LINE

1 名前:Rink 投稿日:2005/12/05(月) 01:02
赤板『ライン』の続編です

ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/red/1132757791/

石川さん視点で書きたいと思います
よろしくお願いします
2 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:04

  ◇  ◇  ◇


LINE  




 "私を愛してくれる、すべての人へ
そして、私の愛する人へ これを届けます"


3 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:05

ライン

この言葉を聞いて、皆さんは何のラインを想像しますか?

スタート、ゴール
ボーダー、エンド

色々あります



わたしは今ゴールラインに立っています

1つの出来事を終わらせようとしてます

でも、とある人がこう言ってました

ゴールラインはスタートラインなんだって。
4 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:05

出来事が終わっても
また新しいゴールに向かって走り出す

だってほら、金メダリストがよく言うでしょ?
次の大会に向けて頑張ります!って。

ここが終わり
だけど
ここが始まり

そんなわたしの告白をここに書きます
5 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:10

―中略―
6 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:12
〜 あたし と わたし 〜
















    ― 144 ―
7 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:13
















    ― 145 ―
8 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:13
前の白紙の2ページ
それがわたし

真っ白で、何も覚えていない

今まで送ってきた生活
幼馴染と遊んでいた幼少の頃の思い出
そして、自分の事さえも・・・
名前を呼ばれ年を言われ、仕事を言われても
全部頭に入らなかった



何も思い出せず、何も感じない

魂が抜け、人形のようだ

それが入院生活の間、言われていた言葉

  ◇  ◇  ◇
9 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:14
−+−+−+−+−+−+−+−+−
10 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:16


「わたしは誰ですか・・・」

「わたしは、何をしてるんですか・・・」

「わたしが、何をしたというんですか・・・」


ここはとある総合病院の病室
とても広い、個室にわたし一人っきり
体中に包帯を巻かれ、ベッドの中で変わらない天井を見上げる
11 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:17

目の前のテレビからは
以前のわたしの姿が走り回って大はしゃぎしてる

わたしはテレビに映る人間らしい
歌を歌っているらしい


"自分が持っている帯番組"らしい
何のことかサッパリ分からない

画面のわたしらしき人は、ピンク色の服を着て
一緒に出ている人と、"コント"っていうのをしていた

『もぅぅ、やめてくださいよぉぉ!アタシそんなキャラじゃないしぃ!』

甲高い声がTVから流れてくる


「バカみたい・・・」
12 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:17
これが本当に、わたしだとしたら

このときのわたしは、何にも考えてなかったんじゃないのかな

笑って、泣いて、拗ねて

でも明らかに
作ってるって分かる

ぎこちないんじゃなくて・・・
"作りあげられた人" なんだと思う、この人


頭が痛い

テレビの電源を落とすと、ベッドから出て
窓の外を眺めた
13 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:17
「病室からは許可無く出るな。窓にも近づいちゃだめだ」

そう言われた
写真を撮られると困るらしい
わたしが何をしたっていうの?

寝かされ、起こされ、食事をして、時々検査して、また寝かされて

体中あちこちが時々痛む
どうしてわたしがこんなめに遭わなきゃいけないの?
わたしが何をしたっていうの?

社長とか言う、派手な女性が
わたしに教えてくれた
14 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:19
夜、帰りに後ろから殴られた
硬い柄のようなものだったらしい
体中を殴られ、蹴られ、気を失うまで続いて・・・

おなかを・・・何箇所も刺された


その話を聞き終わると
何故だか、なにか分からない恐怖が
頭の中を支配した

コワイ! コワイ!!
15 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:19
命はこうやって、助かったものの
わたしは、傷がついた
顔も、身体も・・・
そして、赤ちゃんが産めない身体になった

お医者様は、その時の事を思い出さないように
記憶に蓋をしたんじゃないかって・・・


 記憶が無い
 
 そして、愛されない身体になった

16 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:19
洗面所の鏡に映る顔

顔中にあったアザや腫れは引いてる
頭の包帯もそろそろ取れるらしい

こうやって見てると
テレビに映るわたしとなんら変わりない

もし、記憶が戻ったら・・・
わたしは、あの箱の中に戻るんだろうか
記憶がなくても
あの小さなの世界に、戻るんだろうか

鏡の前に置かれた、剃刀が目に映る
17 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:21

ごめんなさい

何故かその言葉が頭を過ぎった

でも 生きれない

洗面所の排水溝に栓をする
蛇口を捻る ざぁざぁと水が流れる

剃刀を右手に持って
左手首にあてた
18 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:21

音もなく 切り開かれる肌


痛みはない


ぱっくりと開かれたそこからは
鮮やかな赤いものが流れてきた
19 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:22

痛くない

なんで・・・
どうして・・・

水の中に手を入れると
透明なそこに、赤く広がった
止まる事無く、後から後から溢れてくる
わたしの血液


痛くない


この色だって
他の人とは変わらないのに


わたしは
わたしの身体は汚れてる

手首をつけたまま、床に座り込んだ
20 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:22


わたしは 一人だから


だれも愛してくれないなら


このまま、死ねばいい


消えればいい

21 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:23

薄れていく意識の中で
昨日、廊下で話してる人の声を思い出した

以前のわたしという存在は、売り物らしい
22 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:24

ー ー ー - - - - - - - - - - - - - - - - -

『笑えりゃいいんだよ!傷が治ったら、徹底的に教え込むんだ!』
『そんな・・・彼女の精神状態じゃ無理ですよ!』
『馬鹿野郎!アイツは今事務所の看板なんだよ。
 CMもTVも降板なんてことになったら、大損害だ!』
『だけど、記憶が無いあの子にどうやって!』
『今までアイツが出てたビデオをここで流して、植え込むんだ。
 前までの記憶を!』
『メディアには過労で入院ってことにしといたわ。一時の損失は仕方ないわね・・・』
『でも、どうして彼女に、そんな・・・』
『仕方ないわね、デビューの時からそうだったんだから・・・』
『しかも、逆恨みで刺されただなんて・・・かわいそう過ぎます!』
『向こうの事務所はなんて言ってるの?』
『一切関与せず』
『アイツら・・・ウチのところの商品使って。ほんと厄介だわ・・・』
『どうせ売名行為だろう、こっちの売上に乗っかったんだ』
『あの事務所と出版社、癒着してるみたいですし』
『やっぱり・・・こっちが押さえられなかったわけね』
『男のイメージなんて着いたら、売れない。クソッ!!!』
『幾ら積んでも構わないわ。外にこれ以上漏れないようにして。
それとクリーンに復帰できるように、仕向けて頂戴』
『分かった』
『・・・分かりました』

ー ー ー - - - - - - - - - - - - - - - - -
23 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:25

お金 お金 お金・・・

わたしはお金に換わる モノらしい


まわりを不幸にする
ううん・・・わたしを不幸にする

わたしという存在
24 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:26
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
25 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:27
「ん・・・ん・・・・・」

「気が付いた?」

「あ・・・・・」

目の前に広がる真っ白な天井

何故だろう、左手がギリギリと痛い・・・
ここは何処だろう・・・

「よかった・・・」

わたしの顔の上で、誰かが話してる

この人は誰・・・?

記憶が途切れてるから
忘れた・・・?


思い出した

死のうとしてたんだ・・・
26 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:28

「死ね、なかったんだ・・・」

「何を言ってるの!」

わたし、死ぬことも出来ないの
27 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:29

「血を流して倒れてるから・・・心配だったんだぞ」

嘘つき

「傷は深くないけど・・・痕が残るわ・・・」

嘘つき

「辛いのは、分かるけどな、石川・・・」

嘘つき

「乗り越えなくちゃいけないのよ・・・」

嘘つき 嘘つき ウソツキ!うそつき!うそつき!

みんな嘘ばっかり!
わたしのことなんて、誰も心配してない!
わたしのことなんて、誰も愛してくれてない!
わたしなんて、お金としてしか見てない!
わたしなんて、ただのおどけたピエロじゃない!
ウソツキウソツキウソツキウソツキウソツキウソツキ
ウソツキウソツキウソツキウソツキウソツキウソツキ
ウソツキウソツキウソツキウソツキウソツキウソツキ
28 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:30

「帰って!!!」

「「え・・・?」」

「みんな出てって!」
「石川、落ち着け!」
「触らないで!出てって!」
「梨華!」
「みんな帰ってぇぇぇぇぇ!!」



すぐに看護士さんが駆けつけて、暴れるわたしの腕に
鎮静剤を注射した

これで何度目だろう
こうやって暴れて取り乱して、錯乱するのは・・・

でも、涙は出ない
心がない

痛みを感じないから・・・
29 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:30

術後の経過もよくなって
頭の包帯も取れた
だけど、腕や身体に巻かれた包帯はまだ取れていない
手首のそれも、体中のアザもまだ消えていない

退院して、自宅療養になった

わたしが以前住んでいた場所
マンションに入るのがコワイ
背後がコワイ


部屋に入ると、ピンク一色だった

「・・・かわいい」

女の子な部屋だった
多分、その感覚は今もかわらないんだと思う
30 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:31
−+−+−+−+−+−+−+−+− 
31 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:32
  ◇  ◇  ◇

退院後、家に帰っても
事務所の人たちがたくさん来たり
友人らしき人たちが来たけど
追い返した

夜が怖くて、ひたすら家でこもってた
何もせずに、ただボーっと座っているだけの日もあった

何も信じられなかったから
32 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:32
でも、心のどこかでわたしは知りたかったんだと思う

わたしは、本当のわたしを知りたくて
自分で知りたくて

部屋中を調べた

何か手がかりが見つかる気がして・・・


そしたら、引出しの奥に、小さな封筒が入ってた
その中を見たら、焼け焦げている手紙らしきものが。
中を見ると、私へ送られてきた一通の手紙
そこに、ある住所が書かれていた

わたしは、そこへ行かなければいけないという
強迫観念にも似た衝動に駆り立てられ
コートと財布、携帯をバックに入れ
家を飛び出したの


何かから逃れるように
自分を見つけるために
33 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:33
〜 謎の人 〜


書かれていた住所に何とかたどり着いたけれど
幾らノックをしても出てこない

暫く待つことにした

どんな人なんだろう。

手紙には女性の名前が書かれていたから
友達なんだと思う。
所々が焼け焦げていて、内容はわからなかったけれど
でも良くしている人のようだから・・・

記憶が無いことの恐怖と、今日の緊張で
疲労がピークに達してしまい

その人の家の前で
いつのまにか眠ってしまっていた
34 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:33
どれくらい時間がたったのか
寒さで目が覚めると、人が自分の隣で立っていた

この人が、わたしを知る
手がかりを持った人

今まであった事を話そうと声を出すけれど
記憶が途切れていて上手く話せない

記憶障害があるらしい
お医者様はそう言っていた
35 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:34
大きなショックを受けると
思い出さないように記憶に蓋をしてしまう。
そして、他の出来事も
しばらくの間は記憶に残らないようになっているらしい
『忘れるクセ』もしくは『覚えないクセ』なんだとか。

だから自分の名前も思い出せない、年も、どうやって来たのかも・・・
住んでいるところはなんとか思い出せたけど
その人との会話は本当にチンプンカンプンだった気がする

わたしが助けて欲しいと言ったら
「こっちのセリフだぁ!」って叫んだんだよ

今思い出してもおっかしいーって笑っちゃうくらい

  ◇  ◇  ◇
36 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:34
−+−+−+−+−+−+−+−+−
37 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:35
この時のことは今でもはっきり覚えてる
それまであった、入院してたときのことは思い出せないのに・・・

うずくまって、寒さをこらえてると
横に人の気配で顔をあげたら

驚いて、こぼれそうなくらい、目を見開いてる人がいたの

" この人だ・・・ "

直感でそう思ったの

そして、何よりこの人に・・・一目惚れしてた
38 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:36
一見すると男の人っぽくて
でもマフラーの下からは、とっても綺麗な顔が見え隠れしてた
薄暗い電灯の下でも分かる、羨ましいくらいの、白い肌
まるで宝石のような、大きくて、でも深い闇を持つ眼
鍵を差し込もうと、戸惑っている、細くて長い指
イメージがピッタリの、ハスキーな声

わたしよりも高い視線
大きな背中

この人なら、わたしを救ってくれる
柴田さんなら、救ってくれる

わたしは必死で柴田さんに説明した


だけど・・・
39 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:37
−+−+−+−+−+−+−+−+−
40 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:40
  ◇  ◇  ◇

手紙を書いてくれたのはその人ではないらしい。

" 絶望 "

その一言が頭を過ぎった

恐怖が襲ってきた
戻りたくない、何も知らないまま
" 恐怖 " という感覚だけが支配する生活が

全て偽物の世界が・・・待ってるって
直感で悟ったから
41 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:40
でも、そんなときでも身体は正直で
シリアスな雰囲気なのに
わたしのおなかがぐーっと鳴ったの
超はずかしー!

そしたらその人が、ご飯を食べさせてくれるって言ってくれたから
ちゃっかりご馳走になることにした

小さい子に、飴あげるからって言うおじさんには着いていっちゃだめだよって
注意するのにね。

でも、この人に対する恐怖はなかったの
何故か、不思議なくらい

だってとても綺麗な目をしてたから
初めて会った人だけど

この人なら、信じられる

そう思えた
わたしは、その人の家でしばらくの間お世話になることにした

  ◇  ◇  ◇
42 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:41
−+−+−+−+−+−+−+−+−
43 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:41
近くの公園に行ってベンチに座った
何も無い、ほんと小さな公園
でも、夜景は綺麗で・・・こんなふうに誰かと公園にくるだなんて
久しぶりのような気がする、懐かしい感じ。

持っていた手紙を見せる
柴田さんではないと言ってきた
この人は、吉澤ひとみ と名乗った
わたしは、どうする事も出来なかった
目がおっきいから、この名前がついたんだろうなぁなんて
わたしにお茶を買ってくれて、空を仰ぎ見てる
44 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:42
横顔も、あごのラインも・・・綺麗

でも、独り言が癖なのか、時々ブツブツ言いながら頭をかかえたの
怪しい人?
ってわたしが言うのもかわいそうだよね
この人にとっては、わたしが怪しい人なんだもん・・・
45 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:42
帰らなくちゃ・・・

ごめんなさい
わたし、すこしだけ、あなたに元気貰いました
あなたに、優しさをもらいました
少しの間だったけど、あなたを好きでした
こんなわたしに、一所懸命になってくれる

あなたが・・・

あなたと居た、ちょっとの時間
わたし、泣いてたの
寂しい、コワイ、助けてって・・・
泣けたの・・・

痛みを、感じたの
46 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:43
ありがとう
もう、それだけで、充分です


帰るというと、あなたは心配してくれた
というより、当たり前の事を言ってくれただけなんだけど。
帰るっていったって、何処に帰るんだろう
断片的に思い出す、記憶

・・・あの、小さな世界・・・か・・・

これ以上居たら、迷惑かけちゃうから・・・
こっちが捨て犬なのに
彼女は少し、寂しそうな目の色をした

雨の中、震えてる
仔犬みたいな目で見ないで

胸が1つ、高鳴った

帰りたく、ない・・・
47 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:44

 ぎゅるるるるるる


生理的なものは止められないよね
はっずかしいぃぃぃ!


でも、このときは少し、お腹の虫に感謝したの
だって、また少し、彼女と一緒に居る時間をくれたから

彼女は頭をガシガシ掻きながら

「き、今日一日だけ、一日だけ!泊めてやる」

思っても見なかったセリフが聞けて
ほんとに現金だなって思ったけど
でも、あなたと一緒に居られることが
本当にうれしかった
48 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:45
暗い闇の中に、1つだけともった、灯りだったけど
あったかくて、心強くて、うれしくて、勇気付けられた

隣で小さくつかれたため息は、聞こえないフリをした。


わたしは、その日から
彼女の小さなアパートに住む事になった

わたしに名前をつけてくれて
言葉がちょっと乱暴で
でも、細かいところに気が付いて
魚を見てかわいそうなんて言う彼女

そして、帰る場所がない、彼女が

どこか、わたしに似てる気がしたの・・・
49 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:46
−+−+−+−+−+−+−+−+−
50 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:47
  ◇  ◇  ◇

その人はわたしに
たくさんのものを教えてくれた
笑う事、泣く事、怒る事、喜ぶ事、驚く事
料理の出来なささ、散歩の楽しさ
手紙を送ってくれた人に会いに行こうと言ってくれたり

何よりも、愛を教えてくれた

花、風、雲・・・

見る景色、聞く音、目に映る情景
全てが新鮮だった


以前のわたしは、こんな生活をしていなかったんじゃないか
って思うくらい、毎日が感動だった
51 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:48
全てに愛があるんだよ
君は一人じゃない
記憶をなくしても
たとえどんな辛い過去があっても

君は一人じゃない

そう言ってくれた

そして、わたしのために泣いてくれたんだ。



その人がわたしといた時間を写真に撮っていてくれたから
ここに載せますね
52 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:49
┌            ┐


      photo


└            ┘

コスモス畑で会った若いご夫婦の赤ちゃんと一緒に。
超かわいい!
え?赤ちゃんだよ?わたしじゃないってばー



┌            ┐


      photo


└            ┘

いつ撮ったんだか、こんなマヌケな昼寝の写真まである・・・
もう、やだなぁ
だけど、お昼寝って気持ちいいよねぇ〜
53 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:50

┌            ┐


      photo


└            ┘

この猫は野良猫
ミルクって名前をつけたの
ご飯を少しだけおすそわけしてるの

でも、わたしが寄っていくとしばらく逃げられてたことがあったなぁ
なんでだろう。ご飯が美味しくなかったからかなぁ
ごめんね?ミルク


  ◇  ◇  ◇
54 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:51
−+−+−+−+−+−+−+−+−
55 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:51
ひーちゃんと暮らすようになって、ほんとたくさんの事を覚えた
とっても楽しくて、笑ってばっかり。
そんなわたしにつられて、ひーちゃんも笑顔を見せてくれる

最初訪れた時の、怯えてた目がうそのように
本当にうれしそうだった

ひーちゃんが笑うと、わたしもうれしくなる
ひーちゃんの笑顔がみたいから、なんでも頑張れるの
料理だって、なんとか美味しいものを作ろうと
本を買ったりして勉強もした

でも、やっぱり出来栄えは悪くって・・・

ひーちゃんは見た目が最悪なものも
何も言わずに食べてくれる
時々冷やかしてくるけどね。
56 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:53

ひーちゃんは感情を出せない人らしい
思ってることと反対の事を言ってくる
からかったり、照れたりして、誤魔化してる。

でも、本当は違うって・・・気づいてたの。

時々、辛そうに目を伏せる癖

心の中を知られたくないとき
でも、知って欲しい時
何かにがんじがらめにされて
自分を出せないで苦しんでいる・・・

そんな姿を見せないように、気づかれないように
目を伏せるの・・・

その後は決まって、寂しそうな笑顔で
「なんでもないよ」

って言ってくる
その笑顔を見るたびに、心が痛んだ
57 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:54

お人好しで、心が優しくて、照れ屋さんで、ちょっとマヌケなの
ガラスの心で、何かを背負って生きている
そんな彼女の傍にいて、支えたいって思った
抱きしめて、泣いていいんだよって言いたい
自分の傷よりも 記憶のことよりも

この人を・・・
58 名前:回想 投稿日:2005/12/05(月) 01:54
−+−+−+−+−+−+−+−+−
59 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:55
  ◇  ◇  ◇

〜 愛しい人 〜

出会いやきっかけって様々だと思う
たくさんわたしに愛をくれた人たちがいる
家族、自分の小さい頃からの友人
そしてわたしを絶望から救ってくれた、あの人

だけど、記憶は戻らないままで
記憶喪失以前の事は、人づてに聞いた話ばかり

その時出会った人たちは大切
わたしを応援してくれていただろうし
わたしを好きでいてくれたと思う

だけど・・・わたしは
60 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:56
―中略―
61 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:56
わたしを応援してくださったファンの皆さんへ

結果的にわたしは
皆さんを裏切ってしまいました

引退を表明することは
ファンの皆さんが望んでいる
これからのわたしの活躍や、新しい曲、期待に応えられないから

今まで、皆さんにたくさんの声を届けてきたつもりです
わたしの色々な姿を見せられたと思ってます
そこに嘘はありません
62 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:57
わたしを愛してくれていた皆さん
わがままでごめんなさい
本当にごめんなさい

そして、本当にありがとうございました

わたしは皆さんの心の中に少しでも残ればいいなって思ってます。
「忘れないでぇ〜」とは言わないけれど
ふとした時に
「ああそんなヤツも居たなぁ」って思い出してもらえたら
うれしいです。
63 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:58
今まで、本当にありがとう

わたしは、新しいスタートを切ります

力強く、一歩一歩
歩こうと思います

手を取り合って、助け合いながらね
64 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:58
┌            ┐


      photo


└            ┘

最後の一枚
バイクの後ろに乗せてもらったとき
運転中に取ってみました!
危ないから良い子はマネしないように♪

かっこいいでしょ?
65 名前:LINE 投稿日:2005/12/05(月) 01:58

わたしは、この人の傍にいたい

この人を、守りたい



この場所がゴールライン

そして、新しいスタートライン



  ◇  ◇  ◇
66 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:01
−+−+−+−+−+−+−+−+− 
67 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:02

「梨華、何読んでるの?」
「ん?これ!」
「それ・・・自分のじゃん」

ここは飛行機の中。
わたしは海の上にいる

そして隣で、ちょっと呆れ顔の人
ひーちゃん。
わたしの恋人。

わたしたちは、新しい場所へ
NYへと旅立つ途中なのです
68 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:02
「あー、英語大丈夫かなぁー」
「大丈夫じゃねぇ?」
「人事だとおもってぇ!」
「Speak in English」
「え、え、えっと・・・That's only you…ユー・・・え、えっと・・・」
「アヤカさんに教わっただろー?」
「ん、ん、、、んんんぅぅう!」
「色っぽい声だすな!」
「だってぇぇ・・・降参します」
「That's only because you don't have to do it」
「ああ、そうだ・・・」
「大丈夫かぁ?」
「大丈夫・・・じゃない」
69 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:05
−+−+−+−+−+−+−+−+−
70 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:06
あの日。
全てを片付けて
わたしがひーちゃんの家に訪れた日

ひーちゃんにすぐにでも会いたかったけれど
実家に荷物を送ったり、家を引き払ったり
事務所の人たちと色々あったので
手間取ってしまったんだ



朝一番にひーちゃんの家に行く
着く頃にはひーちゃんが寝てるはずだから
こっそり家に入って添い寝しようかな?

早く会いたい
電車!もっと早く動いてよぉ!

電車の窓から見える
川沿いの桜がとても綺麗だった
71 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:06
駅に着いたら、走ってアパートに向かう
何度か駅までひーちゃんと行ったことがあったから
道は覚えてる
24時間開いているスーパーが見えてきた
そこを真っ直ぐ行って左に曲がって
自動販売機を右にまがって

見えてきた・・・
懐かしくて、胸がギュッと締め付けられる切なさと
あなたに会える喜びで、胸が高鳴る

走ってるからじゃない

もうすぐ会える
もうすぐ会える!

ひーちゃん
ただいまって言おう
72 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:06
アパートに着いた

階段を上る前に、上がった息を整える

「すーーーー、はぁぁぁぁぁぁ」

「すーーーー、はぁぁぁぁ」

朝の散歩をしていたおじいちゃんに

「精が出るねぇ」

って言われてしまった。
73 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:07

 ガチャッ

階段の上を見ると
ひーちゃんの家の扉が開く

扉の影から現れたのは、愛しいあの人だった


声をかけようと息を吸ったけど
鍵を閉めて
少し考えるように扉におでこをつけてもたれている姿
何か思いを胸に抱いてる顔を見たら

躊躇ってしまった

"隠れなきゃ"

なぜか体が勝手に動いて、駐輪場のブロック塀に隠れた
74 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:08

 カンッ カンッ カンッ カンッ

ひーちゃんは珍しくバイクに乗らず
駅の方に向かっていった

少し離れた位置で後を追う

何処まで行くんだろう
この際初乗りで乗って、乗り越し料金で行く事にしよう
なんか、探偵さんみたい!

電車はわたしが乗ってきたほうと反対に向かって走り出した

隣の車両でひーちゃんの様子をうかがう
ひーちゃんはずっと窓の外を見ていた
どこに向かってるんだろう

そういえばゆっくり電車乗るのなんて、久しぶりだなぁ

映り行く景色を眺めながら

ひーちゃんと出会ったときの事
昨日までのこと

仕事の事・・・

思い出していた
75 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:09
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
76 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:09

2回ほど電車を乗り継いで
電車を降りた

小さな駅で小高い山が見える

ひーちゃんは道を歩き出した
時々止まって、景色を遠目で見ながら


緩やかなカーブを描いて道は丘を登っていく
途中、ひーちゃんはお花屋さんに入って、花束を買っていた


誰かにあうのかな


もしかして・・・
77 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:10
坂の道の両サイドには大きな桜の木が道すがら並んで植わっている

とっても綺麗な、花びらの吹雪が
坂の上から吹く風で散っていく


幻想的・・・


ひーちゃんはすでに坂の上にたどり着いて
姿が見えなくなっていた


やだ!見失っちゃう!


慌てて走っていくと、そこには一際大きな桜の木が咲いていた
78 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:11


病院・・・


そっか・・・

ひーちゃん、会いに来たんだね


門柱にもたれかかって、花が散っていく様子をずっと眺めてた

病院に続く道は
桜の花びら絨毯が出来ていた

きれいだなぁ・・・寝転んだら気持ちいいのかな
79 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:11

ひーちゃんは、後藤さんに会いに来た

許してくれるよ

ひーちゃんの友達だもの

ひーちゃんを守ってくれた人だもの
80 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:12
ひーちゃんは気づいていない
自分がどれほど真っ直ぐで、素直で、優しいのか
周りには優しいくせに
自分には厳しい

もっと甘えればいいのに、そこは素直じゃない
遠慮ばっかりして、遠回りしてる
不器用で、ぶっきらぼうで

愛される事に戸惑ってる 怯えてる 怖れてる
81 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:13

わたしね
ひーちゃんにたくさんたくさん救われたの
記憶が無くて、どうしようもなかったわたしを
ひーちゃんはわたしを許してくれた
『元の自分』に戻る事を拒んでいたわたしを

いいんだよ
一人じゃないよ って

でも、ひーちゃんは言えなかった

"ウチがいるじゃない"

って

弱虫なんじゃない。臆病者なんじゃない

怖かっただけなんだね・・・
知らなかっただけ
愛されている事を、愛する事を・・・
その時は知らなかっただけ
82 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:13

でも もう気づいたでしょ?


 病院の扉が開いて

 あの人が出てきた

桜の下に立つと、風がざぁっと音を立てて花びらを舞わせた


花びらの絨毯の両端が、風を受けて道を作る


「ひーちゃん」


「梨華」


「ただいま」
83 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:15

「梨華!!」

ひーちゃんは駆け出した
わたしもその道の上を走る

「ひーちゃん!!」

道の真中で ひーちゃんに抱きついた


たくさんドラマを撮ったけど
こんなにもドラマティックなシーンは
今まで見たことなかった

ドラマじゃない

ひーちゃんがわたしを抱きしめる
わたしもひーちゃんに抱きつく

ひーちゃんの腕の中に居る
84 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:15
花びらが肩に、髪に落ちる

どんどん降り注ぐ
二人を埋めるように

このまま埋まって見えなくなるまで積もればいいのに


どれくらいそうしてたんだろう
ひーちゃんが耳元でささやく

ひーちゃんの声はいつも、ハスキーでセクシーで
声を聞いているだけで、気持ちを熱くさせる
85 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:16

 梨華 本当に梨華?

 そうだよ

 ウチ、梨華に会ったら一番に言いたいことがあったんだ

 なあに?




 愛してる  傍にいて
86 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:16
1番聞きたかった言葉を
1番最初に言ってくれたひーちゃん・・・

やっぱり

「繋がってるんだね」

わたしは肩に埋めていた顔をあげて言った

「うん、そうだね」

わたしの1番好きなひーちゃんの笑顔


その唇にキスをした
87 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:16

桜が舞い散る中、しっかりと手を繋いで
家までの道のりを戻る

片時も離れたくなくて
ぴったりくっついてた

ひーちゃんは何も話さない
わたしも何も喋らない

言葉も、なにもかも
いらないときってあるんだなぁ

今までの時を埋めるように
ずっと寄り添って
時々微笑みあって
またくっついて
88 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:17

「ごっちんに会ってきたよ」

電車の中でぽつりと漏らした

「うん・・・」

「・・・許してくれたと、思う」

「・・・大丈夫。許してくれてるよ」

「うん」


ひーちゃんも、ゴールしたんだ
そして新しいスタートを切ろうとしてる


わたしと一緒の、スタートだって思ってもいい・・・?

89 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:17
−+−+−+−+−+−+−+−+−
90 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:19
「まーったく、自分の本飽きないよなぁ、何回もさ」
「だーって暇なんだもん。飛行機の中ぁ」
「寝ればいいっしょ」
「ご飯食べて寝てご飯食べて寝てって・・・牛さんになっちゃう!」
「あーはいはい、美味しく食べてあげるから」

顔からボッと火が吹いた

「や、やぁだぁ・・・」
「何勘違いしてるんだ?」
「え?」
「はぁ・・・相変わらずだなぁ」

ひーちゃんは片眉を上げて苦笑する
苦笑いするときは、いつもこうやって笑うの
91 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:19
「もぅ・・・いいもんだ!」
「「ぶーー」」

わたしはすねるといつもほっぺたを膨らましてぶーっとする
ひーちゃんは一緒になってマネするから
そこからまた些細な口喧嘩が始まるんだけど

「寝ないとしんどいよ?」
「でもさぁ、まだ・・・夕方だよぉ?」
「でも、向こうついたら出発2時間前だよ?」
「え?どういうこと?」
「向こうについたら、出発した日の2時間前ってこと」
「あ、時差あるからか・・・」
「そ。でも身体は夜中の12時」
「そっか・・・でも、眠くないんだもん・・・」

「寝なさい」

そう言って頭を肩にひきよせてくれるひーちゃんは
やっぱり優しいんだ

「うん・・・」
92 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:20
「ねぇ、ひーちゃん?」
「なに?」
「手」
「て?」
「繋いでて」
「なに、どうした」
「だって・・・」

「怖いの?飛行機」

ちがうのにぃ・・・

ひーちゃんはもぞもぞと体勢を変えてこっちに向き合うと
ブランケットの下から、わたしの右手を繋いでくれた

「おやすみ」
「うん・・・おやすみ」

目を閉じて寝てる
けど、それ、フリなんでしょ?狸寝入りなんでしょ?
耳まで真っ赤になっちゃってるし。かわいい!

でもここでからかうと怒って離しちゃいそうだから
わたしも寝るフリをしようっと
93 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/05(月) 02:20

94 名前:Rink 投稿日:2005/12/05(月) 02:21
更新終了です
95 名前:Rink 投稿日:2005/12/05(月) 02:23
今回の更新分は>>2-93です
相変わらず一回の更新量が多くて本当に申し訳ないです
96 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 02:24
(*´∀`)ツイテキチャッター
97 名前:Rink 投稿日:2005/12/05(月) 02:33
訂正です
>>32
×訂正前
わたしは、そこへ行かなければいけないという
強迫観念にも似た衝動に駆り立てられ
コートと財布、携帯をバックに入れ
家を飛び出したの

○訂正後
わたしは、そこへ行かなければいけないという
強迫観念にも似た衝動に駆り立てられ
コートを掴み、財布をバックに入れ
家を飛び出したの

です 本当に申し訳ない・・・
98 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 02:35
(*´∀`)ボクモツイテキチャッター
99 名前:774飼育 投稿日:2005/12/05(月) 02:36
作者様 どこまでもついて行きますよ〜
今日も夜遅くまで更新お疲れ様でした
100 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 02:44
やっぱりついて来ちゃいました
連日の嬉し楽し寝不足上等!!!
101 名前:名無しメトロ 投稿日:2005/12/05(月) 03:02
名作キテタ━━━( ^▽^)人(^〜^0)━━━━ッ!!
いしよしinNYもやっぱり可愛いなー…。
赤板の前スレも含め今、一気に読み終えました…。目が痛いぃ…。
うーん、すごいドラマ。やっぱりいしよしはガチ!!いしよし最高!!!
胸一杯…いや、つむじから足の指先まで満たされるような愛をもらいました。
周りを固めるオカマちゃん達もナイス…っていうか
マリちゃんとかママとか役にマッチし過ぎて逆に怖いですね。
あぁ、やっぱいいよ、いしよし小説は!
ここのスレは読者の方々もカッケーし、なんていうかもう、全てに感動しました。
今夜はぐっすり眠れそうです。もうすぐ起きなきゃいけないけどw

…遅レス糞レス発狂レスなのに調子に乗ってすみません。
自分も(*´∀`)ツイテクヨー
102 名前:gung 投稿日:2005/12/05(月) 07:34
更新お疲れ様です!
小説内容といいキャラ設定といいすごすぎです。
もう尊敬します!!(爆)
103 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 15:06
(*´∀`)ウチモツイテキチャッター

すいません、すっかり楽しみになっちゃってます。
素敵な作品ありがとうございます。
104 名前:7&Y 投稿日:2005/12/05(月) 18:23
お邪魔しまーす(*´∀`)ノ
更新量が多いのは読者からしたらかなり嬉しい事ですよ
前スレを2週間で消費してるRinkさんに恐れを抱きますw
ハイペースにしろローペースにしろ
Rinkさん自身のペースで書いていただけたら満足です!
私もRinkさんについて行きますYO!
105 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:15
−+−+−+−+−+−+−+−+−
106 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:15
ひーちゃんのアパートに着くと
二人でコタツに入る

なんか懐かしい気持ちと、居心地の慣れなさにキョロキョロしてしまう

「どうしたの?」

「ううん、お茶いれよっか?」

「ああ、いいよ。ウチがするから、座ってなって」

「わたしがいれるよ」

「いいから」

「・・・んじゃ、一緒にいれる?」

ひーちゃんはちょっと驚いた顔をしたかと思うと
呆れ顔になって口を引きつらせた

「キショ」

「なによぉぉ!」
「あっはははは!」

久しぶりに聞いたひーちゃんの笑い声
いいなぁ、この感覚・・・
107 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:16
「はい」

ひーちゃんは自分のマグにお茶を注いでくれた
でも、ひーちゃんはグラスに氷を入れて冷たいお茶を飲んでいる

「マグは?」

「ああ・・・割れちゃったからさ」

「そ、っか・・・またおそろいの買わなきゃ」

「梨華は今、まだマンションに住んでるの?」

ひーちゃんはわたしの言葉を流して、質問してきた

「え?・・・ううん、実家に引っ越した、よ?」
「そっか・・・」

何か、思いつめるように、眉間にしわを寄せる

「どう、したの?」
「あ、いや・・・」

また、目を伏せる

「教えて」
108 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:17
わたしがそう言うと、目を開いた
でも、次に待ってたのは寂しそうな笑顔じゃなく
強い、強い意志を持った光

「ウチ・・・引っ越すんだ」

期待と不安が過ぎる。

「え?」

どちらかと言えば・・・不安の方が大きい

「梨華にこんなに早く会えると思ってなかったから、心の準備できてないけど」

何・・・今更、何言い出すの・・・?
まさか・・・いやだよ・・・

「話さなきゃいけないと思ってることが」

ヤダ・・・離れたくないよ!もうやだ!

「あるん」
「やだ!!!」
「え?」
「やだ!わたし、ずっと居るもん!もう離れたくない!」
「り、梨華?」
「引き離されるのはいや!心がちぎれちゃう!」
「梨華、おちつい」
「やだやだ!一緒にいるもん!」

「最後まで話をきけっての!」

ひーちゃんが大きな声を出したから、びっくりして、動きが止まった
109 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:18
「まーったく・・・なんでも走り出したら止まらないんだから」
「なによ!」
「暴走特急め」
「なんなのよぉ!」

また肩眉を上げて、苦笑いをする

「うちね・・・NYに行くんだ」
「・・・え?」

意識が一瞬遠のいた

「NYで店を開こうとしてる人を紹介されて、働く事になった」

働くって・・・ずっと向こうに・・・?

「ビザもなんとか下りるみたい。どんな手段使ったんだかしらないんだけど」

そんな、なんで嬉しそうなの?

「英語もちょっとくらいなら喋れるし、でも、勉強しなおそうと思ってるし」

住むの?ずっと向こうにいるの?

「向こうで、一からやり直そうとおもって」

一人で行っちゃうの・・・?

「だからごっちんにも会って・・・ケジメつけたくて」

もう日本には、居ないの?

「梨華のことも・・・ケジメつけたくて」

なによ・・・ケジメって何よぉ
110 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:19
別れるの?
それよりわたしたちって付き合ってるの?
付き合ってるんだよね
待っててって言ったよ?
わたし言ったけど

「むこうで暮らすつもりなんだ」

帰ってこないの・・・?
ずっと、待ってろっていうの・・・?

「だから」

やだよ・・・

離れるのは嫌だよ
ねぇ、嘘でしょ?
ねぇ、本気なの?

「梨華」

「いやーーーーー!!!」

大声をあげて立ち上がるとひーちゃんはキョトンとした顔で
わたしを見上げた
111 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:20
「は?」
「やだよ!やだ!」
「な、なんで!?」
「待たない!ひーちゃんと一緒に行く!」
「あ、ああ・・・」
「わたしも行く!着いて行くもん!」

涙がポロポロこぼれてきた
ひーちゃんが滲んで見えない

「わた、しも、行く、もん!いや、がられて、も、いくもん!」

涙をグジグジと袖で拭いてひーちゃんを見る
拭いても拭いてもこぼれてくる

「もう、いや、なの、やなのぉ」

 グイッ!

「え?」

わたしの右手をひーちゃんがひっぱって引き寄せた
バランスを崩してひーちゃんの上に覆い被さるように座った

「バカ」
「な、によぉ!」
「先に言うなよ・・・」
「え・・・?」
「ウチが言いたかったこと・・・」
112 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:23
ウチが言いたかったこと・・・?

ひーちゃんはいつも言葉が、足りない
それに加えてわたしは理解力が乏しい
こんな2人じゃ、履き違えもよくある・・・

「ちゃ、んと、言ってよぉ」
「な、なにをだよ」

その上、照れ屋ときたもんだから
同じ言葉を言ってくれるときは少ない

「どういうことか、ちゃんと分かるように言って」

いつの間にか涙は止まっていた
それより頭の中のハテナをどうにかしたくって

「だぁかぁらぁ・・・」

わたしの腕を離して、座りなおす
ちょこんと正座するひーちゃんは、なんだかぬいぐるみみたいにかわいかった

「梨華、うちと、一緒に、来て欲しい」
「・・・え・・・?」
「一緒に、アメリカ、来て欲しい」
「・・・・・」

「・・・ウチ、梨華が居ないと、だめ、だからさ」

花まるをあげたいくらいに
ひーちゃんは素直に打ち明けてくれた
113 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:24

嬉しくて、嬉しくって
思わずひーちゃんに飛びつく

「うぁあ!」

勢いあまってひーちゃんを押し倒しちゃったけど
この際気にしない

「ひーちゃん!!」
「な、なんだよ!頭打ったし!」
「うれしい!!」
「あ、ああ」
「うれしい・・・うれしい・・・」
「・・・また泣いてる・・・」
「う、ぐす、だ、だって・・・夢みたいだもん」

「・・・夢だったらどうする?」

ガバッと身体を起こすと
寝っ転がったままのひーちゃんが口の端を上げてニヤリと笑った

不敵な笑みをこぼしてる、内心で喜んでるんだ・・・
このときのひーちゃんは好きじゃない・・・
わたしがいつも、驚いたり怯えたりすることを言ってきては
からかうんだから・・・


でも・・・好き
114 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:25
「じゃぁ、夢ならなにしてもいいんだよね?」
「え?」

ひーちゃんから不敵な笑みが消える
上から覆い被さるように、唇をつけた

「あ・・・」

柔らかくて、甘ぁいキス

ひーちゃんの顔にわたしの髪がかかる

長い睫が震えて、目をあける
この一瞬の顔が好き
とってもかわいくて、セクシーで・・・
キスをすると、ひーちゃんは決まって頬を上気させる

甘いよ?ひーちゃん

「また、かよ・・・」
「なに、がぁ?」

知ってるよ
先を越されて、悔しいんでしょ?
意外と負けず嫌いだもんね
意外とロマンティストだもんね

でも、それ以上にわたしのほうが負けず嫌いなの
わたしのほうがロマンティストなの
それをいうと、メルヘンの間違いだろって言われちゃってたけど
115 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:25
「・・・詳しい話、聞きに、店に行きたいんだけど、梨華も一緒にきて欲しいんだ」
「うん・・・行くよ?どこでも、ひーちゃんと一緒なら」

「くっさいセリフよく言えるよなぁ」

こんな憎まれ口も、なんともない

乗り越えられないものなんてない
二人なら、何処へでも行ける気がするの

ひーちゃんはわたしを照らす太陽だから・・・
116 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:26
−+−+−+−+−+−+−+−+−
117 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:28
「あー、ついた、ついた」
「腰いたいぃぃ!」
「梨華、ばばくせえよ」
「なによぉ!ひーちゃんだって!」
「はいはい、アメリカで日本語叫ばなーい」

ひーちゃんはそういうと、わたしの持っていた鞄を持って
手を繋いでくれる

荷物はほとんど先に送ったから、本当に驚くほどの軽装だったけど
わたしが日本を離れることに不安になって
あれやこれやと空港で買っちゃったんだ
その時の顔はまるで般若のようだったらしく、ひーちゃんも止めはしなかったけど

「向こうにも日本食材店あるし・・・」

買ってから言わないでよぉ!
118 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:28
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
119 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:30
審査を全部終了して荷物を持ち
JFK空港からNYに向かう

「さーてと、エアトレインは・・・」
「ね、ねぇ、ひーちゃん、電車乗るの?」
「うん。タクシー高いもん。地下鉄でいくよ?」
「地下鉄って危険じゃない?」
「大丈夫だって」

そう言いながらひーちゃんは売店でなにやら切符らしきものを買っている

「ひーちゃんは何度か来てて慣れてるのかもしれないけどわたしは初めてなの!」
「I know. はい、カード」
「ねぇ、本当に大丈夫?」
「だぁから」

手がぎゅっと握り返される

「あ・・・」

わたしは、この手を信じればいい
この人についていけばいい
何も怖がることなんてないんだ

「う、ん・・・ごめん」
「ん?なにが?ほら、いこ?」
120 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:30
ひーちゃんは荷物を肩にかけなおして
改札に入っていった

「え、え?どうするの?」
「あ、ごめん。カードをそこにスライドさせながら通るの」

スライド・・・あ、こうかな

 ピー

「もっかいやってみ?遅いみたい」

 ピー

「早いって」

 ピー

「ブッ!」
「もう、笑わないでよぉ!」
「はいはい、もう一回」

また笑ってぇ・・・

「はい、よく出来ました」
「ちゃんと教えてよねぇ!」
「ごめんって。ほら、いこ?」

滑り込んできた電車に乗り込む
121 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:31
「意外と普通だね・・・」
「だから言ってんじゃん」
「もっと怖いイメージあったから」
「確かに、夜はウチも苦手だけどね」

ひーちゃんは家の下見や、店の件で何度かこっちに来ていて
既に慣れてる感じがした
すごく頼りになる・・・

じっと、ひーちゃんの横顔に見惚れてると

「なんだよ」

視線に気づいたのか目だけ動かして言うんだもんなぁ・・・

「見惚れてたの♪」
「あそこのおにーさんに?」
「違うよぉ・・・ひーちゃんに♪」

また顔が赤くなる
ひーちゃんの肌は憧れるくらいに白い
わたしと並んでいると対照的過ぎて、自分の地黒さを呪いたくなるくらいに
だから真っ赤になると凄く分かりやすい

「Don't be shy」

脇を肘でつっつく。
ツンツンッ♪もうかわいいんだからぁ!

「いてぇなぁ・・・」

アハッ!耳まで真っ赤になってるぅ!

「寝てろ!」

被っていた帽子のつばをぐっと下げられた
122 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:32

日本じゃ考えられなかった
電車の中でくっついて、手を繋いで、声を出して誰かとこうして話すこと
声を出すことも、顔を出すこともなかったから・・・
人にみつかっては逃げるように走って隠れて・・・

見つからないように似合わないサングラスをして

憧れていた世界だったけど
理想と現実はあまりにもギャップがありすぎた
ついていけないときもあった
やり方に納得できなくても
わたしは、笑ってなくちゃいけない

引越しの荷造りをしているときに
昔の手帳が出てきて、それを読み返していると
そんな事を書いてた
毎日びっしり埋まるくらいに細かく


しめくくりにいつもこう書いてた


『わたしの王子様はどこにいるんだろう・・・』


は、はずかしいーーー!
思い出すだけで恥ずかしい
誰にも見せられない!
123 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:32
「梨華、何ジタバタしてんの?」
「あ、う、ううん」
「あっそ。次で降りるから」
「うん」

あぶないあぶないぃ。またバカって言われるところだよぉ

乗換えをして、地下鉄に乗り込む
寝ろと言われたけど、全く眠くなくって
ひーちゃんの顔を見ては、つばを下げられて
地下鉄の中で二人でずっと話してた
初めての土地で、これから二人で暮らす・・・
なんだか、すっごく楽しくなりそう!
124 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:33
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
125 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:34

「梨華、降りるよ」

ちょっとうとうとしてると、ひーちゃんが優しく声をかけてくれた

地下鉄のホームを出て階段を上ると、周りは全てアメリカの色だった
黄色のタクシー
街並み 人 お店も全部

「アメリカなんだねー」
そうだよ?なんで?って笑いながらわたしを見るひーちゃんは
かっこよくてキラキラしてた。

二人で手を繋いでアパートまでの道を行く
126 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:35
「Hey! Tommy!!」

声のする方を見ると一人の女の子が
売店から身を乗り出して笑顔で手を振ってた

「ん?ああ!Mika !」

ひーちゃん、トミーって呼ばれてるの!?

「Hi ! How's it going ?」
「everything fine ! 」

ひーちゃんと女の子が笑いあいながら何か話してる
早すぎてついていけない・・・
127 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:36
「それは良かったヨ!」
「あははっ!」

え?日本語?

「あ、紹介するの遅れたね。MIKA。うちのアメリカ第一号の友達」
「あ、あ・・な、ナイストゥミーチュー」
「で、こっちが、RIKA。うちのか、のじょ?」
「Hi ! RIKA ! よろしくネ!」
「よ、よろしくです」

ペコッとお辞儀をすると、ミカさんは人差し指を立てて

「チッチッチッ。お辞儀じゃなくて、こうだヨ?」

右手を差し出してくれた

「あ・・・はい!よろしくです!ミカさん」
「よろしく!call me Mika ! 」
「は、はい!」

「じゃぁまた後で、買出しくるよー」
「Sure ! バーイ!」

手を大きく振って笑顔を返してくれた

「かの、じょ?ってなによぉ」
「なんだよ、聞こえてたのか」
「ぶー。圭さんにも言われてたでしょー?」
「ハイハイ、また今度ね」
128 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:37
ストリートを二人で歩く
見慣れない街並みにキョロキョロしてると
ひーちゃんがポツリと思い出したように呟いた

「うちも、初めて来た時、ああやって言ってくれたなぁ」
「ミカさん?」
「そう。ミカって呼んで!って。一言喋れば友達。そういう考えなんだって」
「・・・いい人だね!」
「うん、そうだね」

ひーちゃんが立ち止まる。私もつられて止まった

「さー、我が家到着」
「え・・・?」

そう言ってひーちゃんが見上げるのは
大きなホテルのような場所だった

「ここだよ」
「ええええ!?ここ、ホテルじゃないの?」
「違うよ、アパート」
「だ、だって、ドアマンいるじゃない!」
「みんなだいたい居るの」
「そ、そうなの?」
「治安なのかファッションなのかはわからないけどねー」


そういえば、中澤さんがそんな事言ってた気がしたなぁ・・・
129 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:39
−+−+−+−+−+−+−+−+−
130 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:40

 ― Bar K ―

「こんばんはー」
「来た来た。遅いわよ!」
「すいません、ちょっと手間取っちゃって。ほら、梨華?」
「あ、は、はい・・・おじゃまします」
「まぁぁ!かわいいいー!」
「本物だぁ!」

NY行きの話と、向こうで住む場所を決めたりするからと
ひーちゃんの働くお店におじゃますることになった
カナリ緊張します
オーディションの時以上かも。
だって初めてなんだよ?そ、その・・・オカマさんに会うの

「普通だって」

ってひーちゃんは言ったけど・・・
131 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:41
「マリちゃん、はしゃがないの!」
「サインちょーだい!サイン!」
「こら!まったく・・・ごめんなさいね、この子バカだから気にしないで」
「あ、あはは」

「ママ、紹介します。ウチの・・・」
「うちの?」

ママさんはひーちゃんに鋭い目で突っ込みを入れた

「アンタねぇ、はっきり言ってやんなさいよ。
 彼女もはっきり言って欲しいわよねぇ?」

押しが弱いのはいつものことだから、気にしてないけれど
ママさんはわたしの気持ちを察してくれて、とってもうれしかった

「あ、いえ、いつもの事ですし」

わたしがそういうと、ひーちゃんはちょっとムッとした
あれれ?悔しいのかなぁ

「う、ウチの、彼女、の、梨華です」
「ひゅぅぅぅ!」
「いやー、アンタもいい嫁貰ったわよねぇ!」

店にいたほかのオカマさんたちから歓声が上がった
改めて言われるとはずかしいよぉ!

