続き・吉澤とビールと当たり前の話
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/12(土) 00:12
- 森板「吉澤とビールと当たり前の話」の続きです。
前スレURLは次の通りです。
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/wood/1125413057/
独立した続編ではなく、前スレの続き、です。
よろしくお願いします。
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/12(土) 00:25
-
- 3 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:09
-
「みんなの話、おもろかったわー。ええ顔してるで、今、みんな。
ほんでな、そやから、今、急遽、決めた」
つんくの笑顔と裏腹に。
娘。たちから笑顔が消える。
決めたって、、、、なに?
- 4 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:10
-
「モーニング娘。全員、卒業や」
- 5 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:10
-
時間が、止まる。
まばたきの音もひびきそうな静寂。
つんくの顔に光の速度で視線が集まる。
誰も動かない。声もない。
「なんや、静かやな」
つんくがやわらかく言う。
ひとりひとりの目を、順番に見る。
「この休みでな、みんなごっつい成長したで。
変わったっちゅう自覚のあるやつも、自分では気づいてないやつもおるけどな。
みんな、今が、羽ばたくときなんちゃうかと俺は思った。
卒業できる。おめでとう。春のツアーで、全員、卒業や」
- 6 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:11
-
翌日、午前10時。
ホテルニューオータニのバンケットルーム、記者会見。
白い布が掛けられた長テーブルに、マイクが一本。
薄い灰色のスーツに白いシャツ、ボタンを2つ目まで開けて、シルバーのネックレス。
ノーネクタイのつんくが笑みを浮かべて、席に着く。
「えー、つんくです。お忙しいところ、ありがとうございます」
フラッシュ。フラッシュ。
- 7 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:13
-
「きょうは、私がプロデューサーを務めるモーニング娘。について、
みなさんにお知らせしたいことがありまして、集まっていただきました。
昨日、3月1日、モーニング娘。は『骨休み』を無事終え、活動を再開いたしました。
そして、再開と同時に、決定したことがあります。
モーニング娘。の、吉澤ひとみ、高橋愛、紺野あさ美、小川麻琴、新垣理沙、
藤本美貴、亀井絵里、道重さゆみ、田中れいな、久住小春、は、この春の
モーニング娘。コンサートツアー最終日、5月21日、横浜アリーナ公演をもって、
モーニング娘。を、卒業します」
フラッシュ。フラッシュ。
- 8 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:14
-
「現在レコーディング準備中の新曲が、現メンバーでのラストシングルになります。
タイトルは『心ひらけヴァ!ビックリ箱』です。
4月1日にスタートする春のコンサートツアータイトルも変更します。
新しいタイトルは『モーニング娘。コンサートツアー2006春 飛んでけ七色レインボー!
〜卒業あおげばとーとSHOW〜』です」
フラッシュ。フラッシュ。フラッシュ。
「私からは以上です。質問があればお受けします」
- 9 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:15
- 「今おっしゃったメンバーは、現在のモーニング娘。全員かと思うのですが、
モーニング娘。解散、ととらえて問題ありませんか?」
「解散ではありません。『モーニング娘。解散』ではなく『モーニング娘。全員卒業』です。
お間違えのないようにお願いします。モーニング娘。に『解散』の二文字は、ありません。
あり得ません。なぜなら、、、、『モーニング娘。』はカタチではなく、精神の名前だからです。
モーニング娘。スピリット、そのようなものがあって、それを具現化する人間が
集まってくる、そういうものだと俺は、、、私は思っています。
精神に、、、スピリットに、解散、はありません」
- 10 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:16
-
「あくまで解散ではない、と?」
「そうです。モーニング娘。は、なくなりません。在り続けます。現在のメンバーが全員卒業し、
空席になるだけです」
「では、将来、新たなメンバーを迎えてモーニング娘。が再び活動する可能性は
ありますか?」
「なくはないですね」
「具体的に、その予定はあるのですか?」
「今はありません。全くの白紙です」
- 11 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:17
- 「一ヶ月の休業が終わって、吉澤さんがケガから復帰するタイミングでのこの決定には、
何か意味がありますか?」
「吉澤のケガと直接の関係はありません。吉澤も順調に回復しています」
「大変失礼な質問ですが、休業中に、問題を起こしたメンバーがいるというような
背景はありますか?」
「まったくありません」
「メンバーのみなさんには、いつ、どのようにお伝えになりましたか?」
「昨日、事務所の会議室で伝えました」
「メンバーのみなさんの反応は?」
- 12 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:18
-
「納得されていますか?」
「うーん、、、、、」
フラッシュ、フラッシュ、フラッシュ、フラッシュ。
「正直、『なんで?』って感じてるコもおったと思います。でも、俺、、、僕、、、
私からすれば、みんな、卒業できる、羽ばたける、次のステップにいく時期やと感じたから、
決断しました。そのように話しました」
「つんくさんご自身が、限界をお感じになっていたという面はありますか?」
- 13 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:18
-
「ありません」
「ファンの皆さんに、ひとことお願いします」
「現メンバーでのモーニング娘。、、、、飛び立つ直前の、いちばんカッコええ瞬間の
モーニング娘。をしっかり見てやってください」
フラッシュ、フラッシュ、フラッシュ、フラッシュ。
「質問がなければ、以上で、、、、」
つんくが立ち上がる。
「つんくさん最後に!ラストシングルのセンターは、誰になりますか?」
「、、、、、小川麻琴です」
- 14 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:19
-
記者会見が行われている頃、
メンバーの家に新曲の仮歌MDが届けられる。
つんくが、夜、一気に書き上げた新曲。
それぞれの部屋で、それぞれのやり方でMDを聴く娘。たち。
目を閉じて背中を丸めてヘッドフォンに手をあてて。
ステレオサラウンドで大音響で。
立ち上がって軽くリズムを取って動きながら。
歌詞の意味を辞書で調べながら。
窓を開けて、空を見て、MDウォークマンを片手に。
- 15 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:20
- レコーディング、雑誌取材、TV出演、一回目のPV撮影、ツアーの準備。
もともと、すべての予定を3月に設定し直していたのが奏功した。
当面のスケジュールそのものは、予定通りで何の問題もないという皮肉。
ただ、内容だけが「全員卒業」に差し替わる、、、、。
吉澤も、ダンス以外の仕事はメンバーと同じか、それ以上にこなしていった。
そして、3月下旬、いよいよ、ダンスに支障がないレベルに、吉澤の足が回復―――。
- 16 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:21
-
「最初から、そのつもりだったのか?」
山崎がつんくに尋ねる。
「、、、、、どうやろな」
つんくは、はぐらかす。
考えては、いた。ただ、決めたのは、実際にあのコらと話してからのことや。
あのコらの成長、それがあったからこそや。
「もう、静かにせんと」
ふたりは視線を前に向ける。
3月24日、金曜日、20時。
「ミュージックステーション」の生放送が始まろうとしていた。
珍しく、山崎とつんくが収録に立ち会っている。スタジオの隅に立って、セットを見つめる。
- 17 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:21
-
HEY、うたばん、予定通りに、収録、OA。
どちらも吉澤のリハビリ映像を云々するまでもなく「全員卒業」をテーマに
時間は大きくもらえた。ただし、ここまですべて、新曲は9人バージョン。
そして、きょうは。
- 18 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:22
- オープニング。
階段を降りてくるモーニング娘。
あえて隠さない衣装から伸びる吉澤の足。
紫と藍色、ツートンのミニのワンピース、同色のヒールのあるサンダル。
以前と変わらぬ肌、そして、動き、表情。
落ち着きのあるダークブラウンに染めた髪は、耳が隠れるほどの長さで。
白く長い指で前髪を軽くかきあげながら、吉澤が階段を降りてくる。
メンバーと笑顔で目線を交わしながら。
ツアータイトルのレインボーにあわせて、虹の七色から2色を組み合わせた衣装を
メンバーは着ている。橙、黄、赤、緑、青、紫、藍色。飛び交うスペクトル。
- 19 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:23
-
「リーダー吉澤さんの復帰と同時に全員卒業が決定、と急展開の
モーニング娘。のみなさん、きょうは新曲、10人そろってのバージョン、テレビ初披露です!」
「よっすぃ、もう、足、だいじょうぶなの?」とタモリ。
「はい。ご心配かけました」
「触ってもいい?」
「はぁ?」
「ウソウソ、あそこで、つんくが怖い顔して見てるし」
カメラがつんくを抜く。笑っているつんく。
- 20 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:23
- 「それでー、卒業?全員?」
「はいっ」
「どーすんの、これから?」
「どーするんでしょうねぇ、フットサルでどっか雇ってくれないっすかねぇ」
「ねぇって、言われてもねぇ、、、、卒業したくない、落第したいっていう人、いないの?」
「はいっ」
「あぁ、、、、あなたね、、、誰だっけ?」
「七期メンバー、久住小春です」
「入ったばっかりなんだよね?」
「はいっ」
「いや、もう、1年ぐらい経つし」と藤本。
「あらら、先輩、怒ってるよ」
「怒ってないですよお」と怒る藤本。
「あれ?もう時間?じゃあ、みんな、怒りながら、スタンバイお願いします」
- 21 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:25
- 「モーニング娘。のみなさんは明日から一週間、ツアーに向けて合宿に入られるそうです。
では、現メンバーでのラストシングル『心ひらけヴァ!ビックリ箱』、どうぞ!」
麻琴がセンター。
橙のジャケットに黄のショートパンツ。黒い短髪。
イントロ。歌。
心ひらけば!
ケヴァケヴァケヴァケヴァケヴァ!
びっくりするぜいえいえいえい!
ケヴァケヴァケヴァケヴァケヴァ!
全員集合ゴーゴーゴー!
羽ばたけば、フォーエヴァー!
