Code for flowers
- 1 名前:日季 投稿日:2006/01/17(火) 17:52
- 偽りの真実
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1128336383/
心象
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1133452824/
引き続きスレお借りいたします。まだまだ未熟ですがよろしくお願いします。
みきさゆ、いしよしなど……
- 2 名前:only to you 投稿日:2006/01/17(火) 17:53
- 「おはよ〜ございま〜す!」
ニコニコとDVDを抱えて現れた重さん。
何がそんなに嬉しいのだろうと首を捻る。
「どうしたの?」
「あっ、藤本さぁん」
ぴょんって跳ねるように美貴の前に来る姿が……
ちょっと可愛いじゃんか。
「見ました?」
「見るって何を?」
「去年の秋の……じゃ〜んDVDで〜す!」
じゃ〜んとか自分で言うなよ。
心の中で突っ込んではみたけれど、まあいっかと口にするのは止めた。
どうしてか同期の中でもこの子には甘くなってしまう。
理由は……ぜんぜんわかんない。
- 3 名前:only to you 投稿日:2006/01/17(火) 17:53
- 「一緒に見ましょう?」
ぐいっと腕を引っ張られて楽屋の隅に連れて行かれる。
って言うか何を操作してる?
「最初から見ないの?」
「はい。え〜っと……」
いきなりミスムン?ってか早送りしてるし。
2番からかよ!と心の中で突っ込んでると……
「あぁ……」
「えへへ、さゆみと藤本さんのが収録されちゃった!」
「一瞬だけどね」
ぶちゅっとぶちゅっと……
美貴のが背が低いせいでしゃがんでるんだよね重さん。
それを見終わるとまた早送り。
「もう次?」
「ここが大事なの……」
次って言うか……
MCまで最初の辺り飛ばしてるし。
- 4 名前:only to you 投稿日:2006/01/17(火) 17:54
- うさちゃんピ〜ス!
めちゃめちゃ嬉しそうな顔が収録されてしまってる。
けっこう楽しんでるじゃん美貴ってば。
「藤本さんとってもかわいいの」
「それは、どうも」
「もう、ちゃんと見てくださいよ〜」
「見てるってば……巻き戻すな!」
「何回見ても飽きないの」
「本編を見なさい、本編を」
ぎゅっと美貴の腕を掴んで見つめてくる重さん。
こらこら目を潤ませるんじゃない……
「ゆっくり一緒に見てくれますか?」
じーっと熱すぎるほどの視線にたじろぐ。
「こ、今度ね」
「そうですよね、いまからお仕事だもん……」
「仕事が終わったらね」
「ほんとですか!」
ゆっくり頷くと嬉しそうに微笑んだ。
そうだ亀井ちゃんには内緒にしてて。
だって遊びに行く約束したまんま忘れてるから……
- 5 名前:only to you 投稿日:2006/01/17(火) 17:54
- 从*VvV)<おわり。
- 6 名前:only to you 投稿日:2006/01/17(火) 17:55
- リd*TーT) Σ!(VoV从
- 7 名前:日季 投稿日:2006/01/17(火) 17:55
- >>2-6更新終了です。
- 8 名前:名無し 投稿日:2006/01/17(火) 19:10
- 更新おつです。無邪気な感じでさゆがカワイイ!!
やさしくあまいミキティ-も好きです。
新スレでもあまい話が読めるの楽しみにしてます。
- 9 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/01/17(火) 20:16
- DVD見直してみますw
お仕事終わってじっくり見るのは道重さんのお部屋ですか?
藤本さんのお部屋ですか?その後の想像も楽しいです。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/17(火) 20:44
- さゆにだけ甘いミキティー萌え
- 11 名前:腰痛に苦しむ読者 投稿日:2006/01/18(水) 02:53
- 新スレおめでとうございます。
更新お疲れ様です。
リアル藤道もいいですねぇ〜VVV
DVD見ましたよ!!
あれは最高ですよね!!特にミスムンは・・・ヤバイA
作者様の藤道大好きです。
このスレでも甘ま甘まな藤道、石吉を期待しています!!
- 12 名前:No.1 投稿日:2006/01/18(水) 16:42
- 「重さんのナンバーワンは美貴でいいんだ?」
あれは何年前だったかな、ラジオに出た時に言われてドキッとしたのを憶えてる。
何気ないトークの流れで聞かれた言葉だったけど、いまでも心に残っているの。
あのラジオはすごく楽しくて、他にもハプニングがあって……
『美貴』
藤本さんが自分を呼ぶときに使うから、ついついさゆみまで移って
呼び捨てしちゃって焦ったな。
藤本さんは優しく笑って流してくれたけど、ドキドキして大変だったの。
その後のコーナーでも、さゆみの得意なダンスが「ひょっこりひょうたん島」だって
嬉しそうに話してくれた藤本さん。一番苦手なのが自分なのにね。
その年の春ツアーで踊れるようになって喜んでると、良かったねなんて言ってくれた。
わ〜懐かしいなぁ……
「ボーっとしてどったの?」
「あっ、藤本さん」
「リハ始まるよ?」
「はい!」
「ひょっこり楽しみにしてるね」
「……えっ?」
問い返した頃には傍に居たまこっちゃんのところに行ってしまってた。
”楽しみにしてるね”
その言葉だけでやる気が出て、いつもよりリハ頑張れたの。
- 13 名前:No.1 投稿日:2006/01/18(水) 16:42
-
******
- 14 名前:No.1 投稿日:2006/01/18(水) 16:43
- 「藤本さぁ〜ん!」
「お疲れ」
「どうでしたかぁ?」
「ん?」
なんだそのポーズは?
たしか「愛あらば〜」の決めポーズで重さんが連発してたポーズ?
いや、そのまま止まられても……
「ひょっこり張り切ってたじゃん」
「はい!さゆみが一番得意なダンスですから」
「あれ早すぎるんだよね〜、美貴には無理」
「え〜、ちょっと一緒にしませんか?」
「無理」
さくっと無視したんだけど、またあのポーズをして美貴を見る重さん。
何が楽しいのかわかんないけど、ものすっごい嬉しそう。
「すごいハマッてるポーズがあるんですよ〜」
「はい?」
「今年はこれとうさちゃんピースで、さゆみ大忙しなの!」
「あははっ」
大忙しなのって……。やばい、かわいい。
美貴に向かってうさちゃんピース炸裂させないでくれるかな。
なんか重さんのピースの仕方好きなんだよね。親指が可愛い…ってマニアックだな、おい!
去年の春ツアー中に重さんだけに向かってうさちゃんピースしたことあったけど
かなり喜んでたのを思い出した。
- 15 名前:No.1 投稿日:2006/01/18(水) 16:43
- 「で、そのポーズの名前は?」
「ブチ好きポーズです!」
「はっ?」
「こないだ〜愛ちゃんとイベントをしたんですね」
「うん」
「それで〜ポーズの名前を決めて〜」
めちゃくちゃ嬉しそうにポーズを決めた重さん。
「ブチ好きポーズ!」
「あははっ」
「可愛いですか〜?」
「えっ?あぁ、うん。すごくかわいい」
「棒読みなの、藤本さん」
「気のせいだって。かわいいよ」
ごめん、美貴には『お猿さんウッキー』にしか見えない……orz
言えない、満面の笑みの重さんには言えやしないよ……
「藤本さんも一緒に?」
「えーーー?」
「一緒にしましょうよ〜」
「ヤダ」
「即答するなんてひどいの〜」
「うっさい……あーもう、クネクネするんじゃない!」
「だって〜冷たいんだもん」
「いつもこんな感じです」
しゅんと拗ねた顔して、いじいじと美貴の肩で指をまわしている。
勘弁してくださいや〜。
- 16 名前:No.1 投稿日:2006/01/18(水) 16:44
- 「そうだ重さん?」
「・・・・・・・」
相当拗ねちゃってるな。ちろっと美貴を見ただけで
またぐりぐり指をまわしてる。穴開くといけないんでやめてもらえます?
「さゆってば」
「はい!」
早いな、おい。名前呼んだだけで即答かよ!
「あのさ『ね〜え』?歌ってくんない?」
「え〜、どうしようかなぁ」
めちゃくちゃ嬉しそうじゃん。もうポーズとってるじゃん。
「サビだけですよ〜……迷うな」
かるい気持ちでリクしたんだけど、ヤバイかわいい从*´v`)ポワワ
「あなたが好きだからよ〜♪」
ハァ━━━━━━ (´v `*从━━━━━━ン!!!!
愛ちゃんがきっと藤本さん負けますよって言ってたのがよ〜くわかった。
「どうでしたかぁ?」
とろけました、とろけすぎて顔がやばいです。
もう亜弥ちゃんに顔向けできません。
- 17 名前:No.1 投稿日:2006/01/18(水) 16:45
- 「さゆみのナンバーワンは藤本さんでいいの」
「へっ?急に何言ってんの」
「急にじゃありません。何年も悩んでたんですよ〜」
「何年も???」
「もう忘れてるなんて酷いの〜」
「知らないし」
「そんなところがすき」
「はぁ?」
ぐへっ……
思いっきり抱きしめられた。
「痛い離せ……離しなさい」
「さゆみのナンバーワンなの」
「わかった、わかったから手を緩めて……」
本気で苦しいってば。頼むから手を緩めて……
かわいいって思ってたのをちょっと後悔。
とろけた美貴の顔どうしてくれんだよっ。
- 18 名前:No.1 投稿日:2006/01/18(水) 16:45
- 「さゆみのナンバーワンは?」
「み、美貴……」
「よくできましたぁ〜」
わしゃわしゃと頭を撫でられた。
くそっ、なんだこの子ども扱いは……
「誓いのチューもしちゃったしね、藤本さんっ」
「はぁっ??」
「だってステージで奪われちゃったもん」
「奪って……」
なくなくなくなくな〜い。おもいっきりした、美貴からした……orz
「責任とってくださいね?」
満面の笑みの重さんに思わず頷いてしまってた。
また窒息しそうなくらい抱きしめられて、言いようの無い快感を得たとか得ないとか?
亜弥ちゃんといい、重さんといい……
美貴、どうにも自分大好きな人に弱い性分らしいです。
- 19 名前:No.1 投稿日:2006/01/18(水) 16:46
- 川*VvV)<おしまい。
- 20 名前:日季 投稿日:2006/01/18(水) 16:48
- >>12-19更新終了です。
いろんなところで見聞きした藤道をごっちゃにしちゃいました……orz
生粋のみきさゆファンなのであらゆる場面で注目してますw
今年もライブでハプニングが連発しますように从*VvV(・ 。.・*从
- 21 名前:日季 投稿日:2006/01/18(水) 16:49
- レスほんとにありがとうございます。
>>8 名無しさん
リアルは恋愛関係ではない雰囲気の二人を書こうと思ってます。
それでも甘い感じにしようと頑張ってますw
>>9 名無し飼育さん
DVDには収録されていないみきさゆ部分を生で見たんですけど……
脳内にしか残ってないのが悔やまれますw
>>10 名無飼育さん
うちの藤本さんはとことん甘いですw
>>11 腰痛に苦しむ読者さん
最高でしたよねミスムン。生で見た時は重さんが凄かったですw
大好き……と言ってもらえて嬉しいです。甘ったるく頑張ります。
- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/18(水) 18:01
- ミキティ弱っw
シゲのかわいさに負けまくるミキティがツボです
- 23 名前:名無し 投稿日:2006/01/18(水) 20:17
- なに>>12の殺し文句は!!ミキティ-罪深いお人だw
ミキティ-視点から見るさゆは痛い感じで面白い。
ぶっとびキャラのさゆもだいすきです。
- 24 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/18(水) 20:45
- リアルネタ、おもいだしてニヤニヤしてしまいます。
ミスムンはDVDに映ってる後が一番いちゃいちゃしてたのに、そこを
収録してないのがもったいない。
ワンダフルハーツでも、愛あらばの曲の時にお互い見つめ合って
ピョンピョン飛び跳ねてるのを見ました。
リアルも、アンリアルもミキティはさゆみんには甘い気がします。
いや、甘くあってほしいですw
- 25 名前:日季 投稿日:2006/01/19(木) 14:47
- 石川さんの誕生日の日のお話を……
前スレで書いていたみきさゆ花言葉の番外編です。
『Garnet』
- 26 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:48
- 『あー美貴?』
「なんだよーこんな夜中に電話して……」
『ちょっとだけ頼みごとがあるんだ!』
「風邪ひいてたんじゃないの?」
『治った。全開。絶好調!』
「だーーー声でかい!夜中にうるさいってば」
『すまん。それで頼みって言うのが……』
- 27 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:48
-
◇
- 28 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:49
- 「で、結局朝方までつき合わされたんだ」
「お疲れ様です、藤本さん」
ふぅーって溜め息つくと、頭を撫でられた。
美貴の頭を撫でるのが、最近の重ちゃんのマイブームになってるらしい。
髪を撫でて嬉しそうにするから、美貴まで頬が緩む。
「宝石調べて、それからどんなのがいいか検索して……」
「何を買いに行ったんですか吉澤さん?」
「ネックレスじゃないかな。ハート型のがあったから」
「そうなんですね、いいなぁ」
「……ごめんね」
ぬいぐるみばっかりあげてて、ごめんなさい。
どんだけお子ちゃまなんだ美貴は・・・orz
一人で落ち込んでると、それに気付いた重ちゃんが泣きそうな顔をする。
あぁ、そんな顔しないで。もう、すぐそんな顔するんだから……かわいいけど。
「さゆみはうさちゃんが一番嬉しかったんです」
「うん……」
「藤本さんが傍に居てくれただけで、とっても幸せな誕生日だったの」
ぎゅっと抱きしめられた。はぅ、幸せ……
よっちゃん夜中に電話ありがとう。そしてよっちゃんのパソコン修理に出ててありがとう。
そのおかげで美貴は変わりに色々と調べる破目になったけど……
寝不足でこんな良い事があるとは思わなかった。
あぁ幸せだな〜、そんな午後の一時。
おっぱいに包まれてる感じ最高……って変態か美貴は。
- 29 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:49
- 「そうだ、さゆみ?」
「どうしたんですか?」
「中澤が担任なんだよね」
「そうです。先生のこと呼び捨てしちゃダメなの」
「あぁ、うん。で、聞きたい事があるんだけど」
重ちゃんの腕に包まれたまま上目遣いに見上げると
不思議そうに首を捻って見おろされた。
下から見ても可愛い……じゃなくって。
「その、あの……さ」
口にするのもムカつく。
あの人の挨拶はぶちゅっとほっぺにキスだったりするんだ。
まさかとは思うけど……
「先生にさ、セクハラとかされてない?」
「セクハラですか?」
「そう、どんな些細なことでも……触られたり色々と…」
「大丈夫ですよ。絵里と違っておされてるかな〜くらいの感触は好きじゃないですから」
「あははっ、そっか絵里はおされてる感じが好きだったね」
「だから先生にくっつかれても絵里は喜んでますけど、私は逃げてます」
「それがいいよ。絶対に逃げて……」
「えへへ、わかりました」
美貴以外に触れられないで……
喉元まで出かかった言葉を飲み込む。
無理な話だよね、誰にも触らせないとか。
幸いに電車通学じゃないから、その辺の心配はないけど。
ある程度のことは我慢しなきゃ。
- 30 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:49
- 「さゆみはみーちゃんだけなの」
腕の力が強くなってより強く抱きしめられた。
やばい幸せすぎてやばい……
「キャッ!?」
「えっ?」
「藤本さん、血が……」
「わっ、ごめん……」
慌ててティッシュを探す。だぁーーー持ってないじゃん!鞄の中だ……
焦ってると重ちゃんが持っていたハンドタオルで鼻をおさえてくれた。
うぅ情けない鼻血こんな時に出るなよ。でも量が少ないからじきに治まると思う。
「ごべん、ぶぐにづいじゃっだ?」
「えっ?……制服にですか?さゆみは平気です。
それより藤本さん大丈夫ですか?」
「ぢょっどまっで……」
しばらくすると血が止まったので重ちゃんにティッシュを貰って
口の中に少しだけひろがった血を出した。
とても心配そうに見ているから微笑んで見せたけど、まだまだ不安顔。
慣れてると平気だけど、重ちゃんは平気じゃないんだね。
痛みは別にないんだけど、美貴が痛いと思ってるのか
自分が痛いみたいに表情をゆがめている。
「ちっちゃい頃からなんだ」
「鼻血ですか?」
「うん、たまに出ちゃうんだよね。大きくなってからはそんなにだけど」
「ビックリしたぁ……もう平気ですか?」
「うん、大丈夫」
- 31 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:50
- 胸元にうっすらとついてしまった痕を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
クリーニング出さなきゃ、とれないかな?
そんなことを考えてると、何を勘違いしたのか重ちゃんが困ったような顔になっていた。
美貴ってば胸元を凝視してた……
「ごめんなさい」
「謝るなよ〜」
「だって、さゆみがみーちゃんのことぎゅってしたから……」
「違うから、それで出たんじゃないってば」
「ほんとに?」
「うん。違うから、美貴こそごめんね」
心配ばっかりかけてごめん。
美貴が正月明けに触らせてなんて言ったばっかりに
気にしてたんだね、ほんとにごめん。
「えっと、そのそういうことは……ゆっくりでいいから。
美貴とさゆみには二人のペースがあるから、だから……
別に触りたいとかそんなことばっかり考えてたりしないから、えっと」
なんとか伝えたいんだけど、うまく言葉にできなくて
よくわからない事ばかりが口をついて出てくる。
なんだか美貴、泣きそうになってきた。でも伝えなきゃ……
「あの、だからぎゅってしてほしいと言うか……
抱きしめてもらうと気持ちいいし…ってそういう意味で気持ち
イイんじゃなくて、なんていうのか心が満たされて幸せな気分にるんだ」
うまく伝わってるのかワカラナイけど、重ちゃんはずっと真剣に聞いてくれてる。
美貴の手をそっと握って指を絡ませながら……
焦らないでと伝わってくる眼差しに、少しだけ落ち着けた。
- 32 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:50
- 「さゆみが好きだよ」
ふいに飛び出した言葉に一瞬ビックリした重ちゃんは
すぐに表情を崩して、嬉しそうに微笑んだ。
「好き」
いろんな想いがあるんだけど、うまく伝える術を知らないから
シンプルで一番まっすぐに気持ちが伝わるだろう言葉をキミに贈るよ。
ぐだぐだと考えてみても辿り着くのは……「好き」というヒトコト。
ぎゅーっと美貴を抱きしめる力が増したことで
重ちゃんの美貴への想いを再確認できた。そして……
「大好き」
その言葉が美貴の頭上からふんわりと降ってきた。
彼女の胸に抱かれて美貴はこの上ない幸せを感じる事ができた。
- 33 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:51
-
******
- 34 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:51
- 不器用すぎるほどの言葉が並んでも最後には真っ直ぐ伝わってくる想い。
藤本さんはいっつもそうなの。ちゃんと「好き」って言ってくれる。
最初は素直じゃない人だと思ってたのに……
「寝ちゃダメですよ〜?」
「うん…」
返事しながらさゆみの胸に顔を埋めたまま目を閉じてる藤本さん。
この幸せそうな表情は私だけが見れるんだと自惚れてもいいですか?
- 35 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:51
- 「あーーーーーっ!?」
「ど、どうしたんですか?」
「やばい忘れてた」
「忘れる?」
「昨日までは覚えてたんだよ、昨日までは」
髪をわさわさと掻き乱して藤本さんは泣きそうな顔をした。
ちょっと可愛いすぎるの……
気持ちをストレートに表すときの藤本さんは子供のように可愛い。
「梨華ちゃんに誕生日おめでとうさえ言ってない」
「メールはしたんですよね?」
ぶんぶんと首を振って溜め息。
両手を挙げて空を仰いだ藤本さんはそのままどてっと後ろに倒れた。
おまけにゴツンって音までして、慌てて覗き込むと”たはっ”なんて
涙目になって情けなく笑った。
- 36 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:52
- 「みーちゃん、頭だいじょうぶ?」
「へーき。痛いけどへーき」
「いまからでも、おめでとうって……」
「同じクラスなんだよ……朝から一緒に来たんだ、今日は。
なのに美貴なんにも言ってあげなかった。今更言えないよ」
空を見上げたまま起き上がろうとしない藤本さん。
わかってるの、石川さんが大切な幼馴染だってことくらい……
でも私が傍に居るのに、どうして石川さんのこと考えちゃうの?
「吉澤さん、お休みですよね?」
「今日も休んでる。風邪は治ったみたいだけどプレゼント買いに行くって言ってた」
「だったら傍に居てあげればいいじゃないですか……」
「さゆみ?」
涙交じりの声にようやく気づいたのか藤本さんはカラダを起こして
心配そうに私を覗き込んだ。
「石川さんといればいいじゃないですかぁ」
「……ごめん。違うんだ、違うんだよ」
「なにが違うんですか?」
「梨華ちゃんはそういうんじゃないんだ」
そっと腕を掴まれて合わさった視線は怖いほどに真剣で……
ほんとうはわかっています。石川さんを好きな意味と私を好きな意味が違うことくらい。
違う理由は”なんとなく”しかワカラナイけど、「違う」と言う事は解ってる。
- 37 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:52
- 「こうやって傍にいたいと思うのはさゆみだけなんだ」
「うん……」
ぎゅーーーっと痛いくらいに抱きしめるクセは、ちっともなおらない。
でも愛されてると感じられるから。あなたの腕の中が世界で一番大好きなの。
この腕の中にずっとず〜っと閉じ込めて欲しいくらい、あなたが好き。
「でもね梨華ちゃん、朝すっごい元気なかったんだ」
「石川さんがですか?」
「うん。たぶんよっちゃんに1週間くらい逢ってないからだと思う」
「そうですね土日を挟んで、吉澤さんそれくらいお休みしてます」
「無理してると思うんだ。しっかりして見えるけど脆いところもあるから」
「わかってます。私も石川さん大好きだもん、だから心配なのわかります」
「ありがとう、さゆみ」
ほっとしたのか抱きしめる腕の力を緩めて私を見た藤本さんは
とってもやさしい表情をしていた。
「もうすぐお昼休み終わっちゃうの…戻りましょう?」
「……ねえ、さゆみ?」
名前を呼ばれて視線が合った瞬間にキスされた。
ひんやりとした屋上に居たから唇までも冷たくなっていて
じわじわと触れた唇が熱をおびていくのがハッキリと感じられた。
また強くなる腕の力に身を委ねて、そっと瞼を閉じた。
ただ触れるだけの口づけは互いの存在だけを感じられて……
世界に二人しか存在しないんじゃないかとさえ思えた。
- 38 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:53
- バーーーンッと開けられた扉。
ビックリして離れた唇が急に風を感じてひんやりとした。
「美貴ちゃん!」
頭にひびく高い声……
思いのほか元気な石川さんが立っていた。
藤本さんはあまりの急さに私を抱きしめたまま固まっている。
「お邪魔だった……えへへ、ごめんね」
「……り、梨華ちゃんどったの?」
「移動教室だから、早めに戻ってきなよって言ったじゃん」
「そ、そうだったけ?」
「そうだよ〜遅いから迎えに来たの。ところで、いつまでそうやってるの?」
「あっ……へへっ」
照れくさそうに私から離れた藤本さんはスッと立ち上がり
私に手を差し出した。その手を掴んで立ち上がる。
「うふふ、美貴ちゃん鼻血出たの?」
「な、なんでそれを……」
「さゆの制服についちゃってるじゃん。それに持っているタオルにも」
「……すぐに止まったんだけどね」
「昔から出やすいよね」
「そうだね。あっ、さゆみ洗って返すから」
「……はい」
私のハンドタオルをブレザーのポケットに入れながら藤本さんがそう言った。
私が知らない藤本さんのこと、色々と知ってる石川さん。
なんだか羨ましいなぁ、なんて思ってて返事が遅れただけなのに藤本さんは勘違いしちゃったみたい。
「血がついたのじゃ気持ち悪いか……新しいの買うね」
「ううん、へいきです。むしろそのまま持って帰ります!」
「へっ?」
「だって気持ち悪くなんか無いの」
「あぁ、うん……へへ、ありがと。でも洗って返すよ」
「はい」
- 39 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:53
-
「ひとみちゃん大丈夫かなぁ」
「ん?よっちゃん?」
「今日もおやすみでしょう……風邪ひどいのかなぁ」
「メールとかしてないの?」
「だってしんどいのにメールなんてしたら、見るのも辛いかなって……」
「そっか」
吉澤さんがいないときは「よっすぃ」って呼んでた石川さん。
いまはそんな呼び方に拘ってるほど余裕が無いみたい。
いつも姿勢正しく歩いて凛としてる石川さんが、いまは儚く見える。
元気が無くて、どこか寂しそうで……
「石川さん!」
「どうしたの?」
「あの、これ……」
差し出したのは自慢のコレクションからの一品。
藤本さんに見せようと思ってポケットに入れたまま忘れてたの。
なかでもお気に入りの……
「わぁー可愛い〜、さゆ似合うだろうね」
「あの……もらってください」
「えっ?」
「誕生日おめでとうございます!」
きょとんとして石川さんはビックリしてたけど、すぐにそれを受け取って
ニッコリと微笑んだ。
- 40 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:54
- 「ありがとう。大切にするね……」
「うっわ、梨華ちゃんそれつけるのはキツイと思う」
「なによぉ。大丈夫だよね、さゆ?」
「はい!とっても可愛いです」
藤本さんは呆れ顔だけど、石川さんは嬉しそうに私のあげたピンクの髪飾りを見ていた。
良かった、ほんの少しだけど元気が出たみたい。
「誕生日だったね、自分でも忘れちゃってた」
「マジで?」
「だって、ひとみちゃんが苦しんでるのにおめでたくないもん……」
「あーもう、泣くなよ?ほら、授業いこう!」
「泣くわけないじゃん、幾つになったと思ってるのよ!」
「美貴より年取ったんだね、おめでとう」
「もう、ムカつく〜。なによぉお子ちゃまのみきた〜ん」
「うっさい、みきたん言うな!」
「鼻血たれ小僧のみきた〜ん」
「だから、その呼び方をするなって!それに鼻血たれってなんだよ!」
「鼻血たれは鼻血たれじゃん。えっちぃみきた〜ん」
「だぁーーーームカつく!」
子供みたいな二人のやり取りに思わず笑みが漏れる。
ほんとに元気になったみたい石川さん。
先に行ってるね〜と藤本さんを残して走っていってしまった。
- 41 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:54
- 「元気出たみたいですね」
「空元気だけどね。無理してるなぁ、あれは。よっちゃんに連絡しとこ」
何でもわかっちゃうんだ……
ちょっとだけ石川さんの事が羨ましいの。
「で、さゆみも心配性だね」
「藤本さん?」
「梨華ちゃんとはちっちゃい頃から一緒だから、色々わかるだけ。
さゆみとは……ちゃんと心が通じ合ってるって美貴は思ってるんだけど?」
「……さゆみもそう感じてます」
満足そうに微笑んだ藤本さんは、いこっかと手を繋いでくれた。
そう、いつだって私が落ち込んでるとすぐに気付いてくれる優しい人。
気づけば必ず隣に居てくれる、私だけの王子様……
「でも空元気だけど、朝よりは元気になったみたい。さゆみのおかげだね」
「そうですか?よかったぁ」
石川さんも吉澤さんに早く逢えますように……
- 42 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:55
-
◇ ◇ ◇
- 43 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:55
- 放課後の教室で見慣れた人物を発見。
そこにいたのは、走り回って疲れたらしい吉澤さん。
綺麗なお顔に夕日が射してより輝いて見えた。
「あれっ、よっちゃん?」
「みたいですね」
「寝ちゃったんだ」
「石川さんのために無理したんですね」
藤本さん曰く、ネットで見つけたのとよく似たネックレスを探して
吉澤さんは朝から大変だったみたい。
藤本さんのところには報告のメールがたくさん入ってたそうで……
「午前中は音沙汰無くて、昼になった途端に数十回メールが着てさ」
「そんなにいっぱい?」
「うん。午前中はかたっぱしから店に電話して在庫探ししてたみたい」
「それで午後から買いに?」
「うん。けっこう遠いところしか置いてなかったみたいで」
「じゃあ、学校に来れなかったのって」
「買いに行くため。梨華ちゃん聞いたら怒りそうだけど。
自分の為とはいえ、学校サボったんだからね」
そういうところは真面目すぎるほど、真面目な石川さん。
だけど、今日はきっと許してくれると思う。
放課後の教室で『愛しいあの人……』は、こんなに頑張って寝ちゃってるの。
この姿を見たらきっと怒ったり出来ないと思う。
- 44 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:56
- 「もうすぐ梨華ちゃんが来るから、帰ろっか」
「はい」
「今日はバイトですか?」
「休んだ。梨華ちゃんになにかプレゼント買いに行こうかなって」
「一緒に行っていいですか?」
「うん。お願いしようと思ってたんだ。美貴とじゃ趣味が合わないから」
「そっか、ピンク……」
「そうピンク」
そっと教室の扉を閉めて藤本さんは可笑しそうにほんの少しだけ笑った。
「どうしたんですか?」
「よっちゃんの方がメールを送る回数は多いんだよ」
「そうなんですか?」
「案外マメじゃないんだ梨華ちゃんは。よっちゃんのがよく送ってる。
だから梨華ちゃん寂しいんだよ、いつものようにメールが来ないから」
見た目とまったく逆の二人。だけど考えてることはお互いのこと。
- 45 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:57
- 「美貴も寂しいもんね」
「寂しいの?」
「さゆみからメール来ないと心配。体育の前とかだと送れないじゃん?
それだけで寂しいとか思っちゃうから、ダメだなって思うんだけど」
「ダメじゃないです。嬉しいの」
「いっぱいメールして。いっぱい逢いに行くから」
ふいに浮かんだ数ヵ月後の行事。そうかもうすぐ藤本さんいなくなっちゃう……
繋いだ手の力を強めると、藤本さんはゆっくりと私を見た。
「どうした?」
「なんでもないの」
「なんでもなくない?泣きそうだよ」
「ぎゅーってしてみーちゃん」
すこし戸惑いがちに背中に回された腕。
学校では屋上以外でお願いすることなんて無かったから……
「甘えたさんだね」
「ごめんなさい」
「可愛いからいいよ」
「えへへ」
この校舎の中で甘えられるのは、あと少しだけ。
だから、しばらくこのままで私を閉じ込めていてください。
離れても傍にいるんだと感じられる自信をください。
- 46 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:58
-
******
- 47 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:58
- 美貴ちゃんからメールがあって教室に行くように言われた。
来てみたら教室の隅っこで眠る姿……
「ひとみちゃん?」
戸惑いがちに声をかけて、そっと眠ってる頬に触れてみた。
もう、こんなに冷たくなってるじゃない……
今日も休みなはずでしょ?どうして教室に居たりするの?
髪を撫でると幸せな夢でも見ているのか綻ぶ口元。
かわいいな、こうやって眠ってると端正な顔立ちがとっても子供っぽく映る。
1週間は逢ってないよね?だからかな、少しだけ痩せて見えるよ。
ご飯はちゃんと食べれてるのかな?熱は?咳は?
聞きたい事がいっぱいあるの、聞いて欲しいこともいっぱいある。
けど、こうやって顔が見れたら不思議だね、すごく安心したの。
安心して頭の中が真っ白になっちゃった。
こうやってひとみちゃんの息づかいを感じられるだけで幸せみたい。
そっと唇に触れてみる。少しだけ乾燥しちゃってる。
リップ塗ってあげようかな。風邪って喉が渇くよね。唇の乾燥は関係ないのかな?
キスがしたいな……
- 48 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:58
-
「あっ、梨華ちゃん……」
目を覚ましたひとみちゃんは、嬉しそうに私を見て微笑んだ。
そんな無邪気な顔しないでよ、やっぱり怒る気にはなれない。
でも逢えて嬉しいけど心配だよ?もう風邪はいいの?
何しに学校に来たの?昨日の夜、電話もくれなかったのに……
「どうして?風邪は?大丈夫なの?それに休んでたのになんでいるのよぅ」
「だって誕生日じゃん。ほんとは日付変わってすぐに電話したりとかしたかったんだけど
色々と準備してたら間に合わなくて、こんな時間になっちゃった。ごめんね」
「ひとみちゃんのばかぁ」
「電話より逢いたかったんだ。逢ってちゃんと伝えたいことがあったんだ」
「伝えたいこと?」
急に抱きしめられた。
久しぶりに感じるひとみちゃんの匂いは、いつものようにやさしく私を包んでくれた。
腕の中は思ってたよりも暖かくて心配になり、熱がないのかおでこに触れてみた。
うん、熱はないみたい。咳も出てないし……
「風邪は治ったんだ」
「ほんとに?よかったぁ」
「遅くなったけど。梨華ちゃん、誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「それと……これ、もらって」
ひとみちゃんが見せてくれたのは赤いハート型の石がついたネックレス。
深い赤色はとても綺麗で、夕日をうけてキラキラと輝いていた。
- 49 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 14:59
-
「変わりのない愛情であなたにつくします」
唐突に発せられた言葉にきょとんとしてると、ひとみちゃんは話を続けた。
「身につけた人に変わりのない愛情を示す石なんだって。
ひとりの人に忠誠を尽くすんだけどね……」
そっと首にそれをかけてくれた。
「持ち主が同時に他の石を持つと、その効力が消えてしまうんだって」
「石のお名前はなんていうの?」
「ガーネット。自信とやすらぎを与えてくれる宝石なんだ」
「……ひとみちゃんみたいだね」
思わず呟いた。こうやって傍にいてくれるだけで私は安心できる。
あなたと付き合ったことで、たくさんの自信がついた。
- 50 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 15:00
-
「そう、あたしそのもの」
「大切にするね」
「あたし以外を愛しちゃダメなんだよ」
「うん、ひとみちゃんだけだよ」
言い終わった瞬間、また強く抱き寄せられて……
今日はなんだかいつもより強引だね、どうしちゃったの?
「あたしも梨華ちゃんだけに愛を誓うから」
もっとラクにしなよ。そう囁かれた。
「お姉さんぶるのも良いけどさ……」
あたしのまえでは気取らなくていいんだよ。
優しい声色に堪えていた本音が音も無く零れ落ちていく……
- 51 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 15:00
-
******
- 52 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 15:00
- 「逢いたくて逢いたくて逢いたくて逢いたくて逢いたくて……」
言葉と一緒にぼろぼろと零れ落ちる涙が制服にしみこんでいく。
いつぶりだろう梨華ちゃんがこんなに泣くのは。
すぐ我慢しちゃう人だから。本音を隠して笑おうとする人だから。
とっても心配なんだよ、いつか壊れてしまいそうで……
「寂しかったんだからぁ」
「うん、ごめんね。もう風邪なんてひかないから」
「絶対だよぉ」
「わーってる」
「もう、ばかばかばかばかばかばかぁ」
「バカになったら風邪ひかないよね、バカでいいや」
「ばかぁ……」
「うんバカだね、こんなに泣かせてる」
「……ぇっく…」
「あたしも梨華ちゃんに逢いたかった」
梨華ちゃんに逢えなくて、毎日夢に見てた。早くこうやって抱きしめたかった。
美貴たちのこと正月にちょっと大袈裟だなとか思ったんだけど
それの罰があたったのかな?
久しぶりだよねこんなに逢わなかったの。今までが一緒に居過ぎたのかも知れないけど
でも、傍に居たいんだからしょうがないじゃんね。
それが自然なカタチだって思ってるから、離れてるだけでこんなにも辛い。
- 53 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 15:01
- 「も、もう休んじゃダメなんだからぁ」
「うん、もう休まない」
「卒業までぜったいだよぉ」
「休まないって約束する」
涙で濡れた目元にそっと触れると、梨華ちゃんはゆっくりと瞼を閉じた。
いつだったかキスだけでドキドキするって美貴が言ってたのを思い出した。
いまあたしの心臓ありえないくらい速くなってる。こんなにドキドキするのいつぶりだろう?
「ドキドキしてるね」
「聴こえる?」
「うん、ひとみちゃんの心音が私にまで響いてくるよ」
「なんか恥ずかしいな……」
「どうして?」
「いや、なんとなく」
甘えるように見上げられるだけでドキドキして。
付き合う前のあたしはずっとこんな感じだったな。
心臓壊れちゃうんじゃないかって、何度も思った。
けど壊れずにここまできたんだから、なかなか強いんだね。
「ひとみちゃん」
「どしたの?」
「ひとみちゃん」
「……りかちゃん?」
名前を呼んで欲しかったのか、すごく嬉しそうに笑った梨華ちゃん。
「ひとみちゃんにね、呼んで欲しかったの。
ずっと声が聴きたかった」
そっと呟くような囁きに胸がしめつけられた。
強く見える彼女の本音をちゃんと聞いてあげられるのはあたしだけなんだ。
そう思うことでどれだけ強くなれただろう。
- 54 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 15:02
- 「あとね、甘えてくれる人が居ないと寂しいみたい」
「ふぇっ?甘えてくれる……」
「だって、ひとみちゃん甘えたさんじゃん」
「そ、そうだけど」
面と向かって言われると恥ずかしいわけでして……
顔が真っ赤になってるよ絶対に。なんか熱いもん。
そんなあたしを嬉しそうに見上げた梨華ちゃんの涙は止まっていた。
「やっぱり、ひとみちゃんが一番だね」
「いちばん?」
「一番かわいくて、一番頼りになる」
「ほんとにそう思う?」
「もちろん。私の王子様だからね」
「お、王子……」
この人ヤバイですよ、さゆと同じようなこと言ってる。
でも、いっか。そんな所も梨華ちゃんの良さだし。
「ひとみちゃん?」
どうしたのかと思って首を捻ると、あたしの耳元で囁いた梨華ちゃん。
「ね、もう1回愛してるのチューして?」
「こ、ここで?」
「だって誰も居ないもん」
「居ないけ…」
返事を待たずにあわさった唇。
ありったけの想いが流れ込んでくるように熱かった。
- 55 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 15:03
- 触れるだけで離れようとした唇を追いかけて口づけた。
不意のことに彼女のカラダが少し強張った。
腰を強く抱き寄せより隙間を埋めるように密着させる。
「んっ……ひと、みちゃ……」
唇がすこし離れ漏れる声は甘く掠れて耳に届く。
どうしようもなく愛しい。あたしに身を委ねるキミのすべてが愛しい。
ふたりの熱が合わさって絡まってお互いの中へとのみこまれていく。
熱い、熱くて堪らない。カラダ中が沸騰して熱を放出したいと叫んでる。
案の定、察した梨華ちゃんに肩を押し返された。
さすがにこの場所ではちょっと、ね?
「だめだよぉ」
「だってさ〜」
「ひとみちゃんが触れるだけで終わらせないから悪い」
「梨華ちゃんのカラダが誘ってるんだよ」
「誘ってないもん」
ぷくっと頬を膨らませて怒ったフリ。こりゃダメだ。
ここではしませんの宣言でもある。
「梨華ちゃん家に泊まっていい?」
「う〜ん、ママに聞いてみるね」
そう言って携帯を取り出してママに電話。
どうやら大丈夫らしく指でマルを作ってあたしに微笑んだ。
- 56 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 15:04
- 「でも嬉しいなぁ」
あたしがあげたネックレスを手に取り嬉しそうに呟いた。
「尽くしてくれるんだよね、ひとみちゃん?」
「おう、今夜は寝かさないぞ」
「それはダメ」
「なんでだよ〜」
「明日学校だもん」
「そうだけどさ〜」
「今日ズル休みしたんだから明日はちゃんとお勉強しましょうね?」
「は〜い」
大袈裟に手を上げて返事をすると、いい子でしゅね〜と頭を撫でられた。
「ほんとに今日はダメ?」
「だ〜め」
「お風呂一緒に入るくらいは?」
「入るだけで終わると思えないんだけど?」
「もう期待してるくせに!」
「してないわよ!」
「なんでなんでなんでーダメなんだよぅ。梨華ちゃんあたしのこと嫌いなんだ」
「ちょっと、ひとみちゃん」
泣き真似しただけで本気で焦っちゃうキミが大好き。
- 57 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 15:05
- 「ひとみちゃん泣いちゃヤだよ〜」
眉を下げて困った顔であたふたしてる。そんなキミが可愛くて。
わざと嗚咽が漏れちゃってるフリでもしようかと思ってたら……
「ふえぇぇぇぇぇぇ」
えっ?なに泣いちゃってんの?
両手で顔を覆って大袈裟なほどの泣き声に動揺。
「ちょ、梨華ちゃん?」
「ひとみちゃんが泣いちゃったよぉ……グスッ」
「泣いてないから、ねえどうしてそっちが泣いてるの……」
パッと手を顔から離して梨華ちゃんはいきなり無表情になる。
状況把握が出来なくて唖然としているとキツイ一言。
「泣いてないわよ、バカ」
「バ……」
騙された……orz
梨華ちゃんに騙されるなんて、あたしは本気で泣きたくなってきた。
急に力が抜けてへなへなと崩れ落ちるあたしと、目の前にしゃがんだ梨華ちゃん。
「もうそんなのに騙されるわけないじゃん」
「ごめんなさい」
「ほんとにバカ」
ぎゅっとあたしの頭を引き寄せて抱きしめてくれた。
はぁ、梨華ちゃんの胸の中最高!とかおめでたいあたしの思考。
ほんとバカですいません。
- 58 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 15:06
- 「嫌いなわけないでしょ?」
「へっ?」
「大好きだよ。好きで好きで好きで好きで……」
「も、もうわかった。ありがとう梨華ちゃん」
「好きすぎてバカみたいなんだからぁ」
お互いにバカってことで一件落着?
うん、いいやそれで。バカは風邪ひかないって言うし、さっきも言ったなこれ。
まぁ風邪ひかないで卒業までがんばろうね。
「ねえ、ひとみちゃん」
「な〜に?」
「もう1回聴きたいな……」
何を?と問いかけようと思ったけどやめた。
なんとなくわかったから。君が望むのなら何度でも誓う。
―――――― 変りのない愛情で梨華ちゃんにつくします。
胸にそっと埋めた頬から彼女の心音がリズムよく響いてきた。
速くなる鐘の音がふたりのこれからを祝福している――――――
- 59 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 15:07
- 1月の誕生石:ガーネット
宝石言葉【真実、友愛、忠実】
―――――― おしまい。
- 60 名前:Garnet 投稿日:2006/01/19(木) 15:07
-
- 61 名前:日季 投稿日:2006/01/19(木) 15:08
- >>25-59 更新終了です。
石川さんお誕生日おめでとうございます。
いろんな意味で可愛らしい石川さんが大好きです。
(*^▽^)σ)^〜^o)ゞラブラブ な1年になりますようにw
ほんとすいません。
石川さん番外編の予定が、前半はみきさゆメインになってしまいました(汗
( T▽T)<ばかぁ!
从*・ 。.・)<さゆみが可愛すぎるからいけないの。
- 62 名前:日季 投稿日:2006/01/19(木) 15:08
- レスほんとにありがとうございます。
>>22 名無飼育さん
ツボでよかったですw 藤本さん自分大好きな人に弱すぎです。
川;VoV)<弱くないやい!
>>23 名無しさん
そこだけ聞くとキザなセリフですよねw
はっちゃけてる道重さんが大好きです。
从*・ 。.・)<さゆみは何をしても可愛いの。
>>24 名無飼育さん
春ツアーもいちゃいちゃがあった公演がまったく映像で残ってませんからね。
武道館はメイキングにみきさゆがあって(*´∀`)ポワワでした。
ハロコンは自分もそこはしっかり発見しましたw
从*VvV)<へへっ、重さんのことは甘やかしてますぜ?
- 63 名前:日季 投稿日:2006/01/19(木) 15:18
- >>44修正・・・orz
二行目の「はい」は消し忘れです。脳内で消去お願いします。
適当に流して読んでもらえれば幸いです。
- 64 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/19(木) 16:11
- >>45のさゆがかわいくてかわいくて、どうしましょう?w
ミキティも素直でやさしくて。梨華ちゃんとしゃべってる時とのギャップが良い。
いしよしもかわいかった。バカ万歳w
- 65 名前:名無し 投稿日:2006/01/19(木) 18:53
- みきさゆの言動すべてが愛しくてカワイイ。
今回は梨華ちゃんよっちゃん視点両方読めてよかったです。
ふたりの気持ちが純粋で、やりとりは夫婦みたいに遠慮がなくて
みきさゆとは違う魅力がありますね。
- 66 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/01/19(木) 22:22
- あぁ・・・甘いです
これぞ藤道の真骨頂って感じがします
お誕生日小説を乗っ取りそうになっちゃう辺りさすがですw
石川さんおたおめ!
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/20(金) 00:48
- 「重さんのナンバーワンは美貴でいいんだ?」萌え〜
すみませんがこのラジオはいつの何という番組か知ってたら教えてくださいませんか?
- 68 名前:前29 投稿日:2006/01/20(金) 21:03
- オタオメ更新お疲れさまです〜。
ガーネットの宝石言葉・・なるほど・・・w
まさしくその通りですねえ。
数多く上がったオタオメ小説の中でもちょっと雰囲気が違ってて
新鮮でかなり萌え〜でした。ほんとにありがとう〜!!
- 69 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/20(金) 22:17
- >>67 2004年3月5日ハロプロやねん!
- 70 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/21(土) 00:38
- >>28最後の行のミキティと>>57最後の行のヨッスイーが
同じような反応してておもしろいw
似た者同士なんでしょうか?
それぞれ甘くてすきです
- 71 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/01/21(土) 01:14
- くぅう…!いしよし良い!
梨華ちゃんもよっすぃもめちゃくちゃかわいいっす!
- 72 名前:初心者 投稿日:2006/01/21(土) 21:11
- 新スレおめ&更新お疲れ様です
よっすぃと同じく風邪ひいちゃってやっと復活、作者さんも気をつけて下さい
ラジオでの 从*・ 。.・)<美貴 はよ〜く覚えてます 良かった
さゆの可愛いヤキモチも、ミキティの不器用なとこもいいです
石吉夫婦のあまーーーーい雰囲気がたまらなかったでしけどもうすぐ卒業かぁ・・・・
次回更新楽しみに待ってます
- 73 名前:日季 投稿日:2006/01/22(日) 00:05
- 番外>>25-59の番外編です。
誕生日の前日のお話……
『パンジー』
- 74 名前:パンジー 投稿日:2006/01/22(日) 00:07
- 「はぁ……」
17歳最後の日。携帯片手に溜め息ついてる可憐な乙女。なんちゃって……
どこかから美貴ちゃんの「キショっ」って声が聞こえた気がした。
眺めても眺めても着信なし。いろいろと考えすぎてメールさえ出来ずにいる。
いつもなら愛しいこの人から何通もメールが届く時間なのに。
『家に着いたよ、これからバイト』とか『バイト終わったよ』
そんな何気ないメールだけど、来るのと来ないのとじゃ大違いだってイヤと言うほど思い知った。
こんなにも寂しいものだなんて……ひとみちゃんは今日も学校をおやすみした。
風邪そんなに悪いのかなぁ。しんどいだろうなと思ってメールも出来ないでいる。
- 75 名前:パンジー 投稿日:2006/01/22(日) 00:08
- 「梨華ちょっといい?」
ママの声にドアを開けると、不思議そうな顔をされた。
それからすぐに『心配』って顔になる。
目の下にクマとかできちゃってるもんね。ここ何日か寝不足で……
「まだ着替えてないの?」
「ちょっと考え事してて……もう着替えるよ」
「そう。着替えたらおつかい頼まれてくれない?」
「いいけど」
「美貴ちゃんにこれ届けてほしいの」
差し出された包みは駅前の商店街の袋。
それを見ただけで美貴ちゃんの喜ぶ姿が想像できた。
「おばあちゃんがりーちゃん達2人に食べさせてあげてって」
「バーバーが?2人って?」
「美貴ちゃん。久しく会ってないから『みーちゃんに会いたい』って言ってたわよ」
ふふふっと自然に笑みが漏れた。そうだバーバーもそう呼んでたんだ。
私のことを小さい頃と変らずに『りーちゃん』って呼ぶバーバーは
美貴ちゃんのことを『みーちゃん』と呼んでいた。
さゆが前に呼んでいるのを聞いた時、その呼び方に聞き覚えがあったのはこれのせいだったのね……
「今度美貴ちゃんと一緒に会いに行こうかな」
「そうしてあげて」
「うん」
バーバーに会いに美貴ちゃんとひとみちゃん、それにさゆを連れて行こう。
きっと喜ぶと思う。ひとみちゃんがひーちゃんで、さゆはさーちゃんかな。
- 76 名前:パンジー 投稿日:2006/01/22(日) 00:09
- 玄関を出ると日も暮れて真っ暗になっていた。
インターホンを押すと、すぐに美貴ちゃんが現れた。
「梨華ちゃんどったの」
「バーバーがね、これ」
「わっ、マジで!嬉しい〜」
「私達に会いたいって言ってたらしいよ」
「おばあちゃんにお礼もかねて会いに行かなきゃね」
「そうだね一緒に行こう」
「おうっ!へへっ夕飯焼肉だ〜♪」
すっごい嬉しそうな美貴ちゃんは、まだ制服姿だった。
ニコニコと満面の笑みで中に入ってと言ってくれた。
「おばさんはお仕事?」
「うん。今日も遅くなるって」
「そっかぁ。一緒に食べてきなさいって言われたんだけど」
「そのつもりで部屋に上げたんじゃん。一人で焼肉しても寂しいし」
「だね。おじゃましま〜す」
ママが用意してくれたお野菜とお肉を準備してると
美貴ちゃんが制服から着替えて、ホットプレートを持ってきた。
「お母さんさ〜3月中旬でいまの仕事辞めるんだって」
「へ〜、どうしたんだろうね」
「さ〜?次が見つかったのかも」
小さい頃から両親が共働きの美貴ちゃんは、よく私の家でお夕飯を一緒に食べたっけ。
高校生になってからも何度か一緒に食べたりしてたけど
3年に上がってからは一度も無かったな。さゆとお付き合いしてから
あちらのお家でご飯をよばれてくる事もあったし。
でも大体は遠慮してこの時間には帰ってきてるんだよね美貴ちゃん。
- 77 名前:パンジー 投稿日:2006/01/22(日) 00:09
- 「さゆの家に行ってきたの?」
「うん勉強教えてた。さっき帰ってきた所だったんだ」
「それで制服だったのか」
「そうだよ……」
「ねえ、美貴ちゃん?」
「ん?」
「あのね……」
そっとお箸を置くと美貴ちゃんも何かを察したのか、一旦お箸を置いた。
あっ美貴ちゃん食べててと言うと、心配そうな顔で曖昧に微笑んで頷いた。
「よっすぃがどこの大学受けるか知ってる?」
「へっ?」
ものすっごくきょとんとした顔をして美貴ちゃんは固まってる。
「梨華ちゃん聞いてないの?」
「うん……ちょっと違う話をしてて聞きそびれちゃって」
「でも一緒のところ行くんじゃないの?」
「たぶん……」
「美貴も聞いてないな〜。一緒のところに行くとばかり思ってたから」
美貴ちゃんと私は去年のうちに同じ大学に進学することが決まった。
でもひとみちゃんは試験を受けるって言ってたから。
同じところだとは思うんだけど、でも……
聞けないうちにね、すごい相談をされたから聞きそびれちゃったの。
「あのね、一緒に住もうって言われて聞けなかったの」
「へ〜、一緒に……住むの?」
「ううん返事はまだしてないの。だって通える距離なのにママたちがなんて言うかなって」
「そういえば大学に行ったら、よっちゃん一人暮らししたいって言ってた」
「そうなんだけどね……」
心配性なあの両親が許してくれるか分らないから。
ママになんとなく聞いてみることさえ出来ていないの。
- 78 名前:パンジー 投稿日:2006/01/22(日) 00:10
- 「まぁ、ちゃんと話し合わなきゃね」
「うん。風邪が治ったらちゃんと聞こうと思う」
「ほら、ご飯食べよう。肉焦げちゃうよ」
「美貴ちゃんも、もっと食べていいよ」
「へへっ、いっぱい食うぞ〜!」
嬉しそうな食べっぷりを見てるとなんだかお腹がすいてきて
昨日よりはご飯をたくさん食べる事が出来た。
ママもこうなることを分ってて、美貴ちゃんの家で食べておいでって言ったんだろうな。
ここ何日か食欲が落ちてるし、元気が無いって心配してたから。
「梨華ちゃんもう食べないの?」
「え〜、いっぱい食べたよぅ。あとは美貴ちゃん食べて」
「やったーーー!」
少しだけ元気が出たけど、頭の片隅ではひとみちゃんのことばかり考えてる。
心配で仕方が無い。けど連絡することも出来なくて。
いまごろどうしてるのかな、苦しんでないかな?
ちょっとメールすればわかることなのに、できないなんて……
「ご馳走様でした〜。梨華ちゃんマジでありがとー」
「どういたしまして。バーバーに感謝だけどね」
「そうだね〜。今度ほんとに会いに行こうね」
「うん、電話しておくね。すっごい喜ぶと思うな」
「そうだ、久しぶりにお風呂はいろっか?」
「一緒に?」
「うん。ゆっくり話そう」
「ふふっ、そうだね」
お互いに恋人と居る時間が増えて、学校以外で二人で話すのは久々かな。
美貴ちゃんはお風呂の用意をしに行き、私は後片付けをすることにした。
- 79 名前:パンジー 投稿日:2006/01/22(日) 00:11
-
◆
- 80 名前:パンジー 投稿日:2006/01/22(日) 00:11
- 「玄関まで送るよ」
「すぐそこなのに?」
「だって心配なんだからしかたないじゃん」
「うふふっ、ありがと美貴ちゃん」
外に出るとやっぱりちょっとひんやりしていた。
寒そうに背中を丸めた美貴ちゃんは、私の家までの僅かな距離をおくってくれた。
徒歩1分もかからないお隣なのにね……
「梨華ちゃん」
「な〜に?」
「ほんとはさ……抱きしめたいんだけど」
「えっ?」
「なんか梨華ちゃん元気ないから……」
照れたように美貴ちゃんはそっぽを向いて呟いた。
「抱きしめたりできないけど、こうやって傍に居るから」
「そうだね」
「愚痴でもなんでも聞いてあげるから、色々と考えすぎないようにしなよ」
よっちゃんに逢えるまで寂しいだろうけど、ゆっくりやすみな。
逢ったときにそんなんじゃ、よっちゃんまた心配して具合悪くなっちゃうだって……
小さい頃、私が落ち込んでると口下手だった美貴ちゃんは、何も言わずに抱きしめてくれた。
いまその腕を必要としてるのはあの子だから、私が甘えちゃダメだよね。
それに私が甘えられる人は、ひとみちゃんだけだと思う。
- 81 名前:パンジー 投稿日:2006/01/22(日) 00:12
- 「ありがと美貴ちゃん」
「べっつに……」
「気持ちがすごく嬉しい」
「梨華ちゃんが元気ないと調子狂っちゃうんだよね。一緒にバカできないし」
「うん。お風呂楽しかったなぁ、久々に色々とお話できて」
「学校じゃ話せないこととかね」
「そうそう。すぐ誰かに聞かれちゃうから……」
クリスマスのときだったっけ?