「り、梨華、挨拶して!」
「石川梨華です、はじめまして」
「はじめまして、圭よ。よろしくね」

ママさんは優しく微笑んでくれた
132 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:41
「もうすぐ、裕ちゃん来ると思うわ。あとカオリも」
「あ、中澤さんも?」
「家のことじゃない?」

中澤さんもここに?なにがあるんだろう
あ、引き払うからかな・・・


10分後メンツがそろって、奥のボックス席で話し合うことになった

「良かったよ。吉澤がYesって言ってくれないと思ったから」

話を切り出したのは、向こうでひーちゃんがお世話になるカオリさん
凄腕のオーナーさんらしくって、世界中にお店を持ってるらしいの

「アタシもよぉ!」
「居なくなるのは寂しいけど、万歳三唱して送ってあげる♪」
133 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:42

「でね、カオリ思ったの」
「な、何をです。唐突に」
「梨華ちゃんも行くんなら、向こうの店で歌うってのはどう?」

「「「「「はぁ!?」」」」」

店にいた全員が驚いた
わたしは名前で呼ばれたことにも驚いたけど

「だって勿体無いと思わない?」
「そ、そりゃ」
ひーちゃんが頷く

「せっかく歌手なんだしさ」
「まあね」
圭さんも頷いた

「カオリ、梨華ちゃんの歌声好きだよ?」
「「「うんうん」」」
お店の人たちも頷く

「二人で行くんだし」
「確かに店は繁盛するなぁ」
中澤さんも頷く

「梨華ちゃん、歌ってたいでしょ?」
134 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:43
・・・そうだ
わたし、歌を歌いたい

記憶が無くなったあとも、歌を歌ってた
最初は、そんなの出来ないって思ってた
でも・・・身体が覚えてたの
歌う事の楽しさや、感動を・・・

歌は、捨てられない
捨てたくない

でも、いいのかな・・・
こんなに、上手くいって・・・
思いが、叶って・・・

「梨華ちゃん、いいんだよ?歌っても」
「え!?」

心を読まれた・・・顔に出てたのかな
カオリさんの方を見ると

カオリさんは、ニッと笑って

「アメリカは自由だもの」

って言ってくれた
135 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:44
「・・・はい・・・歌い、たいです」


「決まり!」
「よーーーっしゃ!決まった!そこでや!」

中澤さんは持っていた紙をガラスのテーブルの上に
ダンッ!と叩きつけるように置いた

「ちょっと裕ちゃん、乱暴にしないでよ!」
「ええがな、高モンなんやろ?」
「まぁね」
「どうしたんですか?中澤さん」
「アンタらが向こうで住む家をチョイスしたったで!」

「「仕事早っ!」」

ひーちゃんと声をそろえて言う

「ほら、善は急げ言うやろ?」
「や、でも・・・」
「ええから!適当にみつくろたったから、こっから探し!」

「ここからって・・・そんな、行っても無い場所を」
「内装写真もあるわい!とくとみろ!」

「中澤さん、なんでそんなアメリカのアパートを」

「オトンがNYで会社してるからや」


「「・・・えええええええ!?」」
136 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:44
中澤さんのおかげで家探しも苦労しなさそうだけど
どう見ても、家賃が・・・高いです

「家賃が・・・」
「遠慮すんな、カオリ持ちや」

「ええええええ!?」

「ちょっと裕ちゃん!勝手に決めないでよ!」
「ええやろ!あんないい土地探したったんやから、ごちゃごちゃ言うな!」
「裕ちゃんじゃなくって、お父様でしょ!」

中澤さんとカオリさんが言い合う隙に
わたしとひーちゃんは顔がくっつきそうになるくらい頬を寄せて
家の間取りや写真を見る
137 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:45
「ひーちゃん、どこがいい?」
「んー・・・どこっていわれても。梨華は?」
「んー・・・・・あ!ここがいい!」
「え?どこ?」
「ここ!」
「なんで?」

「名前」

「はぁ!?」
「だってチェルシーってかわいいじゃん?」

ひーちゃんが額をおさえながら後ろに仰け反った

「「「「チェルシー!?」」」

店の人たちが声を出して驚く

「そこ!そこにしなよ!」
「そうだよ、ヨシ!そこがいいって!」
「そうね、アタシも賛成だわ」

「な、なんですか、みんなして!」
「ね?ほらぁ!」

「や、どこでもいいんですけ」
「「「「決定!!!」」」」

「まぁ、店にも近いし、いいんじゃないかな?」
「じゃぁ、ここ押さえるように言うわ」


店の人たちがニコニコ?ニヤニヤしてたのはなんだったんだろう・・・
138 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:45
−+−+−+−+−+−+−+−+−
139 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:46

ドアマンに挨拶をして、中に入る
そこはまるでホテルのロビーのように綺麗で、ゴージャスだった

「ねぇ、ひーちゃん?」

エレベーターを待つ間に、ひーちゃんに聞こうと思った
なんでみんながチェルシーを推したのか

「なんで?」
「ああ・・・それは」

ひーちゃんが耳打ちしてくる
140 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 00:47


  チーンッ


エレベーターの音が合図のように
わたしの顔が真っ赤になる

「そ、それで・・・」
「まぁ、狙ってたわけじゃないんだし。しゃーない、しゃーない」

また苦笑いするぅ・・・もう


 "チェルシーって地区は・・・いわゆるゲイの人たち万歳のところなの"


「敵わないな、ホント。You've got me…」

エレベーターの扉が閉まる音で、ひーちゃんが何を言ったか聞き取れなかった
141 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:50
−+−+−+−+−+−+−+−+−
142 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:51
わたしとひーちゃんのNY行きが決まって
中澤さんは家の手配、カオリさんは店の準備に追われてる中
ひーちゃんが
「梨華、英語勉強しよう!」って言ってきてくれて
お店が開く2時間前にひーちゃんと私が店に来て
圭さんの知り合いのお店で働くアヤカさんが先生で教えてもらうことになった

アヤカはハワイで住んでいた事もあって、かなりネイティブな英語を話してる。
実はアヤカさんはひーちゃんの事をかなり気に入ってて
お店にお客さんとして通っていたらしくて
その時ひーちゃんに英語を教えていたんだって。
143 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:52
なんだか不安いっぱいだったけど
英語を覚えなきゃ渡米できないから、かなり必死で覚えた
でも多分それだけじゃない・・・
アヤカさんは、多分・・・ううん、絶対
ひーちゃんのことが好きなはず

負けたくない・・・

闘争心と、嫉妬心で英語をぐんぐん吸収していく

アヤカさんはかなり綺麗な女性。
スラッとしてて、セクシーで、それでいて押しが強い

「ひとみ?」

そしてなによりもひーちゃんの事を名前で呼ぶの!!
キィィィィィ!!

「なに?アヤカさん」

ひーちゃんも心なしか嬉しそうにしてる
わたしに呼ばれてもそんな顔しないくせに!!
144 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:53
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
145 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:54
英語の授業が終わって、わたしは家に帰る。
とぼとぼ、電車を乗り継いで・・・

ひーちゃんとアヤカさんは店に残ってる

悲しくて、悔しくて、涙を流しながら帰ったことも何度もあった


英語をベラベラってところまでは行かなかったけど
でも、相手が何を話しているかくらいは分かるようになったし
ちょっとした言葉なら話せるようにもなった

だけど、アヤカさんのおかげだなんて、思いたくない・・・

かわいくない、今のわたし

家に帰って、夜ご飯の準備をして、ひーちゃんの帰りを待つ
アヤカさんとひーちゃんが笑顔で英会話してるのを思い出して
また涙が出てきた

なんで、わたしは・・・
146 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:56

 ガチャ

「ただいまー」
「グスッ、お、おかえりなさい」
「え・・・?梨華?」

見られた!見せたくなかったのに!
今日に限って帰りがこんなに早くなるなんて
見られたくない!今のこんな顔見られたくない!

「梨華!どうしたんだよ!」

ひーちゃんが靴を脱ぎ捨てて、慌てて走ってくる
靴が上手く脱げなかったのか、戸棚に壁にバッタバタぶつかりながら
でも、わたしのほうに必死になって走ってきた
わたしはひーちゃんに背中を向ける
見ないで!見ないでよぉ!

「どうしたんだよ、なんかあったの?どうしたの?」
「な、んでも、な、いぃ」
「なんで泣いてるんだよー」
「・・・ん、でも、ないのぉ!」
「さみしかったの?」

こんな時は言い当てるんだからぁ
なんで、なんでよぉ!

「ねぇ、梨華。こっちむいて?」
「・・・ぐすっ、ぐすっ・・・」

わたしは顔を見せないように、ひーちゃんの方に向き直った
ひーちゃんはわたしの肩を抱いて引き寄せてくれる
あったかい胸なのに、やさしい腕の中なのに
なんで、素直に喜べないんだろう
147 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:56
「ねぇ、顔あげて?」
「・・・やら・・・」
「ねぇ、梨華?」
「やらぁ!」
「なんで泣いてるのかも、教えてくれないの?」
「・・・・・」
「梨華・・・言ってよ」
「・・・ぐすっ・・・ぐすんッ・・・英語、うま、く・・・なりたいの」
「なってるよ?」

ほら、やっぱりひーちゃんは鈍感なんだ

「梨華は凄い頑張ってるって、アヤカさんも言ってたよ?」

他の女の名前出さないでよぉ!

「あんな・・・か、可愛くて・・・
 健気な、か、彼女でうらやましいって言ってたし」

「・・・え?」

涙が止まった。
驚いてひーちゃんの顔を見上げる

「誉めてくれてたの。梨華のこと」
「で、も・・・」
「でも?」
「アヤカさ、ん・・・ひーちゃんのこと・・・」
「あ!!」

ひーちゃんはわたしを抱き寄せてた肩を離して
わたしの顔をじっとみた。
だめだよ、その瞳に見つめられたら・・・

「やきもち?」

顔から火がボッと出る音がした
148 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:57
「ばかーーーーーー!!!」

悔しくて、言い当てられて恥ずかしくて
目を見つめられて照れて
色んな思いがごちゃまぜになって、力任せにひーちゃんの肩を叩いた

「いってぇ!なんだよ!」
「ばかばかばかばかばか!」

またポロポロ涙が出てきた
くやしくって、ひーちゃんの肩をポカポカ叩く

「な、なんでよ!いてっ!叩くな!」
「ううぅぅぅ・・・好きぃぃぃ!」
「な、なんだってんだよぉ!」
「好き、好き!好き!ひーちゃんが大好き!!」

ひーちゃんの腕の中に飛び込んだ
今度は素直に、飛び込めた

「な、なんなんだ・・・?」

ひーちゃんはちんぷんかんぷんな顔をしてるけど
その手はしっかりわたしを抱きしめてくれてる

わたしはこの人のことが本当に本当に大好きなんだ・・・
149 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:59

涙も収まって、訳を話すとひーちゃんは大笑いした

「あっははは!ばっかだなぁ」
「なによぉ!」
「アヤカさんには、カッコいい彼氏がいるんだよ」
「え!?で、でも、だって・・・」
「ウチに似てるから、アヤカさんは彼氏と話してる感覚なんだよ
 本人もそう言ってた」
「そう・・・なんだ・・・」
「そ。」
「・・・それって、何気にひーちゃん自分の事カッコいいって言ってる?」

反撃開始ぃ!
こうやってツツくと、ひーちゃんは決まって真っ赤になりながら
「ちげーよ!」って言うんだ。ちょっと怒りながら

「ち、ちげーよ!」

ほーらね?

「でもそういうことでしょー?」
「うっさい!」
150 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 00:59
ひーちゃんは真っ赤になって、抱きしめていた腕を
さらに強く抱きしめた
あれ?珍しい・・・いつもなら手を話して
ご飯にしよ!って言うのに・・・

「・・・梨華、だけ、だから」

あ・・・嬉しい・・・
ひーちゃんが・・・心の言葉、言ってくれた。

「だか、ら・・・その・・・んと・・・心配、しないで」
「うん・・・」

嬉しくて、嬉しくて、また胸の中で泣いたの

ひーちゃんの暖かい言葉に
ひーちゃんの言ってくれた勇気に

ひーちゃんは、多分
わたしがやきもちを焼いたことが嬉しかったみたい
かわいいなぁ、ほんと。
わたしも、ひーちゃんにかわいいって言ってもらえるように
素直になるね

「・・・ごはんにしよっか」
「うん!」
151 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 01:01
−+−+−+−+−+−+−+−+−
152 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 01:03
マンションは22階建てで
わたしたちの部屋は1444号
なんか四並びで嫌な感じもするけど、アメリカは4より6の方が不吉らしい


「さぁ、ついた。どうぞー」

ひーちゃんが開けてくれた扉の奥は
とーーーーーーーっても広くてきれいな部屋があった

「うわぁ・・・ひろーい!」

思わず部屋の中をダッシュで走ってしまった

「あ!」
「靴は脱がなくていいから」
「あ、そっか・・・」
「大丈夫、うちも最初はしてたから」

「ねー、ひーちゃん?この部屋何畳あるのかなー」

床の上に寝転がる
両手両足をパタパタしても壁に手がつかないんだぁ
153 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 01:04
「ベッドルームも合わせて700sqftだって言ってたから
 ・・・多分40畳くらい?」
「えええええええ?お座敷だよ・・・」
「だね」

ひーちゃんは、わたしの鞄をソファに置くと
わたしの隣に胡座をかいて座った

「いいのかなぁ、こんな広いところ」
「他はもっと広かったよ」
「・・・これが普通なのかぁー」
「そうかもねー」

肘をついてひーちゃんを見上げる

「ん?どした?」

この返事の仕方、好き
このときのひーちゃんの顔が
すごぉく、やさしいの
154 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 01:06
「ひーちゃん、好きぃ」
「な、なんだよ、急に」
「だぁってぇ」
「いつからそんな甘えになったんだ?」
「前からだもん!」
「そかそか、そうだったな」

よしよしするみたいに頭を撫でてくれる
なんだかくすぐったくって、目を細めた

「にゃ〜〜♪」
「猫かよ!」
「わん♪」
「犬?」
「ひーちゃん♪」
「戻った。なに?」

「ちゅう〜」

足をパタパタしながらひーちゃんの腰に抱きつきながら
ちゅーを待つ顔をしてみた

だってこっちに着てからまだ一度も、ちゅーしてもらってないもん
ぎゅーもしてもらってない
155 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 01:07


 ぺチッ

「ひゃぁぁん!なんでおでこ叩くのぉ?」
「あはは!なんか叩き甲斐のあるでこだったからさー」
「もーーー!ちゅぅー!」
「そんな甘えっ子に育てた覚えはありませんよー?」

「もーーー!」
「ほら、起きるの!」
「だっこぉー」
「すっかり甘えっ子だなぁ・・・」

「だぁって・・・甘えたいんだもん」
「どしてさ」
「やっと、一緒に居られるんだよー?
日本に居た時も、ひーちゃんと居れたけど、お店に行ったりこっちに来てたり
すれ違ってばっかりだったもん!」
「ま、まぁ、そうだけど・・・」
「甘えなきゃ損だもん!」
「損とか得とか、そういう問題か?」
「そーゆーもんだい!素直になるの!ねぇ、ちゅうーー」
「ほら、もう!起きて荷物整理する!」

またおでこをぺしっと叩かれた

「みゅぅぅぅー」
「他の部屋見なくていいの?」
「え?」
「バスルームとかキッチンとか」
「あ!行ってくるーーー!」

また後ろで苦笑いする声が聞こえた
156 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 01:08

ベッドルームに入ると、とっても大きなベッドが置いてあった

「わぁぁ!すごーい!ジャーンプ!」

ぼよーんとベッドの上に座って飛び跳ねた

「圭さんが餞別で買ってくれたの。キングサイズ。あの人ホント太っ腹」
「お姫様カーテンとかつけれそうだよねー」
「つけなくていいです!」
「シーツはピンクがいいかなぁ」
「却下!」
「えーー!?」
「あ、バスはその奥ね」

「みてくるー!」

お風呂もすごく綺麗でひろくて
ほら、映画とかでよく出てくるバスタブあるでしょ?あんな感じなの
かわいーー!
157 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 01:09
乾いたバスタブに入ってひとしきり遊んだ後
着いてきてないひーちゃんに気づく。
ベッドルームにいるのかなぁ・・・なんだか、寂しいぞぉ?
バスルームから大声で叫ぶ

「ひーいいちゃぁぁぁん?」

「なにー?」

やっぱりベッドルームに居るみたい

「お風呂二人で入れるねーーー!」

「バカタレ!」

あ、また照れてるんだぁー。もうかわいいなぁ

バスルーム、トイレ、キッチン、クローゼット
リビング、大きな窓から見える景色。
家の中をくまなくチェックする
日本じゃ考えられないほどの広さで、かなり満足♪
ただ洗濯がランドリーに行かなくちゃいけないのが難点だけど・・・
158 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 01:09

それより、ひーちゃんの姿が見当たらない・・・
ベッドルームに戻ると、ベッドで寝ていた

疲れちゃったのかな そうだよね
ここのところ、休みなく働いてたし
時差ボケにずっと悩まされてたみたいだったし・・・

 ギシッ

ひーちゃんをまたぐように、上から覆い被さる

いつも思うけど、ひーちゃんってホント綺麗
肌も白いし、睫もながくて、目も大きくて・・・

唇も、やわらかくて・・・


すーすーっと息を吐き出す唇にそっと顔をよせる

寝てるし・・・いいよね

ホントは起きてるときにしたかったけど・・・

顔を近づける

あと、少し・・・

159 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 01:11



 パチッ


「ひゃぁぁ!」

寝てるはずのひーちゃんが、目を覚ました
今回は狸根入りじゃないと思ったのにぃ!

「なーに、寝込みを襲ってんのぉ!」
「だ、だって!」
「お仕置きじゃぁぁぁ!」

ひーちゃんは脇腹をこちょこちょして、くすぐってくる
だめだって!脇弱いんだから!

「やははははは!やあだあああ!あははははは!」
「うりゃうりゃうりゃ!」
「く、くすぐ、あははは!くすぐったいいいい!」
「どうだ!ええ!?ってうわぁぁぁ!」

あまりに暴れすぎるもんだから、二人で抱き合ったまま、ベッドからおちてしまった

「っだぁぁ!」

ひーちゃんを下敷きにして馬乗りになっちゃった

「ご、ごめん!大丈夫?」
「だいじょぶ、じゃ、ない・・・ガクッ」
「ひーちゃん!」
「はいはい、起きてるから」
「怪我ない?頭打ってない?」
「だいじょぶ」
「これ以上頭悪くなられたら、やだよぉ!」
「おい・・・」
「エヘッ」
「重い。どけ!」
「重いってなによぉ!」
160 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 01:11

161 名前:Rink 投稿日:2005/12/06(火) 01:27
更新終了です

今回の更新は>>105-160でございます
162 名前:Rink 投稿日:2005/12/06(火) 01:27
れすぽんつ



>>96:名無飼育さん様
( ^▽^)<ありがと〜♪

>>98:名無飼育さん様
(0^〜^)<ありがと!

>>99:774飼育様
ありがとうございます!
これから時間を早めにしようと考案中です
読んでる皆様の睡眠不足が心配で汗

>>100:名無飼育さん様
ありがとうございます
いやいや、寝てくださいね。マジでww

>>101:名無しメトロ様
ありがとうございます。
目の方は大丈夫でしょうか?生活に差し支えなければよろしいのですがw
愛を貰っただなんてそんな。そんな・・・
恥ずかしい限りでございます。
赤板のスレを立てるときは本当に緊張して、汗だくもんで
「帰れ!コワッパが!」って言われたらどうしようと本当に思ってましたが汗
そう言っていただけると本当に作者冥利につきまする。
これからも何卒よろしくお願いします。

(0^〜^)<カモーンナ!
163 名前:Rink 投稿日:2005/12/06(火) 01:28
>102:gung様
いえいえいえいえいえいえいえいえ。
もうそうんな、滅相も無い
駄文ですがこれからもよろしくお願いします

>103:名無飼育さん様
( ^▽^)<いらっしゃいませ〜♪

楽しみにしていただき、こちらこそありがとうございます。
これからもよろしくお願いします

>104:7&Y様

>更新量が多いのは読者からしたらかなり嬉しい事ですよ

それは良かった・・・。
多いし、うぜぇよ!って思われていたらどうしようかと
内心ドキドキしてたのですが。
ハイペースなのには訳があるんです。
早く上げたい文章があるんです。
石川さんにとある言葉を言ってもらいたくて、がっついてるんですよ
( ^▽^)<・・・
多分3日後くらいに明らかになるとおもいますw
164 名前:Rink 投稿日:2005/12/06(火) 01:30
作者より
読んで頂いている皆様へお詫び

昨日赤板を最初から終わりまで通して読んでみました。
あまりの誤字脱字うpミスの多いこと、多い事・・・
恥ずかしさのあまり穴掘って埋まりたくなりました。
本当に申し訳ありません。
今回も2箇所ほどミスがありました・・・たびたび申し訳ありません

細心の注意を払ってこれからも更新していきたいと思いますので
何卒よろしくお願いします

( T▽T)<梨華に免じてゆるして〜
165 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/06(火) 01:33
(*´Д`)アマーイ!!
166 名前:774飼育 投稿日:2005/12/06(火) 01:39
今回は前回と違いかなり甘いですねぇ
けど 甘いお話も大好きです
まぁアンマリ遅くならなければ今のままでも十分なんですが
作者さんの都合もあるでしょうし・・・
まぁ 作者さんのペースでがんばって下さい
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/06(火) 01:42
作者様、更新お疲れ様です。
甘甘ないしよし最高です。
甘えモードの( ^▽^)ちゃんキャワ☆
更新量が多いのは、大歓迎です!
168 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/06(火) 02:21
甘いの大好きだぁーとっても幸せな気分です
大丈夫ちゃんと寝てます!仕事中に!!!!!
169 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 13:24
−+−+−+−+−+−+−+−+−
170 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 13:24

「アメリカに行く前に・・・ごっちんに、会ってくるよ」

日本を発つ2ヶ月ほど前の
ジメジメする梅雨の日に、ひーちゃんはそう言った

「わたしも、一緒に行って、いい?」

ひーちゃんはそっと目を閉じて・・・

「うん・・・」

目を開けたときは、寂しそうな笑顔じゃなかった
とっても、やさしい、笑顔だった
171 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 13:25
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
172 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 13:25

6月の終わり。
梅雨の間の、突き抜けるような青空だった。

病院に行くのはこれで2回目。
でも、後藤さんに会うのは、初めて。

わたしの手を繋ぐひーちゃんの手がどんどん冷たくなっていく
まだ、心の中で、後藤さんに許してもらってないと・・・そう思ってるんだ

緩やかな坂を上ると
桜の木は、緑の葉をつけて、さわやかな風を受けながら揺らしていた



― カツーンッ カツーンッ カツーンッ ―


長く長く続く廊下の先に、後藤さんの部屋があるらしい
ひーちゃんは家を出て、電車に乗ってから一言も喋ってない


扉の前で、小さく息を吐いて

「ここに、いる」
「うん・・・」
173 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 13:26

― ガラガラッ ―

白い扉をスライドさせると、そこには



「ごっちん・・・」








白いベッドだけがあった

174 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 13:27
ひーちゃんはその場で固まったまま動けないで居た
冷たくなっていた手が、小さく震えだす
思わず手が滑って、ひーちゃんが離しそうになったけど
わたしはぎゅっと握った

大丈夫だよ。

「聞いてみよ?」
「う、うん・・・」


ナースステーションに居た看護士さんに聞くことにした

「あの、108号室の、後藤さんは?」

「お見舞いですか?」

ひーちゃんは固まったまま動かない
目をぎゅっと閉じてる。手の震えは止まっていない

「あ。はい」

ひーちゃんは・・・最悪の状況を想像してるんだ
また、自分を責めてる
自分を戒めてる。追い詰めてる。

絶望の谷の崖っぷちに立って、突き落とされそうになりながら・・・
175 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 13:27


「ああ、あの方なら」


お願い

絶望は

もう

いらない

176 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 13:28

177 名前:Rink 投稿日:2005/12/06(火) 13:31
ミニマム更新終了です
今回の更新は>>169-176です。

文中で回想のシーンが入り乱れてますが
−+−+−+−この線が区切りです。
─ ─ ─ これはタイムラグって感じですかね
読みにくくて申し訳ございません(_ _(--;(_ _(--; ペコペコ
178 名前:Rink 投稿日:2005/12/06(火) 13:40
>名無飼育さん様
( ^▽^)<もっと甘いのいっとく?

>774飼育様
>今回は前回と違いかなり甘いですねぇ
前回とかなりギャップがあるので戸惑われるかと思いますw
でも2人がここまで来たのは、次回更新で明らかに・・・
更新時間帯は、『読者にやさしく』をモットーに
作者の気まぐれが行き過ぎないよう頑張ります。

>名無飼育さん様
甘甘の書けてますでしょうか?ちょっと不安なんです。
もっと石川さんには大暴走していただきたいんですが・・・
( ^▽^)< いや〜んばか〜んどっかーんすいどうかーん!
(;0T〜T)<梨華、寒いから・・・

>名無飼育さん様
喜んでいただけて、光栄です
もちょっと甘くしたいんですが、なんせ吉澤さんが
(;0T〜T)<はずかしいから
石川さんの大暴走に期待していてくださいませ

( ^▽^)<仕事中は寝ちゃだめ♪お仕事頑張って!

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
今夜の深夜更新は、多分多くなると思います
179 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/06(火) 13:47
おかげでニヤニヤしっぱなしですよ。
パソコン投げたくなるくらい甘い(*´Д`)
更新量には驚かされますがマイペースでどうぞ!
180 名前:7&Y 投稿日:2005/12/06(火) 18:18
Rinkさん気まぐれすぎ!w(←最上級の褒め言葉)
来る度に更新してあるなんて…
更新時間は深夜に限らないんですか、そうですか
昼間っから上げちゃうわけですか、そうですか
(*´ー`)<もー、嬉しいぞっ!
切ない感じで深夜の大量更新についていきたいと思います
( ^▽^)<エイエイオー!
181 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/06(火) 21:03
更新お疲れです。
今日前スレ見つけて一気に読んじゃいました。
なんかものすごく引き込まれて好きです。
作者さんのペースでこれからもがんばってください。
大量更新にもついていきます!
182 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:01


183 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:02

「ご自宅ですよ?」


「え?」

「退院されましたよ?」
「え!?」

ひーちゃんは目を見開いた
わたしは驚いて、思わずカウンターに身を乗り出した

「た、退院したって、ど、どういう」
「意識が奇跡的に回復したんですよ」
「か、回復って!」
「ご自宅で療養されてますよ」
184 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:03
振り返ると、ひーちゃんは口をあんぐりあけて、呆然としていた
両手を肩に置いてがくがくと身体を揺らす。

「ひーちゃん!しっかりして!」
「あ、う・・・」
「ひーちゃん!」
「あ、ああ・・・」
「後藤さん、意識戻ったんだよ!」
「あ、ああ・・・」
「もういいんだよ!?」
「あ、え・・・」
「ひーちゃんは許されたんだよぉ!」

わたしは泣いた
ひーちゃんの肩にしがみついて、泣いた

「あ・・・そ、っか・・・そう、なんだ・・・」
「そうだよぉ・・・そうだよぉ?」
「そっか・・・」


ひーちゃんは静かに、静かに涙を一筋流した

神様から、許された瞬間だと思うほど
綺麗な、本当に綺麗な、泣き顔だった
185 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:03
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
186 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:04
病院を後にして、丘を下る

ひーちゃんはその後も喋らずにいた
でも、来た時はずっと目を伏せていたけど
今は真っ直ぐ前を見ている

「ごっちんの、家に、いこうか・・・」
「うん・・・」

それだけで、全部伝わってくる
ぽつりと漏らすひーちゃんの言葉は、いつも重みがある
187 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:04

電車を乗り継いで
後藤さんの実家がある駅に着いた
ここはひーちゃんの家の近くでもあるんだ


坂の上をめざしているみたい。黙々と歩きつづける
公園や、学校、空き地を通り越して
坂のほぼ頂上の、一軒の家の前で止まった
太陽がキラキラして、とっても綺麗な景色だった。

いつかの逆だね。
あれは、二人で柴ちゃんの家に行く時。
今度は私が、あなたを守る番。

「押そうか?」
「だ、いじょうぶ」
「うん・・・」
「・・・ふぅぅぅ」
ひーちゃんが大きく深呼吸して、インターホンに指をかけた
188 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:05




「・・・よしこ?」


「「え?」」


声のする方を見た

坂の上のほうにいる一人の女の子
逆光になっていて、輪郭しか見えないけど
栗色の髪をなびかせながら、こっちを見ている
189 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:06

「よしこ?」


「・・・ごっちん・・・?」



「よしこ!」

「ごっちん!!!」



握っていた手がすり抜ける
急に軽くなった右手。
今度は大丈夫

うん、行ってきて。
早く抱きしめてあげて。

ひーちゃんは彼女の方へ走っていった

「ごっちん!」
「よしこ・・・」
「ごっち・・・ごめん、ごめん・・・ごめんね・・・」

ひーちゃんは彼女に抱きつきながら、声を出して泣いた
後藤さんも、ずっと泣いてた

わたしは、ずっと、どこまでも続く青い空を見上げていた
190 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:06
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
191 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:07

3人で公園に行く
わたしは二人から少し離れて、うさぎの形をしたベンチに座った
2人はブランコに乗りながら話してる

話し声が風に乗って所々聞こえてきた
192 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:08
 ずっと、夢でよしこに会ってた気がするんだ
   夢?
 うん。よしこずっとごめんしか言わないの
   ・・・・・
 もういいってばーって言ってんのにさー。
   そっか・・・ごめん
 ほらまたー!よしこはいつだって謝りすぎなんだよー
   ごめ・・・あ・・・
 あははは!
   ・・・意識が回復したんだね
 うん。医者は奇跡だーって叫んでたけどね。何がなにやら
 意識は無かったけど、所々は覚えてるんだ
 なんとなくぼんやりだけど
 お母さんがずっと話し掛けてくれてたこととか
 音楽をかけてくれてたその歌とか、季節が変わっていくこととか
 よしこが来てくれたのも

 多分、意識が戻ったのはよしこのおかげだと思う
 よしこが来てくれた次の日に目を覚ましたから
   え・・・?
 花。置いてってくれたでしょ?
   あ、うん・・・
 お母さんは誰だか分からないって行ってたけど
 絶対よしこだなーって思ってたんだ
   そっか・・・
193 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:08
 っていうか、なんかもっとないかなぁ?
   え?なにが?
 感動の再会だよ?
   いや、だって、ほら・・・
 あははは!冗談だってば
   なんだよ、それぇ!
 そうそう、それそれ。よしこはそれじゃないと。
   ああ・・・
 わたしね、よしこの命が助かって、良かったって思えたんだ
 わたしね、あのとき、よしこじゃなくて本当に良かったって思ったんだよ
   ・・・・・
 だって、よしこ、わたしに初めて感情出してくれたんだから
 だから、うれしかったんだ
   え?
 「もういいよ!」って。はじめてわたしにキレたの。こーわかったー!
   そう、だっけ・・・
 うん。そうだよ。「やっと言ってくれた。うれしいなぁ」って思ってたら
 どーんって撥ねられたの。超ダサいよねー。あはははは!
   笑い事じゃないってば・・・
194 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:09
 よしこはねー、優しいけど感情隠しすぎ
   それは、よく、言われる、ね
 もっと出さなきゃだめだよ。伝えなきゃ伝わんないよ?
   う、ん・・・
 大事にしなよ?彼女、大切な人なんでしょ?
   あ・・・うん・・・
 恥ずかしい事なんてないからさ。もっと出しなよ?
   うん・・・
 受け止めてくれるよ。彼女なら。ついてきてくれてるじゃん。
 よしこは愛される人だよ。もっともっと、うーんとね
   ・・・ごっちん
 なに?
   ごっちん、夢と同じ事言ってくれたよ
 夢?
   ウチの夢にずっとごっちんが出てきてたんだ。その時は名前を呼んでばっかだった
   でも・・・あるときの夢に、同じこと言われた。「大事にしなよ」って
 ほらみろー!夢でも言ってんじゃん、わたし!ったく頑固なんだから。
   確かに・・・
 生霊だったのかもね〜
   ちょっ!怖いこと言わないでよ!
 あははははは!
195 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:09
 大事にしなよー?彼女のこと
 よしこが誰かと一緒にいるなんて、めずらしいじゃん?
   うん・・・分かってる。
 ならよし!ロンリーウルフは卒業だ。
   ・・・夏過ぎたら・・・彼女と一緒にNY行くんだ
 え!?何しに?
   向こうで仕事するの
 へぇぇぇ、そりゃ驚いたなぁ
   ウチも、実はびっくりしてる
 いいじゃん。彼女と二人で新しいスタート切るんだね
   うん・・・・・そうだね・・・
 なーに暗い顔してんだよ!

   ・・・ねぇ、ごっちん?
 なに?
   ごめん、なさい。ウチのこと・・・許して、くれ、る?
 ・・・・・
   酷い事した。4年間奪ったよ。ごっちんに傷つけたよ
196 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:10
 バーカ。それはよしこも一緒でしょ?
   え・・・?
 よしこだって、わたしのせいで4年間奪われたでしょ。わたしもよしこを傷つけてた
   そんなことないよ・・・
 ううん。お互いだよ。・・・わたしのほうこそ許して欲しい。ごめんなさい
   そんな、うちのほうが
 あーもう!おばさんの会話みたいだから、お互い様ってことで、終了!
   そんなもんなのかよ
 そうそう、いいじゃん。全部丸く収まったんだから
   そ、そうだけど
 だからよしこもはやくおさまんなー!
   おさ、おさまるって!
 あー、肩の荷が下りたよー。お守りは大変だ
   お守りって・・・ガキみたいにさー!
 よしこはガキじゃん?
   んだよ!
あははははは!
   ごっちん?
 んあー?
   ありがとう・・・
 ・・・こっちこそ、ありがとう
   これからも、よろしく
 こっちこそ、よろしく! 

 彼女紹介してよ
   彼女って・・・う、うん・・・
197 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:10
「梨華?」

呼びかけられて、振り向くと
ブランコから降りて、私のところに来てた2人

「えっと、ごっちんです」
「どーもー」
「えっと・・・梨華です」
「はじめまして。梨華です」

「吉澤さーん、二人のご関係は〜?」

後藤さんは冷やかすように、ひーちゃんに迫った

「か、関係って!」
「なんだよぉ、はっきり言えよ!」
「はっきりって、何をだよ!」
「まーたまたぁ。梨華ちゃんも言ってほしいじゃんねぇ?」
「あ。え?で、でも」
「あ!いつもそうやって誤魔化してるんだ。バカよしこ!」
「誤魔化すって、そんなことねぇよ!」
「あーあー、女心をいつまで経っても分からないねぇ、よしこはさぁ?」
「わ、分からないよ!」
「4年経って少しはましになってるかと思ったら。変わんないねぇ」
「うるさいよ!ごっちんだって変わってないじゃんか!」
198 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:11
わたしの知らない二人の過去
でも、見てても嫉妬とか、しなかった
ひーちゃんが、本当に心のそこから、笑顔でいるから

よかったね。ひーちゃん
本当によかった・・・

「さーて、お邪魔虫は帰りますー」
「え!?」
「なに。え?って」
「だ、だって・・・そんな」
「いーの、いーの。デートでもしなってば。わたしにはまたいつでも会えるんだし」
「・・・・・」
「あ!信じてないな?いつかこいつ死ぬんじゃねーかって思ってるんだろ!」
「違うよ!ばか!」
「んじゃいいじゃん。わたしはよしこのお守り役おわり!おつとめごくろーさま」
「だからなんだよ、お守りって!」
199 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:12

「梨華ちゃん?」

後藤さんは私に笑顔を向けてくれた

「よしこのこと、よろしくね」
「あ、はい」
「バカで鈍感で小心者で、ぶっきらぼうでヘタレでアホだけど」

ひーちゃんは、ごっちん言い過ぎだよって漏らしてた

「でも、いいやつだからさ」
「はい・・・」

そう、ひーちゃんは、いいやつ
いいやつ過ぎて、泣きそうになるくらい優しい
相手の傷をまるで自分が受けたように感じて
一緒に泣いてくれる、暖かい人
200 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:12

「アメリカ、行くんでしょ?」
「あ、はい・・・」

後藤さんはわたしに耳打ちしてきた

「梨華ちゃん無しじゃいられないと思うんだ、わたしの勘だと。
 よしこ押しが弱いから、梨華ちゃんが強引に押し倒してやって」
「え?」
「頑張って!」

親指を立ててニッと笑う彼女。
その後すぐに、ふにゃっと崩れた笑顔になった。
ひーちゃんが言ってたのは、この顔だったんだぁ・・・
かわいいなぁ・・・

よかったね、ひーちゃん。
わたし、自分の事のように、本当にうれしいよ
201 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:13
「じゃあねー、よしこー!手紙書けよー!」
「わかってるって!ごっちんもね!」
「梨華ちゃん!日本帰ってきたら遊ぼうねー!」
「うん!」

後藤さんは、寂しくなる雰囲気が嫌いだからと
見送りもいらないし、見送りにも行かないといって
ここで別れることになった。
多分次に会うのは、二人が日本に帰ってきたとき。
大きくなった姿を見せてって言われたらしいから。

「後藤さん・・・かわいい人だね」
「うん・・・」
「かっこいいね」
「そうだね」
「ひーちゃん・・・?」
「なに?」
「よかった・・・」

「・・・梨華」
「なあに?」
「・・・ありがとう。梨華のおかげだよ」
「そんなことないよ。ひーちゃんが、頑張ったから、勇気出したからだよ」
「でも、勇気出せたのも、梨華に会ったからだよ」
「じゃぁ二人のおかげってことで」
「・・・フフッ。そうだね。そうしよっか・・・」
「うん!」
202 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:13
二人で公園を出て歩き始める

「ねぇ、ひーちゃん?」

「なに?」

「ひーちゃんの・・・お家って、近い?」

「・・・うん」

「・・・まだ、怖い?」

手を強く握り締める
大丈夫。わたしはここにいるよ

今まで背負ってた十字架をここに全部降ろしていこ?
203 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:14
しばらく歩いたその場所には、空き地があった

「・・・ここ」
「空き地・・・なんだ」
「うん・・・親戚が引っ越して、もう土地を売るらしい」
「そっか・・・」

「丘の上に、いい場所あるんだ。そこに行かない?」
「うん」


丘の上に行くと、草原のように
膝丈くらいの青々とした葉が茂っていた
青と緑のコントラストが
まるで映画のワンシーンのようだった
204 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:15

「両親は、心中だった。何年前か、忘れちゃったけど

 ウチの父さんは、若い時に会社を興して

 ばりばり仕事してたんだ。

 だから家を空けることもしょっちゅうでね

 いつも近所から、父さんは居ないんじゃないかって言われるくらい。

 でも、本当は母さんも居なかったんだ

 そんな父さんに耐えられなかったんだろうね

 外で男の人を作って、その人のもとへよく行ってた

 だから、ウチ、あんまり両親の顔覚えてないんだ

 時々、父さんが帰ってきて、三人で食事をしたりしたよ

 でも、なんか・・・冷めてたんだろうね

 家族で食事なんて、普通だったら嬉しいはずなのに

 ウチはその時間が1番辛かった

 父さんは、中々家に帰れない事を悔やんでた

 たまに家に帰ってきては、ウチが寝静まった頃母さんと喧嘩して。

 いつも、次の日の朝に「ごめんな、ひとみ」って頭をなでて

 また仕事に行くんだ。
205 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:15

 ある日

 ウチが2階で寝てたら、リビングで怒鳴り声が聞こえてきたんだ

 ウチはずっと耳を塞いでた。

 そんなのしょっちゅうだったから・・・でも、怖くて

 早く終わって。早く終わってよってずっと泣いてた


 でも、この日は普通の喧嘩じゃ済まなかったんだ

 互いが互いの不満を爆発させて・・・

 母さんは逆上して、父さんを刺した

 母さんは本当は、父さんを愛していたんだと思う

 父さんは・・・言葉が足りない人だったから

 母さんはいつも不安だったんだと思う

 だから、逃げてたんだと思う

 すれ違いばっかりで、最悪の結末を、迎えてしまったんだ

 お互いの愛が憎しみに変わったんだ・・・。


 今なら分かる気がする・・・。

 ウチと、父さんは似てるみたいだから・・・
206 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:17
 母さんは、その後火をつけた

 自身と、父さんの身体に

 ウチが2階で寝てたときだった

 煙が部屋に入ってきて、おかしいって思ったんだ

 部屋の下に行くと・・・真っ黒に焼け焦げた、物体が

 部屋の真中にあった

 抱き合うようにしてね・・・今でも鮮明に覚えてるよ


 腕が、こっちに向かって上がるんだ。ゆっくり、ゆっくり

 オイデ、オイデって・・・

 でも、本当は、違ったような気がする

 来るんじゃない、おまえは、生きろって・・・言われてる気がした」
207 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:17

「両親との思い出は、思い出せない。
 母さんとの思い出は、ほとんど無いんじゃないかな」


昔の事を、淡々と語る。
ひーちゃんは、家族愛、母性愛を受けていない・・・
彼女は本当に、今まで一人だったのかもしれない


「本当の喧嘩の理由は、父さんの会社で借金があったみたい・・・」

「自殺して、保険金で、ウチと母さんを生かそうとしたんだろうね」

「でも・・・母さんは気づいたんだろうね・・・この人とじゃなきゃって・・・」



「今ごろ、あの世で喧嘩でもしてんのかなぁ・・・」 


「そろそろ仲直りしてほしいんだけどな・・・」

208 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:19

ざぁっと風が吹いて、草を揺らした

ひーちゃんは両手を広げて、風を受けるように、胸を反らせた

何かに抱きしめてもらうかのように
何かに迎えに来てもらうかのように

広げた手は、翼のように見えた

体いっぱいに、風を受けて
羽ばたくようにシャツが揺れる
髪がなびく

風に乗って、涙が流れていった
それは、キラキラと光って・・・
209 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:19

「ひーちゃん」

思わず背中に抱きついたの
だって、そうしないと、ひーちゃんまでどこかに行きそうだったから・・・
ひーちゃんは腕を下ろして、腰に回してる私の手を
そっと暖めるように、上から優しく握った

ひーちゃんの背中が、わたしの涙で濡れていく

「梨華」
「なぁに?」
「ウチら、喧嘩するかもしれない。でも、仲良くやっていこうね」
「うん」
「色んな人の分まで・・・幸せになりたい」

ひーちゃんが、振り向いてわたしと向き合う

「ウチのこの手は・・・梨華を抱きしめるためにある」

「わたしのこの手は、ひーちゃんを守るためにあるの」
210 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:20

緑色の草 白いシャツ 茶色の髪
青い空 光る太陽

わたしは、ここに居る
そして
ひーちゃんと、この場所から、歩いていこう

もう何も怖くない


「なにも、怖くないよ。梨華がいてくれるから・・・」

211 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:20
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
212 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:20
ひーちゃんは確実に変わろうとしていた
無理にではなく、徐々にだけど
いまだぶっきらぼうだけど、彼女は男気溢れる人だと思う
ケジメと言う言葉が、彼女を動かしているんじゃないかと思うくらい。


わたしをNYに連れて行く事を
両親に了解を得るために何度も会いに行って
説得してくれた
わたしもお父さんとお母さんを説得した

記憶喪失になったわたしに、ショックを隠し切れなかった上に
今度はNYに行くって言い出したから
最初は取り合ってくれなかった父だったんだけど
ひーちゃんはずっと一人で家に行って
説得しようとしてた。

最後には

「もう、嫁に出したと思うことにする」

って言ってくれた
213 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:21
すごいよ、ひーちゃん
あの頑固者のお父さんを説得させるんだもん

そう言ったら

「ったりめーだっての」
「どうして?」

「・・・言わせる気?」

相変わらずぶっきらぼうだけど、言葉は足りてないけど。
わたしはこくんと大きく頷いて

「言わせる気」

だって、言って欲しいもん。聞きたいもん。
ひーちゃんは大きなため息を1つつくと
214 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:21

「梨華のため なんでもする」

顔を真っ赤にしながらそう言ってくれた
ほらね?こんなにも素直だよ。

ひーちゃんの癖もう1個発見。
最近じゃ、照れながらでも心の声を聞かせてくれる
そのときひーちゃんは、文節に切って話すんだ
なんだかロボットみたいでおっかしいのー!

凄く嬉しくて、いっつもそれを聞いた後ニヤニヤしちゃうんだけど

「くねくねすんな!キショイ!」

って言われちゃうんだぁ・・・
そんなこと言わなくたっていいのにぃ!
215 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:22
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
216 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:22
家の手続きや、ビザの関係もあり
出発は延びに延びて、夏休み最後の週になった

カオリさんに、どうやってビザが下りたのかを聞いたら

「とりあえずアメリカ人を脅かす職を持ってないといけないって言われたから
 ヨシは日本酒の利き酒ができるバーテンで
 梨華ちゃんは民謡歌手だから」

むちゃくちゃだよぉ、カオリさん・・・

「なんでもいいの!下りりゃいいの!
 下ろさないなら無理矢理下ろすまで!
 カオリは吉澤と梨華ちゃんに来てもらわないと困るの!!」

強引すぎです・・・
でも、必要とされてる事が嬉しかった。
217 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:23
わたしがアパートに来てから渡米の間際まで
ずっとアパートに住んでたんだけど
引越しをするために、家具をどんどん売り払っていく

「店の人が欲しいって行ってたからさー」

冷蔵庫も、バイクも、布団も・・・全部

「食器捨てちゃうの・・・?」
「んー、全部は持っていけないしね」
「・・・思い出」

袋に詰められていく、食器や調理道具を見てたら
なんだか寂しくて、泣いてしまった

「何で泣いてんだよー」

ひーちゃんが優しく頭を撫でてくれる
でも、涙は止まらなくって

「だ、だって、おも、ヒック、いでがぁ」

ひーちゃんがフフッと笑った

「新しいの買お?思い出たくさんつくればいい」
「う、うん・・・」
「新しく、さ」
「うん・・・」

ひーちゃんの暖かい手のおかげで涙は止まった

出発前の一週間は圭さんの家にお邪魔することになった
もぬけの殻になった部屋じゃ何も出来ないからねって。
218 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:24

なーんにも無くなった部屋の玄関に立つ

色々あった・・・
でもわたしよりもひーちゃんのほうが、色々あった・・・

隣で部屋を眺めてるひーちゃんの目が潤んでたから
思わず手を握り締めた

「ひーちゃん?」
「ん?なに?」

いつもの大好きな笑顔

「ありがと」
「なんだよ、改まって」
「だって・・・言いたくなったんだもん」
「そっか」
「それと・・・これからもよろしく」
「フッ・・・うん。こっちこそ」

手を優しく握り返してくれた

「いこっか」
「うん!」
219 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:25
圭さんの家は本当に広かった
部屋が余ってて、そこを自由に使っていいと言われたけど

「あんたたち、アタシの居る時にやらしいことしないでちょうだいよ!」
「し、しませんよ!」
「せめて居ない時にやってちょうだい」
「いや、あの、その」
「・・・まさか、アンタたちまだなの?」
「「!!」」
「信じらんない!ヨシ、あんたバッカじゃないの!?」

「ば、ばかって、そんな」
「そうなんですよぉ、圭さん、なんとか言ってくださいよぉ!」

「ヨシ・・・アンタ、幾らなんでもそれは梨華ちゃんに失礼よ?」
「だ、だって!」
「一緒に寝てて何もしてこないなんてマナー違反だわ!」
「マナーとか・・・」
「でもまぁ、焦らなくていいんじゃない?
 どうせ向こう行ったらいやでもヤるんだろうし」

「ママ・・・お願いだからそんなリアルに言わないで」

ひーちゃんが焦って泣きそうな顔がなんとも可愛かった
220 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:25

ひーちゃんとは、キスはあるけど、それ以上はない。
お互い、今はまだ求めてないのかもしれない

いずれ、その時が来たら・・・それでいいと思う
焦らなくていい

二人は、まだ始まったばかりだから
221 名前:GetReady 投稿日:2005/12/06(火) 23:25
−+−+−+−+−+−+−+−+−
222 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 23:26
「さて梨華さん」

ひーちゃんの上から降りて、二人でベッドを背もたれにして座る

「なあに?ひとみさん♪」
「うぇ、キモ」
「なによぉ!そっちから言ってきたくせにぃ!」
「あっはは!」

ちょっと頬を膨らませながらひーちゃんに話し掛ける

「で?なんなの?」
「眠い?」
「んー、ちょっと」
「寝る?」
「やだ!こんな、昼間からぁ・・・」
「バカ?」
「え?」
「仮眠!睡眠!スリープ!」
「あ、そっちね・・・」
「ママたちに感化されすぎだっての!」
「うふふっ」
「で?どうすんの。眠くないならご飯でも行こうかと思ってたんだけど」
「んー、ごはんはいいよ。機内食でお腹いっぱいだもん」
「確かに。食わされっぱなしだったしな」
「ちょっと眠いかなぁー。飛行機の中で寝ておけばよかった。ふぁぁ・・・」
「I told you so...」
223 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 23:27
ひーちゃんはちょっと呆れ顔をしたけど
どこか嬉しそうだった

「んじゃぁ、食後の睡眠でもしますか?」
「うん。牛さんになっちゃうけど」
「美味しく食べてあげるよ」
「Really ?」
「yeap. I'm serious」

ひーちゃんはベッドにわたしを抱き上げて、押し倒す
背中に手をまわして、深く沈みこむ

ひーちゃんはわたしの上目遣いに弱いみたい
わたしは、ひーちゃんの真っ直ぐな視線にものすごく弱い
じっと見ていられないほど、綺麗で、吸い込まれそうになる

「で、でも、ひーちゃん、お昼だよ?」
「しーっ。黙って・・・」
224 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 23:27
深い深いキスをくれた
こっちに来てから初めてのhug & kiss
熱くて、溶ろけちゃいそうなくらいの。
ひーちゃんの首に手を回す
息苦しくて、窒息しそうなくらい
キスの雨を降らせる

舌が絡みつく
もっともっとって強請るように差し出すと
それに応えてくれる
唇だけじゃ足りないのか、瞼や頬や耳にキスをする

「ん・・・あ・・・」

体が熱くなる

頭の芯がぼーっとしてきた

ひーちゃんって、意外と積極的になるんだ・・・
225 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 23:28

ひーちゃんも欲しがってる

わたしも、欲しがってる

このまま・・・

そのまま・・・


ひーちゃんの腕の中で・・・
226 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 23:30










227 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 23:30




















スーッ・・・・スーッ・・・




って寝るのかYO!!


228 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 23:32
ひーちゃんはわたしの顔の横に突っ伏して
電池が切れたおもちゃみたいにピクリともしない

・・・バカ

でも好き♪

横ですーすーと寝息を立ててるひーちゃん
飛行機の中でわたしが起きてるから
ひーちゃんも起きててくれたの。
お疲れなんだね。
守ってくれようと頑張ってくれてるもん
だから許しちゃう♪














「って許せるかぁぁ!!!」


ベッドからひーちゃんを突き落とした
229 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 23:32
「っだぁぁぁ!」
「バカ!ひーちゃんのバカ!!」
「んだよぉ・・・って寝てたのか?」
「もう知らない!!」
「何怒ってんだよぉぉぉ!!」

人の身体、こんなに熱くして
いまさら続きなんて出来ない!

「ごめん、ごめんってばぁ!」
「知らない!」

ベッドの上で正座して
ペコペコ謝ってるひーちゃんに背を向けて頬を膨らませた
230 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 23:33
でも、焦らずにゆっくり行こう?

今、スタートラインを踏み出したところだもんね

手を取り合って、ひーちゃんとなら何処まででもいけるよ?

ひーちゃんも同じ思いでしょ?


