くじらと人魚

1 名前:Rink 投稿日:2005/12/13(火) 00:22

緑板 『くじらと人魚』の続編です

ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/green/1133712122/
>>518からです

いしよしです よろしくおねがいします。

前作
赤板 『ライン』
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/red/1132757791/

続き 緑板 『LINE』 『CROSS』
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/green/1133712122/
2 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:24
 ∧  V  ∧  V  ∧
3 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:25

エレベーターを降りて
てくてく歩き出す

ウチはどこへ向かうんだ?

久しぶりに叫んだから頭が痛い
目の前に夜でもこうこうと明かりが灯るコンビニが見えた

水買お・・・



相手の不幸より、自分の不幸を背負って立つ
待ってばかりで、全て自分が受身になる

迷惑がかかるだと?
黙ってたらわかんないって思っただと?

黙って犯されて
笑顔で次の日ウチに会うつもりだったのか


ふざけんじゃねぇ

4 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:26


どこまで背負うつもりなんだよ・・・
なぁ、そんなに泡になって消えたいのかよ


腹減った・・・
そういや、ウチ今日昼からなんも食ってない

ブチ切れて、オッサン一人殺しそうになって
いしかーさんのこと怯えさせて

でも腹は減るんだな・・・


おでん買お

みかんゼリー美味そう。買お

煙草も切れてたな。買お

5 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:27

1354円です?なに買ってんだウチ
あー。はいはい。関係ないもんばっかり買ってるね

袋?全部一緒でいいですよ。
なんでそんなビビった顔してんの
ウチの顔そんな怖い?

あ、財布・・・忘れた?
保田さんから借りた警棒ならあるけど
要らない?あっそ
ああ、金持ってたわ。はいどーぞ

ありがとうございました。こちらこそ


ねぇ、店員さん。
アンタ、ウチのことどう見てる?
夜中に腹をすかせておでん買いに来たただの客?
そうだろうね
でもウチ今さっき2人殺したんだよ
一人は半殺し、顎砕けてると思う

一人はマジ殺し

心をだけどね


そういや、チャリ駐輪場に置きっぱなしだったっけ
戻らないと

めんどくせ
6 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:28


来た道をおでん片手に戻る

メゾンチャーミーに住んでる他の住人は
寝静まってるのか

ねぇ、同じマンションで殺人あっても
アンタたちは無関心なんだろ


ウチはマンションを見上げて
部屋の明かりを確認する事もなく






勝手に 足が、ロビーに

勝手に、手が、オートロックに

1444ってロック解除してた


7 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:29


 チーンッ


8のボタンを今度は自分で押す
エレベーターの中におでんの匂いが立ち込める

エレベーター禁煙って書いてっけど
ごめん、イライラしてるときは吸わないとやってけないの

 カキンッ シュボッ

「すぅぅぅ・・・はぁ・・・」


 チーンッ


エレベーターホールを抜けて、来慣れた道を辿る

8 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:30


 ガチャッ


今さっきとなんら変わらない玄関の荒れ様
奥からすすり泣く声が聞こえる

泣いてばっかりで、失ったと思ってる人魚姫


リビングに入ると
体をコの字に曲げて小さく小さくなって
ベッドの上で泣いてる、なんともみすぼらしい格好の
いしかーさんが居た

上半身はボロボロに破られて、ジーンズはとっちらかってて
自慢の長い髪も、ボサボサになってる


ウチの彼女だよ?これ・・・

9 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:30

「はぁ・・」

テーブルの上にコンビニの袋を置いて煙草を消すと
袋からペットボトルを取り出して
ベッドで蹲ってウチの存在にさえ気づいてない
いしかーさんに近寄った


「ねぇ」

 ビクッ!!

身体を震わせて、顔を上げる

「・・・いつまで泣いてんのさ」
「ひ、ひと、ひとみちゃ・・・」

「ねぇ・・・」
「んぐ、ぐぐ」

泣き顔は、汚い。この上なく汚い

「水、飲める?」
「う、うう・・・」

まったく世話のかかる・・・
キャップを開けてさしだした

「ほら」

おずおずと手を差し出して受け取る
プルプルと震えながら

「飲みなよ」
「う、うう」

手から一向に口に持ってかない姿にイラついて
強引にペットボトルを奪った

「・・・あっ」

ポタポタといしかーさんの太ももの上に落ちる

ウチは一口含んで
いしかーさんの顎を掴み、口移しした
10 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:31
「んぐっ・・・ぐっ、んぐ」

ああ、また泣いてる・・・
顎にかけた指に、涙が伝った

「もっと飲め」

二口目、注入
さっきよりは勢いついて飲んでるな

「ん、んぐ、んぐぅ!」

泣いた分だけ飲みなって

「フルーツオレもあるから、飲ましてやっから」

無意識にカゴに入れてたフルーツオレとコーヒー牛乳
無意識ってさ、どんだけウチ・・・はぁ・・・
パックを開けてストローを突き刺すと
ズズズズッとすすって、また口移しした

「ううううぅぅ」


フルーツオレって甘いから嫌い
でも、この人は甘いものが好きみたい

ウチのジャケットにしがみついてるこの人に
ウチはこの上なく、甘いから
11 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:32

水分補給を終えると、嗚咽に耐えるいしかーさんに投げかけた

「ウチが帰ってこなかったらどうしてたの」
「うう、う」
「ウチってそんなもん?」

ふるふる首を横に振る

「泣いてばっかでさ・・・」

追っかけもしない・・・
追っかけられない?どっち?
どうでもいいや、そんなこと

12 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:33

「まだ一人で居たい?」

そっと肩に手をかける
俯いて、ポタポタ涙をこぼす

「一人で、居たい?」
「ううぅぅう」


「ねぇ」


「泡になって、消えたい?」


「人魚姫」


「それとも」


「くじらと一緒に行く?」


 チュッ


いしかーさんの髪を手ですきながら
ウチは彼女に口付けた

13 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:33

もう、魔法は解けたでしょ?
動き出しなよ

ほら、ウチもう怒ってないでしょ?
呆れてっけど、笑ってるよ
顔見てごらん

いしかーさんは震える睫で
ウチの顔を見た


「い、いっ、しょが、いい・・・うぁぁぁぁぁ!」


ウチにしがみついて、いしかーさんはわんわん泣き出した
ドア越しに聞いた叫び以上に声をあげて
そんなに声だしたら通報されるってくらい
14 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:33
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
15 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:34

「・・・風呂、はいろっか」
「・・・う、うぐ」

何十分なのか、何分なのか、もしくは何時間なのか
時間が麻痺するくらい、いしかーさんは泣いてた
泣き続けてた
身体の中にそんなに涙があるんだってくらい
ウチのジャケットを濡らしていく

「風呂いれてくっから、待ってて」
「う、うう」

いつもの広いバスルームに入る
いしかーさん宅のお風呂の使い方わからんけど
てきとーでどうにかなった
16 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:36

リビングではアヒル座りで手をごしごししながら
いしかーさんがまだ泣いてる

「立てる?」
「・・・うう」

手を差し伸べても中々掴まない

「ったく・・・」

ウチはいしかーさんをお姫様抱っこすると
そのままバスルームに移動した


この人軽いなぁ。ちゃんと飯食えよ
ああ、おでんあるから、後で食べような


気づいたらおでんの具
いしかーさんの好きなもんばっかり入れてたよ
みかんゼリーもいしかーさんの好きなものだったよね


・・・一人になんかさせれるかよ、バカ
17 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:37

風呂のイスにぐったり座ってるいしかーさん
丁寧にいしかーさんの髪を洗う
あって声を漏らして、手が頭に上がってきたけど
ウチは腕を下ろさせた。
もうなにもしなくていいから。身を委ねて

丁寧にトリートメントをして
身体を洗う
指一本一本からつま先まで全部
次は洗顔を泡立てる

いしかーさんがポツリと呟いた

「ど、して・・・順番、わかるの?」
「何度も見てたら覚えたの、はい、目瞑って?」

まるで赤ちゃんみたいに言う事を聞いてくれる
こんな時は素直なのにな・・・

全身の泡をシャワーで流す
髪のトリートメントも丁寧に流す
これで自慢の髪も取り戻せたはず
18 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:38


 チャプンッ


いしかーさんを抱えて、大きなバスタブに浸かった


「はぁ・・・」

疲れから呆れからか分からないデカいため息がウチから出た


「ごめん、なさい」
「もう、いいってば」

「ごめんなさい」
「いいって言ってんのに」

「でも・・・」

デモデモ星人・・・もう好きにして
ウチ疲れたの

「なに・・・」

バスタブに踏ん反り返った
ジャグジーがボコボコと泡を立てる
19 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:40

「黙ってた、から」
「言えなかっただけでしょ」

「呼ばなかった、から」
「呼べなかったの間違いでしょ」

「倒れた、から」
「ギリセーフでしょ」

「・・・・・」
「もうない?」

「・・・うううぐぅ」
「我慢すんな」

お湯に顔をつけて、また泣いた
20 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:41

「ウチ、いしかーさんに嘘ついてた」

「え・・・?」

ゆっくり顔を上げてこっちを見てるけど
ウチは天井を見つめながら続けた


「特攻隊長はウチじゃなくて、高校の先輩」

「族なのに部活やってんの、マジメなんだか、どうなんか分からんよね」

「族入って自分の跡継いで18代目になれって言われたけど断った」

「バイク100台でお迎えはホント。でも自分の力じゃない」

「徒党組むの嫌いだから」


「いしかーさんに、一人になれって言ったのも、嘘」

「傍に居れなくて、ごめんなさい・・・」


「ひ、とみちゃんは、悪くないよぉ」
「もういいかげん泣き止んでくれないかな・・・」

「ぐ、ぐうう」
「ウチが泣かせたみたいじゃんか・・・」

21 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:42


「泣かせたのか・・・まいいや、もう、好きなだけ泣いてよ」




「うそ、泣かないで。辛い」




「慰めさせて」


腕がお湯を切って、彼女の身体を抱きしめた

「もう、いいから・・・」
「ううううぇぇえええ」
「それ以上泣いたら、不細工になるから」
「うううぇぇぇ」
「風呂出たらおでん食べような。みかんゼリーもあるから」

泣きつづけるいしかーさんの頭をずっと撫でながら
涙が止まるまで抱きしめつづけた
22 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:42
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
23 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:44

いしかーさんの長風呂はウチを感化させたらしい
手がふやふやになるまでずっと入ってた

「しずかちゃんかよ・・・」
「え?」

いしかーさんの身体の水分をキレイに拭いていく
もう裸見られたって、見たってなんてことはないさ。ははーん

「もしくはお銀だな」
「な、なに言ってるの?」

「はいはい、パンツ履いて服着る!」
「はい・・・」
24 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:46


リビングに戻ると
とっ散らかったままのベッドと散乱した服を片付ける

いしかーさんはまだしばらくかかりそうだから
戻ってきた時、少しでも思い出さないようにしないと


ある程度片付いたところに泣き虫人魚登場

「こっちきて、ここ、座る」

ソファの前のテーブルに冷めたおでんを出した

「とりあえず水飲め」
「うん・・・」

ペットボトルを渡すと
両手で持っていつものようにクピクピ飲み始めた

なんか、ウチ今
すんごいぶっきらぼうだ。
照れてんのか、何なのかもう分からないけど
いつも以上に小さくなった彼女が
愛しくてたまらない
25 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:46

「ほれ、大根。あー」
「・・・あー」

もぐもぐ食べてる。よしよし、ちゃんと食えよ

「ゲホッゲホッ」

やっぱり急に食いものとかキツかった?

「だい、じょうぶ」

あっそ。次はんぺん。食える?

「んぐ・・・」

そかそか、ほらもっと食え。玉子。あー

「あー・・・んぐっ」

淡々と箸をおでんの入った器からいしかーさんの口に運ぶ
時々ペットボトルを差し出して。

濡れた髪をたらしながら、もぐもぐと小さい口を動かしてる
いしかーさんの小動物っぽい顔見てたら

なんか、ウチの固まってた心も、和らいでいった

はぁ・・・あんな非常事態の後でも
こんな姿みて、可愛いとか思う自分が情けない

お人よし過ぎるこの人が、好きなんだ
26 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:47

「ほら」
「ん、もう、いい」
「いいの?」
「うん・・・ひとみちゃん、食べて」

ああ、食べさせる事に夢中になってたから
自分で食べるの忘れてた
いただきます

口一杯にこんにゃくを頬張ってると
いしかーさんがじっと見てきた

「な、なふぃ?」
「・・・ううん」
「なんふぁ、いいふぁいふぉとふぇふぉあるふぉ?」

「・・・ありがとう」


口の中で砕けたこんにゃくを
ゴクンッと飲み込んで

「別に」

すんげー見られてる・・・
なに、なんでそんなガン見してんの?

「カッコよかった・・・よ?」

誰がそんな感想を述べよと言ったの

「照れるから、いいって・・・」
「フフッ・・・」

やっと笑った・・・
ウチからも小さく笑みがこぼれた
27 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:48

「ほら、ミカンゼリー、食え」

スプーンで掬って口に運ぶ

「あーん」
「あーんじゃねえっつの」
「・・・んぐっ、おいひ」
「あっそ、よかったね。もう自分で食え!」

あーんとかすんごい恥ずかしくなって
ゼリーとスプーンをいしかーさんに押し付けた

ウチは煙草に火をつけて、テーブルに顎を乗っける

「もう、さ」
「うん・・・」
「この家、出なよ」
「・・・・・」
「いい思い出、ないでしょ」
「・・・うぅ・・・うん」

「今日は、うち来ていいから」

「でも」
「でも、じゃなくて、はい!」
「・・・はい」

「よろしい」


こんなだだっ広い部屋に一人で居ない方がいい
あんなオッサンの事思い出すような部屋なら抜け出しなよ

行く場所ならさ、あるじゃん
うちんち来たらいいから
28 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:50
  ∧  V  ∧  V  ∧
29 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:51

いしかーさんは
バイトの面接を入れた日から
ずっとオッサンからの要求を拒みつづけてたらしい
だけど、今までの恥辱を晒すと脅され
家に訪れられた

お医者さんごっこは
ままごとまでにしとけクソジジイが



ウチに知らせたくても、知らす事が出来ない状況だったのか・・・

それなのに、傷つけたな


自転車の後ろで、ウチの背中にピッタリ寄り添って
腰に腕を回してるいしかーさんは
心地よい眠りについていた
30 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:52

「ごめん」

家に着いてベッドに腰をかけるいしかーさんの頬を
冷たいタオルで冷やしながら頭を下げた

「怒鳴りつけたりして」
「・・・」

「怖かったよね・・・辛かったよね」
「・・・・・うん・・・」

「それ知ってて、ウチいしかーさんを傷つけたんだ」
「・・・・・」

ウチは立てひざでいしかーさんの前に座る

「確信犯だよ、ウチ。ほら、ちゃんとタオルあてて」
「でも」
「はいでしょ?」
「・・・でも、違うもん!」

おっと反抗したな?

「なにが」
「・・・ひとみちゃんは、わたしとの約束、守ってくれたもん
 でもわたしは約束破った・・・」

「・・・破ったか?」
「うん・・・」

「分かった。もう嘘つかない。いしかーさんの傷癒させて」
「うん・・・」

「・・・そんで、さ」

「なに?」

頬にタオルを当てて立ち上がったウチの顔を見つめる
月の光が差し込んで
やっぱ人魚ってこの人の事だと思った
31 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:56

「人魚姫さん。お聞きします」
「な、なに?」

「・・・自由になりたい?」
「・・・なりたい」

「変わらない?」
「うん」

「ウチに嘘はつかない?」
「うん・・・」

「試したりもしない?」
「うん」


「じゃあ、心の中だけでウチを呼ばないで。ちゃんと、呼んで」
「・・・え・・・?」

「寂しいとき、辛い時、怖いとき、楽しい時、うれしい時、全部」
「ぜん・・・ぶ?」

「そう、ぜんぶ。ウチを呼んで」

いしかーさんは声を出さずに
ウチを見上げながら静かに涙を流した
本人も気づかないほど、静かに
32 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 00:57

「大丈夫。ウチは居るよ。いしかーさんの隣に

 いしかーさんのこと、好きだよ?」


彼女が1番聞きたかった言葉

不安で、怖くて聞き出せなくて、でも聞きたかった言葉を
耳元で囁いてあげた



「うん・・・」


走りっぱなしのウチはまた
心臓を跳ねさせて
泣きっぱなしの彼女はまた
涙をこぼした


いしかーさんの目からはもう恐怖は消えてた
落ち着きを取り戻し
後悔も無く、自責の念も無く
報われた思いを映し出してた

いいんだよ、それで。
もう、怒ってないよ
あなたが愛しい。ただ1つその思いだけ

だからこんなにも胸が早くなるんだ

聞こえてるでしょ?

33 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 01:01

今日は疲れた
ウチも、いしかーさんも。
もう何も考えたくない

お互いの事だけ考えて、離れないように抱きしめあって
深い眠りにつこう



「さて、そろそろ寝ますか・・・」
「ひとみちゃん・・・」

「なに?」

いしかーさんはウチの腕を引いてベッドに誘う

「うえぇ!?」

いしかーさんがウチの上に覆い被さる
月明かりに照らされて
微笑んでいるのに、悲しそうに見えた

「なに」
「・・・襲ってよ」

またかい・・・
しかもさっきあなた本当に襲われそうに・・・

って、もしかして


いしかーさんは泣きそうになってた
影になっても分かる、辛そうな顔
34 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 01:01

「ねぇ・・・」
「いしかーさん」
「なに?」
「寂しいなら言えって言ったよね」
「・・・・・」

ほら、そうだ
眉毛が八の字になってるもの。

寂しさを、苦しさを埋めたくて
紛らわすために、そう言ってたんだ

「襲ってって言ってたのって、紛らわすためだけ?」
「・・・ちがう」

「ほんと?」
「・・・ホント」

「じゃあさ」

いしかーさんの腕を引いて、形勢逆転
ウチが上になる

「“襲って”じゃないよね?」

「・・・ううっ・・・うん」

心の中を言い当てられて
いしかーさんは手を口に当てて、涙を流す
泣いてばっかじゃ目腫れるから・・・

ウチは瞼にキスを落とす



彼女が言い出せるまで
ずっとキスしつづける
彼女がウチにしてきたキスの嵐と同じように
何度も何度も

激しく、優しいキスの嵐を彼女に
35 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 01:02

「いしかーさん」
「な、なに?」
 チュッ
「ねぇ、もういいんだよ?」
「う、ん・・・」
 チュッ
「大丈夫だよ」
「うん・・・ああっ」
 チュッ
「ウチがいるから」
「うん。んはぁ!」
 チュッ
「海のキングが守るっていってんの」
「キン、グ?」
 チュッ
「そう、でっけーくじら」
「んやっ!・・・バン、トウ?」
 チュッ
「ギャグはいいから・・・」
「ご、めん。んはぁっ」
 チュッ

「寂しいなら呼んで」
 チュッ

「苦しいなら、叫んで」
 チュッ

「もっと、求めていいんだよ?」
 チュッ

「ホントに思うなら、言って」
 チュッ チュッ
36 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 01:03

大丈夫、大丈夫
もう怖がらなくていいよ
大丈夫、大丈夫
もうあなたを縛るものはないよ?

ウチの事を自由にしてくれたいしかーさん
今度はあなたを自由にしてあげるから
言ってごらん?

いしかーさんはキスの合間に
ものすごく、色っぽい息を漏らしてる
ウチの腕をぎゅっと掴んで、顔をゆがめて何かに耐えてる
ウチがそうだったように・・・
37 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 01:04

「ひとみちゃん・・」
「・・・なに?」
 チュッ


「・・・・・抱いて・・・」
「・・・うん・・・」
 チュッ チュッ


頑張ったね、いしかーさん。
もう大丈夫だよ

我慢してたのは、彼女の方
苦しかったのも。

もう求めていいから
38 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 01:05

痛いくらいに爪を立ててウチにしがみつく彼女
何度もウチの名前を切なげに呼ぶ彼女

涙をこぼしたのは
辛さからじゃない 苦しさからじゃない

恐怖も、束縛も全てから解放された
歓びからだと 分かったから


ウチは彼女以上に 求めた
隅々までくまなく 愛した


もう怖くないと言いながら微笑むその顔は
儚げなものじゃなくって
ホントに美しいものだった
39 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 01:06


人魚姫は泡にならず

声も奪われず、心もちゃんとある


泣き虫だけど

大海原を自由に泳ぐ

とっても綺麗な人魚になった



クジラと共に海を行く

40 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 01:07

41 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 01:08
更新終了でございます。

今回の更新分は>>2-40です
42 名前:Rink 投稿日:2005/12/13(火) 01:10
緑板のレスポンス

>名無飼育さん様
期待させて申し訳ないです。
こんな感じになりました

>7&Y様
怖かったですかね?やりすぎました?
結構押さえ気味にしたんですが
イメージズレしてしまったらスイマセンです。
( ^▽^)<マッハで豆腐屋チャリンコで来てね♪

>名無し飼育さん様
ありがとうございます。
(0^〜^)<救心いります?

>名無様
実はそうじゃなかったんですよww
`.∀´)<真の女帝はアタシ♪
43 名前:Rink 投稿日:2005/12/13(火) 01:10

>名無飼育さん様
(0^〜^)< 照れるなぁ〜
( `▽´)<よっちゃん!!
(;0T〜T)<ごめんなさい・・・

>774飼育様
いつもの如く気まぐれ更新で
申し訳ございませぬ。
今後ともよろしくお願いします
44 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/13(火) 01:14
えがっだぁ〜(泣)
45 名前:7&Y 投稿日:2005/12/13(火) 01:14
(0^〜^)<キキーッ!!到着だぁ〜
新スレおめでとうございます
前スレ、1週間で消費しちゃってますね
更新速度が早くて量も質もお腹いっぱいなので
ファンとしては多くの素敵な作品に出会えて嬉しい限りです

人魚とクジラでも二人でなら幸せを掴めないはずがないよね?
目の前がぼやけて大変です…でも、よかった。心から
語ったら長くなりそうなのでこの辺で、ありがとうございました
46 名前:774飼育 投稿日:2005/12/13(火) 01:18
更新お疲れ様です
吉澤カッコヨスギダヨ・・・
いい作品です!!続きも期待してます
47 名前:名無し読み手 投稿日:2005/12/13(火) 01:26
うん、よがっだぁああ。
なんかもうお腹も心も一杯で溢れてしまいそう。
ありがとうございます。
更新お疲れさまです。
48 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/13(火) 01:48
よっさんかっこいいよよっさん
二人には心から幸せになってもらいたい
49 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/13(火) 02:17
あー相変わらずいいなぁ(*´ー`)
50 名前:名無 投稿日:2005/12/13(火) 03:03
更新お疲れ様です。
すご〜く良かった!!
最初のよっちゃんのイメージがだいぶ覆されましたw
次も楽しみにしております。
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/13(火) 10:07
お疲れ様です。
更新早い!と思いながら読んでおります。
感動です〜〜次も待ってます。
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/13(火) 18:38
しずかちゃんワロス
突き指しました
53 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:11

54 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:13



 ピチチッ チュンッ  チュンッ


「ん・・・朝かぁ〜?」

身体のあちこちが痛いのは何故でしょう・・・
頭をぽりぽり掻きながらふと隣に目をやると

「うぁあ!」

いしかーさんが居ました
そうだった・・・昨日、そう言うことになったんだ

すんげー、艶かしいんですけど
あなたの寝顔
あんだけ見慣れた裸だけど
毛布から見え隠れしてる身体は
かなりエロいんですけどね

ポリポリッ
照れるけど、まだ寝てるし・・・


 チュッ


ウチはベッドの下に落ちてたジーンズに足を通し
パーカーを羽織ると、下に降りた
55 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:14

 ドンドンッ

一階に置いてある小さな冷蔵庫からポカリを取って飲んでると
入り口をノックする音が。
誰だぁ、こんな朝っぱらから

「はいぃ〜?」
「ぐっも〜に〜ん!」
「ごっちん・・・テンション高いね」
「だーってさ!?酒残ってんの!ほら!ハァァァ〜〜」
「くっせ!くせえよ!」
「あっひゃっひゃ〜!ホラ土産だぞぉ〜〜」
「酔っ払いのオヤジかよ。ありがと」
「うぃ〜〜っくぅ、今帰りましたぁぁ」
「何時まで飲んでたの?」
「さっき!」
「はぁ!?バカじゃねえの」
「ばっかどぇ〜っす!」

 ガタンッ

ごっちんといつものようにバカトークをしてると
ウチの背後で物音がした
56 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:15

「あ・・・ヤバ・・・」
「ん〜どーした?よすぃこ〜〜」
「ちょ、ちょっと、ごっちん、お願い、後でまた来て。ね?ね!?」
「なんだぁ?あっやしいなぁぁ〜?」
「怪しくないから!ほら、出ていっててば!」

「・・・ひとみちゃん?」

ひ、ひぃぃぃぃっ!!!
あなたタイミング良すぎですってば!

「ひとみちゃん?よしこ、ひとみちゃんって聞こえたよね?」
「き、気のせいだってば!!」

2階をどうにかして見ようと動き回るごっちんを
ウチは身体を張って死守してるがしかし

「ひとみちゃん、誰か来てるの?」

ウチとごっちんの動きが止まる。
ごっちんの肩を押さえたまま、ゆっくり振り返って見上げると

毛布で身を包んだいしかーさんが
階段の上で眠たそうに目をこすっていた


「・・・よ、しこ?」
「・・・な、なに?ごっちん」

見えた?ごっちんの目にもはっきり映ってるのね?
もしかして、酔い醒ましちゃった?

「あは、あはは?」
「あ、はは、はは」
「あ、あは?あはは?」
「あはは、あはははは」
「「あははははははは」」

ごっちんと向かい合って、意味なく乾いた笑いを繰り広げる
57 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:18
するとごっちんはウチの両肩を思いっきり叩いて

 バンッ!

「おめでとぉぉぉ!!!!」
「いっだぁっ!なにがだよ!!!」


ニヤリと笑うごっちん
て、てめぇなに考えてやがんだ?


「よしこのママーーーーー!おせきはーーーーーん!!!!!!!!」


ダッシュで蔵の扉からけたたましく
ブンブン腕を回しながら出て行った


「・・・お赤飯って・・・」
「ひとみちゃん?」

2階を見上げるといしかーさんが毛布にうずまって
階段の1番上で三角座りしてた
58 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:19
「お友達?」
「あ、ああ・・・幼馴染」
「そうなんだ」

ポカリの缶を持ってタンタンッと階段を登る

「なんか、見られちゃったね」
「う、うん・・・まぁ、ね」

いしかーさんの座ってるとこから3段ほど下に立つと
目線の高さが一緒になった

「おはよう」
「おはよ」
 チュッ

「・・・ドキドキした」
「・・・ウチも」
 チュッ

「ねぇ、今何時?」
「ん〜〜?」

首を捻って梁にかけてあった時計を見る

「6時、前?」

首をいしかーさんの方に向けると
ウチの頬を手で包んで
いつものキスをしてくれた
59 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:20

 チュッ

はらりと毛布が落ちる

「い、いしかーさん!!ふ、服!服着て!!」
「ねぇ・・・しよ?」
「は、はぁ!?」
「だめ?」
 チュッ
「あ、だ、だって」
「ねぇ・・・」
 チュッ

積極的なのは根っからだと思います、この人
だって、いしかーさんの身体が
求めだしてるもの
ウチの背中に腕を回して、欲しがってる

「襲って?」

また言った・・・
襲って?ってのがクセになってるんだな?

「襲うの?」
「あ・・・」

「ウチはいしかーさんのこと襲いません」
「え?」

いしかーさんは下唇を少し噛んで
俯き加減でプルプル震えてる
恥ずかしさからなのか、後悔からなのか
60 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:20

「寂しかったら、言ってって言ったでしょ?」

あらら、顔赤い?恥ずかしいんだ。前者の方ね
襲って?は言えるのに。もう一個は言えないんだ。ははーん

「どうしたの?」

「だって・・・起きたら」
「たら?」
「いなかったんだもん・・・」
「ああ・・・ごめん」
「それに・・・1番最初に、おはようって・・・」
「言って欲しかったわけね」
「ん・・・」

「ごめんね」

いしかーさんに
コレでもかというほどの熱い熱いキスを送る

いしかーさんは驚いて目を見開いたけど
でもやっぱいつものように頬を包んでくれて
優しく応えてくれる
61 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:21
「んぁ、はぁ、はぁ、んっっ」
「ウチはおはようのキスはしたよ?」
「んんん、えぇ?」
「寝てる間に」
 チュッ

あれれれれれ〜?いしかーさん真っ赤ですなぁ?

ニヤリッ
はいはい、遊んであげますよ?
ほれほれ、もっと赤くなりなさい

「ねぇ・・・」

いしかーさんの腰に回した手で背中を緩く撫でながら
肩でクイッといしかーさんをつつく

「違うでしょ?」

いしかーさんの柔らかい耳をペロッと舐めると
背中にしがみついてた手がビクッと震えた
62 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:22
「ねぇ・・・」
「それ、だめだよぉ」

それってどれ?なに?耳?
ほほ〜。あなた今自分で弱点教えましたね?

耳の後ろを、下からつつーと舐めあげる


「んんやぁ!」


いしかーさんはウチの肩にしがみついて
八の字眉になりながら目をぎゅっと閉じた。


「ひ、とみ、ちゃんの、んぁ!」
「ウチの、なに?」
「声、聞いてた、ら、はぁ、んぁ!」
「なに」
「身体、へ、んに、あんっ!」
「変?」
「んんん!んぁ、はぁ、もっと、ほし、くなる」
「いいよ・・・言って?」
63 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:23

舌を耳から離して
頭に直接響くくらいの近さで囁いた

「梨華・・・言って?」
「ひとみ、ちゃ・・・」

 チュッ

「ねぇ、言ってよ、梨華・・・」
「うぅ・・・・・抱い、て・・・」

「・・・かわいい」
「やだ、恥ずかしいよぉ」

この期に及んでまだゴチャゴチャ言う口を塞ぎながら
彼女をベッドに押し倒した




ウチに溺れそうになる?

溺れたら、助けてあげる

ウチが溺れたら

キスで息を吹き込んで

64 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:24

その後は、まぁ・・・ねぇ?

ウチは彼女の名前を何度も呼んで
彼女はウチの名前を何度も呼んで


ずっと、ずっと
そりゃ、もうずっと
降参するまで、抱き合った
65 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:25

ベッドでぐったりしてるいしかーさんを抱きしめる
彼女の長い髪がウチの腕に絡みつく
いしかーさんは目を伏せて息を整えてる

涙の跡にキスをすると
瞼がうっすら開いた



「ねぇ、ひとみちゃん・・・」

「なに?」


「上手、だね」



こいつ・・・いつかの仕返ししてやがんな?

66 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:26
  ∧ V  ∧ V  ∧ V
67 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:27

家族に、いしかーさんの事を話した
仕事探しに引越ししたてでまだ家を借りてないから
しばらくウチに置いてあげたいと
なんとも無茶苦茶な事を言っても
家族は快諾してくれた
嘘も方便。

その日は弟に強引に番頭を変わってもらった
日給1000円だと言ったら、意外にうんと頷いてくれた
チョロイもんだねぇ?
68 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:27
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
69 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:27

いしかーさんと二人で、メゾンチャーミーに戻る

いしかーさんはウチの左手をぎゅっと握り締めたまま
扉を開けることさえ出来ないでいる

「大丈夫。いこ?」
「う、うん・・・」


ドアを開けて、部屋に入る
昨日と何も変わってない

少し乱れたベッドと
灰皿を汚す煙草の吸殻


全部捨ててしまおう
売ってしまって
新しい家で、新しい生活を始めればいい

怖がらなくていいから

広い海でも、ウチと一緒なら大丈夫でしょ?
70 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:28

いしかーさんの部屋を二人で片付けてると
ジーンズのポケットに入れていた携帯が震えた

「誰だ?」

新着メール1件

ごっちんからだった。
ものすごーく見るのが嫌・・・

 ピッ


『 クジラへ! 』

呼び捨てかよ!しかもクジラって!


『 今日の19時
  圭ちゃんのお店に座礁しろ!
  もちろん人魚と一緒にね   
              ごとー 』


待て待て、座礁って・・・

するとまた一件メール
保田さんからだ



『 絶対来な   (`.∀´)  』

ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!!
その顔文字似過ぎですから!


絶対こいつら企んでやがる
何か絶対ある。
怖い、行きたくないけど、行かないとあの猫目に殺される
71 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:29

「いしかーさん?」

いしかーさんは作業を止めて振り返った

「ん?」

「今日の夜さ、ウチのよく行く居酒屋あるんだけど
 そこ、行かない?」
「え?」
「っていうか、ほぼ強制で、こいって言われてんの」
「わたしも行っていいの?」
「二人で、来いと・・・」
「・・・うん、行く」

いしかーさんは嬉しそうに目を細めて
強く頷いてくれた
72 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:29

家の中にある家具はとりあえず全部引き払うことにした
結構な額になると思う
それと、今まで貯めていた貯金があるらしく
それで新しい家の頭金にしようと言ったんだけど

「でも・・・このお金」

オッサンのなんでしょ?知ってるって
でもね

「そんな金は手元に残さずにババッと使わないといけないの。
 新生活の餞別だと思って全部使いなさい」
「うん」

いしかーさんの顔は夕陽に照らされて
キラキラと輝いてた

「うん・・・それで、いいのです」
「どうしたの?」

だから、近いってばぁぁ〜(泣)

「な、んでもないっす!」
「照れてる?」

知っててやってるだろ!もう救心下さいぃぃ!
73 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:30
  V ∧  V ∧  V ∧
74 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:31

一度家に帰って、母親に
今日はご飯いらないからと言いに行ったら
台所の食卓の上に

「せ、赤飯・・・なんで・・・?」

ごっちんの言葉を真に受けたの!?お母さん!

「ああ、それ。もらい物よ?」
「だ、誰から?」
「前川さん」
「どうして・・・」

まてまて・・・近所ぐるみでウチをひやかしてんのか?
まさかな・・・声が聞こえてた?
そんなにデカイ声だったの!?
確かにいしかーさんの声は色っぽくて、エロかったけど
ちょっとまってくれ!

「おじいちゃんが米寿だからお裾分け」

ああ・・・良かった

「どうしたの?ひとみ。梨華ちゃんもいらないの?」
「あ、ああ、うん。保田さんのところに呼ばれてるから」
「そう。分かったわ」
75 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:32
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
76 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:32

さて、問題の時間になりました
豆腐屋チャリンコでいしかーさんと店の前に来たものの
この扉を開ける勇気が・・・ないんですよね?

いしかーさんの手をギュッと握る

「ひとみちゃん、どうしたの?」
「あ、いや、なんかすごーく嫌な予感がするんだ」
「そうなの?」

彼女を見下ろすと、八の字眉毛になってる
あっは!情けないツラしてるよ
眉間を人差し指でグリグリしながら

「ウチの友達だから、大丈夫。」
「うん・・・」
「ただ、悪乗りが過ぎるってだけで・・・」
77 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:33

 ガラガラッ

暖簾を手で捲くって店に入ると

「「おーーめでとーーーーー!!」」

 パンッ パパーーーーーッン!!

「ぐへっ!」

ウチに目掛けてクラッカーが鳴らされる
半歩後ろにいたいしかーさんはウチの身体で中の状況が見えないらしく
ウチの横から顔を覗き込ませた。
ウチの頭には、細い紙テープが何本も撒き散らされる

「いやいや、めでたいねぇ!」
「今日は貸切よ!アンタたちのために!」
「ほら、さっさと入る!」
「あ、はぁ・・・」
「紹介してよぉ〜、よすぃこぉ〜?」

「あ・・・あの人・・・」
78 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:33

いしかーさんが小さく呟いた
ウチと一緒に居て、彼女が行動を起こした
いわゆる発端になった人がクラッカー持って大騒ぎしてるんだもの
いしかーさん?あなた勘違いしてたんだよ?

「えっと、紹介します。・・・いしかーさんです」
「あ、は、じめまして」
「ども〜!ごとーでーっす!」

二人はシェイクハンズ。
まだ分かってないいしかーさんに耳打ち

「いしかーさん、ごっちんは幼馴染なんだよ?」
「あ、そう、なんだ・・・」
「なになに?わたしのことよしこの恋人だと思ってたのぉ?
 ちっがーうよぉ〜?フォーーー!」

お前、もうすでに飲んでんな?

「保田圭。やすすって呼んで?」

親指を立てて、グッと自分を指した

「無理、圭ちゃん」
「なんでよ!呼びなさいよ!」
「きもーい」
「こら、後藤!」
79 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:35

まあとりあえず座って乾杯しようと
グラスを渡される
ね、ねぇ、何の乾杯?
細かい事は気にすんなと言われ、ビールを並々注がれた
はい、乾杯。
頂きますよ?タダなんだったらめいいっぱい

今日カウンターじゃなくテーブル席で4人で飲む
保田さんは売上なんてどーでもいいと
親に強引に言って貸切をしてくれた

テーブルの上には美味しそうなおかずがたくさん並んでるが
一際目立つのは中央のデカイおひつ・・・


「ほぉら、お赤飯だよぉ〜?」

パカッと蓋を取ると、まあ丁寧に炊き上げられた
山盛りのお赤飯が

「な、なんで!!!」
「めでたいからじゃないの!尾頭付きの鯛はさすがに買えなかったからね」
「ささ、めしあがれ?」

あああ!陥れられてる、こいつらに陥れられてる!
前川さん家のじいちゃんも米寿とか言ってたけど
ホントは近所ぐるみでウチを陥れてんだ!!
80 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:36

ウチの左隣で恥ずかしそうに俯くいしかーさん
そんなに照れたらウチまで恥ずかしいんですけど

「あらららら、照れちゃってるよ、この二人」
「純粋だねぇ、はい、石川ちゃんどうぞ?」
「あ、ありがとう、ございます」

「ほら吉澤も茶碗取る!」
「あ、あ。いただきます」

「でもね、圭ちゃん。そうでもないのよ」
「なにが?」
「だって今日の朝さぁ?」
「ごっちん!!」

「きゃ〜〜〜!もう恥ずかしいぃぃ!ごとー鼻血出ちゃうよ!」
「ごっちん・・・」

ガクッと肩を落としてうな垂れた

「こっちが恥ずかしいよぉ。もうよしこったら、ツンツンッ」
「箸でつつくな!」


おちょくられてからかわれながらも
二人はウチらの事をホントに快く祝って?くれた
81 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:36
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
82 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:36
お酒が進んできて
いしかーさんはぽーっとなってる
あんまり酒は強くないみたい
保田さんは手酌し始めるし、ごっちんは一人でハイテンションだし

「あ、そうだ。保田さん」
「ん?なに」

「不動産屋の知り合い居ません?」
「ああ、居るけど。なんで?」

「ちょっと、家を紹介して欲しいんです。彼女に」
「あーなるほどね・・・壁はぶ厚いところがいいわね〜」
「ちょっと、何言ってるんですか!」

赤い顔のいしかーさんが更に赤くなった

「あはは!冗談だよ!安いところがいいの?」
「ええ・・・そんでもってこの近くで・・・あと」
「あと?」
「保証人無しってのは無理ですかね」

いしかーさんが俯く
いしかーさんは保証人が居ないのだ
居るけど、お父さんに会いに行けない
行ったところで、冷たい態度を取られるのは分かってるから

「そんなとこあるわけないじゃん」

グラスを持つごっちんの目は既に据わってた
ヤバイヤバイ、あの目はやばいぞ
酔って暴れてごっちんの弟を殴って前歯折った時と同じ目してる

「やっぱりないか・・・」
「ないですかね・・・」

ウチといしかーさんはガックリ肩を落とす
83 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:38


「あるよ」

「「「えぇぇ!?」」」

保田さん、あなたは某ドラマのマスターですか!?

「ボロイとこなら貸してくれると思う。多分この辺だったと思うし」
「ま、ま、まじっすか!!」
「ホントですか!?」

テーブルにダンッと手をついて身を乗り出す
ウチといしかーさん

「ちょっと、落ち着きなよ。アンタたち行動揃いすぎだから」
「「すいません・・・」」

おずおずとイスに座りなおすと
プッと笑って保田さんは煙草に火をつけた

「地獄の沙汰もナニ次第って言うでしょ?」
「金・・・ですよね」
「お金・・・」
「金さえ払えば誰でも住ませてくれるっていう
 最恐の女がしてる不動産屋があるよ」
「それって・・・」

「な・か・ざ・わ・不動産♪」

「やっぱり・・・出たよ・・・」
84 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:40

保田さんが隊長時代の最強タッグ、中澤裕子・・・
幼少を大阪で過ごして
学生時代にこっちに引越してきた

でも中澤さんは族じゃなくって、一人でバイクを乗り回してたら
保田さんのチームと鉢合わせして
一触即発になりそうだったんだけど

「まぁ〜、裕ちゃんとは色々あってねぇ。気が合ったのよ」

乗ってるバイクの勇ましさと、メットに貼られた
『弱肉強食』の言葉に保田さんが惚れたそうだ

喧嘩になってたら多分誰も止められないはず


 “ゴジラ VS キングギドラ”
族仲間でその日の二人の対峙は伝説化していて、そう言われていた
火吹き龍の中澤ゴジラと、三つ首龍の保田ギドラ
似合いすぎる、恐すぎる・・・

「中澤さんなら、だいじょうぶ・・・そうですか?!」
「メールしてみるよ。何とかしてくれるでしょ。」
「そう、ですか・・・」
85 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:42

いしかーさんは今まで聴いたことのない世界を知って
目をぱちくりさせてる

「大丈夫だよ、恐い人じゃないからね」
「あ、う、うん・・・」

信じきれないのか、保田さんを凝視しながら
水をコクコク飲んだ

「あ、そだ。保田さん。これお返しします」

後ろのポケットに入れていた
保田さんに借りたものを返した

「なに〜〜?それー」

へべれけのごっちんが朦朧としながら保田さんに聞く

「ああ、これ?」

 ビュッ シャキンッ!

ウチから渡された保田さんは
手首のスナップをきかせて棒を伸ばした

「警棒?」

クルクルッと棒を器用に上に投げて
パシッとナイスキャッチして

「防犯用?」


ニヤッと口の端を上げて笑う保田さん
固まるごっちんといしかーさん
顔から笑顔消えてますから、二人とも
保田さんならその顔で防犯出来てません・・・?
86 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:44

保田さんは警棒を天高らかに突き出して

「月に代わってお仕置きよ〜!」

「「・・・・・」」

更に固まる二人

保田さんの場合、ヤキ入れるの間違いのような・・・


「なに、吉澤。何か言いたそうな顔してるね?」

近い!顔を近づけないで!保田ギドラ!

「い、いえぇ?な、なんでも、ないですよ?」

防犯用とか言ってて、グリップのところに
あなたのチーム名入ってたじゃないですか。
現役時代のものでしょ?それ・・・

保田さんは煙草を咥えて、伸びた棒を縮め
カウンターにそれを戻しに行った


日本全国の泥棒さん
この店には強盗入らないほうがいいですよ?
確実にボッコボコにされて
多分、逆にあなたから金巻き上げられるから
87 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:46

「んぁぁ〜、クジラは泳ぎだしたかぁ〜」

ごっちんがイスにグダッと倒れこんだ

「な、なに言ってんの?ごっちん」
「わ〜らし〜は〜うれし〜い〜の〜〜」
「飲みすぎだってば」
「よ〜〜よよよよ、あっははは〜!フォーーー!」
「なぁ、泣くか笑うかどっちかにしろって・・・」

「吉澤?」

カウンターの方から保田さんがウチを呼んだ

「はい?」

振り返ると、フーッと煙草をふかして一枚の紙を渡してくれた

「リストだって。裕ちゃん」
「仕事早っ!!」
「あの人、自分の利益のためなら何でもする人だから」
「ああ、そうでした・・・」

保田さんは中澤さんがFAXしてくれた紙を渡しながら
イスに座りなおす

その紙にはいくつかの物件情報と

『マネー次第でどうにでもしまっせー』

中澤さんからのメッセージ付き
やっぱり・・・
88 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:47

保証人無しで家を貸せるところは
数限られていて
中澤さんがどうにか押さえてる分くらいしかないとの事。

そりゃそうだよな。

リストにも三つほどしかなくて
その物件を二人で見てたんだけど
なんとも幸薄そうなアパート名が目に飛び込んだ




“ トメコ荘 ”




「と、トメコ、荘」

「・・・ここにする」

「はぁ!?」

いしかーさん、もうちょっとちゃんと見て
見に行ってさ、考えようよ。
ここ風呂便所共同だよ?
セレブレティが神田川になるんだよ?
ねぇ大丈夫?!

「だって、安いし」

あらあなた意外と堅実家なのね

「ひとみちゃんのおうちに1番近いんだもん」
「ま、そ、そうだけど・・・」
「お風呂は、銭湯に入りに行くから、いい」
「あ、そっか・・・」
89 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:48


保田さんはいしかーさんに微笑みながら
焼酎をグビッと飲んだ

「んじゃ押さえてもらう?」
「あ、とりあえず、明日にでも見に行きますと
 中澤さんに伝えてもらえますか?」
「オッケ、メールしとく」

はぁ、最恐の女に会いに行くのか
手土産は確か・・・

「今川焼き持って行きなねー、裕ちゃん喜ぶから」
「はい・・・」
90 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:49
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
91 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:49

宴も酣、料理もほぼ全て食べ尽くし
ウチといしかーさんは帰ることにした

「ごちそう様でした」

保田さんにそう言ってお辞儀をする
いしかーさんもペコッと頭を下げると
保田さんは煙草をふかしながら軽く手を上げた

「おーおー、声は控えめにするんだよ〜〜?」
「うるさいよ!ごっちん!」


店を出ようと扉に手をかけたら
後ろから保田さんに呼び止められた

「ああ、吉澤?これ。」

パックに詰められた赤飯・・・

「あ、あは。あ、りがとうございます」
「いいってことよ」
92 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:50

 ガラガラガラッ ピシャン


「さっぶっ・・・」
「寒いぃ」

そういういしかーさんの顔は
ポッポしていた

「だいぶ飲んだ?」
「ん〜、結構」

あなた、千鳥足ですね?
腰に腕を回していしかーさんを抱きとめる

「しっかりつかまって」
「んんん・・・ひとみちゃん?」
「なに?」

見上げないで!見つめないで!
て、照れるから!

「後藤さん、お友達だったんだね」
「そうだよ」
「そっかぁ・・・勘違いしてたんだ」
「ま、まぁね」

顔近づけないで!背伸びしなくていいから!

