うれし三千里
- 1 名前:パム 投稿日:2005/11/14(月) 02:46
- 森で書いているパムです。
ちょっと別物を書きたいのでここでやらせてもらいます。
吉絡みです。
- 2 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:51
-
◇◆◇家出女と出戻り女◇◆◇
- 3 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:52
- 早かったな離婚。
いきなり言われてあっという間に決まって残ったのはたくさんのお金だけ。
そういえば結婚するのも早かったな、だいたいせっかちやねんあいつ。
もう今じゃ新しい恋人と外国へ行ってもうた。
ふ〜、まあええ、過ぎたことや、終わったことや
気持ち切り替えていこ。
「あっ、ここ開いてますよね?」
物思いにふけていると突然声を掛けられて顔を見上げた。
18,9くらいだろうか、でかい荷物を背負った少し背の高い女性がうちに声を掛けてきた。
開いてますよ、どうせ隣に座る人なんていませんよ。
心の中で悪態ついてるうちに、彼女はうちの返事をまたずに荷物を棚におき隣に座った。
「よいしょっと、ふぅ〜間にあったぁ〜」
ドサッと座るとリフライニング思いっきり倒し伸びをしている。
うざい奴が隣にきたな
と、思ったらそのまま寝てしまった。
ああ、よかった。
こいつはどこまで行くんやろうか。
うちは眠たくもないのでずっと景色を眺めていた。
新横浜に着いたころに隣の奴は起きて、大きく伸びをすると立ちあがった。
もう降りるんかい、横浜までなら新幹線使わんでもええやろ。
棚にあげた荷物を降ろそうとしてるのかと思えば、中を開けて何かごそごそと探しているようだ。
あれ?降りんのか。
だったら先に出しとけって。
「お〜ひゃっこい、ひゃっこい」
出してきたのは、冷凍みかん。
ベタやベタすぎる、なんやこいつ旅行気分満載やな。
- 4 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:53
- 「おー冷た〜い」
彼女は取り出したみかんを頬にあてて、冷たい、冷たいと連呼してる。
うっさいなぁ、そりゃそんなんしてたら冷たいやろ。
鬱陶しくて少し睨んでいると、彼女はチラっとこちらを振り向き目が合ってしまった。
思わず目をそむけて窓の外を眺めていると、首筋に何か冷たいものがあたった。
「うわっ!なんや!」
びっくりして思わず大声を出して振り向き隣に座る彼女を睨んだ。
彼女のほうは悪びれた風も見せずにニコニコしながらみかんをうちの目の前に突き出した。
「食べます?」
は?何言ってるんだコイツ?
ひょっとしてさっき睨んでたのをみかんをもの欲しそうに見てたのと勘違いしたんか?
「いいえ、結構です!」
先ほどのような悪ふざけを二度とさせないようにちょっときつめに言ってやった。
「えーおいしいのに」
あれ?効かんのか、おかしいな。てか、あんたまだ食べてないやん。
「おー冷た〜ひぃ」
うっさいなぁ、もう席替えようかな。
「どちらまで行きますか?」
うっさいのぉ、関係ないやん。
「私決めてないんですよね」
は?決めてないってじゃあどこまで行くつもりや。
「だから、お姉さんと同じところに行こうかなって思いまして」
じゃあ、さっさと降ろすか。
「静岡」
「へ?」
ほんまは京都やけどね
「じゃあもうすぐですね」
「そうですね」
「あちゃー狙い失敗したな」
は?と首をかしげるうちに見せた切符には京都までの切符。
うわっ!あぶねぇ
「静岡は近すぎるなぁ、せっかくだけど、やっぱ京都にしますね」
なんでやねん、なんでやねん、うちのバカ!名古屋くらいにしとけばよかった。
- 5 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:53
- 「京都っていったらなんですかね」
「さあ」
「八橋って美味しいですか?」
「さあ」
「金閣寺ってホントに金なんですか?」
「さあ」
「銀閣寺は銀じゃないんですよね」
「さあ」
「う〜んっと・・・」
そんだけか、京都のイメージそんだけか。
「まあ、いいか、どうせ寺に興味ないし」
う〜ん、こいつどうしよ。
「お姉さん、みかん食べます?てか、食べてください」
いらんって、勝手にこっちに置くなって。
「さすがにこれ一人で全部食べれませんからね、遠慮しないで食べてください」
「はあ、じゃあ遠慮なく」
とほほ
「でも、あれっすね」
はい、なんでしょうか。
「私どうしたらいいんでしょうか?」
知るか!降りろ!今すぐ降りろや!!
「あっ!!富士山だ!富士山!ねぇねぇ見て見て富士山だよ!」
もう!富士山なんて珍しくないやん。
「写真、写真」
えっ、ちょ、うざいなぁもう、なんやうちどかないかんのか。
「あっ!お姉さん入って入って」
なんでうちが富士山と一緒に写らなあかんねん。
「う〜ん、お姉さん笑って!」
笑えるか!
「あーいっちゃう!富士山行っちゃう!!」
動いてるのはこっちやからね、富士山行ってもうたらえらいことやから。
「う〜んなんとか撮れたけど、富士山写ってないや」
それじゃあ、なんとも撮れてないやん。
「まあ、お姉さんが撮れたからいいか」
は?
- 6 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:54
- 「はあ!?」
「え!?」
「何?うち撮ってどうすんの」
「いやいや!別に変なことに使わないですよ!安心してください」
安心できるか、それに変なことってなんや。
「とにかく、それ、消してください」
「えー、なんでぇ〜」
「なんでって、富士山写ってないんでしょ」
「はい」
「じゃあ、意味ないでしょ。私の写真あっても意味ないでしょ」
「そんなことないっすよ」
「なんでですか?」
「えーっと、ほ、ほら!旅の思い出」
「とにかく消して!!」
「はい・・・あ〜あ」
何があ〜あやねん、おかしな奴やな。
「あっ!静岡着きましたね」
やべっ、どうしよ。
「あれ?降りないんですか?」
まあええか無視しよ。
「えっ?えっ?静岡ですよ!お姉さん、SHI・ZU・O・KA!」
うるさい、うるさい。
「え、あぁ、ごめんなさい、私がどかないからですね。すみません」
あと、もう少しで出発するな、辛抱辛抱。
「ええ?どうしました?出ちゃいますよ」
とはいえ、出発してからどうしよ。
「ええ??ちょっとぉー!!駅員さーん!!待ってくださーい!!このお姉さん降ります!」
え!?うわっ!何言い出すんや、こいつ。
「ちょっと待ってぇー、、うがっ」
「黙れや!うちはここで降りない!」
「へ?あれ?だって」
「嘘や!とにかく黙れや、話し掛けるな。ええか?」
「はひぃ」
ふ〜焦ったぁ。
- 7 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:55
- 「お姉さん嘘はダメですよ」
せやから、話掛けるなって。
「いやぁ〜恥かいちった」
なんや、うちの所為とでも言いたげやな。
「まあいいですよ、お姉さんと一緒にいられるなら」
うわっ!ヤバイ!こいつヤバイ!!
「ところでお姉さん悩みあります?」
は?なんで急に?そして、何故お前に悩みを言わなあかんねん。
「ないですか、じゃあ、吉澤の悩み聞いてください」
なんで?なんでうちが聞くの?
「あのですね、私、家出したんですよ」
ああ、だから行き先決めてなかったんか。
「で、ですね。行き先は決まったんですけど、泊まるところが決まってなくてですね」
帰れや!今すぐ帰れや!
「お姉さんのうちに泊めていただけたらなぁ〜と思いまして」
「それ悩みやなくてお願いやん」
「あっ!そっか、じゃあ、私のお願い聞いてください」
「いやです!」
「お金なら出しますよ。あんまり持ってないですけど」
「だったらホテルにでも一泊して、お家に帰りなさい」
「いやぁ〜そしたら単なる旅行じゃないですか」
「それでええやん、家出なんてなんの意味があるんや?」
「えっ?意味ですか?」
「そうや、親と喧嘩したんか、だったら帰って謝りぃや」
「いや別に親とは仲いいですよ」
「じゃあ何か嫌なことでもあったんか、逃げても何の解決にもならんで」
「毎日ハッピーですよ」
「じゃあなんで家出した?」
「いや、なんとなく」
「だったら旅行でもええやん!」
「でも、家出のほうが、かっけぇーですよ」
「かっけぇー?」
「うん、家出かっけぇー」
「どこが格好いいねん、みっともない」
- 8 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:55
- あれ?黙っちゃった。なんやうち悪いこと言ったか?
そんなことないよな、家出なんて格好悪いよな。
あれれ?さっきまでの元気はどうした?
「う〜ん」
あっ、喋った。
「う〜ん、みっともないか」
なんや?
「じゃあ、家出やめて旅行にします」
は?
「ならいいでしょ、泊めてください」
「あかんわ!アホ!!」
「ひゃ!なんでですか?」
「なんでって、こっちが聞きたいわ。なんで人んちに泊まろうとする」
「だって、お姉さん美人だもん」
あら、いやだ。この子いい子だ。って、いかん、いかん。騙されるな。
「なんやナンパしてんのか?」
「えへっ」
えへって、マジか?
「まあ、さすがにナンパではないですけどね」
違うんかい。
「なんていうか、お姉さん寂しそうだったから」
え?
「だから、吉澤が慰めてあげなきゃと思って」
なんで?
「んで、後つけていったら新幹線に乗るんでビックリしちゃいました」
は?
- 9 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:55
- 「はあー!?」
「うわっ!なんですか!大きな声出さないで下さいよ。周りの人に迷惑じゃないですか」
「お前が一番迷惑だ」
「マジっすか?」
「マジっす」
「あちゃー」
「いや、あちゃーやなしに、吉澤さんだっけか」
「なんで名前知ってるんですかー!!」
「ええ!?自分で言ったやん」
「あれ?そうだっけ」
「うん。で、うちは大丈夫やから、誰かに慰められるような寂しいことはないから帰りなさい」
「じゃあ、吉澤慰めてください」
「帰れや!!」
「えー」
もう、なんやねん。何がしたいんや。
「まあ、でも、せっかくだから京都まで行きますよ」
もう、勝手にしろ。
「あとどれくらいですかね」
「さあ」
「もう名古屋は過ぎましたっけ?」
「さあ」
「あっ!うなぎパイ買わなきゃ」
「さあ」
「夜のお菓子ですよ」
「さあ」
「これ食べて夜頑張りましょうよ」
「さあ」
ん?なんて言った?
「新幹線の中でも買えますよね、うなぎパイ」
「さ、さあ」
「ホテルはどこがいいですかね」
「・・・」
「やっぱ夜景が綺麗なとこがいいですね」
「・・・」
「あっ、でも京都だから旅館のほうがいいですかね」
「・・・」
「でも、ベットのほうがいいですよね」
「・・・」
「あっ来た!すみません、うなぎパイ凄い奴ください」
なんやコイツうちをどうするつもりや。
てか、この会話明らかにあれやな、あれをする気やな。
コイツ女やろ、まさか、あれか、うわっ!どうしよ。
- 10 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:56
- 「お姉さんも食べますよね」
いらん!いらん!てか、お前食うな!!
「おっ、美味いねぇ。あっ!!ちょ、何するんですか!」
全部食ってやる!コイツに食わせたらエライことになる!
「なんだ、そんなに好きなんですか。よかった、もう一個買っておいて」
えっ!?マジで・・・
「美味しいですね。うなぎパイ。夜が楽しみだ」
「いや、あのね吉澤さん」
「はい?まだ食べます?」
「いや、もういらん。うなぎパイは夜のお菓子っていうけど、そういう意味じゃなくて夜に食べるお菓子って意味やから」
「あっ!そうなんですか。あまり持続性はないんですね」
何の?
「じゃあ後で買っておきますね」
買わんでええよ。
「喉渇きましたね、何か飲みます?買ってきますよ」
「ビール」
「おおっ!大人〜、じゃあ買ってきますね」
あっ、しまった。思わず言ってもうた。
「はい、どうぞ」
「はい、どうも。金は払わんよ」
「いいですよ。おごりですよ。てか、図々しいですね」
「お前がな」
「ほな、遠慮なく頂きます」
う〜ん、誰が買うて来てもビールはうまいなぁ
- 11 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:56
- あれ?飲まんのか?
ん?なんや、また、黙ってもうた。おかしな奴やな。
「なんで男と女がいるでしょうかね」
急やなぁ〜
なんでいるんやろうな、面倒が増えるばかりなのに。
「どうしてでしょうか?」
「知らんわそんなもん。当り前のことにいちいち疑問持つなや」
「そうですかね」
「そうや。なんや、答えがあるとでも思ってるのか?」
「ないんですか?」
「ないよ」
「そうですか?例えば種の保存のためとか」
「じゃあ、それが答えでええよ」
「なんで投げ遣りなんですか?」
「どうでもええことやから」
「そうですかね」
「そうや、どうでもええねん。男がいようがいなかろうが」
「そうなんですか。ひょっとして、お姉さん振られました?」
「なんでそうなる」
「だって、男の存在がどうでもいいみたいだから」
「そうやな、どうでもええな」
「そうですか、じゃあ女は?」
「女いなくなったらうちもいなくってしまう」
「そうですね」
「そうなのか?」
「そうじゃないんですか?」
「わからん」
「酔っ払ってますね」
「そうでもない」
「そうですか」
なんやこの会話?
- 12 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:56
- 「私、今日彼女と別れてきました」
「さっき毎日ハッピー言ってたやん」
「ええ、幸せになるために」
「そっか」
「あれ?」
「なんや」
「不思議じゃないですか?」
「ん?」
「私、女ですよ」
「そうやったんか」
「うそーん、男だと思ってました?」
「いや」
「もう。ですから、女の私が彼女と別れたんですよ」
「うん、で?」
「あー、もういいや、で、別れたのにハッピーなんですよ」
「そら相手がよっぽど酷い奴やったんやな」
「そんなことないですよ。悪く言わないで下さいよ」
「そら済まんね」
「えっと。まあ、そんなとこです」
「で、家出したのか?」
「う〜ん、そうなのかな?」
「違うんか」
「うん、ていうかホントは家出じゃないんですよ」
「なんや、嘘やったんか」
「まあでも、結局家出ですけどね」
「もう、どうでもええは」
「で、ですね、駅をぶらぶらしてたらお姉さん見て、追いかけてきたんです」
「なんや、うちに惚れたのか」
「そうなんですかね?」
「知らんわ」
「まあでも、言っておくけどうちはそんなんじゃないから」
「はい、わかってます」
「わかってるの?」
「ええ、一応」
「ほう」
結局何が言いたかったのかわからないまま話が終わってしまった。
女同士の恋愛か、どんな風なんやろ。
友達ではないんやろ。
女を求めているんか?それとも女の中にある男の部分を求めているんか?
エッチもするんか?どんなんやろうな。
こいつは自分が男だったらよかったとか思ってるのだろうか。
- 13 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:57
- 隣に座っているこいつの横顔は綺麗で女の私でも見惚れてしまう。
勘違いしてしまうかも知れんな。
しばらく横顔を眺めていたら急にこちらを振り向き目があって、
思わず目を背けてしまった。
うわっ、ヤバっ、勘違いされたかも。
てか、ドキドキしてる。
いや、違うこれはあれや、急に目があったからや。
そう、それだけや。
「名古屋ですね、シャチホコ見えるかな」
目が合ってから少し間を置いて言ってきたことはそんなことで、
うちも顔を上げて外を見ると名古屋についていた。
「見えんよ」
「なんだ」
窓から視線を外すと、こいつは両手を頭の後ろにやりぼんやりと天井を見上げている。
コイツはこの先何をするつもりなのだろうか。
「なあ、京都に着いたらその後どうするつもりや?」
「ん?お姉さんちに泊まります」
「いや、誰も泊めるなんて言ってないで」
「泊めてください」
「いやや、そんなん。なんで泊めなあかんの?」
「泊まるとこがないから」
「帰れや」
「今日は帰りたくない」
「なんやそれ。だったらホテルにでも泊まりぃや」
「お金持ってないです」
「え?さっき持ってるっていったんやん」
「さっきのビールでなくなっちゃいました」
「ビールでって、そんだけしか持ってなかったんか?」
「あっ、それと、うなぎパイ」
「余計なもん買うからいかんやん」
「まあでも、夜は長いですから」
「金ないなら、次の駅で降りて帰り」
「いやだぁー!!」
「わがまま言うな」
- 14 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:57
- 「まあ、京都に着いたら銀行行って下ろせばいんですけどね」
「あるんかい!!」
「はい、意外にお金持ってます」
「そっか、でも、無駄使いはいかんよ」
「お姉さんは・・・」
「中澤、」
「はい?」
「私は中澤です。お姉さん呼ばれるの嫌やから、中澤って呼んで」
「おおっ!!澤澤同士だ!」
「どうでもええやろ」
「で、お姉さんは・・・」
「な・か・ざ・わ!!」
「ああ、そうだ、裕子さんは」
「ちょいまち」
「はい?」
「なんで名前知ってる」
「へ?だってさっき言ったじゃないですか」
「言うとらん、苗字しか言ってない」
「そうでした、えっと、中澤さんは」
「なんで名前を知ってる」
「あれ?ひょっとして当たってました?すごいなぁ〜」
「嘘つくな、あんた誰や」
「吉澤ですぅ〜」
「知ってる。いくつや、何してる?」
「20で大学生ですよ」
「ふ〜ん、他は?」
「他ってなんですか?」
「付き合ってた女は誰や、うちの知ってる奴か?」
「昔の女の話はよしましょうよ」
「いいから言え」
「美貴です」
「ん?」
「知らないですよね」
「苗字も」
「藤本です」
チッ、あいつの妹やん、これは偶然なのか?
