとに?なんか変じゃない?」
「は?絵里に言われたくないと」
「なにそれ?俺は変じゃないよ」
「絵里は変っちゃ」
…ムカつくなあ。
なんて話してるうちに、気がつけば僕達はいつも通りに話をしていた。
あいつはお得意の、
「れいなはー」
を連発して、いつもみたいに僕をバカにして。
- 234 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 21:58
-
でも、なんだか心地いいかも。
こうしていると、あんな事があって付き合い始めたという事実がまるで嘘みたいに、ただの幼ななじみの関係に戻った気がする。
もしかしたら、あいつもそう思ってるのかな?
少しずつ減ってきているワガママ。
どことなく遠慮がちな態度。
幼なじみの関係の方が楽でいいって、あんなふうに告白まがいの事言わなければ良かったって、そう思ってるのだろうか。
僕は急に不安になってきた。
別れ話の電話だったらどうしよう。
- 235 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 21:59
-
正直言うと、僕自身もまだ付き合っているという実感はない。
だけど、いつでもどんな時でも、ふとした瞬間に思い浮かべるのはあいつの事。
肉を食べた時には、あいつのギラギラした目を。
カラオケに行った時には、あいつの意外とかわいい歌声を。
テレビのキスシーンを見た時には、あいつのあの観覧車での照れた笑顔を。
僕の頭の中にはあいつが住み着いてる。
だから、僕はもう幼なじみには戻りたくない。
たとえ、今の関係が前と何も変わってなくても、あいつの彼氏ってだけで特別だって思えるから。
- 236 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 21:59
-
「…り、絵里!」
「あ!ああ、ごめん、聞いてるよ」
「もう、電話でボーッとされたら困ると」
「ごめん、ごめん」
僕は自分で想像した事に落ち込んでしまった。
「…元気ないね?」
そんな様子に気付いたあいつが急に弱気な声になる。
「んー、平気だよ。ちょっと考え事しててさ」
ただ、勝手に想像して勝手に落ち込んでるだけ。
- 237 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 22:00
-
すると、しばしの沈黙の後。
「…イヤ」
は?
「考え事なんかしちゃイヤ」
「…え?」
「…ただの電話かもしれんけど、絵里と話しとう時間はれいなにとって…」
さっきよりもどんどん小さな声で聞き取りずらい。
だけど、僕にはちゃんと聞こえた。
- 238 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 22:00
-
「…大事な大事な時間やけん」
「…」
「絵里も他の事考えんで…」
「…うん」
「れいなの事だけ…」
その先はもう聞こえなかったけど、聞かなくてもわかる。
僕は電話の向こう側で真っ赤な顔してるだろうあいつを思って、幸せな気持ちになった。
- 239 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 22:01
-
「…俺も」
「え?」
「俺にとっても、大事な大事な時間だよ」
受話器の向こうのあいつは照れくさそうに、
「もぅ、バカぁ」
と答えた。
- 240 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 22:02
-
その後、さらにくだらない話で盛り上がった僕達が眠りについたのは夜中の二時。
翌日、二人して目の下にクマが出来ていた。
なんとなく恥ずかしくて、だけどとても嬉しかった。
- 241 名前:第7話 寝不足の理由 投稿日:2005/11/25(金) 22:02
-
僕の寝不足の理由はあいつとの長電話。
それはとても嬉しくて幸せな理由。
- 242 名前:demizo 投稿日:2005/11/25(金) 22:03
-
本日は以上です。
- 243 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/26(土) 00:33
- れなえりが初々しくて可愛いです
- 244 名前:demizo 投稿日:2005/11/30(水) 20:05
- >>243 名無飼育さん
ありがとうございます。
不器用なイメージのある二人なんで、なかなかスマートな恋愛は出来ないかなと。
- 245 名前:demizo 投稿日:2005/11/30(水) 20:09
- それでは短編を一つ。
実は書いた後に似たような設定の話を見つけてしまい、
どうしようかなと迷っていた話です。
何か問題がありましたらご指摘願います。
- 246 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:09
-
絵里とさゆみは仲が良い。
それはもはや当たり前のことで。
ファンの人もみんな知ってることで。
はたから見ると微笑ましい光景なんだけど…。
- 247 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:10
-
「ベタベタし過ぎると」
あまりにもくっつき過ぎている二人を見るのが辛くて、れいなは楽屋から逃げ出してきた。
仲が悪いとか、世間で言われてるようにはぶられてるとか、そういうわけではない。
性格とかノリが違うことはわかってるし、あの二人に合わせることなんて出来ない。
だけど、あんなふうに密着して、まるで恋人同士のような二人を見るのは嫌だった。
- 248 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:11
-
さゆみに触れる絵里。
さゆみに甘える絵里。
さゆみに「好き」と言う絵里。
そんな絵里は見たくない。
そう、れいなは絵里に恋をしていたから。
- 249 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:11
-
「はあ」
深いため息が誰もいない屋上に溶けていく。
よりにもよって、彼女じゃなくていいのにって思う。
たとえば相手が普通の男の子だったら。
友達に相談したり、勇気を出して告白したり、腕を組んで街を歩いたり…。
そういう普通のことが普通に出来る相手だったら。
だけど相手は間違いなく女の子で、しかも毎日顔を合わせるメンバー。
それも大切な大切な同期。
誰かに相談することなんて出来ない。
間違っても告白なんて出来ない。
万が一、付き合えたとしても腕を組んで歩くなんて…。
- 250 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:12
-
「はあ」
再びため息をついた時。
「あー、やっぱここだったあ」
れいなの想い人がやってきた。
「絵里、何しに来たと?さゆは?」
後悔するのは、いつも口に出してしまってからだった。
昔から思ったことをすぐ言葉にしてしまう性格。
誤解されやすい自分。
ホントは、一人で来てくれて嬉しかったのに。
- 251 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:12
-
「せっかく探しに来たのにー」
頬を膨らませてはいるけど、別に怒ってるわけではない。
だって、顔が笑ってるから。
れいなは少しほっとする。
絵里はいつもこうだった。
他の人なら気を悪くするような言い方をしてしまっても、絵里だけはいつも笑ってくれた。
優しい絵里。
だけど、その優しさは自分だけのものではない。
- 252 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:13
-
二人で並んで景色を見る。
都会の、別になんてことない景色だけど。
珍しく何も話さない二人。
苦しい沈黙。
これがもし恋人同士だったら、この沈黙さえも甘いものとなるのだろうか。
れいなはそっと絵里の表情を伺った。
何も考えていないような、だけど何かを秘めているような顔。
だけど、どんな絵里もとても綺麗で。
- 253 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:14
-
れいなの視線に気付いた絵里が「えへへ」とだらしなく笑う。
「キモッ」
「ひどーい、れいなまでそんなこと言うなんて」
文句を言いながらも楽しそうな絵里。
それなら、このままでもいい。
絵里が楽しいなら。
絵里が笑ってくれるなら。
れいなはさゆみにはなれない。
さゆみと同じような関係にはなれないし、たぶんなりたいわけではない。
だから、このままでもいっか。
- 254 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:14
-
「ねー、れーな、友達と恋人の違いって何だろうね?」
謎かけみたいな突然の言葉。
「なん?いきなり」
相変わらず絵里はニコニコ。
れいなは、想い人の口から出た「恋人」という言葉に動揺している。
「絵里とさゆは友達。だから、絶対にしないことがある。友達にはしないこと。なーんだ?」
わけのわからないれいなに追い討ちをかけるようにクイズを出す絵里。
- 255 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:14
-
何となく、何となくだけど答えはわかってる。
恋人にしかしないこと。
それは、つまり…。
だけど、絵里の前でそんな単語を口には出来ない。
意識してしまうから。
「…あー、わからんちゃ」
れいなは天を仰ぐ。
- 256 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:15
-
「じゃあ、教えてあげる」
絵里はれいなにキスをした。
- 257 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:15
-
れいなは固まっている。
「ね?友達にはしないでしょ?」
- 258 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:15
-
れいなは固まっている。
「あー、でも、のんちゃんとかあいぼんはしてたっけ?」
- 259 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:15
-
れいなは固まっている。
「でも、絵里は好きな人にしかしないよ」
- 260 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:16
-
れいなは…。
「絵里は、れいなが好きです」
- 261 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:16
-
真っ直ぐな絵里の視線。
逸らせない。
やっぱり、絵里は綺麗だと思った。
「れ、れいなは…」
ゆっくりと絵里に近づく。
「んー?」
情けなく震える手を絵里の肩にかけて。
- 262 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:16
-
「…れいなも、好きな人にしかしないと」
れいなも絵里にキスをした。
- 263 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:17
-
「えへへー」
そう言って笑った絵里は、今までで一番気持ち悪くて、今までで一番綺麗だった。
「あ、そろそろ行かなきゃ」
収録の始まる時間になった。
絵里に促されて屋上を後にする。
まだ、ドキドキしてる。
まだ、顔が熱い。
当分収まりそうにもない。
- 264 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:17
-
「えりりーん、どこ行ってたのー?寂しかったよー」
楽屋に戻るとさゆみが絵里に抱きつく。
「さゆー、絵里も寂しかったよー」
絵里もさゆみに抱きつく。
絵里とさゆみは仲が良い。
それはもはや当たり前のことで。
れいなはやっぱり少しだけ羨ましいんだけど。
- 265 名前:友達と恋人の違い 投稿日:2005/11/30(水) 20:17
-
友達と恋人の違い。
友達にはしないこと。
れいなと絵里だけがすること。
だから、絵里とは友達じゃなくていい。
恋人がいい。
- 266 名前:demizo 投稿日:2005/11/30(水) 20:18
-
本日は以上です。
- 267 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/01(木) 08:58
- れいなのドキドキが伝わってきました。また楽しみにしています。
- 268 名前:demizo 投稿日:2005/12/03(土) 17:26
- >>267
ありがとうございます。
ドキドキが伝わったなんてすごく嬉しいです。
それでは、あまり需要がないようなのですが、しつこくいしごま短編を。
- 269 名前:ほど良い距離感 投稿日:2005/12/03(土) 17:27
-
いつものように梨華ちゃんとテレビを見ていると、「恋愛のなんちゃら」とかいう特集が始まった。
女性雑誌にありがちな恋愛のマニュアルを紹介するという内容らしい。
ごとーはこういうのはあんまり興味ない。
だって、恋愛の形は人それぞれだし、そもそもごとー達みたいな同性同士の恋人に
そんなマニュアルがあてはまるわけない。
あー、眠くなってきた。
- 270 名前:ほど良い距離感 投稿日:2005/12/03(土) 17:27
-
すっかりと爆睡してしまったごとーが目を覚ました時、梨華ちゃんはなにやら難しそうな顔して考え込んでいた。
嫌な予感がする。
梨華ちゃんは頑固で融通が利かないんだけど、意外と影響されやすかったりもする。
そして、頭の中だけで勝手に物語を進め、結論だけをごとーにぶつけてくるのだ。
つまり、こういう難しい顔をしている時は、何か良からぬ妄想をしているわけで。
また寝た方が身のためかな…。
- 271 名前:ほど良い距離感 投稿日:2005/12/03(土) 17:28
-
「ねえ、ごっちん」
ほら、きた。
ネガティブ全開の暗い声。
まあ、今さら何を言われても驚かないけどさ。
「あたしたちって一緒にい過ぎじゃない?」
ん?そうきたか。
「恋愛を長続きさせるためには、ほど良い距離感が大切なのよ」
さも自分の考えのように言い切ってるけど、たぶんさっきのテレビの受け売りだ。
- 272 名前:ほど良い距離感 投稿日:2005/12/03(土) 17:28
-
「んー、それで?」
「もう、めんどくさそうにしないで、ちゃんと聞いてよ!」
「んあ」
だって、めんどくさいんだもん。
次のセリフは大体予想できるし。
「だから、もう少し距離を置くべきだと思うの」
- 273 名前:ほど良い距離感 投稿日:2005/12/03(土) 17:28
-
やっぱりね。
確かにごとー達はほとんど毎日こうやって夜を過ごしてる。
お互い一人暮らしだし、家も近いし。
「距離を置くって?」
「それは、会う回数を減らすとか…」
自分で言ったくせに苦しそうな顔をする梨華ちゃん。
ほんと、世話が焼けるお姉さんだ。
- 274 名前:ほど良い距離感 投稿日:2005/12/03(土) 17:29
-
「いいの?」
ごとーの言葉に梨華ちゃんはうつむいた。
ごとーは嫌だよ。
やっと恋人になれたのに、距離を置くなんて無理。
梨華ちゃんの長い顎を持ち上げて、上を向かせる。
こういう時は便利だね、なんて言ったら怒られるかな。
- 275 名前:ほど良い距離感 投稿日:2005/12/03(土) 17:29
-
「ごとーは梨華ちゃんと離れたくないよ」
空回りのお姉さんはついに泣き出した。
勝手に考えて勝手に結論を出して勝手に悲しくなって勝手に泣いて…。
でも、そういうところが好きなんだよね。
「いいじゃん、一緒にいれる時は一緒にいようよ」
この恋が永遠なんて保証はどこにもない。
ごとー達がずっと一緒にいるためには、きっと普通の恋人よりもたくさんの障害が立ちはだかると思う。
だからこそ、今は一緒にいよう?
いつか、大きな壁が現われた時も梨華ちゃんと一緒なら乗り切れる気がするんだ。
- 276 名前:ほど良い距離感 投稿日:2005/12/03(土) 17:30
-
ごとーは梨華ちゃんを抱きしめる。
梨華ちゃんは泣きながらうなづく。
ほらね、ただそれだけで強くなれた気がするよ。
- 277 名前:ほど良い距離感 投稿日:2005/12/03(土) 17:30
-
恋を長続きさせるためのほど良い距離感。
それはきっと人それぞれで。
ごとーと梨華ちゃんにとってはゼロ。
- 278 名前:demizo 投稿日:2005/12/03(土) 17:30
-
以上です。
- 279 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/07(水) 10:15
- うまくことばにできませんが、好きですよー、この雰囲気。
次回も期待してます。
- 280 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/07(水) 17:00
- いしごま好きですよ……(ぼそっ
作者様の書かれるお話の雰囲気はやさしくて、好きです。
まったり頑張ってくださいね〜
- 281 名前:demizo 投稿日:2005/12/08(木) 19:26
- >>279 名無飼育さん
ありがとうございます。
うまく言葉にできないと言いつつレスを下さったことが、とても嬉しいです。
雰囲気が好きなんて、なんだかテレくさいです。
>>280 名無飼育さん
ありがとうございます。
いしごまいいですよね!
自分もある小説を読んで以来、はまっております。
それでは、「ワガママなあいつ」の続編を一つ。
- 282 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:27
-
さゆに彼女が出来た。
久住小春ちゃんという一年の子。
なんでも委員会が同じでお互い意識し始めたとか。
僕は見たことないんだけと、あいつの話によると目がぱっちりと大きくてハキハキとした
明るい子だそうだ。
- 283 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:27
-
さゆは自分大好き人間。
その可愛い顔立ちから、年上のお姉さん達から結構モテていた。
中学の頃、女子大生と付き合ってると聞いた時は、どれだけ羨ましかったことか。
…いや、僕はずっとあいつ一筋なんだけど。
ともかく、そのさゆが年下の女の子と付き合うなんて思ってもみなかった。
- 284 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:28
-
今日は部活がない日。
いつも通り、さゆと帰ろうと思って声をかける。
「さゆー、今日、ゲーセン寄って…」
「ごめん、絵里。俺、小春ちゃんと約束してるんだ」
え?