「でも、感謝しなくちゃぁ」
「な、なんで?」
「だってぇ・・・」
93 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:51

酔ってても代わらずクルクルくねくねしてる
素なのか酔ってんのかどっちよ、あなた

ウチは首だけをいしかーさんに向けた
いしかーさんはウチの腕にしがみついて
潤んだ上目遣いで見てくる

相変わらずその唇はふっくらおいしそうで・・・
いしかーさんの手がウチの頬を包んだ
ウチはそれが合図のように顔を傾ける


 チュッ


「ん・・・」
「それ、狙ってやってんの?」
「なにがぁ?」
「狙ってんだな・・・」
「エヘヘッ」

 チュッ


94 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:53
「後藤さんは、キューピットだね」
「はぁ・・・似合わないけどね」
 チュッ
「お友達になってくれるって」
「言ってたね。良かった」
 チュッ
「ひとみちゃん?」
「なに?いしかーさん」
 チュッ

キスがだんだん激しくなる

「最近、照れなく、なったね。・・・んぁ」
「そう?」
 チュッ
「だ、って、前、あん!」
「なに?」
 チュッ
「真っ赤だった、のにぃ」
「今もなってんよ」
 チュッ
95 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:54
ドンドン激しくなって
いしかーさんはウチの腕にしがみつく
プルプル震えながら
ウチは赤飯持ってる手をいしかーさんの背中に巻きつける

たまらん、止まらん二人のキス

しかし






 ガラガラッ!!

「アンタたち、家に帰ってしなよ」


 ビクッ!!

ウチといしかーさんは唇がつく寸前で
固まってしまった
まるでメデューサに睨まれて石化したように

保田さん、あなた魔女でもあるんですね
ギドラメデューサ・・・ごめんなさい
96 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:55
「塩まけ、塩ぉぉ〜〜!ヒャッホーー!」

店の奥から、楽しそうなごっちんの声が聞こえた

 ピシャンッ!!

 ビクッ!

「・・・・・」
「・・・・・」

いっきに恥ずかしさがこみ上げる
俯いて黙り込む二人

「・・・か、かえろっか・・」
「うん・・・」

またぎこちなく両手足が一緒に出てるウチ
はぁ、変わらんのか、これは。
チャリのカゴに赤飯を入れて
スタンドを下ろした

「ほい、ど、どぞ」
「う、うん・・・ありがと」

ねぇ、一応さ?ウチらそう言うことしたじゃん
一線は越えたよね
でも、また中学生日記に逆戻りしたよね

ま、まぁ、それでもいっか
なんて思いながら
いしかーさんを乗せて、チャリを走らせた
97 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:57
  ∧ V  ∧ V  ∧ V
98 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:58

次の日、今川焼きを手に
いしかーさんと中澤不動産に向かう。

ホラ見に行けと鍵を渡される
おいおい、どんだけ荒い不動産屋なんだよ
中澤さんはいしかーさんの顔を見て

「あれ?アンタ」って言ったけど
気のせいや、他人の空似ぃ〜
なんて言って今川焼きを食べてた
99 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 21:58


中澤さんに渡された鍵と地図を持って
いざトメコ荘へ

中々古い感じで、す、素敵じゃない?
神田川よりはマシだけど
ねぇ、ホントにここでいいの?
すんげー建て付け悪そうだよ?

「いいの!ここにする!」
「壁薄そうだよ?」
「・・・エッチ」
「ば、バカ!!」

いしかーさんはこんな古い家に住むのが夢だったそうな。
二人で銭湯とか行っちゃうのも夢だったんだって
二人で銭湯って言うか、ウチが風呂屋だからねぇ

入居手続きをするために中澤さんに電話をすると

「そのまま入ってくれても構わんでー」

判だけつきに来いと言われた
引越しもしないといけないけれど
いしかーさんの家から持ってくるのは
服と靴と鞄、それにちょっとした生活用品とオーディオくらい

少ないから保田さんに頼んで車を出してもらおう
100 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:00

「ひとみちゃん、遊びに来てね?」
「うん、も、もち」
「寂しくなったら、お泊り、してくれる?」

上目遣いで頼まれる
胸がキューンッて鳴った

「あ、当たり前」
「ありがと♪」
 チュッ

ウチは踊らされる
人魚に

この泣き虫で、ちょっと積極的な人魚姫に
でかいクジラが踊らされるなんて・・・

でも、いっか。
いしかーさんだから。
101 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:01
  > <  V ∧  < >
102 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:02

「ふ、ふぁぁああああああ、あーーあ」

いつものように番台につっぷしてる閉店前。
今日の昼飯はお赤飯だった
もう勘弁してくださいよ、お母さん
いつまで赤飯ネタ引っ張るんですか

今日の晩御飯は魚屋で安かったからと
鯛の味噌汁だって。
もう、好きにして下さい、お母さん・・・

 ガラガラッ

女湯の扉が開かれる

「はい、らっしゃいー」
「おらー、豆おかきだぞ」
「ああ、ごっちん。どうしたの?」
「まあまあ。なんだ?よしこ、ぐだぐだだね」
「んん〜なにが?」

ごっちんは番台に豆おかきを置きながら
ウチに耳打ちをしてくる

「毎晩嫁が寝かせてくれないのかしら?うひひ!」
「ば、ばかたれ!!」
「あぁ、意外によしこが激しかったり?ねぇねぇ!」
「もう、好きなだけイジってください・・・」
「いやん!それは嫁のお・し・ご・と♪」

こいつ・・・頭の中そればっかりだろ
この間、ウチらが帰った後もその話してたんだろ!
103 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:03

「そういやさ、嫁は?」
「ん、ああ、バイト」
「へ!?」
「隣の駅前のマック」
「マックぅ〜?」

いしかーさんは、一昨日から始まったバイトに行ってるのだ
しかも、朝から夕方にパスタ屋さん、夕方から夜にマックと
掛け持ちするらしく、ウチと会う時間がめっきり減る
まぁ、風呂屋に来るからいいんだけどね

「そうそう、マック」
「おいおい、嫁を働かせんなよなぁ?」
「そう言われても、彼女が働きたいっていうんだし」
「そかそか、しかし何ゆえマック?」
「ウチがゴリ推ししたから」
「は!?」
「だってよ?あの顔でさ」

ウチはごっちんから貰った豆おかきを袋から取り出し
ごっちんに渡すフリをしながら
いしかーさんのアニメ声を真似た

「( ^▽^)<ご一緒にポテトもいかがですか?キャハッ♪
 ・・・って言われてみろ。」

「う、うう・・・」
「ハァーーーーン!!!ってなるだろ?」
「う、うん・・、なるね」
「な?」
「でもそれって、よしこがただ見たいってだけなんじゃ」
「・・・個人的趣味」
104 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:04
出した豆おかきをポリポリ食べだす

「でもそれは多分、いしかーちゃんしか出来ない技だよね」
「うん・・・」
「どうすんのぉ?ナンパとかされちゃったらさぁ?」
「う・・・言うな」

ごっちんはウチの手を豆おかきごと握り締めて

「ずっと、君の事が好きだったんだ・・・僕には分かる。君のその瞳の奥が。
 なーんて言われたら」
「誰だよ、それ」
「んぁ?居たらの話だよ」

豆おかきをポリポリ二人で食べる
ウチは風呂屋の壁にかけられていた時計を見た

・・・いしかーさんのバイト上がりは確か今日は早いはず
いまからチャリを飛ばせば・・・間に合う
しかも

( ^▽^)<ポテトもいかがですか?

って言ってくれるかもしれない
105 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:05

 ガバッ!

「ど、どしたの、よしこ!」
「ごっちん、ウチ行って来る」

「お。おお?」
「マック!!はいどいて!閉めるよ!」

「も、もう閉店?」
「うるさい!客も居ないんだし、閉める閉める!」

「よしこも、動くようになったねぇ・・・」

急いで風呂屋を閉めて、着替えに戻る



ズダダダダダッ シュタッ、とう!!

階段を駆け上り、ダッシュで着替えて
5段上からジャンプで飛び降りる。


よしこのファッションチェーーック!!

 足元   マーチンの10ホールブーツ
 パンツ  カーゴパンツ(米軍仕様)
 インター ボーダー柄ニット
 アウター ダウンジャケット
 頭    ニットキャップ

どうだピーコ!チェック、しくよろ!

.∀´)<マダマダね!
106 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:06

蔵の鍵をかけて、店先に戻ると
ごっちんはニヤニヤしながら立ってた

「おーほー、クジラの行動が早い早い」
「っるさい!」
「ほれ、これもってきな」

ごっちんはカイロを渡してくれた

「さんきゅー!」

ポケットにカイロをつっこむと
チャリをペダルをグッと踏み出した

「気をつけるんだよ〜!嫁によろしく〜」
「おおう!」

手を上げて合図をする
向かうはマック
107 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:07
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
108 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:08

ドリャドリャドリャ!どけぇぇぇ!



 キキューーーーーーー!!!

マック到着!所要時間5分。
いしかーさんと出会ってから、ウチの脚力はかなりUPしたはず
息を整え店内を覗く。


マックも閉店間際なのか、お客さんぽつぽつ居るくらいで
閑散としていた。

ガラス張りの入り口から見えたのは
何を隠そう、クルー姿のいしかーさん











ハァ━━━━━━ 0´Д`0 ━━━━━━ン!!!!



は、入れません・・・

猛ダッシュ足並み勇んで来たけれど
マックなあなたに胸ズキュン(字余り)

よしこ心の川柳より
109 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:09

 キィッ

「いらっしゃいませー」

ああ、いらっしゃいましたよ〜?

いしかーさんは店長さんらしき人に研修を受けてて
ウチの姿に気づいてない
後ろに回していたニットのつばを前にキュッと回して
レジに近づく

店長さんはウチに気づいてたのか

「さっき教えた通りにやってみて?」

いしかーさんに声をかけた

「あ、いらっしゃ、いませ」






ハァ━━━━━━ 0´Д`0 ━━━━━━ン!!!!


もう、どうにでもしてください

「いらっしゃいませ、こ、ちらでお召し上がりですか?」

ぎこちないけど

けど、か、か、かわいいぃぃ

いかんいかん。取り乱すな、ウチ
110 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:10

店長さんは少し後ろでこっちの様子を伺ってたけど
誰かに呼ばれてその場から離れた

ウチは低い声で応える

「はい」
「ご注文は、おきまり、ですか?」

とりあえずメニューを見るふり。
チラッと見上げると、プルプルしてる

気づいてない、気づいてないぞ?こいつ
ププッ!


「えっとー、ホットミルクティ」
「おひとつですか?」
「はい。えっと、そんだけで」


「ご一緒に、ポテトもいかがですか?」










ハァ━━━━━━ 0TДT0 ━━━━━━ン!!!!


もう、昇天です
お父さんお母さん、産んでくれてありがとう
ひとみは今、最高に幸せを噛み締めてます・・・
111 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:11

「あ、はい・・・」

頼むのかよ!ウチ!!

「はい。Mサイズでよろしいですか?」
「あ、はい」

「ご注文は以上でよろしいですか?」
「あ、それと、持ち帰りで一個」
「え!?」


戸惑ってる戸惑ってる、ニヤニヤ
対応に困ってちょっとオロオロしてるいしかーさん。

キャップのつばをちょっと上げて
口の端をニヤッと上げながらカウンターに乗り出した


「いしかーさんを」


顔を上げるといしかーさんの驚いた顔があった

「ひとみ、ちゃん?」
「ニシシッ」
「あ、ああ、あっと、えっと」
「注文は以上ですよ〜?」

クックッと笑いながら身体を元に戻した
会計を済ますといしかーさんがトレーを渡してくれた

「お席までお持ちしますので、2番の札を持ってお待ちください」
「はいはーい」
112 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:12

照れてる照れてる!
っていうか、ウチも照れてんだけど。
札とミルクティの乗ったトレーを持って
空いた席に行こうとしたら

「あ、ひとみちゃん!」
「ふぇ!?」

後ろから呼び止められて振り返ると
カウンターに両手をついて身を乗り出すいしかーさんが
八の字眉毛で聞いてきた

「灰皿、いる?」
「う、うん」


はあぁぁ・・・幸せ・・・

気の利くええ嫁やなぁ ウルウル

そうだ、この人、気が利くんだった
いい嫁になるねって言って、自分の嫁になるなんて

ありがとう、お父さんお母さん・・・
よしこ今、猛烈に感動し打ち震えております

「はい、どうぞ」
「ありがと」
113 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:13

店の奥の喫煙コーナー
一番奥の席に座って煙草をぷかぷかふかして
ミルクティを口に含むと
ポテトを持ったいしかーさんが現れた

しかもキョロキョロ探さずに、ウチに向かって一直線


やっべぇぇぇぇぇぇ!!

ちょーーーーかーーわーーいーーーーーーーーーー!!

やべーーーーーーーーーーー!!

超やべーーーーーーーーーーー!!


あああぁぁぁぁああ


ダラダラと口からミルクティがリバース。
心臓はドックドクいってる

ああ・・・救心買いに行こ
薬局開いてっかなぁ・・・
114 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:14

「お待たせしました」
「あ、あ、ああ、ありがと」

でも口から出る言葉は中学生日記・・・
もういや(泣)


「ひとみちゃん、ミルクティこぼしてるよ?」

気づけばジャケットにいくつかの染みが。

「あああ、ああ」

いしかーさんはナプキンを取りに行って戻ってくると

「拭かなきゃだめだよ。染みになったら落ちないじゃん」

口元とジャケットを拭いてくれた
しかも立てひざ突いてウチの視線より下で上目遣い
ウチの頬に手を沿えて

もう、もう・・・
イっても、いいですかぁ・・・?

「うん、キレイになった♪」

いしかーさんはそういうと
立ち上がって札を取ってペコッとお辞儀をした

「ごゆっくり、どうぞ♪」

ああ・・・
マニュアル通りなんだろうけど
3割増のハートマーク付きと見てもよろしくて?
115 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:16

持ち場に戻ろうとするいしかーさん

「あ、あのさ!」

いしかーさんを呼び止める
見返り美人マックバージョン!

「ん?なあに?」

いちいち悶え反応するなって感じだけど
悶えるんです、あなたに。

「あ、ああ、待ってるから、さ」
「うん!もう終わるよ」
「そ、そうなの?」
「うん。今日は暇だから、上がっていいって」
「おっけ・・・待ってる・・・」
「うん!」

(*^▽^) ニコッ









ハァ━━━━━━ 0´Д`0 ━━━━━━ン!!!!


昇天セカンド、カモーーンナ!!
もう、ほんと、ダメっす

この可愛さ、どうやったら伝えられましょうか
画面から伝わってます?ねぇ、あなた
そうそこのあなた。
マジ可愛いんですよ。マジ鼻血噴きそうです。


ああ、だめだ・・・
やばい、惚れてる、堕ちてる
ウチはアイツに胸ズキュン
116 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:17

あつあつポテトを口に放り込む
いしかーさんの後姿と笑顔を思い出して
ニヤニヤニヤニヤ顔緩みっぱなし

おっかしな話だよね?
あんだけさ、散々笑顔だの、泣き顔だの
叫び声だの・・・は、裸だの見てんのに

マックの服がよろしくない・・・そうだ、そうそう
エロオヤジじゃないんだから
ウチも、もうちょっと落ち着け。

パクパクポテトを放り込む手を一旦止めて
煙草に火をつける

ハァ、うまいねぇ〜

心がポカポカしてくるなぁ〜
いやはや、うんうん。

灰皿にトンッと灰を落として
ハタと気づいた
117 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:19

待てよ・・・?
ウチだけにあの笑顔は振り撒かれてないってことだよな

この場所って学生とかも来んじゃん?
昼間になったら会社員とかも来んじゃん!?

おいーーー!待て待て待て!!
ライバル大量!?ちょっと待てーーー!


「手とか握られちゃって」

「僕なら分かる、とか言われんの!?」

「だぁぁぁぁぁぁ!!」


机をドンドン叩いて怒りを露にする
取り乱しすぎだって、ウチ

机に顎を乗っけて、ガルガル唸りだした

「どうしたものかな、そんな事されたら」

眉間にしわが寄って、咥え煙草の口が歪む

「ふみゅぅぅぅぅ」

下唇をむ〜と突き出して
情けない声を出してしまった
多分眉毛はいしかーさんのあの八の字になってるはず

でもマジでどうしよう
マックで働けと言って、今更辞めろとは言えないし
接客業なら笑顔は絶対必須なわけだし
あの笑顔が出るわけだし
胸ズキュンの客も出るだろうし

ああああああああああ!!!


悶絶とへこみを繰り返して
百面相してるウチは、かなり怪しい客。
118 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:20

ちょっとヘコんで、俯いてると

「ひとみちゃん」

 バッ!

落ち込み気味もなんのその
アニメ声と小ばかにしていた甘い声。
顔を上げるとそこには
マイオアシス、マイサンシャイン
おお、マイスイートハート
いつものいしかーさんがいらっさった

「お待たせ♪」
「お、お、おつ、おつかれ、さま」
「座っていい?」
「あ、あああ、は、はい」

ウチの向かいのイスを引いて座るいしかーさん
白いファー付きダウンジャケットと
色の落ちたジーンズ
マフラーはピンク色でいつもの鞄

ああ、もう、もう、もう・・・だめ

抱きしめたい、あなたを抱きしめたい
手を握りたい、ああチューしたい!!!
119 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:21

「ポテト貰っていい?」
「ど、どぞ」

「ん〜、おいし♪おなか減ってたんだぁ」
「そ、そうなの?」
「うん!」

なんかいしかーさんの言葉の後ろに
全部ハートがついてるように聞こえるのは気のせいですか?

「ひとみちゃんが来てくれるって思わなかったよぉ」
「あ、あああ、ああ」
「うれしっ♪」
「な、な、にが?」
「ひとみちゃんが初めてのお客様だったの♪」
「あ、ああ、あああ、そう」


僕には分かる

あなたの瞳に映る

ウチの顔が赤くなってるその事が!!!


ぬわぁぁ!!はっずかしい・・・
嬉しくて、いしかーさんが可愛くって
も、もうだめ
120 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:23
落ち着け、よしこ
おう落ち着くよ。
ちょっと取り乱しすぎて疲れてきたし。

上を向いて煙をフーッとふかす

「フフッ」
「な、なに・・」
「クジラみたい」
「ああ、ああ・・・」

いしかーさんは笑顔でポテトを口に入れた

「ひとみちゃん、食べないの?」
「ああ、ああああ」
「食べる?」

ポテトを指で摘まんで

「はい、あーん?」



もう、だめですってば・・・

「ん、あ、ああ・・・あー」
「おいし?」
「う、、うん・・・」

バカップルと言ってください・・・もういいですから
121 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:24
「ミルクティ貰っていい?」
「いいよ、ど、どんどん、どんどん飲んでください」

実はミルクティ苦手なんです
でも、いしかーさんが飲みそうだと思ったから
頼んだんです。知ってた?知らなかったでしょ

いしかーさんはミルクティを両手で持って
ふーっと息を吹いて冷ましながら
机に両肘をついた


「うれしいなぁ」
「な、にが?」
「こうやってひとみちゃんとマックに来たいなって思ってたの」
「ぐぐっ」

照れるから!!

「夢が叶っちゃった♪」
「あ、そう」
「そっけないんだー」

ぶーっとほっぺたを膨らませて
プイッと横を向くいしかーさん
122 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:24
「あ、ああ、いや、そ、そうじゃなくって・・・」
「フフッ。知ってるよ?照れてるんでしょ?」

なら聞くなよ!!
いしかーさんはウチを見てはにかんだ

「なんか、もう、どき、どきして」
「え?」
「いしかーさん、見てっと・・・」
「そ、んなぁ。恥ずかしいよぉ」

二人でテーブルを挟んで照れながら俯く

あれ・・・えっと
今、時代は平成ですよね?
ここの席だけ大正時代?
文学少年少女の集まり?

学生服で、学ランのウチは帽子とかかぶって
いしかーさんはセーラーでおさげ髪で

 ゆ、夢、だった、んです・・・
 わ、わたしも・・・

とか言ってんの?!おいおいおいおい
123 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:26
ウチは照れ隠しに、煙草に火をつけて
身体を横に向け誰も居ない前をじーっとみた

もうだめです、目見れません

一線越えたのは多分ノリです。
そう山本山の海苔だったんですってば

ポテトに手を伸ばして
二、三本口につっこむ

背もたれに腕を乗せて灰を落とそうと
横目でテーブルの上を見ると
いしかーさんは
なにやらせっせこ、ミルクティのカップに指を入れてる

あ、ごめんね。灰でも入ってた?

と思ったら・・・トレーの上で・・・



・・・な、なにしてんの?


・・・・・



・・・


124 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:26














  
 / \
/   \
 ̄ ̄| ̄ ̄
 リ|ヒ
  |ト
 カ|ミ
  |










ハァ━━━━━━ 0´Д`0 ━━━━━━ン!!!!


もう、かんべーーーーーん!!!
125 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:27
いしかーさんはウチのポカーンと空いた口を見て
慌ててトレーから紙を抜き取るとくしゃくしゃに丸めた。
そ、その紙持って帰るから捨てないで!

「ちょ、ちょっと!」
「ダメ見ないで!」

書いたのあんたでしょ!
ああ!丸めるなってば!!ばか!!

「なんで、ちょっと!」
「やだ、はずかしい!」
「自分で書いたんでしょ!ちょっと!」
「ひとみちゃん呆れてるもん!」
「まて!ウチはその紙がほしいの!!」
「・・・え?」

いしかーさんの丸めていた手が止まった

「ああ、ああああ・・・」

いしかーさんの手から紙を取って広げると
相合傘がくっしゃくしゃになってた
126 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:28

「ああ・・・せっかくの・・・」
「ひとみちゃん、それ、ほしかったの?」

小さくコクンッと頷いた
彼女は小さい声で、かわいいって言ったから
余計に顔が赤くなる

「ウチ、さ」

しわしわになった紙を広げながらいしかーさんに呟く

「ん?なあに?」
「いしかーさんの、マック姿見れて、うれ、しいんだけど」
「・・・けど?」

いしかーさんが覗き込むようにウチの伏せた顔を見る

「なんか、気が気でないって言うか・・・さ」
「どうして?」
「だって・・・いしかーさんのスマイル、素敵、だしさ」

「「・・・・・」」

はい、また大正時代に逆戻り〜

ねぇ、いつになったらウチらコレから抜け出せるんだろうね
抜け出せないのかな。どう思う?
127 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:29

ポテトを食べ終わって
トレーを持ち上げて席を立つ
しわしわになった紙はキレイにたたんでテイクアウツ。

「あ、ひとみちゃん、これまだあるよ?」

いしかーさんの手にはミルクティが

よし、大正時代を抜けてやる


「あー」

「え!?」
「あー」

ウチは口をあけて飲ませろと意思表示

いしかーさんはウチの傍に寄ってくる
右手にトレー、左手にいしかーさんの腰を抱く
だーから、照れるなっての!
いしかーさんはウチの口に紙コップを当てて

「こぼさないでね?」

って飲ませてくれた

顔は赤いけど、でも嬉しそうにしてる
あーなるほどな。こう言う事をされると嬉しいのか
128 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:29

「おいし?」
「うん、美味い」

どこにでもあるミルクティだけど
なんか特に甘く感じた
だって、幸せそうな笑顔なんだもん
いしかーさんも、多分ウチも。


いしかーさんが風呂屋に来て、ウチを見つづけてた
その時の気持ちが、マックに来て分かった
働く姿を見て、ドキドキしたり
誰かと楽しそうに話してるのを見て、ハラハラしたり。

いしかーさんは多分ずっと胸の中で
もし、もし叶うなら、ポテトをあーんってしたいんだ
なんて思ってたんだろうな
彼女の夢を叶えられて、ちょっと嬉しくなった。
129 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:31
トレーを片付けて
二人で店を出ようと、扉に向かって歩いてたら

「梨華ちゃん!」

振り返ると、可愛らしい女子が
こっちを見てた。
むむ!おぬし何やつ!
ウチだってまだ名前、何回かしか呼んだこと無いのに!

「あ、柴っちゃん!」

な、なぬ!?おぬしら密通しておるのか!

いしかーさんはレジ脇のドアから出てきた柴っちゃんとか言う人と
楽しそうに話してる

んー、手持ち無沙汰になった左手。
これどうしたもんかな

柴っちゃんさんはこっちをチラッと見た
130 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:32

「梨華ちゃん、彼氏?」

ぶっ!やっぱこの格好だと男なんか・・・
確かにジャケットで胸は隠れてっけどさ

「ん、うん、そう」

認めるのね〜!
まぁ、そこでううん彼女だよ?って言われても
柴っちゃんさんも困るだろうに。賢明な選択と思われるよ

帽子をつばをキュッと持って
柴っちゃんさんにペコッとお辞儀をすると
いしかーさんになにやら耳打ちしてる
てめぇ!このやろう!
いしかーさんに近づいてんじゃねえってば!

「やだぁ!柴っちゃん、もーー!」
「照れんなよぉ!この、この!」

けっこー馴染めてんの?いしかーさん
けっこー馴れ馴れしいじゃない?ねぇ。
肩とか叩き合ってさぁ?おいおい

「そんなことないよぉ」
「なーに言ってんのよ!」

キャッキャ喜ぶいしかーさんと
スキンシップを計る柴っちゃんさん

右手の拳がわなわなわなわな!!
きぃぃぃぃ!
おちつくのでござる!
ええい!離せ、離せぇぇ!
浅野殿!殿中でござる、殿中でござるぅぅぅ!!
131 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:33



おい待て、浅野内匠頭ひとみよ
彼女のバイト先なんだからもっと喜んでやれってば
そうそう、仲がいい人が居るんだから
行きやすそう、働きやすそうなんだってば
そうそう、落ち着け、よしこ。

でも、でも、でもぉぉぉおおおお!
んんっ!んあー、あー、低い声低い声っと

「梨華!」
「「へ!?」」

いしかーさんと柴っちゃんさんがウチを見た
柴っちゃんさんはウチに気づいたのか

「あ、梨華ちゃん、ごめんね?呼び止めちゃって」
「ううん、いいの」

あああああ!!
男のヤキモチってやだよねぇ〜なんて
柴っちゃんさんに言われちゃうんかな
なっさけないけど、でもウチ男じゃないんだってば

「彼氏の胸にに飛び込んじゃえよ♪」
「もぅ!」

「じゃあまた明日ね!」
「うん、また明日!」
132 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:33

柴っちゃんさんは梨華ちゃんに手を振ると
レジの中に戻った
いしかーさんはちょっと俯き加減で駆け寄ってくる

「ごめんね?」
「いいよ・・・」

いしかーさんの手は鞄にふさがれてる
テメェ・・・
ウチは左腕をいしかーさんの腰に回した
そう、さりげなくね

「ヒュゥゥ〜」

後ろから軽く歓声が聞こえる

いしかーさんは、なに?なんで?どうしたの?って顔で
ウチを見上げてるけど、気にしな〜い
首だけ後ろに向けて、顔が赤くなってる柴っちゃんさんに
ペコッとお辞儀をして、外に出た
133 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:35

外は相変わらず寒い
でも寒さじゃなく、腰に回した左腕は
ガッチガチに固まってた

カッコつけたもののぎこちない
ロボコップまではいかないけどかなりダサい

腰から腕を離して自転車を動かす

「んしょっと・・・」
「ひとみちゃん」
「んあ?」

恥ずかしいからキーを挿しながら顔を見ずに返事した

「やきもちぃ?」
「ち、ちげぇよ!」
「もー、照れちゃって♪」

こ、こいつぁあ!

「はい、乗る!」
「うん♪」

チャリをガーガー漕ぎながら
火照った顔を冷たい風で冷ます
いしかーさんの腕がウチの腰に回されてる
ジャケット越しだけど、かなりくすぐったい
134 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:36

「柴っちゃんがね?」
「ん?ああ」

聞く意志があるもんだから
どんなに小声でも聞こえる

「お似合いだねって」
「お、お似合い・・・」
「彼氏、カッコいいね。だって」
「あ、ああ、そう」
「でも、なんか、嬉しかった。けど」

 キキーッ

目の前は赤信号
ウチは首を後ろに捻って彼女を見た

「けど?」
「なんか、やきもちやいちゃった」
「な、んでさ」
「だーって、ひとみちゃん、カッコいいんだもん
 それにさ、梨華!って・・・」
「な、ナニイッテンダヨ」

ああ、ロボット大発生
いしかーさんはまた上目遣いでウチを見る
135 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:37

「ウチだって・・・いしかーさんの笑顔見たら
 なんか、心配で・・・」
「心配?」
「ナンパ、されんじゃないかって」

「「・・・・・」」


「「でも」」


「カッコよかった」「かわいかった」


 チュッ


目の前の信号は青
ウチはまたチャリを漕ぎ出し
彼女はしっかり腰を掴む

いしかーさんの左手を腰から外し
ウチは冷たくなった手を掴んだまま
カイロの入った左のポケットに突っ込んだ

「あ・・・」
「あったかいっしょ」
「うん・・・」

いしかーさんはウチの背中にピッタリくっついて
風にかき消されそうな声で呟いた
背中から伝わる声
心まであったかくさせる

「ひとみちゃん、大好き」
「・・・ウチも」
136 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:38
  ><  V∧  <>  ∧V
137 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:38


 ポチャンッ ピチョンッ

「ああああああ、極楽、極楽」

寒い日にはやっぱりおっきなお風呂だねぇ

銭湯に帰ってきてそのまま二人で風呂に入った

「ひとみちゃん、おじいちゃんみたいだよ?」

いしかーさんはまたいつものように髪をアップにして
うなじ美人で隣に居る
その距離はぴったりしてるが0cmじゃあない

いしかーさんは、お世話になってる上に
銭湯まで入らせてもらうのは悪いと
せめて銭湯代を払わせてと言ってきた
いらないから別のことに使いなさいと押し戻すけど
やっぱいしかーさんって頑固。

ウチはいしかーさんを迎えに毎日マックに行くと思う
夜も遅くならないんだしいいよって言うんだけど
ウチもそこは譲れない
138 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:39

「そのお金さ、貯めない?」
「ん〜、貯めてどうすんの?」
「クジラ見に行くの」
「はぁ!?どこに」
「ハワイ?」
「気の長い話しだなぁ・・・」
「いいじゃん、ずっと一緒に居たら、ね?」
「そっか・・・そだね」
「うん・・・」

いしかーさんは洗い場を
ウチは富士山を見ながらお湯の中で手を繋ぐ

「ま、でもさ、まずは水族館にでも行くか」
「うん!」
「江ノ島が近いかなー」
「やったぁ!」
「でも冬だから寒いよ?いしかーさん寒がりじゃん」
「大丈夫!」
「ホントかねぇ」
139 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:40

「ねぇ、ひとみちゃん?」
「ん?なに?」

ウチはあごの下までお湯に浸かる
いしかーさんの顔を見上げると

「もう、名前、呼んでくれないの?」
「え・・・?」
「・・・嬉しかったの」
「あ、ああ・・・」

天罰が・・・カッコつけた天罰が下るのかしら

「呼んで、欲しい、な?」

ザブッと身体を起こして
いしかーさんと視線を合わせる


「・・・べーー」

「な、なんでよぉ!」

「はずかしいからよばなーい」

パシャンッとお湯を顔にかけたら
もー!って言いながらいしかーさんは目を瞑った

「あっははは!」
「もぉぉ!ひとみちゃぁん!」
「ほらほらほら!」
「や、やだぁ!」

お!いしかーさんはケロ桶に手を伸ばしてる!
反撃が来るのか?危険!危険!
隊長!敵の襲撃です!
そうはさせるか!先手必勝!

いしかーさんの腰に手を回し
身体を支えるようにして沈んだ

「んんん・・・」
140 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:40


 ブクブクブクッ


お湯の中でいしかーさんの髪が揺れる
色っぽくて神秘的で


二人の身体が重なるように
お湯の中で浮かぶ

ウチの頬を小さな手が包みこむ
彼女の背中を優しく抱きしめて




人魚とクジラはキスをする


141 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:41




 ザパァンッ!

「プハァァ!」
「ハァッ!んはぁ、はぁ」


「ん、あ、あのさ、ずっと、さ」
「うん」


「えっと・・・」
「ん?」


「・・・ウチ、好き・・・梨華、のこと」
「わたしも・・・ひとみちゃんのこと、好き」



142 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:42


とりあえず、今はここでさ
富士山が描かれた海だけどさ

泳ごっか


わたしはどこでもいいよ?
バントウクジラさんが居てくれるなら

泳げるよ?





くじらと人魚
不似合いだけどさ

激しい荒波だって
凍てつく寒さだって

一緒なら 怖くないね


二人で行こう

グランブルーも、その先も

ずっと

143 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:42

『くじらと人魚』   

                 fin

144 名前:くじらと人魚 投稿日:2005/12/13(火) 22:43

145 名前:Rink 投稿日:2005/12/13(火) 22:44
更新終了です!

くじらと人魚 終了しました

更新分は>>53-144です
146 名前:Rink 投稿日:2005/12/13(火) 22:46
天使と悪魔がズレたり
今回においては萌えどころの傘がずれたり

まだまだです。日々精進致します。

『くじらと人魚』のその後を1回分更新して
いしよし短編を何個か上げた後
本編だった『LINE』続編『LOOP』を更新しようと思います
147 名前:Rink 投稿日:2005/12/13(火) 22:47
レスポンス

>名無飼育さん様
(0^〜^)<ありがとほぉ〜

>7&Y様
作者、スレ消費日数早すぎっすね汗
実際こんなにスレ立てて乱立か?と
お怒り受けそうで怖いんですけど・・・
喜んでいただけてうれしいです。

>774飼育様
(0^〜^)<ヘタレだけじゃないぜぃ!
お褒めめいただきありがとうございます。

>名無し読み手様
もうそんな、褒められると照れます
( ^▽^)<ありがとー♪
148 名前:Rink 投稿日:2005/12/13(火) 22:47

>名無し飼育さん様
(0*´〜`)<照れるぜぃ!
幸せになって貰えるよう、作者もその方向で

>名無飼育さん様
(#´▽`)〜`O) <ありがとう♪

>名無様
覆されましたか?
意外とキレると怖いんです、よしざーさんw
愛ゆえに、だと思います
(0^〜^)<いしかーさんのためならえんやこら〜

>名無飼育さん様
やっぱり早いですか?
なにぶん生き急ぐ性格でして・・・
次回作はゆっくり行こうと思います汗

>名無飼育さん
( ^▽^)<突き指大丈夫?
しずかネタ、ウケていただきありがたやw
149 名前:Rink 投稿日:2005/12/13(火) 22:50
ネタバレ防止に
作者談 その2

『LINE』と『くじらと人魚』 は何気にリンクしているんです
それにしても保田さん大活躍ww
150 名前:名無読者 投稿日:2005/12/13(火) 22:53
リアルタイムで読ませていただきました。
更新が早いし、量も多いし、読み手としては嬉しいかぎりです。

次回作も楽しみにしています。 頑張って下さい。
151 名前:名無 投稿日:2005/12/13(火) 22:57
完結おめでとうございます^^
最初から最後まで良かったです!!
よっちゃんと同じく胸ズキュンw
マック服絶対似合うっ!!!
( ^▽^)が働いてるお店に行きたいAww
羨ましすぎる相思相愛っぷりですねぇー^^
ごっちんのキャラもめっちゃ好きです(´д`)

152 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/13(火) 22:58
ハァー━━━━━━━━ン!!!
153 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/13(火) 23:57
へタレ再び(0´〜`0)
154 名前:774飼育 投稿日:2005/12/14(水) 00:17
ネタバレ防止ということでアンマリ内容的なことが書き込めないので
一言いいます 作者様 この作品も良かったです
次回作も楽しみにしてます
155 名前:名無し読み手 投稿日:2005/12/14(水) 00:31
ご馳走様でした。
もうね!いしよしいいよね!って勝手につぶやいてしまいました。
完結おめでとうございます。。。
156 名前:7&Y 投稿日:2005/12/14(水) 01:01
完結おめです!
やっぱそうだったんですね!>リンク
途中不動産屋さんが出てきたとこでアレッと思ったら案の定
もうね、いしよし最高ですね。ありがとうございました
あと何気に後藤さん好きでしたw( ´Д`)<んぁ、救心いる〜?…もう終わりか
157 名前:名無し読者 投稿日:2005/12/14(水) 01:06
本当にお疲れ様です。
大変面白いです。またいい作品待っています。
1444最高でございます。
作者さん最高でございます。
158 名前:あいわい 投稿日:2005/12/14(水) 08:23
初めまして!赤の頃からずっと読んでいたにも関わらず初感想です…!えと、完結おめでとうございます!そしてお疲れ様です。ボロ泣きでした…!所々に小ネタが効いたRinkさんの作品が大好きです!!!!次回作も楽しみに待ってます!
159 名前:Rink 投稿日:2005/12/14(水) 23:30
番外編を二本。
160 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:31

161 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:32

さっき、ひとみちゃんがわたしを送って
自転車で帰っていったところ


今日はお泊りしない日

明日わたしが朝早いからって
気を使ってくれたんだ

でも、そんなこと、気にしなくていいのに・・・
162 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:32

一人になった部屋は
とても静かで
隙間風が入るこの部屋は
とても寒い

でもそれは多分
ひとみちゃんが居ないからなんだと思う


どれだけ夜が更けて静かだったとしても
二人で居れば、ずっとお話してるし
どれだけ風が強くても
二人で居れば、ずっとくっついているし


寂しいんだ


今帰ったばっかりなのに
もうこんなにもひとみちゃんが恋しい

163 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:33

 ガタガタガタッ

立て付けの悪い窓が風で揺れる


怖い・・・


あの広い家に居た時の事を思い出した
雨の日も、雷の日も
ずっと一人でベッドの上で
うずくまって
朝がくるまで起きてた

風の音が怖い


ううん、そうじゃない・・・


覆い被さられる・・・おじさんの影を思い出してしまうから


一人の夜が、怖くなる
164 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:34

あの日以来、おじさんはやってこなくなったし
何も言ってこなくなった
携帯も全て解約して
おじさんと繋がる全ての物を切ったから。

ひとみちゃんがいてくれたから
彼女の強さが、わたしを自由にしてくれた


頼りになる存在だとか
安心出来る人とか
そんな言葉じゃ足りないくらい

彼女は・・・


表す言葉が見つからない
165 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:34

だから、時々酸欠になる
そばに居なくて
苦しくなる

窒息しそうになる


いつだって彼女の事を考えてる


会いたい

会いたいよ、ひとみちゃん・・・
166 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:35
 トントンッ



え・・・?



 トントンッ



・・・まさか、そんな・・・

167 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:36

 ガチャッ

家のドアをあけると
今さっき帰ったはずのひとみちゃんが
照れくさそうにしながら立ってた

「ど、どうしたの?」
「あ、えっと・・・ほい、みやげ」

そう言ってひとみちゃんは紙袋を渡してくれた
とっても熱い

「やきいも」
「え・・・え?」
「道で、さ・・・売っててさ・・・食いたくなって・・・
 ・・・その、んと・・・戻ってきた」

ひとみちゃんは、上手く言葉に出来ない人みたい。
でも、わたしはそれだけで伝わるの
目を見れば、顔を見れば、全部分かる

一緒に食べようって思って、戻ってきてくれたんだね

「・・・上がっていい?」
「うん!」
168 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:36

部屋がまたあったかくなったのは
やきいもが熱々だったからじゃない
頬と鼻が真っ赤になった、彼女が居てくれるから

「美味そうな匂い漂ってきてさ?」
「うん」
「ピ〜〜ッとか鳴ってんだもん」
「あははっ!」

わたしは温かいお茶を入れながらひとみちゃんの言葉に耳を傾ける

「なんか・・・さ・・・まだ、時間経ってないのにさ・・・」

わたしと同じ思いなんだ・・・
わたしの思ってる事を言ってくれる

「・・・なんか、へヘッ」


 チュッ


隣にいたひとみちゃんが
身体を傾けて、わたしの唇を潤す


冷たくなった唇も、暖かくなるように
わたしは何度も、何度も唇を重ねた
169 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:38

「食べさせて?」
「え!?」

そんな驚かなくてもいいじゃない・・・
でも、今日はわたしを甘えさせてくれる

「んじゃ、こっちきて、座ってよ」

ひとみちゃんはあぐらをかいて座ってる足をポンポンッと叩いて
ここにこいって言ってくれた

「うん」

後ろから包むようにわたしを抱きしめて
コタツの上に置いてた紙袋から
おっきなおいもを出して、半分に割ってくれる

「あっぢ!あっぢぃ」
「大丈夫?」
「気合い!・・・ふーふー」

なんか、いつものひとみちゃんじゃないみたい
でも、うれしくって、顔がほころんじゃうんだぁ
170 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:38

おいもを小さく割って、口の前まで運んでくれる

「おいし?」
「ん・・・おいひぃ」
「そ」

ひとみちゃんはちょっと嬉しそうにして
手で持っていたおいもにかぶりついた

「ほい、あー」
「あーん」
「なんでこう、やきいもって無性に食べたくなるんだろうね」
「ん〜。なんでだろう」
「イモ屋の陰謀だ。ほい、あー」
「おイモ屋さん?あーん」
「ん。風呂屋にもちったー客を回して欲しいよ」
「あははっ」
「まぁ、そう言って、買っちゃってるけどね。あー」
「うん。あーん」
171 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:39

「はい、あー」
「あーん♪」

ひとみちゃんの指についた、小さな欠片を
舐めるように口に運ぶ

「あ、お、ちょ、ちょっと」

照れちゃって・・・もう、かわいいなぁ

「だってぇ・・・」

ひとみちゃんがいつも以上に優しいから
わたしもいつも以上に甘えてしまうんだ
172 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:40


「あ、のさ・・・」
「ん?どうしたの?」

半分食べ終わったところで
ひとみちゃんがわたしの後ろで何か言いたそうにしてる
顔を横に向けると
顔が赤くなったひとみちゃんが、モジモジしながら
わたしをギュッと抱きしめた


「今日、泊まってっても・・・いい?」


顔を覗き込むようにして
わたしにそっと呟くその声が
とってもハスキーで、セクシーで・・・


「うん・・・」

173 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:40

寂しい気持ちなんて、いつの間にかどっかに行っちゃった

ひとみちゃんが居てくれるだけで
わたし、すごーくうれしくなる
心があったかくなるんだぁ


今日は二人でくっついて
お布団にもぐって、手を繋ぎながら寝よっ?


たまにはこう言うのも、いいね


ってひとみちゃんが小さな声で囁いた
174 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:42
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
175 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:43

 チュンッ  チュンッ   



カーテンの隙間から漏れる光で目を覚ますと
白くて綺麗な肌が、日に透けて
さらに白く輝いてた

・・・綺麗で、とってもかわいい寝顔

ずっと見てたいな・・・

だけど

起こしちゃうかな?



 チュッ


「ん・・・んぁ・・・」
「フフッ」

起こしちゃった
もったいないことしちゃったなぁ

だけど、寝起きのひとみちゃんは
もっとかわいくなるんだ
176 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:44

「ん、んん・・・」
「おはよっ」
「・・・んんっ・・・はよ・・・」

うっすらと瞼をあけて
わたしのほうを見ると
腰に手を回して、引き寄せてくれる

「・・・んん・・・梨華ぁ・・・?」
「なあに?」

普段は呼ばない名前も、この時は呼んでくれる

「寒ぃ・・・」
「寒い?」

ごめんね、こんな古いアパート選んじゃって・・・

「あっためて・・・」
「うん」

わたしはひとみちゃんをぎゅっと抱きしめた

「ん・・・梨華、あったかぃ・・・」
「わたしも・・・」
177 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:44

まだ夢から覚めていないのか
うっすら開いていた瞼も閉じられた

でも、笑顔なの
優しくて、穏やかな笑顔をくれる

 チュッ

「ん、んん?」
「おはようの、キス」
「また・・・先越された・・・」

フフッ
でもね?ひとみちゃん
今日はこれで二回目なんだよ?

ひとみちゃんにそれ言ったら、悔しそうにして拗ねちゃうから
内緒にしておくね?
178 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:44

バイトに行くまでまだ時間があるから
わたしも、もうちょっとだけ寝ようっと。



おやすみ、ひとみちゃん

夢の中も、会いに来て

179 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:45

180 名前:眠れる人魚姫 投稿日:2005/12/14(水) 23:45

(#´▽`)〜`O)<おしまい♪
181 名前:Rink 投稿日:2005/12/14(水) 23:46
『眠れる人魚姫』
更新終了です!

もう一本は小一時間後にUPしたいと思います
すいません、撮って出しです泣
182 名前:7&Y 投稿日:2005/12/14(水) 23:58
きゃわですな〜
またーりマイペースでドゾー( ´▽`)ノ
183 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/15(木) 00:13
私、待ってる!
飲みながら待ってる!!
184 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/15(木) 00:18
うほっ!良いまったり感
鎮座しつつお待ちしております
185 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 00:38

完成して寝かさず出します

186 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:49

187 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:49

「すっご〜い・・・」
「すごい・・・だけどさぁ・・・」

「なに?ひとみちゃん、まだ拗ねてるの?」
「拗ねてねーよ・・・」

「あんなに遊んだじゃない」
「そーだけどさぁ?・・・くじら・・・」
188 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:50

今日はいしかーさんと
なんと、初のデート!!

朝からいしかーさんの家に迎えに行って
チャリンコで駅に向かって




行き着いた先は、デカい公園・・・


なぜ!?Why!?



そう思ったでしょ?
ウチもそう思ったよ

それは1週間前の銭湯デートでの出来事

189 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:51
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
190 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:51

 チャポンッ  ピチャンッ


「ねぇ、今度の休みさ、水族館行かない?」
「うん・・・」

と言ったいしかーさんの顔が何故か浮かない

「どした?都合悪いの?」
「あの、ね?」
「うん」
「んと・・・」
「どしたの」
「水族館、以外じゃ、だめ、かな?」

「・・・え!?」


いしかーさんに聞くとこうだ

バイトで休みをもらう時に柴田さん(柴っちゃんさん)に
「デート?」と聞かれ「そうなんだ」と言い
どこに行くのと聞かれて江ノ島水族館と答えたら

「やめときなさい!」

と、凄い剣幕で言われたんだって。
191 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:53

「だって・・・別れるっていうんだもん」

マジっすか!?
でも、サザンが、サザンが歌ってるじゃない?
烏帽子岩が見えてきた〜オレの家も近いぃ〜って。
胸騒ぎの腰つきだで!?ねぇ、ねえってば!
でも、デートとは関係ないか・・・

「・・・やなんだもん・・・」

でもそれって、たまたまだと思うんですけどね
って言ったら

「柴ちゃんも別れたって・・・」


No! No! No! Noooooooo!!!
それは、とてもリアルなお話
This is 運命って感じなくらい


で、でも、くじら、くじらが・・・
192 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:54

デートは嬉しいけど
くじらを見に行けないことが辛くってね

「じゃぁディズニーランドは?」

って言ったら

「初めてのデートでディズニーランドに言ったら別れるって・・・」

またかよ!!!


な・の・で・・・
193 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:54
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
194 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:55

だからそれからずーっといじけてんですよ、ウチは。
いくら一面落ち葉で
映画に出てきそうだよね?うん、ロマンティックだよね?
って言って言われても、いじけまくりなわけですよ


「ねぇ、ひとみちゃん、お弁当も作ってきたからさ?ね?」
「う、うん・・・」

枯葉がどっさり落ちて、すっかり寒空の中で
公園デートしてるんですよ

クジラが見に行けなかった悔しい思いと
初デートの嬉しさが両方混ざり合って
ウチはいしかーさんが驚くくらい遊んでやったのだ。

すべりだいにアスレチック等等
冬なのに汗かくくらい。
おかげで今は少し寒いです。

んで、今はと言うと
ちょっと人気の無い、ベンチとテーブルのある広場で
いしかーさんは鞄の中から弁当の包みらしいものを出して
ウチに少し遅くなったけどお昼ご飯にしよ?と誘った
195 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:56

「じゃーんっ!」

包みをほどいて蓋をパカッと開けると
まぁ!色とりどりのおかずが。

そんでもって別の袋からはおにぎりが数個出てきたんだけど
形が、ちょっと崩れちゃってるけど

ハートに・・・














ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!!