てか、美貴ちゃんって、そうやったんか。そっちやったんか。
- 15 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:58
- 「い、いや、でもですね。別に追いかけてきたわけじゃないですよ。いや、結局は追いかけたんですけど、たまたま、駅で見かけたんですよ」
「そんなに荷物持ってて嘘をつくな」
「はい、すみません」
「あんたと会ったことあったけ?」
「ないです」
「そっか、でもよくわかったな」
「いや〜会ってはいないですけどね。見たことがあります」
「あっそ」
「はい」
「じゃあ、なんでうちが今新幹線に乗ってるのかも知ってるのか」
「はい」
「で!?何の用や!!」
「まあ、いいじゃないですか」
「よくない、意味わからん」
「まあ、一人は寂しいってことですよ」
「うちは別に寂しくないで」
「無理しなくていいですよ」
「してないよ」
「そうですか」
「そう」
- 16 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:58
- 寂しいかと聞かれれば確かに寂しい。
でも、寂しいのは隣にあいつがいないからではなく。
離婚して実家に帰る自分の姿がとても寂しい。
トンネルに入ると何もない真っ暗な窓の景色に自分だけが映る姿がとても寂しく感じた。
隣に座るこいつはすっと後ろから窓の映る自分の視線に合わせてきた。
二人映ると寂しくは見えないような気がする。
「こんな話知ってます?」
「知らん」
「いや、まだ何も言ってないです」
「だったら知ってるって聞くな」
「すいません」
窓の視線を外したあいつが消えまたうち一人だけが映る
沈黙が続き寂しさが増してくる気がしたので、反対側を向くとこいつは目を閉じていた。
何の話をしたかったんや?
「話せや!」
「あれ?聞きたいですか?」
「知らん話やったらな」
「う〜ん、まあいいか。あのですね」
「ある30近い女性がですね・・・」
「ん?」
「あっ、えっと、20代の女性がですね」
「なんで言い直した?」
「えっと・・・まあ、結婚しました」
「ほう、そらおめでとさん」
「あの、ちょっと黙って聞いててもらえませんか」
「はいはい」
「で、その旦那さんには妹がいました」
「で、その妹には恋人がいました」
「で、その恋人は彼女のお兄さんの奥さんにひと目惚れしました」
「でも、これは叶わぬ恋だとあきらめました」
「ところが、最近離婚しました」
「理由は旦那の浮気みたいです」
「そして、別れた女性は一人故郷に帰ろうとしています」
「私はチャンスだと思いました」
「でも、私には恋人がいます」
「けれども、このチャンスを逃したくありませんでした」
「だから、正直に美貴に話して別れました」
「そして、あなたを追いかけてきました」
「という話なんですけどね。裕子さんはどう思います?」
- 17 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:58
- 「というかな、その前に最初は匿名で話してたのになんで後半ははっきり名前を出してる?」
「えっ?」
「いや、えっ?やなしに、まあええは、そういうことか、で、何?これは告白なんですか?」
「だ、誰にですか?」
「うちに」
「だ、誰がですか?」
「あんたが」
「ええっ!?」
「違うのか」
「い、いや、違わないというか・・・ええっ!!なんで、わかったんですか?」
「自分が話したことに気付いてないのか」
「ははっ、まいったなぁ〜」
まいったのはこっちや。
あれ?なんや俯いて、顔赤くしたりして、照れてるのか。
あっ!今チラッとこっち見た。
あっ、またや。
なんやねん急に、おかしな奴やな。
あっ、またや。
- 18 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:59
- 「なんやねん!!」
「ええっ!?」
「さっきからチラチラと、何か言いたいことあるんやろ。言ってみい」
「でも、結果がわかってるから」
「そんなん言ってみなわからんかもよ」
「マジで!?」
「いや、そうでもない」
「なんだよ」
「てか、ここまで来ておいてあきらめてどないすんねん」
「う〜ん」
「って、自分で何言ってんだ」
「よし!裕子さん」
「は、はい」
「私と、、私と、け、けっ」
「け?」
「結婚してください!!」
「それは無理やろ」
「うおー振られたぁー!!」
「いや、ちょいまち、ってか、大声を出すな!」
「ううっ、振られたぁ〜」
「いや、結婚は無理やろ」
「ん?」
「ん?って結婚したいんか?」
「はい、幸せな家庭を裕子さんと築きたいです」
「本気か?」
「一応」
「ふ〜ん、浮気しないか?」
「しません!!」
「ほんまか?」
「ほんまです」
「あんたってもてそうな顔してるな」
「心配ですか?」
「いや、別に」
「もう!素直になってくださいよ」
「素直に言っとるちゅうねん」
「とにかくですね、裕子さんを幸せにする自信はありますよ」
「学生のくせにか」
「だったら働きます」
「別にそこまでせんでええよ」
「じゃあどうしましょうか」
「何が?」
「とりあえず京都で一泊して東京に帰りますか」
「なんで一泊する?」
「記念に」
「なんの記念?」
「まあいいや、じゃあ次の駅で降りて東京に戻りますか」
「なんで東京に戻る?」
「学校があるから」
「あっそ」
「はい」
「だったら今すぐ帰り」
「ええ、じゃあ次の駅で降りましょうか」
「あんただけな」
「えっ?・・・裕子さんは?」
「なんでうちが東京に行くの?」
「だって、、」
「OKなんてしてないよ」
- 19 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 02:59
- 「そうでしたね。すみません。勝手に浮かれちゃって」
「ああ」
それから、
うちはずっと故郷に近づいていく外の景色を眺めている。
吉澤さんは目を閉じて寝ているふりをしている。
さきほどまでの騒がしさも嘘にように静まり返って、
私達は他人に戻る。
まあ、最初から他人やったけど。
こいつは美貴ちゃんになんて言ったんやろうか。
美貴ちゃんはこいつに言われてどう思ったのだろうか。
そして、美貴ちゃんはうちのことをどう思っているのだろうか。
外の景色が徐々に街に変わっていく。
東京とは違う街。
こうやって見るとよくあんなごちゃごちゃしたとこに住んでいたなと思う。
人が多すぎるから出会ってしまったんかな。
会ってはいかんかったな、あいつに。
そして、こいつもあの娘に。
- 20 名前:家出女と出戻り女 投稿日:2005/11/14(月) 03:00
- スピードが緩みゆっくりとホームに流れ込む。
吉澤さんは目を開けこちらを向いた。
窓に映った吉澤さんの視線に気づき振り向く。
京都は次の駅。
「着きましたね」
「は?」
「帰りますよ」
「あっそう」
「すみませんでした。でも、楽しかったです」
「そうか、ビールありがとな」
「いえ、じゃあ、気をつけて」
「ああ」
新幹線を降りて、こちらを見ずにうちの横を通り過ぎる背中はとても寂しそうやった。
うちもあんな感じやったんやろうか。
もうすぐ出発する。
新幹線がゆっくりと動き出す。
反対側のホームに吉澤さんが出てくるのを見届けることなく発車した。
結局、手をつけることがなかった冷凍みかんが溶けていた。
- 21 名前:パム 投稿日:2005/11/14(月) 03:01
- 続きます。
- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/14(月) 04:44
- 新スレキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
森とはかなりテイストが違いますね。どっちも(・∀・)イイ!!
がんがってください。
- 23 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/16(水) 16:01
- すごく良いです。続き楽しみに待ってます
- 24 名前:パム 投稿日:2005/11/16(水) 22:01
- >>22
>>23
ありがとうございます。
あんまりレスをお返しすることはないですが、これからも読んで頂けると幸いです。
- 25 名前:白い壁 投稿日:2005/11/16(水) 22:02
- 夜、仕事を終えて家に入ると、ここにはもうあいつはいなかった。
荷物のほとんどは残っているが、必要なものはほとんどなかった。
電気も点けずにベットの上に膝を抱えて座る。
決して広くない部屋だが二人で暮らしていた分今は広く感じる。
この部屋がいつもきれいなのはあいつのおかげ。
テーブルも床も本棚もいつも散らかることなく整理されている。
あいつは私と違って大学生だから夏休みがたくさんあった。
その多い暇な時間を使って部屋の模様替えをすると言い出した。
部屋を真っ白にすると。
- 26 名前:白い壁 投稿日:2005/11/16(水) 22:02
- カーテン、ベット、本棚、テーブルありとあらゆるものを買い換え、塗り替えた。
テレビまでわざわざ買い換えた。
あいつは何故か金をたくさん持ってた。学生のくせに。
このマンションだってそう、あいつのだ。
日に日に変わる部屋の風景にあの頃は毎日帰るのが楽しかった。
今日はどこが白くなっているのだろうかと。
部屋をゆっくりと見渡す。綺麗な白だ。
ひとつひとつの家具の白さに思い出がある。
最初に白くなってたのはテレビだった。びっくりした。
何故そこからなのだと、そして、新しいのを買う必要があったのかと。
理由はわからない。ただ、ニコニコして、いいでしょ、これ。
と、笑っている顔を思い出す。
次に白くなったのは、本棚だった。これは塗り替えた。
別にこれは新しく買ってもよかったのではないだろうか。
あいつは完全に乾く前に本を入れてしまったため、何冊か棚に張り付いてしまった。
私はえらく怒った。でも、あいつはニコニコしながら謝ってた。
次に白くなったのはテーブル。前のものよりちょっと小さいサイズに変わっていた。
別に気に入らないわけでもなかったが、前のものは気に入っていたので少し残念だった。
あいつは気に入ったから買ってきたと言った。
そのときもニコニコしてた。
次に白くなったのはベッド。当然全て白。真っ白。
これまた、前より小さくなってた。
前より近づいて一緒に寝れることに嬉しく思った。
真っ白い中に溶け込むあいつの白い肌はさらに綺麗に見えた。
次に白くなったのは食器。すべて買い換えた。
買い換えた所為か、以前より少なくなっていた。
あいつは、とりあえず必要な分だけを買ってきたと言った。
これから、少しずつ買い足して行くよってニコニコして言ってた。
次に白くなったのは、ソファ。これまた、小さいサイズになっていた。
二人が座るには少し窮屈だった。
何故これにしたの?
- 27 名前:白い壁 投稿日:2005/11/16(水) 22:02
- 一通り部屋を見渡し終えて、ベットから立ち上がる。
壁に掛けられたコルクボードを取り外す。
今までにとった色んな写真が貼られている。
一枚一枚取り外しゴミ箱に捨てる。
最後の一枚を手にしたときに、私は止まった。
私もあいつも写っていない写真。兄の新婚旅行の写真。
壁は私も一緒に塗り替えると言った。
あいつもニコニコしながら一緒にやろうと言った。
明日一緒に塗り替えるはずだった。
- 28 名前:パム 投稿日:2005/11/16(水) 22:03
- 続きます。
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/17(木) 02:22
- 話の内容が面白いのはもちろんですが、
作者さんの文章って調子のいい音楽みたいなリズムがあって素敵だなあと思います。
- 30 名前:オレンジジュース 投稿日:2005/11/18(金) 20:58
- 「とりあえず、おいしいコーヒー」
「はい?」
「あれ?聞こえなかった?おいしいコーヒー頂戴」
「あー、はい」
うちのコーヒーは言われなくても美味しいっつうの!
もう!何だよ、こいつ。
変な客が来た。
もうすぐ夜になって会社帰りのOLさんやら何やら来て忙しくなるというのに。
こいつはカウンターの、ど真ん中を陣取って私を逃がさないようにしている。
「はい、おいしいコーヒーです」
「おっ!自分で言ってる」
帰れ!一気して帰れ!
「いやぁ〜しかし、あれだね。まいったね」
こっちが参ってるよ。
「ところでここどこ?」
「へ?」
「ありゃ〜お姉さんも知らないのか。さらに参った」
「名古屋!」
「おっと、ビックリしたぁ〜。やっぱり名古屋か」
帰れ。帰れ。帰れ。追いかけないから食い逃げして帰れ。
- 31 名前:オレンジジュース 投稿日:2005/11/18(金) 20:58
- 「名古屋か、しゃちほこある?」
「あるよ」
「マジで!すげぇ見せて!」
「いや、ここにはないよ」
「うわぁ〜お姉さん嘘ついた。ひーちゃんショック」
「ここにあるわけないでしょ!お城に行けばあるよ」
「どこにあるの?」
「えー、自分で探しなよ」
「うわぁ〜お姉さん面倒くさがってるぅ〜。さらにショック!」
最悪だ。やっと自分のお店持てて順調にここまでやってきたのに。
こいつの所為で全てが無意味になりそうだ。
「まっいっか。タクシー乗れば」
「別にタクシー使わなくてもいいじゃん。誰かに聞けばいいじゃん」
「だからさっき聞いたじゃんかよ!というか、今から一緒に行かない?」
「行かない!!」
もう!さっと行けよ。閉まっちゃうよ。
- 32 名前:オレンジジュース 投稿日:2005/11/18(金) 20:58
- 「う〜ん、しかし、このコーヒー」
「何ですか?」
「なんでもない」
なんだよ。何が言いたいんだよ!
しかも、急に寂しい顔するなよ。
まさか、コーヒー美味しくない?
そんな訳ないよね。
「ねえ、お姉さんなんて名前?」
う〜ん、また、元に戻ったぞ。
何なんだ一体。
「ねえ、ねえ。お姉さん。あっ、そっか、そっか、失礼。私は吉澤ひとみ。はい、お姉さんは?」
「なんで名前聞くんですか?」
「う〜ん、お姉さんって言われるのって嫌じゃない?」
「いや、別に」
「あっそう。でも、教えて」
「後藤です」
「下も!!!!!」
「うっさいな!真希です!」
「おう、後藤真希か。じゃあゴマキ」
こいつぅー!初対面なのにいきなりあだ名付けた!
しかも、一番嫌なあだ名を!!
- 33 名前:オレンジジュース 投稿日:2005/11/18(金) 20:59
- 「あれれ?ゴマキさん、どうしたの?」
無視、無視、無視!
「ゴマキちゃ〜ん、こっち向いてぇ〜」
「ゴマキ言うなぽ!!」
「ぽ?」
あーしまったぁあ。つい、カッとして言っちゃった。
ミキティに怒られちゃうよ。
「ぽっぽっぽっぽ」
こっ、この野郎
「ぽっぽっぽっぽ。ねえゴマキちゃん」
「あのー、すみませんけど、ゴマキって言うのはやめてくれませんか」
「ありゃ、嫌だったのか。早く言ってくれぽ」
こいつぅー殴りたい。
生まれてきてこれほど殴りたくなったのは初めてだ。
「う〜ん、う〜ん、う〜ん」
あ〜あ、早く帰ってくれないかな〜
「う〜ん、う〜ん、う〜ん」
何唸ってるんだ。
コーヒー冷めちゃうじゃん。
もう帰ってくれよ。
- 34 名前:オレンジジュース 投稿日:2005/11/18(金) 20:59
- 「ごっちん!!」
「ダメ!!」
「はやっ!」
こいつはホントに何なんだ一体。
ゴマキもダメだけど、ごっちんはもっとダメだ。
ごっちんって呼んでいいのは、ミキティだけだ。
そういえば、ミキティどうしてるのかな。
あっ、そうだった。
恋人が出来たって言ってたな。
もう、なんだよ。
何で今思い出すんだよ。
「ねぇ、ねぇ、ごっちん」
「もう!なんですか!」
「なんで男と女いるんだろうね」
「知らないよ!」
「う〜ん、何でだろう?」
「当り前のことなんだから考えてもしょうがないでしょ」
「うわっ、同じこと言われた」
「は?」
「いやぁ〜、さっきね。新幹線で振られたんだけどね」
新幹線で振られた?
「その人もね、同じこと言ってた。当り前だってさ」
「あっそう」
「うん」
そっか振られたのか、だから、おかしくなっちゃったんだ。
そっか、そっか、もうちょっと優しくしてあげないとね。
「元気出しなよ。吉澤さん綺麗なんだからすぐ良い人見つかるって」
「う〜ん、じゃあ、ごっちん」
「ん?」
「ごっちんでいいや」
「何が?」
「良い人」
「良くない!」
「あー!!振られた!まさかの2連続!ひーちゃんダブルショック」
バカだ。バカすぎるぞ、こいつ。
こいつには優しくしちゃいけないんだ。そうだ、そうなんだ。
ミキティのような厳しさで行こう。
- 35 名前:オレンジジュース 投稿日:2005/11/18(金) 21:00
- 「吉澤さん、そんなんだから振られるんじゃないの」
「う〜ん」
「もっと、真剣にならないと」
「う〜ん」
「そうじゃないと相手も真剣に聞いてくれないよ」
「うん、じゃあ、住む」
「はい?」
「ここに住む。そして、一緒にここで働く」
「バカ!!」
「うわっ!なんだよ、じゃあ、しゃちほこの金箔貼る仕事やる」
「そんなの無い!」
「えー無いの?」
「あるのかな?」
「あるでしょ。そうじゃなきゃ金ピカじゃなくなっちゃうよ」
「あーそっか」
「うん、よし決めた。さてと、じゃあ、ごっちん鍵頂戴」
「はい?」
「鍵」
「何の鍵?」
「家の鍵」
「誰の家?」
「ごっちんの家」
「なんで私の家の鍵をあげないといけないの?」
「ん?先に帰って待ってる」
「自分の家に帰れ!!」
「やだー!!帰りたくない!!」
「もう、帰りなよ。帰ってくださいよぉ」
「やだ〜、だって、だって、ミキティいるもん。絶対怒られるもん」
「えっ?」
「ん?」
「ミキティ・・・」
「うん、ミキティ。前の恋人さんなんだけどね。最近別れたんだけどね。お互い納得して別れたと思うんだけどね」
「帰って」
「え?」
「お金は要らないなから、もうホントに帰ってください。お願いします」
「えっ?えっ?どうしたの?ごっちん」
「なんでもないです。本当にすみません。帰ってください」
- 36 名前:オレンジジュース 投稿日:2005/11/18(金) 21:00
- 吉澤さんは急に真剣な顔になった。当り前か、ここまで帰れなんて言われたことなんてないだろう。
「ごめんなさい。ちょっと悪ふざけが過ぎたみたいですね。帰ります。けど、最後にオレンジジュース頂けますか?」
もう、なんだよ。なんだよう。こいつは。
オレンジジュースなんてどっかで買えよ。
あ〜、もう泣きそうだ。
「はい、オレンジジュース。これ飲んだら帰ってください」
「すみません」
吉澤さんはくるりとこちらに背を向けると、窓の外を眺めながらジュースを飲み始めた。
もうすぐ夜になる。
窓から入ってくるオレンジ色の光が吉澤さんの表情を哀しく見せている。
あ〜やっぱ振られたのがショックだったのかな。
だから、無理して、元気出そうとして、おかしなこと言ってたのかな。
もの凄い迷惑だけどね。
でも、ミキティってまさか、まさかね。そんなはずないよね。
ね?吉澤さん。
- 37 名前:オレンジジュース 投稿日:2005/11/18(金) 21:00
- 「ミキティってさ」
え?
