カップリングなりきり100の質問(いしごまリアル編)
- 1 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:31
- いしごまリアル。
一昔前に流行った、100質問です。
こういうのは、小説とは言い難いので
載せても大丈夫か不安ですが、
もしアレでしたら、削除依頼してきますので。
質問提供は此方です↓
ttp://bianca77.easter.ne.jp/
- 2 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:33
- 1 あなたの名前を教えてください
石川(以下→石)「石川梨華です。よろしくお願いします。」
後藤(以下→後)「後藤真希。ヨロシクー」
- 3 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:33
- 2 年齢は?
石「20です。もうすぐ21。」
後「ごとーも20。」
石「ね。でも学年は1コ違うんだよね。
あたしの方がお姉さん。」
後「…8ヶ月だけじゃん」
- 4 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:34
- 3 性別は?
石「えと、女です。」
後「女。」
- 5 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:34
- 4 貴方の性格は?
石「負けず嫌い。」
後「空回りじゃなくて?」
石「否定できないけど…。
うー、ごっちんはどうなの?」
後「ごとーは、マイペース。」
- 6 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:35
- 5 相手の性格は?
石「ごっちんはねぇ…。
自然体だね、いつも。
何事にも動じない感じがする。」
後「えぇ〜(笑)」
石「それから、結構気遣いの人だよね。
あと、甘えんぼ!!」
後「…そうかなぁ」
石「2人きりの時は特に。可愛いよ。」
後「んぁー(照)
梨華ちゃんのがカワイイと思うけどね、ごとーは。」
石「ふふ、ありがと」
後(慣れてる…)
「梨華ちゃんは、頑張り屋だねぇ。
何事にもぜんりょくとーきゅー?」
石「疑問形(笑)」
後「一生懸命なのは梨華ちゃんの良いとこだけど、
もーちょっとね?
良い意味で、手抜けるトコは抜いてもイイと思うよ。
息抜きも必要ですよ、お姉さん?」
石「うん」
後「あと、以外に男前だよね。お姉さんな男前。」
石「何それー(笑)」
- 7 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:36
- 6 二人の出会いはいつ?どこで?
後「新メンバーとの顔合わせの時。」
石「うん。スタジオで。」
- 8 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:36
- 7 相手の第一印象は?
石「うわぁ、ゲーノージンだ。モーニング娘だー。
後藤真希だ。」
後「ふーん?」
石「あと、……ちょっと怖い。」
後「……。いーけどね別に。
ガチガチだったもんね、梨華ちゃん。」
石「だって、ずっと憧れてた人達が目の前にいるんだよ?」
後「にしても、すごかったでしょ。緊張。」
石「もぉ。いいよそれはー。
あたしの第一印象はどうだったの?」
後「ん〜。
…女の子だぁ。かな」
石「よく分かんない…」
後「キツイこと言ったらすぐ泣いちゃいそうとか、
女の子女の子してる感じだなって思った。
……ぶっちゃけ、ダイジョーブかなぁって。
ついてこれるかな、みたいなさ。」
石「う〜ん(苦笑)
確かにあたしも、あの時の自分に会ったらそう思うかも。」
後「でも、実際は全然違ったねぇ。
男前だし、よく泣くけど意地になってついて来た。」
石「負けず嫌いですから。」
- 9 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:37
- 8 相手のどんなところが好き?
後「全部。」
石「照れるねこれ。あたしも全部好きです。」
- 10 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:37
- 9 相手のどんなところが嫌い?
石「嫌いっていうか、
2人きりでいても平気でメールするところ。
ちょっと悲しくなる。
寂しいんだよ、ごっちん。」
後「う、…気を付けます。」
石「うん。ごっちんは?」
後「……誰にでも優しいトコロ。」
石「?なんで?」
後「…。いろいろあんの。とにかくヤなの。
彼女としては複雑なんですぅー。」
石「…?」
後「……。…。
…よしことか特に、あんま優しくしちゃ駄目だよ。」
石「えぇ?」
- 11 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:38
- 10 貴方と相手の相性はいいと思う?
石「もちろん。」
後「じゃなきゃここまで続いてないよ。」
- 12 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:38
- 11 相手のことを何で呼んでる?
石「ごっちん。」
後「真希ちゃんじゃなくて?」
石「!それは、だって…。
…特別だから。」
後「えへへ。
梨華ちゃんは梨華ちゃんだね。」
石「うん。」
後「あ、でも梨華ちゃん、前はごとーのこと、
“後藤さん”て呼んでたよね。」
石「いつの話よー(笑)」
後「あん時さー、ごとーのこと超怖がってたでしょ。」
石「違うよぅ。緊張してたんだよ。」
後「ふーん?
話しても敬語だし、
目もあんま合わせてくれなかったよねぇ。」
石「恥ずかしかったの。
そんなにすぐ話せないよ。
…ずっとファンだったんだもん。」
後「まぁ、あれはあれで可愛かったけど。」
- 13 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:39
- 12 相手に何て呼ばれたい?
石「今のままでいいなぁ。」
後「ごとーも。」
- 14 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:39
- 13 相手を動物に例えたら何?
石「ごっちんは猫だね。飼い猫。」
後「なんで?」
石「意外と人懐っこい所とか、
気まぐれだけど、
気を許したら体全体で甘えてくる所とかね。
似てる。」
後「梨華ちゃんは、豆柴。」
石「犬種なんだ(笑)」
後「柴犬って、なんての?忠犬?じゃんか。
でも豆柴は豆だから、ちっちゃくて背伸びしてんの。
それが、なんか、似てる。
ちっちゃいのに、忠犬してる健気な所とか。
…あと、無駄に保護欲掻き立てられるトコも。」
- 15 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:40
- 14 相手にプレゼントをあげるとしたら何をあげる?
石「お休み。
忙しい人だから、ゆっくり休んで欲しい。」
後「手料理かなぁ。」
石「ごっちんの料理美味しいから、いつでも大歓迎だよ。」
後「どーも(照)」
- 16 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:41
- 15 プレゼントをもらうとしたら何がほしい?
石「無理だけど、ごっちんの時間。
最近全然会えないから。」
後「…。うん。ごとーも、もっと会いたい。
ごとーは、…梨華ちゃんが欲しいねぇ」
石「……とっくにごっちんのだよ。」
後(この人は…)
「じゃあ、カンペキに変装できるセット。
こういう仕事してると、
なかなか外で思いっきり遊べないじゃん。
部屋でのんびり過ごすのもいいけど、
外で梨華ちゃんと一杯デートしたい。」
- 17 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:42
- 16 相手に対して不満はある?それはどんなこと?
石「お酒。」
後「んぇ…?」
石「たまに、べろべろになるまで飲むでしょ。」
後「え、うん。ホント時々だけど。
…?梨華ちゃんになんかしちゃったことあったっけ?」
石「ないけど。ていうかね、あたしの前でならいいの。
ごっちん、自分が酔ったときどうなるか分かってる?」
後「記憶飛ぶからなぁ。覚えてない。」
石「めちゃくちゃ甘えんぼになるんだよ、ごっちん。」
後「…は?」
- 18 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:43
- 石「すっごい可愛いの。うん、可愛いのはいいんだけどね。
…これあたしの個人的な我侭なんだけど、
そういう姿を、あたし以外の人に見せるのは嫌だなぁって…」
後「…それを言うなら、梨華ちゃんだって、
酔うと所構わず寝ちゃうのはどうかと思うよ。
一緒にいる人が良識ある人ならいいけど、
仮にも女の子なんだからさぁ。」
石「それは、…気を付ける。」
後「……よしこやカオリと行く時は特に気を付けてよ。
あと裕ちゃんにも。」
石「うん…?」
後(分かってんのかねぇ…)
- 19 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:43
- 17 貴方の癖って何?
石「腕を胸の前で組むこと。」
後「あー、やってるやってる。
ごとーは、……焦ると髪触る?」
石「聞かれても(笑)」
- 20 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:44
- 18 相手の癖って何?
石「ごっちんは、一緒に寝てる時いつの間にか、
あたしの胸とか鎖骨あたりに顔寄せてるよね。」
後「…落ち着くんだよね。」
石「うん。なんかね、安心しきって、
気持ち良さそうに寝てるの見ると、
あたしも嬉しいよ。
あたしは何かある?」
後「 機嫌悪くなるとあひる口になる。」
石「あー(笑)」
後「あれさぁ、ごとーには超逆効果なんだけど。
誘ってるようにしか見えない。」
石「なんで!?」
- 21 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:44
- 19 相手のすること(癖など)でされて嫌なことは?
石「ごっちんは直接関係しないけど、
会えない時に、人からごっちんのことを聞くこと。」
後「それはごとーもだよ。
ごとーはアレだね。嬉しそうにごとーに
ごとー以外の人の事を話されること。」
石「…ごめんね。」
- 22 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:45
- 20 貴方のすること(癖など)で相手が怒ることは何?
石「料理中に後ろから抱きしめる。」
後「あー。危ないからねぇ。」
後「楽屋でちゅーする。」
石「当たり前です!!」
- 23 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:45
- 21 二人はどこまでの関係?
石「…!?えぇ!?」
後「最後までな関係です。」
石「ごっちん!!」
後「付き合い長いからねぇ。」
- 24 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:46
- 22 二人の初デートはどこ?
石「どこだっけ?」
後「付き合う前の、本当に一番最初なら、
ホテル抜け出して行ったコンビニ?」
石「あったね。そんなこと(笑)
付き合ってからは、渋谷へお買い物だね。」
- 25 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:46
- 23 その時の二人の雰囲気は?
石「コンビニは悪い事してるっていうのでスリリングだった。
憧れの後藤真希と一緒で、あり得ない位どきどきしてたし。」
後「あぁ、梨華ちゃん顔真っ赤にして超可愛かった。」
石「恥ずかしかったんだよぅ。」
後「付き合ってからのは、良い感じだったよね。
てか、実はごとー嬉しすぎて、
あんまり覚えてないんだけど(笑)」
石「うそ?!あんなに楽しかったのに…。」
後「うん。すっごい楽しかったってことは覚えてる。」
- 26 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:47
- 24 その時どこまで進んだ?
後「手繋いだくらい?」
石「うん。」
- 27 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:47
- 25 よく行くデートスポットは?
石「こういうお仕事だから、
外にはあんまり行けないね。」
後「だねぇ。大抵、梨華ちゃんの家だよね。
時々、ウチにも来るけど、家族がいるからなぁ。」
石「あたし全然構わないよ?」
後「ごとーがかまうの。
ユウキとかには絶対会わせたくないもん。」
石「なんでよー。」
後「なんでも。」
(ユウキって、ごとーと趣味似てるんだよねぇ…)
- 28 名前:太 投稿日:2005/12/12(月) 00:48
- とりあえず、以上です。
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:30
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 30 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 16:56
- 特徴をよくとらえてますね〜。
読んでて「うんうん」って感じでしたw
つづき楽しみにしてます〜( *´ Д `(´▽`*)
- 31 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:19
- 26 相手の誕生日。どう演出する?
石「一日中ずっと一緒にいる。」
後「ごとーも。絶対スケジュール空ける。」
石「ふふ、ありがとう。」
- 32 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:19
- 27 告白はどちらから?
石「…あたしから。もう殆ど勢いで。」
後「へへ。あん時はごとー嬉しくて頭真っ白になったね。
でもやっぱそんな自信とか全然なかったから。
本気かどうか疑って…。
でも、顔真っ赤にして震えてる梨華ちゃん見たら
一気にどうでもよくなったね。」
石「うう。できることならやり直したい…。」
後「えー。可愛かったよ?」
- 33 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:19
- 28 相手のことを、どれくらい好き?
後「言葉じゃ言い表せないくらい。」
石「うん。大好き。」
- 34 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:20
- 29 では、愛してる?
石「愛してます。」
後「…ん、愛してる。」
- 35 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:20
- 30 言われると弱い相手の一言は?
石「“お願い、梨華ちゃん。”
これ、上目遣いで言われると…もう。
甘いって自覚はあるんだけど、
何でもしてあげたくなっちゃう。」
後「“会いたい”
反則だよねぇ、これ。
普段こういうこと言わないから、余計に、ね。
スケジュール全部蹴ってでも飛んで行って抱きしめたくなる。」
- 36 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:20
- 31 相手に浮気の疑惑が! どうする?
石「泣いちゃうなぁ。
ちゃんと話合って、もし本気なら
潔くはいかないかもしれないけど、別れる。」
後「じゃあ梨華ちゃんは泣かないね。
だってごとー浮気なんかしないし。」
石「もしもの話だよ。」
後「ごとーは、信じない。
梨華ちゃんから直接聞くまでは。」
石「…。うん。」
- 37 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:21
- 32 浮気を許せる?
石「許せない。
…けど、好きだから許しちゃうかもなぁ。」
後「許せないし、許さない。
…分かってる?梨華ちゃん。」
石「へ?」
- 38 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:21
- 33 相手がデートに1時間遅れた! どうする?
後「梨華ちゃんは普段遅れるとか絶対無いし、
連絡も無しにドタキャンするような人じゃないから
抜けられない用事とかできて、連絡取れないのかもしれないし
とりあえず待ってる。こういう仕事だしね。」
石「あたしも。
事故かなとか、変な人に捕まってないかとか、
色々考えちゃって動けないと思うな。」
- 39 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:22
- 34 相手の身体の一部で一番好きなのはどこ?
後「耳。」
石「…みみ?」
後「梨華ちゃんは?」
石「…。…手かな。」
後「そーなの?」
石「うん。
ごっちんの手って指長くてすっごく綺麗。
見た目、冷たい感じだけど本当は温かくて、
…ごっちんの手で頭撫でてもらうの、好き。」
後「うへへー(嬉)
ありがと。」
石「ごっちんは何で耳なの?」
後「ちっちゃくて、照れてる時とかに赤くなんのが超可愛いの。
食べたくなるね。」
石「……。」
- 40 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:22
- 35 相手の色っぽい仕種ってどんなの?
石「…お水飲んでる時。」
後「色っぽい、それ?」
石「うん。飲んでる時の唇から首の下までのラインがね、
色っぽい。」
後「そぉ?てか、よく見てるねそんなとこ。」
石(目が行っちゃうんだもん)
「ごっちんは?」
後「んぅ〜。梨華ちゃんは体からしてヤラシイからねぇ。」
石「…色っぽい、だってば。」
後「ごとーは、見下ろされるとヤバイね。
いつもは見上げられることの方が多いから、
たまに見下ろされるとドキドキする。」
石「ごっちんの方が背高いもんね。
でも、あたし見下ろしたことなんてあったっけ?」
後「…夜とか、ベッ」
石「わあぁぁ!!!(焦)
ごごごご、ごっちん!言わなくていいから!!」
後「照れてるー(笑)」
- 41 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:22
- 36 二人でいてドキっとするのはどんな時?
後「2人でいる時はいつもドキドキしてるよ。」
石「だね。
あ、でも、テレビとか観てて、気付いたらごっちんが
あたしの肩に頭乗せて寝てたりするとドキっとする。」
- 42 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:23
- 37 相手に嘘をつける? 嘘はうまい?
後「梨華ちゃんは下手だよね〜。すぐに顔に出るでしょ。」
石「うん。すぐバレちゃうな。」
後「意地になって、無理な嘘をつき通そうとするのが面白いよね。」
石「う、うるさいなー。引くに引けない時もあるんですっ。
ごっちんは?」
後「嘘つかないけど、
もし、ついたら結構バレないと思うね。」
石「ポーカーフェイスだもんね、ごっちん。」
後「ババ抜き超強いよ。」
- 43 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:23
- 38 何をしている時が一番幸せ?
石「2人でソファでくっ付いて座ってぼーっとしてる時。」
後「あー、気持ち良いよね。
ごとーは、朝起きた時かな。」
石「ごっちん朝弱いのに?」
後「そういうことじゃなくて。
…朝起きた時にさ、
隣に寝てる梨華ちゃんを見つけたり、
一番最初におはようって言ったり、
なんつーの?幸せ、みたいな。ねぇ。」
石「……照れるねこれ。
あたしもごっちんの寝顔見てると幸せだよ。」
- 44 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:23
- 39 ケンカをしたことがある?
後「ある。」
石「ね。しょっちゅうしてるよね。」
- 45 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:24
- 40 どんなケンカをするの?
後「映画どれ観るかで揉めたり、
勝手にお菓子食べた食べてないですることもあるし。
くっだらないことでケンカしてるよね、結構。」
石「でも、1回だけすごいひどいケンカしたことあったよね。」
後「あー、別れるとかまでなったやつ?」
石「うん。もうあたし絶対駄目だと思ったもん。
ごっちんは別れるって言うし、目合わせてくれないし。
悲しくて涙止まらなかったなぁ。」
後「…ごとーの方が、もう駄目だって思ってたよ。
別れるのなんか絶対嫌だったけど梨華ちゃんためにどうすればいいか、
あの時はそれしか思いつかなくてさ。
…必死だったんだよ。」
石「うん、分かってる。
今思えば若かったよねー。」
後「お互いね。」
- 46 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:24
- 41 どうやって仲直りするの?
石「気が済むまで言いたいこと言い合って、
悪いと思った方が謝る。」
後「で、変に意地張ると↑みたいなことになる(笑)」
- 47 名前:太 投稿日:2005/12/13(火) 07:32
- 今回はここまでで。
>30 名無飼育さん
レスどうもです。
うちの2人は別人もいいとこだろと思っていたので
そう言っていただけると嬉しいです。
これから、特に後藤さんがどんどん壊れていくので
どうぞよろしくお願いします(笑)
- 48 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/13(火) 14:06
- ホントに二人がしゃべってるみたい!
こわれた後藤さん、楽しみにしてます。
- 49 名前:( *´ Д `(´▽`*) 投稿日:2005/12/13(火) 23:20
- >>40の会話ハァ━━━━━━ (´▽`*) ━━━━━━ン!!!!
うーん、なんか可愛らしい感じが二人っぽいですよ。
自分のイメージに近いので、とても読んでて楽しいです。
続きもまったり楽しみにしています。
- 50 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:07
- 42 生まれ変わっても恋人になりたい?
後「うん。」
石「なりたいけど、
あたしは…ごっちんにまた出会えるだけで嬉しいよ。」
後「…消極的ー。」
石「だって…。」
後「ダイジョーブ。
ごとーが絶対見つけるから。」
石「……うん。待ってる。」
後「で、絶対落とす。」
石「うん(笑)」
- 51 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:07
- 43 「愛されているなぁ」と感じるのはどんな時?
石「落ち込んでるのを電話の声だけで気付いてくれた時。」
後「分かるよ。梨華ちゃんのことだもん。」
石「……。大事にされてるなぁ、愛されてるなぁって、思う。」
後「ごとーは、ぎゅってされてる時。」
- 52 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:08
- 44 「もしかして愛されていないんじゃ・・・」と感じるのはどんな時?
後「楽屋で冷たい。」
石「当たり前。皆いるでしょ。」
後「でもさー、手ぇ握るのも駄目って、ガード堅すぎ。」
石「あたしは前の質問と被るけど2人でいる時にメールされること。
…かまってよ。」
後「梨華ちゃんも楽屋でかまってよ。」
石「もぅ、楽屋と2人きりの時とは違うでしょう?」
後「梨華ちゃん人目気にし過ぎー。」
石「ごっちんはもっと気にして…。」
- 53 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:08
- 45 貴方の愛の表現方法はどんなの?
石「表現?言葉で言ったり、料理作ったり。」
後「料理ねぇ…。」
石「なによー。
ごっちんはどうなの?」
後「そーだね。…抱きしめる。
届いてるー?ごとーの愛。」
石「届いてるよ(笑)」
- 54 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:09
- 46 もし死ぬなら相手より先がいい? 後がいい?
後「先。
梨華ちゃんが死ぬのとか見れない。」
石「あたしも先がいいなぁ。
ごっちんがいない世界とか考えられないもん。」
- 55 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:09
- 47 二人の間に隠し事はある?
石「隠し事っていうか…。
言ってないことはある。」
後「20年も生きてればねぇ。
あるよ、色々。」
石「…そんなにあるの?」
後「まあ。あ、やましいことじゃないよ。」
石「ふーん?」
- 56 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:10
- 48 貴方のコンプレックスは何?
後「表情。
怖いとか、冷たいって言われる。」
石「そうやって言う人って損してるよ。
笑うとすっごい可愛いのに。」
後「…ありがと(照)」
石「あたしは、…声……。」
後「そー?
ごとー梨華ちゃんの甘えてくる時の声とか好きだよ。
なんかね、ぞくぞくする。」
石「ぞ・・・?それ喜んでいいの?」
後「うん。」
- 57 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:11
- 49 二人の仲は周りの人に公認? 極秘?
石「極秘。絶対言えない。
こういう仕事してるし、それ以前に女の子同士だし。」
後「ごとーはバレてもいいけどねぇ。」
石「駄目だよ。
世間はあたし達が思うより優しくないんだよ、ごっちん。」
後「……。でも一部の人は知ってるよね。
ヨシコとか美貴ちゃんとか。」
石「うん。よっしぃーにはずっと相談してたからね。」
後「ミキティには何故かいつの間にかバレてたけど。」
- 58 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:11
- 50 二人の愛は永遠だと思う?
石「永遠だといいなぁ。」
後「なんで自信無さ気なのさー。
永遠だよ。ずっと一緒だもん。」
- 59 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:14
-
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ココからはエッチ有カップルのみ(笑)
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
- 60 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:14
- 51 貴方は受け? 攻め?
石「?!何!!?何、この質問!?」
後「その時々で変わるけど、どっちかって言うと攻め。」
石「ちょ!!何でごっちん普通に答えてるのよ?!!」
後「ほら梨華ちゃん諦めなよ。」
石「え…!?
う、受けだと思います…。」
- 61 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:15
- 52 どうしてそう決まったの?
石「え、ど、どうしてって…。」
後「雰囲気だねぇ。
下から見上げてくる梨華ちゃんて可愛いんだよー。
それに、ほら、
梨華ちゃんに押し倒されてるごとーとか想像できないでしょ。」
石「…そうかな?
下の時のごっちん可愛いよ。」
後「…可愛くないー。」
- 62 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:15
- 53 その状態に満足してる?
後「うん。満足。」
石「うーん。あたし可愛いごっちんもっと見たいな。」
後「だから可愛くないって。」
- 63 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:16
- 54 初エッチはどこで?
後「梨華ちゃんの部屋。」
石「…その通りです…。」
- 64 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:16
- 55 その時の感想を・・・・
石「感想…?」
後「もうねぇ、幸せすぎて泣きそうだった。
夢見てるみたいで。
えっちであんな震えが止まんなかったのは初めてだったなー。
超気持ち良かったし。」
石「…こんな日が来るなんて思ってなかったから。
ドキドキして頭真っ白になって何が何だか分かんなかった。
でも、すっごく幸せだったよ。」
後「うん(嬉)」
- 65 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:17
- 56 その時、相手はどんな様子でした?
後「もう可愛かったよー。
泣きながらごとーのこと見つめてくんのとか、たまんない。
あれは誰にも見せらんないねぇ。
…絶対誰にも見せないけど。」
石「…恥ずかしいなぁ。もう。」
後「可愛かったんだよ。」
石「あたしはよく覚えてないな。
頭真っ白だったし…。
でも、ごっちんすごく優しかった。」
後「そりゃ優しくしますよー。」
- 66 名前:太 投稿日:2005/12/14(水) 16:32
- ここまで。
やっと50まできましたー。
ここからアダルト方面に突き進んでいく予定なので宜しくお願いします。
>48
嬉しい言葉ありがとうございます。
今回の後藤さん、ご期待にそえる壊れ方だったでしょうか(笑)
>49
イメージに近いとのことで、楽しんでもらえて良かったです。
あと50問なので頑張りたいと思います。
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/14(水) 21:00
- いしごま最高です。
作者さん、ありがとう!
- 68 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:02
- 57 初夜の朝、最初の言葉は?
後「ショヤって。何かヤラシイねぇ。」
石「何言ってるのよ…。」
後「えっと?何だっけ。
“おはよう”だったっけ?」
石「うん。あの時はすごい恥ずかしかった。」
後「可愛かったよ。」
石「もー、ごっちん、そればっかり。」
後「だってホントの事だし。」
- 69 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:03
- 58 エッチは週に何回くらいする?
後「週に何回も会えないからなぁ。」
石「そうだね。
ごっちんが卒業してからオフが重なるなんて滅多にないし。」
後「んーだから…月に3回ぐらい?」
石「1ヶ月間会えないこともあるもんね。
仕事が忙しいのは悪い事じゃないけどやっぱり寂しいよ。」
後「でもそれの後に会った梨華ちゃんってすっごいよねぇ。
すんごいエッ」
石「ごっちん!!」
- 70 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:03
- 59 理想は週に何回?
後「何回でもいい。
それ目当てに付き合ってるわけじゃないし。」
石「…うん。
一緒にいる時間はもっと増やしたいけど。」
後「右に同じ。」
- 71 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:04
- 60 どんなエッチなの?
後「どんなって…。普通の。」
石「そんなにたくさん種類があるんですか?」
- 72 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:04
- 61 自分が一番感じるのはどこ?
石「そんなことまで言うの…?」
後「あ、これ、ごとー気になる。」
石「えぇ?」
後「ごとーはねぇ、耳。」
石「ああ。ごっちん弱いよね。」
後「もうねぇ、ふーってされるだけでダメだね。
梨華ちゃんは?」
石「……背中。」
後「あー、なるほど。」
- 73 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:05
- 62 相手が一番感じているのはどこ?
後「そりゃ、し」
石「ごっちん!!」
後「はいはい(笑)
んー、脇腹かなぁ。意外と反応がいいんだよね。
梨華ちゃんのホントのイイトコはごとーだけの秘密ー。」
石「ごっちん以外の人に触られてもくすぐったいだけなんだけどね。」
後「……。へぇ…。」
石「ごっちんは、耳もだけど、喉。」
- 74 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:05
- 63 エッチの時の相手を一言で言うと?
石「優しい。
あ、怒ってる時は切羽詰った顔するよね。」
後「えー?そんなことないよー。」
石「あるよ(笑)」
後「梨華ちゃんは野性的。」
石「はぁ…?」
後「イイ時の顔とか最高に綺麗。」
石「あ、ありがとう…?」
- 75 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:05
- 64 エッチははっきり言って好き? 嫌い?
石「嫌いじゃないけど…。
あたしは、どっちかっていうとキスの方が好きだなぁ。」
後「ごとーは時と場合による。
2人なら何でも好きだけどね。」
石「うん。」
後「まあ、エッチも好きだけど。」
- 76 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:06
- 65 普段どんなシチュエーションでエッチするの?
石「シチュエーションって…?」
後「夜に梨華ちゃんの部屋で、てのが多いね。」
石「そうだね。他に場所ないし。」
後「ラブホってわけにもいかないしねぇ。」
石「…行きたいの?」
後「んー?興味はあるけど、別に場所はこだわらないよ。」
石「そっか…。」
後「なになに?行きたい?」
石「違うよ。
…ごっちんとならどこでもいいよ。」
後「…ん。ごとーもだよ。」
- 77 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:06
- 66 やってみたいシチュエーションは?(場所、時間、コスチューム等)
石「ないです。」
後「ナースとか結構面白いかもね。
やってみる?(笑)」
石「…普通でいい。」
後「スタジオのトイレで半分くらいしたことあったよね。」
石「本当に止めてよ、ああいうの。
お仕事する場所なんだよ?」
後「ごめんね。
ちょっと色々いっぱいいっぱいでさ。あの時。」
石「もぅ…心臓に悪いよ。」
- 78 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:07
- 67 シャワーはエッチの前? 後?
石「基本的には両方。」
後「だねぇ。
でも勢いで前は入らないことがあるよね。結構。」
石「…入らせてよ。
汚いよ?あたし。」
後「梨華ちゃんは綺麗だから、おーるおっけぃ。」
石「あのね…。」
後「いいのー。お風呂の時間、勿体無いじゃん。」
石「…もぉ。そういう問題じゃ…。」
後「あ、一緒に入るなら話は別」
石「入りません。」
- 79 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:07
- 68 エッチの時の二人の約束ってある?
後「ある?」
石「…特に決めてないね。」
後「だね。
でも、嫌がることはしないようにしてる。」
石「あたしも。」
- 80 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:08
- 69 相手以外とエッチしたことはある?
後「…ある。」
石「ごっちんは彼氏いない時期なんてなかったもんねぇ。」
後(刺のある言い方だな…)
「…梨華ちゃんもごとーが初めてじゃないでしょー?」
石「そうだけど。
そんなに前の人、一杯いたわけじゃないもん。」
後「ごとーもそんなに…たくさんじゃ…。」
石「両手の指じゃ足りないでしょ。」
後「………。今は梨華ちゃんだけだよ。」
石「当たり前です。」
後(…ダメだ。完全拗ねてる。)
- 81 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:08
- 70 「心が得られないなら身体だけでも」という考えについて。賛成? 反対?
後「反対。心が得られてないってことは、
セックスするのに同意してないってことでしょ?
そういうのはダメだと思う。」
石「賛成はできないなぁ。
気持ちは分からなくもないけど…。」
後「確かに。でも、気持ちがあってこそだよねぇ。」
- 82 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:09
- 71 相手が悪者に強姦されてしまいました! どうする?
石「犯人は許さない。」
後「殺すねぇ。犯人は。絶対。」
- 83 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:09
- 72 エッチの前と後、より恥ずかしいのはどっち?
石「…前かな。
これから、その…、
そうなるのかぁって思うと逃げ出したくなる。
恥ずかしくて…。」
後「顔真っ赤にして可愛いよねぇ。」
石「ごっちん意地悪だよ。
あたしが恥ずかしいの知っててじっと見つめるでしょ。」
後「可愛いんだもん。」
- 84 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:10
- 73 親友が「今夜だけ、寂しいから・・・」とエッチを求めてきました。どうする?
後「ないから。有り得ないし。どうもしないよ。」
石「あたしも。
話聞いてあげるぐらいしか…。
…説得するかな。」
後「第一、親友って女の子だし。
女の子はなぁ。別に…。」
石「男の人ならどうかなるの?」
後「ないって。ごとーには梨華ちゃんがいるし。」
石「ふーん。」
後「え、何その目。」
石「なんでもない。」
- 85 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:10
- 74 自分はエッチが巧いと思う?
後「まあ人並みには。」
石「…よくわかんない。」
後「…ホントに?」
石「?なんで?」
後「やー、別に…。」
- 86 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:11
- 75 相手はエッチが巧い?
石「上手、だと思う。
…場数踏んでるだけあるよね。」
後「あのね、ごとー女の子は梨華ちゃんが初めてだから。」
石「ふーん?」
後「……もー。
梨華ちゃんもそーとー巧いと思うけどね。ごとーは。」
石「巧くないよ。」
後「いやいやいや。気付いてないだけだって。
だってごとー…イヤ、何でもない。」
石「なに?
途中で止めないでよ。すごい気になるじゃん。」
後「何でもゴザイマセン。」
- 87 名前:太 投稿日:2005/12/16(金) 16:25
- 今回はここまで。
妄想が大分おめでたい事になってきましたね。
>>67
いしごま最高ですよね!!
最近は例のユニットで妄想充填の場が多くて嬉しい限りです。
- 88 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:47
- 76 エッチ中に相手に言ってほしい言葉は?
後「気持ちいいとか、好きとか。
あ、名前も。」
石「そうなの?」
後「うん。
梨華ちゃんこういう時だけごとーのこと下の名前で呼ぶじゃん。」
石「…うん。」
後「それをね、あんな声であんな顔で言われると、もう、ねぇ。
胸のトコがぎゅぅってなる。」
石「意識してそうしてるわけじゃないから、よく分からないけど…。」
後「あれ意識してされてたら、ごとーちょっとショックだねぇ。」
石「あたしも名前呼ばれると嬉しいな。
あと、大丈夫?って優しく言われると泣きたくなる。
…嬉しくて。」
後「んー。無理させたくないからね。
まあ、ダメって言われても
我慢できるかどうかはその時の気持ち次第だけど。」
石「え…!?」
- 89 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:49
- 77 エッチ中に相手が見せる顔で好きな顔はどんなの?
石「余裕の無い顔。」
後「なにそれ?」
石「ごっちん時々、ごめん無理今日は優しくできないかもって
泣きそうな顔で言うでしょ?」
後「…んんー?」
石「なんかそういう顔見ると、
無性に大丈夫だよって頭撫でてあげたくなっちゃうんだよねー。
可愛いなぁもうって。全部許しちゃいそうになる。
…全面降伏?」
後「降伏(笑)
んぁははー。なんか、うん。これ照れる(照)」
石「ふふ。可愛い。」
後「いーいてばっ。そーゆーのは。
ごとーはねぇ、声出さないようにぐって我慢してる顔。」
石「……。」
後「…梨華ちゃん顔怖いよ。」
- 90 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:50
- 78 恋人以外ともエッチしてもいいと思う?
