亜依あらばIt's All Right

1 名前:ぱせり 投稿日:2005/11/27(日) 18:24

加護さん絡みの短編集です。
更新は不定期になるとおもいますが、よろしくおねがいします。
2 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:27

   Missラブ探偵

3 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:29

「気になる人がいます。 気持ちが知りたいんです♪」

スポットライトの中、歌いながら思う。

あの子はうちのことどう思ってるんやろか?

「遠くから近くからのぞいても何も見えない♪」

歌いながらあの子を見つめる。

(何も見えないや。脈無しってことやろか?)
そう思ってから自嘲気味に微笑んだ。
自分の気持ちが分からないのに、相手に脈があるかどうかなんて分かるわけがない。
たとえ分かったとしてどうしようって言うんやってかんじやもん。

4 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:34

「あいぼーん!」
「なっち姉ちゃん久しぶり〜」
局のスタジオに入ると、なっち姉ちゃんがいつもの笑顔で大きく手をふっている。
うちはなっち姉ちゃんに駆け寄り抱きつくとチュっ♪。

 チュー。そう、キスじゃなくてチュー。
うちらハロプロのメンバーは結構コミュニケーションと言うか、挨拶代わりにチュっとかする。
もちろん誰彼かまわずって分けやないんやけど。
だって中澤さんや稲葉さんやと若さ吸い取られそうやし
ケメちゃんや斉藤さんやと……ね〜?

うちの場合多いのはなっち姉ちゃんや亜弥ちゃん、ごっちんとか梨華ちゃんかな。
でものんにはそんなことずっとしてへん。
娘。に入ったころは結構してた思うねんけど……。
なんかみんなと違ってチュってしようと思うと照れてまうんやもん。
5 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:35
6 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:35

『キャハハ、それは加護が辻のことをさ、好きになっちゃったんだよ』
「何言ってるんですか?のんのことはずっと好きですよ」
『そうじゃなくってさ、加護はさ、辻に恋しちゃってんだよ』
「はぁ?何ですかそれ〜?」
『女の子同士だって良いじゃん♪矢口は応援するよ♪キャハハ』
7 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:35
8 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:36

三日前にあった矢口さんとの電話での会話。
ただの冗談だって分かってるんやけど……
その日から妙に意識してもうて。。。

9 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:36
10 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:39

「ふあぁ〜、寝られへん」
うちは小さく呟いて寝返りをうった。
眠れない理由。
それは隣のベットですやすや眠るあの子。

「も〜、ツアー出る前やっていうのに矢口さんもいらんこと言うんやから」
そうぶつぶつ言いながら、自分のベットを抜け出すと隣のベットへ。

「うちの気も知らんと」
気持ちよさそうに眠るのんのほっぺを突っついてみるけど無反応。

「ほんとに熟睡してんやなぁ。
うちはのんのせいで寝れへんのやで?」
何も知らず幸せそうに眠るのんの顔を見てるうちに
なんだかちょっと腹立って、いたずらしたろう思って
親指と人差し指でのんの左目を無理やり開けてのぞきこんで

1、2、3。

(これでうちの夢、見てくれるやろか?……って何言ってんねん。
ほんとに恋してるみたいやん)
思って苦笑する。

11 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:40

今度は普通に顔をのぞきこんでみる。

(今ならチュってできるやろか?
チュってしたら自分の気持ち、はっきりするやろか?
でもそんなことしたらのん、目覚まさへんかな?目覚ましたらなんて思うんやろ?)
うちはためらいがちに、そっとのんの顔に顔を近づけていった。
12 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:41

チュっ♪
13 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:41
14 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:43

(……うちなにやってんやろ?)
自分のベットに戻ると布団をかぶって思う。
昔は唇にチュっなんて平気でしてたのに、寝てるのんにさえ結局ほっぺにしかできなかった。

(やっぱりうちはのんのことを?)
(ほんとにそうなんやろか?)

「手にとれない気持ちを手にしたいなら観察と冷静な分析を……か」
自分達の曲を小さな声で口ずさんで思う。

(……自分の気持ちに対してもそうかも分からんなぁ。
きっと今のうち、冷静やないから自分の気持ちが分からへんのやろな)

そんなことを考えてるうちにやはり疲れが出てきたのか
うちはいつの間にか眠りり落ちていった。

15 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:43
 
16 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:45

「……寒っ」
うちは肌寒さを覚え、目を覚ました。
見ると掛け布団がなくなっている。
こう言う時の犯人はあの子だ。
最近はなくなっていたけど、昔はこんなことがよくあった。
寒い時、怖い夢を見た時、急に寂しなったとき。
そんなときいつもうちのベットに潜り込んで来ては布団を独り占めにしてしまう。

隣を見てみる。
やっぱりのんがいつの間にかうちのベットに潜り込んで眠っていた。
うちの布団を取り上げて、こっちを向いて、左手でうちの左手を握って。

「もう、のんったら」
うちは掛け布団を取り返し、きちんと二人に掛けなおすと
のんの方を向いて目を閉じた。
17 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:45
 
18 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:46

「……のん?」
次に目を覚ますと、のんが少し上半身を起こしじっとうちの顔をのぞきこんでいた。

「おきちゃった?」
「うん……今何時?」
「まだ4時」
「そう……まだ寝れるね。
でさぁ……のんはなんでうちのベットにおるん?」
「てへ〜」
「てへ〜やないよ。うちの布団取り上げちゃってさぁ、寒かったんやから」
「ごめんぼめん」
19 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:47

チュっ♪
20 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:50

不意打ちだった。

「な、な……のん、なにするん?」
「えへへ〜、亜依ちゃん、耳まで真っ赤」
楽しそうなのんの声。

「知らへん」
うちはそう言うと繋いだままだったのんの手を離し、背中を向けた。

「……亜依ちゃぁん?」
「…………」
打って変って不安そうなのんの声が聞こえてきたけど無視。
だって振り返ったらまた赤い顔見られてまうし
声を出しても上ずりそうやねんもん。

するとのんが擦り寄ってきて左手をうちのお腹の辺りにまわして
おでこを背中にちょこんと当てて

「こうしてたら寒くないよ」
「…………」
そんな甘えてきたって、優しい声出したって何も言ってあげへん。
だってなんだか負けるみたいで悔しいんやもん。
でも完全に無視するのも可愛そうやから、何も答えない替わりに、
うちはのんの左手に自分の左手を重ねた。
それであんしんしたのか

「おやすみ。亜依ちゃん」
そう言うとのんはすぐに穏やかな寝息を立て始めた。
21 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:52

「…………」
うちは右手の中指で自分の唇を謎ってみる。
あの子の唇が触れた部分を。

(やっぱり恋とちゃうんかな?)
だってさっきまであんなにドキドキしてたのにのんがこうやってぴったりしてきても
ドキドキするどころかなんだかすごく落ち着くんやもん。

(まぁいいや。恋やなくても、たとえそうでも)
その答えはうちが冷静になれるまでお預け。
あせる必要なんてどこにもないんやから。
だってこうしてる今、確かにうちは幸せやねんもん。


22 名前:Missラブ探偵 投稿日:2005/11/27(日) 18:55

   Missラブ探偵
       FIN
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/28(月) 10:01
あいののだー!!!
希少価値な二人の話をありがとうございます。
ぼんカワエー!
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:57
突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/17(土) 22:35
振り回され気味なあいぼんさんが可愛い
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/20(火) 18:27
あいのの大好きです。
27 名前:SEXY SNOW 投稿日:2005/12/24(土) 23:12

「もー、何で連絡つかんの!!」
亜依は苛立たしげにケイタイを閉じるとコートのポケットにそれをしまった。

「もう、自分が7時に改札って言うたくせに」
ケイタイで時間を確認すると既に待ち合わせの時間を一時間近く過ぎていた。

あれは先週の週末―――
28 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:13

「クリスマスなんだけどさ、レストラン予約したんだ」
「ほんま!?」
「つってもさ、ぜんぜん高くないとこなんだけど」
「そんなん良いよ。よっちゃんと一緒やったら」
「あいぼんはほんと良い子だよなあ」
「もー!すぐ子ども扱いするんやからぁ!」
亜依はひとみに髪をわしわし撫でられながら、頬を膨らまして抗議した。

「じゃあ、7時にいつもの改札な」
「うン」
亜依は子ども扱いされたことは不満だったが、
それでも嬉しそうにうなずいた。
29 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:14
30 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:16

「でもなんで繋がらへんのやろ」
亜依がケイタイのディスプレイを見つめたその時、
救急車のサイレンが聞こえ、さっと顔色が変わった。

「ま、まさか、よっちゃん?」
不安に駆られ、いてもたってもいられなくなり走り出そうとした時、

「あいぼ〜ん!ごめ〜ん」
手を振って掛けてくるひとみをみつけた。

「よっちゃん!」
亜依はひとみの顔を見て安堵し、その胸に飛び込んだ。

「な、なんだ?どうした?」
突然のことに狼狽したひとみが亜依を受け止めながら尋ねた。

「だって、連絡つかへんし、事故にでもあったんかと思ったんやもん」
「まったくぅ、あいぼんは子供だなぁ」
ひとみはそう言うと、亜依の頭をあやす様にぽんぽんと叩いた。
亜依はなんだか不愉快になり、さっとひとみから離れ、
きっと睨んだ。
31 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:19

「なんやの?一時間も遅刻して、人に心配かけといて」
「ごめんごめん」
そう頭をかきながら言うひとみの姿を見て亜依は唖然とした。

「よっちゃん、なんやのその恰好?」
「え?普通じゃん」
その日ひとみはよれよれのスエットにボロボロのデニム、薄汚れたスニーカーに
色あせたダウンジャケット、しかも寝癖までつけていたのだ。
普段なら亜依はそんな頓着しないところもひとみの魅力だと思っているが、
今日だけは違った。

今日あいは、めいいっぱいがんばっていた。
と言うのも、今日はひとみと過ごす始めてのイヴ、
亜依にとっては家族や友達意外と過ごす始めてのイヴだったのだ。

今日のために友だちを一日中連れ回し、やっと選んだ黒いベロアのスリットが深めのワンピース。
歩くのならヒールよりは良いだろうと姉に借りたパンプス。
バイト代をはたいて買った、タイト目のグレーのコート。
それに去年母からもらったローズピンクのストールを肩から掛けた。
今日は髪をおろし、カラーリップじゃなくってルージュを引いたし、
お化粧だってちょこっとした。

「これで子ども扱いなんかさせへんのやから」
そう意気込んでいたのに。
32 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:20

(なんやの?これじゃうちだけはりきってアホみたいやん)
そんな亜依の様子を気にも留めず、ひとみは楽しげに続けた。

「ごめんね、もうレストラン間に合わないよね。
どこか行きたいとこある?」
「……どこでもいい」
「じゃあさ、ドトール行こうか?駅前の」
亜依は耳を疑った。
その店は、夏休みに亜依が生まれて始めてバイトをした店であり、
ひとみと出会った思い出の場所でもあった。
だけど、何も今日行かなくても良いではないかと亜依は思う。
今夜はイヴでもあるし、何より気合入りまくり、空回りしまくりの
今の自分を昔のバイト仲間にさらされるのかと思うと
亜依は涙が出そうになった。
でもそんな亜依を他所に、ひとみは嬉しそうに、亜依の手を引きドンドン歩いていく。
33 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:20
34 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:21

「いらっしゃいませ〜♪……ってよっちゃんさん?」
店に入ると、亜依とも顔見知りの少しきつめの目をした、
綺麗な女性が出迎えた。

「あれ?隣にいるの加護ちゃん?
なぁんだ大人っぽくて分かんなかったよ」
「へへ〜、可愛いっしょ?」
「なんでよっちゃんさんが嬉しそうなのさ?
「えへへ」
「え?ひょっとして二人ってそう言う関係だったん?」
「まあね」
「何よ?それでイヴだってのに寂しくバイトしてる美貴に店つけに来たってわけ?」
「そんなとこ」
「マジむかつくー」

カウンター越しににこやかに会話をする二人を亜依はどこかさめた気持ちで見つめていた。
35 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:21
36 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:23