「怖いんだよね」
知ってる。
「でもさ、もの凄く甘えぼさんなんだよな」
それも知ってる。
「もの凄く良い奴だったよ」
うん。
「でもさ、もっと良い人がいたんだよ。ひと目惚れしちゃったんだよ」
「なんでだろうね。その人に先に会えてたらって思ったりするんだよ」
「でもさ、ミキティに会わなきゃ会うことなんて出来なかったんだよね」
そっか。
「だから、ミキティには感謝してる」
そっか。
「でも、酷いことしちゃったな」
そうだね。
- 38 名前:オレンジジュース 投稿日:2005/11/18(金) 21:01
- 「ミキティがさ、言ってたんだけど、名古屋に美味しい喫茶店があるって」
え?
「一緒に行こうって言ってたんだけどね」
ミキティ・・・
「そこのコーヒーはあんまり美味しくないけど、オレンジジュースは美味しいって」
ええっ?
「うん、確かにそうだ」
えっ?コーヒー美味しくないの?
「ごっちん、ありがとう」
ちょっと待って、コーヒー美味しくないの?
「さて、あっ、実はお金持ってないんだよね。あはは」
コーヒー・・・
「代わりにこれあげる」
オレンジジュースは別に、ただ、オレンジを・・・
「あれ?どうしたの?大丈夫?」
ミキティ・・・
「じゃあね。もし、ミキティに会うことがあったら伝えとくよ。言ってたとおりコーヒー美味しくなかったって」
やめてくれぽ
「あれれ?じゃ、帰るよ。ごめんね。色々と気悪くさせちゃったみたいで」
- 39 名前:オレンジジュース 投稿日:2005/11/18(金) 21:01
-
どれくらい経ったんだろう。
しばらく放心してたみたいだった。
気が付いたときにもう吉澤さんはいなかった。
ミキティの恋人。
まさかここに来るなんてね。
もし、別れてなかったらミキティと一緒に来るつもりだったのかな?
それはそれで嫌だな。
ミキティを不幸にして自分だけ幸せになんろうなんて何て奴だ。
もういないあいつが座っていた席を睨みつけると濡れたみかんが一つ置いてあった。
ん?
「何このみかん?」
う〜ん?
「えい!この野郎!!」
何故だか急に憎たらしく思えて、思いっきりみかんを握りつぶす。
こぼれるみかんのしずくをちょっと舐めてみた。
「マズッ」
やっぱり私のオレンジジュースが一番だね。
ミキティ
- 40 名前:パム 投稿日:2005/11/18(金) 21:02
- 続きます。
- 41 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/18(金) 21:53
- ごっちんwwワロス
- 42 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/20(日) 12:37
- 吉澤さんがどこに向かうのか気になります
- 43 名前:赤い床 投稿日:2005/11/22(火) 23:56
- ■赤い床
「京都に帰ったんじゃなかったんですか?」
突然の訪問に驚きもせず、無言で私を招き入れ。
コーヒーを差し出すと同時に美貴ちゃんは私に尋ねてきた。
「ん?まあ、帰ったよ。ただ・・・」
目を合わせることが出来ず、コーヒーに映る自分の顔見つめながら答えた。
一人掛けのソファには私が座り、小さいテーブルを挟んで目の間に美貴ちゃんが座っている。
「ただ、何ですか?」
視線が痛い。どんな目で私を睨んでいるのかはわからないが痛く突き刺さってくる。
「ただ、どうしてるのかなって思って」
自分でも何で来たのか今ごろになって疑問に思う。
ゆっくりと顔を上げて辺りを見渡す。
以前に一度だけこの家に来たことがある。
それは、新婚旅行のお土産を渡しに来たとき。
そのときにあいつはいなかった。
あの頃とはずいぶん変わっていた。
前はもっと色があった。
今は白。
何も無いようにさえ感じる。
白いテレビ。
白い本棚。
白いテーブル。
白いベッド。
白い食器。
白いソファ。
何故、白にこだわっているのだろうか?
何故、壁は白くないのだろうか?
バンッ!
テーブルを叩く音で我に返った拍子で美貴ちゃんと目が合った。
怒っている。でも、強さは感じられらなかった。
痛く感じていたのは気の所為だったのだろうか。
それとも、自分で痛くしていたのだろうか。
「どうしてあなたがそんなこと気にかけるんですか?もう他人ですよ。
それにそんなこと電話で済むじゃないですか。なんでわざわざ京都から
来たんですか?」
美貴ちゃんの目をじっと捉えたまま言葉に詰まる。
何しに来たんだろう?
何がどうしてるのかだろうか?
あいつはどうしているのだろうか?
- 44 名前:赤い床 投稿日:2005/11/22(火) 23:56
-
そうか、あいつか。
私はあいつのことを気にかけてわざわざここに訪れたのか。
「よっちゃんならいませんよ。あなたに会いに行ったきり戻ってきてませんよ。当然ですけど」
「当然?」
「ええ、私たち別れましたから、ここに戻ってくるわけないじゃないですか」
そうか、そうだったな。でも、ここしか手がかりがないしな。
「それと、まあ、別にどうでもいいことですけど、私もここ出て行きますから」
「そっか」
「ええ、大体ここ私の家じゃありませんから。よっちゃんのですから」
「そっか」
「ええ、そしたら次はあなたがここに住みます?そしたらよっちゃん戻ってくるかもしれませんよ」
「そっか」
「なんなんですか一体!!」
「あっ、すまん。なんやろうな」
「何しに来たんですか?」
「すまん。わからん」
「ふっ」
美貴ちゃんはゆっくりと立ち上がるとキッチンの方へと向かっていった。
コーヒーを淹れ直すのだろうか。
- 45 名前:赤い床 投稿日:2005/11/22(火) 23:57
-
突然、頭に奇妙な重みが降り注いできたのと同時に目の前が真っ赤になった。
驚き後ろを振り向くと美貴ちゃんが何かを持っていた。
真っ赤な液体が目に入りそうになり、手で流れてくる液体を拭う。
ペンキだ。
真っ赤なペンキを美貴ちゃんは私にかけてきた。
「これで終わり」
そう言うと美貴ちゃんは玄関を開けそのまま出て行ってしまった。
何故こんなことになったのか理解ができず呆然と流れる赤色を見つめる。
ゆっくりと床に広がる赤。
真っ白な部屋に映えるその赤はまるで鮮血。
哀しい血の色。
何故、壁は白くないのだろう?
明日、白く塗り替えておこう。
- 46 名前:パム 投稿日:2005/11/22(火) 23:57
- 終わりです。
- 47 名前:パム 投稿日:2005/11/22(火) 23:57
- 間違えた。続きます。
- 48 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/23(水) 00:37
- ここで終わられたら僕はどうしたらいいんですかああああああ!!
と思いました。
- 49 名前:シルバースカイ 投稿日:2005/11/26(土) 23:20
- 夏の暑い日が続く中のちょっと肌寒い曇りの日。
さっきからずっと壁のある一点を見つめている美貴の恋人。
何を見つめているのかはわかってる。
珍しく一人だけで来た義姉が新婚旅行のお土産と一緒に持ってきた写真。
残念なことに旅行中ずっと天気が悪かったらしく、写真は屋内か曇り空の景色ばかりだった。
しかし、写真に写る義姉の表情は明るくとても幸せそうだった。
義姉は別にこれを美貴にあげるために持ってきた訳ではなく。ただ、話のネタとして持ってきただけだった。
それなのにこの1枚だけはテーブルの下に落ちて気づくことなく義姉は帰ってしまった。
写真に気づいたのはよっちゃんだった。
拾いじっと見つめた後、勝手にコルクボードに貼り付けた。
この写真が落ちることがなければ、今日はこんな天気じゃなかったのかもしれない。
いい加減にこっちを見て欲しくて声をかけてみる。
「ねぇ、よっちゃん。夏休みにさ、万博に行かない?」
「うーん?」
「ね、行こうよ。よっちゃん、マンモス見たがってたじゃん」
「あーマンモスね」
「うん、そうだよ。ね、行こう。来週にはお休みに入るから」
「う〜ん」
「行きたくない?マンモスだよ」
「う〜ん」
ちっともこちらを向いてくれない。
そんなに見たってしょうがないじゃん。
こっちを見てよ。
「それとね、名古屋でね。私の友達が喫茶店やってるんだよ。そこにも一緒に行こうよ」
「う〜ん」
「そこさ、喫茶店なのにコーヒーまずいんだよ。でもね、オレンジジュースは美味しいんだ」
「う〜ん」
「ねえ、聞いてる?」
- 50 名前:シルバースカイ 投稿日:2005/11/26(土) 23:20
- よっちゃんは立ち上がるとベランダの方へと向かった。
まだ、一度も目を合わせていない。
空を見上げるよっちゃん。
今は夏だけど今日はちょっと肌寒い曇り空。
「この部屋みたいな天気だ」
背筋に冷たい衝撃が走った。
体中が震えだして、抑えようとシーツをきつく握り締める。
その言葉は確かに間違ってはいない。
でも、こんな部屋になったのは私の所為だけではないはず。
なのに、なんでそんなことを言うの?
「夏休みたくさんあるから模様替えしようかな」
やっとこちらを見てくれた。
でも、今の私の顔は見て欲しくない。
「部屋を真っ白くしようかな。どうも、この部屋暗いんだよね」
白?暗い?なんで?
うん、うん、そうしよう。なんて、ニコニコしながらソファに座ってこちらを見つめてきた。
よっちゃんの笑顔が美貴は大好きだ。
この笑顔に惹かれて、こうして一緒に暮らしている。
この笑顔で何度となく癒されたことだろう。
この笑顔で何度となく許してしまったのだろう。
- 51 名前:シルバースカイ 投稿日:2005/11/26(土) 23:20
- 「名古屋か〜、そうだね。行ってみようか」
「ええっ!?」
「あれ?行くんじゃないの?」
「うん、行こ!」
「そうだ、そうだ。裕子さんにこの間、って言ってもずいぶん前だけど、お土産もらったからそのお返しもしないとね」
よっちゃんから義姉の名前が出るたびに胸の奥が痛くなる。
余所見をして欲しくなくて、諦めて欲しくて出した言葉でさらに苦しめられる。
「お兄ちゃんたちも行ってきたんだって、万博。楽しかったって言ってたよ」
ピクッと眉が反応して、少し残念そうな顔をした。
「そうなんだ。どうせだったら一緒に行きたかったな」
よっちゃんはそう言って、また、私に背を向け、壁の一点を見つめる。
辛すぎる。
背中なんか見たくなくて、外の景色を見る。
空はとても冷たくて重い鋼鉄の空。
隙間なく、ぶ厚い鋼鉄の雲は光を完全に遮断している。
私がよっちゃんに光を与えないように完全に遮っているのかもしれない。
光が射すほうへ進もうとしているよっちゃんを逃がさないように私はひたすら覆い隠す。
絶対に言わない、言いたくない。
兄が離婚したなんて。
- 52 名前:シルバースカイ 投稿日:2005/11/26(土) 23:21
-
でも、結局は無理だった。
少しづつ白く変わっていく光景に私は何もできなかった。
別れを告げられた日から降りだした雨は止むことなく降り続け、
あの日に作った雲は少しずつ薄くなり、
もうすぐで晴れる。
私はもう消えることしかできなかった。
- 53 名前:パム 投稿日:2005/11/26(土) 23:21
- 続きます。
- 54 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/27(日) 00:17
- 美貴様。・゚・(ノД`)・゚・。
続きが気になります。。。
- 55 名前:green signal 投稿日:2005/11/27(日) 02:06
- 実家の玄関を開けたとき、母がやさしい笑顔で出迎えてくれたことが返って心痛かった。
とりあえず荷物を置きに部屋に入る。
高校を卒業と同時に出て行った部屋は変わらず昔のままだった。
もう必要のない教科書がまだ本棚にある。
当時大好きだったアイドルのCDがある。
今までも実家に帰ることはあった。
久しぶりに会うのだから自分の部屋にはほとんどいることなんてなかった。
ずっとこの部屋は自分の部屋に変わりはないが、生活する部屋ではなくなり、
寝るだけの部屋に変っていた。
それなのに、また、この部屋で生活をこれからしていくことになる。
別に嫌じゃない。
ただ、高校卒業してから今までの時間がなかったように感じてしまった。
久しぶりに母と向き合わせて食事をする。
味は変らず昔のまま。
無言のまま食事を続ける。
壁掛けの古い時計の時を刻む音だけが鳴っている。
これから毎日こういう生活になるのだろうか。
- 56 名前:green signal 投稿日:2005/11/27(日) 02:06
- 食事を済ませた後、缶ビールを持って二階の自分の部屋に戻った。
たまの里帰りのときなら一緒にテレビを見たり、話をしていたはずなのに。
なんか高校生のころみたいだ。
イスに座って、カーテンを開け、缶ビールを開け、一口飲んで空を見上げた。
もうすぐで満月だ。
今日、新幹線で変な奴にあったな。
プロポーズされたな。
女に。
あいつはちゃんと家に帰ったのだろうか。
美貴ちゃんがいるであろう、あの家に。
しかし、まさか、実家に帰るときを狙われるとはな。
そういえば、あいつ泊めてくれって言ってたな。
もし、OKしていたら今ここで一緒にあいつとビール飲んでたのかな。
ふふっ、ありえへん。
ふと、思い出してカバンの中を探り、新幹線であいつがくれたみかんを取り出した。
そして、おもむろにそのみかんをもうすぐで満月になる月に重ねてみた。
わけわからん。
何やってんだ。うちは。
みかんを机の上において立ち上がって外の景色を眺めた。
これからまたこの街で暮らしていくんだ。
とりあえず、仕事探さないとな。
そして、また、新たな出会いがあるといいな。
今度はこの街で一緒に暮らせる人にしよう。
そうしないとまた実家に帰るときにあいつに会いそうだし。
って、なんだ?私はまた離婚するつもりなのか?
ふふっと自然と笑みがこぼれた。
- 57 名前:green signal 投稿日:2005/11/27(日) 02:06
- ビールを飲む。
あぁ、そういえばビール。あいつに奢ってもらったな。
初対面の他人に。
やっぱ図々しいかったな。
お返ししないとな。
でも、もう会うことなんてないか。
あいつが追ってこなければ。
って、まさか、追ってきないだろうな。
窓から乗り出して辺りを見回した。
いない。
当り前だ。来るわけがない。
乗り出した体を部屋に戻そうとしたときに、駅に向かう道の先のあるものに気がついた。
信号機だ。
あんなところに信号機あったっけ?
信号機を見つめながら記憶をたどる。
しばらくすると青信号は点滅し始めた。
もうすぐ赤になる。
向こうへ渡れなくなる。
ここから出られなくなる。
あいつに会えなくなる。
机に置いていたみかんと財布を掴み取ると、
私は急いで家を出た。
- 58 名前:パム 投稿日:2005/11/27(日) 02:10
- 続きます。
時系列が逆になってますが先に「赤い床」を出したかったと、あらかじめ言い訳しときます。
- 59 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/27(日) 02:13
- 微妙にリアルタイムでした。
淡々と進んでいるようで突然ぽんっと弾けるそれぞれの感情にやられ気味です。
- 60 名前:黄色絨毯 投稿日:2005/12/01(木) 01:05
- 「ひーちゃん!!何やってるの!それはそっちでしょ!」
「ええっ!?そうなの?だって、あやや、さっきはこっちって」
「あれはこっちなの!もう何やってるの。ここはいいからお布団敷いてきて」
「うん!ひーちゃんベットメイクは得意なのだ!」
「いいからさっと行け!!」
「は〜い」
まったくもう、使えないんだから。
大体なんでお金持ってないのに泊まろうとするの?
どうやってここまで来たの?
てか、何しに来たの?
3日前に訪れたひーちゃんはお金持ってないけど泊めてと私が働く旅館に訪れた。
そんなの到底通用せず追い返そうとしたら、じゃあ働くって言い出して女将さんを落として、
何故か私が面倒見る羽目になった。
- 61 名前:黄色絨毯 投稿日:2005/12/01(木) 01:06
- あっ!ひーちゃん。ちゃんとやってるかな。
「ひーちゃん、ちゃんとやってる?ん?なにこれ?」
「布団」
「わかってる!何で一つしか敷いてないの!なんで枕だけ二つなの!」
「ん?当り前じゃん」
「ここの部屋は男性二人なの!」
「マ、マジで…ってことはあれなの?」
「何よ」
「フォー!!」
「ちがーう!!」
「なんだ、違うんだ」
「いいから。余計なお世話はしなくていいから、言われたとおりのことを素直にやって」
「つまんないなぁ〜」
「つまんなくてもいいの!!もうここはいいから、外の掃除してきて!」
「は〜い」
もうずっとこんな調子。
まったく使えなくて私は普段の倍以上も働いた。
こんなに手のかかる新人は初めてかもしれない。
他にも勝手にどっかに行ってはお客さんにちょっかいだしたり、遊んだりしてる。
目が離せなくて追いかけては怒る。
怒られても何度も同じことをする。さらに追いかけて怒る。
疲れた。
- 62 名前:黄色絨毯 投稿日:2005/12/01(木) 01:06
- 「ふう、疲れた」
なんとか一仕事終えて焚き火をしているひーちゃんの隣に座った。
「若いのに何言ってんだよ」
「誰かさんの所為でいつもの倍以上働いたからね」
「へぇ〜そうなんだ。大変だったね」
あんただよ、あんたの所為だよ。
というか、
「ひーちゃん!!何やってるの!」
「ん?いも焼いてる」
「誰がそんなことしろって言ったのよ!」
「ええっ!?あやや言ったじゃん」
「言ってない!私は掃除をしてって言ったの」
「掃除したじゃん!綺麗じゃん!」
「嘘!まだこんなに一杯あるじゃん」
「無茶言うなよ!落ちて来るんだよ!」
「だから、落ちたら掃除するの」
「だったらこんなとこに木を立てるなよ!だいたい落ち葉を掃除する必要があるのか?」
旅館の前の通りはいちょうの木が並んでいて秋になると黄色葉っぱで地面を覆い隠してしまう。
風情があっていいように思える光景ではあるのだが、葉が多すぎるため段差が隠れてつまずいてしまう。
だからいつも入り口は綺麗にしておかないといけない。
でも、あまりに多すぎるので私もよくさぼっていた。
- 63 名前:黄色絨毯 投稿日:2005/12/01(木) 01:06
- 「なあ、何か言えよ」
「まあ、いいか。それよりも焼きいも、焼けたかなぁ〜」
ニコニコしながら木の枝で焚き火の中から焼きいもを一つ取り出して、半分に割り私にくれた。
旅館の入り口で焚き火をして、しかも焼きいもを食べてる。
こんなところ女将さんに見つかったら大目玉だ。
でも、そんなちょっといけないことをしていることが嬉しくて、楽しくして、ひーちゃんに同意を求めるように
顔をのぞきこんだ。
ひーちゃんは何かを懐かしむような表情をしていた。
なんでそんな表情をしているの?