後「ダメ。
ごとー、梨華ちゃんが他の奴とって考えるだけでムカツクね。」
石「駄目。浮気だよ?
あたしならそんなことされたら絶対嫌だもん。」
- 91 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:51
- 79 SMとかに興味はある?
後「ソフトなやつならしてもいいけど…。
手縛るとか、目隠しとか。」
石「興味ありません。」
後「そー?
あ、でも目隠しはしたことあるじゃん。」
石「…すごい不本意だったんだけど。あれ。」
後「よくなかった?」
石「よくないよ。
あのね。あれ結構不安なんだよ。
…するなら、ごっちんの顔見てしたい。」
後「へへ(嬉)うん。」
- 92 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:52
- 80 突然相手が身体を求めてこなくなったらどうする?
石「どうしよう…。
とりあえず、すごい悩むと思う。
それから直接本人に聞くかなぁ。」
後「有り得ないけどね。そんなこと。」
石「例えばだって(笑)」
後「ごとーは聞けないと思うな。…怖くて。
だって、求めてこないってそういうことじゃん?」
石「…ないよ。そんなこと。絶対。」
後「…ん。」
- 93 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:52
- 81 強姦をどう思いますか?
後「どうって…犯罪。」
石「うん。駄目ですよ。
捕まりますから。」
- 94 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:53
- 82 エッチでツライのは何?
石「最初の方は全部。
身体的にじゃなくて精神的に…。
恥ずかしくて…。」
後「んー。
我慢できなくて無理させちゃった時かなぁ。」
石「あー、ごっちん、時々、
ごめんもう無理って言って押し切ることがあるよね。」
後「ごめんね…。」
石「終わった後こうやってすごい謝られる(笑)」
- 95 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:54
- 83 今までエッチした場所で一番スリリングだったのはどこ?
後「スタジオのトイレ。」
石「もう絶対ヤだよあんなの。」
後「ドキドキしなかった?」
石「…家がいいよ。落ち着かないもん。
気持ちいいとか考えてる余裕ないし。」
後「そうだっけ?その割には」
石「ごっちん!!」
- 96 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:55
- 84 受けの側からエッチに誘ったことはある?
石「受けとか、攻めとか…。
入れ替わったりするし…。」
後「だよねぇ。うーん。
あるっちゃあるかな。」
- 97 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:55
- 85 その時の攻めの反応は?
石「……。」
後「……。」
石「嬉しそう、だった…?」
後「…まあ、梨華ちゃんに誘われればそりゃ嬉しいけど。」
石「そうなの?」
後「そんなオイシイ状況、年に1回あるかどうかだからねぇ。
ごとー据え膳は残さず食べる主義なので。」
- 98 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:56
- 86 攻めが強姦したことはある?
後「ケンカした時に。
殆どそんな感じで押し倒した記憶が…。」
石「そういえば、あったね。」
- 99 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:57
- 87 その時の受けの反応は?
後「…泣いて嫌だって言われたけどこっちも必死だったから、
そのままキスで口塞いだ…記憶が…記憶が…。」
石「言った言った。怖かったよ、あれ。
でも、あたしあんなに余裕のないごっちん初めて見た。」
後「うー。大失態だよ。ごめんね。
あんなに乱暴にするつもりじゃなかったんだよ?」
石「うん。でも、余裕無かったのも必死だったのも、
全部あたしのためだったんでしょ?
そう思うと、…あんまり嫌じゃないよ。」
後「…うん。」
石「仲直りできたしね。」
- 100 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:57
- 88 「エッチの相手にするなら・・・」という理想像はある?
後「特にない。」
石「あたしも。
敢えて言うなら、好きな人。」
後「あ、ごとーも!」
- 101 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:58
- 89 相手は理想にかなってる?
石「はい。」
後「ばっちり。」
- 102 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 20:58
- 90 エッチに小道具を使う?
後「使わないね。
梨華ちゃんが使いたいなら使ってもいいけど。」
石「使わないしこれからも使いません。」
後「らじゃー。」
- 103 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 21:01
- 91 貴方の「はじめて」は何歳の時?
後「…15…?」
石「じゅっ…!…へえぇ。ふーん。早いねぇぇ。」
後「……。梨華ちゃんは?」
石「17。」
後「…。」
(17…。17…そうか…17かぁ…。
聞くんじゃなかった。なんか、ショックだ…。)
石「ごっちん?」
後(梨華ちゃんの初めての相手…殴り飛ばしたいかも…。)
「んぁー…!」
石「どうしたの?急に。」
後「…ううん。何でもない。
……梨華ちゃーん。」
石「ん、なに?」
後「梨華ちゃぁん。」
石「ふふ、うん。どした?」
後「梨華ちゃん…。」
- 104 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 21:01
- 92 それは今の相手?
石「違います。」
後「…違うね。」
- 105 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 21:02
- 93 どこにキスされるのが一番好き?
後「口。」
石「おでこ。」
後「あ、そうなの?」
石「うん。」
後「ふーん。」
(いいこと聞いた。)
- 106 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 21:03
- 94 どこにキスするのが一番好き?
後「おへその隣。」
石「…なんで?」
後「可愛いから。
普段こんなとこ絶対キスできないしね。」
石「…へえ…。
あたしは鼻筋かな。」
後「鼻スジぃ?どうして?」
石「んー。好きなの、ごっちんのここ。
…見てるとキスしたくなる。」
後「へぇー。
じゃあ今もしたい?」
石「えぇ?」
後「するする?いいよーぅごとーは。ホラ。」
石「しません。」
- 107 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 21:04
- 95 エッチ中に相手が一番喜ぶことは何?
後「そりゃあ、い」
石「ごっちん!!」
後「じょーだんじょーだん。
…名前呼ぶと、嬉そうだよね。」
石「ごっちんは、髪撫でてあげると喜ぶ。」
後「んー。安心するんだよね。」
石「そういうところが甘えんぼー。」
後「そんなんじゃないし。」
石「そんなんだよ(笑)
目閉じておとなしくなっちゃて、可愛い。」
後「可愛くないから。おとなしくもなんないし。」
石「はいはい(笑)」
- 108 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 21:05
- 96 エッチの時、何を考えてる?
後「梨華ちゃんのこと。
気持ちいいかなとか、無理してないかなとか。」
石「あたしはそこまで気が回らないなぁ。
ごっちん以外のことは分かんなくなっちゃうから。」
後「…あのさぁ、梨華ちゃん。
ごとーのこと誘ってる?」
石「なんで!?」
- 109 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 21:06
- 97 一晩に何回くらいやる?
後「2回とか?」
石「…たまに朝までずっと離してくれない時あるよね。」
後「う…。でもそれは梨華ちゃんもじゃん。」
石「ごっちん、限度ってものがあるんだよ。」
後「だって、会えないし。
その間ずっとお預けくってるこっちの身にもなってよ。」
石「…それはごっちんだけじゃないよ。」
- 110 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 21:07
- 98 エッチの時、服は自分で脱ぐ? 脱がせてもらう?
後「自分で脱ぐし、脱がせます。」
石「…脱がされます。」
後「ちなみにこれは上下入れ替わっても一緒だよね。」
石「ごっちん、自分で脱ぐって聞かないんだもん。」
後「そこは最後の意地というか…。大目に見てよ。」
石「じゃあ、あたしも自分で脱ぐ。」
後「それは駄目。」
石「なんで!?」
後「楽しみが減るじゃん。」
石「知らないよぅ…。」
- 111 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 21:08
- 99 貴方にとってエッチとは?
石「愛情表現。」
後「梨華ちゃんに好きだぁーって伝える手段の一つ。」
- 112 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 21:08
- 100 相手に一言どうぞ
石「これからもよろしくね。」
後「ん。ずっとよろしくね。」
石「…うん。」
- 113 名前:太 投稿日:2005/12/18(日) 21:28
- 終了ー。結構長かった。
なんかもう自分が普段どんな目でいしごまを見てるのかバレバレですね。
非常に楽しかったですけども(笑)
もうね後藤さんは石川さんの前でだけS(へたれ)であればいいと思う。
で、無意識に甘えたであればいいと思う。
石川さんは見た目と中身に激しくギャップがあればいいと思う(中身男前)
いしごまに幸あれ。
なりきり100問もっと誰かやってくれないかな…。あやみきとかいしよしとかで。
- 114 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/18(日) 21:54
- ごちそうさまでした!
この関係での物語が読みたくなります。
- 115 名前:ななしさん 投稿日:2005/12/18(日) 22:28
- たしかにこういう前提での話を読みたいですね
- 116 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/20(火) 08:51
- リアルな会話で面白かったです
いしごま最高でした
- 117 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:34
-
「もう、いいよ、別れよ。」
私の言葉に目の前の可愛い人は大きく瞳を見開いた。
- 118 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:35
- それまでのすべての動きを止め、徐々に歪んでいく表情を見とめて、
ああ、泣く、と思ったけど、予想に反して彼女が泣くことはなかった。
代わりに、涙が溜まってきらきらしている瞳で私を睨んだ。
視界の隅に写る手は硬く握り込まれ、僅かに震えている。
その震えも瞳の意味も、私にはすべて分かったけれど、
もう、引き返せない。
- 119 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:36
- きっかけは些細なことだった。いつもの言葉遊び。最初は2人ともそう思ってた。
段々といつものそれとは変わっていって。分かってたけど止まらなかった。
ほら。売り言葉に買い言葉ってあるじゃん。久しぶりに会って、久しぶりの梨華ちゃんの部屋で。
少し、加減が分からなくなってたんだ。
ヒートアップしていく言い合いに思わず出てしまったその言葉は、
正直今言うことじゃなかったと自分でも思うけど、ずっと前から胸の中に確かにあった言葉。
「何、言ってるか、分かってるの?」
自分で発した言葉のために妙に冷静になった頭で、梨華ちゃんの声を聞いた。
その声は普段の彼女のそれよりも随分と低く(でも普通の人よりもまだちょっと高い)、怒りのためか、悲しみのためか、少し掠れて震えてた。
- 120 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:37
-
「別れよう。」
ちゃんと理解してるよという意味で、もう一度言ってみる。
梨華ちゃんの目を見て言えなかったのはショウガナイと思うんだよね。
きっとごとーは、もう一度でもあんな目見ちゃったら心臓がぎゅうってなって、
抱きしめて、嘘だよごめんねって言いたくなっちゃうと思うから。
――だって。だってさ、ごとーはまだ
――梨華ちゃんが、好きだから。
梨華ちゃんの息を呑む声が聞こえたけど、やっぱり目を見ることはできなかった。
「…なんで?」
さっきよりも震えてる梨華ちゃんの声。
抑えられたそれは妙に色っぽくて、心臓の動きが早まる。
- 121 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:41
-
「…なんで?」
さっきよりも震えてる梨華ちゃんの声。
抑えられたそれは妙に色っぽくて、心臓の動きが早まる。
「なんでって…」
「わ、たしのこと、嫌いになったの?」
「違う。」
それだけはハッキリ言える。嫌いなわけがない。
むしろ好きで好きでしょうがない。
「じゃ、じゃあ何でよぅ…っ。意味分かんない…っ!」
途切れる言葉は梨華ちゃんが泣いてる証拠。
無性に顔を見たい衝動にかられた。
それは自分が彼女にどんな顔をさせているのかという少しの興味と、
ただ単に今まで何度も見てきた綺麗な泣き顔が見たいという場違いな欲求からだ。
- 122 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:42
-
「ごとーは、オンナノコだから。」
そして、梨華ちゃんも、オンナノコ。
「…っに、それ…!そんなの最初から知ってるよぉ…!!」
「…うん。」
「他に、好きな人、できたの…?」
「ううん。」
有り得ないよ。ごとーはいつだって梨華ちゃんに夢中だった。
「…じゃあ、なんで。何で、別れよう、とか、言うの…?!」
要領を得ない回答に梨華ちゃんの苛々した声。
顔を上げずに彼女の手を見る。
硬く握り締めてるせいで、それは少し白くなっていて彼女がどれだけ頭に血が上ってるかを私に教えた。
- 123 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:43
-
目を閉じて、一つ息を付き、開く。
覚悟はできてる。ずっと前から。
――梨華ちゃんと付き合い始めてから、ずっと。
目は見れなかった。
「ごとーじゃ、梨華ちゃんを幸せにできない。」
それはずっと、それこそ付き合い始めた頃からあった思い。
ごとーは、梨華ちゃんのことが本当に大好きで、
告白された時は嬉しくて死んじゃうかと思ったけど、
それだけじゃダメなこともやっぱりあって。
ごとー達はオンナノコ同士だから、女の人が一般的に望む幸せをあげることができない。
- 124 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:44
-
「何、それ…。」
「結婚とかできないし、子どももつくれない。」
「そんなのっ」
梨華ちゃんが何か言おうとしたけど、そのまま続ける。
最後まで言わなくちゃいけない。伝えなきゃ、ダメだ。
「梨華ちゃんには、幸せになる権利があるんだよ。
でも、ごとーといるとそれができなくなる。」
「…ご」
「そーゆーのさヤじゃん。ごとー、梨華ちゃんには幸せになってほしいし。」
「……ごっちん…。」
- 125 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:45
-
でも、でもね。幸せになってほしいのも本当だけど、ホントのホントはね。
梨華ちゃんとの付き合いを恥ずかしく思ったことなんてないけど、周りに認められることは難しくて。
いつ男の方がいいって言われるか不安で不安でしょうがなかった。
実際にそういうことを言われたら、身を引こうと心に決めてたけど、
やっぱりそれは悲しいことで、耐えられる自信なんか全然無くて。
だから。先に言おうと思ったんだ。
「別れよう。」
自分以外の誰かのことが好きだって告げられる前に。解放するよ、梨華ちゃんを。ごとーから。
卑怯者でごめんね。自分が傷つくのが嫌で梨華ちゃんを傷つけてる。ごめんね。
- 126 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:46
-
「…本当にそう思ってるの?」
梨華ちゃんの声音が変わった。
「ごっちんは私が幸せじゃないと思ってるの?」
声はもうとぎれることはなくて、ゆっくり喋る彼女のそれがピンクの部屋にやけによく響いた。
まるで頭の中に心臓が移動してきたみたいに、耳の奥で、どくどくと血の流れる音が聞こえる。
目を閉じたら聞こえなくなるかなと思って瞑ってみたけど、どくどくは止まらない。
「ごっちん、こっち向いて。」
ゆっくり梨華ちゃんは声を出した。言い聞かせるみたいに、聞こえた。
「私を、見て。」
どくどく、どくどく、音が止まらない。
耳が熱くなった気がしたけど、これは梨華ちゃんの声に反応したからじゃない。
梨華ちゃんの声が切なそうに響いたからじゃない。
絶対に違う。
- 127 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:48
-
「真希ちゃん。」
有無を言わせぬ響きに眩暈がした。
耳が熱い。
目頭が熱い。
お臍の下らへんが、熱い。
そんな風に呼ぶのはずるいよ。ごとーが言えた義理じゃないけどさ。
だって逆らえるワケないじゃん。
ほら、こんな時なのにごとーの心は、嬉しくて嬉しくてとけちゃいそうだよ。
静かに目を開いて、顔を上げる。ゆっくりなのはごとーの最後の意地。
- 128 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:49
-
「真希ちゃん…。」
「…。」
梨華ちゃんは私を見て安心したみたいに少しだけ表情を緩めた。(ように見えた。)
涙で潤んだ彼女の瞳の淵が赤くて、胸が痛い。
やっぱり顔を上げるんじゃなかったと私は後悔してた。
涙の跡を隠そうとしない彼女を今すぐ抱きしめたいって、体中が叫んでる。
何でこんなに好きなんだろう。何で梨華ちゃんを好きになったんだろう。
何で梨華ちゃんはごとーが好きなんだろう。何で。
何で、私達はオンナノコなんだろう。
別れたくなんてないよ。大好きなんだよ梨華ちゃん。
- 129 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:50
-
梨華ちゃんの手が私の頬に触れて、そのまま包み込まれる。
温かい梨華ちゃんの体温に思わず目を閉じた。
「真希ちゃん、泣きそうな顔してる…。」
「っしてな…!」
「ううん。ねぇ」
別れようって言ったのはごとーなのに、何で甘えるように梨華ちゃんの手に擦り寄っ
てるんだろう。
「聞いて?」
振り払えばいいのに、それができない。
肌に馴染みすぎたその熱が、なにより大好きだから。
「私は幸せだよ。」
閉じてた目を、開けた。
- 130 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:51
-
「真希ちゃんと出会えて幸せ。
真希ちゃんにこうやって触れられて幸せ。
抱きしめてもらうのも、キスするのも、喧嘩するのも、全部。
真希ちゃんの彼女でいる今が、すごく幸せなの。」
頬に置いた手をそのままに、真剣な顔でそう言った、梨華ちゃん。
心臓が尋常じゃない速さで動いて、熱く胸をしめつける。
きっと今の私はものすごく情けない顔をしてるんだろう。
「だから、真希ちゃん。私の幸せを勝手に量らないで。」
私を見つめる梨華ちゃんの瞳が、優しく揺れた。
「幸せなの。好きなの。別れるなんて言わないで。」
一度も視線をそらすことなく言い切った梨華ちゃんは、怖いくらいに綺麗で。
瞼が熱くなって、視界が揺れて、涙が出た。
- 131 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:52
-
「真希ちゃんは私と一緒はイヤ?」
梨華ちゃんの言葉に私は馬鹿みたいに泣いてしまって、上手く話せない。
代わりに、首を横に振る。
「私と恋人になって後悔してる?」
また、首を振る。涙が止まらない。
「私の事、嫌いになった?」
「…っな、こと、ないっ。」
否定しようと口を開いたけど、やっぱり上手く言葉にならなくて。
「…私の事、好き?」
梨華ちゃんの微笑みに、また涙が溢れてきた。
- 132 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:53
-
「好き…!」
別れを告げたのは軽い気持ちなんかじゃなかったのに。
確かに、喧嘩の弾みに出た言葉だけど、本気だったのに。
でも、この人の前では無駄なんだ。そんな決心も何もかも、全部。
どうしようもない程、ごとーは梨華ちゃんが好きだから。
「大好き、だよぅ…!」
梨華ちゃんの肩に顔を押し付けて、思い切り抱きついた。
優しく髪を撫でるその腕が、受け止めてくれる梨華ちゃんが、愛しくてたまらなかった。
不意に、耳元で感じる梨華ちゃんの吐息。
「私も、真希ちゃんが大好きだよ。
…そばにいて?それだけで、私は幸せだから。」
脳みそに直接囁くように、甘く響くその声に、抱きしめる腕の力を強めた。
梨華ちゃんの香りを吸い込んで、ゆっくり頷く。
嗚咽で上手く言葉がでなかった。
涙は、当分止まりそうにない。
- 133 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:54
-
結局、梨華ちゃんの顔を見た時点でごとーの負けは決まってた。
いや、もっと前。ごとーが別れを思った時から。
だってごとーは馬鹿みたいに梨華ちゃんが好きで。梨華ちゃんもごとーが好きで?
きっとごとーはセッケッキュウまで梨華ちゃんに夢中。
可愛い可愛い梨華ちゃんに、やばいくらいやられてる。
一緒にいるよ。この先、キミがワタシに愛想尽かすまで、ずっと。ずっと。
- 134 名前:キミの香りと別れと涙 投稿日:2006/01/16(月) 18:55
-
>>>キミの香りと別れと涙
- 135 名前:太 投稿日:2006/01/16(月) 19:01
- つまりは痴話喧嘩。
まだまだ容量あるので、短編をあげていこうかなと思っております。
第一弾は>>45の会話の元ネタ。いかがでしたでしょうか。
では、お目汚し失礼しました。
- 136 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/16(月) 19:52
- 感激! ありがとうございます。
二人とも大好きです。
次のお話も楽しみにしてます。
- 137 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/16(月) 23:33
- 素晴らしい……いしごまの甘いの大好きです。
なんだか大人な石川さん素敵です。
今後も楽しみにしています。まったりがんばってくださいね。
- 138 名前:Liar 投稿日:2006/01/20(金) 18:53
- おもしろい!いしごま大好きなんです。
作者さんのペースで頑張ってくださいね。
これからも期待してます。
- 139 名前:名無しさん 投稿日:2006/01/20(金) 22:51
- >>45の元話、かわいくて切なくていしごまを堪能させてもらいました。
これからも楽しみにしてますね。
- 140 名前:太 投稿日:2006/01/21(土) 13:50
- >>136さん
読んでいただけて嬉しい限りです。
しかもレスまで…!ありがとうございます。
次はこんな感じになりましたが、どうだったでしょうか。
>>137さん
個人的に後藤さんを甘やかす石川さんが好きなので、
大人石川さんと言って頂けると嬉しいです。
まったり行きたいと思います。
>>138さん
いしごま好きが結構たくさんいらっしゃって嬉しいです。
期待に応えられるかちょっと不安ですが(笑)
私なりに頑張りたいと思います。
>>139さん
切ないなんて…!ありがとうございます。嬉しいです。
これから質問の元ネタ中心に上げていこうと思ってますので、どうぞよろしくです。
- 141 名前:太 投稿日:2006/01/21(土) 13:51
- 遅ればせながら石川さんやぐさん誕生日おめでとうございます。
誕生日とは関係ない話ですが、今回は美貴様視点のいしごまです。
少しだけりかみきあやみきっぽいのが出てきたりするのでご注意を。
- 142 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 13:52
-
そわそわそわそわ。
朝から梨華ちゃんは落ち着かない。
理由は分かってる。今日、梨華ちゃんは大事なあの人とデート。
同じ仕事をしていて、お互いの家だってそんなに離れていないのに、2人はまるで遠恋中。
昨日本人が1ヶ月ぶりに会うと、嬉しそうに話してた。
収録もテンションが高かった彼女は、普段より断然面白い。(不覚にも笑ってしまった。)
まあ、空回りと寒いのは相変わらずだったけど。
楽屋の隅でせっせっと帰り仕度をしている彼女の横顔は、
こっちまで嬉しくなっちゃうような甘い笑み。
そんな健気で一途な姿に微笑ましい気持ちになって、
思わず子どもを見守る母親のように目を細めた。
- 143 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 13:53
-
ミキが最初に“2人”を見たのはモーニングに入った後だった。
団体行動にも大分慣れてきた頃で。
皆ともそれなりに仲良くやってて、いっぱいいっぱいだったのが
良い意味で余裕ができて周りをゆっくり見渡せるようになった、そんな時期。
ミキは混んでた楽屋近くのトイレを諦めて、ちょっと離れたトイレへ。
ちょうどそこから出てきた時、2人はいた。
1人は国民的アイドルグループの元エース。
名前はごっちん。今は卒業してソロ活動に専念中。
もう1人はそのグループの現エース。
名前は梨華ちゃん。ミキの大事な仕事仲間。
2人はこっちに背を向けて少し離れた廊下の隅でお互いに寄り添って立っていた。
お互いしか見えてないような、その視線。微笑み。
絡む指は恋人繋ぎ。
- 144 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 13:54
-
ミキがモーニング入った時にはごっちんはもう卒業した後で、
実際にメンバーとして仕事したことはなかったんだけど、
他のユニットで色々あって結構仲は良かった。
梨華ちゃんともメンバーとしてそれなりに友達で(まあ確かに最初は取っ付きにくかったけれど)
特に問題無く過ごしてた。
1人ずつなら何の問題も無いけど、2人一緒とくれば話は別。
あまりにも珍しいそのツーショットに思わず見入ってしまった。
ごっちんがモーニング在籍時に2人がどうゆう交流を持ってきたかは知らないけど、
ごっちんの性格から考えて梨華ちゃんみたいなタイプの子は苦手だと思ってたから。
ミキの中でごっちんと梨華ちゃんは結びつかない。
それは単純に今まで梨華ちゃんとごっちんが2人きりでいる所を見たことが無いっていうのもあった。
ハローの中にはスキンシップが多い子もいて(ミキが朝までいた部屋の住人もその1人)
手を繋いで、抱きしめて、ほっぺにちゅうなんてのは日常茶飯事に行われる。
けど。
- 145 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 13:54
- あのごっちんだよ?
ふにゃふにゃ笑って人懐っこいけど、他人との距離もちゃんと弁えてる。
ミキたちと一緒にいる時も男友達みたいな、いい意味でドライな関係を持つ人だった。
それが何で、なんで梨華ちゃんと。あんなにくっついて、手ぇなんか繋いじゃってさ。
驚くのも無理ないじゃん?ミキの頭、結構正常に働いてると思うんだよね。
ちょっとのショックと、大きな好奇心。
その場を動けずに2人を見ていたら、不意に梨華ちゃんが動いた。
彼女の横顔はまるで悪戯を思いついた子どものようで。
ごっちんの耳元に顔を近づけて何事かを告げたようだった。
その顔をそのままに、梨華ちゃんを振り返るごっちん。
(うあ)
振り向いたごっちんの顔が、幸せそうに、嬉しそうに、甘く甘く微笑んでて。
ミキは素早くトイレの中へ。
2人の一連の動きはあまりにも自然で、綺麗だった。
何だか見ちゃ行けないものを見てしまった気がして、どきどきと早く動く心臓の上に右手を置く。
トイレの鏡に映った自分の顔は、認めたくないけど、赤かった。
- 146 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 13:55
-
今思えば、この時からミキは何だかやばい気がしてたんだよ。
繋いだ手。柔らかく絡まった指。
鼻がくっ付きそうなほどの距離でお互いをとらえる、視線。
その表情。
全部やばかった。けど。
なにより、2人が纏う雰囲気が、一番やばかった。
- 147 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 13:56
-
その日からミキの梨華ちゃん観察が始まった。
意識してそうした訳ではなかったけど、視線はいつの間にか梨華ちゃんへ。
ごっちんがいたらそっちに目が行くんだろうけど、生憎側にいたのは梨華ちゃん。
自然とそちらへ視線が行くのは仕方ない事だったと思う。
だって、あんな現場目撃した後だよ?気になるに決まってるじゃんか。
きっぱりはっきり気になればすぐに言うがモットーのミキだけど、
この問題はちょっと本人に確かめにくいから、目で追っちゃう。
梨華ちゃんとごっちんてどういう関係?
むずむずうずうず。聞きたいけど聞けない。けど聞きたい。
悶々と過ごすこと1週間。
そんなミキは他人から見れば相当おかしく写ったようで。
がきさんにはすんごい訝しげな目で見られたし、
紺ちゃんは目が合うとびくりと驚き笑いかけてくれるんだけど、
あの、引きつってるんだけど笑顔。
そして、ちょうど7日目によっちゃんさんに呼び止められた。
- 148 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 13:57
-
「石川を見る目つきが超怖いんだけど。何で睨んでんの?」
いやいやいや。睨んでないし。目つき怖いとか失礼だから。
でも、なるほど。最近感じるメンバーのあの態度はそれでか。
「もしかして石川のこと好きになっちゃった?」
続く言葉に思わずぎろりとよっちゃんさんを睨みつけてしまった。
即座に違うからと、否定する。
よっちゃんさんが一歩後ずさった。
「だってさぁ、石川の事睨んでるように見えるけど、
私には何か言いたいことがあるみたいな、切羽詰まった感じに見えたからさ。」
……まあ当たらずとも遠からず。
意外と周りをよく見てる男前に少しだけ関心した。
でも、別にミキは梨華ちゃんを睨んでた訳じゃないし、好きだなんて有り得ない。
あ、恋愛感情が無いって意味で。一応。
- 149 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 13:58
-
よっちゃんさんの言葉から黙って見てるのが馬鹿馬鹿しく思えてきて、
次の日、楽屋で梨華ちゃんの隣に座った。
「梨華ちゃんてさ、好きな人、いる?」
いつまでも溜めておくのは性に合わない。
ミキって自分に正直な人間だから、好奇心に勝つなんて到底無理。
でも、どきっぱりとそのまま尋ねるのはやっぱりちょっと気が引けて、
自分なりの気遣いを持って聞いてみた。
よっちゃんさんがこっちを振り向いた気配がしたけど、気にしない。
梨華ちゃんは一瞬目を見開いた後、すぐにくすくす笑い出し、
いつものアニメ声で答える。
「なぁに?急に。」
「やあー、何か気になって。梨華ちゃんとそういうの話したことなかったし、どうなんだろと思って。」
「んー。どうかな。美貴ちゃんはいないの?そういう人。」
切り替えされた。梨華ちゃんのくせに。
まあすぐに望んだ答えが得られるとは思わなかったけど。
でも、こんなことじゃヘこたれない。
- 150 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 13:59
-
「いないこともないけど…。でもさ、こういう仕事だから会うだけでも大変じゃない?」
「バレちゃうと色々問題だもんね。」
「時間も合わないしね。」
「そうだね…。」
梨華ちゃんの笑顔が寂しそうに揺れた気がした。
「梨華ちゃんなら、その好きな人とどこで会う?」
「えー?家とか?」
案外あっさり答えを返した梨華ちゃん。これじゃダメか。
「じゃあ例えば相手が同じ業界の人だったら?」
「…。」
同じ業界人のごっちんのことを思い出したのか、それとも違う理由からか、
一瞬答えに詰まった梨華ちゃんを見逃さなかった。
- 151 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:00
-
「えっと、やっぱり家かな。すごく警戒しなきゃいけないだろうけど。」
「だねぇ。…じゃさ、局内で、何ての、アイビキ?とかはやっぱ無し?あり?梨華ちゃん的に。」
「え…。」
梨華ちゃんの目が忙しく動き回る。
それは素直な彼女の心を表してるようで。
梨華ちゃんてホント隠し事できない人だね。動揺しすぎだから。
ねえ。そんな反応しちゃうと、勘違いしちゃうよ?
2人はやっぱりタダナラヌ関係ってやつですか?
でも、彼女のそんな表情はすぐにおさまって、いつもの『梨華ちゃん』へ。
「…無しじゃない?ほら、お仕事する場所、だし…。」
「ふーん?」
「…なに?」
- 152 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:00
-
梨華ちゃんに訝しげに上目遣いで見上げられて、少しだけ彼女に近寄った。
「で、結局、梨華ちゃんは好きな人いるの?」
その問いに彼女は今度は詰まらなかった。
「いっぱいいるよー。お母さん、お父さんに、お姉ちゃん、妹。
中澤さんに保田さん。もちろんメンバーもね。」
にこりと締めにお仕事スマイルまで付けて。
そういうお仕事な答えが聞きたかったわけじゃなかったけど、
梨華ちゃんは完全にミキとの間に壁を作ってくれたみたいで、
これ以上の言葉は引き出せそうに無い。
――今は。
ミキをなめないで欲しい。
こんなことでこの美貴様が諦めるかっての。
よっちゃんさんがずっとこっちを見てたけど、最後まで話し掛けられることはなかった。
- 153 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:01
-
次の日から、私は暇さえあれば梨華ちゃんに近づいて
「好きな人」の質問を飽きることなくしつづけた。
当の彼女は困ったように笑いながらも邪険にすることなく
のらりくらりとミキの問いをかわしていくものだから、相変わらず答えは得られずじまい。
でも、悪い事ばかりじゃなくて、殆ど一緒にいたから自然と梨華ちゃんと仲良くなった。
ああ見えて彼女が男前で頑固で融通が利かないのも、この時知ったことだ。
そんなある日。その日もその日で梨華ちゃんに絡んでた。
もうここまで来ると殆ど意地だ。
「ねーえ梨華ちゃーん。ホントに好きな人いないの?」
「もぅ、またそれ?」
梨華ちゃんもいつもと変わらない笑顔で、慣れたようにあしらう。
このやりとりも、かれこれ1週間くらいになるけど彼女の口は重い。
隣に座ってる彼女の左腕に抱きついて、華奢な肩に顎を乗せた。
「またそれ!いい加減素直になりなー。」
「えぇー?」
梨華ちゃんは嫌がるでもなく、にこにこしながら受け止める。
- 154 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:02
-
甘えるような仕草は亜弥ちゃんからの受け売り。
楽屋にいるメンバーも、ミキの行動に見慣れたのか特に何も言ってこなかった。
けど、その中でよっちゃんさんだけは違った。
ミキが梨華ちゃんに絡むと心配そうな目でこっちを窺ったり、
時々ミキたちの会話に入ってきたり。
それはよっちゃんさんなりの心配の現れだったんだろうけど、その時のミキには分からなかった。
「えぇーじゃないよ。ほらほら、早く言っちゃった方が楽になれるよ。」
一緒に過ごす時間が多くなってから、もう一つ気付いたことがある。
「どーしよーかなー。」
彼女の側は意外なほど心地良かった。
「梨華ちゃーん。」
猫撫で声で名前を呼んで、甘えるように彼女の肩口にぐりぐりと頬を擦り付けた。
梨華ちゃんにこんな事してるって亜弥ちゃんにバレたら
1週間くらい口聞いてくれそうにないけど、
知られることなんかないので取り敢えずオッケイ。
- 155 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:03
-
「くすぐったいよぅ。」
「じゃあ白状しなさーいっ。」
「ふふ。あれ?美貴ちゃん香水変えた?」
じゃれ合ってたら、梨華ちゃんが急にそう言ってきた。
「別に変えてないけど。なんで?」
「何かいつもと香りが違うから…。」
「えー?」
「あ、これって亜弥ちゃんも使ってるやつじゃない?」
「ああ。」
言われて気が付いた。
昨日は亜弥ちゃんの家に泊まって、スタジオに来るまでずっと一緒にいた。
もちろんお風呂も亜弥ちゃんの家で入って、香水はさすがに付けなかったけど。
なるほど。同じ香りもするはずだ。
- 156 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:04
-
「昨日亜弥ちゃんちに泊まったから移ったんじゃない?」
「そうなんだ。いいよねこれ。クールな感じ。」
「そー?」
「いい匂い。亜弥ちゃんって結構こういう感じの似合うよね。」
梨華ちゃんはミキの頭のあたりでくんくんと鼻をならした。
少しくすぐったかったけど、不愉快じゃない。
「だね。あんな女の子女の子した顔してんのにねぇ。」
「美貴ちゃんも似合ってるよ。」
「ありがと。梨華ちゃんもいい匂ーい。」
お礼を言って、梨華ちゃんの首筋に鼻を近づける。
視界の隅で、よっちゃんさんが焦ったように席を立ったのが見えた。
その時、がちゃり、と扉が開く金属音。
視線だけを楽屋の扉にやる。
そこに立っている人物を見とめて、ミキは文字どおり“固まった”。
- 157 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:04
-
後藤真希が、そこにいた。
- 158 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:05
- 重たい空気。そう思ったのはミキの思い込みだったのか。
やばい。やばい。何でごっちんがここにいるの。
てか、梨華ちゃんてごっちんとそういう関係だったよね。
まだ確かめてないけど。あれ、待って、やばくない?
