ライン
- 1 名前:Rink 投稿日:2005/11/23(水) 23:56
- はじめまして。
アンリアルで中編ものを書かせていただきます
登場人物は、後々明かします
よろしくおねがいします。
ではどうぞ
- 2 名前:1.不審者 投稿日:2005/11/24(木) 00:00
-
ブロロロロンッ カリカリカリカリ ポスッ、ポスンッ!
いつも停まる時はこんな音だ。どこか調子悪いのかな。
中古だし4年も乗ってるからなぁ。そりゃこんな音になるよ
- 3 名前:1.不審者 投稿日:2005/11/24(木) 00:01
-
深夜3時。
都心から少し離れた住宅街。街灯もまばらで夜になればひとっこ一人通らない。
刺すような風が、バイクを降りた途端止んだけど頬や指の先はジンジンする
「さむ・・・」
近くの公園でエンジンを切って、自分のアパートまで押していく
「お疲れ。ありがとね」
鍵をかけて、シートをポンポンと叩く。愛車はどこか安心したように見えた
- 4 名前:1.不審者 投稿日:2005/11/24(木) 00:02
-
カンッ、カンッ、カンッ、カンッ
今時ドラマにも出てこなさそうな築30年以上もボロい2階建てアパート
さび付いた階段から1番遠い、奥の部屋が自分の家。
「肩こった・・・」
このご時世、こんなボロいアパートに住むのは、よっぽど金の無い人間か、不法滞在者か。
自分は前者。
でも、ボロいわりにはトイレも風呂もついてる、6畳の和室と小さな台所。
小さいながらも、住めば都っていうしね。
2階に住むのは自分と、1つはさんだその隣に居る30歳くらいのヤンキー上がりっぽい人。
隣が空家だから気にしないけど、時々夜な夜な怪しげな声が聞こえてくるくらい。
- 5 名前:1.不審者 投稿日:2005/11/24(木) 00:03
-
カン、カン、カンッ
鍵をジャケットのポケットから取り出し、マフラーを外そうと顔を上げたら
暗闇に少しずつなれてきた目に入り込んできた、怪しげな物体。
- 6 名前:1.不審者 投稿日:2005/11/24(木) 00:05
-
え・・・えっと・・・
えぇ!??
何かの嫌がらせですか!?
客が置いていったのか!?
ピクリとも動かない
一応、人の形をした、その物体は、自分の家の扉のすぐ横でうずくまっていた
「あ、え・・・っと・・・」
そっと近づく
まるで忍者にでもなったかのように、忍び足、忍び足で・・・。
なんでこっちが気を使ってるのか、よく分からないけど
頭のどっかで、多分本能ってやつが
──触らぬ神にたたりなし──
そう発した気がした。
- 7 名前:1.不審者 投稿日:2005/11/24(木) 00:07
-
お願いだから死体じゃありませんように・・・。
顔を覗き込もうとしたけれど
体育座りで膝に顔をうずめているから確認できるわけもない。
よく見てみると、息はしてるみたい。
ダウンジャケットがゆったり上下しているのが分かった。
よかった。
死体じゃなかったことは良かったけど、問題が。
何でこの人はココに?
自分の家の扉の横に居るって子とは、自分に用があるってことだよね
だけど、起こして、例えば
「長年の恨みぃ!」とか包丁突きつけられたら・・・
──触らぬ神にたたりなし──
また本能が発した。
- 8 名前:1.不審者 投稿日:2005/11/24(木) 00:08
-
そうだ
朝になれば居なくなってる事を願おう。
人違いで
“あ、ここには人が居ないんだ、アタシの勘違い。キャハッ!”
って言ってくれる事を願おう
寒さからじゃない震えに堪えながら
極力音を立てないように、鍵を差し込もうとしたら
- 9 名前:1.不審者 投稿日:2005/11/24(木) 00:09
-
チャリンッ
オーーマイガーーーーーー!!!
「ん・・・んぅ」
更にNooooo!!
「・・・あ・・・あ」
輪をかけて、ウチってバカ!!
──触らぬ神に祟りなし。触ったお前に祟りアリ──
薄れ行く意識の中で、どこかで誰かの高笑いが聞こえた・・・
- 10 名前:2.コンタクト 投稿日:2005/11/24(木) 00:12
-
「あ、あの」
不審者がよろめきながら立ち上がる
「すいません、こんな時間に」
す、すっげぇ、高い声
耳がキンキンするぞ?
超音波?コウモリ?この時期にコウモリがココに止まったの?
嗚呼、なるほど。
自分には人に見えるけど、他の人にはコウモリに見えるんだな。
さっきの高笑いは昔のアニメの、黄金バットのあのヌハハハッて笑いだったんだ
幻覚が見える・・・そして幻聴も聞こえてる・・。アハハ、疲れてるんだな。
「あの!」
「・・・っへ?」
「だい、じょうぶ、ですか?」
心の叫びを思わず呟いてしまっていたみたい
不審者に心配されてる自分ってどうなんだ?
- 11 名前:2.コンタクト 投稿日:2005/11/24(木) 00:17
- 「あ、あの、いきなりで悪いんですけ」
「その前に!」
「は、はい?!」
思いっきり眉間にしわ寄せ、不審者の会話を遮った
「あ、あなた、誰ですか?」
おかしな質問の仕方だと思いながらも、そう聞かずには居られないこの状況。
たしかダッシュして2、3分のところに、交番はあったよな
でもあそこに警察官が居たためしないんだけども
ダッシュで入って内からかぎかけちゃえば問題ないか
家から交番までどうやって走るかを頭の中でシュミレーションしてると
超音波が、頭の中に響いてきた
- 12 名前:2.コンタクト 投稿日:2005/11/24(木) 00:18
-
「・・・分からないんです」
分からないんです・・・
わからないんです・・・
ワカラナインデス・・・
って
「はぁ!??」
- 13 名前:2.コンタクト 投稿日:2005/11/24(木) 00:20
-
め、眩暈がする。世も末だ。もうだめだ。
ああ、自分はこの不審者に脳みその回路を超音波でショートさせられて
殺されるんだ。死因なんて検死したってわからないんだ
明日の朝刊差し替えきくのかな
『寒空の中、謎の死』なんて一面じゃ出ないか・・・嗚呼
「どうやって来たかも、分からないんです」
神様、私の運命はどうなるんですか
「でも、ここに来れば分かるんじゃないかって・・・」
そういえば、神様に見放されたんだったっけ
「あなたに、会えば・・・分かるんじゃないかって・・・」
ぐっと下唇を噛んで、少し意を決したように
「だから」
不審者は胸の前で手を組んで、上目遣いで、目を潤ませながら
また超音波を発した
「助けてください!!」
「それはこっちのセリフだぁぁぁ!!」
- 14 名前:Rink 投稿日:2005/11/24(木) 00:23
- 今日の更新はココまでです。
登場人物の一人は、あの人です。
途中数箇所見づらくなってしまいすいません
次回からは改行を考えて見やすくするよう
務めますので、どうぞよろしくおねがいします
- 15 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/24(木) 20:33
- 読まさせて頂きました。
なんだか設定に惹かれまして、楽しみにしております。
次回更新待ってます。
- 16 名前:3.ひとりぼっち 投稿日:2005/11/24(木) 22:35
-
ガチャッ
自分の背後で、家のドアが少し開いて
ヤンキー姐さんがこっちを怪訝そうな顔で伺っている
「ヤバッ」
少し頭を下げて謝ると、鬱陶しそうな顔をしながらまた扉をしめた
「と、とりあえず、ここじゃあれだから・・・公園行こう」
「寒いのに・・・」
「素性の知らない人間を家に上げれるわけないでしょ!」
トホホ・・・今日は早く寝たかったのに。
上がってきたばかりの階段を、また下りて公園に向かった。
- 17 名前:3.ひとりぼっち 投稿日:2005/11/24(木) 22:36
-
ブランコとベンチとすべりだい。それだけの質素な公園。
街灯下のベンチに座るように促す
「ところで」
不審者の前に立って、上から見下しながら強い口調で
話を始めることにした
「名前は?」
首を横に振る
「歳は」
首を横に振る
右手に拳をつくりながら我慢した
こらえろ、自分。そう、お前なら耐えれる
この超音波声の女が織り成すメルヘン話に耐えれる
給料日前、一日パン1個で生活した日もあっただろ。
そう大丈夫、よし、大丈夫
「身分証とか」
また首を横に振る
フルフルッ・・・口が引きつる
- 18 名前:3.ひとりぼっち 投稿日:2005/11/24(木) 22:38
-
ブチッ
ごめんなさい、あっさり限界きちゃいました
「ってめぇ!ふざけんなよ!!」
「ふざけてません」
「っかぁぁ!なんかあんだろうよ!」
「持ってないんです・・・」
「じゃあどうやってきたかくらい分かるだろう!」
「電車で・・・だと思います」
「何で思い出せないかなぁ!?」
クールで有名な自分もすっかり取り乱させる、この不審者。
一体なんなんだよ!
「財布くらい持ってんだろうよ、なんで」
「記憶喪失なんです」
「って、・・・え?」
「・・・・・記憶が、無いんです」
「・・・あぁ・・・」
- 19 名前:3.ひとりぼっち 投稿日:2005/11/24(木) 22:38
-
不審者は、ゆっくり話しだした
気が付いたら病院だったそうだ
回りの人は自分の名前らしい事を呼んでいたけど、全く記憶がないから
どうする事も出来ない
退院後、家に帰っても記憶が戻る事がなく
仕事の上司や、見知らぬ人がいつも家に訪れてきては
記憶を取り戻そうと、あれやこれやと質問したが
手ごたえはまったくなく
だんだんと、その人たちに監視されている気分になってきた。
ある日、自分を取り戻す何かを探していると
部屋の引き出しから一通の手紙が見つかったそうだ
その手紙は焼け焦げていて、自分に関するヒントは書かれていなかったが
手紙を送ったであろう人の住所と名前が書いてあり
そこに行けば、何かが見えるんじゃないか・・・と。
- 20 名前:3.ひとりぼっち 投稿日:2005/11/24(木) 22:39
-
「それで、飛び出してきたってわけ」
「はい・・・」
「・・・その手紙見せて」
「・・・はい」
不審者はかばんの中から数枚の小さな紙切れを出してきた
小っちゃ!
こんなもんで分かるわけないじゃん
なんで焦げてんだよ・・・
その小さな紙切れには確かに自分の家の住所が書かれていたが
「・・・悪いけど、これうちじゃない」
「・・・へ?」
綺麗な目に涙をいっぱい溜めながら自分を見上げた
その顔は一気に暗色を示す
「『柴田あゆみ』ってなってんじゃん」
「あなたの名前は・・・」
「うちの名前は・・・・・」
正直初対面の人間に言うのは躊躇ったが
言わないと信じてくれないだろう
- 21 名前:3.ひとりぼっち 投稿日:2005/11/24(木) 22:40
-
「うちは吉澤ひとみ」
「よし・・・ざわ、さん」
「そう。ほら」
免許証を見せると、望みの綱を切られたかのように
諦めにも似たため息が不審者から漏れた
それにつられて、自分もため息が出る
「もう、ダメ」
せきを切ったように涙をボロボロこぼしながら、俯いた
記憶が無いってさ・・・
どう考えても、自分を騙してるようには、思えない
名前がわからない、年さえも分からない
見た感じ、自分とあまり変わらない気がする。
でも、持ってるものはブランド物で、いいところのお嬢さん風だ
- 22 名前:3.ひとりぼっち 投稿日:2005/11/24(木) 22:41
- 「ちょっと待ってて」
「・・・どこに?」
「寒いから」
そう言って自動販売機を指差すと、不審者はちょっとホッとした顔で涙を拭いた
置いていかれるって思ったのかな。
置いていきたいけど、どうせまたうちに来るんでしょ。
と少し毒づいて自動販売機に向かった
そういえばこの公園に人と来るのは初めてだったなぁ。
夜景ってほどじゃないけど、街の明かりが綺麗でよく一人で来てた
ホットのお茶を二本買うと、また公園に向かった。
- 23 名前:3.ひとりぼっち 投稿日:2005/11/24(木) 22:41
- 「・・・はい」
「ありがとう、ございます」
「アンタさ、家はどこよ」
「港区です」
「一人暮らし?」
「そうみたいです」
「仕事は?」
また首を横に振る
「入院してたとき、誰か来なかったの」
「仕事の、人が来てたみたいです、けど」
「分からないから・・・か」
「はい・・・」
「・・・どう、すっかなぁ・・・」
- 24 名前:3.ひとりぼっち 投稿日:2005/11/24(木) 22:42
- 途方にくれて、空を仰いだ
幾ら見知らぬ人だからって、女一人を外に置き去りにして
例えばここに置いといたとしてだ。
この不審者が強姦されて、ボロボロの状態で家の前で
"怨んでやるぅ・・・!"
なんて言いながら野垂れ死にされたら
完璧自分のせいじゃん!!ぐぁ!
思わず頭を抱え込んでしまった
「あ、あの?」
「ああ、ごめん・・・」
「いえ・・・私こそ、ごめんなさい」
「え?」
「突然訪れてしまって・・・行きますね」
- 25 名前:3.ひとりぼっち 投稿日:2005/11/24(木) 22:43
- そういうと、不審者はベンチから力なく立ち上がった
「行くって・・・」
「お茶、ごちそう様でした」
「電車とっくにないよ」
「でもこれ以上、吉澤さん、に迷惑かけたくないですし」
「(すでにかけまくりだよ・・・)」
「帰ります」
すると、なんとも場違いな音が静かな公園に鳴り響いた
きゅるるるるっ
「え゛?」
「ご、ごめんなさい」
さっきまで泣いてた顔が、一気に赤く染まっていく
「腹、減ってんの?」
「はい・・・朝から、何も」
今ココで帰したら、今度は飢え死んで、ドアの前でまた
"うらんでやるぅ!"
って、もういいよ!妄想は!
・・・乗りかかった舟だし、な・・・
- 26 名前:3.ひとりぼっち 投稿日:2005/11/24(木) 22:44
- 「・・・分かったよ」
「え?」
「き、今日一日だけ、一日だけ!泊めてやる」
幸い女だ。襲ってくる事もないだろ。家に金目の物なんて何にもないし。
「え!?」
ぱぁっと顔が明るくなる。
なんて分かりやすい人だ、まったく
「・・・飯、食わせてやっから」
「はい!!」
あー、嬉しそうだこと・・・人の気持ちもしらないで。
「とりあえず買い物行こうか。家、何にもないし」
「はい!」
名前も知らないこの女の人と
自分を知る人間は誰も知らないこの町で
奇妙な生活が始まろうとしていた。
- 27 名前:4.計算? 投稿日:2005/11/24(木) 22:53
- スーパーに向かう道すがら、女に尋ねてみる
「アンタの入院してるとき、どんな人きたの」
「多分・・・職場の、上司と・・・あまり覚えていません」
「家族は?」
また首を横に振る。
そんなに何度も振ったら首もげるんじゃねぇ?
「その時、名前呼ばれたでしょ」
「はい・・・でも、覚えがないし・・・その名前も忘れてしまって」
「手がかり一切無しか」
「すいません・・・」
「いいよ」
- 28 名前:4.計算? 投稿日:2005/11/24(木) 22:53
- 「・・・こんな時間にお店開いてるんですか?」
「ああ、24時間スーパーあるんだ」
「そうですか・・・いいですね」
「まあね。・・・アンタさ」
「はい」
「ああ、アンタっていつまでも失礼か・・・名前・・・」
「・・・・・」
俯いてまた暗くなってしまった
「んじゃ、あゆみでいいんじゃない?」
「え?で、も、それは差出人の」
「だってそれしか分からないじゃん」
「そう、ですね」
そう言うと、少し嬉しそうにした。
- 29 名前:4.計算? 投稿日:2005/11/24(木) 22:54
-
イラッシャイマセ
機械的な声とともに、自動ドアが開く
「まっぶしっ・・・」
思わず目を細めてしまう
「わぁ・・・」
隣では感嘆の声をあげてる人、約一名
明かりの下で見たら、この人結構可愛い顔してるんだな
冬前なのに黒いけど。
「どうした」
「いえ、なんでも、ないです」
そういうと、また俯いてしまった。
さっきからこの人、ウチのことビビリまくりじゃねぇ?
そんなに怖いかな。
そりゃそうか、ずっと威圧的だったからな
- 30 名前:4.計算? 投稿日:2005/11/24(木) 22:54
- 「アンタ・・・ああ、あゆみはなんか嫌いなものある?」
「え?」
「好き嫌い」
「特には」
「そう。」
スーパーの野菜たちを横目に、精肉コーナーに向かう
その途中の鮮魚売り場。
昼間の活気は何処へやら。
すっかり鮮度を落とし、半額シールが貼られて
捨てられるのか、なんてそんなオーラが漂ってる。
氷の溶けきった発泡スチロールの中じゃ、秋刀魚の目が淀みきっていた
「可愛そうに・・・」
「え?」
袋を手にとり、秋刀魚を入れる
- 31 名前:4.計算? 投稿日:2005/11/24(木) 22:55
- 「よし」
「明日の晩飯。今日は給料貰ったから肉を食う」
「はい!」
「嬉しそうだな・・・」
「だって・・・」
入院食が不味かったのか、そりゃそうだろ
「鶏が安い・・・。これでいいか。はい、終わり」
「え?これ、だけですか?」
「野菜は家に腐るほどある」
「あ、はい・・・」
また萎縮させちゃったよ(泣)
- 32 名前:4.計算? 投稿日:2005/11/24(木) 22:56
- 「あのさ」
「は、はい?」
「そんな、ビビんなくたって」
「すいません・・・」
「ビビらせたのはこっちだから、あれだけど」
「すいません・・・」
「もう、いいから」
「ごめんなさい」
「いいって」
「・・・はい」
会計をするために、レジに持っていく。
この時間はおじさんばかりで、品出しに追われている
「いつもありがとう」
「おじさん、風邪引かないようにね」
- 33 名前:4.計算? 投稿日:2005/11/24(木) 22:57
- そんな他愛ない言葉が、少しだけ嬉しくなる
レジを終えて、今夜の晩御飯の袋を手にして
とある事に気づき、ハッとする
秋刀魚、2尾買ってんじゃん・・・
ってことは、明日も?
気づかれないように、視線だけあゆみの方に向けると
「どうしましたか?」
「・・・なんでも」
「え?」
「・・・はぁ・・・明日も泊まっていっていいよ、この際」
「え!?」
おい、なんでそんな嬉しそうなんだ?
「秋刀魚」
「あ、2匹、買っちゃいましたもんね♪」
この女、気づいてわざと言わなかったな?
「どうしました?」
計算か!ニコニコしやがって!!!
もう、いいっす・・・(泣)
- 34 名前:Rink 投稿日:2005/11/24(木) 23:04
- 更新しました。
登場人物がそう言う状態なので、あえて伏せて居ました
今回で検討つかれたかと思いますが如何でしょうか。
>>15
ありがとうございます
更新は最低1週間に一度。
もしくは二日に一度のペースで頑張りたいと思いますので
よろしくお願いします。
- 35 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/25(金) 18:07
- 面白いですねぇ。
ちょっとこういった感じで始まるのは結構良いですね。
次回更新マターリ待ってます。
- 36 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:02
-
─ ─ ─ ─ ─ ─
- 37 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:03
-
カンッ、カンッ、カツンッ、カツンッ カンッ、カンッ
自分ともう1つの足音が階段に響く
鍵を差し込んでドアを開ける
「どうぞ」
「お邪魔、します」
「コタツ、つけていいよ。」
「あ、はい」
「コート」
「え?」
「かけるから、貸して」
「あ、はい」
- 38 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:03
-
さっそく遅いご飯の準備をする。
と言っても、もう新聞配達のバイク音が聞こえる時間。
自分以外の人間に料理なんて久しぶりだ。
「・・・あの」
冷たい水で手を洗い、やかんに火をかけると、あゆみが後ろから呼んだ
「なに?」
「なんで、そっちの電気つけないんですか?」
「節約」
「そう、ですか・・・」
- 39 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:04
- 肉を買ったものの、どう調理しようか悩んでると
後ろの部屋の電気が消え、一瞬真っ暗になる
「お、お!?」
パチッ
あわてて台所の電気をつける
「なんだよ、ビックリするじゃん」
「わたしも、こっちにいます」
「寒いんだから、コタツ入ってなよ」
「でも・・・一人で、居たくないんです」
なんだ?この甘えっぷりは
- 40 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:05
- 「はぁ・・・」
「お邪魔ですか?」
「別に」
「・・・吉澤、さんの、お話聞かせてください」
「うちの?」
「はい」
「なんもないよ」
「こんな夜遅くまで、お仕事、ですか?」
「うん」
軽快なリズムで野菜を切り始める
- 41 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:06
- 「なんの、お仕事、ですか?」
「バーテン」
「バーテン・・・」
「知り合いのコネで」
「かっこいい、ですね」
「そうでもないよ」
「いつも、こんな時間までですか?」
「今日は早い方。週末は、朝まで」
「体、もちますか?」
包丁を置いて、振り返る
「あのさ」
「は、はい・・・」
- 42 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:07
- 後ろで小さく座っている目が、また怯えた目になる
「あー、敬語無しで。」
「え?」
「敬語じゃなくていいから」
「でも」
「いいから」
「すいません」
「謝るのも、なし」
「すいません」
「またぁ・・・別に悪いことして無いじゃん」
「でも」
「もういいよ、あゆみの気持ち、わからなくもないし・・・」
「え?」
「・・・なんでもない」
- 43 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:11
- またまな板に向かう
「・・・吉澤さんは」
「あー、それもなし」
「え?」
「なんかむずがゆい、吉澤さんって」
「じゃ、あ、なんて呼べば」
「んー・・・」
あゆみと話しているものの、内容は右から左耳に抜ける
生返事で相槌を打つ。いつもの癖だ。
しかし、彼女は自分のそんなスタンスやペースを崩す
「ひとみちゃ」
「却下」
「・・・お友達から、なんて呼ばれてま、呼ばれてる?」
「んー、仕事のときはヨシ」
「ヨシ?」
「源氏名。」
「はぁ・・・」
「あとは、よっさんとか」
「よっさん・・・」
「そんな、もんかな」
- 44 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:19
- あっ!と小さく声を出す
何かいいものが閃いたのだろうか。
少し声を弾ませて、彼女は自分の名前を呼ぶ
「ひーちゃん」
「はぁ!?なにそのふざけた名前」
「だって、かわいいかなって」
「かわいいって」
「よっちゃん、ヨシ太郎、ヨシゾウ」
次から次へと新しい案を出していくが
どれも人前で呼ばれれば確実に睨み返すであろう名前ばかりだ
だれか、メルヘンな彼女の思考を止めてくれ・・・
「あ、あの、あゆみさん?名前変えすぎじゃないですか?しかも男名だし」
なんとかマシンガンを止める事が出来たみたい。
彼女は、うーん言いながらと暫く考えて、また口を開く。
- 45 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:21
-
「じゃぁ・・・ヨシコ」
- 46 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:24
-
ビクッ!
身体を振るわせて、動きが止まる
握っていた包丁をゆっくり置いて
彼女の方に向き直った
彼女は何かを察知したのか、じっと自分を見あげる
「だめ、でした・・・?」
「それは・・・マジで、パス」
「あ、はい・・・」
重い空気が漂う。
シュンシュンと、やかんから湯気が立ちこめた
- 47 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:31
- 「よ・・・ひーちゃんはいくつ?」
「呼び方、それに決定なんだ。はい」
冷蔵庫の横で体育座りをして
膝の上に顎を乗せてうずくまっているあゆみにマグカップを渡す
「え?」
「冷えるから。ジンジャーティだよ」
「あ、ありがとう」
彼女は猫舌なんだろうか
ひっきりなしにフーフーと息が抜ける音がする
「歳は19」
「血液型は?」
「O」
まるで気合の入らない合コンみたいに淡々と答える
店でよく見る光景を自分がするハメになるとは思わなかった
あゆみは熱っと小さく呟いて、質問を続ける
「家族は?」
「居ない」
「え?」
- 48 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:32
- 切った肉と野菜をフライパンに入れると
ジューっとおいしそうな音とにおいがしてきた
「7歳の時・・・事故で死んだ」
「・・・」
「運良く自分だけ助かったけどね」
昔言いなれた言葉を、今になってまた言うとは思わなかった
少しため息が漏れる
「ごめん、なさい」
「いいよ、別に」
「ずっと・・・一人で?」
「あぁ、うん・・・」
そこからは、話したくない
誰も知らない、自分の過去。
消したいけど、消えない
自分だけが知ってる、それが現実。
- 49 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:35
- 「これ、おいしいね」
暫くの沈黙のあと、あゆみが呟く
「そう?」
「うん、なんだかなつかしい」
「風邪とか、寒いときにいいんだって。店のママが教えてくれた」
「そうなんだ・・・料理、慣れてるね」
「まあ毎日してるから」
「そっか」
「あゆみは、まったく記憶無くしたわけ?」
「はい」
「んー、それじゃどーにもならないなぁ」
「はい・・・」
全くの他人事のような口ぶりに、あゆみが絶望の声で返事をした。
「入院中、どんな感じの人が来たか詳しく教えて。」
「スーツ来た人とか、女の人とか、同じ年っぽい派手な、人とか」
「スーツは上司、女性はともかく、同い年の人は友達・・・か」
「あとは・・・家族らしいひとが」
「似てた?」
「まぁ・・・」
「家族も、ショックだろうな」
「ええ・・・」
- 50 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:35
- フライパンの中の肉や野菜もしんなりしてきた
まるであゆみの気持ちを受け取ったかのように
「グスンッ」
「・・・辛いな」
「・・・グスッ」
「回りも、辛いだろうね」
「グスッ・・・ぃ」
「え?」
「・・・グズッ・・・いい、匂い」
「プッ」
記憶がないちゅーときに、大したもんだ。
- 51 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:37
- 「さ、冷めないうちに食べよう」
「はい」
「「いただきます」」
夜飯なのか朝飯なのかわからない時間、コタツに2人。
人が一人増えるだけで、この部屋がこんなに暖かくなるんだな
この家に誰かを迎え入れることも
誰かとご飯を食べるのも、初めてだな
割り箸ってとこは悪かったな。箸ぐらい買うかな
なんて思ってたら
「おいひぃ」
「そ?よかった」
ふっと口元がゆるむ
「・・・ひーちゃん、笑った」
「え?」
「初めて、笑ってくれた」
そう言いながら目を細めて、本当に嬉しそうにするあゆみも
自分と会ってから、初めての笑顔をみせた
「あゆみも」
「え?」
「嬉しそう」
「あ・・・。えへっ」
「さ、熱いうちに食え。」
「うん♪」
- 52 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:39
- ご飯を作ってくれたからと、皿洗いはあゆみがしてくれた
「風呂、入る?」
「あ、でも・・・」
「着替えがないのか」
「お風呂は、いい。今日は」
「そ。ウチも今日はいいや」
「はい」
「・・・あ」
「どうしたの?」
「なんでもない・・・布団敷くから、寝なよ」
「う、うん」
コタツを部屋のすみに立てて布団を敷く
空いたスペースにコタツ布団を置いて、包まるように寝転んだ
「え!?」
「なに」
「ひーちゃん、それで、寝るの?」
「布団一式しかないから」
「じゃ、じゃあ私が」
「いいから、さっさと寝な」
「・・・はい」
「おやすみ」
- 53 名前:5.接近 投稿日:2005/11/26(土) 17:41
-
パチンッ
外は徐々に明るくなってくる
昼夜反転が、自分にそっくりで時々鼻で笑ってた。
自分は一生、太陽の下を歩いちゃいけない
上も下も、右も左も分からない真っ暗闇な生活をしていたから。
それが、あの人にとっての、せめてもの、償い
それが、自分にとって、精一杯の罪滅ぼし
誰にも関わらず、距離を置いて
一人で生きていく
だけど、ほんの数時間前に家の前で蹲ってた
見ず知らずの人間と買い物のに行き
同じ場所で食事をし、そして隣で寝るんだもんな
自分が家に上げたとはいえ・・・
そんな事を考えてるうちに、意識が途切れた
長い一日が終わる
- 54 名前:6.ペット 投稿日:2005/11/26(土) 17:47
-
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 55 名前:6.ペット 投稿日:2005/11/26(土) 17:47
-
カタンッ カチャ、カチャ
「ん・・・んぅ?」
物音で目が覚めた。時計を見たら昼を少し回ったあたり。
「っだぁ・・・」
体のあちこちが痛い。なんでだ?
のっそり起き上がって状況を確認する。
悪いが寝起きは人一倍悪いのだ
「おはよう」
声のする方を見てみると、一人の女が立っていた
「起こしちゃった?」
「ん・・・誰・・・?」
「え?」
「え?」
- 56 名前:6.ペット 投稿日:2005/11/26(土) 17:48
- ちょっと待てよ、昨日を思い出せ
えっと、えっと・・・嗚呼。
そういやペットを飼いだしたんだっけか。ちょっと色黒の猫
時々コウモリになって超音波を発する変わった猫
「ああ、おはよ」
「お、おはよう」
「ごめん、寝起き悪くて」
「ううん」
あゆみはちょっと安心したように、また台所に向かった
「・・・んに、やってんの?」
「へ?」
「なにしてんの?」
「喉かわいかったから」
「そう」
あゆみが寝ていた布団はきっちり畳まれていていた。
布団を押入れにしまって、コタツを出す
「店いく前に服買いに行くか」
「え?!」
「幾らなんでも、2日連続風呂無しはキツイでしょ」
「うん」
「今日も帰り、夜中だからさ」
「うん・・・」
あゆみはちょっと寂しそうな顔をした
- 57 名前:6.ペット 投稿日:2005/11/26(土) 17:50
- 家にあるもので、適当に昼ご飯を作る。
大したものじゃないのに、あゆみは箸を進めるたび
おいしい声をあげと喜んでくれた
「帰らなくていいの?」
「・・・帰りたく、ないんです」
「なんで?」
「わからないから・・・」
「でもさ、心配されてるんじゃ」
「ひーちゃんには、悪いと思ってる。けど、怖いんです」
「怖い?」
ご飯を食べ終えた後、皿を洗いながらゆっくりあゆみが話し出す
「入院してたとき、人がたくさん来たけど、なんか、怖くて」
「記憶が無いから?」
「それよりも・・・」
「よりも?」
- 58 名前:6.ペット 投稿日:2005/11/26(土) 17:53
- また首を横に振る
記憶喪失の恐怖よりも、違う恐怖が勝ってるってか?
わからない。何をそんなに怯えているんだろう。
やかんを火にかけるために
洗剤を流している蛇口の水を少し拝借する
「記憶を取り戻したら・・・思い出したくないものも、思い出すんじゃないかって」
「思い出したくない、ねぇ」
「うん・・・」
あゆみの手が止まる。
ふとその手元を見ると、見たくないものが見えてしまって、視線をまたやかんに戻した
左手首のミミズ腫れ
少しまくった袖口からは、包帯が見え隠れしている
それで風呂入らなかったのか
もしかするとウチはとんでもない人を家に上げたんじゃないのか?
今更ながら、自分のお人好し加減を呪った
「はぁ・・・」
「どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
どうすんだよ。ヤバイ系の沙汰はもう勘弁だよ
軽い頭痛がした
- 59 名前:6.ペット 投稿日:2005/11/26(土) 17:56
-
─ ─ ― ― ― ― ― ― ― ―
- 60 名前:6.ペット 投稿日:2005/11/26(土) 17:57
- 「はぁ・・・」
「どうしたの?ヨシ。ため息なんかついちゃって」
「ああ、マリさん」
「恋でもしたのぉ?」
「違いますよ」
「そう?ちょっと影をもった哀愁漂う感じは恋よねぇ」
寂しそうな目をしながら自分を見送るペットを家に置いてきたけど
アイツの突拍子も無い行動力を心配して
思わずため息が漏れてしまったのだ
ここは、自分が働くバーのカウンター。
今日も開店準備に追われる。
- 61 名前:6.ペット 投稿日:2005/11/26(土) 17:58
- 「どうしたの?誰が恋したって!?」
「ヨシが恋したみたいなのよぉ。くやしぃぃ!」
「だれだれ!?何処の店の女!?」
「スナックバーバラのタエ?」
「あー、あの子ヨシに入れ込んでたからねぇ」
「やあだ、ヨシはノンケよぉ?」
「そうねぇ、あの子オカマだから」
「あたしたちもオカマじゃないのぉ」
そう、ここはいわゆるオカマバーなのだ
いつもテンションの高い店の人たちに付いていけず
結構疲れるんだけど
だけど、みんな暖かい人たちばかり。
- 62 名前:6.ペット 投稿日:2005/11/26(土) 18:01
- 「ほらほら、アンタたちも早く用意しなさい!」
「あ、ママ」
「はーい」
見た目はかなり色っぽいんだけど喋りだすと声はオカマさんで
でも心はかなり優しい店のママ。
とても面倒見がよくって、何度もこの人に助けて貰って
今では本当のお母さん(お父さんか?)のように慕っている
ママも我が子のようにしてくれる。
「どうしたの?ヨシ」
「え?」
グラスを磨く自分に、ママが話し掛けてきた
少しキツイ猫目をしているけど、その目はどこか嬉しそうだ
- 63 名前:6.ペット 投稿日:2005/11/26(土) 18:03
-
「ペットでも飼いだしたの?」
「あ、ええ。まぁ」
「まぁ、アンタのことだからどうせその辺で拾ってきたんでしょ」
確かに拾ったんだけどねぇ
「アンタお人よしだから」
「ええ」
そのおかげで厄介ごとに巻き込まれそうですよ、ママ・・・(泣)
「何処の男?」
「へ!?」
「店の子?」
「あ、いえ」
「犬じゃないの?猫だった?」
「・・・猫、ですね」
「まぁアンタにはこっちのケがありそうだとは思ってたけど、開花させちゃったのね」
「い、いや、訳がありまして」
「訳アリの猫なの?」
「んー・・・ええ、まぁ」
「そうなのぉ。アンタがついに落ちるとはねぇ。どんな猫か見てみたいわ」
「あ、あはは」
「なんかあったらいつでも言いなさいよ。アンタ抱え込む方だから」
「ありがとう、ございます」
さぁ、今日も働きますか
- 64 名前:Rink 投稿日:2005/11/26(土) 18:10
-
更新終了です
今日の深夜、もう一度更新しようかなと思案中。
それより自分の改行のミスや誤字脱字の多さなど、詰めのチェックの甘さにorz
ご意見などありましたらレスいただけると幸いです。
日々精進いたします。
>通りすがりの者様
ありがとうございます。
期待を裏切らないように、頑張りたいと思います
- 65 名前:konkon 投稿日:2005/11/26(土) 21:02
- 興味深い話しですね。
次も楽しみにしてます。
- 66 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/27(日) 01:33
- 最初思ってたよりも背景が複雑そうで、この後の展開が楽しみです。
- 67 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:46
-
- + - + - + - + - + - + - + - + -
- 68 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:47
- 4年前の真冬
自分はこの街に鞄1つで訪れた
身なりはボロボロ、泊まる所もなくホームレス一歩手前の生活をしていた
見た目は男だから声をかけてきた女の家に転がり込んだりして
なんとか暖を取ってたけど、この界隈の女は大抵ヒモがいるもんだ
ドガッ!バキッ! ドンッ、ガチャーン!
