【春の歌】〜PartU〜
- 1 名前:なまっち 投稿日:2005/10/22(土) 01:03
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黄色の過去ログ内にある【麗しき"ナ"と、"ナシ"の華】の途中から始まっている中編【春の歌】の続きです。
下に沈んでます【春の歌】のスレの続きでもあります。
主な登場人物は、石川梨華さん、田中れいな、後藤真希さん、藤本美貴さん、亀井絵里、道重さゆみ、
高橋愛ちゃん、紺野あさ美ちゃん、この9人がメインです。
さぶキャラクター的なメンバーとして、安倍なつみさん、飯田圭織さん、加護亜依さん、辻希美さん、
嗣永桃子ちゃん、中澤裕子さん、吉澤ひとみさんの6人です。
アンリアルで、2005年のこのメンバーの春休みを描いています。
>>2-8にこれまでのあらすじを書きましたので、初めてこのすれを覗こうかなぁと思われました方は、
そちらで少しあらすじだけでも読んでやってください。
で、興味を覚えていただけましたら、過去ログにある【麗しき"ナ"と、"ナシ"の華】と、
下に沈んでいる【春の歌】を読んでやってください。
そして、このすれをヨロシクお願いいたします。
ちなみに【麗しき"ナ"と、"ナシ"の華】の中、一番最初には、
リアル系でりかれな…れなりか(?)(イシカワさん×れぃな)のろりえろ(?)が入ってます(ぉぃ
- 2 名前:【春の歌】 投稿日:2005/10/22(土) 01:03
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第1話。田中れいな
この春から高校生になるごく普通の女のコである田中れいなは、春休みが始まった日に、
街中でカッコいい女のヒトに声を掛けられた。
そのヒトの名前は、藤本美貴。
不審に思いつつも、カノジョの容姿に惹かれ、逃げずに話を聞いてしまったれいな。
そんな初対面の美貴の話の内容は、アルバイトの誘い。
それは、女の人とキスをするだけでお金を貰えるというとても簡単なアルバイトであった。
その誘いを安易に受けてしまったれいなだったが、そのときに1人のキレイな女性に出逢ってしまうこととなった。
そして、そのヒトとの出逢いが、れいなの運命を変えてしまったといっても過言ではなかった。
それは、一目惚れ。
そのヒトの名前は石川梨華。
本当であれば、ほんの1時間程度のコミュニケーションで終わるはずだったのだが、
このまま別れたくないと感じたれいなは、別れ際、梨華に対して衝動的な行動に出る。
そのれいなの行動に対して、梨華は…?
春休みが始まった初日の一日だった。(2005/3/22(火))
- 3 名前:【春の歌】 投稿日:2005/10/22(土) 01:04
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第2話。石川梨華
国民的アイドルである後藤真希のシンユウである石川梨華は、どこにでも普通にいる大学生であった。
普通にアルバイトをし、普通に大学に通っているごく普通の女のコ。
ただ、1つだけ"ある秘密"を持ちながら暮らしていた。
その秘密とは、アイドルである真希と同棲をしているということだった。
そして、真希のさらなる秘密に胸を痛ませながら生活もしていた。
2人が高校生の頃から真希の保護者のような存在となっている梨華が、
世間でいう春休みの一日に、ある1人の美少女と出逢った。
その美少女の名前は田中れいな。
成り行きから連絡を取り始めた梨華は、カノジョへの不思議な感情に疑問を感じながら、
バイト先に来たいと言ったれいなを自身のアルバイト先へと招いたのだが…?
梨華の生活と、不思議なアルバイト先の個性あるメンバーの登場と、
そして、大学生である梨華と、中学生であるれいな、5歳も年齢に差のある2人の関係はどのように…?
春休みが始まって3日後の一日だった。(2005/3/24(木))
- 4 名前:【春の歌】 投稿日:2005/10/22(土) 01:04
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第3話。姉妹
田中れいなのシンユウである道重さゆみと、カノジョが姉のように慕う亀井絵里は、
れいな同様ごく普通の中高生であった。
普通に学生生活をし、普通に春休みも過ごしていた。
そして、このまま差し当たりなく新学期を迎える予定だった。
そんな春休みのある1日。
2人の春休みが始まってすぐに寝込んでしまったさゆみは久しぶりに元気になり、
えりと一緒にれいなを遊びに誘ったのだが、やんわりと断られてしまった。
しかし、れいなの行動を不思議に思った2人は、カノジョの後をつけることに。
れいなを見た瞬間に、明らかにこれまでとは違うカノジョの様子にショックを受けつつも、後をつけ始めた2人。
すると、れいなはある不思議な場所へと足を踏み入れた。
ためらうことなく、同様に足を踏み入れるえりとさゆみ。
れいなの行動の真相を知った2人は、そこで出逢った個性あるヒトたちに惹かれ、
自然とれいなと行動を共にすることに。
3人の久しぶりの会話と、これからの3人、さらに、えりとさゆみのこれからの関係は…?
春休みが始まって7日後、ちょうど1週間後の一日だった。(2005/3/28(月))
- 5 名前:【春の歌】 投稿日:2005/10/22(土) 01:04
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第4話。お願い
石川梨華のアルバイト先の後輩である高橋愛は、アルバイトのある日に珍しく寝坊をしてしまった。
そのため、アルバイトの最中も少しテンションが低い愛だったが、さらに低いれいな。
そして、休んでしまったシンユウのあさ美に梨華。
少し不思議に思いつつも、普段通りに仕事をこなしていた愛だったが、テンションの低いれいなから、
カノジョたちが好きなアイドルである"後藤真希"のスキャンダルのウワサ話を聞いてしまった。
その話の内容にかなりショックを受けてしまったものの、
信憑性の低さに落ち着いた振る舞いをしようとする愛…
同じくとてもショックを受けてしまったあさ美もお昼から元気をとりもどし、アルバイト先に顔をみせると、
夕方には梨華も顔を見せた。
そんな梨華から、珍しく夜のご飯を誘われたアルバイト先の面々。
楽しく高級料理に舌鼓をうち、親交を深めるも、梨華から1つのお願いをされてしまった。
そして、その梨華からの"お願い"は、カノジョたちの春休みをいっぺんさせてしまうものであった。
その"お願い"とは…?
春休みが始まって10日後の一日だった。(2005/3/31(木))
- 6 名前:【春の歌】 投稿日:2005/10/22(土) 01:05
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第5話。かっとう
スキャンダルを生んでしまい、しばらくの間仕事に休みを貰えることになった真希。
一方、真希の保護者である梨華は、最近とくに精神的に不安定になっている真希を心配していた。
なんとかしてカノジョのストレスを取ってあげたいと感じていた梨華。
考えた挙句、梨華の考えたその解決方法とは、同年代の女のコと触れ合うコトだった。
そのため、近い内にカノジョを生まれて初めてアルバイト先に連れて行こうと考えたのだった。
しかし、そう思っていた矢先、真希が見てしまったインターネットでの自分を中傷する心許ない書き込みに、
カノジョがひどくココロを痛めてしまった姿を見て、すぐにでも連れて行くことを決心した梨華。
その話を聞いた真希は、昔から行きたかったコトもあり、素直に喜ぶも、
ココロの中ではどこか不安も。
それは、梨華へコイゴコロともいえる憧れを抱いている"れいな"の存在…
不安を持ちつつも、梨華のアルバイト先を訪れた真希は…?
そして、真希と、梨華のアルバイト先の女のコたちとの関係は…?
春休みが始まって11日後の一日だった。(2005/4/1(金))
- 7 名前:【春の歌】 投稿日:2005/10/22(土) 01:05
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第6話。ステキな関係
国民的なアイドルである亜依と希美は、毎日毎日忙しく働かされていた。
そんなときに聞いてしまったシンユウであり、ファンでもある真希のスキャンダルやウワサ話。
さらにこれまでの真希の仕事の状況からは考えられないくらいに長い休みを貰ったコトを聞き、
さらに不安を募らせ、ずっと真希のコトを心配をしていた2人。
名古屋での仕事を終え、東京に帰ってきた2人を車で出迎えてくれたのは、
2人が心配している真希のマネージャーでもある中澤裕子だった。
裕子との久しぶりの会話に、真希の様子を聞きたがった亜依と希美は、素直に"会いたい"と話す。
そんな2人の様子に、裕子はカノジョたちを真希に会わせることにすると、
真希のいる梨華たちのアルバイト先へと2人を連れて行ったのだった。
そこで出会った個性ある少女たち。
とても久しぶりに出会った同年代ともなる女のコたち。
そして、自分たち、亜依と希美と同じような関係であり、自分たちのファンである2人の女のコにも出会った。
そこでの少女たちとの関係は…?
また、真希との再会は…?
春休みが始まって14日後、ちょうど2週間後の一日だった。(2005/4/4(月))
- 8 名前:【春の歌】 投稿日:2005/10/22(土) 01:05
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第7話。距離
あさ美と愛の春休みに入ったときからの約束である"関西への少旅行"。
アルバイト先の面々は、そんな2人、あさ美と愛の提案から、春休みの想い出に、と、
全員で2泊3日の旅行に行くコトになった。
そして、それに同行するコトとなった真希、美貴。
さらに、カノジョたちに惹かれた亜依に希美も。
たった2泊3日の旅行だが、それでもキズナや距離を縮めるには十分。
そう、積極的に動き出したれいなとさゆみにとっては。
そして、さらにその2人によって少しずつキモチを動かされ始めた女のコたち。
その中でも一際強く動かされた女のコが2人。
カノジョたちの旅の中で得るモノの行方は…?
そして、このお話の結末へと繋がるモノの行方は…?
春休みが始まって15日後の一日は、カノジョたちの少しの間のオヤスミ。(2005/4/5(火))
- 9 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/10/22(土) 01:06
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7 〜
- 10 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:07
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神戸港に面しているハーバーランドの隣、向き合うようにしてメリケンパークと呼ばれている場所がある。
そして、その昔、メリケン波止場と呼ばれたそこには、神戸のシンボルといえる建築物があった。
とくに、夕方から夜にかけてライトアップされる瞬間が人気の建物が。
一つは、船の帆を広げたようなカタチ、波のカタチをイメージして作られた白い建物である、"神戸海洋博物館"。
神戸の港の開港120年を記念して建てられた博物館は、神戸の港の歴史を知ることが可能であり、
未来の海洋開発についても知ることができる、総合博物館である。
どちらかといえば、中を楽しむより、外からの景観が楽しまれる施設といえよう。
もう1つは、神戸海洋博物館の2階と遊歩道で繋がっている、
神戸のシンボルともいえる特徴的な鼓型をした高さ108mの真っ赤なタワー、"ポートタワー"である。
地上1階と2階には、お手軽に楽しめるカフェとレストラン。
3階には約20分で一周するスカイティールームがあり、その次の階は一気に最上階、
高さ108mの展望階へとなり、カップルや観光客、家族連れに人気のある場所である。
神戸港や神戸の街並み、六甲の山並みは当然のこと、大阪湾が一望できる場所。
天気がいい日となれば、関西国際空港までもが見渡せるそうだ。
- 11 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:07
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そして、ライトアップされた夜は、別の顔となる。
夜の真っ赤なタワーがよりライトアップされ、真紅の明るさを放っている美しさは、
数々の雑誌で紹介されるなど、神戸の街の代表的なイルミネーションといえよう。
また、タワーの最上階からは、神戸の街というイルミネーションが楽しめる場所にもなる。
カップルにとって、神戸の一千万ドルの夜景を、タワーの中と外から楽しめるポートタワーは、
重要なデートスポットのうちの1つである。
〜 ☆
- 12 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:07
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随分と太陽も傾き、太陽によって作られる自分たちの影は、ほとんど確認できなくなってしまっていた。
さすが1日中歩き続けた上に、テンションがずっと上がりっぱなしだったことに、
この時間になると疲れも感じ始めるもの。
えりの足取りも随分と鈍くなっていた。
そして、えりの前を、愛と一緒に歩いているさゆみも然り。
あまり疲れを見せていない愛の腕に、自分のそれを絡め、うんと体重を掛けているさゆみは、
随分と体力を使い切ってしまって、性格も開放されてしまっているのか、
愛に"おもぃ"と言われては、"女のコにそんなコト言っちゃいけませんっ"と砕けた口調で愛と遊んでいた。
昨日までの、まだまだ話し慣れない雰囲気とは正反対のそれ。
ただ、愛もまんざらではないのか、甘え上手のさゆみに、表情を緩ませっぱなしだった。
そして、さゆみ同様に、ヒトに甘えるのがスキな希美は、さゆみと愛の前を、美貴と一緒に並んで歩いていた。
ずっと美貴の腕に、ぴったりとしがみついている希美を鬱陶しがらずに構ってあげている美貴。
2人とも、えりやさゆみとは違い、まだまだ体力は残っているようだ。
美貴にいたっては、えりとさゆみが買ったモノを1つの袋にまとめ、持ってくれているくらいであるから。
そんな4人の後ろから、えりは憧れっぱなしだった亜依と一緒に海岸の防波堤沿いを歩いていた。
軽く手を握ってくれている隣の亜依に、どきどきしながら。
- 13 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:07
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6人は、お昼ご飯を食べた後、三宮のセンター街で軽くウィンドウショッピングを楽しみ通り抜け、
南京町で軽く食べると、メリケンパークをかすめるようにしてモザイクの方へと足を運んだ。
そして、愛の提案で、少し北にあった神戸スイーツハーバーで甘いものを堪能し、
モザイクの中で、残りの時間のほとんどを過ごしたのだ。
そののち、日が沈みはじめ、そろそろポートタワー、神戸の街並みがイルミネーションに輝き始めた頃、
隣にある、今日の最終目的地であるメリケンパークの方に足を運ぶ事にしたのだった。
その直前、6人揃って、モザイクの東の岸で、夕闇が迫る中、ポートタワーと隣の海洋博物館の白い建物が、
明かりでキレイにメイクアップされる瞬間を見たときは、さすがに感動すら覚えてしまうくらいのモノであった。
愛の話によると、神戸でも一位、二位を争うくらいに人気のある瞬間だそうだ。
徐々に灯り始める街のイルミネーションも素晴らしいが、一気に灯る"この瞬間"が。
実際に見てみると、大いに納得をしてしまうものであった。
- 14 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:08
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そして、携帯で写真をたくさん撮り、満足をしてから、
モザイクの一番北東の出口から、長いスロープをつたい岸に下りたえりたち。
次の瞬間には、その景観にも小さく声を挙げてしまったのだ。
目の前に見える、灯され始めた高速道路の街灯が、長い曲線を描いている様子。
その曲線の下に見える、大きな船の帆を広げたような白い建物が、
まるで大きな海原で泳いでいるかのような景色。
濃い黄色い中、神戸の夜景は、まだまだ本番前なのに。
海岸沿いを歩きながら、右手の対岸に見えるそれらの景色に、めいめいがココロをうっとりとさせていた。
- 15 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:08
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「きれぃですよねぇ…」
徐々に近付くポートタワーを目に、隣で手を繋いでくれている亜依に声を掛けたえり。
少々しんみりと。
目の前の景色を楽しむ大人の女性を意識して。
そして、隣の亜依に"あそばれるコト"を意識して。
「…」
ところが、やはり思い通りにはいかないもの。
「えりの方がキレイだょ」
「…!?」
その亜依の言葉を聞いた瞬間、思ってもいなかった言葉に、思わずぽかんと口を開けてしまったえり。
普段、最近は特に"あそばれるコト"に慣れ始めていた人間にとって、これだけ"甘い言葉"を発せられると、
そのときの対応の仕方というは分からなくなってしまうもの。
しかも、亜依の表情はやたらをマジメで、しっかりとえりの目を見て。
思わず目を逸らしてしまいそうになったくらいなのだから。
- 16 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:08
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かっと頭に血が昇ると、"ぇっとぇっと…"としか口を動かせなかった。
そして、ぱたぱたと手で風を作り、顔を煽って熱を取ろうと奮闘。
そんなえりをみて、隣の亜依が声に出して笑いはじめた。
いたずらっコのように、にくたらしい、いや愛らしい表情で、手を叩いて。
「…」
しばし考え、やっとからかわれていたコトに気がついたえりは、"もぉ"と声を出し、
少しほっぺを膨らませて抗議するも、亜依にその膨らみを突付かれ空気を抜かれる。
空気の抜ける可笑しな音が聞えると、2人して声に出して笑っていた。
- 17 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:08
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ひとしきり笑い終えると、亜依が少々真剣な口調で"よかったぁ"と言葉を口にした。
その言葉に、少し首をかしげるえり。
そんなえりの手を握ると、少し離れてしまった前のさゆみたちに追いつくために、歩みを速める。
そして、小さく呟いた。
「ご機嫌ナナメ…ゃン…」
亜依の言葉に、えりはさらに不思議そうな表情を浮かべると、視線を斜め上、しばし考える。
「そんなコト、なぃですよ?」
さも当然といったえりの口調に、亜依は面白そうに含み笑いを浮かべた。
さらに手を前後にぶんぶん振る。
えりも合わせて振る。
- 18 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:09
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前を歩いていたさゆみたちとの距離が数メートルまで近付き、右側に見えていたポートタワーが、
すぐ右前に見えてくると、再び歩みを緩める。
そして、優しげに黒目がちの目を細め、えりの方を見た。
「みきちゃんってコはぁ…気に入ったコにはナ…構ってあげたぃコなンゃぁ」
思わず手の動きをとめ、亜依の優しげな表情を見つめる。
一瞬、言っている意味を理解できなかったえりだったが、しっかり考えると、
"やっぱり"と呆れた表情を浮かべていた。
呆れた表情というのは、自分の態度がばればれというコト。
今日に関しては、あまり雰囲気を壊したくないと考えていたコトもあり、
自分として"嫉妬"の態度を出さないようにしていたからだ。
とくに昨日出会ったばかりである亜依や希美にばれないように。
それなのに、簡単にばれてしまっている、今。
- 19 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:09
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「んでなぁ、構って欲しぃコなンゃぁ」
ただ、その亜依の口から発せられる言葉に、その興味は完全に違うモノへとなっていた。
そう、美貴の違った一面を知り、自然と驚きの表情を浮かべていたえり。
一方、えりからすっと視線を逸らすと、前を希美と歩いている美貴を見る亜依。
「みきちゃんカッコいいし…アヤシイ趣味もっとぉけど…あんま心配せんで…ぇぇょ」
何も言えないえりは、ただ亜依の横顔を見つめるだけだった。
その自分より幼げで、とても愛らしいカノジョを。
「つっぱってるけど…とびっきりの寂しがりヤさんゃねン」
その言葉に、えりも美貴の方に視線を向けた。
「ただ、寂しいだけ…」
美貴が寂しがりヤというのは、普段のカノジョを見ていると、想像できないコトであった。
いつも強気で、ときどき冷めている表情を見せ、
ヒトとのコミュニケーションにそれほど興味を持っているように思えなかったから。
- 20 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:09
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「ヒトの優しさに飢えてる女のコ…」
そして、その言葉は、とてもオトナの言葉。
亜依の口から聞えてくるというのは、少々違和感を感じてしまう言葉。
詩人のような言葉。
気恥ずかしさを感じてしまう言葉。
本当に自分と1年しか年齢が違わないのか、と思ってしまうくらいの言葉。
でも、亜依だから…カノジョの口から聞えてくる言葉だから…
そんなえりのキモチを知ってか、亜依は少しだけ顔を向けると、にっこりと微笑んだ。
とても大人びた笑顔。
- 21 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:10
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その笑顔に、さっきの詩人のような言葉が亜依から聞えてきたことに対して違和感を感じてしまったコトは、
今は少しも気になるコトではなくなった。
むしろ、"こんな亜依"の口から出てきた言葉だけに、やけに説得力のあるそれ。
そして、それは、"美貴の新たな一面"。
その一面に、驚きを隠せなかったえりだったが、その亜依の言葉に、少し安心感を覚えたのは確実だった。
ずっと感じていたさゆみを取られてしまう不安。
美貴とお互いに名前を知り合う前に、渋谷の街で声を掛けられ、出会ったときから感じていた不安。
さゆみと美貴の年の差に安心していたけど、それでも感じていた不安を。
それらが和らぎ、少し自分も美貴に"甘えてみようかなぁ"とも思いつつあったえりであった。
"きもぃ"って遊ばれても。
- 22 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:10
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「ぅちが抱きついて熱いクチヅケあげると、飛び上がって喜ぶンゃでぇ」
「…」
ある意味事実のコトのようにも思え、ある意味冗談を言っているように思える今の亜依の言葉。
少し素直に亜依の話を聞いていたえりにとって、その真偽を図る術は持ち合わせていなかったこともあり、
"そぉなんですかぁ"と、いつの間にか自然と流してしまっていた。
そして、亜依のご機嫌をそこねてしまったのは、空気の読めないえりには気付かない事実であった。
〜 ☆
- 23 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:10
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ポートタワーの展望室から眺める景色は、これまでの疲れを完全に忘れさせてくれるくらいのモノであった。
"神戸の街が宝石に例えられている"
その言葉があながちウソではないように思える今。
六甲山にむかって明かりがぐっと伸び上がり、その後ろに見える本当の星。
大きな粒のような光の後ろに、輝く小さな光。
そう、東京の都心ではまず見るコトのできない星々が、神戸のイルミネーションに花を添えるカタチで瞬いている。
少し都心から外れた場所に住んでいるえり、さゆみや亜依とは違い、
東京駅の周辺に住んでいる美貴、もしくは神奈川県との県境に近い場所に住んでいる愛にいたっては、
お互い地方から出てきてから、ここ数年は見ることすらなかった星である。
ただ、2人とも福井と、北海道の出身であるため、随分と懐かしさを感じられるモノでもあった。
そして、高速道路の明かりが川のように連なっていた。
川の上に輝いている大粒の宝石と、その上に降り注いでいる小さな宝石。
思わず見入ってしまうそれらの景観。
眺めているヒトにとって、自然と、表情が柔らかくなるものであった。
- 24 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:10
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しばし、美貴のそばで、その景色に酔っていた愛は、携帯がバイブレーションで揺れるコトに気がついた。
少し邪魔をされたコトに、むっとなるも、携帯の画面に現れた名前に、表情がさらに緩んだ。
そして、携帯を開くと、少々申し訳ない程度の声で電話に出る。
「はぃはぃ〜」
『ゃっほぉ〜あぃちゃん』
いつもの明るくて、ほんわかしたあさ美の口調に、笑顔を浮かべる。
「こんちゃん?」
隣の美貴の言葉に大きく頷く愛。
その愛の耳元では、桃子の騒がしい声が聞えていた。
さらに後ろでは、桃子をたしなめるなつみの声。
真希と梨華、れいなの楽しそうな会話。
自然と嬉しくなってしまうカノジョたちの声。
- 25 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:11
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「あべさんたちも一緒なン?」
『そ、出会ってさぁ〜』
「へぇ〜」
『そうそう、それよりぃ』
愛は"なにぃ?"と言うと、窓際から離れ、近くのベンチに腰を掛けた。
その視線の先には、えりと亜依が恋人同士のように寄り添い、そして楽しげに話している様子が目に入ってきた。
隣では、さゆみと希美、そして愛という相方をなくした美貴が合流している様子も。
『これから三宮の駅の近くで晩御飯を食べるんだってさっ』
「ぁ、そなン?」
『そぉ、し・か・も…』
今にも"はーと"をつけんばかりに、勿体つけるかのようなあさ美の口調に、声を出して笑い、
"早く言ぃゃ"とばかりにクチビルを突き出す。
「なんょぉ」
『さいこうきゅうのぉーこうべぎゅうぅ』
「ぇ゛ぇ?ホンマなン?」
あさ美の言葉に、思わず大きく声をあげてしまった愛。
そして、ヒトの視線を集め、気恥ずかしさを覚えてしまうと、背中を小さくさせ、再び美貴の元へと戻った。
ほっぺを真っ赤にさせ。
- 26 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:12
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そのまま、周りにいる仲間にさっきのあさ美の言葉を告げた。
すると、その言葉に小さく悲鳴をあげる面々。
目を輝かせると、その"言葉"、"響き"だけで空腹感を感じてしまったようだ。
もちろん、一番取り乱したのは、希美なのは言うまでもない。
そんなカノジョたちは、あと10分だけ夜景に酔ったあと、
今度は料理に酔うためにメリケンパークを離れることにした。
- 27 名前:7 〜 投稿日:2005/10/22(土) 01:12
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〜 ☆
- 28 名前:なまっち 投稿日:2005/10/22(土) 01:14
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更新以上です。
だらだらとしたお話ですが、これからもヨロシクお願いします。
それでは、失礼します。
- 29 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/10/23(日) 22:35
- 更新お疲れ様です。
そして新スレおめでとうございます。
なんだか色々な事が起きそうで楽しみです。
次回更新待ってます。
- 30 名前:初心者 投稿日:2005/10/24(月) 17:20
- 新スレおめ&更新お疲れさまです
これから夜は長いのかな?
更新楽しみにしてます
- 31 名前:なまっち 投稿日:2005/10/26(水) 22:32
- あっさりと終わっちゃたなぁ…
あれだけ強かったのに、やっぱり公式戦が終わってからの休みが長いですよね…
はぁ…
来年は(ふれぇ
>>29 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
新すれでもよろしくお願いいたします。
えぇ、のんびりと進めていたので、これからはいろいろと起こしていきたいですよね…(?(ぉぃ
>>30 初心者さん
ありがとうございます^^
これから夜は…むふふ…(?
と、おもわせぶりつつ、新すれでもよろしくお願いいたします^^
- 32 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/10/26(水) 22:33
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8 〜
- 33 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:33
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神戸を代表する食べ物のうちの1つ、神戸牛。
その発祥は、神戸の開港前、旧居留地に住み始めた外国人が始めて調理し始め、
そして食べ始めたコトから始まったそうだ。
それ以前、日本では牛肉といえば薬用として使用されていたのだが、
それをキッカケに今では神戸、いや日本でも有数の牛肉のブランドへと成長したのだった。
また、神戸牛という名称から、神戸で生まれ育てられたものとして勘違いしやすいが、
実際には、兵庫県の北、但馬牛の最高級の上質な肉に与えられる称号である。
一度口に放り込むと、ジューシーで旨みが凝縮された肉質とその味わい、
全てのヒトの舌を満足させてくれるものであろう。
一度は食してみたいものである。
〜 ☆
- 34 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:34
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街が完全に電飾に覆われ、小春日和のように柔らかい温かさを感じていた外気から、
少し肌寒さを感じるそれに変わった頃だった。
13人は三宮の駅のほんのすぐ南、大道芸人のヒトがピエロの物マネでヒトの目を楽しませたり、
外国のヒトが古風な楽器を手に演奏をしてヒトの耳を楽しませたり、と、
ショッピング以外でも楽しめる場所でもある、センター街の入り口で合流をしたのだった。
たった数時間だけだったけど、随分と久しぶりにも思える再会。
しばし、話に花を咲かせる面々がいる一方、なつみと圭織、梨華、関西に詳しい愛は、これからのコトを相談。
そして、当初は、とりあえずホテルに一度戻ってチェックインを済ませてから晩御飯を食べに行く予定だったのだが、
やはり一度戻るだけでも、それだけ時間は掛かるものだし、一旦ホテルの中に入ってしまうと、
しばらくはそのまま"疲れ"から動けなくなってしまいそうであり、さらにホテルに立ち寄るだけでも、
その後に予定していた"夜景を見る"というプランにまで支障をきたしてしまう可能性もあることから、
直接晩御飯を食べることにしたのだった。
少しみんなの手をふさいでいる荷物が気になるといえば気になるのだが。
ま、そうは言っても、余りにも重過ぎる荷物というモノはなく、
さらに、ある程度分担して持っているというコトから、そこまで気にするモノでもなかったのだ。
- 35 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:34
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そして、三宮の駅を通り抜け、列車の高架に沿って西に向け歩くなつみたち。
カノジョたちの足取りは、疲れた様子をみせず、これから自分たちのお腹に入れるモノを想像し、
むしろその表情はゆるみっぱなしである。
先程までの少し疲れを見せていたモノとはまた違ったその様子。
"その"場所に近付けば近付く程、減っていく"疲れ"。
女のコにとって、食べ物の力とは、不思議なもの。
そんなカノジョたちの先頭を歩くのは、なつみと圭織、桃子。
ショップの店員のお姉さんに聞いて記したメモを片手に、きょろきょろと見回しながら歩くなつみの隣で、
圭織と桃子がまるで親子のように仲良く手を繋ぎ、歩いていた。
その後ろに続くのは、愛とあさ美。
今日立ち寄った場所、買ったものなどを、合流してからずっと2人で話しっぱなしであった。
一緒に行動できるのに、行動を共にしなかったことは初めてだったこともあるのだろうか、
その様子はまるで、ずっと離れ離れだった恋人同士が久しぶりに会い、
話したいコトがたくさんあり、ずっと寄り添い話し合っている、そのもののようにも見える。
- 36 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:34
-
恋人同士のように楽しげに話している2人の後ろには、亜依とえり。
まだ出会って間もなかったことも考慮すると、今日一番距離が縮まった2人といっても過言ではない2人だ。
年齢も亜依にとって近く、同じ年に生まれた女のコということもあるのだろうか、
たった一日だけで、"慕うモノ"と"慕われるモノ"という垣根が取れてしまったくらいに、
随分と楽しげな様子が垣間見れていた。
その2人の後ろに続いて歩いているのは真希と梨華。
今日はずっと行動を共にしていたものの、一緒に並んで歩いたコトも少なかった2人は、
久しぶりに2人の時間を楽しんでいるかのように、まったりとした表情で話していた。
ときどきショップのウィンドウの中に飾られている服を見ては、2人して立ち止まり、
後ろを歩いている希美と美貴に押されたりを繰り返している姿は、普段のオトナの立ち振る舞いより、
むしろ前を歩く亜依やえりと遜色がないくらいにコドモ。
そして、最後に歩くのは、れいなとさゆみだった。
少し前との距離が開いている様子は、わざとなのだろうか。
2人はこそこそとナイショ話をするかのように寄り添い、歩いていた。
前と離れず、近付かず。
時々前に視線を持っていっては、少し早める足。
時刻は19時を指そうとしていた。
〜 ☆
- 37 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:35
-
「そうなの?」
れいなの言葉に少し驚いてしまったさゆみは、思わず大きな声を出してしまった。
はっと気がついたときには、れいなに人差し指を立てられ、"しぃ"とクチビルに近づけられていた。
そして、れいなは、"気付かれてないかな?"と前に視線を向け、誰もこっちを振り向いていないコトを確認すると、
その指を下ろした。
とは言っても、これ程の距離と、繁華街の雑踏。
最初から誰かに聞かれるかどうかの不安のための行動ではなく、
ただただナイショにしたい話を口にするときにしてしまう、無意識の行動であろう。
小さなコドモがする愛らしい仕草。
それでも、律儀なさゆみは、さらにもう一段階声を落とす。
「ふたりっきりで?」
そのさゆみの言葉に、れいなは小さく頷く。
「ぅん…」
そのまま、さゆみがこれまで見たことがないくらいに、ほほを赤く染めたれいな。
次の瞬間には、恥ずかしさか、テレ隠しのためなのか、さゆみに腕を絡めてきた。
その仕草は、普段のれいなからは想像できないくらいに女のコ的なモノ。
それは、とても新鮮なカノジョの仕草。
- 38 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:35
-
そして、そんなれいなの今の姿は、ココ最近、梨華の前だけで見せている、とても素直な女のコだった。
さゆみやえりの前では見せないその姿。
そのれいなの姿に、梨華に対してだけ見せている"カノジョ"があるコトを改めて感じ取り、
一瞬だけ寂しさを覚えてしまったものの、次の瞬間には、その寂しさも消え、別の感情も。
そう、嬉しさ。
れいなのとてもシアワセそうな様子に。
シンユウのれいながシアワセなら、さゆみもシアワセな気分を味わえるもの。
だから、たとえ、さゆみが見たことがない"れいな"を梨華だけに見せていても、
それはそれで構わないじゃない、とキモチも簡単に切り替えられたのだった。
ただ、1つ、1つだけ悩みも。
それは、"愛の鍵"。
今もさゆみの左のぽっけの中でタイセツに仕舞われている"鍵"。
- 39 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:35
-
れいなのコトを思い、買った"それ"だったが、おそらく、この鍵をカノジョに渡してしまうと、
れいなはさゆみたちと行動を共にするコトになるだろう。
そうなると、れいなは梨華とふたりっきりのタイセツな時間を、
ステキな景色の中、感じるコトが出来なくなってしまう。
そりゃ、夜景を自分たちと一緒に見に行っても、れいなは梨華のそばにいて、
それはそれでステキな時間を過ごせるとは思うものの、やはり、ふたりっきりの方がいいだろう。
「そっか…」
さゆみは一度ぽっけの中"鍵"を握り締めると、そのまま自分のココロの中へとしまった。
そして、にっこりと笑顔。
「よかったねっ」
「うんっ」
さゆみの言葉に、大きく頷いたれいなは、これまで以上にさゆみにカラダを近づけたのだった。
〜 ☆
- 40 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:36
-
若干薄暗い店内には、神戸牛の専門店らしく数々の特許証や賞状などが飾られていた。
どれを見ても、素人であるさゆみには分からないモノなのだが、
専門分野のヒトから見たらすごいものなのだろう。
店内の雰囲気だけでも、他のお店と比べたら全然違うものに感じられたのだから。
ただ、和牛のお店というものは、それほどヒトを拒絶する雰囲気を持ち合わせていないのだろうか、
前回梨華がアルバイト先の面々を誘ってくれた高級店に比べると、断然入りやすい雰囲気をしているのだ。
しかし、そんな笑顔の面々の中、ただ1人、さゆみの隣にいるれいなだけは別なようだった。
少し緊張した面持ちで、だんまりで座っている。
いや、"緊張"の意味が違うのだ。
れいなの緊張の対象は、むしろ、いや当然なのだろうか、食べ終えてからのモザイクでの梨華との"デート"、
"初デート"と言ってもいいイベントの方が気になるのだろう。
そう、普段から"肉"とつくものに目のないれいな。
焼肉を食べる前ともなると、戦闘態勢とばかりに気合をいれて挑んでいるカノジョが、
今はただただ考え込んでいるのだ。
さゆみとは反対、個室の入り口に近いれいなのさらに向こう側、
一番入り口に近い場所に座っているえりがとても手持ち無沙汰にしている。
そして、ときどき向かい側に座っている愛とあさ美の話に入り込み、少し空気を微妙に冷ましてから、
1人寂しくれいなを突付いたり遊んでいるえりが、少し可哀相にも思える今。
- 41 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:36
-
さゆみは、先程まで話していた美貴の興味が、並べ始められた飲み物や、ユッケ、馬刺しに移り始め、
さらに隣にいるもう1人の食べ物に目のない希美、亜依と一緒に"お皿の位置の取り合い"を始めると、
少し笑顔でコドモのような美貴を見つめてから、シンユウのれいなの方にカラダを寄せた。
少しれいなの緊張をほぐしてあげよう、れいなの相談に乗ってあげよう、と。
「なン?」
肩を触れさせる距離になると、声をめいいっぱい小さくした。
「夜のコト、考えてるの?」
さゆみの言葉に、小さく頷くれいな。
そのままグラスをくるくる回すと、氷をグラスの壁面に当て、がちゃがちゃと遊ぶ。
「夜景見るだけ?」
今度は小さく"ぅ〜ん"と唸ると、さらに考え込んでしまったようだ。
と、そのとき、れいなの向こう側にいたえりも、さゆみと挟むようにして、れいなにカラダを寄せてきた。
「なぁン?」
そして、にっこりと切れ長の目を細めると、自信満々の笑顔を浮かべる。
- 42 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:36
-
「れぃなは、2人っきりで出かけて、イシカヮさんが楽しんでくれるかどうかを心配してるんでしょ?」
えりの言葉に、れいなは、一瞬驚きの表情を浮かべると、
次にはさゆみの方を向いて"話したト?"と少々怖い表情と声を作る。
「…」
「がぅょ。見てたら明らかに分かるじゃん、ねぇ?」
えりの言葉に、れいなはふっと表情を緩めた。
さゆみの気まずそうな表情と、えりのイモウトを庇う様子から、明らかにさゆみがえりに話したコトは分かったが、
もともと別に聞かれたくない話でもなかったし、いずれは知られるコトでもあったのだから、
特別にさゆみを責めるつもりの言葉ではなかったのだ。
冗談での口調。
さゆみもえりも、れいなの笑顔に表情を緩めると、シンユウへアドバイスをするために、
さらにカラダをサンドウィッチさせたのだった。
「あっちぃょ」
〜 ☆
- 43 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:36
-
「ごとぉさんと、距離、縮まった?」
自分の左手側に座っている愛からの突然の囁くような言葉。
そして、その内容に少しほほを引き攣らせたあさ美。
そのまま視線を目の前のユッケから、右手側に座っている桃子、
さらに、その桃子の隣に座っている真希へと向けた。
数秒だけ、とてもステキな憧れのヒトの横顔を見つめたのちに、先程自分に問いかけられた質問に答えるために、
再び視線を、ユッケを通り越し、馬刺しを通り越し、生野菜を通り過ぎ、シンユウへと。
途中、自分たちの前に座っているれいなをサンドウィッチしているさゆみとえりの姿を見かけ、
お互いに似た内容のコトを話しているようにも感じ、少し苦笑いを浮かべるあさ美。
おそらく、今日の夜、憧れの"あのヒト"と同じ部屋で寝泊りをするがちがちに固まっているシンユウのために、
両側で挟み込んでいる2人が色々とアドバイスをしてあげているのだろう。
そんなれいなに少々羨ましさも。
- 44 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:37
-
そうなのだ。
どちらかと言えば、"あちらさん"の方が断然進展していると言えよう。
今日だけでも、遠くから見てて、すごい距離が縮まっているように思えたのだ。
これまで見たコトがなかった、手を一緒に繋いでいる光景。
カラダの距離をうんと縮めて、笑いあっている光景。
今までの、完全に"憧れのヒト"といった様子で、がちがちに背筋をぴんと伸ばして、あごを引いて、
敬語のみといった関係ではなくなっていたのだ。
今日、機会があれば、何回も2人だけの時間を作ろうと奮闘していたカノジョ。
素直に、すごいとは思えたあさ美だった。
それに引き換え自分は…
とても優しく接してくれて、楽しげに話してくれる真希なのに、その笑顔に自分の意志とは反対に、
心臓はどきどきしっぱなしで、ほとんど自分からは何もアピールすることなく、
ただ一緒に行動をしていただけなのだ。
むしろ、桃子が随分と真希との距離を縮めてしまったくらいであった。
時間さえあれば手を繋いでもらったり、と、あさ美が真希に対して"して欲しい"と願っていたコトを、
さも簡単にやってのけてしまったのだ。
それには、悔しさも。
- 45 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:37
-
いや、そもそも考えてみれば、今日一緒にあさ美がいた人物は、"後藤真希"なのだ。
"あの"後藤真希である。
これまでの自分から考えてみれば、到底理解の出来るコトのない出来事である。
カノジョに憧れ、追いかけ、カノジョの言動に一喜一憂させていた自分が。
こうやって一緒に、同じ時間を共有できているコトが。
プリクラを撮るなんてコトが。
真希の隣に立っていたコトが。
真希のプライベートな素に近い姿を見ているコトが。
それらは、他のファンのヒトが聞いたら、泣いちゃいそうなコト。
それに、万が一自分が真希と手を握って歩いたりしようものなら…
おそらく数日は頭の思考がついていかなくなって、余計に真希に対して失礼なコトをしてしまいそうだし。
週刊誌に撮られちゃったり、ファンのコが見て、インターネットで変なウワサをたてられたり。
それはそれで、少し優越感に浸ったり…
まぁ、女のコだから大丈夫だろうが。
そう、真希は自分だけのモノになってはいけないのでは?
いやいや、その考え自体、"なれる"くらいに自分のレベルが高いコトが大前提となるのだが。
「ぅ〜ん…」
思わず唸ってしまったのは、少し思考の飛んでいるあさ美。
- 46 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:37
-
「ン?」
「ぅ〜ん…」
あさ美のその表情は、とても中途半端なものであり、収穫はあったような、ないような、
どちらかといえば、あさ美がそれほど落ち込んでいないコトから、悪くはないのだろう、と、
しかし、"そんなこと以前"のコトを考えているようにも思えるカノジョの表情。
愛も"ぅ〜ん"と唸る。
「あんま、進展なかったン?」
「ぅ〜ん…」
"何度目だよっ!"って思わずツッコミたくなった愛だったが、
さすがにあさ美の表情がどんどん落ち込んでいるようにも思え、少しカラダを近づけた。
このままこっちから聞いてても埒があかない、と。
思い切って、鋭く切り込む。
「嫌われるようなコト…した?」
「…ぇ?」
- 47 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:38
-
一瞬、理解できないといった表情をしたあさ美だったが、次の瞬間には、
"絶対にそんなことはしないっ"と思いっ切りぶんぶんと首を横に振った。
「そんなコトあったら、わたし生きてけなぃょ」
「おぉげさな…」
少し苦笑いを浮かべる。
しかし、"今のあさ美"は普段のカノジョのようにも思え、そして、特別悪いコトがあったわけでもないことが、
安易に想像でき、少しほっと胸を撫で下ろした愛だった。
〜 ☆
- 48 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:38
-
「今日の夜…?」
先程まで桃子と話していた真希が、自分の方に一瞬だけ視線を向け、聞いてきた。
いや、"聞いてきた"というか、主語のない言葉で、語尾を上げ、何かしら聞いてきたように梨華は認識をした。
しかし、当の真希本人は、そのまま、目の前で目をキラキラ輝かせている希美と亜依という2人のイモウトと、
普段から考えられないくらいに食べ物に目をとろけさせている美貴の姿を、優しげに見つめている。
そして、その左隣で固まり、なにやら相談している3人のイモウトの候補ともいえる女のコにも、
嬉しそうに視線を向けた。
同様に、自然と笑顔を浮かんだ梨華も、真希の問いかけに答える。
「ん〜?
どーしたの?」
そこでやっと真希が自分の方に向いてくれると、梨華も、視線を、固まっていた3人、
その真ん中にいた愛らしい少女から、"そのカノジョ"に似た"自分のタイセツなコドモ"に向けた。
「なっちたちと、夜景、見に行くの?」
真希の言葉に、少し胸をドキリとさせる。
そして、しばし考え込む。
- 49 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:38
-
別に隠すコトでもないし、いずれ知られるコトでもあるのだから、素直に話してもいいのだが、
それでも、ためらってしまった梨華。
やはり、それはどこかで罪悪感があるのかもしれない。
れいなと2人っきりで出かけるコトに。
いや、普通に出かけるだけなら、それは別におかしくとも、怪しいコトもなく、
ただ可愛いイモウトと一緒に出かけるだけなのだが、
行く場所、行く時間、そして、一緒に行くという"デート"とも言える"お出かけ"に、
少し胸をどきどきさせてしまっている自分の"キモチ"、"それら"にだろう。
ただ、そんなどきどきさせている梨華だったが、"それ"には1つだけ矛盾が。
- 50 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:39
-
それは、最近では、ココロの中では、れいなを恋愛の対象として見てはいけないのでは、
と思い始めていた梨華。
そう、これまでれいなと一緒にアルバイト、そして接してきてから、当初れいなと出逢ったときに感じた感情から、
少し変わっていきようにも感じられたのだ。
出逢った当初、いや梨華がカノジョを初めて見たときは、年相応、もしくはある程度大人びて見えていて、
年齢を聞いて初めて、"まだ中学生"ということに驚きを隠せなかったくらいだったのだ。
しかし、れいなと接している内に、カノジョがとても幼いように感じてしまっていた。
カノジョの態度は、まるで、中学生になったばかりの女のコが、オトナのヒトと話すときに、
緊張のあまり顔を真っ赤にさせ、がちがちに固まったまま話しかけてくるかのようなものだったのだ。
返事はしっかりしているものの。
そのれいなの様子から、最初の頃は自分に対しての"コイゴコロ"を抱いているかのように感じていたのだが、
今では、ただの"憧れ"のようにも感じてしまった梨華であった。
そして、梨華が想像しているれいなの感情によって、梨華の感情も変わっていた。
最近では、とても可愛いイモウトのように感じられてしまっていたのだった。
そのことから考えると、今日の夜に一緒にモザイクに出かけるという行為自体も、
イモウトとのお出かけと思ってもいいコト。
ところが、実際には胸をどきどきさせてしまっている自分がいた。
矛盾。
- 51 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:39
-
しかし、そんな自分に気付いているからこそ、"れいなと一緒に夜景をみる"と、
素直に真希に話すコトにためらっているのかもしれない。
そう、この前に見せた、真希の"嫉妬"という感情を考慮すると。
「えっと…」
「田中ちゃんと?」
ところが、梨華の感情を知らずか、それとも全然気にしてないのか、真希はさも当然といった口ぶりで、
梨華の中での葛藤の相手の名前を口にしてきた。
「ぇ…」
真希の言葉に、思わず小さく声を零す。
そのまま、あたふたとカラダの向きを真希の方へ。
「知ってたの?」
「ばればれだしぃ」
そう言うと、ふにゃっと表情を崩した真希。
そして、目の前のグラスを持ち上げ、梨華の目の前でゆらゆらと揺らす。
- 52 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:39
-
「…?」
「なっちたちと行くって、肯定しなきゃ、行かないに決まってんじゃん」
思わず納得。
「そっか…」
「まぁ、楽しんじゃってきなー」
真希のそののんびりした口調に、ほっと胸を撫で下ろすも、
目の前で相変わらずグラスを揺らしている真希を不思議そうに見つめた。
「…?」
「ゆらりぃ♪ゆらりぃ♪揺れる〜♪想ぃは〜♪」
「ごっちん、そんな曲歌ってたっけ…?」
〜 ☆
- 53 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:39
-
個室の一番奥、梨華の右隣に座っているなつみが、美貴と、目の前に座っている圭織に促されて立ち上がった。
全員の視線が集まると、照れくさそうに一回頭をかき、"ぇ〜っと"と声を出す。
「今回は…コンノとたかぁしからの提案から、このような機会をもてて嬉しく思ってます。」
「堅っ」
美貴の言葉に、一瞬表情を情けなく崩すも、気を取り直すと"えへん"と1つ。
「まぁ、なっちも誘ってくれたようなものだしぃ」
"最初は誘ってくれなかった"コトを暗に非難するかのような言葉に、
少し気まずそうに表情をしかめるあさ美と愛。
そんな2人を優しげに視線を向けると、その前に座っている3人の方も優しげに見つめた。
- 54 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:40
-
「新しいコも増えてくれたコトだしね」
「頑張ってよねぇ」
圭織の言葉に、一様に視線を絡ませると、少し照れくさそうに頷くれいな、えりとさゆみの3人。
そして、なつみはその3人の隣に座っている亜依と希美、自分のすぐ隣に座っている梨華の隣に座っている真希、
めいめいを見つめ、"とてもステキなお客さまも来てくれたし"と笑顔を零した。
「まぁ、こんな挨拶はいらないと思うけど。
とにかく、いっぱい増えた"メンバー"たちとの距離を縮めちゃって下さい、と」
そう言うと、グラスを持ち上げたなつみ。
そして、小さな部屋に、女のコたちの明るい声が響いた。
〜 ☆
- 55 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:40
-
やはり本場の神戸牛は、これまで食べたものとは比較ができないくらいのものであった。
口の中にいれても、とても柔らかく、すぐにとろけてしまうと言っても過言ではないくらいの食感。
とてもシアワセそうに口の中に頬張っているその間だけは、さすがに口を動かすとは言っても、
"おぃしぃ"という言葉を発するときだけに使われたのだった。
そして、思う存分に食べるコトを1時間半近く楽しんだカノジョたち。
おなかが満足感でいっぱいになると、興味の対象が、これまでの食べ物から、
自然と、その後の行動へと移っていた。
「ヴィーナス・ヴリッジ…だっけ?」
なつみは、ふと思い出したかのように、入り口に近い場所で随分と満足気にくつろいでいる愛の方を見やった。
そう、ご飯も一段落、デザートを待っているときに、少しこの後のことを話したのだが、そのときに、愛の口から、
今日のピアザ神戸の高架下で見つけた"愛の鍵"と"ヴィーナス・ヴリッジ"の話を聞いたのだった。
当然のごとく、その愛の話に目を輝かせている少女たち。
その姿を見ていたなつみは、少し考えを改めるコトにした。
- 56 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:40
-
そうなのだ。
なつみ自身は愛の鍵は知ってはいたのだが、その行為自体は完全に恋人同士のものだと認識をしていたこともあり、
夜景は別の場所にしようかと考えていたのだ。
ところが、愛の話を聞くと、そうではない、とのこと。
また、実際にみんなの分のキモチを込めるコトが出来る鍵を買ってくれているとのことから、
自然と行き先は決まってくれたようなものだった。
さらに愛は気を利かせて、そのときに、すでにその鍵を回し、みんなに書いてもらい、"代表して掛けるね"と、
強制的にヴィーナス・ブリッジに行かなくてはならないという選択肢を消してくれたりもした。
しかし、ヴィーナス・ヴリッジは夜景にも最適でもあるし、みんなの表情を見つめていると、
誰しもが行き先は"そこ"であると考え始めていたのだった。
- 57 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:40
-
そんな中、1人視線を泳がせているカワイイ後輩に気がついていたなつみ。
すぐ隣にいるカノジョの方に視線を向けた。
「梨華ちゃんは…?」
なつみの突然の言葉に、梨華は一瞬、"どのように話そうか"と言葉に詰まってしまった。
しかし、次の瞬間には、自分がこのようにためらってしまっている素振りをするだけで、
れいなに余計な不安を与えてしまいそうにも思え、慌てて口を開く。
「れいなと一緒にモザイクの方に行く約束をしているんです」
そして、その当の本人の方に視線を向け、安心させるように微笑んだ。
その梨華の笑顔に、れいなも表情を崩すと、なつみの方を見て、大きく頷いた。
隣ではさゆみとえりも笑顔を浮かべ、れいなを優しげに見つめていた。
- 58 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:41
-
「そっか」
なつみも、そんなれいなの笑顔に表情を緩める。
しかし、次の瞬間には少し心配そうに視線を逸らす。
そして、呟いた…"あんまり遅くなると女のコにはアブナイから、早く帰ってきなょ…?"…と。
- 59 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:41
-
〜 ☆
- 60 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:41
-
〜 ☆
- 61 名前:8 〜 投稿日:2005/10/26(水) 22:41
-
〜 ☆
- 62 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/10/26(水) 23:59
- 更新お疲れ様です。
おぉっwいよいよでしょうか。
第一歩はどんな感じで始まるのか・・・
次回更新待ってます。
- 63 名前:風まかせ 投稿日:2005/10/27(木) 09:06
- 更新お疲れ様です。
他のカップルの可能性はあるのかな。
それとも憧れで・・・。
- 64 名前:初心者 投稿日:2005/10/28(金) 23:20
- お疲れ様です
れいないい感じでいいですな
愛の鍵でのさゆのれいなに対しての心遣いにもキュンときました
次回まっています
- 65 名前:なまっち 投稿日:2005/10/29(土) 20:40
-
まことおめ〜
>>62 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
いょいょです^^
神戸の夜編もちょっと思っていたよりも長くなりそうなのが心配ですが(にがわら
>>63 風まかせさん
ありがとうございます^^
かっぷりんぐはできるだけ掻き混ぜたいのが希望です(こっそり
神戸の夜だけで決まるのか、決まらないのか…?(ぉもわせぶり
>>64 初心者さん
ありがとうございます^^
れぃな絶好調です(ぅんぅん
これからも…?
さゆとれぃなはシンユウですもの^^
- 66 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/10/29(土) 20:40
-
9 〜
- 67 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:41
-
れいなは、南京町の北、元町商店街を歩いていた頃、とても後悔をしていた。
自分のほんの少し左前、近いのか遠いのか、微妙な距離をあけ、さっき買った缶コーヒーを、
胸の前で可愛らしく抱えながら歩いている"憧れのヒト"を、ナナメ後ろから眺めながら歩くれいな。
小さくため息をつく。
そして、ときどき振り返ってはお店やモノを指差し話しかけてくれる梨華に対して、笑顔を零しながらも、
前を向くと、自然と後悔のため息。
れいなの"後悔"の原因。
それは、とても単純なコトだった。
いや、れいなにとっては、かなり大きなコトだったのかもしれない。
- 68 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:41
-
御飯を食べていたお店を出た後、モザイクやモザイク・ガーデンの閉店の時間、
ポートタワーの消灯の時間を愛に聞いたところ、今から行くとそれほど時間もないコトから、
ホテルにいったん戻ってから夜景を見に行くみんなとは別れ、そのまま2人で足を向けたのだった。
真希に自分の財布からお金を渡し終えて、れいなのそばに来た梨華の右側に立ち、一緒に歩こうとしたとき、
小さいながらも、梨華の手に、お昼にれいなと一緒に買ったアクセサリが入った紙袋があるのを発見したれいな。
すかさず"もちます"と手を差し出すと、梨華に笑顔で"ぁりがと"と言って貰え、
少しポイントアップにもなっただろう、と、上機嫌になったれいなだったが、
その受け取った瞬間、梨華とは肩が触れ合う距離までうんと近付いたのだ。
そして、受け取り、れいなが左手から右手にそれを持ち替えたあと、
梨華がれいなの手首に手を添えてきたのだった。
ほんの少しだけだが、明らかにれいなの手を取ろうとした仕草。
しかし、突然のその行動に、れいなの心臓は大きく跳ね上がってしまい、思わずちょっと離れてしまったのだ。
- 69 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:42
-
その瞬間から、れいなの後悔は始まっていた。
そう、意外と、自分の想定外の出来事には、何も対応できないれいな。
今から考えると、あれは手を繋ごうという合図である可能性は高かった。
いや、ほぼ確実にそうである。
それなのに…
今日は、頑張って梨華とは5回も手を繋いだのに、たった1回の"その失敗"だけで、
全てが飛んでしまったようにも思えたれいなだった。
全ての努力が水の泡に…
それっきり梨華は少しナナメ前を歩き、ときどき振り返っては会話をするといった関係になってしまっていた。
- 70 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:42
-
"それなら、今度は自分から"、とは思うものの、やはり一度離れてしまった距離は、簡単には踏み込めないもの。
大きな、大きな距離だった。
れいなにとって、なにか、手を繋げるキッカケがないと、とても難しいコト。
再び大きくため息をつく。
そして、自棄食いともいえる、"自棄飲み"とばかりに片手に持っていた缶コーヒーを一気にお腹に流し込んだ。
まだまだ熱いコーヒー、ノドに少し傷みを伴った。
さらに、その勢いで、噛んでいたガムまで一緒に流れ込んでしまい、さらに凹むれいな。
もう一個食べようと、袋から出すも、ポトンと軽い音を立てて地面に転がった"それ"
「…」
それを拾うと袋で丸め、もう1つ大きくため息。
とことん凹まされたれいなだった。
せっかくイシカヮさんと2人っきりャのにぃ…
ばかぁ…
〜 ☆
- 71 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:42
-
とぼとぼと梨華の後ろを歩き、色々とキッカケを探っていたれいなだったが、
"きっかけ"なんて意外と簡単なものであった。
そう、ヒトのテンションが高くなれば、自然と距離も近付いてくれるもの。
今回は、やはり再びポートタワーとモザイクガーデンにある大観覧車を目にしたときだった。
昼間とは全く違う建物にさえ見えるポートタワーは、昼間の少し濃い紅色の鼓状の建築物に見えたものが、
いまではとても輝く真っ赤でキレイなモノになっていた。
赤い色はヒトの感情を高ぶらせる、まさにその言葉通りに、梨華とれいなのココロにぐっと入り込むかのような景観。
そして観覧車は、放射状に広がる真っ白なラインに目を奪われてしまうくらいに美しいモノになっていた。
思わず見惚れ、そして、ため息を零していた2人だった。
そして、昼間と全く同じ位置で、その景色を見ている2人。
愛に教えてもらったコトであった。
愛の話だと、昼間と夜では、全く違うモノになるから、昼間に見たのなら、全く同じ場所から見てみては、
と教えてもらったのだった。
その愛のアドバイスに素直に感謝の2人。
- 72 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:43
-
潮の香りは少し減り、肌寒さを感じるも、今はほとんど気にならないコトだった。
「ぜぇんぜん、違うねっ」
「そうですねっ」
すぐ隣に笑顔で立っている梨華。
さっき少し離れてしまった距離を再び近づけるコトができたように感じたれいなは、
ほっと胸を撫で下ろすと、やはり高くなったテンション、そしてさっきの失敗を繰り返さないために、
一歩さらに梨華に近付いた。
少しカラダを揺らした勢いで肩を梨華に当てる。
軽く。
そして、梨華と触れ合っている部分が、離れて距離が再び生まれないコトを確認すると、肘を手すりに置いた。
- 73 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:43
-
梨華と触れている部分、さらに、ホホにも熱を帯びるも、潮の冷たい風が、
とても心地よくれいなのそれらに当たってくれていた。
1つため息をつく。
もちろん、憂鬱なコトがあってのため息では、ない。
「きもちぃぃですね」
れいなの言葉に、大きく頷くと、梨華もため息をつき、れいな同様に肘を手すりにおいた。
そのまま、2人してお昼と同じように景色を眺めていると、"そだそだ"と突然呟いた梨華。
カラダを起こし、れいなの腕を取った。
「ぁ」
思わず、小さく声が零れるれいな。
そのまま、ほっぺがさらに赤く染まるも、
夜の闇、モザイクの中だけの明かりでは、梨華には気付かれなかいようだ。
- 74 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:43
-
「けぇたぃ、けぇたぃ」
そんなれいなをさておき、梨華は自分の携帯電話を取り出していた。
そのままぶつぶつ呟きならが、カメラモードに切替える。
「きれぃに写ってくれるかなぁ」
携帯をカメラモードに切り替えると、とりあえず、と、手すりにもたれ掛かり、自分だけを映しだ。
そして、その画面に映る観覧車の真っ白な光を確認。
「おっ」
梨華の言葉に、れいなも覗き込む。
そこには、意外なほどきちんと光が取り込まれ、キレイに映し出された観覧車が映っていた。
さらに、にこにこ笑顔の梨華と、若干緊張気味のれいな。
あまりにも微妙な自分の表情に、さらに顔をしかめると、その瞬間、ぱしゃっと若干高い音が軽く届いてきた。
とたんに、青ざめるれいな。
「ちょ」
そして、笑い出した梨華。
「へんがぉ、へんがぉ」
コドモのように笑う梨華に、少し呆れ顔になるれいな。
それでも、梨華が笑ってくれるなら、とばかりに、少し嬉しくもなる。
- 75 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:43
-
ただ、やはりさっきの映りは保存されるとイヤなモノだった。
ま、変顔くらい別になんでもないのだが、さすがにさっきのモノは、変顔の域にも到達せずに、
カワイイ変顔でもなく、ましてや笑えるモノでもない映りだったのだ。
さらに、梨華と一緒に写っているものを、笑われたいとも思わないれいな。
こんな写真を梨華の携帯の待ち受けにされた日には…。
ぞっと背筋に寒いものが走ると、梨華から携帯を取り上げた。
「ぁ」
そのまま、しかめっ面で微妙に目を閉じてしまっていた間抜けな姿の自分が写っている画面を背景に、
"保存しない"とキャンセルボタンを押した。
「なっ」
そして、にっこりと笑顔。
「かわぃぃ映りのを、撮って下さいっ」
しっかりと、自己主張。
「はぁい」
- 76 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:44
-
"面白かったのになぁ"としぶしぶならがも、再び携帯を構える梨華に、れいなは満足気にうんうんと頷き、
カメラに視線を向けた。
しかし、次の瞬間、れいなのカラダは、いっきにヌクモリに包まれた感覚を覚えた。
一瞬、何が起こったのか理解ができなかったれいなだったが、やたらと梨華との距離が近いコト、
そして、梨華の甘い香りに一気に包まれたコトから、次第に現実を理解してきた。
「ぁ」
そう呟いたときには、すでに梨華との距離はゼロ。
自分のすぐ鼻先には梨華の柔らかそうなほっぺと、さらさらの髪の毛。
右手で、携帯を構えている梨華の左腕を取り、そして、自分の左腕が梨華との間に挟まっている感覚だけが、
やたらとれいなのカラダに伝わってきた。
少し強めに梨華との間に挟まっていた腕を抜くと、ふらついてしまったれいな。
そのまま、思わず手を梨華の腰に回す。
ぐっと自分の胸が梨華の柔らかいカラダに押しつぶされ、さらに動揺する。
- 77 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:44
-
しかし、そんなれいなを様子を気にしていないのか、梨華はさらにれいなを抱き寄せた。
「ぇ?」
まるで自分のカラダに招き入れるくらいの強さに、れいなは梨華の腕の中で、一回転。
次の瞬間には、正面から向き合うカタチになり、背中に手を回されていた。
そのまま、ぎゅっと抱きしめられるように手に力を入れられると、勢いで梨華のカラダに自分の身を投げる。
そして、"憧れのヒト"の首筋に顔が埋まり、一瞬軽く首にクチヅケ。
さらに、自分の胸に、梨華の"その"柔らかさを感じる。
恥ずかしさのあまり、慌てて顔を上げ、梨華を見上げるれいな。
「ぁ…ぁのっ」
すぐ目の前にいる梨華。
吐息まで聞えそうな距離。
優しげに目を細める梨華。
笑顔。
れいなの大スキな梨華の笑顔。
そして、"現実"に頭の中が真っ白になった。
"あの時"以来の、この距離。
「ぁ…」
一気に高鳴る心臓。
今現実に起こっているコトの意味など分からなかったが、確実に言えるコトは、
2人の距離は、確実に"ゼロ"。
れいなのココロの中は、これまで感じたコトがないくらいに、甘いモノで溢れ返っていた。
- 78 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:45
-
しかし、そんなれいなの甘いココロを打ち砕いたのは、梨華のなんとも能天気な声だった。
「ちぃがうでしょ」
「…ぇ?」
そして、ぐいっとカラダの向きを一回転、強引に変えられると、
"向き合ってどうするのょ"と笑われてしまったれいな。
「…」
その瞬間に、梨華が何をしようとしていたのかを悟り、恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になる。
そう、梨華はただただれいなを後ろから抱きしめるようにして写メに写ろうとしていたのだ。
それなのに…
自分の頭の中をぐるぐる回っていたイヤラシイ考えに、余計に恥ずかしさを覚えた。
ただ、数秒後には、再び梨華の体温を感じていたれいな。
後ろから抱きしめらるコトによって。
そのまま、自分の肩に体重が掛かると、梨華が覗き込むようにして耳元で"写すよ?"と囁いてきた。
「ぁ、はぃ…」
思わず頷いたれいなだったが、その顔はさっきとは全く正反対であり、れいなの特徴的でステキな目は細くなり、
その凛々しい表情は、ふにゃふにゃに情けなく緩んでしまっていたのだった。
"待ってくださぃ"とは言いたかったが、今の空間を崩したくなかったこともあり、頷いていたれいな。
そして、自分のお腹に回されている梨華の手に、自分のそれを重ねていた。
そんなれいなは、ほんの数十分前に感じていた"後悔"は完全に消えていたのだった。
〜 ☆
- 79 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:45
-
3〜4枚も撮ると、"さて"と、梨華はれいなにカラダに回していた腕を解いた。
そして、携帯を眺め、さっき撮った写真をチェック。
そのまま、"送るね"とれいなの方を見て、にっこりと表情を緩めた。
「ぁ、ぁりがとうございます…」
普通なら、わざわざメールで送ってもらわなくとも"れぇなの携帯でも撮ってくださぃ"とでも言えばいいのだろうが、
今は全く頭が働かないれいな。
そう、さきほどの梨華のヌクモリに、未だに心臓の鼓動がどきどきと早く打ち鳴らしていた。
思わず手を胸に当てる。
さらに、そのときに感じたモノを思い出すかのように、ぎゅっと胸を押さえた。
あれだけ近くで"憧れのヒト"を感じたのは、あの出逢ったとき以来だった。
自分の耳元で感じた"憧れのヒト"の体温。
自分の背中に感じていた"憧れのヒト"の胸とカラダの柔らかさ。
自分のコドモのように小さなカラダを包み込んでくれていた"憧れのヒト"。
そして、自分の背中に感じた"憧れのヒト"の鼓動。
自分の鼓動と全く同じように打ち鳴らしている梨華の心臓の鼓動は、まるで一心同体のようにも。
それらを思い出していたれいな。
- 80 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:46
-
すると、じょじょにれいなの胸、ココロの中に甘くて、とてもシアワセなキモチになれる"モノ"が、
現れてきたのだった。
そのまま、自然と"ある想い"も。
それは、誰しもが一度は感じたコトがあるかもしれない、とても緊張するけど、とても恥ずかしいけど、
それでも、とてもステキな"想い"。
"告白してみたぃ…"
自然とそんな欲求さえ生まれていた。
"憧れのヒト"に告白したい、と。
"憧れのヒト"にもっともっと近付きたい、と。
さきほどの梨華のカラダの柔らかさに、自然と自分のカラダも熱いものに。
そう、"憧れのヒト"とカラダを重ね合わせたい、と。
"憧れのヒト"と深い深い関係になりたい、と。
れいなの中生まれた、初めて感じた"欲求"、"欲望"なのかもしれなかった。
"告白"
初めて…しっかりと意識した"言葉"
- 81 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:46
-
"あのとき"は、ただただ"梨華と時間を共有したい"と感じただけなのだが、今は全く違う。
"あのとき"は、まだまだスタートラインにすら立たずに、梨華に対して一目惚れといった感情だけだったのだが、
今は、"梨華というヒト"を知り、そして、梨華を想い、自分のココロを甘くさせているのだ。
これまでも、ただただ近くにいたい、梨華に対して"スキ"という感情はあったが、
それでも"告白"という言葉にまで行き着かなかったのだ。
ところが、全く違う今。
ただの"憧れのヒト"だけなんてヤけん…
望めるなら…
イシカヮさん…と…一緒になりたぃ…
イシカヮさん…に…愛して欲しぃ…
イシカヮさん…を…感じたぃ…全てを…
梨華を"憧れのヒト"という立場から、もっともっと距離を近づけたいと想い、願い、
具体的に言葉に思ったれいなだった。
〜 ☆
- 82 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:47
-
梨華からメールが届くのを確認したれいなは、"ぁりがとうございます"と言い、
そして、先程の後悔は繰り返さないとばかりに、梨華の手を取った。
「観覧車、乗りましょうょ」
そう、コイビト同士にとっては甘いひと時を味わえ、これから"その関係"を目指すヒトにとっては、
試練となるモノ。
とは言うものの、今のれいなにとっては、ただ梨華と1つの空間に入りたかっただけなのだ。
そんなれいなの言葉に、"ぃぃょ"と目を細めて、優しげに頷いてくれた梨華を、
とてもシアワセいっぱいに見つめたれいな。
しかし、そんな梨華の向こうに、こちらを見ている男のような影が2つ、れいなの視界に入ってきた。
確実に自分たちのコトを見ている2人。
その男の姿を見た瞬間に、自然とココロにイヤな感情が湧き上がる。
まるでナンパでもしてこようとしている男の影に。
むっ…男って…ナンパをしにこげんトコにきよっト…
ぅざっ…
ココロの中で、若干湧き上がる怒り。
そして、小さくため息をつくも、梨華に"行こっか"と言われると、自然と笑顔になり、
大きく頷いていたれいなだった。
- 83 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:47
-
〜 ☆
- 84 名前:9 〜 投稿日:2005/10/29(土) 20:47
-
〜 ☆
- 85 名前:なまっち 投稿日:2005/10/29(土) 20:48
-
以上、更新終了です。
これからこのペースに戻せそうな予感も…?