ぐるぐると言葉が回って、混乱する頭。
そんな沈黙を破ったのはよっちゃんさんだった。
「ご、ごっちん、おはよー!」
片手を大きく振って、いつものオーバーアクション。
心なしか声が震えてる。
その後に続いて、楽屋にいたメンバーが1人1人ごっちんに声を掛けた。
ミキと、梨華ちゃんを除いて。
ごっちんは皆と挨拶を交わす中、一度もミキたちから目を離さなかった。
その大きな瞳からは彼女が何を考えているのか読み取れない。
けど。
(怖ぇーっ)
なんとも言えない威圧感だけは、感じてた。
- 159 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:08
- 「どうしたの?久しぶりじゃん。」
よっちゃんさんがごっちんに声を掛ける。
「隣のスタジオでちょっとね。」
ごっちんはよっちゃんさんの質問に答えてるのに、こちらから目を離さない。
一歩、近づいた。
「皆いるって聞いたから、挨拶してこーと思って。」
また一歩。
ミキたちの目の前で止まる。
ごっちんの口がゆっくり笑みの形に弧を描く。
- 160 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:08
-
梨華ちゃんの体がびくりと震えた。
「仲良いねぇ。」
血が逆流するような感覚を覚えた。
背中がざわざわして、頭の中で鳴り響く警告音。
その言葉に自分たちの態勢を思い出し、勢いよく離れた。
嫌な汗が一筋背中を流れ落ちる。
傍目からは機嫌良く微笑んでるように見えるであろうその笑顔。
けれど、近くにいたミキには見えてしまった。
――その目は少しも笑ってはいなかった。
- 161 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:10
- 「ご、ごっちん。あの…。」
「なに?」
梨華ちゃんの言葉にもごっちんは不自然な笑顔を向けるだけ。
そんな顔を向けられた梨華ちゃんは今にも泣き出しそうだ。
ねぇ。これってさあ。修羅場ってやつだったりするもしかして。
昼ドラで見るような罵り合いも、涙もないけれど。
この場に流れる嫌な空気は、修羅場のそれだと思うの。違う?
また一つ汗が流れた。
「……。」
黙ってしまった梨華ちゃんを見て、ごっちんがゆっくり目を伏せる。
その目が何か言いたげに揺れた気がした。
ごっちんがため息を零す。
- 162 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:10
-
「…まだ仕事あるから。戻るわ。」
ごっちんは一度梨華ちゃんを見て、こっちを見た。
絡まる視線の中から読み取れたのは明らかな敵意。
待って待って。いやミキも悪かったと思うけど、
そんな目で見るの止めてごっちん。超怖いんだけど。
別にミキは梨華ちゃんをとったりしないから。
そう言いたかったけど体は金縛りにあったみたいに動かない。
ごっちんは踵を返し、扉の外へ。
「え…。あ、うん。頑張って。」
気の抜けたようなよっちゃんさんの返事のすぐ後に、がちゃん、と扉が閉まる音。
後に残ったのは何とも言えない嫌な空気と泣き出しそうなお姉さんが一人。
- 163 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:11
-
分かってしまった、2人の関係。
直接聞いたわけではないけれど、ごっちんのあの表情にこの梨華ちゃん。
ミキは非常にまずいことをしてしまったのかもしれない。
そしてミキは、ごっちんからものすごい誤解を受けてないだろうか。
確かに目の前で大事な人が他のヤツといちゃいちゃしてたら、いい気分はしないから。
「ねえ。いいの、梨華ちゃん。」
何だか自分にも非があるような気がして。
「追いかけなくていいの?」
俯いてる梨華ちゃんに声を掛けた。
「美貴ちゃん…?」
顔を上げた梨華ちゃんの目の淵が少し赤かった。
「そーだよ。今行っといたほうがいいって!
こういうのって、時間が経つほどやりにくくなるからさ。」
いきなり割り込んできたよっちゃんさんの声に彼女の瞳が戸惑ったように揺れる。
「早く!」
2人分の声に梨華ちゃんは立ち上がって楽屋を後にした。
- 164 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:12
- 閉まった扉を眺めて、隣に立つよっちゃんさんをちらりと窺う。
その顔に浮かぶのは安心したような、優しい笑み。
「知ってたんだ?」
多分、ミキがおかしいと思うずっと前から。この男前は知ってたんだ。
それなら、今までの態度も納得できる。
「んー。なーにが。」
「とぼけちゃって。分かってんでしょ。」
にやりと口の片端を上げて、横目でこっちを見るよっちゃんさん。
「美貴はさぁ。ストレートすぎなんだよ。」
「よっちゃんさんは過保護だと思うけどね。」
目を合わせて2人、笑った。
――大丈夫だよね?
――たぶんね。痴話喧嘩の応用編みたいなもんだから。
――てか、あの子たちなら大丈夫。
――うん。大丈夫。
今さっき出て行った可愛い2人を思って。
「何、2人でにやにやしてるんだよー。」
矢口さんの声が楽屋に響いた。
- 165 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:12
-
あとから聞いた話だと、ごっちんはやっぱり思い切り誤解していたようで。
なんとか仲直りできたとのこと。
その後、ごっちんと2人で会った時に、
「あんまり勝手に触らないでよ。」
と釘を刺された。
それだけで済んで良かったと密かに心の中で思ったのは内緒だ。
だって、あの時のごっちんは本当に半端なく怖かったから。
マジでミキ人生終わるかと思ったもん。
- 166 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:13
-
「りーかちゃーんっ。」
楽屋に入ってきて迷わず梨華ちゃんに抱きつくごっちん。
ふにゃふにゃ笑って何とも幸せそう。
一応ここはモーニングの楽屋だから、
ノックぐらいしてくれよと思ったけど、
言って直るならもう直ってるだろうから言わない。
「ごっちん。もう終わったの?」
「うん。デートだから超頑張って終わらせてきた。」
梨華ちゃんの肩から顔を上げることなく、ごっちんは甘えるように声を出す。
そんな2人を呆れて見る私とよっちゃんさん。楽屋には今4人しかいない。
一度バレれてしまって、どうでもよくなったのか、
あれ以来、梨華ちゃんとごっちんがミキの前でその関係を隠すことはなくなった。
変わりに、愚痴とも惚気ともつかない話をよく聞かされて困ってるけど。
こんな現場に遭遇することも珍しくなて。
まあ、幸せなのはいいことだと思うけどね。
- 167 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:14
-
「頑張ったね。ごっちん。」
これがあの後藤真希なのかと疑いたくなるほど、
梨華ちゃんに甘えるごっちんは、髪を撫でてもらって気持ち良さそうに目を細めてる。
その光景はこっちまで照れるくらいピンク色で、
思わず隣に座ってたよっちゃんさんの方を向いた。
「ねぇ。アレ何とかしてよ。男前。」
そう言った私によっちゃんさんは渋い顔でこちらを向いて。
「無理。」
ヒトコト言うと、手元にあった雑誌を読み始めた。
- 168 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:14
-
後ろではいちゃいちゃいちゃいちゃバカップル。
隣には、渋い顔で後輩の忘れていったティーンズ誌を読む男前。
何故だか無性に亜弥ちゃんに会いたくなった。
- 169 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:15
-
>>>ミキティは見た!
- 170 名前:ミキティは見た! 投稿日:2006/01/21(土) 14:15
- >>57の何故ミキティにバレてたか編でした。
正直、これは廊下で密会いしごまを書きたかっただけなんですが…。
ギャグにしたかったんですが、どうにも中途半端に終わってしまいました(笑)
美貴様ツッコミは難しいですね。でも美貴様視点は意外と楽しかった。
ではお目汚し失礼しました。
- 171 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/21(土) 14:57
- いいですねー。
私の頭の中までピンク色に染まりました。
ミキティとよっちゃんのキャラもいい感じ。
ごちそうさまでした!
- 172 名前:Liar 投稿日:2006/01/21(土) 17:43
- 最高です!いしごまがなんともいい雰囲気
でした。お疲れ様でした。次回作も期待しております。
- 173 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/22(日) 01:13
- おもしろすぎ!いしごま最高
ミキティのキャラもいいなー次回作も期待してます
- 174 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/23(月) 16:49
- さ、最高です。85年組のバランスが最高w
甘えたな後藤さんかわいい〜
- 175 名前:太 投稿日:2006/01/23(月) 17:55
- >>171
ピンク色ですか。いいですね。もっと染まっちゃってください(笑)
自分の中で85年組は仲良し設定なので、こんな感じに仕上がっちゃいましたが、
気に入っていただけたようで、なによりです。
>>172
嬉しい言葉ありがとうございます。
頭の中でのいしごまの雰囲気はいつもあんな感じになってますが、
クールな後藤さんにもちょっと興味があったりします(笑)
>>173
いしごま最高ですよね!!自分の中で不動の第一位。
藤本さんも好きなので、そう言っていただけると嬉しいです。
彼女は今回も出っばってます。
>>174
可愛いですか?良かった。
甘えたな後藤さんと受け止める石川さんが好きなので、
書くとどうしてもこうなってしまうのですが、
そう言っていただけてちょっと安心です(笑)
- 176 名前:太 投稿日:2006/01/23(月) 17:56
-
今回は>>18の元ネタ。
中澤さんとか出てます。
- 177 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 17:58
-
彼女との付き合い(恋人になる前も入れて)は結構長いけど、
あんな姿は見たことがなかった。
まあ、どんな姿でも大好きなあなたには変わりないんだけど。
- 178 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 17:59
-
「にしても、石川もハタチか。時間が経つのは早いなぁ。」
そう言って、ぐいっとジョッキを煽ったのは私の斜め前に座る中澤さん。
ジョッキの中身はビール。お店に入ってから確かこれで3杯目。
「それ年寄りくさいよ裕ちゃん。」
中澤さんの隣に座る保田さんが表情を変えずに言った。
私の前にいるので、手に持っている焼酎がよく見える。
ついでに、彼女の前に空のジョッキが2つ置かれているのも。
- 179 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:00
-
「なによ。私はまだぴちぴちやっちゅーねん。聞いてんの圭坊。」
「聞こえてるよ。ぴちぴちとか寒いから。裕ちゃん今年でいくつになったと思ってんのよ。もう。」
「歳の話はすんなや。あんたかて、いくつよ今年。」
「まだ20代です。」
「あかんわ。歳聞かれてはっきり答えられんのは、もう駄目な証拠やでー。」
「裕ちゃんに言われたくないよっ。」
「もう。分かりましたから。てかミキたちから見れば2人とも変わらないですよ。」
じゃれ合いとも喧嘩ともつかない言い合いを始めた保田さんと中澤さんに、
私の隣に座る美貴ちゃんが、私には絶対に言えないような事をさらりと言い放つ。
その手にはしっかりビールジョッキ。
- 180 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:01
-
「藤本も言うよーになったなあ。まったく。」
「ちょっと藤本、一緒にしないでよー。20代と30代の間にはデッカイ壁があんのよ。」
「圭ちゃんまだ言うかっ」
「まーまー落ち着いて。もう酔ってんですか?」
「そうだよー。裕ちゃんも圭ちゃんも今日は何の為に飲みに来たか分かってんのー?」
また言い合いを始めそうになった2人に、
保田さんの隣に座るよっちゃんと私の隣座るごっちんが止めに入る。
その2人の手にもやっぱりジョッキが一つずつ。
- 181 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:01
-
「分かっとるよ。今日は石川の堂々とビールが飲めるようになっておめでとう祝いやろ?」
「…。」
「つっこめや。もー冗談やん。」
だはははと、豪快に笑う中澤さんは顔に出ていないだけで、
結構お酒が回ってきているのかもしれない。
そんな中澤さんを呆れたように見ていた保田さんは、
焼酎を一口飲むと私に笑いかけた。
「今日は石川の誕生日祝いでしょ。分かってるよ。」
- 182 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:02
-
それは、今日の仕事終わりに始まった。
いつものようにモーニングの楽屋で、
帰り仕度をしていた私の前に現れた中澤さんと保田さんは唐突にこう言った。
「飲みに行くで、石川。」
先輩の言葉に逆らえるはずもなく。
呆気にとられてた私は強引に連れ出された。
ついでに楽屋に残ってたよっちゃんと美貴ちゃん、
そして、たまたま遊びに来ていたごっちんを道連れに。
お店までの道すがら、どうやら誕生祝いをしてくれるという事、
そのために、マネージャーさんから私のスケジュールを確認していたという事を聞いた。
ありがたい話だけど、この状況から見るに、
ただ単に自分たちの飲み会の理由が欲しかっただけ、
という風に感じるのは私の気のせいだろうか。
- 183 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:03
-
それに実を言うと今日、私には予定があった。
たまたま仕事を終える時間が重なった大事な人と、
一緒に私の家へ帰るはずだったのだ。
私の隣に座る後藤真希、その人と。
だから、今のごっちんはとても機嫌が悪い。
自分の感情を隠すのが上手い彼女は、
傍から見ると普通にビールを飲んでいるように見えるけど、
私には分かる。
ちくちくと、視線に、気配に、感じる不機嫌なオーラ。
どうしよう。どうやって機嫌を直してもらおうか。
ごっちんは怒ると、叫ぶでもなく、罵るでもなく、
憮然と黙ってそこにいる。
アクションを起こしてこないから、こっちも機嫌を直してもらうキッカケがなかなか掴めないのだ。
- 184 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:04
-
せっかく今日は久しぶりにごっちんと2人きりで。
部屋で色々、えっと…、楽しく過ごそうと思ってたのに。
大好きな先輩からの誘いは確かに嬉しいけれど、
今の私の頭はこれからのごっちんの事で一杯だった。
だからってわけじゃないけど、気付かなかった。
ごっちんの異変に。隣に座ってたのは私なのに。
ごっちんの前に座っているが中澤さんだって分かってたのに。
- 185 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:05
-
それから1時間程たった頃。
テーブルの上に所狭しと並ぶ空のジョッキと焼酎、チューハイ、日本酒。
まだまだ運ばれてくるお酒に、保田さん、中澤さんはもちろん、
よっちゃんや美貴ちゃんの手も止まらない。
アルコールが弱い私はあまり飲んでないけど、
よっちゃんたちは相当飲んでるはずだ。
何で酔っ払わないんだろうこの子たち。
年下のくせに。まだ未成年のくせに。
複雑な気分で、でもそれなりに楽しんで、
隣の美貴ちゃんと話してた、
その時。
肩に感じる重み。
「え…?」
振り向くと、にこにことご機嫌な笑顔。
私の腕に絡みつく手。
そこには、体全体で私に凭れかかるごっちんがいた。
- 186 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:06
-
「りーかぁちゃぁーんっ。」
「へ…!え!え、え、えっ!!」
何、何が起きたの?
てか可愛い。ごっちんすごく可愛いんだけど。
へらへら笑うごっちんは普段滅多に聞けないような猫撫で声で名前を呼ぶと、
私の腕を強く抱き締めた。
「うあー。めっちゃ酔ってんじゃん、ごっちん。」
「ミキ酔ってるごっちん初めて見たかも。」
混乱した頭によっちゃんと美貴ちゃんの呑気な声が聞こえる。
え、これ酔ってるの?
ごっちん酔ってるの?
ごっちんを見てみると、確かに。
ちょっと赤い目元に、へらへら締まらない笑顔。
とろんとお酒のせいか少しだけ潤んだ瞳。
(…可愛い。)
って、違う。
思わず浮かんだ言葉を頭を振って打ち消す。
- 187 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:07
-
美貴ちゃんの言葉に私も心の中で頷いた。
2人で飲んでても、ごっちんが私のペースに合わせてくれたり、
私の方が弱くて先に潰れちゃったりするから、
彼女が酔った所なんて見たことがなかった。
ごっちんは、私の指に自分のそれを絡ませたり離したりして遊んでる。
時々呟く言葉が舌足らずで幼い。
酔うとこんな風になるんだ。
ごっちんの新たな一面に驚いた。
- 188 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:08
-
「ちょっと裕ちゃん!どんだけ飲ませたのよっ。」
「えぇー。そんな飲ませとらんよ。コップ空いたからついどっただけやん。」
「それが原因でしょ!もう。」
噛み付く保田さんに中澤さんは悪びれることなくのんびり答えた。
その言葉にごっちんの前に置かれたコップ(さっきまで飲んでたと思われる)に目をやる。
そこに注がれているのは透明な液体。
「中澤さんっ。コレ泡盛じゃないですか!」
思わず叫んだ私の目に入ってきたのは、
笑顔の中澤さんと中身が半分以下になった酒瓶。
「旨いでぇ。石川もやるか?」
「やりませんっ!」
なんやのジョークやのにと中澤さんはぶつぶつ呟いた。
冗談でも、お酒に強いごっちんが、
こんなになるまで飲ませないでほしい。
しかも未成年に。
- 189 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:09
- 「裕ちゃん…。一応後藤も未成年なんだからさぁ。」
「そーですよっ。」
「中澤さん一番年上なんだから。」
「率先して飲ませてどうするんですか。」
皆から非難されても中澤さんはごめんごめんと軽くあしらうだけ。
いつものこの人ならきっとこんな事はしない。やっぱり結構酔ってるようだ。
そんな中、更に中澤さんがごっちんのコップにお酒を注ごうとするのが見えて、
止めるべく手を伸ばした。
「ちょっと中澤さん、もう」
“駄目ですよ”と言おうとした時、ぎゅっと抑えられる腕。
手を取ったのは隣にいるごっちんで。
彼女は眉間にしわを寄せてこっちを見ていた。
「ご…」
「だぁめ。」
舌が回らないのか間延びした声で言うごっちん。
何が?何が駄目なの。え、もっとお酒欲しいってコト?
中澤さんもごっちんの言葉をそう取ったのか、
にやりとしたのが視界の隅に見えた。
- 190 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:10
-
「駄目だよ。ごっちん。もうお酒は駄目。」
小さい子に言い聞かせるようにゆっくりと声を出す。
ごっちんが欲しいと言っても、これ以上は飲ませる訳にはいかない。
しかし、彼女は拗ねたような表情で私を見て「違う」と一言。
意味が分からずごっちんを見つめた。
「りかちゃんはぁ、ごとーのこと見てなきゃダメ。」
「え?」
「てか、裕ちゃんに触っちゃやだ。」
「え、え…?」
そう言うとごっちんは満足したのか、
私の肩に頬を乗せて気持ち良さそうに目を閉じた。
周りから聞こえてくる呆れたような溜め息。
「ごっちん独占欲丸出し。」
「こりゃ本格的に酔ってるねぇ。」
と、美貴ちゃんとよっちゃん。2人はまたジョッキを傾けた。
「そういうのは、他所でやって。」
「酒がまずくなるっちゅーねん。」
自分で招いたくせに嫌そうに目を細めて、
中澤さんは自分のコップにお酒を注ぐ。
- 191 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:11
-
うにゃうにゃと何事かを呟くごっちんに目をやると、
視線に気付いた彼女がにこりと笑った。
その顔がちっちゃい子のように安心しきっていて、
あまりにも可愛かったから。
ああ。まずいかもしれない。
滅多に見れないごっちんの幼い姿に
かなりやられてる自分に今更ながら気付く。
どきどき、早まる鼓動。
熱い、頬。
- 192 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:12
-
ごっちんがくっ付いてる方とは反対側の肩に、
美貴ちゃんが手を置くと、
「梨華ちゃん、顔やばいよ。」
にやにや笑ってそう言った。
「ホント。石川、顔とけてるよ。」
「もうごっちんにメロメロって感じ。」
「なっ!」
美貴ちゃんの前に座るよっちゃんも彼女の言葉に同意する。
嫌な笑みを浮かべて、美貴ちゃんが私に顔を近づけた。
「今さ、ごっちん可愛すぎとか思ったでしょ?」
私の首に手を回して耳元で美貴ちゃんが言った。
- 193 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:13
-
恥ずかしくなって抗議しようとしたら、
反対側に強く引かれる腕。
そっちを向くと、私の腕を抱き締めたまま美貴ちゃんを睨むごっちん。
「触んないでよ、ミキティ」
酔っていてもその目力は変わらない。
美貴ちゃんが視線を受け止めてくすくす笑う。
「はいはい。ごめんね。」
「ミキティはいっつもいっつも梨華ちゃんに触りすぎぃ。」
「そうかな?」
「そーだよ。この前も梨華ちゃんに膝枕してもらったんでしょぉ。」
「…何で知ってるの。」
ごっちんの言葉に美貴ちゃんが真顔になって聞き返し、私は固まった。
- 194 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:14
-
確かに、この間膝枕をしたけれど、
それはモーニングの楽屋でのことで、ごっちんが知ってるはずないのに。
「よしこにきーた。」
「「よっちゃん!!!」」
きまり悪そうに明後日の方向へ視線をやる男前に、
美貴ちゃんと私の声が綺麗に重なった。
「ちょっと、何チクってんのっ!」
「そうだよ!言わなくてもいいでしょそんなことっ。」
「やー。ついつい口が。ねぇ。」
「ついじゃないっての!
…待って。もしかしてそれ亜弥ちゃんにも言ったりした?」
「松浦?まだ言ってないけど。」
「“まだ”って何っ!!絶対言うな、ぜぇったい言っちゃダメだかんね!!」
「えー?」
「よっちゃんっ!」
言い合いを始めた2人。口を挟む隙間がない。
呆気にとられて見ていたら、服を引っ張られる感覚。
引っ張っていたのは寂しそうな顔をしたごっちんだった。
- 195 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:14
-
「あのね。膝枕はね。
ただのコミュニケーションというか、
別にヤラシイ気持ちがあったとかじゃなくてねっ。」
その表情に妙に焦って、口を突いて出るのは言い訳。
「…ごめんね?」
「いーよぅ。」
「もう、しないから…。」
ごっちんが私の首元へ甘えるように頬を擦り寄せた。
「ん。梨華ちゃんは、いろんな人にやさしーから、
ごとーはねぇ、ちょっとしんぱい。」
「…。」
「でも、梨華ちゃんはごとーのなんでしょ?」
「うん。…真希ちゃんのだよ。」
「なら、いーや。」
そう言って、ふにゃっと笑うごっちんに心を奪われた。
- 196 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:16
-
どうしよう。どうしよう、ごっちん。
胸がきゅんきゅんするよ。
私はこんなにも、あなたにメロメロ。
- 197 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:16
-
愛しさが込み上げてきて、思わずごっちんを抱き締めようとした、
その時。
がん、と机にコップが叩きつけられる音。
振り向けば、中澤さんの不気味なくらいイイ笑顔。
「帰れ。」
言い放った中澤さんの横で、保田さんが自分のコップに泡盛を注いでいるのが見えた。
- 198 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:17
-
それから、問答無用でタクシーに押し込まれた私とごっちんは、
笑顔の中澤さんに見送られて当初の予定通り家へ。
酔っ払って千鳥足のごっちんを部屋まで連れて行くのは大変だったけど。
ベットの上で幸せそうに眠る彼女を見て、
こんな日があってもいいかもしれないと思い直す。
相変わらず寝顔が幼いごっちんに知らず零れる笑み。
ごっちんのメイクを落としてあげて、彼女の隣へ滑り込んだ。
2人きりでの食事も、部屋でのいちゃいちゃもなかったけれど、
あなたの知らなかった一面を見ることができた。
…少しだけ得した気分。
- 199 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:18
-
クールでカッコイイ姿も、
甘えんぼで可愛い姿も、
私にとっては大事な大事なただ一人のあなただから。
可愛い寝顔にそっと口付けを送って、目を閉じた。
おやすみ、真希ちゃん。また明日。
- 200 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:18
-
次の日、楽屋で人の悪い笑みを浮かべた美貴ちゃんとよっちゃんが、
前日の事で私をからかい倒したのは、また別の話。
- 201 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:19
-
>>>飲んで飲まれて、また飲んで
- 202 名前:飲んで飲まれて、また飲んで 投稿日:2006/01/23(月) 18:21
-
>>18で石川さんが言ってた「酔っ払いごっちん」でした。
泡盛はやばいですよ。ホントに洒落にならないような物がありますから。
後藤さんが別人すぎてアレですが、何とか最後までもってこれました。
あと、中澤さんの関西弁は目を瞑っていただけるとありがたかったり…(笑)
では、お目汚し失礼しました。
- 203 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/23(月) 19:20
- 泡盛はねえ、まずいですよね。
このお話の様子、陰から見ていたい!
作者さんのいしごま、ホントに最高です。
- 204 名前:Liar 投稿日:2006/01/23(月) 20:15
- いいですネェ〜…。
何だかまったりしていて、いい雰囲気なお話でしたね。
とっても満足です。
いしごまは最高!!
作者さんも最高!!
- 205 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/24(火) 00:10
- あのぉーにやけっぱなしになるんですけどどうしましょう?
泡盛飲むよりやばいですよこれは!
- 206 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/24(火) 00:13
- ごっちん可愛い(*´Д`)=з
作者さんのいしごま素敵♪
- 207 名前:太 投稿日:2006/01/29(日) 01:01
- >>203さん
泡盛は沖縄土産で貰ったことがありますが、
やばかったですよ。本当に。
現実でこんな事をしてるなら私も是非覗きたい(笑)
>>204さん
満足していただけたようで、嬉しい限りです。
今回はあまりまったりしていませんが、どうでしょうか?
いしごま最高!!!
>>205さん
嬉しい言葉どうもです。
にやけちゃってください。
でも周りには気をつけて(笑)
>>206さん
作者の趣味で後藤さんはどんどんキャラ崩壊してますが、
そう言っていただけて嬉しいです。
- 208 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:05
- 時折聞こえてくる、静かな笑い声。
テレビに映るバラエティ番組には、最近よく見かけるお笑い芸人。
確か今人気急上昇中とかで、加護ちゃんに聞かされた記憶があるけど、
あまり興味がなかったから、名前はもう覚えてない。
大分前から見るのを放棄したごとーと違って、テレビを真剣に見てる梨華ちゃん。
ソファに座るごとーからは、床に座る梨華ちゃんのつむじしか見えない。
せっかく久しぶりに梨華ちゃんちに泊まりに来たのに、
さっきから梨華ちゃんはテレビに夢中で、放って置かれたごとーは少しだけ寂しかったりする。
かまってほしくて、こっちを見てほしくて、梨華ちゃんを見つめ続けてかれこれ30分。
未だに彼女がこちらを向く気配はない。
最近は良いのか悪いのかお互い忙しくて、1ヶ月くらい会えない日々が続いてて。
だから、今日がすごく楽しみで、ずっと前からこの日が来るのが待ち遠しかった。
- 209 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:07
-
なのに。なのに!
そんな芸人のどこがいいのさ。
泊まるのも、2人きりになるのも、本当に本当に久しぶりなんだよ?
テレビなんか観てないで、こっちを見てよ。ごとーを見てよ。
梨華ちゃんをテレビにとられたような気分になって、
どんどん下降していく機嫌。
知らず眉間に寄る皺を直そうとは思わず、ふ、と息を付き、
ソファの前のテーブルに置かれてるカップを取った。
一口含む。口に広がる独特の苦味。
梨華ちゃんが入れてくれたコーヒーは、もうぬるくなっていてごとーに時間の経過を教えた。
また、寂しさが増した気がして、カップを元に戻すと、
梨華ちゃんがこてんとごとーの膝に頭を寄せた。
その視線はテレビから離れないけど、ごとーの頭は相当単純にできてるようで。
それだけで嬉しくなって、梨華ちゃんの頭を撫でた。
- 210 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:08
-
「面白い?」
さっきから思っていた疑問を口にする。
「面白いよー。この人たち今人気あるんだって。
あいぼんがね?言ってた。」
「…。」
話してるのに、やっぱり視線はテレビに向かっていて。
ちょっと悔しくなって、するりと梨華ちゃんの髪を梳いた。
「ごっちんは面白くないの?」
「んー?面白くなーい。」
「そーかなー。」
ごとーの言葉に、面白いと思うんだけどな、と独り言のように呟く梨華ちゃん。
- 211 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:09
-
違うの。違うんだよ、おねーさん。
確かに、よしことか美貴ちゃんとかまっつーとかと見てたら、
きっとごとーも笑っちゃうと思うんだけどさ。
でも今は。
目の前に梨華ちゃんがいて、しかも手を伸ばせば触れられる。
そんな状況下で、ごとーが梨華ちゃん以外の事を考えるなんて無理。
ゆっくり髪を梳いた。
「だって梨華ちゃんごとーにかまってくれないんだもん。
つまんないー。」
「ええー。」
ふふ、と喉で笑った梨華ちゃんの声は、いつものそれと違って少し低い。
- 212 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:10
-
「かまってよ。2人きりなのに。」
「もぅ。甘えんぼだなーごっちんは。」
「違うし。甘えてるとかじゃないよ。」
「はいはい。」
梨華ちゃんはそう言って、ごとーの膝に更に頭を擦り寄せた。
甘えてると言われて悔しかったけど、彼女の仕草に思わず目を細める。
久しぶりの梨華ちゃんにまだ慣れなくて、早まる鼓動を気付かれないように、
また、彼女の髪を梳いた。
「最近さ。」
「うん?」
「どー?仕事とか。順調?」
「それなりにね。大変だけど充実してるよ。」
「そっか。」
ゆっくり流れる会話に、徐々に彼女を思い出す。
休む事無く髪を梳く。梨華ちゃんの髪は指の間をさらさら流れて気持ちがいい。
- 213 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:11
-
「あ、でもね。」
思い出したように、梨華ちゃんが声を上げた。
くるりとこちらを向いて、視線が絡んだことを確認すると、ふわりと微笑んだ。
「真希ちゃんに会えなくて、寂しかった。」
そう言うと、すぐにテレビへ向かう視線。
「……。」
やっと絡んだ視線よりも。可愛らしい微笑みよりも。
その言葉に、心臓が激しく高鳴って。
言葉一つにどうしようもなく反応する心。
その事実に、目の前の可愛い人に、やばいくらいに侵されてる自分に気付く。
梨華ちゃんが前を向いてくれて良かった。
きっと今の自分は誰にも見せられないくらい真っ赤になってるだろうから。
- 214 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:12
-
「…ごとーも、寂しかった。」
「うん。」
表情は見えないけど、笑む気配。
ぽんぽんと髪を梳いてた手で梨華ちゃんの頭を打って、上がった頬の熱を下げようと、
彼女から手を上げた。
「あ…。」
小さな呟き声。離れた手を追う視線。
(え?)