「今度手ぇ出したらこんなもんじゃねぇぞォ!!」
ヤクザがヒモの女についていくもんじゃない
マジで死ぬかも。
だんだんと記憶が薄れる中、そんな事を思ってた
「ありがとうございましたぁ」
「じゃあママ、また来るよ」
「はぁい、お気をつけてぇ〜」
「・・・ふぅ、今日もお疲れさま」
- 69 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:48
-
「・・・た・・・うぶ?」
どこかで声がする
「ちょっと、アンタ!」
誰かが自分を呼んだ気がした。
なんだよ、眠いのに、寝かせてよ
「そんなところで寝たら凍死するよ!」
「・・・ん・・・」
うっすら目を開けると、化粧の濃い姉さんが顔を覗き込んでいた
「アンタ、しっかりしなよ!」
「もう、いいよ」
「なに言ってんのよ!アンタまだ子供でしょ」
「・・・ゲホゲホ」
「ほら、立ちな!」
「離せよ!」
自分の腕を取っていた手を払いのけた
- 70 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:48
- 「このガキは・・・」
バシッ!!
あまりの勢いある張り手のせいで軽く1mほど吹っ飛び
ゴミの山に倒れこんだ
「・・・ったぁ、何すんだよ!!」
「フン、そんな元気まだ残ってんじゃないのさ。早く立ちな」
「ゲホ、ゲホッ」
「店の裏で野垂れ死にされちゃ、商売上がったりさ」
「オエッ、ゲホ」
「店で手当てしてやるから、ほら、着いて来な」
すこし歩き出したその背中に、何処にそんな元気があったのか
自分は腹の底から叫んだ
「そこの女ぁ!テメェ、殺す気か!」
すると、女は振り返りながら
「フッ・・・アタシは男よ?おじょーちゃん」
「・・・は?」
- 71 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:49
- 店は地下一階で、オンナ男に担がれてやっとこ階段を下りることが出来た
「お帰りなさい、ママ・・・ってその子なに?」
「きったなーい!」
「裏で死にかけてたの。ミチ、手当てしてあげて」
「はーい」
しゃがれた声で返事をする。数人がオモシロそうに顔を覗き込んでくる
これが、オカマってやつなのか・・・初めて見たぞ
「大丈夫?」
「あんた、どうしたの?」
「・・・殴られて・・・」
「まぁ、かわいそう!」
「ちょっと染みるけど、我慢しなさいよ」
「・・・っつぅ!!!」
「この子、元はかわいいんじゃない?薄汚いけど」
「ほら、じっとする!」
「ぐぅっ!」
「上脱げる?」
「え?」
「アンタの身体に興味はないのよ!骨折れてないか調べるだけよ」
「ミチは元医者だから信じていいわよ」
「は、はぁ・・・」
元医者のオカマ・・・知らない世界を一気に知りすぎて気絶しそうだ
ボロボロのジャケットとパーカーを脱ぐ
- 72 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:50
- 「まぁ、やっぱりアンタ女だったのね」
「ええ!?女なの?」
「やぁねぇ、だからマリは騙されんのよ!」
「失礼ね!」
そう言いながら、慣れた手つきで自分の腕や腹を探っていく
「んー、骨は大丈夫みたいね、内蔵も異常なし。はい、後ろ向いて」
言われるがまま後ろを向く
「背骨も大丈夫ね。血は出てるけど、口の中切っただけでしょ
ま、相手は素人でよかったじゃない」
「へぇー。そんな事までわかるのね。あんたやっぱり医者だったんだ」
「五月蝿いわよ!」
体中を消毒されて、ガーゼを張られる
「はい、終わり。服着ていいわよ」
「・・・あ。」
「あんた礼もちゃんといえないわけ?!」
「あ、りがとう、ございます」
「それでいいのよ」
そう言いながら元医者は頭を撫でてくれた
- 73 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:50
- 「・・・はい。コレでも飲みな」
ママの少し骨ばった手が、マグカップを渡してくれる
「え、あ」
「体冷えてんじゃないの」
「ありがとう、ございます」
カップの中は、薄めの紅茶が入っていて、一枚の生姜が沈んでいた
「ジンジャーティよ。温まるわ」
「・・・・・」
「飲みなさい」
カップの湯気の向こうでは、自分を軽々と抱えたママがカウンターで煙草をふかしていた
その目は、とても優しくて・・・
「あったかいな・・・」
自然と涙がこぼれてきた
「泣きたいときは、我慢せずに泣けばいいのよ」
涙は止まる事無く次から次へと溢れ出てきた
泣き止むまでずっと頭を撫でてくれた元医者のミチ
そばで寄り添ってくれたマリ
何も言わずに待ってくれていたママ
初めて会った人たちなのに、なんでこの人たちは優しいんだろうか
ボロボロの自分を、介抱してくれたこの人たちは・・・
- 74 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:51
- 店につれてこられたその日は、ミチの家で預かってもらう事になった
とりあえず傷が癒えるまでとのこと
「あたしだって、男連れこみたいわよ」
そう言いながら、苦笑するミチは
化粧を落とすと、普通のオッサンだった
その後ママに頼み込んで、年を偽り店で雇ってもらう事にもなった
ちょうどバーテンダーが居なくて困ってるところだったからだそうだ。
それに、ママの着ていた着物に、自分の血がついてしまい
「弁償してもらうからね。暫くタダ働きよ!」
着物が加賀友禅だという事を知った自分は血の気が引いたが
笑いながらそういうママは本当に優しかった
そして、最近空き巣にあったということもあり
約1年間ほど店の警備と称して泊り込みで生活をする
- 75 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:52
- 「え?何で介抱したかって?」
店で働き出し、少しずつ慣れだした頃
ママに聞いてみた
「はい・・・」
「そんなの決まってるでしょ。アンタをみて、あたしたちと一緒って思ったのよ」
「一緒・・・?」
「この店に居る子達は、みんななんかを背負ってるのよ」
「背負う・・・」
「そう。・・・ミチは大学病院の医者だったけど、医者の連盟みたいなのに知れ渡っちゃってね」
「はぁ」
「アツコは親から勘当されて、殺されそうになって家出をしたの。」
「・・・・・」
「マリは前の男に金取られて何百万の借金。あたしはあたしで嫁も妻も居るのよ、冷め切ってるけどね。
アンタも似たような目をしてたのよ」
「そう、ですか」
「みんな、そういうの言わなくても分かるの」
「そう、なんだ」
「アンタも、言えるようになったら、言ってきなさい」
「はい・・・ありがとうございます」
- 76 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:52
-
- + - + - + - + - + - + - + - + -
- 77 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:53
- この店で働き出して丸三年ほど経った
店子も新しい人が来たり、常連もたくさんいる
「ヨシがきてから、店の羽振りいいわよねぇ」
「ヨシ様々よぉ」
「ヨシ目当てのお客もいるしねぇ」
「ヨシー!競馬予想してくれー」
「ヨシくーん、また来ちゃったぁ」
「ヨシ君、あたしに何かお酒作ってぇ」
こんな生活も、悪くない
一瞬だけ、忘れる事が出来るから
- 78 名前:7.出会い 投稿日:2005/11/27(日) 03:53
- 一日の営業も終わり、閉め作業をしているときにママに声をかけた
「ママ、急で悪いんですけど、次の火曜日休ませてもらえませんか」
「あら、めずらしいわね、アンタが休み欲しいって」
「ちょっと」
「猫?」
「あ、え、ええ」
ママに昨日あった出来事を大まかに話した
「なるほどねぇ。そりゃアンタも参るわね」
「ええ・・・」
「分かったわ。休みにしてあげる。その日はお客もまばらだろうし。」
「ありがとうございます」
- 79 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 03:56
-
― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
- 80 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 03:57
-
ドルルルルルッ カリカリカリカリ ボスッ、ボスンッ!
深夜3時前。
いつものようにアパートの下にバイクを止める
部屋を見上げると電気がついている
あれ・・・?なんか大量の煙が台所から・・・
火事!?ちょっと、やめてくれ!
カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!
鍵が出てこなくて手間取る。ああくそ!アイツ窒息死してんじゃないだろうな!
- 81 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 03:58
- やっとの事で出てきた鍵を乱暴に回し
勢いよく、扉を開ける
「おい!大丈夫か!!・・・って」
「あ、ひーちゃん。お帰りなさい」
「火事・・・じゃ、ないの。良かった・・・」
「そろそろ帰ってくると思って、ご飯作ってたんだけど・・・」
あゆみの手元にあった魚焼きの網の上には
真っ黒になって原形を留めていない秋刀魚が。
「あ。あああああああ!秋刀魚がぁ・・・」
ホッとしたのと、哀れな秋刀魚のせいで、膝から崩れ落ちた
「ごめんなさい・・・」
「いや、いいよ・・・」
「捨てますね・・・」
菜箸で秋刀魚をつまみ、三角コーナーに運ばれそうになっている
「待て!!」
「え?」
「食べるよ」
「でも、真っ黒だし」
「あゆみがせっかく焼いてくれたんだから」
「はい・・・」
「もう一匹は焼いてやるから、とりあえず座って待ってて」
- 82 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 03:58
- なんで一匹ずつ焼いたのか分からない。これも計算か・・・?
コタツの上には秋刀魚とご飯と味噌汁
自分の方の秋刀魚は真っ黒で、あゆみの方はそりゃキレイに焼けた秋刀魚が。
「「いただきます」」
黒くなった部分をよけて食べる
「にがっ」
「ごめんなさい」
「いいから」
「はい・・・」
「料理したことないの?」
「多分・・・」
「ま、慣れの問題だから」
「はい」
- 83 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 04:01
- 立ち上がって台所の床に置いていた小さなお碗を持ってきて
秋刀魚の焦げてないところを入れる
「何するんですか?」
「外の猫におすそ分け」
「あ、じゃあ、わたしのも・・・」
「あんたはいいから」
「でも」
「んじゃウチにちょうだいよ」
「あ、そう、だね」
あゆみは自分の秋刀魚を切り取って、皿の上に乗せてくれた
「それくらいでいいよ。あゆみのぶんなくなるでしょ」
「あ、うん」
「さっさと食べなよ。飯は熱いうち」
「うん!」
- 84 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 04:01
- 食事も終わり、あゆみが皿を洗っている間に外の猫にご飯をあげに行った
駐輪場の隅っこのダンボール入れたバスタオルに埋もれている小さな猫
「ほら、飯だぞー」
ニャァとうれしそうにご飯を食べる
「ごめんなぁ、いつも少なくて」
相当おなかがすいてたのかがっついている
「アパートに入れれないからなぁ・・・寒くないか?」
またニャァと鳴いた。大丈夫って言ってるみたい
カツンッ、カツンッ、カツンッ
「野良猫?」
あゆみが後ろから覗き込む
「そこで死にかけてたんだ」
「そうなんだ」
「家には上げれないからさ、しかたなく・・・」
「でも、ココなら風も当たらないし」
「うん」
「ふっくらしてるから、大丈夫そう」
「だね」
- 85 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 04:03
- ご飯を食べ終えた猫がまたバスタオルに埋もれていった
「はは、相変わらず愛想ないなぁ」
「・・・名前は、ないの?」
「名前?」
「うん」
「ノラにつけてもなぁ」
「でも・・・名前って、大事」
「・・・んー、白いし、シロ」
「プッ、クスクス」
肩越しにあゆみをみると、手を口に当て
肩を揺らしながら笑っている
「なんだよ、悪かったね。ボキャブラリーなくて」
「ううん、なんか、ひーちゃんらしいなって」
「なんだよ、ウチらしいって」
「ストレートってこと」
「んじゃ、あゆみはなんかいい名前付けれるのかよ」
「ん〜・・・白いけど、ちょっと茶色だから・・・ミルク」
「は?」
「ミルクティ色だから、ミルク」
「ティはないのかよ」
「いいの!ねぇ〜?ミルク」
喉を撫でながら嬉しそうに目を細める
猫も名前が気に入ったのか、ニャァーと目を細めて笑ってるようだ
「ミルクティに、エスプレッソ」
「なに?」
「あ、ううん」
そこまで色黒じゃないか
言ったら泣かれそうだからやめよう
- 86 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 04:04
-
カン、カン、カツン、カツン
「それよりさ」
「なに?」
「今度の火曜、仕事休みにしてもらったから」
「え?」
「不動産屋行かない?」
「不動産」
「ここを紹介してくれたところ」
「え・・・」
「柴田さんのこと、分かるかもしれないし」
「そっか。そうだね」
「そうと分かったら、とっとと風呂入って寝る」
「あ、はい」
「包帯替えてあげるから」
「あ・・・」
ちょっとばつが悪そうな顔をして俯いた
- 87 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 04:05
- 部屋に戻り、先に入るかどうか譲り合いをしたが
あゆみを先に入れることにした
「あ、あの、お風呂いただきました」
「ちょっとまってて、すぐ出るから」
5分もしないうちに風呂から上がって、部屋に戻る
「は、早いね」
「長風呂好きじゃないから」
あゆみに貸したトレーナーとジャージが少し大きいせいか
なんだか更に情けない姿のあゆみが布団の上にちょこんと座っていた
「上、脱げる?」
「あ、うん・・・」
トレーナーを脱いでTシャツ一枚になり、包帯をほどくと生々しい傷が主張していた
「血は、出てないんだね」
「はい・・・」
「染みたらごめん
消毒液を傷に吹き付ける
「ったぁ」
「我慢」
「ひゃい・・」
ぐっと下唇を噛んで堪えてる
濡れた髪の間から見えている、潤んだ目が閉じられた
色っぺー・・・
「・・・あれ?ひーちゃん?」
「あ、ごめんごめん」
思わず見惚れて、手が止まってしまった
「ところでさ、これ、何の怪我?」
- 88 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 04:06
- ぐっと閉じられていた瞼が、ゆっくりと開く
「襲われたって・・・」
「・・・え?」
消毒液が染みるのか、ときどき顔ををしかめながら
あゆみは話し出す
「夜、帰り道、誰かに
後ろから、急に、殴られたらし、くって
でも、ごう、かん、されたわけじゃなくって
ただ、ずっと、殴られた、みたいで
家の前で、倒れてる、のを・・・同じマンションの人が見つけて」
「もういいよ」
「え・・・?」
「ごめん、もういいから」
「・・・それが、ショックで、記憶を無くしたんじゃないかって」
「そっか」
だから、記憶を戻す事を躊躇ってしまうのか・・・
- 89 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 04:07
- 「いいの・・・?」
消毒液を置いて、ガーゼをあてがう
「え?」
「明日」
「・・・」
「記憶、戻すかもよ」
「・・・でも、このままじゃ、いけないと思う」
「ん・・・」
「怖い、けど・・・自分が、誰か、自分で突き止めたいの」
記憶を取り戻すことを拒み、だけど自分のありかを探そうとしている
二つの思いを同居させながら、前に進もうとしている
包帯を腕に巻きながら、言葉を漏らした
「・・・強いね」
「へ?」
「・・・ハイ、終わり!」
「あ、ありがとう」
- 90 名前:8.接点 投稿日:2005/11/27(日) 04:07
- 昨日と同じように布団と、コタツ布団を並べる
「おやすみ」
「おやすみ」
彼女の傷跡が脳裏に焼きついて離れない
恐怖を目の当たりにして、それでも泣かずにぐっと耐えながら
ぽつりぽつりと話す彼女を思い出しながら
夢を見た
- 91 名前:8.淡い夢 投稿日:2005/11/27(日) 04:08
-
"・・・ヨシコ・・・・・"
"ヨシコってば・・・"
- 92 名前:8.淡い夢 投稿日:2005/11/27(日) 04:09
-
「!!」
驚いて目を覚ました。いつの間にか寝てたみたいで
体を起こしてみると、寝汗の量にびっくりする
「はぁ・・・はぁ・・・夢、か」
「どう、したの?」
「ごめん、起こした?」
布団から顔を出したあゆみの少し擦れた声がする
「ううん、寝れなくて」
「そっか」
「怖い夢でもみたの?」
「・・・違うよ」
起き上がって、台所に水を飲みに行く
「ふぅ」
グラスを置いて、右の手のひらを見つめた
封印していた昔の出来事。
久しぶりにみた、あの夢
夢だけど、現実
「・・・現実」
- 93 名前:8.淡い夢 投稿日:2005/11/27(日) 04:09
- あの夢を見た日は、いつも眠れずに何度も朝をむかえる
いくら逃げても追いかけてきて、いつのまにか自分を包み込む大きな闇
全てを飲み込んで、大きな穴の中に引きずり込まれるんだ
- 94 名前:8.淡い夢 投稿日:2005/11/27(日) 04:10
-
"・・・ヨシコ・・・"
- 95 名前:8.淡い夢 投稿日:2005/11/27(日) 04:10
- 布団に戻るとあゆみが心配そうにこっちをみた
「大丈夫?」
「・・・・・」
「ひーちゃん」
「大丈夫、早く寝なよ」
「う、うん・・・」
布団を被るものの、眠くなるはずがない
「・・・ひーちゃん」
「・・・に?」
「一緒に、寝ない?」
「はぁ!?」
思わずあゆみと向き合って見つめてしまった
「だめ、かな」
「ガキじゃあるまいし」
「・・・だって」
「・・・・・なに」
「・・・わたしも、怖いんだもん」
- 96 名前:8.淡い夢 投稿日:2005/11/27(日) 04:11
- ── わたしも 怖い ──
- 97 名前:8.淡い夢 投稿日:2005/11/27(日) 04:11
- 「・・・そっか」
「だから、はい」
あゆみは布団を少しまくって、自分を迎え入れるようにした
「いいって」
「はやくぅ」
「キショイ!」
「もぅ!寒いんだから」
「ったく・・・」
布団のすみにそっと入る
誰かと一緒の布団に寝るのとか、かなり恥ずかしいんだけど
「もっとくっついてよ」
「なんでよ」
「寒いんだからくっついた方があったかいよ?」
「いいから、早く寝ろってば」
- 98 名前:8.淡い夢 投稿日:2005/11/27(日) 04:12
- あゆみに背を向けて隅っこの方で小さくなってると
背後で何かが近づいてくる気配がした
「ちょ、ちょっと!なにしてんの」
「なにって、ぴったりしてるの」
「アンタ、バカ?」
「なによぉ」
「おっかしいんじゃない?」
「寒いんだもん!」
「だもん!じゃないよ・・・」
「・・・安心、しない?」
「なにが」
「誰かのぬくもりとか、さ」
「・・・・・」
「火曜日・・・」
「うん・・・」
「怖いけど、ひーちゃんと一緒なら、怖くないと、思う」
- 99 名前:8.淡い夢 投稿日:2005/11/27(日) 04:12
- 顔だけをあゆみの方に向けると、まっすぐこっちを見て続けた。
「わたし、ひーちゃんが、ひーちゃんで・・・良かったって思ったの」
「何それ?」
「もし、ここに来て、変な人だったらどうしようと思ったの」
身体を少しだけあゆみのほうに向ける。
「怖かったけど・・・でも、今日も、心配して、慌てて走ってきてくれたし」
「あ、ああ・・・」
「なんか、うれしかった」
顔をうずめるように、寄り添ってくるあゆみを見て
いつの間にか肩に入っていた力がふっと抜けていった
「ありがと」
しばらくして、規則正しい寝息が聞こえる
「ありがとう、ねぇ・・・」
カーテンから漏れる明るんできた光を、瞼で遮った
- 100 名前:Rink 投稿日:2005/11/27(日) 04:19
- 長め更新、終了です
今朝方、作者の夢に超音波声のあの方が出てきました。
色んな意味でビックリ、ビックリ。
>konkon様
ありがとうございます。
ご期待に添えれるよう頑張ります
>名無飼育様
作者自身も、複雑な臭いがプンプン漂ってきて
正直結末が・・・(汗
今後もよろしくお願いします
- 101 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/27(日) 15:23
- 更新乙です。
あゆみ(と呼ばれてる人)の過去と、ひとみとあの人の関係すっごい気になります。
次回更新期待して待ちます
- 102 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:45
-
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 103 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:47
- 火曜日
「まったく・・・」
「だって、わたし、寝相悪いんだもん」
「知ってるよ!」
結局、あの日以来
あゆみと1つの布団で寝ることになった
しかし、あゆみは相当寝相が悪く、布団を足で挟むという
なんとも鬱陶しい技を毎晩披露してくれる
そのおかげで朝には布団がなく
寒さで目が覚める。
それだけならまだしも、昨日なんて
うとうとして、寝れるなと思ったら
あゆみからの強力なラリアットを首にお見舞いされ
更に寝付けなくなってしまったのだ
『い、いってぇ・・・マジで殺す、このオンナ・・・』
- 104 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:47
- 「絶対、一緒になんか寝ない」
「そんなこといわないでよぉ」
「もういいから、さっさと支度しなってば!」
「はぁーい」
- 105 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:48
-
カンッ、カンッ、カツンッ、カツンッ
こんな昼間に出かけるなんて何年ぶりだろうか
この季節には珍しく、朝から雲ひとつない空
「はい」
傷がついて、ちょっとボロってるヘルメットをあゆみに渡した。
「え?」
「バイクで行くから」
「あ、でも私乗ったことない」
「歩いて行く?2時間はかかるよ。電車でも駅から遠いから1時間」
「・・・乗ります」
- 106 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:48
-
ドルンッ、ドッドッドッドッドッ
おぼつかない雰囲気でシートを跨ぐあゆみ。
ヘルメットがあまりにも不似合いで噴出してしまった
「なによぉ!」
「なんでもないよ、プッ」
「もう!」
「なんかそう言う動物いるよな。ププッ」
「なによ!動物って!」
頬を少し膨らませて、肩をポカポカ叩いてくる
「しっかりつかまってなよ」
「ちょ、ちょっと、どこにつかまればいいの!?」
「好きなところどうぞ」
- 107 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:49
- そういうと、あゆみは自分の首を両手で締め付けた
「・・・テメェ、マジで殺すぞ」
「おかえしですぅー」
「肩とか腰とか色々あるだろう!」
「じゃぁ・・・」
あゆみは恐る恐る両脇に手を添えた
「しっかりつかまってなよー」
ドルンッ! ドドドドドドドッ
「キャーーーーーー!」
- 108 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:49
-
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 109 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:53
- 途中、とある店に寄り
30分後なんとか不動産屋前に到着
着いた時には、二人ともぐったりしていた
「「疲れた・・・」」
「なんであゆみが疲れるんだよ!」
「だって、あんな早いの、誰だって怖いじゃない!」
最近気づいたが、あゆみは意外と負けず嫌いだ
些細な事で軽くケンカが始まってしまう
でも、いつも自分が言い負かせたり流したりするんだが
今日はさすがに・・・
「安全運転したでしょ!ギャーギャー叫びやがって」
「仕方ないじゃない!乗ったことないって言ったでしょ!」
「アバラ折れるかと思った」
「そ、そんなに強く抱きついてないじゃん!」
「あー、イタイイタイ」
「・・・・・」
- 110 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:54
- 勝ち誇った目で少し見下ろすと
またブーッと何かを我慢するように頬を膨らませた
あんまり長引かせて、へそ曲げっぱなしも困りものだ
「・・・プッ。はいはい、帰りは原付法定速度で帰ってあげるから」
「・・・・・」
「とりあえず、中に入ろ。本題前に疲れてちゃ意味ないし」
「うん」
- 111 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:54
-
カランコローン
事務所には誰も居ないみたい。昼時だからご飯でも食べに行ってるんだろうか
「すいませーん!」
「はいよー」
奥から女性の声が聞こえてきた。
「ああ、アンタかいな」
「どうも」
大阪弁でキツメの顔つきをした女性
あのアパートを紹介してくれた不動産屋、中澤さん
不法滞在だろうがなんだろうが、斡旋したもん勝ちという
なんとも恐ろしい根性を丸出しにした人だ。
自分が部屋を、ダメ元で紹介してもらうために来た時も
『かんけーあらへん、家賃さえちゃんと払ってくれたらな』
と、大家に内緒で貸してくれたのだ
- 112 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:55
- 「どないしたん?家賃は滞納してないで?」
「あ、いや、家賃じゃなくて」
「じゃあなんや、出たいとかいうんちゃうやろうな?」
"出て行ったらどうなるかお前分かってるんやろうな"
そう鋭く目の奥が光った。
そんなお金に、がめつくならなくったって・・・
「違いますよ」
「じゃあなんや。その後ろのねーちゃんに部屋貸すってか?」
中澤さんのあまりの迫力に恐れおののいて
ウチの後ろで隠れているあゆみを見てそう言った
っていうか、あゆみ?
そんなに腕掴まないで、マジ痛いから
- 113 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:56
- 「あー、それも違います」
「じゃあなんや」
「あの、ウチがあの部屋を借りる前に住んでいた人の事を教えていただきたいんです」
「はぁ?」
怪訝な顔をする中澤さん
そりゃそうだ、前の住人の事を教えろだなんて。
「あー、あかんあかん。」
後ろに隠れていたあゆみが、自分を盾にしながら叫んだ
- 114 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:57
- 「なんでですか!!?」
キーーーンッ!!
「ったぁ・・・」
頭がグワングワンする・・・
あゆみ、お願いだから耳のそばで叫ばないで。
叫んだあと、またサッと隠れた。
隠れるくらいなら言うな!
- 115 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:58
- 「なんや、そこのねーちゃん、えらいキンキン声出して」
「す、すいません」
「まあええわ。最近な、個人なんたらってのが出来てな。
むやみやたらと人様の事を教えたらアカンようになってんねん」
「個人情報保護法ですか」
「そうそう、それ。一応な、健全な不動産屋やから」
どこがだよ・・・不法滞在者に斡旋してるくせに
「アンタ今、どこがやって思ったやろ」
「な、何を言うんですか!」
「・・・まあええわ。そやから人にはそんな簡単には教えられん」
- 116 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 21:59
- そういった瞬間、中澤さんの目がキラッと光ったようにみえた
「・・・幾らです」
「おー、アンタ話が早いなぁ」
「ちょ、ちょっとひーちゃん?」
「と、言いたいけど、訳アリのヨッサンからはそんな取れんからな」
「結局取るんじゃないですか」
「まあええわ、それよりアンタ、何号室やっけ?」
「205号室です」
「ちょっとそこ座って待っとき」
- 117 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:01
- 中澤さんは資料を探しに行くと、奥の部屋に入っていった
商談用のソファに座ると
あゆみは困惑した表情で尋ねてきた
「ひーちゃん?」
「なに?」
「お金、払うの・・・?」
上目遣いで、目がうるうるしてる
「まー、あんな事言ってるけど、大抵は肉体労働だとおもうよ」
「に、肉体」
「その言葉だけに反応しないの!前に家賃払えなかった時は
この事務所の掃除とか、屋根修理とかそんなんだったし」
「そ、そっか」
「ああ見えてもいい人だから」
「う、うん」
こいつ、納得してないな・・・?
- 118 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:05
- 「あったでー」
十枚以上はある紙を手に、自分たちが座るソファまで持ってきてくれた
「み、見せてください!」
「ちょーっと待った!」
中澤さんは紙を上げ、あゆみは空を掴む
その姿はえさを前にした飢えた犬と同じ・・・
今にも中澤さんに飛び掛りそうな勢いだ。
さっきのビビり加減は何処へいったんだか。
- 119 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:06
- 「タダっちゅー訳にはいかんなぁ」
「買収するんですか!?」
「キンキン声うっさい!」
中澤さんに一喝され、あゆみは叱られた犬のように
きゅーんと唸った
「ヨッサン、今日は無いんかい」
「はぁ・・・。はい、どうぞ」
やっぱりそう言うと思った。買ってきてよかったよ
中澤さんの好物の、今川焼き
「さすがヨッサン、よー分かってる。茶でも煎れて来るわ」
アイラブ御座候なんて言いながら、ポンと紙を置くと奥に消えていった
あゆみはその紙を食べるんじゃないかって勢いで顔に近づけて見つめている
- 120 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:07
- 「あゆみ?近い近い。ウチも見たいから」
「あ、ご、ごめん」
テーブルの上にその資料を広げる
「川原・・・違う。武田・・・違う・・・し!芝山かよ!」
あゆみは一枚一枚、穴が開くんじゃないかってほど、念入りに見ている
ホント頭わるいなぁ、まったく
うちはパラパラと紙を捲りながら、名前だけをチェックする
「柴田・・・柴田・・・柴田・・・」
「木戸、違うー。み、み・・・ひーちゃん、これなんて読むの?」
「溝端」
「溝端・・・ってちがうー。う〜〜!」
溝端サンとか、どーでもいいから。あゆみちゃん・・・
- 121 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:08
- 「しば・・・しば、た、あゆみ・・・・・ビンゴ」
- 122 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:10
- 「え!?どれ!見せて!」
ソファの上でポンポン飛び上がりながら
ウチの持っている紙を取り上げようとする
「破れるから!落ち着いて!
「やだ、見たい!見たい!!」
お前は犬かよ!
見えないはずの尻尾が見えた
「ハウス!!」
「うぅぅ・・・」
「まったく・・・はい、これ」
そこには、確かに自分が入る前に住んでいたであろう
柴田あゆみの名前があった。
- 123 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:13
- 「その子がどうしたん」
中澤さんがお茶を置きながら聞いてくる
「あ、いや・・・」
自分が返答に困っていると、あゆみは急に声色を変えて中澤さんに答えた
「私の幼馴染でぇ、探してるんですよぉ」
ウチは驚いて、目を見開いて楽しそうに中澤さんに話すあゆみを見た
こ、こいつ・・・役者か?!
「へー。それでなんでヨッサンが絡んでるわけ?」
「あ、ああ・・・」
「ひーちゃんは私のバイト先の先輩なんですぅ」
「あー、それでたまたま知り合ったってやつか」
「はい、偶然って怖いなあと思って。キャハッ♪」
キモッ!
コイツホント何者よ・・・また、軽い眩暈がする
- 124 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:15
- 「ところで中澤さん、今、この柴田さんが何処に住んでるか分かりませんか?」
「あー、なんかこの子一人暮らししてて、実家帰る言うてたで」
「「実家!?」」
「そこに書いてるやろ?
ウチとあゆみは顔をくっつけて、紙を見つめる
「あゆみ、近ぇよ」
「ひーちゃんこそ」
「「神奈川県・・・」」
「そうそう、横浜や、横浜」
- 125 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:16
- 「「(川崎市じゃん!!)」」
- 126 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:18
- 関西人は『神奈川=横浜』なのか?
嗚呼、また軽い眩暈がする。
今日のおかずはレバニラにしよう。鉄分取らなきゃ
- 127 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:18
- 「・・・・・」
紙を持っていたあゆみの手が
膝の上に降ろされ、ぐっと強い拳を作った
目を見なくても分かるくらい、強い意志が伝わる
はぁ・・・川崎市か。
こっからバイクでどれくらいの時間かかるんだ・・・?
- 128 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:20
- 「なんや、アンタ訳アリみたいやな」
お茶をすすっている中澤さんの鋭い目があゆみを捉えた
「え?」
「変な気おこさんといてや。犯罪の手助けしたとか、とばっちりは堪忍して」
「そうじゃないです。ホントに柴田さんとは、お友達なんです」
「・・・そうやったらええけど」
あんたらも食べと今川焼きを勧めてくれる中澤さんは
それ以上なにも聞いてこなかった
- 129 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:22
- 柴田あゆみという人は
自分が住む一年前まで約3年間住んでいたみたいで
何かの事情で実家に戻ったんだろう
それにしても中澤不動産は
何でこうも保証人無しの未成年にバンバン家を貸すんだか
- 130 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:23
- 「ありがとうございました」
「今から行くんか?」
「「え?」」
「その人に会いに行くんやろ」
あゆみを見ると、自分を見上げていた
それは潤んだ甘える目ではなく、強い強い意志。
「「はい」」
ウチらの顔を見て、中澤さんは
納得したように頷いた
「気ぃつけていきや。横浜は遠いからな」
- 131 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:24
- 「「(だから川崎だって・・・)」」
- 132 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:24
- 「ほら、餞別や」
そう言って中澤さんは小さな紙袋と
柴田あゆみの住所が書かれたコピーを渡してくれた
「仲良ぉ、3人で食べ」
「ありがとうございます」
ドルンッ ドッドッドッドッ
バイクのエンジンをふかす。
あゆみは自分の所定の位置を確保し
中澤さんに貰った今川焼きの入った紙袋を自分の鞄にそっと入れた
「ヨッサン、ノーヘルかい」
「ええ、彼女が被ってますから」
「ちょっと待っとき」
中澤さんは店から何かを手にして、店の前まで出てきた
「無いよりはええやろ」
- 133 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:25
-
『弱肉強食 天上天下唯我独尊 中澤裕子』
- 134 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:27
-
か、カッケー・・・
中澤さん、やっぱりあなた、本物だったんですね
あゆみは目をぱちくりさせながら
中澤さんとヘルメットを交互に見ていた
「ウチの青春の品や」
変な気を起こすんじゃないよ、お前の手で絶対返しに来い
そう言われてる気がした
「大丈夫ですよ、ちゃんと返しにきます」
少し固いヘルメットのヒモのバックルをしっかり閉めて手を振った
「行ってらっしゃい。気ぃつけてな」
ドルンッ ドルルルルルルルッ
- 135 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:28
- しかし、暴走族がヘルメットするのか・・・?
そんな事を思いながら、赤信号で停車していると
「ねぇ、ひーちゃん?」
後ろでしがみついているあゆみが声をかけてきた
「なに?」
「暴走族の人って、ヘルメットするの?」
「・・・・・」
「・・・あんまりしないよね」
「う、うん。あんまりっていうか・・・うん」
「「・・・・・」」
- 136 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:30
- 僅かな沈黙のあと
左右から行き来していた車の波が止まる
「た、多分、中澤さんは交通ルールを守る暴走族だったんだよ」
「そっか・・・」
「うん」
なんとなく気まずい感じになったところで青信号に変わった
クラッチを踏み、バイクを滑らせる
交通ルール守るって、それ普通のバイカーじゃん!!
そんなツッコミも秋空に吸い込まれていった
- 137 名前:9.最恐の女? 投稿日:2005/11/27(日) 22:30
- 「ズズズズッ・・・うちは族やないでー」
- 138 名前:10.視線 投稿日:2005/11/27(日) 22:32
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 139 名前:10.視線 投稿日:2005/11/27(日) 22:34
- 法定速度を守り、安全運転しながらやっとの思いで川崎に入る
後ろではうつらうつらしてバイクから落っこちそうな人、約一名
「ねぇ!寝ないでよ!」
「んぁ・・・うん・・・」
「・・・ったく」
さっきまでキャーキャー喚いていたと思ったら
恐ろしく順応性があるやつだなぁ
道に落として、道交法に引っかかるのも嫌だったんで
国道沿いにあるマックに寄って休憩することにした
- 140 名前:10.視線 投稿日:2005/11/27(日) 22:36
- 「突然訪れて、柴田さんびっくりしないかな」
「・・・するよね」
「・・・んー、まぁそこはあゆみの名演技で」
「名演技?」
「さっきとっさに中澤さんに嘘ついてたじゃん」
「あ、うん。なんか口が勝手に」
「へー。あんた実は役者だったりして」
「違うよぉ」
確かに。
こんな特徴のある声の女優が居たら、一発で分かるけど。
でも、ここ数年テレビなんて見てないし
家にはテレビがないから分からないんだよね
あゆみは演劇経験者なんだろう。
強引な解釈を、冷めたコーヒーと一緒に流し込んだ
- 141 名前:10.視線 投稿日:2005/11/27(日) 22:40
- 席についてから気になってたんだけど
自分たちの回りにいる客の視線とヒソヒソ話。
「ね、ねぇ、ひーちゃん?」
あゆみが机に乗り出して、小さな声で話し掛けてきた
「ん?」
「見られてない?」
視線だけ動かす。
確かにこっちを見てる。コソコソ喋ってる。
何見てだ!?コノヤロォ!