それでさゆを一度不安にさせたって反省してたもんね。
「おやすみ」
「おやすみ。美貴ちゃん寒いのにごめんね」
「へーきだよ、このくらい。じゃ明日」
「寝坊しないようにね。たまには一緒に行こうよ?」
「へいへい。ちゃんと起きて一緒に行きます」
ありがとう美貴ちゃん。
いつもいつも支えてもらってるね。寒そうに帰っていく背中に何度もありがとうと呟いた。
クシュンッなんて聞こえて美貴ちゃんを見ると照れくさそうに笑っていた。
- 82 名前:パンジー 投稿日:2006/01/22(日) 00:12
- 窓の外を見ると月が見えた。
「月がきれいだよ、ひとみちゃん」
こんな夜はメールが必ず着ていたな。
『月が綺麗だよ梨華ちゃん』
カーテンを閉めて、そっと保存してあるメールに目を通す。
『梨華ちゃんだいすき。早く逢いたいな〜。早く逢う為に寝るぞ!』
そうだね、早く明日になるように私も早めに寝ちゃうね。
ひとみちゃんが明日こそ元気に登校してきますように……
―――――― 好きよ、ひとみちゃん
瞼を閉じる瞬間にそっと呟いた。
きっと明日は逢えるよね?
- 83 名前:パンジー 投稿日:2006/01/22(日) 00:13
- パンジー:物思い、心の平和、純愛
――――――おしまい。
- 84 名前:日季 投稿日:2006/01/22(日) 00:14
- >>72-83更新終了です。
おたおめと言いつつあまりにも石川さんが登場しなかったので
番外の番外を書いてみました(^▽^;)
- 85 名前:日季 投稿日:2006/01/22(日) 00:14
- レスありがとうございました・゚・(ノ▽`)・゚・
>>64 名無飼育さん
从*VvV)<ど、どうもしないでよ?w
道重さん可愛いと言ってもらえたら本望です、ありがとうございます。
藤本さんはギャップがありますがちゃんと石川さんにも優しいですw
>>65 名無しさん
すべてが……すっごく嬉しいです!
いしよしは最近書いてないせいか非常に難しくて(T▽T;)
でもそう言ってもらえてほんとに良かったです、ありがとうございます。
>>66 名無し飼育さん
真骨頂……嬉しいお言葉ありがとうございます。甘い藤道がやっぱり好きです。
ええっと、途中で「あれ石川さんの誕生日だぞ」と軌道修正するのに大変でしたw
自分はどうもはまると他が不器用になるようです(T▽T;)
>>67 名無飼育さん
この言葉はまったく意識せずに発したものだと思いますが
自分もすっごく萌えましたw
(>>69さんが回答してくれたラジオです)
- 86 名前:日季 投稿日:2006/01/22(日) 00:15
- >>68 前29さん
無理やり間に合わせたので、いしよし少なくてすいません(T▽T;)
ガーネットは最初から使うつもりだったのですが、スマートにできなくて
かなり四苦八苦。それもこれも藤道ばっかり書いてたせいですが(爆
ほんとに読んでもらえて嬉しいです、ありがとうございます。
>>69さん
代わりに教えてもらってありがとうございます。
>>70 名無飼育さん
ちょっと思考か似てるのかもしれませんw
石川さんと道重さんのイメージが甘えられて、甘えさせるのがうまい人なので
それの影響もあります。
甘くて好きと言ってもらえて嬉しいです、ありがとうございます。
>>71 名無し飼育さん
良いって言ってもらえて良かったです。
(*´▽`)´〜`*)かわいかったですか?ホッとしていますw
ありがとうございます。
>>72 初心者さん
風邪大丈夫ですか?けっこう長引くと大変ですよね……復活できてよかったです。
自分も気をつけます、ありがとう。
从*・ 。.・)<どんなさゆみも可愛いの。
(*´▽`)´〜`*)甘い雰囲気……そう感じてもらえてよかったです。
卒業の前に甘甘イベントや、ある人の誕生日があるので
それにあわせて更新できればと思っています。
- 87 名前:日季 投稿日:2006/01/22(日) 00:18
- 更新分間違えた・・・orz
>>73-83です。微妙な間違いですいません(T▽T;)
- 88 名前:名無し 投稿日:2006/01/22(日) 04:59
- りかみきいいですね。ここのミキティ-の優しい感じほんとすき。
梨華ちゃんもカワイイ!!
- 89 名前:前29 投稿日:2006/01/22(日) 21:49
- ほんとにりかみき、いいかんじですぅ。
バーバーとかの小ネタがたまらんww
思いっきり釣られてる部分があるのですが、
楽しみにとっておきますww
- 90 名前:初心者 投稿日:2006/01/23(月) 02:15
- 更新お疲れ様です
梨華ちゃんとミキティもとってもイイ関係ですね
やっぱりそれぞれ、さゆ美貴・石吉と最高だけど4人の関係が
それぞれ素晴らしいのがいいなぁと思いました
次回更新楽しみに待ってます
- 91 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/23(月) 17:45
- 更新お疲れッス
さゆみき大好きです!マジかわいいわ〜
- 92 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/01/23(月) 18:52
- 更新お疲れ様です
こちらの優しい美貴さんが自分のイメージしてるものに近くて
大好きなのです
りかみきもいいなぁ!
どの組み合わせもそれなりの色と味が出ていて好きです
- 93 名前:腰痛に苦しむ読者 投稿日:2006/01/23(月) 20:37
- 更新お疲れです。
パンジー読ませていただきました!!
美貴ティと梨華ちゃんの関係がよかったですVV
お互いに、恋人はいても恋人の次に大切な人って感じが伝わってきて
2人の絆は深いんだなっと・・・。
作者さんの書く、不器用ながらも少しずつ愛を育んでる美貴ティとさゆ、
お互いがお互いを必要としてるよっすぃ〜と梨華ちゃん、
恋人たちより長い時間を過ごしてる美貴ティと梨華ちゃんがとても大好きです。
今後も、作者さんのペースで頑張ってください。
- 94 名前:日季 投稿日:2006/01/24(火) 23:45
- (みきさゆ花言葉の続編です)
『カメリア』
- 95 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:46
- 「ふ、ふじもとさぁんっ!」
だらだらと飲んでいたお茶がこぼれている。
変な質問したから、藤本さん固まっちゃったの……
「ちょ、ちょっと待って」
「タオル使ってください」
「あ、ありがと」
口元を押さえながら藤本さんはちろっと私を見上げた。
今日も可愛い……じゃなくって、どうしよう軽蔑されちゃったら。
急に不安になって潤んでくる瞳。
「ご、ごめん。ちょっと動揺しただけ」
「さゆみこそ、ごめんなさい」
「もう、なんで泣きそうなんだよ」
「だってぇ……」
「ほら泣くことないじゃん」
髪を梳くように撫でる指先が優しくて、やっぱり零れそうになる涙。
困ったように笑う藤本さんがじんわりと滲んで……
すぐにぎゅーっと抱きしめられた。涙が零れる前に力いっぱい。
「どうしたの、これ」
「絵里が貸してくれました」
「そっか……」
「お勉強したほうがいいのかなって……」
「べ、勉強?」
「だって何も知らないなんてありえないって絵里が……」
だからこれでお勉強しなさいって絵里が……
そんなお話ばっかりが色々と載ってる漫画を貸してくれたの。
- 96 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:46
- 「知らなくてもありえなくはないよ。まぁ、読むのも悪いことじゃないと思う」
「軽蔑しませんか?」
「しない。美貴のためでしょ?」
優しい声色で問いかけられコクンと頷くと、目を細めて藤本さんは微笑んだ。
すごく愛しいと伝わるような微笑に安堵して、涙は止まっていた。
「ちょっとは勉強できた?」
「……ずいぶん勉強になりました」
「どんな感じだった?」
「……なんだか怖いなって」
「怖い?」
「えっと…言葉で……あのね」
ページを開いて見せるとギョッとした顔をして
真っ赤になった藤本さん。
「せ、責められる感じがイヤなんだ」
「ヤなの……怖いもん」
「気をつける…って、いや違う。い、いつかした時…
あぁ、そうなった時には……って何言ってんだ美貴…」
あたふたと慌てる姿も可愛くて、ほんとにこの人が好きなんだと
改めて実感しています。
なにごとにも真面目で、ちょっと不器用な人。
普段は怖いほどのポーカーフェイス。
でもさゆみは知ってるの。それは単に気を抜いてるだけだって……
ほんとのあなたはこんなに表情豊かだもん。
- 97 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:47
- 「みーちゃん?」
「へっ、あっ……なに?」
胸元に抱きついて甘えると、デレッと崩れた笑顔。
「優しくしてほしいの」
「うん……ってえぇぇぇぇええ!?」
「いますぐは無理だけど、さゆみ頑張るから」
「が、頑張るって」
「みーちゃんが我慢できなくなったら教えて?」
たはっっと力無く笑った藤本さんは泣きそうな顔をした。
「あのね、すでに我慢は限界かも……」
「えっ……」
「けど頑張ってほしいとは思ってない。だから無理しなくていいよ」
「でも……」
「限界とか言ったけど我慢はいくらでもできるから。
さゆみが無理するのが一番辛いんだ、わかってくれる?」
「うん」
でも、そうしたら藤本さんが辛いんじゃないのかな?
そうだったら私も辛いです。
「みーちゃんは辛くないの?」
「辛くないよ。こうやって、さゆみが甘えてくれるだけで満たされてるから」
「ほんとに?」
「ほんとだよ〜、美貴を信じなさい」
「信じてるの」
あなただけを信じてる……
ぎゅっと抱きついたまま目を閉じる。
あなたの心音に包まれて、言葉にできないほどの幸せを感じたの。
- 98 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:47
-
******
- 99 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:48
- 「……きちゃん、美貴ちゃんってば」
「へっ?あぁ、梨華ちゃん」
「あぁ梨華ちゃん……じゃなくって、ボーっとしてどうしたの?」
「ん〜……なんでもな…くはないかな」
「なにそれ?」
「はぁ……」
衝撃だった。ものすごいこと聞かれた。
いま自習でほんとによかった。周りは自分達の会話に夢中だ。
美貴たちは後ろの窓側だから、ひそひそしてれば聞こえないだろう。
「実は昼休みに……」
”あの時って名前で呼ぶほうがいいんですか?”
そんなことを聞かれたんだ、まだしたこともないのに……
「で、みーちゃんがいいのか藤本さんがいいのかって」
「聞かれちゃったんだ……。またどうしてそんな展開になったの?」
「絵里に漫画を借りたらしいんだ」
「う〜ん、それで興味が出たのかな?様子はどうだったの」
「重ちゃんの?」
「そう。普通だった?恥ずかしそうだった?」
「すっごく普通なフリしてた。でも真っ赤だったから」
「なるほど……それでなんて答えたの?」
「答えてない。っていうか美貴がフリーズしたから……」
「もう可愛すぎるんだから!」
「うっさい」
うりうりとおでこを突付かれて……
うざいけど振り払うのも面倒だから満足するまで突付かせる。
- 100 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:48
- 「梨華ちゃんたちはどうなの、ひとみとか?」
「ううん、普通だよ。いつも通り」
「いつも通りか……」
「でも呼び捨ても良いかもね、今度呼んでみよう。余裕があればだけど」
「そうですか……」
本気で使おうとしてるな、こいつ。
梨華ちゃんの意識がどっか行っちゃう前に話しかけよう。
「家でするの?」
「たまにホテルとかだね……」
「そっか、どっちもお母さん専業主婦だったね」
「そう、だから大変なの」
「するの前提で行くんだよね?」
「そうだけど。だってお茶飲みにホテルは行かないでしょ」
お茶飲んでケーキ食べて帰ったことあります美貴は……
思い出すと情けな過ぎて泣きたくなる。
けど、気持ちを確かめ合えたのだから。
あれはあれですごく貴重な体験だったと思ってる。
- 101 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:49
- 「気楽にとは言わないけど、深く考えすぎなんじゃないかな」
「わかってる」
「悪いことではないんだよ?」
頭じゃわかってる。でも、なんだか踏ん切りがつかない。
重ちゃんとそういうことするイメージが湧かない。
と言いつつ考えちゃうこともあるんだけど……
矛盾だらけのお年頃ってやつだね……って梨華ちゃんみたくキショくなってるよ、美貴!?
「愛が深まるし、すっごく幸せになれるよ」
「このバカッポーめ……」
「愛してる〜とか言ってくれちゃうの、キャッ!」
「……キショすぎ、梨華ちゃん」
「いいの、こんな私を丸ごと愛してくれてるから」
「はいはい、そうですか……」
子供でいてほしいのかもしれない。
あの可愛らしさが消えてしまうんじゃないかなって怖いんだ。
- 102 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:49
- 「最初は優しくしてあげないとダメだよ」
「……わかってる」
「よっすぃはすごく優しかったの〜」
「はいはい」
「でもでも、うまいんだよきっと〜。すぐにね……」
「ちょっと待って梨華ちゃん」
「それに”梨華”とか呼び捨てになったりするんだよ〜、もうやだっ!」
”やだっ”って一人で思い出して恥ずかしくなったんでしょうが
美貴を叩くんじゃない……
「いたっ、叩くなよ!美貴は何も言ってないじゃん」
「美貴ちゃんが聞いたからじゃん」
「そうだけど、誰がそんな具体的に話せと……」
「他の人には絶対教えないよ。幼馴染の特権?」
「そんな特権いらないです」
あほか、こいつはあほなのか……
幼馴染ながらバカらしくなってきた。
- 103 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:50
- 「え〜、美貴ちゃん達のも聞かせてもらおうと思ってたのに〜」
「誰が話すか!」
「ずるい〜」
「ずるくない!」
「私達はこんなにオープンなのに!」
「オープンすぎるんだよ!」
誰がしたときの感想を聞いたんだ、誰が?
それになんで美貴たちのこともぜんぶ話す必要があるんじゃ、ボケ。
と心の中で毒づく。
「まぁ、でもゆっくりペースでいこうと思ってるから」
「うん、見守ってるね」
「あんまり重ちゃんに無理させたくないんだ」
「うふふ、優しいね美貴ちゃんは」
「どうだろうね」
「優しいよ、美貴ちゃんは」
「もう、いいよ」
「照れなくてもいいじゃん」
「照れてないし……」
なにが嬉しいのかニコニコしてる梨華ちゃん。
頼りにされるのが嬉しいのか?まぁ、そんなところだろう。
聞き易さで言えば梨華ちゃんがダントツだからなぁ。
他の人にはとてもじゃないけど相談できない。
- 104 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:50
- 「また何かあったらいつでも相談して?」
「……何かあったらね」
「美貴ちゃんってばおこちゃまだから、梨華とっても心配」
「美貴はどうせ子供ですよ」
「あらっ、素直ね〜」
「いつでも素直で可愛い」
「さゆみたい」
「うつったんだよ」
「ますます可愛くて人気出ちゃうじゃん、気をつけなよ」
「何に気をつけるんだよ」
ふふっと意味有り気に笑った梨華ちゃん。
何もかも悟ってるようでちょっとだけムカつく。
「本人が気づいてないだけで、もてるじゃん」
「もてないよ、怖がられてるし」
「こんなに可愛いのにね〜」
「だぁーーー頭を撫でるな!」
どうせ美貴は子供です……
ほっとけ、ば〜か。
- 105 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:51
-
◆ ◆ ◆
- 106 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:51
- 「この写真もらってもいいですか?」
「ん?どれ……」
「お馬さんに乗っててかっこいいの〜」
「こないだ北海道で乗ったんだ、いいよあげる」
「えへへ、王子様みたい」
「そういえば白い馬に乗ったんだ。乗るのに必死だったから忘れてた」
「ね、みーちゃんかっこいい」
そんなに写真を見つめないで……
ちょっと目がよってるよ?可愛いけど。
年末年始に北海道に行った時の写真を見たいと言うから
美貴の家に来た重ちゃんは、さっきから写真の美貴に夢中です。
ってか王子様って……。まぁ、たしかに馬に乗ってる美貴はカッコイイ。
自分で言うのもなんだけど、かっこよすぎ……とか思ってないから!
「乗馬できるんですね藤本さん」
「うん、ちょっとだけね」
乗馬してる写真ばっか見てるから、ちょっと面白くない。
でも、その横顔が嬉しそうだから……
こっち向いて?って言えないでいる。
けど何か忘れてる。伝えようと思ってた事があったはずなんだ。
あっ、そっか。昼休みの続きだ……
- 107 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:51
- 「あの時の質問の答えなんだけど」
「あの時?」
「ほら、あの時になんて呼んだらいいかとか。昼休みに聞いたじゃん」
「あっ……」
途端に真っ赤になった重ちゃん。
自分でも思い出すだけで恥ずかしいらしい。
あの時は勢いだけで聞いたんだろうな、素朴な疑問として。
案外、後先考えないところがあるから。
「美貴、思うんだ。たぶんね、そのときになったら自然に……
意識しないで出てくるほうでいいと思う」
「……そう、ですよね」
「そうだよ」
「わかりました」
「美貴はその……そういうことしなくても好きだから」
「はい。さゆみも大好きです」
「一緒にいられるだけで幸せなんだ」
「さゆみも幸せです」
こんなときに天然小悪魔だなと思う。
ちょっと俯き加減からちらっとだけ視線をあげて言うんだもん。
知らず知らずのうちにやってるんだろうけど……
ひとつひとつに仕草に負けちゃって緩む顔。
なにをしても可愛くて仕方ないのだから、どうしようもない。
- 108 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:52
- 「漫画、美貴にも貸して?」
「え〜」
「え〜って……いいじゃんか〜。絵里には美貴から返しとくから」
「だって他の人の裸とか見ちゃダメなの」
「漫画じゃん」
「漫画でもヤなの……」
重ちゃんは瞳を潤ませてぎゅーっと腕を握り締め訴えてくる。
「わかった……っていうか美貴、温泉とか行けないじゃん」
「温泉行くんですか?」
「卒業旅行に渋い所に行こうって話してるから。たぶん温泉になるかな」
「卒業…」
呟いて寂しそうな顔をする重ちゃん。
そう、3年生は1月末から期末が始まって……
2月のはじめにテストが終われば、特別な用事が無い限りは
卒業式まで学校に行かなくていい。
期末が終わったら、梨華ちゃんよっちゃんごっちんで卒業旅行に行く。
もちろん4人部屋で泊まるつもり。梨華ちゃんとよっちゃんに、恋人モードを自粛してもらうために。
「また夏になったらどっか連れてってあげるから」
「……はい」
「そんな顔しないで?」
3年生は自由登校になるだけだから、学校に来ちゃダメってことも無いのだ。
だから逢いに行こうと思ってるんだよ、重ちゃんに。
喜ばせたいから、内緒にしてる。
- 109 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:52
- 「あの……」
「ん?」
「……北海道に行きたいな」
「そうだね。じゃあ夏休みに一緒に行こっか」
美貴の返事に、とても嬉しそうに笑ってくれた重ちゃん。
絶対に連れて行ってあげたい……
「あっ!」
「どうしたのみーちゃん?」
「さゆみの誕生日はどうかな?テスト休みでしょ。
美貴が行く大学は6月でテスト終わるはずだから大丈夫だし」
「行きたいです!」
「じゃあ決まり。また色々と調べておくから楽しみにしてて」
「はい!」
さゆみが楽しめそうなところを探そう。
去年は美貴のせいで半日しか遊べなかったし……
今年こそは、頑張ろう。
「約束する?」
「指切りですか?」
「うん。さゆみ、いっつもするじゃん」
ちょっと何かを考えるように伏せられた視線。
ドキッとした。伏し目の重ちゃんはすごく綺麗で……
ボーっと見惚れてしまう。
- 110 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:53
- 「みーちゃん?」
甘えた声色で名前を呼ばれる。
いや美貴と喋ってるときは、たいがい甘えた声だけど
より甘く名前を呼んで、熱っぽく見つめられる。
「あのね……」
”指きりの代わりにキスがしたいの”
そう囁かれて倒れそうになる。言葉がうまく出てこなくてただ頷いた。
そっと近づく唇に目を奪われて、何も考えられなくなり
唇が合わさる瞬間まで、瞳を閉じることが出来なかった。
やさしくあまい感触をちゃんと感じたくて、そ〜っと瞳を閉じた。
美貴の腕を掴む重ちゃんの指先が、ほんの少しだけ震えている。
自分からなんて滅多にしないから緊張してるのかな……
ただ触れるだけのキスなのに、頭の芯が痺れてじんじんしてる。
彼女がくれた約束のキスに、甘く溺れて動けない……
キスだけでこんなにも満たされているから
これ以上なにを望めばいいのかわからない
- 111 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:54
- 唇が離れた後……
照れたように微笑んだ笑顔が、とても幸せそうだった。
キミも同じ気持ちを感じているよね?
周りの声に不安になっても……
ねぇ、なにも心配しないで。ただ傍にいてくれるだけでいいんだ。
あふれる想いを零さないように強く抱きしめた――――――
- 112 名前:カメリア 投稿日:2006/01/24(火) 23:54
- カメリア(和名:椿)
花言葉【赤)ひかえめな美徳・白)最高の愛らしさ】
―――――― おしまい。
- 113 名前:日季 投稿日:2006/01/24(火) 23:55
- >>94-112更新終了
某番組での重さん、かわいすぎます。
それにしっかりと「重さんらしい!」って素早く褒める(?)美貴さんの声が入っていました。
そんな些細なことでも幸せを噛み締めています(アフォ
某雑誌でも2ショットが2枚ほどありまして……
ありがとうと叫びたい気分ですw
从*・ 。.・)<ふぁく馬に乗ってきて?なの。
从*VvV)<ダメです。
- 114 名前:日季 投稿日:2006/01/24(火) 23:56
- レスありがとうございました!すごく励みになります。
>>88 名無しさん
りかみき大好きなんですよ〜。だから嬉しいです!
とことん優しい藤本さんという設定でw
(*^▽^)<えへっ、ありがと〜。
>>89 前29さん
りかみき大好きなんです〜w
ラジオ聞いてて「りーちゃん」って可愛いなぁと思ってつかいました。
釣られてる部分はあそこかなw おいおいわかるかと。。
(0´〜`)<梨華ちゃんと一緒に……
>>90 初心者さん
りかみき大好きなんですw
それぞれ幼馴染のことも大切にしてる設定で書いてるので、
4人の関係をそう言ってもらえて嬉しいです。
ほんとにありがとうございます。
从*・ 。.・)*VvV)<まったりと頑張ります。
- 115 名前:日季 投稿日:2006/01/24(火) 23:57
- >>91 名無飼育さん
可愛いと思ってもらえたら本望です。
从*・ 。.・)*VvV)<これからもまったりペースで続きます。
>>92 名無し飼育さん
自分の中での藤本さんは思わず「かっこいい」と呟いてしまうような
さりげない優しさを持ってる人だと思います。イメージに近くて良かったです。
それぞれの色や味がなんとなく伝わればいいなぁと思ってるので
好きですと言ってもらえて、すごく嬉しいです。そして、りかみき大好きw
从*VvV)<これからも優しく頑張ります。
>>93 腰痛に苦しむ読者さん
りかみきをついつい書いてしまうんですが、絆が深いと感想いただいて嬉しいです。
それぞれのカプに感想をもらえて幸せです。
今後も季節行事を織り交ぜながら、まったり書いていこうと思います。
暖かいレスありがとうございます。
从*・ 。.・)*VvV)<まったり見守ってくださいね。
- 116 名前:日季 投稿日:2006/01/25(水) 00:07
- >>107修正です・・・orz
×ひとつひとつに
○ひとつひとつの
微妙な間違いすいません・゚・(ノ▽`)・゚・
- 117 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/25(水) 01:39
- まぁ!?すげぇーもーかわいすぎるわさゆみき!
- 118 名前:名無し 投稿日:2006/01/25(水) 05:04
- 更新おつです。なんだか気になることが盛りだくさんで続きが楽しみ。。。
>>110のさゆの囁きがかわいすぎてヤバイですw
ミキティ-がメロメロなのもわかります。
ふたりのペースで進んでいくのを、まったり見守ってます。
- 119 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/01/25(水) 19:41
- 甘くて読むたびに胸がぎゅうっとなります。
藤道37錠頂いたおかげですっかりジャンキーになりましたw
もうすっかりトリコなんで、責任とってこれからも甘い藤道書いてくださいねw
- 120 名前:初心者 投稿日:2006/01/26(木) 01:33
- 更新お疲れ様です
さゆの質問にドキッっとしました、あと「ヤなの」にハァーン
ミキティとの会話での梨華ちゃんは大人なのか子供なのか分かんないのがいいぁ
自分も某雑誌での2ショットには癒されました、ブリッコミキティも可愛い
次回更新楽しみに待ってます
- 121 名前:前29 投稿日:2006/01/26(木) 13:45
- 対照的な二組がほんっと、いいっすよね。
それにしても赤裸々すぎな梨華ちゃんが・・・w
余裕があればって・・・www
- 122 名前:日季 投稿日:2006/01/27(金) 14:24
- いしよし番外編です。
(>>25-59、>>73-83のつづきっぽい感じです)
『ブルースター』
- 123 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:25
- 「嘘っ……嘘だよね、ひとみちゃん?」
「ううん、受験するのは梨華ちゃんが行く大学じゃないんだ」
風邪が治った誕生日の日。
あんなに泣いた梨華ちゃんにあたしはこの話が出来なくて
何日も経ってからようやく切り出した。
高校に入ってから先生と相談して探していた大学は他県にしかなく
あたしはそこを志望校としてずっと目指していた。
もっと早くに伝えるべきだったのかもしれないけど、言えなかった。
言えないうちにどんどん時間だけが過ぎて……
受験日迫るこんな日に伝えることになってしまった。
「あのね、他県だけど電車で1時間くらいだから通える距離なんだ」
「そんなことはわかってるよぉ」
「だから一緒に住んで梨華ちゃんと居る時間を増やそ」
「バカじゃないの?」
声が震えていたから泣いてるのかと思ったけど、彼女は泣いていなかった。
キッと睨まれて真っ直ぐに見据えられる。
「ひとみちゃんバカだよ。私の大学の傍で住もうって言ってたけど
親が許してくれるわけ無いじゃん。私が行くのは家から通える大学なんだもん」
「それは……」
「そこまで考えてなかったんでしょ?」
ただ一緒に住めば一緒にいられる時間が増えるって思ったんだ。
だから受験する大学を言う前に、あたしは梨華ちゃんに”一緒に住もう”と言った。
即答してくれると思ってたけど、返事は”考えておくね”だけだった。
そしてまた断られてる……と言えるのかな、この展開は。
そうだよね一人で決断できるほどあたし達は大人じゃない。
いろんな”事情”があるのだから、即断できるはずが無い。
- 124 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:25
- 「どうしてもっと早く教えてくれなかったの?」
「ごめん」
「話す順番がおかしいでしょう?どうしていきなり”一緒に住もう”から話すのよ」
はぁーっと溜め息をついて彼女はしかなたいなぁ、そんな感じで微笑んだ。
子供みたいにすべてのことが自分の想い通りになると思ってたあたしとは違って
やっぱり彼女は大人だと思う。
「でも私、それを聞いてても今の大学に進学したと思う」
「えっ?」
「ひとみちゃんだって目的があって選んだ大学なんでしょ?」
「うん」
「だったら自信を持ってそこに行きたいって教えて欲しかったの」
”ひとみちゃん”甘いトーンで名前を囁かれて、あたしはその腕の中に身を委ねる。
彼女の華奢な腕のほうが、あたしよりうんと逞しくて力強い。
髪を優しく撫でる指の感触が暖かくて、泣きたくなった。
甘く香る匂いはあたしがプレゼントしたコロンのもの。
飽きっぽい彼女がずっと変らずに使っている唯一のものだと思う。
「二人で住むのは簡単なことじゃないんだよ?」
「……バイトいっぱいするから」
「そしたら逢う時間も減るじゃない?」
「一緒にいる時間はつくる。あのね住もうって言ってるマンションは祖父ちゃんのなんだ」
「お祖父さんの?」
「うん。だから家賃は要らないって。水道光熱費くらいは親が出すって言ってくれてるから
食費とかその他必要なものだけ自分達で出せばいいんだ」
「それでも大変だよね」
「そうだけど……」
優しい指先が髪の途中で止まる。
見上げると何かを考えている視線とぶつかった。
- 125 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:26
- 「ひとみちゃんの親は了解してるんだよね?」
「あっ、うん。梨華ちゃんと住んでもいいって」
駅まで徒歩5分もかからない場所だからすぐに電車に乗れる。
それに自立したいんだと言ったら反対されなかった。
住む場所が家からそう遠くないこともあるんだろうけど……
何よりも梨華ちゃんを信頼してるみたいなんだ、うちのお母さん。
「一緒に住んで欲しいんだ。一緒にいたい」
「私だって一緒に住みたいよ……でも、ママを説得しなきゃ」
「そうだよね。お父さんも……」
「パパはママが良いって言えば反対しないから大丈夫」
考えもしなかった、反対されるかもしれないと言うこと。
どうにかして認めてもらいたい……
「……梨華ちゃん!」
「な、なに急に大きい声ださないでよ〜。ビックリするじゃん」
「任せて!」
「ひとみちゃん?」
「あたしに任せて!良い考えがあるから。いまから行こう?」
「い、いまから?」
「って梨華ちゃんの家だから、下に降りればママさんいるよね?」
「う、うん……でも大丈夫?」
「でーじょーぶだって!あたしを信じなさい!」
ものすごく不安そうな困った笑顔に、満面の笑顔で応える。
心配するな!とありったけの思いを込めて……
やるときゃやったる吉澤ひとみ!
絶対にママさんを説得してみせるから、任せて!!
- 126 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:26
-
******
- 127 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:26
- ひとみちゃんの自信満々な様子に押されて思わず頷いたけれど
ほんとに大丈夫なのかな?
ママを説得するって勢いだけで言ったんじゃないよね?
ほんとに緊張してきた。
ママは鼻唄なんかを歌ってご機嫌にお夕飯の用意をしていた。
「あらっ、出かけるの?」
「いえ、ちょっとお話がありまして……」
「ちょっと待ってね、これ作ったら終わりだから」
「手伝いしましょうか?」
「ううん、もうすぐ終わるからそこに座って待ってて。
梨華、何か飲み物淹れてあげたら?」
ママに言われてとりあえず紅茶を淹れる。
いまごろ緊張してきたのか、ガチガチに固まって
ひとみちゃんはソファに座っている。
「ねえ大丈夫?」
「だだだいじょぶ」
ぜんぜん大丈夫そうじゃないよ〜。ちょっとどうしよう……
やっぱりもうちょっと考えてからママに言いに来ればよかった?
- 128 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:27
-
「はい、お待たせ。それでお話ってなにかしら?」
「あ、あああのですね」
もういきなり噛んでるし、なんか汗かいちゃってるじゃん。
ほんとに大丈夫なの?私も何か考えておけばよかった……
「進学する大学が実は他県なんです」
「そう、もう決まっているの?」
「いえ、試験がもうすぐあって2月に決まる予定です」
「そうなの……頑張ってね」
「はい、絶対に合格します」
ひとみちゃんの大学の話になっちゃってるけど、大丈夫?
ねえ、無理そうだったら今度にしようよ……
そう思うけど、ひとみちゃんはママを見たままこっちを向かないから
伝える方法が無い。
「それでですね……あたし一人暮らしをするんです」
「大学の傍へ引っ越すの?」
「いえ、駅の傍に……自立したいだけなのでえ〜っと、とりあえず
実家からは近いほうがいいと思いまして……」
「まぁ、偉いわね」
ママは感心したようにそう呟いた。
- 129 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:28
- 「電車でどのくらいかかるの?」
「1時間くらいです。ずっと行きたかった大学だし
今までがラクをしてきたので、ここら辺で自分に厳しくいこうと思いまして……」
「そう、ちゃんと色々考えてるのね」
あのね考えてるようで考えてないの……
気楽に一緒に住めると思ってたくらいなんだから。
ここぞと言うところでは底力があるのか頼りになるんだけど
普段はひとみちゃんの方が甘えたなんだよ。
だからもうすっごく心配。ほんとに心配……
どうしよう、ちゃんと言えるのかなひとみちゃん。
「それで、あの……お母さん!」
「は、はい?」
ひとみちゃんは唐突にママをお母さん!と呼んで
ソファから降りて正座をした。
ママと私はビックリして固まったまま、ひとみちゃんの次の言葉を待っている。
かるく深呼吸したひとみちゃんは床におでこがついちゃうくらいに
頭を下げて……
- 130 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:28
-
「梨華ちゃんと一緒に住んで、二人で花嫁修業をしたいんです!」
ひ、ひとみちゃん!?
は、花嫁修業?そんなの聞いてない、何言ってるの?
ほらママだってビックリしてるよ。
いくらなんでも唐突過ぎるよ、ひとみちゃぁん……
「ぶっちゃけあたしも梨華ちゃんも料理できません。
それに金銭関係も親に守られて育ったから、有り難味をわかっていないと思います。
この機会に二人で社会勉強がしたいんです!
だから一緒に住むことを許してください!!」
一気に用件を伝えたひとみちゃんは、また思いっきり頭を下げた。
勢い良すぎてゴツンなんて痛そうな音がしたけど、そのまま頭を下げ続けた……
「ほんとに花嫁修業をしたいの?」
「はい。社会的に通用する女性になりたいです」
「二人で住む必要性は?」
「一人だと妥協したりしてうまくいかないことでも、お互いに
注意しあったり支えあったり……まるで夫婦のような生活が
体験できるかと思いまして……」
ちょっと最初の勢いは何処へ言ったのよ!
語尾がフェイドアウトして、なんだか情けない顔でママを見上げている。
やだっ、めちゃくちゃ可愛いじゃん!
なんて暢気にしてる場合じゃない。私もなにか言わなきゃ……
- 131 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:29
- 「面白そうね。たしかに梨華もお料理とかお勉強するチャンスかもしれないわ」
「じゃ、じゃあ一緒に住んでもいいですか?」
ママはやさしくひとみちゃんを見ていた。
それから、ソファに座るように促した。
「梨華がしたいようにすればいいわ。梨華の意見が聞きたいんだけど?」
「わ、私は……」
ひとみちゃんの縋る様な視線を感じたまま、真っ直ぐにママと向き合う。
「私も二人で暮らしてみたいの。親元を離れて、どれだけやれるか……
試してみたい」
ママは”そう”とだけ呟いて、寂しげに笑った。
「子供だとばっかり思ってたけど、梨華もそういう年になったのね」
「ママ?」
「親元を離れたいって感じる年になったのね……」
ごめんねママ。でも住む場所は家からそう遠くないんだ……
だからいつでも会いに来るから、寂しくはないと思うよ?
「ふふっ、お嫁さんに出す気分ってこんな感じなのかしら?
ほんとはストレートにお願いして欲しかったのにな〜」
「ふぇっ?」
きょとんとするひとみちゃんにママはニッコリと笑いかけて……
『梨華さんをください!』そう言ってくれると思ったのにって呟いた。
ひとみちゃんはボー然としている。
- 132 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:30
- 「梨華のこと好き?」
「はい、大好きです」
「梨華だから一緒にいたいの?」
「そうです。他の人じゃなくて梨華ちゃんと暮らしたいです」
「そう、なら反対しないわ。変な男に捕まるよりはね……頑張りなさい」
「うん。ちゃんとバイトもするね」
「無理だけはしちゃだめよ。何かあれば帰ってきていいから」
「ありがとう、ママ」
「ちゃんと梨華を信じてるから許すのよ。
それと同じくらいに吉澤さんのことも信じてみるわ」
「は、はい。任せてください、幸せにします!」
そう宣言したひとみちゃんに、ママは一つだけお願いをした。
「信じあう」ことだけは忘れないでと。
その心があれば、どんなことでも乗り越えていけるからって……
- 133 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:30
-
◇ ◇ ◇
- 134 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:30
- 「りかちゃあん、あたし頑張った?ねえ、頑張ったよね?」
「頑張ったよ〜、ひとみちゃん」
ぐりぐりと胸元に甘えるように抱きついてきたひとみちゃん。
あの後ママに質問攻めされて、ちょっとぐったりしてる。
「よかった〜、一緒に暮らせるんだよ」
「梨華ちゃんの方が早く帰ったら”おかえり”とか言いながら待ってるんだよね。
すっごい楽しみ。帰るのが楽しみになっちゃうね」
「バイトも同じところ探す?」
「そうだなー、休み合わせたり出来るところが良いね」
「美貴ちゃんに聞いてみよう……」
「美貴に?」
「うん、いまバイトしてる所良さそうだから聞いてみるね」
明日にでも聞いてみて、お願いしてもらおう。
そんなことを考えてたらひとみちゃんの手が腰を撫でながら
上下していた……
「こらっ」
「だって、梨華ちゃんが〜」
「私がなに?」
「そんな胸元強調するからいけないんだ」
「あのね、ママが下にいるの……」
「わかってるよ、しないってば」
- 135 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:31
- 「そうだひとみちゃん?」
「なあに〜?」
「お家って……マンションってどんな感じなの?」
「けっこういいところだよ。壁の薄いアパートと違うから安心だよ」
「安心って何が?」
「だってさ〜、梨華ちゃんの声けっこう響くと思うんだよね」
へへ〜なんて可愛く笑って何を言ってくれてるのよ……
「もうひとみちゃんのバカ〜!」
「だってほんとのことじゃん……」
「いいよ、もうしないから。ひとみちゃんとなんてしないんだから!」
「ちょっ、梨華ちゃん!あたしとしないって他のやつとするつもりかよ〜」
「知らない、そんなの知らないもん」
「やだやだやだやだっ!あたし以外となんてやっちゃヤだっ!」
「ちょっと声大きいわよ、バカ!」
「梨華ちゃんがそんなこと言うからいけないんだ。あたしとしないなんて言うから」
「ひとみちゃんとしないからって、どうして他の人とやるって思うのよ!」
- 136 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:32
-
―――――― ガチャッ!?
「あのね、しないとかやらないとか大きい声で話さない……
お風呂沸いたわよ入ってらっしゃい。あっ、パパ帰ってるからお風呂で変なことしないでね」
あぁ恥ずかしいわ〜なんて呟いてママは部屋を出て行った。
「もう、最悪……」
「ごめん、あたしが余計なこと言ったから」
「私も声大きすぎたよね」
「お父さんにも挨拶しなきゃね」
「はぁ、そうだったね……」
- 137 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:32
- 新しい生活は甘いことだけが待っているわけじゃないかもしれない。
でも二人で頑張ろうね、ひとみちゃん。
- 138 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:32
-
ブルースター:花言葉【信じあう心】
―――――― おしまい。
- 139 名前:ブルースター 投稿日:2006/01/27(金) 14:33
-
- 140 名前:日季 投稿日:2006/01/27(金) 14:34
- >>122-138更新終了。
ほんとにレスありがとうございます。
>>117 名無飼育さん
可愛すぎててよかったで〜すw
これからもこんな感じでまったり進みます。
>>118 名無しさん
いろいろと詰め込みながら徐々に進めていこうと思ってますw
从*・ 。.・)<やばいくらい可愛いさゆみ。
見守られながらゆっくり頑張ります。
- 141 名前:日季 投稿日:2006/01/27(金) 14:34
- >>119 名無し飼育さん
藤道ジャンキー大変だぁーw
胸がぎゅうっと……すごく嬉しい感想です。
从*VvV)<責任とって甘く頑張りますw
从*・ 。.・)<さゆみは日常語が甘いから大丈夫なの。
>>120 初心者さん
道重さんは無垢だからとんでも無い質問をしますw ヤなの可愛いですよね。
石川さんは基本的には大人なんですけど、子供みたいな感じもあり……
と思って書いてるので気づいてもらえて嬉しいです。
从*・ 。.・)<ほんとの藤本さんは女性らしくて素敵なの。
>>121 前29さん
ものすごく極端な感じにしていますw
ここの石川さんはいつでも全開ですからww
(*^▽^)<ひとみ!
って呼んじゃってるシーン書いたほうがいいですか?w
- 142 名前:前29 投稿日:2006/01/27(金) 16:33
- キタキタキタwww
梨華ママ、かっけえ〜〜〜!!!
吉の花○○○って理由に噴いたというのは内緒w
いやあ、でもいろいろ考えたんだよね、よっすぃもw
こっからの生活っぷりがますます楽しみでしょうがありません。
>(*^▽^)<ひとみ!
>って呼んじゃってるシーン書いたほうがいいですか?w
言 わ ず も が な www
- 143 名前:名無し 投稿日:2006/01/27(金) 17:46
- よっちゃーんかわいいー!!!
パパがちょっと可哀想ですが、ママがしっかりしてるからいいのかw
ふたりで住んだら夜が・・・ww
- 144 名前:孤独なカウボーイ 投稿日:2006/01/27(金) 19:08
- 更新ご苦労さまです。
なるほど!かかぁ天下、ママ譲りなのですねw
花言葉シリーズ大好きです!この二人もみきさゆも毎回楽しみにまっています☆
- 145 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/27(金) 20:20
- 更新お疲れっす!
楽しみにしてるんでこれからも是非是非
がんばってください♪
- 146 名前:初心者 投稿日:2006/01/28(土) 10:19
- 更新お疲れ様です
よっすぃが一生懸命で良かったです 梨華ママにその上をいかれましたが・・・・
梨華ちゃんの心のドキドキがよくわかりました
でも最後のバカッぷり(笑)はさすが石吉だなぁと
次回更新楽しみに待ってます あとよっすぃ大学に合格出来ますように
- 147 名前:日季 投稿日:2006/01/30(月) 19:45
- (みきさゆ花言葉の幼馴染の番外編です)
『アネモネ』
- 148 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:45
- 体調はほぼ戻っているのだが大事をとって今日も休んだ。
明日はとても大切な日だから……
退屈で窓の外をぼーっと見ていると、さゆが家から出てきた。
どうやら美貴と一緒だったらしい。
バイトのない日は家庭教師みたいなことをしてるんだって
そう美貴が言ってたのを思いだす。
小さい頃はあんなに自分を頼って甘えてきた……ほんとの妹のような幼馴染。
いまは大切な人ができたから、この家に来ることもなくなってきた。
「あんな顔するんだな」ほんのちょっと見ない間に大人になったように感じる。
美貴も梨華ちゃんと居るときと全然違う。
口元は愛しさで緩みきってだらしない。
- 149 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:46
- 指を絡めて美貴の存在を確かめるように見つめている。
美貴以外のことは目に入っていないだろう。
夕暮れで薄暗く随分と見辛いけれど、なにか甘い言葉でも交わしているのか
頬がうっすらと赤く染まっているように見える。
そっと握りあう指がほどけていくのがスローモーションのようにゆっくりと見えた。
そして美貴が強くさゆを抱き寄せた。
二人には当たり前のことなのか、さゆは腕の中に身を預けてじっとしている。
おいおい家の前でやらないで玄関の中でしろよと思いつつ、見守っていると
すこしだけ距離をあけて、今度はじっと見つめあう二人。
甘い視線は離れたくないと絡みつくように合わさったまま
やがてゆっくりと近づき――――――
- 150 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:46
- あたしは咄嗟に瞼を閉じた。
それは二人だけの秘密のように感じられたから、見てはいけない気がした。
数秒経ってから目を開けたら美貴は既に背を向けて歩き出していた。
再び視線をさゆへと戻すと、振り返ろうとはしない美貴をじっと見つめていた。
その背中さえ愛しくて仕方ないのかもしれない。
それほど真剣に見つめている。ほんと呆れるくらい美貴が好きなんだなと感じた。
美貴を見送る横顔が大人びて見え、すごく綺麗になったなと思った。
あたしはその姿になぜか寂しさを覚えた。
少しづつ大人になっていく幼馴染。
きっとあたしにとってはずっと妹のような存在。
さゆが家の中へ入っていくのを見届けてから、あたしは再び眠りについた。
明日こそ梨華ちゃんに逢うんだと誓いながら……
- 151 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:47
-
******
- 152 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:47
- 『かえるぞっ』
『……みきちゃん』
『おばさんにいっしょにあやまってあげるから』
『うん……』
差し出された手を握るとヒンヤリと冷え切っていた。
『つめたくなってるじゃん』
『みきちゃんだって』
『ぎゅってしてたらあったかくなるかな』
そう言って私の手を握ってくれた。
自分だって寒いのに、冬空の下コートも着ないで飛び出した私に
黙って自分が着ていたコートを着せてくれた。
少しだけ大きなコートは暖かくてやさしい匂いがした。
美貴ちゃんの背中が大好きだった。
ぎゅうぎゅうと頬を押し付けて、自転車の後ろでゆられながら
夕暮れの街を家まで突っ走る間中感じてたんだ……
この瞬間だけは絵里だけの美貴ちゃんだって――――――
- 153 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:48
- 幼い頃の記憶は懐かしくて、ほんのちょっと切ない……
まだ幼稚園くらいだったっけ?とにかくずっと傍にいてくれた美貴ちゃん。
引っ込み思案で人見知りの激しかった絵里を、毎日幼稚園まで連れて行ってくれた……
とても大きく感じたその背中。ずっと見ていられるんだと思ってたんだよ。
この夕焼けを見ていると鮮明に思い出せるんだ。
ここからの景色だけはちっとも変らないから。
高校に上がる少し前、久々に家を飛び出した絵里を
迎えに来てくれたのは、やっぱり美貴ちゃんだったね。
『帰ろっか』
『……うん』
『おばさん心配してたよ』
『ごめんなさい』
『美貴に謝らなくていいよ』」
わしゃわしゃと髪を撫でられて。
乱雑なようで優しいてのひらの感触に泣きたくなった。
優しい背中にカラダを預けて自転車に揺られながら
やっぱりこの瞬間だけは私だけの美貴ちゃんだと感じていた。
ぎゅーっと背中に抱きついて感じた美貴ちゃんの暖かさに
ほんの少しだけ夕焼けがぼやけて見えた。
- 154 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:48
- 小さい時あんなに大きく感じた美貴ちゃんの背中が、とても小さくなったように感じた。
最後に迎えに来てもらってから、もう1年くらい経つんだね。
絵里はもうすぐ2年生になる。そして美貴ちゃんは大学に行っちゃう。
想い出の公園は、暮れはじめた街並みが見渡せるから大好きだった。
この場所で待っていればいつも迎えにきてくれた大好きな幼馴染。
いまは親友の大切な人になっちゃった幼馴染。
もう迎えになんて来てくれないだろうな……
美貴ちゃんは、いつも絵里をほんとの妹みたいに可愛がってくれた。
お互いに両親が共働きだから一緒に過ごす時間が梨華ちゃんより多かった。
だから、その背中はいつまでも絵里だけのものだって
あの頃は思っていたかったんだ。
でも大きくなるにつれて、そんなの無理だって想うようになった。
美貴ちゃんにとっての絵里は、ただの幼馴染でしかないのだから……
思い切って髪を切ったんだよ。もう頼りなく泣き虫な絵里はいない……
そう自分に言い聞かせて初恋を終わらせることにしたんだ。
- 155 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:49
- キーっと聴き慣れたブレーキ音。カタンと自転車を止める音がして振り返る。
自転車を降りた美貴ちゃんが真っ直ぐにこっちに歩いてきた。
「やっぱりここだった」
「美貴ちゃん……」
「絵里は何かあると必ずここに来てたよね、昔から」
「綺麗なんだよ……」
街並みを指差すと、目を細めて微笑んだ美貴ちゃん。
すっごく綺麗な横顔をじっと見つめてた。
なんだか遠く感じるな……
「帰ろう」
「……やだもん」
「もうおばさんと喧嘩するなよ〜。高校生になったんだからさ〜」
「まだどうせ絵里は子供だもん」
俯いた絵里が感じたのは優しく髪を梳く指先だった……
短くなった髪を撫でながら、美貴ちゃんは優しく囁いた。
”絵里が帰んないなら、美貴も帰らない”
寒がりな美貴ちゃん。
こんな寒い日は絶対に外に出たがらないのに。
なのに絵里を迎えに来てくれた……
「泣くなよ」
「泣かないもん」
「ほら、帰ろう?」
なおも優しい声色に絵里は素直に頷いた。
けど踏み出せない一歩。
- 156 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:49
- 「もう甘えちゃいけないって……」
「絵里?」
声が震えてしまった。不思議そうに美貴ちゃんは絵里の顔を覗き込む。
だってね、もうあの頃みたいに無邪気には甘えられないんだもん。
「さゆに怒られちゃうから……だから……」
「内緒だよ。今日は一緒に帰ろう?ほら寒いじゃん」
「自転車乗ってもいいのかな?」
「妹みたいなんだから。美貴の大切な妹なんだから遠慮するな」
ぽんぽんと優しく頭をたたきながら、美貴ちゃんは微笑む。
その言葉が嬉しくて、ほんの少し悲しかった……
そう妹のような幼馴染なんだもんね。絵里は美貴ちゃんの妹なんだから……
すこしくらい甘えてもいいよね?さゆ、今日だけ許してね。
「重くなった?」
「もう美貴ちゃんのばかっ!」
「あははっ美貴よりでかくなりやがって」
「美貴ちゃんがちっちゃいんだよ〜」
「どうせ梨華ちゃんにまで抜かれたよ……」
ゆっくりと動き出した自転車。
不安定に小さく揺れてから滑らかに走り出した。
- 157 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:50
- 「だいすき」
「ん〜?なんか言った〜?」
「美貴ちゃんだいすき!」
「美貴もだよ、出来の悪い子ほど可愛いって感じ〜」
「絵里子供じゃないもん!」
「じゃあ、おっきな妹かな〜」
「もう一言多い!!さゆよりは低いんだから!」
ばしっと叩くと、背中からくすくす笑ってるのが伝わってきた。
「重ちゃんはそれでも可愛いんだよ!」
「のろけだ〜!!」
「うっさい」
「美貴ちゃんニヤニヤきしょい〜」
「絵里に言われたムカつく〜」
「美貴ちゃんキショい〜」
「あ〜もうキショいですよ。ついでに言うと絵里も梨華ちゃんもキショいって」
「なんでよ〜」
「いいじゃん。キショい同士仲良くしましょうってか」
「幼馴染だもんね……」
「そう大切な大切な幼馴染。絵里も梨華ちゃんも特別なんだよ」
風に乗って聴こえてきた美貴ちゃんの声。
絵里の心に暖かく沁みて……心の中で”ありがとう”って呟いた。
『ただ』の幼馴染じゃなくて『特別』なんだって嬉しかった……
ぎゅーっとしがみついて頬寄せた背中は、変わらずに暖かくて
夕焼けがぼんやりにじんで零れ落ちた……
- 158 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:50
-
◇ ◇ ◇
- 159 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:50
- 「絵里ボーっとしてどうしたの?」
「ううん、なんでもな〜い。さゆは美貴ちゃんにチョコあげるの?」
「藤本さんにだけあげるの」
「そんなうるうるした目で言われても……」
「だって胸がギュってなるの」
「そ、そうなの……」
「考えるだけでダメなの〜」
相手のことを想うだけで胸が苦しいなんて呟くさゆがとっても可愛くて。
美貴ちゃんが好きになったのは、こんなところなのかなって……
ほんの少しだけわかった様な気がした。
「さゆみが可愛すぎるからって見惚れちゃダメなの」
「見惚れてない!それに……絵里のほうが可愛いんだから」
「さゆみだもん」
「絵里」
「さゆみなの」
「絵里のほうが可愛い〜」
絵里だってきっと見つかるよね?
意地っ張りな絵里を強引に連れ去ってくれるような、そんな人を――――――
ずっとずっと待ってる。
- 160 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:51
- アネモネ:花言葉【儚い恋、恋の苦しみ、君を愛す、期待、忍耐】
―――――― おしまい。
- 161 名前:アネモネ 投稿日:2006/01/30(月) 19:51
-
- 162 名前:日季 投稿日:2006/01/30(月) 19:52
- >>147-160更新終了。
幼馴染のお話でした……
>>147-149はプロローグ(石誕生日の前日)、
>>159はエピローグ(バレンタイン直前)みたいな感じです。
- 163 名前:日季 投稿日:2006/01/30(月) 19:55
- >>142 前29さん
一緒に住んだら色々とエロエロ書けるかと……たぶんw
期待しないで待っててくださいませ(4月になったらw)
(*^▽^)めちゃめちゃ可愛かったので頑張れそうな気はしますw
>>143 名無しさん
かわいかったですか?よかった〜。
ちょっとヘタレなくらいの吉澤さんが好きですw
(0´〜`)<ユンケル飲んでがんばるよ……
>>144 孤独なカウボーイさん
かなりママ譲りですw
大好きと言ってもらえて嬉しいです。まったりペースで頑張ります。
从*・ 。.・)*VvV)<登場までしばしお待ちを……
>>145 名無飼育さん
楽しみにしてもらえて嬉しいです。
从*・ 。.・)*VvV)<まったり頑張ります。
>>146 初心者さん
梨華ママはすべてお見通しですねw
今後もいろんな人の心模様を描けたらいいなぁと想ってます。
(*´▽`)´〜`*)は「バカ」なくらい可愛い感じで、これからもイチャイチャさせたいです。
(O^〜^)<ありがとう!
- 164 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/30(月) 21:04
- えりりん…見つかるよ、きっと見つかるから!(つд∩)グスグス
- 165 名前:名無し 投稿日:2006/01/30(月) 23:51
- 第三者視点から見たみきさゆ甘くて最高!
ミキティ-は大切な人にはとことん優しいのかな?
でもえりが切ない。・゜・(ノД`)・゜・。がんばれえり!?