次回からもよろしくお願いします。
- 86 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/10/30(日) 05:04
- 更新お疲れ様です。
いよいよでしょうか?
ですが変な魔の手が来そうな予感ですね。
次回更新待ってます。
- 87 名前:なまっち 投稿日:2005/11/01(火) 23:57
- もうすぐ美勇伝コン♪
>>86 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
魔の手が…
あ、実際のモザイクではこんな人間見たことがないですが(にがわら
これからは、別れた二組を交代で更新していきたいと思っております。
次回も、ヨロシクお願いします^^
- 88 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/11/01(火) 23:58
-
10〜
- 89 名前:10〜 投稿日:2005/11/01(火) 23:58
-
新神戸駅の前にそびえ立つ大きな高級高層ホテル。
新神戸駅自体、六甲山に沿った高台に作られたコトもあり、そのホテルから見える景観は、
まさに神戸の街並みを一望できる絶景の場所であった。
そして、ホテル自体が、観光スポットのうちの1つといっても過言ではないそのホテル。
神戸一帯でも、その高級感は一番であり、中には軽いカジノから、サウナ、温泉に、スポーツ施設、
さらに、最上階にはバーカウンターや高級レストランが完備されているホテルなのだ。
そして、すぐ隣の建物は、真ん中が吹き抜けになっているショッピングモールになっており、
旅行のおみやげから、旅行での生活用品に、また、普通の生活用品に、大きなオープンカフェや、
食事の出来る場所なども存在し、その辺り一帯だけでもある程度の生活ができる場所であった。
誰しもが一度は宿泊をしてみたいと感じるホテルではあるものの、
やはり一般のヒトにとっては少々手の出せないお値段となっているホテルである。
〜 ☆
- 90 名前:10〜 投稿日:2005/11/01(火) 23:59
-
フロアーは全て明るい総大理石。
フロントの前には、カフェ、いつの間にかうたた寝をしてしまうくらいに大きなふわふわのソファと、
何時間でもヒトを待てそうなロビー。
ただ座っているだけでコーヒーやソフトドリンクを出してくれるフロントにいる、キレイでステキなお姉さん。
自分たちの前を行き来しているのは、とても気品のある老人夫婦。
こんな高級な場所に自分たちが…
預けていた自分たちの荷物を受け取り、なつみと圭織がしてくれている、一括のチェックインの手続きを待つため、
すぐ前にあるロビーのソファーに身を沈めていたえりの素直な感想だった。
目の前に出てきているコーヒーと、小さめの可愛らしい動物のクッキーに目を白黒させながらの感想。
隣に座っているさゆみも、えりの手を取り、少し恐々と周りを眺めていた。
その様子は、ココ最近あまり見せなかった、可愛いイモウトの姿。
久しぶりにも感じられるそんなさゆみに、シアワセいっぱいのえり。
いつも以上におねえさんぶって、さゆみの頭を優しく撫でてあげる。
そして、右側には、とてもステキでカワイク、面白い、まるでおねえちゃんのような亜依。
少々お疲れモードなのか、ときどき頭が揺れ、えりの肩に体重を掛けると、
はっと何かを思い出したかのように起き上がり、かわいく目を擦る。
"両手に花とは、まさに今の自分では?"、と、これまた美貴に言ったら一蹴され、
冷たく目を細められそうコトを思い浮かべ、にたにたと表情を緩めるえりだった。
- 91 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:00
-
そんなえりの前には、顔立ちはカワイイのに不敵な笑みを浮かべているえりを、
少し不思議そうに眺める真希、愛、あさ美と桃子が座り、こちらは逆に優雅にコーヒーカップに口を近づけ、
また、クッキーを可愛らしく口にほお張っていた。
もうすでにこの空気に親しんでいる4人は、さすがセレブの予備軍的存在であった。
そして、その後ろでは、きょろきょろと周りを見回している希美と美貴が、
落ち着きなく、色々と歩き回っていた。
こちらは慣れないのか、少し表情を引き攣らせている。
黙って座っていたら、セレブの予備軍に見えなくもないが、
今の2人はとてもじゃないが、見えそうにもなかったのだった。
そんな少女たちは、少々お疲れ気味の様子だが、まだまだ夜景にココロを高鳴らせていた。
〜 ☆
- 92 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:00
-
お腹もふくれ、満足感でいっぱいになったえりたちは、梨華、れいなと別れた後、
晩御飯を食べた元町駅の近くから、JRを使い三宮駅へ、
そして、地下鉄で新神戸駅のすぐそばにあるホテルまで戻ってきたのだった。
なつみの提案から、少し休憩をしてから出発、と。
さすがに、それに異を唱えるモノはいないのだった。
そして、一度ホテルでチェックインだけを済ませて、少し荷物整理と休憩した後に、
タクシーで諏訪山公園、つまりヴィーナス・ヴリッジの方へ足を運ぶことにしたのだ。
夜景にココロを酔わせるため。
愛の鍵のため。
ま、一応、観光のため。
しかし、その前に、えりとさゆみは、自分たちの泊まるホテルで、
珍しいモノを見て驚いている観光客の気分を味わってしまったのだった。
- 93 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:01
-
大きな刺繍のされたじゅうたんの上で佇む2人は、可憐な乙女の2人組。
ただ、その表情は、部屋へ入るためのドアの前、カードキーを眺めながら、しばし考え込み、
頭がパンクしそうなくらいに混乱している表情。
「どうするのかなぁ」
普通に考えれば、カードは差し込むもの。
しかし、それらしき差込口は全く見当たらないのだ。
他のみんなはどうしたのかな、と思いつつ周りを見回すも、もうすでにその姿は部屋の中へと消えていたのだった。
それを確認すると、"意外と簡単じゃないの?"と、さゆみ。
"いやいや、みんなは頭がいいから"と否定する、えり。
そして、細い指を口もとに持ってくると、考え込む。
「う〜ん…」
"ちょっと貸して"と言うさゆみに、カードを手渡すと、再び思案顔。
ただ、目の前でカードを"何か"に差し込もうとしているさゆみを見て笑顔を零した。
- 94 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:01
-
「どこに差し込もうとしてるんだよぉ、さゅ?」
「ん…なにか、この辺に近づけたら差込口が"ばっ"と現れるとか…」
そんなさゆみの考えに思わず吹き出してしまいそうになったえりだったが、
次の瞬間、少し低い音がして鍵が開いたような音が聞えてきた。
「ぇ…?」
2人して顔を見合わせ、首を傾げる。
そして、ゆっくりとドアの取っ手に手を掛け、押すと、開いたのだった。
「おぉ」
さゆみは自画自賛とばかりに、両手を叩いて祝福をするも、えりは納得がいかないとばかりに、
クチビルを突き出し、さゆみから受け取った鍵を眺める。
何の変哲もないカード。
このホテルの名前が書かれているだけである。
「…」
「まぁ、いいじゃなぃ。
入ろょ」
そう言うと、楽しげに、満足気に、部屋の中へとバックを引っ張り込みながら入っていったさゆみ。
そのバックに引っ張られ、まだ納得いかないえりも、しぶしぶの表情の中、部屋へと入ったのだった。
〜 ☆
- 95 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:02
-
「ぜぇんびゅしょろっへるょ
ひゅごぃねぇ、へりぃ」
バスルームの中から歯ブラシを口にくわえて出てきたさゆみは、とても驚いたように、つぶらな瞳を大きくし、
手に持っているヘアーアイロンをしげしげと眺めながら、もごもごとした口調で、えりに話しかけた。
そう、女性が泊まると分かっていたからだろうか、ヘアーアイロンまで用意され、他にも、歯ブラシは4本、
おそらく夜と朝の分をしっかりと、バスタオルも1人2枚ずつ、ハンドタオルは1人4枚ずつ置かれるなど、
洗面用具は全て不自由なく用意されていたのだった。
行く前に"普通はあるょね"と言いつつ、少し不安もあった2人は、一応、と普段家で使っているシャンプー、
コンディショナーも含めた一式を旅行用の小さなうつわに入れ替え、持ってきたのであった。
ドライヤーまで。
しかし、全くの不必要であった。
さらに、コーヒーから紅茶、お茶と、パックも一晩ではとてもじゃないが飲みきれないくらいの数が用意され、
大きめのポットにもしっかりとお湯が張られ、電源まで入っていたのだった。
考えてみれば、なつみは高級ホテルと言っていたのだら、これくらいの用意は当然なのだろう。
部屋の広さ、バスルームの広さ、どれをとってみても、その大きさは、
これまで2人が泊まったことがあるホテルとは比べ物にならないモノであった。
さゆみは壁にもたれながら、今日何度目だろうか、自分たちの部屋の5倍以上はありそうな大きな部屋を眺め、
"すごぃ"と大きくため息をついたのだった。
- 96 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:03
-
そんなさゆみに向かって、これまで寝たことがないくらいにふわふわしたベッドに座り、
これまた歯ブラシでごしごしと手を忙しく動かしているえりも、壁を指差し、"ひょれもしゅごぃ"と、
もごもご口調でさゆみに話しかけた。
さゆみの視線の先には、さっきまで全く気付かなかったモノ。
壁に掛けられたテレビ。
「ぉぉ」
れいなの家では見たことがあったが、まだえりとさゆみの家では42型とはいえ、ブラウン管のテレビなのだ。
あまりにも大きすぎるテレビに、リフォームを敢行したときには、最近流行りのプラズマテレビに変えようか、
という話し合いがお互いの家で行なわれたのだが、それでもバカにならないリフォーム代。
ある意味地方に行けば家が一件買えるくらいのお金が掛かってしまったのだから、
泣く泣くテレビの買い替えは先延ばしになってしまったのだ。
こんな場所で見られるとは、と、またまた驚くさゆみ。
「しゃいきんは、どにょヒョテルも、きょれなの??」
「いゃぁ…ぎゃぅとおもうひょ」
おそらく他人が聞けば"会話なのだろうか"、と思われても仕方がないくらいに聞え辛い発音なのだが、
やはり、この2人にとっては、モノを口の中に入れいるときに聞えている発音も、
お互い慣れ親しみ、はっきりと理解できるモノなのだろう。
聞き返すことなく、会話が成立している様子は、少し面白ささえ感じるものである。
「だひゃよね」
えりの"違うと思うょ"の言葉に、しっかりと相槌を打つと、えりの隣、一緒に手前のベッドに座り、
これまで見たことがないくらいに大きく、キレイな画面を見入っていたのだった。
そんなテレビの中では、"へぇ"とボタンを押している、テレビの中のヒトの姿が映し出されていた。
そして、まさに、今もさゆみとえりも"この部屋"に対して"へぇ"と"押している"と言ってもよかったのだった。
- 97 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:03
-
「あ、はゃとで」
そう言うとえりは、窓を指差した。
「やへぃも、しゅごひょ」
と、にっこりと笑顔。
「ゃへぃも?」
「んん」
それなら、とばかりに"あとでいっひょにみひょぅ"と笑顔を浮かべたさゆみ。
歯ブラシのしっぽを突き出して、少し間抜けにも見えるが、それでもさゆみがするとカワイク見えてしまうのは、
少々不思議であり、それでもそれさえ自慢できるイモウトのようにも思え、満足感に浸ってしまうえりであった。
そして、自然とにたにたと表情が緩んでしまうのであった。
そんなえりを不思議そうに見つめていたさゆみは、"もうしょろしょろはな…"と呟きながら、
バスルームへと入っていった。
〜 ☆
- 98 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:04
-
「すっごぉぉい」
愛の言葉に、ひとしきり部屋の中を漁り終え、自分の荷物を整理していたあさ美も、
"どれどれ"とテラスにカラダを滑り込ませた。
とたんにあさ美を襲う、ひんやりと心地よい風。
さらに、とても澄んでいる空気。
そして、神戸の街並み。
海岸線に沿い、高速道路の光が明るい川を作り出し、ホンモノの海と交じり合っている姿は不思議なものだった。
さらに、赤いポートタワーに、真っ白な円形の観覧車。
白い波のような造形をした建物。
それに並ぶ真っ青な粒。
それらが海岸線にそってキレイに立ち並んでいた。
「うわぁ」
そのまま手すりに手を置くと、少しカラダを乗り出す。
「ぁ、下、見たらあかんょ」
愛の忠告に、一瞬不思議そうに首を傾げたあさ美だったが、
人間とは、"ダメ"と言われると一度は見てみたいもの。
自然と、視線は下へと。
「…っ!!」
案の定、次の瞬間には、なんとも言えない小動物のような鳴き声をあげると、
ばっと愛に抱きついてきて、ばたばた。
"忠告したのに"と呆れ顔の愛は、よしよしと自分に抱きついている可愛いシンユウの背中を撫でてあげた。
自分の胸に中にいるシンユウを。
- 99 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:05
-
そして、ゆっくりとカラダをはなす。
「だから言ったゃン」
「…ぅ…」
クチビルを突き出すと、"あんなに高いと思わなかった…"と情けなく表情を緩めたあさ美に、
少し愛らしさを感じてしまった愛は、そんな自分に少々テレてしまい、ぶっけらぼうに突き放す。
「はぃはぃ」
ぽんぽんと肩を叩き、愛は再び手すりの方にカラダを寄せた。
少し熱くなったほっぺを冷ましてくれると、"そろそろ降りてもいいかな…"と呟くも、まだ動かないカラダ。
そうなのだ。
もう準備も終わったから、ロビーに降りてもよかったのだが、もうしばらく"この夜景"を見ていたい、と。
あさ美もしばらくはまだ酔っていたいのか、愛同様に、手すりにカラダを預けようとした。
しかし、一瞬ためらう。
先程目に入ってきた怖い光景が忘れられないからなのか。
そして、その手は自然と愛の腕に掛けられ、しがみついていたのだった。
「そこまでして、見ンでも…」
愛の呆れ顔に、"見たぃの"と女のコの声。
さらに、にっこりと笑顔。
普段見慣れたあさ美の笑顔とは、また違ったそれ。
その笑顔に、一瞬、どきりと胸を高鳴らせてしまったのは、愛。
- 100 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:05
-
これまでもあさ美の笑顔は可愛らしかったのだが、今の笑顔は、とても女性であり、キレイなモノにも思えた。
そう、今日だけでもとてもオトナになったように感じられたのだ。
真希と一緒に行動をして。
そのあさ美が少し眩しかった愛。
"憧れのヒト"の前だと、とても不安がっているシンユウを。
"憧れのヒト"の前だと、いつも以上に女のコになっているシンユウを。
でも、"憧れのヒト"のコトになると、我を忘れてしまうシンユウを。
それでも、"憧れのヒト"の前だと、とてもステキな女性になっているシンユウ。
今は、その延長なのか、あさ美はとてもキレイな女のコだった。
そのあさ美に胸をどきどきさせてしまった自分に気付き、思わず小さくため息をついた愛。
"なに、どきどきさせてンゃ"、と。
「はぁ…」
"下に下りよっか?"と聞いてきたあさ美の言葉にも、"そだね"と少し落ち込み気味に答えたのだった。
しかし、その後に声を掛けてきたあさ美の言葉には、しっかりと頷いたのであった。
「ちゃんと"愛の鍵"持ってね?」
「もちろんっ」
〜 ☆
- 101 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:07
-
用意されていたタオルで口元拭きながら、ひとしきりバスルームの広さに感心をしたえりは、
その広さに"2人で入っても大丈夫だなぁ"とにたにたと表情を緩めると、満足気に部屋へと戻った。
すると、さゆみがベッドに寝転がっている姿を発見。
その瞬間に、いつものイタズラっコのような笑顔を浮かべると、"久しぶり"とばかりに声を大にして、
大きくてとても柔らかいベッドと、そしてさらに柔らかいさゆみに向かって思いっきりダイブ。
「さぁぁゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
一際大きくベッドのスプリングがきしむ音がすると同時に、うめき声を上げる少女、さゆみ。
「…ぃたぁぃ」
ベッドは、さゆみを挟み、えりと2人を心地よくはじき返した。
そのまま、バウンドを繰り返すと、ゆっくりと止まる。
家にあるベッドとは比べ物にならないくらいに柔らかく、そして心地よい肌触りを貰えるベッド。
さらに、ある意味ダブルと言ってもいいくらいに大きなベッドでもある。
ベッドの大きさは違えど、いつもの光景、いつものやりとりに満足をしたえりは、
自分の下で相変わらず呻いているさゆみを、背中から抱きしめた。
「きもちぃぃ…」
さゆみの柔らかくて、温かいヌクモリを自分のカラダの下に感じながら、そう言えば、と思い出すえり。
そう、これだけさゆみと距離を縮めたのは随分と久しぶりのようにも感じられたのだ。
もちろんヌクモリを感じたコトも。
ココ最近だと、腕を組むだけで、じっくりとさゆみのカラダのヌクモリを感じていなかったのだ。
そのコトに対して、寂しさも感じていたえり。
さすがに、"甘えちゃダメ"と言った言葉を、忠実に守られると、これはこれで辛いものだった。
ただ、その分、久しぶりに甘えられると、それはそれで、前以上にヌクモリを感じられるもの。
えりはうっとり目を閉じた。
とても心地よいさゆみのヌクモリを感じながら。
- 102 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:07
-
しばらくすると、えりの下で押しつぶされていたさゆみが、カラダの向きを変え、えりを自分の真横に迎え入れた。
そして、自分の方を向かせる。
少しカラダとカラダに隙間が生まれるも、逆に足が絡まりあう。
さゆみの手が、えりの腕を取る。
えりも、さゆみの腕を取る。
目の前にいるさゆみ。
とても愛しいイモウト。
カノジョが、自分のコトをとても純粋に見つめていた。
今、さゆみが何を思っているのか、えりには読めないが、ただただイモウトの瞳に引き込まれる。
しばらく見つめ合っていたが、あまりにもキレイなさゆみの瞳に、我慢が出来なくなったのはえりだった。
「さゅ…」
名前を呼ぶ。
すると、不思議そうに首をかしげたさゆみ。
「…?」
その仕草の愛らしさに、思わず手をさゆみの柔らかいほっぺに添えていた。
そして、そっとなぞる。
沈む指先。
感じるヌクモリ。
- 103 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:07
-
そのえりの手の動きに、今日一日の疲れが消えそうな感覚を覚えたさゆみは、心地よさそうに目を細め、
にっこりと微笑んだ。
久しぶりの"たった2人だけの空間"に。
とても純粋に"おねえちゃんがスキ"なさゆみの笑顔。
しかし、えりは…。
"ゃばぃ"
えりのココロの中にあった、甘くて純粋でキレイな"モノ"は、
そのさゆみの笑顔に、どろどろとしたイヤラシくてアヤシイ"モノ"になりそうになっていた。
〜 ☆
- 104 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:08
-
部屋に入ると、その豪華さに驚いてしまった真希。
しかし、それは一瞬だけ。
すぐに梨華と美貴、3人で1つにまとめて持ってきた荷物から今日必要な自分の分の荷物だけを取り出し、
整理すると、ポットに用意されていたお湯で紅茶を作り、"いつも"のようにテラスに出たのだった。
真希は、職業柄、こうやってホテルに泊まるコトが多いから、ホテルに入ってからするコト、
用意するコトなど、慣れてしまっていたのだ。
ツアーで色々な地方を回り始めた頃は、ホテルに泊まるだけでも緊張し、わくわくしていたものなのだが、
今では、あまりそういう感情もなくなっていた。
ホテルに泊まるときに特別に感動するものといえば、そのホテルから見える景色ぐらいだった。
都会だと隣のホテルが見えるだけだが、地方に出かけたりすると、
ごくたまに、キレイな景色が窓の外に見えるときがあった。
それが、今の真希にとって楽しみの内のひとつ。
そして、それは"ココ"でも。
- 105 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:09
-
テラスから眺める景色は、これまで見てきた景色とは全く違い、
さらに、普段自分の家から見慣れたものとも全く違うものだった。
そう、東京のイルミネーションとも全く異なる、神戸のそれ。
自分の家から見える東京のイルミネーションは、自分の生まれ育った街というコトもあり、真希はスキなのだが、
今見ている神戸の街並みは、とても素直なキモチで美しいと感じるコトができる景観であった。
さらに、とてもココロを癒してくれるモノ。
しかし、ただ1つ、ココロの中には、もやもやが。
"まぁ、楽しんじゃってきなー"
ほんの数時間前に、自分の"タイセツなヒト"に対して言った言葉。
いや、"言ってしまった"、と言ってもいい。
どうしてあのときは。
そうココロの中で反芻するも、そのときは自然と出てしまった言葉だったのだ。
- 106 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:09
-
梨華の顔、そして、その日1日見てきたれいなの行動、それらを見てきた真希にとって、
そう言わざるおえなかったといっても過言ではなったのだろう。
いつもいつも自分がワガママを言って、迷惑を掛けている梨華が、とても楽しそうにしている姿を見て。
さらに、"憧れのヒト"にとても優しげに見つめられて、とても嬉しそうな笑顔のれいなの姿を見て。
その2人を見てきた真希にとって、あのときの言葉は自然だった。
そして、少し気まずそうに、また言いにくそうにしていた梨華に対して、気を利かせた言葉。
そう、それでよかったのかもしれない、と。
たまには親孝行もいいじゃない、と。
自然と、そのように結論を出してしまった真希だったが、やはりココロの中には、しこりが。
寂しさ、というしこりが。
また、梨華が自分から離れてしまいそうな、不安も。
"タイセツな家族"をもう失いたくない、という純粋な想いが、真希の中で見え隠れしていた。
"それ"を取るために、大きく深呼吸をして、軽く頷くと、部屋の中へと戻った。
- 107 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:10
-
そんな真希を出迎えたのは、部屋をノックする音だった。
「…?」
集合は下なのに、と少し不思議そうに首を傾げた真希は、そのままドアの前、覗き穴から外を見る。
すると、少し緊張した表情で俯いているあさ美が立っているのが目に入ってきた。
「ぁ…」
軽く驚く真希。
そして、ドアを手前に引き、開けた。
「こんばんは」
にっこりと笑顔。
別に作った笑顔ではない。
あさ美を見て、自然とでてきた笑顔。
「ぁ…はぃ」
ほほに赤みが帯びると、恥ずかしげに俯くも、"一緒に行きませんか…?"と、まさに容姿どおり、
お嬢様のように小さな声で誘ってきたあさ美。
そう、自分のことをわざわざ迎えに来てくれたのだった。
- 108 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:10
-
そんなあさ美に、少し嬉しくなった真希は"そーだね"と表情を緩めた。
そして、"ちょっと待っててね"と部屋の中へ戻ると、携帯だけを持ち、
自分のポケットにさっき梨華に貰ったお金を確認した後に、軽く部屋の中をチェック。
"ぅんぅん"と頷き、部屋を入ったトコロに差し込んでいたカードキーを抜くと、部屋を出た。
ドアの前で、未だに清楚に両手を自分の前で沿えるようにして、ぴんと背筋を伸ばして立っている、
いや、"佇んでいる"という言葉がぴったりなくらいのあさ美に、"いこっか"と言葉を掛け、歩き出した。
「ぁ、はいっ」
ついて行こうと、慌てて隣に並んだあさ美は、お昼に比べたらそれほど緊張した様子は見せていないものの、
それでもやはり、表情は強張っていた。
まだまだ、自分に対して距離があるのかな、と、ふと思った真希は、寂しさを覚えるも、
最初はこんなモノ、と、いずれ今日れいなが梨華に見せたように、あさ美も自分に軽く接してくれるだろう、と、
時間が解決してくれるだろう、と、簡単に割り切れたのだった。
- 109 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:10
-
そんなあさ美は、真希にとってとても新鮮な女のコに映っていた。
そう、これまで真希の近くにいなかったような女のコである。
ま、もともとトモダチの数なんて片手で数えられるくらいしかいなかったのだが、
その片手の中だと、確実に異質といってもよかった。
シンユウとも言える美貴なんて、完全に男のコのような性格であり、言葉遣いも乱暴、性格もざっくばらん、
てきぱき動いて、完全に女のコの集団の中だと周りから浮くようなコである。
明らかにあさ美とは違う。
あさ美は美貴のような女のコについていく方だろうし、集団の中に埋もれて他のヒトを支える女のコだろう。
イモウトのような亜依は、どちらかといえば、とても可愛らしく、あさ美に近い性格の女のコだが、かなり開放的で、
人見知りせず、初めて出会ったヒトにも軽く話しかけたり、結構びしっとヒトに意見を言える女のコだ。
これまた、あさ美とは違うように思えた。
そして、希美もそうである。
希美も、性格的にも美貴に近いし、行動力もあるほうだ。
ただ、ヒトにとても甘えたがる性格は、美貴とは少々違うようなのだが。
かといって、ヒトに甘えたがる性格というのも、これまた、あさ美とは違うようにも。
まだ、あさ美の詳しい性格は分からなかったが、ここ数日で見ていた限り、ヒトに甘えている様子は見せず、
むしろ、甘えるコトすら恥ずかしさを覚えるような女のコにも思えたのだった。
- 110 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:11
-
一方、一番あさ美に近いのでは、と思える梨華。
性格的にも女のコであり、ヒトに甘えたいとは思っているものの、
いつもいつもそれを隠しているように思える女のコ。
若干近いようにも思える。
しかし、自分の前だと、いつもいつもおねえさんぶって、なにかとお世話をしたがる女のコでもあった。
少しでも散らかすと、"片付けなぃ"と。
少しでも足を開いて座っていると、"はしたないってば"と。
少しでも服を脱ぎっぱなしにしていると、"ちゃんと洗濯カゴにいれなさいょ"と。
"お世話をしたがる女のコ"を通り越して、お母さんのような梨華。
そんな梨華の姿とあさ美を照らし合わせようと頭の中で想像してみると…
次の瞬間にはぶんぶんと頭を横に振る。
どうみても、合わない。
- 111 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:11
-
やはりあさ美は、清楚におとなしく、そして緊張した面持ちで自分の会話に相槌を打ってくれる女のコであり、
さらに、とてものんびりとした空気で、ヒトを癒してくれる雰囲気をしたコである。
梨華もどちらかといえば自分を癒してくれるが、あさ美はまた違った風に癒してくれそうだ。
今日一日だけでも、自分自身がとてものんびりとした性格になってくれたようにも思えたのだ。
いつもいつも、日々の忙しない生活の疲れを、梨華と一緒にいるコトで癒してもらっていたものを、
今日ばっかりは随分とあさ美にも癒してもらったくらいだった。
そして、そんなあさ美に少し感謝の真希。
自分を慕ってくれるあさ美に。
〜 ☆
- 112 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:12
-
あさ美と一緒にエレベーターホールの方に歩き出した真希。
真希の隣の部屋である、梨華とれいなの部屋の前を通り過ぎる。
まだ2人とも入っていない部屋だが、帰ってきたらその部屋の豪華さと、
夜景の美しさにワンテンポ遅れて歓声が上がるコトが想像できた。
その隣が、愛とあさ美の部屋。
そして、その次の部屋は…。
その部屋から愛が首を傾げながら出てきた。
「ぁ…」
「ぁ、こんばんは」
しっかりと挨拶をしてくる愛。
真希も立ち止まると、"こんばんは"と笑顔を作る。
「カメイちゃんと、ミチシゲちゃん?」
愛の出てきた部屋を見て、誰の部屋か気付いた真希が聞く。
その言葉に、頷いた愛。
しかし、次の瞬間には、その表情をちょっとしかめると、ナナメ上に視線を持って行き、考え込む。
そして、"なんか、ぇりがめっちゃご機嫌ナナメで…怒られちゃっいました"と、苦笑いを浮かべ頭を掻いた。
「…?」
隣のあさ美が少し珍しそうに首を傾げると、"どうしたんだろ"と呟く。
- 113 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:12
-
「キャラじゃないね…」
真希の言葉に大きく頷くも、少し考え、"おじゃまだったんゃろか…"と呟きながら愛も一緒に歩き始めた。
そのまま隣の部屋のドアをノックする。
えりとさゆみの部屋の隣、今回のメンバーの泊まっている部屋の中で一番エレベーターに近い方の部屋は、
美貴と桃子の部屋だった。
意外と正反対の性格である2人の部屋だけに、少し興味津々といった様子で愛は立っていた。
少ししてドアが開くと、美貴が"すっげぇ部屋"と、まるで女のコとは思えないようなセリフ片手に出てきた。
さらに"やばぃよやばぃよ"と連呼。
そのまま、愛を自分の部屋に引きずり込んでしまったのだった。
完全にその場に残されてしまった真希とあさ美。
しばし、呆然と立ちすくむ。
「…さすがみきてぃ…」
そして、ふと呟いたあさ美の言葉に、少し吹き出してしまった真希も、"らしいね"と笑いながら頷いた。
そんな真希を見て、"憧れのヒト"が笑ってくれたコトに、少し嬉しそうに表情を緩めたあさ美だった。
- 114 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:13
-
しかし、扉が閉まってしまってから、2人の間に沈黙が訪れていた。
すぐに出てくるコトを想像していたが、予想外にも、愛はしっかりと捕まってしまったようだ。
そして、中では、ベッドにでも押し倒されたのだろうか、愛の悲鳴が。
さらに、桃子の悲鳴まで。
「ぁ…行こっか…」
「ぁ…はぃ…」
真希の性格も、随分とのんびりしたものへとなっていた。
〜 ☆
- 115 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:13
-
真希とあさ美がロビーに下りてきた頃には、もうすでに4人の先客がいた。
疲れ切って、ロビーのソファにぐったりとなっている、なつみと圭織。
少々ハイテンションになり、キャップも取ってしまっている、亜依と希美。
そんな4人の次に、真希とあさ美はのんびりと降りてきたのだった。
続いて、5分もすると、愛と美貴と桃子が少々騒がしくエレベーターから降りて来た。
さすがに、さっきかなり暴れたのだろうか、その様子は随分と疲れているようにも感じられる。
桃子にいたっては、ついさっきまで暴れていたかのように、ほんのりとほっぺを赤く染めていたくらいだった。
そして、さらに5分後。
さゆみが1人で降りてきた。
1人で降りてきたことに、少々驚いた真希だったが、それでも数分もしてからえりが降りてきて、
さらにえりの方は、先程、愛の言っていた"ご機嫌斜め"といった様子も見られなかったコトから、
真希としても、2人が別々に降りてきたコトは気にしないコトにしたのだった。
こうして、11人全員がロビーに集合した時刻は、すでに21時半を回ってしまっていた。
しかし、22時前あたりが一番夜景としてキレイらしいと、愛が話していたコトからも、
時間的にはちょうど良かったのかもしれない。
一番大役を授かっている愛以外は、みんなとてもリラックスした様子でタクシーに乗り込み、
3組に分かれ、ヴィーナス・ヴリッジのある諏訪山公園へと目指したのだった。
- 116 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:13
-
〜 ☆
- 117 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:14
-
〜 ☆
- 118 名前:10〜 投稿日:2005/11/02(水) 00:14
-
〜 ☆
- 119 名前:なまっち 投稿日:2005/11/02(水) 00:37
-
げっ!
>>96の部分の最後でトリビアをみているように書いてしまいましたが、
お話の中の今日は火曜日でした(ぉぃ
トリビアは水曜なのに…
あぁ…"女が罵り合っている"とかにしないと…
がっくし…
- 120 名前:初心者 投稿日:2005/11/04(金) 17:14
- 更新お疲れ様です
さゆえりの可愛さにノックアウトされました可愛すぎる
しかしあの時間差は?
更新お待ちしています
- 121 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/04(金) 21:21
- 更新お疲れ様です。
うーん、いろいろなことが起こっているようで。
どんどん気になっていきます。
次回更新待ってます。
- 122 名前:なまっち 投稿日:2005/11/05(土) 01:08
-
美勇伝コンもう一公演くらいしてくれても…(なみだ
イシカワさんの♪王子様♪を聞けて嬉しかったなぁ
れいなが香港でスキな曲として♪恋しちゃ♪を歌ったんだから(びみょぉにもぇた自分はおかしいですか?)、
こうなりゃ、お正月コンはりかれなでタンポポの曲を!!
♪恋しちゃ♪をりかれwithあぃりさこんで歌ってくれたら、
迷惑顧みずにめっちゃ飛び跳ねちゃいますょ(まじ
に、してもまたまたぇろぃ衣装を着せて…(怒
目が釘付けじゃないですかぁ(ぉぃ
おかぱぃも"イシカワさんのおしりがぷりんっ"って…(ぉぃ!!
まさにその瞬間を見てしまってて、"あぁイシカワさん//そんなぁ//"って激しく思ってしまい、ひとりでどきどきしてたのにぃ
なんてコトを言うんだぁ/////
みぃ〜ょも、ぇろぃコトいうし//
あぁ…名古屋いきたいなぁ…
>>120 初心者さん
ありがとうございます^^
可愛いですか?(ほっ
どうしてもこの2人はバカっぽく、愛らしくが、ろりろりに書きたくなる(ぉぃ
前回のベッドシーンは、山口コンの前の日にさゅの実家に泊まったというえりとの
2人のシーンをもぉそぉして描きました(ぉぃ
おっと、今回はりかれな編なんで、次回をお楽しみに^^
>>121 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
色々とですが、満遍なく振れたらいいのですが…(しんぱい…
どんどん振っていくので、どんどん気になってください(w
- 123 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/11/05(土) 01:11
-
11〜
- 124 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:11
-
モザイク・ガーデン。
お庭。
まさにその言葉がピッタリのような場所であった。
ほんの小さな敷地の中に、公園にあるような遊具から、小さなコドモが楽しめそうな乗り物がいたるトコロに置かれ、
家族連れからカップルまでがゆっくりとした時間を楽しめそうな場所。
現に、れいなも梨華も、コドモの頃よく遊んでいた近くの公園を思い出したくらいなのだ。
ただ、平日の夜ということもあり、ヒトの数は随分とまばらであった。
しかし、逆にそれがカップルにとってはいいのだろう。
とても甘い時間を過ごしているように感じられるのだ。
れいなにとっても、思わずぼぉっと見てしまうくらいに、甘くて、濃厚な時間を。
そして、次の瞬間には、自分の姿、"自分の理想の姿"を当てはめて、少しほっぺが熱くなる。
- 125 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:12
-
「らぶらぶだね」
れいながあまりにもじっと見ていることから、梨華は、自然とからかうように言葉を口にした。
とくに羨ましいとも思わなかった梨華だったからだろうか。
その表情にも、どこか余裕が感じられる。
そんな梨華を見て、あまり意識をしていないようにも思えてしまったれいなは、少し寂しさを覚えるも、
目の前に、はっきりと美しい真っ白いラインを放射状に放つ観覧車の乗り場が見えてくると、
再びテンションが上がってきたのだった。
〜 ☆
- 126 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:12
-
ガチャンと大きな音を立て、係員のヒトが扉を閉めてくれると、ぐっとひとつだけ揺れ、地上から離れ始めた。
とにかく怖かったれいなは入ってすぐに左側のベンチに腰を掛ける。
梨華は、"久しぶりだなぁ"と呟き、少し腰を屈め、景色を眺めると、れいなとは反対の方に腰を掛けた。
梨華のその行動に、一瞬だけ、少し寂しさを覚えてしまったれいなだったが、
当の梨華は、自分の左隣をぽんぽんと叩き、"こっち"とれいなに示した。
ぱっと笑顔が咲くれいな。
「こっちの方が神戸の街が見れて、キレイだよ」
「ぁ…はぃ」
梨華に"こっち"と言われ、嬉しさでいっぱいになるも、少し怖い観覧車の中。
恐々と腰を浮かせると、梨華の手を取るようにして、座り込んだ。
別にわざとではなかったのだ。
本当に怖かったれいな。
そんなれいなを見て、やはり"コドモ"に思えた梨華は、優しげに目を細めた。
そして、記憶に鮮明に残っている前回の"同じ"シーンを思い出したのか、ふと懐かしげに1つため息をつき、
視線を再び外の景色に向けると、"ホント、久しぶり…"としみじみと呟いたのだった。
- 127 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:12
-
梨華の呟きに、れいなも口を開く。
「前乗ったのって、いつですか?」
「ん…高校3年生になるときの、春。」
窓ガラスにもたれ掛かりながら、しっかりと答えた梨華。
「はっきり覚えてるんですね」
「うん」
れいなの言葉に大きく頷くと、窓の外かられいなの方に視線を向けた。
れいなと肩が触れ合う。
梨華の視線の先では、さっき2人で一緒に写メを撮った場所が見えていた。
「ごっちんの初ツアーのときだょ」
「ごとぉさんのですか!?」
思ってもいなかった言葉に、少し驚いたように声を出したれいな。
そんなイモウトを、面白そうに眺め、含み笑いを浮かべると、携帯を取り出した。
「わたしが3年生のときだから…ちょうど3年前…
春休みに入った直後だから…」
視線を上に向けると、しばし考えた。
「ちょうど先週か、先々週くらいだね。
まるまる三年かぁ…」
ひとつ頷く。
「北海道で公演があったときに、一緒に連れて行ってくれたの」
そう言うと、懐かしむかのように目を細めた。
「ごとぉさんと、ツアーで北海道ですか…」
「うん」
- 128 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:13
-
3年前。
れいなにしたらまだ中学生になる前。
そう、小学校を卒業したときだった。
その年が、デビューして半年になる真希にとっても絶頂であり、
れいな自身も、その春から真希のコンサートにも顔を見せ始めたのだ。
今でもよく覚えている。
さらに、その春から、れいなも東京の方に出てきたコトからも、さらによく覚えていた。
卒業式前の福岡での公演はもちろんのこと、引越し直前の広島の方で行なわれた公演にも顔を出したくらいだった。
そして、東京に引っ越してからの、ラストの代々木体育館にも。
そのとき、れいなは、一ファン。
そして、今隣に座っていて、れいなが憧れてやまない梨華は、全く違う立場で、真希の保護者のような存在だった。
さらに、高校3年生。
真希の一ファンであった自分と、真希の保護者である梨華。
小学校を卒業したばかりの自分と、高校3年生になる梨華。
それを考えた瞬間、れいなはとても重たいモノを突きつけられたような感覚を覚えてしまった。
時代を遡れば遡るほど、自分と梨華の年齢の差を感じてしまうのだった。
現実を突きつけられたようにも思え、また、当然のごとくか、そのときの梨華を全く知らないコトにも、
とても寂しさを感じてしまった瞬間でもあった。
- 129 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:13
-
一方、隣のれいなの葛藤など露知らず、携帯で画像を探していた梨華。
その梨華の目に、とても懐かしい写真が現れた。
当時の携帯で撮ったモノだから、若干、今で撮ったモノと比較すると画質が悪いが、
それでもはっきりと顔が写り、そして、当時のコトをしっかりと思い出せたのだった。
初ツアーでずっとはしゃぎっぱなしだった真希。
寝れずに、リビングでレッスンで撮ったビデオをずっと見ていて、それに付き合っていた梨華。
梨華の前で踊り、"何か気なる点ない?"と聞かれて、分かるはずもない梨華が"わかんなぃ"と言っては、
不貞腐れた真希。
そんな真希に慌てて、"完璧だから分かんなぃんだよぉ"と言っては、
真希の満更でもない笑みにほっと胸を撫で下ろしていた梨華。
東京の中野から始まった公演は、大阪、福岡、岡山、名古屋、広島、仙台ときて、
春休みに入った最初の土日が北海道、そして京都、ラストに代々木体育館だった。
その中のひとつ、北海道。
前の日に早めに入り、リゾートホテルに隣接された遊園地で、半日だけどゆっくりと楽しんだ2人。
とても大きな遊園地で、結局全部は回りきれずに、"また行きたいね"とはお互いに話していたのだが。
- 130 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:13
-
梨華の目に映っている写真は、そのときの一コマ。
特に変わったシーンではなかったのだが、それでも思春期真っ只中の2人にとって、
とても楽しかった1日であったし、2人で一緒に遊園地で遊んだのが、
そのときで最後といってもよかったからだろう、ずっと胸の中にある、タイセツなワンシーンだ。
今でもその画像だけは携帯を変えても、しっかりと移している。
とてもステキな1枚。
そんな写真。
思わず笑顔が零れる。
- 131 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:14
-
それをすぐ隣にいるれいなの顔の前に持っていった。
「これ」
「…ぁ…」
「そのときのだょ」
れいなは梨華の手から大事そうに受け取り、そして、画面に食い入るように見入った。
その画面には、ゴンドラの中、そう大自然を背景に観覧車のゴンドラの中、梨華と真希が楽しげに、
また、嬉しそうに2人で映っている姿があった。
2人で寄り添い、ほほを寄せ、口元でピース。
れいなが見たことがない、まだまだあどけなく、コドモのような表情をしている梨華。
今は大人びて、キレイなのに、この写真の梨華は、すごい可愛らしかった。
左側のサイドトップに1本シッポをつくり、おでこを出している梨華。
れいな自身が一番スキなヘアースタイルに近くて、思わず嬉しさも込み上げる。
梨華の隣には、当時かられいなも知っているカッコイイ笑顔の真希。
ヘアースタイルも、ミディアムで、少しボーイッシュの真希だ。
いや、れいなが知っている真希とは少々違い、とても素直で、本当に安心しきっているような、笑顔だった。
そう、それはおそらく梨華にだけ見せている笑顔。
そして、表情。
そんな2人の姿が映った画像に、れいなは思わず"かわぃぃ"と呟いていた。
さらに、ため息も零れる。
"こんな場所で、こんなカタチでみれるなんて"、と、思わず嬉しくなっていた。
また、少し梨華や真希の当時に触れるコトができ、2人に近づけたようにも思えたれいな。
嬉しさも込み上げてくるも、余計に、もっともっと知りたくなったのは、当然であろう。
- 132 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:14
-
「2人とも…ホント、かわぃぃけン…」
「ぁ、ぁりがと…」
しみじみと呟いたれいなの言葉に、さすがに気恥ずかしさを感じてしまった梨華は、
お礼だけを言うと、少し視線を窓の外に持っていった。
「このときのイシカヮさん…高校3年生ですね…」
れいなの言葉に、頷くと、少し考える。
年齢を。
「うん。まだ17歳だなぁ」
言って、"若いなぁ"としみじみと感じてしまった梨華。
「れぇなと、2歳の違いト」
「…?」
その言葉に、ぐんぐんと高くなっていた窓の外の景色から、再びれいなの方に視線を向け、
カノジョの言っている意味を考える。
しかし、れいなの言っている意味が少し理解できなかった梨華は、少し首を傾げた。
「12歳だけど…今のれぇなと2歳違ぃ」
そう言うとにっこりと微笑んだ。
本当に嬉しそうに。
- 133 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:14
-
そして、カノジョのその笑顔を見た瞬間に、梨華は、れいなのキモチが少し分かったような気がした。
間違っているかもしれないが。
それと同時に、少し複雑な自分の心境。
それは、梨華自身が考えている以上に、れいなは年齢の差を気にしているのでは?、と。
考えてみれば梨華が高校3年生に上がるこのとき、れいなは中学生にあがる年だったのだ。
数日前まで、小学生であるれいな。
その当時で考える年齢の差は、今以上に感じられる年齢の差。
今の20歳と15歳。
当時の17歳と12歳。
おそらく、当時だったられいなに対して、ココロをどきどきさせるコトなど、有り得ないコトであろう。
小学生でもあるれいなに対して。
それくらいの年齢の差。
れいなも5年という年齢の差を、"そう"感じていたのだろう。
だから、携帯の画面に写っている17歳の梨華は、今のれいなからすると2歳しか差がないのだ。
それが無性に嬉しかったのだろう。
おそらく。
いや、確実に。
- 134 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:15
-
そのように考えた瞬間に、最近は自分でれいなとの年齢の差に壁を作りかけていたコトから、複雑な心境になるも、
次の瞬間には、よりカノジョが自分のコトを考えてくれているようにも思え、安心感と、嬉しさを感じたのだった。
そして、大きく頷いた。
「うん
たった2歳だょ」
「はい!」
「今だって、"たった5歳"だもん」
梨華の言葉に、本当に嬉しそうにれいなは頷いていた。
〜 ☆
- 135 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:15
-
ゴンドラが一番高い位置まできたとき、未だに梨華と真希が映った画像を嬉しそうに眺めていたれいなだったが、
梨華に携帯を返すと、自分の携帯を取り出した。
そして、少し恥ずかしげに、"その画像下さぃ"と言ったあとに、
有無を言わせぬくらいにはっきとした口調で言葉を口にした。
「さっきのごとぉさんと、同じの、撮って下さいっ」
れいなの言葉に、梨華は表情を柔らかくさせると、大きく頷いた。
「ありがとうございますっ」
「ぅん」
携帯を受け取ると、れいなの肩を抱き寄せた。
とても細くて小さな、れいなの肩を。
- 136 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:15
-
あのときの真希の肩も細かったが、それでもとても梨華にとって大きくて、強い存在の女のコだった。
真希と出会った当時は、すごく儚くて、今にもいなくなってしまいそうなくらいに弱くて、
そして、悲しげに笑う女のコだったが、いつの間にか自分の力で強くなった女のコ。
一方、今のれいなは、勝気な性格だけど、自分の前だと本当に弱くて、
細くて、小さくて、とても包んであげたいと思えるカノジョだ。
自分のコトをとても慕ってくれるカノジョ。
普段の、梨華が接しているれいなや真希への態度は、おねえさんぶってて、
それは同じものであり、2人の雰囲気もとても似ているものだけど、
梨華自身の本質的なキモチは、全く正反対である、2人の女のコ。
頼りがいがあり、ココロのどこかでは抱きしめて欲しいと感じている真希と、
しっかりしている女のコだけど、イモウト、娘のように抱きしめてあげたいと感じるれいな。
- 137 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:15
-
今も、カノジョを。
しかし、イモウト、娘と感じたその瞬間から、梨華のココロは、大きく波打っていたのだった。
自分では抑えられないくらいの、それ。
そして、それはココロの動揺。
今日、ときどき沸き起こっている"それ"に戸惑いながらも、梨華は、れいなのほっぺに自分のそれを近づける。
カノジョのとっても温かい、ヌクモリを自分のほほに感じる。
すぐ隣にいるれいなに、自分の心臓の音が聞えてしまうのでは、と恥ずかしさを感じる。
それと同時に、口元に近づけている指が、微かに震える。
そして、ゆっくりとゆっくと揺れるゴンドラの中、2人は一番高い場所にさしかかったとき、
梨華はシャッターを押した。
- 138 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:16
-
ゆっくと下り始めたゴンドラの中。
軽い音とともに、写された梨華とれいなの2人。
少しカラダを起こした梨華は、携帯の画面に映し出された"保存する"という文字を選択をすると、
そのまま、れいなに手渡した。
「ありがとうございます」
「送ってね」
「もちろんっ」
笑顔を咲かせ受け取ったれいなは、携帯の画面を見た。
そこに映し出されているモノを。
甘くて、ヌクモリを貰ったようにも思え、さらに、真希に追いついたかのような錯覚さえ覚えるモノ。
そして、見ていると、無性に嬉しくなってしまったれいなは、自然と、梨華に寄りかかっていた。
何も考えずに、無意識の行動。
柔らかい梨華のカラダに、体重を掛け、肩に、頭を乗せる。
「…?」
梨華が少し自分の方を見たように思えたれいなは、"少しの間…お願いします…"と呟いた。
もっともっと感じていたいから。
「ぃぃょ」
とても愛らしい小さなコドモのようなカノジョの仕草に、梨華はにっこりと表情をゆるめると、
次の瞬間には、自然とどきどきした感覚も治まってきてくれた。
そして、落ち着くココロ。
カノジョのヌクモリに。
〜 ☆
- 139 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:17
-
ゴンドラが下りている間は、2人はお互いにもたれ合い、頭を寄せ合い、とてもゆっくりした時間を過ごしていた。
しかし、感じた時間はごくわずか。
すぐに扉が開かれ、2人だけの空間も開かれてしまったのだ。
"あんまり夜景見てないね"と笑い合い、ゴンドラから飛び降りると、
一気にひんやりとした冷たい風が2人を包んできた。
タンクトップの上に羽織るモノは、少々薄手のデニムジャケット。
両手で肩を抱くようにして"寒ぃ"と呟く梨華に、れいなは近付くと腕を絡めた。
そして、ぐっとカラダを近づける。
「アッタカイですか?」
カノジョの優しさに胸を甘くした梨華の頷きながらの笑顔に、
れいなもとてもシアワセなキモチを味わっていたのだった。
「もうあと30分もないから、あったいモノでも飲もっか?」
「はいっ」
しかし、そう頷いたれいなの視界に、さきほど見かけた2人組の男が映ってきた。
さらに1人増え、3人になっているその男たち。
それと同時に、せっかくのシアワセに甘くなったキモチも、すこし冷める。
そして、自分たちがナンパのターゲットになっているように感じられ、
相手をするのが面倒臭いキモチも生まれたれいなだった。
時刻は、21時半を回ったところだった。
- 140 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:17
-
〜 ☆
- 141 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:17
-
〜 ☆
- 142 名前:11〜 投稿日:2005/11/05(土) 01:17
-
〜 ☆
- 143 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/05(土) 19:47
- 更新お疲れ様です。
お二人は本当に見てて良いですよねぇ。
思わずこっちが照れてしまいます。
次回更新待ってます。
- 144 名前:初心者 投稿日:2005/11/07(月) 02:11
- お疲れ様です
いい感じの二人でこのまま夜は続くのかな?
しかしあのナンパ男たちは・・・
ドキドキしながら次回待ってます
- 145 名前:名無し猫 投稿日:2005/11/07(月) 22:10
- 初めて感想かきます。
りかれなあまいですね。
続きが気になります
今回の話には関係してませんがこんごまいいですねw
でもラブこんも捨てがたいですね♪
あと、読んでいてなんか自分も旅行しているような気分になりました。
作者様のペースでがんばってください!
