『もしも』の話
- 1 名前:ワクワク 投稿日:2005/11/27(日) 18:33
- ここでは本当の…2で書いていた『もしも天使に会えたなら』の続きを書くと共に、何本かの話も執筆しようと考えております( ^_^)/
- 2 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 18:53
-
――――――
――――――
――――――
――――――
「ばいばぁい!」
「ちょっとぉ〜。早くしないとバス来ちゃうよ?」
女子校の下校時間独特の女の子の声があちらこちらで聞こえる。
「あ・・・」
ガシャン。
あたしが自転車を出そうとしてると意外な人物が横で立ち尽くしてた。
『あーしすごい好き』
さっきの彼女の言葉が耳から離れない。
「な、なんやっ!!新垣さんも今帰り?」
「ん。まぁねぇ。」
明らかに焦った様子の彼女。
『あーしすごい好き』
まただ。またさっきの彼女の声が聞こえる。
別にあたしを好きなわけじゃない。
彼女はあたしの『クセっ毛』が好きだったんだ。
ガシャ
ガシャン
構わず自転車を出す。
- 3 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 19:00
-
『あーしすごい好き』
あたしのことなわけがない。
ガサガサ。
見てればわかる。
明らかにこの空気をなんとか切り抜けようとして必死な彼女。
「・・・乗る?」
「えっ?」
「たまにはこっからでもいいじゃん。」
「本当にええの?」
「カルピスのお返しも含めてオッケー。」
「じゃ、じゃあ・・・」
カタン。
彼女がいつもの指定席に腰かける。
でも今日はひとつだけ違っていた。
そう、学校から彼女が乗ること。
それだけが唯一、『いつもの』というわけじゃなくて
「いいやよ。」
なんだかやけに新鮮に感じた。
- 4 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 19:07
-
――――――
――――――
――――――
――――――
カタカタカタ。
「なぁなぁ、あーしらのクラス・・・ちょっとすごくない?」
「あぁ、うん。」
「サッカー以外は全部勝ってるし。こりゃ総合優勝も夢やないね!」
「そーだね。」
本当に彼女はよくしゃべる。ただし、あたしと二人きりのとき限定だけど。
「あ!!ガキさん、ガキさんっ!あーし、本ほしーんよ!」
キキッ。
彼女に背中を叩かれてブレーキ。
「なに?」
「だーかーら。本屋さん寄って?」
彼女はいっつも思いつくまま行動。
昔から変わってない。
「やーだっ。」
「えぇ?お願いやよ。なっ?」
- 5 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 21:55
-
スタスタスタ。
「ガキさーん、これ、めっちゃ面白いんやよ?」
結局あたしは昔から彼女の思うツボなんだよね。
「もー!!ガキさんって!」
背後からの声を気にせず、CDコーナーに足を進める。
「ありがとうございました〜。」
彼女が目的のものを手に入れて、ニコニコとあたしのほうに向かってくる。
「愛ちゃんっ。」
「なんやぁ?」
「宝塚のサントラ買った?」
「あぁ〜。買ったやよ!」
やっぱ買ったんだね。
「愛ちゃん、昔から好きだったもんね。宝っ塚っ。」
「・・・」
あたしといるときもいつだって宝塚の話ばっかだったもんね。
なのに・・・
なんでそんなにびっくりした顔してるの?
- 6 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 22:17
-
「いーなぁ、最近お金なくてさぁ〜。今度貸して?」
「うん。あ、明日持ってくやよ。」
「本当にぃ?イエーイ。」
『宝塚』
彼女の影響を受けた中のひとつ。
――――――
――――――
――――――
カタカタカタ。
「あ。ガキさん。今日は・・・」
キュ。
「え・・・?」
彼女のことなら大体のことはわかる。
だからすぐさま右に曲がった。
――――――
――――――
――――――
「ごめんなぁ?」
「はい?」
「まぁどーせガキさんの家もすぐそこやしな。」
「自分で自分のフォローしないの。」
「ナハハハ!」
変わってない。
「じゃーね。」
カタカタカタ。
彼女の笑顔も変わってなかった。
- 7 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 22:30
-
・・・そりゃあ覚えとるよね。
部活帰りいっつも一緒に帰っとったもんね。
いつも
『一緒に』
まぁ実際は覚えとらんやろと思ってた。
今日はあーしが塾に行く日やってこと。
カシャ。
ガキさんに塾の前で下ろしてもらった後、塾の授業受けてすぐさま帰宅。
「あ・・・」
懐かしい。
渡せんかったな・・・
クリスマスプレゼント
「・・・・」
「・・・あ、宝塚宝塚。」
パタン。
『友達以上恋人未満』のとき
塾まで送ってくれたんは
たった一回やったけど・・・
- 8 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 22:46
-
球技大会 二日目
キーンコーンカーンコーン・・・
ガラガラ。
「あ、おはよ。」
「おはようやよ。」
今日は珍しく彼女を後ろに乗せて来なかった。
なんでかっていうと、いつもの時間に彼女が出て来なかったから。あたしも結構待った。それでも彼女は姿を現さなかった。
「高橋さ〜ん、遅刻ギリギリだよ?」
「ス、スイマセン。」
藤本先生が冗談めかして言った。
「はいはい、はーやく座って。」
「はい。」
いつものことだけど
「ガキさんも座る!」
「はーい。」
あたしのこと
「まったく〜。」
避けてる・・・?
- 9 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 23:13
-
キーンコーンカーンコーン。
朝のホームルームが終わってとりあえず一息つく。
「ふぅ・・・」
ジャージのポケットに手を突っ込むと何か長細い感触。
「あ、借りっぱじゃん。」
取り出すと予想通り、昨日彼女に髪をやってもらったときのピンだった。
ガラガラ。
ドアから出て行く彼女を追いかけて、あたしもドアに向かう。
「たかはーし・・・さ・・・ん」
そこには藤本先生と二人で楽しそうに話している彼女がいた。
「先生〜、冗談きっついやざぁ。ハハハハ!」
「アハハハ。いや、美貴は冗談あんま言わないよ?」
二人の笑い声が耳に響く。
- 10 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 23:20
-
「あ、じゃあバレー頑張るんだよ?」
「はあいっ!」
彼女の頭を優しくなでている藤本先生が、やっとあたしに気づいて。
「おっ、ガキさんどーしたの?」
「あ・・・いや、高橋さんにピン返そうと思って・・・」
そう言うと彼女もあたしのほうに振り返って
「え?あー、いいやよそんなん。あげるやざ。」
「あ、そう?ならもらっときまーす。」
藤本先生とあたしに接する彼女の顔が明らかに違っていた。
クルッ。
邪魔しちゃ悪いから去らなきゃ
そう思ったのに。
「ガキさん。」
藤本先生に名前を呼ばれて、また振り返るハメになった。
- 11 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 23:32
-
「なんですかぁ?」
正直、ふたりの空間に入り込みたくない。
「バスケ、頑張ってよ?」
「言われなくても頑張っちゃうのが新垣でーす。」
「ならいいけど。うちのクラス、総合優勝狙うからね。」
みかけに似合わず負けず嫌いな藤本先生。
「ほーい。」
「ん、じゃあ二人とも応援してるから。」
なんであの人はいっつもクールに去ってけるんだよ
と思いながら教室に入る。
「あ、そうや。新垣さん、CD持ってきたやよ。」
「まじ・・・」
「ガキさーん!!お昼買いに行こっ!」
「おうよ!まこっちゃん!」
ガタタタタ!
「なんやのよ・・・自分が貸せって言ったんに・・・」
「愛ちゃ〜ん、すぐに試合みたいだから、早く体育館行こう。」
「う、うん!」
- 12 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 23:40
-
「おっ、亀子がんばれぃ!」
後輩の亀子がちょうど試合に出てるから応援するあたし。もちろん彼女も近くにいる。
亀子も試合に出ながら、こっちを見て、手を振る。
「前見れ〜!!」
バンッ。
あらら、前見てないからボールが足に直撃。
「ね〜ガキさん、バスケ部入ってよ。」
またかよ。
「やだ。」
「なーんで!?ガキさんの実力なら三年から始めても全然オッケィだよ?」
「そーいう問題じゃなくて、あたしバイトしてるからぁ。」
隣にいたバスケ部の子が残念そうな顔をする。
「え!?うっそ!ガキさんバイトしてんの!?」
三人挟んだところから違うクラスメイトが驚いてあたしに聞いてきた。
- 13 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 23:50
-
「ん。まぁね。」
「どこでどこで?」
「コンビニと喫茶店。24時間営業しておりまぁす!!あ、喫茶店は違うけどね。」
「二個もやってんだぁ。ちょっとさ、行こーよ今度!」
「どこの?」
「喫茶店は二丁目ぇ。」
「えーーっ!じゃあ今日帰り行こうよ!みんなでっ!!」
「おーよいねよいね。」
「やったぁ!何飲もっかなぁ?」
「ってあたし安らげないじゃんよ。」
まぁいっか。
「愛ちゃんも行くでしょ?」
何人か挟んで紺野さんが隣の愛ちゃんを誘ってるのが見える。
「う?うーーん・・・」
ピッピーーー!
「バレー、三年三組対一年四組。」
「あっ試合やから行かな。」
立ち上がって歩き出す彼女。
「たかはーしさんっ。」
彼女が振り返ってくれた。
「頑張って。負けるなぁ〜。」
なんとなく声援を送りたかったんだ。
- 14 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/27(日) 23:57
-
ピーーーッ!
ボン。
「ナハハッ。まこっちゃんしっかりしろぉ!」
バシッ。
「ナーイス!」
ドガッ。
「いいじゃんいいじゃん!まこっちゃん!!」
ビシッ!
「おっしゃあ!」
試合中は彼女に声援を贈れそうにもなかったから。
「サッチいい感じぃ!!」
だから先に言いたかった。
「おっ!おっ、あ〜惜しい!」
「ガーキさん。」
「なしたぁ?」
「ちょっといいかなぁ?」
「おぅ。ええよええよ。」
昨日、愛ちゃんと話してたときに来た友達に呼ばれた。
試合をチラチラ気にしながらも、その子と並んで体育館を出た。
彼女が見ていたとも知らずに。
- 15 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 00:07
-
―――――
―――――
―――――
―――――
「あ、宝塚?」
試合に勝って、あーしたちは教室に戻って休憩中。
クラスメイトがあーしのCDを手にとる。
「いーなぁー・・・愛ちゃんの?貸してほし〜。」
「あーー・・・うん。」
いっか・・・
どーせガキさんも忘れてるんやろうし。
ポンッ。
「ねー愛ちゃん・・・ガキさんが中三ときバスケ部でキャプテンだったってほんと?すっごいうそくさいんだけどさ。」
「うっそぉ!?キャプテン!?かっくいい〜!」
あ―――・・・
そういえば中学のときはバスケバカやったもんな・・・
「バスケって背ぇ低くてもできんだねぇー。」
「押し付けられたとか?」
「あはは!ありえるありえる!あの性格だしねぇ。貫禄なっしだね!」
「・・・」
- 16 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 00:13
-
ガタン。
あーしが急に立ち上がってクラスメイトがちょっとびっくりする。
「・・・あ、愛ちゃんもしかしてコレ、ガキさんに貸すの?」
「え・・・?」
さっきからCDを貸して欲しいって言っとた子が急に口を開く。
「ガキさん、宝塚好きだし・・・」
「・・・」
「まったも〜!気にしすぎ!!」
「だって・・・仲良いし・・・」
もしかして・・・
「ハハハハ!別に高橋さんとガキさんはなんもないよねぇ!?この子に言ってやってよぉ。」
やっぱり。
「考えすぎだって〜!」
「え・・・」
「ガキさんってだれにでもああじゃん。」
- 17 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 00:20
-
ガヤガヤ。
「あったかはーしさん。」
「・・・」
ガシャン。
とっさに机の上に置かれていたCDを手にとる。
「ねーねー、写真撮ろー!写真!」
「おっ、いーねいーね!」
クラスメイトの誘いに快く答えるガキさん。
「ホラ、撮ってあげんよ。」
「えっえっ///」
さっきCDを貸して欲しいって言っとった子が顔を真っ赤にしながらガキさんの隣に立つ。
「なんだよー。あたしは?」
「あははっ。いらないってさ〜。」
「ヒョエー!!なに!?ガキさん狙いですか!?」
あーしの前で小川さんがふざけとる声がする。
- 18 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 00:26
-
「あ、マジっすかぁ〜!そーゆーことは早く言ってくださいなぁー!」
ガシッ。
ガキさんがその子の肩に笑顔で腕を回す。
「・・・・」
「しっかしちっさいねぇ〜。身長なんぼさぁ。」
「ひゃっ・・・147///」
「うわっ、ちっこーい。」
ガキさんが楽しそうに笑っとる。
「なにさぁ。ガキさんばっかズルいよぉ〜。」
「まこっちゃん、みんながよーやくあたしの良さに気がついたのさぁ。」
「よく言うよ!さっき五組の子に告られてたじゃん。」
「・・・」
- 19 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 00:32
-
そーいうことか。
だからあんとき仲良さ気やったんやね。
「・・・まこっちゃん・・・言うかな、フツー。そーゆーことぉ。」
「うそ!?なに?五組の誰!?」
「あったしは言いますよぉ。」
「っていうかなんで知ってんのさ!」
「尾行したのですよ。」
「ププ・・・威張るとこじゃないでしょーが。」
「・・・・」
そっかそっか。
「ガキさん付き合うの!?」
好きにすれば?
「・・・てゆーかさ、そんなんだれにでもやっとったら、モテるってゆーか、勘違い入るわぁ―――・・・」
「え?」
「あ・・・」
あーし何言ってんのやろ・・・。
- 20 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 00:39
-
キュッ。
うわ・・・ガキさんに叩かれるんかな。
「シシシッ!ジェラスィってやつですかぁ?」
スッ。
笑顔であーしの顔に手を近づけてくる。
「・・・・」
バッ!
カシャン。
あ・・・またやってもぉた・・・。
あーしが手で避けた弾みでCDが床に落ちる。
キュッ・・・
カシャ・・・
「・・・///」
またあのときと同じや。
ガシャン。
ガタッ。
またあーしたちの関係が壊れた。
「ったくさぁ、さっさとよっこしなぁさいよ。」
「え・・・?」
「忘れられてんのかと思ったではないっすかぁ。」
「・・・こちらこそ」
バコッ。
「あっ!たかはーしさん!!たかはーしさんがぶん投げるからケース、イカれましたよ!?」
- 21 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 00:46
-
「え?あー本当やぁ。」
「ごめんねぇ。」
・・・なんでガキさんが謝るんよ。
悪いんはあーしやのに。
「あいよっ。」
自分のプレイヤーのイヤホンをひとつ、あーしに貸してくれる。
「・・・こちらこそ」
「はーい、みなさん!今、あたしは宝塚に夢中なんで散って散って〜。」
文句を言いながら、ガキさんに言われると断れないのか、みんなそれぞれ別の場所でおしゃべり開始。
あーしはというとガキさんと反対っ側の耳にイヤホンを入れて目を瞑る。
カタッ。
すると中学時代の記憶が蘇ってきた。
- 22 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 00:53
-
――――――
――――――
――――――
――――――
「愛ちゃん?なに?CD買うのぉ?」
「うんっ!」
「あー!宝塚?」
「当たり前やざぁ。」
誘って一緒にビデオを見たら
「また宝塚かぁいな!!」
この人の歌が好きやって言ってくれたんや
――――――
――――――
――――――
――――――
「ふふん♪」
隣で楽しそうにリズムを取るガキさんの横顔をじっと見る。
『愛ちゃん、好きだったよね』
あーしの好きなもの
覚えとったことがとっても嬉しかったんやよ?
ガキさんは気づいとらんやろうけどな。
- 23 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 22:36
-
シャカ
シャカ
シャカ
「ん〜♪」
「ふふっ・・・///」
楽しそうな横顔が昔のガキさんのまんまでおかしかった。
「ガキさーん。30分から試合だから行くよぉ?」
ガタッ。
「なんだぁよ、宝塚最中にぃ〜。」
スポッ。
あーしのイヤホンも同時に抜かれる。
「ほら、たかはーしさんも応援しにきてよっ。」
「あ・・・うん。」
高校に入ってから、こんなに親密になったのは、今回が初めてや。
これまでは
お互いずーっと
避けあってたから。
でも今は・・・
- 24 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 22:44
-
スパッ!
「うっ・・・わ!すっご!こりゃ相手いきなし強くない!?」
小川さんが隣でびっくりしとる。
「ドンマーイ。次、次ぃ〜!」
それでもコートに立ってるガキさんは、楽しそうに笑ってた。
「・・・いけぇ!!ガキさぁ〜ん!」
昔みたいに応援してもええよね?
もう時効やろ?
「なに?バスケ出ないのぉ〜?」
あ・・・体育館の子や。
「ほら、あの子出てるよ。ガキさんだっけ?」
「・・・」
『五組の子に告られてたじゃん。』
そうや、ガキさん
「あー・・・ほんとだぁ・・・」
返事―――・・・・
「足引っ張ってんじゃないのー?」
え・・・?
- 25 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 22:53
-
「チビがデカイ顔すんなって感じぃ。」
ガキさんは
「てゆーか自分大好き?」
ガキさんはな
「調子こいてんじゃねーよって・・・」
バッチーーン!!
「はえ?」
「・・・いったい!!」
「新垣さんはねぇ!!!」
サイテーや。
「中学ずーっとバスケ一筋で!」
許せん。
「20人以上いる三年の中からキャプテンになったんや!!」
ガキさんは・・・
「一番ちっちゃいのに一番高く跳んでたんやっ!!!」
「・・・なにこの子・・・」
「だから調子に乗ってもええの!」
ガッ。
「つっ・・・」
髪を掴まれた。
- 26 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 22:58
-
「バッカじゃないの!?ただ同じ中学だっただけじゃん!」
「・・・」
『ガキさん、だれにでもああじゃん。』
さっきの教室での言葉が蘇る。
「・・・ないもん」
「は?」
「だけやないもん・・・」
あーしとガキさんは同じ中学だっただけ
やない。
「こらっ!なにやっとんねん!!」
「やばっ。中澤だ!」
バタバタバタ。
「おい!こら!待たんかい!!」
あーしたちはそんな簡単なもんやないもん。
「・・・違うもん・・・」
- 27 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 23:06
-
――――――
――――――
――――――
――――――
「なーに飲もっかなぁー!あ、ガキさんのバイト力で安くなったりしないの?」
「まこっちゃん、あたしにそんな権力あると思う?」
「うー、ない。」
「じゃあおとなしく通常値段で店に貢献してくださぁい。」
「ちぇ〜」
「あ・・・たかはーしさん。たかはーしさんも来るっしょ?乗ってきなよ。」
ガキさんがいつもみたいに後ろをポンポン叩く。
「や、あーし用事あるから・・・」
「あ、そっか・・・」
「んじゃあ・・・」
パシッ。
「貸しちゃる。」
ガキさんはあーしにハンドルを預けると、そそくさと小川さんたちのとこに走ってった。
「・・・え?へ?」
「おっしゃ〜、イケイケまこっちゃん!」
「ほいさっさぁ!」
「・・・・」
- 28 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 23:12
-
・・・いいんかな、借りちゃたけど
どーすりゃええんやろ、自転車
あ、バイト帰りにでも取りに来るか・・・
「そーや、その手があったんや・・・あ・・・」
キッキッ!!
「なっつかしぃわぁ〜・・・」
中学の前で足を止める。
「・・・」
ここに立っとると・・・
あのころが鮮明に見える
まるで・・・
今が『あのころ』みたいや
「あかん、あかん。はよ帰えらな。」
シャァ―――
またペダルをこいで家まで加速した。
- 29 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 23:20
-
「愛、あんたおフロ上がったばっかりやからってそんな格好しとったら風邪ひくよ?」
「は〜い。あ、今日、あーし部屋で食べるからぁ。」
「なに言ってんのー?下で食べなさい。」
―――――
―――――
―――――
カチャ・・・
今日の夜ご飯、カレーライスを食べながらガキさん待ち。
コツコツコツ
コツ
チラ。
「なーんや、まぎらわし。」
何時に終わんのかくらい聞いとけばよかったやざ。
「・・・」
あそこから歩きってけっこうキツイよね・・・
ただでさえ、バイトで疲れとんのに・・・
「・・・こんな格好でええんかな・・・まぁええんか。」
カチッ。
ちょうど時計が11時30分を指す。
- 30 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 23:32
-
久しぶりに中学の卒業アルバムを開いてみる。
パラッ。
「あ、そっかぁ。これには電話載ってないんやった・・・」
自転車忘れて帰ったなんてことはないよね・・・
パラ・・・
「あー、懐かし・・・」
中学の時のあーしのクラスを開く。
「よー考えれば中学も女子校やったんやよねぇ・・・」
そのまま上がれば大学までのエスカレーター。ただ、高校になるとここから通うのには遠過ぎる距離だった。
「まさかガキさんまでここに残るとはなぁ〜。」
パラ。
「ガキさんかわええのぅ・・・」
『ただ同じ中学だっただけじゃん』
- 31 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 23:38
-
カサカサ。
「・・・だけやないもん・・・」
だって
「クリスマスプレゼントあげようとしてたんやもん・・・」
なかったことにしても
なかったような気がしても
思い出すんはあのころばっかや・・・
いつも
いつも
必ずガキさんがあーしの隣で笑ってた
あのころのことばっかり
きっとあーしは
いつになっても
いくつ歳をとっても
あのころのことは忘れられんのやろーな
だって
あのころのあーしは
すごく楽しかったから
- 32 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 23:49
-
――――――
――――――
――――――
――――――
ピチチ・・・
ピチ
チュンチュン
「むぅ・・・」
チュチュチュン
「・・・ん―――・・・まだ8時20分・・・」
なんやまだ・・・
「お、おかぁーさん!!」
ウソや!!
「お母さんは何回も起こしたのに、あんたが起きんかっただけやよ?」
あかん、完全に遅刻やざ。
「あ!!」
思い出して窓を開ける。
ガチャ!
「オーーッス。」
そこには予想通り笑顔のガキさんがおった。
「ご、ごめん!ガキさん!!今、カギ・・・」
「いーいー。どーせ遅刻だし。ゆっくりして?」
「・・・」
こーしてると本当に昔みたいや・・・
- 33 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/28(月) 23:57
-
ガチャ。
「・・・おはよーございます。チャイム鳴らしてくれれば良かったのに。」
「いやぁ、なんか久しぶりだからさ、キンチョーしちゃいましたぁ。」
こーゆうとこ変わっとらんな。
「あい。ずっと出しっぱなしやったからぬるいよ?」
昨日から準備しといたペットボトルのカルピス。
「はははっ、ずっと出しっぱなしであたしのこと待ってたんだぁ?」
「ま、待ってないやざ///だいたいガキさんが朝来るってわかっとったら・・・」
二人して自転車にまたがり、ガキさんがペダルをこぐ。
「やっぱ待ってたんじゃぁん。」
「待っとらん!!」
- 34 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/29(火) 13:35
-
「・・・ガキさん。」
「ん?」
二人並んでちょっとした草原に座る。
「よく来るん?この公園。」
「まぁね、ここで食べる弁当は格別なんですよぉ〜。」
「やろーね。きもちいーもん・・・」
風になびく長くてキレイな髪からチラチラ覗く彼女の顔。
フワ・・・
「ちゃんと消毒した?」
思わずさっき叩かれたであろう頬に触れる。
「え・・・?」
本当はまた否定されるんじゃないかって怖かった。
「あぁ、うん。全然大したことないやよぉ。」
それでも心配だったんだ。
「愛ちゃんさ、女の子同士のあーゆーの。怖いからやめましょーよ。」
こんなときに冗談っぽくしか言えないあたしはバカだよね。
- 35 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/29(火) 13:43
-
「・・・ふったんやね。」
悲しそうに笑う彼女が痛い。
「・・・ははっ。向こうは『トモダチ』だと思ってませんでしたぁ・・・はーんせーい。」
あたしが間違ってたんだよ。
「あんときね。」
「うん?」
だから愛ちゃんがそんな悲しい顔しないでよ。
「『一番高く』ってやつでちょっとばかし泣きそーになりましたぁ。」
「・・・・」
ははは。まーたびっくり顔になってるよ。
『一番小さいのに一番高く跳んでたんやもん!』
彼女が言った一言は
「またさ、頭やって?評判いくってさぁ〜。」
「ん、ああ。えーよ・・・」
あたしの胸に響いたんだ。
- 36 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/29(火) 13:51
-
クイッ。
「な・・・!?」
「こーんどはあたしにしばらせて?」
昔からやりたかった
「やっ・・///やだやだ!!」
彼女の髪をいじること
「さーてはハゲがあるなぁ?」
「ないわ!!」
「んじゃいいじゃん。昔っからいっつも愛ちゃんがあたしの髪いじってばっかだったからさ、一回やってみたかったんだぁ〜。」
本当は
サラサラ。
怖くて触れなかった
あたしの手でこのキレイな髪を汚しちゃうんじゃないかって
そう思ったんだ。
- 37 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/29(火) 13:59
-
「・・・///」
サラサラ・・・
やっぱ彼女の髪はキレイだった。
「・・・あたしがキャプテンになったの・・・知らないと思ってた。ほら、あたしたち途中から話さなくなったじゃん?」
本当はいつも近くにいたかった。
「愛ちゃんが見てんならもっかいバスケやろっかなぁ〜!はははっ!!」
クシャ。
「あーもうぅ!!やっぱあたしにはムリみ・・・た・・・い・・・」
「グスッ・・・///」
「・・・・」
もっかい
「あ・・・ズズッ・・・あーし・・・」
- 38 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/29(火) 14:09
-
もっかい
「・・・愛ちゃん・・・」
グイ。
「あ・・・ははは・・・」
「・・・だめかなぁ・・・」
もっかい
「あたしらの関係もあのころみたいに・・・」
「・・・」
ガサ。
「へ・・・へへっ・・・なーに言って・・・」
「愛ちゃん。」
「あかんよ。昔・・・あんだけつまんなかったやろ・・・」
そう言って、彼女は立ち去った。
「あはっ・・・」
パタン。
「あ、カルピス・・・ こぼしちゃ・・・」
なかったことにしようとしても
「ははは・・・」
やっぱりなくならなくて
「なにやって・・・」
あれは現実で
『過去』
「ばっかじゃん・・・」
ポロ。
「な・・・ん・・・だ・・・これ・・・」
ポロポロ・・・
もう戻らない
- 39 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/29(火) 14:10
-
――――――
――――――
――――――
――――――
- 40 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/29(火) 14:19
-
「あの二人、絶対あやしーよねぇ。」
「これ決勝?」
「んや、準決だよぉ。」
あたしが来たときはすでにバレーの試合がやってた。
「一緒に遅刻してきてさぁ〜。遅刻してまでナニしてたんだかね〜!」
なんもしてない。
ただ今は
今なら・・・
「愛ちゃん?」
「・・・」
「キャッ!!危な・・・」
バチッン!!
ダッ!
「高橋さんっ!!」
あのとき離れた手を
もう一度
繋げると思った
ただそれだけ
それだけだった。
- 41 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/29(火) 14:31
-
『昔あんだけつまんなかったやろ?』
スッ・・・
「だーいじょーぶですか?」
「あれ?ここ・・・あーし・・・」
気づいたら心配そうな藤本先生がおって。
「ボール直撃。ガッツーンとね。」
「あーそうなんやぁ。あ、ヘーキですよぉ?眠くてボーッとしてただけやし。」
「あっ、し、試合は?」
何がおかしいんか先生がクスクス笑う。
「そーれよりご飯、食べなさい。はい、カバン。」
「あ、はい///」
なんやろ・・・
「タオルお貸し。」
「・・・」
ジャアア―――
このドキドキは
ピーンパーンポン
「20分よりバスケ決勝を行います。代表者は本部まで・・・」
- 42 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/29(火) 14:41
-
「・・・」
ポン。
「はいよ、これ。オデコに当てときな。」
藤本先生があーしのオデコにタオルを乗っけてくれる。
「ありがとーございます。」
「いや、美貴なんもしてないから。」
照れてる先生が
「な、なーに見てんの。」
どっかのだれかさんに見えた。
カチャ。
「あー、愛ちゃん良かったぁ〜。」
「高橋さ〜ん、事後?ついに憧れの保険室で・・・」
なっ///
「バーカまこっちゃん、高橋さんが困ってんじゃん。」
あ・・・
「バスケのオーダーは?」
「センセー、あたしをなめないでください。」
「ならよし。」
ガキさんと藤本先生の単調な会話。
- 43 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/11/29(火) 14:52
-
「なーんちって。そんな深刻な顔しないでくださぁい。」
「ごめんごめん。ついついね。ハハハハハハ。」
「にしししっ。」
あのころのこと
きっとガキさんも
なかったことにしとる
そう思っとった
「うおっ。ガキさんすっごぉ!」
シュ。
きっと捨ててる
パサ・・・
でも違ってた。
ガキさんは
あーしのこと・・・
でも
あーしは
もーいやや。
あんな思いはしたくない
だから
あーしらは
もーどうにもならん。
- 44 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/29(火) 16:59
- 更新乙です。
この二人の独特な関係、空気感がすごいよく出てて面白いです。
ただ、ちょっと文章の説明が少なすぎないでしょうか?
会話文中心の構成上、仕方が無いのかも知れませんが、状況が分かりづらい場面がいくつかありました。
こんな感想迷惑だったらすみません。次回更新楽しみに待ってます。
- 45 名前:名無し 投稿日:2005/12/02(金) 16:54
- あいちゃ〜ん!!
この気持ち、どう表現したらいいんでしょうねぇ…?
とにかく次回の更新たのしみにしてます!