さゆは鏡を見て気合いを入れる。
「よし!今日もイケメン!」
いや、確かにイケメンだけど、その掛け声はどうかと思うよ…。
僕が複雑な顔で見ていると、さゆは僕を指差してこう言った。
「絵里もさあ、ちゃんとれいなと帰ってあげないと、愛想つかされちゃうよ?」
愛想つかされるって…。
- 285 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:28
-
付き合い始めて約一ヶ月。
僕とあいつは幼なじみの時の関係と全く変わっていない。
特別に約束していなくてもほとんど毎日なんとなく会ってるから、一緒に帰るわけでもなく、
デートもしたことない。
「俺が思うに、誘い下手のれいなは絵里からの誘いを待ってるの」
「なにそれ??」
僕はさゆの言ってることが全く理解できなかった。
誘い下手もなにも、小さい頃からあいつはこれっぽっちの遠慮もなく僕を振り回してたんだ。
待ってるなんてありえないよ。
- 286 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:29
-
「これだから絵里は鈍いって言われるんだよ」
さゆは自信満々に言うけど、あいつのことなら僕の方がよく知ってる。
ワガママなあいつが誘えないなんて有り得ない。
「戸惑ってるんじゃない?付き合うってことに」
「れいながあ!?そんなに乙女じゃないでしょ」
笑い飛ばす僕にさゆは冷たい視線を投げかける。
「れいなは絵里が思ってるよりもずっと女の子だと思うよ。ちゃんと気遣ってやらないと」
うーん、そうなのかなあ…。
やっぱりいまいちピンとこなかった。
- 287 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:29
-
「道重せんぱーい!!」
一際高い元気のいい声。
すらっと背の高い目がクリッとした子が教室を覗いてる。
あれ?
もしかして…。
「あ!小春ちゃん!」
やっぱり、あの子がさゆの彼女なんだ。
「道重せんぱーい!小春、待ちきれなくてきちゃいましたー」
とびっきりの笑顔を見せて、さゆの腕にしがみつく小春ちゃん。
- 288 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:30
-
うわっ、可愛い…。
あいつだったら100%言わないだろうセリフ。
あんなふうに積極的に甘えてこられたら、さゆじゃなくてもイチコロだよなあ。
…いや、僕はあくまでもあいつ一筋だから。
いつになくしまりのない顔をしたさゆは、僕のことなんて全く忘れたように教室から
出ていった。
友情なんてこんなもんだ…。
- 289 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:30
-
一人残された僕は、さっきのさゆの言葉を思い出していた。
あいつが誘いを待ってると、そう言ってた。
そんなわけないじゃんと思いながらも、なんとなく一年の教室に向かってみる。
帰宅部のあいつは特に用事がない限り、もう帰ってるはずだ。
えーと、確か一年五組…。
目的の教室に着き、中を覗く。
まだ数人の生徒が残っていて、一斉に視線が集まる。
うわ、こわっ…。
- 290 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:31
-
そのうちの一人の女の子が、教室の端の方に歩いていって…。
彼女が向かった先には、携帯を握り締めながら窓の外を見てるあいつがいた。
クラスメイトに肩を叩かれてあいつが振り向く。
そして、僕を見つけて。
その瞬間、本当にほんの一瞬。
あいつの顔がパアッと笑顔になったのを僕は見逃さなかった。
クラスメイトに冷やかされながら、真っ赤な顔で僕に近付いてくる。
- 291 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:31
-
「な、なにしとうと?」
ちょっと怒ったような声。
だけど、僕はさっきの笑顔を思い出して笑ってしまう。
「なに笑っとうと?ムカつく」
「えへへ」
「なん?きもいって」
あいつはずっと『きもい』を連発してるけど、そういう自分の顔もニヤけてることに
気付いてんのかな。
- 292 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:32
-
「変な絵里」
はいはい。
いつもの憎まれ口も今日は一段と可愛く思える。
これでなんでもないなんて言ったら怒るかな?
そんなこと言わないけどさ。
「一緒に帰ろ?」
あいつは照れくさそうにうつむいた後、
「そ、そこまで言うなら仕方ないと。一緒に帰ってあげる」
と笑った。
- 293 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:32
-
二人で並んで校門を出る。
しゃべり続けてるあいつはご機嫌。
それを聞いてる僕もご機嫌。
一緒に帰るなんて大したことないと思ってたけど、こんなに楽しいことだったんだ。
- 294 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:32
-
角を曲がると、さゆと小春ちゃんの後姿が見えた。
僕達よりもかなり前に帰ったくせに、まだこんなところにいる。
声をかけるなんて野暮なことは出来ずに、なんとなく二人の様子を見ていた。
さゆの腕にしがみついて下から見上げるように話す小春ちゃん。
さゆの言葉に反応して、すねたり怒ったり笑ったり…。
さゆはさゆで、いつもは自分が一番のくせに、小春ちゃんのことを気遣ったりして。
なんだかすごく幸せそうで見ているこっちが恥ずかしくなる。
僕達はあんなふうにはならないだろうなあ…。
- 295 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:33
-
あれ?
ふと気が付くと、隣を歩いていたはずのあいつがいない。
振り向くと、5歩くらい後で下を向いている。
どうしたんだろう?
僕は駆け寄って声をかけた。
「れいな?」
あいつはマフラーに口をうずめた状態で上目遣いで僕を睨む。
ちょ、何怒ってんの??
「あの…」
「絵里のバカ!」
は?
- 296 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:33
-
「もう絵里なんて知らん!」
「ちょ、ちょっと、なんだよ、急に…」
今の流れでどうしてそうなるわけ?
全然意味がわからない。
わかってない僕の態度に更に怒りを感じたらしいあいつは、持っている鞄を
振り回し始めた。
「バカバカバカバカ!最低!」
「お、落ち着いて!」
僕はあいつの手を取ってその暴走を止める。
なんなんだよ…。
- 297 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:34
-
「絵里はああいう子がいいっちゃろ?」
ああいう子って…小春ちゃんのこと?
「昔からそうやけん」
「む、昔からって?」
「小学校の時好きって言っとった桃子ちゃん」
も、桃子ちゃん?
誰だっけ?
正直、僕は顔も思い出せない。
- 298 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:34
-
「それから、中学校の時、バレンタインに手紙くれた安倍先輩。それから…」
「待ってよ、それがどうかしたの?」
「みーんな、小春ちゃんみたいに明るくて素直で積極的な子やったと」
…そうだっけ?
「絵里はそういう子が好きなんやろ?」
「…」
「…れいなは、あんなふうにはなれん…」
- 299 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:35
-
ああ、そっか。
僕が二人をずっと見ていたから、羨ましいと思ってるって勘違いしたんだ。
確かに、少しだけ羨ましいと思ったのは事実だ。
だけど。
「…別にならなくていいじゃん」
- 300 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:36
-
僕の幼なじみは、僕が大切なのは、僕にワガママを言うのは、僕が好きなのは。
「そ、そのままでいい」
子供の頃からずっと隣にいたのは、他の誰でもない、あいつなんだから。
本当はもっと気の利くセリフを言ってあげられればいいんだろうけど、今の僕には
これが精一杯。
じっとこっちを見てるあいつのことを見ることが出来ないくらい、恥ずかしい。
- 301 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:37
-
「…帰ろ?」
「…うん」
僕が促すと、あいつはその小さい手を差し出して。
僕達は手を繋いだまま、黙って歩き続けた。
腕を組んだりなんてまだまだ出来そうにない僕達だけど、こうやって少しずつ前に
進んでいけばいいよね。
- 302 名前:第8話 冬の帰り道 投稿日:2005/12/08(木) 19:37
-
通い慣れた通学路。
いつも背中を丸めて足早に通り過ぎるこの道が、永遠に続いてほしいと思った冬の帰り道。
- 303 名前:demizo 投稿日:2005/12/08(木) 19:37
-
本日は以上です。
- 304 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/08(木) 22:13
- 絵里くん、いいっすね!
新登場のカップルも楽しみです
- 305 名前:名無しal 投稿日:2005/12/09(金) 15:48
- もうね、絵里くんもれいなちゃんも可愛すぎですね。
読んでいると心の何処かが良い感じでムズ痒くなります。
今後も期待しています。
- 306 名前:demizo 投稿日:2005/12/10(土) 17:45
- >>304 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
新カップルは…これからの出演は未定です、すいません…。
>>305 名無しal 様
可愛すぎですかw ありがとうございます。
今後もムズ痒い話をお届け出来ればと思います。
それでは、れなえり短編を一つ。
思いつきと勢いで書いてしまいました。
先に謝っておきます、くだらなくてすいませんw
- 307 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:46
-
今日は毎週恒例、れいなとのお泊りの日。
特別な用事がない限り、れいなが家に来ることになってる。
といっても、まだ2回目だけど。
でも、いいんだもん。
これから恒例にしていくんだもん。
- 308 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:46
-
初めてお泊りに来た日。
誘ったのはあたし。
「れーな、うちに泊まりに来ない?」
それを聞いた時のれいなの嬉しそうな照れくさそうな顔は、今もはっきりと覚えてる。
ありえないくらいのレベルでかわいかったなあ。
なのに、あたしは自分のベッドで一緒に眠るつもりだったのに、れいなはその提案を頑なに拒んだ。
ひどくない?
あたし達、もう付き合ってるのに!
- 309 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:47
-
モーニング娘。の6期メンバーとして出会ったあたし達。
性格が似ているさゆとは、どんどん仲良くなって今では親友と呼べる仲。
同期だけどちょっと先輩の藤本さんには、なんだかんだで可愛がってもらってる。
そして、れいなは…。
れいなはあたしやさゆとは違うタイプ。
最初はすごく怖くて、年下のくせに生意気で、正直言って苦手だった。
だから一時期は距離を置いて接してたし、二人きりでいるときはギクシャクしてた。
- 310 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:47
-
だけど、いつからか普通に話すようになって、今まで知らなかったれいなを知るようになって、
もっと知りたいと思うようになって。
それが恋なんだって気付いたあたしは、必死の思いで告白して、やっと付き合うことになったのに。
れいなは照れ屋だから仕方ないのかも知れないけど、隣で眠るくらいいいじゃん?
別に襲ったりしないよ?
…そりゃあ、ハロモニで猫のコスプレしてた時は理性を失いかけたけどさ。
だけど、あれは絶対に反則だよ!
周りのスタッフさんやテレビの前のファンの人も絶対に理性を失ってるはず。
でも、れいなはあたしのもんだもん。
- 311 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:48
-
今日、あたしは一つの作戦を実行に移すつもりだ。
れいなと同じベッドで眠るために、練りに練った作戦。
といっても、考えたのはほとんどさゆと藤本さんと吉澤さんなんだけど…。
その作戦はあたしにとって多大なリスクを負うもの。
だけど、れいなと一緒に寝るためなら、どんな危険も怖くない。
たとえ火の中、水の中、れいなのためならあたしは強くなれるのだ。
それに綿密なリハーサルを積んだのだから失敗するはずがない。
- 312 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:48
-
一日の仕事が終わり、あたし達はぞれぞれ家路に着く。
あたしはもちろん、れいなと一緒。
なんだか厭な視線を感じて振り向くと、ニヤニヤしながらあたしを見ている三人組。
わかってます、安心してください。
れいなに見つからないように右手で「GOOD」の合図を送る。
三人もそれに答えてくれる。
亀井絵里、16歳、今日は絶対に負けられない勝負の日。
絶対に田中れいなをゲットするのだ!
- 313 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:49
-
「…絵里」
「え?」
「なんか、顔が怖い」
な、こんな美少女を捕まえておいて、顔が怖いなんて…。
藤本さんじゃあるまいし。
「なんか、企んどるっちゃろ?」
う…。
そう、れいなはものすごく鋭い。
野生の勘なのか本能なのか、いち早く危険を察知して自分の身を守ろうとする。
ここで怪しまれてはせっかくの作戦が水の泡だ。
- 314 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:49
-
「た、企んでないよ!あ、れいな、お風呂!お風呂、お風呂、お風呂!」
動揺をうまく隠したあたしは、ターゲットをお風呂へと促す。
れいなはまだ釈然としない顔をしてたけど、「じゃあ、お先」と言ってドアの向こうへと消えていく。
よし!