顔だけ振り向いて
泣きそうなひーちゃんの唇にキスをした

「あ?え?」
「仕方ないから許す♪」
「あ、はい・・・」
「寝よ?お昼寝♪」
「・・・うん」


NYの生活は、始まったばっかり
2人も始まったばっかり

わたし、幸せだよ?
ひーちゃん♪
231 名前:スタートライン 投稿日:2005/12/06(火) 23:34

『LINE』 

                  fin

232 名前:甘い、あなたの味 投稿日:2005/12/06(火) 23:35
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
233 名前:甘い、あなたの味 投稿日:2005/12/06(火) 23:36
ひーちゃんは、わたしと引き離されたあの日以来
煙草を吸っている

「ねぇ、ひーちゃん?」
「ん?なに?」

煙草を燻らせながら、すこし煙たそうに目を細めて
優しい笑顔でこっちを見た

「煙草・・・やめないの?」
「あ、ああ・・・」

無いとだめってほどじゃないんだけどな
と言いながら、灰皿に煙草を押し付ける

「嫌いじゃ、ないけどさ・・・」
「なに?」
「ひーちゃんが、病気とかになったら、やだもん」
「え?」
「やだもん・・・」

「ごめん・・・」


ひーちゃんは少し寂しそうな目をした
234 名前:甘い、あなたの味 投稿日:2005/12/06(火) 23:37

「そうだ!」
「な、なに?」
「ひーちゃん、煙草吸いたくなったら言って?」
「どうして?」

「そのかわり、キスしてあげる」

「え!?な、なに言うんだよ」

「だってやなの」
「病気には、ならないくらいで、辞め」
「そうじゃなくってぇ・・・」
「なにさ」

「ひーちゃんの唇に触れていいのは、わたしだけだもん・・・」
235 名前:甘い、あなたの味 投稿日:2005/12/06(火) 23:37
「・・・ば、バカじゃねーの!?」


真っ赤になって、ひーちゃんは顔を背けた

「どうしてよぉ」
「じゃ、じゃぁ箸も缶コーヒーもやなのかよ」
「それは、いいの!」
「じゃ、なんで」
「だめ!だめぇぇ!」

「・・・わかったよ・・・やめるから」
236 名前:甘い、あなたの味 投稿日:2005/12/06(火) 23:37
ひーちゃんの禁煙生活がスタートした
わたしは、ひーちゃんが煙草を吸いたそうにしてると
目をキラキラさせる
それを見たひーちゃんは、箱に伸ばしていた手をひっこめて
「べ、べつに・・・吸いたかねぇよ」って言うの。
キスがそんなにやなのー?

「そうじゃなくって・・・恥ずかしいし・・・別に、吸わなくたって」
「別に吸ってもいいんだよぉ?」

「むっかつく・・・」

キスしたいからだろうがって毒づいてたのは
聞かないフリをしたの。

いいよ?いつでも。吸いたくなったら言ってよ
わたしはあなたにいつだって、キスしたいの
237 名前:甘い、あなたの味 投稿日:2005/12/06(火) 23:38


禁煙なんて口実
いつだって、あなたに触れてたい
いつでも、ひーちゃんにキスしたいの

場所も、時間も、関係なく
ずっと触れてたいから・・・
238 名前:甘い、あなたの味 投稿日:2005/12/06(火) 23:38

 −NY−

「ひーちゃん、煙草辞めれたんだねぇ」
「おうよ」
「なーんだ・・・がっかり」
「なんだよ、病気になるとかいってたくせに」
「だってぇ・・・」
「こっちは煙草はダメだからね。
 吸う場所すらないし、吸ってるやつなんて凄い目で見られるんだから」

アメリカじゃ、煙草を吸う人間は
本当に追いやられてる。
このマンションもマンション自体が禁煙なのだ。
安易に病気にもかかれない。簡単に病院には行けないの。
健康に気を使わなければいけない
でも、それが普通なんだよ?
身体にやさしくして?

ひーちゃんだけの身体じゃないんだから

「わーってるって」

ぽりぽり頭を掻きながら照れ隠しするひーちゃん
239 名前:甘い、あなたの味 投稿日:2005/12/06(火) 23:39


キスが煙草の味じゃなくなったのは、嬉しいけど
どこか勿体無い気がした
大人っぽくて、苦い味

でも、ひーちゃんからのキスは甘い方がいい

わたしを溶かす、甘い、あなたの味
240 名前:甘い、あなたの味 投稿日:2005/12/06(火) 23:40

(#´▽`)〜`0) <おしまい♪

241 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:45

242 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:45
NY生活にも慣れてきたある日

「ねぇ、ひーちゃん?」
「なに?」
「昨日ミカちゃんに、これ借りたの。一緒に観ない?」

梨華はそういって一つのDVDを見せてきた

「・・・えぇ?」

手にもっているのは『Romeo+Juliet』
え、えーっと・・・レオ様ですか

「ね?観よ?今日はベジタブルするー!」
243 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:46
このベジタブルするーっていうのはいわゆる
テレビの前にお菓子やジュースを持ってきて一日ゴロゴロするって事。
この間観たPretty Womanの中でジュリアロバーツが言ってたセリフなんだ。

梨華は映画に感化されやすい
映画だけじゃなく、環境に。
いいほうに感化されればいいんだけど、大抵の場合は
暴走特急するのだ・・・Pretty Womanの時だって

「バラの花束買ってリムジンで迎えにきてぇ!」

って無茶言い過ぎだよ!
244 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:46
仕方ないから最近買った自転車で家の近所を一周して
マンション前で自転車のベル鳴らして
窓から呼んで梨華がダッシュしてくる。
両手広げて待ってたら、梨華がそこに飛び込んでくる

っていうコントをさせられたの。
もうホントコントだよ!

そしたら街行くカップルたちから拍手とか起きてるし。
確かチェルシーはwelcome gayだから微笑ましく見てくれてたけど。
もう、勘弁してよ・・・。
やらされる自分も、やってる自分もどうなんだって話。
だってやらないって言うと
「やだやだやだやだ!やって!やって!」を永遠繰り返されるんだから。


はぁ。今回はどうなることやら。
映画の内容は知らないけどさ、シェイクスピアくらい知ってるよ?
これたしか悲恋でしょ。最後の結末知ってる?梨華ちゃん・・・
245 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:47

「準備かんりょー!」
「はいはい・・・」

テレビの前にあるテーブルを端にやって
梨華はソファを背もたれにして座る
目の前にはキッチンから持ってきた
ジュースやら、チップスやら
ブリートやら、うさちゃんリンゴやら。

「はい、ひーちゃん、ごろんして?」

足が痺れるからいいよって言ってんのに
梨華はいつもベジタブルするときは膝枕をしてあげると言う
今回の映画は長いんじゃないのか?大丈夫?
でも、ウチは梨華の膝枕が好きだったりするんだけどね

映画が始まった
246 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:48

『O Romeo, Romeo! wherefore art thou Romeo?
 Deny thy father and refuse thy name
 Or, if thou wilt not, be but sworn my love,
 And I'll no longer be a Capulet.』


−− ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの。
   お父さまと縁を切り、その名を捨てて。
   それが無理なら、せめて私を愛すると誓って。
   そうすれば、私はキャピュレットの名を捨てましょう。 −−
247 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:49
『O Romeo, Romeo! wherefore art thou Romeo?』
ってねぇ・・・
いやいや、そんなこと言われても・・・

レオ様はいいんだけどさ
この映画も好きなんだけど
言葉がシェイクスピアのままだから、クサくって、寒くって

「that was bad...」

小さく漏らした悪態を梨華は聞いていたのか

「そう言うこといわないのぉ」

はいはい。分かりましたよ。
248 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:50

『A rose by any other name would smell as sweet.』

「素敵・・・」

やな予感がするぞ・・・これ、絶対インプットしただろうな・・・
言えとか言うんじゃないだろうね、梨華さん
249 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:51

ジュリエットが死んだと聞かされて
ロミオが絶叫する

『Julieeeeeeeeeet!!』

ああ、ヤバイ。これは泣きそうだ

 ポタッ

右の頬に、何かが落ちてきた。
見上げると、梨華が口に手を当ててボロボロ泣いてたんだ

 ポタッ ポタッ

ティッシュの箱からドンドン引き抜かれる
ああ、梨華さんは大洪水ですよ
250 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:51
映画もクライマックスにさしかかる
ろうそくがクロスに灯り、一面を埋め尽くす教会

ジュリエットは棺の中で眠いってるが
レオ様は死んだと思って、自分も後を追う

「あ・・・ああ・・・ロミオォ・・・」

ウチの顔の上でぐずぐずになった梨華が叫ぶ
お前が叫んでどーすんだ

だけどレオ様は、一瞬だけ目が覚める

あ・・・ああ・・・レオさま、がぁ・・・
すれ違っていた2人が、この一瞬だけ結ばれる
梨華の涙もピークに来てる

「う、うう・・・ううぅぅ」

ウチのシャツを握り締めて声を殺して泣いてるみたい
画面に目を向けると
ジュリエットが指輪の内側を見るシーンだった
251 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:52



え・・・?


 − I love thee −



これって・・・

梨華の膝の上に置いていた右手をそっと開いて見つめる

たしか・・・指輪の刻印だったよな

252 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:52

「うぅぅ、ひぃぇぇぇん」
梨華は声を我慢しながら泣いた

腕を伸ばして頬を撫でてあげると
その手をぎゅっと握りながら、また泣いた
涙が指に触れる


梨華が泣くと、心が痛む
たとえ映画だろうが、なんだろうが
だからウチは身体を起こして、梨華を抱きしめた

「声出していいから・・・」
「う、うう、ううぅぅぅう」


添い遂げるって、ああ言うことを言うのかな・・・

画面からは音楽が流れてきた

253 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:53

  Pride can stand a thousand trials  The strong will never fall
  But watching stars without you  My soul cries

  Heaving heart is full of pain  Oooh, oooh, the aching
  'Cause I'm kissing you, oooh  I'm kissing you,

  Touch me deep, pure and true  Give to me forever
  'Cause I'm kissing you, oooh  I'm kissing you, oooh

  Where are you now  Where are you now
  'Cause I'm kissing you  I'm kissing you


  誇りは幾千もの試練に耐え 強い意志は決して屈しない
  だけどあなたと離れて星を見つめて 私は心から涙した

  この心はうめき声をあげ苦しみに満ちて ああ この痛み

  今あなたはどこにいるの? ねぇ、あなたはどこに・・・

  だって私は あなたにキスをしている  私はあなたにキスしているの


                              − I'm kissing you −
254 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:54

映画はいつの間にかエンドロールが流れていた
腕の中で、梨華はしゃくりあげながら涙を抑えていた

「大丈夫?}
「う、うう・・・うう・・・」
「・・・よしよし」

頭を優しく撫でてあげると梨華は深呼吸した
255 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:55


梨華が泣きやんだところで、ベジタブル終了。
ソファに座って色の変わったうさちゃんリンゴをほおばった

「ねぇ、ひーちゃん?」
「ん?なふぁに?」

「もしね」

来た・・・

ベジタブルの後は必ずこの「もしも〜」トークが始まるんだ
お前はドラえもんかよ!
256 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:55
「もしね・・・もし、わたしが死んだら」
「ちょっと、縁起でもないこと言うなよ」
「もしもの話だってば!」
「・・・なに」
「もし、わたしが死んだら、ひーちゃんはどうする?」

単刀直入なんだか抽象的なんだか分からない表現だなぁ
どうするって・・・

「やだよ・・・」
「やだって・・・それだけ?」
「わかんない。でも・・・梨華が死なないように、する・・・しかない」
「それじゃ質問の答えになってな」
「だって!」

珍しくウチが声を荒げたから、梨華は少し驚いてた

「だって・・・考えられない・・・梨華のいない生活なんて」

ベジタブルの残骸を見ながら、手をぐっと握りしめた
悔しいのか、腹立たしいのか、恥ずかしいのか分からない
心の中がぐちゃぐちゃになって、梨華の顔を見てられなくなって
257 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:57

「わたしも一緒」

隣に座った梨華に、今度はウチが抱きしめられた

「わたしも、ひーちゃんの居ない毎日なんて、考えられないよ」
「うん・・・」

「ごめんね?こんなこと聞いちゃって」
「ううん、いい・・・」

梨華はウチの顔を胸に引き寄せ、頭をずっと撫でてくれた
まるで子供をあやすように

「泣いてもいいんだよ?」
「誰が泣くか!」
「そうなのぉ?」
「映画とか観て泣きませんー。誰かみたいに!」
「なによぉ!」
「ふははは!」

声がくぐもる。身体を通して梨華の声が響く
とっても暖かい梨華の胸で、少し泣いた


I don't wanna think you are lost.
失う事なんて、考えたくないよ・・・
258 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:57


「ところでさぁ?」
「なあに?」
「あれ・・・」
「え?」
「指輪」
「あ、ああ・・・」

梨華がちょっと照れてはにかみながら教えてくれた

「家にあった日記に・・・
 『いつか王子様が来てくれたら
 “I love thee”って彫ってる指輪を貰うんだ』って書いてあったの。
 多分その日に、この映画観てたみたいなんだぁ」
259 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:58

I love you の古典英語

 我、汝を愛す


「王子様って・・・」
「あ!!・・・なによぉ!」
「メルヘン」
「いいじゃない!もぅ!」
梨華は真っ赤になってウチの胸をポカポカ叩いてきた
「痛くないよーだ」
「もーー!」
「「ぶーっ!」」
「あははっ!」


王子様からじゃなくってお姫様からになっちゃったんだね
んじゃぁ、王子からちゃんと渡さなくちゃね
今度は左薬指の指輪を。
260 名前:XXX 投稿日:2005/12/06(火) 23:58

ねぇ、なんでロミオ+ジュリエットだと思う?

え?なにが?

『+』はね、十字架って意味もあるんだよ?

そうなんだ。知らなかった

ウチ、この映画かわいそうな結末だと思ったけど・・・
そうじゃない気がしたよ

どうして?

だって・・・ちゃんと結ばれたじゃない。教会で

うん・・・でも、死んじゃったよ

死んだって、離れないよ

そうだね

ずっと一緒だから

そうだね
261 名前:XXX 投稿日:2005/12/07(水) 00:00

それとね?キスって『XXX』って書くんだよ?

そうなんだ。これもクロスだね

Xは交わる。キスは交わすものからね

うふふっ・・・じゃぁわたしとキスを交わして?

うん・・・





2 LINE is Cross



              Next story 『 Cross 』
262 名前:XXX 投稿日:2005/12/07(水) 00:01

(#^(    )<chu♪   おしまい 
263 名前:ママのゆううつ。その2 投稿日:2005/12/07(水) 00:04

264 名前:ママのゆううつ。その2 投稿日:2005/12/07(水) 00:04
はぁ・・・あたしも、また1つ年を重ねたわ・・・

え?いくつって?
だからそう言うことは聞かないの。
心は永遠に18なんだけど♪
でもそういう事言うと、周りが哀れんだ目で見るのよね
微妙なお年頃だわぁ

はぁ・・・

え?ため息がつくと幸せが逃げるって?
いいの。まだお客様が見えてないから

これは全部独り言よ。
アタシの心の中とあなたの会話。
265 名前:ママのゆううつ。その2 投稿日:2005/12/07(水) 00:05



アンタ今、キショって言ったわね!
キィィ!腹の立つ坊やね!

まあいいわ。
アタシのバースデーに免じて許してあげる


 Tululululu...Tululululu...


「ありがとうございます、Bar Kでございま・・・あ、はい・・・少々お待ちください。
 ママー!?」

「はいはい、何かしら?」
「国際電話です。吉澤ひとみさんから。ヨシのこと?」
「はいはい」
「あの子ひとみっていうんだ・・・知らなかったー!」
「もしもし。はい、そうです・・・はい・・・」

嫌だわ。
国際電話サービスの案内係の人、アタシのフルネーム言うんだもの。
ビックリしちゃうわよ。
266 名前:ママのゆううつ。その2 投稿日:2005/12/07(水) 00:06

「・・・ああ、もしもし?元気?」

「あらやだ。覚えててくれたの?ありがとう〜。
 嬉しかないわよ!あっははは!」

「それより、そっちはどうなの?・・・うん、ええ・・・そう。それはよかったじゃないの」

「ええ・・・そう・・・そうなのね・・・ええ・・・あっははは!」

「ところで、新婚生活はどう?順調?・・・何、その浮かない返事」

「あははは!アメリカなんだからキスくらいしてやんなさい。恥ずかしいとか言ってないで」

「大丈夫よ、アンタたちの事を知ってる人間なんてほとんど居ないんだから誰も見ちゃいないわよ」

「ホント、ヨシはいつまでたっても坊やよねぇ・・・」
267 名前:ママのゆううつ。その2 投稿日:2005/12/07(水) 00:07

「うふふっ。大人の階段は上ったの?・・・・・え!?まだ!?どうしてよ!」

「アンタ恥ずかしいとかそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!
 何ヶ月嫁をほったらかしにするつもりなの?・・・キスは挨拶でしょ!!」

「どれだけ暴れても転げ落ちないように、キングサイズ買ったのに。もうちょっと利用して欲しいわ」

「そんなの関係ないわよ!ガッといっちゃいな!やっちまいな!」

「アンタ、女に主導権握られちゃダメよ!ってアンタも女だけどさぁ」

「大丈夫。裸になればやり方なんてどうにでもなんのよ」

「そう。信じなさい。彼女はアンタの傍に居てくれる人なんだから」

「なに言ってんのよ。いいのよ。声聞けただけで充分よ。・・・アンタも身体に気をつけてね」

「はーい、またね」
268 名前:ママのゆううつ。その2 投稿日:2005/12/07(水) 00:07

  チンッ

はぁ・・・まったくあの坊やはヘタレっぷり発揮してるんだから・・・
彼女があの子とアメリカに行ってもう3ヶ月は経ってるわ?
何してるのよ!何にもしてないだなんて・・・バカじゃないの!?
今時高校生でも『付き合って3ヶ月でエッチ♪キャハッ』なんて言わないわよ

推しが弱くて、ヘタレで、ビビリで・・・
でもそんなんじゃぁ、彼女にかわいそうだわ
彼女が、いつまで経っても信じてもらえないって思うかもしれない
ヨシ、幸せになりなさい
アンタはもう十分過ぎるほど背負ったわ
アンタはもう幸せになっていいのよ

戸惑わなくていいの
彼女はちゃんと受け止めてくれるわ

愛されなさいな。
269 名前:ママのゆううつ。その2 投稿日:2005/12/07(水) 00:17
はぁ・・・

凍えそうだわ、アタシ
暖めてくれるのは、いつもお酒だけね・・・

泣いてないわよ!そんなおセンチなお年頃じゃないもの!

あら、アタシの為に乾杯してくれるの?
ありがと。

じゃぁ、乾杯♪
270 名前:ママのゆううつ。その2 投稿日:2005/12/07(水) 00:18


`.∀´)<おしまい♪


誕生日記念に一筆。

271 名前:Rink 投稿日:2005/12/07(水) 00:19
更新終了です
今回の更新分は>>182-270です

『甘い、あなたの味』は石川さん視点
『XXX』は吉澤さん視点
『ママのゆううつ。その2』はヤススハピバ記念でした
272 名前:Rink 投稿日:2005/12/07(水) 00:20
レスポンス


>名無飼育さん様
ニヤニヤですか、素敵です。
激甘になるように、頑張ったんですが
どうも作者自身が照れるようで、これが限界でした。申し訳。
パソコン投げたくなるくらい甘い(*´Д`)

>7&Y様
>Rinkさん気まぐれすぎ!w(←最上級の褒め言葉)
ありがとうございますww
更新時間は限らないんです。昼間からアゲアゲなんです
なんせママのゆううつをなんとしても今日中にあげたかったんですが
一歩及ばず _| ̄|○

>名無飼育さん様
ありがとうございます。
引き込まれすぎるとママが待ってるんで気をつけて♪
|Bar K|`.∀´)<いらっしゃ〜い
273 名前:Rink 投稿日:2005/12/07(水) 00:22
次は吉澤さん視点の
『Cross』が始まります。

えーっと・・・エロ入ります
初めての小説で初めてのエロです。
つたない部分多々ありますがよろしくお願いします
274 名前:774飼育 投稿日:2005/12/07(水) 00:22
更新お疲れ様です
あまあまですねぇ〜
思わずニヤニヤしてしまいました。
今日もリアルタイムで見てますよ (ニヤリ
275 名前:名無し読み手 投稿日:2005/12/07(水) 00:41
いやぁ、いしよし小説ってほんといいですね!
作者さんのニヤニヤさせてしまう細かい表現が好きです。
おかげで読んでる自分の顔が(・∀・)ニヤニヤしっぱなしです。
季節がらのこともありますし体調に気をつけて下さい。。。
276 名前:7&Y 投稿日:2005/12/07(水) 00:43
くそーちょっと出遅れたYO!
過ぎちゃったけど、ママおたおめ〜。…忘れてたわけじゃないよ?
独白というか、こんな感じの一視点のSSも何気に好きです
LINEも良かったです。ごっちゃん…・゚・(ノД`)・゚・
えーと、次もカモーンナ!!w
277 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/07(水) 01:18
更新お疲れ様です。
ごっちんとのやりとりもすごく良かった〜
次回も楽しみにしています( ^▽^)(^〜^0)
278 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/07(水) 02:21
(*^▽^)<キャッ!
279 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/07(水) 03:30
んぁ〜よかったぽ(´д`*)
280 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:45

281 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:46


朝の冷たい風が少し眠たい目をこすっていく

 ねぇ 早く起きて

そんな急かさないで

 クスクスッ お寝坊さんね・・・

もうちょっとまどろんでいたいんだ


「・・・きて」


だれ、耳元で囁くのは


「・・・ゃん、起きて・・・」


くすぐったいよ

282 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:47

「ひーーーーーちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「うゎぁぁあ!」

「朝ですよー!起きてくーださぁぁい♪」


あまりの大音量に、思わず飛び起きる
隣を見ると、目をキラキラさせながらベッドの上でポンポン跳ねる
のーてんきなヤツの姿があった

「今日はひーちゃんの大好物ベーグルサンドですよぉ!」


「・・・・・・」


「ハッシュポテトも上手く焼けたからぁ!ねぇねぇねぇねぇ!」







「・・・うっぜぇぇぇぇ!!!」
283 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:49
朝からムスッとしている自分の左隣には
しゅんとしながらサラダをもそもそ食べているヤツが居る

「ひーちゃん・・・」

彼女しか呼ばない自分の呼び方

「なに」
「ごめんなさい・・・」
「なにが」
「怒らせちゃって・・・」
「いいよ」
「怒ってる、よね」
「別に」

まるで倦怠期夫婦の会話だ
まだ「風呂、飯、寝る」じゃないだけマシなんだろうけど

「怒ってるよぉ・・・」

まだ言うか、この女は

「怒ってないって」

カチャリとマグカップを置く。

決まってこの後は泣くのだ。そりゃあ、もう、ボロボロ泣くのだ
泣き止むまで自分は放置。
いちいち構ってられない。

今日も泣くのか?泣くのか?え?泣いてみろってんだ
284 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:50
「ごちそうさま」

すくっと立ち上がって
マグと皿を台所に運んだ

あれれ・・・スカ食らった感じだぞ

コーヒーを飲みながら横目で皿を洗う背中を見ると
肩が震えている
時々スポンジを持っている手が目を拭っていた


まったく・・・
285 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:51
そっと立ち上がって背後に立つ

「ごめん」
「・・・グスッ・・・グスッ」

腰に手を回して、耳元で囁いた

「梨華・・・」
「・・・グスッ」
「ごめんね・・・」
「グスッ、うう、ん、いいの・・・私が、バカ、だから」
「そんなことないよ」
「ひーちゃ、ん、怒らせて、グスッ・・・ばっかり、で」
「こっちこそ、キツく言い過ぎた」

皿を洗い終わって手持ち無沙汰になっている彼女の手を
上から優しく包み込むように握った

「梨華・・・」
「ひーちゃん・・・許して、くれるの?」
「うん・・・こっちこそ、許してくれる?」
「う、ん・・・」
「ありがとう」
286 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:52
「ひーちゃん」
「ん?なあに?」
「キス・・・して?」
「ここで?」
「うん・・・」
「カーテン開いてるよ?」
「いいの・・・して?」


梨華は自分と向き合い、首に手を回す

潤んだ瞳、しっとりと濡れた唇


自分はゆっくりと唇を近づけた

梨華の唇がうっすら開く

甘い吐息が漏れる


もう少し・・・もう少し・・・


287 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:53










「はい!終わり!!!」

「えーー!なんでよぉ!」
「キスするまで書いてない!」

「書いてなくてもしてくれてもいいでしょぉ!?」
「あーうるさい、うるさい!」
288 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:54
梨華とマンハッタンに来て約2ヶ月。
異国の生活に慣れてき始めた頃

ほんの一週間前から、何かをきっかけに毎朝これをさせられるのだ


『新婚生活の朝 〜泣き顔の新妻を優しくなだめる編〜』


今日はウチがキレる役。
台本のようにこと細かく書かれた紙を寝る前に渡され
翌朝コレ通り、朝食までのミニドラマを行う

ミニドラマというより、コントにしか感じない。
しかしそれに付き合うウチは
もうすっかり自分というものが無い気がする
289 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:54

「ねぇ、これ楽しい?」
「たのしいよぉ!」
「演技派だから、泣いたりするし」
「嘘泣きだもん!」
「嘘泣きなのかよ!」
「えへへ〜」

梨華の涙は信用しない方がいいのか?

マンハッタンの朝、本格的な寒さが目前に来てる
街はthanksgivingでクリスマス一色。
アメリカのクリスマスは本当に盛大で
デパートのウィンドウが競うように可愛く飾り付けされている。
おもちゃ屋さんの前なんか通ろうもんなら、梨華は大はしゃぎするんだから。

そして、NYの寒さは尋常じゃなく
梨華は冷え性だから、どうも朝方の寒さに苦労しているようで。
ソファを背もたれにして、水を触っていた手を温めるように
梨華は小さくなる
朝食も終わり、片づけをすると
梨華は決まってソファのところでリンゴを食べよう?って誘うんだ。
290 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:55

「まーったく、毎日毎日違うもんをドンドン思いつくねぇ」

テーブルの上に置かれたうさちゃんリンゴを口に入れる
梨華がリンゴを切ると、必ずうさちゃんにする。
最近やっと、ウサギの耳が切断されずに身とくっついてきだした

「だぁって、アイディアがどんどん出ちゃうんだもん」
「もうそろそろネタ尽きてもらいたいんですけどねぇ」

「やーだ、まだまだするもーん」
「もういいよぉ・・・」

「ひーちゃん!」
「なに?」

「あーん」
「あぁ?」

テーブルの上に顎を乗せて、口だけ大きく開けてる
291 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:56
「あーんして?」
「なんだよ・・・あーん」

「ちーがぁーう〜!あーんして?ってことぉ」
「はぁ?自分で食え!」

「やあだ、手寒いもん」

口をパクパク開け閉めしている姿が
金魚かサンダーバード人形のようだったので
リンゴ1個口に放り込めば収まるだろうと思い
出来るだけ小さいリンゴを口に入れようと、口の前に持っていく
梨華はリンゴが口の前に来た途端、口を閉じた

「口開けろよ」
「開いてるときに入れて♪」

「て、てめぇ・・・」

よーし、いいだろう
意地でも開いてるときに入れてやる
292 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:58
「あーん」 
「ほれ」

「んー」
口を閉じて首を横に振る
「チッ・・・」

「あーん」
「それ」

「んーんー!」
唇を突き出してまた首を横に振った
その顔は、うれしそうだ
「・・・チッ」

イラッ

「あーん」
「どうだ!」
「んん〜〜!」

 イライラッ
293 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 21:59
「てめぇ!食う気ねぇだろ!!」
「だってぇ、食べさせる時の言葉言ってくれないんだもん」

「なにさ、言葉って」
「決まり文句だよぉ。」

「はぁ?」

「はい、あーんして♪あ〜ん♪パクッ!
おいしい?うん、おいしいよぉ?ひーちゃんも、はい、あーん」

ミニコントから一人漫談に変わったぞ?

「んー、やっぱり梨華が切るリンゴはおいしいなぁ」
「これ、1bag1$リンゴだろ。ハズレ多いからよせって言ってんのに」

「やぁーだぁ〜、もう、ひーちゃんったらぁ」
「くねくねすんな」

「可愛いやつだな、ツンツンッ」
「なにそれ、ウチの役?」

「はい!ここまで♪」
「はぁ!?」

「ここまでして?」
「出来るか、バカ!」

「バカってなによぉ!」
「バカはバカ。さっさと食え」

「やぁだぁ、さっきのやってよぉ!」
「長ぇよ!」

梨華の口に入れ込もうとしたリンゴは自分で食べる事にした
いつまでも手で持ってたら、怒りで握りつぶしそうだ。
294 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:00
「んじゃぁ、短くするからぁ」
「もういいって」

「やだぁ、やって!やって!あーんして」
「はぁ・・・もう、うるさい」

リンゴを小さめに一口かじる

「うるさいって、うるさいって、なに」

ついでにうるさい口も塞いだ


「んん!・・・・・んぁ・・・」

シャクッとリンゴを砕く音が聞こえる
唇を離すと、梨華はゆっくり瞼を開いた

梨華のこの瞬間が、本当にセクシーで
時々、たまらなくなる
295 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:01

「ずるい・・・」

梨華はコクンッと喉を鳴らしてリンゴを飲み込むと
恨めしそうに見上げて漏らした

「なにが?」
「ずるいよ、ひーちゃん」

「だから、なにが」
「私はいっつも、いっぱい考えてカッコいいことしようとするのに
 ひーちゃんは、これだけでカッコいいんだもん・・・」

ウチに勝ちたくて毎朝毎朝、あんなだるいミニコントを
ウチが帰って来る前に真剣に考えてるのか・・・?

「アホ」
「な、なによぉ!関西人でもないくせに、アホって」

「アホはアホだ」
「むかつくーー!」

梨華は手をグーにしてテーブルをドンドン叩いている
相当悔しいらしい

「それ見れんの、梨華だけって、知っとけ」
「あ・・・」

乱暴に言い放つとそっぽ向いて少し酸っぱいリンゴをシャクシャク食べた
リンゴには怨みはないのに、恥ずかしくなったから
296 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:02
「ひーちゃん?」
「シャクシャク」
「ひーちゃん」
「シャクシャクシャクシャク、ゴクンッ」

「ひーちゃん!」

梨華は大きな声でウチを呼ぶと
両手で頬を掴んで、顔を無理矢理自分の方に向けた

 ― グキッ ―

「いでぇ!なん、」

梨華の顔が目の前に近づいて来て
ぷっくりと膨らんだ艶っぽい唇に
最後の言葉は消されてしまった

「ん・・・はぁ・・・」

甘酸っぱい、リンゴの味が広がる
絡み合って、混ざりあわさって、溶ける

背中に快感が走り抜ける
頭が痺れる感覚に襲われる

梨華とのキスは、相性がいいらしい
だって、それだけで・・・
297 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:03
梨華はウチの唇を舌でなぞりながら、ゆっくり離れる

「ずりぃーよ・・・」
「なに、がぁ?」

おでこ同士をつけて、至近距離で見詰め合う

「ずるい」
「だから、なにがぁ?」

これじゃ、さっきと反対じゃん

「こんなの、されたら・・・止まんなくなる」
「んんっ!」

強引にキスをすると
梨華の背中に手を回し、絨毯の上に寝かせた
298 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:04
梨華のキスは麻薬だ
どんなクスリよりもキくんじゃないかってくらい

ゾクゾクと背中を駆け抜ける
体が熱くなる
何も考えられなくなって 
とろとろになるまで溶かされる

「ん・・・んぁ・・・」

梨華の吐息が熱を帯びだす
首に回されていた手がウチの髪を掻き雑ぜる
梨華の息づかい1つ、手の動き1つに
ウチは乱される

「ん・・・はぁ、ん!」

合間に漏れる声で
痛いくらいに胸を打つ
舌が絡み合う音だけが、部屋に響く

「ひ、ぃちゃ」
「黙って・・・」

むさぼるように、激しさを増す
いつの間にか背中に回された梨華の細い腕が
キツくウチを抱きしめる

「んぁ・・・くぅ・・・ひぃちゃ」
「・・・梨華・・・」

まだ欲しいって梨華が舌で求めてくる
それから、逃げて・・・唇を離すと
開かれた唇から舌がチロチロと見え隠れしていた
299 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:05

「こっから先は・・・だめ」

梨華のお得意上目遣いで、なんで?って言われた気がした

「・・・だって、まだ、ダメ」
「・・・うん」

梨華の少し乱れた髪をとかして
隣に寝転がる
梨華は所定の位置について瞼を閉じる
ウチの左腕で腕枕。向かい合って胸に顔をうずめる
が基本体勢らしい


梨華と溶け合うようなキスをすれば
身体は自然と、もっと、もっとと求めてる

だけど、まだ、彼女の奥には触れられない
怖いんだ
この期に及んでビビってる


少し肌寒い風が、部屋の中を通り抜けた

300 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:06
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
301 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:06
今日も店に向かう
梨華は、午後からボイストレーニングのスクールに通ってる
勿論、梨華は歌の基礎は学んでいる
だけど、日本で通用していたものが
このNYでは一切通用しない
カオリさんはクールにこう言い放った

「It's showbiz's」


梨華はカオリさんが見つけてくれたスクールに行く
レッスンは厳しいけど楽しいと言ってた
やっぱり梨華には歌っていてほしいし
本人も歌っている事が好きだと言っていたから
302 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:07

「じゃぁ、行ってくるね」
「気をつけてね」
「梨華も」
「うん」

いつも先に出るウチを玄関まで見送ってくれる

「ひーちゃん」
「ん?」

ウチのジャケットの袖口をつまむように持って
少し顔を赤らめながら左右に揺らす

「ちゅー」
「え!?」
「いってきますの、ちゅー・・・して?」

出たよ、必殺梨華の上目遣い
こいつ、絶対分かってやってる。
ウチがコレに弱いの知っててやってやがる・・・

でも、嵌ってる
303 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:08

 チュッ

「ってきます!!」
「はぁぁい♪take care !」

毎朝顔を真っ赤にしながらアパートのエレベーターを降りる
ドアマンに挨拶をして、店の近くまで走る地下鉄に乗る

あれだけのことなのに、何でこんなにドキドキするんだろ
304 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:09
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
305 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:11

カオリさんは、日本人が入りやすい店、そして日本食を出す店をするっていう
コンセプトでここマンハッタンにレストランバーを開いた
まぁ、ウチは相変わらずそこでバーテンダーをしているわけだけど
いくら英語を叩き込んで話せるとはいえ、時々タジタジになってる
それより、やたらとゲイのお兄さんに話し掛けられて困ってる
日本ではオカマさん、こっちじゃゲイのお兄さん
モテるのはうれしいけど、なんか複雑。

「吉澤?」
「はい」
「梨華ちゃんの調子はどんな感じ?」
「そうですねぇ、カオリさんが教えてくださったスクールのおかげで
 前よりも歌が上手くなったって言ってますよ」
「そう、それは良かったわ」

モデルのような顔立ちのカオリさんが笑みをこぼした
何をしてもカッコいい

「来週くらいからライブの回数増やそうと思うんだけど
 吉澤から伝えといてくれない?」
「はい、分かりました」
306 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:12
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
307 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:12

慣れてきたとはいえ、やっぱりNYの夜は怖い
自分の事は自分で。
日本でもやっていたけど、でもまた違うジャンル。
こんな時、アイツの顔が浮かぶから不思議だ
朝はあんなに呆れてたのに

薬指の指輪を撫でる

「梨華・・・」

目を閉じて、日本に居た時の事を思い出した
308 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:13
−+−+−+−+−+−+−+−+−
309 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:17

「ママ・・・」
「なに?どうしたの」

「うち・・・アメリカ行きます」

そういうと、ママは、少し驚いた後
凄く嬉しそうに笑顔をくれた

「ホント??」
「はい・・・そろそろ、ケジメつけないと」
「そうね・・・」
「大切なもの、守れそうだから」
「フフッ、猫が帰ってきたのね」
「ええ・・・」

「彼女も一緒に連れて行くの?」
「え?」
「違うの?まさか置き去り?」
「あ、いえ、連れて行きたいと思ってますけど・・・むずかしいですかね」
「さぁ・・・カオリは色んなところで色んな人と通じてるから
 根回し利くんじゃないかしら」
「そうですか・・・」

「なに、うれしくないの?」
「いや・・・色々して貰って、申し訳ないなと思って」
「バカね。甘えればいいの」
「はい・・・ありがとうございます」
310 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:18

「フフッ。まーさかアンタが本の中のあの人だったとはねぇ」
「へ?!」

「RIKAMIでしょ?」
「な、ななな、なんで!」

「指輪」
「はっ!?」

「写真と一緒のデザインじゃない」

薬指にある指輪を見た
そ、そんなに珍しいデザインなのか・・・?

「ああ・・・ああ・・・」

開いた口が塞がらない
311 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:18

「それくらい気づいてるわよー?この店の人間は特に♪」
「はぁぁぁ・・・」
「クリスマス、アンタ渋谷行ってたんでしょー?RIKAMIのゲリラメッセージ聴きに。」
「あ、あ、いやぁ」
「あの時からだもんねぇ、その指輪。」
「そ、た、だ!」

ウチの口からは言葉にならない言葉しか出てこない

「RIKAMIもそこに居たってことよねぇ?もう、若いっていいわぁ」

どうしてこう、この人は洞察力が優れてるんだ・・・?

「拾った猫が雑種だと思ったら、血統書つきだったとはねぇー」
「あ、はぁ・・・」
「だーれも、アンタの事怨んだりしてないわよ。
 みんな、アンタには幸せになってもらいたいの♪」
「・・・はい・・・」
312 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:19
−+−+−+−+−+−+−+−+−
313 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:20

思い出して、少し苦笑いした
まさか指輪だけでバレるとは思わなかったよ・・・

アイツは本当に心を暖める
アイツが走り回るたびヒヤヒヤしたり
泣き出すとオロオロしたりするけど
幸せにしてくれる
ウチは、愛されてるんだなって・・・実感する

夜の寒い風が吹き抜けるストリートを歩く
心は暖かい。ちょっと嬉しくなってにやけた顔をマフラーで隠した




でもそれも、もしかしたら扉を開けるまでかもしれないな
久しぶりにウチのアンテナが
凄まじい電波をキャッチしたから
314 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:21


 ― チーンッ ―



エレベーターが部屋の階で止まる
ドアベルを鳴らすと奥からけたたましい音が聞こえてきた

ヤバイ、少し離れておこう

 ガチャッ バンッ!

勢いよく扉が開く
ほらみろ、扉に近づいてたら顔面強打だぞ

「おかえり、ハニーー♪♪」

両腕を広げて、抱きしめてー!って顔してる

「・・・・・」
「あれぇ?なんで言ってくれないのぉ?」

 ピクッ

眉間のしわが寄りだした

「ただいまぁ、ベイビーって言ってよぉ!」

 ピクピクッ

「アメリカじゃぁ、女の子がハニーって言うんだって♪
あ、ベイビーがいやだった?sweetieのほうがよかった?」

うちの回りを仔犬のようにぴょんぴょん跳ねながらグルグル回って
ねぇねぇって言ってくる

 ピクピクピクッ

「ひーちゃん?照れてるのぉ?ツンツンッ♪」






「えええいぃ!!うっとうしいぃぃぃ!」
315 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:23
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
316 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:23
今日の晩御飯は和食
彼女が作るおかずもカナリ上達したと思う
だって秋刀魚がちゃんと魚の形してるから。

本当なら誉めてあげたいけど
いつもありがとうって言いたいんだけど
家に帰ってきて交わした言葉はさっきのドア前でやったあの会話だけ・・・
今回は台本無しでキレてるもんだから非情に気まずい
そして重い空気だ

「・・・言ってくれてもいいのに・・・」

梨華が漏らす
317 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:24

「アメリカなんだしさ・・・」

確かにそうだ、ここはNYだ

「憧れだったしさ・・・」

やっぱりこいつはどこか乙女に憧れてるんだな・・・?

「せっかくミカちゃんに教えてもらったしさ・・・」

ミカ・・・余計な事を
もうちょっと日常に役立つ事を教えてもらえよ・・・

「はぁ・・・」

大きなため息がウチから漏れた

「だって、ひーちゃん、最近名前すら呼んでくれないんだもん」
「はぁ?呼んでるっつーの」
「ねぇとかおいとか・・・お前とか・・・」

確かに、そう呼んでるな・・・
318 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:25
「でも毎日じゃないだろ」
「今日だって、キスしてくれたときと出かけるときだけだもん!」

梨華は手をグーにしてテーブルをドンッと叩いた

「だ、だから、どうしたっていうんだよ」

梨華のあまりの剣幕にちょっとビビる

「愛が足りない!愛がぁ!」
「そんなわけないだろ」
「いーえ!足りません!」
「名前呼んだだけで足りるのかよ」
「それだけじゃないもん!」
「じゃぁなんだよ!」

なんか、最近こんなケンカが絶えない・・・
梨華は決まって愛が足りないと言う
ウチは自分なりにめいいっぱいあげてると思ってるんだけど
彼女はそれで満たされないらしい
319 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:26
「・・・もういい!」

そういうと梨華は食べていた食器をキッチンに持っていった

いつもなら、あそこで梨華はしゅんとして
「ごめん」って言って丸く収まるんだけど
今日に限って、収拾がつかなくなった
梨華は頑固だから、自分が悪くないことに対しては絶対謝らない

こっちに来てから何度かこう言うケンカがあった。
その時は自分がぶっきらぼうに謝って
「しかたないなぁ、許してあげる♪」って言ってくれた
なんかその言葉がシャクに障ったが
でもその後はいつも、かわいくて甘えてくるもんだから
ウチも引きずったりはしてなかった

惚れた弱みってやつかな・・・
320 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:26
しかし・・・今回はその時とちょっとタイプが違う

長引いて・・・もしかして・・・
いやいや、あいつに限ってそんなことはない

梨華は食器を洗うと、クローゼットを開けトランクを引っ張り出して
ベッドルームに入っていった

「お、おいおい・・・」

その"もしかして"が的中するのか・・・?
帰るとかいうのか?
良くある「お暇をいただきます」ってやつが来るのか?

でもよく考えろ、ここはアメリカだ
そう簡単には実家に帰ったりできるはず

 ―ガチャッ―

トランクを引きずりジャケットを手にした梨華が
箸を持ってポカーンッと口をあけて見てるウチに


「実家に帰ります」
321 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:27



って、待てぇぇぇぇ!


つかつかと玄関に向かう梨華
ウチは持っていた箸をテーブルに放り投げ
イスを蹴倒し走って追いかけた

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

ドアノブにかけられた手を掴む

「なによ」

梨華が振り返ってウチを睨みつける
でも、上目遣いだから、睨んでても怖くないんだけど
口調がヤバい。かなりご立腹の様子

「実家って」
「日本よ」
「帰るって」
「帰るの」
「なんで」
「ここに居たくないから」
「な・・・」
322 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:28
梨華は一歩後ろに下がってウチを見つめた

「わたしの全てはひーちゃんなの」

ああもう、ズキュンです
この一言で胸打ち抜かれます
どうしてこうも、ストレートなんだろう
時々羨ましくなって、時々妬んでしまう・・・

「でもひーちゃんは違うみたいだから」
「そんな・・・」
「なによ、違うんなら言ってよ」
「そ、それは・・・」
「言えないんでしょ!」
「・・・・・」

「もういい!意気地なし!」

梨華はドアの鍵を開けて、外に出ようと1歩踏み出した
323 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:28
ちょっと待てぃ!
意気地なしって、どういうことだよ!
当たってるけど、けど・・・ムカツク!

「梨華!」

ウチは彼女の腕ごと、後ろから抱き付いた
でも、梨華からはまだ怒りオーラ放出されている

ムカツクけど・・・ムカついてる場合じゃない

手を離したら・・・アウトな気がした
324 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:29
首筋に顔を埋める

「待ってよ・・・」

梨華の動きが止まった

「やだよ」

ノブから手がゆっくり離れる

「行かないで」

肩に入っていた力も、和らいでいく

「梨華、居なくなったら、うち、ダメ、死んじゃう」

こんな時にしか、言えない自分を呪った
ピンチに立たなきゃ、何も出来ない自分が本当に嫌になった
325 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:30
「・・・ホントに・・・?」
「うん・・・」
「ホントにホントにホント?」
「うん」

「いい切れる!?」

梨華はウチの腕を解いて向き合った
目はやっぱりウチを睨みつけたままだった

「な、にを?」

「Don't give me that ! 」

ウチの梨華ちゃん、英語の方が迫力あるんです・・・
すんげー怖いんです
お伝えできないのが悔しいです
髪の毛逆立つくらいのオーラ出てるんです・・・

「・・・い、言いきれるよ」
「じゃあ言ってよ!」
「あ、う・・・」

見つめられると、弱い
照れてしまって、言えない
梨華の目に、吸い込まれそうで・・・

「・・・はぁ・・・やっぱりダメね。うちに帰る」

梨華は言い出さないウチに業を煮やしたのか
大きなため息をついた
326 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:31
「Why !?」
「言えないから」

ギクッ

「ほら、目が泳いでる」

あ、あわわ

「どーして、ひーちゃんはもっと我儘にならないの?」
「わが、ままって・・・」

「いつもわたしを見てよ。もっと欲しがって?捕まえててよ」
「そん、な・・・だって・・・」
「なによ」
「だって・・・梨華だって、いろ、いろあるだろうし・・・ウチが・・・」

「バカ!!!」

梨華が初めて真剣にウチを怒鳴りつけた
両手でウチのほっぺたを抓って引っ張る
327 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:32
「い、いひゃい!なんひゃよ!」

バチンッ!
抓っていた手を思い切り離した

「バカバカバカバカ!ひーちゃんのバカ!」
「い、いってぇなぁ!なんだよ!」

「わたしはひーちゃんのなに?」
「は!?なんだよ、今関係な」
「答えて!!」

「・・・・・恋、びと、です」
「・・・・・」
「・・・すべてです」
「よろしい」
「・・・ってそれとこれと」
「ひーちゃんはわたしの全てなの。それは伝わってる?」
「え?」
「答えるの!」
「つ、伝わってるよ」
「どれくらい!?」
「どれ、くらいって・・・」
「言って!」
「・・・じゅ・・・充分、わかり、すぎるほど、です」
328 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:33

「じゃぁ、何でその相手に遠慮なんかするの」


ああ、また心を打ちぬかれる

アメリカの神様はストレートすぎる
ウチにもっと幸せになんなよってボンボン投げ付けてくる
そんなに投げられちゃ、ウチ倒れちゃうよ


「ひーちゃんのいいところは心が優しいところ。
 ひーちゃんのいいところはカッケーところ。
 でも、それが時々裏目に出てるの」

ズバリ的中
笑えないくらい、梨華に読まれてる

「自分には、ってのが口癖なんでしょ。
 カッケー姿ずっと見せなきゃいけないって思ってるんでしょ」

ウチにはもったいないくらいのいい女
なんでこの人がウチなんかを好きなのか
一緒に居るのか本当に分からないときが

って、ほらまた 「ウチなんか」って言った・・・
329 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:34

「もっとわたしのこと縛ってよ」

「もっとわたしに甘えてよ」

「もっとわたしに愛されてよ」

「もっとわたしを欲しがってよ」

「わたしだけを見て」



梨華の気持ちが痛いくらい分かった
梨華はわがままを言ってるんじゃない
梨華はわざと怒って、自分を焦らせたんだ
だってほら、目が潤んでる。泣きそうになってる

ウチは、呆れるくらい梨華に求めないから
梨華は不安なんだ・・・
330 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:34
カッコいい姿を見せれば、彼女は喜んでくれる
頼もしい姿で居れば、彼女は頼ってくれる
それだけでいいと思ってた

でも、どこかでそれは間違いだってのにも気づいてた

梨華が毎朝考えるコントにしたって
お帰りのお出迎えだって
自分がどこかで憧れてた姿だってことにも 気づいてた

梨華はそんなウチを知って
引き出しやすいようにきっかけをくれてたんだ

馬鹿を演じてたんだ
・・・なにさせてんだよ、ウチは

 大事にしなよ

履き違えてた、ごっちんの言葉
傷つけないように、ひたすら守りつづけることが
大事にする事だと思ってた

でも、そうじゃないんだね
思いを通わせる事が
大事にするってことなのかもしれない・・・
一方通行を双方向にしなくちゃ

何にも伝わらない
331 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:35
「ごめん・・・」
「謝ってほしくない」
「ごめん」
「謝らないでよ!」
「違う・・・」
「な、なによ・・・」
「寂しい、思いさせて、ごめんね」
「・・・・・」

「梨華が言いたくないこと言わせるくらい馬鹿でごめん」

「梨華の寂しさに気づいてあげれなくてごめん」

「・・・愛が足りなくて、ごめんなさい」

「ウチの、気持ち、気づいて、きっかけくれてて・・・」

「ありがとう」
332 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:36

「・・・グスッ・・・グスンッ」
「梨華・・・?」
「ない、てないもん!」
「泣いてるじゃんか・・・」

「泣いでない!ぐずっ・・・だれが、ひーぢゃ、ヒック、ために、ヒック
 なぐ、もん、でずが」
「そっか・・・ごめんね」
「・・・うぅぅぅぅ、なんであやばるのよお!」
「だ、って・・・事実だし」

「あやまら、れたら・・・グズッ、あやまれ、ない、じゃない!」
「・・・そう、なの?」
「もう、黙って!」
「はい・・・」

梨華はアメリカに来て、強くなった
それは多分、ウチがそうさせたのかもしれない
弱すぎる自分に、脆すぎる自分じゃ
守ってもらえない!って・・・

ああ、また自分にはって・・・
333 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:38
「・・・グズッ・・・グスッ・・・ごめん、なさい」
「なんで・・・梨華が謝るの」
「ひどい、こと言った、から」
「ううん、当たってることだから」
「わたし、ひーちゃん、に、いっぱい愛情貰ってる」

梨華の大きくて深い愛情に、溺れそう

「・・・ううん、ウチはあげれてないよ・・・
 恥ずかしいって言葉を盾にして、逃げてる」

首をブンブン横に振った

「ひーちゃ、おっかけて、きて、くれたも、ん」
「そりゃぁ・・・」
「つよが、りで、かわいくなくて、頑固で、バカなわたしのこと
 好きでいてくれてるもん」

梨華の頭を撫でて、抱きしめた
だけどね、梨華。それだけじゃないよ?
もっとたくさん、梨華のいいところ伝えたい
334 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:38
「泣き虫で、かわいくて、大きい梨華が好き。梨華が好き」
「うう、うん」
「・・・まだ、日本に帰りたい?」
「え?」

ウチはまたズルい聞き方をした
ダメだ・・・梨華にはちゃんと伝えよう

ウチには なんて言葉も、もう辞めよう

「訂正。梨華、ここにいて」
「あ・・・」
「ここに居てよ」
「・・・うん」
「Do you forgive me ?」
「・・・I got it・・・but, call me "baby"」
「wh, what !?」
「だって呼ばれたいんだもん・・・」
「な、な、なんでそんなハズい事」
「誰も聞いてないよ?わたししかいないよ?」
「それが1番、恥ずかしいっての!」
「言って欲しい・・・な?」

潤んだ瞳で上目遣いをしてくる
だから、その目は反則だってば・・・

惚れた弱みだ・・・

「わ、わかったよ・・・」
335 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:39

梨華はウチの胸に顔を埋めた

「べ・・・baby」

「…one more」

「baby」

「ウフッ・・・うふふ」

「finish !」

「Nooooo ! call me baby more, more !」

「・・・I wish I would」

「what !?」

梨華は眉間にしわを寄せて
トランクを掴んでウチを睨みつけた

「I beg your pardon !? ha ?」

「just kidding…」

ごめんって・・・お願いだから眉間のしわを戻してください
ねぇ、笑って?
336 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:40
「言ってくれる?」
「・・・わかったよ」

呆れ顔で梨華にそういうと
一転。パァッと明るい顔になった

「ホント?ちゃんとアイラブユーベイビーって言ってくれる?」
「あ、アイ!?」
「そうだよぉ、愛してるって、アイラブユーって言ってくれないとやだもん」
「・・・いつか、ね・・・」
「わーーい!」

梨華がウチに飛びついてキスをした

アメリカじゃ、キスなんてごく当たり前の事だけど
なんか久しぶりのような気がして・・・

二人で手を繋いで、リビングに戻った
337 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:41
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
338 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:41
今日、梨華が出かけるときに、ミカが言ってきたそうだ

このアメリカ、NYと言う街は、言葉にしなくちゃ何にも伝わらないって。
思いを持ってるだけじゃだめなんだ
って。さすが、自己主張の国だなぁ

梨華自身も、ウチにいえない事を持ってた
ウチも梨華にいえない事を隠してた

だけどそれは傍から見ればとても滑稽なのだ

 なんで恋人同士で遠慮しあうの?
 どうして恋人同士で求め合わないの?