- 46 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 17:39
-
―――――
―――――
―――――
―――――
「バスケ優勝、さーらに総合2位おめでとーう!!!」
黒板の前で賞品を持っている藤本センセーがかるーくガッツポーズ。
「イエーイ!!あたしカルピスくださぁい!!」
「おっ、ガキさん大活躍だったね。」
「ホレないでくださいよぉ?」
藤本センセーに向かってブイサイン。
「ガキさんみたいなのはタイプじゃないから。」
「グッサァ〜。うぅ、新垣、傷つきました・・・」
ワザとお腹痛そうなフリをする。
それを見て爆笑するセンセーとまこっちゃん。
「ガキさん、今日はバイト?ガキさんとこの喫茶店で打ち上げするんだ、全員参加でぇ。」
昨日、あたしのバイト先に来た一人が話しかけてきた。
- 47 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 17:46
-
「ないけどさ・・・全員参加?」
カルピスと反対の手にはリンゴジュースを持つ。
「はいよ・・・高橋さんも参加するってやつかい?」
彼女の背後からそのリンゴジュースを差し出す。
「のわっっ!!」
「そんな驚かなくても・・・で、マジ参加する気?」
「え?あ、うん。オデコもヘーキになったしね。」
ったく・・・
「ダーメダメ。帰りますよ。」
彼女の腕と彼女のカバン、そして自分のカバンを持って教室を出る。
「・・・///」
「帰ろ帰ろお家へ帰ぇろぉ〜♪」
「いっ・・・いいやよ!大丈夫やって・・・」
いつものことながら往生際が悪い。
- 48 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 17:55
-
「こっちが大丈夫じゃーないですつっーの。」
元はといえばあたしがあんなこと言っちゃいけなかった。
あんな・・・
『過去』のこと。
―――――
―――――
―――――
―――――
キィコキィコ。
いつものように自転車の後ろに彼女を乗せて進む。
ただ違うのは・・・
あたしがジャージのままなのと
彼女の口数が少ないことだけだ。
「なーんか異常発生したらおかまいなく新垣さまさまへぇ――――」
この空間をなんとかしたくて、ふざけてみる。
「あはっ・・・なぁんかお姫様気分やぁ〜。」
「あんま調子にのると、自転車から落ちちゃいますよぉ・・・」
会話がやっと成り立ったと思ったら、あたしたちが通ってた、中学の横を通った。
「・・・・」
「・・・ねぇ、ガキさん・・・」
- 49 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 18:03
-
―――――
―――――
―――――
―――――
キュキュ。
「ファイトォ!!」
やっぱり、あたしはいつまで経っても彼女の頼みは断れない。
「おーー?なんだオマエ、新垣か?」
「どーもです。」
彼女の頼み。
それは中学の部活に寄るというものだった。
「ちょーっと背伸びて、顔つきも変わったからわからんかったよ。」
元顧問のセンセーに会うのは久々だった。
「あっ、なんだっけかオマエ。いっつも新垣と一緒にいて・・・高・・・橋・・・?」
「はいっ!」
悩んだ末に見事、彼女の名前を言い当てた元顧問にちょっと苦笑い。
- 50 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 18:12
-
「センセー今年も顧問なんですね。」
「おぅ。オマエら同じトコか。高校でもやってるんだろーな?」
センセーの期待に満ちた目にちょっとばかしやられる。
「・・・いやー・・・」
そんなあたしたちのやりとりをよそに、隣の彼女は楽しそうにバスケ部を見る。
「なんだよ。やれや。もったいないだろ。あ、ちょっとやってくか?」
「あはは、いやー・・・」
「やりたぁい!」
横から彼女が割って入る。
顧問はもう集合をかけていた。
「ってオイ。ちょっと見たらすぐ帰るって言ったでしょ?」
「だってあーし今日は全然試合出てへんしぃ〜。」
そんな笑顔向けないでよ。
思わず彼女から目をそらす。
- 51 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 18:18
-
一方、顧問のほうは生徒たちにあたしたちが来たってことを話し始めて、後輩たちは「え?新垣先輩?」ってびっくりしてるし・・・。
「まったブッ倒れたらどーすんの!?あたしのせー・・・で・・・」
「ほぇ?」
あたし・・・なに言ってんだよ・・・
「・・・遅刻はさせるし・・・」
そう思っても口からはポンポンと言葉が出た。
「靴貸してやる、靴。」
生徒たちに話し終えた顧問が戻ってきた。
仕方ない
だって
あたしは彼女が
心配なんだから
- 52 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 18:27
-
「ありがと・・・」
彼女の口が動いたけど、周りの声でかき消された。
―――――
―――――
―――――
キュキュ。
「左左!!動けぇ〜!!ってうぉ、いつの間にぃ〜。」
バスケの練習試合をする。あたしはガードのポジションで後輩、そして愛ちゃんに指示を出す。
キュキュ。
「ガキさんっ。」
ゴール下にいる愛ちゃんがあたしを呼ぶ。
「・・・」
シュッ。
気がついたら、あたしは彼女にパスを出して、自分も彼女に向かって走り出していた。
タッタッタ。
その間にも、彼女がゴールめがけてシュートの格好をする。
当然、彼女には後輩がマークに付く。
「・・・」
瞬間的に彼女と視線が重なる。
- 53 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 18:36
-
スッ・・・
彼女と目が合ったと思ったら、あたしの手に託されたボール。
「うぉ・・・」
彼女が笑う気配。
あたしはそのままゴールを見据えた。
ダンッ。
地を蹴る。
「いっちゃえ〜!」
彼女の声。
あたしをマークしている後輩も飛び上がってきたけど、構わずフックシュートを放つ。
パサッ。
ボールが吸い込まれる。
「っと・・・」
キレイに着地。
「新垣先輩すごっ!」
「おぉ〜!先輩速いっ!!」
周りの後輩たちから驚きの声。
あたしは自分が、後輩たちが思うほど、体は鈍っていなかった。
「ガキさん。」
あたしにハイタッチを求めてくる彼女。
「ん。ナーイスパス。」
パチッ。
ハイタッチをしたときの彼女は
本当に嬉しそうだった。
- 54 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 18:43
-
ハイタッチで
彼女も
あたしも
心にあったモヤモヤが
消えた気がした。
「声かけろ〜!」
キュッ。
「ドンマイやよ!!」
あたしたちは
これからも
『友達』
シュ。
「オッシャ。また得点!!」
「ガキさん、さすがやざぁ。」
「まぁにぃ〜。ナハハハハ!!」
「ニシシシシ!」
あたしは
彼女が笑顔でいれるのならば
『友達』
これが一番だ。
- 55 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 18:54
-
彼女が隣で、顔をタオルで拭く。
「はぁ〜。やっぱ球技大会とは違うんやねぇ。」
彼女がコートを片付けている後輩たちを見ながら、話しかけてくる。
「あー、ね。うるさいのがいないし。それよかさ、最初のアレ。やったことないのに、よくできたではないかい?」
最初にやった愛ちゃんとのワンツーパスからフックシュート。
その場面を思い出す。
「あー。あれね。知りたい?」
「まぁ・・・」
彼女はいつも自分が優位に立つと、ためるクセがある。今もそのクセだ。
「いっつもガキさんがやっとったから。」
「え・・・?」
彼女からの思いがけない言葉に自分の耳を疑う。
「あーし、いっつもガキさんのこと見とった。だからアレも出来たんや。」
- 56 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 20:45
-
頭が混乱する。
愛ちゃんが・・・
あたしを見てた?
「ははは・・・」
渇いた笑い声しか出せない。
「あ、教室とかも・・・見てく?」
やっとった出たのは、彼女の話とはまったく関係のないことだった。
「ガキさん・・・」
あたしの好きな声
あたしの好きな手
あたしの好きな口
あたしの好きな彼女があたしの肩に触れる。
「あーしね・・・」
「帰ろ。」
「ふぇ?」
あたし・・・
「もー帰ろ。」
まだここにいたら
「・・・うん・・・」
きっとまた、朝と同じようなことしちゃうから。
もームリだから。
今度はきっと、もっとヒドイことしちゃうだろうから。
- 57 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 20:52
-
――――――
――――――
――――――
――――――
キキーッ。
彼女の家の前に着いた。ここに来るまで、あたしのお腹辺りに回された腕にドキドキしたけど、なんとかいつものあたしに戻した。
タンッ。
彼女が降りる。
「ちゃんと寝なよ??」
「うん。ありがとぉ。ガキさんもちゃんと風呂入るんやよ?」
あたしに気を遣ってくれたのか、彼女もいつもの調子で返してくれる。
「あ、やっぱ臭かったぁ?」
「・・・ガキさんさ、本当にバスケ部入らんの?」
「はぁい?」
驚いた。彼女がこんなことを言うとは思ってなかったから。
- 58 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 20:58
-
「・・・今日、昨日とかもな、学校で試合したときも・・・ガキさんずーっと楽しそうやったし。」
「・・・」
「あーし、昔からガキさんとバスケしたら楽しいやろぉなと思ってたら、本当にすっっっごい楽しいんやもん。って言ってもあーしはバスケ部やないから一緒にはできんけどな。」
「っ・・・」
彼女が本当に楽しそうに笑うから
彼女が本当にあたしを見てたんだってわかったから
よけーに心が痛い。
「・・・バスケが嫌で辞めたんじゃないやろ?」
彼女はそう言い残して、自分の家へと入っていった。
- 59 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 21:05
-
いつものように見上げると彼女の部屋の明かりがついていた。
チリンチリン。
自転車のベルを鳴らす。すると、彼女も窓のほうへと来てくれた。
「なんやぁ?」
ガサガサ。
自分のカバンの中をあさる。
あった。
「ほっ!」
手に取ったそれを窓の彼女に投げる。
「のわっ・・・」
パシッ。
「ナーイスキャッチ。」
自分でもだーいぶ前からわかってたんだ。
いつかは
いつかはフンギリつけなきゃいけないって。
- 60 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 21:14
-
――――――
――――――
――――――
――――――
中2のクリスマス前
「ガキさぁん、まだ決まらないんれすかぁ?」
「・・・・」
「なーんかさぐりとかは?終業式の後とか・・・・」
「最近話してないから・・・そんなことよりどっちがいいと思う?」
「どっちも変わらないれすよ。」
――――――
――――――
――――――
終業式
「もーさ、やめよ。」
自分から切り出した言葉なのに
あたしは苦しくて
苦しくて
ポケットのプレゼントもそのままに、教室を去った。
- 61 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 21:20
-
今日は
ちゃんと
ちゃんとフンギリつけるよ
「なんや?コレ?」
「あたしからのお詫び。今日はいろいろ付き合ってもらっちゃったからさ。」
「えぇ!?付き合ってもらったんはあーしや・・・」
「いーのいーの。もらっといて。」
彼女は少し不に落ちないような表情をしたけど、すぐにパァと笑顔になった。
「ありがとな?」
「いーえこちらこそ。じゃあ、また明日ね?」
「うん!」
カタカタカタ。
自転車を出す。
「はぁあ・・・」
これで
これでいいんだよね?
- 62 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 21:27
-
ザザザザ!!
「・・・ガキさん!!」
すごい音に振り返ってみると、さっきわかれたはずの彼女が、あたしの自転車の後ろを必死でつかんでいた。
ガシャン。
「・・・なに・・・」
急いで自転車を止めて、彼女に駆け寄る。
「はぁはぁ・・・」
「なしたの?ドロボーでもいた!?っていうか、足・・・血ぃ出てる・・・」
彼女のキレイな白い足から真っ赤な血。
カサッ。
「コレ・・・」
彼女は小さな紙袋を差し出した。
「え?」
あたしなんか忘れ物したっけ?
いや、でも愛ちゃん家なんか入ってないし・・・・
そんなことを考えてたら、また、彼女の口が動いた。
- 63 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 21:34
-
「コレ・・・あのときの・・・プレゼント。クリスマスの・・・・あげれんかったから。」
「あ・・・」
ウソでしょ?
愛ちゃんから・・・
「さっきの・・・クリスマスプレゼント・・・やろ?」
「な・・・んで・・・」
「中に・・・クリスマスカード入っとったから。」
「あぁ・・・」
あたしって意外とドジかも。
「でなっ!」
彼女の声が急に明るくなった。
「待ってて・・・」
「・・・」
でも声とは裏腹に、目には涙が溜ってた。
「あーし今、好きな人がおるんや。」
まただ
また彼女の思いがけない言葉に頭が混乱する。
- 64 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/02(金) 21:41
-
「だから・・・あーし・・・頑張るから・・・ふつーに・・・」
「・・・」
だけど必死に何かを伝えようとする彼女を見ると、何にも言えなくて
「ガキさんとトモダチになれるよう頑張るから・・・」
「・・・」
「ごめんな、ガキさん。」
彼女は涙を流しながら去って行った。
「あはは・・・・」
グシャ。
彼女から受けとった紙袋に力を入れる。
「なんだよそれ・・・」
彼女は最後にこう言った。
『もう、話しかけんといて』
- 65 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/02(金) 21:45
- 更新いたしました。
名無飼育さま>貴重なご意見ありがとうございます!実は作者自身もそこを直さねばと、思っていたところでした((((((((^_^;)
今後もなにかありましたら遠慮なくご意見いただけるとありがたいです(>_<)
名無しさま>意外と予想外な方向に進ませてみましたがどーでございましょうか?(笑)
もうこの話も終盤です。これからも感想いただけるとありがたいなと思っております( ^_^)/
- 66 名前:774飼育 投稿日:2005/12/02(金) 21:50
- やべっ ちょっと泣きそう・・・(;;)
次回更新も楽しみにしてます
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/02(金) 23:44
- 更新お疲れ様です。
夕方に更新中なことに気付いて、
今自分の好きな話が生まれてるんだと思ってちょっと感動でした。
一番今好きな話です。
せつない・・・。
次回更新楽しみにしてます。
- 68 名前:星龍 投稿日:2005/12/03(土) 17:44
- 更新お疲れ様です。
せつないっす・・。
これからの展開どうなるのか楽しみです。
次回も楽しみにしてます。
- 69 名前:名無し 投稿日:2005/12/03(土) 18:16
- せつな〜い……
ほんと、号泣ですよ……
次回更新が待ち遠しいです
- 70 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 00:03
-
―――――
―――――
―――――
―――――
もう、話しかけんといて―――――
―――――
―――――
―――――
―――――
- 71 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 00:13
-
「やっぱ7月ともなるとあっついねぇ。」
「そりゃあ夏だからね〜。」
学祭の準備で大急がし。今、あたしとまこっちゃんはうちのクラスのたこ焼き屋看板を作るために必要な、ペンキがなくなったから、美術室から持って行くところ。
「ところでガキさん、も―・・・2ヶ月くらい?球技大会辺りからさ、せっかく仲良くなったのに、また全然しゃべってないみたいだけどケンカした?」
「はぁい?なーに言っちゃってんのまこっちゃん。あたしはみーんなと仲良いじゃあないですかぁ。」
まこっちゃんがペンキを一度、持ち直す。
「んや、高橋さんと。話してないでしょぉがぁ〜。」
「・・・」
まこっちゃんがちょうど言い終わると、クラスの出しもののところに着いた。
- 72 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 00:23
-
「お――――?やってるやってる!なに作ってんの、コレ。」
あたしたちの背後から藤本センセー登場。
「あ、コレうちのクラスの看板なんです。出店のぉ!」
愛ちゃん・・・高橋さんが嬉しそうに藤本センセーに答える。
「あーあ〜、ハイハイ。なーんか楽しそうだねぇ。」
藤本センセーが高橋さんのすぐ隣にしゃがむ。
「先生もやりますかぁ?」
彼女が先生に一本、筆を差し出す。
「マージで?美貴もやっていいの?」
「ええやよぉ。先生とあーしの仲やからねぇ。」
「えー?美貴だけ特別かぁ〜。こりゃ頑張らないと、後で怖いなぁ。」
「えぇ?」
「アハハハ。愛ちゃん、目でっかくなった〜。」
「・・・」
センセーと並んでいる彼女はとっても楽しそうに笑ってた。
彼女がセンセーにしか見せない顔。
- 73 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 00:32
-
「せーーんーーぱいっ!!」
ドンッ!
後ろから体当たりされる。
「のわっ!いったぁ・・・なにすんだよっ。」
後ろからぶつかってきたやつにちょっと文句。
「先輩見ると体当たりしたくなっちゃうんですよ〜。」
「亀子、それ、属に言う迷惑ってヤツだから。」
いつまで経っても亀子は悪びれなく、体当たりしてくる変なヤツ。
「ん?その子ダレ?」
亀子の隣にいる、無愛想な感じのヤツを指さす。
「え?」
「え?じゃなくてさぁ。初対面のときはフツー紹介するでしょーが。」
あたしたちがこんなやりとりをしている間に、まこっちゃんは出店の手伝いに行っちゃった。
- 74 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 00:40
-
「ナハハハハ!」
「なーに笑ってんだよっ!」
意味もなく笑う亀子にコツンと軽くゲンコツを浴びせる。
「だっ、だって・・・アハハハハ!」
ったく・・・なんなんだよ・・・
「絵里、笑いすぎっちゃ。」
亀子の連れがふてくされたように言う。
ん?
今『ちゃ』って・・・
「先輩も忘れるなんてヒドイっちゃよ。」
こ、コイツ・・・
もしかして・・・
「田中・・・ちゃん?」
「はい。」
「う、うっそぉ〜!? しばらく会ってないうちにめっちゃ雰囲気変わってんじゃん!!!」
田中ちゃん、本名田中れいな。亀子と同じ2年で亀子の想い人でもある。あたしの妹的存在第2号ちゃん。
- 75 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 00:54
-
「先輩こそ、変わってるとよ。」
「ん〜?そっかぁなぁ?」
変わったと言われて自分を見渡してみる。
「そうっちゃ。」
「ちょっとぉ、二人で絵里を退け者にしないでくださぁいよぉ〜!」
「絵里が悪いとよ。れーなのこと笑ったりするから。」
「そーそー。田中ちゃんの言う通りだねぇ。」
「そんなぁー!!」
田中ちゃんと肩を組んで、亀子に背を向ける。
「んで、亀子に告ったりしたの?」
「なっ・・・///」
この二人はもう1年くらい前から両想い。
にも関わらず、お互いが片想いだと思ってるチョー鈍感なヤツら。
「で、でで出来るわけないっちゃ!!絵里は好とぉ人がおるし・・・」
そりゃお前だよ。
と言いたくなったけど、ここは亀子と田中ちゃんのために伏せておく。
- 76 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 01:05
-
「はぁ・・・まあそのうち分かるからいっか。」
「へ?」
田中ちゃんが不思議そうにあたしを見る。
「ん〜、なんでもないないナッスィングだから。」
あたしが言っても田中ちゃんの頭には???と目に見えるように?が浮かんでいた。
「ちょっと〜、なに二人でコソコソ話してるんですかぁ〜!」
「んやぁね、今後の作戦的なことをちょっとばかし。ね?田中ちゃん。」
「あ・・・はい。」
ったく、普段は見せないくらい真っ赤な顔しちゃって・・・
「先輩、出店行かなくていいんですか?」
「あ、しまったぁ〜!まこっちゃんに出遅れたぁ〜。」
「先輩、ワザと時間潰しとったっちゃ・・・」
「たーなかちゃん。」
ひと睨みして一喝。
「あ、れーなたちと途中まで行きます?」
「おっ。いいねいいねぇ。んじゃあ行くぜぇい。」
二人と並んでその場から立ち去る。
- 77 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 01:14
-
立ち去るときに
一瞬
ほんの一瞬だけど
彼女の隣を通り過ぎた。
「最近、藤本先生と高橋先輩って仲良いですよねぇ。本当ベッタリって感じで。くっつくのも時間の問題ですかねぇ?」
「絵里!!」
「あ・・・」
二人もあたしたちの話題を避けてくれてたみたい。
「あぁ〜。あん二人ね!!あたしから見てもめっちゃめちゃお似合いって感じですもんっ。」
実際、何度あの二人をお似合いだと思ったことか。
「・・・」
「先輩・・・」
もう一度振り返る。
するとそこには
幸せそうな二人が並んでいた。
『もう、話しかけんといて』
2ヶ月ってこんなに長かったっけ・・・
- 78 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 01:24
-
―――――
―――――
―――――
―――――
プップーー!!
学校の帰り道。
一人であーしの自転車と信号待ち。
キッキー。
左からブレーキ音。
なんとなくそっちを見てみる。
「あ・・・・」
そこにはクラスメイトの小川さんと
ガキさん。
二人がいるほうの信号が変わる。
チリンチリン。
「おー、高橋さんじゃぁん。」
自転車のベルを鳴らして近づいてくる小川さんと、その後ろから着いてくるガキさん。
「あたしたちこれからたこ焼きの材料買いに行くんだけどさぁ〜、あ、出店のね。どっかいい店知らないかぁい?」
「・・・」
「あ・・・うちの近くにいい店あるやよぉ。ほら、デッカイ看板のとこの!」
「あー!あそこかぁ〜!!」
- 79 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 01:32
-
このまま
目も合わない日々を
ただ
時間が過ぎてくれるのを
待つだけの日々を
また・・・
・・・あーし
また
繰り返すんや。
「んでは、あたしたちこっちだからぁぁ〜。」
二人が自転車をこいで進む。今度はガキさんが先頭で。
「おーい。店、ガキさん家と反対ほーこーだけどいいっすよねぇ?」
「え・・・なんで?」
「んえ?あ、先にね。ガキさん家で作戦会議すんのさぁ〜。」
「・・・なんでぇ?」
「なんでって・・・」
「新垣さん家、お引っ越ししたの?」
じゃないとおかしいやざ。ガキさんの家はあーしん家のすぐ近くなんやから。
- 80 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 01:39
-
「んやぁ、ガキさん家総出ではしてないと思うけど・・・」
「ならあーしん家の近くやざ。」
自分の家の方向を右手で示す。
「あ、いや、実家はそっちらしいんだけどさ・・・」
「ふぇ?」
実家って・・・
「ガキさん、一貫から高校移るってので親とケンカしたらしくてさ、家出て自分でバイトしたお金で一人暮らししてんの。だーから反対方向。しっかしなんでまたそんなにうちの高校行きたかったんかねぇ?」
「え?」
小川さんもガキさんの後を追う。
- 81 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 01:45
-
『ガキさん家、近くやろ?』
『まぁね』
『部活帰り。よく帰ってたよね、一緒に。』
『乗んなよ』
今までのことがスローモーションで何回も何回もあーしの頭を駆け巡る。
「うぅ・・・」
涙を両手で隠す。
「・・・なん・・・でっ・・・」
苦しい
「は・・・ん・・・たい・・・やのに・・・」
なのに
ずっと送り迎えしてくれてたん?
なぁ
ガキさん・・・
どーして
どーしてわざわざ
あーしの家の前にいたん?
反対方向やのに・・・
- 82 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/04(日) 01:52
-
―新垣宅―
「あっぢぃ〜。」
あたしん家に来てから、まこっちゃんはアイス片手に扇風機を占領。一方のあたしは机にうつ伏せ。
「なーにあったか知んないけどさっ!」
「・・・・」
「どーせガキさんがふざけすぎちゃったとかそんなんでしょ?」
まこっちゃん、それハズレ。
「ったくさ、聞いてる?あたしさぁ〜、あーゆー空気、耐えらんないんだよねぇ〜。」
あ、でも『あたしのやりすぎ』まこっちゃんってとこは大正解。
「ガーキさん?」
「ん、ごめんね・・・」
「まぁいいってことよ!」
本当、まこっちゃんがいてよかったよ。
「アイス、食べよ?」
- 83 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/04(日) 01:59
- 短いながらも更新しました!!
774飼育さま>ナ、ナキソウですか!?ハンカチをどーぞ(笑)
細やかながらまた少し進みました。
名無飼育さま>一番好きな話…むっちゃくっちゃ嬉しいお言葉でございます(T^T)
これからもみなさんにそう思っていただけるよう、頑張ります!
星龍さま>作者が書くとどうしても切ない系になってしまいます(苦笑)なにしろ切ない系大好きなので(^_^;)
名無しさま>待ち遠しく思っていただいていたので更新しました(笑)号泣していただけるとは…そのことに作者が号泣です(T.T)
- 84 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/04(日) 02:26
- わぁーい更新されてる。
ここのガキさんのキャラいいですねぇ。好きですねぇ。
これからどうなっていくのか。
楽しみにしてます。
- 85 名前:774飼育 投稿日:2005/12/04(日) 04:20
- ハンカチありがとうございます(笑)
けどハンカチがもう一枚必要かも切な過ぎます・・・
次回更新楽しみにしてます
- 86 名前:名無し 投稿日:2005/12/04(日) 17:48
- 更新お疲れ様です。
ガキさんの気持ちと愛ちゃんの気持ち…
うあ〜〜〜〜
…次回更新、待てませんっ(泣
- 87 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 17:19
-
学祭当日。
「たっこ焼きぃ〜たっこ焼きはいかがですかぁい?」
「まこっちゃん、それ焼き芋屋の掛け声でしょーよ。」
「いいのいいのぉ〜。これで売れちゃうんだからさっ!!」
あたしたちのクラスはハッピでたこ焼き屋。珍しいせいか、人が集まってくる。
「あーガキさんやってるねぇ!」
「買ってくだぁさいよ !」
「ガキさんハッピ似合う〜!」
「サンクスサンクス!!」
「ガキさんタコおっきめにしてぇ?」
「んぇぇ?しゃーないなぁ。」
「ガキさんこっち手伝って!」
「はいはい。」
「ガキさーん!」
「ほいよ。」
「「「「ガキさん」」」」
だぁーーもう!!
なんでこんなに忙しいんだよ。
- 88 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 17:28
-
「あのぉ・・・」
「今度はなに!?って・・・あ、紺野さん、ごめんごめん。んで、どーしたっ?」
あたしのすごい形相にビックリした紺野さんが、いつもよりさらに控え目で話し始めた。
「あの・・・私、生徒会で・・・」
「あ、生徒会って今日大変だよねぇ〜。」
あたしより遥かに忙しい人、発見。
「はい。あ、それでミスターティーチャーのことで・・・」
「あぁ、ミスティねぇ。そりゃあ大変だわ。」
ミスターティーチャーコンテスト、通称ミスティはこの学校独自のコンテストで毎年学祭で行われている大イベント。
その名の通り、一番カッチョイイ先生を選ぶ大会で、予選通過者だけが学祭の舞台に上がれる。これ目当てで、女子校なのに他校の女子高生たちが集まってきて、毎年生徒会はてんやわんやの大騒ぎ。
- 89 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 17:36
-
「今年はダントツで二名の先生が選出されまして・・・」
「ふ〜ん。今年は二人だけが学祭に登場ってことね。」
こりゃまた珍しい。
昨年までは少なくても三人は舞台に上がってたはずなのに・・・今年はよっぽどその二人が人気あったんだね。
「したら集まる人数も減るんじゃない?」
「それがそうでもないんです。応援演説をする方が、二人とも一緒の人が勝ち上がってきてしまって・・・」
あぁ、ちなみに学祭まで投票で勝ち上がると一人の生徒がその先生をアピールすることになってるんだ。
「あー・・・二人とも同じ演説者ってのはムリがありますねぇ〜。」
いくらなんでもムリが有りすぎだね。
「そうなんです。それで、もう一人演説してくれる方を探しているです・・・」
- 90 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 17:42
-
なんかこれって・・・
「それで・・・その・・・よろしければ新垣さ・・・」
やっぱり。
「あぁ、ごめん。あたしムリだわ。ほら、こっち大変だからさぁ〜。」
ジュウジュウいってるタコ焼き機を指さす。
「あ!!そーいうんならさ、まこっちゃんがベストだよ、まこっちゃんが!!」
隣りでタコ焼きを買いに来ていた後輩を相手に、話しているまこっちゃんを見る。
「あぁ、ガキさん。あたし無理ですっ!」
「はぁ!?」
こっち向いて敬礼してくるまこっちゃん。
「いやいや、紺野さんを助けてあげましょーよぉ。」
「無理っす!」
「なーんで!!」
「だって二人の演説者があたしなんっすもん。」
- 91 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 17:51
-
「は?じゃあ今年勝ち上がったのって・・・」
まじ?まじですか?
「吉澤先生と藤本先生なんです。」
「あは、あははは・・・紺野さん・・・冗談だよね?」
「こんな忙しいときに冗談なんか言ってられません。」
「だ、だよねぇ。」
うそでしょ?
よりにもよってあの二人が・・・
「新垣さん、やっていただけませんか?」
そんな目で見られても・・・ね。
「あーやっぱ無理・・・」
「なーんでなんでぇ!?ガキさんも一緒に演説やろーよぉ!」
やだ、限りなく嫌ですよ、小川さん。
「いやぁ・・・」
「お願いします。」
「いや、ちょっと・・・」
「ほらほらぁ!こんなに紺野さんが頭下げてんだから!」
っていうかそもそも二人の演説をやろーとしたまこっちゃんが悪いんじゃんよ。
- 92 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 17:57
-
「はぁ〜・・・」
ったく、しゃーないな。
「わかったよ。やればいいんでしょ、やれば。」
「本当ですか!?」
いや、こんなとこでウソつきませんって。
「ありがとうございます!!」
「やったぁ!ガキさんと演説、ガキさんと演説♪」
嬉しそうに踊ってるまこっちゃん。
っていうか一緒にはやらないよ?
「で、あたしはどちらさんの演説を行えばよろしいんですかねぇ?」
「あっ、えっとですね・・・」
パラパラ・・・
紺野さんがメモらしきものを何枚か捲る。
「あっ。小川さんが吉澤先生で新垣さんが藤本先生です。」
はい?今なんて?