196 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:57
ってなると思っただろ!
もう慣れました。
救心要りませんよ?へへーんだ!


ドキッとはしたけど

ドキドキしてるけど・・・

バクバクいってるけど・・・














ハァ━━━━━━ 0´Д`0 ━━━━━━ン!!!!


やっぱりなるみたい、ウチ
197 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:58

いしかーさんはウチの隣に座って
少しぬるくなったペットボトルのお茶やら
お箸やらを出してくれた

「ひとみちゃん、食べさせてあげるよ♪」

あなたそんな事をする気ですか
ウチを心臓マヒで殺す気ですか、まったく


「なに食べたい?」
「え、っと、お、すすめは?」
「ん〜、全部♪」
「あ、いや、それは、分かるんだけど」
「エヘヘッ、そうだなぁ、卵焼き?」
「んじゃ、それを」
「はい・・・あーんして?」

いしかーさんはキレイに巻いた卵焼きを半分に切って
ウチの口の前まで持って来てくれた

ううっ、いまだ慣れない、このラブラブっぷり
198 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 00:59

「ん?」

いしかーさんは首を傾けていつものスマイル。

ウチは口を中々開けられなくって
何度も小さくパクパクしてた
いしかーさんは、それでも笑顔で待ってくれる

「あ、あー」
「はい、あーん♪」

パクッ  モグモグッ

いしかーさんは、ウチの顔を笑顔で見つづけてくる
いつもならどう?とか、おいしい?とか聞くのに
今日に限ってジーッと待ってんの。ウチの答えを。


恥ずかしすぎて顔を見れないから
ウチは両手を足の間に突っ込んで
モジモジ、そりゃぁもうモジモジしながら
小さい声で呟いた

「お、お、お、い、しい、でっす」

どもりすぎだってば(泣)

「ん!よかったぁ」

いしかーさん、超笑顔なんですけど
とろけそうな笑顔なんですけど
嬉しそうでなによりですよ、ウチは

「じゃぁ、次ウインナー、はい、あーんして?」
「ん、あー」

タコさんウインナーを口に入れてくれる
もうウチの顔はタコさん以上に赤い

いしかーさんは終始ニコニコしながらウチに食べさせてくれた
199 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:00

「いしかーさんも、食べなよ」
「うん!」

これってさ、やっぱウチが食べさしてあげた方がいいわけ?
どう思う?やっぱいっとくべき?


この間は成り行きでおでん食べさせたけどさ
あれは状況が状況だったからさ

でも、今は、その、ねぇ?
真昼間ですし?ここ公園じゃん?

無理無理無理無理!
ぜってー無理!

いしかーさんは箸でから揚げをつまみながら
自分の口に運んでいった

ああ。やっぱさ・・・
200 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:01

「箸、貸して」
「え?ひとみちゃんのお箸なら」
「いいから・・・」

きょとんとした顔でいしかーさんはウチを見る

「何、食べたいよ」
「え?」
「おかず・・・」
「あ・・・」

気づいたのか顔がほんのり赤くなる

「んと、じゃぁ、ポテトサラダ」
「ん・・・あー」
「あーん」

 パクッ もぐもぐ

「ひとみちゃんに食べさせてもらって、おいしい♪」


ああ、あああああ

もう、なんて言うのかな

もしかして、こう言うの、些細な幸せですか?
201 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:02

「そ、そか・・・よかった・・・つ、ぎは?」
「んー、じゃあウインナー。あーん」

はぁぁぁ、かわいい・・・

ウチの太ももに手を置いて
ちょっと身体を捻って、ウチのほうを向きながら
あーんっておねだりしてるいしかーさんのこの姿

ごめんなさいね、皆さん。
ウチ、独り占めしちゃいます。


箸にウインナーを突き刺そうとしたら
おや?この形はタコさんじゃないですね

「あ!それひとみちゃんが食べて?」
「え?なんで?」
「だって・・・」

よく見ると、まぁ器用にくじらになってた

「しっぽが折れそうになってるけどね」
「しっぽじゃなくて、尾ビレだってば」
「あ、そっか。エヘヘ」

なんか、かわいいなぁ

「んじゃ、頂きます」
「どうぞ♪」
202 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:03

「くじら、いつか見に行こう」
「うん。貯金貯まったら行こうね?」
「ハワイだっけ?」
「うん!」

ウチはおにぎりに手を伸ばした

あれ・・・?
なんか、おにぎり暖かい?

「ねぇ、いしかーさん」
「ん?なあに?」
「これ、あったかい?」
「あ、うん」
「ど、うして?」

いしかーさんは
柴田さんからまたミニ知恵袋を教わったそうだ。

お弁当にカイロを入れておくと
冷たくなくなるからって。

ご飯をおにぎりにするならそうしてみたら?
と、恋愛の先輩でもある柴田さんからのアドバイスを
忠実に守ったみたいで

「冷たくなると、おいしくなくなるじゃない?」

いしかーさんはウチのほうを見て
またニコッと笑ってくれた
203 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:05

この子は・・・もうマジで
悶えるとかさ、ハーーーンッとかのレベル超えました
針振り切っちゃいました



医学書には“心”の場所は載ってないけどさ
ウチ、今、心の場所分かるよ。

だって、胸がキューーーッて締め付けられて
じんわり体中に広がるんだ

うれしいって、幸せだぁって。


いしかーさんがさ、こうやって色々してくれるのって
最初の頃だけだろうかと思ってたことがあったんだけど
なんか、いつもなんだよね

ウチの好みを知ってくれてて
嫌がる言葉もわかってるから言わない
時々照れてるのをからかうけれど
その後必ずキスをくれる

なんていうのかな、こういうの
204 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:06

ご飯も食べ終わって、いしかーさんはお弁当を片付け始める
ウチはやってもらいっぱなしで
どうしていいかわかんないから
肩でもお揉みいたしましょうか?奥さん。
なんて言おうとしたら

「ひとみちゃん、煙草吸う?」

あら、あなた。ウチの行動よく分かりますね
でもね?

「あ、いや、いいよ。灰皿ないし」

そう言うといしかーさんは鞄の中から
携帯灰皿を出して

「はい、どうぞ」

な、なんて準備のいい人なんだ・・・
スマイル君の携帯灰皿じゃないっすか

「あ、ありがと・・・」
205 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:07

煙草に火をつけて
ポワポワッと煙を吐き出す

なんかさ、ウチさ
すんげー、いしかーさんに尽くされてるよなぁ

なんか、あ、あ、あい、愛されてるっていぅの〜?
って思うんだ

だけど


「ねぇ、梨華ちゃん」
「え!?」
「あのさ・・・無理、してない?」
「え?・・・何を?」

ウチは煙草を挟んでる中指で
スマイル君をつついた

「これとか、お弁当、とかさ・・・」
「・・・・・」
「なんか、無理、させちゃってるかなって・・・」

ウチはじっとスマイル君を見つづける
いしかーさんは何も話さない

夕陽はウチらの背中を照らしつづけた
206 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:09







「バカ」

「ふぇ?」



いしかーさんが突然
ウチの顔をぐいっと横に向けて
唇を塞ぐ

キスするときのクセ
頬を包むその手は、冷たくなってた


「・・・ひとみちゃんの、バカ」
「な、なんでだよ」
「無理なんてしてないよぉ?」
「・・・・・」

「だって、ひとみちゃんのこと、いつも考えてるんだもん
 1番最初にひとみちゃんのこと、思い浮かべるんだもん
 その灰皿を見たときだって、お弁当だって
 ひとみちゃんに、喜んでもらいたいから・・・」

いしかーさんは、俯いてしまった
207 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:10

綺麗な景色を見たときや
美味しいものを食べた時
自分がいいなって思うものを見つけたときに
誰の1番最初に顔が浮かぶか

それがあなたの1番大切な人


以前何かの本でそう書いてあったのを思い出した


そうだ
ウチだってそうじゃん

一人で買い物行ったとき
いしかーさんの似合いそうなもの合ったら
これいいんじゃないか?って思うし
マックまで迎えに行く時に出てる月が綺麗だったら
教えてあげようって思うじゃん

彼女はそれを、表現してるんだ
素直に、ウチを好きでいてくれてる
ウチを思ってくれてる
208 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:11

「ごめん。無理させてるなんて、言って」
「ううん、重荷に感じたんだよね」
「違う!・・・ウチは・・・ぶっきらぼうだし」

俯いていたいしかーさんが顔を上げる

「・・・ヘタレだし、照れるし・・・鈍感だし・・・」

ウチは自分の気持ちを上手く伝えられなくって
乱暴に煙草の火を消す。
顔をしかめて、膝の上に置いた手をギュッと握ってると

「そんなことないよ?」

いしかーさんはウチの手の上に
手を重ねて、優しく笑った

「分かってるよ?ひとみちゃんの気持ち。伝わってる」
「え?」

「だって、さっきも梨華ちゃんって呼んでくれたもん」
「そ、そうだっけ?」

「大事な時にはちゃんと、名前で呼んでくれるもん」
「そう、なんだ・・・」

「うん。ひとみちゃんがわたしのこと、1番好きだって、分かってるよ?
 ひとみちゃんの気持ち、ちゃんと伝わってる」
「で、でも。さっきだって・・・」
209 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:14

「ううん。ナンバーワンで、オンリーワンだってのも、伝わってるよ?」


いしかーさんはウチの手をギュッと握った
大丈夫って言ってるみたいに。


ああ・・・
言いたいことが、いしかーさんに伝わってる・・・
もどかしくて、言葉に出来なかったそれを
いしかーさんが言ってくれた

「ひとみちゃんが照れ屋さんなのも、分かってる
 言葉が少ないのも、ヘタレなのも分かってる
 だけど、強くって、カッコよくって、でっけーのも
 全部ぜーーんぶ!」

「ど、して・・・?」



「だってわたし、ひとみちゃんの1番近くにいるもん」


「ね?」


いしかーさんは、微笑んでくれた
210 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:15


もう・・・

嬉しすぎて

ウチ、泣きそうです

まじで、泣きそう


ねぇ、泣いていいですか



ごめんなさい、泣かせてください

211 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:16

「ひとみちゃん、どうしたの?」
「あ、ああ?いや、なんでも」
「やだ、なんで泣いてるの?」
「ちがっ・・・」
「どうしたのぉ」

いしかーさんの顔が滲んで見えない
でも八の字眉毛になって、いしかーさんも泣きそうになってる

「ちがう、ちがっ・・・うぅぅぅぅぅ、グスッ」

寒さも相まって、鼻水垂れそうなんだけど
必死で堪えながらいしかーさんを抱きしめた
肩に顔を埋めたウチの頭を
いしかーさんは撫でてくれる
212 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:17


「うれし、くて・・・もう、うれし、すぎて・・・」
「ひとみちゃ・・・」

「いしかー、さん、の、こと、好き、すぎて・・・ズズッ」
「うん・・・」

「すっげ、幸せ、ズズッ、で・・・さぁ?」
「うん・・・グスッ」



「・・ズズッ・・・はぁ・・・ありがと・・・」

「・・・グスッ・・・うん・・・」


「うううっ・・・そば、居て、くれて、ありがとね・・・」

「わたしも、グスッ、ひとみちゃん、居てくれて、ありがとう」

213 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:18

ズズーーーッと鼻をすすりながら
いしかーさんの肩から顔を離した
至近距離で見つめ合う。
やっぱいしかーさんも泣いてた

「ズズッ・・・あぁ・・・情けねぇ・・・ズズッ」

手でゴシゴシ鼻をこすると、いしかーさんは

「そんなことないよ?・・・うれしかった」

 チュッ

いしかーさんはまたウチにキスをくれる

「んぁ・・・くっそ・・・」
「なんでぇ?」

いしかーさんがティッシュで鼻を拭いてくれる
214 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:19

「だってさぁ?・・・ああ、くそ」
「なあに?」
「あー・・・くそ・・・泣いてるしさ?ウチ・・・」
「いいんだよ?泣いて」
「カッコわりーもん」
「そんなことないよ?ひとみちゃんいつも言ってくれるじゃない」
「・・・え?・・・ズズッ」
「我慢するなって」
「あ・・・ああ・・・」
「わたしもね、ひとみちゃんに思うの・・・我慢しないで?」
「・・・うん・・・」

いしかーさんは鼻を拭いてた手を止めて
ウチを抱きしめてくれた

「いいんだよ?泣いても。もっと、甘えて?」
「ん・・・」
「弱いところも、全部、見せて」
「うん・・・」
215 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:20


彼女は、人魚じゃなくて
海そのものなのかもしれない
クジラを包むでっかい、でっかい、海なのかもしれない

昔誰かが言ってた
クジラが泣くから
海はしょっぱいんだって

海の優しさに触れて
暖かさが染みて
クジラは涙を流すんだね

216 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:22


「ハァ・・・」
「落ち着いた?」
「ん・・・」

いしかーさんの胸の中でぐずぐずになりながら泣いて
泣き止むまでいしかーさんは頭を撫でてくれた

人の胸の中って、ホント暖かくて
安心するんだなぁ

いしかーさんの胸から顔を上げてちょっと離れたら
なんか恥ずかしさがこみ上げてきた

「うう、うう・・・」
「どうしたの?」
「・・・ずかしい・・・」
「フフッ。かわいい♪」
「・・・ん・・・」

いつもならかわいいって言われたら
うるせー!とか言っちゃうんだけど
今日はもうなんか、いいやって思えた
やっぱいしかーさんは大人なんだ



くじらが自由に泳げる海を探してたら
人魚だと思ってたあなたの胸の中でした

もしかして こういうの ホントの幸せですね

217 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:23

ひとみちゃんは甘いものが苦手だと思ったんだけど
って言いながら、ちっちゃい弁当箱を取り出してきた

「開けてみて?」

蓋を開けると、そこに
手のひらサイズのスイートポテトが
しかも形はくじら。

まめだねぇ・・・
ホント彼女はまめだと思った

「えへへー。くじらさんだよ?ひとみちゃんクジラ見れないの
 悔しがってたからさ?」

「うう・・・ごめん」
「なーんで謝るのよぉ」
「だって、そこまでさせちゃってるから」
「いーの!わたしが好きでしてるんだもん!
 ねぇ、食べてみて?」
218 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:24

コロンと手のひらにくじらを取っておくと
まぁ目までちゃんとあるんだな。

・・・かわいい・・・

でも



んあ! パクッ!

一口でクジラを食べた

「どう?」
「んご、もぐ、もぐ」
「おいし?」

ゴックンッ

「んまい」
「ほんと?よかったぁ」

いしかーさんはホントに嬉しそうにして
わたしもって言いながらちっちゃなくじらを頬張った
ほのかに広がる甘いサツマイモの味が
寒い身体をじんわりあっためてくれた
219 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:25
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
220 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:26

「ひとみちゃん・・・」
「ん?」

いしかーさんはちょっと俯きながら
ポツリと漏らす

「わたし、ね?」
「うん」

「おじさん、にさ」

今まで彼女はずっと伏せてきてた
ウチの知らない過去

聞かないでおこうって思ってた
彼女がいつか自分から言えるその時まで

大丈夫だよ
ウチは傍にいるから

いしかーさんの手をぎゅっと握った
さっき、彼女がそうしてくれたように



「あんなこと、されてて・・・」
221 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:28

 ずっと誰にも打ち明けられなくて
 わたしの周りには誰も居なくて
 死んじゃいたいって、思ってたんだ

 でも・・・
 それさえも怖くて、出来なかった

 おじさんの家に行くにつれて
 心が、無くなっていくっていうのかな

 息をしてるのかさえも
 分からない状態でね
 ずっと泣いてた
222 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:28

 いつだったかなぁ・・・
 ひとみちゃんを見たとき

 わたしの心の中が溶けていくのが分かったの

 
 ひとみちゃんは、いつも一人でいて
 いつも同じ時間の電車で
 同じ車両の、同じ入り口のところにいて
 わたしは少し離れた座席から
 ずっと見てたの

 今日も会えた・・・って
 
 ただそれだけで
 すべてが、消えて無くなる気がしたんだ

 なんか、一人でそんな事考えてて気持ち悪いよね?
223 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:29

 でも、ある日
 女の子と一緒に電車に乗ってて
 その子がひとみちゃんの前で座って
 二人で楽しそうに笑いながらお話してるのを見て

 初めてひとみちゃんの笑う顔を見れて
 嬉しくなったけど

 でも、ギュッて胸が締め付けられたの

 どれだけ、おじさんにひどい事をされてもならなかったのに
 その日、ずっと、胸が傷んだの

 それで、ひとみちゃんの後をつけたんだ

 終わらせようと思って。
 辛くなりたくないから

 でも・・・終われなかった。
224 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:30

 お風呂屋さんに行って、少し離れたところで見てて
 ときどきひとみちゃんが出てきて
 笑顔でお客さんと話してたり
 暖簾を片付ける時の、ちょっと凛々しい顔を見たら

 やっぱり・・・好きなんだって・・・
 やっぱり、諦めきれないよって
 思ったの 


 だから、お風呂屋さんにお客さんで行こうって決めたの

 でもね?
 初めのうちは何回も引き返した事あったんだ
 扉に手をかけるんだけど
 なかなか開けられなくて
 
 勇気を出して、扉を開けたのが あの日

 初めて、間近でひとみちゃんを見たの


 綺麗な人だなぁって思った

225 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:31

 お風呂屋さんに行くにつれて
 どんどんひとみちゃんのことが好きになっていった
 自転車で送ってもらったり
 髪が濡れてて、風邪引くよ?とか
 
 そんなちょっとしたことがうれしかったの

 思いをずっと留めておこうって思ってた
 言わないまま、見てるだけでいいって思ってた
 いつか、いつか

 「ありがとう」

 って・・・それだけ言おうと思ってた


 でも、それも、無理だったの

 ひとみちゃんが、わたしを許してくれたから

 “上手く行ってないかもしれないけど     ”
  なんかいいこと絶対あるって信じてみたら?

 うれしくて、泣いちゃった
 救われたって思ったの
 
 だからあの日、本当は
 ありがとうって言おうと思ったの

 でも、 ひとみちゃんの目を見てたら
 どんどん、吸い込まれていって

 気づいたら、キスしてた
 気づいたら、好きって・・・言ってた


 エヘヘッ
 後先考えずに行動しちゃうんだよね、わたしって。
226 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:32

 次の日、謝ろうと思ったの
 あんなことして、ごめんなさい。
 もう、来ませんって、言いに行こうとしたら

 また、おじさんに呼ばれて

 もう、このまま、ひとみちゃんに会わずに
 そのまま、終わらせようと思った

 

 でも・・・
 家に帰ってきて
 お風呂に入ってたら
 ひとみちゃんの言葉を思い出して
 辛くて、辛くて

 ずっとひとみちゃんの名前呼んでた
227 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:34

 最後に一目だけ見たいって思って
 お風呂屋さんの前で
 ひとみちゃんが出てくるのを待ってたの

 ひとみちゃんが、暖簾を下ろしに出てきて
 もう、それだけで良かったんだ
 
 そしたら、ひとみちゃんがわたしに気づいて
 まさか追いかけてくると思わなかった

 でも、どこかで

 許されるのなら
 ちゃんと、あなたに言おうって思ったの

 あなたのことが、好きです
 今でも、ずっと


 って・・・
 
 言おうとしたら
 ひとみちゃんに、抱きしめられてた

 “人魚みたいだね”

 って言われて

 今まで、呪いつづけてた自分を
 そう言ってくれたのが
 うれしくて、泣いちゃったの

 “好き”って言われて
 

 気持ちが抑えられなくなったの


 乾いたスポンジが水を吸い込むように
 心がひとみちゃんを求めだしたの
 もっと、もっとって・・・
228 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:35

「ひとみちゃんは、わたしの言いたい事を、全部先に言ってくれるの」
「・・・え?」
「時々、心の中を読まれてるんじゃないかなって思うくらい」
「そう、なの?」
「うん!だから鈍感なんて思ったこと一度も無いよ?」
「・・・でも」
「でもじゃなくて、はい!でしょ?」

いしかーさんはウチの頬に手を当てて
ニコッと笑ってくれた

「・・・はい・・・」
「うん!」
229 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:36

いしかーさんは、ペットボトルのお茶をコクッと飲んだ
ウチはまた煙草に火をつける

「ねぇ、いしかーさん」
「ん?なあに?」
「ウチ・・・さ・・・」
「うん」
「いしかーさんに、さ?・・・出会えて、良かったって思う。
 いしかーさんが、ウチの店に来てくれて、感謝、してる」

「ううん、こっちこそ。ひとみちゃんが居てくれて
 ほんとうにありがとう」

「い、いや、いやいや」
「フフフッ」

いしかーさんはウチの頬を包んで、おでこをくっつけた

「ねぇ、ひとみちゃん?」
「ん?なに?」

「大好き」
「・・・ウチも、大、好き」
230 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:37

「ねぇ、ひとみちゃん?」
「ん?なに?」
「ひとみちゃん」
「なに?」
「ひとみちゃーん」
「だから、なに」
「ひーとーみーちゃーん」
「なんだよ」
「ん〜、もう・・・ひとみちゃん」


・・・・・


「なに?・・・り、かちゃん」
「エヘヘッ」
 チュッ


ウチもそろそろ
いしかーさんを卒業しなくちゃ。
231 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:38

ウチはベンチを跨ぐように座って
いしかーさんの身体を横から引き寄せて
ギュッと抱きしめた
首筋に顔を埋めて、何度もキスをした


「ねぇ、ひとみちゃん」
「なに?り・・いしかーさん・・・」

・・・ヘタレが!





「・・・襲って?」

またかよ!!
今かなりマッタリムードじゃないの!?
なんでウチに心の中でツッコミさせるような事を言うかなぁ!?


「襲わないって、言ったじゃん・・・」

「じゃぁ・・・しよ?」
「あ・・・え!?」
 チュッ


「ここで」
「・・・はぁぁぁぁぁぁ!?」
 チュッ
232 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:39

こ、ここって、ここ? here?
ってか、あなたがスイッチ入る瞬間って
なにがどうなってそうなるのか、ウチはとても疑問なんですけど
あの、だから、その、む、無理だってば!


「したい」
「む、無理だってば!」
 チュッ

「どうして?」
「ど、どうしてって!そんな」
 チュッ

あなた
青噛ん(青○ン)で行って頂戴って
椎名林檎じゃねえんだから!
233 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:41

「だって、思ってないでちゃんと言ってっていったじゃん・・・」
「そ、そうだけど」
 チュッ
「だから、言ったの。ねぇ、しよ?」
「むーーりーーーだっつってんの!」
 チュッ

「どうして」
「どうしてもこうしても、ここ公園で」
 チュッ



あ・・・ヤバ・・・

この人、キス・・・上手だったんだ・・・





ウチの中の、火がつく




でも、アンタだめだから!
よしこ堪えろ!だめだって言ってんの!
乗っちゃだめ!捕まるから!
234 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:42



「・・・ダメ?」

いしかーさんはウチの手を取って、ジャケットの中に滑り込ませた

「ば、ばか!こら!」
「人居ないよ?」
「そーゆーことじゃなくって!!」


ジャケットの中ならまだしも
セーターの中にまで・・・

いわゆる、肌を、脇腹付近の肌を
その、触ってるわけでして

ちょ、ちょちょ、ちょっと待って!!
強引過ぎます!激しすぎます!
どうしたのさ!ねぇ、一体何があったの!?
よしこテンパってます!

「こここっここ、こ、こら!!」
「なあに?」
「だだ、だめだってば!!」
「どうして?」

さらに奥に手を滑らせる
もう強引どころの騒ぎじゃない

ウチの右手は、いしかーさんの胸にあってですね・・・
その、その・・・触っちゃってるわけでして・・・

ぬおおおおおお!!!
235 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:43


「くっついてたら、見えないよ?」

確かに今いしかーさんとウチの身体はかなり密着型でして
周りから見ても、ただ抱きしめ合って
イチャイチャしてるようにしかみえない

んだけど

「そぉぉぉぉ言う問題ぢゃねぇぇってば!!」
「したいのぉ」
「だーーーから!!!」
「ねぇってばぁ・・・」



ひいいいいいぃぃぃっ!


て、て、手が、手がぁぁぁぁ!
いしかーさんの、胸に、じ、直に触れてるぅぅ!!
がががががが!
236 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:44

「ねぇってば」

いしかーさんは、ウチの手の上から強く押さえつける
ウチの冷たくなった手が、彼女の胸に触れて

その、えっと・・・
ね、分かるでしょ?彼女の胸がどうなったかって・・・

ウチの頭の中はもう大パニックで


・・・でも、火がついちゃったもんだから


また天使と悪魔が出て来そうになるんだけど
今は痴話喧嘩させてる場合じゃないんだってば!
だからここ、公園だっての!外!外外!!
無理だっての!寒いし!
237 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:45

「りりりり、り、梨華ちゃん!!!」
「・・・なあに?」
「こ、こ、ここは、む、無理、だから、ね?」
「ん・・・」
「家、か、かえろ?ね?」

「うん、わかった♪」


いしかーさんはウチの手をサッと服から抜き取ると
少し乱れた服を整えた


もしかして、梨華ちゃんって呼ばせるために
この人ここまでしたの?

・・・ありえそうで、怖い(泣)



「おうち帰ろ?」

いしかーさんはテーブルの上の灰皿とペットボトルを鞄に詰めて
ウチをベンチから立ち上がらせた

「う。うん・・・」

意気揚揚としすぎじゃござんせん?
238 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:45

「ねぇ、ひとみちゃん」
「な、なに?」

ウチの手を引いて、歩き出したいしかーさんは
公園のゲート付近で立ち止まって、胸の中に飛び込んできた

「ど、したの?」

手を繋いだまま柔らかいその髪を撫でる

「・・・したい」

またかよ!!!



って・・・あ・・・



 チュッ





目を閉じて、少し顔を上げて
待っていたいしかーさんに
唇を落とした
239 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:46
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
240 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:48

公園から駅まで向かう間、ずっと手を握ってた

左手と顔だけすんごい熱くなって

電車に乗ったらヒーターでさらに熱くなって
体の中は、ムラムラするわけで

この人、火をつけるのが上手すぎる


トメコ荘に着く頃にはもうすっかり
その、あの、ね?

だから、キテる状態なんですよ
241 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:49

 ガチャッ

何度も訪れたいしかーさん家
今日はなんか、とても、すごく
ヤバイ・・・ヤバ過ぎる

ウチは後ろ手にドアを閉める

いしかーさんは鞄を玄関の脇に置くと
部屋に上がりもせず
振り返ってウチに抱きついてきた

「のわっ!!」
「・・・もう、我慢出来ないもん・・・」
「わ、わ、わわぁぁっ!」
「ねぇ、ひとみちゃん・・・」

首筋に顔を埋めるいしかーさんの息がかかって
くすぐったくって




「襲って・・・?」

また言いやがったな?こいつ・・・
ちょっとお仕置きしないといけませんね
やられっぱなしじゃ、ヘタレと言われつづけるもんな

あー、そうならいいさ
そんなつもりならウチだって負けてませんよ?
242 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:51

いしかーさんを抱きしめて
そのまま、その場に押し倒した

「え!?」
「襲って欲しいんでしょ」

ほとんど息だけで、いしかーさんに耳打ちした

「あ・・・う、ん」

ウチは乱暴にいしかーさんのジャケットを脱がせる

「あ、ひとみ、ちゃ」
「襲って欲しいんだろ」

ウチは低い声で唸るように言った
さっきはあれほど躊躇っていたけど
セーターの中に手を滑らせて、素肌に触れる

「んぁ!」
「襲ってあげるよ」
「んんんっ、や、あ!」

いしかーさんの上に覆い被さって
手で体中を弄る

「ん、あ!」
「してほしいんだろ?」
243 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:51

熱くて、ねっとりとしたキスをしながら
ウチは背中に手を回した

「ああ、ひと、みちゃ、お布団」
「言ったのそっちじゃん」

ブラのホックを右手で外して
ラインにそって指でなぞる

「ここは、いゃ、んんぁぁ!」
「声、我慢しな」

いしかーさんの顔は、強張ってるけど
声が漏れないように口を手で覆った

強く胸を掴んで、痛いくらいに揉みしだく

「んんぁ、やぁ!」
「誘ったの、そっちだろ」

「う、ううううう」

いしかーさんの目から、涙が零れた
ウチはそれを無視して
いしかーさんの顔の横に顔を埋めながら
手を下に伸ばした


「うぅ・・・こ、わい・・・」


「ひとみちゃ・・・こわいよぉ・・・」




あっさり白旗宣言いしかーさん
244 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:52



「プッ」
「ふぇ?」

なんとも情けない声を出すいしかーさん
このくらいで勘弁してあげましょ

「お仕置き」
「なに、がぁ?」

顔を上げていしかーさんを見つめると
恐怖と驚きと、なんて言うか
色んな感情が一気に出てた


「襲って襲って言うから・・・」
「うぅぅぅ」
「怖かった?」
「・・・ん、んん、うん・・・」
「ごめんね?」

首をフルフル横に振る
もう、かわいいんだから。

 チュッ


あんまりクジラさんを怒らせちゃだめですよ?

腕を引いていしかーさんを起こすと
ウチは、ぎゅーーーっと抱きしめた
245 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:53

「ごめんね」
「んん、ううん、い、いいの」
「襲ってってもう言っちゃだめだよ?」
「ん、うん」

手を口に当ててコクコク頷く
ウチは頭をずっと撫でて、泣き止むのを待った


まーったく・・・
大胆かと思ったら、急に怖気づくんだからさ

ウチが男だったら間違いなくそのまま続いてたってば。


かわいいお姉さんも好きですよ?
ダイジョーブだって。
ウチは逃げたりしないよ?
246 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:54

「ねぇ・・・」
「・・・ん・・・?」

いしかーさんが泣き止んだ頃、ウチは耳元でささやく
いしかーさんは耳が弱いみたいで

・・・多分、コレが彼女のスイッチを切り替えるんだな

「・・・どうする?」

「・・・・・」

いしかーさんは迷ってる
怖くって、でも、身体は求めてて

「布団、敷く?」
「・・・ん・」
「・・・うん・・・もう、あんなことしないから。ね」
「うん・・・」

ほら、こっちのほうがいいでしょ?
247 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:55


いしかーさんを起こして部屋に入る
なんか改まって布団敷くって
気分が冷めやしないけど、なんか、キンチョーするんだ

よし!するぞ!って、おかしいじゃない?


とりあえずジャケットを脱いで
ラフな感じでくつろぐことにしよ

ウチも慣れないことしたもんだから
恥ずかしくて、いしかーさんの顔まともに見れない

布団の上に座って、ちょっと離れたところに居る
いしかーさんを手招きした

「おいで?」
「ん・・・」

まだブルッてんのかよ・・・トホホ
あんなことするんじゃなかった
ウチはいしかーさんをやさしく抱きしめる
248 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:56

「ごめんね?」
「んん・・・わたしが、悪いの」
 チュッ

「怖かったよね」
「・・・ちょっと」
 チュッ
「ちょっと?」
「・・・けっこう」
 チュッ

「あはは、素直でよろしい」
「・・・だってぇ」
 チュッ
「なに?だって?」
「・・・ひとみちゃんの目が、違ったもん」
 チュッ
「どんな目だったの?」
「・・・なんか、野獣」
「・・・おい」
「エヘヘッ」
 チュッ
249 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:57

気持ちほぐれてきた?
もっとする?

いしかーさんの顔を見ると
さっきより、優しくなってた

「どっちでもいいよ?」
「え?」
「しても、しなくても・・・」
「・・・・・」
「このままお昼寝でもいいよ」

いしかーさんは
ウチのパーカーをギュッと掴むと
耳元で、消え入りそうな声で囁いた


「・・・抱いて・・・?」


「うん・・・」

250 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:58


 ひとみちゃ・・・

 ん? なに?

 ん、あぁ、ん!ひとみちゃぁ・・・

 なあに?

 んはっ、あ、ああ・・・はぁ、ひと、んんん!

 どうしたの?

 っもち、いい

 ん・・・もっと、よくしてあげっから・・・

 んん!やぁ!あっ、とみ、ちゃ

 なに? 梨華・・・

 んんん!!

 梨華・・・かわいい・・・

 だめ、も、もう、っちゃう

 梨華・・・

 んんんやぁぁぁぁ!

251 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 01:59
 >  <  >  <  >  <
252 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 02:00

「・・・はぁ・・・んっ・・・あ・・・」

ウチの胸の中で荒くなった息を整えてる

「・・・梨華?」
「・・・んん?」

「綺麗」
「・・・や、だぁ・・・」

“いしかーさん”、卒業するよ

だって、ね
その方が、彼女も喜ぶし、悦ぶし・・・。

ウチも、その方が
燃えるみたい
253 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 02:01

「梨華?」
「なあに?」

少し恥ずかしそうに顔を上げた彼女に
キスをする

「もう、襲ってって言っちゃだめだかんね?」
「ん・・・」
「もし、また言ったら、またするかんね?」
「・・・んん」
「ガルルルッ」
「フフッ、ひとみちゃん、狼みたい」
「クジラから狼になったか・・・梨華にはいつだって、狼さー」
「ほんとぉ?」
「ん、ほんと・・・」

笑って、泣いて、拗ねて
乱れて、悶えて、果てて・・・


まだウチの知らない彼女の姿を
もっと知りたい

ねぇ、教えて。
まだまだウチはお腹をすかせてるよ?
254 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 02:01



「ひとみちゃん・・・」
「ん?なに?」






「・・・襲って?」









テメェ・・・




255 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 02:02

いいよ、いくらでもしてあげる

もうすっかり踊らされてる
ウチは梨華に嵌ってる
梨華はウチに溺れてる


でも
ウチも梨華も、まだ足りないよね



梨華の声を、もっと聴かせて
梨華の身体で、もっと満たして


二人で 深い海に 行こう
256 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 02:03



257 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 02:03

「梨華?」
「なあに?」

「声、もうちょっとだけ我慢しようね?」
「あ・・うん・・・」

「隣の人に聞かれたくない」

「・・・恥ずかしいもんね・・・」
「それも、あるけど・・・」
「なに?」


「・・・やだ」
「やだって・・・どうして?」

「だって、梨華の声、聞かせたくない」
「ひとみちゃん・・・」

「ウチだけのもん・・・」
「なんか、ひとみちゃん、子供みたい」

「子供で悪かったね」
「かわいい」

「っるせぇ」
「あ、照れてるぅ〜」

「もう、黙ってってば」
「ひとみちゃん、赤くなっ・・・んん・・・」
258 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 02:05


ウチだけに聴かせて
人魚姫の甘い声

梨華だけに届けるよ
クジラからのLove Song

259 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 02:06

260 名前:SweetLoveSong 投稿日:2005/12/15(木) 02:08

(#´▽`)〜`O) <おしまい♪
261 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 02:09
更新終了でございますー

時間との戦いのせいか
作者動悸がいたします・・・

( ^▽^)<きゅうーしん、きゅーしん
262 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 02:10
レスポンス

>名無読者様
喜んでいただけて、本当にうれしいです!
ありがとうございます

>名無様
ありがとうございます!

>( ^▽^)が働いてるお店に行きたいAww
作者も同意見でございますww
しかし現実は結構、ね・・・

>名無飼育さん様
(0^〜^)<はい、ご一緒に?

ハァ━━━━━━ 0´Д`0 ━━━━━━ン!!!!

(*^▽^)<もう、ひとみちゃんったら♪


>名無飼育さん様
(;0T〜T)<ヘタレと呼ばないでぇ〜
263 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 02:10

>774飼育様
ありがとうございます!
お褒め頂いてもうなんと申し上げてよいやら泣
( ^▽^)<頑張っちゃう♪


>名無し読み手様
( ^▽^)<よろしゅうおあがり♪
やっぱいしよしはいいですよねぇ


>7&Y様
不動産屋はやっぱり彼女じゃないとww
作者は、後藤さんのキャラがイマイチ分からず
あんな飛んだ感じになってしまったんですが
喜んでいただけてうれしいです
(;0T〜T)<救心ぐでぇ〜

>名無し読者様
ありがとうございます!
作者有頂天小躍り状態でございますww

(#´▽`)〜`O) <さいこぅ〜!

>あいわい様
ありがとうございます
小ネタ満載しすぎてちょっと不安だったんですが
喜んで貰えてほんとにうれしいです!
264 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 02:10

>7&Y様
ありがとうございます。
マジで励みになりますm(_ _)m

>名無飼育さん様
( `.∀´)<飲み過ぎには注意よ!

>名無飼育さん様
足痺れてませんか?w
( ^▽^)<ツンツン♪
265 名前:774飼育 投稿日:2005/12/15(木) 02:10
更新お疲れ様です
なんかニヤニヤしたり切なくなったりと
自分ひとりで大変なことになってます!!
次回も楽しみにしてますよー(ニヤニヤ
266 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 02:13

今回更新分は
『眠れる人魚姫』
>>160-180

『SweetLoveSong』
>>186-260

でございます
267 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/15(木) 02:13
いい
すごく いい
何回も読み直してるけど
何回読んでも
すごく いい
268 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 02:16
今回で『くじらと人魚』シリーズは完了です

いしよし、バカップルを通り越して
ただのバカになってしまい・・・申し訳。
とくにこの人→( ^▽^)<いやん♪
イメージ崩しちゃってすいませんすいませんすいません


今回かなりギャグ入ったので
シリアスというか、ダークなものを構想中です。

次はいしかーさん視点の短編一本
そのあとに
中編〜長編物を一本行きたいと思います


269 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/15(木) 02:16
いしよしって本当に良いものですね
すっごい幸せな気分
270 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 03:44
作者談 その2

そして、今まで書いてきたストックが
全て出てしまい、今すっからかんなんで
もしかすると更新がゆっくりになると思います・・・
( ^▽^)<とかいっても明日もUPするんでしょ?

いしかーさん視点は切なめテイストになる予定です。
(;T▽T)<幸薄い・・・
271 名前:名無読者 投稿日:2005/12/15(木) 09:38
更新お疲れ様でした。

読んでいるこっちまで幸せな気分になれました。
ありがとうございます。

次の作品も楽しみに待ってます!
272 名前:7&Y 投稿日:2005/12/15(木) 17:30
お疲れ様でした
一段落ということなので読み返してみようかな〜と思ってます
クジラと人魚、凄くよかったです!
いしよしならバカでも許せるww
では次回更新期待して待っております♪
273 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 21:45
短編2本いきます
274 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:48

275 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:49


いつものホーム いつもの時間

あなたに出会ったのは
春も近い3月の終わり頃

少し前まで吹いていた北風も
もうどこかに行って
マフラーはクローゼットの中に仕舞った

ラッシュの時間から少し後の
暖かい陽射しが差し込む
駅のホームだった

276 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:49



わたしが座る席から見える扉に
もたれるように立って
外をいつも眺めてる

遠い目をして
何かを思い出すように

時々 フッと笑って
誰かを思うように


277 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:50


わたしは連結の1番近くに座る
ここからは無理な体勢じゃないと
あなたが見れない
でも


本を読むフリをしたり
吊り広告を見たりしながら

あなたを見つめてた





ねぇ 名前も知らないあなた
背が高くて
ショートカットが似合っていて
金髪で 肌が白くて
目が大きくて
カッコよくて

とても 意志が強そうな瞳をしている


278 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:50


わたしより先に駅にいて
わたしより先に電車を下りる


あなたが降りた後
わたしは あなたが立っていた場所に
そっと立ってみる

そこから何が見えるのか
景色は流れていって
同じ物は見れないけれど

あなたの温もりを少しだけ感じたいから

279 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:52


あなたの名前はなんていうんだろう
多分カッコいい名前なんだろうな
どんな声をしてるのかな
歳はいくつくらい?
学生なのかな
この時間に乗ってるのは
どこに行くの?
誰かに会いに行くため?

毎日 わたしは同じ事を思う



あなたと過ごす10分足らずのその空間のために
伸びていた前髪を切ったり
服装を整えたり


そんなことしたって
あなたはわたしに気づいてはくれないけれど

それでも・・・



こんな思いになるなんて
あなたを見るために持ってる
この小説のせいかもしれない

珍しく恋愛小説なんて読んでるから
少しだけ 恋がしたくなったのかも
しれないな


280 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:52

281 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:53


いつものホーム いつもの時間

今日はあなたが来ていない

胸が少し痛んだ

もう 会えないのかも知れない
そんな思いが過ぎる

ううん 今日はたまたまだよ
お家でのんびりしてるのかもしれない

そうそう

なんて自分に言い聞かせて・・・



だんだんと春の陽気になってきて
ぽかぽかした空気が漂う

本なんて読んでない
毎日同じページばかり開いてるから
折り目がついてしまった

明日は会えるのかな
会えるといいな

あなたのことを思いながら
わたしは眠りに誘われる

282 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:53

283 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:54


ふと、気づけば
見たことの無い景色が流れていた
しかも目の前の席には
乗車していたはずの人が誰一人としていない

もしかして、乗り過ごしたの?

・・・まぁ、いっか・・・
今日はのんびりしよう



あれ・・・?
わたし さっきから
誰かに凭れてる?

284 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:56




「・・・降りないの?」


え・・・?


わたしの頭の上から降る声

身体を少し起こして
凭れていた人を慌ててみると


あなたが居た


「降りないの?」


どうして・・・?

乗ってなかったんじゃ


ねぇ こんな小説みたいなことが
あってもいいのかな

285 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 21:58


「降りる駅、通り過ぎたね」

「・・・・・うん・・・」

「もう少し、寝ない?」

「・・・そう、だね・・・」




まるで 夢の続きを見ているように
ふわふわとした
柔らかい空気に包まれた

爽やかなコロンの香り

春風のように穏やかな鼓動

規則的に揺れる 電車


通り過ぎていく踏み切りの音も
次の停車駅を知らせるアナウンスも

だんだん聞こえなくなって


時間が止まった気がした

286 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 22:00


夢なら もう少しだけ
覚めないで







だけど 願いとは裏腹に

わたしは夢から引き戻される

287 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 22:00

288 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 22:01


やっぱり 夢だったんだ

隣には誰も居ない



フフッ
そうだよね
この小説みたいな話なんて
ありえっこないもの


もう 違う本を読もう
289 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 22:02


本を仕舞おうと
膝の上に置いてあった開いたままのページを見ると








『吉澤ひとみ 090-1444-XXXX bagel0412@doco......』




夢じゃ・・・なかったんだ


うれしくて

本で顔を隠しながら
涙を流した

290 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 22:02


あなたのつけていたコロンと同じ香りが
風に乗って流れてくる


もう一度走り書きを見る

夢じゃないんだ



そのページは

小説の中の主人公と恋人が
再び落ち合う場面



わたしの願いが 通じたのかな
こうなりたいと 思っていたから

291 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 22:03



春の訪れを
あなたから 感じました

恋の始まりは
あなたから もらいました


292 名前:train 投稿日:2005/12/15(木) 22:05

train

            fin

293 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:08

294 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:09


久しぶりに この場所を訪れる
たまたま通りがかった

1年前によく来ていた駅のロータリー



よく待ち合わせしてたよね
この場所のこの花壇にあなたは腰をかけて

わたしが来ると立ち上がって嬉しそうに笑顔をくれてた

295 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:10


いつからわたしたちはすれちがったんだろう

嫌いになって別れたんじゃない
好きすぎて 言いたいことも言えなくなって

傷つけあうだけだから もう終わりにしよう

わたしはそうあなたに切り出した

あなたは
「うん」それだけ言って
わたしの前から去っていった

296 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:10


今はどこに居るんだろう
まだあの街に住んでいるのかな
それとも どこか遠い場所にいるのかな

ここに居たって あなたが来るわけないのに
なぜか入り口の方を見てる


ねぇ もしあなたともう一度会えるなら
やりなおしたいって思うの

もし まだわたしを好きで居てくれるのなら
あなたに謝りたいって思うの

297 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:11


だけど そんな偶然なんてあるわけ無いよ
もし居たとしても
休日でにぎわうこの場所で
あなたを見つけられるはずがないもの


そう もういい加減終わらせなさいって
言われてる気がした



そうだよね
新しい誰かと一緒に
あなたは居るのかもしれない

いつまでも
思い出のあなたを心に
わたしは留めてちゃいけない

298 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:12


もう 帰ろう
ここには 用はないもの
あなたが私を迎えにくることなんて
ないもの


小さくついた吐息と一緒に
恋の終わりを告げようとした

299 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:12




どうして・・・


心はまだ あなたを好きなんだ



だって

こんな人ごみの中でも

あなたを見つけてしまったから


300 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:13


あなたとの距離は

名前を呼べば気づく

それくらい近くて


だけど呼べない

呼んじゃいけない とても遠く感じた


誰かと待ち合わせしてるのかな

時計を見て辺りを見渡して
携帯で誰かに連絡をしてる

おねがい 気づかないで

わたしは動けなかった

足が固まって


だけど もしかすると

動きたくなかったのかもしれない

あなたを見てたかった

301 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:16


少しため息をついて
あなたは辺りを見渡してる
目を細めて 遠くを見るクセは
今も変わってない

わたしも ああやって
探されてたな

どれだけ近くに居ても
遠くを見てるから 気づかないんだ

至近距離で
わっ!って驚かすと
んだよ!ってちょっと怒る
そのあと決まって 照れる

今も 変わってないのかな

302 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:17


なんて
まるで あなたを
映画のスクリーンを観るように見ていたら


あなたの大きな瞳が
わたしを見て 止まった


ゆっくり近づいてくる


どうして ねぇ

おねがい わたしの後ろに誰か居るんでしょ?

どうして ねぇ

今もそんな やさしい顔をするの?

303 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:17


「やぁ・・・久しぶり」


変わってない わたしの胸に響くハスキーな声


「元気、してた?」


わたしは手を温めるフリをして うつむいた
1つ分あけて あなたはわたしの横に座る

あなたの顔を見ることが出来なくて
組んだ自分の手を じっとみつめてた


「今は、どうしてるの?」

「あ、いかわら、ずだよ?」

「そっか・・・」

「そっち、は?」

「ウチも変わってない」

「そっか・・・」

304 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:18


あの時の事 聞いてもいい?

今のあなたを 聞いてもいい?



「あの時は、お互い子供だったんだろうね」

あなたは わたしの心を読んだように

「好きすぎて、言いたいことが言えないだなんてね」

遠い昔話のように

「ウチ、梨華ちゃんのこと、壊してしまうかもって」

懐かしむように

「いつも・・・ビビってた」

優しく 穏やかに言葉を紡ぐ

305 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:19


「でも・・・」



ねぇ もしわたしの願いが叶うなら

もう一度  もう一度だけ

チャンスを






「誰よりも・・・好き、だった・・・」





・・・過去、形・・・


「何よりも、愛してた」




そっか・・・


期待しちゃった・・・少しだけ・・・


“でも”の後に続く言葉を

少しだけ

306 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:20


「梨華ちゃんは、今、恋人いるの?」


それは もう

期待しないでって意味なんだよね

わたしを 緩やかに

そして 鋭く突き放つ

あなたの 意思表示?