そう言われたのだろう・・・。

前言撤回。
ミカもたまにはいい事を教えてくれるようだ
339 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:42
「ねぇ、ひーちゃん?」
「なあに?」
「ケンカしたら、いつもラブラブだよね」
「・・・そうだね」

ソファに座り、梨華が膝の上に乗ってくる

「どうしていつもこうできないのかなぁ」
「んー・・・」

ウチは恥ずかしいから、と言わない
梨華は意地を張って、言わない

「気持ちがピュアになるからかだよねー」
「そうだね」
「ピュアに、ピュアに・・・」
「ピュア、ねぇ・・・」
340 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:42
「分かった!そうだ!」

梨華が膝の上からぴょんと飛び上がって、ウチのほうを見た

「ひーちゃん、しよ?」
「なにを?」

「んもぅ!分かってよぉ」
「だから、なにさ」

「make love」







make love...


ェ・・・ッチしようだと!!?
341 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:44
「はぁぁぁ!?」
「だって、それが1番ピュアな姿じゃないの?」

出た、暴走特急。
梨華の思考は本当に読めないときがある
でも走り出したら止まらないのは、この子の性格なんだ

「それは、別な気が」
「どうして?」

どうしてってアンタ・・・
「しよ?」て言われて、うん!って答えられると思ってるわけ?!

「だ、だって・・・」
「じゃぁ、ひーちゃんはしたくないの?」

こいつは・・・ホントこっちきてスパスパ言うようになったなぁ

「そ、そりゃぁ・・・」
「じゃぁ、いいじゃん」
「あぁ・・・な、んで、そんな、簡単なの?」
「だって・・・わたし、ひーちゃんとしたいもん」
342 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:45

「ひーちゃんだから・・・」

「初めて、あげれる、もん」





はじ、めて・・・


初めて・・・


って、えええええええ!?????

343 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:46

暴走特急がぁぁぁぁ!

マンションの窓を突き破ってセントラルパークまで届きそうになるくらい
ウチを跳ね飛ばしていった

なんか、また眩暈が・・・
こんなふうにしたのはウチの責任かもしれない・・・

「もう!そんな顔しないでよぅ・・・」
「だ、だ、だって」
「だめなの?ヴァージンがそんなにいけないこと!?」

かわいい顔して、ヴァ、ヴァ・・・
梨華のお父さん、お母さんごめんなさい・・・

「あ、いや、そんなことは・・・」
「そういうひーちゃんはどうなのよ!」
「・・・うち、も、無いねぇ・・・」
「ほらみなさいよ!」

なんでそんな、えばってんの・・・?
344 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:46
「だめ、かな・・・やっぱり」
「え?」
「・・・傷モノだもん、ね・・・」

「ばか!」
「え?」

「梨華のばか!あほ!」
「な、なによぉ!さっきの反撃?」

「そうだからってウチが梨華に、きょ、興味なかったんじゃない!」
「興味って・・・」

それは事実だ。
あの大きなベッドの真中で寄り添うようにして眠る毎日。
毎晩寝顔を見てると
かわいくってコッソリキスしたり
寝言でウチの名前なんて呼ばれたら
襲いたくなるんだ・・・

でも・・・
345 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:47
「う、うちは、う、ちは初めてだか、ら・・・」
「・・・だから?」

気づけよ!馬鹿!

また得意の上目遣いでじーっと見つめる
続きを待ってる、待ってる・・・確実に待ってるぞ、こいつ

言わす気かよ!

「き・・・き、緊張するし・・・
 どうやったらいいか分かんなかっただけだし!」
「ウフフッ。やっぱりひーちゃんってかわいい」

頭を撫でてくれる梨華の顔が
とっても嬉しそうだ
346 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:47
「・・・もういいよ、好きなだけ、からかいなよ」
「ごめんね?冗談だよ」

「傷ものとか・・・冗談でも言わないで・・・」
「ごめん」

梨華はウチの足の間に入り、ウチを抱きしめてくれた
顔を梨華の柔らかい胸に押し付ける

「り、梨華?」
「・・・聞こえる?」
「・・・え?」
「わたしも、ドキドキ、してるよ・・・?」
「あ・・・」
「仕方なんて・・・分からなくたって・・・
 からだが、おしえてくれるから・・・」

"本能に従えばいい"

そっか。そうだね・・・
二人とも・・・初めてだから、ね
347 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:48

「「一緒か」」

「「真似しないでよー!」」

「「もー」」

「「プッ」」

「「あははははははは!!」」

心があったかくなる
やっぱりウチと梨華は繋がってるんだ

じゃあ、今の思いも繋がってるとしたら・・・

梨華の顔を見ると潤んだ瞳で、何かを訴えていた
348 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:49
ウチは立ち上がって梨華を抱きしめる
キツく、キツく・・・
梨華も背中に腕を回して、抱きしめてくれた

うっすら開かれた唇にキスを落とす
それは甘くて、絡みつく
だけどいつもよりも、濃くて、深い・・・

唇を離すと、梨華の目の奥で何かが揺らいだ

それは、間違いなく・・・

ウチと梨華のキスの間隔が、短くなる

「ねぇ・・・しよ?」

「うん・・・」

キスをしたまま、梨華を抱えてベッドルームに入った
349 名前:Cross 投稿日:2005/12/07(水) 22:58

350 名前:Rink 投稿日:2005/12/07(水) 23:00
一旦更新終了です
今回の更新は>>280-349です

次工口入るんで深夜帯にもう一回更新します
351 名前:Rink 投稿日:2005/12/07(水) 23:00
>774飼育様
作者は痛めが好きなんですが
もうここの二人には甘く行ってもらいたくって
これからもっと砂糖吐き出すくらい甘くなってきますよ〜
リアルタイムありがとうございますww

>名無し読み手様
やっぱりいしよしは書きやすいんですよねー
なんと言っても想像膨らませる発言やら何やらが多くってw
お気遣い頂き、ありがとうございます
読者様といしよしに励まされながら頑張りたいと思います

>7&Y様
|Bar K|`.∀´)<出遅れでもいいわ♪ありがと
どうもママさんは誰かと絡ませるより
心の中を覗き見した方が面白いかなと思いましてww
後藤さんのシーンは本当に迷いました
これ以上吉澤さんを落とす事が出来なかった_| ̄|○
作者は基本HAPPYが好きなので、こんな感じになりました
352 名前:Rink 投稿日:2005/12/07(水) 23:01
>名無飼育さん様
ありがとうございます
あのシーンは後付けの思いつきだったので
不安いっぱいだったのですがそう言っていただけて嬉しいです!

>名無飼育さん様
( ^▽^)<照れるなよぉ♪
(;0T〜T)<梨華ちゃぁん・・・

>名無飼育さん様
|Bar K|`.∀´)<ありがと♪
353 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/07(水) 23:38
深夜の更新楽しみフォー!!
354 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/07(水) 23:42
更新お疲れさまです
深夜の更新、正座して待ってます
355 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:48
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
356 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:49
抱えていた梨華をベッドにそっと寝かせて
覆い被さるようにキスをする
何度も、何度も
確かめるように
離したくなくて息をするのも忘れるくらい

長いキスの切れ間に、梨華が小さく呟いた

「シャワー・・・」

「あ、うん・・・」

梨華の腕を持って起こしてやると

「一緒に入る?」

得意の上目遣いで言って来た

「バカ・・・」
「ウフフッ、後でね」

梨華はウチの唇に軽く触れてバスルームに入っていった
357 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:49

ウチはベッドに仰向けになって天井を見上げた

梨華を抱くなんて・・・
不安だらけだけど、ウチよりも梨華のほうが不安なんだ・・・
ママだって言ってた
「裸になればやり方なんてどうでもいい」って・・・
身体が勝手に動くのかもしれない

それに、「彼女を信じなさい」って。
信じるのが怖いんじゃない、裏切られるのが怖いんでもない
失う事を考えてしまうウチの悪い癖。

でも、彼女は、多分・・・
ううん、この先ずっとウチの傍に居てくれる
それを、信じればいい
梨華がさっき言った言葉を
358 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:50


 もっとわたしのこと縛ってよ 甘えてよ

 愛されてよ 欲しがってよ

 わたしだけを見て


梨華だけを見てるよ・・・いつも
もう、怖れたくない・・・


バスルームから聞こえるシャワーの音を聞きながら
ウチは目を閉じた
359 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:51





「ひーちゃん?」

いつの間に出てきたのか
ウチに覆い被さるように梨華が顔を覗き込む

「あ、ごめん」
「寝てた?」
「ううん、起きてたよ」
「そっか。ひーちゃんもシャワー浴びてきて?」
「うん」
梨華はウチの背中に手を回して抱き起こしてくれた
胸に顔を埋めると、長い梨華の髪から水滴が落ちる

見上げると、バスルームの窓から部屋に差し込む
月明かりに照らされた梨華の顔が
セクシーで、艶っぽくて
胸が締め付けられるように、痛んだ

なんで、痛いんだろう

分からない
360 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:51


「どうしたの?」
「わかんない・・・」
「泣きそうだよ?・・・怖い?」
「違う・・・」

好きすぎて

好きすぎて

壊してしまいそうになるから

怖かったんだ・・・

梨華がちょっと困り気味に眉を下げた

「なあに?」
「好きすぎて・・・胸が、痛い」

梨華はウチを抱きしめてくれる
優しく、でも強く・・・

「わたしも・・・ひーちゃんのこと大好きだよぉ?」
361 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:53

この思い、どう言えばいいんだろう
この気持ち、どうやったら伝えられる?

愛しくて、可愛くて、大切で。
恋しくて、綺麗で、大好きで。
満たされて、でも足りなくて
好きで、苦しいくらい大好きで
魅せられて、惚れてて、溺れてて

だけど、それを表現出来る言葉が見当たらない

結局見つかったのは
ごくありふれた、言葉だった

「梨華?」

「なあに?」

「・・・愛してる」

梨華は今まで見た笑顔の中で飛びきり優しい顔で
返してくれた

「・・・もっと、言って」

「梨華、愛してる」

「もっと」

「愛してるよ」

「わたしも、愛してる・・・」

深い深いキスのあと、梨華はふっくらと笑ってくれた

「・・・シャワー浴びてくるね」

バスルームから見える月は、青白く大きく輝いていた
362 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:53

シャワーを浴びてベッドルームに戻ると
バスローブを纏った梨華がベッドの上に座っていた
少し濡れている髪を撫でて、手を頬に滑らせる
梨華は手を重ねて、目を伏せると
顔を上げて、ウチのキスを迎えてくれた

「ひーちゃんの膝の上がいい・・・」

ベッドの真中で
梨華はウチの胡座の上に、向かい合いながら座って
上からキスをくれる

ついばむように、何度も何度も
時々離れて、見下ろすように
笑みをこぼす

その顔はとてもセクシーで
臆病者のウチを
酔わす
惑わせる
絡める
火をつける
363 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:54
梨華の背中を支えながら、身体をベッドに沈めた
味わうように、確かめ合うように
キスを繰り返して。

だんだんとキスが熱いものに変わる
お互いの舌を絡めて、唇に吸い付いて
梨華の口から、濡れた息が漏れる

ああ、何でこんなにもドキドキするんだろう

唇から頬へ
耳たぶを咥えるように甘噛みする

「んん、はぁ・・・」

誰に教わったわけじゃない
でも、唇が、舌が、梨華を悦ばせたいと動き出す

「ひーちゃんの、キス、気持ち、いぃ」
「うちも」

好きすぎて、壊したくない・・・
好きすぎて、これ以上動けない・・・


「もっと、して?」

だけど、梨華はウチを解き放ってくれる

至近距離の上目遣いが胸を高鳴らせた
乱れる息づかいが、手に込められた力が、愛しくて
梨華に言われるがまま、唇を合わせる
激しく、強く交わす
364 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:55

お互いの間にある全ての物が煩わしくて
バスローブの紐を解き開く

梨華も、ウチの紐に手をかけて解いてくれる
腕に手を滑らせて、脱がせるとベッドの下に投げ捨てた


薄暗い部屋に、ぼんやりと浮かび上がる
梨華の素肌、輪郭

顔の横で両手をつくと、梨華に影を落とす
なのに、くっきりと見える、梨華の潤んだ

ウチを虜にする瞳
365 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:56
梨華は、ウチの胸の真中に刻まれてる
あの時傷つけられ、手術した傷の跡に触れた

これを見るたび・・・梨華は苦しむかもしれないと思ってた。
だから、裸になれなかった。

「・・・消えないんだね・・・」
「うん・・・」

梨華は少し起き上がると、
反り返ったウチの背中に手を回し
胸の傷に優しくキスをする

「ごめんね・・・」

舌で古い傷跡を舐めあげる
猫がペチャペチャとミルクを舐めるように
何度も、何度も
366 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:56


「んっ・・・はぁ・・・り、かぁ・・・」
「なぁに?」

「キス、してよ」
「うん」

少し嬉しそうに目を細めて、キスをくれた
溶けて、混ざり合うキス
頭の芯がボーっとする
367 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:57
確かめるように、熱い身体を
指で、手で、舌で、愛撫する

「んん・・・んぁぁ・・・はぁ・・・」

その度、梨華の声が漏れる
その声はとても甘美で、耳から直接脳に響く

ヤバイ・・・マジで、ヤバイ

首筋に顔を埋めながら
手を、梨華の細く伸びた足に滑らせる
脛、膝、内腿をゆっくりとなで上げれば

「んんやぁ・・・」

梨華の声も、高くなる

「梨華・・・かわいっ・・・」

心の声が、勝手に出る

腰から中心に向かって、手を這わせた
368 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:57

「ひぃ、ちゃ・・・」

梨華は身体をビクッとこわばらせて
ウチの手を止めた

「どう、したの?」
「・・・傷・・・見ない、で・・・」

誰にも見られたことの無い
見せる事を拒んでいた
梨華の過去の呪縛

慈しみたい、愛したいから・・・怖がらないで

身体を少し下にずらして梨華の傷を見た
真横に何本も引かれ、少し盛り上がっている

「やぁ・・・だ、め・・・」

掬うように傷を舐める

「んゃぁぁ!」


かわいそうに・・・

消えるように、癒えるように
願いを込めながら、何度も何度も口づけた
369 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:58

ふと顔を上げると、両手を顔にあてて
声を殺して梨華は涙を流していた

「ごめん・・・」

首を横に振る

「もう、しないから・・・」
「ちが、うの・・・」

伏せていた目を、真っ直ぐこちらに向ける

「うれ、しくて・・・」

髪を優しく撫でた

「うれし、かったの」
370 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:58

梨華の左手を掴むと
いつまでもそこで主張している傷に
吸い付いた

「んあぁ」
「消してあげる」

その手を首の後ろに持っていくと
梨華はウチにしがみついてくる

涙の流れた跡を舌でなぞって
梨華の耳元で、小さく囁いた

「おまじない」

恥ずかしそうに、梨華はこくんと頷いた
371 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:59
もう一度、はじめから
梨華を愛す


指の一本一本から、手の平、甲、手首の傷

「んぅ・・・ひぃ、ちゃん・・・」

瞼 鼻 唇 頬 耳

「はぁ・・・んっ」
「りか・・・」

あごから首筋、 肩から鎖骨

「っくぅぅ、あぁ」
「梨華・・・」

すべらかな腕も、柔らかい胸も

「んぁぁ!・・・ずかしい・・・」
「かわいい・・・」
372 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 00:59
梨華の美しくて淫らな体のライン

「はぁ!ぁん、ゃぁ・・・ずかしいぃよぉ・・・」
「りか、かわいい・・・」

細く伸びた足を、脹脛を

「ふぅぅぅっ、っんく」
「梨華・・・」

すねを、膝を、足の付け根を

「うぅぁぁ、っはぁ、はぁ」
「我慢、しないで・・・」

やわらかくて、なめらかな肌の内腿

「っくぅぅぅぅ!」
「もっと、聞かせて・・・」

切り裂いたように残る、消えない跡

「んあ!ぁぁ、ん!」
「梨華・・・」
373 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:01

そして 

甘い香りを放ち、奥から溢れている
1番熱を持った、そこに触れたくて

顔を埋め 口に含み 吸い上げた


「やぁぁぁぁぁぁぁ!」


梨華が強くシーツを握り締める
閉じようとする膝を左手で抑えて、右手で内腿を撫でる

「んあぁぁ!」

髪を乱して、首を振る
目の端から、涙をこぼしながら

「ひぃ、ちゃあ・・・だめ、だよぉ」

もっと、聞かせて

もっと、酔わせて

梨華の言葉に反して、そこは更に熱くなる、溢れる
もっと欲しくて、強く深く舌を差し込む

「んゃぁぁぁぁ!」

足が更に閉まろうと、力が入る
視界の端で、梨華の右手がピンッと伸ばされていた

まるで自分が居ないと寂しいと言うかのように

名残を惜しむかように、舌からはねっとりとした糸が引く
374 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:01


「ひぃ、ちゃんが、見えなく、なるのは、嫌・・・」

梨華を抱きしめる
梨華はウチにしがみついて浅い息を繰り返す

「うん」

ごめんね・・・寂しかったんだね
ウチは瞼に、涙の跡にキスをすると
梨華に身体を重ねて、首の下に腕を回して抱きしめた
手を上から滑らせ
指で、淫らに濡れて溢れる蜜を絡め取る

「んぁぁぁぁ!」

熱く膨れる場所をくすぐる
上下に、円を描くように
指で挟んで、揺らして
その度硬さを増し
もっともっとと強請るように張り出してくる
375 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:02

「んゃぁぁ!」


脳にダイレクトに伝わる梨華の声が響く


「んっくぅぅ!」


背中に回されていた腕に力が入る


「っちゃうぅぅ!」


胸を上下して息を荒げる


「んん、ぁぁぁぁぁあ!」


梨華は身体をビクッビクッと小さく痙攣させ
めいいっぱい、しがみついた
376 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:02

息を整える梨華にキスをする
うっすら汗ばんでるおでこに、
流れる涙に
うっすら開く唇に。


ウチの中で、声がする

足りない
もっと、もっと


梨華を求めてる
自分の身体の中で
いつもは出せないで隠していた気持ちが
梨華を欲する気持ちが擡げてる
377 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:03

「梨華・・・」

指をあてがうと、梨華は少し身体をこわばらせた

「肩、噛み付いていいから・・・」
「う、ううう」

梨華は首を横に振る
余韻に浸りながら
襲ってくる恐怖に揺られながら

「しっかり、捕まってて・・・」
378 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:03

梨華の中にゆっくりと侵入する

「っくぅぅ!」

肩に回されていた腕が痛いくらい
ウチを締め付ける

「う、ぐぐぐぐぅ」

梨華の痛みが、苦しみが
自分も同じように
胸が締め付けられるように痛む、軋む

だけど、このまま
緩く侵入をすればするほど、梨華は辛くなる

梨華が荒く呼吸をする
ウチの下から、か細い声が聞こえた


「だい、じょうぶ、だよ?」


梨華は涙を浮かべながら、微笑んだ

「ひー、ちゃ・・・ん・・・し、て?」
379 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:04


「ちょっとだけ、我慢、してね」


一気に、深く沈めた


「んやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


悲鳴にも似た声が、部屋に響いた

「あぁぁ・・・」

声にならない深い息が、自分の口から漏れる
380 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:04
そこは、ギチギチと自分を締め付ける

「・・・んんん、っぐぅぅぅぅ!」

梨華の目の端から涙がこぼれた
辛そうなのに、苦しそうなのに
ウチの胸を熱くする


「梨華・・・大好き」

「愛してる」

「大好き・・・愛してる・・・」


梨華の頭を撫でる
何度も耳元で囁く
唇に、頬に、耳にキスを繰り返す

痛みが無くなるように
辛さを解放できるように
381 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:05
  +  +  +  +  +  
382 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:06

どれくらいそうしてただろう

「・・ん・・・んぁ・・・」

梨華が涙をしゃくりあげる声がいつの間にか吐息に変わっていた

「りか・・・?」

「・・・んんっ・・・はぁ・・・に?」

指を少しだけ動かす

「んん!・・・はぁ・・・」

それは、明らかに痛みからじゃなく
快感に変わりつつある声
383 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:06

キツくて、熱い中の上に、指を押し付ける

「んぁ!」
「・・・どんな、感じ・・・?」
「わか、んない、けど・・・なんか」
「なん、か?」

少し、力を加えて掻き出すように
指を曲げる

「んぁぁ!」

「・・・もっと、よくして、あげる」

下唇を噛んで、声を堪えてる顔を見て
また擡げていた何かがゆっくりと頭を上げだす
384 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:07

中をくすぐるように動かす
強弱をつけて

「んぁぁ!ひぃちゃぁ!」

梨華の中は痛みから快感に変わった

「んんぁあ・・・」

無茶苦茶にしたい
乱れた姿を見たい
切なげにあげる声を聴きたい

自分の頭の中が梨華の温度と声で溶けていく

「ひぃ、ちゃぁ」

「ああぁ・・・」

「ひぃ、ちゃ・・・んぁぁ!」

指から伝わる感触で背中に快感が走り抜ける
385 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:07

もっと梨華を、知りたくて
声を聞きたくて、乱れさせたくて
奥を、知りたくて・・・

「んぁ、り、か・・・ああ!」

だけど、梨華の今にも泣き出しそうな顔を見て
理性がそれを食い止める
ギリギリのところで、ブレーキをかける
そうしないと、壊しそうなくらい
梨華を滅茶苦茶にしそうだったから・・・

モット ダメ モット ダメ モット ダメダ
2つの感情がウチをグチャグチャにする



「ひとみ・・・き、もち、いい・・・よぉ?」


涙をこぼしながら、梨華は柔らかに笑った


だめだ、歯止めがきかない
もう止められない
386 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:08

「ぁぁ、梨華ぁ」

「きも、ち、いいよぉ」

「うち、も」

駆け上がるように走る快感が
頭を痺れさせる
ゾクゾクと震えさす

「ひと、み・・・も、っとぉ」

梨華はウチを飲み込む

「も、っと、し、て」

「も・・・っと?」

「・・・んぅ・・・もっとぉ!」
387 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:09

指を強く、深く動かす
卑猥な音が聞こえる
そこは、ウチの体全部を締め付けるほどキツい

「り、か、ダメ・・・こわし、そう・・」

「い、いい・・・こわし、て・・・んぁ!」

自分の中の何かが、殻を破って梨華を食いつくそうとしてる
梨華が熱い息を漏らすたび、抑えられなくなる

「だ、めだよ」

「い、いい、か、らぁ・・・んぁぁぁ!」



「から、だ・・・んん!・・・で、教え、て・・・!」

388 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:10
梨華の言葉で、胸の奥でチリチリとくすぶっていた火が
いっきに炎になり燃え盛る

彼女は自分を包む
大きな、恐ろしいくらいの愛情で
臆病でしり込みをする自分の思いを見抜く


 何も構わないで、隠したりしないで

 全部曝け出して


そう言うように、梨華の腰が動く
苦しいくらいにキツく締め付ける


長い髪が、ベッドに広がる
身体を仰け反らせて、何かに耐えるように顔が歪む
首に回された腕の力が更に強まる
389 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:10

ウチの中で擡げていたもの

本能
梨華を欲する本能が
殻を食い破って暴れだした

もう、戻れない


欲望を解き放った

390 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:11

お互いの息が荒くなる
喉を震わせて、声が高くなる

更に強く指を沈めた

「んひゃぁぁぁ!」

「・・はぁ!り、かぁ!」


おかしい・・・
ウチは何処にも触れられていないのに

何度も何度もウチの名前を呼びながら
しがみつく痛いくらいの爪の跡だけで
梨華の声と熱と感覚だけで

もう限界が近い
391 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:11

「り、か・・好き」
「わたし、も!す、好きぃ」

「梨華ぁ!」
「んん!ぁぁぁ!ひとみ・・・んぁぁぁ!」


もう何も考えられない

飛びそうになる意識を保つのが精一杯で
目も開けてられないくらい、内側から迫り来る
波のような快感に耐える


「ひ、ひとみぃ、い、いっくぅぅ!」
「う、ちも・・っきそう」
392 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:12

痛いほど梨華の爪が肩に食い込む
その手も震えて、限界を示してる

「ひぃ、と、・・・ぁああああ!」

「梨華、り、かぁぁ」





「んぁああああああああ!!」



身体を弓なりに反らし
強く息を吸い込むと、声が止まった


今までよりもキツく、何度も何度も締め上げる
まるで、離れないでって言ってるみたいに

吐き出す声が、細かく震えていた手が
津波のように、後から襲い掛かる
快感に導かれて

身体を、大きくビクンッとわななかせ
梨華はベッドに深く沈んだ
393 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:13



二人の間にあった隙間が


埋まって、溶けてなくなって


1つになった


394 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:13
梨華は深く、深く、息を吸い込む
その唇に、深い口づけをした

慈しむように、息吹を交わすように
頬を、髪を撫でながら
優しくて、包み込むような
甘い口づけ

「梨華・・・?」
「・・・ん・・・?」

梨華の瞼はやんわり閉じられている

「・・・なんでも、ない」

そう言ったウチに
ふっくらとした微笑みを浮かべた

「なぁに・・・?」

もう、怖れないよ
あなたに愛される事
ウチにくれる、あなたの愛以上に
ウチはあなたを、愛したい・・・

「愛してるよ」

腰に回された腕に少しだけ、力が込められた
395 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:14

首の下に回した腕で、引き寄せて抱きしめる
耳に口を近づけて、囁いた

「聞かせて・・・」

梨華は瞼を開き
とろんとした目で、見つめ返した


「ひとみ」

「・・・なに?」

「愛してる」



ほら、通じ合ってる

繋がって、伝わった
396 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:14

  +  +  +  +  +
397 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:15

まぶしい光が差し込む
どこかで朝のニュースを見ているのか、テレビの音が聞こえる

「ん・・・ぅん・・・」

うっすら目を開けると
天使が居た

今もまだすやすやと眠る
世界一愛しい梨華の顔
やわらかに微笑んでいるようにも見えた

その唇におはようのキスをする

「ん、ぁ・・・」

ああ、起こしてしまったみたい

「・・・んっ・・・ひーちゃ・・・」
「おはよう」
「・・・おはよ」

少し擦れた声で返事をすると
梨華がウチを抱き寄せた

今はキスだけでいい
このまどろみの時間をゆっくり味わいたい
398 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:15
今日は仕事が休みだ

梨華のうさちゃんリンゴを持って、デリでサンドとスープを買って
セントラルパークに散歩に行こうか

それともソーホーでぶらぶらして
チャイナタウンでお粥食べて、買い物でもしようか



今なら言っても恥ずかしくないから・・・
寝ぼけてる梨華にささやこう


「I love you. baby」
399 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:16

梨華はむにゃむにゃしながらまた眠ったようだ
フフッ・・・
今日はこのまま家に居るのも悪くないな
キスをして、ベッドでゴロゴロして

そんな休日もたまにはいいかも


天使の寝顔を見てたら
こっちまで眠くなってきた

またちょっと、寝よう
今度は梨華が起こしてくれるまで



瞼を閉じると、梨華がフッと笑った気がした






「I love you too. honey・・・」

400 名前:Cross 投稿日:2005/12/08(木) 01:17

『Cross』

              fin
401 名前:Cross−side R− 投稿日:2005/12/08(木) 01:18

402 名前:Cross−side 投稿日:2005/12/08(木) 01:18
ひとみは

時々苦しそうに顔をゆがめて
まだ何かに苛まれてる
葛藤してる

本当にいいの?本当にウチでいいの?って・・・

いいんだよ もっと欲しがって
わたしを もっと欲しがって

心の中にある、あなたの本能をせき止める
仕切りを全部、取り払って・・・
403 名前:Cross−side.R− 投稿日:2005/12/08(木) 01:19

「ひと、みぃ・・・んん、もっと」

「え・・・も、っと・・?」

「んん、あ、はぁ・・・っとぉ!」

欲しがれないひとみにわたしがきっかけをあげる
彼女はそれに応えてくれる
強くなる 熱くなる
ダムが水を放出するように
次から次へと溢れ出る
押し出して流れ込む
404 名前:Cross−side.R− 投稿日:2005/12/08(木) 01:19

知ってるよ
ホントは欲しいがってる事
ホントは求めてる事
だけどひとみは
怯えてる

わたしはそれを許す
いいよ、こわがっても
いいよ、おそれても
わたしが許すから
全部受け止めるから

もっと もっと見せて
もっと もっと出して

いいから・・・

身体で 示して
405 名前:Cross−side.R− 投稿日:2005/12/08(木) 01:20


「んん、、ああ、あぁ!」

「梨華・・・梨華ぁ・・・」

「んやぁ、んっくぅ」


許しを受けた彼女は
欲望も本能も剥き出しにして求めてくれる

わたしはもう限界に近い
果てそう
だけど、まだ、だめ
彼女を解き放って
お願い 一緒に・・・

下唇をぐっと噛んで我慢する

「んんっ・・・ぐぅぅ!」

背中に爪を立てて、必死にしがみつく
406 名前:Cross−side.R− 投稿日:2005/12/08(木) 01:20

「んやぁぁ!」

「梨華・・・我慢、しな、いで」

息が乱れる
強く 激しくなる


「んぁぁ、はぁ、んやぁ!」

「もっと、聞かせて」


ひとみの目が変わる
ひとみの目の奥で深く強く、燃え上がる

わたしを食い尽くそうとしてる欲望
悶えて、擡げてる本能

もっと、もっと見せて
もっと出していいよ
407 名前:Cross−side.R− 投稿日:2005/12/08(木) 01:21

「ひと、みぃ・・・ひとみぃ!・・・もち、いいよぉ」

「ああ、梨華・・・りかぁ・・・」

「んゃぁ!はぁぁ、んっくぅぅぅ、ひとみぃ・・・」

「梨華・・・ああ、んん」

「んんぁぁぁ・・・っちゃうぅ!」


溺れる 彼女の、海に溺れる

そして、わたしを導いてくれる

その奥先へと





「んやぁぁぁぁぁぁ!!」

408 名前:Cross−side.R− 投稿日:2005/12/08(木) 01:21
いつまでも愛される事に怯えてる
でも、いいよ
わたしが変えてあげる

ひとみの愛されないって思い込んでるクセ
わたしが変えてあげる

あなたの不安が消えるまで
ずっと言ってあげる
あなたが飽きるまで
愛してあげる
飽きてもなお
愛し尽くすから


身体で、教えて
409 名前:Cross−side.R− 投稿日:2005/12/08(木) 01:22
Cross−side.R−

              fin
410 名前:Cross−side.R− 投稿日:2005/12/08(木) 01:24
更新終了でござい。
今回更新分は
>>355-400 吉澤さんサイド

>>401-409 石川さんサイド
です
411 名前:Rink 投稿日:2005/12/08(木) 01:25
期待させておきながら
全然エロくなくてすいません・・・
恥ずかしい・・・
412 名前:Rink 投稿日:2005/12/08(木) 01:27
レスポンス

>名無飼育さん様
期待通りにならなかったらごめんよフォー!!!

>名無し飼育さん様
足痺れてませんか?
( ^▽^)<ツンツン♪
ご期待に添えなかったらごめんなさい、申し訳ないです
413 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/08(木) 01:30
リアルタイムで読めました!感無量です
梨華ちゃん視点では梨華ちゃんが包んでる感じがして素敵でした
梨華ちゃんにツンツンて本望ですw
414 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/08(木) 01:31
リアルタイムで読めました。
どうもありがとうございます。
すばらしい誕プレになりました!
えへへ。
415 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/08(木) 01:31
大丈夫です、十分過ぎるくらい萌えました
今夜は余韻に浸りながらゆっくり眠ろうと思います
416 名前:774飼育 投稿日:2005/12/08(木) 01:32
更新お疲れ様です
いやぁなんというか
まぁ一言で言うと良かったですよ!!
次の更新も待ってます
417 名前:Rink 投稿日:2005/12/08(木) 01:46
作者談

ラインの途中辺りで
Crossの冒頭部分が出来上がってしまい
これをどうにかして早くあげたかったので
Lineが駆け足になってしまったんです。

Crossもエロを全開に出来なかったのは
よしざーさんの葛藤を描きたいゆえ 云々・・・

ライン、LINE、Crossとつづきまして
残りLOOPでこのお話、完結となります
あと3回くらいの更新だと思います。
418 名前:Rink 投稿日:2005/12/08(木) 01:46
>名無し飼育さん様
なんせヘタレよしこなんで
梨華さんに頑張って頂かないと・・・って感じですはい
( ^▽^)<もっと引っ張って♪


>名無飼育さん様
誕生日でしたか!
( ^▽^)^〜^0) <おめでとー!

>名無飼育さん様
ありがたいです
その言葉で作者救われました。合掌。

>774飼育さん様
ありがとうございますぅ!涙

気を良くした作者。
ちょっと気が早いですがクリスマスにちなんで
( ^▽^)<もう一本いっとく?
419 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 01:48

420 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 01:48

クリスマス前の休日
ロックフェラーセンター前のクリスマスツリーを見に行く事になった

「綺麗・・・」
「デカイなぁ・・・」

手を口に当てて息を漏らすツリーを見上げる梨華の瞳は
電灯の輝きを映し出していた

「ねぇ、ひとみ?」
「ん?」

彼女はウチと抱き合ったその日から
ひとみと呼ぶようになった
嬉しくって、くすぐったい気もするけど
悪くないな

「毎年見にこようね」
「うん」

左手を梨華が手が強く握り締めた

 ずっと一緒にいようね

そう言われてる気がした
421 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 01:49

見上げていた視線を梨華に向けると
寒さで頬を赤く染めたにした彼女がウチを見つめる

「な、なに?」
「キス、しよ?」

「あ、え?こ、ここで?」
「うん・・・だめ?」

ウチの首に巻かれて垂れているマフラーの端っこを
キュッと持ってモジモジしてるんだ
422 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 01:49

はい、ズキュンです
胸打ち抜かれました
得意の上目遣いです
目も潤んで、イルミネーションで
いつも以上に輝きを増してる
423 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 01:50

「キス、して?」

「うん・・・」


距離が縮まる
梨華はウチの手を繋いで
迎えてくれる


大きなツリーをバックに

唇が重なる


行き交う人の声や、車のクラクションも
全て聞こえなくなる

まるで、映画のワンシーンみたいに・・・

何度も、角度を変えて
唇を重ねる
424 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 01:50

今年はあなたを見つめられる

周りに冷やかされるピンクのマフラー
去年あなたがウチに巻いてくれたものだから
ずっと着けてるんだ
梨華もウチのマフラーを巻いてる
服装とマフラーがチグハグな二人


だけど、言いきれるよ




世界一の幸せものだって

世界一の二人だってね

425 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 01:50
 +  +  +  +  +
426 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 01:51
「寒い!帰ろ!」
「えー!もうちょっと見たいぃ!」

「限界!だめ!寒すぎる!」
「もー、ひとみはどうしてそうムードがないのぉ?」

「いいじゃん、寒い!」
「だぁめ!もうちょっとぉ!」

「あー、ざぶぃ。ラーメン食いたい」
「ヌードルなんておうちにないよぉ?ねぇ、もうちょっと!」

「ああ、もう、全身が痛いんだって」
「家に帰ったら暖めてあげるからもうちょっとだけ!」

「うぅぅぅぅ」


凍てつく寒さの中、不満げな顔を浮かべていたら
梨華がウチの肩に手を置いて
少し背伸びして耳打ちしてきた
427 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 01:52


「ベッドでね♪」



・・・世界一のバカップルも付け足しといて

428 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 01:53

(#´▽`)〜`0) <つづく♪

429 名前:Rink 投稿日:2005/12/08(木) 01:54
今度こそ更新終了。
ガッタスの耳打ち写真を想像しながら読んでいただけると
これ幸い。
430 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/08(木) 02:01
寝る前に読み直そうと思ったら新作が(*´Д`*)
ガッタス耳打ち写真がさらにエロく見えて仕方ないです
431 名前:名無 投稿日:2005/12/08(木) 03:04
前よりさらにラブラブないしよし良かったです!
可愛いっ!!いしよし萌えw
作者さんの描写好き。
次の更新も楽しみにしています。


432 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/08(木) 03:55
石川さんまじいい女だなあ
吉澤さんまじ羨ましいっす
433 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/08(木) 14:46
ナイスカッポー(´д`)
434 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:27

435 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:27


後日


tululululu....tululululu....

 ガチャッ

「Hello?...Yeah, This is hitomi speaking」

国際電話だって・・・誰だろう

『もしもし?ヨシ?』

「ああ、ママ?」

ちょっと声が遅れて、ママの声がする
後ろがやけに騒がしいのは気のせいかな
リビングのソファで料理の本を読んでいた梨華がこっちを見た

“ママ”と口だけを動かして知らせると
梨華は本を投げて嬉しそうに近づいてきた
436 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:28

『おめでとーーー!』

何人もの声が重なって、おめでとうと言われる
ヨシ、良かったねーなんて言葉も聞こえる

「な、なんですか?」

梨華も受話器に耳を近づけて様子を聞こうとしてる

『アンタと子猫ちゃん、週刊誌にすっぱ抜かれてたわよ?』

「はぁ!?」

『NYのクリスマスツリー前にRIKAMI現る!』

「な、なんですか、それ」
437 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:28
『昨年、突如引退を表明したRIKAMIがNY在住と言う事が分かった。
 ロックフェラーセンターのツリーをバックに、毎年この時期の恋人たちの写真を募集し
 写真展を行っている団体の最優秀作品に
 なんとあのRIKAMIが映っていた事が判明!!だってさ!』

「ま、マリさんですか?」

『おうよ!ホント色男だねぇ、アンタ♪』

『RIKAMIとキスしてるのはNY在住のA氏だってさ!顔ぼやけてるけどアタシたちが見たら
 一発でアンタって分かるわよぉ。』

「今度はミチさん?いや、あの。色男って・・・」

受話器の向こうで、代わって、代わって!って声が聞こえる
電話をたらい回ししてるみたい

『こりゃ、最優秀作品取るはずだわ。ロックフェラーの近くのギャラリーで
 写真展やってるみたいだから見に行ってみたら?』

『アンタたち、ツリーをバックにすっごい絵になってるわよぉ!クゥゥ!』

「ママ・・・そんな、悔しそうにしなくても」
438 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:29
『こっちじゃまたまた子猫ちゃん騒動だし?』

「それ、大丈夫なんでしょうか」

『RIKAMIのCDがまた売れてるってだけよ!心配しなくて大丈夫』

「そ、そうですか」

『幸せそうでほのぼのしてるじゃない。良かったわねぇ』

「あ、ええ、まぁ・・・」

『人前で堂々と出来てるって事は、大人の階段上ったのねぇ』

「ちょ、ちょっと、ママ!」

『あら、もしかして今もお邪魔だったかしら?』

「な、な、なな何言ってるんですか!」

『ホホッ!ごめんあさーせ〜!
 じゃぁ、風邪引かないように、裸で寝るんじゃないわよ〜、アデュ〜♪』

『『『アデュ〜〜♪♪』』』

  ガチャリッ プー、プー、プーッ

テンションの高い声が無機質な音に変わる
439 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:30

「ねぇ、ひとみ。圭さん何て?」

電話が終わっても受話器を持ったまま固まっているウチに
梨華は心配そうに声をかけてくれた

「邪魔してるようだから電話切るって・・・」

久しぶりに、あの猛烈オカマンパワーを受け取って
頭がフラフラしてきた
ドサッと倒れるようにソファに座り込む

「ひとみ、大丈夫?顔真っ赤だよ?」
「あ、うん・・・大丈夫」

恥ずかしくって顔も赤くなるさ!!

「なんか所々は聞こえてたけど・・・週刊誌がどうのって」
「らしいねぇ〜。あはは〜」
「ひとみが壊れたぁ!」

すっぱ抜かれたことよりも恥ずかしさの方が上だよぉ
やっぱり人前でキスなんてするもんじゃない!
440 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:30

電話の内容を梨華に話すと

「いいじゃん、これで堂々とできるね♪」
「そっちかよ!!」
「だめなの?」
「いや、だめって、そんな・・・」
「んじゃぁ、いいんだよね?」

目をキラキラさせないの・・・

「もう、いいよ・・・あはは・・・」
「じゃぁ、邪魔が入らないうちに、しよ?」
「う、えぇ?!」
「ねぇ、ほらぁ〜」

真っ赤になったウチの手を引いてベッドルームに直行


ああ、もうなんて言ったらいいんだろう
甘すぎて、溶けそうだよぉ
大胆で、ちょっと強引な梨華に
これからもハラハラさせられて

それでも変わりなく、愛して愛されるんだろうな


「ひとみぃ、はやくぅ♪」


はいはい、待ってて。子猫ちゃん
441 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:31





( ´ Д `)<んあー、よしこもやるねぇ



从#~∀~#从 <ヨッサン、さすがやな!



川σ_σ||<梨華ちゃんとよっすぃーだ。いいなぁ


442 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:31


次の日

写真展が行われているギャラリーを探して
出向いてみる事にした

恥ずかしいから嫌だって言ってるのに
またあの子のやだもん病が出だしたからだ


「うわぁ・・・すっごい・・・」


ギャラリーの天井から下げられた壁一面の写真

大きなツリーをバックに
行き交う人が残像になり
その中心で
梨華とウチがいる


2人だけの世界みたいに・・・
時が止まっているように見えた
443 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:32

「すごいね・・・」

「うん・・・」

なんか、自分ごとじゃないみたいに


「Oh!Hey you!」

声のする方に顔を向けると、一人の女性が笑顔で手を差し伸べた

「Nice to meet you」

その顔はどこかママに似ていた
「また会えると思ってなかったよ」
「に、日本語?」
「わたし、こっちでフォトグラファーしてる、保田っていうの。よろしくね」
「あ、初めまして」
「わたしがこれ撮ったのよ」
「そうなんですか」

保田さんは写真を見上げながら話してくれた

「まさかこんなに上手く撮れると思ってなかったから自分でも驚いててさ。
 この日寒かったから、もう帰ろうって思ってたんだ・・・。
 でも、最後に・・・もう一枚だけ撮りたくって
 そしたら2人が現れたって訳よ」

梨華は保田さんの話に耳を傾けながら、また写真を見上げた
444 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:32
「わたしにとってのクリスマスプレゼント。二人には感謝してるよ」
「いえいえ、そんな・・・」
「この写真のおかげで、仕事増えたし」
「あはは!それは良かったです」
「ありがとうね」


写真のタイトルは

 『eternal』

「永遠・・・」

「お幸せにね♪他にもあるからゆっくり見てって!」

保田さんはウィンクをして、手をひらひらさせながら
ウチらから離れた

「永遠・・・」

梨華がポツリと漏らす

「うん、永遠」

ウチの指を掴んでいたその手を、ぎゅっと握り締めた

「他のも、みよっか」
「うん」
445 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:33

ギャラリーの中には数々の恋人たちが映し出されていた
寄り添ったり、見上げる顔だったり
光を目に映したカップルの写真もあった
どれも幸せそうだ

その中にもう一枚、保田さんが映したウチらの写真もあった

それは、梨華がウチの肩に手を置いて
少し背伸びをしながら耳打ちしている写真

「こ、これもかよ・・・」


 『Title   massage from goddess』


    女神からのメッセージ 
446 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:34


「女神だって♪」

おいおい、こんな梨華が喜ぶようなタイトルつけちゃって・・・

でも、確かに女神に見えないこともない
だって写真に写る梨華の背中に
イルミネーションの光の輪がぼんやり映っていたから

なんかとっても、神々しい姿

「この女神はなんて囁いたのかな」

梨華がはにかみながらそう言った

ウチは梨華の耳に近づいて

「ベッドでね、だろ?」
「そうだった」
447 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:34

女神は女神でもエロスのほうだな
なんて苦笑してしまった

「ねぇ、もう一回ツリー見に行かない?」

女神はウチを誘う

「そうだね」

誰が断れる?こんな綺麗な女神からの言葉を

保田さんに挨拶をしてギャラリーを後にした
448 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:35

「お昼に見るツリーもいいね」
「うん。そうだね」

「ねぇ、ひーちゃん?」
「なに?」

「キス、しよ?」




ねぇ、梨華
いつか梨華が言ってくれたよね
あなたにいつも触れていたいって。

場所も、時間も、関係なく
わたしはあなたに触れていたいって

ウチも同じ気持ちだよ
恥ずかしくて、まだ言えそうにないけれど

でも
唇から伝えるから

いつでも、どんなときでも

449 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:36
『eternal』

(#´▽`)〜`O)<おしまい♪

450 名前:eternal 投稿日:2005/12/08(木) 16:39
更新終了です
今回の更新分は>>434-449です

『eternal』
>>419-427
>>434-449
です
451 名前:Rink 投稿日:2005/12/08(木) 16:44
れすぽんつ

>名無飼育さん様
あの耳打ち写真は作者もフォー!と思わず叫んでしまったんです
寝れなくなったらすいませんww

>名無様
もうここの2人にはラブラブになっていただきたくって。
他のカップリングなら試行錯誤するんですが
やっぱりいしよしは過去の素晴らしい絡みがあるので楽ですねぇ〜ww
>作者さんの描写好き。
ありがとうございます。頑張ります


>名無飼育さん様
>石川さんまじいい女だなあ
作者も同感ですww
こんな彼女激しく希望ですよねー

>名無飼育さん様
( ^▽^)^〜^0)<ラブラブ♪
452 名前:Rink 投稿日:2005/12/08(木) 16:46
そして深夜に身悶え更新致します
今回は激しく出来たといいきれる、いいきりたい
( ^▽^)<自分で言うなよぉ
旦那に頑張っていただきました
(;0T〜T)<激しいぃ〜
453 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/08(木) 22:34
良いですわ
幸せですねぇ〜
深夜に備えて林檎食べて気合い入れときます!
454 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:11

455 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:11

最近、梨華は料理を勉強している
今日だって

「ひーちゃんが美味しいって言ってた
 あのレストランのチリの作り方教えてもらったんだー」

って言いながらキッチンに立つ

チリビーンズなんて大量に作らなきゃ美味くないよって言ったら
マーケットで本当に大量の豆やトマトを買ってきて、鍋と格闘してる
おいおい、何日分のチリを作るつもりだ?

食材から民芸品を作り出してたあの頃がなんだか懐かしいな

梨華が作る料理を
「美味しい」って素直に言えるほど
本当に美味いんだ

おかげでちょっと太った?
それでも梨華は
ウチの裸を見るたびに
「ひとみ、もっと食べなきゃ」って言うの
そんなに痩せてたのかなぁ・・・

「だってちょっとぷくっとしてる方が、抱きごこちいいじゃない?」

だってさ・・・
そんなになるまで太らせるつもりか?
456 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:12
梨華は今度のライブで歌う歌を口ずさみながら
鍋の中で何かをかき混ぜてる

ウチはキッチンカウンターの前にあるテーブルに肘を突いて
ピンクのエプロン姿の背中をじっと見つめてた



んー、なんか、寂しいぞ?
457 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:13


そっと梨華の背後に近づいて肩越しに鍋の中を覗き込んだ

「あ、だめだよぉ、まだ見ちゃぁ」
「なんで」

腰に手を回して抱きつきながら、右肩に顎を乗せる
梨華は首を少し横に向けて見つめてくれた

「だぁって・・・」
「ちょっと味見」
「んもー」

梨華はスプーンでチリをちょっとすくって
ふーふーって冷ましてくれた
458 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:13

「はい、あーんして?」
「んぁー」

開けた口に熱々のチリを入れてくれる

「あぢっ!あっぢぃ!」
「ごめんごめん!お水飲む?」
「うう、うぃふぃ」
「大丈夫?」
「ん・・・おいひぃ」
「よかったぁ」

熱くて正直味が分からなかったんだけど
でも、梨華が作ってくれるものは何でも美味しい
たとえ民芸品だったあの料理も、美味かったのは事実だ
459 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:14

こっちに来てから一度もウチはキッチンに立って料理した事が無い
というより、梨華が立たせないようにするんだもんな
たまにはウチが作ろうか?なんて言っても
「だめぇ!」
ってぷんぷんほっぺたを膨らませて
「大人しく座ってて♪」
って言われるんだよな

広いリビングで一人で居るのも寂しいもんだよ?

でも梨華はいつもウチが仕事に言ってる時はここに一人でいるんだもんな
たまにスクールの友達を連れてきたりもしてるけど
460 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:14
そんな事を梨華の背中にくっつきながら考えてると
鍋からいい匂いが漂ってきた

「よし、出来た」
「おわり?」
「ひとやすみさせたら終わり♪」

梨華は鍋に着けていた火を止めて、手を洗った
横顔をじーっと見つめると

「ん?どうしたの?」

って優しく微笑んでくれる
多分ウチのその時の顔はだらしないんだろうなって思うくらい
デレデレしてるはず

 チュッ

「どうしたの?ひーちゃんからしてくれるなんて・・・」
「だって、したくなったんだもん」

 チュッ

「んもぅ〜」
「なんだよぉ」
461 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:15
キッチンの脇に置いてある店で貰ってきたスツールを出して
膝の上に梨華を乗せて座った

「ねぇひーちゃん」
「ん?なに?」
「いつもね、ここでご飯作ってるときに、そのスツールに座って
 ひーちゃんのこと考えながら、待ってるの」
「うん」
「おいしいって言ってもらえるかなぁとか
 今日もかわいいねって言ってくれるかなぁとか」
「後者は・・まだ、ちょっと」
「いつか言ってね♪」
「うん」

 チュッ

「ひーちゃん?」
「なに?」
「好き〜」

 チュッ

「うん。うちも」

 チュッ


ヤバイ、止まんない
ウチの胸の中の何かに火がついた
462 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:16

「ねぇ、梨華?」
「なあに?」

「チリを一休みさせてる間に、さ・・・」
「うん?」

「ウチらも、ちょっと休まない?」
「休むのぉ?」

「ああ、食事前の運動?」
「やーだぁ、その表現」

「じゃあ、なんて言ったらいい?」
「んー、flirt?」

「いちゃいちゃ?それで済む?」
「なによぉ!」
「あっはは!」

ウチは梨華の首筋に顔を埋めてクスクス笑った

「くすぐったぁい」

梨華もちょっと照れながらクスッと笑う

「I can't wait...」

梨華はウチにぎゅっとしがみついた
463 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:16

「ここで、する?」

何を言い出すんだこの子は!