何があったの?
何をしにここに訪れたの?
ここにはいつまでいるのかな?
ずっといるのかな?
- 64 名前:黄色絨毯 投稿日:2005/12/01(木) 01:07
- 「やっぱ富士山かっけぇーなぁ〜」
「えっ?」
「富士山」
すうっと綺麗な右手で富士山を指差す。
私はいつも見慣れている富士山よりもひーちゃんの細くて長い指をじっと見つめていた。
「あやや、あっちじゃないよ。あれだよ、富士山。わかるでしょ」
「わかるよ!もう!」
「なんだよ。何怒ってんだよ」
もう!もう!もぉーなんだよ。なんなんだよぉ。
「いやぁ〜やっぱここに来て正解だったな」
「えっ?」
「ん?」
「なんでここに来たの?」
「富士山見に来た」
「別に富士山見るならどこだっていいじゃん。泊まる必要ないじゃん。お金もってないくせに」
「まあ、どこでもいいんだけどね。でも、これに写ってたから。ここに行こうかなって思って」
と、ひーちゃんは携帯の画面を私に見せた。
そこには新幹線の中で怪訝な表情している女性が写っていた。
- 65 名前:黄色絨毯 投稿日:2005/12/01(木) 01:07
- 「この写真とここの旅館と何が関係あるの?」
「ちょっとよく見てよ、ほら、ここ一面黄色く写ってるでしょ」
黄色?
う〜ん、あっ、いちょうの葉のことか。
「凄いね。まっ黄色だ」
「うん。凄いなって思って、どんなとこかなって思って来てみた」
「そうなんだ」
へぇ〜新幹線からこんなふうに見えるんだ。ここ。
てか、誰だよ。この女は!
「ね、ねぇ」
「何?」
「あの〜」
「何だよ」
「ん!?んんん?」
「何だよ、言いたいことがあるなら早く言えよ」
「ていうか、お金持ってないくせに新幹線乗ってきたの?」
「は?『ていうか』っていうのはどこから繋がってるの?」
「いいから!ホントは持ってるんでしょ」
「う〜んと」
「う〜んとじゃなくて、それとも新幹線でお金尽きちゃったの?」
「そうそう、ビールとうなぎぱいでね。あっ、そういや、まだ残ってたな。あやや食べる?夜食べるお菓子なんだって」
- 66 名前:黄色絨毯 投稿日:2005/12/01(木) 01:07
- 「太るからいらない。てか、ビールとうなぎぱい買うくらいのお金しか残ってなかったんだ」
「うん。普段から現金あまり持たないから」
「は?」
「ん?ひーちゃんお金は持ってないけど、金色のカードは持っているのだ」
「はあ!!?」
「なんだよ、大声出すなよ」
「カード持ってるの?」
「うん」
「じゃあなんで働いてるの」
「お金持ってないから」
「うちカード使えるよ」
「知ってる」
「は?」
「いいじゃん、たまにはこういうのも」
「よくないよ」
「そうお?」
でも、ひーちゃんがお客さんになったらこういう風に一緒にいられないんだ。
じゃあ、いいか。
「まあ、いいか、たまには」
「なんだよ。どっちだよ」
「いいの。私がいいって言ってるからいいの」
「いや、その前に女将さんにいいって言ってもらったよ」
「いいの!!」
「はいはい。なんなんだよ」
いいったらいいの。ずっとここにいればいいの。
そして、こうやって一緒に焼きいも食べながら富士山を見る。
うん。いいかもしれない。
- 67 名前:黄色絨毯 投稿日:2005/12/01(木) 01:08
- なんかこうやってまじまじと富士山を見るのなんて初めてかも。
しかも、こうして好きな人と一緒に見るなんて。
好きな人?
ん?誰のこと?
自分で思ったことなのにビックリして思わずひーちゃんを見た。
ひーちゃん?
そうなのかな?でも、昨日会ったばっかだよ。
全然使えなくて手のかかるどうしようもない奴だよ。
それに女だよ。
なんで?
「ん?あやや、どうした?」
ひーちゃんが私のほうに振り向いて目があう。
大きな目。
綺麗な瞳。
何も答えずにじっと見つめる。
ひーちゃんもじっと見つめてる。
頭がボーっとしてきて、体が言うこと聞かなくなった瞬間、目の前にいたひーちゃんがいなくなった。
- 68 名前:黄色絨毯 投稿日:2005/12/01(木) 01:08
-
私、抱きしめてる。
ひーちゃんを。
夢中になってキスをする。強く抱きしめる。
でも、抱き返してはくれない。
私を受け入れてはくれない。
たまらなくなってひーちゃんの胸の中に顔を埋める。
そこでようやくひーちゃんは優しく私を抱き返してくれた。
それがなんか悔しくて私は強く抱きしめる。
逃がさないように、どこにも行ってしまわないように。
「あやや」
優しい言葉が私の耳に触れる。
余計苦しくなってさらに強く抱きしめる。
埋めた胸の中でちらちらと先ほどの携帯の写真の女性の顔が浮かぶ。
あの人は誰なの?
ねえ、ひーちゃん。私じゃダメかな?
ねえ、一緒にここにいようよ。
- 69 名前:黄色絨毯 投稿日:2005/12/01(木) 01:09
- 力強く抱きしめているはずなのに、優しくゆっくりと引き剥がされる。
どうしていいのかわからなくて、顔を見られないようにひーちゃんに背を向けた。
「ねえ、あやや。なんで男と女がいるのかな」
突然の問いに戸惑う。
男と女?
私はひーちゃんだけがいてくれればいい。
でも、とてもそんなことは言えないから、小さく「知らない」と答えた。
「そっか知らないかぁ〜」
「なんでそんなこと聞くの?」
「なんでかなと思ってね」
なんでだろうね。
もし、ひーちゃんが男だったらどうなっていたんだろう。
さっきのように抱きしめることなんてできたのだろうか。
性別を超えて恋をしてしまった私にそんなことを聞いても無駄なのかもしれない。
だって、いて欲しいのはひーちゃんだけだから。
もう冷めてしまった焼きいもを握り締めて俯いて、この恋の行方を案じる。
多分叶わぬ恋。
だって、ひーちゃんはきっと明日には帰っちゃうから。
「さてと」と言って焚き火を消し、旅館の中にひーちゃんは私を置いて先に行ってしまった。
追いかけなきゃ。
いつも勝手なことをするひーちゃんを追いかけて怒らなきゃ。
急いで後を追いかけなきゃ。
一人で黄色い絨毯の先に行かせてはいけない。
だって、私ひとりじゃここから抜け出せることはできないから。
- 70 名前:パム 投稿日:2005/12/01(木) 01:09
- 続きます。
- 71 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/03(土) 16:46
- いいねーなんてか絶妙だね。
「フォー!!」
「ちがーう!!」
ワロタw
- 72 名前:黒い幸福 投稿日:2005/12/05(月) 01:22
- 幸せだったと思う。
例えそれが2週間の新婚生活だったとしても。
新婚旅行中の事故で夫は亡くなってしまった。
私は無傷だったのに。
しかも、不倫の果ての結婚。
葬式に参列することは許されなかった。
葬式が終わってしばらくしてから私はこっそりとお墓参りをした。
そして、今、一人、新幹線に乗り横浜に帰る。
- 73 名前:黒い幸福 投稿日:2005/12/05(月) 01:22
- 「あっ、ここ空いてます?」
外の景色を眺めながら出発するのを待っている私に同い年くらいの女性が訊ねてきた。
隣の席は確かに空いている。
でも、私の隣に座っていいのはあの人だけ。
だから、
「すみません。空いてません」
ほぼ満席に近い状態で申し訳ないとは思うけど、誰も座って欲しくない。
ごめんなさい。
「空いているんですね。すみません。失礼しま〜す」
「えっ!?」
思いがけない返答にビックリして彼女の顔を見つめると、彼女は笑顔で返してきた。
そして、彼女はビックリしている私を他所に荷物を棚にのせ、隣に座った。
「石川さんはどちらまで行きます?」
「えっ!?」
また、驚かされた。
この人は何なの?なんで私の名前を知ってるの?
彼女は私の驚いた表情で私の思ったことがわかったのか、私のうなじ辺りを指さしてこう言った。
「クリーングのタグがついてますよ。石川さん」
「えっ!?」
これで、3度目。
慌てて手を伸ばして探ってみると確かに何かついていた。
無理矢理引き剥がそうとしたら、彼女が手を伸ばしてきて丁寧に取ってくれた。
「はい。そんな風に引っ張ったら服破けちゃいますよ」
私は「すみません」と答えて、受け取ったタグを折り潰してポケット中に突っ込んだ。
- 74 名前:黒い幸福 投稿日:2005/12/05(月) 01:23
- 「お葬式の帰りですか?」
喪服を着ているんだから、見ればわかるでしょ。
お葬式の帰りじゃなけど。
もう、ほっといてよ。
「ああ、すみません。話したくないですよね。じゃあ、話題変えましょうか」
変えなくていいわよ!ほっといてよ。もう。
「あっ、そうだ!まだ、答えてもらってなかった」
え?何を?
「どこまで行きます?」
なんだそんなことか。てか、どこでもいいじゃない。
私は何も答えずに窓の外を眺めた。
外は明かり一つなく真っ暗。
まるで私の心みたい。
「ねぇ、ねぇ、石川さ〜ん。どこまで行くの?」
もう!しつこいわね!なんなよ!
「新横浜です!」
二度と話しかけないでという意味も含めて、思いっきり睨んで言ったのに、この人は
「あらら、残念。私は東京なんだよねぇ〜」
もう、何が残念なのよ。何考えてるの、まったく。
「そうだ、そうだ。石川さん、うなぎパイ食べます?夜食べるお菓子なんだって。今、夜だから食べないと」
「いりませんし、話掛けないでください!」
今度こそ大丈夫。
「いらないのか〜、美味しいのになぁ〜」
もう、なんて非常識な人なのかしら。
もう、バリバリうるさいなぁー。
- 75 名前:黒い幸福 投稿日:2005/12/05(月) 01:23
- 「ねえ、ねえ、石川さん」
「私さっき話しかけないで下さいって言いましたよね?」
「うん」
「じゃあなんで話かけるんですか?」
「なんか話をしたそうだったから」
「は?」
「どうぞ、思う存分喋ってください。他人ですから。気にすること無いですよ」
「いえ、まったく話したいことなんてありません」
「じゃあ、私の話聞いて」
「嫌です!」
「あのね。私、好きな人を追っかけて新幹線乗って、ふられて、まずいコーヒー飲んで、仲居さんにチューされたんですよ」
「は?さっきから私の話聞いてないですよね」
「そして、今、お家に帰るところなんです」
「んもー」
「でね、このまま家に帰っていいのかなって思って」
「知らないわよ。帰らなきゃいいじゃん」
「じゃあ、石川さんち泊めて」
「はあ!??」
「まっ、それは冗談ですけど」
「はあ、もう、黙っててくださいよう」
あれれ?本当に黙った。
ふう、よかった。あともう少しで着くわね。
このままそっとしててお願いだから。
- 76 名前:黒い幸福 投稿日:2005/12/05(月) 01:24
- 「ねえ、石川さん」
「もう!何よ!なんなよ!」
「なんで男と女がいるんだろうね?」
「はい?」
「だから、なんで男と女がいると思います?」
「そんなの・・・」
「うん。何?」
「幸せになるために決まってるじゃない」
「えーーー!!!」
「ちょっと何よ!いいじゃない別に!」
「いやいや、普通に答えてくれたんでビックリしちゃった」
「もう、からかってたんですか」
「違いますよ。ごめんなさい。本当に聞きたかったんです」
「そうですか。で、満足していただけましたか」
「う〜ん、そっか、幸せかぁ〜」
「そうよ。幸せになるためよ」
「女と女じゃ幸せにはなれないんですかね?」
「え?どういうこと?」
「いや、なんでもないです」
「そう」
「石川さんは幸せですか?」
「えっ!?」
「あっ!ごめんなさい。今そういう状況じゃなかったでしたね」
「幸せよ」
「そうなんですか」
「うん」
「そっか。相手は男性?」
「もちろん」
「そっか」
「そう、もう死んじゃったけどね」
「えっ!?あっ、あちゃ〜。本当にすみません。もう黙ってます。すみませんでした」
「いいの。本当に幸せだから」
- 77 名前:黒い幸福 投稿日:2005/12/05(月) 01:25
- 「今も?」
「うん」
「そうですか」
「不倫の末にねようやく結ばれたと思ったら、死んじゃった」
「はあ」
「でもね、ほんのわずかだったけど幸せだった」
「そうですか」
「うん。そう思うの。おかしいかな?」
「いや、わからないです」
「そうよね。でね、代わりに多くの人を不幸にしちゃった」
「でも、それは・・・」
「仕方ないのかもしれない。幸せになるってこういうことなのかもしれない」
「はい?」
「誰かが不幸にならないと釣り合わないでしょ」
「釣り合う?」
「幸せの量が、多分一定じゃないのかな」
「う〜ん?そうなのかな」
「そうよ。私の欲しかった幸せの量は大きすぎたのかもしれない」
「そうなんですか」
「うん。不幸な目にあったのは、彼の元奥さん、彼の家族、彼、そして私」
「石川さんも?」
「もちろん。だって愛してた人が死んだのよ」
「でも、さっき幸せって」
「うん。幸せよ」
「う〜ん、わからなくなってきた」
「いいのよ別に。人それぞれよ」
「いや、でも、私も自分の幸せのためにある人を不幸にした」
「そうなんだ」
「でも、自分は幸せにはなれなかった」
「あなたなら大丈夫よ。きっと」
「そうなんですかね?」
「うん、誰かが不幸になったんだから、あなたに幸せがくるわよ。きっと」
「でも、なんかそれって、ちょっと」
「いい気分ではないわね」
「はい」
「じゃあ、あなたは目の前にある幸せを捨てるの?」
「えっ?」
「どうするの?」
「いや、ど、どうしよう」
「着いたみたいね」
「ええっ!!?あっ、ちょっと待って」
「大丈夫よ。あなたなら」
うん。大丈夫。私も。
例え暗闇の中に埋もれてしまった幸せでも、これを頼りに歩いていける。
あなたもきっと、暗闇の中にある幸せを照らしてくれる人が現れるはず。
今日の満月ように。
- 78 名前:パム 投稿日:2005/12/05(月) 01:25
- 続きます。
- 79 名前:白い壁 投稿日:2005/12/06(火) 02:10
- 真っ赤なペンキが排水溝へと流れていく。
美貴ちゃんに浴びせられた哀しい赤い血が流れて落ちていく。
どのくらいシャワーを浴びているのだろうか。
浴びせられた赤いペンキがしがみついてるかのようになかなか落ちない。
このペンキはひょっとするとあいつに浴びせるつもりだったのだろうか。
しかし、爆発した感情の矛先は仕方なく私に向けられたのかもしれない。
でも、私がこれを受けてよかったと思う。
美貴ちゃんをこんな目に合わせたのは私が原因なのだから。
シャワーを終えて部屋に戻り、真っ赤な床を見つめる。
さて、どうやって元に戻そうか。
あいつにはこれを見せたくない。
見せたらきっと悲しい表情を見せるだろう。
あいつには笑っていて欲しい。
こんなにも簡単に私の心を動かしたのだから。
部屋を真っ白にしよう。
- 80 名前:白い壁 投稿日:2005/12/06(火) 02:10
- 床に広がった赤いペンキをふき取る。
これだけで一日を費やしてしまった。
次は赤いペンキが降りかかった家具を処分する。
もったいないかもしれないが、残したくない。
部屋には何もなくなり、赤い床と白くない壁だけになる。
壁には何かが飾ってあったのか四角い後が残っている。
本当なら壁から白く塗りたいが最後に取っておこう。
今日は取り合えず、床を白くした。
今日で3日目。あいつは帰ってこなかった。
床が乾かないので取り合えず家具を買いに出かけた。
まずはテレビ。もったいないなとは思うが仕方ない。
同じ真っ白なテレビを買った。
次は本棚か。これは塗ればいいか。
ちょっと早かったか、乾く前に本を入れてしまって棚に張り付いてしまった。
次はテーブル。前にあったのはちょっと小さかったな。
大き目の白いテーブルを買った。
次はベッド。これはまあいいか。
次は食器。別にペンキが降りかかったからではなく
二人分の食器をそろえた。
次はソファ。どうして二人で暮らしてたのにこんな小さかったのだろう?
ちょうど二人が座れるサイズのものを買った。
- 81 名前:白い壁 投稿日:2005/12/06(火) 02:10
- そして、最後に壁。
今一度ゆっくりと部屋を見渡した。
何故、壁だけが白くなかったのかはわからない。
でも、この壁を白くすればわかるかもしれない。
そして、あいつが帰ってくるかもしれない。
夢中になって塗った。真っ白く。
あいつの笑顔を思い出しながら。
ようやく全て塗り終えた頃にはもう夜になっていた。
今日は綺麗な満月だ。
- 82 名前:パム 投稿日:2005/12/06(火) 02:12
- 次回、最終話です。
- 83 名前:黄金の月 投稿日:2005/12/07(水) 01:14
- 一週間ぶりに戻ってきた我が家の扉を開けると部屋は真っ暗だった。
真っ暗な部屋を見て今更ながら自分のしたことに後悔する。
一気に脱力して荷物をその場に置き、リビングへと入る扉を開けたとき私は固まった。
カーテンの隙間からベランダで外の景色を眺めている人が見えた。
金色に輝く髪が風に揺れると次は真っ白なカーテンが大きく揺れ部屋の中に光が差し込んだ。
差し込んだ光が映した景色は真っ白な部屋。
どうしてあなたがここに?