鋭いけれどツメが甘いれいなを騙すのはちょろいものだ。
れいなが階段を降りたことを確認し、ベッドの横にお客さん用の布団を敷く。
この作戦の目的はあくまでも、れいなの方からあたしの隣に眠るように仕向けること。
だから、最初は別々に寝るふりをする必要がある。
- 315 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:50
-
『絵里、隣行っていいと?』
『あー、れいな、怖いの?』
『そ、そんなんじゃなか!』
『またー無理しちゃってー』
『絵里、むかつくっちゃ!』
『いいよ、こっちにおいで』
・
・
・
『絵里、あったかいっちゃ』
『れいな、ダメ、そんな…』
『絵里、れいな我慢できん』
- 316 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:50
-
脳裏に浮かぶのは、数日前、藤本さんと吉澤さんが見せてくれたお手本。
楽屋の机をベッドに見立てて、あたしとれいなに成りきった二人。
れいな役の藤本さんがあたし役の吉澤さんに抱きつく。
あたし役の吉澤さんがれいな役の藤本さんを優しく抱きしめる。
そのまま、二人はあたしの口からは言えないようなことまでやろうとして。
それはさすがにさゆに止められてたけど。
ちなみにさゆは電気役。
だからといって、バカにしてはいけない。
この作戦でもっとも重要な役割を担っているのは、他でもない、電気なのだから。
- 317 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:51
-
藤本さん達がやろうとしたことはお子様のあたし達にはまだ早いけど、
そうなればいいなって思いがないわけじゃない。
だって、やっぱり付き合ってるわけだし、別に問題も障害もないし。
『れいな、ダメ、そんな…』
『絵里、れいな我慢できん』
れいな、れいな、そんな…。
- 318 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:51
-
「…なにしとうと?」
一人二役に没頭しているあたしを冷たい目で見るれいな。
「ぜーったい、なんか企んどる。ぜーったい、怪しい」
ヤバイ、完全に疑いモードだ。
「もう、れいなったら、そんなんだから大きくなれないんだよ」
「は?関係ないと!」
「関係ありますぅ」
「意味わからん」
「絵里にはわかるからいいんですぅ。お風呂入ってこよーっと」
あたし自身も意味はわからなかったが、とりあえずお風呂へと向かった。
こういう時はごまかしてその場を逃げるのが一番。
- 319 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:52
-
湯船に浸かっている間も妄想は絶えない。
自分の隣で眠るれいなを想像し、ひたすら悶えるあたし。
傍から見ればただのバカなのかも知れない。
だけど、人にはそれぞれ至福の時があり、あたしにとっては今日これから起こる出来事がまさにそれなのだ。
絶対に誰にも邪魔させない。
妄想に入り込んでしまったらしく、あたしは少しのぼせたみたいだ。
時計を見たわけじゃないから時間はわからないけど、なんだかものすごく嫌な予感がする。
この前のお泊りの時もそうだったのだが、れいなは寝る時間が異様に早いのだ。
そんなお子様なところもかわいいんだけど…。
- 320 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:52
-
慌ててパジャマを着て二階へ上がる。
部屋の電気はついている。
物音はしない。
…なんだろう、この胸騒ぎは。
恐る恐る、部屋のドアを開けたあたしの目に映ったのは…。
お客さん用の布団の上で爆睡してる、愛しい愛しい田中れいなだった。
- 321 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:52
-
「はあ」
潜入に失敗したスパイってこんな気持ちなのかな。
あたしの作戦は遂行する前に終わりを告げた。
目の前には幸せそうに眠るれいな。
わかってるんだけどね、今日もいっぱい働いたし、疲れてるってこと。
「よいしょ」
おばさんくさい声を出しながら、布団を思いっきり踏み脱いでいるれいなをきちんと寝かせてあげる。
- 322 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:53
-
あーあ、2回目のお泊りも結局何もないままかあ。
れいなの寝顔は本当に子供みたいでかわいいから、こうして見てるだけでもいいかなあって思うけど。
そのまま隣に潜り込めばいいのかも知れないけど、それはなんだかズルイ気がする。
あたしはベッドに入り、天井の電気から伸びている紐を引っ張る。
1回、2回…。
真っ暗の一つ前。
もうすぐ17歳だし、もう卒業しようと思ったけど、やっぱり真っ暗は怖い。
作戦は失敗に終わったことだし、あたしがリスクを負う理由はない。
- 323 名前:豆電球 投稿日:2005/12/10(土) 17:53
-
何も知らない恋人の寝顔を優しく照らす豆電球。
次のお泊りでは真っ暗にして寝るんだから。
怖がりなれいながあたしの横に入り込んでくるように。
覚悟してね。
おやすみ、れいな。
- 324 名前:demizo 投稿日:2005/12/10(土) 17:53
-
以上です。
- 325 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:33
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 326 名前:demizo 投稿日:2005/12/16(金) 21:59
- >>325
お疲れ様です。
実はたまに覗いたりしてました。
- 327 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:01
-
今日は愛しい梨華ちゃんとデートの日。
晴天娘と呼ばれてるごとーだけあって、絶好のドライブ日和。
なのに。
渋滞でまるっきり動かない道。
調子の悪いエアコン。
そして、ごとー自慢の愛車の助手席で、ずーっと窓の外を見ている不機嫌なお姉さん。
いい加減、機嫌直してよ、梨華ちゃん。
ごとーが悪かったからさ。
- 328 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:02
-
もうすでに半同棲のような暮らしをしているごとー達。
だけど、月に一度、今日みたいに遠出をするデートの前日はきちんと自分の家に帰り、
待ち合わせをして出かけることになっている。
梨華ちゃん曰く、それは、いつまでも新鮮な関係でいるために大切なことらしい。
ごとーは面倒だから一緒に出ればいいじゃんって思うんだけど、結局押し切られてしまった。
実は、力説してる梨華ちゃんがとても可愛くてその顔に見とれてるうちに頷いてた、
なんて口が裂けても言えないけど。
- 329 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:02
-
だから、昨日は久々に一人で夜を過ごしたんだ。
こう見えても意外と乙女なところがあるごとーは、今日のことを考えてなかなか寝付けなかった。
お気に入りの曲を選んでオリジナルMDを作ったり、何度も地図を見てはニヤけたり…。
とても人には見せられない姿だけどさ。
梨華ちゃんのことになると、バカになるごとー。
でも、そんな自分は嫌いじゃないんだよね。
- 330 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:02
-
ともかく、やっと眠れたのは確か夜中の、いやもうすでに明け方の4時過ぎで。
寝起きの悪いごとーの目が覚めたのは、待ち合わせの一時間後だった。
その間、梨華ちゃんからの留守電10件、メール7件。
梨華ちゃんはたぶん、ごとーが寝坊したってことに気付いていたんだろう。
最初は不安そうだったアニメ声が、だんだんと低い声に変わっていって…。
最後の10件目の留守電には一言。
「バカ」
それを聞いた瞬間、ごとーは大急ぎで準備して家を飛び出した。
夜通し用意したMDもニヤニヤと眺めていた地図も梨華ちゃんの怒りが詰まってる携帯も、なにもかも置いて。
とりあえず、待ち合わせ場所に向かうと、般若のような顔をした梨華ちゃんが待っててくれた。
- 331 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:03
-
それから二時間。
渋滞続きの海沿いの道を走る車の中。
梨華ちゃんは一言も話してくれない。
それどころか、ずっと窓の外を見てて。
時刻はちょうどお昼。
朝ご飯を食べていないごとーのお腹はさっきから悲鳴をあげている。
だけど、今日のお昼ご飯は梨華ちゃんが作ってくれたお弁当。
梨華ちゃんの膝の上でおとなしく出番を待ってる。
「あのー…」
恐る恐る声をかけてみる。
このままじゃ平行線だ。
頑固なお姉さんは自分からは絶対に折れないだろう。
それに、今回は100%ごとーが悪いしね。
- 332 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:03
-
「ごめんね」
こういう時はわけのわからない言い訳は禁物だ。
スパッと謝るのが一番。
梨華ちゃんは相変わらず窓の外を見てるけど、耳がピクって動いてたから、ちゃんと聞いてくれてると思う。
「ごとー、梨華ちゃんと話せないの嫌だよ」
固まる梨華ちゃん。
よし、後一押しかな。
もうお腹が限界だし、ここは最後の必殺技を…。
「梨華ちゃんのこと、好きだからさ」
「ごっちん…」
やっと振り向いてくれたぁ。
これでお昼ご飯にありつける…と思ったその時。
- 333 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:04
-
グウウウウウウウウ…。
- 334 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:04
-
「…」
「…」
「…あ、あはは」
ものすごい音で車中に響き渡るごとーのお腹。
見る見るうちに鋭い目になっていく梨華ちゃん。
あは、なんかやばいかも…。
「ごっちん、お腹すいてるんだ?」
「あー、まあ、うん」
「早く食べたかったよね、ご飯」
「い、いや、そういうわけじゃ…」
梨華ちゃんはきっと、ごとーが早くご飯を食べたいがために「好き」って言ったって思ってる。
あながち間違いじゃないんだけど…。
- 335 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:04
-
「そうやって簡単に好きなんて言葉使う人信じらんないっ!」
再び窓の外を向く梨華ちゃん。
簡単?
冗談じゃない。
確かに今のは早く仲直りしたくて言ったのもあるけどさ。
ごとーはずっと梨華ちゃんが好きなんだよ。
簡単なんかじゃないよ。
いつでも心がこもってるんだよ。
- 336 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:04
-
いつまでも怒ってるわからず屋のお姉さん。
口で言ってもダメなら、態度で示すしかないか。
梨華ちゃんの肩を掴んでこっちを向かせる。
そして、そのまま強引にキスをした。
ごとーを引き離した梨華ちゃんは真っ赤な顔で怒り出す。
「バ、バカ!運転中でしょ!危ないでしょ!」
大丈夫。
だって、まだ渋滞で動かないし。
- 337 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:05
-
「だからって、こんな…」
壊れた拡声器みたいに怒鳴り散らす梨華ちゃんの口を再び塞ぐ。
もう梨華ちゃんは抵抗しなかった。
「…ごっちん」
「んあ?」
「ごめんね?」
ああ、怒ってたこと?
「いいの、いいの、元はと言えばごとーが悪かったんだし。これから楽しもうよ」
「…違うの…」
梨華ちゃんは気まずそうに首を振った後、
「…お弁当、落としちゃった」
と舌を出した。
結局、ごとーがお昼ご飯を食べられたのは、それから一時間後。
- 338 名前:ドライブ日和 投稿日:2005/12/16(金) 22:05
-
今度ドライブに行く時は、前の日から一緒にいようよ。
ちょっとだけケンカしながらMDを編集したり、イチャイチャしながらお弁当の下ごしらえをしたり。
そういう時間もきっと新鮮で楽しいよ。
だから、次のドライブ日和まで、ごとー達はずっと一緒。
- 339 名前:demizo 投稿日:2005/12/16(金) 22:10
-
以上です。
とある歌を聴いている時に思いついて、勢いだけで書きました。
- 340 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2005/12/17(土) 02:20
- いしごまいいですな
寒い夜だけどポカポカしました
- 341 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/20(火) 21:38
- 豆電球の亀ちゃん可愛いですね。思わず応援したくなります。
いしごまデート、2人の間に漂う雰囲気がたまんないです。石川さん面白い。
- 342 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/20(火) 22:35
- いしかわさんの尻にしかれてるようなごとうさんかわいいですね
- 343 名前:demizo 投稿日:2005/12/23(金) 00:03
- >>340 名無し募集中。。。 様
ありがとうございます。
いしごまを書いているときは自分自身も暖かい気持ちになれます。
またポカポカしてもらえるような話を書けたらいいなと思ってます。
>>341 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
豆電球の亀井さんは、自分が今まで書いた中で一番本人のイメージに近いかなと。
現実のいしごまも独特の雰囲気がありますよね(絡みは少ないですが…)。
>>342 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
後藤さんがリードしているようで、実は石川さんには頭があがらない。
そんないしごまが自分の理想(?)ですw
- 344 名前:demizo 投稿日:2005/12/23(金) 00:04
- 「ワガママなあいつ」の続編です。
- 345 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:04
-
12月。
今月は僕の誕生日、クリスマス、そして年末と、イベントが目白押しだ。
自然と気合いが入る。
いつも僕の誕生日はあいつが押し掛けてきて、
「今日は絵里のためにとっておきのワガママをプレゼントすると」
なんて言って、一日中付き合わされる。
そう、あいつの誕生日と同じパターン。
だけど、今回は一応恋人同士なわけだし。
僕はかなりデカイ期待をしてる。
- 346 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:05
-
そして、待ちに待った23日。
僕がもらった最大のプレゼントは、…風邪だった。
「結構熱いわね。今日はおとなしく寝てなさい」
うう、ついてないにもほどがある。
あいつとは特別な約束をしてるわけじゃない。
けど、約束しなくても、今日も明日も一緒に過ごすことはお互いにわかってる。
僕は力ない手でメールを打った。
『ごめん、熱あるから今日無理。明日までには治すから』
そして、そのまま眠った。
せめて、夢の中であいつと過ごせたらいいなあ、なんて思いながら。
- 347 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:05
-
・
・
・
「…よね、こんな日に風邪ひくなんてバカよねえ」
…ん?
かすかに聞こえる母さんの声。
「まあ、そこが絵里らしいと」
そして、あいつの声。
「れいなが看病するけん、安心して出掛けるっちゃ」
「悪いわねえ、じゃあ、よろしくね」
「行ってらっしゃい!」
そんな会話と共に部屋のドアが開く。
- 348 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:06
-
…来てくれたんだ。
朦朧とした意識の中、ベッドに近寄ってくるあいつ。
「絵里のバカ」
「…ごめん」
「明日までに治らんとお仕置きやけんね」
どんなお仕置きなんだろう。
…恐ろしい。
- 349 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:06
-
「まあ、れいなが看病してやるけん、治るとよ」
「母さんは?」
「おじさんとおばさんはデート。まこっちゃんもいないと」
そっか。
じゃあ、今この家には二人き…、ふ、二人きりじゃん!
飛び起きかけた僕をあいつが押さえ付ける。
「ちょ!何やっとうと!おとなしくすると!」
だって、二人きりだよ?
そりゃあ、今までだって二人きりになることはあった。
この前、あいつが熱を出した時だってそうだったし。
けど、それは付き合う前の話で。
恋人である男女が密室で二人きり。
しかも今日は僕の誕生日。
これって最高のシチュエーションなんじゃない?
熱出してる場合じゃないって!
- 350 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:06
-
「だから、暴れんと、おとなしくすると!!」
再び起き上がろうとする僕を一喝してため息を一つ。
「…おとなしくしとったらごほうびあげるけん」
子供じゃないんだからと思いつつ、僕はあいつの言う通りにした。
内心ちょっとだけごほうびに期待しながら…。
- 351 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:07
-
あいつは思ってたよりも手際よく看病してくれて、夕方には熱が下がって楽になってきた。
「熱下がったね。もう平気やろ。れいなのおかげやけん、感謝すると。やっぱれいなは天才かも」
あいつは(小さな)胸を大きく張って威張ってみせる。
僕は何か突っ込もうかと思ったけど、やめておいた。
実際にあいつの看病のおかげで良くなったわけだし。
それに…。
- 352 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:07
-
「あのさあ」
「なん?お礼なら明日でいいとよ」
いや、そうじゃなくてさ。
「さっきさあ…」
なかなか言い出せない僕。
イライラするあいつ。
「もう、なん?」
「だからさあ」
- 353 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:07
-
『ごほうび、ちょうだい』
…なんて言えるわけない。
- 354 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:08
-
僕はいじけて布団の中に潜り込んだ。
情けないけど、具合が悪い時ってのは何となく甘えたくなるもんだ。
そもそも、ごほうびくれるって言い出したのはあいつの方だぞ。
なのに忘れちゃってるみたいで。
そりゃあ、おとなしくさせるための手段かもしれないけどさ。
そんなことをブツブツ呟いていると、布団越しに温かいぬくもりを感じた。
「絵里」
何だか色っぽく聞こえるあいつの声にドキッとする。
「…ごほうびあげるけん、出てくると」
- 355 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:08
-
うお!
まるで心を読まれているかのようなタイミング。
僕は完全にあいつの言いなりで、布団から顔を出した。
「目つぶってよ」
「う、うん」
こ、これはもしかして、期待通り…。
ああ、なんか、また熱が出るかも。
ドキドキしながら待ってると、唇に冷たい感触。
ん?
なんか酸っぱい…?
- 356 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:09
-
思わず目を開けて確認すると、僕の口には大好物の梅干が押し付けられていた。
「絵里、梅干好きっちゃろー。これ、すっごいおいしいて評判やけん!」
ニヤニヤしてるあいつ。
絶対に僕が何かを期待してたってことはわかってる。
ムカつく!
「なに考えてたと?」
「別に、何も考えてません…」
「にひひ、ホント、絵里はアホっちゃね」
ああ、僕はアホですよ!
勝手に期待して待ってたら梅干を口に入れられた間抜けな男ですよ!
- 357 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:09
-
「…しょうがないなあ」
急にあいつの声色が変わる。
ん?
その瞬間。
おでこに感じる優しい感触。
- 358 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:10
-
それがあいつの唇だと認識するのに、たっぷり一分ほどかかった。
「…これでいいと?」
あいつの言葉に、取れるんじゃないかってくらいブンブン首を振る。
「じゃ、じゃあ、れいな、もう帰るけん!」
我に返り恥ずかしくなったのか、あいつは慌てて荷物をまとめてドアの方へと向かう。
「う、うん」
少し寂しいけど仕方ないか。
照れ屋なあいつの後姿。
僕は何となく幸せを感じた。
- 359 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:10
-
あいつが帰ってから、部屋の隅に見慣れない袋を見つけた。
真っ赤なラッピング。
これって…。
中身はカッコ良いスポーツタオル。
そして、
『ハッピーバースディ!絵里。これからもれいなのワガママ聞いてね』
の可愛い文字。
ああ、ヤバイ。
超可愛い。
僕はこれから先、あいつのどんなワガママでも聞いてやろうと心に誓った。
- 360 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:12
-
その翌日、クリスマスイブ。
病み上がりの僕を待っていたのは、あいつの容赦ないワガママの嵐だった。
うう、前言撤回…。
- 361 名前:第9話 ごほうび 投稿日:2005/12/23(金) 00:12
-
だけど、あんなごほうびくれるなら、また風邪をひくのも悪くない。
- 362 名前:demizo 投稿日:2005/12/23(金) 00:13
-
本日は以上です。
亀井さん、誕生日おめでとうございます。
- 363 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/24(土) 00:45
- か、可愛すぎる・・・!! おもわずパソコンの前で悶えてしまいましたw
今夜はイイ夢みられそうです(悦
- 364 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/24(土) 22:44
- 風邪ひきたーい!!
- 365 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/25(日) 19:35
- おもしろいいーーい!
次回もよろしくお願いします。
よく読みました!