- 146 名前:なまっち 投稿日:2005/11/08(火) 00:43
-
>>143 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
現実でもれいなのイシカワさんを見つめる目には、いつも勝手にテレています(ばく
これからもヨロシクお願いします〜^^
>>144 初心者さん
ありがとございます^^
この男たちは…2人の邪魔をさせたくないんですけど…
↓更新です^^おまたせいたしました^^
>>145 名無し猫さん
初めましてです^^
りかれなあまぁ〜〜〜いです^^
どこまで甘くなるのか…
おっこんごま2票ですね(めも
でも、今後少しこんごまもラブこんも出していく予定なんで、お楽しみにぃ^^
あ、旅行をしている気分になりましたってお言葉とても嬉しいです^^
ある意味それも目標だったんで(ょし
今後ともヨロシクお願いします〜^^
- 147 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/11/08(火) 00:44
-
12〜
- 148 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:44
-
諏訪山公園。
ヴィーナス・ヴリッジという名称が一番知られているが、実際には諏訪山公園の中の一部の場所である。
ただ、諏訪山公園と呼ばれているものの、その公園自体が存在するのではなく、
ヴィーナス・ヴリッジを含めた総称のコトをいうのだ。
諏訪山公園の中には、他にも、1600年も前に建立された諏訪神社とよばれる神社がある。
その神社が存在することから、この辺り一帯のコトをそのように呼んでいるコトにも由来しているのだった。
また、他にも、休日になると家族連れで賑わう、コドモが楽しめる遊具がたくさん揃っている広場もある。
さらに、金星台と呼ばれる、星型の広場も存在する。
1874年に、フランスの観測隊が初めて金星の観測に成功したコトを記念した石碑が建てられている場所だ。
そして、その金星台のすぐそばにある急勾配の山道を登って行った場所に、ヴィーナス・ヴリッジが存在するのだ。
実際に名称どおり"橋"であり、螺旋状をした橋は、諏訪山の山頂にある展望台とハイキングコースを繋ぐものなのだ。
その山道を夜に歩くのはさすがに怖く、懐中電灯は手放せないと言ってもいいだろう。
しかし、その怖さが消える頃には、壮大な神戸の夜景を目にすることになり、
誰もがうっとりとしてしまうこと間違いなしの場所である。
〜 ☆
- 149 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:45
-
ひんやりとした冷たい風が亜依たちをくるんだ。
真っ先に新神戸駅の前に止まっていたタクシーに乗り込み、そして一番最初に諏訪山公園に降りたのは、
なつみを始め、真希、亜依、えりの4人だった。
自分たちの泊まっているホテルから、ほんの数分であり、昼間だとハイキング気分で普通に歩いてこられる場所。
4人は、タクシーには待ってもらい、公園の中を歩き始めた。
運も悪いことに、時間も時間だったコトからか、タクシーは全て出払っていて、全員で一緒にはこれなかったのだ。
あと、どれくらい待てば他のみんながくるのか分からなかったコトもあり、
とりあえず、ヴィーナス・ヴリッジを目指し、そこで待つことにしたのだった。
「さっむぅ〜」
両手で肩を抱くように震えた亜依に、えりが後ろから面白そうに抱きついた。
そして、ぎゅっと抱きしめる。
あったかい女のコがすると効果てき面の即席カイロである。
さらに、女のコのヌクモリはとても心地よいモノでもあることから、自然と癒されたりもするのだ。
一石二鳥の効果。
「あったかぃなぁ」
「ぇりのココロです」
「…」
「いゃいゃ頷いてよ、あぃぼん」
そのえりの言葉にも、ポートタワーでのお返しとばかりに冷たい視線を投げかけ、流した亜依。
それでも、自分のコトを"あいぼん"と呼ばれたコトが嬉しかったコトもあり、
自然と黒目がちの目は細くなっていたのであった。
- 150 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:45
-
そして、今度は隣で歩いていた真希の背中から抱きつく。
トリプルサンドである。
「ぉも」
のんびりと、隣のなつみと一緒に歩いていた真希にとっては、不意打ちの攻撃であったこともあり、
思わず亜依のコトを意識せずに零してしまった言葉。
しかし、"覆水盆に返らず"であった。
「ああっ!まきちゃん、そんなコト言うんやっ!」
「ひどぃ…」
少し気にしていた亜依は、少々大げさに落ち込んだ素振りをして、振り返ると、えりに抱きついた。
えりもえりでしっかりとのってあげ、"ごとぉさん、ひどぃです"と非難するかのような視線を投げかけ、
そして"ょしょし"と亜依の頭を撫ぜてあげる。
「ぇ…ぃゃ…」
そんな2人を見て、しどろもどろになってしまった真希は、助けを求めるかのようになつみの方を見るも、
なつみまで非難するかのような視線を投げかけてきたのだった。
「なっちまで…」
「なっちにもチクリときた…」
「どぉしてぇ?」
思わず声も裏返る。
「ごっちんって、以外と乙女心をざっくりさせるような言葉を言うのね」
そのなつみの言葉に、頭を抱え込んでしまった真希を見て、3人は声に出して笑っていたのだった。
〜 ☆
- 151 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:45
-
「愛ちゃん、分かる?」
すぐ隣を懐中電灯を照らしながら歩いているあさ美の言葉に、"たぶん"と、自信なさげに答えたのは、
あさ美と手をつないでいる愛だった。
愛の手にはタクシーの運転手のヒトに聞いたときに、それを残したメモが持たれているものの、
その視線は自分のソレを見るのではなく、さっきからずっと周りを見回している。
あさ美にしては、"愛のモニュメント"を探しているモノと思い、近いのだろうと感じていたのだが、
実際は違っていた。
ただ単に、愛は、分からなくなってしまい、看板を探していたのだった。
そう、運転手のヒトの"看板が立っているから分かるはず"との言葉を信じて。
「この近く?」
まさにあさ美の思っていたコトを言葉にしたのは、2人のすぐ後ろを、
さゆみと一緒に手をつないで歩いている美貴。
こちらは完全に愛任せを決め込んでいるのか、先ほどから夜景にココロをウットリとさせながらも、
さゆみと"固有名詞しりとり"で盛り上がっていた。
- 152 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:46
-
もちろん、固有名詞のみの"しりとり"である。
単純ながらも、時事をしっかりと知っていないとすぐにつまってしまうモノだが、
最終手段としては、適当に即席で名前を作り、学校のトモダチと言い張るのも手だ。
そうなると、延々に終わらないのが問題点でもある。
ま、今はお互いに知っている固有名詞とルールを決めているコトから、その問題点は気にしなくてもよいのだが。
そんな2人の"しりとり"に、ときどきどちらかがタイムオーバーになると、あさ美が助っ人として手助けで参入をし、
延々と続いている"しりとり"。
意外とこういうときにすると、盛り上がるモノである。
ただ1人、寂しく看板を探している愛以外は。
- 153 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:46
-
「この近くのはずなんやけど…」
少し立ち止まる愛。
そして、神戸のキラキラ輝いている街の景色を見て、少し表情を緩めた。
さらに、あさ美、美貴、さゆみも歩みを止め、愛の視線の先を見ては、同様に表情を緩めたのだった。
とてもステキな景色に。
そんな3人を方を振り返って、愛がにっこりと笑顔を零した。
「前はこの手すりにつけてたンゃて」
そう言うと、ぽんぽんと、今歩いている螺旋状の橋、つまりヴィーナス・ヴリッジの"手すり"を叩いた。
「3000錠を越えちゃって、めっちゃ苦情がきたんゃて」
愛の言葉に、今のこの状態と頭の中で照らし合わせると、思わず目を白黒させるさゆみ。
美貴とあさ美も"想像できないね…"と呟く。
- 154 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:46
-
ヴィーナス・ヴリッジと美しい名前で呼ばれる橋の手すりに掛けられる、3000もの南京錠。
その景観は、とてもじゃないが見れたものでもないし、初めて訪れたヒトを、必ず驚かせるモノであった。
そう、あらかじめ愛の鍵のコトを知って、調べてココにやってきているヒトにとっては、まだ免疫もあり、
少し驚くだけで、被害は最小限だろうが、何も知らずにこの場所に来たヒトにとっては、
まずこの光景が異常なモノに映っても仕方がないくらいの、景観であったのだ。
事実、近くの住民からの苦情が随分と相次いだのだ。
そして、行政も仕方がないとばかりに、重い腰を動かし、やっと新たな設置場所として、
"愛のモニュメント"を設置したのだった。
「でも、ここに繋げるって…わかるかも…」
あさ美のきらきら輝かせた瞳に、"まぁ確かに…"と、少々納得の表情を浮かべる、3人。
確かに、今4人の目に映っている景色を目にして、2人の世界に入り込んでしまったら、
それはそれでとてもステキなキモチになれるだろうし、"愛の鍵"というものを知っていたら、
まず掛けたくもなるだろう。
2人の想い出に
想いを込め
願いがかなうコトも込め
実際に足を運び、その景色を見ると、誰もが納得してしまうくらいのコトであった。
〜 ☆
- 155 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:46
-
さゆみが見つけた看板を辿り、ゆっくと歩いていた愛たちの視界に、7人の影が映ってきた。
デコボコの影。
そして、"おっそいよ〜"というなつみの言葉に、"迷っちゃって…"と頭を掻く愛。
苦笑いを浮かべる面々が見守る中、愛がお昼に買い、そして先程みんなに名前を書いてもらった"愛の鍵"、
さすがに全員が一言を書ける程のスペースはなく、各個人の名前と、お店の名前のみが書かれた"愛の鍵"、
それでも、もうすでに"ただの南京錠"から格段にランクアップを果たした鍵をバックの中から取り出すと、
"愛のモニュメント"の前に立った。
とても、神妙な顔つきで、愛が。
「そんなに緊張せんでも…」
同じ名前の亜依に突っ込まれ、少し表情が緩むも、やはり緊張は否めなかった。
みんなの想いが乗っているのだから、と。
少し震える指で愛は鍵を使って南京錠の錠を外し、"愛のモニュメント"で自分が手の届く一番高い位置にある棒に、
それを繋げようと背伸びをした。
一瞬、バランスを崩しそうになり、かつんと高い音がするも、美貴に後ろから支えてもらうと、
"ぁりがと"と1つ笑顔を浮かべ、そして、改めてしっかりと繋げると、鍵で閉じた。
全員の想いとともに、繋いだ。
愛の鍵を。
- 156 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:47
-
「ロマンチックだね…」
なつみの言葉に、一様に笑顔で頷く面々のなか、さきほど大役を果たした愛だけが、
少し思案顔で自分の手元を覗き込んでいた。
その視線の先には、さきほど繋いだ南京錠の鍵が置かれてあった。
そして、それを見たあさ美が、"どーしたの?"と訊ねる。
あさ美の声に、他のみんなも愛を囲むように、近付いてきた。
そんなみんなの視線に、愛は自分の中で思い浮かんでしまった言葉、不謹慎な一言をぼそっと呟いた。
「ん…これ無くしたら、ヤバィゃろなぁって…」
「…」
なんとも"愛"らしい言葉に、一様に吹き出すと、"気にせんでえぇゃん"と言う亜依。
同様に頷く真希や希美。
さらに、桃子やさゆみ、えり、圭織も笑顔の中、ただ1人美貴だけで、怖い顔を作る。
「あぁ…顔で笑ってても…みんなの非難は確実…かな…
みんなの"キズナ"を"なくす"って…」
「え゛ぇ゛?」
しかし、そんな愛のびっくりしたような顔を見ると、"なわけないじゃん"と表情を緩めたのだった。
いつもの美貴のアソビにほっと胸を撫で下ろした愛だったが、美貴の横にいたなつみの心配したような素振りに、
ますます不安顔となってしまった愛。
心配そうになつみを見つめる。
そんな愛を放って置いて、しばらく考え込んだなつみは、何かイイ考えが浮かんだのか、
にっこりと笑顔を零した。
そして、"じゃ、お店に大事に飾ろっか"と優しげに目を細めたのだった。
みんなの"気にしなくてもいい"という言葉を受けたとはいえ、さすがに愛にはプレッシャーが掛かるもの。
「そうですねっ」
気を利かせたなつみの言葉に、愛も大きく頷いたのだった。
〜 ☆
- 157 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:47
-
愛の即席ガイドで、諏訪山の展望台、今この場所から見えている景色の紹介を聞きながら、
亜依は、えりがこの輪の中にいないコトにふと気がついてしまった。
さゆみと一緒だろうか、と思い、さゆみを探すと、一番端っこで、希美と美貴とカラダを寄せ合うように、
一緒に愛の話に耳を傾けていた。
他にもヒトがいないかどうかを見ると、この輪の中にいないのは、えり1人だけだった。
少々不思議に思いつつも、少し心配になった亜依は1人その輪から離れ、
展望台からヴィーナス・ヴリッジを下りてみるコトにした。
ところが、ヴィーナス・ヴリッジに掛かる直前、軽く手すりに手を置き、1人えりが佇んでいた姿を発見した亜依。
ほっと胸を撫で下ろすと、安心し、表情を緩める。
実際には、自分たちからいた場所でも見えるくらいに近い位置だったのだが、
それでも街灯の当たらない暗い闇の下にいたこともあり、亜依の目には入ってこなかったのだろう。
少し物思いに耽っているようにも思える、えりのその様子。
ほんの数メートまで近付いている亜依にも、気がつかない。
亜依は、そんなえりの隣に立つと、"1人で黄昏たいン?"と冗談っぽい口調でえりに声を掛けた。
一瞬驚いたように目を開いたえりだったが、次の瞬間には、"そんなコト…なぃ…ですょ…"と、
少しハニかんだ笑顔を見せた。
「…そ、ナン?」
しかし、その笑顔は普段のえりのモノではなく、確実に作ったモノだった。
仕事柄、笑顔を作るコトには慣れている亜依にとって、ヒトの作り笑いというのは、簡単に見破れるものだった。
とくに、素人のヒトともなると、そのヒトの目じりを見るだけで、分かってしまうのだ。
今のえりはとくにそうだった。
- 158 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:47
-
そうなると、自然と原因は1つに絞られていった。
ここに来る前、えりと"えりのタイセツなヒト"の2人が別々にホテルの部屋から下に降りてきたコト。
さらに、今日別々が多かったとはいえ、タクシーも別々に乗り込んだコト。
そのコトからも、やはり、"えりのタイセツなヒト"、さゆみが原因だろう。
まだ、不安なのだろうか、と思った亜依だったが、次の瞬間には本当にそれが原因だろうか、と頭を振る。
ハーバーランドでえりに話したとき、カノジョは確実に表情を柔らかくさせ、
そして、不安は消えていたように感じたから。
どうなんゃろ…
ただ、またまた自分からコノ話を切り出すコトは、ただのお節介人間になるように思えてしまった亜依は、
なかなか自分から話を切り出すコトができなかった。
2人の間に、今日初めての"長い沈黙"が訪れた。
- 159 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:48
-
2分くらい経ち、ちょうど亜依が"持久戦かな?"と感じ始めた頃だった。
えりが、重たげに口を開いたのだった。
「あぃぼんとのんちゃんって…」
しかし、亜依が想像していたものとは、違うその会話の始まり。
自分たちの名前、さらにタイセツな相方の希美の名前を出され、一瞬首を傾げる亜依。
「ん…?」
とても言い難そう、しかも、とても恥ずかしげにえりは俯く。
聞いていいのだろうか、とでも思っているのだろうか。
亜依は、安心させるため、"何でもいいょ"と笑顔を浮かべ、えり同様に手すりに手を掛け、
下から覗き込んだ。
その言葉にえりは、1つ頷くと、意を決したかのように、口を開いた。
そして、希望を込めて。
- 160 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:48
-
「あぃぼんとのんちゃんって…」
「ん…?」
亜依から視線を外す。
「アブナイコト…したこと…ある?」
一瞬、えりの言っている意味を理解できなかった亜依は、きょとんとした不思議そうな表情を浮かべ、首を傾げた。
そして、しばし考え込む。
そんな亜依の様子に、慌てたように"やっ、あのっ、ちがうのっ"とアタフタと顔の前で手を振るえりは、
顔を真っ赤にさせ、さらに、亜依の手を握りしめた。
「ちがうのっ」
「…ちがうって…?」
勢いよく否定をしたえりだったが、亜依に再び目をしっかりと見つめられると、
そのまま、"え〜っと"ともじもじと指先で遊び始めてしまった。
「ぁ…の…」
そんなに恥ずかしいコトを聞きたかったのだろうか、と、実際に"アブナイコト"を少し考えた亜依だったが、
もしや、と"イヤラシイコト"が浮かんでくると、次第にえりのこの慌てぶりも理解し、少しは納得できたのだった。
"アブナイコト"イコール、"イヤラシイコト"イコール、"えっちなコト"。
その言葉イコール、亜依と希美。
- 161 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:48
-
事実、亜依と希美の2人のユニットは、そのようなコンセプトを元に作り出されたユニットだったのだ。
歌の歌詞にも"禁断の恋"的な要素も含み、振り付けの部分でも、幼い女のコが2人、
キスをするようなシーンも昔はあったのだ。
そう、とても幼い容姿である亜依と希美の2人だから、キスをするということもイヤラシサを感じさせないのだが、
実際にカノジョたちの歌っている歌詞ではオトナの女のコ同士の葛藤や愛情を描いたものが多く、
その2つのギャップがよりファンの獲得にも繋がっていたのだ。
そんなコトから、当時一番最初にマネージャーだった裕子からも、
2人は本当のコイビト同士のように普段から振舞うように、と言われていたのだった。
ただ、別に裕子に言われなくとも、2人の波長はまさにぴったりだったのか、
自然とコイビト同士のように振舞えていたのだが。
テレビの前でも普通にクチヅケも出来たし、ある意味ディープキスに近いコトも何度もしたコトがあった。
しかし、仕事という感情はなく、むしろ自然の行為にも思え、いつの間にかプライベートでも平気でクチヅケをし、
暇さえあれば2人はカラダを寄せ合い、お互いのヌクモリに"感じていた"のだった。
- 162 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:49
-
依存症。
まさにお互いのヌクモリがないと、不安させ覚えるくらいのものである。
まるでコイビト同士の関係。
ただ、何度か同じ業界の同年代の女のコから、冗談とも言える位の口調ながら、
"付き合っている"関係"なの?"と聞かれたコトもあったが、
2人はその言葉を聞くまで、意識にすらしていなかったコトでもあったのだ。
お互いが必要であるから、一緒にいるだけ。
大スキだから、そばにいるだけ。
ただ、それだけだった。
必要なヒト。
距離感のないヒト。
運命のヒト。
しかし、"アブナイ関係"をコンセプトに作られ、他人から見れば"アブナイ関係"であり、
実際に"アブナイ依存関係"であるカノジョたちだったが、その人気が、別の方向、
幼い女のコたちに人気が出てからは、カノジョたちの当初作り出されたコンセプトは、
ほとんど影を潜める形となっていた。
今では、明るく、元気を与えるコンセプトを元にした歌や、歌詞、振り付けとなり、
いつの間にか亜依と希美の中でも、自分たちが作り出された当初のコンセプトを忘れかけていたのだった。
- 163 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:49
-
えりとさゆみ、初めて出会った前、れいなから聞いた言葉を少し思い出した亜依。
れいなの話だと、えりとさゆみは、亜依と希美がデビューした頃から、2人のコトがスキであり、
そして2人の関係が自分たちと同じような関係に思えたコトから、スキになったと言っていた。
つまり、えりとさゆみの2人は、亜依と希美の当初のコンセプトに共感した、といっても過言ではないのだろう。
そう、亜依と希美の"イケナイ関係"に。
- 164 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:49
-
亜依はにっこりと笑顔を浮かべた。
"別に恥ずかしがるコトはないょ"、と。
「のんとえっちなコト、シタことあるん?、って?」
「…っ!」
顔真っ赤にさせると、えりは完全に俯いてしまった。
自分からは出来るだけ"そんな言葉"を口にしない努力をしていたのに、と、自分の努力が水の泡に、と、
思わずがっくしと首を垂れるえり。
しかし、それでもこれだけ亜依がはっきりと、恥ずかしげもなく、この言葉を口にしたコトから、
えりにとってとても簡単に聞けそうな気もしてきて、さらに雰囲気さえもそのように変わっていたコトに、
普通に聞けそう、と少し安心したえりだった。
「…ぅん…」
微かに頷く。
- 165 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:49
-
えりがはっきりと"それ"について知りたいと分かった亜依だったが、そこまで聞いて考え込んでしまった。
さすがに自分たちの立場を考えると、そうやすやすと事実を言っていいのだろうか、と。
事実を言うコトにより、えりがショックを受けないだろうか、落胆をしないだろうか、と。
この場合、えりは自分と希美が"えっち"をしたコトを肯定して欲しいように思えるし、
おそらくは、もし亜依に肯定をして貰い、ほっと胸を撫で下ろした後には、
自分たちの関係のコトを相談するであろうコトは、安易に想像できたのだった。
つまり、肯定をした方がえりにとってはイイ、と。
このあとの、えりの相談にも格段に乗りやすくなるのだろう。
しかし、実際は、"No"だった。
- 166 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:50
-
いや、"まだ"、と言った方が正しいかもしれない。
2人の関係は、依存しあう関係であり、お互いがお互いを必要としているコトは、誰の目にも明らかなほどなのだ。
そして、亜依と希美も、他人に知られてもおそらく隠そうともしないだろう。
ある意味、"コイビト同士"である。
ただ、不完全な"コイビト同士"。
いや、"精神的なコイビト同士"というのが一番正しいだろう。
まだ、"ない"から。
しかし、おそらくどちらかが望めば、確実にカラダを重ね合わせるコトは確実だった。
別にお互い拒まなだろうし、亜依は、拒むという考えにすら至らないだろう。
自然と、流れから希美を受け入れるだろう。
ただ、"まだ"。
- 167 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:50
-
仮に、"まだ"と言えば、えりは、自分たちに"そういうイメージ"を持っていたコトもあり、
落胆は隠せないだろうし、もうこれ以上相談はしてこないだろう。
このあとのさまざまなリスクを考えると、それが一番。
しかし、それを考えると、悲しみとも不安ともいえる感情を自然と抱いてしまった亜依だった。
もし、ここで"えりの距離"の中に踏み込めば、もっともっと2人の距離は縮まるだろう。
かけがえのないシンユウにさえ、なれるだろう。
お互いのコトをなんでも相談できるシンユウ。
そう、そちらの方を望んだ亜依は、自然と頷いてしまっていたのだった。
えりに惹かれて。
そして、自分たちと似ている2人のため。
"ナカマ"のため。
えりのため。
- 168 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:50
-
〜 ☆
- 169 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:50
-
〜 ☆
- 170 名前:12〜 投稿日:2005/11/08(火) 00:51
-
〜 ☆
- 171 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/08(火) 01:51
- 更新お疲れ様です。
なんだか唐突な展開になってきましたね。
次回更新待ってます。
- 172 名前:初心者 投稿日:2005/11/10(木) 00:24
- 更新お疲れ様です
ぼんさん・・・
さゆえりの"アブナイ関係"を期待しているのは黙っておこう(あれ?)
次回更新楽しみにしてます
- 173 名前:なまっち 投稿日:2005/11/11(金) 00:04
- れぃな誕生日おめでと〜
16歳かぁ…加入したときが懐かしいなぁ…
これからもマジメに頑張って♪
>>171 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
唐突がもっとぉのお話です!(ちぃがぅ(ぁせ
唐突なカンジで進んでますが、呆れずにこれからもヨロシクお願いします〜
>>172 初心者さん
ありがとうございます^^
ぉ、アブナイ関係をご期待ですかぁ(w
ご期待にこたえられるか、ないのか…これからもヨロシクお願いします♪
- 174 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/11/11(金) 00:05
-
13 〜
- 175 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:05
-
「のんちゃんと、えっちなコト、シタ…コト…ぁる…ノ…?」
再び聞いてきたえりの言葉に、亜依はにっこりと笑顔を作ると、大きく頷いたのだった。
その瞬間に、えりの表情が面白いように変化をした。
びっくりした表情、それでも嬉しさを隠しきれないそのえり表情。
あまりにもの大きな感情の変化に、少し笑顔も零れてしまいそうになった亜依は、えりの肩をぐっと抱くと、
勢いのまま、自分に抱き寄せた。
そして、そのまま、自分のすぐ目の前にあるえりの真っ赤になっているほっぺに口もと近づけ、
"内緒ゃから"と囁いたのだった。
かくかくと頷くえりを見て、手を放す。
少しえりとの距離が近付いたようにも思えた亜依は、えりの言葉を待った。
- 176 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:06
-
「ぇ…ぇっと…」
しかし、実際にはえりの口はなかなか動いてくれなかった。
何か口は動くが、嬉しさのあまりか、自分が話したいと頭の中で考えているコトと、
実際に口の筋肉を動かしている頭の中の神経さえ、かみ合っていないのだろう。
そして、そんなえりを見た亜依は、カノジョの姿に愛らしさを感じると、
再びカノジョの肩を抱き寄せる。
そのまま、カラダをずらすと、正面からえりと向き合った。
腰に手を回し、自分に引き寄せ、お腹をつける。
ぐっと近付いた距離。
少し胸に隙間を作っただけの距離。
顔と顔との距離は、ほんの数十センチ。
驚いたように切れ長の目を見開いたえりは、さっきまで考えていたコトも頭の中から飛んでしまったのか、
何も言葉を発せないまま、ただただ亜依の目を見つめるだけだった。
亜依も、優しげに見つめた。
えりが話してくれるまで。
- 177 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:06
-
そして、そんな亜依の優しげな瞳に安心したのか、えりはほんのりとほっぺを赤く染めながらも、
ゆっくりと口を開いたのだった。
「一番…最初って…大丈夫…だった…?」
不安も感じられるくらいに、途切れ途切れに。
しかし、その話を聞いた瞬間に、一瞬表情が緩んでしまった亜依。
とても初々しいえりのお話に。
さらに、"これから"のお話に。
その内容に少し胸を撫で下ろしたのだった。
実は、今日の2人の様子から、もしや、イヤラシイコトでもしようとしたえりを、さゆみが拒否をしてしまい、
それでえりが随分と落ち込んでしまったのではないのだろうか、と思っていたのだった。
もし仮に、それが原因でえりが悩んでいたのであれば、亜依は、希美とはお互い恥ずかしかったコトもあり、
時間が随分と掛かってしまった、と、焦らずにお互いを信じていった方がイイ、と話すつもりだった。
ところが、今のえりの話しの切り出し方から想像するに、まだまだ"そこ"まで行かない、
前の"段階"のように思えた亜依。
今はまだ、えりはさゆみに対して、そんな関係になりたいと望んでいる段階、と。
- 178 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:07
-
「そっか…」
そう安心したように1つ息を吐くと、優しくえりの背中を撫でてあげた。
そして、"この2人なら大丈夫"と思った亜依は、目を細めると、勇気をあげるために、抱きしめてあげた。
そのまま、耳元で囁く。
「自然と…流れから…受け入れてくれたンゃ…
カメちゃんとさゅなら…大丈夫ゃで…」
そっとカラダを話すと、ぽんぽんと頭を撫ぜてあげた。
"安心しろっ"と、ばかりに。
ところが、そんな亜依の目に映ったのは、えりの少し驚いたように、目を開いている姿だった。
そして、次の瞬間には切れ長の瞳に、じわっと涙が浮かんでいたのだった。
「ぇ…?」
びっくりした亜依は、思わずえりを抱きしめる。
とてもほっそりとしたえりのカラダを。
「ちょ…」
"どうしたン"と自分のすぐ耳元で泣いているえりの背中をぽんぽんと叩きながら、
亜依は自分が言った言葉が悪かったのだろうか、とイヤな考えが浮かんできた。
カノジョの望んでいない言葉だったのだろうか、と。
そして、その亜依の疑問は、次の瞬間には、自分の耳元で聞えてきた涙声によって、知ることとなった。
「抱きしめた…だけ…で…
イヤ…って…」
〜 ☆
- 179 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:07
-
完全に亜依の想像が外れていたコトになった。
いや、実際には、最初に亜依が思っていた原因が、そのまま正解だったのだから、
当たっていたといえば当たっていたのだが。
結果的には、反対のコトを想像し、そして、そのコトによって、えりは確実に傷ついたのだった。
せめて、自分が考えていた、"恥ずかしがって苦労した"と言っておけば。
思わず何も言葉が出なくなってしまった亜依。
何か声を掛けないといけないと、と思うも、何も言葉が出ず、ただただ驚きと、
えりへの罪悪感だけが亜依のココロを占めていた。
さらに亜依は、さゆみが拒否をしたことにも、驚きを隠せなかった。
そう、ただ抱きしめただけで拒否反応を見せたコトが余計に、亜依を驚かせたのだった。
- 180 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:07
-
まだまだカノジョたち2人と出会って日付は浅いものの、昨日2人から聞いた話、2人の様子から、
確実に自分と希美の関係と同じくらいに強い依存関係にある2人だと、感じていたから。
そのコトから、余計に亜依は、えりとはココまで距離を近づけられたと思っていたくらいなのだ。
それなのに…
それとも、フト頭の中に起こる、考え。
えりより美貴の存在の方が格段に上がってしまったのだろうか、と。
しかし、次の瞬間には、首を横に振る。
違う…
それは、悲しすぎるから…
自分たちに当てはめて。
もし、希美が他の女のコに依存する姿なんて想像したくないから。
- 181 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:07
-
もともと、お互いがお互いを必要としているからこそ成り立っている"この関係"なのに、
片一方のココロが、別のヒトにいけば、その瞬間に、2人の"それまでの関係"は崩壊してしまうだろう。
"精神的コイビト"は壊れ、"辛さ"から"シンユウ"という関係も断ち切ってしまうコトも有り得る。
そして、ただのトモダチに。
それだけは、想像したくない。
だから、えりとさゆみの関係だって。
亜依は優しくえりの背中を撫ぜてあげると、"話してみぃ"と軽めの口調で話しかけた。
「…ぅん…」
- 182 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:08
-
えりの話は、ほんのついさっき、1時間も経たないくらい前の話だった。
ホテルの部屋に入って、色々と準備をし終わったあとに、さゆみがベッドで寝転がっている姿を発見したえりは、
いつものように、さゆみに抱きついたのだった。
しばしさゆみのヌクモリを感じていたえりだったが、少し様子のおかしいさゆみ。
自分のコトをじっと見つめるのだ。
ただ、そんなさゆみの様子を不思議に思ったえりだったが、カノジョのあまりにもの愛らしさに、
完全に頭の片隅から消えていたのだった。
そして、ガマンの出来なくなってしまったえりが、いつものように、
いや、えりのココロの中ではもっとイヤラシイ感情が渦巻いていたのだが、
それでも、いつものように思いっきりさゆみを抱きしめたのだ。
さらに、そのままさゆみの首筋に顔を埋め、カノジョの香り、ヌクモリを感じようとした、そのときだった。
ふとした弾みで、えりの足がさゆみのフトモモの間に入り込み、少し押してしまったのだ。
その瞬間に、さゆみはえりとのカラダの隙間に手を入れ、"いやっ"と意思表示をしてきたという。
- 183 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:08
-
さゆみのその仕草に、ショックと通り過ぎて、ただ呆然としてしまったえり。
予想もしていなかった拒絶。
"いつも"のように抱きしめただけなのに、と。
別に"えっち"なコトをしようという気は、そのときは全くなかったのだ。
しかし、さゆみが自分を拒絶した理由をずっと考えていたえりにとって、さゆみの拒絶の理由が思いつかないのだ。
抱きしめあうコトなど、日常茶飯事と言ってもいいコトであるから。
仮に、さゆみが拒絶をする理由としたら、もっと別のコト。
やはり、ちょうど自分の足が入り込んだのと同時に跳ねられたのだから、やはり、"それ"が理由なのだろう。
だが、"それ"が理由というのも、えりには分からなかった。
- 184 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:08
-
姉妹のように一緒に成長してきた2人。
ずっとお互いのカラダを見て育ってきたのだった。
そう、普段から一緒にお風呂に入ったりしていた2人。
さゆみが中学生になった頃からは、お互いのカラダに興味を持ち、触りあいっこみたいなコトもしてきたという。
また、ちっちゃなコドモの頃から、つい数年前まで、さゆみのカラダを洗ってあげてたコトもあったそうだ。
えりも洗ってもらっていたし。
ただ、最近では、えりはさゆみのカラダに興味を持ってしまい、カノジョのハダカを見るだけで、
おかしなキモチになってしまう自分に気付いていたコトもあり、カラダの洗いっこだけは避けていたのだが。
それでも、2人はこれまでのように一緒にお風呂に入ったりして、
さゆみはお互いのカラダのコトで意識をしているとは思えなかったのだ。
だから、カノジョのタイセツな部分に、少しフトモモが当たったとはいえ。
そう、そのコトから、余計にえりにとってさゆみの拒絶は意味がわからなかったコトであり、
さらにショックな出来事でもあったそうだ。
- 185 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:09
-
「そなんゃ」
そこまで聞いて、亜依は小さくため息を零した。
そして、完全に早とちりをしていた自分に、恥ずかしさを覚える。
考えてみれば、あの短時間の間に、えりがさゆみと"えっち"をしようと考えるコトでさえ不自然であるのだ。
この長い一晩。
焦らずとも、時間はたっぷりとあるのに、と。
反省。
そう、本当に亜依の考えていたコトは、何から何まで違ったのだった。
やはり、ヒトの考えは読めないもの。
つまり、えりが"えっちなコト"をしようとして、さゆみに拒絶されたコトから落ち込んで、
亜依に相談してきたという、亜依が想像していたコトは完全に間違いであり、
えりは、自分の考えたさゆみの拒絶の理由を、えりの足がさゆみの"タイセツな部分"に触れたコトとし、
それがイコール"えっちなコト"と前提と踏まえ、亜依と希美の関係から参考にしようとしたのだった。
亜依の希美が一番最初に"えっちな関係"になったときの様子から。
- 186 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:09
-
そして、亜依と希美がすんなりと"えっちな関係"になったコトを聞き、よりショックを受けてしまったのだろう。
自分は、たださゆみの"タイセツな部分"に触れただけで拒絶されたのに、と。
さゆみの拒絶の理由が、えりの足が触れたコトと仮定したカノジョにとって。
結局は、ただ自分を拒んださゆみに対して悲しんでいるだけなのだ。
さらに、自分を拒絶されたえりが怒って、さゆみとの間がケンカに近い状態、とのこと。
全ての話を聞き終えると、本当に反省をした亜依であった。
この早とちりで、えりに悲しみを与えてしまったのだし。
- 187 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:09
-
しかし、しっかりと反省だけすると、えりとさゆみのコトを再び考える。
えりの話で、確実に2人は亜依と希美の関係より"深い"コトが、さらに認識できた亜依。
亜依と希美の2人が過ごしてきた時間の4倍は一緒過ごしていた2人であることから。
ただ、さゆみがえりを拒絶したのは確かなコトであり、えりの足がさゆみの"タイセツな部分"に触れたコトにより、
さゆみが拒絶をしたコトも、確かなコトであろう。
しかし、そのコトは、2人の"深い"関係が一種の原因にも思えてしまった。
そう、あまりにも長い時間を過ごしてきたコトから、えりとさゆみの2人は本当の姉妹のような関係であり、
"依存しあう関係"とは全く異なり、"当然の関係"のように思えてしまったのだった。
さすがに姉妹となるとカラダを重ね合わせるコトに拒否感を持ってしまう可能性も感じられるもの。
だから、自分のカラダの一番敏感な部分に触れられたときに、自然と拒んでしまったのかもしれない。
つまり、さゆみはえりと"そういう関係"になるコトを望んでいないというコトにもなる。
本当の姉妹。
- 188 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:09
-
そうなると、えりにとってはとても辛い関係なのかもしれない。
さっきの話の口ぶりだと、えりはさゆみと深い関係になりたいようにも思えたのだ。
もう1つため息を零した亜依。
今度は大きく。
しかし、ふと思う。
ん…?
ホントにあっとんゃろか…?
少しだけ自分に自信をなくしてしまっていた亜依であった。
〜 ☆
- 189 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:10
-
モザイクのオープンカフェは、ポートタワーを対岸に眺めるようにして、立ち並んでいる。
真っ赤なポートタワーのその左側には、船が帆を広げたように真っ白な輝きを放つ神戸海洋博物館。
そして、その2つの後ろには、真っ青な輝きを放つ、ホテルの電飾がブルーサファイアのような輝きを放っている。
神戸でも一番といえるこの景色。
この景色により、平日でもたくさんのカップルたちが、自分たちだけの甘い時間を過ごすコトが出来ている。
オープンカフェから眺めるのもよし。
オープンカフェのすぐ下にある小さなウッドデッキの広場に立ち並ぶベンチに座り、
温かい飲み物と、コイビトのヌクモリによって温まりながら眺めるのもよし。
そう、コイビト同士は観覧車で少しまったりモードになってから、
ここにきて飲み物とコイビトにココロを温かくさせるのが定番であろう。
一度はココに来てみて、少しココロを落ち着かせて、温かくなってみるのもよいだろう。
そんなココは、神戸でも一番と言ってもイイくらいに、ステキな場所である。
〜 ☆
- 190 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:10
-
モザイクの中、レストランやカフェを探しながら歩いていた梨華とれいなだったが、
どこも窓際、そう夜景の絶好のポイントの場所となる窓際で空いている場所はなく、
仕方がないとばかりに、2人は缶のコーヒーとレモンティを手に、
モザイクの一階の海沿いに置かれているベンチに腰を掛けるコトにしたのだった。
とは言っても、ある意味夜風にあたりながら、感慨に耽るコトも出来るその場所は、
カフェの中より、よりステキな場所とも言えよう。
そう、カフェの中では、自然と別々の椅子に座るコトもあり、お互いのヌクモリに浸るコトもできないのだが、
ベンチでは自然と寄り添うようにして座るコトにもなり、お互いの距離は必然的に短くなるもの。
ヒトの目を気にせず、ひっつける場所でもあるのだ。
現にれいなも、何も恥ずかしがるコトなく、梨華に腕を絡めると、カラダを寄せ、
大スキなヒトのヌクモリを感じながら、目の前に見えているモノに酔っていたのだった。
もちろん、隣にいる憧れのヒトにも酔っていた。
楽しげに話してくれている、隣にいるヒトに。
- 191 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:10
-
「それ以来ドコにも行っていないんですよね…?」
観覧車を出てから続いていた会話であった。
梨華と真希が北海道の方に行ったときの話を、興味のあったれいなはずっと聞いていたのだ。
手元に握られているレモンティは、相変わらず梨華のように、温かい。
さっきまでの歩いているときとはまた違い、随分と近い距離で。
すぐ隣にいるヒトの話に耳を傾ける。
そして、当時のテレビの中での真希を知っているぶん、より興味を覚え、
さらに、大スキな梨華の当時の話も聞けるコトにシアワセを感じていたのだった。
そんな話が一段落をしたときに、ふと気になっていたコトを口にしたれいな。
家族のような関係の2人が、一番最後に一緒に遊びに出かけた行ったのが、3年も前になるコトに、
少し不思議にも思えたのだった。
お互いにトモダチが全くと言ってもイイくらいにいないと言っていたコトから、
2人は家族兼、トモダチ兼、シンユウと言ってもいいのだろう。
なら、普通に色々な場所に出かけてもイイようにも思える。
しかし、3年前で最後、と。
「…だね…」
梨華は1つ唸ると、"どうしてだろ…"と呟いた。
- 192 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:10
-
梨華自身、考える理由としては、単純に忙しいから、というのが挙げられた。
真希は当然のことながら、梨華も平日は学校に、暇があればアルバイトという生活をしていたのだ。
しかし、金銭的には、普通の生活なら十分できるくらい、
いや、真希と2人が生活を出来るくらいの仕送りも貰っていたし、
真希の月収なんて一般サラリーマンの軽く10倍はあるくらいだったから、
今考えてみても、梨華は学校に通いながらアルバイトする必要なんてなかったのだが。
それでも梨華は、真希の世話に支障を来たさない程度でも、いっぱいにアルバイトに入っていたのだった。
それは、今でも。
そして、真希のため、といっぱいいっぱいに働いている。
そう、考えてみれば、アルバイトをしている時でも、真希がオフを貰えば、
比較的自由に自分の行動を制約できる梨華自身も一緒に休んで、2人でどこかに出かければよかったのだが。
しかし、それをせずに働いていた梨華。
- 193 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:11
-
深く考え込んでしまった梨華だったが、ふと、いつか同じコトを考えたような気がし、
"あれ"と口元に手を持ってくる。
隣に座って自分にヌクモリを与えてくれるれいなの視線を感じながら。
そして、手元のコーヒーに視線を落とす。
そう、あのときは…
あのとき梨華が一生懸命、真希のために、と働いていたときの素直なキモチ、
そのときのキモチを考えれば、それはとても単純な理由のような気もしてきたのだった。
当時から"輝き始めた"カノジョ。
寝る間もないくらいに働かされていたカノジョ。
梨華がテレビの中で見るカノジョは、普段自分に見せているコドモの姿ではなく、
とてもオトナで、そして、とても輝いていた。
もちろん、それは今でも変わらないコトだが。
- 194 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:11
-
そして、そんなカノジョを、いつも見ていて、いつも感じていたコトがあった。
カノジョに対して、口にはしなかったが。
2つ。
それは、"輝いているカノジョ"がとても羨ましく感じていたコト。
そして、正反対の感情として、"現実"を知っているぶん、可哀相とも。
羨望と、哀れさ。
その2つをいつも感じていたが、そんな梨華の感情とは関係なく、やはり輝いているカノジョ。
そう、"輝いている"コトはとてもステキなコト。
今出来るコトを一生懸命するだけでも、"輝ける"ようにも思えた。
それが、お門違いとはいえ。
だから、たとえ夢がなくても、そのときにカラダを動かしていたいと感じていたのかもしれなかった。
"真希"には"なれない"が、それでも自分も"何か"をしているコトで。
それが、ただのアルバイトでも。
- 195 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:11
-
しかし、それだけだろうか、とふと思った梨華。
もっと違う理由があるようにも考えられた。
それは、真希の感情。
真希のオフはまとめて貰えるコトもなく、ただただ1日だけ、というのがほとんどだが、
貰ったあとに梨華に相談するコトもなく、当日の予定を入れていたようにも思えた。
それも、別に2人で行っても支障を来たすような場所ではなく、ショッピングがほとんどなのに、
"ごめん"と一言言い、断るような素振りで、1人で行きたいコトをアピールしたのだった。
家族のような存在だから、当時は特別気にしたコトもなかったが、
それでも今からじっくりと考えると少しショックを受けてしまいそうなコトである。
2人で出かけるのが、いや?
- 196 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:12
-
ただ、そんな物思いに耽っていた梨華を見て、れいなは"ごめんなさぃ、変なコト言って"と慌てて謝る仕草をした。
「ぁ、違う違う。
別に変じゃないょ」
梨華も慌てて手を振る。
「ま、単純に考えれば、ごっちんが忙しかったからだけだと思うけど…ね」
「けど…?」
「まぁ、わたしも色々とアルバイトが入ってたからね…」
それっきりれいなは、当時からなつみやかおりと一緒にしていたアルバイトの、
その時の話に興味を持っていってしまったこともあり、さっきまでの"考え事"は、
しばしココロの奥にしまうコトにしたのだった。
〜 ☆
- 197 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:12
-
「ぁ…」
梨華のアルバイトの話に楽しげに相槌を打っていたれいなだったが、梨華のお話も一段落もついたとき、
ふと見やった視線の先、一組のカップルの姿が目に入ってきた。
いや、ただのカップルなら、いたるトコロにいる。
それなら、もうすでに見慣れて、本日で免疫は完全に出来上がってしまっていたのだが、
今度のカップルは新しいウィルスなのか、その免疫が出来ていないれいなは、
またまたじっと見入ってしまったのだった。
そして、憧れのこもった瞳に変わる。
そう、とてもシアワセそうに寄り添いあっている2人。
いや、それなら普通にどこにでもいると言ってもイイのだが、その2人は、女のコの二人組であったのだ。
数人のグループなら数多く組見かけたのだが、たったふたりっきりの女のコは、
この時間では初めてと言ってもよかった。
もしかして…
あの2人…
そんな考えが浮かぶと、無性に羨ましさを感じてしまったれいな。
可愛か顔しとるのに…
1つ皮肉。
- 198 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:12
-
確かに可愛い二人組の女のコであった。
右側で、隣の女のコの肩にもたれ掛かるように頭を乗っけている女のコは、少し目尻の下がった瞳と、
ふわふわのウェーブをかけたロングヘアーから、とてものんびりした空気と、お嬢様の雰囲気をかもし出し、
カーディガンからの上からでもわかるくらいに、女性的なスタイルが伺える女のコだ。
一方、左側にいる、どちらかと言えば、隣のコをリードしているように見える女のコは、
ブラウンのショートヘアーを耳に掛け、少し大人っぽさを演出しているも、その表情は幼く、
可愛らしささえ感じるものであった。
さらに、隣のコよりカラダは小さいものの、とてもスレンダーなスタイルをし、キレイなすらっとした足を、
短めの柔らかいスカートからダイタンに曝け出していたのだった。
お互いに少し幼げな容姿は、意外とお似合いなお二人さんであった。
そんな容姿的にもお似合いな2人に、れいなは自然とため息をこぼしていたのだった。
そう、自分と梨華との組み合わせにように、デコボコではなく、お似合いの二人に。
そして、その2人を、れいなが羨望の眼差しで見つめていた時だった。
さらに、2人はとてもシアワセそうに寄り添うと、れいなが見ているコトに気が付かないのか、
はたまた"見ているからこそ"なのか、クチヅケを始めてしまったのだった。
その甘いシーンに、カラダが急に熱くなると、もう目の前で起こっているコトから目が離せなくなっていたれいな。
お互いのカラダに手を這わせ、さらに舌を濃厚に絡ませてのディープキス。
「ゎ…」
- 199 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:12
-
いつの間にかれいなが顔を真っ赤にさせながらも、キラキラ輝く瞳で見つめている視線の先が気になった梨華。
ただ、なんとなくれいなの視線の先で"何が行なわれているか"に気がついてはいたのだが。
それでも、視線を向ける。
梨華の視界に、しっかりとそのシーンを理解してしまうと、大袈裟にため息をついた。
そして、女のコ同士であるコトに、若干の羨ましさを感じながらも、"だめっ"と一言、
そのまま、れいなの目を手で覆った。
「ぇ?」
「教育に悪ぃ」
「ンなぁ」
余りにも残念そうに言うれいなに、梨華は呆れ顔になると、
"あらぁ、純粋だと思っていた田中さんなのに、あんなイヤラシイコトに興味があるんだぁ"と、
まるで近所のおばさん並みに、れいなをからかうように声を裏返したのだった。
「ち、ちぃがぃますよー」
"イヤラシイコト"と表現をされ、さらに自分のことを純粋とまで言われたれいなは、慌てて否定するも、
れいなの頭の中、1つのイタズラが思いつくと、その目を細めた。
- 200 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:13
-
そして、今度は逆襲とばかりに、声を裏返す。
「じゃぁ、イシカヮさんは興味ないんですかぁ?」
「な、ないゎよ」
思ってもいなかったれいなの逆襲に、少したじろいだのか、
梨華はさっきまでの自信満々のヒトをからかうような視線を、微かに泳がせる。
ただ、いつものプライド通りに胸を張り、言い切った。
しかし、れいなにとってそれは想定内。
とっても大スキな憧れの先輩が、少し可愛らしくあたふたと表情を崩すと、
次の言葉には、どんな反応を見せるのだろうか、と、笑みを浮かべ、予定通りの言葉を口にする。
「じゃぁ、"あのとき"…れぇなの胸を…」
「…!」
れいなの言葉を理解した梨華は、小さく言葉を零すと、目を泳がせ始めた。
そして、そんな梨華の様子をしっかりと確認すると、れいなは、自分の胸を押さえ、一度視線を落とし、
憂いの込めた目を作ると、再び梨華のあたふたと混乱している目を見やったのだった。
「ゃ…ぇ…っと…」
これまでれいなが見たコトがないくらいにほっぺを真っ赤にさせると、れいなから視線を外した梨華。
れいなの腕に感じる梨華の体温が、急上昇しているのが明らかに分かるくらいの梨華の反応。
あまりにも素直に反応してくれた梨華に、思わず笑ってしまいそうになったれいなだったが、
今の梨華になら、こっちが優位に立っているコトもあり、少しダイタンなコトが出来そうな気もしていた。
何しても許してくれそうな、気も。
- 201 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:13
-
そんなイヤラシイ発想が頭の中を巡ると、さっきの2人、いや、
今も2人の世界に入り込んでいる2人の女のコをちらりと見やってから、
自然とれいなは、カラダを動かしていたのだった。
そう、梨華の左腕に後ろから手を入れ組んでいた腕を抜くと、カラダを梨華の正面に廻し、
こつんと頭を首すじに落とし、腕を腰にまわした。
「ぇ…?」
先程までのイジワルなれいなの姿が消え、急にしおらしくなったカノジョに不思議そうに首を傾げた梨華だったが、
次に聞えてきた愛らしいイモウトの言葉に、ふっと表情を緩めたのだった。
「カップルごっこ…しましょうょ…」
「最近の中学生は、そんなコトしてるの?」
呆れ顔で言う梨華も、"仕方がないなぁ"と小さく照れ隠しのような言葉を口にすると、
自分の胸の中にいる小さな少女の背中に手を廻した。
そして、少し強く引き寄せる。
自分の胸の中に。
- 202 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:14
-
首すじに感じるれいなのほほのヌクモリ。
胸に感じるれいなのカラダのヌクモリ。
腰に感じるれいなの手のヌクモリ。
少し胸をどきどきさせているれいなのヌクモリ。
そんなカノジョのヌクモリは、そろそろ冷たくなり始めた缶コーヒーとは正反対な温かさ。
それを感じながら、梨華はふと思ってしまった。
"れいなは、何を思っているの?"と。
〜 ☆
- 203 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:14
-
梨華のヌクモリに、カラダ全体がぽっかぽっかしていたれいなだったが、それ以上にカラダを熱くさせる要因に、
少し頭を抱え込んで、困り果てていたのだった。
まさかこんな状況になろうとは、と。
別にワザとしたコトではなかったのだ。
自然と、"この位置"に収まってしまっただけであり、計算高く、
この位置に収まるように仕向けたわけでもなかったのだ。
そして、"それ"を発見してから、れいなのココロのどきどきは2倍増しであった。
別に"それ"に興味はあるわけではない。
自分もオンナなのだから。
見慣れたモノなのだから。
ま、かなり大きさに差はあるのだが。
それはさておき、見慣れているのに、やはり梨華の"モノ"、未知のモノというコトもあり、
感情の高ぶりが大きいのだろう。
- 204 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:14
-
そう、自分の真下に見えるのは、梨華の胸の谷間。
ダイタンに胸元がカットされたタンクトップの隙間に、梨華のほどよい大きさの胸の谷間が、
微かに見え隠れしていたのだった。
極端に大きくはないけど、それでもほどよい大きさであり、しっかりとしたキレイなカタチが想像できるソレ。
梨華の呼吸と共に、小さく上下させながら、その都度少し見え方が変わり、深い深い中の方まで見えるコトに、
よりイヤラシサを感じてしまっていたのだった。
耳元で聞えてくる憧れのヒトの鼓動と共に。
そして、それらが、今の瞬間だけでも"自分だけ"のモノになっているコトにシアワセを感じるのであった。
さらに、触ってみたいという"欲望"も。
口に含んでみたいという"欲望"も。
一方、梨華に対しての罪悪感も。
こうやって覗き見のようなカタチで黙って見て、"イヤラシイ"キモチになってしまっているコトに。
イヤラシイ自分に。
- 205 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:14
-
「れいなは、"ごっこ"じゃなくって…ホントのコト…したぃとか思ったコト…あるの?」
ふと聞えてきた梨華の言葉に、一際大きく胸を弾ませたれいな。
さらに、その言葉に色々な考えが頭の中を巡る。
単純に考えると、この梨華のたとえ話の主人公は"れいな"であり、その対象となるのは"梨華"であろう。
""わたし"と"ごっこ"じゃなくって…ホントのコト…したぃとか思ったコト…あるの?"と言っているのでは?、と。
そう思えたれいな。
そして、そうなると、もしここで自分が"うん"と頷いたりしたら、どうなるのだろう、と思ってしまったのだった。
それは、れいなが梨華へ告白したコトにもつながるのでは、と考える。
わざわざ梨華から話を振ってきたのだから、もしれいなが頷いたとしても、
梨華が拒むようにも思えなかったのだった。
なんとも都合の良い話だが、れいなの中では、真っ先にその考えが浮かんでいた。
しかし、次に聞えてきた梨華の質問に、あっけなくその考えは崩壊されてしまったのだった。
「コイビトがいたとしたら…」
その言葉を聞いた瞬間に、ふっと気の抜けてしまったれいな。
対象は"梨華"ではなく、"仮のコイビト"。
そのまま"なぁーんだ"とばかりに、表情だけ緩める。
- 206 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:15
-
"そんなわけなぃっちゃね"とは思いつつも、なんだか自分に対して、妙に期待させた発言をした梨華に対して、
ふつふつと湧き上がる怒りもともつかない、モノ。
すると、またまた少々イタズラが浮かんでいたのだった。
少し、えりのようにいたずらっコのような笑みを浮かべると、相変わらずれいなのすぐ真下で存在している、
梨華のステキな胸、それが覗いている"部分"に向かって、ふっと息を吹きかけた。
「…っ!!!!!」
大げさにカラダをびくっと振るわせた梨華は、"なっ"と小さく声をあげると、次の瞬間に胸を手でおさえ、
慌ててれいなのカラダにまわしていた手をどけたのだった。
それに合わせてカラダを起こしたれいな。
そこには、顔を真っ赤にさせ、口をぱくぱく金魚のように開けている梨華が自分を見つめている姿があった。
見つめ合っている2人。
相変わらず胸に手をおき、れいなを見つめる梨華。
あまりにもウブな梨華の反応に、少し面白さが込み上げてきたれいなは、表情を緩めると、軽く口を開いた。
「ぁ…感じちゃったんですかぁ?」
「なっ!」
その瞬間、さらにほっぺを真っ赤にさせると、"知らないッ!"と声をあげ、梨華は立ち上がり、
モザイクの方へ続く階段の方へと、大またで歩き出したのだった。
「えっ…」
軽くあしらわれると思っていたれいなだったが、予想外にホントに怒ってしまった梨華。
慌てて追いかけたれいなは、当然のごとく、激しく後悔をしてしまったのだった。
〜 ☆
- 207 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:15
-
怒ったとは言っても、もともと怒り心頭であるわけはなく、余りにも自分をからかってくるれいなを、
逆にからかってあげようとしただけであったのだ。
れいなは絶対に自分に謝ってくるコトは、安易に想像できたし、
そんなれいなを見たいとも思った梨華だったから。
案の定、れいなが梨華に"冗談です"、"ごめんなさい"と泣きそうな表情で謝り続ける隣で、
簡単に表情を緩めた梨華だった。
さらに、未だに泣きそうなれいなの手を握ってあげると、"オトナをからかっちゃいけませン"と少しプライドを回復。
そして、満足気に表情を崩したのだった。
- 208 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:15
-
そんな2人は、丁度モザイクの閉店にもなったコトもあり、手を繋ぎ、駅の方へと足を向けようとした。
ただ、少しだけ遠回りをして。
そう、メリケンパークの方から神戸駅の方へと足を運ぶことにしたのだった。
最後に2人っきりだけの時間をほんのわずかな間だけでも楽しみたかったれいなからの提案で。
少し遠回りになるけど、と。
やがて、ゆっくりとお互いのヌクモリを感じながらメリケンパークを出た2人。
大きな国道にさしかかり、向こう側に渡ろうとした。
神戸駅にはその国道を渡り、そこから左にずっと歩いていかないといけないのだった。
右に向かっていけば、やがて三宮の南の方に出ることになる。
兵庫県の南を縦断している交通の動脈といってもよいのだが、もう1本南に夜景を見れるバイパスが開通してから、
平日のこの時間となると、ほとんど車の通りも少なくなる場所である。
お昼通りかかったときからは、考えられないくらいの静かな場所であった。
少し不安を感じるくらいに。
- 209 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:16
-
そして、その不安が現実のものに。
信号待ちをしている間、向こう側からさらに信号を挟んで左側の通り、つまり梨華とれいなのいる位置からは、
交差点を対角線で結んだ丁度反対側に、6人の男の姿がこちらを伺っている姿が、
れいなの視界の中に入ってきたのだった。
ちょうど梨華の向こう側に。
その中の3人は、さっき観覧車を出たところでこっちを見ていた男。
一瞬自分の目を疑ったが、本当に"あのとき"の男たちだった。
3人から6人に増えている男のグループ。
普通、ナンパなら、こっちが2人なら相手も2人であるのに、向こうはいつの間にか6人になっていた。
さらに、これだけ人通りの少ないココに場所を移して。
その瞬間に、れいなはさっき2回感じた"面倒臭い"というキモチから、"恐怖"が沸いていた。
- 210 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:16
-
何かされるのでは、と。
その次の瞬間には、確実に自分の身、いや梨華のカラダがキケンに曝されるコトが想像できていたのだった。
そして、ぞくっとカラダに鳥肌が立つと、左隣でこちらの方に顔を向け、
海に視線を送っている梨華の右手をぎゅっと握り締めた。
梨華は、少し不思議そうに、一瞬だけれいなの横顔を見つめるも、すぐにその興味は海の方へ。
そんな梨華の手をぎゅっと握りしめているれいなの中、色々な"考え"が過ぎっていた。
このあとの自分たち。
なにをされるのか。
あの男たちは、何を考えているのか。
また、ターゲットは自分ではなく、隣にいる梨華であろうというコト。
もうちょっと別の服を着てもらえばよかった、と。
なつみの忠告通り、素直に早めにホテルへ帰ればよかった、と。
自分が最後にメリケンパークを通ってから帰ろうと言ったコトが、間違いだったコト。
- 211 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:16
-
しかし、それらのコトが頭の中を過ぎるも、不思議と落ち着いてきたれいな。
そして、ただ一言"守らなきゃ"という言葉がれいなの中に浮かんでいた。
どうやって"守る"とか、想像できなかったが、ただ1つだけ。
"守る"
隣で、のほほんとポートタワーを振り返って、目を輝かせているお姫様を。
れいなが握り締めている梨華の右手。
"絶対に放すもんか"と、ココロに決めたのだった。
- 212 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:16
-
〜 ☆
- 213 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:17
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〜 ☆
- 214 名前:13〜 投稿日:2005/11/11(金) 00:17
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〜 ☆
- 215 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/12(土) 01:09
- 更新お疲れ様です。
何だか凄くヤバイんでしょか?
気になりますねぇ。
次回更新待ってます。
- 216 名前:初心者 投稿日:2005/11/13(日) 02:43
- 更新お疲れ様です
えりの苦悩が・・・頑張れえり、負けるなえり
れいなはなかなかやりますね、しかし奴等が・・
次回更新楽しみに待ってます
- 217 名前:なまっち 投稿日:2005/11/14(月) 01:17
-
>>215 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
ちょっとゃばぃです…ぃゃ…かなり…
>>216 初心者さん
ありがとうございます^^
えりにはもっと悩んでもらう予定です…(最近お気に入りなんでイジメタクなる…(ぉぃ
れぃなにも頑張ってもらわなきゃ…
- 218 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/11/14(月) 01:19
-
14 〜
- 219 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:19
-
諏訪山の展望台。
めいめいがコーヒーやら柑橘系のジュースやら、温かい飲み物を手に、少しまったりモードで語り合っていたとき、
先程"いない"コトに気がついていたえりと亜依が、いつの間にかこの輪の中に戻っていたコトに気がついたさゆみ。
"ぁ"と小さく言葉が零れるも、えりの顔を見た次の瞬間には、頭に血が昇ったかのような恥ずかしさを覚えた。
"あの時"の感覚と共に。
神戸の街の冷たい風がさゆみのほほにあたるも、一向に治まる気配のない、その火照り。
そして、なかなか治まってくれないコトが、さらにさゆみを悩ませるのだった。
さゆみの顔の火照りの原因は、えり。
それも。ほんの一時間前に起こった出来事。
"いつも"のコミュニケーション。
それなのに…
今から思えど、えりにしては、いつものコミュニケーションの一部だったのだろう。
いつものように自分に抱きついてきて、いつものように自分のヌクモリを感じるえり。
とても、シアワセそうなえり。
そして、さゆみも、えりのヌクモリを感じて、とてもシアワセなキモチになったのだ。
おねえちゃんの笑顔。
- 220 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:20
-
ところが、その日のえりは違った。
少し久しぶりだったコト、今日一日だけだが、それまでずっと一緒にいなかったコトが原因なのか、
さゆみの目に、おねえちゃんが少し違うように映っていた。
ただ、"違う"とは言っても、マイナスに向かったモノではなかった。
そう、目の前で自分のコトをとても優しげに見つめるえりの表情がとてもオトナに見えたのだ。
いつものカワイイおねえちゃんではなく、とてもキレイなヒトに。
そんなえりの瞳に、魅入ってしまったさゆみ。
おねえちゃんのステキな瞳に。
しかし、そんなときだった。
再び抱きついてきたえり。
最近多い"泣き虫おねえちゃん"の姿に、"仕方がないなぁ"とふっと息を抜いたさゆみだったが、
次の瞬間、えりのふとももが自分の両足の中に入り込み、ぐっと自分の"タイセツな部分"に触れたのだった。
そして、それと同時に自分のカラダに電気が走ったかのような、"イヤラシイ"キモチを覚えてしまったさゆみ。
とても心地よいキモチ。
でも、アブナイキモチ。
イケナイキモチ。
自分の全てが曝け出されてしまったかのような、キモチ。
"反応"したカラダ。
これまで生きていた中で、一番といってもよいくらいの羞恥心を感じたのも、確実だった。
- 221 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:20
-
さらに、理解ができなかった。
いや、その自分のカラダに起こったコトについては理解できたのだが、"それ"ではなかった。
理解できなかったのは、大スキなおねえちゃんであるえりに触られて、そんな"反応"をしてしまった自分だった。
これまで、えりにはたくさんカラダは触られてきたし、さゆみのタイセツな部分だって、何度も触られてきた。
小学生の頃は、普通に手で洗ってもらったこともあったし、
えりが中学生になったときには、"今日、授業で習ったんだょ"と、"名前教ぇたげる"って、
まだまだコドモのさゆみの"タイセツな部分"をじっと見られたコトもあった。
さらに、さゆみも中学生になったときには、お互い好奇心が生まれていたコトもあり、
触りあったコトもあった。
しかし、そのときには、全く何も思わなかったのだ。
何も思わなかったどころか、何も変化すらなかった。
えりは、さゆみの"タイセツな部分"の蕾を、不器用に、傷つけないように、そしてとても優しく撫でながら、
"おかしいなぁ、濡れてくるって言ってたのに"と不思議がっていたくらいなのだ。
そして、固くなっている"それ"に、不思議そうに首を傾げていた。
そんなえりとの"行為"に、"イケナイアソビ"をしているコトに、"ココロをどきどきさせるだけ"だったのだ。
それなのに…
- 222 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:20
-
そのときとは違い、確実にさっきのさゆみのカラダは"反応"していた。
そう、一瞬、とても甘いキモチに覆われてしまったのだ。
まるで美貴に手を握られているときのように。
まるで美貴に肩を抱き寄せられているときのように。
ただ、美貴に感じているモノと、えりに感じているモノは確実に違う。
2人ともとてもとても大スキなのだ。
ただただ純粋にスキな2人。
だから余計に、触られて"反応"したコトがとてもイヤラシイようにも思えたのだった。
そして、その事実に気がついたとき、恥ずかしさのあまり混乱したのか、思わずえりを跳ねのけてしまったのだ。
これまでえりを拒絶したコトがなかった自分が、生まれて初めて。
また、抱きしめようとした自分を拒絶され、不機嫌になったえりは、自分が"拒絶"された理由を聞きたがったが、
さゆみにとって"感じた"なんて言えるはずもなかったのだ。
素直なさゆみは、ウソもつけなかったし、ただただ黙り込んでしまった。
それっきり、えりは怒ってしまい、不機嫌になってしまい、そして目も合わせてくれなくなってしまったのだった。
- 223 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:21
-
「はぁ…」
思わず大きくため息をついたさゆみ。
手に持っているぽっかぽっかのレモンティの温かさが、えりにも思え、より寂しさを覚える。
すると、そんなときだった。
隣に座っていた美貴に手を握られたのは。
そして、そのまま表情を緩めると、さゆみの耳元で囁いたのだった。
"ちょっと、歩こうょ"と。
その瞬間にさゆみの胸に甘いモノが広がると、えりとのケンカともいえる出来事に痛めていたココロの傷が、
すっと薄らいでくれた感覚を覚えたさゆみ。
笑顔を浮かべると、"はぃ"と頷き、立ち上がったのだった。
そして、2人に気がついたなつみの"もうちょっとで帰るょ"の言葉に軽く頷くと、
美貴に手を取られヴィーナス・ヴリッジの方へと歩き出したのだった。
〜 ☆
- 224 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:22
-
美貴と一緒に歩いていたさゆみは、いつの間にか先程のココロの辛さが随分と減っていた。
カッコいい美貴に手を取られ。
美貴の香りを感じているうちに。
そんな自分にフト気付き、苦笑いを浮かべる。
さらに、今日の朝には、自分の存在で美貴に楽しんでもらいたいと思っていたのだが、
もう今では、美貴の存在で自分は癒されたりもしているという事実にも。
そして、美貴とえりで感じている2人の違いを、改めて再確認するのであった。
美貴とえりでは癒され方も違うというコトを。
「ぅ〜ん…」
そう認識をすると、やはり唸ってしまったのだった。
「ん…?」
そんなさゆみに気付いた美貴が、自分の方を見ると"どうしたの?"と聞いてきたが、
少しご機嫌になったさゆみは、にっこりと笑顔を浮かべただけで、"なんでもないですっ"と。
「…?」
- 225 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:22
-
そのままぐいぐいと美貴の腕を引っ張っていたさゆみだったが、
螺旋状をしたヴィーナス・ヴリッジの真ん中まできたときに、美貴にぐいっと引っ張られ、立ち止まった。
そして、不思議そうに首を傾げ、美貴の顔を見る。
「…?」
そんなさゆみのコドモのような表情に、一瞬視線を外した美貴は、そのまま手すりに手を掛けた。
気恥ずかしさを覚えたかのような美貴の仕草だったが、次の瞬間にはさゆみの方に再び顔を向け、
にっこりと笑顔を零した。
「ちょっと、ここで見ようょ」
その笑顔の美貴に、さゆみも表情を緩めると、美貴同様に手すりに手を掛けた。
美貴の隣で。
そして、しばらく2人でしんみりと神戸の夜景に浸っていたのだった。
- 226 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:23
-
やがて、そんな2人の姿が、まるで"コイビト同士"のようにも思えてきてしまったさゆみ。
少し気恥ずかしさを覚えるも、いつの間にか、自然と、
えりとのケンカの辛さも"全て"忘れるコトもできていたのだ。
やはり、"美貴に感謝"のさゆみ。
自分が元気のない姿を見て、誘ってくれたように思えて。
そのさゆみの少し元気を取り戻した姿に満足をした美貴は、何かを思い出したかのように"そだそだ"と手を叩くと、
さゆみに、自分の手の平を上に向け、差し出した。
まるで何かを"ちょうだい"とも言わんばかりの美貴のその仕草。
「…?」
しかし、さゆみに美貴のその仕草の意味は理解できなかった。
自分にあげるモノなどあったのだろうか、と、
むしろ、自分が美貴からたくさん貰っているようにも思えたくらいなのだから、と。
思わず首を傾げる。
- 227 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:23
-
「はぁ…」
そんなさゆみの姿に、美貴は自分の意思が通じていないコトに少し落胆の表情を浮かべ、ため息をつくも、
"仕方がないか"とばかりに肩を竦め、そのまま"鍵"とぶっけらぼうに言葉を言い放った。
「ぇ…?」
一瞬意味を理解できなかったさゆみだったが、今でも自分のぽっけの中にある、いや眠っている"モノ"を思い出すと、
そのつぶらな瞳を大きくし、そして嬉しそうに手を口元に持っていった。
そして、小さく声をあげる。
とても嬉しそうに。
「ゎぁ…」
「ちょうだいよ」
もう一度聞えてきた美貴からの言葉に、さゆみは嬉しそうに頷くと、慌ててぽっけからそれを取り出した。
そのまま美貴に手渡す。
「ありがと…」
美貴はそう呟くと、恥ずかしさのあまりか、ほほを赤く染めてた。
そして、さらにさゆみが飛び上がるくらいに喜ぶ言葉を、ぶっけらぼうに口にしたのだった。
「一緒に繋げよっか」
〜 ☆
- 228 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:23
-
交差点を渡り切るまでの間、れいなは頭の中を一生懸命に働かせていた。
今日通った道を。
曖昧だったが、できるだけ。
そう、梨華を"守る"と決心はしたものの、今のれいなにできるコトは、とにかく"逃げる"コトだった。
相手は男。
それも6人。
普通に太刀打ちなどできるはずもない。
そうなると選択肢は1つだけ。
"逃げる"
神戸駅に行くためとはいえ、あの男たちの前を通るのでさえ危険を感じるのだから、れいなは左ではなく、右、
つまりこのまま国道に沿って歩ききり、三宮の駅の前の大通りを使って、三宮の駅に行くコトを決意したのだった。
確か三宮の駅までは、それほど時間は掛からなかったはず、と。
また、車の通りは少ないものの、若干明るいことから、強引に迫られることもないだろう、と。
さらに、運よくタクシーを拾えたなら、そのままホテルに直行してもイイ、と。
いや、それが一番の狙いでも。
あの男たちとの接触をなくせば、梨華にも余計な不安や恐怖を与えるコトもないだろうし、と。
- 229 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:24
-
1つ小さくココロの中で頷いたれいなは、握り締めていた梨華の右手をぐいっと自分の方に引き寄せると、
力強く言ったのだった。
「こっちの方から、歩いて三宮まで歩きましょう」
そして、右の方を指さした。
いつものれいなではなく、とても力強く、自分の前では見せないくらいに、
きりっと凛々しさの感じられる瞳で言い放ったれいなに、少しぼぉっと見とれながら、
梨華は頷くしかなかった。
ただ、無邪気に1つカワイク首を傾げながら。
- 230 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:24
-
信号を渡り切ったあと、男たちのこっちに渡る信号は赤であることから、れいなは"今のうち"とばかりに、
梨華の右手を強く引きながら、足を速めた。
ところが、れいなの思惑は簡単に砕けてしまったのだった。
「速いょ」
そう、少し後ろから聞こえてきた梨華の辛そうな口調に。
れいなは振り返り、その足元に視線を落とした。
そして、少し顔をしかめる。
考えて見れば梨華はブーツであった。
れいなもそうなのだが、自分のモノとは違い、随分と足の細いモノである。
その分、余計に早歩きは辛いのだった。
「ごめんなさぃ」
- 231 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:24
-
しぶしぶ少しスピードを緩めるも、梨華の後ろに男たちの姿が見えると、焦ったれいなは、
"トイレに行きたいから早く帰りたいんです"と、少し強めの口調で言葉を口にした。
そんなコドモのような理由を挙げたれいなに、梨華はいつもの母親のようなキモチが出たのだろうか、
"あらタイヘン"と手を口元に持ってくると、少し足を速めてくれたのだった。
梨華が足を速めてくれたコトに、ほっと胸を撫で下ろすも、次の瞬間には、呆れ顔で暢気なお姫様を一目見る。
しかし、梨華が不思議そうに首を傾げると、ふっと表情を緩めたれいな。
そして、"やっぱり自分が守らなきゃ"、"手だけは離すもんか"と改めてココロに言葉をぶつけたのだった。
〜 ☆
- 232 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:25
-
梨華とは会話もまばらに、それでも手だけはしっかりと握り締め、必死で歩いていたれいなだったが、
頼みの綱だったタクシーは、やはりこういうときほど捕まらないものなのか、全く通りかかる気配もなかったのだ。
さらに、後ろの男たちは虎視眈々と機会を狙っているのか、つかず離れず、ずっとついて来ていた。
また、より悪いコトに、少し道も暗くなり、車の通りもさらに少なくなると、
細い横の路地も狭く、暗くなっていたのだった。
本当にこの道が三宮に前の大通りに繋がるのかさえ、疑問に思えるくらいの道。
どんどん"流れ"が悪くなる。
イヤな予感がれいなの頭の中を駆け巡り始めた。
そして、この道を選択したことにも、少し後悔しはじめていた。
また、こっちの道を選択したときに、"モザイクに引き返す"という選択肢があったことを思いつき、さらに後悔を。
- 233 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:26
-
と、そんなときだった。
疲れた表情で隣を歩いていた梨華が、バックの中から四角い機械を取り出し、"それ"を見始めた。
それを見た瞬間、小さく声を上げたれいな。
そう、完全に忘れていたのだった。
今、一瞬見ても気づかなかった"それ"。
普段なら、れいなの生活の中でも、なくてはならないモノの1つなのに、
焦っていたれいなの頭の中から、完全に消えていたのだった。
その瞬間に、自分のバカさ加減に嫌気がさすも、早速とばかりに、携帯を取り出した。
"手を離さない"と誓ったはずなのに、梨華から手を離して、"それ"を取り出した。
"離さない"と誓ったのに。
- 234 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:26
-
そして、"えり"の名前を探しながら、少し警戒の意味もこめ、後ろを振り返る。
しかし、自分の目に飛び込んできた光景に、"あれ"と不思議そうに小さく声を零したれいな。
少ない。
そう、れいなの目には、さっき6人いた男が3人に減っていたのだ。
もしかして…
ほっと胸を撫で下ろし、小さくため息をついた。
確実ではないが、もしかしたら他の3人は諦めてくれたのかもしれない。
そうなれば、少しは安心である。
このまま三宮の駅に近付けば、どこかに交番もあるだろうから、
今いる3人もいずれ諦めてくれそうな気もしたからだ。
少し安心したれいなは、隣で携帯の画面を見ていた梨華の方に視線を向けた。
ところが、梨華の向こう、細い路地、暗い闇の中、一瞬黒い影が動いたような気がした。
そして、もう一度確かめよう、と、目を細めたれいな。
- 235 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:27
-
その瞬間だった。
梨華の小さな悲鳴がれいなの耳に聞えてきた。
それと同時に、梨華のカラダが、ぐらっと揺れる。
「ぇ?」
自分の目に映っている光景が瞬時に理解出来なかったれいな。
スローモーションで梨華のカラダが路地、闇の方にどんどん引きずり込まれる姿を、呆然と眺めていた。
そして、次の瞬間には、無意識の内に激しい恐怖が襲ってきた。
震える足。
全身を何かに掴まれたかのようなキモチ悪さを覚える。
力が入らなくなる足。
ノドがカラカラになる。
声すら出ない。
そんなれいなの目の前では、何か黒いものに羽交い絞めにされ、口元を押さえられている梨華が、
れいなの方を恐怖の満ちた目で、助けを求めるかのような視線で見つめていた。
声にならない悲鳴をあげている。
「…!!」
その梨華の目を見た瞬間、今梨華に起こっている"全て"を理解したれいなは、叫び声をあげようとしたが、
余りにも恐怖が先行すると、声すら出ないのだろう。
普段呼び慣れた梨華の名前すら、口からでなかった。
- 236 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:27
-
ただ、梨華を"守るキモチ"だけは先行したのか、梨華が自分の方に腕を伸ばしている姿を見た瞬間には、
何も考えずに、れいなも梨華を追い、闇の中に飛び込んだ。
自分の身に危険が及ぶコトなど考えずに。
自分のカラダがどうなっても。
ただ1つ。
梨華を想い。
そして、梨華の伸ばされた手を掴もうと、懸命に手を伸ばした。
しかし、無情にもその手は空を切ってしまった。
その瞬間に、"絶対に手を離すもんか"と誓ったれいなの誓いは、無残にも打ち砕かれたのだった。
もう一度手を伸ばし、梨華のカラダを掴もうとしたれいなだったが、
次の瞬間、自分の手首も"何か"に掴まれた感覚を覚えた。
そして、ぞわっと全身を虫が這いずり回るかのような恐怖とともに、手に持っていた携帯が落ちる。
また、梨華の手からも携帯が乾いた音を立てて落ちるのがれいなの目に入ってきた。
梨華の恐怖に満ちた目が自分を見つめる。
- 237 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:28
-
"守れなかった…?"