・・・・・・・・
・・・・・
・・
- 22 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:26
- 翌日、午前9時。
UFGビル。
チャーターされた大型バスにモーニング娘。が乗り込んでいる。
行く先は、河口湖。
関係のある老舗レコード会社所有の、宿泊施設付きスタジオへと向かう。
眠たそうなメンバー。
通路の両側に2つずつ座席がある大型観光バスに10人がゆったりと座っている。
いつでも足を伸ばして横になれるように、と吉澤はいちばん後ろのシートを一列、あてがわれる。
「もう、だいじょうぶですよ」
Mステでは以前と変わらぬ動きを見せ、周囲を安心させた吉澤。
「まぁ、念のためな」とマネージャー。
- 23 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:27
- 動き出す大型バス。
麻琴は運転手側ではないサイドの、いちばん前の座席に座る。窓に寄りかかる。
一列後ろに藤本。窓枠に肘をついて外を見る。
「富士山の近く?」
「テニスコートとか、あるらしいよ」
「バーベキューとか、できるって」
そんな会話も長くは続かない。
一日、一日、近づく、卒業、、、、、。
しかも、一週間で、ほとんど1から、ライブを仕上げることを思うと、はしゃぐ気になれない。
早々に眠りに向かうメンバー。
バスは中央高速を西へと走る。
まだ茶色い山肌が、びゅんびゅんと後ろへ飛び去る。
- 24 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:28
-
藤本が上半身を起こして、前の座席をのぞきこんだ。
「寝てる?」
麻琴が顔を上げて、首を振る。
藤本は、スッと立ち上がって、麻琴の隣に移動。
「ねぇ、なんでこの頃、よっちゃんさんとしゃべんないの?」
- 25 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:29
- 「あ、、、、、、え、、、と、、、」
「わかった。緊張してるんだよね、初センターだから。それで『よっちゃんさん断ち』して
気合い入れてるんだ。あー、わかったわかった、それでなんかキリッとしてるんだ、
まこっちゃん最近」
「、、、、、」
「なるほどねー、でもさぁ、もっとリラックスしていこーよ、ね?無理しないでさっ」
麻琴の肩をポンッとたたく。励ましたつもりになって、自分の席に戻る藤本。
藤本は、「卒業」について特に感慨はなかった。何が起こっても驚かない、
いつもそう思っていたから。だから、3月1日以降、自分以外のメンバーが微妙に
テンパッているのが、もどかしく、つまらなく、感じた。
もっと楽しくやろーよ。そう言いたかった。
吉澤は、最後部の座席で身体を伸ばして横になり、バスの天井を見ている―――。
- 26 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:30
-
ジャリジャリジャリ、、、。
駐車スペースに敷かれた小石を踏みしめてバスが停まった。
湖畔のスタジオに到着。富士山の裾野に位置する湖。
高度があるぶん、東京よりも気温が低く、肌寒い。道路にはまだ雪が残っていた。
4階建ての白いコンクリート、小さなホテル風の建物にスタッフあわせて20名以上が宿泊する。
娘。たちにはそれぞれシングルルームが与えられた。
湖に面した個室。富士山は建物の反対側。メンバーの部屋からは見えなかった。
- 27 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:31
-
各自の部屋の確認後、食堂に集合、スケジュールが壁に貼られる。
最終日の通しリハと10人バージョンPV撮影まで7日間、びっしり。
食堂は、富士山側に面していた。窓から大きく見える富士山。
うわぁー、と久住は心のなかで思う。
こんなに近くで、初めて見る、富士山、と。
おっきいっていうのは知ってたけどさぁ。だって、窓より大きいんだよ、すごいよね?
久住は先輩たちを見渡す。窓を見ている者はいなかった。
- 28 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:32
-
娘。たちには余裕がなかった。昼食、すぐにリハーサル開始。無口になるメンバー。
2日目、3日目、4日目、、、ライブのカタチは出来てくる。
フォーメーションの確認、曲のつながり。身体は、動く。
しかし、メンバーの気持ちは躍動しているとは言えなかった。
卒業への戸惑い。まだ納得しきれていない者がほとんど。
不安と焦燥。
- 29 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:33
-
小さな事件が、5日目の昼食に起こる。
「夜さぁ、ちょっと静かにしてくれない?発声練習、気になって、寝れない」
食堂で、皿をつつきながら亀井が田中に言った。
静かな食堂に亀井の声は思いのほか響いた。
「けど、れいな、あれ毎日やっとるけん、やらんと、一日が終わらん。」
「だってうるさいんだもん、、、れいなはいいじゃん、歌、うまいんだし、もう、、、」
亀井が悲しそうな声になる。田中が反発する。
「うまいとかうまくないとか関係ないっちゃろ?」
「関係なくないよ、、、、」
亀井が涙ぐむ。たまらず吉澤が立ち上がる。
「どうした?」
- 30 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:35
-
「吉澤さんは関係ないです。リーダーぶらないでくださいっ」
立ちすくむ吉澤。泣き出す亀井。
「ご、、、ごめんなさい吉澤さん、絵里、そんな、、つもりじゃ、、、」
静止する10人。今、誰かが動けば、空気が砕ける―――――その瞬間。
ガラッ、、
食堂の扉が開き、マネージャーが飛び込んでくる。
- 31 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:36
-
「みんな聞いてくれ。CMの話が決まった」
食堂の温度を感じることもなく、慌てた様子でマネージャーが続ける。
「急なんだが、合宿中に撮影したいということで、今、CM制作会社さんがこちらに
向かっている。今日の午後、リハは中止して、CM撮りに変更」
ざわめき。
「どーゆーCMなんですかぁ?」
藤本が質問する。意識して、のんきな声で。
「あぁ、、えぇと、、、」
マネージャーが手元の紙に目をやる。
「リクルートの『とらばーゆ』だ。4月のリニューアル新創刊の広告キャンペーン」
- 32 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:37
- 「なんかぁ、急すぎませんかぁ?」
鋭いツッコミ。マネージャーは一瞬ためらうが、話すことにした。
「実は、別のタレントでCMは完成していたんだが、そのタレントが不祥事を起こして、
流せなくなったらしい。それで、急遽、、、、ま、そんな事情は気にしなくていいじゃないか、
ひとまず、部屋で待機しててくれ」
バタバタと到着するCM撮影クルー。ワゴン車、機材車、、、。
メンバーは、自分の部屋の窓から到着するクルマを眺めている。
宙ぶらりんな気持ちのまま。
- 33 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:38
- 空いている部屋をいくつか使って、撮影準備がすすむ。
「、、、、ということで、基本的にはドキュメンタリータッチで仕上げたいので、
自然な感じで会話していただければ。ふたり一組で。台本や決まったコンテはありません。
小型カメラを目立たないところにセットして撮影します」
広告会社スタッフが娘。たちに企画を説明している。
「この企画のコンセプトは『あなたらしく働こう!』です。仕事の転機にあるモーニング娘。
さんたちの生の言葉が、同じように、仕事に、人生に、迷いながら一生懸命な『とらばーゆ』読者の
共感を呼ぶと考えています」
生真面目に企画書を読み上げていた広告会社の男が、ふと顔をあげる。
- 34 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:40
- 「正直なところ、急に撮影しなければならないのは、事情があってのことです。
ですけれども、私たちは、完成していたCMよりも、モーニング娘。さんの企画のほうが、
いいと思っています。こういう企画でCMを作れることになったのは、
むしろ幸運だったとよろこんでいるんです。
絶対、話題になる、強いCMになると確信しています。
ご協力、よろしくお願いします」
- 35 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:41
-
ふたり一組で、しゃべる。
要約すれば、それだけのこと。
部屋にはカメラがいくつかセットされている。お茶やお菓子も自由。
特筆すべき点があるとすれば、時間が長いこと。
今が午後2時30分。
夕食をはさんで、夜9時まで、ずっと会話していてほしい、と。
カメラを意識しない会話がどれだけ撮れるか、その一点にこのCMの成否がかかっているから、と。
- 36 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:41
- 「組合せは、こちらで決めさせていだだきました。高橋さんと紺野さん、藤本さんと久住さん、
新垣さんと道重さん、亀井さんと田中さん、吉澤さんと小川さん、です。
では、早速、部屋の方に移動お願いします」
息をのむ、数人。歩き始める、10人。
それぞれの組合せが、それぞれの部屋へ。
扉が閉まる。
- 37 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:42
- 「れいな、さっき、ごめんね」
「いいっちゃよ。れいなも、気づかんで、悪かったし」
亀井は、まず、謝った。昼食でのやりとりがずっとひっかかっていた。
カメラのことは気にならないわけではなかったが、謝りたい気持ちが先だった。
8畳の和室。メンバーの部屋はシングルタイプの洋室だったが、
収録に使用する部屋は違った。山側にあり、窓から富士山が見える。
こげ茶色の座卓に、木の座椅子、お茶のセット。和風旅館のよう。
ざっと見渡しても、カメラがどこにあるのか、わからない。
窓の方に歩きながら田中が言う。
「れいなは、絵里がうらやましい」
「え?なんで?ぜんっぜん絵里なんか、、、」
・・・・・・
- 38 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:43
- 「新垣さん、ちょっと、待ってもらえますか?」
「いいよ」
部屋に入ると道重は、まず、カメラを探した。
テレビの下の、ビデオデッキの横に小さいの、発見。
窓枠の真ん中へんにも、小さいの。
「あとは、どこですかぁぁぁ?」
「シゲさん、なにやってんの?」
「だってぇ、どういうふうに映ってるのかわからないってイヤじゃないですか?
さゆみ、メイクとかまだちゃんとやってないから、ちょっと向こうでやってきます」
「シゲさん、元気だね、、、、」
新垣のつぶやきにも気づかず、道重は物陰でメイク中。
新垣は思う。
あたしがモーニング娘。でいられるのは、あと何日?