なんてことは聞かなくてもいいか。
あなたはゆっくりとこちらを振り向くとわずかに微笑み右手を差し出した。
私はゆっくりとあなたに近づく。
差し出された右手を掴む。
あなたは左手に持っていたビールを口に含み、私に口移した。
まだ、慣れないビールの苦い味も甘く感じる。
- 84 名前:黄金の月 投稿日:2005/12/07(水) 01:14
- あなたはベランダの手すりに体を預け空を仰いだ。
私も隣で同じように空を仰ぐ。
「今日は満月や」
「綺麗ですね」
掴んだ右手は繋がれたまま。
「ビール飲むか?」
「いらないです」
「なんでぇ?」
「ビールはちょっと苦手で」
「そっか、そら済まんことしたな」
「何がですか?」
「さっき」
「ああ。あれだったらいくらでも飲めますよ」
「アホ」
あなたはビールを一気に口に含むと私を強引に抱き寄せて、私に口移す。
「お返しや」
「はい?」
「あのときのビール」
「ああ、そういうことか」
「そう」
抱き寄せた体は離れないまま。
- 85 名前:黄金の月 投稿日:2005/12/07(水) 01:14
- 「やっと出戻ってきたな」
「はい?」
「家出から」
「あぁ。ただいま」
「おかえり。うちは家出してきた」
「そうなんですか」
「そう」
「これからどうするんですか?」
「あんたの家に泊めてや」
「そうなっちゃうんですか?」
「なんや帰すんか?」
「帰しませんよ」
抱きしめられた体はさらに強く抱きしめられる。
「大変やったで」
「何がですか?」
「壁」
「壁?」
「なんで壁だけ白くないん?」
「まあ。色々とあって」
「そっか」
「はい」
- 86 名前:黄金の月 投稿日:2005/12/07(水) 01:15
-
壁を白く塗ることができたのはやはりあなただけでした。
あなたは私を真っ白にしてくれる。
暗い闇の中に光を与えて白くしてくれる。
あなたは私の月
金色に輝く髪が綺麗なあなたは
黄金の月
- 87 名前:パム 投稿日:2005/12/07(水) 01:17
- 終わりです。
読んでくださったみなさん、ありがとうございました。
次回からは別の話になります。
- 88 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/07(水) 19:59
- 完結お疲れ様です。
思いもかけない所で色んな人がからんでくるのがとても新鮮でした。
次回作も楽しみにしています。
- 89 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/07(水) 23:52
- すごおく良かったです
- 90 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/08(木) 06:16
- 完結お疲れさまです。
素晴らしい連作でした。
それぞれの色と人々が際立ってました。
- 91 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:55
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 92 名前:パム 投稿日:2005/12/27(火) 03:24
- >>88
>>89
>>90
まとめてで申し訳ないですが、感想ありがとうございます。
これからもよろしくです。
- 93 名前:連続夢 投稿日:2005/12/27(火) 03:24
-
◇◆◇連続夢◇◆◇
- 94 名前:連続夢 投稿日:2005/12/27(火) 03:25
- 「美貴、おはよう」
夢の始まりはいつも同じ、おはようと言ってくれる。
「おはよう」
私がおはようと返すとキスをしてくれる。
いつも同じ
それからは何気ない会話が続く
私を抱きしめながら話してくれる声は私を癒してくる
さらに心地よい眠り与えてくれる
「美貴ちゃん!美貴ちゃん!起きなさい!」
夢の終わりはいつも同じ、姉が起こしに来る。
「んもー、うるさいなー。あとちょっとだけ」
「ちょっとだけって何時だと思ってるの!」
「ん?何時?」
「7時半だよ!ごっちん外で待ってるよ!」
うげぇと叫び、飛び起き、慌しく身支度を整えて玄関に向かった。
そこには、あの人の靴があった。
一瞬硬直してしまった、現実にあの人がいるということに緊張してしまった。
振り向こうかと思った。でも、振り向いて姉と一緒に朝ご飯を食べている姿なんて見たくない。
家を飛び出し、そのまま走り出した。
- 95 名前:連続夢 投稿日:2005/12/27(火) 03:26
- 「ちょっと待つぽ!」
後ろからごっちんの声が聞こえて、ようやく振り向くことができた。
「無視するなんてひどいぽ」
「ごめん、ちょっと急いでて」
「んぽ?今日日直だったぽ?」
「そんなじゃないよ」
「んぽー」
ごっちんは私がどうして走って出て行ったか察したようだ。
その証拠に申し訳なさそうに俯いている。
ごっちんは知っている。
私があの人のことを好きなことを、姉の恋人を好きなことを。
もともとはごっちんが私にあの人を紹介した、けど、あの人は姉を選んだ。
姉を愛した。
別に恋人にさせるつもりで紹介したわけじゃないのはわかってる。
ただ、私も姉も、そしてあの人も恋をしたんだ。
だからごっちんは悪くない。だからそんな顔しないでよ、ごっちん。
「あ!!やべぇ、忘れ物した」
「なんだぽ」
「ジャージ忘れちゃったよ」
「別になくてもいいぽ」
「やだよ、さみぃーじゃん」
「ごっちん先行ってて」
「遅刻するぽ。」
「大丈夫だよ、ギリギリ間に合うって。じゃあ」
「んぽ」
あぁ、そういやー洗濯して取り込むの忘れてた。
てか、なちねぇが忘れてたんだよな。
あの人連れこんでるから。
- 96 名前:連続夢 投稿日:2005/12/27(火) 03:27
- 「ねぇ、なちねぇいる?私のジャージもってきて」
玄関を空けるとすぐに大声を張り上げた。
なにも返事がないので、靴を脱ぎ、洗濯物が干してあるベランダへと向かった。
あれ?ジャージがない?おかしいな、洗濯したよな?
取り込んでくれたのかな?
引き返そうとしたとき突然背後から影が伸びてきた、あの人だ。
「あ、ごめん、ひょっとしてこれって、美貴ちゃんのジャージだった?」
後ろからかけられた声は間違いなくあの人の声で、振り向きたいけど振り向くのが怖かった。
これは夢じゃないんだ。現実なんだと頭になり響いて私を振り向かせないようにしている。
拒んでいる。
そんなことはあの人は知らない。
「ごめんね、ひょっとして必要?てか、そうだよね。ごめんね。すぐ着替えるから」
「いい!!別になくてもいい!今日結構あったかいから別にいいです」
「でも、ジャージ取りに戻ったんだよね。あぁそうか、私、着ちゃったもんね。ごめんね。いやだよね」
「そんなことはないです。もう私、学校行きますね。遅刻しちゃうから」
「あっ!送ってくよ。車できてるからね、ちょっと待ってて」
「いいです。それじゃ、行ってきます」
「あぁ、いってらっしゃい」
最悪だ。
現実では逢いたくないんだ。
あの人が来るのは姉がいるから、
私に逢いに来ているわけじゃない。
私を愛しに来てくれてるわけでもない。
戻るんじゃなかったよ、わかってたじゃないか、戻ればあの人に会ってしまうことを。
なのにどうして?
それもわかっているじゃないか。
- 97 名前:連続夢 投稿日:2005/12/27(火) 03:27
- 「うう、さみぃ〜」
「んぽ?ミキティ、ジャージどうしたぽ?」
「なかった」
「んぽ?そんなわけないぽ」
「うるさい!」
「んぽ〜」
ああ、チクショウ早く帰りたい、早く眠りたい。
眠ってあの人に逢いたい。
私だけを愛してくれるあの人に逢いたい。
- 98 名前:連続夢 投稿日:2005/12/27(火) 03:28
- 「美貴、おはよう」
来た。
私の愛する人が来た。
私はゆっくりと夢の中で目を覚ます。
「おはよう、よっちゃん」
目を開けると目の前に優しいまなざしを向けるよっちゃんの顔があった。
両手を伸ばし首に手をかけぐっと引き寄せる。
顔が近づけばそのままキスとなる。
待っていた。この感覚を、現実では味わえることのない快楽を。
腰に手を回しぐっと引き寄せ、そのままベットに引き込ませる。
よっちゃんは私の上にのしかかり、首筋にキスを落とす。
これが夢でなければといつも思う。
「ねぇよっちゃん?」
「ん?何?」
「勝手に美貴のジャージ着ないでね」
「え?あ〜ごめん、でもいいじゃん」
「いいんだけどね、でも学校で使うから」
「あぁそっか、そうだよね。ごめん、気をつけるよ」
「うん、でも着てもいいよ」
「ん?どうして?」
「だって、よっちゃんの匂いがするから」
「ふ〜ん、今は?匂う?」
「えっ!・・・わかんないよぉ」
「どうして?」
「だって・・・」
夢だから
- 99 名前:パム 投稿日:2005/12/27(火) 03:28
- 続きます。
- 100 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/28(水) 04:47
- なんかちょっと新鮮。面白いです。
- 101 名前:連続夢 投稿日:2006/02/02(木) 04:15
- 「美貴ちゃん、おはよう。今日は早いのね。朝ご飯食べる?」
なちねぇはいつものように朝食を作っていた。
しかし、今日は一人分だけだった。
おかしい、一緒にいたじゃないか。
「いらない。ねぇ、よっちゃんさんは?」
「ん?よっちゃん?今日は早くから仕事があるみたいだから夜中に帰ったよ」
「仕事?ふ〜ん、そういえばさ、よっちゃんさんって何の仕事してるの?」
「知らない」
なちねぇは少し怒ってるようだ。
聞いちゃいけないことだった?それとも何かあった?
「なちねぇ、何かあった?」
「何もないよ、どうしたの?何か気になる?」
「ん?何かちょっと怒ってるみたいだから」
「そう?そんなことないよ、本当によっちゃんは仕事なんだよ」
「そう」
なちねぇとよっちゃんが付き合いだして半年くらいたつ。
ほぼ毎日よっちゃんはうちに来る。
そして一緒に朝ご飯を食べる。
だから美貴は食べない。
よっちゃんと一緒にいると苦しくなる。
とてもご飯なんて食べられない。
「おはよう!ごっちん」
「おはようぽ!どうしたぽ、今日はやけに元気だぽ」
「そう?」
「んぽ」
そりゃそうだ、よっちゃんに会わなかったからだ。
会えばつらくなる、会いたいけど会いたくない。
まったく困ったもんだ。
そして、眠りたくなる。
私だけのよっちゃんに会いたくなる。
「何かいいことあったぽ?」
「ねえよ、バカ!!」
「んぽっ!!」
「さっさと行くぞごっちん」
「ミキティ、待ってくれぽぉ〜」
- 102 名前:連続夢 投稿日:2006/02/02(木) 04:16
-
付き合って半年も経ってるのに何をしてるのか知らないだと。
そんな訳ないよな。美貴に言えないことなのか?
ごっちんなら知ってるかな。
「おい!ごっちん!」
「んぽぉ〜、待ってくれぽぉ〜」
「おせえよ!早く来い!」
「んぽぉ〜、ミキティはやいぽ」
「いいから。ねえ、よっちゃんさんってどういう仕事してるの?」
「んぽ?」
「『んぽ?』じゃなしに教えろよ」
「知らないぽ」
「知らないのかよ」
「実はごとぉーあまりよしこのこと知らないぽ」
「はあ?友達じゃないのかよ」
「友達だぽ。でも、そういう友達じゃないぽ」
「じゃあどういう友達だよ」
「たまに会って遊ぶ友達だぽ」
「いや、でもさ、何かしら話するだろ」
「じゃあ、ミキティがよしこと話すればいいぽ」
「なんだと!!」
「なんでそこで怒るぽ!」
「うっさいボケ!もういい!」
「無茶苦茶だぽ」
「無茶苦茶で結構!」
「コケぽっぽー」
「ん?」
「んぽ?」
「てめぇ、ぶっ殺してやる!!」
「なんでそうなるぽぉー!」
「待て、このぽっぽ野郎!」
知る必要なんてないか。
だって、美貴のよっちゃんは夢の中にいるんだから。
- 103 名前:パム 投稿日:2006/02/02(木) 04:16
- 続きます。
- 104 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/02(木) 19:05
- あー切ないというかなんというか。
ごっちんとみきちーのやりとりの面白さが、切なさを引き立たせているというか。
とりあえず、良いっす。
- 105 名前:パム 投稿日:2006/04/21(金) 03:55
- 放置すみません。そして、さらにすみません。「連続夢」は放棄させて頂きます。
力不足でした。この先が書けなくなりました。
申し訳程度ですが、短編をひとつ。
- 106 名前:double 投稿日:2006/04/21(金) 03:55
- 4月12日。私たちは生まれた。
先に生まれた姉のヒトミ。
そして私は妹のひとみ。
なんで名前まで一緒にしたのか親の真意は未だにわからない。
かろうじて違うのがカタカナかひらがなってだけ。
たまに自分がどっちだったかわからなくなったりする。
今日は私が宿題をやる日。
同じ学校に通っているので出される宿題は大体同じ。
たまに違う日もあるけど、後日同じ宿題が出されるからどちらかがやればいいだけ。
これは同じ学年になれる双子の特権。
姉のヒトミはベットに寝転がって、宿題が終わるの待っていた。
何をしているかわからないがずっと黙っていたヒトミが、突然とんでもないことを言い出した。
- 107 名前:double 投稿日:2006/04/21(金) 03:55
- 「ひとみ。今日さ、石川先輩に告白されちゃったよ」
私はビックリして振り向くとヒトミは携帯をいじってた。
誰かにメールをしてるのか、指がもの凄い勢いで動いている。
「は?なんで?」
私が問い掛けても指は止まることなく動いている。
「ねえ、ちょっと。ヒトミ」
ようやく打ち終えたヒトミは携帯を放り投げると体を起こして私のほうを見た。
「なんでって言われてもね。私のこと好きだからじゃないの?」
「ヒトミのことが好きなの?私じゃないの?」
「うん。確認したよ。ひとみじゃないの?って」
「そんなこと確認しないでよ!」
「ついでにひとみにしたらってのも言っておいたよ」
「それも言わなくていい!」
「あら、ごめんねぇ〜」
「もう、何考えてるの。これじゃ、先輩に私が好きなのバレちゃったんじゃん」
「いいじゃん別に」
「よくないよ!勝手に告白しないでよ!」
「いいじゃん。双子なんだから。それに代わりに振られたんだから、ありがたいと思いなさいよ」
「は?」
「うん。ひとみちゃんは石川先輩に振られちゃったのだ」
「えっ?」
「かわいそうなひとみちゃん。今日はお姉ちゃんが一緒に寝てあげるよ。さあ、おいで」
「ふざけんなー!!」
私は大声をあげてヒトミに飛びかかった。
ヒトミは飛んでくる私を強く抱きしめた。
抱きしめられた私は何故だか涙がたくさんあふれてきた。
ヒトミの感情が私に流れ込んできたんだ。
ヒトミは私じゃないけど、先輩に振られたときのヒトミは私だった。
- 108 名前:double 投稿日:2006/04/21(金) 03:56
- 翌朝、学校に行く途中に石川先輩に会った。
私たちはお互い気まずい感じになった。
ちらっと目があったときに無理して笑ったのが精一杯だった。
あのとき、石川先輩がどういう表情をしていたか見ることもできなかった。
なんとも変な感じに振られた私は授業に集中できずにぼんやりと一日を過ごした。
いつの間にか一日が終わっていて、教室には私だけになっていた。
意外と振られたショックが大きかったんだな。
突然、バン!と強く扉が開く音がして心臓止まりそうになった。
恐る恐る振り向くと、扉のところで仁王立ちしている藤本先輩がいた。
もの凄くこちらを睨んでる。怖い・・・
「ひとみちゃんだよね?」
何でちゃん付け?
怖いっすよ。先輩。
それとひとみには間違いないけど、私じゃなくてヒトミのほうですよね?
「えっと、私は妹のひとみです。姉はもう帰ってると思いますよ」
「よかった。あってた」
あってたのかよぉ〜。
お姉ちゃん助けて。。。
「あのさ、ひとみちゃん」
とりあえず、ちゃん付けやめてくれませんかね。
「私、ひとみちゃんのことが好きなんだ。付き合ってくれないかな?」
え?マジすっか。
どうしよう。これはまいったぞ、昨日とまったく逆だよ。
ヒトミは先輩のこと好きなのになあ。
- 109 名前:double 投稿日:2006/04/21(金) 03:56
- 「あのぉ〜、私は妹ですよ。姉と間違っていませんか?」
「間違ってないよ!間違えるかよ!」
「すみません。」
なんだよ。怒るなよ。
さて、どうする?
でも、やっぱり、私はヒトミじゃないから。
「ごめんんさい。私は先輩とはそういう風にはなれません。」
「そっか」
「姉のことは好きになれませんか?」
「ごめん。無理」
「ははっ、振られちゃった」
何故だか突然哀しくなった。
昨日の夜、ヒトミに抱きしめられたときのように。
ああ、今、私はひとみじゃなくてヒトミなんだ。
「ちょっとなんであんたが泣くのよ」
藤本先輩はやさしく私の頭を撫でてくれた。
余計に私は哀しくなってさらに泣いた。
藤本先輩は困り果てて、「ごめんね」とだけ言って教室から去っていった。
家に帰るとヒトミは宿題をやっていた。
私は後ろからヒトミを強く抱きしめた。
するとヒトミは泣き出した。
- 110 名前:パム 投稿日:2006/04/21(金) 03:57
- 終わりです。
- 111 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/21(金) 23:32
- ウマイなー。それに面白かった。
- 112 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/22(土) 15:34
- おぉ!更新待っていましたよ!
Wよっちぃとは斬新ですね。こういう設定私は初めて見ました。
面白かったです。次回更新待ってるんで!
- 113 名前:different 投稿日:2006/05/05(金) 03:24
- 陽気な歌声が聞こえてくる。
ヒトミは今、風呂に入っている。
そういえばいつから一緒に入らなくなったんだろう。
小学生の頃までだったかな。どうだったかな。
「ひとみちゃ〜ん。シャンプー!!」
ちゃん付けするなよ。
思い出すじゃんかよ。
「ここ、置いとくよ」
「サンキュ。一緒に入る?」
「入らないよ。さっさと頭洗え!」
「え〜、たまにはいいじゃん。背中流して」
頭洗うんじゃないのか?