ふとそんな言葉が頭の中に浮かんでしまったれいな。
慌てて頭を振る。
勝手に諦めるなんて、そんなのは自分の性格でもない。
しかし…"現実"は無情。
地面に転がり、そして、地面を照らしている2人の携帯の画面から輝く光が、
微かな"希望の光"に見えるも、れいなの目にはそれは"絶望の光"にも見えた。
いや、"希望"の光。
そう思い込もうとしたれいなだったが、次の瞬間、再び"絶望の光"へと変わるのを感じてしまったのだった。
強い"絶望"へと。
れいなの目に入ってきた、梨華のカラダが、カノジョを羽交い絞めにしている"存在"と共に、
スローモーションで地面に崩れ落ちている姿に。
崩れ落ちた"2人"に。
"うそゃ…"
歪むれいなの顔。
深くえぐられる心臓。
溢れそうになる涙。
"自分の目の前"で起きようとしている現実。
"自分の憧れのヒト"が…
これは、自分の責任。
自分のせい。
自分の…
- 238 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:29
-
れいなの携帯の画面では"えり"という名前が映し出され、選択されるのを待っていた。
また、梨華の携帯の画面では"後藤真希ちゃん"という名前が映し出され、
そして、女のコの梨華の名前を呼ぶ声が、梨華の声にならない悲鳴の中、微かに聞えていた。
ただの機械から。
感情もなく、仕事をこなす機械は、持ち主である2人の感情とは関係なく、いつものように仕事をこなしていた。
いつものように。
的確に仕事をこなしていた。
〜 ☆
- 239 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:30
-
夜景を見ながらも、真希の視線は自然と港の方向へと向いていた。
真っ赤に見えるポートタワーと、その隣にある真っ白な円形の観覧車へ。
そして、今、2人がとても楽しい時間を過ごしているコトを想像しては、
梨華が喜ぶ姿が思い浮かび、嬉しさを感じるが、それでもやはり、次の瞬間には不安も。
もうすでにハーバーランドを離れ、2人一緒にとてもシアワセなキモチでホテルに帰っている姿が見えるから。
れいなと梨華が2人で、とてもイイ雰囲気で並んで歩いているその姿。
正直な話し、羨ましいコト。
そう、そのまま、れいなと梨華が2人で、自分だけを置いて、家を出て行ってしまうのではないのだろうか、
自分の元を離れていくのではないのだろうか、とさえ考えてしまっていた。
どこか、遠い世界へ、と。
自分の手の届かない世界へと。
言いようのない不安。
これほどの不安を、これまで感じたコトがなかったのに、今感じる不安。
その自分の中を渦巻いている不安は、異様とさえ言えるくらいのモノであった。
どうしてこれだけ胸が苦しいのか、そして痛いのか。
どうして、これだけ"梨華とれいなに二度と会えないような不安"を覚えるのか。
不思議だった。
そして、ため息。
- 240 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:30
-
なんだか夜景を見ながら、ずっとそのコトを考えてしまっていた真希。
隣にいるあさ美が、とても心配そうに自分を見つめている姿に気がついていたのに。
その点は、少し悪いことをしたのかな、と。
そんな真希は、隣から聞えてきたなつみの"帰ろっか"の言葉に、小さく頷くと立ち上がったのだった。
そのまますぐ隣にきた亜依の手を取る。
そして、亜依のヌクモリに、ほっと胸を温かくさせると、表情が柔らかくなったのだった。
ただ、次の瞬間、真希の携帯がポケットの中、揺れ始めたのを感じた。
長い揺れに、電話であるコトを理解すると、携帯を取り出し、画面を見た。
すると、そこに映し出されていた名前を見て、少しほほを緩めた。
さらに、温かいキモチになる。
さきほど感じた大きな不安がすっと消え、一安心。
"梨華ちゃん"
逸るキモチを押さえて真希は電話に出た。
- 241 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:30
-
「梨華ちゃーん?」
「…」
呼びかけた真希だったが、すぐに返事は返ってこなかった。
少し首を傾げる。
「…?」
ただ、音が何も聞えなかったわけではなかった。
遠くで車が通っている音。
そして、何か布が擦れるような音も。
そのあと、数度呼びかけるも、いっこうに梨華から真希の呼びかけに答える声はなかった。
「…?」
「梨華ちゃんゃないノ?」
亜依の言葉に、頷くも、不思議そうに首を傾げたのだった。
間違えてボタン押しただけなのかな…
それとも…
再び大きな不安に襲われた真希であった。
時刻は、22時半にさしかかるところだった。
とても冷たい風が、ひときわ大きく吹きすさぶ。
- 242 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:31
-
〜 ☆
- 243 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:31
-
〜 ☆
- 244 名前:14〜 投稿日:2005/11/14(月) 01:32
-
〜 ☆
- 245 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/14(月) 19:41
- こんなとこで切らないで。・゚・(ノД`)・゚・。
さゆみきにほのぼのとしていたら、一転して・・・
作者さん、都合もあると思いますが、早めの更新お願いします。
- 246 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/14(月) 20:53
- 更新お疲れ様です。
Σ( ̄□ ̄|||) ついに来てしまいましたか・・・。
次回更新待ってます。
- 247 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/14(月) 23:30
- 石川さん…(;T▽T)
シツレンジャー、出動願います!
(;´Д`)ゞ<らじゃ
(●´ー`)ゞ<らじゃ
|。‘从<………
| ⊂ )
|
- 248 名前:初心者 投稿日:2005/11/15(火) 22:54
- 更新お疲れ様です
さゆえりの微妙なすれ違いがどうなるのか楽しみ
恥ずかしがるミキティそして優しいのが最高です
梨華れなは・・・早く誰か〜
更新待ってます
- 249 名前:風まかせ 投稿日:2005/11/16(水) 12:30
- そういえば、あややは出てないんですよね
一部をのぞき、あちこちのカップルに動きが出てきましたね
楽しみになってきました
更新待ってます
- 250 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/11/18(金) 00:31
-
15〜
- 251 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:32
-
梨華にとって特に意味もなかったが、携帯で真希に偶然電話を掛けようとした瞬間だった。
メールではなく、電話。
普段は電話ではなく、ほとんどメールなのに、そのときばっかりは、なぜか電話を掛けた梨華。
やはり、少し胸騒ぎを覚えたのかもしれなかった。
れいなの様子も、おかしかったコトから。
常に焦っているカノジョの様子。
そんなカノジョに不安を覚えたからか、自然と携帯へと手が伸びていたのだった。
そして、その瞬間、まさに"通話"のボタンを押したときだった。
突然、すぐ左の闇から突き出された細い腕。
その手に、自分の携帯を持っていた手を掴まれると、すっとカラダを引き込まれる感覚を覚える。
いや、本当に引きずり込まれたのだ。
一瞬、何が起こったのか理解を出来なかったが、とにかく、無意識の内に強く振り払おうとした梨華。
少し外れそうになったが、次の瞬間には、声も出す間もなく背中からカラダを抱きかかえられていたのだった。
- 252 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:32
-
そして、街灯の明るさが若干残っていた場所から、暗闇の中に自分のカラダが消えていく頃には、
梨華は、自分に起こっている"コト"を全て理解した。
夢?
その出来事が信じられなかったが、"現実"であった。
もうすでに声は全く出せない状態。
手で口元を押さえられ、もう一方の手はカラダにまわされ、さらにぐいぐいと引きずり込まれる。
また、自分を助けようと手を差し出してくれたれいなの手を掴もうとするも、カノジョに全く届かない手。
さらに、いつの間にか、れいなの手も隣から出てきた手に掴まれていたのだった。
その瞬間に、完全に梨華は恐怖一色に覆われてしまっていた。
これ程の"恐怖"という感情を抱いたのは、生まれて初めてだった。
- 253 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:32
-
ただ、こんなときでも、隣で腕を掴まれているれいなのコトの方が心配でたまらなくなった梨華は、
とにかく恐怖を振り払い、最後の力を振り絞って、自分のカラダを掴む腕を必死で振り解こうとした。
ありったけの力を振り絞って。
しかし、それは全く意味のなさないコトであった。
普段出る力が、全く"でない"今。
どれだけあがいても、完全に抜け出すコトはできなかった。
そして、"抜け出せない"コトを悟ると同時に、"絶望"も感じていた。
やがて、"絶望"を感じると、自然と膝の力も抜け、崩れ落ちていた。
これから自分とれいなは何をされるのか。
いや、自分たちの身に起こるコトは簡単に想像ができた。
ドラマの中では見たコトはあったが、そのときには"悲惨な光景"に現実では起こりえないモノと思っていた。
しかし、今、自分とれいなの身に起こっているコト。
今にも自分の衣服が剥ぎ取られ、そして…
- 254 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:33
-
自分のカラダを、赤の他人の男に奪われる恐怖。
そのコトは、プライドの高い梨華にとって、自らの手で"死"までもが覚悟の対象になるくらいのコト。
自分のお腹に廻された手。
そして、自分の口元を押さえる手。
それらは、"死"を感じるモノ。
また、隣でれいなも自分と同様のコトをされるとなると…
ただ、願った。
れいなだけは、やめて欲しい、と。
自分はいいから、れいなだけは、と。
まだ、コドモだから…やめて、と。
恐怖を感じながら、ただそれだけを。
〜 ☆
- 255 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:33
-
感じている恐怖とは対照的に、自分の背中に感じるカラダは、やたらと温かく、
そしてヌクモリを感じる柔らかいモノだった。
それを"ヌクモリ"と感じた瞬間に、自分の思考まで"恐怖"のあまり壊れてしまったかのような錯覚を覚えた梨華。
さらに、耳元で聞える声にも。
「…まってっ!」
若干鼻に掛かり低いけれど、それでも性別だけは明らに分かるような、声質。
そう、"いやいや"と頭を振る梨華の耳元で聞えてきたのは、女のコの声。
それに気がつくと、一瞬、自分の耳まで壊れてしまったようにも思ってしまったものの、
"壊れている"コトにも"理解"してくると、周りの声も少し聞こえだしたのだった。
「だぁまってっ!」
「イシカワさんっ」
さらに、突然耳に届いてきたれいなの声に、全ての時間が止まる。
すっと力も抜ける。
それと同時に、自分の口元を覆っていた手も外された。
そして、頭が混乱していた梨華だったが、れいながいつの間にか隣で自分の手を握りしめている姿を見て、
さらに落ち着くと、やっと自分の耳元から聞えてきた声が、女のコのモノであるコトを、
しっかりと理解したのであった。
- 256 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:33
-
「イシカヮさん…大丈夫ですょ」
そう囁いたれいなの優しげな瞳。
さっきの恐怖に満ちた瞳から、いつものように自分を慕う瞳、いや、自分を"守る瞳"に戻っているカノジョ。
れいなは、梨華の乱れた髪の毛を手櫛でとぎながら、"安心してくださぃ"と、もう一度優しげに微笑んだのだった。
カノジョの笑顔に、一気に安心感が生まれた梨華は、目の前が熱くなると、
自分の手を握り締めるれいなの手を力いっぱい握り締め、思いっきり抱きついた。
いや、実際には、抱き寄せたと言った方が正解であろう。
次の瞬間には、簡単にれいなのカラダは梨華の胸の中に納まっていたのだった。
とても安心感をもらえるカノジョを。
そして、タイセツに、ぎゅっと抱きしめた。
- 257 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:33
-
取り乱した様子から、少し自分を取り戻してくれた梨華。
さらに、いつもの梨華のヌクモリに、れいなはほっと胸を撫で下ろすと、地面にべったりとオシリから腰を落とし、
震えている梨華の背中をさすりながら、後ろにいた2人組の女のコの方に視線を向けた。
しかし、暗い闇の中、はっきりとは分からない顔。
ただ、会ったコトがないコトだけは確実だった。
さっき自分に声を掛けた関西独特のイントネーションでのんびりした口調の女のコの声も、
梨華に対して掛けていた標準語の女のコの声も聞いたコトがなかったのだ。
自分のコトを未だに抱きしめて離さない、コドモのように震えている梨華の背中を撫ぜてあげながら、
2人の影を、少しだけ警戒した瞳で見つめる。
一方、れいなの手を握った関西弁を話す女のコが、地面に落ちていたれいなと梨華の携帯を拾うと、
急いだ様子で、そのまま自分の手提げの紙袋に放り込む。
それ見たれいなは、視線を再び梨華を抱きしめた女のコの方へと向けた。
警戒した瞳で。
そんなれいなの視線に、梨華を抱きしめた女のコが"そんな場合じゃない"とだけ言うと、
強引に梨華を立たせ、2人の背中を押すようにして、さらに闇の方、つまり北の方に歩き出したのだった。
〜 ☆
- 258 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:34
-
真っ暗な暗闇、それでも前を歩く"梨華を抱きしめた"女のコの手に持っている小さな光を頼りに、れいなは歩いた。
隣で自分の腕を握り締めている梨華の"存在"に安心感を覚えつつ。
やがて、その女のコは、今歩いている小さな路地の右手に、さらに小さな、ヒト1人がやっと通れるくらいの道に、
"こっち"と言いながら入り込んだのだった。
一番後ろを歩く、さっき"れいなの手を掴んだ"関西弁の女のコが、れいなと梨華の背中を押す。
一瞬ためらうも、相手が女のコであるコト、さらに雰囲気として信頼できる"モノ"を感じたからだろうか、
梨華の手を引っ張り、付いて行くことにしたのだった。
いや、こんなトコロで置いてけぼりにされても、それはそれで困るもの。
れいなの強い力に、梨華も素直についてくる。
梨華も、もうれいなの"存在"について行くしか考えていなかったのだ。
隣にいてくれている頼もしい"存在"に。
それ以外のコトは考えてもいないし、未だにさっきの出来事のショックから、
頭の中は真っ白な状態といってもよかった。
そう、はっきりいって、梨華の頭の中では、未だに自分の身に起きたコト、
起きているコトすら理解できていない状態でもあった。
- 259 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:34
-
とても細い道。
梨華とは縦になり、それでも手だけは離さずに歩く。
しかし、それはほんの数メートルだけだった。
若干街灯の明かりを感じ、ヒトが3〜4人は歩けるくらいに広い道にたどり着くと、今度は再び右、
つまり南の方に歩き出した。
数十メートル先には、更に明るさを感じられる道が、れいなの視界に入ってきた。
そして、そこで初めて女のコの後ろ姿のシルエットを目にしたれいな。
カラダの大きさは、さきほど感じたものより随分と小さく、れいなよりほんの少し大きいくらいの女のコ。
短めのスカート、高めのシューズ、上は薄めのブルゾンだろうか。
ショートヘアーの髪の長さは、えりと同じくらいである。
- 260 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:34
-
と、前の女のコを観察していたときだった。
一番後ろを歩いていた、さっきれいなの手を握った関西弁の女のコが焦ったように、それでも小さく声をあげた。
「いるよっ」
その声に振り返る。
すると、関西弁の女のコの向こうに、男が3人、長い長い路地の先、この路地に入ってくるが、
微かに目に入ってきた。
先頭歩いていた女のコは"簡単に見つかるなんて"と、舌打ちをすると、関西弁の女のコと一緒に、
慌てたようにれいなと梨華の手を取り、さらに足を速めた。
そして、さっきから見えていた明るい道の方へと、飛び出した。
- 261 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:35
-
片側3車線はある大きな幹線道路。
数多くの街灯。
ただ、そんな道路の規模とは相反し、車の通りだけは、ほとんどない。
れいなと梨華は2人の女のコに引っ張られるようにして、左の方に歩き出した。
「あれ…」
少し歩き出して、ふと声が零れたれいな。
そう、その道にれいなは見覚えがあったのだ。
いや、梨華も。
その道は、さっきまで2人が歩いていた道だったのだ。
つまり、少しだけ先回りをして、同じ道に出たということになるのだろう。
全く同じ道に。
ただ違うのは、さっきまで2人だったのが、今では4人になっているということだけ。
そして、少し落ち着いて歩くれいな自身。
〜 ☆
- 262 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:35
-
「なんでこっちにきちゃったの?」
「狙われとったン、気付かンかったン?」
呆れた口調で言ってきた少女2人の口調に、隣で自分の腕を握り締めて離さない梨華を心配そうに見つめながら、
少々むっとなるれいな。
当初の自分の選択が間違っているコトを、こうまでびしっとした口調で非難されると、
自分が梨華をキケンに落としいれているとでも言われているように思えるのだ。
しかし、地元の人間にしたら、こっちに来たコトの方が選択肢として間違っていたのだろうが、
そのときは必死に考えた末なのに、と、少し凹んだれいな。
小さくため息をつくも、この女のコは、自分たちを心配して追いかけてきてくれた女のコであり、
そして、このコたちのおかげで、今では先程までとは比べ物にならないくらいに安心して、
梨華の手を握り締め、同じ道を歩いているのだった。
一瞬感じた恐怖は随分と大きなモノであったのだが。
そう、やはり、2人よりは4人の方が襲われる確率も低くなるものだし、そう簡単に手出しも出来ないであろう。
この点に関して、素直に感謝をしていた。
- 263 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:35
-
「うゎ…また6人になりよった」
「しつこいなぁ
4人になったら諦めると思ったのに…」
しかし、まだまだそう簡単にはいかないようだ。
とにかく、この2人は味方であるコトだけは、確実。
梨華も徐々に落ち着きを取り戻してきたのか、口は全く開かないものの、
それでも足取りだけは、しっかりとしたものになっていたのだから。
そして、ここまでの2人とれいなとの間での会話と、先ほどの2人からの挨拶がてらの洗礼から、
自分の置かれていた状況を知り、"あんな端っこ歩いてたら、引きずり込んで下さいって言っとぉモンやで"の言葉に、
少し顔色を悪くしていたのだった。
"れぃなは気付いていたの?"の言葉に、気まずそうに頷いたれいなを見て、少し泣きそうに目じりを下げるも、
次の瞬間には、自分の手を握り締めた梨華の力が強くなり、いつもの負けず嫌いな部分が出たコトに、
少しだけほっと胸を撫で下ろしたれいなだった。
- 264 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:36
-
梨華の様子に安心をしたれいなは、再び、梨華と自分の前で、
歩きながら相談をしている2人の女のコの方に視線を向けた。
「ねぇ、どないしょ」
「んー、とにかく三宮の駅。
このままフラワーロードまで行って、三宮。
ゆぃちゃんは、後ろ見ながらだからね」
「ぅーん、東公園過ぎるまでは安心できへんょね…」
「うん
多分公園過ぎたら、交番もあるし、諦めてくれるはずだけど…
公園が…問題かな…
もー、ゥザすぎ」
そこで初めて2人の女のコの顔をしっかりと見たれいな。
可愛らしく、おとなしげな容姿とは対照的に、意外と強気の発言をしている女のコ2人。
- 265 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:36
-
と、その2人の女のコを見た瞬間、どこかで見たコトがある2人だな、と感じたれいな。
切羽詰まった状況ながら、少し気になったれいなは、首を傾げ、まじまじと2人の女のコを見つめたのだった。
1人は、カワイイ顔立ちをしたブラウンのショートヘアーをした女のコ。
柔らかいスカートから覗く足はすらっとしてキレイであり、とてもスレンダーなスタイルをしている。
地元の人間のような口ぶりなのに、話している言葉は関東方面の言葉であるコトが少々奇妙にも映る。
また、もう1人は、目じりのさがった瞳と、ウェーブを少し掛けたロングヘアーをアップで束ね、
とてもお嬢様的な雰囲気を出している女のコである。
そして、さっきからショートヘアーの女のコと話している口調は、とてものんびりとしたモノであり、
強い関西弁を話していた。
どこかで見たような気がした2人。
そこで、記憶の糸を手繰り寄せようとしたれいなは、少しづつ時間を遡らせようとしたのだが、
それは時間をほんの1時間も遡らせないうちに、完全に手繰り寄せられたのだった。
そう、ほんの1時間前。
- 266 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:36
-
そして、その瞬間に、大きく声をあげてしまったれいな。
「あっ!」
隣にいる梨華が不思議そうにれいなを見つめる。
しかし、今はそれどころではない、れいな。
驚きのあまり、口をぱくぱくさせ、2人を指差した。
「…なに?」
先頭を歩く、スレンダーなショートヘアーの女のコがれいなの方を見る。
「さっき、えっちなコトしとった2人…」
「ぇ…?」
れいなの言葉に、梨華も少し驚いたように目を開くと、まじまじと2人を見つめたのだった。
そして、"ホントだ"と呟いた。
そう、この2人は、さきほどれいなと梨華がモザイクの夜景を最後に楽しんだ場所で、
2人の世界に入り込んでいた女のコだったのだ。
「ぁ…今頃気がついたン?」
隣を歩いていた強い関西弁を話す女のコが、相変わらずのんびりした口調で、梨華とれいなを交互に見ると、
"ぅちらは気付いとったょ"と少し笑顔を零した。
- 267 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:36
-
2人の話によると、2人は、れいなと梨華がモザイク・ガーデンに来たときからその存在に気がついていたそうだ。
最初は、この時間に女のコが2人っきりで来ているコトに、少し"ナカマ意識"を感じ、
2人の様子をほのぼのと眺めていただけだったのだが、れいなと梨華の2人が、
モザイクが閉店してからハーバーランドの方に回った姿を見て、2人の行動が心配になりはじめたのだった。
カップルなら定番の行動なのかもしれないが、女のコ2人組の行動。
さらに、そのまま国道の方に歩いていた姿を見て、地元の女のコではないコトも簡単に想像できたコトから、
余計に心配になり、少し離れて付いて行くコトにしたのだった。
そして、案の定、2人のあとをついて歩き始めた6人の男たち。
どんどんエアポケット的な場所、ひと気、交通量の少ない場所に近付いていたコトから、
さすがにアブナイと感じた2人は、先回りして合流をしようとしたのだが、やはり早い足取りから、
なかなか追いつかなかったのだ。
- 268 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:37
-
1つ隣の筋を通り、やっと男たちを追い越そうとしたとき、男が二手に分かれている姿を見て、
さらに焦った2人は走り出し、梨華とれいなを追い越すと、とにかく行動に起こしたのだった。
狭い路地に引き込んで、少し説明をし、その路地から1つ隣、先の路地まで渡ったあと、
相手の男たちの裏をかき、再び幹線道路の方に出てから逃げるつもりだったそうだ。
ただ、そこまでは作戦通りだったが、まさかあの路地で見つかるとは思わなかったらしく、
その点は失敗だったと、反省も。
さらに、梨華に対して与えてしまった"不安"に対しても。
そう、あのとき、息も切れ切れ、また、説明する言葉をあまり考えていなかったコト、
さらに、梨華があまりにも抵抗するコトから、梨華の口元、カラダを押さえ込むような、
ああいう行動になってしまったそうだ。
それは随分と反省しているらしく、素直に"ごめん"と謝った2人。
余計な不安を与えてしまって、と。
しかし、次の瞬間には、この時間に出かけるのは、普通にキケンだから、と、気をつけないと、と、
本当に心配そうに表情をしかめたのだった。
その言葉に、なつみの言葉もあったコトから、素直に反省をした梨華とれいなの2人だった。
〜 ☆
- 269 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:37
-
「なぁんやぁ、東京からきたンかぁ」
「ぅん
アルバイト先のみんなとト」
「ト?」
「と?ト。」
「とト?」
「…」
岡田唯と名乗った、隣にいる関西弁の女のコとのやり取りは、少々空気の流れがれいなや梨華とは違うコトもあり、
なかなか会話がすっきりと成立しない問題点があったが、それ以外は普通の女のコであった。
ごく普通の。
いや、第一印象がディープキスであるコト以外は。
ま、お世辞にも、第一印象はイイとは言いがたい。
なにしろ、目の前を歩いている三好絵梨香と名乗ったショートヘアーの女のコとのディープキスである。
女同士のディープキス。
フレンチキスならまだしも、である。
女のコとディープキスをして、もの凄い天然ボケであるコト以外は、とても普通の女のコであり、
ヒトの空気も癒してくれるコである。
唯のおかげもあり、れいなのココロの中が、随分と安心したモノで覆われていたのだ。
さらに、後ろから追われているという事実にも、恐怖を感じるというコトはなくなっていたのだった。
それは、れいなの隣で手を繋いで歩いている梨華もしかりであった。
れいなの手に感じる梨華のヌクモリも、今日何度も感じていたモノと同じになっていたのだ。
そして、ときどき2人のやり取りに笑顔も浮かべてくれたりもした。
その笑顔に、さらにれいなも笑顔が浮かぶ。
- 270 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:37
-
そう、"あのとき"の梨華の表情は、思い浮かべただけでもれいな自身辛いキモチになるし、
確実に、梨華をとても辛い感情にさせてしまったのだから。
実際には、絵梨香と唯が焦って、しっかりと理由を説明せずに、衝動的に移した行動だったのだが、
そのときの梨華は確実に相手は男であると思い、そして自分は"犯される"と思っていたのだ。
その"恐怖"がどれだけのモノか。
れいなも、実際に体験をしたと言ってもいいコトから、ある程度分かる。
ただ、れいなの場合は手を掴まれたあとに、すぐに掛けてくれた唯の声を理解できたコトもあり、
声を掛けている絵梨香の声を全く認識できなかった梨華ほど"辛い"というキモチはなかったのだが、
それでも、手を掴まれた一瞬だけだが、そのときに"怖さ"を味わい、梨華の"キモチ"は分かるのだった。
もちろん、梨華の身に起こるであろう出来事を想像したときの、そのときの"辛さ"は、
自分のカラダに起こるであろう出来事の比ではなかったのだが。
やはり、梨華に比べたら。
- 271 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:38
-
それだけ辛い"時間"を味わった梨華も、今では表情が随分と柔らかくなってくれたのだ。
そんな梨華の様子に、れいな自身も、ほっと胸を撫で下ろしていたのだった。
しかし、未だにしっかりと自分の手だけは離さないのは、少しだけでも"そのときのキモチ"が残っているのだろう。
れいなも、あのときの"後悔"だけは、しっかりと胸に焼きついているコトもあり、
梨華の手を離すコトは出来なかった。
そして、改めて梨華の手のヌクモリを感じ、自分自身が安心感を貰うのだった。
ただ、次の絵梨香の言葉に、再び緊張感を覚える。
そう、さっきからずっとこのようなカンジでのんびりと話している唯に向かって、
いや3人に向かって絵梨香が少し怖い顔を作った。
「安心しちゃダメ
公園の横抜けるまで」
絵梨香の言葉に、"その公園"のコトが少し気になったれいな。
首を傾げる。
「そげんに、キケンな場所ト?」
「ぅん
確実に人通りは"ない"し、公園自体周りを高い木に囲まれてるから、
中に連れ込まれちゃったら、"どんなコト"されてても誰も気付いてくれないよ」
少し冷たく、残酷に言葉を発した分、より"それ"が恐怖を受ける言葉に聞えてきた。
そう、自然と鳥肌が立つ。
- 272 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:38
-
梨華も、"あのとき"のキモチを思い出したのか、少し強めにれいなの手を握り締め、
さらにれいなにカラダを寄せたのだった。
その姿は、とてもか弱い女のコのモノ。
今にも泣き出しそうな女のコ。
普段のおねえさんのような梨華の振る舞いは、今は完全に身を潜めるカタチとなっていた。
そして、完全にれいなのコトを頼りにしているのか、常に身をれいなに寄せているのだ。
いつもは自分を慕ってくれているカノジョに。
ただ、そんな梨華の、自分を頼りにする姿に、れいなは少しだけ嬉しさも感じていた。
普段は梨華を追いかけるだけである自分なのだが、今は自分を追いかけてくれるのだ。
それが、どれだけれいなにとって嬉しいコトか。
梨華のキモチを思うと罪悪感も感じるのだが、それでも嬉しさは隠し切れなかった。
そして、改めて梨華だけは"守る"というコトを、決心したのだった。
今度は、確実に。
- 273 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:38
-
"うん"となにやら気合をいれ、大きく頷いたれいなを、不思議そうに見つめた唯。
しかし、その次の瞬間には、ふと思うコトが。
それは、れいなに随分とカラダを寄せ、不安げに目じりを下げている梨華を見て、
さっきモザイクで見ていた2人とは、全く違う関係の2人にも見えていたのだった。
あのとき見た限りでは、確実に背の高い梨華は"お姉さま"であり、
梨華より一回りは小さなれいなは、"イモウト"であった。
"お姉さま"を慕う"イモウト"。
まさにその構図が見えていたのだ。
また、それが"憧れ"だけにようにも見え、さらに2人の容姿と、感じられた年齢の差から、
コイビト同士にも完全に見えそうにもなかったのだ。
しかし、今は少し違う関係にも見える2人。
そう、実際はどうなのであろうか、ふと思ってしまった唯。
そうなると、無性に聞きたくなってしまったのだった。
そのまま、のんびりと隣にいるれいなの耳元で囁いたのだった。
梨華と、今はまだぴりぴりしている絵梨香には聞えないように。
「イシカワさんとは、どんな関係ナン?」
- 274 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:39
-
突然聞かれたその質問の内容に、一瞬、間抜けに表情を緩めるも、いやいや、と再びきりりと表情を引き締める。
しかし、やはり"このヒトは…"と、再び呆れ顔になるのだった。
「ねぇどぉなんよぉ」
「…」
唯は、どうやらあさ美とえりの2人を足して、2で割ったような女のコであることが、
このほんの30分にも満たないコミュニケーションの中で、理解できてしまったれいなであった。
のんびりとした空気を持っているあさ美。
空気の読めないえり。
ある意味"のんびりとした空気"と"空気を読めない"という2つの特徴は、正反対の性格の人間からすると、
この上なくイライラしてしまうものなのかもしれない、と、ふと感じるれいな。
どちらかといえばれいなとは反対になるのではないのだろうか。
ま、今は、この女のコの空気のおかげで、自分のキモチにも余裕が生まれ、梨華にも笑顔が零れているのだから、
意外とこのような性格もいいかも、と少し思ったのであった。
- 275 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:39
-
「アルバイト先の…センパイ」
素直に答える。
しかし、その答えに、明らかに不満げに眉をしかめた唯は、"ちぃがぅってば"と少々大きな声で非難の声をあげた。
その声に、少し気まずそうに視線を落とすれいな。
唯の非難の原因は簡単に分かったのだが、さすがに梨華がすぐ隣にいると、気まずい。
いや、声の大きさから、2人の会話はそこまで梨華には届かないコトは分かってはいるものの、
それでも、と口は重たかった。
真実は、もうすでに語っている。
アルバイト先のセンパイ。
それだけである。
しかし、深い真実となると、簡単には口からは出ないものであった。
いや、むしろ、れいなが聞きたいくらいであった。
隣にいる梨華に対して。
ただ、梨華にしたら"カワイイ後輩"とだけ言うのであろうコトは、簡単に想像はできたのだが。
それでも、日頃の梨華、今日の梨華を見ていたら、もしかしたら、と、
自分の優先順位は本人が思っている以上に高いかもしれない、という微かな希望はあるのだ。
それを考えると、唯には、自分より隣にいる梨華に対して、この質問を投げかけて欲しかった。
それが、素直な感想。
- 276 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:40
-
「う〜ん…」
自分にとって、この上ないくらいに難しい質問であるから、思わず唸っていたれいなであった。
「唯ちゃん、こんなときに何聞いてるのよっ」
そして、そんな考え込んでしまっていたれいなの助け舟とばかりに、先頭を歩いていた絵梨香が、
きりっと表情を引き締めたまま、2人に向かって強い口調を投げかけてきた。
その絵梨香の言葉で、これで質問に答えなくてよくなったと思い、ほっと胸を撫で下ろすも、
次の瞬間には、少し青ざめていたれいな。
そう、つまり梨華にも聞えていたコトになる。
"アルバイト先のセンパイ"
- 277 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:40
-
慌てて梨華の方を見るも、梨華は特に興味なさそうに前をじっと見つめていた。
他の3人が話をしているのに、1人だけ前を見ているというのは、少々可笑しな光景だが、
なんの感情も読み取れないコトから、やはり梨華は本当に気にならないコトだったのかもしれない。
そうなると、れいなは少しだけ後悔も。
"タイセツなセンパイ"とでも、恥ずかしがらずに答えたら、
それはそれで梨華に少しアピールにもなったのかもしれなかったのだ。
少し、いや、大きな後悔。
唯が"はぁ〜ぃ"とのん気に絵梨香に答えている隣で、少し空気を重たくさせているれいなは、
自然とため息を零していたのだった。
- 278 名前:15〜 投稿日:2005/11/18(金) 00:40
-
〜 ☆
- 279 名前:なまっち 投稿日:2005/11/18(金) 00:44
-
と、少しだけ空気が戻ったところで…
さんざん煽ったのに…(ぉぃ
お助けキャラとして、この2人を出したのは、現実でもこれからイシカワさんを助けていって欲しいなぁと
願望を踏まえてのコトです^^
最初は、普通に好まれそうなヒトとして、れすをして頂けた方の中にもあった、
姫路出身のあややを出そうと考えておりましたが…やっぱり(ぅんぅん
まぁ、あややに関しては、のちほどもしかしたら…(意味深…だけど意味なし…?
モザイクの中での2人の紹介表現は、全く分からなかったですね(がく
まぁ、全然思いつかなかった挙句の果てがあんな人物紹介です(ぉぃ
次回は…もうちょっとれいなには頑張ってもらって、イシカワさんを守ってもらいたいと思います^^
本当は、今回で一度に更新しようと思ったのですが、あまりにも量が多すぎたので、次は結構早めに更新を^^
それでは失礼します。
>>245 名無飼育さん
ごめんなさぃ…ちょっと遅めに…
でも、少し安心していただけましたでしょうか^^?
ただ、まだもうちょっと試練は続きます…
>>246 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
まだまだもうちょっとこの状態は続きます…
うぅ…
>>247 名無飼育さん
一番下の人物にちょっとどきっとしてしまいました(w
でも、ちょっと笑って…(ぉぃ
ありがとうございます^^
(;´Д`)<梨華ちゃん…どうしたんだろ…
(●´ー`)<ごっちん。梨華ちゃん…?
(;´Д`)<うん…電話が掛かってきたんだけど…
(●´ー`?)<…
>>248 初心者さん
ありがとうございます^^
ちょっとさゆえりみきにはしばらくの間試練を…
みきてぃの優しさに喜んでもらえて嬉しいです^^
長くなりそう…
>>249 風まかせさん
一部をのぞき、ですね(ぁせ
でも、そろそろその一部も動かしていきたいなぁと^^
ぁゃゃは…上でも書きましたとおり…どうなるのかなぁ〜(ぉぃ
みなさん、れすありがとうございました〜
- 280 名前:なまっち 投稿日:2005/11/18(金) 00:44
-
〜 ☆
- 281 名前:なまっち 投稿日:2005/11/18(金) 00:44
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〜 ☆
- 282 名前:なまっち 投稿日:2005/11/18(金) 00:45
-
〜 ☆
- 283 名前:初心者 投稿日:2005/11/18(金) 22:33
- 更新お疲れ様です
ひとまずホッ。しかしまだまだ気は抜けませんね、れいな頑張れ
さゆえりみきの試練はまたいろいろと期待します
更新楽しみに待ってます
- 284 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/19(土) 10:16
- 前の更新では小説なのに本気で焦ってしまいましたよ、あんなところで切られるからっ!
まだまだ余談は許さないですけども。
あ、ところで、「フレンチキス」と「ディープキス」って同じもののような…
自分もほかの小説で知ったし、意味は通じると思うので大丈夫かとは思いますが。
いつも楽しみに見ております。頑張ってください。
- 285 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/20(日) 01:30
- 更新お疲れ様です。
なんだかホッと一安心でした。
最悪な状態にならず、この調子で行きましょう。
次回更新待ってます。
- 286 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/11/20(日) 02:02
-
16 〜
- 287 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:03
-
絵梨香の言うフラワーロードは、三宮の駅をかすめるように、南北に縦断する大きな通りのコトである。
歩道やセンターブロックなどに季節季節の花が植えられ、
歩いているだけで季節を感じるコトができるステキな道である。
今、れいなたちが歩いている大きな国道は、南東に進み、三宮の駅の南でフラワーロードと交差をするのだ。
その道は車の通りも少しは多くなるものの、ヒトの通りはほとんどまばらであるトコロだ。
そして、その通りを三宮駅に向かって西側の東公園、正式名称は東遊園地、
その場所が一番最後の難関とも言っていた。
ヒトの通りもまばらなコトから、自分たちがその公園に連れ込まれても助けてくれるヒトもいないコトから、
確実に抵抗をしても無駄であるコトが想像できたから。
そのコトから、絵梨香は、東公園がある側の歩道を通らずに、反対の通りを通るコトを考えたのだった。
そっちなら、小さな通りの奥には暗い駐車場などがあるものの、それでも東公園の側と比較しても、
明るい場所なのだ。
- 288 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:03
-
ただ、相手もそれは予想してくると思えたコトから、絵梨香は更に悩んでいるそうだ。
もしかしたら、東公園に差し掛かるトコロではなく、フラワーロードに入る前に襲ってくるコトも考えられたから。
フラワーロードに入る前に、何本かの路地は全て東公園に通じる道であり、その周辺は全て駐車場、
または、企業が集まった地区でもあることから、この時間であれば、ヒトに見つかるコトなく、
簡単に東公園まで連れ込める可能性があるそうだ。
いや、絵梨香が反対の立場だったら、必ずそこで襲うとも話していた。
できれば、そこまでにタクシーを拾えたら、とも。
その言葉に、改めて恐怖を感じたれいなと梨華であった。
- 289 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:03
-
どんどん緊張感が増す中、突然立ち止まった絵梨香。
そのまま振り返ると、れいなと梨華に"止まって"と、手で軽く合図をした。
そして、"振り向かないで"と。
素直に立ち止まるれいなと梨華。
唯も絵梨香に並ぶようにして、れいなと梨華の方を振り返り、立ち止まった。
「大丈夫なン?」
先程歩いていたときとは比べ物にならないくらいに、ぎゅっと自分の左腕を強く握り締めている梨華の腕を、
軽く、安心させるようにさすってあげながら、心配そうに絵梨香に尋ねた。
「うん、止まってる」
その言葉に、少しほっと胸を撫で下ろす。
ここで止まっていたら、とりあえずは安心なのかもしれない。
ただ、このままずっとココにいるわけにもいかないのは、当然であろう。
絵梨香が立ち止まった理由が分からなかったが、確実にずっとココにいるのも、キケンである。
「どうしたン?」
れいなの言葉に、唯が代わりに"もうすぐフラワーロードゃねん"と呟いた。
そう、そして、あと50mも歩けば、心配している路地が、数本存在する場所となるそうだ。
その言葉と、絵梨香の緊張した表情に、れいなも表情が強張る。
自分の腕を握る梨華の力も一段と強くなる。
- 290 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:04
-
と、その次の瞬間だった、絵梨香の表情が一層強張ったのだった。
そして、"歩き出したよっ"と声にだし、れいなと唯の腕をぐいっと引っ張ったのだ。
そのまま足早に歩き出す。
足がもつれつつも、引っ張られるようについて歩く、れいな。
れいなの手に引っ張られる梨華。
一瞬、意味が分からなかったが、歩きながらの絵梨香の"アイツらがこっちに向かって歩き出したの"との説明に、
再び鳥肌が立つと、梨華の手を一層強く握り締めたのだった。
自分たちが立ち止まっているコトに、しびれを切らしたのだろう。
埒が明かないと、そのまま東公園の路地の方まで、連れ込もうと考えているコトが、安易に想像できた。
梨華のコトを考え、歩調を合わせていたれいなだったが、少し後ろを振り返ると、
さっきより男たちとの距離が随分と縮まっているコトに気がつき、再び恐怖に襲われたのだった。
表情が強張る。
ただ、そんな自分に気がつき、梨華の表情にも"恐怖"が見えると、その瞬間に無性に腹が立ってきたれいな。
「なんでうちらがっ」
強いキモチが生まれる。
- 291 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:04
-
半分キレそうになりつつも、梨華の手をひっぱる。
そんなとき、梨華も男たちが気になったのか、後ろを振り返ろうとした。
その様子に気がついたれいなは、慌てて"だめですっ"と声を荒げる。
見るだけでも、さらに萎縮してしまい、余計な恐怖を与えてしまうコトを恐れたのだ。
そのまま、梨華のカラダをぐいっとひっぱり、自分の左前に出し、背中から手をまわして押し始める。
「あ…うん…」
梨華が再び足を足を速めてくれたコトに少しほっとなるも、もう一度距離を測るため振り返ったれいな。
ところが、後ろの様子を見て、青ざめたのだった。
"あのとき"のコトを思い出すと、慌てて絵梨香に声を掛けた。
「また二手に別れとーよっ」
「えっ!?」
れいなの目には、3人の男しか映っていなかったのだ。
その瞬間に、無意識のうちに梨華を道の方押し出し、自分のカラダを路地に近い方に押し込んだ。
そして、左の路地を警戒しながら、足早に駆け抜ける。
- 292 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:04
-
やがて、フラワーロードまで60mを切り、路地の数もあと3本となっていた。
その路地さえ抜けたら、あとはフラワーロードを突っ切り、向こうの路地から三宮を目指してもよいし、
信号が赤でも、道にでも飛び出し、車が通りかかっていたら助けてもらうとかすればよいのだ。
フラワーロードの街灯の光が、少しだけ希望の光に見え始めたれいなたちだった。
フラワーロードにさえ、出れば。
ところが、あと2本となったとき。
ふっと気が抜けそうになったそのときだった。
一番最後の路地から飛び出してきた男たち。
その姿に、随分と早く動いていた心臓が、一際大きく跳ね上がると、れいなたちは一斉に足を止めたのだった。
いや、止まらざる終えないというのが、正しいだろう。
道をふさがれるようにして、立っていたのだから。
そして、後ろから追いついてきた足音も、数十メートル後ろで止まるのが聞えてきた。
- 293 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:05
-
「やばぃ…かな…」
絵梨香の言葉に、頷くしかなかったれいな。
唯も絵梨香の腕にしがみ付く。
れいなは、震えている梨華を抱きしめ、背中をさすってあげながら、少し後ろを警戒する。
完全に立ち止まり、自分たちを眺めているその様子は完全に楽しんでいる、そのものであった。
その姿に、さらに腹が立つれいな。
「ムカつく」
なにより、梨華をこれだけ震えさせているのが許せなかった。
いつものおねえさんのように自分を見てくれている梨華の姿が、完全に消えてしまっているのだから。
自分が男だったら…
今ほど悔しさを感じたコトはない。
梨華を守れるのに、と。
これだけ怯えて自分を強く握り締めている梨華を守れるのに、と。
- 294 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:05
-
と、さらに強い怒りを覚えたれいなだったが、
次の瞬間、ふっと自分を握り締める梨華の力が抜けるのを感じたのだった。
まるで、これまでの緊張感が一気に抜けてしまったかのような、梨華の力。
あまりにもの豹変ぶりに、不思議に思うのを通り越し、心配にもなってしまったれいなは、
梨華の方を見ると、当の本人は呆然とした表情で向こうに立ちはだかっている男たちを見ていた。
いや、男たちではない。
視点が完全に遠いものを見るモノになっていた梨華の視線の先。
れいなも、そっちの方に視線を向けた。
すると、男たちが陰になり、はっきりとは分からないが、なにやらヒトの影が見えていた。
随分と久しぶりにも感じられる"ヒト影"だったが、その"影"が何かに気がつくと、自然と声が零れていた。
「ぁ…」
一瞬、自分の目を疑ったものの、自分たちの方に手を振る小さな影が四つ。
そして、その小さな影の後ろにいる、2人のヒト。
しっかりとその姿形を認識したれいなは、思わずへなへなと力が抜け、梨華のカラダに抱きついていた。
手を振る梨華に。
その梨華の様子に、絵梨香と唯も梨華の手を振る視線の先の姿を確認すると、ほっと安心したように表情を緩め、
大きくため息をついたのだった。
梨華とれいなのトモダチであるコトに、簡単に気がついた2人は。
さらに、その後ろにいる、制服を着ている2人の男性の姿を見て。
- 295 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:06
-
そう、4人の視線の先には、ジャンプをしながらこっちに向かって手を振る愛とあさ美、
2人の後ろには、ほっとしたように笑顔を零しているなつみと真希の姿があった。
さらに、4人の後ろには警察官のヒトがいたのだった。
その姿、警察官の姿を見て、前にいた3人の男たちは観念したのか、それとも開き直っているだけなのか、
以外とおとなしく道の端に寄ったのだった。
梨華にもたれ掛かりながら、なつみたちの姿をもう一度はっきりと認識すると、
れいなは、今度は後ろを振り返った。
そして、先程まで後ろにいた3人の男たちの姿がいつの間にか消えていると、
それを確認した警察官の1人が追いかけ始める。
その姿に、すっと安心感を覚えたのだった。
〜 ☆
- 296 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:06
-
1人の警察官が、無線で応援を頼み、3人の男たちを路地の方に向かわせ、事情を聞いている間、
れいなと梨華は久しぶりにナカマたちとの再会に、ほっと胸を撫で下ろした。
とくに、梨華。
いつものふにゃとした笑顔の真希がすぐ前にきた瞬間、一気に緊張感が抜け切ってしまったのだろう。
梨華は、真希に抱きつき、"怖かったんだからっ"と泣き出してしまった。
これまでれいなが見たことがないくらいに、涙を流し、泣いている梨華。
そして、真希は、そんな梨華を優しげに抱きしめると、背中をさすってあげ、
自分の首筋に顔を埋めているカノジョの頭を優しく撫ぜてあげていた。
その2人の様子に、れいなは複雑な表情を浮かべるのであった。
無事に戻ってこれた安心感を感じながらも、少しの落胆。
やはり、自分のコトは頼ってくれなかったのかな、と。
真希の存在の方が、はるかに大きいのかな、と。
まだまだ追いつけないのかな、と。
無事になつみたちの元に戻ってこれた安心のあとには、少々凹んだキモチが残ったれいなだった。
- 297 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:06
-
「ホントに、危なかったんだ…」
唯と絵梨香に軽く会釈をし、れいなのそばに来たなつみが、少々驚いた様子で聞いてきた。
そして、れいなが頷くのを見て、顔を曇らせる。
なつみのすぐ後ろにきた愛とあさ美も、同様に表情を曇らせた。
しかし、そのなつみたちの様子に、今度はれいなが不思議がる。
そういえば…
どうしてなつみたちが"ここ"にいるのだろうか、と。
れいなはもちろんのコト、梨華も連絡は入れていなかったはずである。
あのときに携帯を開けて画面を見てはいたものの、メールを打つでもなく、ただ見ていただけに思えたのだ。
さらに、その梨華の携帯は、唯の紙袋の中に入っていたはず。
「あっ…」
そこで、れいなも思い出した。
自分の携帯も、ずっと唯が持っていたコトを。
- 298 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:07
-
「携帯…」
「あぁ…ごめんごめん、返さナ」
唯が紙袋から携帯を取り出す様子を眺めながら、"そういえば…"と、
れいなはさっきから疑問に思っていたコトを、なつみの方に顔を向け、口にした。
「どうして安倍さんたちが、ここに来てくれたのですか?」
そして、開いたままの携帯を唯から受け取り、"ありがと"と一言、画面を見る。
適当にボタンを押すと、路地に飛び込んで携帯を落としたときの画面がそのままれいなの目に映し出された。
えりの電話番号が表示されている画面。
その画面をキャンセルし、携帯を閉じて、なつみの方を見やった。
「これ、イシカワさんの」
「ぁ、ぅん。
ぁりがと…」
なつみの方を見ながら、れいなはもう一個梨華の携帯も唯から受け取った。
そして、まだ開いたままのそれを閉じる。
- 299 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:07
-
「それだょ」
「ぇ?」
"それ"が何を指しているのか、一瞬理解出来なかったれいなが、不思議そうに首を傾げる。
「いしかーさんの携帯」
そんなれいなの表情に、愛はぽんぽんと頭を撫ぜてあげると、カノジョの手に握られていた携帯を自分の手に取り、
そのまま開き、画面を見たのだった。
しかし、"ぁ、もぉ切れとぉ"と素っ頓狂な声を"愛"らしい口ぶりで零すと、携帯を閉じた。
そして、"閉めると切れるんゃな"と、1人感心したあとに、れいなの方を見て、にっこりと微笑んだ。
「ごとぉさんの携帯に電話が掛かってきて…そのままずっと繋がりっ放しゃったんゃよ」
「したら、ごっちんがじぃっと携帯の前から動かなくて、気がついたら、2人を迎えに行くって言い始めちゃって…」
なつみはそのときの様子を思い浮かべたのか、少し肩を竦める。
ただ、それでもとても優しげに表情を崩し、未だに6人の後ろで泣いている梨華を抱きしめている真希を見つめた。
愛、あさ美も。
普段の梨華の保護者ぶりと、真希の関係が、全く正反対になっている2人を。
- 300 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:07
-
なつみの話によると、夜景を見終えた面々が、それぞれ待たせてあったタクシーのトコロまで戻り始めたところ、
1人真希だけが、展望台の上でずっと携帯に耳を傾けていたそうだ。
自分から話をするでもなく、ただひたすら携帯を耳に当てているカノジョの様子に、
少し不思議に思ったものの、しばらく待っていたなつみ。
すると、はっと何かに気がついたのか、真希が慌てたようになつみのそばにくると、
"梨華ちゃんと田中ちゃん迎えに行こう"と言い出したのだった。
最初、意味が分からなかったなつみだったが、2人が歩いて三宮の駅の方に歩いているはずだから、と、真希。
そして、少しキケンな場所だから、迎えに行ってあげないと、と。
あまりにも一生懸命に、真剣な表情で話すコトから、とりあえず、このあたりに詳しい愛と、
真希と一緒のタクシーに乗りたがったあさ美を引止め、圭織だけにこのコトを話してから、
4人で一番最後のタクシーに乗り、三宮まで来たそうだ。
その車内で、梨華とれいなが男たちのグループに追いかけられて、
三宮の駅の方に歩いて逃げているかもしれない、と話を聞かされたのだった。
ずっと携帯に耳を傾けていた真希に。
- 301 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:08
-
そのときに、"これが証拠"と、未だに梨華と繋がっている携帯を渡されたのだった。
ただ、なつみたちの耳には、がさがさと何かが擦れる音しか聞えなかったのだが。
真希の耳には、しっかりと声が聞えているらしい。
切るに切れない携帯。
そう、切って再び掛けるのがよいのかもしれなかったのだが、梨華はマナーモードにしているコトから、
おそらく気付かないコトが想像できたから。
真希にとって、その携帯だけは切れなかった。
梨華との関係を切るように思えて。
真希の言葉を、一瞬、信じられなかった3人だったが、その言葉、そして、余りにも真剣な表情で話し、
携帯から手を放さないカノジョに、次第に信じざるおえなくなっていたのであった。
すると、そんな4人の話を聞いていたタクシーの運転手のヒトが警察に連絡をいれてくれたのだった。
- 302 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:08
-
そして、携帯から聞えてくる声と、聞えてきた"フラワーロード"という単語を頼りに、
愛が2人が来るであろうルートを想像し、アブナイと電話の中で話していた東公園の近くから、
スタンガンと痴漢撃退用催涙スプレーを片手に、警察官のヒトと一緒にずっと歩いてきたそうだ。
スタンガンと痴漢撃退用催涙スプレー。
意外と物騒な"それ"は、両方とも愛が護身用に持っているモノとのコト。
それを、ばちばちっと火花を散らしてれいなに見せた愛のカワイイ笑顔が、少し楽しそうに見えたコトには、
今のれいなは何も言うまい。
むしろ、自分も持とうか、と素直に思ったのだった。
ま、それはともかく。
フラワーロードから国道の方に曲がると、男たちが3人が道を塞ぐカタチで立ち、その後ろに梨華とれいなが、
真希の言った通り、心配して合流してくれた2人組の女のコと一緒に固まるようにして立っている姿を、
4人の視界に確認をしたのだった。
さらに、その4人の後方数十メートルもないくらいの場所にいる3人の男の姿。
それらの光景見たときには、若干信じていない部分があったなつみもさすがに信じて、"怖さ"を感じたのだが、
2人が無事である姿、さらに男たちが警察官の姿に、戦意喪失かのように諦めた表情を浮かべた姿を見て、
ほっと胸を撫で下ろしたのだった。
また、改めて夜の道の"怖さ"も感じたのであった。
- 303 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:08
-
なつみの話を聞き、思わず納得の表情を浮かべたれいな。
「そっか…」
そう、あのとき、梨華が携帯を取り出して画面を見ていたときに、何をしていたのか、やっと分かったのだった。
ただ来たメールを見ていたのではなく、ちょうど真希に電話をしようとした瞬間だったのだ。
やはり、れいなの切羽詰った、焦った様子から、何か不安を感じたのだろうか。
しかし、そう思った瞬間に、少々がっかりと肩を落とす。
さきほど、まさに感じたコトを、駄目押しとばかりに、目の前に突きつけられたように感じたのだから。
梨華の中での、自分の頼りなさ、を。
いや、それにもまして、梨華の無言の連絡に、しっかりと真希が答えたのだから。
そう、安心感のあとには、目の前で真希に抱きしめられて安心しきった様子で表情を緩めている梨華を見て、
改めて梨華との距離も"まだまだ"なコトに気付き、再び凹んでしまったれいななのであった。
「はぁ」
1つため息をつく。
すると、そのため息と同時に、さきほどまで感じていた梨華の手とカラダのヌクモリの感触も、
簡単に消えてしまいそうになり、さらに凹む。
そして、必死に思い出そうとするれいなの奮闘もむなしく、
そのヌクモリは、随分と懐かしさを感じるモノへとなっていた。
〜 ☆
- 304 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:09
-
「ありがとうね」
なつみの言葉に、唯が"いーぇどーいたしまして"と、関西特有、いやどちらかといえば、ワザとなのだろうか、
京都に近いイントネーションで、にこにこ笑顔で答えたのだった。
そして、軽く自分の名前を言い、自己紹介。
さらに、隣にいる絵梨香の服の裾をくいくいっと引っ張ると、"ほら、えりかちゃんも"と、
少ししっかりしている様子を見せる。
しかし、当の絵梨香は、さっきまでのしっかりした様子は完全に影を潜めて、顔を真っ赤にさせ、
緊張した面持ちで立っていた。
「…?」
完全に変わってしまった絵梨香の様子に、さっきまでのカノジョを知っているれいなは不思議そうに首を傾げた。
初対面であるなつみと愛、あさ美が、絵梨香のコトを、こんな感じで人見知りする女のコなのかな、と、
第一印象を抱いているコトが簡単に窺い知れるくらいのカノジョ。
ただ、そんな絵梨香の目は、もうすでにれいなたちを見ていないようにも思えたのだった。
そう、れいなたちの後ろにいる真希と梨華の2人。
いや、真希。
カノジョを熱いマナザシで見つめていたのだった。
- 305 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:09
-
「あっ」
"それ"に気がついた瞬間に、ひときわ大きく声をあげたのは、あさ美。
そして、その表情は、みるみるうちに警戒したものへとなっていっていた。
そんなあさ美の様子に、れいなは軽く表情を緩めると、小さく"ライバルかぁ"と呟いたのだった。
そう、目の前で軽く"三好絵梨香です"と自己紹介はしているものの、目を輝かせて、
なつみたちではなく、後ろの真希を見つめ続けている絵梨香。
カノジョの様子は、明らかにあさ美と同じ"モノ"を感じたのだった。
自分や愛とは比べ物にならないくらいに、真希に恋しているあさ美と"同じニオイ"を。
そして、隣で同様に"ライバルかぁ"と呟いた愛と一緒に、顔を見合わせては笑っていたのだった。
なつみに紹介してもらい、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいる絵梨香と、目を白黒させている真希に近付き、
なにげなく"自分の方が距離が近い"コトをアピールしようとしているあさ美の後ろで。
〜 ☆
- 306 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:09
-
結局、あの男たちは、梨華やれいなたちに何もしていないというコトから、即逮捕とはいかなかったが、
それでもハンディカムのビデオを持っていたコトから、少し事情を聞かれるため、警察に連れて行かれていた。
もしかしたら、他にも犯行を行い、そのビデオを撮って残しているのでは、というコトで。
ビデオを持っていると聞いたときには、改めて"恐怖"と"怒り"を感じたが、
梨華にはまた不安を与えたくなかったため、話さないコトにしたれいなだった。
一方のれいなたちは、とりあえず簡単に事情と連絡先などを聞かれるコトとなり、
応援として呼ばれた婦警さんのヒトと一緒に三宮にある派出所へと向かったのだった。
こちらは近いコトもあり、歩き。
やはり、婦警さんと一緒というコトもあり、随分と安心感を覚えるのだった。
その表情も、先ほどとは全く違うものへと。
ただ1人を除いて。
- 307 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:10
-
真希と絵梨香、唯、愛、あさ美が楽しげに話をしながら歩いている姿を後ろから眺めながら、
少ししんみりと歩いていたれいな。
正直なトコロ、この旅行はあと2日もあるのに、完全に疲れ切ってしまったのだった。
もう、3日分の行動力を全て使い切ってしまったくらいに。
かなり重たい足取り。
安心してから、どっと押し寄せた脱力感。
そう、さすがに先程の経験は、どんな辛いコトでも"根性"に変えられるれいなにも堪えてしまっていた。
いや、どんな女のコでも堪えるものだが。
なんだか、これまでの人生の"サイアクと思えたコト"が、一度に束になって襲ってきたかのような出来事。
考えれば考えるほど、ため息が零れるのである。
「はぁ」
三宮の駅の方面に向かって歩き始めてから、何度目のため息だろうか。
もう数え切れないくらいに吐いたため息。
10回目だろうか。
- 308 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:10
-
やがて、そのため息が14回目になり始めた頃、久しぶりにも感じられた見知った光景である、
センター街の入り口が、れいなの目に入ってきたのだった。
ずっと見慣れない景色だったコトもあり、ほっと安心感を覚えると、さらに疲れに襲われてきた。
しかし、それと同時に、隣にヒトの気配を感じ、れいなの鼻にも甘い香りが漂ってきたのだった。
そのまま、思わず笑顔が零れる。
もちろん、それはれいなが大スキな梨華の香りだった。
逸るキモチを押さえて、自分の手首を掴んできた梨華を見やったれいな。
当然のごとく、にっこりと微笑んだ梨華の笑顔に癒されたのだった。
そして、しばらく、2人で手を繋いで歩きたい、と、しっかりと梨華の手を握り締める。
一番後ろに1人で歩いているなつみには悪いと感じたが、今は梨華と2人で歩きたかったれいな。
そう、なつみたちと合流してからは、梨華はほとんど真希のそばにいたのだった。
さらに、真希をあさ美と絵梨香に完全に奪われてしまってからは、なつみと。
なにやら真剣に、いや、なつみが梨華を叱っていたのだろう、れいなが入り込めない様子で話し合い、
それが終わってから、やっとれいなのそばに来てくれたのだった。
最後だったコトもあり、少し寂しさを感じるも、それでも、一番最後だったから、余計に嬉しくも。
今日1日の中で一番ゆったりとしたキモチで、シアワセに浸りながら、
ステキな梨華の手のヌクモリを感じるのであった。
そう、あれだけ辛いコトがあったぶん、よりシアワセに浸れるもの。
- 309 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:10
-
そんなとき、うっとりとした笑顔を浮かべていたれいなは、すっと梨華が顔を寄せてきたコトに気がついた。
何か内緒話でもしたいのだろうか、と感じると、れいなも梨華に耳を寄せる。
すると、れいなの耳に"れぃな、頼もしかったょ"と恥ずかしそうに囁く梨華の可愛らしい声が聞えてきたのだった。
さらに、"ぁりがと、カッコよかったょ"と。
その瞬間に、一気に跳ね上がった心臓。
自然と顔も熱くなるれいな。
心臓も、しっかりと鼓動をばくばくと打ち始めると、ただただ俯いてしまったのだった。
「惚れちゃいそうだったょ」
そして、梨華の言葉に、この上ないほどだらしなく表情を緩めて、シアワセを感じながらも、
恥ずかしさの余り何も話せなくなってしまうと、"せっかくイシカヮさんと歩いとるのに、勿体なかトょね"、と、
後悔をしていたのだった。
〜 ☆
- 310 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:11
-
その後、警察の派出所で事情と連絡先を聞かれ、さらにれいなに至っては、夜遅い外出に軽く説教をされたあと、
結局それほど時間も掛からずに、解放してくれたのだった。
そう、いろいろと事情を深く聞かれ、さらに書類をたくさん書かされるものかと思っていたから、
少々拍子抜けもするもの。
やがて、もうキモチも切り替わっていた面々は、三宮の駅で、絵梨香、唯とたっぷりと話し、
"次の日に時間があれば案内してょ"、と約束。
さらに、メールアドレスの交換をしたあとに、れいなたちはホテルへと帰っていったのだった。
そして、れいなにとって長い長い1日だったが、まだまだ続きそうにも思える1日。
そう、このあとは梨華との2人っきりの部屋なのだ。
忙しなく過ぎてしまった1日に、完全に忘れてしまっていたれいなだったが、
思い出すと、自然と笑顔になっていた。
やはり今日1日の収穫だろうか、
昨日までの、何を話そうか不安がっていたれいなは、完全に消えていたのだった。
ゲームも必要なかったトょね…
1つ呟いたれいなは、楽しそうに梨華の隣に座り、電車に乗る一駅間だけの短い時間の間だけだが、
肩にカラダを預けて、しばし疲れを癒してもらったのだった。
- 311 名前:16〜 投稿日:2005/11/20(日) 02:11
-
〜 ☆
- 312 名前:なまっち 投稿日:2005/11/20(日) 02:12
-
と、安全に戻ってまいりました(w
さんざん煽った挙句、こんな感じでした(ごめんなさぃ
逮捕されるとか、当然ながらあんまり知らないんで…モウソウですけど…
あ、この2人に関しては、しばし消えちゃうあぃぼんとののの代わりに大阪編でも登場してもらうつもりです(たぶん
(ののは活躍の場が全くなかったですが(ぁせ)
あ、なんだかこの第7話が終了しそうな勢いですが、まだしばし3〜4回ほど残っております(まだかょ
それでは、次回から完全に雰囲気をもとに戻しまして…
少しだけホテルでの夜をお楽しみに^^
P.S.