―――数分後
亜依はろくに食事にも手をつけず、じっと窓の外を見つめていた。

「うめ〜!やっぱここのベーグルサンドは最高だね」
亜依は美味しそうにベーグルにかじりつくひとみを一瞬見やると、視線を窓の外に戻した。
クリスマスのイルミネーションの中、行き交う恋人達。
その顔はみんな幸せそうで、自分一人だけが取り残されているような気がして、
ドンドン気持ちが沈みこんでいった。

(……なんでこうなったんやろ?)
ひとみとの始めてのいヴ、大切な人と始めて過ごすイヴ。
普段よりちょっとおしゃれして、一緒に食事して、
手を繋いでイルミネーションをみて、プレゼントをわたしてひとみの喜ぶ顔を見る。
それだけ、たったそれだけで良かったのに。

(よっちゃん、うちのことなんかなんとも思ってへんのかも?)
ずっと胸の中に燻っていた疑問がドンドン膨らみ始めた。
(いつも子供扱いするし……なんとも思ってへんからこんな日やのに
……だいたいよっちゃんが好きって言ってくれたことあらへんし)
亜依は俯き、自分の隣の席に置いたひとみへのプレゼントが入った紙袋をぎゅっと握り締めた。
37 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:23
 
38 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:24

「ねえあいぼん、どうしたん?」
「…………」
店を出てしばらく歩くとひとみが切り出した。
さすがのひとみも普段なら自分から腕を絡めたり、手を繋いでくる亜依が、
数歩後ろを俯きながらついてくるのが気になり
声を掛けてみたのだが、亜依からの返事はなかった。
仕方なくひとみは繁華街から離れ、人気のない公園まで行き、再び亜依に声をかけた。

「あ〜いぼん、どうしたのさ?」
「…………」
遅刻したのまだ怒ってんの?」
「…………」
「ひーちゃんのチューあげるからさ〜、ゆるしてよ〜」
ひとみはおどけながら、亜依の肩に手を掛け、口付けし用途した。

「アホ!!!」
限界だった。亜依はプレゼントの包みをひとみに投げつけると掛けだした。
39 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:25

(いつもそうや!)
亜依は走りながら思った。
ひとみが亜依にキスする時、それは必ずふざけた後でしかないのだ。

(うちのこと子供や思ってるから……だから
……よっちゃんはうちのことなんかどうでもいいんや!!)
40 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:26

「あのー……さぁ、よっちゃんって付き合ってる子とかって、いる?」
二人で遊びに行くようになって何度目かの帰り道、
亜依は思い切って切り出した。

「いいや、いないけど」
「なら……うちと付き合って……くれへん?」
「いいよ」
あの日、オッケーをもらえたことに舞い上がって気に求めなかったが、
今から思えば、ひとみのやけにあっさりした返事は、
亜依の告白は、ひとみにとってたいして重要な出来事でもなかったようにしか思えなかった。
41 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:28

(どうせ、暇つぶしだったんや!
たまたま好きな人がいいひんかったから……)
そう思った時ふいに、追いかけてきたひとみに後ろから肩を掴まれた。

「待てよ!なんなんだよ!何怒ってんだよ!」
「離して!どうせうちのことなんかなんとも思ってへんのでしょ!!」
「はあ!?なんだよそれ!なんでそうなるんだよ!!」
普段温和なひとみが声を荒げたので亜依は驚き、
その瞬間こらえていた涙が溢れ出してしまった。

「……あぁ、泣くなよ。あたしも悪かったからさ。
ちゃんと理由話してよ」
亜依の涙を見て、少し頭を冷やしたひとみが問いかけるが、
それでも亜依はしゃくり上げるばかりで話せる状態ではなかった。

「……ごめん、怒鳴ったりしてさ。
もともとあたしが遅刻したのが原因だもんね」
ひとみは亜依を抱きしめると優しく言った。
42 名前:SEXY 投稿日:2005/12/24(土) 23:29

「……いもん」
「え?」
「……それだけやないもん」
「……じゃあ、聞かせてよ、全部。
あいぼんが不満に思ってることをさ」

「……だって、だってよっちゃん、イヴやのに寝癖つけてくるし、
うちだけ張り切っててはずい思てるのにドトール連れてくし」
「……ごめん」
亜依は合間にしゃくり上げながらも話し続けた。

「うちのこと子供あつかいするし、キスする時いつもふざけてばかりだし、
よっちゃんうちに好きって言ってくれたことないし……
うちが作った料理で何が一番好き?って聞いたら、ゆで卵って言うし……
それから……それから……」
ひとみはいつまでも続きそうな自分への不満を苦笑を浮かべて聞いていたが、
ふいに亜依の背中に回した手に力を込めると

「大好きだよ。誰よりも」
「……え?」
「あたしも愛のこと大好きだよ」
驚いてひとみの胸から顔を上げた亜依に突然口付けをした。
43 名前:SEXY SNOW 投稿日:2005/12/24(土) 23:34

「……ごめん、いつもなんか照れくさくってさ。
でもそれで傷つけてたんだね。
あたしもさ、これからがんばるよ」
「……うん……うちもごめんなさい」
突然の行為に顔を赤らめる亜依にひとみは続けた。

「ドトールに連れてったのはさ、可愛い彼女をみんなに自慢したかったんだよね」
てへ〜っと笑いいつもの調子に戻ったひとみの顔を見ていると
自分の気持ちも軽くなって行くのが分かり、亜依もいつもの
調子を取り戻して言った。

「なんも今日やなくてもいいやん」
「だってさぁ、今日あいぼん綺麗なかっこしてるし」
「そう思てたなら会ったときに褒めてくれへん?」
「えへへ、それよりさ、泣いちゃったから
折角のお化粧台無しになっちゃったね」
「そんなのよっちゃんが遅刻した時から台無しですようだ」
「それ言われるときっついな〜」
ちょっと困り顔のひとみを見て、亜依も涙を浮かべたままだったが、口元をほころばせた。
44 名前:SEXY SNOW 投稿日:2005/12/24(土) 23:35

「それよりさ、これ開けて良い?」
ひとみは先ほど投げつけられた包みを掲げて聞く。
「……うん。あっちょっと待って」
亜依はひとみの手からプレゼントを受け取り、
ひとみから離れると

「メリークリスマス、よっちゃん」
微笑み、手渡した。

「サンキュ!」
ひとみが包みを開けると、中からはブルーのセーターが現れた。
45 名前:SEXY SNOW 投稿日:2005/12/24(土) 23:37

「カッケーー!これ手編み!?」
「うん、ってよっちゃん?なにやってんの!?」
亜依が驚きの声を上げるのも気に求めず、
ひとみはダウンジャケットとスエットを脱ぐと、Tシャツ一枚になり、
亜依のプレゼントに袖を通していた。

「どう?カッケー?あたしカッケー?」
「うん、カッケー!よっちゃんカッケーよ!」
ポーズをとりながら意味もなくくるくる回り尋ねるひとみに
亜依は笑いながら答えた。

「あ、あたしもあいぼんにプレゼントわたさなきゃ」
そう言うとひとみはダウンジャケットのポケットから小さな包みを取り出した。
46 名前:SEXY SNOW 投稿日:2005/12/24(土) 23:39

「メリークリスマス、あいぼん」
「ありがとう、開けて良い?」
「もちろん」
ひとみから手渡された包みを開けると、紫色の石がついた
かわいらしいシルバーのピアスが出てきた。

「アメジスト、あいぼんの誕生石だよ」
ひとみは亜依の手からピアスをつまみ上げると、亜依につけてやりながら言った。

「宝石言葉は……酔っ払わない?
……まあさ、あいぼんがお酒飲める年になっても一緒にいられるようにっつうか……」
折角かっこよく決めたひとみだったが、
最後はしどろもどろになってしまった。

「よっちゃん、ありがとう!」
それでも亜依は涙ぐみながらひとみの胸に顔をうずめた。
亜依は知っていた。
アメジストの宝石言葉が本当は『誠実、平和、純真』であること、
みずがめ座にとって永遠の愛の象徴であることを。
そしてなにより普段そんなことに注意を払わないひとみが、うろ覚えな知識だったとしても
亜依のことを一生懸命考えて、プレゼントを選んでくれてたのだと思うとそれだけで嬉しかった。
47 名前:SEXY SNOW 投稿日:2005/12/24(土) 23:40

「あっ、雪」
亜依がひとみの声に顔を上げると、暗い空からちらちらと舞い降りる白いものが見えた。

「ホワイトクリスマスだね」
「……うん……綺麗」
「うん……あいぼん寒くない?もう帰る?」
「ううん、もう少し……このままで」
「うん」


その夜の雪は、二人を祝福するかのように優しく、いつまでも振り続いていた。

48 名前:SEXY SNOW 投稿日:2005/12/24(土) 23:45
SEXY SNOW
FIN
49 名前:ぱせり 投稿日:2005/12/24(土) 23:47

すみません。>>28から>>42までのタイトルが替わってました。
タイトルはSEXY SNOWです。
今回は違うCPでした。
ちなみに作中でよっちゃんが宝石言葉として間違えて覚えていたのは、石にまつわる伝承です。
50 名前:ぱせり 投稿日:2005/12/24(土) 23:50
皆さん、レスありがとうございます。
>>23さん、今回は違いましたが、またあいののも書きますのでよろしくおねがいします。
>>24さん、がんばってください。
>>25さん、このスレではいろいろなあいぼんを書いていけたらと思ってますのでまたよろしくおねがいします。
>>26さん、作者も大好きなのでまた書きますのでお待ちください。
多分次回はあいののです。
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/25(日) 15:57
スタンダードなよしかごですね。希少種のよしかごですね。かわいいよしかごですね。
僕の大好きなよしかごですね。ぱせりさんらしいよしかごですね。吉澤と加護でよしかごですね。
最高のよしかごですね。
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/29(木) 05:36
自分が捜し求めていた小説に出会った そんな感じ(*´Д`)
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/02(月) 15:38
よしかごキター!!
大好きなCPなので読んでて嬉しかったです
デートに気を使わなかったり、よっちゃんらしくてイイと思いました
また書いて欲しいなぁ。。。
54 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/01/21(土) 04:40
次回のあいのの期待してます!
55 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:17

   ココアの香り
56 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:18

 (……どうしてこうなったんやっけ?)
うちはのんに包まれながら思う。
少し前まで、そう、1時間程前まではこんな関係になるなんて思ってもいなかった。
57 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:19
 
58 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:20

「あいぼーん、ココア飲む?」
うちがお風呂から上がって、化粧水をつけてると、
先にお風呂をすませ、すっかり寝る準備のできたのんから声をかけられた。

「うん、ありがとう」
「ここ、おいとくね」
鏡越しにのんがベット脇のサイドテーブルにカップを置いているのが見えた。

うちは一通り基礎化粧を終えると、自分のベットに座り、のんが煎れてくれたココアに口をつけた。

「あ、マシュマロ入ってる」
「へへへ、良いでしょ?」
「うん、なんか可愛いね」

それぞれのベットに座り、ココアを飲みながら
しばらく他愛もない話で盛り上がった後、のんが切り出した。
59 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:21

「……ね〜、あいぼんは好きな人とかってぇ……いる?」

うちは思い切って切り出したって感じののんを見て、なんか可笑しくなった。
「どうしたぁのん?恋の悩みぃ?
しょうがないなぁ、あいぼんが相談に乗ってあげましょう」
うちは微笑むと、カップを持ってのんのすぐ横に座った。

「…………」
でものんは、からかい口調のうちにちょっとむっとしたのか、そっぽを向いてしまった。

「……ごめんごめん、真面目に聞くから、機嫌直して、な?」
うちが真剣に聞く体制になったのを見てのんはゆっくり口を開いた。
60 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:22

「……のんね……好きな人がいるんだ」
「うん」
「ずっと言わないつもりだったんだけど……最近は自分の気持ち隠してるのがつらいんだ」
「なんで言えへんの?」
「……だって」
言いよどむのんにうちは続けた。