「・・・いないよ?」

「そっか・・・」


「・・・そ、っち、は?」


聞きたくない

聞きたくない

お願い

言わないで


「・・・んー。どうだろう」

曖昧な返事は 前と同じなんだね

突き放すわけでもなく

待たせるわけでもない

あなたの優しさ

それが わたしを傷つけていたこともあった

307 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:22


「どうだろう、って・・・」

「ビミョーってヤツ?」

柔らかに笑うあなたは

わたしの気持ちなんて 分からないんでしょう?



ごめんね

やっぱりわたし

あなたが今でも好き

だから その優しさが

とても 憎い


立ち直れないほど 傷つけるわけでもない

あなたの 優しさが

憎い




優しいあなたが 好き

だけど優しすぎるあなたは 嫌い

308 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:24



「あ、来た来た」

あなたは入り口の方を見て

今日一番の笑顔になった



昔誰かが言ってた

人を好きになるのは その人の横顔なんだって

誰かを見つめて 思いを馳せる

その横顔なんだ って・・・



いつも隣で見あげてた あなたの横顔

もう別の誰かが 見てるんだね

309 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:25


「じゃぁ、ね」


あなたは やっぱり最後まで言わなかった


入り口の方へ走っていく

可愛い 女性

足が長くて 顔が小さくて

長いストレートの髪






あの人と同じ長い髪は

明日 切りに行こう

もう いらない

310 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:26


二人はとても自然体で

お互い腰に腕を回して

人ごみを分けて 歩いていく

わたしの手を取っていた あなたの左手は

彼女の腰に回される




周りの行き交う人が 振り返るような

とてもお似合いの二人


あなたは 一度も振り返らない

311 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:27


物陰に隠れる 少し手前で

あなたと彼女が立ち止まる

彼女がしゃがんで 靴紐をなおしていると



あなたは わたしのほうを向いて

口を動かした






“  バ イ バ イ  ”






彼女が立ち上がり 彼女に笑顔を見せて

二人は 街に消えていった


312 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:28



バイバイ・・・



バイ、バイ・・・




またね

って・・・期待してた


言ってほしかった


もう 会わないんだね


もう 会えないんだね



最後まで 声にして

言ってくれなかった



もう 会えないんだね

313 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:29


わたしは

その場所で 泣いた


あなたと待ち合わせていた

あなたが座っていた

この場所で


あなたを思いながら

泣いた

314 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:30


ごめんね

今になって分かる

ごめんね

今更もう遅いよね

ごめんね

もう消さなきゃね



だけど 伝えたかった

ほんとうの気持ち



いまでも あなたが 好きだって


こんなに あなたを 愛してる 

315 名前:terminal 投稿日:2005/12/15(木) 22:30

terminal
fin

316 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 22:31

更新終了です

train
terminal とも石川さん視点で書きました
317 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 22:34
レスポンス


>774飼育様
一人百面相、周りは誰も居ませんか?ww
ありがとうございます
今回は緩やかに行きたいと思います

>名無飼育さん様
そんなに褒められちゃ照れまするww


>名無飼育さん :2005/12/15(木) 02:16
( ^▽^)<水野晴男さん?
(0^〜^)<だれ、それ
( ^▽^)<映画の人・・・おもしろくないですか?
(0`〜´)<おもしれぇよ!


>名無読者様 :2005/12/15(木) 09:38
(#´▽`)〜`O)<幸せおすそ分け♪

>7&Y様 :2005/12/15(木) 17:30
バカで大丈夫でしょうか?汗
いしかーさん飛ばしすぎたような気もしてならないんですが
ありがとうございます
318 名前:Rink 投稿日:2005/12/15(木) 22:35

今回の更新分は

train >>274-292

terminal   >>293-315

です。

余韻に少し浸っていただきたいので
小一時間、開けます

よしざーさん視点でterminal上げたいと思います
319 名前:774飼育 投稿日:2005/12/15(木) 22:58
切な過ぎます・・・ 涙が出そうです・・・
320 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/15(木) 23:29
( ;´ Д `;)<切ないぽ
321 名前:名無読者 投稿日:2005/12/16(金) 00:27
ずっとほんわか幸せモードだったので、
もの凄く切なく感じました・・・
322 名前:Rink 投稿日:2005/12/16(金) 00:29

terminalU  side H
323 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:30

324 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:32


「ねぇ、よしこ。どうしたの?」


信号待ちをするごっちんがウチを見上げてこう言った


「なにが?」

「腰に手なんて回しちゃってさ。そう言う関係だったっけ?」

「あれ、違ったっけ?」

「別にいいけど、どっちでも」

325 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:33


久しぶりに来たこの駅

嫌だって言ったのに
ごっちんはどうしてもここがいいと言い張った
自分の職場が近いからって理由だけで・・・


ウチは心が痛んだ

少しだけ ほんの少しだけ

思い出すから 彼女の事を・・・

326 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:34


327 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:35


二人の中間を取って
いつも待ち合わせはこの場所だった

ウチは彼女が来るのを 花壇に腰掛けて待ってる
入り口の方をずっと見てるんだけど
彼女は神出鬼没で
いつも決まった場所から現れない

だから周りをキョロキョロ見渡してた

振り返ったら真横に立ってて
「わっ!」なんて驚かすんだ


笑顔が可愛くて 負けず嫌いで
心が優しくて 弱くて だけど強い

328 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:37


何故 二人が終わりを告げたのか
そんなこと 今更思い出せるわけがない

もう 一年以上も前のこと

心に蓋をして
ただひたすら 思い出さないようにしてきた

会いそうな場所には出来るだけ行かず
思い出しそうなものは 全て捨てた


だって ウチは

どれだけ離れても
どれだけ嫌われたとしても


今でも彼女が 好きだから

329 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:37


それだから なのか
それなのに なのか・・・

まさか あなたに会うなんて思わなかった

いつもウチが居た あの場所に
あなたが居たから・・・

心臓が止まるかと思った
動き出すまでに時間がかかった

でも たぶんそれはほんの数秒で

うれしくて
ただうれしくて

迷わずあなたに近づいて 
あなたに声をかけた

いや・・・
かけてしまった の 間違いだと思う

330 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:38


331 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:40


「あ、ごっちん。ほら信号変わったよ?」




よく渡った この横断歩道
渡りきれずに 真中で二人で立ち止まった


最終電車に間に合わないかもね なんて言ったら
それでもいいよって 彼女はウチに抱きついて

キスをしてくれる


暑い夏の日も 雪が積もる朝も
二人で 何度も この道を行った


信号待ちをするたびに キスをして
信号がかわったら 手を繋いで歩き出す


少し照れた 彼女の顔が
今も頭から 離れない

そして

332 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:41


さっき見た彼女の 辛そうな顔が
頭から離れない


苦しそうに吐き出した
言葉の破片が

ウチを拒絶していたから



ウチは少し頭を振った
忘れるように
もう忘れなきゃ・・・



「さて、何の映画観る?」



ごっちんの腰から腕を抜いて

ウチは横断歩道を歩き出す

333 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:42




「・・・行ってきなよ・・・」

「・・・え?」


ちょうど真中の 
あの場所で 立ち止まった



「行って上げなって」

「・・・なんだよ、急に」

「・・・わたしが気づかないとでも思ってんの?」

「なん、のことだよ」

「あてつけじゃん」

「だから、なにが」

「彼女いたじゃん・・・」


勘が鋭いんだね・・・


「・・・もう、終わった事だよ」

334 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:43


本当にそう思う?

ねぇ 自分

本当にそう思う?




彼女が 隠してたけど

胸の前で組んでいた

右手の薬指

ウチがあげた リングが

まだ つけられてたじゃないか




ねぇ 本当にそう思う?


「本当に、そう思ってんの?」

335 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:44


「ねぇ」



「行ってあげなよ」



「わたしのことなんて、いいからさ」

336 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:45


「行きなよ!!!」

「もう終わったんだよ」

「うそつけ!!」

「うそじゃないって・・・」

「じゃあなんでそんな辛そうな顔してんだよ!!」

「そんな、わけ・・・」

「好きなんでしょ!やり直したいって言いに行きなよ!」

「そんなこと、出来るわけ、ないだろ・・・」

「・・・彼女・・・泣いてたよ」


ごっちんの言葉に動揺する



そんな はずない

彼女が 泣くだなんて

そんなはず

337 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:46


行き交う人が走り出す


選択を迫られてる



ここで進めば 終われる

戻れば やり直せる

だけど全て 希望にしか過ぎない

ウチの 期待にしか過ぎない

彼女がまだ ウチを好きだなんて

そんなこと ありえない

338 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:47


信号が点滅する



「分かってるよ、よしこのこと全部」



「あてつけみたいに、腰に手回したり
 彼女に向かって、さよなら言ったり」



「どうしてそんなことするのさ」



「なんで彼女を選ばないのさ」



「好きなんだろ!!今でも好きなんだったら行きなよ!」



「泣くんなら、彼女抱きしめて泣きなよ!」



「行けってば!!」

339 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:48


「ごめん・・・」




信号が赤になる直前

横断歩道を 渡りきった



もう 無理だって

言い聞かせた

そんなこと 無いって


いくら強く言われたからって

そんなの推測でしかないじゃない

それにウチはさっき

もう言ったんだよ

1年越しに 言えたんだよ

だから もう

いいんだ

340 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:49



ねぇ 


そうやって 言い聞かせた自分を

あなたは 許してくれる?


341 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:50



342 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:52


「・・・梨華ちゃん」

蹲る彼女に声をかける
小さくなって 寒さに震える雛鳥のように


「・・・な、んで・・・」

「梨華ちゃん・・・」

「ど、うして・・・」

「・・・ごめん・・・」

「なんで・・・行ったんじゃ」

「ごめん・・・」

343 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:53


震えながら 涙をこぼしながら
彼女は何かに耐えるように

ウチを見上げて 睨んだ


「もう、会いたく、ない」

「・・・・・」

「また、会った、ら」

「・・・会ったら?」


最後まで聞こう

それが 彼女に対する

精一杯の 誠実だと思ったから




「会ったら・・・あっ、たら・・・離れたく、なく、なるから」

344 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:54


行き場を無くしてた ウチの両手が


あなたを抱きしめたいって言ってる



ねぇ

もう泣かないで

お願い 慰めさせて

ウチに 謝らせて

ウチに 涙を拭わせて



ねぇ

今でもあなたを 愛してる

345 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:55


彼女の震える肩を抱き寄せた
もう二度と 離さないように


「離し、てよぉ」


彼女は泣きながら必死で離れようとする


「はな、してってばぁ!」


ウチの胸を 彼女はめいいっぱい殴る


「気まぐれなんて、要らないよぉ!!」


ウチの肩を 両手で力いっぱい突き放そうとする


「どうして、また現れるのよぉ!!」


それでもウチは 彼女を抱き寄せる


「どうしてよぉぉ!!」


ウチは 痛いくらい 抱きしめる

346 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:56



「好きだから」



「・・・ぇ・・・?」


彼女は 殴る手を止めた


「今でも、好きだから、梨華ちゃんのこと」



ごめん

バイバイなんて

言いたくなかった

ごめん

あなたの前で

泣きたくなかった

ごめん

今でもあなたが好きなんだ

347 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:57


「離れたくない」


「ウチ、梨華ちゃんの隣に居たい」


涙が止まらない


「ずっと、今も、ずっと」


「好きなんだ」

348 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 00:58


「・・・嘘なんて、つかなくていいよ」

「嘘じゃない」

「気なんて使わなくていいよ」

「使ってない」

「もういいよ!もういい!!」

「よくない!!!」



ウチは梨華ちゃんの腕を掴んだ
どこにも逃げないように

いや・・・
ウチが 逃げ出さないように



「もう・・・自分に嘘はつかない」


「ウチは、今でもあなたを愛してる」


「あなたが居ない未来なんて、要らない」


「梨華ちゃんに、居てほしい」


「ずっと、居て、ほしい」

349 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 01:01


ウチはまた 強く彼女を抱きしめた

後から後から溢れてくる涙を

止める事無く
ウチは彼女の肩を濡らしていく

彼女も
ウチの胸を濡らしていく


やっと言えたほんとうの気持ちは

“ バイバイ ” なんかじゃなく


ずっと言いたかったほんとうの気持ち

“ これからも ずっと 愛してる ”

350 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 01:02


「信じて、いいの・・・?」

うん

「本当、に・・・?」

うん

「離れ、ない?」

うん


「前みたいには、なれ、ないよ?」

「新しく、始めればいい」

「わがまま、いっぱい、言っちゃ、うよぉ?」

「構わない」

351 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 01:03


「ごめ、ん」


「今まで、ごめん」



「ひ、とみちゃ・・・」


やっと名前を呼んでくれた
愛しい 愛しい あなたから




「ひ、とみちゃ・・・うあああああぁ!!!」

「梨華、ちゃ・・・」





行き交う人が足を止めて

ウチを見てたけど


関係ない

352 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 01:04


353 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 01:06


人の出入りも少なくなって
辺りが静かになり
空車表示のタクシーが並びだしたころ

ウチらはその場所で 座り込んで
花壇に倒れこむように抱き合ってた


もう 1ミリも離れたくない



「・・・最終、なくなるね・・・」

「ん・・・いいよ、なくなっても」

以前と同じ事を言ってくれる

「いいの・・・?」

「うん・・・」

354 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 01:08


ウチは泣きすぎて 脱力感が残る体を
なんとか立ち上がらせた

「・・・かえ、るの・・・?」

「ウチん家、いこう」

「うん・・・」


電車で来た道を戻る

いつも開いていた左側に

今日は 彼女が寄り添うように座ってる


違うな

これが 普通なんだ

355 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 01:09


家に着いて
ウチは もう何もせずに
彼女とベッドにもぐりこんだ

一晩中 今までの隙間を埋めるように
強く 抱きしめあった

身体なんて いつでも求められる

今は あなたと ずっとこうしていたいから


言葉も要らない
温度と あなたの呼吸だけで
もう全部 分かるから

356 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 01:10


「ねぇ、ひとみちゃん・・・」

少し擦れた彼女の声が ウチを呼ぶ

「なに?」

「・・・ここに、誰か寝た?」

「ううん。誰も」

「そっか・・・」

彼女はそれだけ聞くと また身体をウチに埋めた


彼女の不安は しばらく拭えないかもしれない

今後ずっと 拭えないかもしれない

それでもウチは ずっと彼女の頭を撫でながら


不安を取ってあげたい

357 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 01:11


以前のようにはなれなくても

新しいウチらで

いいんじゃないかな


今まで たくさん傷つけあったから


これからは 愛しあっていこう




ねぇ 梨華ちゃん

358 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 01:11


359 名前:terminalU 投稿日:2005/12/16(金) 01:12

terminalU  side H

               fin
360 名前:Rink 投稿日:2005/12/16(金) 01:13
更新終了でございます
361 名前:Rink 投稿日:2005/12/16(金) 01:14

今回の更新分は

train  >>274-292

terminal   >>293-315

terminalU   >>322-359

ホントはよしざーさん視点を入れないつもりだったのですが
無理でした・・・だって
(#´▽`)〜`O) ←ですから
362 名前:Rink 投稿日:2005/12/16(金) 01:14
レスポンス

>774飼育様
作者自身、いしかーさん視点書いてて泣きました(アホ)
幸薄い彼女に多きの幸あれww

>名無飼育さん様
(;T▽T)<幸せ探しに行きませんか〜?

>名無読者様
実は作者、切なめのほうが書きやすいんです汗
しかもいしかーさんには似合うんでw
363 名前:Rink 投稿日:2005/12/16(金) 01:15

作者から告知。

皆様、赤板から続いてましたラインって作品を
覚えてらっしゃいますでしょうか

次回『LINE』『Cross』の集大成
『LOOP』を上げたいと思います。

実は今月末の一大イベント
年に一度のあの日に上げたかったんですが
今書いてます、次回連載作『歪んだ太陽』が
やったらと長くなりそうなので
涙流しつつ、載せる事にしました

一足早い、いしよしクリスマスってことで。
おたのしみに〜
364 名前:774飼育 投稿日:2005/12/16(金) 01:22
更新お疲れ様です
LOOPに向けてLINEとCrossを
もう一度読み直そうと思ってますー
さてどんな話になるのやら・・・
楽しみにしてます
365 名前:名無読者 投稿日:2005/12/16(金) 01:26
いしよしはやっぱりちゃんと繋がってるのが良いと再認識w

この作品の中の二人は気持ちが通じ合えてヨカタ・゚・(ノД`)・゚・
思わず自分と照らし合わせて読んでしまいました(汗

もう一度『LINE』『Cross』読み直しながら、次の更新待ってます!
366 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/16(金) 01:33
いしよし可愛い
367 名前:名無 投稿日:2005/12/16(金) 02:41
切ない‥(T0T)
でも、最後は良い感じで終わったので安心しましたw
いしよしクリスマス楽しみにしています^^
368 名前:あいわい 投稿日:2005/12/16(金) 09:25
あぁぁぁあ(涙
よかった、本当によかった…!最後はこう終わってくれてよかったです(感涙
Rinkさんのいしよしには毎回号泣させられています…!
さて、次に備えて『LINE』『Cross』の復習をしてきます!
『LOOP』楽しみにしています!
369 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:14

370 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:18

今日は25日、クリスマス

昨日と今日は店が完全予約制で
梨華のクリスマスライブがある
ムーディーな曲を選曲してるようだ
梨華の歌声は結構人気があり、ニューヨーカー達にも受けている
もちろんNY在住の日本人のお客さんも来てて
お店は繁盛している
371 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:18

今日の彼女はクリスマス仕様という事もあり
深紅のロングドレスでぐっとセクシーな雰囲気

梨華の歌が始まると
ウチはカウンターの中から、梨華の歌う姿をじっと見つめてる

贅沢じゃない?
だってさ、仕事とはいえ
自分の彼女がクリスマスソングを歌ってくれるんだよ?
時々こっちに視線を向けては
ウィンクだったり、笑顔だったりを送ってくれる

「吉澤、でれでれしすぎ!」
「す、すいません・・・」

今日はカオリさんも来ていて
ニヤケ面だったウチを注意してくれた

まずいまずい。
372 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:21

去年のクリスマスは
引き裂かれる思いだったよね
お互いが思いを出せなくて、傷つけて
だけど梨華はウチが越えられなかった壁を越えてきてくれた

ねぇ、ウチは本当に幸せだよ
こんなに幸せになっていいの?って時々怖くなるくらい


でも梨華は優しく頬に手を当てて
まるで母親が子供をあやすように

「いいんだよ?ひとみは愛されていいの。もっと受け取って?」

って言ってくれる

後悔してない?って聞いたこともあった
だけどその時だって

「ひとみが居ない人生の方が後悔する」

彼女は大きい
そして強い
ウチは彼女に追いつきたい
ウチが彼女の手を引いて、歩いていきたい・・・


でも、守るとか、守られるとか
本当はどうでもいいのかもしれない

彼女と手を取り合って、歩けることが

全てだと思うから

373 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:21
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
374 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:22

店も終わって、二人で手を繋いで帰る
今日は早く店が閉まったので、地下鉄の時間を気にして慌てる事も無い

「ひーちゃん、歩いて帰らない?」
「寒くない?」
「大丈夫」
「うん、わかった」

梨華は甘えたい時にウチをひーちゃんと呼ぶみたい。
刺すような寒さなのに、何故か今日は暖かく感じたのは
多分隣に梨華が居るから


「♪真っ赤なおっはっなーのー、トナカイさんはー」
「ハイハイ」
「いっつもみんなのー、わぁらぁいものー」
「あららー」
「でもっそのとっしのー、くりすますのーひー」
「はいよー」
「さんたのおじーさんはー、言いまっしたー」
「なんてー?」
「あはは!なにその掛けごえー」
「いや、聞いたほうがいいかと思って」

梨華は繋いでいた手をブンブン振って歩いてる
うちも今日は心がいつもより浮かれてる
375 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:24

「たーのしー!」
「お店のあまりものだけど、ケーキも貰ったしね」
「うん♪お家に帰ったらターキーが待ってるよー」
「デパートのな。来年頑張れな、梨華」
「う、うん・・・」

ターキーを焼くといって意気込んだものの
スーパーに置いてあった鳥を目の前にして
「丸のままは嫌ぁぁ!」と
断念したのだ・・・何を隠そう鳥嫌いなんだなぁ
やっぱりリアル過ぎたみたい
来年こそはと意気込んでたけど、鳥嫌いが原因じゃ
来年も無理なんじゃないのかなぁ・・・

376 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:25

「ねぇ、ひとみ?」
「ん?なに?」
「わたし、幸せだよ」
「うん・・・ウチも」
「時々、怖くなるくらい」
「・・・同じ」

「こんなに幸せで・・・明日の朝、部屋に隕石が落ちてきたらどうしようとか
 いつか道がガーッて割れて落っこちたらどうしようとか
 うさちゃんリンゴを喉に詰まらせて倒れちゃったらどうしようとか
 自転車のサドルが取れてて、ひーちゃんのお尻に刺さったらどうしよ」

モガッ!

止めどなく繰り広げられる妄想劇場を
梨華の手を繋いでいないケーキの袋を下げた右手で塞いだ
勢いが良すぎてケーキが崩れてるかもしれないが
この際構わない。

どう考えてもピンポイントで隕石は落ちないし
道が割れるってのもありえないし
一番最後が1番どうかと思った・・・

377 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:25

「でもね」

ウチの右手を、梨華の左手が覆う

「でも・・・多分、神様が言ってるんだと思うの」
「なんて?」

梨華は口元に合ったウチの手を握ったまま
ぴょんと飛んで、ウチの前に立った

「幸せになりなさいって」
「そうだね・・・」
「だって愛されるために生まれてきたんだもの」
「そうだね」
「・・・ひーちゃん」
「ん?なに?」

「ぎゅってして・・・?」

梨華を引き寄せて、抱きしめる

「あったかい・・・」

「うん、ウチも」

「ひーちゃんが居ると、うれしいの」

「うちも・・・梨華が居ると、うれしいよ」

梨華が少し顎を上げる
キスが欲しいサイン

戸惑い無く、梨華と唇を重ねる

たいしたもんだよ、ウチも
梨華が傍にいてくれるからだね
こんなにも変われるとは思わなかった

378 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:28


そう、こんなにも・・・

ジャケットの中にある小さな箱が
物語ってるかな



「さぁ、帰ろ?」
「うん!」
「鳥が待ってるぞー」
「やぁだぁー!」

379 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:29
  X  ―  X  ―  X
380 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:32

「I'm home」
「さっびぃぃぃ」

「もぉ、おかえりって言って・・・って、これ」


部屋には、梨華の背丈ほどあるクリスマスツリーが置かれている


「あはは、驚いた?」


今日、梨華がライブの打ち合わせで早く家を出たから
その間にツリーを飾って置いたんだ

梨華が欲しい欲しいって言ってたけど
デカイのはダメ!邪魔になるから!と
テーブル用のミニサイズで我慢させたんだ

でも梨華が家を出てダッシュで自転車で買いに行ったの。
持って帰るのにかなり苦労したけどね

381 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:32

「こ、これ・・・これ・・・」
「梨華が欲しがってたツリー」
「でも、だって、ダメって」
「まぁ、クリスマスだし。去年驚かされたから。今年はお返し」

「う、うう・・・ううう、ひーちゃぁぁん」

あらら、泣き出しちゃったよ
ウチにしがみついて、わんわん泣いてる梨華の頭を
手袋をはめたままの手でポフポフ撫でた

「ひいちゃぁ・・・好きぃぃ」
「うん、ウチも梨華のこと大好きだよ」
「大好きぃぃ」

ほらね?素直になってるよ

382 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:33

梨華が泣き止んだ後
二人でささやかなクリスマスパーティーをした

ケーキとターキー、少しだけシャンパンを飲んで。
しかもここはNY。夢のようなクリスマス
隣には梨華が居る。最高のクリスマス。

クリスマスツリーをバックに、部屋の明かりを消して
窓から見える街の明かりを見てた

二人で寄り添いながら
時々見詰め合ってはキスをして。


「さぁさぁ、早く寝ないとサンタさんが来れないよ?」
「やぁだぁ、もっとピッタリしたいのぉー」
「ぴったりっていうかいちゃいちゃの間違いっていうか」
「もう、黙って」

383 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:34

そういって何度目のキスをしただろう
もうわかんないくらいのキス

ここがNYだから、こんなにもしてるのかな
もし日本にいて、あのボロアパートだったとしても
してるのかな

ちょっと物思いに耽ってたら梨華が顔を覗き込んできた

「どうしたの?」

梨華が居るから、だな


どこに居ても、梨華が隣に居るから
手を繋ぎたくなる
抱きしめたくなる
こうやって、キスしたくなる

「ん・・・」

384 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:34

梨華を抱きしめて
耳元でささやく

「ねぇ、目閉じて。30数えて?」

「え・・・?」
「いいから・・・」
「分かった・・・」

ちょっと不安な顔をした梨華の腕を解くと
梨華はカウントを始める

「one...two...three...four...」

立ち上がって、クローゼットに向かう
ジャケットの中に閉まっておいた小さな箱を取り出して
向こうで数える梨華のほうを見る

「eleven...twelve...」


去年の梨華も、こんな気分だったのかな
本当は見つめたい

見詰め合って、あなたとキスをしたい
でも、見つめられると離れられなくなる

今だって、ウチは
こんなに近くにいても
はやく、あなたの瞳を見つめたいって
胸が急かすように高鳴るんだから

385 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:35

クローゼットの奥に、隠していたものを持って
梨華の前に座りなおす

両手を組んで胸の前にあて
何かを祈るように目を閉じてる梨華

早くその唇に、キスしたくって
ちょっと苦笑いしちゃった

「25、26、にじゅーなな、にじゅーはち」

あはは!いつから日本語になったんだ?
英語はまだまだ勉強中だね、梨華


「にじゅーきゅう、さんじゅう!」

「ゆっくり、目開けて」

「うん・・・」

386 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:35



「え・・・これ・・・」


「Merry Christmas」


「あ、え・・・?」


「今年は、ウチから・・・」



387 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:37

388 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:37


ひとみはわたしに小さな箱と、一輪のバラをプレゼントしてくれたの

「あけ、て・・いい?」
「どうぞ」

とっても優しい笑顔で答えてくれる

箱の中にはループ状の刻印が連なり
その中心に小さなダイヤが光るリングが入ってた

指輪を箱から取って、手の上に置いた
小さくて、でもそれには
ひとみの思いが込められている、リング
内側を見ると、指輪の中にはあの言葉が彫られていた

ひとみが優しく囁く

389 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:38


 「infinity eternal」




 “限りなく、そして永遠に・・・”






 「I love thee」





 “あなたを愛す”


390 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:39

「う、ううううううぅ」


「梨華?」


「ううぅ、うっぐ、な、なにぃ?」


声が上ずって、返事がちゃんとできない
ひとみの顔を見たいのに、涙が邪魔をする

391 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:39










「結婚して」



「え・・・?」





涙で滲んで、顔が見えないけど
でも、ひとみの目は真剣に、ちょっと眉を下げて
何かを我慢するようにぐっと下唇をかみ締めてた

392 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:40






「ウチ、梨華の傍に居たい・・・梨華に、傍に居て欲しい」



「だから」



「・・・結婚してください」







「はい・・・」





393 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:40

ひとみはわたしの手の中にあった指輪をとって
左手の薬指にはめてくれた

その指はちょっと震えてたけど
それは、ひとみの中にいつもあった
怖れからじゃなくって

幸せをかみしめてるからだって

そのあと私を見つめて交わした
キスの暖かさから伝わったの

394 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:41


あなたに初めって会った時から
予感していた

わたしはこの人のものだって・・・

あなたの瞳に見つめられた時から
感じてたの

ねぇ、これって運命って言ってもいい?


395 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:42


ひとりぼっちだったあなたとわたし
点と点が
2人が出会って
線になって、交わって
円を描き出した


この上ない幸せに
あなたからの愛に包まれて
胸がいっぱいで
もう、言葉が見つからないよ
うまく伝えられない

396 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:43



「梨華、愛してる」


「わたしも、ひとみのこと、愛してるよ」




動き出した

永遠に続く、ループ



397 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:44


 ―  X  ∞  



Line Cross LOOP

                  fin

398 名前:LOOP 投稿日:2005/12/16(金) 21:45

399 名前:Rink 投稿日:2005/12/16(金) 21:45


更新終了です

今回の『LOOP』で
『ライン』は完結です
長々とありがとう御座いました
400 名前:Rink 投稿日:2005/12/16(金) 21:46
レスポンス


>774飼育様
ベッタベタにこんなになりました
楽しんでいただけたでしょうか〜?汗

>名無読者様
ターミナルのいしかーさん視点で止めるかどうか
本気で迷いました。
しかしそれが出来ない・・・作者も同意見でございます
後藤さんが不憫でならない。・゚・(ノД`)・゚・。

>名無飼育さん様
(#´▽`)〜`0)<らぶらぶ♪

>名無様
喜んでいただけて光栄でございます
やっぱり最後は、ああしないと
無言の圧力が・・・
(;T▽T)<ひとみちゃぁ〜ん!

>あいわい様
( ^▽^)ノ□<ティッシュいる?
そう言っていただけると、作者も嬉しいです。えへっ

401 名前:Rink 投稿日:2005/12/16(金) 21:47
今回の更新は

『LOOP』
>>369-398です

やっと終わった泣
書置きしておいたものを読み返すと
あまりのクサさに照れまする

402 名前:名無読者 投稿日:2005/12/16(金) 21:52
完結お疲れ様でした。

途中、背筋がぞわっとなるくらい感動しました・゚・(ノД`)・゚・
素敵な作品、ありがとうございました。

次回作も楽しみにしてます!
403 名前:774飼育 投稿日:2005/12/16(金) 21:57
完結お疲れ様でした。
よかったですよぉ〜 涙が・・・
とてもいい作品書いて下さってありがとうございます
次回作も楽しみにしてます
404 名前:Rink 投稿日:2005/12/16(金) 22:01

そして次回予告

『歪んだ太陽』(仮)

作者初の試み、ダーク系で行きます

血出ます、激しい濡場描写大量だと思います(?)


(;0T〜T)<頑張りますぅ〜
( ^▽^)<よっちゃん今回もカッコいいよ!

実は作者、煮詰まっており
まだ書き起こせてなくて更新が遅くなると思います
イッパイイッパイですが
がんばりますのでよろしくお願いします

405 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/16(金) 23:00
やばいです。感動で鳥肌が立ちました。
素敵な作品をありがとうございます。
406 名前:7&Y 投稿日:2005/12/17(土) 00:24
感動しました…
というか完結したんだなぁとしみじみ浸ってしまいました
私が言うのもなんですが本当にいい作品でした
ありがとうございました
そして次回作、だいぶハードなようですがゆっくりと待ってますね
407 名前:名無 投稿日:2005/12/17(土) 00:51
完結お疲れ様です^^
Rinkさんの作品大好きです
次回作もいしよしワールドを楽しみにしてます
Rinkさんのペースで頑張ってください
気長に待ちます〜
408 名前:名無し読み手 投稿日:2005/12/17(土) 07:58
いやぁ本気で感心してますよ
こんなすごいの連発で出されたら心臓持つかどうかw
作者さんのペースでやっていってください
がんばれ〜
409 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 01:02


410 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 01:03



  1つは  オッド


  そして  もう1つは・・・



411 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 01:04


  ズン、ズン、ズン、ズンッ


 「ヒーーーーーーーーヒャァ!」
 「フォーーーーーーーー!」
 「イェーーーーーー!」

 「ねぇ、今日一人で来たの?」
 「俺らとさぁ?」
 「ごめーん、向こうで待ってるからさー」



ここは東京、新宿
あるクラブのイベント

フロアのライトが激しく揺れて
人が咽返るようにハコを埋める

412 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:04

普段の憂さを晴らすもの
再会を喜び酒を飲むもの
女を漁りに来ているもの

バーカウンター近くで居る人間は
人が通るたびに
物色し、好みとあれば声をかける

 「ねぇねぇ、一緒に踊んない?」

ほとんど服を着ていないような女は
軽くそれをあしらう

 「ごめん、あなた、タイプじゃないの」


そんな事が繰り返し、繰り返し・・・


だけどここにいる人間は

全員女だということ

413 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:05

ハコの2階はソファになっていて

下で漁った女とヤる一歩手前の行為や
外では絶対見せられない粉を鼻から吸引してるヤツが
ゴロゴロいる


自分は奥の席に座って煙草を揺らしてる

うるさいはずの音も
ここに居れば心地よく聞こえるから不思議だ


「おー!オッド!久しぶり!!」
「どうしてたんだよ、元気してたのか?」
「オッド!」


周りはウチの事をオッドと呼ぶ

ここでは本名なんて語らなくていい
誰一人として、自分の名前を知る人間なんて居ない


思い思いにウチに声をかけて
傍によって来ようとする人間を
手で追い払う

 「シッシッ!って、おーーい」
 「んだよ、つめてーなぁ」
 「犬じゃないんだからー」

お前たちとは喋る気すらない

414 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:06

「よいしょっと、おまたー」

ウチの隣に座ってくるコイツは
唯一の友達と呼べる人間かもしれない

「おせえよ」
「そう言わないでって。ほらテキーラ」
「ああ」

ショットのテキーラを持ってくる
確か名前はあゆみって言ったはず。

「オッド、何杯飲む気?」
「別にいいだろ」
「荒れてんの?」
「こんなところに呼ばれたから」
「たまにはいーじゃん、若者についていかないと乗り遅れるぞ?」
「うるさい」
「んま!寂しいこと言うんだね〜」

こいつはどれだけ冷たくあしらっても
平気で流す。
犬っころのように纏わりついて
本気で殴ってやろうかと思ったけど
もう今は呆れて何もする気が起きない

415 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:06

「どうせクラブに来るなら普通のに呼べよ」
「だーって、1番近いイベントがコレだったんだもん、仕方ないでしょ?」
「・・・ったく」
「いいじゃん、いい女の子居た?」
「クソばっかり」
「こらこらー、睨まれるよぉ?」
「お前は居たのかよ」
「居ない」
「ほらみろ」
「・・・確かに、クソばっかり」

あゆみは多分、その辺に居るヤツよりも可愛いんだと思う
ウチも人並み以上に顔はいいらしい
そんな2人が座ってたら声をかけるやつも居るわけで

 「ねぇ、二人ぃ〜、隣座っていい?」

「「あ?」」

 「あ、いや、いいや・・・あはは、ご、ごめんね?」

ニヤついてた顔が凍りついて
そそくさとウチらの傍から離れてった

「あああ!クソばっかりー!もう」
「お前がここに来たんだろ」
「だって雅が回してんだもん・・・」
「雅に言っとけ、もっといいハコで回せって」
「そうするぅ。うううう」

416 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:07

「それより、オッド?また目塞いでんの?」


オッドの由来、オッドアイ
普段閉じている左目はシルバーグレイ


「まぶしいんだよ」
「こんな暗いのに?」
「あぁ・・・クセだよ」
「その癖治した方がいいよ?右目だけ視力落ちる」
「心配してくれてんだ」
「まあねー。オッドのこと好きだし?」


左眼の色を隠すようにウチはいつも目を伏せる
いつもはカラーコンタクトを入れて
両目同じ色にするんだけど

「でも、カッコいいよね」
「見たこと無いくせに」
「想像、想像♪」

417 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:08



 1つは オッド


 もう1つの名前を知る人間は



418 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:08

「酒、取って来る」
「あー、わたしも行くよ」

ソファから立ち上がって、下に降りようと歩き出した

 ドンッ

前から来たヤツの肩が触れる

「おい・・・」
 「んだよ!テメェが退かねぇからだ・・ああ・・・」
「何か言ったか・・・?」
 「あ、いや・・・な、にも・・・」

そいつはビビリながら行こうとした

「おい、お前」

振り返って呼び止める

 「な、なんだよ、い、イーヴ・・・」

右手を伸ばす

 「ヒッ、ヒィィ!!」
「粉、ついてっぞ」

そいつの顔についてた粉を払って
階段を下りた


 「・・・うぁああああああ!!」


ヤク漬けの飛んだアイツは多分
ウチの目を見て錯乱したんじゃないか

そんな叫び声を上げた

419 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:09

バーカウンターに下りて、チケットを渡す

「テキーラ、ショット」

小さなカップに注がれたテキーラを一気に飲み干す

「まーたそんな飲み方してぇ〜」
「うるさい」

カウンターから少し離れた所からなにか騒ぎ声が聞こえる


 「ねぇねぇ、今日こそはさぁ?」
 「頼むよぉぉ」
 「一人なんでしょ?」


「なんだ、あれ・・・」

一人の女を取り囲むように
男の格好をしたガキが群がっている

420 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:10

「あ、あれケイキだよ」
「ケイキ?」
「スラングで超可愛い子って意味」
「へぇ」
「でも、それはジャリだけが言ってる」

「他はなんて言ってんの」
「ビッチ、女豹、もしくは能面」

「女豹ねぇ・・・」
「ヤリまくりだから。」

「能面ってのは?」

「アイツをお持ち帰りした子がみんなそう言うの
 “の、能面だぁぁぁぁ!”って」

「なんだそれ」
「さぁ〜。でも持ち帰ったヤツって、絶対消えてんだよね〜」

421 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:11

ケイキってさ、声かけても絶対喋んないの
ニヤッて笑って「いい?」って言うのがOKのサインで
そのままベッドにGO!なんだけど
でも、持ち帰ったヤツからはその日の事って一切聞かないの
それどころか、そいつ自体どっか消えちゃうんだ

噂じゃ、ケイキが囲ってんじゃないかとか
骨抜きにされて、飛んじゃってんじゃないかとか。

それにケイキの噂って絶えないからさ
ネンショー帰りだとか、ヤクザの女じゃないかとか。
そのヤクザに見つかってコンクリート詰めにされて
海に沈められてんじゃないかとか
いーろいろ

422 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:12

「なるほどね・・・」

「でも、ジャリはやっぱりしたいわけじゃん?顔も身体もいい訳だし?」
「ただのネタ作りだろ」

「まー、そうともいう!だからああやってみんな凝りずにいくわけよ」
「モテねーブタばっかり寄り集まって」

「あっはっは!さーすがオッド、辛口だねぇ」

あゆみはウチの肩をバンバン叩きながら大笑いした

「いってえよ、殺すぞ」
「あははははは!ごめんごめん!」

423 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:13

424 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:14

「あゆみ〜!」

馬鹿笑いしてるあゆみの後ろから
雅がブースから降りてきたらしく、声をかけた

「あ〜、まぁぁぁさぁぁぁ〜♪」
「こ、こら!キスするな!」
「だってぇぇ」

雅の前ではあゆみもただの猫になる

「あ、オッド、久しぶり」
「よぉ」
「今日はなんで?めずらしいね。ひとみんウォッカトニックちょーだい?」
「はいよー」

カウンターの派手なギャルはカップにウォッカを注ぐ

425 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:14

「お前の猫が誘ったからだよ」
「あー、そうなの?あゆみん」

雅は首に腕を巻きつけて絡んでるあゆみを
引き離し声をかけた

「ん〜、だってぇ、一人で居たらナンパされちゃうんもん」

こいつはナンパ防止のためにウチを連れ出したんか・・・

「あー、わかったわかった、はいはい、よしよし」
「まさぁぁあ〜、ちゅーしよーよぉー」

鬱陶しい・・・

「雅、もっといいハコで回せよ」
「あー、そうしたいんだけどオーガナイザーが連れだからさ」

「雅は優しいんだよねぇ〜、ねぇ、ちゅぅぅぅ」
「あゆみん、飲みすぎだってば!」

「まさぁぁ、上行ってイチャイチャしよぉよぉ〜」
「はいはい、わーった、わーったってば!」

雅はウォッカトニックを受け取って
あゆみを抱えながら階段を上がっていった

なんなんだ・・・
恋人の前じゃああなるのが普通なのか?

426 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:15

「はぁ・・・」

煙草を取り出して咥えると、前のギャルが火を出してくれた

「あぁ、どうも・・・」
「雅もあゆみちゃんにゾッコンだから」

そう言ってにっこり微笑む

「そうみたいだな・・・テキーラ、ショット」
「はい。チェイサーは?」

要らないと、首を軽く横に振る



女が女を好きになるとか
男同士でSEXしようがなんて思わない

それより男と女だったとしても
自分には関係ない
愛だの恋だの、もうそんなものとっくの昔に忘れた

いや、もともとそんなものは持ち合わせてないのかもしれない


前に置かれたテキーラを飲み干した


427 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:16


「そんな飲み方して美味しいの?」

いつの間にか左隣に立っていた女がウチに話し掛ける
辺りが少しざわつく

「スクリュードライバーください」

なんだ、こいつ
そういや、さっきの群がりの中心に居た
たしか・・・ビッチ?

「乱暴な飲み方」

なんだ、コイツ
それにこの声。やけに耳に障る

 「おいおい、ケイキ・・・」
 「オッドが相手じゃ、こっち勝ち目ねえよ・・・」

そんな声が聞こえてくる
何に勝とうとしてたんだ?

女のほうを向いて、顔を見る
女はスクリュードライバーを手にウチに微笑む

はぁ・・・どいつもこいつもバカばっかり

428 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:18

「ねぇ」
「・・・なに」
「あなたの名前は?」

「テキーラ、ショット」

カウンターに向き直ってギャルに注文をする
付き合ってられない

「聞いても答えてくれないんだね」
「先に言え」
「乱暴だね」
「じゃぁ話し掛けるな」

大抵コレで、相手は話す気をなくして黙って去っていく
だけどコイツは違った

「わかった、いいよ?乱暴でも」

ギロリと女を睨む
だけど笑顔で言った

429 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:18

「りか」


「名前。りかだよ」

周りに居たガキたちが騒ぐ
なんだよ、こいつの名前がそんなに珍しいのか?

「あなたの名前は?」
「・・・オッド」

「オッド?本名?」
「なわけないだろ」

「教えてよ」
「うるさい」

「ねぇってば」
「しつこいな」

「教えてって」

女に向き直ると、近距離で唸った

「それ以上喚くな」

「あなた・・・左眼」

女はウチの顔に手を伸ばして
閉じられた目を触ろうとしてきた

コイツ、殺すぞマジで

430 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:19

 パシッ!

伸ばされた女の右手を振り払う

「なによ・・・せっかく誘ってるのに」

「自信過剰な女は嫌いだ」
「そう言う自分だってそうじゃない」

「とっとと、その辺のガキ捕まえておねんねしな」
「今日はあなたって決めてるの」

「他あたれ」

「自信ないんだ」

んだと・・・?
コイツ、人の神経逆なでしやがって・・・

ウチは構わず、勝ち誇った顔をしてる女の胸座を掴んだ

「じゃぁ教えてやるよ」

 「おい、お前!!!」
 「手ェあげん」

周りの声が止まる
そりゃそうだ


掴みかかったと思ったら
キスをしたんだから

431 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:19

「ん・・・んん、んぁ・・・」

女はウチの首に手を回す
手にもっていた煙草をフロアに落として
腰を引き寄せた

「んん・・・んはぁっ・・・」

こいつ・・・

「ん・・・んん!!!」

女は目を見開いた
フンッ、やっぱりそうかよ

 ドンッ!

こいつ、噛み付きやがったな・・・?
血の混じったつばを吐き捨てる

432 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:20

「お前、改名しろよ」


「ビッチから鉄のケツにさ」


 バシッ!

女はウチを突き放し、頬を殴った

「最低っ」

女はウチの脇を通って、走っていった



 「ちょ、ちょっと!ケイキ!!」
 「待てよ!」

何人かのガキが後を追いかける

433 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:21

何がビッチだ
あんなんだけでビビってんじゃん

「クックッ・・・」

ウチは舌で血を舐めながら
こみ上げる笑いをかみ殺し
新しく煙草に火をつけて深く吸い込んだ

 「おい、てめぇ!!」

一人のガキがウチの胸座を掴んできた

「んだよ」
 「てめぇ、どういうつもりなんだよ」
「なにが」
 「ケイキに手ェ出しやがって!」
「てめえになんか関係あんの?」
 「んだと!?」

階段から降りてきたあゆみと雅がウチに気づく

「ちょ、ちょっと!オッド!」
「オッド!よせ!!」

434 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:21




左側の瞼がうっすら開いて 目が光を吸い込む



ゆっくり両目を開いて



煙を吐き出す







ガキの胸座を掴み引き寄せると
見下ろしながら、牙を剥き出しにして
右の拳をゆっくり後ろから振り上げた

435 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:22

 「わ、悪かったよ!!」
 「やめとけ!!」

殴りかかろうとしてるガキの後ろから
そいつを止める


 「イーヴルだぞ!!」




ガキはウチの胸座から手を離した

 「か、帰るぞ!」「殺される」

口々に吐き捨てて、その場を去っていった

436 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:23



  1つは  オッドアイ


  そしてもう1つは  イーヴルアイ



437 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:23

 
 左眼が開かれるとき
 目の前の人間に明日は無い

 その名前を知る人間は
 ウチを怖れる

 閉ざされている瞼が開く事を
 そしてシルバーグレイの左眼を
 

438 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 01:24
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
439 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:26


なんなのよアイツ

気分悪い 最低っ

 「ねぇ、ケイキ、気持ちいい?」

わたしの上でバカが聞いてくる
気持ちいいわけないでしょ

追いかけてきたバカを捕まえてホテルに入った
シャワーも浴びずにわたしはベッドに倒れこむと

「はやくしてよ」

440 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:26

嬉しそうにニヤついた顔を浮かべて
わたしの上に覆い被さる

どいつもコイツもやり方なんて一緒
手で舌で指で体中を触りまくって
気持ちいいかなんて聞いてくる

気持ちいいわけないでしょ

ムカツク ムカツク

自分の思い通りにならなかった事が

みんなわたしに跪けばいいのよ

 「ケイキ、ねぇ・・・」

早く終わらせなよ
その辺の男とヤってる方がよっぽどマシ

「もういい」
 「うっ、え、へ?ええ?」
「帰る」
 「ちょ、ちょっと待ってよ」

わたしはバカを手で振り払ってベッドから身体を起こした

441 名前:歪んだ太陽◇ 投稿日:2005/12/18(日) 01:27

「なによ」
 「な、なんだよ、急に」
「アンタ、下手すぎ」
 「お、おい、誘っといてそりゃ」

わたしは乱れた髪を撫でて
ベッドから立ち上がった

「うるさい」
 「なぁ、待っ・・・て」

どうせコイツだってそうなんだ

わたしのこれを見れば 引き止めなくなる

「なによ」

ベッドの上で情けない格好のまま
わたしを見上げてた表情が凍りついた

「まだしたいの?」

 「あ。ああ、ああああ」

「ろくにSEX出来ないなら、女の格好しとけば?バーカ」

 「め、女ひょ、う・・・」

442 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 01:29
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
443 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 01:29

ホテルを一人で出るのはいつものこと
わたしのあの姿を見て平然とする人間なんて居ない

わたしとヤろうとする人間はみんな
業界から姿を消す
わたしに会いたくなくなるから
そしてそいつたちはわたしのことを
能面と呼ぶ。
ベッドの上じゃ
喋らず、泣きもせず、よがりもしないから

誘う時にうっすらと笑う、ただそれだけだから

バカたちを狙っている女はわたしの事をビッチと呼ぶ
履いては捨てていくから

隙間なんて埋めれる訳ないのに
あんなクズたちに埋めれるはず無いのに
わたしはそれでも誘う事を辞めない

444 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 01:29

一人で夜の街を歩く
寄ってくる男はたくさん居るけど
興味ない


どうせ 身体だけが目当てなんだ
みんな どいつもこいつも

心なんてとっくに捨てた
いつか病気になって死ぬんじゃないかって言われても
関係ない


イライラする。さっきからずっと
薄く開いた奥にあった、シルバーグレイの目が
頭に焼き付いて離れない

なんなのよ、アイツ・・・

445 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 01:30
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
446 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 01:30

 ガチャンッ


「梨華、帰ったのか?」
「あ・・・はい」
「どこ行ってたんだ、煙草の匂いプンプンさせて」
「すみません・・・」

この人はわたしを飼いならす
そしてその気になればいつでもどこでも
所構わずわたしの後ろから求める

こっちは何の準備もされてないのに
構わず激しく腰を振る

「やっと手にしたんだ、はぁ、はぁ」

ずっとこの人は我慢していたらしい
何年もわたしを見つづけ、視姦しつづけ
そして、わたしが一人になった途端
こうやって求めてきた

我が物顔のように、わたしを犯しつづけ
奴隷のように扱う
だけど痛みなんて無い
あの人が居なくなった時、わたしは全部捨てたから

447 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 01:31


「あんまり、夜遊びしすぎるなよ?」


そう言ってわたしの背中を一撫ですると
ズポンのファスナーを上げて
去っていく。

この人は裸になんてなったこと無い
わたしだって、ベッドで抱かれた事なんてない

こんなことがもう3年近くも続いてる

448 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 01:31

449 名前:Rink 投稿日:2005/12/18(日) 01:32
更新終了でございます
450 名前:Rink 投稿日:2005/12/18(日) 01:33
レスポンス



>名無読者様
そんなに感動していただけたなんて
こちらもさらに感動です。・゚・(ノД`)・゚・。

これからもよろしくお願いします

>774飼育様
いえいえ、いつも読んで頂いてありがとうごさいます
これからもよろしくでございますm(_ _)m


>名無し飼育さん様
(;T▽T)<鳥は・・・
鳥肌たちました?あら〜うれしいですw
こちらこそ、ありがとうございます

>7&Y様
完結しましたよ〜。・゚・(ノД`)・゚・。
やっと終わらせる事が出来たってかんじで
作者としては一安心です、はい

今回の作品、納得行くかどうか分かりませんが
作者の限界を超えたいと思います

>名無様
ありがとうございます〜!
いやいや、拙く駄文まるだしの作品で
いつも申し訳ないなと思っているのですが
喜んでいただけて本当にうれしいです!
アザッスッ!