なんてキレるほどガキじゃない。
ポーカーフェイス保たなけりゃ、バーテンはやってられない。
- 142 名前:10.視線 投稿日:2005/11/27(日) 22:41
- 「見られてるね」
「ひーちゃん、何か悪いことした?」
「待て。なんでウチなの」
「わたし、そんな変?」
「まぁ、変だけど」
「どこが!?」
「頭」
「ちょ、ちょっと、もう!」
「あはは!」
それにしても、見られすぎだ
「あゆみ?」
ちゅーちゅーとジュースを吸ってるあゆみに声をかける
「もう食べ終わった?」
「うん」
「出よう。なんか居心地悪い」
「そうだね」
- 143 名前:10.視線 投稿日:2005/11/27(日) 22:43
- 店を出て、バイクの置いているところまで向かう途中
あゆみが、思い出したように呟いた
「なんか、ああいう視線、どこかで・・・」
「え?」
「なんか、前にも、感じてた、気がする」
「前にも?記憶がなくなる前ってこと?」
「・・・多分」
「・・・・・」
「なんか、すごく、苦手な、感じ」
「・・・気にするなって。超音波声のあゆみが珍しかっただけだよ」
「なによぉ!超音波声って!」
「あーそれそれ、耳イターイ!」
「もぅ!」
- 144 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 22:44
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 145 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 22:48
- 再びバイクを走らせて
20分ほどで、中澤さんがコピーしてくれた住所のあたりに着く
この辺一体は、同じような家が並ぶ、いわばベッドタウンで
急勾配の道をはさんでずらっと立ち並ぶ。
ココから探し出すのか。一苦労だな
- 146 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 22:49
- 「さーて、ここからどうやって番地を探すかだよね」
「うん・・・」
「ま、とりあえずバイク走らせますか。あゆみ、電柱の番地見といて」
「あ、うん」
あゆみが番地を確認しやすいよう、バイクをゆっくり走らせる。
「・・・4丁目2番・・・4番・・・」
「柴田さんの家って何丁目だっけ?」
「8丁目」
「さっき通ったところは?」
「1丁目」
「じゃぁ、もうちょっと坂の上かな」
- 147 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 22:51
- 「・・・7丁目・・・9番・・・」
「近いかな?」
「あ!!8丁目!!」
肩をバンバン叩きながら耳の傍で声を出す
「危ない!暴れるなって!」
「ごめんなさい・・・」
「じゃぁこのあたりで柴田の表札を探すかな・・・。ここから歩いて探さない?」
「さんせー!」
肩越しに顔を覗き込んでくる
何故かその目はキラキラしていた
「なんか探偵さんみたいだよね!」
「おまえってやつは・・・」
自分の置かれてる立場ってのを分かってないんじゃないのか?
そう思いながら、近くにあった公園の入り口にバイクを横付けした
- 148 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 22:52
- 「さてと・・・8丁目の・・・」
「柴田・・・柴田・・・柴田・・・」
公園から少し歩くと、十字路に立たされた
「どっちだと思う?」
「どっち行っても8丁目なの?」
「うん、そうみたい」
「せーので言おうか」
- 149 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 22:53
- 「「せーの」」
「右」「左!」
- 150 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 22:54
- 「・・・右だって」
「左だってば」
「何を根拠に」
「私の勘です」
「あゆみの勘は当てにならんな」
「じゃーいいですよ?右行ってなかったらどうしてくれるんですかー?」
「そんとき決める」
ほらまた、ケンカが。
しかし、このときばかりはあゆみの勘が当たったようだ
なんと少し歩くと、行き止まりになっていたから。
- 151 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 22:57
- のび太がジャイアンに追い詰められるようなブロック塀あるでしょ
あんな感じよ。
ドラえもーん!ジャイアンが、ジャイアンがぁ!
ってそんな想像はどうでも良いが
背後から聞こえる屈辱的な笑い声を誰か止めてくれ。
「ほーらみなさいよ!おーーーっほほほほほ!」
キッとあゆみを睨みつけたが
右手を左頬につけて高らかに笑うあゆみには敵うわけが無い。
「ガックリ・・・」
- 152 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 22:59
-
「さぁ、戻りますわよ?」
すっかり女王様気取りだ
行き止まりのブロック塀におでこをつけて、イジケていると
「ほーら、ひーちゃん。ママとはぐれないようにしましょうねぇ?」
なんて言いながら
あゆみが自分の左手を取って、来た道をぐんぐん戻った
しかし、そこから探しまくり、迷いまくりで
15分以上は8丁目内を彷徨っていた
というより、同じ道を行ったり来たりしてる
方向音痴のあゆみが悪いんだけど
勘が外れて見事に敗北した自分が注意できるわけもなく・・・。
- 153 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 23:03
- 「柴田、柴田・・・ホントにあるのかなぁ」
「んー、あると思うんだけど」
「無いと色んな意味で困る」
突然あゆみの足が止まる
不思議に思って、あゆみの視線の方を向けると
『柴田』の表札があった。
「みつかった」
「・・・うん」
あゆみは自分の手をキツく握り締める
- 154 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 23:05
- 「呼び鈴押そうか?」
「ちょ、ちょっと、待って。急で・・・」
「大丈夫?」
「深呼吸させて・・・」
だんだんと、手が冷たくなってるのには気づいてた
足取りも、軽いわけじゃないことも。
冗談を言いあってたけど。
“でも、怖い”
って、伝わってきてたから
- 155 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 23:08
- 「大丈夫?」
「う、うん」
「押すよ?」
「うん」
─ ピンポーン ─
「・・・・・」
─ ピンポーン ─
「・・・・・」
- 156 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 23:09
- 中に人が居る気配が全く無い
「居ないの、かな」
「まぁ、平日の昼間に家に居るなんて主婦くらいでしょ」
「う、うん」
「それに、奥様方は買い物の時間だろうし」
時計を見ると、4時前を示していた
「・・・ちょっと待ってみる」
「ここで?」
「怪しいかな」
「かなりね」
「でも、またバイク止めてる公園に戻ったらココに戻れない気がするの」
あゆみは胸に手を当てて、何かを告白するかのように
上目遣いで自分を見てきた
「それは、言えるね・・・。
って、それはあゆみが散々同じ道を行ったり来たりするからだろ?」
「なによぉ!」
- 157 名前:11.ホームズ 投稿日:2005/11/27(日) 23:13
- あゆみが頬をプーっと膨らませるのが何かのサインのように
また痴話ケンカが始まる。
こんな言い合いなんて今まで誰ともした事無いのに
コイツはホントに人のスタンスを崩す
「あたしの勘は冴えるのよぉ〜とかいいながら、結局同じ道に戻ってたじゃんか」
「だからって、ひーちゃんに任せたら行き止まりだったでしょ!」
「行き止まりだったらまた戻ればいいんだよ!」
「同じ道だって、また戻ればいいでしょ!?」
「あゆみの場合は言ったり来たりするからややこしくなるんだよ!」
閑静な住宅街に、かなり場違いな声が響き渡る
秋の太陽は沈むのが早い。空もオレンジ色になってきた・・・
- 158 名前:12.再会 投稿日:2005/11/27(日) 23:14
- 「あのぉ・・・」
- 159 名前:12.再会 投稿日:2005/11/27(日) 23:17
- 「だったら公園に戻ったらいいじゃんか」
「えーえー、戻ってまたここまで来ますよ!」
「おー、言ったな?一度でも間違えてみろ」
「なによ!」
「あのぉ・・・」
「今夜はコタツで寝てもらうからな!」
「いいですよ?コタツ好きだもん」
- 160 名前:12.再会 投稿日:2005/11/27(日) 23:19
- 「あの!!!」
- 161 名前:12.再会 投稿日:2005/11/27(日) 23:22
- 「「はい!?」」
「ウチの家の前で、何か、用ですか・・・?」
あゆみと二人で声のあったほうを見る
そこには、スーパーの買い物袋を手に下げて
明らかに不審者を見る目でこっちを見ている、女性が立っていた
- 162 名前:12.再会 投稿日:2005/11/27(日) 23:24
- 「あ、ああ・・・」
「なにか、用です、か・・・」
「あ、あの柴田さんのお宅の方ですか?」
「え、ええ」
「あ、わたし、吉澤って言います」
あゆみはすっかり固まってしまい、自分の後ろに少し隠れた
「柴田あゆみさん、いらっしゃいますか?」
- 163 名前:12.再会 投稿日:2005/11/27(日) 23:25
- 「わたし、ですけど」
- 164 名前:12.再会 投稿日:2005/11/27(日) 23:26
- 腕を捕んでいたあゆみの手に力がこもる
「ちょっと、お聞きしたい事がありまして、東京からやってきたんですけど」
「え、ええ」
「あ、そうだ・・・あゆみ」
「はい?」
「あ、柴田さんじゃなくて、あ、あの」
今更自分のネーミングボキャブラリーがなさ過ぎる事を呪った
するとあゆみが後ろから突然勢いよく、自分の前に一歩出た
- 165 名前:12.再会 投稿日:2005/11/27(日) 23:28
- 「あの、この手紙、覚えてませんか!?」
「あ・・・あれ?」
「わたし、この手紙を柴田さんから貰ったんです・・・それで、その・・・」
口篭もるあゆみ
しかし、目の前の柴田さんは
何かを思い出したように大きな口をあけて
あゆみを指差す
- 166 名前:12.再会 投稿日:2005/11/27(日) 23:29
- 「梨華ちゃん?」
俯いていたあゆみが顔を上げ、柴田さんを見つめる
「へ?」
「梨華ちゃんでしょ!?元気してた?久しぶりだね!」
あゆみは振り返ってウチの顔を不安げに見つめた
そして、様子がおかしい事に気づいて黙った柴田さんに向き直ると
- 167 名前:12.解明 投稿日:2005/11/27(日) 23:39
-
「・・・わたし、梨華って言うんですか・・・?」
- 168 名前:12.解明 投稿日:2005/11/27(日) 23:45
- 「え・・・?」
「あ、あの、リカ、って、わた、し」
マズイ!
なんだかよく分からないけど、柴田さんを止めないと
あゆみがパニックを起こして、錯乱するんじゃないかって
咄嗟に思えた。
「ちょっと、柴田さん!話があります!」
あゆみを横へ押やって、柴田さんの話を手で止める
「へ?へ?」
「あゆみ!柴田さんのこの荷物持って待ってて!」
「あ、え?」
柴田さんの腕を掴んであゆみから離れた
多分、ウチは
あゆみに対して本能が働くみたい
- 169 名前:12.解明 投稿日:2005/11/27(日) 23:47
- 「ちょ、ちょっと、なんですか!」
あゆみには声が届かないところまでつれてくると、腕を離した
「あの、柴田さん」
「なんですか!?」
「突然訪れて本当にご迷惑をかけてることは承知です」
「え、ええ」
「しかも家の前で漫才繰り広げて、ご近所に迷惑をかけてしまったことも謝ります」
「それは、べつに」
「こんな事を頼める分際じゃないことは百も承知なんですが」
「なん、ですか・・・?」
「柴田さんと彼女が出会ったときの思い出だけ、話してほしいんです」
「なんでそんな」
「彼女・・・記憶・・・喪失なんです」
「え・・・?」
- 170 名前:12.解明 投稿日:2005/11/27(日) 23:48
- 柴田さんに
あゆみに起こった事、自分の存在自体も喪失していること。
なぜ自分が『あゆみ』と呼んでいるか
そして自分が今あのアパートに住んでいる事
手紙を元に、自分を訪ねてきたことを説明した
「なる、ほど・・・」
「それに・・・もし、彼女の現状を知っていたとしても・・・言わないでほしいんです」
「なんでですか?」
「思い出したくないそうです」
「でも」
「柴田さんと居たときの事、そこだけを彼女に話してもらえませんか」
「・・・・・」
「お願いします」
「・・・・・分かりました」
- 171 名前:12.解明 投稿日:2005/11/27(日) 23:48
- ゆっくりとあゆみのもとへ戻る
「ここじゃなんだから、家に上がって」
「あ、はい・・・」
「梨華ちゃん、荷物もらうよ」
「あ、ごめんなさい」
「そんな改まっちゃって。普通にしてよ!」
「う、うん」
- 172 名前:12.解明 投稿日:2005/11/27(日) 23:54
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 173 名前:12.解明 投稿日:2005/11/27(日) 23:54
- 柴田さんはお茶を入れるからと自分たちを部屋に案内し
階下のキッチンへ向かった
柴田さんの部屋に入り、部屋の真ん中で座る
そわそわと落ち着かない雰囲気の梨華に話し掛ける
「・・・梨華っていうんだね」
「うん・・・」
「思い出した?」
「なんか、そんな名前呼ばれてた、気がする」
- 174 名前:12.解明 投稿日:2005/11/27(日) 23:56
-
ガチャッ
「おまたせー」
「ありがとうございます」
「気にしないで、くつろいじゃってね」
「あ、あの、私は・・・梨華っていうんですか?」
「・・・そうだね、何から話そうか」
柴田さんが話し出してくれた
- 175 名前:12.解明 投稿日:2005/11/27(日) 23:57
- 名前は石川梨華
歳は柴田さんより1つ下の19歳
誕生日は1月19日。血液型はA型。
早生まれだから歳は同じだけど
ウチよりも数ヶ月年上だという事。
昔、家が隣同士でよく遊んでいたそうだ
しかしこの家は最近引っ越したからココではなく
二人昔住んでいた場所は長野県。
今の石川家の実家の住所はわからないらしい
- 176 名前:12.解明 投稿日:2005/11/27(日) 23:58
- 「写真見る?」
そう言って、アルバムをたくさん開いて見せてくれた
「ウチの父親の趣味が写真だからさー、山ほどあるんだよねー」
小学校に上がるまで長野に住んでいたが、柴田家の事情で越したらしい
でも、梨華とあゆみは手紙のやり取りをしていたそうだ
- 177 名前:12.解明 投稿日:2005/11/28(月) 00:02
-
「わたしね、パティシェになるつもりで、家出したんだ」
「え!?」
「昔、梨華ちゃんと約束してね。梨華ちゃんは歌手、私はケーキ屋さん!って」
「そうなんですか」
柴田さんの話を聞きながら
梨華の細い指が、幼い二人が映る写真をそっと撫でた
「上京して、専門学校行く為に勉強しながらバイトして。」
「そのとき、あのアパートに住んでたんですか?」
「うん。親の許しがなくても・・・中澤不動産の裕子さんはいいよって言ってくれたし」
住所が変わったことを伝えるために
梨華が持っていた手紙を送ったそうだ
「でも、なんで焼け焦げてんだろう」
「んー・・・、確か・・・あ、そうだ!梨華ちゃんから来た手紙あるよ?」
引出しを開けて、いくつかの可愛いマスコットが書かれている封筒を出してくれた
「・・・これが一番近い日付かな」
その手紙にはこうかかれていた
- 178 名前:12.解明 投稿日:2005/11/28(月) 00:03
- 家が放火され、何とか持ち出せたのが手紙と
あゆみから貰ったぬいぐるみだったそうだ
大事にはならなかったものの、火をつけた人は捕まっていないとのこと
そして・・・
「"闇が、怖いよ・・・"」
「あたしがその手紙を送ったのが、3年くらい前だから
梨華ちゃんはもう一人暮らししてるころだね」
「東京で?」
「うん」
「そうですか」
- 179 名前:12.解明 投稿日:2005/11/28(月) 00:04
- さっきから写真を見つめたまま、一言も発していない梨華
「あ、あゆみ?」
「はい?」
柴田さんがアルバムから顔を上げ返事をする
「あ、柴田さんじゃなくって・・・り、梨華?」
「あ・・・ごめんなさい」
「大丈夫?」
「・・・うん」
「たくさん話しすぎちゃったかな」
柴田さんが煎れてくれた紅茶はすっかり冷め切っていた
- 180 名前:12.解明 投稿日:2005/11/28(月) 00:05
- 「あ、あの・・・」
「ん?どうしたの?」
「わたし、柴田さんのこと、なんて呼んでましたか?」
「んー、柴ちゃん、だね」
「柴、ちゃん・・・あの、柴、ちゃん?」
少し恥ずかしそうに柴田さんを呼ぶ
「ん?なに?」
「この、写真もらってもいい?」
「あ、いいよー!」
「ありがとう、柴ちゃん」
「最初、家の前で二人が居る時は分からなかったけどさ
その声聞いてすぐ分かったよ。変わってないんだもん」
それを聞いて思わず思い出した
「プッ」
「な、なによぅ!」
思わず噴出した自分に顔を真っ赤にしながら
梨華は肘で脇をつつく
「超音波」
「うるさいなぁ!」
「あはははははは!!」
「もぅ!柴ちゃんまで!」
- 181 名前:12.解明 投稿日:2005/11/28(月) 00:07
- 梨華は、ハッとして、手で口を押さえた
「あ・・・」
「どうしたの?梨華ちゃん」
「なんか、懐かしい」
「・・・ゆっくりで、いいんじゃないかな?」
柴田さんが、話し出す
「わたしさ、上京したけど、夢諦めちゃったんだ。
でも、やりきったから後悔してないの。
大切なものが何か、わかったからさ・・・
梨華ちゃんは、今大変な時だと思う。
不安だろうし、辛いと思うし・・・
でも、必ず・・・分かる時が、来ると思うよ」
「・・・うん」
静かに、静かに、梨華は涙をこぼした
- 182 名前:12.解明 投稿日:2005/11/28(月) 00:07
- ウチは柴田さんの言葉に、胸が締め付けられて
目をそらすように窓の外を見た
秋の夕暮れは、嫌いだ
- 183 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:10
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 184 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:12
- 「ちょっと公園いこうか」
柴田さんが、散歩がてらといって、公園まで歩く事にした
「・・・っていうか、柴田さんの家からこの公園直進じゃない・・・?」
「うん・・・」
「え?なんで?」
「あ、いや・・・」
「「なんでもないです」」
声を揃えて柴田さんに言う。
こんな直線距離を15分以上も迷ってたなんて言えない
梨華とはなにかと、共鳴するらしい
- 185 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:13
- 「柴ちゃんは、今なにしてるの?」
「今は家事手伝いだよー。それと父の仕事をちょっと手伝ってる」
「お父さんの仕事??」
「うん、福祉関係。まぁバイトみたいなもんだけどねー」
梨華と柴田さんがブランコに乗りながら話してる。
自分はすべりだいの上までどうやったら一気に駆け上れるか挑戦しているところ
「そっかぁ、じゃあもしかしたら将来はカメラマンさんになるのかな」
「わかんないけど、そうだといいなぁ。そしたらさ、梨華ちゃん撮らせてね」
「うん!約束!」
「約束ぅー!」
- 186 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:16
-
ダダダダダダダダッ ツルッ ドンッ ズサーーーーー!
「痛ぇ!!」
「もー!ひーちゃん、何してるのぉ!?」
「いや、一気に上れるかなーって・・・いてて」
「あははは!梨華ちゃんの彼氏、意外とドジだねー」
「「彼氏!?」」
「あれ、違うの?」
((ブンブンブンッ))
ほらね、梨華とは共鳴してる。
まぁ、そこは否定するでしょ。
- 187 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:17
- 「そんな、二人して否定しなくたって」
「あの、柴田さん、私オンナですから」
「えええええ!?ご、ごめんなさい!てっきり男の人かと」
まぁ身なりがこうだから仕方ないか。
「それに私の話聞いてました?」
「え?ああ、吉澤さんの家に梨華ちゃんが急に・・・って、ああ。」
柴田さんは納得してくれたようだ
「私と梨華が出会ったのはほんの数日前ですから」
「でも泊まってるでしょ?」
まだ言うか!
「いや、あの、その」
「一緒の布団で寝てるんだよねー?ひーちゃん♪」
こ、このオンナぁ!
「てめぇ!」
「きゃーー!ひーちゃんが怒ったぁ!」
「待てこのコウモリオンナぁ!」
「きゃーー♪」
- 188 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:18
- 公園中を鬼ごっこ。なんか、こう言うの久しぶりだ
ブランコに乗りながら柴田さんはウチらの様子を笑いながら見ていた
3分後、軍配はコウモリに上がった。
「ぜ、ぜぃ、ぜぃ・・・」
「あ、そうだ!」
「ど、どうした?」
「みんなでこれ食べよ?」
梨華は鞄の中から中澤さんにもらった今川焼きの紙袋を出した
- 189 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:20
- 「はい、ひーちゃん」
「あ、ありがと」
「はい、柴ちゃん」
「ありがとー!」
「そして、私・・・柴ちゃん、これからもよろしくね」
「うん!もちろん」
「ひーちゃん、これからさらによろしくね」
「なんだよー、さらにって!」
今川焼きを手に、柴田さんは何か思いついたのか
ウチの顔をじっと見つめて口を開く
- 190 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:20
- 「ひーちゃん」
「し、柴田さん?」
「なんて呼んだらいいかわからなくて」
「ひーちゃんはやめて!恥ずかしいから!あゆ、梨華で限界なんだ」
梨華は悪乗りをして、冷やかしながらウチの名前を呼ぶ
「ひーちゃん♪」
「てめぇ・・・」
- 191 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:21
- 柴田さんは少し考えて
「んー。じゃぁ、よっすぃー?」
「それで」
「よっすぃーも、柴ちゃんでいいよ」
「あ・・・し、柴ちゃん」
「ひーちゃん照れてるぅ!」
「うるさいよ、梨華!」
「うふふふ」
「よっすぃー、友達になってくださいな!」
「あ・・・よろこんで!」
「それと・・・梨華ちゃんよろしくね」
「・・うん・・・」
冷たくて固くなった今川焼きの味は
今まで食べたものよりも、サイコーにおいしかった
- 192 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:22
- 「り、梨華?」
「なあに?」
「なんか飲み物持ってない?」
「あるよー」
「走ったから喉渇いて、ゲホッ。喉に貼りついた」
「「あはははははは!!!」」
笑い声がいつまでも公園にこだました
- 193 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:23
- そろそろ帰ろうってことになり、梨華は携帯を持ってなかったから
ウチと柴ちゃんの携帯番号を交換して
公園でバイバイすることになった
「よっすぃー?」
ヘルメットを被ろうとする自分に柴ちゃんが話し掛ける
「ん?なに?」
「ちょっと・・・いいかな」
- 194 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:24
- 梨華とバイクを置いて、公園の中に入る
「梨華ちゃん、本当に記憶喪失なんだね」
「うん・・・」
「今の状況とか、知らないんだよね」
「そう、だね」
柴ちゃんは少し考え込んで、俯きながら続けた
「よっすぃーは知らなくていいの・・・?」
「うん。いい」
「本当に?」
「だって、知ったとしても、梨華は梨華だよ」
- 195 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:25
- 「そうだけど」
「彼女が知りたくない事を、ウチが知ってたら
多分言ってしまいそうになるし」
「そっか・・・」
「うちも、梨華と一緒に、石川梨華探しをするよ」
「梨華ちゃん・・・色々、大変だと思う。今の状況とか・・・
記憶を戻した時、梨華ちゃんが心配だから」
「うん・・・」
「もし、今の梨華ちゃんを知っても・・・傍に居てあげて欲しいんだ」
「・・・分かった。ありがとう」
「ううん、こっちこそ。急だったけどうれしかったよ?」
「また、遊びにくるよ」
「今度はちゃんと連絡してよねー」
「オッケー」
- 196 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:27
-
ドルルンッ ドッドッドッドッ
「気をつけて帰ってね!」
「うん!」
「梨華は運転しないだろ」
「あはは!」
「またお手紙書くねー!」
「わたしも書くよ!」
「じゃあね!」
「またね!!」
ドルンッ ドドドドドドドドッ
梨華が手を振りながらずっと柴ちゃんを見ていた
柴ちゃんはミラーに姿が映らなくなるまで
自分たちを見送ってくれた。
- 197 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:27
-
「・・・記憶が、戻らない、今の方が、幸せかも、ね・・・」
- 198 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:31
- 帰りも安全運転で帰ってきたけど、程よい疲れが心地よかった
心がホクホクする感じ。
梨華は、どう思っているんだろう。
自分の過去を、少し垣間見て、何か分かったんだろうか
- 199 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:33
- 「ただいま」
「おかえり、ひーちゃん!」
屈みながらブーツを脱ぐ自分に
隣で同じくブーツを脱ぐ梨華が言った
「なんで玄関で言い合ってんだよ」
「だってぇ。ひーちゃんもわたしにお帰りって言ってよ」
「えー!ヤダよ」
- 200 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:33
- 一人スタスタと部屋に上がると
梨華は玄関で今か今かと嬉しそうに待っている
こりゃ言わなきゃ上がらんつもりだな?
「・・・おかえり」
「きゃー!うれしー!」
照れくさかったけど
はしゃぐ彼女を見て、ちょっと安心した
- 201 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:33
-
「柴ちゃん、いい人でよかった」
「そうだね」
「中澤、さんも・・・いい人そうだし」
「そうだね」
「ちょっとだけ・・・怖くなくなった」
「・・・そっか」
「ひーちゃんが、居てくれたからだと思う」
「え?」
「ひーちゃんが、隣にいて、手繋いでくれてたから」
「・・・そっか」
「うん!」
- 202 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:34
-
ぎゅるるるるる
「ま、また。お前ってやつは・・・」
「おなか減った・・・」
「わーったわーった!」
「わーい、買い物だぁ!」
「今日はレバニラだ」
「なんでぇ?」
「眩暈がひどいから」
「大丈夫?お医者さん行く?」
「誰かの超音波のせい」
「なによぉ!」
「あははは!ほら、買い物行こ?」
- 203 名前:13.新しい親友 投稿日:2005/11/28(月) 00:36
-
履きにくいブーツをまた履くと
すっかり冷えた風が吹く外に出る
少し照れながら、後ろに差し出した左手を
梨華はしっかり握ってくれた
闇が怖いもの同士
マイナスが二つ掛け合ったらプラスになるんだ
昔、誰かが言ってたなぁって、そんな事を思い出した
横には腹をすかせた犬が居る。早く作ってやらなきゃな。
綺麗な星空を見上げて、スーパーに向かった
- 204 名前:Rink 投稿日:2005/11/28(月) 00:41
- 更新終了です。
キリのいいところで更新終われず
大量更新になってしまいました。
最近、吉澤さんの乗っているバイクは何なのか考えているんですが
いいバイクありますでしょうかねぇ。
>名無飼育さん様
一人は判明しました。
もう一人は、もう暫く引っ張りますw
- 205 名前:gung 投稿日:2005/11/28(月) 00:44
- 膨大な更新お疲れさまです。
すんごい素敵な作品ですね。
続きが気になってしょうがないです(・∀・)
- 206 名前:Rink 投稿日:2005/11/28(月) 07:00
- 訂正。
重大なミスを発見しました
>>85
×訂正前
「マリは前の男に金取られて何百万の借金。あたしはあたしで嫁も妻も居るのよ・・・」
○訂正後
「マリは前の男に金取られて何百万の借金。あたしはあたしで嫁も子供も居るのよ・・・」
です。
>>185
×訂正前
「そっかぁ、じゃあもしかしたら将来はカメラマンさんになるのかな」
「わかんないけど、そうだといいなぁ。そしたらさ、梨華ちゃん撮らせてね」
「うん!約束!」
「約束ぅー!」
○訂正後
「そっかぁ、じゃあお婆ちゃんになったら看てもらおうかなぁ」
「あはは!気の遠い話だね」
「先に予約しとくの!」
「オッケー!」
です
初歩的ミスだ・・・ _| ̄|○
父上は当初カメラマン設定だったので
このようなミスが起きました
重ね重ね、申し訳ありません。
>gung様
ありがとうございます。
大量すぎて、読み疲れありませんでしたか?汗
今後暫くは、二人のマターリ加減が主になると思います。
- 207 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/28(月) 11:09
- 一気に読みました……すごい惹きこまれてます。
続きもまったりお待ちしてますので、作者様のペースでがんばってくださいね。
- 208 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:13
-
- 209 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:13
-
梨華と居ると、どうもアンテナが広がるらしい
喜怒哀楽を素直に出してるからなのかもしれないけど。
今までは、どれだけ人がすっとぼけても、キレても、何をしても
スルーしてたか、愛想笑いだったから。
そして、それを楽しんでる自分が居る。変なところで気が合うんだ。
梨華が笑ってくれると、自分も嬉しいと思える。
からかうと、頬をブーっと膨らませていじけたりする
梨華と暮らすようになってから、毎日がカーニバルのように忙しい
こんなに、笑いあったり、からかったり、拗ねる顔を見て
可愛いと思えたりするのはどれくらいぶりなんだろう
- 210 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:14
- 「こんなの、初めてだよ」
「こんなのって?」
「ツッコんだりするのってこと」
「初体験?」
ブーーッ!!
飲みかけの味噌汁を噴出してしまった
- 211 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:14
- 「ひーちゃん、汚いよぉ!」
「は、は、初・・・どこでそんな言葉覚えたんだ!」
まるで年頃の父親みたいな事言ってる自分
梨華はテーブルに広がった味噌汁噴水を拭いてくれた
「それくらい知ってるよぉ?」
「そ、そか
「ひーちゃんったら、顔赤いぃ!て・れ・や・さん♪」
左手に持ってる味噌汁碗を頭の上から
ぶっ掛けてやりたい衝動に駆られた
まったく・・・。
変な事は覚えてるのに、肝心なことだけ思い出さないんだから。
- 212 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:14
- すっかり"石川梨華"に対する手がかりが消えてしまったので
しばらくの間、梨華をこの家に住まわせる事にした
帰りたくない相当な理由もあるんだろうし。
なにしろ、梨華自身がこの生活がよほど気に入ったらしく
帰ろうとしないんだから困ったもんだ。
料理は分担制。梨華が味噌汁とご飯炊き。
さすがに怖くておかずは任せられないからだ
- 213 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:15
- 自分が出かけてるときは
散歩や、近くの肉屋や魚屋に買い物に行き
店のおじさんと仲良くなるのが今のマイブームらしい
そこは感心。
「梨華は将来いい嫁さんになるな」
- 214 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:15
- コロンと箸が落ちる音がする
何気に梨華の顔をみると、ポーっとした顔でこちらを見つめていた
「な、なんだよ。どうした」
「・・・どうしたの?急に」
「いや、感想だよ」
「料理、ヘタだよ?」
「だから、慣れだって」
「お味噌汁もしょっぱいでしょ?」
「確かにな」
「ご飯も硬いって言われるもん」
「昨日はアルデンテ」
- 215 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:16
- なんだか嫌な電波をマイアンテナがキャッチした。
なんか来るぞ、なんか凄いものが
「それでも!?それでもいい奥さんになる?」
「ああ、練習だって」
「ほんとになれる?ねぇ!ねぇ!」
いつもの犬の顔をして、ウチの左手にしがみつく
何を期待してるんだ?
「あ、ああ、なると思うよ」
「うふふ、うふ・・・うれしい♪」
- 216 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:16
- やっぱり女の子なんだな。夢はお嫁さんとか昔は言ってたんだろう
頬に手を当てて、くねくねしている姿はキモイけど。
たまには誤電波も流れるらしい。
「うれしいなぁ、ひーちゃんにそう言ってもらえると♪」
本当に嬉しそうにしてる。頬まで赤くなってるし。
でも、もう少し味噌汁は薄味にしないと
旦那さん、病気になるからね
「そう?それは良かった」
ウチもつられて笑顔になる
うんうん、って何度も頷きながらまた味噌汁に口を付けた
- 217 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:16
-
「ひーちゃんからプロポーズしてくれると思わなかった♪」
- 218 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:17
- ブブーーーッ!!
本日2度目の味噌汁噴水。
梨華も慣れた手つきで、また机の上を拭き出した
やっぱりウチのアンテナは正しかったらしい。
「な、な、何言ってんだよ!」
「何って、だって、私ひーちゃんのお嫁さんになるんだもん」
「ば、ばか!無理に決まってんだろ!」
- 219 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:17
- 「なんで?どうして?料理が下手だから?でもひーちゃん慣れて行けばいいって
言ってくれたじゃない。いい奥さんになるって言ってくれたじゃない
確かに、お豆腐は手の上で切れないし、ネギは切れてなくて全部くっついてるし
この、うさちゃんリンゴだって耳が取れて、ただの紅白になっちゃうけど
でも練習中だもん。ひーちゃんの為に一生懸命練習してるの!
ひーちゃん、言ってくれたよね?いい奥さんになる!って。
梨華はいい奥さんだよ!って。うちにぴったりな奥さんだよぉって。
ねぇ、何で無理なの?もっと頑張るよ!私、頑張るよ!?」
- 220 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:18
- り、梨華?息継ぎしてる?
後半なんかおかしいぞ?脳で変換するんじゃないの!
「わ、わかった。わかったから落ちつ」
「お嫁さんにしてくれるの??わーーい!」
「まて!それとこれと話は」
「うれしぃ!梨華張り切っちゃう♪」
サブマシンガンで撃たれるってこんな感じなのかなって
なんだか分かった気がした
梨華は走り出すと止まらない、暴走機関車のようだ
- 221 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:18
- 今何を言っても、頭に花が咲いたこいつには効かない。
皿の上に置かれた耳の取れたリンゴを
無理矢理梨華の口に詰め込んだ
「もぎゃ!」
「暫く黙っとれ」
「ひゃぁい・・・シャクシャク」
- 222 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:19
- どこがどうなって『嫁=ウチの嫁』なんだ
そこまで話が飛躍するとは。
そりゃビックリして味噌汁半分は撒き散らすさ。
「わたしね、思うの」
「なに」
アンテナが察知する。だけど、さっきのような不穏電波じゃない
「ひーちゃんとはね、繋がってるって」
「え?」
「笑ったり、喜んだり。ひーちゃんが喜ぶと、わたし嬉しいの。
すごく、すーーっごく!」
- 223 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:19
- 梨華がふっくらと笑う
つられて、自分も笑う。
「ほらね?ひーちゃん笑ってくれた!
ひーちゃんが思ってることなら何でも分かる気がするの」
ご飯を食べ終わって、リンゴに手を伸ばす
「よし、じゃぁ今何思ってるか当ててみ?」
梨華はしばらくウチの目を見つめると
親指を立てて、自分の胸の方に指すと低い声で言った
- 224 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:20
-
「・・・オレの嫁に来ないか?」
- 225 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:20
- やっぱりな。
ウチは不敵に笑った梨華の口にリンゴを突っ込んだ
「もぎゅぅ!!」
「それ以上喋るな」
「ふみゅぅぅ。シャクシャク・・・」
- 226 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:21
- 歯ざわりのいい音をたてる梨華をほっといて、食器を洗いに台所に立つ
「繋がる」と「読める」はまた別物だと思うんですよねぇ、梨華さん
梨華の言動を、さっきのように読めるときもあるけど
時々、言わなくても通じてるときがある。
同時に同じ言葉を発したりすることもある。
恥ずかしくて「キモーイ」としか返せないけど
あながち、梨華の言うことは当たってる
- 227 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:21
- でも、分かってても、絶対梨華に言わないことにしてる。
だってそんな事一言でも言ったら
「ねぇ!?ほらぁ!だからひーちゃんのいい奥さんになるよ?」
とか訳のわからない接続詞をもってきそうだから。
- 228 名前:14.電波 投稿日:2005/11/29(火) 20:22
-
- 229 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:27
- 今日も、梨華を置いて仕事に出かける
いつ出かけてもいいように、合鍵を作って渡したし、戸締りは大丈夫だろう
'自分が居ない間、秋刀魚は焼くなとキツくいいつけてきたが
「おかずもつくるー!」
って張り切って腕まくりをしていた梨華に一抹の不安をよぎらせた
秋刀魚焼けない人間がどうやって料理するんだか(泣)
頼むから焼くのは魚だけにしてくれ。家は燃やさないで。
- 230 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:27
- 毎晩結局梨華の泣き落としのせいで、1つの布団に寝るんだけど
相変わらず寝相が悪いから、我慢ならんとコタツの布団で寝てたら
起きたとたんに、超音波を発せられる始末
「なんで、隣にいないのぉ!寒いよぉ!」
んじゃぁお前の寝相を良くしてからにしろ!!