「よっしぁ!よっしざわセンセ〜よっしざわセンセ〜♪」
- 93 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 18:03
-
「まっ、待った〜!それって変えらんないの?」
「はい。吉澤先生のほうが第一候補で小川さんの名前が上がっていましたので・・・」
ん?ちょっと待った。
「じゃあさ、藤本センセーは誰を第一候補に上げてたわけ?」
「小川さんだったんですけど・・・吉澤先生と小川さんがどーしても吉澤先生の演説は小川さんだと言っておられて・・・」
チラリとまこっちゃんを見ると、ギクッと音がしそうなくらいに背筋が伸びる。
「てめぇ・・・ピーまこぉ!!」
「は、ははひぃ!」
「仕組んだな!?」
「いや・・・その・・・こうすれば仲直りなるかなって・・・」
- 94 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 18:10
-
一応気ぃ遣ってくれてんのはわかるけどさぁ・・・
「それで、第二候補に上げられていた新垣さんに頼んだんです!!」
「あぁ・・・そう。」
ムリだよ。
ムリに決まってんじゃん。
「それでは、1時間後に舞台裏でお願いします。」
「はいよぉ。」
手を振って去っていく紺野さんに、遠慮がちに手を振るまこっちゃんとあたし。
「・・・で、まこっちゃん。」
「ほほほほいっ!」
「あんま勝手なことしないでよ。」
「いや、だってさ、藤本センセ〜に近づけば高橋さんも付いてくるでしょぉ?」
「そーれが勝手って言うんです。」
「だーけど、こないだ仲直りしたそーだったけど?」
コツン。
軽くこずく。
「イテッ。」
「ばかヤロー・・・」
- 95 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 18:14
-
わかってる。
まこっちゃんが好意でそうしてくれたってこと。
わかってる。
自分がフツーに接することができてないってこと。
わかってる。
彼女もあたしを避けてること。
わかってる。
ぜーんぶわかってるんだ。
あたしたちが戻ることなんてないってことも。
ぜーんぶ
わかっちゃたんだよ。
- 96 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 18:17
-
あたしたちは
どんなに周りに言われても
どんなに仲直りの場を持ったとしても
全部・・・
意味のナイことだってわかってるのに
どーして
どーしてそれでも
神様はあたしたちを引き合わせようとするんですか?
- 97 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 18:18
-
神様。
あんたって人は
本当に残酷だね・・・
- 98 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 18:28
-
「・・・残酷ヤローめっ・・・」
「ん?なーんか言いましたぁ?」
「んやぁ、あたしの独り言。」
「ん〜、ならいいけどぉ。あ、そこの子!!タコ焼きどうですかぁ〜?」
まこっちゃんが二人の少女にタコ焼きを勧める。
「あータコ焼きれす!!」
「おぉ!タコ焼きほし〜い!」
「あ・・・」
近づいてくる二人を見て唖然とした。
だって・・・
「ぬぁ!ガキさんハーッケン!!」
「あー本当だぁ!」
「のんつぁんとあいぼん・・・」
中学時代の友達、あいぼんとのんつぁんだったから。
- 99 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 18:35
-
「なーになに?お二人と知り合い?」
まこっちゃんが二人の間からヒョッコリ顔を出す。
「あぁ、うん。中学んときの。」
「マッジッすかぁ〜!!じゃあ高橋さんとも・・・・」
「まこっちゃん。」
あたしが止めるより先に言っちゃって、しまったという顔をするまこっちゃん。
「え?愛ちゃんを知ってるんれすかぁ?」
「うん!知ってるもなにも同じクラスですからぁねぇ〜!!」
懲りないヤツ・・・
恐るべし小川のまこっちゃん。
「そっかぁ!!ってことはガキさんも?」
「まぁね。」
あたしのそっけない返しにあいぼんが苦笑い。
- 100 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/11(日) 18:40
- 短いながら、今日はここまで。
名無飼育さま>キャラ好きとかぁーーー!!かなり嬉すぃくて涙がちょちょぎれます(笑)
774飼育さま>ハンカチ一枚では足りませんでしたか・・・では特大のバスタオルをどーぞでやんす♪(笑)
名無しさま>待てないと言われて待たせてしまうのがご存じワクワクでございMAX!!(笑)
- 101 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 21:05
-
「おーぉ!!ってことはのんつぁんはバレー推薦で高校行ったんだねぇ!」
「そうなんれす!まぁうちの学校は一貫なんれすけど・・・バレー部とバスケ部は特別推薦の子じゃないと入れないれすよぉ〜!」
「うぉぉ!のんつぁんスゲェ!!」
「テヘヘへ!!」
「・・・・」
もう仲良くなってるし・・・
「ガキさん。」
話しが弾んでいる二人を見ていたら、あいぼんがあたしを呼んだ。
「ん?」
「最近どーよ?」
「え?なにがぁ?」
あいぼんが言いたいことはわかるけど、ここはあえてわからないフリ。
「とぼけてもムーダ。愛ちゃんのこと。」
ふと、先日、交差点でチャリに乗った彼女に会ったときのことを思い出した。
- 102 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 21:11
-
「あ〜・・・知らない。」
「はぁい?何言ってんの?ガキさんと愛ちゃんの間で知らないことなんて・・・」
「いや、ホンットに知らないっすよぉ。あんなヤツ。」
「あんな・・・ヤツ・・・?」
あいぼんの肩がピクッと反応する。
まぁ、一番仲良くしていた子が『あんなヤツ』なんて言わたら誰でもそーなるだろうけどね。
「そ。あんなヤツ知らないよ。あたしはあたしの人生歩んじゃってますからぁ〜。」
そう、彼女も彼女なりに自分の道を歩いてるんだ。
「ガキさん、ホンキで言ってんの?」
ついにあいぼんがフルフルと震え始めた。
「あたぼーよ。大体ね、中学の時とかそれまでとか、家が近いだけでなーんであんな仲良かったのかわけわかんないもぉん。」
- 103 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 21:17
-
今さら気がついた。
「・・・テー・・・」
「本当にね。あの人のせーであたしの人生どんだけ狂ったかわかりゃせんわぁ。」
一人で自転車に乗る寂しさ。
「・・・・っ」
「あーあ、もっと違う人と仲良くなるべきだったなぁ〜。」
坂を登るときの重さが心地良かった。
「まぁ、あたしはあの人のこと友達だと思ったこと自体が間違ってたんだよねぇ。」
友達で良かったのに。
バシッ!!
「あいぼん!?」
「ガキさん!!」
気がつくと左頬がヒリヒリと痛かった。
- 104 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 21:24
-
「ったぁ〜。なにすんの・・・さ・・・」
振り返ると、そこには目にいっぱいの涙を溜めたあいぼんと、あいぼんを止めてるのんつぁん。
「愛ちゃんは!!ガキさんが思ってるよーな子じゃない!」
「ふっ・・・・ふはははは!」
あたしが思ってるような子?
「ガキさん?」
心配そうに見つめてくるまこっちゃん。
あたしが思ってるような子ってどんな子?
「なにがおかしいの!?」
「ちょ、あいぼんやめなって!」
真っ赤な顔した今にもあたしに飛びかかりそうなあいぼんをのんつぁんが必死で止める。
「ははっ。ごめんごめ〜ん。でもさ・・・・」
あたしの知らない愛ちゃんってナニ?
- 105 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 21:30
-
「あいぼんにあたしのナニがわかんの?」
「え・・・?」
「ガキさぁん?」
「ちょいと、ガキさんまでぇ〜。」
今度は立ち上がったあたしをまこっちゃんが力ずくで止める。
「あいぼんにあたしのなにがわかるんだって言ったんっすよ。」
「・・・」
ほーら、やっぱり。
いっつも愛ちゃんが愛ちゃんがって中学のときからそーだったよね?
「言っとくけどさぁ、あたしは別に『高橋さん』の保護者じゃないわけ〜。おわかりですかい?」
あたしのキモチがわかってたまるか。
「・・・わかんない。」
「あいぼん!」
ガシッ!!
今度はハッピの胸ぐらを掴まれた。
- 106 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 21:39
-
「わかるわけないじゃん!!あいぼんはガキさんじゃないもん!ガキさんの考えてることなんて全然わかんない!!」
「・・・」
「ガキさんは中学のころからそーだよ!!いっつもなんの相談もなしで・・・高校のバスケ部に入るの決まってたのに・・・急に辞めるって!!ヘーキな顔して『辞める』って一言で終わらすよーなガキさんなんて全然わかんない!!」
「・・・」
中学のころ・・・
あたしは高校はそのまま上がって、バスケ部に入ることが内定していた。
のんつぁんはバレー部であたしはバスケ部。中学での部活、都大会で優勝、全国3位と好成績だった。
おまけに全国ベスト5にあたしの名前があがった。
このことを一番喜んでくれたのは・・・
のんつぁん、愛ちゃん
そして・・・
あいぼんだった。
- 107 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 21:46
-
「・・・しょーがないじゃん。あたし、バスケやるのに・・・高橋さんの面倒みるの・・・疲れたんだからさ。」
本心じゃなかった。
「疲れた?だったらなんでバスケ辞めてまで一緒の学校なの?愛ちゃんといたくないならなんでワザワザ家を出てまで・・・」
バンッ!!
「うっさいな。どこの高校行こうがあたしの勝手じゃん!!」
あいぼんに掴まれていた胸ぐらを手で払い退ける。
「愛ちゃんが・・・愛ちゃんがどれだけガキさんのことスキだったか知ってて言ってるの?」
「アハハハ!なに・・・言ってんの?」
愛ちゃんがあたしをスキ?
「そーだよ。愛ちゃんはガキさんのことを・・・」
有り得ない。
- 108 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 21:54
-
「愛ちゃんが・・・愛ちゃんが・・・どんな想いでクリスマスプレゼント選んでたかなんて・・・知らないくせに。」
あいぼんがその場に泣き崩れる。
「・・・」
「あの日、愛ちゃんは楽しみに・・・」
ウソだ・・・。
あの日、愛ちゃんとあいぼんが楽しそうに歩いてるのをこの目で見た。
「んな過去のことどーでもいいし。」
あたしにはもう関係ない。
「愛ちゃんは・・・ガキさんがダイスキだったんだよ?」
あたしの想いは
届くことなんてない。
「そんなの・・・あたしが知ったこっちゃない・・・し。」
ねぇ。
自転車さ、
軽すぎて乗ってる感がないんだけど。
- 109 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 22:06
-
『ミスターティーチャーコンテストを行いますので、関係者の方は舞台裏に集合してください。』
タイミング良く流れる放送。
「あ、じゃあ・・・あたしは行くから。まぁテキトーにゆっくり楽しんでってよ。まこっちゃん、行こ。」
「うぇ?あぁ、うん・・・」
先をゆくあたしとあいぼんを交互に見ながら歩き出すまこっちゃん。
「ガキさん!!」
のんつぁんに呼び止められてゆっくりと振り返る。
「もっと、素直になったほうがいいれすよ?」
「忠告ありがと。」
そっけなく返して再びあたしは歩く。
素直?
なったよ。じゅーぶんなくらい。
そしたら
『あかん。昔、あんなにつまんなかったやろ?』
このザマだよ。
- 110 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 22:12
-
あたしの後ろは
『空席』
あたしの心は
すっからかん
あたしの想いも
きれいさっぱり消えた。
- 111 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 22:17
-
そう思ってた。
なのに・・・
彼女の嬉しそうな顔
泣いてる顔
寂しそうな顔
怒った顔
彼女だけは消えることなんてなくて・・・
やっぱりあたしは
彼女にめっぽう弱かった。
- 112 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 22:29
-
――――――
――――――
――――――
――――――
「・・・という感じで進行して行きますがよろしいですか?」
紺野さんの問いかけに吉澤さん、まこっちゃん、藤本センセーそしてあたしの順で頷く。
「それでは先生方は・・・」
「ガキさん。」
「ん〜?」
「大丈夫?」
あたしからもわかるくらい心配そうな顔をしてあたしを見るまこっちゃん。
「なーに情けない顔してんのぉ〜。」
「いや・・・だってさ・・・」
「ダーイジョーブイブイブブイ〜ってねぇ。」
「ならいいけどね・・・」
「くっらい暗い!!そのオーラなんとかしてくださぁいよぉ〜。まこっちゃん!」
ダーイジョーブだよ。
もう考えない。
- 113 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 22:36
-
タンタンタン・・・
まず先にセンセーたちが舞台へと上がる。
『キャアァァァァァ!!!』
もう歓声というより、悲鳴に近いキンキン声が一斉に聞こえる。
「すんごい人気・・・・」
「次、小川さんと新垣さんお願いしますっ!!」
呼ばれたあたしたちも、生徒会委員らしき子が捲っている布から舞台へと上がる。
「まぶしっ・・・」
そこはまるで光しかなくて
いつかあたしにもこんな明るい出口が見つかるのかな
なんて性に合わないことを思った。
- 114 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 22:44
-
『レーディス&ジェントルメーン!!とうとう始まりましたぁ!記念すべき第30回、ミスターティーチャーコンテスト!!』
「キャアァァァァァ――――!!」
『記念すべき今回、ここまで勝ち上がってきたのは・・・なんと!!たった二名ですっ!!』
「ワァァァァァ!!」
「あーあ、耳痛いなぁ。」
軽く数百人にいる観客たちのキンキン声にあたしの耳は耐えられないらしい。
「ね、美貴も勘弁してほしーよ。」
隣に立っている藤本センセーがあたしの方を向かずに会話をもちかけてくる。
「ですよねぇ。」
「うん。鼓膜がヤバイのなんのって。」
「ハハハ・・・」
うまく会話できない。
- 115 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 22:52
-
「っていうかね、美貴思ったんだけど『ジェントルメーン』っていらなくない?」
「はい?」
突拍子もないセンセーの言葉に思わずセンセーの顔を見てしまう。
「いやね、ここって女子校でしょ?しかも他校から来るのも女子高生ばっかじゃん。ということは・・・ここに『ジェントルメーン』は存在しなーいわけ。」
「あぁ〜。」
確かに先生の言う通り、辺りを見回しても、女、女、女、女という感じだった。
「ニシシシ。ね?」
「は・・・い・・・」
無邪気な笑顔。
彼女と重なる。
「ガーキさん?」
『ガキさーん!』
まただ。
「おーい。」
「えっ?あ、はい。」
「とんでってたけどヘーキ?」
「あぁ、はい。」
- 116 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 23:02
-
二人して再び前を見る。
「美貴さ・・・」
「はい。」
「愛ちゃんに告白しよーかと思ってる。」
「・・・うわぁ、禁断の恋ってヤツっすねぇ・・・」
しょーじき驚いた。
彼女とセンセーがそこまで進んでると思わなかったから。
「ガキさん、真面目に聞いてる?」
「真面目の真面目で聞いてますよぉ〜。」
良かったじゃん。
「いいかな?」
「え?なーにがですかぁ?」
「美貴が愛ちゃんに告白して・・・」
なんであたしなんかに聞くんだよ・・・
「いいもなにも・・・センセーがいいならいいんじゃないっすかい?」
愛ちゃんとセンセー両想いだったんだよ?
「いや、真面目に。」
「・・・だーからあたしは真面目ですって。」
- 117 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 23:10
-
「ほーんとに?」
「ほんとっすほんとっす。」
愛ちゃん、喜んでオッケーでしょ?
藤本センセーからの告白・・・
「ってかなんでわざわざあたしなんかに聞くんっすかぁ?」
「え〜・・・いや・・・だってさ、ガキさんって愛ちゃんのこと・・・好きっしょ?」
あたしが?
愛ちゃんを?
スキ・・・
「違う?」
「・・・ぜ・・・全然、んなこと有り得ないですよぉ。やだなぁ〜センセー。」
言えないよ。
あたしが愛ちゃんをスキだなんて。
死んでも言えない。
「・・・そっ。・・・ならいいんだけどね。」
心なしか藤本センセーの顔が嬉しそうだった。
- 118 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 23:26
-
『それではぁ〜、みなさまお待ちかねのアピールターイム!!』
「キャアァァァァァ!!!」
『まずは・・・体育担当、言わずと知れた一年教師、吉澤先生の演説タイム!担当するのは・・・自称吉澤先生のイチバン弟子!三年の小川さんで〜す。』
司会者からマイクを受け取るまこっちゃん。
「え〜、コホン。ご紹介に預かりましたぁ・・・ピーピーピーピーピーまこ小川でっす!!」
「プッ・・・なんだアレ・・・」
まこっちゃんらしい派手な自己紹介だ。
「えーわたくしピーまこは吉澤先生を押して押して押してぇ・・・そして引きます!」
「アハハ!!引いちゃうのかい!」
「キャハハハハ!」
「いいぞーまこっちゃん!」
うまいことやるじゃん。
- 119 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/11(日) 23:35
-
「どーもどーもぉ!えっと、吉澤先生のいいとこはですね・・・男前!バスケうまい!犬っころ!天才的なボケ!そしてアフォでございMAX!!」
ゴンッ!!!
マイク越しに鈍い音が聞こえた。
「まこと!!オメェ最後のほうはうちのことけなしてんじゃんかよ!」
「アララ・・・よっちゃんさんがちょっと怒った。」
「まこっちゃんもバカだなぁ・・・」
「イッデェ〜・・・けなしてなんかないっす!ぜーんぶ立派な誉め言葉じゃないっすかぁ〜。」
ゴンッ。
「どこがだよ!」
「吉澤センセーカッコイイー!!」
あんなところでも女子高生にはカッコイイらしい。
「サーンキュ。」
「キャャアアアア!!!」
- 120 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/11(日) 23:36
- やっぱりさらに更新してみました(笑)
- 121 名前:774飼育 投稿日:2005/12/12(月) 00:18
- イイ!! やはりイイです!! 作者さん
おもろすぎです
次回更新もまってますよぉ〜
- 122 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 01:08
- 量が多いとは嬉しい限りの更新、お疲れ様です。
禁断ですかー。ますます目が離せませんね。
次回更新待ってます。
- 123 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:12
- 突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント「2005飼育小説大賞」
が企画されています。よろしければ一度、案内板の飼育大賞準備スレをご覧になって
いただければと思います。お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 124 名前:星龍 投稿日:2005/12/12(月) 15:47
- 更新お疲れ様です。
たくさん更新して頂いて嬉しい限りです。
カナリ気になる展開に。
続き楽しみにしてます!
- 125 名前:名無し 投稿日:2005/12/13(火) 20:33
- 更新お疲れ様です!
焦らされたぶん、じ〜っくり読みましたw
やっぱり次回が気になってしょうがないですよぉ〜
楽しみにしてます!
- 126 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 02:00
-
『さぁて続きましてはぁ・・・目つきが悪く一見クールだが、ハートは熱い!国語担当、藤本先生のアピールターイム!!名乗り出てくれたのはみなさんご存じのこの方!三年のにーがきーりっさーさんです!』
「ワァーーーー!!!」
司会者からマイクを受取り、舞台のセンターに立つ。
「ども、新垣里沙です。」
あんまり気が乗らない。だいたいあたしは名乗り出てないっつーの。
「ガーーキさぁん!」
「にぃーがきせんぱぁい!!」
他方面からあたしに向けた声援が飛び交う。
「はぁい!どーもどーも。知ってる人も知らない人も覚えましょう!あたしの名前はぁ・・・」
観客に向かってマイクを出し、耳を傾ける。
- 127 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 02:08
-
「新垣里沙〜!!!」
「オッケィ。みなさんじょーできっす!」
観客に笑顔を向ける。
「じゃあじゃあ、そんなあたしが担当しているセンセーの名前は・・・」
さっきと同じようにマイクを傾ける。
「ふっじもとみーきセンセー!!」
大音量でセンセーの名前が呼ばれた。
それに反応して、センセーが手を振る。
「キャアアアアア!!!」
またも絶叫。
「あー・・・っと、みなさーん。藤本センセー通称もっさんが好きですかぁ〜?」
「ハーーイ!!!」
すんごい勢いで手を上げる女の子たち。
その中にひとり、控え目に手を上げている子がいた。
「・・・ですよねぇ〜!あたしももっさんサイコーだと思いますっ〜!」
笑顔とは裏腹に、あたしの心はズキズキと痛んでいた。
- 128 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 02:17
-
控え目に手を上げていたのは
「もっさんサイコー!!」
「サイコーー!!!」
やっぱりあたしが気にしていた彼女で
「クールで熱いサイコーなやつ!!」
「イェーーイ!!」
彼女の目はやっぱり藤本センセーに向いていた。
「オッホン。もっさんはね、マジでいいセンセーです。あたしもビックリするくらい熱くて、いっつも目つきは悪いけど。」
「ちょ、ちょっとガキ さん・・・」
後ろで慌てている本人をよそに、彼女から目を離さずに話す。
「でもさ、もっさんは優しくてイイヤツだよ。あたしが保証する。だから・・・」
彼女と目が合う。
久々だった。
「だからさ、これからも、もっさんのこと・・・信じてついていきな?」
「ワァーーーー!」
- 129 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 02:24
-
彼女に向けたあたしの言葉。
『ありがと〜ございました!後は集計のみでございます・・・』
あたしなりのお祝いの言葉だった。
彼女への
もっさんへの
二人の幸せへの。
あたしがもっさんの隣に戻ると、生徒会委員が集計を始めていた。
「ガキさん。」
「はい?」
「なーんかさ、最後のスピーチ、ちょっと感動したよ。」
彼女に告白しようとしている人があたしの言葉を受け入れてくれた。
「美貴、ガキさんに頼んでよかったよ。」
「はははは。そりゃあありがたいです。」
「いや、本当に。」
もっさんがあたしを受け入れてくれたみたいで、ちょっぴり嬉しい気分。
でも・・・
なんだか悔しくもあった。
- 130 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 02:26
-
だって・・・・
そんな素直にあたしを褒めてくれる彼女が
彼女のキモチも奪ってしまっていたから
どんなにあたしが頑張っても手に入れられなかった
彼女のココロを
もっさんが手にしようとしてたから
- 131 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 02:27
-
悔しい
悔しいよ・・・
- 132 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 02:29
-
こんな感情もうとっくになくなってるはずだった・・・
『悔しい』なんてキモチ
あたしの中には存在してないと思ってたのに・・・
どーやら違ったみたい
まだ存在してた
- 133 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 02:32
-
その『悔しい』ってキモチ
そんなモノがまだ残ってたことに気付かなかったことがまた・・・
『悔し』くて
結局あたしは
いつも
『悔しい』の繰り返しなのかな?
- 134 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 02:34
-
もし・・・・
もしも
あたしの中で『悔しさ』がないとしたら
あたしはどんだけ違ってたんだろ?
あたしはどんだけ勇気が出せた?
あたしは・・・
彼女を幸せにしてあげられた?
- 135 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 02:40
-
ただひとつ
唯一言い切れるのは『悔い』はない
『彼女を想っていたこと』
これだけは『悔い』なんてなかった
むしろ・・・・
誇らしかった
だって・・・
あんな素敵な子を想っていられたんだから・・・・
- 136 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/18(日) 02:46
- 少量更新です。
774飼育さま>面白いですか!?マジのマジのマジですか?(笑)
単純て嬉すぃです( ^_^)/
名無飼育さま>きーんだんっ!きーんだんっです(笑)
これからさーらにああなっちゃいますので(*^o^*)
星龍さま>気になる展開にしたかったんです(^_^;)ですので、「気になる」の一言で目がキラキラんになりました(笑)
名無しさま>また出たぁ「気になる」(笑)
やっぱり話は気になるほうが楽しいかなと思ったので、最近は中途半端に切ってます((((((((^_^;)
- 137 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 17:14
-
『お待たせいたしましたぁ!!集計の結果、今年のミスターティチャーが決定いたしました!!』
司会者がメモ用紙を持って、会場のみんなに発表しようとしてる。
「はぁ・・・」
ずいぶん待たされた気だるさがここに来てドッとのしかかってくる。
「まぁしょーがない・・・っか。」
集計の大変さが見ただけでわかる観客の人数。この学校の生徒、どこからか来た他校の女生徒、そして私服の一般女性。
どこを見ても女の子ばかりだった。
『集計は実に782票!!ミスターティチャーコンテスト始まって以来の票が集まりました!!』
「すっ・・・すげぇ!」
まこっちゃんが驚いているのが目の端に入る。
- 138 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 17:24
-
まぁ驚くのも無理はない。
うちの高校は1学年5クラスで1クラスは40人。つまり、3学年全部を合わせても600人にしかならない。たとえセンセーたちを多く見積もっても640人くらい。
ってことは全校生徒が投票したとしても残りは180人ぐらいは必要になってくる。
「いったいどっからこんなに人が集まったんだか・・・」
それほどここにいるセンセーたちが人気なんだなってミョーに納得。
「この票の数ってすごいの?」
あ、そっか。藤本センセーは今年入ったばっかだから知らないんだっけ・・・
「すごいっすよ。昨年はたーしか・・・500票くらいだったはずですし。」
「500票・・・すごさに納得。」
「ははは。わかってもらえて良かったですよぉ〜。」
- 139 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 17:31
-
『集計結果はお二人の後ろにある電工掲示板にて表示されますっ!!みなさん、ご注目を!!』
司会者の合図であたしたち4人を含めた全員が電工掲示板に目を向ける。
『今年のミスターティチャーコンテストの優勝者は・・・・』
ドゥルドゥルドゥル♪
コンテスト定番の曲が流れる。
ドンッ!!
『藤本先生325票!!対する吉澤先生も325票!!・・・あれ?』
司会者が疑問の声をあげる。
「なー数合わなくね?」
「よしざーセンセーは数学ニガテですからね!どれどれ、ここはピーまこ小川が・・・・って、ありゃりゃ??」
明らかに計算が合わない。
「生徒会も忙しかったからミスっちゃったんだね。」
藤本センセーはいつものように、軽く流そうとしていた。
- 140 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 17:38
-
ササササッ。
「あっ。」
司会者の隣に慌ててうちのクラスの秀才兼生徒会の紺野さんが駆け寄って耳打ちをする。
ザワザワザワ・・・
『お、オホン!!』
司会者の咳払いで騒いでいた観客が静かになる。
『ただ今入った情報によりますと、この集計結果に間違いはないようですっ!!』
「数合ってないですよ〜?」
「明らかに間違いでしょ。」
他方面から聞こえる訂正の声。
司会者が微笑んだ。
『いやいや、みなさん。私もびっくりな結果です!』
そりゃ同点の上に集計間違いじゃびっくりもするね。
『今回の投票はミスターティチャーを決めるためのものでした。』
は?そりゃそーでしょーよ。ミスターティチャーコンテストなんだから。
- 141 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 17:45
-
『今回選らばれ壇上に上がったのは藤本先生、吉澤先生です。しかしながら、残りの132票を獲得した新しいケースが出て参りました!』
ザワザワザワ・・・
「はぁ!?有り得ない。有り得ないっす!!」
「まぁ有り得ないけど、ガキさん落ち着け。」
落ち着いてられるかってーの!!
せっかくあたしが意を決してセンセーの応援演説したのに・・・
「どーなってんだよ・・・」
「ピーマコにも分かりませぬ・・・」
あたしにもさっぱり分かんないっす。
『本当にこんなことは前代未聞ですっ!!なので、生徒会役員で協議を行っておりました!』
協議してたから遅かったわけか・・・。
- 142 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 17:49
-
『そして、今回!協議の結果・・・特別賞を贈呈することとなりましたっ!!』
嬉しそうに司会者がニコニコする。
「あ、あはは・・・」
もうここまで来ちゃったら笑うしかできないですよ。
「ズルーイ。」
「ズルーイっすね。」
吉澤さんとまこっちゃんが息ピッタリなところで頷く。
「まぁいいじゃん。」
「美貴ちゃんさんはなんでそんなクールなんだよ。」
「美貴はよっちゃんさんじゃないから。」
ホンットれーせいすっわ、藤本センセーは。
- 143 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/18(日) 17:50
- ちょーつと更新してみる((((((((^_^;)
- 144 名前:774飼育 投稿日:2005/12/18(日) 22:15
- まぁ 更新されてる
次の展開が楽しみですなぁ
まぁ大体予想が付いてますけd・・・
次回更新待ってますね〜
- 145 名前:星龍 投稿日:2005/12/18(日) 22:39
- 更新お疲れ様です。
すごくいいです!!
作者さんの書く言葉1つ1つがなんか良いです。
これからの展開楽しみにしてます!!。
- 146 名前:名無し 投稿日:2005/12/18(日) 23:31
- たぶん、私の予想は当たってると思うんですが…
やっぱり、気になるんですよw
いつも気になって、楽しみが増えていくんです。
なので、ずっと応援させてもらいますね
- 147 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 23:45
-
『今回の特別賞を獲得したのはぁ〜・・・』
「結局センセーと吉澤さん、同点でしたね。」
「ん。まぁ美貴が勝つとややこしいことになるからいいんじゃん?」
「アハハハ〜。吉澤さんですもんね。」
吉澤さんは昔っからいつも男前キャラで。
今までは吉澤に敵う人なんていなかった。
そして今日も同点という形でやっとライバルと呼べる人ができた。
やっと吉澤と対等に渡り合える藤本センセーが現れたことによって、吉澤さんはきっと嬉しいだろう、とあたしは思う。
『三年の新垣里沙さんです!!』
「キャアアアアーーー!!」
「ガーーキィさんっ!!」
「せんぱーーい!」
ん?今なんて・・・
『特別賞は藤本先生の応援演説を行った新垣里沙さんです!それでは新垣さんっ!!こちらへ!』
司会者が満面の笑みであたしを呼ぶ。
- 148 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 23:53
-
ザワザワザワ。
「は?あ、あたし?」
『新垣さーん?』
「いや、うそうそ。こりゃあドッキリってやつで・・・」
「あーもう。ガキさんが特別賞なんだってば。」
ポンッ!
藤本センセーに背中を押される。
「うわっ!ちょ・・・」
『それでは新垣さんに喜びのコメントをお聞きいたしましょ〜!』
司会者は戸惑うあたしに強引にマイクを渡すと、何歩か後ろに下がった。
『トントン・・・あー。マイクテスッマイクテス・・・』
「キャハハハ!!さっすがガキさん!おっもしろ〜い!」
「せんぱぁい!」
最前列で爆笑している数人のクラスメイト、その背後には亀子と田中ちゃん、そして彼女がいた。
- 149 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/18(日) 23:59
-
『えっ、えーっと・・・あたしはティチャーじゃないんですけど・・・』
亀子は相変わらず元気に手を振ってて、そんな亀子を恥ずかしそうに田中ちゃんが止めようとしていた。
『これってミスターなティチャーを選ぶコンテストなんっすよぉ。』
「知ってるよ〜!だけどたまらずガキさんに入れちった♪」
「せんぱぁい!絵里も迷わず先輩に入れましたよぉ!」
いや・・・それ主張するとこじゃないと思う。まぁ亀子らしいっちゃ亀子らしいけど。
『入れちった♪ってねぇ〜・・・っていうか担任に票入れろよ!!』
「だーいじょぶだーいじょぶ!センセーはあたしたちが入れなくてもいっぱい入れる人がいるからねっ♪」
どっからその自信がくるんだよ。
- 150 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/19(月) 00:07
-
「せーんぱい!!絵里ははなっから先輩に・・・モゴモゴ!」
あ、亀子の口が田中ちゃんに塞がれた。
「先輩!!れ、れーなも先輩に入れたっちゃよ〜///」
また顔赤くなってるよ〜。田中ちゃん。
『ハハハハ。あんがとねっ!えーっとこれはミスターティチャーを選ぶコンテストですが、例外であたしに票をくれた・・・』
あれ?何人だっけ?