その声に上げた手をその場に止めた。
「なに?」
「え、あっ、何でもない。」
慌てたように視線を戻す梨華ちゃん。
どこか動揺してるような彼女を見つめて、視線をそのまま自分の手へ。
もう一度、梨華ちゃんを見る。髪から顔を出してる耳が、赤い。
- 215 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:13
-
「…。」
追う視線に、赤い耳。
頬の筋肉が緩んでいくのを自覚する。
「梨華ちゃん。」
彼女の体がぴくりと震えたけど、こちらを向く素振りはない。
けど、赤い耳は変わりなくて。
胸が熱くなる。
本日2度目の不整脈。
ねぇ、梨華ちゃん。ごとートキメイちゃってるよ。君に。
ソファから降りて、梨華ちゃんの隣に座る。
そこから見る彼女の横顔は耳と同じくらい赤かった。
- 216 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:14
-
「ねぇ。梨華ちゃん。
…気持ち良かった?」
「……。」
「もっと撫でたげよっか?頭。」
「いいっ。」
子どもにするようにゆっくり声をかけると、梨華ちゃんは俯いて首を振った。
体育会系で意地っ張りな彼女は、子ども扱いされるのが好きじゃない。
「いーの?」
「いいです。」
そんな素直じゃない言葉も仕草も、ただただ可愛く映って、心が暖かくなる。
同時に沸々と湧き上がる悪戯心。
- 217 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:15
-
「ふーん?」
にやりと心の中で笑って、未だにテレビから目を離さない梨華ちゃんに顔を近づけた。
この意地っ張り。耳赤いんだよ。
物欲しそうな目で手見てたくせに。まだ撫でて欲しいくせに。
知ってんだよ?
梨華ちゃんだって、ごとーに負けないくらいいちゃいちゃするの好きなくせに。
「ホントにいーの?」
耳元に唇を寄せて、小さな声で囁くと、可愛い耳に軽く口付ける。
本当はそのまま食べちゃいたかったけど、そんなことしたら張り倒されそうなので我慢。
「…っ、や」
短い声を上げて、耳を抑えた梨華ちゃんはすごい勢いでこちらを向いた。
「何するのっ。」
赤い顔で睨みつけてくる彼女はちっとも迫力がなくて。
逆にこっちの気持ちを煽ってるという自覚はないんだろうか。
- 218 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:16
-
「梨華ちゃん嘘つくから。」
「嘘なんてついてないよ。」
抗議の声を上げる彼女に少し近づく。
「気持ち良かったんでしょ?撫でられて。」
「違うもん。」
また、近づく。
「嘘だー。」
「嘘じゃ」
まだ抗議する口を自分のそれで塞いだ。
大きく見開かれる目を、キスしながら見つめるていると、
観念したようにゆっくりと閉じられた。
それを見届けて、ごとーも瞼を降ろす。
そういえば、今日初めてキスしたかも。
久しぶりの熱い感触に、深くなり過ぎないように注意しながら。
梨華ちゃんの下唇をそっと舐めて、唇の端にわざと音を立ててちゅっと口付けて顔を離した。
そこには真っ赤な顔で眉尻を下げた梨華ちゃん。
- 219 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:17
-
「…っいきなり。」
「だって、梨華ちゃん可愛いから。」
そう言って、こめかみにキスをする。そのまま下がって頬に吸い付く。
「ちょ、ちょっと!?」
焦る梨華ちゃんの声が聞こえたけど、無視して耳に唇を寄せた。
ぺろりと舐める。
「…っ、ふ…」
聞こえる息遣いに、ぞくぞくと背を這う、何か。
頭の後ろの方が白くなって、くらくらする。
お腹の体温が上がった気がした。
「…も、真希ちゃん!」
梨華ちゃんの感触に夢中になっていたら、当の本人に名前を呼ばれた。
その声にしかたなく顔を上げる。
- 220 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:18
-
「なに?」
いいところだったのに、と不満を漏らして。
梨華ちゃんは安心したように表情を緩めて、息を整えてる。
その仕草も何だか色っぽくて、ぞくり、とまた何かが背を駆け抜けた。
「ご飯、作んなきゃ。ね。」
「いーよ。」
そんな事を言う彼女の首筋に顔を埋める。
唇でそっと撫でた。
「…っでも、材料も買って、あるし。」
ちゅっと吸い付く。痕を残したい衝動に駆られたけど、
そんなことをしたら、後で梨華ちゃんに怒られるので我慢。
- 221 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:19
-
「ま、き、ちゃんも、お腹すいてるでしょぉ?」
「…。」
「ごはん…」
「もう、ご飯なら後でごとーが作ってあげるから。」
まだ、ご飯の心配をする梨華ちゃんにそう言って、見つめる。
視線が合うと、彼女は困ったように目を伏せた。
そんな仕草にまた胸が高鳴って。
ああ、もう。
どうしようもなく興奮する、心。
この思いを、止める術なんて、知らない。
上目遣いで彼女を見つめた。
梨華ちゃんが少しだけ顎を引く。
- 222 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:20
-
――ごとーは知ってる。
「お願い、梨華ちゃん。」
――梨華ちゃんは“これ”に弱い。
- 223 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:21
-
彼女の瞳が揺れた。
「会えなくて、寂しかった。梨華ちゃん。」
人差し指の背で、そっと彼女の頬を撫でる。
「梨華ちゃん。」
掠れてしまった自分の声。
お願い。もう、これ以上。
我慢できない――。
- 224 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:21
-
梨華ちゃんが目を伏せてごとーの肩に顔を埋めた。
「ばぁか。」
囁く彼女の声は、その内容と違って甘く響く。
背中には腕が回された感触。
嬉しくなって、梨華ちゃんを一度ぎゅっと抱き締めて、隣に見える赤い耳にキスを送る。
電話もメールも毎日してたけど、声だけじゃ満足なんてできなくて。
寂しくて、会いたくて。
久しぶりの感触に余裕がないのはお互い様。
彼女に溺れるのに時間はかからなかった。
そっと、梨華ちゃんの体を横たえて。
キスの最中にリモコンを取って、いつのまにか人気芸人がいなくなったテレビを消した。
- 225 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:22
-
あとに残るのは、甘い梨華ちゃんの声と、お互いの熱。
脳が彼女に侵食されていく快感に、身を委ねるのみ。
- 226 名前:我慢できない 投稿日:2006/01/29(日) 01:24
-
>>>我慢できない
- 227 名前:太 投稿日:2006/01/29(日) 01:25
-
>>35の石川さん編です。
あと微妙に>>39にもかすってます。
やらしめな感じを目指してみました(笑)
では、お目汚し失礼しました。
- 228 名前:読者 投稿日:2006/01/29(日) 02:30
- 毎回楽しく読ませて頂いております!
今回のもイイ!!
- 229 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/29(日) 11:59
- ほんっとにいいわいしごま
更新されるたびに悶絶しております
- 230 名前:Liar 投稿日:2006/01/29(日) 15:33
- メチャクチャいいですね!
もう、こっちもにやけてきますよ。
甘いいしごま大好き!
- 231 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/30(月) 02:39
- ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!
甘々ないしごまかわいーです。
もうたまりません。
- 232 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/30(月) 20:15
- 甘くて可愛くてすっごく癒されます。
作者様のお話大好きです。
- 233 名前:太 投稿日:2006/02/10(金) 20:21
- >>228さん
毎回読んで頂いてるようで、ありがとうございます。
励みになります。今回のはお口に合うでしょうか(笑)
>>229さん
こんな文で悶絶できましたか(笑)
いや、嬉しい限りです。
>>230さん
にやけちゃってください。
個人的に甘いのが好きなので、
これからもどんどん甘くしていきたいと思っております。
>>231さん
たまりませんか(笑)
可愛く可愛くと思って書いたので、
そう言って頂けると嬉しいです。
>>232さん
やらしめでしたけど、癒されましたか(笑)
大好きと言って頂いてちょっと照れました。
- 234 名前:太 投稿日:2006/02/10(金) 20:22
-
最終的にはいしごまですが、石川さんと後藤さんに彼氏がいたり、
いしよしが仲良さげだったりしますので、ご注意を。
- 235 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:23
-
かちかちと携帯電話を操作する音。
騒がしい楽屋でそれを聞き取れたのは、その携帯の持ち主が隣に座っていたから。
ごっちんはさっきから真剣な顔で携帯と向き合っている。
相手は多分彼氏。
この間、もうすぐ1ヶ月になるんだと、ふにゃっと笑って教えてくれた。
その笑顔に心がぎしりと痛んだのは内緒。
彼女の横顔を携帯をいじるフリをして盗み見る。
ごっちんと呼べるようになって大分経つけれど、
綺麗な顔に、圧倒的な存在感に、慣れることはなくて。
卒業間近の彼女は、それまで以上に誠実にモーニングと向き合っていて、
真剣な表情を見る機会が増えた今でも、隣にある横顔に鼓動が早くなった。
- 236 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:23
-
ねぇ。ごっちん。
あなたは知らないだろうね。
梨華ちゃんと名前を呼ばれるだけで頬が緩んでしまうこと。
その横顔に見蕩れてどきどきしてること。
携帯の相手に嫉妬していること。
私が、あなたに、恋をしてること。
- 237 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:24
-
最初は憧れだと思ってた。
名前を呼ばれるだけで、笑顔を向けられるだけで、
どきどきと高鳴る鼓動。
その意味に気付いた時には、もう、すべてが遅すぎた。
普通とは言い難いこの恋は、この先、報われることはきっとない。
悩んで、悩んで、泣いた。
- 238 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:25
- 指の動きが止まって、ごっちんがぱたんと携帯を畳む。
手に納まるそれを見て溜め息。何故だか浮かない表情。
「彼氏さん?」
「んー。彼氏さん。」
尋ねると、携帯をくるくる回して答えるごっちん。
彼女が手を動かす度に、ストラップが音を立てて揺れる。
「1ヶ月なんだよね?」
「…そーだけど。よく覚えてるね、そんなの。」
「覚えてるよー。ついでに、ごっちんのだらしない笑顔もね。」
笑いながら言う私にごっちんは唇を尖らして、だらしなくないよ、と抗議した。
覚えてるに決まってる。
たとえ心が痛むような出来事でも、その笑顔が自分に向けられた物でなくても。
私にとってはあなたとの大事な思い出だから。
- 239 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:26
- 「お祝いとかするの?」
自分で発した言葉にずきりと痛む心。
ごっちんは手の中の携帯に目を落として、それを揺らした。
ストラップも一緒にゆらゆら揺れる。
彼女はちらりと窺うようにこちらを見た。
「…気になる?」
「気になるっていうか、素朴な疑問。」
「…。」
「なに?」
その視線に居心地が悪くなって、少しだけ顎を引く。
「時間がさ。」
「え?」
「時間が合わないから、しないと思う。」
「あ…」
- 240 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:27
-
今も昔も忙しい彼女の仕事量は、卒業前のこの時期、私たちの比じゃなくて。
ごっちんに時間が無いのは、
毎日のように一緒に仕事する私たちが一番分かってるのに。
自分の考えのなさに自己嫌悪。
謝ろうとしたその時、手元に置いてあった私の携帯が鳴った。
「っ…。」
「…。」
携帯を手に取ると、ごっちんがふいっと視線を逸らすのが視界の隅に見えた。
ごっちんの方を気にしながら、ぱかりと携帯を開く。
画面にはメールの受信を知らせる文字と彼氏の名前。
私はごっちんが好きだった。
けれど、報われることのないこの思いはただ苦痛で。
彼女を忘れるために作った彼氏とはまだ続いてる。
未だにその目的を果たせてないけれど。
- 241 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:28
-
「彼氏さん?」
「…うん。」
彼女の言葉に頷く。
メールの内容はデートのお誘い。
自分のスケジュールを思い出して、かちかちと操作。
「なになに?梨華ちゃん愛してるよーぅ、とか?」
冗談でもそんなことを言わないで欲しい。
私には決して囁かれることの無い言葉にどきりと鳴った心。
「…違うよ。」
少しだけ顔の体温が上がったことを気付かれないように、
携帯から目を離さないで言った。
- 242 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:29
-
「週末どっか行こうって。」
「あ、デート。」
「まあ…。」
「いーねぇ。何か幸せそー。」
幸せ?これは幸せなんだろうか。
本当に好きな人に好きだとも告げられない。
その恋を忘れたくて、好きでもない人と付き合ってる。
身勝手で、最低な私。
仕事がある、と入力して送信。
携帯を閉じる。
息を吐いて、天を仰いだ。
- 243 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:30
- 「てかさ、それ長いよね。」
ごっちんの声に振り向くと、彼女の視線は私の手に納まる携帯へ。
「携帯のこと?」
「そー。半年とか使ってない?」
「そうだね。」
「変えないの?」
「うん。壊れたわけじゃないし。」
一度携帯に視線を落として、ごっちんを見る。
目が合うと、彼女は黒目がちな瞳をくるりと回した。
- 244 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:30
-
「可愛いのいっぱいでてるよ。
ごとーなんか、今年に入って5コか6コ目。」
知ってるよ。
「そうだけど…。でも、ごっちんは特別じゃん。
だって、」
だって、それは。
- 245 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:31
-
「彼氏変わる度に、携帯、変えてるからでしょ?」
- 246 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:31
- それを聞いたのは、去年の春。
楽屋からの帰り道、局の廊下で腕を引かれた。
振り向くとごっちんがいて。
彼女はまるで内緒話をするように、
頻繁に変わる自分の携帯の謎を、そっと教えてくれた。
――ごとーね。彼氏変わる度に機種変してんの。
その言葉に、ショックを受けたことを気付かれてはいけない。
引きつりそうになる顔を必死で堪えて、笑顔を作った。
彼女の携帯が変わる度に痛む心を誤魔化して。
- 247 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:32
- 「幸せなのはいいけどね。周りには気を付けなよ。」
ごっちんはそう言って、1ヶ月間変わらない携帯をジーンズにねじ込み席を立つ。
見上げると、その目が落ち着きなく泳いでる。
彼女は視線を机に向けたまま口を開いた。
「…あー。あのさ。梨華ちゃん、これから暇?」
「これから?」
「あのっ、美味しいパスタ屋さん見つけたんだけど、
行かないかなーって、思ったりして…。」
滅多に無い彼女の誘いに心が弾んだけれど。
「ごめんね。まだ私仕事あって…。」
胸の前で手を合わせて“ごめん”のポーズをとると、
ごっちんは思い出したように笑い自分の髪を梳いた。
- 248 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:32
-
「そっか。そだね。そうだった。あは、忘れてた。」
「ごめん…。」
「いやいや。仕事じゃしょうがないしさ。」
「あの、また良かったら誘って?一緒に行こう。」
私の言葉にごっちんの視線がこちらを向く。
「うん。きっと。」
嬉しそうに微笑んだ。
- 249 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:33
- 帰っていく彼女を見送って、椅子に深く座り直した。
携帯を見ると、メール受信の文字。
開くと彼氏からで。
仕事頑張れ、と書かれてた。
付き合いの悪い私に怒るでもなく、優しい文面に湧き上がる罪悪感。
携帯を閉じると、息を吐いて顔を伏せた。
――私は、何をやってるんだろう。
- 250 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:33
-
かたんと突然目の前に置かれた缶ジュース。
「暗いよおねーさん。」
「よっちゃん。」
驚いて顔を上げると、そこには見慣れた笑顔。
よっちゃんはさっきまでごっちんが座っていた椅子に腰を降ろして、
私の前に置かれた缶を指差す。
「いしかー元気なかったから、優しいよしざーさんが奢ったげる。」
「…ありがとう。」
彼女の気遣いに心がふわりと温かくなって、お礼を言って、缶に手を伸ばした。
触れた温かい缶にほっと息を吐く。
- 251 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:34
- 「…なんかあった?」
よっちゃんは自分も手に持っていた缶の蓋をぷしりと開けて口に運ぶと、
こちらを見ずに呟いた。
よっちゃんは全部知ってる。
彼氏のことも、その理由も、
ごっちんに対する私の思いも。全部。
一人悩んでいた時。
その時もこうやって温かい缶を私に渡して。
静かに隣に佇んで。
優しい気配に心に溜めていた思いを吐き出した。
止まらなくなった涙にずっと側にいてくれたよっちゃん。
彼女の優しさに何度も救われた。
- 252 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:34
-
「なんかね。駄目だなぁって。
忘れたいのに。全然ダメでさ?彼氏の事も中途半端で。」
よっちゃんは何も言わずに缶を傾ける。
「何やってるんだろと思って。」
彼女に貰った缶の蓋を開けた。
「ほんとに…」
言いたい事はたくさんあるのに、それ以上言葉が続かない。
涙が出そうなのを必死に堪えた。
- 253 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:35
-
俯くと、頭によっちゃんの手の温度。
ゆっくり撫でられて、また目頭が熱くなる。
誤魔化すように缶に口をつけた。
中身はホットココア。
口に広がる甘さと、隣の優しい気配に少しだけ安心した。
- 254 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:35
-
こんな恋、忘れたいのに。
彼女の笑顔が心から消えることはなくて。
それでも、この気持ちを告げる勇気は無い。
ぎしぎし心が軋んでも、ごっちんの一番になることは一生なくても、
私は“友達”というこの席を手放せずにいた。
もうすぐ、ごっちんは卒業する。
悲しくて寂しいけど、それは同時に彼女との仕事が減るということ。
会う時間がなくなれば、きっとこの恋も終われるはずで。
そうすれば、本当の友達として堂々とごっちんの隣に立てる。
――そう、思ってた。
- 255 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:36
-
無事にごっちの卒業式が終わり、彼女との仕事は予想通り減っていった。
顔を合わせることも少なくなって、今では時々ごっちんの方からメールが入るくらい。
食事の誘いも、当り障り無く断ったりして。
会わなくなれば自然とごっちんの事を考える時間も減っていった。
彼女の穴を埋めるために必死で仕事をしていたというのも、確かにあったけれど。
それでも順調に進んでた。
少なくとも私はそう思ってた。
- 256 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:36
-
それは突然訪れた。
その日私たちは番組の収録のため局へ。
いつも通り仕事をこなして、楽屋へ戻る廊下をよっちゃんと並んで歩いてた。
いつも通り。
仕事も、よっちゃんとの世間話も。
全部いつもと変わらない。
正面に見える曲がり角から急に出てきたその人を見とめて、硬直した。
「ごっちん…。」
呟いたのは隣にいたよっちゃん。
- 257 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:37
-
さらさらの髪に、まっすぐ前を向く瞳。
そこにいたのはごっちんだった。
- 258 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:37
-
どくりどくりと大きな音を立てる鼓動。
異常な速さで心臓が動く。
久しぶりに見る彼女の姿に忘れていた感情を思い出す。
「…梨華ちゃん…。」
混乱した頭に、ごっちんの声が聞こえて。
また、心臓が大きく跳ねた。
ごっちんがいる。ごっちんがすぐそこに。
なんで。会わないようにしてたのに。
メールも電話も必死で我慢してたのに。
なんで。
- 259 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:38
- 「ごっちんも仕事?」
答えられない私の代わりに、よっちゃんがごっちんに話し掛けた。
「うん。新曲のね。」
「あーそれ聞いたよ。いい感じじゃーん。」
「んへへ。ありがと。」
照れたように笑う姿も久しぶりで。
ごっちんがこちらに近づく。
- 260 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:39
-
「じゃあ、まだ仕事あるから。」
そう言って私の隣を通り抜ける。
その時、腕をそっと掴れた。
びくりと震えて振り向くと、ごっちんと視線が絡む。
その瞳が切羽詰まったように揺れていて。
目が、離せない。
「こんどっ。」
「え」
「今度、時間合ったら、ごはん行こうね。」
言うが早いか、彼女は廊下を早足に過ぎていった。
- 261 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:39
-
「なに、あれ…。」
よっちゃんの不思議そうな声が響いた。
「…石川?」
訝しげな声に答えられない。
ごっちんに掴れた腕をぎゅっと握った。
どくどくと落ち着くことの無い鼓動。
心臓が締め付けられるように軋んだ。
あつい。熱い。
とけちゃいそうだ。
彼女に触れられた部分が、焼けるように熱かった。
- 262 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:39
-
忘れられたと思ってたのに。
もう終わったと思ってたのに。
その姿だけで、その声だけで、どうしようもなく反応した心。
――私はまだ、こんなにもごっちんのことが好きだ。
再発したこの熱をどうすればいいのか、もう、私には分からなかった。
- 263 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:40
-
ごっちんと再開してから数日、どうしようもなくってしまった私は、
彼女のことを考える時間が増えていった。
頭ではまずいと思うけれど、そう思えば思うほど、心には彼女への想いが溢れて。
よっちゃんが心配そうに掛ける声にも、
大丈夫と言うだけで精一杯。
そして、丁度ごっちんと会った1週間後、彼氏に別れを告げられた。
- 264 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:40
-
久しぶりのデートの帰り、車の中で彼は突然口を開いた。
別れよう、と。
本当に好きなのは俺じゃないだろう、と。
そう、言った。
ごめんなさいと頭を下げることしかできない私を彼は責めなかった。
どれだけ罵倒されてもしかたない事をしたのに。
謝らなくていいから。素直になれ、と。
幸せになって、と。
優しい彼は最後まで笑顔で。
罪悪感と自己嫌悪で、吐き気がした。
- 265 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:41
-
次の日、楽屋で携帯を眺めてたら、ぽんと肩に置かれた手。
心配そうなよっちゃんの顔。
なんだか最近彼女にはこんな顔をさせてばかりだ。
「いしかーさん。」
「なぁに?よしざわさん。」
その手から彼女の優しさを感じて、自然と笑顔になる。
よっちゃんは前を向いていて、目の前にある鏡越しに視線が絡む。
「あれ、皆は?」
鏡に映る楽屋の中には誰もいなくて、隣に座ったよっちゃんに尋ねた。
- 266 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:41
- 「1人ずつコメント撮りだって。さっきスタッフさん言ってたじゃん。」
「あ、そっか。」
「皆呼ばれて行ったよ。」
呆れたようなよっちゃんの言葉に思い出す。
大分長い間ぼんやりと携帯を眺めていたようだ。
「よっちゃんは行かないの?」
「私はもう終わった。てか、ホント聞いてなかったんだね。」
「何かぼーっとしてて。」
「…いしかーが仕事場で気ぃ抜くなんて珍しー。」
彼女はそう言って、椅子に浅く座りなおし、背もたれに体重をかけた。
「じゃあ、私も行かなきゃ…。」
「あー、いしかーの番はまだだよ。誰か呼びに来ると思うし。」
「そっか。」
- 267 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:42
- よっちゃんはちらりとこちらを見て、すぐに鏡に視線を戻す。
鏡の中で目が合うと、口を開いた。
「なーんか、いしかー最近変。」
「えー?」
「ま、いしかーが変なのは今に始まったことじゃないけど。」
彼女の言葉に、なにそれと、くすくす笑う。
「最近はおかしすぎ。特に今日は、…変だよ。」
「そー?」
「そう。ほら、おにーさんに話してみなさい。聞いたげるから。」
「おにーさんって、よっちゃん。」
言葉遊びをしていたら、鏡の中のよっちゃんがすっと視線を外した。
彼女の気配が少しだけ変わる。
- 268 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:42
-
「大丈夫?」
そう言ったきり彼女は黙った。
絡まない視線は彼女の照れ隠し。分かってるから嫌な気分にはならない。
「よっちゃんは大丈夫?」
聞き返したら、よっちゃんが鏡越しに上目遣いで見つめてきた。
羨ましいくらいに白い肌が桜色に染まる。
普段かっこいとか男前とか言われる彼女だけど、
その仕草は子どもっぽくて可愛らしい女の子のそれ。
「いきなり…。」
「そう?」
- 269 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:43
-
私とよっちゃんがこんな関係になってから、
私たちの間には私のごっちんへの思いと、もう一つ秘密があった。
よっちゃんの恋の話。
叶わない恋をしてる。ずっと前からずっと片思いで。
相手はきっと私の思いを知らない。
これからもその気持ちを相手に伝えるつもりは無い、と。
彼女は言った。
その相手の名前を聞いたことはないけれど、
それを初めて聞いた時、彼女の寂しそうな笑顔が頭から離れなかった。
- 270 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:43
-
「最近どう?」
「最近とかないっての。私のことは別にいいから。」
恥ずかしそうに口を尖らすよっちゃん。
いつも頼ってばかりだから、時々でいいから頼ってくれてもいいのに。
「で、何かあったの?」
こほんと一つ咳払いをして聞くよっちゃんは、私と視線を合わせない。
頬がまだ少し赤い。
「別れた。」
「え?」
「彼氏と別れた。というか、振られちゃった。」
あははと笑って言ってみる。
- 271 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:44
- どうも私はよっちゃんの醸し出す雰囲気に弱いようで。
近くにいると、すべて吐き出して、寄りかかりたくなってしまう。
「そっか。」
「うん。まあ、当然なんだけどね。最低なことしてたから。」
「…。」
「素直になれって、言われた。」
彼の最後の笑顔を思い出す。込み上げる罪悪感。
「…素直になってみる?」
その言葉に思わずよっちゃんの方を向いた。
素直になる、それは、あの人に想いを告げるということで。
「ごっちんが、好きですって言うの?」
「うん。」
彼女にそんなことを言われたのは初めてだった。
- 272 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:44
-
「…なれたら、いいね。」
そんな勇気はないよ。
ごっちんに軽蔑されたら、きっと私は生きていけない。
今のままでいい。
苦しくても、切なくても、このまま。どうか最後まで。
- 273 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:45
-
目を伏せた。携帯を持っていた手に力が入る。
「いしかーまだその携帯だったんだ。」
よっちゃんの言葉に、携帯を見た。
「変えないの?」
不思議そうな声音。
そいえば、ごっちんにも変えなよと言われた事があったっけ。
- 274 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:45
-
もう、変え時なのかもしれない。
「…そうだね。」
携帯も、私の気持ちも。
変えられればいいのに。
全部。
なんでこんなに好きなんだろう。
ごっちんの言動一つに、こんなにも心が乱されて。
関係ない人まで傷つけた。
「いしかー?」
鏡越しに絡まった視線からよっちゃんの心配げな様子が読み取れて、
少しだけ笑ってみせる。
- 275 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:46
-
初めから報われないと分かってる恋は辛いだけで。
思い描いてたものとは違ってた。
ねぇ、よっちゃん。
私たちのこの想いは、いつ終われるんだろうね。
優しい気配。視線。言葉。
隣に座る彼女の肩に頭を預けた。
- 276 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:46
-
最近ね?私、思うんだ。
「ひとみちゃんを好きになればよかったなぁ。」
優しくて、温かくて、いつだって私を見ていてくれた。
あなたがいなかったら、私は今、どうなっていたか分からない。
本当に感謝してるんだよ。
- 277 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:46
-
目を閉じて、温かい体温に甘える。
「ひとみちゃんとか、懐かし。」
「新鮮?」
「新鮮すぎて、逆に鳥肌がっ。」
「もー。」
「おねーさんが言うと嵌りすぎてサムイから。」
「てーれちゃって。」
彼女に凭れたまま会話をしていると、不意に笑む気配。
こてんと、折り重なるようによっちゃんが私の頭に自分のそれを預けた。
- 278 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:47
-
「私も、梨華ちゃんを好きになればよかった。」
久しぶりに呼ばれた名前が少しだけくすぐったい。
ひとみちゃん。ありがとう。
ごめんね。
あと少し、あともう少しだけ、こうさせて。
きっと立ってみせるから。あの人の前に、友達としてちゃんと笑ってみせるから。
どうか。
彼女の優しさに体を預けて。
その温かさに、甘えた。
- 279 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:47
-
「じゃあ両思いじゃーん。」
冗談交じりの私の言葉に、
よっちゃんが声を出して笑った。
「梨華ちゃーん。あいしてるよぉー!」
「きゃーっ。」
楽屋に誰もいないのをいいことに、よっちゃんは調子に乗って、
ぐりぐりと頭を擦り寄せる。
「めっちゃ好きー。」
「あはは。告白されちゃった。」
「おにーさんが、幸せにしたげるよ。」
楽しそうなよっちゃんの声が楽屋に響く。
こんなじゃれ合いも久しぶりだ。
- 280 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:48
-
昔はよくやったっけ。
あいしてるよーとか、ちゅーするぞーとか。
きゃあきゃあやってたら、いつの間にかごっちんも入ってきて、3人で。
その頃を思い出し、頬が緩む。
よっちゃんの腕を抱き締めて、彼女の肩に頬を押し付けた。
「私もあいしてるよー!ひとみちゃん。」
叫んだと同時に楽屋の扉が開いた。
- 281 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:48
- 咄嗟の事に動けずにいたら、鏡の中に入ってきたのは矢口さん。
矢口さんは私たちの態勢を見とめると、困ったように眉を寄せた。
「やっぱりお前らか。外までまる聞こえだっての!
恥ずかしいなーもー。」
そう言うと矢口さんは腕を組んで拗ねたように唇を尖らす。
その仕草は、只でさえ童顔の彼女を更に幼く見せた。
可愛い先輩に、ふふっと笑う。
「矢口さんもやりますー?」
「特別に入れてあげてもいいですよ。」
やらないよ、と言いながら矢口さんは扉を開けたままこちらに近づく。
- 282 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:49
-
「あ、矢口さん。ドア閉めてくださいよー。」
よっちゃんの言葉に、矢口さんが扉を振り返る。
開きっぱなしの扉を見て、不思議そうに首を捻った。
「あれ、ごっつぁんは?」
突然出てきた名前にびくりと反応する心臓。
隣のよっちゃんの体が少し強張った。
矢口さんは扉から頭を出して左右を確認する。
「おかしいなー。楽屋の前まで一緒にいたのに…。」
そう呟き、扉を閉めた。
「…ごっちん、来てたんですか?」
尋ねるよっちゃんの声が硬い。そう思ったのは私の気のせいなのか。
矢口さんがこちらを向いた。
「んー?さっきスタジオの方に顔出しててさ。
2人にも挨拶するって言うから一緒にそこまで来たんだけど。」
急用でも思い出したのかな、と矢口さんは首を傾けた。
どくりどくりと心臓が跳ねる。
- 283 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:49
-
聞かれたかもしれない。
ごっちんが好きだと、ばれたかもしれない。
嫌な汗が背中を流れた。
- 284 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:49
- 「…どこから聞いてました?」
「え?」
「うちらの会話、どこから聞いてました?」
よっちゃんの抑えた低い声に、矢口さんが気圧されたように顎を引いた。
よっちゃんを窺い見れば焦ったような表情。
「えと、梨華ちゃんあいしてるよーとかからだけど…。」
その言葉に、ほっと胸を撫で下ろした。
良かった。まだ、大丈夫。
「あ、石川。順番回ってくるから、そろそろ入った方がいいよ。」
「はい。」
返事をして、よっちゃんから腕を離す。
席を立とうとした時、彼女に腕を引かれた。
そちらを見ると、その顔は焦りの色が強くなっていて。
- 285 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:50
-
「よ…」
「ごめん。梨華ちゃん。私、もしかしたら…。」
よっちゃんはそこで言葉を切ると、迷子になった子どもみたいな顔をした。
意味が分からず、聞き返そうとした時。
扉のノック音にスタッフさんの私を呼ぶ声。
よっちゃんの顔を見ると、目を伏せて私から腕を離した。
「ごめん…。」
「うん?」
そう言って、楽屋をあとにした。
分からなかった。彼女の言葉も、その表情の意味も。
私には、この想いをごっちんに知られなかった、
それだけが重要だったから。
- 286 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:50
-
そのあと収録が終わって、よっちゃんにさっきの事を聞こうとしたら、
彼女は曖昧に笑って、何でもないよと、誤魔化すだけ。
そうなると、あの時よっちゃんが何を見たのか、何を思ったのか、
もう私に知る術はなかった。
- 287 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:51
-
それ以来、ごっちんからのメールがぱたりと止んだ。
彼女との繋がりが薄れていく気がして寂しかったけれど、
その方が彼女の為にも私の為にも良い事だと、心に言い聞かせて。
- 288 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:51
-
その数日後、私は意外な場所で彼女と遭遇した。
午後からオフだった私は、柴ちゃんに振られ、しかたなく一人で買い物へ。
世間では夕食の時間帯。
夕食は外で済ませても良かったんだけど、一人で外食は何だか味気なくて。
早く家へ帰るために駅のホームへ。
ホームの壁に体を預けて、ふと前を見てみると、
視界に飛び込んできた後姿。
キャップに薄いサングラス。
さらさら流れる綺麗な髪に、すっと佇むその姿。
一番会いたくて、一番会いたくなかった人。
- 289 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:51
-
――ごっちん。
心の中で呟いて、咄嗟に被っていたキャスケットを引き下げる。
場所を移動しようと思ったけれど体が言うことを聞かない。
頭では駄目だと理解していても、心は彼女の姿を求めていて。
少しだけ。少しだけなら――。
早まる鼓動。そっと彼女に近づいた。
久しぶりに見る横顔は、涙が出そうなほど変わらなくて。
どくりどくり、五月蝿い心臓を左手で抑えた。
同じ車両に乗り込んで、彼女を見つめる。
電車はそれなりに混んでいて、ごっちんに見つかることはない。
- 290 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:52
-
がたんがたん。断続的な振動に足元が少しふらつく。
視線の先の彼女は鞄から携帯を取り出した。
俯いて、操作してる。
そこまで視線で追って、ふと我に返った。
何してるんだろ。
これじゃまるでストーカーだ。
知らず漏れる自嘲的な笑み。
忘れるって決めたのに、こんなことをしてちゃ、駄目だ。
もう止めようと、ごっちんから顔を逸らした。
その時、持っていた鞄の中で携帯が震えていることに気付く。
手に取って、ぱかりと開いたその画面に映し出された名前に目を疑った。
(ごっちん…!?)