れぃなのとこにイシカワさんが三回も写ってましたね…(もぇ
いままで一度も写ってなかったのに…やっぱり卒業したからかな…
エンジェルスの写真集はやばぃですね…ほっぺひっつけすぎ(ぁぁぁ
イシカワさんとれぃなの希望って100枚くらい送ろうかな…でも2人ならボディラインで差があるからなぁ…
れぃなはごっちんとならボディライン的(胸以外………!………ごめんれぃな)にいいかな…?
- 313 名前:なまっち 投稿日:2005/11/20(日) 02:13
-
>>283 初心者さん
ありがとうございます^^
とりあえず無事に戻りましたょ^^
ちょっとこのあとの残りの神戸編は、さゆみきえりのもぇ的なものからは離れますが…
これからもヨロシクお願いします〜
>>284 名無飼育さん
ありがとうございます^^
焦らし作戦成功ですね(しめしめ(ぉぃ(狙い通り(…
!
「フレンチキス」って「ディープキス」と同じだったのですか!!
てっきりコドモ同士がするような"ほっぺにちゅぅ"ってモノだと思い込んでました…(ぁせ
フランス人のような情熱的なキスってコト…?
ぅ〜ん…ってコトは「ソフトキス」としか言い方はないのかなぁ…
ありがとうございます^^
>>285 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
最悪の状態にはせずに書いてる本人的にほっとしてます(にがわら
あぁ…でもれぃながイシカワさんを襲うようなシチュエーションなら…(おっけーかな…(ぉぃ
一度書いてみたいなぁ…おもいっきり嫌がるイシカワさんを引き攣った笑顔で押さえ込むれぃな…(ぞくぞく(ぉぃ
失礼しました。
- 314 名前:なまっち 投稿日:2005/11/20(日) 02:13
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〜 ☆
- 315 名前:なまっち 投稿日:2005/11/20(日) 02:14
-
〜 ☆
- 316 名前:なまっち 投稿日:2005/11/20(日) 02:14
-
〜 ☆
- 317 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/20(日) 17:36
- 更新お疲れ様です。
まだまだ一日は長いようで・・・(苦笑
まぁ、あのお方達が登場ということで良しとしましょう。
作者様の妄想も含んで頑張ってください(笑
次回更新待ってます。
- 318 名前:なまっち 投稿日:2005/11/26(土) 01:08
- のど痛ぃ…
もうだめぽ…
けど、そのおかげで一週間近くあいたので、
少し前回の雰囲気を忘れて新展開に持っていけるかなぁ(ぉぃ
>>317 通りすがりの者さん
ありがとうございます〜
えぇ…せっかくの春休み、一日は長くしなきゃ(にがわら
そのお言葉にこの更新で切るバージョンを考えたのですが、無理でした(にがわら
しばしモウソウだらけのこのお話にお付き合いをお願いします^^
- 319 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/11/26(土) 01:09
-
17 〜
- 320 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:10
-
日付も変わる寸前、ちょうど14時間ぶりとなる新神戸駅。
そして、ホテル。
なんだか、今日1日だけの宿泊施設とはいえ、やはり自分の家に戻ってきたかのような錯覚を覚え、
それはそれでれいなと梨華の2人、随分と安心感に浸れたのだった。
しかし、ほっとしたのも束の間、なつみと愛が預けてあった鍵を受け取っている間に、
まじまじと周りの景色を眺めると、その豪華さに2人は目を白黒させてしまっていたのだった。
梨華に関しては荷物を預けたときに、一度は足を踏み入れてはいたものの。
当然のごとく、梨華に頼んでいたれいなは初対面となる。
「すごぃ…」
ぽかんと口を開けていた梨華とれいなを、面白そうに眺めていた真希とあさ美は、"もう少しだけでも話す?"と、
もう閉まってはいるものの、ヒトが集まっても大丈夫なほど明かりが灯っているカフェの方を指差した。
たくさんの針葉樹に囲まれたカフェで、少しだけ飲み物にノドを潤そうと。
「そーですね」
真希の提案に、少し早めに部屋に戻りたいと思っていたれいなも、笑顔で答えたのだった。
そして、4人はなつみと愛を待ってから、カフェの方に足を運んだ。
- 321 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:10
-
そんな6人は、カフェの一番奥の立派なソファに座っている人影を発見したのだった。
しかも、顔見知りであり、少し意外にも感じたその人影。
「あれぇ…」
間抜けな声をあげた梨華の方を見た少女。
少し眠たそうに黒目がちな目を擦りながらも、6人の顔を見ると、
"今帰って来たんゃぁ"と表情を明るくさせたのだった。
ヒトを癒すその表情は、亜依。
そして、一言、"どこで遊んできたン"と笑顔を浮かべたのだった。
「…」
ま、きちんと話していなかったコトから、とても自然な反応なのだろう。
しかし、さすがにこれだけあっけらかんと言われると、苦笑いも浮かぶもの。
ただ、話すつもりもなかった2人。
余計な心配をかけたくないのだ。
そんな6人の表情を不思議そうに眺めていた亜依だったが、隣でカノジョの肩にもたれ掛かるようにして、
眠っていた少女が目覚めると、少し笑顔を零し、"みんな、帰って来たょ"と。
切れ長な目を少し赤く腫らせながら、6人を不思議そうに眺めたのは、えりだった。
- 322 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:10
-
「ただいま」
れいなの言葉に、少し笑顔を浮かべて"おかえり"と答えたえり。
少し眠たげに目を細めると、うんっとカラダを伸ばして、"はぁ"と笑顔。
"疲れたもんね…"と言いながら、そのえりの隣に愛は腰掛けた。
「ぅん…」
愛の前のソファには、"早く寝ちゃった方がぃぃょ"と梨華。
「そうですょね」
そうすばやく肯定をしたれいなが、梨華のすぐ隣に腰を下ろした。
少し沈むソファに、"ぉっと"とバランスをとり、隣の梨華に手を差し出してもらうと、
ほほを赤らめて"ぁりがとぉございます"。
そんな2人のまるでカップルかのような様子に呆れ顔ながらも、さっきの梨華の言葉に真っ向から否定をし、
"せっかく来たのだから、夜はまだまだ長いです"と答えたあさ美が、
四角形に向き合うカタチになっているソファで、梨華と愛を左右に見て、その間に腰を掛けた。
「こんこんは、元気だね」
あさ美に向かうようにして反対の方のソファに腰掛けながらの真希の言葉に、
少し顔を赤らめると、"春休みですから"と表情を崩したあさ美。
そのあさ美の表情に、今度はれいなが、"ヒトのコト言えないんじゃ…"と軽く呟き、さっきの仕返しを敢行。
そんな2人のやり取りに、梨華だけが少し苦笑いを浮かべていたのだった。
- 323 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:11
-
「ねぇ…何、飲も…」
真希の隣に座ったなつみは、真っ先に目の前に置かれてあったメニューに手を伸ばしていた。
そして、日頃のクセで、全部のメニューを声にあげて読み始める。
真希もなつみの持っているメニューを覗き込む。
反対側のあさ美は、別のテーブルに置かれてあったメニューを持ってくると、隣の愛、えり、
亜依たちと眺め始めていた。
そして、そんな面々が深夜のロビーに少し響くくらいに騒がしく話し始めたときに、フロントのお姉さんが、
なつみの読み上げているメニューを聞いていた梨華とれいなにメニューを持ってきてくれたのだった。
少し疲れていたれいなと梨華は、取りに行かず、なつみの即席メニューを頼りに頼もうとしていたのだが、
それに気付いてくれたフロントの若いお姉さんがメニューを持ってきてくれたのだった。
丁度二十歳を過ぎたばかりで、短大を卒業したばかりか、それとも四大を卒業したぐらいであろう。
そして、"決まったら声を掛けてね"と、このホテルの雰囲気とは相反し、
とてもフレンドリーに声をかけてくれたのだった。
少し意外のようにも感じられた対応だったが、それはそれでとても親しみやすく、
高級なホテルという緊張感を、簡単に忘れさせてくれるモノであった。
- 324 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:11
-
親しみやすいお姉さんに感謝しつつ、梨華は、れいなと一緒に眺め始めたが、もともと今の時間は、
しっかりとカフェがオープンしているのではなく、フロントのヒトが対応するため、
簡単なモノしか頼めないコトになっていコトもあり、なんだかあっけないくらいに簡単に決まってしまったのだった。
やはりいつもの通り、紅茶を頼むことに決めた梨華。
れいなも梨華に習う。
決まってしまうと、何も考えなくてよくなるからだろうか、自然と目蓋が重たくなり始めてしまったれいな。
他のみんなが楽しげに相談している様子を、とろんと目じりを下げ、眺める。
さっき、軽く数分だけど、梨華の肩を枕にお休みをもらったのだが、それが余計にいけなかったのかもしれない。
可愛らしく1つあくびを零すと、梨華の"眠ぃ?"の言葉に、軽く苦笑いを浮かべ、頷く。
そんなれいなの可愛らしい仕草に、梨華も自然と笑顔が零れると、自分の肩を貸してあげようと、
少しソファに身を沈め、れいなの腕をひっぱり、自分に引き寄せた。
ありがたく梨華の肩を借りることにしたれいな。
とても心地よいソファと同じくらいに"ヌクモリ"と"癒し"をくれる梨華の肩に。
そして、いつの間にか軽く寝息を立てていたのだった。
- 325 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:12
-
れいなの重みを自分の肩に感じ始めると、梨華も随分と目蓋が重たくなってしまっていた。
さすがにまだ部屋にも一度も入っていないのに、と少々呆れながらも、
本日の我が家に辿り着き、大きな緊張感が消えてから、どっと押し寄せてきた疲れ。
そして、強い睡魔。
うつらうつらと、目の前の視界が揺らいできていた。
さっきまではっきりと聞えていた亜依やあさ美、愛のコドモのようにはしゃいだ大きな声や、
なつみや真希のオトナのように落ち着いた声、それらの声が、どんどん遠のいていた。
- 326 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:12
-
やがて、次に気がついたときには、先程のれいなの重みがさらに肩に強く掛かり、
耳には、明日のコトを話しているみんなの声が。
"大阪だと、どこに行くのですか?"と、"夜は長ぃ"とさっき言っていたあさ美。
"やっぱり食べ物ですょねぇ"と、両手を胸の前、目をきらきら輝かせている姿が安易に想像できるくらいに、
うっとりとした声を出している。
"ぅち、飲んで、食べてばっかりゃ"と唸る愛の声と、"帰ってからしっかりと動かないと"と、
もう早くもスタイルを気にしている愛となつみの2人。
"ある意味神戸より大阪の方が食べ歩きの街ゃのにね"と亜依も同様に情けない声。
"なら、結構ヘルシー系がぃぃのかなぁ"と悩んでいる、明日の道案内役である真希の声。
その声を聞きながら、そう言えば自分も食べてばっかりだったコトを思い出し、少しココロの中でため息をつく梨華。
余計な部分に脂肪がつかなかいかどうかを心配しつつも、やっぱり食べ物を目の前にしてしまうと、
手を伸ばしてしまうのが、悲しいかな、女のコ。
自然と最後は、明日も食べるコトを前提として、"カラダを動かさないといけないょね"と、
なつみのしみじみとした声が聞えてきたのだった。
やがて、それはみんなも同じなのか、最後には計ったかのようにため息をついたのだった。
- 327 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:12
-
そして、"なら"とばかりに、愛が大きく声をあげた。
一瞬、軽く頭が覚める梨華の頭。
愛の透き通った声は、こういうときに役立つのだろうか、とふと思いつつも、再び思考は、とろんと落ち始めていた。
そんな梨華の耳に、愛の"サウナとジムがあるって言ってましたけど、汗かきません?"と、
嬉しそうな声が聞えてきた。
"そういえば、言ってたなぁ"と思い、"いこっかなぁ"と考えた梨華の耳に、
"温泉もあるって言ってましたょ"と言う、あさ美の嬉しそうな言葉も聞えてきた。
"ぃぃねぇ"となつみ。
"へぇ"と真希。
そんな愛とあさ美の乗り気な声に、亜依が"そういえば…"と思い出したかのように、声を出した。
"みんな今行ってるょ"と。
亜依の言葉に、あさ美は善は急げとばかりに、"なら…"とソファの上で、少しカラダを揺らす。
"あぃちゃん行くょね?"と、隣の愛に同意を求め、さらに前に座っているなつみにも、"安倍さんも?"と。
そして、"ごとぉさんも、温泉行きません?"と、さっきまではと明らかに違う口調が、
梨華の耳に届いてきたのだった。
"温泉かぁ"と呟く真希。
- 328 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:13
-
梨華も同様にココロの中で呟く。
ところが、その言葉を聞いた瞬間から、フト頭が働き始めた梨華。
さっきまではサウナとジムと話していたのに、あさ美は最初から"温泉"の話。
そして、普段からは想像できないくらいにダイタンな発言をしたコトに気がついてしまうと、
自然と苦笑いを浮かべてしまったのだった。
温泉に"憧れのヒト"と一緒に。
"意外と積極的だなぁ"と。
しかし、突然頭の中に思い出した"コト"に、ぱっと目が覚めた梨華。
完全に目が覚める。
「だめっ」
思わずココロの声が口から出ていた。
- 329 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:13
-
突然素っ頓狂な声を出した梨華に、あさ美は目を丸くさせた。
それは、隣の愛も同様、いや亜依、なつみ、真希、えりも同様であった。
いや、驚くのは当然である。
さっきまでれいなと一緒にシアワセそうに眠っていたと思っていた梨華が、
突然目を開けて"だめっ"と声高らかに宣言したのだから。
しかし、そんな梨華に対して、呆れ顔を浮かべながらも、やがて、
優しげに目を細めてのんびりとした口調で、"おはよ"と声を掛けた真希。
「ぁ…おはょ」
梨華も律儀に答え返す。
ただ、さっきの言葉を思い出したのか、首を横に振ると、"だめだよっ"とあさ美に対して口を真一文字に結ぶ。
「…?」
何に対して梨華が"だめ"と言っているのかを理解できなかったあさ美は、一瞬考えるも、
次の瞬間には、理解が出来たのだろうか、クチビルを突き出すと、"どーしてですかぁ"と反抗態勢をとり始めた。
その言葉に、一瞬、ためらう梨華。
- 330 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:13
-
一方、梨華の様子に、理由を考えているのだろうか、とフト考えたあさ美。
しかし、きちんとした理由があるからこそ、すぐに梨華は"だめ"と言ってきたのだ。
つまり、あまりはっきりと言えないような理由があるからこそ、今すぐ口にするのをためらっているのだろうか、
と思うと、真希の方に視線を向けた。
さすがに、梨華は真希の保護者のような存在であるから、今はマネージャーのようなものと考えてもよいのだろう。
"やっぱり許可がいるの?"と、一瞬考えてしまったあさ美。
「ただの温泉ですけど…」
少し悲しそうに真希と梨華を見つめる。
「ぁ…ぅん…ただの温泉だけどね…」
気まずそうに、表情をしかめた梨華は、真希の方を見つめた。
何か、目配せでもしているようにも思えるその空気。
やがて、梨華がとても言いにくそうに、"盗撮とかがね"と、声を小さくさせたのだった。
その言葉に、大いに納得してしまったあさ美。
- 331 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:14
-
しかし、次の瞬間には疑問も。
それは、その梨華の様子は、さも今気がついた理由を言うかのようなものであり、
理由はしっかりと正当なものであるが、少し考えると、あさ美にしてはさすがに不思議に思えたのだった。
ただ、理由としては正しい。
ネットの中でも、随分と常軌を逸した盗撮や盗聴と、明らかに犯罪であるコトが横行していることから、
マネージャーである裕子から、そういう部分に関してきつく言われているのかもしれない、と。
「ぅ〜ん」
思わず唸る。
「ぁ…でも、サウナとかジムなら…」
あまりにも残念がるあさ美をみて、そう気を使った真希の言葉に、梨華も少し考えた末、
しぶしぶながら頷いたのであった。
そんな梨華が頷いた姿を見て、先程まで少し落ち込んだ様子を見せていたあさ美だったが、
嬉しそうに笑顔を咲かせると、頼んであったマンゴーのジュースを一気に飲み干し、立ち上がった。
そして、今すぐに行かんばかりの視線を、テーブルの周りにいる人間に投げかけたのであった。
そう、温泉は仕方がないとして、サウナとジムにも行けるのだから、と。
明らかに嬉しそうにしているあさ美に、少しだけ呆れ顔になった梨華だったが、
真希の方を見て、軽く頷いたのだった。
- 332 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:14
-
「じゃ、行こっか…」
腰を上げた真希を見て、なつみや愛も立ち上がる。
その3人の行動に満足気に頷くと、続いて、あさ美は、
梨華と、未だにカノジョの隣でシアワセそうに目を瞑っているれいなの方に目を向けた。
梨華は、隣のれいなを指差し、"起きたら行くから"と、片手で謝る素振り。
今度は、まだ立ち上がらないえりと亜依。
あさ美が"行かないの?"と聞くと、2人は顔を見合わせて"今はぃぃゃ"と笑顔で断ったのだった。
そして、少し残念そうに表情をしかめたあさ美に対して、"またあとで行くから"と両手を顔の前で、謝罪。
「そっかぁ」
残念そうに呟くあさ美の隣に立っていた真希は、何か思い出したのか、"そーそー"と梨華の方を振り返った。
「行く前に、バック持って降りてくるね」
真希の言葉に"ぁ"と小さく声を零すと、梨華は申し訳なさそうに"ぁりがと"と言葉をだし、
"ごめんね"と謝ったのだった。
そんな4人に手をふり、あさ美、愛、なつみ、真希の4人は、どれだけ豪華な場所なのか、と、
期待感いっぱいで、とりあえず部屋へと着替えを取りに行ったのであった。
〜 ☆
- 333 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:15
-
「そういえば…」
隣で自分にもたれ掛かり、ほんのりとほほを赤く染めながら眠りに入ってしまっている可愛らしい少女。
いや、さっきまではあれだけ凛々しく自分のコトを引っ張っていたのに、
今ではこれだけコドモのように愛らしい表情を浮かべてしまっているお姫様。
真希がわざわざ渡しに来てくれたバックを受け取ってから、亜依と話しつつ、
そんなカノジョを母親のようなキモチで見つめていた梨華だったが、
帰って来たときから不思議に思っていたコトを再び思い出したのか、
前に座っている珍しい組み合わせの2人の方に視線を向けたのだった。
そう、今日一緒に行動をほとんどしていなかった梨華にとって、とても珍しい組み合わせに感じていたこの2人。
ま、もともとえりが亜依のファンであったコトは知ってはいたのだが、それでも、もう深夜に近付いているのに、
このロビーのソファに座っている2人。
明らかに、不思議な光景である。
お互い相方ともいえるヒトがいるのに。
その相方は、どうしたのだろうか、と。
そして、梨華が聞こうと口を開いた瞬間、亜依はぱっと手の平を梨華に見せると、
何も言うなとばかりに制してきたのだった。
- 334 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:15
-
そんな亜依の様子に、素直に口を噤む。
そのまましばらく考え込んでいる亜依を眺める。
さらに、隣で全く口を開かないえりにも。
普段から、対応に困るようなコトでも話すなどして、"会話を生もう"、
"コミュニケーションをしよう"としているえりからは考えられないくらいの今のカノジョ。
これまた、珍しい光景。
思わず、唸る。
そして、1分。
たっぷりと時間がそれぐらい経ったとき、亜依が人差し指を立てて、びしっと言い張った。
「珍しい組み合わせって言いたぃン?」
「ぁ…ぁ、ぅん」
「ぉ、やっと当たった…」
梨華が頷くと、ほっと安心したかのような笑顔を零し、さらに満面の笑みで"まだまだ大丈夫"と頷いたのだった。
ただ、梨華にとっては、完全に一人舞台の亜依の行動に、さきほどの疑問より、
今の亜依の行動の方を不思議に思ってしまったくらいであったのだが。
隣のえりも、今の亜依の行動には、不思議そうに首を傾げていたのだった。
- 335 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:15
-
そんな2人の様子を気にしない亜依は、少しカラダをえりの方に寄せると、
さらに満面の笑みで"仲良くなってン"と上機嫌になったのだった。
「ぁ〜そうなの?」
えりの方を見ると、今度は少し恥ずかしげに、そして、嬉しそうに頷いたのだった。
意外な組み合わせに、"ふ〜ん"と鼻を鳴らす。
しかし、この時間に2人っきりでココにいるというのは、さすがに不思議であった。
どちらかといえば、他のみんなと同様、温泉やサウナに行くとか、
または、最上階にあるカフェの方に足を運ぶであろう。
何か面白いコトでもあるのだろうか、とふと周りを見回すも、
さして観光客にとって喜ぶようなモノも見えないのだ。
ますます不思議がる梨華。
- 336 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:16
-
「そんなコトより…」
そう一言言ったえり。
戻ってきてから初めてといってもいいくらいに、にっこりと笑顔を浮かべると、
"れぃなと随分仲良くなったのですね"と嬉しそうに目を細めたのだった。
そして、梨華の肩でとてもシアワセそうに眠っているカノジョを優しげに見つめる。
「うん」
少し恥ずかしい言葉にも聞えてしまったが、嬉しさも感じるえりの言葉。
自然と頷いていた梨華だった。
「いっぱぃリードされちゃったょ」
そのまま、隣のれいなの方に顔を向けた。
とても幼げな表情で眠っているれいなを。
嬉しそうに。
- 337 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:16
-
やがて、いつしか、3人でほのぼのとれいなを見つつ、話し込んでいたのだった。
話題は特別れいなのコトばっかりというわけではなかったのだが、
それでもカノジョの寝顔には自然と癒されてしまうもの。
おそらく、あとで本人がこのコトを聞くと、とてもイヤそうに表情をしかめるコトが安易に想像はできたのだが。
と、そんなときだった。
梨華のカップの底に描かれていたクマさんの絵が見えた頃。
突然、びくっと震えたれいな。
そのまま、はっと何かに気がついたかのように驚いた表情をさせ、頭を起こす。
そのれいなの突然の行動に、一瞬、あっけらかんとした表情になってしまった梨華だったが、
れいながビックリした表情であたふたと、梨華、亜依、えりの顔を見ている姿に、
思わず声に出し、笑っていたのだった。
梨華も経験があるコト。
余りにも疲れてしまったときに、起こるそうだ。
本人はそれにより目が覚め、今自分のカラダがぴくっとしたコトに微かに気付き、
そして恥ずかしがってしまうそれ。
現にれいなも、梨華、えり、亜依の声に出して笑う笑い声に、とても恥ずかしげに顔を赤らめたのだった。
ただ、あまりにも笑う3人の様子に、次の瞬間には、少し不貞腐れたかのように、憮然とした表情へとなっていた。
せっかくご機嫌に眠っていたのに、と。
しかし、そんな表情をしても梨華たちの笑い声は止まらない。
やがて、いつまでたっても笑ってばかりの3人に、れいなは呆れたように肩を竦めるも、
目の前の紅茶を自棄飲みしたあとには、自然とつられるように笑っていたのだった。
〜 ☆
- 338 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:16
-
れいなが目を覚ますと、さきほどあさ美たちの話していた温泉と、サウナ、ジムなどの話をした梨華。
もしれいなが疲れた表情を少しでも見せたら、無理には誘わないでおこうと思ったものの、
梨華の心配は無用であったのだった。
目を輝かせると、すぐに立ち上がり、梨華の手をひっぱったのだった。
そして、"早く行きましょう"と、笑顔。
さっきまであれだけ疲れたように眠っていたのに、と、そんなれいなの様子に、少し呆れたように表情を緩めるも、
それでもれいなの嬉しそうな笑顔は、梨華にとっても、とても嬉しいものだった。
自然と笑顔で梨華も立ち上がったのだった。
そのまま、亜依とえりの方に目を向ける。
「2人はどうする?」
梨華の問いかけに対して、2人は顔を見合わせたあとに、
亜依の方が"もうちょっとしたら"と申し訳なさそうに顔をしかめたのだった。
えりも小さく頷いたのを見ると、梨華は"じゃぁね"と手を振り、れいなのあとを追った。
すでに、自分のバックと梨華のバックの両方を、
器用にころころと転がしてエレベーターの方に足を運んでいたれいなのあとを。
- 339 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:17
-
とても豪華なエレベーター。
モダンな中にも、中世の王宮のような雰囲気を出しているそれ。
さらに、自分たちの泊まるフロアーについてからも、その豪華さに、目を丸くさせたのだった。
とてもふわふわした絨毯。
壁に掛けられた絵画の数々。
このフロアーだけでこれほどの絵が飾られているとなると、他のフロアーの絵画も合わせると、
いったいどれくらいの数が飾られているのだろうか、とふと思ってしまうくらいのそれ。
れいなと梨華は、2人で一枚一枚数えて歩いていったくらいに。
もちろん、部屋も。
その豪華さは言うまでもないもの。
また、部屋の前では、カードキーを知らないれいなが、梨華の鍵を開ける"仕草"に、
惚れ惚れとした表情で見惚れたのだった。
いや、鍵としてはとても単純な"開け方"。
単にICチップの内蔵されたカードをドアのぶの前のセンサーに翳すだけでいいのだ。
しかし、鍵というものは銀色の金属を鍵穴に差し込み、ひねって開けるものという固定概念があったコトから、
初体験となるれいなにとって、梨華のその仕草でさえカッコよく見えてしまい、
羨望のマナザシを梨華に向けていたのだ。
- 340 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:17
-
そんなれいなの視線に恥ずかしげに表情を緩めると、ドアを押し開け、先に入り、ドアを手で止め、
れいなを招き入れた梨華。
そして、"ぁりがとうございます"と言ってれいなが中に入るのを確認すると、ドアを閉め、
入ってすぐの壁にあった機械に、部屋のキーを差し込む。
一気に部屋の明かりが灯る。
その瞬間に、感嘆のため息を零したれいな。
それは、梨華も同様だった。
ある程度"豪華な部屋"と言われるものを、見慣れている梨華でさえ。
入って真っ先の右側には扉が2つ。
トイレとバスルーム。
十分な広さが確保されているトイレは、当然のごとくウォッシュレット。
テレビまでついている。
バスルームは、総大理石の上に、全面鏡張り。
カラダを洗えるスペース、足をしっかりと伸ばせるくらいの広さが確保されているコトは当然のごとく、
ジェットバスとなっており、さらに、こちらにもテレビは完備。
また、洗面台には、ドライヤーにヘアーアイロン、洗面用具が全て一式、いや一式以上揃っていた。
- 341 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:18
-
「これだけ揃ってたら、何も持ってこなくてよかったね」
梨華の言葉に、かくかくと頷くれいな。
そう、れいなは高級な場所というコトは聞いていたのだが、これまであまりホテルに泊まったコトもなく、
何が揃っているのか、想像がつかなかったのだ。
えりとさゆみの2人に聞けば、2人とも心配だから一式全て持っていくと話していたコトもあり、
れいなも一通りは持ってきたのだった。
もちろん"命"ともいえるヘアーアイロンも。
しかし、全てがいらなかったのだ。
思わず苦笑いを浮かべたれいなであった。
- 342 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:18
-
部屋の豪華さも、これまた規格外といってもいいくらいのそれ。
右側にはダブルのベッドが2つ。
左側には、長いテーブルの上に1つ大きめのポットが置いてあり、すぐそばにはカップ。
さらに、コーヒー、紅茶、お茶などのパックがたくさん置かれてあった。
テーブルの横には、少々大きめの冷蔵庫。
そして、その中にはたくさんの食べ物が入ってあった。
ジュースやアルコールがほとんどだが、中にはおつまみ的なものまで入っており、
さすがに食べるのは気が引けるものであった。
あとで、どれくらいのお金を請求されるのか、と。
さらに、そのテーブルと冷蔵庫の上の壁には、プラズマテレビ。
DVDもオッケーである。
これはさすがに2人の目には親しんだものだが、ホテルで見るとなると、少し場違いのようにも思えたのだった。
普通のホテルで、プラズマテレビなど見たことがなかったのだから。
また、その向こうの窓側には、1つ大きな円形のテーブルと、ソファが2つ。
ゆったりと夜景を楽しみ、休憩できる場所。
これらが、およそ30畳以上ある部屋に置かれてあったのだった。
梨華自身も、前回真希と北海道のホテルで泊まったホテルで少々豪華なホテルというのは体験してはいたのだが、
この部屋は、そのときのホテルとは比較にならないくらいのものである。
梨華と真希のマンションの、リビングくらいの部屋なのだ。
- 343 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:19
-
そして、とっておきとも言えるモノが2人の目に飛び込んできた。
それは、もちろん"テラス"。
このホテルの醍醐味のうちの1つであろう。
れいなと梨華は窓を開けると、外に出た。
ひんやりとした空気に包まれると、完全に目が覚める。
そして、テラスの手すりに手を掛け、その景色にうっとりと表情を緩めたのだった。
それだけで少しテンションが高くなる。
「わたしたちの家からも、ここまでじゃないけど、ぃぃのが見れるんだょ」
思わず少々鼻高々に、れいなに自慢をする。
高層マンションに真希と一緒に暮らしているコトは話していたのだが、
その話はまだしていなかったコトを思い出したのだった。
そんな梨華の言葉に、"そうなんですかっ"と声を大きくあげたれいなのあまりにも驚いた様子に、
梨華は満足気に頷く。
「じゃ、じゃ今度連れて行って下さいょ」
「ぃぃょ」
今度はとても嬉しそうに、さらに、無邪気に表情を緩めたれいな。
その様子は、梨華の家に行けるというだけで、とても嬉しそうにはしゃいでいるコドモの姿であった。
そして、それを見ただけで、母親のような温かいキモチになれた梨華。
そう、れいなが喜んでくれているコトに、嬉しさを隠しきれなかったのだった。
- 344 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:19
-
しばらく指であれこれ指したりして、自分の発見したキレイなイルミネーションを自慢し合っていた梨華とれいな。
そんなとき、自然と神戸のベイエリアが2人の目に入ってきたのだった。
ただ、ポートタワーと観覧車、神戸の街の夜景の醍醐味である、ベイエリアのイルミネーションは、
少しボリュームを減らし、それには残念なキモチを覚える。
しかし、次の瞬間には、ふと先程の出来事を思い出していた梨華。
それと同時に、そのときの怖さを思い出し、少し表情をしかめたのだった。
そんな梨華の様子に目ざとく気がついたれいなは、すぐに梨華の手を握り締めた。
そう、昨日までは手を握るという行為に、恥ずかしさ、気後れなどを感じていたのだが、
もうすでに、そんなコトを気にする必要もなくなっていたのだった。
とても自然に梨華の手を握るコトができていたれいな。
梨華も、キモチよくれいなの手を受け入れたのだった。
そして、自分の辛いキモチを察してくれたれいなに、感謝。
にっこりと微笑むと、れいなを見つめた。
自分のコトをきらきらさせた瞳で見上げて、視線を外さないれいなを。
- 345 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:20
-
「イシカヮさん…」
「なに…?」
れいなの自分を呼ぶ声でさえ、嬉しさを感じてしまうものに。
それが、真希が自分を呼ぶ声と同じくらいのモノに感じる。
やがて、カノジョとずっと長い時間見つめ合っていた梨華。
いや、カノジョの大きく、くりっと凛々しい目、さらに、コドモのように愛らしい表情から、
自分の瞳を離せなくなっていたのだった。
カノジョから。
そして、梨華は、今日ずっと感じていたれいなのヌクモリを再び感じたくなっていたのだった。
そう、とくに自分を守ってくれていたれいなのヌクモリ、"それ"を。
自分を守ってくれたれいなの。
抱きしめたぃ…
コドモのように愛らしいカノジョの小さなカラダを、自分の胸の中で、ぎゅっと。
そんな自分に気がつくと、ふっと呆れてしまうものの、すぐに自分のそのキモチの理由を悟る。
自分の胸の中に大きく渦巻く"それ"は、明らかに母性本能。
素直に梨華は認めたのだった。
とてもれいなを愛しいと感じたから。
自分のイモウト、真希に対して感じているモノと似ているようで、似ていないその母性本能。
- 346 名前:17〜 投稿日:2005/11/26(土) 01:20
-
〜 ☆
- 347 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/26(土) 04:10
- 更新お疲れ様です。
ははぁ、なんだかグルグルと渦があちらこちらに作られてますねぇ。
一体どうなるんでしょう?
次回更新待ってます。
- 348 名前:初心者 投稿日:2005/11/28(月) 22:48
- ちょっとこれなかったら沢山更新してた〜
お疲れ様です
なにやら紺ちゃんにライバル登場ですか?!
れいなはいいですね
さゆえりは・・・・・!!!!さゆ美貴?
この先がとっても気になります 更新待ってます
- 349 名前:なまっち 投稿日:2005/11/28(月) 23:52
-
>>347 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
この渦は大阪編での前置き的なものなので、しばらくは続きます…
キレイに読者さまが納得のいくようなカタチですっきりと治められたらいいのですが…(少々自信なし…?(ぃゃぃゃ
これからもヨロシクお願いします〜
>>348 初心者さん
ありがとうございます^^
前回、前々回はかなりの量を書いちゃったので(ぁせ
第7話でもうこれだけきちゃってます(ぁせ
今のところ(意味深?)安泰のれいなです^^
ふふ…こんちゃんにライバル登場です^^
さゆえりみきの三角形は、ある意味次の大阪編の主人公的なカプにしようかな、
と考えておりますので、お楽しみに^^
- 350 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/11/28(月) 23:52
-
18 〜
- 351 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:53
-
このホテルの最上階には、神戸の街並みを眺めながら、料理に舌鼓を打てるカフェやレストランが存在する。
そこは、予約さえあれば誰でも入れる場所であり、一種のデートスポット的な場所でもあるのだ。
気軽とまではいかないものの、それでも少々の出費を覚悟すればとくに気張らずに入れる場所。
一方、宿泊客が泊まる3階から、最上階の1つ下のフロアーまでは、
宿泊客のみに入るコトが許されている場所である。
その中の1つ、最上階の1つ下のフロアーには、女性のみが許されたスポーツジム、サウナ、温泉がある。
そう、そのフロアーは完全に女性客だけしか入れないように警備もしっかりとされているトコロであるのだ。
男性は、もう1つ下のフロアーとなる。
エレベータの前、階段の前では警備員のヒトがいて、全てのヒトを厳しくチェックするのであった。
そして、実際に使用する際には、エレベーターの前にある受付で、ルームキーと引き換えにロッカーの鍵を貰い、
そのフロアーの一番真ん中にあるロッカールームで着替え、あとは1つの通路を使用して、
完全に自由に行き来が出来るようになっていた。
- 352 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:53
-
スポーツジムで汗を流したあとは、すぐ隣のシャワールームで軽く汗を流し、
そのまま隣にある温泉につかるのもよし。
また、温泉をはさんで、ジムの反対側にあるサウナでもう一度汗を流すのもよし。
レンタルとして貸し出しをしている水着や、もしくはスポーツ用のウェアに着替え、
温泉以外では、基本的にそのスタイルでいるのが普通である。
もちろん、持ち込みも可。
温泉に入るときのみ、すぐ外にある脱衣所で脱ぎ、裸でゆったりと入るのだ。
ちなみに温泉の中にもサウナは完備されている。
こちらは少々手軽に入れるものであるも、それでもそれなりの数は用意され、
しっかりと汗を流すコトが可能な場所。
また、温泉のみに入りたい宿泊客は、ロッカーでは貴重品のみを預け、温泉の前の脱衣所で着替えるである。
宿泊客のみに許されたそこは、泊まったからには、入っておきたい場所である。
〜 ☆
- 353 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:53
-
ホテルの様子、ジムにサウナや温泉が完備されている設備、それらにとても緊張感を覚えていたあさ美だったが、
受付のお姉さんがしっかりと説明してくれた内容から、それほど緊張する場所でもないことが分かり、
ほっと胸を撫で下ろしたのだった。
とは言っても、もともとなつみと圭織について来たようなものであって、2人が説明を受けている間、
後ろで簡単に聞き、ある程度理解をしたあとは、真希、愛と一緒に興味津々といった様子で、
温泉の効能が書かれてある看板を眺めていただけであったのだが。
ちなみに、圭織は、なつみから梨華とれいなを迎えに行く話を聞いていたコトもあり、真希の顔色から、
梨華とれいなの身になんとなくアブナイコトでもあったのだろうか、と少し心配して待っていたのだった。
そして、なつみの話に顔色を悪くさせたものの、梨華とれいなが無事に帰って来たコトに、
ほっと胸を撫で下ろし、そのままなつみの誘いで一緒に温泉まで来たのだった。
やっぱり、泊まっているからには体験はしておきたいモノ。
もちろん一番の目的は、温泉。
みんなと同じ目的。
- 354 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:54
-
なつみと圭織の2人からロッカーの鍵を受け取ると、エレベーターを出て右側にあった受付コーナー、
その奥のロッカールームに入れるドアを潜ったあさ美。
少し大きめ、スペースも十分、個室の数もかなりの数が用意されたロッカールーム。
これまで、こういったロッカールームのような場所は、公共のプールぐらいしか存在を知らなかったあさ美にとって、
とても新鮮、なおかつ驚くぐらいに豪華な場所に感じられたのだった。
それは愛にしてもしかり。
ま、このようなホテルにある"モノ"と公共の施設を比較するコト自体が、そもそも間違いなのだが。
しかし、愛やあさ美はそんな場所しか経験をしたコトがないのだから、仕方がないといえばないのだろう。
一方、なつみや圭織は、ある程度の規模のフィットネスサロンや、
エステティックサロンのような場所に顔を出しているコトもあり、それほど驚いている様子は見られない。
もちろん真希も、である。
こういう場所、こういう豪華な雰囲気にすら慣れているのだろう。
あさ美や愛が、落ち着いていたら簡単に分かりそうなロッカーの使い方すら分からずにあたふたとしている姿を見て、
ほのぼのと表情を緩めつつも、きちんと教えたのだった。
そんな真希の説明に、愛とあさ美は顔を真っ赤にさせ、俯いてしまった。
「ぁ…スミマセン…」
余りにも"普通"の開け方だったコトに、あさ美は随分と恥ずかしさを覚えてしまったのだった。
そう、このホテルの部屋のカードキーを目にしていたコトから、このロッカーも随分とハイテクなのだろう、
と想像していたぶん、とても難しく考えてロッカーを開けようとしていたのだ。
しかし、それはいとも単純な開け方。
思わず頭を掻く。
- 355 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:54
-
「ぁ」
そんなあさ美は、名誉挽回の機会を思い出したのだろうか、小さく声をだし、
照れ隠しのように"そだそだ"と手を叩くと、一番近くにあった個室の中に入っていった。
そして、呆然とした表情で眺めていた愛、真希、なつみと圭織の視線を気にもせずに、
なにやら壁を叩いたり、ジャンプをしたりして、一通り眺めてから、とても満足気な笑顔で出てきたのだった。
「だぃじょうぶですょ」
親指を立て、真希に対してもう一度アピール。
「…?」
不思議そうに首を傾げた真希だったが、さっきの行動を思い返して、あさ美のしているコトをなんとなく気がつくと、 ふっと表情を緩めて、"ありがと"と微笑んだのだった。
そして、持ってきていたショートパンツ、タンクトップを手に、さっきあさ美が入った個室へと、
入っていったのだった。
「あぁ…」
そう、その真希の行動に、やっとなつみや愛、圭織も何をしていたのかに、気がついたのだった。
気がつくと、少々呆れ顔にもなるも、改めてあさ美の純粋なキモチを知り、少し温かくさせたのだった。
〜 ☆
- 356 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:54
-
すぐ外に売ってあった安めのナイロンのハーフパンツと、同じくシャツに、真っ先に手を通したあさ美が、
少々着慣れない服の裾を整えつつ、居心地が悪そうに、ショーツの位置を調整。
サイズを間違えて買ってしまったぶかぶかなハーフパンツだから、屈んだり座り込んだりするだけで、
簡単に服の隙間から、さっき同様に買ったショーツが丸見えになり、かなり恥ずかしさを覚えてしまうモノであった。
しかし、サウナは水着で入る場所であり、さらに温泉からすぐに行き来が出来るサウナは、
大抵のヒトはハダカにタオルを巻いてというカッコであるコトから、ジム以外でのカッコを考えると、
こうやって服を身につけているのは、少々おかしなカッコとも言えるのだろう。
そうなると、自然と恥ずかしさも消えるもの。
愛なんて、汗でベトベトになり、それをそのまま持って帰るのがイヤなコトもあり、
さらに下着を買うのも面倒なコトから、完全に下着は外してしまっているくらいである。
ただ、その姿はとてもじゃないが、男性の前には出れないモノであった。
少し上半身を屈んだりするだけでも、服の隙間から、愛の程よい女性の膨らみから、
桃色の蕾まで簡単に覗いてしまい、はっきり言って、それを見てしまったあさ美の方が恥ずかしいくらいである。
- 357 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:55
-
「タカハシ、そのカッコの方が、ャラシイょ」
まさにあさ美が思っていた言葉を、圭織が呆れ顔でいうと、さすがに愛も"そうなんゃろか"と首を傾げた。
「それなら水着の方がぃぃような気も…」
その言葉を聞きつつ、シャツの裾を指先で摘み、ぱたぱたと浮かす。
そして、丸見えになっている部分を見ては"確かに…"と呟くも、もう次の瞬間には気にならないのか、
あっけらかんとした笑顔を浮かべたのだった。
「ジムでも、そんなにカラダ動かさないと思いますモン」
「ぅ〜ん…」
「それに、サウナの方が目的なンです」
にっこりと表情を綻ばさせた愛。
しかし、やっぱりあさ美は気になって仕方がなかった。
そのままのカッコで少しでもカラダを動かすなんて、と。
やがて、そんな愛の姿をしみじみと眺めていたあさ美は、ふと浮かんだコトを思わず口にだしていた。
「擦れちゃぃそ…」
「何が?」
誰も聞いてないだろうと思い発したその言葉だったが、温泉が目的のため、何も着替えていなかった圭織が、
いつの間にかすぐあさ美の真後ろで立ち、"なになに"としっかりと聞き耳を立てていたのだった。
そして、圭織としては意味を理解しているのに、少しからかうような口調で、あさ美の顔を覗き込んだ。
- 358 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:55
-
「…?」
圭織の言葉を聞き取れなかったのか、あさ美は首を傾げる。
そのあさ美の仕草に、ふっと息を抜き、呆れ顔を浮かべると、今度はみんなに聞えるように声を大きくあげた。
「何が擦れちゃいそうなのかなっ?」
「…っ!!」
一気に顔を真っ赤にさせると、あたふたと口をぱくぱくさせていた。
次の瞬間には、思いっきり手を振る。
「真っ先にそれが気になったんだね…コンノさんは」
圭織と同じく、温泉が目的のため、着替えずにロッカールームの中を歩き回り、眺めていたなつみも、
いつの間にかあさ美のそばで、やけに納得顔でうんうんと頷いていたのだった。
その隣では、言われた張本人である愛は、"濡れたらどうしよ…"と顔を赤らめ調子に乗る。
そんな愛の笑えないノリに、もう後戻りできなくなってしまったあさ美は"ごめんなさぃ"と俯いてしまったのだった。
- 359 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:55
-
そして、あさ美にとっては、さらに悪いコトが続くのであった。
そう、ちょうどタイミングが悪いコトに、着替え終えた真希が出てきたのだ。
すると、"ぁ"と声をあげた愛が、"ちょっと聞いてくださいょ"と、とてもイヤラシそうな表情を浮かべたのだった。
「こんちゃんが、さっき、ぅちのカッコ見てぇ…」
"ぁ、ちなみに、下なんも付けとらンです"と服の裾を摘み、少しアピール。
"ぁら"と少し顔を赤らめる真希は、愛のダイタンな行為に少し目を白黒させるも、しっかりと耳だけは傾けた。
「こす…」
「わわわわああああああぁぁぁぁぁぁぁ」
しかし、そんなあさ美の奮闘はむなしく、数秒後には、真希に冷たい視線を向けられていたのだった。
「こんこんって…"いっつも"考えてるんだ…
意外だねぇ」
少し頭で手を押さえると、"あぁ…イメージが…"と軽くため息をついた真希であった。
「…!」
その仕草に、あさ美は泣きそうな表情になると、きっと愛を睨みつけたのだった。
明らに冗談の真希の口調も、あさ美には全く通用しなかったコト。
一方の愛、明らかにわかる冗談なのに、これだけキレないでよ、と少し後悔をしていたのであった。
〜 ☆
- 360 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:56
-
とても不思議な雰囲気だった。
これまでの梨華との2人っきりのシーンで感じていたものとは、全く違うそれ。
梨華の自分を見る瞳も違うように感じられた。
いつも見上げているときに感じていたものは、梨華の慈愛の深さを感じるような瞳。
とても優しげな瞳で、お姉さんがイモウトを見つめるかのような"それ"なのだが、今は違う。
れいなの中で表現は出来ないが、下から見上げていても、梨華と同じ視線の高さにいるようにも感じられるのだ。
対等な立場。
しかし、とても心地よいけど、それでも不思議な違和感を感じる今の自分。
本当にこのような瞳で梨華に見つめられていいのだろうか、と感じる自分。
ふとそんなコトを考えていたれいなだったが、すっと自分の肩に重みが掛かると、全ての思考が停止した。
そう、梨華の自分の手を握り締めている手とは反対の左手が、自分の肩に軽く置かれたのだった。
一気に心臓の鼓動が早くなる。
そして、明らかに空気も変わる。
その空気はまさに…
キス…?
自然とれいなの頭の中に浮かんできたその言葉も、他人から見ても、あながち勘違いとはいえない言葉である。
見つめ合う2人の美女と美少女。
20cmもないくらいの顔、カラダの距離。
美少女の肩に置かれる美女の手。
それは、明らかにれいなの感じた空気。
その言葉が頭に浮かぶと、自然とほほもほんのりと赤みが帯びてきた。
これからの"コト"に、期待感で胸がいっぱいになる。
出逢ったあのとき以来の。
そして、さらにその先…
- 361 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:57
-
と、そんなときだった。
れいなが自分と梨華のカラダが絡み合っている姿を想像し、少し顔をだらしなく緩めてしまったそのとき。
突然、部屋をノックする音がテラスまで響いてきたのだった。
「…」
「ぁら…」
一気に砕け散る空気。
梨華の瞳。
いつものおねえさんの瞳に、さっきまでの空気は微塵も感じられなくなってしまっていた。
さらに、梨華の動揺した様子が見られないコトから、もしかしたら梨華は何も考えていないのでは、と、
さえ感じてしまう梨華のそれ。
「…」
多少なりとも、フシダラな思惑があれば、突然の来訪者にココロに動揺を生ませてもおかしくないのだろうが、
梨華にはそれが全く見受けられなかったのだ。
それを感じた瞬間に、自分はとんでもない勘違いと期待を抱いていたようにも思えてしまったれいな。
思わず大きくため息をつく。
「出なきゃ…」
梨華のお母さんのような言葉遣いに、さらに零れるため息。
梨華の女性らしい後姿のカラダのラインを、ほっぺを赤く染めながらも、呆れた表情で眺めるのであった。
〜 ☆
- 362 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:57
-
「…」
入り口から遠い方、梨華のベッドに腰を掛け、その上に持ってきたポテチを広げて、
テレビを見ている突然の来訪者。
その隣には、さっきまで自分と見つめ合い、イイ関係となっていた梨華が、一緒にポテチに手を伸ばし、
楽しげにテレビを見ていた。
そして、流れているバラエティ番組に対して、2人して笑い合う。
そんな2人を、窓際のイスに腰を掛け、肘置きで頬杖をつきながら、
不貞腐れたような表情を浮かべて眺めていたれいな。
納得いかないとばかりに、突然の来訪者の、切れ長な瞳をしたシンユウを眺める。
「はぁ…」
やがてため息。
まぁ、別にシンユウが遊びに来ただけなら、これほどご機嫌ナナメになる必要はないのだが、
少し良いカンジになっていた梨華との雰囲気を壊されたようなキモチになってしまっていた上に、
さらに、シンユウの手に持たれていた荷物に、れいなはイヤな予感を覚えていたのだった。
- 363 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:57
-
そして、"それ"は今はそのシンユウのすぐそばに置かれている。
とても悲しげに、今はれいなを見ている"それ"。
"本来の場所"に収まりたがり、訴えているようにも見える"それ"
そう、そのれいながイヤな予感を覚えるモノは、着替え一式。
明らかに不自然である。
これから温泉に行くための準備だろうか、とふと思うも、量は明らかにこの旅行における全ての着替えであるのだ。
おかしい。
よく分からないシンユウ、えりの行動、考え。
梨華はえりの着替えに気がついてはいるのだろうが、特に気にする素振りもなく、
えりと楽しげに会話を繰り広げている。
えりも、梨華に聞かれないコトをいいことに、何も言わずに、お土産がてらのお菓子を広げているのだ。
その様子はいつものえり。
とくにおかしい様子はない。
そんなえりを訝しげに眺めるれいな。
そして、ふと思いつく、えりの相方のコト。
そう、さゆみ。
- 364 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:58
-
そのさゆみはどうしたのかな、と。
いつもは一緒にいるはずのカノジョと、一緒にいないコトさえ不思議に思えるくらいなのだ。
やがて、一瞬頭の中を過ぎる、"ケンカ"という言葉。
しかし、すぐに頭を横に振る。
さゆみとえりのケンカは、これまでれいなは"見たコトがない"と言ってもいいくらいの出来事であるのだ。
知り合ってから3年になるのだが、これまでえりとさゆみのケンカは、れいな自身見たことがなかったし、
一度、ケンカをしたコトがあるのかどうかを聞いたコトもあるのだが、そのときも"ないょ"と当然のごとくの返事。
そして、その言葉にも、普段の2人の姿から、すごく簡単に納得の表情を浮かべてしまったれいなであった。
それくらい、仲のよい2人。
だから、その2人がケンカをするというコトが想像できないのだ。
やはり、2人が"ケンカ"の状態という考えはすぐに消えてしまうのだった。
そうなると、余計にわからなくなってしまっていたれいな。
- 365 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:59
-
「ぅ〜ん…」
やがて、表情をしかめて、考え込んでしまったのであった。
しかし、それはほんの数秒だけ。
普段から考えるコトが苦手なれいなだから、次第にうつらうつらと目蓋が重たくなり始め、
いつの間にか思考は停止状態へとなっていた。
梨華の楽しげな声が、子守唄のようにも思える今。
視界が暗くなっていく。
- 366 名前:18〜 投稿日:2005/11/28(月) 23:59
-
〜 ☆
- 367 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/29(火) 22:07
- 更新お疲れ様です。
うーん、なんだか膨らんできましたねぇ(ニヤリ
この調子で行っちゃいましょうか。
次回更新待ってます。
- 368 名前:初心者 投稿日:2005/12/01(木) 00:08
- 更新お疲れ様です
紺ちゃんと愛ちゃんもなかなかおもしろいですね
あとれいなの心の葛藤がつぼです
さゆえりみきの三角形楽しみにしてます
次回更新待ってます
- 369 名前:なまっち 投稿日:2005/12/03(土) 01:11
- DEF.DIVAカッコよかったなぁ…
もっとイシカワさん、ごっちん、なっちにも話して欲しかったなぁ…
>>367 通りすがりの者さん
いつもありがとうございます^^
じゃ、この調子でいっちゃいます^^
…のんびりと、ですが…
>>368 初心者さん
ありがとうございます^^
あいこんはもっともっと絡ませる予定です(はぃ
あ、こんちゃんのキャラがちょっとはっちゃけすぎのような気もしますが…
ふふふ…最近さゆえりみきが急上昇中なので、力入れますょ…ふふふ…
- 370 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/12/03(土) 01:12
-
19〜
- 371 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:12
-
「でっかぁ」
思わず呟いていた愛と、同じく愛の言葉に首を縦に振るあさ美。
2人は、目の前にフロアいっぱいに広がるトレーニング器具に、目を白黒させ驚いていたのだった。
そう、こういう場所に来たことがない2人にとって、いたるトコロに転がっている器具は、
テレビの中でぐらいしか見たコトがないモノであるのだ。
はっきり言って、使い方なんて分かるはずもなく、ただただ眺めるだけ。
唯一分かるモノといえば、窓際に立ち並んでいる単純に走るだけのランニングマシンであろう。
いや、それさえも様々な電子機械が取り付けられており、簡単には分かりそうになかったのだった。
結局、何も出来ないような気も。
そんなコトを話しながら、ほぼ貸しきり状態のフロアーを探索している2人の後ろから、笑顔でついて歩く真希。
なかなか新鮮なリアクションを見ながら、ココロをほのぼのとさせるのであった。
- 372 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:13
-
と、そんな3人の目に、ベンチプレスに腰を掛け、ぐったりと頭を垂れ下げている少女が入ってきたのだった。
タンクトップからは、小さなカラダとは対照的に、とても筋肉質な腕が伸びている。
そして、目じりが少し下がり、とても幼げで可愛らしい顔立ちの少女。
「ぁ…」
思わず声が零れるあさ美。
そう、見知った顔。
いや、日本中の誰もが見知った顔。
「つーじぃ」
真希の呼びかけに、眠そうに頭を上げたのは、希美。
真希の顔、愛、あさ美の顔を見ると、にっこりと人懐っこそうな笑顔を零した。
額に前髪が張り付いている。
タンクトップとハーフパンツも、随分と湿っているのが目に見えるくらいだ。
もうすでにかなりの時間ココにいたというコトが想像できるその姿。
- 373 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:13
-
そんな希美の姿に、真希は"随分と頑張ってるんだー"と表情を緩めたのだった。
しかし、希美は少し顔をしかめる。
「ちょっと、お腹がね…」
舌足らずな口調でそう答えると、表情はそのまま、ちらりと覗くお腹を摘む。
すると、小さな希美の指の先に、若干お肉が挟まれたのだった。
しかし、そんな希美の指に摘まれたお肉を見て、それほど気にするくらいではないように思えた愛。
ある意味、自分の方かかなり指で摘めそうな気もしたのだ。
これで心配をするとは、羨ましい話。
「全然大丈夫ゃのに、羨ましぃ」
思わず言葉に零れる。
すると、そんな愛の言葉に希美は"昔ちょっと…"と少し頭をかいたのだった。
- 374 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:13
-
そう、昔、デビューして1年も経ち、随分と仕事に慣れ、人気も出始めた頃、ストレスも溜まり始めると、
食べるコトでそれを解消しようとしてしまい、結構体重を増やしてしまったコトがあったのだ。
そのときに、"自分の立場を考えろ"と、裕子にこっぴどく怒られた経験があるのだ。
毎日お腹や腕、足やらをチェックされ、脂肪を摘まれては"反省しろ"と。
それ以来、懲りてしまい、食べるモノは食べるものの、それでもきちんとカラダを動かして、
脂肪だけは食べた以上の分はしっかりと燃焼させるようにしているのだ。
「中澤さんがかぁ…」
あのアネゴ肌的な雰囲気そのままの言動に、思わず納得の表情を浮かべるも、その"シゴキ"に、
ぶるぶると震えると、あさ美と愛は、自分のお腹を少し摘み、ちょっと汗を流そうか、
とお互いに顔を見合わせたのであった。
それは、真希も同様。
こんなお腹で帰ってから、裕子に見られたときには…
少し想像をしてから、慌てて頭を振ると、1つ気合を入れ、何からしようかしら、と探し始めたのだった。
〜 ☆
- 375 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:14
-
数多くの湯船が大きな窓ガラスの前に並び、さまざまな効能のある温泉が楽しめる場所。
神戸の夜景を楽しみながら、1日の疲れを癒し、そして次の日の英気を養えるトコロだ。
一番右端には、水風呂。
その隣には、白濁した湯船。
少々温度が低めに設定されていると書かれてある。
そして、その隣にも白濁した湯船があり、こちらはもう少し温度が高いと書かれてある。
その1つ隣には、もう少し高い温度が設定されている湯船である。
一方、一番左端には、透明な温泉の水であり、一番温度も高く設定されているようだ。
さらに、一番疲れを取るのによいとのコト。
ただ、長いコトはいるのは、少々辛いもの。
その温泉の左がわに立ち並んでいるサウナ室と同様に、かなりの発汗が期待できそうな場所であるから。
しかし、その場所から見える夜景は、部屋のテラスから見えるものと同様、とてもキレイなものであり、
時間を忘れてしまうコト間違いなしであろう。
- 376 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:14
-
さて、と、圭織を温泉のすぐ横に備え付けられたサウナへと見送ったなつみは、
どれに入ろうかと胸の右前、バスタオルの結び目を括り直しながら考えていると、
一番右端の水風呂の縁に腰を掛け、こっちを眺めていたスレンダーな少女を発見したのだった。
目が合うと、手を振ってくる。
見知った少女であった。
とてもキレイな整った顔立ち。
ミディアムショートの髪の毛を小さく後ろで括っている。
そして、女のコが見ても見惚れてしまうくらいにカッコいい笑顔。
ただ、今は少しほほを赤く染め、どちらかと言えば愛らしさを感じるような笑顔である。
しかし、手を振ってきた少女の顔から視線を下ろすと、なつみは思わず顔を赤らめたのだった。
そのまま、次の瞬間には、呆れたように表情をしかめる。
そう、その少女のカラダには、タオルが一枚も巻かれておらず、
そのスレンダーなスタイルを惜しげもなく曝していたのだった。
1つため息をつくと、近付く。
- 377 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:14
-
「安倍さん来たトコですか?」
なつみがすぐそばまで近付くと、絞って隣に置かれてあったタオルを広げ、膝の上にかけた。
さすがに、羞恥心があるのだろうか、少しずらし自分のタイセツな部分を隠す。
「まぁね」
一応、その少女からの質問に答えるも、"に、してもさ…みきてぃ"と、再び顔をしかめたのだった。
そう、その少女は美貴。
普段のさばさばした性格が、こんな場面でも発揮されているのだろうか。
ふとそんなコトを思うも、自然とお説教へ。
「いいオトナなんだから隠すトコ隠さないと」
なつみのその言葉に、少し不機嫌に表情をしかめた美貴。
しかし、次の瞬間には少し納得したのか、目じりを下げると少し頭をかく。
「だから、しげさんもこっちを一度も見てくれないのかなぁ」
そして、ぽんぽんと隣にいた少女の肩を叩いたのだった。
- 378 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:15
-
「ぁ、しげさんもいたんだ」
大げさに驚いたように声を出したなつみ。
そう、今の今まで気付かなかった、水風呂の中に美貴の隣で肩までざっぷりと浸かりこんで顔を背けていた少女。
水風呂の中で、そこまで浸け込む必要はあるのだろうか、というぐらいに浸かりこんでいるのはさゆみだった。
「こんばんは」
さゆみは、一瞬なつみの方をみるも、美貴のスレンダーなカラダが視界の隅に入り、
すぐ目の前に美貴のうっすらとキレイに生え揃っている茂みが、タオルから覗き、
目に入ってくると、慌てて顔を背けた。
もう随分と長い時間入っているコトから、そのほっぺ、カラダは随分と火照っているも、
水風呂につかってても、さらに、顔を真っ赤にさせたさゆみの行動。
「…」
さゆみらしいかな、とふと思ったなつみ。
ただ、一方、そんなさゆみの肩をつつき、"こっち見てよ〜"と美貴らしからぬ声を出し、
興味を引こうとしているカノジョの表情に少し新鮮さを感じたのだった。
- 379 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:15
-
「恥ずかしがるコトないじゃん」
「し、知らないですっ!」
つれない返事を受けると、なつみの方に再び視線を向け、少し呆れたように肩をすくめた。
「しげさん、ぇろぃばでぃしてるんですけどね」
「な、なんてコトいうんですかっ
関係ないじゃないですかっ」
随分と2人の間の距離が縮まって、冗談も言えるような仲がいい関係になったのか、
目の前で美貴にすぐ隣、肌も触れ合う距離に座り込まれると、慌てて立ち上がり、
タオルでカラダをしっかりガード、すぐ隣の少し温かいお湯へと避難したさゆみを、
ほのぼのと眺めていたなつみであった。
〜 ☆
- 380 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:15
-
手元のポテチの袋もカラ、テレビで流れていたバラエティ番組が終わり、深夜も1時半に近付いていた。
ちょうど番組の切り替わりのために、コマーシャルが流れている。
深夜になると、普段見慣れたものとはまた違うものになり、さらにその地方独特のものが流れ、
いつの間にか、ぼぉっと眺めてしまうコトもしばしば。
えりはまさにその状態なのだろうか。
視線はテレビを見つめているものの、何も考えていないような、その表情。
一方、梨華にとっては、深夜のコマーシャルもあまり関係ないようだ。
少し眠たげに可愛らしくあくびを零すと、そういえば、と、
いつの間にか静かになってしまっていた可愛いイモウトの方に視線を向けた。
寝ちゃったかなぁ…
すると、案の定、ゆらりゆらりと頭が揺れてしまっているれいな。
カノジョのその愛らしい姿に、思わず笑顔が零れる。
- 381 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:16
-
「疲れましたもんね…」
まさに梨華も思った言葉が、すぐ後ろ、えりの口から聞えてくると、梨華は視線をれいなからえりへと。
そして、大きく頷いた。
「まだ明日もあるもんね」
しみじみと呟く。
そんな梨華の言葉、さらにれいなの寝顔に、えりも少し眠たくなったのか、目を細めると、軽くあくびを零した。
そのまま、ばたっとベッドに大の字で寝転がる。
「お風呂入ったの?」
「ん…あぃぼんのトコで…」
軽く頷く。
もうすでにオネムの世界へと旅立つ寸前なのか、かすかに胸が上下しているえり。
「じゃ、そのままそこで寝ちゃっても…ぃぃょ」
梨華はそう言うと、にっこりと表情を緩め、"さて"と立ち上がったのだった。
そして、1つうんっと伸びをすると、"ごっちんの部屋で寝ょかなぁ"と呟く。
「ぇ…」
梨華のその言葉に、えりは少し驚いたかのように目を開く。
そのままベットから上半身を起こすと、立ち上がった梨華を見つめる。
- 382 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:16
-
笑顔の梨華と、少しマジメな表情のえり。
相反する2人の表情のにらめっこは、ほんの少しだけだった。
負けたのは、笑顔の梨華。
さらに表情を緩めたあとには、少し難しいコトを考えるかのようにしかめっつらをすると、
クチビルを突き出し呟いた。
「あまり深い理由は分かんなぃけど…
まぁ、それだけニモツ持って来たらばればれだし…」
梨華はそう言うと、"でも、仲良くしなきゃね…寂しいょ"と、自分の荷物をがさがさと漁り始めたのだった。
ただ、次の瞬間には"美貴ちゃんには、言った方がいいかなぁ"と指先をあごの先にもって行き、
少し考える。
やがて、難しい表情をしながらも、下着だけを取り出すと、"温泉は明日かなぁ"と呟きつつ、
お風呂場へと消えたのだった。
- 383 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:16
-
そんな梨華の後姿を、少し複雑な表情で見つめつつも、梨華がこの部屋で眠ってもいいと言ってくれたコトに、
自然と"ぁりがとうございます"と呟いていたえり。
そう、今日の"あの"さゆみとのケンカともつかない出来事以来、一度も口もきかず、
とても気まずい関係となってしまっていたのだ。
ホテルに帰って来てから、一度部屋でさゆみと会ったとき、そのときも。
とても申し訳なさそうに目じりを下げているさゆみとは対照的に、
憮然とした表情で横を向いてしまう自分。
なんとかして話のキッカケを作ろうとしているさゆみとは対照的に、
テレビのボリュームを大きくする自分。
今にも泣き出してしまいそうなさゆみとは対照的に、
素直になれない自分。
とても気まずいそんな空気の中、美貴と桃子が部屋へ温泉に誘いに来たのだった。
- 384 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:16
-
その誘いに、少しえりの方を見るも、快く受けたさゆみ。
一方、正反対のえり。
そして、"あとで亜依と"と言う自分が、とても素直じゃなく、カワイクないようにも思えた瞬間。
えり自身、どうして素直にさゆみの話しかけようとしているキッカケを受け入れられなかったのか、
わからなかった。
いや、やはり自分を拒絶されたコトが、許せなかったのかもしれない。
さらに、美貴とずっといるさゆみに。
だから、部屋の鍵をさゆみに渡し、えりは後から荷物だけ持って出てきたのだった。
そして、れいなが帰ってきたら、部屋に強引に泊めてもらおう、と。
おそらくイヤな顔はされるのでは、という不安もあったが、それでも最後は説明して泊めてもらうつもりだった。
しかし、その心配は無用だったようだ。
素直に梨華に感謝をしたえりであった。
〜 ☆
- 385 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:18
-
「つぐながちゃんも、みきとあんまり変わんなぃね」
少し安心した表情を浮かべ、湯船の縁に腰を掛けていた桃子を眺めつつ、呟いた美貴。
そう、桃子のまだまだ成長しきっていないコドモのようなスタイルを見て、何を思ったのか、自分と比較をしたのだ。
年齢にも差のある桃子と。
一方、その美貴の言葉に、桃子は、少しむっとした表情を浮かべると、
"そんなコトなぃですょ"と引き攣った笑顔を浮かべる。
「まだまだ"成長中"ですから」
と、にっこりと挑戦的な笑顔。
その桃子の笑顔に、美貴も"ふん"と鼻を鳴らすと、負けてなるものか、と目を吊り上げる。
「でも、"今"でそれだけバスタオルに凹凸が見えなぃとなると、期待感"ゼロ"かなぁ」
しかし、桃子ももうすでにそんな美貴の挑発的な言動への対応に慣れてしまっていたのか、
余裕の笑みを浮かべ、さらに挑戦的な瞳を向けた。
「フジモトさんよりは、"まし"だと思いますょ」
そう言うと、美貴のカラダに視線を落とすと、目を細めて見ながら"ほらぁ"と。
「ぐ…」
- 386 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:18
-
そんなばちばちと火花を散らしている2人と同じ湯船に浸かりながら眺めていたのは、
美貴のすぐ隣で浸かっているさゆみだった。
少々羨ましさを感じながら。
どうもこの2人、日頃から、仲がよいのか悪いのか分からないくらいに"口げんか"をしている姿を見てしまうのだが、
この姿を他人の目から見れば、このようにして楽しんでいるようにも見えるのだから、本当は仲がよいのだろう。
「いいなぁ」
思わず呟いていたさゆみ。
しかし、そんなさゆみの呟きを、全く意味を取り違えてしまったのが、美貴と桃子。
先程より、より一層目じりを吊り上げると、"ひにくー"とクチビルを突き出す。
「それだけ"ある"からってっ」
美貴はそう言うと、"ちくしょぉ"とばかりにさゆみに後ろから抱き締めようと、飛び掛かった。
一瞬、虚を付かれたかのように不思議そうに首を傾げたさゆみだったが、美貴のイヤラシイ笑顔と、
バスタオルに手を掛けようとしているイヤラシイ指使いに、カノジョのしようとしているコトを悟り、
"いやっ"と、必死でタオルをガード。
若干ぬるめの白濁した湯船が大きく波打つ。
- 387 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:19
-
余りにも必死でタオルの結び目を握り締めるさゆみに、美貴も少し諦めモードになるも、
次の瞬間には、再びイヤラシイ笑みを浮かべると、タオルの結び目から手を下げ、
さゆみのボリュームのある胸の膨らみに手を持っていったのだった。
そして、優しく、それでも相手がしっかりと理解するくらいの絶妙の力を指先に込めた。
「え…」
一瞬小さく声が零れるも、美貴がしている"コト"を理解すると、
"いやっ"と手で自分の胸をまさぐっている美貴の手を握り締めたさゆみ。
さすがに冗談とは分かっていても、こんな場所で触られたくはないカラダの"部分"である。
とても敏感な部分にあてがわれている、美貴の指。
それが、艶かしく動き、自分の柔らかいタイセツなモノに、ほどよい刺激となり、食い込む。
そして、自分の胸、ノドの奥に感じる甘いキモチと、熱いキモチ。
やがて、徐々にカタチどる芯。
明らかに美貴の指の中で潰れ方が変わったコトが分かるくらいの芯。
美貴の"アソビ"に反応している自分。
それを感じてしまった瞬間に、美貴に悟られたくない、というキモチが一気に溢れ出ると、
さらに、全てを否定するかのように再び手に力を込める。
- 388 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:19
-
しかし、やはり美貴の方が力が強いのは、当たり前。
簡単には美貴の"攻撃"なんて止められるはずもない。
次第に、どんどんカラダに力が入らなくなるさゆみ。
そんなさゆみの力が緩んだコトを、ただの諦めモードになったのだろうか、と勘違いをした桃子が、
それまで笑顔で2人の"戯れ"を眺めていた状態から、"トドメ"とばかりに参戦。
さゆみにとって明らかに劣勢である。
ただでさえカヨワイさゆみ。
「や、やめてくだ……ゃ…」
艶かしい声を一瞬あげてしまい、思わず手で口元を押さえる。
そして、さらに羞恥心を覚えると、最後の反撃を試みようと、美貴の腕から抜け出ようとするも、
その次の瞬間には、カラダが一気にお湯に包まれた感覚を覚えたさゆみ。
さらに、そのさゆみの目に、桃子の手によって一気に剥ぎ取られてしまったタオルがうつったのだった。
"やったぁ"とばかりに桃子が一際大きく波打った白濁したお湯から、戦利品とばかり持ち上げた"それ"。
- 389 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:19
-
「ぁ…」
自分の肌を隠すものがなくなると、不思議と極端に羞恥心に襲われるもの。
普段、えりと一緒にお風呂に入り、カラダを見せるコトなど慣れているものの、
まだまだ自分のカラダを見せたコトがなかった美貴や桃子が相手となると、
とても恥ずかしさを感じてしまうものだった。
さらに、自分の背中に、美貴の芯をしっかりとカタチどっている胸の蕾の感触を感じると、
とても恥ずかしさを感じたのだった。
憧れの美貴の胸が自分の背中に触れている。
おそらく、普段、素の状態だと、立っていられないくらいに頭をくらくらとさせてしまうような出来事であるのだが、
今は、さすがに自分のカラダを覆うものがないコトの方が重要な出来事。
思わず美貴から離れると、膝を抱え込むようにお湯の中で丸まり、カラダを隠す。
さらに、肩まで浸かっていたお湯のラインを、ぶくぶくと鼻まで持ってくる。
そして、涙目で美貴を見つめ、抗議。
とても楽しそうに自分を見つめている美貴を。
さらに、恨めしげに眺める。
- 390 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:19
-
と、そのときだった。
美貴の目を恨めしげに眺めようとしたそのとき。
鈍い音がさゆみの耳に届いてきたのだった。
次の瞬間には、頭を押さえている美貴の情けない表情。
「ったぁ」
クチビルを突き出し、少し抗議をしようと振り返った美貴の後ろには、呆れた表情と、
少し怒ったように目じりを吊り上げた愛、あさ美の2人が、両手を腰へ、仁王立ちで立っていたのだった。
「ばか」
「ばか」
2人のステレオのように聞こえてきた言葉に、何も反論の出来ない美貴。
少し素直に肩を竦めると、"はぃはぃ"と、おとなしくお湯の中へと避難。
そんな素直な美貴に満足をすると、桃子の方を見て、呆れたように表情をしかめた愛。
「桃子ちゃんも、こんなバカな美貴ちゃんに付き合うコトなぃのに」
「ぅ…」
「かわぃそ…しげさん、涙目になっちゃってるじゃん」
あさ美の言葉に、桃子も情けなく目じりを下げると、"ごめんなさぃ"と素直にさゆみにタオルを返品したのだった。
- 391 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:20
-
このときばっかりは、タオルを腰にだけ巻き、そのステキなカラダを惜しげもなく曝している愛と、
タオルを胸から巻きつつも、ふっくらとした顔立ちからかけ離れているくらいにステキで、
スレンダーな女性的なスタイルをしているあさ美に対して、尊敬のマナザシを向けたさゆみであった。
そして、最後に、美貴に非難の目を向ける。
「ケイベツします」
「じょ、冗談でしょ…」
冗談にも思えたさゆみのその言葉だったが、そのさゆみの目つきに少し心配になった美貴は、少し顔色を悪くさせ、
さゆみの肩に手を掛け、"ねっ"と同意を求めるかのような視線を向けた。
しかし、簡単にはじかれてしまうと、さらに情けなく目じりを下げたのであった。
ただ、そんな美貴の見慣れない表情に、普段のカッコよさではなく、可愛さを感じてしまったさゆみは、
悟られるのが悔しかったコトもあり、ふんと顔をあさっての方に向けたのであった。
「ぇぇ!?」
愛とあさ美、桃子の楽しげな笑い声が、深夜の温泉に響いていた。
- 392 名前:19〜 投稿日:2005/12/03(土) 01:20
-
〜 ☆
- 393 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/12/03(土) 20:30
- 更新お疲れ様です。
ほほぉ、これはどうなっていくのか・・・。
次回更新待ってます。
- 394 名前:初心者 投稿日:2005/12/03(土) 23:26
- 更新お疲れ様です
中澤姉さんがいるけど、ののちょっとカッコイイ、さすがプロ
さゆ美貴に ハァ━━━━ ;´Д` ━━━━ン! ってなりました
入れ替わる部屋・人もいいですね
次回更新楽しみに待ってます
- 395 名前:なまっち 投稿日:2005/12/06(火) 23:42
- DEF.DIVAコンを楽しみにしてたら…
なんてこった!