そう言ってやりたかったが、もう、反撃する元気もなく・・・
しばらく寝不足が続きそうだ
- 231 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:27
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 232 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:28
- 「ふぁぁぁぁぁ」
「あら、ヨシ、あくび?」
「あ、ママ・・・すいません」
「いいのよ、まだお客様は見えてないし。・・・ペットが寝かせてくれないのかしら?」
「ち、違いますよ!(ある意味寝かせてくれないけど)」
「どんな子なの?ヨシの猫は」
「そう・・・ですね」
- 233 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:29
- グラスを拭きながら梨華を思い出した
「黒くて・・・声が高くて・・・」
「ま!やらしいわね!」
「ママ・・・想像が妄想になって、しかも卑猥すぎます」
「そうやって、つっこむあんたも大概卑猥よ!」
「フフッ・・・バカですけど、かわいいですね」
「・・・そう」
「なんか、似てるんですよ」
「ヨシに?」
- 234 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:29
- 「ええ・・・でも・・・」
「でも?」
グラスを拭いている手を止めて少し目を閉じた
瞼の裏には、梨華の姿が焼きついてる
大きな、大きな、梨華の・・・。
- 235 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:30
- 「・・・彼女は立ち向かってる」
「・・・・・」
「迫ってくる未来を、受け止めようって・・・自分で、立ち向かってるんです」
「・・・ふぅ」
「自分は、出来ないから」
「・・・そうかしら」
「え?」
「アンタだって立ち向かってるじゃない」
「・・・そうでしょうか」
「そうよ。そうじゃなきゃこんなところで働かなくてもいいんじゃないの?」
「・・・・」
「貧乏な生活しなくて住むわけなんだし」
- 236 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:30
- 磨いているグラスを、そっと棚に置いた
ママが煙草を口にくわえたので、ライターさっと取り出し火をつける
「こんなこと、あんたの年でしなくたっていいと思うのよ、あたし」
「あ・・・いえ」
「その子猫も、特別な事をしてるわけなじゃいのかもしれないわよ?」
「え?」
「・・・荷物はね、いくつも持てないの」
「ええ・・・」
「新しいものを手にしようとしたら、何かを捨てなきゃいけないの」
- 237 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:31
- フーッと煙を吐き出す。その仕草が、本当に女の人みたいで
時々、ドキッとする
「だけどね、時間が過ぎれば、その時大事だったものは大事じゃなくなることが多いの」
「・・・ええ」
「人はね、選択しながら生きていくの。時々迷いながら、苦しみながら。
分かれ道に来るたび、立ち止まったり、行き止まりに当たったり」
「はい」
「そして、振り返るのよ。そしたらね、結構楽だったな、大事じゃなかったなって思えるのよ」
「そう・・・でしょうか」
「そうよ・・・過去なんて大事じゃないわ。今をどう生きるか。それだけ」
「今を・・・」
「今が、未来に繋がるんだから」
- 238 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:31
- 灰皿に、トンッと灰を落とす
煙草の煙が、薄暗いカウンターにゆらゆらとのぼった
「ヨシは今を生きてるわ。未来を良くするために。
だけど、もっと良くするためには・・・目の前にある壁から目をそらしちゃだめ」
- 239 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:32
-
ズキンッ
「大切なものを見失っちゃだめよ」
「・・・・・はい」
- 240 名前:15.紫煙 投稿日:2005/11/29(火) 20:32
-
- 241 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:48
- 少し忙しかった仕事を難なくこなし、今日も帰宅する
カンッ、カンッ、カンッ
大切なもの、か・・・。
自分に、何が大切なのかなんて・・・
チャリンッ
- 242 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:50
- はぁ・・・分からない・・・
ため息を1つついて、鍵を差し込もうとしたら
勢いよくドアが開いた
「おっかえり!ダーリン♪」
ガンッ!ドンッ!
「あだぁ!!」
「おかえりのちゅー・・・って、あれぇ?」
- 243 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:50
- 自分の鼻とおでこに、ドアがクリーンヒット
そんな事も知らず、蹲る自分の頭上から梨華の超音波が降り注ぐ
「ひーちゃん!?どうしたの?」
「・・・っ・・・」
「大丈夫?おなか痛いの?なんで泣いてるのぉ!?」
「てめぇがやったんだろ!!」
今ごろ、遅いのかもしれないけど、ウチは気づいた
こいつこそ、本能で生きてるんだな・・・
- 244 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:51
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 245 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:51
- 「さ、さて梨華さん。これは、何かな?」
コタツの上に並べられた、何かわからない物体の乗った皿が2つ
自分はそれを見た瞬間に血の気が引いて、口は引きつってしまった
そう、これはまさしく、梨華のおかず第一弾、処女作なのだ。
「えへっ!これ!」
そう言って本を開いて見せた
- 246 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:52
-
『薄切り豚ロースの野菜巻き』
ふ、ふむ・・・。なるほど
写真と実物を見比べる
青コーナー、オレンジページの『おてがる簡単、今日の晩ごはん』
赤コーナー、どう見てもすき焼き風にしか見えない、梨華のブツ
- 247 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:52
- 「どう?どう?」
目をキラキラさせながら言葉を待つ梨華。
右手に本を持ち、左手で梨華の右腕を掴む
「・・・勝者、オレンジページ!」
右手を高く天に上げた
- 248 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:52
- 「えーー!どうしてよぉ!」
「よく見てみなよ!何がどうなったらこんな見栄えが悪くなるんだよ!」
「だって、崩れちゃったんだもん・・・ともかく、味だよ!味!」
「・・・トイレ臭くないだろうな」
「なあに?なんか言った?」
「いや、頂きます」
- 249 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:53
- 「どう?どう?」
また目をキラキラさせながら、言葉を待つ梨華。
右手に本。左手に梨華の腕
「・・・判定、ドロー!」
「なーんでよ!」
「さすがに本と味までは比べられませんねー」
「あ、そっか」
「梨華も早く食べなよ」
「はーい・・・お茶煎れてくる」
- 250 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:53
- 納得いかない不満げな顔をしながら台所に立った
ウチは梨華に対して、いつもぶっきらぼうだ
恥ずかしいから面と向かって言えないから、小さな声で呟く
「・・・美味いよ」
- 251 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:54
- 「え!?なになに!?なに?」
急須片手にダッシュで駆け寄ってくる
なんて地獄耳なんだ!
- 252 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:54
- 「もう一回聞こえるように言って!」
「近っ!」
「いま、美味しいって言った?ねぇ、言った?」
「うるさい!」
「言ったよね?可愛いって言ったよね?」
「言ってないから!」
「美味しいって言ったよね?可愛いって言ったよね?ねぇねぇねぇねぇ!」
「うっざい!」
「もー、うざいってなによぉ!」
- 253 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:55
- プンプンッなんて言いながらまた台所に戻った
ホントに毎日がカーニバルだ。梨華はとてもパワフル。
ついていくのが大変で、いつも呆れるけど
梨華が戻って座るまで待っていよう。
まだ頬をぷっくり膨らませて拗ねてる猫を撫でてあげよう
- 254 名前:16.奮闘 投稿日:2005/11/29(火) 20:56
-
- 255 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:01
-
"大切なものを見失っちゃだめよ"
「大切なもの、か・・・」
今日は布団とコタツ布団に別れて寝ることにした
ぽつりと漏らした声が、梨華には届いてたようで
- 256 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:02
- 「どうしたの・・・?」
顔まで被っていた布団をすこしずらしてこっちを見る
「・・・大切なものって、なんだろうなって・・・」
「大切なもの・・か・・・」
「・・・ウチには、あるのかなって・・・」
「・・・・・わたしの大切なものは、ひーちゃんだよ?」
- 257 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:02
- 「ブッ!!」
「きったないぃ!」
どうしてそんな恥ずかしい事が面と向かっていえるのか
自分には分からない
「ま、またそんなこと」
「そんなことってなによぉ!」
「嫁さんになるとか、大切とか・・・」
「・・・ホントだもん」
「・・・え?」
「恥ずかしいから、こっちきてよぉ」
「な、なんで?」
「おっきな声じゃ、誰かに聞こえちゃう・・・」
「・・・わかったよ」
- 258 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:03
- 梨華に近づく
すると、梨華は自分の腕にぎゅっとしがみついて胸に顔をうずめてきた
「・・・ひーちゃん居なくなったら・・・わたし、寂しいもん
ひーちゃん居ないときは、早く帰ってきて欲しいって思うもん
ひーちゃんが帰ってくる時間が近づいてきたらうれしいし
ひーちゃんが」
- 259 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:03
- 聞いてるこっちが恥ずかしくなって、梨華の言葉を遮る
「ああ、も、もういいから」
「聞いて!」
「はい・・・」
「ひーちゃんが帰ってきたら、うれしくて抱きつきたくなるんだもん・・・」
「・・・・・」
「柴ちゃんも、大切。ひーちゃんはもっと大切」
「・・・そっか」
「ひーちゃんは?」
「え?」
「・・・私のこと、大切・・・?」
- 260 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:04
- 少しだけ顎を下げたら、目に涙を溜めて必死で堪えてる梨華の顔が目に入った
アンテナが察知した
察知せざるをえない、それ以上に熱を帯びた視線。
自分は、目の前の壁から、目をそらしているじゃないか
こんな真っ直ぐな熱い目さえも・・・見つめ返せない
マジ、かよ・・・
嫌悪とか、そう言うんじゃない
拒絶とか、そんなんでもない
自分の中にある、甦る恐怖が襲ってきたから
- 261 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:04
- 瞼を閉じて、顔を背ける
「もう、寝なよ」
「ひーちゃん!」
「・・・なに」
「答えてよ・・・」
「・・・・・」
「ねぇ」
「・・・おやすみ」
梨華に背を向けた
- 262 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:05
-
"・・・ヨシコ!"
"・・・・・ヨシコ・・・ほら、はやく!"
"ねぇ、よしこ、学校行こうよぉ!"
もう・・・嫌なんだよ
・・・この手は、汚れてる・・・
- 263 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:06
- 「・・・めん・・・」
「・・・え?」
「・・・ごめ、ん」
「ひーちゃん?」
「ごめんね・・・」
「・・・ひーちゃん、こっち向いて?」
「・・・む、り」
「顔見せなくていいから・・・こっち向いて?」
- 264 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:06
- 首を曲げて、見せないまま、体だけ梨華のほうを向いた
ぎゅっと目を閉じて、歯を食いしばる
「なんで、震えてるの?」
「・・・・・」
「何が悔しかったの・・・?」
「!」
「それとも、辛かったの?」
- 265 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:07
- 違う・・・辛いんじゃない
首を横に振る
「ひーちゃん、何も悪いことしてないよ?」
また首を振る。
梨華は、ね?だから笑って?と続けた
「大丈夫だよぉ・・・、ひーちゃんは悪くないんだよ?」
- 266 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:07
- 自分のはがゆさに、悔しくなる
自分のもどかしさに、苛立ちを覚える
梨華が自分の頭を撫でる
髪をすきながら、梨華の唇がおでこにやさしく触れる
- 267 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:07
-
「いい子だから、泣かないで」
「泣いてない」
「心が泣いてる」
「そん、な・・・」
「抱きしめてあげるから」
その日は、梨華の華奢な腕に抱きしめられ
いつのまにか眠ってしまった
- 268 名前:17.古傷 投稿日:2005/11/29(火) 21:08
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 269 名前:Rink 投稿日:2005/11/29(火) 21:12
- 更新終了です
石川さんの暴走っぷりをもっと書きたかったのですが
まだまだ修行が足りませんな。日々精進、合掌。
次回はいよいよ明らかになると思います。
>名無飼育さん様
ありがとうございます。
当方、これが処女作で駄文丸出しですが、そう言っていただけると
とても励みになります。これからもよろしくお願いします
- 270 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/11/29(火) 21:47
- 更新お疲れ様です。
ウーン、なんだかちょっと引き込まれてきましたよ。
どうなるんでしょうねぇ。
次回更新待ってます。
- 271 名前:207 投稿日:2005/11/29(火) 23:03
- ふたりのおばかなやりとりが大好きですw 暴走だいすき。
>>267で泣きそうになりました……
作者様が書く二人は生き生きしてて可愛い。それに脇役人がカッコイイ感じがします。
続きも楽しみにしています、まったりとがんばってくださいね。
- 272 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/30(水) 02:05
- 更新乙です。
ああ、あの人が気になる・・・一体過去に吉澤となにがあったのか・・・
と思うのと同時に、石川さんと二人での猶予期間がずっと続いても欲しい・・・
次の更新までまばたきしないで待ってます。
- 273 名前:18.波紋 投稿日:2005/11/30(水) 23:05
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 274 名前:18.波紋 投稿日:2005/11/30(水) 23:07
- "心が泣いている・・・"
中を見られた気がした
彼女の純粋な思いが、自分の着込んだ鎧を貫く
ウチは単純な誉め言葉さえ言えない。
素直に感謝の気持ちを伝えられない
たった5文字程度の言葉さえ。
恥ずかしさがそうさせる?不器用がそうさせる?
ちがう
"いい子だから・・・" かぁ
彼女は本当に、心が動くまま、本能のまま、素直に動いてるんだ
- 275 名前:18.波紋 投稿日:2005/11/30(水) 23:07
- 「フッ」
「どうしたの?ヨシ」
「あ、いえ」
「やーっぱり恋してるの?」
あの夢と、梨華の存在。
気持ちが追いつかなくって、自嘲してしまっていた
- 276 名前:18.波紋 投稿日:2005/11/30(水) 23:08
- 「恋なんて、してませんよ」
「あら?そうなの?」
「ええ、そういう相手居ませんから」
「でも、最近のヨシは嬉しそうだってみんな言ってるわよ?」
「みんな?」
「うん。営業スマイルじゃなくって自然な笑顔が出てるって」
「へぇ・・・」
「あーあ、羨ましいわぁ、あたしも誰か温めてくれないかしら」
「フフッ・・・いずれ現れますよ。マリさん、いい女だから」
「あら!やあだ!ヨシがそんなこと言うなんて、照れるじゃない!」
「フフッ」
- 277 名前:18.波紋 投稿日:2005/11/30(水) 23:09
- 「・・・そうだ、ヨシ?」
「なんですか?ミチさん」
「今日、店を早閉めして、常連さんたちとカラオケ行くんだけど行かない?」
「え?」
「ヨシ連れて行かないと帰っちゃう客もいるからさぁ?来て欲しいのよ」
「そう、ですねぇ・・・」
「それとも家で待つ犬が気になる?」
「・・・んー・・・少しだけなら、大丈夫かな。明日休みだし」
- 278 名前:18.波紋 投稿日:2005/11/30(水) 23:10
- 店を早く閉め、ママの知り合いのお店の人たちと
お客さん総勢20人ほどでカラオケに行く事に。
あんまり遅くならないように、早めに帰らせてもらう事も許しを得たし。
カラオケなんて久しぶりだから、歌える歌があるか心配だ・・・
- 279 名前:18.波紋 投稿日:2005/11/30(水) 23:11
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 280 名前:18.波紋 投稿日:2005/11/30(水) 23:14
-
「♪夜桜ぁ、おひぃちぃ〜〜〜〜!」
「いよっ!さすがだねぇ!」
「ママの夜桜お七最高!!」
「次、アユ行きますぅ〜!」
「俺、マリちゃんとデュエットしよーかなぁ〜?」
「やぁだーー!」
ここに性別と口調が一致してる人間はいるのか?
でもそんなの関係ない、お祭り騒ぎ大好きな人たちと居ると
なんだか楽しい。嬉しいんだ。
- 281 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 00:55
- 「ヨシさん?」
「あ。愛ちゃん、久しぶり」
「お久しぶりです」
最近、ママの知り合いの店に来た、高橋愛ちゃん。
1つ年下で、自分を兄、姉のように、慕ってくれている可愛い子
福井から出てきて、訛りはまだ抜けてないけど
それがお客さんにはうけてるらしい
- 282 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 00:56
- 「愛ちゃんは何か歌わないの?」
「あたし、昔の歌しか知らないですから」
「いいんじゃない?好きな歌歌えばさ」
「でも、恥ずかしいですから」
頬を赤くして俯いている姿は、本当にかわいらしい
「ヨシさん、最近なにかありましたか?」
「え?」
「顔がやさしくなってます」
言われて気づいた。そんな変化が自分にあったんだ
「そう?」
「はい」
「んー、家にペットがいるからかなー」
「そうなんですか・・・かわいいですか?」
「まあね、暴れまくってるけどね」
- 283 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 00:57
-
♪長く長く降り注いでた 水無月彩る雨
ずっとずっと待ち続けてた あなたの言葉は 雨音に消えた
- 284 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 00:58
- 「あ、RIKAMIだぁ!あたし歌おうと思ってたのにぃ!」
「さっさと入れないからよ!」
「黙ってあたしの歌をききなっさーい!」
「よ!ミチさん!待ってましたー!」
「この人そんなに人気なの?」
「え?ヨシさん、RIKAMI知らないんですか?」
「うん。誰?」
「今、超人気の国民的アイドルRIKAMIですよ」
「そうなんだ・・・うちテレビないからさ」
「雑誌とかにも載ってますよ?」
「あー、興味無くって」
「そうですか・・・」
「ご、ごめんよ」
「いえいえ。夜の世界の方でRIKAMIのファンの人はかなり多いんです」
「へぇー」
「キャラといい、歌といい。第二の聖子さんらしいですよ?」
「ほー。なるほどな」
- 285 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 00:59
-
ゆらりゆらり揺れる想いは
花びらに重なるように
何も迷わずに 強く抱きしめて
泣かせても 傷つけても いいんだから
- 286 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 00:59
- 「ふーん・・・いい歌だね」
「でしょ?」
「どんな人が歌ってるのか気になるな」
「おぼこいんよ!仕草とか歌声とか。歌は正直マリさんの方が上手いと思うざけど
でも女優もこなしてるし、アニメの声優だってやってるし。
もー!ホントに可愛くて可愛くて!」
「あの、愛ちゃん?福井弁まるだしだから。落ち着こうね」
「あ!す、すいません!」
- 287 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 01:00
- 「アハハッ!いいよ。愛ちゃんがそんなにゴリ推しするんだからよっぽどなんだろうな」
「ええ、そりゃもう!・・・でも」
「ん?でも?」
「最近、テレビに出てないんです」
「へぇ・・・」
「1ヶ月くらいまえに、体調不良で入院したってテレビで言ってて。」
「そうなんだ」
- 288 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 01:00
- 「昨日の新聞にも出てましたけど・・・新曲楽しみにしてたのになぁー」
「発売前だったの?」
「はい。でもずっとスキャンダル続きだったし、話題絶えない人なんですよ」
「へーーー。アイドルでスキャンダルねぇ」
「でも、RIKAMIファンの人はそんなのでたらめだーって言ってるし。
わたしは、歌が聴ければそれでいいんですよ」
「本当にそのRIKAMIさんのこと好きなんだね」
「はい!憧れです!」
「そっか・・・今度CD貸してよ」
「わかりました!お店に持っていきますね!」
- 289 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 01:01
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 290 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 01:01
- やっぱり、何年もテレビのない生活をしていると
色々なものが疎くなるもんだな。
たまにはCDショップにでも行って、研究するか
結局家に着いたのは朝の5時を過ぎてしまった
梨華、寝てるだろうなぁ
- 291 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 01:02
-
ガチャッ
「た、だいま・・・」
部屋の明かりがついたまま、コタツに入って横になっている梨華が居た
コタツの上には、ラップでくるまれたおかず。
これまた謎めく物体だな・・・
待たなくてもいいのにさ・・・
- 292 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 01:03
- 「梨華」
「・・・んぅ」
「梨華、風邪引くよ?布団敷くから、そっちで寝なよ」
「・・・ひーちゃ・・・」
え!?夢にまで出てきてるんですか?
「・・おいし?・・・よかっ・・・」
「フフッ・・・」
さて、起こした方がいいのかな
- 293 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 01:03
- 机の上に置かれたご飯やお茶碗を台所に移動させて
梨華を起こさないようにコタツをすみに立てる
「今日は雑魚寝だな」
コタツ布団をかけて、梨華の横で寝る
梨華の寝相は良くなってきてるし
隣にいると、寝やすいことにも気づいてきた
子供見たいにはしゃいだり、すぐ拗ねたり、泣いたり
こっちまで暖かくなる柔らかな笑顔を見せたり
表情がクルクル変わる梨華。
いつも真っ直ぐで、大きくて、強い
- 294 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 01:04
- 昨日は、言えなかったけど
寝てるから、言えるんだけど・・・
「梨華が大切だと、思う」
眠る梨華が微笑んだ気がした
- 295 名前:18.波紋 投稿日:2005/12/01(木) 01:04
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 296 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:10
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 297 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:11
- 「もぅ!どうして起こしてくれなかったのよぉ!」
「起こしたよ」
「もっと起こしてよ!」
「もっとって・・・あまりに気持ちよさそうな顔で寝てるしさ、悪いかなと思って」
「ひーちゃんにおかえりって言いたかったのにぃ」
「いつでも言えるじゃん」
「昨日のおかえりは昨日しか言えないのぉ!それに一緒にご飯食べたかったのに!」
「今食べてんじゃん」
「ぶーっ、ひーちゃんが作ったものだもん。美味しいからいいけど」
- 298 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:12
- 昨日梨華が作ってくれたものはハンバーグだったらしいが
焦げて真っ黒だし、形は崩れてるから
「なんの民芸品?」
って言って、そこから拗ねてむくれる
お子ちゃま梨華ちゃんは止まらないのだ
あまりにも無残な形のハンバーグに手を加えて
オムレツの具にして、なんとか機嫌は取り戻してくれたけど
- 299 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:13
- 「それよりさ、梨華、お買い物代足りてる?」
「あ、うん。財布は持ってきてたみたい」
「え!?」
「でも、お金しか入ってないの・・・」
「んー・・・梨華はどういう生活をしてたんだろう」
「だよね」
- 300 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:13
- オムレツを口に入れてもぐもぐしながら考えてる梨華の顔
どうみても真剣に悩んでるようにはみえなくって
大丈夫か?なんて思うけど
梨華が来てから、あの肉巻きロール以来
民芸品だろうがなんだろうが、自分が散々けなしてもこうやっておかずを作って
帰りを待ってくれている。
しょっぱい味噌汁にも、硬めのご飯にも慣れてきた。
深夜だから絶対疲れるはずなのに
自分が起きる時間には必ず起きて
「いってらっしゃい」って言ってくれる
- 301 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:14
- 「・・・いつも感謝してます」
「え!?どうしたのいきなり」
「・・・素直になろうと思って」
すると梨華はお箸を置いて
真剣な顔をしておでこに手を当てて熱を測りだした
- 302 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:14
- 「熱は、ないみたいだね」
「・・・テメェ」
人が素直になったと思ったらこれだ。
「あはっ!冗談だよ!だって急に言うから」
「もう二度と言わない!」
「やぁだぁー!うれしいよ♪
・・・それに、ほんとに夫婦の会話みたいじゃない?」
「はぁ?」
- 303 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:15
- 「いつも感謝してるよ?ママ。あなたが外で頑張ってくれてるからよ、パパ」
始まったよ・・・やっぱりさ、実はイッちゃってる人とかじゃないよな
梨華は時々一人芝居を繰り広げる。そのたびそんな気持ちになる
「あ、あの、梨華さん?」
「ママの作ってくれるご飯は世界一おいしいね」
「・・・崩れてるよね」
「パパの働いてる姿はほんとカッコいいわ!」
「見たことないじゃん・・・」
「ぶーーっ!うるさいなぁ!」
- 304 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:15
- 「一人芝居はいいから、ご飯食べちゃって。出かけるから」
「え?どこに?」
「たまには梨華も外に出たいでしょ」
「バイクでおでかけ?」
「そうだなぁ・・・寒くないしね」
「やったぁ!」
「この間はあれほど嫌がってたのに」
「だってひーちゃんとぴったり出来るもーん」
「そういう恥ずかしい事を平気で言うな!」
「はーい♪」
- 305 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:17
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
すこし冷たい空気。
でも背中は暖かくて、とても心地いい
梨華は、まだやっぱりしがみついてるけど
ちょっとは余裕が出てきたみたい。
途中コンビニで、使い捨てのカメラを買って
またバイクを走らせる
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 306 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:17
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 307 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:18
- 「はい到着」
「はー、たのし!ここどこ?」
「まぁ、行けば分かるよ」
「うー、分かったぁ。・・・ひーちゃん!」
「なに?」
駐車場にバイクを止め、先に歩き出した自分を
数歩後ろで立ち止まっている梨華が呼び止める
- 308 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:19
- ちょっと恥ずかしそうに、頬を赤らめて梨華は右手を差し出した
「・・・手」
「手?」
「・・・つなご?」
「・・・はぁ・・・はいはい」
「あ!呆れてる!」
「梨華は方向音痴だから、しゃーないね」
「どういうことよぉ!」
「迷子になるんじゃないですよー」
「ぶーっ!」
二人とも、少し手がかじかんでいるけれど
熱を持つのに時間はそうかからない
- 309 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:20
- 「なんか、デートみたい」
「デートぉ?」
「うん!ひーちゃんとデート」
どうしてそう、照れる事をぽんぽん言うかなぁ、コイツは
「・・・そう、だね」
「でしょぉ?ほら、ひーちゃん、早く早く!」
「わ!ちょっと待って!」
デートって言うか、これじゃ仔犬と散歩だよ・・・
- 310 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:20
- 都心から離れた場所にある、小高い丘一面の花畑
コスモスの甘い香りが漂ってくる
「うぁ!すごい、お花畑だぁ!」
「今週が最盛期らしかったから、来たかったんだ」
「ねえねえ、向こうまで行ってもいい?」
「フフッ、いいよ」
手を離して、花畑を駆け回る梨華は本当にうれしそうだ
無邪気って言うか、子供というか
コンビニで買ったカメラを出して、梨華を撮る事にした
- 311 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:21
- カシャッ
一面のコスモス畑を走り回る姿
カシャッ
花の香りを嗅ごうと、かがんだら、鼻に近づけすぎてくしゃみ寸前の顔
カシャッ
知らない若い夫婦が押しているベビーカーに乗っている赤ちゃんを
幸せそうな顔で見ている笑顔
あんまり走ると転ぶよー って言ってるスキから転んだ
あーあー、言わんこっちゃない
慌てて駆け寄ると、泣きそうになりながら膝を抱えて蹲っていた
梨華と一緒にいると、いつもヒヤヒヤもんだ
- 312 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:22
- コスモス畑の丘を上がっていくと、一軒の売店があった
「ひーちゃん、アイスたべよ?」
「アイス?寒いじゃん」
「いいから。ほらぁ牧場ソフトって書いてるよぉ?」
「牧場って、どこにあるんだか」
「そんな事言わないのぉ!美味しそうじゃない?」
「はいはい」
バニラにしようかミックスにしようか散々迷ってたけど
バニラソフトクリームにする!と言ったので1つ買うと、それを梨華に手渡した
ベンチに座って足をバタバタしながら、嬉しそうに受け取って一口ぱくつく
ホントに小学生みたい
- 313 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:22
- 「ひーちゃんは要らないの?」
「寒いから、1個は無理」
「んじゃぁ、はい」
「え?」
「あーん」
「あーんって・・・」
「ん?」
アイスを、まるでマイクでインタビューするみたいに
笑顔で自分の方に向けた
食べろと・・・ここで、食べろと・・・
でも梨華のことだ。食べるまで「ん?」って向けつづけるぞ
- 314 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:23
- パクッ
「おいし?」
「・・ん、うん・・・」
「でしょー?」
あー、あーーーもう!!ハズいんだってば
ヤベェ、今絶対顔赤いぞ
「どーしたの?ひーちゃん」
「ふぇ!?」
「顔赤いよ?」
「な、なんでもないよ!」
相手は小学生のガキだと思ってたら、
自分は中学生みたいな反応しちゃってるよ。あー、やだやだ。
- 315 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:23
- 「ねぇ、ひーちゃん」
「ん?」
バタバタしていた足を止めて、梨華は落ち着いた声で話し掛けてきた
「石川梨華って、どんな人だったんだろうね」
「え?」
「記憶を失う前の、石川梨華さん・・・。
もしかしてさ、悪いことしちゃってたらどうしようって思うの」
「悪いこと?」
「だって、後ろから襲われるんだよ?相当悪いことしなくちゃ、そんなことないじゃない」
「んー・・・どうだろう。今の時代は何が起こるか分からないし」
「それにさ、免許証もないし、銀行のカードだって持ってないしさー?」
「うん、まぁ、それはね」
- 316 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:24
-
アイスを食べ終えると、梨華は目の前に広がる花を見つめながら話し出した
「・・・もし、もしね」
「うん」
「意識って戻ったら、今のこと、忘れちゃう、のかな・・・
夢みたいに・・・忘れるのかな」
「それだったら・・・さめない方が、いい」
「なに言っ」
「だって!・・・だって・・・私思うの」
梨華が自分を遮って、話を続ける
- 317 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:26
- 「私の年で、料理もろくに作れなくって。夜のスーパーも、初めてで。
すごい、すごい楽しいって思えるの。」
「うん」
「このアイスだって、お花畑だって、バイクだって
さっきの赤ちゃんだって・・・ミルクだって」
梨華の言いたいことが、なんとなく分かってきた
「でもそれは・・・ひーちゃんにとったら当たり前だけど」
「・・・うん」
「私はそんな当たり前の生活を、してなかったんじゃないかなって・・・」
- 318 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:28
- 梨華が少し首を傾けて、遠い空を見ながら呟いた
「線で、囲われて区切られた中だけで、生きてたんじゃないのかなって・・・」
「線?」
「そう。こうやってね」
近くに落ちていた棒を拾ってしゃがみこむと、足元に大きめの円を描いた
梨華はベンチから立ち上がって、その中に立つ
「ここだけの、世界」
「その、中だけ?」
「そう。ひーちゃんや、柴ちゃんや・・・たくさんの人は、この外なの・・・。
でも、私が知らないことが多すぎるのは、こんな小さな世界で
生きてきたからって、思う」
少し強い風が、梨華の髪を揺らした。
その髪に構う事無く、梨華は遠くの空を見てる
- 319 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:30
-
─ 憂い ─
今その顔を撮れるのならば、そんな言葉を付けたい
悲しみや、戸惑いを、映し出す瞳をもつ
梨華の凛々しい姿はなぜか儚いけど、高貴な光を持っていた
梨華のその姿を目に焼き付けるために、そっと瞼を閉じる
- 320 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:30
- 「もし、そうなら・・・醒めたくない」
「・・・梨華を、心配してくれてる人がいるかもしれないのに?」
胸の前で両手を組んで、首を横に振る
「そうだったら、思い出せるはずだもの」
「そんな」
「柴ちゃんのときだって、少しだけど、思い出せたもの。
でも、入院してるときは、何一つ思い出せなかった。
それより、怖い、嫌だって気持ちのほうが・・・」
- 321 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:31
- - + - + - + - + - + - + - + - + -
『梨華!気がついた!?』
『石川!分かるか!俺だ!』
『・・・あ・・・あ・・・』
『梨華!梨華!?』
『・・・だれ、です、か?』
『え?』
『誰ですかって・・・俺の顔を忘れたのか?』
『石川!石川!しっかりして!』
『だれ・・・いや・・・』
『梨華、梨華!!』
『石川!!』
『分からない・・・』
『梨華!』
『嫌ァァァァ!!!』
- + - + - + - + - + - + - + - + -
- 322 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:36
- 丘を吹き抜ける風で、コスモスが揺れる
強弱をつけて、引いては寄せる波のように。
その風音が、どこか心を不安にさせた
「ねぇ、ひーちゃん」
「ん?」
- 323 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:37
- 「何言っても、驚かないって、約束してくれる?」
「え?」
梨華を見上げると、その目は強い意志を放っていたけど
でも目の奥が不安に揺れていた
「・・・うん」
風がザァッとコスモスを揺らす
- 324 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:38
-
「私ね・・・赤ちゃん、産めないの」
「・・・え?」
- 325 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:40
-
「襲われたときにね・・・ココを、ナイフで、刺されてね・・・」
そういって下腹部を指差した
「産めないんだって・・・それを聞いて、何度も死のうと思った」
左手首の傷を思い出す
「感情も、思い出せなかったの・・・病院のベッドで、いつも外ばかりを見てて
魂が抜けて、人形みたいって、言われてた。」
ウチは少し目をそらした
- 326 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:41
-
「アハッ。おかしいでしょ?襲うんだったら、普通犯すのにーって」
「あ・・・あぁ・・・」
手を後ろで組んで
寂しく笑いながら足元にあった小石を蹴っ飛ばす
まるで他人事のように、梨華は続けた
「こんな体じゃ、赤ちゃん、出来ないもんね」
すこしおどけて首をすくめる梨華を見て
胸を何かが抉り取る痛みが襲ってきた
- 327 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:42
- 「どこに行っても、私は・・・一人なんだと、思う」
「・・・・・」
「これからも、ずっと・・・愛されないのかなぁって・・・」
「・・・ぅょ・・・」
「刺されちゃうなんて、前の石川梨華はよーっぽど悪いことしてたんだろうなぁー」
- 328 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:42
- 「違う!!」
「・・・ひーちゃん?」
ベンチから立ち上がって梨華に怒鳴りつけてしまった
梨華はゆっくり振り向きながら答える
今度は風になびく長い髪を押さえながら。
「違うよ!違う違う!」
「何が、違うの・・・?」
「梨華は一人じゃない!愛されない事なんてない!!」
- 329 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:43
- 梨華の前で泣くのは、2度目だと思う
だけど、今日は涙が出た
声を荒げた。
目から溢れるものが、こんなに煩わしいって思うことはなかった
お願いだから、止まってよ
梨華はしっかりと自分を見つめてくれているのに
ウチは顔が滲んで見えないじゃない
声が上ずって、言いたいこと言えないじゃない
そんな意志とは反して、涙はますます溢れてくる
- 330 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:44
- 「り、かは、愛され、てるよ!梨華、には、家族がいるだろ!