今後も楽しみにしてます。まったり作者さんのペースでがんばって。
- 166 名前:初心者 投稿日:2006/01/31(火) 06:36
- 更新お疲れ様です
石吉もさゆ美貴も2人の世界に入ると周りが見えなくなっちゃうのかな
でもヨッスィがさゆを見ての心境は本当にお姉ちゃんみたいでいいなぁと思いました
これからいろんなイベントなどなどありそう(?)なのですごく楽しみです
次回更新ワクドキしながら待ってます
- 167 名前:名無読者 投稿日:2006/02/01(水) 00:50
- うわぁ切ない。
さゆみたいに胸がギュってなりました…w
- 168 名前:腰痛に苦しむ読者 投稿日:2006/02/01(水) 21:45
- 更新お疲れです。
最近、学校行事で忙しかった為感想を掛けませんでした。
でも、ちゃんと読みましたよvv
梨華ちゃんのママさんかっけ〜っす。
するとか、しないとかでもめてる2人も面白かったです!!
幼馴染を思う気持ちが伝わってきましたよ!!
やっぱり人それぞれですね。
次の更新も楽しみにのんびりと待ってますね!
無理はしないでください。
- 169 名前:日季 投稿日:2006/02/03(金) 23:46
- (みきさゆ花言葉の85年組番外編です)
『アイビー』
- 170 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:46
- 「チョコみたいなの」
唐突に絵里の顔を見ながらさゆが呟いた。
「絵里はチョコじゃないけど?」
「絵里じゃなくて、恋愛」
「恋愛?」
「甘くてほんのり苦くて……とろけちゃうような感じなの」
「あぁ、そう……」
美貴ちゃんが卒業旅行に行ってしまうからか
さゆはなんだか気が抜けたみたいにボーっとしてる。
2泊3日だって言ってたからすぐに帰ってくるってば……
「卒業式まで来ないのかな3年生……」
「3年って自由登校でしょ?」
「大学が決まった人はほとんど来ないみたいなの」
「美貴ちゃんが言ってたの?」
「ううん。藤本さんは来るとも来ないとも言ってなかったの」
「そっか……」
「バレンタインの前の日には旅行から帰ってくるって言ってたから
14日の放課後にでもお家に行くつもりなの」
「帰ってきた日に会わないの?」
「疲れてるかなって……だから我慢するの」
窓の外を見ながらさゆはすごく優しく微笑んだ。
その視線の先にきっと美貴ちゃんを思い浮かべながら……
美貴ちゃんと付き合うようになってから、どんどんさゆは綺麗になっていく。
- 171 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:46
- 「絵里にも春が来るの……」
「誰にでもくるじゃん」
「さゆみの場合はもう来てるの」
「あぁ、そうですか〜」
「来年になったら後輩ができるし、いい子いるかも」
「年下かぁ……」
展開が唐突なさゆの会話は絵里がボーっと考えてる間に
どんどん進んで気づいた頃にはまたチョコの話に戻ってきていた。
明日は土曜だから昼までだし、材料を買いに行こうなんて話してる。
「絵里、一緒に作ろう?」
「いいけど、さゆってお菓子作りできたっけ?」
「愛があればなんとかなるの」
「なんとか……」
「だいじょうぶ、さゆみに任せて」
なぜか自信だけは人一倍あるんだよね、さゆって。
また絵里がどうしようかなって考えてる間に話題は学期末テストに移っていた。
だから絵里をおいていかないでってば……
一緒に作るかどうかの返事、まだしてないですよ?
- 172 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:47
-
******
- 173 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:47
- 『早く帰ってきてくださいね』
「うん」
返事をしながら思う、帰って来る日は変らないのに……
それでもそう思っちゃうものなんだろうか。
『やっぱり温泉ですか?』
「そうだよ、ゆっくりしようって」
『みんなで入るの?』
「えっと…そうなるんだけど……ダメかな?」
『だめじゃないの……でもあんまり見ちゃダメですよ?』
「見ちゃダメ?」
『石川さんとか後藤さんとか……ちょっと吉澤さん』
ちょっと……?あえて触れないでおこう。
というかごっちんもヤバイのかな?
そう言われると気になって見たくなるんですけど……
- 174 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:48
- 『寂しいな……』
「向こうについてもメールとかするから」
『電話は無理ですよね……』
「無理じゃないよ。じゃあ夜に電話する」
『……待ってます』
「お土産なにがいい?」
『おみやげ……藤本さんが無事に帰ってきたらそれだけでいいの』
可愛い言葉に嬉しすぎて止まる。
思いっきり近場への旅行なので危ないことなんて無いんだけど
本気で心配してくれてるんだろうなって思うと嬉しい。
『藤本さん?』
「あっ、ごめん。可愛いなって思って」
『えへへ』
「そうだ、空!寂しくなったら窓の外を見て。空は繋がってるじゃん。
美貴も同じ空を見上げてるから、離れてても大丈夫」
『わかりました』
ちょっと寒いセリフなのに何の疑問も持たずに返事をしてくれた。
「明日、朝早いから電話とか出来ないと思うけどメールはするから」
『はい。待ってます……藤本さんが帰ってくるの待ってます。楽しんできてくださいね』
「うん、ありがとう」
『みーちゃんいってらっしゃい』
「いってきます」
- 175 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:48
-
◇ ◇ ◇
- 176 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:49
- 「美貴ちゃん、おはよう!」
「おぁよぉ」
「おはようすら言えて無いじゃん……」
もたもた着替えてると梨華ちゃんが服のボタンをとめてくれた。
情けないなとは思いつつ、おせっかい好きの幼馴染に甘えておく。
だって眠くて体が思うように動かないんだ。
着替えが終わると梨華ちゃんは美貴を引きずるようにして家を出た。
うぅ、眠いよ……
「ちょっと歩きながら寝ないでよ?」
「そんな器用なこと出来ません」
「美貴ちゃんなら出来そうなんだもん」
「無理だって……手離して」
「ダメ。美貴ちゃん遅いんだもん」
このせっかちが……
美貴の手を引っ張ってぐいぐい歩く逞しい梨華ちゃん。
そんな引っ張らなくっても待ち合わせに十分間に合うってば。
「よっすぃはきっちりしてるから、先に来ちゃってるもん」
「よっちゃんだけならね」
そう、よっちゃんだけなら待ち合わせの数十分前に来てると思うけど。
あの人が一緒なんだよ?たぶん大丈夫だって。
- 177 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:49
-
「ほら、来てるじゃん」
「あっ、ほんとだ」
駅前のベンチに座ってるよっちゃんが見えた。
っていうか、ごっちんは?
「ひとみちゃん、ごめんね待った?」
「ううん。今来たところだよ」
「ごっちんは?」
「ここ」
よっちゃんが指差したところを見ると……
「ごっちん半分くらい寝てたからおんぶしてきた」
「はぁ?おんぶって……」
「そのままベンチに座ったわけ」
背中にごっちんを背負ったまま座ってたのか。
器用なことをするなぁ。
「荷物送っておいて良かったね」
「だね……」
さすがのよっちゃんもごっちんを負ぶって二人分の荷物を持って
ここに来るのは至難の業だろう。
宿に着替えとかだけ先に送ろうって言われた時に反対しなくて良かった。
- 178 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:49
-
◇
- 179 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:50
- 電車に揺られながら目的地へと向かう。
と言ってもほぼ夢の中だった……
なんとなく目覚めて視線だけをあげると窓の外を見ている梨華ちゃんが見えた。
どうやら美貴は梨華ちゃんの膝で眠ってしまったらしい。
ボーっと見上げてると視線に気づいた梨華ちゃんと目が合った。
「起きた?」
「んっ……あっ、ごめん」
ごしごしと目をさすりながら頭を起こした。
う〜んっと伸びをしてる美貴の乱れた髪を直しながら梨華ちゃんは微笑む。
「見て、可愛いんだよ」
「こっちも寝ちゃったのか……」
目の前に座るよっちゃんとごっちんも寝てしまったらしい。
お互いの頭がごっつんこしてるんだけど、そのまま寝ている。
「ごめん、ずっと起きてた?」
「ううん。ちょっとは寝たから大丈夫だよ」
そういう梨華ちゃんだけど、きっとあんまり寝てないと思う。
昔から小さな物音でも起きてしまうくらいだったから、
きっと電車でなんて寝れないタイプ。
- 180 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:51
- 「それにね、景色見てたら眠くならなかったの」
窓の外に広がる景色はとてものどかで綺麗だった。
青く広がる空に真っ白な雲が気持ちよさそうに泳いでる……
ちょうど休憩時間くらいかな。親友とおしゃべりしてる愛しい人の姿が浮かんで
口元が自然と綻んでいく。
「あっちについたらまず温泉?」
「そうだね」
「いろんなとこ散歩するのは明日でいっか」
「今日はゆっくりして……明後日も帰るだけになっちゃうからね」
「自由に動けるのは明日くらいだよね」
もう少しかかるから寝てていいよと言われたけど
車内販売の飲み物を買いに行って、目を覚ますことにした。
「はい」
「ありがとう。あっ、りんごジュースだ〜」
「梨華ちゃんいっつもそれだったよね」
「そうそう。ちっちゃい頃……懐かしいなぁ」
「なんだっけ紅茶、コーヒー、カフェオレ、ココアだっけ?ハマった飲み物たち」
「飽きっぽいからね〜」
「あれと香水だけは変らないね」
眠ってるよっちゃんを指差すと梨華ちゃんは苦笑い。
「”あれ”は無いでしょう」
「ごめんごめん」
「飽きないよ〜、よっすぃは色々と可愛いし」
はいはい……
見つめるだけで幸せですって顔しないでくださいな。
あれ、なんか忘れてるなぁ。
なんだったっけ?なんだろう?
- 181 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:52
- 「あっ!」
「どうしたの美貴ちゃん?」
「メール忘れてた。メール!」
「メール?さゆ……だよねたぶん」
「そう、重ちゃん」
慌ててメールを打つ。移動の電車内です……
えっとバタバタしてメールできなかったんだっと。
向こうに着いたら何か写メします。こんな感じでいいかな。
「よしっ、セーフ」
「なにがセーフ?」
「だってこういうの忘れると……」
拗ねるんだよ。ぷくってほっぺた膨らませて。
機嫌とるのもラクじゃないんだってば。
「ふふっ、美貴ちゃんって意外とマメなんだ」
「意外は余計」
「さゆも幸せでいいな〜」
「自分だって幸せなくせに」
「うふふっ、わかる〜?」
「いちいち言い方がキショい」
「キショくないもん!」
梨華ちゃんをサクっと無視してブルブル震えた携帯を開く。
返信メールにはたくさんのハートが散りばめられていて
いろんな意味でちょっと酔いそうだった……もちろん良い意味で。
- 182 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:54
-
「お酒はダメだよ」
「「りょーかい!」」
宿に向かう前にコンビニに寄ろうという事になった。
そこに向かう途中の道すがらいきなり梨華ちゃんにそう言われた。
美貴もよっちゃんも迷わずに返事をした。
こないだみたいになったらマジでヤバイ……
「なんでー?」
なんでなんでと煩いごっちんをなだめ様としてたら
よっちゃんが握り拳をつくって叫ぶ……
「酔った美貴が梨華ちゃんの生乳に顔埋めるからだよーー!!」
「よっちゃん声でかいよ!」
「えー!?いいなぁ、いいなぁ梨華ちゃんのナマチチ〜」
「ちょっとごっちんも声大きいって!」
「ごとーもナマチチ触りた〜い」
「や、美貴触ったわけじゃないから」
「ダメに決まってんだろっ、梨華ちゃんのはあたしんだ」
「じゃあよしこのでいいよ〜」
「ダメーー!ひとみちゃんは私のなんだから」
「梨華ちゃんも相手するな!ごっちんも冗談がすぎるよ」
「だって真剣に怒るから面白いんだもん」
幸いに人気の無い道だったとはいえ……
女子高生4人の会話で話題が「ナマチチ」ってどうなわけ?
- 183 名前:アイビー 投稿日:2006/02/03(金) 23:54
-
◇
- 184 名前:日季 投稿日:2006/02/03(金) 23:55
- >>169-182更新終了。続きます……
85年組番外編は何回かに分けて更新予定です。
なまぬるい話が続きますがしばしお付き合いいただければ幸いです。
- 185 名前:日季 投稿日:2006/02/03(金) 23:55
- レスありがとうございました。
時間を割いて読んでいただいてること、ほんとに嬉しく思います。
>>164 名無飼育さん
リd*^ー^)<ありがとー。春になったら……見つかるよね?
>>165 名無しさん
そうですね藤本さんは優しいですw
みきさゆは甘く甘く……今後も甘く頑張ります。
リd*^ー^)<がんばる!
>>166 初心者さん
バカップルは常に自分達の世界へいってしまいますw
吉澤さんは心配性なお兄ちゃ……いやお姉ちゃんです。
イベントが続くのでまったりしつつ頑張ろうと思います。
从*・ 。.・)<藤本さんとラブラブするの。
从*VvV)<楽しんでもらえるよう頑張ります。
>>167 名無読者さん
ぎゅってなってもらえてリd*^ー^)<ありがとー。
もっと明るくすればよかったなぁと反省してたりします。
>>168 腰痛に苦しむ読者さん
それぞれに思いあって成立している人間関係を
ほんの少しでも描けたらいいなぁと思っていますw
お言葉に甘えてまったりがんばりま〜す。
从*・ 。.・)*VvV)<ありがとう〜。
- 186 名前:日季 投稿日:2006/02/03(金) 23:58
- >>171修正です……orz
×「来年になったら〜」
○「新学期になったら〜」
ですね。とっくに年明けてるのに……ボケまくりですいません・゚・(ノ▽`)・゚・
- 187 名前:名無し 投稿日:2006/02/04(土) 00:30
- やっぱりこの話のさゆかわいいし、やさしいミキティ-も好き。
この4人いいですね。すごくキャワです。
>>182会話に噴きましたw
- 188 名前:前29 投稿日:2006/02/04(土) 00:37
- 更新お疲れさまです〜〜!!
うぎゃうぎゃww やったあ!!続きものだあいっっ!!
ちょっとずつ更新が心をくすぐります。
85年組最高っっ!!
- 189 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/02/05(日) 00:53
- 更新お疲れ様です。
おー、続きすっごい楽しそう!
マターリとお待ちしております^^
- 190 名前:初心者 投稿日:2006/02/05(日) 15:27
- 更新お疲れ様です
もうさゆとミキティの熱っちいやりとりで頬がゆるんでしまいます
でもチョコ作りは心配・・・・愛あらば・・・・・心配・・・
85年組は話題の内容は置いといて楽しそうでいいですね
でもバカップル(笑)には何かいろいろと期待してしまいます
次回更新楽しみに待ってます
- 191 名前:腰痛に苦しむ読者 投稿日:2006/02/06(月) 01:10
- 更新お疲れですvv
アイビー読みましたよ〜!!
なまむるくないですよ!!癒されるくらいあったかいです!!
さゆの作るチョコ…美貴ティなら食べれるさ!!
愛がありますから…たぶん?
梨華ちゃんは飽きっぽいんですね!香水とよっちゃん以外は(笑)
続き楽しみにまったりと待ってます。
- 192 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/06(月) 06:25
- さゆみき好きになりました
- 193 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/02/06(月) 22:02
- さゆ「あ!最近藤本さんがうさぎのカチューシャ買ってきてくれたんです」
みき「ああ、バネでうさぎがついてるの見つけて、これは重さんだ!って」
さゆ「何かそういうプライベートでもさゆみを思い出してくれたんだっていうのが、
すごい愛を感じましたよー」
みき「でもこんなの本当につけたら恥ずかしいってヤツなんですけどね(笑)」
さゆ「うれしくて部屋に飾ってます!」
なんてリアルに(;´Д`)'`ァ'`ァなネタが出てきましたよ作者さま
- 194 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:25
- 「お風呂場で写すの?」
「いや入る前と入った後の浴衣姿を……梨華ちゃん撮って!」
「一人で?」
「えっと……」
しばし考えてみる。とりあえず一人で撮って……
さっき旅館の人に頼んで撮ってもらった4人の写真を送ろう。
「とりあえず美貴だけで」
何枚か撮影してるうちにちょっと調子に乗ってきて、いろんなポーズで撮影してみた。
「み、みきちゃ……」
「笑いすぎ」
そんな涙流しながら笑うところじゃないってば!
梨華ちゃんは涙目になって必死で笑いを堪えている。
「だって、だって……ぶりっこ似合わな〜い!」
「いや美貴だって可愛いんだから似合うって」
「自分で言った〜!」
「うっさいなぁ。言うのはタダ」
「今度は真面目に撮ってみよっか」
またカシャカシャと変なところ真面目な梨華ちゃんは真剣に美貴を撮影し始める。
別にそこまで……って思うけど一生懸命だし、梨華ちゃんに合わせる事にした。
そのうちによっちゃんとごっちんも合流して、ああでもない、こうでもない……
って撮影大会が始まった。
そして我慢できなくなった梨華ちゃんも参加して、なんだかわからないうちに
凄い枚数撮影していた……しかも携帯で。
- 195 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:26
- 「そろそろ普通のカメラでも撮ろうよ」
「だよね。さっきから携帯でしか撮ってないし」
「んあ〜、あたしちゃんとこれでも撮ったもん」
「ごっちんいつの間に……」
ごっちんは使い捨てカメラを片手にひらひらと手を振る。
「自然な顔の方が良い写真になるんだよ」
「わ〜、ごっちん偉いね〜」
「もっと褒めて褒めて〜」
「どさくさにまぎれて梨華ちゃんにくっつくなよ!」
「いいじゃんか、よしこのケチ〜」
ぎゃーぎゃー騒ぎながらも撮影大会は終わり。
ようやく温泉につかろうと言う事になった。
「ねえ、美貴ちゃん。お風呂上りは1枚くらいにしよっか?」
「さっき撮りすぎたから1枚でいっか……」
「ごとーが湯上りの色っぽいミキティ撮ったげるよ」
「別に色っぽさはいらないって」
「なんでー?みっちぃーがその気になっちゃうかもよ?」
「そ、その気ってなんだよ」
「え〜その気って言ったらあれしかないじゃん」
「べ、別にそんな気持ちになってもらわなくっても……」
「だってまだしてないんでしょ?」
そこに触れてくれるな……
ガクッと項垂れると梨華ちゃんが眉を下げながらごっちんに「めっ!」なんて
キショい怒り方を披露してくれた。
- 196 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:26
- ごっちんがふにゃりと笑って「ごめん」って謝ると
よしよしと頭を撫でて満足したのか梨華ちゃんは少し前を歩いていく。
「あはっ、ミキティってば純情なんだね」
「うっさいなー。美貴には美貴のペースがあるの」
「どっちかというと、みっちぃーのペースにあわせてるんでしょ?」
す、鋭い……何気にごっちんってば鋭いじゃんか。
「ありゃ図星?ミキティはほんとに優しいんだね。こりゃ彼女は幸せものだ」
「当たり前じゃん」
世界一幸せだって前に重ちゃんが言ってくれた事があった。
そのときは言えなかったけど、美貴は宇宙一幸せなんだから……
だって重ちゃんといられるだけで幸せなんだ。なんちゃって。
- 197 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:27
- 「マジでまだやってないの?」
「よっちゃんまでなんだよ」
「そっか、まだなのか……そっか」
一人でそっかそっかと安心したような顔をするよっちゃん。
なんだよ、気持ち悪いなと思ってたら唐突に美貴の肩をがしっと掴んで
真剣に見つめられた……今度はなんですか?
「美貴すっごい見直した!偉い、偉すぎて泣きそうだ!」
「なんだよそれ……」
「さゆが純粋なままいられるのは、美貴様のおかげです!」
「意味わかんないから……美貴様ってなんだよ!」
「あたしは猛烈に感動してるんだよ!」
「ぐはっ、よっちゃん痛い、痛いって!」
がしっと抱きしめられて意味わからないけど褒められまくっている。
どうやら妹のような幼馴染がまだ……なことが嬉しいらしい。
- 198 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:27
-
「楽しそうね……」
刺すように抑揚の無い声にゾッとした。
知らない、美貴は知らないんだ。よっちゃんが勝手に抱きしめたんだよ?
美貴は悪くないんだってば……
緩んだ腕の間からそ〜っと抜け出して離れる。
少し前を歩いてた梨華ちゃんが振り返った瞬間に、よっちゃんはフリーズした。
なんか怒らせちゃったみたいだね。美貴、し〜らないっと……
「ひとみちゃん、美貴ちゃんはそんなに抱き心地いいのかしら?」
「いや、あの梨華ちゃん。これは違うんだ……」
- 199 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:27
-
◇ ◇ ◇
- 200 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:28
- 「よしこは?」
「たぶん梨華ちゃんのご機嫌直しに必死になってると思う」
「置いて来たんだ?」
「先に逃げたのはそっち」
「あはっ」
そそくさとコンタクトを外す。
これがなかったらあんまり見えないから大丈夫なはず……
「コンタクト外して入るの?」
「無くても支障は無いから」
「裸見てぶっ倒れるからだったりして?」
「な、なんでそれを……」
「よしこから聞いた〜」
「よっちゃんめ……」
「でも、みっちぃー限定でしょ?いまじゃ倒れなくなったって梨華ちゃんが言ってたし」
「梨華ちゃんまでばらしたのかよ……外すのは重ちゃんに言われたからだよ」
「何を?」
「あんまり見ないでって。他の人の裸見ちゃイヤだって言うんだ」
「へ〜、みっちぃーってば可愛いな〜」
「ほ、惚れるなよ」
「……それは無い」
「即答しろよ!」
「だって、ちっと可愛いじゃん」
「ちっとじゃなくって、めっちゃ可愛いよ!」
- 201 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:29
- 「熱くなるなんて珍しい。惚れてるね〜ミキティ」
そう惚れてしまってるんだ。
たぶん美貴は彼女には勝てない。
「へへっ」
「顔筋が緩みっぱなしじゃん」
「考えただけでダメなんだ」
「それはそれはご馳走様です」
ごっちんは美貴に向かって手を合わせるとさっさと温泉へ。
タオルなんて肩にかけて隠す気ゼロ。
その姿があまりにカッコよくて笑ってしまった。
「なに笑ってんの?」
「べっつに〜」
「ごとーの裸見て喜んでたってみっちぃーに報告するぞ〜」
「それはマジでやめて……冗談通じないから」
「あはっ、ほんとに弱いんだね〜」
「もう頭上がんないくらいに惚れてるよ」
「お〜言い切る辺りカッコイイ!」
「美貴に惚れるなよ!」
「無いから」
「今度は即答かよ!」
二人で笑いあいながら温泉につかる。頭にタオルを乗せたりして。
熱すぎるくらいだと思っていたけど、慣れてきたらめちゃくちゃ気持ちいい。
- 202 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:29
- 「梨華ちゃんたち来ないね〜」
「なにしてんだろ?」
「ミキティそんな想像しちゃいやん」
「いやんって……してないから!」
「あはっ、冗談だよ〜」
「うっ……」
「なに想像したのかな〜?」
「べっつに」
だってあの二人の仲直りの仕方……
前にトンでもない事を梨華ちゃんが言ってた事があったじゃん。
そう言うとごっちんも「そんなこともあったね〜」なんて遠い目をした。
- 203 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:30
- 「なんだかさ〜、高校生活が終わっちゃうって日々実感しない?」
「美貴は……まだよくわかんない」
「でも、寂しいだろうね」
『誰が』とは言わなかったごっちん。でもたぶん重ちゃんのことだと思う。
ボーっと夜空を見上げながら思いだしていた。
3学期に入ってからのこと。3年生は1月いっぱいしか学校に来ないから。
だから重ちゃんは昼休みは必ず二人になりたがった。
この季節の屋上はすごく寒いんだけど「二人で食べましょう」って
泣きそうな顔でお願いされたら断ることなんて出来なかった。
寂しいのかな、やっぱり。
美貴は瞼を閉じて少し前の出来事を思い出していた。
- 204 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:30
- ◇
- 205 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:31
- クシュンと美貴がくしゃみをしたら重ちゃんは持ってきたカバンから
ブランケットを出して、ふかふかのそれで美貴をくるんでくれた
「ごめんなさい」
「謝んないで。美貴だって二人で居たいから」
そっと肩を抱いてそのまま引き寄せる。一緒に暖たまろうと言うと嬉しそうに引っ付いてくる。
すこし小さなブランケットに二人でくるまって……
「藤本さん?」
「ん?」
「ぎゅーって」
言葉の最後を待たずに抱きしめると、嬉しそうな……でも泣きそうな顔をして
重ちゃんは美貴にカラダを預けてきた。
その重みさえも愛しくて美貴までが泣きそうになる。
明日からテストが始まるから。だからお弁当持参で学校に来るのは今日で最後だった。
「だいすき」
囁くような声だったのに、はっきりと憶えてる。
「だいすきなの」
美貴の肩におでこを乗せたまま、震える声でただ好きだと伝えてくれた。
「大丈夫だよ」
抱きしめる腕の力を強めて、美貴は大丈夫だからと何度も伝えた。
きっと大丈夫。ぜんぶ大丈夫。何も変らないよ。
美貴はいつだって傍にいるから。
- 206 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:31
- 「でも、みーちゃん卒業しちゃう。そしたら一緒に居る時間が減っちゃうの」
「逢いに来るから」
「学校にですか?」
「大学に行ってもさゆみより早く終わる日は迎えに来てあげるよ」
「でも……」
「出来るだけ多く逢えるようにするから。心配しないで?」
こくんと頷いた重ちゃんは、おもむろに顔をあげて美貴を見上げ
甘えるように口にした。彼女特有のとんでもないお願いを……
「白馬に乗って迎えに来てください」
- 207 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:31
- ◇
- 208 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:32
- 思い出しても笑える。
真剣に焦った美貴を見て重ちゃんはイタズラっぽく笑ったんだ。
バカみたいに真剣に悩んだ、そんな美貴を見て嬉しそうにしてた。
「なに笑ってんの?」
「前にね……言われたんだ」
「なんて?」
「白馬に乗って迎えに来てって」
「あはっ、昔からの夢?」
「そう。叶えてあげようとか本気で思ったりした」
「ほんとに惚れてるね」
「そうなんだろうね……」
自分で思う以上に好きなのかも知れない。
どれだけの時を彼女と過ごしたのかと思い起こせば
1年も経っていなくって。けどもっと一緒に居たような気がするな……
- 209 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:33
- 「よしこと梨華ちゃん遅いね〜」
「ほんとに何してんだろ」
「だから〜、色々と大人な二人にはあるんだよ」
「どうせ美貴は子供です」
「案外さ〜、ミキティとみっちぃーのほうが大人なのかも」
「へっ?」
「だってカラダで繋がんなくても一緒に居られるんだから」
「そんなものかな」
「付き合い方は人それぞれだと思う。大変なのはこれからだろうね、大事にしてやんなよ」
「言われなくってもわかってます」
帰ったら逢いにいこう。
朝一番で迎えに行ってあげよう。
さすがに白馬は無理だけど……
- 210 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:35
- 結局、よっちゃん達は温泉に来なかった……
二人で部屋に戻ると二人とも浴衣に着替えていた。
どうやら部屋についてる風呂に入ったらしい。
仲直りもしたみたいで安心した。
「遅かったね」
「そのほうがよかったんじゃない?」
「もう、ごっちんは一言多い」
「せっかく気を利かせてあげたのに〜」
じゃれるように引っ付きながら梨華ちゃんの隣にはごっちんが座って
美貴はよっちゃんの隣に腰を下ろした。
他愛ない思い出話をしながら、高校生活を少しづつ振り返った。
先生の話とか行事のこととか……
睡魔に負けてごっちんが寝てしまうまで、とりとめなく続いた会話。
みんなが眠ることさえ惜しんで、この空気を愛しいと感じていたに違いない。
すやすや眠り始めたごっちんの顔を見て、3人とも自然と「おやすみ」と口にしていた。
ゆっくりと眠りに落ちる瞬間に思った。
離れることで終わるような関係じゃないんだから
いつも通りに普段のまま過そう……
- 211 名前:アイビー 投稿日:2006/02/07(火) 11:35
-
- 212 名前:日季 投稿日:2006/02/07(火) 11:36
- >>194-210更新終了です。
な、なんとか1日目終了です……
たぶんそんなには続かないので、まったりお付き合いくださいませ。
レスほんとにありがとうございました。
>>187 名無しさん
好きと言ってもらえて感激です。
これからもキャワな感じで頑張ります。
>>188 前29さん
楽しんでもらえたら本望です。そのテンションが大好きですよw
85年組万歳!?ほんとに大好きです。
(*´▽`)´〜`*)は4月くらいに予定してるのでそれまでお待ちを(爆
>>189 名無し飼育さん
楽しんでもらえたら嬉しいです。
まったりと頑張ります!
>>190 初心者さん
みきさゆで頬緩めてもらえれば本望ですw
从*・ 。.・)<チョコは気合で作るの。
今回はバカップルはあまり目立たないかもしれません、すいません。
もうちょっとだけ番外にお付き合いいただければ幸いです。
そして、バレンタインは藤道全開でいきますw
- 213 名前:日季 投稿日:2006/02/07(火) 11:37
- >>191 腰痛に苦しむ読者さん
癒される……そのお言葉をいただけるとほんとに嬉しいです!
从*VvV)<た、食べるよ!(死ぬ気で食うのだ)
从*・ 。.・)<さゆみのチョコには愛と可愛さがつまってるの♪
>>192 名無飼育さん
ものすごくありがとうございます!
好きになってもらえてよかったです。バレンタインは藤道予定なのでまた読んで頂けると嬉しいです。
>>193 名無し飼育さん
もうリアルに萌えましたw
教えていただいて感謝です。探してみつけました。
すっごくリアルに道重さんに甘い藤本さんが素敵です。
バレンタイン頑張れそうな気になってきました(単純w)
- 214 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/07(火) 16:16
- 某雑誌にのってたうさぎのカチューシャエピソードはやばい萌えですねー
やっぱりみきさゆ最高やわー
この小説も大好きで前から読んでます
頑張ってください!
- 215 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/02/07(火) 18:00
- 更新乙です!
リアルでもアンリアルでも藤道全開な今日この頃。
ただひたすら甘い2人に心が温まります。
バレンタインが物凄く楽しみ!頑張ってください!
- 216 名前:名無し 投稿日:2006/02/07(火) 19:06
- ミキティとごっちんがいい感じでした!!
それとバカップルはいったいどんな仲直りをしたんでしょうか?w
- 217 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/07(火) 23:15
- やっぱいいなぁ!もうホント切ない!
高校時代の恋を思い出します…w
- 218 名前:前29 投稿日:2006/02/08(水) 00:10
- 更新お疲れ様でした。
ミキさま、可愛いしかっこいいし男前だし・・・w
台詞にいちいちやられちゃってます。
お風呂を使った仲直りねえww ムフフ
ほんと、高校時代を思い出します。
- 219 名前:腰痛に苦しむ読者 投稿日:2006/02/08(水) 01:13
- 更新お疲れ様でしたvv
アイビー続編、読みましたよ!!
美貴様…かっこいいですvv
美貴ティに好かれるさゆが羨ましい!!
4人の関係がとても素敵です!!
作者さんはもっと素敵です!!
- 220 名前:初心者 投稿日:2006/02/08(水) 15:21
- 更新お疲れ様です
もう藤道にはバレンタイン前に蕩けてしまいそうな感じです
思い出し笑いするミキティが可愛い
何気にごっちんのあの性格好きです、のらりくらりの口撃とかわしが面白い
方法は不明(笑)ですが石吉カップルも仲直りしたし、楽しんでほしいです
次回更新楽しみに待ってます
- 221 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:42
-
「で、電話するの忘れた……」
「あ〜あ、知らないぞ〜」
「美貴ちゃん朝ご飯は?」
「先に食べてて、美貴電話してくる」
そそくさと部屋を出てそれから中庭に出る。
凛とした空気がとても心地よくて思いっきり深呼吸する。
一気に目が覚めて、気分は……うん爽快って感じ。でも寒いぃ〜。
えっと……
7時過ぎだけど起きてるかな?先にメールで確認したほうがいいのかな……
でも迷わずに重ちゃんの番号を呼び出しダイヤルする。
すぐに出てくれるはずも無く……。
日曜の朝はゆっくりと寝てるって言ってたのを思い出して
後悔した瞬間に重ちゃんが電話に出た。
「さゆみ、おはよう。ごめんね朝早くに……えっと」
『みーちゃん?』
早口で謝る美貴の言葉を遮るように名前を呼ばれた。
少し掠れた声は今まで寝てたことを窺わせた。
- 222 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:42
-
『みーちゃんのばかぁ』
「ご、ごめん昨日電話できなくて……」
『だいすき』
「だ……」
唐突な切り返しに言葉に詰まる。
ばかって言った後に大好きとか……
『声が聴けて嬉しいの』
甘えたような響きにどこか安心している自分がいて。
こんな些細なことなのに甘えてくれる事が嬉しくて仕方ない。
『みーちゃんは?』
「うん声が聴きたかったんだ。だいすきだよ」
そうメールじゃなくって声が聴きたかった。
だから迷わずに電話したんだから。
『楽しめてますか?』
「えっとね」
前に焼肉食べて浮かれて電話したら、寂しいのにって拗ねた事があった。
- 223 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:43
- 「楽しいけど……でも、さゆみがいないから寂しい」
『えへへ、みーちゃんったら』
「ちゃんとお風呂の時はコンタクト外して見ないようにしたから」
『みんなで入ったんですか?』
「昨日はごっちんとだけ。梨華ちゃんとよっちゃんは部屋で入ったみたい」
『そうですか……ご飯とか美味しいですか?』
「うん。でも肉があんまり出てこなくって残念だけど。さゆみは昨日どうしてた?」
『さゆみ昨日の晩はずっと電話待ってて……』
「ごめん…遅くまで待ってたの?」
『知らないうちに寝ちゃったから、何時までかは覚えてないです』
「ほんとにごめんね」
『でも朝一番で電話もらえたから大丈夫です』
最初に拗ねてた感じとは違ってすごく穏やかな声だった。
- 224 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:43
- 「今日はどこかに行くの?」
『絵里と……テスト前の勉強をしようと思ってます』
「テストってまだ先じゃなかったっけ?」
『範囲が広い教科があるから……』
「そっか、偉いね。解らない所とかあったら美貴に聞いて?帰ったら教えてあげるから」
『はい。みーちゃん今日も気をつけて旅行楽しんでくださいね』
「うん、ありがとう」
『あの時間があったら……電話…』
「暇が…ってか暇をつくって電話する」
そう言うと嬉しそうに「やった!」と呟く声が聴こえた。
自分からは切り辛く、しばらくお互いに無言のまま相手が切るのを待っていた。
「なかなか切れないね」
『切り辛いです……』
「じゃあ一緒に切ろう。『せ〜の』で切ろうか?」
『はい』
「せ〜の……」
- 225 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:44
-
『みーちゃん、だいすき!』
「へっ?あぁ、大好きだよ」
「せ〜の」の後に言われて焦ったけど、慌ててだいすきって返した瞬間に電話が切れた。
間に合った?間に合ったよね。
危うく「へっ?」なんて間抜けな返しで電話が終わっちゃうところだった。
- 226 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:44
- ◇ ◇ ◇
- 227 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:44
- 顔が緩んでるとさんざん指摘され、からかわれた。
もうこの際どうでもいいです……
「スケートなんて小学校以来かな、梨華ちゃんもだよね」
「たぶん私滑れないよぉ……」
「大丈夫、ごとーがつきっきりで教えてあげるから」
「あほ、梨華ちゃんにはあたしが教えるからいい」
「ごっちんでいいよぉ。ひとみちゃん顔がエロいから却下」
「そんな〜」
「あはっ、任せて任せて」
「ごっちんも危なかったら美貴が教えるよ」
「あたしはよしこと違って危なくないよ〜」
「よっちゃんよりはましか」
「ごっちんなら大丈夫だよね」
「ちょっと梨華ちゃんも美貴も何を納得してるんだよ……」
旅館からすこし歩いた場所にあるスケート場。
さすがに日曜だからかそれなりに人が多い。
靴をレンタルしてからごっちんが呼ぶので傍に行くと
よっちゃんと梨華ちゃんを二人にしてあげようなんて提案された。
- 228 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:45
- 「異議は?」
「なし。まぁ、他にもお客さんいるけどね」
「気分的にふたりっきりっぽくなれば……」
「あとは勝手に自分達の世界に入ってくれるか」
梨華ちゃんがスケート靴を履くのを手伝ってるよっちゃん。
過保護すぎ……靴紐くらい結べるだろうに結んであげてる。
「相変わらずだね〜」
「だね」
「ミキティもあんな感じ?」
「いや、あそこまでは……」
「たしかに甘いイメージ無いけどね。でも実はミキティのが甘いよね」
「そうかな……」
「ほら1年の時とか梨華ちゃんと毎日帰ってたじゃん」
「そう言えば早く終わったほうが待ってた」
「朝も教室まで一緒に来たり」
「あ〜、ちょっと喋ってから自分の教室に行ってた気がする」
「うちのクラスに睨みきかせてたし」
「だってさ」
小さい頃からあのキャラなんだよ?
誤解されやすいって言うか、こう好き嫌いがわかれるタイプで。
心配だったんだよね。
- 229 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:45
- 「守ってあげなきゃって……どっかで思ってたのかな」
「よしこと付き合うってなった時とか寂しかった?」
「どうだろうな……別に梨華ちゃんの1番になりたいって思ったことは無いから」
「そっか。で、今日はミキティの愛しいあの子は何してんの〜?」
「ん?えっと……なんか絵里と勉強だって」
「勉強ね……なるほど」
なるほどなるほど、へ〜なんて言いながらニヤニヤと美貴を見てくる。
なんだよ、すっごい気になる……
ニヤニヤの理由を聞こうと思ったらサーっと滑りだしたごっちん。
「ミキティー適当に滑ってお腹空かせて夜ご飯食べるぞ〜」
「もう夜のこと考えてるの?まだ昼も食べてないのに……」
「気にしない、気にしない〜」
「気になるって……」
「そうだ、もうすぐバレンタインじゃん?」
「そうだけど」
「用意した?」
「重ちゃんチョコ好きだからね、あげるよ」
「作ったの〜?」
「ううん、買ってきた。手作りって苦手」
「料理は出来なかったっけ?」
「それなりにはできる。たまに自分で作るから」
- 230 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:46
- お母さんが遅い時は自分で作ってたから。
たぶん重ちゃんよりは出来るんだよね……
ふっと見上げた空に面白い形の雲を見つけた。あははっ、ウサギみたい……
彼女の姿を思い出しながら凛とした空気の中を無心で滑る。
目の前にごっちんだけじゃなく、ぎこちない滑りの梨華ちゃんと支えてるよっちゃんが見えた。
周りにはもっとたくさんの人がいるのに、器用に大好きな友の声だけが聴こえてくる。
幸せなんだなって思いながらも、ほんの少し何かが足りない。
自分に寄りかかってくれる愛しい人の存在。いまの美貴を支えてくれるぬくもり……
『逢いたい』
浮かんだ言葉をぐっとのみこんで、みんなのもとへ手を伸ばした――――――
- 231 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:46
-
******
- 232 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:46
- 「さ、さゆ!」
「どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ〜」
一緒にチョコを作ることになった日曜日。
さゆは朝からご機嫌で……
「さゆは生チョコ作るんだよね?」
「うん!」
だったらいきなりチョコをお湯の中に入れたりしないでね……
美貴ちゃん、さゆの料理の腕はヤバイ感じですよ?
「さゆ、とりあえずチョコは刻んでね」
「刻むの?」
「そうだよ。溶けやすいようにこうやって……」
わ〜絵里すご〜いとか言われて調子に乗ってぜんぶ刻んでしまった……
さゆにうまく使われてしまい、次の工程へ。
- 233 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:47
- 「生クリームを火にかけて。これもいれてね」
「ハチミツ?」
ハチミツは隠し味なんだって。
「沸騰してきたらチョコを溶かして……さゆ弱火!」
「弱火、弱火?どうするの?」
そんな泣きそうな顔で絵里を見ないでってば!
結局は絵里が変りに火を弱めてチョコを混ぜ……
「さゆ自分で混ぜて!」
えへっなんて笑っても誤魔化されないから。
「よく混ぜないと後で生クリームが上のほうで白く固まっちゃうからね」
「は〜い」
「美貴ちゃんへの愛情を込めて混ぜて」
「それなら簡単なの」
よくわからない鼻唄を歌いながらさゆはご機嫌で混ぜている。
そういえば朝からすっごいご機嫌だったな〜?
- 234 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:47
- 「そういえば何かあった?」
「なにかって?」
「さゆすっごい機嫌がいいから」
ぐりぐりとチョコを混ぜながら頬を染めたさゆ。
なんで照れてるの……
「藤本さんから電話があったの」
「あぁ、それで……」
「だいすきとか……愛を確かめ合ったの」
「はいはい。ちゃんと真面目に混ぜてね」
さゆに甘甘な美貴ちゃんのことだから、朝から
愛の言葉の応酬だったんだろうな……
「おいしくな〜れ」
とても幸せそうな親友の横顔。
絵里までなんだか幸せな気持ちになる。
- 235 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:48
- 「混ざったら型に入れて……。昨日買ってきたのは?」
「あっ、お家に忘れたの……」
「じゃあ絵里の貸してあげる」
「絵里は?」
「自分のチョコは夜か明日作るからいいよ、はい型」
「ありがとう絵里」
「冷やして固まったら……」
そうだ買ってくるの忘れてる。
「さゆ冷やしてる間に買い物行こう」
「何か買うものがあるの?」
「ココアパウダーだよ。仕上げにまぶすから」
「ちょっとビターな感じになるんだ」
「そう。甘すぎなくて美貴ちゃん好みになると思うよ」
美貴ちゃんの名前を聞くだけで嬉しいのかさゆは微笑む。
「さゆみってやっぱり才能があると思うの」
型に流し込み終えると満足そうにさゆが言う。
あのね……大半は絵里が作ったような気がするんですけど?
でも美貴ちゃんが望む愛をプレゼントできるのは、さゆだけだもんね。
「どうしたの絵里?」
「ううん、なんでもな〜い。さっ買い物に行くよ〜」
- 236 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:48
-
******
- 237 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:48
- 外でご飯を食べて宿に戻った。
久しぶりに時間を忘れてはしゃいだな〜。心地いい疲労感でほどよく疲れたって感じ。
「すっげえ、温泉から景色が一望できるんだな」
「昨日は部屋で入ったもんね」
「ごっちん寝ないでよ?」
「んあ〜」
ごっちんは温泉に入って暖まってきた頃、早くも寝てしまいそうだった。
美貴も昼間の疲れがどっと押し寄せ、必死に睡魔と格闘しながらのお風呂となった。
梨華ちゃんとよっちゃんは……よくわかんないけどイチャイチャ。
ちょっと離れてるから何を話してるのかは聞こえないけど、
嬉しそうに頬寄せ合って話してる。あんまり見てると胸ヤケしそう……
「ちょっとごっちん!」
ぶくぶくと沈みそうになってるごっちんを起こす。
ボーっとしながらふにゃ〜っと笑ったけど、大丈夫?
「部屋に戻ってから寝るんだよ」
こくこくと頷くとまた目を閉じて……
「だから寝るなって!」
梨華ちゃん達はもうちょっと入ってると言うので、
ごっちんを連れて先に上がる事にした。
- 238 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:49
- 部屋に戻ってすぐにごっちんは寝てしまった。
美貴も眠かったので布団の中に潜り込んで瞼を閉じた。
あっ、そうだ。寝る前に……
『みーちゃん!』
電話に出るなり名前を呼ばれた。
まだその呼び方は照れくさいんだけど、嬉しそうに呼んでくれるからイヤとはいえない……
「勉強はどうだった?」
『……復習だけだったから大丈夫でした』
「そっか」
『今日はどう過ごしたんですか?』
「近くにスケート場があるから遊んできた。あとは適当に散歩したり」
『いいなぁ。さゆみもスケートやってみたいです』
「今度連れて行ってあげるよ」
ちょっと滑ってる姿を想像すると……
あまり巧いイメージが無くて笑ってしまいそうになる。
- 239 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:49
- 『明日帰ってくるんですね』
「あっ、うん。家に着くのは夜になるかなぁ」
『気をつけて帰ってきてくださいね』
「ありがとう。帰るの夜になるけど電話しようか?」
『メールだけで……我慢します。ゆっくり休んでください』
優しい声が心に沁みてくる。
「そっか。じゃあ甘えてメールだけにしておとなしく寝るよ」
『なんだか眠そうですね?』
「ちょっと疲れてるかも……さゆみも明日学校だね」
『もう寝ちゃいますか?カラダゆっくり休めてくださいね』
「うん、そうだね」
『さゆみもゆっくり寝れそうです』
「そう?」
『みーちゃんの声が聴けたから……』
ほんとに満たされたように呟くから、美貴まで嬉しくなる。
- 240 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:50
- 「じゃあ一緒に切ろう」
『はい。そうだ、みーちゃん?』
「ん?」
『朝にね、だいすきの前に……』
「どうしたの?」
『大好きって言う前に名前呼んで欲しかったの』
あっ……
そうだ、たしか焦って『あぁ、だいすきだよ』とか言う言い方をしてしまった。
「うん、わかった。今度は気をつけるよ」
『おやすみなさい』
「おやすみ。また明日の朝も電話するね」
『待ってますね……無理だけはしないで?』
「うん」
『みーちゃん、だいすき』
「さゆみがだいすきだよ」
電話が切れても甘えたような声が耳に残っている。
その声に包まれて美貴は眠りにおちていった。
なんだろこの満たされてる感じは。彼女も同じ気持ちならいいのに……
- 241 名前:アイビー 投稿日:2006/02/08(水) 22:50
-
- 242 名前:日季 投稿日:2006/02/08(水) 22:51
- >>221-240更新終了。
あと1回くらいで終われるかと……。いしよしもある予定。
みきさゆの電話がメインになってしまってるw
レスほんとにありがとうございます!
>>214 名無飼育さん
某雑誌いいですよね、甘すぎる現実に頬が緩みっぱなしですw
大好きとか……ほんとに嬉しいです、ありがとうございます。
从*・ 。.・)*VvV)<まったりとですが頑張ります!
>>215 名無し飼育さん
リアルで素晴らしいネタが投下されテンションが上がってますw
心温まる……と感想いただけて嬉しいです。
バレンタインは少し遅くなるかもしれませんが、藤道全開予定です。
从*VvV)<甘く優しく頑張ります。
>>216 名無しさん
後藤さんはいつもセリフ無しとかなので申し訳なく頑張りましたw
バカップルは……ご想像にお任せします。
きっと愛を深めたんだと思います(*´▽`)´〜`*)
- 243 名前:日季 投稿日:2006/02/08(水) 22:52
- >>217 名無飼育さん
幸せすぎても不安になっちゃうような、そんな純粋な感じが出せたらいいなぁなんて思ってます。
高校時代を思い出してもらえて嬉しいですw
从*・ 。.・)*VvV)<切なく甘く頑張ります。
>>218 前29さん
お風呂で……(*´▽`)´〜`*)あとは想像にお任せしますw
藤本さんのセリフとか普段は絶対言えないような言葉を選んでるので
甘すぎるかな?とか思うのですが、そう言ってもらえて嬉しいです。
从*VvV)<美貴に惚れるなよ!w
>>219 腰痛に苦しむ読者さん
素敵……嬉しいです、ありがとうございますw
4人ともあまり言葉にしなくっても繋がってる感じの人たちかなと。
思うけど表現するのは難しいですね……
从*・ 。.・)<藤本さんの愛をひとりじめなの。
从*VvV)<・・・(美貴のファン増えたかな?)
>>220 初心者さん
蕩けてもらえてよかったです。今回も甘くしてみましたw
後藤さん好きと言ってもらえてかなり嬉しいです。
(*´▽`)´〜`*)は自分達なりの仲直り方法を活用していますw
温泉地を調べてるときに近場にスケート場があったので、地味な遊びをさせてしまいました(爆
从*VvV)<4人で遊ぶ事が大切なのだ。
- 244 名前:日季 投稿日:2006/02/08(水) 23:00
- (微妙な修正……orz)
×絵里が変りに〜
○絵里が代わりに〜
- 245 名前:名無し 投稿日:2006/02/08(水) 23:34
- あまいみきさゆを読めて幸せ〜
えりりんも苦労しますねw
>>237のごっちんがカワイイ!!
85年組の時々のぞく切ない感じがいいです
- 246 名前:腰痛に苦しむ読者 投稿日:2006/02/09(木) 00:12
- 続編、読ませていただきました!!
あまーい、甘すぎるよ、作者さん。
バレンタイン前なのにもう甘いのが……
甘すぎて鼻血出そうです↑↑
美貴ティはさゆが本当に好きなんですね!!羨ましい…
絵里ちゃんが…立派です。
続き楽しみに待ってますvv
- 247 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/09(木) 04:59
- 甘い〜
もう作者様のおかげで
さゆみき超好きになりました♪
- 248 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/10(金) 20:47
- みきちー胸ヤケしそうとかゆってるけど人のこと言えないべさ!!
- 249 名前:初心者 投稿日:2006/02/11(土) 11:38
- 更新お疲れ様です
スケート靴を履くのを手伝ってるよっすぃが素敵
楽しそうだけど熱々の石吉にブクブク沈むごっちんとミキティも大変ですね
さゆのスケートする姿は同じく巧いイメージがないですがそれも可愛いのはさゆだから?
次回更新楽しみに待ってます
- 250 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:18
- すやすや眠る美貴ちゃんとごっちん。
部屋に戻ると二人とも寝てしまっていた。
「二人とも寝ちゃったの?」
「うん、疲れたんだね」
「キャーキャー騒いでたからな〜」
「ふふっ、かわいい」
「どっちが?」
「二人とも」
「梨華ちゃんが一番だけどね」
「ひとみちゃんが一番だけどね〜」
おでこをこつんってあわせて笑いあう。
4人でいられるのもあと少しなんだね……
「ごっちんは専門学校に進学して……」
「美貴は梨華ちゃんと同じ大学」
「ひとみちゃんが他県の大学」
「それでもたまには4人で会おうよ」
「そうだね」
- 251 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:18
- 「でもほんと腐れ縁だよね、美貴と梨華ちゃん」
「長いね……」
「時々さ〜心配になる」
だから一緒に暮らしたかったんだ、そうひとみちゃんは言う。
美貴から離れて欲しくて。すこしでも距離を離したくて。
「美貴ちゃんね」
一度もひとみちゃんとの交際に口を出したこと無いんだよ。
そう言うとちょっとビックリしていた。
「ひとみちゃんのこと信用してるみたい」
「そうなんだ」
平和そうな顔をして眠る幼馴染。
握りしめられた携帯に視線を落とす……
また電話したのかな?ほんとに可愛いあの子に夢中なんだから。
- 252 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:19
- 「小さい頃ね」
「急になに?」
「こうやって美貴ちゃんの寝顔とか見てるの好きだったんだ〜」
「へっ……へ〜」
ちょっと面白くないのか声が上擦ったひとみちゃん。
「でもどうしてかな、ドキドキはしたことがないの」
「美貴に?」
「たぶんお互いにそうなんだと思う」
なんだろう家族のような気持ちでいたのかな。
不器用なくせに優しい人だから。安心できたの、傍にいるだけで。
いまはね、まっすぐに見つめていたい人ができたから。
だから美貴ちゃんのこと見ている機会が減ったように思う。
当たり前のように包んでくれるぬくもりに、私は何度励まされただろう。
私達はお互いの道を歩いていくけれど、これからも美貴ちゃんは……
きっと近すぎず遠すぎないそんな距離に居てくれる気がする。
- 253 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:19
- 「いまは、ひとみちゃんを見ていたいの」
「ずっと見ててよ。飽きるまで見てて」
「飽きたりしないもん」
「わかんないよ。太っちゃうかもしれないし」
「それでもひとみちゃんだもん」
「あたしだから好き?」
「そうだよ〜、ひとみちゃんだから好きなの」
忠誠を誓うガーネットのネックレス。
いつもあなたの愛に包まれているような気がして、ほんとに幸せを感じているの。
ひとみちゃんの誕生日にね、あげたいものがあるんだ。
いつも私を感じていて欲しいから……
「梨華ちゃん、もう寝ちゃう?」
「明日はゆっくり寝て、ゆっくり出発だけど……」
「じゃあ少しくらい平気?」
そっと触れた指先が服の上からカラダを撫で上げる。
「だめ!」
「ちょっと触るだけだよ〜」
「ちょっとで終わったことないでしょ?」
「ほんとに、ちょっとだ……」
美貴ちゃんが寝返りをうった気配に言葉が止まった。
むにゃむにゃと口元が動いて『焼き肉たべたい』って寝言に思わず噴出す。
- 254 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:20
- 「寝言が肉かよ……」
「美貴ちゃんらしいじゃん」
おとなしく寝よう?と言うとちょっと不満そうに頷く。
けどすぐに気を取り直して満面の笑みで……
「じゃあ、おいでハニー」
「ちょっとなにそれっ?」
「そこはさ〜、ダーリンって言いながら胸に飛び込んできてよ」
「やだよ〜、恥ずかしいもん」
「照れるような間じゃないでしょーがー」
「もう、わかったよぉ」
布団の中でひとみちゃんは両腕を広げて待っている。
今度はハニーと言われなかったから、そのまま腕の中へ……
「あったかいなぁ」
「温泉で温まったからね」
「ひとみちゃんはいつでもあったかいよ」
「美貴より?」
「なんでそこで美貴ちゃんが出てくるのよ〜」
「だって、子供の頃さ……」
「もうちっちゃい時だけだよ、こんな風にしてもらってたのは」
付き合う前に時々話してた私達の小さいときのお話を
ひとみちゃんはよく覚えているみたい。
よく一緒に寝ていた頃はいつもくっついて寝ていた。
- 255 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:21
- 「妬いてるの?」
「誰が……」
「ちっちゃい頃の美貴ちゃんに妬いてるんだ」
「なんだよ〜いいじゃんか。好きなんだ梨華ちゃんが」
急に真面目な顔で見つめられて、それだけで早くなる鼓動。
きっとひとみちゃんの愛に慣れてしまうことはないと思う。
いつだって、こうやってドキドキするんだから……
「もう1回言って?」
「好きだってば」
「もう1回」
「……好き」
もう1回って言おうとした口は塞がれていた。
少しだけ触れて離れた唇から『好き』と甘い囁きが届く。
「ひとみちゃんが好き」
気持ちを確かめ合うことも減ってきたけれど
きっと時には必要なんだと思う。
忘れてしまわないで、想う気持ちを伝える方法は幾通りもあるということ。
視線で仕草で言葉で……
ひとみちゃんのすべてで私を愛してほしい。
私のすべてであなたを愛するから――――――
- 256 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:21
- 「梨華ちゃん、帰ったら泊まりに行ってもいい」
「いいけど、いつ?」
「週末で」
「わかったから、その手をどけてね」
「え〜」
「え〜じゃないの」
胸に伸びてきた手をペシンと叩くと、ちぇっなんて言って離した。
離れた手に自分の手を重ねて指を絡める。
一つになれなくても、いいよね。
だってこうしてお互いの存在を感じていられるんだから。
そっと頬寄せた胸元から響く心音は私を包み込んで、ゆっくりと眠りを誘う。
安心とトキメキを同時に運んできてくれるのは、きっとあなただけ……
そう感じながら夢の中へとおちていく――――――
- 257 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:21
-
******
- 258 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:22
- 4人ともゆっくり寝て、起きたのは昼前だった。
とにかくアラームとか無しで寝ようって言ってた計画は実行できた。
「おはよう」
「おはよ、美貴ちゃん」
「ごっちんとよっちゃんは?」
「先に起きて散歩してくるって」
「昼は電車で食べるの?」
「うん。駅弁買おうってお話してたの」
「じゃあ、二人が戻ったら出発だね」
「もう戻ってくると思うけど」
出発の準備をしていると二人が帰って来たので駅へと向かう。
そして駅の傍にあるお土産屋に寄った。家には適当に饅頭でいっか……
一応、重ちゃん家にも一箱。
「美貴、さゆの家にも買う?」
「うん、そのつもり」
「じゃっ、あたしは自分家だけでいいや」
そういってお菓子を選んで。
目に付いたのはバス用品。あれはさすがにいらないだろうか?