「言えへんかったら相手に伝わらんで?
ためらってるうちに誰かにとられてまうかもしれんやん」
「だって女の子なんだもん!!」

「え?」

突然大きな声で叫んだのんだったが、しまったと言う顔をして、うなだれてしまった。

「……へんな風に思われたくないもん。
……気持ち悪いとか……思われたくなかったんだもん」
だんだん涙混じりになってきた。
61 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:24

正直うちも少し驚いた。
この世界にいると結構同性愛者って人は多かったりする。
特に男同士なんて普通の光景って感じやし。
でものんが女の子のこと好きだとは思わなかった。

「……あいぼん……やっぱりのんのこと軽蔑した?
嫌いになっちゃった?」
「ううん、そんなことある分けないやん」
うちは不安そうに尋ねてきたのんにあわてて答えた。

「だってこの業界ってさぁ、そう言う人多いやん」
「……うん」
そう言い微笑むとのんは少し笑顔を取り戻した。

そののんの笑顔を見て、うちも落ち着きを取り戻して話を戻した。
62 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:25

「で、その子てさぁ、ハロプロの子なん?」
「……うん」
「それなら大丈夫かも知れへんやん。
この業界の子やったらうちみたいに平気かも分からんし」
「あいぼん!……平気なの!?」
のんがパッとかを上げた。

「さっき、最初に聞いた時はさぁ、やっぱりちょっと驚いたけど、別に平気かな?」
「なんで?」
「ううん……やっぱりそう言う人見慣れてるし、
のんはのんやからかな?」
「……どういうこと?」
「……う〜ん、何て言って良いかよう分からんけど
今のままののんが好きやからかな?」

「……あいちゃんなんだ」
63 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:26

「え?」
「のんが好きなの……あいちゃんなんだ!」
「……そうなんだ」
のんの突然の告白。てっきりまこっちゃんかあさ美ちゃんかと思ってた。
でもなんやろ?なんかもやもやする。
確かに愛ちゃんは可愛い。でものんが愛ちゃんが好きやなんて……
応援しなきゃいけない……とは思うんやけど。

「あいちゃんが好きなんだ」
「……うん、分かった。協力できることあったら言う……ってのん?」
急にのんに抱きしめられた。
64 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:28

「のんが好きなの……亜依ちゃんなんだ」
抱きしめられたままのうちの耳元でのんがささやく。

「……うち……なん?……愛ちゃんやなくて?」
「うん」
答えるとのんはうちを強く抱きしめた。

(のんがうちのこと好き?)
(のんが好きなのはうち?)
(愛ちゃんでもまこっちゃんでもあさ美ちゃんでもなくうち?)
(今までそんなそぶりなかったやん)
うちはただただ混乱していた。
いろいろ考えてはみるんやけど、なんだか頭の中に
霞がかかったみたいにぼんやりとして何も考えられへんくなっていた。

「……亜依ちゃんはのんのこと……嫌い?」
のんが耳元で囁く。

「うちがのんを嫌いやなんて……ある訳ないやん」
その耳をくすぐる声にさらに思考は麻痺させられ
うちは呟くようにそう答えていた。

「亜依ちゃん」
突然ココアの香りに唇がふさがれ、うちの霞が勝った思考は
その甘い香りに塗りつぶされていった。―――
65 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:28
 
66 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:30

そこからのことはよく覚えていない。
次に気がついた時には、うちは自らのんの背中に手を回し
彼女を受け入れていた。

「……亜依ちゃん」
「……うん?」
のんに包まれたまま、現実感の伴わない
この1時間あまりのことを思い出していると声を掛けられた。

「……ごめんね、なんか……強引だったみたいで」
「……いまさら何言ってんの?」
うちはのんの胸から顔を上げると上目遣いでちょっと睨んだ。

「嫌……だった?」
ずっとうちの髪をなで続けていた手を止め、うちの顔を
不安そうにのぞきこんで尋ねるのんに

「嫌やったらこうしてへん」
言ってまたのんの胸に顔をうずめた。

のん、のの、辻希美。
娘。に入った時からずっと一緒だった子。
昔は自分の方がちょっとお姉さんだと思ってたのに
今ではこの子に依存してる部分も多い。
何より胸に顔をうずめ、髪を撫でられてると言う今のこの状況。

(なんだかうちが甘えてるみたいやん)
そう思ったけど悪い気はしない。
いや、むしろ心地良いくらい。
67 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:31

「亜依ちゃん」
のんがうちを強く抱きしめる。
うちも答えるように、のんの背中に回した手に力を込める。

「大好き」
「……うん」
「のんは亜依ちゃんが大好き)
「……うん」
「のんは亜依ちゃんのこと大好きなんだよ?」
「……うん」
「……亜依ちゃん『うん』ばっかり」
「え?」
見上げるとすねたようなのんの顔。
そんな顔を見ていたら自然に言葉が唇からこぼれた。

「うちものんが好き」
(……ほんまやろうか?
ほんまにのんのこと好きなんやろか?
ただ今の状況に流されてるだけやないやろうか?)
そう思っていると再びココアの香りに唇がふさがれた。
68 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:33

今度はさっきとは違い、その香りはすぐに離れて行った。
それがなぜか寂しくって、切なくって。

「……のん」
うちは囁くと、ためらいがちにその香りを求めて行った。
でもなんだか恥ずかしくなり、うちはすぐに唇を離した。

「えへへ」
唇を離すとすぐに、のんがこれ以上ないってぐらいの
笑顔でうちの顔をのぞきこんできた。

「ど、どうしたんのん?」
「だって嬉しいんだもん♪」
そうしてまた力いっぱい抱きしめられた。

「もう、苦しいやん」
そう文句を言いながらも、うちの口元もほころんでいるのが自分でも分かる。
だって分かっちゃったんやもん。
この笑顔が、のんの笑顔がうちにとって何より大切やって。
69 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:34

「のん」
「なぁに?」
「浮気したら許さへんからね」
「するわけないじゃん」
うちらはもう一度強く抱きしめあうと唇を重ねた。

のん、これから、ううん、これからもずっと一緒でいような。
この香りが消えてもずっと。

70 名前:ココアの香り 投稿日:2006/02/07(火) 22:36

   ココアの香り
     FIN     
71 名前:ぱせり 投稿日:2006/02/07(火) 22:38

 みなさん、レスありがとうございます。
>>51さん、ありがとうございます。
よしかごお好きなんですね。また書くと思いますので、お待ちください。
>>52さん、ありがとうございます。
そう言っていただけてすっごく嬉しいです。
>>53さん、ありがとうございます。
最近はそうでもないようですが、服に気を使わなかったりすると
よく聞いてたので、よっちゃんはやっぱりこんなイメージですよね。
またよしかごも書くと思いますのでよろしくおねがいします。
>>54さん、お待たせしました。
ご期待に添えましたでしょうか?
いままでとは違う雰囲気なのでちょっと不安です。
72 名前:ぱせり 投稿日:2006/02/07(火) 22:39

   ☆Happy birthday AIBON☆
73 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/08(水) 22:12
甘い誕生日最高(*´д`*)
74 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/02/09(木) 02:20
甘いあいののサイコーです!
またお願いします!
75 名前:ぱせり 投稿日:2006/05/15(月) 22:59
 みなさんこんばんわ、作者です。
 レスありがとうございます。
>>73さん、ありがとうございます。
あまりこう言うあいのの見ないんで不安でしたが、気に入っていただけて幸いです。
>>74さん、ありがとうございます。
私もまた甘いあいののも書きたいと思ってますのでお待ち下さい。

 ここで、こっそりと告知なのですが、7月七日までに>>77をゲットされた方の
リクエストにお答えします。
 ただ作品を読んでいただいてお分かりの通り、文才も想像力も乏しいので
リクエストに十分お答えできないかも知れませんが、その時はご容赦下さい。
 
 あいぼん絡みであればどんなマイナーCPでもオッケー!
スチュエーションの誤記ぼうがあれば、抽象的でも具体的でも
いいので、あればお聞かせ下さい。
なるべく誤記ぼうに添えるようにがんばります。
そのさい、ぱせりへのメッセージもいただけると嬉しいです。

十分期限をとりましたが、更新もせず、sageのままでの告知なので
気づいてくださる人がいるか不安ですが・・・
気づいててもスルーだったらどうしよう・・・

 それではリクエストお待ちしてます。
76 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/18(木) 06:30
よしかご!!よしかご!!
って77じゃないと駄目なのか・・・
77 名前:名無し 投稿日:2006/05/20(土) 23:38
物凄くマイナーですが、
美貴ぼん?美貴加護?を
見てみたいです!!
いつもひっそりと拝見させて頂いてましたです。
78 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/21(日) 17:26
みきぼんキタコレw
ミュージカルのデュエットで歌声の相性が良くて驚いたの思い出した
作者さんに期待
79 名前:ぱせり 投稿日:2006/06/07(水) 00:15
みなさんこんばんわ、作者です。
みなさんレスありがとうございます。
こんなに早く気づいてもらえるとは思いませんでした。
感激です。

>>76さん、連続投稿しないフェアな76さんに感動です。
リクがなくても、よしかご書くかもしれませんし、
このスレは切り番、ぞろ目をGETされた方のリクにお答えすることに今決めましたので、
作者がなかなか書かなかった場合、次のチャンスを狙ってみて下さい♪

>>77さん、
( ‘д‘)<おめでとうございまぁす♪
はぁい、みきぼん入りま〜す♪
ってうちと美貴ちゃん、どうやって絡むんやろ?

なかなかお目が高いですね♪
がんばって書きますので、今しばらくお待ち下さい。

>>78さん、あれは良かったですよね。サントラがなかったのが残念でした。
ご期待に添えるか分りませんが、がんばって書いて見ます。
80 名前:名無し 投稿日:2006/06/11(日) 02:08
77でリクしたものです。
自分なんかがいいのかな…と思ったんですが
カキコさせて頂きました。

私もあのミュージカルのみきぼんのデュエット聞いてビックリしました
好きですねぇ。
書いて頂けるだけでも十分嬉しいです!
81 名前:デコボコセブンティー 投稿日:2006/07/23(日) 17:22
   デコボコセブンティーン
82 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:23
 7月の土曜日の夕暮れ、駅前の商店街を二人の少女が歩いていた。
二人はチェックのプリーツスカートに白のブラウスに青いリボン、
ぺらぺらの通学カバンとテニスラケットを抱え、
足取りも軽やかに家路を辿っていた。

 「あ〜いっぼんっ、どうしたの?にやにやしちゃって〜」
ぱっちりした目の少女、亜弥がカバンをぶんぶん振り回し、鼻歌を歌いながら隣を歩く亜依に話しかけた。

「えへへへ〜、なんでもないよ」
「どうせ明日たんとデートだぁって浮かれてんでしょ?」
「な、なんで分るン?」
「そんなニヤニヤしてちゃーね〜」
「あーそうですそうですー!ええやん、久しぶりに会えるんやもん!
うちがニヤニヤしてようが、ニマニマしてようが、
デレデレしてようが、亜弥ちゃんに迷惑かけてへんやん!!!」
「うぉ、開き直った♪」
夕焼けの中でさへ、はっきり分るほど真っ赤になり、
オーバーリアクションで答える亜依を見て亜弥ははしゃいでいる。

83 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:26

「それにしてもさぁ、あいぼんとたんが付き合うなんて思ってなかったよ」
「って紹介してくれたん、じぶんやん?」
「いやぁ、だってさぁ、あいぼんがたん、絶対怖がると思ってたもん」
「……確かに最初怖かったけど」
亜依は当時のことを思い出しながら呟く。

「ほう?じゃあ、どこが好きになったん?」
「そんなん、幼馴染なら美貴ちゃんのよさぐらい知ってるでしょ?」
「そりゃぁしってるけどさ〜ぁ、やっぱり、幼馴染と彼女の視点じゃ違うかなぁって思って」
亜弥はいやらしい笑みを浮かべ言う。