もっともっと楽しみなものになってるじゃぁないですかぁ!!
やばぃなぁ…
別名…いしごま&あいのの&みょぱぃコン…(ぉぃ
これ以上に楽しみなのって言ったらりかれなユニットくらいだろうなぁ(しみじみ
ってか、おかぱいとみぃーょがめっちゃ緊張してそう…(w
>>393 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
あと今回あわせて2回の更新で7話が終了しますんで、
次回からの第8話の前置きみたいなものです^^
楽しみにしていただければ〜
>>394 初心者さん
ありがとうございます^^
さゆみきに ハァ━━━━ ;´Д` ━━━━ン! ってなっていただけましたか(w
もっともっとなっていただく予定で…(ん…意味深?…意味なし?
ちょっこと次回いしごまを入れさせていただきます^^
- 396 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/12/06(火) 23:42
-
20〜
- 397 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:43
-
バスタブの中での心地よい刺激に、カラダの疲れが一気に押し寄せていた。
しかし、これほど疲れに身を包まれた状態で眠ると、明日の朝には、
すっかり疲れが消えてくれそうな感覚さえも覚えてしまうのだった。
立ち上がると尚更である。
「はぁ」
1つため息をつく。
特別憂鬱なために出てきたものではない"それ"。
自然とでたもの。
その一息で、さらに疲れが押し寄せる。
ただ、疲れたカラダに、水をしっかりと吸収してくれるふわふわタオルをあてがうと、
"疲れ"も水と一緒にすっと吸収されそうにも思えた梨華。
押し寄せては消える"疲れ"という波。
それを1つ1つ取ると、最後に鏡に映った自分のカラダが自然と目に入ってきたのだった。
- 398 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:43
-
すらっとしているも、とても女性らしく、凹凸のしっかりとしたボリュームのあるライン。
そんな梨華のカラダを見て、とても羨ましいという真希。
あまり自分では意識をしないのだが。
真希は真希で、脂肪を全く感じさせない、とてもスレンダーなスタイルをし、梨華にとって、
とても羨ましさを感じるものの、カノジョにしては自分のラインは余りにも細く、少しイヤだそうだ。
その点、梨華のカラダは女性らしい脂肪の付き方をし、スキ、とも。
それを、とてもあっけらかんとしたコドモのような表情でいうのだ。
しかし、対照的に、羨ましさもこもった目で、梨華のハダカのカラダのラインを見る真希。
女性、1人のオンナとして梨華を熱い視線で。
そのときばっかりは、さすがに普段の母親のようなキモチは完全に消え、1人の女のコになり、
羞恥心を感じる梨華であった。
- 399 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:44
-
ミディアムヘアーをタオルでくるむと、頭で束ね、火照ったカラダを冷ますかのように下着をつけずに、
ホテルに置かれてあったバスローブを身にまとい、バスルームから出た梨華。
浴衣とは別。
このようなものまで用意されているコトに、多少の驚きを感じるのだった。
バスローブをつけたことのない梨華にとって、使用方法などの具体的なコトは分からなかったが、
"今だけ"というコトもあり、下着を着けなかった。
本当は正しいのか分からないし、考えてみると、1人でいるときにしか出来ないような行動に思えて、
普通の自分なら、恥ずかしさを感じるのだろうが、今は、部屋にはえりとれいな、
イモウトのような2人しかいないコトもあるからだろうか、あまり恥ずかしさを感じるコトがない。
自然な行動。
バスルームを出ると、前を軽く締める。
バスローブの前の隙間から感じるひんやりとした空気がとても心地よい。
その空気を閉じ込めるのは勿体無く、再び感じたくなると、一度閉めたものを再び解き、カラダを曝す。
そして、一度空気を仰ぎいれ、満足をすると、閉めた梨華。
- 400 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:44
-
そんな梨華の耳には、バスルームから聞こえてくる水の音だけが聞えていた。
いつの間にか、テレビの音も消えていたのだった。
深夜も2時を過ぎ、さすがにテレビで見るような番組はなくなったのだろう。
ベッドを見ると、えりが心地よさそうに、持ってきていたピンクのパジャマに身を包み、胸を上下させていた。
また、窓際のイスで眠っていたれいなに視線を向けると、カノジョもうつらうつらと頭を揺らしている。
梨華は近付き、そっと腰を屈めた。
「れぇなぁ」
アップにさせた髪の毛を整えてあげ、れいなの赤ちゃんのように柔らかく、赤みの帯びたほほをなぞる。
一瞬ぴくりと反応し、頭が揺れるも、すぐに心地よさそうに梨華の指先にほほを沈めたれいな。
思わず梨華の表情も緩んだ。
- 401 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:44
-
このままずっと眺めていたい衝動に駆られるも、しかし母性本能が上回り、
れいなのほっぺから肩に手を置き換える。
そして、ゆっくりと揺すった。
「ほら、れぃなぁ?
起きなさぃ」
母親のような口調。
いつもの真希に対して起こすものと全く同じその口調。
それは、自然と出たもの。
「風邪ひいちゃうょ?」
もう一度揺らすと、うっすらを目を開けたれいなだったが、その目は完全にオネムのお子様。
自分のコトを認識しているのかどうかでさえ曖昧に感じるくらいである。
少し呆れたように表情を緩めると、"お風呂にお湯を張ったから、入りなぁ"と下から覗き込む。
「イシカヮさん…?」
少し目を擦るれいな。
たどたどしい口調で梨華に訊ね、"そうだょ"と答えを聞くと、少し安心したのか、にっこりと表情を緩めたのだった。
そして、手を突き出し、"入れてくださぃ"。
とても甘えきっているカノジョ。
普段のカノジョからは考えられないその仕草、その言葉。
やはりまだまだ頭の中は眠ってしまっているのだろう。
半分母親と梨華とを混合させてしまっているのかもしれない。
- 402 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:45
-
ふとそんなコトを感じると、再び呆れる梨華。
しかし、それでもれいなの愛らしさには自然と胸を甘くさせてしまうものであった。
嬉しさを感じる今。
ただ、嬉しさに浸りながらも、やはり母親。
「ママじゃなぃのよ」
れいなの脇に手を入れると、"こら"と立ち上がらせた。
そして、普段の高い女のコのような声を、ワントーン低くさせると、れいなの耳元で囁いたのだった。
「ハダカ見ちゃうぞ」
その瞬間に、れいなのうっすらと開かれていた目が、普段のものようにくりっと開かれると、
眠っていたときの名残である、ほんのりと赤色に染めたほほを、一際赤く染める。
そのまま、"イシカヮさんがそんなコト言うと、ショック受けます"と、目じりを下げ、
お風呂場へと消えていったのであった。
そんなれいなを見送り、ふっと表情を緩めると、1つため息。
「さて…」
そして、まだ布団の外で眠りに入ってしまっていたえりのカラダを、
布団の中へと入れるお仕事へと取り掛かったのだった。
〜 ☆
- 403 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:45
-
そろそろいいかな、とばかりに入り口の方を見た美貴。
もうかれこれ1時間半近くこの場所にいるコトになるのだ。
サウナにいた場所も合わせると、ざっと2時間にはなる。
さすがに随分と体重は減ってくれたかもしれないが、これだけ長い時間いると、少しふらつくコトも多々。
しかし、やはりさゆみや桃子を始め、途中から入ってきたなつみたちと会話を楽しんでいると、
自然と時の流れも忘れてしまうものだった。
- 404 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:45
-
美貴は、最後に水風呂にしばらく浸かり、そして出口の近くにある、軽く仕切られたシャワー室で全てを流そうと、
浴槽から立ち上がった。
少しだけ温かく感じる浴室の空気。
水風呂に浸かってはいたものの、まだまだ十分にカラダの火照りは治まる気配はなかった。
途中、"最後"とばかりにサウナ室の中に入って行ったさゆみ、桃子、愛とすれ違った瞬間、
相変わらずさゆみが自分の方を見ない姿には、さすがに寂しさを感じたのだった。
ただ、これだけ頑なに見ようとしないと、人間なぜか意地でも見せたくなるもの。
ま、この美貴の思惑だけを聞くと、ただのヘンタイなのだが。
いつか…
この旅行での微かな目標に、不思議な闘志を燃やした美貴であった。
- 405 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:46
-
胸から腰の辺りだけを区切られている、簡易的な場所。
ま、普通なら温泉にそんな区切りすらいらないのが普通なのだろうが、やはり配慮であろう。
美貴としては気にならないが、さゆみにとってはとてもありがたそうである。
また、あさ美も。
と、そんなコトを考えた美貴の隣に、まさに頭の中に浮かんだ人物であるあさ美がやって来た。
相変わらずバスタオルでしっかりと胸からガードしているあさ美。
しかし、絞ったものではないタオルであるコトから、しっかりとカラダに張り付き、
カノジョの女性らしいラインをはっきりとカタチどっていたのであった。
「ふ〜ん」
1つ鼻を鳴らす。
「何よ、みきてぃ」
まだ30分少ししか入っていないあさ美だったが、そのカラダは若干桜色に染めている。
少しぼぉっと眺め、さゆみと同様、自分のカラダと比較をし、羨ましさを感じていた美貴は、
"相変わらず、いぃカラダしてるょね"と、少しイヤラシイ視線を向けたのだった。
- 406 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:46
-
「はぃはぃ」
ただ、あさ美にしては美貴の取り扱いは少々慣れたもの。
とくに慌てる風もなく、さらりと流すと、1つ板だけで仕切られている隣のシャワーを手に取った。
そのままシャワーのノズルをひねり、手をお湯に当てながら温度調整をする。
やがて丁度よい温度に満足をしたのか、バスタオルの結び目を手にした。
「…」
「…」
その様子を、隣から少し爪先立ちで眺める美貴。
当然のごとく、気付くあさ美。
「…」
あさ美の手が止まり、カノジョが自分の方に顔を向けたコトに気が付くと、視線をあさ美の程よく膨らみ、
蕾もかたどっている胸から、顔に向けた。
そして、"どうぞお構いなく"と軽く首を下げる。
「…おかしぃ」
「ん…?気にしなくてぃぃょ」
「…」
やがて、あさ美の表情が険しくなってくるコトに気が付くと、"わかったょ"と一言呟き、
美貴はあさ美のカラダを拝むコトを諦めたのだった。
- 407 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:46
-
美貴がやっと自分のカラダから視線を外してくれると、あさ美はバスタオルの結び目を解き、
すぐ前のタオル掛けに掛け、シャワーを自分の首筋に当てた。
そのまま呆れたように呟く。
「そんなに女のコのカラダ見るのスキなんだ」
しみじみとしたあさ美の口調に、少し首を傾げると、"まぁ、最近のマイブームかな…"と、
何気なく1つ頷いた美貴であった。
「…」
- 408 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:46
-
「もう上がるの?」
先程の教訓から、あまり隣のあさ美の方に顔を向けないようにして訊ねた美貴。
まだあさ美が愛と一緒に温泉に入ってきてから30分しか経っていなかったが、
こうやって美貴と一緒にシャワーを浴びているというコトは、上がるのだろうか、とフト感じたのだ。
そんな美貴の言葉に、シャワーを頭から浴びていたあさ美は、カラダの方にそれをずらした。
そして、手で顔の雫を拭い、美貴の方に視線を向けた。
しかし、当の本人が真正面を見ているコトに気が付くと、未だに先程の自分の言葉を守っているように思え、
"そこまで一生懸命見なくてもぃぃょ"と、少し表情を緩めたのだった。
「そんなコト言ったって、見たらヘンタイって言うんでしょ」
少々不貞腐れてしまっているのか、コドモみたいなコトをいう美貴。
いや、実際にコドモのようにクチビルを突き出し、抗議の意思を伝えている。
- 409 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:47
-
さゆみやえり、れいなが入ってきてからよく見る、このようなカノジョ。
いつもはオトナでカッコいい美貴だが、ときどきこうやってコドモのように不貞腐れたり、
甘えたりするときもあるのだ。
普段はカッコいい美貴も、このときばっかりは意外とカワイイもの。
昔とは違い。
そう、同じ表情でも、とても冷め切っていて、大学のトモダチにもあまり歓迎されないコトを、
初めて梨華が連れてきたときに、話していたコトをフト思い出したあさ美。
その当時は、確かにそうかもしれないと思ったりもしたコトもあったのだが、
最近よく見せるコドモのような表情を見ていると、とてもじゃないが、
美貴のコトを"冷めている"とは思えなくなっていた。
とくに、今のような表情を見ていると。
- 410 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:47
-
あさ美は少し呆れたような表情を浮かべ、仕切られている板に手を掛けた。
そして少し背伸びをする。
「コドモみたぃ」
呟く。
そこでやっと美貴はあさ美の方に顔を向けるも、思っていた以上にあさ美との距離が近いコトに驚いたのだろうか、
少し後ずさりをし、"近すぎ"と、表情を引き攣らせたのだった。
すると、普段なかなか見るコトのない、美貴の焦った表情に気をよくしたあさ美は、
"どうしてそれだけ焦ってんの?"と少しからかい、美貴のカラダに視線を落とす。
ところが、少し小さめの胸の膨らみが目に入ったとたん、あさ美の視界は真っ暗に。
あれ、と思うも、何となく自分の視界を覆っているモノ、いや覆っているヒトに気がついたあさ美。
雰囲気と手の大きさ、そして単純な理由から想像はつく。
- 411 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:47
-
「ごめん、しげさん」
その言葉にくいっと頭の向きを90度変えられ、覆っていた手を外されると、少し憮然とした表情をしたさゆみが、
目の前、軽く囲われた敷居に手を掛け、立っていた姿が目に入ってきたのだった。
偶然なのか、それとも憧れのヒトの"危機"に気が付いたのか、そのカラダはつい今しがたサウナから出てきたように、
ぽっかぽっかと真っ赤に火照っていた。
いや、それはあさ美に対しての"抗議"なのか、はたまた単純にサウナを出たばかりなのだろうか。
ほほも赤く染め、あさ美のコトを目を吊り上げ見つめる。
まるで"イジメなぃで下さぃ"と言わんばかりのその視線、態度。
なんだか、自分が悪者みたいに見つめられているように感じる今。
- 412 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:48
-
「もぉ、せっかくさっき助けてあげたのにぃ」
納得がいかない、とばかりにあさ美は、そんなさゆみの視線にクチビルを突き出し、軽く抗議。
そして、さゆみとにらめっこ。
すると、あさ美の抗議に、さゆみは少し目じりを下げて、
申し訳なさそうに"ごめんなさぃ"と小さく呟いたのだった。
さゆみらしい仕草と表情に、あさ美も表情を緩める。
もちろん、本当に抗議などしていない。
単純に、可愛らしいさゆみの行動と、美貴への感情に、軽く嫉妬みたいなものを感じただけ。
そのまま、"いぃなぁ"と美貴の方を向き、少し不気味にニヤけている美貴を見ては、軽く1つため息。
- 413 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:48
-
こうやって美貴が女のコに慕われている姿というのは見慣れているのだが、やはり羨ましいと感じるのだ。
"見慣れている"。
そう、自分の身の回りには意外と多い。
女のコに慕われている女のコが。
本人は全く意識していない、愛の"年上のお姉さま系の女のヒト"にやたらと可愛がられる姿。
純粋な性格的な部分や、キレイでとても可愛らしい顔立ちからだろう。
実際に、お店にも、愛目当てにやってくるお姉さま系の美女がやたらと多いのだ。
やってきては"あぃちゃん、これ買ってきたょ"と色々と手土産も持ってやってくるくらいに。
そして、誕生日になると、その現象は尚更ひどくなるのだ。
可愛らしいアクセサリやお洋服を買ってきては、愛に着て貰い満足気に浸るお姉さまは数知れず。
その日の愛は、手荷物いっぱいに、帰宅につくのだった。
まるで、軽いホステス。
ま、本人は"お友達"に"誕生日プレゼント"を貰っているような軽い感覚であろう。
一方正反対なのは、美貴の"年下の乙女のような少女"に慕われている姿。
カッコいい顔立ちはもちろんのコト、性格の一部分にあるざっくばらん的なトコロも好かれるのだろう。
そして、フト見せる意外と優しいトコロ。
仕事柄、女のコに声を掛けるのは慣れている美貴だが、可憐なおとなしい美少女に声を掛ければ、
その連れてくる確率は百発百中なのだ。
また、意外と小さな女のコから人気のある梨華。
ま、れいなと桃子に"あれ"だけ慕われ、"取り合い"、"嫉妬合戦"を見せつけられているのだし。
真希のコトもあり、コドモの取り扱いには慣れているのだろうか。
小学生や中学生の女のコは、梨華とお話しをして、働きたいと言い出すコもいるくらいである。
- 414 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:48
-
そんなカノジョたちとは対照的に、あさ美は、年下の女のコから憧られたり、
年上のお姉さま的なヒトからの寵愛のようなモノを受けたコトもない。
一度も"知らない女のコ"からプレゼントを貰ったコトもないし、積極的にお店にあさ美目的に遊びに来るコもいない。
いつもいつも、愛や梨華が女のコに慕われている姿を羨ましげに眺めるだけ。
逆に、自分から女のコに憧れたりしているのだ。
実際に、真希は愛してやまない。
それを考えると、少し悲しくもなる。
少しぐらい女のコに慕われるキモチを味わってみたいのだ。
「ちょっとぐらい、モテてみたぃ…」
思わずため息とともに零れてしまったその言葉。
そんな情けなく目じりを下げているあさ美の横では、先ほどのさゆみの行動が嬉しかったのか、
カノジョをシャワー室に連れ込もうとし、軽くハタかれて、"しらないですっ"と、つれない返事を貰い、
あさ美と同様、情けなく目じりを下げた美貴がいたのであった。
〜 ☆
- 415 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:49
-
温泉の更衣室の中には、一番最後に愛と一緒に温泉に入ったのに、一番最初に出てきたあさ美1人だけだった。
誰もいないコトから、ダイタンにカラダにタオルを当てる。
特にヒトの目を気にせず、いつものように家でお風呂から上がったときのように。
ただ違うのは、随分と広い部屋。
そして、自分の全身を映し出す鏡。
改めてマジマジと見つめると、それはそれで恥ずかしさを感じてしまうものだった。
とくに自分のカラダを見慣れないあさ美にとって。
そう、自分のカラダのラインを見るコトに抵抗のあるあさ美は、カラダを鏡で見るコトが、あまりなかった。
だから、そんなあさ美にとって、今映っているカラダは、随分と久しぶりに"見る"ようにも思えたのだ。
どれくらい久しぶりだろうか。
思い出す、自分のカラダ。
しかし、思い出そうとしてもなかなか思い浮かばず、
つい今しがた見たばかりのモノだけが、頭の中のヴィジョンに映し出されていたのだった。
- 416 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:49
-
やがて、思い出すコトを諦めたのか、再び目を向ける。
カラダのライン。
胸のカタチ。
ウエストのカタチ。
フトモモからのカタチ。
それらにタオルを当てながら、再び"前の自分"を思い出そうとするも、全く思い出せなかった。
ただ、1つだけはっきりしているコトがあった。
それは、今見えているモノは、自分の中で覚えているモノから明らかに成長しているモノだった。
そして、それは下着をつける段階ではっきりとカラダに感じるものであった。
ショーツを身につけ、少しキツク感じると、お尻が気になってしまうもの。
手で整え、少し隠す。
お尻を小さく見せようと前に出すと、お腹が出るように見える。
悪循環。
お腹をぐっとしめ、お尻を突き出すようにすると、とてもセクシーに見える。
ところが、自分の顔立ちから見ると、随分と違和感を感じるのだった。
- 417 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:49
-
「イシカヮさんとは…やっぱり違うなぁ…」
そう、あさ美も認めるが、梨華は、かなりセクシーなカラダのラインをしている。
そして、それをより強く見せるように振舞っているように見えるのだ。
その1つが、お腹を引っ込め、お尻を突き出すカラダのラインの出し方。
しかし、今少しそれをマネしてみたのだが、どうも自分のキャラじゃないようにも思える。
「やめょ」
無理にしようとすると、それはすぐにばかばかしくなる。
"だって、ごとぉさんがしていないのだから"と。
もし真希がそうやってセクシーなカラダの見せ方をしていたら、自分も何も考えずにするのかもしれない。
「はぁ」
結局は努力で小さくしなきゃ、と呟いたあさ美。
- 418 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:49
-
ブラジャーをお腹の前でホックを着け、くるっと後ろに回転、ぐっと持ち上げるようにして胸を納める。
肩に紐を掛け、胸のカタチを整えていると、フト手が止まったあさ美。
「おっきくなったかなぁ」
呟く。
ブラジャーのカップを下から持ち上げると、しっかりとボリュームを現し、
イヤラシサを感じるようなカタチとなったあさ美の胸。
「う〜ん…
ちょっとせくしぃ?」
少しイヤラシサを感じるも、この大きさに、なかなか悪い気はしないとばかりに、満足げなあさ美は、
"ごとぉさんと釣り合えるかなぁ"と呟きつつ、ブラジャーの中、普段より長い時間を掛け、
胸のカタチを整えたのだった。
このあと、真希と会うコトを自然と意識してのコトなのかもしれない。
しかし、フトそんな自分に気が付くと、呆れ顔で表情を緩めたのだった。
なんだか"憧れのヒト"を色仕掛けで落とそうと奮闘している自分に対して。
「男じゃないんだから…」
そう呟くと、改めて呆れてしまったのだった。
- 419 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:50
-
大きくため息を吐くと、パジャマの変わりに持ってきたぶかぶかのLサイズのシャツを身につけ、
そして、ホテルの部屋に置いてあった浴衣をカラダを通したあさ美。
浴衣とは不思議なものである。
こうやって袖を通すだけで、よりホテルや旅館に泊まっている感覚を味わえるのだ。
まさに、あさ美は旅行に来ているキモチに浸りながら、袖に腕を通すと、しっかりと胸の前で交差をさせた。
そして、帯を手にとる。
ところが、ふと止まる手。
さらに、首を傾げ、そのまま自分のお腹に当てた帯を眺める。
「はて…」
そう、なかなか着慣れないあさ美であったから、帯の結び方というのは分からないもの。
頭の中に浮かぶのは、夏祭りで1年に数度だけ着る浴衣と同じ結び方のみ。
それでいいような気もするも、しかし、本当は違うのでは、とも。
「…」
- 420 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:50
-
"ま、いっか"と、昨年の夏に愛と一緒に行ったときに教えてもらった新しい結び方で結ぶコトにしたのだった。
しかし、またまた止まる手。
そういえば、あの時は結局愛に全てを任せてしまったのだった。
微かに覚えてはいるものの、なかなか動かない手。
やがて、諦めると、昔習っていた空手のときと同じ帯の結び方でガマンをするコトにしたのであった。
かなり見た目に不細工だが、あとで愛が上がってきてから、聞こう、と。
普段は一度悩み始めると、誰から聞くまで他のコトに手が回らないあさ美だったが、
今は"そんなコト"より、"重要"、いや"嬉しい"コトがあるから、だろう。
軽く鼻歌を歌いながら、自分の下着やら着てきた服などを、いつもより適当にたたみ、袋に入れると、
普段なら立ち止まってしまうアイスクリームやジュースの自動販売機の前を素通りし、
温泉の更衣室を出たのであった。
- 421 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:50
-
温泉の更衣室をでて、1本の通路を右に向かうと専用のサウナ室がある。
こちらは温泉の中のものとは違い、サウナ専用の場所なのだ。
小さな更衣室、兼持ち物置き場、兼休憩場所となる中心の部屋の扉を開けたあさ美。
中を覗き込むも、とくにヒトはいないようだ。
「誰もいないのかぁ」
軽く呟き、扉を閉めると、さっき来た道を再び逆戻り。
そして、温泉の前の更衣室を通り越すと、ロッカールームのドアの前も通り過ぎ、ジムの方へと足を運んだのだった。
ガラスの自動扉の前、中を覗くと、こちらにもヒトはいないようだった。
ま、考えてみれば深夜の2時近くなのだから、とても自然のコトなのかもしれない。
祝日ならまだしも。
「ま、そだね…」
腕を胸の前で組むと、うんうんと頷くあさ美。
やけに納得顔のまま、結局はロッカールームの方へと、足を運んだのだった。
本当なら、一番最初に足を運ぼうと思っていた場所なのだが、やはり自分の探し人がいなかった場合に、
二度手間になりそうだったために、先に誰もいないであろうサウナとジムの方に回ったのだった。
温泉で希美にも出会ったコトから、おそらく"自分の探し人"は、
ロッカールームの方の休憩室にでもいるのかもしれない、と。
- 422 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:51
-
少し軽い足取りでロッカールームへの扉を潜る。
入ってすぐ前、30m先に見える扉が、受付の隣にでる扉である。
そして、左側には背の高さより若干高いロッカーの列が立ち並ぶのだった。
さらにその左億に、マッサージ機などが置かれた休憩室が存在するのだ。
扉を閉めると、軽く周りを見回したあさ美。
あまりヒトの気配は感じないようだった。
"いないのかなぁ"と少し寂しさを覚えるも、まだ休憩室の方もあるのだし、と少し元気付けるように1つ頷き、
一列ずつ覗き見ようと、歩き出した。
手前から軽く首を傾げながら、眺める。
"いなぃなぁ"と思いつつも、5列目もすぎ、"やっぱり休憩室の方かな"と思い始めていたあさ美。
ところが、6列目のロッカーの陰から首だけ出し、軽く覗き込むと、その表情に、笑顔が浮かんだのだった。
そう、カノジョの探し人の姿が目に入ってきたのだ。
しかし、その探し人の後姿をしっかりと認識した瞬間、息を呑んだあさ美。
思わずロッカーの陰に隠れる。
とっさの行動。
そして、1つ胸に手を当て、大きく深呼吸。
それは、一瞬大きく揺れ動いた心臓を押さえ込もうとした行動。
しかし、なかなか収まらない、それ。
ココロのどきどき。
そう、あさ美の頭には未だに、真希の後姿が、目に焼きついて離れないモノのように浮かんでいたのだった。
とてもキレイな真希の後姿が。
- 423 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:51
-
まるで雪のように白い真希。
すっと通った背筋に、ぐっと引き締まっているウエストライン。
それらを隠すように落ちている、真希のさらさらのブラウンのロングヘアー。
ショーツに治まっているほどよいカタチのお尻から、すらっと伸びた足。
全てが引き締まり、余分な脂肪が一切窺い知れないくらいだ。
高鳴る鼓動を抑えきれず、あさ美は再び少しだけ顔をだした。
とても、大きな罪悪感にココロを覆われながら。
自分がしてはいけないコトをし、そして、ただのオトコのようにも思え。
ただ、"罪悪感"という"思考"とは正反対の場所に納まってしまっている"欲求"という"思考"には、
やはり勝てなかったのだ。
そう、早く声を掛けたかったが、真希のショーツ姿を見てしまった時点で、
もう、声を掛けるに掛けられない状態と言ってもよかったのだ。
手を胸に持っていき、とても不思議な甘いものが渦巻いているココロを、ぎゅっと押さえ込もうとする。
無意味な行動とは、分かっていても。
- 424 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:52
-
いつの間にか、あさ美の目には、真希が今日1日穿いていたデニムに身を包んでいる姿が入ってきていた。
そして、次には、ブラジャーに手を掛けている姿が。
肩紐を外し、そのまま腰まで下ろし、ホックを外す。
どうやら、汗を流していた服装から、下着だけを代え、今日着ていたものに着替えているようだ。
しかし、今のあさ美にとって、そんなコトはどうでもよかった。
ただただ前にいる真希の姿に目を奪われる。
そう、これまで見たコトがない真希の部分。
ナナメ後ろからしか見えないのだが、それでもしっかりとカタチどっている真希の胸。
写真集を出しても水着姿を見せたコトのない真希。
カノジョの胸は、初めてといってもよかった。
ある程度のアイドルなら、写真集を出すと、水着姿を見せ、ある程度の胸のカタチを想像できたりするのだが、
真希にいたっては、なぜか水着はなかった。
その真希の、初めての姿。
しかも、包んでいるモノはない。
思わず感嘆のため息を零す。
頭がくらくらしてくる。
- 425 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:52
-
そんなあさ美の状態を知らない真希は、続いて、髪の毛を手で1つにまとめ、肩に掛けるように、
前にまわしたのだった。
何気ない仕草。
そして、背中が全てあらわになる。
と、そのとき、一瞬目を細めたあさ美。
そう、自分の目を疑ってしまうような"モノ"が入ってきたのだった。
再び目を細める。
いや、何が自分の目に入ってきたのか分からなかったための"目を細める"という行為。
"なに?"
真希の背中、丁度ブラジャーで隠れていた部分であろう。
そして、今まで髪の毛で隠れていた場所。
そこに、"何か"が見えたのだった。
"キズ…?"
- 426 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:52
-
いや、違う。
明らかに不自然なカタチのモノだった。
不自然というのは、それが人工的なモノであるように見えたからだ。
なぜなら、真希の背中の"それ"は幾何学模様の1つに見えるから。
"×…?"
"鎖模様…?"
そう、まるで"×"という記号を横に連ねたモノ。
遠目に見ると、"鎖"のようにも見える"それ"。
赤くはなく、若干浅黒い"それ"。
それが真希の雪のように白い肌に、食い込むかのように存在していた。
深く深く刻まれているかのようである。
意味が分からず、本当に自分の目に見えているものだろうか、と思ったあさ美は、再び目を細めた。
ところが、何度見ても、それは消えない。
- 427 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:53
-
真希のブラジャーに丁度隠れる部分にある"それ"。
しかし、遠すぎるコトもあり、あさ美には何なのか、全く理解できなかった。
近くで見ないと分からないモノである。
近付きたい衝動に駆られるも、当然出来るはずもない行動。
やがて、そんなとき、フト思い浮かんだ"タトゥ"という言葉。
オヘソにピアスの穴を開けている真希だから有り得るコト。
ところが、すぐに頭を振る。
見た限り、明らかに違うモノであるからだ。
それに、最近流行りの"タトゥ"というものは、昔の"イレズミ"と呼ばれていた時代とは違い、
ヒトから見えない、隠れている部分に作っても意味がないモノである。
ヒトに見せるのが目的で付けるのだから。
- 428 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:53
-
なら…
もう一度目を細めたが、もう真希は新しいブラジャーを身につけていた。
ブラジャーから微かに覗くそれは、やがて、後ろに流された髪の毛とともに、隠されたのだった。
じれったく感じるも、それはもうどうしようもなかった。
と、そんなときだった。
あさ美は後ろにヒトのような気配を感じ、思わずびくっと震えると、慌てて振り返った。
次の瞬間には、先ほどとは全く違った感情で、ノドから心臓が飛び出しそうになる。
「何してんの?」
そこには、まだ"お風呂上り"、軽くほほを染め、浴衣に身を通したさゆみと美貴が、
不思議そうに首を傾げ立っていたのだった。
「ぁ…」
余りにもビックリすると、人間は言葉を失うというが、このときに初めてあさ美は実感したのだった。
完全に口の中がカラカラになると、のどから言葉というものが全く出てこない。
「…ぁの…」
「みきてぃ?」
しかし、そんなあさ美の後ろから、先ほどの美貴の声に気が付いたのか、真希が声を掛けてきたのだった。
それに、さらに混乱するあさ美。
- 429 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:53
-
"バレル?"
完全に頭の中は、その言葉でいっぱいになっていたあさ美。
頭には血が昇り、さきほどの真希のハダカのシーンが浮かんでは消えを繰り返し、
そして、次の瞬間には、真希にケイベツの目を向けられる姿が浮かんでいた。
「…ゃ…ぁ…」
「ごっちん?」
あさ美を相変わらず不思議そうな表情で見ながらも、美貴も真希の声に気が付いたのだろう、
あさ美に近付き、そして、その後ろのロッカーの陰から顔を出したのだった。
「みきてぃかぁ」
「あーごっちん」
顔を出せないあさ美の横を、さゆみも通り過ぎ、美貴の後ろから顔を出した。
「あ、こんばんは」
真希と顔を合わせると、慌てて夜の挨拶をするさゆみ。
さっきまで来ていたタンクトップを丁寧にたたみながら、真希も"こんばんは"と嬉しそうに言葉を出す。
そして、2人の方に近付き笑顔を零したのだった。
一方、そんな3人の前に、あさ美だけは、顔を出せなかった。
背中を向け、俯いていただけである。
真希と顔を合わせられなかったあさ美は。
- 430 名前:20〜 投稿日:2005/12/06(火) 23:54
-
〜 ☆
- 431 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/12/07(水) 22:25
- 更新お疲れ様です。
うーん、ちょっと気付かれたようですね。
次回更新待ってます。
- 432 名前:初心者 投稿日:2005/12/08(木) 22:59
- 更新お疲れ様です
さゆ美貴のやりとりもいいです紺さゆのやりとりも面白いですね
しかし今回はこんこん頑張れー とゆいたかったです
次回更新楽しみに待ってます
- 433 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:39
- 突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 434 名前:なまっち 投稿日:2005/12/12(月) 23:14
-
>>431 通りすがりの者さん
ありがとうございます〜
えぇ…これから少しの間こんこんにはテンションを下げてもらいます…(ぅ〜ん…
>>432 初心者さん
ありがとうございます^^
やりとりを面白いって言っていただけるとうれしぃ^^
あ…こんこんには頑張ってもらいたいのですが…
>>433 名無飼育さん
お疲れ様です^^
へぇ×93初めて知った…
ちょっと行ってみようかな…
- 435 名前:【春の歌】〜第7話。距離 投稿日:2005/12/12(月) 23:15
-
21〜
- 436 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:15
-
他のメンバーももう少ししたら出てくるコトもあり、ロッカールームに隣接した休憩室で少し待とうと、
その中に入った美貴たち。
"へぇ"と声を零し、少し驚く。
今日何度目の声だろうか、と思うも、もうすでに驚くコトに慣れてしまっていたコトが、
少し不思議にも思えてしまった美貴であった。
そう、驚くのも当たり前。
意外と大きな部屋に、とても大きなマッサージチェアが数台置かれ、
今にも眠ってしまってもおかしくないくらいにふわふわのソファーまで。
ひとしきり眺めている美貴とさゆみとは相反し、真希はさっと自分の居場所、マッサージチェアの1つに腰を掛け、
先ほどまで動かしていたカラダの疲れを取ろうと、機械を動かし始めた。
少し軽い音を立て始めた機械。
そして、微妙な箇所を刺激され、奇妙な声をあげつつも、その表情はニヤけている。
なかなか自分にあった"動き方"を見つけるのは難しいもの。
しばし、難しい表情を浮かべながら色々と動かし、一番気持ちのいい"動き方"を探していた真希は、
何パターンか試したあと、やっと見つけたのか、"ぉ"と小さく声を零すと、心地よさそうに目を瞑ったのだった。
そんな真希のキモチよさそうに目を細めている姿を見て、美貴も一緒に寝転がりたい誘惑に駆られるも、
もし機械を動かしてしまうと、確実にそのまま朝まで時間が経過してしまうコトは簡単に想像がついてしまった。
さゆみも然り。
やがて、少し難しい表情をさせていた2人は、お互いに呆れたように小さくため息をつくと、
しぶしぶながらあさ美が座っているソファの方に引き返したのだった。
少し難しい表情をしているあさ美の方に。
- 437 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:15
-
今より、より難しい表情をしたあさ美をロッカールームで見たとき、少しイヤな予感がした美貴。
喜怒哀楽の全ての感情が入り混じった、とても不可思議な表情をしていたのだ。
大抵ぼぉっとしているか、食べ物や"真希"を見てシアワセそうな笑顔を浮かべているかのどちらかなのだが、
そのときのあさ美の表情は、全く違ったのだ。
そして、不思議に感じていた美貴の耳に、いかにも"誰かいるの?"といった口調の真希の声が聞えてくると、
自然と険しい表情へとなっていたのだった。
ここは更衣室。
隠れるようにしていたあさ美。
さらに相手は真希。
"まさか"
そんな言葉が自然と頭の中を駆け巡る。
しかし、一方の張本人である真希は、特別変わった様子もなく、いつものように笑顔を浮かべ、
自分に話しかけてきたのだった。
それは、普段の真希と全く変わらない"それ"である。
その姿を見た瞬間、一瞬感じた"イヤな予感"が勘違いであるような気もした美貴。
ただ、未だにあさ美の様子は、少し不自然であるコトは、気になったのだが。
全く話そうとはせずに、じっと考え込んでいるあさ美。
さゆみと美貴の会話にも入らずに、ただただ考え込んでいるのだ。
- 438 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:16
-
そんなあさ美に気付かないのか、さゆみはいつもどおりの笑顔。
ただ、やはり深夜も2時も過ぎると、普段はもう完全に夢の中にいてもおかしくない時間であるため、
会話にも、覇気もキレもなくなるもの。
「眠ぃ…」
やがて、可愛らしくあくびをしたさゆみは、温泉上がりの心地よい体温に随分と眠たげに目を細めたのだった。
そして、自然とソファに深く腰を掛けると、美貴の肩にもたれ掛かる。
いつもはえりにしてもらっているそのポジションだが、今はどうしても美貴になる。
美貴の温かいヌクモリと、自分のヌクモリ、さらにソファのヌクモリ。
真希のシアワセそうな緩んだ表情も、尚更さゆみの思考を緩やかなものへとさせるのだった。
「美貴がだっこして運んだげるょ」
そんな美貴の冗談にも、普段なら恥ずかしいものが、今は少しシアワセなキモチになり、
素直に受け入れられそうだった。
「ぁりがとうございます」
表情を緩めると、そのまま軽く目を閉じたさゆみであった。
えりと同じヌクモリをくれる美貴に、安心して。
一方、そんなさゆみに肩を取られてしまった美貴は、少し恥ずかしがるコトを想像して掛けた言葉を、
あまりにも素直に返され、少し虚をつかれたかのように、さらに不思議そうに首を傾げていたものの、
次の瞬間には"悪い気はしない"とばかりに、さゆみ同様に表情を緩めたのだった。
〜 ☆
- 439 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:16
-
眠ったらダメ、と思えば思うほどヒトというのは眠くなるものである。
さゆみを部屋まで送り届けるまでは、という使命感も、いつしか美貴の頭の中では、
どんどん端の方へと押しやられていたのだった。
気が付けば、"ネムイ"という言葉だけが美貴の頭の中では占められていた。
そして、その言葉がやたらとカラダ中を駆け巡る。
うとうと。
うとうと。
頭が大きく揺れる。
がっくしと垂れては、はっと起き上がる。
いい加減その繰り返しに嫌気がさしてきた、そんなときだった。
少し微睡みが心地よくなってきたそのとき。
いつもはカワイイけど生意気な桃子のやたらと高い声が、美貴の耳に聞えてきたのだった。
さらに愛の澄んだ声も。
2人の"寝てるよ〜"とやたらと元気な笑い声が、とても強烈な"目覚まし"になり、美貴の頭の中を駆け巡る。
そんな2人に続いて、なつみの笑い声、希美のヒトをバカにする声。
それらの声に、自然と目を覚ましていた美貴。
そして、目を覚ましたら覚ましたらで、またまた愛と桃子に指で指され笑われたのだった。
なんとも悪い目覚め。
いつも以上に不機嫌な表情へとなっていた美貴であった。
- 440 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:16
-
ただ、少し少し怖い表情でさゆみを起こしていた美貴だったが、
カノジョが未だに寝ぼけ眼で自分を見つめるその愛らしい姿に、少し機嫌を直すと、
さゆみの両脇に手を入れ、ぐいっと立ち上がらせた。
なつみも手を貸す。
「…ん…」
言葉にならない言葉で、頷いたさゆみ。
カラダに力を入れ、伸ばそうとするも、やはりもうカラダは眠ってしまっているようだ。
動かないものは動かないのか、やがて諦めると、素直に美貴の腕にぶら下がり、身を任せたのだった。
カラダも随分と冷えたぶん、より美貴のヌクモリが心地よい。
そんなさゆみの行動に、少し呆れたように表情を緩めるも、満更でもないのが美貴。
愛と桃子の"嬉しそう"の言葉に、特別否定をするコトもなく、"羨ましいかっ"と少しクチビルを突き出す。
そして、圭織と、希美が真希、愛があさ美を起こす様子も、少しほのぼのと眺めたのだった。
〜 ☆
- 441 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:17
-
美貴の隣でやたらと体重を掛けているさゆみと真希は、寝起きであるコトから、かなり重い足取り。
一方、その3人の前には、あさ美が愛に腕を絡ませ、相変わらずおとなしげに歩いていたのだ。
俯きかげんに歩くあさ美。
カノジョのその姿に気付いたとき、再び"やっぱり…?"と不安を覚えた美貴だったが、
さらに前を歩いている桃子、なつみ、圭織、希美から、"アイスクリームじゃん"と、
いかにも女のコっていうくらいに、ワンオクターブ高い声が聞えてくると、
俯いていたあさ美が、一気に元気を取り戻し、真っ先に並んだ姿を見て、少し安心をしたのだった。
しかし、アイスクリームの文字に、あさ美同様にさゆみも元気を取り戻し、自分の腕を外して、
お店に並んでいる姿には、少々気を落とした美貴。
手持ち無沙汰にぶらぶらと腕を振る。
ま、それでもさゆみが自分と真希の分も買い、それを手に嬉しそうに戻ってきた姿には、
簡単に機嫌を直したのだった。
- 442 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:17
-
「ぁりがと」
「ぃえ」
真希に同様にお礼を言われると、こちらはまだまだ慣れない"ヒト"なのか、
少し顔を温泉に入っているときのように染め、嬉しそうに頷いたさゆみ。
そして、お金を出そうとしている2人に対して、"今日お世話になったので、ぃぃですょ"と、
少し気恥ずかしげに、アイスクリームを口に含む。
クチビルに僅かについたクリームを、可愛らしくひとなめ。
そんなさゆみの気遣いを、素直に受けたのが真希。
"ぁりがとね"ともう一度お礼を言うと、さゆみ同様にアイスクリームを口に含んだのだった。
一方、"今度はごとぉが奢ってあげるね"と嬉しそうに言う真希に"ぁりがとうございます"と楽しげなさゆみの隣で、
美貴だけは、"年下に奢られてもねぇ"と少し表情をしかめ、納得いかないとばかりに、
アイスクリームを眺めていたのだった。
〜 ☆
- 443 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:17
-
アイスクリームのスナック部分を口にする頃、美貴はさゆみと真希と一緒に自分たちのフロアーを歩いていた。
3人だけで。
なつみと圭織、希美、愛とあさ美に桃子は、とりあえず一階にあるコンビニで、
お菓子や飲み物を買ってから部屋へと戻るというコトで、分かれたのだった。
"また明日"と夜の挨拶を交わして。
そして、明日のコトを少しだけさゆみの部屋の前で話していた3人だったが、真希が眠そうに1つ目を擦ると、
美貴は"そろそろ寝よっか"と自分も眠いコトを思い出したのだった。
「そうですね…」
さゆみが美貴の言葉に頷くと、真希は"じゃまた明日"と、手を振り部屋へと戻って行った。
- 444 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:17
-
やがて、その後ろ姿を眺めていた美貴だったが、さゆみの表情が少し冴えないコトに気が付くと、
"そう言えば…"と思い出したコトが1つ。
そう、さゆみとえり。
温泉に誘いに行ったときの2人の様子から想像できた、2人のケンカのような状態を思い出したのだった。
ある意味、"自分がさゆみのそばにい過ぎる"せいのような気もするそれ。
少し罪悪感を覚える。
さらに、幼馴染である2人、初めて出会った渋谷のセンター街での2人のぴったりと寄り添う姿を思い浮かべ、
さらに罪悪感を感じるのであった。
「ぅ〜ん…」
思わず唸る。
そして、次の瞬間には自然と"もうちょっと話す?"と聞いていた美貴。
その美貴の言葉に嬉しそうにさゆみは頷くと、早速とばかりに扉を開け、美貴を招きいれた。
とても嬉しそうなさゆみの表情に少しほっと胸を撫で下ろすも、
急に変わった様子には、少し呆れたような表情を浮かべた美貴であった。
〜 ☆
- 445 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:18
-
ベッドに腰を掛け、今日携帯で撮った写メを眺めていた梨華。
その表情は、ずっと緩みっぱなしである。
目に映し出されるモノを見ては、そのときの場所や景色、楽しいキモチなども思い出し、
さらに目を細めてしまうのであった。
東京駅を出たときのモノから、新幹線の中、新神戸の駅。
旅行にあまり行く機会のない梨華は、まだまだ旅行が始まったばっかりということもあり、
少し緊張した表情ながらも、どこか期待感でいっぱいにほほを染めたモノが多い。
そんな梨華とは正反対であり、とても慣れている真希。
カノジョとの写真が多いのは、やはり姉妹の2人、久しぶりというコトもあるからだろう。
随分と枚数を撮っていたのだった。
神戸に到着してからは、巡った場所場所で撮ったコトもあり、さらに数を増したのだった。
一番最初の目的地である南京町まで通った街。
ハーバーランドのモザイクから、ポートアイランド、旧居留地。
そして、つい先ほどともいえる、夜のハーバーランドとポートアイランド。
そのどれにも写っていたのは、れいな。
そう、神戸についてからの写メは極端にれいなとのショットが多くなったのだった。
もちろん、今日一緒に行動していた真希や桃子、あさ美とのショットも多いのだが、
やはりれいなの数だけは極端に多い。
その数の多さに、少し呆れる梨華。
- 446 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:18
-
ただ、呆れるとはいえ、梨華自身、れいなとのツーショットはとても嬉しかったのだ。
カノジョからの"撮りましょう"という言葉が。
だから、飽きるコトなく、撮り続けたのだった。
それは、見るときでも変わらない。
今、これだけたくさん撮られたものを見ても、全く飽きるコトがなかったのだ。
とくに、れいなの表情。
「かゎぃぃなぁ」
いつの間にか、そのときの景色、感情を思い出して"楽しむ"というコトから、"れいな"を見て楽しんでいた梨華。
愛らしいカノジョを見て。
真希を見ていても、全く飽きないのだが、れいなも同じだった。
やがて、ほんの数時間前の、観覧車の中での写メが出てきたのだった。
北海道で撮った、真希と同じ写真を撮ってください、と言ったカノジョとのショット。
その画像を見ていると、不思議と甘いモノを感じる梨華であった。
- 447 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:18
-
しかし、次の瞬間には、少し表情をしかめる。
「なんだかなぁ」
そう、そんな自分に少し呆れると、そのまま写真を眺めながら、ばったりとベッドに倒れ込む。
自分の視界に見える携帯の角度が少し変わり、キモチも変わるのだろうか、とフト思うも、
梨華の願いとは裏腹に、うんともすんとも変わりそうにはなかった。
さきほどの"甘いキモチ"は。
やがて、心地よいベッドに包まれていた梨華は、れいなの画像との相乗効果で、
少しれいなのヌクモリを思い出したのだった。
今日ずっと感じていたれいなのヌクモリを。
少し懐かしさを感じるそれ。
もう一度感じたいなぁ…
そのように感じるも、出来るわけもなく、仕方なく、再びそのヌクモリを思い出そうとした梨華。
しかし、今度は、先ほどとは打って変わって、そう簡単には思い出せるモノではなかったようだ。
「はぁ…」
真希のヌクモリなら簡単に思い出せるのだが、やはり今日1日だけたくさん"感じる"だけだと、
簡単に思い出せるレベルにまで、ならなかったようだ。
- 448 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:19
-
しばし考えるも、いつの間にか諦めたのか、携帯を閉じると、軽く目を閉じたのだった。
遠くで聞えてくるドライヤーの音に、れいながお風呂から上がったコトを悟った梨華。
もう少しかな、と思いつつも、自然と重たくなる目蓋。
やがて、次に目が覚めたときには、隣にぼふっという音と共に、微かにベッドが沈むと同時に、
軽いモノが落ちる気配がしたのだった。
まるで、倒れ込むかのような、その気配。
その気配を感じると、梨華の表情も自然と柔らかいものへとなっていた。
うっすらを目を開けると、案の定、れいなが浴衣に身を包み、うつ伏せになって倒れ込んでいたのだった。
ぐったりと倒れ込んでいるれいな。
しかし、梨華の方に向けられ、軽く目を瞑っているその表情は、とてもシアワセそうに見える。
じっくりとお湯に浸かっていたからか、それともお湯の中で眠ってしまい、たまたま長い時間掛かっただけなのか、
カノジョのほほは赤く染まり、とても愛らしさを感じるものだった。
いつまで経っても飽きないれいな。
梨華は、ココロを甘くさせ、カノジョを眺めていたのだった。
- 449 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:19
-
「れぇなぁ」
やがて、どれくらい眺めていたのだろうか。
れいなとは一言も話さず、梨華はカノジョを眺めていたのだった。
もしかしたら、倒れ込んだときには、意識があり、色々と話せたかもしれなかったのだが、
もう今では、完全にオネムの世界へと飛び立っているコトは確実であるカノジョ。
それを考えると、少々残念なキモチにもなる。
「れぇなぁ」
2回目の呼びかけにも、答える気配がないことを悟ると、梨華は"仕方がなぃなぁ"と表情をゆるめ、
上半身を起こし、立ち上がったのだった。
そして、ベッドに倒れ込んだときの衝動から、少し乱れてしまったれいなの浴衣を軽く直してあげてから、
カノジョの脇に手を入れ、ぐっと持ち上げる。
とても軽いコトに一瞬驚き、さらに意外と簡単な仕事に、少し残念なキモチを覚える梨華。
そのまま、れいなのカラダは、簡単に布団の中へと導かれたのだった。
少々の物足りなさを感じながら、お布団を掛けてあげる。
- 450 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:20
-
と、そのとき、微かにれいなの口が動いたコトに気が付いた梨華。
それに気が付くと、少し腰を屈める。
「…?」
「…イシ…ヮさん…」
「…?」
はっきりとではないが、自分が呼ばれたように感じると、"どうしたの?"と、少し顔を寄せる。
今のカノジョの口から出てくる言葉は寝言と分かってはいたものの、母性本能なのか、自然と近付き聞き返した梨華。
少し表情を柔らかくさせ。
そう、寝言を言うと、普段の可愛らしさがさらに増してしまうのだ。
しかも、れいなの口から聞えてきたように思えた名前は、自分の名前。
この瞬間だけは、おねえさんを通り越し、母親のようなキモチにもなる。
夢の中へと入ってしまっているれいなだけに、答えるとは到底思っていなかったものの、顔を寄せた。
「…?」
「…キ…」
「…?」
「…だい…スキで…す…」
「…!」
思わず顔が赤くなる梨華。
「…あぃ…して…ます…」
そして、早く動き出した心臓。
体温が急上昇するのを感じたのだった。
胸を押さえる。
- 451 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:20
-
しかし、まだ動くれいなの口。
「…?」
「…ごとぉさん…」
その言葉に、梨華はふっと表情を緩めたのだった。
"なぁんだ"とばかりに、一瞬すごい胸をどきどきさせてしまった自分にも、呆れてしまう。
そう、自分に向けられたと思った言葉の対象は、実は真希。
「知ってるょ…それは…」
少々悲しげに呟く。
やはり、慕われるとは思っていたのだから、先ほどの言葉は自分に向けられたモノだと思ってしまっただけに、
少々悲しい。
「いぃじゃん」
れいなは真希のコトをスキなのは、散々聞いてきたものだし、と。
「はぁ…」
"わたしに言ってょ"と、妙な悪態をつく梨華。
小さくため息をつき、呆れたように表情を緩めると、"さて"と中腰を解き、立ち上がったのだった。
- 452 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:20
-
しかし、次の瞬間、フト何かを思い出したのか、"そうだそうだ"とばかりに再び腰をかがめると、
れいなの耳元に口を持っていった。
「今日1日、色々と付き合ってくれて…ぁりがと…」
そして、感謝のキモチも込め、カノジョの柔らかいほっぺに1つ、クチビルを落としたのだった。
とても柔らかくて、マシュマロみたいなカノジョのほっぺに。
梨華の柔らかいクチビルが。
軽く音を立て。
やがて、イケナイイタズラをしてしまったかのように感じてしまった梨華は、ほんのりとほほを染めて、
部屋を出たのだった。
"イケナイことしちゃったかなぁ"と、罪悪感を感じて。
- 453 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:21
-
ただ、そんな梨華の行動を知る由もないれいなは、とてもシアワセそうに、さらに、だらしなく表情を緩めて、
そして、夢の中で梨華とのデートの続きを楽しんでいた。
夢の中で。
そう、れいなの1日は、夢の中でまだ続いていたのだ。
"憧れのヒト"から随分とランクアップを果たし、"距離"も近付いた、"ステキなヒト"と。
さらに、自分の中で勝手に想定している"ライバル"に打ち勝って、その"ステキなヒト"と夢の中で、
1日の残りを、楽しんでいたのだった。
「ごとぉさん…
…に…げーむ…勝ちま…したょ…
だから…れぇなと…」
〜 ☆
- 454 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:21
-
テレビの音を、単なるバックミュージックに聞きながら、ふと途切れた会話。
そこには、ベッドの上で見つめ合うさゆみと美貴。
"やばぃ?"