そこには、同じ車両に乗る彼女の名前があった。
- 291 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:52
- 嫌な汗が流れた。
震える指でかちりとメールを開く。
――そこで何してるの?
たった一言、そう書かれていた。
(ばれてる?)
勢いよくごっちんの方を向く。
彼女は携帯に目を落としていて、休む事無くその指が動いてた。
手の中の携帯がメールの受信を知らせる。
――これから予定ある?
そう聞かれて、少しだけ頭が混乱した。
予定は無い。
今日は午後からオフだったし、なにより今から家に帰るのだから。
無いけど、と打って送信。
すぐに震える携帯。
- 292 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:53
-
――じゃあ、ごはん行かない?
断ろうと思ってた。
遠くから姿を見ただけでこんな状態なんだから、
2人で食事なんて行けるわけがない。
でも。
でも、少しだけなら。
別に普通にごはん食べるだけだし。
だから。
そう自分に言い訳をして。
本音を言えば、彼女の声が聞きたかった。
もっと近くで彼女を感じたかった。
笑顔を、見たかった。
ただそれだけで。
馬鹿な私は承諾した。
- 293 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:53
-
ごっちんの指示で次の駅で下車。
彼女は駅で、久しぶり、と言ったきり、お店に着くまで一言も喋らなかった。
怒っているのか、いないのか。ずっと無表情で私の少し前を歩く。
話し掛けるきっかけがなかなか掴めなくて、黙って彼女の後を付いて行った。
ごっちんが連れてきてくれたお店は感じの良いパスタ屋さん。
彼女が店員さんに何事かを話すとお店の奥にある個室に通された。
適当に何品か注文して落ち着くと、やっと口を開くごっちん。
「結構イイでしょ?」
にっと笑いながらキャップをとる。
その声に、笑い方に、じわりと込み上げてくる気持ち。
- 294 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:54
-
「うん。こんな所あったんだね。」
そう言って被っていたキャスケットをとった。
ごっちんは、サングラスをしたまま俯いて頭をかくと、
小さな声で呟いた。
「覚えてない?」
そう聞こえた気がした。
このお店に来るのは初めてだったし、
誰かに教えてもらった記憶も無い。
「なに…?」
「ん。や、なんでもない。」
そう言った彼女のサングラスの奥に隠れている目が、
寂しそうに揺れた気がして、胸の中に広がる不安。
何かまずいことを言っただろうか。
- 295 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:54
-
ごっちんはサングラスを外し傍らに置いた。
鞄から携帯を出してそれも置く。
電車ではよく見えなかったけど、記憶にあるそれとは違っていて。
その意味にずきりと心が軋む。
「最近どう?相変わらず忙しそうだけど。」
直に見る彼女の目は記憶の中にあるそれと変わらない。
真っ直ぐ私を捉える。
「忙しいよ。新曲の振り付けが大変で、今はそれにいっぱいいっぱいかな。」
「それやぐっつぁんも言ってた。」
「みんな必死だからね。」
「でも、梨華ちゃんなら大丈夫でしょー。」
突然呼ばれた自分の名前に、締め付けられるように胸が痛んだ。
- 296 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:54
-
嬉しかった。
彼女の声で名前を呼ばれることが。
単純に嬉しかった。
「梨華ちゃん?」
固まってしまった私をごっちんが訝しげに呼ぶ。
「ご、ごめん。」
「…大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。」
動揺を隠すように笑って言うと、ごっちんの表情が少し緩む。
注文した品が運ばれて、それを突付きながら他愛無い世間話。
私の話、ごっちんの話、最近聞いた音楽の話。
久しぶりの感覚に自然と心が弾んだ。
- 297 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:55
-
デザートのアイスを食べていた時、唐突にごっちんが呟いた。
「彼氏と別れたの?」
- 298 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:55
- 彼女を見上げる。
ごっちんは手にしたコーヒーカップに視線を落としていて、こちらを見ない。
「…なんで知ってるの?」
怒りでもなく、悲しみでもなく、素朴な疑問。
ごっちんには話していないはずだ。
さっきまでの楽しい気分がすうっと引いていくのを感じた。
「やっぱ別れたんだ。」
彼女の纏う雰囲気が変わった気がした。
「別れたけど。ごっちん?急に…」
「それで。」
私の言葉を遮るように響いた彼女の声。
まるで怒ってるような声音に戸惑う。
- 299 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:55
-
「それで、よしこと付き合ってるんだ。」
驚きで声が出なかった。
彼女の言葉を理解するのに時間が掛かる。
ごっちんは今なんて言った?
よっちゃんと私が付き合ってる?
なんで。
頭の中が真っ白になって危うくスプーンを落としそうになった。
「なに、言ってるの…?」
私の言葉にごっちんは苛立たしげにカップを机に置く。
乱暴に扱ったせいでがちゃりと嫌な音が鳴った。
- 300 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:56
- 「だからさぁ。よしこと付き合ってんでしょ。今。」
「なんでそうなるの?そんな事あるわけないじゃない。」
ごっちんは、はっと短く息を吐くとこちらを見た。
「嘘吐かなくていーよ。」
「ごっちん、あの」
「愛してんだよねぇ。いいじゃん幸せで。」
その言葉に数日前の楽屋でのよっちゃんとのやり取りを思い出した。
同時に彼女が誤解している理由も。
あんなのいつもの冗談なのに。
何故彼女がそんな事を信じているのか分からなかった。
「違うよ。」
「違くないよ。」
「あのね、ごっちん。話を聞いて。」
「いいよ。知ってる。」
まるで駄々をこねる子どもみたいに私の話を聞かない。
取り付く島がなくて途方にくれた。
- 301 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:56
-
「てかさ、彼氏と別れてすぐによしことか、梨華ちゃんもすきだよねぇ。」
馬鹿にしたような笑みを浮かべながらごっちんが発した言葉に、
かっと頭に血が上った。
「…っ!」
気付いた時にはもう体が動いてて。
じんと痛む自分の手と、
少しだけ赤くなったごっちんの頬。
涙が出た。
怒りでじゃない。
ごっちんにそんな風に思われてたという事実が、なにより一番悲しかった。
- 302 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:57
-
「梨華ちゃん…。」
止まらない涙。
悲しくて、情けなくて。
ぎゅっと自分の手を握り締めた。
「何でそんなこと言うの。」
ごっちんの動きが止まる。
「よっちゃんとは、そんなんじゃない!大好きだけど違うよ。」
色んな感情が一気に押し寄せてきて混乱する頭。
- 303 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:57
-
「だって私は!」
頭の中で警鐘が鳴り響く。
これ以上は言ってはいけない。
本当に戻れなくなる。
言っては、いけない。
- 304 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:58
-
「私はごっちんが好きだから」
- 305 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:58
- 瞳を大きく見開いたまま固まってるごっちんを見とめて。
熱が引いて、冷静さを取り戻す頭。後悔。
やってしまった。
何の為に黙ってきたのか。
何の為に今まで――。
自分の馬鹿さ加減に責める言葉も思いつかない。
俯くと、食べかけのアイスが目に入った。
怖くてごっちんの顔を見れない。
アイスは半分以上溶けていて、もうきっと美味しくないだろうと思った。
- 306 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 20:59
- 「…ごめん。」
気まずい空気に、そう言ったけど返事はない。
――絶対軽蔑された。
もう終わりだ。そう思った。
ごっちんの友達も。
この恋も。
すべて。
「ごめん。今の忘れて。」
それだけ言うのが精一杯で。
鞄を引っ掴んで、席を立つ。
一刻も早くこの場からいなくなりたかった。
- 307 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 21:00
-
「やだ。」
突然耳に入った言葉に、びくりと体が震える。
どくりどくり。心臓の音が聞こえる。
ごっちんがどんな表情をしているのか知るのが怖くて、動けない。
「忘れない。」
机に置いていた手の上にごっちんの手の感触。
その温かさに、また涙が溢れてきた。
「絶対忘れてなんかやんない。」
彼女の言葉の意味を図りかねて。
動けなくてぐっと目を閉じた。
ごっちんに触れられた所がじんじんと疼く。
「梨華ちゃん。」
- 308 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 21:00
-
触れていた手をぎゅっと握られた。
腕を引かれて、ごっちんの隣に座らされる。
突然の事に抵抗できない。
隣に座る彼女の気配に、心臓が動きが早まる。
手が震えた。
怖くて顔が上げられない。
「梨華ちゃん?こっち見て。」
俯いて首を振る。
逃げ出したい。
「お願い。ごとーを見て?言いたいことがあるの。」
「い、いいっ。聞きたくない。」
「梨華ちゃんは何にも分かってない。」
「分かってるもん。」
「分かってないよ。ごとーまだ返事してないじゃん。」
逃げたいのに、ごっちんに手首を掴れてそれができない。
嫌だ。嫌だ。
続く言葉は分かってる。
涙が止まらない。
- 309 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 21:01
-
「梨華ちゃん。」
焦れたような声。
捕らえられた腕に力を入れて、逃れようともがいた。
逃げたってどうにもならないのは分かってる。
出てしまった言葉を取り消せないのも。
突然、強く腕を引かれた。
その力に抵抗することなく体が傾く。
体中に感じる圧迫感。
ふわりと鼻腔を擽るのは、ごっちんが好んでつけている香水の香り。
- 310 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 21:01
-
ごっちんに抱き締められた。
そう頭が理解すると同時に、それまでとは比べ物にならない程の速さで心臓が鳴った。
何度となく夢見てきた彼女の腕の中の心地良さに叫ぶ心。
「…は、なして。」
「やだ。」
そのままの状態で発した小さな声での抗議を彼女に切り捨てられる。
声が震えた。
それが混乱からくるものなのか、怯えからくるものなのか、
それとも、悦びからくるものなのか、私にはもう正確に判断できない。
「離してっ。」
「やだって。」
「お願い、離して。」
「だめ。離したら梨華ちゃん逃げるじゃん。」
ごっちんの腕に力が入る。強く抱き締められた。
- 311 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 21:01
-
「自分だけ言いたいこと言って逃げるなんて許さない。」
低く響く強い言葉。
耳に彼女の吐息がかかりぞくりと振るえが走る。
思わず、ふ、と息が漏れた。熱い。
「聞いて?」
彼女の声が少し震えていた。何故かは分からない。
逃げられないと悟り、続く言葉を受け入れる覚悟を決めた。
ここですべてけりを衝けよう。
直接ごっちんの言葉で聞いて、
綺麗に諦めよう。
終わらせるんだ、全部。
固く目を閉じる。ごっちんの言葉を待った。
- 312 名前:太 投稿日:2006/02/10(金) 21:03
-
ちょっと急用が…!!
1時間後くらいに再開します。
- 313 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:11
-
「ごとーも梨華ちゃんが好き。」
- 314 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:11
-
一瞬、彼女の言葉を理解できなかった。
周りの音がすべて無くなったような錯覚に陥って、頭が真っ白になる。
じわりじわりとその言葉を理解して。
「…うそぉ。」
だってそんなことあるはずがなかった。
ごっちんはそんな素振りを見せたことがなかったし、
第一彼女には彼氏だっているのだから。
「ごっちん彼氏いるじゃん…っ。」
思ったままにそう言った。
- 315 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:13
- 「いないよ。」
彼女の側に置かれた携帯を見る。
真新しいそれは最近彼氏ができた証拠で。
「だって、携帯っ。」
その言葉の意味を理解した彼女は、ああ、と声を漏らした。
「携帯?」
「そうだよ。機種変するって…。」
ごっちんの笑む気配を感じる。
彼女の息が首筋にかかって、体がすくんだ。
「言ったけどさぁ。梨華ちゃんごとーのことすっごい誤解してる。」
「誤解?」
「ごとーだって携帯ぐらい普通に変るよ。」
「だって」
「てかさ。実は1年前から彼氏いなかったりするんですけど。」
「え…。」
驚いた。
だってずっと彼氏がいたはずだ。
ごっちんは自分から進んで言うわけじゃないけど、
彼氏の事を教えてくれた。
- 316 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:14
- 「で、でも、ごっちん彼氏いるって言ってた。」
「いないよ。」
「ご…」
「梨華ちゃんのことが好きって気付いてから、彼氏はいない。」
彼女はそこで言葉を止めると、するりと私の首筋に擦り寄った。
「好き。大好き。」
背中に感じる彼女の腕の力が強くなった。
彼女と私の間に隙間がなくなったみたいに、
お互いの心臓の音が混ざり会う。
「怖かった。友達にこんな気持ちを持っちゃったのが、怖かった。
梨華ちゃんにばれたくなくて、彼氏がいるって嘘ついたの。」
ごっちんの声が泣いている時のように震えてる。
彼女の体が熱い。
「梨華ちゃんに、嫌われたくなかった。」
その言葉は、まるで許しを請うようで。
- 317 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:14
- ごっちんの体が震えてる事に気付く。
こんなに弱々しい彼女を見るのは初めてだった。
ごっちんはいつだって一番前に立っていて、真っ直ぐ前だけを見てる人。
私からはその背中しか見えない。
そう思ってた。
「好きだよ、梨華ちゃん。おかしくなりそう。」
その言葉に喜びで震える体。
ごっちんに触れられたすべての場所が熱い。
頭の芯がじんじんする。
心臓が、壊れそうだ。
ごっちん。ごっちん。本当に。
有り得ないと思ってた。諦めてた。
あなたからこんな言葉が聞けるなんて。
こんな風にその温もりを感じられるなんて。
「私も、ごっちんが好き。大好きだもん…っ。」
さっきとは違う意味で涙が止まらない。
後から後から溢れてくる。
- 318 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:14
- 背中に回されてた腕の力が緩められて、少しだけ体が離される。
彼女の手が頬に触れて、そっと顔を持ち上げられた。
視線が絡む。
彼女の目が嬉しそうに細められて、どきどきする。
頬に触れてた指が私の目元を撫でた。
「あは。梨華ちゃんてば、顔ぐちゃぐちゃー。」
「見ないでよぉ。」
恥ずかしくなって顔を下げようとしたけど、
ごっちんにがっちり固定されて動かせない。
「可愛い梨華ちゃん。」
「…。」
「顔真っ赤。」
「恥ずかし…。」
- 319 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:15
- 彼女の指摘通り赤くなってるであろう顔。
でも、ごっちんの顔も真っ赤だ。
上目遣いに睨むと、彼女が眉根を寄せた。
「…ああ、もー!」
突然ごっちんは叫んで、私の肩に額を乗せた。
「ごとーさぁ。絶対ダメだと思ってた。」
「うん?」
「梨華ちゃん最近なんかごとーに冷たかったし、
絶対バレたと思ってさ。」
冷たかったのはごっちんを忘れようとしてたからで。
そんな事を思ってたからじゃない。
そう言おうとしたら、続けて彼女が口を開いた。
「ごはん誘っても、なーんか全然行く気ないみたいだし?」
「それは」
「てかさ、覚えてる?前にパスタ屋さん誘ったの。」
「え…?」
「ここがそのパスタ屋さんなんですけど。」
覚えてる。
だけど、ごっちんがそれを気にしてたなんて全然知らなかった。
- 320 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:15
- 「…今日さ電車ん中で見つけた時は、頭に血が上って、手が勝手に動いてさ。」
電車の中で受けっとったメールを思い出す。
内容がすごく簡潔だった。
あの時は何も思わなかったけど、彼女の言葉にその理由を納得した。
「まあ、こんな風になるとは予想してなかったけど。」
「…うん。」
「でも、ラッキーだった。」
ごっちんが顔を上げる。
その表情が真剣なそれで、思わず姿勢を正す。
彼女が私の前に手を出した。
その意味が分からなくて、凝視。
- 321 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:16
-
「ごとーと付き合ってください。」
耳まで赤く染まった顔。真一文字に引き結ばれた口。
真剣なその目は自信なさげに揺れていて。どきどきする。
彼女の手をそっと取った。
「はい。」
嬉しそうに笑む姿が、恥ずかしそうに赤くなった顔が、
どうしようもなく愛おしい。
- 322 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:16
- 嬉しそうに笑む姿が、恥ずかしそうに赤くなった顔が、
どうしようもなく愛おしい。
彼女がまた、こてんと私の肩に頭を乗せた。
さらさらの髪が頬に触れてくすぐったい。
「今すっごい幸せ。」
そう言った彼女の表情は私からは見えない。
ごっちんの腰に腕を回して、ぎゅっと引き寄せた。
その動作だけでもどきどきして、ごっちんに動揺を悟られないように浅く息を吐く。
「私も、幸せ。」
ごっちんの肩に頭を寄せてそう言うと、彼女に抱き返された。
彼女の香りがして胸が熱い。
目を閉じた。
彼女の心臓の音が心地良く響く。
- 323 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:17
-
「ねえ、梨華ちゃん。携帯変えに行こっか。2人で。」
ごっちんの言葉にゆっくり頷いた。
温かいごっちん。
このまま2人交ざり合えればいいのに。
食べかけのアイスは完全に溶けていた。
- 324 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:17
-
後日、よっちゃんに報告すると、どうやら彼女は、
ごっちんの気持ちに気付いてたようで。
「つーか、早く告れと思ってた。」
と、あっけらかんと言い放った。
いつから気付いてたのかは知らないけど、
よっちゃんには相当焦れったく見えたみたいで。
彼女はぐりぐりと私の頭を撫でながら、幸せになれよと笑った。
よっちゃんの好きな人は未だに分からない。
けど、いつか彼女もちゃんと納得できる結末を迎えられたらいい。
それまでは、私が彼女の支えになろうと決めた。
頼りないかもしれないけど、今までの借りはきっと返すから。
そう言ったら、よっちゃんは照れくさそうにありがとうと言って。
笑ったよっちゃんはとても可愛かった。
- 325 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:17
-
ねえ、ごっちん。
この恋を大事にしよう。
普通じゃないかもしれない。
けど、2人ならきっと、大丈夫。
- 326 名前:夢の中で 投稿日:2006/02/10(金) 22:18
-
>>>夢の中で
- 327 名前:太 投稿日:2006/02/10(金) 22:18
-
>>27のいしごま告白編でした。
告白するまでが長すぎて、辻褄合わせるのが大変でした。
なので、いつも以上に文がとっ散らかってます。
吉澤さんと石川さんの所を妙に力入れて書いてるので、
いしごま的には後ろ3分の1くらいで十分だったりします。
あと、この話の中で石川さんの元彼が一番可哀想。
では、お目汚し失礼しました。
- 328 名前:Liar 投稿日:2006/02/10(金) 22:21
- よかった…。最高です!
今回のもまたよかった!
いしごま大好きです!
- 329 名前:名無 投稿日:2006/02/11(土) 01:07
- 更新お疲れ様です。
すっごい良かったですっ!!
よっちゃん視点も読んでみたいです^^
- 330 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/11(土) 14:53
- 作者さん最高です。あったかいです。
- 331 名前:読者 投稿日:2006/02/11(土) 23:32
- 今回のもまたいい!ちゃんとQ&Aに話がリンクしているのがイイですね!
Q&A54〜55に至るまでのエピソードが見れたら、ギザウレシス(笑
- 332 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/14(火) 00:35
- すっごく良かった!
まじで話の中に入りこんでしまいました!
また更新待ってますね。
今回の続編とかあったらうれしいです!
- 333 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/15(水) 12:36
- よっちゃんは誰が…。
毎度、ありがとうございます。
ポワワ〜、な感じで楽しませていただいてます。
- 334 名前:太 投稿日:2006/02/15(水) 23:23
- >>328さん
レスが早くて驚きしました。
毎回コメントありがとうございます。
嬉しいです。
>>329さん
よっちゃん視点やってみたいですね。
でもそれにはまず吉澤さんの好きな人を決めなければ(笑)
期待せずにお待ちください。
>>330さん
レスありがとうございます。
寒い時期なので少しでも温まって頂けたようでなによりです。
>>331さん
初めてモノはたくさんできそうですね。
ちゅー編とかお風呂編とかお泊り編とか。
順を追ってH編も、もしかしたら書くかもしれません。
期待せずにお待ちを。
>>332さん
ここに上げてる話は全部繋がってるっちゃー繋がってるんですけども、
そういうことじゃないですもんね(笑)
これのすぐ後の話とかは書くかもです。初めてのちゅー編とかで。
期待せずにお待ちを。
>>333さん
楽しんで頂けてなによりです。
よっちゃんの相手は全然決めてなかったり…。
梨華ちゃんだったら可哀想すぎるよな、とは思って書いてましたが、
どうしましょうね。
- 335 名前:太 投稿日:2006/02/15(水) 23:24
-
(微妙に)石川攻めいしごまです。ご注意を。
- 336 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:25
-
――ここが踏ん張り所だ。
ごとーの前に座る年上のおねーさん。
上目遣いに睨まれてなんとも居心地が悪い。
何故か二人正座して、沈黙すること数分。
後藤真希、18歳。
只今、人生の壁を乗り越えるべく奮闘中。
かちかちと時計の秒針の音が静かな部屋に響く。
いい加減睨み合うのにも疲れて、この沈黙を破るべく口を開いた。
「楽屋でちょっと手繋ぐくらいいいじゃん。」
- 337 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:26
-
――遡ること数時間。
久しぶりにオフが重なって、梨華ちゃんからのお泊り許可。
そりゃあもう嬉しくて、仕事中もテンションのコントロールが上手くできなかった。
普段、感情のキフクがトボシイとか言われるごとーだから、
今日は相当おかしく見えたらしくて。
マネージャーさんやたまたま仕事が一緒だったまっつーに何度も大丈夫と、声を掛けられた。
いつもそんなに周りから暗い子に見られてるのかって、ちょっと凹んだけど、
でも仕事は超気合入れて(もちろん早く梨華ちゃんに会うために)終わらせたわけですよ。
- 338 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:26
-
鏡で髪型とかチェックして、ふう、とドアの前で深呼吸。
梨華ちゃんちのインターホンを押す瞬間は今でもどきどきする。
彼女と付き合うようになって気付いたんだけど、ごとーって結構乙女。
ドアから顔を出した可愛い人にきゅんって心が跳ねた。
最近大分色彩感覚が落ち着いた梨華ちゃんの部屋に入って、
二人でご飯を食べた後、テレビを見ながらのんびり過ごす。
- 339 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:27
- 机の上には梨華ちゃんが淹れてくれたコーヒーに、ポッキーの赤い箱。
ぽつりぽつりと進む会話の中、ふと、楽屋の話になった。
「この前ね?楽屋で麻琴がチョコ食べててね。」
そう始めたのは確か梨華ちゃん。
二人で床に座ってソファに凭れ、隣の彼女に顔を向けた。
梨華ちゃんは視線を受け止めると、目だけで少し微笑み言葉を続ける。
「それを見たののが、のんにも頂戴って、麻琴に言ったの。」
「あー、言いそう。辻ちゃんお菓子に目がないもんねぇ。」
「そう。で、頂戴って言う前から、
のの自分で持ってきてたお菓子いっぱい食べてて、
麻琴が、のんちゃんさっきたくさん食べたからもう止めなよって。」
「言ったんだ?」
「うん。そしたら、ののがむきになっちゃってね。」
梨華ちゃんはそこで言葉を切るとおかしそうにくすくす笑う。
その表情はすごく優しげで、辻ちゃんの話をしている時はいつもこうだ。
記憶の中だけで彼女にこんな顔をさせる少女に少しだけ悔しくなったけど、
ごとーもいい大人だから、そんな気持ちは見せずに「それで?」と促した。
- 340 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:27
-
「麻琴に飛びついて、チョコを取ろうとしたの。
でも、麻琴がチョコを上にあげてね。」
彼女は「こうやって。」と、
目の前の机の上のポッキーの箱を持って両手を上げた。
「ほら、のの背低いじゃない?」
「うん。」
「だから、全然届かなくて。飛んだり跳ねたり必死で取ろうとしてね。
可愛かったよー。なんか小動物みたいで。」
「…。」
嬉しそうな梨華ちゃんを横目にポッキーを一口。
甘いはずのそれは何故だか全然甘くない。
きっと今梨華ちゃんの頭の中は辻ちゃんでいっぱいだ。
そう思ったら、不機嫌になるのを止められなかった。
- 341 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:28
-
そりゃね。辻ちゃんは可愛いよ。
梨華ちゃんが妹みたいに思ってるのも知ってるよ。
だけどさ、だけど。
今一緒にいるのはごとーなのに。
「でね?ののがぴょんって跳んで麻琴に抱きついたの。」
「へー。」
「そしたら、麻琴がバランス崩して、二人して倒れちゃってさ。」
「…え」
多少不機嫌になりながらも大人しく聞いてたら、
思わぬ方向に進む話に驚いて、思わず彼女の方へ体を乗り出した。
倒れたって結構危ないと思うんだけど。
- 342 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:28
-
「大丈夫なの?」
小川も辻ちゃんも丈夫そうだけど、そう見えるだけで中身はただの女の子。
頭打ったとか、間接捻ったとか。無事だったのか。
心配になって聞くと、梨華ちゃんはやっぱりにこにこしながら胸の前で手を振った。
「二人とも怪我はなかったんだけどね。」
「ああ、そうなの。」
ほっとして、体を元の位置に戻した。
「でも。倒れたひょうしに、ののと麻琴がキスしちゃってて。」
「は…?」
「信じられないでしょ?本当にこういうことってあるんだね。
二人とも呆然としちゃって、漫画みたいでさ。」
想像してみる。
きゃあきゃあとじゃれ合ってた女の子が倒れて気付いた時にはキスしてた。
当の本人達の心境は言わずがもな。
周りだってそれはもう驚いたことだろう。
- 343 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:29
-
「もうその後はあいぼんとかよっちゃんとかが悪ノリして、楽屋の中はちゅーの嵐。」
楽しそうに言う梨華ちゃんの言葉に動きが止まる。
――何の嵐だって?