まあいいや、テレビでも見ようかな。
「ひとみー!!背中!!」
うるさいな。自分で洗えっての。
しかし、面白いテレビやってないなぁ。
あ〜あ、つまんないなぁ。
って、両手を上げて伸びをしてそのまま反り返ると真っ裸のヒトミが仁王立ちで頭を拭いていた。
- 114 名前:different 投稿日:2006/05/05(金) 03:24
- 「服着ろ!」
「別にいいじゃん。似たような体なんだからさ、ほれ、鏡見てるみたいな感じでしょ。ひとみも脱いでみ」
「なんで脱がなきゃいけないんだよ!」
ったく、まあ、確かに顔も体型も同じで、それこそ親もしょっちゅう間違える。
でも、石川先輩は私じゃなくてヒトミのことが好き。
そして、藤本先輩はヒトミじゃなくて私のことが好き。
何が違うんだろう。石川先輩は私ではなくヒトミのどこを好きになったんだろう。
「どこなんだろうね」
ヒトミは私の隣に座ると突然こんなことを言い出した。
でも、よくあること。双子だから話さなくても何を考えているのかわかる。
- 115 名前:different 投稿日:2006/05/05(金) 03:24
- 「う〜ん。私のほうがいいと思うけどね」
「だったら、告白すればいいじゃん」
「ヒトミがしたんでしょ。それで振られたんでしょ」
「でもさ、わかんないよ。ひょっとするとOKくれるかもよ」
「そんなわけないじゃん」
「いやいや、妥協するんじゃない。まあ、同じだからいいかみたいな感じで」
「石川先輩はそんな人じゃない!」
「わかんないよ。やってみなよ」
「じゃあ、ヒトミも藤本先輩に告白しなよ」
「いいよ」
「いいの?」
「うん。だから、ひとみも告白しなよ」
「二度振られることになるよ」
「そんなのやってみないとわかんないじゃん」
「そうかな」
「そうだよ」
「う〜ん。わかった」
「よし!じゃあ、さっさと風呂入ってこい。なんなら背中流そうか?」
「いい!」
絶対振られるよな。だってそうじゃなきゃ妥協したことになるもんね。
そんなのヤダな。でも、振られるのもヤダな。
ヒトミは本当に告白するのかな。
風呂からあがってくるとヒトミは裸のままで眠っていた。
まじまじと見るとやっぱりすべてが同じだ。
- 116 名前:different 投稿日:2006/05/05(金) 03:25
- 放課後、石川先輩を呼び出して思い切って告白した。
結果はやっぱりダメだった。
理由は怖くて聞けなかった。
ヒトミにあって私に無いもの知ることが。
家に帰るとヒトミがボケっとしていた。
やっぱりヒトミも振られたか。
当然だよな。
ヒトミの肩が震えている。
私はヒトミの隣に座り肩を抱き寄せた。
抱き寄せた肩からヒトミの感情が流れてくる。
やっぱりヒトミも同じだったみたい。
私はヒトミからそうっと離れるとお風呂に入った。
服を全部脱いで鏡の前に立つ。
違いなんてひとつもない。
「私のほうがおっぱい大きいよ」
「何勝手に入ってきてんだよ!しかも裸で!」
「一緒に入ろうよ。ね?」
「勝手にしろ」
「うん」
向き合ってお互いの体を見た。
まるで鏡を見ているような気分。
違いなんて何もないくらいに似ている私たち。
「ほら、やっぱ私のほうが大きい」
「触るな!」
- 117 名前:パム 投稿日:2006/05/05(金) 03:25
- 続きます。
- 118 名前:名無飼育 投稿日:2006/05/31(水) 17:11
- 掛け持ちで大変でしょうが待ってます
- 119 名前:delusion 投稿日:2006/06/23(金) 22:18
- ごっちんという幼馴染がいる。
ごっちんとは小さい頃からの付き合いでお互いのことをよく知っている。
しかし、ごっちんは未だに私たち姉妹の区別がつかない。
だから、ごっちんはヒトミを呼ぶときは「よっすぃ」、ひとみを呼ぶときは「よしこ」と呼ぶ。
でも、区別がつかないからよく間違える。
- 120 名前:delusion 投稿日:2006/06/23(金) 22:19
- 「後藤!」
私を呼ぶ声への方に振り向くと仁王立ちしているミキティがいた。
辺りを見渡して私以外に誰もいないところを見るとやっぱり私を呼んだんだな。
なんで呼ばれたのかわからないのでとりあえず手を振ってみる。
「ミキティ、バイバ〜イ」
そして、逃げるように急いでミキティとは反対方向に歩き出す。
「なんでバイバイなんだよ!呼んでんだよ!こっち来い!」
あっ、やっぱり呼んでたんだ。てか、自分が来いよな。
仕方なくミキティに近寄った。
ギリギリ手の届かないところまで。
「何、微妙に離れてんだよ。さっさとこっち来いよ」
「ここでも良く聞こえるから大丈夫だよ」
「二度も言わないぞ」
もう何なんだよこの人は。
怖いなぁ〜
「何?」
「ったく、お前は態度悪いな」
あなたよりはマシですよ。
「まあいいや。あのさ、吉澤さんのメアド教えてよ」
「よっすぃの?」
「よっすぃ?ああ、うん。そうそう。知ってるでしょ」
「う〜ん。知ってるけど、勝手に教えていいのだろうか」
「いいじゃん。教えてよ」
「う〜ん。まあいいか」
- 121 名前:delusion 投稿日:2006/06/23(金) 22:19
- 携帯を取り出して、アドレス帳を開きよっすぃのところまでスクロールさせる。
よっすぃの上にはよしこがある。
あれ?よっすぃで良かったのかな?
「よっすぃの?それともよしこの?」
「どっちがどっちだよ!お前と同じクラスのほうだよ」
「あ〜、じゃあ、よっすぃだ」
納得した私はミキティによっすぃのアドレスを教えた。
「もう、帰っていい?」
「ああ、さっさと帰れ」
なんだよ!お礼くらい言えよ!
私は苛つきながらも怖かったので素早くその場から立ち去った。
しかし、何でミキティはよっすぃのメアド知りたがったんだろう?
あっ、やっぱよっすぃに伝えといたほうがいいよな。
私は自分の家に帰らず、そのままよっすぃの家に勝手にあがりこんで、よっすぃの部屋に入った。
部屋に入るとよっすぃはベッドで寝転んでマンガを読んでいたが、私に気付くとマンガを投げ捨ててを起き上がった。
「ごっちんどうした?」
「さっき、ミキティがね。メアド教えてって言われた」
「ごっちんの!?」
「違う違う。よっすぃの」
「えっ!?マジで!!」
あれま、もの凄く驚いてる。教えちゃまずかったかな。
「うん。それでね、勝手に教えちゃった。ごめんね」
「いやいや、良いんじゃないの」
「いいんだ。良かった」
ちょっと罪悪感を感じていたけど、まあ、本人が良いって言うならいいか。
私はよっすぃが投げ捨てたマンガを拾い上げて、ペラペラとページをめくった。
少年マンガだ。
なんで、よっすぃってこういうマンガしか読まないのかな。
「ねぇ、よっすぃ。これ面白いの?」
「待った」
「うん。待ってる」
「違う!!私はよっすぃじゃない!よしこ!妹!!」
- 122 名前:delusion 投稿日:2006/06/23(金) 22:19
- あっ、間違えた。
なんかよっすぃの表情が見る見る強張ってきてる。
さて、そろそろ帰る時間かな。
「それじゃあね、よしこ。また、明日」
そうっと立ち上がろうとしたところで、よしこの手が私の肩を押さえつけた。
「ごっちん。メアド教えたのはどっち?」
「えっとぉ〜、多分よっすぃ〜」
「多分?」
ぎゅっと手に力が入った。
うん、間違いなく怒ってる。
「どっち!?私の教えてないでしょうね?」
「教えてない教えてない」
もう、どっちだったのかわからなくなったてきたけど、とりあえず逃げれるほうに逃げてみる。
「これで私のほうにメールが来たらどうするつもりなの?」
どうするって言われても・・・。
「藤本先輩は私のを教えてって言ったの?ヒトミのを教えてって言ったの?どっち?」
「さあ、どっちでしょう?」
もう、笑って誤魔化すしかないな。
「多分、私のだよ。はあ、もうなんだよ。私あの人苦手なんだよ」
私も苦手だよ。
「ごっちん、あのね・・・」
「キャーーー!!!」
よしこが何か言ってたけど、その声は聞き取れず、代わりに隣の部屋からもの凄い甲高い、まるで梨華ちゃんのような声が聞こえた。
そして、扉が勢いよく開くと、そこには携帯片手に満面の笑みで立っているよっすぃが立っていた。
- 123 名前:delusion 投稿日:2006/06/23(金) 22:20
- 「ねぇねぇ、ひとみ見て。藤本さんからメールが来た!藤本さん私のメアド知ってたんだぁ〜」
なんでこれほどまでによっすぃが大喜びしているのかわからなくて、よしこの顔を見ると苦笑いしてた。
「う〜ん。ごっちん。とりあえず、結果オーライってことで」
ん?よくわかんない。
「ねぇ、これってさ、デートの誘いだよね。ひとみ見てよ。見える?転送しようか?」
まあ、よっすぃが喜んでるみたいだからいいか。
「転送しなくていいよ」
「もう、ひとみったら拗ねちゃって。ほらほら、ごっちん見て。藤本さんからのメール」
「よかったねぇ〜」
「うん。よかった」
「ごっちんがミキティに教えたんだって」
「そうなの?」
「うん。今日帰りに教えてって言われた」
「そうなんだ。ごっちんには何かお礼しないとね」
「じゃあ、明日の掃除当番代わって」
「よし!じゃあ、ひとみ代わってあげなさい!」
「なんで私が代わらないといけないのよ!」
「だって、私クラス違うもん。ひとみは同じでしょ」
- 124 名前:delusion 投稿日:2006/06/23(金) 22:20
- ん?
「嫌だね。私関係ないもん」
「双子じゃん!」
あれ?どっちが同じクラスだったっけ?
「双子は関係ないでしょ!」
「一心同体じゃん!」
えっと、整理すると。
私はよしこと同じクラスで、よっすぃとは別。
「同じじゃない!私は私!」
「ひとみはヒトミ!ヒトミもひとみなの!!」
ミキティは私と同じクラスの吉澤さんのメールアドレスを教えてと言った。
「意味わかんない」
「理解するんじゃない!感じるの!」
どうやら私が教えたのは違うクラスの吉澤さんだったようですね。
「まあまあ、二人とも。それは冗談だって。幼馴染なんだからこれくらいのことでいちいちお礼なんていらないよ」
「ごっちんは良い子だ。ひとみも見習いなさい」
「おまえがな」
う〜ん。間違えたみたいけど、よっすぃが喜んでるみたいだからいいか。
- 125 名前:パム 投稿日:2006/06/23(金) 22:21
- 続きます。
>118
だいぶ空いちゃってごめんなさい。
ゆっくりですが、最後までやるつもりですのでこれからもよろしくです。
- 126 名前:名無飼育 投稿日:2006/06/24(土) 18:42
- わーい更新キタ!
やっぱ面白いっすねー
これからも待ってますよ
がんばってくださいね。
- 127 名前:decite 投稿日:2006/06/28(水) 04:20
- 結局、ヒトミの意味不明な強引さに押し切られて掃除当番を引き受ける羽目になった。
私は綺麗好きというほどでもないけれど、やりだすと徹底的にやるタイプなので、今は床に広がっている染みを雑巾で必死になって拭き取っている。
「よしこぉ〜、まだ終わんないのぉ〜」
「だったら手伝えよ!」
ヒトミは先に帰ってしまったが、ごっちんは何故か私を待っていた。
しかも、何もせずただ座って私の掃除する姿を見ているだけ。
「ごとぉーがやったら意味無いじゃん」
「意味はあるよ」
「何?」
「早く終わる」
「別に早く終わんなくてもいいもん」
ちくしょう、何の罰ゲームなんだよこれは。
大体この染みはなんだよ。こぼしたらすぐ拭けよ。
- 128 名前:decite 投稿日:2006/06/28(水) 04:20
- 「後藤さん」
扉のほうからごっちんを呼ぶ声が聞こえた。
私は机に隠れて誰だか見ることは出来なかったが、この声は間違いなく石川さんだ。
ど、どうしようかな。立ち上がったほうがいいかな。
でも、石川さんはごっちんに用があるみたいだし、ちょっとこのまま様子見ようかな。
「梨華ちゃんが理科室に来た」
だからなんだよ!それと慣れなれしく梨華ちゃんって呼ぶな!
「えっ?来ちゃまずかった?」
あっ、ごっちんのダジャレに気付いてない。可愛いなぁ〜。
「うんとね。梨華ちゃんと理科室の理科をかけたんだけど」
解説しなくていいよ、ごっちん。
「ああ、そういうことね。面白い」
石川さんは優しいなぁ〜。
「で、どうしたの?掃除中なんだよね」
してないじゃん!それに石川さんを邪魔者扱いするなよ!
「あのね。吉澤さんのメールアドレス教えて欲しいなあって思ったんだけど。いいかな?」
おおっ!!
教えろごっちん!!
- 129 名前:decite 投稿日:2006/06/28(水) 04:20
- 「うん。いいよ」
「ありがとう!!」
しかし、えらくあっさり教えるな。ちょっとはためらえよな。
「で、どっちの?」
「え?」
私の!私のを教えろごっちん!
この間はヒトミの教えただろ。次は私だ!
「あっ、そっか。双子だもんね。うんとね、カタカナのヒトミちゃんのほう」
あ゙ー。なんかまた振られた気分だ。なんだよ、カタカナのヒトミって!
いやいや、これは石川さんに言ったわけじゃないですよ。こんな紛らわしい名前を付けたママに言ってるんですよ。
「カタカナのヒトミ?どっちだっけ?」
ごっちーん!!いい加減にしろよ!
姉ちゃんのほうだよ!
いや、待てよ。ごっちんわかってないのか、よっしゃ間違えろ!私の教えろ。
「えっ?後藤さん幼馴染だよね?わからないの?」
「うん。双子だから」
「じゃあね、A組のほう。後藤さんとは違うクラスのヒトミちゃん」
「おー!そっちか。後藤は最近知ったのだ」
何を?
「何を知ったの?」
おっ!石川さんと同じこと思った!!
以心伝心ってやつだな。
- 130 名前:decite 投稿日:2006/06/28(水) 04:21
- 「後藤と同じクラスはよしこで、違うクラスがよっすぃということを」
「そ、そうなんだ」
今更かよ。
「違うクラスということはよっすぃだね」
「うん。そうそう」
ん?ちょっと待って、このままじゃヒトミのほう教えちゃう。
「はい。これよっすぃのアドレス」
「ありがとう」
「ちがーう!!!」
しまった。
思わず立ち上がってしまった。
二人ともこっち見てる。どうしよう。
「よ、吉澤さん。いたの?」
あっ、やばい。石川さん驚いてる。困惑してる。
うわぁ〜、やっちゃたよ。
- 131 名前:decite 投稿日:2006/06/28(水) 04:21
- 「あれ?ひょっとして後藤、間違えた?」
どうしよう。
う〜ん。まっ、いいや。押し通しちゃえ。
「違うよごっちん。違うクラスはよしこだよ」
「あれま。また、間違えた」
「しかっりしてよね。ごっちん」
「あはは。ごめんね梨華ちゃん。こっちだったみたい」
「そ、そうなんだ。ありがとう」
よし!やったぞ!ごっちんがアホでよかった。
「そ、それじゃあ。私行くね。ごめんね吉澤さん」
「梨華ちゃんバイバ〜イ」
ん?ごめんね?
何が?何で?どういうこと?
「よっすぃ、何で梨華ちゃん最後に謝ったんだろうね?」
「違う!私はよしこ!!」
- 132 名前:パム 投稿日:2006/06/28(水) 04:21
- 続きます。
- 133 名前:名無飼育 投稿日:2006/06/28(水) 20:29
- よしこなんだか健気でウケるよ
- 134 名前:despond 投稿日:2006/08/04(金) 03:19
- 今、0時過ぎたところです。
起きてます。
眠る気は一切ありません。
だって、石川さんからメール来ないんだもん。
普通聞いたんだから送るよな。
藤本さんなんてすぐ送ってきたじゃん。
まあ、石川さんのことだから、書いては消し、迷いに迷ってこれでよしってところで送信ボタンが押せなくて、
「どうしよう、どうしよう」なんて困ってるんだろうなぁ〜。
石川さんのならどんなメールだって構わないさ!
さあ、来い!恋よ来い!
「キモっ!!」
「いたのかよ!!」
ビックリして起き上がるとドアのところで仁王立ちしているヒトミがいた。しかも全裸で・・・。
お前は服を着ることを知らないのか。
「服着ろ!」
「藤本さんも家では全裸らしいよ」
だからなんだよ・・・。
「ちょっと、私の藤本さんで変な想像しないでよね」
「してねぇよ!誰がするか!」
しかし、石川さんはどうなんだろうなぁ〜。
全裸かな?
そんなわけないよな。
多分、ピンクの可愛いパジャマ着てるんだろうなぁ〜。
- 135 名前:despond 投稿日:2006/08/04(金) 03:19
- 「鼻の下伸びてるよ。気持ち悪い」
「うっさい!出てけ!」
「出てくけどさ、宿題終わった?頂戴」
「机の上にあるよ」
ヒトミは机の上に置いてあるノートを取ると思いきやイスに座った。
「ノートあるだろ。さっさと出てけよ」
「石川さんからメール来た?」
なんで知ってる。
「その感じだとまだ来てないみたいだね。てかさ、ひとみちゃん嘘ついたでしょ」
ぬおっ!
バレてる!
「そんなことしても意味ないでしょ。返って嫌われちゃうんじゃないの?」
だからメールが来ないのか?
「石川さんからメール来たらどうするの?私の振りして返すの?」
そうだよな。そういやそこまで考えてなかったよ。
う〜ん。どうしよう。
私がじっくり考えている間ヒトミは一点をじっと見つめていた。
私もその視線の先を見るとランプが点滅しているのに気付いた。
あっ、メールだって思って手を伸ばそうとした瞬間・・・。
- 136 名前:despond 投稿日:2006/08/04(金) 03:20
- 「あーーー!!」
「うぉー!なんだよ!」
すっぱだかのヒトミが飛び掛ってきたので思わず避けてしまい、点滅する携帯を奪われてしまった。
「メール着てる!」
「返せよ!」
「さて、さて、どんなメールが着たんだろうねぇ〜」
「ヒトミ!返せ!」
ヒトミに奪われた携帯を取り返そうと手を伸ばして掴むとそれはとっても柔らかい・・・。
ん?なんだこれ?