- 259 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:23
- 「美貴ちゃん、それ買うの?」
「どうしようか悩み中」
手にとって見ていたらすかさず梨華ちゃんが聞いてきた。
「可愛いけど、さゆに?」
「そう……美貴が使うわけ無いじゃん」
「さゆっぽいけど」
「やっぱヤバイ?」
「どうだろう……さゆなら大丈夫そうだけど」
買うか……
シールとか子供っぽいものを集めてるし。
こんな感じのを貰っても引いたりしないはず。
「買うんだ」
「いいじゃんか……」
「なんか美貴ちゃんが可愛く見える〜」
「なんかってなんだよ」
「そんなの絶対に買わないタイプだもん」
「うぅ、ほっとけ……」
うさぎ模様のお風呂セット。
別にこの温泉地限定のものでもないけど、こういうの喜びそうだし。
こうなったらついでにウサギのぬいぐるみキーホルダーも買ってやる。
- 260 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:23
- 駅について梨華ちゃんに手を引っ張られた。
「美貴ちゃんとお弁当買ってくるから、先に乗ってて」
よっちゃんが返事したのを確認して、美貴の手を離した梨華ちゃん。
「昨日はありがと」
「ん?」
「起きてたでしょ?ひとみちゃんが、その……」
「あぁ、あの時。ちょっと目覚めたら妖しい雰囲気だったから邪魔してみた」
「あのまま暴走しちゃってたと思うから」
「止めてよかったんだ?」
「うん、ありがと」
「どういたしまして」
だって美貴もごっちんも居るのに隣でされたら……
冗談だったり、ただのじゃれあいだったのかもしれないけど
寝言のフリして『焼肉たべたい』って呟いてみた。
「っていうか本気でするつもりだったの?」
「……だって、ひとみちゃんってじょうずなの」
「はいはい。もうそれは聞き飽きた……」
「そうだ!なにかあったら相談してね。美貴ちゃんうまそうだけど……」
「なにを根拠に」
「なんとなく?」
「なんとなく?って……美貴に聞かないで」
- 261 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:24
- 「やだっ、赤くなって美貴ちゃん可愛い!」
「うっさい!ほら早く買って乗ろうよ」
「もう恥ずかしがり屋さんなんだから」
そう言ってなんで自分まで赤くなってるんだよ……
もう美貴、頭痛いよ。
「美貴ちゃん、焼肉弁当あるみたい」
「マジで?それ買って!?美貴それがいい!」
「もう買うから、そんなにはしゃがないで」
「よっちゃんにゆで卵売ってないかな?」
「あっ、温泉卵食べるの忘れてない?」
「じゃあ買っちゃえ」
「そんなに買って平気?」
「ごっちんが食べてくれるよ」
色々と買いこんで最後にお茶を買って電車に乗る。
- 262 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:24
-
電車に揺られながら、今度は4人とも寝なかった。
こうやって過ごした思い出が、いつか自分達を支えてくれる気がする。
いま気付かなくっても、後になってきっと……
「みんな明日学校行くの〜?」
「美貴ちゃん行くんでしょ?」
「うん、美貴は行くけど」
「じゃ、あたしも行こっかな」
「ひとみちゃんが行くなら私も……」
「んじゃ、ごとーも〜」
また学校で会おうね。そう約束してそれぞれが家路につく。
4人とも進路が決まって、あとは卒業式を残すのみ。
だけど3月の卒業式までは高校生活を楽しもうと思う……
- 263 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:25
- アイビー:花言葉【永遠の愛・友情・信頼】
―――――― おしまい。
- 264 名前:アイビー 投稿日:2006/02/11(土) 23:25
-
- 265 名前:日季 投稿日:2006/02/11(土) 23:26
- >>250-263更新終了。
これで番外編終わりです。次は本編へ戻ります。
ちょっと遅れるかもしれませんが、甘いバレンタインをお届けできればいいなぁと思っています。
(あまり期待しないでまったり待っていただけたら幸いです)
- 266 名前:日季 投稿日:2006/02/11(土) 23:27
- レスありがとうございます!
>>245 名無しさん
幸せをお届けできて良かったです。
後藤さんまたセリフ少ないんですけどw
从*VvV)<別れは切ないよね。
>>246 腰痛に苦しむ読者さん
みきさゆも甘い甘いバカップルに成長中ですw
亀井さんが立派……嬉しいです。脇役に思い入れがあったりしますw
从*VvV)<大好きなのだ。
从*・ 。.・)<さゆみにはチョコより甘いの。
>>247 名無飼育さん
好きになってもらえて嬉しいです!
从*・ 。.・)*VvV)<今後も頑張ります。
>>248 名無飼育さん
ほら、周りは案外と見えないものなので……w
从*VvV)<み、美貴は胸やけするほど甘くないのだ。
>>249 初心者さん
吉澤さんとことん甘い人です。
藤本さんはいろんな意味で苦労人なので、重さんに癒されてるんだと思いますw
从*・ 。.・)<どんなさゆみも可愛いの♪
从*VvV)<むしろ運動ヘタな感じが可愛い。
- 267 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/02/11(土) 23:43
- 85年組いいなぁ。
そしてごめんなさい。バレンタイン超期待してます!笑
- 268 名前:前29 投稿日:2006/02/11(土) 23:48
- 更新お疲れ様です。
旅行編、ほんっとによかったっすw
いしよしもだけど、
りかみきのあったかい友情も好きだなあ♪
(ごめんなさい、バレンタイン、期待しちゃいますw)
- 269 名前:名無し 投稿日:2006/02/12(日) 00:06
- セリフすくなくてもごっちんが愛しいですw
いしよし、りかみきそれぞれの関係がすき
急にアホな会話をするところもだいすき(笑
みきさゆ本編が待ち遠しい。
番外であんなに甘かったから期待しちゃいます、すいませんw
- 270 名前:腰痛に苦しむ読者 投稿日:2006/02/12(日) 01:23
- 更新お疲れ様です
アイビー、続編読ませて貰いました。
アイビーはこの作品にあった花言葉ですねvv
永遠の愛を望む梨華ちゃんとよっすぃ〜、4人の壊れることのない友情、
梨華ちゃんは美貴ティに、美貴ティはよっすぃ〜に対する信頼。
素晴らし過ぎです…
さゆの為になら普段は買わない物を買っちゃう美貴ティが可愛いvvv
バレンタインに期待大!!です。頑張ってください!!
- 271 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:13
- 「おはよう」
ドアを開けた瞬間に声をかけられて夢かと思ったの。
制服姿の藤本さんがなぜかお家の前にいて……
「おはよってば、お〜い!」
「……藤本さん?」
「美貴のこと忘れちゃった?」
ぶんぶんと首を振ると、ニッコリ笑って髪を撫でられた。
サラサラと私の髪を梳きながらとても嬉しそうにしている。
「今日は髪おろしてるんだ。ヤバイ、可愛い」
「えへへ、だって放課後に……」
「放課後に?」
「藤本さんのお家に行くってさっきメールしたじゃないですかぁ」
「そうだった。美貴のためなんだ?嬉しい」
ぎゅっと抱きしめられて耳元で囁かれる”かわいい”と……
前にお話していた時に、どんな髪型が好みですか?と聞いたら
シンプルが一番だよと言っていたから。
「みーちゃんおかえりなさい」
「ただいま」
昨日の晩は帰ったよっていうメールだけで電話も無くて。
たぶん疲れて寝ちゃったのかな?って思ったから夜はメールを返さなかった。
朝起きてすぐに放課後に行くことだけをメールで伝えた。
- 272 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:13
- 「そうだ、これ」
ごそごそとカバンから取り出したのは、ちいさなウサギのぬいぐるみキーホルダー。
3つ目だ……心の中で呟く。少しづつ小さくなっていくウサギのぬいぐるみ。
でも私を想ってくれる気持ちはきっと大きくなってるの。
「ありがとうございます!」
「それと、あのお風呂セットなんだけど……帰ったら開けて」
「はい」
「あと家にお菓子なんだけど」
お土産を渡すために来たのかな藤本さん。
「美貴ちゃんおはよう」
「おはようございます。これお土産です」
「まぁ、ありがとう。もう卒業なのね〜」
「そうですね、あと少しで」
「大学に行ってもさゆみのこと面倒みてあげてね」
「勉強とかなら任せてください」
「4月が楽しみだわ〜」
4月が楽しみ?ママの言葉を不思議に思いながら
私は部屋に藤本さんからもらったお土産を置きに行った。
うさちゃんは鞄につけようっと。
- 273 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:14
- 外に出て気付いた、藤本さんは私を迎えに来てくれたんだ。
「自転車で来たんですか?」
「うん。乗っていく?」
真っ白い自転車。でもその自転車には乗れないです。
親友が大切にしている想い出を壊すことは出来ないから……
絵里が話していたのは藤本さんのことだったんだ。
そう藤本さんに出会う前に、絵里と仲良くなったときに教えてくれた。
大切な初恋の話。絵里の大切な大切な想い出……だからその自転車には乗れないです。
「歩いていきましょう?」
「別にいいけど…」
断った私を不思議そうに見つめる藤本さん、ちっとも気付いて無いんだ。
絵里の気持ちに。
「石川さんは乗せたことありますか?」
「梨華ちゃん?いや、乗らないって言うんだ。美貴の運転信用してないのかな」
「そんなこと無いと思いますよ」
「ちゃんと二人乗りできるのにな」
全然気付いてないのは藤本さんだけみたい。
きっと石川さんも絵里のこと大切にしてるから乗らないんだと思います。
- 274 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:14
- 「藤本さん?」
「ん?」
「一緒に歩きたいです」
「そっか」
「少しでも長く一緒にいられますよ、歩きましょう?」
そう言うと嬉しそうに綻ぶ口元。
絵里、ぜんぜん気付かずにごめんね。
いっぱい辛かったよね、藤本さんのお話ばかりして……
「さゆみ、どうしたの?」
「なんでもないです」
滲んだ涙を誤魔化すように笑う。
絵里の気持ちを考えるなら、私は気付いちゃいけなかったんだ。
絵里の想いになんか……
あんなに応援してくれる絵里はやっぱり大好きな親友で、とても優しい人。
大切な人の幸せを願って、私のことを支えてくれてる。
「でも泣きそうだったよ?なんでも話すって言ったじゃん、ね?」
とても心配そうな声色に涙がまた溢れそうになる。
優しいあなたをひとりじめしちゃっていいのかな……
きっとこんなこと考えてたら絵里に怒られちゃう。
絵里、気付かなかったことにするね。
だから、これからもいっぱいお話聞いてくれる?
絵里にしか言えないこともきっとあると思うから……
- 275 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:15
- 「藤本さんに逢えるだけで嬉しかったから」
「美貴も逢えて嬉しい。逢いたかったよ」
ぽんぽんと頭をかるくたたいて優しく笑う。
「また泣きそうになる〜。そうだ、チョコ食べる?チョコ好きだったでしょ」
鞄の中を見て藤本さんはしゅんと項垂れた。
どうしたのかな?
「忘れた……」
「えっ?」
「チョコ買ってたんだけど持ってくるの忘れた」
「バレンタイン?」
「そう。さゆみにだけあげようと思って」
その言葉だけで嬉しいです。
絵里が言ってたから。ほとんどあげたことがないみたいだって。
私のためだけに用意してくれた気持ちが嬉しいです。
- 276 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:16
- 「放課後に美貴の家においで」
「はい」
「そのときに渡すね」
「えへへ嬉しいです」
学校に向かう間中、いろんな話をしてくれた藤本さん。
電車から見えた風景や温泉からの景色。
いつも以上に饒舌な藤本さんが可愛くて見惚れていた。
学校に着くほんの少し前に気付いて慌ててチョコを渡す。
だって一番に渡したくなったから……
誰よりも早く気持ちを藤本さんに伝えたい。
「チョコ作ったんです」
「ありがと。へ〜手作りしたんだ?」
「美味しいかどうか…でも愛はいっぱいこめました!」
「さゆみが作ったのなら、なんだって美味しいよ」
開けていい?と言われて頷くと梱包を外して
すぐに一つを口にした。
「うん、美味しい」
「ほんとですか?」
「すっごい美味しい。嘘なんてつかないってば」
もう一つ手にとって食べさせてくれた。
ほんのりと口の中にひろがる甘いチョコの味。美味しい……
教えてくれてありがとう、絵里。
「泣きそうなほど美味しい?」
「はい…」
「あははっ、可愛い」
- 277 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:17
- 「美貴、図書室に行くから。えっと、昼休み会える?」
「お昼は絵里と食べる約束してて……」
「そっか、急だったもんね。じゃあ放課後に。一緒に帰ろう」
「はい」
靴を履き替えて階段を上がっている私を見送りながら、手を振ってくれた。
何人も他の生徒が通り過ぎるけど、私だけを見て……
柔らかな視線はとても居心地がよくて、ずっとあなたの傍に居たいと想う。
あと少し……
こうやって学校の中であなたを感じられるのは、あと少しだけ――――――
- 278 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:17
-
******
- 279 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:18
- 今日はすぐに気付いたんだね。
美貴ちゃんは嬉しそうに窓の外に手を振っている。
キャラじゃないから、そんなにへらへらしちゃダメだよ……
バレンタインだからそれなりに登校者が多いのかと思ったらそうでもなくて。
私達のクラスは美貴ちゃんと私だけだった。
はぁ〜っと溜め息を一つ。
ふたりっきりでさっきまでは喋っていたけど、外にさゆの姿を見つけたから
美貴ちゃんはそっちに夢中。
こないだの教訓を活かしてるんだと思うけど……
いいな、さゆは。そんな言葉が浮かんで苦笑いをする。
そして溜め息をもう一つ。
授業が始まっても、美貴ちゃんはずっとさゆを見ている。
飽きないよね、愛しい人を見てるのは……
- 280 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:18
- 「梨華ちゃん?」
何回目かの溜め息をついたあたりで声をかけられた。
美貴ちゃんはちょっと呆れ顔。だって溜め息の理由なんてバレバレなんだろうから。
それでもこうやって気にかけてくれるあたり、ほんとに優しい人なのだ。
「バレンタインって悲しいね」
「あのね、何をいきなり……」
「だってあのバカ誰のでも貰って嬉しそうなんだもん」
「バカって愛する人をつかまえて酷いな〜」
「ごっちんと競争してるんだよ、信じられる?」
「や、美貴にはわかんない」
「だよね、美貴ちゃんってば案外一途だったりするし」
「おい、案外って失礼だな」
と言いつつへらへらと笑って美貴ちゃんは頭を撫でてくれた。
もう、さゆを見てたまんま緩みまくってるじゃん。
「梨華ちゃんはあげたの?」
「放課後にあげようと思ってるの。美貴ちゃんは貰ったの?」
「うん。朝もらったよ」
「そう……珍しく一緒に登校してきたんだっけ?」
「迎えにいったんだ〜」
「……それ以外は?」
「貰ってないけど」
きょとんってそんな感じの美貴ちゃん。
ほんとにさゆからしか貰ってないんだ……
去年なんて貰い過ぎたとか言って、絵里と私の家に配りに来たのに。
「今年はさゆがいるからかな?」
「ん〜、どうだろうね。貰ってくださいとは言われたりしたけど」
「えっ?それって断ったから1個しか貰ってないって事?」
「そうだよ。重ちゃんからしか貰わないようにしようと思って」
- 281 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:19
- 笑顔で言い切られた。
ちょっと、美貴ちゃんって素敵とか思っちゃった。
私は3時間目くらいに学校に来たんだけど、すでに美貴ちゃんは来てて
図書室で時間を潰してた。
そんな早く来てて、誰からもチョコを受け取らなかったんだ。
「美貴ちゃんと付き合えばこんな思いしないわけだ」
「な〜に言ってんの?よっちゃんだから好きなくせに」
「そうだけどね……時々思うの。優しすぎるのも罪よね」
「それがよっちゃんの良さだと思うけど。それに優しさにも種類があるじゃん」
「美貴ちゃんみたいなのも優しさだもんね」
わかってるんだよ、ひとみちゃんは断る事が出来ないだけだって。
俯いた頭上から能天気な美貴ちゃんの冗談が聞こえた。
「なんだったら美貴と付き合っちゃう?」
「ばか……でも、それもいいかもね」
ゴツンっ!!!
って音がしてビックリして顔を上げると、ひとみちゃんがいつの間にかいて……
「ちょっとひとみちゃん?」
「美貴!なにくどいてんだよ……それに梨華ちゃんも梨華ちゃんだよ」
「冗談に決まってるでしょ…美貴ちゃん大丈夫?」
「痛い〜」
「さゆが見てたわよ絶対に……」
「知るか……」
窓の外を見るとさゆがこっちを見ていた。
なんだか怒ってるように見えるんだけど、気のせいかな……
- 282 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:19
-
******
- 283 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:20
- 「ミキティ〜いるか〜い」
「あっ、ごっちん」
美貴がそっちを見るとごっちんの後ろからひょこっと重ちゃんが顔を出した。
珍しいな3年生の教室に来るなんて。
他の生徒はいないから、美貴と梨華ちゃんそれに後から来たよっちゃんしかいないけど。
「さゆみ、どしたの?」
ごっちんの後ろから歩いてきた重ちゃんに声をかけると
涙をいっぱいためた目で見つめられる。
み、美貴なんかしたっけ?また梨華ちゃんと喋ってたから?
でも今日はすぐに気づいて手とか振ったじゃん……
「みーちゃんチョコあげるの」
「へっ?朝もらっ」
「一緒に食べよう?」
「えっ、うん。それはいいんだけど」
ぎゅーっと腕を掴まれて身動きが出来ない。
なんで泣きそうなんだろう。頭の中は「?」が飛び交っている。
- 284 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:20
- 「いいなぁ」
ごっちんの呟きに重ちゃんはカバンから小さな包みを出した。
「後藤さんのです」
「あはっ、やった〜。みっちぃーありがと」
「こっちが……石川さんに」
「あ、私も?ありがとう。あとで美貴ちゃん家に行くんだよね
そのときに私から二人へのチョコ渡すね」
次は当然自分だと思っていたよっちゃんは、なかなか貰えないので
重ちゃんに声をかけた。
「吉澤さんには無いです」
「な、なんで?」
「暴力はよくないの」
「あ、あれは美貴が……さゆぅ」
「たとえ相手に非があっても暴力はダメです」
強い口調で言われてしゅんとしたよっちゃん。
ごめん助けてあげたいけど、結構叩かれたの痛かったんだよね。
- 285 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:21
- 「ごねんね、さゆ」
「石川さんは悪くないです」
「うん、そうなんだけどね……」
困ったように眉を下げる梨華ちゃんを見て可哀想になったのか
重ちゃんは鞄からチロルを出してよっちゃんにあげた……
それ常備してるチョコだよね、たしか。いっつも鞄に入ってるもん。
それでも嬉しそうにするんだから、よっちゃんは偉い。
さっき渡されたチョコを見て思う。これってよっちゃんのじゃ……
まっ、いっか。美味しかったから、また食べれて嬉しいし。
「じゃ、みーちゃん。後藤は帰るね〜」
「みーちゃん言うな!」
「あはっ、ばいば〜い」
かなりのチョコをゲットしたのかご機嫌で帰っていくごっちん。
またからかわれる人が増えた……
ようやくよっちゃんが言わなくなったのに、みーちゃんって。
- 286 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:22
- 「そうだ、美貴はチョコもらったの?」
「さゆみからはもらったけど」
「じゃなくって、それ以外」
「もらってないよ」
「マジで?」
「うん」
そんなに驚くことじゃないだろうって思うんだけど。
「ひとみちゃん帰るわよ」
「そうだ、梨華ちゃんから貰ってない」
「欲しいの?」
「欲しいです。一番欲しいです。他のチョコ取り上げられても梨華ちゃんが欲しいです!」
梨華ちゃんの顔が嬉しそうに綻んでいく。
よっちゃんは「梨華ちゃんが欲しい」とか言ってるし。
絶対に違う意味を込めてるだろ……
二人ともバイバイすら忘れて、帰って行った。
梨華ちゃんのさっきまでの溜め息はなんだったんだろう?
まぁ、暗いよりはいいよね。
- 287 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:23
-
「藤本さん他には貰ってないんですか?」
「うん。貰ってくださいって言われても知らない子だったし」
「そうなんですか……」
「さゆみからもらえて嬉しかったし」
なんだか俯いて落ち込んでる?
よっちゃんのこと気にしてるのかな……
「このチョコ、よっちゃんの?」
「……はい」
「あげなくていいの?」
「だって藤本さんのこと、ぶったもん」
「あれは冗談でだよ、よっちゃん悪くないからさ」
「でも、どんなことがあっても叩くのはダメ」
「そうだけど、許してやってよ」
「わかりました。でもそれは一緒に食べましょう?」
甘えるように身を寄せてくれたから、そのまま抱きしめた。
誰もいない教室で、こうして二人でいられることは嬉しいけど。
やっぱり元気が無いことが気になって顔を覗き込む。
「ほんとにどうしたの?」
泣きそうな顔にたずねたけど、美貴の肩に顔を埋めてなんでもないって首を振った……
そんな顔してるときは、なんでも無いはずがない。
いつだって隠そうとするのは悪い癖だよ、ちゃんと話してほしい。
- 288 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:24
- 「ほんとはね」
重ちゃんはぽつりと呟いた。
「ほんとは藤本さんだけにチョコを作るつもりだったの」って。
そんなこと気にしてたのか。
「だいじょうぶ。義理でしょ?」
「でも……」
「美貴のまで義理だったら泣いちゃうけどね」
「それは絶対無いです!」
「あははっ。だったら大丈夫だよ」
きっと大切な人たちへのプレゼントは間違ったことじゃない。
美貴にだけもっともっと特別であれば、それだけで満足なんだよ。
「でも藤本さんが誰にも貰ってないって聞いて…」
「美貴が勝手にしたことだよ。さゆみのだけ欲しかったんだ」
「来年からは藤本さんだけに作ります」
「うん。じゃあ来年」
ずっと先の約束をしてしまうのは怖いけれど。
大丈夫、守ってみせるから……
- 289 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:24
- 指きりの変わりに口づけた。
彼女の頬をつたった涙が口元に流れ、繋がる唇を濡らした。
溢れそうな想いはいつだって涙に変って零れおち、二人を繋ぐ。
「好き」
愛してると伝えるにはまだ少し早すぎるから
いまは『好き』だとシンプルに想いを伝えよう。
溢れそうな想いをぜんぶこの一言にこめて……
それに、来年は手作りしてみてもいいかなぁ。
「みーちゃん、だいすき」
甘く響くその言葉を聴きながら美貴は想った――――――
- 290 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:25
- アーモンド花言葉【希望、真心の愛】
―――――― おしまい。
- 291 名前:アーモンド 投稿日:2006/02/14(火) 16:25
-
- 292 名前:日季 投稿日:2006/02/14(火) 16:26
- >>271-290更新終了。
前回の更新の最後に、期待せずに……とか書いて返って自分の首を絞めたような気がw
そんなあほ作者をこれからも見守ってください(T▽T;)
甘くなったのか自分でよくわかりません……orz
- 293 名前:日季 投稿日:2006/02/14(火) 16:26
- レスありがとうございました!
>>267 名無し飼育さん
85年組いいですよね……
ごめんなさい、期待してもらって嬉しいですがごめんなさいw
从*VvV)<甘かった?
>>268 前29さん
よかったと言ってもらえて良かったw
りかみきの友情が好き……すっごく嬉しいです♪
(*^▽^)<期待させて(0´〜`)<ごめんよぉ。
>>269 名無しさん
( *´ Д `) <ありがとー!
あほ会話だいすきとか嬉しいですw
ついついあんな会話をさせちゃうんですよ……
从*・ 。.・)<いつでも甘い藤本さん大好きなの。
>>270 腰痛に苦しむ読者さん
花言葉は他にも色々あるのですが、あえてこの3つを選びました。
いろんなことに気付いてもらえて嬉しいです、ありがとうございます。
从*VvV)<重ちゃんのためな〜ら……がんばります。
从*・ 。.・)<うさちゃん大好き(藤本さんはもっと好きなの)
- 294 名前:名無し 投稿日:2006/02/14(火) 17:15
- さゆにとことん甘くデレデレなミキティ-がだいすきです
甘やかしてますねほんとにw
でも所々切なくて。。。
次回更新も楽しみにしています。
- 295 名前:初心者 投稿日:2006/02/14(火) 20:32
- ぬぉ、アイビーに間に合わなかったorz
更新お疲れ様です
お風呂セット可愛くてさゆにぴったり、迷いながら買っちゃうミキティ可愛すぎます
あとチロルがとっても良かったです、喜んでるよっすぃもそこは幼馴染の素敵な関係ですね
しかしさゆママの言葉が気になります
次回更新楽しみに待ってます
- 296 名前:前29 投稿日:2006/02/14(火) 21:51
- シンプルな言葉に込められる二人の気持ちがすっごくいいですね〜ww
ほんとにかっけえわ・・美貴様ww
どっかのおバカさん(ヲイ!! とは違いますねw
でもおバカさんを包み込むいしかーさんのこの雰囲気もめっぽう好きなんで♪
甘いチョコより甘いお話、ありがとうございました。
- 297 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/18(土) 20:32
- 脇役の絵里も好きです。いい子ですよね〜
さゆみき可愛くて最高(^O^)/
- 298 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:21
- 「何をプレゼントするの〜?」
「藤本さんの星座石」
「美貴ちゃんの?」
「アクアマリンなんだって」
絵里にプリントアウトした宝石の紹介を見せた。
「なになに……アクアマリンは」
知的でクールなイメージ。しかし石にはもっと穏やかな、母性が宿されています。
決して受身ではなく、自らが愛情を注ぎ、優しく包み込む……
そんな女性に相応しい宝石です。
「すっご〜い」
「でしょ?藤本さんにきっとぴったりなの」
沈着、聡明、勇敢、幸運を呼ぶ、心の平和、知恵
そして、ロマンチスト。
たくさんの宝石言葉は飾りでしかないけれど……
それでもどの言葉もぴったりと当てはまるような素敵な人だから。
- 299 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:22
- 色々と見せてもらったけど、シンプルで可愛いのはやっぱり……
一目惚れしてこれをあげようって決めたの。
自分もお揃いで買おうか迷ったけど、藤本さんのだけを買うことにした。
「さゆ、予算は?」
「大丈夫」
「じゃあ買っちゃう?」
「うん」
お店の人に尋ねたらアクアマリンがちょうど品切れで……
「あの26日までに欲しいんですけど」
「ちょっと問い合わせてみますので、少々お待ちいただけますか?」
「はい、宜しくお願いします」
しばらくしてお姉さんが戻ってきた。
どうやら23日に入荷するみたいで予約だけを済ませた。
これだったら25日に勉強教えてもらって、そのまま泊まってもらえる。
ママには許可をもらってるから、後は藤本さんに予定を聞いて……
泊まってくださいって素直に言えばいいよね?
- 300 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:22
- 「間に合ってよかったね〜」
「絵里、一緒に来てくれてありがと」
「どういたしまして。まだ時間あるよね?」
「あるけど」
「お茶飲んで帰ろうよ〜、さゆの奢りで」
「はいはい。付き合ってもらったお礼するね」
やったーと喜ぶ絵里となんだか軽い足取りで店を後にした。
早く来ないかな誕生日。藤本さん喜んでくれるといいな……
- 301 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:22
-
******
- 302 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:23
- 「もうすぐだね〜」
「なにが?」
「美貴ちゃんの誕生日と卒業式」
「あぁ」
「もう関心無さすぎ〜」
「だって実感がさ、わかないんだもん」
「まだ?」
「だって梨華ちゃんみたいに生活スタイルが変るわけでは無いじゃん」
美貴は実家から通うわけだし、バイトも今行ってる所だし。
あんまり変らないように思うんだよね。
「でも同じ学校にさゆはいないよ」
「まぁ、そうだけど。学年が違うからね」
「そっか〜」
「昼休みに逢えないくらいかな」
「でも今よりも、大学行ったら逢えなくなるよ?」
「放課後とか逢える日は迎えに行こうかなと……」
「偉い、偉い」
「だぁーーー頭を撫でるな!」
- 303 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:23
- 何かある度に美貴を子供扱いする性質の悪いクセがついちゃってて困る。
それに4月から必要なものとか、なんで今から買いに行くわけ?
まだ2月じゃん。それによっちゃんと行けばいいのに……
今日はよっちゃんがバイトのため、美貴は昼前に叩き起こされて梨華ちゃんに付き合わされてる。
お昼奢ってもらったからいいけど。
「今日は予定無いって言ってたじゃん」
「言ってたけど」
「だから、暇かな〜って美貴ちゃんを誘ったわけ」
「すっごい迷惑……もっと寝たかったのに」
「それに誕生日プレゼント買おうと思って」
「誰の?」
「美貴ちゃんに決まってるじゃん」
「決まってるって言われても……」
美貴は初耳なわけで、そんな自信満々に言われても困るし……
まぁ気持ちだけ有難くいただいておくよ。
「ぶっちゃけ美貴は荷物持ち要員でしょ?」
「えへっ、そんなわけないじゃ〜ん」
いや思いっきり「そんなわけあるじゃ〜ん」って顔して言われても
説得力無いわけで……
- 304 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:25
- 梨華ちゃんの胸元には、よっちゃんからのプレゼントが見え隠れしてる。
忠誠を誓う愛の石なんだって、くさいなあのおっさん。
「よっちゃの誕生日なにかあげる?」
「もちろん。けっこうお金貯まってるんだよね」
「そっか。普段は……」
「よっすぃ全部払っちゃうから使う事が無くて」
デート代はほとんどよっちゃんが出すらしい。
美貴はあんまり外に行かないからお金使う事が無いんだよね。
今年こそは脱インドア目指そう……
「話し戻すけど美貴ちゃんの誕生日じゃん」
「うん、それはさっきも言ってたよね」
「ねえ、何が欲しい?」
ふっと向けた視線の先に見慣れた人の姿を見つけた。
学校終わったってメール着てたっけ……
「梨華ちゃん」
振り返って梨華ちゃんを見ると目を見開いてビックリしている。
美貴なんかしたっけ?
- 305 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:26
- 「美貴ちゃん、それだけは無理だよぉ」
「はっ?」
「美貴ちゃんのこと好きだよ。でも前にそういう対象じゃないって言ったじゃん…
私だって同じ。大切な幼馴染だけど、そんないきなり無理だよぉ。
それに私にはひとみちゃんがいるの……だから、そのプレゼントはあげられないの…
あれ?美貴ちゃん?」
早口で色々言われて、訳ワカンナイって顔をして見てると
その様子に気付いたのか梨華ちゃんはようやく落ち着いて言葉を止めた。
「いったい話がどうなってるのかわからないんだけど?」
「だって美貴ちゃんに『何が欲しい?』って聞いたら、『梨華ちゃん』って」
がくっと項垂れる。いや違うから。
どんなストレートな告白だよ、それ……
「違うから。美貴はただ名前を呼んだだけ」
「そうなの?よかったぁ」
「だから梨華ちゃんは有り得ないんだって」
「またそんな言い方する〜」
ぐいっと腕を引っ張って指差した方を向かせる。
あれ。あれを見たから梨華ちゃんに話しかけたんだって。
- 306 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:26
- 「さゆ?」
「と絵里だよね」
「ジュエリーショップだね、あそこ」
「だよね」
一生懸命になにかを見ている様子。
キラキラ可愛いものが好きらしいから、何かほしいものでもあるのかな。
「中に入ったよ」
「後で行ってもいい?」
「いま行かないの?」
「うん」
絵里と二人で出かけるって珍しく遊ぶの断られたから気にはなっていたんだ。
確かに美貴はああいう店をず〜っと見てるとか無理だけど
重ちゃんとならちゃんと付き合うのにな……
「もうすぐ1年はテストだけど、勉強教えに行くの?」
「来週からね」
「違う勉強とかは教えないの?」
「はい?」
「そんなわけないわよね」
「当たり前じゃん」
これ以上からかわれたくなくて、足早に歩く。
待ってよ〜なんてちょこちょこついてくる梨華ちゃん。
- 307 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:27
- 「美貴ちゃん怒っちゃや〜だ〜」
「怒ってないし」
「だって歩くの速いもん」
「喉渇いたな〜」
「ジュース奢るから〜」
立ち止まって振り返ると眉を下げてもう一度謝られた。
だから別に怒ってないんだって。
「荷物、預けようよ」
「そうだね」
「それから付き合って、さっきの店」
「ジュースは?」
「後で良いや」
駅に荷物を預けて戻って来れば多分いなくなってるだろう。
そう思って梨華ちゃんが持ってた分まで頑張って荷物を運んで預け
ひき返して来たら……
「まだいるみたい」
「だね」
「長い時間見てるね」
何か迷ってるのか色々と見ているようだ。
そんなに欲しいなら言ってくれたらいいのに。
- 308 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:27
- しばらくして店から出てきた重ちゃんと絵里。
「買ってないのかな?」
「何も買って無いみたいだね」
帰って行く二人の姿を見送ってから梨華ちゃんとお店に入った。
梨華ちゃんは自分も見たいものがあるからと、店の奥にあるショーケースを見に行ってしまった。
「あの〜、すいません」
「はい」
「高校生くらいの子にプレゼントしたいんですけど、何かいいものはありますか?」
「誕生日などに贈るもので宜しいでしょうか?」
「そうです。出来れば学校でもつけられるような感じの……」
うちの学校は指輪とかピアスとかに煩い。まぁピアスは見えなければ大丈夫だったけど。
「こちらの商品はいかがですか?」といくつかの小さなリングを見せられた。
ベビーリングと言うらしく、ペンダントに通して身につけるものだという。
「ピンクはありますか?」
「ピンクトパーズなどいかがでしょうか?」
「じゃあ、それください」
「ありがとうございます」
宝石にあまり詳しくないから、お姉さんの提案に即答した。
買い物に行くって言われて、バイト代下ろしてきてよかった〜。
余裕で買えたじゃん。っていうか去年あげたでっかいウサギのぬいぐるみよりも安いなんて……
でも、あのうさぎは気に入ってるみたいだし
去年はあれで良かったんだよね。そう自分に言い聞かせる。
- 309 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:28
- 「美貴ちゃん買ったの?」
「うん、重ちゃんにあげようと思って」
何かあげたいって思ってたから、ちょうど良かった。
喜んでくれるかな、ビックリするかな……
へへっ、やばい顔が緩んでる。慌てて引き締めようとしてたら
案の定、梨華ちゃんにキショいよって言われた。
「でも特別な日じゃないのにプレゼントするなんてカッコイイ〜」
「へへっ、だろ〜。美貴に惚れるなよ」
「絶対無いから大丈夫」
「梨華ちゃんに言い切られちゃったよ」
なんだかわからないけどテンションが上がってて
なんでもない事が可笑しくて梨華ちゃんと笑いあった。
普段は買い物なんかに付き合ったら、めちゃくちゃ疲れるんだけど
今日は帰りの足取りもすごく軽かった。
- 310 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:28
- ◇ ◇ ◇
- 311 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:28
- 家に帰って調べると重ちゃんの誕生日石がトパーズだった。
まぁ、ピンクであっても問題ないだろう。偶然とはいえ美貴ってばやるじゃん。
それにしても誕生石に星座石、誕生日石……いろいろとありすぎて意味がわかんない。
どれでも好きな石を持ってればいいように思うけどな。
語源はギリシャ語の「捜し求める」という意味のtopazosからきています……
へ〜すごいなぁ。石にも色々とあるんだ〜。
よっちゃんが梨華ちゃんへのプレゼントを決める時に、なんであんなに調べたのかようやくわかった。
どうせあげるなら、ちょっとでもカッコつけたかったんだろうな。
他にも色々書いてるな〜、ちょっと勉強しておこう。
創造性や感受性を高めて、幸福、友愛、希望をもたらす石と云われていて
トパーズを身につけると、生涯における素晴らしい人との出逢いがあると信じられています。
素晴らしい人にはもう出逢ってるけどね、なんちゃって。
だめだ、すごい頭がゆる〜くなってる。
いまの顔は見せられないな、絶対に……
- 312 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/19(日) 20:29
-
- 313 名前:日季 投稿日:2006/02/19(日) 20:30
- >>298-311更新終了。
藤本さん誕生日編です。
今回が前編。次回は後編を誕生日前後に更新予定です。
- 314 名前:日季 投稿日:2006/02/19(日) 20:30
- レスありがとうございました!
>>294 名無しさん
从*VvV)<ありがとう〜
藤本さん甘やかしてますね、甘いですほんとにw
卒業はやっぱり悲しいですからね……それが新しい始まりになるのですが。
>>295 初心者さん
お風呂セットはお店で見た瞬間に使おうと想いましたw
よしさゆ幼馴染の関係も良好です、気付いてもらえて嬉しいです。
さゆママの発言はいずれ解るかと……
从*・ 。.・)<さゆみも気になるの。
>>296 前29さん
从*VvV)<かっけえとか照れるよ〜。
おバカさんな吉澤さん、ほんとは一番賢い設定なのですが
いつのまにかこんなキャラに……。(*^▽^)<包んであげる〜(´〜`*)
こちらこそ読んでもらえて嬉しいです、ありがとう。
>>297 名無飼育さん
リd*^ー^)<えへへへへへ
絵里を好きと言ってもらえて嬉しいです。
みきさゆも頑張りますのでよろしくお願いします。
- 315 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/19(日) 21:01
- りかみき会話がイイ!(゜▽゜)
>>305の梨華ちゃんかわいかった〜w
さゆはまじで好きなんだね、羨ましいぞミキティ
- 316 名前:名無し 投稿日:2006/02/20(月) 00:12
- 更新おつです
ミキティ-ゆるーくなっちゃうところがカワイイw
続きも楽しみにしてます。
- 317 名前:初心者 投稿日:2006/02/21(火) 01:29
- 更新お疲れ様です
自分の誕生日とかはあんまり気にしそうにないのがミキティっぽくていいですね
さゆもミキティが喜ぶのを想像して顔が緩むのかなと想像しちゃいました
誕生日が待ち遠しいです
次回更新楽しみに待ってます
- 318 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/25(土) 23:57
-
「藤本さん!」
「ん〜?」
「なんでもないで〜す」
「なんだよ、それっ」
キツイ口調もどこか楽しげで。
髪を乾かしながらご機嫌な藤本さんは、いつも以上に可愛い。
「週明けからテストだね」
「どうして3学期って範囲が多くなるんでしょうか…」
「うちの学校は酷いよね」
「もう大変ですぅ」
月曜にテストがある教科の勉強が一段落して、一緒にお風呂に入った。
結構がんばったせいで、もう11時過ぎになっちゃって……
そう誕生日前日の今日、藤本さんは私の家に泊まってくれることになった。
これで一番におめでとうって、さゆみが言えるの。
「あんまり見つめないで。照れるじゃん」
「えへへ、だって大好きなんだもん」
「ん、ありがと」
「みーちゃんは?」
背中に抱きついて顔を覗き込むと真っ赤になっていた。
あっ、またやっちゃった……
- 319 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/25(土) 23:57
- ダイレクトに感触が伝わってしまうから、ちょっと困るんだって
前に言われた事があったの。
その時は意味がわからなくて、何度も聞き返して困らせてしまったっけ……
「す、好きだよ」
ちょっと焦って答える藤本さんの体がガチンと固まってしまってて
申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
でも、怒られるかもしれないけど…こんな所が可愛くて大好き。
もう少しこうしていたかったけれど、そっと離れた。
「さゆみはもっと好きなの」
その言葉に力なく笑った顔が鏡に映った。
コトンとドライヤーを置いた藤本さん。
「じゃ、もっともっと好き」
振り返った瞬間にキスされた。
次の言葉を塞ぐよう触れた唇は、私のすべてを包んでくれるように暖かい。
- 320 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/25(土) 23:58
- ぽーっとただ藤本さんを見てた。
こんな時に自分よりも年上なんだと痛感する。
普段見せないような顔をするから……
薄く綻ぶ口元が大人っぽくて、その微笑に誘われるように目を閉じてしまう。
かるく触れるだけのキスなのにカラダ中が熱に侵され熱くなる。
きっとあなたに出逢わなければ、こんな感覚を覚えることは無かったかもしれない。
唇が離れても熱く柔らかな感触が離れなくて、胸がギューっとしめつけられる。
ただ触れただけなのに息が詰まるほど緊張してしまった。
熱を上げた頬を見られないように俯いていると、優しい掌が頬を撫でる。そして、瞳を覗き込まれた。
見つめられ絡まる視線も熱をおびて溶けそうなほどに熱い。
薄く微笑み伏せられた視線、伏し目の藤本さんは世界一キレイだと思う。
ずっと見ていたかったけど、近づいてくる気配に咄嗟に瞼を閉じる。
「んっ……」
唇の形を確かめるように優しくなぞられ、舌で濡らされる。
「はぁっ……んぅ……」
するりと絡められた舌の熱さに思考ごと掠め取られていく。
- 321 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/25(土) 23:58
- 指先の震えを誤魔化すように藤本さんの服を握りしめた。
やっぱり慣れない、何度口づけられても……
強く抱き寄せられ重なり合う心音は、壊れそうなほど早鐘をうっている。
滲む涙がスーッと頬をつたっていくのを感じていると、藤本さんの唇がゆっくりと離れた。
頬をつたった涙を見て慌てながら髪を撫でてくれる。
「さゆみ?」
優しいその声に安心してほんのちょっと笑ってみせる。
「キスするのヤだった?」
ぶんぶんと首を振る。嫌なわけじゃないんです、ただほんの少しだけ怖くて……
なぜか一緒に涙目になってる藤本さんが愛しくて、ぎゅーっと抱きしめる。
「大好き……」
好きだからもっとキスしたいと思う。けど触れるだけのキスは平気なのに……
意識しちゃってダメなんです。それ以上を求められる事がまだ怖い。
そんな空気を敏感に感じて、すぐに私を気遣ってくれる優しい人。
きっといっぱい我慢してるのに、微塵もそんなことで私を責めない。
- 322 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/25(土) 23:59
- 「まだ怖い?」
「ちょっとだけ……」
「大丈夫だから」と囁いてすぐにまた重なる唇。
微かに震える指先をあなたは1本1本確かめるように絡めた。
固く繋がった指に少しづつ解けていく緊張。
「好き」囁くような声が甘い息とともに発せられ胸に響く。
キスの合間にかかる甘い吐息さえ愛しくて、もっともっととせがむように唇を押し付ける。
触れることしか出来ない不器用なキスを受け止めながら、あなたは何を想うのだろう?
鳴り止まない鼓動が痛いほどに胸を打つ。もう壊れちゃうんじゃないかなんて本気で想う。
スッと唇が離れてほんの少し寂しいと感じた。もっとキスしていたいのに……
咄嗟に浮かんだ感情が恥ずかしくて、頬がカッと熱くなる。
涙が滲んで薄く開いた視界がぼやける。
くたっと甘えるように胸元に寄りかかり、涙を零さないように瞳を閉じる。
上がった息を整える間、私を抱きしめたまま藤本さんは髪を撫でてくれていた。
優しい指の動きにすこしづつ鼓動が落ち着いていく。
- 323 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/25(土) 23:59
- 「そうだ、さゆみにプレゼントがあるんだ」
「プレゼントですか?」
「気付かなかった?」
「あっ……」
藤本さんの首にかけられていたのはベビーリング。
それを外して私の首にそっとかけてくれた。
「これ……」
「ピンクトパーズって言う石なんだって」
「でも、なんで……」
「いらなかった?」
心配そうな声色に慌てて首を振る。
ただ状況が呑み込めないだけで……
お風呂上りにジュースを取りに行った時つけたんだ、だってお風呂場ではしてなかったもん。
「よかった」
「嬉しいです、すごくすごく……」
自分が買おうとしていたピンク色の石がついた可愛い指輪。
それがいま自分の胸にあって。
- 324 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/26(日) 00:00
- 「生涯における素晴らしい人との出逢いを呼ぶ石なんだって」
「他にも意味があったりしますか?」
「意味?語源が『捜し求める』とかだったかな」
もう素晴らしい出逢いは訪れているけど、きっとこれから先の未来を
捜し求めるためのお守りになる石なんだ。
「藤本さんだと想って大切にします」
「へへっ」
これで、少しくらい離れていても大丈夫。
目には見えない絆を感じます。
だって私があげようと想って選んだプレゼントは……
「ちょっと待ってて」
「へっ?あっ、うん……」
抱きしめようとした手から私がすり抜けたから、間抜けな格好になっちゃった藤本さん。
それでも微笑んだらニッコリ笑って「待ってるよ」と言ってくれた。
部屋だとすぐに見つかると思って、プレゼントはママに預けてある。
- 325 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/26(日) 00:00
-
「ほんの少し早いけど、プレゼントです」
「わっ、ありがとう」
開けるね?ってすっごく嬉しそうに包みをほどいていく。
そして笑顔が少しづつ驚きの表情に変っていく。
そう私が選んだのも、同じベビーリングペンダント。
あなたの鼓動の傍にいたくて、選んだんです。いつも私を感じていて欲しいから。
「これっ……美貴に?」
「えへへ、藤本さんの星座石のアクアマリン」
自らが愛情を注ぎ優しく包み込む、そんな意味を持った石なんです。
「藤本さんみたいだなぁって選んだの」
「美貴みたい?」
こくんと頷くとすぐに抱きしめられた。
そのまま囁くから首筋に吐息があたってくすぐったい……
「さゆみみたいな気がするけどな」
「えっ?」
「美貴のこといつだって包んでくれてる」
強くなる腕の力と、じんわりと伝わってくる暖かな体温。
こんなに近くで感じられるのはきっと私だけ。
隙間無く触れたカラダから響きあう心音が聴こえてくる。
- 326 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/26(日) 00:01
- 速くなる鼓動の少し上にお揃いのリングが輝く。
もう卒業が目の前に迫っているけど、ほんの少しだけ不安は消えたように思う。
だって、あなたのぬくもりに慣れて、大切なことを見失わないように……
ほんのちょっとだけ離れることも必要なのかもしれないって想うから。
「お揃いだね」
「えへへ、嬉しい」
「美貴も大切にするから」
「毎日つけてくださいね?」
「うん、外さないよ」
『約束』そう言ってキスをしてくれる。
いつしか指きりからキスに変ってた、約束の方法。
なのに、唇が離れてすぐは照れて目を合わせてくれない藤本さん。
激しい時はじっと見つめたままでも平気なのに、かるく触れるだけの方が照れるみたい。
- 327 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/26(日) 00:01
- 「明日どうしよう?」
「お家でゆっくりしましょう」
「今年の目標は脱インドアなんだけどな……」
「あんまりお外でデートしたことないですね」
「だから、どっか行こうよ。特別な場所じゃなくてもいいから」
「……本屋さんに行きたいです」
「本屋?」
「藤本さんのバイト先に行ってみたいの」
「普通の本屋だよ」
「どんな所か見てみたいんだもん」
「……別にいいけど」
「イヤですか?」
「明日は梨華ちゃんとよっちゃんがいるんだ」
「バイト同じところなんですか?」
「うん、先週からね」
- 328 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/26(日) 00:02
- 「二人がいるとイヤですか?」
「いや、別にそういうわけでは無いんだけど……」
「欲しい本もあるし行きたいです」
「わかった。じゃ行こっか」
「はい!」
「電車で一駅だし、歩かない?」
「お散歩ですね」
「途中にケーキ屋さんあるからケーキ食べよう」
「やったぁ」
「何が食べたい?」
「チョコレートケーキ!あっ、お代はさゆみが出します。だって……」
「いいんだよ、美貴に奢らせて」
「でも……」
「一緒にいてくれるだけで十分、ね?」
「うん」と返事をすると髪を撫でられた。
自分の誕生日なのに奢らせてって……藤本さんらしいけど。
- 329 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/26(日) 00:02
-
「手……」
「手?」
首をかしげながら私の手を握った藤本さん。
今じゃなくって……
「明日、手を繋いで歩いてもいいですか?」
「へっ?あぁ、いいよ。繋ごう」
勘違いしたことが恥ずかしかったのかすぐに手を離してしまった。
ちょっと寂しいからぎゅっと抱きつくと、力なく笑った。
「離しちゃ、やぁだ……」
「ごめん」
「ぎゅーってして?」
背中に回された腕の力が増す。手加減しない藤本さんの愛が真っ直ぐに伝わってくる。
この腕の中はとても安心できる場所。トクントクンと響く心音が心地良くて瞼を閉じる。
特別な言葉を交わしているわけじゃないのに、こんなに幸せ……
- 330 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/26(日) 00:03
- あなたの腕の中で部屋に響く時計の音を聴いていた。
規則正しく刻まれるリズムに、ほんのすこしウトウトしてしまうけど
まだ、誕生日は始まっていないから。
あと少し、もう少しだけ寝ちゃダメだと自分に言い聞かせる。
「さゆみ眠い?」
胸に頬をあずけたまま首を振る。
眠く無いもんと呟くと「そっか」とだけ返事が返ってきた。
とんとんとあやすように背中をたたかれる。だから、眠くないのに……
腕を掴んで少しだけ起き上がる。
真っ直ぐに見据えられた視線がほんのすこし揺れる。
この瞳が好きで、その声が好きで……あなたのすべてが好きで堪らない。
- 331 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/26(日) 00:03
- 時計の針が0時をさした瞬間にキスをした。
これがほんとうのプレゼントになればいいな、そんな風に想いながら……
- 332 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/26(日) 00:04
- エンゼルランプ:花言葉【あなたを守りたい】
―――――― おしまい。
- 333 名前:エンゼルランプ 投稿日:2006/02/26(日) 00:04
-
- 334 名前:日季 投稿日:2006/02/26(日) 00:05
- >>318-332後編更新終了です。
美貴さん、誕生日おめでとうございます(甘い歌声が大好き)
从*・ 。.・)<あいじゃすふぉ〜りんら〜ぶ♪
从*VvV)<あなたにであい〜……なにいろにでもそまるぅ〜♪
- 335 名前:日季 投稿日:2006/02/26(日) 00:06
- レスありがとうございました!
>>315 名無飼育さん
石川さん勘違いし易い性格ですw(*^▽^)<えへっ
りかみき良いと言ってもらえて嬉しいです。
>>316 名無しさん
知らず知らずにへらへらしちゃう藤本さん……w
可愛く出来てて良かったです。
从*VvV)<へへへへっ
>>317 初心者さん
藤本さんっぽいと言ってもらえて嬉しいです〜。
そうですね、道重さんは妄想して一人で照れてるかもw
从*・ 。.・)<いつかさゆみをプレゼント……キャッ
- 336 名前:名無し 投稿日:2006/02/26(日) 00:38
- 更新おつです。二人ともカワイイ!
やさしすぎるミキティ-が好き過ぎて大変ですw
さゆの言動もいちいちかわいくて。。。
ちょっとずつ成長してる二人の今後が楽しみです
- 337 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/26(日) 01:31
- いや〜もうヤバイほどいいです♪
- 338 名前:初心者 投稿日:2006/02/26(日) 02:39
- 更新お疲れ様です
まずはミキティ誕生日オメ! これからもさゆに甘いミキティでよろ
可愛い理由でママに預けてたさゆが可愛すぎです
ミキティもあげる時に心配するなんてこれまた可愛い
大丈夫とは思うけど前歴があるので朝に鼻血出さないように気をつけてミキティ
次回更新楽しみに待ってます
- 339 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/27(月) 22:45
- キスのとこの描写がリアルでドキドキしましたw
「離しちゃ、やぁだ……」 っていう台詞もカワイイですねー萌えw
- 340 名前:名無し読者 投稿日:2006/02/27(月) 22:48
- 甘い 最高!