>名無し読み手様
( ^▽^)<いざとなったら心臓マッサージしてあげる♪
名無し読み手様の心臓の安全はOKなので
これからもガンガン出していきたいと思いますww
451 名前:Rink 投稿日:2005/12/18(日) 01:33

今回の更新は>>409-448です

>>439-からはいしかーさん視点にかわりました
表記がちゃんとされなくって、分かり辛くなってしまい
申し訳ありません。日々精進。

◇ よしざーさん
◆ いしかーさん

で書いていきます
452 名前:名無読者 投稿日:2005/12/18(日) 01:36
更新お疲れ様でした。

今までと違う雰囲気に、早くも嵌ってしまいましたw
今後の展開がとても気になります。

無理されないように頑張って下さい!
453 名前:名無 投稿日:2005/12/18(日) 01:47
更新お疲れ様です。
早速読めて嬉しいです^^
前作とは全く違う感じでよりいっそう興味ひかれます
2人がすごく気になります!
454 名前:774飼育 投稿日:2005/12/18(日) 02:17
更新お疲れ様です
ヤバイ ヤヴァイです・・・ 続きが気になって気になって
あぁ早く続きが・・・ 
もうナンカ病気みたい(笑
次回も楽しみにしてます
455 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/18(日) 16:41
(0`〜´) (`▽´ )

良い感じ
456 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:25

457 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:26
 ◇ ◇ ◇


夜の街で、片目のアイツを見たら目を合わせるな


それがココのルールらしい
知らないものは居ない
それでもこうやって吹っかけるヤツはいる


 「おい、テメェ、どこ見てんだよ」

今日もバカが一人声をかける
路地裏に連れて行かれる
ボコろうとしてくるバカな男

 「おい、なんか言え」


 ドカッ! ガシャーンッ!!

 ドンッ!ドカッ!


 「ゲフッ、グェッ!!」


胸座を掴んで血だらけの顔を引き寄せる

「二度と声かけんな」

 ドカッ!!

ゴミにまみれて倒れる男は
血を吐き出して虫の息になった



458 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:28


今日は無性にイライラする
さっきの女の目が気に食わない

飲んだ酒が悪かった
酔いもしない

退屈することばかりで 時間の流れが止まってる

いいこと? たのしいこと?
なにそれ、何の話

クスリやSEXに嵌ってる周りのバカたち
一時の快楽に溺れてそれが全てと信じてる
そんなヤツらから
声を掛けられても、乗ったりしない
喧嘩を売られても、動じない

信じられるものは
自分と金。それだけ

459 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:29
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
460 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:30

「アンタねぇ、いつか後ろから刺されるわよ」

血だらけの顔を拭いて、手に包帯を巻いてくれる
これは自分の血なんかじゃない

「アンタが来てくれるのはいいけど、犯罪者は囲いたくないわぁ」
「そう言うなよ。こっちだって来たくて来てんじゃないんだから」
「ま!失礼なこと言う子ね!」

そういって右手をバシッと叩いて救急箱を閉じる


ここはウチがいつもイラついたときに来る店
ママはこんなウチでも構わず店に入れてくれる

461 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:31

「なんか、アンタはヤンチャしてるけど、ほっとけないって言うか・・・」

そう言ってため息をつくママ。
煙草に火をつける

「他に行く店がないんだよ」
「あら、どうして?」

ウチは店に入ると大抵揉め事が起こる
それはこっちが吹っかけてるんじゃなくって
向こうから勝手に喧嘩を売ってきやがる
たいして強くも無いくせに
ガンつけてきただの、自分の女に手を出しただの
自分を負かせば、名を馳せられるとでも思っているのか
単細胞なバカの考えそうなことに
いちいち付き合うこともないけど

酒が入ればまた左眼を開くことになる

売られたら買う。容赦なく殴る
相手が死んだかどうかなんて気にしない
手加減してやろうなんて、そこまでウチは甘くない

結局それが、自分の行く店を減らすわけだけど

462 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:32

「だから、こんなしけたオカマバーしか来るとこないんだよ」

「しけたって、アンタ殺されたいわけ?」

ママはウチの胸座を掴んでイスから立ち上がらせる
その目は女の怨念と男の怒り両方のを持ち合わせてる

「い、え・・・いいっす」
「よろしい。大人しく座ってな」

ったく・・・コイツには勝てない
殴る以前に目で殺されてる。勝負は着いてる

「フフフッ」
「んだよ」
「いえ、オッドさんでも敵わない人が居るんだなと思って」

カウンターで笑う女
たしか名前は・・・

「うるせえよ、美貴」
「フフッ。何飲まれますか?」

「あー、美貴ちゃん!そいつには氷でも食わせておけばいいから!」
「ケイさん、そんな」
「いいのいいの!頭をちっとは冷やさせなさい!」

そう言い捨ててママは店を出た

463 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:32

「あのオカマ・・・いつか殺してやる」
「フフッ。ケイさんも、オッドさんのこと心配してらっしゃるんですよ」

心配ねぇ・・・
確かに良くはしてくれるけど

「はい、どうぞ。ジンジャーティです」
「なんだこれ」
「ケイさんがいつも出してくれるんです。鎮静作用ありますから」

どいつもこいつも・・・。
灰皿に煙草を押し付けると
ウチは熱くて甘い紅茶を口に含んだ

464 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:33

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

465 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:34



「んんっ、はぁ、んんああああ!!」


呼ばれれば決まってベッド

コイツはそう言う女
そして、そう言う関係


466 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:35

 カキンッ シュボッ


「ねぇ、ちょっとは顔に出したら?」
「なにをだよ」

「気持ちよさそうにするとか」
「女が女抱いて気持ちいいなんて聞いた事ないね」

「そう?わたしの彼女は気持ちいいって言ってくれるわ」
「んじゃぁ、そいつとしろよ」

なんて名前だったっけ・・・
たしか

「なぁ、・・・アヤカ?」
「なに?」

合ってたみたい
こいつは唯一ウチの本名を知ってる

467 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:35

「ひとみはいつもそうやって私の名前確かめてるよね」

「なんだよ、急に」
「別にぃ〜?」

そう言って、裸のままキッチンに向かう
ウチは煙草に火をつける


人の名前なんて、覚えたりしない
覚えたところで記憶に残ったりなんてしない

どうせ自分の前からはいつか消えていくんだから

468 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:36


「ひとみとするのって、なんか犯されてる気分」
「あっそ」
「恋とかしたことなさそうな顔してるけど、あるの?」

「・・・あるよ・・・」

「へぇ、気になるわ。どんな女だったの?」




「最低な、女」


469 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:37


一度だけ

昔 惚れた女がいた


だけどそいつは、どこかに消えた


囲われていた世界から出よう


そう言って、ウチと夜の闇から抜け出るその日




そいつは現れなかった


470 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:37
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
471 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:38



「No more bets」


 シャーーーーーッ  カンッ カンッ コロンッ


「赤の17。おめでとうございます」

 「おっしゃ!」
 「くっそーーー!」
 「次は絶対取るぞ・・・」

472 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:39

ここはとあるビル。
表向きはホストクラブ、キャバクラ。
しかし階段を深く下り
そのまた奥深くの部屋にある、カジノ。


ウチはそこで今日もルーレットを回す

もちろん違法カジノ。

現金が飛び交う。
一日で大金を持ち帰る者
一日で首を吊る者
ここにはそんなスリルがある

473 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:39

ディーラーになってもう3年も経つ
良くここがばれずにありつづけるなとは思うけど
そんな事知ったこっちゃない
バックにヤクザが居ようがウチはここで球を投げ入れるだけ

さてそろそろ、金を吸い取ろうか・・・


「黒の15。」

狙ったところに入れられる
誰だって経験をつめばそれくらい出来る
一度大金を目の前に積み上げさせて
一気に吸い取る。それがココのやり方。
少しくらいは夢を与えてやれと言われるからだ


「オッド、交代です」
「ああ・・・」
「それから、社長が事務所でお呼びです」
「分かった」
「それと、コレを渡しておいて貰えますか?」

交代に来たディーラーが台の下から封筒を手渡した

「ああ・・・」

474 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:41
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
475 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:41

 トントンッ

「どうぞ」
「失礼します」
「ああ、オッドか。まぁ座れよ」

カジノの奥にある応接室のような部屋
革張りのデカいイスに踏ん反り返ってる男
ココの社長でどこぞのヤクザをやってるらしいが
名前なんて忘れた

「お前はディーラーとしての腕は最高だな」
「・・・ありがとうございます」
「ああ、ペテン師か。ハハッ!」
「今日は、何のようですか?」

「ああ、そろそろ俺もこの席を譲ろうと思ってな。お前が適任だと思うんだが」

「・・・タバコ吸ってもいいですか」
「ああ。俺は本業が忙しくなりそうだしな」
「そうですか」
「それに・・・あの金も、もう充分お前は稼いだだろう?」
「お役御免ってわけで?」
「そうじゃないさ。お前は上に行け。もっとのし上がれ」

「闇の世界でな」

476 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:41

 バタンッ

闇の世界でのし上がれ・・・
罪を犯すことなんて、怖れちゃいない
怖いものなんて何も無いから。

だけど、あの男の言う事を信じているわけじゃない

あの金を稼いだから・・・


ウチがこの店でディーラーになるきっかけ
それが、あの女が持ち逃げた金でもある



ウチが一度だけ愛した女

後藤真希が持って逃げた金

477 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:43
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
478 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:44

3年前、ウチはこの店で働き始める
彼女はココで、バカラのディーラーをしていた
とても上手く、そして華麗に金を吸い取る

ウチはそんな彼女に惚れた


そして、彼女を抱いた

その時にポツリと漏らしたんだ

「わたし、オーナーに抱かれてる」

479 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:45


当時のオーナーは、ヤクザの幹部をしていた人間だった
彼女の親はその男から多額の借金をし
返済が出来なくなった代わりに彼女を肩代わりにした。


「わたし、自由になりたい」

「もう、あんな生活は辞めたい」

「だから、ひとみ」

「一緒に逃げて」


愛なんて持ち合わせてなかったけど
彼女を抱いたその日
心から彼女を救いたいと思った


480 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:46

彼女は組事務所にある、金庫の中の金を奪って
一緒に逃げようと言ってきた

自分なら入れるから
だからひとみは店の前で車を止めて待っててと



だけど、いつまで待っても
彼女は現れなかった

481 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:48

そしてオーナーは、ヤクザ同士の抗争かなにかで
その日、撃たれて死んだらしい

その後を継ぐように、今のオーナーが社長になった

そのとき、彼女が事務所の金を奪って逃げたと聞かされた



一人で逃げたんだ



ウチは裏切られたその思いが憎悪に変わった
救いたいなんて思ったそれが裏目に出たんだ
自分に隙を作ったから。

少しでもあんな女の話に耳を傾けたから・・・


ウチは彼女への憎しみと、そして折れた心のまま
店で働きつづけ
闇の世界でトップのディーラーにのし上がった

今まで持ち合わせていた
客へのあわれみや、情など全てかき消して

全ての金を吸い上げる、巻き上げる

482 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:49

もしかすると
帰りを待っていたのかもしれない
いつか迎えに来てくれるのかもしれない
そう思いながら・・・

未練なんて、持つつもりなどないのに



ウチはその日から
左瞼を閉じるようになる
彼女が好きだと言った
シルバーグレイの目を、閉ざす

開けば、あの顔を思い出すから
自分が弱くなりそうだから


だからウチはそれをかき消すかのように
目の前にいる人間を殴りつづける

容赦なく

少しでも、過去の自分を消すように

483 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:49
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
484 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:50

  ガチャッ

応接室を出て、非常扉を抜け、店に入ろうとしたとき
昔の事を思い出していた


よくここで、真希と抱き合ってたな・・・

右手の指を見つめる


フッ・・・もういい加減、迎えなんて来ない事に気づけよ  

アイツは金を持って逃げたんだ
ウチを裏切って
もしかするとウチを利用したのかもしれない

あの社長だって
ウチが真希と一緒にいたことくらい気づいてたはず
なのに自分を傍に置いてることも、疑わしい

まぁ、なんだっていいさ

ココの生活は苦じゃない。
むしろ、大人たちが毎日持ってくる
大量の札が行き交う姿が面白い
自分の投げ入れる球に生死がかかっているだなんて
この上ない快楽だから


485 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:50

ふとポケットの中に手を入れると封筒を思い出した

「ああ、そうだった・・・」

扉を開けて、応接室に続く長い廊下を歩いて行く



扉がうっすら開いていた
中から声が聞こえてくる

地上に繋がるエレベーターから
誰かが降りてきたのか?
そっとその隙間から中をのぞきこんだ



あいつ・・・

486 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:51
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
487 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:52
  ◆  ◆  ◆


裕子さんに呼ばれて、家に向かう

日本庭園のような立派なお屋敷
その奥に通される

呼ばれた理由は大体検討は着いてる


 トントンッ

「姐さん、お嬢がきやした」
「おお、通し」

襖の奥には、和服姿の裕子さんが座ってた

「よう、来たな。まあ入りや」
「失礼します」
「アンタは下がって」
「失礼しやす」

 ピシャンッ

「何の用か、分かってるか?」
「・・・はい・・・」
「そうか・・・」

煙草に火をつける姿は
女のわたしが見ても惚れてしまうほど、色っぽい

488 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:53

「そろそろ、離れたらどうや?」
「・・・」

「惚れたはれたを口出しするつもりはないけどな」
「・・・いえ・・・」

「アンタにはええ思いせえへんで?」
「・・・分かってます」

「アンタにはもっとええ男の傍でおって欲しいんや」
「ありがとう、ございます」

裕子さんはすくっと立ち上がって、庭の方に目を向ける

489 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:53

「アンタのお父さん・・・兄さんのことは不憫でしゃあないけど」
「いえ・・・仕方の無い事です」

「それにな、あの男・・・どうも気にかかるんや」
「・・・というと?」

「あのカジノ、やたらと羽振りが良すぎる。その割りには上に回ってくる額が少ない
 もしかしたら溜め込んでんとちゃうかと思ってな・・・」

「それは、分かりませんが・・・」

「そうやな・・・まぁ、アンタもそろそろ考えや」

490 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:54

お屋敷の門をくぐって外に出る

あの男は、やっぱり、何か企んでる
そう裕子さんは言ってた

だけど、あんなちっぽけな男一人で何が出来るというのだろう
金さえ集めれば何とかなると思っているのか
それとも策があるのか

だけど、わたしにはもうそんなことどうでもいい
彼女を失ってからのわたしは
時の流れが止まっている

491 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:55

 ♪♪♪♪

携帯のメール音が鳴った

「・・・どう、してよ・・・」

男からの呼び出しメール。

だけど今日は、行きたくない場所に呼ばれた
アイツの性癖は、サディスティックで嫌がる顔を見るのがいいらしい
わたしは表情1つ変えないから

アイツは色んな手段で、どうにか顔を歪ませようと考える

もう1つのゲームのみたいに。

492 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:55
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
493 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:56


ここに来るのは好きじゃない


地獄のそこにまで続いていそうなエレベーターに乗って
B5Fを押す

なんでココに呼び出すのかが分からないけれど
言われたらいう事を聞かなければならない

自分はアイツの奴隷だから


 トントンッ

「誰だ?」
「わたし、です・・・」
「ああ、入れ」


中に入ると、ニヤケ面の男がいた


494 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:57

「なんで、ココなんですか?」
「お前はココが嫌いだったな」
「・・・ええ」
「だからだよ」

そう言ってまた乱暴に服を脱がせる

「上になれ」

ソファに座り込む男に跨いで
上から腰を沈める



「お前も、うまく、な、ったな」

ミシミシとソファの革が擦れる

「相変わらず、笑いも、な、きも、しない、がな」

そんなわたしが好きだと男は顔を撫でる
いつもより激しく貫かれて
思わず声が漏れる

「ん・・・っくっ」
「今日は感じるのか?え?」

汚い言葉を発して、自分は上手いと勘違いしてる

「ほら、もっと動け」

495 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:58

何故こんなにもコイツの言う事を聞いているのか
わたしは自分が不運な女だなんて思わない

だけど、これはもう使命なんだと思う
砂時計の粒が落ちきるまで
わたしはコイツに貫かれる

「おま、えの、オヤジには、世話、んん!になった、からな」

わたしの周りは、カタギではなく
いわゆる、ヤクザと言われる人間で


おじいちゃんが組長をしていた

父は3年前に撃たれて死んだと聞かされた
その後を追うように、おじいちゃんが死に
今は父の兄弟の裕子さんが組を受け継いでる

この男はわたしの父が弟のように可愛がっていた
だけど


「おま、えのオヤジには、んぁ、はぁ、恨みばっかりだから、な」


可愛がると言うよりも、むしろ甚振っていたんだろう
今まで堪えていたものが
父の死により、一気に爆発したんだ
その1つがわたしに対する欲望。

496 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/18(日) 23:59

逃げる事だって出来る
裕子さんに言って、かくまってもらう事だって出来る
だけど

たくさんのものを一度に失って
わたしは空っぽになってしまった

抵抗する事もない、逃避する事もない
この世界の人間はいつか死に行くものだから

粒が落ちきるまで



そういって、わたしは別の場所で
別のわたしを作り出す

ケイキ、ビッチ、能面、女豹
呼び名は色々だけど
その世界の人間はまるでハイエナのように集ってくる
それを足蹴にして嘲笑う

わたしも、この男とさほど変わりはない

497 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:00

「んっ、っくぅ!!」

「ほら、もっと、うご、けよ」


今日は何故だろう、いつもより激しい
場所がココだからなのかな

わたしも、やっぱり地獄の人間なんだ

ふと顔を上げると
扉が開いてることに気づいた

その隙間から

あの時の、鋭い瞳がこっちを見ていた


まさか、そんな・・・
どうして、この場所に?

ううん、人違い
シルバーグレイの目は、黒い瞳だから


だけどあの顔、絶対忘れない
たしか、名前は・・・

498 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:01

「・・・んっ、オ、ッド・・・」


「どうした?ええ?ほらもっとよがれよ」

「ん、んん、やぁぁ!」


あの瞳に見られてる
そう思うだけで、身体に快感が走った

なに、これ・・・
こんなの、いままで


「んんん、やぁぁ!」

499 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:02

あの瞳に犯される

触れられていないのに
アイツのあの瞳にヤられてる

そう思えば思うほど、身体がしなる

快感の震えが止まらない
髪を振り乱して、あえぎ声を出す

もっと、もっと見て

ねぇ、わたしを犯して
その目で



「んん、はぁ、ああ、や、やぁぁぁぁ!!」

500 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:02
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
501 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:03
  ◇  ◇  ◇


まぁ、大した乱れ様だ
ビッチは本物だったってことだな

まさか社長の女だったとは思わなかった
いつからコイツを囲ってたんだ
金が手に入り、力も手に入れてからってことか

それにしてもあの女
なんでここにいるんだ
社長とどういう関係なんだ?

褐色の肌、揺れる胸、乱れる長い髪

それに、アイツのあの目
挑発するようにこっちを見てる

502 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:04

フンッ 馬鹿馬鹿しい
ただの変態じゃないか
ヤってる最中にウチに見られて
よがって悶えてんのか

鉄のケツからビッチに舞い戻りだな

するとあの女の口が言葉を刻んだ

 “ オ ッ ド ”

へぇ、名前覚えてもらえてたんだ
そりゃ光栄だね

こんなところ見て何にも楽しい事なんてないさ
男と女が獣のように求め合う
本能剥き出しにして、場所も声も構わず
ヤりまくってる

映画の世界だな、まるで

503 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:05

ウチは封筒を扉の隙間からそっと差し込んで
もと来た道を戻る


後ろの方で 女の乱れた叫びが聞こえた


「your bets」

504 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:08
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
505 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:10

カジノが終わる時間
さっきまでの興奮は一気に冷める
ライトが消され、主のいなくなった台は
ひっそりと静まり返る

ウチはバーカウンターで一人酒を飲む

他人がウチの前に2度も姿を見せるなんて
よく殺されずにいるもんだ

「フッ・・・ビッチなだけあるな」

506 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:10

昔、よく店が終わってから
ここで真希と抱き合った事を思い出した

誰かに見つかるかもしれないスリルがたまらないと
カウンターや台をベッド代わりに抱きつづける

アイツも同じ類だったのかな


「見られて、虐げて・・・」

507 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:11

コンタクトを外した左眼が
バーカウンターのライトの光を吸収する
眩しくてほとんど何も見えない
色素が薄いから、光を吸収しやすいのだと
昔医者に言われた

なんで自分の左眼はこんな色なのか
隔世遺伝だの、染色体異常だの色々言われたけれど
別にどうってことない
それでイジメにあってたこともあったけど
その頃から、向かってくるやつには容赦なかった

勝つか負けるか
なら勝てばいい、ただそれだけだ

テキーラをグラスに注いで、一気に飲み干す

どれだけキツイ酒を煽ったところで自分の体は酔うわけじゃない
ありとあらゆる感覚は麻痺してるようだ

508 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:12

「またそんな飲み方」

非常扉の方を見るとあの女が立ってた
どこか見下した笑みで。

「さっき、見てたんでしょ?」

だからなんだって言うんだ
ウチは誰もいないバーカウンターを見つづける

「ねぇ、あなたの名前、教えてよ」

「うるさい」

また甦る抑えきれない感情、この女に対する憎悪のようなもの

「わたしの名前、言ったじゃない」
「こっちも言った」

「でも、本名じゃない」
「忘れた」

「うそつき」

509 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:13

なんなんだ、この抑えきれない感情は
イライラする

ウチはスツールにかけてあったジャケットを手にとって
その場を離れようとした

「ねぇ、待ってってば!」
「・・・っるさい・・・」
「もう一回、してよ」

女はウチを引き止めて、首に腕を回してきた

「あなたが、初めてだったから」

だから舌入れただけでビビったのか・・・

「キスは、誰にもあげてない」

娼婦みたいなこと言うんだな、マジでビッチがお似合いだよ

「ねぇ、してよ・・・」

女はウチの唇に近づいて
吐息交じりで、ウチに囁く

510 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:14

「ねぇ・・・オッド・・・」


「・・・男のナニ咥えた口近づけんじゃねぇよ」
「なっ!」

 ドンッ!

女はウチを突き飛ばした

「・・・あなたが、嫌いなら、辞める」
「関係ない」

「あなたがしてくれるなら、辞める」
「勝手にしろ、ウチは関係ない」

「どうしたら、してくれるの?」

「本気になるな」

「初めてだった・・・あんな、気持ちいいの」
「しるか」

女はまたウチに近づく

「お願い・・・」


「ねぇ・・・お願い」

511 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:14



唇を近づけようとする女
こいつのこの目、この熱っぽい話し方

あの時と同じ感覚

あの女に出会ったときの

自分の心に隙が出来る感覚

イライラする


512 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:15

「次、会ったら殺すぞ」

女に背を向けて、歩き出す

そんな簡単に堕ちたりしない
また同じ過ちを繰り返したりしない

くだらない一時の感情に流されたりしない


「いいよ、あなたになら」

「・・・あぁ?」

立ち止まって振り返ると
作りじゃない、笑顔があった

513 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:16

「あなたになら、殺されても構わない」
「・・・・・」
「ねぇ、お願い」

女はウチに唇をつける

激しく、絡み合う舌
巻きついて、髪をかき混ぜる手

「その目で、犯して」


「ねぇ・・・オッド・・・んん、はぁ!」


挑発に乗ったわけじゃない
一度ヤれば黙るだろう、それだけ

カウンターに押さえつけて胸を強く掴む

「んんっ・・・んぁ、もっと・・・」

舌を激しく絡ませながら
右手で女のスカートをたくし上げる

「んんっ、んぁ!・・・はぁ、オッ、ド・・・」

514 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:16


  ガチャッ

「チッ・・・」

ウチは右手をスカートから抜いて、女から離れた


「梨華、ここには入るなと・・・」

非常扉が開いて社長が現れた
ウチはカウンターにあった煙草に火をつける

「オッド・・・まだ居たのか?」

カウンターに肘を着きながら横目で社長を見る

「あ、ああ・・・そういうことか」

社長は口の端を上げて笑うとウチに近づいて
耳打ちをした

「今回限りだ、次は無いと思え」

そう言って、財布から数枚の札を抜き、ウチの手に握らせた

「梨華、帰るぞ」

女の腰を抱き、非常扉の方へ向かう
女は連れられながらも振り返り、ウチの方を見ていた

515 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:17

 バタンッ


手の中の3枚の札を、ジーンズのポケットに押し込む。


金さえあればそれでいい

あの時のウチは
あまりにも無力だったから


テキーラをグラスに注いで一気に飲み干した
怒りが込み上げる。


 ガッシャーーンッ!!


グラスを握り締めどこにもぶつける事が出来ない怒り
ショットグラスを床に叩きつけた

516 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:18
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
517 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:18


店の裏口から外に出る

もう外は明るく太陽が昇り始めていた
ウチは眩しくて左眼を閉じる

この目からは全ての物が歪んで見える

人も、街も、太陽でさえも

518 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:19

いや
心が歪んでいるだけなのかもしれない

たった一人の女に、奪われた
形の歪んだ心のまま
ウチは過ごしているから

戻る事なんて無い
決して、戻ってくる事なんて無い
言い聞かせては、思い出し
弱くなりそうになって、また人を殴りつづける
自分を殴りつづける


「・・・フゥ・・・」


ため息を1つ吐き出して
ウチは家路についた

519 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 00:19

520 名前:Rink 投稿日:2005/12/19(月) 00:19
更新終了です
521 名前:Rink 投稿日:2005/12/19(月) 00:21
レスポンス

>名無読者様
ありがとうございます!
あまりにも違いすぎて大丈夫かなと思ってたので汗
無茶して頑張りますw

>名無様
結構難しい設定をしたため
もうイッパイイッパイで汗
完結目指して頑張ります!

>774飼育
いしよし病、発病しましたか?
( ^▽^)<らっきー♪

がんばります〜!


>名無飼育さん様
黒い感じだせてますでしょうか?w
522 名前:Rink 投稿日:2005/12/19(月) 00:23

今回の更新分は>>456-519です

えー、早くもストック切れでして
大変焦っております
話の筋は出来てるんですが
よしざーさんが難しくって、なかなか書き出せずイライラ。

小出し更新になったらごめんなさ〜い!

523 名前:7&Y 投稿日:2005/12/19(月) 00:24
リアルタイムでお疲れ様です
新作始まってたんですね!
前回と一変して確かにハードでダークな感じがします
タイトルの“歪んだ”という単語が深い意味を持ってそうですね
すごく作り込まれている感が伝わってきます
寒くなってきましたがお体に気をつけてください
そんでもって次回更新もマターリマターリ待ってます
524 名前:774飼育 投稿日:2005/12/19(月) 00:29
更新お疲れ様です
やっぱりいいなぁ・・・
ダークな感じはちゃんと出てると思いますよぉ
更新は小出しでもいいですよ
では次回も楽しみにしてます
525 名前:名無読者 投稿日:2005/12/19(月) 00:30
更新お疲れ様でした。
二人の接点を垣間見たり、少しずつ人間関係も見えてきて、
ますます続きが楽しみになってきました。
小出し更新でも構いませんよw次回も楽しみに待ってます!
526 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/19(月) 00:34
あまり無理しないようにね
527 名前:Rink 投稿日:2005/12/19(月) 00:38
リアルタイムレスありがとうございます

レスは次の更新後にしますです〜

今、ラインのhtml化を図っておりまして
自分のサイトにうpしようかと考えてまして
コピペしてるんですが、マジで大量にあって
自分で上げておきながら鬱でございます汗

それもまた出来ましたらお知らせします


レスで774飼育様の敬称抜けてしまって申し訳ありませんでした
重ね重ねお詫びします (_ _(--;(_ _(--; ペコペコ
528 名前:名無し読み手 投稿日:2005/12/19(月) 00:55
これまたすごい作品ですね
色が全然違いますし。
なんだか圧倒されちゃいますよ、ハハハ。
529 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/19(月) 02:47
赤板から一気に読ませていただきました
もう・・・最 高 で す
これからもずっとついていきます
530 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/19(月) 02:48
コーフンでageちゃいましたスミマセン(泣
531 名前:あいわい 投稿日:2005/12/19(月) 10:27
更新お疲れ様です!
全然違う雰囲気にドキドキです…!だんだんと見えてくる過去や、取り巻く周りの人間も深くて。これからどうなるのかすっっごく気になります!
もうここを覗くのは日課になってます(笑
Rink様、師匠と呼ばせて下さい!!!
では、次回更新楽しみにしてます!
532 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/19(月) 14:00
やっぱいいなぁ…ていうか更新ペースが速くて尊敬です。
533 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:14

534 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:24
 ◆  ◆  ◆


「あいつと、ヤろうと、してたのか、ええ!?」

今日はいつも以上に激しい
激しいと言うよりも、怒りにあふれてる
だけど、社長に激しく突かれながら
わたしはさっきの事を思い出してた

あのシルバーの瞳
狼のような冷たくて孤高の色

「二度と、あの男女に近づくんじゃ、ない、ぞ!ああ!?」

壊れる事の無い強さの奥に秘めた
揺れる、小さな灯火

目を閉じていても、思い出せる
鋭くて、全てを見通すあの目が焼きついて離れない
535 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:24


「んん、んぁ、出る!っく、ああああああ!!」


男はわたしの背中に、熱い精を解き放つと
髪を掴んで顔を上げさせた

「近づくんじゃ、ないぞ。あ?分かったのか?」

あの人の声以外、わたしには届かない
似てる・・・昔と。
わたしの思いを届けられなかった
あの人と、似てる

「お前の背中に出すのが、最高の楽しみなんだよ、俺は」

そう言ってまた、家を出て行った

わたしが背負った、彼女の、証し
一生消えない、彼女への愛

536 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:24
−+−+−+−+−+−+−+−+−
537 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:25

全ての分岐点は3年前だった
わたしが、思いを馳せていた人

裕子さんに組が継がれ
その片腕的存在だった人

赤子さえも無表情のまま殺す
そんな冷たい・・・温度の無い表情
そして裕子さんや組に対しての絶対的服従

わたしは彼女に焦がれていた
保田圭という、一人の女性に。
538 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:26


「圭さん・・・」
「・・・お嬢、あなたはここには来ちゃいけない」
「どうして」

圭さんに会いたくて、どうしても会いたくて
毎日事務所を訪れていた

「あなたは、カタギにつかなければ」
「でも、でも!」
「・・・知ってます、あなたの気持ち」
「・・・・・」
「でも、受け取れない」
「・・・どう、して」

組長の孫だから?

涙を流しているわたしの頬に手を置いて
圭さんは首を横に振る

「あなたには、太陽の下で、笑っててほしい」
「え・・・?」
「あなたの笑顔は、心を癒すから」

初めてあなたが微笑んでくれた

「・・・だから、いつも、笑ってすごしてください」

539 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:26

裕子さんは統率力に優れ
彼女は情報や行動力に優れ、そして何よりも冷徹だった
次期組長の声もあがっていたけれど

突然、姿を消した


わたしはショックでしばらく裕子さんの家に泊まっていた

組では裏切ったのではないかと
怒りを露にするものや、消されたんじゃないかと
色々な噂が絶えなかった



そして、その1ヵ月後

540 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:27


「圭さん!圭姐さん!!!」




わたしは朝早くその声で目が覚めた

彼女が帰ってきた

息が白く上がる、雪が降る真冬の朝




裕子さんのお屋敷の前に
変わり果てた姿の圭さんが居た


541 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:29

目の下は真っ黒にクマが出来て
腕には何箇所も注射針の跡があり
ガリガリに痩せていた

体中に乱暴された跡
そして、ナイフでメッタ刺しにされていた


当時、対立関係にあった組の仕業だと
抗争が勃発し
その組は潰された

だけど結局、だれがこんな酷い事をしたのかなんて
分からなかった

542 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:30

彼女の通夜の日
誰も居なくなった斎場に
わたしは一人で彼女に自分の気持ちを打ち明けた


「あなたが好きだと言ってくれた笑顔は、あなただけのものです」



「圭さん・・・あなたを、愛しています・・・これからもずっと」


冷たくなった彼女の唇に口づけをする
わたしの涙が彼女の頬に落ちる

決して笑う事がなく
冷酷非道と言われていた彼女だったけど
わたしに見せてくれた笑顔は彼女の優しさだと思った
そして、寝顔はとても穏やかだった




父を無くし、最愛の人を無くし
わたしはその日から


全てを無にした


感情も、表情も、すべて


彼女が好きだと言ってくれた
わたしの笑顔も、消した

543 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:34


そして、能面という名が付くようになる
ビッチという名前が知れ渡る

今の社長に犯されるようになったのも
この辺りから。


いつもどこかで彼女を求めていた
彼女と抱き合える事なんてないけれど
いつか・・・いつか・・・

そんな思いで、誰かを探してた

だけど、あの人に代わる人なんてどこにもいない
わたしの心を奪っていったあの人の代わりなんて。




そう思っていたけど
あの瞳は、どこか似ていた
圭さんと同じ、冷たくて簡単に人を殺せる
そしてその奥にある、孤独が。

544 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:35
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
545 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:36
  ◇  ◇  ◇


昼過ぎに目が覚める
カーテンをしていても差し込む光がまぶしくて
ベッドから這い出る

昨日帰ってきてから煽った酒がまだ残ってる
頭が酷く痛い



テーブルの上に置かれた携帯を見ると一件のメールがあった
仕事に少し早く来て、社長室の掃除をしろとのこと
これくらい、お前がしろよと言いたかったが

飼いならされてる自分には発言権などない
546 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:37

このマンションは社長が持っているもので
同じ年代の人間が住めるようなもんじゃない

そこを貸してもらってるんだから
それくらいしないとな


社長の意見は自分の中での絶対
あのクソ女に手を出すってことは
飼い主の手を噛む事と同じ

ビビッてるわけじゃない
ヤクザだろうがなんだろうが別に怖いわけじゃない

ただもう面倒な事がうんざりなだけ

547 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:37

少し早くに店に向かう

掃除といってもただの蛍光灯交換らしい

ディーラーの服に着替える前
シャツを黒のパンツから出して、腕まくりをし
脚立を肩に担ぎ、蛍光灯を適当に数本掴んで部屋に向かう


 トントンッ


誰も居ないようだ

「失礼します」

社長はいつもたまに顔を出すくらいだから
居なくて当然なんだけど
社長の側近の人間がいつもなら居るはずなのに
その男たちさえも見当たらない

548 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:38

 カチッ

電気をつけて確認すると
部屋の中心辺りの蛍光灯がチカチカと点滅していた


「ったく・・・」


脚立を広げて一番上に座りながら蛍光灯を取り外す


 チーンッ


奥のエレベーターから誰かが上がってきたようだ
構わず作業を進めていると

 トントンッ


誰だ?社長なら入ってくるはずなのに


 ガチャッ


「あ・・・」


顔を下に向けるとこれで3度目だ

549 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:39

「オッド・・・」

ウチはまた作業に取り掛かる

「なにしてるの?」
「・・・見りゃ分かるだろ」

「それも、そうね」
「何の用?社長はまだ来てないけど」

「社長は今日は出張よ?」

出張なんてあの社長にあるんだ
どうせどっかの女と旅行にでも行ってヤりまくってんだろう
女がウチの座っている脚立に近づく

550 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:40

「ねぇ、オッド・・・あなた、いつからここに?」

取り外した蛍光灯を手にして
女に向かうように脚立を降りた

「うるさい」

ウチは傍にあった新しい蛍光灯を箱から抜き出し
また脚立に登ろうと手をかける

「どうして、自分の事を話したがらないの?」
「・・・・・」

かけていた手と足を下ろすと
振り返って女に向き合った

「お前にだけだ」

タンタンッと脚立に上る


「・・・どうして」
「社長の女だから」
「関係ないじゃない」
「ウチにはある」

551 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:41

「飼いならされてるから?」


脚立の上から女を見下ろすと
挑発するでもなく、誘うでもない
ただの一人の女の顔があった


「一緒だね」
「・・・違う」

「どこが?」
「自ら選んだかそうじゃないか」

「あなたは自ら飼い犬を選んだの?」


ふぅとため息を漏らし
交換を終えて脚立から下に降りる
至近距離で女を睨みつけた

「・・・そうだ」


「ねぇ」

女は降りてきて、片付け始めたウチの腕を掴む
捕まれた腕を振り払う

「さわんじゃねぇ」



「ねぇ、抱いて」


女は自らスカートをたくし上げる

552 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:42

「ねぇ、誰も来ないよ?」

「・・・社長に仕込まれたのか?」
「・・・そうよ?」

「汚れた女を抱く気なんてない」

「あなたも一緒なくせに」

「・・・なんだと?」

「違うの?」

女はまたウチを見下す
その視線が気に食わない

ウチは女の口に手を当てて
頬を握りつぶすように抑えた

「んっぐふっ!」
「次は殺すぞ」


 バタンッ

脚立を抱えて、部屋を出る

クソが。分かったような口ぶりで
ウチを見下ろす女
気に食わない、気に食わない

553 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:43



倉庫に脚立を戻して
スタッフルームに続く廊下を歩いていると

「ひとみ!」

アヤカ?
振り返ると、店の裏口から顔を出していた

「なんでここにいるんだよ」
「あたしも来たくて来てんじゃないよ」

「じゃあなんだよ」
「言伝。今日店が終わったらうちの店に来てってママが言ってた」

「それだけのために来たのか?」

「バカ・・・決まってるでしょ?」

アヤカは誘うように見つめる

「今からかよ」
「違うわよ。会いたかっただけ」

「そう・・・」

554 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:43

場所なんて構わない
まだ誰もこのビルには居ない
腕を取って引き寄せる

「アヤカ」
「な、なによ、ちょっと、ココで?」
「黙って」
「や!ひと、ちょっと、まって!」

非常口のドアに押し付けて服の上から強く胸を揉む

「やぁ!だめ、だって!誰か来ちゃう」
「うるさい」

首筋に顔を埋めて彼女のシャツの下から手を差し込む

「んん、んぁ!だ、め、だってぇ」
「うれしいくせに」

待ちきれないと腰がゆるく動き始める
コイツもあの女と一緒だ
ウチが触れるだけで、勝手にうずき出しやがる
アヤカはウチの首に腕を巻きつける

555 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:44

「ひとみ!んんぁ!」

手をスカートの中に入れ、指を奥に侵入させる

「んやぁ!そ、んな、やぁ!」
「こん、なに、濡らしてさ」

「んんぁ!はぁ、んぁ!」
「欲しがってんのに」

「だめ、ひとみ!やぁ!ひとみぃ!!」
「ほら、もっと、腰、動かしなよ」

「んぁぁ!ひ、とみぃぃ!」


誰も居ないビルの廊下に声が響き渡った

556 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:45
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
557 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:45
  ◆  ◆  ◆


あの人が出て行った応接室
蛍光灯は一本だけ明るく光っていた

ここに来れば必ずあなたが居るような気がして
社長の居ない隙を見て来た

二度と会うなと言われても
わたしは自分の衝動に素直に動く

飼われている身だとしても
ずっと続くわけじゃないと分かっているから

あの人も飼われている身・・・
何故だろう

あの人は誰かに飼われるような人間じゃない
一人で居た方が
誰かに服従するよりも
誰かを統率したほうが似合う
それを本人も気づいてるはずなのに

何故だろう・・・


 「次は殺すぞ」

フフッ。もう何回目?
あの人がわたしを殺せない事知ってる
だって・・・

558 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:46

わたしは応接室を出て
地上に向かう階段を上る

階段を上って外に繋がる扉に手をかけようとしたら

あの人の声が扉越しにした

誰かもう一人の女の喘ぎ声とともに

559 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:47
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
560 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:48


「はぁ、はぁ・・・」

「ひと、み、やぁ!んんぁ!!」



フフッ・・・自分だって汚れてるじゃない
アイツと代わらない鬼畜じゃない

ビルの廊下で、誰に見つかるか分からない場所で



それより、オッドの名前
ひとみっていうんだ・・・


あの目から来てるのかな

ひとみは何故この世界に居るのか
どうしてあんな冷たい目をしているのか

秘密を暴きたくなった・・・

561 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:49

彼女の目を思い出すだけで
身体が熱くなる

もっとも熱くなるそこに触れると
じっとりと溢れていた

「ん・・・はぁ・・・」


 「ひと、みぃ!ひとみ!んぁぁ!」

 「はぁ、はぁ・・・んん」


ドア越しに伝わる熱気
わたしは扉に手をついて、右手の指を奥に沈める

「ああ、はぁ・・・」


 「ひとみっ、だ、めぇ!」

 「ほら、もっと動いて」

自分の指なのに
目を閉じれば、そこに・・・
左手の冷たい扉越しに
あなたの熱を感じる

562 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:49

「ああ、はぁ、ひと、み・・・」



 「やぁ、だめ!っちゃう!!」

 「ああ、ああ・・・」


「んぁ、はぁ、はぁ、んんん!」



身体がピクンッと小さく跳ねた


「はぁ・・・はぁ・・・」


彼女がほしい
彼女のあの目に、犯されたい

こんなにわたしを濡らしたのは、彼女が初めてだから・・・


「ひとみ・・・」


わたしも変わらない
わたしもあの人と一緒。ただの鬼畜なんだ

563 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:52
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
564 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:53
  ◇  ◇  ◇


「・・・赤の16。おめでとうございます」

今日も変わらずルーレットを回す
昨日来ていた客。大金を掴んだものはまた今日も来る
しかし全てを失ったものは二度とこの店に現れない
どこぞで首でも吊ってるんだろう

フッと笑みをこぼす

するとルーレット代の1番端に座っていた客が
急に怒鳴りだした

 「おまえ、イカサマだろう!!!」

辺りが静まり返る

 「さっきからずっと当たらないじゃないか!」

このボケが・・・
時々当たらない事をはらいせに怒鳴り散らす客がいるけれど
ただ運がないと思えばいいのに

「・・・ここのルールをご存知内容ですね、お客様」

 「なんだと!?」

後ろの扉から強面の男たちが現れる
565 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:54

「全て、運ですよ」

ウチはニヤリと口の端を上げて笑う

 「て、てめぇ!!」

 パチンッ

指を鳴らすと男たちが
怒鳴り散らしていた男の腕を掴んで奥に連れて行った

 「お前!覚えとけよ!!!」

連れて行かれた人間のその後はたいてい
想像どおりのことが行われる
時々、閉店後外に出ると店裏で野垂れ死んでることがある
イチャモンをつけてきたらどうなるか
それが他の客に対しての見せしめにもなるから
ああいう客も、居てもらった方がありがたい

こっちも命かけて回すんだから、命かけて張ってほしいもんだ

566 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:55

今日は客からのクレームのせいで早上がりすることになった
他の客からの疑惑をかけられると
商売も上がったりだからだ

裏口から外に出ると、まだ暗い街には冷たい風が吹く

「ふぅ・・・」

 カキンッ  シュボッ

煙草に火をつけて深く吸い込む
そういや店にこいとアヤカが言ってたけど
今日はそんな気分じゃないな
メールをして行かない事を告げた


今日はもう帰って寝よう
こんな日に酒なんて飲んだら
何人も殴り合いしなくちゃいけなくなる

567 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:55

街を歩いてると
ウチを避けるように、人は行き交う
ウチの姿をみたらヒソヒソと話し合って
そっちを見れば、目をそらして物陰に入る

どいつもこいつもクソばっかりが・・・



 グイッ!