今は、思い出さ、なくたって、ウグッ・・・必ず、思い出すよ!!」
「ひーちゃん・・・」
「友、だちだって・・・グスッ、思い出す、よ」
「・・・・・」
「だから、だから・・・一人なんて言うなァ!!」
- 331 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:44
- 何故、止めたくても涙が込み上げてきたのか
何故、人目も気にせず大声で泣き叫んでしまったのか
少しだけ分かった気がする
自分に、似ていたからだ
数年前、ママに拾われる前の・・・
遠くを見つめて、今にも消えそうな梨華が
あの頃の自分と 同じ
一人の少女を、失った
あのころと、一緒だったから
- 332 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:45
- だから、言いたかったんだ
一人なんて思わないで 同じ道を辿らないで
あなたには、愛してくれる人が、いるだろう?って
泣き止むまでずっと抱きしめてくれた梨華も
声を出さずに泣いていたようだった
回りからみれば滑稽な姿だったろう
青春なんて思われたのかもしれない
だけど、そんなのどうでも良かった
- 333 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:46
- 大切なものを作らないように
人と距離を置いて接していた
作り笑いを覚えて、営業トークだって学んだ
泣く事もなく、声を張り上げて怒る事もしなかった
失うのならば、はじめから手に入れなければいい
まるで呪文のように、繰り返し繰り返し縛って・・・
囲われた線の中にいたのは ウチの方かもしれない
人と自分の間に線を引いて
誰も入らないように 誰にも入られないようにしていた
- 334 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:46
- だけど
ウチよりも小さな身体で
ウチよりも細い腕で抱きしめる彼女は
いとも簡単に その線をかき消して
いつのまにか隣にいた
同情からじゃない 境遇からでもない
あなたが大切と、言葉に出来なかったけど
初めて、心から人の為に泣いた
初めて、感情を出した気がした
- 335 名前:19.理由 投稿日:2005/12/01(木) 01:47
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 336 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:52
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 337 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:53
- 「ふぅ・・・」
いつものように開店前にボトルとグラスを磨く。
しかし、なぜか今日は仕事の能率がわるい
原因は分かってるんだけど。
理由がわからない・・・なんでこんなに胸が痛いんだか。
「もー。なあに!?若いもんがため息ばっかり!」
「すいません・・・」
「だーから、ヨシは恋をしてるのよ!」
「マリ、またそれなの?」
「だってぇ、ヨシの目は誰かの事を思う目よ?」
「そうなの?ヨシ」
恋、ねぇ・・・
- 338 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:54
- 「・・・ねぇ、マリさん」
「なあに?」
「・・・恋ってなんですか」
「「え!?」」
「アンタ、本気でいってんの?」
「え?」
思わず素っ頓狂な声をだしてしまった。
そんな自分をマリさんは目を見開いて驚いている
「ほーーーらやっぱり!」
「や、だから、恋ってなんですかって・・・」
「それはねぇ、ヨシ。誰かを好きになって、心が痛んだり、誰かを思って泣いたりすることよ」
「はぁ・・・」
「いつもその人のことが頭にあってね」
「ええ」
「ため息ばっかりでちゃうのよ」
「・・・ええ・・・って、それは」
「そう、今のヨシ♪鏡でも見なさ〜い、そしたら分かるわよ!」
マリさんは嬉しそうにしながら、同伴行ってきますと出て行った
- 339 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:54
- 心が痛んだり、誰かを思って泣いたり
頭の中にその人のことがある
確かに胸は痛んだし、泣いたりもした
頭の中には梨華のことばっかりだけど
これが恋なのか・・・?
いや、おかしい。梨華は女だ
グラスを拭く手を止めて、カウンターに座って
スポーツ新聞を読むミチさんに声をかけようとした
"女性に恋をするっておかしいですか?"
そんなこと、この場で言ったら、大笑いされそうだから
発しそうになった言葉を飲み込んだ
- 340 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:55
- 「今日はママ、お休みでしたっけ?」
「うん、調停がある日はね。体力勝負らしいわ」
「親権は?」
「やっぱり向こうに行くみたい。父親がオカマじゃぁねぇ・・・」
「子供さんは?」
「ママについていきたいみたいだけど」
「・・・いくつでしたっけ」
ミチさんが新聞の持つ手を下ろして、少し遠い目をして考える
煙が目に入らないように、目を細めながら
「確か・・・ヨシ、いくつ?」
「19です」
「アンタまだ19なの!?」
「あ・・・はい」
「老けてるわねぇ・・・」
「ほっといてください!」
「アンタより4つ下よ」
「中学生・・・」
- 341 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:55
- 「そんな年頃の子だったら、微妙よねぇ」
「確かに」
「子供は足枷になるのかしら・・・」
「・・・産まない方がいいと?」
「アタシは産めないけどさ」
欲しくても産めないのは・・・同じか
- 342 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:56
- 「・・・産まないのと、産めないなら、どっちが嫌ですか」
「あらどうしたの?珍しく真剣な話?」
「珍しいって・・・ちょっと聞いてみたくて」
「産まないってのは自分の意志よね。産めないってのは理由があるからよね・・・」
「ええ」
「これはアタシの意見だけど産まないってほうが高慢な気がするわ。
欲しい人間だっているんだから」
「欲しい人間・・・」
「まぁ、産まないのも理由があるんでしょうけど」
「そうですね」
「でも、もっと高慢なのは堕ろす女ね」
ミチさんは目に入る煙が鬱陶しそうに、顔を顰めた
- 343 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:56
- 「自分の事しか考えてないんじゃないのって思っちゃうわ。相手の男にも責任あるけど」
「そう、ですね」
「どうしたの?ペットの子供でも産むの?」
「ちがいます!」
「なーんだ、いい産婦人科紹介しようと思ったのに」
「・・・時期が来たらいいますから」
「フフッ、期待せずに待っとくわ」
ミチさんが煙草をもみ消し
新聞の読んでるページを裏に折り返した
- 344 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:57
- 「ミチさん、珍しいですね。スポーツ新聞なんて」
「たまには芸能に興味示さないと置いていかれるからね」
「いつも日経なのに。」
「まあね、若い人についていかないと。客商売には必須よね」
「とかいいながら、エロいページばっかり見てるんじゃないですか?」
― バサッ ―
「アンタ、図星いうんじゃないよ!」
「あっはははは!」
「まったく・・・」
- 345 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:57
- 少し顔を赤くしながら、だから若い子はって言いながら読み始めた。
グラスを棚に置いて振り返ると
ミチさんが折り返したページは芸能欄を開いていた
「・・・え?・・・」
グラスを拭いていたダスターを置いて、新聞に近づく
- 346 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:58
-
『RIKAMI 入院長引く』
「・・・あ、あぁ・・・」
- 347 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 01:59
- ― バサッ! ―
新聞を急に降ろされ、自分の目の前には
ミチさんのキス待ち超どアップがあった
「うぁ!!」
「なによ!」
「いきなりなんですか!キモイですから、その顔!」
「アンタが近づいてきたんでしょ?怪しい喘ぎ声出してると思ったから
して欲しいのかと思ったのに、なんなの!アンタって子は」
「ウチは新聞が見たいんです!ミチさんの顔はいいですから!」
「失礼ね!・・・どの記事が見たいのよ」
「こ、こ、こ、これ!!」
- 348 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 02:00
- ミチさんが新聞を自分の方に向けて記事を見る
「ああ、RIKAMI?」
「り、RIKAMI?」
「アンタ知らないの?」
「え、ええ・・・」
「RIKAMI知らないなんてアンタか巣鴨の爺さん婆さんくらいよ」
「そ、そんななんですか?」
「出す歌は絶対1位だし、CMも出まくってるし、ドラマも出てるし
バラエティだって出てるわよ」
「あ、や、でも」
「ああ、アンタの家テレビないんだったわね」
「ええ・・・」
「それでも、雑誌とか出てるし、ラジオも出てるし」
「両方とも疎いです・・・」
ミチさんは大きなため息をついて煙草に火をつけた
「アンタねぇ、この店のバーテンがそんなんじゃダメよ!」
「だって、ここは会話あまり要らないですし・・・」
「おバカ!そんな事言わないの!」
「日々勉強、精進させていただきます」
「ところで、RIKAMIがどうしたの?」
「あ、いえ・・・」
「今RIKAMIってテレビ出てないわよね。入院?なんて書いてるの」
- 349 名前:20.それは 希望か 絶望か 投稿日:2005/12/01(木) 02:02
- 「事務所も、顔なんだから大事に扱いなさいよねぇ」
「・・・あ・・・あ・・・」
「幾ら今まで儲けてなかったからってねぇ・・・ヨシ?」
- 350 名前:20.それは 希望か 絶望か 投稿日:2005/12/01(木) 02:03
-
赤いロングドレスを着て、流し目の大きな写真が載っている
「・・・梨華・・・?」
その顔は、コスモスの丘で見たあの表情と同じだった
- 351 名前:20.それは 希望か 絶望か 投稿日:2005/12/01(木) 02:04
- 「ヨシ?大丈夫?顔真っ青よ?」
「え、あ、はい」
そういえば、軽い頭痛がする・・・
「RIKAMIがどうしたのよ」
「あ、いえ・・・ちょっと」
「この子かわいいわぁ。声も可愛いのよねぇ。オカマのアタシにはあんな声は出せないわぁ」
「声、声ってどんな声ですか!?」
「あら、アンタやけに掘り下げようとするわね、めずらしい」
カランコロンッ
「あ、いらっしゃ〜い」
「あ、あ」
「ヨシ、お客様よ!」
「は、はい」
- 352 名前:20.それは 希望か 絶望か 投稿日:2005/12/01(木) 02:04
- 結局RIKAMIの声がどういうものか分からなかった
でも・・・幾らなんでも
他人の空似にしては、あまりにも似すぎている
そうだ・・・愛ちゃんにCDを借りれば、ちょっとは声が分かるかもしれない
仕事の合間を見て、愛ちゃんにメールした
- 353 名前:20.それは 希望か 絶望か 投稿日:2005/12/01(木) 02:05
- 今日の仕事も終わり、店子を全員見送った後
愛ちゃんはCDを店に持ってきてくれた
「そんなに気に入ったんですか?」
「あ、うん。まぁ」
「いいですよー?これ、初回限定で、メッセージ入りなんです」
「メッセージ?」
「はい!いつ返してくださってもいいので、聞いてくださいねー」
- 354 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 02:07
- 営業終了後、誰も居なくなった店内
拭きあげたカウンターの上に、CDを置く
CDケースを開けて、歌詞カードを見る
何枚かの写真をみて、その予感は確信に変わった
これは、他人の空似なんかじゃない
梨華本人だ・・・
普段、ママが選曲したCDを流しているオーディオのスイッチを入れる
CDを取り出して入れ替える作業なんて何てことははいのに
指が震えて、上手くいかない
少し、ボリュームをあげると、1曲目が始まった
- 355 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 02:08
- スピーカーから流れてくる音
悲しげなメロディに乗せられた歌声
頭を抱え込んだ
- 356 名前:20. 望 投稿日:2005/12/01(木) 02:09
-
皮肉にも、彼女への気持ちに気づいてしまったから
- 357 名前:20.渇望 投稿日:2005/12/01(木) 02:13
-
嗚呼 神様
あなたはとことん私に意地悪をする
あなたは私に救いなど求めるなと言う
やはり、何も手にしては、いけないのですか
こんなにも
苦しいくらいに 狂おしいほどに
梨華
あなたを手にしたいと望んでいる
- 358 名前:20.渇望 投稿日:2005/12/01(木) 02:13
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 359 名前:Rink 投稿日:2005/12/01(木) 02:17
- ネタバレ防止
( ^▽^)<ひーちゃんご飯つくったよー
(○^〜^)<うん
( ^▽^)<ミルクにもあげてくるー!
翌日
(;T▽T)<ひーちゃん!ミルクがご飯食べてくれないぃ!
どうして!どうして?わたしが寄っていくと逃げるのぉ!
(○´〜`)<そ、それは・・・
心の中で「同士よ」と呟く吉澤さんでした
ショートコント
(#´▽`)〜`O) おしまい♪
- 360 名前:Rink 投稿日:2005/12/01(木) 02:39
- 更新終了です
どうしても、ココまで更新しないと
次回に上手くつなげなかったのでまたまた大量更新で
申し訳ございません
そろそろ痛くなります。作者、Mなんで。
ショートコント部は、とある日の2人と言う事で。
>通りすがりの者様
そのまま引き込まれていただけるととても嬉しいです
最後までお楽しみくださいませ
>207様
泣きそうになりましたか?
そう言っていただけると嬉しいかぎりです。
バカっぷり大発揮なシーンを書くほうが楽しくて好きなんですが
これから、もっと痛くなると思います
ちなみにママのイメージは
( `.∀´)この方なんですよね。
ハマり役だと思うのですがどうでしょう?
>名無飼育さん
まばたき出来ましたでしょうか?
乾燥の季節、ドライアイには気をつry
猶予期間。いい響きですねw
あの人のことは大筋決まっているのですが
少し変えようかどうか、思案中です。
そして登場はもう暫く引っ張りますw
- 361 名前:Rink 投稿日:2005/12/01(木) 02:49
- 訂正です
>>348と>>349の間に
記事にはこう書いていた
『国民的アイドルRIKAMIの人気はとどまるところをしらない
しかし、○月○日のラジオを最後に、突然の活動休止している
事務所の会見では、過密スケジュールのため過労で入院したとのこと。
しかし、入院先の病院名、病状、そして復帰はいつ頃なのか
詳細は発表されていない・・・―――」
が入ります。
またミスしてしまいました。鬱だ_| ̄|○
申し訳ありません。
- 362 名前:207 投稿日:2005/12/01(木) 19:13
- 作者さま大量更新乙です。泣きました、泣かせていただきました……
続きを覚悟を決めて(?)まったりお待ちしています。
あっ、ママはイメージ通りでしたよw その人だと思って読んでました〜。
- 363 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/12/01(木) 20:56
- 更新お疲れ様です。
ははぁ、なるほどねぇ。
しかもママがあの人ですかw
次回更新待ってます。
- 364 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:04
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 365 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:05
- 梨華が家に来てから、何回目の朝を迎えたんだろう
扉を開ければ、飛びきりの笑顔で迎えてくれる
それにもだんだんと喜びを覚えて
梨華が作るご飯にも慣れはじめていた。上達はしてないけど。
- 366 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:06
- カンッ カンッ カンッ カンッ
十数段しかないこの階段が、こんなに重いなんて思わなかった
この事実を、どう伝えよう・・・
彼女は望むのだろうか
それより・・・伝えない方が
いや・・・
初回限定の特別メッセージが頭の中でリフレインする
私を応援してくださるファンの皆さんは
大切な友達、そして家族です
私の歌声で恋人たちが結ばれますよう
私の笑顔で、少しでも幸せを届けられますように
Happy!
- 367 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:06
- 紛れもない、梨華の声だった
ドアノブに手をかけるものの、なかなか回せない
ここをあければあの顔がある
でも今の自分じゃ、平静を装えない
まともな考えが思い浮かばない
部屋には入らず階段を下り、梨華と初めて話した公園に向かった
- 368 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:07
- -----------------------------------
- 369 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:07
- あの日と同じように、ベンチに腰を下ろす
遠くで救急車のサイレンが鳴ってる
こんな時間でも町の光はも消えることが無い
何をこんなにも悩んでいるんだろう
何をこんなにも躊躇っているんだろう
笑顔で伝えればいいんだ
「梨華、分かったよ!」って
だけどもう1つの・・・
気付いてしまった梨華に対する
ずっと心の中にあった思いが頭の中を占領する
- 370 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:08
- 本当に言うべきだろうか
彼女はそれを望んでいないというのに。
そして彼女を襲った人間に晒してしまうというのに
なによりも・・・失いたくないと 思っている
「はぁ・・・」
頭を抱え込んでため息を漏らすと
息は白く色づいて上へ上へと消えていった
- 371 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:08
- どれくらい、そうしていただろうか・・・
いつの間にか回りの音さえ全て聞こえなくなるほど
静寂に包まれていた
「ひーちゃん?」
居るはずの無い人物の声に
ビクッと身体を震わせて顔を上げると
梨華が、心配そうにベンチの横で立っていた
- 372 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:09
- 「あ、な、なんで」
「階段の音聞こえたけど、入ってこないから心配になって・・・」
「ああ・・・」
「ドア開けたら、公園に行くの、見えたから」
「・・・そか」
「・・・はい、これ」
ジャケットの袖から少しだけ見える手で
あの時と同じお茶を渡してくれた
自販機の音も、梨華が歩いてくる音も
聞こえなかった自分を少しだけ呪った
- 373 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:10
- 「寒いね」
「そうだね・・・」
「でも、冬ってすき」
「・・・」
「星が綺麗だもん」
はぁっと息を吐きながら空を見上げた梨華の鼻は真っ赤だった
随分、待っていたんだな・・・
ぬるくなったお茶を飲むと、唇の乾きに気づく
- 374 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:10
- 「梨華は、星が好き?」
「うん!」
「そっか」
「・・・ひーちゃん?」
「ん?」
「・・・ううん、なんでもない」
そう言うと、梨華は頭を肩に乗せてきた
「ねぇ、梨華?」
「なあに?」
「・・・もし・・・」
「うん」
「・・・ウチが、梨華の」
「うん」
「記憶を無くす前の梨華を知ったら・・・梨華は、知りたい?」
「え・・・?」
- 375 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:11
- 頭を起こして、真っ直ぐウチを見つめる
真っ直ぐ梨華を見つめ返す。
すると、梨華はゆっくり瞼を閉じて
首を横に振った
「・・・どう、して?」
「・・・知っても、元には戻れないよ」
「でも、梨華を待ってる人が、居るよ?」
ゆっくり空を見上げる。その横顔に、見惚れていた
- 376 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:11
-
「家族や、友達は大切だよ」
「・・・うん」
「その時居た、周りの人たちも、大切、なんだと思う
時間も、かけがえのないものだと思う」
「うん・・・そうだね」
「・・・でも、わたし、それより大切なもの、見つけたから」
「え・・・?」
梨華がウチをじっと見つめてきた
熱を帯びて潤んだ目で・・・
少し顎を上げて、梨華が距離を縮める
「・・・あ・・・」
目を閉じたと同時に・・・梨華の唇が自分の唇に触れた
- 377 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:12
- 触れた唇は暖かいのに
なんでこんなにも胸が痛むんだろう
心がギリギリと音を立てて、締め付けられる
ねえ、梨華
ウチ、梨華のこと好きなんだ
繋がってると思う
梨華の気持ちも伝わってる
でも・・・
あなたを待ってる人は たくさん居るんだよ
ウチは・・・ウチなんて・・・
- 378 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:13
- 「・・・ひーちゃん、なんで、泣いてるの?」
「え?あ、ああ」
気づかないうちに、涙を流していた
梨華は唇で涙を拭ってくれる
それを拒否するわけでもなく、さらに求めるでもなく
されるがままの自分は
卑怯だと思った
- 379 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:13
- 「お願い・・・」
梨華が腕にしがみつく
「なんとなく、予感がするの・・・
知ったら、ひーちゃんが、居なくなるって」
「そんな事・・・」
言い切れない自分は
弱虫
- 380 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:14
-
「お願い・・・お願いだから、言わないで」
思わず梨華を抱きしめた
強く強く・・・跡がついてしまうんじゃないかってくらい。
顔を見れないから、抱きしめてしまった自分は
臆病者
- 381 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:15
- 「傍に、居させて・・・」
そして、声を発さない自分を
殺してしまいたいと思った
- 382 名前:21.怯 投稿日:2005/12/02(金) 00:15
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 383 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:16
- 翌日、開店前に愛ちゃんに会い、CDを返した
「もういいんですか?」
「うん」
「どうでした?」
「良かったよ」
「でしょー?声も可愛いし♪」
「ありがとうね。またなんかいいのあったら貸してね」
- 384 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:16
- カランコロンッ
「おっはよーございまーーっす!」
「おはよう」
「おはよー!ヨシ!」
「早いわね!」
「ええ、天気が悪くなりそうだから、早く出て来ました」
梨華と居る間笑っていようと心に決めながら
どこかで梨華と距離を置いている
- 385 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:17
-
「いつもヨシは元気だねー!」
「そうでしょ?ほら、店のアイドルですから!」
「ま!アイドルの座は譲らないわよ!」
「あっはははは!」
着替えてカウンターに入る
するとママが目の前に座って煙草をくわえた
素早くライターを出して火をつける
「なにがあったの?」
「え?何にもないですよ?」
「ヤケッパチは見てられないわよ」
下唇を噛んで、目を伏せた
「店終わってから時間あるの?」
「・・・はい」
ママは全てお見通しなのだ・・・
- 386 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:18
- -----------------------------------------------
- 387 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:18
- 「ほら、1杯付き合いなさいよ」
「あ、でも」
「薄く作ってあるから」
そう言ってママは水割りを作ってくれた
「いただきます」
「・・・で、どうしたのよ」
ロックグラスを傾けて、ママが隣に座った
「ゆっくりでいいから」
「はい・・・」
何を話せばいいんだろう。
- 388 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:18
- 「ママは・・・手放さなきゃいけないものがあるとき、どうしますか」
「・・・そうね・・・その人に聞くわ」
「離さないでと言われても、離さなくちゃいけないときは・・・?」
「・・・その子の、幸せを考える」
「幸せ・・・ですか」
「アタシの場合・・・一緒に居ても、子供は幸せにはならないからね・・・」
「・・・・・」
「それに、母親についていったほうが、裕福に暮らせるわ」
「そう・・・ですか」
ママはいつも、自分の質問にだけ答えてくれる
詮索はしない
言葉が足りない自分の不器用さも知ってくれているから
答えやすいように、引き出してくれる
- 389 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:19
- 「・・・手放すの?」
「どうしたらいいか、分からないんです」
「相手はなんて言ってるの?」
「傍に居させて、と」
「アンタはどうなの」
「手放したく、ない・・・です
でも帰した方がいい・・・待つ人が多いから・・・」
瞼を閉じて、俯いた
- 390 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:19
- 「本当に大切なら、攫っていいのよ」
「・・・え?」
ママの方を向くと、強い視線で真っ直ぐ前を見詰めていた
珍しい。ママがそんな事をいうだなんて。
「アンタたちの事、誰も知らないところに連れ去ったっていいのよ
本当に大事なら、攫って行きなさいよ。
なりふりなんて構わなくていいのよ。それはカッコ悪いことじゃないわ。
アタシはアンタの選択は間違いないと思ってるわ。いつも」
「・・・ありがとうございます」
「いいのよ」
「でも・・・無理なんです」
「どうして」
「向こうが失うものが多すぎる・・・でも、自分は愛しかあげれない・・・」
「それは、ただの逃げよ・・・アンタが傷つきたくないだけ」
- 391 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:20
- ママはいつも自分の奥深くに押し込めている感情を見透かす。
そしてその言葉は、いつも正しい
帰した方がいい。待つ人が居るから
それに、小さな頃の夢だっただろうから
だけどそれは建前なんだ。
ホントは、傍に居て欲しいと思っている
でも、あまりにも彼女は大きすぎる
それに代わるものが自分はあげられるのか
自分は攫う勇気も、守る強さも、包み込む優しさも
ウチには持ち合わせて無いから・・・
でも、それさえも嘘。
本当は
ただ、自分が傷つくのを怖れている
- 392 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:21
- 目の前の壁から目をそらして、逃げてばかりいる自分
「それとも・・・その前に目を向けなきゃいけない物があるのかしら」
店を出たときには、すっかり空が薄白くなっていた
- 393 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:22
- ---------------------------------------------ーーーーーーー
- 394 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:23
-
酔いをさますために、コンビニに入って週刊誌を読んでいるうちに
梨華と過ごして、どうしても理解出来なかった点と点が
線で繋がった
マックで浴びていた視線も、梨華が襲われた理由も
焼け焦げた手紙の断片も
あゆみが言った言葉も
"梨華ちゃん・・・色々、大変だと思う。今の状況とか・・・"
- 395 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:24
- 週刊誌はどれも常にRIKAMIの記事は取り上げられている
一部の週刊誌は、RIKAMIが襲われた事もスクープとして載せている
RIKAMIと噂になった男性アイドルのファンが
入院以前、RIKAMIのマンションの前をうろついていたそうだ
犯人の推測も行われている
しかし双方の所属事務所からのコメントは
付き合っているという事実はないとの事
男性アイドル本人からもそのような事実もないとコメントしている
梨華はファンからの行き過ぎた妄想、逆恨みのせいで
子供を産めない身体になったのだ・・・
- 396 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:25
- そして、あゆみが梨華宛てに送った手紙が焼け焦げていたのも
デビュー当時、梨華とライバルに位置に居た人間に、放火されている
たくさんのショックな出来事が重なり
梨華は手首を切り自殺を図ろうとした
という記事も取り上げられていた
残酷過ぎる試練とも言うべき出来事を乗り越えて
たくさんの人に希望や愛を届けてる
彼女を求めてる人は、本当にたくさんたくさんいる
- 397 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:26
-
だけど、誰よりも
自分が求めてる
彼女の笑顔を、心を、全てを。
もし、神様がいて
こんな自分の願いを叶えてくれるのなら
強さを下さい。
彼女を守れる強さを下さい
"お願い・・・お願いだから、傍に居させて"
明けはじめた太陽が眩しくて
目を細めた
- 398 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:27
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 399 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:28
- 「遅かったねー。ってもう朝だから、早かったねーだね」
「ただいま」
「ご飯たべる?」
彼女はご飯も食べず、いつも自分の帰りを待っている
「梨華・・・」
コートも脱がずに抱きしめる
「ど、どうしたの?」
「ちょっと、こうさせて・・・」
「うん・・・」
梨華の肩に顔をうずめる
- 400 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:28
- 彼女の笑顔を見れば元気になる
抱きしめられると、勇気を貰える
だから・・・
彼女を 傷つける全ての物から
自分が守ろう
弱くても・・・
なりふりなんて構わなくていい
風に揺れて今にも消えてしまいそうな
小さな灯りだけど
それでも梨華を暖められるのなら
- 401 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:29
- 梨華
ウチは梨華の笑顔で強くなれるから
梨華の温もりで安心出来るから
梨華の言葉で優しくなれるから
梨華のために、いきたい
- 402 名前:22.風前の灯 投稿日:2005/12/02(金) 00:29
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 403 名前:23.麻痺 投稿日:2005/12/02(金) 00:31
- 梨華と住み始めて半月が経った
ますます冷え込みがきつくなり、隙間風が入るこの部屋は辛くなる季節だ
でも今年の冬は、隣に梨華が居る
お互い「暖かいから」なんて建前を言って
抱きしめあって眠ることが、当たり前のようになっている。
コタツの左隣には梨華が居る。
少しずつだが、料理の腕も上がってきたみたい。
嫁さんトークも落ち着きを見せていたが
時々梨華がする『夫婦の会話(一人芝居)』の出演頻度は増していた
その度流したり、ツッコんだり、笑いあったり
- 404 名前:23.麻痺 投稿日:2005/12/02(金) 00:31
- コスモス畑で撮ったカメラも、家で梨華がする、マヌケ顔によって
残数を減らされている
「ひーちゃん、これ現像しないの?」
「あー。そういえば・・・あと1枚だって」
「じゃぁ、二人で撮る?」
「そうだね」
背景は古ぼけた部屋の壁。何の飾り気もない
ウチは梨華の左側に来て、梨華と肩を並べる
「もうちょっとくっついてよぉ!」
「あー、はいはい」
左腕をめい一杯伸ばしてカメラをこちらに向ける
- 405 名前:23.麻痺 投稿日:2005/12/02(金) 00:32
- 「よいですかー?」
「よいですよー」
「んじゃ、いきますよ。ハイ、チー」
― パシャッ ―
梨華が両手で自分の頬を包み、首を横に向け
『ズ』は梨華の唇に塞がれた
- 406 名前:23.麻痺 投稿日:2005/12/02(金) 00:32
- 暫く何が起こったのか分からず、呆然としている自分に
嬉しそうな顔で、梨華が囁いた
「奪っちゃった♪」
- 407 名前:23.麻痺 投稿日:2005/12/02(金) 00:33
- ウチは顔からボンッと火が出そうなくらい、真っ赤になる
「て、てめぇ!」
そう言うと、ウチの手からカメラをひょいと取り上げ
逃げるように立ち上がった
「ひーちゃん、現像いこ?現像!」
「ま、まて!」
「ほら、はやくぅ!」
「お前は人をおもちゃにしてるだろ!」
「行きますよ〜」
ウチのコートを持って玄関に立っている
はぁ・・・
カーニバルだと思ったけど
コレは多分・・・いや、間違いなく
マリさんが言うように
恋なんだと思う
胸が高鳴る音が日に日に増しているから。
頭をポリポリ掻きながら、内心で写真がブレてることを願った
- 408 名前:23.麻痺 投稿日:2005/12/02(金) 00:34
- ----------------------------------------------------
- 409 名前:23.麻痺 投稿日:2005/12/02(金) 00:36
- 翌日の晩御飯
梨華の様子がいつも以上にワッキャ、ワッキャしている
ついにイッちゃったかと思うくらい
くねくねしっぱなし
「なに、はしゃいでるのさ」
そう言って冷蔵庫に行くと
昨日の、不意打ち写真が貼られていた
「て、てめぇ!!」
「えへっ!上手く撮れてたの。ハッピー♪」
- 410 名前:23.麻痺 投稿日:2005/12/02(金) 00:37
- よくよく見ると、台所にも、いつのまに梨華が撮ったのか
バイクを運転する自分の横顔ショットの写真が立てられていた
「ひーちゃんを思いながら、晩御飯を作るの♪
このひーちゃん、かっこいーー!」
- 411 名前:23.麻痺 投稿日:2005/12/02(金) 00:37
- もう、眩暈どころの騒ぎじゃない。
呆れを通り越して、乾いた笑いが漏れる。
「外せ!!」
「やーだぁ!」
「捨てろ!」
「だめ!」
「恥ずかしいだろ!」
梨華は写真を死守している
もうどうにでもしてくれと、写真はそのままにすることにした
冷蔵庫の写真は、嫌でも見てしまうので
別のところに移動させて欲しい・・・
- 412 名前:23.麻痺 投稿日:2005/12/02(金) 00:38
- これが日常。これが平常
キャーキャー毎日梨華と騒いで、バカやって・・・。
これが、幸せって言うもんなんだ
自分の選択は正しかったんだ
くさいセリフ、“世界中を敵に回したって”
梨華がいれば、強くなれる
梨華の笑顔が見られれば、それだけで
うちは梨華を守れる。笑顔を守り抜ける
・・・そう思っていた
- 413 名前:23.麻痺 投稿日:2005/12/02(金) 00:38
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 414 名前:23.5.キモチ 投稿日:2005/12/02(金) 00:49
-
ひーちゃんと居れば わたし心があったかくなるの
ひーちゃんと一緒に寝ると、ぐっすり眠れるの
ひーちゃん照れ屋さんだから
からかいたくなるの
真っ赤になって、ちょっと怒った顔をしてるけど
だけど、嬉しそうにしてる
そんなひーちゃんが好き
- 415 名前:23.5.キモチ 投稿日:2005/12/02(金) 00:51
-
これって恋っていうんだと思う
変かな。こんなわたし
でも、それでもいい
周りなんて関係ないから
わたしね、ひーちゃんのおかげで
キモチが優しくなれるの
いつか言いたいから
その時は、ひーちゃんのことだから
照れると思うけど
わたしも、恥ずかしくなるから
ぎゅっと抱きしめて
- 416 名前:Rink 投稿日:2005/12/02(金) 00:58
- 更新終了です
まるでN○K連ドラ級に毎日更新してますが
大丈夫なのか自分が不安です汗
話も終盤に差し掛かってまいりました
痛め痛めで行きますのでよろしくお願いします
>207様
泣きましたか。泣いちゃいましたか。
作者の思う壺ですよーww
ママは(`.∀´)か( ゚皿゚)かどちらかで迷っていたんですけどね。
やっぱり彼女の方が適役ですね
>通りすがりの者様
納得いかれましたでしょうか?
もっとドロドロさせようかとも思ったのですが
作者の頭ではあれが精一杯でして汗
どうか、見放さないでくださいませ
最後まで駄文にお付き合いいただけると幸いです
- 417 名前:774飼育 投稿日:2005/12/02(金) 01:08
- 更新お疲れ様です
いいお話ですねぇ・・・
これからどうなるのかすごい楽しみです
次回も楽しみに待ってます
- 418 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/02(金) 01:27
- 更新お疲れ様です。
素敵です。
いつもドキドキしながら読ませてもらってます。
次回がすごく楽しみです。
- 419 名前:207 投稿日:2005/12/02(金) 01:35
- 更新お疲れ様です。
あぁ、切ないけどこの二人が愛しい……
続きも楽しみにしています。今後の二人を、ひっそりと見守っていきたいと思います。
- 420 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/02(金) 01:41
- (´∀`)キャーワイイ
- 421 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/02(金) 01:58
- うわぁ…。一気に読みました。作者様の中で既にストーリーができてる感があって、
変な言い方ですけど安心して読めます。
これからもがんばってください^^
- 422 名前:23.75.Why me ? 投稿日:2005/12/02(金) 14:51
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 423 名前:23.75.Why me ? 投稿日:2005/12/02(金) 14:52
-
ねぇ
あの時あなたに出会っていなければ
こんなふうにはならなかったのに
ねぇ
あのときあなたに出会っていなければ
今も二人は他人同士なはず
ほんとうにそうおもう?
ほんとうにそう思う?
いいえ
あなたは?
そうだね・・・
こうなる運命なのかもね
初めから決まっていたんだね
- 424 名前:23.75.Why me ? 投稿日:2005/12/02(金) 14:53
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 425 名前:Rink 投稿日:2005/12/02(金) 14:54
- ちょっとだけ更新。
深夜にもう一度更新します
レスはその時に。
- 426 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/12/02(金) 22:35
- 更新お疲れ様です。
いよいよでしょうか。。。
次回更新待ってます。
- 427 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:30
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 428 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:33
-
♪♪♪♪〜
仕事が休みの、昼過ぎ。
携帯のメロディが流れる
ディスプレイを見ると
『中澤不動産』
嫌な予感がした
- 429 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:34
-
Pi
「もしもし?」
『ヨッサンか?』
「はい」
『アンタ、何したんや』
「え?」
『さっき、アンタの家の住所調べに変な連中きよった』
「うちの・・・?」
『何とか事務所言うてたで』
「事務所・・・?」
『芸能プロダクションや言うてたけど、なんでアンタに用あんねん』
「・・・・・」
自分が、ごくりと生唾を飲む音が耳にはっきりと伝わった
- 430 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:34
- 『一緒に居った、ねーちゃんのことか』
「・・・・・」
冷や汗が流れる
『・・・とりあえずそいつらにはなんも話さんかったから安心しぃ』
「ありがとう、ございます」
『早めにカタつけらなあかんで』
Pi
胸に、生ぬるい嫌な風が吹いた
- 431 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:35
- 「ひーちゃん?どうしたの?」
「あ、いや。なんでもないよ」
「そう?顔色悪いよ」
「大丈夫」
「なら、いいけど・・・」
一緒に居る事が、知られている
ということは、ココにくるのかもしれない
なんとか梨華を守りたい
だけど自分には力がない
頼れる人は・・・
ママに相談してみよう
あの人なら何か、アドバイスをくれるはずだ
携帯にコールをするが、留守番電話に繋がる
何故かじっとしていられなくて、コートを手にした
- 432 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:36
- 「梨華、ちょっと出かけてくる」
「何処行くの?」
「店に行ってくる」
「もうお仕事?」
「そうじゃなくて・・・ちょっと相談したい事があるからさ」
「そっか」
「梨華、誰か来ても開けちゃだめだよ?」
「わかってるよぉ」
- 433 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:39
- 「梨華?」
「ん?どうしたの?」
梨華はいつもの笑顔を見せてくれたけど
妙に焦っていた。冷や汗が止まらない
動悸がする。浅い息が続く
「梨華・・・」
「どうしたの?」
「梨華」
「ひーちゃん、顔真っ青だよ!?」
「梨華!」
梨華の腕を掴むと、ビクッと身体を震わせて、梨華は制止した
「ごめん・・・おっきい声出して」
- 434 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:40
- 目を閉じて、平静を取り戻そうとする
でも、不安が拭い去れない
カチッ カチッ カチッ カチッ
時計の針が一秒一秒を刻む。やけに耳に障る。
これは部屋の時計の音じゃない。
迫り来る何かがあるんだ。
自分の心臓の音が聞こえる。軽い吐き気と頭痛がする
- 435 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:40
-
「ひーちゃん?」
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、んん・・・ハァッ」
浅い息を繰り返してる自分を見て、梨華の顔は不安の色に染まっていく
上手く言葉が出せないもどかしさと
こんな姿を見せられない焦りと
"守らなきゃ" そう思えば思うほど空回りしていく
- 436 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:41
-
「ひとみ」
梨華は腕を首に回し、少し背伸びをしてキスをくれた
「ひとみ」
今まで梨華からもらった事のない、熱い熱いキス
脳が痺れて、何も考えられなくなるほどのキス
クラクラと眩暈がするほど濃密な・・・
- 437 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:42
- 「・・・落ち着いた・・・?」
「・・・んっ・・・はぁ」
「大丈夫だよ」
ぎゅっとしがみつくように梨華は自分を抱きしめる
「大丈夫・・・大丈夫。大丈夫だよ」
繰り返されるたび、落ち着きを取り戻す
- 438 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:43
- 「大丈夫。ひーちゃんの傍にいるよ」
「・・・うん」
「ひーちゃんが、好き」
「うん・・・」
「ひーちゃんが、大好き。ひーちゃんが居てくれるから、笑顔になれるの」
「うん」
「ひーちゃんが、好き」
「・・・うん」
- 439 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:43
-
今なら、言えそうな気がした
今、言わないといけない、気がした
- 440 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:44
- 「・・・うち、も・・・好き」
「え・・・?」
「・・・梨華が、好き・・・黙ってて、ごめん」
「ほん・・・と?」
「うん」
梨華の腕をゆっくりほどきながら身体を離して見つめる
梨華は涙を流しながら、見上げた
- 441 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:45
- 「梨華を守りたい。今から、大事な相談をしてくる」
「うん・・・」
「ウチの恩人だから、アドバイスくれると思う。」
「うん」
「すぐに帰ってくるから、待ってて」
「分かった」
「誰かが来ても開けちゃだめだよ」
「分かった」
「・・・ふぅ・・・」
大きく息をつくと、腕を梨華から離した
いくつになっても言葉が足らない自分が嫌になるけど
そんな自分を分かってくれる梨華を
本気で守りたいと思った
- 442 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:46
- 「じゃあ、いってきます」
「うん。気をつけてね」
「分かった。すぐ戻るから!」
後ろ手にノブをつかみ、梨華に笑顔を送る。
梨華も笑顔で返してくれる
ガチャッ
ドアを開けた瞬間
梨華の視線は、自分を通り越し
その笑顔は凍りついた
- 443 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:47
-
「え?」
振り返るとそこには、スーツを来た屈強な男が2人と
赤のスーツの女と金髪で派手な男が立っていた
「吉澤ひとみさん?」
女がサングラスを外しながら自分に問う
- 444 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:48
-
「なん、ですか」
「私、こう言うものよ」
名刺を差し出す
そこには週刊誌に書いてあった梨華の所属事務所と
取締役代表とが書かれてあった
「梨華を返して頂戴」
- 445 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:49
- スーツの男たちが、強い力で自分を突き飛ばす
あまりの衝撃に、後ろに倒れた
男たちは部屋に上がると梨華が持ってきていた鞄を掴み
梨華を抱えると外に連れ出した
「おい!待てって!」
「何!?いや!いやぁぁぁ!!」
「離せ!梨華を離せ!!」
「ひーちゃん!」
突然の出来事で頭が回らない
梨華は外にいる金髪男と女に抑えられている
- 446 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:50
- 立ち上がって玄関に向かおうとしたら
スーツの男が自分を軽々と投げ飛ばした
ドンッ ガッシャーン!