「なんやの?今日の亜弥ちゃんめっちゃいじわるやん」
「まぁ、たまにはね〜、いっつも惚気られてるおかえしですうぅ」
「だ、だれが惚気てんねん!」
「美貴たんにデレデレのあいぼんですぅ」
「あっ、こら待てー!」
「いや〜だよっ」
掛けだす亜弥を亜依も追いかける。
二人の少女はスカートを翻し、キャッキャ叫びながら商店街を駆け抜けていく。
84 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:27

「はぁ、はぁ、もーあっつい!汗だくじゃぁん!」
「はぁ、はぁ、誰のせいやと思ってんねん?」
「デレデレあいぼん」
「まだ言うか」
「にゃはは、それよりアイスでも食べよ、喉渇いちゃった」
「うん」
二人はコンビニでアイスを買うと、食べながら歩く。

「で、明日はどこ行くの?」
「ううんとね、映画とお買い物」
「またベタだね〜。」
「ええやん、美貴ちゃんがそうしよって言うんやもん」
「はいはい、で、なんの映画見るの?」
「美貴ちゃんがDethNote見たいんやって」
「今話題だもんね。でも面白いの?」
「♪つまらない映画でもいいの、一緒なら、女は♪
「はいはい」
楽しそうに歌う亜依に、どこが惚気てないんだと、亜弥が心の中で
つっこんでいると、突然亜依の携帯がなった。
85 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:28

「あ、美貴ちゃんからメールだ♪」
だが携帯を開いた亜依のテンションは見る見るうちにしぼんで言った。

「どうした?あいぼん」
「美貴ちゃん、明日急にバイト入ったんやて」
「え〜?先週もそんなこと言ってなかった?」
「……うん、3週続けてやねん……」
「3週も!?」
「……うん」
亜依は頷くと肩を落とし、深いため息を着く。
今まではしゃいでいた亜依を見ていただけに、亜弥も落ち着かない。

「じゃぁあいぼん、明日あたしとデートしよ」
「……え?」
「なんっつうかさ、たんがあいぼんに迷惑かけたわけじゃん?
幼馴染としてはさ、なんだっけ?あたしがたんのお尻拭いてあげなきゃいけないかなぁって思って」
「……尻拭いってこと?」
「……そう……かな?」
亜弥は可愛らしく小首をかしげ真剣に考え込む。

「きゃははなにそれ?」
「ね?明日デートしよ?ちょうど水木買いにいこうって思ってたから付き合ってよ」
「うん、いいよ」
亜依がとりあえず笑顔になってくれたので亜弥は安心した。
幼馴染が原因で親友が元気ないなんていい気分はしない。
それならまだ惚気られ照るほうがましだと思う。
86 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:28

「じゃぁ、明日ねあいぼん」
「うん」
二人は駅で別れるとそれぞれ家路に着いた。
87 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:29
88 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:30
「あ、美貴ちゃん?」
『あいぼん、どうした?』
亜依は家に帰り、美貴のバイトが終わる時間を見計らって電話をかけた。
「今いい?」
『うん』
「明日バイトになっちゃったんやて?」
『うん、そう。ごめんね』
「ううん、そんなんいいけど、体だいじょうぶなん?」
『うん、だいじょうぶ』
美貴の口数が少ないのはいつものことだが、今日の亜依にはそれがとても寂しく感じられ、
必死に会話をつむぐ。

「でな、明日な、亜弥ちゃんと水着買いにいくことになってん」
『うん』
「だからな、今度海いこ?
あ、忙しかったら近場のプールでもいいし」
『そうだね』
「かわいいの買ってくるから楽しみにしててな?」
『うん』
でもそんな思いも虚しく、相槌しか打たない美貴に会話も弾まず、
しだいに亜依の口数も減っていってしまう。

「…………」
『……ごめん、美貴、明日早いから切るね』
「え?……もう?」
『なにか用あった?』
「……ううん、分った。体、気いつけてね」
『うん、おやすみ』
「……おやすみなさい」
89 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:31

「……美貴ちゃんのアホ」
亜依は電話を切ると呟いた。
美貴は電話が苦手だ。
なぜか電話では緊張してしまい、笑いもせず、
口数も減り、そっけない態度をとってしまうらしい。
いつものことだから普段の亜依ならそんなことは気にはしない。
けれども、今回は3週連続で週末の約束をキャンセルされた後である。
そこに来て、声が聞きたいと思い電話をかければ
『どうした?』だの
『なにか用あった?』
などと聞かれた日にはたまらない。
なにか用なきゃいけないの?恋人の声聞きたいって理由じゃ駄目なの?なんて叫びたい気分にもなる。
でも、美貴だって疲れてるんだし、そんなこと言ってうざいと思われるのも悲しい。

「美貴ちゃんのドアホ」
亜依は呟くとバフっとベットに身を投げ出し、携帯をいじりだす。

「……美貴ちゃんばっかり」
発信履歴を見て見るとほとんどが”美貴ちゃん”で埋め尽くされている。
でも着信履歴を見て見ると、ずいぶんスクロールさせないと”美貴ちゃん”は出てこない。
メールを見て見ても美貴と自分の履歴を見て見ると、3通に1通も
帰ってきてればいい方である。
亜依がため息を着き、待ち受け画面に戻すと、
美貴が亜依の肩を抱いて微笑んでいた。
 亜依はなんだか寂しくなり、携帯をパタンと閉じると仰向けになり目を閉じた。

(こんなに美貴ちゃんのこと好きになるなんて思わなかった……)
90 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:33
91 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:33

「あいぼん、あのさぁ、紹介したい人いるんだけどぉ……」
去年の秋、部活の後寄り道したセルフのカフェで、亜弥が突然切り出した。

「紹介したい人?」
「うん、会うだけ会ってあげて……おねがい!」
亜依は手を合わせ、頭を下げる亜弥に戸惑いながら尋ねた。

「ちょ、ちょう待って、それだけじゃ分らんやん。とりあえず誰なん?」
「あっ、ごめん、ごめん、そうだよね」
亜弥は照れ笑いして、頭をかくと

「あたしの幼馴染の藤本美貴って言う子なんだけど」
「うん、で、なんでうちなん?」
「それはね……」

亜弥の話によると、先日行われたテニス部の試合を見に来た美貴が、
亜弥とダブルスを組んでいる亜依を見て、一目ぼれをし、亜弥に紹介しろとうるさいのだと言う。

「……ねっ、会うだけでいいんだ。駄目なら駄目であたしに言ってくれればうまいことむこうに伝えるからさ」
「……そこまで言うんやったら……まぁ良いけど……」
「ほんとっ?ありがとう」
亜弥は席を立つと、ビスケットを持って帰ってきて

「感謝の気持ち」
っと言って亜依に手渡した。
92 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:34

 次の日、亜依が指定された待ち合わせ場所に来ると、
一人の女性がどこか遠くを見詰め―――
と言うより睨みつけて所在無げに立っていた。

(どないしよう。待ち合わせ場所にめっちゃ怖そうな人おるやん……
美貴さんのメルアドとか知らんから離れるわけにいかんし……
亜弥ちゃんにメールしてみようかな?)

「あのう……加護ちゃん?」
「はっ、はひ!」
亜依が携帯を取り出そうとすると、当のめっちゃ怖そうな人から声を掛けられ
飛び上がらんばかりに驚いた。

「あっ、驚かせてごめん」
「……いえ、あのう……もしかして、美貴さん?ですか?」
「うん、藤本美貴」
(うわ、どないしよう?めっちゃ怖そうやん)
亜依の脳裏に昨日の必死な亜弥の姿とビスケットがよみがえる。

(もう!亜弥ちゃんのあほ!……なんかにらんではるし
……あっそうか)

「あっ、加護亜依です」
「とりあえず場所、替えようか」
「……はい」
亜依は恐る恐る、先に歩く美貴に続いて歩きだした。
93 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:36

(……どないしよう、なんかどんどん人気のない所に向かってるんやけど……)

「……あの…美貴さん、どこまでいくんですか?」
「いいとこ」
「いいとこ……ですか?」
「うん」
(……いいとこってどこやの?大丈夫やんなぁ?いきなりへんなことされへんよなぁ?
……会うの夜やない方がよかったやろか?……スカートよりパンツの方がよかったかなぁ?
……美貴さんあんまりしゃべってくれへんからなに考えてるか分らんし
……逃げ出すわけにはいかんし、逃げ出すのも怖いし……)

「ついたよ」
亜依がはっとし、美貴の指し示す方を見てみると
そこは近くを流れる川の土手出あった。

「ここですか?」
「うん、ここ。ここは……美貴のお気に入りの場所なんだ」
「お気に入りの場所?」
「うん、亜弥ちゃんも知らないとっておきの場所」
「はあ、そうなんですか」
「ここにねっころがって空見るの好きなんだ」
そう言うと美貴は無造作に草の上に身を横たえる。
94 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:37

「加護ちゃんもおいでよ」
「……はい、でも……」
「あっ、服汚れちゃうか……
可愛いかっこしてるもんね。
美貴みたいにラフなかっこでこればよかったのに……」
「…………」
亜依はすこしむっとした。
別にそんなに乗り気ではなかったにしろ、自分を好きだと言ってくれる相手に会うのだ、
なるべく可愛い姿を見て欲しいと思うのは人情である。
だが亜依がそんなことを思っていると、

「ほら」
美貴が自分のシャツを脱ぎ、草の上に広げ、自分はその隣に横になる。

「え?」
「ここ」
美貴は空を見上げたままぽんぽんと広げたシャツをたたいた。
亜依はその美貴のさりげない優しさに少し安心して、
足りない分を自分のハンカチで補い、美貴の隣に横になり、同じように空を見上げた。
95 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:37

「……うわぁ〜、きれぇ……」
亜依は思わず呟いた。

「この街でこんなに星、見えるなんて思いませんでした」
「へへへ、気に入った?」
「あ……はい」
その無邪気な声に顔を向けると、美貴は優しいまなざしで亜依を見つめていた。

(美貴さんってほんとは怖くないんかも?)

「ねぇ、もし良かったら……」
「…………」
「……よかったら……ここ、美貴と加護ちゃんとの場所にしない?」
「……それって」
「あ、ごめんいきなり言われても困るよね?
あの、だからさ返事いつでもいいからさ美貴待ってるからさ」
「はい」
あわてて息も着かず、まくし立てる美貴に
亜依は少し笑って答えた。
96 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:38
97 名前:デコボコセブンティーん 投稿日:2006/07/23(日) 17:39

多分その時にはもう美貴に恋してたんだと思う。

「美貴ちゃんの方が先に好きになったのに……なんか美貴ちゃんに負けちゃってるみたいでちょっと悔しいな」
亜依は呟くと、また一つため息を着いた。
98 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/07/23(日) 17:40
 
99 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/07/23(日) 17:42

 次の日。
 亜依と亜弥はデパートで水着を選びながら騒いでいた。
昨夜のちょっと憂鬱な気持ちも、テンションの高い親友のおかげで
どこかに吹っ飛んでいた。

「ねぇねぇ、あいぼん、これなんかどうかな?」
「え?亜弥ちゃんそんなの着るん?
なんかそれラインメッチャ鋭角やあらへん?」
「なに言ってんのぉ?これ着るのあいぼんだよ?」
「え〜!!!?」
「あいぼんうるさい」
「な、なに言ってんの亜弥ちゃん!?そんなん着るわけないやん!!!」
「え〜?でもたん、こう言うのすきなんだけどなぁ?」
「え?ほんま?」
「うん♪」
「ほんまにほんま?」
「うん♪」
「ほんまにほんまにほんま?」
「うん♪」
「ほんまにほんまにほんまにほん」
「あぁ!ほんとだって!」
「……ごめん」
「で?どうする?」
亜弥はぬぅっと顔を近づけ、ニヤニヤしながら亜依に問いかける。

「……じゃぁ……試着、して、みようかな?」
ためらいがちに答える亜依に、水着を手渡すと

「はい、いってらっしゃぁい♪」
亜弥は快進のアイドルスマイルを向けた。
100 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/07/23(日) 17:43