いきなり腕を引かれて、振り向かされる

・・・コイツが一番のクソだったか

568 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:56

「オッド」
「・・・またお前か」

「ねぇ、昼間の続きしようよ」
「人の顔を見ればヤろうって、お前頭オカシイんじゃねぇか?」

「そうね、おかしいのかも」

ニコッと笑う顔はビッチでも能面でもない

「・・・何が目当てなんだ」
「何って?」

「つきまとってくる目当てだよ」
「そんなの、ないよ」

「金か?クスリか?」
「違う」

「じゃあなんだよ」

569 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:56

「オッド」
「・・・は?」


「あなたよ」
「・・・・・あいにく、誰の物にもなんねえの」

「いいよ、それでも」

煙草を深く吸い込む

「それでも、わたしは、あなたを手に入れるから」


なんなんだ、こいつのこの目は
それにこの感情・・・
胸がモヤモヤする感覚
隙間に入り込んでくる、こいつの言葉


誰かの時に似てる・・・

真希のときか・・・


いや、それ以上、なのか

570 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:57

「ねぇ、オッド・・・」

首に手を巻きつけてウチに抱きついてくる

「あなたの隙間、埋めれないかな」
「・・・隙間?」

唇がつきそうな距離で女は漏らす

「あなたと、わたしのなかにある隙間・・・」
「・・・さぁ、やってみなきゃ、分かんねぇ、だろ」


女はフフッと笑みを漏らして、唇を合わせた


クラブの時のような
奪うだけのキスじゃなくって

何度も確かめるように


ウチは腰に腕を回して引き寄せる

571 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:57

「ん・・・はぁ、オッド?」
「なに」

「見られてるよ?」
「構うか」

キスが熱を帯びる
自分の中にある欲求が顔を覗かせる

「はぁっ!んん・・・」

「ん・・・・・はぁ・・・」

「もっと、してよ・・・」



「なぁ・・・」

唇が離れた隙間にウチは女に問う

「ん、なに?」

「名前、なんだっけ」

「フフッ・・・梨華よ」

「梨華・・・」

また唇を重ねる
舌を絡ませて、口の中を弄る
ウチの舌の動きに合わせて、梨華の舌も動き回る

初めてとか言ってたっけ
ウチに合うはずだ

572 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:58



「なぁ・・・」

「なに?」


「ベッドある?」



573 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/19(月) 21:58

574 名前:Rink 投稿日:2005/12/19(月) 21:59
更新終了です
575 名前:Rink 投稿日:2005/12/19(月) 21:59
レスポンス


>7&Y様
始まってしまいました
「止まれよ、ちったーよ!」って声が
聞こえてくる事承知で上げてしまいました汗

7&Y様もお体には気をつけてくださいね!

>774飼育様
ダーク感出せてて良かったです泣
しかし、見切り発車してしまったため
かなり大変ですが汗
がんばります〜

>名無読者
点と点を結ぶ作業に、今回は大変です泣
ありがとうございます、がんばりますです!


>名無飼育さん
アザッス!

>名無し読み手様
ありがとうございます
圧倒だなんて、いえいえ、そんなそんな

>名無飼育さん様
一気っすか、大丈夫ですか?
( ^▽^)<目薬いる?
ありがとうございます

>あいわい様
素敵な日課ありがとうございますww
師匠だなんてそんな汗
しがない、いしよし書きでございますよ

>名無飼育さん様
ぶっちゃけ早すぎて読んでる方がバテられてるんじゃないかと
本当に心配なんですが・・・
作者も病気のように上げまくりです汗
576 名前:Rink 投稿日:2005/12/19(月) 22:00
今回の更新分は>>533-573です

ペースが速すぎて、読まれてる方が萎えるんじゃないかと
ビクビクしながら上げております

ゆっくりでもいいので読んでいただければ光栄です


次回は作者の限界に挑戦した濡れ場で御座います

( ^▽^)<がんばっちゃう♪
(0^〜^)<梨華ちゃん、頑張りすぎ・・・
577 名前:Rink 投稿日:2005/12/19(月) 22:05
書いても書いてもボツボツボツな状況で
かなりスランプに陥っていますが
読んでくださっている方のレスを見て
励まされております。本当にありがとうございます

なのに、レスでまた敬称抜けてしまいました
スイマセンスイマセンスイマセン汗
578 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/19(月) 22:09
やばい、いい!!
579 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/19(月) 22:14
ほんと目が離せない展開です。
毎日ここをチェックするのが楽しみになってます。
Rinkさんも無理はなさらないでくださいね。
( ^▽^)<マイペース、マイペース♪
580 名前:Rink 投稿日:2005/12/19(月) 22:19
そして、またバカ変換発見

>>564
ミス
「・・・ここのルールをご存知内容ですね、お客様」

訂正
「・・・ここのルールをご存知ない様ですね、お客様」

です。ほんと申し訳ないです汗

(0`〜´)<しっかせんかーい!
581 名前:774飼育 投稿日:2005/12/19(月) 23:10
更新お疲れ様です
いやぁ ヤパーリ続きが気になりますねぇ
続きを書くのもがんばってくださいね〜
582 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/20(火) 00:07
赤版からずっと追っかけてきてます!
毎日更新されるのが今楽しみとなってます。

前回までのホワホワとした感じとはまた違って、
今回の話はドキドキな感じで目が離せないですね。
無理せず進めて下さい。
一読者として楽しみに待ってます。
583 名前:名無 投稿日:2005/12/20(火) 00:54
更新お疲れ様です。
続きが気になります、、、
584 名前:名無読者 投稿日:2005/12/20(火) 02:25
更新お疲れ様でした。

更新量の多さや、ペースの早さは、読み手としては
嬉しい限りです。
作者様にとっては大変でしょうけれど・・・(汗

次の更新も楽しみに待ってます!
無理なさらず頑張って下さい!
585 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/12/20(火) 02:44
大量更新最高!
586 名前:あいわい 投稿日:2005/12/20(火) 19:00
更新お疲れ様です!
やばい!やばすぎます!よすぎです!!
もうすっかりRink様の小説中毒です…!
これからどうなっていくのかすごく気になりますね…。
次回も期待してますっ!
587 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:21

588 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:24


「っくっ・・・ああ!」

「もっと、乱れていいよ」

「ああ、んぁ、はぁ、はぁ」

「ほら、ねぇ、もっと見せて」

「んんん、ああああ」

「ねぇ、オッド」

「・・んん、はぁ、はぁ、に?」

「両目で、わたしを見て」

「ん、で」

「あなたの、目で殺して」

ウチの上で、梨華が笑う
閉じていた左眼をそっと開く

「そう・・・その目」

「んぁあぁ!!」

「・・・ひとみ」

「んんっぐ!!よ、ぶな!」

「ひとみ・・・もっとよがって」

「よ、ぶなぁぁぁぁ!」

「ひとみ・・・」


「んんん、あああああああ!!!」


589 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:24
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
590 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:26

社長と同じベッドで
しかも梨華に抱かれてるなんて
知られたら殺されるな・・・

「フッ・・・」

「どうしたの?」

「いや・・・別に」

煙草を燻らせながら、自嘲の笑みが漏れた

「どうして、ひとみは目を閉ざすの?」

シャツだけを羽織った梨華がウチの上に跨る
長い髪が肩に流れるようにかかる

「クセだよ」

「だれの?」

誰の・・・か・・・

「誰に慣らされたの?」
「お前には関係ない」

「前の女?」
「・・・・・」

「図星?」
「お前が誰にでも腰を振るのは社長のクセだろ」

「・・・そうね」

「じゃぁ、何でだ」
「・・・・・」

言えないんだろ
じゃぁ、ウチに聞くんじゃない

591 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:27


「一緒だな」


梨華は俯いて、何か思いつめるようにじっと自分の手を見た


「・・・いいよ。見せてあげる」


梨華はウチの上から降りて
ベッドの横に立ち上がった

「・・・これの、せい・・・よ」

ウチに背中を向ける
梨華はシャツを身体に滑らすように脱いだ


592 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:28


そこには
背中一面に見事な刺青があった



女豹・・・
梨華の背中には
岩場に前足をついて真っ黒な豹が
こっちに襲い掛かるように牙をむいている


暗い部屋でも分かる
豹の強い目、白い牙。
今にも食い殺そうとする鋭い爪
毛の一本一本にも躍動感が感じられる
雷雲を切り裂くように吠える姿

よく見ると豹の左眼がシルバーグレイに光っていた


ヤクザの女ってのは、本物だったわけだ
そりゃ、こんなもの見たら
そのへんのガキはチビって逃げ出すな


593 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:28


「昔、惚れた女がいた」


「でも、死んだ」


「忘れないようにするためだよ」



「・・・忘れるためだろ」
「そう、かもね」
「なるほどね・・・」

「怖くないの?」

「別に」

「そう・・・」

梨華はこっちを向いて、ベッドに上がる
四つん這いになりながら迫る姿はまさしく女豹だと思う


594 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:30

「あなたが初めてだよ」
「なにが?」
「これを見ても、怖れなかった人」
「そのへんのクソと一緒にするな」

煙草を灰皿に押し付ける
梨華はウチの首に手を巻きつけて、見下ろすように座った

「強い人って好き」

「その女もそうだったのか?」

「・・・そうね。でもひとみはそれ以上だよ」

「それは光栄だね」

595 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:30

「社長は、これが憎いみたい」

梨華は少し首を後ろに向けて、どこか切なそうな目をした

「自分のものにはならないって、思ってるからなのかも」

「昔の女がいつまでもそこに居るんじゃな」

「・・・そうね」

「後ろ、向いて」


梨華は背中を向けると髪を前に流した

596 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:31

どこか、似てる、自分に。
そして、アイツ以上に梨華は背負ってる

豹の目にそっと触れる


「んぁ!」

梨華の身体がグッと反った

「そん、な、優しく、触れ、ないで」

「なんで」

「・・・初めて、だから」


慈しまれることなんてなかったのか
怖れられて、犯されるだけで
自分の体を他人の性欲処理だけのために使っていた女

だけど本当はそんなことは望んでないんだろ

昔の女の事を思い出しながら
目の前の男や女たちに呆れていたんだろ

こいつも違うって・・・

597 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:32

ウチは梨華の背骨に沿って舐め上げた


「んんぁぁ!!」


ビビられる存在は、ウチと同じ

脱ぐか脱がないか、それだけの違い


「んん、ぁぁ、はぁ!ひと、みぃ!」


自分に課した、過去への思い。
背負っていたって、忘れることなんて出来ないのに
それをお互いは誰にも理解されず
されることなんて求めず

いつか散っていくその時まで


ウチは左に銀目をもつ
梨華は背中に豹をもつ

598 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:33

「んぁぁ!ひと、みぃ!」

「なに」

「もっと、強く、してよぉ!」

「なんで」

「そんな、やさ、しくされ、たら」

「なに」

「こわれ、そうに、なる!!んぁぁ!」

「・・・わかった・・・」

ウチは梨華を四つん這いにして
後ろから激しく求めた

「んぁぁぁ!も、っとぉ!!」
「ほら、もっと、よがりな、よ」
「ああ、んぁ!はぁ!」
「ほら・・・ほら、なぁ、もっと、振ってよ」

「ああ!んんっ、こんな、の、初め、てだよぉぉ!」

599 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:33

髪を振り乱しながら、声をあげる
ベッドについてる手が震えだす
シーツをきつく握り締めて
蜜を垂れ流しながら、そこはキツく閉まる

「んぁ、はぁ、もっと、振りなよ!!」

「ああ!もっと、やぁ!ひとみ!!」

自分の中で何かが食われていく
梨華の背中に描かれた豹の牙に
食い尽くされそうになる

「んあああ!あぁ!もっと、ほら!」

「やぁ!んんん、はげし、くしてぇ!」

ギシギシとベッドが鳴る
誰にもこんなに激しくした事が無いのに
なんでウチは、こんなにも求めるんだ

600 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:34



   “ ・・・ひとみ・・・ ”




お前の影なんて消してやる

ウチはもう、お前に苛まれることなんてない

もう、消してやる



「も、っと!もっとぉ!!」

梨華はウチのそんな気持ちを読むように
叫び声を上げる

「わすれ、させて、やるよ。んんぁ、ほら!!」

「んぁっ!はぁ、はぁ、んと?」

「ああ、ほら、もっと、動いて」

背中を左手で撫でながら、覆い被さるように強く指を動かす

「んんぁぁぁ!!」

「ウチの、クセ、つけてやるから」

「ひと、みぃぃ!!!」


身体をビクンッビクンッとわななかせ
梨華はベッドに倒れこんだ

601 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:35

「・・・上、向いて」

「ん、んぁ・・・」

力なく身体の向きをかえると
休む暇を与えず、また梨華を求める

「んぁ!だ、だめぇ!!」

「んだよ、もっと、欲しいんだろ?」

「だめぇぇ、あああ!ひとみ、ひとみぃ!」

ほら、もっと乱れなよ
全部手放しなよ
新しいウチの癖つけてあげるから

もっと、よがりな

602 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:36

「んんんぐぐっ、ううううう!あああ」

梨華の口の端からは、涎が零れる
それに吸い付いて、舌で口の中を犯す
手は激しさを増す


「ひと、みぃ!・・・目、で、ころ、してぇ」

「んんんん、ぁぁあああ!」

「も、っとぉ!」

「はぁ、はぁ、はぁ!んんんぁぁ」

身体も支えられないほど、ウチは手を動かしつづける
優しさや思う気持ちなんてそこにはない
ただ、激情だけがウチを動かす
梨華もそれに応えるように、腰を振りつづける

603 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:36

 

   “ ・・・ひとみ・・・ ”



頭の中に残る、アイツのよがってる顔が
アイツの潤んだ瞳が消えるまで

梨華の顔の横に倒れこんで、頭をつける



「んん、ぁぁ、ぁあああ!足りない・・・足んねぇ!!!」

「もっと、もっと、いいから!!」

「ああああ!」

「んん、ひと、みぃ!!ひとみぃ!」

「ああっ、くそ!くっそ!!」


「ああああっ、ひとっ、みぃぃ!!」

「んんんっぁぁぁぁああああ!」


604 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:37
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
605 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:38
  ◆  ◆  ◆


ひとみは狂ったようにわたしを求めた
今まで抱かれた、誰よりも激しく

忘れさせてやるって言いながら
自分が何かを忘れるように

過去の女なんて忘れさせてあげる

わたしが消してあげるから


消せないわたしの背中は

あなたのその目で、殺して



「ひと、みっ!ひとみぃ!」

「ぁぁ、ああ!くそっ!」

「もっと、もっとぉ!」

「あああっ、ああ!」

唸り声を上げながら、憎しみや苦しみをわたしにぶつける

いいよ、いいから
もっとぶつけて

いいよ、わたしが忘れさせてあげる

606 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:39

「っくぅぅ!!ひと、みぃぃ!」

「んぁ、ああ!り、かぁぁ!」

苦しそうに顔を歪ませて
息を切らしながら、強くする、痛くする

それでもわたしは辛くなんてない

ひとみが求めてくれるなら


「りか、りかぁぁ、んんあああ」

「いい、よぉ、もっと、ねぇ、もっとぉ!」


ひとみは擡げていた頭を少し上げて
わたしに激しく唇をつける

舌が絡んで、熱を帯びて
ひとみの指から身体から発される全てが快感に変わって
背中から頭に向かって貫いていく

ひとみの両目がわたしを刺さるように見つめる

目の奥にある小さな灯火が
ゆらゆらと揺れる

ねぇ、その火をもっと大きくして
わたしを焼き尽くすくらい

頬に手を当てて顔を引き寄せる

「もっと、ねぇ、消してぇ!」
「んんんぁ、あああ、ああ」

607 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:40

壊れてもいい ボロボロになってもいい
あなたになら、殺されていい

「ひと、み、ころ、してよぉ!」
「あああああ!!!」

ひとみはベッドについていた手を
私の首にかけた

「そう、ねぇ、もっとぉ!」

左手の力が強くなる
首が絞まる音がする


「んんっぐぅ、ぐふっ!」

「りか、りかぁ!」

「んんん、んんぁぁぁあああ!!」



身体がベッドから持ち上がって
ビクンッと大きく跳ねた

608 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:41

「ん、んん、ああ、、ああ・・・」

「はぁ、はぁ、はぁ・・・あぁ、んっ、はぁ・・・」

ひとみの身体から力が抜けて
ガクッと崩れ落ちるように、横に倒れこんだ


指を引き抜かれて
わたしの身体が、ブルブルッと震える


「ん、はぁ・・・はぁ・・・」

ひとみは荒々しい息を整えながら
わたしを強く抱き寄せた


「んん、ぁあ、はぁ、はぁ・・・」
「はぁ、はぁ、ん・・・」


唇を合わせて
今までにない優しいキスをくれる


「んんっ、っくぅ・・・」
「んっ、ん・・・」

舌が絡んで、ピチャピチャと音が響く
熱くて、ねっとりと絡み合う

誰よりも激しくて
誰よりも優しい


ひとみが唇を離すと、白い糸が引いた

609 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:42



「意外と、優しいんだね・・・」





「・・・うるせぇ・・・」




口の端を上げて、ひとみはフッと笑った

610 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:43
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
611 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:44
  ◇  ◇  ◇


眩しい光で目が覚める
いつもと違う景色に、少し戸惑った


「んんっ・・・」

自分の横を見ると、寝ていたはずの梨華の姿がない

「・・・まぁ、こんなもんだろ」

一緒に目覚めて、おはようのキスだなんて
くだらないマンガの中の話

ビッチにそんなのは似合わない


体を起こして周りを見渡す
よく見ると、女の子の部屋だ
モノトーンだけど、小物が飾られている

ベッドサイドには伏せられた写真立て

そっと起こすと、何人もの強面の人間に囲まれた梨華が映っていた
梨華の隣には目つきの鋭い女が寄り添うように立っている

「・・・こいつか・・・」

梨華の背中に黒豹を背負わせた人間
今はもう居ない女

「たしかに豹の目だな・・・」


ベッドから起き上がると、脇に落ちていたジーンズに足を通す
頭を振って目を覚まさせる
早くこの家を出よう

あの男と同じ空間に居ることが気に食わない

612 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:45


 ガチャッ

ベッドルームの扉を開けると
奥からなにやらいい匂いが漂ってきた

「・・・ああ?」

足を進めると、キッチンに梨華が立っていた
その顔は今まで見たことのない幸せそうな顔

「あ、おはよう」

「・・・ああ」

頭をガシガシ掻きながら理解出来ない状況を
なんとか把握しようとキッチンカウンター脇のテーブルを見る

「朝ご飯、出来るから」

眩しい笑顔をこっちに向けた
光なんて放ってないのに、左眼を閉じる

「シャワー浴びる?」
「・・・ん、ああ」

613 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:46
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
614 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:51

  キュッ  ザァァアーーー



あんな激しいSEXは初めてだ
膝が震えて、腰が立たない・・・


「ってぇ・・・」


何度も何度も求められて、その度激しさを増す

シャワーから出る熱いお湯を頭から被った
壁に手をついて、ポタポタと流れ落ちる湯の中で
目を閉じた



  “ ・・・ひと、・・・ ”



声はするけど、姿はもう見えない

見事に消されたってわけか・・・


フッ・・・


「your win・・・」



  ザーーーーッ  キュッ

大きなため息を吐き出して、バスルームから出た

615 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:51
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
616 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:52

「座って?」

ジーンズとTシャツを着ると、バスタオルを肩にかけて
ぬれた髪のままで、テーブルにつかされる

「まめ、だな」

「でしょ?」

嬉しそうに味噌汁を手渡してくれた

「クセか?」
「そうね」
「・・・そう」

ゆらゆらと湯気が立つ味噌汁に口をつける

「味は保証できないけど」

なんであんな激しい後の朝なのに、こんなイキイキしてんだ?
ウチから生気吸い取ったんか、こいつは

617 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:53

「・・・ん、べつに」
「そ?よかった」

「それより、服着ろよ」

梨華はジーンズとブラだけで食卓に着く

「どうして?」
「・・・どーしてって・・・」

「恥ずかしいの?」

「殺すぞ」
「いいよ?」

ったく、この女は・・・
箸を進めながら、梨華を見る

「それもクセ?」
「あなたからのね」

「え・・・?」

「この方が燃えるんじゃない?」
「朝からうるさい」

「フフフッ」

飼いならされてる女に飼いならされるなんて御免だ
ったく。
湯飲みに入っていたお茶を一気に飲み干した

618 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:54

「それより・・・これ、なに」

箸で赤いウインナ―を摘み上げる
梨華はウチの湯飲みにお茶を注ぐ

「かわいいでしょ?」

「ガキの弁当じゃねえんだから」

器用にタコになってやがる
こんなん作って喜んでんのか?

「いいじゃん、べつに」
「はいはい」

ウインナ―を口に放り込んで噛み砕く
朝からこんなバカ話繰り広げるなんて
思っても見なかったな・・・。
味噌汁を一気に飲み干す

梨華はウチの味噌汁碗を取ってキッチンに向かった

619 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:55

それにしても・・・このおかずの量は半端じゃないな
魚や卵がちょっとずつ、キレイに皿に盛られてる

社長もよくここまで慣らしたもんだ

「はい、どうぞ」
「ああ、ありがと」

梨華は席に着くと、テーブルに肘をついてニコニコウチを見てる

味噌汁碗を受け取って口を付ける

そういやコイツ、さっきから箸つけてない
っていうか食ってない

「食わないの?」
「いただきます」

手を合わせると、箸を持って食べだした

はぁ、こいつ・・・

「早く言えよ」
「ん?フフッ」

ウチが言い出すまで待ってたのか
お茶のタイミングといい、味噌汁のタイミングといい・・・
620 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:56

「クセか?」
「ん?なにが?」
「それも、これも」

味噌汁碗をちょっと上げる

「ひとみからよ」
「・・・そう」

「嬉しそうにしたら?」
「うるっせぇな」

「照れてんの?」
「マジで殺す」

「いいよ?」

また嬉しそうに笑った
コイツに何を言っても効かないみたい

「フッ・・・」

思わず口から笑みが零れた
それを見て梨華もまた笑った

621 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:57
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
622 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:57

「ごっそさん」

箸を置くと、梨華も手を止めてキッチンから灰皿を持ってきた

「ああ、ありがと」

「ごちそーさま」

梨華の皿を見ると、まだ半分も食べてない


「もういらないの?」

煙草に火をつける

「ん?」

またこいつは・・・

「いいから、食え」
「はい、じゃぁ、頂きます」

相手に合わせることを教え込まれてるのか
あのバカ男の考えそうな事だ

623 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:58

「いつから社長の女?」
「3年前」

「黒豹入れたときから?」
「・・・そうだね」

「そう・・・」


「ねぇ、ひとみ?」
「んぁ?」

「ひとみは、いつから?」
「なにが」

「目を閉ざしたの」

「・・・店で働き出してからだよ」
「いつ?」

「・・・3年前だね」

なんだろう、この奇妙な数字の一致は。
気のせいか?

「そう・・・」

梨華は少し目を伏せながら、箸を止めた

624 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:59


「・・・誰を見たくないの?」
「え?」

「誰を見ようとしないの?」
「・・・言ったろ?」

「・・・消せない?」
「何を」

「その人のこと・・・わたしで」
「そういうお前はどうなんだよ」

「・・・あなたなら、消せるかも」


そう言って立ち上がると、ウチの上に
向かうようにして跨いで座った

625 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/20(火) 23:59

「ねぇ、どう?」
「なにが」
「消せる?」

「・・・さぁな。やってみないと分かんない」

「フフッ・・・ねぇ、それ誘ってるの?」
「・・・さぁ」

梨華はウチの上から見下ろしながら
首を曲げてキスをする

髪をかき混ぜるようにウチの頭を掴んで
腰を動かし始める

「ねぇ、して?」
「カーテン開いてるけど?」

「いいよ、見えてても」
「ん・・・はぁ・・・」

626 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:00

「ねぇ、お願い」
「んんっ、な、に?」

キスの合間に梨華が漏らす

「カジノの、応接室で、して」
「どうして?」

「あそこ、嫌いなの・・・」
「なら、なんで」

「あそこで社長に犯されても、ひとみを思い出せるように・・・」


フッ・・・
こいつやっぱ普通じゃない

最高にビッチだ


「わかった・・・」

627 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:00
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
628 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:01

まだ誰も来ていないビル。
応接室に入って、ソファに押し倒される

梨華はウチの上に跨いで、狂ったように腰を振る
髪を振り乱し、ウチの肩に手を置いて
前後に、腰を沈める

「あぁ、ひとみ、ひとみぃ・・・」

「んん、ほら、もっと深く・・・」

「んぁ!ああ、はぁ!」

梨華の中に深く沈めながら
指を曲げるようにして何度も掻きだす
そのたびに、まるで踊るように身体を揺らす

「んぁぁ!やぁ!はぁっ!あぁ!」

「んっくっ」

629 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:02

髪を振り乱しながら上で腰を振るその姿は
あまりにもいやらしくて
そして顔をゆがめては、口をだらしなくあけて
喘ぎ声を出す

「それ、も、あの、男のクセ、かよ」

「ち、がう、んんん!ひとみ、から、んぁぁ!」

ウチは指を更に激しく突き動かした


「んひゃぁぁぁ!!」

身体を大きく弓なりにそらす
大きな胸が腰を沈めるたび揺れている
ウチは左手を胸に伸ばす
強く鷲掴みにして激しく揺らす

「こ、んなの、はじ、めてぇ、んぁぁぁ!」

右の手のひらは
梨華の中から溢れてくる蜜が溜りを作る

ぐちゅぐちゅと音を立てながら指を飲み込んでいく
中は昨日よりもさらに締まって
指が動かせないほど、キツイ

630 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:03

「んぁああ!やぁぁぁぁ!!」

身体をよじりながら、髪を振り乱して
喉をぐっとそらして
ソファの背もたれにしがみ付いてる

最高の女だな、こいつ・・・

上でよがりながら
ウチを見下ろすその目が
本物の豹みたいに食いついてくる

「んぁ・・・はぁ・・・」
「もっとぉ!」
「ああ!はぁ・・・」

631 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:04

 ガチャッ

いきなり応接室の扉が開いた

社長か・・・?
ああ、殺されるかな・・・


梨華はウチを左手で押さえつけて
擡げていた頭を上げ
荒げる息のまま、ギッと入り口の方を睨んだ


その横顔
長い髪の間からギロリと光る目は
まさしく女豹だった


こいつ、マジで最高・・・

632 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:05
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
633 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:06
  ◆  ◆  ◆


せっかくひとみと抱き合ってるのに
誰よ・・・

「んぁ・・・はぁ・・・何?」

 「あ、ああ、いえ、その、あの」

スタッフだろうか、男が一人呆然と立っている
ソファでひとみの姿は隠れている

わたしの上半身は男から見えていて
社長と抱き合っているのかと勘違いしてるみたい


バカ男、見て分かんないわけ?

「・・・まだ、なんか用?」

 「し、しし、失礼しましたぁぁ!!!」

634 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:07

 バタンッ

扉が閉まったのを確認して
首をひとみのほうに向けると、クックッと声を漏らして笑っていた

「なに、よぉ」
「フッ、ハハッ!お前、最高だよ」
「なにがよ」
「ビッチだな」
「うるさい」

わたしはひとみの口を塞いだ

「んぁ・・・はぁ」

「ねぇ、つづき・・・もっと、してぇ?」

「ん、ぁぁああ」

ひとみの手の動きが再開される

635 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:07

社長の居ない社長の部屋で
ひとみと繰り返される秘め事

まるで親に内緒で、部屋でSEXをする感覚
だけどそんな生易しいものじゃなくって


二人ともすごく、野性的で
本能のままに動く動物になる

「はぁ、んんっああ!」
「ほら、もっと、動いて」

「んぁあ!やぁ!」

ひとみの指を飲み込んでいるそこからは
次から次へと溢れ出す

ソファを、ひとみの身体を汚していく
たくさんの人にそこを貫かれても
この人の指を飲み込もうと、キツく閉まる

グブブッと締め付ける音がするほど

636 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:08

「はぁ、んんぁぁ!ひと、みぃ!っちゃうぅぅ!」

「ああ、ああ、はぁ、んっ」


強くて、熱くて、身体の中が溶かされる
過去の痛みも、全部溶けてなくなるように
この人はわたしの全てを消してくれる


「んぁぁ、やぁぁあああ!」


ひとみも、もう、全部消してよ
わたしだけを見て、ねぇ、ほらもっと


「っくぅぅぅ!んあぁっぁああああ!」

637 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:09
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
638 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:10

「なにがどうなって、能面なんだ?」

力が尽き果てて、彼女の胸に倒れこんでいると
体を通して声が響いた

「さぁ・・・声出さないからじゃない?」
「フンッ・・・あんなに出しててよく言うよ」

ひとみはわたしの頭を優しく撫でてくれる

「ひとみだけだよ」

少し顔をあげると、ひとみは少し笑った

「そう・・・」

「ねぇ・・・」
「なに?」

「消せる?」
「なにを」

「あなたの過去」
「・・・梨華はどうなんだよ」

「・・・あなたなら、消せるよ」
「そう・・・」

「ねぇ・・・」
「・・・さぁな、やってみなきゃ分かんないだろ」

「それ誘ってるの?」
「フフッ・・・さあな」

ひとみはまた優しいキスをくれた
初めて感じる、胸が震えるキス

もしかして、これが愛ってやつなのかな

639 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:11

「・・・消してよ」
「どうして」

「だって・・・もう、忘れたい」
「・・・いいのかよ」

「ひとみが、居るなら、いい」
「・・・ウチは誰のものにも」

「知ってる」
「だったら」

「それでも、わたしはあなたのものになるから」
「・・・そう」

オッドアイが少し揺らいだ
辛そうに顔をゆがめるのは、多分

「・・・泣きたきゃ泣け」

わたしが泣きそうな顔をしていたからだと思う

640 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:11

「やだ」
「なんで」

「・・・やだ」
「強情」

ずっと頭を撫でてくれるひとみはやっぱり優しい
あれだけ激しく熱くわたしを抱いても
投げて捨てるような事はしない
街に居るバカたちや、社長のようなことはしない

「・・・消してやるよ」
「うん・・・」

ひとみはわたしに何度も口付けながら
髪を、頭を、頬を撫でてくれた

「消してあげるよ・・・」
「・・・ん・・・」

二人で、少しだけ泣いた

641 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:12
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
642 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:14

いつ社長が帰ってくるか分からないと
熱も冷めないままに部屋を出る

地上へと続く長い廊下を歩いて
エレベーターに乗り込む

「また・・・、会ってくれる?」

ひとみはエレベーターの扉を手でおさえながら
顔を近づける

「・・・さぁな」

多分、彼女なりのYESなんだと思う
眼は優しくて、口元には笑みがこぼれていたから

わたしは少し背伸びをして、唇を重ねる

「んっ・・・」
「・・・はぁ・・・」

吐息が二人から漏れる
名残惜しむように、離れる

「じゃあな」

ひとみは扉から手を離した

扉が閉まる瞬間まで彼女はわたしをみつめてくれた
その眼は優しく、顔つきは穏やかだった

643 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:16

恋や、愛や、表情なんて
圭さんが死んだ日に全部捨てたつもりだったけど

ひとみに触れて
また思い出してしまった

ううん・・・彼女がわたしに与えてくれたんだと思う
だから、涙が零れた・・・

彼女も、本当は消したくないのかもしれない
だけど、消さなきゃいけない辛さが
溢れ出したのかもしれない

ねぇ、もう
二人で、消して
ねぇ、もう
過去なんて置いていこう


あなたと抱き合えば、全部消せるから

644 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/21(水) 00:16

645 名前:Rink 投稿日:2005/12/21(水) 00:17
更新終了です
646 名前:Rink 投稿日:2005/12/21(水) 00:17
レスポンス

>名無飼育さん様
アザッスッ!w

>名無し飼育さん様
ありがとうございます感涙
励ましのお言葉、とても心に染み渡ります

>774飼育様
スランプをやっと脱出して
なんとか書き上げることが出来ました
いやはや、今回は辛かった泣
最後までお楽しみくださいませ〜

>名無飼育さん様
ありがとうございます!
ちょっと無理な設定だったかなと今更後悔してますが
無事完結出来たので、最後までお楽しみくださいませ〜!
647 名前:Rink 投稿日:2005/12/21(水) 00:18

>名無様
( ^▽^)<こんなんなりましたけど〜♪

>名無読者様
いえいえ、読んでくださる方ありきなので
やりがい御座います
ありがとうございます!

>名無し飼育さん様
アザッスッ!w

>あいわい様
>やばい!やばすぎます!よすぎです!!
乱れすぎっす!!大爆笑してもたwww
( ^▽^)<中毒患者一人出ました〜
648 名前:Rink 投稿日:2005/12/21(水) 00:19

今回の更新分は>>587-644です

今回のテーマ 『女豹、石川』

( ^▽^)<張り切っちゃう♪
(;0^〜^)<もうむりっす・・・

かなり疲れました。もう当分絡みはいいっす泣
649 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/21(水) 00:23
リアルで読めました!
どうもありがとうございます。
エロ云々でなく、痛いほどの心理描写にorz

実は、仕事しながらずーっと更新チェックしてました。
もうRinkさん登場以来、m-seekから目が離せません…。
あまり無理せず、更新してくださいね。
650 名前:7&Y 投稿日:2005/12/21(水) 00:24
更新お疲れ様です
なんというか、苦しいですね
月並みな感想ですが幸せになってほしいなぁと思います

>かなり疲れました。もう当分絡みはいいっす泣
あはは、よく頑張りましたw(エラそうに)
凄かったっすよ、もうドッキドキ
651 名前:名無読者 投稿日:2005/12/21(水) 00:24
更新お連れ様でした。
上手く感想書けないけど、めちゃめちゃ良かったです!
結末が気になって、眠れなくなりそうw
次回更新も楽しみに待ってます。
652 名前:774飼育 投稿日:2005/12/21(水) 00:25
更新お疲れ様です
イタタタタタ・・・
心が痛いです作者様
何かお薬くださいな・・・
マッタリ書いてってください
次回も楽しみにしてます
653 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/21(水) 00:26
なんだか良い感じ
こういう胃が痛くなる展開苦手なんですが
先が楽しみでもあり面白いです
654 名前:名無し飼育 投稿日:2005/12/21(水) 00:29
リアルタイムレス多いなww
それだけ作者殿の更新を楽しみにしてる人がいるってことか
話にはすごく引き込まれました
圧巻ですな、作者殿
次回もまったり茶でも飲んで待ってますよ
655 名前:Rink 投稿日:2005/12/21(水) 00:52
リアルタイムレスありがとうございます
レスの詳細はまた次回にしたいと思うのですが
皆様からの意外な反応に作者驚いております
痛いですかしら汗
あまり何も考えず書いたものでして汗汗

最近のいしかーさんを見ているとどうしても
『ビッチ』という言葉が似合う気がして(褒め言葉です)

えー、この後も、多分マッタリしませんww
が、いしかーさんには頑張っていただける話になってますので
よろしくお願いしますm(_ _)m
chain!chain!chain!を見て、予習よろぴこ♪
656 名前:名無 投稿日:2005/12/21(水) 01:12
女豹( ^▽^)ちゃん,見事引き込まれましたw
大人ないしよしですねぇ。
私の中でいしよしといえば甘甘が染みついているので、
今までにない感じもすごく良いです!
今後の展開が楽しみです。
657 名前:あいわい 投稿日:2005/12/21(水) 08:36
ああああああ!ややややばすぎです!良いとかって言葉が霞んでしまうくらいよすぎです!
読みながらドキドキが止まらず…。…
きゅ、救心を…!
まさに好きすぎてバカみたい、みたいな…。
次回もものごっつい楽しみにしてます!
658 名前:名無し読み手 投稿日:2005/12/22(木) 00:31
なんかギリギリのとこに二人がいる感じします。
ハラハラしながら読んでる自分がいました。
そんな崖っぷちな状態結構好きです。。。
659 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:10

660 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:11
  ◇  ◇  ◇


「No more bets」

 カンッ カンッ カツンッ コロンッ

今日は球を投げ入れる集中力が冴えている
あれだけ激しく抱き合って
体力なんて残っていないはずなのに
精神力とはまた別物らしい


球を投げ入れる二本の指を少し見つめた

「フッ・・・」

吸い付くようにこの指を求める感触が
まだ残ってる

あれだけしたのに、まだ求めてる

ヤバイな
飼いならされるのはこっちなのか?

おいおい、嵌るなよ
あの手の女は後が厄介だから

661 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:12

今日も仕事を終えて
着替えを済ませると、長い廊下の先にある
外に続くドアの方へと歩いていった

社長のいる応接室から声が聞こえる


 「そろそろ、もういいだろう」
 「でも、もう少し稼いだ方が」
 「2億もあるんだ、もういいだろ」
 「相手は中澤ですよ?もう少し・・・」
 「そろそろココも潮時だと思ってる。オッドに任せてもいいだろう」
 「・・・そう、ですか」
 「梨華はアイツが気に入ってるみたいだしな」
 「・・・・・」
 「まぁ、もっと稼がせて、巻き上げてもいいだろう」

662 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:12

社長と誰かが話しているみたいだ
それより2億も稼いでたのか・・・
一体何に使うんだ・・・?
中澤って・・・誰なんだ

音を立てないようにそっと扉から離れた

2億、中澤、梨華・・・
頭の中で疑問が渦巻く

以前なら、関係ないと流していたが
どこかひっかかる


「ハァ・・・」

小さくため息を漏らして
外に続く階段のドアを開けた

663 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:13

梨華は毎日のように、ウチと抱き合う
激しく、優しく・・・
その度彼女は違う表情を見せる

泣いたり、叫んだり、悦んだり・・・


それも全部、初めてだと言っていた

抱き合った次の日の朝は必ずキッチンに立って
眩しいくらいの笑顔でおはようと言う

最初は軽くあしらっていた
慣れない状況に戸惑っていて、隠す事で誤魔化していたけど
やっぱりコイツには敵わないと思った


全てが歪んで見えていたこの目も
梨華の笑顔は真っ直ぐ見える

664 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:13

「昔ね、梨華の笑顔は太陽だって言われたことがあるの」

分かる気がしないでもない

「そんなクサイセリフ、よく言えるな」
「なによぉ!いいじゃない。ひとみだってそう思ってるんでしょ?」

頭をぽりぽりと掻いて目をそらす

「べつに」
「照れちゃって♪」

「ふっざけんなよ」
「フフフッ。ひとみも笑ったほうがかわいいよ?」

額を抑えて苦笑を隠した
ビッチだったり、普通の女だったり

コイツは忙しいな・・・


665 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:14




左眼も、梨華の眩しさになれてきた頃・・・




666 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:14
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
667 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:15


 ピンポーン


店を終えて、飲み明かした後
夕方過ぎに帰ってきて風呂も入らずにベッドに倒れこんだ

どれくらい寝たのか分からない
外はもうすっかり暗い。今日が休みでよかった
時計を確認する

「・・・8時・・・?」


 ピンポーン


誰だよ・・・寝付いたばっかりじゃないか
今日も梨華と抱き合って
酒も入っていつも以上に体力を消耗してる

そんなときに叩き起こされて
苛立ちは最高に引き出される

 ピンポーン

ったく・・・
インターフォンの受話器を取る
668 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:16

「はい・・・」

「わたし・・・」

施錠をあけてロックを解除する

なんだよ、また抱けとか言うんじゃないだろうな・・・

しばらくソファに倒れこんでいると
ドアベルが鳴った



 ピンポーン・・・


 ガチャッ

「なに・・・」
「開けて」

チェーンを外すと、梨華が俯きながら部屋に入ってきた
669 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:16

「どうした」
「話が、ある」

「抱けって?」
「・・・・・」

「無理。体力ない」
「違う・・・」

「なに」
「今から、出れる?」


顔を上げた梨華は思いつめた表情をしていた

670 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:16
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
671 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:18

静かなジャズバーの小さな半個室の席に向かい合って座る

ロックグラスを傾けてると
梨華が呟いた

「・・・社長、なにか企んでるみたい」
「・・・なにかって、なんだよ」

「・・・分からない」
「んだよ、それ」

「でも、家に、武器の書類がたくさんあった」
「武器・・・?」

「金も、手に入ったしって・・・誰かと電話で話してたの」
「・・・それで?」

「2億らしい」

・・・このあいだ店を出る前に誰かと話してたあれか
としたら、中澤ってやつに

「わたしの、組を、潰す気なのかもしれない」
「組、ねぇ・・・」

672 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:19

梨華は自分の家のこと
黒豹を入れるきっかけになった出来事を
全て話してくれた


「なるほど・・・」
「あの男だから、簡単に寝返るわ」

「・・・それで?」
「・・・・・」

「ウチになにをしろと?」



「社長の、金を奪って、逃げよう」



「わたしは、組の人たちにはお世話になったと思ってる
 だけど、・・・あの男からは逃れたい」



「ひとみと、一緒に居たいの。だけど男は・・・邪魔なの」



「あなたも、誰かに飼われるような人間じゃない」



「だから、ひとみ・・・」



やっと消えたはずの影がまた現れる

673 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:19


 「「わたし、自由になりたい」」


 「「もう、あんな生活は辞めたい」」


 「「だから、ひとみ」」


 「「一緒に逃げて」」


目の前に居る梨華が、真希と被る

話す言葉も同じかよ・・・
674 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:20

「・・・パス」
「どうして」

「誰かと組んでやるのは御免だ」
「なんで・・・」

「・・・昔、同じことがあって、逃げられたから」
「・・・・・」

「他あたって」
「・・・利害関係は一致してるわ」

「・・・なに?」

「あなたには金が、わたしには自由が手に入る」
「お前は要らないのかよ」

「別に。あなたと居るなら」
「フンッ、お前の方が得だな」

「それもそうかもね」

梨華は少し笑って、マティーニに口をつける

675 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:20

「信じられない?」
「・・・信じるのは自分と金だけ」

「なら2億を信じればいい」
「・・・・・」

「今なら特典でわたしもついてくるよ?」
「オマケは要らない主義」

「フフフッ・・・」

コイツはあいつよりも更にビッチだってこと忘れてた
手に入れるためなら手段を厭わない
梨華はそんなヤツだったな

「・・・勝算は」
「ひとみ次第」

「へぇ・・・丸腰でヤクザと張り合えって?」
「用意するよ」

「あんまり使いたくないけど」
「死んだら終わり」

「そうだな・・・」
676 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:21
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
677 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:22

梨華が持ち出した作戦はこうだ

事務所の金庫から金を運び出す日があるらしい
その日に梨華は事務所に行って
睡眠薬入りの酒をすすめて眠らせる

梨華は金を持って一度地上に上がって組長に電話をする

そこにウチが入って
社長が眠っている間に金の入った袋と同じ
石の詰まった袋と差し替えて置いておく

ウチは社長が眠っているのを確認して、店を出て
梨華が運転する車に乗って逃げる



そんな簡単に行くものか?

逃げたところで追っ手はかからないのか・・・

あの時は若さ故に、後先考えずに行動したけれど
知りすぎた今じゃ全てに疑惑がかかる


もしまた、梨華が・・・



疑いは消そう
金さえ手に入ればそれでいい



まぁ、オマケもいいかもしれないけれどな

678 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:23
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
679 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:23


社長が金を運ぶ日の前日
少し恐怖に震える

イーヴルアイがビビるだなんてな・・・
フンッ。らしくない。

すべてあのビッチのせいだ
自分をこんなに仕立て上げた
あいつのせいだな

680 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:24

ウチを何度も求めてくる
その度、あいつは聞いてくる

「消せた?」

とっくに消えてるさ。
目の前には梨華のよがる顔しか出てこない

梨華が昔言われた
“太陽みたいな笑顔”ってのも

今なら、頷ける

ウチはまんまとアイツのものになってしまったみたい

681 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:24

もう一度ビルの作りを見ておこうと
応接室の前を通りかかると

社長が誰かと電話をしてる声が聞こえてきた


 「ああ・・・そうだ。明日だ」

やっぱり梨華の言うことは合ってるようだ


 「・・・ああ、兄貴が殺したのは、後藤とか言う女だからな」


なに・・・?


真希は・・・殺された・・・?


 「だから囲ってんだよ。梨華が継いで厄介な事を起こさないようにな」


だから・・・?

兄っていうのは・・・


 「・・・まぁ、兄貴は後藤とか言う女と相打ちになったけどな」

682 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:25


なん、だって・・・?


真希を殺したって・・・?


真希は逃げたんじゃないのか


金を奪って、逃げたんじゃないのか!?




 ガタンッ


呆然として、後ろに下がると
廊下に置かれていた消火器に躓いた

 「誰だ!!」

ああ、まずい・・・

 ガチャッ

「・・・なんだ、オッドか・・・」
「しゃ、ちょう・・・」

「今の話、聞いていたのか?」
「・・・・・」

「お前には、話しておかずにいようと思ったが・・・」
「詳しく、聞かせてもらっても、いいですか」

「ああ・・・入れよ」


683 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:26


応接室に入ってソファに座る
ついこの間、ここで梨華と抱き合っていたのに
また心の奥から込み上げてくる

今度は、激しい憎悪が
梨華に対する、憎悪が生まれる


「以前、後藤とかいう女が居ただろう」
「ええ・・・」
「アイツは、ここから金を奪った」
「・・・・・」
「その当時のオーナー、俺の兄貴分が、梨華のオヤジで」

点が繋がりつつある

「そのオヤジは、真希を囲っててな。甚振るようにしてたらしい」
「それは、知ってます」
「・・・それが嫌になってな、あいつはココから逃げようとしたらしい・・・」
「それ、で」
「金を奪って逃げる時、兄貴が、銃で撃ったんだよ」

「・・・死んだ、んですか・・・?」

「・・・ああ・・・兄貴は刺されて、見つかった時はもう既に・・・」


激しい怒りが込み上げる
今まで逃げたと思っていた真希に対する後悔が込み上げる
頭を抱えるように俯くと
目の前の社長が声をかけた


「オッド・・・」

「なん、ですか」



「梨華には気をつけろ」

684 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:27


 梨華には気をつけろ・・・

 アイツは人を平気で唆す
 他人が死のうがなんて思わない人間だ

 お前の事を気に入ってるみたいだが・・・

 本気になるな

 梨華がお前を使って、何かを企んでるかもしれない

 操られるなよ

685 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:27

社長はウチにそう言ってきた

心の隙間に入ってきたアイツ
あの笑顔は偽物だったってことなのか・・・

3年前の出来事
真希は逃げたと思っていたが
梨華のオヤジに殺されていた事実

そして今また
同じ事が繰り返される

今度死ぬのは・・・自分なのか?

それも、あのビッチに陥れられて・・・


信じるもの・・・







  金だけだ



イーヴルアイが目を開く

686 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:28
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
687 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:29

梨華に渡された一丁の拳銃
ヤクザの組長から借りたそうだ

この銃は誰に向かって放たれるんだ・・・


時間どおり、梨華が社長の部屋に酒を持っていく

ウチは非常口の裏で待機する



あの男が、梨華の勧める酒を飲んだのだろうか
いかんせん作戦が甘いと思ってしまうが・・・

688 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:30

 ガシャーンッ!!


なに!?

非常口を出て、応接室の扉に手をかける
今日は店が休みの日で、あいにく誰もいない
廊下さえも電気が消えていて、ほとんど見えてない

このビルに居るのは、ウチと梨華と、社長だけ


 ガチャッ

真っ暗で何も見えない
廊下の非常灯の緑の明かりだけがぼんやりと辺りを映し出す

銃を構えて、勘を頼りに奥へ突き進む


はぁ・・・はぁ・・・
息を殺しながら、奥に進む


目が見えない・・・


すり足で奥に進む

689 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:30

 ドンッ

足元に何かが引っかかった
誰かが倒れている

近づいて見てみると、社長が倒れていた
近くにはガラスが飛び散っている

眠ってるのか・・・?