思わず埋めてた顔をバッと上げると
梨華の目は潤んでいた

「な、なに言って」
「だって、待ちきれないんでしょ・・・?」
「あ、え?でも・・・」

「いいよ?ここでも・・・」

横座りしていた梨華がウチを跨ぐようにして座りなおす
向かい合って首に手を回して。

この体勢で、至近距離は、非情にマズイ

「あれぇ?ひーちゃん、照れてるのぉ?」
「て、照れるよ・・・そりゃ」
「わたしもドキドキしてる・・・」
464 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:23
梨華が腰で縛っていたエプロンの紐を解き
首から抜き取った

髪を少し振り乱して
見下ろされた視線が
なんか、とっても・・・エロい・・・

「しよ・・・?」

「うん・・・」

始まってしまえば、もう止まらない
ただ場所が、キッチンっていうのが
とってもエロくって

それが2人を余計に燃え上がらせる

少し高くなった視線が
ウチを誘う
465 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:24
キスしたくて、唇を近づけると逃げる

「んん・・・」

また近づけては逃げて、近づいては逃げ・・・


「んん・・・梨華ぁ・・・」
「なあに?」
「・・・意地悪しないでよ・・・」
「フフッ。いいよ?」

梨華は口の端をちょっと上げて
笑みを漏らした

すごく勝ち誇ったような、得意げな顔で

やっと捕まえた
466 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:24
キスは自然と熱くなる
梨華の下唇を咥えて、何度も吸っては離れて
舌が絡む
喉の奥まで調べつくすように
何度も絡ませて

「んんっ、くぅ」

ニットの裾から手を差し入れる
脇腹をくすぐるようにそっと触れながら

「ん、ひゃぁ」

梨華は身体のラインが弱い
それを知ってるから、何度も焦らすように指先で撫でる

「んん、、はっ、んぁ」

両手を服の中に差し込んで
滑らせるようにニットを脱がせる

髪を乱して、またウチを見下ろす

ああ、だめだって
そんな目で見られたら、我慢きかない
467 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:25
「エッチ・・・」

「なにが、だよ」
「ひーちゃんの顔」

「ばか・・・」
「でも、好きだよ?」

顔を胸に埋めて、キスをする
吸い付くような、きめ細やかな肌が
ウチを酔わせる

背中に手をまわし、撫で上げるように指先でくすぐる

「んぁ・・・やぁ・・・」

梨華の素肌を邪魔するものが、背中を撫でるとひっかかったから
それも剥ぎ取ると、梨華の綺麗で柔らかい胸が現れた

梨華はウチのパーカーに手をかけて脱がしてくれた
背中に手を回して、同じように剥ぎ取ってくれる
468 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:26
「ひーちゃんの裸・・・綺麗」
「あんま、見んなよ・・・」
「なんで?」

梨華は首筋に顔を埋めてキスをくれる
首から喉、鎖骨に舌を這わせる
強く・・・吸い付くように・・・

「んん、ぁあ・・・」
「付けちゃった・・・」
「なに・・・を?」
「キスマーク」

「いいよ・・・もっと、付けて」

ウチも梨華の肌に吸い付く

「くすぐったいよぉ・・・」
469 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:26
梨華はウチの顔を手で撫でる
そして、指が唇を撫でる

「んん・・・」

少し小さくて、細い親指を咥えて、しゃぶる

「んんぁ・・・」

見上げると、梨華は嬉しそうに

「フフッ・・・もっと欲しがって?」

背中に回していた右手で、梨華の柔らかい胸を包む

「んぁ・・・」

手からこぼれる胸を優しく、持ち上げて揺らす

「はぁ・・・」

胸の中心は、強くそそり立って主張している

「なんもしてないのに・・・」
「やあだ・・・」

手のひらで柔らかく揺らしながら
そそり立つ胸の先を親指で押し付ける

「やんっ!」

梨華の身体が小さくはねる
470 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:27
コリコリと指でその感触を楽しみながら
忘れられているもう一方を舌で転がす

「んぁぁぁ!」

同時に責められ、梨華の身体が悶えだした

「んっくぅぅ」

身体を何とか離そうと
ウチの肩に手を置いて、身体を曲げる

「だめだよ、逃げちゃ・・・」

左腕でしっかり背中を抱きとめ、抑えて
強く胸を揉みしだく

「んはぁ・・・やぁ・・・」
471 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:27
胸の先を唇に挟んで、見上げると
梨華がまたウチを見下ろす。下唇を少し噛んで

梨華に見下ろされると
ウチは燃え上がる

なんだか、挑むような目だから
もっと、してきなよ
もっと、激しくしてみなよって・・・

ウチは、焚きつけられるように
胸にむしゃぶりつく
激しく、強く揺らしながら
舌先で転がして、唇で咥えて

「ひーちゃ・・・んん・・・獣、みたい」

「・・・んだよ、獣って・・・」

「だ、って・・・んぁ!」

背中を反らせて、髪を揺らす
梨華の栗色の長い髪が、ウチの肩に落ちる
振り乱すたび、ウチの首筋に絡みつく

「んっくぅぅぅ・・・」

背中に回されていた手に力が入る
472 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:28
それを合図に
右手を身体のラインに沿って、撫で下ろす
梨華の締まったお腹を、触れるか触れないかのギリギリのところで
やさしく、じらしながら

「ん、もぅ・・・んあ・・・」

ウチは少し足を開く

「ああ、だめ・・・」

梨華がバランスを崩さないように、背中を抱きとめながら
右手で、内腿をなぞって、近づける
早く触れて欲しそうにしてる
熱くなる、そこに・・

「んぁ!や、あ、だめぇ・・・」

指が到達すると、足の間に腕を忍ばせて
後ろから掬うように手で撫で上げた

「んぁぁ!!」

ジーンズの上から撫で上げられるなんて
とってもじれったいんだね
473 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:29
梨華は身体を捩じらせて、身悶える

「んっくぅぅ!」

なんども撫でていると
じんわりと熱を帯びてくるのが分かった

「ひと、みぃ・・・」

手の動きを止めて、キスをする
梨華の舌が、激しくウチを求めてきた

「んっ、ふぅ・・・っくぅ」


唇が離れないうちに、隙をついて
ジーンズの上から、熱くなったそこを
手のひらを強引に押し付けた

「んっふぅぅ!!」
「だめ、唇、離さないで」

手のひらで、何度も、何度も押さえつける

「んっぐぅぅ!っふぅぅ!」

息が篭って、声が喉の奥に届く

「んっ、くぅぅぅ」
「さっき、ウチに意地悪した罰」
「いじ、わる・・・んうぅ、なん、て・・・して」

右手の力を更に加えた

「んっぐぅぅ!!」

気のせいだろうか・・・
デニム越しでも、溢れてくるのが分かる
474 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:29
「ひとみぃ・・・」

見上げると、眉を八の字に下げて
まるで懇願するような目で見つめてくる

もう、我慢できない
そう言うかのように、涙を浮かべながら

いいよ、もっと悶えさせてあげる
もっと、大胆にさせて・・・

梨華を立ち上がらせると、ジーンズのホックをはずし
ファスナーを下ろす
その音が、すごくやらしく響いた
ヒップラインに手を滑らせてショーツごと下ろした

細身のジーンズに隠れていた
すらっと長い足と形のいいお尻

梨華は足元に絡みつくジーンズを振り払って
ウチが立ち上がる姿をうっとりとした目で見つめる

今度は梨華の上目遣いがウチを絡め取る

どっちにしたって
ウチは梨華のその目にやられてるんだ

シンクの方に向かって立たせると
後ろから抱きついて、耳たぶを噛む
475 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:30
「んひゃぁ!!」

右手を
脇から、お腹、そして傷を撫でて
熱くしっとりと濡れている奥に手を伸ばした

「んんん!!」

でも、まだ触ってあげないよ

手のひらで、梨華の傷辺りにある茂みを
やわやわと撫で上げる

「ひ、とみぃ・・・」
「なに・・・」

「・・・ねがいぃ・・・」
「なに」

「さわ、ってよぉ・・・」
「どこに?」

「んんん・・・」

梨華は我慢できなくなったのか、ウチの手を掴んで
その奥へと導く

今日はやっぱりいつもよりお互いが大胆だ・・・

触れなくても分かる
熱を帯びたそこに、手をあてがうように
強く押さえつけようとする
476 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:31
でも、まだだめ
ウチは指を反らせて、触れないようにする

「・・・んでぇ?・・・」

「可愛い梨華を、もっと見たいから」

耳元で囁くと、梨華はくすぐったそうに首をすくめた

「・・・ねがい・・・もう、しない、からぁ・・・」

梨華は涙声になりながらお願いしてくる。
まだウチが怒ってると思ってるの?
違うよ
本当に乱れる梨華を、ただ見たいだけ・・・

いつも梨華がウチにしてくれるように
もっと、欲しがって
もっと、よがってみせて
そう誘ってるだけ

「ひと、みぃ・・・」

シンクにしがみついた手が震えだしている
もう立っていられないと、腰がヒクついてる

「キスしてよ」

首を捻って、ウチにキスをしてくる
舌を何度も吸って、唇に食らいついて

いいよ・・・ご褒美あげる
477 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:32
溢れてくるそこを人差し指と薬指で押し広げ
下から中指でツーッとなぞった

「んゃぁぁ!!!」

ビクンッと身体が揺れ、背中を仰け反らせる


ほら、もっと味わって
ご褒美だよ?待ち望んでたんでしょ?
いっぱい食べて


いつも以上に張り出した膨らみを
何度も何度も、指で撫で上げる
その度梨華の身体がビクビクと震えて
息が細かく震えだす

「んっ!やぁ!はぁ、んぁ!んぁぁ!だ、だめぇ」

「なんで?欲しかったんでしょ?」


ウチってサドっ気あるのかなぁ
梨華を苛めて、焦らして
悦んでる自分がいる
478 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:33

「んっくぅ!!ああ!んぁぁ!」

まだ、外気に触れることさえ慣れないそこを
人差し指と、薬指で、捲り上げ
露になった芯に、そっと触れた

「んひゃぁぁぁぁ!!」

ああ、脳が痺れる・・・
頭にジンジンと響き渡る、梨華の声

梨華は首を横に振る
いやいやってするみたいに。
息づかいが、だんだんと荒くなる

でも、やめないよ?

ビチャビチャとわざと音を立てて
繰り返し撫であげて、指の腹で押さえつける

「んんんっぐぅぅぅぅ!」

背中を仰け反って、喉を露にして
足の指をぎゅっと締めながら
快感の波に襲われそうになるのを耐えてる

「きもちいい?」

「んっ、はぁ!んぁ!っもち、いい!!」

身体がガクガクと震えだした


「っちゃうぅよぉぉ!!!」


その言葉で、ウチは指の動きを止めた
479 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:34

「やぁ!んぁ!はぁ!」


梨華は名残惜しそうに、恨めしそうに
肩越しのウチを見上げる


「んでぇ、やめ、ちゃうのぉ?」
「ん?」
「なん、で・・・」

「もっとほしいの?」
「・・・しいぃ」

「じゃぁ、声我慢しないで」

脇の下から左腕を回し、梨華の口の中に
左手の指を入れて、咥えさせた

「くはっ、ぐぅぅ・・・」

右手の動きを再開させる

「んぐぅぅ!んはぁぁ!んはああ」

梨華の舌が指をピチャピチャと嘗め回す
だけどその動きも、おぼつかなくなってきて
口の端から、梨華のあえぎと一緒に溢れ出る
480 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:34
「んはぁぁぁ!」

ほら、身体がビクビクはねだしてる
梨華はどうにか逃げ出そうと身体を捩じらせてるけど
ウチは上半身と肩でしっかり押さえつける

「だめだよ、逃げちゃ」
「んっくふぅぅぅ!」
「ほら、もっと感じて・・・?」
「んぐくぅぅ、っふぅぅ!」

指を早く、強く動かす
シンクを握っていた手が、ウチを抱きしめたいと彷徨いだす

「首、手回しなよ」
「ん、んっふぅぅ」

身体を反らせて、逃げ惑いながら
それでもウチを求めてくる
481 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:35
左手の指を咥えながら
梨華は淫らに揺れて、ウチの腕を掴む


「ら、めぇ・・・!っちゃうぅぅ!」

「いいよ・・・」

指の動きを更に強くした

「んんやあぁぁぁぁ!!!」


ビクンッと大きく震えて、髪を乱すように、首を後ろに振った

身体を硬直させて、プルプルと何かに耐えるように


「ん、、っくぅ・・・はぁ・・・」


目を伏せて、余韻に浸っている




だめ、まだ安心させないよ?
482 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:36

スツールに座りなおすと
今にも腰を抜かしてへたりそうな梨華を引き寄せた

「跨いで」

梨華は言う通りにウチの足を跨ぐ

大きく足を開いて、露になったそこからは
甘い香りを放って、やらしく光っている


手を忍ばせ、指を奥に差し込む

「んぁぁああああ!」

急激な快感が、梨華の中を駆け巡るように
しがみついていた身体を弓なりに仰け反らせた

髪が乱れるその姿にウチは魅了されてた
483 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:36

梨華はウチの動きを何とかやめさせようと
肩を抑えて、フルフルと首をふる

「いま、は、だ、めぇぇ!」

知ってるよ・・・
イッた後は、どこを触られても敏感で
触られたくないほど、敏感になってること

「こんなに欲しがってるのに?」

梨華の中は何度も何度も締め付ける
指を引き抜き、また奥へと差し込む

「んっぁあああああ!!」

「はぁ、はぁぁ・・・」

ウチの口からは、自分の声とは思えないほどの
低いうなり声が出た

ぐちゅぐちゅといやらしい音が響く
溢れる蜜は手を伝って、滴ると

 ポタッ ポタッ

床に零れ落ちた
484 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:39

「ひ、とみぃぃ・・・ひとみぃ!」
「はぁ、はぁ・・・んぁ・・・」

指が吸い付いて離れなくなる
奥の壁に指が触れてもまだ
ぐいぐい飲み込もうとする

「ひとみぃぃ!」
「んあぁああ・・・」

ヤバ・・・ウチ、男みたいな声出してんじゃん・・・


「ウチ、はぁ、んぁ、獣、みてぇ・・・」


梨華はウチを見下ろしながら
辛そうに悶えながら歪めた口で
余裕無く、一瞬だけ笑った


そうだよ
もう、梨華が仕掛けた罠にハマッて
抜け出せない、愚かな獣だよ・・・

だから、お願い
もっと、酔わせて
うちを狂わせて
485 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:39
「んぁぁ!も、う、んぁ!はぁっ!だ、めぇ!」
「ま、だ・・・まだ・・・んぁぁあ」

指を激しく動かす
ぎゅうぎゅう締め付けるその中を
掻きだすように何度も

梨華はウチの頭にしがみついて
腰を浮かせては沈める

もっと、よがって
乱れてよ
486 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:40

「ひと、み!す、き?」
「ん、、ん?」
「わたし、のこ、と、んぁぁ!す、すき?」
「ああ、んぁ、好き、梨華が、すき」
「んぁ、っはぁ!、たしも、すき」
「ああ、はぁ・・・」
「ひ、とみぃ!んぁぁぁ!だめぇ!」
「んあああ!」

「んやぁぁ!っか、しく、なっちゃうよぉぉ!」

「んんぁ、梨華ぁぁ!」


「っく!んやぁ!ひと、み、んはぁ!っちゃう、っちゃうよぉぉ!!」



身体が大きくビクンッビクンッと震え

汗を撒きながら、身体を撓らせた


頭を掴んでいた手がギュッと痛いくらいに締め付ける

指を飲み込んでいる奥も
真空のようになって、吸い付く

487 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:41

倒れないように左手でしっかり抱きとめて
荒い息を、梨華の胸の中で沈める

「んぁ・・・はぁ・・・」

梨華はウチの頭に抱きついて
ぐったりと、首筋に顔を埋めた

「ん・・・んやぁ・・・」
「はぁ・・・りか・・・」
「ん・・・んん?・・・」


のっそりと身体を起こしてウチを見下ろすその目は
恍惚として、とろんと溶けていた

乾ききった唇を舐める
舌が力なく絡みついてくる
ウチは梨華の喉を潤すように、口に含ませる

コクンッと喉が鳴った
488 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:42

梨華の中は、キュゥと何度も何度も繰り返し伸縮する
飲み干そうと何度も締め付ける

「ん・・はぁ・・・はぁ・・・」

ゆっくりと指を引き抜くと、梨華の身体がピクンッとはねて
次第にガクガクと小刻みに震えた


 ポタッ ポタッ


指からは、蜜が垂れて落ちる
489 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:42

「ひ・・ちゃ・・・」
「ん・・・?」
「ぎゅって・・・してぇ・・?」
「うん・・・」

ウチは梨華の胸元に抱きついて、抱きしめた
梨華も、ウチの首にしがみついて身体を密着させる

「すきぃ・・・」
「んぁ・・・ウチも・・・好き」

梨華の息が収まるまで
何度もキスをして、抱きしめあった

「ひーちゃ・・・」
「なに?」

「あい、して、る?」
「愛してるよ」

「ん・・・」

とろんとしたままの目で、柔らかく笑った


「シャワー、浴びよっか」
「ん・・・」

「ほら、つかまって」
「ん・・・」

梨華を抱きかかえると、バスルームに入った
490 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:43

梨華をバスタブに腰掛けさせて
ウチはジーンズを脱ぐ

太もも辺りに染みが広がってる

これって、梨華の、だよね

すごくない・・・?

梨華を見ると、爪を噛むように指を咥えて
何とか姿勢を保つので精一杯な姿が目に映った

「梨華・・・?」

バスタブに入って、梨華と視線を合わせる

「んん?なぁに・・・?」

目がとろんとして、焦点が合っていない
あぁ、梨華はイッたのか・・・
491 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:43

「立てる?」
「だっこぉ・・・」

首につかまらせると、背中に腕を回して抱き起こした

「もっと、ぎゅー、して・・・?」
「ん・・・」

抱きつきながらシャワーのお湯を出す

「もっとぉ・・・」
「くっついてたら、シャワー浴びれないだろ・・・」
「いいのぉ・・・ぎゅーして」

降り注ぐシャワーのお湯が
ウチと梨華を濡らしていく

「ひーちゃ・・・」
「なに?」
「ちゅー、して?」

梨華の顔を見ると、とろんとしてふわふわした表情を浮かべる
いつもとは違う甘え方が、妙に愛しくて
首に絡んでいた腕にも、瞼にも
もちろん唇にもキスを降らせた

「んんぁ・・・きもちいい・・・」

492 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:44

シャワーを何とか終えて、抱きかかえると
濡れた身体のまま、ベッドに寝かせた


「風邪ひくから、タオル持ってくるよ」
「やぁら・・・行っちゃ、やぁ」
「すぐ、戻ってくるよ?」
「いいのぉ・・・ここに、いて?」

梨華は隣をポンと叩いた

梨華の隣に寝そべると
モゾモゾと身体を動かして傍に寄ってきた

「うれまくらぁ」
「うん」

もう梨華のロレツが回ってない
首筋にかかる息がくすぐったい
493 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:45

「ぎゅー」
「うん」

「ひーちゃ?」
「なあに?」

「くふふふぅ」
「なんだよ・・・」


「ひーちゃって・・・キッチンのほうが、もえるのぉ?」


埋めていた顔をバッと上げると
いまだとろんとした顔にウチが

「ば、ばか!」
「ふぇ?ばかぁ?」

だめだ、今の梨華に何を言っても無駄だ
っていうか、こんな風にさせたのはウチなんだけどな
494 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:46


なんか、うれしくなって、はずかしくなって
シーツでくるむように抱きしめると
梨華がウチの腕にすがり付いて来た

「ひーちゃ・・・?」
「なに?」

「今度は、ひーちゃん、抱くぅ」
「いいよ。うちは」
「抱くのぉ・・・」

梨華は力なくウチの腰を抱き寄せた

「はいはい、今度ね」

「うん」

頭を撫でると嬉しそうに笑って

浅い眠りの世界に導かれていった
495 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:46
  +  ∞  +  ∞  +
496 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:47

「っくしゅっ!」


んっ・・・?


いつのまにか眠ってたのか
目を開けると
隣で梨華が背中を向けてくしゃみをしていた


「寒い?」

「あ、起こしちゃった・・・?ごめん」

ウチは梨華を後ろから抱きしめる

「暖めたげる」

「んんぅ」

「お風呂入る?」

「うん・・・」

「一緒に入る?」

「・・・・・うん」
497 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:48
こうやって抱き合うようになってから
まだ一度も一緒にお風呂に入ったことなんてなくって
さっきが初めてだった

でもまぁ、梨華は意識が飛んじゃってたから
あんまり覚えてないんだろうけど・・・

「ちょっと、まってて」

梨華の首から腕をそっと抜く

「どこ、いくのぉ?」

「喉渇いてない?」

「うん・・・」

淋しそうに視線を送る梨華にキスをして
キッチンに向かう
498 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:49

グラスに氷を入れて水を注ぎ
カラカラになった喉を潤しながら辺りを見渡した

脱ぎ散らかされた服 熱を残したままのスチール
まだ手をつけられていないチリの入った鍋
床にはまだ、梨華の溢れた跡が残ってる

キッチンの壁にかけられていた鏡に目をやると
身体のあちこちに梨華がつけたキスマークがあった


「・・・はっげしぃ」


 “ キッチンのほうが、もえるのぉ? ”


クセになっても知らないからね・・・
499 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:49

床に散らばってる服をかき集めてソファに投げると
寂しがってる姫のところにグラスを持って行った

「飲める?」

「んっぐ」

身体を起こすにも一苦労してる
ウチはベッドの端に腰をかけて、梨華の上に覆い被さる
水を一口含んで、梨華の頬に手を添えた

「・・・ふぇ?」

 ゴクッ ゴクッ

ウチの口から流れ出した水を
喉の奥へと流し込む

上下する喉がとってもエロい

梨華は何をしてもエロいんだから・・・
ウチはいつもドキドキさせられる
500 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:50

「んはぁ・・・」

「もっと飲む?」

「ううん・・・」

首を横に振りながらも、ウチの首に手を伸ばして引き寄せる

「キス・・・」
「ん・・・」


そっと触れるようなキスから
だんだん熱を帯びてくる

いつも抱き合ったあと、梨華がしてくれるキスは
とても情熱的で、官能的

「だめだよ、またしたくなる・・・」

そう、また始まってしまいそうになるほど

「いいのに・・・」

「だめ・・・お風呂いこ?梨華の好きなミルクの泡風呂にするから」

首に絡み付いていた腕をそっと離して
バスルームに入って行く
501 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:51

ヤバイよ
あのままじゃ、また火がつきそうだ

バスタブにお湯を張る
バスバブルは梨華が気に入ってる甘い鼻につくようなミルクの香り
モコモコと泡が膨らむのをじっと眺めた

梨華の熱の余韻が、指に残ってる
バスタブの端に腰をかけて、指を口に含んだ

何度も
梨華を味わっているけれど
自分でやっときながらなんかその仕草が
とってもエロくって
ボーっとしてしまう

今は一体何時なんだろう
月が遠くで欠けて、白く光っていた
502 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:51
  ∞  ∞  ∞  ∞  ∞
503 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:52

「電気、消してて・・・」

梨華の手を引きながらバスルームに入ると
恥ずかしそうに、俯きながら言った

さっきはあんなに明るいキッチンでしてたのに
思い出して少し苦笑いしてしまった


二人でバスタブに入って泡に包まれる

梨華はウチに背中を向けて
顔を泡に埋めてる
ウチは後ろから抱きしめる

「んやっ・・・」
「なんでそっち向いてんの?」

「だって・・・はずかしいんだもん・・・」
「暗いから、大丈夫だよ?」

「んぅ・・・でも・・・」


梨華はウチの胸に背中を預けてくる
泡を手ですくいながら、フゥっと吹いて飛ばした
泡が飛んで行くのがそんなのおもしろいのか
足でパシャパシャとお湯を蹴っている


「こーら、暴れんなって」

お湯の中で腰に手を回し、抱きしめる

「だぁってぇ・・・」

パシャンッと音を立てて足を沈める
504 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:54

梨華は肩越しのウチを見上げて、思い出すようにぽつりともらす

「はげしかったぁ・・・」
「ぶっ!」

「だぁって・・・ひーちゃん、ホントに、獣みたいなんだもん・・・」
「言うな、恥ずかしいのに」

「足立たないんだもん・・・なんかまだ、ふわふわするの」
「ふーん」

「イくってああいうこというのかなぁ」
「こ、こら・・・」

「英語でイクってI'm cumin'っていうんでしょ?」
「ど、どこでそんな言葉!」

「スクールの友達が話してたのを聞いてたの」
「どんな会話してんだよ・・・」

「だーって、面白いんだもん」
「エロい・・・」

意識がハッキリしてきたのか
梨華がくねくねしながら恥ずかしい言葉をポンポン言ってくる
505 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:55
「イクんじゃなくって来るんだねー♪」

こ、こいつぁ!!
もうお願いだからそれ以上言わないで・・・
情けなくなって、恥ずかしくて、梨華の肩に顔を埋めてしまった

「なあに?ひーちゃん、したくなった?」
「ち、違う!」
「したいの?」

梨華は腕を解いて、向き合うように座りなおした
ウチの足の上に乗って、首に腕を絡ませてまた見下ろす

「だから、ちが・・・うってば・・・」

「そう?」

その目は、だめだって・・・

「ほんとうに?」

泡のついた胸や喉が、やらしくって
ウチの中に火をつける
506 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:55

「ほん、とうに・・・」

「嘘」

 ゴクッと喉が鳴ったのが分かった

「うそじゃ、ねぇよ」

「嘘」

屈みこむようにウチの唇を塞ぐ
ねっとりと舌が絡みついて、ついばむように何度も唇に吸いつく

「・・・これでも?」

「・・・んだよ・・・」
「なあに?」

「別に・・・したく、なんか・・・」
「ホントに?思い出したんじゃないのぉ?」

こい、つあああ!!
恥ずかしさからの怒りで、噛み付いてやろうと思ったら

「嬉しかったの」

あんぐり開けて牙を剥いていた口を閉じた
507 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:56

「なにが・・・」

「だってぇ・・・あんなに求めてくれたの、初めてだったんだもん」
「だ、だって」

「だって?」
「なんか・・・な・・・」

「なあに?」
「梨華が、エロいから」

「なによぉ、それー」


影になった梨華の目がゆらりと光る
あれだけ激しく求め合ったのに
また心が、身体が、梨華を求めてる


「・・・続き、しようよ」

「するの?」

「うん、したい・・・」

「ひとみ、かわいい・・・いいよ・・・bottom or top ?」

「depend on you...」

「I got it...」




マンハッタンの夜は、長く深い・・・
508 名前:eyes 投稿日:2005/12/08(木) 23:57

(#´▽`)〜`O)<おしまい♪
509 名前:eyesオマケ 投稿日:2005/12/08(木) 23:59

「梨華・・・ベッドでしようよ」

「ここがいいの」

「だめ、だって・・ああ」

「ひとみ、かわいい・・・」

「だめ、だってば!んん!」

「さっきはキッチンでしたでしょ?」

「だ、って、んぁ!・・わぁぁぁぁ!」


ドボーンッ!!


「ひーちゃん!ひーちゃん!?」


バブルバスは滑るからひーちゃん・・・


510 名前:eyesオマケ 投稿日:2005/12/09(金) 00:00
(;0T〜T)<色気ねぇなぁ・・・


(;T▽T)<おしまい♪
511 名前:Rink 投稿日:2005/12/09(金) 00:01
更新終了です

今回の更新分は>>454-510です
512 名前:Rink 投稿日:2005/12/09(金) 00:02
れすぽんす

>名無飼育さん様
( ^▽^)<リンゴはうさちゃんで♪


萌えれなくてすいません orz
513 名前:Rink 投稿日:2005/12/09(金) 00:05
ネタバレ防止

石川さんの見下ろし視線は
『華美』の中の見下ろし視線をイメージしていただけると良。
514 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/09(金) 00:10
深夜に備えて読み返しに来たらこれだ…
もうヤバいですよ!脳ミソが溶け出しそう
連日ありがとうございますです
515 名前:774飼育 投稿日:2005/12/09(金) 00:14
今日はいつもより早いですねぇ
今日は早めに眠れそうです
更新お疲れ様でした
516 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/09(金) 01:59
更新お疲れ様です。
サドめで大胆な吉良い〜w
エロモードの梨華ちゃんも◎
517 名前:Rink 投稿日:2005/12/09(金) 19:16
『Cross』の続編『LOOP』で
『LINE』はお終いなのですが

LOOPを上げるにはちょっと時期が早いので

全く別話のいしよしショートストーリーを一本。
518 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:16

519 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:17

「いい湯だったよー」
「はーい、ありがとー。おじさん風邪引かないようにねー」


ここは東京のある町。
そんでもってここは
おじいちゃんのそのまたおじいちゃんの代から続く
ふるーい銭湯の番台。

富士山の絵とか書いちゃってて
でかい首振り扇風機と
茶色い革張りで、ローラーがゴロゴロ動くマッサージ機
もちろんコーヒー牛乳とか置いてるようなベッタベタな銭湯。
520 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:18

江戸時代から続いてるーとか言ってたけど
ホントかどうだかは分からない

昔は繁盛してたんだけど、今は近所の人たちの憩いの場になってるくらいで
実はそろそろ廃業かななんて話も出てる

うちの親はともにふつーの仕事をしてる
なもんで
暇を持て余してる自分が番台さんってわけ。
で、じいちゃんが釜場でお湯を沸かしてくれる
釜ジイってやつよ。
521 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:18

でも結構大変なんだよ?
いや、経営とかじゃなくってさ

営業終了したら、2時間3時間かけて風呂掃除するんだ
勿論一人で
じいちゃんは足腰が悪くって
ホントは寝とかなきゃいけないんだけど
釜の仕事だけは譲れん!って毎日釜場に立ってる
まぁ、その方がボケなくていいのかもしれないけどね
522 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:19

 ガラガラッ

「あ、あの・・・」
「いらっしゃーい」
「まだ、だいじょうぶ、ですか?」

小さな鞄を両手で抱えて、目をうるうるさせながら
女の子が一人入ってきた

「あ、大丈夫っすよー」

言うと同時に、ご近所さんの前川さんの奥さんが出て行った

「ひとみちゃん、いつもごくろうさま」
「あいえいえ、毎度ですー」

男湯からは前川さんちのじっちゃんが出て行く

「ひふぉみひゃん、いいゆひゃったよー」
「ありがとねー。前川さん忘れ物ない?」
「ぉう!」

じっちゃんもごもごして、入れ歯ちゃんと入れて帰れよ・・・

「ふぅ・・・」
523 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:21

ふと女湯の入り口に目をやると
まだ居たのか、女の子!
どうしたらいいかと、目にいっぱい涙を溜めて上目遣いで見てた
迷子じゃねーんだからさ

「あ、400円っす」
「あ、はい・・・」

その子は震える手で100円玉4つを置いて
中に入っていった

ニューカマーですかぃ?
この辺の人じゃないなぁ


案の定初めてらしく、オロオロしながら服を脱いで
風呂に入ってった

同い年くらいかなー
若い子が銭湯だなんて、抵抗ないのかなぁー

なんて、煙草をプッカプカふかしながら考えてた
524 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:22
お客さんも2、3人になってきたころ
暖簾を下ろしに外に出る

 ガラガラッ

ビュゥゥと冷たい風が吹いた
っげぇ!さっぶぅ!


こりゃ絶対お客さんたち湯冷めすっだろうなぁ

腕を摩りながら番台に戻ると
男湯のお客さんが出て行くところだった

「ありがとー」
「はーい、寒いから湯冷めしないようにねー」
525 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:22

残すところ、あの女の子のみ
けっこー、長湯してんなぁ

男風呂の掃除を始めようかどうしようか

とりあえず脱衣所のチェック
あーあー、あのじいさん、またメガネ忘れてるよ
まぁ明日も来るだろうし、いいか

ほうきで隅から隅まで履きつづけてると
女湯の扉が開く音がした

 ガラガラッ

おお、出てきたのね
ここのお湯熱いから、のぼせてないか心配だったけど
大丈夫そうだな
526 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:23
ロッカーを開けて、布が擦れる音がする

「ふぅ・・・」

いいお湯だった♪そんな息が漏れた
それは良かった。

 キィィ、パタン

お着替え終了ですか?
ウチは構わず掃きつづけてると
ふと見た洗面台に、恐ろしい物体が


「うげぇぇ!!」
「ひゃぁ!」


洗面台使ってた客・・・確か前川さんちのじっちゃん
おいおい、、入れ歯忘れてんじゃんよ!
どうすんだ?これ。触んの、超やなんですけど


そういえば、女湯から悲鳴が?

「あ、あのぉ・・・」

あら、可愛らしい声ですな
どちらかというとアニメ系?


`.∀´)<呼んだ?

そういうアンタは保田圭
って、いいから!出てこなくて!
あとでいっぱい出てくるんだから
527 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:25
「だい、じょうぶですかぁ?」
「ああ、気にしないで」

ほうきをブンブン振って大丈夫なことをアピール。

「そう、ですか」
「おーう」

「あ、あの」
「なにー?」

「か、帰りますね」

何故に帰る事をアピール?
ああ、最後の客だからね。

番台越しからヒョコッと顔を出すと
そこに女の子も居て、ペコッとお辞儀をした。
頬を上気させ、濡れたままの髪で。

「乾かしてかないの?」
「あ、はい・・・」
「ドライヤーあるよ?」
「いいんです・・・」
「風邪引くべ?」
「べ?」
「いいならいいけど。まいどどーも」
528 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:26
「また、来ます・・・」
「はーい、ありがとー」

またほうきをブンブン振ってさよならアピール
営業時間が終わったらウチは必死になるから
あんまり構ってられない
だってめんどっちー掃除が待ってんだから

 ガラガラッ ピシャン

「ひとみぃ〜?そろそろ閉めるかぁ〜?」
「はいよー、じいちゃん。おやすみねー」
「あいよ、おやすみー」



さーって、本日もお疲れ様でした
女湯の脱衣所も掃いて
いよいよ、腕の見せ所。風呂場の掃除。

風呂場のロッカーの上にでかいラジカセを置いて
大音量で音楽をかける
529 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:27
「すっきなーひとーが〜〜、やっさしーかあったーー ぴぃっすぴぃっす!」

ピースのところは、床を掃くデッキブラシの手を止めて
ピースサイン。はい、ピーッスピーッス!
だーれもいないから出来る事なんだけどね

そういや、あのプロモって便所だったよなー

おっと、端っこにまとめたはずのケロリン桶ハッケーン!

「ケロケロ〜〜ケロリンキーーーックッ!」

カコーンッ!

「ナイッシュ〜!」


さて、遊ぶのもこれくらいにして、真剣にしないとまた寝不足になっちゃうぜ



男湯と女湯の掃除がすべて完了して
今日の営業終了

 パチッ

今日も色んな人の疲れを癒してくれてありがとね
530 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:29
  V  ∧  V  ∧  V
531 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:30

 次の日

お昼過ぎ
田中さんちの奥さんがおじいちゃんのメガネと
入れ歯の持ち主前川さんが、ブツたちを取りに来た

銭湯の営業時間は4時からだけど
準備は早い
じいちゃんはもうボイラー室に入ってお湯を沸かしてる
ウチの出動は2時くらいだから、まだゆっくりコタツに入って
ミカンなんかをモシャモシャ食べてる

 トントンッ

勝手口の戸が叩かれた
532 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:31

「開いてまっすよー」

勝手口から入ってくるのは一人しかいない

「おじゃまー」
「らっしゃい、どうぞー」
「はい、よしこの好きな豆おかきだぞー」
「ウチは好きじゃないって言ってんの!」
「なんで?いっつも買ってんじゃん」
「豆おかきはじーちゃんが好きなの!」
「あーそう。んじゃ、後で渡しといてー」

豆おかき片手に
寒い寒いと言いながらコタツに入って来たのは
ご近所さんで幼馴染の後藤真希
533 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:31
「ごっちん、今日大学は?」
「んぁー、休んだよ」
「んでよ!」
「だって寒いし、出なくていい授業だったしぃ〜?」
「おめー、大学ちゃんと行けよなぁ?」
「よしこの夢を担ってることくらい重々承知の助だよーん」

ミカンに手を伸ばして剥きはじめる

「ミカンは上からむいむいした方が白いの取れて食べやすいんだよ?」
「なんだよ、むいむいって」
「ほらね?」

そんな豆知識要らないし
534 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:32

「そういや、昨日圭ちゃんの店に来なかったよね?」
「あー、ちょっと疲れてたからね」
「そうなんだ」
「最後の客がさー、長湯でさー?」
「へー、めずらしい」
「長湯も珍しいんだけど、客も珍しかったんだよ」
「なになに?」
「なんかアニメ声の女の子」
「女の子?」
「そう。同い年くらいの子だったんだ」
「へー、この辺の同い年ってうちら以外いるんだね」
「さーぁ、わっかんねー」
「圭ちゃん、渡したい物あるって言ってたから、今日は行ってみたら?」
「うん、そうするよ」
535 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:34
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
536 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:35

さて、そろそろ営業前の掃き掃除でもするかなー

「さっむぅ・・・」

上下ジャージで、足元は下駄。首元には紺のマフラー巻きながら
さっさかお掃除。

「下駄ップ、下駄ップぅ〜」

カランコロンッ、カラランコローン

「下駄ップて案外むずかしいのねー」

最近見た、座頭市で下駄ップ見てから
挑戦するものの、うまく行かないのが世の常
一朝一夕じゃぁ何だって無理って訳よ

「あーしたてんきになーれ!」

カランコロンッ

「ありゃ、曇りか・・・」

ケンケンしながら下駄を取りに行く

「ひとみちゃん、今日も精が出るねぇ〜」

って言ってきたのはチャリで通りがかった酒屋さん

「おじさんもねー」

ご近所付き合いが無いって思われがちな東京だけど
ウチの周りは意外とあったかい

「掃き掃除終了!」
537 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:36

4時に営業開始。

暖簾をかけて番台に座る。
みなさん、今日も一日ごくろうさまでした。
はい牛乳ね、120円。

いつもと変わらない毎日。
いつもと変わらないお客さん

なハズだったんだけど・・・
538 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:36
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
539 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:37

ここ連日アニメ系がやってくる
決まって店が閉まる間際に。
ちょっと顔を俯かせて、番台に硬貨を置いていく

その手は綺麗で、細長い指
ウチとは大違い
ちょっと色黒で、健康的な肌で
結構ナイスバディーときたもんだ

決してエロいこと想像してるんじゃないぞ!
番台からは男の裸も女の裸も丸見えなの!

小さなバッグを持って来て
そこからシャンプーやらなんやらを出して風呂に入っていく
やっぱり恥ずかしいのか、タオルを身体に当てて入るんだ

って、ウチ観察してる?
やべーやべー!怪しすぎだってば

でも若いお客さんが珍しいから
どうしても目で追っちゃうんだよね
540 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:38
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
541 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:38

さて、この日も一日終了!
暖簾を下ろしに外に出ようとしたら

 ガラガラッ

「あ・・・」
「あ、アニメ系」
「へ?」
「あ、なんでもないよ。入る?」
「あ、はい・・・」

番台に硬貨を置いて中に入ってった
まーたこっから長くなるぞ?
男湯掃除はじめよっと。
542 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:39
お客さんがいるから大音量スピーカーはちょっとお休み
鼻歌交じりで掃除を始める


「すっきなーひとーがぁ〜、やっさしーかあったー。
 優しくされてぇぇ!」


あ、隣にアニメ系居るの忘れてた
歌自粛します。


シャコシャコ床を磨いていく
これがまた大変で、ダッラダラ汗かくんだ

またまた端っこに置き去りにされたケロリン桶発見

「けっろけろ〜〜〜けろりんブゥメルァン!!」

シュルルルルッ、カコーン!

「はい、ご臨終。なむなむ」

あ、また忘れてた。
独り言も自粛します。
543 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:40

女湯から、ザァッとお湯を流す音が聞こえてきた

「湯加減どおっすか〜〜??」
「へぇ?」

篭った声が聞こえる

「なあに〜〜?」
「ゆかげーん!」

「あ、いいです〜」

そのままだなぁ
アドリブきかせて、ひねろよ少しは

「お背中ながしましょーかーー?」
「け、結構ですぅぅ!!」

ちょっと焦ってない?そんなに焦る事?
まあいいけど

「こっちもえんりょしますーーー」
「そう、ですか」

なんでガッカリしてんの?
ちょっと最近の若い子のノリはわかんねぇよ
544 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:42

床掃除と風呂の中の掃除も終了して扇風機にあたってると
女湯の扉が開く音がした

マジ長風呂っすね、お嬢さん


「あっぢぃぃぃ」

頭に巻いていたタオルが、おでこの汗をぐんぐん吸収していく

「大変ですね」

脱衣所から声がする

「ああ、仕事だし」
「そう、ですよね」

ロッカーを閉める音がする

「番頭さん、歌上手いんですね」

聞かれてた!
ってそりゃあんなデカイ声で歌ってりゃいやでも聞こえるってか

「それに、独り言も多いんですね」

おじょーちゃん、あんた見かけに寄らず言うね
545 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:43
男湯の脱衣所からヒョッコリ顔を出してみると
昨日と同じで、番台越しに顔が見えた

「独り言言わなきゃ、掃除なんてやってらんないからねー」

デッキブラシを肩に担いで
番台を通り越して女湯の脱衣所に渡る

「っしょっと」
「あ、すいません。・・・いつも、長湯しちゃって」

「いいよ、気にしないで」
「ありがとうございます」

「それよりさ、この辺の子?」
「え?」

いきなり聞いて、新手のナンパじゃないんだから・・・

「あーいや、この辺ってさ、ジジババばっかりだし」
「あ・・・」

おや?ちょっとバツが悪そうに、俯いちゃったぞ

「お風呂、壊れてて」
「あっそー、そりゃ大変」

心の篭ってない言葉が口から出る
壊れていただいた方が?ウチの店は儲かるわけで?
へいへいおおきに、毎度あり。
546 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:45
「だから・・・ここに」
「そう。家どこなの?」

一応社交辞令で聞いたものの
身体はさっさと掃除したいと言わんばかりに女風呂の方へ向かう
しかしさすがアニメ系

「世田谷です」
「はぁぁ!?」

うちはギュインと身体を捻ってアニメ系に向き直った
隣の区じゃん。そっから来てんの?わざわざ?
近くに風呂屋くらいあるだろうよ

「あ、で、でも、端なんで・・・」

いや、端とか中央とかって関係ないし・・・

「歩いたら20分くらいなんで」

しかも歩きかよ!!
ウチは慌ててデッキブラシを女湯の中に放り投げた
547 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:47

「送るよ」
「え?」

「送るから、待ってて」
「あ、でも!」

「でもじゃなくって、送るから」

後ろでなんかまだゴチャゴチャ言ってたけど
この際シカト。
慌てて裏口から家に入って、部屋に駆け上がり
マフラーとジャケットを持って、風呂屋に戻った
548 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:48
「外にチャリ止めてるから」

番台の中に置いてあるキーを取って外に出ようとすると
俯いてた顔を上げて、ちょっと焦ってる

「で、でも!」
「なに?」

「お仕事・・・」
「仕事は後でも大丈夫だから、送るって」

「でも」
「なに」

「・・・悪いですし・・・」

中々うんと言わないから、勢い余ってキレ口調。

「女の子が一人で濡れ髪しかもシャンプーの匂いプンプンさせて
 夜な夜な街灯も少ない道歩いてったら襲ってくれって言ってるようなもんでしょ」

ずずいずいと顔を近づけて、眉間にしわを寄せる
アニメ系は、あの、ちょっと!なんて言いながら手でウチを抑えようとする

「あ、あの、息継ぎしてます?」
「ああ!?」

25メートル息づき無しで泳げるよ!心配ご無用!

「ご、ごめんなさい・・・」

またまた俯き加減、バッグを持つ手がモジモジしてる

「人の心配はいいから、送るって言ってんの!」
「は、い・・・」

「大事なお客さんが減ったら困るし」
「・・・・・」
549 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:49
風呂屋の電気を消して、入り口の鍵をかけた

「ほい、乗る!」

家の前に止めてたジイちゃん愛用の豆腐屋チャリンコに乗って
アニメ系の前に登場

「あ、でも・・・」
「まだ言うか!」

クワッ!と顔を歪ませて睨んでやった

「はい・・・」

アニメ系は鞄を腕に通して、後部に横座りする

「腰掴んでていいから」
「は、はい・・・」

「いきまーす」

 チリンチリーンッ
550 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:50
「世田谷のどの辺よ?」

風が邪魔をして声が届かないと思ったんで
気持ち大きめに声を上げる

「あ、道案内します・・・」
「ああ!?」

「道案内します!!」
「あ、はいよー」

小さい声だとわかんないんだよねー

冷たい風を受けて、チャリンコをビュンビュン飛ばす

「あ、そこ右で」
「はいはーい」


「そこ、左で・・・」
「はいよー」
551 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:50
チャリをこぎながら考えた
これ、どう頑張っても徒歩20分圏内じゃないだろ

「ねぇ、なんでわざわざウチに?」
「あ・・・」

「近くに銭湯ないの?」
「と、通り道なんです!」

「なんの?」
「ば、バイト先の」

「あっそー」

風呂屋が閉まる時間帯に終わるバイトってどうなの・・・
まあいいや、なんか深入りするほどでもないだろうし
552 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:51
「あ、ここでいいです」

 キキューーーーッ

ききの悪いブレーキ音が静まり返った町に響く

「こ、ここで、いいです」
「家近いの?」

「すぐ、そこです、から」
「家の前まで送るよ」

ペダルを踏んで漕ぎ出そうとしたら
腰をグッと握って止められた

「いいんです!」
「ぐぇ!」

ちょっと必死系の剣幕で、アニメ系はウチを止めた
そんなに必死になられたら、了解するしかないじゃん?
553 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:52
「そ、そう」
「あり、がとう、ございました」

チャリから降りたアニメ系は
気持ちほっぺたが赤くなってた
そりゃそうだろ、こんなに寒いんだもんよ

「んじゃ」

チャリを抱えて向きを変えると颯爽と跨って去ろうとした

「まって!」

また腰をグイッと引っ張られる

「ぐぇ!」

なんなの、この子!やけに力あるし!

「なに?」
「お名前・・・教えて、もらえませんか?」

「名前?」
「はい・・・」

「吉澤ひとみ」
「吉澤、ひとみ・・・さん」

「ん。じゃあねー」

ウチはペダルを漕ぎ出してもときた道を戻った
後ろの方で「あ」って声が聞こえたけど
ウチは今日は急いでんの!
風呂掃除も残ってるし、保田さんとこに行かなきゃいけないの!

んじゃぁ、アデュ〜
554 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:54

女風呂の掃除も終了し、ウチは慌てて着替えに部屋に戻る
着替えを済ますと、自転車に跨って保田さんの店に向かった


  ∧  V  ∧  V  ∧


 ガラララッ

「いらっしゃーい」
「おっそいぞ、よしこー!」
「ごめんごめん」

ここは保田さんの親が開く小さな居酒屋
保田さんとは、ウチの高校時代の部活のOG
部活の練習でちょくちょく顔を出してくれていて
しかも住んでる場所が近かったから
ウチは店に顔を出すようになった。

「かけつけ3杯ぃ〜」

何故かごっちんと一緒に・・・。
今じゃごっちんのほうがこの店の常連さんになってる

「無理だってば!大汗かいてたんだから」
「なんでそんな汗かいたの?」
「いや、色々ありまして」

大汗の理由をビールとししゃもを手に話した
555 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:55
「んあー、そりゃ、ストーカーだな」
「はぁ!?」

「だーって、そうじゃん?20分もかけてわざわざ世田谷から来ないよー」
「保田さんまで!」

「20分以上あったんでしょ?」
「まぁ・・・」

「吉澤はモテるからねー」
「ちょっと、保田さん、やめてくださいよ!」

「なんでさ、事実じゃん」
「モテるって・・・」

「高校の時チョコレート貰ってたじゃん?」
「昔の話掘り返さないで下さいよ!」

「しかも閉店間際に来るだなんて確信犯ね!」
「そうだそうだー!」

人事だと思って盛り上がって、こいつら・・・
556 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 19:57
「でも実際、その子の言う通り風呂釜壊れてんのかもしれないし」
「そーそー」
「決め付けるのは早いよ」

決め付けたのはそっちだろ!

「でもさ?昔は純愛、見てるだけの恋は今じゃストーカーって言われるんだなんてね」
「線引きが難しいよねー」
「手出したらストーカーでしょ」
「見てるだけでも怖いじゃん」
「風呂屋に来てるのは手だしてないし」
「たしかに」
「それより、その子の名前なんて言うの?」

名前・・・名前・・・ああ!!

「聞くの忘れてた」

「「はぁぁぁ!?」」

「だって、急いでここに来なきゃいけないと思って」
「ばっかだねぇ」
「でも、明日も来るんじゃないの?その子」

「多分・・・」

その時聞けばいいよって保田さんは言ってくれたけど
ぶっちゃけアニメ系の子の名前なんてどうでも良かった
ストーカーだろうが、どうでもいいし・・・。
泡の消えたビールをグビッと飲み込んだ
557 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:00
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
558 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:00

「あったまいってぇ・・・」

昨日はあれからジャンジャン保田さんに煽られて
飲みに飲みまくったはいいけれど
二日酔いで頭がグラグラする
営業にならないくらい、グッタリ。

と思いきや。
番台に上った途端、一気に頭痛も引いてきた
いやー、さすがだねぇ
これぞプロってやつ?ほれるねぇ!吉澤さん!

今日も、見慣れた景色、見慣れた人たち
身体をパンパン叩きながら拭いてたり
コーヒー牛乳を手を腰に当てて飲んでたり

でも、一週間ほど前から
この風呂屋の長風呂クイーンが閉店間際にお出でなさる
559 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:01


 ガラガラッ

ホラきた
女湯の入り口をチラ見すると

あれ?違うじゃん

「こんばんはー」
とご近所のオバチャンだった
「らっしゃーい・・・」


おっかしいな・・・
って何気にしてんの?
あ、いや・・・お客の動向チェックは当たり前か


閉店時間になっても来ない・・・

ま、いっか。風呂釜が直ったんだろう
560 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:02

ウチは急いで男風呂の掃除を終わらせた

むふふっ
今日はなんてたって、一人大浴場の日なのでありまーす!
風呂屋の特権
終わった後に、入浴剤を居れて
ちょっとリッチにスパ気分?
背景の富士山がなんとも切なげですが。

「そりゃ!」

入浴剤を入れると、お湯が乳白色に染まっていく
えっと・・・200リットルに20g?・・・この風呂何リットルなんだよ
ええいめんどくせぇ。丸々一本投入!!

 ドサァァァ

あ、どう見ても入れすぎ?まあいいや。安かったし
561 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:03
ケロリン桶でぐるんぐるんかき混ぜて準備完了!
意気揚揚と脱衣所に戻ると、入り口の方で見たことのある
挙動不審の女子発見!