「ねぇ、亜弥ちゃぁん」
しばらくするとフィッティングルームから亜依の情けなさそうな声が聞こえてくる。

「どうした?」
「着てみたんやけどぉ……」
どれどれと亜弥がフィッティングルームをあけて見ると
亜依はピンクの水着に身を包み、泣きそうな顔でたたずんでいた。

「うち、こんなん着れへん」
「なぁに言ってんの?可愛いじゃん?」
「でも……美貴ちゃんの前でこんなんはずいやん」
「なぁに言ってるのいまさらぁ。
そんな仲じゃないでしょが?」
「…………」
黙り込む亜依に亜弥はキョトンとして問いかけた。

「え?ひょっとして……」
「…………」
「……まだ?」
「……うん」
「あのたんが!?1年近くも!?」
「亜弥ちゃん声大きい」
「あ、ごめん」
亜依に起こられ、亜弥はすごすごとフィッティングルームに入り込み、私服に着替える亜依と話し始めた。
101 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/07/23(日) 17:44

「ねぇ亜弥ちゃん……美貴ちゃんってすぐそう言う事……したがるん?」
「あ〜」
亜弥は罰が悪そうに答える

「いや、別に……そうとは限らないと」
「うち……拒んだらいやなんかな?」
「……拒んでるの?」
「拒んでるって言うか……そう言う雰囲気になるとふざけちゃうって言うか……」
「なんで」
「……なんだか怖いやん」
「……そう?」
「……子供なんかなぁ、うち」
「…………」
亜弥は困ってしまった。
確かにこの年で見経験の子も珍しい。
でもそれはそれでいいことだと思う。

「だから美貴ちゃん……うちのこと飽きたんかも……」
「そんなことないよ!たんはそんなことで飽きたりしないよ!」
「そ、そうやんなぁ、ごめん」
「あ、ごめん」
亜弥も思わず怒鳴ってしまったことに誤る。

「うち、これにする!これ着て美貴ちゃん驚かしてやる!メロメロにしたんねん!」
「お、その意気だあいぼん!」
気持ちを切り替えようと明るい声になった亜依に、亜弥も調子を合わせた。
102 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/07/23(日) 17:46
 それから二人は水着を買うと、あちらこちらと見て回った。
ちょうどクリアランスセールの時期でもあり、二人のテンションは否が応でも高まる。
日が落ち帰るころには、それなりに大荷物になっていた。

「なんか、いっぱい買っちゃったねぇ」
「ほんまや、どうしよう?買いすぎたかも?
セールは怖いわ〜」
「って言うか、あいぼんの場合、たんが好きそうって言うとすぐ買っちゃうんだも〜ん♪」
「え、えぇやん」
「にゃはは、あいぼん照れちゃってぇ」
いつもの二人の光景。
仲良く夕暮れの駅まで歩いて帰る。

「でさでさぁ、この前ごっちんがね」
「…………」
「あいぼん?」
急に立ち止まった亜依に、亜弥が訝しそうに尋ねる。

「…………」
「あいぼん?」
いくら呼びかけても返事をせず、一点を見詰める
亜依の視線の先を追って見ると

「み、みきたん!」
美貴が綺麗な女性と歩いていた。
その女性はなんだか美貴に甘えているようで、
腕を組みぴったりとくっついている。
そして美貴も別段嫌がる様子も見えない。

「あいぼん待ってて、あたしいってくる!!」
整った顔を鬼のように代えた亜弥は強く言い放ち、
二人の方へ歩き出そうとしたが

「…………」
「……あいぼぉん……」
無言のまま下唇を噛み締め、涙をこらえた亜依が
必死に亜弥の服の裾を掴んでいるのを見て動けなくなってしまった。
103 名前:ぱせり 投稿日:2006/07/23(日) 17:47
あー!タイトルがー!!!
104 名前:ぱせり 投稿日:2006/07/23(日) 17:48
本日の更新終了です。
今回はちょっと長めなので2、3回に分けての更新です。
105 名前:ぱせり 投稿日:2006/07/23(日) 17:52
>>80さん、遅くなり申し訳ありませんでした。
なんとなくみきぼんと言うより・・・・・ですが、
次回はもっと藤本さんにも活躍してもらいますので・・・・多分・・・・(汗)
お待ち下さい。
106 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/24(月) 13:02
更新乙です
あいぼん・・・ミキティいったいどういうことなのか?
続き楽しみに待ってます
107 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/27(木) 23:57
これは新鮮ですね
あれこれ気を回すあいぼんが可愛い
108 名前:名無し 投稿日:2006/07/30(日) 00:33
更新お疲れ様です
みきぼん、なかなか見ないので嬉しいです
次の更新も楽しみにしてます!
109 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:05
 穏やかな秋の午後。
亜依と美貴は難いシートに身を預け、カタカタと言う音と共に空に向かって上っていく。

「美貴さん!うち、これ乗るん始めてなんです!」
「そ、そう?よかったね」
はしゃぐ亜依とは裏腹に美貴の笑顔はぎこちない。

「あれぇ?美貴さんもしかしてこう言うの怖いんですかぁ?」
「そ、そんなことないよっ!」

からかうような亜依の言葉に美貴が反発した時、
その時は訪れた。
カタカタと言う音は泊まり、シートがゆっくり平行になる。
そして二人の視界には、おもちゃ箱をひっくり返したような光景が広がった。
カラフルな沢山のアトラクションや人形ほどの大きさの人たち。
そして、二人に内臓を引っ張られるような感覚が訪れた。

「ぎゃあぁぁぁぁーーーー!!!
ちょっやばいってマジとめて!駄目だって美貴こう言うの駄目だってーあぁーーーーー!!!」
美貴のあまりの変貌に亜依は驚き叫ぶのも忘れ、美貴を見詰めていたが、
今まで見たことのない美貴を見て嬉しくなった亜依は

「きゃーーーー!!!最っ高ーーー!!!」
両手を上げて、思いっきり楽しそうに叫ぶ。
110 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:06

「あぁ、ほんとは美貴、苦手なんだよ。こう言うの」
「へへへ、美貴さんかわいかったですよ」
「…………」
ゲートから出てくる二人の表情はやはり対照的で、
楽しそうな亜依とは裏腹に美貴は起こったような落ち込んだような
なんとも言えない表情をしていた。

「ねっ美貴さん、次あれのろ」
美貴が複雑そうな顔を上げると、
亜依の指の先には大きく振り子のように揺れる、巨大な船があった。

「え?マジ!?」
「うん♪」
亜依は
「いこ!」
と言うと、美貴の手を引いて掛けだした。
111 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:08

「美貴さん、だいじょうぶですか?」
「……うん」
帰り道、亜依はなんだか元気のない美貴をあの土手に誘った。

「ほんとですか?なんかうち、調子にのっちゃって……」
二人で土手に腰を下ろし、夕日を見詰めながら話す。
「美貴さんあぁ言うの苦手って言ってたのに……」
「ううん、ただなんかかっこ悪い所みせちゃったなって」
「そんなことないですよ」
「え?」
「うち、美貴さんの意外な面、見れて嬉しかったです」
「……ほんとに?あんなかっこ悪いとこが?」
「はい、うちどっちかって言うとあぁ言う美貴さんの方がかわいくて好きです」
「ありがとう!そんなこと言ってくれた子、初めてだよ」
「そうなんですか?」
「うん、美貴、今まで何度も告白されて付き合ってきたけど、
いつもあぁ言うとこ見られて振られてきたんだよね」
「それはその子達がほんとの美貴さんを見てなかったんですよ」
「…………」
「これからもうちだけには美貴さんのいろんな面、見せてくださいね」
「……え?それって」
「……ここ……うちも……ここうちの場所にもしていいですか?」
「うん」
美貴は亜依の肩を抱き寄せると、触れるだけの短い口付けをした。
112 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:08
 
113 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:10

「……なんで今日に限ってあの日の夢……」
亜依は目を覚まし呟いた。
 昨日はあれから、美貴を問いただそうとする亜弥を自分達で解決するからとなだめ、
家に帰ってきたのはよかったが、結局美貴に電話をかけることもできず、
ベットで考え込んでいるうちに眠ってしまったらしい。
目覚ましを引き寄せて時間を見て見ると、まだ4時だった。
一度目覚めてしまうと眠ることもできず、眠る前と同じように
考えをループさせてしまう。
114 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:11
(あの女の人は誰だったんだろう?)
(それよりほんとに美貴ちゃんだったの?)
(でも亜弥ちゃんだって美貴ちゃんだと言ってた)
(でも美貴ちゃんバイトだってうちに)
(でも二人揃って間違える分けないよね)
(それにしてもあの女の人綺麗だった)
(うちと違ってスタイル良かったし)
(大人って感じだったし)
(やっぱりうちが子供だから)
(うちがそう言うこと拒んじゃうから)
(だから美貴ちゃん大人の女性に)
(ううん、美貴ちゃんはそんな人やない)
(亜弥ちゃんもそう言ってたし)
(でも美貴ちゃんがなにもしないの珍しいって亜弥ちゃんが)
(それにしてもあの人は誰なんだろう?)
115 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:12

「はぁ〜……」
そうして亜依は、朝までただため息と寝返りを繰り返し続けた。
116 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:12
 
117 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:14

「ホルト!ダブルホルト!!ラブフォーティー!!」
日が傾きかけたテニスコートに監督の声が響き渡る。
亜依は落ち着こうとボールをコートに数回弾ませ
深呼吸をしてからサーブを打つ。

「ホルト!」
「あいぼん」
ネット際の亜弥が亜依を落ち着かせようと、声をかけるが亜依の目にはそれも映っていないようだった。

「ホルト!ダブルホルト!!ゲーム、是永、川島!」
「あいぼん、だいじょうぶ?」
「うん」
駆け寄る亜弥に力なく答える。

コートを変えて、再びゲーム開始。
是永のサーブを亜弥が受ける。
数回亜弥がラリーをした後

「あいぼん!」
叫ばれ、気が着いた時には既にボールが目の前にあった。
118 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:15

「あっ!」
亜依は何とか手は出したものの、不自然な体制だったため、
ラケットは弾き飛ばされ手首を押え蹲る。

「あいぼん!」
「加護!」
亜弥と監督が駆け寄る。

「加護、手首見せてみな」
監督はしばらく亜依の手首を見ていたが、

「うん、軽い捻挫だね」
少し安心したように微笑み、コールドスプレーをしテーピングする。
そして治療を終えると途端に大きな猫目を吊り上げ、
鬼のような顔になって言った。

「加護!松浦!」
「「はいっ」」
「あんたたち、なんなの!もっと集中しなさい!
こうやって大怪我するし、是永や川島の練習にもならないでしょ!」
「……すみません……うちがぼうっとしてしまったせいで
……亜弥ちゃんは……関係ないんで」
「何言ってるの!ダブルスは二人で一人!
一人のミスは二人の責任でしょ!」
そう言われると亜依は亜弥に申し訳なくて、俯いて鼻をすすりだした。
119 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:17

「もういい!二人は今日はもうラケット使うな!
また怪我する!終わるまでソと走って来い!」
亜依は監督の言葉が終わると同時に掛けだす。

「あっ、待ってあいぼん!」
亜弥が必死に追いかけ、校門を出ると、
そこに亜依がたたずんでいた。

「あいぼん……」
「……ごめんね、ごめんね亜弥ちゃん
うちのせいで亜弥ちゃんまで……」
「……そんなことはいいよ」
「でも……でもぉ」
「いいって」

亜弥は亜依の頭を胸に抱き寄せ優しく囁いた。
120 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:18
しばらくして亜依が少し落ち着くと、
亜弥は近くの公園に亜依を連れて行った。

「亜弥ちゃん?」
「今日、さぼっちゃお」
「でも……」
「走る気分じゃないでしょ?」
「……ごめんね」
「ほらぁ、そんな顔しない」
亜弥はベンチに座らせた亜依の頭をぽんぽんと叩くと

「ちょっと待ってて」
と言ってどこかへかけて言った。

 亜依はしばらく亜弥の去った方を見送っていたが、
亜弥の背中が見えなくなると、なんとなく公園を見渡す。
犬を散歩させているお年寄り、ブランコで遊ぶ幼児達、
それを談笑しながら見守る母親、そして、グランドでサッカーをしている小学生達。
121 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:19
 