・・・・・・・・・
- 39 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:44
-
「愛ちゃん、紅いもタルト、食べる?」
「そんなの持ってきてるんや、紺ちゃん」
「非常食ってことで」
「あたしこれからストレッチするから、モノは食べん」
「愛ちゃん、、、、」
「しゃべるの、その後な」
・・・・・・・・
- 40 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:45
-
「お茶、いれますね、藤本さん」
「あ?ありがと」
「部屋の温度、だいじょぶですか、藤本さん」
「ん、いいんじゃない?、、、、ていうかぁ、なんでそんなに気ぃ遣うの?」
ニコニコする久住。
「もっとさぁ、図々しくすればいいのに、久住ちゃん」
「図々しく、ですか、、、」
ニコニコする久住。
- 41 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:46
- 「ハロモニとかでもさぁ、遠慮しまくってない?クイズとかゲームとか、譲るじゃん、勝ちを」
「譲ってるわけじゃないですよ」
ニコニコする久住。
「そぉおかなぁ?美貴の考えすぎ?欲しいものは欲しい、食べたいものは食べたいって
ガンガンいけばいいのに、一歩、ひいてるとこない?」
「ひいてますか、、?」
ニコニコする久住。
「ちょっとイライラする時ある。なんで?なんで遠慮すんの?久住ちゃんはさぁ、
すんごい数の人から、選ばれたんだよ?わかってる?・・・・」
・・・・・・・・・・
- 42 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:46
-
「、、、、、、、」
「、、、、、、、」
吉澤と麻琴が座卓をはさんで、向かい合う。
吉澤は足を伸ばしている。麻琴は正座から足を崩した格好。
吉澤が口を開く。少しの勇気が要った。
「何、話そうか」
「そうですよね、、、困りますよね、、、」
麻琴が答える。
カメラ、回ってるわけだし、、、とふたりは思う。
- 43 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:47
- 3月1日以降、ふたりが話したのは、事務的な連絡だけ。
「でも、話せて、うれしいよ、あたしは」
吉澤が顔をあげて麻琴を見る。麻琴も吉澤を見る。
「そう、、、ですね、、、、、吉澤さん、足、治って、おめでとうございます」
「え?」
「それ、言ってなかったと思うんです」
「あ、、ありがと」
「、、、、、、、」
「麻琴、初センター、おめでとう」
「え?」
「それ、言ってなかったから」
「ありがとうございます」
「、、、、、、」
「、、、、、、」
「卒業、びっくりしたね」
- 44 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:48
-
無難と言えば無難なボールを吉澤は投げた。
黙りこくっていることは、CMスタッフの人たちのことを思うと、できなかった。
「さっき亀井ちゃんの言ったこと、吉澤さんはどう思ってるんですか?」
麻琴は吉澤のボールを無視した。
「さっきって、、、、」
「吉澤さんがリーダーぶってるって」
- 45 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:50
- 「麻琴もそう思う?あたしが、、、リーダーぶってるって」
「ぶってるとは思いませんけど、、でも、吉澤さんは、役割とかそういうのに、
がんばっちゃう人だなって思います。キャプテンとかリーダーとか、
そういう期待に応えてて、、、、それはすごい大変なことだし、えらいけど、、、
あたし、すごい考えてたんですよ、ずっと、、、なんで、吉澤さんは」
なんで吉澤さんはあたしを、好きでもないあたしを欲しがったのかなって。
麻琴はその言葉を飲み込む。
カメラ――――。
「なんで、吉澤さんは、、、、、、、」
麻琴が言わない、言えない言葉を感じ取る吉澤。唇を噛む。
吉澤が口を開く。
「あたしも、考えてた、ずっと」
麻琴のこと。麻琴を傷つけた自分のこと。
- 46 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:51
- その言葉を咽喉の奥でつぶやいて吉澤は麻琴を見る。伝わっているだろうか。
願わくば、もう一度、麻琴と「仲間」になりたい―――――。
沈黙。
「吉澤さんの、やりたいことって何ですか?好きなことっていうか」
「え、、、、、」
「案外、それがないんじゃないかなって、吉澤さん。だから、、、、だから、
期待とか役割とかにがんばっちゃうっていうか、、、」
不安になって、誰かにそばにいてほしくなっちゃうんじゃないかな。
- 47 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:52
-
麻琴の声が少しずつ、やわらかくなっていく。
病院での出来事から2ヶ月。腹も立ったし、怒りも感じた。それらがゼロになったわけじゃない。
悲しみは、もちろん、ある。けれど、吉澤が、好きでもない自分を欲しがったのには、
何か理由があるはずで、そのことを考えると、吉澤のことが心配なような、
だいじょうぶ?と声をかけたいような、藤本が聞いたら、バカじゃん、と
間違いなくツッコむだろう気持ちになるのだった。
- 48 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:53
-
「麻琴には、あるの?」
「ある、、、と思います。ダンス、すごい好きです」
確かに、と吉澤は思う。
麻琴におけるダンス、高橋における舞台、のようなものが自分にはない。
歌?フットサル?好きだが、しかし、、、、、。
あたしは、、、何が好きなんだ?
・・・・・・・・・・・・・・・・
- 49 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:54
- 翌日、合宿6日目。
朝。
食堂で朝食をとる娘。たち。
緩慢な動作、少ない口数。
前日のCM撮影は、娘。たちを疲れさせた。
話をすることで浮かびあがった不安、未解決な課題、疑問。
すっきりした顔でペースを保っているのは、藤本と高橋だけだった。
CM撮影が入ったぶん、6日目のリハはハードになった。実質的な、最終日。
明日、7日めは通しリハとPV撮影をして早めに帰京、そしてその翌日は、もう4月1日、ツアー初日だ。
- 50 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:55
-
午前中、メドレー部分のリハーサルで、久住がミスを連発。
皆、自分のことで精一杯でフォローができない。なんともいえない空気が広がる。
昼食。
食堂。吉澤は久住を目で探す。
窓に向かって座っているピンクのジャージ。
白いテーブル。白い壁。
白い雪をかぶった富士山。
- 51 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:56
-
「富士山、登ったことある?」
吉澤が尋ねた。久住が振り向く。ニコニコ、、、、、しようとして、、、できない久住。
「ないです。こんなに近くで見るのも初めてです。吉澤さんは?」
「小学生の頃、登ったことある、家族と」
「うらやましいです、行ってみたいなぁ」
そう言うと久住は静かに窓の外に目を戻す。
不意に。
吉澤の心にある衝動が湧き起こる。
- 52 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:57
-
本日は以上です。
- 53 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:58
-
- 54 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/13(日) 00:58
-
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/13(日) 02:08
- すごい面白い
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/13(日) 02:46
- もしかしたらこのストーリーが現実で、自分が目にしているものは空想なんじゃないかと思ってしまうぐらいのリアルさに完璧引き込まれてます
すごいという感想しか浮かばないです
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/13(日) 22:49
- こんなに続きが読みたいと思う話は久しぶりです
- 58 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/14(月) 00:01
- ほんとに、すごくリアルで・・・・・・なんていうか、ゾっとしました。
今もドキドキしながら打っています。
>>56さんの感想に、すごく共感しました。自分もそう思います。
続きが楽しみです。
- 59 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:21
- 午後中かかって、吉澤は考えた。
リハーサルに身体と神経のほとんどを集中させながら、頭のごく一部で、その実現可能性について。
――――ひとりでは、無理だ。
- 60 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:22
-
夕食。
食事を済ませて部屋に向かう麻琴に、吉澤が声をかける。
「麻琴」
驚いて、麻琴が振り向く。
「なんですか?」
「頼みが、あるんだ」
・・・・・・
・・・・
・・
- 61 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:23
- 午前3時45分。
吉澤の部屋の目覚まし時計がデジタル音を響かせる。
ピピピピピピピ、、、、。
起き上がり、目をこすると、吉澤は部屋の灯りを点ける。
ケータイを手に取る。麻琴にかける。切る。
着替えて、部屋を出る。
まず、道重の部屋へ。そして、田中、亀井、最後に久住。
少なくとも、ひとり5分は、かかるだろう。
ドアをノックし、起きなければ電話し、プランを話し、できるだけ厚着をして、と指示し、
じゃあ4時30分に駐車場に集合ね、見つからないように、と言うまでに。
- 62 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:24
- 麻琴には、五期と藤本を説得してくれるように頼んだ。
ひとりで9人に説明している時間はなかった。
駐車場。
4時30分。
まだ暗い、星あかりだけの駐車スペースに、10人の人影。
「美貴、こーゆーの大好きー、ねぇ、みんなびっくりするよね、朝」
「ミキティ声大きすぎです」
「どのくらい寒いんですか?」
「いいんですかねぇ、でも、いいですよねぇ」
「空気が気持ちいいですね、キリッとしてて」
「ねむいけん」
「すぐ目、覚めるって」
「すごく楽しみです」
「、、、、、麻琴は、富士山に登って、初日の出を見に行くって言うたけど、本当ですか?吉澤さん」
高橋が言った。
- 63 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:25
- 「初じゃなくて、ただの日の出だけど。初日の出はお正月」
小さく広がる笑いを制するように高橋が言う。
「あたしは行きません。この気温、、、咽喉によくないと思うし、第一、意味がわからん。」
ざわめき。
「咽喉?、、、考えてなかった、、、あたし、どうしようかな、、、、」
ざわめき。
「吉澤さん、本当に行く気ですか?」
「行く、、、つもりだけど、、みんなが行きたくないんなら、、、、」
ざわめき。メンバーの表情から楽しい気持ちが消えてゆく。
- 64 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:26
- 手の届くところに。
行かない理由はたくさんある、行く理由よりも。
「ほんなら、あたし、もう部屋戻るし」
高橋が玄関に向かってスタスタと歩き始める。
それを見て、何人かの身体の軸がブレる。
ざわめきと沈黙。うつむく数人。吉澤が言う。
「みんな、楽しくないんだったら、、、だったら、やめ、、、」
「あたしは、、、行きたいです」
そう言ったのは、久住。
全員の視線が久住に集まる。緊張で声が震える久住。
自己主張。久住が起こした、初めての摩擦。
「行ってみたいです」
動かしたい、今、ここにいるすべての人を。自分の気持ちで。自分の熱で。
- 65 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:28
- シン、となる9人。沈黙を破ったのは藤本。
「いいこと言うねー、久住ちゃん。そうそう、欲しいものは欲しいって言わないとね。
ちなみにぃ、美貴もぉ、行きたい」
ジャリジャリジャリ、、、。