食器棚に叩きつけられて、激痛が背中に走る
「っつぅ!!」
「ひーちゃん!ひーちゃん!!!」
「り、か・・・」
倒れこむ自分の腹に、男が蹴りを入れる
「っがは!!」
「やめてぇぇ!」
- 447 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:52
-
数発腹を蹴られたが
寸でのところで両手で受け止めて足を捻り、大男をなぎ倒した
「うわぁ!」
足払いを食らった男は床の上に倒れこんだ
「てめえら・・・なめんじゃねえぞ」
口から流れる血を拭って、もう一人の男と対峙する
「梨華は渡さない」
- 448 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:54
- 「ひーちゃん、後ろ!!!」
視線を梨華に向けた瞬間、一瞬の隙をついて
倒れこんでいた男に背後から羽交い絞めされてしまった
「は、なせぇぇ!」
目の前の男が、自分の腹部をめがけて
腕を大きく振りかぶった
−ドカッ−
「ぐはぁっ!」
「いやぁぁぁぁ!やめてぇぇ!!」
−ボキッ!ゴリッ−
骨が折れる鈍い音が伝わった。
−ドスッ ドスッ!−
何度も何度も鈍い音が響く
男に捕まれている腕が、ミシミシと嫌な音をと立てる
「ぐっ、かはっ!ごはっ!」
口から大量の血を吐き出す
−バキッ!!−
どこかが折れる音が、身体の中を走りぬけた
- 449 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:56
- −ドサッ−
男から解放され
膝から崩れ落ちてその場に倒れこんだ
「げほ、ごほっ・・・」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」
遠くで梨華が叫んでる
「もういいだろ。こんなところに居たら大事な商品が腐る」
金髪男がウチの顔を踏みつけながら喋る
商品って・・・梨華の事か・・・?
- 450 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:57
- 「吉澤さん?もう梨華に近づかないでね」
「いやぁぁ!!ひーちゃん!!!」
「梨華、黙りなさい!」
「ひーちゃん!ひーちゃん!!」
「り、か・・・」
- 451 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:58
- 階段をけたたましく下りる音がする
「ひーちゃん!ひーちゃん!いやぁぁぁぁ!」
梨華は、自分の名前を叫んでいた
体を起こそうと、右腕で床に手をつく
「っつぅ!!!」
激痛が走った。腕が折れてる
どうにか体を起こしてやつらを追う
だけど今は、息をするのさえ精一杯で。
なんとか外に出ようとしたけど、足がもつれて勢いよく飛び出してしまい
廊下の柵にぶつかって、倒れこんだ。
車に押し込められる梨華の姿が、ぼやけて見える
- 452 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 00:59
-
「お前が女で感謝してるよ。」
頭の上で誰かが喋る
「あー。でもアイツは妊娠しないから心配いらないか。ハハハハ!」
下卑た笑いを発しながらウチを足で仰向けにする。
もう反撃する事も出来ない
「だけど、虫がつかれちゃ困る」
ぼやける視界で、金髪の男だと気づいた
「・・・ゴボッ」
また口から血を吐き出した
「もしまた梨華に近づいたときは・・・
お前の家族のことと、後藤とか言う女の事
街に撒いてやってもいいんだぜ?」
「!!」
ウチは痛みも忘れて目を見開いた
- 453 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 01:02
- 「お前みたいな蛆虫は、ちゃんと駆除しなくちゃな!!」
クロコダイルの革靴が、自分の腹を思い切り踏みつけた
「グハッ!!」
「無力だな。アッハハハハハハ!」
梨華を商品だと言った男
梨華を金としか見ない最低な男の高笑いに
指一本動かす事も出来なかった
- 454 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 01:03
- 男は財布から札を取り出し、自分の顔の上に散らした
「治療費だ」
下でクラクションが鳴り響く
カンッカンッカンッカンッ
バタンッ ブロロロロロロロッ
エンジン音が遠ざかり、辺りは静寂を取り戻す
- 455 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 01:05
- アパートの柵越しに見える空に、数枚の札が舞い上がった
自分は血を拭う事も出来ない
溢れる涙を止める事も出来ない
ぐうの音も無いほど、打ちのめされていた
「・・・梨華・・・」
ウチは 無力だ・・・
- 456 名前:24.無 投稿日:2005/12/03(土) 01:06
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 457 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:07
-
ここは・・・?
一面真っ白な部屋・・・いや、壁がない・・・天井も見当たらない
ぼんやりと、誰かが見える
あれは・・・両親だ・・・
- 458 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:08
-
「ひとみ・・・」
父さん・・・
「ひとみ・・・」
母さん・・・
「こっちに、おいで・・・」
手招きをする、父と母
- 459 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:09
-
「ひとみも、一人で辛いでしょ・・・」
「おいで」
「オイデ・・・」
その顔、体が
真っ黒に爛れ、ドロドロと溶けていく
- 460 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:10
-
「オイ、デ」
「オ、イ・・・デ・・・」
腕を掴んだ手は
グチャッと虫唾が走る嫌な感触を残し
崩れ落ちた
- 461 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:11
- 形を崩してもなお声をあげつづける
真っ黒な物体
「ヒ、ト・・・ミ・・・」
「いやだ・・・」
「ヒ・・・ト・・・ミ・・・・・」
「ヒ・・・ト・・・アアアアア」
「うああああああああ!!!」
目を瞑り
耳を手で塞いで、その場から走って逃げた
声が聞こえなくなる場所まで
走った 走った
- 462 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:12
-
足がもつれて 大きく転ぶ
「ハァ・・・ハァ・・・」
腕には掴まれた跡が、くっきりと残っていた
- 463 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:13
- 「よしこ」
「・・・え?」
「私だよ」
「誰・・・」
前髪が消えて、顔が現れる
「マキだよ」
- 464 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:14
-
「・・・ごっちん?」
「そう・・・」
「ごっちん・・・」
「久しぶりだね」
「そう・・・だね」
- 465 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:15
- 「よしこは、冷たいね」
「・・・どうして」
「一度も、会いに来てくれない」
ごっちんは、頭からダラダラと血を流し始めた
「もういいんだよ・・・もう、わたしのことはいいんだよ」
「どうして」
「みんな、諦めてしまっているから」
「そ、そんな」
目から、口から
腕や体から血が溢れ出す
流れ出た血は
白いワンピースを赤く染めていく
- 466 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:16
- 「本当はよしこだって、そうでしょ?」
「ちがう!」
「だから、会いに来てくれないんでしょ?」
「ちがう!」
「そうだよ」
「ちがう・・・」
「よしこは、自分さえ良ければそれでいいんだ
私のことなんて、何も考えちゃいない
償ってるつもりでいる、ただの偽善者なんだ」
音もなく、膝から崩れ落ちる
- 467 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:17
- 「ねぇ、よしこ・・・」
「・・・に」
「よしこ、顔を上げて」
恐る恐る顔を上げると、血を流していない
あの頃のようにふにゃっと笑うごっちんの顔があった
「よしこは、幸せになりたい?」
なんで、そんな事を・・・
「答えてよ」
- 468 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:20
- 「そんなの、無理だよ」
「質問の答えになってないよ」
目を伏せて、きつく瞼を閉じる
「なりたいの?なりたくないの?」
唇が震える
「・・・・いよ・・・」
「なに?聞こえない」
「なりたいよ!!!」
ウチはごっちんに叫ぶように言い放った
「なりたいよ!だけど、どうやったらなれるんだよ!
手にしたものはみんな離れていく
一人になんてなりたくない!」
今まで隠していたことが
全て流れ出る、とめどなく・・・
- 469 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:21
-
「・・・やっと本音言ったね・・・」
「・・・・・」
「よしこ、いつも線引いてたから・・・。私にでさえね・・・」
「そんな・・・」
- 470 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:24
-
よしこ・・・いい事を教えてあげる。
言葉にしなきゃ伝わんないよ?
だけど目をそらすから、逃がすの。
まるで自分だけが傷ついてると思い込んで・・・。
伝えて。貫いて。
回りがなんと言おうと。
よしこなら、出来るよ・・・
- 471 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:25
-
「え・・・?」
「大事にしなよ」
「ごっち・・・」
「じゃあね」
そういうと、ごっちんは、振り返る事無く歩き出した
「どこいくの!?」
「会いに来てね・・・」
「待ってよ!ねぇ、待って!置いてかないで!」
ごっちんを追いかけようと走り出すけれど、幾ら走っても追いつけない
次第にごっちんの姿は、霧のように消えていった
- 472 名前:Rink 投稿日:2005/12/03(土) 01:25
-
訂正
462と463の間に
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
「・・・ヨシコ・・・」
ビクッと身体を震わせる
声のする方を見ると、少女が一人立っていた
「・・・・誰?」
「忘れたの?」
「誰だよ・・・顔、見せて」
真っ白いワンピースを来た少女の髪は長く
顔が隠れるほどの前髪があった
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
が入ります
途中でしたが話の流れをスムーズにさせたかったので
ここで訂正入れました
すいません
続きます
- 473 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:27
-
「・・・と、み」
「ひとみ・・・」
「え?」
振り向くと梨華がいた
- 474 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:28
-
「梨華!」
「ごめんね・・・」
そういうと、顔の見えない誰かに腕をとられ
梨華は泣きながら歩いて行く
「まって・・・待ってよ!梨華!梨華!!」
梨華がこぼしていった涙が、キラキラ光る破片になって、辺りに落ちている
「梨華!梨華!!」
梨華の背中を追いかけて、必死で走るけど、足が空回って上手く走れない
梨華が落としていった破片が足の裏に刺さる
破片が風に乗って、自分の腕や顔を切り刻んでいく
血を流しながら、腕をめいいっぱいのばして捕まえようと追いかける
- 475 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:31
- 梨華はゆっくり立ち止まって、振り返ると
泣いていた
「ひとみ」
ピシッ
「ひとみ・・・」
ピシッ ピシッ
梨華が言葉を発するたびに、亀裂が入る
「梨華ァァァァァ!!!」
「ア、イシ、テ、ル」
梨華を掴もうと手を伸ばした
- 476 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:32
-
バシッ! パリンッ、ガシャーンッ!
無機質な音を立てて
グラスが割れるように、粉々になって
梨華は消えてしまった
触れることも、出来なかった
- 477 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:33
-
「オイデ・・・」
「会いにきて・・・」
「アイシテル」
・・・・・また、一人だ・・・・・
走ってきたほうを見ると、自分の血でついた足跡だけがある
・・・・・また、一人になった
- 478 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:34
-
涙も、出ない
泣く事も出来ない
そこにあったのは、『無』
怖れていた、闇ではなく
真っ白で、自分しか居ない 絶望の世界
- 479 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:37
-
強い風が吹きぬけた
ああ・・・
風は、自分を消していく
砂の城が風に乗って形を崩していくように
音もなく
自分を消していった
ウチは、一人だ
───────────────────
───────────────
───────────
───────
- 480 名前:25.『無』 投稿日:2005/12/03(土) 01:38
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 481 名前:Rink 投稿日:2005/12/03(土) 01:40
- 更新終了です
途中御見苦しい点がございました事
深くお詫び申し上げます
- 482 名前:774飼育 投稿日:2005/12/03(土) 01:48
- 更新お疲れ様です。
続きがすごい楽しみです
次の更新も楽しみにして待ってます
- 483 名前:Rink 投稿日:2005/12/03(土) 01:50
- レスポンス。
>774飼育様
ありがとうございます
いい話だなんて、そんなそんな。
ご期待に応えられるよう頑張ります
>名無飼育さん様
そう言ってくださるあなたが素敵♪
心拍数アゲアゲでよろしくです
>207様
切なさ満開でお送りしてみました
如何でしょうか。
最後までこの二人を見守っていただけると幸いです
>名無飼育さん
あーざぃやす!
もっと喜んでいただけるキャワな文を
早く書きたい(泣)
>名無飼育さん様
ありがとうございます。
いやいや、安心なんてそんな。
作者本人はうっかり更新ミスしまくりで
頭の中もとっ散らかってまして・・・
でも、とても励みになります。ありがとうございます
>通りすがりの者
いよいよ来ましたね。どうでしたでしょうか
予想を覆したかったんですが、覆せてない自分に鬱だ
- 484 名前:Rink 投稿日:2005/12/03(土) 01:53
- レスがたくさんついて、作者本人とても大喜び小躍りです
皆さんのおかげで、更新もミスはありますが
はかどっております。本当にありがとうございます
今回更新少ないので、もう一回更新しようかと思っているのですが
需要ございます?
>774飼育様
リアルタイムありがとうございます
あまりの速さにびっくりしましたww
- 485 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/03(土) 02:01
- 更新お疲れ様です。
またまた、さらにひきこまれていきましたっ!
続きを楽しみにしています。
- 486 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/03(土) 02:07
- 更新お疲れ様です。
- 487 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/03(土) 02:43
- (;´Д`)ハラハラ
- 488 名前:Rink 投稿日:2005/12/03(土) 02:49
- 夜中にコッソリ。
3時に更新します
寝不足になったらゴメンナサイ
- 489 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:01
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 490 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:01
-
「・・・・・んっ・・・」
「・・・し・・」
「んっ・・・?」
「・・・ヨシ?」
「え・・・?」
視界が広がって、ぼんやりと目に自分を覗き込む人の顔が映ってきた
- 491 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:02
- 「ヨシ・・・ヨシ!わかる?」
「あ・・・え・・・」
「ママ!ヨシが気づいたわよ!」
「・・・ヨシ・・・ヨシ!?」
「あ・・・ママ・・・」
「分かる?」
「・・・はい・・・」
「はぁ・・・よかった・・・」
ほのかに消毒液くさい部屋、ボロイ天井が見える
- 492 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:02
- 「あ、の・・・ここは、どこ、ですか」
「ミチの知り合いの闇医者」
「はぁ・・・」
「アンタから携帯鳴ってかけなおしたけど
繋がらないから不安になってマリに見に行ってもらったの」
「マリ、さんが・・・」
「おぼえてない?」
「はい・・・」
「右手骨折と捻挫、肋骨が折れてるせいで肺が少し損傷していたけど
あとはなんとか大丈夫よ」
「そうです、か・・・」
それで体が痛いのか・・・
じゃぁ、あの事は、夢じゃなかったんだ
あの夢は・・・現実だったんだ
- 493 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:03
-
「ヨシ・・・なにがあったの・・・?」
ママが優しく髪をすいてくれる
「・・・大切なものを、守れなかった・・・
守るって・・・決めたのに・・・守れ、なかった」
- 494 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:04
-
包帯だらけの腕で顔を隠した。泣き顔を見られたくなかったから
包帯がぐんぐん涙を吸っていく
「もう、戻ってこない・・・」
「・・・何故・・・?」
「分かるんだ・・・もう、帰ってこないって・・・」
それでも止まらず、頬を流れた
夢では、泣かなかったのに
梨華を思うと、辛くて、辛くて・・・辛くて・・・
涙がとまらない
「また、失った・・・」
- 495 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:04
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 496 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:04
-
3日後、病院を後にして、家に戻った
これ以上闇医者の世話になるのは厄介だから。
マリさんはずっと、歩けない自分を支えてくれていた
「・・・めちゃくちゃね・・・部屋」
「はい・・・」
「掃除、手伝うわ」
「あ、でも」
「アンタのその身体じゃ何にも出来ないでしょ」
「・・・ええ」
「甘えなさい」
右手をつるして、頭と頬に包帯を巻き
息をするのが辛く、足を引きずる自分に何が出来るんだ
- 497 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:05
-
食器の割れた破片を左手で集める
梨華が良く使っていたマグが割れている
自分の茶碗や皿は無事なのに・・・梨華のものだけが割れていた
あの夢と一緒だ
「っぐっ・・・うう、う・・・」
握り締めた左手から血が流れる
こんな痛みじゃない、こんな傷じゃない・・・
マリさんは、嗚咽に耐える自分を
見ない振りしてくれていた
- 498 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:06
- 片づけが終わって、マリさんは胃にやさしいものをと
お粥を作ってくれた
ずっと付き添うといってくれたが、大丈夫と断った
何かあったらすぐ電話しなさいと言い残し心配そうに店に出かけていった
店は暫く休む事になった。
せめて包帯が取れるまで
ゆっくり休みなさいとママから言われたから
- 499 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:07
-
部屋の寒さは傷に悪い
でもそれは体の傷なんかじゃない
体の傷なんて、食事をしなくても治る
穴が開いた胸の傷が、ぐじぐじとうずいて
自分を飲み込もうと、だんだんその穴を広げていく
目を閉じると、梨華の笑顔がよみがえる
耳を澄ませば、梨華の声が聞こえる
置いていかれたジャケット、ロングブーツ
歯ブラシも、買い置きのリンゴも
冷蔵庫のドアに貼られた写真も
水分なんてろくに摂っていないのに、なぜ涙がでるんだろう
- 500 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:07
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 501 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:07
- 何日こうしているんだろうか
たまに起きて水を飲み
二酸化炭素を吐き出して
また眠る
繰り返し繰り返し
植物よりもタチが悪い
- 502 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:08
-
トントンッ
誰にも会いたくない
トントンッ
帰ってよ・・・
ドンドンドンドンドンッ!
「ヨッサン、おるんやろ!開けーや!!」
中澤さん・・・?
横たえた身体を起こす。骨折は治っていないから
それだけで、息をするのが辛い
- 503 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:08
-
ガチャ
「おう。入れてや」
「中澤さん・・・」
「ろくに食べてないんやろ。頬もけて、ガイコツさながらやな」
「すいません、帰ってもらえませんか・・・?」
「ええから開けえ」
そういって中澤さんはドアを強引に開け、ズカズカと上がりこんだ
- 504 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:09
- 「じゃますんでー。おーおー、電気もつけんと」
「中澤さん・・・」
「部屋の壁に穴開いてるって聞いたから、調べにきたんや」
思わず俯いてしまった
「じょーだんやって。ママから聞いてな・・・なんか胸騒ぎもしとったし」
「・・・すいません」
「なにがや」
「部屋、壊してしまって」
「そんなん、どうでもええ。アンタが無事やったら」
「・・・すいません」
「何で謝ってんねん」
「・・・わかり、ません」
また静かに涙が流れる
「兎に角座り。立ってるのも辛いやろ」
「はい・・・」
「まあ、とりあえず、酒買ってきたから飲ませぇや。」
「・・・あ、でも」
「心配すんな!一人酒は慣れてる」
「すいません・・・」
- 505 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:09
- コタツに入って、中澤さんが持ってきたコンビニ袋から
ビールを何缶か出し、プシュッと勢いよくプルタブをひく
その手に付いたスカルプはとてもキレイで
あの公園で見た夜景と同じ色をしていた
「ママとお友達だったんですね」
「そうや。もう古い付き合いやわ」
「そうなんですか・・・」
「ココをアンタに貸したのも、あの人の紹介やからな」
中澤さんはビールをグイッとあおった
「アンタの惚れたヤツは今どうしてるんや?」
「わかりません・・・」
「こんなとこで居てもええんか?」
「・・・・・正直・・・言い聞かせようとしてました」
「なんでや」
「もしかすると、いつかこうなるんじゃないかって、心のどこかで思ってたから」
「・・・・・」
- 506 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:10
- 「自分じゃ、幸せに出来ないって・・・」
「ほう」
「でも・・・一人でずっと住んでたのに誰も居なくて、寂しいんです・・・」
「・・・・」
「声がなくて・・・寂しいんです」
「そうか」
「明かりのないこの家が・・・一人で居るのが、辛いんです・・・」
堪えても、涙は絶えない
毎日毎晩、泣き疲れて眠ってしまうまで泣いているのに・・・
「・・・もうちょっと待ってみぃや」
「・・・・・」
「好きなんやったら、諦めんと待ったらええ」
「はい・・・」
ポンポンッと頭を撫でて、中澤さんはビールを飲み干した
- 507 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:11
-
「中澤さん、ヘルメット、お返しします」
1時間ほどして、中澤さんが帰るというので、玄関まで見送る
「あほ、それはアンタが持っとき」
「え・・・でも」
「ねーちゃん返ってきたら、またいるやろ」
「・・・・」
「二人でまた餞別持って来い」
「はい。・・・ありがとうございます」
「はよ体、治しやー」
- 508 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:11
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 509 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:12
- 梨華が部屋に居ないのを実感してから、10日ほど経った
身体の方もよくなってきたので、店に復帰する事になった
顔の傷と、右手が動かしにくい事、息をするのにまだ難はあるけど
平常を取り戻しつつある
1つを除いては。
店のみんなは気を使ってくれて、あの日のことは何も言ってこない
いつもの営業スマイルを振りまく。トークだって冴えている
だけど作り笑いと分かるほど、ぎこちない
足りないのだ
家に帰れば魂の抜けた、人形
記憶をなくして間もない時の彼女もこんな気分だったんだろうか
魂の息吹を自分は彼女に吹き込めたのか
あの時の笑顔は嘘じゃないと信じたい・・・
- 510 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:12
- 休んでいた分を取り返すために連勤をしていたが
身体を思いやれと叱られ、今日は休みを貰った
自分の体をいたぶるように働いていたからだ
酒も浴びるように飲み、吸えもしない煙草を吸う
何も出来なかった自分を苛める。懺悔のつもりなのか・・・
店の客だかに、やっと夜の人間らしくなったなと言われた
- 511 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:12
- 頬の傷や手の包帯を隠すにはいい季節だ。
マフラーとジャケット一枚で全てを包み込んでくれるんだから。
何も考えたくない時は、わざと人の多い街に行く
行き交う人をよけるのに必死になればいいだけだから
会話などただの音。通行人はただの残像。
何も考えなくていい。何も感じなくていい。
今の自分の耳は
たった一人の声しか聞こえないようになっているらしい
- 512 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:13
- 自分の後ろで誰かが叫ぶ
「あ!RIKAMIだ!」
名前に反応して視線を追う。
そこには
巨大エキシビジョンに映し出された
今1番見たい顔
そして、胸に空いた穴に風を吹かせる
1番見たくない顔
ウチを強くも弱くもさせる人
- 513 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:13
- 緊急会見の様子が映されていた
煙草に火をつける
『このたびは・・・多くの皆様に、ご迷惑をおかけしました』
少し痩せたようだ。目もどんよりしている
「やっとRIKAMI出てくるんだねー」
「早く新曲聞きてーよ」
「ラジオも再開するんだってー」
これでよかったのかもしれない
こんなにたくさんの人が彼女に注目しているじゃないか
- 514 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:14
- 「なんかストーカーに襲われたんでしょー?」
「そうなの?」
「週刊誌に載ってたよー」
『週刊誌で取り上げられていた、襲われたという件に関して、真実はどうなんですか!?』
『刺されたと出ていましたが!?』
『某タレントのファンの犯行と言われていますが、対応は?』
『RIKAMIさん、答えてください!』
レポーターの声が街にこだまする
- 515 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:14
- 「えー?!刺されたの?」
「マジかよ!」
「かわいそー!」
「何でそんな事するかなぁ?」
「あ、でもあれデマらしいよ?」
道行く人がみんな足を止めて画面に食い入っている
ほらね・・・
『そのような事実は一切ありません』
自分に蹴りを入れた、あの金髪の男が梨華のかわりに答える
- 516 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:15
- 『今回の入院は、ドラマ撮影が続いていた過労によるものです
そのタレントの方にも、根も葉もない噂のせいで
ご迷惑をおかけしたと思っております
そのようなデタラメな記事を載せた週刊誌の出版社を相手に
事務所サイドは訴訟も考えていますが・・・』
『今まで何故事務所サイドからの発表がなかったんですか!?』
『ファンの皆様に、本人の元気な姿を見せることが1番だと思いましてね
本人の体調が万全になるまで待っていただけです』
梨華を商品として扱う男の、偽物の笑顔が映し出される
- 517 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:15
- 「なーんだよ」
「焦るなぁ!」
人は単純だ。たった一言でそれを信じる
「お前があせってどーすんだよ」
「うっせーなぁ、RIKAMIはオレの女なの」
「その発言あっぶなーい!」
「「「あははははは!!」」」
- 518 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:16
- 取締役だと言っていた女が
レポーターの質問に切り返す。
『RIKAMIさんの過去についても、取り上げられて居ましたが!?』
『そのようなことは、一切ありません。本人を妬んだ人間のでっち上げです』
『RIKAMIさんと、とある人が街で目撃されたいう事実は!?』
『本当に入院されていたんですか?』
『その発言に責任は取れますか?
目撃されたと言うのは本人だったという証拠はあるんでしょうか』
『・・・いえ、ありません』
- 519 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:17
- 全て金で解決するような人間たちだ。どうせもみ消したのだろう。
いつだったか、自分宛てに、小切手が一枚送られてきた
五拾萬円と明記され、あの女の名前が書いてあった
手切れ金ということらしい。
小切手を手にしてると、古いドラマを見ているようだった
破って燃やしてやった。
あまりにも陳腐すぎて笑う事も無い
- 520 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:18
- イメージが悪くなり、売上が落ちる事よりも
金と暴力に任せ、彼女に降りかかる
全てのマイナス要因を消すことのほうが容易い
完全潔白の・・・純粋無垢なアイドルを作り上げる
本人の意志を無視して
一人の女性の、魂を奪って
RIKAMIを彼女のように思う者
RIKAMIを友人のように思う者
RIKAMIを家族のように思う者
RIKAMIに憧れて、同じ世界を目指す者
- 521 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:19
-
『これからも、よろしくおねがいします』
戸惑いを隠しながら不器用に作った笑顔。
「やーっぱRIKAMIは笑ってんのが1番だよねー」
「お前もそう思うー!?」
「ちょっとぉ、アタシが居ながらなによぉ!」
- 522 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:19
-
人は単純だ
そして、自分自身も。
あの笑顔が本物ではないことに気づいていながら・・・。
アノ、エガオハ、ホンモノ
言い聞かせている
- 523 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:20
-
慣れろよ すぐに慣れる
失ったんじゃない、元に戻るだけだ。
自分を騙せるくらいの嘘をつくよ
ウチの元に居るべき人じゃない
大勢の人の前で居るべき人だ
- 524 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:20
-
「笑えんじゃん・・・」
ウチは必要ない
大きな画面に食い入る人たちに背を向け、歩き出した
- 525 名前:26.嘘と現実 投稿日:2005/12/03(土) 03:22
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 526 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:27
-
1週程たった
冷え込みが厳しくなってきた朝方。
カンッ、カンッ、カンッ
階段をあがるだけで、息が上がる
落ち着かせようと息を深く吸うと、
冷たい空気が肺に刺さる
「っつぅ・・・」
胸を押さえながら、家までの廊下を歩く
いつかみた、光景がそこにあった
- 527 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:28
-
扉の前で蹲る人影
あの日とは違うジャケット
少し伸びた髪
ずっと抱きしめたかった人が、そこに居る
この寒空の中ずっと待っていたのだろうか
胸が軋んだ
- 528 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:28
-
自分の足音に気づいたのか
彼女はゆっくり立ち上がって、躊躇いがちに声をかける
「ひーちゃ・・・」
1番会いたかった人の1番聞きたかった声
抱きしめたい・・・今すぐ奪い去りたいのに
自分の口から発せられた声は、あまりにも冷たかった
- 529 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:29
- 「何しに来たの」
胸に開いた穴が広がる音がした
「あ・・・」
「入れば?」
「う、うん・・・」
- 530 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:29
- ジャケットを脱いで畳むと梨華はいつも座ってた、自分の左隣に座る
「お茶、いれるよ」
「あ、ありがと・・・」
- 531 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:29
-
今更、何ヲシニ来タンダ
何ヲシニ来タンダ
- 532 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:30
- 自分のマグにお茶を注いで、彼女の前に置く
「ありがとう・・・」
「・・・一人?」
「あ、うん」
「よく、来れたね」
「こっそり・・・」
「そう・・・」
「謝りたくて・・・」
「・・・何を」
「傷・・・」
「いいよ、治った」
「・・・・・」
「・・・記憶は戻ったの・・・?」
俯いて首を横に振る
そして長い沈黙が続いた
- 533 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:31
-
「・・・はぁ」
自分のため息を合図に、彼女が言葉を漏らした
「ごめんね・・・ごめんなさい」
「なんで謝るの」
「痛かった、でしょ・・・ごめんなさい・・・
わたしが、ここに、居なかったら」
「・・・本当にそう思う?」
「・・・え?」
「ココに居なかったら良かったって・・・思う・・・?」
下唇を噛んで、首を横に振る
あの日となにも変わっていない、同じ情景
そのたび、涙がこぼれていた懐かしい記憶
- 534 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:32
- 「ほん、とは・・・会いたかった、だけ、なの・・・ひーちゃんに
ひーちゃんに、会いたかっただけ、なの」
「・・・・・」
「ずっと、ずっと、ひーちゃ、んのこと、グスッ・・・考えて
会いに来たかった、けど・・・監視されて、グスッ」
この人の癖は、声を出して泣かない事
ぐっと堪えて、決して大きな声を出さない
- 535 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:33
- 「ツラかった・・・?」
「う、うぐっ・・・うん」
「ソウ・・・」
「う、うっ。うぅ」
静かに目を閉じる
しゃくりあげる、梨華の声
カチッ カチッ カチッ カチッ
秒針の音と、冷蔵庫のモーター音
- 536 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:33
-
大丈夫 慣レルヨ
モウ、慣レタヨ
カチッ カチッ チッ チッ ・・・
針は進まず、同じ場所で
息の根が止まるのを待つように。繰り返した。
- 537 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:34
-
梨華
あなたを 愛してるよ
今も、変わらず
だから
- 538 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:35
-
「もう、辞めよう」
「え・・・」
「顔なんて見たくない」
せめて嫌いになって・・・
- 539 名前:27.秒針 投稿日:2005/12/03(土) 03:35
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 540 名前:Rink 投稿日:2005/12/03(土) 03:37
- 更新終了でございます。
あまり一度にあげるのも楽しみがなくなるので
今日はこの辺で。
- 541 名前:Rink 投稿日:2005/12/03(土) 03:41
- レスポンス
>名無飼育さん様
ありがとう御座います
引きずり込まれないようにご注意あそばせ♪
>名無飼育さん様
ありがとうございます。夜中にコッソリ失礼しました
>名無飼育さん様
次回の顔文字期待してますww
- 542 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/03(土) 03:42
- おうっ!マジですか!?
こんなとこで止められたら楽しみ過ぎて寝られないよ
寝不足上等!!!
次を待つ間は仕事でもして気を紛らわしてますわ
- 543 名前:Rink 投稿日:2005/12/03(土) 04:00
- 中編といいつつも、もうすでにスレが500オーバーなのですね。
話も終結に向かっております
れすぽんす
>名無飼育さん様
|Bar K|`.∀´)<寝不足はお肌の天敵よ!
では次回予告
- 544 名前:次回予告.汚れた手 投稿日:2005/12/03(土) 04:03
-
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
「なんで、涙を流してるの・・・」
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
「許してほしいなんて、言えるわけない・・・」
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
「言い聞か、せるしか・・・ないじゃないかァァァ!!!」
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
おたのしみに。
- 545 名前:774飼育 投稿日:2005/12/03(土) 16:00
- まさか2回更新とは・・・
1回更新終わって床に入った私に罰をお与えくださいぃぃ・・・
- 546 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/12/03(土) 20:13
- 更新お疲れ様です。
うーん、辛いですねぇ。
この先はもう全然分かりません。
次回更新待ってます。
- 547 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:37
-
- 548 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:38
-
梨華の動きが固まった
「どう、して・・・」
長い沈黙のあと、やっと出た言葉
それは、ホント必死に搾り出した言葉なんだと思う
「理由なんて要る?」
ウチは容赦なく切りつけるように発する
「・・・なんで」
「梨華と、ウチは、住む世界が違うんだよ」
梨華に発する一言一言が、自分の胸の穴を広げる
瞼を閉じて視界を遮った
- 549 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:39
-
「そ、んな」
「こんな世界で、梨華は住めるはずがない」
「そんなことない」
「それに・・・梨華が居ると、ウチが不幸になる」
「そ、んな・・・」
「うろちょろされると困るんだよ」
「なん、で・・・」
「人気アイドルさんが、来るような場所じゃない」
- 550 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:39
-
「嘘!!」
「嘘じゃないよ」
「嘘よ!」
「それは梨華の思い込みだよ」
「そんなはずない!」
「どうして言いきれる」
- 551 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:42
-
コタツから出て、ウチと向き合って言る彼女
何日か前まで
何が何でも守りたいって 誓った彼女に
ウチは今、ナイフで切りつけようとしてる
ギラギラ光る刃をちらつかせながら
怯えさせている
- 552 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:43
-
「私は、私は・・・」
「ほら、ないんでしょ?