「きゃー!ひとみちゃんのエッチ!おっぱい触ってるぅ〜」
「気持ち悪い声出すな!服着ろ!」
「黙れひとみ!これは私に送ったメールだ!違うか?」
ちくしょー!
違わないけど、それは私の携帯なんだよ。私の携帯に石川さんがメールを送ったんだよぉ〜。
「まあまあ、泣かない泣かない。後で見せてあげるから」
うわぁ〜。せっかくの石川さんからの初メールをこいつ取られるなんて最悪だ。
- 137 名前:despond 投稿日:2006/08/04(金) 03:20
- 「う〜ん」
なんだよ。なんて書いてあるんだよ。
「はい、ひとみちゃん」
あら、意外とすんなり渡すんだね。
さて、どれどれ。
「ん?」
「それじゃ、私寝るね。宿題ありがとねぇ〜」
ちょっと待て。
なんだこれ?
「おい!なんだよこれ!『こんばんは。おやすみなさい』って!!」
「さあ?もう寝るってことじゃないの」
「返事返したほうがいいかな?」
「もう寝てるでしょ。やめときなよ」
- 138 名前:パム 投稿日:2006/08/04(金) 03:20
- 続きます。
- 139 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/16(水) 20:23
- ひとみちゃん頑張れ。w
続き楽しみに待ってます。
- 140 名前:date 投稿日:2006/09/08(金) 01:23
- 朝起きて最初にしたのはメールチェック。
メール1件あり。
開けて見ると「おはよう」だけ。
う〜ん。石川さんはメールできない子なのだろうか?
どう返していいのかわからなくてとりあえず「おはようございます」と返す。
しばらく待ってみたが返事は来ず。
とりあえず起き上がり、部屋の扉を開けると、目の前をもの凄い格好をしたヒトミが通り過ぎる。
コスプレ大会にでも行くのか。
どうでもいいことなので、無視して顔を洗って朝食を食べる。
「ねぇ、ひとみ。どうこれ?」
どうと聞かれてもなぁ。私はそっち関係は詳しくないからわかんないし。
でも、なんかのアニメで見たことあるような格好だな。
「いいんじゃない」
本当は良くないけど、そっち関係ならありでしょう。
「ホントに?よっし!じゃあ、行ってくる!!」
「いってらっしゃ〜い」
ヒトミはどこに行くのだろう。
まあいいや、問題は自分だ。
せっかくの日曜をどう過ごそうか。
1.石川さんを誘ってみる
2.ごっちんとどっか遊びに行く
3.だらだらとテレビを見る
1だな。とりあえず1だよな。
ダメだったら2があるし。
さらにダメだったら3があるし。
うん。完璧だ。
- 141 名前:date 投稿日:2006/09/08(金) 01:24
- では、早速メールを。
うーん。なんて書こうかな。
今までのメールからして簡単な文章がいいよな。
じゃあ、「今日は暇ですか?どこか遊びに行きませんか?」
よし、いいな。
いいかな?
まあいいや!送信!!
さてと、着替えるか。
「よっすぃいる?」
「いない」
「なんだいるじゃん」
「いないって!よく見て!!」
「あ〜。よしこか」
「本当にわかったの?」
「う、うん」
どっから入ってきたのかわからないけど2番のごっちんが来た。
ヒトミに用があるようなので、私はそのまま自分の部屋に戻る。
ごっちんはさっきまで私が座ってたイスに座って、私が残したコーヒーを飲んでいる。
飲むなよ。
- 142 名前:date 投稿日:2006/09/08(金) 01:24
- さて、どんな格好がいいかな。
石川さんはどんな服装でくるかな。
やっぱ女の子らしい格好だろうな。
意外と大人っぽい感じだったりして、おっぱい大きいからな胸元強調されたらたまらんな。
おっといかん鼻血だ。
中学生かよ、まったく。
とはいえ、本当にそうだったらどうしよう。
う〜ん。とりあえずティッシュ。
まあ、普段の格好でいいか。無理すると変になるし、例えば今日のヒトミみたいに。
ん?
まさかな。
そんなわけないよな。まさかあの格好で藤本さんとデートとかないよな。
あんなので現れたら問答無用で殴られるよ。
あっ、まだ、ごっちんいたんだ。
「ごっちん。ヒトミは出かけたよ」
「ああ、そうなんだ。じゃあ、よしこ遊びにいこ」
どういうことだ?
ヒトミがダメだったから私になったのか?
私も2番だったのか。そうなのか。
「残念だけど、私も出かけるから」
「ありゃりゃ。じゃあ、ここでテレビ見てよ」
3番も私と同じだったのか。
てか、帰れよ。
- 143 名前:date 投稿日:2006/09/08(金) 01:24
- 「ひとみー!!!」
あれ?早いな。もうコスプレ大会終わったのか。
「ちょっと!藤本さんに嫌われちゃったじゃんかよ!どうしてくれんだよ!」
あっ、藤本さんとデートだったのか、なんだそうだったのか。
って!
「ちょっと!ヒトミ!!鼻血!!」
「殴られたの!藤本さんに!!」
やっぱ殴られたのか。それで私も鼻血出したのか、まったく余計なところでシンクロしてくれたな。
「そんな格好してたら誰でも殴るよ」
「よくそんなこと言えるね。ひとみが良いって言ったから行ったんだよ!」
「いや私はコスプレ大会に行くのかと思って」
「誰がそんなとこに行くかよ!もぉ〜、どうしてくれるんだよ。確実に終わったよ」
「まあ、元気出しなよ。それじゃ、私はこれからデートだから。じゃあねぇ〜」
「ちょっと待て!!姉を置いて行く気か!!」
「ごっちんが相手してくれるよ」
「よしこ。メール着てるよ」
おっと、そうだった。そういえばまだ返事が着てなかったな。
どれどれ?
ん?
「ひとみどうしたの?」
あっ!ニヤけてる!
まだメール見てないのにわかってる!
「どうしたの?ひとみちゃん、デートでしょ。早く行かないと遅刻しちゃうんじゃないの?」
「やめやめ!!ほら、ハロモニ始まるよ!」
「そうだねぇ〜。仲良くみんなで見るとしますか。ね?ごっちん」
「ん??」
ちょっと石川さんのことがわからなくなりました。
「無理」って・・・。
二文字って。
- 144 名前:パム 投稿日:2006/09/08(金) 01:25
- 続きます。
- 145 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/18(月) 19:08
- 梨華ちゃんにバレちゃったのかな?w
続き楽しみにしてます。
- 146 名前:drop 投稿日:2006/10/04(水) 03:04
- なぜ、昨日あいつが来たんだろうか?
そして、なんであんなおかしな格好してきたんだろうか?
謎だ。バカだ。
「美貴ちゃん。おはよう」
ていうか、あんなにメールでは喜んでたくせに、いざ会うとなったら違う方が現れるとは一体どういうことだ。
「美貴ちゃん!!」
「なんだぁー!!」
「ご、ごめん。おはよう」
「はい、おはよう」
あれかな、照れちゃったのかな。
いやぁ〜ん。かわうぃ〜。
「美貴ちゃん?」
見た目は男の子ぽくて格好いいけど、やっぱ女の子なんだな。
恥じらいがあるもんな。おかしな格好して街中を歩いてくるあいつとは大違いだ。
- 147 名前:drop 投稿日:2006/10/04(水) 03:05
- 「美貴ちゃん!無視しないでよ!」
「なんだよ。今、考え事してるんだよ」
「昨日のデートどうだった?」
「それを今聞くのか?」
「え?うん。何かあったの?」
「梨華ちゃん。あいつはやめたほうがいいぞ。梨華ちゃんが恥をかくことになるぞ」
「どういう意味?」
「いや、ある意味お似合いか」
「どっちよ!」
「まあ、あいつのことなんかどうでもいいんだけど」
「ちょっと何よそれ」
しかし、おかしいな。
どうして姉が来たんだろう。
あっ、そいうや、あいつ美貴のこと好きだったな。
ひょっとしてひとみちゃんは気使って姉を行かせたのかな。
うん。姉思いのいい子だ。
だが、しかし、それは美貴にとっては余計なお世話だ。
そして、あいつも浮かれてのこのこと現れるなよな。
よし!ちゃんと、ひとみちゃんに言っておこう。
「ちょっと美貴ちゃんどこ行くの!授業始まるよ!」
- 148 名前:drop 投稿日:2006/10/04(水) 03:05
- 「えっとぉ〜。よしこが同じクラスでよっすぃが違うクラスと」
「そう。手帳に書いておけば間違えることないでしょ。わからなくなったらこれ見るんだよ」
「おー」
おー。じゃないよ。普通友達がどこのクラスかメモする奴なんていないだろう。
「あっ!えっと。どっちだっけ」
しかも、早速使うのかよ。
「よしこだ。よしこ、ミキティだよ」
「なにっ!!」
「や、やあ。ひとみちゃん。ちょっと」
もの凄い勢いで手招きされてるんですけど。
「よしこどうやら呼ばれてるようだよ」
「わかってるよ!ちょっと行ってくるよ」
- 149 名前:drop 投稿日:2006/10/04(水) 03:05
- 「あのぉ〜。どこまで行くんですか?もうすぐ授業始まりますよ」
「誰もいないとこ」
誰もいないとこ?
ヒトミだけじゃものたらず私も殴るつもりか?
やばいな、逃げたほうがようさそうだな。
「授業始まるんでまた今度にしましょうよ。それでは失礼しますね」
「あっ!ここ誰もいない。ここ入ろう!」
「ちょっと藤本さん」
完全に二人きりだ。
確実にやられる。
ならば、やられる前にやってしおう。
「あのね。ひとみちゃん」
「うおっとぉ!!」
「何してるの?」
「さ、さあ、どっからでもかかって来い」
「いいの?」
え?ダメだよぉ〜。
「じゃあ・・・」
あっ、ちょっと。やめて、マジで。
ん?
- 150 名前:drop 投稿日:2006/10/04(水) 03:06
- 「あはは」
おいおい、笑ってるぞ。
というか、これは・・・。
「あ゙ー!!!キスしたぁー!!」
「ちょっと、ひとみちゃん。そんな大声出さなくてもいいじゃんよ」
えっ?何これ。
なにこのハレンチ攻撃。
「じゃあね。今度はちゃんとデートしようね」
「あっ、はい」
「またメールするね。バイバイ」
「はい。バイバ〜イ」
って!手振ってる場合じゃないぞこれは。
キスだぞ。キス。
口と口がくっつく、そうこれがキス。
初めてだったらファーストキス。
ふざけんなっ!!
誰だのせいだ!
というか、あいつしかいないな。
- 151 名前:drop 投稿日:2006/10/04(水) 03:06
- 「ごぉぉおおーーちぃーーん!!!」
「おっと、何?大声出して」
「ごっちん。もう一個追加」
「なんだい?」
「ファーストキスを先にしたのはよしこ」
- 152 名前:パム 投稿日:2006/10/04(水) 03:07
- 続きます。
- 153 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/05(木) 13:42
- 何この可愛いおバカw
- 154 名前:devil 投稿日:2007/01/05(金) 04:41
- 私もヒトミも怖いもの知らず。
だって、この世で一番怖い人が近くにいるから。
それはママ。
私とヒトミを産んだママ。
そして、同じ名前を付けた張本人。
そのママが1ヶ月の出張を終えて今日帰ってくる。
「ひとみ。ビール買ってあるよね?」
「あるよ。大丈夫」
冷蔵庫にはぎっしりとビールが入ってる。
これで文句を言うようなら鬼だ。
「タローとハナは生きてる?」
「生きてるよ!!」
「よかった」
私達はまったく甘やかされず育てられてきたのにも関らず、この犬二匹には異常な程の甘やかしっぷり。
そのうち食うんじゃないのか。
「ところでさ、どっちがタロー?」
「わかんね」
- 155 名前:devil 投稿日:2007/01/05(金) 04:41
- この二匹の見分けがつくのはママだけで私達はわからない。
それなのにママは私達の区別がつかない。何故だ?
「何時に帰ってくるんだっけ?」
「もうすぐじゃないの」
「だから何時!!」
「落ち着けって!」
玄関の前で正座して待つ二人。
臨戦体制は整った。
いや、違うな。処刑台に上がったと言ったほうがいいか。
カチャリとドアの開く音が聞こえた。
私もヒトミも息を飲み込む。
手を繋ぐ私達。
ついに帰ってきやがった。
「「おかえりなさい」」
「あ〜、ただいま」
私達の膝の上に荷物を置き素通りするママ。
背後から「ハナちゃ〜ん」と声が聞こえてくる。
背筋が凍る。
- 156 名前:devil 投稿日:2007/01/05(金) 04:41
- 「ヒトミー!!ビール!」
早速飲むのかよ。つまみはタローか?ハナか?
「ヒトミ、ビールだって」
「いや、あの呼び方の感じからしてひとみだよ」
「違うよ。カタカナっぽかったよ」
「いいや。ひらがなっぽかった」
「ひとみ!!ビール!」
「ほら、ひらがなっぽいじゃん」
あれぇ〜?おかしいな。確かに最初はカタカナっぽかったのになぁ。
仕方なく私がビールを持っていくとママは犬二匹とじゃれてる。
「はい、ビール」
「どうも」
「ところでママ。お土産は?」
「ない」
- 157 名前:devil 投稿日:2007/01/05(金) 04:42
- 「「ええー!!ちょっと、ちょっとちょっと」」
「二人同時に喋んなや。双子っかつうの」
双子だよ。あんたが産んだんだろ。
「本当にないの?」
「ないっていってるやろうが!!欲しかったら自分買ってこい!!」
それじゃあ、お土産じゃないじゃん。
って、あれ?
「それは何?」
「これか。ええやろ。ハナとタローに似合うと思って買ってきた」
「「ちょっと、ちょっとちょっと」」
- 158 名前:パム 投稿日:2007/01/05(金) 04:42
- 続きます。
- 159 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/06(土) 01:33
- 何だこの母親www
- 160 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/06(土) 02:47
- 母、面白すぎ〜!!
- 161 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/06(土) 05:11
- これまた斬新な設定ですね。
- 162 名前:devil 投稿日:2007/01/17(水) 05:09
- 「あっ、裕ちゃんおはよう。帰ってたんだね」
朝、ごっちんが私の家に勝手に入って迎えにくるのはいつものこと。
だから、今日もいつも通りに家に勝手に入って挨拶をする。
とはいえ、何で人んちの親を名前で呼ぶかね。しかも、ちゃん付けで。
「ごっちん久しぶりやな。お土産あるで」
「あー!ちょっと待った!」
「なんやねん。朝っぱらうるさいな。飯はまだか」
「なんでごっちんにはお土産あるの?私には?」
「あんたにはない。ごっちんにはある。おかしいか?」
「おかしいよ!娘だよ。私はあなたの娘だよ」
「そうや娘や。育てるのに金がかかってんねん。土産なんてあるかボケ」
金はかかってるでしょうが、育てられた覚えはない。
ママの目玉焼きは焦がしておこう。
「はい、ごっちん。木彫りの熊」
いらねぇ!そんなのいらねぇ!
てか、ちょっと待った。
「ママ。大阪に出張してたんじゃないの?なんで熊なの?」
「そんな出張の間ずっと大阪にいるとは限らんやろ。北海道に旅行に行ってきたんや」
「仕事で?」
「旅行って言ってるやん」
「遊びなの?」
「お前はアホか。旅行なんやから遊びに行ってるに決まってるやんか」
「ずるーい!なんで私も連れてってくれないのよ!」
「金かかるやん」
うわぁ〜。酷すぎるぅ〜。
- 163 名前:devil 投稿日:2007/01/17(水) 05:10
- 「ひとみ。それよか飯はまだか」
焦がしてるんで時間がかかるんですよ。
「よっすぃ欲しいの?」
「いらないし、私はよしこ!」
「おっと、また間違えた」
「ははっ、ごっちんは相変わらずやな」
もう!まったく、どいつもこいつもいい加減にしろよな。
「木彫りの熊がいらないのはよしこ。と」
「ごっちん何書いてるん?」
「よっすぃとよしこを区別するために書いてるの」
ごっちん、ちゃんと持ってるんだね。そして、色んなことを書いてるんだね。
でもね、ヒトミも木彫りの熊はいらないと思うよ。
「なんやそれ。ちょっと見せて」
「いいよ」
ママもそれ読んで私達の区別付けてくれよ。
「ごっちん。この『ファーストキスを先にしたのはよしこ』って何や?」
ん?
「ああ、それね。よしこが書いとけって」
「あー!!!ママ!それはそのぉ〜、あのぉ〜」
「うっさいな。ごっちんに聞いとんねん」
「うん。だからね、あの別に、あのぉ〜」
「飯!」
「はい」
やべぇ。怒られるのも嫌だけど、からかわれるのはもっと嫌だ。
どっちに転んでもヤバイな。
- 164 名前:devil 投稿日:2007/01/17(水) 05:10
- 「誰とキスしたんや?」
「知らない。よしこ、誰とキスしたの?」
「さあ、誰でしょう」
「まあ誰でもええか」
興味ないのかよ。
娘がキスしたんですよ奥さん。
わかってるんですか?
「しかし、ひとみもあれやな。高校生になってようやくファーストキスか。しょぼいなぁ〜。そんな娘に育てた覚えはないんやけどなぁ〜」
しょ、しょぼいって…。
育てられた覚えはないから高校生になってキスしたんですよ。
「ひとみ、今度連れて来いや」
「誰を?」
「誰ってキスした奴に決まってるやろ。アホか」
「絶対ヤダ!」
「なんでやねんな。別にママ手出したりせぇへんって。てか、イケメンか?不細工やったら殴るで」
「どっちを?」
「さあ?どっちがええ?」
じゃあ藤本さん殴ってください。
藤本さんとママだったらどっちが強いかな。やっぱママかな。
藤本さん?
あー!藤本さんだった!