- 366 名前:demizo 投稿日:2005/12/26(月) 20:13
- >>363 名無飼育さん 様
悶えていただき光栄ですw
イブの夜にいい夢を見て頂ければ嬉しいです。
>>364 名無飼育さん 様
いやいや、健康第一で…。
と言いながら、風邪ひいた時れいなに看病されるのを妄想してしまった
アホな作者ですw
>>365 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
またおもしろいと言って頂けるよう頑張ります。
- 367 名前:demizo 投稿日:2005/12/26(月) 20:15
- では、小高短編を一つ。
豆電球に引き続き、くだらなくてすいません。
- 368 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:18
-
とある日、小川宅。
あたしは今、メチャクチャ落ち込んでいる。
どれくらいかって聞かれたら、大好きなかぼちゃプリンが目の前にあるのにたったの三個しか
食べれないくらい、それはもうひどい落ち込みようで。
いつもはなにかと突っ込みを入れてくるメンバーも、今日のあたしには声をかけられなかった
みたい。
- 369 名前:かなりイカれたPURE 投稿日:2005/12/26(月) 20:18
-
きっかけは収録中の些細な出来事。
正直、もう思い出せないくらい、本当に些細なこと。
だけど、それがあたしの昔からの悩みやコンプレックスを呼び覚まして、怒涛のようにあたしの
肩にのしかかってきて。
もともと落ち込みやすいあたしは、久々にどん底を味わっている。
こんな時は、一人きりで布団を抱えて泣いてしまいたい。
それは、いつも通りの元気な小川麻琴に戻るための必要不可欠な儀式。
それなのに…。
- 370 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:19
-
「…う、グス…」
断っておくが、泣いているのはあたしではない。
泣き声の主は、勝手に部屋に上がり込んで、勝手に持ち込んだDVDを見て、勝手に感動してる
高橋愛。
- 371 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:19
-
…ねえ、愛ちゃん?
愛ちゃんも知ってるよね?
あたし、メチャクチャ落ち込んでるってこと。
ベッドの上から睨みをきかせているあたしの視線をまるで無視して、愛ちゃんは画面に夢中。
うん、わかってるよ。
宝塚のDVDを見てる時の愛ちゃんに何を言っても無駄だってことくらい。
けどさ…。
- 372 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:19
-
「愛ちゃん…」
「うう…」
やっぱり無視。
しょうがないかあ。
こんな雰囲気の中で自分の世界に入れるほど、あたしの神経は図太くない。
というか、なんだか落ち込んでること事態、バカバカしくなってきた。
あーあ、もういいや。
とりあえず、かぼちゃプリン食べよーっと。
- 373 名前:かなりイカれたPURE 投稿日:2005/12/26(月) 20:20
-
あたしは儀式をするまでもなく、いつもの小川麻琴に戻っていた。
恐るべし、高橋愛…。
- 374 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:20
-
またまたとある日、再び小川宅。
あたしは今、メチャクチャ苦しんでいる。
どれくらいかって聞かれたら、大好きなパンプキンケーキ(ホールサイズ)が目の前にあるのに
半分しか食べれないくらい、それはもうひどい苦しみようで。
こんな高熱が出たのは本当に久しぶりだ。
今年の初め、春ツアーの最中にインフルエンザにかかった時以来かなあ。
- 375 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:20
-
幸い、今日の仕事はダンスレッスンだけだったから、マネージャーに言いつけであたしは
大人しくベッドで横になっている。
明日はどうしても抜けられない仕事がある。
絶対に治さないと。
こういう時は睡眠第一、とにかくちゃんと眠ろう。
眠りたいんだけど…。
- 376 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:21
-
「あー、指切れた!」
「あっつい!ヤケドするって!」
「うわー、まずー…。まあ、えっか」
断っておくけど、来訪者は三人ではない。
さっきからやかましい声の主は、人の家の台所で何やら悪戦苦闘している高橋愛。
- 377 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:21
-
…ねえ、愛ちゃん?
マネージャーから聞いてるよね?
あたし、熱があって辛いんだよ、眠りたいんだよ…。
ベッドの上でうなっているあたしの元に、満面の笑みを浮かべて近づいてくる愛ちゃん。
その手には怪しげな物体を抱えている。
どうやら、おかゆらしいってことはわかるんだけど、さっき「まずー」とか言ってたような…。
- 378 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:21
-
「あ、愛ちゃん…」
「ほら、早よ食べ」
愛ちゃんは有無を言わさずあたしの口におかゆを流し込む。
うげ、まず…。
「ほら、早よ寝な」
愛ちゃんはまだおかゆを飲み込みきれてないあたしを布団でグルグル巻きにする。
うう、苦ぢ…。
- 379 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:22
-
あたしはそのまま気を失うように眠りについた。
だけど、不思議なことに翌日、あたしの熱はすっかり下がっていた。
恐るべし、高橋愛…。
- 380 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:22
-
またまたまたとある日、みたび小川宅。
あたしは今、メチャクチャ追い詰められている。
どれくらいかって聞かれたら、この世の中にある大好物全てを目の前に並べられても、絶対に
食べないって自信があるくらい、それはもう天と地がひっくり返るようなことで。
- 381 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:23
-
あたしの前には、さっきからじーっとこっちを見ている高橋愛。
あたしの後には、壁。
そして、あたし達の足元にあるのはベッド。
もう逃げ場がない。
愛ちゃんはいつになく真面目な顔であたしに問いかける。
「どうなん?麻琴」
ど、どうなん?って言われても…。
徐々に近づいてくる愛ちゃん。
- 382 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:23
-
ああ、もう。
完全に降参。
「…あたしも、愛ちゃんが好き…」
- 383 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:23
-
あたしは愛ちゃんに脅されるように、秘めていた思いを告白させられた。
恐るべし、高橋愛…。
- 384 名前:かなりイカれたPURE GIRL 投稿日:2005/12/26(月) 20:25
-
高橋愛に歯向かおうなんて思ったのがそもそもの間違いなんだ。
あたしはもうとっくの昔に、この人に囚われてるんだから。
あたしの目の前で笑ってるのは、かなりイカれたPURE GIRL。
だけど、あたしはそんな高橋愛にイカれてる。
- 385 名前:demizo 投稿日:2005/12/26(月) 20:25
-
以上です。
- 386 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/26(月) 21:00
- 面白い!
こういう高橋さん結構好きです。
- 387 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/26(月) 23:18
- すっごいいいです!
おがーさん可哀想なくらい愛されてるよおがーさんw
こんな関係の二人、とっても大好きです。
- 388 名前:demizo 投稿日:2005/12/29(木) 21:40
- >>386 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
自分もこういう高橋さんが好きみたいだと、書いてる途中に気付きました。
>>387 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
高橋さんの溢れんばかりの愛が伝わったようで、嬉しい限りです。
- 389 名前:demizo 投稿日:2005/12/29(木) 21:41
- それでは、「ワガママなあいつ」の続編を。
本当は大晦日に更新したかったのですが無理っぽいので、
本日フライングで載せさせて頂きます。
- 390 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:42
-
大晦日。
数時間もすれば新しい年になる。
僕の家では毎年、僕達家族とあいつ、おばさんの六人で年を越すのが恒例になっていた。
今年も六人勢揃い。
兄ちゃんは受験生なんだけど、早々に推薦で進学を決めているので、余裕のお正月だ。
ちなみに高橋先輩もすでに合格しているらしい。
- 391 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:42
-
高校生の息子二人なんてむさ苦しいだけらしく、父さんと母さんはあいつのことを実の娘
みたいに可愛がっている。
「れいなちゃんみたいな子が嫁に来てくれれば言うことないのになあ」
酔っ払った父さんはとんでもないことを言い出す。
普段無口でヘタレなくせに…。
僕とあいつは思わず顔を見合わせて、そして慌ててそらす。
- 392 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:43
-
付き合ってることはまだ親には話してない。
唯一知ってるのは兄ちゃんだけだ。
別に隠してるわけじゃないけど、やっぱりなんとなく恥ずかしくて。
「そりゃ、あたしだってれいなちゃんが本当の娘になってくれたら嬉しいけどさ。相手が
このバカ息子じゃ申し訳ないわ」
兄ちゃんに彼女がいることは知ってるから、そのバカ息子は必然的に僕ってことになる。
ひどい、ひど過ぎる…。
「確かになあ」
兄ちゃんはニヤニヤしながら相づち打ったりして。
ムカつく!
「あら?おばさんは絵里君なら安心して任せられるとよ」
「いやあ、この子ったら誰に似たのかヘタレでねえ。ぜんっぜん、頼りにならないわよ」
おばさんのフォローも軽く流すクソ婆…いや、母さん。
ふとあいつを見ると、必死で笑いを堪えてやがる。
ムカつく!!
- 393 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:43
-
どうも僕は昔から、家族の中でも友達の中でもこういう役回りらしい。
いじられキャラっていうの?
よくわかんないけどさ。
散々人の話題で盛り上がった後、大人達は酔っ払って寝てしまった。
これも毎年恒例。
だから、僕達三人はいつもゲームしたりテレビを見たりして0時を待ち、年が明ける寸前に
親達を起こすことになってる。
- 394 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:43
-
11時半。
突然、携帯が鳴った。
兄ちゃんのだ。
相手を確認した兄ちゃんは見る見るうちにだらしない顔になっていく。
間違いない、高橋先輩だ。
「あ、愛ちゃん!?」
兄ちゃんは、やっと餌にありつけた犬みたいに携帯に飛び付いて二階に上がった。
「まこっちゃんは相変わらずっちゃね」
「ほんと、あれでよく高橋先輩に愛想つかされないよな」
「でも、まこっちゃんは優しいし、頼りになるけん、高橋先輩は幸せと」
…あ、そう、『まこっちゃんは』、ね。
- 395 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:44
-
昔からいつもそう。
あいつの口癖は『まこっちゃん』で。
だったら僕はどうなの?なんて聞けるわけない。
そんなのまるで、いじけてる子供みたいじゃん。
「絵里、いじけとうと?」
うっ、なんでバレたんだ…。
「い、いじけてないし!」
「嘘っちゃね。絵里、わかりやすいけん」
あいつは心底嬉しそうにニヤニヤしてる。
だー、マジムカつく!
あまりにもあいつがバカにするから、僕はテレビの方を向いた。
なんだか子供っぽい気もするけど、あいつの前で今さらカッコつけても仕方ない。
- 396 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:44
-
「…怒っとう?」
少し不安そうな声。
別に怒ってないよ。
…ただ、いじけてるだけ。
急に静かになるあいつ。
強気なくせに恐がりなあいつは、人付き合いにも臆病なところがあって。
たぶん、今、かなり怯えてるんだと思う。
だから、僕はちゃんと声に出して言ってやる。
これ以上、あいつが不安にならないように。
「…怒ってないよ。ただ、ちょっと羨ましいなって。兄ちゃんが」
- 397 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:44
-
二番目特有のコンプレックスって奴なのかな。
あいつのことを抜きにしても、僕は時々兄ちゃんを羨ましいと思う。
確かにヘタレでアホなんだけど、いざという時は頼りになって、おまけに可愛い彼女がいて。
…いや、僕の彼女だって高橋先輩に負けず劣らず可愛いけど。
子供の頃、あいつが近所のガキ大将にケンカを売ってやられそうになった時、なぜか巻き
込まれた僕とあいつを助けてくれたのは兄ちゃんだった。
ケンカが強いわけでもないのに僕達の前に立って、ガキ大将を追い払ってくれた。
子供心に悔しくて強くなりたくて空手を習い始めて。
今は兄ちゃんに負けないつもりだけど、本当は自信がない。
本気で守りたいものを前にした時の兄ちゃんにはかなわないって気がするから。
- 398 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:45
-
そんなことを考えてネガティブになっていると、コタツの中にある左手に温かい感触。
え?
振り向くと、机に顔を伏せてるあいつ。
よく見ると耳が真っ赤だ。
僕の右側にテレビがあり、左側はあいつが座っている方向。
てことは、この手は…。
- 399 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:46
-
「絵里はまこっちゃんに負けとらんよ」
左手を掴む小さな手に力が入った。
「少なくとも、れいなにとっては、まこっちゃん以上やけん」
小さい呟き。
だけど、僕の胸にストレートに響いてくる。
たった一言で、17年分のコンプレックスが消えてくみたいだ。
口を開くと泣いちゃいそうだったから、僕は繋いだ手に力を込めた。
「ありがとう」って心の中で呟きながら。
- 400 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:46
-
日付が変わる5分前。
兄ちゃんが戻ってきて父さん達を起こす。
「いやあ、ホント、れいなちゃんみたいな娘がほしいなあ」
まだ酔いが抜けてない父さん。
「ホントよねー、でも絵里じゃあねえ」
相変わらずひどいことを言う母さん。
「うんうん、絵里じゃあ心配だ」
相づちを打つ兄ちゃん。
「いやいや、絵里君は良い男とよ」
かばってくれるおばさん。
いつもと同じお正月。
だけど。
- 401 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:47
-
「…え、絵里は意外と頼りになるとよ」
一斉にあいつを見るみんな。
慌てて言葉を濁すあいつ。
「あ、あくまでも、『意外と』やけん!『意外と』!」
一言余計なんだよと思いつつ、何も言わずにフニャフニャと笑う僕。
だって、二人の手はコタツの中で繋がれたままだから。
- 402 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:47
-
そして、新しい年へのカウントダウンが始まる。
5、4、3、2、1…。
「あけましておめでとう!」
「今年もよろしく!」
その瞬間、僕達はどちらからともなく、強く強く手を握り締めた。
- 403 名前:第10話 いつもと同じお正月 投稿日:2005/12/29(木) 21:47
-
いつもと同じような、だけど特別なお正月に僕は願いをかける。
今年もずっとあいつと一緒にいれますように。
そして、いつの日か、あいつと本当の家族になれますように。
- 404 名前:demizo 投稿日:2005/12/29(木) 21:48
-
本日は以上です。
- 405 名前:demizo 投稿日:2005/12/29(木) 21:50
- 次回の更新は来年となりますので、よろしくお願いします。
それでは、良いお年を。
- 406 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/30(金) 16:19
- あけましておめでとうございます。
2006年も、頑張って下さい。
今回もよく読みました。
- 407 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2005/12/31(土) 22:58
- ほかほかの大晦日ですね。
来年も更新がんばって下さい。
楽しみにしてます。
- 408 名前:demizo 投稿日:2006/01/02(月) 14:43
- >>406 名無飼育さん 様
あけましておめでとうございます。
今年も頑張るのでよろしくです。
>>407 名無し募集中。。。 様
ありがとうございます。
今年も楽しんで頂けるよう頑張ります。
- 409 名前:demizo 投稿日:2006/01/02(月) 14:45
- それでは、「ワガママなあいつ」の番外編。
藤本先輩の物語です。
- 410 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:45
-
俺は高校二年の6月という半端な時期に、北海道(の真ん中ら辺)から東京に越してきた。
昔から目付きが悪いとか素の顔が恐いだとか言われてきたけど、そのせいなのか、なかなか
東京の生活に馴染めずにいた。
学校での指定席は屋上。
なんてことないビルだらけの町並みだけど、一人でタバコをふかしながら見るここからの
景色は嫌いじゃない。
そんなサボリ魔の俺をクラスメイトは敬遠してたけど、一人だけやたらと付きまとってくる
奴がいて。
それが亀井麻琴だった。
- 411 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:46
-
「藤本君、またサボリ?」
一人で屋上にいると必ずと言っていいほどやってくる。
うざかった。
はっきり言って、うざかった。
「おまえさあ、なんなの?」
ある日、あまりにもうざ過ぎる麻琴に聞いたことがある。
「なんで俺に構うわけ?ほっとけよ」
すると、奴は何の迷いもなく答えた。
「だって、俺達、友達だろ」
あの答えには参った。
まるで昔の青春ドラマだ。
今時、高校生の男でそんなセリフを恥ずかしげもなく口にするのは、あのバカくらいだろう。
- 412 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:46
-
それからも麻琴はなにかにつけて俺に寄ってきては、くだらない話を聞かせてくる。
俺は本気でうざいと思ったし、実は俺に気があるのかとも思ったけど、別に追い払うわけでも
なくなんとなくそばにいた。
今でもその理由はわからない。
- 413 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:47
-
自分で言うのもなんだが、俺の顔は恐いけど造りは綺麗な方で、転校当初から割と騒がれて
いたらしい。
ほとんどの女は恐がって遠くから見てるだけだったみたいだが、何人かは告白してきた。
俺は、そんな女達と手当たり次第に付き合っていった。
別に好きな女なんていなかったし、付き合ってみてうざかったら別れるだけ。
麻琴はギャアギャア説教してきたけど、子犬がまとわりついてるくらいの迫力で、俺は聞く
耳を持たなかった。
まあ、今思えば、その時にちゃんと聞いとけば良かったのかもしれない。
当然のように、そんな俺に恨みを持つ奴が現れた。
俺らの年頃は結構恋愛が全てみたいな時期で、失恋ってのはかなり重大な問題らしい。
もっとも、俺自身は今になってそのことを実感するのだが。
- 414 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:47
-
ともかく、思い詰めたヤロー共数人が、俺の指定席に殴り込んできたわけだ。
その人数はなんと八人。
おいおい。
いくらなんでもそりゃないぜって感じだった。
猫の手も借りたいって時に現れた正義の味方は…。
そう、うざい子犬ちゃん。
びびって逃げるかなと思ったら、意外にも勇敢で。
- 415 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:48
-
「おまえら!情けないことすんな!そんなんだから女が逃げるんだよ!」
なんて、事態を悪化させるようなセリフを言い放った。
俺はこの時思ったね。
普段温厚な奴ほど、キレるとヤバいって。
「麻琴、口出すなよ、うざい」
そしたら、麻琴は何を思ったのか、俺の胸倉を掴んでこう言った。
「ざけんな!俺はおまえの友達だろ!」
あのセリフにはマジでしびれた。
いや、いろんな意味で…。
- 416 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:48
-
こんな漫画のような展開だけど、漫画のようにうまくはいかない。
俺達は八人にボコボコにされた。
薄暗い屋上。
薄汚い男子生徒二人。
「…おい、平気かよ?」
倒れこんでる麻琴に声をかける。
「…うー、平気じゃない」
さっきまでの迫力はどこへやら、情けないセリフだ。
- 417 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:48
-
「おまえさあ、ケンカとかしたことねーだろ?」
「あー、子供の頃以来…」
そんなんで首突っ込んでくるんだから、恐ろしい奴だ。
八人だぜ?