2つの白く丸いライトがサッと9人を照らし出す。いっせいに同じ方向に伸びて動く影。
ワゴンタイプのタクシーが来た。
「ご予約のヨシザワさまは、、、、?」
「はい」と吉澤。
久住の背中を押しながら、藤本が言う。
「楽しいじゃん。小春、乗ろ」
- 66 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:30
- ――――藤本さんが小春って呼んでくれた、、、。
9人がタクシーに乗る。
「五合目まで」
吉澤が言う。クルマで行けるのは五合目まで、そこから先は徒歩。
「五合目って、、、、雪、まだ残ってるよ、何十センチも」
「え、、、そうなんですか」
「ここらへんだって、まだ残ってるでしょ、雪。五合目は、山の上だよ、相当だよ」
「そうなんですか、、、じゃあ、五合目から上の方って、、、」
「あぶないよぉ、雪山やる人なら行くけどね、、、、富士登山の山開きは7月。
あんたたち、そんなことも知ら、、、、 あぁっ!?モーニング娘。じゃないの?」
「、、はい、、、」
「そりゃあ、行くのは行けるけどね、五合目までは、道路あるから。
でも、今の時期は、みんなそこまで。五合目で、みんな戻るよ。そこから先は、あぶなくて。
それ、わかってるのかなぁ、、、誰か、大人の人はいないの?」
- 67 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:31
- 「え、、、と、、、、、」
「ホントに連れて行っていいのかどうか、聞いてからじゃないと、ちょっと、、、、、」
「、、、、、、、」
困る吉澤。
困る運転手。
「運転手さんっ」
突然話しかけたのは道重。
「ダメです、振り向かないでください。映ってますよ、今」
「な、なんだい?」
前を向いたまま返事をする運転手。
「カメラですよ、テレビカメラ。これは罰ゲームなんです。そうじゃなきゃ、
こんな暗い時間から、そんなとこ行くわけないじゃないですか」
- 68 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:32
-
「え?そうなの?これ、今、どっかから撮ってるの?」
「きょろきょろしちゃダメです!テレビ的には、とりあえず五号目まで、
スーッと行って欲しいんです。そうじゃないと、おじさんじゃなくて、
別のタクシーで撮り直すことになりますね、たぶん」
「なんだぁ、それならそうと言ってくれりゃあ」
「ホントは言っちゃいけないんですよ、さゆみ、つい、、、、
ごめんなさぁい、スタッフさぁん、適当にカットして使ってくださぁぁぁぁい」
見えないカメラに向かって両手でハサミの動きをする道重。
- 69 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:33
- 走り出すワゴンタクシー。
クスクス笑いをこらえきれない9人。
「シゲさん、天才」と新垣。
道重が小声で答える。
「さゆみだって、みんなの役に立ちたい時は、ありますよ、新垣さん」
そう言うと、道重は笑顔になった。
- 70 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:34
- 有料道路を走るワゴンタクシー。
カーブを曲がるごとに、高度が上がるごとに、路肩の雪が厚くなる。
すれ違うクルマは皆無。闇のなか、樹木のシルエットが浮かび上がる。
40分後、富士山五合目に到着。
クルマが約300台停められる駐車スペースは一応、除雪されていたが、
隣接するみやげ物店や食堂の周辺は30センチ以上雪が残っていた。
戻って行くワゴンタクシー。
駐車場の照明は本数も少なく、足元がやっと見えるほどの明るさしかない。
夜明け前。
誰もいない。平らなコンクリート。
9人の人影。白い息。
見上げれば黒い山。
- 71 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:35
- 「うわぁーーー」
「来ましたねぇー」
「やっぱ、寒い」
「富士山だぁ、富士山だぁ」
走ってみたり、ぴょんぴょん跳ねてみるメンバー。
吉澤は、メンバーの歓声を聞きながら目を閉じる。
冷たい空気を深呼吸する。
頂上まで行くつもりは、もちろん、なかった。
五合目から六合目ぐらいまで登って、日の出を見ることができれば。
見せたかった。メンバーに。なんか、楽しいことが、したかった。
みんなが笑顔になるような。
- 72 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:36
- 「どうしますか?」
麻琴が吉澤に尋ねる。
9人が登山口へと歩く。
木製のゲートの向こうに道が延びている。
クルマが通れそうな幅の、平らな土の道。
「広いのは最初だけなんだよね、、、すぐ、狭くて、フツーの山道になるんだ、確か」
運転手が言っていたほど、雪は残っていない。
土の部分も見えているが。固く凍った雪があちこちに面をなす。
「雪、よけて歩いたとしても、、、うーん、、、あぶないか、やっぱり」
街灯などない、山。スニーカーでは。
「ちょっとだけでも、行ってみたいです」
久住が言った。
- 73 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:40
- 「この門の向こう側に行ったら、富士山に登ったってことですよね?ちょっとでも、登ったって」
「、、、、、、、」
「登りたいです、富士山」
「、、、、、、、」
「あぶなくなったら、すぐ戻りますから」
「みんなは?」
うなずくメンバー。
「よっちゃんさんは、やめたほうがいいんじゃない?足、心配だからさ」
「うん、、、、、、」
吉澤は考える。雪のことがなくても、足のことがなくても、吉澤は残るつもりだった。
きっとすぐにマネージャーが来る。
タクシーでしか動けるわけがないのだから、行き先はすぐにバレる。
五合目駐車場で待つつもりだった。謝るのは、自分の役割だ。
- 74 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:41
- ゲートの先へ、歩き始める8人。
「麻琴」
吉澤は最後尾を歩く麻琴を呼び止める。近づく。
「麻琴、頼りにしてる。絶対、無理させないで。みんなを、ケガさせないで、連れて帰ってきて」
思わず麻琴の腕をつかむ吉澤。
あ、、、と吉澤は思う。
麻琴の水色のダウンジャケット。その腕の部分にめりこむ自分の指を見つめる。
視線をあげて、麻琴の目を見る。
――――甘えじゃなくて。頼りにしてる。麻琴。
- 75 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:42
- 麻琴は、触れられて一瞬、身体が固くなるのを感じる。でも、振りほどくことはしない。
目と目が合う。そして、吉澤はゆっくりと手を離す。
「麻琴、、、、、ありがとう、、、、ごめん」
麻琴は困ったように微笑む。
吉澤が言っているのは、きょうのことだけではないと感じる。
「こんな時に謝るの、やっぱり、吉澤さんはずるいです」
「、、、、、」
「だいじょうぶです、ちゃんと、戻ってきます」
「、、、、、」
「頼りにしてくれて、うれしかったですよ」
軽くそう言うと、麻琴は歩き出した。
- 76 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:43
- 駐車場に戻る吉澤。
入り口近くのブロックに座って、マネージャーが来るのを待つ。
息が白い。
空を見上げる。
星がきれいだな、と思う。
有料道路を、一台のクルマが走ってくる。
来た、と吉澤は思う。立ち上がる。
降りたった人影が吉澤に近づく。
「ひとりでおっても、リハにならへんが」
高橋―――――。
- 77 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:44
- 戻っていくタクシーを見ながら、高橋が寒そうに身を縮める。
「うぅ、、。こんなとこ、よくいられますね、吉澤さん」
「寒いけど、気持ちいいし、あったかいよ」
「あったかい?わけわからん。あー。明るくなってきますよ、ほら、吉澤さん」
東の黒が緩み始めている。夜明けだ。
「うん、朝だねぇ。太陽―――っ!」
「それ、おもしろい。太陽―――――っ!!」
東の空に向かって。
太陽、太陽、と叫び続けるふたり。
まだ、その姿は見えない。山のむこう側から、姿より先に、光を届ける星。
- 78 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:45
- 上気した顔の8人が戻ってくるのと、マネージャーが到着するのと、ほぼ同時だった。
ハイエースに囚人のように詰め込まれて、10人は富士山を降りる。
反省のそぶりを、見せては、いるが、、、 囚人たちの心は楽しさに満ちていた。
こぼれる笑みを抑えきれない
「吉澤さん、日の出、迫力ありましたよぉ、湖の左、三分の一のところから、ジミジミジミーッと出てきて、
そうだなぁ、だいたい吉澤さんの頭の3.5倍ぐらいの大きさでしたね、それが半分出たところで・・・・・・」
吉澤の隣に座った亀井が、笑顔で手を振り回しながら、少し意味不明の、
亀井なりに詳しい説明を続ける。
- 79 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:46
- そう、笑顔が見たかったんだ、亀井の。小春の。みんなの。
あたしが好きなのは、笑顔。目の前の人の笑顔。
仲間でも、ライブの時のお客さんでも、いい。
数千人じゃなくてもいい。ひとりでも、ふたりでも、いい。人数なんて関係ない。
歌でもダンスでもいい。コントでもフットサルでも、
あたしの顔見るだけで笑顔になるのなら、それでもいい。
目の前の人を笑顔にする。
そのために、できることを全力でやる自分でありたい。
それがあたしのしたいこと。好きなことなんだ。
今、すげーわかった。わかった気がする。
- 80 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:47
- 吉澤はクルマの窓から外を見る。
「あれ?なに?」
雲の一部分がへんな感じに色づいている。
「虹?」
「雨降ったっけ?」
「短いし、、、まっすぐですよ」
「オーロラ?」
「北極かよ」
「なんだろう、色、たくさん、メラメラしてる」
雲という画用紙に、太い筆でサッと漢字の「一」を書いたらインクが7色でした、
というような不思議なもの。
- 81 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:48
- 雨が降らなくても見える虹があることを、娘。たちは知らなかった。
ある種の雲の水分に太陽の光が反射して、まれに現れるまっすぐな虹、水平環。
橙、黄、赤、緑、青、紫、藍色。飛び交うスペクトル――――。
雲がわずかに動いてカタチを変えると、光の帯も揺れた。
濃く、薄く、呼吸するように、羽ばたくように。
- 82 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:49
- 「きれいだね」
「不思議」
「うわー」
「見えなくなっちゃうよー」
席に座っている者はひとりもいない。ハイエースの後ろの窓に、顔を押し付ける10人。
しゃがんで、立って、折り重なって、伸び上がって、仲間の肩に手を置いて。
空を見上げる笑顔が並ぶ。
なだらかな下り坂、クルマはゆっくりとカーブを曲がる。
路肩の白い雪がキラリと輝く。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・
- 83 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:50
- 翌日。
4月1日。
『モーニング娘。コンサートツアー2006春 飛んでけ七色レインボー!〜卒業あおげばとーとSHOW〜』
モーニング娘。全員卒業ツアーが始まった。
トレーディング卒業証書クリアファイル、第2ボタンピンバッヂ・ガシャポン、寄せ書きポスター、
うちわとセットの「あおげばトートバッグ」など急遽作られたグッズが並ぶ。
- 84 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:51
- 合宿最終日に収録した『心ひらけヴァ!ビックリ箱』の10人ダンスバージョンも
追って発売になった。
湖を背景に撮影したlakeside versionと富士山バックに撮ったmountaintop
version の2つが収録されたDVDは娘。たちの明るい表情をよくとらえていて、
評判もよかった。
「とらばーゆ」CMのオンエアが始まると、
「モーニング娘。全員卒業」に改めて世間の注目が集まった。
CMはこんな仕上がりだった。
- 85 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:53
-
『大事なもの@ 亀井・田中篇』
田中「れいなは、絵里がうらやましい」
亀井「え?なんで?ぜんっぜん絵里なんか、、、」
田中「絵里は、明るいキャラで誤解とか、されんっちゃろ?