なんかすっかり忘れてたけど藤本さんだったじゃん。キスしたの。
したのっていうかされたんだ。どうしよう、そういやヒトミに言ってなかった。
ヒトミが知ったら怒るよな。それとも泣くかな。どっちだろう。
これはなかったことにしようかな。そうだな、ごっちんも知らないことだし。
- 165 名前:devil 投稿日:2007/01/17(水) 05:10
- 「あのね。ママ、そのぉ〜。キスは嘘なの」
「なんやエッチしたんか」
「してないよ!なんでそっちに行くの!」
「なんやつまらん」
なんで面白がるんだよ。
とはいえ、藤本さんとキスしたんだよな。
藤本さんキスした後のちょっと照れてて可愛かったな。
ああ見えてもやっぱ女の子なんだな。
「なんやひとみ。ニヤニヤして気持ち悪いな。キス思い出してんのか?」
「ち、違うよ!してないから!ごっちん、それ消しといて!」
「う〜ん。わかった。じゃあ、よしこは『キスしたと嘘言った』って書いとく」
うん。それでいいよ…。
というか、キスしたこと自体嘘であって欲しいよ。
ヒトミにばれないよな。
「ひとみ、目玉焼き焦げてるで。作り直せや」
- 166 名前:パム 投稿日:2007/01/17(水) 05:11
- 続きます。
- 167 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/18(木) 02:20
- 母、恐るべし!!
読んでてクスクス笑いが止まりません〜
- 168 名前:dog 投稿日:2007/02/16(金) 03:17
- ファーストキスはとても予想外。
思ってもない人から突然、激しく唇を吸い付かれ、舐められ。舐められ。舐められ…。
ん?なんか犬臭い。
「うわっ!誰だ、お前!」
こいつは悪魔の使いの一号だな。まったく、この部屋に勝手に入ってくるなよ。
二号はどうした?飯は食ったのか?悪魔はもう出かけたか?
うんともワンとも言わないなこいつ。
まいいや、お前も飯食うだろ?いい加減顔を舐めるのを辞めろ。私はご飯じゃない。
- 169 名前:dog 投稿日:2007/02/16(金) 03:17
- 「おはよう」
「おはようさん。もう一人のヒトミは寝坊ですか、偉くなったもんやな」
「だって遅くまで宿題やってたから。って!あー!!ママ!!」
「なんやねん。うるさいな」
「まだいたのね」
「あんたのほうがまだいたんか」
どういう意味?
ところで…。
「なんで熊があるの?」
「裕ちゃんからのお土産」
「大阪で熊なの?」
「北海道のお土産だって」
「あれ?出張って北海道だっけ?」
「ちゃうよ大阪」
「なんでそれで北海道のお土産なの?」
「もうお前ら面倒臭いな。旅行に行ってきたんや。仕事じゃなくて遊びで、それで金がかかるからお前らは連れてかなかった。文句あるか?」
「あ、ありません」
おい、お前のご主人様はお前らを置いて北の大地に行ったみたいだぞ。
なんか言ってやれ。
- 170 名前:dog 投稿日:2007/02/16(金) 03:18
- 「ヒトミ!!タローをいじめんな!こっちよこせ!」
ほう、お前がタローか。さあ、ご主人様のところに行け。私は犬臭い顔を洗ってくるから。
背後でおぞましい悪魔の声が聞こえてくる。やっぱそのうち犬食うんじゃないのか。
ひょっとして二号はもう食われたのか?なんか焦げ臭いし。
なんてな。こんなどうでもいいようなことを考えて現実逃避をするのはやはりの昨日の出来事の所為で、ひとみになんて言ったらいいのやら困ってしまってワンワンワワン。
- 171 名前:dog 投稿日:2007/02/16(金) 03:18
- ふぅ〜。あ゙ー!!すっきり。
うん、犬臭くない。
ところで、足が痛いのは気のせいだろうか。
うん、気のせいじゃない。ガッチリ噛んでる。
いつから私はこいつらのエサになったのだろうか。
とにかく離せ二号。お前らに食ってもらいたい人がいる。
さあ、こっちにおいで。
「ヒトミ!!今度は花ちゃんいじめたんか!こっちによこせ!!」
「違う!!いじめられたのは私のほう!ここ見て、くっきりバッチリ噛まれた痕あるでしょ!」
「何言ってんねん。可愛いキスマークやんか」
可愛いキスマークか…。
あっ!まさか、キスマークついてないよな。
大丈夫だ。落ち着けヒトミ。唇を思いっきり吸われただけだ。
唇にはキスマーク付かないよな。あれ?付くかな。付いてる?う〜ん。
「なんやねん。唇突き出して気持ち悪いな。お前はタコか。タコなのか?このタコ!!」
うおっ!三回タコ言われた。
3タコだ。
それがどうした。
はあぁ〜。
- 172 名前:dog 投稿日:2007/02/16(金) 03:18
- 「ねぇねぇ、よっすぃこの熊欲しい?」
「いらない!!」
なんだ突然。例えいらなくても、くれた人の目の前でそんなこと言うなよ。
相手は悪魔だぞ、呪われるぞ。殺されるぞ。
って、
「ごっちん何書いてるの?」
「ん?よっすぃも木彫りの熊はいらないって書いた」
「そんなこと書く必要があるの?」
「う〜ん。二人とも同じだからあんま意味ないね」
あんまりというかまったく必要ないじゃん。
ごっちんがいて良かった。ごっちんはいつも平和でいいなぁ。
まるで犬みたいだ。
「ねえ。ごっちん、ワンって言ってみて」
「なんで?」
「いいから」
ごっちんは私たちの犬だ。アホだけどいつも和ましてくれる。
いまいちご主人様の区別がはっきりついてないようだけど、それはゆっくり躾るとして、とりあえずワンと言ってみ。
そしたら、ご褒美になんかあげる。
「ぽん!」
ぽん?
- 173 名前:パム 投稿日:2007/02/16(金) 03:18
- 続きます。
- 174 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/17(土) 00:13
- 裕子ママ、自分的に思いっきりツボです〜。
- 175 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:03
- あの頃はまだ若すぎた。いや、幼すぎたと言うべきか。
好奇心が二つの命を持つことになった。
相手は私が妊娠したことを聞くと青ざめて逃げ出した。
喜んでくれると思っていたのに、若すぎるとはいえこれから二人で幸せな家庭を気付けると思っていたのに、私は不幸のどん底に突き落とされた。
それでも産んだのはやっぱり私の子供だから。
生まれた二人の赤ん坊の目はまん丸でくりっとした綺麗な瞳していた。私は迷うことなく名前をひとみにしようと思った。
しかし、どちらにひとみと名付けるか迷った。どちらも綺麗な瞳をしている。どちらにも相応しい名前。
だから、二人には同じ名前を付けた。
それに間違うことないし。
父親がいないことで哀しい思いもさせただろう。
けれど、それでくじけることのないように心を鬼にして厳しく育てた。
それは功を奏したと自負していいだろう。
立派に育った。わがままも文句の言わず、従順に私の言うことを利くようになった。
う〜ん完璧。何もかもが計画通り。
そして、今日、遂に長い年月を掛けた計画が終えようとしている。
- 176 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:03
- 「ねえ、ママ。お姉ちゃん達は何時に帰ってくるの?」
「もうそろそろやろ。早く帰って来いって言ってあるし」
「早く会いたいなぁ〜」
「ええか、ちゃんとやれよ。失敗は許されんからな」
「うん。わかった」
「ただいまぁ〜」
「ほら帰ってきた!って、ごっちん!」
「裕ちゃんただいま」
「おかえりって、ここあんたの家ちゃうで」
そうやった。ごっちんも一緒に帰ってくるのを計算にいれてなかった。
こいつは厄介だ。ごっちんも従順やけど純粋すぎるから厄介だ。
「あー!!!あややだぁー!!なんで?なんでここにあややいるの?」
ほら、やっぱり。
うちのこと思いっきり無視してるやん。
「あんたは驚かんでもええねん。ヒトミ達はどうした?」
「わあ、凄い。ねえ、握手して、サインして、写真とろう」
また無視しやがった。めっちゃ亜弥にがっついてるやん。ごっちんを驚かせるつもりはないっちゅうねん。
- 177 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:04
- 亜弥は二人を産んでまもなくして妊娠した。
家族や友達やら周りは驚いてたし、自分自身も驚いた。
その中で驚いていないのが二人いた。それがしゃくだったので、ここは一世一代の大ドッキリを仕掛けることにした。
亜弥がアイドルになることは想定外だったが、そのことを知った瞬間、めっちゃ心の中でガッツポーズした。
「あやや、サインして、ごっちんへって」
「うん」
「ねぇ。裕ちゃん見て、あややのサインだよ。いいでしょ」
「ああ、良かったなごっちん。ちょっと今日は家族だけで話すことがあるから帰ってもらえるか?」
「うん。わかった。じゃあ、あややは私の家行く?てか、行こう。ご馳走たくさん作るよ」
「なんで、亜弥連れてくねん。家族で話があるって言ったやろ!」
「ちょっとママ。・・・あっ!」
「ん?ママ?」
- 178 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:04
- 「あーーー!!ごっちん!何でもない!亜弥は今あれやから。ほら、ドラマやってるからついついママって言っちゃうねんって」
「ドラマやってたっけ?」
「これからや」
「でも、ママって普通に言うでしょ」
「うちがママの役やから」
「裕ちゃんいつの間に女優になったの?」
「もうええっちゅうねん!とにかく帰れや!!」
「う〜ん??」
「ほらほらしっし」
「じゃあ、裕ちゃんのサインも貰っておこうかな」
「あー!!もう、しつこいな!裕子!!これでええやろ!」
「ちょっと裕ちゃん!なんでおでこに書くのよ!」
ったく、ごっちんはアホなくせしてあなどれんな。
疲れた疲れた。
「ねえ大丈夫?」
「大丈夫やって、あの子アホやから」
「そ、そう」
ていうか、ヒトミ達遅いな。何しとるんやろ。
- 179 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:04
- 「お姉ちゃん達ビックリするかな?楽しみだなぁ」
「絶対ビックリさせてやる。何年待ったと思ってるんや」
「う〜ん。もっと早くにお姉ちゃんに会いたかったな」
「あかん。今やないとあかん。あの子らの年にうちが産んだんやから」
「ねえ。私のことはどうでもいいの?」
「ええやん。もうすぐ会えるんやし」
「もうぉ〜」
「「ただいまかえりました」」
「おっ!!!帰ってきた!!」
「えっ!?何?」
「はよこっち来い!」
「「はい!!」」
さて、これからヒトミとひとみがどういう反応するかな。とりあえずはごっちんと同じ反応やろうな。
「何ボケっとしてるんや。座り」
「「はい!!」」
ははっ。亜弥を見とる見とる。
さあ、第一声はなんやろうな。
- 180 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:04
- 「あれ?ごっちんは?」
「帰った」
「何で?」
「知らんがな。それよか他に言うことあるやろ!」
「うん。わかってる。でも、ちょっと待って」
何でうちが待たなあかんのや。
早く驚けや、目の前に芸能人いるやん。知らん人いるやんけ。
「どうしよう。ごっちんいないとちょっと恥ずかしいね」
「そうだね」
「意味わかんらん!それよりよか、こっち!こっち!」
「どうする?ひとみから言いなよ」
「なんでよ。一緒に言おうよ」
何をモジモジしとんねん。
あっ、あれか。芸能人目の前にして緊張してんのか。相変わらずヘタレやのう。
- 181 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:05
- 「ごっちん呼ぼうか」
「そうだね」
「ごっちんはもう済んでるからええって!それよか、もっとこっちを気にせい!」
「えー!!何でごっちんがママに言うんだよ」
「意味わからん!それよか、ほれ、こいつ見たことあるやろ」
「もうぉ〜。ごっちんって本当不思議だよね」
「お前らも十分不思議や」
「ん?何のこと?」
「もうええ。亜弥、挨拶して」
「はい。は、初めまして松浦亜弥です。お、おねえ…」
「じゃあさ、思い切ってうちらも言っちゃおうか」
「そうだね」
「何をブツブツ言ってんねん!今、亜弥が喋ってるやろ!」
「「ママ。いつもありがとう」」
えっ?何これ?
「えへへ。何かやっぱ照れるね」
「だね。ママ、早く開けてみてよ。絶対気に入ると思うんだよね」
- 182 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:05
- 「い、いや。そうやなくて、あのぉ〜。亜弥が、今」
「ははっ。ママ照れてる」
「なんかこっちも恥ずかしいね」
「何で?誕生日は来月やぞ」
「「今日が何の日か知らないの?」」
「母の日!」
「おっ!正解。ところで、君誰?」
「私もね、ママにプレゼント持ってきたの」
「ああ、いい子だね。じゃあ、早く帰ったほうがいいんじゃないの」
「はい。ママ、お姉ちゃん達に会わせてくれてありがとう」
「ん?ああ。ども」
「えっ?いやいや、えっと松浦さんでしたっけ?この人は私達のママであって、松浦さんのママじゃないよ」
「私のママだよ。そして、私はヒトミお姉ちゃんとひとみお姉ちゃんの妹だよ」
「「ん?」」
- 183 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:05
- 「あっ、これはティッシュカバーか。しかも、豹柄やし」
「ママ、ママ。それは後にして、どういうこと?」
「ありがとうな。ママが豹柄好きなこと覚えててくれたんか」
「うん。もちろん。それはとりあえず置いといて、この子は一体?」
「で、亜弥のは。これはブレスレッドか。綺麗やな」
「ママ!それは松浦さんのお母さんに渡すのだよ。勝手に開けちゃダメだって」
「どうや?似合うか?」
「うん。似合うよママ」
「ママって、やっぱりそういうことなの?」
「どうやひとみ?」
「う、うん。似合ってる。てか、これ高そうだね。それに比べてうちらは」
「ええって。金額やないから、気持ちが嬉しいって」
「それでママ。松浦さんとはどういうご関係?」
「ん?娘や。ええ娘を持ったなぁ〜」
「「むすめぇー!!」」
「そうだよ。お姉ちゃん」
「「お姉ちゃんですか」」
「うん」
「ママ、本当に?」
「えっと、ティッシュはどこやったっけかな」
- 184 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:05
- 「ママ、ティッシュは後でいいから座ってよ」
「なんでぇ〜。せっかく貰ったんやからつけたいやん」
「わかったから、ひとみ持ってきて」
「うん」
「で、ママ。何で今ごろ妹連れてきたの?」
「あんたら驚かそうと思ったんやけど、逆にこっちが驚かされっちゃな。でも、嬉しいわぁ〜」
「驚かそうって…」
「はい。ママ、ティッシュ」
「おっ、サンキュ。お〜、ええやん。ええやん」
- 185 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:06
- 「お邪魔するよぉ〜。ご馳走持ってきたよぉ〜」
「あっ!!ごっちん!大変だよ!妹が!」
「そうだそうだ。あややだよ。よっすぃよしこサイン貰った?」
「何でサインを?」
「何言ってるの。あややだよ。あのアイドルのあややだよ」
「「ん?」」
「にゃはは」
「「あーーー!!!あややだぁー!!」」
「今ごろ気付いたの?」
「ママ!!どういうことなのさ!」
「もう、うっさいな。ほら、ごっちん見てみこれ。ヒトミ達がプレゼントしてくれたんやで」
「いいねぇ〜。裕ちゃんに似合うよ」
「それと、これは亜弥からのプレゼントや」
「ねえ、松浦さん。本物なんだよね?」
「うん。でも、お姉ちゃんなんだから、松浦さんってのはやめてよ」
「なんで、あややからも貰ってるの?」
「だって、うちの娘やから」
「そ、そうだね。じゃあ、亜弥ちゃんでいいかな?」
「うん。お姉ちゃん」
「お姉ちゃんだってさ、ヒトミ」
「なんかいいね。ひとみはまともに私のことお姉ちゃんって呼んでくれないもんね」
「へぇ〜、そうなんだ。あややは裕ちゃんの娘だったんだ」
「そう。ビックリした?」
「うん。ビックリした。じゃあ、ご飯食べようか」
「してないやん」
- 186 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:06
- まさか驚かすつもりがこっちが驚かされるとはな。
でも、いい記念になったな。
女一人で頑張って育ててきた甲斐があったな。
「生まれてきてありがとうな。ヒトミ、ひとみ、亜弥」
「「えっ!?何?気持ち悪い」」
「にゃはは、なんかママ変だよ」
「なんかごとぉーだけ仲間外れみたい」
「よっしゃ!!今日はみんなで一緒に寝るぞ!」
「「ええ〜いいよぉ〜」」
「いいじゃん。お姉ちゃん一緒に寝よ」
「ま、まあ、亜弥ちゃんが言うなら。ね?」
「そ、そうだね」
「ごとぉーは?」
- 187 名前:daughter 投稿日:2007/05/25(金) 04:06
- 「よっしゃ。ヒトミとひとみはうちの両端な。んで、まあ亜弥は好きなほうの隣で寝ろや」
「え〜。何でぇ〜。私、真ん中がいい」
「ごとぉーは?」
「ええやん。別にどっちも似たようなもんなんやから、一人隣にいれば十分やろ」
「ちょっとママそれは酷いんじゃない?」
「ええやんけ!ママが真ん中や!」
「ごとぉーは?」
「はいはい。寝て、寝て」
「じゃあ、今日はヒトミお姉ちゃんの隣で寝る」
「よっしゃ!ひとみ残念だったねぇ〜」
「チッ。しゃあない。ごっちん隣きなよ」
「う〜ん。なんか変なの」
「ところでさ、何でごっちんのおでこにママの名前が書いてあるの?」
- 188 名前:パム 投稿日:2007/05/25(金) 04:14
- 終わりです。
中々、先がまとまらず、放置したままになるのもどうかと思い、この話「ダブル」はここで一旦終わりにさせて頂きます。
容量も丁度いいので。
見切り発車過ぎました。すみません。
今まで読んでくれていた方々ありがとうございました。
- 189 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/25(金) 05:21
- 完結(?)おめでとうございます。
終わってしまうのは残念ですが、今まで楽しませて下さってありがとうございました。
- 190 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/26(土) 00:39
- おでこにサイン、吹き出しました。さすが裕子さん〜
完結おめでとうございます、と言うのはかなり寂しいです。毎回とても楽しみに
していたお話でした。楽しい時間をありがとうございました!
- 191 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/26(土) 04:49
- >177の「亜弥は二人を生んでまもなく妊娠した」亜弥じゃなくて
「裕子」ですよね?(w
パムさんの書く小説は大好きですよ!。完結お疲れさまです。
次の新作も楽しみに待っています。
Converted by dat2html.pl v0.2