普通、逃げるだろが。
「おまえさあ、なんで…」
なんで、俺なんか助けようとしたんだって聞こうと思ったけどやめた。
たぶん、『友達だから』って返されると思ったから。
- 418 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:49
-
「おまえさあ、友達たくさんいるじゃん。なんで俺なわけ?」
こいつはなんだか人望があるらしくて、男女問わず友達が多い。
その中には、俺のことをよく思ってない奴もいるだろう。
「言われてんだろ?あんな奴に関わるなって」
「なんでだろうなあ」
は?
わかんねーのかよ!
「人を好きになるのに理由なんてないっしょ?いや、別に変な意味じゃなくてさ。俺は、
藤本君と友達になりたいって思ってる」
それはある意味、強烈な告白だった。
- 419 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:49
-
「…おまえ、アホだな…」
けど、俺は嫌いじゃないぜ。
ってその時は言えなかったけどな。
- 420 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:49
-
「吸うか?」
ポケットから出したタバコを差し出すと、意外にもあいつは受け取った。
吸えんのかって思った次の瞬間。
「おまえ、それ、火つけんの逆だよ」
案の定、奴は吸ったことなんかないらしい。
「無理すんなって。こんなの吸わないのに越したことはねえ」
俺は麻琴からタバコを取り上げた。
- 421 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:50
-
それが悔しかったのか、体が痛むのかわからないけど、それから少しの間、麻琴は珍しく
おとなしかった。
だけど、俺が一本吸い終わって、足で火を消してると一言。
「藤本君、吸殻はちゃんと灰皿に入れなきゃダメだよ」
ったく、小姑みたいにこうるせえ奴だなと思った。
だけど、それ以来ちゃんと携帯灰皿を持ち歩いてる俺は、結構いい奴だと自分で思う。
- 422 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:51
-
「藤本君さ、もう簡単に付き合うのとかやめなよ。本当に好きな子が出来たとき、後悔するよ」
また子犬みたいに吠える麻琴。
「俺、好きな女なんていないし」
「だから、出来たときの話だってば」
「おまえは好きな女いるわけ?」
「…いるよ」
へえ。
ヘタレなわりにちゃんと恋愛してんじゃん。
「誰?」
「べ、別にいいじゃん」
そう、あの時は一人前に隠したりしてたな。
だけど、その次の俺の一言で、あいつはあっさりと白状した。
- 423 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(前編) 投稿日:2006/01/02(月) 14:51
-
「教えろよ、俺達、友達だろ?」
その時の、むかついたような驚いたような、だけど嬉しそうな麻琴のアホ顔は今でも覚えてる。
それから俺達は、いわゆる親友って奴になった。
- 424 名前:demizo 投稿日:2006/01/02(月) 14:51
-
本日は以上です。
- 425 名前:ぽち 投稿日:2006/01/03(火) 02:10
- 番外編、良いですね〜。
まこっちゃんって、いいやつだ…
- 426 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/03(火) 11:03
- 子犬にいちゃん最強(ケンカは弱いけどw)!
- 427 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/03(火) 19:16
- 美貴様にも彼女という幸せ訪れて欲しい…
- 428 名前:demizo 投稿日:2006/01/04(水) 15:15
- >>425 ぽち 様
ありがとうございます。
まこっちゃんは暑苦しいくらい真っ直ぐないい奴だと思いますw
>>426 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
確かに最強ですねw
この小説の登場人物はみんな兄ちゃんにはかなわないみたいです。
>>427 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
作者も美貴様の幸せを心より願っております。
- 429 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:17
-
そんなこんなで俺はなんとか無事に三年に進級することが出来た。
そして、運命的な出会いをしたわけだ。
- 430 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:17
-
あの日、屋上の指定席に先客がいるのを発見した。
その子は何をしているというわけでもなく、ただボーっと屋上からの景色を眺めていた。
とびっきりの美人というわけではないが、意思の強そうな綺麗な瞳。
周りの風景さえ飲み込んでしまう、まるで孤高の子猫のような女の子。
俺はなぜかその子から目を離せなくて。
それが田中れいなだった。
- 431 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:18
-
じっと見ている俺に気付いた田中ちゃんは、慌てて目をこすった。
その時、初めて泣いていることに気付いたんだ。
気まずそうにその場を立ち去ろうとする田中ちゃんの腕を思わず掴んで。
「大丈夫?」
何でそんなことをしてしまったのかは、今でもわからない。
ただ一つ確かなのは、俺はあの時すでに田中ちゃんに惚れていたってことだ。
それは、生まれて初めての本気の恋の始まりだった。
それからというもの、俺達は屋上でいろんな話をするようになった。
一匹狼で誰も寄せ付けないように見えた田中ちゃんは意外と人懐っこくて、一生懸命オチの
ない話をしてくれた。
普段の俺ならうざいと思うような言動が、どうしようもなくかわいく思えた。
- 432 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:18
-
夏が終わる頃、田中ちゃんは初めて会った日の涙の理由を話してくれた。
「れいな、いろんな噂立てられとって。自分のことならいいんやけど、ママのことまで
言われて悔しくて」
俺はそんな噂なんて知らなかった。
もちろん、麻琴が起こした乱闘騒ぎのせいで、うちのクラスでは田中ちゃんの噂話を一切
してなかったなんてことも。
悔しそうに唇を噛んでうつむく横顔。
そんな田中ちゃんに、俺は何も言ってやれなかった。
他の女だったら、ちょっと肩でも抱いて優しく声をかけてやったと思う。
だけど、情けないことに、田中ちゃんには指一本触れることが出来なかった。
笑っちまうくらい純粋で大切な恋だった。
- 433 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:18
-
季節が過ぎて冬が近づいた頃、俺は田中ちゃんと初めて一緒に帰った。
その帰り道でもうすぐ田中ちゃんの誕生日だということを知る。
「あのさ、良かったら誕生日一緒に過ごさない?」
それはもうほとんど勢いみたいなもんだった。
「え?」
聞き返す田中ちゃん。
その綺麗な瞳に吸い込まれたまま、俺は生まれて初めて告白をした。
「ずっと好きだったんだ。付き合ってほしい」
それは本当にストレートな、ただ思いを口にしただけの不器用な告白。
- 434 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:19
-
「じゃあ、返事考えといて」
「あ、あの、れいなは…」
やばい。
なんとなくうまくいかない予感はあった。
だけど、目の前で断られたらどうしていいのかわからなくて。
卑怯な俺は答えを先延ばしにさせた。
「あー、ストップ。断るにしても、しばらくは夢見させといてよ」
ほんの少しでいい。
一緒に過ごす誕生日の夢を。
俺は精一杯無理をして、いつも通りの笑顔を作った。
- 435 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:19
-
その日の夜。
田中ちゃんから電話があって、俺達は学校の近くで会うことになった。
「電話でもいいよ」
と言った俺に、意外と生真面目な田中ちゃんは、
「でもなんか、直接言わんと失礼かなって」
なんて答えた。
暗闇であまりはっきりとはわからなかったけど、なぜか田中ちゃんの目が腫れていたことを
覚えてる。
- 436 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:19
-
「ごめんなさい」
予想通りの返事。
- 437 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:19
-
「ごめんなさい。れいな、好きな人がおって」
胸が痛い。
- 438 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:20
-
「れいな、すごいワガママやけん。絵里じゃないとダメで」
胸が痛い。
- 439 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:20
-
「絵里は、れいながワガママ言える唯一の存在やけん」
胸が痛い。
- 440 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:20
-
「ごめんなさい」
それは、俺が初めて経験する失恋の痛みだった。
- 441 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:20
-
何度も何度も謝る田中ちゃん。
なんだかいたたまれない気持ちになって、俺はやっぱり無理やり笑顔を作った。
うまく笑えていたかはわからないけど。
「あー、気にすんなって。ぶっちゃけ、俺ってかなりもてるし。ちょっとどうかなって思って
言っただけだからさ」
そんな俺の無理を見破ったように、田中ちゃんは最後にもう一度だけ、
「ごめんなさい」
と謝った。
- 442 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:21
-
その翌日、なぜか俺と田中ちゃんが付き合ってるという噂が流れていた。
たぶん、昨日の夜、二人でいたところを誰かに見られたんだろう。
俺は噂されるのは慣れていたし、それまでの噂もすぐに消えていったから特に気にして
いなかった。
少しだけ、ほんの少しだけ。
噂の中だけでも恋人同士でいたかったなんて情けない本音は、俺だけの秘密。
- 443 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:21
-
だけど数日後、俺は麻琴に呼び出されて噂の真偽を聞かれた。
「ただの噂だよ。何でおまえがそんなこと聞くわけ?」
今までも女との噂なんて腐るほどあったけど、いちいち真実を確かめたりしなかったくせに。
「れいなは俺の幼なじみなんだ。そんでもって、たぶん、絵里がれいなのこと好きで…」
その時初めて、田中ちゃんが麻琴の幼なじみで、『絵里』ってのが麻琴の弟だってことを知った。
なぜかはわからないけど、麻琴の弟なら仕方ないって妙に納得できた。
きちんと噂を否定して応援してあげようって心から思ったんだ。
それなのに、あのヤローは。
- 444 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:22
-
俺が田中ちゃんとの噂を否定してからすぐのこと。
いつも通りに屋上で寛いでいた俺の耳に、女の泣き声が聞こえてきた。
と言っても、その声は間違いなく嘘泣きで、そんなのに騙されるバカな男もいるもんだって思った。
だけど、なんとも腹が立つことに。
それが亀井絵里だった。
- 445 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:22
-
「なんではっきり断んねーんだよ!」
壁に炸裂した俺のパンチに目を丸くしてる亀井絵里。
だけど、田中ちゃんのことを諦めないと言った俺の胸倉を掴んで、亀井絵里は堂々と言い放った。
「俺はれいなの事が好きなんだ!あんたなんかよりずっと前から!誰にも渡すもんか!!」
その瞬間、俺は初めて麻琴に胸倉を掴まれたあの時のことを思い出していた。
『ざけんな!俺はおまえの友達だろ!』
同じような顔で恥ずかしいセリフを堂々と言いやがる。
ったく、兄弟揃って俺の邪魔をする煩わしい奴らだ。
- 446 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:23
-
あれだけ偉そうにタンカをきったくせに、亀井絵里は肝心な言葉を言えずにいた。
「幸せにする」くらい言ってみろよなんて思ったけど、あのバカの気持ちは俺にもよくわかる。
本当に人を好きになったら、そんなに言葉は簡単に出てこない。
だからこそ、俺はこいつになら任せられるってそう思った。
こうして、俺の初恋は終わりを告げた。
- 447 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:23
-
・
・
・
「まあ、大体こんな感じなんだけどさ」
ベッドの上。
俺の横で真剣な顔で話を聞いていた彼女は、少し不満そうに唇を尖らす。
先月から始めたバイト先で知り合った、一つ年下の彼女。
あっという間に懐かれて、あっという間に告白されて、あっという間に付き合い始めた。
だけどそれは今までのようないい加減な恋じゃなくて。
今は彼女を好きだと自信を持って言える。
- 448 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:24
-
「なんで怒ってんの?話せって言ったのはそっちじゃん?」
いつものように幸せな時間を過ごした後、甘えん坊で独占欲の強い彼女は言った。
「高校のこと教えて」
だから、こうして話をしてやったというのに。
「あたしと田中ちゃん、どっちが好き」
なんて言って俺を困らせる彼女。
大切な思い出と比べることなんて出来ないけど。
- 449 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:24
-
「亜弥ちゃんが好きだよ」
その言葉に満足したのか、彼女は俺の腕を掴んで眠りについた。
- 450 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:24
-
指定席だった俺の屋上。
そこでの出会いが俺を変えてくれた。
そして俺は今、人生で二度目の恋愛中。
隣でかわいい顔をして眠ってる、愛する人に夢中。
- 451 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:24
-
- 452 名前:番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜(後編) 投稿日:2006/01/04(水) 15:25
-
- 453 名前:demizo 投稿日:2006/01/04(水) 15:25
-
以上です。
- 454 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/05(木) 00:03
- >>449、めっちゃ萌えました…
作者さんありがとう作者さん
- 455 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/08(日) 20:41
- かっこいい、なんかかっこいいよ登場人物みんな……
作者さんの書く文章のファンです。
- 456 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/09(月) 15:06
- すごいい,本当にすごいいですね。
藤本さん、なんかすごいですよ。
- 457 名前:demizo 投稿日:2006/01/14(土) 01:39
- >>454 名無飼育さん 様
喜んで頂けたようで幸いです。
こちらこそ、読んで頂いてありがとうございます。
>>455 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
ファンだなんて照れくさいですが、正直嬉しいですw
>>456 名無飼育さん 様
すごいの連発、ありがとうございます。
実際の藤本さんもきっとすごい人だと思ってます。
- 458 名前:demizo 投稿日:2006/01/14(土) 01:39
- では、超短いですが小高短編を。
- 459 名前:君の不満顔 投稿日:2006/01/14(土) 01:42
-
「うわあ、すっごいねえ!やっぱ海はいいねえ!」
今日は愛ちゃんと二人きりで、季節外れの海に来ている。
メチャクチャ寒いけど、海はいつでも大きくて青くて、すっごいなあって思う。
海といえば日本海!のあたしにとって、冬の太平洋は懐かしい気持ちになれる好きな場所。
あたしは愛ちゃんと二人きりっていうことだけで、ものすごくハイテンション。
なのに、隣で歩いてる愛ちゃんは唇をとがらせて不満顔。
あーあ、もう19歳なのに、まるで子供みたい。
- 460 名前:君の不満顔 投稿日:2006/01/14(土) 01:42
-
あたし達はまるでそれが決まりごとのように、本当に自然に隣にいるようになっていた。
いつもくだらないことでふざけ合ったり、真面目に語り合ったり。
そして、いつの間にか、恋人のマネゴトのように抱き合ったりキスしたりするようになって。
それが友情だろうが愛情だろうが、そんなことはどうでもよかった。
だって、愛ちゃんのそばにいるだけで嬉しくて楽しくて、素顔のあたしでいられるから。
そんな人は今までいなかったし、たぶんこれからも出会えないと思う。
だから、この思いに名前なんかつけなくたって、愛ちゃんはぶっちぎりのナンバーワンなんだ。
- 461 名前:君の不満顔 投稿日:2006/01/14(土) 01:43
-
だけど、愛ちゃんはこの思いに名前をつけたがってる。
曖昧な関係をはっきりとさせたい、そう思ってる。
- 462 名前:君の不満顔 投稿日:2006/01/14(土) 01:44
-
「ねえ、愛ちゃん、機嫌直してよー」
愛ちゃんが笑ってくれないと、あたしはあたしじゃなくなるんだよ。
「愛ちゃーん、愛ちゃーん、あいあいあいあいあいあいあ…」
「ウザイ」
秒殺。
うーん、困ったなあ。
不機嫌なわりに繋いでる手を離そうとしないところは、ものすごくかわいいんだけど。
あたしはとりあえずテンションを下げて、愛ちゃんの手を引いてテトラポットの上に座る。
- 463 名前:君の不満顔 投稿日:2006/01/14(土) 01:44
-
愛ちゃん、あたしね、よくわかんないんだよ。
「好き」とか「恋」とかよくわかんない。
楽しければいいじゃん?