それじゃ、あいつはどこに


690 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:31











  ガチャッ

「・・・銃を捨てて」

691 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 01:31

692 名前:Rink 投稿日:2005/12/22(木) 01:32
更新終了です
693 名前:Rink 投稿日:2005/12/22(木) 01:32
れすぽんつ

>名無飼育さん様 :2005/12/21(水) 00:23
大変嬉しいお言葉ありがとうございます!
今回はエロじゃなくって生(性)と死は紙一重ってのを
出したかったんですが・・・
なんかめい一杯盛り込みすぎました汗
( ^▽^)<お仕事がんばって♪

>7&Y様
>月並みな感想ですが幸せになってほしいなぁと思います
最後までなんとも・・・
とりあえずラストはどえらい事になりますww

>名無読者様
( ^▽^)<ちゃんとおねんねしてね♪
ありがとうございます

>774飼育様
( ^▽^)<お注射しますね〜 ブスッ!
痛いですかねぇ。痛いですか汗
今後もっと774飼育様に注射ぶっさす内容に
なると思いますですww
694 名前:Rink 投稿日:2005/12/22(木) 01:32
>名無飼育さん様
(0^〜^)<胃薬だしますね〜
やっぱりいしよし=マッタリのほうがいい
というお声が多いようで・・・

今回はちょっとアダルティに行きます

>名無し飼育様
( ^▽^)<お茶いれますね〜
作者自身もリアルタイムレスの多さに驚きですww
グイグイいしかーさんには行ってもらいたいと
思ってます

>名無様
名無様の言葉で
皆様が痛い痛いと言っていたわけがわかりました
年齢設定を実年齢より+3くらいしていただけると
うれしいんですが、今更遅かったですかね?w

>あいわい様
また乱れ撃ちあいわい様・・・www
( ^▽^)ノ□<救心どうぞ〜
DEF.DIVAを聞いていて思いついた部分もありますねー
あの曲ビッチなんで、さらに足してみたらこうなりました

>名無し読み手様
( ^▽^)<あなたも好きねぇ〜
首の皮一枚って感じでしょうかww
崖から転落するのは・・・さぁ、誰でしょうか〜?w
お楽しみに♪
695 名前:Rink 投稿日:2005/12/22(木) 01:33
今回の更新分は>>659-691です

( ^▽^)<展開早くてごめんなさーい!!

謝罪ついでに次でラストになると思います
696 名前:Rink 投稿日:2005/12/22(木) 01:34
サイトのほう何とか骨組み出来てきました。
LINEがうp出来た状態です
もしよろしければこちらもどうぞー

ttp://maniac.himegimi.jp/

697 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/22(木) 01:35
またエライいいとこで切りますなぁ
もうラストですか
楽しみのような淋しいような
698 名前:774飼育 投稿日:2005/12/22(木) 01:36
更新お疲れ様です
ナヌッ もっと痛くなるんですか・・・
ココロして更新待っていないと・・・
次でラストですかぁ また番外編とかあるんでしょうか
その辺のところ期待しつつ 今日は寝ますZzz・・・
699 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/22(木) 01:37
うわわん。どえらいことってなんなんだあっっ???
眠れないっす。どうしよう??
700 名前:名無 投稿日:2005/12/22(木) 01:42
更新お疲れ様です
‥めちゃくちゃ続きが気になるっ!!!
( ^▽^)ちゃんの正体も‥ww
所々キャワな梨華ちゃんが見えたので安心したのもつかの間‥ww
次で全て明かされるのですねぇ^^
楽しみに待ってます。
701 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/22(木) 01:56
うふふ、今日は仕事もせずに飲んだくれてました。
慌てて帰ってきて、なんとかリアルタイムで読めました。

もう…参りました。
いろんな意味でorzでございます。
久々に手に汗握りながら更新を待ち、リアルで読ませて頂き
心臓を鷲掴みにされているにも関わらず、何故か幸せな気分の私はおかしいのでしょうか。

とにもかくにも、Rinkさんは神!
702 名前:名無し読み手 投稿日:2005/12/22(木) 02:00
うわあああああああ
って夜中に言ってました。
大人しく更新待ちます。。。
703 名前:Rink 投稿日:2005/12/22(木) 05:29
朝からこんなダークですいません
ラストに向けて一遍。
704 名前:BITCH 投稿日:2005/12/22(木) 05:41

705 名前:BITCH 投稿日:2005/12/22(木) 05:42



本当にアンタってバカだよね

手なずけたつもりなんだろうけど

そんな簡単に心なんて許すはずないじゃん

アンタも心のどこかでそれを分かってたんじゃないの?


706 名前:BITCH 投稿日:2005/12/22(木) 05:42


知ってたよ

アンタがどこかでわたしを疑ってること

全部計算済み

だからわたしはこうやって銃を向けてる


殺すことなんてなんてことない

アンタが死んだってどうってことない


707 名前:BITCH 投稿日:2005/12/22(木) 05:43



わたしのことを見下してたんでしょ

そうじゃなきゃ、あんなに激しく抱いたりしない


アンタがわたしのことを少しでも愛していたなら

わたしに殺されるのは本望なんじゃない?


708 名前:BITCH 投稿日:2005/12/22(木) 05:43


バイバイ


もう二度と会わない

わたしは、この人と一緒に行く



次会うとしたら、あの世でね



 BANG !!

709 名前:BITCH 投稿日:2005/12/22(木) 05:44

710 名前:Rink 投稿日:2005/12/22(木) 05:45
夜明けの更新終わりです〜
今回の更新は>>704-709でございます

さぁ、いしかーさんに張り切ってもらいましょー

( ^▽^)<いきまっしょい!
711 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/22(木) 08:21
うへぇ・・・気になる
712 名前:名無読者 投稿日:2005/12/22(木) 09:38
なんなの!なによ!・・・な展開ですねw
ますます先が読めなくなりました。
サイトにもおジャマしてみますね!
次回更新も楽しみに待ってます!
713 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/22(木) 16:24
なんかごっちんカワイソス
714 名前:あいわい 投稿日:2005/12/22(木) 20:24
ええぇぇぇええ!?えっ…ちょっ、待…っ!エエェェェェエエ!?なんだこれ!なんだこの展開!み、乱れずにいられますかこんな展開で!!

(〇´〜`)<落ち着けYO

うへぇ…なんか、こうじゃなきゃいいな、っていうかきっとこっちの展開だよな…!と願ってるんですが…。頼む!梨華ちゃん!そうだと言ってくれぇぇぇぇえ!(汗)
いつにも増して乱れレス(略してみだレス)すいません;
前回よりも動悸激しいです…!うまく息も吸えませ(ry
次回更新までに呼吸を整えておきます…!
715 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 21:54

716 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 21:54




「・・・銃を捨てて」



後頭部に冷たいものが突きつけられる

銃口・・・


「・・・やっぱりな」

銃を投げ捨てる

717 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 21:56

「分かってて、飛び込んできたなんて、アンタもよっぽどのバカね」
「どういうことだよ・・・」

「アンタに金なんて渡るわけないでしょ?手を上げて」

顔の横まで手を上げる

「はぁ・・・」

ゆっくり立ち上がって両手を顔の横まで上げる

「フフッ・・・まんまと嵌ってくれてありがとう」

背中越しに声が聞こえる

「わたしは強い男が好きなの」

「アンタには悪いけど、社長殺しの犯人になってもらうわ」

社長も殺してウチも殺して
金だけもってトンズラってか

「ごめんね?アンタのSEXは惜しいけど」

全部コイツの罠だったってわけか・・・
そんなこと百も承知さ

718 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 21:57

「なぁ・・・せめて死ぬ前くらい顔見せろよ」

「わたしに惚れてるから?」

「そう・・・だなっ!!」


ウチは一瞬の隙をついて、梨華が向けている銃口を
振り向きながら掴んだ

「は、なしなさいよ!!」
「うるせぇ!!このクソ女!」

 バシッ!

「キャァッ!」

ウチは銃を抑えながら左手で平手打ちをした

ドサッと床に倒れこむ
梨華から奪い取った銃を向ける

「クソ女が・・・」

719 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 21:58







  ガチャッ

「お前はクソ男女だよ、オッド」

720 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 21:59

後ろから銃を顔の横に向けられる
眠ってたのも演技ってわけか・・・

「・・・・あああ・・・」

「you lose. 銃を下ろせ」

「チッ・・・」

ゆっくりしゃがみながら銃を下ろして、梨華のほうに投げる

「悪役は簡単に死んだりしないのさ」


「お前の命なんて、大したもんじゃないけどな」


梨華がゆっくり立ち上がった
ウチを見下すような目線を送る

721 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:00

「よくも俺の女に手を出したなぁ!」


 ガツンッ!!


「んあああ!!」


 ドサッ

銃の柄で頭を殴られ、床に倒れこむ
ってぇ・・・こいつら、はなっからグルで
ウチを陥れるつもりだったのか・・・


薄れ行く意識の中で男の笑い声が落ちてきた


「クックックッ・・・お前もバカだな・・・金が1番裏切るんだよ」

722 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:06
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
723 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:08



「・・・んっ・・・ああ・・・」



声がする
頭がガンガンと割れるように痛い


「はぁ・・・はぁ」


うっすらと目を開けると、ウチの前のソファで
社長のナニを咥えている梨華の横顔が見えた

724 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:09

「んぐぅぅ!!」

「おぅ、目覚ましたか?オッド・・・」

男は横目でウチを確認する
手足と口を縛られ、身動きが取れない

「んんんん!!」

「お前もこの女抱いたんなら分かるだろ?こいつがどんな女なのか」

梨華を見ると、横目でこっちを見る
その顔は、能面そのものだった

「こいつは泣いたり叫んだりしないのさ、ほら、もっと動かせよ」

「はぁ・・んっ」

「お前に、見せてた姿は、お前を、騙すため、さ。んぁぁあ!!」

梨華の頭を男が押さえ、激しく動かしている
髪を乱しながら、それでも表情1つ崩していない梨華がいる


ああ、まんまとこの女にしてやられてたのか


「んん、はぁ、はぁ、んぁあああ!!!」


咥えていたナニを離し、口を拭う
その梨華の顔は変わらず、ウチを見つづける

725 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:10




梨華はニヤリとウチに笑った





726 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:10


歪んでる



コイツのあの笑顔は・・・
太陽のように眩しく輝いてた笑顔が



歪んで見えた







恐怖や、悲しさじゃない

目から涙が零れた


ただ、憎くて、悔しくて


727 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:11

728 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:11



「梨華、外に車を回して来い」


梨華は何事もなかったように髪を撫で付け
落ちていた銃を拾って、ウチに一瞥すると外に向かった




「なぁ、オッド・・・お前は球入れときゃこんな事にはならなかったのにな」

ウチは男を睨みつける

「まんまと俺の話に騙されてよぉ?」




「後藤って女を殺したのは、俺だよ」




な、に・・・?

729 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:16


 あの日、後藤って女が、事務所の金を奪って逃げる時
 梨華のオヤジが部屋に入ってきて
 揉みあいになってるところを
 後藤がナイフで腕を突き刺したんだよ


  「真希!待て!!」
  「嫌よ!もうアンタに囲われるなんて!」
  「待て!!」

   ドスッ!!

  「あああぁぁぁああ!!」


 梨華のオヤジは、後藤って女を愛してた
 けど後藤は、ヤクザが嫌いでな
 逃げ出したいと漏らしてたらしい

 逃げないでくれと引きとめたがアイツは腕を刺した


   ガチャッ

  「あ、兄貴ィィ!!!  このアマがぁぁぁ!」


 そこに俺が入ってきて

 アイツの背中に一発、打ち込んでやったのさ



   バァァンッ!!


  
   ドサッ・・・



 金を撒き散らしながら、アイツは死んでったさ

730 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:19


 オヤジは重症じゃなかったけど
 俺はあのオヤジを怨んでた

 だから全て後藤って女のせいにしてやろうと思ってな


  「兄貴!兄貴!」
  「ま、きを撃ったの、か・・・」
  「・・・・・」

  「そう、か・・・逃がして、やっても、良かったんだけどな・・・」

  「兄貴、あの女のことが・・・」

  「もう、遅いけど、ぐふっ、な・・・」




  「いいや・・・?・・・・・そんなことないぜ」


  「な、に?」


    ブスリッ


  「ぐはぁぁぁ!な、なにする、んだ!」
  「・・・あの世で、添い遂げな」


    グブサッ!!

  
  「ギャアアァァアアアアアアアア!!!!」





 オヤジも殺してやったのさ

731 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:20


「お前はそれを、梨華のオヤジが後藤を殺したとまんまと騙されてなぁ?」

なんだと!?
こ、の・・・クソがぁぁぁぁ!!

「ん゛ぐぅぅぅぅーーーー!!!!!!!」

 ドガッッ!!

「っぐっふっ!!」

男はウチを蹴り飛ばした
口を縛っている布が赤く染まっていく

「後藤に騙されたと思って、次は梨華に嵌められたと勘違いして・・・
 哀れだなぁ?オッド」

「んんぐぐぐぐうぅぅぅぅ!!」

 ドカッ!!

「っぐふっ!」
「おいおい、もっと楽しませてくれよなぁ?
 こんなところで殺すと思ってなかったからよぉ?」

 ドガッ!!!

「っがっはっ!!」

布が見る見るうちに赤くなる

732 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:24


「お前が後藤って女を抱いてる事くらい知ってたさ・・・
 だからお前を飼って、いつでも傍において、いつ寝返るか見てたんだよ」


囲われてたのは、ウチのほうだったのか・・・


 ドカッ!!

「っぐっ!!」
「飼い主の手を噛むとどうなるか・・・知ってるか?」

落ちていた銃を拾うと、ウチの胸座を掴み
机に押さえつけるように立ち上がらせる


「殺されるんだよ・・・」



引き金を引いて喉元に銃口を向けた



「・・・死ね」

733 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:30

男のニヤけた顔が
暗闇の中で分かった

真希を撃った男に、自分も殺される


ウチは、閉じていた左の瞼を開いて

奥を 見据えた

734 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:31









 ガチャッ


「死ぬのはアンタよ」

735 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:32
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
736 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:33
  ◆  ◆  ◆


金を奪うその日の昼
わたしは裕子さんに全てを聞こうと
お屋敷を訪ねた

裕子さんは少し顔をしかめて
わたしに言ってきた

「そろそろ・・・アンタに全部話してもいい頃やろう」


 裕子さんは全て知ってた
 圭さんを殺した人間
 そして、父を殺した本当の人間は

 あの社長だってこと


「どうして、今まで黙ってたんですか!」

「・・・誰が1番辛いか分かるか?」
「え・・・?」

「アンタやろ」

737 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:33


裕子さんは立ち上がって
小さな引出しの中から、包みを出した

「アンタが言うてくるまで、黙っておいたんや
 アンタが仇取る言う時までな・・・」

包みをわたしに差し出す

「圭が使ってたチャカや・・・使い方は分かるか?」

「・・・はい」

「それと、もう一丁、言われてたやつや。持っていき」


「・・・・・」

「アンタに手がかからんようにしたる。かたついたら電話してこい」

「・・・はい」

738 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:34


今まで虐げられた恨みを晴らすため、父を殺し

わたしを手に入れるため、圭さんを殺し

そしてわたしをまるでノラ犬のように扱い

金を、ひとみを使って、裕子さんを殺そうとする

あの男


・・・すべてはアイツが

739 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:34
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
740 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:35


真っ暗な部屋の中から声だけがする
男もひとみの姿も見えない


「お、おい、梨華・・・」

「銃を下ろして」


「何、言ってんだよ、俺のそばに居たら
 お前は何も怖いものなんてなくなるんだぞ?」

「下ろして・・・アンタなんてクソなのよ」

「分かってんのか?」

「下ろしな!!!」


男はわたしと向き合うように立つ

今撃てば、男の向こう側に居るひとみにまで当たる

741 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:37


「お前もバカな女だな・・・大人しくヤられてりゃいいものを・・・」


真っ暗な中に
1つだけギラリと光る

鋭い視線が動いた



 “ 撃て ”





スローモーションで 全てが動く




ひとみが右に飛ぶ



男が引き金を引く





「死ねぇあああ!」

「んぐぁぁぁーーーー!!!」



  バァァァーーンッ!!!








  ドサッ


  ドンッ  


742 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:38





銃口から煙が上がる








「っぐふっ・・・り、か・・・ああ・・・」



机に凭れるように崩れ落ちる




銃を下ろして部屋に入り、奥に進むと

男が腹から血を流しながら倒れていた

743 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:39


「・・・大丈夫?」

ひとみの口に縛られていた布と
手足の紐を解く


「っぐふっ・・・はぁ・・・」

ひとみはゆっくり立ち上がって
ぺッと血を吐いた

「ったく・・・このクソ女が!!」

ひとみは胸座を掴んで強く引き寄せた

744 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:40


「なっ!んっ!!」

ひとみはわたしの唇にくらいついてきた



1番最初に会ったときと同じ
熱くて、激しく舌が絡む

血の味がするキス


「んっっ、はぁ、はぁ・・・」

唇を離すと、ひとみはうっすら笑った

「ホント、ビッチだな・・・」
「ひとみが言うと褒め言葉だよ」

ひとみは男が落とした銃を拾って
男に向ける

「コイツのナニ咥えた後ってのが気に食わないけど」

その目は、圭さんよりも冷たく
そしてその奥は燃え上がるように滾っていた

745 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:41
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
746 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:42
  ◇  ◇  ◇


梨華は銃を男に向ける

「圭さんを何故殺したの」

「っぐふっ・・・お前を、手に、入れる、ためと
 組を、乗っ取る、た、めさ」

 バァァンッ!!

「っがはぁぁぁ!!」

梨華が男の足を撃った

747 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:43

「アンタ、ホントクソよね・・・」

 バァァンッ!

今度は腕を撃つ

「簡単に死ねると思わないで」

「っぐあぁあああ!!!」

 バァンッ!

次は股間を撃ち抜く

「っがぁぁ、はぁぁぁぁああああ!!」
「アンタのSEXって大した事ないよ?ひとみのほうが上手」
「フンッ・・・比べるな・・・」

748 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:45


穴だらけになる男を、二人で見下ろす
血が足元に広がる


「おい・・・真希は、どこにいる」

「っふっ、ぐふ・・・いま、ごろ・・・どっかの山、おくで
 埋まってらぁ!!あははははははは!!!」


 ガチャッ  ガチャリッ




 ズガーーン! ズガーーンッ! ズガーーンッ! ズガーーンッ!

 バァンッ!バァンッ!バァンッ!バァンッ!バァァンッ!



「っぐはぁ、はぁ!ごふっ・・・・」




 ズガーンッ!! ズガーンッ!! バァァンッ、バァァンッ バァンッ!!


 ガチャッ ガチャッ   カチャリッ カチャリッ カチャリッ

749 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:45


白い煙があがり、部屋中が火薬臭くなる
梨華とウチは弾がなくなるまで撃ちつづけた

穴だらけになって
影も形もなくなった、顔だったそれは
言葉を発さなくなった



「・・・・・」
「・・・はぁ・・・」


ウチの口からため息が漏れた


「・・・泣きたい?」

「別に」

「いいよ、泣いても・・・真希さんが、うかばれるから」

「そう・・・」


梨華に引き寄せられて
彼女の肩に埋めて、少しだけ泣いた


750 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:46



真希は、コイツに殺された

信じられなかった、自分が・・・






「もう、終わったよ・・・ひとみは悪くない・・・」


751 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:47

752 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:47
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
753 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:48


あの日の前の夜、ウチは梨華に問い質した

それは大きな賭けだった

ここで殺されるかもしれないという、大きな賭け

最後まで、疑いたくない気持ちがあったのかもしれない
彼女はウチに打ち明けてくれた
一度は男を騙すためにあなたに銃を向ける
だけど信じてって・・・

信じてなんて言うやつほど信じられない

そういうと

「じゃぁ殺してくれていいよ」

そう言ってきた

だけど信じきれなかった部分もあった
本当にコイツがウチに銃をぶっ放したら・・・

なんて過ぎった

あの歪んだ笑顔はビッチそのものだったから

754 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:49


死ぬのが怖いんじゃない


また、捨てられるのが怖かったのかもしれない


フッ・・・哀れだな、イーヴルアイも・・・

だけど、まぁ・・・
アイツになら、殺されてもいいと思ったところもあった
諦めにも似たことを思ってた



真希が逃げたと思い、縛られてた自分
過去を消し去れなかった自分を

変えた女だからな・・・

755 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:49


それにしても2億の代償は痛い
肋骨が折れて、口の中もボロボロだ

くっそ・・・あの男、殺しても殺し足りない

梨華が言うには東京湾に沈んだらしいが
魚のえさにもならないクソ男が・・・ったく


ま、こんないい車も手に入ったし


煙草に火をつけると
デカイ門から彼女が出てきた



「・・・おまたせ」

756 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:50
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
757 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:50
  ◆  ◆  ◆


裕子さんに銃を返しに屋敷を訪れた
全部こっちで処理すると言ってくれた

「まぁ、アンタをカタギにするには勿体無いねんけどな」

そう言って頬を撫でてくれた

「でも・・・」

「でも?」

「・・・圭さんはカタギになれと言ってくれましたから」

「・・・そうか・・・」

「ええ」

「まぁ、あんなやつでも一応は兄弟やからな
 兄弟を殺したヤツは破門や・・・」

「・・・すいません」

「ええよ。アンタみたいなかわいらしい笑顔出来るヤツは極道になったアカン」

「はい・・・今までお世話になりました」

「元気でな」

「ありがとうございました」



大きな門をくぐる
もう二度とここの敷居をまたぐ事はない

758 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:51

外に出ると
カウンタックのドアに凭れるように
ひとみがダルそうに立っていた


「・・・おまたせ」

ひとみは少し口を歪ませて、車に乗れと目で合図した



 バタンッ


「・・・さてと、どこに向かう?」
「どこでも?」

「どこでもって・・・」

「地獄?」
「フンッ・・・」

「天国?」
「どっちでも」

「いいよ、ひとみとなら」

彼女に向き合うと、腕を首に回してきた

「・・・行ってみなきゃ、分かんないだろ?」

左眼を開いて、わたしを見る
誘ってるの?
759 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:52

「ここは嫌よ、シート硬すぎ」
「おまえ・・・」

「スプリング弱いし、なにしろ狭い」
「・・・はぁ。ホントお前ってビッチだよ」

「最高の褒め言葉」


わたしを引き寄せて唇を重ねる


「フッ・・・お前は最高の女だよ」
「ひとみもね」



  ブルォォォォンッ!!!


760 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:52


761 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:54

「さて、2億はどうやって使うかな」
「埋まるほどあるもんね」


後ろに無造作に置かれた袋からは
札束が溢れ出している


「なんか使いたいこととかある?」
「ん〜、そうだなぁ・・・お店やりたい」

「はぁ!?」

赤信号で止まると
ひとみは顔を歪ませてわたしを見た

762 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:55


「何屋だよ・・・」

「やきそば屋さん」

「はぁ・・・」

ひとみはハンドルに凭れるように頭を擡げた

「なによぉ!」
「なんでそば屋なんだよ」

「だって、おいしいんだよ?」
「知るか!」

「もう、今度作ってあげるから」

顔を上げたひとみに口付ける
ひとみも慣れたのか舌を絡み付ける

「んんっ・・・」

763 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:56


 パッパーーーーッ!!

目の前の信号はとっくに青に変わっていたらしく
後ろの車にクラクションを鳴らされる

「んだ?喧嘩売ってんのか」
「3万くらい撒いたら?」

「そば代に回す」
「やきそば屋さんOKなの?」

「・・・やってみなきゃ、分かんない。だろ?」

「そうね・・・フフッ」

「フッ、ハハハ!」

  
   ブオォォォォンッ!!!

764 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:56
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
765 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:57


眩しく光る太陽


やっぱ、ウチが見たこいつの笑顔は


本物だった



おまけは金のほうだったのかもな



横目で梨華を見る
濁りなく、歪んでいない笑顔を見ると
そう思った


 your win


766 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:57



「ねぇ、ひとみ?」
「なに?」

「ベッドあるところ、行かない?」



「いいよ」


767 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:58

『歪んだ太陽』
            fin

768 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:58

769 名前:歪んだ太陽 投稿日:2005/12/22(木) 22:59
更新終了です
770 名前:Rink 投稿日:2005/12/22(木) 22:59
レスポンス

>名無飼育さん様
>またエライいいとこで切りますなぁ
やっぱり?ww
思っては居たんですが、丁度ココがくぎりよくって汗

>774飼育様
番外編・・・今のところ考えてないのですが
今日の夜次第でしょうか汗
期待せずに待っていてください〜

>名無飼育さん様
( ^▽^)<おねんねできた?
ってなわけで、こんなんになりました。
睡眠不足になってしまっていたらごめんなさ〜い

>名無様
えぇ、やっぱり( ^▽^)この方
可愛いキャラのほうが似合いますね(今更かYO!)

>名無飼育さん様
( ^▽^)<お帰りなさ〜い♪ご飯にする?それともお風呂にする?それとも・・・

>何故か幸せな気分の私はおかしいのでしょうか。
いえいえそんなことはありませんよ?多分正常ww

>とにもかくにも、Rinkさんは神!
アザッスッ!!マジでうれしいです!
771 名前:Rink 投稿日:2005/12/22(木) 23:00

>名無し読み手様
>うわあああああああ
ワロタ
壁薄くないですか?大丈夫?
( ^▽^)<ご近所にはご注意♪

>名無飼育さん様
(0^〜^)<こんなん出ましたけど〜

>名無読者様
>なんなの!なによ!
作者最近このセリフを見て DIVAなのか理解して!なのか
結構悩むんですが・・・w
サイト訪問ありがとうございます〜

>名無飼育さん様
すいません・・・作者もそれは思っていて
かなり心苦しいのです・・・
ごっちんに華ある作品を書きたひ。・゚・(ノД`)・゚・。

>あいわい様
乱れレスの言葉を見て「お、みだレス?」って思っちゃったんですけど。
あいわい様と気が合うねぇww

救心どころの騒ぎじゃないっすね
( ^▽^)<きゅーきゅーしゃー!一台お願いします〜!
(0^〜^)<へい、おまち!!
772 名前:Rink 投稿日:2005/12/22(木) 23:01
今回の更新分は>>715-768でございます
『歪んだ太陽』今回で完結です

番外編は・・・ん〜〜〜、今のところ汗
773 名前:Rink 投稿日:2005/12/22(木) 23:02
ネタバレ防止に作者談

えー、無理ありすぎでしょうか・・・汗
クレーム等ございましたら、サイトで・・・汗
ぶっちゃけいしかーさんより後藤さんのほうが似合う気ry


次は激甘なのいきますよ!もうこんなのいや!!
(;T▽T)<自分で書いといてなんだよ!
774 名前:774飼育 投稿日:2005/12/22(木) 23:28
更新お疲れ様です
感動しました〜〜〜
いやぁドキドキしながらよんでました。
この作品もよかったですよ。
番外編のことは気になさらずにあったらなぁと思っただけですから(笑
775 名前:あいわい 投稿日:2005/12/22(木) 23:31
きたぁぁぁああああ!!と携帯片手に叫んだ私はもう立派な『リン中』(Rink様中毒の略)です(何
最後にああくるとは…ッ!Rink様、なかなかイキなことをしますねっ!2人が幸せになった様でよかったです。
Rink様と気が合うなんて…!嬉しくて嬉しくて鼻血出そうです(何故
Rink様のサイト、行こうとしたら携帯では見れなかったので今度パソからお邪魔しますね!

梨華ちゃんよっちゃん救急車ありがとう…!

ちなみに好きバカと理解して!の私的区別の仕方は

好きバカ:なによ、なんなのよ
理解して:なんなの、なによ

『なによ』の位置です(ぇ
長レス失礼致しました;
776 名前:名無し読み手 投稿日:2005/12/23(金) 01:00
にょおおおおおおおおおおと言いながら読みました。
更新お疲れ様です。
ハードボイルドな感じのを久しぶりに読んだので心臓が負けそうでした。
なんにせよ、やっぱこの二人じゃなきゃ!って感じです。
読めてよかったです、ありがとうございます。
777 名前:名無読者 投稿日:2005/12/23(金) 01:11
完結お疲れ様でした。
一時、この二人はどうなるのかと、
結構真剣に悩みましたw
あぁ、良かったよほ・・・

『なんなの!なによ!』の区別、
>>775さんの説明、完璧です!

またサイトの方にもおジャマさせていただきます!
そして次回作の激甘、お腹を空かせて待ってます♪w
778 名前:名無 投稿日:2005/12/23(金) 01:14
完結おめでとうございます。
まさか‥な展開も想像してしまいましたが‥‥とりあえず良かったww
展開にハラハラしました。
次は激甘ですかぁ(´д`)
甘甘大好きなのでとても楽しみです^^
梨華ちゃんワールド期待しておりますw
779 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/23(金) 01:26
今日も飲んでくれていましたが、相方放置で携帯にてほぼリアルで読めました!

『ライン』以降、時間がこんなにも遅く過ぎ行くのか!ってほどに
更新を待ちわびていた自分がいました。

いやー、凄すぎですRinkさん。
許されるものなら、囲いたい!
780 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/23(金) 01:28
すげえです。
なんか色々言いたいことあるけど、とにかくこの一言につきます。
781 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/23(金) 18:17
ネタばれしそうなので感想は控えます(^^ゞ
激甘期待してます〜
782 名前:Rink 投稿日:2005/12/23(金) 18:18
どこかに同じような話がありそうですが
短編を一本。
783 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:20

784 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:21


今日はコンサートで地方に来てる


ってなわけで、お泊りしてるんだけど

ウチはもう疲れきって、風呂は明日にすることにした

疲れたなぁ。でも楽しかったなぁ・・・

なんて今日あった事を思い出しながら
うとうと眠りに誘われる

785 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:21



  バンッ!!




「キャァァァ!!」


・・・んぁ?


786 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:22

顔までかぶっていたシーツを下ろすと
辺りがやたらと暗い。
ベッドサイドのランプがついてたのに消えている
しかも時計も表示されてないし、エアコンまで止まってる。


「・・・停電か?」


手探りでベッドサイドに置いていた携帯を見ると夜中の1時。
ん〜、とりあえず後輩メンバーの見回りでもいくかな


頭をポリポリ掻きながら、ドアに手をかける
鍵を持っていったとしてもオートロックだから
閉まると開かない可能性もあるな

ドアにスリッパを挟み込んで、いざ見回りへ
787 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:22


案の定廊下も非常灯しかついてなくって
こうやって見るとお化け屋敷にしか見えないぞ


802号室 ここは重さんとキャメイの部屋

 トントンッ

・・・・・・

 トントンッ


寝てるか。
まぁ、朝まで気づかないほうがいいかなー

788 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:23

803号室 ここは高橋とガキさんの部屋

 トントンッ

・・・ガチャッ

「おー、たかはすぃ〜、大丈夫か?」
「吉澤さぁぁん!!」

泣きそうな顔で出てきたのはかなりビビリ気味の高橋。
話を聞くと、寝ようと思った瞬間に停電になって
寝れなくなったそうだ

「まぁ、何かあったら807に居るからおいで」
「はい〜〜」
「もし出るんなら、カードキーで開かないかもしれないから
 なんかで挟んで開けといた方がイイよ?」
「分かりましたぁぁ」

かわいそうに。
よしよしと頭を撫でると、泣き顔もちょっとおさまった



ミキティとかは・・・いっか
起こしたら殺されるかもしんないし

789 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:24


805号室 紺野と麻琴の部屋

 トントンッ

「はい〜」
「麻琴、大丈夫かぁ〜?」
「お菓子食べてます、食べます?」
「いらん・・・」

ドアも開けずに確認終了。




そういや、何か忘れてる気がするんだけどなぁ・・・
長い廊下を歩きながら腕組みをして考え込んだ





・・・あ・・・・・



ちょっと早足で部屋に戻る

自分の部屋にいる人間の事忘れてたよ

790 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:25

 ガチャッ


「いしかわ〜?」
「よっちゃぁぁぁぁぁん!!」

そういや、ウチが寝るって言って
風呂に入るって言って、風呂に入ってたんだな

「大丈夫かぁ?」
「よっちゃぁぁぁん!!」

 ガチャッ!

風呂の扉の前に行くと、中から慌てて出てきた

「うぁあ!」
「うぇぇぇぇぇぇ、こわいよぉぉ!」

そういうアンタが怖いって・・・
ウチにしがみ付きながら倒れこむように飛び出してきた

頭に泡一杯つけて
しかも身体は濡れてるし

って・・・ちょっとまて、石川!

「は、はだ、はだか!!!」
「ううぇぇぇぇぇ、どこ行ってたのよぉぉ!」

泣いてて話にもなりゃしない

791 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:26

「とりあえずさ、入りなよ」
「怖いよぉぉ!」
「どうすんのさ、そのままいるつもり?」
「やだぁぁ!」
「とにかく入れってば」
「怖いもん!」
「んじゃ、どーすんだよ」
「・・・一緒に入っ」
「無理」
「どうしてよぉ!」
「何でウチが一緒に入んなきゃいけないんだよ」
「怖いもん!」
「つーか、入れないじゃん、狭すぎだし」
「おねーがーーーいいいいい!!」
「お湯は出てんでしょ?とりあえず入りなよ」
「こわいもん!」
「目つぶって入りゃいいじゃん」
「目つぶっても、目開けたら暗いじゃん!」

たしかに・・・当たってる

「しるか!」
「じゃ、じゃぁ、そこにいて、くれる?」
「あ〜?めんどくせー」
「おおおねぇぇぇがーーいいいい!!」
「あーー、もう。わかった、わかった!さっさと入れってば」

世話のかかる・・・
暗かろーが、風呂くらい入れるだろ・・・ったく。

792 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:26

ウチはあけ広げられたままの風呂の横で座り込む

「よっちゃん?」

シャワーの音の間から、石川の声が聞こえる

「なに?」
「寝てない!?」
「起きてるよ」
「なんかお話してよぉ」
「んでだよ」
「こわいよぉ!」
「あー、はいはい」

まーったく・・・どんなお姫様だよ

「あーーー、うーーーー、えーーー」
「なによぉ、もっとちゃんと話してよぉ!」
「喋ってないでさっさと洗え!」

793 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:28


 5分後
なんとか洗い終えたらしく
かなりフラフラして出てきた。

「怖いよぉ」
「・・・はいはい、もういいから。さっさと寝なって」

ウチはやっとお役ごめんになったので
のっそり立ち上がってベッドに倒れこんだ

それにしても電気の復旧遅いなぁ


「よっちゃぁん」

ベッドにもぐりこむ。もうシカト。眠いんですってば

「んぁ?」

「怖いよぉ・・・」
「はいはい」

「髪も乾かせないし・・・」
「風邪ひかないよーにねー、おやすみー」

794 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:29

ウチは布団に突っ伏して寝る事を決め込んだ

横のベッドの上じゃまだグズグズいいながらタオルで頭を拭いてる

いしかーさん、あなたもう20歳なんだから
しっかりしなさいな・・・
後輩にはお姉さんなのに
ウチと一緒じゃ、ダメダメっぷり大発揮してる

いや、分かるんだけどさ
甘えたいっていうか、そういうの分かるけど。
アンタ美勇伝でやってくんでしょ?リーダーなんでしょ?
まったく・・・


隣でタオルを動かす音が止まった
もう諦めたのかベッドのシーツを捲る音がする。
そうね、そうそう。早く寝なさい
起きたら復旧してるから


「ねぇ、よっちゃん・・・」
「ん〜?」

「・・・怖い」


まだ言ってるよ、おい
ウチの背中の方から声が聞こえる

795 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:30

「寝な」
「怖い・・・寝れないよぉ」

かなり泣き声になってる。そんなに怖いか?
ウチはちょっと楽しくって
なかなかスリリングでしゃーないんですけどね

「・・・怖いぃ」
「・・・・・」
「ねぇ、よっちゃん・・・怖いよぉ、寒いよぉ」

お前は凍死寸前の登山者か!!

「うっさいなぁ・・・」

「ねぇ・・・」
「なに」

「・・・そっち、行ってもいい?」
「はぁ!?」

ウチは思わず振り向いて顔を見た
おい、泣くなよ・・・

796 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:30

「だってぇ・・・」
「ガキじゃないんだからさ・・・」

「お願い・・・」


目は真剣そのものだった

・・・ウチも甘いみたい


「好きにすれば?」

また背中を向けてシーツをかける
ちょっとだけベッドの端に寄った

「・・・お、お、じゃま、します・・・」

なんで恐々なわけ?ほんとに・・・

797 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:31

「ねぇ、よっちゃん・・・」

まだなんか言ってくる気か、コイツは

「なに」
「こっち向いてよぉ」

「はぁ・・・」

もう呆れてため息しか出ない

「・・・んでさ」
「だってぇ」


もう何を言ってもきかないつもりだろうから
ウチは身体を反転させて向き合った

「・・・ありがと」
「へいへい」

798 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:31

「よっちゃん・・・」
「なに」
「手繋いで・・・」

ガキがぁぁぁぁ!

「なんでさ!」
「こわ」
「もういい、わかったから」

ウチは横にしていた体の上に置いてた右手を
胸の前に置いた

「・・・ありがと」

もういいってば・・・

ウチの手を石川が重ねるように置く
その手はさっき風呂から上がったのが嘘のように冷たくなってた
よっぽど怖かったんだろうか

799 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:32

「なんか、お話しよ?」
「んあ〜?話ぃ?」
「うん・・・なんか、お話して?」

しよ?じゃなくて、して?に変更かよ・・・
それってこっちが先頭切れという事ですよね、あなた

「はー・・・」
「なんでも、いいよ・・・?」

ウチは頭の下に敷いていた左腕を伸ばす
石川はその手も握ってくる

どんだけ怖いんだ?怖い以上にただ繋ぎたいだろ、あなた


「んじゃぁ・・・むかーしむかし、あるところに
 おじーさんと、おばーさんが居ました」

「うん・・・」


「おわり」
「ええ?」

「おわりおわり」
「続きはぁ?」
「無し無し!」
「ハハッ!」

やっと笑いやがった・・・

800 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:33

「頭」
「え?」
「頭上げて」
「・・・うん」

ウチは上げられた頭の下に左腕を通した
身体を摺り寄せるように近づいて、胸に顔をうずめる
濡れた髪が腕に絡んで、シャンプーの香りがする

「はぁ・・・」
「ごめんね・・・」
「いいから・・・」
「ん・・・」

腰に手を回してしっかり抱きしめる

「ったく・・・いつもこうだといいのにさ」
「なに、がぁ?」

熱い息がウチの胸をくすぐる

「べーつに?」
「フフッ」


顔を少し上げたと思ったら、ウチの唇にそっと触れた

「!!」
「・・・お礼」

「・・・あ、そ」
801 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:34

ウチらは恋人どうしなのか、そんなのわからない

いつの間にかそばにいて
いつの間にか、必要な存在になった

どっちから付き合おうとか言い出したわけじゃないし
それ以上もそれ以下もなくって


多分、この先もこう言う関係なんだと思う


・・・けど、コイツに彼氏とか出来たらイヤなんだろうな
ウチがもし誰かと付き合うとか言うと
泣いて別れろとかいいそうだな

・・・やっぱ恋人なのかな

802 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:34

「ねぇ」
「なに?」
「・・・ウチらってさ・・・」
「うん・・・」
「付き合ってんの?」
「え・・・?」
「いや、なんかさ、そういうのなかったじゃん?」
「うん・・・」

「・・・どうなんかなと思って」

「・・・どうなんだろうね」

「なんだよ、曖昧だな」
「よっちゃんこそ・・・曖昧じゃん」

アンタ、さっきまで暗闇怖がってたのに言うねぇ

803 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:35

「だって・・・」
「なに」

「そういうの、思ってても、女の子からは、言わないもんだよ」

まて、石川。
ウチは男じゃない

「・・・・・」

まて、吉澤!
さっきの石川の発言を思い出せ!

思ってても言わない


思ってても







思ってるのかよ!!


804 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:36

「そ、そっか・・・」

「うん・・・」

石川がさらにウチにぎゅっとしがみ付いてきた


「そ、そっか・・・えっと・・・」

急にヘタレになる。

もしかしてさ、幸薄いって石川が言われてるのって
ウチのせいだったりするわけ?
待ってるだけとかさ、トメ子みたいに耐えてるとかさ

「・・・いいよ」

何が!?
あの、ちゃんと主語とか述語とか動詞とか
そういうの入れてください!


「待ってるから・・・」


なるほど・・・

待ってるって・・・待たれるのね

805 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:37

「・・・あの、さ」
「なに?」

「もうすぐ卒業じゃん」
「うん」

「・・・離れるけど、さ」
「・・・ん」


「・・・よろしく・・・」


「・・・・・うん・・・」


泣き止んだ顔がまた歪んだ

待たせて、ごめん
言葉足りなくて、ごめん

けど多分、トメ子には伝わったと思う


「こっちこそ、よろしくね」

「うん・・・」



停電に、感謝しなくちゃな・・・


806 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:38

別に・・・そう言うつもりじゃないんだけど
ないんだけど・・・


ウチは繋いでた手を解く

「あ・・・」

小さく呟いて、不安そうに声を出した石川の顎をちょっと上げて


 チュッ


「・・・・・」
「・・・・・」

807 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:39

べ、べつに、それ以上とかそういうの求めてないって!
そんな潤んだ目で見るなって!
なんもないから

「寝ろ」
「うん・・・」


お互い顔は真っ赤だったと思うけど
ウチが恥ずかしくって
頭を引き寄せるように抱きしめたし
それに、暗くて分からなかった


けど・・・

ドキドキ言ってる石川の心臓の音と
ドキドキ言ってるウチの心臓の音は
暗くても、ちゃんと聞こえた

808 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:39
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
809 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:40


寝れたかって?
寝れるわけないでしょ

けど目の前じゃピーピー鼻鳴らしながら寝てるやついるんですよ

人の睡眠時間奪ってさ
息がかかるもんだから、妙に目が冴えて
急に意識したもんだから心臓バクバク言うし
軽く人の寿命奪ってさ

・・・はぁぁぁあ


810 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:40

「・・・んっ・・・ん・・・」

お目覚めですかい

「・・・んん・・・よ、っちゃ・・・」

うへぇぇ!!
至近距離でこの人の寝起き、初めて見たけど
あなた色っぽいですね

ちきしょー・・・ぜってぇ、彼氏とか作らせないからな

「・・・はよ」
「・・・おはよ・・・」

うっすらと開いた目がまた閉じる
やんわりと笑みが零れた


「なに、笑ってんのさ」
「うれし・・・」

「なにが」
「・・・一番に、おはようって・・・言えたから」


あ〜れれれれれ
また寿命縮みます?これ

811 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:41

「あ、そ・・・」
「ねぇ・・・」

「なに?」

「・・・たまには、さ」
「ん?」

「名前、呼んでよ」

名前って呼んでんじゃん・・・

「石川ってさ・・・なんか・・・」

ああ、そっち!?そっちの名前!?
ファーストネームってこと!?

「な、に」
「・・・なんか、やだ・・・」

「・・・やだって言われても」
「だって、急なんだもん」
「自分だって・・・」
「・・・なによ」
「よっちゃんってさ・・・」

「・・・・・」
「・・・・・」

812 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:42

「・・・ひとみちゃん?」

ひ、ひぃぃぃ!ひぃぃぃぃぃ!!痒いぃぃぃ!

「ウェ・・・」
「なによぉ」

「んだよ、朝から寒いんだよ!」
「せっかくさぁ?・・・呼んだのにさぁ?」

だからウチにも呼べってか、あん?
潤んだ瞳で見上げないの!
だから、待ったりしないの!

「・・・・・り、か、ちゃ」
「なあに?」

うわぁ、めちゃうれしそうじゃん、こいつ何者よ

「オェ」
「もぉぉ!」

ウチの胸をポカポカ叩いてくる
いや、痛いから。ね?ちょ、ちょっと

っていうか、気づいたんだけどさ
もう朝じゃん?電気もついてんじゃん

「・・・いつまでくっついてんの?」
「え?」
「離れろ!」
「やぁだぁ!」
「キショッ!」
「んもぉ〜」

まだポカポカ叩いてくる手を掴んだら
やっと大人しくなった

813 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:43

「・・・ううぅ」

あひる口にして、悔しがってる

なー・・・ったくさぁ?
そう言う顔って誰にでもするわけ?

「その顔禁止」
「なんでぇ?」

「・・・そんな顔されたら、してほしいんかと思うでしょ」
「・・・なにを?」


「・・・キス」


「・・・してほしい、よ?」
「はぁ!?」

「よっちゃんに、してもらいたいもん」



ポリポリとおでこを掻きながら
じっと見つめてくるその目を見てたら

なんか、朝だし
停電の後だし
ここ、ホテルだし

いいかなって思って


顔を近づけた


814 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:44





 ドンドンドンドンッ!!


「よしざーわーーーさーーーん!あーーーさですよーーー!」




 バッ!!

ウチと石川は近づいていた顔を離した


ま、麻琴・・・


アイツ、一回絞め上げたろか

815 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:44

「・・・起きるか」
「う、うん・・・」

もぞもぞと起きて、ドンドン叩かれてる扉を開けた

 ガチャッ

「おはよーございまーす」
「はい、おはよ・・・」
「あれれ?なんかお疲れですか?」
「おめーが五月蝿いからだよ!帰れ!」

 バタンッ!


「まったく・・・」
「フフッ、麻琴っていつも元気だよね」

振り返ると、窓から差し込む太陽の光よりも
眩しい笑顔を放つ石川が居た

「ん、まぁ、ね」

な、な、なんだ、この息苦しさは・・・
ドキがムネムネする

って動揺しすぎだし、古いよ!
816 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:45

「ふ、ふろ、入る」
「うん!」

着替えを持ってバスルームに直行!

 バタンッ

はぁ・・・はぁ・・・

今までさ、そりゃ可愛いとはおもったことは何度もあったし
どんどん色っぽくなってくるのも見てたし
なんか、大人だなって思ったし

でもさ、分かるかなぁ
あれがウチのか、のじょに、なるんだよ!?

外には7人の敵が居るって言うけど
あの人彼女にしたら、7人どころじゃすまないな


おちつけ、おちつくんだよし子。
こんなんじゃフットサル優勝連覇出来ないぞ!
いつだって平常心平常心平常心色即是空空即是色
南無阿弥陀仏祇園精舎の鐘の音
よし、大丈夫。

気合い充分↑↑で、風呂から上がった

817 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:46

 ガチャッ

「ふぅ・・・」
「気持ちよかった?」

笑顔が眩しい

「ああ、あああ」

気合いダダ下がり↓↓↓


「こっちきて?」

言われるがままベッドの端に座らされる
石川はウチの首にかけられていたタオルで頭を拭いてくれる

「ああ、ああ、いい、いいよ、やるって」
「いいの」

がしゃがしゃと拭いてくれる
ウチの前には、その・・・
胸があるわけで、腰があるわけで

ていうか近いんですけど

818 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:47

「ね、ねぇ、もういってば」
「いいから・・・昨日のお礼」

お礼って言われるような事、別にしてないんだけど
ただ拭きたいだけなんじゃ

「ねぇ?」

髪を拭く音の合間から声が聞こえた

「なに・・・」


しばらく沈黙が続いた
ウチは少しだけ顔を上げて見上げると
優しく笑う石川が居た

見下ろし目線だめですよ
それも禁止

「ありがと」

なにに対してのありがとうだ?
だから主語とかそういうのをさ

819 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:48

タオルを持ったまま今度はしゃがみ込んで
上目遣いのアヒル口


もう、だから・・・


タオルをギュッと握り締めてじっと見つめてくる

な、なぁ・・・何を求めてるの?
何をねだってるの?
言ってくれなきゃ・・・



 
 “よっちゃんに、してもらいたいもん”



820 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:49


 ゴクリッ


ウチは生唾を飲み込んで
身体を少し前に倒した


姉さん、事件です!
し、し至近距離です!