从*・ 。.・)<離しちゃ、やぁだ♪
藤本さんが羨ましすぎます。
- 341 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/02/28(火) 12:38
- つttp://page.freett.com/sayumiki01/sayumiki49.jpg
あげゆ♥
- 342 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:22
- 「卒業生代表、吉澤ひとみ」
新入生代表の挨拶をしたのもよっちゃんだった。
よっちゃんの挨拶を聞きながら思う。
あれから3年経ったんだなぁって……
入試の成績トップの生徒が代表挨拶をするはずだから、最初の印象は優等生だった。
入学式の時にメガネをかけてたんだ、コンタクトするの忘れたとかで……
余計に知的に見えたんだよね、たしか。
挨拶の声を聞きながらそっと瞼を閉じた。
3年間の思い出に別れを告げるように……
けっこう泣けないもんだな。だって終わりじゃない。
新しい人生がここから始まるんだから――――――
- 343 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:23
-
◇
- 344 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:24
- いつもよりも早く登校した。他に人のいない学校に来てみたかったんだ。
誰もいない1年生の教室。入学した頃を懐かしみながらそっと机に触れた。
イタズラで自分の名前を彫って、中澤先生にめちゃめちゃ怒られたのを覚えてる。
「美貴ちゃん?」
名前を呼ばれて振り返る。
教室の入り口で佇む絵里は不思議そうに美貴を見ていた。
「1年のとき、このクラスだったんだ」
「それでお別れ言いに来たの?」
「そうだよ、懐かしいなぁってね」
一つ一つの机を探して……
「あった!」
「なにがあったの?」
「これ……ってあれ?」
美貴が指でなぞった場所を覗き込んだ絵里。
「これ、さゆが使ってる机なんだよ〜」
「みたいだね」
1年のときに美貴が使っていた机。
色褪せた自分の名前。その隣に彫られた真新しい彼女の名前。
運命なんて口にしたくないけど、きっと美貴と重ちゃんは……
- 345 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:24
- 「おはようございます藤本さん!……えり?」
美貴の姿を先に確認して元気よく挨拶した重ちゃんは
絵里のことも見つけて不思議そうな顔をした。
「おはよ〜、さゆも早かったね」
「うん……藤本さんからメールが着たから」
「そっか……絵里って邪魔だったりして〜」
「そんなことないの!」
自分の否定の声がちょっと大きすぎたことにビックリしたのか
重ちゃんは口を押さえた。絵里はそんな重ちゃんに優しく微笑んだ。
「さゆ〜だいすき〜」
じゃれて抱きつく絵里を重ちゃんは優しく抱きしめた。
っておい!美貴を無視して何してんだ……
なんとなく面白くなくて窓の外に視線を泳がせた。
「あっ、美貴ちゃんがヤキモチ妬いてる」
「や、妬いてないから!」
「美貴ちゃんも大好き」
「うわっ……ちょ、絵里?」
思いっきり背中から抱きつかれて焦る。
目の前に重ちゃんがいるのに……
- 346 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:25
- 『美貴ちゃんの背中だいすきだったよ』
消えそうな絵里の呟きにビックリして声が出ない。
なんでそんな切ない声で……
「卒業おめでとう美貴ちゃん。絵里、式が終わったらすぐ帰るから今言っちゃうね」
「あぁ、うん。ありがと」
「これからも大切な幼馴染だよね」
空元気。絵里の声が泣き出しそうで胸が締め付けられた。
「当たり前じゃん。絵里は大切な幼馴染だよ」
「さゆは?」
「へっ?」
絵里の質問を聞きながら、真っ直ぐに美貴を見つめる眼差し。
近づく距離に戸惑っていると、重ちゃんは美貴をぎゅっと抱きしめた。
絵里ごと美貴のことを抱きしめて……
「さゆみへの気持ちは二人っきりの時だけ聴かせて欲しいです」
耳元で囁かれる。コクコクと頷くとそっと腕を離した。
- 347 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:25
- 「えり、いい加減離れて」
「うん、さゆごめんね」
「さゆみもえりのこと大好き」
ぎゅっと美貴から離れた絵里を抱きしめた重ちゃん。
絵里は嬉しそうにその腕の中で瞼を閉じた……
って、だから美貴の目の前でするんじゃない!
「そういえば絵里はなんで早いの?」
「中澤先生に式の準備手伝えって言われたんだよ〜、さゆもね?」
「そうだったの……」
「忘れてたな〜。美貴ちゃんのメールでは飛んでくるくせに……」
えへっなんて誤魔化し笑いをして重ちゃんは頭を掻いた。
必死で緩む頬を抑えたのに絵里にニヒヒヒヒと笑われた。
「美貴ちゃんなんかさゆに用事だったんだよね?」
「あっ、式が終わったら屋上で逢いたいんだ」
「わかりました、すぐに行きます」
「美貴のがちょっと遅くなるかもしれないけど、必ず行くから」
頷いたのを確認して美貴は自分の教室に向かった。
- 348 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:26
-
◇
- 349 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:26
- 「藤本〜」
「先生くっつかないでください!」
「ケチ〜」
「ケチとかじゃないですから!」
「もう寂しいな〜、裕ちゃん泣きそうやわ〜」
「はいはい、美貴がいなくなってそんなに寂しいですか……」
「重ちゃんの担任が終わると思うと寂しいわ〜」
「そっちかよっ!」
突っ込んだ事が嬉しかったのか先生はご機嫌だ。
来年はどうか担任が中澤以外でありますように……
「まぁでも1枚くらい写真一緒に撮ったってもええで〜」
「なにを……撮ってください」
「なんや素直やな〜ほんま可愛いわあんた」
「はいはい、今日も可愛いですよ」
「ほんま重ちゃんに染められてからに」
「えっと誰に撮ってもら……って先生何やってるんですか!」
- 350 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:27
- 美貴がキョロキョロしてる間に梨華ちゃんに抱きついてた。
ほんとにあんたって人は……
よっちゃん泣きそうになって見てるなら阻止しなさい、阻止を。
「こわっ、藤本がお怒りやから離れよう」
「裕ちゃんごとーも写真撮って〜」
「この際4人で撮ろう、はい先生カメラ」
「え〜裕ちゃんも一緒にいれて〜や〜」
「冗談ですからいじけないでださい!」
「まぁ、ええわ。先にあんたら4人撮るで〜」
急にカメラを構えられて焦ってポーズをとる。
「はい、やぐち〜」
「はっ?」
「はっ?や無くて『やぐち〜』や。キムチと同じ原理やん」
「そうですか……」
4人でヤグチ〜と言うと満足そうにシャッターを切った。
- 351 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:28
- そして先生は「おしまい」って言った後に、
「ありがとうございました」と言いながら笑った美貴達を不意打ちに撮影した。
自然に笑えてたからって……
「ほんまあんたら居なくなるなんて不思議やな〜」
「そうですね、この制服着るのも最後だし」
「石川と吉澤はたまにそれでイイコトしたらええけど、藤本はあかんで」
「な、なにを言ってるんですか……」
「そうですよ〜、石川だってそんなことしません!」
「いやいや梨華ちゃん嬉しそうに言っても説得力無いから」
「だってひとみちゃん制服好きだし」
「はいはいそうですか……」
隣でよっちゃんは苦笑い。でも否定しないんだね。
というか先生が生徒にそんな発言しても良いのか……
「騒がしかったけど、良い子らやった」
急にしんみりして言うから、ほんの少しだけ実感する卒業。
明日からはこの学校に来ることも無いのかな。
- 352 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:28
- 「まぁ、重ちゃん見に体育祭とか文化祭とか来てもええで」
「先生に言われなくても来ます」
「でも学校でのイチャイチャは禁止」
「し、しませんよ!」
「それと屋上行くんやったら今日が最後やで」
「ななななんでそれをっ!」
「藤本はわかりやすいねん。さっきから屋上ばっか気にしてる」
がくっと項垂れた美貴の頭をぽんぽんとたたきながら
先生は豪快に笑った。
「早く行ったり、重ちゃん待ってるんやろ」
ぽんっと背中を押されてちょっとよろける。
よろけた美貴の腕を支えてくれたのは梨華ちゃんだった。
「美貴ちゃん一緒に帰ろうね、さゆも」
「うん、今日だっけ?おばあちゃん家に行くの」
「そうだよ、忘れないでね。待ってるから」
お肉のお礼を言いに行こうって前に決めたんだよね。
「バーバーに卒業証書見せに行くの」って梨華ちゃんが言ってたから
じゃあ美貴も一緒に行ってお肉のお礼言うよって。
- 353 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:29
- 「藤本、最後に一言!」
「な、なんですか唐突に」
「心の中でも名前で呼んだり」
「えっ?」
「重ちゃんって言われるの嫌みたいやで」
「……わかりました」
心の中まで読まれてたのか……
先生ってなにもの?
でもたまにそう呼んでるのをどっかで聞いたのかな。
重ちゃんが気にしてるのかもしれない。
あの子はなぜか名前で呼ばれることに拘ってたし。
ちゃんと心の中でもさゆみと呼ぼう。
彼女の望むことは何だって叶えてあげたいから。
- 354 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:30
-
******
- 355 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:30
- 「卒業式終わっちゃった」
見下ろした校庭はたくさんの生徒で賑わっている。
藤本さんに出逢ったこの屋上。あなたにとって私は特別なんだと感じられた場所。
元々出入り禁止なんだけど、4月から本格的に立ち入り禁止になる。
だからココへ来るのも今日で最後、ココで二人きりで逢えるのも最後……
そっと瞼を閉じて手すりにカラダを預ける。
はじめはすっごく怖かったあの眼差し。いつの間にかやわらかく私を包んでくれるようになった。
冷たく感じる言葉の裏にいつも不器用な優しさをもっていた。
あなたに出逢う直前まで私の心を虜にしていたのは……
ほんとに泣いていた理由。伝えたことはないけど、もうとっくにバレちゃってるかな。
私の初恋が吉澤さんだって知った時に、気付いちゃったよね。
でも初恋は幻、あなたを好きになった事が真実。
好きになった瞬間が自分でもわからないくらい、自然に惹かれていた。
- 356 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:31
-
「ねえ、飛び降りたりしないよね?」
あの日と同じ言葉で声をかけられた。覚えてたんだ、初めて会った日のこと。
「えっと、それから……」
私の隣にきた藤本さんは手すりに顎を乗せて、そっと上目遣いで私を見上げた。
今日もとっても可愛いの……
「今日は泣かなかったんだね。あれっ違うなぁ、でもそんな感じだったよね」
「はい。2回目に逢ったときですね」
「へへっ、そう。覚えてた?」
「覚えてますよ〜」
『今日は泣いてないんだ』優しい声だった。
忘れられるわけが無い。たぶんあなたのこと意識し始めた日だと思うから。
「な〜んで惹かれたのかな。よく憶えてないんだ……」
「私も一緒です」
「怒られると思った」
「いま大好きでいてくれるから、昔のことは気にしません」
「大人だね〜……でも、まだまだ可愛い感じでいてほしい」
そっと髪に触れてから屋上の入り口の扉まで歩いていく。
手招きされて慌てて傍に寄り添うと急に抱きしめられた。
「座ろっか」
「はい」
座ってしまえば校庭からは見えない。
- 357 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:32
- 「最初に会った時に可愛いって思ったんだ」
「ほんとに?」
「そう。泣いてる顔もかわいいなぁとか……」
笑ってる顔を見た事が無いって河原で言われたのを思い出す。
「いまじゃどんな表情も可愛いとか思っちゃうんだけど……」
「藤本さんだってずるいくらい笑顔が可愛いです」
「あははっ、ずるいのかよ!」
楽しそうに笑って私を映してくれる眼差しに、自然と高鳴っていく鼓動。
校庭の喧騒も遠くに感じられるくらい藤本さんしか見えなくなって……
何度キスを交わしただろう。なのにどうして慣れたりしないのかな。
こんなにドキドキして、すごく幸せで……
角度を変えてキスを繰り返しながら鳴り止まない心音。
重なり合い響くこの音は二人を繋いで永遠に止まることは無い。
慣れたり飽きたりしないよって、そう言ってくれた言葉がいまも
胸に残っている。
- 358 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:32
- 触れるだけのキスだと思っていたけど強く腰を引き寄せられて気付いた。
これだけで終わるような口づけでは無いことに……
隙間無く触れるカラダから響いてくる鼓動が激しく胸を打つ。
「…っ…ぁっ………」
ぐっと唇を押し上げるようにキスされ開かれる。
するりと侵入してくる舌の甘さに溺れてカラダの力が抜けていく。
迷わずに飛びこめばいい、あなたにすべてを預ければいい。
でも頭で想うほどカラダは素直についてこない。
「……っぁ、あ……んっ……」
腰が砕けたように力が入らないけど必死にしがみつく。
どこにも振り落とされたくなくて指先が痛むほどにあなたの腕を掴んでいた。
口腔内をゆっくりと暴れる藤本さんの舌が歯列をなぞる。
いつも以上に熱く絡みつく舌に戸惑いながら舌を絡ませた。
ぎこちない動きに合わせるように優しい動きに変った。
包み込むように口づけられながら愛されていると強く感じた。
- 359 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:33
-
そっと離れていく唇、ゆっくりと開けた視界が浮かんだ涙でぼやける。
「だめだ……」
ぎゅーっと力いっぱい抱きしめられて呼吸が止まりそうになる。
「ごめん、これ以上してたらヤバイ」
「……藤本さん?」
涙が浮かんだ私の目元にそっと触れて優しく微笑んだ。
「好きなんだ。好きだから……」
どうして藤本さん泣きそうなんだろう……
私は力の入らないカラダを藤本さんに預けた。
頬をうめた胸から聴こえてくるのは壊れてしまいそうなほど速い心音。
こんなにドキドキしてたんだ、私と同じくらいあなたも……
「ゆっくりゆっくりって言い聞かせてるんだけど」
時々セーブできなくなって激しくなる口づけ。
でもちゃんと保たれてる理性。だからすぐに優しいキスに戻る。
「ごめんなさい」
「な〜んで謝るんだよ」
「だっていっぱい無理させてるから」
「してないってば、無理なんてしてない」
- 360 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:34
-
「キスだけでこんなに胸が痛いんだ、きっとしちゃったら心臓壊れちゃうよ」
ずるいくらいの可愛い笑顔でそう話す。
そっと胸元に手を置くと急なことにビクッと怯んだ。
「心臓が痛いの?」
「なんかドキドキして痛いくらいになる。さゆみはならない?」
「さゆみも……」
藤本さんの手をとると不思議そうに首を捻った。
でも次の瞬間――――――
「ささささゆみっ」
「ドキドキしてるでしょ?」
「う、うん」
「こんなに大好き」
私の胸に置かれた自分の手を凝視して固まった藤本さん。
やりすぎたかなと後悔したけど既に遅くって……
「嬉しいけど美貴また倒れそう……手、手放してもらって良いかな?」
「えっ?」
「なんだか動けないんだ」
- 361 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:35
- 慌てて手を胸元から膝の上に移動させてぎゅっと握ると
何度か確認するように握り返してくれた。
「あははっ、ごめん。ありがと」
「もう大丈夫ですか?」
「ん、へーき」
ちょっと青冷めてるのは気のせいじゃない。
しゅんとしてると優しい声で名前を呼ばれる。
ちゅっとかるくキスをして吐息がかかる距離で「好き」だと言ってくれた。
「みーちゃんギューってして?」
すぐに抱きしめてくれた藤本さん。
腕の中で感じるのはドキドキと反比例するような安心感。
ほわっと和やかな気持ちに満たされる。
最後なんだと思ったけど口にしなかった。
この場所では最後だけど、これからもいつだってこの腕の中に閉じ込めてもらえるから。
だから『最後』なんて言葉は言いたくない。
- 362 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:36
-
「帰ろっか」
「はい」
「ごめんね二人じゃなくって……」
「石川さんのおばあちゃんに会うの楽しみです」
「そっか、良かった」
みんなで居られる時間も大切にしましょう。
「あっ!」
「ん?」
「卒業おめでとうございます」
「ありがと」
自分で言ったのに「卒業」という言葉にふいに目頭が熱くなった。
安心して欲しくって泣かないって決めていたのに
好きだと想うほどに滲む涙は、あなたを好きな分だけ溢れ出して零れ落ちる。
「泣いていいんだよ」
やだやだやだ……首を横に振る私に優しい声が降ってくる。
「我慢しちゃダメ」
ぽんぽんと頭をかるく撫でられてそっと顔を上げると
藤本さんは両手を広げた。
「ほら、おいで」
迷いなく飛び込んだ胸の中でたくさん泣いた。
背中をさする優しい掌のぬくもりに安心して止まらない涙。
- 363 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:36
- 「傍に居るから、美貴はいつだってさゆみの隣にいるから」
藤本さんが私にくれる言葉はいつもストレートで心に響く。
「でもこれからは学校で泣いちゃダメだよ」
「……は、い」
「泣きたくなったら美貴のこと呼んで。飛んでくるから」
ちょっと想像した必死に走ってくる藤本さんの姿がおかしくて
小さな笑みがこぼれる……
「笑ったな〜」
「だって飛んでくるって……でも嬉しいです」
「卒業は一つの区切りだから。終わるわけじゃないからね」
「うん。終わらないってやくそくっ……」
言葉を言い終わる前に掠め取られた唇。約束の甘いキス。
咄嗟のことで閉じられなかった瞳には藤本さんのいたずらな笑顔が映る。
「好きだよ」
「さゆみも大好き」
- 364 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:37
- 確認するように視線を交わしてからもう一度キスをした。
二人の気持ちを確かめ合う優しいキスを……
- 365 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:38
-
******
- 366 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:38
-
「ええぇぇぇぇええ?」
卒業式から数日後、突然聞かされた父親の転勤話……
故郷である北海道に帰るって、マジですか?
それでお母さん仕事3月で辞めるんだ。
「でも、大学……」
一人暮らしっすか?美貴に一人暮らしをしろと……
と思ってたら、お母さんはとんでもないことを言う。
「道重さん家がね、美貴のこと面倒見てもいいって言ってくださってるのよ」
道重さん?一瞬、素でわからなかった。
いや、わかってるんだけど……わかってるよ。
たしかさゆみの苗字は「道重」だ。
「家庭教師してあげたら?あんた勉強それなりにできるでしょ」
それなりってお母さん?
可愛い末娘をつかまえて「それなり」って……orz
いや、違うぞ。問題はそこじゃない。
さささささささゆみと暮らすの?ねえ、一つ屋根の下で365日?
- 367 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:38
- 「お母さん達も安心だし、月々の食費とかだけでいいって言ってくださってるの。
いい話でしょ?」
うぅ、そりゃ一人暮らしすれば家賃とか、水道光熱費とか……
現実的にかなりお金がかかる。
きっとバイトしたお金で払えとか言われそうだし。
めちゃくちゃ悪い話ではない。
「梨華ちゃんは一人暮らし?二人暮し?……するからいないし。
絵里ちゃん家は兄弟多いから無理でしょ」
「この家は?」
「お兄ちゃんが住むって」
「はぁ?」
「美貴がいると邪魔なんですって」
「あのやろー」
- 368 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:39
- あのやろーとか呟きながら頬が緩む。
そっかこれからは一緒に居られるんだ。
寝ても醒めてもさゆみの傍に……
「美貴急に笑わないの、怖いから……」
「お母さん、美貴バイトも頑張るよ!」
「そ、そう?ほんとに大丈夫なのね?」
「もちろん!」
「ご迷惑にならないようにするのよ。下宿の身なんだからね」
「わかってるって。おばさん遅いときは夕飯とか作るし」
「そうね。今日は遅いし明日電話しなさいね」
「は〜い」
さゆみはもう知ってるのかな?
知ってたらメールとかあるだろうから、まだ聞かされてないのかもしれない。
彼女はどう思うのかな?喜んで……くれるよね?
- 369 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:39
- アカシア:花言葉【友情、プラトニックラブ】
―――――― おしまい。
- 370 名前:アカシア 投稿日:2006/03/02(木) 23:39
-
- 371 名前:日季 投稿日:2006/03/02(木) 23:41
- >>342-369更新終了です。
藤道も……w
- 372 名前:日季 投稿日:2006/03/02(木) 23:42
- レスありがとうございました!
>>336 名無しさん
可愛いと言ってもらえて嬉しいです。優しすぎる藤本さんに包まれて
道重さんは真っ直ぐにぶりっこしてますw
从*・ 。.・)*VvV)<まったり見守ってくださいね〜。
>>337 名無飼育さん
やばいほどですか……嬉しいですありがとうございます〜。
>>338 初心者さん
从*VvV)<これからも甘くいきますw
道重さん、藤本さんともに可愛いと言ってもらえて嬉しいです。
鼻血は……ぶっ倒れなくはなったんで大目に見てあげてくださいw
从*・ 。.・)*VvV)<これからも見守ってください〜。
>>339 名無飼育さん
ドキドキしてもらえて嬉しいですw
セリフはむずがゆくなるようなのをチョイスしてます从*VvV)<へへっ。
>>340 名無し読者さん
最高って言ってもらえて嬉しいです〜。
甘すぎる藤道を書いていきたいなと思ってます。
从*VvV)<いいだろっ?w
>>341 名無し飼育さん
从*VvV)<ありがと
- 373 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/03/02(木) 23:59
- 自分が怖いくらいモニタ前でニヤニヤしています。笑
藤道からは暫く離れられないなぁ
この設定で続くんですよね?なんだか色々期待しちゃっていいのかしらー。
甘い甘いお話ごちそうさまでした。
- 374 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/03(金) 00:01
- あますぎて目眩がw
しかも急展開?で続き楽しみ
- 375 名前:名無し 投稿日:2006/03/03(金) 00:14
- 更新おつです。切ないのに甘甘な二人最高です!
だけどミキティ-大丈夫でしょうか。一緒になんて。。。
今後もニヤニヤしつつ見守ってますww
- 376 名前:konkon 投稿日:2006/03/03(金) 00:30
- 最高の卒業式、ありがとうございました〜!
顔がもうニタついちゃって(汗)
これからの二人に期待大です。
- 377 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/03/03(金) 22:42
- 新展開にニヤニヤが止まらない放課後!!やっばい!これからの期待大!!
- 378 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/03(金) 22:47
- ちょっと藤本さんやばいんでないすか!?w
もうかたっぽの某カップルの新生活も覗いてみたいなーなんて…
- 379 名前:初心者 投稿日:2006/03/04(土) 17:39
- 更新お疲れ様です
屋上最高です。ちょっと寂しいけどとっても素敵な場所だなぁと
梨華ちゃんは制服捨てられませんね、ヨッスィのコレクションになりそう
しかしこの展開は予想できなくて、これからの2人がとっても楽しみです
次回更新楽しみに待ってます
- 380 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/06(月) 17:24
- あの人のあの発言がようやく繋がりました
これから楽しみです
- 381 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:47
-
「藤本さんが家に?」
卒業式から数日後。
ママが朝食をテーブルに並べながら「美貴ちゃん4月から家で住むからね」って……
そんなママの一言であの日言われた言葉がようやく理解できた。
ママは知ってたのにどうして教えてくれなかったんだろう?藤本さんも知ってたのかな?
「私なにも聞いてないよ?」
「そう?美貴ちゃんも昨日聞いたばっかり見たいよ」
「えっ?」
「昨日電話があってね、宜しくお願いしますって」
「藤本さんから電話があったの?それも知らないよぉ」
「さゆみ寝てたから。どうせ今日会うんでしょ?」
そうだけど、そうだけどぉ……
「美貴ちゃんに隣の部屋使ってもらうけど、狭いからベッドは置けないわね。
寝る時だけさゆみの部屋で一緒でも良いわよ」
「えっ、あっ……うん」
ママは何気なく言っちゃうけど、ちょっと心配だよぉ。
こないだだって屋上で我慢できなくなりそうだって……
そんなこと言われたばっかりなのに。
- 382 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:48
- 「ママとパパが仕事が忙しい時とかは二人でご飯済ましてね」
「うん」
「さゆみもちょっとはお料理勉強しなさい」
「はぁ〜い」
そっか今まで一人で待っていた時間を二人で過ごせるんだ。
でも大学に行っちゃったら、きっと違った意味で忙しくなるんじゃないのかな。
いろんなことがあるから真っ直ぐに帰ってこない日が……
ダメダメ。まだ訪れても居ない事柄に悩んでも仕方が無い。
だって初めて外で待ち合わせをしたんだもん。
いつもなら迎えに来てくれるけど、今日は無理言って近くの公園で待ち合わせ。
「公園でいつもはっじまる〜午後の日曜日でぇ〜すぅ……えへへ」
気持ちが浮かれていて無意識に口ずさんだ歌に照れる。
心臓の音を聞かれたくらいじゃ恥ずかしくないけどなぁ。
だってお互いを好きな分だけ速くなる心音さえ愛しいから。
- 383 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:48
- 約束の5分前、先に来ている姿に頬が緩む。
自分の為に待っていてくれることが嬉しい。
近くまで歩き定番の言葉を言おうとして固まる。
「待ちましたか?」「ううん、いま来たところ」そんなありふれた会話がしてみたかったのに
藤本さんは笑顔で電話をしていて、私の存在に気付いていないみたいだった……
「亜弥ちゃん久しぶりだね〜。美貴も会いたいよ」
そんな声が聴こえた。
優しく甘い声色が、電話の相手がとても大切な人だと教えてくれる。
3月の暖かい陽射しの下なのに、急に寒くなったように感じた。
電話を終え私に気付いた藤本さんが無邪気に手を振る。
「誰ですか?」
「どうしたの怖い顔して」
「『あや』って誰ですか?」
「あぁ、亜弥ちゃんはね……」
なんでもないように話し出そうとする藤本さんが信じられなかった。
だって、石川さんに聞いたことがありました。
あなたが好きだった人でしょう?
- 384 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:49
- 「ちょっ、さゆ……」
ボー然とするあなたに背を向けて歩き出す。
胸に突き刺さる甘い声色。
どこかデレっとしたニュアンスは自分にだけ向けられる特別だと思っていたのに。
ぎゅうぎゅうと胸を締め付ける苦しさに、酸素を欲しがって小さく喘ぐ口元。
なにか言葉にすればそれは嗚咽に変ってしまいそうで逃げるように足を進める。
知らずに流れた涙が頬を濡らしているけど、それにかまっていられるだけの余裕が持てない。
なんて自分は子供なんだろう。
だって他の誰かに甘く語りかける姿を見ただけで逃げ出してしまった。
- 385 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:49
-
******
- 386 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:50
- 何が起きたのかわからない。
どうして泣いてるの?あまりに突然で言葉に出来なかった。
美貴を見つめたままの強い眼差しがゆらゆらと揺れて
次々と零れ落ちた涙。
しばらく何が起きたのかわからずに立ち竦むしかなかった。
今までに見せたどの涙とも違う、ただ美貴を責めるように零れ落ちた涙。
何がいけなかった?何がそんなに彼女を傷つけた?
少しづつ遠ざかる後姿が酷く頼りなくて我にかえる。
どうして泣かせてしまったのかを考えるよりも、その涙を止めることだけを考えよう。
そんな悲しみで流れる涙はイラナイ。
- 387 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:50
- 美貴の動き出す気配を感じたのか走って逃げてしまった。
でも真っ直ぐに家に向かっていることに安堵する。
きっとほんのちょっと頑張れば追いついてしまうだろう。
家に着いたらちゃんと話を聞こう。
ほんとに失ってからでは遅いんだ。
心を超える言葉は存在しないけど、それに近づけることは出来る。
何一つ伝えないまま終わるなんて、もうイヤなんだ。
「好き」そう素直に言えるようになったのもきっと彼女のおかげ。
真っ直ぐにいつも美貴を包む言葉をくれるから、応えたいと思うようになった。
ねえ、なんでも話を聞くからどんな事でもぶつけて欲しい。
それが例えプラスの感情でなくても、ちゃんと受け止めるから。
何も言わずに泣かれると困るんだ、ほら鈍感だしね……
いつもみたいに素直に想いを美貴にぶつけてほしい。
- 388 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:51
- 「さゆみ、開けて?」
「開いてます」
「いや開いてるけど……」
扉を動かすとガチャガチャ聞こえるチェーンの音。
「チェーン開け……」
「いやです」
「そんな即答しなくっても」
「だって藤本さんが悪いの」
「ねえ、美貴なにかした?謝るからここ開けて?」
「自分でしたことがわからないのに謝らないで」
普段の甘えた声とは違う低い声にちょっとビビる。
心なしか隙間から見える目も据わってて怖い。
どうしようかと思案にくれていると突然後ろから名前を呼ばれた。
「た〜ん!」
無邪気に自分を呼ぶ声が響いた。
次の瞬間に感じた額の痛みに閃いた。あぁ、この子のせいで怒ってるんだ
それにしても……めちゃめちゃ頭痛いっ!?
- 389 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:52
-
******
- 390 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:52
- 「た〜ん!」
と聞こえた瞬間にゴツッ!という鈍い音が響き「いっ、痛ぁっ!」と声が聞こえた。
どうやら藤本さんがドアに頭をぶつけたらしい。
「ぐえっ……く、首が絞まっ……」
「たん、たん!あいたかった〜」
「亜弥ちゃん良い子だから飛びつかないで……美貴しんじゃう」
「やぁだっ!たんしんじゃや〜!!!」
「ま、待って……揺するな!頭痛いんだぞ!」
「うっ……ぇっく…たんが、たんが怒ったぁっーーー!」
うえーーーーーーーーーーーん!?と言う泣き声に違和感を覚える。
そう、思いっきり子供の泣き声……
私の知ってるあやさんは確か私よりも一つ上で……
- 391 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:53
- なんて暢気に考えてる場合じゃないの。
ドアを開けると困ったように笑う藤本さんと……
可愛らしい小さな女の子がいた。
- 392 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:53
-
◇ ◇ ◇
- 393 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:54
- 「たんだいすき〜」
「だ、抱きつくな!」
ちょっとムッとした私が見えたからか、やたら焦ってる藤本さん。
ぷいっとそっぽを向くとニコニコ笑ってあやちゃんが私を覗き込む。
いつのまにか藤本さんから離れたらしい。
悪気はないんだもんね、それにこんなに可愛いし……
気を取り直して話しかけると嬉しそうに返事をしてくれる。
二人で話してるのが面白くないのか藤本さんは会話に参加してこない。
「あやちゃんは何あやちゃん?」
「ふじもとあやです」
「偉いね〜、ちゃんとお名前言えるんだね」
「うん!あや5さい。おねえちゃんのお名前は?」
「おねえちゃんは、さゆみって言うの」
「さゆみちゃん、かわいい」
「ありがとう〜。あやちゃんも可愛いね」
「うん!せかいでいっちばんあやがかわいいんだよ!」
咄嗟に私のほうが可愛いとか言いかけて止める。
5歳の子と張り合うなんて、さすがに恥ずかしい……
- 394 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:55
- ぬいぐるみのみーちゃんが気に入ったらしい亜弥ちゃん。
子供ながらに私が大切にしているのがわかったのか
欲しがったりはしなかった。でも……
「たん、あやのたんじょうびにぬいぐるみかって!」
「えーーー?」
「買ってあげましょうよ藤本さん」
「わ〜い、やった〜」
亜弥ちゃんは「やくそくだからね〜」なんて言いながら藤本さんに抱きついた後
私に甘えて「だっこ〜」と膝へ乗ってきた。
可愛らしい仕草に微笑んでいると、ちょっとだけ膨れた藤本さんが見える。
「おねえちゃんのおたんじょうびなんがつ?」
「お姉ちゃんはね、7月13日。あやちゃんは?」
「あやはろくがつの〜……わすれた!」
「亜弥ちゃんは25日だよ」
「藤本さんもっと優しい声でお話してくださいよ〜」
「たん、こわい〜」
ぎゅうーと私にしがみついて怖がったフリをした亜弥ちゃんは
ちらっと藤本さんを見て不適に笑う。
- 395 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:56
- 「さゆみちゃんのおっぱいやわらかいね〜」
「あああ亜弥ちゃん、こらっ!」
「さゆみちゃんちゅう〜」
ちゅってかるくキスされてビックリしてると
藤本さんが固まって泣きそうな顔をしていた……
なんだかいじけてるみたいだけど、あやちゃんがニコニコと
膝に乗ったままで私を見つめているので慰めることも出来ない。
「あやちゃんのパパとママは?」
「おうちにいるよ」
「どうしてココがわかったの?」
「さっきおでんわしてばしょをきいて、ままがつれてきてくれたの」
さっきの公園で勘違いしたことを思い出した。
早とちり……だけど勘違いしちゃう状況を作った藤本さんも悪いの。
ぎゅうっと抱きつく腕に力が増して、胸に顔を埋めたあやちゃん。
目をごしごし擦るから「眠いの?」と聞くと何度も頷いた。
とんとんと背中をあやすように叩いていると、しばらくして穏やかな寝息が聞こえてきた。
- 396 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:57
-
「どうしてもっと早くに教えてくれないんですか?」
「ごめん、忘れてたんだ。今日電話もらうまで……」
「お兄さんの子供なんですね」
「うん、姪っ子なんだ」
それに「たん」って確か藤本さん他にも呼ばれてましたよね?
「元々呼んでたのはこの子なんだけどね」
「それで、真似て”たん”って呼ばれたんですか?」
「ううん、偶然……何の因果か顔とかもすっごい似てたんだ……」
「藤本さんにそんな趣味があったなんて……」
「だ、誰が……違うから!子供が好きなわけじゃないってば!」
「亜弥ちゃんに似てるからあやさんを好きになって……」
「無いから。それにややこしいな」
「あやってどんな漢字だったんですか?」
「まったく一緒」
「ふ〜ん」
「ほんとに違うって、さゆみはそんなに……子供じゃないでしょ?」
「子供だって思ってるくせに……」
「・・・・・」
「どうせ子供だもん」
「な、泣くな!泣かないで?」
「泣いてません」
そんな恨めしそうに見ないでください。
だってもっと早くに教えてくれてれば、さっき勘違いすることも無かったのに。
- 397 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:58
- 「っていうかさ〜、そろそろ他で寝かせても起きないと思うんだけど」
首を捻って見つめると藤本さんは真っ赤になった。
もしかして、もしかして……
「みーちゃんやきもち?」
「ばっ、違っ……違うから!」
ベッドに亜弥ちゃんをそっと下ろした。スヤスヤ眠る寝顔に罪は無い。
藤本さんのこと大好きなんだってね、お姉ちゃんと一緒だね。
優しいもんね、好かれない筈が無いの。
じーっと亜弥ちゃんの寝顔を見てると、そっと藤本さんが隣に座った。
「そんなに可愛い?」
「可愛いですよ。可愛くないんですか?」
「可愛いけどさ……」
合わさった視線が伏せられてかるくキスをされ、
ほんの少しだけ唇を離して囁かれる。
「さゆみのほうが可愛い」
それからぎゅーっと確かめるように私を抱きしめた。
- 398 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:58
- 「な〜んでちゅうとかしちゃうんだよ」
「だって不可抗力です。急だったもん」
「そうだけどさ、そうなんだけど……」
「やっぱり妬いてたんだ」
「妬いちゃ悪いのか〜」
「えへへ、可愛いみーちゃん」
「だからー、さゆみのが可愛いんだって」
「それは知ってます」
ガクッとわざと大袈裟に項垂れて、敵いませんねーなんて呟いて両手を広げる。
「こういうタイプに好かれるのかな」
「どんなタイプですか?」
「自分だいすきっ子」
「・・・・・」
「あれっ?なに急に黙ってどうした?」
「……藤本さんは自分大好きなら誰でも良いんだ」
「はっ?」
「さゆみじゃなくっても好きなんだ」
「いや違くって好かれるって言っただけで」
「さゆみのこと好きでもないんだ……」
「好きだよ、さゆみだけが好きなんだよ」
「もっとぎゅーってして」
- 399 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 21:59
- もうちょっと拗ねたフリしてたかったけど自分が寂しくなったから。
今日は一度しか抱きしめてもらって無いもん。
亜弥ちゃんの仕草を真似るように胸元に擦り寄る。
子供は素直だからこうやって愛を求めてて手探りでその愛を引き寄せようとする。
失いたくないな、そんな気持ちを……
意地を張って強くなったって何一つ楽しくない。
弱くってもいい。弱いから見えてくる事がたくさんあると思うから。
「好き」
胸元で呟いたヒトリゴトに応えるように腕の強さが増す。
痛いんですってば……
だけど嬉しいから、その分愛されてると感じるから。
抱きつく腕に同じように力をこめてみる。
「あっ、そうだ藤本さん?」
「な、なに急に」
突然顔をあげた私にビックリしたのか笑顔が引きつっている。
「4月になったら家で住むってママから聞きました」
「あっ、うん。そうなんだ、一昨日聞いたんだ美貴も」
「ご両親が北海道に行っちゃうってほんとですか?」
「そう。家業を継ぐんだってさ」
「藤本さんのお家は?」
「あぁ、兄ちゃんが住むって。ほら亜弥ちゃんの親でさ〜
美貴が邪魔とか言ったんだよ。おかげでさゆみの家に居候できるからいいけど」
- 400 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 22:00
- 頭を掻きながら照れたように最後は呟いた。
さゆみも一緒に住めて嬉しいです。
「それにやっぱり亜弥ちゃんにみーちゃんとられるのはイヤです」
「あははっ、そうだね。亜弥ちゃん、美貴と結婚するとか言ってるから」
「えっ?パパは?」
「パパより美貴が良いんだって。それで拗ねてるわけ兄ちゃんは」
「じゃあ亜弥ちゃんはライバルですね」
「そんなこと言って仲良くなってるくせに…子供あやすのうまいよね?」
「はい。ちっちゃい子可愛いじゃないですか〜」
「美貴は苦手。だから凄いなぁって思った」
「みーちゃんも甘えたかったらどうぞ」
「……お言葉に甘えて……とか言わないからっ」
「ちょっと考えたくせに〜」
「うるさい!違う、違うんだ」
「もう可愛いんだからっ」
「ばかっ、やめ……」
ぎゅーっと抱きしめるとあきらめた様にカラダの力を抜いた。
そんなやり取りをしていると、気付けば亜弥ちゃんが起き上がっていた。
咄嗟に離れたら藤本さんはちょっとだけ残念って顔をした。
やっぱり甘えたかったんですね?後でゆっくりと……なんて考えてると
まだ夢醒めぬような状態の亜弥ちゃんは、何を思ったか私に抱きついて
さっきのようにかるくチューをして胸に顔を埋めた。
- 401 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 22:01
- 「亜弥ちゃん可愛いですね」
「このガキャ……」
「もう子供なんですからいいじゃないですか〜」
「ダメ。もうキスとかしちゃダメ。絶対にダメだかんね!」
「はぁーい」
わかってますってば。だって亜弥ちゃんがもし目の前で藤本さんにキスをしたら
私だって面白くないです。
「兄ちゃんに電話するから」
「どうしてですか?」
「迎えに来てもらうんだよ」
「泊まって行けばいいじゃないですか〜」
「美貴だけ泊まるから……さゆみは亜弥ちゃんに泊まってほしい?」
「えっ?あの、藤本さんだけが嬉しいです」
「えへへっ、だよね。じゃ電話するね」
ほんとはもう少し亜弥ちゃんにも居て欲しかったけど
藤本さんの目があまりにも真剣だったから……
二人で居たいってそう思ってくれる事が嬉しいです。
- 402 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 22:01
-
◇ ◇ ◇
- 403 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 22:02
- 「なんだか疲れた」
「そういえば藤本さん?」
「ん?」
「おでこ大丈夫ですか?」
返事を聞く前にそっとおでこに触れた。
撫でてあげると気持ちよさそうに目を閉じてされるがまま。
「もう痛くなんかないんだよ。でも気持ちいい……」
ぎゅっと抱きついて甘えるように体重をあずけられる。
いつもならさゆみがこんな風に甘えてるのに、不思議だな。
そして上目遣いで私を見上げた藤本さんがイタズラっぽく笑った。
無防備なその笑顔に胸が高鳴っていく。
「さゆみ、ちょっと触ってもいい?」
「えっ?」
「亜弥ちゃんにさ……その……」
さっきまでイタズラに笑ってたのに急に焦って泣きそうな顔をする。
藤本さんの言いたい事がわかってちょっと内心焦る……お互いに真っ赤なまま沈黙。
だってそれはその…冗談で済むのかな?亜弥ちゃんが触るのとは訳が違う気がするの。
でも少しくらいなら。いっぱい我慢してもらってるんだから……
言葉にしようとしても喉に言葉がひっかかったように出てこない。
何度かちいさく深呼吸をしてようやく出た声は掠れていた。
- 404 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 22:03
- 「……ぃぃょ」
自分で言ったくせに私の返事が意外だったのか目を見開いて固まっている。
ほんとに恥ずかしいんですから、そんなに見つめないでください……ちょっと嬉しいけど。
でもその視線から逃げるように瞳を閉じた。
ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえて、カラダからは緊張が直に伝わってくる。
震える指先がそっと胸に触れた。
お正月の時とは違って酔っていない藤本さんは置いた手をどうすることも出来ずに
ただしばらくそのまま固まっていた。
そ〜っと目を開けると胸元を凝視して固まっている姿が見えた。
私が見つめてるのに気付いたのか、視線を上げて苦笑いする藤本さん。
「やばい自分で放せないんだけど」
「もう、なにやってるんですか〜」
「ごめん、美貴の手動かして……」
緊張で固まってしまったらしい藤本さんの手に自分の手を重ねる。
「さゆみ?」
なかなか胸元から手を放さない私に不安そうな顔を向ける。
「ほしいなら……」
藤本さんにぜんぶあげます。
そう言うとポカンと口を開けたまま固まってしまった。
- 405 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 22:04
- ほんの少しの沈黙がとても長い時間に感じられて、自分の行動を後悔する。
ちょっと頑張りすぎたのかな?こんな私のこと嫌いになっちゃうかな……
「やっぱり無理。ダメだよ、うんダメだ……ね、さゆみダメだと思うんだ」
「藤本さん?」
「まだまだ早いって言うか、もう美貴死にそうっていうかさ……」
「あの……」
「そう言ってくれるのは凄く嬉しいんだけど無理しないで?」
「……はい」
「無理しないでって言うか、美貴が無理って言うか……」
あーーーーごめんへタレでごめんね……
そんな風にワシャワシャと髪を掻き乱して謝ってくれる。
「さゆみがこんなに頑張って言ってくれたのに……」
「もう大丈夫ですから」
「……美貴のこと嫌いになったりしない?」
「なりません。いつも言ってるじゃないですか、どんな藤本さんも大好きって」
「そうだよね……へへっ、ありがと」
じーっと真っ直ぐに見つめた後、瞼を閉じると
そっと優しいキスが降ってきた。
- 406 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 22:05
- 何度かかるくキスをしてそっと腕を背中に回そうとしていたら
部屋をノックされて慌てて離れる。
「ジュースでもどうぞ〜」
「あ、ありがとうございます」
藤本さんがコップを手に取った瞬間にママが「あっ!」って声を出したけど
さっきの緊張で喉が渇いていたのか藤本さんは一気に飲んでしまった。
「それワインだわ」
「どうしてワインなんか……」
「パパが飲むって言ってたから一緒に持ってきたの忘れてたわ」
「あっ、へーきです。へーきであります!」
明らかに平気なんかじゃない。藤本さんはめちゃくちゃにお酒に弱いんだから。
おやすみって言ったママに満面の笑みでおやすみなさいって言った藤本さんは
とろんとした目をしていて最強に可愛かったけど……
- 407 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 22:06
- 「みーちゃん?」
「さゆぅ」
がばっと抱きつかれてちゅってキスされた次の瞬間……
むにゅむにゅなんてかるく触られた。さっきはあんなに遠慮がちだったのに、藤本さんのバカ!
そう思ってると蕩ける様な視線を私に向けて、もう寝ようよぉなんて甘えてくる。
ほんとに寝るだけですからね……
一緒に布団に入ってからも胸に顔を埋める様に抱きつかれた。
しばらくすると規則正しい寝息が聞こえてくる。
「もう寝ちゃったぁ」
すやすやと穏やかに眠る頬をつつく。
ほんのすこしだけ顔をしかめたけど、すぐにまたニコニコと胸に擦り寄ってくる。
酔って無くても照れずにこのくらい触れるようになってくださいね。
「でも当分は……おあずけなの」
だってさっきの余韻で鳴り止まない心音がまだ無理だって私に告げている。
けど確信できたの。4月から一緒に住んでも不安は無いと。
藤本さんとなら大丈夫。感情に流されて私を奪おうとはしない。
いつか……私のすべてをあげられればいいな。
雨音が奏でるリズムが心地よく部屋に響きはじめた。
優しい雨音に誘われるように私は瞼を閉じた。
- 408 名前:サクラソウ 投稿日:2006/03/10(金) 22:07
- サクラソウ:花言葉【希望、青春の始まりと悲しみ】
―――――― おしまい。
- 409 名前:日季 投稿日:2006/03/10(金) 22:08
- >>381-408 更新終了です。
つい出来心でこんな登場をさせてしまいましたw
あやみき、あやさゆ?そんな感じです(VvV;从
(あくまでも主役はみきさゆです……ごめんなさい)
- 410 名前:日季 投稿日:2006/03/10(金) 22:09
- レスありがとうございます!
ほんとに励みになります。
>>373 名無し飼育さん
どうもお粗末さまでした。ニヤニヤしていただけて嬉しい限りですw
藤道から離れられないように頑張ります。
从*VvV)<き、期待とか……(ドキドキ
>>374 名無飼育さん
从*VvV)<大丈夫ですかっ?w
楽しんでもらえるように精進したいと思います。
>>375 名無しさん
最高という言葉ありがとうございます。
藤本さんは色々と我慢の日々が待っているかと……
从*VvV)<見守りありがとー。
>>376 konkonさん
こちらこそレスありがとうございますー。
ニタついてもらえて嬉しいですw
从*・ 。.・)*VvV)<いちゃつくだけいちゃつきます(予定
- 411 名前:日季 投稿日:2006/03/10(金) 22:10
- >>377 名無し飼育さん
これからもニヤついてもらえるように頑張ります。
レスを読んでついつい歌わせてしまいました〜w
从*・ 。.・)<〜♪
>>378 名無飼育さん
从*VvV)<やばいとかないんだよっ(と言いつつドキドキw
もう片っぽは4月くらいに……なんて思ってます。
しばしお待ち頂ければ幸いです〜。
>>379 初心者さん
思い出の場所は心の中で生き続ける……とか言ってみましたw
そうですね、いしよしの新居に制服が飾られてるかもしれませんw
二人っきりになれる時間を増やしたく、こうしちゃいました。
从*・ 。.・)<楽しんでもらえるようにイチャイチャするの。
从*VvV)<へへっ。
>>380 名無飼育さん
いくつか伏線を張ってみたものの分り辛い感じで申し訳ないです。
从*・ 。.・)*VvV)<今後も楽しんでもらえるといいなぁ……と思ってます。
- 412 名前:名無し 投稿日:2006/03/10(金) 22:30
- 更新おつです。
ハラハラしたけど二人の甘甘やりとりに
ニヤニヤしっぱなしでしたw
あの人がこんな形で出てくるとは思いませんでしたが
カワイイし羨ましいし楽しかったですw
- 413 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/03/10(金) 23:36
- 更新待ってました。
ちょっとずつ進歩?してる2人を生温く見守って行きたいと思います。
相変わらずのデレデレっぷりに和みました。次回が待ち遠しい…!
- 414 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/12(日) 00:10
- >>403あたりからのミキティがかわいい(*^-^*)
もどかしいはずなのに、心地よいさゆみきの関係がすきです
- 415 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:42
- もらってから一度も外していないストラップを夕焼けにかざす。
キラキラと光を浴びて揺れるピンクに包まれたクローバー。
懐かしいな、出逢ったのは偶然だったけど……
こんなにも大切な人になるなんて想像もしなかった。
家に帰る途中で思い出の河原に来てしまった。
幼い頃からここに座るだけでなぜか落ち着いた気持ちになるんだ。
緩やかに流れる川を見つめながら、彼女に惹かれ始めた日を思い出していた。
大切な幼馴染にあげたくて探していた頃は、まったく見つける事ができなかった
四葉のクローバー。
それが、あんなにあっさりと手に入ってしまったのだから不思議だった。
そしてなんの迷いも無くプレゼントしていたっけ……
言葉よりも雄弁に自分を見つめる真っ直ぐな瞳。その瞳から零れ落ちる雫の美しさ。
彼女の涙に魅せられた美貴は、ピンク色の世界から抜け出せなくなってしまった。
- 416 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:42
-
◇ ◇ ◇
- 417 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:43
- 「んっ……」
美貴の存在を確認するように擦り寄ってくる仕草に苦笑する。
ここに居るってば……
カーテンの隙間から眩しい光が射しこんできているから
もう朝なのだろう。
遅刻かと思って一瞬焦ったけれど、彼女は既にテスト休みに入っているので
終業式まで学校に行かなくても良いのだと思い出した。
自分は無論、もう高校へ行く用事は無い。
美貴にしがみつき安心したように眠る寝顔が可愛いくて
そっと髪を撫でると嬉しそうに綻ぶ口元。
傍に居ると誓った夜の出来事を思い出しながら
泣き虫な彼女の目元にかるくキスをして、もう少しだけ眠ることにした。
- 418 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:43
- ◇
- 419 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:44
- 昨日はお風呂に入った後、いつのまにか眠ってしまったらしい。
気付けばあたたかな腕の中で柔らかい感触に包まれていた。
何時かは覚えていないが深夜であることは静けさから想像がついた。
まだ醒め切らない頭ではあったけれど喉の痛みに少し苛立って
そっと腕の中を抜け出した。
その瞬間、ほんの少し彼女が起きそうな気配がしたけど
美貴が頬を撫で「ちょっと水飲んでくるね」と囁くと
理解したのかはわからないが、こくんと頷いた。
ぽんぽんとかるくあたまを撫でて部屋を後にする。
さゆみの母親からは夜中に喉が渇いたら遠慮なく冷蔵庫を開けても良いと
言われていたので心の中でお礼を言いながら、コップに冷やしてあった水を注ぐ。
小窓を少し開け感じた外の空気は、ひんやりと冷たかった。
そのまましばらくはキッチンの小窓から見える月を見ていた。
”裸で抱き合うだけで気持ちいいんだよ”そんな風に話す幼馴染の
大人びた横顔を思い出しながら、コップに注いだ水を飲み干した。
- 420 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:44
- 「……みーちゃん」
部屋に入った瞬間に名前を呼ばれた。
寝起きのためか掠れてはいるが甘えた響きに自然と頬が緩む。
きっと自分では想像できないほど優しい顔をしているに違いない。
「起こしちゃった?」
こくんと頷いた頭を撫でていると、不意にポタポタと雫が零れた。
泣いて……る?
慌ててベッドに腰かけ抱き寄せる。
美貴のパジャマをぎゅっと握ってしがみつくように抱きついて
何度も確認するように甘く名前を呼ぶ。
くすぐったくなるその響きにいつしか慣れてしまっている自分に苦笑しつつ
宥めるように背中を何度も撫でた。
「さゆみ」
優しく名前を呼ぶと少し落ち着いたのか、ほんのりと赤くなった目を美貴に向けた。
どうしたの?と問いかけるように見つめ返すと恥ずかしそうにはにかんで
肩に頬を押し付け、腕を掴んでいた手が背中に回るのがわかった。
- 421 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:45
- 「……寂しかったの」
頼りなく掠れた声が胸元におちて、急に胸が痛んだ。
何かでぎゅーっと掴まれた様に苦しくて自分まで泣きたくなる。
「寂しかった?」
「だって目が覚めたら居ないんだもん」
「……ごめん」
謝った美貴の言葉にぶんぶんと首を振る仕草で必死に
美貴は悪くないのだと伝えてくれる。
「ちゃんと傍に居るから」
「……うん」
少しづつ増していく重みは彼女が安心していることを美貴に伝えてくれる。
もっとすべてを預けあえる様になれればいいね。
こんな些細なことで不安を感じたりしないくらいに。
「ぎゅーってして?」
痛いくらいに胸元にしがみついているくせに……
自分はさゆみにたいしてとことん甘いなと思いつつ
抱きしめる腕の力を強める。
- 422 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:45
- 「痛くない?」
「平気だよ……嬉しいもん」
嬉しいと呟きながらとても幸せそうに目を閉じて微笑むから
自分まで嬉しくなり自然に笑ってしまう。
二人っきりで甘えてくる時、ほんの少しづつ敬語が抜けてきている。
ほんとにゆっくりだけれど前進している自分達に安堵する。
周りが聞いたら呆れるくらい遅い歩みかもしれないけど
そのペースが自分達にはあっているのだから構わない。
「ほら、もうちょっと寝よう」
「もうどこにもいかない?」
「行かないから。ちょっと奥につめて……」
「……あと少しだけこのままじゃダメ?」
ゆっくりと瞳をあけて見上げる甘えた仕草にイヤだなんて言えない。
返事の代わりに優しく髪を撫でて微笑むと、肩に頬を擦り付けるようにして
背中に回した手に力をこめるのが分かった。
自分の腕の中でなんの不安も無いように再び目を閉じる仕草に
すこしだけ心が痛んだ。
満たされていく心とは裏腹にカラダが勝手に熱を上げそうなのだ。
隙間無く抱き合っている二人を隔てる服がほんの少しもどかしいような気もする。
- 423 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:46
- 抱きしめる手がすこし緩んだのを感じたのか
心配そうに名前を呼ばれた。
ハッとして再び強く抱きしめると今度は強すぎたのか
「痛いよぉ」と拗ねた声がする。
ちゃんと気持ちを込めて抱きしめなければ痛いだけなのだと悟る。
「寝よっか」
「……うん」
ほんのすこし不満そうな顔をしたけれど素直に頷いて
自分が入れるようにスペースをあけてくれた。
すぐに隣に潜り込む美貴にしがみついてくるから
そのまま抱き込むようにして眠る体勢になった。
「……みーちゃん」
遠慮がちに名前を呼び胸元で『好き』だと囁かれた。
すぐに『好き』だと囁き返せば、嬉しそうにその瞳に美貴を映した後に
ゆっくりと瞼を閉じた。
唇を寄せて触れるだけのキスをしながら、自分の心の震えを感じていた。
少しづつ欲張りになっている自分が居るんだ。
キスを深くしたいと思うように、そのすべてに触れてしまいたいと……
でも大丈夫、傷つけるようなことはしないから
心の中で呟いてすぐに唇を離した。
- 424 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:46
- そして悟られないようにちいさな溜め息を吐いて、美貴も瞼を閉じた。
欲張りになったって自分のほうが何も出来ないのだ。わかってる。
触れるだけで緊張して固まって……幾度かさゆみに呆れられてるんじゃないかなんて悩んだ。
でも意外と姉御肌な彼女はそんな美貴さえ可愛くて愛しいらしい。
言葉にしなくってもその瞳から充分過ぎるほどに伝わってくる想い。
弱そうで強くってほんとに頼りになる。
なのに美貴の姿が見えないだけで泣き出してしまった可愛い人。
お互いに弱い部分を補って支えあっていこうね。
しばらくして聴こえはじめた穏やかで規則正しい寝息が
子守唄のように美貴を眠りに誘う。
次に目覚めた時はちゃんと傍に居るから安心して……
- 425 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:47
-
◇ ◇ ◇
- 426 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:47
- 「可愛かったな……」
今朝の出来事を思い出しながら頬が緩む。
夜に泣いてしまった事がちょっと照れくさかったのか
「おはよ」って声をかけた美貴に「おはよう」って返しながら
ぎゅーって抱きついてきたんだ。
見れば頬がほんのり赤く染まっていた。
白いからよく目立つピンク色の頬を隠すように
美貴の胸元に擦り寄って顔を埋めた。
それからしばらくは甘えられるままに抱きしめていた。
さゆみのお母さんが朝食食べなさいって呼びに来るまで……
一つ一つの仕草や言葉が可愛いから、ついつい甘やかしてしまう。
甘えられることに幸せを感じるんだから仕方ないと言い訳をする。
- 427 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:48
- 「寒っ……」
びゅうっとかるく吹いた風が冷たくて身震いする。
胸元のベビーリングをぎゅっと握ってから立ち上がった。
春になったら一緒に来ようね……
誰も居ない河原に向かって「またね」と呟いて自分の家へと向かった。
- 428 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:48
- ユリ(ソルボンヌ)花言葉【涙を拭いて】
―――――― おしまい。
- 429 名前:ユリ ソルボンヌ 投稿日:2006/03/13(月) 21:49
-
- 430 名前:日季 投稿日:2006/03/13(月) 21:51
- >>415-428更新終了です。
前回のお泊りの夜の出来事でした……
(ちなみにユリ ソルボンヌはとてもキレイなピンク色の花です)
今更ですが前回の更新のちょっとしたミス修正です。すいません。
>>396 最後から2行目の前に『泣くフリをした私をジトーっと見つめる。』が抜けていました。
>>399「〜求めてて〜」は「〜求めて〜」の間違いです。
- 431 名前:日季 投稿日:2006/03/13(月) 21:52
- レスありがとうございます!