「132人ですよ。」
忘れていたあたしに司会者がコソッと人数を教えてくれる。
『132人のかたがぁた!面白半分で投票した方もいるかもしれません。それでもあたしに票を入れてくれたってことは、それなりにあたしを認めてくれた・・・っていうか好意を持ってくれたってことだと思うんで、新垣は嬉すぃですっ!』
「キャアアアア!!」
- 151 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/19(月) 00:15
-
「ガーキさんっ!」
「ガーキさんっ。」
「ガーーキ先輩!」
「ガッキィさん!!」
観客からあたしコールが沸き起こる。
『はいはぁい。あたしがガキさんでっす!』
その歓声に答えて、後ろのほうの人にも見えるように大きく手を振る。
「キャーーーッ!」
「ニイガッキ〜!」
「ガキさぁん!!」
「センパ〜〜イ!」
『ありがとねぇ!』
最後にお礼をしてから、さっきの場所に戻る。
『新垣さんありがとうございましたっ!今回は・・・』
「ガキさん、人気者だね。」
「いやいや、センセーほどじゃぁあーりませんよ。」
「んや、美貴よりある意味人気・・・かもね。」
センセーがあたしの頭をポンッポンッと叩く。
- 152 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/19(月) 00:24
-
「ちょっとぉ〜。ガキ扱いしないでくださぁいよ〜!」
「だって『ガキ』さんじゃん。」
「うわっ、さっびぃ。藤本センセーギャグめっちゃ寒いっすよぉ〜。」
「うっさい、ガキ。」
「うおっ、出たぁ〜。藤本センセー必殺、きっつぅいお言葉。」
藤本センセーは相変わらずあたしの頭をワシャワシャと撫で続けた。
あたしは気になってた方を向く。
「・・・」
「アハハハ。ガキガキィ。」
そこには悲しそうにこっちを見ている彼女が立ってた。
バッ。
センセーの手を払い退ける。
「止めてくだっさいよぉ。」
「あ、ごめんごめん。怒った?」
「・・・」
彼女の悲しそうな顔見ていると
「ガキさん?」
「あ、いや。でーじょうぶですよ。」
「ふ〜ん・・・」
こっちが悲しくなるじゃん。
- 153 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/19(月) 00:30
-
『続きましてチャンピオンも今回は異例のお二人とさせて頂きますっ!藤本先生と吉澤先生、こちらへどーぞ!』
二人が前へと呼ばれる。
「ガキさん。」
藤本センセーがあたしに振り返る。
「はい?」
「・・・大切にしたほーがいいんじゃない?」
「えっ?」
「いや、なーんでもない。」
藤本センセーが吉澤さんの隣に並ぶと、また大歓声が起こった。
『みんな、投票ありがとー!!よしざーは・・・』
大切にする?
藤本センセーの言いたいことがイマイチわからない。
あたしは基本モノを大事にするほうだし・・・そんなお粗末なことはしてない・・・・はずなんだけど・・・・
なんだ?
なんなの?
- 154 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/19(月) 00:34
-
「ん〜・・・」
後ろから見る藤本センセーは久々で
なんだかたくましく見える。
「・・・」
『美貴ちゃんさんとよしざーは親友で・・・』
そーいえば
藤本センセーって
いっつも前向いてるな・・・
彼女は後ろ向きな、ネガティブな考えを見せたことがない。
いつも前向きで
あたしたちを引っ張ってきてくれてる
今だって
ほら。
あたしの前を行ってる。
- 155 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/19(月) 00:38
-
『新垣も、元々はあたしの中学、高校の後輩で・・・・』
センセーはいつも
いつも
みんなの前を行ってるのかな?
だったら
もしそうだったら・・・
藤本センセー
けっこうキツイっすよね?
いつも人の前を行くのって。
なんとなく
なんとなくだけど分かる気がする。
- 156 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/19(月) 00:42
-
だから・・・
そんな頑張り屋なセンセーだからこそ
彼女に惹かれたし
彼女が惹かれたんだと思う。
彼女も頑張り屋さんだから・・・
なんていうか
似たモノどーしってやつ?
でもさ・・・
二人が惹かれ合った理由
なんとなく分かるな
だってさ・・・
あたしは
二人ともすっごいと思えるもん。
あたしのスキな人が
あたしの認めた人に惹かれるなんて・・・
サイコーなことだと思う。
- 157 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/19(月) 00:47
-
『美貴ちゃんさんと一緒に優勝できてよかったかな、とよしざーは思いま〜す。』
「ワァァァァ!!」
でも・・・・
やっぱりキツイよ。
あたし以外の誰かと
キミが一緒にいるなんて・・・
しょーじきかなりキツイ。
だけど・・・
あたしのキツさと交換に
あなたに幸せがやってくるなら
それでもいい。
- 158 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/19(月) 00:51
-
『えっと・・・美貴もよっちゃんさんと二人で優勝出来たことが嬉しいです。』
キミが幸せになれるなら
あたしはどんなにキツくたって
耐えられる。
だって・・・
あたしは・・・
きっと世界でイチバン
イチバン・・・
キミの幸せを願うヤツだから
キミに幸せになって欲しい
世界でイチバンって言えるくらいに
幸せに・・・
なりなよ?
- 159 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/19(月) 00:53
-
あたしが・・・
キミの幸せを
誰よりも
イッチバン・・・
願うから。
神様、もしいるなら
どーか・・・
どーか彼女を
幸せで包んでやってください。
どーか彼女を
世界でイチバンの
幸せ者にしてやってください。
- 160 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/19(月) 00:58
- 今日三回目こーしん(笑)
774飼育さま>今回はあえてバレバレな感じにしちゃいました(^。^;)
どーぞご勘弁を(笑)
星龍さま>言葉はやっぱ考えて考えて作ってます。なんで褒めていただけてめっちゃ嬉すぃです(*^o^*)
名無しさま>予想は当たっちゃいましたか?(笑)ずっと応援していただけるなら、挑むところです( ^_^)/笑
- 161 名前:名無し 投稿日:2005/12/19(月) 01:24
- 予想はバッチリでしたw
リアルタイムで見てて、今までぼーっとしてました
こう…色んな気持ちが見えて、複雑です…
この主人公さんは、やっぱり鈍感なんですかね?
- 162 名前:774飼育 投稿日:2005/12/19(月) 02:05
- 更新乙です
また切ない方向へ・・・
涙がこぼれそうです!!
ガキさんカワイソ・・・
これからどうなっていくのかたのしみですよぉ
次の更新を楽しみにしながら布団へ・・・
ではでは
- 163 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/19(月) 23:17
- 更新お疲れ様です。
ちょっと目を離した隙に思わぬ展開に。
各人の思惑の違いがこれからどう作用していくのか。
楽しみです。
- 164 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/22(木) 00:57
-
――――――
――――――
――――――
――――――
「お疲れ様で〜す。」
舞台裏にはけたあたしとまこっちゃん、吉澤さんに生徒会の子たちが挨拶をしてきた。
「おっ、お疲れさ〜ん!!」
吉澤さんは相変わらず笑顔をふりまく。
「ナイスがんばりぃ!!」
まこっちゃんも吉澤さんに習って、笑顔。
「新垣先輩!」
「ん〜?」
後輩の一人があたしの前にやって来た。
「今回はホントに応援演説、ありがとーございました。」
「いや、あたしは大したことやってないからさっ。生徒会もいろいろ大変だったみたいだし・・・とりあえずお疲れ〜。」
「はい。新垣先輩のスピーチ、感動しましたよ!」
後輩が目をキラキラと輝かせている。
- 165 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/22(木) 01:04
-
「さっすが新垣でしょ〜?なんちゃってぇ。」
「アハハハハ!先輩ありがとーございました。」
「こんなことならお安いご用ですからぁ。まぁこれからも生徒会は大変だと思うけど・・・任務を全うしたまえ〜。」
「はいっ!!それじゃあ・・・失礼します。」
「おう。突き進めぇ。若者よぉ〜。」
背を向けた後輩に拳を向けて、エールを送る。
「ガキさん、あったしらもずいぶん若者っすよ〜?」
まこっちゃんが笑いながら、あたしの肩に手を乗せる。
「いやぁ〜、あたしはもう若者なんかじゃあーりませんよぉ。」
「充分過ぎるほど若いから、安心しなさぁい!!」
まこっちゃんが笑いを堪えながら、あたしの顔を見る。
- 166 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/22(木) 01:12
-
「あ、そーだ!今さっきさ、サッチーたちが来て『たこ焼きの材料がなくなったから、教室から取ってきて』って言われてもーたですわさ。」
まこっちゃんがあんまり似てないクラスメイトのサッチーの声を真似ながら、言う。
「あ、そう。ならまこっちゃん早く行かないと・・・」
「いや、この伝言はあたしに向けてじゃなくて、ガキさんに向けてっすよぉ。」
まこっちゃんが顔の前で両手をブンブンと振る。
「はい?なんであたしなのさ?」
材料を教室に取りに行くのなら、別にあたしじゃなくたって構わない。むしろ、あたしより力のある、まこっちゃんに行かせるべきだ。
「あんね、たこ焼き屋、思った以上に好評らしくて・・・あたしは店をきりもりしろってサッチーさまさまから言われたのさぁ。」
- 167 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/24(土) 13:48
-
あぁ、まこっちゃんは基本手際いいし、愛想もいいから店繁盛するもんね。
それに、まこっちゃんは売りつけるのがうまいし・・・うん、納得。
「ふ〜ん・・・で、あたしに材料を取ってこいと?」
「ハハハハ、そういうわけでござりますぅ〜。」
「はぁ〜・・・わかりましたよ。行けばいいんでしょ、行けぇば。」
まこっちゃんが頷く。
「そーいうことぉ。」
「はいはい。ちゃんと店の売り上げをウナギ登りにしてくっださぁいよ?」
まこっちゃんに軽く手を振ってから、教室に向かう。
タッタッタ・・・
「外はお祭り騒ぎなのに・・・」
階段を上がって行くと同時に騒がしさが消えていく。
タッタッタ・・・
そんな中に、あたしの足音だけが響く。
- 168 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/24(土) 14:00
-
タタタタタ・・・
「いっそご〜・・・」
なんだか嫌な予感がして、階段を少し駆け足で進む。
自分の教室がある3階に着く。
「あ!先ー輩!」
「うぉ。亀子に田中ちゃん。」
階段を上がりきったところで亀子と田中ちゃんが浴衣姿で立っていた。
「浴衣じゃん。」
「先輩こそハッピ着てると。」
「たこ焼き屋ですからねぇ〜。そっちは・・・浴衣喫茶だっけぇ?」
「はい!絵里似合ってますかぁ?」
自分を主張してくる亀子に、田中ちゃんと二人で苦笑い。
「アハハ・・・」
「はぁ・・・朝からこればっかりなんですよぉ。」
「ねぇねぇ、絵里似合ってます?」
反応しないせいか、あたしのハッピを掴んで体を揺らされる。
- 169 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/24(土) 14:10
-
「に、似合ってるよ。ね?田中ちゃん。」
「はい。絵里、バリ可愛かよ。」
「アハハハハ♪良かったぁ〜。」
亀子が一人で喜んでいるのを見て、田中ちゃんとあたしでまた苦笑い。
確かに亀子はフツーに可愛いい。ただ、自分を主張しすぎるところがあれだけど・・・
隣にいる田中ちゃんだって負けないくらい可愛かった。
こんな子たちがいたら、フツーは惚れちゃうんだろーなぁ・・・
あの子に出会ってなかったら。
ふと、昨年の祭りで浴衣を着ていた彼女を思い出す。
「あ、そーだ。なんでここにいんの?」
頭に浮かぶ、彼女の笑顔を消す。
「あー、絵里たち、高橋先輩に用があって・・・」
「ふ〜ん、そっか。」
妙に気を遣ってくれている亀子に、あたしは笑顔で返した。
- 170 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/24(土) 14:23
-
たこ焼きの材料を取りに来たことを思い出す。
「じゃあ、あたしちっと急いでるからぁ〜。」
「あ!先輩!」
「ちょっと待つと!」
後ろにいるはずの二人に向けて手を振って、教室のドアまで行った。
「・・・・ゃん。」
「・・・や・・よ。」
え・・・?
今の時間、うちの教室には誰もいないはずなのに、中から微かに声が聞こえてきた。
ドアの小さなガラスのところから、中をのぞき込む。
「だれ・・・だ・・・よ・・・」
中を見た途端、あたしの心臓が飛び上がる。
ドックン・・・
「な・・・」
ドックン・・・
- 171 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/24(土) 14:30
-
「美貴さ・・・その・・・好き・・・なんだ・・・」
「センセ?」
必死で想いを伝える藤本センセーと、そんなセンセーを不思議そうに見る彼女がいた。
「・・・」
スッ・・・
あたしは思わず、ドアに背をくっつける。
「美貴ね、愛ちゃんのことが・・・・好き。」
ガタン。
「ちょ・・・センセ・・・」
こもった彼女の声が聞こえる。
きっと・・・
抱きしめてるんだろうな。
「好きなんだ。愛ちゃんのことが。」
「センセ〜・・・」
彼女の声が震えてる。
「・・・・」
「好きだよ。」
「あーし・・・」
- 172 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/24(土) 14:42
-
ガサッ・・・
「なーにやってんだよ。あたしは。」
髪をかきあげて、笑う。
「行こ・・・」
たまらずドアを離れる。
タッタッ・・・
「バッカみたい・・・」
笑う。
笑うしかなかった。
「はは・・・たこ焼きの材料取れねぇー・・・」
タッタッタ・・・
「先輩!!」
「せーんぱい!」
亀子と田中ちゃんが心配そうにあたしを見る。
「・・・ハハ、やっぱさ、気持ちなんて邪魔だったわ。」
「先輩・・・」
「・・・センパイ?」
元々あたしは
「スキとかカワイイとか・・・思わなかったらこんな風になんなかった・・・のに・・・」
「・・・」
「・・・」
彼女の眼中になかった。
- 173 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/24(土) 14:54
-
「・・・でもさ、笑ってくれんだよ。愛ちゃんは・・・」
彼女は優しいから
「あたしが・・・振ったのに・・・中途半端にサイアクなの知ってても・・・」
「先輩・・・」
亀子に抱きしめられる。
「・・・どーしたらいいんだよ・・・」
やっぱりあたしは
彼女がスキだよ。
「先輩。れいなは・・・先輩のこと大好きです・・・」
「た・・・なかちゃん?」
「全部わかってて・・・高橋先輩の全部をわかってて・・・高橋先輩の幸せを願ってあげられる先輩は・・・偉かよ?」
「れいな・・・」
田中ちゃんが、あたしの頭に触れる。
「先輩は偉かよ。」
「っつ・・・」
今まで溜め込んできたものが
解放された気がした。
- 174 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/24(土) 14:59
-
やっぱり・・・
彼女の幸せがイチバンだけど
苦しかった。
彼女の幸せな姿を見ることは
あたしの幸せなはずなのに・・・
ココロがチクチク痛い。
できれば
出来ることなら・・・
彼女と
あたしの幸せが
一緒なら良かった。
- 175 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2005/12/24(土) 15:05
-
彼女と
あたし
幸せな時が・・・
来れば良かった・・・
手離さなければ
良かったよ・・・
- 176 名前:ワクワク 投稿日:2005/12/24(土) 15:10
- 更新でーす!
名無しさま>主人公さんは・・・むしろ他の登場人物のがドンカンな気がします((((((((^_^;)
774飼育さま>布団でグッスリ眠れましたかい('_'?)今回もちょっとだけ進めました…(笑)
名無飼育さま>もうね、作用しまくっちゃってますよ(笑)
今後もまだまだ作用し続けますよ( ^_^)/
- 177 名前:名無し 投稿日:2005/12/24(土) 23:14
- 更新お疲れ様です。
イブに…イブなのに…なんて切ない…!!
この切なさのまま眠りにつきたいと思います
主人公さんが幸せになれますように…
ワクワクさんも、この時期は寒いのでお身体に気をつけて下さいね。
- 178 名前:星龍 投稿日:2005/12/25(日) 10:41
- 更新お疲れ様です。
現場目撃なんて・・・。
なんと切ないんでしょう。
皆さんが幸せになるよう願ってます。
- 179 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/25(日) 13:58
- 更新お疲れ様です。
揺れてますねぇ。うーん
次回更新楽しみにしてます。
- 180 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 15:40
-
―――――
―――――
―――――
「あれ?ガキさんまだ来てないじゃん。」
「いや、しっかしまさかあんたが告白なんてねぇ〜。」
キュッ。
「あ、愛ちゃんおはよー。」
「おはよ〜・・・。」
こないだガキさんとツーショットで写真を撮ってたクラスの子とそれを茶化してた子があーしに挨拶。
「愛ちゃん。」
「なに?」
「・・・いーよね?愛ちゃん。」
その言葉に思わず振り返る。
「・・・いーも悪いも・・・」
ちょっと戸惑ってる彼女。
「頑張ってね。」
「え・・・?」
「あーし応援してるやよっ。」
「いいの!?じゃあ本当に愛ちゃん、ガキさんのこと・・・」
その子を見てちょっと笑ってみた。
- 181 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 15:51
-
ザワザワ・・・
周りの子たちもあーしの発言にびっくりしたみたいで、妙にザワザワし始めた。
「本当に愛ちゃんってガキさんのこと好きじゃなかったんだねぇ〜。」
「ねっ。あたしてっきり二人は付き合うもんだと思ってたよ〜。」
「ちょ、ちょっと!じゃあ愛ちゃんの好きな人って・・・」
クラスであーしの話題になるなんて珍しい。あーしはガキさんと違って目立つほうやないから。
「ヘヘッ・・・。」
ドアに向かいながら、振り返ってみんなに微笑む。
- 182 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 15:52
-
「ガキさんやよ。」
- 183 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 16:00
-
タン。
「はぁ・・・」
我ながら情けない。
「あーあ・・・」
だけどやっぱり昨日のはきつかった。
タンッ。
「ハハハ・・・」
どっぷりだな。
彼女に・・・。
「なっさけな・・・」
教室まで行く階段があの時を思い出させる。
「行きたくないな・・・」
こんなこと言ってもやっぱしあたしの足は前へ前へと進んでて。
「しゃーないか。」
結局は彼女に会いたいんだなって納得させられた。
タタッ。
誰かが走ってんのか、いくつかの足音が聞こえる。
「朝から元気ですねぇ・・・」
- 184 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 16:09
-
「愛ちゃんっ!」
タンッ。
「え・・・?」
まさかと思って下を向いていた顔を上げてみる。
「あ、おはよ!ガキさんっ!!」
「あ・・・お、はよ・・・」
やっぱり。
クラスメイトを後ろに従えた彼女だった。
「見て見て!!昨日使ってたのぼり!今、下に持ってくとこやったんやぁ〜。店のほうは大体片付いたん?」
「・・・」
目の前にいる彼女に久しぶりに話しかけられた感動と、なんで話しかけられたのかわかんないのの両方で頭がごっちゃごちゃ。
「ガキさん!」
ガシッ。
彼女の後ろにいたクラスメイトにカバンを引っ張られる。
「うわっ。ちょ・・・」
「カバン、教室に置いてきてあげるよ!二人とも先行ってて!」
- 185 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 16:17
-
「え?あ、ちょ・・・え?」
タッタッタ。
無理矢理クラスメイトにカバン持ってかれて、彼女と二人にされた。
「―――ガキさん、あーしふっ切れたんや。」
「あっ、そ・・・」
センセーと付き合うんだね。
タッ。
彼女があたしより何段か下がって行くのを目だけで追う。
「あ、そーや!」
もう行っちゃうんだ、と思ってたら彼女はまた振り返った。
「バスケ。」
「え・・・・?」
そんな笑顔で見ないでよ・・・。
「また一緒にやろーな!」
タタッ。
のぼりをなびかせながら走り去る彼女。
- 186 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 16:21
-
「んだよ・・・」
あんな笑顔見せられたら
「ちっきしょ〜・・・」
あたしがくよくよしてる場合じゃないのに・・・
「人のことも考えてよね・・・・」
また泣きそうになった。
でも
今度は悲しいとか
苦しいとか
そんなんじゃなくて
純粋に彼女が幸せになったことが嬉しくて。
だから・・・
涙が出そうになった。
- 187 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 16:25
-
「・・・あたし・・・いつからこんな涙腺弱くなったんだろ・・・」
こんなこと言ってても心ではちゃんとわかってるんだよね。
『彼女を好きになってから』
あれからだってこと。
もう、あの時を繰り返さない。
もう逃げないんだ。
だから・・・・
彼女のキモチをきちんと受け入れる。
もう・・・・
逃げない。
- 188 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 16:31
-
タタタタタッ。
「ガキさん。」
今度はこないだ写真を撮った子が、急ぎ足で下りてきた。
「あ、お、おはよっ////」
「よっす。」
「あ、あの!ね・・・///」
「ん?どった?」
立ち向かうんだ。
彼女に
彼女のキモチに。
だってそれが
あたしの
あたし自身が選んだ道だから。
それが『彼女の幸せ』に続く道なんだから・・・。
- 189 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 16:33
-
―――――――
―――――――
―――――――
―――――――
- 190 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 16:41
-
「ばいばぁい!」
「じゃあね〜。」
「また明日!」
放課後、いつものように自転車置き場は帰りの挨拶でにぎわってた。
「あ・・・・」
そんな中に見慣れない人。
「やっほ。」
自転車の後ろに腰かけてる、彼女がいた。
「今日はあーしが送るやよ。」
そう言って彼女は自転車にまたがった。
「って言ってもガキも自分の自転車あるやろーからついてくだけやけどねっ。」
ニシシと楽しそうに彼女は笑っていた。
- 191 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 16:50
-
―――――
―――――
―――――
キキッ。
「ここ、今のあたしんち。」
「・・・ほんと全然、反対・・・」
ガチャ。
自転車をアパート指定の駐輪所に置いて、階段の手すりに手をかける。
「・・・あの・・・」
明らかに何か言いたげな彼女。
「あたしも・・・」
「ふぇ?」
彼女の言葉を遮る。
「あたしも、もー話しかけないで。」
これがあたしの出した道。
「・・・ガキさん!?」
階段を登ろうとしたけど、彼女の声で止められた。
- 192 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 16:58
-
ガシャン!!
彼女が自転車を倒した音。
「・・・わかんないんだよ。」
「・・・」
彼女に背を向けたまま言葉を浴びせる。
「・・・愛ちゃんとダメんなって、友達ならって思って・・・したら、話しかけないでとか言われて・・・」
『友達になれるように頑張るから』
あのときの彼女の言葉が頭に響く。
「オマケに愛ちゃんは藤本センセーと付き合ってて・・・」
「なんで・・・それ・・・」
「昨日、教室行ったらたまたま見ちゃったんだ・・・センセーが愛ちゃんに告ってるとこ。」
なに言ってんだ、あたしは。
「・・・だから、あたしも友達になるよう頑張るから・・・」
愛ちゃんが笑ってられるよーに。
- 193 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 17:03
-
「・・・わかった。もー話しかけん。」
「・・・・」
終わった・・・。
一世一代のあたしの恋。
彼女の恋を応援できるならそれでいい。
そう思うと心にかかってたもやが晴れて、自然に笑えた。
彼女には背を向けたままだったけど。
それでも
彼女の恋を受け入れられていることが
嬉しく思えた。
- 194 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 17:04
-
「でも、好きやから。」
- 195 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 17:11
-
「え・・・?」
予想だにしたかった彼女の発言に思わず振り返った。
「藤本センセーの告白断った。」
「な・・・んで・・・」
あんなに幸せそうだったのに・・・
「あーしは・・・ガキさんがあーしをどう思っとっても・・・誰かと付き合っても・・・」
「・・・・」
彼女の目は
「好きで・・・いるから・・・」
大粒の涙でいっぱいだった。
「ガキさんを好きでいる・・・こと・・・だけは・・・グスッ・・・許して・・・」
- 196 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 17:15
-
「・・・・・」
「・・・ごめ・・・ごめんな・・・」
いつも泣き虫な彼女は
今日もやっぱり泣き虫だった。
「・・・ごめんな――――こんな・・・こんな好きんなって・・・」
「つっ・・・」
グイッ。
泣き虫さんの腕をそっと引っ張る。
- 197 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 17:21
-
ガバッ。
そして泣き虫な彼女を包んだ。
「ガ・・・キ・・・さん?」
そんなに泣かないで。
「・・・なんで、藤本センセー断わっちゃったのさ。」
「・・・やってぇ・・・」
あたしはさ、
「・・・あんな楽しそうな顔してたじゃんか・・・。」
「グスッ・・・でも・・・」
「・・・バカでしょ?」
「バカでええもん・・・」
「・・・ほんと、そこまでして・・・こんなののどこがいいんだか・・・」
「わからんっ・・・でも・・・」
笑ってるほうが好きだから。
- 198 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 17:27
-
「スキだよ。」
「ふぇ・・・え・・・?」
笑ってよ。
「あたしは愛ちゃんのこと、忘れた日なんてない。」
「・・・ガ、ガキさぁぁん・・・ふぇぇ・・・」
「あーあ、ほんとあたしよりセンセーのが幸せになれただろーになんであたしなんか選んだのさ・・・」
「・・・わからん・・・」
「あはは、まぁいいや。」
包んでいた泣き虫さんをいったん離して、笑顔で涙を拭ってあげる。
「あたし、ちょっとわかったから。」
愛ちゃんが選んだ理由。
なんとなくだけど
わかったよ。
- 199 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 17:33
-
―――――
―――――
―――――
「ちょっとちょっと!見たぁ―――!?」
「え?なにがぁすっかぁ?」
「まこっちゃん、情報遅いよ!!ガキさんと愛ちゃん!手繋いで登校してきたって!」
「あ、そーなんだ。」
「なにそれ!まさか・・・知ってたの!?」
「なーんとなく。」
「いつから付き合ってんの!?あの二人!」
「え?中学から・・・あれ?もっと遅かったっけ?」
「うっそ!すっごーーい!」
ガラガラ・・・
「あ、噂をすれば。」
全員がいっきにこっちを向く。
「な、なんっすか。みんな朝から怖い・・・」
- 200 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 17:40
-
「相棒っ!!あっしに黙ってるとはなにごとだっ!」
「は?何が?」
まこっちゃんは相変わらず主語なしなんだから。
「何が?じゃないっすよ!!その手!」
右手を指差される。
「あ、このリストバンドいーっしょっ?あげないよ?愛ちゃんからあたしへのプレゼントなんだから。」
「違うよ!リストバンドじゃなくて、手を繋いでることをあっしは言ってるんでーす!」
なんだそのことか。
「あ、んっとね、あたしと愛ちゃん。付き合ってます。」
「今さら言っても遅いよっ!!」
プンプンと怒るまこっちゃんをおかしくて見てたら、あたしのあげたリングをはめた彼女が後ろからまこっちゃんを見る。
- 201 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 17:47
-
「ごめんな、小川さん。」
「あ、いや、いいっすよ。高橋さん。」
おいおい、なに軽く許しちゃってるんですか小川さん。
っていうか、態度違すぎ。
「ってうぉい!人の彼女の顔見てデレデレするなぁ!」
「ハハハハ・・・面目ない。」
「面目ないじゃないよっ!!」
「ガキさん、ちゃっかり高橋さんのこと『彼女』って言ったぁ〜!」
「あ・・・///」
しまった・・・
「あ、照れてる照れてる!」
「う、うっさい!バカまこ!!」
「うわぁーー。」
「待て、こら!」
彼女、今は本当にあたしの『彼女』になった愛ちゃんと目を合わせて笑いあってから、バカまこを追いかけた。
- 202 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 17:55
-
『天使って本当におるかなぁ?』
うん、いたよ。
『もし、もしも本当に天使がおったら?』
いないと思ってたんだけどさ、見つけたよ。
本当に羽根があって飛んだりとか、頭の上にわっかがあるわけじゃないんだけどね。
でも・・・・・
見つけたよ。天使。
おとぎ話に出てくる天使たちより、もうなん万倍も綺麗で可愛くて
でもちょっと訛りのある
「愛ちゃんって名前の。」
そう。
あたしだけの天使をね。
- 203 名前:もしも天使に会えたなら 投稿日:2006/01/09(月) 17:56
-
END
- 204 名前:ワクワク 投稿日:2006/01/09(月) 18:01
- つ、ついに完結したぁ((((((((^_^;)
名無しさま>お気遣いありがとうございました。やっとのことで完結ですよ(>_<)
星龍さま>こんな感じの結末にしてみましたが、いかがでしょーか?(笑)
名無飼育さま>遅くなりましたが完結しました(^。^;)
結末考えてる間に時が流れすぎました(笑)
次回作も考え中ですので、もしよろしければ読んでやってくださいm(_ _)m
- 205 名前:774飼育 投稿日:2006/01/09(月) 20:44
- 完結お疲れ様です
良かったですよぉぉぉぉ・・・
泣きそうです・・・(TT)
次回作考え中ですか・・・もちろん期待しております
- 206 名前:名無し 投稿日:2006/01/10(火) 17:37
- 完結お疲れ様です!