122 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:20

「あいぼん、あいぼん!」
「どうしたん?美貴ちゃん嬉しそうに」
「美貴さ、バイと先の子達と女子サッカーチーム作ったんだ」
「へ〜ほんま」
「美貴さ、ちっちゃいころからやってみたかったんだよね〜」
「うん」
「試合決まったら応援に来てよ?」
「もちろん♪」
「絶対だよ」
「うん♪お弁当作って応援行く」
「マジ?じゃぁ、肉!焼肉!」
「分ってるって♪焼肉弁当な♪」
「やったぁ、あいぼんの応援と肉があれば美貴、ハットトリック間違い無しだよ」
美貴は目をキラキラさせて喜ぶ。
亜依はこう言う美貴をみるのが好きだった。
いや、普段クールな美貴が、亜依の前だけでは子供のように
喜怒哀楽を全てさらけ出してくれることが嬉しかった。
亜弥も知らないあまえんぼうの美貴。
自分だけの優しい美貴。
ちょっといじわるすると本気ですねる美貴。
でも今は―――
123 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:21

「……美貴ちゃん」

「お待たせー!」
亜依が思い出にふけっていると、息を切らせて亜弥が戻ってきた。

「お金とりにこっそり部室まで戻ったら時間化かっちゃっタ」
そういいながらミルクティーの缶を開け、手渡すと、亜依の横に並んで座る。

「ありがとう」
亜依は礼を言い、一口口をつけると俯き、深いため息を吐く。

「ねぇ、あいぼん……たんとはまだ……」
亜依は美貴の名前にビクッと肩を震わすと、一度亜弥の顔を見、
再び視線を落とす。

「……うん」
「電話は……したの?
「……できひんかった」
「……そっかぁ」
「…………」
「…………」
124 名前:でこぼこセブンティーン 投稿日:2006/08/06(日) 22:24

「……うち……もう美貴ちゃんと別れた方がいいんかなぁ」
しばらくの沈黙の後、亜依が呟く

「あいぼん!」
「……やっぱり美貴ちゃん……うちに飽きちゃったんや」
「……そんなこと」
「……うちが美貴ちゃんのこと……受け入れてあげられなかったから」
「だからたんはそんなこと」
「ううん、うちが悪いんやから……全・部・うちが・悪・いんやか・ら」
「そんなことないから、ね?だいじょうぶだから、あいぼんはわるくないから」
亜弥は普段の亜依らしくなく、自分を責め続けながら
しゃくり上げる亜依の肩に手を回し、戸惑いながらも励まし続けた。
125 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/06(日) 22:24
本日の更新終了です。
126 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/06(日) 22:27
またタイトル間違えてるし・・・・
正しくは「デコボコセブンティーン」です。
127 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/06(日) 22:29
レスのお礼です。

>>106さん、すみません、今回は進展しませんでした。
>>107さん、今回分はさらにあまり見ないようなあいぼんかも知れませんが、
こんなあいぼんも応援して下さると嬉しいです。
>>108名無しさん、みきぼん度が少ないような気がして心配しております。
次回はみきぼん度、もっと上がる予定ですのでお待ち下さい。
128 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/09(水) 19:03
仲直りできるのか・・・ミキティとの絡みに期待します。
129 名前:名無し 投稿日:2006/08/13(日) 00:25
更新お疲れ様です。
全然、充分満足させてもらってます!!
生意気ですが、心配されなくて大丈夫ですよ。

次の更新も楽しみにしてます。
130 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:22
 その日の夜、亜依は一人であの土手にきていた。
あの後、思っていたことを全て亜弥に聞いてもらった亜依は、少し気持ちが楽になったものの、
真っ直ぐ家に帰る気分にはなれなかった。

「……亜弥ちゃんに悪いことしちゃったぁ」
亜依はカバンをまくらに、草の上にごろんと横になると
ため息混じりに呟いた。

『ね、とりあえずたんと話ししてみて。
誤解かも知れないんだから』
別れ際の亜弥の言葉。
頷いてはみたものの、美貴が自分を裏切っていたのではないか、
美貴の心が自分から離れていったのではないかと思うと
やはり怖い。
131 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:23

「♪元気になれる歌♪」
小さく口ずさむ。

「♪元気になれるキット♪」
美貴とよく歌った歌。

「♪元気になれるから……また歌いたく……♪」
「……元気になれるわけないやん
……だって一人ぼっちやもん」
悲しげに呟く。

亜依はポケットから携帯を取り出すと、時間を確認する。
まだ美貴はバイトの時間だ。
なんとなく携帯を開いてみる。
そこにはいつも見慣れた待ちうけ画面が、亜依と美貴の笑顔があった。

「この写真も……」
そう言えば、待ち受けに使っているこの写真もここで撮ったものだった。
132 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:24
 
133 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:25

「なぁ美貴さん?写真とらへん?」
亜依が携帯を出しながら楽しそうに言う。

「え?」
「へへへ、待ち受けにしたいねん」
「あぁ」
「でな、でな、二人おそろの待ち受けにすんねん」
「え?美貴も?」
「え〜?いやなん?」
「いや、だって恥ずかしいじゃん」
「ふ〜ん、うちとのツーショット恥ずかしいんや」
自分としては素敵な思い付きだったのに、美貴が嫌がるのを見て
途端に亜依は不機嫌になった。

「いや、ツーショットがいやなんじゃなくって、それ見られるのが」
「そんなんやったらえぇもん」
亜依は頬を膨らませ、つまらなさそうに草をちぎっては風に乗せる。
134 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:27

「あぁ、ごめん、写真ぐらいでそんなに怒んないでもいいじゃん」
「写真ぐらいって!」
「あ、そうじゃなくて」
「もう、美貴さんなんて知らん」
「あの〜、さぁ、美貴も待ち受けに……するから、さぁ」
「無理にしてくれなくてもいいです!」
美貴は亜依に隠れてそっとため息を吐く。
最初のころはこうなった亜依はなかなか手に終えなかった美貴だったが、
ここ一ヶ月の付き合いでしっかり対処法を学んでいた。

「ねぇ、美貴が加護ちゃんのことどれくらい好きか知ってるでしょ?」
そっと後ろから抱きしめる。

「…………」
「……ねぇ加護ちゃん」
「……そんないつもいつも騙されへん」
「…………」
美貴は苦笑してペロっ戸舌を出す。
135 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:28

「……じゃぁ、どうしたら許してくれる?」
「……じゃぁ、亜依って呼んで」
「え?」
「亜依って呼んで」
「亜依……ぼん?」
「亜依」
「……だって」
「亜依」
「……亜依?」
「うん」
亜依は振り返ると、少しはにかんで微笑んだ。

「じゃ、じゃぁさ、亜依……もさ、美貴って呼んでよ」
「え?」
「だってそうでしょ?美貴ばっかりずるいじゃん」
「……美貴?」
亜依は呟くように呼ぶと、途端に真っ赤になった。
136 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:30

「あかん!めっちゃ恥ずかしい!」
「でしょ?美貴も亜依……って呼ぶの恥ずかしいもん」
「なぁ、美貴ちゃんじゃだめぇ?」
「美貴はいいけど、それなら美貴もあいぼんでいい?」
「え〜?」
「お互い徐々になれてけばいいじゃん」
「……そうやね」
二人は顔を見合わせ微笑みあった。

「……じゃぁ写真、撮ろっか?」
「うん」
美貴は亜依の肩を抱くと携帯を構えて言った。

「アンパンマンに出てくる犬は?」
「なにそれぇ?」
電子音と共に二人の笑顔がディスプレイいっぱいに納まった。
137 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:30
138 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:32
 亜依の見詰めるディスプレイの仲の美貴の笑顔がゆがんで見える。
亜依はメール作成画面に切り替えると、

『会いたい』
とだけ書いて美貴へ送信した。

♪♪♪
美貴はどうやら休憩時間だったらしく、すぐに返事が帰って来た。

『あぁ、先週ごめんね。
今週は必ずデートしようね』
亜依はまたすぐに

『会いたい』
とだけ送る。

『うん、美貴もあいぼんに会いたい』
亜依はまた同じく

『会いたい』
と送る。

『どうしたの?あいぼん。
美貴そろそろ休憩終わっちゃうからまた後でね』
亜依は同じメッセージだけを送り続ける。
すると今度は電話がなった。
139 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:34

『なに?どうしたの?』
亜依がふざけているとでも思っているのか、美貴の声は少し不機嫌そうだった。

「会いたい」
『開いたいって今日?』
「会いたい」
『はぁ?美貴、今日帰り遅いって知ってたよね?』
同じ言葉しか繰り返さない亜依に、切れ気味の美貴だったが、
そんな美貴を無視するように亜依は続ける。

「会いたい」
『……あいぼん?』
いつもと違う亜依に美貴もやっと気がつく。

「会いたい」
『どうした?なにかあった?』
「……会い……たい」
亜依の声はもう涙声になっていた。
140 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:37

『分った、バイト終わったらすぐ行くから』
「…………」
『あいぼん?ひょっとして今外?
それ、家じゃないよね?どこ?』
「…………」
心配そうな美貴の声。

『ねー、あいぼん!』
亜依は居た堪れなくなりそのまま電話を切った。
どうしてこんなことしてしまったんだろう?
美貴を困らせたいわけではなかったのに。
亜依はカバンに顔を押し付けて、声を殺して泣いた。

(これでもう駄目や!
あんなわがまま言って、もううち、嫌われて当然や!)
しばらくそうしていた亜依だったが、
なきやむと起き上がり、周りを見渡す。
美貴との思い出の場所。
告白されたのも、それを受け入れたのも、
始めてのキスも、お互いの呼び方を変えたのも、
全てこの場所だった。
亜依は星空を見上げる。
二人で見た星空。
美貴が大好きだと行っていた星空。
もう二度と見ることのない風景をしっかり目に妬きつけると、亜依はゆっくり立ち上がり、
その場を後にしようとした。
141 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:38

「あいぼん!!!」
大声に振り返ると、美貴が息を切らせ走ってくる。

「あいぼん、よかった」
「美貴ちゃん……どうして?」
「どうしてじゃないよ!」
「……まだバイトの時間じゃ?」
そう、美貴は本来ならまだバイトの時間だった。

「バカ、あんな風に電話切られたら心配になるじゃん」
「……ごめんなさい」
美貴は安心したようにため息を吐くと、亜依を座るように促し、
自分も隣に腰を下ろす。

「で、なにがあったの?」
「…………」
亜依は自分を裏切っていた美貴に何事もなかったように尋ねられ、
なんだかバカにされたような気持ちになり、涙がこぼれそうになった。
142 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:39

「ねぇあいぼん」
「…………」
美貴が手を握ろうとすると、亜依は手を引っ込めてしまう。

「はぁ?なに?あいぼんが会いたいって言ったんじゃん!」
「…………」
「だから美貴無理して抜けて来たのになにそれ?」
美貴も亜依の意味不明の行動に思わず声を荒げる。
美貴にして見れば、バイトの途中でへんに電話を切られ、心配して探し出して見れば、
自分を避けるような行動をとられたのだ。
今まで心配していた分、安心した反動でその苛立ちも大きかった。

「……あの人」
「……?」
美貴の勢いに触発されたのか、突然亜依が口を開く。
143 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:39

「あの人誰?」
「え?」
「日曜日、一緒に歩いてたの誰!?」
「……見てたの?」
美貴の表情が一気に強張る。

「…………」
「…………」
「……そう……なんや。
……やっぱり美貴ちゃんやったんや」
「あいぼん!」
「もういい!」
腰に回そうとした美貴の腕を払う。

「あいぼん!」
「はっきり言ってくれれば良かったのに。
うち……ちゃんと別れて……あげたのに」
「あいぼん、違うの!」
「なにが違うの!」
亜依の感情が一気に爆発する。
144 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:40

「美貴ちゃんがうちのこと裏切ってたんやないの!!!
うちにバイトだって嘘ついて!!!
うちとの約束破って!!
あんな綺麗な人と!
あんな……綺麗な……人……と……」
亜依は抱えた膝に顔をうずめる。