>>412 名無しさん
ハラハラ、ニヤニヤしてもらえて嬉しいですw
ちっちゃいと可愛いような気がしたのでつい登場させてしまいました。
从*‘ .‘)<こどもなのでさわりたいほうだいだよ?
从*VvV)<こらこら……
>>413 名無し飼育さん
和んでいただけて感涙です。それに待ち遠しいなんてうれすぃ……・゚・(ノ▽`)・゚・
ほんのちょっとずつは進歩してるみたいですw
从*・ 。.・)*VvV)<これからも生暖かく見守ってくださいね〜
>>414 名無飼育さん
从*VvV)<か、可愛いとか……(照
ほんとにもどかしい二人ですが、心地良いって言ってもらえて嬉しいです。
二人のペースで進んでいくと思うので見守っていただければ幸いですw
- 432 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/13(月) 22:10
- か、かわいい!かわいいです!
さゆに惚れそうですw
- 433 名前:名無飼育 投稿日:2006/03/13(月) 22:15
- sage忘れすいません
- 434 名前:名無し 投稿日:2006/03/13(月) 23:25
- 更新おつです。甘えたなさゆ可愛い?!
ミキティーかなり惚れてますね。とことん甘やかしていいよーw
これからも甘いの期待しつつ見守ってます
- 435 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/03/14(火) 10:44
- 思ってたよりも早い更新で嬉しいです!
美貴さんの中の人の心境の変化に少しドキドキしちゃいます
- 436 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/15(水) 03:22
- もうミキティとさゆみんのラブラブっぷりたまらないです
ほんと純愛って感じですね!
夜中に泣いちゃうさゆ可愛いすぎるw
- 437 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:01
- 「梨華ちゃんそれはキツイと思う」
「なんでよぉ〜」
「ピンクばっかは落ち着かないって」
「むぅ」
膨れっ面の梨華ちゃんは手に持ったいくつかのカーテンと睨めっこ。
フローリングにひくカーペットは落ち着いたアイボリーにしたと聞いているけど
寝室はピンク一色になりそうだって嘆いていた親友が浮かんだ……
「さゆみはピンク可愛いと思います!」
「そうだよね〜。さすがさゆ!」
「えへへへへ」
おいっ石川!なに抱きしめてんだよっ!?
それにさゆみまで嬉しそうにしてるし……
拗ねてやる。もうどうでもいいよ。ピンクな部屋にすれば良いじゃん。
「でもお二人で住むんですよね?」
「うん、そうだよ」
「だったら二人それぞれに好きな色を部屋ごとに変えてみたらどうですか?」
「そっかぁ……よっすぃが落ち着く空間も必要よね」
- 438 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:01
- あぁ、やっぱりさゆみは頭が良いなぁ。それに良い子だ。
よっちゃんのことまで考えてあげられる良い子だね〜……
うんうんなんて頷いていたら梨華ちゃんに睨まれた。
「ちょっとデレデレしすぎだよ美貴ちゃん」
「してないって」
それより早く手を放せ。いつまで抱きしめてるんだよ。
そんな態度があからさまに出ていたのか梨華ちゃんは
まったく悪びれずに腕を放した。
「あっ、ごめんごめん。ヤキモチ妬いてるから放すね」
「なっ……一言多いよ」
ほんのり頬染めながら美貴を見ないで……
ヤキモチ妬かれると嬉しいもんなんだ。
ひとつ美貴は賢くなりました。
- 439 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:02
- 「美貴ちゃんは何色が良いと思う?」
「無難にいくなら……これとかは?」
「……わかったそれにする」
「えっ、速決で大丈夫?」
「もう美貴ちゃんが言ったんじゃない。いいの、ピンクは寝室にするから」
「あはは」
美貴もしかして余計なことしたのかな?
ごめんねよっちゃん寝室がどんどんピンクになってくね……
- 440 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:02
- ◇
- 441 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:02
- 「お風呂でぎゅーってしないの?」
ぶはっと飲みかけてたコーヒーを噴いた。
そのまま固まってしまった美貴の口元と飛んだ飛沫を
さゆみが拭いてくれた。面倒かけてごめんね……
「やだ美貴ちゃんったら……だいじょうぶ?」
「あんたが余計なこと聞くからでしょうが」
「だって素朴な疑問だよ。素朴な」
「素朴って2回も言うな……ぜんぜん素朴じゃないから」
「一度体験しちゃったら美貴ちゃんはまりそうだし……」
「人の話を聞け」
「さゆが困っちゃうよね〜」
「だから……」
真っ赤なさゆみは俯いてしまった。
誰がはまるって?……うん、はまるとは思う。って違う違う。
ぶんぶん首を振って想像をかき消していたら
気付いた梨華ちゃんがニヤリと笑った。
- 442 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:03
- 「肌と肌とが触れあうとほんとに気持ちいいよ」
なんでもないように言う言葉にまた噴出す。
今度は自分で口を拭った。
だって顔も上げられないくらいさゆみは照れてしまっている。
「えっちな意味じゃなくって……ほんとに」
「そ、そうですか……」
何かを思い出すように窓の外に視線を移した梨華ちゃん。
当分は帰ってこないだろうなぁ。
お店に入ってくつろぎだすとすぐにこうなるんだから……
あっ、お姉さんコーヒーお替りください。
さゆみも今のうちにケーキとか頼んで良いよ。
- 443 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:03
-
******
- 444 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:03
- 卒業旅行一日目の晩。
梨華の機嫌を損ねたひとみは慌てて後を追いながらもどこか楽しんでいた。
些細なことで妬くくらい自分を愛しているんだなと不謹慎にも嬉しくなるのだ。
けれど謝らなければ益々機嫌は悪くなるだろう。
部屋に入った瞬間に梨華の前に回りこんで謝ることにした。
「ごめん。軽率でした……」
ほんとは美貴に偉そうに言えないくらい子供っぽい自分が歯痒い梨華。
すぐにヤキモチを妬いてしまうのだ、ひとみにたいしては我慢が出来ない。
美貴にだって自分は抱きしめたりくっついたりしているのに
その行為を棚に上げてこうやって怒っている自分にも腹が立つ。
ひとみの顔を見ていられなくて背中を向ける。
「あたしが好きなのは梨華ちゃんだけだよ」
「抱きしめたいのも梨華ちゃんだけ」
「わかってくれる?」
答えない梨華を後ろから抱きしめて耳元で囁く。
耳にかかる吐息と甘い言葉で梨華のカラダは正直に熱を上げていく。
- 445 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:04
- 「温泉に戻る?」
ぶんぶんと首を振るとふっと笑う気配がした。
「やぁっ……」耳たぶにキスされた梨華は首を竦める。
後ろから抱きしめられているから逃げられない。
うなじにかるくキスをしてから腕を離したひとみの方を向くと
安心したように笑っていた。
すこしだけ梨華の膨れっ面が元に戻っているからだろう。
「じゃお風呂ここで入ろっか?」
「……うん」
素直に頷く梨華。よしよしなんて言いながらひとみは頭を撫でる。
子ども扱いされた事がムカついたから、その手を振り払って
スタスタと先にお風呂場に向かう梨華に、ひとみは焦ったように後ろをついて行く。
「ご、ごめん……ほんとに反省してるんだよ?」
「触らないで」
触れようとした手を上に上げたから、間抜けにもバンザイした格好のまま固まっているひとみ。
それを見た梨華は(ちょっと……ううん、かなり可愛い)なんて
怒りも忘れてしばし見惚れていた。
- 446 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:05
- けれど言葉や態度には出さず、なおも無視を決め込んで梨華は自分の服に手をかける。
すべて脱ぎ終えるまでポカンと口を開けて見入っていたひとみは
慌てて自分も脱ぎ始めた。
「洗ってあげようか?」
梨華の言葉に一瞬止まっていたけどすぐにデレデレとその表情を崩す。
この言葉は仲直りしようの合図でもある。
かるくシャワーのお湯をかけあいながら、どちらも喧嘩していたことなんて
きれいに忘れてはしゃぐ。
お互いにカラダが温まってきた所でかるくキスをしてから
梨華はひとみの背中に回ってボディソープを手に取り、そのまま背中に手を滑らせる。
「素手で洗うの?」
「前は自分でやって」
「へ〜い」
返事をしたひとみのほうへボトルを渡す。
前にテレビで特集していたのを見た梨華は得意気に語る。
- 447 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:05
- 「あんまりゴシゴシ洗うとお肌によくないんだって。
だから手で洗うのは合理的なんだよ」
かるくシャワーで流しながらひとみの背中を撫でる。
くすぐったいなんて口では言っているが、ひとみは梨華に触れられて嬉しそう。
洗うのは表向きな名目で、真意は仲直りにある。
「また無駄な知識仕入れたんだね」
「無駄じゃないもん」
ぎゅっと背中に抱きつく。それは交代の合図……
胸の感触に一段とデレデレが止まらないひとみ。さっき怒られた事など既に頭に無い。
梨華の怒っている理由が可愛い独占欲だと理解しているので、
怒られる事をむしろ喜んでいるかもしれない。
梨華は緩んだひとみの頬をつんつんとしてから背中を向ける。
- 448 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:05
- 「梨華ちゃんは何もしなくってイイからね」
ひとみは泡だらけの手を脇から滑らせてそのまま胸を撫で回す。
梨華が抗議出来ないほど急に始められてしまい……
「えっ?…ちょっ……ぁっ」
「イイこと聞いちゃった〜。手で洗うと良いんだよね」
「……んっ…はぁっ……ぁっ」
「声響くね」
「……ば…っか」
「いいよ、かわいい。梨華ちゃんかわいい」
耳元で囁かれて、それだけで意識が飛んでしまいそうになる梨華。
「きもちいい?」
声のトーンをわざと落としてひとみは囁く。
甘い声が低く耳の奥に流れ込んで脳を刺激する。
胸からカラダ中に快感が広がりとめどなく与えられる刺激に
座っているのさえ苦しくなる。
既に互いに洗うなんてことは頭の片隅にも残っていない……
ひとみの支え無しに座っていられなくて、梨華はひとみに体重をあずける。
そのまま首をひねってキスをねだるとわざと唇を外してキスを繰り返される。
欲しがる唇を避けてひとみは浴槽へ入れておいたシャワーで梨華の泡を
ゆっくりと流していく。
- 449 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:06
- 「ゃぁんっ……」
首筋、顎、頬にキスしながら丁寧にカラダを流していると
シャワーの刺激にさえ反応して可愛い声を漏らす梨華。
喘ぐ口元はひとみを求めているのだがなかなか触れることが出来ない。
じれったそうに半開きのままの唇から漏れる甘い吐息にひとみは酔っていた。
耳にかるくキスするだけで梨華のカラダが小さく震えた。
「ぁっ……ぁん…いぢわ、る……」
「なんだよ〜。欲張りだなぁ梨華ちゃんは」
「ぁっ……ぁぁっ…ぁっ……」
泡を流し終えるとシャワーを浴槽に戻し、梨華の胸を包み込むようにして揉みしだく。
既に硬くなっている先端を摘まんで擦るようにすると声が跳ね上がった。
そのまま梨華のうなじにキスを落として焦らした唇に口づけようとするが……
「んっ……」
焦らしたせいか梨華から積極的にキスを求め唇を塞がれる。
口内に侵入した梨華の舌がひとみを求めて緩やかに暴れ始める。
梨華のキスに応えながらもひとみは胸への愛撫を続ける。
- 450 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:06
- 触れる唇から漏れる声が直接自身に響いてきてひとみはより興奮する。
そして梨華もまた共鳴する様に乱れゆくひとみの熱い吐息でカラダが熱を上げ続ける。
胸ばかりに集中していた手を離し片手だけそっと下腹部へと移動させると蜜は溢れ出していた。
「こんなになっちゃってる……」
「……ゃぁだっ……ぁんっ」
「かわいい…可愛いよ梨華ぁ」
「ぁっ……ぁんっ…ぃ……ゃぁっ……」
ゆっくりと指で愛撫していると少しづつ硬く熟していく。
執拗に攻めるひとみに梨華は耐えられないように逃げようとするが
思うように力が入らずまたひとみの手の中へと堕ちていく。
「……ぁっ…ぁんっ……ぁっぁっぁっ」
一定のリズムを刻み始めた梨華にひとみは赤く膨れ始めた蕾を中心に
愛撫する手に緩急をつけて攻めつづける。
「ぁっぁあんっ……」
一瞬だけ梨華の力がフッと抜けた。かるくイッたのだろう。
手にかかる重みが増して喘ぐ呼吸が激しくなっている。
- 451 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:07
- 「勝手にイっちゃだめじゃん……」
「……ごめっ……なさ…ぃっ……」
「いいよ。それにまだ足りないでしょ?」
「……ひと…みちゃ…ん」
何か言いたげな瞳が熱をおびて昂揚している。
「梨華ちゃんほしい?」
とろんとした目で梨華はこくんと頷いた。
快楽を彷徨う目が自分を映し出すまではあげない……
「あたしを見て?」
「ひとみぃ」
「そうだよ梨華。梨華を気持ちよくしてるのはあたしだからね」
「ぁっ…はやくぅ……ぁん」
いつもと違う呼び方に興奮したが焦らすようになかなか梨華の
中には触れようとしないひとみ。
「もっと名前呼んでみて?」
「ひとみぃ……」
「好き?」
「大好きぃ……ひとみが好きなのぉ……ぁんっ……」
梨華はその言葉しか知らないようにひとみの名前を繰り返す。
あまりの可愛さにうすく笑みを漏らすとひとみは指をゆっくりと梨華の中へと挿しいれる。
溶けそうなほどに熱くじっとりと濡れて指にまとわりついてくる。
- 452 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:08
- 「……はぁっ、すごいよ…梨華ぁ」
「…きもちい……」
「きもちいいの?」
「んっ……きもち、いぃ……ひ、とみぃ……」
「梨華の中、絡みついてくる……あたしもきもちいいよ」
「……ねぇっ…す、きっ……ぁっぁあんっ……」
「すきだよ。だいすき……」
「ぁぁっ……はぁっ…んっ……ぁっぁあっ」
さっきよりも激しい快感に名前を呼ぶことさえ儘ならない梨華。
そんな梨華をもっと感じさせようとひとみは耳に息を吹きかけながら
甘く名前を囁き耳も愛撫する。
「イってもいいんだよ」
「ぁっ…ぁっぁんっ……」
もっとじっくりと愛してあげたいけれど親友達がいつ帰ってくるかわからない。
梨華はもうそんなこと考える余裕は無いだろうがひとみは少しだけ冷静になり
考えをめぐらせていた。いま響く愛しい人の声を誰にも聞かせたくないと……
胸を刺激していた手を離し梨華を強く抱き寄せ指の速度を速めていく。
梨華の唇を塞ぎ甘く喘ぐすきに舌をしのばせる。
与えられる様々な刺激すべてに攻められ梨華のカラダが震えだす。
どろどろに溶けてしまうように熱く激しい快感が梨華を襲う。
「んぁっ……ぁっ…ぁんっ……ぁぁあっ」
「……りかぁ…はぁっ…」
「ぁっぁっぁ……ひ、とみ…あぁっぁっ……ぁぁんっ」
キスの合間に聞こえる喘ぎ声がまた一定のリズムを刻みはじめ
耐え切れない快感に梨華のカラダが大きく痙攣して跳ねた……
- 453 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:08
- ぐったりと自分に抱きついてくる梨華をしっかりと受け止めた。
快感の余韻に浸りながらも安心しきった梨華の表情が堪らなく愛しい。
「可愛いよ、梨華」
「んっ……」
かるく触れたキスにさえ余韻を引きづる梨華は感じてしまう。
いつもならもっと熱くなる二人だけど心地よいこの感じを閉じ込めるように
また一つキスを交わして、互いの存在を確かめるように抱きしめあった。
- 454 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:09
- ◇
- 455 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:09
- 「ほら服着ろよ〜」
「もうちょっとだけ……ねえねえ」
「ん〜?」
「ぎゅってしてて、あと5分で良いからぁ」
「帰ってきたらどうすんのさ〜」
「その時は……その時だよ。どうにかなるってばぁ」
仕方ないなぁって呟きながら嬉しそうに抱きしめてくれた。
ダイレクトに響くドキドキが落ち着くんだよね。
お風呂場を出た後、裸のまま布団に潜り込んだら
浴衣を持ってひとみちゃんが慌てて飛んできた。
帰ってきたら見られるからって……。
触れる肌がじんわりと暖かくなって気持ち良い。
目を閉じてうっとりとしているとポンポンと頭を撫でられ「終わり」と囁かれた。
「ほら膨れない」
「……わかったよぉ」
「あたしだけだよね?」
「ひとみちゃん?」
「こうやって……抱き合ってるのってあたしとだけだよね」
美貴ちゃんには見せたこと無い自分を
イヤというほどひとみちゃんには見せてるじゃない。
- 456 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:09
- 「他に誰かいると思う?」
「思わないけど……」
「美貴ちゃんとだって裸では抱き合ったりしないよ」
「そ、そうだよね」
「そうだよ〜。それに最近じゃさゆがいるから引っ付いたりしてないもん」
そっかって呟きながら安心したように息を吐き出して
また強く抱きしめられた。
「……約束だよ」
「うん。ひとみちゃん以外に甘えたりしないもん」
「あたしも梨華ちゃんだけだから」
こんなにドキドキできるのは、ひとみちゃんにだけなんだよ。
- 457 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:09
-
******
- 458 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:10
- 「あっ、そうだ!」
「な、なに?大きな声出して」
「お風呂より普通に抱き合うほうが気持ち良いよ!」
真っ赤になった美貴達を放置して、梨華ちゃんは微妙な鼻唄を口ずさみながら
足早に新居となるマンションへ荷物を置きに消えていった。
普通の状況でどうやったら裸で抱き合うシチュエーションになるんだよ……
まだまだそんな体験はできそうに無いと、不安そうに美貴を見つめる瞳から感じとった。
「美貴たちも帰ろっか」
「はい……」
「気にしちゃだめだよ」
さゆみはこくんと頷いて美貴の服の袖を握りしめた。
「ほんとに気持ち良いのかな?」
「えっ?」
ヒトリゴトの様に呟かれた言葉にビックリしていると
照れくさそうに笑って美貴の腕を引っ張って歩き出す。
それって期待してもいいのかな……
いや別に深い部分で期待してるんじゃないんだよ。
ただ……ちょっと抱き合ってみたりとか?
- 459 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:10
- 想像しただけで倒れそうになったから、それ以上は考えるのをやめた。
「藤本さん寝る時なんですけど……」
「寝る時?」
「家で暮らしてからのお話なんですけど」
「あぁ、それがどうしたの?」
「さゆみの部屋で一緒に寝たらってママが……」
「えっ?そしたら毎日一緒ってことだよね」
「だってお泊りの時一緒なんだから、それでいいだろうって……」
押し切られちゃったんだね。
そうだよね普通に考えたら別に変じゃないもん。
「だから、いつかね……」
「いつか?」
「いつか石川さんが言ってた気持ち良いことしてください」
予想外のお願いに時間が止まる。
固まってしまった美貴にさゆみは慌てて言葉を繋いだ。
「今すぐじゃ無いですよ?そのいつか……です」
「あぁ、うん。いつか、いつかだね」
「藤本さんがよければ別にすぐでも構わないですけど……」
「……もうちょっと先でお願いします」
- 460 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:11
- 心の準備が出来てからにしてほしいと言うかなんて言うか。
そんな美貴にちょっと安心したように笑うから、きっとさゆみも
今すぐでは心の準備が出来ていないんだろう。
「早く帰ろう、マジでお腹空いちゃったから」
「はい!」
いまの関係に不満があるわけではないから
お互いのペースでいいんだよ、きっと……
- 461 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:11
- ミスミソウ:花言葉【忍耐・自信・信頼・内緒】
―――――― おしまい。
- 462 名前:ミスミソウ 投稿日:2006/03/19(日) 22:11
-
- 463 名前:日季 投稿日:2006/03/19(日) 22:12
- >>437-461 更新終了です。
何度かいしよしは4月に……なんて言ってましたが
「アイビー」で喧嘩した二人の仲直りの様子など書いてみました。
表現下手で微妙ですがエロなので苦手な方はスルーしてくださいorz
- 464 名前:日季 投稿日:2006/03/19(日) 22:13
- >>432 名無飼育さん
ありがとうございます!可愛く書けてて良かったです。
从*・ 。.・)<ごめんなさい……私には藤本さんがいるのw
>>434 名無しさん
ありがとうございます!たまには甘えたさんな道重さんも書いてみたくてw
今後もまったり見守ってもらえれば嬉しいです。
从*VvV)<へへ、惚れてるのは内緒だよ?w
>>435 名無し飼育さん
ありがとうございます!ドキドキしてもらえて良かったです。
自分でもビックリするくらい早く書けたので更新してみましたw
从*VvV)<悩み多きお年頃なのだ。
>>436 名無飼育さん
ありがとうございます!書いてて恥ずかしくなるくらいに純愛ですねw
これからもラブラブな二人だと思いますので、読んで頂けたら嬉しいです。
从*・ 。.・)<可愛すぎてごめんなさいw
- 465 名前:名無し 投稿日:2006/03/19(日) 23:51
- 更新おつです。ミキティ-よりさゆの方が大胆かもしれませんねw
喧嘩すら愉しむいしよしはすごいな〜
大人なのか子供なのかわからない梨華ちゃんの言動にドキッとしましたww
さゆみきはカワイイままいてほしいな、なんて思いました
- 466 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/20(月) 00:36
- ミキティの心中がおもしろい。いつかさゆに負けそうな気がする
そして仲直りキタコレ(゜▽゜)
初々しい主役カプを喰っちゃうエロさがすきw
- 467 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/20(月) 01:50
- いしよしのお風呂エロスw
さゆみきの今後もすごく楽しみです!
自分達のペースで少しずつ少しずつお互いを深め合って欲しいものです
- 468 名前:前29 投稿日:2006/03/20(月) 15:31
- タイムリーないしよし温泉だあっっ!!!!
見たかったシーン到来に、感謝感激ですぅ!!
これからもまったりとお待ちしております。
- 469 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/21(火) 03:49
- E!RO!I!
さいこーです。
- 470 名前:初心者 投稿日:2006/03/26(日) 01:54
- 更新お疲れ様です
ちょっと訳ありで書き込めなかったですけど読ませてもらいました
寝ぼけさゆが可愛いすぎてもうやばいです
ミキティも優しい、でも心は強いんだけど弱い感じで応援したくなりますね
石吉の仲直りもエロスもとっても良かったです
次回更新楽しみに待ってます
- 471 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:16
- 「藤本さん?」
「はぁ〜かわいいよね〜。大人になってキレイになってる」
昔大好きだった映画の主人公に夢中の藤本さんは呼んでも気付かない。
ドラマなんて滅多に見ないくせに……
その大好きな女優さんが連ドラに出ていると石川さんに教えてもらったから
ビデオに撮って見ているそうだ。今日も朝からパジャマのままビデオ鑑賞。
「また映画のビデオ借りてこようかな、一緒に見ない?」
「・・・・・」
「あれっ?どうした……」
返事をしないで俯いているとブチっとテレビを消して私を抱きしめてくれた。
「えっと美貴が好きだったのは映画自体で……
この女優さんだけが好きなわけじゃないんだよ?」
『さゆみが好き』
黙っていると抱きしめる腕の力を強めて耳元で囁かれた。
その言葉だけで許しちゃう自分が悔しい……
「もっと聴きたいなぁ」
「好きだよ」
「ほんとに?」
「うん、大好き」
- 472 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:16
- しばらくそのまま何も話さずにいたけど
パッと思いついたように藤本さんが立ち上がった。
どうしたのか首を捻って見上げているとそっと手を差し伸べられた。
「遊びに行こ」
「今からですか?」
「このまま昼ご飯も外で食べちゃおう」
「はい……」
「いいとこに連れてってあげるよ」
「いいところ?」
藤本さんの手を握って立ち上がりながら問いかける。
ニヤ〜っと笑った顔に急に不安になる。
「みーちゃんお顔が怖い」
「うわっひどっ……」
「だってニヤけてるの」
「うっ……変なところじゃないってば」
「ほんとに?」
「ほんとほんと。大丈夫」
引き締めた口元とは裏腹にまだ笑ってる目。
やっぱりどうしても不安……
- 473 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:17
- 「なんだよぉ美貴のこと信じられない?」
「そんなことはないですけど」
「おでかけしようよ、ね?」
珍しく可愛いおねだりに思わず頷いていた。
脱インドアとか目標を掲げながらやっぱりお家で過ごす事が多い藤本さん。
だからたまにはいいんだよね……
「着替え着替え……」
「藤本さん?」
「あっちの部屋で着替えてくるね」
「もういい加減慣れてくださいよぉ」
一緒に着替えるのさえ恥ずかしがるって……
だってお風呂に一緒に入ってるのにどうしてだろう?
「まあいっか」
早く着替えて遊びに連れて行ってもらおう。
- 474 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:17
- ◇
- 475 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:18
- 「ここって……」
「寂れたゲーセンです」
戸惑った私の腕を引いて藤本さんは中に入っていく。
古びた地味な外観。ここに何があるんだろうと不安になりながら
黙って後ろをついていくと、店の奥には最新のゲームの機械が数台置いてあった。
そして最近お気に入りのカードゲームもちゃんとあった。
「これだよね?」
「そうです……」
「こないだ話してたから気になって調べたんだけど、ここ朝はあんまり人居ないから」
「ありがとうみーちゃん」
「さすがに並ぶのは恥ずかしいから……あの時はごめんね」
ちょっと前に一緒に居る時に並ぼうとして止められたんだ。
『ごめん美貴には無理』って並ぶのを諦めたことがあった。ずっと気にしてたのかな……
「さゆみこそごめんなさい」
「いいんだよ。今日は好きなだけどうぞ」
「うん!」
どう考えても藤本さんのキャラじゃないこのゲーム。
すぐに終わらせて違うことして遊ぼう。
無理はしてほしくないんです。私に無理に合わせて欲しくないの……
- 476 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:18
-
「もういいの?」
「けっこう集まりましたよ」
「うわっ……なんかすごいな」
「亜弥ちゃんもやってそうじゃないですか?」
「たぶん……こんなカードが家に散らばってた気はする」
「今度は亜弥ちゃんと来ましょうよ」
考えるような仕草をしてからゆっくりと頷いた藤本さん。
「じゃあ今度ね、喜ぶと思う。でも今日は二人でいよう」
その言葉が嬉しくてしばらく見つめたまま固まってしまう。
恥ずかしくなったのかあたふたと歩き出した藤本さんの耳は真っ赤で。
行くぞーと照れたように先を急ぐ背中に抱きついた。
「うわっ」
「だいすきっ」
「こ、声でかいよっ」
「誰も居ないもん」
「そうだけど……」
そっと背中から離れるように促された。
- 477 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:18
- 「そういうのは二人っきりのときで」
「はい……」
しゅんと俯いて落ち込んでいると優しく髪を撫でられる。
「他の人に見せたくないんだよ」
優しい声色に顔を上げる。
とても優しい瞳が私を見ていた。
「さゆみが好きって言ってくれる瞬間ねすっごく可愛いんだ」
「……藤本さん」
「だから誰にも見られたくない」
可愛い独占欲。愛されてるんだなぁって思うだけで嬉しくてじわーっと浮かぶ涙。
ちょっと驚いていたけど優しく目尻の涙を拭ってくれる藤本さん。
そっか、こんな優しく微笑む顔見ちゃったら……
きっとみんな藤本さんを好きになる。
- 478 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:19
- 「泣くなよ〜」
「だって嬉しいんだもん」
「かわいいなぁ」
「えへへ」
「すぐに帰ろう、やっぱ家でまったりしたい」なんて藤本さんは言う。
「脱インドアは?」
「えっと……4月からの目標にする」
「さゆみは……」
「ん?」
「4月からお弁当作るの」
「へっ?」
「みーちゃんとさゆみのお弁当♪」
「……う、嬉しいな」
一瞬できた間が気になるけど……
ママにもお料理の勉強するように言われたしがんばるの。
「玉子焼きから練習しようか?」
「今からですか?」
「善は急げって言うじゃん」
「走んないでくださいよぉ〜」
- 479 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:19
-
******
- 480 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:20
- ウトウトしていると急に肩を揺すられる。
時計を見るともうすぐおばさんが帰ってくる時間だった。
帰ってから玉子焼きの練習をして……それなりに食べれる味にはなったと思う。
他のおかずもちょっとずつ練習しなきゃ絶対にヤバイと思う……。
その後は疲れたから膝枕してもらって一緒にビデオを見てたけど
眠くてほとんど内容が頭に入ってこなかった。
んーーーーっと伸びをして起き上がると何やら真剣な顔で見つめられる。
「ど、どうしたの?」
「あのね、さゆみ考えたんです」
「うん」
あまりの迫力に思わず頷いてしまった。顔が近すぎだよ……
「さゆみが攻めてもいいのかなって」
「はい?」
どこでそんな知識を……?
「中澤先生が、意外と藤本さんは受けが似合うんじゃないかって……」
あ、あのやろー……。
いつだ、吹き込まれたのは?終業式かな、その時しかないよね。
- 481 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:20
- 「だから、さゆみからキスしても平気ですよね?」
「へっ?」
「ガンガン攻められるように頑張ります!」
「あ、あははっ……」
キスのことだって勘違いしてたんだ。なんだ心配して損した……
って違う!それもどうかと思うよ美貴は。
中澤先生に今度会いに行こう。これ以上余計なことを吹き込まれないように。
「今まで通りで良いと思う。自然に……ね?」
「自然に……そうですね。藤本さんキスうまいですもんね」
「えっ、そうかな……」
「照れるみーちゃん可愛い」
「いやいやさゆみのほうが可愛いから」
そっと目を閉じるから、ちゅってわざと音をたててキスをした。
美貴の肩に甘えるように擦り寄ってくる仕草にドキッとした。
「やっぱり藤本さんからがいいな」
座ってないと美貴の方が背が低いから直撃することはまず無い彼女の上目遣い。
どうやら直撃しちゃったらしい。情けないほど速くなる心音。
甘えるような視線に射抜かれて痛む胸を押さえた。
「あぁ……」
「みーちゃん?」
心配そうに覗き込んだ瞳が不安で揺れている。
「胸が苦しいんだ」そんな風に囁いて口づけると腕を掴む手の力が痛いくらいに強くなる。
- 482 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:21
- 唇を離して見つめ返すと戸惑って揺れる瞳。
大丈夫だよって言葉の代わりに優しく唇を重ねて甘い感触を味わう。
ついばむようなかるいキスを繰り返していると腕を掴む手の力が緩んだ。
上唇を挟んでかるく吸い舌先で唇を濡らしていく。
うすく開かれた唇に舌を挿しいれるとビクッとカラダが揺れた。
「……んっ」
絡めとった舌の甘さに昂ぶる熱をどう放出したらいいのかわからない。
なぜか焦る気持ちは荒くなるキスに変って。
もっと深くもっともっと……探るほどにどうしようもなく上がる熱。
彼女を攻めて暴れる舌がもう自分じゃないみたいだった。
「……ぁっ…ぅ………」
苦しげな吐息が漏れて口元を掠める。
さっきまで緩んでいた腕を掴む手の力がまたぎゅっと強くなる。
微かな震えが伝わってきて……ゆっくりと唇を離した。
「ごめんなさい……」
震える声で美貴にそう言って肩にくたっと寄りかかる。
ごめんって言おうとした美貴の言葉は口の中でカラ回った。
俯いたまま上げられない視線の先にポタっと雫が一つ零れ落ちる。
苦しげな息づかいが耳に流れ込んできて胸を締め付ける。
ゆっくりゆっくりと想う気持ちと裏腹に焦ってる自分が暴走する。
何やってんだろう……
- 483 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:22
- 沈黙が痛いほどに激しい鼓動を響かせる。
壊れそうなその音に愛しさだけが増していく。
「さゆみ、ぜんぜんダメなの」
「ダメじゃないよ」
「だって……」
美貴のキスにうまく応えられないからって呟きながら
これ以上涙を零さない様に唇を噛みしめる姿が見えた。
不安ばかり感じさせてしまう自分が悔しい。
謝らないといけないのはきっと自分のほう。
だけどごめんって口にしたらもっと彼女は気にするだろう。
「好きだよ」
そう言ってぎゅーっと抱きしめたら堪えていた涙が嗚咽と一緒に零れていく。
好きすぎてどうしたらいいのか分からない。こんな時に何も出来ない自分が歯痒い。
「どうしたらいい?」
「……藤本さん?」
「美貴どうしたらいいのかわからないんだ」
「このまま……」
「ん?」
「……このままでいてほしいの」
さゆみはそう言って肩に埋めていた顔を上げて笑った。
- 484 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:22
- 涙をいっぱい浮かべて、それでも笑ってくれた。
「このままでいいの?」
「深く考えないで下さい?いまのままの藤本さんが好きです」
「自分が何をしたいのかもわからないんだ……それでもいいの?」
美貴の頬を両手で包み込んでただ微笑んだ。
その手の暖かさが少しづつ心を落ち着かせてくれる。
いつかキミを壊してしまうかもしれない。
それでもほんとにいいの……?
「藤本さんが望むならなんだって叶えてあげるって言ったじゃないですか」
そっと触れるだけのキス。懐かしい記憶が蘇る。やっぱり敵わない。
美貴を包んでくれる彼女の愛には敵わない。
いつだって傍にあるのに見逃してしまいそうになるなんてバカだな。
「じゃ、ぎゅーってしてよ」
「えへへ可愛いみーちゃん」
「だからさゆみのほうが可愛いってば」
「それは知ってます」
「あははっ」
- 485 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:23
- 憎たらしいくらいの返しなのに可愛くて仕方ない。
彼女の言うことならどんなことでも自分のほうが聞いちゃいそうだ……
「寝ちゃダメですよ〜」
「……眠い」
「ママが帰ってきちゃうの」
「帰ってくるまで……今日も泊まってこうかな」
「帰らなくて平気ですか?」
「へーきだよ。もうこっちで住んだほうがいいかなって思ってるんだけど」
「さゆみもそう思います」
「だよね」
明日にでも荷物持ってこよう。
「あっ!」
「どうしたんですか?」
「そうだ、あのね……」
ウマいヘタじゃないと思うんだキスとかは……うまく説明できないけど。
そう言うとはにかんで美貴をぎゅーっと抱きしめてくれた。
- 486 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:23
- 行為そのものに意味があるわけじゃない。
誰とするかに意味があるんだと思うんだ。
「気持ちが大切なんだよ、きっと」
どちらともなく顔を寄せてキスをする。
スキって言うたびにキスしようか?
二人の気持ちが重なるような甘い口づけを――――――
- 487 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:23
- キキョウ:花言葉【やさしい愛情・誠実・変らぬ愛】
―――――― おしまい。
- 488 名前:キキョウ 投稿日:2006/03/26(日) 10:24
-
- 489 名前:日季 投稿日:2006/03/26(日) 10:26
- >>471-487 更新終了です。
サクラソウ→ユリ(ソルボンヌ)→ミスミソウ→キキョウの頭文字で「サユミキ」になります。
こんなアホなこと考えながら書いてる作者ですがこれからも宜しくお願いします(T▽T;)
今後更新が遅れると思いますが気長に待ってもらえると幸いです。
- 490 名前:日季 投稿日:2006/03/26(日) 10:27
- >>465 名無しさん
ありがとうございます。道重さんの方がいざとなれば……w
あらゆることを楽しんでしまう(*´▽`)´〜`*)です。
从*・ 。.・)*VvV)<お望み通り可愛いまま……いられますようにw
>>466 名無飼育さん
ありがとうございます。負けないようにがんばらせたいですねw
好きと言ってもらえてよかったです。
(0^〜^)^▽^) <ありがと〜。
>>467 名無飼育さん
ありがとうございます。お風呂ではいつもこんな感じです(ヲイw
今後もまったりと楽しんでもらえる二人を書けたらいいなぁと思っています。
从*・ 。.・)*VvV)<こっそり見守ってもらえると嬉しいです。
>>468 前29さん
ありがとうございます。あんまり温泉とは関係ないお話でしたが
読んでいただけてこちらこそ感謝感激ですw
(*^▽^)<今後もまったり待っててね。
>>469 名無飼育さん
(*´▽`)´〜`*)さいこーにありがとうございます〜。
>>470 初心者さん
読んでいただけて嬉しいです、ありがとうございます。
ここの藤本さんはちょっと不安定ですね……
ふだん甘えたで可愛い道重さんが支えてる感じですw
从*・ 。.・)*VvV)<今後もまったりとがんばります〜。
- 491 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/26(日) 11:38
- このふたりの不器用な感じがかわいいです
ミキティ負けずにがんばれ?!
- 492 名前:名無し 投稿日:2006/03/26(日) 22:24
- 更新おつです。妬いてもすぐ許しちゃうさゆも甘いな〜w
いろいろ葛藤しながらがんばるミキティ-かわいい
趣味は子供なのに大人っぽいさゆが好きです
作者さんのペースでマターリがんばって!!
- 493 名前:名無し読者 投稿日:2006/03/27(月) 20:41
- この2人には癒されます。
作者様が花言葉で「サ ユ ミ キ」を作っていたとは・・言われなきゃ
気づかなかったですw
これからも、楽しみにしてます。
- 494 名前:初心者 投稿日:2006/03/29(水) 01:14
- 更新お疲れ様です
さすが日季さま、花言葉でさゆみき作っちゃうなんて素敵ですね
あのゲームが出てくるとは時事ネタで何かうれしかったです
中澤先生もやってくれますね、あとミキティは脱インドア宣言大丈夫かな
次回更新楽しみに待ってます
- 495 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/09(日) 02:45
- 更新マダー?w
- 496 名前:桜 〜初恋〜 投稿日:2006/04/09(日) 23:02
- 本編とはまったく関係ない短編です。
- 497 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:03
- 2月、まだ冷たい風が吹く季節です。
でも今日は太陽がポカポカしていて、少しだけ”もうすぐ春なんだな”って感じていました。
「絵里!」
大好きな声が自分を呼ぶのが聞えました。振りかえると――――――
ほんわかとした笑顔をむけて手を振ってくれるアナタの姿。
絵里より3歳年上の高校3年生の幼馴染です。
中・高・大と一貫の学校なので隣接して校舎があるため、帰り道で運が良ければ会う事がたまにあります。
背は絵里より大きくて。
端整な顔立ちで目を引くほどの美形…誰しもが振りかえって見ちゃうほどカッコイイ人。
制服を着るアナタを見れるのも後少しだけ。濃紺のブレザーが似合うんだよね……
「絵里、一緒にかえろ」
立ち止まった私に追いつくとそう言ってくれました。
ちょっと後ろを見ると数人のお友達がこっちを見ていました。
- 498 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:04
- 「いいの?」
後ろをちょっと指差して、アナタを見上げて聞くと”良いの良いの”って笑顔で返されて…
少しだけ後ろのお友達さんに頭を下げて歩き出します。
「もうすぐ絵里も高校生だね」
「大学生かぁ、また大人になっちゃうね」
「う〜ん、実感沸かないけどね。すぐ学校隣だしさ」
「また…こうやって帰れるかな」
「大学だと時間がバラバラだからね。どうかな」
何でもない風にそういうから少しだけ寂しくなります。
アナタにとっては3歳も下の絵里はただの幼馴染。
妹くらいにしか想ってもらえないでしょうか?私はずっとアナタの事が好きなのに……
- 499 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:04
- 本当は兄弟みたいな人じゃなくって、もっと特別な人…
一緒にいるだけでドキドキするけど安心もできる人。
いつからだろうそんな風に意識し始めたのは。
きっと幼い絵里は気付かなかっただけで、ずっと昔から好きだったのかもしれない。
―――――― アナタは絵里の初恋。
「卒業式だね」
「ん?そうだね、絵里はもうちょっと後だっけ?」
「うん。中学はもっと後だよ。自分だって中学生だったことあるじゃん」
「そうだけど忘れたんだよ〜。あっ、明日学校来るの?」
「中学はまだ普通に授業があるから。昼までだけど」
「あっ、そっか。ダメだな、あたしもう年かも」
おどけた言葉に笑い返して。アナタの声を耳に焼き付けようと必死で聞いていた。
一緒に居られる時間はほんとに短いと感じる。あっというまに家についてしまう。
明日……明日こそ気持ちを打ち明けよう。そう思っていました。
門を開けたところで呼び止められ何かなって振り返ると真剣な顔のアナタがいました。
「卒業式終わったら写真でも撮ろう」
「えっ?」
「この制服着るのも最後だし」
「…うん」
返事をするといつものやわらかな笑顔に戻っていました。
- 500 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:05
- 部屋に入ってからもアナタのことばかり考えていました。
どうやって伝えようかな……
”初恋は実らない”
なんて友達は言うけれど。それでも好きでいたことを知っていて欲しい。
アナタが、高校の3年間恋人を作らなかったのは何故ですか?
モテナイはず無いのに。好きな人がいるからって告白を断わってるのを見たことがありました。
”誰が好きなんですか?”
アナタの学校での事は何も知らない。
幼馴染としての通学途中のアナタしか知らない。
- 501 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:06
- 1番好きなのは絵里を呼ぶアナタの声とやわらかな笑顔。
どこか甘い響きにいつもドキドキしていました。
その瞬間、私の為だけに向けられる笑顔を胸に刻んでいました。
その度に、もっと特別になりたいと欲張ってしまうんです。
ただ傍にいるだけで良いと思った事もあったけど……
知らない女の先輩と話してるのを見るのが辛いってわかった時、アナタが好きなんだと自覚しました。
- 502 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:06
-
******
- 503 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:07
- [ 思い出の公園で待ってるから来てほしいです。絵里 ]
卒業式の後、そっとメールしました。気付いてくれるでしょうか?思い出の公園。
中学に上がる直前の春休み、少しだけ遠出してアナタが連れて行ってくれた場所。
鮮やかに桜の花が咲いていました。
綺麗なピンク色の花びらが、春風に乗って絵里のもとに舞い降りてきて
幻想的にも想える時間を過ごしたあの場所。
『絵里が好きなピンク色の花が咲いてるよ』
と言って連れて行ってくれた公園。
絵里が喜んではしゃいでいるとアナタは嬉しそうに微笑んで
『良かった。絵里だけに見せたかったんだよ』
そう言ってくれました。
少しだけ、アナタの特別なんだって感じられた日でした。
- 504 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:07
- たった一度だけ行った公園。いつも遊んでいた公園とは違います。
憶えていてくれるでしょうか?
もし忘れていたら…想いは告げずに幼馴染のままでいよう。
来てくれたら…大好きですと伝えたい。
- 505 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:08
- ◇ ◇ ◇
- 506 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:08
- 今も桜の木はありました。
少しだけ大きくなった絵里が見上げてもあの頃とちっとも変わらず
大きな桜の木が堂々と息づいていました。
春になったら満開の花びらが私の元へ舞い降りてくるでしょう。
目を閉じて、もう一度『一緒にみれますように』とお願いしました。
ねぇ〜はれ〜とおり〜雨のちぃ……
”好き”好き好きぃ――――――
歌が頭の中で何度も繰り返し再生されます。
30分くらい待っているけどアナタが来る様子はありません。
まだお友達とお話してるのかな。それとも、やっぱり公園わかんないかな……
不安ばっかりが頭の中を占める。アナタにとって絵里はただの幼馴染ですか?
- 507 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:09
- しずかに雨が降り出しました。
私がいる場所は公園の屋根のあるベンチの下だから雨宿りできるけれど……
「濡れちゃったらどうしよう……」
自分勝手に呼び出した事を後悔しながらも、ひたすらきてくれるのを待っていました。
それから15分くらいして雨が止んできました。けれどアナタは来ません。
もう帰ろうかな?俯いて諦めかけていた時、大好きな声がしました。
「絵里!ごめん、遅れたね。ほんとごめん
思い出すまでにいろんな公園走り回ってたんだ……ごめんね」
謝るアナタはびしょ濡れで。髪の毛から雫がポタポタと落ちていきます。
その様が不謹慎だけど、とても綺麗だなって想いました。
しばらくは髪から零れる雫に見惚れていました。
吸い込まれそうな瞳には絵里だけが映し出されていて……
「絵里こそごめんなさい。すっごい濡れちゃった…」
我に返ってすごく泣きそうになる。ううん、もう涙が目にたまってきてるのがわかりました。
それを溢さないようにするのが精一杯でそれ以上何も話せなくなります。
- 508 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:10
- 「大丈夫?」
そう言ってアナタは傍にもう一歩近づく。眼差しが切なく揺れて……
絵里は、無言で頷きました。頷く事しか出来ませんでした。
そして何も言えなくて、気付けばアナタに抱きついていました。
雨の中、絵里を探してくれたアナタの身体は冷えてしまっていて。
でも少しだけあったかく感じるのはなぜだろう……
「濡れちゃうよっ」
慌てて離れようとするからギュってしがみつきました。
「このままでいてください?少しだけで良いから……」
頭上でフッと笑うような暖かな空気の変化を感じました。
きっと優しいカオしてるんだろうな……
戸惑っていたアナタの腕が背中に回って、そのまま抱きしめてくれました。
- 509 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:10
- 「けっこう迷ったけど、思い出せて良かった」
”だってこの桜を見せたいと思ったのは絵里だけだから”
優しい声が絵里の身体に直接響いてくるようで嬉しく感じました。
アナタの胸元に顔をうめると、心音が聴こえてきました。
- 510 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:11
- 少しだけ速くうつ心臓の音は絵里を好きな証拠って想っても良いですか?
だって絵里も同じくらい速くなってるから……
自惚れかもしれないけれど、きっと同じ気持ちだと想う。
この腕がほどけたらアナタに言おう。
『大好きだよ』って――――――
fin
- 511 名前:桜 投稿日:2006/04/09(日) 23:12
-
- 512 名前:日季 投稿日:2006/04/09(日) 23:13
- >>496-510更新終了です。
まったく本編と関係ない短編でした。
某桜組で黒髪で長かった頃の亀井さんをイメージしていただけると有難いですw
- 513 名前:日季 投稿日:2006/04/09(日) 23:17
- みきさゆ本編の前にひとつ番外を挟む予定です。
その後に甘い(たぶん)二人をお届けできれば良いなぁと想ってます。
レス返し〜。ありがとうございました。
>>491 名無飼育さま
ありがとうございます。可愛いって言ってもらえて嬉しいです。
不器用さをもっとうまく表現できればいいのですが……
从*VvV)<がんばるのだっ。
>>492 名無しさま
ありがとうございます。見守られながらマイペースでがんばりますね。
道重さんあまり怒るイメージが無いので……甘いですかね?w
藤本さんを可愛いって言ってもらえると嬉しいです。
从*・ 。.・)<案外クールなのw
>>493 名無し読者さま
ありがとうございます。癒される……マジで嬉しいお言葉です。
気付かれて無いかなぁと思って自分で言っちゃいましたw
从*・ 。.・)*VvV)<まったりがんばります〜。
>>494 初心者さま
ありがとうございます。こんなアフォ作者を素敵と言って頂いて嬉しいですw
どうしても登場させたかったので無理やりに出してみました、ゲームネタ。
中澤先生は色々とかまいたいみたいですw
从*・ 。.・)*VvV)<また甘いみきさゆ書けるようにがんばります。
>>495 名無飼育さま
遅くなりましたが更新しました。
- 514 名前:名無し 投稿日:2006/04/09(日) 23:30
- 更新おつです。○○かめですかね?青春って感じですねw
優しい文章に癒されました〜
番外もみきさゆも楽しみにしてます
無理せずがんばって!!
- 515 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/10(月) 00:38
- デビュー当時のなよっとしたえりりんが浮かびましたw
短編とても素敵でした
- 516 名前:日季 投稿日:2006/04/10(月) 17:47
- 吉澤さんの誕生日番外編です。
『Blue sapphire』
- 517 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:48
- 「はぁ?」
なんだそれって感じの不機嫌な声で美貴が問い返す。
「だからー、梨華ちゃん実家に帰ってる」
「喧嘩でもしたわけ?」
「ちげーよ」
「じゃ、なんで?」
「3日前に……」
- 518 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:48
- ◇
- 519 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:49
- 「なにこれ……」
夕飯の支度をしようとキッチンに居たら、梨華ちゃんの呟きが聞こえてきた。
カウンター越しに顔を出すと、困ったように眉を下げて笑った彼女と目が合った。
「どうしたの?」
「ママからメールなんだけどね」
そういってカウンターまで歩いてきた梨華ちゃんの携帯を覗きこむ。
「えーーーーー!?」
「冗談だと思うんだけど……」
「じょ、冗談って」
「とりあえずこれから行ってみる」
「今から?」
「だって早く行かないとイタズラがエスカレートするから」
そう言うと梨華ちゃんは”ご飯一緒に食べれなくてごめんね”と家を出た。
あまりに突然であたしはボー然と見送ることしか出来なかったんだ。
- 520 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:49
- ◇
- 521 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:49
- 「どんなメールが着てたの?」
「お、おとうさんがぁーーーー!?早く戻って梨華っ!!!って」
「何やってるんだよおばさん……」
「こんなイタズラよくするって言ってたけど」
「笑えないジョーク飛ばす人だから……っていうか、やっぱイタズラだったわけ?」
「うん。戻ったらお父さんピンピンしてたって」
「なのになんで帰ってないのさ」
「寂しがってるから3、4日くらい実家から大学に行くって」
「可哀想に……」
「誕生日には帰るって言ってたけどさ〜」
「まだ戻ってないわけね」
がっくりと項垂れたあたしの背中をぽんぽんと叩いて励まして……
くれてるんだろうけど、噛み殺した笑い声が微かに聞こえてる。
- 522 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:50
- 「笑うなよ」
「ごめんごめん。それで寂しく誕生日にバイトしてんだ」
「そうだよっ!」
「まぁまぁ怒るなって。後でさゆみが来るからプレゼント渡すね」
「さゆが来るの?聞いてない」
「よっちゃん誕生日だからって。プレゼントも二人で買ったから……ってか聞いて無いって何?」
「昨日、日付が変ってちょうどくらいにメールが着たんだ」
「へ〜」
「やっぱりあたしってばさゆにとって特別なんじゃん?」
「”ただ”の幼馴染だよ」
「なんだよ、余裕だな〜」
「だって美貴たちの場合は一緒に過ごしてたから。一番におめでとうってお互いに言ったわけ」
「くそっ……」
思い返せば、梨華ちゃんの誕生日もあたしが風邪をひいたせいで……
どうしてこうもついてないんだ。
神様とかいう偉い人がこの世に存在するなら、どうしてあたし達にだけ試練を与えるんですか?
理不尽だ。大変理不尽である。美貴はこんなにも日々楽しそうに過ごしているのに……
- 523 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:50
- 「美貴はいいよな……」
「なにが?」
「はぁー……」
「無視かよ」
本棚の整理をしながらお喋りしていたがどうも視線を感じる。
気のせいかと思って振り返ろうとしたその時……
「サボってんじゃないわよっ!?」
「いだっ……保田さ〜ん美貴じゃなくてよっちゃんを怒ってください!」
「あらっ、ここ藤本の担当だったわね失礼。だって吉澤があまりにも負のオーラを発してたから
とてもじゃないけど叩けないわよ……そこまで鬼じゃないし」
「だからって美貴を叩かないでください」
「あんたは幸せそうなんだからいいじゃない」
「良くないですっ!」
「そうだ藤本にお客さんよ。休憩してらっしゃい」
「お客さん?」
「色白の長い黒髪で可愛らしい子が来てたわよ」
「……色白黒髪…可愛い……」
「心当たり無いの?」
「無いわけ無いじゃないですか〜!藤本お昼の休憩に行ってきま〜す」
「あら凄い変わり様ね」
呆れる保田さんが見送る美貴は満面の笑みで奥に消えていった。
仏頂面でレジ打つくせに、お客さんにその顔をしろよ。
- 524 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:50
- 「吉澤はもうちょっとがんばってね。藤本が戻ったらお昼にして」
「はぁ〜い……」
「返事は短くハッキリと!」
「はいっ!」
いきなり目の前に迫られた勢いに負けて咄嗟に返事を返すと「宜しい」なんて、
満足そうに保田さんは微笑んだ。
それにしても美貴のやつぅ……さゆが来るなんてさっき聞いて知ってたけど早いじゃないか。
学校は?今日は昼までなのか?それさえ知らなかったあたしって悲しいね。
とか梨華ちゃんじゃないんだしそんなこと言ってる場合じゃない。
梨華ちゃん来ないかなぁ……
お昼一緒に食べよっとかはにかみながら。
そんでもってお昼より梨華ちゃんが良いな〜とか言っちゃたりして。
やだっひとみちゃんたらっ!とか言われていいじゃんかよ〜とか甘いやりとりを……
「あんた石川ばりにヤバイわよ?」
「へっ?」
「百面相してる。ニヤニヤしないほうが良いわよ。普通にしてたら男前なんだから」
「いやいやあたし女ですから」
「そうね、じゃあキレイな姉貴って感じかしらね」
「姉貴……」
「子沢山なイメージだわ」
「……まぁこの際なんでもいいです」
「それよりあんた自分の担当忘れないでね?ちゃんと整理しといてよ」
「……はい」
- 525 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:51
-
******
- 526 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:51
- 「お待たせっ」
「早かったですか?」
「ううん、ちょうどよかった……」
甘えるように抱きつかれて戸惑う。
どうしたのかなって聞こうと思ったら泣き真似をした藤本さんが大袈裟に「えーん」
なんて似合わない声を上げた。
「保田さ…店長が美貴のこと叩くんだよぉ」
「何かしたんですか?」
「してないよぉ」
上目遣いで見上げられ鼓動がどんどん速くなっていく。
やだ可愛いの……
「よっちゃんが落ち込んでるから励ましてたんだけどね。
美貴はちゃんと自分の仕事してたのにサボるなって怒るんだよ〜」
よしよしと頭を撫でるととても気持ちよさそうに目を閉じてうっとりしている。
こんな可愛い藤本さんを叩くなんて許せないの!