いやぁ、よかったよかったv
私の中でのベストカップルなんですよ?このお二方。
まこっちゃんのキャラが好きですね。
次回作も読みますよ!絶対!!
- 207 名前:星龍 投稿日:2006/01/10(火) 18:45
- 完結お疲れ様でした。
最後は自分が願っていた結末でした!!
すっごく良かったです。
自分は作者様についていきます!!(笑)
次回作も絶対読みます。
- 208 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/10(火) 22:34
- ついに完結ですね。お疲れ様です。
待ってましたよー。
どうなるのかと思いつつなかなか良かったです。
次回作、期待してます。
- 209 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 17:34
-
――――――
――――――
――――――
ガチャ・・・・
――――――
――――――
――――――
- 210 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 17:35
-
今日もまた
いつものように
扉を開けると
空が広がっていた
- 211 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 17:36
-
もしも変身できたなら
- 212 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 17:43
-
「・・・なんっすか、話って。」
今日もいつもと変わらない。
「テメェ、とぼけてんじゃねーよ!!」
「はぁ?意味わかんないんですけど。」
「藤本、オメーだけはゼッテーぶっ殺す!!!」
今日もまた、見知らぬやつらに呼び出された。
「はい?ってか美貴、あんたたちになんかしたっけ?」
「っつ!テメェー!!」
あーあ、またいつものパターンじゃんよ。
ヒョイ。
「くっ・・・避けてんじゃねーよ!」
「いやいや、黙って殴られてるほーがおかしいって。」
「うるせぇ!かかれっ!!」
今度は6人いっぺんにかかってくる。これもまたいつもと変わりない。
- 213 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 17:49
-
ススッ・・・
そして美貴は美貴でいつもと同じように、ネクタイを緩める。
「はぁ・・・まあ、やれるもんならやってみなよ。」
クイックイッ。
手で相手を挑発。
「舐めんじゃねぇ!!」
一人がものすごい勢いで美貴に向かってくる。
ヒョイ。
「だーから、やけくそにかかってきたってムダだってーの。」
「ハハハハ!馬鹿め!」
今日は珍しく相手が笑った。
「何笑ってやが・・・・」
バキィ!!!
言葉を返す前に、頭に激痛が走る。
「っつ・・・」
自分の手を後頭部にやる。
「・・・あーあ・・・」
手を見ると、指先が真っ赤に染まっていた。
- 214 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 17:56
-
「プハハハ!ざまぁみろ!油断してっからんなことに・・・」
「うるさい。」
バゴッ!!
「うぐっ!!」
ムカツクから、笑ったやつの腹を一蹴り。
「たけし!!」
美貴の蹴ったやつはたけしって名前らしい。仲間がそいつに駆け寄る。
「くそっ!!おい。」
「はい。」
今日はちょっといつもの違うらしい。
複数の奴らが金属バットや鉄の棒を持ってた。
「・・・ふーん・・・」
「うりゃあああ!」
今度は返事したやつがかかってきた。
ガシッ。
まずはバットを素手で受け止める。
「ヒィッ!」
こんなんでビビってんじゃねーよ。
「お前か、さっき美貴を殴ったのは。」
- 215 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 18:08
-
フルフルフル!
すごい勢いで首を振るそいつ。
「あっそ。じゃあね。」
ガツン!!
ビビってるそいつに頭突きをくらわしてやっると、見事にのびきっていた。
「・・・美貴の・・・頭、殴ったやつ。だれ?」
呆然と立ち尽くしている残りの奴らを一睨み。
「うっ・・・」
たじろくくらいならこんなことすんなよ。
「だれだって聞いてんだよ。」
ガシガシ。
殴られた頭をかきながら、集団に近付いていった。
「ふーん・・・」
全員の持っている棒をひとつずつ見ていく。
- 216 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 18:15
-
そしてひとつのバットに美貴の目が止まる。
「あっ。あんたのバット、ヤケにへこんでるし、しかも血ぃついてんじゃん。」
そいつに笑顔を向ける。
「こ、これは・・・」
「・・・美貴を殴ったわけね。」
「う、うわぁぁぁぁ!」
やっとこさ、状況の悪さに気付いたのか、下っぱ君はドアに向かって走り出す。
「逃げてんじゃ・・・」
ガシッ!
下っぱ君の後ろ襟を掴む。
「ねーよ!!!」
ガシャーン!!!
そして、そのまま網に向かって投げてやった。
カツカツカツ。
網にぶつかった下っぱ君は、恐怖のあまりか、それとも力のせいか、白眼を剥いていた。
「あーらら、白眼になっちゃってるし。」
- 217 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 18:20
-
「お、お前ら!や、やるぞ!」
親玉らしきやつが手下たちに向かって叫ぶ。
「うわぁぁぁぁ!」
「トォリャアア!」
「コンノォォ!!」
今度は全員かよ。
「あー・・・めんど。」
バキッ!!
ドガァ!
ガッシャン!!
ボカァン!
ドゴッ!!!
- 218 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 18:25
-
「プハァー・・・」
クイッ。
殴られて血が出ているところを軽く拭く。
「さーてと、今日も授業にいきますか・・・」
キィ――――
今日もいつものように全員倒してから、屋上のドアを開けた。
「今何時間目だろ?」
美貴の背中には、白眼を剥いて、気を失っているやからが何人も転がっていた。
「あーめんど。」
- 219 名前:ワクワク 投稿日:2006/01/23(月) 18:30
- 久々に更新です!
774飼育さま>泣いてくれましたか?(笑)期待をしょっての新作スタートです(((^_^;)
名無しさま>ベストカップルですかぁ。このカップルは初だったのでどーかなと思ってるうちに終わってましたよ!(笑)
星龍さま>ついにやっちゃいますよ新作(笑)またまた懲りずに続き物ですよ(>_<)
名無飼育さま>良かったと言っていただけるだけで書いたかいがあります((^_^;)
またもや、新作を始めてしまいました(苦笑)
- 220 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 21:59
-
***
- 221 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 22:14
-
コソコソ・・・
「・・・」
また相変わらず美貴が通ると噂話ばっかコソコソとしやがって・・・
美貴が廊下を通るといつもこうだ。
みんなも美貴をチラチラと見ることが日課になってんのかもしれない。
「あっ!」
ヤベ・・・・
今、イチバン見つかりたくない人が前からこっちに駆けてくるのが見えた。
「藤本!!!」
「なんですか?」
「なんですか、じゃないだろ!!」
この人は矢口先生。
美貴たち3―3の担任の先生やってる人。ちっこい女の先生。明るいし、相談もよくのってくれるから人気なんだ。
- 222 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 22:19
-
ただ・・・・
「藤本、一緒にこい!!」
「えぇ〜、美貴は遠慮しときます。」
「バカか!藤本に拒否権なんてないんだよ!」
「はぁ・・・」
お節介なんです、この人。
「ほら!」
美貴よりも小さい体で、美貴の制服をがんばって引っ張る彼女。
「はい・・・」
こうなったら最後。結局は彼女についていくしかないんだ。
「やってらんねぇ・・・・」
「なんか言った?」
「いや・・・」
これも毎日変わらず行われていることだ。
- 223 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 22:24
-
そうそう美貴自身の紹介、忘れてました。
美貴は藤本美貴。
ハロモニ学園の3年3組所属。
美貴なんて女っぽい名前だけど、れっきとした男です。
ただ、不良っていうコブツキなんですけどね。
目つき悪いし、髪ちょっと茶色だし、まぁ調度いいかなと思ってね。
あ、でも、制服はちゃんと毎日着てます。
Yシャツはいつも血が付いてるけどね。
まぁそんなわけで美貴は男なんでよろしく。
- 224 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 22:31
-
―――――
―――――
―――――
ガラガラ・・・
あぁ、やっぱりここですか。
前を歩くちっこい先生がたどり着いた先は、やっぱりいつもお決まりの場所だった。
「藤本、入んなさい。」
なんでここに来るといつも先生っぽくなるんだよ。
と思いながらも、今さら抵抗したところで、呼び出しをくらうので、そのまま後に続いた。
「ん?矢口、授業終わったんか・・・ってお前!」
「今日も・・・らしいよ。」
「はぁ・・・はよ来んかい!!」
矢口先生と話してる、パツキンの男教師、中澤先生に呼ばれる。
この人は3年の学年主任でイチバン偉い。そしてイチバン恐い。
- 225 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 22:38
-
「ども。」
「ども、じゃないわ!!お前、何回ケンカしたら気ぃすむねん!」
「いやぁ、あと・・・卒業するくらいまでは・・・」
わざとふざけてみる。というよりはふざけてないとやってられないのが現実。
それに、実際問題、美貴のケンカは卒業するまでなくならないと思う。
「ふざけんなや!!俺がどんだけ言っとっても止めん気か!」
「いや、だってケンカ売られるんっすもん。」
「だからって買うやつがどこにおる!?」
「ここに。」
バシッ!!!
おもいっきり頭を叩かれた。
「いって・・・」
「お前な、いい加減にせぇや!」
「・・・」
中澤のセンコーから視線をそらす。
- 226 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 22:43
-
ケンカを止める気なんてさらさらない。
だって
バカにされたらやり返す。
これが美貴のポリシーだから。
「はぁ・・・もうええ。とりあえずケガの手当てでもしろ!」
中澤もついに諦めたのか、アゴで出ていくように促す。
「・・・」
美貴は無言で職員室から立ち去った。
―――――
―――――
―――――
- 227 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 23:06
-
ガラガラ・・・
―保健室―
「はいは〜い!ちょっと待つべさぁ!」
「・・・」
ドカッ。
とりあえずいつもの定位置に座る。
「あー・・・今日も派手にやったんだべね。」
「ウルセー。」
美貴がこんなへらず口聞いてもニコニコ笑ってる保健室の先生。
「どれどれ・・・ありゃりゃ、今日は後頭部から血がダラダラだべな。」
そう言いながら彼女は手当てをしてくれた。
「はい。完成!」
「別に包帯なんて巻かなくていいのに。」
「なーに言ってるべか!なっちはこれでもプロなんだよ?」
そう言って彼女はまた、美貴の前で微笑んだ。
- 228 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 23:14
-
「どいつもこいつもお節介なんだよ。」
「アハハ。なっちも矢口も裕ちゃんもみーんな藤本のことが心配なだけだべ。」
「それがお節介なんだよ!」
ガシャン!!
ソファーの足を一蹴りして、ドアに手をかける。
「も〜、モノに当たるんじゃないの。」
通称保健室の天使、安倍先生が笑って書類を直し始めた。
フン・・・なんでいっつも笑ってんだよ、このセンコーは。
ガラガラ・・・
保健室から出ていくときに安倍先生が
「もうここにこないよーにするんだよ。」
と言っていたのが微かに聞こえた。
- 229 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/01/23(月) 23:14
-
***
- 230 名前:ワクワク 投稿日:2006/01/23(月) 23:15
- 今日はここまで!
- 231 名前:774飼育 投稿日:2006/01/24(火) 00:52
- 新作待ってました!!
激しく期待しております
そうですか・・・男設定ですか・・・
面白そうですよ!!
次回更新待ってます
- 232 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/05(日) 15:14
-
***
- 233 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/05(日) 15:22
-
ガラガラガラ!
思いきり音をたてて扉を開けた。
「ふ、藤本か。早く座りたまえ。」
美貴が入ると、ちょうど物理の授業が始まっているところだった。
「・・・」
ガタン!
ドサッ。
わざと大きな音をたてて自分の席に座った。
「お、オホン!ここはだな・・・」
教師なんてろくなのがいない。
この物理の教師だってそう。美貴が入ってくると一瞬怯む。そして美貴が存在しないかのように授業を続ける。
- 234 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/05(日) 15:24
-
あーダルい。
いろんなことをごちゃごちゃ考えるのは好きじゃない。
カタッ。
机にうつ伏せて寝ることにした。
- 235 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/05(日) 15:35
-
――――――
――――――
――――――
「いったぞ!」
コロコロ・・・
「ミキティ!」
あぁ、パス出さなきゃ・・・
「こっち!」
待って、今パスを・・・
「早く!」
だからそんなに遠くに行くなよ。
『・・・ちゃ・・・』
待てって言ってんじゃん。
『ね・・・』
わかってるって。
「ミキ・・・。」
――――――
――――――
――――――
- 236 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/05(日) 15:41
-
「美貴ちゃん!!」
気がつくと肩をゆさゆさ揺らされていた。
「ねぇってば!」
美貴に慣れ慣れしく触ってくるやつはクラスにただ一人、加えて周りより高い声で美貴のことをチャン付けで呼ぶとなったら、さらにそいつしかいないと絞られる。
「うるせぇ。」
「なによ〜、せっかく起こしてあげたのにぃ。」
「梨華ちゃん、止めときなよ〜。」
石川梨華だ。
別に仲が良いわけじゃない。だけど、いつもこいつが美貴に絡んでくる。
- 237 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/05(日) 15:46
-
またあの夢か・・・
もう何回この夢を見たかわからないくらい見ていた。
「美貴ちゃ〜ん。」
「んだよウッセーな。どっか消えろ。」
「ひっどぉい!」
「ほら、梨華ちゃん。藤本くんもこう言ってるし・・・」
石川の後ろでさっきから止めてるやつは・・・確か・・・柴田?とか言うやつ。
「えー、しばちゃんいいじゃない。美貴ちゃんと話しようよ〜。」
「・・・」
無視。こいつはとことん無視に限る。
- 238 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/05(日) 15:51
-
大体、なんでコイツが美貴に絡んでくるのかがわからない。
「ね〜!美貴ちゃん。」
「・・・」
コイツは頭良くて常に学年トップ3に入ってるし、スポーツ万能でテニス部の部長やってるし、生徒だけじゃなくセンコーたちの信頼もあつくて学級委員やってる。
「美貴ちゃぁん!」
「死ね。」
こんな完璧なやつがわざわざ学内一の悪につっかかってくる意味がわからなかった。
- 239 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/05(日) 15:57
-
「おーっす。」
廊下側の窓からひょっこりと姿を現すやつ。
「あ!よっすぃ〜!」
「またやってんのかよ、梨華ちゃんは。」
「ヘヘヘン!」
「威張るとこじゃないっしょ。」
石川の頭を撫でるソイツ。
「キャア!よっすぃだぁ♪」
「「「よっすぃ〜!!」」」
「はいはぁい。」
「「「キャアァァ!」」」
ソイツが笑顔で手を振るとクラスの女どもがうっとり。
ウゼェ。
- 240 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/05(日) 16:03
-
女どもにキャアキャア騒がれてるアイツは吉澤ひとみ。
学内一のイケメンって騒がれてる3―1在籍のやつ。
やつはスポーツ万能でフットサル部のキャプテンやってるらしい。
「んあー、よしこすごいね。」
ピクッ。
ああこの声・・・
思わず反応してしまった。
「ごっちぃん!」
「あは。」
「「「キャアァァ!」」」
爽やかな笑顔で女どもを虜にするコイツは吉澤に次ぐイケメンで同じく1組、フットサル部。頭も良いらしい。
- 241 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/05(日) 16:08
-
イケメンコンビと学園な綺麗どこ石川が集まった光景によってクラスがざわつく。
「るせーんだよ・・・」
せっかく人が寝ようってときに来やがって。
無駄だろうが、もう一度机にうつ伏せて寝ようと試みる。
「・・・」
だけど、目はパッチリとしていた。
せっかくの休み時間が・・・
まぁ美貴の場合は常に休み時間だけど。
それでもあの集団は迷惑だった。
- 242 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/05(日) 16:10
- 短いですが(^。^;)
774飼育さま>面白そうと言っていただけるとは思いませんでした((((((((^_^;)
更新が遅いにも関わらず、いつも読んでくださってありがとうございますm(_ _)m
- 243 名前:774飼育 投稿日:2006/02/05(日) 20:42
- やはり 面白そうな展開に・・・
続きに激しく期待しております
- 244 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/07(火) 23:18
-
―――――
―――――
―――――
ヒュー・・・・
あぁ、やっぱ春の風は暖かくて心地いい。
あの後、結局ずっとうるさいから現在、4時間目サボり中。
「ふぁ〜・・・」
やつらのせいでいつもよりちょっと寝不足。
そんなときは決まっていつもここで休憩。
美貴はサボるときは常に屋上のさらにちょっと上に出っ張ったアンテナがある、イチバン高いここか保健室。
大概はここだった。
「春はいいねぇ・・・」
目を瞑ると直で風を感じることができるここが好きだ。
何よりもイチバン高いってとこが美貴のお気にポイント。
- 245 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/07(火) 23:22
-
ここに登ってくるには、屋上からさらに短いハシゴをつたってこなくちゃならない。
そのせいか、美貴がいるせいかはわからないけど、ここに登ってくるやつはいない。
用は美貴の縄張りってとこかな。
「ふぁ・・・」
また欠伸が出た。
とりあえず昼休みくらいまで寝て過ごそう。
その後の授業は気分次第。
- 246 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/07(火) 23:28
-
ヒュオオオ・・・
ブルッ!
寒む。春ってこんな寒いっけ?
美貴の体に容赦なく吹き付ける風。いつもより増して寒い。
「んだよ・・・」
しかも、ヤケに首もとだけ寒い。
「勘弁しろっつーの・・・」
首もとのエリを立てようとするけど、エリが見つからない。
「は・・・?」
いつも着ているはずのYシャツではなかった。というよりもエリの部分だけがパックリとなくなっていた。
「なに・・・これ・・・」
- 247 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/07(火) 23:35
-
―――――
―――――
―――――
バッ!!
「はぁ・・・はぁ・・・」
妙な夢だった・・・
ん?なんか重い・・・
「にゃは、みきたんおはよ♪」
「・・・」
声に視線を向けると美貴に跨ってるやつ約1名。
「なにしてんだよ。」
「ん?みきたんのボタン外してあげてるの。」
さっきの夢はコイツのせいか。
「なんで?」
「みきたんの手をわずらわせないようにっ。」
- 248 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/07(火) 23:39
-
「なんで美貴の上に跨ってるんだよ。」
「ん〜、みきたん寝てたから。」
ワケわかんねぇ・・・
「いつも言ってもダメだから今日は寝込みを襲おうかとぉ。」
「ざけんな。」
ドンッ。
跨ってたヤツを押し退けてあぐらをかく。
「だってぇ〜!みきたんが相手してくんないんだもん!」
出た。ウルウル上目使い攻撃。
「だれがお前なんか。」
「え〜。今日こそは・・・みきたん、抱いて?」
「無理。」
- 249 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/07(火) 23:46
-
コイツは松浦亜弥。
こんなだけど石川を抜いて学園一のアイドルで2年。
コイツもテニス部だから、いつもテニス部には人だかり。
「なんでぇ?」
「欲情しない。」
シュボ。
手持ちのライターでタバコに火をつける。
「他の人は抱くくせに。」
「美貴のタイプな女だけだし。」
「まつーらは?」
「ガキは趣味じゃない。」
プカプカとタバコをふかす。
春の風の暖かさとタバコの香りが美貴を落ち着かせる。
- 250 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/07(火) 23:51
-
「まつーらがみきたんと幼馴染みだから?」
「さぁね。とりあえず美貴のタイプではない。」
そう、コイツのことはガキのころからよく知ってる。いわゆる幼馴染みってやつだ。
「むぅ。みきたんケチ。」
「ヤりたいなら他当たれ。」
コイツはガキのころからいつもみきたんみきたんってうるさかった。家が隣だからしょーがないかもしんないけど。
しかも最近になって色気付きやがった。
「やーだ!」
「あっそ。」
だけど美貴のタイプではない。
- 251 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/07(火) 23:58
-
「みきたんがいいのっ!」
「知らないし。」
コイツはモテる。
なのに、なんでそこまで美貴にこだわるのかが美貴にはさっぱりわかんない。
「んもぉ、あ、みきたんお弁当は?」
「これ。」
買ってきた美貴の焼き肉おにぎりを指差す。
「ってゆーかお前に関係ねーだろ。」
「あるよっ!みきたんママにみきたんを頼まれてるんだから!」
「いつの話してんだよ。」
そりゃ、美貴が小2のときだっつーの。
- 252 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/08(水) 00:02
-
「みきたん、お弁当食べよ?」
「勝手に食ってろ。」
バッ。
カンカンカン・・・
弁当食おうとしてる幼馴染みを置いてハシゴを下る。
「みきたん、どこ行くの?」
「さあな。」
どいつもこいつも美貴に絡んでくるなってーの。
そう思いながら、美貴は屋上を後にした。
- 253 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/08(水) 00:03
-
***
- 254 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/08(水) 00:10
-
「美貴ー!!美貴ー!」
「んだよ、うっさいな。」
あの後テキトーに授業ばっくれて家に帰った。
やっとうるさいのから解放されたと思ったら、今度はリビングからでっかい声で叫ぶ母親。
「ちょっと頼まれてくれない?」
「やだ。」
「あんたに拒否権なんかないわよ。」
「じゃあ聞くなよ。」
毎度のことだけどやっぱわかんない、この母親は。
「おばーちゃんのところからジャガイモいっぱいきたのよ。」
「あっそ。んで?」
- 255 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/08(水) 00:14
-
「うちじゃ余っちゃうから、お隣さんにおすそわけ・・・」
「ムリ。」
またあのうるさいやつに会うなんてまっぴらだ。
夜に行くとなったら余計に。
「だから美貴に拒否権はないって何回言わせるの。」
「行かね。」
「行って。」
「行かない。」
「行ってきて?」
「やだっつってんじゃん。」
「行きなさい!」
「ムリ!」
「何回言わせんのよ!!」
「そっちこそ何回言わせんだよ!」
- 256 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/08(水) 00:15
-
―――――
―――――
―――――
―――――
- 257 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/08(水) 00:21
-
「はぁ・・・」
結局、根性負けしてジャガイモの箱を持って現在、松浦家の前。
「すぐずらかろ。」
久しぶりに松浦家のチャイムを鳴らす。
ピーンポーン・・・
中からは〜いという大きな声が聞こえたかと思ったら、扉のガラス部分に人影が写った。
「はいはい、お待たせしました。どちら様・・・あら。」
「どーもっす。」
「やだぁ〜、久しぶりね!美貴くん!」
「アハハハ。」
- 258 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/08(水) 00:25
-
「しばらく見ない内にまた男前になったわねぇ〜。」
おばさんが上から下まで美貴のことを一通り見た。
「んなことないっすよ。おばさんも相変わらずお綺麗で。」
「あらやだ。どこでそんなお世辞覚えたの?」
お世辞なんかじゃない。松浦家の母は昔からかなり綺麗な人だった。もちろん、今も変わりない。
「お世辞じゃないですよ。」
「美貴くん、声低くなったわね。」
「え?ああ、大分前に声変わりしたんで。」
そういえばおばさんと最後に会ったのは変声期前だったことを思い出した。
- 259 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/08(水) 00:30
-
「背も大きくなったわね。」
「あー、おばさんと最後に会ったときより15センチくらい伸びましたからね。」
「やっぱり男の子はすごいわぁ〜。」
おばさんがうんうんと嬉しそうに頷く。
「あ、これ。なんかばーちゃんから送られてきたらしいんですけど、うちじゃ食べきれないからおすそわけに。」
「あら、ジャガイモ。」
「はい。北海道の。」
「悪いわねぇ。」
「いや、ホントうちじゃ食べきれないんで。」
おばさんが綺麗な笑顔でありがとうと告げた。
- 260 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/08(水) 00:32
- 短いですが(苦笑)
774飼育さま>さっそく続きを更新してみたので、よかったらお読みください!
- 261 名前:774飼育 投稿日:2006/02/08(水) 00:35
- 読みましたよぉ(ニヤリ
やはり面白いですねぇ
次も楽しみにしてます
- 262 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 02:10
-
おばさんが美貴から段ボールを受け取ろうと手を出す。
「あ、これ重いんで美貴が運びますよ。」
「えぇ?悪いわ、美貴くんにそこまでしてもらっちゃ。」
またおばさんが手を伸ばす。
「いや、ホントいいですよ。女の人が持つの大変だと思うし。」
考えているのか、おばさんは少しの間、黙りこんだ。
「じゃあ・・・キッチンまでお願いできる?」
「はい。」
おばさんは丁寧にスリッパを美貴の前に並べて置いてくれた。
- 263 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 02:14
-
「あ、すいません。」
「いいのよ、これくらい。美貴はわざわざ運んでくれるんだから。」
おばさんはそう言うと、美貴を中に入れてくれた。
「美貴くん、ホント男らしくなったわね〜。」
手前のリビングに繋がるドアを開けながらおばさんが言う。
「いや、全然ですよ。」
「ううん、変わったわよ。あ、もちろんいい意味でね。」
「そんなこと・・・」
今度は美貴が否定する前におばさんは言葉を続けた。
- 264 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 02:20
-
「昔はおばさんの方が力あったのに・・・今は美貴くんのほうがあるもの。それにね、声とか顔付きとか・・・ホント成長したって感じよ?」
「そーですかね?」
顔をじっと見られて、久々にこっぱずかしかった。
「あ、それ。ここに置いてくれる?」
「はい。」
ドサッ!!
「ふぅ・・・」
「私が若いころに美貴くんがいたらねぇ〜」
「え?」
「ううん、なんでもないわ。」
おばさんがお茶飲んでく?と美貴に告げた。
- 265 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 02:26
-
「いや、もう帰り・・・」
「マァマ〜?誰か来てる・・・の・・・」
ヤバイと思ったときにはすでに遅く、イチバン会いたくないやつがリビングのドアに立っていた。
「みきたん!?」
「よっ。」
おばさんがいるから挨拶をしないってわけにもいかなくて、軽く挨拶。
「なんで!?もしかして会いにきてくれた・・・」
「ちげーよ。」
「亜弥、美貴くんね、おすそわけを持ってきてくれたのよ。」
美貴が言う前におばさんが説明。
- 266 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 02:32
-
「・・・」
「なーんだ。」
目の前に立ってる幼馴染みの髪はほのかに濡れていて、髪先から鎖骨に滴る水がなんだかやけに色っぽく感じさせた。
「みきたん?」
「え?」
美貴は思わず魅とれていた。
「あ!もしかして今まつーらに魅とれてた?」
「んなわけないだろ。」
おかしい。今まで一度もコイツのこと、色っぽいだとか、セクシーだとか感じたことはなかったのに。
「あ、そーだ!みきたん、あたしの部屋においでよ!」
「は?」
美貴の返事も聞かずにグイグイと引っ張っていくソイツ。
- 267 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 02:38
-
「ちょ、あぶねーつっうの。」
美貴の言葉も聞かないで階段を登る。
「はい、到着♪」
到着ってほど歩いてねーよと思いながらも、あえて口には出さない。
すると下からお茶持っていくわねぇとおばさんの呑気な声が聞こえた。
ガチャ。
「どーぞどーぞ♪」
先に部屋へ入った幼馴染みの亜弥が手招き。
「・・・」
ここまで来たら逃げ場も何もないので、とりあえず部屋に入る。
カチャ。
美貴が入ったのを確認してから、亜弥が扉を閉めた。
- 268 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 02:44
-
「あんま変わってないじゃん。」
「えー?そうかなぁ。」
亜弥の部屋は最後に入ってからほとんど変化していなかった。
白い勉強机とイスにカーペットは女の子らしくピンク。
そしてそんな中にちょこんと置いてある、小さなテディベア。
「まだあんなの持ってんのかよ。」
「だってこれはあたしの特別なクマさんだも〜ん。」
そう言いながら少しボロくなったテディベアを亜弥が手にとって、抱きしめた。
- 269 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 02:50
-
「バカじゃねぇの・・・」
あのテディベアは昔、美貴が小学生のときに初めて貯めてあった貯金箱を割って、誕生日にあげた人形だった。
「いいのいいの♪」
そう言いながらテディベアを嬉しそうに抱える亜弥のうなじが見えて、またドキっとした。
こんなガキに美貴が欲情なんてするわけねぇ。
ドサッ。
とりあえず昔のように亜弥のベットに腰かけた。
「はぁ・・・」
「ため息つくと幸せ逃げちゃうよ〜?」
「うるせぇ。」
なんとなく部屋を見渡した。
- 270 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 02:57
-
コンコン。
「お茶、持ってきたわよ。」
ちょうどおばさんがお茶を二つ持って入ってきた。
「あ、すいません。」
「いいのよいいのよ。そんなにかしこまらなくて。」
頭を下げた美貴に優しく言い聞かすおばさん。
「みきたん態度ちがーう!」
「うるさいな。」
二人で言い合いをしていたら、おばさんがクスクスと笑いだした。
「これで安心してパパのところに行けるわ。」
「んえ?」
何気ないおばさんの言葉が妙に引っ掛かる。
- 271 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 03:03
-
「今日ね、パパのところに荷物を持って行くことになってるの。今から行こうとしてたんだけど・・・亜弥を一人にするのは・・・ほら、この子これでも女の子だから。」
おばさんが心配そうに亜弥を見た。
「大丈夫大丈夫♪みきたんが来てくれたんだし!」
「そうね。」
おばさんが微笑んだ。
「あの、美貴・・・」
「今日はパパのところに泊まるから帰って来れないのよ。」
松浦家の父親は単身赴任をしていて、今はアパートで一人暮らしだ。
そして月に一回くらいのペースでおばさんが荷物を届けに行っている。
- 272 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 03:10
-
「でも美貴くんが来てくれたから安心して行けるわ。」
「え?あ、いや・・・」
「美貴くん、是非うちでゆっくり泊まっていってね。美貴くんのママにはさっき電話で伝えておいたから。」
「ちょとま・・・」
パタン。
美貴の抵抗も虚しく、おばさんは笑顔で扉を閉めて行ってしまった。
「あ〜・・・」
わけわかんないけど、とりあえず美貴は今日、ここに泊まるってことになっちゃってんのか。
と思いながらまた部屋を見渡す。
- 273 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 03:15
-
「あ・・・」
すると、洗濯物が目に入った。
洗濯物と言っても、それはきちんと畳んであり、あとはタンスに入れるだけ。
「・・・」
ここは亜弥の部屋なわけで・・・
「・・・」
当然、その洗濯物も亜弥のもの。
「ヤッタァ!!」
横で喜ぶ亜弥の声が聞こえるけど、やっぱり目を離すことができないソレ、基、亜弥の下着さん。
「みきた〜ん?」
「な、なんだよ!」
突然、亜弥のドアップ。
- 274 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/10(金) 03:19
-
「なーに見てるの?」
「別に。」
おかしかった。
亜弥のことを女として見たことがなかったはずなのに、今日はこの家に入ってから、めちゃめちゃ意識しまくってた。
「あー!みきたん、あたしの下着見てたでしょ?」
しまい忘れた下着に気づいた亜弥は美貴に言った。
「バカ。美貴はガキの下着なんか見たかねーんだよ。」
たまらず亜弥から視線をそらした。
- 275 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/10(金) 03:21
- 最近短い…(苦笑)
774飼育さま>短いですが、懲りずに更新しました。珍しくちょっぱやです(笑)よろしければどーぞ!