「……ごめんあいぼん」
美貴が優しく亜依の体を包み込む。

「いや!触らないで!……離して!」
泣きながら亜依が逃れようとする。

「あいぼん、聞いて」
「聞きたない!」
「全部話すから……ね」
「いや!触らないで!!」
「ね、お願いだから」
「いや!」
「お願いだから、美貴の話し、聞いて」
美貴の必死の説得に、やがて亜依も抵抗を止める。
145 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:41

「あの子は梨華ちゃんって言ってバイト先の子なんだけど、
最近しつこい男に付きまとわれてるって相談されたんだ」
亜依が聞ける状態に落ち着くまで待って美貴が切り出した。

「…………」
「で、付き合ってる人がいるって思えばそれもなくなるだろうって、
美貴が恋人のふりすることになったんだ」
「…………」
「だけど、かなりしつこいやつでさ、なかなか諦めてくれなくてさ
……それで時間かかっちゃって」
「…………」
「だからこの前梨華ちゃんとそいつに会いに行ってさ、
『美貴の女に手を出さないでよね!』
って脅かして二度と手を出させないようにしてきたんだ」
「…………」
「だから……もう、何も心配しないで」
「…………」
「もう、ずっとあいぼんと一緒だから」
「…………」
「美貴には……あいぼんしかいないから」
美貴は強く亜依を抱きしめる。

「なんで……なんで、うちに最初に言っといてくれなかったん?」
「それはさ……だって、やっぱ心配すると思ったから」
亜依はパッと美貴から離れると、いきなり腕を振り上げ、
それを見た美貴は次に訪れる衝撃に備え、目を閉じた。
146 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:42

「あいぼん?」
美貴は不思議そうに、ペチっと言う軽い音と共に、
自分の頬に当てられた亜依の手に触れる。

「なんでストーカーに会うなんて、そんなん危ないことするん?
なんで、うちには……言って……くれへんの?」
「……ごめん」
大粒の涙が流れるのもそのままに、美貴の目を真っ直ぐに見詰める亜依に、
それしか言うことができなかった。

「ごめん……ほんとごめん」
美貴は頬に当てられたままの亜依の手をとると引き寄せ、優しく抱きしめる。
亜依も力が抜けてしまったように、美貴の胸に身を預ける。

「……あいぼん、美貴……さ、ほんと、あいぼんだけだから
……今度のこと隠してたのほんと……ごめん
……許して……くれないかな?」
亜依は無言のまま美貴にしがみつく。
美貴もそんな亜依を安心させるように、優しく髪を撫でる。
147 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:43

「……ごめんなさい」
しばらくそうしていると、美貴の胸からか細い声が聞こえてきた。

「あいぼん?」
「うちこそごめんなさい」
「どうしてあいぼんが誤るのさ?」
「……美貴ちゃんのこと……信じてあげられなかったから」
「そんなことしょうがないよ。
決定的な瞬間みたいなもんだったもん」
「……でも」
「……ひょっとして、だからさっき殴らなかったの?」
美貴の胸の中でこくんと頷く。

「……そっか」
「…………」
148 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:45
「……土曜日さ」
しばらくの沈黙の後、美貴は明るい声で話しかけた。

「…………」
「今度の土曜日、どこ行こうか?」
「……会えるん?」
心配そうに尋ねる亜依に美貴は小さく笑って答える。

「うん、もちろん。もう約束破ったりしないから」
「……うん」
美貴の胸に顔をうずめたまま、亜依も嬉しそうに頷いた。

「どこがいい?」
「……どこでもいい」
「じゃぁ、プールいこっか?」
「……プール?」
「うん、だってあいぼん、水着買ったんでしょ?」
「……うん」
「楽しみだなぁ」
「…………」
その瞬間、美貴のわき腹に鋭い痛みが走った。
149 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:46

「いぃっ!いったいっ!!ってあいぼん、なんでつねるの?」
「美貴ちゃん、今創造してエッチな顔しとった」
「って見てないじゃん」
「見んくても分るもん」
「な」
「違うん?」
「……創造はしたけど」
「ほらぁ」
亜依は美貴の胸の中で勝ち誇ったように笑う。
美貴はそんないつもの亜依に安心してふーっとため息をつくと、

「そろそろ帰ろっか?」
ぽんぽんと頭を叩きながら言う。
150 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/18(金) 22:47

「え〜」
亜依は不服そうに顔を上げる。

「ほら、美貴、まだバイトあるから」
「あっ、ごめんなさい」
「うん」
「美貴ちゃん、バイトだいじょうぶなん?
うちのせいで首になったりせぇへん?」
「うん、だいじょうぶだよ。梨華ちゃんにごまかしといてって頼んだから」
「……梨華ちゃんってさっき言ってた?」
「あいぼん、妬いてるの?」
「そんなことあらへんもん!美貴ちゃんのアホ!」
亜依は美貴の唇に、一瞬唇を落とすと、

「帰ろ?」
と言って美貴の手を引いて立ち上がらせた。
151 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/18(金) 22:48
更新終了です。
このお話は後一回で完結予定です。
152 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/18(金) 22:53
レスのお礼です。
>>128さん、こうなりました。
今回はみきぼん100%でお送りしてみました(笑)。
>>128 名無しさん、ありがとうございます。
喜んでいただけているようで大変嬉しいです。
またがんばります。
153 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/18(金) 22:57
で、突然ですが、ちょっとお知らせです。
 このスレの次回作に書いていた話のイメージが膨らんでしまい、
シリーズ化しようと思い立ち、新スレを立てさせていただきました。
 よろしければこちらものぞいてやってください。
 笑顔のデート のんとのデート
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/dream/1155651475/l50
アンリアルあいののです。
154 名前:名無し 投稿日:2006/08/20(日) 00:00
更新お疲れ様です。
一人でパソコンの前でにやにやしてしまいました。
次で最後とは寂しいですが楽しみです。
155 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/23(水) 23:04
堪能しました(*´д`*)
156 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:30
 約束の土曜日。
亜依は待ち合わせ場所にいた。
久しぶりのデートと言うことで、張り切りすぎて20分も前に着いてしまっていた。
亜依は暇を持て余し、鏡にて入念に前髪などをチェックしていると

「あいぼん」
「!!!」
突然声をかけられ、思わず鏡を取り落としそうになる。

「なに?前髪のチェックしてるのぉ?」
いじわるな口調の問いかけに、亜依は振り返り
ぷーっと頬を膨らませて抗議する。

「前髪気になるんは美貴ちゃんもでしょ?」
「ははは、あいぼん、怒らないでよ」
美貴は笑いながら、指先で亜依の膨らませた頬を、
プシュッとつぶす。

「もういい!いこっ!」
亜依はすねたような、でもどこか嬉しそうな表情で
腕を組んで美貴を引っ張って行く。

「そんなに引っ張らないでよ」
美貴も楽しそうに、亜依に引かれるまま、雑踏の中へと紛れていった。
157 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:31

「あれ?美貴ちゃん、ほっぺどうしたん?」
電車の中、向かい合ってまじまじと美貴の顔を見ると、
なにやら左頬に薄い痣がある野を見つけた。

「これ?亜弥ちゃんに聞いてない?」
「亜弥ちゃん?」
「うん」
「聞いてへん」
「そっかぁ、言えないよな、普通」
美貴が遠い目で言う。

「え?なんなん?」
亜依はどことなく疎外感を感じ、不服そうに尋ねる。
美貴も亜依がすねそうな気配を感じて、素直に答える。

「あの日さぁ、あいぼんと仲直りした否」
「うん」
「家に帰ったら亜弥ちゃんが家の前ですっごい形相で待っててさぁ……」
「うん」
「いきなりひっぱたかれたんだよねぇ」
「えー!?」
「『たん、サイッテー!!!』っとか言って」
「それって……やっぱり」
「うん、今度のことでさ」
亜依には思い当たるところがあった。
158 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:32
 
159 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:33

「あいぼーんっ!」
亜依と美貴が仲直りした次の日。
亜依が登校していると、突然亜弥が後ろから抱きついて来た。

「亜弥ちゃん!」
「あいぼぉん、よかったねぇ」
「え?なに?」
「もう、たんと仲直りしたんでしょ?」
「そうだけど、何で知ってるん?
美貴ちゃんに聞いたん?」
亜依が訝しげに問い返すと

「ははは、まあいいじゃない?
それよりさぁ、すっごく美味しいケーキ屋さん見つけたから帰りいこ。
あいぼんとたんの仲直りのお祝いにおごったげる♪」
「ほんまぁ!?いくいくぅ!」
見事に話をそらされたのだった。
160 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:33
 
161 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:34

「いやぁ、マジきいたよ」
「そっかぁ」
「ん?あいぼん笑ってない?」
「気のせいやって」
亜依は口元をほころばせながら言う。

(亜弥ちゃんありがとうな)
亜依はそれほど心配してくれていた親友に心の中で
感謝の言葉を送った。
162 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:36

「じゃぁ、美貴ちゃんまた後でな〜」
 プールに着き、更衣室の所まで来ると亜依が突然言った。

「え?なんで一緒に着替えないの?」
「だって、美貴ちゃん、どうせいやらしい目で見るんやもん♪」
「な」
「へへへ、じゃぁプールサイドでねぇ」
「ちぇ、女の子同士なんだからいいじゃん」
手を振って離れて行く亜依を見送ると、美貴はつまらなさそうに呟いた。

「美貴ちゃんお待たせぇ♪」
「!!!」
プールサイドでぼんやり待っていた美貴は、声をかけられ振り返ると、
亜依の姿を見て息を呑んだ。
シンプルなピンクのワンピースなのだが、自分と違って100%本物の胸。
そしてそれを際立たせる胸元の深いカット。
そしてなにより大胆に切れ上がったビキニライン。
その姿に見とれていると

「美貴ちゃんじろじろ見過ぎ!」
真っ赤になった亜依にぺしっと頭をはたかれた。
163 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:36

「いやぁ、だってさ、美貴のツボついてるし……」
「あはは、亜弥ちゃんの言うことほんまやってんなぁ」
「なに?亜弥ちゃんに選んでもらったの?」
「うん、似合ってる?」
「うん、すっごく似合ってるよ」
「よかったぁ……うちな、これ着るんめっちゃ恥ずかしかってん。
だからな、美貴ちゃんに気に入ってもらえんかったらどうしようか思っててん」
「そっかぁ、でもほんとにいいよ!
っつうか、最高!」
そう言いながら、美貴はまた亜依の水着姿をな目回すように見る。

「もう、美貴ちゃん見すぎ!
ほらはようプールいこ」
亜依は真っ赤になり、美貴を引っ張って流れるプールへ向かった。
164 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:38
 
165 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:38

「おっ、来た来た♪」
一日中、流れるプールを皮切りに、ウォータースライダーや
波の出るプールなどを堪能した二人は、夕食をとるためにファミレスに来ていた。

「うぁ〜美味しそう♪いっただっきまぁっす♪」
美貴が満面の笑みで焼肉丼にかぶりつく。
亜依はそんな美貴を見詰めながら考え込んでいた。

(美貴ちゃんあんなとこばっかり見るやなんて……)
今日の美貴はいつも亜依を見てくれていた。
亜依でさへ思わずはっとするような、素敵な女性が通りかかっても、美貴の視線は
亜依に向けられていた。
それはとっても嬉しかったのだが、その視線はいつも胸元やビキニラインに集中しているようで
とても恥ずかしかった。

(やっぱりうちとそう言う事したいんやろか……)
あの日、消えたはずの不安が再燃する。
166 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:40

『「あのたんが!?1年近くも!?』
亜依と美貴がまだそう言う関係で無いことを知った時の
亜弥の驚いた顔を思い出す。

(美貴ちゃんのことよく知ってる亜弥ちゃんが言うんやもん。
きっとほんとは……)
脳裏に浮かぶ美貴と腕を組んで歩いていた、梨華と言う女性。
とても綺麗な大人な女性だった。

(ほんまは美貴ちゃんあの人と……ううん、美貴ちゃんそんな人やない!
……でも……)
でも亜依にはこの先も美貴を繋ぎとめておける自信はなかった。
167 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:40