「あ、あの・・・もう、終わり、ですか?」
「ああーーー、おわっちゃったねー」
「そう、ですか・・・」

かなーり、ガッカリした様子。そりゃそうだ
来てみたら閉まるっつーんだから

「また、明日来ま」

出て行こうとする、アニメ系

「だから、タダ」
「・・・え?」

扉にかけていた手を下ろして、振り向いた

「タダでいいよー」
「でも」
「んじゃ帰る?」
「そ、それは・・・」
「ほい、入った入ったー」
562 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:04
身体と髪をダッシュで洗う
そんな時間をチンタラかけるような身体でも髪でもないし。

1個あけて、アニメ系さんは髪を丁寧に洗ってる
そりゃそうだ。あんな長い髪だもんな


 ピチャンッ

「ふぁぁぁぁ、極楽、極楽ぅぅ」

乳白色のお湯を顔にかけながらザブンと浸かった
軽く泳いだりもしますよ?ええ。クロール平泳ぎなんでもござれ

洗い終わったのかアニメ系さんがケロ桶でかけ湯をして
端のほうから湯船に入った
563 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:05

 チャプンッ


「きょうは・・・濁り湯なんですね・・・」

いやいや、温泉じゃないんだから

「店早く閉めたときだけ一人で楽しんでんの。ばれたら殺されそうだけど」
「いいです、ね・・・」

長い髪をアップにしてるアニメ系さんは
結構美人系でもあるんだなと思った

「ところでさ、名前」
「え?」
「名前昨日聞くの忘れてたから」
「あ、ああ・・・」
「なんてーの?」
「石川、梨華っていいます」
「いしかーさんか」
「はい・・・」
「歳は?」
「20です」
「学生?」
「・・・いえ・・・」
564 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:06

あれま、また沈んじゃったよ
ほんとに鼻の下まで潜ってる。
言いたくないのね、はいはいもう聞きませんから

「ひ、吉澤、さんは・・・」

よく人の名前を覚えれるね
ウチもうあなたの名前忘れましたけど何か?

「なに?」
「この、お店の番頭さんなんですよね」
「まあねー」
「歳はいくつですか?」
「20」
「同い年ですね。誕生日はいつですか?」
「4月」
565 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:07

あの、ここ取調室ですか?
デカ長とかカツ丼とか出してくれます?

「わたしは、1月です」

いやいや、聞いてないよ?

「1つ年下ですね」

3ヶ月差じゃん
日本の年度制度ってややこしくない?
3月末だろうが4月だろうが、年一緒なのに
何気に3ヶ月差で年上加減振りまかれてるんですけどね、アニメ系さんに。
って誰にキレてんの?ウチ
566 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:07

「あの・・・」
「はい?」

「わたし、ウザいですか?」
「べつに」

「・・・」
「なんで?」

「わたししか、喋ってないから」
567 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:08

そりゃそうだ。
ウチがあなたになんの興味があって話し掛けるのさ
そりゃ?昨日は送りましたよ
青春気取りで2ケツしましたよ?
今日だってタダでどうぞーってお通ししましたよ?
でもそれだけですよ。
ええ、それだけ

「ひと・・・吉澤さんの、こと・・・知りたい・・・です」
「うちのこと?」
「はい・・・」

チラッと横を見るといつの間にそんなに近くに来てたのか
結構近距離で見つめられちゃってるんです
うなじ綺麗ですね、アニメ系さん
だから夜な夜な風呂上りに一人で歩いちゃだめなんですってば

「あー、うん。なに知りたい?」
「お住まいは?」
「このうら」
「あ、はぁ・・・じゃぁ、兄弟は?」
「弟2人」
「今、学生さんですか?」
「・・・・・違う」
「そうですよね・・・お店の番頭さんですもんね」
568 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:09

「・・・えーっと・・・」
「はい?」
「・・・あの、名前」
「石川です」
「あーそうそう、いしかーさんは一人暮らし?」

たまにはこっちから聞かなきゃね
会話はキャッチボール。プレイボール

「ええ・・・」
「あの辺に住んでんの?」
「はい・・・」
「もしかして、なんとか荘とかいうようなアパートだったりするわけ?」

「・・・・・」
569 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:10

当たりかよ!!

「風呂と便所が共同だったり?」
「・・・・・」

また当たったよ!!

「廊下ギシギシいっちゃったり?」
「・・・・・」

ビンゴかよ!!
神田川の世界はもういいよ!

「なんか、いいねそう言う生活」
「あの、いえ・・・そうじゃ・・・」
「いいじゃん、ビンボー万歳」
「ああ、はぁ・・・」
「一人暮らしかぁ、いいねぇ」
「・・・寂しいですよ」
「一人だからでしょ」
「はい・・・」

「じゃあ質問」

一人が寂しいと言う人に大抵する質問を
アニメ系・・・えっと、いしかーさんに投げてみた
570 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:12
「一人で居て感じる寂しさと、二人で居て感じる孤独。どっちがいい?」
「え!?」

いしかーさんはこっちを見た
お湯が波紋になってウチのほうまでやってくる

「どっち?」
「・・・どっちも、ヤですね」
「どっち」
「・・・まだ、一人のほうが、いいかも」
「でしょ?」
「でも・・・」

出た!デモデモ星人め



「一人だと、もし倒れてても、気づかれません」

571 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:13

そんな簡単に倒れんなよな
そう思いながらいしかーさんを見ると


泣いてるし!!!


汗?汗であってほしいんだけど!


「グズッ・・・」


汗じゃねぇぇぇぇ!!

「ご、ごめん・・・」
「違うんです・・・」
「なに・・・」
「なんか・・うれ、しくて、グスッ」

うれし泣き?のわりには辛そうじゃないかい?
572 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:13
ウチは両手を重ねて、ギュッと閉じて
水鉄砲でいしかーさんを狙った

 ビュッ! パシャンッ!

はい、見事命中。

「んん!?」

 ビュッ!

「ほれ」
「やだぁ!」

 ビュッ

「ほれ」
「や、ちょっと!」

 ビュッビュッ!

「ほれほれ!」
「やめ、やめてくださいよぉ!」

めんどくさくなって手でバシャバシャお湯をかける

「うらぁぁ!」
「ちょっと!まって!!やぁ!」

顔を防御しながら逃げ惑ういしかーさん
573 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:15
ほれほれ、もっと逃げてみよ?え?え??
悪代官風にお湯をバシャバシャかけまくる

「ほれほれぇ〜」
「やだ!ひとみちゃん!」
「ひゃっはっは!」
「ひとみちゃ、も〜〜〜!!!」

いしかーさんは、傍にあったケロ桶を掴んで反撃開始。

うお!水量が違いすぎて勝負にならないんですけど!

 バッシャーーン!

「ぶっは!」
「あ、ごめん!」

かけておいてごめんてどーなの、いしかーさん
574 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:16
「よしざーさんじゃなくて、ひとみちゃんって言いなよ」
「え?」
「吉澤さんって言いにくかったんでしょ」
「へ?!」

顔が真っ赤になったのは多分のぼせてじゃないはず

「ずっと、心の中でひとみちゃんって呼んでたんでしょ?」
「・・・・・」

気まずそうにまた俯いた

「気にしない。」
「・・・はい・・・」
「近所の人たちはみんな呼んでるし」
「・・・」
575 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:17
また手で水鉄砲を作って、真上目掛けて水を飛ばす

「・・・ウチさ」

番頭生活始めてから、誰にも明かしてなかった新事実
ごっちんと保田さんくらいしかそれを知る人はいない
親にだって本当の理由を言わなかった
ウチが大学に行かなかったわけ

「はい・・・」

「クジラを見たいんだ」

なんか、言いたくなったんだ
いしかーさんに

「え?」
「クジラ」

ギュッと握るたびに、水が吹き上がる
576 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:18

「イルカとか、クジラの生態を調べたくてね」

いしかーさんは、ウチの事を見つめて聴き入ってた

「あいつら、哺乳類じゃん。すごいなって思って」



でも、クジラとかイルカの職業なんて無いんだよ
日本じゃね

海外はみんなボランティアらしくってさ
高校卒業前に調べたんだけど
どこもなーんもそういうのやってないの

大学に行って、卒業したころで
その事熱く語っても、企業はみんなバカにするんだろうな

って思っちゃったわけ
577 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:19

「ウチさ、イルカと一緒に泳いだりしたいんだ」
「ええ・・・」

「クジラがもっと自由に泳げる海にしたいんだよ・・・」
「自由に・・・ですか」

「だから、大学行かなかったんだ。無駄だと思って」
「そう、なんですか・・・」

「ちっぽけな事で人生棒に振ったって親には言われたけどね。
 世の中上手く行かないよなー」
「そう、ですね・・・」

「でもさー、意外と小さい幸せ落ちてたりするしさ」
「はい・・・」

「この先見つかったりするかもだし」
「・・・・・」

「だからさー」
「はい」

「いしかーさんも、上手く行ってないかもしんないけど」
「え・・・?」

「なんかいいこと絶対あるってー信じてみたら?」
 
いしかーさんがちょっと驚いて口をうっすら開けた
その目は、何で分かったの?って言いたそう
578 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:20

「千里眼ってやつ?あははは!」


 ドボンッ!


ウチは顔をお湯につけて、頭まで潜った


 “ちょ、ちょっと、ひとみちゃん!”

お湯の上のほうで、いしかーさんがなんかワタワタしてるみたいだったけど
この中じゃ、音も全て振動でしかない
そんな感じになる




  ブクッ  ブクブクッ   ゴハァァ!


579 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:20

ザバァァンッ!

「きゃぁあ!」
「ぶへぇぇ!あーきもちいい」

髪をオールバックにして水を切る

「な、なにしてるの!?」
「クジラになったの」
「え!?ええ?」
「やってみ?きもちいーから。自分の心臓の音が聞こえる」
「ちょ、ちょっと!」

 ブクブクブクッ

引き止めるいしかーさんをほっといて
息を深く吸い込むとまた潜った
580 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:21



 ポチャーンッ   ドクンッ ドクンッ ドクンッ





   ひとみちゃ・・・    チャポンッ





 ドクンッ  ドクンッ   ブクブクッ


581 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:23
ザバァッ!

「ゼェ、ゼェ・・・」

隣も同じ事をしてるみたい
クジラになる感じ、わかるかなー


ザパッ!

「はぁ・・・はぁ・・・んっ、はぁ・・・」

手で顔のお湯を拭ういしかーさんの髪はほどけて
お湯の中に浸った

長い髪がお湯に広がった
人魚が居たら、多分、こんなんだろうなって思うくらい
濡れた髪が、綺麗で見惚れてしまった

「!!」

何考えてんだか
動悸がするぞ、救心くださいお母さん
肺活量落ちてんのかな

「クジラ・・・分かった気がする」
「そう?」
「うん・・・お母さんのお腹の中って、あんな感じなのかな」
「そうかもね」
582 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:25

「バントウクジラ」

「へ?」
「ザトウクジラと、番頭で、バントウクジラ・・・」
「・・・・・」


「・・・ウフフッ・・・おもしろくないですか?」


自分で言って、自分で笑ってるよ、こいつ

しまいにゃ五本指ソックス履いてたら
水虫って言われちゃったんです

( ^▽^)<おもしろくないですか?

とか言い出すんだろ!おもしろくねぇけどおもしれぇよ!
おもしろくないですか?って言ってるいしかーさんがおもしれえよ。

何か恥ずかしくなって思わず減らず口が出た

「くっだらねぇえ」
「なんでですかぁぁ」

また眉毛を下げて捨て犬顔
そっちのほうがよっぽど面白い

「オヤジギャグもいいところだよ」
「そんなぁ・・・」

また眉を八の字にして、なんとも情けない顔をしたいしかーさん
その顔に笑えた
583 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:26
 ポチャーン  ポチャーン

規則的に水が蛇口から落ちる
いしかーさんは風呂の縁っこにつかまって
じーっと洗い場の方を見てた
沈黙が嫌いなウチは、顔にお湯をかけながら話した

「・・・クジラって歌うんだよ」
「そうなの?」

いしかーさんが顔だけこっちに向ける

「そう。オスからメスへのラブソング」
「そうなんだ・・・」

「3000km先まで届くんだって・・・」
「すごいな・・・」


クジラの事、誰にも話さないつもりだったんだけどな・・・

「さ、あがろ。のぼせる」
「わたしは、もうちょっと、クジラになります」

「はいはーい」
584 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:27
一足先に上がって、タオルで水を吸い取っていく

クジラの話をしないのは、変な目で・・・
いつまでも夢語るなって目で見られるのがいやだったから

でも、いしかーさんは、そんな目で見ずに
ウチの話を聞いてくれた


なんか、変なやつ・・・


ジャージとTシャツを着て扇風機に当たる
外は寒くても、今はカッカ熱い

「あ゛〜〜〜あ゛〜〜〜あ゛〜づ〜〜い゛〜〜」

扇風機に向かって遊んでるといしかーさんが出てきた

「あ゛〜〜も゛うで〜〜だ〜〜の゛〜〜?」
「はい・・・」
585 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:28

 カチャッ

スイッチを切って、振り向いた

「きゃぁぁ!」
「ああ?」

タオルをあてて、しゃがみこんだいしかーさん
でも、ケツ見えてっからよー?

「ああ、今更いしかーさんの裸見ても驚かないから」
「え、ええ?」

顔をあげて見上げる目は涙目になってる
そりゃ、うら若き乙女の裸を見られたってなったら
一大事ですわね。
でも、毎日見てんのよ?ウチ。見えるんだからしゃーないでしょ

「そ、そうだ、ね・・・」

あっはは!またあの眉毛。超おもろい
タオルを離さずに立ち上がって
いしかーさんは慌てて身体を拭いて服を着た
チッ、眉毛戻ってやんの。
もうちょっとからかえば良かった
586 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:29
「さって、何のもっかなー」

キンキンに冷やされた牛乳やら、コーヒー牛乳やら並ぶ
ショーケースを開けた

「よし、きめた。こ〜ひ〜ぎゅ〜にゅ〜!」

コーヒー牛乳天高らか。
アイテム登場ドラえもんBGMよろしく ♪デレレ、デッ、テレ〜
扉を開けたまま、いしかーさんを見る

「ん」
「え?」
「好きなの取りなよ」
「あ、お金」
「タダ、タダ!」
「でも!」
「一本くらいわかんねーってば」
「・・・」
「ほれ、取る!」
「は、はい・・・いただきます」
587 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:30
いしかーさんは何にしようか迷ってたんで

「んじゃ、お先頂きます」


キャップを取って手は腰に。
はい、イッキ、イッキ!


 ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ、ごきゅっ 


「ぷっはぁぁぁ!うんめぇ!」

口を手で拭うと、いしかーさんが圧巻といった感じで見てた
おいおい、小さく拍手すんなって・・・

「飲まないの?」
「あ、いた、だきます」

キャップを取って、手は腰に。
そうそう。
はい、イッキイッキ!


 コクッ コクッ


っておい!イッキしろや!!

「おいしっ」

じゃねぇぇぇぇ!もっとイッキに飲んでこそ
風呂上りの瓶牛乳だろうぐぁ!!
かぁぁ!分かってないねぇ!

まぁ、ちょーしこいて、イッキして
脱衣所にぶちまけられるよりはマシだからいいけどさ

いしかーさんはゆっくりフルーツ牛乳を飲んでる
口がちっちゃいのかチョピチョピ飲んでる喉を
ウチはジーッと見てしまった
だから怪しい人になるってば
588 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:31
ショーケース脇にあるケースに空になった瓶を入れると
番台から煙草とライターを取って
マッサージ機にドカッと座った
はい、スイッチオーン

「うっひゃぁぁ!きっくぅぅ!」

ゴロンゴロンローラーが動く
でも、当たって欲しい場所に届かない
微妙に気の利かないやつなんだよなぁ、こいつ

煙草を取り出して火をつける

「ふぃ〜〜、んまいねぇー」

髪を片方に流してタオルでふき取りながら
ウチをマジマジと見てる

「煙草、そんなに美味しいんですか?」
「まあねー」

ぽわっぽわっとわっかを作る
いしかーさん、また小さく拍手してるし。
そんなにめずらしーんか・・・
589 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:33
いしかーさんは洗面所にあったドライヤーで髪を乾かしてる

 ブイーーン、ブイーーン

しばらくその背中をくわえ煙草でジーッと見てると
手が止まって、ついでにスイッチも止まった

「な、なに?」
「は?」
「じっと、みてる、から」
「あ、ああ」

鏡に映ったウチがじっと見てるのを映してたのね
はいはい、見ません見ません。

乾かすのを再開するいしかーさん
590 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:34

なんか変な感じ

変な人

変な・・・ん?なんだこの気持ちは


天井をみつめながら思い出すのはいしかーさんの裸
けっこーくびれてんだよな
胸もでかいし、足も長いし
色は黒いけど・・・

髪を上げたうなじもキレイだったしな
フルーツ牛乳の瓶両手で持っちゃって、小指立ってんの。お嬢?
目つぶってコクコク飲んじゃってさ

ってばか!これじゃエロオヤジじゃんよ!
591 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:35

 ウィィン カチャッ

マッサージのローラーが止まった
横に置いてあった灰皿に煙草を落として消す

「ん、んあぁぁぁ!!」

大きく伸びをして前を見ると
いつの間にか髪を乾かし終えたいしかーさんが立ってた

「まだ濡れてんじゃん」

胸の近くまで伸びてる髪を少し触ったら
いしかーさんは、小さくビクッと震えた

「でも、いい。帰ってる間に、乾くから」

なんで震えんのさ。ウチ、なんかいけないことしたか?

「風邪ひくべ?」
「大丈夫、です」

本人がそういうならいいでしょ。
また俯いちゃったけど

「あっそ」
592 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:36

「・・・・・あの」

顔を少し上げて、じっと見つめるいしかーさん。
な、なんだよ、思いつめた顔してさ
ちょっとほっぺた赤いしさ

「なに?」
「・・・・・」

濡れた髪から覗く目が潤んで
じっとウチを見つめた

「な、なに・・・」

マッサージしたいんか?
もっと牛乳飲みたいんか?
593 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:37




だけど、それは
突然訪れる







いしかーさんはソファの肘掛に置いてた
ウチの手に、ちょっと小さな手を重ねて







唇を奪ってった


594 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:38


「・・・・・」


柔らかい、唇
震える睫
ハラリとウチの頬に落ちる長い濡れた髪
あまりの一瞬の出来事に、目なんて見開いたまま

小さく漏れた吐息

ゆっくり開かれるいしかーさんの瞼
シャンプーのいい匂いが鼻をかすめた

スローモーションに見える

いしかーさんが離れていく
ウチの手の上に置かれた手に力が入る

「・・あ・・・?」

口がぽかんと開いて、瞬きを数回繰り返す

いしかーさんは俯いて
595 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:39









「・・・好き」












ええぇぇぇぇ!?


596 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:40

「ちょ、ちょ、う、え、あ?」

ウチが頭の中を整理して必死で言葉を出そうとしてると
いしかーさんは音が立つんじゃないかってくらい
勢いよく振り向いて、ロッカーから荷物を取り出し
マンガにあるようなクルクル回った足取りで

「ごちそうさま!ありがと!おやすみ!」


 ガラガラッ ピシャン!


文字通りダッシュで帰ってった
597 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:41


あ、あ・・・え・・・うぇ!?


えっと、落ち着け


キス、されたよな?



好きって言われたよな?



よな?


よな?!



うなずけ、画面前のあんた!
598 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:42



ぽっかーん・・・


ウチは呆然として
どうしたらいいか分からなくって
しばらく止まったマッサージ機と共に時間を過ごした


599 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/09(金) 20:43

600 名前:Rink 投稿日:2005/12/09(金) 20:45
くじらと人魚 更新終了です

今回の更新分は>>517-599です
601 名前:Rink 投稿日:2005/12/09(金) 20:47
レスポンス


>名無飼育さん様
( ^▽^)<溢れちゃう♪
耳からこぼれてますよ!

>774飼育様
作者も同感でございますw

>名無飼育さん様
作者も二人もあれが限界でした
(;0T〜T)<いっぱいいっぱい
602 名前:名無 投稿日:2005/12/09(金) 21:49
おもしろい!
読んでいてすごく楽しいです^^
よっちゃんが番頭さんの銭湯いいなぁ〜(´д`)
603 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/09(金) 23:06
ひとみちゃん頑張れ!
全ては君の手に掛かっているのだぁぁぁぁ〜!!!!!!
604 名前:7&Y 投稿日:2005/12/10(土) 00:05
最近来れなかったうちに大量更新お疲れ様です♪
新作も私の好きな感じの話で嬉しいです
文字通りお腹を抱えて 大 爆 笑
恥ずかしながら終始笑いっぱなしでしたw
本編のほうもお腹いっぱいです…(*´Д`)
こちらは読んでいて本気で恥ずかしかったです(テレ
また楽しみにしております!長々失礼致しました
605 名前:名無飼育さん様 投稿日:2005/12/10(土) 22:06
よしこキスされちゃったね。
( ^▽^)やっちゃた。
606 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/10(土) 23:02
↑ネタバレ……orz
ブクマしときゃ良かった
607 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 01:18
どどどどーなるんだ?!
608 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 01:32
新作が!どきどきわくわくな展開です。
次回更新楽しみにしてます。
609 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:01

610 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:01
「それは間違いなく恋や!」
「って、誰だよ、お前!」

保田さんのお店に入ったウチは
魂が抜けたようだったらしい

多分女風呂を掃除した。したはず。
鍵も閉めてきた。しめたはず。

でもどうやってここにきたか思い出せない

今日あった出来事をごっちんに話したら
開口一番、関西弁でそう言った。

「とりあえず飲め」

そう言って、ビールを注いでくれるごっちん
611 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:02
「なんのことか、サッパリ・・・」
「ストーカーが恋する乙女だったとはねぇ」
「ちょっと、やめてよ!」
「なんでよ。だってキスされて、好き♪でしょ?恋じゃん?」
「ウチは向こうの事なんてなんもしらないの!」
「見られてたんだよ、知らない間に!」
「こわいってば!」
「恋なんて、そんなもんじゃーん?」

ほれ食えとほっけの身を箸で摘まんで向けてくれた

「はい、あなた。あーん♪」

はい、スルー

「いや、そうかもしれないけど・・・このほっけ美味いな」

「北海道産だもんねー」

北海道産をアピールしながら
カウンター越しに保田さんは嬉しそうに語ってくる
612 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:02

「純愛じゃないの。いいじゃない、吉澤。そこから発展するかもしれないし」
「そうだよ、よしこ。発展させちゃいなって」
「ちょ、ちょっとまってよ!相手は女だよ?なんで!」

「アンタねぇ、男も女も関係ないんだってば」
「な、なんでですか、保田さん!」

「好きって気持ちは止められないでしょ?」
「まぁ・・・」

ビールを一口含む

「例えばこれがきっかけで、アンタもその子好きになるかもしれないじゃん」
「そんなこと!」

「無いとは言い切れな〜い、ほい、あーん」
「んあぁ・・・このほっけ、美味いな」
「北海道産だよーん」

保田さんはまた嬉しそうにアピールした
613 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:03

「よしこ?」
「なにさ」

「あたし思うんだけど、その子かわいいんでしょ?」
「まぁ・・・普通以上に」

「だったら、頂いておきなさいって」
「な、なんで!?だったらの意味わかんねぇって」

「いい男にはいい女、いい女にはいい女、いいもの同士がくっつくの。OK?」
「は、はぁ」

「でもそのいい女がピンでいるってーことはだ」
「ことは?」

「いつかどっかの男に攫われてもおかしくない状況、これOK?」
「なんとなく・・・」

「もし、もしだよ?」
「うん」

「よしこがその子に対する気持ちが変わって、好きってなったとしようよ」
「う、うん」

「気づいたら時既に遅しってこともあるんだよ、はい、あーん」
「・・・んん。あー・・・このほっけ美味いな」

「北海道産だよー」
614 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:04

「物事にはタイミングってのがあるの。OK?」
「・・・・・」
「よしこ、いっつもタイミング逃がしてるからさ」
「・・・痛いところ突くね」

「つくね?あるよ。食べる?」
「「いただきます」」

「大学の、こともさ・・・分かるけど・・・」
「大学のことは」

「大学芋?あるよ?」
「「結構です」」

「捨てたんじゃないってのも知ってるし、よしこがふらついてんじゃないってのも知ってる」
「・・・・・」
「未来に賭けたい気持ちも、わかってる。
 でもそれも、みんな、ちょっとしたタイミングのずれて大きく変わるんだよ?」
615 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:04

確かにそうだ
少しのズレが、いずれ大きく歯車を狂わせる

ウチの選択はミスしてるのかもしれない
今更になって気づく事。
大学に行ってれば、何か変わってたのかもしれない
夢の切れ端を掴んだのかもしれない
でもそれは、全て想像でしかなく

別れ道で反対の道を選べば良かったのかもしれないと
進むところまで進んで、恨めしそうに隣の道を見つづけてる

正しいかどうか、未来にしか分からないけど
自分でも気づいてる、少しずつズレていく音がするから。
616 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:05
「その女の子、なんだっけ、名前」
「いしかーさん」
「いしかーさんだってさ、勇気振り絞ったんだとおもう」
「たしかに」
「だってさ、好きって言った後帰ったんでしょ?」
「うん」
「どういうことか分かる?」
「え?どういうって?」
「よしこに答えは求めなかったってこと」
「は、はぁ・・・」
「気づかない?」
「え、ええ・・・」
「このニブチンが・・・自分の思いを伝えたかったってこと!」
「あ、ああ・・・なんとなく分かりました」
「しかも女の子に告白して、キスするんだよ?」
「キス・・・」

「キスの天ぷらあるよ?」
「いただきます」「結構です」

「どっち?」
「「いただきます」」

「それをさ、傷つけちゃだめだとおもうんだ。ほれ、ほっけ」
「ん・・・うまい」
617 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:06

「後藤も大人になったね」

保田さんがカウンター越しに話し掛けてきた

「そう?」
「うん。昔は吉澤のほうが大人っぽかったけど」
「えへへ〜」

ウチは泡がポツポツとあがるグラスを見ながら
いしかーさんの思いつめた顔を思い出した

泣きそうになってたじゃん・・・

もしかして、ごっちんたちの言う事が正しくて
確信犯的に閉店間際に来てたのも
言い出すタイミングをうかがってたのかもしれない


 “ひとみちゃん・・・”


何回ウチを心の中で呼んでたんだろ・・・
618 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:06

「吉澤?」

グラスを握り締めて俯くウチに、保田さんは声をかけた

「はい?」
「女とか、男とか、身体の問題でしょ?」
「・・・・・」
「恋ってさ、心でするもんじゃないのかな」

グラスを持ってビールを口に含む

「色々あると思うよ、そりゃ」
「え、ええ・・・そりゃ」
「エッチしたら物足りないって思うのかもしれないしさ」

「ブブーーッ!」

 バキッ!

飲みかけていたビールを噴出した
ごっちんはほっけに刺してた割り箸が折れて顔が真っ赤になってる

「だって事実でしょ?」
「「ええ、そりゃ・・・」」
619 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:07
「それはなんとかなるってよ。愛があれば」
「恋から、愛、ですか?」
「そうそう」

「でも・・ウチは、その人のこと、知らないし」
「知っていけばいいじゃない。これから」

「でも・・・好きにならなかったら」
「その時考えればいい」

「でも。それじゃ傷つけちゃうじゃないですか」
「そんなの分からないでしょ」

「ごっちん・・・でも」
「ああああ!デモデモ星人うるさい!!」




あ・・・デモデモ星人って、ウチのことだったのか・・・

迷ってばっかで、悩んでばっかで
頭の中でぐるぐるしてるだけで、行動に出さない
後になって後悔してる、デモデモ星人・・・
620 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:08

「いつまで番頭やってるつもりなんだよ!」

ごっちんはダンッ!とコップを叩きつけた

「ちょっと、後藤、店荒らさないでね」
「おめーはクジラ追っかけに行けよ!」
「ちょ、ちょっと、ごっちん!」

「じじーがどうのとか、家がどうのとか、弟がどうのとか
 おめーの人生、おめーで作るんだろうが!!!」

ごっちんはイスを倒して立ち上がった


胸を抉り取られた
誰も言ってくれなかった言葉
誰かに言ってもらいたかった言葉

熱いものが、目からこぼれた


「よしこがやりたいことやったら、親だって納得すんだよ!」
「・・・っぐっ・・・うぐ・・・」

「いつまでたっても自分の足で立てないで、ウダウダ言って
 周りに責任なすりつけてんのと一緒だろうが!」

「ご、後藤、言い過ぎ」
「圭ちゃんは黙ってて!」
「は、はい・・・」
621 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:08

「よしこ、自分で決めなよ」


「自分の人生だろ?」


「自分の人生、自分が笑って終わらなきゃ悔しいだろ」
622 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:09

「いしかーさんも勇気出したんだよ。よしこも勇気出さんでどうすんだよ!」
「グスッ・・・それと、これとは」

「違わねぇってば!」
「そう、グスッ・・・なんかな」

ごっちんはイスを起こすと、深く息を吐いて座りなおした

「そうだって・・・」
「グズッ・・・まだ、わかんないよ・・・」

「・・・いしかーさん?」

ごっちんの口調が柔らかくなる

「だって、さっきの、こと、だし」
「まぁ、確かにね」

「女の子ってわかんない、し」
「なんとかなるってば」

「ただの客だって、おも、って、たから」

声が上ずって、うまく喋れない

「明日も来るんじゃないの?」
「たぶん・・・」
「その時、アンタがその、いしかーさん?見て
 自分の心に聞いてみればいいんだよ」

保田さんの顔は涙で滲んで見えなかったけど
優しく微笑んでくれてた
623 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:10

そうか
ウチは誰かに認めてもらいたかったんだ
ちっぽけな子供みたいな夢を
認めてもらいたかったんだ・・・

いしかーさんは、笑い飛ばしもせず、批難もせず
黙って、認めてくれたじゃないか・・・


「変な、やつって、思ったけ、ど・・・変な、気持ちになった」
「変な気持ちって?」
「わかん、ない・・・けど」

「けど?」
「なんか・・・救心欲しいっておもった」

「動悸息切れ」

保田さんはふっと微笑んだ

「まさしく恋じゃん・・・」

ごっちんはふぅっと息を吐くと小さな声で、鈍感バカよしこって言ってた

「まぁ、明日になれば分かるよ。ほら、つくね出来たよ」
「はい・・・」


つくねの味は甘辛いはずなのに
今日はやけにしょっぱかった
624 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:10
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
625 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:11


次の日
いつものように店先を履いて
営業時間に備える
長くそびえ立った煙突からはもくもくと煙が出てた
くわえ煙草の煙も、置いてかれまいとゆらゆら上る

煙突の煙は周り
煙草は自分

あとからスタートしたって
空には上れる

掴める・・・のかな・・・


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


営業時間になって
人がいつものようにやって来ては引き、来ては引き

でも、今日はなんだか違った

刻一刻と迫る閉店時間が
妙に胸を打ってた
秒針と一緒に、ウチの心臓も脈を打つ


 カチッ ボーン、ボーン、ボーン・・・


古い時計が、閉店時間の時を告げる

来なかった・・・

なんか、がっかりしてる、ウチ
626 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:12
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
627 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:12


結局あのダッシュして走り去った以来
いしかーさんは姿を見せなくなった

閉店間際、ちょっとドキドキして
やっぱり来なくてウチをしゅんとさせる
今日で何日目なんだろう・・・


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


大音量の音楽も鳴らさずに
静かに床を掃く

 ゴシャッ ゴシャッ ゴシャッ

なんだよ・・・
来ねえんじゃん

 ゴシャッ ゴシャッ ゴシャッ

気まぐれだったんだよ
そうそう、ただの出来心
ほら、ウチモテるからさ。ちょっとカッコいいからさ

 ゴシャッ ゴシャッ ゴシャッ

一人の寂しさから、人恋しかっただけなんだってば

 ゴシャッ ゴシャッ ゴシャッ


一人の孤独と、二人の孤独どっちがいい?


 “一人だと、もし倒れてても、気づかれません”

628 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:13
手を止めて、湯船の縁に腰をかける
並々と張られた湯船のお湯に映るウチの顔は
苦しそうに、歪んでた

 ポチャンッ

波紋を作って広がっていくわっか

 ポチャンッ ポチャン



 “よしこがその子に対する気持ちが変わって、好きってなったとしようよ”


 “気づいたら時既に遅しってこともあるんだよ”




「あるね・・・」

629 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:14

 カン、カランッ

絵を握っていた手を離すと
静まり返った風呂場にデッキブラシの乾いた音が響いた


ゆっくり風呂の中を覗き込む

そこには変わらず泣き顔のウチが映ってた


「なに考えてんだよ、お前・・・」


「なんも考えてないんだろ・・・」




  ドボーンッ!!

倒れこむように服のまま、頭から湯の中に沈んだ
それはクジラが潜水する時の、アーチに似てた
630 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:14


お湯の中で目を開けると
ぼやけたそこに

人魚が居た





 アカシアの雨にうたれて 泣いてた

 春風の中で月がのぼるまで

 その笑顔を しぐさを 愛しくて
 
 本気で思った 抱いて抱いて抱いて。。。




ボゴッ  ゴハッ!!


 ザバァンッ!


「ハァ、ハァ・・・」



 ピチャンッ  ピチャンッ

静まり返る風呂の中

人魚なんてどこにもいない


人魚に見えた、彼女が居たような気がしただけ

631 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:16


「その笑顔を しぐさを 愛しくて・・・ 
 本気で思った 抱いて抱いて抱いて・・・」


こうしてたら、ちょっとはクジラみたいに
でっけー気持ちになれんのかな・・・


湯船に両手を広げて、天井を見上げるように浮かんだ

632 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:17
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
633 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:18


「やーっぱ恋だね」
「そりゃ、恋でしょ」
「そうなのか・・・」

「くわしい家の場所とかもわかんないんでしょ?」
「♪待つ身のオンナでいいわ〜〜」
「テレサかよ!古いよ圭ちゃん」
「♪会えない時間が愛そだてるのさ〜」
「ひろみ郷かよ!」
「知ってるアンタも大概よ」
「あはは〜」

いつものように仕事が終わると保田さんのところに行く
毎日ほぼ強制的に来いと言われて
そんな気分じゃないんだけど、トボトボ向かう。
日に日にウチがどんよりしながら店に入ってくるのを
見るに見かねて
いい加減認めろよバカ!と言われてしまい
さっきから掛け合い漫才をひたすら続けてるごっちんと圭ちゃん

二人は気を使ってくれてるんだ、ウチに・・・
634 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:18

「なんか、欠かさず来てたからさぁ・・・」

カウンターにほっぺたをつけて、泡がぷくぷくあがるグラスを指で弾いた

「シケたツラしてんじゃないよ!ほらこれでも食え!」

サービスするからと言って
保田さんはウチの目の前にマグロとろろをドンッと置いてくれた


「はぁぁ・・・」
「ありゃりゃ、こりゃ重症ですな」
「遅咲きの恋は辛いぞぉ?」

ウチが落ちてる姿がそんなに楽しいんか、こいつら

「はぁ・・・」
「ため息ばっかついちゃって、マグロいらないんなら食べるよ?」

 ブスッ!

ズリズリ自分の方にずらすごっちんの手を制止しようと
持ってた箸で鉢の中のマグロをぶっ刺した

「ちょ、ちょっと!」
「食べるってばぁ」
「んじゃしゃきっとしろ!Humpbackめ」

Humpbackとはザトウクジラのザトウの英名で
猫背って意味
今のウチは猫背以上に猫背ってる
635 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:19

「こんなの覚えるようになったのも、よしこがクジラマニアだからだよなー」

ごっちんは自分の目の前にあるもずく酢をズズッとすすった

「クジラって人魚のモチーフ?」
「それはジュゴンでしょ」
「あっそうなの?」
「多分」

保田さんとごっちんの会話を
カウンターにおでこをくっつけて、つっぷしたまま聞いてた

「うちじゃクジラは扱ってないよ?」
「クジラ食べるとかちょっと抵抗あるなぁ」
「なんでだろうね」

「・・・したら、いいんだろ」

「「へ?」」

「どうしたら、いいのかなぁ・・・」

「なに、よしこ」


「人魚に惚れたクジラはどうしたらいいんだろう・・・」


「「・・・・・」」

二人が小さく息を漏らしたのが分かった
後から後から溢れてくる目の熱いものを止められなくて
ニスのハゲたカウンターに水溜りを作っていく
636 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:20

「・・・ほら、拭きな」

保田さんはお絞りを渡してくれる
ごっちんは何も言わず背中を撫でてくれる

2人は追いかけろよとは言わなかった
だって、追う場所が分からないんじゃ
追えやしない事が、分かってるから

待って、待ちつづけて
いずれ消すしかない って 分かってるから




クジラと人魚じゃ、恋なんて出来ないんだよ・・・

気づいた時には遅いんだ
いっつも、うちはそうだ

一人で大海を彷徨う
でかくてのろまなクジラなんだ
637 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:20
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
638 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:21
昨日はあの後ずっと泣いてて
店を早く閉めてくれた保田さんと
なんでか恋敗れ記念だって言って
飲み明かした。

付き合ってくれた2人に感謝した

おかげで笑顔を取り戻せたし
今もこうやって変わらず番頭をやってる

でもいつもならボーっと煙草ふかしたり、漫画読んだりしてたけど
今ウチの手元にはクジラの写真集がある

昔に買ってずっと大事にしていた宝物

だけど一旦奥にしまいこんでたもの

またこうやって出して見るなんて思いもしなかった
やっぱりウチは、諦めきれない


人魚は・・・諦めなきゃいけないけれど・・・
639 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:22


いしかーさんがダッシュで去ってから7日。
今でも思い出せる
濡れた髪がお湯に広がったあの横顔
ふざけてお湯を掛け合ってたあの笑顔

思いつめるように見つめる熱っぽい目
やわらかかった唇の感触


「はぁ・・・」


ウチの口からはため息ばかり
クジラの潮吹き以上に出てる
640 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:23

 カチッ ボーンッ ボーンッ・・・



今日も営業終了。

暖簾を下げに、外に出る
びゅぅぅっといつにもまして冷たい風が吹き付けた

「・・・さびぃ」

暖簾を下げて、中に入ろうとしたら
電柱の影で星明子発見。
もしくは貞子?

超怖いんすけど



・・・けど、胸が高鳴った

641 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:24
「い、いしかーさん?」

ビクッと身体を震わせて、回れ右。
いしかーさんはダッシュした

「ちょ、ちょっとまってよ!」


下駄の音が、あたりに響く

 タタタタタタタッ
 カラコロカラコロカラコロッ

「ま、待ってってば!!」

あーちくしょう!
下駄を脱いで両手に持って鬼ダッシュ!
ウチの脚力舐めてもらっちゃこまるぜ

「待っててば!」

いしかーさんの前に立ちふさがった
下駄を持った両手で腕を広げる。なんかダサい
642 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:25

「なんで逃げんの」

俯いて何にも話さない
足がジンジンする。多分擦ってるか切れてる

「ねぇ、顔あげてよ」

手を胸の前で組んで、首をプルプル横に振る

下駄を突っ込んだ手の甲で顎をグイッと上げた

「んん!」
「やっぱり・・・」


泣いてんじゃん・・・

643 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:26

「なんで、さ・・・」
「だって・・・」

「なに」
「だって・・・」

「好きだけど、もう、会っちゃいけ、ないって、おも、って」
「なんで・・・」

「だ、って・・・ひと、み、ちゃ、ん・・・」

グズグズ鼻をすすりながら涙を止めようとしてる

「なに?」

「わた、しが、勝手に、好き、になった、だけ、だもん」

胸が、キューンってなった

「見てる、だけ、でいい、っておも、ってた、けど」

ドキドキ脈が速くなる

「でも、がま、ん、出来なく、て・・・グズッ」

なんか・・・かわ、いいんですけど・・・

「だか、ら、きの、う・・・あんな、こと、し、たの」

えっと・・・なんか、すんごい、抱きしめたいんですけど


「あや、まり、たく、て」

「もう、来ないからって、言いに、きたけど」

「ひと、みちゃ、顔、みた、ら」

「こわ、くなって、ズズッ。逃げて」

「だ、から・・・」
644 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:26

コロンッ


下駄の刺さったままの手で
いしかーさんの身体を抱きしめた


「・・・どれだけ、待ってたの?」
「・・・・・」

「ねぇ」
「3、じか」

「・・・ばかじゃねぇの」
「うう、ぐすっ」

「どんだけ・・・待たせてた?」

「え・・・?」


バックバク高鳴るウチの胸のなかにいるいしかーさんが
顔を少し上げた

か、かわいいね、あなた。その上目遣いダメですよ

「だ、から・・・どんだけ、待たせた?」
「・・・2、ヶ月」

「・・・ウチ、ばかじゃん・・・」
「ちがう・・・ひとみちゃんの、せいじゃない」

「鈍感・・・だから・・・」
「違う、違う・・・」

「また、一人で、泳ぐとこだったなぁ・・・」
「え?」
645 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:27
胸からいしかーさんをひっぺがした

「なんでもない」
「・・・・・」

いしかーさんは顎を上げてウチを見つめる
だ、だからその顔はダメです・・・

目を伏せると小さく頷くいしかーさんは
涙を指で拭って

「ごめん、なさい。泣いちゃって」

えへへとはにかんだ。
超かわいいんすけど


「あーのさ・・・」
「なん、ですか?」

「いしかーさんってさ・・・」
「はい」

「人魚みたいだよね」



多分、この言葉で、彼女は何かを感じたはず
だってまた泣き出したから
646 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:28

「あの、さ・・・これから、でもいいかな」
「は、い・・・」

「その・・・えっと、よろしく」
「はい・・・」

「それよか、風呂入ってくしょ?」
「え、あ、はい・・・」

「戻るか」
「はい」

下駄をコロンと落として、履きなおす
なんか恥ずかしくて、空を見上げてるウチと
ずっと下向いてるいしかーさん

647 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:29
沈黙が嫌いなウチは
空を見つめながら話した

「でもさ・・・」
「はい?」
「先に裸見てる関係ってどうなの・・」
「・・・・・」

「「・・・・・」」

意識するから黙るなってば!
そういやこの人アドリブきかないんだっけかな
あはは、あは

「キスも、しちゃったし・・・」

それはアンタだけでしょ!
はぁぁ・・・なんだか先が思いやられそうだけど

取り合えずは、冷えたその身体をウチの湯であっためなよ
でも、手だけ先に暖めさせてもらってもいいかな?

いしかーさんの右手を
手を振りながら歩いて、偶然当たったように装って握ってみた

指先を握るって感じだったけど
いしかーさんは握り返してくれた

なんか、それだけでも、ドキドキする
風呂屋に着くまで ドキドキは治まらなかった
648 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:30


 ピチャンッ

「ふぁぁぁぁ、極楽、極楽ぅぅ」


このあいだは意識しなかったけど
っていうかさっきからかなり意識しちゃって
まともにいしかーさんを見れないんですけど
今も富士山みつめて、洗い場の方見れてないんすよ

ウチはどこまで純情なんだ?
中学生日記じゃないんだから

 チャポンッ

いしかーさんがこの間と同じように髪をアップにして
端の方から入ってきた

風呂の端と端にいる二人。
客は誰も居なくてウチらだけ
その距離だいたい5m
649 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:31

「・・・なんで、端いんのさ」
「ひとみ、ちゃんも・・・」

「・・・・・」
「・・・・・」

ウチがちょっとずつ真中に寄る
いしかーさんも真中に寄って来る

二人の距離が100cm


「クジラ」
「うん」


 ドプンッ
650 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:33



  ボコボコッ   ドクンッ トクッ ドクンッ トクッ



   コポッ  コポッ  コポコポッ



   ボコッ   ブクンッ  ドクンッ ドクンッ 


    トクッ トクッ トクッ






二人のその差 0cm


651 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:33
ザバァッ!

「ブハァァ!」
「プハァッ、ハァッ」


「なんで、中で、なのさ・・・」
「ひとみちゃんが・・・してきた、から」


そうでした、すいません・・・

髪から垂れる滴
睫を濡らす お湯を拭う



「いしかーさんのこと、さ」
「うん」

「好き、みたい、でさ」
「・・・」


濡れた頬に伝って落ちたのは
お湯じゃないって分かった
652 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:34

 ポチャンッ  ポチャンッ


「これ、から・・・知ってっても、いいかな」
「・・・うん」

また差が0cmになった



柔らかいな、この人の唇・・・



「わたしも、もっと、ひとみちゃんのこと、知りたい」
「うん・・・」

653 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:34

「もっかい、クジラ」
「うん」


ザブンッ


やっぱ、彼女は人魚だと思った


手を頬にあてて、まるで息を吹き込むみたいな
キスをする彼女

ノロマでダサかったくじらのウチに
キスの魔法で解かしてくれた

人魚な彼女の事を


知りたくなった
654 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:37



655 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:37

 カチャ ブゥゥゥゥン

「あ゛〜〜〜〜あ゛〜〜〜〜」

いしかーさんより一足お先に出てきて
毎度の如く扇風機前で宇宙人声発してるんだけど

やっぱ、その、意識ってするじゃん?
よそよそしくなるってーか
会話が弾まないわけで。
656 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:41
 ガラガラッ

長風呂クイーンが出てきたみたい

ちらっと横目で見たら、その体全体から湯気がもわもわ立っていた

エロい。どうみてもエロすぎる
存在自体がエロですね、あなた。
そそくさと身体を拭いて着替えてる。
濡れた髪が色っぺー

ウチはショーケース前に立って
今日は何を飲もうかちょっとお悩み中
確か昨日はポカリだったから・・・
やっぱ定番行っときますか

「こーひーぎゅーにゅ〜〜〜!」

ってデカイ声で叫んだものの
この間とは明らかに違う状況なもんで、恥ずかしさがこみ上げる。
657 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:42
「あ・・・えっと・・・なんか飲む?」
「いただき、ます」

キャップをあけて、手を腰に
はい、イッキ、イッキ!

・・・したかったんだけど
フルーツ牛乳の瓶を持って
ジーッと見つめるいしかーさんと目があっちゃって
半分ほどでイッキを止めてしまった

「な、なに・・・?」
「・・・・・」

そんなに見つめるなってばよ!

「の、飲む?」
「いいの?」

だって飲みたそうにしてんじゃん

「ん」
「ありがとうございます」

いしかーさんはフルーツ牛乳瓶を洗面台において
コーヒー牛乳瓶を両手で持ってクピクピ飲み始めた

あーあー、またほら小指たってんじゃんよ
両手で持たなきゃいけないほど
そんなに重いのか?この瓶
658 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:43

ってちょっとまてぇぇぇ!

か、か、か、かか間接キッス!?


「コーヒー牛乳も、おいしいね」

(*^▽^) ニコッ

















ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!


鼻血出して後ろにぶっ倒れそうになるほど
素敵なスマイル振りまいた
マッククルーも目じゃないね
いしかーさんに

( ^▽^)<ポテトもいかがですか?

なんて言われたら、芋袋1袋分下さいって言っちゃいそう
これって犯罪級の笑顔って言うんだろうな

「あ、あ、そ、そう?」

声上ずってるし、ウチ
659 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:43
「フルーツ牛乳半分こしませんか?」
「は、は!?」

はんぶんこって・・・

「ひとみちゃんのコーヒー牛乳飲んじゃったし・・・」
「あ、ああ・・・」
「これ一本飲んじゃうと、お腹こわしちゃいそうで」
「あ、え、あ」

「・・・だめ?」



ハァ━━━━━━ 0´Д`0 ━━━━━━ン!!!!




もう、ほんと勘弁してください
あなたウチを悶え死にさせる気ですか

「わ、わかった・・・」

あんまり好きじゃないフルーツ牛乳だったけど
今日に限り好きと言ってやろうじゃねえか
660 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:44

「はい、ひとみちゃん」
「あ、ありがと」

瓶を渡されたとき、指に触れてしまって
また心臓がバックバク言い出した

止まれ!止まれぇ!


いしかーさんはドライヤーで髪を乾かし始めた
ウチは半分ほど残ったフルーツ牛乳の瓶をじっと見つめる

か、か、間接キッスですよね


・・・・・



・・・




ええぃ、飲め飲めぇぇぇぇ!
661 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:45

コクッ、コクッ、コクッ

「・・・」

何でいしかーさん飲みしてんの!
小指も立ち気味だったし!

殻になった瓶を、ケースに戻した
たまには味わって飲むのもいいのかもしれないな


マッサージ機に座って、いつものように煙草をふかす

でもマッサージは今日は休み
鏡越しにいしかーさんを見ないように
天井に向かって煙草の煙をぽわっぽわっと輪っかにして吐き出した
662 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:45

 ブィィィィィィン   カチャッ

「わっか、上手ですね」
「ゲッ!ゲホッゲホッ!」
「だ、大丈夫?」

いきなり話し掛けられて咽ちゃったよオイ。
傍にかけよるいしかーさんの顔がまた八の字眉毛になってた

「あ、の・・・」
「ん、ん?」

ジーッと見つめるいしかーさん
見つめられて瞬きが多くなるウチ。

「な、な、なんでしょう?」

この間は、ここでキッスをされたんだよな
ま、また来るの?ちょ、ちょっと待ってよ
そんでもってまたアニメ走りで帰るの?

「してもいい?」
663 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:47

なに? どれ!?
キス!?

だいぶテンパり気味のウチをよそに
いしかーさんは、ウチの後ろを指さした

「マッサージ・・・」
「あ、ああ!あ、はい、ど、どぞ」

キスって・・・バカじゃん、ウチ
したいみたいじゃんか・・・。
いしかーさんに席を譲ると、おずおずと腰をかけた

「はい、スイッチオン」

 ウィィン、ゴロゴロゴロ

「ったあぁあ!」
「痛い?」

顔をゆがめて奇声を発するいしかーさん
その声はやっぱりアニメ系ね
アンタ、林家?パー子?

( ^▽^)<キャーハハハハッ! パシャッ!パシャッ!

いしかーさんがピンクのワンピースを着て
笑いながらカメラで写真を撮る姿が安易に想像出来てしまったよ

「んん、でも、っもち、いい・・・」

顔歪んで背中がぎゅっと反ってても
気持ちよさそうにしてるいしかーさん
声エロいってば!姿もエロいってば!
Tシャツしか着てないもんだから
胸が強調されてこれまたエロい。ブラはしてっけどさ・・・
ってそういうウチがエロいってば!
664 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:47
いしかーさんがマッサージ機の強さになれてきたのか
涙ちょちょ切らせつつも、気持ちよさそうにしてる。
ウチはマッサージ機の肘掛に浅く腰かけた

 ウィィィィン  カチャリッ

「ふぅ」

マッサージ機が止まって、いしかーさんが一息ついた



 カチッ カチッ カチッ

時計の音がやけに響く

 カチッ カチッ カチッ

沈黙が嫌いなんですけど
でも何話していいか、わかんないんですけど!

 カチッ カチッ ボーンッ

ビクッ!!
すんげータイミングで、ちびりそうになったじゃんかよ!
665 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:48

「あ、あの・・・」

背中の方から遠慮がちに声が聞こえた

「う、うん・・・」
「帰り、ますね」
「あ、うん・・・」
「ありがとう」
「うん・・・」

うんしか言ってねぇーし!


いしかーさんはマッサージ機から立ち上がると
ロッカーの中身を取り出して、ニットとジャケットを着込んだ

ウチは硬直したまま横目でそれを確認するしか出来なくって

「ありがとう」

いしかーさんがどこか淋しそうにお辞儀をするのを
ただ見てることしか出来なくって

スタスタと入り口の方に向かういしかーさんを

「まって!!」

呼び止めるしか出来なくって


って呼び止めてんじゃんよ!

「え?」

見返り美人とはあなたのための言葉なのですか
いしかーさん
666 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:49
「あ、あの・・・お、お、お」
「お?」
「お、おぅ、おぅ」

ウチはアシカかよ!