「さゆみがお話してきます!」
「えっ?いや、止めた方が……」
「だって藤本さんを叩くなんて許せないの」
「気持ちだけで凄く嬉しいよ。あんな怖い人と喋っちゃダメ」
上目のままお願いされてちょっと蕩けそうだった。
ズルイくらいに愛らしい笑顔は天性のものだと想う。
営業スマイルが苦手だってお話してたけど、それを聞いてどこか安心したの。
だってこんな笑顔ふりまかれたらきっとファンが増えちゃう。
- 527 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:51
- 「お弁当作ったんです!」
「ありがとう〜」
「どれから食べますか?」
「さゆみ」
「えっ……」
満面の笑みでそんな返しを受けて私はどうすれば良いんですか?
戸惑っているとちゅっとかるくキスされた。
藤本さんは「なんちゃって」なんて照れたように言う。
「もう、みーちゃんのばかぁ」
「ごめんってば。だってしたかったんだもん」
「誰かに見られたらどうするんですか〜」
「だいじょうぶだよ誰もいないって。ね、もう1回」
もっかいちゅーとか言ってわざと音を立ててキスされる。
それだけで真っ赤になっている私を見て満足そうに微笑んだ藤本さんは
玉子焼きからお弁当を食べ始めた。
「怒った?」
何も言わない私にちょっと心配そうに問いかける。
意外と心配性だからすごく焦ってるみたい。
「ビックリしただけなの」
「そっか……」
お弁当を置いてそっと抱き寄せられた。
何も言わないけれど藤本さんの気持ちがカラダに響く心音から伝わってくる。
- 528 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:52
- 好きな気持ちの分だけ抱きしめる。
いつか想いが溢れて伝えきれなくなったら……
また二人だけの伝え方を探せば良いですよね?
「好き」
ありふれた愛の言葉もあなたの声で紡がれるだけでとても特別なものになる。
心地良い幸せの中でしずかに瞼を閉じればそこはもう二人だけの世界。
- 529 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:52
-
******
- 530 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:53
- 「ただいま〜」
ため息まじりに呟いて虚しくなる。
ここ何日か聞いていない「おかえり」って言葉を無意識に探して
あたしは玄関に立ち止まったまましばらく目を閉じていた。
今日も帰ってないのかな?けれど少しの違和感を感じた。
自分の足元に視線を落とすと見慣れたブーツが並んでいた。
すぐには脳が指令を出せずあたしはやはり佇んだまま思考を巡らせる。
「……梨華ちゃん?」
彼女の名前があたしの喉を甘く潤す。渇いた心に一気に甘い味が広がっていく。
リビングのソファに見慣れた人影。遠目からでも眠っているのがわかる。
眠ってしまうほど疲れた原因を考えながらキッチンを覗きに行く。
不器用な彼女の作り出した料理が並んでいた。努力したのだと言うことだけは切実に伝わってきて嬉しくなる。
流し台に目を向けないようにしてあたしは苦笑いした。
後片付けしなきゃやばいだろうな……
そっと膝を突いて覗き込むと気配を感じたのか薄く瞼が開いていく。
まどろみのなかで彼女はどんな夢を見ているのだろうか。綻ぶ口元はとても幸せそうだ。
「……ひとみちゃん」
掠れた声だけどしっかりと甘えを含んであたしの耳に届いた。
まだとろんとした目であたしに擦り寄って腕を首に絡めてくる。
子供のような仕草に頬が緩んでいく。ふわりと香る彼女の甘い匂いに痺れたように声が出ない。
ただぎゅっと抱き返すと安心したように瞼を閉じた。
- 531 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:53
- 「梨華ちゃんただいま」
吐息とともに囁けば彼女もまた吐息混じりに返してくれた。
「おかえりなさい」
久々に聴く彼女の声にようやく帰って来たのだと実感した。
- 532 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:53
- ◇ ◇ ◇
- 533 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:54
- 「ひとみちゃん起きてっ!もうこんな時間だよ〜」
「……ん〜もうちょっと」
「だめっ!お夕飯食べなきゃ……起きなさいっ!!!」
耳元で最大限の大声で囁かれて耳がキーーーーンっとなった。
勘弁してください。殺傷能力があるって絶対に……
耳を押さえがなら渋々起き上がるともう外は真っ暗。
あの後あたしまで寝ちゃったらしい。
「ごめんねほんとはもっと早くに帰ってくる予定だったんだけど……」
無駄にがんばっちゃったんだよね。わかってる。
あたしに食べさせようとがんばって料理してくれただけでなく
その材料を嬉しそうに買っている姿が容易に想像できるから。
だってすごい量の材料を買ったであろう残骸が悲惨にも散らばっているのを見たから。
「いまこうして一緒に居られるから嬉しいよ」
「えへっ……もうママにもパパにもキツク言っておいたから大丈夫だと思う」
「そっか。でも寂しかったんだよきっと」
「そうなのかなぁ……」
梨華ちゃんの存在の大きさはあたしもイヤと言うほどに知っている。
お母さん達の気持ちも理解できる。
- 534 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:54
- 「だって寂しかったんだよ〜」
「やーん甘えたなひとみちゃんかわいい〜」
むぎゅーーーっと胸に抱かれて言いようの無い幸せがあたしを襲った。
細いくせに肉感的な彼女の不思議なカラダ。やわらかくとても女性的なんだと思う。
「梨華ちゃんこのままぎゅーってしてて」
「どうしたの〜」
「だから寂しかったんだって。それにきもちいい〜」
胸に顔を埋めてぐりぐり左右に振っていると頭を叩かれた。
「叩くなよ〜」
「くすぐったいの」
「いいじゃんか……」
じとーーっと見上げたら目を細めてあたしを見る彼女と目が合った。
愛しいと伝えようとするその瞳に自分の姿を見つける。
安心して再び胸に顔を埋めて思いっきりため息を吐く。
幸せが全身に溜まりすぎて危険だったから……
「はぅぅ……」
「もうひとみちゃんため息なんて吐かないでよ〜」
「しあわせー」
「うふふっ」
吐息まじりに漏れる声はすごく嬉しそうだ。
- 535 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:54
- そっと起き上がって唇を寄せるとキュッと瞼を閉じて待っている。
しばらくそのままで梨華ちゃんを見ていた。
「もうバカぁ」
「だって目閉じてる梨華ちゃんかーわいいっ!」
アヒル口で抗議しても意味無いって気付こうよ。
むしろ誘われてるようで燃えちゃうんですけど?
なんて邪推していたら無邪気に笑ってキッチンを指差した。
どうやらキスはおあずけらしい。
「お腹空かない?」
「う〜ん、空いたかも」
「ご飯にしよっ」
そう言って立ち上がった梨華ちゃんの後を追って自分も立ち上がる。
キッチンへと歩き出そうとしたら止まっていた梨華ちゃんにかるくぶつかった。
「ちょっ、梨華ちゃん危なっ!?」
振り向きざまにキスをされる。やられた……
満面の笑みでしてやったりの表情であたしを見ている。
「お誕生日おめでとう」
誰に言われるよりも自分が一つ年を重ねたことを実感し、そして喜ぶべき日なのだと感じた。
無意識に触れた唇を確かめるように指で触っていた。
あたしがもう一度キスをねだると後でね……なんておあずけ。
そしてすぐに何かを思い出したのか「あっ!」と声を上げた。
- 536 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:55
- 「ご飯の前にプレゼントがあるのっ!」
「なにくれんの?あっ!梨華ちゃんだったりして〜?」
「もうっ!そんなのいっつもあげてるじゃない」
「いやここ何日かはおあずけでしたから」
「ごめんってば〜」
「いいのいいの。こうして帰ってきてくれたし。でプレゼントって?」
ものすごく失礼なのだけどあまり期待してはいけない。
何度趣味と違うものをプレゼントされたことだろう……
それでも気持ちは嬉しかったので笑顔を引き攣らせながらも
あたしは心から喜んでそのプレゼントをもらっていた。
何をもらうかじゃなくて彼女があたしを想っていてくれる事が嬉しいから
梨華ちゃんにもらったものは全部大切にしまってある。
梨華ちゃんがごそごそと取り出した箱のサイズから見てネックレスだと推察する。
一瞬だけイヤな予感がした。まさかでっかいハートとかじゃないだろうなぁ。
しかもピンクとか……そんな不安が顔に出ていたのか梨華ちゃんは不思議そうにそれを手渡してくれた。
- 537 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:55
- 「ブルーサファイアなの。深い青色が心を落ち着かせてくれるんだって」
「梨華ちゃんにしては良い色を選んだね」
「もうっ、一言多い!」
「ごめんごめん、真面目に聞くから怒んないで?」
ぷいっと横を向いたから、すかさずぎゅっと抱きすくめた。
話を聞いてから中身を確認しよう。一生懸命に選んでくれたはずだ。
その姿を想像するだけでニヤけてしまう。彼女に見られなくて良かった。
「誠実さの象徴でね、深い青色が二人の愛の結束を強めてくれるらしいの」
「おぉっ!?」
大袈裟に驚いたあたしを見てとても幸せそうに笑う。
ちゅっと首筋にキスを繰り返したら、梨華ちゃんはくすぐったそうに首を竦めた。
小さく抗議しながら振り向くから唇にキスをしようとした瞬間
腕の中で身じろぎして向いあう体勢になり真正面からあたしを見据えた。
本日3度目のおあずけを喰らった……。
- 538 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:56
- 「そうだ!」
「な、なに?急に大きな声出して」
「中世のヨーロッパでは誠実さで浮気を封じ込める石だったんだって」
「へ、へ〜」
「だから浮気なんか出来ないんだからね!」
「わーってるって」
「ぜったいぜったいダメなんだからね」
子供のように繰り返される言葉を唇で塞いだ。
わかってよ、こんなにもあなただけが好きなんだから。
「梨華ちゃんつけて」
「うんっ!」
あたしの首にそれをかけてとても満足そうに微笑むから
何故かあたしまで嬉しくなる。
「やっぱり似合うね〜」
うんうんなんて頷いて納得しながらあたしを見る。
あたしも調子に乗ってポーズなんて決めちゃったりして……
- 539 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:57
- 「ね、ご飯よりさ〜」
「甘えた声だしてどうしたの?」
「もっと食べたいものがあるんだけど?」
「ひとみちゃん?」
「かるく運動しよう?」
「もう……」
子供っぽい雰囲気が隠れ大人びて妖艶な微笑を浮かべる。
ほんとにズルイっておもう。色とりどりの表情でこんなにもあたしを夢中にさせるのだから。
「かるくじゃ、やだ」
「梨華ちゃん……?」
「深く愛してほしいの」
返事のかわりにキスをした。
青と赤が見守る中であたし達は互いの愛を確かめながら堕ちていく……
その先なんていまは考えなくていい。ただ現在を生きていくのだから
- 540 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:57
- 4月12日の誕生日石。
ブルーサファイヤ:石言葉『慈愛・誠実』
―――――― おしまい。
- 541 名前:BlueSapphire 投稿日:2006/04/10(月) 17:57
-
- 542 名前:日季 投稿日:2006/04/10(月) 17:58
- >>516-540 吉澤さん誕生日番外編更新終了です。
(短い藤道シーンの方が書きやすかったのは内緒w)
少し早いですが誕生日(*^▽^)<おめでとう♪
ほんとはもっといしよし色を強く出したかったのですが時間も腕もが無く出来ませんでした(T▽T;)
前回の更新でミスってましたorz
>>503 「卒業式の後」は「卒業式が終わったくらいに」の間違いです。
- 543 名前:日季 投稿日:2006/04/10(月) 17:59
- >>514 名無しさま
レスありがとうございます。○○かめですw
初々しい頃の亀井さんを書きたかったので……ノノ*^ー^)
癒すことができて非常に嬉しいです。ありがとうございました〜。
>>515 名無飼育さま
レスありがとうございます。
素敵と言ってもらえて嬉しいです、ありがとうございました。
そうですねその頃のイメージかもしれませんノノ*^ー^)
- 544 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/10(月) 18:30
- 甘えるミキティーがめちゃくちゃイイ!?
ヨッスィ〜かわいいぞ!そしてヤッスーがすきww
- 545 名前:名無し 投稿日:2006/04/10(月) 20:28
- 更新おつです。>>527のやりとりでにやけちったw
この二人にはカワイイままいてもらいたいです。
あまえるよっちゃんもいいですね。梨華ちゃんも扱い慣れてるのかな?
濃い夜を過ごしたことでしょうww
みきさゆ本編も楽しみにしています。マターリお待ちしてます
- 546 名前:前29 投稿日:2006/04/11(火) 23:15
- よっすぃお誕生日おめ〜〜!
やっぱ梨華ちゃんに祝ってもらってこそのお誕生日ですよね〜〜♪
気分もいよいよ頂点に!!
最後の一言に顔面崩れましたww
- 547 名前:日季 投稿日:2006/04/11(火) 23:17
- ミス修正……orz 書き直すの忘れてました。(毎度ミスしてる、反省)
>>537 >>537最後から5行目は「あたしを見て」では無く「あたしの気配に」の間違いです。
脳内で修正していただければ幸いです。
(レスは次の更新時にします。ありがとうございました〜)
- 548 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/14(金) 22:48
- こういう光景リアルに見てぇぇぇぇ!!
部屋に入れてください!!
大人しくしてるから・・・w
- 549 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:10
- 『……ダイキライ』
昨日の晩に言われた言葉が頭の中でずっと回ってる。
嫌いだってさー……初めて言われたのかな。ぐしっと鼻をすする。泣いてないぞちくしょー。
なんて考えながら机に突っ伏していると梨華ちゃんに苦笑いされた。
「どうしたの美貴ちゃん」
「はぁ……」
「溜め息なんて珍しいじゃん」
「美貴にも色々あんだよ」
「その色々聞かせて欲しいな〜」
「やだ」
「もう、意地っ張りなんだから」
昨日は出逢って1周年だったらしい。
すっかり忘れてた美貴にさゆみは……
口も聞いてくれなくて、朝起きると既に学校に行ってしまってて
美貴は一人で朝ご飯を食べた。
大学の講義のほうが遅くても一緒に朝ご飯を食べるようにしてたのに。
寝坊した美貴が悪いんだけど。起こしてもくれないなんて初めてだった……。
- 550 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:10
- いつもならこう起きるまでしつこく起こされる。
かわいらしく〜とかちょっと怒った風で〜とか、色んなバージョンを試しながら美貴を起こす。
一人で翻弄してる彼女を見るのが好きでわざと起きないフリをすることもあった。
そんなことをぼんやり考えてたらじわーっと涙が視界を滲ませる。
零れ落ちるほどは出なかったけれど鼻水の方が先に垂れてきそうだったので
とりあえず鼻をかもうとティッシュを探した。
ないないない……何もかもついてない。忘れた最悪どうしよう。
ふいに梨華ちゃんがティッシュを美貴の鼻にあてる。
じとっと睨み上げたつもりが彼女の眉だけでなく目尻も下がっていることで
全然怖く出来て無いことを知る。今日はダメっ子モードでいいや。
諦めて素直に鼻をかんでもらった。
「ちっちゃい時みたい」
「……りかねーちゃん」
「うふふっ覚えてたんだ〜」
「……うふふはキショいって」
ちっちゃい頃に美貴は年の離れた自分の姉よりも
梨華をねーちゃんと呼んでいた時期があったそうだ。
二人とも忘れていたがいつだったか母親が笑い話でそんな話をしてくれた。
- 551 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:11
- 「もうほんとに今日の美貴ちゃん可愛いっ!?」
「うっさい」
「素直じゃないところが可愛いの〜」
「……美貴は可愛いですよ〜だ」
「素直でも可愛い〜」
うざったいくらいに美貴にかまいたがる時はわざとだ。
元気付けようとしてるんだろうな。ちろっと浮かんだ涙も拭いてくれ……
「り、梨華ちゃん……」
「どうしたの〜」
「どうしたもこうしたも……」
それさっき鼻かんだティッシュじゃん。
もうこのさいどうでもいいや、なんて思ってると梨華ちゃんは気付いたのか
えへっなんて誤魔化し笑いをする。
「エコ?みたいな」
「……そうだね地球に優しくしないとね」
「そうそう。さっすが美貴ちゃん話がわかる〜」
ぐりぐりと頬をつつかれる。だからかまうなっての……。一人になりたいんだい。
とか思ってたけど無意識に梨華ちゃんの傍に座ってたんだな、そういえば。
やっぱ寂しがり屋さんの甘えんぼじゃん美貴ってば。
- 552 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:11
- またなんだか泣きたくなってぎゅっと目を瞑ってたら思い出した。
久しぶりに夢を見たんだ。泣きながら去って行く後姿を追いかけることができない夢。
昔別れた人だったのに、いつしかさゆみに変ってた。
一緒に住むようになってずっと同じ部屋で寝てたのに。
ママさんに変に思われないようになのか一緒の部屋では寝たんだけど
布団を別にひいて寝てくださいって言われた。しかもメールで……。
さゆみはデカうさぬいぐるみと寝てたっけ。あいつ帰ったらしばいたる。
「ところで喧嘩でもしたの?」
「……怒らせちゃったんだ」
「さゆも怒ったりするんだね」
「……悲しませた、の方が近いかもしれない」
「どうして?」
「忘れてたから……だから泣いちゃって」
「あっ」
「1周年だったんだって。出逢ってから1年目」
河原で思い出に浸っていた3月中旬。
「もうすぐ出逢って1年が経つんだ」とか想っていたのになんで忘れるかな。
「口聞かない喧嘩って初めてじゃない?」
「そうだよ」
「うふふっ」
「笑うなよ人が落ち込んでるのに」
「だって、可愛いもん二人とも」
ぷーっと膨れた美貴を見て梨華ちゃんは優しく微笑んだ。
- 553 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:11
- 「たまには距離を置いてみたら?」
「距離……」
「きっと近すぎなんだよ。お互いが見えていないというよりは
お互いしか見えてないから……ね」
「たしかに傍にいなきゃいなきゃって思ってたかな」
どこかで無理してたんだろうか?
一緒にいることだけがすべてなような気がしていた。
それでとても幸せだったし……。
「だいじょうぶだよ、ね?」
「……うん」
梨華ちゃんは「だいじょうぶ」と言った後は美貴に何かを助言することは無かった。
それが彼女の優しさで、美貴のことを考えてくれてるんだってことがわかる。
枠の中にはめられようとすると反発することをちゃんと理解してるんだ。
誰かのサンプルで仲直りするよりも、美貴達なりの方法で元に戻ることを願ってる。
これで終わるような気持ちならこんなには悩まなかったはずだから。
もっともっと近づければいいな。そう思って少しだけ泣いた。
やさしいぬくもりを背中に感じながら……
- 554 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:12
- ◇ ◇ ◇
- 555 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:12
- 「はぁ〜……」
ちょっとは前向きに考えようとしたけどダメだった。
お昼を食べる気力が無い。当然怒った彼女が弁当を作ってるはずも無い。
そういえば梨華ちゃんどこ行ったんだろう?
いなきゃいないで寂しいな、アニメ声聞けないと急に周りが静かになった気がする。
「何を悩んでるんだね少年」
「……誰が少年ですか?」
「突っ込む元気あるんじゃん」
「……梨華ちゃん何か言ってた?」
さぁどうでしょう?なんておどけて美貴の隣に座ったのは柴田あゆみ。
同じ中学に通っていた同級生。高校は隣町の女子高へ通っていた。
「そうそう梨華ちゃん帰って行ったよ」
「はぁ?」
「そんな怖い問い返し方をしちゃだめでしょ」
「いいんだい、美貴はこれで生きてきたんだから」
「あたしは慣れてるからいいけどね。それで梨華ちゃんだけど……」
どうやらよっちゃんが午後休講になったらしくって家に帰るってメールが着たそうだ。
それを見て電光石火で帰る途中の梨華ちゃんに、柴ちゃんは会ったらしい。
- 556 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:12
- 「擦れ違いざまに美貴ちゃんは頼んだわよっ!とか叫ばれて……」
「うちの幼馴染がすいません」
「いえいえ、そっちのお世話も慣れてますから」
そう彼女は中学に入って美貴以外で初めてできた梨華ちゃんのお友達。
実際には他にもいたけれど心を許すような友達はきっと柴ちゃんだけだった。
なにかと天然な梨華ちゃんの行動も寛大な心で受け止めるどこかお姉さんみたいな人。
「ミキティも相変わらず梨華ちゃんのお世話してるの?」
「……昔ほどはないよ」
「そっかお互いに大切な人できちゃったもんね」
「……ん、まあね」
ポンと目の前に置かれたのは……。
「お腹すかないんだ」と言おうとした美貴のお腹がバカ正直に空腹を伝えた。
ぐーーーっと可愛く無い音が響いた気がする。
本能って悲しいね……なんて梨華ちゃんじゃないんだからやめとこう。
「ほんと重症だね」
「えっ?」
「ミキティ口に出してるよさっきから」
焼肉弁当を抱えて机に突っ伏す。うぅ、美貴ってば打たれ弱いんだもん。
とかキショいってーの。
- 557 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:13
- 「ほら食べて。腹が減っては戦ができぬってね」
「別に戦をしたりは……」
「とりあえず食べなさい。身体壊したらみんな心配するよ?」
「……わかった」
柴ちゃんはポンポンと頭を撫でてくれた。
それから美貴に「時間が解決してくれるんじゃない?」なんて言う。
ダメなんだ、もう既にやばいもん。こんなの何日も耐えらん無いよ。
そう思ったけれど言えずにただ頷いた。
謝ろう。ちゃんと素直に謝ろう。
彼女が悲しんだということは美貴がほんとに好きなんだってことで……。
あれこれ考えても仕方ないってことだけは痛いほどにわかったから。
傍にいて欲しいんだ。ただ一緒にいたいんだ。
いつかそれじゃダメになる日が来るかもしれないけど
それはその時にまた悩めば良い。
だからいまは想いのままに気持ちをぶつけよう。
焼肉を噛みしめながら美貴はひそかに拳を握った。
- 558 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:13
-
******
- 559 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:13
- 「さゆ機嫌悪すぎ」
「そんなことないの」
昨日から私はまったく可愛くないと想う。
もう考えたくなくて絵里に何か気分の紛れる話をしてもらえば良いなんて想ってたのに。
何かを口にすれば藤本さんのことばかりが溢れてきそうで怖かった。
「吉澤さんの従姉妹が転校してきたよね……」
「それがどうしたの?」
「絵里ってへタレ系はすき?」
「はい?」
「やっぱりいい。おせっかいはやめておくの」
「意味わかんない」
「気にしないで……」
気になる気になると言っている絵里を無視して思い出していた。
昨日の態度はやっぱり可愛くなかったと想う……。
だって忘れてるんだもん。悔しくって悲しくって。
一番言っちゃいけない言葉を私は藤本さんにぶつけてしまった。
どうしてかな。怒っていたはずなのに怒りなんてどこにも残ってなくてこんなにも苦しい。
あんなに悲壮な顔をする藤本さんを……一度だけ見たことがある。
私が吉澤さんを好きだったことを知ったときに一度だけ。
- 560 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:14
- その時に自分は何と言っただろう?
昨日は思い出せるのに思い出さないようにしていた。
偉そうなことを言ったのに私は藤本さんを裏切った。
「キライ」って言う言葉がどれだけあなたを傷つけるのかわかっていたはずなのに。
なのに私は勢いに負けてその言葉をあなたに言ってしまった。
ちゃんと朝ご飯食べたのかな……。
用意しないといっつもいらないとか言って抜こうとするズボラな藤本さん。
ちゃんとお昼は食べられたかな……。
嬉しそうに毎日帰ってきたらその日のお弁当の感想をくれる律儀な藤本さん。
いつだって笑顔だった。甘い人だった。どうしてキライなんて言っちゃったんだろう?
「さゆみってばなんておばかさんなの……」
「急に落ち込まないでよ〜」
「えりり〜ん」
「うわっ……もう危ないじゃん」
うへへへって笑いながら照れる絵里。久々かも絵里に抱きつくのって……。
「ひっさしぶりだ〜ね」
「だね〜」
「絵里もだっこ〜」
「はいはい」
今度は絵里が抱きついてきたのでそれを受け止める。
よしよしなんて頭を撫でていると飯田先生がやってきた。
2年生の担任は飯田先生になった。これも運命なのか藤本さんとまったく同じなんだって……。
- 561 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:14
- 「あんたらじゃれてて仲良いね〜」
「飯田先生〜どうしたんですかっ?」
「道重さんにお届け物だよ。携帯忘れてたって」
「えっ?」
「家に置いたままだったから届けてくれたみたい」
藤本が来てたんだけどね、渡してくださいって職員室に来て帰っちゃった。
会って行けば?って言ったんだけど大学があるみたいで急いで帰っちゃった。
「ありがとうございます」
「そうだ道重さんだいじょうぶ?」
だいじょうぶ?首を捻っていると飯田先生は教えてくれた。
藤本さんが2年生の頃のことを……。
挨拶代わりにあの裕ちゃ……中澤先生のお尻でさえ触ってたんだよ〜。
冗談でそんなことをよくしてて、まあでもあの笑顔でしょ?
人懐っこい笑顔するから誰も嫌がらないんだけどね。
藤本はあの容姿で得してるわね。中身はちょっと変態オヤジみたいだからね。
「触り魔ミキティなんて言われてたんだよ〜。
だから先生とっても心配……別にダメだとは言わないけど気をつけてね」
「先生?」
「どうしたの?」
「先生も触られたりしましたか?」
「う〜ん、挨拶代わりに……ね。まあでも3年になってからは噂すら無くなったから大丈夫」
気にしない気にしないって携帯を渡して先生は教室を後にした。
- 562 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:14
- 3年になってから減ったのはきっと私と出逢ったから?
そう思いたいけど別にベタベタと触られるわけじゃない。
むしろものすごく緊張してダメになっちゃったりする……。
「さゆ気にしちゃだめだよ?」
「絵里は知ってた?」
「ええええええっと、しししらなかったよ〜」
「動揺しすぎなの。怒らないから教えて?」
「さゆ怖いも〜ん」
キャーっと席に絵里が逃げた瞬間にお昼休み終了のチャイムが鳴った。
ホッとした顔で振り返った絵里がにへら〜っと笑って私を見る。
帰りに絵里の家に寄ろう。真っ直ぐに帰る前に気持ちを落ち着けたい。
届けられた携帯を見る。そこには1件だけメールが着ていた。
『ほんとは直接渡したかったけど寝坊して時間がなくて無理でした
帰ったら話を聞いて欲しい。朝ご飯ありがとう』
お弁当は作れなかったけど朝食べれそうなものだけは用意してでかけた。
寝坊したんだ……。起こしてあげればよかったかなと少しだけ反省した。
でもさっきのお話が気になって仕方が無い。すぐに会えばまた怒りをぶつけてしまいそう。
どうすればいいのかわからないよー……。
- 563 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:15
- ◇ ◇ ◇
- 564 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:15
- 「ほんとに真っ直ぐ帰らないの?」
「絵里の家でおやつを食べながらお話したいの」
「だから〜喧嘩したんでしょ?」
「な、なんで知ってるの?」
「さゆの態度見てたらわかるよ〜。親友をなめんなよっ!」
「舐めてないけど……」
「そんな真剣に返されても困るから」
へらっと困ったように笑った絵里。
話さなかったけど喧嘩したことはバレていた。
そんなにわかりやすいのかな……。
「さゆ?」
「なあに?」
「美貴ちゃんいるよ……」
絵里が指差したのはあの河原。
川の流れを見ながらぼんやりとする藤本さんがすごく寂しそうで……。
いますぐ抱きしめてあげたくなる。何もかも気にするほどの事では無い気がしてくる。
あんなに寂しそうな藤本さんを見たら何もかもよくなってしまいそう……。
だけどなんて言えば良いのだろう?キライだなんて言ってしまった私はなんて言えばいいの?
「行ってあげなよ」
「絵里……」
縋るように絵里を見た。逢いたいけど会いたくないの。
だってまだ心の準備が……。
- 565 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:16
- 「時間が開くとどんどん話しづらくなっちゃうよ?」
「……そうだけど」
「ほら、さゆらしくいっちゃえっ!」
「さゆみらしく?」
「あまり気にしないのがいいところだったでしょ?」
「そんな自己紹介したけど〜」
「だいじょうぶ。美貴ちゃんのこと好き?」
絵里の目はいつものおどけた調子じゃなく真剣だった。
真っ直ぐに私を映している。
「好き」
掠れた呟きに満足そうに笑った絵里は、ぽんぽんと肩を抱いて「ガンバレ!」そう言ってくれた。
「また今度遊びにおいで」
「お菓子ご馳走してね」
「もう……わかったから今日はバイバイね」
「うん」
絵里が笑顔で後押ししてくれた。最後にぽんっと背中を押してくれる。
もう一度だけ振り返ると口パクで「が・ん・ば・れ」と励ましてくれた。
思ったままにお話をしてみよう。そしてやっぱりキライじゃないことをきちんと伝えよう。
- 566 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:16
-
******
- 567 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:16
- 最初はまったく気付けなくて。あー美貴ってば水面に幻見ちゃってるよ。
そんな風に思っていた。でも明らかに隣に人の気配がする。
そーーーっと見ると彼女も川の流れを見つめていた。
しばらくは無言で美貴の隣に座っていた。その姿をボー然と見ることしかできなかった。
やっぱ夢なのかも?と想って頬をつねって一人で痛がっていたらちょっとだけ彼女が笑った。
「もう忘れない?」
唐突に発せられた『忘れない?』しばらくその言葉が頭の中で回っていた。
脳に到達してようやく美貴はぶんぶんと首を縦に振った。
言おうと想ってた気持ちの一つも口から出てこない。昼間の気合よどこへいった?
情けないとは思ったけどこうやって隣にいてくれることが、ただ嬉しくて……。
泣いてしまいそうだった。
「忘れないよ」
「絶対だからね」
再び頷きまくる美貴に微笑んでからさゆみは真剣な顔をした。
「誰のでも触りたいって思いますか?」
「……へっ?」
「サワリタイ?」何のことだろうと考えていると
もう一度美貴に近づいて確かめるように囁いた。
「触りたいですか?」
「……思わない、と思う」
「触り魔……って噂、嘘ですよね?」
冷や汗タラり……どこで聞いたんだろう。
もしかして中澤先生?ヤバイ非常にヤバイ。
あれはほらスキンシップ?美貴も中澤と変わらないくらいセクハラしてた……。
でもお尻とかだよ、冗談でだもん。打ち解けるのに話題づくりだったり。
- 568 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:17
- 焦っている美貴になおも詰め寄る彼女の膨れた頬が可愛らしくって。
いつのまにかにやけていたらしい。
その緩んだ美貴のほっぺをさゆみはぎゅーっと両方からひっぱり……。
「いひゃい、ひゃゆみぃ・・・はなひて?」
「真剣に聞いてるの?」
ちょっと怒ったような視線も上目遣いで可愛い……そそるんだってば
と場違いな考えが浮かんでちょっと凹んだ。
反省してるんだよ……なんて、しゅんと項垂れると頭を撫でてくれた。
そんな、さゆみの手の動きに心が満たされていく。
口をきかなかった時間なんて僅かなのにほんとに久しぶりに彼女を感じた気分だった。
「さゆみが好きだよ」
それしか言えなかった。それだけでよかったんだと思う。
ぎゅーっと抱きしめられて「みーちゃんのことだいすき」と囁かれた。
それしか言わなかった彼女。でもそれだけでよかったんだ。
だってあんなに悩んでたことが嘘みたいにからっぽだった。良い意味でからっぽになった。
彼女はきっと美貴をいっぱいにしてくれるだろう。
- 569 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:17
- ◇ ◇ ◇
- 570 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:17
- 先にお風呂に入ってと言われてまだ怒ってるのかなと心配になった。
なにか思いつめたような顔をしていたから気になって読んでいる本にも集中できない。
さゆみのベッドに入って出てくるのを待つ事にした。本は机の上に置いてきた。
ボーっと天井を見て考える。『触り魔』と聞いてショックだっただろうか?
自分はほんとにスキンシップのための軽い気持ちだった。
当時なんでもなかった行為がさゆみにはできない。
どうしてなのか自分でも解らない。緊張して固まって何もできなくなる。
こんなことは一度も無かったのに……。
そっと扉が開いてさゆみが入ってきた。きちんと髪は乾かしてきたらしい。
サラサラに流れる黒髪に見惚れていると、彼女は伏し目がちにベッドに腰かけた。
- 571 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:17
- 次の瞬間に何が起きたのか理解できなかった。
ゆっくりと指先がパジャマのボタンを外していくのをどこか遠くから見ている気分だった。
ただ目の前に彼女の透けるように白い肌が露になった。
何か言おうと思うのだけど言葉が何一つ浮かばない。
頭の中まで彼女の白に染められたようだった。
「他の人なんて触っちゃヤなの」
泣き出しそうな声に思いつめた痛みが伝わってきた。
どうすればいいのか動けない美貴の手に彼女の手が触れそうになって
カラダがようやく動いた。動揺してその手を捕まれる寸前で布団の中に隠れた。
すぐに美貴の隣に滑り込んださゆみのパジャマのボタンは外れたままだ。
ちいさなパニックを起こしていると何かを話しかけようと彼女の口が動きかけた時だった……。
扉が小さくノックされすぐに開いたのだ。
「あら、もう寝てるのね……明日で良いかしら」
そう言って母親は電気を消して部屋を後にした。
母親が来る気配に反応した彼女に美貴は包まれていた。
抱きしめられているのだと理解したのはさゆみの母親が出て行った後だった。
- 572 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:18
-
すこしづつ鮮明になっていく感覚は柔らかな感触を感じていた。
自分の頬に触れているのは……。不思議と美貴はとても落ち着いていた。
瞼を閉じればそれはよりリアルに美貴を包んでいるのだと感じられた。
「……藤本さん?」
心配そうな声が聴こえた。それでも美貴はなかなか返事が出来なかった。
「ごめんなさい……ママが来るのがわかったから咄嗟に」
離れようとした彼女にしがみついて抱きついた。
なんかきもちいいんだ。胸の中でくぐもった声が自分に返ってきた。
吐息がかかってくすぐったいのかちょっと彼女のカラダが揺れた。
「だいじょうぶですか?」
「うん、へーき。むしろ気持ちよすぎてしあわせ」
蕩けそうな自分の声が甘くくぐもる。
倒れてた頃よりは成長したのか、はたまた彼女の愛が偉大なのか……
きっと後者だと想った。
ドクンドクンと美貴に響く彼女の鼓動が心地良い。
- 573 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:18
- 「みーちゃん?」
「ん〜?」
「脱いで?」
「へっ?」
彼女の手が美貴のパジャマのボタンを探る。
焦った美貴に「だってみーちゃんだけズルイっ!」とさゆみは怒った。
「ちょっ……じ、自分でできるから」
「いいの!さゆみがするっ!」
梨華ちゃんが言っていた世界がとたんに二人を包んだ。
やばいかもしれない。あたたかくやわらかな感触から抜け出せなくなりそう。
自分とは違う体温がじんわりと伝わり一つになる感覚。
触れ合うカラダの境界線が曖昧になりまじわりあう。
「あったかい」
「ね、すっごいあったかい」
「石川さんが言ってたのってこういうことですよね?」
「そうだね……」
- 574 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:19
-
******
- 575 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:19
- 「梨華ちゃん、ミキティの寝顔が……」
「怖すぎるね……」
「すっごく幸せそうだけどね」
梨華は美貴の寝顔を見て微笑む。
ほんとに寝ている美貴は可愛いのだ、昔から。
「もうちょっと寝かせてあげますか?」
「そうだね。柴ちゃんお昼奢りね〜」
「ちぇっ、覚えてたのか……」
「美貴ちゃんたちが2日も口聞かないわけ無いもん」
「甘かったな〜。もっとミキティ強情だと思ってた」
「ふたりは甘いんだってば」
◇
美貴は夢うつつな状態で親友達の声を聞いていた。
内容までは届いてこなかったが自分のことを話しているみたいだ。
- 576 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:20
- 眠るまでいろいろと話しをした。なんだか夢の中にいるようだった。
触れ合う熱だけが現実なのだと訴えていたように想う。
まどろみのなかでお互いを大切にすることを誓った。
それにしてもやわらかかったなぁ……
今日もしてくれないかなと想いながら次の講義までを夢の中で過ごした。
- 577 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:20
- アイリス:花言葉【恋のメッセージ・あなたを大切にします】
―――――― おしまい。
- 578 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:21
-
- 579 名前:アイリス 投稿日:2006/04/15(土) 22:21
-
- 580 名前:日季 投稿日:2006/04/15(土) 22:22
- >>549-577 更新終了です。
ヘタレたり甘えたりする藤本さんが好きかもw
>>544 名無飼育さま
レスありがとうございます。イイと言ってもらえて嬉しいです〜。
そして……( `.∀´)<あたしもすきよっ!ww
>>545 名無しさま
レスありがとうございます。にやけてもらえて嬉しいです。
とっても扱いなれていますねw(*^▽^)<熱すぎる夜でした〜。
从*・ 。.・)*VvV)<待ってくれて嬉しいw
>>546 前29さま
レスありがとうございました。顔面だいじょぶですか〜?w
崩れてもらえて嬉しいですw 今度機会があればお望みのようないしよしを……。
(0´〜`)<書いて欲しいYO!w
>>548 名無飼育さま
レスありがとうございます。リアルに見てみたいですね〜w
部屋にひっそりとご招待……(*`▽´)<無理!
みたいなので音声のみでお楽しみ……(0`〜´)<だめだYO!
ということで脳内妄想でお楽しみくださいませw
- 581 名前:名無し 投稿日:2006/04/16(日) 01:17
- 更新おつです。オイラも作者さんが書くミキティーかわいくてすきw
甘やかす梨華ちゃんも最高
何してもなんかカワイイふたりだなあ
そしてキタ*・゜゜・*:.。..。.:*・゜(゜∀゜)゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*!!!!
ついにと思ったらやっぱりふたりらしくかわいかったww
今後もみきさゆマターリ見守ってま〜す
- 582 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/16(日) 04:50
- 更新おつです!
いつもいつも最高にかわいいお話しありがとうございます♪
- 583 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/16(日) 07:38
- あの人の従姉妹さんは、次に繋がる伏線ですか?ニヤニヤ
- 584 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/16(日) 08:37
- さゆみきは良い友達に恵まれてますね
いししばは何かあやしかったけどw
- 585 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/04/19(水) 21:25
- あまぁーい!疲れた体に沁みる甘さです。
さゆみきのペースで幸せになって欲しいです。
- 586 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 18:52
- 「お花見がしたいのっ!」
「・・・・・」
「お花見がしたいよ〜」
お花見がしたいお花見がしたいお花見がした……
呪文のように耳元で懇願するあほな幼馴染がひとり。
「お花見しようよ〜、美貴ちゃんってば〜」
「……黙れ」
せっかくちょっと早い昼ご飯を食べれると思っていたら梨華ちゃんに捕まった。
で、花見がしたいと連呼するのだ。
「お花見したーいっ!?」
「どこでするんだよ、どこで?」
「あのね桜の木があるのそこでお昼にしよう?」
「……講義は?」
「次はとって無いやつだよ?やだ美貴ちゃんったら……」
「同じでしたね、たしかね…」
どうにかならんのかこの腐れ縁。
「たまたま選んだ学部が一緒だっただけだもん」
「はいはい。そう思いたいですよ」
どっこらしょと立ち上がって歩き出すと嬉しそうについて来る。
いつから美貴の犬になったんだろうこの人は……。
「ほんとに行く気?」
「うんっ!」
◇
- 587 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 18:53
- 「綺麗だね〜」
「だね」
「もう、そこは梨華のほうが綺麗だよ〜とか言わなきゃ」
「誰が言うか。よっちゃんにでも言ってもらえ」
「毎日言われてるに決まってるじゃん、失礼ね」
なんでそこで逆切れしてんだよ、ほんとにムカつく。
ぷくっと膨れっ面で食べてたらじーっと見つめられてるのに気付いた。
「なに?」
「さゆの手作り?」
「そうだけど」
「うふふ、お弁当箱もかわいいなぁ」
「これしか無いって言うから仕方ないじゃん」
「買いに行けば?」
「察しておくれ」
あぁっ!と大袈裟に納得した様子の梨華ちゃん。
お揃いで彼女が買ってきたものなのに、別なのを買ったらどうなるか……。
泣いてすむなら泣きやがれ〜では済まないんだから。想像したくも無いです。
- 588 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 18:53
- 「突然なんだけど何かあったよね?」
「ふぇっ?」
「だって仲直り速攻だったし次の日の美貴ちゃん寝顔怖かったし」
「怖かったって……あんたこそ失礼だ」
「だってほっぺが緩みきってたもん」
「うぅ…」
ねえねえ何があったの?教えて教えて教えてっ!
ニヤついて寝ちゃうほど何があったのか教えて教えて教え……
「しつこいってば。なんにも無いよ、いつも通りです」
「いつも通りに甘えてお風呂入って我慢できずに夜這いした、みたいな?」
「勝手に人の日常をつくるな。それにお風呂は別でした……」
「そうだったんだ……。じゃあ夜這いはしたの?」
「してないからっ!」
「さゆが肌のふれあいがあったって言ってたのは?」
「なっ……さゆみが喋ったの?」
「やっぱりなにかあったんだ〜」
「騙したな……」
誰にも言わないからなんて言う気満々な顔で言われても……
よっちゃんにも内緒だよと言うと何を勝手に勘違いしたのか
美貴の手を握り締めて「大人になったのね」なんて涙目で言う。
- 589 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 18:54
- 「美貴ちゃん!」
「な、なにっ?」
「今夜はお赤飯炊かなきゃね!」
「いやいや違うから。それ絶対に間違ってるから」
「だってついについに……しちゃったなんて梨華ビックリなんだもんっ!!」
「だ、だれがしたって言った!誰が!?」
「美貴ちゃん声大きいよう」
「あんたもたいがいデカイ声で赤飯炊くとか言ってたから」
「だって〜」
「だってじゃない。それにそんなことで赤飯炊く家なんか無いですから!」
「そんなものなの?」
「あのね……」
まさか石川家は炊いたんじゃないだろうな?
「ご想像にお任せします」
とか言いながら頬染めるな幼馴染よ。
やっぱり梨華ちゃんのおばさんは侮れない人だ。
- 590 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 18:55
- 「美貴ちゃんベーってしてみて?」
「べー?……んがっ!?」
美貴の舌を出させたと思ったら梨華ちゃんはそれを指先で掴んだ。
「りひゃひゃん?」
「あっ、ごめんごめん。昔から思ってたけど長いよね」
「……ったくビックリするじゃん」
「だって器用そうだな〜って思って」
「器用って?」
「えっちの時とかすごそう」
真っ赤になった美貴を見て梨華ちゃんは小悪魔な笑みを浮かべる。
「な〜にを想像したんだ?」
「し、してないから!」
「美貴ちゃんもいずれわかる日が来るのね……自分の凄さが」
うっとりとした顔で見ないでもらいたい。
こんなところ見られたら勘違いされちゃうよ。
- 591 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 18:56
- 「あのね美貴ちゃん」
「ん?」
急に真顔になった梨華ちゃんに、お弁当を置いて向き合った。
美貴の意識が自分に向いたことを確認して話し出す。
ちょっと露骨な表現をするけど聞いて。そんな風に言って梨華ちゃんは穏やかに微笑んだ。
「セックスってね身体よりも心が感じることが大切なんだよ」
「……心がかんじる?」
「心ごと満たされて初めてイクの」
「……なるほど」
「よっすぃはそれをただの快楽と一緒にしちゃダメだって言うのね」
「ほぉ……」
「でも永遠に私は知らないままなんだと想う。
その『ただの快楽』っていうのを経験することは無いの。
ふたりにもそうであってほしいなって……」
「そうだね」
やけに素直に頷いてしまった。
梨華ちゃんはゆっくりと美貴の頬を撫でる。
「だから美貴ちゃんに色々言ってたけどね、ほんとは安心してる」
「安心?」
「よっすぃも一緒だよ。ふたりがすぐにそういう関係にならなかったことが嬉しいみたい」
温泉で抱きしめられた時のことを思い出していた。
そうかそれであんなに嬉しそうにしてたんだね、よっちゃんは。
- 592 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 18:57
- 「前によっすぃが言ってたの。快楽に流されてしまうのは愛ではないって」
いつだっただろう。
気持ちが昂揚して乱暴なキスをしてしまったことがあった。
きっとそんな美貴に戸惑ったであろう彼女は泣いていた……。
「なんとなく……おぼろげには解る」
「ふたりは大丈夫って思うけど…話しておきたくて」
「うん。なんて言うのかな…気持ちが嬉しいからありがとう」
「なんか素直すぎて怖いみたい」
「たまにはいいじゃん、ね?」
「そうだね」
真面目すぎる梨華ちゃんは何事にも真剣。
そんな考えをウザイと言う人もいるだろう。
でも誰がなんと言っても美貴はそんな彼女を尊敬してる。
「さゆのどこが一番好き?」
「いきなり質問されても……」
「ゆっくり考えてみて?」
「一番か……全部はダメなんでしょ」
「ダメって事も無いけどね。理由次第かな」
「理由は……なんだろうなぁ、ぜんぶが可愛いんだ。
美貴のことを想ってしてくれる行動とか……中身が可愛いのかな?」
うまく言葉では表せないけど……
いつも彼女を可愛いと想う瞬間を思い出してみる。
彼女自身の心が可愛いから、すべてが可愛いのだと想う。
紡ぐ言葉も仕草も、なにもかもが可愛い。
- 593 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 18:58
- 「うふふっ」
「だからうふふって笑うな」
「いいじゃんか〜。やっぱり美貴ちゃんたちは愛だね」
「はぁ?」
「愛で溢れてる。これで一番すきなのは可愛い顔ですとか、身体ですって
言われてたらぶん殴ってたわね」
「怖っ……」
「ほんとに安心しました」
「それは、どういたしまして」
なぜかお互いに頭を下げて笑いあった。
「うまく愛を語れる人にはならないでね」
「無理でしょ。いまだに頭真っ白になると『すき』しか言えないし。
真っ白じゃなくってもそれしか言って無いかも……」
「それが一番良いと思う。それでいいんだよ」
「そうだよね」
今のままの美貴が好きだって彼女は言ってくれた。
暴走しそうになった心もなんだか今はとても落ち着いてる。
どんな恋が正しいのか、なにが愛なのか……。
誰も答えなんて知らないのだから、二人なりの愛をみつけられればいいな。
- 594 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 18:59
-
◇ ◇ ◇
- 595 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 19:00
- 「ただいま〜」
「おかえりなさいっ!」
美貴が帰ると玄関でさゆみが迎えてくれた。
「遅くなってごめんね」
「ううん。たまにはお友達とのお付き合いも大事ですよね……」
「お弁当美味しかったよ。玉子焼きめちゃめちゃうまくなったね」
「えへへ」
美貴からカラの弁当箱を受け取りながら照れ笑いをする。
あれ?いつもとちっと違うなぁ……。
「なんか雰囲気が違うね」
「ゆるまきにしてみました♪」
さゆみはそのまま毛先をちょこんともってポーズをとった。
「ゆるまき、かあいい……」
普段ストレートな髪が、いまは毛先だけゆる〜く巻かれている。
かわいい……美貴がボーっと見惚れていると嬉しいのか彼女がはにかんだ。
「あんまり見ないで……」
「……ごめんごめん」
ストレートも似合うけど雰囲気がお嬢様っぽいせいか
ちょっとふんわりした感じも似合うなぁ。
- 596 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 19:02
- 「どうしたの?」
「あのね……」
部屋の鏡の前でなにやら悩んでいるから声をかけた。
どうやら飯田先生に寝る時はゆるく三つ編みにして寝ると
髪が痛みにくいと聞いたそうだ。
でもどのくらいゆるく三つ編みすれば良いのかで悩んでるらしい。
「きょうはそのまま寝ようよぉ〜、それかわいいもん」
「どうしようかなぁ……」
「明日から三つ編みしたらいいじゃん、ね?」
「みーちゃんがそういうなら」
しかたないなぁと言いつつ美貴の隣に潜りこんだ。
きゅっと抱きついて甘えたようにお願いされる。
「ぎゅーがいいの」
「りょーかい」
いつものように想いの分だけ抱きしめると、安堵したようにさゆみは瞳を閉じる。
そんな些細な仕草だけど美貴を信頼してるんだろうなと想う。
それからしばらくはそのままだけど、最近は……。
- 597 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 19:03
- 「こーたいっ」
彼女がこくんと頷いたのを確認してから、腰に腕を回して胸元に顔を埋めた。
美貴の髪や背中を撫でながら心いくまで甘やかしてくれる。
「さゆみ〜」
「どうしたんですか〜?」
「すきだよ〜」
彼女のカラダに甘えた声が吸い込まれていく。
「そのまま喋るとくすぐったいよぉ」
「ヤダ?」
胸元から上目でさゆみを覗き込むとちょっと照れてるのか
頬を上気させて首を横に振った。
「ヤじゃないの。嬉しいけど、恥ずかしいんだもん」
「へへへ、そっかごめんね」
「大丈夫です。藤本さんの好きにしてください。
だって甘えるみーちゃんかわいい…」
うっとりと美貴を腕の中に閉じ込めて囁く。
彼女の吐息が頬を掠める度にドキドキする。
愛は遠いなんて想っていたけど、口にしないだけでふたりの心にもう愛はあった。
そんなのたぶんずっと前から知ってたけどね……
なんてカッコつけてもいまの格好じゃ説得力無いだろなぁ。
彼女の胸の中でうっとりと瞳を閉じてる自分。だらしなく緩んだ頬。
- 598 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 19:04
- 「キスがしたい」
心の中で言ったつもりが、思い切り口をついて形になった。
重なった唇のやわらかさとぬくもりが全身にじわぁっと広がる。
ただ触れるだけなのに不思議なくらいにすべてが満たされていく。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
どちらともなく唇を寄せてもういちどキスをする。
なんどしたって飽きることが無い。
ふんわりムースな感触でチョコより甘いのだから……
- 599 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 19:04
-
- 600 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 19:05
-
- 601 名前:ルピナス 投稿日:2006/04/20(木) 19:05
- ルピナス:花言葉【あなたは私の安らぎ】
―――――― おしまい。
- 602 名前:日季 投稿日:2006/04/20(木) 19:08
- >>586-601 更新終了です。最近みきさゆ寝てばっかですいません……。
次回更新は5月の連休明け以降になる予定です。
- 603 名前:日季 投稿日:2006/04/20(木) 19:08
- >>581 名無しさま
ありがとうございます。かわいくできててよかったです〜。
みきさゆらしいと言ってもらえて嬉しいですw
从*・ 。.・)*VvV)<まったりありがとう〜。
>>582 名無飼育さま
最高にかわいい……嬉しいです。
从*・ 。.・)*VvV)<こちらこそレスありがとうございました〜。
>>583 名無飼育さま
ありがとうございます。リd*^ー^)<伏線……
どうなるかは未定ですがそのうち番外でもと思ってますw
>>584 名無飼育さま
ありがとうございます。なんだかんだと優しいお友達ですw
(;^▽^)<柴ちゃんが悪いんだもん
>>585 名無し飼育さま
ありがとうございます。甘さで疲れを癒せてますか?だったら嬉しいです〜。
从*VvV)人(・ 。.・*从二人のペースで幸せになりますw
- 604 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/20(木) 19:28
- 石川さんアホなのか知的なのかわからない感じが素敵
勉強になりましたいやマジでww
さゆみき少し前進したのにカワイ〜ままでよかった
- 605 名前:名無し 投稿日:2006/04/21(金) 00:07
- 更新おつです。さゆみきカワイくてカワイくて走りまわりたいw
>>595からのふたりが新婚みたいでニヤニヤがとまりません
ここのりかみきもすき
マターリ更新おまちしています!
- 606 名前:nanasi 投稿日:2006/04/22(土) 00:06
- 更新お疲れ様です!!
あぁカワイイ。。。
このままのみきさゆで居て欲しい気もする・・・
大人になって欲しい気もする・・・
- 607 名前:初心者 投稿日:2006/04/28(金) 00:03
- 更新お疲れ様です
私事ですが研修がやっと終わり、ずっとこのさゆ美貴が気になっていました
でもとても2人らしい速度でイイ感じに進んでるようでうれしいです
さゆのポワワって感じですかね 可愛すぎます
いしよし夫妻も健在でこれからも期待してまってます
- 608 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/28(金) 13:49
- そういえば美貴様は舌が鼻につく芸をもってましたね
いかんいかん、いろいろ想像してしまう
でもエロ優しいミキティと可愛すぎるさゆが大好きです
- 609 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/05/08(月) 20:28
- 連休も明けましたのでお待ちしております!