「あいぼん?どうしたの?全然食べないで」
美貴が心配そうに尋ねてくる。

「ううん、なんでもない。ちょっと疲れただけ」
「ほんと?だいじょうぶ?」
「うん、だいじょうぶ」
亜依は微笑むと、目の前のハンバーグ定職に手をつけた。

「そっか。それならいいけど。
あ、で今日さぁ……」
楽しそうに話はじめる美貴の声をききながら再び思う。
今は、この先しばらくはいいかも知れない。
でも自分がずっと美貴を拒み続けていれば、自分の美貴への思いを疑われてしまうかも知れない。
そして、そんな時、梨華のような素敵な女性が美貴のそばにいたとしたら―――

(美貴ちゃんに全てを許せば、へんな心配しなくていいんやろか?
美貴ちゃんはずっとうちのこと好きでいてくれるんやろうか?
うち、美貴ちゃんとずっとこうして一緒にいたい……だから……
だから……うち……)
168 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:42

「あいぼん、どうした?」
店を出て、美貴が亜依の家の方へ向かおうとすると、
亜依は突然立ち止まってしまった。

「美貴ちゃんち、行きたい」
「え?もう遅いよ?」
「……明日日曜日やもん」
「…………」
「……あかんの?」
「いや、美貴はいいけど」
「……じゃぁ、行く」
亜依は美貴の腕にしがみつき、歩き始めた。

街灯の明かりの中、二人黙って歩く。
美貴の家には時々来ているが、こんなに夜遅くくるのは始めてだった。

 家に着き美貴がドアを開けると、一日中暖められた、
むっとした空気が部屋の中から流れ出してくる。
169 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:43

「ジュースでも飲む?」
家に上がり、エアコンをつけ、美貴が言う。

「……うん」
いつもと違う亜依の様子に美貴も飲まれ、なんだか意識してしまい、
会話も弾まず、二人はソファーに並んでテレビを見ながら黙ってジュースを飲む。

「……そろそろ……帰らなくてもいいの?」
11時を過ぎたころ心配そうに美貴が尋ねる。

「……うん」
「泊まって……く?」
「……うん」
思い切って問いかける美貴に、亜依は俯いたまま答える。

 それからも二人はジュースを飲みながら、ただ黙ってテレビを見る。
部屋の中には、テレビからのバラエティー番組の笑い声と
カラカラと言う、二人のグラスの氷の音だけが響いていた。
170 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:44

「……シャワー、浴びる?」
日付が替わるころ、美貴が恐る恐るといった感じで、亜依に尋ねる。

亜依は一度ビクッと肩を震わせると、

「……うん」
頷き、立ち上がるとバスルームへ向かった。

(うちなに緊張してんねん。
だいじょうぶ。美貴ちゃんは優しいんやから。
怖がらんでもだいじょうぶ。
いつもどおりでいれば……
いつもどおりで……)
亜依はシャワーを浴びながら自分に言い聞かせた。
シャワーを止め、一度深呼吸をすると、
バスタオルを巻いて外へ出る。

「美貴ちゃぁん、開いたよ」
なるべく明るい声で、普段の声を意識して美貴に声をかけた。

「あ、うん」
入れ違いに美貴がバスルームへ入って行く。
亜依はそれを見送ると一度目を閉じ、小さく頷いた。
171 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:45

「あいぼん?」
美貴がバスルームから出てくると、リビングには亜依の姿がなかった。
不思議に思い、寝室に向かうと、暗闇の中ベットが膨らんでいるのが見えた。

「あいぼん、寝ちゃったのかぁ」
なんとなく、安心したような、残念そうな声で美貴が呟き、
自分も亜依の隣に滑り込む。

「!!!」
抱きしめようと触れた亜依の体は、美貴が亜依のために用意した、
パジャマのコットンの手触りではなく、暖かく滑らかな
亜依自身のものだった。
172 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:47

「あいぼん?」
事態を把握し切れない美貴が呼びかけると、
亜依は黙ったまま美貴の手に手を重ねる。

「……いいの?」
少し落ち着いた幹が尋ねると、暗闇の中、亜依が頷くのが見えた。
美貴は自分も衣服を脱ぎ、ゆっくり亜依に覆いかぶさると、優しく口付けをした。

「いい?」
亜依が頷くのをもう一度確認すると、美貴は再び口付る。
今度は長く、深く。

(ほら、だいじょうぶ。
美貴ちゃんは優しい。
怖いことなんかあらへん)
亜依は頬に、耳に、口付けされながら思う。
173 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:47
美貴の唇が、指先が、亜依の白い肌を滑っていく。

(美貴ちゃんは優しい……
こんなに愛されてるんやから怖いことなんて……)

「ぁっ」
美貴の唇が胸の先端をとらえた瞬間、小さく声が漏れた。

「きもちいい?」
「……うん」
実際の所、緊張しすぎてそんなことは分らなかったが、
亜依は小さく頷いた。
だって、大好きな美貴に愛されているのだから、そうでなければ嘘だと
亜依は思っていた。
174 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:49

「あいぼん、大好きだよ」
耳元で美貴が優しく囁いてくれる。
美貴の手は胸元からゆっくり腹部を通り、下へ下りてくる。

(だいじょうぶ。美貴ちゃんは優しい。
美貴ちゃんに任せればいいんや。
……怖いことなんかあらへん
……怖いことなんか、
怖いことなんか、
怖いことなんか)

「あっ!」
美貴の手がそこに触れようとした瞬間、亜依は思わず両足を難く閉じてしまった。
175 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:50
美貴はしばらくの間じっと亜依の顔をのぞきこんでいたが、
小さくため息を吐くと、ゆっくり亜依の隣に身を横たえた。

「ごめんなさい!あの、嫌とかジャなくって!
あの、だから、美貴ちゃん!」
途端に見話されたような気持ちになって、亜依は美貴に必死に謝る。

「いいよ」
そんな亜依に美貴は優しく言う。

「ほんとに、嫌じゃないから!美貴ちゃん、だから!」
「美貴、泣いてる子にして喜ぶほど悪趣味じゃないって」
あわてる亜依を他所に美貴は小さく笑いながら答える。

「え?」
亜依が自分の顔に手を当てて見ると、頬は涙で濡れていた。
176 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:52

「うち……」
「無理しなくっていいって」
「でも」
「どうしたの?あいぼん、今日おかしいよ?」
「でも、美貴ちゃんエッチしたいんじゃ……」
「はぁ!?」
美貴は思わず素っ頓狂な声をあげる。

「……したくないん?」
「いや、そりゃしたいけど……ってそうじゃなくって!
……なんでそんなこと思ったの?」
「…………」
「どうした?」
頭にぽんと手を載せ、優しく美貴が尋ねる。
177 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:52

「……だって、今日ずっと……」
「ずっと?」
「ずっと……うちの胸とか……そう言うと子ばっかり……見てるし」
「そりゃぁ、自分の彼女がセクシーなかっこしてれば見ちゃうでしょ?」
「……それに美貴ちゃん、1年近くも彼女としないの珍しいって
……だから……だからすっごく我慢してるんかって
……だからずっとうちが怖がってたら」
「美貴があいぼんのこと嫌いになるとでも思った?」
「……うん」
「ひっどいなぁ、美貴、そんなことで嫌いになったりしないよ」
「……ごめんなさい」
「だいたいエッチってさぁ、どっちかが我慢とかしてまでするもんじゃないと思うんだよね」
「……うん」
「あいぼん、例えばさぁ、美貴が嫌がってる時に無理やり
美貴にキスしてあいぼんは嬉しい?」
「……ううん」
「でしょ?エッチもそうなんだよ。
エッチなんてキスの延長みたいなもんなんだからさ」
「うん」
「なんでもそうだけどさ、徐々になれてけばいいんだよ。
あいぼんはなんでもあせりすぎ」
「……ごめんなさい」
「気にしなくていいって」
「うん」
美貴が優しく抱き寄せると、亜依も美貴の胸に顔をうずめる。
178 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:53

「ところでさぁ、あいぼんに変なこと吹き込んだのはだれ?」
「え?」
「誰がそんな美貴がエッチ好き見たいなこと言ったのかなぁ?」
「あっ」
亜依ははっと顔を上げる。

「……聞くまでもないか。亜弥ちゃんしかいないよね
そう言うこと言うの」
「……あの」
「いいって、亜弥ちゃんにはたぁっぷりお仕置きしとくから」
美貴はいじわるな笑みを浮かべ言う。

「それ、うち、ちょっと困るんやけど」
「ははは、まぁ、いいや、内緒にしといたげる」
本気で困ってそうな亜依に、美貴は楽しげに答えた。

「美貴ちゃん、ありがとう」
亜依は微笑むと、美貴の胸元にキスをした。
179 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:54

「じゃぁ、そろそろ服、着よっか?」
「ううん、このままがいい」
「え?」
「徐々になれてく」
「そっか」
美貴は亜依の頭を胸に抱きしめると、少し苦笑した。
亜依は初めて直接触れた、美貴の肌のぬくもりに
安らぎを覚え、すぐに眠りに落ちて言ったのだった。
180 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:54
 
181 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:56

「でな、でな?」
「はいはい、たんがものすっごぉーーーく優しかったんでしょ?」
週明けの月曜日の夕方。
亜依と亜弥はいつも通り、二人並んで下校していた。

「うん、あんな?そんなんことせんでもうちのこと好きなんやて」
「もう、何回も聞いたってぇ」
亜弥は肩をすくめ、ため息を吐く。
仲直りしてくれたのはもちろん嬉しいが、落ち着くまでのしばらくの間は
亜依の惚気話につき合わされるのかと思うと少し憂鬱になる。
182 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:58

「亜弥ちゃぁん、ケーキ食べて帰ろっか?
うち、おごるで?」
「どうせ、漏れなく惚気話し付なんでしょ?」
「あはは、そんなことあるわけないやん、いややわぁ♪」
「じゃぁ、行く」
「うん、で、美貴ちゃんがなぁ?」
「……はあ」
(あたしも早く恋人作ろ!!!)
ため息をつきながら亜弥は強く心に誓うのだった。

「亜弥ちゃぁん、はやくぅ」
先を行く亜依が満面の笑顔で手招きしている。
そんな亜依の笑顔を見ていると、亜弥も自然に笑顔がこぼれる。

(やっぱ笑顔でいてくれるのが一番かぁ)
「はぁ〜い、今行くぅー!」
亜弥は元気よく答えると、先を行く亜依の後を笑顔で追いかけて行った。
183 名前:デコボコセブンティーン 投稿日:2006/08/30(水) 22:59
   デコボコセブンティーン
     FIN
184 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/30(水) 23:00
これにてデコボコセブンティーン完結です。
185 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/30(水) 23:06
レスのお礼です。
>>154 名無しさん、にやにやしていただけて嬉しいです。
今回もお一人の時に読まれることをお薦めいたします(笑)。
>>155さん、今回も堪能していただけたら幸いです。
186 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/31(木) 22:55
タイトルにちなんだ展開でドキドキしました。
みきぼんとあやぼんで1粒で2度おいしい物語でしたね(*´д`*)
187 名前:名無し 投稿日:2006/09/08(金) 12:07
更新お疲れ様です。
 
終わってしまって寂しいですが、たっぷりみきぼんを
堪能させて頂きました、有難うございました。
188 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/31(日) 20:46
こんばんわ、作者です。
次回作の時に、レスのお礼をと思っていましたが、なかなか次作を書かずに
せっかくいただいたレスを放置する形になり、すみませんでした。

>>186さん、私も書きながらドキドキしました(笑)
あやぼんはこれほど入る予定はなかったのですが、あややを書いてるうちに楽しくなり、
いつの間にか増えてました。
恐るべしあやや(笑)
楽しんでいただけて嬉しいです。
>>187名無しさん、堪能していただけたようで嬉しいです。
こちらこそありがとうございました。

 来年はこちらのスレも更新したいと思っておりますので、その時はまたお付会い下さい。

 それではみなさん、良いお年を。

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