「なに・・・?」

いしかーさんは2、3歩戻ってくると
焦点のあってないうちの視界に入ってきた

よしこスコープON!
隊長!目標発見!目標接近!


うはぁ!
至近距離でいしかーさんがウチの顔を覗き込む

「どうしたの?」
「あ、あ・・・」

Д `)<ヘタレ!

どっかからそんな声したんですけど、気のせいですかね

「・・・お、くりぃ、ます」

やっとこでた声が、裏返ってしまった

「いい、よ・・・」

それは、どっち?いいよ?いいよ?
って文字にしたら一緒じゃん!
OKなのかNOなのか、どっち

「ひとみちゃん、お仕事、あるし」

後者なのね
667 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:50
「で、でも・・・あ、とででいいし」
「ううん、大丈夫」
「でで、でも、あぶないから」
「いいよ」

いしかーさんの目が、悲しそうに光って
静かに俯いた


あ・・・そっか
うちがぎこちないから・・・遠慮してんだ


「お、送ります!」

なんかの呪縛が解けて、ウチの声は正常に。
いしかーさんの俯いてた顔も、真っ直ぐウチに向けられた

「チャリだと、早いし」

番台にキーとマフラーと半纏を取りに行くがしかし
やっぱまだぎこちないっていうか緊張してるのか
同じ手と足が一緒に出てんですけど

ウィーン、カチャ、ウィーン、カチャ

「ダカラ送ラセテクダサイ」

メチャ棒読みじゃん!ロボコップじゃねーんだから

「プッ」

いしかーさんは口に手を当てて噴出した
668 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:51
「な、なんすか」
「だってひとみちゃんロボットみたいだもん」

あーあー、言われちゃったよオイオイ
ウチの顔が見る見るうちに赤くなるのが、自分でも分かった

「送ります」
「うん!ありがと」

(*^▽^) ニコッ






ハァ━━━━━━ 0TДT0 ━━━━━━ン!!!!


もう、救心一本じゃ足りません


─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─


風呂屋の電気を消して、入り口に鍵をかける
外に出るとビュウウウッと一段と冷たい風が吹いた
こんな中で3時間も待つなぁ・・・

豆腐屋チャリンコを押しながら風呂屋の前に行くと
白いダウンジャケットのいしかーさんが
寒そうにピンクのマフラーに顔を埋めて立ってた

赤いマフラーなら神田川なんだけど・・・
まいっか

「ほい、どうぞ」
「ありがとう」

前みたく鞄を腕にかけて、横乗りする
はい、出発

 チリンチリーン
669 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:52

「道案内してね」
「あ、うん」

と言ったけど、道を結構覚えてて
いしかーさんが言う前に

「ここ右だっけ」
「あ、そう・・・」

「次、左だよね」
「うん」

ほーらね?風呂屋だけど酒屋になれんじゃねーかってくらい
道をスイスイ進む
記憶力だけはいいみたいよ、ウチ


キュキューーー

この間止まった辺りでチャリを止める
またまた沈黙な二人

「・・・家の、前まで、行こうか?」

半纏の中に手を入れて腰をつかんでたいしかーさんの手
キュッと力が加わった

ペダルを踏んで、漕ぎ出す

「まっすぐいった、ところです」

なんか、もうちょっと一緒に居たかったから
そう言ってるみたいだった
670 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:53
しばらく自転車をこいでると、目の前にボロいアパート発見
あ、あそこかな

「あ、ここで」
「え!?」

 キキューーーー!

「・・・ここ、でいいです」
「でも、まだ先なんじゃ」
「ここが、家なんで」
「え!?」



自転車が止まった真横を見る

「メゾン、チャーミー・・・?」

ロビー目視、ガバッ!
最上階目視、クワッ!


え、えーっとぉ?
これは、いわゆる

デザイナーズマンションってやつですかい
いしかーさんは自転車から降りて、ウチの真横に立った
また俯き加減で。

「ここが、家なんです・・・」
671 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:53
よしこコンピュータ起動

 ウィィィン ピコンッ

六畳一間 便所風呂共同
 ブブーッ!

3LDK、オートロック
 ピンポーン!

「か、神田川じゃないの?!」
「え?!」

 × 神田川
 ○ セレブ

あ、えっとぉ・・・とんだ勘違いでしたのね
っていうか今のウチの格好がすんげー恥ずかしいんですけど

よしこのファッションチェック!

 足元 下駄(じーちゃん仕様、年代物)
 上下 ジャージ(グレー)
 上着 半纏(紺。じーちゃん仕様)
 胸元 オシャレな襟巻き(じーちゃん仕様)
 頭  タオル(銭湯タオル)

ピーコさん、辛口チェックお願いします・・・

.∀´)<ダメダメよ!

ありがとう、やすす・・・
672 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:55
「ここが、家なんです・・・」
「あ、あ、そ、そうな、んだ」

あははーははー。セレブが銭湯だよ。
ちょっと庶民の暮らしでも見に行こうかしら?オホホホ
って感じなんだね?

あはー・・・はは・・・

「ありがとう、ございました」
「あ、あ、いえ・・・とんでもない」

自転車の向きを換えようと、チャリを降りる

「んじゃぁ・・・」
「はい・・・」

っていうか、風呂から出てから、ずっとこんな感じじゃねぇ?
すんごいぎこちないってかさ

 “いしかーさんだってさ、勇気振り絞ったんだとおもう”

ぎこちないままで、いしかーさんとバイバイしていいのか?
おい吉澤しっかりしろ!

「じゃぁ・・・」

いしかーさんはマンションの中に入っていこうと歩き出す
その目はずっと捨て犬で八の字眉毛のままだった

絶対傷つけてる、ウチの行動で
呼び止めんかい!吉澤!
オンナ吉澤いっとかんかい!
673 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:57
「あのぉほ!」

呼び止めたはいいけど、声裏がえってんすけどね
ダセーよ、ウチ・・・

「はい?」

見返り美人リターンズ!

「あ、あの・・・その・・・」

オートロックのドアに手をかけていたいしかーさんが
ウチのほうに歩み寄ってきた

「あ、っと・・・その・・・」

自転車のスタンドを立ててハンドルから手を離した

「なに?」

いしかーさんは、たかが3ヶ月だけど
やっぱ年上で、大人なんだと思う
674 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:58
「えっと・・・その」

こんなにどうしようもなくキョドってるウチを
優しく見つめてくれるんだもん

「なあに?」

ウチの心臓をバクバクさせる上目遣いですけど。

「あの・・・」
「ん?」
「えっと・・・」
「なあに?」
「その・・・」
「どうしたのぉ?」

思ったんだけどさ
ぜってーこの人分かってやってると思う
そう言う風に言われてドギマギしちゃって
心臓バコバコ言わせて、モジモジして顔真っ赤になってる
ウチの反応が面白くて

「・・・からかってんでしょ」
「なにが?」

ほらみろ!プッて笑ったじゃないか!プッて!

「・・・んだよ」
「ごめんね?」

首を傾げてエヘッと笑った
そんな姿にもウチはバキュンなんですけどね
675 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 02:59
「だって、ひとみちゃん面白いんだもん」
「な、にが・・・」
「手足一緒に出してるし、顔はトマトみたいに真っ赤だし
 お地蔵さんみたいに固まっちゃってるし」

「トマト色の地蔵で悪かったね」
「ウフフッ」
「・・・もう、帰る!」
「あ、うん・・・」

照れくさくって、早くこの場から去りたくって
ちょっと声を荒げたら
いしかーさんがまた寂しそうな目をした

多分、これは・・・からかってない


「そんな、目されたら・・・帰れないじゃん」
「ご、めん・・・」

また俯く。
なんか、ウチの胸がキューンってなって

気づいたらいしかーさんを抱きしめてた

「あ・・・」

いしかーさんが小さく漏らした
676 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 03:00
「なんか、ほっとけないってか・・・さ・・・」
「うん・・・」
「なんか・・・あぶなっかしいってかさ・・・」
「うん・・・」
「なんか・・・かわいいっていうか・・・」
「そんな・・・こと」

そっと身体を引き離すと
震えてる長い睫の瞼がゆっくり開いた

「ない、よ?」

上目遣いはだめだって!

「あ、あるよ」
「ないってば・・・」
「あるって・・・」

唇を凝視。それこそ凝視、ガン見。
すっげー、潤んでて、柔らかそうで・・・おいしそうで・・・


気づいたら、キス してた

いしかーさんはうちの半纏の裾をギュッと握って
恥ずかしさに耐えてるみたい

ウチも、なんか恥ずかしかったけど
人目とか気になったけど
でも・・・止まらなくって

何度も何度も、唇を重ねた
677 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 03:01


どれくらいしたか
数え切れないほどしたと思う
キスの合間に白い息が何回も上がってた

いしかーさんがキスをするときのクセは
頬を手で包むようにして、キスをする

湯船の中でしたときみたいに
息を吹き込んでくれるような、優しいキス

顔を離して、また抱きしめる

「なん、か・・・ドキドキ、するんです」
「わたしも・・・」
678 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 03:02
「んと・・・帰ります」
 チュッ

「うん・・・」
 チュッ

「か、えり、ます」
「・・・帰る・・・?」
 チュッ

「う、うん・・・」
「・・・帰っちゃうの・・・?」
 チュッ

「あ、え、う・・」
「・・・うち、上がって行って・・・?」
 チュッ、チュッ

「だ、だめですって」
「・・・どうして?」
 チュッ

「だ、だって・・・」
「いいよ?」
 チュッ

「か、帰ります」
「いいのに・・・」
 チュッ

「かぁ〜えぇ〜り〜〜ますぅ〜〜?(泣)」
「いいよ・・・帰らなくて」
 チュッ

「だ、だ、だめだめだめ!」

ウチはいしかーさんの唇から離れて
ぎゅっと抱きしめた
679 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 03:03

「どうして?」

「だ、だ、だだって、今いしかーさんの家に行くと
 か、かか可愛すぎて、ウチ
 お、お、おおおお襲いそうになると思うし」




「襲って、も、いいよ」

 チュッ

680 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 03:04

ってアンタ!なんでそんなに積極的なんだよ!
大人ってこうなの?ねぇ、どうなの!

ウチが目を見開いていしかーさんを見てると
また頬に手をあてて、迎えるようにキスをした

 チュッ

「だだだ、だめ、だめだめだめだめ!」
「どうして・・・」
 チュッ

「だ、だって、こ、告白したの、きょ、今日、だし!」
「・・・上がってってよ・・・」
 チュッ

「ううぅぅぅ〜〜〜〜〜ひぃぃぃ〜〜(泣)」

もんどり打って倒れそうになってるウチの顔を引き寄せて

 チュッ

ウチの断末魔が夜の街にこだまする
っていうか、なんでこんなに積極的なのさぁ!
いや、待てよ
よくよく考えたらさ、この人結構積極的じゃなかったか?
最初からさ、ね?どう?スレの>>552-553あたりとかさ。
積極的だし、強情っていうか・・・
ただウチがヘタレなだけなのかもしれないけど

「ねぇ・・・」
「お、お〜〜〜、おふろぉ〜呂洗って、また来ますぅぅ(悶)」
「うん」


人魚に魅せられたくじらはいとも簡単に落ちました
681 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 03:04

「じゃ、じゃぁ・・・行ってきます」
「うん」

自転車のスタンドを下ろして跨る
ペダルを漕ぎ出そうとするウチにいしかーさんは

「ひとみちゃん?」
「ふぇ!?」

 チュッ

「・・・あ、ああ」
「気をつけてね」

「は、はぁぁぁぃぃいい〜〜(悶)」


風呂屋に着くまで電柱に3回激突しました

682 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 03:07

683 名前:Rink 投稿日:2005/12/11(日) 03:08
更新終了です

今回の更新は>>609-682です
684 名前:名無 投稿日:2005/12/11(日) 03:12
更新お疲れ様です。
ほんわかした雰囲気好きです。
じーちゃん仕様笑いましたw
梨華ちゃん‥めっちゃ良い‥!!!w
本領発揮って感じですね(^▽^)

685 名前:Rink 投稿日:2005/12/11(日) 03:15
レスポンス

>名無様
ありがとうございます。
前作で溜まったハッチャケギャグストレスが
ここに爆発してしまいました
よっちゃんが番頭だと服脱ぎにくいっすよね照

>名無飼育さん様
(;0T〜T)<ありがとぉ〜

>7&Y様
爆笑していただけてうれしいです。
作者もシリアスよりもギャグの方が書いてて楽しいです
本編は、ギリギリ限界ですね、ありゃ。
( ^▽^)<夜のお供にどうぞ♪

>名無飼育さん様様
( ^▽^)<食っちゃった♪
↑これだけ書くとエロい

>名無飼育さん様
( ^▽^)<こんなん出ましたけど〜

>名無し飼育さん様
よしこのバカっぷり大暴走ですw
(0^〜^)<じゅんじょーなの
686 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 03:23
すてきじゃないですか〜
687 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 03:26
やっぱり( ^▽^)∧(^〜^0)最高っ!!
次更新も楽しみにしてます!
688 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 03:43
やばいよぉ〜おもしろ過ぎる!!!
次回が楽しみでなりませぬ
689 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 04:51
へタレすぎなよっちぃと
積極的すぎな石川さんにワロタ
690 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 05:24
よっちぃと一緒にハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!
おねーさんな梨華ちゃんにクラクラです
691 名前:プリン 投稿日:2005/12/11(日) 12:03
毎日更新お疲れさまっす。
二人共可愛すぎるぜよ…w
(○^〜^)<もー最高っす!
次も待ってますYO。
692 名前:gung 投稿日:2005/12/11(日) 12:21
くぅぅぅ…可愛いすぎます。
毎日更新お疲れ様です。
見てるこっちがキュンとなりました(爆)
693 名前:7&Y 投稿日:2005/12/11(日) 17:09
前回と比べて優勢気味の梨華ちゃんステキ!
ありえないくらいドギマギしてるよっちゃんが愛しいです…
これぞいしよし( ^▽^)0^〜^)<でしょっ!!
694 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:01

695 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:02

風呂屋に着いて、ダッシュで風呂掃除

何でこんなに慌ててんだろって思うくらい
その形相たるや、誰も近づくんじゃねぇぞゴルァ!!
って感じだったと思う
鏡を見て自分が自分だと事に気づくのに、時間がかかりました


風呂掃除を終えて、これまたダッシュで部屋に入る
幾らなんでもあんなセレブレティなお家に
ジャージと半纏じゃまずいっしょ

ウチは出かけるときにしか着替えない
だって番頭なんて、オシャレしたってしかたないもん
でも、今日は違いますよ?
ダメージの入ったジーンズと、古着屋で買ったパーカーに着替える
ね?お洒落さんでしょ?ジジイ仕様は風呂屋の番頭のときだけ!
696 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:03

フライトジャケットと、ボーダーのマフラーを手にして
店先に止めた豆腐屋チャリンコに跨った。
このチャリもセレブなマンションにはどうかと思うんだけど
乗り物は父さんの車とこれしかないんでね。

あとウチが乗れる乗り物って行ったら・・・ホッピングくらい
ほら、一本足でさ、バネになっててステップに足かけてぼよーんって飛んでいくやつ。
昔よくこれで遊んだんだよ。かなりテクってるよ?ウチ。
今じゃ埃にまみれて傘立ての中にブチ込まれてるけど。
あえてこれで行ってみる?
697 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:03


(0^〜^)<ボヨーン、ボヨヨーン、いしかーさん、おまたせ!ボヨーン
( ^▽^)<ひとみちゃん、健康志向なんだね!


ってバカ!!そんなボケかましても
いしかーさんがそんな返ししてくれるわけないでしょ!


ウチ現実逃避してないかぃ?
真っ暗になった風呂屋の前でなにオタオタしてんだよ・・・
さっさと行かなきゃもう1時間近く経ってるし


いしかーさんを乗せて送った道を、今度は一人で爆走した
698 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:03
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
699 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:04
どけどけどけぃぃぃ!!
ウチは今急いでんだよ!オラオラ、どかんかい!!
いしかーさんちはもう目前!どいたどいたぁぁぁぁ!



キキューーーー!!


ちょっと待てよ
そんなに急いでどうすんの?

いしかーさんの家に行くんだよね
行ってどうすんの?


“襲って、も、いいよ”


襲いに行くの?



・・・・・
700 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:05
えっと・・・
ウチ、つい2、3時間前にいしかーさんに告ったんだよね
そんでもって
これからいしかーさんの事を知っていきたいんだって言ったんだよね
それには間違いございません

でも、知っていくってーのは
大人ないしかーさんからすると
そういうことに、なるのか?



えっと・・・




・・・帰ろう・・・





いしかーさんちのマンションの下まで
取り合えず行って、明かりを確認してから帰ろう

自転車から降りてトボトボ押して歩いてった
701 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:05
なんか、一人で舞い上がってたしなぁ
ウチ、まだそんな気ないしな

だって、女の子だもんよ。相手。
はじめてなんですよ?
いくらかわいーからってさ、襲ったり出来ないしさ
そもそも襲うって表現がさ、やなんだよな・・・

と言ってたら、いしかーさんちのマンションが見えてきた
はぁ・・・セレブレティ。はぁ・・・トボトボ

いしかーさんちのマンションまであと20mほどって時に
へたり切ってたウチの心が、また大きく鳴った


い、いしかーさん??


マンション前の植え込みに腰をかけて
ウチが来る方向を見てる

ウチったら、乗ればいいのにチャリンコを
押してあなたに猛ダッシュ (字足らず)

よしこ心の俳句より
702 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:06
「い、いしかーさん!?」

ガシャンッ 

錆びついたスタンドを立てて、いしかーさんとご対面

「何で中に入らないの!?」
「だって・・・」

そういういしかーさんの鼻と頬は真っ赤になってた

「ひとみちゃん、部屋の場所、分からないと思ったし」
「ああ、たし、かに。でも」

「それに・・・来てくれなかったら、どうしようと思ったもん」


はぁぁぁぁぁ・・・
もう、だめです
完敗です。君の瞳に乾杯です。
703 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:07
「ううん、いいの。わたしが待っときたかっただけだから」


顔を上げて、目を潤ませながら優しく笑ったいしかーさんが
なんか・・・とっても・・・

 チュッ

いしかーさんは驚いた顔をした

「・・・ごめんね」
「ううん・・・」

唇は冷たかった。目も少し赤かった。
握った手も冷たくなってる

「・・・うち、あがらせてもらっても、いい?」
「うん」


ウチはチャリンコを駐輪所に止めた
他に止まってるのはカッコいいマウンテンバイクやら折りたたみ自転車
そこに場違い豆腐屋さん。カッコ悪いけどレトロなんだぞ!年代物なんだぞ!

他のチャリに喧嘩を売って、入り口の方に行くと
いしかーさんがはにかみ笑顔でお出迎え。
ちょっと俯き加減の上目遣いで手を差し出してくれた

「ん?」
「か、か・・・」

かわぇぇ・・・
704 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:09

いしかーさんは慣れた手つきでオートロックをあける

「取り合えず、風呂入る・・・?」

ってこの質問エロすぎ!!!ちがうの、ちがうのいしかーさん!
そう言う意味じゃないの!

「あ、ああの、そうじゃなくて、冷えてるし!」
「うん・・・」
「あ、で、でも、風呂釜壊れてんだっけ」

握った手がぎゅっと締め付けられる

エレベーターに乗り込んで、8階を押すと
ドアが閉まる前にいしかーさんはこう言った

「・・・壊れてないの」


 ガーーーッ ピタッ  ウィィィィン・・・


壊れてないの

 壊れてないの

  壊れない愛がほしいの・・・


「はぁぁぁぁ!?」


   壊れない自分が欲しい・・・


壊れてないってどういうこと!?

「あれ・・・嘘なの」
「は、はぁぁぁぁ〜〜〜?」
705 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:09
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
706 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:11

「そうならそうと、言ってくれりゃいいのによー」

ザブンッ

いしかーさんのお家にお邪魔してさっそくお風呂なんぞや
頂いてるんです、よしざーさん。
壊れてない事聞いて、湯船でふんぞり返ってるわけなんです

 “ひとみちゃん、お風呂掃除の後だから、汗かいてると思って”

用意がいいねぇ、あなた。
いいお嫁さんになれると思うよ?

いしかーさんのお家はかなり広い
3LDK以上あるんじゃねぇかってくらい
お風呂だってさ、ジャグジー付きで、テレビもあって
ウチん家の風呂よりデカイんだで?
余裕で三人くらいは入れそう
しかもなんかいい匂いだし。海外の入浴剤かな。
ザバザバと足で湯を蹴る

「だぁぁ・・・なんだよ、セレブレティ」

ウチが早とちりしてまくし立てるように
神田川と決め付けたもんだから
否定出来なかったそうです。
707 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:11
それにしても、初めてお家にあがってさ
いきなり風呂ってどうゆうことさ

おい、この流れは・・・
ウチでも読めるぞ?

告白しました。ええしました。
キスしました、しました何度も
手繋ぎました、繋ぎましたよ?順序逆になったけど。
密着しました、そりゃあ、バッチリ、チャリンコで。
そしてここはいしかーさん家
んでもってお風呂
時間は夜

・・・・・


ノォォォーーーーーー!!!
違うの、違うの!
そういうんじゃないの!
汗を流したからさっぱりしてるだけなの!ホントそうなの!
信じて?ねぇ、信じて?!

「だぁぁぁぁ!!!」

 ザブンッ!

誰にも見られてないのに、恥ずかしくなって
くじらになった

 ボコボコッ
708 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:12
エレベーターの中での事を思い出す

風呂釜壊れてないといしかーさんに言われて
口から魂が抜けてった。お空の彼方にグッバイサンキュー
ウチはその場にへたり込んでしまった
だけどいしかーさんの手は離さないよ?

「お風呂入ってからでもいい?」
「え、ええ!?」
「寒いし・・・」
「あ、ああ、そうだね」
「その事、話すね・・・」
「う、うん・・・」

のっそり立ち上がると8階にご到着

 チーン ウィィン

いらっしゃいませ何名様ですか?2名です
お煙草は吸われますか?ええ吸いますけども禁煙で
まぁなんてやさしいのかしら、さすがねよしこ!



 ブハッ!!

「・・・壊れない自分が欲しい(泣)」

もう現実逃避させてください・・・
709 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:13
風呂場のドアになにやら人影が?

「お加減どうですかぁ?」
「あ、あ、い、いいです」

ひねろよ、ウチ!いしかーさんにひねろって言った分際で!

「お背中流しましょうかぁ?」
「け、けけけ、ケッコーです!!」

鶏かよ!!いしかーさんと同じ返ししてんじゃん!

 ガチャ

いしかーさんは扉を開けてひょっこりひょうたん
ひょこっと顔を横にして覗き込んできた

「わあぁぁぁっ!」

ザブンッ!!

ウチは目の下まで湯に浸かると後ろを向いた
銭湯じゃ意識しなかったけど
どうもこう密閉空間じゃ、恥ずかしいのね、裸って。

「いいの?」
「ふぉふぇ?」
「お背中流しますよ?」
「うぃ、ふぃ、ふぇふ、ぼはっ!」
「そう・・・」

 ガチャッ

ふぅ・・・
家の風呂には一人で入らせてよ
恥ずかしいじゃない。
710 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:14
ウチはまたくじらになる

 トポンッ


  ボコボコッ・・・ボコッ


 ガチャッ  パタンッ



  ボコッ   ボコッ   ドクンッ ドクンッ


 キュッ  シャァァァ    キュッ


  ドクンッ  ブクブクブクッ   ドクンッ


 チャポンッ


なにやら風呂場が騒がしい?
閉じていた目を開けると
ぼやけた水中に、ちょっと焼けた足が
足!?足!!!

 ゴフォァッ!!


ザパーンッ!!
711 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:15
「ハァ、ハァ、い、いし、いしかーさん!?」
「入っちゃった」

入っちゃったじゃないってば!
も、も、も、あ、ああああああ!

「お風呂入ってからでいい?って言ったから」
「あ、ああ・・・」

お風呂に入った後でもいい?ではなく
お風呂に入ってるときに話すね?キャハッ♪
ってことだったんか・・・そ、そか・・・
納得せざるを得ない状況ぢゃねぇか・・・


いしかーさんの髪は少し濡れていて
お湯のなかに浸っていた
銭湯じゃないから下ろしてるのか。
その髪は三角座りしてる胸を隠すように沈む

エロい、エロすぎるこの状況
712 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:16

「お風呂、壊れてないの」
「あ、はぁ・・・」
「ずっと・・・」
「そ、そうでしゅか」


シャワーからポタポタと滴が落ちる

「実は・・・2ヶ月ってのも、嘘なの」
「え、ええ!?」

いしかーさんのほうに首を向ける
いしかーさんはぶくぶくと口をお湯につけながら話し出した

「半年前に、新宿駅で見かけてたの」
「だ、誰を」
「・・・ひとみちゃん」

新宿の図書館に通い詰めてたから
新宿駅には行ってたけど

「髪が金髪できれいな人だなぁって」
「あ、ああ、そりゃ、どうも・・・」
「目立ってた。最初は外国の人かと思ったくらいだったもん」

当時は金髪で、どこの国の人?って言われてましたよ
カラコンでも入れて
「ヘ〜イ、ミィはおフランス帰りザ〜ンス」
世界のジョークショーでもやってやろうかと思ったくらい
713 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:17

「ほんの少しだけだったけど、電車が一緒で」

えっと、これはストーカーの部類?ギリセーフ?

「ずっと見てるだけでいいって・・・心の支えになってた」

あの、好きって言われたときより
ドキドキしてるんすけど、違う意味で

「だけど・・・気になって、止まらなくなって」
「あ、あぁ・・・」
「その後、一度、家までついてきたの」

尾行されてんじゃーん!
そりゃそうだわ

「そしたら、あの銭湯だったの」

なーるほど。



って納得できるか!?
714 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:20
「ホントは・・・ずっと、行かないでおこうって思ってた」

 入っちゃいけない、知っちゃいけない
 って思えば思うほど
 気になっていったの
 でも、どんどん気持ちが膨らんで
 もっと知りたいって気持ちになって・・・

「ごめんなさい・・・」

何で謝るんだ・・・
何でそんな辛そうな顔するんだよ
何で泣くんだよ
ねぇ・・・なんで?

「ごめん、な、さい」
「なんで・・・謝るのさ」
「だ、って・・・気持ち、わる、いでしょ?」
「驚いたけど・・・」
「後つけ、たり、とか、したり、グスッ」
「確かに、後から、聞いたら、怖いけど・・・」

「ぐすっ、だか、ら・・・ホントは、グスッ行かない、つもりだったの」
「風呂屋に?」
「う、うん。で、も」
「・・・でも?」
「ひと、みちゃ、んが、仲よさ、そうに、女の子、と歩い、てるの、みて」

ごっちんか?

「いて、も、たっても、いられ、なく、なって、グスッ」

それで行動に出たってわけか・・・

「・・・ごめん、なさい」
「・・・・・」

「もう、行かないから・・・」
「・・・・・」

手でバスタブの淵をぎゅっと握って
ポタポタ涙をこぼしてる
715 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:21
「だから・・・」


「嫌いに、ならない、で」


「・・・っぐぅ、せめ、て、とも、だちで、居て・・・」



待って、待ちつづけて
見てるだけでいいって思って
思いを伝えることなんて毛頭なくって
支えになって

でもウチとごっちんが歩いてるのを見て
思いが溢れ出して、思い切って風呂屋の扉を開けた


ねぇ、いしかーさん
あなたの勇気、すごいよ
マジ、尊敬する。

頭ん中で、いしかーさんの立場に立って考えただけで
胸がギュイギュイ痛んだもの



 “その時、アンタがその、いしかーさん?見て、自分の心に聞いてみればいいんだよ”

保田さんはそう言った

 “いしかーさんも勇気出したんだよ”

ごっちんはそう言った


ウチは2人より鈍い。それは認める
でも、ウチでも分かったいしかーさんの嘘
今の友達宣言、心に無い事言ったんでしょ
怖くなって嘘言ったんでしょ
716 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:22


「ばかちん」

ウチはいしかーさんの方に身体を向けて
手で水鉄砲をしてやった

 ビュッ パシャンッ

「ふぇ!?」

情けない声出すんじゃないの
また大粒の涙がボタボタ溢れてる

「そりゃ、つけられてたりしたのは、ぶっちゃけ、怖いと思ったけどさ・・・」
「うううううう」
「さっき・・・す、すす好きって、言ったじゃん」
「でも、さっき、だ、し。今、じゃ、ないし」
「そうだけど・・・なに、嫌われたいんか」

いしかーさんはブンブン首を横に振る

「うううううう」
「ウチはいしかーさんのオアシスなんでしょ?」
「ううぇぇぇえっぇぇぇ」
「よしよし」

バスタブの淵におでこをくっつけて
わんわん泣き出すいしかーさん
ウチは頭を撫でてあげることしか出来なくって。
でも・・・
泣き止んだいしかーさんの顔を見て
ウチも勇気を出して言おう
そう思った
717 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:23

「今日の、格好、ね」

泣くのが少しおさまったいしかーさんは
しゃくりあげながら話し出す

「うん?」
「あの、時と一緒なの」
「あの時?」
「はじめて、ひとみ、ちゃんを見たとき」

ありゃ、ウチそんなに衣装持ってないわけ?

「だから、さっきビックリしたんだ」
「あ、そりゃあね・・・」

「やっぱり、好きだって、思った」



 好きって言ったけど
 嘘ついてたり、後をつけたりしたこと言って
 嫌われるくらいなら、
 友達宣言しようと、勇気出そうと思ったけど
 やっぱり無理だった


そのやっぱりって事でいいんだよね?


いしかーさんは顔を上げてウチを見る
目から涙をいっぱいこぼして
でも笑った
718 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:24

ホント、人魚姫みてぇ・・・
見てるだけでいいってさ・・・
伝えられなくてもいいってさ・・・

この笑顔と涙には嘘ないって思う

「なんでウチがいしかーさんを嫌わないといかんかな」
「だ、って・・・」
「・・・変わらん」
「へ?!」
「いしかーさんの、探偵発言聞いても、気持ち変わらん」
「え・・・?」

いしかーさんは目を見開いてウチをみる
何か言いたそうに口をあけたけど
なんか、恥ずかしくって、聞きたくなくって

ウチはいしかーさんの唇を塞いだ
結構強引に

「んんっ!!」
「・・・・・」

「・・・んはっ・・・」
「いしかーさん・・・」
「な、なに・・・?」
「・・・もっと好きになった」
「なん、で」
「なんでって・・・人魚だから」
「わかんないよ・・・」
「いいよ、わかんなくて」
「なん、で」
「ウチもわかんない」

「そんな、ん!!」

さっきは触れるだけのキスだったけど
もっと、求めたくなって
ちょっと、はげしめのをお見舞いしてみました



あ、やばっ


この人、上手い


719 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:25

「んっ・・・はぁ、はぁ・・・」
「いしかーさんさ・・・」
「な、に?」

息切れてんすけど、大丈夫?

「なに?」

いしかーさんは多分
勇気出して行動したものの、やっぱ恥ずかしいんだと思う
耳まで真っ赤になってるから

「上手、だね」

お湯に波が立つほど勢いよくウチを見る
その顔はそりゃ茹でダコだったよ

出た出た、八の字眉毛。
あっはっは!あーーーっはっは・・・
はぁ・・・ウチも顔赤いじゃん
720 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:25
「あの、さ、聞きたかったんだけどさ、この家さ」
「うん・・・」
「いしかーさん家、だよね」
「うん」

「一人、暮らし、だよね?」
「うん」

「・・・バイト、何やってんの?」

ぶっちゃけ気になってた
星明子は解決したけど、次の疑問へレッツトライ


「・・・知りたい?」

そりゃ知りたいですとも、ああ知りたいさ!
メゾンチャーミーにあなたが居るわけを教えなさいよ!

「し、知りたい、です」
「それより、上がらない?」

聞いといてそれかよ!!ひっぱるのね!?
金田一少年の事件簿級にひっぱるんだ、あなた

「のぼせそうで」
「あ、そうだね」

「・・・・・」
「わたし、後ろ向いてるから」

「あ、ああ、ありがと」

 ザパァ!!

やっぱ中学生日記だよ、いつまでたってもよ〜?(涙)
721 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:27
V  ∧  V  ∧  V
722 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:28

「あ、その辺に座って?」
「はい」

風呂上り、用意してくれてたバスタオルで身体を拭いて
ジーンズに足を通した
そらぁ?バスタオル一枚で居れるわけもなく
リビングでぼーっと突っ立ってたら
部屋着に着替えた湯上り美人いしかーさんが
後ろから声をかけてくれた

この家来てすぐ、風呂入ったからさっきはなんとも思わなかったけど
なーんも無いな、この部屋
すんげー広いリビングなんだけど
風呂屋の男女の脱衣所、合わせたくらいあるか?

リビングにはソファとガラスのテーブル
その前にはデカいプラズマテレビ、オーディオとベッド。
一人住まいだから、わざわざ寝室を作ることもないってわけか
723 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:28

いしかーさんはタオルを肩にかけて
うさちゃんのスリッパでこっちに来た
そのうさちゃんスリッパ何気にかわいいね

「冷たいもの飲む?」
「あ、は、はい・・・」
「えっと・・・オレンジジュースか、コーラか、お水か」
「え、えっと、コーラで・・・」
「わかった」

嬉しそうにニコッと笑って キッチンに入ってった

ここマジで広いんすけど
てか、家賃月どれくらいなんだ

キョロキョロ辺りを見渡すと、オーディオの上に小さな写真立てがあった
遠めで見ると、お母さんらしき人と映ってる
いしかーさん、ウェアYourファーザー?
触れちゃいけないのかな
このマンションと関係してんのかな
724 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:29

「ひとみちゃん、煙草吸う?」

キッチンカウンターから顔を出すいしかーさん

「あ、や、いいよ」

うさちゃんスリッパがパタパタ動いて
廊下のほうに行った

「いいよ?吸ってくれても。ジャケットの中にあるの〜?」

遠くの方でいしかーさんが叫ぶ

「あ、あ、うん」
「ポケットの中さぐるね?いい?」
「あ、はい。怪しいものは、入ってないんで」

そう言っていしかーさんはキッチンに戻り
ガラスのオシャレな灰皿と煙草とライターを持って来てくれた
いしかーさん、吸うの?
それとも誰かのための灰皿・・・?

胸がチクリと痛んだ

煙草を取り出して火をつける
なんかきれいな部屋を煙で汚してる気分になった

また胸がチクリと痛む
725 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:30

「お待たせ」

トレーにグラスとコーラの缶と氷の入った水を乗せて
うさちゃんスリッパはこっちに来た
ウチの横から缶を置いてくれる

「あ、ぐ、グラスは、いいっす」
「ん?」

首を傾けてまた笑顔
濡れた髪が色っぽくて、笑顔がマッククルー以上で
湯上り玉子肌で・・・おでんの染みた玉子色だけど
しかもいしかーさんは、キスしてきそうな体勢

近っ!近い、近いから!
だめだってば、それ。ホント
ウチ身が持たないんすよ!

「ひとみちゃん、コーラいやだったの?」

固まってるウチをアニメ声で解いてくれる

んはっ!も、戻ったぜ
煙草の灰をトンッと落とす

「あ、いや、いただきます」

プシュッとプルタブを引いて、炭酸を一気に流し込んだ。
726 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:31

いしかーさんはトレーを戻してリピングに来ると、
んしょって言いながらウチと反対側に正座する
ソファに横並びってのも変なのか?
ウチはソファから降りて目線を合わせるように座りなおした

いしかーさんはいつものように両手でグラスを持って
コクコク水を飲んでる
いしかーさんが暑いなぁなんて手でパタパタ仰いで
やたらとせわしない、キョドってる。

なんか、居心地が、あまりよろしくない
これから質問する内容も内容だし・・・
さっきからのいしかーさんの落ち着きの無さも気になった
煙草を灰皿に押し付ける

聞かねばならないその質問を投げかけた

「・・・ん、んで、な、に?」
「え?」
「ば、バイト・・・こんな広い家に住んでるんだもんさ」
「気になる?」

だから気になるって言ってんでしょ!
727 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:33

「キャバクラ」
「・・・はぁ」

いしかーさんがパンチラのミニスカートとか履いて

( ^▽^)<3番テーブル、ボトル入りまーす♪

とか言って足とかお触りされてんの?
だからグラスを置く手がやたらとしなやかだったり
あの笑顔も営業スマイルだったわけね
なるほど、納得。
キャバはいいけど、お触りはお障りしますけどね
さすがのウチもそれはちょっと

「嘘」
「はぁ・・・」

こいつ・・・水飲みながら今プッて笑っただろ
ウチのことおもちゃにしただろ
おい、何とか言ってみろ
728 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:34



「SM女王だよ」
「あ、あああ〜〜〜」

♪職業選択の自由、アハハ〜ン
・・・いしかーさんがSM女王?
笑って鞭を振り下ろしながら

( `▽´)<オーーーッホッホッホ!女王様とお呼び!

とか言ってんの?

「嘘」
「はぁ!?」

クスクス笑ってやがる
ウチの反応見て笑ってやがる、こいつ笑ってやがる!!!
ちっきしょーーーーー!!!

「キャバ嬢でもSM女王でもないよ」
「じゃぁ、何・・・」

キャバ嬢でもなくてSM女王でもない
次は何来るんだ?
ウチは緊張しながらコーラを口に含んだ
729 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:35


「風俗」

「ブーーーッ!!」






キタ━━━ヽ(ヽ(゚ヽ(゚∀ヽ(゚∀゚ヽ(゚∀゚)ノ゚∀゚)ノ∀゚)ノ゚)ノ)ノ━━━!!!!


そりゃそうだよね
ヘルス行かなきゃこんな豪華なマンション
メゾンチャーミーに住めないもんねー

マットプレイ?放置プレイ?
マットの上であんなことやこんなことやそんなこと・・・

( ^▽^)<・・・気持ちいいですか?

待て待て待て待て待てぇぇぇーーー!!!
なんでウチそんなに詳しいわけ?
行った事なんてないよ!当たり前だ!全て妄想だってば!
作者の威厳を保つために言うけど、作者も妄想で書いてるから!
なぁ、Rink!おうよ!そうよ!どうよ!?


っておい、体売ってるって、どうよ・・・


「嘘」

いしかーさんはまた笑いながら
ティッシュでテーブルを拭きながら言った

「はぁ・・・」

ウチは煙草に火をつける
目に煙が入りそうになって、目を細めたその先に
淋しそうに揺らいだ、いしかーさんが映った
730 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:36

知ってる。
いしかーさんが嘘つく訳もわかった

怖がりなんだ、この人

ウチがいしかーさんの事、嫌いになるような言葉言って
試してるんだ
それでもウチが離れないかって・・・

始まったばっかの恋で駆け引きしなくたっていいのに

試さなきゃ、いてもたっても居られない
訳があるんだろ?そこに。


「ねぇ」
「なあに?」

笑顔でウチを見てくれた
でも、脆くていつ崩れてもおかしくない笑顔

「・・・試さなくて、いいからさ・・・言ってよ、ホントのこと」

笑顔が崩れて、泣き出した

「・・・嘘、なの」
「どっから?」
「・・・バイト」
「うん・・・」
「一人で、住んでるのは、ホント」
「うん」

聞いていいのか、その辺り
いや・・・聞いてあげなきゃよ

 “一人だと、もし倒れてても、気づかれません”

この言葉の意味に気が付いたから
こんなだだっ広い家で一人だったら・・・
731 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:37

「お母さん、は?」
「居ない」
「え?」
「死んだの」

「・・・・・」
「嘘・・・」

「・・・・・」
「ごめ・・・ホント・・・」

「いつから、この家に?」
「5年、前」
「お母さんが亡くなった後は、ずっと一人で?」
「うん・・・」

「お父さん、は?」
「・・・居る」
「どこ、に?」
「・・・・・」
「一緒に住まないの?」

・・・言いたく、ないか
732 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:38

「ここ、おじさんの家なの」
「あ、はぁ・・・」

おじさんの家?お、おじさん?

「父の、弟なの」

ああ、ホントの叔父さんなのね



「わたし、囲われてるの」


えーっとぉ・・・もちょっと砕いてプリーズ



「おじさんの愛人なの」


砕きすぎだよ、いしかーさん・・・
733 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:39

いしかーさんのお母さんは、お父さんと離婚してすぐ亡くなったそうで
お母さんのお父さんはデカイ病院の院長してて
いしかーさんの両親は政略結婚だったらしい
お父さんはお母さんに全く興味がなくて・・・
不憫に思ったお父さんの弟、おじさんが
お母さんといしかーさんに色々してくれたらしい

「父は、母を見殺しにした」

家で倒れていたお母さんを見つけたのはいしかーさん
だけど病院に運ばれても、大事な昇進会議だかなんだかのために
お父さんはお母さんの執刀をしなかった

お母さんが亡くなった後も、この家に住みつづけていい
生活費も気にしなくていい
学校も行けばいい そう言ってくれた

でも


「おじさんね・・・おかしいの」
「おか、しい・・・」

いやな雰囲気。すごく、ものすごく

「わたしの身体で、遊ぶの」

もしかして、それってさ、良くありがちなやつ?

「身体のあちこちを調べるの。お医者さんごっこって言ってる」

フフッといしかーさんは笑った
それはまるで壊れた人形のように、冷たくて自嘲してた

遊ぶっていうのは、そういう、事でいいわけ?
ドラマだけの話だと思ってたけど・・・
734 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:40

「おじさんのマンションに呼ばれて、服を脱がされて
 身体のあちこちを、器具を使って、調べるの
 おじさんは満足したら、一人でしてるの
 それを、見てろって言うの・・・終わったらお金をくれる」

無理矢理ヤられてるわけじゃないのか・・・?
確かに身体には暴力の跡なんて1つもなかった
けど、心は傷だらけなんだろう

「変態なの、おじさん」

変態プレイですか・・・

「・・・なんで、そこに行くの?」
「お母さんの支えだった人だから・・・」

そりゃそうか・・・この家買うくらいだからな・・・

「逃げる事は、出来ない、のかよ」
「逃げても、連れ戻される。絶対」

「行かなくて済むようには?」

いしかーさんは首を横に振った

「ここにくるから」
「・・・・・」

「ここには、来られたくない」



「思い出すから・・・他に行く場所なんて、ないから」




事実は小説より奇なり
いしかーさんは堪えるようにまた泣いた
735 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:41

「嘘・・・」

・・・試さなくていいよ
嘘はいいから

「ごめ、ホントな、の・・・」


ウチは煙草を灰皿に押し付けるとすくっと立ち上がった
いしかーさんは怯えた目で見上げる

「かえ・・・る・・・?」

帰る?フッ
泣いてるいしかーさんを置いて、ウチが帰るとでも?
まだこいつは言ってやがる、まったく・・・

ウチはいしかーさんの横に移動して
ため息1つ、ドカッと座りなおした

「ばかちん」
「うう、うう、ご、めん、なさい」
736 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:42

 心の支えになってたの
 ひとみちゃんのことを電車で見かけるたびに
 誰にも言えない恥辱が無くなるの

 ひとみちゃんが髪を掻き揚げる仕草に
 腕をさっと伸ばして、腕時計を見る姿に

 銭湯に行けなくなったのは
 ひとみちゃんに告白したからだけじゃなくって
 次の日・・・また・・・
 だから、だから・・・


「気持ち悪い、でしょ?」

エヘヘと笑ったいしかーさん
笑わなくていいのに

「ごめんね」

謝らなくていいのに

「嫌って、いいよ?」

嘘言わなくていいのに


「ごめん・・・嘘・・・」


「嫌わ、ないで・・・」


やっと言った 本心
737 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:43

「同情なんか、しない」

多分、この言葉でいしかーさんを傷つけた
思いっきりナイフで突き刺した

「かわいそうって、思うけど」

ぐりぐりえぐって血ダラダラ出してる

「同情しない」
「グスッ、グスッ」

でもいしかーさん、勘違いしないでね
いしかーさんに嫌悪感を抱いたんじゃないよ

「同情からじゃないから」
「グスッ・・・え?」

「いしかーさん、好きになったの」
「・・・・・」

「嘘つかんでいいから」
「グスッ、グスッ・・・うん」


“一人だと、もし倒れてても、気づかれません”

泣きながら、あの広い風呂に一人で入ってたんだろうな
ずっと、ずっと
ウチの名前、ずっと呼んでたんだろうな

ひとみちゃん、ひとみちゃんって・・・
738 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:44

そんな金貰うなよ
キャバ嬢のほうがまだ・・・

って・・・だから、試したのか・・・
あんなこと言って、ウチの態度見てたのか

なんか・・・
なんか・・・


ムカツク



「バイトしろ!バイトを!!」
「だめなの」

「はぁ!?」
「男の人に触れたら、いけないの」

「なんで!!」
「縛るから」
「し、しば、しば」
「一日中、縛られる」

「・・・・・」



「わたしは、人形なんだって・・・」

「一生、誰にも触れられず、いろって・・・」

「調べるの・・・」



なんかフツフツと怒りが込み上げる
そのオジサンってヤツにはもちろん
黙っていつまでも耐えてるいしかーさんにも

自分が、不甲斐ないって思った
タダの自己満なのかもしれないけど
739 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:44

「・・・そぉぉぉおおおお言ぃぃううことは、早く言ぇぇぇぇえ!!」

ウチはいしかーさんに怒鳴った
この上ないデカイ声で。
いしかーさんは泣くのを止めてビックリしてる

「嘘なんてつくな!な!?」
「・・・」

「返事しろ!!!」
「は、はい!」

「試さなくてもいいから!」
「はい・・・」

「ウチは試されるなんて大っ嫌いだ!!」
「ごめんなさい・・・」

「倒れそうになったら、倒れる前に呼べ!」
「は・・・い」

「気づけないだろ!!」
「はい・・・」

「倒れられるのはもっと嫌いだ!!」
「・・・・・」

「泡になって、消えるじゃんかよ」
「え・・・?」

「人魚姫・・・」
「・・・・・」

「もう、思うだけじゃなくて、いいからさ・・・」
「・・・・・」
「ウチ、居るからさ・・・」
「・・・はい」

泣きながら笑った顔は
ウチの胸を締め付ける
切なくて、美しくて

あまりにも儚かったから
苦しくて抱きしめた
740 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:46

動揺したけど、同情しなかった
情けでかわいそうって思って
いしかーさんを好きなんじゃない
ウチは、いしかーさんが好きってだけ


変態プレイのジジイをぶっ殺してやりたいって思うほど
ウチは怒りに満ちあふれてるわけで
どういう戦法を取ろうかあれやこれやと考えてたら
胸の中のいしかーさんが呟いた

「あの歌・・・好きなの」
「歌?」
「一人ぼっちで感じる孤独より・・・って」
「あ・・・ああ」
「あゆ、だよね?」
「そうなんだ・・・知らなかった」
「SURREAL・・・ずっと聴いてる」
「そう・・・」

あゆの曲は聞いたことないから、それが歌の歌詞だなんて知らなかった
今度ごっちんに借りてみよう
741 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:47

人魚姫は自分で選んだ。声を失おうとも
好きだって気持ちに正直に動いた
だから尾ビレが足に変わった。

ウチはごっちんに背中を押してもらった
変えたかったから。

さて、君はどうするものか?平成のマーメードよ


「自由になりたい?」
「・・・・・・」
「決めて」
「・・・・・」
「うちは、自由になろうと思う。いしかーさんがいてくれたから気づいた」
「・・・・・」
「もっかい聞く。自由になりたい?人魚姫。」

答え出てるんだろ?
ずっと、聞いて欲しかった言葉なんでしょ

嘘つかなくていい、試さなくて言いから
言いなよ、人魚姫
くじらはでっけ−んだぞ
大海原で1番でっけー生きモンなんだぞ?


「・・・なり、たい」

742 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:47


オッケイ、了解
ウチは意外と男勝りなんだよ
決めたら貫き通すんだよ
知らなかったでしょ。ウチも今気づいたよ
ヘタレなんてもう言わさせない

いしかーさんが居るんなら、大丈夫だと思う

743 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:48

「もっかいまとめに言ってやる。耳の穴よーくかっぽじって聞きなさい」
「は、はい」

「ウチはいしかーさんが好き」
「う、うん」

「自信持て。揺るがん。OK?」
「はい・・・」

「そのオッサンに一本背負いしてぶっ倒したいって思うほど
 今怒りに満ちあふれてる」
「そ、そんな」

「だまらっしゃい!」
「はい・・・」

「自分の好きな人の体弄くられてうれしいと思う馬鹿がどこにいんだよ!」
「・・・・・」
「一人で泣くな」
「はい・・・グスッ」

「慰めてやることもできないじゃん・・・」
「・・・・ぃ・・・グスッ」
744 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:49

「どうにか、してやるから・・・マックでバイトしろ」
「・・・マック・・・?」
「うん。いしかーさんのスマイルは金払ってもいいスマイルだから」
「・・・フッ、フフッ」
「よし・・・」

なにに良しなんだか分からないけど
自分と、約束したんだ

ウチ、もういしかーさんのことで
迷ったり悩んだり
デモデモ星人出さないって。

自分の事で怖れたり、怯えたり
ヘタレたりしないって。

いしかーさん。きみは幸せになるべきだ
そんな笑顔見せれるんだからさ
745 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:51

「ねぇ、いしかーさん」
「なに?」

さっきからずっと気になってたんだけど

「いしかーさん、煙草吸うの?」
「え!?」
「だって、灰皿・・・」

「ううん・・・無理だった」
「は?」
「ひとみちゃんが吸ってるのを見て・・・買ってみたの」
「は、はぁ・・・」
「匂いが、同じだから・・・」

離れていても、感じれる、ってか?
乙女だなぁ・・・

「でも、吸えなかった」

エヘヘと笑ういしかーさんの目からは
もう涙は出てなかった

「吸わなくてよろし」
「どうして?」
「病気になる」

そう言って、ウチは抱きしめてた腕をほどき
煙草に火をつけた

「ひとみちゃんは・・・」
「ウチは・・・いいの!」
「りふじん〜〜!」
「・・・・・すまん」
「ウフフッ、いいよ?・・・匂い、残して?」

やんわり笑ったいしかーさんがかわいくて
ウチは唇を重ねた
746 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:51

今日、なんか色んな事がありすぎて
告白して、風呂入って、告白されて、キスしてる
泣いて怒って笑って・・・

頭のなかぐちゃぐちゃだけど
でも、いしかーさんが好きってことは
変わってない、変わらない


「どうして、そんなこと、聞いたの?」
「え!?」

それ聞きますか?聞きたいんですね?どうしても

「・・・ねぇ、どうして?」
「・・・・・いや、灰皿、あるってことーはだよ」
「うん」
「誰か、来てん、の、かなって・・・おも、ってね」
「ウフフッ・・・やきもちぃ?」
「は!?」
「やきもちやいたの?」
「ちがっ・・・わないっす」

「ないっすかー」
「ないっすねー」

なんだ?この会話
多分、いしかーさんもウチと一緒

重い空気より、ハッピーな方がいいんだろう
誰だってそうか

( ^▽^)<ハッピー♪

って言葉、誰よりも似合いそうだもんな
747 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:53
いしかーさんはまたウチにキスをする
優しく包み込むようにして

この仕方も嫌いじゃない
むしろ好き

何度も、何度も


 チュッ チュッ チュッチュッチュッ

サマーパーティ?
じゃなくて!
む、むしろ、す、きなんだけど
あの、いしかーさん?
そ、そんなにしなくても。ね、ねぇ!?
だ、大丈うぶっ、だ、ってぇ〜〜〜!(悶)

「い、い、いし、いしかーさん?」
「なあに?」

灰皿に置かれた煙草は燃え尽きて長い灰を連ねていた

「な、なんでそんな猛烈キッスを・・・」
「だって・・・」
「だ、だって?」

こ、怖い。聞くのが怖い
バイトの話を聞いたときより怖い
なんでだ?
748 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:54

「・・・したいんだもん」

あ、意外とあっさり。
なるほどな。キスがしたいんだ
分かる分かる。いしかーさんとのキスは気持ちいいから

「その先のこと」












ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!