「飯田さんとか、あ、その時、中澤さんもいたんだけどね。みんな、そ」
「あのさ。」
梨華ちゃんの言葉を遮る様に、少し大きな声を出すと、
彼女が不思議そうにこちらを見た。
「それって、梨華ちゃんもされたの?」
思ったよりも不機嫌そうに響く自分の声。
でも、しかたないと思うんだよね。
だって、もしそんなことされてたりしたら、
ちょっと、いや、かなり、嫌。
心が狭いって言われようが。大人気無いって言われようが。
どうにもならないこの気持ち。
- 344 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:29
-
「あーやきもちー。」
「違うよ。」
むっとして言い返す。
図星だったけど、指摘されると認めたくなくなるものだ。
「で?」
「でって?」
「されたの?」
「えー、えと…。」
梨華ちゃんの目が泳いでる。
それは隠し事のできない彼女にとって肯定を意味してて。
その反応に意識せずぴくりと片眉が動いた。
- 345 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:29
-
「されたの?」
「あの、されたと言うか…」
「されたんだね。」
確認するように、でも確信を持って。
じわりと頭の片隅が嫌な気配に侵されて苛々する。
梨華ちゃんの眉尻が困った様に下げられた。
「…でも、ほっぺだったし…。」
言い訳するように梨華ちゃんは言うけれど。
場所の問題じゃない。
まあ、口なら口で腸煮えくり返るくらいむかつくけど。
- 346 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:30
-
そうじゃないんだ。
梨華ちゃんに言ったことはないけど、
ごとーはかなり嫉妬深い上に、独占欲が強かったりする。
本音を言えば、彼女が自分以外の誰かに触られるだけでも嫌で。
誰にも、それこそ辻ちゃんにだって、触らせたくない。
こめかみがどくどくする。胃が重い。
――キスとかありえないから。
- 347 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:30
-
「誰にされたの?」
「…あいぼんとかののとか、美貴ちゃんとか…。」
「へぇ。」
最後の人物にまた片眉が動いた。
ミキティとは一度よく話し合わなければいけない。
「怒ってる…?」
恐る恐るこちらを窺う梨華ちゃん。
「怒ってる。」
感情を爆発させないように、わざと抑えた声を出す。
梨華ちゃんがますます困ったように眉尻を下げたのが見えた。
- 348 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:30
-
「梨華ちゃん、ごとーには楽屋で近づくなって言うくせにさ。」
「近づくな、なんて言ってないよ。
関係がばれるような行動はしないようにしようって言っただけでしょ。」
「同じだよ。隣に行くだけでもあんま良い顔しないじゃん。」
付き合い始めた時、もうごとーはモーニングを卒業した後だったから、
仕事が一緒になるなんてことは少なかった。
それでも時々現場が重なったりして、同じ仕事の時にはモーニングの楽屋を訪ねる。
忙しくてなかなか会えない梨華ちゃんに会いに。
そんなごとーの行動に梨華ちゃんは喜んではくれるんだけど、
必ずしもいい顔はしなかった。
「だってごっちん、すぐ抱きついたり手繋いだりするんだもん。」
「いいじゃんかー。」
「皆に知られたらまずいでしょ。」
そう言っては、頑なに接触を拒むのだ。
- 349 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:31
-
「皆だって抱きついたり手繋いだりするよ。」
「でもね…」
「ミキティとか見てみなよ。近くにまっつーがいれば所構わずべたべたしてるじゃん。」
まあ、ミキティに関してだけ言えば、
まっつーだけじゃなく誰にでもべたべたする傾向があるけど。
梨華ちゃんに対してだってその態度は変わらない。
「もう。美貴ちゃんとごっちんは違うでしょ?」
「違わないし。」
「違うの。人にはそれぞれイメージってものがあるんだよ。」
梨華ちゃんは私の目の前に開いた右手を掲げた、言い聞かせるような声。
「美貴ちゃんのイメージは、怖い、目つきが悪い。」
指を折り数えながら、本人がここに入れば、
間違いなく怒られそうなことを言う梨華ちゃん。
- 350 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:31
-
「それなのに、甘えんぼ。で、亜弥ちゃんの親友。」
四本の指を折った手を左右に振って梨華ちゃんはこちらを窺う。
言いたいことが分からず見つめ返すと、彼女は続けて言った。
「そういう風に、他人から見られてるんだよ。」
「…だから何。」
「だから。亜弥ちゃんとべたべたしてもあんまりおかしくないの。」
そう言って、分かった?と、首を傾ける。
「じゃあ、ごとーが梨華ちゃんとべたべたしてもいいじゃん。」
ごとーと梨華ちゃんは親友じゃないけど、
まっつーとミキティの関係にかなり近い物がある。
- 351 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:31
-
べたべたしよーよ。
あの二人みたいに、皆が呆れちゃうくらい。
不満ですと、主張するように唇を尖らすと、
梨華ちゃんが首を振った。
「違うよ。ごっちんと私は、美貴ちゃんと亜弥ちゃんとは違うの。」
「何で…。」
「ごっちんのイメージはね。」
梨華ちゃんはさっきと同じように右手を出した。
「クール、さばさばしてる、冷めてる、大人っぽい。」
つまり、冷たいって言いたいわけですか。
見事に一貫したイメージに怒りよりも感心した。
梨華ちゃんが申し訳なさそうな表情をして、手を下ろす。
- 352 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:32
-
「それから、…石川とはあまり仲が良くない。」
「なにそれ。」
「だからね?私とごっちんが必要以上に一緒にいるのはおかしいんだよ。」
寂しそうに言われた言葉にむっとした。
何で他人にそんな事を決められなければいけないのか。
「意味分かんない。」
「ごっちん…。」
「知らないしそんなの。勝手に思わせとけばいいじゃん。」
「そういう問題じゃないよ。」
「そういう問題だよ。」
「あのね、ごっちん」
「そんなの気にしたってしょうがないじゃんか。」
「ご」
「てか、何で知らない人にそんな風に思われなきゃなんないの。」
「もうっ、真希ちゃん!」
子供のように駄々をこねて言い募ると、痺れを切らしたように呼ばれた。
名前呼びにどきりとしたのは内緒。
- 353 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:32
-
梨華ちゃんはびしっと机の向こう側を指差して。
「そこに座りなさい。」
と、言った。
目が本気だ。
- 354 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:33
-
その言葉に従って梨華ちゃんの前に移動する。
いつの間にか彼女が正座をしていたので、自分もそれに倣って正座。
梨華ちゃんを窺い見ると、真剣な視線とぶつかった。
「いい?真希ちゃん。」
梨華ちゃんの硬い声。
「どこでどうなるか分からないんだよ。」
「考えすぎだよー…。」
また、怒られたくないから、なるべく彼女を刺激しないように、
そっと主張してみる。
「手ぇ繋ぐくらいはあんまり問題ないと思うな。」
上目遣いに見上げて。
声から完全に拭えなかった不満な気持ち。
キスとか抱きしめるとかは、まあ我慢するけど、
これだけは何としても譲れない。
- 355 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:33
-
梨華ちゃんはすっと目を細めて唇を尖らせた。
不機嫌さの表れなんだろうけど、ごとーにはただただ可愛く映るだけで。
よっぽど、ちゅーでもしてやろうかと思ったけど、
今以上に怒られそうなので我慢。
思わず緩みそうになる頬を引き締める。
ダメだ。ダメだ。
後藤真希、18歳。
――ここが踏ん張り所だ。
けど、数分の沈黙に先に耐えられなくなった。
- 356 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:35
-
「楽屋で手繋ぐくらいいいじゃん。」
今度は不満全開の声で言う。
梨華ちゃんが言うこともわかるけど。
理屈じゃ、ないんだ。
楽屋に遊びに行くと色んな人が梨華ちゃんの周りにいて。
辻ちゃんだったり、カオリだったり、ミキティだったり。
梨華ちゃん皆ににこにこしてさ。
ごとーだって梨華ちゃんとべたべたしたい。
そう言ったら、彼女は困ったように首を傾けた。
「もう。拗ねないでよ。」
「拗ねてませんー。」
「そうやって言うところが拗ねてるって言うの。」
「…拗ねてないもん。」
気まずくなって横を向く。
呆れたような梨華ちゃんの声。
年上の彼女。子供な自分。
一緒にいたいと思ってるのは自分だけみたいで悲しくなる。
- 357 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:36
-
せっかく久しぶりの二人きりなのに何やってるんだろう。
楽しいはずの梨華ちゃんとの時間。
ずしりと沈む気持ち。ああ、何か泣きそうかも。
「まーきちゃん。」
笑みを含んだ声と共に、ふわりと頬を包まれた。
そっと梨華ちゃんの方に顔を向けられて。
柔らかく微笑んだ彼女の瞳に囚われる。
- 358 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:36
-
「別にね?意地悪で言ってるわけじゃないんだよ。」
梨華ちゃんは表情を緩めて、でもね、と言った。
「疑われたらね、こんな風に一緒にいられなくなる。」
梨華ちゃんを見る。
「私はそんなの嫌だから。」
彼女に見つめ返された。
真剣な顔に、見とれる。
「だから、疑われるような行動はできるだけとりたくないの。」
梨華ちゃんはそう言って眉を寄せた。
まったく、梨華ちゃんには適わない。
そんな風に言われたら頷くしか無いじゃん。
ふっと息を吐いて、視線を外す。
- 359 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:36
-
「…分かった。」
観念してそう言うと、嬉しそうに微笑む梨華ちゃん。
好きになった方の負けってよく言うけど、あれって結構あたってる。
だってごとー、この笑顔に最後は全部許しちゃうから。
「あーあ。なーんか梨華ちゃんに上手いこと言い包められた感じー。」
「えー。」
「悔しいなぁ。」
そう口では言ったものの、これが不思議と悔しくはなかった。
悔しくなるにはこの気持ちは、甘すぎる。
- 360 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:37
-
「…可愛い。」
梨華ちゃんの声に彼女へ視線を戻すと、潤んだ瞳に見つめられて。
動揺して声を出せずにいたら、するりと右耳を撫でられた。
耳の輪郭に沿って滑る指の動きにぞくりとする。
「な、何っ。」
反射的に顔を引こうとしたけど、彼女の両手がそれを許さない。
「可愛いなぁ。真希ちゃん。」
「え、え?」
「べたべたしたいとか言っちゃってさー。」
「な…っ」
自分が言ったことを梨華ちゃんの口から聞かされて、
一気に押し寄せる羞恥心。
彼女が身を乗り出してこちらに近づいた。
- 361 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:37
-
「かわいい。」
そう言った梨華ちゃんにちゅっと頬にキスされた。
止める暇もなく唇が塞がれて。
完全に主導権を握れられたことを頭が理解した時にはもう遅い。
甘い唇に翻弄されて、意識を梨華ちゃんの感触に奪われた。
気が済んだのか、下唇に小さく口付けて離れる梨華ちゃん。
「おいで?」
そう言って立った彼女に手を引かれた。
「さっきはここに座れって言ったくせに…。」
苦し紛れにそう呟いて、大人しく梨華ちゃんに従った。
抵抗する気は起きない。
梨華ちゃんにこういう風に誘われると何故だか逆らえなくて。
久しぶりだし、今日は自分が…その、ねぇ。って思ってたんだけど。
でも、こういうのも悪くない。
- 362 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:38
-
「可愛がってあげる。」
耳に顔を近づけて、囁くように。
梨華ちゃんは昼ドラに出てくるお姉さんが言いそうな台詞を吐いた。
その顔に浮かぶ笑みがやらしい。
こういう時だけ妙に男前な彼女にどきどきする。
きっと今、自分の顔は真っ赤なんだろうなと思いながら、
寝室へ続く扉を二人、入った。
- 363 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:38
-
次の日、遅く起きたら梨華ちゃんがごとーの髪を梳いて、
楽屋で近づくなとは言ってないからと、言った後、
「皆が見てない所なら別にいいんだけど。」
と、独り言のように呟いた。
それからは、楽屋から彼女を連れ出して、
人気の無い廊下とかで会うようにした。
そこでなら梨華ちゃんはあまりうるさく言わないから。
――その現場をミキティに目撃されたのはまた別の話。
- 364 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:39
-
>>>かっこいい彼女
- 365 名前:かっこいい彼女 投稿日:2006/02/15(水) 23:40
-
>>52で揉めてたやつです。こんな約束が交わされてたりしました。
あと>>20も掠ってるかも。
でもって、石川攻め。どうでしょうか。
では、お目汚し失礼しました。
- 366 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/16(木) 00:27
- ヤバイ・・・萌え死ぬ。
いじごまはどちらが攻めでもOKという素晴らしいカプですね。
次の作品も期待しております。
- 367 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/16(木) 00:29
- お姉さんな石川と、妹(弟っぽい?)キャラな後藤
ありそうで、あんまりなかった新機軸w
おもしろかったです、ごちそうさま
- 368 名前:Liar 投稿日:2006/02/16(木) 08:05
- まじでイイ!
石川さんのお姉さんキャラはたまりません!
上手いですねぇ〜…。こんないしごま大好き!
- 369 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/21(火) 02:23
- すごいー!!
ひとつひとつの質問がこんなふうにリアルな話と繋がっていて
感心してしまいます。いしごま好きだー(*´Д`)
- 370 名前:太 投稿日:2006/02/28(火) 07:39
- >>366さん
リバOKで本当に素晴らしいカプですよね!
男前石川さんも、可愛い後藤さんも、全部素敵です。
いしごま万歳。
>>367さん
後藤さんは妹属性の強い方だと勝手に思っておりますので、
どんどん石川さんに甘えさせていこうかなと(笑)
お粗末さまでした。
>>368さん
嬉しい言葉ありがとうございます。
石川さんお姉さんキャラになってましたか?
良かった。気に入って頂けてなによりです。
>>369さん
質問を書いてる時は、
後からこんな話をのせるとは思ってなかったので、
毎回辻褄合わせに苦労するのですが、そう言って頂けて安心しました。
- 371 名前:太 投稿日:2006/02/28(火) 07:39
-
いしごまのつもりですが、
時期的には>>235-326の前で、
いしごまよしっぽいです。
- 372 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:40
-
この感情の名に気付いた時には、もう、すべてが遅かった。
- 373 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:41
-
最初はね、すっごく怖かったの。
だって、あなたは芸能人で、テレビの中の人で。
私は只の一視聴者だったし。
テレビの中のあなたは綺麗で、クールで。
かっこよかった。
- 374 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:41
-
同期のひとみちゃんは、いつの間にかあなたと打ち解けてて。
ののとあいぼんもすぐにあなたと仲良くなってた。
何だか一人取り残されたみたいで、
少しだけ寂しかったな。
- 375 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:41
-
なかなか敬語が抜けなくて一人やきもきしてた私に、
梨華ちゃんって呼んでくれた事。
知ってる?
本当に本当に、嬉しかったんだよ。
- 376 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:42
-
ひとみちゃんが間に入ってくれて、
やっと敬語じゃなくても話せるようになったのは、
他の三人より大分遅かった。
- 377 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:42
-
だからってわけじゃないけど、やっぱり一人じゃ近寄り難くて。
あなたとの間に自分から壁を作ってるっていう自覚はあったけれど、
それを取り除く事はできなかった。
でもね。
誤解してほしくないんだけど、それはあなたの事が嫌いだったからじゃなくて。
むしろ大好きで、憧れで。
もっと、仲良くなりたかった。
- 378 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:43
-
ざわざわ騒がしい楽屋の中。
今日もあなたに声を掛ける勇気のない私は、
ののに貰ったポッキーを摘みつつ、隣のひとみちゃんとお喋り。
「ひとみちゃんさぁ。台本覚えた?」
手に持ったポッキーを口に含んで、丁度半分の所に狙いを定めてぱきっと折る。
残念。ちょっと短い。
「んー?まあそれなりに。」
ぱらりと手にした雑誌のページを捲り、こちらを見ないひとみちゃん。
彼女のそれなりは本当にそれなり。
重要なポイントを抑えて、番組の流れを一通り頭に入れる。
要領がいいのか、大雑把なだけなのか。
- 379 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:43
-
「うそー。私、台詞覚えるだけで精一杯だよ?」
「梨華ちゃんは全部覚えようとするから大変なんだよ。」
「でも不安で。」
「大丈夫だって。忘れたら皆がフォローしてくれるし。」
「なんか悪いじゃない。」
「そーだけど。てか、流れが分かってれば何とでもなるでしょ。」
雑誌を見ながら、ひとみちゃんは私と会話を続ける。
手元に向けられてるその目は真剣で。ちゃんと読んでるみたいだ。
器用な彼女に少しだけ感心。
彼女がぱらりとまたページを捲った。
「ごっちんとか見てみ。ありゃぜーんぜん覚えてないね。」
急に飛び出した年下の先輩の名前に少し驚いた。
離れた席で矢口さんと話しているその人を意識する。
ちらりと横目で見て、こちらを向いてないのを確認。
- 380 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:44
-
「そーかなー?」
「そーだよ。」
手に持ってたポッキーの残り半分(ちょっと)を口に入れる。
「でも、…ご、っちんは、それでも良いよね。」
未だに呼び慣れない名前にちょっと噛んだ。
その言葉にひとみちゃんがやっと雑誌から顔を上げる。
…何その目。すごい変な物を見るような目。
あの、眉間に皺よってるよ。
「なんでよ?」
「なんでって。何か…台本を完璧に覚えてるよりも、
こう、自然体で喋る方がごっちんぽいって言うか…。」
「…はぁ?」
「どしっと構えてればいいみたいな。」
「…自然体って。何も考えてないだけだと思うけどね。私は。」
どうでもいいと言う様に、言い捨てるひとみちゃん。
さらりと言い放つ彼女が少しだけ羨ましい。
だって私には言えない。
未だに彼女と一対一で話す事もままならないのに。
- 381 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:44
-
「梨華ちゃんてば、まーだごっちんの事、神聖化?してるというか。
怖がってるというか。」
「う。」
「ごっちんは結構普通だよ。普通に寝坊するし、普通に台本覚えないし、
普通にぼーっとしてる。」
ひとみちゃんはそこまで言うと、机に肘をついて手の上に頬を乗せた。
図星のその言葉。呆れたような視線が居心地悪い。
そう。私は怖いんだ。
まだまだテレビの中の彼女のイメージが離れなくて、
近づいてもいいのか、ダメなのか、その距離感を掴みきれないから。
彼女に不用意に近づいて嫌われるのが怖い。
だから彼女と話す時、どきどき胸が高鳴って上手く話せないんだ。
高校の時、憧れの先輩に声を掛ける時のような、
緊張と不安でどきどきする、そんな高鳴りを覚えて。
憧れの人に嫌われるのが怖い。
そう。それは、憧れ。
ポッキーの赤い箱から一本取り出す。
- 382 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:45
-
「あ、梨華ちゃん。ポッキー頂戴。」
私の動きを見ていたひとみちゃんが、顔を上げた。
急な話の展開に手の中のポッキーを見て、そのまま彼女の口元へ。
「はい、あーんして。」
「は…?」
「あーん。」
猫撫で声でポッキーを差し出すと、ひとみちゃんが顎を引いた。
桜色に染まる彼女の頬に、少しだけ笑みが零れる。
「い、いいよ。普通に頂戴って。」
「あげるよ。だから、あーん。」
「ちょっ」
「ほーら。」
焦ったように首を振るひとみちゃん。
普段は抱きつこうが腕を組もうが動じない彼女だけど、
こういうことには慣れてないみたいで。
これがののとかあいぼんなら一も二も無く飛びつくんだけど。
動揺するひとみちゃんに悪戯心が止まらない。
- 383 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:45
-
「あーん。」
強引にずいっと近づけると、
ひとみちゃんは観念したように渋々口を開けた。
そこにポッキーを入れると、
恥ずかしそうに横を向いて、もぐもぐ動く赤い頬。
のの達にあげる時は雛鳥に餌をあげる親鳥のような心境になるのだけど。
ひとみちゃんにこうする時は少し違う。
久しぶりに会った小さな従兄弟に飴をあげたらちょっと警戒しながら貰ってくれた。
お母さんの後ろに隠れて少しだけ顔を出してこちらを窺ってる子に、手を振ったら振り返してくれた。
そんな、感じになる。
ちょっと嬉しくて、ふふっと笑ってしまった。
「…何笑ってんの。」
「えー?」
目敏く見つけたひとみちゃんは不機嫌そうに言うけれど、
赤い顔で言われても全然怖くない。
- 384 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:46
-
「ひとみちゃんって、意外と可愛いよね。」
「なにその言い方。むかつく。」
「褒めてるんだよ。」
「ぜんっぜんそんな風には聞こえないっての。」
「えー。こんなに素直に褒めてるのに。」
「だから、そん…」
突然途切れた声。
ひとみちゃんの視線が私から外れて、後ろの方に向いてる。
(後ろ?)
その視線から背後に何かあるのかと思って振り返ろうとしたら、
ぽんっと肩にかかる重み。
目だけで肩を確認しようと顔を向けると、
視界を掠めた、茶色。
「ごとーにもちょーだい。」
妙に子供っぽい声が響いた。
私の顔の真横から突然出てきたごっちんの頭。
有り得ないほどの至近距離で見つめられて思考が停止した。
- 385 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:46
-
「ごっちんもポッキー欲しいの?」
「うん。辻ちゃんが梨華ちゃんに貰ってこいって。」
「ふーん。」
「辻ちゃんごとーにはポッキーくれないんだよ。」
「嫌われてんじゃん?」
笑いながら会話を進めるひとみちゃんとごっちん。
ごっちんの顔は未だに私の真横にあって。
私からはひとみちゃんの方を向いている彼女の横顔しか見えない。
もちろん超至近距離の。
肌きれい。
何これ。全然荒れてないよ。
すっごい白いし。いいな、私もこんなに白くなりたい。
まつげ長い。鼻高い。
なにこれ?え、何これ。
「ええー。ごとーしょっくー。」
冗談めいた声に、やっと頭が動き始めた。
ごっちんの顔を確認。
- 386 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:47
-
「ごごご、ごっちんっ。」
一気に顔を離すと、その勢いでがたんと椅子が揺れた。
近い。近かったんだけど、今。
ばくばく鳴る心臓。
ごっちんとの距離をとると、彼女がのんびり振り向いた。
「なに梨華ちゃん。」
「な、何って、なに?!」
なに?え。こっちが何だよ。
いきなり顔出して、こっち見て。
超至近距離で!!
そのやり取りを眺めたてたひとみちゃんが、
くすくす笑い出した。
- 387 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:48
-
「梨華ちゃん。動揺しすぎ。」
でも、だって。
あんな近くで見つめられたら驚くに決まってる。
混乱した頭が徐々に落ち着きを取り戻し、浮かぶ言い訳。
指さして笑われて、急に恥ずかしくなった。
「な、別に動揺なんて…!」
悔しくて言い返すけど、ひとみちゃんはまだ笑ってて。
「もうっ、笑わないでよ。」
「ごめん、ごめん。」
謝ったものの彼女の目は笑んだまま。
子供を嗜めるような言い方にますます悔しくなった。
文句を言おうと、ひとみちゃんの方を向いた時、
後ろから聞こえる声。
「ひっどいなぁ。」
寂しそうな声音に慌てて振り向いた。
そこには唇を尖らせて不満そうなごっちんの姿。
- 388 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:48
-
「いや、あの…」
「梨華ちゃん、そんなにごとーに近づかれるのヤなんだ。」
「違うよっ。その」
「しょっくー梨華ちゃんに嫌われた。」
「ええっ。」
両手で顔を覆ったごっちんに焦って手をのばす。
彼女の手に触れる直前、少しの躊躇。
――触っても、いいのだろうか。
でも、すぐに思い直してそっと手首に触れた。
初めて触れた彼女の手は、想像以上に温かかった。
- 389 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:48
-
「ごめんね。そういうつもりじゃなくてね?」
「へこむ…。」
ごっちんは呟いて、俯いた。
その声が本当に悲しそうに湿っぽく響いて、更に焦る。
顔にかかる彼女の髪を耳にかけるように梳く。
綺麗な髪。さらさらと指の上を滑らかに流れた。
自分のじゃこうはいかない。
「…ごめんね。」
覗き込むように顔を近づける。
ごっちんの香りがして少しだけどきどきした。
「いいよ、もう。」
「ごっちん…。」
「お願いがあるの。」
「え…?」
唐突に切り出された言葉に少しだけ驚くけれど。
「あのね。」
「うん?」
聞き漏らさないように、更に顔を近づけた。
- 390 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:49
-
「ポッキーが食べたい。」
「…は?」
言葉と共に彼女の手が少し開く。
間から覗く瞳が悪戯気にくるりと動いた。
その視線に全てを理解。
――からかわれた。
隣からはひとみちゃんの笑い声。
「な、な、ごっちん!!」
怒りよりも、何の疑いもなく信じていた自分に対する恥ずかしさの方が先にきて、頬に熱が集中する。
「なに?」
悪戯が成功してにんまりと満足気に笑み、のんびり答える彼女。
その笑顔に毒気を抜かれた。
- 391 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:49
-
ごっちんは時々こんな悪戯を仕掛ける。
私が戸惑ってようがいまいが関係なくするりと懐に滑り込んできて。
私の困っている姿(顔?)を見ては嬉しそうに笑うのだ。
でも、出会った頃の彼女は私に対してすごく無口で、
話し掛けても会話が成立しない事が多々あった。
だから、そのころに比べれば、今は、
こんな冗談を言い合える(一方的にからかわれてる?)ほど、
お互いの仲が深まったって事だと思う。…多分。
「もう。本当にちょっと心配した。」
「梨華ちゃんってホント騙されやすいよね。
訪問販売とかで変な物売りつけられそう。」
失礼な。
確かにテレビショッピングとかみてると電話しちゃいそうになるけど。
そこまで単純じゃないよ。
- 392 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:50
- 不満気にごっちんを見ると彼女は視線を受け止めて、
私の隣に座るひとみちゃんの方へ顔を向ける。
「ちょろいね。」
「ほんと。悪い男に引っかかっちゃダメだよー。」
口々にそう言って、私を挟んで二人は笑った。
嬉しそうな笑みに悔しさがぶり返す。
――年下に完全に遊ばれてる。
考えてる内に段々と情けなくなってきて。
はあ、と溜め息を吐くと、
それまでひとみちゃんと話してたごっちんが急にこちらを向いた。
「で。梨華ちゃん。」
「え?」
「え、じゃないよ。ほら。」
「何?」
言葉の意味が分からず見つめ返すと、
彼女は焦れたように私の手元の赤い箱を指さした。
- 393 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:50
-
「ポッキーちょーだい。」
子供のような声を出して、にこりと笑みを一つ。
彼女が最初からそれを要求していた事を思い出して、
慌てて赤い箱を手に取り、ごっちんの前へ。
箱を見つめる彼女の瞳が、またくるりと動いた。
その色が悪戯を思いついた時の、のの達のそれとよく似ていて。
…嫌な予感。
「食べさせて。」
ごっちんは視線を私に戻すと、口をぱかりと開く。
その意味を理解して、固まった。
隣でひとみちゃんの笑む気配がした。
- 394 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:51
-
「あ、あの、子供じゃないんだし…」
「いいじゃん。」
「でも」
「よしこにはしたのに?」
確かにひとみちゃんにはしたけれど。
ひとみちゃんにするのとごっちんにするのでは、
こちらの気持ちがまるで違うのだ。
大分彼女に慣れてきたとは言っても、まだまだ緊張するから。
唇を尖らせて下から見上げるごっちん。
子どもの様に拗ねる彼女は可愛いけど、
どう接していいのか分からなくて困る。
ひとみちゃんの方を向くと、さっきまで見ていた雑誌を広げながら頬杖。
助けてくれる気はさらさら無いようだ。
- 395 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:51
-
「ほーら。」
「…。」
大人っぽいと思ってたごっちんは時々子どもみたいに甘えてくる。
それは私に限らず、安部さんにも矢口さんにも中澤さんにも。
まるで、猫が気を許した相手にするりと擦り寄ってくるように。
そんな、甘え方。
最近気付いたのだけど、それは彼女に許された証拠で。
嬉しいことだけど、まだまだ戸惑いの方が先にくる。
催促の声に仕方なく箱からポッキーを一本取り出すと、
それを見とめたごっちんが嬉しそうに口を開けた。
無防備な表情に何故か少しだけ温かくなる胸。
ひとみちゃんにするよりもゆっくりと、
その口にポッキーを入れると、
もぐもぐと口を動かしながら、彼女がふにゃりと笑う。
「ありがと。」
その笑顔に心臓が大きく揺れるのを感じた。
- 396 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:52
- 息が一瞬止まって。
頬が異常に、熱い。
何なんだろう、これは。
心臓が。心臓の動きが、おかしい。
ごっちんの周りだけが鮮やかに色づいた。
彼女の動きに全ての感覚が反応する。
ののとあいぼんにあげる時とは違う。
ひとみちゃんにあげる時とも違う。
この感情は、一体。
隣から聞こえる雑誌のページを捲る音。
目の前にはごっちんの笑顔。
どきどき高鳴る鼓動。
頭の片隅で赤いランプが点滅してる。
- 397 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:52
-
やばい。やばい。
考えるんじゃない。離れろ。
――これ以上近づいてはいけない。
右手でそっと、心臓を抑えた。
- 398 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:52
-
ああ。ひとみちゃん。
どうしよう、私。
この感情の名を、知ってる。
それは、友達の終わり。
- 399 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:53
-
>>>友達と憧れと、君との距離
- 400 名前:友達と憧れと、君との距離 投稿日:2006/02/28(火) 07:54
-
気付いっちゃった石川さん編。
>>14のつもりで書いたんですが、
どっちかと言うと>>11の元ネタっぽいですね。これ。
まだまだ後藤さんには強く出れませんが、
その分吉澤さんには強く出る石川さんでした。
では、お目汚し失礼しました。
- 401 名前:太 投稿日:2006/02/28(火) 14:08
- >>11じゃなくて>>12でした。
- 402 名前:Liar 投稿日:2006/02/28(火) 16:54
- なんとも、まったりと…。
楽しませて頂きました。
いいですね。てんぱってる石川さん。
なんだか和みます…。
- 403 名前:名無しさん 投稿日:2006/02/28(火) 21:54
- 作者さんのお話は臨場感あって自然に引き込まれます
いつも更新が楽しみです
- 404 名前:太 投稿日:2006/03/03(金) 13:27
-
>>402
レスありがとうございます。
石川さんのてんぱり方はテレビなどで見ていてもとても可愛らしいですよね。
和んでいただけたようで、嬉しい限りです。
>>403
臨場感…!ありがとうございます。嬉しいです。
更新を楽しみにしているとの事で、
週一更新を心がけていますが、いつも不定期で申し訳ないです。
- 405 名前:太 投稿日:2006/03/03(金) 13:28
-
>>235-326の吉澤さん視点です。
なので先に>>235-326を読んだ方が分かり易いかと思います。
- 406 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:29
-
好きか嫌いかで聞かれたら、そりゃまあ好きだけどね。
うん、でもあれだよ。その種類を聞かれると困るんだよね、実際。
だって、ねぇ?
- 407 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:30
-
「ああ!もうっ!」
突然響いたガラのよろしくない声に楽屋は静まりかえった。
でも、それは一瞬のことで、声の出所を確認すると皆動きを再開する。
声の出所、私の隣に座る美貴に目をやると、
苦々しげに携帯を見つめる彼女の姿。
美貴の不機嫌な声には皆慣れっこだ。
基本的に溜めない性質の彼女に怒鳴られることは多い。
眠いから静かにしろだの、好きなお菓子が無いだの。
この前はカラオケの割引券の期限が切れたと怒ってた。
「何?どーしたよ?」
とりあえず聞いてみる。
放っておくのは可哀想だし。隣に座ってるし。
なにより、このままずっとぴりぴりされてちゃ堪らない。
美貴がちらりとこっちを見た。
- 408 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:31
-
「亜弥ちゃんがさ、今日遊べなくなったって…。」
さっきとは打って変わった寂しそうな声。
なるほど。松浦が大好きと公言して止まない美貴さんは、
その彼女に振られて凹んでるってわけですか。
まあ、美貴がここまで寂しそうにする原因は松浦以外にないけれど。
「ずっと前から約束してたのにぃ…。」
「松浦、仕事?」
「仕事。てか、これが他の友達に誘われたからとかだったら、
今ミキこんなとこにいないよ。」
確かに。その連絡を受けた時点で松浦の元へ直談判しに行ってるはずだ。
でも、仕事場をこんなとこで片付けるのはどうなのよ。
「堂々とゆーな。」
「だって、亜弥ちゃんがミキより他のヤツ選んだんだよ!
相手聞き出して、ケジメつけに行かなきゃじゃんか!」
「いやいや美貴さん。何でキミにケジメつけられなきゃいけないの。」
- 409 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:31
-
「ミキと亜弥ちゃんはラブラブだから。」
ああ、そう。
あまりにもきっぱりと断言されて、心の中で呟く。
これは何言っても無駄だ。
「何その顔ー。」
「…。」
「いいよいいよ。寂しいよっちゃんさんに、
ミキと亜弥ちゃんの愛の軌跡を聞かせてあげる。」
「なんでよ。結構ですから。」
「まず出会いはねぇ。会社だったんだけどぉ」
「日本語理解してくださいよ。ちょっと。」
「なによー。気になるくせに。」
「パンダの尻尾の色ぐらい気になんねぇよ。」
パンダの尻尾は白だよと、呟きながら美貴は頬杖をついた。
いらない情報どうも。
「てか、美貴、今石川みたいだったよ。」
語尾の上がり具合とか、人の話聞いてないとことか、
その行動はついこの間卒業を迎えた同期の彼女を思い起こさせた。
- 410 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:33
-
てっきり嫌がるかと思ったら、
美貴はにやりと何とも嫌な笑みを浮かべてこちらを向く。
「梨華ちゃんがいなくなってそーんな寂しいの?」
「なんでそうなんだよ。」
「こんなに梨華ちゃんと正反対のミキが梨華ちゃんに見えちゃうなんてさ。
さーびしぃんだねぇ、ひとみちゃん。」
「…美貴さん気持ち悪い。」
「えー?前はこう呼ばれてたんでしょ?」
いやまあ、確かに呼ばれてはいましたが。
でもそれは本当に加入して間もない頃で、
すぐによっしぃーに変わったし。
この間ふざけてひとみちゃんと呼ばれた時も死ぬほど恥ずかしかった。
正直、美貴に猫撫で声で呼ばれても癇に障る以外の何者でもないんだけど。
- 411 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:33
-
「ひとみちゃん。梨華ちゃん。って何か可愛いよね。」
「可愛くないし。」
「まあ、今言ったら可愛くないだろうけどさ。
昔は可愛かっただろーねぇ。仲睦まじい感じ?」
「睦まじくないですよ。別に。」
「でも、仲良かったんでしょ?実際。」
美貴の小さい頭が少し傾く。
その顔にはまだあの笑顔。
仲は良かった。
いきなりモーニング娘に放り込まれて、
すぐに馴染めるものではなくて。
自然と同期の四人で一緒にいることが多かったから。
打ち解けるのも早くて、すぐに友達になった。
――そう。友達。
胸の後ろの方が、少し疼いた。
- 412 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:34
-
「…。悪くは無かったけど。」
歯切れ悪くそう言うと、笑みを深くする美貴。
すべてを見透かされてるようで居心地が悪い。
「よっちゃんさんて梨華ちゃんのこと好きだったでしょ。」
その目がきらりと確信の色を持って光った。
- 413 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:35
-
◆◇◆
石川がまだ私の事をひとみちゃんと呼んでいた、あの頃。
すぐに泣いて、凹んだらいつまでも立ち直らない彼女を、
慰めて支えるのが私の役目だった。
石川だって私の前では遠慮なく素顔を見せて。
彼女がこんな姿を見せるのは私だけという甘い優越感と束縛に、
彼女の存在が私の中の大きな範囲を占めるようになるのに時間はかからなかった。
石川とごっちんを仲良くさせたのは私。
緊張で敬語が抜けない石川。
警戒心が意外と強いごっちん。
ごっちんの警戒心からくる無愛想で、ますます石川は怯えて。
最初はね。ダメだと思ってた本当に。どうしようもないって。
だけど、私が間に立ってみると、意外にかちりと嵌ったみたいで。
仲良くとまではいかなくても、それなりに上手くいった。
ああ良かった、なんて思ってたら、いつの頃からか二人の仲は急激に接近していて。
楽屋に行けば、石川の隣にいつでもごっちんの姿を見つけられるようになってた。
そんな二人の姿に脱力感と突き刺さるような悔しさ。
- 414 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:35
-
年上のくせに不器用で危なっかしくて、可愛い同期の彼女。
大事な戦友。
うん。悔しかったんだ。私は。
ずっと一緒だったから。
石川をごっちんに取られた気がして。
だから、多分。
これは友情。
- 415 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:36
-
コーヒーを買おうと財布を手に自動販売機へ向かう私の目に、それは映った。
自動販売機の隣のベンチに蹲る後姿。
石川がいた。
ベンチの端で、静かに膝を抱えて。
また、何かへこんでる。
ダンスが上手くいかないとか、中澤さんにダメ出しされたとか。
きっとそんなところだ。
変わらない彼女に微笑ましくなって、コーヒーとココアを買って手渡した。
石川は驚いたように目を瞠ったけど、大人しくそれを受け取って。
石川を慰めるのは私の役目だ。
それは、加入当時から変わらない私と彼女の関係。
隣に座って彼女の言葉を待つ。コーヒーを飲みながらゆっくり。
- 416 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:36
-
泣き出した石川の頭をそっと撫でる。
落ち着けるように、優しく、そっと。
「ごっちんが、好き。」
涙声で告げられた言葉に、私は固まった。
知らず早くなる息遣い。
どくどくと脈打つ音がやけに大きく聞こえる。
驚いたなんてもんじゃないよ。
は、なにそれ?意味わかんないって。石川さん。
すぐにでもそう聞き返したかったけどさ、
その目から落ちる涙は本物で。その声は嘘を吐いてるそれじゃなかった。
第一、石川はそんな嘘を吐くような人じゃない。
それは私が一番よく知ってるから。
- 417 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:37
-
そういえば最近石川はごっちんに対してなんだかよそよそしかった。
なるほどね。だからですか。
恋しちゃったの。顔を見るのも照れちゃうの。ってことですか、石川さん。
胸の中がもやもやする。
この気持ちに私は気付いた。
変わらない石川に、変わらない関係。
心地良い彼女の隣に座っていてもいいと、信じてた。
ああ。寂しいんだ私。
変わっていく彼女に。変わっていくこの関係に。
私は寂しさを感じていた。
- 418 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:38
-
それから石川にごっちんの相談をされる事が増えた。
ごっちんが彼氏変わる度に携帯を変えてるのは知ってたけど、
どうやらそれを本人から聞かされた石川は相当ショックだったみたいで。
私の部屋に来ては、うじうじと泣き言を漏らしてたのが懐かしい。
そのすぐ後、石川は彼氏を作った。
ごっちんの事を忘れたいから。
そう言った彼女の目は切羽詰ってて、逆にこっちが切なくなったのを覚えてる。
その頃、私には好きな人がいて、でも叶わない恋だったから、
忘れたいと言った石川の気持ちが痛いほどよく分かった。
そんなこんなで石川の中で、
ごっちんの事は整理がついたのかなって思ってたけど、
やっぱりそう上手くはいかないみたい。
その証拠に彼女からの相談が減ることはなかった。
- 419 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:38
-
でもね。実は私は知ってたんだ。
ごっちんの、気持ちを。
- 420 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:39
-
それはごっちんの卒業間近、久しぶりにごっちんとパスタ屋さんに行った時のこと。
保田さんが教えてくれたパスタ屋さんは、
保田さんが一押しするだけあってとても美味しかった。
楽しいお喋りの最中、ごっちんが口を開いた。
「梨華ちゃんってパスタ好きかな?」
「さーねぇ。嫌いではないんじゃない?」
まあ、好きだとも聞いたことはないけど。
目の前のカルボナーラをフォークでくるくると絡め取る。
- 421 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:39
-
「よしこ知らないの?」
「知らないよ。」
「なんで、仲良いのに。」
「いしかーさんの嗜好なんて把握してませんから。
てかさ、仲良いって、ごっちんのがよっぽど仲良いじゃん。」
加入時ならいざ知らず。今ではごっちんの方が石川と仲が良い。
…最近は石川さんの方の気持ちにちょぉっと問題があるけども。
カルボナーラをぱくりと口に運ぶ。美味しい。
「そんなことないよ。だってこの前も梨華ちゃんよしこんちに行ったんでしょ。」
そうね。でも、ずっとごっちんの事話してけど。
「梨華ちゃんごとーんち誘っても来てくれないし。」
そりゃそーでしょ、石川さんアンタの事が好きなんだから。
好きだけど、忘れたいって言ってるんだから。
その相手の家になんて行くわけないでしょ。
むぐむぐと口を動かしながらごっちんの言葉を聞く。
このカルボナーラあんまりくどくなくて食べやすい。
- 422 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:40
-
「…ごとーさぁ、梨華ちゃんに嫌われたかも。」
寂しそうな声に頬張っていた物を飲み込んだ。
――なんだって?