れいなは怒ってないのに怒ってるとか言われる」
亀井「れいなは、歌うまいし、そんなの気にしなくてもいいのに」
田中「気になるっちゃ、、、れいな、ほんとは、アホでビビリなんよ」
ナレーター「大事なのは、キャラ?能力?あなたらしく働こう!とらばーゆ!」
- 86 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:54
-
『大事なものA 新垣・道重篇』
道重「お待たせしましたー、新垣さん。さゆみ、今日も、かわいくなりました!」
新垣「ねぇ、、、シゲさん、、、自分とモーニング娘。と、どっちが好き?」
道重「え、、、?」
新垣「あたしはさぁ、、、モーニング娘。が好きなんだよね」
道重「比べられないですよぉ、、、道重さゆみがいるぅ、モーニング娘。が、好きです」
新垣「、、、、、、」
ナレーター「大事なのは、組織?個人?あなたらしく働こう!とらばーゆ!」
- 87 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:55
-
『大事なものB 高橋・紺野篇』
紺野「愛ちゃんには、才能があるから」
高橋「なんでっ?」
紺野「あたしなんかいくら努力しても、歌えないものは歌えないし」
高橋「歌えへんって決めつけてるやろー?ちょっと歌ってみよ、いっしょに、今」
紺野「い、、いま?」
高橋「だってな、あたし、しゃべるのとか、いくら努力しても苦手やから、今とか、
なるっべくっ、しゃべりたないもん」
ナレーター「大事なのは、才能?努力?あなたらしく働こう!とらばーゆ!」
- 88 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:57
-
『大事なものC 藤本・久住篇』
藤本「久住ちゃんはさぁ、すんごい数の人から、選ばれたんだよ?
わかってる?美貴と違ってさぁ。美貴、事務所でお茶汲みとかしてたんだよ」
久住「やってみたいです、お茶汲み」
藤本「え?」
久住「仕事のこととか、勉強になりそうですよね」
藤本「うん、、それは、、、そうだったんだけどね」
ナレーター「大事なのは、経験?抜擢?あなたらしく働こう!とらばーゆ!」
- 89 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 00:59
-
『大事なものD 吉澤・小川篇』
小川「吉澤さんの、やりたいことって何ですか?好きなことっていうか」
吉澤「え、、、、、」
小川「案外、それがないんじゃないかなって、吉澤さん。だから、、、、
だから、期待とか役割とかにがんばっちゃうっていうか、、、」
吉澤「麻琴には、あるの?」
小川「ある、、、と思います。ダンス、すごい好きです」
吉澤「、、、、、、、、」
ナレーター「大事なのは、期待?役割?好きなこと?あなたらしく働こう!とらばーゆ!」
- 90 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 01:00
- モーニング娘。の楽屋。
「また流れてますよ、吉澤さん」
勝ち誇ったように、麻琴が言う。
「うるせー、麻琴。あーもームカつく」
吉澤がわざと乱暴に答える。
確かに、あのCMのあたしはカッコ悪い。
でも、あの時は、そうだったんだから仕方ない。好きなこと、わかんなくてさ。
麻琴は、わかっててさ。
でも、あの後、あたしも、わかったんだよ、ちょっとはさ。
みんなの笑顔を見てたらさ。
- 91 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 01:00
- きょうは、5月21日。
横浜アリーナ。
全員卒業ツアーの最終日。
「テレビ、消そう。ミーティング、始めるよ」
立ち上がって吉澤が言う。
- 92 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 01:01
-
開場。
開演。
ステージの上に、光が集まる。
「解散」ではなく現メンバーの「卒業」。
ゲストは招かず、現メンバーだけで卒業ライブをつくりあげてきた。
これまでの卒業メンバーがステージに上がることはなかった。
ただ、千秋楽は例外だった。
- 93 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 01:02
- アンコールの前に、卒業メンバーから、現メンバーに花束が贈られる。
中澤から、吉澤へ。
安倍から、高橋へ。
飯田から、紺野へ。
辻から、麻琴へ。
矢口から、新垣へ。
保田から、藤本へ。
加護から、亀井へ。
石川から、道重へ。
後藤から、田中へ。
そして、
つんくから、久住へ。
- 94 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 01:04
- ダブルアンコール最後の曲は、もう一度『心ひらけヴァ!ビックリ箱』。
ライブが終わる。
ステージから誰もいなくなる。
モーニング娘。全員、卒業―――――――。
ステージで、中澤や安倍や飯田や辻や矢口や保田や加護や石川や後藤を見たとき、
吉澤は少し泣いてしまった。
しかし、吉澤が涙を見せたのはその時だけだった。
感謝の気持ちでいっぱいだった。
- 95 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 01:04
-
本日は、以上です。
- 96 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 01:05
-
明日、完結予定です。
- 97 名前:chapter11:春 投稿日:2005/11/14(月) 01:07
- >>55 名無飼育さん
すごいうれしい一言、ありがとうです。最後まで楽しんでいただければ。
>>56 名無飼育さん
作者冥利に尽きます。ありがとうございます。ぜひ最後まで見届けてみてください。
>>57 名無飼育さん
そんなふうに言ってもらって、ハッとしました。ありがとうござました。
>>58 名無飼育さん
レスありがとうございます。伝わっているということに驚きと感謝の気持ちです。
- 98 名前:まゆっぽ 投稿日:2005/11/14(月) 01:09
- リアルタイムで読みました。なんか現実になりそうで怖いです(笑
明日、完結とのことなので、楽しみにしてますo(^-^)o
- 99 名前:56 投稿日:2005/11/14(月) 01:27
- 読み終えた時のこの気持ちを上手く表現するボキャブラリーを持ち合わせていないようです、自分は。
ただ本当にすごいとしか浮かばないのが恥ずかしいですが、こんな言葉でもどうしても言っておきたくてまた書き込んでしまいました。
明日の完結、心の準備をして待ってます。
- 100 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/14(月) 01:47
- ホントに面白い。この一言に尽きます。
- 101 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/14(月) 02:18
- コレは現実!?って思うほど引き込まれます
CMのとこ好きです
明日の更新待ってます!
- 102 名前:名無し読者。 投稿日:2005/11/14(月) 20:06
- 感想書くとぜったいネタばれしちゃいそうなんでコメントはひかえますが
みんなの感情とか気持ちがダイレクトに伝わってきて凄く共感しました
完結楽しみにしてます
- 103 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:07
- ・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
- 104 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:08
- 「よっすぃ、次から、運転替わってくれる?」
「マジ?まだ3軒目だよ。あとこれから10軒以上あるっつーのに」
「だって、ここの赤、おいしいんだもん。全種類飲みたい」
「こーゆーのが好きなんだ、まいちん。だったら、最初のとこの09年も、近かったじゃん?」
「最初のとことか言われても、もう、わかんないし」
「最初のとこで3番目にテイスティングしたやつ。ピノなんだけど、そんなに重くなくてさ、
気軽な感じの。プラム系の香りでさ、めちゃめちゃなめらかで、色もルビーで」
「んー、、、、わかんない、どれもおいしかった」
- 105 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:09
- 「、、、、、わかったよ、次、あたし運転するよ」
「道、簡単だからさ。広いし、人より動物のが多いぐらいだし」
「はいはい。じゃ、地図貸して、まいちん。そっちじゃなくて、ワイナリーマップの方。
順番考えるから。暗くなるまでに全部回りたいし、、、、タスマニアは、ここみたいな、
ちっこいワイナリーが多いから、楽しみ。家族でこじんまり作ってる感じで」
「テイスティング・カウンターのおねーさんも、のんびりしてるっぽくていいよね。
そだ、よっすぃ、テイスティングのちゃんとしたやり方、もいっかい教えて?
まず、グラスをぐるぐる回すんだった?」
- 106 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:10
- 「ぐるぐるっつーか、、、グラスを揺らして、ワインを空気に触れさせる感じ。それから、
沈殿物がないかとか色を見るために、グラスを目の高さより少し上に持ち上げて、
光にかざす。傾けて見る。次に、グラスに鼻をつっこむようにして、香りを味わう。
そしたら、まず、ちょこっとだけ口に含んで、舌の上にワインを乗せて、鼻の方に香りを、、、、」
「ねぇ、ゴクゴク飲むのは、まだ?」
「まいちん、、、、最初っからゴクゴク飲んでいいよ、、、、無理しないでさ、、、」
「だよねー。てか、ここのワイナリー、センスいいよね、カウンターとか、壁のディスプレイとか」
「あー、やっぱそういうとこ見るんだ、、、、、それで、さぁ」
「なに?」
- 107 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:10
- 「いつもの、聞いてくれる?」
「ああ、、、」
「英語は、やっぱり、まいちんのが上手だから。留学経験者にはかなわないっす」
「オージーの田舎英語と、あたしのクィーンズイングリッシュ、微妙にかみ合わないのよね」
「3ヶ月の留学で、そこまで言うんだ。いいから、酔っ払う前に、聞いて」
「うん、、、、じゃ、あのおねーさんに聞いてみるよ、、、、、、、、」
「、、、、、、、、なんて?なんて言ってる?」
「え、、、、あ、、、、ちょっと待って、よっすぃ、、、、、聞き間違いかも、、、、、」
- 108 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:11
- 「なんか、知ってるって言ってるっぽくない?」
「ちょっと待って、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」
「、、、、、まいちん、、、、、、、あたしにもそのぐらいの英語なら、、、、、聞き取れるよ、、、」
「うん、、、、」
「何年前か、聞いて」
「数年前だって」
「だから、それが何年前かって」
- 109 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:12
- 「あ、ごめん、、、、、、、、、、、、、、、」
「4年か5年前って言ってるよね、、、、、じゃ、すぐじゃん、あれから」
「うん、、、、、、、、、来て、すぐ、1年ぐらいで、いなくなったって」
「どこ行ったんだろ?」
「知らないって。どっかまた別の国に行くって言ってたって」
「それで、、、、ワインは、、、?」
- 110 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:13
- 「ワイン作りは、彼女には合わなかったみたいって。続けるつもりはないって言ってたって」
「、、、、、そっか、、、、、、」
「、、、、、、、」
「、、、、、、、」
「よっすぃの考え、当たってたね」
「うん、、、」
「ワインじゃないかって」
- 111 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:13
- 「オーストラリアでもタスマニアとは思わなかった、、、、、。
オーストラリアって、ワインで有名な地区、多いから、そっちから探しちゃったもん、、、
まいちんにも何回かつきあってもらったよね、、、」
「けっこう、行ったよね」
「うん、、、、、、」
「、、、、、、、、」
「ここだったんだ、、、、、」
「ここにいたんだね、、、」
「やめちゃったんだ、、、、ワイン」
「よっすぃは?どーするつもり?」
- 112 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:14
- 「どうって、、、、?」
「勉強。やめる?」
「いや、、、やめないけどさ」
「そっか」
「それとこれとは、、、、、」
- 113 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:14
- 「なら、いいけどさ」
「、、、、、、、、」
「、、、、、、、、」
「まいちん、、、、、」
「なに?」
「どこいっちゃったのかな、、、、、、、アヤカ」
- 114 名前:intermezzo:タスマニア 投稿日:2005/11/15(火) 00:15
- ・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
- 115 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:17
-
(chapter12:十周年)
吉澤ひとみ様
ご無沙汰しています。小春です。
お元気ですか?