愛ちゃんと何かをする度にすごく幸せな気持ちになるんだよ。
こうして手を繋ぐのも、抱き合うのも、キスするのも、ケンカさえも、全部幸せ。
愛ちゃんもそうでしょ?
だったら、それでいいじゃん?
- 464 名前:君の不満顔 投稿日:2006/01/14(土) 01:45
-
黙り込んだあたしの手をギュッて強く握る。
視界の端には、睨むようにあたしを見てる不満顔。
鋭い視線だけど、愛ちゃんに見られてると思うとドキドキする。
しょうがないなあ。
愛ちゃんが欲しがってる言葉、愛ちゃんが望んでる関係。
それはあたしにとっても嫌なことじゃなくて、むしろ嬉しいことで。
- 465 名前:君の不満顔 投稿日:2006/01/14(土) 01:45
-
「愛ちゃん」
それなら、愛ちゃんを笑顔に変える魔法の言葉を口にしよう。
- 466 名前:君の不満顔 投稿日:2006/01/14(土) 01:45
-
「好きだよ」
愛ちゃんの不満顔は、お得意のビックリ顔になった後、大好きな笑顔に変わった。
- 467 名前:君の不満顔 投稿日:2006/01/14(土) 01:46
-
- 468 名前:君の不満顔 投稿日:2006/01/14(土) 01:46
-
- 469 名前:demizo 投稿日:2006/01/14(土) 01:46
-
本日は以上です。
- 470 名前:demizo 投稿日:2006/01/18(水) 23:31
- ワガママなあいつの続編です。
- 471 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:31
-
今日は都の陸上競技会。
僕にとっては勝負の日だ。
一応都内でも1、2を争うほどの実力を持つ僕は、もちろん優勝候補の一人でかなり注目
されている。
だけど、今までは優勝を逃してきた。
今回は負けられない。
- 472 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:32
-
僕はどちらかというと物事に執着しないタイプで、人との争いも嫌いだ。
勝負事は苦手だったし、負けても悔しいと思わなかった。
だけど、走ることに関しては違う。
誰にも負けたくなかった。
ただ、努力している姿を見られるのが嫌だったから、この二年間、早朝や休みの日に自主練を
重ねてきた。
そのせいか、周りのみんなは才能だけで記録を伸ばしてきたと思ってるみたいだけどさ。
この大会は優勝するんだ、絶対に。
- 473 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:32
-
周囲の期待通り、僕は危なげなく予選を通過した。
ライバル達と並んで決勝のスタートラインに立ち、駆け付けてくれた応援団を見る。
さゆと小春ちゃん。
兄ちゃんと高橋先輩。
陸上部のみんな。
顧問の先生。
そして、祈るようにこっちを見ているあいつ。
絶対に勝つよ。
そこで見てて。
- 474 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:32
-
「位置について、ヨーイ」
ドン!
ピストルの音に一斉に飛び出す。
スタートはバッチリだ!
ゴールまであと少し、僕はトップを走ってる。
勝てる!
そう思った次の瞬間。
- 475 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:32
-
グキッ。
…嫌な感触と共に、僕はトラックに倒れこんだ。
- 476 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:33
-
・
・
・
負けたんだと認識出来るまで、少し時間がかかった。
記録なし。
なんだか笑うしかない。
応急手当をしてもらい、ロッカールームに引き上げると、部員が心配そうに僕を見ている。
かける言葉がないって感じで。
「あー、あははー、負けちゃいましたー」
出来るだけいつも通りヘラヘラ笑って、何事もないように。
そんな僕の様子にホッとしたのか、みんなが一斉に話し出す。
- 477 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:33
-
「なんだよー、落ち込んでるかと思ったよ」
めちゃくちゃ落ち込んでるよ。
「まあ、亀井は練習嫌いだもんな、仕方ないか」
影で死ぬほど練習してたよ。
「真剣にやらないから怪我すんだぞー」
それはいつもの軽口。
だから、僕は必死で笑顔を作った。
痛いほど拳を握りしめながら。
- 478 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:34
-
病院に寄ってから家に帰る。
診断結果はただの捻挫。
全治二週間。
そんなことで二年間の努力が無駄になったのに、不思議と悔しさはなかった。
なんでだろ?
やっぱ僕、みんなの言う通り、あんま真剣にやってなかったのかな。
あー、だから悔しくないんだ。
なーんだ、簡単なことだ。
落ち込む必要ないじゃん。
いつもみたいに笑おう。
僕には真剣勝負なんて似合わないんだ。
何もなかったように笑おう。
- 479 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:34
-
「絵里ー、れいなちゃんが来たわよー」
どのくらい時間が経ったのかわからない。
母さんの声で現実に戻される。
珍しくノックするあいつ。
僕が返事するとゆっくりと中に入ってきた。
重い空気。
なんだよ、僕、平気だって。
別に落ち込んでないし。
たかが陸上だろ。
- 480 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:34
-
「へへへ、負けちゃったー。いやー、あんなとこでこけるなんて、ある意味すごくない?」
気持ちを知られたくなくて早口でまくしたてる。
「…絵里」
「んー?れいなも笑っちゃうでしょ?やっぱ僕ってバカな…」
「…っく、ひっく…」
…なんだよ、なんで、れいなが泣くんだよ。
「な、なあ、俺、全然平気だからさ?」
泣くなよ。
- 481 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:35
-
「絵里が泣かんから、…か、代わりに、れいなが泣いとうと…っく、ひっく…」
「俺、別に泣きたくなんか…」
「バカ!絵里、練習しとったけん、朝も休みの日も…。一生…けんめ、い、やっとったやん」
知ってたんだ…。
誰にも内緒の自主練。
なのに…。
「泣いて、あげんと、…っく、悔しがっ、てやらんと、…ひっく…、練習しとった絵里が
むくわれん。次に進めんっちゃろ」
…ああ、そうだ。
「絵里、頑張っとったけん」
僕はずっと頑張ってきたんだ。
負けたくなくて、誰よりも努力してきたんだ。
負けて悔しかったんだ。
僕は、僕は…。
- 482 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:35
-
「…く…」
泣きたかったんだ。
僕は、まるで子供の頃のように久しぶりに声をあげて泣いた。
- 483 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:36
-
僕の体を優しいぬくもりが包む。
情けないとかカッコ悪いとかそんなのどうでもよくて。
だた、あいつのぬくもりに体を預けた。
僕を抱き締めながら、あいつはやけに自信満々に言う。
「次は絶対勝てると。努力は嘘つかんけん。れいながついとうけん、次は勝つと!」
うん、なんだか本当に勝てそうな気がする。
不思議だなあ。
- 484 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:36
-
僕の努力を知っててくれた。
僕の悔しさをわかってくれた。
僕が泣きたいことに気付いてくれた。
あいつがそばにいてくれるなら、これからも頑張れるだろう。
だから、僕の努力も涙も、あいつだけが知っててくれればそれでいい。
- 485 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:37
-
- 486 名前:第11話 努力と涙 投稿日:2006/01/18(水) 23:37
-
- 487 名前:demizo 投稿日:2006/01/18(水) 23:38
-
本日は以上です。
- 488 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/18(水) 23:44
- リアルタイムで読めてすごく嬉しいです
待ってましたよー!更新お疲れ様です
作者さんのれなえりめちゃめちゃ好きです
- 489 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/21(土) 17:13
- よく読みました。
れなえり、最高!!!
作者さん、次回もよろしくおねがいします。
- 490 名前:ななし 投稿日:2006/01/24(火) 23:19
- 今日初めて読みましたが、見事にハマりました。
登場人物がそれぞれかわいくてかっこよくて…。
次回も期待してます!!
- 491 名前:demizo 投稿日:2006/01/28(土) 23:27
- >>488 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
待ってて頂き、光栄です。
自分のれなえりは若干異色な気がするので、好きと言って頂けて嬉しいです。
>>489 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
れなえり最高ですよね!
今回も楽しめて頂ければ嬉しいです。
>>490 ななし 様
ありがとうございます。
登場人物にはそれぞれ思い入れがあるため、すごく嬉しいです。
今後ともさらにハマって頂ければ幸いです。
- 492 名前:demizo 投稿日:2006/01/28(土) 23:27
- それでは、「ワガママなあいつ」の続編を。
- 493 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:28
-
あの観覧車での出来事からもうすぐ三ヶ月が過ぎようとしている。
だけど、僕達の関係はあまり進展していない。
もちろん、幼なじみの時とは気持ちも態度も変わってきてるけど、決定的な出来事がない。
つまり、その…。
キスの一つもしていないわけだ。
(おでこにしてもらったことならあるけど…)
兄ちゃんのこと、ヘタレとか言えないよなあ。
- 494 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:28
-
幼なじみだった僕達は、何だか真剣に向き合うのが恥ずかしくて、そういう雰囲気になると
すぐにごまかしてしまう。
僕達が付き合っていることは、今もまだ母さん達には話していない。
だから、こんなふうにおばさんがいない夜の間にあいつの家にお邪魔しているってことも、
お互いの親には秘密だ。
バレるといろいろと面倒だし。
夜。
密室。
二人きり。
こんなおいしいシチュエーションで何もしないってのも、男としてどうかと思うけど…。
- 495 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:29
-
「ねえ、絵里ー」
「ん?」
いつものようにコタツで丸まってテレビを見ている。
何だか、長年連れ添った夫婦みたいだな…。
「んー、なんでもないー」
迎い側に座ってるあいつはコタツの上に顎を乗せて唇を尖らせた。
クールに見られがちだけど実はかなり表情が豊かなあいつは、テレビを見ている時もコロコロと
顔が変わる。
笑ったり怒ったり拗ねたり泣いたり叫んだり落ち込んだり…。
まるで子供そのものだ。
まあ、飽きなくていいんだけど。
- 496 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:29
-
「なんか言いたいことあるんじゃないの?」
珍しいじゃん。
言いたいこと言わないなんてさ。
「んー」
「んー?」
「うー」
「うー?」
「あー」
「…あのねぇ…」
「…隣、座っていいと?」
- 497 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:29
-
ドクン。
久々に胸が高鳴る。
「…う、うん」
「…絵里がこっち来てよ」
「は、はい」
緊張のあまり声が上ずってしまう。
「なん?緊張しとう?」
嫌なこと聞くなよ。
あいつはなぜかニヤニヤしてる。
余裕じゃん。
ムカつく。
- 498 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:30
-
「別に」
僕は平然を装って隣に座ってやった。
狭いコタツは二人で入ると本当に窮屈で。
つまり、僕達はかなり密着してる。
余裕そうに見えたあいつだけど、よく見ると耳が赤くなってた。
…良かった。
僕達はまだ始まったばかりで。
だから、いきなり前に進むなんて出来ないんだ。
それは僕もあいつも同じはずだ。
- 499 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:30
-
「いつまで正座しとうと?」
いや、崩すとさらに密着するわけで…。
「あー、ほら、俺、狭いとこと正座が好きだからさー。ついでにコタツとお茶とおせんべも
好きだし」
我ながらわけわかんない説明。
あいつは本当にその理由がわからないみたいでキョトンとしてる。
か、可愛い…って、そうじゃなくて…。
あー、そんな顔で見つめないでよ。
- 500 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:31
-
「…それだけ?」
「へ?」
一人で悶えていた僕は質問の意味がわからずに聞き返す。
「やけん、絵里が好きなんは、狭いとこと正座とコタツとお茶とおせんべだけ?」
そ、それって…。
「…れいな達って付き合っとうよね?」
付き合ってる…と思うけど…。
- 501 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:31
-
「絵里、なんも言ってくれんし、なんも変わらんし、わからん」
「な、なんもって、観覧車で言ったじゃん」
そりゃ、何も変わってないかもしれないけど、確かにあの日、僕達は気持ちを確かめ合った
はずだ。
「やけん、…好き、とか…は言ってくれてないと…」
ふぇ?
言ったじゃん?
僕、言ったよね?
あの観覧車での出来事を思い出してみる。
- 502 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:31
-
・
・
・
「…ずっと、そばにおいとって…。…れいなもワガママ言う相手がおらんと、ダメと…」
「…れーな…」
「絵里は、れいなにとって、…おらなアカン存在やけん」
「そばにいる。れいなのワガママ、全部受け止めるよ」
れいなが、好きだから。
・
・
・
- 503 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:32
-
ほら、言ってるじゃん。
れいなが、好きだから
…って、脳内で言ってるだけじゃん!
そっか、僕はまだちゃんと言ってなかったんだ。
あいつに好きだって…。
うつむいてるあいつ。
ずっと不安だったのかな。
バカだなあ。
好きじゃなきゃこんなに一緒にいないよ?
こんなにワガママ聞いたりしないよ?