少しおかしくて不思議な空間に、美貴は"直感"で感じていたのだった。
意外と人生経験が長い分、何となく今の空気が危ないものだと。
"今の空気"
それは、少し会話に困ってしまったときなどに起こりやすいモノである。
会話に困ってしまうような空間とは、どうしても大胆なコトも口にできる空間。
そして、相手も簡単にその空気に引きずり込まれてしまうのだった。
今はまさに"それ"である。
- 455 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:21
-
さらに、その空気を助長しているのが、さゆみ自身の悪いクセであった。
そのクセは、本人は全く意識をしていないのだから、余計にタチが悪い。
そのくせ相手に与えるダメージは相当なものなのだ。
そう、それは、さゆみのヒトの目をみるクセ。
いや、ただ見るのではない。
今まさに、さゆみの潤んだ瞳で美貴を見つめる瞳は"恋する女のコ"であるように感じさせてしまうものであった。
さゆみの悪いクセとも言えよう。
ヒトの目を、じっと見つめるクセは。
おそらく、今の空間、男のコが見たら、ほぼ100%の確率で勘違いをし、抱き締め押し倒すであろう。
今、現に、美貴のココロは、まるで男のように、動揺をしてしまっているのだ。
さらに、お風呂場でのさゆみのカラダをライン、はたまたさゆみの胸のとても柔らかい感触、
次第にカタチどっていた"それ"、自分の手の刺激により反応しているさゆみを思い出し、
どきどきさせる。
- 456 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:22
-
女のコ同士のカラミを見るコトがスキな美貴。
他人の女のコのカラダは、職業柄見慣れてはいるものの、
やはりさゆみとなると別格である。
そう、カノジョのランクは美貴が見てきた女のコの中でも、トップクラスなのだ。
さらに、その性格を考えると、カラダとのギャップから、より胸を甘くさせてしまうものだった。
とても女性らしい柔らかいカラダなのに、性格はまだまだ未成熟で純粋な少女。
ま、実際にまだまだ15歳とコドモなのだが。
明らかに犯罪である。
そんなさゆみに、これほどの潤んだ瞳で見つめられると、理性という防波堤など簡単に決壊してしまうだろう。
いとも簡単に。
今の美貴みたく。
- 457 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:22
-
そして、少し自分自身が"やばぃ"と感じた美貴は、そこで先手を打ったのだった。
さゆみが沈黙をして、相手の瞳を見つめると、"こうなる"と。
冗談を使い。
「浴衣って楽だよね」
「…そうですよね…?」
唐突に切り出された美貴の会話。
その方向が分からなかったさゆみは、一応頷くも、少し不思議そうに首を傾げたのだった。
"どうして?"とばかりに。
ただ、次の美貴の言葉に、少しカノジョの言わんとしているコトを理解したのだった。
そして、ほほを染める。
「簡単に"脱がせる"んだょ」
そう、その言葉に、簡単に温泉の中でと同じくらいに表情を赤らめたさゆみ。
美貴の思惑どおりに。
そんなさゆみの行動に、満足した美貴は、少し目つきを鋭くさせると、カラダを近づけ、
さゆみに"キケン"をワザと知らせる。
今の自分は"狼"。
- 458 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:22
-
手が浴衣に触れると、さゆみのカラダがびくっと一瞬震えた。
ただ、その瞳は何を思っているのか、相変わらず潤んだものである。
"タチが悪ぃ"
少し呆れたように表情を緩めると、"そんな潤んだ瞳でヒトを見つめると…"と小さく呟いたのだった。
さゆみにも聞えるくらいに。
その美貴の言葉に、少し首を傾げたさゆみ。
やはり、意識をしていないだけにタチが悪い、と再び感じる。
このままオトナになって、いつか"普通のトモダチ"に勘違いをさせて、そのまま強引ともいえる夜のイトナミの後、
コイビト同士になってしまうなんて、悲しすぎるもの。
今のうちに、そういう悪い未来は根を摘まないと。
- 459 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:23
-
「簡単に勘違いしちゃうょ」
脅しともいえる文句を、更に低い声を作り、煽る。
しかし、そんな美貴の思惑は、思い通りにいかないようだった。
そう、少し動揺を見せると思っていたさゆみは、余り顔色を変えずに、むしろ笑顔を零すと、
"フジモトさんは、そんなヒトじゃありません"と言い切ったのだ。
その言葉に、一瞬呆然としてしまったものの、次の瞬間には、嬉しさを隠しきれなかった美貴。
"あの"お風呂場では"ケイベツします"と言っていた言葉は冗談だったのだ、と。
それはつまり、大分冗談も言える仲になったコトにも繋がるだろう。
そうなると、自然と嬉しいものだった。
- 460 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:23
-
ただ、今の美貴の目的は違う。
少しニヤケそうになるも、"いゃいゃ"とばかりに少し怖い表情を作ると、
"美貴の"職業"を忘れた?"とカメラをまわすフリをしながら、低い声を出したのだった。
「ぁ…」
思わず小さく声を零したさゆみは、本当に忘れていたようだった。
少し驚いたように目を開き、美貴を見つめる。
そして、浴衣の前を押さえ、少し後ずさり。
しかし、そんな仕草をされると、俄然張り切ってしまうのが美貴だった。
"ヒトのコトをあまりじっと見つめたらダメ"というコトだけを教えるつもりだったのだが、
いつの間にか、簡単に忘れてしまった美貴。
ゆっくりとベッドの上を後ずさりするさゆみを追いかける。
- 461 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:23
-
ところが、ベッドなどそう広いモノではない。
簡単に追い詰めてしまうもの。
もっともっと追いかけて、そんな"プレイ"を楽しみたかった美貴だっただけに、がっくしを肩を落とす。
そう、これだけ簡単に自分の下で押し倒され、さらに潤んだ瞳で見つめるのだから。
普通はもっと抵抗をして、"いゃいゃ"と言う女のコを羽交い絞めにするのが、美貴的にはスキなのだ。
こんなに簡単に話が進んでは、勿体無いもの。
「もっと抵抗してょ」
思わず呟いていた美貴。
しかし、さゆみにとってはあまり関係がなかったようだ。
先ほどの言葉を美貴から聞き、逃げる仕草はしていたものの、"まだ信じてますょ"と少し表情を緩めたのだった。
「あ〜ぁ…」
その言葉に、美貴は大げさにため息をつく。
ここまで言われてしまったら、もうどうしようもなかった。
素直に元々の定位置へと戻ったのだった。
そして、面白くないとばかりに不貞腐れたような表情を浮かべたのであった。
〜 ☆
- 462 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:24
-
「帰って来ないね…」
美貴にとって、本題であった。
その言葉は。
もちろん、さゆみも簡単に美貴の云わんとしているコトは理解できたのだろう。
先ほどまでの緩んだ表情は、一気に引き攣ったものへとなったのだった。
そして、悲しげに俯く。
何も言えないさゆみ。
ただただ悲しかったのだ。
美貴と一緒にいるだけで、その寂しさは忘れられていたのだが、こうやって改めて言われると、
すごく簡単に思い出してしまったのだった。
とても悲しいキモチを。
「そうですね…」
やっとのコトで1つ呟いたさゆみ。
- 463 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:24
-
そんな悲しげな表情をさせたさゆみを目の前に、少し慰めてあげたいと考えていた美貴だったが、
いざその場面に出くわすと、何も言えなかった。
ただ自分も悲しくなり、少し目じりを下げるだけ。
普段は少しキツメの口調で、ヒトのコトを慰めてあげたり、怒ってあげたりと出来る自分が、
今は何も言えなかったのだ。
そんな自分が、情けなく感じる。
ある意味、今日ずっとさゆみのそばにいて、今もすぐそばにいる美貴が、これまでのさゆみの人生の中で、
一番長い時間そばにいたえりの代わりのような存在であるはずなのに、と。
今の美貴にとって、ただ出来るコトは、一緒にいてあげるコト。
そう、このまま放ってなんて帰れるはずもない。
もしえりが帰って来なかったら、さゆみは一晩、1人だけで眠るコトになるのだ。
さすがに、旅行に来て、それは悲しいだろう。
そうなると、ただ1つだった。
そして、いつもよりうんと優しげな表情をした美貴。
「美貴たちの部屋で一緒に寝ようか…?」
- 464 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:24
-
美貴のその言葉に、嬉しそうに目を開いたさゆみ。
一瞬、その表情のまま、口が動きそうになった。
しかし、次の瞬間、はっと思い出すと、少し表情を沈ませたのだった。
悲しげに。
「さゆみがフジモトさんの部屋に行っちゃうと…えり…部屋に入れなくなっちゃうんで…」
さゆみの言葉に少し驚いた美貴。
そう、予想外だったのだ。
今日の雰囲気だったら、えりは帰って来ないコトが想像できたのだから、
こうやって声を掛け、美貴、桃子と一緒に寝てあげるコトが、さゆみにとっても一番であろうと思ったのだ。
そっちの方が明らかにココロへのダメージは少ないし。
それなのに、さゆみは断ったのだ。
やはり姉妹のような存在である2人、ココロの半分をもぎ取られたように感じていたのだろう。
- 465 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:24
-
そして、それを必死で修復をしていた美貴。
そう、美貴のおかげで、さゆみのもぎ取られたココロは随分と修復してもらっていたのだった。
それには、とても感謝をしていたさゆみ。
ただ、美貴の言葉に甘えて、この夜、そのまま部屋を出るとなると、それはそれでイヤだった。
えりが出て行ったから、自分も出て行く。
さゆみの性格的にイヤだったし、仮に自分が出て行くと、えりがフトしたキッカケで戻ってきたとしても、
部屋へと入れなくなるのだ。
それを考えると、部屋を出るコトはできなかった。
かといって、自分からえりの方に謝りに行くコトもできなかったさゆみ。
素直に謝りたいとも思うものの、必ず聞かれるであろう"あのとき"のコトなど、説明なんて出来ないのだ。
何と言えばいいのか分からなかったから。
悪循環である。
- 466 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:25
-
さらにそれを助長するのが、さゆみとえりが生まれて一度もケンカをしたコトがなかった"事実"であろう。
ある程度ケンカをするような姉妹なら、仲を戻す方法を知っているだろう。
さらに、ケンカの耐えない姉妹なら、次の日には、あっけらかんと、ケンカをした事実も忘れ、
お互いに謝るコトもなく、いつものように過ごせるだろう。
しかし、さゆみとえりはケンカをしたコトがなかった。
つまり、"仲直りをしなければいけないという状況"に、今までで一度もなったコトがなかったのだ。
今"生まれて初めてなった"その状況。
生まれて初めてのケンカ。
それを考えると、自然と零れてしまいそうになったため息。
ただ、美貴の前ではこれ以上ため息をつきたくなかったさゆみ。
あまり心配をかけずに、寝て欲しかったのだ。
そして、とびっきりの笑顔を作ったのだった。
「ありがとうございます」
美貴を笑顔で見送った。
〜 ☆
- 467 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:25
-
真希の部屋をノックした梨華。
しばし待つ間、携帯を取り出し、眺める。
もし、まだ部屋に戻ってきていなかったら、電話を掛けるつもりである。
普段のツアーとは全く違うホテルでの一泊なのだし。
もしかしたら、あさ美たちに捕まっているコトも考えられる。
しかし、その心配は無用だったようだ。
ほどなく"はぃはぃ"と真希らしいのんびりとした口調が聞えてきたのだった。
そして、ばたんと少しドアに手が当たるような音。
どうやら、覗き穴から見ているようだ。
梨華も覗き穴に顔を近づけ、1つ口元でピース。
「…」
「…」
たっぷりと30秒は経過。
「ちょっとごっちんっ」
明らかに遊んでいる真希。
むっと表情をしかめると、ドアのノブをがちゃがちゃ。
抗議を示す。
- 468 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:26
-
やがて、笑い声と共に、扉は開いてくれたのだった。
もぉっとほっぺを膨らませた梨華。
しかし、出てきたふにゃっと表情を崩している真希の姿を見て、
思わず顔を赤らめたのだった。
そして、しっかりと上から下まで眺めると、部屋の中へと慌てて押し込んだ。
押し込むとはいっても、少し遠慮をして、肩を押してのコト。
さすがに親子のような関係とはいえ、恥じらいと遠慮はある。
そう、真希は全く服を身につけていなかったのだ。
服とは、下着も含む。
いや、一応首からタオルを掛けてはいたのだが。
そんな姿で部屋の扉を開いたのだった。
扉をしっかりと手で閉めると、梨華は顔を真っ赤にさせた。
「ちょっと!
浴衣くらい羽織ってから出てきなさいよっ」
お母さんのように強い口調で注意する梨華だったが、やはりその視線は恥ずかしさのあまり泳いでいる。
少しでも油断をすると、真希のとてもボリュームのある胸の膨らみに自然と視線がいってしまうのだった。
その大きさからは想像できないくらいの重力に逆らって、キレイなカタチを保っている真希のモノに。
- 469 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:26
-
ただ、一応、見慣れているといえばおかしな話だか、見慣れてはいるのだ。
そう、真希は意外と家のお風呂上りでも、真っ裸でうろつくコトがざらであるのだ。
さらに、寝るときも。
"ちょっとっ"と注意する梨華に対して、"とても楽だから"とあっけらかんとした表情で言う真希。
だから、結構見慣れたものなのだが、こうやって家以外の場所で堂々を見せられると、
自然と恥ずかしさを感じる梨華であった。
「恥ずかしがるコトないじゃん」
「なっ」
絶句。
そうなると、まさに図星でもあるコトから、負けず嫌いの梨華がむくむくと起き上がってきたのだった。
「恥ずかしくないもんっ」
「恥ずかしがってる」
「ないっ」
「…おこさま」
手馴れた様子で、あしらう真希。
やはり、相当慣れているようだ。
- 470 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:26
-
「ぐ…」
何も梨華が言えなくなると、少し肩を竦めて、"梨華ちゃんもハダカになれば恥ずかしくなぃんだょ"と、
さも当然の口調で、普通の女のコが聞いたら恥ずかしがるような言葉を口にしたのだった。
真希のその言葉に、呆気に取られたような表情を浮かべた梨華だったが、
次の瞬間には、情けなく目じりをさげた。
いつものやり取りである。
そう、いつもいつも真希がハダカで家をうろついていると、こうやって言い合いになるのだ。
そして、その結果、こうやって真希が勝ち、梨華が落ち込むコトで一件落着となる。
それは、外出先でも変わらなかったようであった。
やがて、勝ち誇った表情の真希は、部屋の方へと向かったのだった。
少し落ち込んだ様子の梨華も、なるべく真希を見ないまま、後ろから続き、手前のベッドに腰を掛ける。
そんな梨華の前で、真希はショーツを穿く。
「ちょっとお風呂上りだったから…」
少し優しげな口調の真希。
これもいつものコトである。
少し梨華が落ち込むと、真希は可哀相と感じてしまうのだった。
そして、梨華に対して優しくなる。
これまたいつものやり取り。
- 471 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:27
-
真希の言葉と、様子や口調に、少し機嫌を直した梨華は、素直に頷くと、
自分が来た目的を思い出し、"そうだそうだ"と口を開いたのだった。
「ちょっとえりがわたしのベッドで寝ちゃって…ごっちんの部屋で泊めてょ」
疑問系や、余り"お願い口調"でもないというのは、もう自分の中では決まっているコトなのであろう。
いや、真希が断るというコトを、頭の片隅にも想定していないからであろう。
ま、親子のような2人であるから、当然なのかもしれない。
「そうなんだ…」
しかし、すぐに"いいょ"と頷くと思っていた真希だったが、相反し、少し考え込んだのだった。
そして、指先を口元に持っていく。
- 472 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:27
-
一方、真希の様子に少し不思議そうに首を傾げた梨華。
しばし待つことにするも、相変わらず曝されている真希のハダカには、
視線のやり場に困ってしまっていたのだった。
そう、腕に胸が潰され、少しいやらしく変形しているその様子を、ちらりの視線の先に見止めると、
自然と顔に熱が帯びてきた。
腕の隙間から覗く胸に。
やがて、羨ましさを感じていた梨華。
自分自身はごく一般的な大きさの分類に入り、別に大きくなくてもいいと思っているのだが、
真希の膨らみを見ると、いつも羨ましく感じ、自分も大きくなりたいと感じていたのだった。
ま、成長期を過ぎてしまった梨華にとって、そう簡単なコトではないとは分かってはいるものの。
いやいや、真希は成長期を過ぎてから大きくなったのだから、可能性がないわけではないのだが。
「羨ましいなぁ」
思わず呟いていた梨華。
そして、それを目ざとく聞き逃さなかった真希が、少々不敵な笑みを浮かべたのだった。
「なにが?」
「え…?」
「なにが羨ましいの?」
明らかにイヤラシイ笑みを浮かべている真希の姿に、梨華は少々むっと表情をしかめると、認めない、
とばかりに、"別にぃ"とふんとクチビルをつきだした。
- 473 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:28
-
そんな梨華の姿に、"なにお"っとほほを引き攣らせた真希。
ただ、次の瞬間には、"まぁいぃゃ"と息を抜くと、"そうそう"と手を叩いたのだった。
もう真希の興味は梨華とのアソビから離れていた。
そう、意外と真希との会話はぽんぽん切り替わるのだ。
まぁ、家族のような存在であるから、別にお互いに気を使いながら会話をする必要はないのだろう。
自分が思ったコトを、思ったときに口にし、会話のアソビも付き合いたかったら付き合う。
それが梨華と真希の会話。
まるで今のように。
「なに?」
「残念ながら…」
少し肩を竦めた真希。
そして、"ベッドが1つしか空いてないの…"と。
- 474 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:28
-
梨華は自分の座っているベッドに目を向けた。
すると、真希のニモツが広げられていたのだった。
ただ、それほど大きくないニモツ。
やがて、"こっちのなら空いているんだけど…"と、少しぶっけらぼうに言う真希。
その姿は少し恥じらいがあるのか、ほほを赤く染めていた。
そう、次の瞬間には、梨華は真希の言いたいコトが分かったのだった。
やがて、少し表情を緩めると、"じゃ、一緒に寝ょか"と笑顔を浮かべた。
その梨華の笑顔に、真希は嬉しそうに頷く。
とてもコドモのように素直な表情を浮かべて。
しかし、そんな幼げな真希にほのぼのとしたキモチになった梨華だったが、現実的なモノ、
真希のとてもステキな胸の膨らみと、カラダのラインが目に入ると、改めてほほを染め、
肩を竦めたのだった。
そして、しっかりとした口調で諭す。
「一応、浴衣だけは羽織ろうね…」
〜 ☆
- 475 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:28
-
さゆみは急に寂しくなってしまった部屋の中で、ベッドに腰を掛け、携帯を取り出した。
今日、行動を共にしたメンバーとモザイクの中からポートタワーを背景に撮った、6人の姿が映し出されていた。
まだこの時点では、えりとはケンカをするとは思ってもいなかった。
いや、そもそも考えてみれば、今の状態はケンカとはいえるのだろうか。
えりはそうなのかもしれないが、さゆみにとってはえりに対して怒っているという感情は微塵もないのだから。
ただ、えりだけが怒っている。
しかし、それをケンカというのだから、考えてみれば正しいのかもしれない。
「ケンカ…?」
これまで使ったコトのない言葉に、とても違和感を感じるさゆみ。
そして、それが余計に寂しさを覚えさせたのだった。
使ったコトがない、"ケンカ"という言葉。
ため息しかでなかった。
- 476 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:28
-
やがて、いつの間にか思い浮かんでいた、もう一人のシンユウの顔。
もちろん、それはれいな。
そして、れいながこのコトを聞き、とても不貞腐れたように表情をしかめているのが想像できたのだった。
"はぁ?意味わからんっちゃよ"
真っ先に掛けてくる言葉すら思い浮かぶ。
「れぃなのトコに行きたい…」
頼もしいシンユウのそばに。
ただ、今カノジョは梨華ととてもシアワセなひと時を味わっているのかもしれないのだ。
それはそれで、また怒られそうな気もするさゆみ。
「はぁ」
やはり、ため息しかでない。
- 477 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:29
-
いつの間にかベッドに寝転がっていたさゆみ。
少し寒さを感じると、ふわふわの布団の中へと潜り込んだ。
とても心地よいヌクモリに包まれる。
ただ、そうなると自然とえりの顔も思い浮かぶのだった。
やがて、さゆみは、何か出来ないかな、と携帯のメールの画面を開いた。
しばし考え込む。
"寂しいから戻ってきて"
"寂しいょ"
泣いている写メでも添付して送ろうか、と思うも、やっぱりまずは謝らないといけないのかな、と考えると、
その案は消えてしまったのだった。
- 478 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:29
-
"ごめんなさぃ"
続いては、手で謝っている写メを添付して送る案。
ただ、謝ると、えりのコトだから"あのとき"の原因となった理由を聞きたがるだろう。
そうなると、まださゆみには踏み出せなかった。
結局はなにも出来ないさゆみ。
仕方なく、美貴に"ありがとう"といったメールを送り、携帯を閉じたのだった。
そして、目を瞑った。
もしかしたら、明日になれば今日のコトなど忘れたかのような、いつもの笑顔をさせたえりが、
2人の部屋へと戻ってくるかもしれないと感じて。
そうなれば、明日は胸がどきどきしてしまう美貴のそばにいる時間より、
とても落ち着けるえりのそばにいる時間を増やして、甘えてみよう、と。
- 479 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:29
-
さゆみはいつの間にか、えりと一緒に手を繋いで歩いていた。
夢の中で。
しかし、やがて、夢の中では少し"距離"を開けて歩いている2人の姿が映し出され、うなされたのだった。
そう簡単にはいかないのかもしれない。
一方、途中からは、"距離"も縮まった憧れの美貴と一緒に歩き、少しだけ落ち着いていたのだった。
〜 ☆
- 480 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:30
-
ショーツだけを身に付けた真希がベッドの上で胡坐をかき、座り込んでいる。
そして、その後ろでは、梨華がタオルとドライヤー片手に真希の長い髪の毛を乾かしていたのだった。
やさしくタオルをあてがい、ドライヤーの熱い風が直接当たらないように気をつける。
とてもシアワセそうに目を細めている真希は、梨華の手の動きが本当にキモチよいのだろう。
いつもしてもらっているコトなのだが、こうやって場所が変わるだけでも、
また違うキモチでシアワセなキモチに浸れるのだ。
それは梨華もしかり。
その表情はいつもより、より柔らかいものである。
こうやって真希のお世話をしているコトに、シアワセを感じているかのようである。
そして、ときどき会話の合間、"熱くない?"と聞いては、真希が"だいじょぉぶ"と頷くと、
満足気に笑顔を浮かべるのだった。
とてもシアワセそうな2人。
- 481 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:30
-
随分と乾き、手櫛が、さらさらと心地よい感触と共に、キレイに通り始めた。
そうなると意外と乾いているのか、乾いていないのか、分からない状態なのだ。
いつ終えてもいいくらいである。
「そろそろいぃかなぁ…」
梨華の呟きも、ドライヤーの音と、興味の対象が別のモノに向かっている真希は、全く気が付かなかったようだ。
そう、真希は今、梨華の今日撮った写メを、とても楽しげに眺めていたのだった。
ときどき"これどこだっけ?"と聞き、梨華の言葉に"あぁ"と思い出しては、うんうんと頷いたりしている。
梨華としては、れいなとの画像がやたらと多かったコトもあり、少し見せるコトも渋ったのだが、
意外にも、真希のリアクション的には好評なようだ。
とくにご機嫌ナナメになるコトもない。
むしろ、ご機嫌に、ほんのつい先々週、世間でいう春休みに入る直前に発売になったばかりの自分の新曲を口ずさむ。
- 482 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:30
-
まさに、今の季節となる"春"をテーマに"恋の成長"を歌った曲。
しんみりとしたバラード調のリズムと、ステキな恋が育まれている様子が、
真希の口からとても優しげに語られていた。
口ずさむくらいなのに、ドライヤーの音にも全く負けずに届く、真希の歌声。
自然と聞き入ってしまうもの。
この歌声だけでも、梨華はシアワセだった。
- 483 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:31
-
そして、さらにおめでたいコトがあったのだ。
今日の朝、あさ美やれいな、愛から教えて貰ったコトなのだが。
それは、つい先日発表になったばかりのオリコンの週間ランキングで、発売して3週目になっても、
20位を下回るコトがなかったというニュースなのだ。
そう、発売した最初の週こそ14位と、これまでの順位から比べてよくなかったのだが、
3週目になってもこれほど落ちなかったのは、随分と久しぶりのコトである。
ここ数年、発売した曲は、どれも発売した次の週には大きくランキングを落としていたコトもあり、
このニュースは真希ならずとも、ファンにとっても、とても嬉しいコト。
そのコトもあり、真希もとてもご機嫌なのだ。
自分も大スキな曲だから。
「来週も20位以内だったら…お祝いしようね…」
梨華の言葉に、真希は嬉しそうに頷いたのだった。
〜 ☆
- 484 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:31
-
「ねぇ…?」
あさ美の呼びかけに、愛は少々眠たげに"なぁん?"声を荒げたのだった。
もう眠り始めてから随分と経つのに、と。
「…」
そんな愛の返事に、あさ美はしばし閉口する。
呼びかけたはいいものの、何も話すコトなどなかったのだ。
ただただ呼びかけただけ。
黙っていると、考えたくないコトまで考えてしまうあさ美だったから。
何も考えたくない、今。
だから愛に声を掛けたものの、どうやら少し愛のご機嫌をナナメにさせてしまっただけのようだった。
まぁ、それはそうだろう。
これだけ深夜も遅くなり、疲れ切ってしまっているのだから、早く眠りたいのも分かる。
でも…
"もうちょっと付き合ってょ"
ぐっと出る言葉も、押さえ込んだあさ美。
やがて、ぶっけらぼうに"ごめん"とだけ言うと、布団を被った。
しかし、思い浮かぶのは、真希の姿。
そして、背中に見えた"モノ"。
そうなると、疲れなんて二の次とばかりに、完全に思考は目覚めてしまった。
思わず"もぉ"と不貞腐れる。
- 485 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:31
-
ところが、そんなとき、フトがさがさと布団が擦れる音が聞えてきたのだった。
さらに、自分の布団がめくられる。
「ぁ…」
小さく声を零した瞬間には、もう布団は閉じられ、
とても温かいヌクモリがあさ美の布団の中に進入してきたのだった。
そのまま、自分の方を向き、膝を抱え、丸まった侵入者。
特に注意をして進入してきたコトもないことから、その浴衣は簡単にはだけ、若干弱い明かりを感じる布団の中、
愛の白い肌が、見えている。
浴衣の隙間から、ブラジャーはもちろんのコト、カワイイオヘソから、ショーツまで。
前は完全にはだけているのだ。
ただ、愛は特に気にした素振りもなく、軽く目を瞑っていた。
「…」
やがて、何もあさ美が言わないコトに、さすがに気まずさを感じたのか、
少しだけ優しさを感じる口調で言葉を口にしたのだった。
「子守唄代わりに聞いたげるから、話してぇぇょ」
その言葉に、すっとあさ美の表情も緩んだのだった。
- 486 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:32
-
「ぁりがと…」
「ん…」
しかし、次の瞬間には、少々ほほを赤く染めつつ、表情をしかめたあさ美。
愛の浴衣の襟首をぐいっと握ると、"女のコらしく、恥らってよ"と、胸をダイタンに覗かせた部分を、
閉めたのだった。
「ぁら…」
あさ美の強引な行為に、胸に手が当たり、思わず顔を赤らめた愛。
"やだ"と胸を押さえると、"ばか"とあさ美に言われ、"冗談なのに"に少し凹まされる。
ただ、そんなやり取りにも、あさ美は少し落ち着きを取り戻し、表情も柔らかくなっていたのだった。
そして、自分の落ち着いたココロを感じると、改めて"ぁりがと"と答えたのだった。
やがて、あさ美の愛の手を取るようにして、眠りについたのだった。
- 487 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:32
-
いつしか、少し後ろから真希と梨華とれいなの歩いている姿を眺めて歩いているあさ美。
その表情は、少し晴れない。
とても緊張し、色々なコトを考え込んでいる。
少し落ち込み。
真希との"距離"が近付いたと感じていたのに、とフト思うと、更に落ち込み、
愛と一緒に歩いていたあさ美であった。
夢の中で。
〜 ☆
- 488 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:32
-
「はぃ、終わったょ」
「ぁりがと」
梨華はドライヤーを止めると、最後にもう一度整えてあげた。
やがて、自分の手に触れるとても柔らかくてさらさらの感触に、"ぅん"と満足気に頷くと、
いつものように、真希の髪の毛をまとめ、前にまわした。
真希の白い肌が曝される。
そして、真希から、旅行用の小さめのプラスチックのケースを受け取ったのだった。
普段のモノとは違い、慣れないケース、さらに乾燥し過ぎているコトから、フタを開けるコトに悪戦苦闘。
やっとのことで開けると、軟膏の白いどろっとしたモノを人差し指で取り出した。
「つけるね…」
「ん…」
真希が軽く頷いたコトを確認すると、梨華は視線をカノジョの背中に落とした。
すると、自然と目の中に入ってきた"モノ"。
日頃から見慣れているとはいえ、何度見ても、見た一瞬だけでも、顔をしかめてしまうモノだった。
これだけ"ヒドイもの"なのに、真希のカラダに馴染み、刻み込まれている"モノ"。
そう、梨華の目に入ってきたものは、あさ美の目に入ったものと全く同じものであった。
あさ美のココロを惑わした"モノ"。
梨華にしては、別に"それ"に対して"しかめた"のではない。
ただただ、"現実"に対して、だ。
真希の背中に"刻み込まれた"という"現実"に対して。
- 489 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:33
-
梨華はとても優しく、真希のその若干窪んでいる部分に触れた。
そして、薬を塗りつける。
優しく。
とても優しく。
真希にしたら、"痛みは全くないから、がんがん塗っちゃって欲しぃ"そうだが、どうしても無理な話である。
触れるのでさえ、痛みを与えてしまいそうに感じるのだから…
- 490 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:33
-
「薄くなってる…?」
真希の問いかけに、"そうだね"と頷いた梨華。
「だいぶん薄ぃよ」
そして、にっこりと微笑んだ。
いつもの真希からの問いかけに、いつものように梨華は答えた。
口から出た言葉が、そのまま現実になれば、という願いとともに。
実際には、梨華が初めて見た日から、ほとんど変わっているものでもなかった。
もう5年にもなるのに、そのときからは、ほとんど変わらない傷。
普通なら、人間には治癒能力というものがあるから、自然と直るものであるはずなのに、
それは真希の背中に、くっきりと刻み込まれていたのだった。
どうしたらこんなキズができるのか、聞こうと思ったコトが一度だけあったが、実際には聞けるはずもないコト。
"誰"がしたのかは明らかに分かるコトであるし、梨華が聞くことにより、
そのまま、それは、真希の"さまざまなキズ"を開くコトになるのだから。
カノジョの"そのとき"、"キズをつけられているとき"の感情と共に。
梨華にとって、"そのとき"の真希の"感情"など、想像にできないモノである。
- 491 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:33
-
カノジョが"その感情"を味わってから梨華と出逢うまでは、さらに長い年月。
全く消えるコトのなかった、"その感情"。
むしろ、日に日に増える"辛い"感情。
生きているのでさえ"辛い"と感じる日々。
しかし、真希の辛い感情は、梨華との出逢いで随分と薄らいでいたのだった。
そう、梨華と同棲を始めてからは、今も薄らいでいない傷とは相反し、長い年月とともに、
そのときの"感情"は随分と薄らいでいた。
梨華との生活で。
梨華が"その事実"を初めて知ってからは、ちょうど5年。
それはそのまま梨華が高校に進学したときを示す。
つまり、2000年の4月、真希と同棲を始めて。
- 492 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:33
-
つい先日、春休みに入った直前、2人の同棲の5周年の記念として、豪華な場所に外食に出かけたのだが、
その日が、ちょうど5年目にあたった。
"長いね"とお互いに呆れたように表情を緩めて語り合った日。
そんな表情は、ある意味テレ隠し。
そう、実際には、とても嬉しいコト。
同棲を始めた当時から考えると、今の生活なんて全く想像できていなかった2人。
真希が成功し、これだけ充実した毎日を2人で送っているコトなんて。
ただただ毎日をのんびりと過ごしていた。
普通の生活をし、普通に学校に行き。
普通に生きてきた。
いや、真希は"普通に"生活できるコトですら、シアワセだったのだ。
梨華と2人で。
"命の恩人"であるような存在である梨華と。
それだけでも十分にシアワセだったのに、こうやって"成功"してしまったのだから、不思議である。
人生なんて。
- 493 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:34
-
さらに、いつの間にか、完全に梨華は母親代わりになってくれたのだし。
独りぼっちだと思っていた真希の家族に。
また、増えてくれたトモダチの数。
家族を亡くしてから、新しくトモダチなんてできるとは思ったこともなかった。
ましてや、こうやって梨華と2人以外のヒトと一緒に旅行に行くコトなんて尚更である。
しかし、今、実際にこうやって神戸まで"仕事"ではなく、楽しみにやってきている。
そして、やってきて、さらにトモダチたちとの"距離"が縮まったのだ。
シンユウである美貴、亜依、希美以外のトモダチと一緒にいて、これだけ落ち着き、楽しめたコトも、
真希にとって記憶にないくらいであった。
自分のコトをとても慕ってくれるあさ美、愛にれいな。
少しれいなは自分に対してライバル心を持っているようにも感じるが、
それとは全く別、とても嬉しそうに、尊敬をこもった瞳で見つめてくれる。
また、自分より年齢の点でオトナでも、とても親しみやすい、なつみや圭織。
ま、なつみは明らかに性格は自分よりコドモであるが。
ほかにも、とても無邪気に接してくれる桃子。
亜依や希美がやってきてからは、少し取られてしまったようにも感じるが、
それでも十分に慕ってくれるえりやさゆみ。
- 494 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:34
-
まだまだ出会って数日しか経っていないのに、もうこれだけ親しめるヒトタチ。
そんな女のコを紹介してくれた梨華に、尚更感謝をしたのだった。
こういう女のコたちと一緒に過ごして、"普通の女のコ"のようなキモチになれて。
それは、とてもステキな"キモチ"である。
このままずっと浸っていたとさえ思えるくらいに心地よい"キモチ"。
- 495 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:34
-
"普通の女のコ"
"いぃなぁ"とフト思い、憧れた。
〜 ☆
- 496 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:35
-
梨華の要望どおり、真希は浴衣を羽織り、ベッドの方に向かった。
とは言っても、ショーツだけである。
これだけ開放的な場所に来て、下着をつけるのは、なんだか勿体無いような気もしたのだ。
「いぃじゃん」
真希は、小さく呟き、梨華の隣に滑り込んだ。
- 497 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:35
-
梨華はすでに心地よい寝息を立てている。
1日の疲れがどっと押し寄せてしまっているのだろう。
まだベッドに潜り込んで十数分、真希からの呼びかけに答えなくなってからも数分しか経っていないのに、
とても深い深い眠りに落ち込んでいるようだ。
その表情はとても満足げであり、シアワセそのもの。
真希も自然と表情が柔らかくなるくらいに。
少し梨華の表情同様、シアワセに浸りながら、家族である梨華の可愛らしい寝顔を眺めていた真希。
やがて、とても大きなベッドの中、カラダを近づけると、自然と梨華の胸に顔を埋めたのだった。
とうの昔に忘れてしまっている母親のヌクモリと同じ、梨華のヌクモリに。
とても大スキな梨華のヌクモリに。
とても愛しい梨華に。
「これからも…一緒に…いて…ょね…」
気恥ずかしそうに一言呟き、柔らかい胸の膨らみから顔を上げると、梨華の顔を見上げた。
そのまま、すっとカラダを上げると、梨華の柔らかいほっぺに1つ、クチヅケ。
満足げに表情を緩めると、再び梨華の胸に顔を埋めたのだった。
そして、とても柔らかいヌクモリに、シアワセを感じながら、胸に手を添えるようにして、
眠りの世界へと向かったのであった。
- 498 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:35
-
コドモのキモチで。
梨華のヌクモリを求めて。
梨華より少し後れて。
夢の中へ。
梨華と手を繋ぎ、笑顔で歩く真希。
夢の中で。
明日にココロを躍らせていたのだった。
- 499 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:36
-
☆ 第7話 ☆
- 500 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:36
-
☆ 距離 ☆
- 501 名前:21〜 投稿日:2005/12/12(月) 23:36
-
☆ おわり ☆
- 502 名前:なまっち 投稿日:2005/12/12(月) 23:38
-
さて、第7話が終了です。
れすをいただけました方、ありがとうございました^^
モチベーションアップアップでしっかりと書ききれました、です^^
てか…長すぎ…これまでの1話の2倍…文章量からは3倍…か…
ちょっとさすがに疲れました…(w
最後の2つはテストが迫ってて急いで書いたから、ちょっとヘンで雑…(…ぉぃ…見直せょ(見直しました…
あ、最後のごっちんの部分ですが、途中から読まれた方で"唐突"と思われた方は、
第2話の「石川梨華」編を読んで頂ければある程度?分かると思います。
ちょっと随分と時間が経過しちゃったから、忘れた方も多かったかな…
しっかりとしたコトはまた…後ほど。
次回からは朝の様子を1話だけ話した後に、第8話で大阪編を開始したいと思っておりますが、
ストックは出来てない上に、題名まで思いつかない状態…
はて…?
テストは終わった上に、最近妙にれぃながイシカワさんにつっこみを入れたり、ツーショットを見てもぇたり、
ごっちんキャプテンコンにはしゃいだり、でふでぃばのカッコよさに惚れ惚れしたり、
紅白にみんなで出るとなって嬉しかったりと、ハイテンションになるようなニュースばっかりなのに…
全く進まなく…
書きたいコトは決まりつつあるのですが…
ちょっと強敵の予感…
第7話ではりかれな(ちょこっとごま?)中心、さゆえりみきがサブといった感じでしたが、
第8話では、さゆえりみきを少し中心、いしごまれな、あぃこんを微妙にサブといった感じで進む予定です。
それでは、最近、さゆの激きゃゎな部分と、うさぴぃしてるときの腕のお肉部分に強烈にもぇてる作者でした(ぉゃじ
なるべく次も早く再開したいと思っておりますので?…しばしオヤスミなさいませ。
- 503 名前:初心者 投稿日:2005/12/14(水) 00:04
- 更新お疲れ様です ホントに大量で読み手としてはうれしい限りです
さゆ可愛いすぎてノックアウト・・・ミキティはエロイけど優しいなぁ
しかし愛紺がいい感じで応援したいですね
第8話もとっても楽しみです
次回更新まで楽しみに待ってます
- 504 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/12/14(水) 08:37
- 更新お疲れさまです。
長かったですが、それぞれの物語があって良いです。
頑張ってください。
次回更新待ってます。
- 505 名前:なまっち 投稿日:2006/01/06(金) 23:30
-
あけましておめでとうござぃます。
今年もよろしくお願ぃいたします。
と、長かったかなぁ…
なんだか分かんなぃけど、やっぱりツアーが始まると気合が入りますね(w
少しだけ手が進みました。
って言っても、それまでにも嬉しいニュースがいっぱいあったんですけど^^
ごっちんのアブナイドラマに、「リボンの騎士」めっちゃ楽しみ^^
両方とも内容的にめっちゃ好みっぽいし、なにより「リボンの騎士」は美勇伝^^
原作は知らないし、まだあんまり状況も知らないけど…
やっぱりタカラヅカ全面協力だし、力からみてもあぃちゅんがメインだろーなぁ
ここは思い切って前々からしたいって言ってたショートにばっさりと(w
でも、当たり前すぎるから…最近きれぃかっこよくなってるえりがいいなぁ
やっぱり、ヒロインはこはるぅかなぁ
でも、美勇伝入れてるからおかぱぃ大抜擢とかも…?
ぁ、もちろん、イシカワさんいい役して欲しいなぁ
う〜ん、妄想楽しい!
配役決めとかシナリオとか書かせて!!…ま、無理か…楽しみ^^
それでは、こんな作者ですがこれからもよろしくお願いいたします。
>>503 初心者さん
嬉しいとは、なんとも嬉しいお言葉をありがとうございます^^
みきさまの仕事はなんてったって(もごもご…
さゅをもっともっと可愛く描くのが今年の目標です(w
ま、ホンモノには到底及びません(りすぺくと
あぃこんにももっと活躍の場を与える予定なんで、第8話、これからもよろしくお願いいたします。
>>504 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
しっかりと"物語"をみなさんの納得がいくように解決させてあげたいですね(ぅんぅん
これからもよろしくお願いいたします。
- 506 名前:【春の歌】〜第8話。嫉妬 投稿日:2006/01/06(金) 23:34
-
☆ 第8話。嫉妬 ☆
- 507 名前:【春の歌】〜第8話。嫉妬 投稿日:2006/01/06(金) 23:34
-
1 〜
- 508 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:36
-
春の朝。
日頃感じるモノより、随分と暖かい朝。
やはり自分たちの住んでいる場所よりは、若干南ということもあるのだろうか。
寝る前に、ノドを壊さないように、と暖房を切ったにも関わらず、これだけ暖かいのだから。
いや、そもそも"ほぼ西"であるからして、ホテル自体に断熱の効果があるのだろう。
いつもとは違う場所での目覚めだが、暖かい室温、ふわふわのベッドのおかげもあり、心地よい目覚め。
そして、ゆったりとしたリズムの曲が、どこか遠くから聞えてきたのだった。
まだまだ思考が停止しているコトから、さらにキモチものんびりとなる。
暖かさと、このゆったりとしたモーニングコール。
聞き入る。
やがて、モーニングコールではなく、携帯の目覚まし時計だと気がついた"少女"。
少し眠たげに目を擦ると、可愛らしい顔立ちを少し崩して、クチビルを突き出す。
今のカノジョにとって、別にご機嫌ナナメだからする仕草ではない。
ただただ無意識の内の行動。
しかし、少し不貞腐れたような表情が、より"少女"を幼く、愛らしく見せていた。
ただ、その中にもキレイで大人びた雰囲気を感じる"少女"。
そう、年齢ではもうオトナの女性と言ってもよい年齢であるカノジョ。
- 509 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:36
-
何の曲かな、と思うも、すぐに気が付くと、自然と笑顔が零れる。
さらに、昨日の夜にも聞いた、自分の"愛しいヒト"の歌声が、再び頭の中で奏でられる。
また、その歌声と共に、その存在も。
自分の胸元にいるその存在。
そう、とても温かいヌクモリが自分の胸の中で感じるのであった。
目を瞑ったまま、柔らかいさらさらの髪の毛に手をまわし、自分の手のひらに存在を感じると、
無意識の内にぎゅっと強く抱きしめる。
自分の胸に。
ところが、次の瞬間、思わず目を開いた"少女"。
自分の胸に直接感じた柔らかい感触に。
「ぇ…」
小さく呟く。
そして、恐る恐る自分の胸元に目を落とす。
すると、その原因を目に止め、表情がみるみるうちに変化した。
そう、そこには、とてもシアワセそうに表情を緩めた"女のコ"が、"少女"の胸に顔を埋めていた姿があった。
- 510 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:37
-
さらさらのロングヘアーが掛かる、とても大人びてキレイな顔立ちなのに、
今の表情はコドモのように安心しきっているカノジョ。
一方、はだけている浴衣からは、とてもボリュームのある胸が、愛らしく折りたたんだカノジョの腕に潰され、
イヤラシク姿を見せていたのだった。
そのギャップがとても不自然なカノジョ。
そんな"女のコ"が自分の胸に顔を埋めているのだ。
いや、それなら、特別おかしくもなく、この"女のコ"と一緒にお布団に入ったときには多い光景。
問題は、"少女"の方にあった。
そう、"少女"の目には、普通に存在するであろう自分の浴衣ではなく、
健康的な褐色をした肌色の部分がやたらと入ってきたのだった。
大きくはだけた浴衣の胸元。
さらに、ブラジャーも下ろされ、"少女"の柔らかくてボリュームのある胸を惜しげもなく曝していたのだった。
胸の桃色の蕾まで、完全に曝されている。
そして、その自分の胸に、とてもシアワセそうに、コドモのように無邪気な表情を浮かべた"女のコ"が、
"少女"の胸に手を添え、顔を埋めていたのだ。
すぐ口元の近く、"少女"の桃色の蕾が、少し大きくカタチを現し、今にも"女のコ"の口に含まれそうである。
まるでお母さんのおっぱいをせがむ、小さな赤ちゃんの姿。
その赤ちゃんを抱きかかえている、若すぎるお母さん。
- 511 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:37
-
「…」
そんな自分の姿に、今の状態をしっかりと理解をすると、顔を真っ赤に染めた"少女"。
完全に目も覚める。
「ちょっ…」
思わず"女のコ"の肩を揺すり、抗議をしようと眉間にシワ。
しかし、次の瞬間、カノジョのコドモのように素直な寝顔を見て、自然と手と口が止まる。
"少女"の中を覆っている感情は、なんとも不思議な母性本能。
日頃からカノジョのコトを自分のイモウト、娘のように思っているからだろうか。
ふっと表情を緩めた。
呆れたように苦笑いを浮かべる。
「仕方がなぃなぁ」
そして、もう一度"女のコ"の頭に手を沿え、今度は先ほどより、より強くぎゅっと抱き寄せたのだった。
- 512 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:37
-
やがて、自分の胸の膨らみの触れる、カノジョの柔らかいほっぺと、クチビルの感触に、少し満足をしたのであった。
カノジョと肌で触れ合っているコトに、少しシアワセなキモチにもなる。
ただ、フト気が付く事実。
カノジョのクチビルの感触に、少し甘くなってしまったカラダ。
情けなく目じりを下げると、少し離す。
「ちょっと…えっちな気分になっちゃうから…」
そう呟くと、あらわになっている胸の膨らみと蕾を、少し恥ずかしげに収め、
浴衣のはだけた部分を軽く直してから、再びカノジョを抱きしめたのだった。
時刻はまだ6時。
未だにゆったりとした音楽を奏でていた"女のコ"の携帯を止め、もう一眠りしたのは"石川梨華"、
梨華の胸の中で、無邪気な表情を浮かべ、シアワセそうに眠りについていた"女のコ"は、
もちろん"後藤真希"である。
〜 ☆
- 513 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:38
-
大きな部屋に鳴り響いている自分たちの歌。
それが毎日の目覚まし代わりの携帯の音だというコトに気が付くと、1人の"少女"が手探りで枕元を探る。
まだまだ小学生ともつかないくらいに、とても愛らしくて幼げな"少女"。
1回、2回、3回…。
「…」
仕方なく、うっすらと目を開ける。
定まらない焦点のため、ぼやける視界。
黒目がちな目を、一度可愛らしく擦ると、やがて、満足したのか、
焦点を調節しようと少し目を大きく開いた。
すると、"少女"の目に、向こう側のベッドで眠る、大切な"相方"の姿が入ってきたのだった。
この目覚ましの中、全く目の覚める気配のない"相方"の姿に少々呆れるも、
そののんびりとした寝顔に、自然と表情は柔らかくなる。
昨夜、"相方"を、戻って来たコトを確認だけし、眠った時間は2時半。
4時間に満たないくらいの就寝時間であるにも関わらず、目覚めは意外とよさそう。
真っ先に目に飛び込んできた、"相方"のおかげもあって。
しかし、今日の自分たちの"やらなければいけないコト"を思い出すと、自然と憂鬱になってしまうのだった。
こうやって遊びに遠方に来ているのに、お昼からは"お仕事"。
昨日、あれだけゆったりと遊んだ分、余計に今日のお昼から"お仕事"となると憂鬱になってしまうもの。
- 514 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:38
-
1つため息をつくと、"いつも"のように隣のベッドで眠っている"相方"に声を掛けた。
それは、"少女"の起こしてくれる声が"スキ"と言う"相方"のため。
ま、カノジョにそうやって言われるとなると、自然と言うコトを聞いてしまうものであろう。
普通は。
「のぉん…」
ただ、気分が気分だけに、若干"いつも"の声に聞えなくもない。
ま、それは、この際仕方がないものとして、"相方"には許してもらおう、と"少女"。
「のぉん…?」
二度目の声にも反応はない。
「のん…」
若干いつもより低くなる声。
「のん」
さらに低く、短くなる声。
一向に目の覚めない"相方"に、大きくため息をついた"少女"。
いつの間にか、自分の目の方がぱっちりと覚めてしまったようだ。
- 515 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:38
-
起こして欲しいと頼まれていた"相方"のお願いを叶えてから、せっかくもう一眠りしようと思ってたのに、と、
白くてとても柔らかいほっぺを膨らます。
しかし、次の瞬間にはふっと表情を緩めたのだった。
そう、昨日眠ったのが深夜の3時近いのであるから、さすがに辛いであろう。
時間がある日くらい眠りたいもの。
「仕方がなぃかぁ」
"少女"はゆっくりとベッドを抜けると、大きく伸びをした。
つま先を立て、顔立ちとのギャップが大きなとても女性らしい胸の膨らみをアピールしながら、
おもいっきり手を伸ばす。
「ん〜〜〜ン…」
最後に1つ大きく深呼吸。
- 516 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:39
-
「さて…」
そして、満足げに頷くと、1つ思案顔。
指先を口元に持ってくると、しばし考える。
「そう言ぇば…」
温泉に入っていなかったコトを思い出した"少女"。
昨日、"相方"が帰ってきてから聞いた話によると、設備のしっかりしたジムもあり、
種類の多いサウナもあり、キレイで景色のよい温泉もかなりよかったとのコト。
"明日の朝、入ってきたら?"と話していたコトを思い出したのだった。
さまざまな地方に出かけるコトが多い"少女"だったが、宿泊するホテルは、
意外とエンターテイメント的な設備がそれ程整っていないような場所が多かったコトもあり、
温泉にゆっくりと入るという経験が少なかったのだ。
そして、"少女"の立場からも。
「行くかぁ」
今から行けば、もしかしたら丁度朝日もお目に掛かれるかもしれない、と。
ま、方角が分からないから、確かではないが、それでも期待だけはつのる。
- 517 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:39
-
「たまには…」
そう呟くと、早速行動に移る。
"相方"の乱れてしまっている掛け布団を掛けなおしてあげると、部屋に置かれてあった浴衣、
着替えと洗顔道具に自前のシャンプーとコンディショナーを手にして、準備完了。
朝に温泉に入り、初めて浴衣の袖に手を通すというのは少々おかしな感覚だが、
この際、小さなコトは気にしないでおこう、と笑顔を浮かべる。
しかし、フト感じる寂しさ。
そう、温泉に1人で行くのも寂しいもの。
"相方"はシアワセそうに眠っているし、昨日の夜にも入っているものだし、と、
難しい表情をさせてしばし考えると、携帯を取り出した。
ただ、一瞬"いぃンかなぁ"と首を傾げるも、次の瞬間には"ま、いっか"と笑顔を咲かせた。
そして、履歴で"えり"の名前を選択したのだった。
時刻は6時を少し過ぎた頃。
少し仕事のコトを忘れ、鼻歌交じりにご機嫌に朝を楽しもうとしていたのは"加護亜依"、
まだまだ夢の中にいるのは、亜依の相方でもある"辻希美"であった。
〜 ☆
- 518 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:40
-
暖かい朝なのに、いつも以上に悪い目覚め。
気分も昂揚するであろうこの気温に、旅行先という状況では、ごく一般的な旅行者にとって、
とてもご機嫌に朝を迎えるものなのだろうが、今のこの"少女"にとっては、少々違うようだ。
枕もあるのに、わざわざ両腕で枕を作り、かなり不機嫌にじっと天井を見つめている。
いつもは優しげに目じりの下がっている瞳も、今はきりり。
のんびりとした空気も、しゃき。
しかし、しっかりと目を見開いているその様子とは相反し、
昨夜はほとんど眠っていないコトが簡単に窺い知れた。
少し目を赤くはらしているコトからも。
そう、睡眠時間にしてはほんの数時間。
朝方に目が覚めてからは、ずっとこの姿勢だった。
自分の隣で眠っている、名前通り愛らしい"女のコ"の寝返りに、時折りほほを緩ませる以外は。
そして、零れるため息。
- 519 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:40
-
「なんだかなぁ」
意味の通じない言葉を呟く"少女"。
すると、その声に、隣で眠っていた"女のコ"が目覚めたようだ。
「ん…」
小さく声を零すと、両手をうんっと伸ばす。
たっぷり10秒。
やがてカラダの伸び具合に満足したのか、ぱっちりと大粒の瞳を開け、自分を起こした本人の視界に見止めると、
とてもキレイな顔立ちをむっとしかめ、寝返りを打ち、"ご機嫌ナナメの少女"に軽く体当たり。
少し抗議の意味のこもっているその行動。
しかし、意外と可愛らしくクチビルを突き出す姿は、誰もが愛らしさを感じてしまうモノであった。
そう、名前通り。
ただ、"ご機嫌ナナメの少女"は日頃から見慣れているコトもあり、とくに気にした素振りもなく、
再び視線を天井に。
- 520 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:40
-
そんな普段とは全く違う"少女"の自分への対応に、少々不思議そうに首を傾げる"女のコ"
視線をナナメ上、少し考える。
たっぷりと1分後、考えがまとまらなかったのか、再び抗議の意味を込めて寝返り。
今度は、艶やかでさらさらなロングヘアーが"ご機嫌ナナメの少女"に掛かる。
ただ、特に気にした素振りも見せずに、相変わらず視線は天井の"少女"。
そして、そんな自分に興味を持ってくれていない"少女"に、またまた不満げにクチビルを突き出す。
やがて、突き出したまま、今度は話題作り。
「何時?」
「ん…」
"女のコ"の質問に"少女"は軽く考えるフリをする。
しかし、"時間"なんて"考えて"も分かるはずもないコトは当然の事実。
"女のコ"は、"少女"が答える気配がないコトを悟ると、諦めたのか、小さくため息をつき、
枕元においてあった携帯を手にとった。
「ぁ〜ぁ…」
正確な時間を知ると、再びため息をついたのだった。
そう、時刻は6時半前。
まだまだこのホテルを出るまでにはたっぷりと時間はあるのだ。
- 521 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:41
-
「9時だっけ…?」
「うん」
軽く頷いた"少女"。
やっぱり興味は他にあるようだ。
なら、と口を開いた"女のコ"。
「朝ご飯は7時から食べれるんゃンね?」
「そだょ」
「…」
そっけない"ご機嫌ナナメの少女"の答えに、最終的には"女のコ"の方がご機嫌ナナメになってしまったようだ。
クチビルを突き出し、"少女"のそばでもう一眠り。
"かまってょ"と呟きながら不貞寝に入ったのは、"高橋愛"だった。
そして、そんな愛の様子に、少し慌てたように"朝ご飯、豪華だろうね"と笑顔を零したのは、"紺野あさ美"。
〜 ☆
- 522 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:41
-
乾いた音が部屋に響くと、この大きな部屋の中にたった1人でいる少女が軽く寝返りを打った。
2つのダブルベッドがあるのに、たった1人でいる"少女"。
つぶらな瞳を軽く開けると、少し眠たげに目を擦る。
そして、上半身を起こし、辺りを見回しながら、ふわふわのロングヘアーを手櫛でとぎ、
"そっか…"と小さく呟いた。
そこでやっと自分のいる場所に気がついたのだろう。
さらに、思い出すコト。
まだまだ寝ぼけ眼で、もう一度辺りを見回し、さらに確認をすると、ため息。
これだけ大きな部屋にたった1人でいるコトに。
「はぁ」
と、もう一度ため息をついたとき、部屋がノックされる音が"少女"の耳に聞えてきた。
一瞬どきりと高鳴る心臓。
そして、表情が引き攣ると、"もしかして"とはやるキモチを押さえきれずに、ベッドから立ち上がった。
とても女性らしい柔らかなカラダのラインがあらわになる。
やがて、少しはだけ、カジュアルTシャツが覗く浴衣の前を整えながら、部屋の鍵を開けた"少女"。
大きな瞳を、扉の向こうに向けた。
- 523 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:41
-
「ぉはょ」
ところが、そうやって優しげに声を掛けてきた人物は、"少女"の期待した相手ではなかったようだ。
表情に落胆の色を浮かべる。
しかし、次の瞬間には、ぱっと切り替わる。
そして、"おはょうございます"と笑顔で挨拶。
そう、目の前に立っていたのは、期待した"自分のお姉ちゃん"ではなかったが、
それでもとても嬉しくなってしまう"ステキなヒト"だったのだ。
ブラウンとストレートミディアムの髪の毛から、とてもきりっとしたかっこいい表情が覗く。
まだまだ幼げで幼女のような"少女"とは違い、大人びてキレイな女性。
どのような女のコが見ても、見惚れてしまうくらいであろう。
昨日のとてもラフなジーンズとシャツという、カワカッコよく見せる服ではなく、
今日は柔らかいシックなミニスカートと、ごくごく薄手のタンクトップにジャケットと、
自分のとてもスレンダーなスタイルを見せ付けるかのような服であり、キレイな女性を見せていた。
思わず見惚れる"少女"。
昨日のカッコもスキだったが、今日の女性らしい姿も一段とステキに映る。
いや、そもそも自分にとって好感の持っているヒトは、どんな服を着ても"ステキ"と感じるだけなのだろうが。
それでも、それを差し引いても、とてもステキなヒトに映っていた。
- 524 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:42
-
その"ステキなヒト"の朝からの突然の訪問。
朝一番で顔が見れたコトにも若干シアワセを感じつつも、少し頭の中が混乱している"少女"
やはり、まだまだ頭は起きていないようだ。
いつものつぶらな瞳も、少し黒目がちな目になってしまっている"少女"に少し苦笑いを浮かべながら、
"素敵なヒト"は早速訪問の理由を口にしたのだった。
「ご飯食べようょ」
「ぁ…」
"そっか…"と呟き、なるほど、と納得顔の"少女"。
さらに、誘ってくれたコトに、少しシアワセなキモチにも浸る。
ただ、"ステキなヒト"の次の言葉に、その表情はみるみる内に、落胆の色が濃くなっていたのだった。
「ツグナガちゃんは梨華ちゃんが起きるの待っとくって言うしぃ」
「…」
そして、全ての言葉を聞き終わらないうちに、"なんだぁ"と呆れ顔になっていた。
"ま、そうだょね…さゅみのためなわけなぃよね"とうんうんと妙に納得顔。
- 525 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:42
-
しかし、そんな"少女"の様子に気が付かない"ステキなヒト"は、少女の寝起きの姿を見て少し肩を竦めると、
"まだ無理かな…?"と苦笑い。
「じゃぁ…入って…ぃい?」
"ステキなヒト"の言葉に、少し苦笑いを浮かべて少女は頷くと、道を開けた。
しかし、落ち着くとフト気がつくコトが1つ。
そう、今の自分の姿。
それを理解すると、慌てて振り返り、"ステキなヒト"に対して、
"すぐ準備をするんで外で待っててください"と追い出したのだった。
"自分が準備している様子を見られるなんて"と。
"これ以上見られたくないっ"とばかりに。
やはり、憧れのヒトが、これだけしっかりとオメカシをして自分の目の前に現れると、
余計に恥ずかしさを感じてしまうのが、女のコ。
まさに"女のコ"のような容姿、性格である"少女"は、慌てて準備を始めたのだった。
時刻は7時に差し掛かる前。
少し顔を赤らめ、洗面所に消えていった"少女"は、"道重さゆみ"、
外で置いてけぼりをくらい、少し不思議そうに首を傾げていた"ステキなヒト"は、"藤本美貴"であった。
〜 ☆
- 526 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:42
-
ぱっちりと開いてしまった目と、頭。
あまりにも突然の出来事に、目をぱちくりと1回。
そして、じっくりと考える。
"起きたのかな??"、と。
さらに、"えぇ?"と呟く。
しかし、本当に目が覚めたようだ。
思わず首を傾げる。
目の前にいるのは、とても温かいヌクモリと癒しをくれる梨華。
しっかりと閉じられている胸元が真っ先に目に入ってきたが、それでも自然と分かるもの。
手にも同様にヌクモリも感じるコトからも。
はっきりとその存在を認識すると、またまた不思議そうに首を傾げた。
何が不思議なのかというと、この目覚めである。
そう、真希にとって、これほどぱっちりと目が覚めたコトは、
これまで一度もなかったと言ってもよいくらいであったのだ。
いつもいつも梨華に起こしてもらうか、それとも目覚まし、もしくは、自然と目が覚めたとしても、
数分は目を開けられず、いつの間にかまたまたオネムの世界へと旅立つというコトがざらにあったからだ。
それなのに、今のこの爽快感。
自分の手に感じるヌクモリもはっきりとした感覚として感じられる。
- 527 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:43
-
「ふ〜ん…」
1つ鼻を鳴らす。
人間ってこんなに簡単に目が覚めるコトもあるんだ、と妙な部分に納得をすると、
梨華を起こさないように、布団の中で半回転。
うつ伏せになり、枕元の携帯を手に取った。
「まだ、6時前かな…」
これほどすっきりとした目覚めなのだから、さぞかし早い時間であろう、と少し期待しつつ。
ところが、意に反し、真希の目に入ってきた時刻は、7時を少し過ぎたばかりだった。
思わず"なぁんだ"とため息。
さらに、6時に鳴らそうとしていた目覚ましまでしっかりと止められていたコトにも、気が付く。
「ふ〜ん…」
そう、これほどぱっちりと目が覚めたのに、実は、自分の目覚ましでは目が覚めていなかったのだ。
あまり嬉しいものではない。
- 528 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:43
-
さらに、凹むコトも。
そう、これからまだもう一眠りできるかな、と期待して時計を見たのに、
実際はもう起きなければならない時間である。
今日の出発は、亜依と希美が9時15分過ぎの"のぞみ"に乗るコトに合わせて、
8時50分にロビーに集合になっている。
それを逆算をして、昨日の夜に、梨華と7時にはしっかりと起きる約束をしていたコトを思い出したのだ。
「はぁ」
本日二度目のため息。
やはり、もう一眠りは難しいようだ。
とは言っても、これほど爽快な目覚めなのだから、それほど落胆する必要もないのだろう。
- 529 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:43
-
携帯を閉じると、もう一度布団の中で半回転。
今度は、頬杖をつき、隣でまだまだシアワセそうに眠り込んでいる梨華の方に視線を向けた。
なんとも無邪気な寝顔。
これだけを見ていると、日頃の、お母さんぶって、色々とお世話をしたがる女のコに全く見えないくらいである。
部屋を汚したり、何か脱ぎっぱなしにしたり、ハシタナイコトをしているときに、目くじらを立てて怒る姿なんて。
そう、むしろ容姿だけを見ていると、逆に、誰かに引っ張って貰い、ついて行く女のコに見えてしまうくらいだ。
おとなしく清楚に。
しかし、本来の性格は強烈な"お節介"。
「かわいぃのに…」
ま、その"お節介"に日頃からお世話になっていて、これがなくなるとそれはそれで寂しくなるのだろう。
なんだかんだ、こんな梨華がスキなのだ。
- 530 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:44
-
つんつんと柔らかいほっぺをツツク。
ぷにぷにと心地よい弾力に、真希のほっぺも緩む。
そのまま、しばし梨華のコドモのような表情を眺めたのだった。
いつもとは違い、カノジョがこのように無邪気な表情をするのは、眠っているときだけ。