- 276 名前:774飼育 投稿日:2006/02/10(金) 03:27
- なんか最近の更新は全部リアルタイムで読めて
自分ですごいビックリです
今回もいいですね
二人きりってw次の展開が楽しみです
更新おつかれさまでした
- 277 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/10(金) 18:44
- うおー、なんか楽しみな展開。わくわくして待ってます。
- 278 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 00:26
-
「みーきたん。」
ポスッ。
「なん!だょ・・・」
いつものように強気で返そうとしたら、亜弥が膝に座ってきたのに目を奪われる。
「なにやってんの。」
「みきたんの膝にお座りしてるの〜。」
「してるの〜じゃないっつうの。」
美貴の膝に座ってにっこり笑いかけてくる小悪魔な亜弥。
「ねぇねぇ、さっきあたしの下着見てたんでしょ?」
か、顔が近い・・・
いつもより至近距離な上目使い。
- 279 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 00:32
-
「白状しなさいっ。」
小悪魔が目をウルウルさせて美貴の鼻をつっついてきた。
ヤバイ。
美貴にそう感じさせるほど、今日の亜弥は艶っぽかった。
「ん〜?どうなの〜?」
甘い声とウルウル上目使いに加えて、普段見ている制服ではなく、薄ピンクのパジャマからチラチラと覗く生肌。
「見てないって言ってんじゃん。」
それでもギリギリ理性を保ていた。
我ながら美貴はよくやってるよ。
心の中で自分を尊敬した。
- 280 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 00:38
-
「みーきたん。」
「うっさいなぁ。まだ言うか。」
今日の亜弥は口だけではなく、頭からつま先までの全身で美貴を落とそうとしていた。
落とされてたよ。
美貴じゃなかったらね。
そう思わせるほど、亜弥は色気を発していた。
「そんなに見たいなら今着けてるの見なよぉ。」
- 281 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 00:43
-
亜弥がさらに詰め寄ってきた。
しかも・・・・
わざとパジャマのボタンを一つ外しながら。
「ゴクッ・・・」
たまらず生唾を飲み込んだ。
ドサッ。
美貴が為す術もなく固まっていると、今度は押し倒された。
「んな・・・」
「みきたぁん・・・」
相変わらずウル目で美貴を見つめてくる学園アイドル基、小悪魔の松浦亜弥。
- 282 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 00:44
-
限界だ・・・。
亜弥に覆い被されながら、そう感じた。
- 283 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 00:50
-
「ガキ。」
「えぇ〜?あたしはガキじゃ・・・」
チュ。
「んっ。」
小悪魔が言い終わる前に、彼女の首筋にキスを落とす。
「みきた・・ん?」
自分から誘っておきながら、美貴がやる気になったのを不思議そうに上から見つめてくる。
「誘ったのは・・・」
ドサッ。
彼女を逆に押し倒して美貴が上になる。
「そっちだろ。」
- 284 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 00:55
-
美貴が上から見つめるのを、じっと見つめ返してくる亜弥。
ポチッ・・・
ポチッ・・・
構わず亜弥と美貴の邪魔をしているパジャマのボタンたちを上から一つずつ外していく。
「みきた・・・」
「なに?」
ヤろうってときに不安そうな声。
妙にイライラした。
「あたし・・・」
「んだよ。早く言え。」
- 285 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:03
-
ポチッ。
そうこうしている間に亜弥のブラジャーが露になった。
「みきたんのこと好きだよ?」
「・・・知ってる。」
彼女の胸を見て、美貴は愕然とした。
「ならよかったぁ〜。」
「・・・」
亜弥は安心したように穏やかに目を瞑った。
コイツ・・・・
ガキじゃないんだ。
彼女の胸は、美貴をそう思わせるには、充分な大きさだった。
- 286 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:10
-
そのふくよかな胸とは対照的な幼い表情。
「みきたぁん・・・」
「・・・」
そして艶っぽい声は美貴を混乱させるのに、充分な武器だった。
昔の亜弥じゃない。
テディベアをあげただけで大喜びする亜弥じゃないんだ。
今まで美貴の思っていた亜弥はガキで、色気の『い』の字もなかったが、いつの間にか魅力的な女性に変わっていた。
「亜弥・・・」
美貴はそのまま彼女の胸に顔を埋めた。
- 287 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:11
-
―――――
―――――
―――――
- 288 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:17
-
「はっ・・・はぁ・・・」
「・・・」
行為をし終わった後、亜弥はまだ息を弾ませていた。
「みっ・・・き・・・たんっ。」
「なに?」
お互い生まれたままの姿でベットに並んでいる。
亜弥は恥ずかしそうに布団を掴んでいた。
「ス・・・キッ・・・だ・・・よ。」
小さな悪魔は行為の最中もその言葉を言い続けていた。
カチッ。
タバコに火を付けようとしたけど、ライターは火が出なかった。
- 289 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:22
-
「くそっ。」
クシャ。
手に持ったタバコを握り潰して床へ落とした。
そう、まるで神様が美貴に亜弥の話を聞くように言っているかのようだった。
「ねぇ・・・」
相も変わらず亜弥の息を弾ませた艶っぽい声。
「あのさ、さっきから好き好き言ってっけど、美貴は・・・」
付き合うとかそーいうの考えてないから。
美貴の言葉より先に亜弥が言葉を発した。
- 290 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:23
-
「知ってるよ。」
「は・・・?」
思わぬ亜弥の声に、隣の亜弥を見た。
- 291 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:26
-
美貴に抱かれたヤツは決まって付き合ってと言う。
美貴にはそんなつもりこれっぽっちもないのに。
それでも美貴を求める彼女たちは世間で言う、美貴の『ヤり友』になる。
なのに・・・
亜弥の第一声は彼女たちとは少し違っていた。
- 292 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:29
-
不思議そうに見ている美貴に、彼女は笑いかけてきた。
「にゃは。知ってるよ。」
その顔はやっぱり昔の亜弥と同じだった。
「だったら・・・」
なんで美貴と?
大きな疑問だった。
あれほど毎日、飽きもせずに美貴を求めてたのに・・・。
- 293 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:38
-
「みきたぁんのこと、好きだもん。」
「はぁ?」
わけがわからない。
というより、彼女の発言は矛盾しているようところだった。
「あたしね、知ってるんだ。みきたんが付き合うとかそういうの考えてないって。」
「・・・」
よくわかってる。
幼馴染みなだけあって、亜弥は美貴のことをよく理解していた。
「だから最初っからみきたんと付き合おうとか、そんなこと考えてないの。」
彼女の笑顔に美貴の心はかき回された。
- 294 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:47
-
「あっそ。」
彼女は悲しそうな顔で笑っていた。
「うんっ。だからみきたんの数いるそーいうことしてる人の一人になるんだっ!」
「は?」
またもや謎な発言。
「だめ?」
出たよ、必殺ウルウル上目使い。
「お前さ、自分の言ってる意味わかってる?」
「うん、バッチリ。」
さっきとは逆にとびっきりの笑顔の小悪魔、亜弥。
「相変わらずバカだな。」
「みきたんよりはマシかなぁ。」
「バカにすんな。」
- 295 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:49
-
美貴の幼馴染みは
バカだ。
- 296 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:54
-
美貴を好きだと言うとこ。
美貴に抱かれたこと。
美貴に気持ちをぶつけてくるところ。
- 297 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/14(火) 01:57
-
美貴の気持ちを見透かしてしまうところ。
これが特にニガテだ。
それでもやっぱりどこか憎めなくて
なんだかんだ言って美貴にひょこひょことついてくるヤツ。
それが美貴の幼馴染み。
- 298 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/14(火) 02:03
-
774飼育さま>更新しましたよっ。二人っきり・・・ですよ(*^o^*)笑
最近、夜中更新ですが、リアルで読んでいただけて嬉すぃです(*^o^*)
名無飼育さま>名前通りワクワクしていただけてありがとたいです(笑)
更新がんばりまっす(>_<)
- 299 名前:774飼育 投稿日:2006/02/14(火) 16:17
- 今回もリアルで途中まで読んでたのですが
眠気に負けて・・・orz
これからこの二人はヤッパリあまあまになって行くのか
それとも切ない方向になって行くのか・・・
今回は切なかったですねぇ・・・
次回も楽しみにしてます
- 300 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/14(火) 19:52
- わぁ…こんな切ない展開なんですか。でも読みたい。
- 301 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 00:53
-
気がつけばそばにいた。
まさに美貴とキミはそんな感じだった。
いつの間にかキミは
美貴の生活の一部になっていたのかもしれない。
- 302 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 00:58
-
キーンコーン・・・
今日もいつもと同じように頭に響くチャイム音。
「ん〜、うっさいなぁ・・・」
美貴は青空の下、両耳を塞ぎ、仰向けになっていた体を起こした。
「なんだ、もう昼休みか・・・」
屋上に来たのは今から約2時間前。
いつものようにハシゴを上がって仰向けになっていたら、いつの間にか美貴の大好きな昼休みになっていた。
「さ、昼飯の焼肉おにぎり焼肉おにぎり・・・」
コンビニの袋をガサガサとあさった。
- 303 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:03
-
ガチャン!!
「ざけんなっ!」
人がせっかく静かに昼飯の焼肉おにぎりを食べようってとこに現れた男女のいかにも悪やってますって集団。
「あの、でも・・・」
そんな集団に囲まれている、これまたいかにも真面目そうなメガネちゃん。
「・・・焼肉おにぎりはーけん。」
やつらの行動を上からこっそり見物。
パクッ。
「・・・んまっ。」
そして当然、焼肉おにぎりにかぶりついた。
- 304 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:09
-
「あぁ?口ごたえしてんじゃねぇよ。お前な、自分の立場わかってんの?」
「お、リョウかっくい〜!」
「キャハハ!」
「ハハハ!」
メガネちゃんを脅してるやつをはやしたてる周りのやつら。
「でも私はぶつかった覚えないです・・・」
「はぁ?あんたさ、あたしにおもいっきりぶつかってきたでしょ?お陰でこのざま。」
そう言うと、悪集団の女が一人、一歩前へ出たかと思うと、シャツの腕部分を捲り上げ、大きなアザを見せた。
- 305 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:14
-
「お〜いったそ〜。あけみのケガ見てもまだしらばっくれんのかテメェは!あぁん?」
「あ・・・いや・・・」
メガネちゃんもまた派手なやつらに捕まったもんだな。
「モグモグ・・・」
ガシャン!
集団に詰め寄られたメガネちゃんは、とうとうフェンスまで追いやられた。
「あけみに慰謝料払えや!慰謝料!!」
「慰謝料って・・・」
あーあ。
静かな昼休みが台無しだよ。
美貴はせっかくの昼休みを台無しにされて、少しムカムカした。
- 306 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:16
-
「そんなケガくらいで・・・」
「テメェ、ぐちゃぐちゃ言ってねーで金出せや金!!」
リョウと呼ばれた男がメガネちゃんの顔を殴ろうと、拳を振り上げた。
- 307 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:18
-
ガシッ!!
「んな!?」
後ろから腕を掴まれたソイツは、びっくりして一瞬よろめいた。
- 308 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:22
-
「ちょっと、お前さっきっからうるさい。」
「お前誰に向かって言ってんだよ!」
そのリョウってやつが振り向いた瞬間に顔から血の気が引いていくのが目に見えてわかった。
「あ・・・藤本・・・美貴・・・」
「人の昼休み邪魔すんな。」
軽く睨みをきかせる。こういうやつらは見かけだけで、実際は美貴が恐れるほどじゃない。
「あ・・・いや、その・・・この野郎が・・・」
ソイツらは一斉にメガネちゃんを見た。
- 309 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:27
-
「うっせぇ。お前ら、カツアゲしようとしてただけだろーが。女のケガ、どーせ前もって細工してたんだろ?」
美貴がアゴでケガの女を指すと、集団の顔色はさらに悪くなった。
「カツアゲなんかつまねーことしてんな。」
「でも・・・」
「あぁ?美貴に逆らうわけ?」
「す、すいませんでした!!」
そう言うと、集団はあっけなく屋上を走り去った。
「・・・」
そんなやつらをただただ唖然と見送るメガネちゃん。
- 310 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:33
-
「あーあ、せっかくの焼肉おにぎりタイムが・・・」
すでに完食してしまった3つの焼肉おにぎりを恋しく思った。
「あ、あの・・・」
「は?」
怯えながら美貴に声をかけてきたメガネちゃん。
よくよく見ると、彼女は髪が三編みであまり化粧もしていない、さらにはスカートもヒザが見えないくらいに長く、ネクタイもキッチリと締められているメガネっ子。
メガネだけじゃなく、容姿全体が彼女の真面目さを物語っていた。
美貴と正反対。
まさにそんな感じだった。
- 311 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:38
-
「助けてくれてありがとうございましたっ!」
バサッ!と効果音を付けてもいいくらいの勢いで頭を下げているメガネちゃん。
「は?美貴、別にアンタを助けたわけじゃな・・・」
「ありがとうございます!あっ・・・」
カチャ。
美貴が言い終わる前に再び頭を下げた彼女は、勢いあまり過ぎて、メガネを床に落としていた。
「あ・・・メガネメガネ・・・」
「ププッ・・・」
恥ずかしそうにメガネを拾い上げて、かけ直した彼女がとてもおかしかった。
- 312 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:42
-
「あ、笑うんですね。」
「え?」
彼女は嬉しそうに美貴を見た。
「あ、その・・・さっきすごく恐い顔してたんで・・・」
「・・・」
そんなことを言われるのは初めてだった。
というより、美貴にまともに話しかけてくる子が初めてだった。
「あ、あ!すいません!別に・・・あの、その・・・」
美貴が気を悪くしたとでも思ったのか、またあたふたし始めた。
「ぷっ、ははは・・・アンタ、面白いね。」
- 313 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:46
-
「え、あ、そうですか?」
またも顔を赤らめながら照れるメガネちゃん。
「うん、サイコーだよ。メガネちゃん。」
「ありがとうございます!」
美貴的には、ちょっとからかい気味に言ったのに、メガネちゃんはまともに受け止め、素直にありがとうと言った。
「ハハハ・・・あ、メガネちゃん何持ってんの?」
「あ、これですか?」
彼女は両手で大事そうに、一冊の本を抱えていた。
- 314 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:51
-
「そ、それ。」
美貴は気になった。
だって、ここに来てからずっと大事そうに抱えてるんだもん。
「これはですね、『昼間の月』っていう物語なんです。」
「ふーん。」
美貴は今気が付いた。
人とまともに話をすることが久しぶりだということに。
「どんな話?」
なぜかなんかわからない。
それでもなぜか、美貴の好奇心がそそられた。
ただそれだけ。
- 315 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 01:57
-
「えーっとこれはですねぇ・・・闇に暮らすある少年と太陽のような少女という、全然共通点のない二人がひょんとしたことをきっかけに知り合ってという物語なんですよ。」
「へ〜。」
面白そう。
率直にそう感じた。
美貴は別に本が好きなわけじゃない。ただ彼女に抱えられている本は妙に気になった。
「これ、シリーズものなんですよ。」
メガネちゃんが目をキラキラさせながら、本を強調しようと前に出す。
- 316 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 02:01
-
「シィリィーズ?」
「はいっ!シリーズものって何冊も続いてるやつのことを言うんですよ。」
「あーそう。」
よくよく見てみると、彼女の持つ本には『昼間の月』というタイトルのすぐ下の真ん中に、算用数字で1と書かれていた。
「何刊まであんの?」
「7冊ですっ!」
7冊か・・・。
どこぞのマンガより全然短いじゃん。
- 317 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 02:05
-
そう思った美貴だったけど、その本はマンガとは比べものにならないくらいに分厚かった。
「太くない?」
「物語ですからねぇ。これが7冊で完結なんですよ。」
よっぽどワクワクしているのか、メガネちゃんは終始笑顔だった。
っていうか、美貴のこと・・・
恐くないんかな?
さっきからフツーに会話しているメガネちゃんが不思議でならなかった。
この美貴を見て恐がらないなんて・・・
- 318 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 02:09
-
あ、そっか。
美貴の中でひとつの仮説が立てられた。
「メガネちゃんさ、美貴のこと誰だか知らないでしょ?」
本に目を向けていた彼女がこちらに視線を向け、にこっと笑った。
「知ってますよ?学園でウワサのアノ藤本美貴先輩ですよね?」
アノという部分を強調して言われた美貴の名前。
どうやら美貴を知らない説は違っていたらしい。
- 319 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 02:13
-
「じゃあ美貴のこと知ってて今話してんの?」
「はい。」
彼女ははっきりと頷いた。
「なんで?」
「さぁ?なんでですかね?」
困った笑いを浮かべるメガネちゃん。
どうやら自分でもなぜ、『アノ』藤本美貴と会話しているのか、わかっていないらしい。
「ヘンなやつ。」
「よく言われます。」
彼女はまた笑った。
- 320 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 02:15
-
これがキミとの出会いだった。
覚えてる?
キミははっきりと覚えていないかもしれない。
でもね・・・
美貴は今でも鮮明に覚えているんだ。
たまに夢で見るくらいに。
- 321 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/18(土) 02:17
-
キミの・・・・
太陽のような笑顔を。
美貴は一生忘れないよ。
いや、正しく言えば
美貴は忘れられないよ
キミの笑顔を。
- 322 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/18(土) 02:21
- 更新です( ^_^)/
774飼育さま>おや?おやおやおや?まだまだ先は読めない感じが大好きワクワクです!(笑)
さぁて、今回の更新…いかかですかい?(笑)
名無飼育さま>よ、読みたいですか!?そのお言葉、めっちゃめちゃウレスィです(T_T)
ぜひぜひお読みくださぁい!(笑)
- 323 名前:774飼育 投稿日:2006/02/18(土) 10:25
- ナンカまた出てきましたねぇ・・・
ナンカ切ない方向な気がしてきましたよ
続き楽しみにしてます
- 324 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 00:28
-
***
- 325 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 00:32
-
何もナイ。
まさに美貴はそんな感じだった。
毎日がただ何をするわけでもなく
なんとなく生きてきた。
もう美貴がナゼ生まれてきたのか
わからなくなるくらいに
全てがどうでもよかった。
- 326 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 00:32
-
***
- 327 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 00:47
-
プップーーー
今日もまた、ネオンがきらめく中を歩く。
そう、いつものように・・・
「ミキさんっ!!」
前方から人が走ってくるのが見える。
「ハァハァ・・・こん・・・ばんわ!」
美貴に近づいてきたかと思うと、息を切らしながら必死で挨拶をしてきた。
「おっす。」
「おっす。じゃないですよっ!」
息を切らしていたと思ったら、今度はちょびっと説教された。
- 328 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 00:56
-
「店、始まっちゃうじゃないですか〜!」
「あぁ〜もうそんな時間か。」
『店』。そう美貴はちょっとしたバイトをしている。
コイツは同じ店で働く麻琴。
「行くぞ。」
「え?あ、ちょっ、待ってくださいよ〜。」
コイツはいわゆるヘタレ。
『店』の中でもその性格は現れていて、しょっちゅう客に怒鳴られている場面を目撃する。
「ミキさぁ〜ん!」
店長やオーナーに怒られることもしょっちゅう見かける。
- 329 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 01:04
-
チャリンチャリン。
店の大きな扉を両手でおもいきり開けると、小さなベルが鳴り響く。
開店前なこともあって、客は人一人としていない。
「ざいまぁす!!!」
美貴が店内に入ると一斉に店員たちが頭を下げる。それは後ろにいる麻琴も例外ではなかった。
「おっす。」
店員たちはみんな、もっと前から出社していて、店内をピカピカと言えるくらいに掃除している。
「麻琴、わざわざ美貴を迎えに?」
「あ、はい!店長に頼まれまして。」
麻琴がエヘヘと笑う。
- 330 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 01:11
-
「おっ、やっときた。」
その麻琴の背後からひょっこりと顔を出した店長。
「飯田さん。美貴遅刻はしてないはずですけど・・・」
「あぁ、うん。してないよ。」
飯田さんはこの店の店長さん。
スラッとした長身で、自らも接客をこなす。いわゆる現場チーフみたいなもんだ。
「店長!ミキさんをお連れしました!」
「見ればわかるよ。」
「あ、はい・・・」
店長、飯田さんのことを『さん』付けで呼ぶのはここでは美貴だけ。麻琴や他の店員たちは全員、『店長』と呼ぶ。
- 331 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 01:17
-
「ミキ、今日は大事なお客さまが来るから麻琴に迎えに行かせたんだよ。」
「わかりました。奥で準備してきます。」
「あぁ。今日も頼むよ。」
通りすがりに飯田さんに肩を叩かれる。
カチャ。
これをされるといつも美貴の頭は音をたてて切り替わる。
そう・・・・
藤本美貴ではなく
ミキというもう一人の人物に。
- 332 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 01:28
-
チャリンチャリン。
「ようこそ、ハローに。」
その挨拶を店内全員で言うと同時にミキたちが作った花道に敷かれたレッドカーペットを歩く今日第一号の客。
「いらっしゃいませ。お客さま。」
そう、ここはホストクラブ。といっても、アルコールは扱わない。ノンアルコールの店だ。
客にはただホストとの一時を過ごしたい人もいる。
そういうオーナー独特の発想で作られたクラブ『ハロー』。
ノンアルコールでも、カクテルさながらの色合いや、ノンアルコールのビールなどが特に扱われる。
- 333 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 01:34
-
ここの従業員はだいたい交代制になっていて、バイトは週に3日など入れば充分という仕組みになっている。
「今日は私が一番?」
「はい。お客さまが一番乗りでございます。」
バイトは美貴と同じ高校生の者もいれば、大学生やフリーターそれにこれを本職としている人もいる。
「じゃあミキくんでお願いするわ。」
「ご指名、ありがとうございます。」
列から客の元へと優雅に歩く。
ここを歩くことは指名を受けた者しか許されない、それが美貴を優越感に浸らせた。
- 334 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 01:39
-
「乾杯。」
カチン。
客と自分のグラスを合わせる。
「今日のミキくん、いつもよりさらにいいわね。」
客がグラスを置いたので、美貴もすぐにグラスを置いた。
「そうですか?」
「えぇ。そのスーツといいネクタイといい、とってもよく似合ってる。」
「ありがとうございます。」
そう言って微笑む。
そうすれば客はしばらく美貴に見とれる。
いつものことだ。
- 335 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 01:45
-
今日の美貴のスタイルは、少し細身になっているブラックスーツにこれまたブラックの細めのネクタイ。シャツはシンプルに白。
美貴はシンプルなスタイルを好んでいつも着ている。
「大丈夫ですか?」
普段なら面倒な人に話しかけるという行為も、仕事になればそこまで面倒でもなかった。
「あ、えぇ。大丈夫大丈夫。」
自分に言い聞かせているのか、客は何回か頷いてみせた。
「ハハハ、面白いですね。」
「ん?そう?」
「はい。」
とは言いつつも、腹の中では面白くもなんともない。と思っている美貴。
- 336 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 01:51
-
「今日は早く来れたから緊張してるのよ、きっと。」
この客はとある会社を経営する女社長。
毎日忙しい日々を送っているために、ここへ来るのはだいたい深夜の3時くらい。
それは今日に限って仕事が早く終わったとかで、開店9時ちょうどにやって来た。
「早く来れると緊張されるんですか?」
この女社長はパッと見、スタイル抜群の美人さん。
なので接客をする美貴としても大歓迎な客だ。
「あーうん、そう、かな。」
なんとも歯切れの悪い答え。
それが何を意味するのか、美貴にはわかっていた。
- 337 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 01:59
-
「緊張されないでくださいよ。ミキはただお客さまに喜んでほしいんです。」
白々しい。
我ながらものすごく白々しい言葉を発したものだと感じる。
それでも、必ずどの客でも美貴の言葉にめっぽう喜ぶ。
「ち、違うのよ。その・・・始めからミキくんといられるなんて珍しいから・・・なんだか緊張しちゃって、ね。」
このバリバリキャリアウーマン的な彼女からは想像もつかないであろう言葉。
この女社長は普段ではこんな乙女チックなことは言わない。
「ミキも始めからあなたといられることほど嬉しかったことはないですよ。」
こんな彼女たちだからこそ、ここハローではこんなに甘い言葉を発するのだ。
- 338 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 02:05
-
「失礼致します。」
そこへバーテンの飯田さんがやって来て、美貴の耳に口を当てる。
「大事な客がきた。」
と美貴に告げた。
「お客さま、ちょっと失礼してもよろしいですか?」
いつものように、絶妙なタイミングでヘルプの二人が女社長に付いた。
「ちょっと失礼します。」
ヘルプの一人は美貴と反対側の女社長の隣りへ。もう一人は立ち上がった美貴と入れ替わる。
「もう?」
美貴が違うテーブルに行ってしまうのを残念がっていたが、いつものことだとわかっていたのか、案外諦めは早かった。
- 339 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 02:13
-
カツカツカツカツ。
「それで飯田さん。大事な客っていうのは?」
美貴を呼びに来た飯田さんと共に次の客のテーブルへと歩く。
「指名・・・じゃないだけどさ。」
「は?」
指名をしていない、ということは新規の客か。
「新規は新規でも、オーナーの教え子。」
「だから大事なんですね。」
「あと同級生。」
「は?」
教え子なのに同級生?
「あ、オーナーのじゃなくて圭織の。」
「飯田さんってオーナーの教え子なんですか?」
「まぁね。」
カツカツカツ。
- 340 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 02:20
-
うちの店のオーナーは元高校教師。
なんだかサヤが合わないとかで辞めちゃったらしい。
「だからですか?」
「うん。ほら、大事な客にはやっぱりうちのナンバー1をってやつ。」
そう、美貴はこの店でナンバー1の肩書きを持つホスト。
「ミキほどのホストをあの子たちに付けるのももったいない気がするけど。」
「どういう意味ですか?」
オーナーと店長の大事な大事な教え子兼同級生。
さすがにホストを付けたくなかったってやつか。
「いや、この業界に入ってナンバー1になった期間がわずか1ヶ月という最速の貴公子を庶民に付けていいのかなってね。」
- 341 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 02:24
-
「えらい見下してません?同級生のこと。」
「あぁ、ミキも見ればわかるよ。きっと。」
普段は人を見下すなんてことをしない店長が人を見下すなんて。
よっぽどの女たちなんだろう。
カツカツ。
「6番テーブルだから。」
「はい。」
再び受付まで戻ってくると、テーブル番号を指示された。
カツカツカツ。
どんな客なんだろ。
妙な期待に駆り立てられながら、静かに歩みを進める。
そして・・・
- 342 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 02:29
-
ピタ。
6番テーブルの前で綺麗に静止。
「お待たせいたしました。お客さま。」
飯田さんがいつものように頭を下げて美貴からは見えないが、座っているであろう客に挨拶。
「当店自慢のナンバー1、ミキでございます。」
飯田さんが一歩横にずれたのを見計らって、美貴が一歩前に出る。
「ミキです。本日は当店に足を運んでいただけて光栄です。」
頭を下げる。
新規の客には、まず自己紹介と丁寧な挨拶。
これはハローの鉄則だ。
- 343 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 02:35
-
「この人が圭織の言ってたナンバー1?」
「はい。」
同級生でも店内に入ると『お客さま』。店長はきっちりとそれを心得ている。
「お客さまにウワサしていただるなんてありが・・・た・・・い・・・」
顔を上げて、目があった瞬間に息が止まった。
「あぁ!?」
「えぇ!?」
「なんで!?」
客二人に美貴。
三人が一斉に声を挙げる。
「どうかした?」
そんな美貴たちをよそに、飯田さんが不思議そうに見てくる。
- 344 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 02:39
-
「あ、いえ。なんでも。」
「そう。じゃあ二人をよろしく頼むよ。あ、今日は他のテーブル気にしなくていいから。」
去りながら言う飯田さん。
どうやら今日はこの二人だけを接客しろってことらしい。
「あ〜、まぁ、立ってんのもなんだから・・・座れば?」
「あ〜、はい。失礼致します。」
そう言って、二人の間に空けられたスペースに滑り込んだ。
- 345 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/21(火) 02:41
- 今日はここまで!