私は元気です。
卒業10周年同窓会のご案内ありがとうございました。
研究の都合がつかず、残念ながら私は参加できませんが、
きっとすごくすごく盛り上がるだろうなぁと思っています。
私は今、アリゾナ大学の大学院修士課程の学生です。
- 116 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:18
- 15歳で芸能界を引退してアメリカに行った頃までは吉澤さんとも
よくメールしていましたが、その後、連絡をとっていなくてすみません。
大学では地球物理学を専攻しています。専門は、地球外文明論です。
簡単に言えば、「宇宙人」の研究です。ヒトに言うと、みんな笑います。
そういえば、私が、なぜ、地球物理学を勉強しようと思ったのか、その理由、
吉澤さんに言ってなかったですよね。聞いてもらえますか?
きっかけは、あの、最後のツアー直前の、合宿です。
- 117 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:18
- 富士山に行ったときに見た、美しい星空。そして、日の出。
それが忘れられなくて、この専攻を選びました。
あの日は、本当に感動しました。今でもよく覚えています。
吉澤さんが五合目に残ったあと、私たちは注意深く、15分ぐらい、歩きました。
藤本さんと私が先頭で、藤本さんが、ここ、歩きやすいよ、とか、右、あぶない、とか
みんなに指示を出してゆっくり歩きました。
私は、最初、暗いのが怖かったのですが、ふと見上げると星がたくさん輝いていて、
それを見たら、わかったんです。
暗いんじゃない。これは、宇宙の色なんだって。
そう思ったら、落ち着くことができました。
- 118 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:19
- スニーカーに雪の冷たさがしみてきた頃、だんだん、空が明るくなってきました。
それまで見えなかった風景が見えてきて、すぐ下に湖があることがわかりました。
湖の向こうから、オレンジ色の光がじんわり広がってきました。
私たちは立ち止まって、声もなく、それを眺めていました。
あの時、私は何もかもうまくできなくて、今から考えると、吉澤さんはじめ、
先輩のみなさんとも今ひとつなじんでいなかったように思います。
そういうことが、胸に押し寄せてきて、泣いてしまいました。
それまで、どんなに練習がきびしくても泣かなかったのに。
- 119 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:20
- そうしたら、小川さんが横に来て、小川さんも泣いていました。
亀井さん、新垣さん、田中さん、、、みんな泣いてました。
藤本さんですら、鼻をすすっていました。寒いだけ、というフリで。
- 120 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:20
- 太陽が昇って、みんな、ホッとして、少し暖かくなって、
藤本さんが「もうちょっと行こうか」と言ったのですが、小川さんが、
もう戻った方がいい、と言って、確かに道もあぶなかったし、戻ることになりました。
帰り道は、みんな笑顔でした。
太陽は、恒星です。
恒星は簡単に言うと熱と光、燃えている星なので生き物は住めません。
私の研究テーマである地球外文明の存在する可能性があるのは、
恒星のまわりをまわっている、地球のような星、惑星です。
- 121 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:21
- 宇宙人のいそうな惑星を探すのが、私の携わっている研究です。
そのために、今、私はハワイに来ています。
ハワイ島のマウナケアという4200メートルの、富士山より高い山の山頂にある、
ジェミニ天文台の電波望遠鏡を使っての共同プロジェクトの末席に、私はいます。
日本の天文台「すばる」もある、あの山です。
私は毎日、山頂までクルマで登っています。すごいですよね、
クルマで富士山より高いところまで行けるんですから。
山は、やっぱり寒いです。
下では水着で歩けるのに、ここではスキーウエアが必要です。
空気も薄いので、すぐフラフラします。
- 122 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:22
- 吉澤さん、「ドレイクの方程式」って知っていますか?
私たちが出会える地球外文明、つまり、宇宙人の数を計算する式。
N=R×fp×ne×fl×fi×fc×L
という式で計算できるんです。すごいでしょ?それぞれの項目の意味を書きますね。
R ……銀河系の中で毎年生まれる恒星の数
fp ……その恒星が惑星系を持つ確率
ne ……その惑星系の中で生命の発生に適した環境をもつ惑星の数
fl ……その惑星で実際に生命が発生する確率
fi ……さらに知的生物まで進化する確率
fc ……そして知的生物が星間通信が行えるような技術文明に至る確率
L ……その文明の寿命
- 123 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:22
- 私は、この項目を読んでいると、だんだん、せつなくなります。
宇宙人の可能性って、どこかの星に酸素や水素があるとかないとかの話になりがち
ですけど、それだけじゃないんです。
よく「同じ時代に生まれてよかった」という言い方ありますが、
それと同じで、文明のタイミングが合わなければ、宇宙人がいても、会えずじまいで、
いないのと同じになってしまうのです。
出会うって、すごいことです。
奇跡です。
- 124 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:23
- モーニング娘。で私はたくさんの人と出会いました。
モーニング娘。は奇跡です。
そして、私は、今も、奇跡を、ミラクルを信じて空を見上げています。
- 125 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:24
- 私がいつか地球外文明と出会えたら、それは、あの日、
私を富士山に連れて行ってくれた吉澤さんのおかげです。感謝しています。
10周年同窓会のことを想像すると、自然と笑顔になります。
みなさんによろしくお伝えください。ではまた!
Koharu,
- 126 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:25
-
{本日は貸切パーティのため臨時休業させていただきます}
プレートがかかっているドアノブ。
里田は、こげ茶色の肉厚な木で出来た扉を押す。
ガランカラン、、、、。
ドアにつけたカウベルが鳴る。
里田はカウベルを見上げる。
くすんだ金色の真鍮素材。
インド製だがヨーロッパのアンティーク風にも見える、ぽってりしたカタチのベル。
――――この店にすごく合ってる。色も音も素敵!選んだの、誰?あ、た、し、だ。
- 127 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:26
- 「よっすぃ、あたし。来たよー」
「まいちん、入って入ってー」
吉澤が奥から返事をする。
赤坂見附から徒歩5分のイタリアンレストラン。
ビルの半地下と1階を白い階段がつなぐこの店は、
機野菜と和の素材を大胆に取り入れたメニューで人気があった。
経営者は吉澤。「名前だけだよ」と本人はへらへらしているが、
料理を修業していた弟が一人前になるタイミングで、吉澤はなんとなく続けていた芸能界から身を引き、
店を持つことにした。
- 128 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:27
- 吉澤自身も店に顔を出しながらワインについて本格的に学び、
3年前にソムリエ資格を取得。料理のおいしさだけでなく、
「よっすぃがワインを選んでくれる店」として予約は常にいっぱいだ。
目の前の人を、笑顔にする仕事。芸能人でなくても、よかった。
おいしいものと、おいしいお酒があると、みんな笑顔になる。
シェフは弟だから、文句とか、こういうの作って、とか、このワインに合う味にして、とか
気軽に言えるし。名前だけだけど、社長だし。
- 129 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:28
- どうやら普通の人より鋭いらしい自分の嗅覚と味覚をいかせるソムリエールという仕事を、
吉澤は案外、気に入っていた。
ワインボトルを手に。
ソムリエ服をビシッとキメて笑顔でテーブルを渡り歩く吉澤の姿は、
しばしば雑誌に取り上げられた。
模様替えが趣味だった里田は、インテリアコーディネーターとして活躍中。
吉澤の店のインテリアも里田の手によるものだった。
吉澤の店が取材されるときに里田もしばしば同席し、
3ヶ月のロンドン留学をちょっとおおげさにアピールしたうえで、
吉澤の店の内装についてアジアンテイストとヨーロッパ感覚の絶妙なミックス、と
自画自賛トークを展開した。
- 130 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:29
- 2016年5月21日。
モーニング娘。全員卒業10周年同窓会の日。
来れるメンバーは、みんな、吉澤の店に集まる予定だ。
既に卒業していたメンバーや、交流のあったハロプロメンバーにも吉澤は声をかけていた。
里田は、何か手伝うことがあれば、と少し早めに来たのだった。
「よっすぃ、でもさぁ、ここ、場所、ほんと、いいよね、便利だし、緑多いし」
「中澤さんのおかげなんだよね」
「あ、そっか。中澤さん、不動産王と結婚したもんね。玉の輿だよね」
「そーそー。きょうも来るって。きっとまた宝石ギラギラのすげードレスで、、、、」
- 131 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:29
- 「ドレス?」
「中澤さんじゃなくて、犬に着せてんの」
「ああ、、、」
「ウチの店、ペット禁止じゃん。そうすると、店の外につないでおいて、中澤さんは、
あの窓際の席に座るんだけど、もー、犬が目立つから、外歩く人みんな立ち止まって大変」
「うわー、すっごい見たい。あとは?先輩系だと誰来る?」
「保田さんは、ブラジルからこのために帰ってくるって。あとやぐっつぁん、安倍さん、カオリン、かな」
- 132 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:30
- 保田はブラジルでボサノヴァ歌手として人気を博していた。
ブラジルは、ボサノヴァの本場。
リオのカーニバル見物に行った時、ナイトクラブで一曲歌ったら、
現地のプロデューサーの目にとまった。日本で言えば「外国人演歌歌手」のようなもので、
珍しさと確かな実力でたちまちスターの仲間入りを果たした。
たまに帰国すると保田は吉澤の店に来て、飲んだ。酒癖は悪かった。
酔ったときの口癖は「人に好かれようと思ってるうちは、コドモなのよ、吉澤」。
- 133 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:31
- 矢口は結婚後、しばらくの休業を経て、主婦系バラエティタレントとして
お茶の間をにぎわせ続けている。最近では夫の浮気発覚という事件もあったが
なんとか乗り越えて、それもネタにする強さを見せていた。
安倍は年に一回、冬にテーマ性の強いアルバムを発表し、全国ツアーを行う、という
安定したペースを保っている。『恋のテレフォンGOAL』をフランス語訳して
シャンソン風にアレンジしたものがリバイバルヒット中だった。
ある番組の企画でオリジナルバージョンを歌ったとき、10年以上経っても
何の違和感もなく笑顔で踊る姿に視聴者だけでなく業界関係者も驚愕した。
さすがなっち、と。
- 134 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:32
- 飯田は、、、、。
ネットで評判の占い師として、名前を隠して活動している。
相談事と、自分の誕生日、そして手相の写真をデジカメで送ると、長文の占い結果が
返送されてくる。そこそこの料金設定だが、よく当たるので、予約は3ヶ月先まで一杯である。