- 504 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:32
-
でも、言わなきゃ伝わらない。
あの時はあいつがきっかけを作ってくれた。
だから、今度は僕の番だ。
好きだって言うんだ。
ちゃんと思いを込めて。
僕は深呼吸をする。
- 505 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:33
-
「…す、す」
ヤバい、どもっちゃった…。
カ、カッコ悪い。
あいつは気をきかせてるのか無反応。
よ、よし、もう一度…。
さっきよりも深く息を吸う。
今までのあいつとの出来事を思い浮かべながら、ついにその言葉を口にする。
- 506 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:33
-
「…好きだよ」
今度はどもらずに言えた。
伝わったかな、僕の気持ち。
次の瞬間、左肩に確かなぬくもりを感じた。
つまり、あいつが寄り掛かってるってことで…。
あの観覧車の続きって考えると…。
あの時は邪魔が入ったけど今は二人きり。
付き合い始めて三ヶ月。
僕達はついに…。
「れ、れいな」
僕は意を決してあいつに顔を近づけ…。
- 507 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:33
-
「…スー…スー…」
「…は!?」
思わず、あいつ並みのキレ声を発してしまった。
だって、まさか…。
あいつは僕の肩に寄りかかり、とても気持ちよさそうに眠っていた。
よくよく時計を見ると、観覧車での出来事を思い出し始めてから、すでに三十分以上経って
いる。
あいつはたぶん、何度も僕に呼びかけたんだと思う。
だけど考え込んでいた僕には聞こえなくて…。
- 508 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:34
-
伝えられなかった「好き」という言葉だけど、少しだけホッとしている僕がいる。
言ってしまうと、歯止めが利かなくなるような気がするから。
そんなに上手じゃないし、欲張りでもない二人。
でも、のんびり行けばいいよね。
僕はあいつの寝顔を見ながら、なんとなくそう思っていた。
- 509 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:34
-
その後、たっぷり一時間も寝てしまったあいつのせいで、足がしびれてしばらく動けなかった
ことは言うまでもない…。
- 510 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:35
-
僕が好きなもの。
それは、狭いとこと正座とコタツとお茶とおせんべと。
そして、ワガママなあいつ。
- 511 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:35
-
- 512 名前:第12話 僕が好きなもの 投稿日:2006/01/28(土) 23:35
-
- 513 名前:demizo 投稿日:2006/01/28(土) 23:36
-
本日は以上です。
- 514 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/29(日) 23:00
- 毎度、ありがとうございました。
よく読みました。
れいな、なんかおもしろいですよ、なんか
- 515 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/30(月) 10:03
- あー彼女欲しい(´Д`)
- 516 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/07(火) 00:08
- うわぁいいなぁやっぱいい!!
次回も楽しみにしてます^^
- 517 名前:demizo 投稿日:2006/02/11(土) 21:10
- >>514 名無飼育さん 様
いつもありがとうございます。
楽しんで頂けたようで良かったです。
>>515 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
自分の小説を読んでそう思って頂けるなんて、嬉しい限りです。
>>516 名無飼育さん 様
なんかすごく嬉しい一言、ありがとうございます。
今後もいいと思って頂けるように頑張ります。
- 518 名前:demizo 投稿日:2006/02/11(土) 21:11
- それでは「ワガママなあいつ」の続編を。
一月ばかり季節を進めて3月の設定となっております。
- 519 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:11
-
3月に入ったばかりのある日。
もうすぐ高校を卒業する兄ちゃんから声をかけられた。
「絵里、今度の休み空けといてよ」
「え?なんで?」
「愛ちゃんがれいなに会いたいから四人で出掛けようって」
ったく、高橋先輩の言うことなら何でも聞くのかよ。
兄ちゃんと高橋先輩はこの春から別々の大学へ通うことになる。
もう緊張なんてしないだろうから、二人で出掛ければいいのにさ。
「うーん、まあ、高橋先輩がそう言うなら…」
…どうやら僕も兄ちゃんと一緒で、高橋先輩の言うことなら聞いてしまうタイプの人間らしい。
かくして僕達は実質二回目のダブルデートって奴をすることになった。
- 520 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:12
-
本日も晴天なり。
あの日と同じく、最高のデート日和になった。
冬も終わりを告げようとしていて、ポカポカと暖かい。
今日の目的地は横浜らしい。
久々に会う高橋先輩はやっぱり可愛くて。
なんというか、少しだけど大人の色気(?)みたいなものを漂わせてる気がする。
ほんと、話さなければ最高の彼女だよなあ。
- 521 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:12
-
一方、あいつはというと…。
「あー!ちっちゃい遊園地っちゃね!観覧車があると!なん、あのビル!?れいな、横浜
来るの夢だったとー。また一つ夢がかなってしまったあ!」
子供の遠足みたいに大騒ぎ。
恥ずかしいったらありゃしない。
…まあ、そこが可愛いんだけどさ。
どうやら、兄ちゃんも高橋先輩もあいつのことが可愛くてしょうがないみたいだ。
- 522 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:12
-
お昼ご飯を食べた後、公園をフラフラ歩く。
「あっ!ソフトクリーム売っとう!」
突然、お店の方に走り出すあいつ。
もう、ガキそのものじゃん。
僕が慌ててついて行こうとすると、
「いーよ、俺行くから。二人の分も買ってくるねー」
なんて言って兄ちゃんが走って行った。
根っからのパシリ体質らしい。
- 523 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:12
-
残されたのは僕と高橋先輩。
「こうやって二人で話してると、あの遊園地のこと思い出すわ」
「ああ、あの時は散々でしたからねえ、俺。あんま思いだしたくないかも」
僕が首をすくめると、高橋先輩は大爆笑。
あーあ、そんなに顔クシャクシャにして笑うと美人が台無しですよー。
「でも、あのおかげで今のあたし達があるから、絵里君には感謝しとるよ」
いやあ、そんなそんな。
「それに、絵里君とれいながうまくいって良かった」
「え?」
「れいなの気持ち知ってたから」
あいつの気持ち?
- 524 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:13
-
「絵里君のこと好きだってこと」
「え?いつからですか?」
「あの遊園地の日やよ」
いつの間に、そんなこと…。
「まあ、聞かんでも何となくわかったけどな。麻琴もたぶんそうだって言っとったし」
あの日、兄ちゃんと高橋先輩に悪いことをしたと思ったあいつは、帰り際に先輩に自分の
気持ちを打ち明けていたそうだ。
『れいなが好きなんは絵里やけん。高橋先輩は安心しとって』
そうやって他の人の口から聞かされると、何だかものすごく照れてしまう。
しかも、よくよく考えてみると、僕はまだあいつの口から言われたことがない。
「好き」って言葉を。
まあ、そういう僕も結局言ってないけど。
- 525 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:13
-
「楽しそうに、なに話しとうと?」
振り向くとソフトクリームを両手に持って、ほっぺを膨らませてるあいつ。
「れいなったら、やきもち?」
高橋先輩がからかう。
「ち、違うと!」
「心配せんでええって。あたしは麻琴一筋やから。な?麻琴」
いきなり話を振られた兄ちゃんは、その言葉に動揺してソフトクリームを落としそうになる。
そんな兄ちゃんを見て、僕とあいつは大笑いした。
- 526 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:14
-
夕方になり、帰る前に観覧車に乗ることになった。
「ここはやっぱり二人ずつ乗らないと」
という高橋先輩の鶴の声で二組に分かれた。
兄ちゃんと先輩が乗り込んだ観覧車が先に上がっていく。
あいつの誕生日以来の観覧車。
乗り込んだ瞬間、僕達は二人とも無口になる。
- 527 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:14
-
「きれーだね」
僕の乾いた声が響く。
あいつはただうなづくだけで。
なんか、話してよ?
さっきまではしゃいでたじゃん?
嫌な緊張感に耐えられなくなりそうだ。
僕はごまかすように外の景色を眺める。
- 528 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:14
-
綺麗な町並み。
綺麗な夕陽。
いつものあいつなら大騒ぎするのに…。
付き合い始めてから少しずつだけど確実に、二人で過ごす時の空気が変わってきている。
普段の会話ならいいんだけど、恋人であることを意識してしまうと途端に気まずくなる。
だから、こんなふうにたまに沈黙が続いたりして。
不器用な僕達は、まだうまく恋人として立ち回れないらしい。
あれから四ヶ月も経ってるのにキスもしてないなんて。
- 529 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:15
-
もどかしいあいつ。
もどかしい自分。
もどかしい距離。
一歩踏み込んでしまえば、何かが動き出すだろうか?
勇気を出すことが出来れば…。
- 530 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:15
-
「絵里」
ん?
神妙なあいつの顔。
「れいなね」
「うん?」
夕陽に照らされて、オレンジ色に染まる頬。
なんでだろう。
小さな頃から見慣れてるはずなのに、こんなにドキドキするんだ。
- 531 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:15
-
あいつは、今までに見たことのないくらい大人びた顔で、こう言った。
「れいな、絵里が好き」
- 532 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:16
-
ああ、そうだ。
ずっと同じ道を歩いてきた僕達は、考えることもとてもよく似ている。
だけど、最初の一歩を踏み出すのは、いつもあいつの方。
もういい加減、僕も進みださなきゃいけない。
置いていかれないように。
隣で歩き続けるために。
- 533 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:16
-
僕はゆっくりと立ち上がり、あいつの隣に座った。
「俺も、れいなが好き」
- 534 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:16
-
ずっと好きだよ、今までも、これからも。
僕達はオレンジ色に包まれて優しい優しいキスをした。
- 535 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:17
-
- 536 名前:第13話 オレンジ色のキス 投稿日:2006/02/11(土) 21:17
-
- 537 名前:demizo 投稿日:2006/02/11(土) 21:18
-
本日は以上です。
一応、次回が最終話の予定です(前編、後編の二話)。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。
よろしくお願いします。
- 538 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/12(日) 00:55
- さみしくなるなぁ。
- 539 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/12(日) 01:50
- 次回が楽しみだけど終わってしまうのは寂しいですね。
絵里君よくがんばった!!
- 540 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/12(日) 04:32
- ここのれなえり最高です!
れいなも絵里もずっと幸せでいて欲しい。
終わってしまうのは、ホントに寂しいです。
- 541 名前:demizo 投稿日:2006/02/16(木) 22:15
- >>538 名無飼育さん 様
嬉しい一言、ありがとうございます。
最後までしっかりと更新しますのでよろしくお願いします。
>>539 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
本当に、絵里君はようやく前に進んでくれたって感じですね。
最後までよろしくお願いします。
>>540 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
自分もこの二人にはずっと幸せでいてほしいなと思います。
そう思って頂けるような話を書けたこと、素直に嬉しいです。
- 542 名前:demizo 投稿日:2006/02/16(木) 22:16
- では、「ワガママなあいつ」の続編です。
- 543 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:17
-
今日は卒業式。
1、2年生は式には参加せずに、体育館の外で3年生を出迎えることになっている。
もっともそれは自由参加で、部活に入っていなかったり見送る3年生がいない場合、今日は
休日となる。
僕は陸上部の先輩の見送りもあるし、兄ちゃんや高橋先輩もいるから普通に学校に来ていた。
昨日、一応あいつのことも誘ったんだけど断られた。
- 544 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:17
-
「でも、高橋先輩も卒業しちゃうんだよ?」
「わかっとう。けど、れいな、苦手やけん」
そう、あいつは昔からああいう別れの場面が大の苦手なのだ。
もちろん、そんなのが得意な人なんて滅多にいないだろうけど、あいつの場合は半端じゃない。
それこそ、母親とはぐれた子供のように泣きじゃくる。
「そんな姿、見せたくない。まこっちゃんや愛ちゃんや絵里にならいいけど」
そりゃそうだろう。
クールに見られがちのあいつが泣き喚いたなんて、心ない噂の格好の餌食だ。
- 545 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:17
-
「それに、まこっちゃんにも愛ちゃんにも、また会えるし」
…うん、兄ちゃんや高橋先輩にはね。
けど、もう一人、見送りたい人がいるんじゃない?
たぶん、兄ちゃん達と同じくらい、大切な人。
鈍い鈍いと言われる僕だけど、このことについてはかなり自信がある。
その証拠に、あいつは唇を噛んでうつむいて、じっと何かを考えている。
- 546 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:18
-
あいつと藤本先輩の間にどんなことがあったのか、僕は何も知らない。
気にならないと言ったら嘘になる。
ただ、怖くて聞けないだけ。
接点のない二人がどこで知り合って、どんな話をしてたのか。
あの日、まるで恋人同士みたいに信頼し合ってるように見えた二人。
正直言うと、今でもたまに夢に出てきて僕の胸をかき乱すんだ。
情けないことに、あの日の二人の姿が。
- 547 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:18
-
「おーい、亀井!先輩達来るぞ!」
陸上部の友達に呼ばれる。
そろそろ、3年生が体育館から出てくるらしい。
次々と出てくる先輩達に花束を渡していく。
兄ちゃん達のクラスの番になった。
「う、うう…」
あーあ、泣いちゃってるよ、兄ちゃん…。
「ほら、麻琴、もう泣かんで」
その横では背中をさすってくれてる高橋先輩。
逆だよね、普通…。
だけど、兄ちゃんを見る先輩の表情は本当に優しくて綺麗で、とても幸せな気持ちになった。
- 548 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:18
-
「ったく、いつまで泣いてんだよ」
兄ちゃんの頭を後ろから軽くはたいたのは、藤本先輩。
相変わらず、女子の注目を集めてる。
あの屋上で会った時よりも何倍もカッコ良く見えるのはなぜだろう。
なんか、ちょっと雰囲気が変わったような…。
一瞬、こっちを見た藤本先輩が僕を見つけて、小さく口を動かした。
『バーカ』
ムカついたけど、なぜかちょっと嬉しかったから、僕はあえて笑顔で答えてやった。
藤本先輩も笑ってくれた。
- 549 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:19
-
陸上部恒例の卒業の儀式が終わり帰ろうとした時、校門の影に見慣れた後姿を見つけた。
…やっぱり。
「れいな」
声をかけると気まずそうに目をそらされる。
強気なくせに弱虫で泣き虫なあいつ。
意地っぱりのあいつ。
たぶん、誰かが背中を押してやらなきゃ動けない。
- 550 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:19
-
「藤本先輩、あっちにいるよ」
あいつは僕の声なんて聞こえないふりで、そっぽを向いたまま。
「早くしないと帰っちゃうよ」
「れいなは別に…」
ったく、世話のやける奴。
「藤本せんぱーい!!」
「ちょ、絵里、なんしとうと!」
「いいじゃん、ちゃんと挨拶しなよ」
「そんなん絵里に関係ないっちゃろ!れいなの勝手やけん、ほっといてよ!」
「関係あるよ!」
- 551 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:20
-
関係あるに決まってるじゃん。
あいつの気持ちを疑ってるわけじゃない。
この数ヶ月、僕達は確かに同じ時間を過ごして同じ思いを共有しているって実感してる。
だけど、いや、だからこそ。
未だにあいつの中に藤本先輩がいることに気付かないわけがなかった。
それが、好きとか後悔とかじゃないのはわかってる。
なんかもっと違う意味で、あいつは藤本先輩をずっと気にしてるんだ、今も。
だからさ、そんな気持ちはもう全部吹っ切ってよ。
藤本先輩を呼んだのはあいつのためとかじゃない。
それは、僕自身の勝手な願い。
- 552 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:20
-
「こんなとこで痴話喧嘩すんなよ」
怒鳴り合い、睨み合っている僕達に、花束を持った藤本先輩が近付いてきた。
「あー、どうも、なんかこいつが話があるみたいなんで、聞いてやって下さい」
「え、絵里…」
「じゃあ、俺、あっち行ってるから」
そう言って二人から離れようとした瞬間、腕を掴まれた。
「…ここにおって、一緒に聞いとって」
「え、でも…」
「お願い、絵里」
真剣な表情に僕は黙ってうなづいた。
- 553 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:21
-
あいつは藤本先輩と真っ直ぐ向き合う。
「久しぶり、田中ちゃん」
すごく優しい声。
「あの…、ありがとうございました」
「ん?」
「あの頃、れいな、本当は学校来るの嫌になっとって…」
「…あー、うん」
「けど、藤本先輩にいろいろと聞いてもらってすごく楽になって…」
「そっか、良かった」
「ほんとに、ありがとうございました」
その時のあいつの顔はすごくすっきりしたって感じで、すごく綺麗で、なんだかちょっと
だけ悔しくなった。
- 554 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:21
-
「礼を言うのは俺の方だよ」
「え?」
「田中ちゃんに会えて、わかったことがたくさんあるからさ」
「わかったこと…?」
「そ。まあ、なにかって聞かれても秘密だけど」
藤本先輩は、逆に礼を言われて少し唖然としているあいつに笑いかけた後、僕の方を向いた。
- 555 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:21
-
「で、ちゃんと言えるようになったか?」
ん?