ある意味、あと数分もすればいつもの"お母さん"の姿なのだ。
ここ最近、れいなやえり、さゆみといったカワイイ後輩の登場で、
とくに"お母さん"のような表情が増えてしまって少し残念にも感じる。
昔は、ときどきふと普通の可愛らしい女のコの表情も見れて、とてもスキだったから、尚更残念にも。
「もっとカワイイ女のコになってょ」
何とも言えないココロの呟きであろう。
そして、1つため息。
と、さも残念そうに視線を落としたそのとき、フト気がついた事実。
"ソレ"に気がつくと、みるみる内に表情が不貞腐れたものへとなる。
この真希の表情も、日頃、他人の前では全く見せない表情。
梨華の前だけで見せる"それ"。
自分の思い通りにいかないときや、拗ねているときに出るモノである。
まさに"今"。
- 531 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:44
-
「ちぇ」
そんな真希の視線は、梨華の胸元に向けられていたのだった。
とても恨めしげに。
しっかりと閉じられている梨華の胸元に。
そう、別に梨華は悪くもなんともない。
普通の女のコだったら、ごく当然のコトをしただけである。
勝手に真希が嫉妬して、不貞腐れてしまっただけ。
それは分かっているのが、やはり少々ご機嫌ナナメになってしまうのだった。
梨華のしっかりと閉じられた胸元を見て。
「せっかく開けたのに…」
そう呟き、昨日の梨華のとても柔らかい胸の感触を思い出していた真希。
- 532 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:44
-
昨晩、一度目が覚めてしまったときに、ふとヌクモリに寂しさを覚えてしまった真希は、
無意識のうちに梨華の胸元を開いていたのだった。
そして、あらわになった柔肌にほほを添え、そのまま抱きしめた。
すぐ目の前、しっかりとカタチどっている胸の蕾を目の前、無意識の内に口に含んでみたい衝動にも駆られ、
イケナイ展開とか考えてしまったりもしたが、それは押さえ、とにかく梨華の胸に惹かれた真希。
ただ、えっちなキモチではないのだから、それはやはり母親の愛情に飢えているからなのだろう。
とても"ステキなモノ"に見えたコトは。
ま、そんなコトに気がつかない真希は、梨華は家族のように近い存在なのだから、と、
罪悪感は頭の片隅に寄せ、とても柔らかくて温かい母親のような感触に、
童心に返ったかのようにほほを寄せ、とても落ち着いて眠れた真希であった。
- 533 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:45
-
それなのに…
そのときの感触を思い出し、一瞬表情を緩め、シアワセなキモチに浸りつつも、
自分の前でここまでしっかりと閉じられると、やっぱりなんだか無性に悔しいもの。
「ちぇ」
完全に理不尽なのに、やっぱり今の真希はコドモであった。
再び梨華の胸元に、手を持っていく。
そして、そっと重なった襟首に手を添えた。
と、そのときだった。
びしっ
突然はたかれた手。
「げっ」
そして、恐る恐る見上げた真希の目に入ってきたのは、
梨華の、とても呆れ返ってしまったかのような表情であった。
さらに、ため息まで零れている。
- 534 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:45
-
「何やってるのよぉ」
「ゃぁ…ぁの」
あたふたと慌てる真希を見て、もう一度ため息。
「起きてたの…?」
真希の質問にも、答えはため息。
さらに、ジト目で冷たい視線を投げかける。
たじたじの真希は、仕方なく面白そうな言い分けを考え、口にしたのであった。
「ゃぁ…ちょっと"おっぱい"とかもう出るのかなぁなんて…」
思いついたのは、なんとも間抜けな答え。
当然のごとく、"はぁ"と眉間にシワを寄せた梨華。
そして、次の"ミルクとか…"という言葉に、一気にほほを赤く染めると、
"出るわけないでしょ!"と一喝。
視線も冷たい。
- 535 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:46
-
「ま、そだょね…」
ただ、真希の素直な返事に、梨華はふっと表情を緩めるも、続いては、眠っていたときとは正反対のように、
お母さんのようにきりっとした表情をさせたのだった。
一瞬、"あぁ"と残念がる真希に、梨華は続けざまに母親代わりの言葉を投げかける。
「そんなコトしてる暇あったら、準備なさぃよ」
「はぁ〜ぃ」
投げやりのような返事をさせたあとには、真希はしぶしぶ起き上がり、浴衣を脱ぎ、
ショーツ姿だけで、洗面所の方に、準備をするために入ったのだった。
また別の意味で顔を赤く染めた梨華の前を通り。
- 536 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:46
-
「ももちゃんがさー」
真希が洗面所を独占し、水が流れる音が聞える中、携帯を見ながら真希に声を掛けた梨華。
何も返事はないが、聞えているであろう、とそのまま続けた。
「朝ごはん一緒に食べませんか?だって」
少し大きく声を出した梨華は、聞き耳を立てる。
そして、真希の"んー"と微かに頷く声が聞えてくると、"じゃぁ8時くらい?"と聞き返し、
返信用のメール作成画面を開いたのだった。
真希の再び"んー"と聞えてきたときには、送信ボタンを押し、そのまま携帯をベッドに置き、浴衣に手を掛けた。
「温泉に入れなかったなぁ…」
フト感じる。
少々残念なキモチを覚えるも、真希も入らなかったコトを考えると、自分が1人だけ入るのもおかしなもの。
そう思うと、"ま、いっか"と、自然と笑顔も浮かぶものであった。
- 537 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:47
-
浴衣を脱ぐと、下着のみを身につけたカラダがあらわになる。
真希のように脂肪が一切ない、とてもスレンダーなカラダのラインではなく、女性らしい丸みを帯びたラインが、
薄い紫色の入った上下お揃いの下着の間から現れた。
指で下着のラインを整える。
若干、上下梨華のタイセツな部分が覗くぐらいに薄いブラジャーとショーツ。
さすがにじっくりと眺めると、自然とほほがほんのりと赤くなってしまうもの。
ただ、この、ランジェリーと呼ばなければ失礼に当たるくらいに高価な下着は、
今年の梨華の二十歳の誕生日に、真希が選んでくれたものである。
そう、これまでとは違い、かなり高級なランジェリーショップに入って買ったものなのだ。
オーダーメイドでしっかりとサイズを測り、高級な素材を使って作って貰ったモノでもある。
事細かく計られ、相手が女性とはいえ、少々恥ずかしさを覚えてしまったのだが、
実際に出来上がって着てみると、やはり一般的に普通に売られているものと、全然違うものであった。
しっかりとフィットし、着ていて締め付けもなく、夜になっても、それほどカラダにラインが残らないし、
とても肌に当たる感触が心地よいのだ。
そして、やはり重要である、"可愛さ"。
真希以外に見せるヒトなどいないものの、それでもカワイイモノを着ていたいというのが、女のコ。
やはり、それ以来、結構下着にもハマり、色々と真希と2人の分を買っているのだ。
その中でも、一番のお気に入りのモノである。
- 538 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:49
-
そして、胸元に視線が行くと、自然とさっきのコトを思い出した梨華。
少しほほも赤く染まる。
もしれいなと一緒に眠っていたら、おそらく何か適当なシャツを着ていただろうが、
やはり真希が相手だったコトから、下着のみを身につけ浴衣を羽織ったのだが、
その結果が、真希のあの行動。
今から考えても、少々呆れてしまうような行動であるのだが、梨華自身、本当に怒っているわけはない。
むしろ、小さい頃から母親の愛情に飢えていた真希が、自分の胸に対してそのような感情を抱いたコトが、
自分自身のコトを本当の母親のように思ってくれているようにも思えてしまい、ほんの少しだが、
複雑ながらも嬉しさや愛おしさを感じたくらいなのだ。
ただ、やっぱり真希に直接触れられると、"お年頃"の梨華にとって"イヤラシイ"刺激に勘違いしてしまうのだから、
少々困ってしまうものである。
そんな自分に対して、自然とため息も零れたのであった。
- 539 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:49
-
2、3度ため息を零した後、昨晩、真希の部屋に持ってきた服を取り出した梨華。
持ってきたとは言っても、昨日、旧居留地のブランドショップに立ち並ぶ手ごろな一軒で、
れいなに選んで貰い、買ったものを、携帯やら貴重品と一緒に、袋に入ったまま持ってきたというだけである。
厚手のロングスカートとセーター。
2つとも至ってシンプルなものだが、れいなが、派手で一目に曝されすぎている、と、
昨日着ていた梨華の服を考えてのコトだそうだ。
"もうちょっとイシカヮさんらしぃのを着て下さい"と、恥ずげに言っていたそのときのれいなの表情が、
簡単に目に浮かんでくる。
そして、自分のコトを考えて、選んでくれたれいなに素直に感謝をした梨華であった。
ただ、少し足の細いブーツとは合わないかもしれないコトが少々気がかりだが、
ま、早速次の日に着ると、れいなも喜んでくれるコトが目に浮かぶから、よしとしよう、と。
- 540 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:50
-
値札が残っていないコトを確認したのち、色々な準備の前、
とりあえずファッションショー的な感覚で身につけるコトにした梨華。
適当に持ってきていたシャツを着て、その上にセーターを羽織る。
少し裾を整えた後に、ロングスカートも身につける。
さらに、携帯のストラップに通していたゴールドの刺繍のされたブレスレットを手に取った。
こちらは、昨日一緒に行動を共にした5人で、ハーバーランドの"モザイク"でお揃いに買ったものである。
それを腕に通した後、着た姿を部屋に置かれてあった大きな鏡に写すと、思わず表情が緩んだのだった。
やはり、新しいものは良いもの。
新鮮なキモチになれるし、さらに、"れいなが選んでくれた"というコトが余計に嬉しさを倍増させてしまうのだ。
すると、そんな梨華の様子に気がついたのか、真希が洗面所からタオル片手に顔を拭きながら出てくると、
"へぇ"と、何とも微妙な声をあげたのだった。
- 541 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:50
-
目ざとく気がつくと、早速クチビルを突き出した梨華。
「なによぉ」
納得いかない、とばかりに少し服の裾をもってアピール。
そんな梨華の様子に"へんじゃなくって"と慌てて手を振る真希。
「田中ちゃんらしくなぃね」
と、日頃のれいなの服装を思い出そうと目を細めた。
梨華も頷く。
「そうなの…昨日の派手すぎらしかったから、もっとおとなし目のを着て下さぃ、だってさ」
「あぁ…そなンだ」
目を大きくさせると、今度は納得とばかりに2つ頷く真希。
「ま、確かにね…」
そして、"今日は梨華ちゃんがごとぉに買ってよね"と洗面所に消えていったのだった。
時刻は7時を15分ほど過ぎていた頃。
真希の後姿に"はぁーい"と少し嬉しそうに頷き、何を選んであげようかな、と早速表情を緩めていた梨華であった。
〜 ☆
- 542 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:50
-
とても遠くから聞えてくる音楽。
その音楽が自分の携帯から聞えてくるモノだと認識をした"少女"は、軽く寝返りを打つ。
コドモのように幼げな表情を浮かべ、眠たげに目を擦りながら真上を向くと、
うんっとカラダ全体を伸ばした"少女"。
小さなカラダを大きくさせるも、小学生のように細くて小さなカラダは、まだまだ思春期前の少女のよう。
そのままの姿勢で、伸ばした手で枕元を探る。
カラダを伸ばす毎に、手の位置も調整。
しかし、ふと気がつくその音楽。
とたんにばっとカラダを布団の中で半回転させる。
"目覚まし"だと思っていたものは、電話の着信だったのだ。
細い腕を伸ばし、携帯を手に取り、背面の液晶を見ると、その少女の表情が一気に変化した。
さきほどまでの眠たげに目を細めていた姿から、目をぱちくりと大きく開くと、
いつもの大きくてステキな瞳へと変化させた。
- 543 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:50
-
そう、携帯の画面にはれいなの"ステキなヒト"の名前。
ただ、次の瞬間には不思議そうに首を傾げた。
そして、隣のベッドに視線を向ける。
すると、ぱっちりとした目を情けなく細めたのだった。
"ステキなヒト"から携帯に電話が掛かってきた時点で、ベッドには誰もいないというコトは分かってはいたものの、
やはり実際に目にすると少しショックを受けるもの。
この幼げな"少女"にとって、何がショックなのかというと、言うまでもなく、
朝起きて、隣に"ステキなヒト"がいないというコトである。
さらに、昨日の夜からの"ステキなヒト"との、とても楽しみにしていた夜のコミュニケーションを、
全く覚えていないのだ。
これほどすっからかんに頭の中に残っていないというのは、ある意味不思議なコト。
微かに残っているものといえば、昨晩お風呂上りに倒れ込むようにして、
"ステキなヒト"の隣で眠り込んでしまったコトくらいであろう。
それっきりであり、それ以前の記憶も、勿体無いコトに"ステキなヒト"の隣で寝ていたコトくらい。
「はぁ」
その事実に気がつくと、せっかく一晩同じ部屋で過ごしたのに、何とも勿体無いようなキモチに陥ってしまい、
さらに落ち込んでしまった"少女"であった。
たくさんたくさん話せる機会があったのに、と。
「はぁ…」
やがて、もう一度ため息をついてから、キモチを少し切り替えて、携帯に出たのだった。
- 544 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:51
-
「おはょございます」
『おはょ』
"少女"のいつもの挨拶に、電話口からはいつも通りにとても可愛らしい女のコの声が聞えてきた。
ある意味、声だけを聞いていたら"少女"より年下であるコトが想像できるくらいに、
可愛らしい少女のように高い女のコの声。
しかし、"少女"の挨拶が敬語であるコトから、相手は年上になるのであろう。
傍から見れば少々不思議な光景に見えなくもないが、やはり、"少女"の口調も、普段とは違い、
とても可愛らしいものであるコトから、電話口のヒトの方が年上とも思えなくもない。
そう、この"少女"は普段は意外とざっくばらんな口調で話すのだ。
何でもはっきりとした口調で言ってのけるくらいにオトコのコ的な性格でもある。
しかし、今の"相手のヒト"は"少女"の口調や性格まで軽く変えてしまうくらいの存在であろうのだろう。
この"少女"に、これだけカワイイ声を出させる相手。
"少女"にとって特別な"存在"。
- 545 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:51
-
二言、三言だけ言葉を聞くと、"少女"の顔色がさらに変わった。
ぱっちりと目を開き、ほほをほんのりと赤く染める。
そして、"はいっ、分かりましたんで、待っとって下さいっ"と元気よく口を開いてから、携帯を切ると、
慌てて準備に取り掛かったのだった。
朝のご飯を"一緒に食べようょ"と誘われ、とても元気になったのは"田中れいな"。
もちろん、誘った"ステキなヒト"は梨華であった。
〜 ☆
- 546 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:52
-
全ての準備を済ませた梨華、真希、桃子、そしてとてもご機嫌なれいなの4人は、8時に差し掛かる前、
ホテルの3階でエレベーターを降りると、そのフロアーにある大きなレストランの中の1つに足を入れた。
ここが本日の朝食の場所らしい。
梨華たちは、着物を着て、ホテルとは一風違った雰囲気をしたお姉さんに出迎えられた。
ホテルであるのに、この場所の雰囲気はまるでどこかの旅館。
そう、このホテルでは、毎朝毎朝朝食の場所が変わり、さまざまなバラエティに富んだ朝食が楽しめるのだ。
中華、フレンチ、和食、イタリアンの計四つのレストランが存在し、サイクルで回っている。
ただ、そうは言っても、全ての朝食がバイキング形式となっており、
それぞれのメインになっている食べ物の種類が豊富であるだけで、
一応他のものもきっちりと置かれているのだ。
どれだけ宿泊客の要望に答えようとしているのかが、簡単に伺えるホテルと言えよう。
- 547 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:52
-
そして、本日は和食。
レストランの中央に置かれてあるメインのエリアには、ご飯にお味噌汁といった主食から、
豊富な種類の旬の焼き魚、ある意味和食を超えてしまっている様々な種類のタマゴ料理、
お豆腐類に、ひじきの炒め物といった日本固有の食べ物などのオカズや、お漬物、生卵、
納豆などの補助系の食品までが所狭しと並んでいるのだった。
どちらかと言えば、気品に満ちた年配のご夫婦の姿が多いこのコーナー。
そして、対照的なのは、少し離れた場所にある、パン類や、様々なフルーツ食品、お野菜といった軽いものから、
コーヒーや新鮮な緑黄色のジュースが並ぶ一角。
こちらの方は、やはり若いヒトに人気がありそうである。
現に、一番近い場所に、木の和風のテーブルとイスに座った梨華たちの顔見知りの姿を発見したのだから。
若いだけあって、やはり、周りを取り囲む座敷の方には足は向かなかったようだ。
こうやってバイキング形式なのに、座敷に座って食べるのも少しおかしなもの。
自然と足がこの場所に来ていたのだろう。
- 548 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:53
-
ブラウンのミディアムショートをさせた可愛らしい少女、いや人懐っこそうな笑顔をさせた大人の女性が、
梨華の姿を発見し、手を軽く上げた。
隣にいるすらっとした長身の大人の雰囲気をさせたキレイな女性も同様に気がついたのか、笑顔を零す。
2人ともまだ準備を済ませていないのか、このホテルの浴衣を羽織っていた。
ただ、朝食はほとんど済ませてしまったのか、コーヒーを片手にのんびりと過ごしているようだ。
おそらく準備より先に朝ごはんを食べに降りてきたところであろう。
「おはようございます」
梨華の呼びかけに、"ぉはょ"と声を掛けたのは、少女のようなオトナの女性、"安倍なつみ"であった。
もちろん隣にいたのは、"飯田圭織"。
梨華の後ろから、れいな、真希、桃子も同様に朝の挨拶。
そのまま圭織となつみの後ろにいる女のコたちにも声を掛ける。
そう、なつみと圭織の向こう側にいたのは、美貴とさゆみと希美だった。
準備万端の美貴とさゆみと対照的に、希美は慌しくジュースとパンを一緒にお腹に納めている。
さらに向こう側にはまだ浴衣姿の愛とあさ美。
ただ、一応軽く準備だけは済ませているのか、2人とも軽くメイクだけは済ませている。
そして、朝食も終了なのか、愛は腰を上げ、軽く伸びをしていた。
その姿を見て、4人は愛とあさ美が座っていた場所に腰を掛ける事にした。
- 549 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:53
-
朝からとてもご機嫌なれいなは、積極的に梨華の隣に腰を掛ける。
顔を見て、目が合えばシアワセそうにほほがほんのり。
まるでコイビトを見るかのようなれいなの様子。
そんなれいなのご機嫌な様子は、今日の朝、梨華の姿を初めて見た瞬間から始まっていたのだ。
梨華の顔を見て自然と笑顔になるのは、最近のれいなの定番の朝。
しかし、今日だけは違った。
そう、それは、梨華が早速自分が選んだ服を着てくれているコトなのだ。
さらに、アクセサリまで付けてくれているとなれば、これほど嬉しいコトはない。
れいな自身は、想い出のモノとなると、付ければ付けるほど汚れが多くなるコトがイヤで、
今日はどうしようかな、と思案していたのが、梨華が付けるとなると、もう迷う必要もなかった。
3人を待たせて、わざわざ部屋の中に取りに戻ったくらい。
そして、今は同じ左腕につけ、お揃い。
自然と表情も緩みっぱなしになるのも無理はないのかもしれない。
- 550 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:54
-
ご機嫌となれば、普段から朝食をそれほど取らないのに、むしろ今は食も進むもの。
隣で、パンを小さくちぎっては可愛らしく口に頬張っている梨華や、
朝からすっきりした目覚めからご機嫌にコーヒーをすすっている真希。
れいなと梨華のコイビトのような様子に自棄食いとばかりに、口にデザートばかりを詰め込んでいる桃子。
そんなカノジョたちとの会話を楽しむれいな。
しかし、梨華との会話も一段落したとき、目の前に座っていた桃子がデザートのお代わりを取りに立ち上がると、
自然と目に入ってきたさゆみと美貴の姿。
やがて、希美も一緒に2人が、"先に帰るね"と自分たちの方に声を掛けてから、
お腹もいっぱい、満足げに出て行く姿を後ろから眺めながらフト感じたコトがあったのだ。
そして、思い浮かぶもう一方のシンユウの姿。
いつも並んでいる後姿を見ているだけに、なんだか妙に見慣れない光景に映ってしまう。
そう、それは、昨日の夜も一瞬だけ感じたコトであり、すぐに自分の中で否定をしたコトでもある。
さゆみとえりの2人。
昨夜は、自分の中でも簡単に否定をしてしまったれいなだったが、
えりはどうやら昨夜の自分たちと同じ部屋にいたように思えたのだ。
まだ、えりの着替えなどの荷物が残されていたコトから。
つまり、自分の部屋には戻っていないのだろう。
そうなると、やはり首を傾げてしまうれいなであった。
- 551 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:54
-
一応確かめるコトにしたれいな。
「イシカヮさん、イシカヮさん」
「ん?」
スクランブルエッグをお箸で口に運び込もうとした姿勢で止まる梨華。
何とも不自然な姿勢だが、せっかくカワイイ後輩から話し掛けてきたのだから、と律儀にその姿勢で停止。
目の前でぷるぷる揺れている、まだまだ温かい黄色い物体を名残惜しそうに眺めるも、
しっかりと後輩の方へと視線を向ける。
「や…ぁの…食べてくださぃ…」
「ぁ…ぅん」
口に頬張り、シアワセそうに一度目を細めると、"お待たせしました"と笑顔を浮かべる。
そんな梨華のなんとも無邪気な表情に少しほっぺを緩めるも、本来の目的を思い出すと、
"そだそだ"とばかりに、少し姿勢を低く、カラダを近づけた。
ナイショ話でもせんかの勢いに、梨華も少しカラダを縮める。
- 552 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:54
-
久しぶりにとても近い2人の距離に、一瞬ドキリと胸を高鳴らせ、少しほほをほんのりと染めるも、
今度は、"今は違うけん"とばかりにしっかりと真剣な瞳で、きりりと梨華を見つめる。
「昨日って…」
「昨日?」
「"えり"、れぇなたちの部屋で寝たトですか?」
その名前を聞くと、梨華は一瞬視線をナナメ上、少し考えるような素振りをするも、
次の瞬間には少々表情を曇らせ"そだね…"と頷いていた。
「さゅの部屋には戻ってないょ」
少し寂しげに付け加える。
「そうなんゃ…」
思わず呟いていたれいなを見て、梨華"ぅん"ともう一度だけ頷いた。
そして、2人は顔を見合わせると、なんとも言えない、とばかりに表情をしかめたのだった。
その2人を眺める桃子と真希も、会話が聞えていたのか、少し表情を曇らせたのだった。
時刻は8時を15分ほど過ぎていた。
〜 ☆
- 553 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:55
-
梨華は自分と真希の着替えを持つと、昨晩、自分たちのバックをそのまま置いてきたれいなの部屋へと向かった。
昨夜、そのままバックも持って真希の部屋に行ってもよかったのだが、それをしてしまうと、
少しれいなとの距離が開いてしまうようにも感じられてしまい、寂しさを覚えた梨華。
無意識の行動であったのだ。
一方の真希は、希美と亜依が顔を見せたコトもあり、部屋を軽く点検だけしてから、
そのまま3人で一緒にロビーの方に足を運ぶそうだ。
最後に少しだけお話がしたいのだろう。
- 554 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:55
-
梨華は、れいなの部屋、元々は本来の自分の部屋の前に立つと、ドアをノックした。
そして、一度お腹の前で抱えた荷物を、落ちないように、と持ち替える。
数度繰り返している間も、中から応答はなかった。
「ぁれぇ??
おトイレかな…」
そうなると少し焦らすのも可哀相なもの。
しばらく待ってから、再び、ノックをする。
やがて、中から、れいなの"ごめんなさいっ"という声が聞えてくると、ゆっくりと扉が開いたのだった。
"ごめんね"と言って入る梨華だったが、れいなのその表情が普段とは違い、少々ご機嫌ナナメなコトに気がつくと、
少し目じりを情けなく下げた。
「ごめんね、おトイレだった?」
「ち、違いますっ」
ほほを赤く染めると、慌てて否定するれいな。
「ぁ、そなの…」
素直に頷くも、少しれいなの様子に不思議そうに首を傾げる。
別にトイレだけでそれだけ焦らなくても、と。
「違いますからねっ」
れいなは先に部屋へと入りながらも、もう一度振り返り、念押しをする。
「ぅ…ぅん…」
"思春期だから恥ずかしいのかしら…"と再び不思議そうに首を傾げつつ、
れいなの後ろをついて部屋へと入った梨華であった。
- 555 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:56
-
部屋に入ると、奥のベッドに1人の"少女"が腰を掛けている姿が目に入ってきた。
梨華と目が合うと、"ぉはょうございます"と軽く会釈。
笑顔を見せるも、どこか硬い表情をさせた、ブラウンのストレートミディアムショートの切れ長の目の"少女"。
とてもキレイで、どこか少年っぽいような顔立ちをさせた少女は、柔らかくて短めのスカートを身につけ、
健康的な褐色をしたスレンダーな足がダイタンに露出させるも、その裾を両手で押さえ、
居心地が悪そうに座っている。
そして、足をぶらぶら。
とても気まずそうに座っているその姿は、日頃からの笑顔の耐えない姿からは、かけ離れている。
そう、その"少女"は"亀井絵里"。
- 556 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:56
-
そんなえりの前にれいなは立つと、両手を腰にあて、まさに仁王立ち。
またまた表情を険しくさせる。
一方、2人の様子に、まさに先ほどれいなと一緒に心配をしていたコトが原因であろうと、
2人の状態を理解するも、梨華は、とりあえずシンユウであるれいなに任せるコトにして、
自分のバッグを開け、荷物を整理し始めたのだった。
ところがしばらく経つと、れいなの様子に、えりはとうとう耐え切れなくなったのか、
泣きそうに目じりを下げ俯き、"イシカヮさん、お願いします…"と呟いたのだった。
「ぇ…?」
突然の"お願い"に、着ていた真希と2人の下着の入った袋をバッグの中へ入れていた手が止まる梨華。
雰囲気から"ある程度"のコトは理解してはいたのだが、さすがに今の"お願い"だけだと、よく分からないもの。
えりの方に視線を向けた梨華は、ふとれいなの視線を感じ、カノジョの方を向くと、
れいなは、"聞かなくていぃですよ"と少し強めの口調で言葉を発したのだった。
それは、日頃梨華に対する口の利き方とは全く違うそれである。
ただ、れいながそう言っても、梨華にとっても、やはりこのまま放っておくわけにはいかないだろう。
そう、もう少ししたら出発の時間も迫っているコトもあるし。
さらに、これだけ泣きそうな様子を見せられると、れいなに怒られているえりが、少し気の毒にも感じるのだ。
このようなえりを見たのは初めてと言ってもいいし、えりばっかりが悪いとは言い切れないのものでもあるのだし。
やがて、小さくため息をつくと、梨華は立ち上がり、手前のベッドに腰を掛けたのだった。
- 557 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:56
-
れいなの方をチラリと見ると、一瞬目が合い、情けなく目じりを下げたれいな。
梨華が入ったコトで、余計に対応が難しいと感じているようだ。
2人だけならある程度は強く言えるが、梨華が入るコトにより、あまり強く自分を出せなくなったのだろう。
梨華が"あまり怒っちゃダメ"といった視線を投げかけると、余計に視線を漂わせるのだった。
「どーしたの?」
梨華の優しげな問いかけに、えりはほっとしたかのように表情を緩めると、
"着替え…入れて欲しいんですけど…"と囁くように言ったのだった。
申し訳なさそうに。
その答えを聞いたとたん、呆れたように表情をしかめた梨華。
ある程度その答えを予想はしていたものの、やはり実際に聞くと呆れてしまうもの。
- 558 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:57
-
小さくため息をつくと、れいなの方を見た。
すると、首を横に振るれいな。
そのれいなの仕草にも、呆れると、梨華はえりに向かって"けんか?"と訊ねながら、立ち上がった。
そのまま、ベッドの上に置いていた真希のタンクトップを手にして、おなかの前でたたむ。
えりは何も答えない。
ただ俯く。
「どーせ、フジモトさんに嫉妬しとぉだけゃろ」
れいなの言葉に、ぴくりと一瞬反応するも、すぐに首を横に振るえり。
ますますバツが悪そうに俯くのだった。
「あんま一緒におれんのゃけん…
一緒におれンも、こげん旅行のときぐらぃやン」
冷たい口調だが、それでもえりのコトを心配してのれいなの言葉。
しかし、えりにとってはただただ辛いのだろうか、しきりに梨華の方を助けを請うかのように見つめる。
とても弱い瞳で。
- 559 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:57
-
梨華は小さくため息をついた。
「だぃたぃ、ぇりはさゅの…」
「わたしは、れぃなには聞いてないのよ?」
えりのさらに怯えた様子に、仕方がない、とばかりにれいなの言葉を切った梨華の口調に、
今度はれいなが口を噤む。
そして、少し目じりを下げると、"どうして?"とばかりに情けない視線を梨華に一瞬だけ向け、
やがて、自分を見つめる梨華の目の光が変わらないコト気がつくと、俯いてしまったのだった。
- 560 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:58
-
いつでも自分の味方だと思っていた梨華に、冷たく言われたコトに"辛さ"を感じてしまったれいな。
今の状況だって、自分が悪くはない、と思って、さらに、えりとさゆみのコトを思ってのコトなのに、と、
余計に辛いのだ。
もちろん、それだけではない。
えりとさゆみのコトは自分が一番知っているコトでもあり、自分がしっかり叱って解決させようとしていたのに、
梨華にぴしゃりと切られたコトも辛かった。
しかし、梨華が相手だけに何も言えないれいな。
普段なら、オトナ相手にも、気負いもせずに堂々と自分の意見をいける女のコだが、
梨華が相手だと、何も言えないのだ。
ただただ俯き、納得いかないとばかりにクチビルを突き出すのみ。
- 561 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:58
-
そんなれいなの様子に、梨華は、少しキツかったかな、と反省をするも、時間迫っているコトもあり、
とりあえず"入れてあげるから"と、立ち上がると、えりの頭を撫ぜてあげ、荷物を受け取ったのだった。
梨華の言葉に、ほっと胸を撫で下ろすと、嬉しそうに"ぁりがとうございます"と少しだけ笑顔を零したえり。
一方、ますます不貞腐れたかのように、クチビルを突き出すのはれいな。
そして、そのれいなを見て、まるで真希の不貞腐れたときと一緒にも思えると、1つため息をつくも、
ますます母親のようなキモチに覆われ、ふっと息をはき、れいなの頭を軽く撫ぜてあげた梨華。
しかし、次の瞬間には少し視線をナナメ上。
"大丈夫かしら…"と、少し今日のコトを考えると、心配になり始めていたのだった。
〜 ☆
- 562 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:58
-
梨華の部屋へと、自分の荷物を持って、バックに入れてもらおうと向かっていた美貴だったが、
さゆみの部屋がまだ開かれていないコトに気がつくと、先にカノジョの部屋をノックした。
しばらくして、開かれた扉。
一瞬、とても目をきらきらさせてさゆみが出てくるも、美貴の顔を見ると、ふっと光が消える。
しかし、それもほんの少しだけ。
すぐに笑顔を浮かべると、部屋へと招き入れたのだった。
- 563 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:59
-
部屋の中は、もう完全に整理されていた。
いつでも出れるように、さゆみの荷物もきちんとバッグに入れられていた。
ある程度、ベッドの上の布団もキレイに揃えられ、さゆみの几帳面な性格が簡単に窺い知れたのだった。
もういつでも部屋を出れるくらいである。
さゆみ自身も、昨日とはまた違い、短めの柔らかいスカートとピンクのセーターと、とても女のコらしい服装で、
しっかりと準備も終えている。
それなのに、部屋へと入ると、ベッドに腰を掛けたのだった。
まだまだ部屋は出ないというコトであろう。
「まだ行かないんだ?」
美貴の言葉に、少し悲しげに目じりを下げたさゆみ。
その様子に、"そっか"と美貴も表情を情けなく緩め、もう一度荷物に目を向けたのだった。
やがて、"やっぱり"と、はっきりと理解をした美貴。
そう、半分くらいになっている荷物を見て。
そのコトを悟ると、さすがに呆れてしまったのだった。
- 564 名前:1〜 投稿日:2006/01/06(金) 23:59
-
性格的に、男のコである美貴にとって、えりの行動は明らかに呆れ返ってしまうものである。
まだ実際に2人の"けんか"の理由を聞いていない美貴にとって、原因は自分としか考えられないのだが、
別にさゆみと美貴、昨日1日、コイビト同士のようなコトはしていないのだ。
ただただ一緒にいただけである。
常に手を繋いで行動を共にしていたわけでもなく、腕を組んでいたコトもほんの少し。
ま、"愛の鍵"を一緒に繋げたコトは、さすがに悪いのかもしれないが、それはえりは知らないはず。
それなのに…
大きくため息をつくと、さすがに可哀相と感じてしまったさゆみに向かって、笑顔を向けた。
そして、さゆみのバックをぽんぽんと叩くと、"美貴の荷物入れてもらって…ぃい?"と聞いた美貴。
にっこりと微笑む。
その美貴の笑顔に、さゆみは少し寂しさが消えてくれたたのか、
ほっとしたように笑顔を零すと、"いぃですょ"と答えたのだった。
ただ、美貴の荷物を入れてしまうと、ますますえりと話しにくくなりそうに思えたさゆみ。
少し胸に痛みが走るも、美貴の優しさにとても素直に感謝をしたのだった。
〜 ☆
- 565 名前:1〜 投稿日:2006/01/07(土) 00:00
-
新神戸駅の前で輪になっている少女たち。
キャップを目深に被ったカラダの小さな少女が2人、輪の中心、笑顔で話している。
とても愛らしい顔立ちとは相反し、女性らしい柔らかいカラダのラインをさせた少女と、
引き締まった少年的なカラダつきをした少女が2人。
そう、輪の中心にいる少女は、亜依と希美の2人。
そして、その周りを取り囲むのは、当然のごとく、なつみたちである。
これから東京の方に帰る亜依たちを見送ってから、なつみたちも、在来線を使って大阪の方に移動するのである。
- 566 名前:1〜 投稿日:2006/01/07(土) 00:00
-
「そろそろやなぁ」
9時も5分を過ぎた頃、亜依の言葉に、希美も頷く。
相方が頷き、梨華と真希の方に抱きつきに行く姿を確認すると、
亜依もすぐ右側に立っていたあさ美と愛と桃子に抱きつく。
続いて、その隣に立っていたれいなに、はぐ。
一通り、全員と挨拶を交わすと、最後に"ぇりぃ"と嬉しそうに言葉を発しながら抱きつき、はぐはぐ。
ぎゅっと抱きしめ、笑顔を零す。
やがて、満足すると、カラダを離した。
「じゃぁね…」
「ぅん…」
えりも笑顔。
ただ、次の言葉に、少し目じりをさげたのだった。
「ラスト、"さゅと一緒に"来てよね」
一瞬だけ、間の生まれたえり。
ただ、もう次の瞬間には、笑顔を引き攣らせ、少しクチビルを突き出しつつも、頷いたのだった。
そんなえりの様子に、少し悲しげな表情を浮かべた亜依だったが、
しっかりと頷いてくれたコトに嬉しさを感じると、"よしっ"と笑顔を浮かべ、
少し離れたトコロで美貴となつみと圭織に囲まれるようにして希美と話していたさゆみの方にも、
顔を向けた。
亜依の視線に気がつくと、さゆみも、笑顔を浮かべる。
しかし、さゆみのそれは明らかに作ったものであり、少しほほが引き攣っていた。
そんなさゆみに気がつくと、再び表情が曇る。
そう、その不自然な笑顔に、亜依は、これからの2人が余計に心配になってしまったのだった。
- 567 名前:1〜 投稿日:2006/01/07(土) 00:00
-
思わず唸ると、考え込む亜依。
もしかしたら、今日の朝になったら再び一緒に顔を出してくれるかもしれない、という甘い願望があったのだが、
どうやら、簡単にはいかないようだ。
亜依と希美の2人のように。
2人は、結構ケンカはする方なのだが、それでも次の日になったら、たいてい亜依から話しかけ、
自然と"いつもの2人"に戻っているのである。
とてもヒトのコトを考え、優しい性格の持ち主である亜依とは反対に、
希美は活発的な体型から考えられないが、性格的に少し引っ込み思案であり、
どうしても受け身になってしまうのであった。
初対面の人間には、自分から話し掛けるコトもなく、相手から話し掛けてくるのを待つという性格である。
そんな希美の性格を知っているからこそ、ケンカをした後は、常に亜依から歩み寄っているのである。
それは、亜依がオトナの世界で生きてきたからこそであって、
ある程度"相手のするコト"も受け止められるくらいに"オトナ"であるからで、
おそらく普通の女のコとして生活していたら、難しいのかもしれない。
さらに、ケンカの数も多いコトから。
- 568 名前:1〜 投稿日:2006/01/07(土) 00:01
-
そんな2人とは全く正反対であるえりとさゆみ。
とても仲がよく、ケンカもしたコトがない2人。
そんな2人、お姉さんであるえりの方が怒ってしまってしまったとなれば、イモウトのさゆみにとって、
どうしたらいいのか分からなくなってしまっているのかもしれない。
ふと、そんなコトを感じると、ますます心配になってしまったのだった。
しかし、そうはいっても、もう亜依にとって出発の時間であるのだ。
これ以上は、本人たち2人に任せるしかない。
いや、もしかしたら2人のシンユウであるれいなが何とかするかもしれないが。
少しの願望だけを残し、最後に美貴に抱きついてから、自分の元に希美が戻ってくると、
"行こかー"と希美の肩をぽんぽんと叩いたのだった。
「だね」
希美と2人でバッグを持つと、みんなと笑顔で挨拶、そして、最後にもう一度えりとさゆみの方を見てから、
改札を潜ったのだった。
- 569 名前:1〜 投稿日:2006/01/07(土) 00:01
-
エスカレーターで駅のホームに向かう途中、亜依は呟いた。
「2人、一緒に来てくれるかな…」
亜依の言葉に、希美は笑顔を浮かべると、"何言ってんの"とばかりに、頭をコツク。
「あたりまえじゃん
ウチラのコト、スキなんだから」
希美の笑顔に、ふっと亜依も"そゃな"と表情を緩めたのだった。
そう、自分たちと同じ"依存しあう関係"、"いるのが当たり前の関係"なのだから、心配なんて無用。
今週の土曜日のコンサートでれいなも一緒に3人で来てくれている姿を思い浮かべて、
シアワセそうに笑顔を浮かべたのだった。
〜 ☆
- 570 名前:1〜 投稿日:2006/01/07(土) 00:01
-
次の目的地へと向かうために、地下鉄へと向かう少女たち。
笑顔で歩くなつみと圭織、桃子の3人を先頭に、少し表情のすぐれないさゆみと一緒に歩く美貴。
笑顔を繕っている美貴が、さゆみのバッグを持ち、ときどき"大丈夫ですか?"とさゆみに聞かれると、
にっこりと微笑んで"大丈夫"と答える。
そんな2人の後ろには、朝のご機嫌ナナメな様子から、少し元気を取り戻したのか、
いつもと変わらないくらいに柔らかい表情へとなっているあさ美と、
これからしばしの間の案内人とならなければならず、少々緊張ぎみに表情が硬い愛。
今日は昨日とは違い、あさ美がお荷物係である。
そして、笑顔の真希と、ほんのつい先ほどからずっと困り果ててしまったように目じりを下げている梨華、
梨華とは対照的に、元気を取り戻しつつあるえりがぎこちない笑顔で続き、一番後ろをれいなが歩いていた。
とぼとぼと、れいなは、少し暗い表情で。
昨日とは少々違う雰囲気の中、これから1日、まだまだ始まったばかりである。
- 571 名前:1〜 投稿日:2006/01/07(土) 00:02
-
〜 ☆
- 572 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/01/07(土) 19:01
- 更新お疲れ様です。
ウーン、ますます複雑になってきましたねぇ。
次回更新待ってます。
- 573 名前:初心者 投稿日:2006/01/08(日) 23:31
- 更新お疲れ様です
さゆは絵里との問題とミキティとの楽しい時間と忙しそうですね
朝のごま梨華・れな梨華・愛紺のやりとりも可愛かったです
人数は減っちゃうけどさらにこの先楽しみです
次回更新楽しみに待ってます
- 574 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/09(月) 06:36
- わぁ〜さゆえりがどうなるかハラハラです〜うまくいってくれたらいいんだけどなぁ
- 575 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/10(火) 16:33
- 更新おつかれ様です。
りかれなファンだったのですが、すっかりさゆえりファンに
なっちゃいました♪
おこちゃまだった二人がどんどんお互いを女性として意識して行く感じに
ドキドキです。
楽しみにしてますのでこれからも頑張ってください☆
- 576 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/25(水) 23:34
- 待ってます
- 577 名前:なまっち 投稿日:2006/02/11(土) 02:03
- あぃぼん…(涙
ショック…いめーじが…
お酒はまだしも…女のコにとって…んゃ、歌い手にとってだめだょ…
>>572 通りすがりの者さん
ありがとうございます^^
複雑になっちゃってますね(はは…にがわら
これからもヨロシクお願いします。
>>573 初心者さん
ありがとうございます^^
朝のやり取りは結構気合いれて書いちゃったんで、そう言って貰えると嬉しいです^^
さゅはもっともっと忙しく…(?
これからもヨロシクお願いします。
>>574 名無飼育さん
れすありがとうございます^^
うん^^さゆとえりはうまいこといって貰いたいですけど、さゆとみきてぃにも…(うーん…かっとう
これからもヨロシクお願いします。
>>575 名無飼育さん
ありがとうございます^^
りかれな⇒さゅえりですか♪
このお話でなってくれたようで嬉しかったりして^^
最初の方はほんとおこちゃまでしたからね…(ぅんぅん
これからもヨロシクお願いしますね〜
>>576 名無飼育さん
お待たせしました(にがわら
- 578 名前:第8話。嫉妬 投稿日:2006/02/11(土) 02:03
-
2 〜
- 579 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:04
-
三都の内の1つ、大阪。
神戸から在来線を使用すると、時間にして20分で来るコトが可能である都市、大阪は、
日本の中でも東京に次いで大きな都市といえるだろう。
その歴史は"東京"よりは長いものの、同じく関西にある"京都"や"奈良"といった日本を代表する古都と比較すると、
5分の1に満たないくらいであろうか。
そんな"大阪"いう街の始まりは、1496年、本願寺8世法主蓮如が、
山科本願寺の別院として大坂御坊を建立したコトが始まりとされている。
この石山本願寺の起源となった経緯を示した文章の中に、
日本歴史の中で初めて"大坂"という文字が出てきたのであった。
現在使用されている"大阪"とは別に、その昔は"大坂"と書いていたコトは、現在では有名な史実である。
- 580 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:04
-
石山本願寺とは、1532年に、山科本願寺が戦国の争乱に巻き込まれて焼き討ちに合い、
そこから逃れた十世証如らによって作られ名づけられたものであり、
堀・塀・土塁などをもうけて武装を固めるなどを繰り返し、
次第に難攻不落の城砦として強化されていった、お寺とは名ばかりの要塞であった。
そして、本願寺の武装化に伴い、次第に構成する寺内町も発展し、
11世顕如の代に本願寺隆盛の絶頂期を迎えたのだった。
ところが、繁栄していた本願寺も、長くは続かなかった。
そう、織田信長の天下統一の野望に屈してしまったのだ。
ただ、簡単には屈せず、最終的に本願寺が織田信長の下に落ちるまで、11年もの歳月が費やされたのだった。
それは、有名な歴史上の出来事であり、このことからも、大坂という土地が、
優れた地勢を持っていたというコトが簡単に想像できよう。
『信長記』にも、「そもそも大坂はおよそ日本一の境地なり」という有名な一節が存在しているのである。
- 581 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:04
-
そのコトから、大坂という街を一気に発展させた豊臣秀吉が、
大坂という土地にて天下統一を選んだ理由も簡単に伺え知れそうだ。
そして、その豊臣秀吉が大阪城を築城したコトにより、飛躍的に大都市へと発展し、
一躍日本を代表する都市へとなった街でもある。
また、その当時から、堺市という当時の日本を代表する商業都市が存在したコトがあったからだろうか、
大阪は、ヒトのココロの中に強く商業都市として現在まで存在するコトとなった。
ただ、いつの頃からか、商業だけではなく、むしろ"食の街"としてその道を歩み始めていた"大阪"。
それは時代を駆け抜ければ駆け抜けるほど顕著になり、現在では"くいだおれの街"とまで称されているくらいである。
日本各地はもちろんのこと、世界からもたくさんの観光客がやってきては、
活気に満ちた街、大阪の人間の人情味、充実して安い品物、それらに目を白黒させ、
気分も昂揚、お財布の紐も緩くさせてしまう、そんな都市である大阪は、
一度は来ておいて損はない都市であろう。
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- 582 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:05
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神戸から大阪という狭い幅をもった地域だけでも、3本の在来線がその交通網を結んでいる。
阪神平野に位置し、とても多くの人口が密集している地域であるコトから、
地域住民にとって重宝されている路線。
ごくごく一般的に交通の手段として利用されているのは、"JR西日本"が運営する電車である。
手ごろな値段と、スピード、そして、到着時間に、一時間あたりの本数。
一番利用しやすい電車であろう。
また、庶民的な雰囲気を持っている"阪神電気鉄道"が運営する"阪神電車"も南の方を走り、意外と利用者は多い。
一方、その2つとは相反した空気を持っているのが、"阪急電鉄"が運営する"阪急電車"であろう。
三本の中でも、一番北を走るその阪急電車は、他の二つとは違い一番高級感を味わえる電車ともいえよう。
関西では一番の高級住宅街と称されている"芦屋"、さらに"夙川"、"甲陽園"といった場所を走るコトからも、
阪急電車は他の2つの電車とは一風違った雰囲気をさせた電車であった。
たかが電車、されど電車。
意外と、セレブな空気を持っている電車というのも良いモノ。
自然と、乗ってみたくなる。
そのような雰囲気をさせた電車に、なつみたちご一行は、愛の提案どおりに乗り込み、大阪を目指したのだった。
途中、"芦屋"という場所を通り、少しだけセレブな空気を感じながら。
そして、色々と関西に詳しい愛を、少しだけ尊敬のマナザシで見つめながら。
ま、愛は、単純に、"タカラヅカ"を見に、大阪から阪急電車にしか乗ったコトがなかったから、
阪急電車しか知らなかった、というコトは、決して言うまい。
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- 583 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:05
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周りの景色がじょじょに変わってくる。
時折田畑なども伺えた地域から、次第に緑も少なく、建物ばかりの景色へと変化していく。
そして、大きな鉄橋を越えると、電車はスピードをさらに緩めたのだった。
どんどん緩まるスピード。
やがて、電車は、高いビルの隙間から、大きな大きな建物の中へと吸い込まれていったのだった。
阪急梅田駅。
阪急電車の起点となっている駅である。
ここから、"十三"を経て、京都、神戸、宝塚など、さまざまな方面に広がっているのだ。
それだけ様々な地域への便が出ているだけあって、ターミナル駅はざっと見るだけでも、
数十本もの電車が並んでいる。
ある意味小さい路線が幾重にも折り重なった東京では、見慣れないような光景でもあろう。
ま、かろうじて、北の玄関口と言われている上野が近いとは言えようか。
それでも、なつみたちにとっては、驚きを隠せない景色であった。
- 584 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:06
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地下へと続く出口、そのまま到着したフロアーにも幅の広い出口が存在している。
しばし、きょろきょろと見回した後に、佇むなつみ。
初めて足を下ろした場所であるコトもあり、その表情は随分と固くなっていた。
そのまま、とりあえず、とばかりに近くのベンチにバックを置くコトにしたのだった。
圭織、美貴、桃子といったバックを持っていた面々も、すぐ隣にバックを置く。
キャリーバックを持っていた梨華とあさ美、れいなはそのまま立てる。
そして、視線はなつみへと。
やがてなつみは困ったような表情をさせると、圭織へと視線を向けた。
ところが、圭織は、真希へと。
すると、自然と全員の視線が真希の方へと。
大阪に到着してからの道案内役ともいえるカノジョへ。
しかし、そんな真希だったが、たくさんの視線を集め、すっかり忘れてしまっていた自分の役割を再び思い出すと、
到着してからほのぼのとさせていた表情を、少し気まずそうにしかめ、
隣に立っている梨華の背中に隠れたのだった。
やがて、申し訳なさそうに呟く。
「阪急って使ったコトなぃ…」
テレビの中だと見慣れないカノジョのコドモのような仕草に、ふっと表情の緩むなつみたち。
そう、最近とくに多くなってきた、年相応のカノジョのその様子に。
真希の隣に立っていた梨華も、カノジョの仕草に、随分と表情を柔らかくさせたのだった。
- 585 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:06
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ま、今はまだまだ道案内には適さないというコトであろう。
そういうコトなら、と、なつみは愛の方を見て、ちょいちょいと手で"こっち"と招く。
そして、梨華の方も見ると、同様に手で"こっち"と示す。
そう、昨日同様、本日の相談といったトコロであろう。
梨華の後ろにいた真希にも手招き。
そんな5人の姿を見た美貴は、しばし時間が出来そうに感じると、すぐ隣で佇んでいたさゆみと桃子の手を引っ張り、
同じフロアーにある横に長い出口の前に並んである売店の方へと足を運んだのであった。
兎にも角にも"腹ごしらえ"なのだろうか。
一方、れいなとえりは近くのベンチに腰を掛け、大阪のガイドブックが遊び相手。
今日1日のコトに想いを巡らせているようにも思える。
あさ美も、れいなとえり同様にベンチへ腰を掛けるが、逆にこちらは、しばしぼぉっと周りの景色を眺めつつ、
自分の世界で今日1日のコトに想いを巡らせているようだ。
いずれにしても、めいめいこれからのコトを考えつつ、しばらくの間休憩となった。
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- 586 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:06
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腕組みをしたなつみは、美貴とさゆみと桃子の後ろ姿を眺めながら、少し表情をしかめる。
そして、ひとつ軽くため息をつくと、呆れたように眉をしかめ、梨華の方へと視線を向けた。
「どうしたもんかなぁ」
その言葉に、梨華が少し驚いたようになつみの顔を見つめるも、"ま、分かるかっ"とばかりに表情を緩めると、
"そうですねー"とお姉さんの言葉に相槌。
そう、さすがにまだまだえりたちと出会ってから数日しか経っていなくとも、
その数日のうちで随分とお世話をしてきたのだから、なつみにしたら簡単に分かってしまうものなのであろう。
圭織もそのようだ。
ただ、愛だけは少しなつみの言葉だけでは理解できなかったのか、少しだけ不思議そうに首を傾げていたのだが。
ま、そうは言っても、やはり暗には気がついていたのか、梨華が説明をしてあげると、
"やっぱり"と簡単に頷き、大きな瞳をさらに大きくさせたのだった。
そのまま"うんうん"と納得の表情を浮かべて再び頷く。
一方の真希は、朝ご飯を食べていたときの梨華とれいなの会話と、大阪にくるまでの電車の中で、
梨華から話を聞かされていたコトもあり、それほど驚いた様子も見せず、
"そうだょね"となつみの言葉に相槌を打っていたのだった。
そんな5人は、やがて、計ったかのように一斉に大きくため息を零したのだった。
- 587 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:06
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梨華はもう一度ため息をつくと、少し離れたベンチに腰を掛けていたえりとれいなを見つめた。
2人は、朝とは違い、少し気まずい雰囲気をさせながらも、
笑顔を零しつつ、仲良く大阪のガイドブックに目を落としている。
そして、時折、駅のホームの入り口近くで美貴と仲良く食べ物を物色しているさゆみの姿を見ては、
小さく苦笑いのれいな。
朝の時点では、随分と呆れ顔だったが、今では、少しは受け入れてあげようといったカンジであろう。
本人が一番辛いと感じているのだから、と。
いつしか、とても温かい空気でえりを包んでいたのだった。
そんなれいなの優しさを視界にとどめながら、梨華は口を開く。
「今日1日、昨日と同じで…別々に行動しません?」
その言葉に、少し驚いたように目を開くなつみ。
そして、圭織。
小さく"ぇ?"と呟く声が聞えてくると、梨華は振り返り、にっこりと表情を緩めたのだった。
「"あの"3人はもちろん一緒で…あとわたしとごっちんとれぃなと…」
これまでずっと考えていたのか、その口ぶりは今しがた思いついたコトを話すものではなく、
しっかりとした意志を持った意見を話すようなモノであった。
- 588 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:07
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「とりあえず、ぇりとさゅを何とかしますし…」
今度は少し遠くで寂しげに佇んでいるさゆみの方にも視線を向けた。
先ほどまで美貴と桃子と一緒に、楽しげに食べ物を選んでいた姿はなく、
1人で立っているカノジョは、少し沈んでいる。
とても愛らしい幼女のような表情を日頃から見せているさゆみは、寂しげな表情をさせているからか、
今ではとても大人びた雰囲気である。
そして、キレイな表情を見せている。
ただ、似合わないのは当然のコトであろう。
さゆみに悲しげな表情は似合わない。
いつでも笑顔で、つぶらな瞳を細めて幼女のような表情をさせるのがカノジョ。
それが"さゆみ"。
- 589 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:07
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カノジョのそんな笑顔を思い出し、自然と表情が緩んだ梨華。
「みんなで一緒だと本当に話せる機会も少なくなっちゃいますし…
せっかくの旅行ですから…」
そして、再びなつみと圭織の方に視線を向けると、"安倍さんたちは楽しんでくださぃ"と、
にっこりと笑顔を浮かべたのだった。
その言葉に、なつみと圭織と愛は顔を一様に顔を見合わせるも、梨華の笑顔と、有無言わせぬ強い口調に、
自然と頷くしかなかったようだ。
そんな3人の隣では、真希が、"お母さん"のカッコいい姿に、1つ"ふ〜ン"鼻を鳴らしていた。
〜 ☆
- 590 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:07
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グループとなるメンバーは、梨華の提案の通りに、梨華、真希、美貴、さゆみ、えり、れいな。
もう一方は、なつみ、圭織、愛、あさ美、桃子となった。
片一方ずつに、真希と愛という関西のコトを多少なりとも知っているヒトがいるコトも丁度よかったのだろう。
真希も反対はなかった。
ただ、やはり愛と圭織、なつみは多少なりとも罪悪感はあるのだろう。
未だに表情だけは冴えなかったのだが。
そんな3人を安心させるため、梨華はもう一度笑顔を浮かべると、
"そうそう"と思い出したかのようにと手を叩いたのだった。
話題のイイ転換とばかりに。
- 591 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:08
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「今日は…
岡田さんは…」
少し視線をナナメ上に持っていく。
そして、名前の少女の顔を思い浮かべた。
そう、"岡田さん"は、昨日、梨華とれいなを助けてくれた女のコのうちの1人。
"岡田唯"。
カノジョと昨夜別れる前に、今日、朝から会えるなら会いたいと話していたコトを思い出したのだった。
また、唯のコイビトでもあり、昨日助けてくれたもう1人の女のコ"三好絵梨香"は、
朝からは無理だけど、昼からは絶対に、というコトも話していたコトを思い出す。
さらに、2人と積極的に連絡を取っていたのは愛であったコトも思い出した梨華。
愛は、代表のようなカタチなのか、はたまた自然となのか、昨日から、
カノジョたちと頻繁に連絡のやり取りを行なっていたのだ。
そんな愛の方に視線を向ける梨華たち。
すると、きらきら光る大粒の瞳を少し大きく開いた愛は、昨日からの2人とのやりとりを報告したのだった。
- 592 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:08
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愛の話によると、特に行く場所がなければ自分たちが案内してもいいとのコト。
とは言うものの、真希が行きたいと考えている場所があるのであれば、それはそれでよく、
自分たちも一緒に観光客的な気分で色々な場所に行きたいとも話していたそうだ。
関西に住んでいるとはいえ、やはり住んでいる近場の、観光客が行くような場所には行ったコトがないようだ。
ま、そのようなコトは、世間一般的にもごくごく普通のコトなのかもしれない。
そう、ふと聞いたコトも思い出す。
それは、唯と絵梨香にも当てはまるようだ。
そういえばと、さらに思い出す梨華。
自分自身に当てはめて、東京タワーにも登ったコトがなかったのを思い出す。
そして、地元である横浜でも、中華街に行ったコトがほとんどないコトも思い出したのだった。
このコトは、日本全国、一般的に当てはまるコトなのかもしれない、と。
- 593 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:08
-
ま、それはともかく、昨日助けてくれた女のコに会えるだけではなく、
これから今日1日の観光に、地元のヒトがいるというコトも、とても頼もしいもの。
愛と真希が詳しいとはいえ、それはある程度の地理だけであり、場所場所の込み入った場所では、
ほとんど2人の大阪での知識は役には立ってくれないコトが簡単に想像できたのだった。
目的地の近くまでは到着できるものの、それ以上は。
やはりガイドのような存在はありがたいもの。
さらに、地元のヒトがいてくれるだけで、"昨日のようなコト"もないだろうし。
と、昨日のコトを少し思い出しては、表情をしかめる梨華。
それを考えると、やはり感謝であった。
- 594 名前:2 〜 投稿日:2006/02/11(土) 02:08
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- 595 名前:なまっち 投稿日:2006/02/11(土) 02:15
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もうこのすれも書き込めなくなりそうですね…
ふぅ…
新しいお話が書きたくなったなぁ(ぉぃぉぃ…ばしっ!…しっかりしろ!
ごっちん早くよくなってねー^^
ぱーてぃではみんな一緒に最高のパフォーマンスを見せてくださいませ^^
楽しみぃ♪
って…ぱーてぃ競争率高いね…これまで7公演くらい申し込んで、2公演しか当たってないゃ…
- 596 名前:初心者 投稿日:2006/02/15(水) 09:46
- 更新お疲れ様です
さすがお姉さん組みはいろいろと考えて行動してますね
さゆえりにも仲直りしてほしいしミキティにも楽しんで欲しいです
唯と絵梨香の新メンバーにも期待
次回更新楽しみに待ってます
- 597 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/11(土) 16:38
- ここのさゆえりが好きです。
更新楽しみにしてます。
がんばってください
- 598 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/03/14(火) 14:59
- 更新お疲れ様です。
さぁ、この方法が吉となるのでしょうか。
気になりますねぇ。
次回更新待ってます。
- 599 名前:名無し飼育 投稿日:2006/03/31(金) 13:35
- リアル春休みに更新を期待してみたり…。
春休みじゃなくても
いつになってもいいから物語の続きが知りたいです!
- 600 名前:てん。 投稿日:2006/04/05(水) 20:21
- 梨華れな不足です
つづき待ってます
がんがれ
- 601 名前:なまっち 投稿日:2006/04/14(金) 00:46
- あぁ…春休みが終わっちゃいました…
本当なら(書き始めの予定)先週の日曜で終わる予定だったんですけど…
すみませんです。
なかなか次のスレを立てる勇気がなくて…気分転換に短編とかも書いている
のですが、載せるとココ、ホントに書き込めなくなりそうなんで(にがわら
はぁ…忙しかったのですが、一応生きてます報告でした。
現実は、いしごまコン(おぃ)が熱いですね^^
まさにいしごまコン。
それだけでも見に行く価値ありそう…楽しみだなぁ…
>>596 初心者さん
次回の更新が遅くてごめんなさいです。
これからさゆえりみきがメインになるところで止まってしまって…
できるだけ書いてから次のスレをたてたいと考えてますので、
次もよろしくお願いいたします。
>>597 名無飼育さん
ありがとうございます。
そう言って頂けるとチカラになります^^
現実のさゅえりはもっと素晴らしいですが(w
>>598 通りすがりの者さん
次回の更新、遅れて申し訳ありません。
この方法は…うぅぅぅ…
>>599 名無し飼育さん
嬉しいお言葉ありがとうございます。
リアル春休みに更新したかったのですが…スミマセンです。
>>600 てん。さん
ありがとうございます。
わたしもりかれな不足です…(×_×)
ワンダの名古屋以来不足で不足で…(なみだ
いしごまはこれ以上ないくらいにキテルのに…
- 602 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/22(土) 19:34
- 待ってます
- 603 名前:初心者さん 投稿日:2006/04/29(土) 00:31
- いつまでも待ってますよ
- 604 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/31(水) 20:17
- 待ってます
- 605 名前:てん。 投稿日:2006/07/04(火) 02:28
- まっています
れいながこのごろ大人びてきているのでは・・・
- 606 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/04(火) 03:29
- ochi
- 607 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/02(水) 00:30
- 作者さん期待してますよ☆
- 608 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/02(水) 00:48
- 落とします。
- 609 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/03(木) 00:39
- なんで落とすのか…
意味がわからない
- 610 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/03(木) 02:56
- むしろなんで上げるのかの方が分らない。
もちろん作品どうこうではなく、更新されたと期待している人が勘違いするでしょ?
無闇に上げられる方が迷惑。
- 611 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 00:30
- 待ってます!
生存報告だけでもどうかよろしくお願い致します。
- 612 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/04(水) 01:12
- 待ちます
- 613 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/10(土) 23:18
- まだー
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