ごっちんに目を遣ると頼んだペペロンチーノを突いている。
「…なんで?」
「梨華ちゃん最近冷たいんだよね。」
「………そう?」
「そーだよ。目とか合わせてくれないし。ご飯誘ってもはぐらかすし。」
自分で言ってへこんだのか、徐々に小さくなる声。
石川の態度に心当たりはあるけれど、
ごっちんにそれを教えることはできない。
- 423 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:41
-
「きーらーわーれーたー。」
「嫌いじゃないと思うけどねぇ。」
項垂れる彼女にフォローの言葉を掛けると、むくりと顔を上げるごっちん。
半目で睨むその表情には疑いの色が見て取れて。
何となく気まずくなって目を逸らす。
「梨華ちゃんがそー言ってたの?」
「あー、まあ…。」
「いいよ。隠さなくても。言ってないんでしょ、そんな事。」
「いや、そーゆーわけじゃ。」
「つーか、むしろ嫌いだって言ってたんじゃない?」
「言ってないよ。」
「嘘。今なんか言いよどんだじゃん。」
むしろ大好きですって言ってたよ。
心の中で呟くものの口に出せないもどかしさ。
頑ななごっちんに頭を掻いた。
どうすれば分かってくれるのか。
- 424 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:41
-
ごっちんは頬杖をついて明後日の方向を向いている。
石川は告白する気は無いみたいだけど、こんなのは駄目だ。
「本当に言ってないんだけど。」
「…。」
「あれだよ、えーと。その、か、彼氏っ。」
――そう彼氏。
自分の言葉に私はこの状況を打破する方法を見つけた。
「石川彼氏できたから。だから最近行動がおかしかったんだよ。」
石川に彼氏ができたのは最近の出来事ではないけれど、
嘘は言ってない。
ごめん。石川。
心の中で石川に詫びる。
きっと彼女はごっちんには言っていない。勝手にばらしてしまったけど、
この状況なら石川も許してくれるだろう。…多分。
- 425 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:42
-
とびきりの笑顔でごっちんを向くと、目を見開いて動かない彼女の姿。
「…ごっちん?」
そっと呼ぶと、ごっちんがびくりと震えた。
「あ、梨華ちゃん彼氏いたんだ…。」
「…うん。」
「そ、っか。知らなかった。」
そりゃ、ごっちんを忘れるために作った彼氏だし、
本人には言いにくいだろうから。
ごっちんのこの反応は何?
ただ驚いてるだけじゃない。
まるでショックを受けてるようなその反応。
- 426 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:42
-
注意深く彼女を窺っていると、ぽろりとその目から光るものが。
(ええっ)
ごっちんが泣いていた。
「ごごごご、ごっちんっ!?」
「え、あれ、何で泣いてんだろ。」
ごっちんは心底驚いたようにそう言うと、手の甲で目元を擦った。
「なにこれ。止まんなっ…ぃ。」
「ごっちん…。」
彼女のその姿に、私の中に一つの憶測。
もしかして、ごっちんは。
- 427 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:44
-
「何で泣いてるの?」
「分かんない、よ。」
ねぇ、ごっちん。
「石川に彼氏がいて悲しいの?」
「…ちがっ。知らなくて。だから。」
――ごっちんは、石川が、
「…石川に彼氏がいて、嫌なんだ?」
――好きなんだ。
ごっちんは何も答えなかった。
その代わり、するりと絡む視線。
その瞳の奥に、炎が静かに、燃えていた。
- 428 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:45
-
そう、だから私は知ってた。
ごっちんの気持ちを。石川よりもずっと、早く。
- 429 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:45
-
でも、知ってたからってどうにかなるものでもなくて。
ごっちんに石川の気持ちを伝えるわけにもいかないし。
石川にごっちんの気持ち(はっきり聞いたわけじゃないけど)を言うわけにもいかないから。
私は反省してた。
ごっちんに石川の彼氏の事は言わない方が良かったかもしれない。
彼女の気持ちが分かったのはいいけれど、
好きな人に彼氏がいるなんて、この後の二人の進展の妨げになるから。
石川の彼氏さんには悪いけど、障害は少ない方がいいに決まってる。
- 430 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:46
-
そんな衝撃事実発覚後、悶々と過ごす中、
楽屋で落ち込む石川を発見。
さっきまで楽しそうに(私にはそう見えた)ごっちんと話してたのに。
自分の手には缶が2つ。
石川のために買ってきたわけじゃないんだけど。
ふう、と息を吐くと、缶を一つ、彼女の前に置いた。
私も大概、石川に甘いなと思いながら。
「暗いよおねーさん。」
驚いてる彼女にどうしたのか尋ねると、
どうやら彼氏の事で悩んでる様子。
- 431 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:46
-
どうしようもなくて、色んなものに縛られて、
石川自身もきっと動けないでいる。
自業自得なんだろうけど、震える声に胸が痛んだ。
不器用な石川。
悲しくて、辛くて。
だけど泣けない意地っ張り。
そっと彼女の頭を撫でた。
ゆっくりゆっくり、少しでもその辛さが和らぐように。
- 432 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:47
-
ごっちんが卒業した。
喜ばしい事だけど、卒業しちゃうと、
ごっちんと石川の会える時間が、
今までよりも比べ物にならないくらい減ってしまう。
何とか二人の仲を近づけたかったけど、すぐ名案が浮ぶはずもなくて。
仕事に消えていく日々が続いていた。
ごっちんがいなくなった楽屋の中で、石川は笑う。
以前と変わらないその笑顔で。
だけど。
私の目にはどうしようもなく寂しそうに映った。
- 433 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:47
-
局の廊下を歩く。隣には石川。
笑顔を浮かべる彼女は、やっぱりどことなく無理しているように見えてしまう。
「この前コンビニ行ったらさ、新しいおにぎり出てて。
いくらと蟹が一緒に入ってるやつ。」
「高そー。」
「値段あんま変わんないよ。それがね」
石川のおにぎり講座が始まると思ったら、突然途切れた言葉。
微動だにしない石川に不思議になって、
彼女の視線を追うと、その先には、ごっちんがいた。
ごっちんも驚いたように目を見開いて固まってる。
- 434 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:48
-
「ごっちん…。」
多分ごっちんが卒業してから初めて会う二人。
二人の精神状態を考えれば、
チャンスとは言えないこの状況。
どうしよう。
一触即発の雰囲気に思わず拳を握った。
「…梨華ちゃん…。」
(…。)
ごっちんの言葉に一気に脱力した。
だって、彼女には私の隣で固まってるおねーさんしか見えてないのだから。
一人で焦るってるのが馬鹿馬鹿しい。
- 435 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:48
-
「ごっちんも仕事?」
そう言ったら、はっと気付いたように、
ごっちんがこちらへ視線を向けた。
うあ、失礼なヤツ。
「うん。新曲のね。」
「あーそれ聞いたよ。いい感じじゃーん。」
「んへへ。ありがと。」
ごっちんは照れたように笑うと、早足でこちらへ近づいてきた。
「じゃあ、まだ仕事あるから。」
すっと石川の隣を通り抜けるごっちん。
と、石川の体が私にも分かるくらいはっきりと、びくりと震えた。
咄嗟に何が起こったか分からなくて。
- 436 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:49
-
石川が、ごっちんを向く。
ごっちんが、石川を捉える。
「こんどっ。」
「え」
「今度、時間合ったら、ごはん行こうね。」
ごっちんの瞳が切羽詰まったように揺れていた。
するりと彼女の手が動く。
そこで初めて石川の腕がごっちんに掴れてた事を知った。
ぱたぱたと走り去るごっちんの後姿。
- 437 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:50
-
「なに、あれ…。」
呟いて、石川に答えを求めようと振り向くと。
「…石川?」
石川は片腕をぎゅっと握って、
自分の体を抱き込むように俯いてた。
切なそうに、歪む表情。
その体が小刻みに震えてるようで。
石川が握ってるそこは、さっきごっちんが触れた場所だった。
彼女がゆっくり、目を閉じた。
- 438 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:50
-
それから数日、石川の様子がおかしかった。
ぼーっとしてるっていうか、気付いたら楽屋の隅で一人、座ってる。
彼女は何事にも一生懸命で、手を抜くことを知らない人。
だから、こんな姿には違和感しか感じない。
何度か大丈夫か尋ねたけど、帰ってくるのは、
引きつった無理やりな笑顔だけ。
やばいね。これは、やばい。
この間のごっちんとの再開が大分堪えてるとみた。
石川の心がぐらぐらきてるのが、手に取るように分かった。
- 439 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:51
-
そして、あの日。
多分、あの二人に小さなきっかけとなった日。
その日の石川はこれまでとは比べ物にならないくらいおかしかった。
楽屋へ来てからずっと携帯を眺めて、
飯田さんや矢口さんの声にも、スタッフの声にも反応しない。
おかしい。おかしすぎる。
色々事情を知ってる手前。
やっぱさ、放っておけないじゃん。
鏡の前に座る石川の後へ近づきその肩へ手を置く。
- 440 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:52
-
「いしかーさん。」
「なぁに。よしざわさん。」
ふわりと微笑んだ彼女と鏡越しに視線が絡んだ。
どこか切なげなその笑みに胸を衝かれた。
彼女の隣へ腰掛けるて話を続けると、
本当に楽屋に来てから誰の話も聞いてなかったようで、
会話が噛み合わない。
いつもの、石川らしくなかった。
「大丈夫?」
そう言うと視線を逸らす。
こういうことを聞くのはなんだか照れくさいから。
- 441 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:53
-
続く沈黙に次の言葉を考えていたその時、石川が口を開いた。
「よっちゃんは大丈夫?」
言葉の意味を理解して、頬に熱が集まるのを感じた。
彼女には私の片思いの話をしたことがある。
それ以来石川は時々こうやって聞いてくるのだ。
「いきなり…。」
「そう?」
不意打ちは卑怯だ。
答えられない。
突っ込んで聞き出そうとする石川を適当にあしらって、
こほんと咳払い。
私の話をしにきたんじゃない。
- 442 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:53
-
「で、何があったの?」
彼女はにこりといつもの笑みをその顔にのせて、
衝撃的な事実を口にした。
「別れた。」
そう、言った。
振られちゃった、と言う彼女が何を考えてるのか分からない。
彼氏さんとの間に何があったのかも私には分からない、けど。
けど。
- 443 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:54
-
「素直になれって、言われた。」
その言葉から彼氏さんの人となりが窺えた。
そして多分、本当に石川の事が好きだったんだろうってことも。
素直に。そうだよ。素直にならなきゃ。
だって、石川とごっちんは。
「…素直になってみる?」
そっと呟いて、ちらりと石川を見やると、
目を見開いて私を見つめる瞳とぶつかった。
- 444 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:56
-
彼氏さんの言葉と私の言葉。
私にはこれくらいしかできないから。
石川が自分で動かないと何も始まらない。
「ごっちんが、好きですって言うの?」
頷く。言葉にして伝えなきゃダメだ。
「…なれたら、いいね。」
辛そうに、苦しそうに。
石川は顔を歪める。
その姿に、ふうと息を吐いた。
これ以上言っても今はどうにもならないだろう。
――今は。
チャンスはこれから何度だってある。
- 445 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:56
-
かちゃりと音がした。
見ると、石川が握り締める携帯のストラップが机に当たった音だ。
「いしかーまだその携帯だったんだ。」
その携帯は確かごっちんが卒業する前から使ってる物。
彼女は顔に似合わず物臭な所があって、
携帯にもあまり頓着しない人だけど、
いくらなんでもそろそろ変え時じゃないだろうか。
「変えないの?」
「…そうだね。」
石川の雰囲気が急に変わった。
何かまずい事でも言っただろうか。
でも、携帯の買い替えを提案しただけだし。
彼女が敏感に反応(?)する意味が分からない。
- 446 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:57
-
「いしかー?」
ちょっとだけ不安になって、鏡越しに彼女を見つめた。
石川が視線に気付いて、少し笑う。
妙に哀愁漂う笑顔に胸が高鳴った。
なまじ整ってるだけに性質が悪い。
彼女がこてんと私の肩に頭をのせる。
「ひとみちゃんを好きになればよかったなぁ。」
するりと擦り寄る石川に、
どきどき鼓動が早まる。
待って。待って、ねぇ。
胸の中に広がるこの気持ちは、何?
- 447 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:58
-
「ひとみちゃんとか、懐かし。」
「新鮮?」
「新鮮すぎて、逆に鳥肌がっ。」
「もー。」
「おねーさんが言うと嵌りすぎてサムイから。」
「てーれちゃって。」
笑う石川に、“あの人”の笑顔が重なった。
憎らしいくらいに綺麗な笑顔。
抑えていた思いが胸に溢れる。
叶わない恋。報われない想い。
…やだなぁ。何で、こんな時に。
本当だね。
多分、きっと。石川のことを好きになってたら、きっと。
私たちは幸せになってた、かな?
- 448 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:58
-
「私も、梨華ちゃんを好きになればよかった。」
冗談めかして、普段絶対使わない名前で呼んでみた。
でも、分かってるんだ。
私も石川も。
辛くても、悲しくても、苦しくても。
叶わないこの恋でも。
それでも。
私たちは。
「じゃあ両思いじゃーん。」
私たちは、いや、私は。
“あの人”に会えた事を後悔はしていないから。
それは多分、石川も。
- 449 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:59
-
「梨華ちゃーん。あいしてるよぉー!」
ぐりぐりと石川に頭を擦り寄せる。
「めっちゃ好きー。」
「あはは。告白されちゃった。」
「おにーさんが、幸せにしたげるよ。」
少しずつだけど、石川の顔が明るくなってきた。
久しぶりのじゃれ合いも、昔はごっちんと三人でよくやった。
あの頃、石川は多分ごっちんの事好きじゃなかったんだろうな。
ふざけて頬にちゅーとか日常茶飯事だったけど、
石川は普通だったし。
嘘を吐くのが苦手な石川は、
好きだったら絶対普通ではいられないだろうから。
そういえばごっちんはあの頃、石川の事どう思ってたんだろう。
意識して見たことはなかったけど、
自分の感情を隠すのが上手いごっちんは、
もしかしたら。
- 450 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 13:59
-
「私もあいしてるよー!ひとみちゃん。」
石川の声と同時にそれまで静かだった楽屋の扉が開いた。
首を回すと楽屋口に佇む小さな影。
そこにいたのは矢口さん。
「やっぱりお前らか。外までまる聞こえだっての!
恥ずかしいなーもー。」
矢口さんが拗ねたような声を出して、唇を尖らせた。
隣の石川が顔を上げて、笑む気配。
「矢口さんもやりますー?」
「特別に入れてあげてもいいですよ。」
「やらないよっ。」
石川の言葉に便乗すると、矢口さんが叫び、
そのままこちらに近づいてくる。
彼女の後ろに見える扉が開けっ放しだ。
意外と細かい事にうるさい矢口さんが扉を閉めないなんて。
- 451 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:00
-
「あ、矢口さん。ドア閉めてくださいよー。」
矢口さんが歩みを止めて扉を振り返った。
不思議そうに首を捻る。彼女の金色の髪がぱらりと揺れた。
「あれ、ごっつぁんは?」
心臓が跳ねた。
体が強張るのを感じる。
――ごっちんが、いた?
矢口さんが、おかしいな、と呟いて扉を閉めた。
- 452 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:00
-
「…ごっちん、来てたんですか?」
予想以上に低い声が出た。
どくりどくり、脈打つ心臓。
ごっちんがいた。いつから?
そこまで一緒に来てた、と言う矢口さんの言葉に、
手が汗ばむ。
待って。待ってよ。
矢口さんはさっき私たちの話がまる聞こえだって言ってなかったっけ?
それって。
「…どこから聞いてました?」
「え?」
「うちらの会話、どこから聞いてました?」
私の声に驚いたように顎を引く矢口さん。
- 453 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:01
-
「えと、梨華ちゃんあいしてるよーとかからだけど…。」
遠慮がちな言葉に、頭を抱えたくなった。
だって、ごっちんは石川が(多分)好きで、
ただのじゃれ合いも、三人でやっていたような気持ちで見ることはできないだろうから。
…変な誤解をしてなきゃいいけど。
でも、急にいなくなったって事は、事は?
「あ、石川。順番回ってくるから、そろそろ入った方がいいよ。」
「はい。」
悶々としてたら、石川が矢口さんの言葉に応えて私から手を離した。
反射的に、離れていく石川の手を掴む。
驚いたように彼女がこっちを見た。
急にいなくなったごっちん。私の言葉。石川の言葉。
嫌な予感。
- 454 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:01
-
「よ…」
「ごめん。梨華ちゃん。私、もしかしたら…。」
もしかしたら、私のせいでごっちんにから変な誤解を受けたかもしれない。
そう、例えば、私が石川の事、好きだったとか…。
彼女にみなまで言わせず一方的に謝るけど、
スタッフさんの声に、その後の言葉は続けられなかった。
心配そうに楽屋を出て行く石川の後姿を大人しく見送って。
ばたんと扉の閉まる音が矢口さんと私だけになった部屋に響く。
- 455 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:02
-
「あー!!」
「うわっ、何、びっくりした。」
両手で右胸を抑え、目を見開いて、
「びっくり」を体全体で表す矢口さんに、すみませんと謝る。
けど、これが叫ばずにいられるかっての。
だって、ごっちんがごっちんでごっちんだから…何。
ああ、嫌な予感がする。
心配しすぎだろうとなんだろうと、これは、この予感は。
「どーしたの、よっしぃー。大丈夫?」
心配そうにこっちを窺う矢口さん。
「やぐちさぁん。私やっちゃったかも…。」
「はあ?」
「どうしよ…。」
「何かよく分かんないけど、相談にならいくらでものったげるから。」
背は小さいけど頼れる先輩の姿に、全部吐き出してしまいたかった。
けれど。
頭を軽く振る。そんなことはできない。
自分で招いた事だし、彼女たちの事を喋るわけにもいかないし。
- 456 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:04
-
優しい言葉に矢口さんに礼を言おうとした、その時。
能天気なメロディが楽屋に響いた。
音源は、私の鞄の中。
「…。」
「これ、よっしぃーの携帯じゃないの?」
「…はい。」
不思議そうな矢口さんの声に返事をする。
返事をしたにも関わらず、動かない私を見て矢口さんが首を傾げた。
自分の鞄を凝視する後輩の姿は不審以外の何者でもないだろう。
動かない。動けない。
本日三度目の嫌な予感。
意を決して、携帯を手に取る。
画面にはごっちんからのメール受信を知らせる文字。
かちりとメールを開くと。
――梨華ちゃんのこと、よろしく
って、意味分かんねぇから。
心の中でつっこんだ。
- 457 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:04
-
今考えれば、何であの時あんなに嫌な予感がしてたのかよく分からない。
だって、何度も言うけれど、あれはただのふざけ合いで。
ごっちんだって一緒になってやってたりしたし。
嫌だ嫌だと思ってたらその嫌な事が起きちゃうってのが、自然のセツリ。
例えば、学芸会での劇でこいつの相手役になるくらいなら、
親父の使用済みパンツを被ってもいい、
ってくらい絶対やりたくないって思ってたら、
見事その役をゲットしちゃったり(あみだくじで)
例えば、カップ麺にお湯を注いで三分後、よっしゃいただきますって所で、
絶対このタイミングで電話をかけてくれるなと思ってたら、
やっぱり見事(?)かかってきたり(しかも悩み相談で超長電話)
だから今回も自然のセツリと腹を括ったわけですよ。
そっこー、ごっちんと会う約束を取り付けた私を褒めて。
てかね。何で全くの部外者の私がこんな必死になってるわけ?
- 458 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:05
-
そして翌日、会社に来たごっちんを捕まえた。
ごちゃごちゃ言う彼女を問答無用で応接間に押し込んでソファに腰掛ける。
ごっちんは暫く私を見つめてから、私の前に座った。
改めて、彼女を正面から見据えたけど、
大き目のサングラスをかけてる彼女と、
ちゃんと視線を合わせられたのか甚だ疑問だ。
「昨日のメール、何なの?」
「そのまんまだけど。」
単刀直入に聞くと、その問いを予想してたのか、
ごっちんは特に驚いた風でもなく答えた。
- 459 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:06
-
「あのさぁ、石川をよろしくされる覚えないんだけど。私。」
「…。」
「てか、ごっちん何か勘違いしてるんじゃない?」
「…。」
「昨日、楽屋で私と石川が言ってたのはね。
ふざけてたと言うか。冗談だから。」
「…。」
「って、聞いてんの?」
俯いて何も答えないごっちんにそう言ったら、
ゆっくり顔を上げた。
「きーてるし。ふざけてたんでしょ?」
「え、あ、うん。そうだけど…。」
「分かってるよ。そんなの。」
あっさりと認めたその言葉に拍子抜けして、
ぽかんと彼女を見つめてしまった。
あれもしかして私、取り越し苦労?
でも。でも、じゃあ。
- 460 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:07
-
「あのメールは何だったの…?」
振り出しに戻ったその問いに、ごっちんが溜め息を一つ。
「だから、そのままだって。
ごとー卒業したから、梨華ちゃんのことよろしく、みたいなさー。」
明後日の方を向いて、こちらを見ずに彼女は早口に言い切った。
なんだ。そうなの。
ごっちんの言葉にほっと胸を撫で下ろす。
「話ってそれだけ?」
「うん。」
「じゃあ、ごとーもう行くね。」
- 461 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:08
-
席を立つごっちんを穏やかになった心で眺める。
誤解なんてしてなかった。そう、大丈夫。
そう思ったら、急にある事が頭に浮かんだ。
――彼氏と別れた。
そう言った、石川の顔が。
多分石川はごっちんには言ってないだろう。
彼氏がいた事さえ告げてないのだから。
私がごっちんに彼氏の事を教えたんだから、
別れた事も私から言わなければ、
ごっちんはずっと誤解したままだ。
- 462 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:08
-
「石川、彼氏と別れたって。」
誓って言うけど、その時の私に他意はなかった。
ただ、教えようと思った。
その方がごっちんも石川に変な気を使わないだろう。
そう、思ったから。
でも、気付くべきだった。
サングラスの意味を。
目を合わせない意味を。
あのメールの、本当の意味を。
私は、気付くべきだった。
- 463 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:09
-
「え…?」
扉のノブに手を掛けてたごっちんは、こっちを見た。
サングラスが邪魔して彼女の表情がよく分からない。
「…そっか。別れたんだ。」
彼女の手がぐっと握りこまれて、少しだけ震えてた。
「よしこには、言ったんだ。」
抑えた声。何かを我慢してるような低いそれ。
その時になって、やっと私はごっちんの異変に気付いた。
- 464 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:09
-
「ごっちん…?」
「仲良いねぇ。すっごい信頼されてる。」
「ご」
「よしこの為に別れたんでしょ。」
私の声を遮るように発せられた言葉に、反応が遅れた。
――彼女は今、何て言った?
「……最悪。」
声が出ない私を見やると、ごっちんは小さく呟いて部屋を後にした。
- 465 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:09
-
最後に見えたサングラス。
その中の瞳は見えるはずないのに。
ごっちんの目が苦しそうに揺れた気がした。
- 466 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:10
-
その場に固まっていた私の脳みそが正常に作動を始めたのは、
彼女が出て行ってから数分後だった。
慌てて追いかけるものの、ごっちんがいるはずもなくて。
それなら携帯だ、と文明の機器に頼ろうとしたけれど、
ごっちんから「さっきはごめん」と一言受信して以来、
電話もメールも、うんともすんとも言わなくなった。
- 467 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:10
-
大失態も大失態。
あの時はごっちんからのメールが来ない携帯を見ては、
本当に石川に土下座しようと思ったもんだ。
ごっちんはめっちゃ落ち着いてるように見えてたけど、
内心は相当複雑だったはずだ。
まあそんな思いも長くは続かなかったけれど。
- 468 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:11
-
自己嫌悪で凹みまくってた、あの日。
私にしては早い時間に家を出た。
楽屋の扉を開くと、石川の後姿。
一瞬、扉を閉めて走り去ろうかと本気で思ったんだけど、
実行する前に彼女がこちらを振り向いた。
「よっちゃん、おはよー。」
「…おはよ。」
爽やかな笑顔を向けられても、気分が上向くはずも無く。
辛うじて、返事をすることができた。
だって、ねぇ?気まず過ぎる(自分のせいだけど)
なるべく彼女を見ないようにして、
できるだけ離れた席に腰を下ろす。
- 469 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:11
-
「…何でそんなに離れた所に座るの?」
もっともな疑問。
だけど、私は答えられない。
あなたの顔を見たくないからです、なんて言えるわけないじゃん。
がたり、と椅子の音。
間もなく隣に石川の気配。
「あのさ、話したい事があるんだけど。」
横目で確認すると、隣にはさっきまで遠くの席に座ってた石川の姿。
何なんだろうか。
正直、話を聞くテンションじゃない(自分のせいだけど)
- 470 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:12
-
「ごっちんがね、」
「ごっちん?」
最近頭から離れない名前に体が勝手に反応して、
勢いよく隣を向いた。
石川は気にした様子もなく言葉を続ける。
「昨日、会ったんだけど。」
「会った!?」
私には電話どころかメールも総シカトなのに!?
衝撃的な石川の言葉に思い切り叫んでしまった。
さすがの彼女も私の反応に少しだけ顎を引く。
- 471 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:12
-
「う、うん。でね?その時にごっちんに」
そこまで聞いて、はっと気付いた。
もしかして、ごっちんに勝手に石川の男事情を話したのがばれたのか。
謝らなくちゃ。
「ごめん!!」
「告白された。」
言葉を発したのは二人同時だった。
「え?」
「は?」
きょとんとお互いを捕らえる視線。
一瞬早く我に返ったのは、私。
- 472 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:14
-
「告白?」
そう言わなかったか。今。目の前のおねーさんは。
殆ど呟きに近い私の声に、石川は静かに頷いた。
「告白?」
「…うん。」
「誰が?」
「ごっちんが。」
「誰に?」
「私に。」
ごっちんが、石川に、告白。
ゆっくりその言葉を理解する。
じわりと胸に広がる、何か。
「付き合ってくださいって言われた。」
「うっそ…。」
「私もね。最初は嘘だと思ったよ。けど、本当。」
- 473 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:14
-
ダメ押しのその言葉に、心臓が震えた。
自分のことでもないのにつーんとする鼻。
やばい、泣きそう。
泣き顔を見られたくなくて、
彼女の頭に手を置いて乱暴に撫でて下を向かせた。
「やったね。良かったねっ。」
「うん。」
「なんだよ、ちくしょー。こーの幸せもんめー。」
「うん。」
少しだけ声が震えた。
石川は大人しく頷く。
「ま、私はごっちんの気持ち知ってたけどね。」
「えっ。」
「つーか、早く告れと思ってたもん。」
なにそれ、と言う抗議の声も無視だ。この幸せもん。
- 474 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:15
-
「…幸せになれよ。」
「…うん。」
彼女の頭に手を置いたまま、反対の手で目元を擦った。
「よっちゃん。」
「ん?」
「よっちゃんにはいっぱい相談にのってもらったじゃない。」
私の前では石川涙を堪えなかったもんね。
家に来て一晩中愚痴の相手もさせられた。
石川が顔をあげる。
視線が絡むと、彼女はゆっくり微笑んだ。
- 475 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:15
-
「頼りないかもしれないけど、この借りはきっと返すから。」
胸が熱い。
付き合いの長い彼女にそう言われるのは、
なんだか照れくさかった。
「…ありがとう。」
上手く笑えただろうか。
- 476 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:16
-
不意に“あの人”の顔が頭をよぎった。
私もそろそろけりをつけなきゃいけな時なのかもしれない。
どんな結末を迎えられるか分からないけれど。
できれば彼女たちのように笑いたい、そう思った。
- 477 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:16
-
◆◇◆
目の前で美貴が好奇心できらきらと子供のように目を輝かせてる。
「好きだったね。今でも好きだよ。友達だし。」
笑顔でそう答えたら、彼女はあからさまに眉を寄せた。
目つき超怖いんだけど美貴さん。
「そーゆー事を言ってんじゃないんだけど。」
不機嫌そうな声音に美貴から視線を逸らす。
分かってるよ。
美貴が聞きたいのはあれでしょ。
私が石川に恋愛感情を持っていたか、って事でしょ?
確かに好きだったよ。でも、恋愛感情は。ねぇ?
- 478 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:17
-
「どうなの?」
何でそんな嬉しそうなのよ、あんた。
らんらんと輝くその目から、聞きたくてうずうずしてるのがよく分かる。
どうやら松浦の事は完全に消え去った様子。
美貴の質問をどうやってかわそうか考えてると、
鞄の中の携帯が鳴った。
聞き慣れたメロディに心が跳ねた。
はやる気持ちを抑えて、携帯を手にする。
画面に映る“あの人”の名前。
- 479 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:17
-
「よっちゃんさん。顔超やばいよ。」
訝しげな美貴の声も無視だ。
“あの人”からの久しぶりのお誘いメールに、
さっさと帰り支度を始める。
どきどき高鳴る鼓動。
「お先にしつれーしまーすっ。」
鞄を引っ掴んで楽屋を後にする。
閉まる扉の隙間から、心底呆れたような美貴の視線と、
お疲れ様、と言うメンバーの声が聞こえた。
- 480 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:18
-
好きか嫌いかで聞かれたら、そりゃまあ好きだけどね。
うん、でもあれだよ。その種類を聞かれると困るんだよね、実際。
だって、ねぇ?
石川の笑顔に時々どきりとしてたのは、まあ本当だけど。
私はあの頃“あの人”が好きだったから。
ねえ。これって浮気?
答えなんか出ない。
でも、それでいい。
- 481 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:19
-
彼女たちの幸せを心から祈ってる。
それが、今の私の本当の気持ちだから。
――それで、いい。
- 482 名前:本当の気持ち 投稿日:2006/03/03(金) 14:19
-
>>本当の気持ち
- 483 名前:太 投稿日:2006/03/03(金) 14:20
-
吉澤さんはあの時こんな事を考えてました編。
吉澤さんと後藤さんと藤本さんの場面を追加したら、
長くなってしましましたが、どうでしょうか。
では、お目汚し失礼しました。
- 484 名前:Liar 投稿日:2006/03/03(金) 17:18
- 本当にいいですね…。
なんか、第3者の目線からみると、新たな発見があったり、
逆に新鮮でもあったりして、楽しかったです!