もういいよ。貧乏人相手して、からかってただけなんだろ」
「何、言って」
「その辺のいい男捕まえればいいじゃない」
梨華が大きく手を振り上げた
バシッ!!
乾いた音が部屋に響く
左の頬に血液が集中してジンジンと熱くなっていく
- 553 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:45
-
「ぐ・・・うっ・・・どう、して・・・」
「・・・・・」
「どうして隠すの・・・」
「隠してな」
「隠してるよ!嘘ついてる!」
「知ってるような口聞いてんじゃな」
「目閉じてるじゃない!」
「え・・・?」
「ひーちゃんは、辛くなると、言いたくないことがあると
そうやって目を閉じる・・・嘘ついてる」
「・・・・・」
「どうしてよ・・・ねぇ、どうしてよ」
- 554 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:46
-
そんな癖があったんだ・・・
あんな短い期間で、そんなこと、よく見つけたね・・・
それとも自分はそれほど彼女に嘘をついてたのかな
- 555 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:47
-
「・・・・・もう、いやなんだ」
「なに、が」
「失うのが、いやなんだ」
「失う・・・?」
「また、居なくなられたら・・・もう耐えられない」
「そんな」
「唯一なんて、作りたくないんだ・・・」
「・・・ずっと、そう思ってたの・・・?」
「・・・わからない」
「同情で、好きっていってくれたの」
「違うよ」
「記憶喪失のわたしを哀れんで、言ってくれたの?」
「違う」
「じゃあなんで」
「もういやなんだよ」
何もかもが・・・モウ、ドウデモイイ・・・
- 556 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:48
-
「ウチは梨華とちがって、恵まれてないからね」
「どうしてそうやって」
「家族も、事故じゃなくて、心中だった・・・」
「え・・・なんで」
「ほら、少し弱さを見せれば同情する。哀れんでるのはそっちじゃないか」
- 557 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:49
-
言葉が足りない不器用なウチを知らない彼女は
勘違いしてくれる
めいいっぱい傷つけばいい
ウチのことなんて信じられないと
もう嫌いだと、彼女がそう思えばいい
- 558 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:50
-
「梨華は優しいからね、すぐに騙される」
ホラ、モット呆レテヨ
――― どうして嘘は簡単に思いつくんだろう
- 559 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:50
-
「哀れんでないなんて冗談だよ
記憶の無いアンタに同情しただけだよ」
モット嫌イニナリナヨ
――― どうして嘘はこんなにもはっきりと言い切れるんだろう
- 560 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:51
-
「オモシロ半分で、付き合っていただけ」
モウ二度ト会ワナイ、最低ッテ言イナヨ
――― どうして、本当の事を・・・
- 561 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:52
-
どうして・・・
どうして・・・
「どうして・・・」
心と同じ言葉を言われ、一瞬たじろいだ
- 562 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:53
-
「じゃぁ、どうして、ひとみ、泣いているの・・・?」
- 563 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:55
-
ああ・・・
「なんで、涙を流してるの・・・」
神様・・・あなたはことごとく私を裏切る
嫌われる事も、出来ないのですか・・・
「ひとみは、いつも怯えてる・・・心をいつも閉ざしてる」
- 564 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:55
-
彼女の手が頬を撫でる
涙の跡をなぞりながら、いつもの優しい目でいてくれる
どんなに傷つけるような言葉をぶつけたって
それを受け止める
- 565 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:56
-
「ねぇ・・・ひとみ・・・本心言って・・・」
全部、知られているんだ
「嘘なんて言わないで・・・お願い・・・」
敵わない
ほら、ばれてるじゃないか・・・猿芝居だって
いつか梨華が言ってたじゃないか
繋がってるんだ・・・って
「ひとみが言ってくれるまで、待ってるから・・・」
- 566 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:56
-
「分かってた・・・いずれ、こうなることも」
「・・・知ってたんだね・・・わたしのこと」
「でも、それは、関係、ない」
「じゃぁ・・・なんで・・・」
「・・・人を愛す、資格なんて、ないんだよ。ウチには・・・」
「どうして・・・」
「・・・・・」
「ねぇ・・・教えて・・・?」
- 567 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:57
-
これを言って、全て終わらせよう
彼女が、離れやすいように
最期の言葉を
「・・・たんだ・・・」
「え・・・?」
- 568 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:58
-
「友達を殺したんだよ・・・この手で」
- 569 名前:27.凍りつく時計 投稿日:2005/12/04(日) 00:58
-
- 570 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 01:04
- 更新終了です
需要ご座いましたら
1時間後にまた更新しようかなと思ってるのですが。
土曜日ですし、夜更かしもOKかなと思いまして。
|Bar K|`.∀´)<うちにも来てね
- 571 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 01:05
- レスポンス
>774飼育さん様
( ^▽^)<しないよ!
梨華姫からお許しが出たのでOKですww
>通りすがりの者様
辛いですかねぇ・・・
作者としてはもっと辛くしたいんですが
この先どうなるか作者も分かりませんw
- 572 名前:774飼育 投稿日:2005/12/04(日) 01:07
- リアルタイムでよんでますよ〜
1時間後も楽しみにしてます
- 573 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 01:08
- リアルタイムで読んでました
続きが気になる展開です
夜更かしにつき合わせていただきます!
- 574 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 01:09
- いつも、楽しみに読ませていただいております。
更新の早さには、ただただ感服いたしております。
骨格のしっかりしたお話だと思っておりますので、無理をなさらず
ご自分のペースで更新いただけましたら幸いです。
って言いながら、毎日何度もチェックして楽しみにしてるんです(^_^)。
最後になりましたが、わくわくする一時を与えていただいていることに深謝いたします。
- 575 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 01:10
- ああ!あと1時間寝れない!!
- 576 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 01:13
- 夜更かし大好き
楽しみに待ってます
- 577 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:26
- −+−+−+−+−+−+−+−+−
- 578 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:26
-
4年前
同じ学校に通ってた後藤真希とは無二の親友だった
ウチを預かってくれていた親戚の家の近くに住んでて
ウチが一人で居る事を知って、家に呼んでくれたり
夏は花火大会やキャンプに誘ってくれたり
本当の姉妹のように思ってくれてた
友情なんて安い言葉じゃなくて、それ以上の思いがお互いにあった
- 579 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:27
-
でも、ウチの両親が心中だってことが学校の人間に
俄かに知られ始め、いつのまにか苛めの標的にされていた
彼女はいつもウチと一緒にいてくれて
噂なんて気にしなきゃいーよって笑い飛ばしてたし
苛めてくるやつに向かっていった
でも、だんだん学校に行くのが億劫で
休みだしたんだ
彼女はいつも家まで訪ねてきて、よく誘いにきてた
でも、たまには
「んー、じゃぁさぼろっかなー」って
二人でウチの家に居た事もあった
- 580 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 01:27
- \(;`Д´;)/ブォオオ!!
- 581 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:27
-
15の秋。大きな夕陽が綺麗だった
おっきな交差点で、信号待ちをしてるときに
ケンカをしたんだ。
理由は些細な事
ウチが高校に行かないって言ったから
でも彼女は一緒の高校に行こうって言ってくれた
うれしかったよ
でも学校に行っても何も面白くない
それなら、働いた方がいいって
甘い考えをしてたんだね
彼女にも甘えてた
- 582 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:29
-
ウチが話を切り上げて、
「もういいよ!」って
彼女が掴む手を振り払って飛び出したんだ
逃げ出したかった。
彼女の真っ直ぐな思いから。
真っ直ぐな瞳から。
- 583 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:29
-
でも、目の前の信号は赤でね
横から車が走ってきて
" よしこ!!! "
- 584 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:29
-
ドンッ
って強い衝撃が伝わった
中央分離帯に倒れこんで、振り返ったら、自分の目の前で
" よしこ・・・ "
彼女が、ウチを見て やさしく笑ったんだ
- 585 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:30
-
―― キキィィィィーーーーー!! ドンッ! ―――
- 586 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:31
-
スローモーションで
乗用車が彼女を跳ね飛ばしていった
うちが声をあげるまもなく
彼女が、交差点まで飛ばされて・・・
頭から、体から血を流して 動かなくなってた
- 587 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:31
-
救急車に乗って、いくら呼んでも、返事がないんだ
彼女の手を握ってたんだけど
どんどん冷たくなっていった
手術室に運ばれて、暫くしたら家族が来て
全部事情を話した
そしたら、彼女の家族は何も言えない顔して黙ったの
お前が変わりに、事故に遭えば・・・
そう言われてるみたいだった。
だけど、それは自分の想像だった
- 588 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:32
-
幸い、一命は取り留めたけど
脳に損傷があって
最悪、植物状態になるって
ほんの数時間前まで、自分の名前を呼んでた友人が
一生声を発さないかもしれないんだよ・・・?
自分は・・・
死んで償おうと思った・・・
でも・・・それじゃ、何にもならない
って気づいたんだ・・・
- 589 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:32
-
家に帰って、必要な荷物だけ詰め込んだ。
残りのものは色んなところで売ったけど、数万にしかならなくて
住んでいた親戚の家の人に、ココを出るって手紙だけ書いて
彼女の家に行ったの
生きて償う
自分の全てを捨てて
一生かかっても償う って・・・
- 590 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:33
-
高校に行かずに、色んな町を点々としてた
どうにかして、入院費がほしかったから
なんでもしてやるって・・・
でも、ヤバい事だけには手を出さなかった
汚い金じゃ、償えない
- 591 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:34
-
この街についたときは、ボロボロだった
真冬の路地裏で、死にかけてるところを
今の店のママに拾ってもらったんだ
ある日、彼女のお母さんからの手紙に
急に失踪したウチを心配してくれてた事が書いてた。
そしては、ウチに、もういいんだよって言ってくれた
"ひとみちゃんは自分の為に、真希の分まで生きて"
って・・・
だけど、うちは償うって決めたんだ
全てを手放して
背負って、生きていく って
- 592 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:35
-
4年経った今でも、彼女は意識を戻す事はないらしく
もう、一生、意識は戻らないだろうって・・・
もう二度と、声を聞く事はない
ふにゃって、クセのある笑顔を、見ることはない
両親が死んだ 親友を殺した
- 593 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:35
-
ウチは、もう、欲しがっちゃいけない
ウチは、もう、誰も愛さない
だれも、傍に寄せない
全てを奪ったんだから
一人で、生きるんだ・・・って・・・
- 594 名前:28.汚れた手 投稿日:2005/12/04(日) 01:36
- −+−+−+−+−+−+−+−+−
- 595 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 01:40
- 1時間後と言いつつ、あげてみました
小出し小出しで申し訳ない _| ̄|○
(−●▽●)<一旦CMでーす
今日の残りの更新を何処までしようか
考えてるんですが
このままノンストップまでラスト行きそうな気がして
どうしたものか・・・汗
- 596 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 01:45
- レスポンツ
>774飼育さん様
リアルタイムありがとうございます!
作者本人が待ちきれずあげてしまいましたorz
>名無し飼育さん様:2005/12/04(日) 01:08
リアルタイムありがとうございます
夜更かしお供よろしくおねがいします
>名無飼育さん様
ありがとうございます
「更新早すぎじゃないか?」 と
自分では思ってるんですが。
あまり早いとこう、ドキドキ感がねぇって思うんですが。
でも、喜んでいただけてとても嬉しいです。
こちらこそ、読んでいただけていることに感謝します。合掌。
- 597 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 01:46
- >名無飼育さん様
|Bar K|`.∀´)<ウチにいらっしゃい♪
>名無飼育さん様
ありがとうございます。
今の間にトイレ行ってきてくださいw
>名無飼育さん様
いつも楽しい顔文字ありがとうございますw
かなりツボってます。
- 598 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 01:48
- >>580の件については
本当に申し訳ありませんもうなんと言ったらいいか
ごめんなさいごめんなさい
お詫びに画面の前で土下座します_○/ ̄|_
スレの雰囲気ぶち壊しですみません
あと2分早ければ・・・
- 599 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 01:49
- 正直言ってこのテンションのままラストまで読みたい!
でもそこは作者さんのお好きになさって下さいまし
- 600 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 02:01
- >名無飼育さま
あ!言葉初めて見たwww
>>580は大丈夫ですよー
私が予告どおり1時間後に上げてしまったので
こちらこそ、スイマセンでした(_ _(--;(_ _(--; ペコペコ
>名無飼育さん様
実は石川さん視点を今書いていまして
コレが終了したらそっちをあげようかと思ってるのですの。
『ライン』は痛いから作者はあまり好きじゃないんです
自分で書いておきながらすいません
やっぱりいしよしはラブラブのほうがね。
次回2時半更新予定です
ラストまで・・・行こうかどうしようか
- 601 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 02:02
- 訂正
>名無飼育さま
あ!言葉初めて見たwww
>>580は大丈夫ですよー
私が予告どおり1時間後に上げてしまったので
こちらこそ、スイマセンでした(_ _(--;(_ _(--; ペコペコ
一時間後にあげてないから、俺・・・汗
レスでも間違うなんて鬱だ氏のう
- 602 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 02:02
- 更新おつかれさまです
自分もこのままラストまで読みたいって気持ちがあります
でも終わってしまうのが寂しい気持ちもあります
とにかくRinkさんについていきます
- 603 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 02:10
- 自分としては最後ま(ry
作者様に任せます!!
- 604 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 02:12
- わがままを言わせて貰えば
気になって寝れねぇぇぇぇ!!!!!
- 605 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 02:13
- >名無飼育さん様
ありがとうございます
寂しがっていただけるなんて・・・うれしいっす!
>名無飼育さん様
最後まであげようと思ってきているのですが・・・
皆様の体力が心配ですて。
結構長いけど大丈夫でしょうか?
あと15分・・・
さ、二人がどうなるのかこうご期待!?
( ^▽^)<自分で言うなよぉー
- 606 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 02:15
- >名無飼育さん様
寝ないでぇぇぇぇぇくれぇぇぇぇ!
- 607 名前:774飼育 投稿日:2005/12/04(日) 02:18
- また油断していた・・・
まさか早めにあがるとは・・・
作者は策士と見た。
もうスグ更新か・・・楽しみにしてますよ〜
- 608 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 02:39
- >774飼育様
ただの気まぐれなんです・・・すいません(_ _(--;(_ _(--; ペコペコ
ラストまで一気に更新したいと思います。
よろしくおねがいします
- 609 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:41
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 610 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:41
-
「これが、梨華の知りたがったウチの全部」
「・・・・・」
「アハハッ。どう?呆れて物が言えないでしょ」
「・・・・」
「好きだって言ったのも、上辺だけだったって、分かったでしょ」
- 611 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:42
-
お願いだから ウチを嫌って
お願いだから ウチを置いて 帰って
ウチに呆れてよ
何も無かったように 元の生活を送って・・・
- 612 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:42
-
「後藤さんには・・・会ってないの?」
「会って何を言うのさ・・・今更会っても・・・」
諦めるように、目を伏せる
そう、全てはフリだと、気づいているのに
- 613 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:43
-
「許してほしいなんて、言えるわけない・・・」
涙はいつの間にか止まっていた
梨華がゆっくり立ち上がる
お願いだから、そのまま行って
もう、限界が近い
壊れそうになる前に、早く・・・
- 614 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:44
-
「いいんだよ・・・」
そう言って、梨華はウチを強く、強く抱きしめた
「もう、いいんだよ。ごめんね。気づいてあげれなかった
大変だったんだね。もういいんだよ
もういいよ。ひーちゃんは充分償ったよ
私が、許すから。許すから。自分を責めないで
あなたを 救いたい・・・
わたしは、あなたを愛したい」
梨華は、泣いた
初めて
声をあげて 泣いたんだ
- 615 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:44
-
"目をそらすから、逃がすの"
"貫いて。回りがなんと言おうと・・・"
"よしこなら、出来るよ・・・"
"幸せになりたい?"
- 616 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:45
-
本当は 幸せに、なりたい
許されたい
愛されたい
梨華に、愛されたい
叫びたい
梨華だけがほしい
梨華以外何も要らない
だけど
- 617 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:45
-
「・・・無理だよ」
ゆっくり梨華を引き離す
心がギシギシと音を立てて軋む
泣いていた梨華の声が止んだ
「どう、して・・・」
「梨華を待つ人は、大勢いる・・・」
- 618 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:46
-
目を閉じる キツく、キツく、閉じる
もう、何も、見たくない
「だから」
両手で、梨華の細い身体を、押し返した
「だから、その人たちのもとへ、行って」
「ウチに あなたは 必要ない」
- 619 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:47
-
不思議と涙は出なかった
梨華はゆっくり立ち上がって、振り返らず家を出て行った
バタンッ
扉が閉まる音が響く
熱を帯びた部屋が一気に冷める
目には見えない、彼女との境界線が
色濃く引かれた
チッ チッ ・・・
時計は静かに息を引き取る
- 620 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:48
- 自ら、手放した
おめでとう、自分
よくやった。
いや、普通だ
自分が、望んでいた結果
彼女を帰せた
元の生活に戻せたんだ
ここに居たって彼女は幸せになれない
これが望んでいた結末
本当に、望んでいた終末
これでよかった
これがウチの、当たり前の世界
そう
- 621 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:50
-
「言い聞か、せるしか・・・ないじゃないかァァァ!!!」
堰を切ったように、声をあげた
声が枯れるまで 壊れるまで
泣き叫んでるウチは
世界で1番の、大馬鹿野郎だ
- 622 名前:28.真実 投稿日:2005/12/04(日) 02:51
-
- 623 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:51
-
時間は人に平等に与えられる
毎日、太陽はのぼる
中澤さんにヘルメットを返しに行った
「・・・そうか」
少し悲しそうに背中をポンと叩いてくれた
- 624 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:52
-
腫れ上がった目、生気が感じられない顔
でも鏡を見ても、何も驚かない
店に出向いたけど、帰れと言われた
暫くママの家に居ろと言われた
一人で置いておけないと言ってくれた
見慣れない景色
歩きなれない場所
でも、何も感じない
体重がどんどん落ちていく
無理にでも食べろといわれるけれど
体が受け付けない
ココに居ても、迷惑をかけるだけ
ママに謝って、ママの家を出た
- 625 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:52
-
結局自分が帰るところは、このボロいアパートなんだ
もうなにも残ってはいない
声も、顔も、温度も、何もかも
こんなにも、はっきり思い出せるのに
自分の手の中には何も無い
梨華を思い出す全ての物はダンボールに詰めた
梨華の事を何も知らない自分に気づく
彼女の住んでいる場所も、電話番号も知らない
そりゃそうか、記憶がなかっただから・・・
何も知らない、知ることが出来ないなら
そのまま、風化していけばいい
ことごとく裏切られていたけれど
今回は少しだけ神に感謝した
- 626 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:52
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 627 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:53
-
街はすっかりクリスマスムード一色
普段、寂しげに立っている街路樹も
このときばかりは電飾を纏う
なんとか体重も増えつつ、それでもまだ細さは残ったままの体に
明かりは灯らない。痛みを感じる北風は身も心も凍らせる
カップルがうれしそうに、ウィンドウショッピングをしている
色んな思いを持ちながら、人々が行き交う
自分にプレゼントを買ってやるほど
ウチはロマンティストじゃない
RIKAMIはあれから曲を出したらしい
出す曲全て、トップになったみたいだ
愛ちゃんが嬉しそうにCDを持ってきてくれたが
一度も聞かずに返した
時間は過ぎる 残酷なまでに・・・
- 628 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:54
-
年末は書き入れ時。
頭が回らないほど、店も忙しくなる
連日のパーティーで、体力的にも限界なはずなのに
まるでランナーズハイのように、動き回れている
ウチがお客と接する姿は、明るく、笑顔らしい
ママは何も言ってこない。
時々やりきれないと言ったふうに目を向けてくる。
気づかれている、隠し切れない思い
でも、誰かに打ち明けて慰めを貰うほど
ウチは弱くない
いや・・・強くないのだ
- 629 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:54
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 630 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:55
-
今日は何日だろうか。12月の中ごろだろうか。
もう日付なんて関係ない。
ウチの中の時計は凍ったままなのだから
今日も朝方まで続いた仕事が終わり、脱力感だけをひっさげて
いつものように公園から家までバイクを押す
バイクを止めると、ヌケガラのダンボール箱が
視界の端に入った
ウチがバカだから・・・ミルクにも愛想をつかされたみたい
- 631 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:56
- 階段の脇にある郵便受け。
どうせ全部ダイレクトメールだろうと
チェックしていなかったけど
中身が溢れそうになっていたので開いた
何日分のものが詰まってるんだ?
耐え切れなくなったように、ドサッと足元に落ちた
「あぁ・・・」
手紙を拾い上げて、階段を上る。
肺も、だいぶと落ち着いてきた。骨折も治っている
部屋に入り、コタツの上に無造作に投げ捨てると
ザーッと束が崩れた
- 632 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:56
- パチンコ屋、不動産、ピザ屋のチラシ・・・
どれもどうでもいいものばかりだったから
全部捨てようと、束を掴んだら
1つだけ、場違いな薄いピンク色の封筒があることに気づいた
透かして見たが、中が見えるわけもない
差出人の名前や住所は書かれていない
「何だ・・・?」
封を乱暴に破って開くと
一枚の手紙が入っていた
- 633 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:56
-
− − − − − − − − − −
12月24日 23時50分
渋谷駅ハチ公広場に来てください。
梨華
− − − − − − − − − −
- 634 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:57
-
24日・・・
行ける訳無いだろ、仕事だよ
しかも絶対人多いし・・・
手紙に毒づいたって仕方ないけど
心が、大きく弾んだ
同時に、ふさがりかけていた胸の傷が痛む
久しぶりに見る名前、文字、温度
氷付けにされて奥にしまいこんでいた時計が
動き出しそうな気配がした
まだ何を伝えられるのかなんて、分からない
でも・・・それでも
未だに、心を弾ませる自分が居る
- 635 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:58
-
いや・・・違うよ、自分
そんな分けない
終われるんだよ
万が一なんてない
そんな奇跡なんて ウチには訪れない
自分に言い聞かせた
- 636 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:58
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 637 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:58
- 梨華が指定してきた日付の一週間前
「ママ。24日から25日にかけてってパーティ入ってますよね?」
「入ってるわよ、この日の為にアタシ頑張ってきたんだから!」
「そんな、意気込まなくたって・・・」
「何言ってんの!離婚成立後初の一人身クリスマスよ!」
「自虐的な・・・」
鼻息を荒くして、飲みまくるわなんて言ってるママに少し苦笑いしてしまった
「その日がどうしたの?」
「あ、いえ・・・」
「・・・どれくらい時間が要るの?」
「え?」
「その日休まれるのは困るけど、少しくらいなら良いわ」
「・・・ありがとう」
「ケジメつけてきなさい」
ママは少し嬉しそうだった
やっと、自分らしい笑顔が出たから
- 638 名前:29.モノクローム 投稿日:2005/12/04(日) 02:59
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 639 名前:30.Last Christmas 投稿日:2005/12/04(日) 03:00
-
その日はあっという間に来る
24日、一人身の男や女やオカマたちが
店に溢れんばかり来てくれた
なんせママが『独身パーティー』と言って
クリスマスを祝うのではなく
自分を祝えと、たくさんの人を呼んだからだ
この日は、ママの知り合いの店の人たちもヘルプできてくれた
愛ちゃんもカウンターに入る
「仕事が大事ですから」
といってデートを蹴ったらしい。
さすがというか、もっと恋人大事にしなよ・・・
- 640 名前:30.Last 投稿日:2005/12/04(日) 03:01
-
時計を見る23時30分前・・・
ココからだと15分でいけるか
一度奥に入って、着替えて、ヘルメットを持ち出かける
「ヨシ、出かけるの?」
「えーーー!何処行くんだよ!」
酔っ払ったお客に引き止められる
「あ、あの、いや・・・」
「ヨッサン、抜け駆けかー!?」
奥のソファで座っていた裕子さんが大声で叫んだ
- 641 名前:30.LastChristmas 投稿日:2005/12/04(日) 03:02
- 「裕ちゃん、アンタにはアタシがいるじゃない。」
「そうやな・・・乾杯」
「一人だけ抜け駆けするヨシに乾杯!」
「相手は誰!何処の女!?」
「オカマなの!?」
「ちくしょーーー!!」
「メリークリスマス、ヨシ!!」
「「「かんぱーーい!!」」」
誰かの掛け声とともに、十数回目の乾杯を始める
「あ、あはは、かんぱーい」
店を出ると、ダッシュで階段を駆け上る
ビルの外は、いつも以上に人が多い
バイクを置いている、ビルの裏に走っていく
- 642 名前:30.Last Christmas 投稿日:2005/12/04(日) 03:03
-
ドルンッ! ドルンッ、ドルンッ!
色んな事が頭を過ぎる
会って何を言えばいい?
ごめんなさい
何のために呼んだの
会えて嬉しい
言葉が思い浮かばない
まだ会えるかどうかなんて決まっていないのに・・・
それに24日なんて、仕事してるに決まってる
絶望を抱えるんだ。
期待なんてしない。望んだりしない
あの時決めたはずだ
終われる、終わりに出来る
これからも、道を一人でいくために・・・
そう思いながら、エンジンを思い切りふかし
バイクを走らせた
- 643 名前:30.Last Christmas 投稿日:2005/12/04(日) 03:03
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 644 名前:30.Last Christmas 投稿日:2005/12/04(日) 03:04
-
3分前
バイクを路上に止めて、走って広場に向かう
人が多すぎて、上手く前に進めない
何度も人にぶつかっては謝り、ぶつかっては謝り・・・。
あまりに急ぎすぎて、ヘルメットを置いてくるのさえ忘れてしまっていた
こんなにも胸を弾ませている自分を落ち着かせようと
冷たい空気をめいいっぱい吸い込んだ。
何とか広場の脇まで来る事が出来たけど
ここで、なにがあるというのだろうか
それにしても人が多い。なにかあるのか・・・?
- 645 名前:30.Last 投稿日:2005/12/04(日) 03:05
-
1分前
真っ暗だった巨大ビジョンに
カウントダウンのタイマーが表示された
なにかのイベントだろうか。
あちらこちらから、それにあわせてカウントダウンをする声がする
"5!4!3!2!1!"
『Merry Christmas!!』
渋谷のビジョン、全てに文字が映し出され
音楽が鳴り響く
へぇ・・・
歓喜の声が上がる
手を上げ、声を出し、みんなが喜んでる
- 646 名前:30.Last 投稿日:2005/12/04(日) 03:06
-
巨大ビジョンから声が聞こえる
『Special Message From RIKAMI!!』
え・・・?
『皆さんメリークリスマス!RIKAMIです!』
歓声があがる
回りの人々はみんな画面に釘付けになる
なるほど・・・
あははっ・・・
そうか、みんなこのために集まってたのか
- 647 名前:30.Last 投稿日:2005/12/04(日) 03:07
-
「なに、ゲリラ?」
「やーっぱかわいいよなー」
「リーカミーー!!」
「全国のビジョンでやってるらしいよー?」
「へぇーー!さすが!」
「25日発売の新曲流すんでしょ?」
「新曲のプロモーション?」
「ばーか、RIKAMIからクリスマスプレゼントだよ」
クリスマスプレゼント・・・
これが伝えたかった事、か
ハハッ・・・
そのためにココに呼んだのか
絶望はしなかったものの
思いを的中させてしまい
自分に呆れて、胸に痛みが広がった
- 648 名前:30.Last 投稿日:2005/12/04(日) 03:08
-
『皆さんはどんなクリスマスをお過ごしですか――』
梨華が大画面で映し出されている
『サンタクロースはお家にやって来ましたか?』
色鮮やかな画面を受けて、見ている人全ての顔色も鮮やかに写る
『恋人といる方、家族やお友達と過ごす方、仕事をしている方、一人の方も』
- 649 名前:30.Last 投稿日:2005/12/04(日) 03:08
-
画面の中の梨華は、楽しそうに笑顔を見せてくれた
よかった。
以前に比べて顔つきも良くなっている
どれだけ離れても、思う心は・・・
まだ残っているみたい
あははっ・・・
自嘲しながら、煙草に火をつける
- 650 名前:30.Last 投稿日:2005/12/04(日) 03:09
-
心のどこかで、会える事を・・・期待していたから
どんなに離れようとしても
どんなに辛く痛みが伴おうとも
ウチは、梨華が好きだ
くっそ・・・泣きそうだ。
これじゃ、RIKAMIに憧れる熱心なファンと同じじゃないか
涙がこぼれそうになったから
ヘルメットを足元に置きながら誤魔化した
この一瞬、一瞬を焼き付けよう
忘れないように。
梨華が自分にくれた、クリスマスメッセージを
心に刻もう
大丈夫。
進める
- 651 名前:30.Last 投稿日:2005/12/04(日) 03:10
-
『もしかすると、サンタクロースはアナタのすぐ傍にいるかもしれません』
この選択こそが、正しかったんだ
自分に言い聞かせる
『ほら、後ろに・・・』
画面の梨華が、指をさしておどけて笑った
つられて笑みをこぼす
- 652 名前:30.Last 投稿日:2005/12/04(日) 03:10
-
そうだ。
梨華の笑顔は人を幸せにする
回りの人たちも笑っている
最後に、幸せに・・・なれた
これでいい・・・これでいいんだ・・・
梨華に見せられなかったけど
ほら、うち、笑ってるよ・・・?
- 653 名前:30.Last Christmas 投稿日:2005/12/04(日) 03:12
-
『あ!だけど、気配を感じても、振り向かないで』
ドンッ
「え?」
誰かが背中にぶつかって、煙草を落としてしまった
- 654 名前:30.Last Christmas 投稿日:2005/12/04(日) 03:18
-
「振り向かないで」
ぶつかってきたのではなく
抱きつかれた
- 655 名前:30.Last Christmas 投稿日:2005/12/04(日) 03:19
-
忘れるわけがない、この声
時計の氷が溶け出す
心が熱くなる 胸を焦がす
自分をこんなふうにするのは、一人しか居ない
時計の針は逆回転しだした
- 656 名前:30.Last Christmas 投稿日:2005/12/04(日) 03:19
-
『サンタクロースは意外とシャイなの。あなたと目が合うと照れるから』
「ひーちゃんに見つめられたら照れるから」
腰に回された腕。小さな手の細い指
ビジョンから流れる音と同じセリフ
だけど自分に伝えられている
あの人しか呼ばないウチの呼び方
声の主は・・・
- 657 名前:30.Last Christmas 投稿日:2005/12/04(日) 03:20
-
『目を閉じていて、決して目を開けずに振り返って』
目を閉じて・・・目を開けずに、振り返る・・・
- 658 名前:30.Last Christmas 投稿日:2005/12/04(日) 03:21
-
『そしたら、サンタクロースはプレゼントと一緒にキスをくれるよ』
「『あなたに、メッセージを言いながら」」
目を閉じていても分かる気配
腰にあった手がほどかれて、背中に回る
- 659 名前:30.Last 投稿日:2005/12/04(日) 03:22
-
『ハッピーメリークリスマス!』
「愛してる、ひとみ」
しがみつくように強く抱きしめて、唇が触れた
カチッ
時計の針は、0時ちょうどで止まった
- 660 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:24
-
彼女の声以外、何も聞こえない
回りの歓声も、車のクラクションも
ビジョンから流れるRIKAMIの新曲も
何度も、何度も
繰り返すたびに、熱を帯びていく
激しさを増していく
腕で、唇で、温度で
全てで梨華を感じる
だけど、1番見たい姿を・・・見つめる事が出来ない
- 661 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:25
-
「梨華・・・本当に梨華?」
「そうだよ」
「梨華・・・」
「ひーちゃん」
「梨華・・・梨華ぁ」
涙が零れ落ちる
お願い、もっと声を聴かせて
ウチを酔わせる、甘い声を聴かせてよ
壊れたレコードのように、何度も彼女の名前を呼ぶ
- 662 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:26
-
「ひーちゃん・・・」
梨華が耳元で囁く
「なに・・・」
「あの日の、ひーちゃんがついた嘘・・・お見通しだよ」
「そっか・・・」
「うん・・・。それに」
「・・・それに?」
「私を待ってくれる人は、ひーちゃんしか居ない」
「・・・え?」
「RIKAMIを待ってくれる人は大勢いるけど
石川梨華を待ってくれる人は、ひーちゃんしか居ない」
「あぁ・・・」
- 663 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:26
-
「わたしは、わたしは・・・石川梨華だよ」
「ひーちゃんしか、欲しいって思わない」
「ひーちゃんだけ居てくれたらいい」
「ひーちゃんの傍にいたい」
- 664 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:27
-
涙が止まらない
「ゆる、して、くれるの?」
「全部・・・許すから・・・過去のこと、全部・・・」
「いい、の?」
「もういいんだよ」
「もういいよ・・・ひーちゃん
わたしに、全部預けて
受け止める」
- 665 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:28
-
痛いくらい梨華を抱きしめて、肩に顔を埋めながら泣いた
「ごめん・・・ごめん・・・・・」
泣きながら謝るウチに
梨華はずっと頭を撫でてくれた
- 666 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:29
-
" 言葉にしなきゃ伝わんないよ? "
" 貫いて "
” よしこならできるよ ”
- 667 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:29
-
「・・・うちも、梨華に居て欲しい・・・梨華以外、なんもいらない」
肩から顔を少し上げて呟く
梨華がふっと笑った気がした
「やぁっと、言ってくれたぁ」
「待たせて、ごめん」
- 668 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:30
-
「フフッ・・・ねぇ、ひーちゃん?」
「なに?」
「ひーちゃんの、1番、傍にいたいの」
「うん・・・」
「傍に行ってもいい?」
「うん・・・」
「だから・・・少しだけ、待ってて」
「・・・わかった。待つよ」
今度はウチが待つ
- 669 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:30
-
「ひーちゃん」
「なに?」
「ひーちゃんから、聴かせて」
抱きしめる腕に力をこめる
なんてもどかしいんだろう
二人の身体が、1つに溶けあえばいいのに
お互いの境界線がなくなればいいのに
- 670 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:31
-
隙間を埋めるように キツく抱きしめて
梨華の耳元でささやいた
「愛してる」
「うん・・・」
「梨華、愛してる」
「うん」
- 671 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:32
-
耳元で笑う梨華の息がくすぐったくて、少し目を開いた
顔は見えなかったけど・・・
間違いなく梨華が自分の腕の中にいた
もう一度、目を閉じる
そうだ・・・自分は、石川梨華を愛してるんだ・・・
時間がかかり過ぎた。傷つけた。
ねぇ、梨華・・・
こんな自分を許してくれる?
自分の気持ちを
梨華が1番欲しがる言葉を言えない自分でも
愛していてくれるの?