774飼育さま>ナンカ出しちゃいましたよ(笑)そして今日もまた新キャラ出しちゃいましたよ( ^_^)/
ナンカ問題ありますかね?(笑)
- 346 名前:774飼育 投稿日:2006/02/21(火) 02:52
- スーツ姿想像しました メッチャ似合いそうだなオイw
また新キャラ登場ですか・・・もう予想をいい意味で裏切りすぎですw
問題なんかちっともないですよ
さぁ次回はどうなるのでしょうか
期待してます
- 347 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 17:05
-
―――――
―――――
―――――
「んで、わかってんの?」
「なにがっすか?」
客っていうのはわかってはいるけど、どうしてもハローのミキではなく、藤本美貴に戻ってしまう。
「お前なぁ〜。こんなとこにいていいと思ってんの?」
「別に美貴の自由だし。」
まさかここに知り合いが来るとは思わなかった。
「ったく、相変わらず減らず口だな。」
「そりゃどーも。っていうか教師がこんなとこ、来ていいんですか?」
しかも教師二人が。
- 348 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 17:16
-
「んなっ!な、なな、なんだよ!別にいいじゃん。ね、なっち。」
「ん、んだべよ。」
なんでよりにもよって矢口先生と安倍先生なんだよ。
「失礼致します。」
美貴が少し戸惑っていると、麻琴がやって来た。
「座らせて頂いてよろしいですか?」
矢口先生が美貴を気にしながら、あぁと頷く。
「麻琴、そこ座んな。」
「はいっ。」
麻琴は美貴が指示した通り、美貴たちの目の前に腰を落ち着けた。
- 349 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 17:25
-
カランッ。
麻琴が4つのグラスに氷を入れる。
「お客さまたち、初めてですよね?」
「あぁ、うん。おいらたちこーゆうトコ、来たことなくてさ。」
矢口先生がアハハハっと笑う。
「じゃあ、お二人はラッキーですね。」
「ラッキー・・・だべか?」
今度は安倍先生が不思議そうに麻琴を見る。
「えぇ、ミキさんはフツーの方は指名できないんですよ。」
「え?ふじも・・・あっと、ここは指名制なんじゃないの?」
危うく美貴の本名を口に出しそうになる矢口先生。
- 350 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 17:38
-
「そうなんですけどね。ミキさんは人気有りすぎまして・・・お得意様の方がいつも独占してしまうんですよ。店が多少空いてるときでも、ミキさんだけは指名いっぱいで忙しいんですよ。」
麻琴が微笑みながら、飲み物の準備。
「へ〜。人気・・・あるんだべね。」
「麻琴、ヨケーなこと話すな。」
「あ、すいません。」
「飲み物、なんにしますか?」
知られたくなかった。
美貴が客に人気があるなんてこと。
この人だけには。
- 351 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 17:45
-
「あー、おいらはこのカシスティってやつがいいかな。」
「じゃあなっちは・・・メロンミルクってやつにしてみるべさ。」
二人がメニューそれぞれを指し示す。
「麻琴、オーダー通してきて。」
「あ、でも・・・」
作りかけの水が入っているグラスを見つめながら、一瞬躊躇した。
「いいから、行け。」
「あ・・・はい。」
美貴がもう一度睨むと、麻琴はすぐにオーダーを伝えに行った。
- 352 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 17:53
-
知られたくなかったんだ。
絶対に。
「なーに怒ってんだよ、藤本。」
「ここではミキと呼んでくださいよ。矢口様。」
「あーごめんごめん。」
「イライラしすぎだべさ。藤本。」
今度は安倍先生に優しくなだめられた。
「イライラなんかしてません。ミキって呼んでくださいって。安倍様。」
そう言いながら安倍先生に微笑む。
ミキ特有の営業スマイルで。
「あ・・・うん・・・ごめん、だべさ・・・」
- 353 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 18:01
-
「いえ。わかってくだされば結構ですよ。」
「ミキさぁん!オーダー通してきましよっ!」
いいタイミングで麻琴が戻ってきた。
「あぁ、ありがと。」
美貴はどんくさい麻琴が嫌いじゃない。
人間嫌いな美貴にとって、麻琴はまた別だった。
どんくさいし
マヌケだし
落ち着きないけど
いつも美貴を慕ってきてくれる麻琴に美貴は、なんとなく癒されている。
ただなんとなく、麻琴は嫌いになれなかったんだ。
- 354 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 18:10
-
「ンヘへ〜。」
麻琴がなぜか照れて頭をかきながら、再び元の席に座る。
いや、正しく言うと座ろうとした。
ガチャン!!
座ろうとした麻琴のスーツの裾がグラスに当たって、4つのグラスがいっきに床へと落ちた。
「あー!またやっち・・・」
「麻琴!!大丈夫か!?」
麻琴が4つのグラスを拾おうとするところに美貴があわてて立ち上がる。
すると、珍しい美貴の大声にびっくりしたのか、麻琴の目が点になっていた。
- 355 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 18:17
-
「あ、は、はい。」
「ふ〜。麻琴、奥からタオルを何枚か持ってきて。」
またも麻琴に指示を出す。
「あ、でも・・・」
麻琴が床に散らばってしまった4つのグラスだったガラスの破片を見る。
「いいよ。美貴がやっとくから。」
「ミ、ミ、ミキさんが!?だ、だめですよ!そんなの!!」
「いいって。美貴のこと気遣うより、お客さまに迷惑をかけないよう、片付けをするのが先だよ。」
「そうですけど・・・」
まだ麻琴は戸惑っていた。
- 356 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 18:29
-
「だったらさっさとタオル取りに行ってくる。ほら、行け。」
「あ・・・はい。」
タタタタ。
美貴が諭すと、麻琴は急いで奥に走って行った。
「ちょっと失礼しますね。」
麻琴を見送った後、矢口先生の前を通って、ガラスの散らばっているところへとしゃがむ。
カチャ。
カチャ・・・
ガラスの破片を黙々と拾った。
美貴がこんなことをするなんて久々だった。
入店当初はまだまだ新人で、麻琴のように雑用ばかりだった。
- 357 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/21(火) 18:41
-
カチャ
カチャ・・・
気が付けば・・・
『最速貴公子』
とか
『ナンバー1』
とか、名前で呼ばれることも少なくなっていった。
カチャカチャ。
学校でも、ここハローでも、結局美貴は一人なんだなって感じた。
カチャ・・・
「っつ・・・」
ガラスの破片のせいで、指から血が垂れた。
「・・・」
こんなキズ、どうってことない。
- 358 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/21(火) 18:45
- とりあえずここまでで((((((((^_^;)
また近々すぐ更新します!
774飼育さま>ついに想像までいっちゃいましたか(笑)
予想裏切るのだぁい好きなんで( ^_^)/
- 359 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 01:11
-
血をジッと見つめた。
ただただ、じーっと血の滴る指。
「あ、ふじ・・・じゃなかったべさ。ミキくん、右の指ケガしてるべさ!」
じーっと見つめる美貴の指が、誰かにそっと包まれた。
独特な訛りと共に。
「こういうときは・・・」
そう言ったかと思うと、自分の持っているプーさんの絆創膏を取り出した。
「あ、こんなの舐めてりゃ治るんで。」
差し出される絆創膏を拒否して、再び破片を拾おうとした。
- 360 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 01:17
-
ガシッ。
だけど、手を掴まれて、それは遮られた。
「ダメダメ!また二の舞いになるべさ!」
彼女、基安倍先生は口調とは裏腹に笑顔で美貴の手を掴んでいた。
「あ、いや・・・」
「いいからいいから。」
そして彼女は持っていた絆創膏の袋をピリピリと破り、美貴の指に張り付けた。
「・・・」
「はいっ、完了。」
いつもの笑顔で美貴の手をぎゅっと握った。
- 361 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 01:20
-
「・・・」
じっと彼女の笑顔を見つめる。
「ん?どーした?」
そんな美貴を不思議そうに見つめてくる安倍先生。
「・・・」
美貴は・・・
この人に知られたくなかった。
こんな美貴の姿を
もう一人の『ミキ』という存在を。
- 362 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 01:23
-
「美貴は・・・」
「うん?」
安倍先生がスキ。
だから・・・
こんな姿見せたくなかった。
女の人にこびて
金稼いで
指名受けるごとに優越感に浸ってて・・・
そんな美貴を見せたくなかった。
安倍先生だけには。
- 363 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 01:27
-
美貴が毎日のようにケンカするのも
その度に保健室に行くのも
全部、先生がスキだから。
だからそうしてた・・・
きっと。
美貴はあの笑顔に救われてたんだ。
安倍先生が笑ってくれるなら
どんなことでもできる。
美貴はそんな気がしてた。
- 364 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 01:33
-
「ミキくん?」
安倍先生に呼ばれて、初めて自分の意識が飛んでたことに気がついた。
「美貴は・・・」
「どーした?」
またこの笑顔。
「・・・こんなダサい絆創膏したくないんですけど。」
「あー。文句言わないの!」
「ダサっ。」
「もう、なっちはこう見えて保健室の先生だべよ?」
いつもの決めゼリフ。
「はいはい。」
仕方なく、ガラスの破片をそのままに立ち上がる。
- 365 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 01:40
-
「ハッハッ。ミキさん!持って来ました!」
そこでちょうどタオルを持った麻琴が駆けてきた。
「じゃあまずテーブル拭いて。お客さまが座れるように。」
「はいっ!」
そこへ、血相を変えた飯田さんがやって来た。
「申し訳ございません!ただ今、別のテーブルをご用意致しますので。」
飯田さんがアゴで合図をすると、数人のバーテンがホウキとちり取りを持ってやってきた。
また、別にバーテンの集団を呼び寄せた飯田さんは、他のテーブルを用意するように、指示をした。
- 366 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 01:46
-
「飯田さん、テーブルの準備はミキがやりますよ。」
「いや、ミキは・・・」
安倍先生と矢口先生を一度見る。
「お客さま、こちらへどうぞ。」
飯田さんの指示を聞き流し、二人を営業スマイルでご案内。
「飯田さん。」
「ん?」
テーブルを拭いていた飯田さんに顔を近付ける。
「あのお客さまを特別席にご案内しときますよ。」
「え?特別席って・・・」
「じゃあ、よろしくお願いします。」
そう言って二人の元へと戻った。
- 367 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 01:57
-
キイッ。
他の席とは壁で隔離されている。
その特別席へとつながる扉を開けた。
「こちらへどーぞ。」
レディファースト。
またも営業スマイルで二人を先に入れた。
「すっげー。なにこの部屋!」
矢口先生が驚くのも無理はない。
この特別席はよっぽどの常連か、各界の大物、金持ちしか入れないビップルーム。
つまり、それなりの広さにソファと花、そしてテーブル。周りはほぼ大理石で、床にはいかにも高級なカーペットが敷かれている。
「さぁ、座りましょうか。」
そう言って、呆然と立ち尽くす二人を促した。
- 368 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 02:10
-
「しっかしすっげーな。この部屋!」
カランッ。
三人分のグラスを準備する。
「一応、VIPルームなんで。」
「「ビッ、ビップゥ!?」」
おもいっきり二人同時に同じ反応を示す。
「はい。つい最近だと、女優の黒木さんとかですかね。この部屋使ったのは。」
「んええ?あ、あの大女優の〜!?」
「そうですよ。」
明らかに興味を示す二人。
「知り合いなのか!?」
矢口先生の小さな体が美貴の方へと投げ出される。
- 369 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 02:17
-
カラン。
2つのグラスをそれぞれの取りやすい場所に置く。
「知り合いっというよりは、常連様ですね。」
美貴は先ほどと同様に、二人の間に空けられたスペースに座った。
「まさかふじ・・・じゃなくて、ミキくんのお客さんだべか?」
美貴のことをミキと呼ぶことが慣れなくて戸惑っていながらも、興味を示してきた。
「そのまさかですよ。」
美貴は営業スマイルで安倍先生に答えた。
- 370 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 02:29
-
「ミキくんはなまらすごいんだべな!」
「一応ナンバー1ですからね。」
例え安倍先生が美貴に興味を示したわけじゃなくても
それでも
安倍先生が少しでも美貴に興味を示してくれたことが嬉しかった。
「すっげーすっげー!!藤本、お前すっげーよ!!」
もう美貴をミキと呼ぶことを忘れるほど興奮したのか、矢口先生はとりあえずすごいと言い続けた。
「他は!?」
興奮覚めやらぬ矢口先生がさらに身を乗り出した。
- 371 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 02:39
-
「財界の先生とか、最近では芸能界の方が多いですね。」
こう言うと矢口先生はまたすっげーすっげーと繰り返した。
「それ、ぜーぶん藤本のお客さんなのか!?」
「あーまぁ。」
「やっぱすっげーな!」
何回すっげーって言うんだろ、と思いながら目の前の水を口に含んだ。
「クスクス・・・」
すると隣りから細やかな笑いが聞こえた。
「矢口、おっかしいよね。」
一人で興奮する矢口先生を見た安倍先生が楽しそうに笑っていた。
- 372 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 02:45
-
その笑顔がまたキレイで
思わず魅とれてしまいそうになった。
だけど・・・
「ねっ?」
笑いながら美貴の肩に手を置かれた瞬間に、そっちに全神経を集中させてしまった。
「っあ・・・飲み物、用意させてきます。」
思わず立ち上がってオーダーを通すために、扉を開いた。
キイッ。
「わっ。」
そこには、ちょうど飲み物を持った飯田さんが立っていた。
- 373 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 02:50
-
「あ、飯田さん。」
「さっきのオーダー、持ってけなかったからさ。持ってきたよ。」
美貴の目の前に、ミドリっぽいグラスとあかっぽいグラスを出した。
「あぁ。ありがとうございます。」
「それと・・・」
さらにグラスを持っているのとは逆の手で、持っているビンを美貴の目線まで持ち上げた。
「ミキ用のノンアルコールビール。」
「あ、どーもです。」
美貴は接客をするとき、必ずと言っていいほどノンアルコールビールを飲む。
飯田さんもそのクセを知っていた。
- 374 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 02:54
-
飯田さんからその三つを受け取り、再び中へと戻った。
キイッ。
「おっ、早いじゃん。」
矢口先生が待ってましたというように笑顔で手招きしてきた。
「飯田さんがそこまで持ってきてくれてたんで。」
三つの飲み物をテーブルに置きつつ、自分を落ち着かせ、元の位置に座った。
「よしっ!じゃあ乾杯しよーよ!乾杯!」
矢口先生が真っ先にグラスを持った。
「だべね!」
安倍先生もグラスを持つ。
- 375 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 03:02
-
「じゃあ。」
乾杯はあんまり好きじゃないけど、客の二人がグラスを持っているのに美貴がしない。というわけにもいかないので、ノンアルコールビールを注いだグラスを持った。
「ん〜と、じゃあおいらたちの初クラブ体験に乾杯!!」
「なんだそれ。」
「か〜んぱ〜い!」
カチャン!
美貴の細やかなツッコミも虚しく、三人のグラスは音をたててぶつかった。
「・・・」
ゴクッゴクッ。
- 376 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 03:07
-
「ぷは〜!!これ、めちゃくちゃうまいじゃんか!」
「なっちのも〜!」
二人は予想外に美味しかった自分の飲み物をじっと見つめた。
「オーナーと飯田さんが試行錯誤して作ったやつですからね。」
ハローにあるメニューの全てはオーナーと飯田さんの男共同作業で作られたものだ。
「へ〜。やっぱあの二人はセンスあるな。」
「ねっ!」
美貴を挟んで、二人が微笑み合う。
- 377 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 03:13
-
「そーいやさ、藤本はなんでこのバイトしてんの?」
グラスを置いた矢口先生が不思議そうに美貴を見た。
「別に。」
ハローのミキの接客とはかけ離れた、普段の美貴に戻っていた。
「な〜んだよ。なんか理由があんだろ?」
美貴にこのこのと詰め寄ってくる矢口先生。
「なんとなく。」
「そんなわけないだろ!」
そう言われても答えようがなかった。
- 378 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 03:15
-
だって・・・
美貴は本当にただなんとなく飯田さんにスカウトされて
ただなんとなくそれを受けただけの話だから。
『なんとなく』
そう答えるしか方法がなかった。
- 379 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/22(水) 03:16
- 更新完了((((((((^_^;)
- 380 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 16:20
-
―――――
―――――
―――――
「にゃはははぁ〜!!ふりもぉとぉ〜。」
「で、なんでノンアルコールでよっぱらってるんすか。この先生は。」
美貴のノンアルコールビールをちょびっと頂戴と言って半分くらい飲んで、見事によっぱらい化した安倍先生が美貴にすり寄ってくる。
「ハハハ。なっち、酒弱いんだよ。」
そんな安倍先生を見ながら苦笑している矢口先生。
「ふ〜じ〜もぉろ〜!!」
完全にろれつの回っていない、よっぱらい先生。
- 381 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 16:27
-
「あ〜、はいはい。なんっすか?」
こうなるとはっきり言って、もう接客どころじゃない。
「ンハハ〜。ふりもろぉはあっらかいねぇ〜。」
呑気なよっぱらい先生は、美貴の肩に寄りかかりながら、アハハと笑う。
こっちの気もしらないで・・・
呑気な笑顔がこっちからするとまた複雑だった。
「あったかいのはミキじゃなくて、ビール飲んだからですよ。」
なんて冷静に返しちゃう自分になんだか悲しくなったりもした。
- 382 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 16:36
-
「ふ〜りも〜とぉ〜、ぬっくぬっくらべさぁ〜。」
「あーあ。なっちがこうなると大変なんだよ。」
矢口先生が安倍先生のホッペをつんつんとつつく。
「やぁーぐぅーちぃ、いらいべぇ。」
美貴の肩にくっつきながら、矢口先生の指をくすぐったそうにするよっぱらい安倍先生。
「そういうのは、こういうことになる前に言ってくださいよ。」
美貴が指さすと、安倍先生はまたアハハと笑った。
- 383 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 16:43
-
「あの、もうそろそろ離れてくれません?」
利腕を掴まれてたんじゃ、片付けもできたもんじゃない。
「ンフフフ・・・」
「あの、安倍先生?」
美貴の言葉に反応せず、ただ美貴の肩に顔を埋めて笑うだけ。
「安倍せーんせー。」
「へへ・・・」
退く気がないらしい。
「ねっ?おいらの言う通りでしょ?」
「いや、威張るとこじゃないですよ。」
誇らし気に腕を組む矢口先生。
- 384 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 16:54
-
「あーもう。矢口先生も見てないで手伝ってくださいよ。コレ。」
もうちょっとこのままでいたい。
という本音はさて置き、このよっぱらい先生をなんとかしなくては。
「ほら、なっち。そろそろ帰ろ?もうこんな時間だし、おいらたち明日も仕事だしさ。」
矢口先生がよっぱらった安倍先生の肩を揺らす。
「ん〜・・・」
「なっち、ほら、離れて離れて!」
しかし、いくら安倍先生を引き剥がそうとしても、いっこうに動こうとしない。
- 385 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 17:02
-
「なっち?」
「安倍先生?」
矢口先生と美貴。二人で静かな安倍先生を見る。
「すぅ〜・・・」
「・・・あの、明らかに寝息たててますけど。」
「うん。完全に寝てるよ、このよっぱらいなっち。」
矢口先生があららと頭をかく。
「どーすんですか。この先生。」
規則正しく寝息をたてている安倍先生をよそに、矢口先生と二人、頭を抱える。
- 386 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 17:18
-
「あー。おいらがおぶって帰ってもいいんだけどさ、ほら、その、おいら・・・」
矢口先生がアハハハと笑う。
「先生ちっさいから無理ですね。」
「ちっさい言うな!!」
「本当のことだし。」
「そうだけど・・・」
矢口先生がしゅんとなる。
「あ、今何時ですか?」
「へ?あぁ、2時ちょっと過ぎたくらいだけど・・・」
「ちょっと待っててください。」
美貴は安倍先生に絡められた腕をすり抜ける。
- 387 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 17:28
-
「うわっ!ちょっ・・・」
美貴が退くと、寝息をたてている安倍先生は矢口先生の方へと倒れこんだ。
「んじゃあ。」
「こらっ、藤本!お前、おいらを見捨てる気か!?」
「あーうるさ。」
キィ・・・
特別席の扉を手っ取り早く開き、出ていく。
その間に、矢口先生の嘆きが聞こえた。
「あーうるさいな・・・」
両耳を塞ぎながら歩いた。
- 388 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 17:42
-
―――――
―――――
―――――
「あーもう!なっち!起きろ!」
「スゥ―・・・・」
ペシペシと叩くが、全く反応はない。
キィ・・・
「お待たせしました。」
「あれ?藤本・・・?」
美貴の姿を見て驚く担任の矢口先生。
「さ、帰りますよ。」
「え?え?」
近づく美貴の格好を見て呆然とする矢口先生。
その美貴の格好はというと、さっきのスーツがジーンズに変わり、足元はそのジーンズを黒のブーツにインしているだけ。上半身はさきほどのままで、スーツのジャケットと白いシャツに黒いネクタイ。シャツをジーンズに入れた格好。
そして肩にはスーツのズボンが入ったカバンをかけていた。
- 389 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 17:55
-
「帰るって・・・」
「美貴がおぶって帰りますよ。どーせちっさい矢口先生には無理だし。」
「なっ!ちっさいちっさいとか・・・ていうか藤本はバイト中じゃないのかよ!」
矢口先生が美貴にツッコミを入れようと手を伸ばしたが、寄りかかっている安倍先生が邪魔をして、それをさせなかった。
「バイトなら飯田さんに早抜けするって言ってきたんで。」
「そんなん許されんの?」
「元々今日は二人を接客するように言われてたんで。」
- 390 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 18:04
-
美貴がソファの前にしゃがむ。
「はい。」
「なにやってんの?」
しゃがむ美貴に、矢口先生は疑問を投げかけてきた。
「なにって、安倍先生をおぶるんですよ。」
「あ、あぁ。」
やっと理解したのか、矢口先生は自分に寄りかかる安倍先生を美貴の背中へと乗せた。
「よっし・・・じゃあ行きますよ。」
「あ、うん。」
矢口先生が自分の荷物と、ぽつんと置かれていた安倍先生のカバンを手に取って美貴の後ろへタタタと駆けてきた。
- 391 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 18:15
-
「あ、ミキ。」
安倍先生をおぶった美貴に気づいた飯田さんがやってきた。
「あ、圭織!」
そんな飯田さんが駆けてきたのが見えたのか、美貴の後ろで一生懸命に手を振る矢口先生。
「矢口、なっちつぶれたって?」
背の高い男の飯田さんと背のちっさい女の矢口さんが並ぶと、お互いがさらに目立って見えた。
「うん。ほら、この通り。」
そう言って矢口先生は美貴の背中を指した。
「ったく、なにやってんの。なっちは。」
飯田さんはちょっと苦笑ぎみに安倍先生を見た。
- 392 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 18:29
-
「あ!お金!!」
会計が終わっていないと気づいた矢口先生が自分のカバンをガサガサとあさり始めた。
「あ、お金はいいよ。」
飯田さんがカバンをあさる矢口先生の手を止めた。
「いや、でも・・・」
矢口先生が戸惑う。
そしてそんなことは知らず、美貴の背中で呑気に寝息をたてる安倍先生。
「つんくさんがさ、二人にはサービスだって言ってたんだよ。」
つんくさん。
ウワサの元高校教師で飯田さん、矢口先生や安倍先生の担任であり、ここハローのオーナーだ。
- 393 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 18:35
-
「つんくさんが?」
「そう。二回目からはサービスするけど、ただにはしないってさ。」
飯田さんがウインク。
また珍しいものを見れたもんだ。
「じゃあお言葉に甘えて・・・」
矢口先生が控え目に笑った。
「おう。」
「矢口先生〜。重いから早くいきましょーよ。」
「あぁ、うん!じゃあ、本当ありがとね!圭織!!」
重いなんてウソ。
むしろ安倍先生は軽いほうだ。
ただ、美貴がこの状態でいることで理性を失いそうな気がしただけ。
- 394 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/22(水) 18:42
-
玄関に向かう美貴に矢口がタタタと駆けてきた。
「ミキ、なっちを頼むよ。」
「おーす。」
飯田さんが美貴に向かって叫ぶ。
その顔は少し心配そうだった。
「お疲れ様でした。」
飯田さんに挨拶をしてから、扉を足で開け、そのまま矢口先生と外へ出た。
「またね!」
扉が閉まるか閉まるらないかのときに矢口さんが飯田に手を振っていた。
- 395 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/22(水) 18:43
- 連続更新シン(笑)
- 396 名前:774飼育 投稿日:2006/02/23(木) 15:30
- 連続更新キタコレw
そっかちゃんと好きな人いたのか
次回も楽しみです
- 397 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 01:20
-
―――――
―――――
―――――
カツン。
コロコロコロ・・・
矢口先生の足元にあった石が、ほんの少し前に転がる。
「しっかしさぁ〜、藤本もなかなかやるな。」
「なにがですか?」
さっきとは変わって美貴より何歩か前を歩く矢口先生が笑顔で振り返る。
「ナンバー1なんだろ?」
矢口先生がまた、石を蹴って前に進ませる。
「あぁ、まぁそうですけど。」
「なんだよ、曖昧だなぁ〜。」
矢口先生がニシシと笑う。
- 398 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 01:35
-
「・・・なっち、ぐっすりだな。」
「あ〜。そうですね。」
なるべく意識しないようにしていたが、矢口先生の一言で妙に熱くなった気がした。
「普段はさ、自分から飲むっていうことないんだよ?」
「ふ〜ん・・・」
確かに安倍先生は飲みそうなタイプじゃない。
「たださ、なっちもいろいろあるんだ・・・」
「へー。」
正直、興味が湧いた。
どんな風に思ってるとか
なにが好きなのかとか
好きな人のことだから。
- 399 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 01:41
-
「ケンカ別れ・・・しちゃったみたいなんだよね。」
「・・・」
ケンカ別れ。
つまり安倍先生には恋人がいた。
「それが引いちゃっててさ・・・っておいら何話してんだろ・・・」
カツン!
また矢口先生が石を蹴った。
「・・・いいんじゃないですか?」
「んえ?」
石に視線を落としていた矢口先生が、美貴に振り返る。
「そーいうのも。美貴たちは世の中に居るそういう女性を癒すためにいるから。」
矢口先生がジッと美貴を見つめてきた。
- 400 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 01:46
-
カツカツカツ。
少し前に立ち止まっている矢口先生のすぐ横まで歩いていく。
「うちにくる女性はみんな足りないモノを求めて足を運ぶんですよ。」
「足りないモノ?」
横に並ぶと矢口先生の小ささが余計に目立つ。
矢口先生が美貴を見上げた。
「そ。足りないモノは人それぞれだから、コレってはっきりは言えないんですけどね。安倍先生は・・・なんつーか・・・足りなかったんですよ。悲しみをぶつける場所が。」
「・・・」
矢口先生は黙って美貴と美貴の背中で規則正しい寝息をたてている、安倍先生を見つめた。
- 401 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 01:51
-
コンツ。
コロコロコロ・・・
矢口先生が蹴っていた石を今度は美貴が蹴って前に進める。
「だから・・・こーゆうのも、たまには息抜きでいいんじゃないっすか?」
カツカツ・・・
石を追いかけて、矢口先生より何歩か前に進む。
「藤本っ。」
不意に後ろから名前を呼ばれて振り返る。
「本当にそう思う?」
「え?あぁ、はい。」
わからなかった。
なぜ、矢口先生が『本当に』と確認を取ってきたのか。
- 402 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 01:56
-
「じゃあさ・・・おいらは・・・おいらはなんで今日、行ったんだろ?」
「はっ?」
急な質問に頭がごちゃごちゃになった。
確かに。
安倍先生がきたのはわかる。
じゃあ・・・
矢口先生は?
「ねぇ、なんで?」
なんでって言われても・・・。
本人がわからないのに、美貴がわかるわけないと思った。
タタタタタ。
小さな足でまた美貴に並んだその人。
- 403 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 02:04
-
「あー・・・ずばり欲求不満。」
「ば、ばか!!」
横から容赦なくバシバシと叩いてくるちびっコ教師。
「いた、痛いっすよ・・・」
「藤本が変なこと言うからだろっ!」
顔を真っ赤にして抵抗してくる矢口先生。
「あ、図星か。」
「んなわけないだろ!」
一瞬止んだ攻撃。
「まぁ矢口先生なら、ギリギリ美貴がやってあげてもいいですよ?」
「んなっ///っていうかギリギリってなんだよ!!」
止んだと思っていた攻撃。今度は一発大きいのが、脇腹にきた。
- 404 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 02:09
-
「うわっ、ちょっと静かにしないと背中の人、起きちゃいますよ。」
「あ・・・」
やっと自分の声の大きさに気が付いたのか、矢口先生は自分の口を両手で塞ぐ。
「スッ――・・・」
美貴たちの心配をよそに、安倍先生はさっきと変わらず、静かな寝息をたてていた。
「藤本がいけないんだろっ。」
だいぶボリュームを落とした声で矢口先生が言った。
「やだな、ジョーダンに決まってるじゃないですか。」
また矢口先生が顔を真っ赤にした。
- 405 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 02:16
-
「あ。案外本気でした?欲求不満。」
「ないないないっ!」
ボリュームが下がったと思っていたら、またすぐに急上昇。
「だーから、起きちゃいますって。」
「あ・・・あぁ、ごめん。」
矢口先生がまた口を塞ぐ。
「まぁ、美貴はちびっこの矢口先生とヤる気なんて全然ないんで。安心してください。」
コツッ。
コロコロ・・・
今度は美貴の蹴った石が前に進むと同時に、美貴も前に進む。
- 406 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 02:21
-
タタタタタッ。
「ちびっこゆーうな!」
ダンッ!!