早い更新ありがとうございます!!応援してますよ!
- 485 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 00:27
- 会話がリアルですよねー。
面白いです、ホントに!
次のエピソードも楽しみにしています。
- 486 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/06(月) 21:58
- 石川さんの夢の中でを吉澤さんの本当の気持ちで読むとまた違った面白さですね。
作者さんは本当に感情表現が上手です。
後藤さんの気持ちも読んでみたい気がしました。
- 487 名前:太 投稿日:2006/03/13(月) 22:30
-
>>484さん
レスありがとうございます。
書いてる自分自身も思はぬ発見が色々ありました(笑)
応援に応えられるように頑張ります。
>>485さん
会話は不自然にならないように、
できるだけ気を付けているのですが、
まだまだ修行が足りません(笑)
今回の話はいかがでしょうか。
>>486さん
感情表現…。あ、ありがとうございます!嬉しいです。
後藤さん視点は書いてみたいですね。
期待せずにお待ちください。
- 488 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:31
-
いくつになってもアイスの袋を開ける瞬間っていうのは、
どきどきとわくわくが一緒くたになってやってくるような嬉しさがある。
棒の部分をそっと掴んで、口に含むと、ひんやり広がるあの甘さ。
幸せすぎて頬が緩んじゃうのも仕方がないと思うの。
「幸せ…。」
うん。思わずこんな言葉がでちゃうのも仕方がないと思うの。
お風呂上り、髪の毛をきっちり乾かして、お肌の手入れもカンペキ。
大き目のジャージを着て、ゆったりソファに腰掛けて、ミルクアイスを食べる。
ああ、幸せ。
これで隣にあの人がいてくれれば、もっと、もっと幸せなのだけど。
- 489 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:32
-
アイスの先を少し齧って目を閉じた。
口に含んだアイスがゆっくり溶けていく。
耳を澄ますと聞こえてくる水音。
私と入れ替わるようにお風呂に入った彼女が出てくるのが待ち遠しい。
このソファは一人では広すぎるから。
仕事帰りのごっちんが家へ来たのは、一般的な家庭の夕食の時間をとうに過ぎた頃だった。
明日一日オフの彼女は今日から泊まりに来る予定で。
仕事でこっちに着くのは遅くなるかもって言っていたから、
てっきりご飯は来る前に済ましてくるものだと思ってたら、
早く梨華ちゃんに会いたかったから、局から直行でご飯食べてない、
なんて、嬉しいことを言ってくれたりした。
- 490 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:33
-
だけど、玄関で抱きついて、なかなか離してくれないのにはちょっと困った。
キスを強請られて、仕方なくちゅってしたら、
そのまま、…ねぇ。そう、なりそうになって。
彼女を説得して部屋へ上げるのには本当に苦労した。
ご飯の用意をしてないって言ったら、ごっちんが残り物でご飯を作って。
冷蔵庫の中を見た彼女に、梨華ちゃん普段何食べてるのって呆れられたのには、
ちょっとむっとしたけど、相変わらず料理の手際が良い彼女には関心。
食事を終えてお風呂に入ろうってなった時、
一緒に入るって聞かないごっちん。
これもなんとか説得して、やっと浴室へ入れた(もちろん一人で)のが11時。
一緒に入りたかったのに、とぶつぶつ言う彼女とお風呂を交代して、
もうすでに、1時近い。
- 491 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:34
-
ぺろりとアイスを舐める。
テレビをつけるためにリモコンを探して、ぐるりと部屋を見渡した。
一応ごっちんが来る前に片付けをしたのだけど、その成果はあまり現れていない。
きっと、よっちゃんあたりが見たら汚いって言われるだろうな。
そんな部屋だから目当ての物をなかなか見つけ出せなくて、
机の上に置いてある雑誌をどけた。
その下にあったのはリモコンじゃなかった。
――ごっちんの写真集。
数日前にマネージャーさんからもらったそれがそこにはあった。
そういえば、貰ってからずっと見るのを忘れてた。
手に取って、ぱらぱらと数ページ捲る。
目に飛び込んでくるごっちんの笑顔。
確かに可愛いのだけど、何とも言えない複雑な気持ちがふつふつと湧き上がってきて。
知らず眉間に皺が寄った。
- 492 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:35
-
だって。だって、ねぇ?
その笑顔も、真剣な表情も、可愛い姿も。
できれば独り占めしたいのに。
…私だけのモノにしたいのに。
仕事だって事は重々承知してるけど、
不特定多数の人に自分の彼女が見られてるってのは、正直、嫌なもので。
まあ、こんな事絶対本人には言わないけど(からかわれそうだから)
ぱらりとまたページを捲ると、
水着で笑顔全開のごっちんの姿。
なんでこんなに色っぽいんだろ。年下のくせに。
ごっちんはよく私の事エロいって言うけど、
私から言わせればごっちんの方がやらしいと思うの。
スタイルとか、絶対ごっちんの方が良いもん。
- 493 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:35
-
片手のアイスをぺろりと舐めて、
また捲ろうと、ページの端に手をかけた。
「なに、読んでんの?」
突然聞こえた隣からの声に驚いて、思わず本を閉じる。
その勢いで、それを背中へ隠した。
声の方を見やると、ペットボトルを片手に持ち、
首にタオルを掛けたごっちんの姿。
お風呂上りで桜色の頬が普段大人っぽい彼女を幼く見せた。
- 494 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:36
-
「ご、ごっちん。もうお風呂上がったんだ。」
「んー。さっき出た。声掛けたのに梨華ちゃん全然気付かないんだもん」
「ごめん。」
何も疚しい事はしてないのに、
ごっちんの視線に何故だか気まずくなって、目を逸らす。
彼女は不思議そうに私を眺めてから、
手に持っていたペットボトルのキャップを回した。
「別にいーけど。で、何見てたの?」
「いや。あの、何でもないっ。」
「はあ?」
ごっちんの訝しげな表情に、更に視線を逸らす。
「いや、今、何か読んでたじゃん。」
「…読んでない。」
「後ろに隠したでしょ?何か。」
その言葉にぎくりとした。
写真集を見てたって事をごっちんに知られたくない。
絶対からかわれるに決まってるから。
俯き後ろ手に本をぎゅっと握って、首を振る。
- 495 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:36
-
「…ふーん?」
ぱきっとキャップの開く音と、ごっちんの納得したような声。
「梨華ちゃん。」
名前を呼ばれて反射的に顔を上げてしまった。
予想していたよりも相当近い所にごっちんの顔があって驚いて顎を引く。
お風呂上りの彼女からは、ふわりと私と同じシャンプーの香り。
ごっちんがにやりと笑ったのが見えた。
「隙あり!」
言うが早いか、ごっちんが私の背中に手を伸ばす。
やばいと思った時にはもう遅い。
彼女の手には、彼女自身の写真集。
ああ。ばれた。
- 496 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:37
-
「…写真集じゃん。」
最初は驚いたように呟いたごっちんだったけど、
その表情がゆっくりに笑みの形に変わっていく。
彼女の視線が写真集から外れて、こちらを向き、
視線が絡んだ。
「ごとーの写真集を見てたんだ。」
「や、あのっ。」
「声聞こえなくなるくらい真剣に見てたんだ。」
「……。」
――だから、ヤだったのに!
にやにやと勝ち誇ったような笑みを浮かべる彼女。
恥ずかしさで頬に熱が集まるのを感じた。
彼女が言ったことは事実で、言い返せない。
代わりに少しだけ睨んだ。
ごっちんはその視線を受け止めると、にやりとまた一つ笑う。
そのまま写真集を机に戻し、持っていたペットボトルに口をつけて、一口飲んだ。
- 497 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:38
-
「……。」
ごっちんの綺麗な形の唇が濡れる。
そこから徐々に視線を降ろすと、
上を向いた彼女の喉がごくりと動いた。
そのラインの妙な色っぽさに、
どきどきと胸が鳴って。
――目が、離せない。
ペットボトルから口を離した彼女が、こっちを向いた。
「なに?」
その疑問に答えられなくて、思い切り首を振る。
あなたに見とれてました、なんて言えるわけがない。
ごっちんは首を傾げると、口元を拭った。
それだけの仕草なのに妙に様になっていて。
また、鼓動が早くなる。
- 498 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:39
-
「てーかさ。」
言いながらごっちんが私の隣へ腰掛けた。
彼女の重みで少しソファが沈んだ。
きゅっとキャップを閉めて、ペットボトルを机の上に置く。
その動きを目で追っていると、突然手首を掴まれた。
驚いて彼女を見ると、強い視線とぶつかった。
「…アイス溶けてる。」
ごっちんの言葉に、掴まれた方の手を見ると、
さっきまで固まってたミルクアイスが溶けて、
棒を伝い、私の指を汚していた。
慌てて拭おうと手を引こうとしたら、
ごっちんが手を離してくれなくて、
そこから、動かせない。
- 499 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:40
-
「ごっち…」
「ごとーがキレイにしたげるよ。」
すっと彼女の顔が手に近づいてきた。
その行動の意味が分からなくて訝しげに見ていたら、
彼女の唇からちらりと見える、赤。
同時に、アイスまみれの指に温かい感触。
頭がその状況を認識し、理解した。
息を呑む。
一気に体温が上がった。
「あまーい。」
彼女は、まるで飴を舐めるように、
私の指を舐めていた。
- 500 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:40
-
「…っ、ごっちん…っ!」
あまりの恥ずかしさに手を引こうとするけれど、
彼女がそれを許さない。
ぺろりと、またごっちんが舐めた。
彼女の舌が私の指を這う。
その光景に体が震えて。
恥ずかしくて涙が出そうだ。
「やめっ…。」
涙声でそう懇願すると、ごっちんがその態勢のままちらりとこっちを見た。
真っ直ぐ向けられる視線に、ぞくりと何かが背を駆け抜ける。
その唇が、舌が、焼けそうに熱い。
彼女がそれを止める気配はなくて、
その光景を見ていられなくなって顔を逸らす。
耳まで熱くなってきたみたい。
- 501 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:42
-
ちゅっと指先にキスされた感覚がした。
すっと軽くなる腕。
逸らしてた顔を温かい手に包まれて、彼女の方を向かされる。
微笑んだごっちんと視線が絡んだ。
「今のはね。梨華ちゃんだけに特別サービス。」
そう言いながらごっちんが顔を近づけた。
彼女との距離がどんどん縮まる。
ぱた、とアイスが手から滑り落ちて、
机の上で、くしゃりと崩れた。
「写真なんかよりさ、ホンモノの方がいいと思わない?」
互いの息が掛かるほど近づいて。
鼻先が触れた。
「こーんな近くにいるんだからさ。」
あと少しでキスできそうな距離に、早まる鼓動が抑えられない。
ごっちんは笑みを深くして、囁くように呟いた。
- 502 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:42
-
「写真じゃなくて、ごとーを見て。」
そのまま唇を塞がれた。
暫く長い睫を眺めた後、そっと瞼を降ろす。
唇を舐められて、するりと侵入してきた彼女の舌の熱さに、
思わず声が漏れた。
顔を離すと、私だけ息が弾んでて、
余裕の笑みを浮かべるごっちんが恨めしい。
下から睨むと、彼女は擽ったそうに笑った。
「梨華ちゃんだけの特別サービス、続きしようか?」
ごっちんは微笑んだまま、そっと囁いた。
少しだけ掠れてるその声に、
心臓が締め付けられるみたいになって、
堪らなくなる。
彼女の首筋に頬を擦り付けて、その腰に腕を回した。
- 503 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:43
-
ぎゅっと背中にごっちんの腕の感触。
密着した体から、彼女の心臓の音が聞こえる。
耳に吐息が掛かってくすぐったい。
「ね?ベッドいこ。」
笑みを含んだ悪戯っ子みたいな声で囁かれて。
彼女の言葉に逆らえない。
というか、私に逆らう意思が元々ないんだ。
だって、ほら。
抱き締められたその腕に、
その微笑に、
こんなにも、心が、震えてる。
ごっちんに顔を見られないように、
首筋に顔を押し付けて、ゆっくり頷いた。
- 504 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:43
-
寝室へ向かう中、机の上に放り出された写真の中の彼女が見えた。
その笑顔も、真剣な表情も、可愛い姿も。
できれば独り占めしたいけど。
…私だけのモノにしたいけど。
ベッドの中で見下ろされる優しい瞳に、
全部どうでもよくなってしまった。
今、目の前にごっちんがいる。
それが、すべて。
- 505 名前:ミルクアイス 投稿日:2006/03/13(月) 22:44
-
>>>ミルクアイス
- 506 名前:太 投稿日:2006/03/13(月) 22:45
-
>>40の石川さん編です。
できるだけ、いちゃつかせようと頑張ってみました。
やらしめになりましたが、いかがでしょうか。
では、お目汚し失礼しました。
- 507 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/13(月) 23:10
- いいっ! スゴくいいです!
ドキッドキッ、です。
ありがとうございました。
- 508 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/14(火) 22:38
- いしごま凄いわ。にやにやが止まりません。
- 509 名前:名無しさん 投稿日:2006/03/25(土) 20:46
- なりきり100の質問から繋がる話が素晴らしくて
いつも楽しみにしてます。
- 510 名前:太 投稿日:2006/04/03(月) 19:59
-
>>507さん
レスありがとうございます。
やらしめを狙って書いたので、
そう言って頂けて嬉しい限りです。
>>508さん
いしごまは本当に全てが凄すぎですよね。
絡みはあまりありませんが、
こっちの世界では結構お好きな方が多いようで嬉しいです。
>>509さん
100質の方に関連させるのにはいつも苦労しているので、
そう言って頂けて嬉しいです。
楽しみに…!き、恐縮です。
- 511 名前:太 投稿日:2006/04/03(月) 20:00
-
今回は100質とは関係ない話です。
というか、リアルでもありません。学園物いしごま。
内容は…タイトルを見ていただければ分かってもらえるかと。
ご注意を。
- 512 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:00
-
恋愛の形って人それぞれじゃん。
100人いれば100通りの恋愛があると思う。
時には好きになっちゃいけない人を好きになったりもするでしょ?
例えば、友達の彼氏とか。
例えば、会社の上司(妻子持ち)とか。
例えば、同性の親友とか。
相手を選んで恋ができたら楽だけど、
でも、恋ってそういうモノじゃない。
頭で考えるよりも、心で感じるモノ。
だから好きになったら止まらない。
それがどんなに辛い道だとしても。
それに、ほら。よく言うじゃん?
“恋は障害が多いほど燃えるもの。”
――教師と生徒。
燃え尽きちゃいそうなくらい魅力的な障害だと思わない?
- 513 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:01
-
かつかつと黒板にチョークが走る音が静かな教室に響く。
周りを見渡せば、真剣にノートをとってる人から、
完全に眠りの世界へ旅立ってしまった人まで様々。
心地良い春の陽気に、昼休み直前の授業とくれば、
眠っちゃう気持ちもよく分かる。
しかも、二年生の始めの国語なんか、
むしろ寝てくださいって言われてるようなもんだし。
ごとーだっていつもなら開始早々おやすみだね。
うん。これが、国語の授業じゃなければ。
――というか。
「梨華ちゃん。文章間違ってるよ」
――彼女の授業じゃなければ。
- 514 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:01
-
突然発せられた声に、黒板に一生懸命チョークを走らせていた、
“梨華ちゃん”が振り向いた。
きょとんとして、どこを指摘されたのか分かってない様子。
「“暮らし”の後の“の”が抜けてる」
「あ、本当だ。ごめんね」
梨華ちゃんの様子を察して、指摘した生徒が親切に言い直すと、
彼女は慌てて“の”を付け足す。
“暮らし”の右斜め下に申し訳なさそうに付け足された“の”が梨華ちゃんらしい。
国語教師・石川梨華ちゃん(24)は去年この学校にやってきた。
生徒と年が近くて、単純で扱い易い性格の彼女は、
赴任早々生徒からちゃん付けで呼ばれて慕われたけれど、
その性格からからかわれる事も少なくなくて。
- 515 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:02
-
例えば、今間違いを指摘した声の主。
ごとーの後ろに座る声の主、よしこに目を遣れば、
そこには満足気に微笑む彼女の姿。
よしこの行動は端から見れば親切として受け取られるだろうけど、
中学からの腐れ縁のごとーには分かる。
こいつはただ単に梨華ちゃんの慌てる姿を見て面白がってるだけだ。
にやにやしたその笑顔に呆れて視線を前へ戻すと、
梨華ちゃんが黒板に文章をすべて書き終えたところだった。
「はい。じゃあもう終わろうか」
時計をちらりと見て、とんとんと教材を揃えた梨華ちゃん。
その言葉のすぐ後に授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
号令と共に礼。
ざわざわ騒がしくなる教室の中、
梨華ちゃんが教室を出て行くのを目で追っていたら、
ぽんぽん、と肩を叩かれた。
振り向くと、満面の笑みのよしこの姿。
- 516 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:02
-
「ごっちん、梨華ちゃんのこと見すぎ」
人を小馬鹿にしたような口調にちょっとむっとしたけど、顔には出さない。
まあ、よしこにはばれてるかもしれないけど。
「あいかーらず、梨華ちゃんの授業だけはちゃんと聞くんだね」
「他の授業も聞いてるよ」
「そっこー寝んじゃん」
「…」
まったくもってその通り。
言い返せずに黙り込むと、よしこがにやりと笑みを深める。
「てか、ごっちんの場合、
梨華ちゃんの授業は聞いてるんじゃなくて、
見てる、のが正解だよねぇ」
大正解。
ごとーが国語の授業をちゃんと受けているのは、
偏に、“梨華ちゃん”の授業だから。
だけど、こいつには絶対教えない。ムカツクから。
- 517 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:03
-
にやにやするよしこを横目に鞄を探る。
こういう時の彼女には、何を言ったってからかいの種にしかならない。
シカトするのが一番。
悔しいけど、どうしたって、口の上手いこの男前には勝てないのだから。
鞄の中から目当ての物を見つけて、膝の上に置くと、
よしこがそれを見とめて溜め息を吐いた。
「いつにも増してデカイ弁当」
呆れたように呟いた彼女の言葉に、膝の上のそれに視線を遣る。
緑色の紙袋。
中にはビデオテープを横にして二段重ねにしたぐらいの大きさの弁当箱が、三つ重ねて入っている。
確かに、一般的な女子高生の弁当としては、これは大きい。
それには、二つの理由がある。
一つは、ごとーが結構食べる人だからだ。
三時のおやつにハンバーガー三つなんて軽く食べれてしまう。
このくらいの弁当なんてことはない。
- 518 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:03
-
「毎日毎日よくやるよ」
――そして、二つ目。
「今日も梨華ちゃんとこで食べるんだ?」
――この弁当は、一人で食べる物じゃないのだ。
よしこが頬杖をついた。
「まーね」
「大変じゃないの?毎朝二人分の弁当作るのって」
二人分あるお弁当。
ごとーと、梨華ちゃんの分。
- 519 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:04
-
「別に。一人分作るのも二人分作んのもたいして変わんないし」
「そーなの?」
「そーなの」
紙袋を手に、がたりと席を立って、教室を後にした。
昼休みの時間は限られているのだ。
こんな所でよしこと話してる場合じゃない。
周りがお弁当を広げてる中、よしこが、ふうと溜め息を吐くのが見えた。
生徒が行き交う廊下を梨華ちゃんがいる国語準備室をめざして進む。
はやる気持ちに自然と早足になった。
手には梨華ちゃんのために作ったお弁当。
彼女に会えると思うだけで足元が軽くなるこの気持ち。
彼女の授業は何があってもちゃんと受ける(見る)その、理由。
すべては、自分の気持ちと、自分と彼女との関係のせい。
梨華ちゃんが大好きなごとーの気持ちと、
ごとーと梨華ちゃんが、所謂、恋人な関係のせい、だったりする。
- 520 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:05
-
梨華ちゃんとの出会いは、去年の始業式。
式の為に体育館へ向かう途中、
廊下でリクルートスーツを着た梨華ちゃんに声を掛けられたのが始まりだった。
頼りなさげに体育館の場所を尋ねる彼女の姿は、どうやっても教師には見えなかった。
式が始まって、“今年度からお世話になる先生方”の紹介で、
ステージ上に彼女の姿を見つけた時の、あの衝撃は今でも忘れられない。
あんなとろそうな人が教師だなんて信じられなかったから。
女の子女の子した雰囲気に、
絶対仲良くはなれないだろうなと思った。
けど。
それから何度か話す内に、段々とそんな印象も薄れていって話すのが楽しくなってた。
そして、いつの間にかもっと会いたいと思うようになって。
――好きに、なってた。
- 521 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:07
-
同性の上に、教師と生徒なんて、
ドラマにも出てこないような障害にめちゃくちゃ悩んだけど。
好きになったものは仕方がないと割り切って、
押して押して押しまくった結果、見事梨華ちゃんの気持ちをゲットしたわけですよ。
それから、毎日お弁当は一緒だったりする。
毎朝、早起きして弁当作りに励むごとーって結構健気だよなぁ、と思う日々。
学校の中で梨華ちゃんに会える時間は限られてる。
国語の授業がある時と、昼休み。
絶対にばれちゃいけない関係だから、
学校では会うの止めようと言う彼女と、
押し問答の結果、このお昼の時間が許された。
学校で会うのは止めた方がいいってのはよく分かってる。
けど、やっぱりそんなのは寂しくて。
会いたい気持ちは止められなかった。
- 522 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:08
-
階段を上って廊下の一番奥。
『国語準備室』と書かれたプレートの下の古い木の引き戸に手を掛ける。
扉を開けると、がたがた鳴った。
「もー、後藤さん。ノックしてって言ってるでしょ」
聞こえてきた大好きな声に頬が緩んだ。
ごとーのクラスの教室と変わらない広さのはずなのに、
“国語準備室”はそこよりも狭く感じる。
それは、壁にひしめき合う背の高い古い本棚の圧迫感と、
部屋の真ん中に偉そうに置かれている縦長の机や、
いつからあるのか分からないような古いソファが、
部屋の大半を占領しているからだ。
本棚には、題名を見ただけでは内容がさっぱり分からないような物や、
古すぎてその題名さえ掠れて読み取れないような物ばかり並んでいて、
まるで、図書室をそのまま縮小してこの部屋に無理やり詰め込んだようだ。
そんな部屋の奥、大きな窓の下にある教員用の木の机の前に、彼女は立っていた。
- 523 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:08
-
「いいじゃん。別に」
「突然開いたらびっくりするでしょ」
「こんな時間にこんな所来るのはごとーくらいじゃんか」
「そうだけどー…」
教室棟とは別棟にあるこの部屋に来る生徒はいない。
というか、特別教室やら実習室やらが集まるこの棟に来る生徒が殆どいないのだ。
そして、この準備室を使う教師は梨華ちゃんだけ。
もちろん、この学校の国語教師は彼女だけじゃないけれど。
無駄に歴史のあるこの学校は校舎も相当古くて、改装工事が何度も行われている。
けれど、奥まった場所にあるこの準備室は、
その工事が一度も行われたことがなく、
扉から部屋の中の窓枠に至るまで、木製という年季の入り方をしている。
やっぱりこの古さでは誰も使いたがらないらしくて、
使用許可を出した時も、一も二もなく許可が下りたと梨華ちゃんがが言っていた。
まあ、だから、ここを密会場所に選んだんだけど。
- 524 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:08
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不満そうな彼女の声を聞きながら、後ろ手に戸を閉めた。
「お弁当食べよ?」
手に持っていた紙袋を掲げると、
梨華ちゃんが嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔にこっちまでつられて笑んでしまう。
ソファに隣同士腰掛けて、弁当を受け取る為に、
両手を差し出す彼女に、思わず、
紙袋を手渡してしまいそうになって、
慌ててそれを自分の方に引き寄せる。
「ダメ」
「え?」
きょとんとする彼女は、
年上とは思えないくらい幼く映った。
- 525 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:09
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「“後藤さん”じゃないでしょ?」
できるだけ真面目な顔をして言うと、
梨華ちゃんが気圧されたように顎を引いた。
付き合いだしてから彼女に名前で呼んでくれるように頼んだ。
梨華ちゃんが生徒を苗字にさん付けで呼んでるの知ってたから。
その中の一人じゃなくて、自分だけの、特別が欲しかった。
彼女がごとーの事を“その中の一人”として見てないことは、
ごとーの気持ちに応えてくれた時から分かってたけど。
はっきり分かるような証みたいなものが欲しかった。
けれど、他の生徒をさん付けで呼んでるから、
あなただけを名前で呼べない、と彼女は頑として首を縦に振らなくて。
これまた押し問答した結果、二人きりの時限定で呼ぶということになったのだ。
そして今は二人きり。
彼女が名前で呼んでくれる時。
- 526 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:09
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「さっき“後藤さん”って言った」
「え…」
「“後藤さん”じゃヤだよ」
「…うん」
「梨華ちゃん?」
「……真希ちゃん…」
小さな声で(しかも恥ずかしそうに!)呟かれた自分の名前に、
心がふわりと温かくなった。
緩みっぱなしの顔のまま、紙袋を差し出すと、
少しだけ恥ずかしそうにそれを受け取る梨華ちゃん。
彼女の手が紙袋に触れた瞬間、がしっとその両手を掴む。
「…っ、なにっ」
梨華ちゃんの瞳が戸惑ったように揺れた。
引っ込めようとする彼女の手を、ぐい、と引き寄せる。
そのまま顔を近づけて、可愛い頬にちゅっと口付け。
勢いよく梨華ちゃんが離れた。
- 527 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:10
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「なにするのっ!」
目を見開いてこっちを見る梨華ちゃんに、
にっと笑ってみせる。
ひっくり返った高い声に、赤い頬で怒鳴られたって全然怖くない。
「何って、ちゅー」
「な、学校ではしないでって言ったでしょ!」
「だいじょーぶ。誰も見てないって」
「そういう問題じゃないのっ。公私混同はダメなのっ。
ここはお仕事する場であって…」
「まーまー、落ち着いて」
ぶつぶつと呟く彼女に声を掛けて、
紙袋を机に置く。
「おべんと食べよう?」
下から見上げて出来るだけ可愛く見えるように笑ってみせると、
彼女がふう、と溜め息を吐いた。
- 528 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:11
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「…もう。分かってるの?」
「分かってるけどさぁ」
「なによ」
弁当箱を取り出して梨華ちゃんの前に置き、
ちらりと見やると、不満気に唇を尖らす彼女。
そんな姿に心がきゅんと揺れた。
「だって、梨華ちゃん可愛いんだもん」
そう言ったら、彼女は恥ずかしそうに目を伏せる。
だから、そういう仕草が可愛いんだって。
保護欲をくすぐられるって言うの?
ぎゅうって抱き締めたくなる。
でもそんな事したら、また梨華ちゃんが怒るから我慢。
- 529 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:11
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ぱかりと弁当箱の蓋を開ける。
「時間なくなっちゃうからさ。お昼にしよ?」
箸を差し出すと渋々梨華ちゃんが受け取った。
三段ある弁当箱を一段ずつ机に置くと、
彼女の表情が少しだけ緩んだ。
分かり易すぎる梨華ちゃん。
拗ねてるけど、やっぱりお腹はすいてるみたいだ。
「今日はねー、だし巻き卵がオススメ」
だし巻き卵を箸で取って、笑顔で彼女の口元へ持っていくと、
梨華ちゃんがぱくりと食べた。
むぐむぐ動く頬をどきどきしながら見つめる。
料理には自信があるけど、やっぱり食べてもらう瞬間っていうのは、ちょっとだけ不安。
しかもそれが大好きな人なら、尚更。
- 530 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:11
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ごくりと飲み込んだ彼女がふわりと微笑んだ。
「おいしい」
梨華ちゃんの満面の笑み。
嬉しくて嬉しくて、頬がふにゃっと緩むのが自分でも分かった。
この笑顔を見れるから、また明日も頑張っちゃうんだよね。
自分でもどうかしてると思うけど、
そんな些細な事がどうしようもなく嬉しいから。
「でしょでしょ。あとね、その煮物とかもね、結構自信あんだ」
「はいはい」
ぱくりと食べて、美味しいと褒めてくれる度に、どんどん頬が緩んむ。
二人寄りそって、時々食べさせあいっこしたりしながら、楽しいお昼が過ぎていく。
お弁当を平らげて、梨華ちゃんが淹れてくれた食後のコーヒーを飲んでると、
それまで梨華ちゃんとごとーの声しかしなかった部屋に鳴り響く電子音。
- 531 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:13
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音を出しながら震える携帯をブレザーのポケットから取り出し、
ぱかりと開いて中を確認すると、よしこからのメールが一通。
――次、体育
簡潔な文面から滲み出る彼女らしさ。
そのメールで、次の授業が体育だった事を思い出した。
いつもなら次の授業が始まるぎりぎりまでここにいるのだけど、
体育の時はそうはいかない。
着替えなくちゃいけないし、更衣室から体育館まで距離があるから時間がかかるのだ。
ごとーは少しくらいの遅刻も別に構わないけど(梨華ちゃんと一緒にいる事の方が重要だから)
だけど、梨華ちゃんが構うようで。
一度、この昼休みのせいで遅刻したことがある。
それを知った梨華ちゃんは尋常でなく怒って。
それはもう、そのまま別れを切り出されるんじゃないかってくらい半端ない怒り方で。
それ以来、遅刻をしないように細心の注意を払って行動するようになった。
- 532 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:13
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このメールもその一つ。
五分前になっても教室に戻らなければメールをしてくれるようによしこに頼んだのだ。
おちゃらけてるけど人の良い親友は、面倒臭い、と言いながらも承諾してくれた。
ぱかりと携帯を畳んで、ブレザーのポケットへ。
「次体育だからさ。もう行くね」
腰を上げると、梨華ちゃんが慌てたように口を開いた。
「あ、お弁当箱、洗って明日返す」
別にそのまま返してくれても全然よかったんだけど、
申し訳なさそうな彼女が予想以上に可愛くて。
ふと、ある考えが頭に浮かんだ。
洗って返してもらうよりも素敵なアイデアに心の中でにやりと笑う。
- 533 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:14
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腰を屈めて、お弁当箱の蓋を閉めている梨華ちゃんに近づいた。
「梨華ちゃん」
不思議そうにこっちを見た彼女。
その耳に唇を近づける。
「今日梨華ちゃんち行くから、その時返して」
ゆっくり囁くようにそう言うと、
返事を待たずに急いで部屋から出た。
がらがらと戸を閉めると、後ろから微かに聞こえてくる声。
きっと真っ赤になった梨華ちゃんが文句を言ってるに違いない。
その光景が目に浮かぶようで。
心が温かくなる感覚に、知らず漏れる笑み。
- 534 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:15
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小走りに教室へ向かうと、よしこが待っていた。
「遅いよごっちん」
「ごめんごめん」
「早く更衣室行こう」
ロッカーからジャージを引っ張り出そうとしたら、
ブレザーのポケットが振るえた。
携帯を取り出して、ぱかりと開くとディスプレイに光る梨華ちゃんの名前。
「ちょっとごっちん何してんの?」
よしこの声も無視して、かちりとメールを開く。
――待ってる。
それがさっきの返事だと気付くのに時間は掛からなくて。
たった一言、色気もムードも無いそれにきゅんと胸が震える。
こんなのいくらでも可愛く返答できるのに、
真面目で恥ずかしがりで、
しかも意地っ張りの彼女にはそれができない。
きっとこの返事だって、送るかどうかすごく悩んだはずだ。
そこが堪らなく可愛いのだけれど。
- 535 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:15
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「ごっちんっ。早く!」
「分かった」
よしこの声に携帯をぱかりと閉じる。
ロッカーからジャージを出すと、緩んだ頬を引き締めて彼女の元へ。
「遅い。携帯見て何にやにやしてたの?」
目敏い親友に苦笑いを返すと、彼女はそれだけですべてを理解したようで。
呆れたように溜め息を吐いた。
「時間ないから行くよ」
それ以上は何も聞かず、踵を返した彼女の後に続く。
けれど、さっきのメールで頭の中は梨華ちゃんでいっぱい。
- 536 名前:教師と生徒のすすめ 投稿日:2006/04/03(月) 20:16
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明日は土曜日。学校は休みだ。
頑張ればお泊りの許可が出るかもしれない。
晩御飯は何がいいかな。
梨華ちゃんちの冷蔵庫はいつも何もないから、
帰りに買い物してかなきゃ。
前を歩くよしこの金髪が日に当たってきらきらした。
眩しくて思わず目を細める。
授業の開始を知らせるチャイムが鳴った。
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