目を閉じる石川の睫が少し震えてる
こんな明るい中でするって、なんか、ちょっと

息がかかる距離


えっと、すいません
その、し、し、しちゃいます・・・


821 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:50






  ドンドンドンドンドドドドッ


 ビクッ!!


また慌てて身体を離す
石川は驚いて目を開く



「よーーーしざーーーーーわさーーーーーーーーーん」
「いーーーーし、かっわさーーーーーーん」



あああああいいいいいいいつううううううらーーーーーーーー!!!
きぃぃぃぃぃぃ!!

ウチは立ち上がって扉に近づく

「うっるせぇぇぇ!」

「「ひやぁぁぁあ!」」

扉の向こうで叫び声とパタパタ走っていく音が聞こえた
あいつら絶対仕組んでやがる。どっかで見てるんだろ!

822 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:50

ぜいぜいと息を整えると
後ろでクスクス笑ってた

「な、なんだよ・・・」
「だってよっちゃん、顔真っ赤なんだもん」

そりゃ真っ赤にだってなるよ
ちょっと口をゆがめて不貞腐れてると
石川が近づいて来た

「そんな顔しちゃだめだよ?」
「んでだよ・・・」

「キスしたくなるもん」


ウチの頬を包むように手を当てていきなりキスした

うっぉぉおおあああ!?

823 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:51

「んんん!!」

そりゃもう目なんて見開くさ
閉じる暇なんて無いってばよ

「・・・ひとみちゃん」
「ん、な、に」

「・・・好き、だよ?」


そういや、言ってなかったね
付き合ってって言葉にもしてなかったし
どうなんだろ、やっぱ言ったほうがいいのかな


「・・・ウチ、も、す、き。」
「・・・うん」

石川の腰に手を回して、抱きしめた

824 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:51

なんかいつも抱きついたりとかするけどさ
ちょっと違った

ウチの鼻をシャンプーのにおいがくすぐる

照れくさいけど


「つ、きあって・・・」

「・・・はい・・・」


身体を離して

首の角度を変えて

唇を近づける


もう邪魔入るなよ







 チュッ




入れよぉぉ(泣


825 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:52

照れくさそうに、俯く
なんか、か、わいい、な・・・こいつ

「あ、ぃ・・・う・・・用意しよ、か」
「うん」


ウチももう20歳なんだから、もちょっとしっかりするよ
たよりないけど、ヘタレって思われてるだろうけど

ちょっとはリード出来るように

826 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:52
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
827 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:53


髪を乾かし終えて、服を着替えて
荷物を持って忘れ物が無いかチェックして

部屋を出ようとドアに向かう

「ひとみちゃん」

鞄を持ってない左手の指をそっと握る

「・・・なに」
「・・・・・」

手を繋ぎなおして





 チュッ




ホテル出たら、出来ない、もんね


「んっ」

ちょっと嬉しそうに笑ってる
ウチもなんか嬉しくなった

828 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:54

マジ、停電に感謝



そんでもって・・・

石川に感謝



「いこっか?」
「うん!」




さて、今日も一日飛ばしますか

829 名前:夜明け前 投稿日:2005/12/23(金) 18:54
『夜明け前』

(#´▽`)〜`O) <おわり♪
830 名前:Rink 投稿日:2005/12/23(金) 18:55
更新終了でございます
831 名前:Rink 投稿日:2005/12/23(金) 18:55
レスポンス

>774飼育様
>774 :774飼育 :2005/12/22(木) 23:28
( ^▽^)<774ゲットおめでとうございます〜!
なんか嬉しくて載せましたww
番外編はサイトのほうで載せようかなと思っています
ので、また出来たらお知らせします

>あいわい様
お!リン中ですか。なんか危ないですねw
粋ですか?あらうれしい♪
鼻血出すだなんて、そんな
( ^▽^)<ティッシュいる?

好きバカと理解して!の区別ありがとうございました
ちゃんと聞けば分かるものを、イヤだわ汗
昨晩から好きバカエンドレスリピートでございます

>名無し読み手様
>にょおおおおおおおおおおと言いながら読みました
ワロタ。マジワロタ!
心臓負け!?
( ^▽^)<せんせぇ〜!心臓マッサージを!!
(0^〜^)<ばっちこーい!
寿命縮めてしまってたらごめんなさい

>名無読者様
お悩み解決できてよかったですww
サイト訪問いつでもカモ〜ン♪
よろしくお願いします。
832 名前:Rink 投稿日:2005/12/23(金) 18:56
>名無様
まさかな展開のままいこうかどうしようか
迷ったんですが・・・まぁ、ね?
見えない圧力が。イタタタタッ!
( ^▽^)<がんばっちゃう♪

>名無飼育さん様
(;T▽T)<相方さんごめんなさい・・・
そんなほっぽり出してまで読まなくてもと思ったんですが
うれしいです。アザッス!

>いやー、凄すぎですRinkさん。
>許されるものなら、囲いたい!

囲って囲って♪意外と安上がりですよ?ww
(;0T〜T)<何言ってんだか

>名無飼育さん様
ありがとうございます。色々が聞きたいw
もし宜しければメールなんぞやで、よろしくおねがいします

>名無飼育さん様
明日はクリスマスなので、がんばろうかなと思ってます!
ネタ拾いに今から街に繰り出します〜!

833 名前:Rink 投稿日:2005/12/23(金) 18:57
今回の更新は>>782-829です

一昨日、Rinkの生息している地域で本当に停電があり(朝でしたが)
それを題材にしてみました。
いやぁ、電気が無いってほんと何も出来ない。
834 名前:Rink 投稿日:2005/12/23(金) 18:59
でもって、もう1つ作者談。

なんとRinkの初めてリアル作品でございます。
設定としては石川さん卒業間近ってかんじなんですけど
コンサートがその時期あったのかどうか
ちょっとあやふやで・・・在宅系ファンでごめんなさい

Rinkの作品を読んでくださる方の傾向として
「きたぁぁぁぁああああ!」とか「にょおおおおおお!」とか
「うわーーーーーー!」とか
夜中にも関わらず大声を出してくださる方が多いようでwww
レスを読んでいて、作者も大爆笑です。ありがとうございます。
835 名前:名無読者 投稿日:2005/12/23(金) 19:42
ニヤニヤデレデレが治まらないんですがw
今、人に会ったら、タダの怪しい人です(ぇ

クリスマスケーキより甘いいしよし、
ごちそうさまでした♪
836 名前:774飼育 投稿日:2005/12/23(金) 20:03
更新お疲れ様です
774GETしてたんだぁ 指摘されるまで気づかなかった
うはぁ この作品もいいですねぇ
ところで作者様のサイトのアドレス知らないのは
私だけでしょうか?前のレスに載っていて見逃してるだけかもしれませんけど・・・
837 名前: 投稿日:2005/12/23(金) 20:46
更新お疲れ様です。
甘いいしよしありがとうございます。
やっぱり激甘にはよわいです。
ずっとニヤニヤしながら読みました。
今後もよろしくお願いします。
838 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/23(金) 21:53
>>836さん
私も知らないです…知りたい
839 名前:名無読者 投稿日:2005/12/23(金) 22:06
>>836さん>>838さん
このスレの>>696をご覧になると分かりますよ。

でしゃばってすみません・・・m(_ _)m
840 名前:名無し読み手 投稿日:2005/12/24(土) 00:40
いやぁ、たまらんなぁ〜♪
こういう多幸感富んだ作品も好きです。
更新乙です。
ということで、メリークリスマス!
841 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/24(土) 01:16
よかった!全部よかった!
842 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/24(土) 02:01
歪んだ太陽サイコーでした!
もしかして、元ネタはかの有名なあの映画・・?
これからも、更新たのしみにしてます。
ここんとこ、Rinkさんにふりまわされっぱなし。w
843 名前:あいわい 投稿日:2005/12/24(土) 17:24
どわぁぁあああぁあぁ梨華ちゃんかわいいぃぃぃぃぃいぃ!!!
…と、つい学校の図書室にいる事を忘れ叫びそうになりましたw叫ぶのはおさえられましたがニヤける顔はノンストップでした…!(何
あぁもうRink様最高…!

夢をありがとうございます…!!!
844 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:40

845 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:41


「ふぁぁぁあああああ、あぁぁ」


あ、どうも。
いきなり間の抜けたあくびで申し訳ないです
私の名前?

姓は吉澤、名はひとみ。
人呼んで・・・ってそんなの無いですよ。

なんで間の抜けたあくびをしたかって?
846 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:41

ここはとあるスキー場の寄宿舎。
ウチはスキー場の山頂近くのカフェでバイトをしている
いわゆるリゾートバイト、略してリゾバ。

県営じゃなくって、一企業?がやってるところで
結構広いし、雪質もいい。

ウチがなんでこのバイトをし始めたか。
まぁ、都会の生活がイヤになったってのもあるんだけどさ
暇つぶし?ああ、それもあるかも。
でも、ただスノーボードに明け暮れる毎日を
一度くらいしてもいいんじゃないかって思ったわけ。

だからこのスキー場がシーズンオープンしてから
ずーっとここでコーヒー入れたりケーキ出したり
んでもってご飯作ったりしてる。
847 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:42

ウチが滑れる時間はナイターのみ。
ナイターだけだからってバカに出来ないんだよ?
結構上手くなる。ガンガン滑れるしね。
リゾバ来てる人たちと仲良くなったから
その人たちに教えてもらったりもしてる。
んでもって、出かけるところもないからさ
金を使う場所が無くて。煙草と酒くらい?
これまた貯まるんだ。一石二鳥!


しっかし、朝が早いのが難点。
リフト動き出す前に上に行って用意しなきゃいけないから。
眠いったらありゃしないよ
昨日も夜中まで飲んでたしなぁ。
848 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:43

 ガチャッ

「おはよー、よしこ」
「おう、おっふぁああぁぁぁああ」
「アッハハハッ!すんごいあくびだね」

朝から大笑いしてるこの人
ウチの向かいの部屋の住人
姓は後藤、名は真希。
人呼んでごっちん。っていうかウチだけ呼んでる
ウチと同じような動機で東京からバイト来てる。
しかも去年もここに来てたんだとか。

「ごっちん、朝から元気だねぇ」
「だって今日はピーカンだよ!?ねぇ、外見た?」
「見た見た。ふぁぁあああああ」
「ったく・・・どーしてよしこはそうなのかなぁ」
「なにがさ」
「もっとこう、ハッスル!ハッスル!どぅーざハッスォ〜!」

若いんだからって言いながらトボトボ歩くウチの背中をグイグイ押してくる

「いだだ!わかったわかった!」
「はいはい、しゃきっとして、今日も一日?」
「「がんばろ〜〜」」
849 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:44

このスキー場で働いてる人は、ほとんどがココの寄宿舎にいる
老いも若きも男も女も。
ただ、スキー場が経営しているホテルの従業員の人だけは別。


スキー場で働く人たちってさ、どういうイメージある?

男はほとんどがヤローばっかり。
みんな若いんだよね
んでもって女の子はかなり少ない。
ウチとごっちん、それとあと数人

ヤローはさ、純粋に山にこもって極めたい!って人と
女の子をゲットしたい!っていうバカが居て

そんなんだから、数少ない女の子を狙うやつらもいるわけ。
全国の女性スキー・スノーボーダーの皆さん?
スキー場に行ってリフト乗り場の兄さんたちがやたらと優しいのは
そのせいだからね、気をつけた方がイイよ?
850 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:45
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
851 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:46

「おはよー」「おはようございますー」

食堂にみんなが集まってくる
目の周りだけ日焼けしてない人
なんでだか真っ白で焼けてない人
筋肉マッチョに、オジサンなどなど

みんな思い思いにご飯を取って席に着く

「よしこー、今日はご飯?」
「んーー、そうだねぇ」

ごっちんはウチにトレーを渡しながら、おかずをほいほい乗せていく

「もう、ちょっと、そんなに食べれないってば!」
「いいから食べなよ。体力勝負!」

何でこの人こんなにパワフルなわけ?

852 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:47


「お〜〜!よしざわ〜!こっち座れよ!」
「真希ぃ〜!今日こそはヤらせろ〜!」

えっと、アンタたち、まだ朝の6時半だよね
酒入ってんの?

そうなんですよ。
数少ない女を巡って男の争いがこんなとこから繰り広げられてる

男と女の部屋は別れてるけど
食堂は一緒。大浴場は隣同士。

ヤローどもは数少ない触れ合いの場でこうやってアピってくるんだけど
朝から既にオッサン化してる
毎日こんなんだから、もう慣れちゃった

「はいはい、シッシッ!」

ウチとごっちんは朝ご飯を手に席についた

「「いただきます」」

大きな窓の傍のテーブルについて
モリモリご飯を食べる。
やっぱり朝はしっかり食べないと、夜まで持たないんだよねー
853 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:48

「よしこ、今日ホール?」
「んー、多分」
「んじゃあたしはキッチンかぁ」

なんて事を言いながら箸を進めてると
隣のそのまた隣の席から声が聞こえた


「なぁなぁ〜、梨華ちゃ〜ん」
「俺と一緒に滑ろうよぉ〜」


まーたやってるよ・・・

ちょっと俯きながらご飯を食べてる人
彼女の名前。
姓は石川、名は梨華
人呼んで、寄宿舎のマドンナ。
ウチの部屋の隣の住人。

854 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:48

数少ない女の中で、トップを行く可愛さらしく
多分それはゲレンデマジックでもなんでもない。
ホラ良くあるでしょ?
あ、この人素敵!滑りもカッコいいし!って声かけたら
サングラスとってビックリ!
オイ!てめぇ!ってツッコミ入れたくなるような事。
あれゲレンデマジックって言うんだけど

彼女はそういうのじゃなくて、多分街にいても、可愛い。
だから、ヤローはこぞって声をかける
っていうかナンパしまくってる


「あーあ、またやられてるよ。かわいそうに」
「んー、そうだね」
「よしこ、助けてやれば?」
「いーよ、ご飯ご飯!」
「梨華ちゃん泣きそうになってるよ?」
「関係ないし」

「そんなこと言っちゃってさぁ?」

なんでごっちんがこんなにも突っかかってくるかと言うと
それはこのバイトが始まって半月くらい経ったある日・・・

855 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:49
−+−+−+−+−+−+−+−+−
856 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:50


ウチは相変わらずカフェでコーヒーを煎れてたら


 ガチャーンッ!  ドサッ


振り返るとキッチンの方が騒がしい

「どうしたの?」
「梨華ちゃんが!」

カウンターの方に向かうとに入っていくと
キッチンの入り口の方でマドンナが蹲ってた

「え、ちょ、ちょっと!」

そばによって顔を上げさせると、顔が真っ赤になって息が荒くなってた

857 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:51

「どうしたの!?」
「・・・ん、ちょ、っと・・・熱・・・」

おでこに手を当てると、かなり熱があるみたい
なんでそんなんで店に出るかな!?休めばいいのに!
って言っても始まらない
辺りを見渡すと、こんな時に限ってヤロー共が居なくって

「よしこ・・・どうしよう」

「・・・分かった、ちょっと待ってて!」
「ど、どこいくの!」

エプロンを外して、店の裏に走る。
スニーカーからブーツに履き替えて紐も結ばず外に出た

「よしこ!どこ行くの!」
「リフト乗り場!!」

858 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:51

 ガチャッ!

外に出ると、今日に限って吹雪いてる
あまりの慌て様に、ゴーグルもジャケットも忘れてきたけど
そんなん関係ない。
ゲレンデを滑り降りてくる客の間をかいくぐりながら
ズボズボ足が埋まっていく走りにくいゲレンデを横断した

859 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:52

「山崎ぃぃぃ!!!」

「ああ!?吉澤!?なんだよ!」
「モービル貸して!!」

リフト乗り場に居た、山崎に声をかける

ヤロー達は基本的にリフトを受け持ってるから
みんな顔なじみ。
特に山崎は、実は小学校時代の同級生だったりするんだ

「なになに、何があったんだよ」
「いいから!説明は後!!」

分かったよといいながら、雪を払うために持ってたほうきを放り投げて
リフトの操作室に入っていった

「ほら!」

 チャリンッ

「サンキュー!」
「お前運転できんの!?」
「多分」
「おい〜〜!俺が代わりに行こうか?」
「いい!アンタは仕事あるでしょ!」

  ドルンッ!!!

キーを回してアクセルを回す

「気つけろよ!!」

山崎に手を振ってウチはカフェに戻った

860 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:52
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
861 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:53

 バンッ!

ドアを乱暴に開けて裏口から店に入ると
マドンナがぐったりと座っていた

「大丈夫?」

「よしこ、どこ行ってたの」
「山崎にモービル借りてきたから、今から降りる」
「今から!?」
「ごめん、ごっちん。ちょっとの間だけ店回しといて」
「それはいいけど」

休憩から戻ってきた仲間も居たから
店もなんとか回ると思う


「ねぇ、大丈夫?動ける?」
「・・・うん・・・」

ウチはマドンナのそばに寄って身体を揺らした
彼女のジャケットをかけて、ウチのマフラーを首に巻く

「ほら、しっかり、つか、まって!」

彼女を抱きかかえながら、店の裏口から外に出た

862 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:54

モービルの後ろにマドンナを座らせると
ウチはエンジンをかけた
店の裏口からごっちんがウチのジャケットを掴んで走ってくる

「よしこ!ゴーグル!ジャケット!」

吹雪いてるからごっちんの声も聞こえにくい

「あああ!?彼女にかけてあげてよ!!」
「よしこはどうすんのさ!」
「すぐ戻るから大丈夫だって!!」

ウチはゴーグルをつけて彼女の膝にジャケットをかけた

「しっかり捕まってるんだよ!!」
「ん・・・」

ウチはシートを跨いでアクセルを吹かす
彼女はウチの腰に力なくしがみ付いてきた

「いくよーー!」

863 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:54


 ブロロロローーーッ



ゲレンデから寄宿舎までは結構遠い
それに今日は吹雪いていて前が見えにくい
モービルに着いてるランプを点灯させながら
慎重且つ迅速に運転する
意外とモービルの運転って簡単じゃん・・・
でもこれ無免?捕まるかな・・・

それにしても

「さっびぃぃぃぃ!!!」

864 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:55
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
865 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:55

  ブロローーーンッ   カチャッ


寄宿舎の入り口前に到着。
やっぱり麓は吹雪いてない

モービルから降りて後ろを見ると
マフラーにびっしり雪がついた彼女が固まってた

「だ、だ、だぃ、じょう、ぶ?」

ウチは寒さのあまりに口が回らない
もしかしたら鼻水垂れて凍ってるかも

「ん、うん・・・」
866 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:56

膝の上に置いてあるジャケットをハンドルにかけて
彼女に背を向けてしゃがんだ

「ん、ほれ、おぶさって」
「で、も・・・」
「いーから、動けないんでしょ?」
「・・・はい・・・」

マドンナはシートから降りて
倒れこむようにウチの背中におぶさってきた

お、お、重っ!!

彼女が重いんじゃなくって、雪の上だからか
足場も悪いしものすごく重く感じる。

ゆっくり立ち上がって
寄宿舎の入り口の階段を上っていった

867 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:56

「ひ、ひ、ひぃ、ひぃ・・・」

 ドサッ

階段長ぇよ!!
寄宿舎に入って、玄関に彼女を下ろす

「はぁぁぁ・・・」

さっきから走りっぱなしで、かなり息絶え絶え
でもそんなんでへたってる場合じゃない

彼女の靴を脱がせて、ウチは乱暴にブーツを脱いだ

「もう、だい、じょうぶ」

顔真っ赤にして、さっきより息荒げてるのに
なんで大丈夫なんだよ!

「いいから」

ウチは彼女をお姫様抱っこしてかかえる

「や、も、あの、その」
「熱あるのに、ウダウダ言わない!」
「・・・はい」

彼女を叱り飛ばしながら部屋に続く廊下を歩いていった

868 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:57

 ガチャッ

ウチは両手が塞がってるから彼女に部屋をあけて中に入ると
まぁ、それはそれは。女の子らしい部屋ですねぇ、あなた
ピンクだらけ。軽い吐き気しますけど。

彼女をベッドに下ろして
着いている雪が解けかけていたマフラーとジャケットを脱がせた

「着替えできる?」
「・・・はい」

マドンナがよろよろしながらベッドの脇に置いていた着替えを手にする

「また、あとで来るから」

869 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 17:58

 バタンッ

ウチは部屋を出て、大浴場に向かうと洗面器を1つ掴み
食堂のオバチャンの元へ鬼ダッシュ

「おばちゃーん!」
「おばちゃん言うんじゃないよ!」
「ごめ〜ん!」

姓は保田、名は圭。人呼んで食堂のおばちゃん

「氷ちょうだい!」
「どうしたの」
「マドンナがぶっ倒れた」
「はぁぁ!?」

保田さんは製氷機からスコップで氷をすくって
ガラガラと洗面器の中に放り込んでくれる

870 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:00

「なに、なんでよ」
「熱あるのに仕事行ったから」
「どれくらいの熱よ」
「わかんない」

そういうと保田さんは、奥から救急箱を持って来てくれた

「中に体温計と薬入ってるから、アンタ看てやんな!」
「えええええ!?だって仕事!」
「ウチがカフェに内線入れといてあげるから」

はい、行く!と救急箱を押し付ける

「んだよ〜・・・」
「おかゆ作ってあげるから、後で持ってってあげるよ」
「へいへ〜い・・・」

救急箱を受け取って洗面器を取り
途中トイレで洗面器に水を入れて、自分の部屋からタオルを取ると
しぶしぶマドンナン部屋に戻った
なーんでウチが看病しなくちゃなんないかなぁ
まぁ、必然的にそうなるんだろうけどさ・・・

871 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:01

 トントンッ

部屋をノックすると中からか細い声で返事が聞こえた

「着替えた?」
「ん・・・」

部屋に入ると布団からちょっとだけ顔を出してるマドンナ・石川。
暖房も入れたみたいで、部屋の中は暖かくなってた

「とりあえず熱測って」
「うん・・・」

体温計を取り出して、彼女に手渡す

「・・・・・ごめんね」
「なにが」

ウチは救急箱の中から薬を探しながらぶっきらぼうに返事した

「ひとみちゃんが、風邪引いちゃうかも・・・って・・・」

あ、そういや、ウチのセーター
雪着いてたのが溶けてぼとぼとになってんじゃん
ウチはセーターを脱いでTシャツ一枚になる

「ウチは平気」
「でも・・・」
「いいから、自分の心配だけしてなって」


彼女はうんと小さく返事した

872 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:02

 ピピピッ

体温計が鳴ると彼女は脇から引き抜いた

「・・・8度、さん、ぶ」

高熱じゃんかよ!
絶対朝から熱あったんでしょ!何で無理するかなぁ!?

マドンナの方を見ると
熱のせいか、目が潤んでとろんとしていた
ちょっとだけ手を出して体温計を渡してくる

「もう、熱あるんだったら、休みなよ」
「だって・・・」

責任感強いんだろうけどさ、倒れられたらもっと迷惑だっつーの

「なに・・・」
「・・・今日は、出たかったんだもん・・・」

なんで・・・って・・・ああ
マドンナ・石川が狙ってるだろう男でも居たのかい

「なるほどねぇ・・・」
「ふぇ・・・?」
「好きなヤローと働きたいのは分かるけどさ」
「え、あ・・・そうじゃ・・・」
「違うの?」
「・・・・・」

彼女の赤い顔がさらに赤くなる
マドンナは黙りこくって、目の下まで布団を引きあげた
はいはい、恋愛はいいからさっさと熱下げてください

ウチは水を入れた洗面器にタオルを浸して
ギュウッと絞ると彼女のおでこにあてる

どこか安心したように、彼女は目を閉じた

873 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:03
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
874 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:05

そのあと圭ちゃんが
食べさせてやれとおかゆを持って来てくれた
ふーふーとかしたかって?しませんよ!
薬を飲ませて、寝かせると彼女はスースーと息を立てて眠った


ウチはモービルを返しにまた山を上る
山崎にキーを渡すと

「おまえ〜〜!梨華ちゃん抱えてどこ行ったんだよぉ!?」

何で見てんだよ!

「どこって、部屋に決まってるじゃん」
「まーたまたぁぁぁ、抜け駆けしようったって
 そーはこのスキー場の従業員が黙っちゃいませんよ?」
「はぁぁ!?」
「お前、梨華ちゃんのこと気にいってんだろ?」
「はぁぁぁぁぁ!?」

875 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:07

 『 - ピンポーン - お進みください 』

リフトが迫ってくる
山崎が受け持ってるリフト乗り場は上級者コースの
超ハイクラスゲレンデ。
だからお客もあんあり来ない。空のリフトが通り過ぎる

「あぶねっ」
「何言ってんのさ!」
「いやぁぁ、俺ら賭けしてんだよ。お前と梨華ちゃんがくっつくのが早いか
 他の奴らが落とすのが早いか」
「意味わかんねぇってば!」
「いやー、梨華ちゃんはお前に気あるとおもうよ?」
「どうしてそう言う事を平気な顔で言えるかな!?」
「あはははは!いやいや、恋愛には国境なんてないのさ、ベイビー」

両手を上に向けて肩をすくめた
お前はちびまるこちゃんの花輪君かよ!

「訳わかんねぇって!」
「お前が分からなくたってもな、なるようになるんだよ。ズバリッ!!!」

今度はスエオかよ!!もしくは博士?

「どうでもいいから・・・もう、さっさと仕事しろってば」

876 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:08


 『 - ピンポーン - お進みください 』

「まぁ〜?照れちゃって♪アンタもウブよねぇ〜?」

ほうきでウチの腹をツンツンつっついてくる
このやろう、テメェ・・・

  ドンッ!!


「あ、あっぶ、あぶねぇ!!!」

腹が立ったから思いっきり押してやったら
丁度来たリフトに乗っかって進んでいった

「そのまま山頂まで行って来い!!」
「てめぇぇ!おぼえてろよぉぉ!!」
877 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:09
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
878 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:10

ウチがマドンナをおぶって山から降りてきた話は
その日の夜の食堂でもちきり。

「おいおい、よしざーさんよぉ?梨華ちゃん狙わないでくれるかなぁ?」
「っていうか、お前やっぱそっちだったのかよー」
「いやぁ、お前なら分かる気がするよ」
「っていうか、ホントは部屋でなんかやらかしたんじゃねぇの??」

みんな揃ってウチの周りに集まってくる
あああああ!どいつもこいつも鬱陶しい!

 ドンッ!!

「うるさい!!!」

「カッカしちゃってさぁ?」
「カルシウムが足りないよぉ?ほらオレの魚やるからさー?」
「どんなテク使ったのか教えてくれよー!」

ウチはトレーを持ち上げて席を立った

「ヒュ〜〜〜!」
「嫁のところに行ってくるのかー?」

いいいいいいいいいいいいい!!!
むっかつく!!!

 
湧き上がるヤローの声を背にウチは食堂を出た
こんな日はすべりに行く気力も無い

もう部屋帰って寝よう

879 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:11

食堂を出て廊下に向かうと
マドンナ石川が歩いてくる

「・・・あ・・・」

お前のせいで、ウチは・・・ウチは・・・
肩にセーターを羽織って、歩いてくる。
昼間よりは元気になったみたいだけど。
ものすごい睨みをきかせて、そっちを見ると
彼女は俯いて何か言いたそうにもじもじしてる

「なに」
「・・・ありがと」
「別に」
「・・・怒ってる・・・?」
「別に」

少し顔を上げてウチを見るその顔は
情けなく眉毛が下がってて、目は今にも泣き出しそうになってた

「・・・ごめんなさい」
「いいよ」
「・・・・・」

あああ、ついには泣き出しちゃったよ
880 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:12

「ちょ、ちょっと!なんで?」
「だって・・・ひとみ、ちゃん、おこ、ってるから」

グズグズすすりながら、彼女は泣き出した

「いや、あの、その、怒ってないし」
「怒ってるよぉ・・・」
「怒ってないってば・・・」

彼女に近づいて、肩に手を置くと
泣きながら見上げてきた

「ほんと・・・?」
「・・・ん」

何かを訴えるような目。
ポロポロ零れる涙を指で拭うと、彼女の顔はまた少し赤くなった

「熱、ひいたの?」
「ん・・・昼間よりは、マシになった」

おでこに手を当てると、確かに熱は下がってた
彼女はウチの手をちょっとだけ掴んで俯いた。

やっと泣き止んだよ・・・はぁ。
ウチは涙を見るのが弱いから、あんまり泣かないで頂けるかな?

881 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:13

するとウチの背後でヤローどもの声が聞こえる

「お!噂のカップル!!」
「おいおい!梨華ちゃん取るなってば!!」
「って・・・おい、吉澤!お前なに梨華ちゃん泣かしてんだよ!」

「はぁ!?泣かしてないってば!」

「泣いてるじゃんかよ!梨華ちゃん何されたの?大丈夫!?」
「あ、え、その・・・」

「おまえ、泣かすなよなぁ!?」
「泣かしてないってば!」
「梨華ちゃん、こんなやつ辞めて俺にしない?」

ヤローたちに冷やかされてウチはもう呆れて物が言えない
マドンナ・石川は少し俯いてモジモジしてた

だから、もう、いいですから・・・

882 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:13
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883 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:15

てなことがあったわけ。

「はぁぁ・・・」
「ひとみちゃん、ため息?」

ニコニコしながらウチを見て来る、マドンナ・石川
アンタのことですよ、アンタの。

ウチはトレンチを持って、さっき帰った客のグラスを取りに席に向かった
なーんでウチが女を好きにならんといけないんかな。

どうせ山崎あたりが彼女と付き合うんだろうし。
でもね?リゾバで出会った関係っていうのは
よっぽどの事が無い限りそのシーズンだけなんだよ。
残念だねぇ、山崎。合掌してやるよ。チーンッ

884 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:15

「そういえばさ、今日クリスマスイブだよね?」

キッチンが暇になったのか、ごっちんがフロアの方に出てきた

「あ、そうだっけ?」

クリスマスなんて、ウチには関係ございませーん

「ピーカンだけどさ、夜は降るみたいだよ?」
「ホワイトクリスマス?」

マドンナがちょっと嬉しそうにごっちんと話し込む
それで店内の有線も今日はクリスマス仕様だったんだ。
やたらとマライヤだのワムだのかかってるなと思ってたんだ
それにしても、マドンナは乙女だねぇ。
ホワイトだろうがブラックだろうが、ウチは滑れりゃそれでいい。

「ひとみちゃん、今日の予定は?」
「え?」

ウチはトレンチにグラスを置くと、カウンターに持っていった

「予定・・・」
「ああ、いつも通り滑って飲んで寝るだけ」

マドンナ・石川はちょっと淋しそうに目を伏せた

885 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:16

「よしこもさぁ、ちょっとは乙女になれば?」

ごっちんがウチのほうを見て呆れ口調で言ってくる

「なんでさ」
「今日はクリスマスだよ?年に一度しかないクリスマスですよぉ?」
「だからなに」
「はぁぁ、このロマンが分からないかなぁ?ベイビ〜」

なに。花輪君が今になって流行りなの?

「こんなスキー場にいてロマンもへったくれもあるもんなの?」
「へったくれって・・・」
「ウチにはサンタもトナカイもいらっしゃいませーん」

カウンターの上にあったダスターをクルクル回しながら
テーブルを拭きに席に戻った

886 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:17
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
887 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:18

今日も一日が終わり。
カフェの終了時間は16時。ナイターが始まる少し前に店が終わる。
店内の片付けも済んで
やっとウチの楽しみにしていた時間が来る

「やーーっと滑れるよー」

店の連中は思い思いに板を履いて滑り出していった

「でも今日は早めに切り上げてね♪」

ごっちんはバックルを止めながら顔を上げた

「なんでさ」
「パーティよ!パーティ!」
「パーティ??」
「そう。圭ちゃんがクリスマスパーティ開いてくれるんだって」
「へぇぇ」
「労をねぎらってくれるんだってさ」
「まぁ、粋なはからいしてくれるもんだ」

ウチはブーツを縛り終えて、煙草に火をつける

「梨華ちゃんも来るでしょ?」
「え!?」

マドンナ・石川はスキーの板をガチャッと履いて
ちょっとよろめきながらごっちんを見た

888 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:19

「バーティ」
「あ、え、うん・・・」

ごっちん、そんなアンタ

「山崎とどっか行くんだから、そんな無理に誘ってあげんなってば」
「「え!?」」

ごっちんと梨華ちゃんは声を揃えてウチを見る

「あれ・・・違うの?」

トンッとバケツの灰皿に灰を落とした

「な、な、んで、山崎君・・・」
「ああ、違ったのか」

だって噂になってんですよ
山崎とマドンナは付き合ってんじゃないかって。
ウチもその噂の信憑性は感じられる出来事を目撃しちゃったし・・・

「よしこ・・・」

ごっちんが哀れんだ目でウチを見る

「な、なんだよ・・・」

ごっちんはバインディングをつけながら
ウチの肩に手を置いた

「はぁぁ・・・乙女になりなさい」
「なんでため息?ねぇ、なんで乙女?何が関係して」
「じゃぁね〜」

ごっちんは華麗なスケーティングでリフト乗り場に向かった

「ま、待ってよ!!」
「よしこは梨華ちゃんと滑りなさーい!」

なんなの?まったく・・・

889 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:20

白い息とともに煙を吐き出す
マドンナ石川を見ると、ストックを持ちながら前後に小さく板を滑らせていた
なに、運動?いまさら?

「あ、のさ」
「え!?」

驚いた顔でウチを見る
顔が赤いですけど、また熱出たんですか?

「滑る?」
「・・・あ、ううん、降りるよ」

「そう・・・」
「ん・・・」

灰皿に煙草を落とすとジュッと音とともに消えていった

「梨華ちゃんもさ、ボードにすればいいのに」
「ふぇ!?」
「ふぇ?って・・・」
「あ、あ、でも・・・怖いし」
「そう?慣れたら簡単だよ?」
「でも・・・危なそうだし」
「危なくないって」
「・・・教えてもらう人、居ないし・・・」

とことんマイナス思考ですね、あなた・・・
890 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:21

「ウチが教えるよ?」
「ええ!?」

なんでそんないちいちビビってんの?

「なに、いやなの?」
「ああ、いえ、そんな、そんな!」
「ま、気が向いたらでいいよ」
「う、うん・・・」

ウチは店の壁に立てかけてあった板を取って
バインディングをつける

「ひとみちゃんって、カッコいいよね」
「はぁ!?」

俯いてた顔を上げて彼女を見た

ストックを持ちながらコツコツグリップをぶつけてる
その顔はまた赤い
891 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:22

「なにが?」
「滑ってるところ・・・あの、あれ、なんだっけ」

そう言いながら彼女はゲレンデの端にあったパイプを指差した

「ああ、ハーフパイプ?」
「そう、それとか、してるところ」

この人いつの間にチェックしてんの?

「まだまだだよ。山崎の方が上手いもん」
「山崎・・・君・・・」
「そうそ。ヤローのほうがやっぱ上手いよ」
「・・・そう・・・」

山崎の名前を出すと彼女はまた俯いた
なに、名前出したらまずいですか?
892 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:23

「・・・そう、かな・・・」
「なに」
「ひとみちゃんのほうが、かっこいいよ?」

彼女はウチに今日の昼間に出ていた太陽みたいな
眩しい笑顔を向けた

 キラキラーンッ

ちょ、超眩しいんすけど・・・
胸が大きく高鳴った

「先に戻ってるね?」
「あ、はい・・・」

なんだこの息苦しさは・・・
スケーティングするだけで息上がってんのかな
だめだ、もっと体力つけなくちゃ


彼女は颯爽とスキーで山を降りていった

ニットから出る長い髪を風に揺らしながら
シュプールを描くその後姿が消えるまで
ウチは呆然とその場に立ち尽くしてた

893 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:23
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
894 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:27


「へぃ、よーしこ〜〜!?」

後ろからザッと雪をかけられる

「ふぇ!?」
「まだ居たの?」
「あ、ああ・・・ごっちん早いね」
「なんてったってアルペンですから?」

そう、彼女はアルペンボード。

トリックやパイプを楽しむよりも
より早くいかに切れのあるターンをするかが楽しいらしい

「どうしたのさ」
「あ、いや・・・なんか・・・」
「なに」

そう言いながらごっちんは右のバインディングを外した
895 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:28

「なんか、さ・・・」
「なに」
「なんだろ・・・」
「なんだよ!」
「いや・・・いいわ」
「言えよ!あああ!イライラするなぁ!一本煙草ちょうだい!」
「あ、はい・・・」

ウチはジャケットの中から煙草とライターを渡す

「スゥゥ〜〜、はぁー。やっぱこの一本がおいしいよねぇ」
「あぁ、まぁ、そう、っすね」
「どうしたのさ、梨華ちゃんとなんかあったの?」

 ドキンッ!!

「え!?あえ!?う!?な、んも、ないよ?」
「どもりすぎ・・・」
「ああ、すいません」
「なに、告白でもされたの?」

 ドキドキドッキン!!

「ここ、こ、こ、こく、はく!?」
「あれ、違うの」
「な、なんで!!」
「え?ああ・・・まぁ、ねぇ?」

ニヤニヤしながら、フーッとタバコをふかす
山崎といい、ごっちんといい、なによ、なんなのさ!

896 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:29

「まぁ?今日はクリスマスイブですし?おーーっほっほっほ!」

だから誰だよ、てめぇはよぉ!!
ポンポンとウチの肩を叩きながら高笑いがこだまする

何がそんなにおもしろいかなぁ!?

「はいはい、よしこもつったってないで、滑ろう?置いてくよ?」


なによ、なんなのよ
・・・行けばいいでしょ?


「さよならね、バイバイ!!!」
「ちょ、よしこ!なんだよその歌!!」

ごっちんを置いてウチは滑り出した
897 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:31
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
898 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:32

ナイター用の照明が灯りだす
日が落ちて、あたりも次第に暗くなってきたから
だんだんと冷え込んできた

「う〜〜、さぶ・・・」

パイプに入ると、ウチは相変わらずヤローたちに
ヘタだの、帰れだの冷やかされつつ何本も滑る

時々そのまま下まで降りて、また上に上がってくる


「おお、吉澤じゃん」
「あ、山崎。」
「お席ご一緒しまぁっすぅ!」
「キモイから!」

 『 - ピンポーン - お進み下さい 』

寄宿舎のヤローとこうやって一緒のリフトに乗るのはめずらしい
このスキー場は全部のゲレンデがナイター可能だから
みんな思い思いに色んなところで滑ってるから。

リフトに乗り込むとフードが閉まってきた
899 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:32

「吉澤、煙草ある?」
「ココで吸うの?」
「うん、吸いたい」
「禁煙って書いてんじゃん!」
「ばれないって。くれ」
「まったく・・・」

グローブを外して、ポケットから煙草とライターを取り出した

「ん、サンキュ」

山崎はフードの隙間から煙草を出して、フーッと息を吐き出した
ウチもつられて一本吸おう。このリフトはメチャ長い。

900 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:33

「おまえさー、女なのに、よくあんなジャンプ出来るよな」
「ふえ?」

煙草を咥えて、携帯灰皿を出す

「脚力あるよなーとおもって」
「そう?」
「うん・・・俺もあそこまでは飛べないな」
「そうかな・・・ウチは山崎のエアスピンの方が凄いと思うけど?」
「あっはっは!まぁ、首骨折しただけあるよなー」
「笑い事じゃないって・・・」

こいつはいつも無茶な回転をするから
いつもどこかしら怪我をしてる。
今だって、手の骨にひびが入ってるらしいんだけど

「ハハッ!かんけーないって!つば付けときゃなおるし」

ヤローたちはとっても豪快で、それでいて勇ましくてカッコいいと思う
冷やかしたり、エロオヤジになったりしてるけど
滑ってる時はやっぱり尊敬する。
901 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:35

リフトが頂上を目指して動いていく
ゲレンデの音楽が山にこだまして同じフレーズを3回流してくれる


「あのさ?」
「ん?なに」

山崎を見ると、フードの先の山を見つめていた

「お前さ・・・」
「なに」
「・・・梨華ちゃんのこと、どう思ってんだよ」
「はぁ!?またそれ?」
「真剣に答えろよ・・・」

「どうって・・・どうって・・・バイト仲間でしょ」
「それだけか?」
「な、なに」

山崎はウチの顔をじっと見つめてきた
ゴーグルの奥の目は、いつも見せてるおちゃらけた目じゃなくて
ウチの心の中を見通してるようだった

902 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:35

「な、なんだよ・・・」
「・・・俺、さ・・・」
「うん・・・」

支柱を通るたび、ガタンッとリフトが揺れる

「梨華ちゃん、さ・・・」


なに?やっぱり噂の真相は事実で
付き合ってるとかいうわけ?

・・・なんか、すごく・・・
不安になった


「・・・告ったんだ」

えええええ?!マジっすか!やっぱりっすか!

「い、いつ・・・」

「梨華ちゃん、倒れた、ちょっと後」
「そ、そう・・・」
「他の奴らはさ、ヤリたいだけなのかもしれないけどさ・・・」
「ん、うん・・・」
「俺、真剣にさ・・・好きで、さ」
「うん」

支柱の横に立っている照明が、眩しくて目を細めた
煙草を灰皿に入れてもみ消した
山崎も煙草を灰皿に入れてくる

903 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:36

「そんで・・・飯の後に、彼女をロッカーに呼んで・・・告ったんだ」

そういや、いつかロッカーの方から
彼女が走ってくるのが見えたんだよなぁ
やっぱあれって、そうだったんだ

「でも・・・断られた」
「そ、そう・・・」
「ごめんなさいって・・・」
「そっか・・・」
「俺、さ・・・諦めつけたかったから、聞いたんだよ」
「な、なにを?」

さっきからすっごいドキドキするのはなんでだ?
マドンナ・石川改め、梨華ちゃんのあの笑顔が過ぎる
それにこのドキドキ。ごっちんの言葉
今山崎が語ろうとしてる彼女のこと

「どうして?って・・・」
「ああ」
「そしたらさ・・・梨華ちゃんさ」

き、聴きたいけど、聞きたくない・・・

904 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:37

「・・・好きな人居るって」


好き、な人・・・

ウチは鈍器で頭を殴られたような感じになった


「あ・・・そう・・・」
「俺さ・・・これ、勝手な俺の想像だけどさ」
「な、に」

「多分、マジで、お前じゃないかと思うんだ」
「な、なんで!!」

「彼女見てたから、分かったんだけどさ・・・」
「うん・・・」


「いっつもどっかを見てるんだよ」


「視線の先、見たらさ」


「お前なんだよ・・・な・・・」



山崎は、ホントに彼女に恋をしてたんだと思う
視線が自分に向かないか、いつも見てたんだと思う

けど、彼女の視線にはウチがいて

905 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:37

「時々、フフッて笑ってんの」
「へ、へぇ・・・」
「そう言うときってお前がなんかいつもドジってるときなんだよな」
「そ、う・・・」

「俺さ、梨華ちゃんに好きな人居るって言われた時、なんか、諦めついたんだ」
「そう・・・」
「なんか、俺の入る隙ないっていうかさ・・・」
「隙、ねぇ」

山崎はシートに置いてたグローブをはめ直す

「だからさぁ」
「うん」
「お前も、ちょっと真剣に考えてやれよ」
「・・・・・」
「彼女、マジで好きだと思うからさ」
「・・・・・」
「戸惑うかもしれないけどさ・・・ちゃんと考えてやれよ」


それは多分、彼女の事を思って言ったのと
自分の気持ちを無駄にしないでって言いたかったんだと思う

906 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:38

「・・・うん・・・」
「寄宿舎のヤローたちはさ、案外祝ってくれるって」
「そ、そうかな・・・」
「そうそう」

山崎はうんうんって頷きながら、降りる用意をしてる

「まぁ、マドンナだからなぁ〜。しゃーねぇよな〜」

ウィィンとフードが開いて、山崎は足をぎゅぃっと伸ばした
ウチはグローブをまとめて掴む

「なにが?」
「マドンナにはさ、王子が着くわけよ」
「なにそれ」
「山男にゃ惚れちゃいけないわけよ。ヤローは雪山に恋すりゃいいのさ〜」

リフトが下車位置にたどり着くと、山崎は颯爽と滑り出した

その背中を見てると
ちょっと寂しそうで、でも、どこか清清しかった

907 名前:今宵あなたと、この木の下で 投稿日:2005/12/24(土) 18:39

908 名前:Rink 投稿日:2005/12/24(土) 18:40
仕事の合間をぬって更新終了です!
909 名前:Rink 投稿日:2005/12/24(土) 18:41
レスポンス

>名無読者様
自分のサイトを携帯で見てたんですが
自分で書いておきながらもニヤニヤしてしまいました
しかもマックでww
やーっぱいしよしはいいですねぇ

>774飼育様
774げとーでございましたよん?さすが
( ^▽^)<おめでとうございます〜

サイトのアドレス分かりにくくて申し訳。

>春様
いやいや、もっと甘いのいきたいと思うので
よろしくお願いします〜

>名無飼育さん様
申し訳ないっす。本当に申し訳orz

>名無読者様
いえいえ、ありがとうございます!グッジョブ!w
910 名前:Rink 投稿日:2005/12/24(土) 18:41

>名無し読み手様
たまりませんか?嬉しい限り!
Rinkはさっきからもう顔が緩みっぱなしで仕方ないんですけども汗

>名無飼育さん様
アザッス!!

>名無飼育さん様
>もしかして、元ネタはかの有名なあの映画・・?
キャァァァ!!ば、バレてもた!!汗
ってばれますよね?ww
サイトにうpするときに詳しい話は載せますが
元ネタあれです。だってピッタリじゃないですか?
(#´▽`)〜`O) ←この二人に。

>あいわい様
叫びすぎ、叫びすぎ!!ww
心の中で叫んでおられますでしょ?
ニヤケ顔は確かに押さえられませんね。作者もかなり怪しい人ですから汗
911 名前:Rink 投稿日:2005/12/24(土) 18:42

今回の更新は>>843-907です

クリスマス目前、日を跨ぐときに
もう一度更新したいと思います

そんでもってスレ数にまたまた不安を感じたので
移転します。次は話の流れ的に雪板ww
でもこんなに板を転々としていいんでせうか・・・

メールやレスで例の言葉をたくさん頂きましたが
次の更新後に言いたいと思います!
なんでって?そりゃあ、ねぇ?

(#´▽`)〜`O) <らぶらぶ

さて、ケーキでも買いに行ってきまーす
912 名前:名無読者 投稿日:2005/12/24(土) 18:44
新作更新お疲れ様でした!
続きが待ち遠しいよほw

どれだけ甘いのがきてもいいように、
胃薬握り締めて続き待ってますw
913 名前:774飼育 投稿日:2005/12/24(土) 21:48
更新お疲れ様です
続き気になりますねぇ 楽しみにしてますよぉ
839さんサイトのアドレスの場所教えていただきありがとうございます
ヤッパリ見逃してたかぁ・・・orz
914 名前:Rink 投稿日:2005/12/24(土) 23:13
雪板に移転しました
スレ名『今宵あなたと、この木の下で』

ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/snow/1135433520/

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