無理ですってば、早いですってば
落ち着いてください、いしかーさん
あなたさっきまで泣いてたでしょ、ねぇ
切り替え早すぎませんか?ちょっと!

確かに純情よしこはグッバイボーイ宣言しましたよ?
ウチはあなたと一緒に大海原に出ると言いました
でもね?ね?
まだ、そういうこと、早いと、おも、おも
は、はや、はやい!って押し倒されてるし!?

「ねぇ・・・」
「な、なんですか!」
「ダメ?」
「な、なんで、そんなあせ、あせ、あせるの!?」
「だって・・・」
「だ、って?」
「ひとみちゃん・・・モテそうだから」
「だーーから、ウチはあなたのものですから!!!」
「でも、やだ」

デモデモが出たよ
しかもちょっとハートマークまみれてるデモデモだし
749 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:56
「いや、今日は、も、もう、か、かえり、ます」
「帰るの?」
 チュッ
「か、えりまっす!」
「どうして?」
 チュッ
「どう、してぇってぇぇぇ〜??」
「お風呂掃除終わったんでしょ?」
 チュッ
「お、おわ、わわ、おわ」
「いいじゃん」
 チュッ
「じゃんって、あ、あああだ、あだ」
「だめ?」
 チュッ
「だめ、っていうか」
「いいの?」
 チュッ
「ま、まだ、はやいっすから!」
「いつならいいの?」
 チュッ
「い、いつって、いつ、いつ・・・」
「今でもいいってこと?」
 チュッ
「ちっがーーーーーーーう!!!」
「なにが?」
 チュッ
「こ、だ、だから、こういうこと」
「襲いそうになるんでしょ?」
 チュッ
750 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:57
いしかーさんのキスの雨のせいで
理性と本能、天使と悪魔が頭の中でささやきだした



   ⊂⊃
  ノノ ヽヽ 
Φ( ^▽^)<いけません!いけません!

 ▼ノハヽ▼
Ψ(0^〜^)<やっちゃいな、やっちゃいな〜

Φ( ^▽^)<悪魔の言うことを聞いてはいけません
Ψ (0^〜^)<やっちゃいな、据え膳食っちゃいなぁ〜?
Φ( `▽´)<面白半分に人の心を操るのはおやめなさい!
Ψ (0`〜´)<悪魔はなぁ 悪いことをするのが仕事なんだよ!
Φ( `▽´)<もー!怒った!あんたねぇ 知ってるんだからねぇ
        仕事現場に甚平にジャージ姿で来てるでしょ!!
Ψ (0`〜´)<な、なに!?
Φ( `▽´)<それに、その前髪!自分の気分でザクザク斬るでしょ
        髪も自分で染めてるから、マダラになってんのよ!
Ψ(0T〜T)<う、うるさい!



うるさいのはお前らじゃ!!!
頭の中で痴話喧嘩するなーーーー!!!!



                ⊂⊃
               ノノ ヽヽ▼ノハヽ▼
  ゴメンナサーイ!!ε=ε=ε=ε=ε= ( T▽T)T〜T0)Ψ
  
751 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 18:58
頭の中の天使と悪魔を追っ払っても
目の前には天使の顔した小悪魔がいるわけで

「いいよ?」
 チュッ

「ひとみちゃん、襲って」
 チュッ

「ねぇ、襲ってよ」
 チュッ

「ひとみちゃん」
 チュッ チュッ

「襲って?」
「むああああああ!!!」

ウチはいしかーさんの肩を持って、身体を引き離した

「ゼ、ゼィゼィ、ゼェ・・・だ、だめです」
「どうして?」

「・・・もちょっと、時間、ください」
「・・・・・」

淋しそうに俯くいしかーさん
多分、傷つけた
でも、したくないとか、そういうんじゃない
ぎゅっといしかーさんを抱きしめた
ものすごく、痛いんじゃないかってくらい

「・・・大事に、したいんす。いしかーさんのこと・・・」

「うん」

強く頷いたいしかーさん
キスの雨は、いしかーさんの身体を張った試しだったんだろうな
だって、顔真っ赤だもん
慣れないことしたんだろう

こういう試され方は、嫌いじゃないよ?
でも、あんまりされると心臓が持ちませんです
752 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 19:00

「でも・・・」

出たな?デモデモめ

「一緒に、寝よ?」
「うぇ!?」
「添い寝」

・・・添い寝、だけで済みますか?あなた

「おねんね、しよ?」
「は、はい・・・」
「でも、ひとみちゃんがしたくなったら・・・いいよ?」

疲れる、この人・・・

「嘘だよ」
「・・・知ってる」
 チュッ

ほら赤くなった。
753 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 19:02



「寝るって言っても、もう朝だね」
「うん」

広い部屋のリビングの
窓側におかれたベッドに2人

まさかこんなに親展するとは自分でも思ってませんでした
大人って怖い(泣)


「1時間経ったら、帰りますよ」
「帰るの・・・?」
「風呂屋は忙しいのです」
「う、うん・・・」
「寝てください」
「うん」

ウチは仰向けで天井を見つめる
いしかーさんはウチの方に身体を向けて
手を口の前に置いてる
横目で感じる視線。熱っぽい目線
見てる見てる、すんげー見られてる
寝なさいってば・・・
754 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 19:02


「寝ないんですか」
「ひとみちゃん見とく」
「寝なさいってばぁ・・・」
「大丈夫だよ?」
「な、なにが」
「寝込みを襲ったりはしないから♪」
「・・・そんなにウチをからかうのがおもしろい?」

ウチはいしかーさんのほうを向いて
ガン垂れてみたんだけど

「うん♪」

(*^▽^) ニコッ











ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!


だめだ、もう
無理。勝てません
755 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 19:03

「悪趣味・・・」
「フフッ」
「いしかーさんって何気にSだよね」
「ひとみちゃんはM?」
「・・・・・」
「嘘、冗談だよ」

「知ってる」

でも、いしかーさんってさ
こうやると照れて黙るんだよ

「頭あげて」
「ふぇ?」
「腕枕」
「あ・・・あ・・・」

ほーらモジモジしだした
腕を首の下に通して、グイッと引き寄せた

「・・・・・」
「どうしたの?」

ニヤニヤ、ニヤニヤ

「なん、でも、ない」

おーやおやおやおや?顔が赤いですぞぉ?
どうしましたか?いしかーさん。
郷に居れば強引にGO!
なんか違う気もするけど、まあいいか
しかし、まさか自分が腕枕する側になるとは
思っても見ませんでしたよ
756 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 19:04

「1個だけ、約束して」
「なに?」

いしかーさんがウチの胸に埋めてた顔をスポッと出した

「もう・・・会わないで。来ても、扉開けないで」

誰って言わなくても分かる
口にしたくなかったんだ

「・・・分かった」
「ん・・・」

「じゃぁ、わたしも」
「なに?」

「・・・自由に、して」

何からなんて言わなくても分かる
彼女がずっと、言いたくても誰にも言えなかった言葉

「分かった」
「うん・・・」


「「おやすみ」」
757 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/11(日) 19:12

758 名前:Rink 投稿日:2005/12/11(日) 19:13
更新終了です

今回の更新分は>>694-757です
759 名前:Rink 投稿日:2005/12/11(日) 19:14
れすぽんつ


>名無様
作者もほんわかなノリのほうが書いててたのしいですw
(0^〜^)<じいちゃんの物は年期が入ってる〜

>名無飼育さん様
( ^▽^)<ありがとうございまーす

>名無飼育さん様
最高だって♪>( ^▽^)^〜^0) <あたりまえだろ〜?

>名無飼育さん様
(0^〜^)<ありがとうごぜぃます

>名無飼育さん様
( ^▽^)<大暴走します♪
(;0T〜T)<勘弁してよ

>名無し飼育さん様
萌えていただけてこれ幸いですw

>プリン様
20歳越えてもまだ純情を押し切るよしこです
(;0T〜T)<経験値あげます

>gung様
(0^〜^)<救心いかがですか〜?
作者も動悸がしますww

>7&Y様
やっぱりいしかーさんには優位にたっていただきたくって
暴走とはちょっと違う感じでグイグイ行ってもらおうと思ったんですが
ちょっと影背負ってます。
幸薄いです、いしかーさん
760 名前:Rink 投稿日:2005/12/11(日) 19:15
いしかーさんとよしざーさんには
幸多き人生を歩んでいただきたいのですが
作者が書くとどうしてもいしかーさんは幸薄子に・・・

次回、よしこの大逆襲 お楽しみに

(0`〜´)<りーーーかちゃーーーーん!!
(;T▽T)<ひとみちゃぁぁぁん
761 名前:名無 投稿日:2005/12/11(日) 19:26
更新お疲れ様です。
今回のよっちゃん、頼もしいなぁ〜☆
幸せにしてあげれるのはよっちゃんだけですねー。
梨華ちゃんの暴走っぷりにやられましたww
続きが楽しみ!!
762 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 19:42
すっごい展開になってきましたね
763 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 20:32
ほんっとに面白いっす。
一筋縄じゃいきませんなあw
764 名前:7&Y 投稿日:2005/12/11(日) 20:37
更新お疲れ様です〜!嬉しいなぁ♪
>>729 えぇぇぇぇー!!?妄想だよね?w
よっちゃんめちゃかっこいい…です
この先すごく気になるんですがお互いの気持ちを大切にしてほしいな
幸薄子のいしかーさんもよっちゃんといれば幸せになれると思ってます
それではよしこの大逆襲、ドキドキしながら待ってます!
765 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 20:53
おっちゃん・・・
766 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 21:01
いしよしチュー三昧ww
767 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/11(日) 21:06
なんかえらい展開になってきましたなぁ
次回が待ち遠しいです
768 名前:名無し読み手 投稿日:2005/12/11(日) 21:37
この展開にビックリっす。
おもしろいw次回が楽しみです。
769 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 00:45
話の緩急がすごく好きです。
更新がむちゃくちゃ早いので必死でついて行きます。
今後も続きを楽しみにしています。
770 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:44
突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
771 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:01

772 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:02
結局あの後、寝ることが出来なかった
なんでかって?

二人とも、離れたくないって気持ちが
密着したら、更に出ちゃって

ずっと、キスしてたから

「ひとみちゃん?」
「な、に?」
 チュッ
「ねぇ・・・」
「な、んですか」
 チュッ
「苦しそうだよ?」
「だ、って、そりゃ」
 チュッ チュッ
「我慢しなくても、いいのに」
 チュッ
「がーーまん、して、ませんよぉぉ〜?」
 チュッ
「もう、黙って・・・」

 チュッ チュッ


って・・・ずっと・・・
その先のこと? それは理性が勝ちました
天使が微笑んだんです。ウチに。
でも圧勝ではなく僅差でしたけど。
773 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:02

ベッドから出るまでに時間がかかり
帰る間際も、延々と繰り返されるキスの嵐

遅咲きの恋ですから、大人との恋ですから
ハマるのも仕方ないですかね

なんとか帰ってきて、コタツに突っ伏して
睡魔と闘ってるんです


 トントンッ

勝手口がノックされる

「はぁ〜い〜?」
「おじゃま〜」
「らっしゃぁい」
「どうした、そんな疲れた声出して」
「もう、だめ」
「生気吸い取られてる?」
「ええ、ものすごく」
774 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:03
昨日あった事を、大まかに話した
いしかーさんのひととなりは話してないけど。

「あっは〜〜!春だねぇ!春、春!春が来たよ!!」
「春春連呼しないでよ」
「spring has come!フォーーー!!」
「ごっちん、うるさいよぉ」
「よしこのおかーさーーん!お赤飯炊いて〜!フォーーー!!」
「うるさいってば!」

「まぁまぁ、よかったじゃん」
「ん〜、まぁ・・・ね」
「あら、あんまりよろしくなさげ?」
「ちょっと、抱えてる問題がありまして」
「なにさ。いしかーさんが実は結婚してたとか?」
「そういうんじゃないんだけどね」

「なになに?言ってごらん?ほらほらほらほら」
「ミカンを鼻の穴に突っ込もうとするんじゃない!」
「うひひ!んで、なにさ」
「それは、ちょっと、ごっちんにも、言えない、かな」
「おおおおお、友情より恋をとりましたね?あなた!」
「いや、そういうんじゃ・・・」
「でも、それでいいと思うよ」
「そうなの?」
「うん。それでいい」
「そっか・・・」
775 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:04
いやいや、おばちゃんもうれしいよなんて言いながら
ごっちんはミカンをぽいっと口に入れた

「あ、そうだ、ごっちん。あゆのCDって持ってた?」
「んあー?あるけど?」
「あのさ・・・なんだっけかな、なんとかっていう歌入ってる」
「なんとかじゃわかんないって」
「・・・一人の孤独よりーってやつ」
「わかるか!」
「アルバムとりあえず全部貸して」
「はいはい」


ごっちんはあゆのアルバムをどっさり持って来てくれた
ウチはこの中からいしかーさんの曲を探すわけだが
かんなり時間要りません?

結局一番最後のCDにその曲が入ってた
776 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:05
CDウォークマンを持って来て
歌詞カードを見ながら番台の中で聞いてる
今日は仕事サボります。


  誰にも言えない誰かに言いたい、あの人が誰より大切って


ピアノの音が胸をキュッと締め付ける。
ごっちんには乙女心をちったー勉強しろと言われたけど
ウチにはまだまだあゆ様を味わうほどの経験値はございませんよ


いしかーさんを自由にしたいと言ったものの
どうしたら出来るのか
たとえウチが手を差し伸べたところで
掴まないなら、そこまでなんだけど

でも・・・約束したもんな
777 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:06

 ブルブルブルッ

番台の隅に置いてた携帯が震えた
ウチの携帯を鳴らすのはどなた〜〜
まぁ、この時間なら一人しかいないんだけど

『 番頭さんへ
  お仕事がんばってますか?
  さっき求人誌買ってきて
  今探してます(^▽^)
  いいのがあると、いいな 

             梨華 』

帰り際に番号交換をしたんだけど
1時間ごとにメールがいらっしゃる
まぁ、暇だからいいんだけどね
それにしても、番頭さんって・・・江戸っ子かい、アンタ

『 人魚姫へ
  今日は寒いから
  お客さんが少ないっす(TーT)
  バイトいいのあるよ!
  ダイジョーブ!
              番頭 』

送信っと・・・
人魚姫って、寒いんですけどね、とっても


タダでさえ少ない客も、今日は大寒波らしくほぼゼロ。
大丈夫?しっかりしてくださいな
いいえ大丈夫じゃありません、心が寒いんです

今日はもう閉めようかなぁ・・・
でも、閉店間際にあの人くるし
開けといた方がいっか
778 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:07


 カチッ カチッ カチッ 


 ボーンッ ボーンッ

あーあ、閉店時間でございますー
今日はなんかやる気が起きない
番台にほっぺたつけた状態で歌詞カードをずっと見てる
曲もエンドレスリピート
大音量が基本なので、周りの音は聞こえない

 シャカ、シャカ、シャカ、シャカ

「♪ん〜〜〜、ふぅ〜〜」

 シャカ、シャカ、シャカ、シャカ

「♪ララーラライ、ララーラライ」


ご陽気に鼻歌なんぞや歌ってたもんだから
客が入ってきたことも分からず
歌詞カードが手から離れた

 バサッ

「うわぁぁ!!」

どアップはあの方、そういしかーさん

「な・・・き・・・るの?」
「はぁ!?」

耳打ちしてくれるんだけど
全く聞こえませんの。

「なに、いてる、の〜?」

あ、ヘッドフォン外せばいいんじゃん

「何聞いてるのぉ〜〜!!?」
「うるせっ!!」
「あ、ご、ごめん」
「何聞いてたの?」
「んあ、あゆ」
「え?」
「歌・・・」
「あ・・・あの曲」
「うん」

いしかーさんが赤くなって俯く
なんで?ねぇなんで?
時々あなたの行動が読めないんですよ
779 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:08
「んもぅ、ひとみちゃんったら」
「な、なんですか」
「純情だね」
「は!?」

モジモジしながら身体をクルクル右に左に回転させてる
ねぇ、いいの?そんなキャラで。
あなた20歳でしょ?そろそろそのキャラ卒業すれば・・・?

「ところで、番頭さん」
「はいよ」
番台から降りて、男風呂の掃除を始める

「一緒に入りませんか?」
「い、いいけど・・・」
「やったぁ!じゃあ、待ってるね♪」
「はい・・・(照)」

これって銭湯デート?
デートっていうかウチん家じゃん
しかもマジで裸の付き合いだし
780 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:09
1時間後、男風呂掃除終了っと。
いしかーさん、お掃除終わりましたよ?
って、寝てんじゃん・・・

可愛い顔しちゃってさ

「いしかーさん?」
「・・・・・」
「いしかーさーん・・・」

だめだ、起きる気配なし
はたくか?それとも・・・あ!

「スイッチオーン」

 ブィィン ゴロンゴロン

「きゃぁぁぁぁ!!」
「あっははははは!!」

いしかーさん、びっくりたまげて腰浮くほど飛び上がってんの!
あーおもろい、おもろい

「もぉぉ、いじわるぅ!」
「起きれてマッサージも出来る。一石二鳥?」
「ちょっと違う気がするんだけど・・・」
「風呂掃除おわったよ?入る?」
「あ、うん・・・」
781 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:09

彼女は閉店間際に訪れて
ウチと一緒に風呂に入る
お湯を掛け合ったり、ボーっとしたり
くじらになったり、キスしたり

毎日飽きないねって思うくらい
毎日居た

帰りは決まって自転車で送って
家の前で部屋に上がるか上がらないかの悶絶が待ってるんだけど
いえいえ、貞操は死守されております

以前なら
「襲って?」だったのが
最近じゃ
「襲っていい?」に変更されてますけど。
782 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:10

「ねぇ、ひとみちゃん」
「ん、んん?」
 チュッ
「襲っていい?」
「おそ!?!」
 チュッ
「襲いたいのぉ」
「あ、あの、あのまだ、そんな」
 チュッ
「いつならいいの?明日?」
「明日とか」
 チュッ
「じゃぁ今日でもいいじゃん」
「だあぁからぁぁぁ(泣)」
 チュッ
「ひとみちゃん、我慢してるでしょ?」
「うぅぅぅぅぅうぅっぐううううう」
 チュッ
「しなくていいのに」
 チュッ チュッ

「き、キレイなお姉さんは、好きですかぁぁぁぁ〜???(悶)」



何でいつもそう言うのか聞いたら
だってひとみちゃんかわいいんだもん って。

おちょくられてるんですかね、ウチ
でも、なんか、それだけじゃないよな気がしてさ
必死系になってるのは、なんでなんだ?
783 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:12
  ∧  ∧  V  ∧  ∧
784 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:15

「それはねぇ、多分よしこが悪いよ」
「うんうん、悪い」
「え!?なんでなんすか!」

「女から迫らせるなんて、サイテーだね」
「男として最悪だね」
「あの、いや、ウチ男じゃないんですけど」

いしかーさんを送った後に
保田さんの店に行って、ポロッともらしたら
そう言われたんです

「でもさぁ?」
「なに、ごっちん」
「そんなに毎日一緒に居て、チューしまくってんならさ」
「うん」
「ある意味エッチと同等の体力使うようね」
「そ、そうなの!?」
「だってよしこ、最近やつれてない?」
「え!?」

慌てて壁にかけてあった鏡を見る
お肌は温泉効果でツルツルなんだけど
目の辺りが、なんかくぼんでる?
785 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:15
「若旦那、生気吸い取られてるんじゃ〜ん?」
「まぁ!そりゃ大変だ。アンタうなぎ食べる?あるよ?」
「う、うなぎは・・・ちょっと」
「んじゃ、山芋あるから麦トロ飯でも食べる?」
「いただきます・・・」

「まぁ、それにしてもいしかーさんはなんでそーも迫るのかねぇ」

ごっちんが箸を咥えて頬杖をつきながらポツリと漏らした

「それがわかんないんだよね・・・」

ビールを飲み込む

「やーっぱ、なんかあるんだべ」
「なんか、ってなにさ・・・」
「よしこが語りたがらない、いしかーさんのひととなりに
 ヒントは隠されてる」
「ほーほー」
「真実はいつも1つ!!犯人はお前だ!」

ごっちんはイスから立ち上がると、左足をイスに上げ
ウチに向かって指差した

「・・・・・」
「・・・え?滑った?」
「結構。コナン好きだから余計に。」
「すいません」
「だって分かってないんでしょ?」
「ええ、その通りでして」
「はぁ・・・」
786 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:16
「いしかーさんって子さ、アンタにも話さないんでしょ?」

保田さんはしゃこしゃこ山芋をすりながら
ウチに問いかける

「かわいいから、襲いたいって」
「本心じゃないの?」
「・・・半分半分だと思います」
「残り半分がわからないってか」
「はい」
「よしこがそれを気にする理由が、わたしは分からん」
「なんでだよ・・・」

ごっちんは目の前のハマグリの酒蒸しにパクツキながら
ウチを横目でちらりと見る

「よしこが我慢してるのバレてんでしょ?」
「え、ええ・・まぁ・・・」
「なんで我慢するの?」
「・・・なんでって・・・」
「遅いとか、早いとか、関係ないんだってば」
「で、でも!」
「なによ、わたしをデモで止めたんだから
 それ相応の納得させれる理由があるんでしょうなぁ!?」

ご、ごっちん、立ち上がって上から見ないで下さい
怖いです。咥えた貝殻、食べ終わったんなら置いて下さい

「あまりの速さに、ついていけてないんだよ・・・」
「トントン拍子ってやつか」
「うん・・・」
787 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:17

「アンタ今まで誰かと付き合ったことあるんでしょ?」
「え!?」
「ないの?高校生のときとか、最近でもいいや」
「あ、まぁ、はぁ・・・」

保田さんが、作業していた手を少し止めて
ウチを見た

「そんときはどうだったのよ」
「どうって?」
「思い出してみなよ。したいってなるまでにどれくらい時間かかったの?」
「あ、え、いや、あの・・・」
「ほら、お姉さんたちにぶっちゃけてごらん?」
「そうそうそうそう」

ごっちん、なんであんたまで入ってくんの

高校入学してすぐ付き合った人とは
結局、デート数回しただけで終わった
原因は分からない。若さゆえだからかな
その後数人と付き合ったけど
ぶっちゃけ・・・
788 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:18

「ぶっちゃけ・・・」
「「ぶっちゃけ?」」
「・・・あんまりそう言うの思わなかったです」
「したいってこと?」
「はい」
「んじゃ、いしかーさんに対しては?」
「どうなのよ、よしこの気持ちはどーなのよ!」

「戸惑ってるけど・・・あります」

「「じゃぁ行っとかんかい!!」」

「そんなんなんですか?ノリなんですか?」
「そうよ?そういうもんよ。ノリでいいんだって」
「そうそう。ノリだよ、ノリ。ああ、圭ちゃん海苔ちょうだい」
「はいはい、もう瓶ごとどうぞ」
「ありがと・・・パリパリ」
「わかんないじゃないっすか・・・女の子だしさ」
「だーから、海苔でいけっての!」
「海苔じゃなくてノリだと思われ」
「この山本山のノリのようにふわ〜っとかる〜く
 行けってことよ。ほら食え」
「ん、ありがと・・・パリパリ」
789 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:19

保田さんがウチの前にどんぶりを置いてくれた

「はい、麦トロ飯おまち」
「ありがとうございます」

保田さんの店にない物ってないんじゃないかってくらい
ポンポン料理が出てくる

「まぁ、アタシの意見を言わせてもらうとよ」
「はい」

保田さんは一息入れるために煙草に火をつけた
煙を吐き出す仕草はやっぱ貫禄ある

「なんかを忘れたいんじゃない?」

・・・思い当たる節が

「かき消したいのかもね」

変態ヤローのことか・・・?

「穴を埋めたいのかも」
「圭ちゃんエロいよ、その表現」
「想像してるアンタがエロい!」
「あはは〜」

忘れたいこと かき消したいこと

いしかーさんの前には ウチがまだ見たことのない
変態エロジジイの顔があるんだ・・・

それを、消したい、のか・・・
790 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:20

「よしこが利用されてるのかも?」
「ん〜〜、無いとも言い切れないけど」

利用・・・ウチに抱かれて
また、彼女はジジイの元へ行く

「でも20歳でしょ?そこまで頭回んなくない?」
「けど後藤、アンタにその発想出来たんだから出来るかもよ?」
「ああ、そっか」

埋めたい穴 傷ついた心
利用されてる・・・

ホントは・・・弄んでる?
ウチをからかってるだけ?
791 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:21

「違うと思う」
「「え?」」
「利用じゃ、ないって思う・・・思いたい」
「・・・・・」
「アンタしかさ、いしかーさんの事情知らないから
 アタシたちも軽はずみな事言った。ごめん」
「あ、いえ、そういうことじゃ」
「ないって顔してなかった。昔の、アンタ出てたからさ・・・ごめん」
「・・・わたしも・・・よしこ、ごめん」
「あ、あ、違います。・・・信じたいんです、彼女のこと」
「・・・そっか」
「助けたいんです、癒したいんです・・・」

「ほぉ・・・くじらもでかくなったねぇ」
「え!?」
「大海原へレッツラゴーか。お母さんはうれしいよぉ?」
「誰だよ、お前」
「後藤真希ですが何か?」
「い、いえ、なにも・・・」
「ま、とにかく食べなよ。腹が減っちゃ戦は出来ないから」
「はい、いただきます」
792 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:22
  V  V  ∧  V  V
793 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:22

今日も飲みすぎた身体で家に帰って、部屋に入る
ウチの部屋は庭にある蔵を改造して作ってもらった
部屋というかもう素晴らしい一軒家
中は二階もあって、メゾンチャーミーにも負けてないぞ?
鍵は錠前ですけど・・・


2階の寝室にあるデカイ窓から月が見えた

「でっけぇな・・・」
昔観た映画で、月がデカく海に浮かんで
くじらが泳いでる幻想的なシーンを思い出した

 カツンッ    カツンッ

窓から音がする。この時間でこの叩き方は・・・

窓を開けて下を見ると、ごっちんが小石をこっちに投げた

 ヒュンッ  

「あっぶね!」

パシッとナイスキャッチ

「よぉ〜」
「また庭木越えてきたのかよ」
「いれてくれ〜」
「じーちゃんの大事な庭木を・・・はいはい、今開けますよ」
794 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:23

ごっちんがまだ飲み足りなかったのか
家から失敬してきたビールとつまみを持って
2階に上がる。
月見酒ですか、中々乙ですな

「ねぇ、よしこ?」
「なに?」
「思ったんだけどさ」
「ん」

「よしこが人のことに真剣になってんの、初めてじゃない?」

「・・・うん、たぶん」
「昔付き合ってた彼氏のこととかでもさー」
「あ、ああ・・・」
「どーでもいい、メンドクサイが口癖だったのにね」
「そうっすね」

「なんか、妬けるな」
「は?」
「そこまで思ってもらえるいしかーさんに、会いたいな」
「あ、会うのかよ」
「うん、どんな子か見たいもん。連れて来てよ」
「そう、だね」
795 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:24

ごっちんは窓の淵に顎を乗っけて外を見る

「店でさ、言った事あるじゃん」
「うん」
「・・・よしこの気持ちがさ、そうなったら・・・」
「うん」
「かなえてやんなね」
「・・・・・」
「いしかーさん、真剣なんだってば」
「うん、それは、分かる」
「よしこをからかってるように見せるのは、恥ずかしいってのと」
「・・・と?」
「・・・まだ、つっかかってるんだよ、言い出せないんじゃないかな」
「そう、だね」
「よしこしか、居ないんならさ、よしこが取ってあげなね」
「おう・・・」

「「乾杯」」



煙草の煙がゆらゆら 月夜にのぼる
クジラのラブソングは
いしかーさんの元にも届くかな・・・


「どんなことあっても、好きです・・・」

796 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:25
  V  V  V  V  V
797 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:25

次の日も通常営業
毎日同じことの繰り返し
だけどウチは少しずつ変わり出した

ちょっと前向きにくじらを検討してるんです
最終でイルカショーのお姉さんでもいいかとか思うし

番台の中は、水族館状態
くじらやらイルカの写真や資料がいっぱいあふれてる


そういえば、店が始まってしばらくやりとりしてた
いしかーさんからメールがピタッと止まった

どこかに出かけてるのかな。新たにバイト面接?
何個か結果待ちだとは行ってたけど
ウチがマックにしろって言ったもんだから
ありとあらゆるマックに面接行ってるみたい
マック荒し・・・大丈夫かな

いしかーさんのマッククルー姿
見たいような、でもナンパされたらやだなとか
期待と不安が一杯
798 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:29

風呂屋も暇になる閉店前
ちょっとメールしてみた


『 人魚姫、人魚姫
  今はどちらの海でお泳ぎですか?

             くじら 』


 カチ、カチ、ボーン、ボーン


暖簾を下ろしに外に出る
どこを見渡しても星明子はいらっしゃらない

「今日は、来ないのか?」

なんかいつもと違う感じ
がっかりよりも
胸騒ぎがした


番台に戻って携帯を見ると新着メール1件


『 おうち 今日は行けない 』


メール短っ!!
さ、さようですか。
ここまで短いとなんか、それ以上掘り下げる気無くすっすね

『 分かった。
  風邪引かないようにして寝るんだよ
  おやすみなさい           』

その後いしかーさんからはメールが来なくなった
799 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:30

風呂の床磨きをいつものようにする
あゆのCD爆音量でかけながら

 ガシュッ ガシュッ ガシュッ

何日も続けて来てたからなんか変な感じ

 ガシュッ ガシュッ ガシュッ

習慣ってやつぅ〜?いやんよしこ照れますわ♪

 ガシュッ ガシュッ ガシュッ

それが今日は来れないと。しかも理由なく・・・
ん〜、なんか、ひっかかるんだよな


両方の風呂掃除を終えて
番台に置いてあった携帯と煙草を取る

もう一回いしかーさんのメールを見てみた


『 おうち 今日は行けない 』


行けない?
行かないじゃなくて、行けない

・・・絶対なんかある

風呂屋の鍵を閉めて
部屋に戻ってダッシュで着替える

チャリで向かうは保田さんのお店
800 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:33
  V  V  V  V  V
801 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:34

自転車を店先に乗り捨てる

 ガシャンッ!  ガラガラガラッ!

「らっしゃい!何慌ててんの?後藤ならまだ来て」

ダンッとカウンターに手をついて、保田さんと向き合う

「ハァッ、ハァッ、や、保田さん!」
「な、なによ!息切らしてさ、とりあえず座って水でも」
「い、いい。ハァッ、い、1個、ゲホッ、聴きたいことある」
「なによ」

言いたい言葉が頭の中にぐるぐる駆け巡って上手く喋れない
大きく息をついて、保田さんの目を見つめる
802 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:35


「保田さんって、もう引退したの?」


保田さんの猫目がギラリと光った
ゆっくり煙草に火をつけて、腕を組んだ

「・・・一応。なんで?」
「動かしてって言ったら動かせんの?」
「・・・出来るよ」
「そう・・・分かった」

カウンターからゆっくり離れて、また大きく息を吐く

「アンタ、なに考えてんの?」
「なんでも、ないよ」

「嘘つけ。あんだけ嫌がってたのに」
「・・・ちょっと、自分の力だけじゃ、ならなさそうになったら困るから」

「なるほどね」

「その時は、お願いしても、いいですか」
「当たり前。任しときなって」

「ありがとうございます」

身体を90度に曲げて深くお辞儀をした
803 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:36


「アンタ一人で、無茶すんじゃないよ?」
「大丈夫っす」

保田さんに背中を向けて、店を出ようと
歩き出したら

「これ、もってきな!」

 ヒュンッ  パシッ

「アンタなら、使わなくても大丈夫そうだけど」
「ありがとうございます」

 ガラガラッ ピシャンッ



「咲かせて見ましょう恋の華ってか?ああ、酒補充しなくちゃ」
804 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:45
  ∧  V  ∧  V  ∧
805 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:46

保田さんの店からノンストップノンブレーキ
立ちこぎしまくり、競輪選手も目じゃないぜ
アクセルターン!おらどけぇぇ!

「オラオラオラオラオラ!どけぇぇぇぇぇぇ!!」
「きゃぁぁ!」
「すまん!」

誰か轢きそうになった?知らん!

「どけぇぇぇぇ!どかんかい!」
「ニャーーーー!!!」
「うぉおおぉお!猫ぉ!!」

 ジャンプッ   ヒュゥゥウ、ガシャンッ!

「猫すまん!!」
「ニャ、ニャァァ〜〜」

あの猫失神したんでないか?でも知らん!
806 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:46

 キキュゥゥゥゥ〜〜〜〜〜!!

いしかーさんのマンションまで10分
今までの最短記録更新

チャリンコを駐輪場に投げ込むように止める

「ドルァ!!」


 ガシャンッ

「ん?」

いやな予感・・・
スローモーションで、自転車が将棋倒しに


 ガシャガシャガシャガシャ、ドシャーーンッ!



・ ・ ・ ・ ・



「回れ右。気のせい、気のせい」



・ ・ ・ ・ ・



「わーったよぉ!起こす起こす!(泣)」

807 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:48


セレブチャリンコを全部起こし終えて
これまたダッシュでロビーに向かう

 “ ここのロックナンバー1444だよ? ”

そう言って教えてくれたいしかーさん
待っててね!いしかーさん!

なんだか分からない胸騒ぎから
こんなに慌てて衝動に駆られてただダッシュしたけど
これでなんもなくて、家に居てさ

 “ どうしたの? ”

っていつもの笑顔を振り撒かれたら
ウチもそりゃポカーンとするよ


でも、そうじゃないんだ、頭ん中は

絶対、絶対なんかある


ドアロック、1444で解除して
エレベーターホールに向かう

「ゼェ、ゼェ・・・や、やっぱ、あの人と居ると、救心いる」
808 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:50
そういや、家を出てからずっと走りっぱなし、漕ぎっぱなし。
ぜーぜーと荒れた息を整えながら
エレベーターが上階から降りてくるのを
イライラしながら待ってたら
入り口から一人の人が入ってきた


なんか・・・嫌いなオーラ漂ってる


 チーン ウィィンッ 


「どうぞ?」
「あ、ども・・・」

なかなかジェントルですね、あなた。

エレベーターに乗り込んでボタンを押そうとしたら
ウチの指の先で『8』が点灯した


まさか、な・・・

809 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:56

「何階ですか?」

優しい口調でウチに聞いてくる

「あ、っと、6階です」

ウチの代わりに押してくれた人を
横目で確認する

グレーの高そうなロングコートにキレイに手入れされた革靴
袖からちょっと見えたシャツにはこれまた高そうなカフス
すだれ頭で、デカいパイロットケースを持ってる


「寒いですねー」

腕をさすりながら、ウチは笑顔で話し掛ける

「そうですねぇ」

柔らかな笑顔を見せて、応えた声は
とても落ち着いていた

だけど、目の奥が、濁ってる
ウチの直感は外れた事がない

「お仕事の帰りですか?」
「ええ」


「大変ですね、この時間まで」
「まぁ、今日は泊まりじゃなかったんで」


鋭い感覚が、こめかみに刺さるように伝わった


隠してる、その裏側を見抜く
ウチの直感に、例外はない

810 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:57



 “ 泊まりじゃなかったんで ”






「お泊りの仕事?」





こいつ・・・






「ええ、医師なんです」



811 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:58

 チーンッ

扉が閉じないように、手で押さえてくれる

「あ、ありがとうございます」
「いえいえ、風邪引かないようにね」

 パタンッ  ウィィィンッ・・・ 

優しい口調で、優しそうな表情で

ウチが降りたエレベーターは8で止まった




  早鐘のように打つ脈


  『今日は行けない』


   「医師なんです」




 ガチャッ!!

ウチはエレベーターの向かいにあった
非常階段の扉を勢いよく開けた
812 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 18:59
3段飛ばしで階段を駆け上る
膝にガンガン痺れがくるけど
そんなことどうでも良かった
騒音?セレブはそんなことで文句言わねぇだろうよ

8と書かれた非常扉を開けると

 キィィッ  パタンッ

いしかーさんちの家のドアが閉まった



やっぱり・・・



「ゼェ、ゼェ、ゼェ・・・」

膝が痺れる、胸が痛い
喉が張り付くように渇く

けど、関係ない
813 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:00

確かいしかーさん家の扉はカードキーのハイテクだったはず
ここまできたけど・・・

 でももし、これで開かなかったら?

すっこめ、デモデモ星人
今ウチに話し掛けたら殺すよ?
開かなかったら叩き割って入るまで


ゴクリと息を飲む

「圭ちゃん、借りたものは使いません」

素手で行きます 素手で。

首をパキパキ鳴らして。指をボキボキ鳴らして。
扉の前で目を閉じる

何もない事を祈って

だけど
そこにあるSURREALをこの目で受け止める


 オラァッ!


髪を後ろに撫で付けて目を見開き
ノブに手をかけた
814 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:01

 ガチャッ

あ、開いた。
意外と緩いセキュリティーなんだね




扉を開くと、あの男の靴が合った
いしかーさんの靴もある

奥からなにやら声がする
時々、強烈に鳴り響く乾いた音




殴ってやがんな・・・?




クソジジイ・・・コロス・・・


815 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:02



ゆっくり廊下を歩いて行く
野太い男の罵声が近くなる
悲鳴が聞こえる



リビングの扉を静かに開けると

そうSURREAL 超現実があった


816 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:02

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

817 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:05

「おまえはぁぁあ!!!」
「いやぁぁ!」
「求人誌なんか買ってバイトなんかに行きやがって!」

 バシッ!

ああ、いしかーさん、今日バイト行くはずだったのか
受かったんなら言ってくれればよかったのに・・・
そういや、秘密教えるね♪って言ってたもんな
バイトのことだったのか

「男に触れようっていうのか!」
「やめてぇぇ!」

 バシッ! バシッ!

剥ぎ取られるように服が引き裂かれて
ジーンズはもみくちゃになって投げ捨てられてる
ベッドの上で顔を隠しながら小さくなる彼女と

覆い被さる、彼女を縛り付ける

彼女の中の絶対的な威圧感

818 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:06


「あの灰皿の、あの煙草もそうなのか!!ええ!?」

 バシッ バシッ!


彼女が匂いを残していいよ?って言ってくれた
ウチと同じ煙草がキッチンカウンターに置かれてた

ねぇ、それね、タール数キツいからよしなよ
いしかーさんにマルボロメンソールは似合わない


煙草をそっと手に取ると一本取り出して火をつけた


 カキンッ  シュボッ

 スゥゥゥ・・・ハァ・・・


ジッポの音にも気づかないほど
怒りを撒き散らしている男


819 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:09

「今まで遊んでやってたが、今日という今日はもう許さないぞ!!」

男が自分のズボンのベルトをガチャガチャ外した

「男に染まる前に俺が教えてやる。俺のコレでなぁ!」

下卑た笑い声
目の前で震える彼女の泣き顔



   スゥゥ   ハァ・・・


     スゥゥ  ポワッ  ポワッ


  スゥゥゥ   ハァァァ



「残念だったなぁ!?梨華!!あっははははは!」


男は彼女の口を押さえ、身体を押し倒した


「んーーー!!んぐ、んん!!!」


ウチはベッドに上がると男の真後ろに立った



 今日という今日は許さん

 残念だったな

 俺が教えてやる



それはこっちのセリフだ、クソジジイ

820 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:10

いしかーさんはウチに気づいたのか
目を見開いて、首を横にふるふる振った

 “来ちゃだめ、ひとみちゃん!”

そう言うかのように


アンタ、襲われてもまだそんな事言ってんの?
821 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:15

男は自分の恐怖からの応えだと勘違いしたのか

「誰も助けになんて来てくれるか!!はははははは!」
「んーーー!んんんんん!!!!」
「大人しくしろ!」

 バシッ バシッ!!

「んぐぐぐぐぐ!!」
「お前みたいな汚れたガキ相手にするやつなんて居ないんだよ!」

 ここに居ますけど? お前が汚したんだろうが

「よっぽどのバカかマヌケなんだろうよ!!」

 マヌケですか、ほー、そうですか

「お前相手にしてるのは、どこのどいつだかしらんがなぁ!!!」


煙が立ち込めてるのにそれでも気づかない
バカな男の真後ろに立って

 バサッ 

顔の真横から両腕を伸ばし


「え?」


 グイッ!! グギギギギッ!!!


「うごごごごぉぉ!ぐぇぇぇえ!!!」


男の首に腕を回し、後ろに反り返りながら
怒りMAXで最大力のヘッドロックをかました
822 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:18



「杉並区在住吉澤と申しますが何か?」



咥えていた煙草の灰が、ベッドに落ちる

823 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:21

 グギギギギッ ゴキゴキッ

骨が軋む音が伝わる

「ひ、ひと、ひとみちゃ・・・」

彼女が男から解放される
ウチの目を見て、彼女は震えた
多分、見せたことのない・・・昔のウチだったから


唸るようにウチは低い声を出す


「オッサン、お前の出してるナニ仕舞え」


「が、がはぁ!!」

 グギギッ ミシッ!

「ナニなんて見慣れてるけど、オメーのは言うほどじゃねぇ」

 ビキッ ビキビキッ

「く、ぐはっ!ご、ごご!」


「黙って言う事聞かんかい。殺されたいんか」


「は、が、は、はい」

オッサンは手だけ動かして
ショボイナニをしまってベルトを締めた
824 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:22

「両手上げろ。顔の横まで」

 グギッ!ミシッ!


「ぐ、ぐぐが、ぐぁ」

「医者ならわかんだろ、テメーの骨がどうなってるかってことくらい」

オッサンは手をゆっくり上げて
顔の前まで持ってきた

「それでいいんだよ」

右腕で首をしめたまま、オッサンの左手を掴んだ
ミシミシ骨が軋む音がする
825 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:24

「オッサンよぉ・・・テメェと彼女の関係はなに」
「あ、あが、が!」

 ギギギギッ ミシッ バキッ

「ぐはぁぁっ!!」
「ほら、言えよ」

「お、叔父と、め、姪・・・」
「だよなぁ?」

 グギギギギッ!!

「ぐ、ぐぇぇぇ!」
「テメェが今やってることってーのは、なんだよ」

 ミシミシミシッ ゴキッ!

「ぐ、ぐはっ!!や、め」
「躾か?あぁ?」
「ぐ、ぐるじ、ぐるじい」

オッサンは開いた右手で空をバタバタと切ってる

「そりゃ苦しいわなぁ・・・」
「ぐ、ぐる、だ、ずけ」
826 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:28
「でもなぁ、オッサンよぉ・・・
 テメェがやってる事はどんだけ悪か知ってるか?あ?」
「あ、あが、がが」

絞められながらも首を縦に振る

「そうか、そうか・・・気づいてんなら話はやいなぁ」


ウチの目の前では彼女が口に手を当てて
ボロボロ泣いてる


ウチは目を細めて、オッサンに耳打ちした



「オッサン、悪いやつは制裁ってのを喰らうんだよ」


「これ以上、彼女に手出ししてみろ」


「テメェを迎えに、病院前で100台のバイクが待ってるからよぉ」



「ぎゃぁぁぁ!!」

オッサンの左手首を、首に回した右手で強く握り締めた

「次期院長先生?」

「お、おま、ぐぐっ、おまえは、だれっ」


今までで最高にドスの聞いた声で
オッサンに告げる

827 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:30



「関東 勇衛風永会 武栖女衆 18代目 特攻隊長」



咥えていたフィルター間際まで燃えていた煙草を
親指と人差し指で挟んで



「吉澤ひとみ 夜露死苦」



オッサンの左手にぐりぐりと煙草を押し付けた

828 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:31

 ジュゥゥゥゥッ!!


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」

なんとも情けない声を発してる
オッサンの手の甲からは煙が上がって
嫌なにおいが立ち込める

「あああうぁぁぁぁ!痛いイタイイタイ!!!」

のた打ち回るように、ベッドから飛び降りて
ぎゃーぎゃー喚き散らした


「梨華のなぁ、痛みはなぁ、そんなモンじゃねぇんだよ」


床に倒れこんでウチを見上げる
ウチが一歩近づくと、オッサンはまた一歩後ずさる


「テメーはよぉ、弱みに付け込んで、梨華の身体を弄んでんだよ」
「あああああ、ああぁぁがが!」

「分かってんのか?テメェ、オラァ!」
「あ、ああ、は、は、は、はいぃぃぃ!」

恐怖からなのか首をカクカク縦に振って震えてた
ソファの脇まで追い詰めて行き場を失うオッサンは
ひぃひぃ泣きながら許しを請う
829 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:37

「ゆ、ゆる、ゆるして、くれ、金、金なら」

 ブチッ

ウチの頭の中で何かが切れた

「このクソジジイィィ!」

 ドガッ!  ガシャーンッ!  

オッサンの顎を右足で思いっきり蹴り上げた

「うげゃぁぁぁぁぁぁ!!」

蹴られた反動でオッサンが吹っ飛んで
ソファの上に倒れこむ

ウチはゲホゲホ咽こむオッサンの胸座を掴み
至近距離で唸った

「次ツラ見せたら殺すぞ」

「あああ!ああうぁぁぁぁあ!」

ウチの手を振り払って、口から吹き出る血を押さえながら
オッサンは鞄とコートを手に取って
走って家を去ってった

 ドタドタドタッ ガチャッ! バタンッ!
830 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:39

静まり返る室内

いしかーさんに背中を向けて立ってる

けどわかる
背中からでも伝わる
彼女の、叔父からの恐怖と

ウチに対する恐怖


ゆっくりウチが振り向くと
ビクッと大きく身体を震わせたから。
ウチの姿を泣きながら怯えた目で見る
831 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:40


「なぁ・・・」

一歩、また一歩と、ベッドの上でボロボロになった彼女に近づく

「ヒッ!」

「なんで、扉開けたんだよ」
「・・・ううぐっ」

「なんで、入れたんだよ」
「・・・・ぐぐっ」

「なんで、黙ってたんだよ」
「ううぅ」

「なぁ・・・」

押さえきれない誰に向かっているのか分からない怒りが
身体全体から発される

「なぁ・・・」

ベッドに上がると
彼女は怯えながら後ずさった

一歩、一歩、にじり寄る

 ドンッ

壁に背中をつけて、俯いて、ぶるぶる震える

「おい、何とか言えよ」
「・・・ううぅう」

しゃがみこんで目線を合わせると
彼女の顎を思いっきり掴んで顔を上げさせた


「何か言えっつってんだろ!!!」



「・・・ご、めん、なさい・・・」

832 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:42


「黙ってたら、ウチは気づかないって思ったんか」

「・・・ごめん、なさい」

震えながら、小さく、首を縦に振る


「オッサンが来るのは、いつから知ってたんだよ」

黙り込む


「今日の夜か?」

「ごめん・・・んぐっ」

首を縦に振る


「ウチに嘘ついたんか」

横に振る


「試したんか」

横に振る


「じゃあなんで言わないんだよ!!!」
「ごめん、なさい」

「ごめん以外何か言え!!」
「ひとみ、ちゃ、んに・・・めいわ、く、かけたく、なか・・った」


馬鹿野郎・・・


833 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:44

ベッドから降りて
煙草を取り出して火をつける

「・・・フゥ・・・」

ため息と一緒に吐き出した

ウチの目からは怒りがまだ消えてない
彼女の目からは恐怖じゃなく・・・後悔と自責の念があった


「ごめん、なさい・・・ごめんなさい」



「もういい」

834 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:45

ウチは玄関へと続く廊下に向かって歩き出す


「ひとみ、ちゃ・・・」



「一人になりたいんだろ」




「まっ・・・」






「なれよ」



835 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:46

玄関に向かって靴を履く
男が慌てて出てったんだろう
玄関が散乱してたけど、もうどうでもいい


  ギィィッ  バタンッ




ドアを閉めて凭れながら
ずり落ちるように座り込んだ


後ろからは、叫びのような泣き声が聞こえた
836 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:47


837 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:48
更新終了です

今回の更新は>>771-836です
838 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:49
レスポンス

>名無様
(0^〜^)<そう言ってもらえてうれしいぜぃ!
いしかーさん大暴走の理由が明らかになったでしょうか?

>名無し飼育さん様
(;T▽T)<こんなんなりましたけど〜

>名無飼育さん様
捻りすぎかとも思われたのですが
苦肉の策ですw

>7&Y様
もちろん妄想ですよ!な、何言ってるんですか汗
(;T▽T)<幸せ探しに行きませんかぁ〜?
そろそろ幸多き人生を歩んでいただきたいですw

>名無飼育さん様
>おっちゃん・・・
この一言爆笑しましたww

>名無飼育さん様
わたしたち>(#´▽`)〜`O)<ラブラブなんです

>名無飼育さん様
(0^〜^)<こうなりました

>名無し読み手様
もっとライトタッチにギャグ満載するはずだったんですが
本編よりも重くなりそうで怖いです汗

>名無飼育さん様
更新早いですよね・・・やっぱりorz
なんか毎日更新がクセついてしまって、申し訳。
839 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/12(月) 19:51
またこんなところで切って!
という批難轟々のブーイング覚悟で切りました
だって、避難勧告出てるんです・・・

風板で『くじらと人魚』でスレ立てします
また中途半端で板移動になってしまって
重ね重ね申し訳ありません(_ _(--;(_ _(--; ペコペコ

今日の深夜もう一度更新します
840 名前:Rink 投稿日:2005/12/12(月) 19:51
すいません上記3つ作者です
841 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 19:54
うおぉぉぉぉっぉ
こんなところで切らないで!!!
今夜ですね?了解しました!風板でお待ちしております
842 名前:7&Y 投稿日:2005/12/12(月) 19:54
リアルタイムでお邪魔させていただきました
吉澤さんかっこいいですけどやっぱちょっと怖かった…
っていうかあぁぁぁー!!
うまく言葉になんないです…なんか、ダメだ
ちゃんと読み直させていただきます
更新お疲れさまです&ありがとうございました

もぉ!こんなとこで切っちゃって!!(お約束)
(0´〜`)<でもマッハでついてっちゃうYO〜
843 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 19:54
リアルタイムで読んでました。切なくて苦しいっす。
深夜の更新楽しみにしておきます。
844 名前:名無 投稿日:2005/12/12(月) 19:58
よっちゃん、特攻隊長だったのかぁ〜
強さにビックリww
続きが気になるー(>_<)
深夜まで楽しみにしています^^
845 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 20:05
こんなよっちぃでも´`ァ(´Д`)´`ァ
846 名前:774飼育 投稿日:2005/12/12(月) 20:20
板移動しても ついていきますよ〜
作者様深夜の更新楽しみに待ってます
847 名前:Rink 投稿日:2005/12/13(火) 00:24
風板に移動しました

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