聞かなくても分かる、梨華の温度。
- 672 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:32
-
「梨華・・・」
「なあに?」
「目、あけていい?」
抱きしめながら、聞いてみる
返って来る返事が分かっていても。
「だぁめ。はずかしい」
「やっぱり・・・」
「なによぉ、やっぱりって」
「梨華は強情だから」
「クスクスッ、気づいてた?」
「フフッ、初めて会ったときからね」
- 673 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:34
-
梨華との間にあった境界線が溶けあうくらい
抱きしめて・・・
どれくらいしただろう・・・
梨華は静かに話しだした
「もう、行くね」
「うん・・・」
「迎えに行くね」
「プロポーズ?」
「フフフッ。かっこいいでしょ?」
「今度は梨華からなんだ?」
「いいの、私は料理作れないって実感したから」
「あ、ダメだったんだ」
「うるさいなぁー」
「「ぶーっ」」
「あははっ」
「真似しないでよぉ!」
ポカポカと胸を叩く
「また・・・作ってよ」
「うん・・・早く行くから」
「分かった」
- 674 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:35
-
「・・・恥ずかしいから・・・そのままで・・・30数えて」
「・・・分かった」
「・・・1、2、3」
抱きしめていた腕が解かれ、自分の腕をするりと抜けて
温度を確かめるように、指を握り、撫でる
「7、8、9・・・」
首に巻いていたマフラーが外されて、冷たい風が入り込む
「13、14、15・・・」
フワッと首に梨華の香りが漂う
マフラーを巻かれた
「さみしく、ない、ように・・・」
数を数えながら頷いた
もう、大丈夫
歩き出せる
「18、19、20・・・」
目を閉じていても分かる。梨華の視線、姿
一歩一歩、梨華が遠ざかる
名残惜しそうにしながら・・・自分から離れていく
- 675 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:36
-
「27、28、29・・・・・30」
梨華の気配が、完全に消えた
ゆっくりと目を開けるとそこには変わらない、景色
行き交う人々
ビジョンの映像が終わり、思い思いに散らばる人々
全部が幻だったんじゃないかと、思うほど平然としていた
だけど夢じゃない証しがある
首に巻かれた自分には不似合いなピンク色のマフラー
マフラーに顔をうずめると、梨華の香りと温度が残っている
夢じゃないんだ・・・
「コレ付けろってか・・・」
思わず苦笑いが出た
- 676 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:36
-
唇に残る温度も、背中に回された腕の感覚も
全て、本当なんだ
"大事にしなよ"
ごっちんが、引き合わせてくれたのかな・・・
ごっちん・・・うち、許されてもいいのかな・・・
愛されてもいい・・・?
もう、自分に嘘をつくのはやめよう
たくさんの人を傷つけたから
カチッ カチッ カチッ カチッ
時計の針が、強く時を刻み始めた
- 677 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:37
-
うちも行こう。
ママに報告しなくちゃいけない
時計を見ると0時15分を回ったところだった
下に置いているヘルメットを取ろうと手を伸ばしたら
中に小さな紙袋が入っていた
「梨華・・・?」
辺りを見渡しても、居るわけも無いのに・・・
その場で開ける
中には小さな箱と、手紙が一通入っていた
- 678 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:38
-
− − − − − − − − − −
ひーちゃんへ
来てくれる事を信じて。
そして、人ごみの中
あなたを見つけられるか心配ですが
これをあなたに渡せる事を願って。
怪我は治りましたか?
私のせいで
ひーちゃんをたくさん傷つけてしまった事
本当にごめんなさい
ごめんなさい
何度謝っても、謝りきれない
自分の身に起きた事を、事務所の社長からすべて聞かされました
記憶は戻っていませんが、以前のRIKAMIという人物を
演じろと言われました
そして、ひーちゃんに二度と会うなと言われました
会いたくて、抜け出したかったけど、出来なくて
会えないなら・・・いっそのこと
あなたの事を忘れようって思った事もあった
- 679 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:38
-
でも、出来ないよ
ひーちゃんのこと、大好きなの
ひーちゃんを愛してるの
離れたくない 忘れたくない
ひーちゃんを守りたい
ひーちゃんが私を救ってくれたように
わたしもひーちゃんを救いたい
ひーちゃんを幸せにしたいの
もっと愛したいの
ひーちゃんに幸せにしてもらいたい
もっと、愛されたい
あなたを必ず迎えにいくから
だからそれまで、待っていて
あなたの腕に飛び込めるまで
待っていてください
メリークリスマス ひとみ
愛しています
梨華
− − − − − − − − − −
- 680 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:39
-
もう、救われてるよ・・・
この手紙で、充分だよ
あのメッセージで、伝わってるよ
このマフラーが・・・守ってくれてるよ
"いつ"なんて言葉は要らない
梨華がいるだけで
この空のどこかで笑顔を見せているって思えるだけで
勇気付けられるよ・・・
手紙を胸に当てると、涙が溢れてきた
自分の中の時計が
大きくはっきりとした音で、動いてる
- 681 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:40
-
袋の中の小さな箱を開けると
クロス模様が彫られたシルバーリングが入っていた
「ほんと、プロポーズじゃん・・・」
手紙には追伸があった
『追伸 サイズ分からなかったんだけど、合うといいな』
- 682 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:41
-
よく見ると、指輪の内側に文字が刻まれていた
『I love thee R to H』
右手の薬指にはめてみたら、ジャストサイズだった
「フフッ・・・計算じゃなくて天然だったかなぁ・・・」
"繋がってるからだよ"
そう言って微笑む梨華の顔が
夜空に見えた気がした
相変わらず、カッケーことしてくれるもんだ
手を息で温める振りをして
指輪にキスをした
さぁ、帰ろう
今日から、また、進みだせる
明日も、明後日も・・・梨華が居るから
- 683 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:41
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 684 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:42
-
店に帰ると
そりゃあもう大変な騒ぎになっていた
ママが裸踊りしてないだけましだったけど
中澤さんは目ざとく指輪を見つけて、絡んできたと思ったら
急に泣き出したり、もう大変だった。
ママは、ウチの顔を見て
優しく微笑んでくれた
ごめんなさい
そして、ありがとう
- 685 名前:30.プレゼント 投稿日:2005/12/04(日) 03:43
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 686 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:43
-
- 687 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:44
-
年末年始の慌しさも落ち着いて
お客さんもまばらになり、いつも通りの落ち着いた日を過ごす
「やっぱりこの時期は、お客さんもあんまり来ないですね」
「そうねぇ、年末年始にお金使いすぎるから」
「この店のお客さんは特にですよ」
「それもそうね・・・」
「そういえば、マリさん遅いですね」
「どーこで油売ってるんだか」
ママは入り口の方を見た
「噂をすれば」
「え?」
- 688 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:44
-
ドタドタドタ、バタンッ!
「た、ただいま!」
「アンタねぇ、あれほど走るなって言ってるのに」
「い、い、いいの!ヨシ、水一杯頂戴」
「はい」
グラスに氷を入れて水を注ぐ
それをマリさんに渡すと、なんとも男らしい飲みっぷりを披露した
「っぷはーー!」
「ホント、はしたないわ、この子」
ママは呆れた顔で煙草をふかす
ウチはそんなママに苦笑いを送った
「どうしたんですか?そんなに慌てて」
「ニュースよ、ニュース!」
「どうしたのよ、男から金でも返ってきたの?」
「違うわよ!あんな男に貸した金なんてどうでも良いわ!
そんな事よりこれ!」
一冊の週刊誌を広げた
そこには大きく、RIKAMIの名前が載っていた
- 689 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:45
-
『RIKAMI、芸能界引退!噂の真相を出版』
え・・・
「あの子やめちゃうの?」
「そーなの!ママ、テレビつけていい?会見あるって」
「はいはい、それよりどこでこの情報取ってきたの?」
「姐さんのお店の愛ちゃんからよ」
「あの子熱狂的なファンだからねぇ」
「な、んで・・・」
ママはテレビを付けた
ちょうど記者会見が行われるところだった
- 690 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:46
-
彼女がマイクを持って話出した
RIKAMI引退の理由は、事務所幹部に対する不信感だそうだ
契約金などのいざこざではなく、事実を捻じ曲げ
何が何でも隠しとおす事務所のやり方に
納得いかなくなったからだとか。
契約が切れる3月いっぱいで正式に引退するとのこと。
『全部、今度発売する本に書いてます』
「あらー、暴露本なのね」
「そうみたい。オカマ界はみんな買うわねー」
「ねぇ、ママ」
「なに?」
「こ、これってさ、事務所辞めたら、責任問われるのかな」
「さぁ・・・契約が切れる時にやめるんだから大丈夫じゃないの?」
「それにしても、勿体無いわぁ。これからってときに」
夢を・・・捨てたのか・・・?
「でも、この子は、捨てたんじゃないわよ」
驚いた。ママは心を読めるのかもしれない
「新しい道を進むのに、今の世界じゃ、何も出来ないって気づいただけ」
- 691 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:47
-
『ご結婚の噂もされていますが』
「ほらね?」
ママが微笑んだ
『いえ・・・。でも、大切な人はいます』
少しはにかみながら、梨華はそう答えた
フラッシュが一斉にたかれる
「ヒュゥ〜!凄いわこの子!爆弾発言ねぇ」
『その薬指の指輪の方ですか?!』
カメラが梨華の右手をアップに映す。
薬指には、ウチと同じ指輪があった
「ちょっと、このレポーターもうちょっと品のいい質問の仕方ないのかしら」
「だからメディアって嫌いよ」
「「ほんと、下品だわぁ」」
- 692 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:48
-
『・・・そうです』
「「うおおおおおお!!」」
そこの二人!品が無いのはどっちだ
男に戻ってるから!
「アイドルも大変よねぇ。わかるわぁ、その気持ち」
「確かに、業界のアイドルですからね。マリさんは」
「でしょぉ!?ヨシ、ちょっとホワイトレディ作ってちょうだい」
「はい、かしこまりました」
「まるでアタシみたいよねぇ〜♪」
「マリちゃん、年考えなさいな」
「マリは永遠のアイドルですぅ〜」
「あはは!」
- 693 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:48
-
RIKAMIの暴露本とも言われているフォトエッセイが
1月19日に発売されるそうだ
新しい自分に生まれ変わりたいから、誕生日を発売日に選んだとか。
スポーツ新聞や週刊誌は、
RIKAMIの所属事務所の裏をバンバン暴いていく。
脅迫、賄賂、暴力事件・・・
事務所の重役クラスは刑事責任を負うとのこと。
たくさんの人を脅迫し金で解決をしていた事が明るみに出たからだ。
梨華を連れ去ったあの派手な二人組みか・・・。
梨華が失踪した辺りから、事務所サイドは水面下で
いわばクーデターの計画を立てていたらしい。
そして重役クラスが入れ替わり
そのおかげで今回の本の出版もスムーズに進んだとのこと。
そして、引退を止められたが断った。
それを聞いた他事務所が梨華に
移籍のオファーをかけたそうだが、全て断ったそうだ
梨華らしい、勝負。
- 694 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:49
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 695 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:51
-
「あのぉ・・・ココ、図書館ですか?」
発売と同時に、本は話題を呼び即日完売の書店が続出した
勿論、夜の業界の方も噂好きRIKAMI好きとWが合わさった本だから
みんなして読みふけているんだけど
「ねぇ、営業しましょうよ・・・」
「うるさいわね!客居ないでしょ!」
「いや、居るじゃないですか・・・」
「客も客で読んでるから、いいのよ」
「何でみんな買うんですか。一冊を回し読みすれば」
「アンタバカねぇ、ちょっとでも印税収入入れてあげるためよ!」
「そう、ですか」
- 696 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:52
-
もう、何度も読んだからと、マリさんが本を貸してくれた
本の表紙は、肩を出して目を閉じる梨華の顔だった
ページを開くと、梨華の字でこう書かれていた
"私を愛してくれる、すべての人へ
そして、私の愛する人へ これを届けます"
- 697 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:53
-
引退を決意したのは
ウチと引き離され、その後社長たちから
浴びせられた耐えがたい罵倒からだったらしい。
そして、事務所に対する不信感が
記憶を無くす前からあったという、日記の内容を見たから。
勿論、放火の事、ストーカーの事、記憶喪失の事
そして、名前は伏せてあったが自分と出会ったこと。
全てを包み隠さず書いていた
「この人も幸せよねぇ〜」
「ほんとよぉ!アタシは北風で凍えそうだっていうのに」
店で誰かがそう言ってたことを思い出した。
- 698 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:53
-
時折、梨華本人が撮った写真が載っていた
梨華の家のベランダであろう場所から撮られた空
梨華のご両親、実家の犬
薬指に光る指輪・・・
あの時のカメラでとった写真も数枚あった
写真の受け取りを梨華に任せていたから
ネガを持ってたんだろうか
コスモス畑の写真、二人が使っていたマグが並ぶ写真
ウチがあのカメラで撮った、たくさんの梨華があった
マヌケ顔や、昼寝をしている顔、ミルクを撫でながら振り返る笑顔
- 699 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:54
-
そして、1番最後のページに
梨華の直筆の言葉と
バイクを運転する自分の
口から下の横顔が映ってた
"わたしは、この人の傍にいたい"
- 700 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:54
-
やることが本当に大胆で
カッコいいんだか、後先考えないんだか。
呆れ半分、照れ半分
やっぱり梨華はカーニバルだと思う
ウチは、そんな"石川梨華"の事が好きだ
そして、自惚れはなく
梨華は"吉澤ひとみ"を愛してくれている
本のおかげか、梨華のテレビ露出度は更にUPしたらしい。
事務所は重役クラスが総代わりしたおかげで
梨華以外の所属している人間も
動きやすくなったのではないかと、週刊誌で取り上げられていた
梨華の動き一つ一つが輝いていた。
- 701 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:55
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 702 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:55
- RIKAMIの引退1ヶ月ほど前
暴露本騒動も一段楽し
今度は引退前の騒動がまた起きている最中
ママが開店前に話し掛けてきた
「ヨシ?」
「はい」
「アンタ、いつまでこの店続けようとか思ってる?」
突然の質問に、驚いてしまった
「え!?」
クビ切られるのか・・・
「あー、クビとかじゃないのよ」
「びっくりした・・・」
- 703 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:56
- 「その逆よ。この間のクリスマスパーティあったでしょ」
「ええ。」
「その時に、知り合いのオーナーが来ていてね。その人が新しく店を出すって言ってんの」
「はぁ」
「それで、アンタを連れて行きたいって言ってくれてるのよ」
「ええ!?なんでウチなんですか」
「普段からアンタの事話してたし、見込まれたってことよ」
「・・・でも、それじゃぁ、ママに」
「アタシの事はいいの。アンタそろそろ自分の事を考えなさい。
遠慮ばっかりしてたら、逃げていくわよ」
・・・そうだ・・・そうだった
「その、店ってのは、どこですか?」
「何処だと思う?」
「この界隈ですか?」
「うふふ、NYよ」
「え!?」
「海外でも顔の聞くオーナーらしくってね」
「ニューヨーク・・・」
「いい話よ。考えてみてちょうだい。いい返事待ってるわ」
「・・・はい」
- 704 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:56
-
アメリカなんて、考えてみてもなかった
しかも自分が・・・
確かにビックチャンスだと思う。こんな機会は滅多に無い
だけど・・・自分には
- 705 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:57
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 706 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:58
-
『みなさん!今までありがとうーーーー!』
RIKAMIの武道館、ファイナルライブが終わった
数日間、その様子のドキュメントがテレビで放送される
RIKAMIを題材にした映画やなんかも作られるだの
凄い旋風を巻き起こしていた
だけど、公言していたとおり、RIKAMIは3月31日いっぱい
メディア上から一切姿を消した
彼女は潔い
そして、自分も、1つの決心をする
- 707 名前:31.決心 投稿日:2005/12/04(日) 03:59
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 708 名前:32.再会 投稿日:2005/12/04(日) 03:59
-
4月
道なりに大きな桜が何本も並び
満開になっている桜は、春の風で散り始め
花びらで道を埋め尽くしていく
- 709 名前:32.再会 投稿日:2005/12/04(日) 04:00
-
― カツーンッ カツーンッ カツーンッ ―
長い、長い廊下に響き渡る、ブーツの音
光が差し込む窓の外には、緑が綺麗な中庭が見える
- 710 名前:32.再会 投稿日:2005/12/04(日) 04:00
-
― ガラガラッ ―
すべりのいい、扉を開けると
窓が開けられているのか、ふわりと風が通り過ぎた
白い部屋にかけられたカーテンを揺らす、心地いい風
その風は、長くて綺麗な栗色の髪をなびかせる
「・・・ひさしぶり、ごっちん」
- 711 名前:32.再会 投稿日:2005/12/04(日) 04:01
-
ベッドに眠る顔は、4年経った今でも穏やかで
あの頃の面影は残したまま
女性の顔つきになっていた
ベッドの横に置かれた棚の上に、花束を置いてパイプイスに座る
「いままで・・・来なくて、ごめん」
「・・・怖かったんだ・・・」
- 712 名前:32.再会 投稿日:2005/12/04(日) 04:01
-
どんな顔して、訪れたらいいんだろうってずっと思ってた
いまさら、合わす顔なんて無いって・・・。
でも、ごっちんは
ウチにずっと会いたがってくれてたね
夢に何度も出てきてくれてた
なのに、ウチは
忌まわしいもののように蓋をしてた
ごめん
ごめんなさい
命の恩人に、酷いよね
怒ってるよね
今更来ておせーよって言うよね
ホントに、ごめんなさい
- 713 名前:32.再会 投稿日:2005/12/04(日) 04:02
-
泣いてないよ。泣いてないってば。
嘘です、泣いてます
素直になるよ
ごっちんのおかげで・・・素直になれる気がするよ
だから、はやく起きて
ウチのことぶん殴って
バカよしこ!って言って
ごっちん・・・
ウチを・・・許して、くれますか・・・
大事にするから・・・
- 714 名前:32.再会 投稿日:2005/12/04(日) 04:02
-
「ごめんなさい」
そして
「ありがとう」
ごっちんは、優しく微笑んだ気がした
「また、来るね」
窓からは桜の花びらが舞い込んできた
病室の扉を後ろ手に閉めて、もと来た道を戻った
- 715 名前:32.再会 投稿日:2005/12/04(日) 04:03
-
― ガラガラッ ―
「あら?誰か来たのかしら」
病室に置かれた花束に気づく
「真希?もう桜が満開よ?
お花見しようってお母さんに言ってくれたわね
早くしないと、また今年も桜終わっちゃうわよ?」
病室の窓を少し閉める
「・・・真希?泣いてるの?」
閉じられた瞼の隙間から光がこぼれた
- 716 名前:32.再会 投稿日:2005/12/04(日) 04:03
- ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
- 717 名前:33.Line 投稿日:2005/12/04(日) 04:04
-
- 718 名前:33.Line 投稿日:2005/12/04(日) 04:04
- 病院の自動ドアを出ると、少し暖かくなった風が髪を揺らす
でも、まだジャケットは手放せない
桜を見上げながら、病院の門まで繋がる一本の道を歩く
桜が多いからか、道は花びらの絨毯になっていた
ビュゥゥッ と強い風が吹き、桜の枝を揺らす
花吹雪が、自分をめがけて吹き抜ける
風の強さに目を閉じた
ゆっくり瞼を開けると
門の脇の、一際大きく立つ桜の木の下に
幻を見た
- 719 名前:33.Line 投稿日:2005/12/04(日) 04:05
-
一歩一歩、近づいていく
もう一度強い風が吹くと
花びらを巻き上げながら空高く昇っていった
風を見送って目の前を見ると
真っ直ぐのびる花びらの道が出来ていた
幻ではなく
柔らかに微笑む
- 720 名前:33.Line 投稿日:2005/12/04(日) 04:07
-
「ひーちゃん」
彼女と
「梨華」
自分を結ぶ
「ただいま」
一本のLine
- 721 名前:33.Line 投稿日:2005/12/04(日) 04:07
-
fin
- 722 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 04:09
- おつかれさんです。
目、離せなかったっすよ。
- 723 名前:207 投稿日:2005/12/04(日) 04:09
- リアルタイムで読みながらホット安心しました……
どこか優しい風が吹くような作品に胸がいっぱいです。
完結お疲れ様でした。
- 724 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 04:09
- 終了です
今まで駄文にお付き合い下さった方
ほんとうにありがとうございます
誤字脱字、あげミス多々ありましたが
番外編も用意しておりますので
またそちらの方もよろしければお付き合いくださいませ
- 725 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 04:09
- 良かった
- 726 名前:774飼育 投稿日:2005/12/04(日) 04:13
- まさか4時過ぎるとは思わなかった・・・
いいお話でした ちょっと涙がこぼれるところもあったりと
自分が好きな作品です
更新お疲れ様でした!!
- 727 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 04:18
- リアルタイムレスがいっぱいだw
ほんとに良い物語でした。吉澤さんの弱さ、石川さんの強さに心打たれました。
番外編も楽しみにしてます。
- 728 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 04:24
- 。・。(ノД`)・。ヨカッタヨ‐
- 729 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 04:59
- 作者より少しだけあとがき。
この話は作者が登場人物の年齢と同じ時期に
同じような心が裂けるような結末の恋を体験をしました。
相手は芸能人ではなかったですが(汗)
しかしいしよしはやっぱりガチなので
こう言う結果に。
そしてさらに幸せになって欲しいと願いつつ
番外編は、かーなーり、甘甘で行きたいと思います
よろしくお願いします
- 730 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 04:59
- レスポンス
>名無飼育さん様
こちらこそこんな時間まで読んで頂いて
本当にありがとうございました
>207様
ありがとうございました
そう言っていただけると本当にうれしいです!
>名無飼育さん様
ありがとうございます
>774飼育様
>まさか4時過ぎるとは思わなかった・・・
同じくww
何はともあれ、完結できて嬉しい限りです
ありがとう御座いました
- 731 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 05:00
-
>名無飼育さん様
|Bar K|`.∀´)<そろそろ閉店時間よ!
石川さんは強くあってほしく
吉澤さんにはこれから強く生きて欲しい
そんな思いで書きました
それが少しでも伝わったようなので、本当にうれしいです
ありがとうございました。
番外編はすこし吉澤さんに頑張ってもらおうかなぁと思ってるんですが
相変わらずヘタレっぷり発揮だと思いますww
>名無飼育さん様
。・。(ノД`)・。アリガトネー!!
- 732 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 05:10
- `.∀´)<次回予告よ!
『ライン 2』
「色っぽい声だすな!」
「あーはいはい、美味しく食べてあげるから」
「・・・んじゃ、一緒にいれる?」
「バカ」
「腰いたいぃぃ!」
- 733 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 05:12
- `.∀´)<これだけ見てるとただの官能小説ね
次回はエロ入ると思います
こうご期待
- 734 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 13:38
- 作者様お疲れ様でした。
良かった!
最初の更新を読んだ時からもうひきこまれていました。
次回の甘甘ないしよしも楽しみに待っています!!
- 735 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 17:26
- ´`ァ(´Д`)´`ァ
- 736 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 17:33
- ほんっとによかった!!
Xデーの演出に感動・・・。
いしよし最高です。
- 737 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 20:49
- れすぽんつ
>名無飼育さん様
ありがとうございます
何せ処女作だったので、こんな駄文を読んでくれる人が
果たしているのだろうかと、ぶっちゃけ不安でしたが
そう言っていただけると本当に嬉しいです!
番外編は甘甘いしよしになってると思います汗
引き続きよろしくお願いします
>名無飼育さん様
>´`ァ(´Д`)´`ァ
これは悶絶と見ても、よきかな?ww
>名無飼育さん様
ありがとうございます!
作者は大阪人なので、あの場所の事を詳しく知らないのです
雰囲気を壊さないようにできる限り調べて書いたのですが
大丈夫だったでしょうか汗
次回も引き続きよろしくお願いします
- 738 名前:7&Y 投稿日:2005/12/04(日) 21:49
- 完結と聞いてガーっと一気読みさせていただきました
なんというか、感動。
陳腐な言葉ですがそれっきゃないですね
うまい言葉が見つからなくてすみません
処女作とは思えないほど作りこんである素敵なお話でした
ありがとうございました
そしてこれからも楽しませてください(*´∀`)
- 739 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 22:04
- んにゃ〜(´△`*)
ほんまに良かった!!素晴らしい!!
これからも作者様の作品に期待しております。
- 740 名前:Bar K ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 22:58
-
- 741 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 22:59
-
カラン、コローン
いらっしゃいませー
あら、いらっしゃい
今日もお仕事ご苦労様でした
- 742 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:00
-
薄めがお好みだったわね、はいどうぞ
じゃ、アタシも・・・
乾杯♪
なあに?今日はママの話が聞きたいって?
そんなアタシの話なんて聞いてもつまんないわよ
それでもいいからって?
分かったわ
- 743 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:01
-
そうねぇ、何から話そうかしら・・・
プライベート?
やだ、野暮な事言わないでちょうだい
もう、仕方ないわね
- 744 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:02
-
この店を開いて、もう10年は経つかしら
そんなこと言ったらアタシの年バレちゃうわね
え?いくつって?
アンタも女に年聞くだなんて、失礼よ!
この店を開いたときはアタシ一人だったけど
今じゃ店も大きくなって、従業員も15人ほど居るわ
まぁ、入れ替わりが激しいけど
みんなかわいいアタシの子供たちよ
- 745 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:02
- 1番長いのはミチって子。
アタシと年も大して変わらないわ
その次が、アツコとマリね。
もうオバハンね。あの子達も。
ここの子達はみんな訳ありなのよ
なんだかアタシが見てられなくなっちゃって引き取っちゃうってかんじ
だってかわいそうなのよ?
でも捨て犬拾いすぎて今じゃホント大変だわ
その次に長いのは・・・アタシの可愛い坊や
カウンターの中で居るヨシね。
あの子はいい子よ
- 746 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:02
- この中で唯一のホントの女よ
ああ、性別がってことね
あの子との出会いが1番衝撃的だったわ
店の裏でゴミにまみれて血出しながら、死にかけてるんだもの
ボロボロの格好でね・・・
思わず助けたわ。
手を差し伸べたら、アタシの手を振り払ったの
- 747 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:03
- え?ママの手を振り払うだなんて、なんて大それたって?
まぁまぁ。うふふっ
威勢いいでしょ?威勢だけよ、いいのは。
ま、当時は荒れてたみたいだし、仕方ないわね
いつの間にかこの店の番犬みたいに住み着いちゃってね
うふふっ
いいのよ。あの子には帰る場所がないんだから。
アタシが1番かわいがってる子よ
あの子には幸せになってもらいたいって思ってるの
- 748 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:03
-
あら、お酒もう飲んじゃったの?
じゃぁ、はい。2杯目
そろそろママの話を聞かせてくれって?
そうね・・・
アタシは根っからのオカマじゃなかったのよ
もともと普通の会社で働いてたわ
似合わない?そうね、確かにそうかも。
アタシもともと女顔だったから、違和感あるかもしれないわね
- 749 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:04
- 結構いいところの会社でね。
成績優秀のセールスマンしてたわ。
同じ会社の子と社内恋愛。27で結婚
順風満帆だと思われてた
でもね、気づいちゃったのよ
アタシ、そっちがものすごく淡白だってこと。
もちろん結婚相手と、籍を入れるまで一度だって寝たことなかったし
結婚してからも、寝たのはホント数えるくらいよ
その時に子供が出来たわ
かわいい子供よ。
- 750 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:04
- アタシが気づいたのは、会社の上司に初めて連れられたときかしら。
オカマバーだったわ
その店の人にね
「アンタ、実はこっちでしょ?」って言われたの
その時は憤慨したわ
だけど、思い返せばそうだったかもしれない
学生時代も、周りに合わせるために女と付き合ったり
会社の先輩に連れられて、夜の街に繰り出したり。
でも、まったく興味が湧かなかったの。
いつも男ばかり見てた気がするわ
でも自分ではおかしいって心の奥にしまい込んでたのね。
- 751 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:05
- 子供が小学校に入る前かしら。
今の仕事についたの。
会社を辞めて、この世界に来たわ。
もちろん、先輩に初めて連れられた店よ
そしたら、あの時の店の人が居てね
「いいのよ、それで」
って言ってくれたわ。
会社を辞めたときに、家を出ようと思ったの。
奥さんに、自分がオカマバーで働く事を言った時
「わたしはそれでもあなたが好き」と言われたわ
胸が引き裂かれる思いだった・・・
裏切ったんですもの。一人の女性と、一人の子供をね・・・
- 752 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:05
- 子供が小学校を卒業したときに
正式に離婚の話を持ち出したの
でも、彼女は、せめて子供が中学校を卒業してからにしようって。
その時彼女には新しい男性が居たみたい。
寝てたかどうかなんて知らないけど
仕方ないわね。
支えが必要だったのよ。
- 753 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:06
-
あら、今日はお酒のペース速いのね
はい、どうぞ
続き?
そうね・・・
今は調停中よ
彼女は慰謝料は要らないって言ったの
でも、養育費は払わせて欲しいと思ったわ
子供には、なんの罪も無いもの
子供もね、アタシについて行きたい
「わたしのパパはパパだけ」って言ってくれるの
泣ける話でしょ?
でもね、パパがママじゃ、あの子は幸せになれないわ
裁判所もそうしようとしてるみたい。
- 754 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:06
-
悪いのはみんなアタシ。
あの子が幸せになってくれればそれでいいの・・・
寂しくないかって?
やだぁ、慰めてくれるのかしら
でも、アタシには今イイ男がいるからいいの!
あなたがいい男じゃないって言ってるんじゃないのよ?
もう、拗ねないの♪
- 755 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:07
- この店の税理士よ
イケメンなのよ、その先生。
でも、ちっとも読めやしないの。
クールっていうのか、照れ屋っていうか。
年下だから仕方ないけど。
まぁ、アタシなんかに好かれてるって思われたら
この店の仕事投げ出しそうだから、言わないけどね
恋心っていうのは内に秘めておくのが華よ
- 756 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:08
- さ、アタシの話はこれでおしまい。
湿っぽくなっちゃうからイヤなのよね
また今度聞かせてって?
機会があればね。
◆ ◆ ◆
あら、もう帰るの?
そうね。奥さん大事にしなさいよ。
子供もね。
世界にたった一人しか居ないんだから。
ママも先生と結ばれればいいのにねって?
はいはい。ありがとう。
じゃぁ、また来てくださいね
はい、ありがとうございます〜
またお越しくださいませ
- 757 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:09
-
すっかり寒くなったわねぇ・・・
アタシの春はいつくるのかしら・・・
- 758 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:09
-
◆ ◆ ◆
- 759 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:09
-
カラン、コローン
あら、先生。いらっしゃい。
どうしたのこんな時間に
え?今日はママに会いに来た?
やあだ、そんな事言っても何にも出ないわよ?
たまにはママと仕事以外の話がしたいって?
もう、仕方ないわね。
じゃぁ、まず乾杯しましょ?先生♪
ママの春も近いようである
- 760 名前:ママのユウウツ 投稿日:2005/12/04(日) 23:10
- |Bar K|`.∀´)<おしまい♪
- 761 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 23:15
- 苦労人、圭ママのちょっとした小噺でした。
思い付きで書いたので内容薄いです。申し訳
れすぽんつ
>7&Y様
ありがとうございます
陳腐だなんて、そんなそんな
作者その言葉を聞けて、嬉し涙ポロリ。
更新ペースが速すぎて、一時軽く放置した方がいいのかと
思ってましたが、そう言っていただけて本当にうれしいです
これからもよろしくお願いします
>名無飼育さん様
ありがとうございます
これからもよろしくお願いします。
- 762 名前:774飼育 投稿日:2005/12/04(日) 23:24
- 更新お疲れ様です
このお話もおもしろかったですよ〜
今日もリアルタイムで読んでました
- 763 名前:平凡な日常 投稿日:2005/12/04(日) 23:34
-
(○^〜^)<ねえ、梨華。いつも思うんだけど味噌汁しょっぱくねぇ?
( ^▽^)<そう?お味噌は普通の量だよ?
(○^〜^)<味噌以外なんか入れてるの?
( ^▽^)<おしょう油
(;^〜^)<え!?なんで!?
( ^▽^)<だって、お味噌汁におしょう油入れると身体にいいって
(○^〜^)<誰情報なの、それ。
( ^▽^)<みのさん
(○^〜^)<みのさんか・・・それじゃ仕方ないな
( ^▽^)<みのさんがイイって丸山さんが言ってたの
(○^〜^)<(丸山さんって誰・・・)
( ^▽^)<あ、丸山さんって、八百屋さんね
(○^〜^)<ああ、そうなんだ・・・それよりしょう油どれくらい入れてるの?
( ^▽^)<お玉いっぱい♪
(○`〜´)<入れすぎだYO!腎炎にさせる気かYO!!
(;T▽T)<わーん、ごめんなさーい
- 764 名前:平凡な日常 投稿日:2005/12/04(日) 23:36
-
(○´〜`)<(でも、梨華が作ってくれたから飲むよ・・・ぐーっと。
味覚障害起こらない事を願う
( ^▽^)<おしまい♪
- 765 名前:Rink 投稿日:2005/12/04(日) 23:38
- いしよしの日常バカ話でした
これも作者が味噌汁作ってるときに思いつきました
ちなみに味噌汁にしょう油を入れるのは
みのさん情報ですよ
(○^〜^)<量はちょっとだけだよ!
- 766 名前:平凡な日常 投稿日:2005/12/05(月) 00:14
- 梨華頑張っちゃう♪ 編
(○^〜^)<ただいまー
( ^▽^)<おかえりー!ご飯出来たとこだよー
(○^〜^)<ありがと。その前にちょっとのど渇いたから、水、水ぅ〜
ガチャッ
冷蔵庫を開けるひーちゃん
扉を開けて、暫く固まるひーちゃん
(○^〜^)<り、梨華・・・これは・・・?
(;^▽^)<うさちゃんリンゴ作ろうと思って・・・
(○^〜^)<何個切ったの・・・
(;^▽^)<え、っと・・・じ、じゅっこ?
(○`〜´)<バカ!!!色変わるじゃねぇかよ!(そこかよ)
(;T▽T)<だってうさちゃんじゃなくて
わかめちゃんカットになっちゃったんだもん!
- 767 名前:平凡な日常 投稿日:2005/12/05(月) 00:15
-
(○´〜`)<でも、もったいないから・・・
ジャムをつくりはじめるひーちゃん。
意外と器用な人、ひーちゃん
(∧)こうでなく(V) こう切ったらしい・・・
がんばれひーちゃん!負けるな梨華ちゃん!
( ^▽^)<おしまい♪
- 768 名前:平凡な日常 投稿日:2005/12/05(月) 00:21
-
とある日の午後。
珍しく買い物に出かける二人
丸山)<お!梨華ちゃん!
( ^▽^)<あ、おじさーん、こんにちはー
(○^〜^)<(噂の丸山さん・・・)
丸山)<今日は旦那さんもいっしょ?
(○^〜^)<(だ、ダンナ!?)
( ^▽^)<そうなんですぅ〜
(○^〜^)<(梨華まで!!)
丸山)<旦那さんもいい奥さんもらったねぇ
こんなかわいい奥さんでさぁ?このこのぉ!
( ^▽^)<やぁだぁ、かわいいだなんて♪
(○T〜T)<(もう、好きにして下さい・・・)
がんばれひーちゃん!落ち着け梨華ちゃん!
( ^▽^)<今度こそおしまい♪
- 769 名前:Rink 投稿日:2005/12/05(月) 00:24
- 平凡な日常3連発でした。お粗末。
れすぽんぬ
>774飼育様
リアルタイムありがとうございますw
ママにも幸せが訪れる事を願いつつ書いてみました
- 770 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 00:30
- ワロタ
- 771 名前:Rink 投稿日:2005/12/05(月) 01:08
- 続編『LINE』
番外編『CROSS』
スタートします
が!
容量に不安を感じたため、緑板に移転いたします。
もしよろしければお付き合いくださいませ
>名無飼育さん様
あーざいやす!
- 772 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/26(月) 13:16
- 新しい移転先は・・・
追い掛けたいです。
- 773 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/26(月) 13:26
- LINE
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/green/1133712122/
- 774 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/26(月) 17:46
- ありがとうございますっ
- 775 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/26(月) 20:54
- どういたしまして
あと、書き込むときにはsageで書き込んだほうがいいですよ
メール欄に半角でsageと書けばokです
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