占い好きの女性の間ではカリスマ的人気を誇るが、誰もそれが飯田とは知らない。
しかし、もし、飯田圭織ファンが注意深くホームページを見たなら、
そこに使われているイラストが、紛れもなく飯田の手によるものだと気づいただろう。
- 135 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:33
- 「ごっつぁんが、連絡とれなくてさぁ」
「そーなんだ」
後藤は西海岸をツアー中だった。
モーニング娘。全員卒業の直後、後藤はハロプロを離れ、渡米。
紆余曲折のロック武者修行を経て、ようやく自分の納得できるミュージシャンで
結成したパンクバンド「ippiki−Wolf」が軌道に乗ってきたところだった。
吉澤からのメールは見ていたが、返事を書くヒマがなかった。
メジャーレーベルとの契約が成立するかどうかの瀬戸際で、ライブに集中していた。
- 136 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:34
- 「あと、来れないって連絡あったのは、小春と、ガキさんと、、、、石川」
「ガキさん、すごいよねぇ」
「そうそう、これ」
そう言って吉澤が取り出した雑誌の表紙を一枚めくると、シャネルの広告。
新垣が物憂げな表情で写っている。
卒業から4年後、パリのカメラマンから不意に事務所に連絡があった。
骨休み中、パリで声をかけられた新垣は、写真は断った。
が、連絡先を教えてくれとしつこく言うカメラマンに事務所の電話番号を教えていたのだった。
シャネルが「東洋」をテーマにしたブランドを立ち上げるため、イメージモデルを探している、
是非、オーディションを受けてみるべきだ、と、そのカメラマンは言った。
そこからとんとん拍子に話が進んで、新垣理沙は、今やすっかりシャネルの顔となっていた。
- 137 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:35
- 石川は、とにかく忙しかった。
歌手でもタレントでも女優でもなく、ビジネスで忙しかった。
石川の描いた、ウサギのイラスト――――。
あのイラストが、アジアでウケた。
アニメ映画が爆発的にヒットした結果、今や石川はアジアのディズニーと呼ばれていた。
キャラクタービジネスをマネジメントして世界を飛びまわる日々。
バンコクでの「チャーミーランド」建設準備で今はタイにいるらしい。
石川の口癖は、「あたし、いい奥さんになりたいのにぃぃぃ」である。
- 138 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:36
- 「そういえば、こないだ、ミキティのドラマやってたね」
「『ダメ出し刑事』シリーズ?長いよね、あれ」
藤本は、2時間ドラマの女王としてテレビの世界に君臨していた。
自ら歌う主題歌もヒット。
かつてのメンバーの中で、今、テレビでいちばんよく見かけるのは、藤本だった。
- 139 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:37
- 高橋は舞台女優、ミュージカル女優として高く評価され、オファーが途切れることはなかった。
やや苦労したのが田中。歌手としてソロ活動に入ったが、いまひとつ伸び悩みの時期があった。
しかし、サンディエゴのコアなファンが田中をイメージした「Reina」というオリジナルアニメを発表し、
日米のインディーズシーンで人気となると、そこから逆に田中れいなが注目を集め、
歌のヒットにつながった。今は日本とアメリカの両方で活動している。
- 140 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:38
- 道重は姉がアルバイトしていた旅館の御曹司に見初められ、あっさりと結婚、若女将となった。
着物と洋服は好きなだけ買っていい、というのも魅力だったが、
道重にとっては「さゆみがいちばん」でいられる場所を得たのが大きかった。
モーニング娘。時代、道重としては自分が一番かわいいのに一番人気というわけではないことが、
潜在的なストレスだった。おっとりした外見と裏腹に、従業員をやる気にさせるのがうまく、
口うるさい義母ともうまくやっていた。
- 141 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:38
- 亀井は事務所のすすめで受けてみた『世界ふしぎ発見!』の
ミステリーハンターのオーディションに合格し、史上最年少のミステリーハンターとなった。
独特のリアクションと話術に磨きをかけ、番組終了後は、トラベルジャーナリストとして活動中。
紺野は「癒しと食の融合」を目指して北海道にファームステイを企画するNPO法人を
設立し、公官庁から注目を集めていた。国会議員に立候補するのはまだ先のことである。
- 142 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:39
-
麻琴は、夏先生のもとで修行した後、
「マコトオガワ・ダンス・ラボ」というダンススクールをオープンさせた。
スクールの場所選びで麻琴も中澤の世話になり、
偶然、吉澤の店の3つ隣のビルにいい物件があったのでそこに決めた。
レッスン後に、ダンサーの卵たちをつれて吉澤の店に来ては
「おごりですよね?」と言って吉澤を困らせるのだった。
- 143 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:39
- 「ダブル・ユー、たちは?」
里田が尋ねた。
「来るって。辻は、子ども連れて」
ダブル・ユーは順調に活動を続けていたが、
辻が夜中にタンスの角に足の小指をぶつけ、あまりの痛さに救急車を呼んだときに
出会った当直の外科医と電撃結婚、加護もそれに影響されて、急遽10歳年上の
雑誌記者と結婚を決め、ふたりはいったん引退した。
- 144 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:40
- しかし、加護の勢いだけの結婚は続かず、離婚、その調停を担当した弁護士と恋に
落ちて結婚したが、それも続かず、離婚、若くしてバツ2となった経験をいかしたテレビでの
人生相談が女性視聴者に大好評で、人生相談本を次々に出版し、講演にひっぱりだこになっていた。
- 145 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:41
- 一方、主婦に専念することにした辻は双子の女の子を生んだが、2卵性双生児。
似ていなかった。「双子なのに、双子じゃないみたい」なふたりはスクスクと成長し、
もう7歳だった。
このふたりが、13歳になる直前、つんくが、モーニング娘。第8期オーディションを
おこない、親に内緒で受けた双子が合格し、タイプの違う2トップとして
新しいモーニング娘。を率いて活動することになるのは、まだ誰も知らない。
- 146 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:41
-
ガランカラン、、、、。
カウベルが鳴る。ドアが開く音。
「配達でっすー」
いつものワイン業者の声。
「はーい」
立ち上がり、受け取りに出る吉澤。
伝票をチェック。
- 147 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:42
-
「あれ?これ、頼んでないけど」
「それ、サンプルです。卸のほうから、こちらのお店には1ケース差し上げてくださいと
いうことでした」
店の奥にあるワインセラーに、ワインを運び込んでから、帰ってゆく業者。
そのなかにひとつ、他よりひと回り小さい箱がある。
「なになに?やっぱ人気店は違うねー、開けていい?」
里田が盛り上がる。
「いいよ」
珍しいことではないので、吉澤も気軽に答えた。
- 148 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:43
- 箱を開ける里田。
「あれー?これ、ワインじゃない。瓶がちっさい、、、」
吉澤が覗き込む。
「ん?グラッパだね」
「グラッパ?」
「グラッパって、お酒の種類の名前。ワイン作るときに出る、ぶどうの搾りカスでつくる
イタリアのお酒。ブランデーの仲間なの。ワインじゃなくて。
でも最近、人気あって、ウチでもいくつか揃えてるよ」
「搾りカス?」
「飲んでみる?」
- 149 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:44
- 吉澤と里田が店の奥のテーブルに向かい合って座る。
「お酒ってさー、ワインとか日本酒とかビールみたいに、発酵させてつくるタイプと、
ブランデーとかウイスキーとか焼酎とかグラッパみたいに、蒸留してつくるタイプと、
大きくふたつに分かれるの」
「ふーん、蒸留ってなに?」
「たとえばさぁ、今、ここに鍋に入った泥水があるとするじゃん。
まいちんがすんごくノド渇いてて、水を飲みたいとするじゃん。どーする?」
「んー、、、、我慢して飲む」
- 150 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:45
-
「そーじゃなくて。鍋にフタして沸かしたら、泥水の水分だけ蒸発してフタの内側に
水滴がつくでしょ?それを集めて飲めばいい。つまり、蒸発させるって方法で、
泥水から、水だけ取り出せるわけ。アルコールも同じ。搾りカスを熱して、
搾りカスに滲みこんでるアルコール成分を取り出すことを蒸留っていうの」
「ふーん」
「昔、イタリアの、ワインが買えないぐらい貧しい農民が、ワインの搾りカスからお酒を
作ろうとしたの始まりって言われてる。ヨーロッパではけっこう昔から作られたんだけど、
ほかの地域ではあんまり、作ってなかったりするんだよね」
- 151 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:46
- そう言うと、吉澤はグラッパグラスを2つテーブルに置いた。
ワイングラスよりさらに足長で、足の長さは20センチ以上。
お酒を入れる部分はチューリップの花のカタチ。
しかもチューリップよりひとまわり小さい。細長い足の上にちょこんと乗っている。
「かわいいグラス!」
「グラッパは強いお酒だから、食後に少しだけ、キリッと飲む。
だからグラスもちっさいんだ。アルコール度数、50ぐらいあるよ。
ビールは5度とかだし、ワインは15度ぐらい。グラッパの強さ、わかるでしょ?」
「ふーん」
「もともと、ワインにするようなぶどうだから、丁寧に作るといいお酒になる。
ぶどうの種類とか、熱する温度とか、時間とか、蒸留したあと、樽に入れて香りをつけるとか、
いろいろあって、今や高級品」
- 152 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:46
- 「よっすぃ、くわしー」
「一応ね、、、でもワインじゃないからなぁ」
そう言って吉澤はサンプルのグラッパを一本、手に取る。
透明な液体が透明な瓶に満ちている。
球根の水栽培の容器のような大きさと形。丸みを帯びている。
ボディ中央には濃紺の正方形のラベルが貼られている。
銀色の文字で「armonia」。それがこのグラッパの名前らしかった。
「a」の文字だけ少し目立つように飾りがついている。
armonia、、、、イタリア語、、、確か、、、。
- 153 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:47
-
「よっすぃ、これイタリア語?アーモニアってどういう意味?」
「アルモニアって読むんだ、、、イタリア語で、、、調和って意味、、、、
英語でいえば、、、harmony、、、ハーモニー、、、だよ」
- 154 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:48
- 吉澤は手元のグラッパを見つめる。透明。
いくら見つめても、自分の手のひらが瓶の向こうに透けて見えるだけ。
ハーモニー、、、イニシャル、a、、、、搾りカス、、、ぶどうの皮、、
強い、、お酒、、、、ヨーロッパ以外の地域ではあんまり作らないお酒、、、、、
オーストラリアでは、、、ほとんど作られてないはず、、、。
濃紺のラベル、、、銀色、、、宇宙?