「おわっ!」
背後から矢口先生の体からは考えられないほどの力で蹴られた。
その衝撃で美貴が前によろめく。
「あっ!!」
矢口先生も自分がやりすぎたと感じたのか、あわてて美貴の手を取ろうとする。
「あっ・・・ぶね。」
タンッ。
辛うじて踏みとどまった。
「ふぅ〜。」
矢口先生が美貴のすぐ後ろで額に手を当てた。
- 407 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 02:30
-
「ごめんごめん。ちょっとやりすぎた。」
「みたいですね。」
一息ついてから、また歩き出す。
「なぁ、藤本。」
「今度はなんですか?」
さっきまで矢口先生と美貴に蹴られていた石はここで置いてけぼり。
「なーんかさ、学校んときと雰囲気違うな。」
横に並んだ矢口先生が頭からつま先まで、じっくりと美貴を見る。
「気のせいじゃないっすか?今日は私服だし。」
「んー・・・いや、やっぱなんか違う。」
矢口先生がうんうんと一人で頷く。
- 408 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 02:35
-
「そんなわけないでしょ。美貴は美貴だし。」
「いやな、なんてゆーか・・・こう、柔らかくなってっかなって感じるんだよ。」
美貴はいつもと変わらない。
ただ、矢口先生にはいつもの美貴と今の美貴が違うように感じるらしい。
「はぁ?んなわけないし。」
「減らず口は変わらないけどな。」
矢口先生がニシシと笑って再び、美貴の前を歩いた。
- 409 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 02:41
-
「おっ、着いたぞ!」
矢口先生がひとつのマンションの前で立ち止まり、振り返って美貴を手招きした。
タンタンタン。
美貴も矢口先生に追い付いた。
「すげっ・・・こんなとこに住んでんだ・・・」
一目見て、美貴は驚いた。
綺麗なオートロック付きらしいマンション。結構高そうで、普通の高校教師が住むような感じではない気がした。
「ほら、行くぞ。」
「行くって・・・美貴も?」
矢口先生が慣れた足取りでオートロックの自動ドアを開いた。
- 410 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 02:46
-
「あったり前だろ。なっちを担いでんのは藤本なんだから。」
「でも・・・」
美貴はそこまで行くつもりはなかった。
玄関手前で矢口先生に預けてバイバイ。
これが美貴の中でのシナリオだった。
「ほら、急がないと閉まっちゃうだろっ。」
自動ドアが閉まらないように、センサーがあるところを矢口先生が何回か行き来する。
「あー・・・はい。」
ここで矢口先生に安倍先生を預けてる暇もないので、とりあえず自動ドアの中へと入った。
- 411 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 02:51
-
「おーい、なにしてんだ?早く来ないと置いてくぞ。」
いつの間に移動したのか、矢口先生は少し行ったところのエレベーターのボタンを押していた。
「はいはい。行けばいいんでしょ、行けば。」
ここまで来たらもうしょうがない。
コツコツコツ・・・
美貴は諦めて矢口先生の待つエレベーターへと向かった。
- 412 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 02:57
-
ポチッ。
安倍先生を背負った美貴が乗ると、矢口先生は5階のボタンを押した。
ウィーン・・・
美貴たち3人を乗せたエレベーターが音をたてて上へと進んでいく。
「・・・」
「・・・」
エレベーターに乗ってからは、お互いに口を開かない。
なんとなくこの空間が気まずかった。
チィン!!
そんな気まずい雰囲気を打ち砕くかのように、到着の知らせがなった。
ウィーン。
そしてエレベーターの扉が開く。
- 413 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 03:04
-
やっぱ中も綺麗なんじゃん。
エレベーターの扉が開いたと同時にそう感じた。
外観に相応しく、中の造りもそれなりに高級そうな匂いがした。
「こっちこっち。」
ここの造りを熟知していると言ってもいいくらいに、矢口先生は迷うことなく美貴の前を歩いた。
「よいしょっと。」
ひとつの扉の前で立ち止まったかと思うと、矢口先生は安倍先生のカバンをあさり、カギを取り出した。
- 414 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/02/24(金) 03:05
-
ガチャッ。
そして矢口先生は扉を開いた。
- 415 名前:ワクワク 投稿日:2006/02/24(金) 03:06
- こーしんっ。
774飼育さま>またも更新してみましたよっ(笑)
どーですか('_'?)
- 416 名前:774飼育 投稿日:2006/02/24(金) 15:22
- つ、続きが・・・気になりすぎて・・・
デモ 作者さんのペースで書いていってくださいなw
これからどうなるんでしょうか・・・
更新待ってます
- 417 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/03/02(木) 02:29
-
***
- 418 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/03/02(木) 02:32
-
あのとき・・・
戸惑っていた美貴に
アナタは優しく微笑んでくれましたよね?
あれ。
あの笑顔。
アナタの笑顔はやっぱり素敵でしたよ?
- 419 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/03/02(木) 02:34
-
だからですかね?
美貴の心が締め付けられました。
そんなサイコーの笑顔を見せながら
アナタは涙を流していたから。
美貴は・・・
ホントに笑ったアナタが好きでした。
- 420 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/03/02(木) 02:34
-
***
- 421 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/03/02(木) 02:40
-
「・・・・」
「ほら、なにぼーっとつっ立ってんの?入った入った。」
「あぁ、はい。」
扉が開いたと同時に目の前に広がった空間。
美貴が予想してより意外とフツーだった。
むしろ・・・
目の前に広がる空間に充満している、安倍先生の香りのほうに気をとられた。
「ほらっ。」
先に入った矢口先生に早く入れと催促される。
「はい。」
女の人の部屋に入るのは初めてだった。
亜弥の部屋は何回も出入りしている。だけど、一人暮らしの女の人の部屋には入ったことがなかった。
- 422 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/03/02(木) 02:45
-
先に入っている矢口先生の後に着いて行くと、そこにはいかにも一人用のベッドがあった。
「ここ、寝かしてやって?」
「はいはい。」
ポスッ。
ん〜と唸っている安倍先生を、ベッドにゆっくりと落とした。
「ふ〜・・・」
やっと究極な我慢状態が解き放たれる。
なんてったって好きな人を背中に乗せて歩いていたんだから、こんな我慢をさせられることもなかならない。
「サンキュ。藤本。」
「いや、まあ。」
矢口先生と美貴。
ベッドで幸せそうに眠る安倍を見る。
- 423 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/03/02(木) 02:50
-
「じゃあ、後頼む。」
お互いに安倍先生を見つめて数分後、矢口先生が妙なことを口走った。
「はっ?」
「おいらさ、明日早番なの。だから後は頼んだ。」
安倍先生のカバンをソファに置き、なんの躊躇いもなく出ていこうとする矢口先生。
「ちょっとちょっと!なんで美貴が残んなきゃいけないんですか。」
そんな矢口先生を後ろから腕を掴んで、帰宅を断固阻止。
やっと究極な我慢から解放された、と思ったらまた災難。
- 424 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/03/02(木) 02:55
-
「だーから、おいら明日早番なの。」
「早番だからって・・・。つーか美貴より矢口先生のが安倍先生と仲良いじゃないですか。」
そーだよっ。矢口先生と安倍先生が仲良いんだから、矢口先生が残ればいいだけの話じゃん。
美貴自身の発想に激しく同意した。
「なっちの介抱してたらおいらぜっったい明日遅刻する。」
「だからってほっておくんですか?」
「いいや、だから藤本に後はよろしくって言ったの。」
- 425 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/03/02(木) 03:00
-
なんなんだ、この会話。
安倍先生が潰れて、美貴と矢口先生がそれを運んで来て、やっと美貴が解放されると思ったら今度は安倍先生の部屋に残れ?
なんでだよっ。
美貴にそんな義務ないじゃんか。
「っていうか、いいんですか?」
「何が?」
「美貴と安倍先生。二人っきりにするの。」
「なんで?」
本気でわからないのか、おもいっきり眉間にシワを寄せるチビッコの早番先生。
なんでって・・・
- 426 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/03/02(木) 03:05
-
「美貴、男ですよ?」
「知ってるよ。そんなの。だから?」
だから?だからってなんだよ、だからって。
「いや、だから。大の男と安倍先生をこんな夜中に二人っきりにさせちゃっていいんですかって言ってるんです。」
どんだけ鈍感なんだよと思いながら、早くも靴を履き終えている矢口先生が美貴に振り返った。
「あは・・・あははは!」
「ちょっと、笑うとこじゃないんですけど。」
「ああ、ごめんごめん。ってゆーかさ、藤本ってなっちのこと女としてみてんだな。」
- 427 名前:ワクワク 投稿日:2006/03/02(木) 03:08
- 短い更新です(苦笑)
774飼育さま>若干ですが、進めました((((((((^_^;)これからも進めて行きます(笑)
- 428 名前:ナナシ 投稿日:2006/03/14(火) 00:36
- 作者さんはじめまして。
続き楽しみにしているのでがんばって下さい。
- 429 名前:774改 投稿日:2006/04/06(木) 19:01
- 更新待ってますよぉ・・・
- 430 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/07(日) 23:29
-
「じゃあ、そういうことだから!頼んだぞ!藤本君♪」
最後の最後でナイのに色気ムンムンな感じの語尾をチラつかせながら、チビッコ先生はドアに手をかけていた。
「ちょっ・・・だから・・・」
ガチャ。
「また明日ね〜。」
パタン。
「・・・」
無情にも、ドアはゆっくりと閉じられてしまった。
「なんなんだよ・・・」
ただそう口走るしか出来ない状況に置かれてしまっていた。
- 431 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/07(日) 23:30
-
***
- 432 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/07(日) 23:37
-
いつも保健室で迎えてくれる
いつも笑顔のあなた。
引きずってしまうくらい想い人のことを
とても愛しているあなた。
- 433 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/07(日) 23:39
-
美貴はあなたのことをほんの少ししか知らないし
あなたは美貴のことをこれっぽっちも知らないだろうけど・・・
それでも
あなたは本当に
美貴の心に触れてきたんだ。
美貴の心に・・・
- 434 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/07(日) 23:40
-
***
- 435 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/07(日) 23:45
-
「どうっすっかな・・・」
やはりここは酔い潰れている彼女を置いて帰るべきなのだろうか
それとも帰るべきではないのか
混乱気味な頭をフルに働かせて、一人閉まってしまったドアと睨めっこ。
「一応女なわけだし・・・っていうか美貴と二人にすること自体が有り得ないっしょ・・・」
何度考えても、結局はチビッコ先生が二人にしたのが悪いというところにたどり着く。
- 436 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/07(日) 23:51
-
「だぁー。そうじゃなくて・・・」
自分の頭を何度も叩いてみるが、結局はそれしか頭に浮かばない。
「っていうか悩むとこじゃないナイ。ここは静かにズラかるのがイチバンイチバン・・・」
まともに働かない頭を動かそうとしてもムダなことに気がつき、普段から得意な無視作戦を決行。
「美貴には関係ないしね・・・」
一人納得し、靴を履き始める。
- 437 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/07(日) 23:58
-
「うぅ〜・・・」
「帰る準備準備っ・・・」
「グスンッ・・・」
「・・・・」
スポッ。
ガタッ。
パタパタパタ。
「あ、あの・・・帰るのにカバン忘れて・・・」
玄関で履き始めていた靴を脱ぎ捨て、急いで戻った。
カバンを忘れたなんてただの口実。
まぁウソでもないけど・・・ね。
「う゛〜・・・ふじもどぉ・・・」
「・・・はいはい。なんっすか。」
ほっとけないじゃん。
好きな人が泣き声もらしてんのに
帰るに帰れないっつーの。
- 438 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/08(月) 00:04
-
「・・・」
クイクイ。
安倍先生が黙って枕を抱えたまま、右手だけを動かす。
こっちにこいってか・・・。
「なんで・・・す・・・か・・・」
バサッ。
「ちょっと・・・こうしてて・・・ほしいべさ・・・」
安倍先生の所に着くやいなや、美貴の右手が安倍先生によって安倍先生の頭に乗っけられた。
「・・・」
「ちょっとだけ・・・なっち・・・ちょっとダメっぽいから・・・」
そんなこと言われたら、帰るなんて選択肢はなくなった。
- 439 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/08(月) 00:09
-
「どうしたんですか・・・まぁ別にいいけど。」
美貴の右手が役に立つならね。
「へへっ・・・ちょっとなっち、グスンッ・・・無理してた・・・べさ。」
明らかにいつもの笑顔とは違う、無理して作った笑顔。
見るからに痛いしかった。
「安倍先生でも・・・無理、することあるんだ・・・。」
こんなときに泣くなとか
大丈夫だとか
美貴がいるからとか
そんなことが言えるのが優しい男なのかな、とか考えてる自分がいた。
- 440 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/08(月) 00:13
-
でも、そんな考えとは裏腹に、出てきたのはいつもの憎まれ口。
バカか・・・美貴は。
そっぽを向いて憎まれ口なんて、美貴が女だったらイチバン嫌なパターン。
そんなパターンを好きな人にもろに出してしまっていた。
「・・・」
「・・・」
あーあ・・・
安倍先生はさらに落ち込んでしまったのか、美貴と口を交そうともしてくれない。
美貴サイアクだ・・・
やってしまった後から後悔。
- 441 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/08(月) 00:19
-
「・・・なっちの付き合ってる人・・・」
「んぇ?」
突然の切り出しに拍子抜け。
だけど、とりあえず嫌われてしまってたというわけではないみたい。
「・・・アソコに飾ってるやつ・・・」
枕を抱えていた右手と左手。その片方の右手が、棚を指差していた。
その指の先を見ると、なにやら写真らしきものがひとつ、飾られている。
「彼氏との写真・・・ですか?」
「うん・・・」
小さく頷く安倍先生を横目で見て、先生の頭に乗せている右手を下ろし、写真のほうへと歩み寄った。
- 442 名前:ワクワク 投稿日:2006/05/08(月) 00:20
- 更新遅くなってしまいましたが・・・少し更新です(*_*)
- 443 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 22:43
-
***
え・・・・?
- 444 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 22:48
-
その写真を見て思わず立ちすくんでしまった。
「正しく言うと・・・付き合ってた・・・かな。」
先生の悲しそうな声さえもボヤけてくる。
「なっちだけなんだ・・・忘れて・・・ないの・・・。」
美貴の前には幸せそうな笑顔を浮かべた先生と、相手の写真。
美貴の前で・・・
こんな顔したことないですよ・・・。
今までの
今までの先生とは別人じゃんか。
- 445 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 22:51
-
ずるいよ。
こんな・・・
こんなに幸せそうにしてるのに。
「・・・今日の圭織は・・・笑ってた・・・。」
何でですか?
飯田さん。
なぜ、あなたはこんなにも彼女を苦しめるの?
こんなにするくらいなら・・・
はなっから
他の人に譲ってれば良かったのに。
- 446 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 22:55
-
写真に写っていたのは
幸せそうに微笑む先生と・・・
そんな先生に寄り添っている飯田さんだった。
「なっち・・・だめ・・・だべね。」
途切れ途切れの先生の言葉。
他の人に譲ってれば、なんて考えたけど
やっぱり飯田さんで良かった。
だって・・・
先生が愛してる人は
飯田さんだけだから。
- 447 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 22:58
-
良かった。飯田さんで。
だけど・・・・
「グス・・・か・・・お・・・りぃ〜・・・」
先生を泣かしたことは
やっぱ許せない。
「かお・・・り・・・グスッ・・・」
許せない許せない許せない。
泣かすなよ。
でも・・・・
飯田さんだから良かった。
- 448 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 23:02
-
そんなことばかりが頭の中をグルグル回る。
その度に先生の泣き声が頭に響いた。
「ふじ・・・も・・・とぉ。」
泣きながら、また美貴を呼びよせる。
美貴は何も言わず、彼女の横に腰を下ろした。
「ふじ・・・も・・・」
泣かないで・・・
泣かないでよ。
ガバッ。
思わず美貴は、涙を流し続ける彼女を抱き寄せた。
- 449 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 23:07
-
「ふじ・・・もと?」
こんなときにまで、不思議そうな声を出す彼女が
また愛しいと思った。
「こーゆうときは・・・黙って男の胸でなくのが・・・女の人なんじゃないですか?」
「・・・なっちも・・・」
「うん?」
抱きしめながら、しゃくりあげる彼女の背中を擦ってやった。
「なっちも・・・いいのかな?」
「当たり前でしょ。センセーも・・・美貴にとっちゃ・・・女の人ですから。いちお。」
彼女がピクリと反応する。
- 450 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 23:13
-
「いちお・・・って・・・ズズ・・・ヒック!なんだべさ・・・」
彼女が少し笑ってくれた気がした。
「いちおー・・・ね。美貴がこんな励ますのは・・・」
スッ・・・。
抱き寄せていた彼女を、いったん離して見つめる。
彼女は涙を流しながら、また不思議そうな顔をした。
「好きな人・・・だけだから・・・」
こんなときに何言ってんだよ自分。
今日はこんなこと言うつもりなんかなかったのに・・・。
- 451 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 23:17
-
彼女も彼女で、固まってしまっていた。
「あは・・・ハハハ・・・。冗談・・・ですから。気にしないで・・・ください・・・」
今更弁解してはみるものの、明らかにさっきの安心した表情はどこにもない。
「・・・じゃあ・・・美貴・・・帰ります・・・。」
こんな状況で居座る気はさらさらない。
むしろこっちから去りたい気分だ。
ギシッ・・・
ベッドから立ち上がると、なんだか自分が悲しくなってきた。
- 452 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 23:21
-
「・・・いやぁ〜、美貴、すっかり居座っちゃったなぁ〜。」
ホントはもっとあなたと居たいです。
「矢口センセーは先に帰っちゃうし。」
あなたの隣りにいたい。
「バイト時間もそろそろ終わるころだし丁度・・・」
「本当・・・だべか?」
「え・・・?」
いつの間にか彼女の涙は止まっていた。
- 453 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 23:26
-
「もしウソなら・・・ダメだべよ?女の子に簡単に好きなんて言っちゃ。藤本・・・かっこいいから・・・みんな本気に・・・」
なんだよそれ。
「・・・」
「だーから、簡単にそんなこと言わない。」
先生がいかにも先生って口調でそんなことを言った。
「ねっ?」
「・・・そんなに」
「ん?」
なんで無理矢理・・・先生っぽくするんだよ。
- 454 名前:もしも変身できたなら 投稿日:2006/05/12(金) 23:30
-
「そんなに美貴は信用できませんか?」
また彼女に視線を向ける。すると、目を見開いていた。
「美貴が・・・好きでもない女に・・・好きって言う男に見えますか?」
「ふじも・・・」
ムキになるな。
「美貴は!!」
こんなことを言うために
「女の人として・・・先生のことこんなに好きなのに。」
彼女を困らせるためにいるんじゃないのに。
- 455 名前:ワクワク 投稿日:2006/05/12(金) 23:30
- またも小量ですいません((((((((^_^;)
- 456 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/13(土) 08:36
- 今日初めて読みましたが。
面白いですっ
次回も楽しみにしてますっ
- 457 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/15(月) 08:13
- 個人的には亜弥ちゃんに頑張ってほしいです…
- 458 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/25(木) 11:59
- 美貴ちゃん頑張れー
- 459 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/18(火) 13:21
- 待ってますよッ
- 460 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/20(日) 12:43
- まだですかね…
- 461 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:06
-
『好き』
その一言がいつまでも耳から離れない。
『好き』
好きすきスキ・・・
『好き』ってなに?
- 462 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:11
-
「おーっす!お疲れさん!」
部長の吉澤さんが元気よくみんなに声をかける。
あたしはいつも、ただじっとその光景を見つめるだけ。
「お疲れっ。」
後ろからポンっと肩に手を置かれる。
これもいつもの日課。
「お疲れさまです。」
振り向いて笑顔で答える。
いつものあたしの行動パターン。
「毎日疲れるよね。」
彼女、副部長らしからぬお言葉もいつもと変わらない。
- 463 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:15
-
そして・・・
「藤本先輩っ!お、お、お疲れ様ですっ!!」
普段からどんくさいマネージャーが、いつも決まって副部長の藤本先輩に話しかける。
「ん。お疲れさん。」
副部長もにっこりと返す。
あたしが毎日見てる光景。
だけど、なぜだか決まって胃がムカムカする。
これもあたしの毎日のクセ。
- 464 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:19
-
「じゃ、美貴着替えに行くわ。」
そう言って毎回爽やかに去ってゆく、副部長。
そしてそれに見とれてはぁ〜とため息を漏らすマネージャー。
「飽きないね。」
毎回そんな行動を繰り返しているマネージャーに、思わずポロリと言ってしまう。
しまった、と気が付いたときには、もう遅い。
「なによっ。ええやろ?藤本先輩はかっこええんやから。」
ムスッとした彼女の顔。
- 465 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:23
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「あーそうですか。」
こういうときは軽く流すのがイチバンだ。
これでも、彼女の扱い方は心得ているつもりだ。
「なにその態度。親に似てふてぶてしいがし。」
親?親なんか関係ないだろ、と思いつつも、もう彼女とこれ以上話しをしたくない自分がいる。
「ふてぶてしいのはどっちだか。」
ただ売られたら買っちゃうんだよね。
ケンカって。
- 466 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:26
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「ふんっ。人ん家の前にわざとらしく店建てた一族に言われたないわ。」
あたしたちのケンカは決まってこのこと。
「は?ってかイヤなら他の店舗でも買って移れば?」
しょうもない、と思いながらも、彼女といるときは必ずケンカしちゃうんだよなぁ。
- 467 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:33
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「老舗の面目丸つぶれや。」
「いつまでそんな古臭いことやってんだかね。」
彼女、基、高橋愛の家は、もう何百年と受け継がれた味や風格で有名な老舗の和菓子屋『高橋』。
そして、うちはというと、素材にこだわっていて、最近は喫茶店部分を作った洋菓子店の『NIIGAKI』。
「伝統もあんたん家のおかげで半減やわ。」
もうね、正直相手もしたくないって感じですよ、はい。
- 468 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:39
-
ことの発端は、うちのおじいちゃんが何百年も続いている『高橋』の真ん前に引っ越し、店を開店させたときから。
なにやら、元々、おじいちゃんと高橋家のおじいちゃんは同級生で、大親友だったらしい。
しかーし。徐々にうちが繁盛し始めて、『高橋』の売り上げが落ちたんだとか。
それで、やれ営業妨害だの、そんなことを店で言うこと自体が営業妨害だの、と言い争いが始まり。
そのライバル同士の戦いが、代々、あたしたちにまで受け継がれているのだ。
- 469 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:44
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「あんたなんか大っ嫌いやっ!!」
お決まりのフレーズ。
ケンカの度の彼女の捨てゼリフ。
「そのままそっくりその言葉を返してやるよ。」
体育館を乱暴に出てゆく彼女への捨てゼリフ。
これも毎回決まったあたしのセリフ。
「はぁ〜。」
ケンカの後は、必ず気がどっと滅入ったように感じられる。
まぁ要は精神的疲労ってやつですかね。
- 470 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:48
-
「っし、やるか。」
気が滅入ったときのトレーニングがいいんだよね。
と、勝手に自分で決めつけてるもんだから、いつも残って自主練。
「まずは、ダッシュ。」
お決まりメニュー第1。
部活直後で疲れている筋肉を極限まで疲れさせる。それがダッシュ。
これのおかげか、部活中はそんなにへばることがない。
- 471 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:52
-
「はっはっはっ・・・」
ただし、部活後のはいつも決まって、ものすごく疲れます。
「つ、次・・・シューティング100。」
お決まりメニュー第2。
スリーポイントラインからのシューティング。
チビなあたしに上手くなる近道みたいなもんかな。
あたしは吉澤さんみたいに背が高いわけじゃないし、藤本さんみたいに技術がずば抜けてるわけでもない。
だから、1つの武器を作るんだ。
- 472 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:56
-
シュパンッ。
キュッ。
ボールを1つ握る度に、感覚を確かめる。
ピュッ。
パシュ。
ゴールにボールが吸い込まれる音で、あたしの神経は研ぎ澄まされる。
正に、これもいつものことだ。
その度、その度に、あたしは喜びでブルっと震える。
- 473 名前:好きになるということ 投稿日:2006/08/31(木) 01:58
-
「よし・・・。終わり。」
一通り終わった自主練。
また、いつものようにちょっとした疲労感を味わいながら、部室へと向かった。
- 474 名前:ワクワク 投稿日:2006/08/31(木) 02:00
- もしも変身できたならは、思考中のため、ちょっとした別作の中編?を書きます。お待ちのところ、申し訳ありません。
- 475 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/07(木) 11:59
- こちらの中編も楽しみにしてます
もしも変身できたならも待ってますね
- 476 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:01
-
―――ガチャ。
あたしが扉を開く前に、開けられた。
というより、中から人が出てきた。
- 477 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:06
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「あはは!マジ愛ちゃん面白いわぁ。あ、てか愛ちゃん、美貴と逆方向だよね?帰り道。」
「へ、へーきですよっ!あーしいっつも一人で帰ってますし!」
部室から出てきたのは、先輩の藤本さんと高橋愛。
どうやら今まで二人で話し込んでたらしい。
「ははっ。いやいや、さすがにマネージャーを一人で帰すわけには・・・あ、ガキさん。そーだ!!ガキさんって愛ちゃんと近所だよね?」
やっとあたしの存在に気がついた藤本さん。
ってか気がついた第一声がそれですか。
- 478 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:08
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「いや、まぁ・・・」
正直、答えずらい状況。
高橋愛はめちゃめちゃあたしを睨んでるし。
あたしはあたしで彼女と一緒に帰るなんて、まっぴらだし。
だけど、先輩の質問に答えないわけにもいかないし。
もーはっちゃかめっちゃかですよ。
あたしの頭ん中は。
- 479 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:11
-
そんなあたしを差し押いて、藤本さんはあたしにマネージャーを送っていくように命じる。
「うちの部の可愛いマネージャーをお守りしなさい。」
なんておまけ付き。
やだ。
やだよ、やだよ。
送って行けって言うなら、先輩が送ってってくださいよ。
なんて思っても、神でも言えないあたし。
あ、また高橋愛が睨んだ。
- 480 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:15
-
わかったら早く着替えてくる!美貴たち待ってるから。と背中越しに言われて、ドンっと背中を押された。
「・・・っいたた。」
先輩の押しが強すぎて、おでこをロッカーにぶつけた。
なんてかっこ悪いんだ、あたし。
って、あたし、結局彼女と一緒に帰るはめになった?
- 481 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:19
-
先輩は高橋愛を気にかけてる。
ってよりは、マネージャーを気遣っている。
元々、先輩は弱いものを守るって信念があるみたいで、弱いものイジメなんて絶対許さない。
そのせいか、普段は運動していない体力不足のマネージャーたちにはやたらと優しい。
「はぁ〜・・・」
高橋愛に気を遣うなら、正直、あたしにだって気を遣ってくれてもいいじゃないですか。
藤本さん。
- 482 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:24
-
気が重くなりながらも、先輩命令は断れないので、とりあえず急いで着替えた。
「お、お待たせしてすいません。」
多少、息切れ。
普段はきちんと着ている制服も、急いだせいか、かなり着崩し。
半袖のシャツのボタンは第二ボタンより上は開けっぱ。
ネクタイユルユル。
スカートはなんとかきちんとはけた。
カバンは手にブラブラと持って、急いで靴をはく。
- 483 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:28
-
こらこら、二年のクセに着崩しすぎだと言われる。
ってゆーか焦らしたのは、あなたじゃないですか。
というツッコミはゴクッと飲み込み、すいませんと大慌てで制服を直そうとした。
「あーあ。ほら、まずはボタンしめないと。」
フワッ・・・。
へっ?
- 484 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:31
-
イイ香り・・・。
と思ったら、藤本さんが、あたしのシャツのボタンを笑顔でしめていてくれた。
「あ、ありがとござい・・・」
「もー。ネクタイも。」
お礼を言おうとしたら、今度はネクタイを掴まれ、くいっと前に引っ張られた。
「のわっ・・・」
踏ん張ったつもりが、藤本さんの力のほうが強くて、一歩前へとやられる。
- 485 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:35
-
はい、完了。
あたしが藤本さんの顔を見ているうちに、先輩がきれいに直してくれていた。
「あ、すいません。全部やってもらっちゃって。」
本当だよ〜。ガキさんはまだまだ美貴の手がかかるんだから。と部活中には見せないとびっきりの笑顔で先輩は言った。
- 486 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:38
-
―――カツカツ。
あの後、先輩からじゃあと別れを告げられ、自然と二人きりになったあたしたちは、仕方なく、家までの道のりを歩き始めた。
コツコツ・・・。
タッタッ。
もちろん、二人で並んで歩くことなんてしない。
高橋愛が何歩か前を歩いていて
あたしがその後ろを歩く。
- 487 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:41
-
なんか・・・
先輩、いつもと違ったなぁ。
なんて言うか
女の子って感じ?
すんごいイイ香りしたし。
って言うかイイ女系?
あたしの制服とか直してくれたし・・・。
あん時の笑顔はヤバいね。
ってゆーかヤバかったね。
あたしが男なら。
- 488 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:44
-
ピタ。
あーやべ。
「なぁ。」
何考えてんだ、あたし。
「なぁって。」
相手はあの怖い藤本さんだぞ?
「なあって!!」
「あ?」
ここでやっと、前を歩いていた彼女が、立ち止まり、ものすごい形相であたしを見ていることに気がついた。
- 489 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:47
-
「あんた、好きなん?」
「は?何が?」
またワケわかんないことを言いやがる。
まぁ、いつものことっちゃいつものことなんだけど。
「その・・・」
「ハッキリ言ってくんないとわかんない。」
珍しく、いつも強気な彼女が言葉を濁して、こっち的にはわけわかんない状況に置かれた感じ。
- 490 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:49
-
なんだよ、本当。
今日は、とことんついてないな。
「藤本先輩のこと。あんた、好きなん?」
- 491 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:51
-
「は?」
今、なんつった?
この人。
「だからっ!!藤本先輩のこと、好きなんかって言っとるんや!!」
半ば強引な感じに言われても。
っていうかさ、何をいきなり。
わけわかんない。
- 492 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:53
-
あたしが。
このあたしが・・・
ねぇ?
恐怖の人だよ?
藤本さんって。
そんな人を好きになるわけない・・・
よね?
・・・ね?
新垣里沙。
だよ・・・ね?
- 493 名前:好きになるということ 投稿日:2006/09/11(月) 03:55
-
「んなことあるか。」
自分に問いただしながら、一言で答えた。
「あっそ。」
自分から聞いてきたくせに、興味ないみたいに、またツカツカと歩き始めた。
なんだよ。
自分が聞いてきたクセに。
本当、今日はみんなわけわかんないよ。
- 494 名前:ワクワク 投稿日:2006/09/11(月) 03:57
- ちょい更新です。
名無飼育さま>ちょびっと更新でまったく申し訳ないです。
もしも変身の方は作戦練り中ですので(笑)
- 495 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/17(日) 17:55
- どちらとも
楽しみにしてますっ!!
- 496 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/08(木) 16:21
- どちらも続きが気になります
期待して待ってます!
- 497 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/21(木) 23:39
- まだまだ待ってます。
頑張ってください
- 498 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/12(水) 12:19
- 1年経っちゃいましたけど、まだまだ待ってます!
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