「あの日、屋上で言えなかったことだよ」
あの日、屋上で言えなかったこと。
『俺、れいなの事、ちゃんと…』
ああ、そっか、『幸せにする』って一言。
あの頃より少しだけ強くなった今なら言えるかな。
カッコ良くて頼もしくて、とても優しい元『恋のライバル』に。
- 556 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:22
-
「…まだ、です」
やっぱりダメだ。
まだ言えない。
だって、僕はまだ揺れてばかりだから。
もっとちゃんと自信をつけて、もっとちゃんとホントの意味で強くなって、もっとちゃんと
あいつと向き合えるようにならないと。
「バーカ」
藤本先輩はあの時と同じセリフを口にした。
- 557 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:22
-
「言うってなにを?絵里、先輩と知り合いだったと?」
きょとんとした顔で聞いてくるあいつ。
…絶対に言うもんか。
「あー、こいつ、屋上でさ…」
「だー!ちょっと!!」
「なん?」
「だー!なんでもない、なんでもないよ!」
「なんでもないってことはねーだろが、あの時…」
「ちょ!」
「れいなに言えないことがあると?」
「ないない!ありません!」
「怪しい。もう知らん、絵里のバカ!」
元『恋のライバル』は、そんな僕達の言い争いをニヤニヤしながら見ていた。
- 558 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:22
-
「じゃあ、俺、もう行くわ」
右手をあげて去っていく藤本先輩は、最後に一言だけ言い残していった。
「ちなみに、俺、彼女出来たからさ。田中ちゃんに負けないくらい、かわいい子。じゃあな!」
そんな、普通ならムカつくようなことを言われたのにも関わらず、藤本先輩の後姿を見送る
あいつの表情はすごく優しくて、やっぱりちょっとだけ悔しくなった。
- 559 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:23
-
- 560 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(前編) 投稿日:2006/02/16(木) 22:23
-
- 561 名前:demizo 投稿日:2006/02/16(木) 22:23
-
本日は以上です。
- 562 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/17(金) 03:27
- 藤本先輩カッケー!
最後は絵里もかっこよくキメて欲しい
…と思う反面やっぱりふにゃふにゃしていて欲しいとも(笑)
最終話も楽しみにしています
- 563 名前:demizo 投稿日:2006/02/20(月) 23:00
- >>562 名無飼育さん 様
ありがとうございます。
藤本先輩と比べるとダメダメな亀井さんですが、最初よりは少し成長したのかなとw
カッコ良く決められたかどうかはわかりませんが、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。
- 564 名前:demizo 投稿日:2006/02/20(月) 23:00
- それでは、「ワガママなあいつ」の続編です。
- 565 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:01
-
「あー、れいな!」
手を振りながら高橋先輩と兄ちゃんが近づいてくる。
「愛ちゃん!卒業おめでとうございます」
「ありがとうございます」
男二人を完全に無視して盛り上がる先輩とあいつ。
兄ちゃんはいつかの遊園地と同じように、そんな二人を優しく見守っている。
「…愛ちゃんおらんと、寂しいと…」
「泣くなってー、いつでも会えるやろー」
「…う、ぐす…」
「れいなあ…」
盛り上がったと思ったらいつの間にか盛り下がっちゃって…。
でも、向かい合って手を繋ぎながら泣く二人を見て、僕も目頭が熱くなってきた。
- 566 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:01
-
確かにいつでも会えるんだけど、なんか、そういうことじゃなくて。
今までいた場所から今までいた人がいなくなるという事実。
当たり前のことが当たり前じゃなくなるという事実。
うまく言えない、このせつなさ。
本人達にしかわからない、この寂しさ。
その時、隣の影が二人の方へと近付いた。
泣きじゃくってる先輩とあいつの頭を優しく撫でる手。
二人の視線を受けた兄ちゃんは、少しだけ照れくさそうに笑った後、高橋先輩の手をとった。
ああ、やっぱり、兄ちゃんにはまだまだ敵いそうにない。
- 567 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:02
-
「絵里」
「え?」
「ほら」
兄ちゃんが指差す先には子供みたいに泣きじゃくるあいつ。
そう、どんなに敵わなくたって、あいつの手を引っ張るのは僕の役目だ。
それだけは誰にも譲れない。
僕はそっとあいつの手をとった。
- 568 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:02
-
「また四人でどっか行こうねー」
なんて約束をして別れた後、僕達は二人きりで通学路を歩いている。
離すタイミングを失ってしまったから、繋いだ手はそのままで。
いや、本当の理由はきっと離したくないからで。
「絵里さあ、もしかしてずっと気にしとった?」
「んー?」
「藤本先輩とのこと」
「…あー」
図星をつかれて言葉に詰まる。
- 569 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:02
-
「気にしとったやろ?」
「…別に気にしてません」
「えー、絶対しとったって!」
「…してないよ」
「妬いとったやろ、正直」
ああ、もう!
「あー、妬いてたよ!妬いてました!」
妬くに決まってるじゃないか。
自分の彼女と他の男とのあんなシーン見せられて、妬かない奴がどこにいるのさ。
- 570 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:03
-
「ずーっと気にしてたよ!それこそ夢にまで出てくるくらいに」
僕は一気にまくしたてる。
だって、しょうがないだろ?
「しょうがないだろ、れいなが好きなんだから」
そう、もうどうしようもないくらい、好きなんだ。
- 571 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:03
-
してやったりという顔でニヤニヤしてると思ったら、あいつは真っ赤な顔で固まっていた。
ちょっと、待ってよ。
そんな反応されるとこっちまで恥ずかしくなるじゃん。
「…あのー、れいなさん?」
あまりにも意外な反応に思わず「さん」付けしてしまう。
「もしもーし?」
「…バカ」
「ふぇ!?」
なんでいきなりバカになるわけ?
いや、もうそんなセリフは聞き慣れてるけど。
- 572 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:03
-
「絵里、キモい」
「な、なんでそうなるのさ!」
「普通こんなとこで言う?この前までちゃんと言えんかったくせに…」
「そ、そりゃそうだけど、でも…」
この前、観覧車の中で初めてキスした時、あいつに『好き』って言われて気付いたんだ。
言葉ってすごい力を持ってるんだってことに。
幼なじみの僕達は一緒にいるのが当たり前みたいになってて、お互いの気持ちや言いたい
こともなんとなくわかっちゃう。
それはそれで嬉しいことでもあり誇らしいことでもあるんだけど、言葉にしてもらうこと
で改めていろんな思いが伝わってきた気がした。
『好き』って言われたこと、すごく嬉しかった。
だから、僕もちゃんと伝えたいって思う。
『好き』って思った時に、『好き』って言葉を。
- 573 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:03
-
「れいな、そんなふうに言われるとひいてしまうと」
「…そ、そんな…」
この前は『言ってくれん』なんていじけてたくせに…。
女心はよくわかんない。
「けど」
握られたままの手にギュッと力が込められる。
- 574 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:04
-
「絵里やけん、いいと」
「…」
「…絵里は特別やけん」
それは、いつかと同じようなセリフ。
あの頃、鈍感でバカな僕はあいつの気持ちなんてなにも知らなくて、今思うと無神経なこと
ばっかり言ってたような気がする。
「うへへー」
「だからー、キモいって」
- 575 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:04
-
「イチャイチャしちゃってー、やだねー」
「小春も道重先輩とイチャイチャしたーい!」
突然の聞き慣れた声に、どちらからともなくパッと手を離す。
「べ、別にイチャイチャなんてしてないよ」
「隠したって無駄だよ、絵里。俺達、ずーっと見てたんだから」
「ずーっとって…」
「校門を出てからずーっと。ね?小春ちゃん」
「はい!亀井先輩って意外とやきもちやきなんですね!」
「『しょうがないだろ、れいなが好きなんだから』だって。情熱的ー!」
こ、こいつら…。
- 576 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:04
-
「な、なんでさゆ達がいるんだよ?別に来る必要ないだろ?」
「俺達は委員会の先輩のお見送りに来たの」
「道重先輩って結構律儀ですよねー!小春、そういうとこ好きです!キャハ!」
なんなんだ、一体…。
「でも、亀井先輩ってカッコいいですよねー。1年の間でも結構人気あるんですよ!」
「へ?あ、まあ、へへ…痛っ!」
さっきまでの怒りをすっかり忘れて答えた僕の足をあいつが思いきり踏みつけた。
はいはい、わかってますよ。
だけど、あんなふうに言われたら気分いいじゃん、誰だって。
- 577 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:05
-
「こ、小春ちゃん、俺は?」
「もちろん、道重先輩の方が亀井先輩よりも100倍カッコいいし、100倍頼りになるし、
100倍大好きです!!」
「やっぱそうだよねー」
「はい!ミラクルです!!」
「うんうん、俺達、レインボーピンクだもんねー」
「こはっピンクー!」
「重ピンクー!」
さゆと小春ちゃんはそんなわけのわかんない会話をしながら、腕を組んで僕達の前から姿
を消した。
それにしても、恥ずかしいセリフを聞かれた上に、100倍劣ってると言われた僕って…。
「なんか、すごい…」
さすがのあいつも呆然としている。
そりゃそうだろう。
- 578 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:06
-
「でも、道重先輩ってもっと大人っぽいと思っとったけど、あんなところもあるっちゃね」
言われてみると確かに、小春ちゃんと付き合い始めてからさゆは変わったような気がする。
中学の頃から仲間内では一番しっかりしていて一番いろんな経験をしていて、僕達と一緒
にふざけ合ったりすることもあったけど、どことなく大人びている兄貴的存在だった。
僕自身、無意識のうちにさゆのことを頼りにしていたし、実際にさゆのアドバイスに助け
られたことが何度もある。
- 579 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:06
-
恋愛に関してもそうだ。
さゆの初めての彼女は、当時家庭教師をしていた女子大生。
その人と付き合ってる時のさゆは、着ている服も態度も雰囲気も何もかもが中学生離れして
いた。
今思うと、彼女に合わせて無理していたのかもしれない。
今のさゆはものすごく自然体だ。
いつでもどこでも、さっきみたいな感じで小春ちゃんとじゃれ合っている。
男子校生の言動としては問題があるように思うけど…。
でも、さゆを変えたのは間違いなく小春ちゃんで、二人は今すごく楽しいんだろうなって
思う。
そして。
- 580 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:07
-
「もう、絵里はすぐボーっとするけん」
僕も少しずつ変わってきている。
変えたのは間違いなくあいつ。
「な、なん?れいなの顔になんかついとう?」
「ん?なんでもないよ」
あいつの中でも何かが変わってきているのかな。
目の前のあいつは最近すごく女っぽくなっていて、ことあるごとにドキドキさせられる。
そんなふうに変えたのが僕だったらいいな。
心からそう思う。
「帰ろうか」
「うん」
そして、僕達は手を繋いで再び通学路を歩き始めた。
- 581 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:07
-
この数ヶ月はいろんなことがあった。
不良に絡まれたあいつを助けた日。
あの頃はまだ自分の気持ちに気付いてなくて、それでも背中に感じる温もりにドキドキした。
二度目に助けたのはクラスメイトに襲われそうになった時で、もう無我夢中で飛び込んだ。
兄ちゃんや高橋先輩と一緒に出掛けたり、藤本先輩に殴られそうになったり、さゆと小春
ちゃんのことでちょっとしたケンカになったり。
寝顔にドキドキしたり、長電話で寝不足になったり、嬉しいごほうびもらったり。
コンプレックスを吹き飛ばしてくれたのも、落ち込んだ僕を励ましてくれたのも、全部あいつ
だった。
なかなか上手く気持ちを伝えられなくて、不安にさせたこともあったなあ。
本当に密度の濃い数ヶ月だった。
だけどそれは、僕達が今まで一緒に過ごしてきた時間やこれから一緒に過ごすであろう時間に
比べれば、きっと一瞬の出来事なんだろう。
- 582 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:07
-
「絵里ー、喉乾いたとー」
はいはい、駅の自販機で買ってあげるから。
「絵里ー、お腹すいたとー」
はいはい、途中でファミレスでも入ろうね。
「えーりー」
まだ、あんの?
- 583 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:08
-
「…ずっとそばにおってね」
…そんな嬉しいワガママなら喜んで。
- 584 名前:第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ(後編) 投稿日:2006/02/20(月) 23:08
-
今の僕達に出来ることはこんなふうに手をつないで歩くことと、不器用なキスだけ。
だけど、ゆっくりと少しずつ、歩いていこう。
ずっとずっと一緒に歩いていこう。
僕は可愛いあいつの可愛いワガママに精一杯の笑顔でうなづいた。
- 585 名前: 投稿日:2006/02/20(月) 23:09
-
ワガママなあいつ 完
- 586 名前:demizo 投稿日:2006/02/20(月) 23:11
- 以上で「ワガママなあいつ」は完結です。
可愛い田中さんを書きたくて始めたので、それが伝わっていれば嬉しいです。
現在、雪板で「bluff」をいう話を書いています。
れなえりではないしこのスレとは違う雰囲気ですが、暇な時にでも覗いて頂ければ幸いです。
読んでくださった方、レスをくださった方、そして遅くなりましたが2005飼育大賞に投票して
くださった方、本当にありがとうございました。
- 587 名前:demizo 投稿日:2006/02/20(月) 23:14
- ワガママなあいつ
第1話 背中 >>3-16
第2話 寝顔 >>19-28,>>33-44
第3話 特別 >>48-58,>>64-75
第4話 噂 >>80-92
第5話 ワガママなあいつ >>98-106,>>114-130
第6話 恋のライバル >>172-192
第7話 寝不足の理由 >>230-241
第8話 冬の帰り道 >>282-302
第9話 ごほうび >>345-361
第10話 いつもと同じお正月 >>390-403
第11話 努力と涙 >>471-484
第12話 僕の好きなもの >>493-510
第13話 オレンジ色のキス >>519-534
第14話 可愛いあいつの可愛いワガママ >>543-558,>>565-584
- 588 名前:demizo 投稿日:2006/02/20(月) 23:14
- ワガママなあいつ
番外編 ヘタレな麻琴 >>197-206,>>210-225
番外編 屋上物語 〜俺と子犬と子猫と亀〜 >>410-423,>>429-450
短編(れなえり)
矢印の告白 >>152-167
友達と恋人の違い >>246-265
豆電球 >>307-323
短編(いしごま)
理解して! >>139-149
ほどよい距離感 >>269-277
ドライブ日和 >>327-338
短編(おがたか)
かなりイカれたPURE GIRL >>368-384
君の不満顔 >>459-466
- 589 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/21(火) 00:59
- 完結おめでとうございます。楽しかったです。
あまり見たことがない設定のれなえりで、とても新鮮でした。
それからここの麻琴と高橋さん、好きだったので、また番外編か
何かでお目にかかれると嬉しいです。
- 590 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/21(火) 03:12
- 完結おめでとうございます!
絵里が男の子という珍しい設定でしたが
リアルネタがたくさん散りばめられていたからか、すんなり入れました
絵里もれいなもすごく可愛くて
最初から最後までニヤニヤしっぱなしでした(笑)
本編も短編も楽しませていただきました
- 591 名前:駆け出し作者 投稿日:2006/02/21(火) 09:35
- 完結おめでとうございます。本当にお疲れ様でした。
最初、設定が面白くて読み始めたのですが、まさかここまではまり込むことになろうとは(汗
登場人物みんなが純粋で真っ直ぐで、まるで変化球の存在しない野球のような。それが逆に新鮮でした。
素晴らしいお話を読ませていただいて、ただただ感謝です。ありがとうございました。
- 592 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/28(火) 14:57
- お疲れ様でした。そして、完結おめでとうございます。
とても大好きな話でした。
ありがとうございます。
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