ぶどうの皮の話、してくれた、、、 、、 、、。
- 155 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:50
- 吉澤はグラッパの瓶をテーブルに置いて、目を閉じる。
落ち着け。考えすぎ。
息を吸う。
突然、明るい音楽が鳴り響く。
「ごめん、メール」
里田のケータイだった。
「どーせまた迷惑メール」
そう言いながら、里田はケータイをチェック。
アドレス変えればいいんだけどね、と独り言。
- 156 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:50
-
メールを読む里田。
表情が固まる。
「よっすぃ、これ」
ケータイを差し出す。
- 157 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:51
- まいちゃん、これは今もまいちゃんの
アドレスですか?そうだといいのですが。
アヤカです。
ようやく落ち着いたのでメールします。
って遅すぎだよね。
10年経っちゃったもんね。
私は今、イタリアにいます。
お酒をつくる仕事をしています。
armoniaという名前のお酒ができて、
日本でも売ってもらえるようになりました。
強いお酒です。とても。
私は、強いお酒がつくりたかったのだと
思います。
話したいことはたくさんありますが、
何から話したらいいのかわかりません。
- 158 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:52
- まずは、こちらのアドレスがまいちゃんの
ものかどうか知りたいので返事もらえますか。
それから、よっすぃは元気ですか。
よっすぃのことはネットでときどき調べていて、
お店をやっていることは知っています。
そこに、届けてもらうようにしました。
まいちゃんも一度飲んでみてください。
アヤカ。
- 159 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:53
- はぁ、、、、、と息をつく吉澤。
ダンボールに入った、アヤカのグラッパを見る。
透明な瓶が静かに並んでいる。
沈黙。
くすくすと、笑い始める里田。
「おかしくない?ようやく落ち着いたので、っておかしすぎる、アヤカ」
笑いながら、泣きそうになっていく里田。
- 160 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:54
- 吉澤は黙ってアヤカのグラッパを一本、開ける。
グラッパグラスに注ぐ。グラスの足をそっと持つ。
鼻に近づけて、香りを確かめる。
目を閉じる。
涙が出そうになる。
――――すげー強い酒だ、これ。
- 161 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:55
-
グラスを顔に近づけただけでむせ返るほどのアルコールの揮発感がある。
吉澤は、グラスを目の高さより少し上に持ち上げて、光にかざす。
透明なグラッパグラス。透明な酒を見つめる。
- 162 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:56
-
・・・・・・ワインじゃないんだからそんなことしないで。透明だよ。見ての通り。
・・・・・・わかってる。でも、なんか、見上げてみたくてさ。乾杯みたいに。
乾杯、できなかったから、あの日。
吉澤は無言で酒と会話する。まばたきをする。その横顔。
唇をグラスにつける。ゆっくりと、傾ける。
スプーン一杯にも満たない量の液体が、吉澤の舌の上に乗り、消える。
- 163 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:56
-
熱い。舌と咽喉が焼ける。
吉澤はふっと微笑む。グラスを置く。
――――アヤカ。
- 164 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:57
- グラスを置くと、吉澤は里田を見る。
「まいちん、アドレス、10年、変えなかったよね」
「そうだよ」
「カッコいいよ、まいちん」
「よっすぃ、あたし、だんだんムカついてきた。文面が事務的すぎない?
返事とか、書きたくない感じ。よっすぃ書いて」
「あたしは、、、書けないよ」
「なんで?」
「だって、、、」
- 165 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:58
- 「あたしも書かないし、よっすぃも書かないんなら、もう、いいね。ムカついたし、削除!」
ケータイを操作する里田。
「ちょ、ま、待って」
慌てて里田の手を押さえる吉澤。ニヤリと笑う里田。
「転送した、よっすぃに」
「、、、、、、」
「返事、よろしく」
「あたし、、、アヤカに、また、、、メールとか、していい、、、のかな、、、」
「当たり前じゃん!」
アヤカの代わりに、里田が答えた。
- 166 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:58
-
アヤカの話が聞きたいな、と吉澤は思う。
どんな旅だったのか。
どんな空を見たのか。
どんな人と出会ったのか。
どんな人に助けられたのか。
どんな自分に気づいたのか。
- 167 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 00:59
- 厨房から、いい香りが広がる。
同窓会の準備が整う。
「おなか空いてきちゃった」と里田。
「前菜とかテーブルに並べ始めようか。そろそろ、誰か来るかも」
時計を見上げて吉澤が言う。
- 168 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 01:01
- ガランカラン、、、、、。
ドアが開く音。人の気配。
「誰かな?」
「誰だろ?」
笑顔で顔を見合わせる吉澤と里田。
「はーい、どうぞー」
吉澤より先に里田が言って、駆け出す。
入り口であがる歓声を聞きながら。
吉澤ひとみは、ゆっくりと立ち上がった。
―――――――――了―――――――――
- 169 名前:chapter12:十周年 投稿日:2005/11/15(火) 01:01
-
読んでくださった方、特に、レス下さった皆さん、ありがとうございました!
昨日のレスも含めて、返礼書き込みは後日、改めて。
本日は以上です。では。
- 170 名前:名無し飼育だYO 投稿日:2005/11/15(火) 01:12
- 完結お疲れ様でした!
リアルタイムで読ませていただきました
うまく言葉にできないですが、衝撃の大きな作品でした
終わり方も自分的にすごく満足がいくようになっていて嬉しかったです
ありがとうございました
- 171 名前:オレンヂ 投稿日:2005/11/15(火) 01:28
- 完結お疲れ様でした。
早く読みたいような、もったいないから読みたくないような思いで最終話をよませていただきました。
最初からずっと追いかけて読ませていただいていましたが、
あまりの素晴らしさに完結するまでレスができませんでした。
本当に、この小説で起こっていることが現実なんじゃないかと思うくらい
とてもリアルで、ありえそうな話だなぁと思いました。
全てを、一つずつ言葉で説明してしまわなくてもわかる、
行間を楽しめるとても素晴らしい小説でした。
この作品に出逢えて本当によかったです。ありがとうございました。
- 172 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/15(火) 01:41
- 脱稿お疲れ様でした。
結末であって結末でないと言いますか
今後のよっちゃんを想像して楽しむ余韻をいただいた気がします。
うまく表現できない自分がもどかしいです
とにかくひと言、素敵な作品ありがとうございました。
- 173 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/15(火) 10:13
- >>98 まゆっぽさん
その、もしかして、の感じを楽しんでいただけたらよかったです。レスありがとうございました。
>>56 名無飼育さん
56さんのレスを読むと自分もドキドキする感じがして、テンションあげめでいけました。感謝してまっす!
>>100 名無飼育さん
いやもう、ありがたい感想、ありがとうございました。
>>101 名無飼育さん
自分も、そーゆーCM、見たいなぁと思っていて。同じですねー。レスありがとうございます。
- 174 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/15(火) 10:14
-
>>102 名無読者。さん。
なんとか完結できて、ほっとしています。節目節目でのレス、感謝してまっす。
>>170 名無飼育だYOさん
終わり方はむずかしくて、、、。なんとなく、希望のある感じにしたかったのですが、
いや、むずかしいですね。
自分的には、あのへんとか、あのへんが気に入っています。
(って、これじゃわかんないっすよねすみません)。
レス、本当にありがとうございました。
- 175 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/15(火) 10:16
- >>171 オレンヂさん
ふと見えてしまったパラレルワールド、みたいな気分で書いてました。
レスありがとうございます。どれだけ、ムダな行をそぎ落とせるか、は
意識していたところなので、感じてもらえてうれしかったです。ありがとうございました。
>>172 名無飼育さん
レスありがとうございます。
エロあり夢あり、リアルで意外、みたいにしたかったのです。
余韻のなかにそこらへんの残り香があるといいなぁ。レスありがとうございました。
- 176 名前:名無し読者。 投稿日:2005/11/15(火) 14:34
- まずは完結お疲れ様でした
これだけ次の更新まで待てなくて何度も読み返した話は初めてといっていいくらい
心惹かれました
あと個人的感想なんですが娘。同士のカップリングではめったにない吉澤さんと彼女の
濃厚な絡みは自分の大好きな推しメンとカップリングだったので読んでて凄くドギドキでした
こんな素晴らしい作品に出会えて幸せです ありがとうございました。
- 177 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/11/15(火) 22:13
- 完結おめでとうございます。
素晴らしい世界をありがとうございました。
この作品を読み終えて思ったこと。
前よりもずっとずっとモーニング娘。が好きになりました。
- 178 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/15(火) 22:40
- 完結お疲れ様でした。
毎回楽しく読ませていただきました。
すごく面白かったです。
- 179 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/15(火) 23:00
- 完結お疲れ様でした。
リアル以上のリアルでした。
作者さまが本当に娘。を大事にしてらっしゃる気持が伝わってきました。
心に残る作品になります。
本当にありがとうございました。
- 180 名前:56 投稿日:2005/11/19(土) 02:18
- 実は更新直後に読ませていただいてたのですが、なんだかいつも以上に感想が言葉にならず遅れてしまって申し訳ないです。
正直に言えば結末は別の形を想像していたりしました。それこそドラマや小説のような展開を。
けれど、良い意味でそれを裏切られたと言うか…。最後までこのお話は本当にリアルで、そのことがとても優しい気持ちにさせてくれました。
よくわからない感想になってしまってすいません。要約するととても面白く素敵なお話でした、ということですw
最後に。お疲れさまでした、そしてありがとうございました。
- 181 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/19(土) 04:51
- >>176 名無読者。さん
こちらこそありがとうございます。「彼女」との絡みは、書いていてもドキドキでした。レス、励まされました。
>>177 名無飼育さん
ありがとうございます。身に余るお言葉をいただいて、背筋のびました。読んでくださって感謝です。
>>178 名無飼育さん
感想ありがとうございます。いっしょに面白がってもらえて、よかったです。
>>179 名無飼育さん
リアル以上のリアル、、、ありがとうございます。あと、大事に思ってるということが伝わって、ホッとしました。
>>56さん
伴走、ほんとにありがとうございました。単純な好奇心なんですが、56さんの想定してた展開って
どんな感じなんでしょう?ネタバレ感想スレとかに、軽くメモっぽく、、、なんてダメもとで思ってみたり、、、、。
- 182 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/23(水) 01:04
- 今、一気に読みました。面白かったです。
- 183 名前:baka 投稿日:2005/11/29(火) 19:22
- 泣きました。
とても感動しました。
ありがとうございました。
- 184 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:33
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 185 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/21(水) 23:42
- >>182 名無飼育さん
一気読み、ありがとうございました。
>>183 名無飼育さん
読んでくださって感謝です。こちらこそ、感想、ありがとうございました。
>>184
ご苦労様です。拝見させていただきます。
- 186 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/25(水) 22:06
- 飼育大賞に投票してくださった方、ありがとうございました。
自分でも読み返してみて、あー、とか改めて思って、しみじみしています。
とりいそぎ御礼まで。作者でした。
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