- 610 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:06
-
「雨…」
教室の窓から外を見ていた絵里が呟いた。
私の気配に振り返った彼女はへにゃっと情けなく笑う。
「さゆぅ、傘持ってる?」
ぶんぶん首を振ると絵里はがっくりと項垂れ机に突っ伏した。
「すぐ止むんじゃない?」
「わかんないよ〜」
「そうだよね……」
窓から空を見上げる。
なにもこんなにがんばって降らなくってもいいのにね。
慌しく降りしきる雨に『ご苦労さまです』なんて心の中で呟く。
勢いだけですぐに止みそうな気もするけどなぁ……。
- 611 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:07
- 「どうしよっか?止むまで待つ?」
上目遣いに問いかける絵里がちょっと可愛い……。
負けじと机に顎を乗せ彼女を上目遣いに見上げてみた。
「なにやってんの?」
「さゆみのほうが可愛いってアピールなの」
「絵里のほうが可愛いもん」
「さゆみだもん」
「絵里〜」
「さゆみなの」
「えりだもん……携帯鳴ってるよ、さゆのじゃない?」
「あっ、ちょっと待ってて」
「待たない、絵里の勝ち〜」
「もう……」
絵里のだらしない笑い声に呆れながら確認せずに通話ボタンをおしていた。
- 612 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:07
- 『さゆみ?』
「あっ……藤本さんっ」
『授業は……とっくに終わってるよね?』
「掃除も終わりました」
『そっか。いま教室?』
「はい、絵里と一緒です」
『一緒に降りてきてよ、1階にいるから』
「えっ?……切れちゃった」
用件だけを伝えて切れてしまった。しばらくそのまま動けずにいると
絵里が不思議そうに私の目の前で手を振る。
「さ〜ゆ〜、どうしたの?」
「……1階にいるって」
「美貴ちゃんが?」
「うん。絵里と一緒に降りておいでって」
- 613 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:08
-
◇
- 614 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:09
- 「あれ絵里は?」
「もうちょっと残るって言われちゃいました…」
「そっか、気を使わせちゃったかな」
絵里は優しいから。無理してでも笑いながら背中を押してくれる。
いつだって私と藤本さんを応援してくれる優しい親友。
彼女の蕩けるように甘い笑顔を見れる日が早くくると良いな……。
「絵里の靴箱に傘置いて帰ろうかな」
「折りたたみですか?」
「うん。美貴たちはこっちで帰ろう」
「あっ、それさゆみの…」
手元を指差すと照れくさそうに笑った藤本さん。
淡いピンク色の傘。ぜったいに普段ならささないような傘。
家には他にも傘があるはずなのに……。
- 615 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:11
- 「えへへ、これさしてきたんですか?」
「だってさーこれしか見当たらなかったんだよ…」
「折りたたみは?」
「鞄に入ってるの忘れてて。さっき気付いたんだ」
ほんとは私のために無理してその傘を使ってくれたんだろうな。
雨にもっと頑張って降ってもいいよと、心の中で呟く。
「帰ろっか?」
「お迎えありがとうみーちゃん」
「へへっ……あれっ?」
照れながら傘を開いた藤本さんが素っ頓狂な声をあげる。
どうしたのかなと思いながら空を見上げた。
「小降りになったからじきに止むだろうね」
傘をさして振り返った藤本さんは淡いピンクの中でやさしく微笑む。
なんだかその笑顔が眩しくて遠慮がちに隣に並んだ。
- 616 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:12
- 「もっとくっついていいよ?」
「……うん」
「ほら濡れちゃうから」
藤本さんの腕を掴んでカラダを寄せる。
そのままもっと密着するように腕を絡ませた。
それを確認してから藤本さんは歩きはじめた。
「だいじょうぶ?」
「だいじょうぶって?」
「いっつもなにも言わなくってもくっついてくるから」
何かあったのかなって思って……ほんとに心配そうにそう呟いた。
「たまには遠慮してみただけなの」
「なんだそれ……」
「いっつも同じじゃ飽きちゃうかなって思って」
「飽きないってば……ばかだなぁ」
「どうせさゆみはバカだもん」
拗ねたフリをして俯いたら、焦ったように私の顔を覗き込み謝ってくれた。
ちょっと涙目の藤本さんが可愛くて、ついつい演技も忘れて頬が緩む。
- 617 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:12
- 「笑ってるし……」
「まだまだ甘いの」
拗ねてないとわかってホッとしたのか半笑いの藤本さん。
「どーせ甘いよ。美貴はいっつも甘いです」
「やさしいも追加でお願いします」
「怒ったこと無いじゃん。他にお望みは?」
「え〜っと……えっちな藤本さんは困るので控えて欲しいです」
「……なんでだよ〜。そんなエピソードあったっけ?」
「だって寝てる時に毎日胸に擦り寄ってくるんだもん」
「憶えてない……」
「やっぱり無意識だったんですか?」
「憶えてないなんて……もったいない…」
そんなほんとに残念そうに言わないでください。
「今日は起きてるうちにしてもいい?」
「えっ?」
ダメ?なんて上目で見つめられたら断れないってわかってるくせに……。
こくっと頷くとほんとに嬉しそうに笑う。その笑顔は無邪気で子供みたい。
「さゆみもぎゅーってしてほしいの」
「うん。いっぱい甘えて」
いつもするお願いだから聞き飽きてるかもしれない。だけど律儀に返事をしてくれる。
- 618 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:14
- 藤本さんは真っ直ぐに前を見据えたまま、手を空に向けてそっと傘から出した。
手のひらを雨がすこしづつ濡らしていく。
「雨も悪くないね」
「さゆみもそう思います」
”好きだよ”
唐突な囁きに驚くことは無かった。だって同じ気持ちだったから。
ぎゅっと絡めた腕の力を強めて囁き返す”だいすき”って。
見つめあわなくってもわかる、お互いを想いながら愛しげに微笑んでいると。
さっきよりも頑張るのをやめたらしい雨はしずかに降り続く。
その穏やかな雨音が心地良いほどにやさしく二人を包みこむ。
- 619 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:14
- そっと覗き見た横顔。
その美しさに見惚れながら想う。こんなにもだいすき。
いろんな藤本さんを見せてくれたやさしい雨に
”ありがとう”と呟いて、あたたかな腕に身を委ねた……
- 620 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:15
- ヒナゲシ(別名:美人草、ポピー)
花言葉【七色の恋、思いやり、感謝】
―――――― おしまい。
- 621 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:15
-
- 622 名前:ヒナゲシ 投稿日:2006/05/09(火) 23:16
-
- 623 名前:日季 投稿日:2006/05/09(火) 23:18
- >>610-620短いですが更新終了です。
ほんとにレスありがとうございます。とても励みになります。
次回更新も遅れると思いますが気長に待っていただけたら幸いです。
>>604 名無飼育さま
レスありがとうございます。石川さん素敵と言ってもらえて嬉しいですw
勉強になっただなんて……恐縮でございます。
从*・ 。.・)*VvV)<ゆったりな歩みで進んでいきます。
>>605 名無しさま
レスありがとうございます。ニヤニヤしてもらえて本望ですw
りかみき書いてて楽しいのでそういってもらえて嬉しいです。
从*・ 。.・)*VvV)<まったりがんばりますね〜。
>>606 nanasiさま
レスありがとうございます。可愛いと言ってもらえて嬉しいです。
今のままか大人になるのか……書きながら両極に揺れていますw
从*・ 。.・)*VvV)<見守ってもらえるとありがたいです。
>>607 初心者さま
レスありがとうございます。研修お疲れ様です、そして気にしていただいて嬉しいです。
この二人らしくまったり進んでいきますので見守っていただけると幸いです。
道重さんを可愛いと言ってもらえるとほんと嬉しいですw
从*・ 。.・)<これからもかわいくがんばるの。
>>608 名無飼育さま
レスありがとうございます。そういえばそんな特技がありましたね……
自分もいけない想像をしてしまいました、ごめんなさいw
从*VvV)<え、エロ優しい……
从*・ 。.・)<すごく的確なの。
>>609 名無し飼育さま
レスありがとうございます。从*VvV)<待たせてすいません。
- 624 名前:名無し 投稿日:2006/05/09(火) 23:54
- 更新おつです
さゆの心の声がいちいちカワイイww
やさしい雰囲気に心が温まりました!
次回更新もまったりと待ってます
- 625 名前:konkon 投稿日:2006/05/10(水) 01:29
- やっばいな〜。
ここのみきさゆほんとに大好きです!
次も楽しみに待ってます。
- 626 名前:初心者 投稿日:2006/05/11(木) 01:36
- 更新お疲れ様です
この2人にはホントに頬が緩んでしまいます
可愛いんだけど可愛いじゃ言い表せないような雰囲気があるような
あとこれだけはいっておきたいです、雨よありがとう
次回更新もマッタリと待っています
- 627 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:02
-
「亀井さん」
声をかけられてしばらくはボーっとして気付かなかった。亀井って私か……
振り返った私に苦笑いしながら入ってきた小柄な隣のクラスの転校生。
「どうしたと?」
「なんとなく雨が止むまでボーっとしてただけ」
「さゆは?」
「さゆは……デートだよ」
「あっ、デート」
「そうデート」
嬉しそうなさゆを見てると自分まで嬉しい気持ちになる。
だけど……美貴ちゃんと二人でいるのを見るのはまだ慣れない。
視線を窓の外に向けると随分と暗くなり始めていた。あ〜あ、なにしてるんだろあたし。
「送っていこっか?さゆの家より遠かったやろ」
「歩いて帰れるよ」
「でも……」
次の言葉は呑みこまれて田中さんの口から出てこなかった。
なに泣いてるんだろ……気付かずに零れた涙を拭って誤魔化すように笑うと、
ほんのすこし困り顔で一緒に帰ろうと、もう一度誘われた。
- 628 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:02
- 外に出ると思っていたよりも暗くってすこし怖い。
でも大丈夫だもん。最近は電気を消して寝れるようになったから……
思いっきり無理して我慢して。エコだなんて言い聞かせて頑張ってるもん。
いつだったかな……幼稚園に上がったばっかりの頃だったかな。
お泊りした時に怖がりな絵里の手をずっと握っていてくれた美貴ちゃん。
自分だってまだ子供で怖かったはずなのに強がって傍にいてくれた。
『だいじょうぶ』って励ましてくれる笑顔に安心して眠ることができたんだ。
下駄箱を開けた瞬間に飛び込んできたメモ『濡れたら風邪ひくからさすように』
ぶっきらぼうな言葉に隠れたほんとの優しさに泣きたくなった。
手の中にある見慣れた折りたたみ傘から優しさが伝わってくる気がした。
「傘もっとったん?」
「ううん。美貴ちゃん……幼馴染がね置いていってくれたみたい」
「やさしか人やね。みきちゃん……って藤本さん?」
「そうだよ。さゆの王子様」
そっかなんて呟いて傘を見つめてから、田中さんはあたしに背中を向け歩き出そうとした。
ほとんど無意識だったと思う。あたしは彼女の制服の裾を握ってしまっていた。
ビックリして振り返った後に真っ直ぐに見つめられた。
1秒にも満たない沈黙がやけに長く感じられ、あたしは自分が解らなくなりそうだった。
一緒に帰らないなんて強がったのに、矛盾するように彼女を引き止めてしまった。
- 629 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:03
- 「やっぱ自転車乗りんしゃい。送ってく」
「えっ?」
「今日は遅刻しそうやったけん自転車で来たから」
彼女の制服を掴んだまま黙って頷いた。
それから自転車に乗るまでの間、田中さんは何も話さなかった。
あたしが制服を握りしめたまま歩いてることにも触れたりしなかった。
薄暗い空がぼんやりとオレンジ色に染まりすごく不気味で、あたしをどこかに連れ去ってしまいそう。
目の前には美貴ちゃんよりもちっちゃい背中。なんだか頼りない。
でもその背中が『大丈夫、怖くなんかない』そんな風にあたしを励ましてくれた。
「田中さんは許可もらってるの?」
「近すぎて範囲外らしくってもらえんかった」
「うちの学校許可もらえなかったらチャリ通禁止なのに〜」
「亀井さんも同罪ばい」
「あ〜騙したな〜」
「乗ったのは自分の意思っちゃろ」
控えめにあげた二人の笑い声がオレンジ色の空にはじけた。
- 630 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:03
- ◇
- 631 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:04
- 「同じクラスだね〜」
「ね〜」
新学期のクラス発表を見ながら嬉しそうにさゆが笑うから釣られて笑った。
「絵里知ってる?」
「なにを?急に聞かれてもわかんないよ〜」
「転校生来るんだよ、吉澤さんの従姉妹」
「さゆは知ってるの?」
「ちょっとだ……」
恐らく「ちょっとだけ」と言おうとしたさゆの言葉が途切れた。
なにかを凝視しているので、絵里もそっちに顔を向けてみる。
教室の入り口に小柄で華奢な女の子が立っていた。
「れいなだ」
「れいな?」
「吉澤さんの従姉妹だよ」
「噂の転校生?」
「どうしたのかな」
さゆが立ち上がったのでなんとなく一緒に立つと手を引かれた。
- 632 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:04
- さゆが見えるとちょっとムスっとしながら「ひさしぶり」と呟いた女の子。
どことなく拗ねたちっちゃな子供を連想させて可愛らしかった。
「れいな寂しかったの?」
「んなことない」
「だってわざわざ会いに来るなんて珍しいの」
「別に……久々に顔見に来ただけやけん」
「さゆみが可愛いからってれいなったら!」
「……あほ」
ふいにさゆから視線を逸らした田中さんと目があった。
しばらくじっと見つめあったままだったけど、彼女は口元を緩めて人懐っこい笑顔を浮かべた。
こんな風にも笑えるんだ……ぼんやりとそんなことを思った。
「初めまして……」
お互いに自己紹介をしてなんとなく笑いあった。
- 633 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:04
- それからさゆがいない時に二人で話したことがあった。
共通の話題と言えばさゆのことだったので自然とその話をしていた。
「なんかイメージ変わったっちゃ」
「さゆの?」
「うん。もっと意味不明な人やったけん」
「そっか〜。でも今でも人の話を半分も聞いてないことあるよ」
「興味あること意外はスルーやけんね。いまでも鏡ばっか見よる?」
「回数は減ったけど……あっ、でも隙あらば見てるかな〜」
思っていたよりも早くさゆが職員室からかえってきた。
「早かったね、なんだったの?」
「藤本さんが携帯を家に忘れたって、連絡をくれたみたい」
「わざわざそれだけを?」
「だってメールの返事が無いってさゆみが泣いちゃうといけないから?」
「から?って絵里に聞かないで……」
呆れたようなれいなと目があう。
ちょっと困ったみたいに笑って「藤本さんって?」と聞かれた。
耳打ちをして教えていると、仲間はずれにされたと思ったのかさゆが拗ねる。
「ふたりとも妖しいの」
「あやすくない」
「れいな声が上擦ってるうえに噛んでるの」
「うっさい」
田中さんはちょっと怒ったようにさゆを睨んでも
絵理には困ったようにだけど笑ってくれた。
- 634 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:05
- ◇
- 635 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:05
-
「れーなぁ?」
「なん?」
「れーなって呼んでもいい〜?」
「聞こえん〜」
風が前から吹いてるから声が届かないみたいで後ろを向こうとする。
慌てて前見ててと言って耳元の傍で話してみる。これなら聴こえるかな?
後ろ向いたら危ないってば……。
「れーなって呼ぶよ〜?」
「……よかよ」
「絵里って呼んで〜」
「わかった〜」
「きこえな〜い」
「えり〜」
「うへへ」
「笑い方きしょいって」
「きしょくないもん!」
「聞こえとるやん」
風の向きで考えてみてよ。絵里にはちゃんとれいなの声が届いてるよ〜。
いちいち反応の可愛いれいな。これから遊んじゃおう……
なんて思ってると自転車が止まった。あっという間に河原まで来ていたみたい。
- 636 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:06
- 「この近くやんね」
「そうだよ〜、ありがと」
降りようとした絵里の手を掴んだれいな。
なんだろうと首をかしげていると、最近出来たであろう電柱に立てかけられた看板を指差す。
「痴漢とか危ないけん。送ってく」
「やーさし〜」
「都会は恐ろしい所だって吉澤さんが言ってた」
そのまま再び発進しかかった自転車。
「あっ!」
「な、なんね」
急に大きな声を出した絵里にビックリしてれいなは振り返った。
「ちょっと川の流れ見ていこうよ〜?」
「よかやけど本格的に暗くなると危な……」
「家はすぐそこだから……ちょっとだけお願い」
甘えた声でお願いすると、渋々頷いて自転車を止め一緒に河原に来てくれた。
この街を見渡せる公園からの景色も好きなんだけどね、
この河原から沈む夕陽を見るのもだいすきなんだ。
- 637 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:06
- 「みてみてっ!綺麗な夕陽が沈んでいくよ」
「……無理してるの辛くなか?」
自分が苦しいみたいな顔をして聞いてくるれいな。
無理してるのかな、自分でもわからないんだ。
だってもう美貴ちゃんのことそんな風に好きなわけじゃない。
自分で終わらせたんだもん。だから辛くなんか……ってなんでそんなこと知ってるの?
あぁ、絵里が泣いたりしたからか。気づいちゃうよね、あんなタイミングで泣いたら。
「なにも知らんのにでしゃばって、ごめん」
ぶんぶんと首を振る。だって気づけたから。気づかないフリをしてたんだって気づけた。
ぼろぼろと零れる涙。辛かったんだ、やっぱり。
「こ、こすったら目腫れちゃうけん……」
「…うえっ……ひっぐ……っ……」
ごそごそと鞄を探りながら必死で絵里を慰め続けるれいな。
「ああああハンカチすらないっ」
「だ、だいじょーぶ……持ってるから」
タオルに顔を埋めて、背中を擦る優しい手の感触を感じながら思いっきり泣いた。
泣いて泣いていっぱい抱えてた気持ちを話した。支離滅裂ながらどんどん言葉が紡ぎだされる。
美貴ちゃんがだいすきだったこと、さゆがだいすきなこと。
幸せそうなさゆの話を聞いてるのは平気なのに……むしろ嬉しくなるのに
なぜか二人でいるところは未だに見たことがないこと。
自分でも無意識のうちに二人っきりでいる姿を見ないように避けているんだと思う。
- 638 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:07
-
オレンジ色に染まる空はいつのまにか闇の中。
見るはずだった夕陽はとっくに沈んでしまったみたい……。
それでも心はスッキリしていた。なんで泣いてたんだろ?っていうくらいに。
「だいじょぶ?」
「うん、泣いたらスッキリしちゃった!ありがとね」
「ただ話聞いただけやけんお礼なんて……」
「ううん。聞いてもらいたかったんだと思う…誰かに気持ちを話したかったみたい」
「藤本さんには?」
「言わない。初恋は大切にしまっておくんだ」
れいなはそれ以上聞いてこなかった。
こんなに胸痛んだ今日のこともきっと良い想い出に変る。
小さな頃の記憶がやさしく絵里に微笑みかける。
きっと間違いなく今日の記憶も月日が経てばやさしく微笑んでくれるはず。
- 639 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:07
- 「れーなはどこに住んでるの?」
「えっと……とりあえずしゅっぱーつ!」
「ちょっと〜」
絵里の声を無視して不安定に揺れながら進み始めた自転車。
しつこく問いかけるあたしを無視してひたすら家路を急ぐ。
やけにスムーズに進む自転車。迷いなくあたしの家に向かって走っていく。
「到着〜」
「ありがとう」
あれっ?と思った。だって絵里は一度もれいなに家の場所なんて教えていない。
- 640 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:09
- 「引越しの挨拶が遅れました。福岡から引っ越してきた田中れいなです」
れいなは頭を掻きながら笑っていた。
嘘……隣に誰か引っ越してきたとは聞いていた。
絵里がいない間に挨拶に来たらしいことも。なのになんでお母さんは黙ってるのよー。
「と言うことでお隣さんなので、改めてよろしく」
「もっと早く言ってくれればいいのにぃ」
泣き顔まで見られちゃった照れくささに思いっきり膨れた。
「そんなに怒らんで?だって……」
『ビックリさせたかったんやもん』って微笑んだ無邪気な笑顔がかわいくて
怒る気持ちもどこかに消えてしまってた。
「明日いっしょに学校行こ?」
その言葉に頷いてまた心から笑うことができた。ここから何かが始まればいいな……
そんな風に想いながら、今度こそ初恋にサヨナラをした。
- 641 名前:スイートピー 投稿日:2006/05/16(火) 23:09
- スイートピー:花言葉【繊細、微妙な楽しみ、優しい思い出】
―――――― おしまい。
- 642 名前:_ 投稿日:2006/05/16(火) 23:10
-
- 643 名前:紫陽花 投稿日:2006/05/16(火) 23:10
- 「まだやまないね……」
窓の外を見ながら、まるで子供みたいな顔をしてぽつりと呟く。
大学が終わって帰ってきた頃から降り続いている激しい雨。
容赦なく窓に打ちつけられる雨に、自分まで濡れてしまったみたいに心細げな後姿。
振り返った彼女の眉が困ったように八の字に下がっていた。
ここ最近、大学もバイトもお互いに忙しくって、ゆっくり二人きりにはなれなかった。
だから彼女は夕方からでもおでかけがしたいと、昨日ちっちゃなヒステリーを起こした。
でも昨日の勢いは、この強い雨に流されてしまったらしい。
もう一度窓の外を見て、諦めたように溜め息を吐く沈みきった背中を見つめて想う。
こんな風に喜怒哀楽を隠すことなく表してくれる彼女が堪らなく愛しいと。
外ではちょっとお姉さんな彼女からはきっと想像できないだろう。
「晴れたらどこにでも連れて行ってあげるから、そんな顔しないで」
「ひとみちゃん……」
「ほらこないだ買ってきた紫陽花が喜んでるんだから、笑ってあげてよ」
ちょっとアヒル口でなにか言いかけたけれど、素直に花に視線をおとす。
雨に濡れてより輝きを増した紫陽花が、薄暗い空気を明るく染めているみたいだ。
- 644 名前:紫陽花 投稿日:2006/05/16(火) 23:11
- 「ちっちゃな頃、雨がだいすきだったの」
ボソッと呟いて愛しげに目を細めながら、彼女は昔を思い出しているようだった。
「美貴ちゃんとね雨ガッパを着て長靴を履いて……
はしゃいだなぁ。何をしたのかまで憶えてないけどね、すっごく楽しかったんだぁ」
雨に濡れた紫陽花を見つめたまましゃがんで膝を抱え
彼女はぎゅっと自分を抱きしめるような仕草をした。
「動き回ったからカッパ着てた意味なくって風邪ひいちゃって……
ママにすっごい怒られたなぁ……」
どうしてだろう泣いてるみたいに見えるのは。口元は綻び昔を懐かしんで笑っているのに。
「いつからだろうね、雨の日のおでかけが億劫になったのって。
大人になんてなりたくないな……そんな風に思ってたのに」
いつもシャンと伸びている背中が不安げに丸まっている。
儚げに映るその姿に呼吸さえ忘れそうなほど胸が痛む。
どうにかできないだろうかと思案に暮れる前にカラダが勝手に動いていた。
- 645 名前:紫陽花 投稿日:2006/05/16(火) 23:11
- そっと背中から彼女を包むように抱きしめると、安心したように体重を預けてくれる。
「なんなら今から出かけようか?」
「……相合傘したいの」
「喜んで」
「おっきな傘じゃなくてちょっとちっちゃめのやつだよ」
「りょーかいです」
彼女がとても幸せそうに笑うから、あたしはとてもやさしい気持ちになる。
どの表情でも大好きだけど、やっぱりこうして笑ってるほうがいいよ。
そう心の中で呟いてみた……
- 646 名前:紫陽花 投稿日:2006/05/16(火) 23:12
- ◇ ◇ ◇
- 647 名前:紫陽花 投稿日:2006/05/16(火) 23:12
- 「あっ!」
「どしたの?」
鍵をかけながら振り返ると雨がずいぶん小降りになってきていた。
それを見た彼女は『やっぱりおでかけしない……』そう呟いた。
「お家でゆっくりしたいな、だめ?」
思わず拍手したくなるほど完璧な上目遣いに潤んだ瞳。
意識してない彼女の欠点だ……すくなくともあたし以外のやつにはしないで欲しい。
「どうしてって聞いていい?」
「どうして?」
ソファに座るなり質問したあたしを、首を捻って見つめる仕草はやっぱり完璧で。
こういうときはズルイくらいに可愛らしくなる人。
それから当たり前のように膝に乗った彼女の腰をそっと抱き寄せた。
「家に居たい理由、教えて?」
「このくらいの雨はね、だいすきなんだ」
彼女はしずかになった雨音に耳を澄ませるように瞳を閉じた。
- 648 名前:紫陽花 投稿日:2006/05/16(火) 23:13
- 「周りと遮断されたみたいに感じない?ふたりだけこの家の中に閉じ込められたみたいに」
ソファに座るあたしの膝の上で、すこしづつ体重をあずけ胸元に頬をつけながら
彼女はとても幸せそうに囁く。ふたりっきりが嬉しいのだと。
しずかに雨降る日はあまり喧騒が聴こえないから、とてもしずかで
この世界には自分達しかいないように錯覚してしまうんだって。
「ふたりの心音だけがリアルでしょ……」
言葉にできない不安がいつも心の中にある。
それが何なのかわかっているけれど解らないフリをして。
心音が重なる度に大丈夫だと言い聞かせる。
唇を寄せる気配にそっと瞼を閉じた。心はいつだって欲張りで終わりがない。
やわらかな熱を受け止めながら、彼女をこのまま閉じ込めてしまいたいと想った。
行き場のない感情を抑えきれずに、抱きしめる腕の力をぎゅうっと強めた。
思いのほか強く抱きしめてしまったのか、ちいさな呻きが鼓膜にとどく。
『ごめん……』言葉にならない呟きに彼女はやさしく微笑み、滑らかな手つきで髪を梳く。
それからそっと頬を撫でられ自分までもが雨を降らせていることに気づいた。
けれど彼女はそのことには触れず、ぎゅっと優しい仕草であたしを抱きしめる。
「雨やまないね……」
「降り続いたっていいじゃん」
「ずっとふたりっきりでいられるもんね」
世界が終わらない限りやまない雨。
永遠では足りないほど無限の夢を見ていたい。
- 649 名前:紫陽花 投稿日:2006/05/16(火) 23:13
- 「今日ね大学終わった瞬間に美貴ちゃんったら急いでっ……」
明るい声色で気分を変えようとしたんだろう。けれどいまは夢の中に浸っていたい。
ちゅっと素早く言葉ごと唇を奪う。すぐに合わさった視線は戸惑いに揺れている。
「美貴の話はしないで……」
懇願するようなあたしの想いに気づいた彼女は黙って頷いた。
どんな些細な事でもあたしだけに特別であってほしいと想う。
ちいさな独占欲は枯れることなく心にあり続ける。
それを言葉にしなくっても彼女には伝わっていると想う。
「ひとみちゃん私のこと好き?」
「急にどうしたの?」
「好き?」
「……好きだよ」
「どれくらい?」
「愛してるを超えるくらい好きだよ」
嬉しそうに微笑んだ彼女は言葉の代わりにやさしいキスをくれた。
あたしを閉じ込めようとするみたいにやまない雨を降らせながら……
- 650 名前:紫陽花 投稿日:2006/05/16(火) 23:13
- 紫陽花:花言葉【強い愛情】
―――――― おしまい。
- 651 名前:_ 投稿日:2006/05/16(火) 23:14
-
- 652 名前:日季 投稿日:2006/05/16(火) 23:16
- >>627-641 亀井さん番外編更新終了。
方言がわからんとです……orz
多少の間違いには目を瞑ってもらえるとありがたいですリd*´ー`)
>>643-650 いしよし番外編更新終了。
ほんとはただ甘いのを書こうとしたのにいつの間にかこんなお話にorz
>>624 名無しさま
レスありがとうございます。かわいかったですか?よかった〜w
あったまっていただけたら本望です。
从*・ 。.・)*VvV)まったりがんばります。
>>625 konkonさま
レスありがとうございます。だいすきと言ってもらえて嬉しい限りです。
从*・ 。.・)*VvV)本編も楽しんでもらえるように頑張ろうと思います。
>>626 初心者さま
レスありがとうございます。頬緩めていただいて嬉しいです!
そういう雰囲気を感じてもらえて非常に幸せです。書いててよかったなぁって思います。
从*・ 。.・)*VvV)まったりとがんばります。
ほんとにレスありがとうございました。
次回更新は6月になるかもしれませんが、引き続きまったりお待ちいただければ幸いです。
- 653 名前:前29 投稿日:2006/05/17(水) 07:47
- もったいなくて少しずつ少しずつ読みました。
紫陽花ほんとに二人のイメージにぴったりだな・・・
この甘さと美しい世界に蕩けそうです。
もう一度読んできます。
- 654 名前:名無し 投稿日:2006/05/17(水) 19:50
- 更新おつです。優しい転校生に痺れました
この二人の続編なんかも期待してますw
いしよしは雰囲気があってすごいなと思いました
次回更新までマターリ待ってます
- 655 名前:日季 投稿日:2006/05/31(水) 20:52
- 本編とはまったく関係ない藤道です。
- 656 名前:Conclusive factor 投稿日:2006/05/31(水) 20:53
-
「いいよ」
予想外の返事にちょっと驚いて咄嗟には反応できなかった。
半分は冗談だったのにな……
撮影の待ち時間に絵里がわたしが作ったお弁当がいかに不味かったかを力説しているのを
藤本さんは興味なさげに聞いていた。
だから絵里が撮影で席を外したときに思わず言ってしまったの。
『さゆみに料理教えてください』って。
絵里にお願いされて即答で「ヤダ、めんどくさい」とか断っていたから
当然わたしも断られると思っていたのに……。
「ほんとですかっ?」
「うん。どーせ家にいる予定だから」
どっちの家で作る?とかそんな話をした後に
藤本さんは「そうだっ!」と声を上げた。
- 657 名前:Conclusive factor 投稿日:2006/05/31(水) 20:56
- 「シゲさんさ〜、作るときにどんな気持ちで作ってた?」
「えっと……」
「味見とかしてなかったじゃん?しかも絵里が食べるからいっかとか言ってたし」
ニタ〜っていたずらっ子のように笑ってわたしの顔を覗き込んでくる。
そうです、そんな発言ばっかりしてました……。
だって作り方とかも全然わからないし投げやりになっちゃったの。
「料理はいちばん何が大切だと思う?」
「……味?」
「それも大切だけど、もっと重要なことがあるんだよ」
「もっとですか?」
「うん」
そう言うとポンポンと胸元を叩いて見せた藤本さん。
首を捻っているわたしに今度は優しく微笑んでくれた。
「一番大切なことだよ」
「おっぱいが大切なんですか?」
がくんと項垂れてだははって情けなく笑った藤本さん。
まだまだ解らないって顔をしているわたしにもう一度問いかける。
「美貴がなんでシゲさんに教えたいか、わからない?」
それでも微妙な顔をして悩むわたしに優しくほほえんで。
「えりえりじゃなくってさゆに教えたいんだ。考えてみて」
そう言い残して戻ってきた絵里と交代に撮影にいってしまった。
- 658 名前:Conclusive factor 投稿日:2006/05/31(水) 20:58
-
「えり〜」
「さ、さゆ?」
わたしの勢いに何がなんだかわからないって顔をした絵里が
目を見開いて仰け反った。
「かわいいって罪なの」
「はあっ?」
「だって絵里よりさゆみが可愛いばっかりに……料理教えたいんだって!」
あのね……なんて呆れたように呟いてから絵里が意味深に笑う。
わたしが藤本さんの言葉の意味を知ったのは数時間後のことでした……。
おしまい
- 659 名前:日季 投稿日:2006/05/31(水) 21:00
- >>655-658 超短編更新終了です。
Conclusive factor(決め手)は愛情の違いですかねw
>>653 前29さま
レスありがとうございます。すべてのお言葉に感謝です。
ほんとに詰め込みすぎな短いお話ですが、そう言ってもらえて報われましたw
今後もいしよしがんばります(と誓ってみるw)
>>654 名無しさま
レスありがとうございます。痺れてもらえて何よりですw
書きなれない二人なのでお友達のまま……書いていけたらいいなと思います。
从*VvV)お待たせしましたがみきさゆ久々に更新しました〜
- 660 名前:名無し 投稿日:2006/05/31(水) 22:02
- 更新おつです
甘いミキティーも我が道をゆく彼女もいいですね
ミキティー違うこと教えちゃだめだよww
マターリ次回も楽しみにしています
- 661 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/01(木) 13:51
- ラブラブなふたりもいいけどこれくらいの距離感もいいですね
- 662 名前:初心者 投稿日:2006/06/05(月) 11:16
- 更新お疲れ様です
わけを考えさせるミキティがなんかいいですね
それにちょっとナルで無垢なさゆが出した結論も可愛い
そして、どうしても>>660の方と同じく違うこと教えちゃダメって思ってしまいますね(笑)
次回更新楽しみに待っています
- 663 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:05
-
「ただいま〜」
すでに藤本さんの靴があったけど「おかえり」と私を出迎えたのはママだった。
「藤本さんは?」
「昨日の晩レポートのせいで寝てないから仮眠とるって言ってたわよ。
大学生って大変なのね〜」
今日が期限のレポートがあると言っていたから、「先に寝ますね」って言うつもりだったの。
だけど「息抜き。なんか話しよう」ってお部屋に来た藤本さん。
学校でのことを話す私を穏やかな笑顔で見つめていた。
ふいに会話が途切れた瞬間にちゅっとかるくキスして。それからぎゅーっと抱きしめてくれた。
「充電完了♪」なんて照れたように言った藤本さんは、ものすごくかわいかったの。
そのままお喋りをしばらく続けて、気づいたらけっこうな時間が経っていた。
- 664 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:06
- 話し疲れて眠そうにする私に気づいて苦笑いしながら
「無理せずに寝て」なんてやさしく髪を撫でてくれた。
まどろんだ意識の中でやさしい声が聴こえたのを憶えてる。
「おやすみ」って囁く声に安心してそのまま眠りにおちていった……。
あれから藤本さんは一睡もしてなかったんだと思う。
「もうすぐ晩御飯だから、起こして一緒に降りてきてね」
「うん」
「テストどうだったの?」
「あっ、そうだ……」
今日返ってきた答案を鞄から取り出して誇らしげに掲げてみる。
いままでよりも頑張った分、結果がちゃんとついてきていた。
それを見たママはすごく満足そうに頷いて、いっぱい褒めてくれた。
- 665 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:06
- ◇
- 666 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:06
- 「藤本さん?」
私のベッドでスヤスヤ眠る顔はまるで子供みたいで。
なにかをやり遂げたーって感じで誇らしげにも見える。
「ごめんね、みーちゃん」
あんなにお喋りして時間潰しちゃってごめんなさい。
ほんのすこしでも寝られたかもしれないのに、その時間すら奪ってしまった。
徹夜したからか朝はほんとに元気が無かった。
いまは眠ったおかげか顔色も良くなっていてホッと胸を撫で下ろす。
前髪を撫でるとくすぐったそうに身をよじって
気配に気づいたのかうっすらと目を開け
ボーっと私を見つめた後に、ふにゃあと笑ってくれた。
「ちゅー」
そう言ったかと思うと寝ぼけたままキスされて、とたんに上昇する体温。
もう突然なにするんですかーなんて言う暇もなく、ぎゅーっと抱きしめられる。
さっきから激しくなるドキドキになんだかきゅっと胸が締め付けられた。
こんなにドキドキしてるのにあなたはほんとに幸せそう。
もっとドキドキしてほしい。もっと意識してほしいのに……
- 667 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:07
- 「さゆみも寝ようよぉ」
上目遣いに懇願するような甘え口調。
完全に寝ぼけているのかいつも以上にあまえんぼなあなた。めちゃくちゃにかわいい…
このまま流されて寝ようかななんて思うけど、もうすぐ晩御飯だし。
それにちょっと悔しいから。私だけがドキドキしてるなんて、やなの。
「もうすぐご飯ですから起きてください」
「……やだぁ」
ぐりぐりとお腹に顔を擦り付けて甘えるから、どうしていいのかわからなくなる。
なんにも気づいていないあなたは、不思議そうに私の顔を見上げている。
「なんか顔赤いよ?」
「藤本さんが急にちゅーするからですよぉ」
「だってしたかったんだもん」
まだまだ甘えたモードな藤本さんはもう一度ちゅっと唇を重ねた。
そのまま軽いキスを繰り返して、何度目かのキスの後私の顔をマジマジと見つめた。
- 668 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:08
- 「わっ、ごごごごめん!泣かないで……」
急に声を張り上げてそっとやさしく頬を撫でられて、ビックリした。
泣いてはないんだけどな…
「泣いてません」
「だって、じわぁって浮かんでるってば」
「だいじょうぶです」
「怒ってる?怒ってるよね……だって」
だってさぁ、かわいいんだもん。だからつい……ちゅーしたくなったんだもん
唇を尖らせて拗ねたようにそう話す姿が、やっぱりずるいくらいに可愛い。
「怒ってないです」
「……ほんとに怒ってない?」
「藤本さんとっても可愛かったですから怒ってません」
「うぅ……」
かわいいとか言うななんて言われても、可愛かったんだもん。
だけどこれ以上言うとほんとに拗ねちゃうから、心の中にしまっておきますね。
- 669 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:08
- 「そういえば”きょうもかわいい”って最近やってる?」
「えっ?」
「美貴さ〜、あれ見たことない気がするんだけど」
吉澤さんに話は聞いていたけど、この目で見たこと無いからって。
鏡の変わりなんて言って自分の瞳を指差す。
凛とした瞳の中に自分の姿を探して距離をつめる。
シーンとした部屋の中で自分の心臓の音だけがリアルに響いているようだった。
ドキドキドキドキ……壊れそうなほど速くなる心音。
藤本さんが真剣な顔をするから、余計に緊張して声が出ない。
冷静に考えたら奇妙な光景。至近距離で見つめあったまま固まっているのだから。
その微妙な空気に気づいたのか、すこしだけ口元を緩めて微笑んでくれた。
穏やかな雰囲気にほんのすこし緊張が解ける。
相変わらず鼓動はうるさいほどに響いているけれど……
- 670 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:09
- 微かに震える声で「きょうもかわいい」と言った直後にぎゅーっと抱きしめられる。
そして「いつだってさゆみはかわいい」と耳元で囁きすぐに離れた腕に寂しさを覚えた。
だけどちゃんと感じた。藤本さんもドキドキしていること。
だから誤魔化すようにすぐに離れてしまったんだと思う。
はにかむように笑うから胸がきゅんとなる。
「自分の姿が見たくなったら美貴の目を見てほしいな。
そうやっていつだって見つめあっていよう」
「はい」
熱を上げた頬がきっと真っ赤になってる。
照れてそっぽを向いた背中に思いっきり抱きついた。
あなたがくれる真っ直ぐな想いがいつも私をドキドキさせる。
どきどきどきどき……なのにほわっと和む心。
不思議なほどあったかくてまた虜になるの……
- 671 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:09
-
******
- 672 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:09
- 「昨日はごめんなさい」
「どうして謝るの?」
「だってさゆみのせいで眠れなかったでしょう?」
「さゆみのせいじゃないよ」
「でも、すこしくらい眠れたかもしれないのに…あんなにお話しちゃって」
「さゆみのおかげで最後までがんばれたんだよ」
だから気にしちゃダメだよって、キザだとは思うけど泣き出しそうな瞳に口づけた。
はにかむように微笑んでから美貴の肩にこてっと額をつけた。
「体調崩しませんでしたか?」
「うん。案外じょーぶだから」
「でも無理はしないでね……」
返事の代わりに髪を撫でると、そのまま体重を預けながら美貴の背中に腕を回す。
ぎゅーっと抱きしめられて、あまい香りに包まれるとなんだか不思議なくらいに満たされる。
このドキドキを聴いてるんだろうな。なんか胸元に頬を置いて幸せそうに笑ってる。
- 673 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:10
- 「嬉しいな」
「ん?」
「みーちゃんもドキドキしてくれるんだなって」
いつもドキドキしてるよ。当たり前になんてならないって言ったじゃん。
彼女は時々こんな風に確認しないと不安になるみたい。
だから思いっきり抱きしめて安心してもらう。それしか方法を知らないから。
「ぎゅーってして?」
どきどきどきどき……重なりあって音を響かせる心音。
痛いくらいに抱きしめあえば一つになれるような気がしていた。
だけど一つになることはなく、より鮮明にお互いの存在を感じている。
それでいい。それがいい。キミを感じていられるこの瞬間がリアルな感触で残るから。
はぁってしあわせなため息が零れそうになるけど
それさえももったいなくってのみこんだ。
- 674 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:10
- ◇
- 675 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:11
- 「がんばったじゃん」
「教え方がいいからですよ〜」
「いやいや実力でしょ」
えらいえらいと頭を撫でたら上機嫌の彼女は、中間の答案を胸に
座ったまま美貴を見上げている。
うぅっかわいー。さっきからドキドキとうるさい心臓を鷲掴みしたくなる。
気づけばさっきのことばかりが頭に浮かぶ。
勢いで甘えてかなりの幸せを感じちゃって。それから思いきり甘えてもらって。
満たされきった時間に緩む頬が戻らなくなりそう。
「この成績なら旅行も行けそうだね」
「そうだっ!ママも行っても良いよって行ってくれたんです!」
「えっ、話したの?」
「はい。だって善は急げって言うじゃないですか〜」
「まあそうだけど……」
思いのほか成績も安定した彼女にママは二つ返事でOKをくれたらしい。
そりゃそうだ、その前に美貴からも話してあるんだから。
中間の成績が落ちなかったら北海道に連れて行ってあげたいって。
- 676 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:11
- 「日程だけど12日から……2泊はしないとキツイかな。
泊まる所は安く借りれそうなんだ。2階建てのコテージがあってね」
なち姉が働く施設には4〜5人が泊まれるコテージがある。
1階にリビング、お風呂、トイレがあって2階に寝室がふたつ。
ゆったりとくつろげる場所だから、きっと気に入ってくれると思う。
「藤本さんのお家には泊まらないんですか?」
「仕事忙しそうだしそれにふたりでいたいから、ダメかな?」
「ダメじゃないです……嬉しいもん」
「そっか、よかった」
「でもお顔だけは見に行きましょう?離れて暮らしてるからきっと寂しいはずです」
「そうだね」
毎日短くっても電話はしてるんだけど、顔を見せればより安心するだろうし。
それにさゆみも連れて行ったら喜んでくれると思う。
- 677 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:12
- 「りんごジュースとか有名なのがあるんだよ。美貴たちが行く時期だったら
イチゴとかさくらんぼ狩りが体験できるかも……」
「うわぁイチゴだいすきですっ!さくらんぼも美味しいだろうなぁ」
「夜はバーベキューしようってなち姉が言ってた」
「なつみさんに会えるんだ〜楽しみ」
「温泉もあるからゆっくりはいろう」
こくんと頷いてとても幸せそうに微笑んだ。
それだけで美貴まで幸せになる。もっと喜んでもらうんだ……
ってもっと頑張れそうな気がしてきた。
「一緒に過ごせるだけで嬉しいのに……
誕生日がくるのがもっと楽しみになりました」
自分を映す純粋な輝きに吸い込まれるように顔を近づける。
ぎゅっと慌てて閉じられる瞳。なんだか初めてキスした時を思い出す。
震える睫がじれったそうに揺れるから、そっと唇を…………
- 678 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:12
- 『ふたりともご飯できたから降りてきて〜』
ママさんの声にビックリして咄嗟に二人の距離が微妙に離れた。
未遂に終わったキスに顔を見合わせて苦笑する。
「じゃ行こっか」
「……藤本さん?」
先に行こうとした美貴を呼び止めたさゆみは
ちゅっとかるくキスをして真っ赤になりながら先に階段を降りていった。
唇を指でなぞって、へへっなんって情けない笑みが漏れる。
もう緩んだほっぺ、ぜったいに元に戻らないよなんて思いながら
あまい幸せを噛み締めて彼女のあとを追いかけた。
- 679 名前:すずらん 投稿日:2006/06/06(火) 00:13
- スズラン:花言葉【しあわせ、意識しない優しさ、純愛】
―――――― おしまい。
- 680 名前:_ 投稿日:2006/06/06(火) 00:13
-
- 681 名前:日季 投稿日:2006/06/06(火) 00:16
- >>663-679 更新終了です。
勢いだけで書いたのでごちゃごちゃしててすいませんorz
>>660 名無しさま
レスありがとうございます。本来の道重さんってこんな感じかなぁと思って書きましたw
うちの藤本さんはいつでも甘いです。違うこと……从*V-V)<お、教えてないのだ。
>>661 名無飼育さま
レスありがとうございます。
ちょっと微妙な雰囲気にしましたのでそう言ってもらえて嬉しいですw
>>662 初心者さま
レスありがとうございます。ちょっと焦らす从*VvV)と勘違いしまくりの(・ 。.・*从
ふだんのみきさゆはこんな感じかなと勝手に思っていますw
そして从*V-V)<ほ、ほんとに教えてないから……。
- 682 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/06(火) 00:43
- あまくてさいこー?!
ふたりとも言い表せないくらいカワイイww
- 683 名前:名無し 投稿日:2006/06/06(火) 18:52
- 更新おつです。クルクル表情かえるミキティーかわいいw
互いを思いあう感じが素敵
ここのさゆの雰囲気が健気でだいすきです
これからもかわいい話楽しみにしてます
- 684 名前:konkon 投稿日:2006/06/07(水) 00:12
- ンハーッ!
思わずこっちの心臓が止まりそうなくらい甘いですw
このあとのみきさゆにも楽しみです♪
- 685 名前:初心者 投稿日:2006/06/10(土) 18:22
- 更新お疲れ様です
あまーーーーーーーーーーーい!! 2人とも可愛すぎで
ママさんにドッキドキの反応がたまらないです
先の旅行もいろいろ想像してしまいますね
次回更新楽しみに待ってます
- 686 名前:ななし 投稿日:2006/07/11(火) 21:50
- ワクワク
- 687 名前:日季 投稿日:2006/07/13(木) 00:00
-
- 688 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:00
- 「で、電車で行こうかと思ってたのに〜」
「みきつぁん声が上擦ってるべ」
「そ、そんなことないさ〜」
「なんか変……」
空港まで迎えに来てくれた安倍さんを見た瞬間
なぜか藤本さんは真っ青になった。
動揺しているのか視線がきょろきょろして落ち着きが無い。
「マジで乗らなきゃだめ?」
「せっかく迎えに着たんだから遠慮したらバチがあたるべさ」
「は、はぁ……」
「さゆちゃんは乗るよね?」
「えっ、はい。ありがとうございます」
安倍さんの笑顔に思わず頷いてしまった。
藤本さんはほんのすこし哀しそうに上目遣いで私を見た後
ため息混じりに”しかたないよね”なんて呟いた。
- 689 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:01
- とぼとぼ歩く藤本さんにスキップしそうな勢いで上機嫌な安倍さん。
その二人の背中を見ながら首をかしげる。
飛行機の中ではいたって普通だったし、すごく元気いっぱいだったのに。
いまはしょぼくれてなんだか頼りない雰囲気の藤本さん。
どうしたんだろうと本気で心配していたら、そんな気配に気づいたのか
弱弱しくだけど私にむかって笑ってくれた。
駐車場にはちいさな軽自動車。イメージ通りですごくかわいらしい。
まだ浮かない顔の藤本さんは「助手席に乗る?」という安倍さんの言葉に
「後ろに乗る!」と勢いよく即答した。
- 690 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:01
- 「さゆみシートベルトして」
「うしろですよ?」
「いいから、ほら……」
ぎゅっと手を握られ覆いかぶさるように近づく気配に咄嗟に瞼を閉じる。あ、安倍さんが居るのに……
なんて思っていると藤本さんはお尻の後ろにあったシートベルトを引っ張り出して
私の手に渡した。勘違いした事に赤くなっていると首を捻って見つめられ余計に真っ赤になる。
素直にシートベルトをすると、よしよしなんて頭を撫でてくれた。えへへ嬉しいな……。
藤本さんは真剣な顔をしていた。さっきまでの頼りない雰囲気が消えて、なんだか頼もしい。
「ちゃんと掴まってなきゃダメだよ」
「……わかりました」
そう言うとものすごい真顔で手すりを握りしめる。
反対の手で私の手を握り締めているから、ちょっと緊張。
でもドキドキしたのも束の間……
- 691 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:02
- 「な、なち姉?」
「みきつぁんどうした〜?」
「スピード出しすぎっ!?」
「へーきへーき、だいじょうぶだべさ〜」
「後ろを向くなぁーーーーーーーーーーーっ!」
まったく違うドキドキを味わい絶句したの……
安倍さんは見かけによらずぶっ飛んだ運転。
小声で藤本さんが「かるいジェットコースターだと思ってて」なんて言うくらいに。
スピードが半端なく出ている気がするのは気のせいなのだろうか?
窓の外の景色を楽しむ余裕なんて無くてただただ必死に耐えていた。
ほんとに遊園地で絶叫マシンに乗って悪酔いしてしまった感じで、着いた頃にはふたりともぐったり。
運転していた安倍さんはものすごく元気なのに……。
- 692 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:02
- 「か、帰りは電車で帰るから……」
「なんでだべさ〜」
「ほらお母さん達にも会いに行かなきゃダメだし…
それに電車からの、景色もゆっくり見たいんだよ……ね、さゆみ?」
「はい、そうです!すいません……」
「だったらしかたないべさ。今日はお風呂でも入ってゆっくりしてたらいいっしょ。
部屋の浴室にも温泉水がひかれてるからわざわざ大浴場来る必要ないからね」
「うん、そうする」
「二人っきりで楽しんだらいいべ〜」
「べべべつに楽しむとか……」
「明日はバーベキューするからね。今日はお部屋で食べる?」
「あっ、なち姉そばと合鴨の柳川風食べたい」
「わかった食べさしてあげるべさ。ほら、ここが二人が泊まるコテージだべ」
安倍さんに案内されたコテージは本来なら4、5人で宿泊するらしく
とても広い印象を受けた。
- 693 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:03
- 「こないだみきつぁんに案内したお部屋が予約できなかったから間取りはちょっと変わるけど
そんなに大差ないからいいよね?」
「あっ、うん。思ってたより広い、ほんとにいいの?」
「な〜に遠慮してるんだべさ。大丈夫だから」
「ありがと、なち姉」
安倍さんはまだちょっと仕事があるからとにこやかに去って行く。
とりあえず荷物を2階の寝室に置いてリビングにあるソファに座る。
ものめずらしくって二人ともきょろきょろして落ち着かないから
部屋に備え付けのポットでお湯を沸かして、部屋の探索。
- 694 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:03
-
「どうするベッドが良い?それとも2階のほうで寝る?」
「そうですねベッドはお家でもそうだし2階が良いです」
「りょーかい」
1階寝室はベッドが2つ並んでいて、2階寝室は布団を敷くタイプだった。
そして1階には調理器具が一式揃ったキッチンまであって。
もっと料理が得意なら自分たちでご飯作れるのになぁ。
気づいたら藤本さんはもう次の部屋を見に行ったみたいで姿が見えなかった。
自分を呼ぶ声に反応してそっちに行って見るとバスルーム……
- 695 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:04
- 「藤本さん……」
「さゆみすっごい広いよ〜」
「寝ちゃダメですからね」
「わかってるってば〜」
浴槽にねっころがってる姿は年上に見えないほどかわいい。
無邪気に罪なくらいの笑顔をふりまくんだもん。
「ご飯食べてから入る?」
「はい」
「んじゃ、とりあえず夕飯までゆっくりしてよっか」
「あっ、お湯沸いてるみたいです」
「おっし美貴がお茶淹れてあげるね」
なんだかはりきってる姿もかわいいな……
- 696 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:04
-
◇ ◇ ◇
- 697 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:05
- 安倍さんが私たちが泊まるコテージを訪れ夕飯を作ってくれた。
藤本さんが安倍さんのお料理は「やさしい味がする」と表現していたけど
一口食べるだけで納得できた。そして食べているうちに自然と笑っている自分がいた。
「すっごく美味しかったです!」
「喜んでもらえてよかったべさ。後片付けほんとにいいの?」
「うん、美貴たちでするから」
「じゃあお言葉に甘えてこのまま帰るね。おやすみ〜」
「おやすみなさい」
「おやすみ」
ふたりで安倍さんを見送ってからお風呂に入る。
慣れたとばっかり思っていたけどほんとは藤本さんいまだに一緒に入ることには慣れていないの。
コンタクトをすぐに外して、あまりこっちを見ようとしない。
家だとママたちが居る時は別々に入っているから慣れないのかな……。
- 698 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:05
- 「ここの温泉水って美容に効くらしいよ」
「ほんとですかっ?」
「いろんな効能があるって聞いたけど忘れちゃった」
「でも美容に効くんですよね?」
「うん、それは確かだよ」
すぐにのぼせてしまった藤本さんは先に出るねって真っ赤な顔で湯船から上がった。
「ゆっくり入ってていいからね」
「でも後片付け……」
「だいじょぶ。美貴がするからゆっくりしてなよ」
こくんと頷くと満足したように微笑んでやさしく髪を撫でてくれた。
ひとりになるとなんだか寂しくって。ゆっくりと……そんな気分にはなれなかった。
でも今すぐに出て行ったらたぶん藤本さんは気にしてしまうだろう。
ちょっとほんのちょっと我慢して。そうだ藤本さんと出会ってからのことを考えてみたら
時間なんてあっという間に過ぎてしまうんじゃないかな。
そんなことを色々と考えていたら思いのほか時間が経ってしまった。
慌てて髪を乾かして寝室に戻ると藤本さんは窓辺で外を眺めていた。
その顔はとても穏やかで。ただ見つめているだけでとても幸福な気持ちになる。
- 699 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:06
- 「誕生日プレゼント、ほんとにいいの?」
「はい。藤本さんにはいっぱいいろんなものをもらってるし……
それにこんな素敵なところに一緒に来れたからそれだけで満足です」
「もっとカタチに残るものとかあげたほうがいいのかなって、思ったりもしたんだけどね。
でも前に言ってくれたじゃん。一緒にいられるだけで嬉しいって」
私に視線を合わせ、やさしい笑顔を見せてくれる。
言葉にできなくてただ頷けばそれだけで満足したように目を細めた。
「美貴もおんなじこと想ってる」
ぎゅーっと抱きしめられることに慣れたようで慣れていない。
かわらずに速い鼓動を刻む心臓はせっかちにその音を藤本さんに伝えたがる。
鳴り止まない愛の音は耳を澄ませば心地良くふたりを包んで……
とても安心できるの。愛されてるんだなってそう自惚れていられる。
- 700 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:06
- 「もうすぐ誕生日おめでとーだね」
「早いですよね、16歳が終わっちゃうの」
「でも憧れてたんでしょ?17歳って響きに」
「そうなんですけど、やっぱり16って響きもいいなぁって」
「結局どっちだよ!」
突っ込むキツイ声とは裏腹に髪を撫でる手がやさしくて、ゆっくりと瞼を閉じる。
胸いっぱいに満たされるやさしい香り。一緒にお風呂に入ったのだから
同じ匂いのはずなのにな、どうして藤本さんの香りがするんだろう?
部屋に置かれている大きな時計が時間を知らせた。
その音にあわせてふわっとやさしく口づけられる。
「誕生日おめでとう」
「えへへ……」
「さゆみにとって素敵な一年になりますように……
ってか美貴がしてあげるからね」
照れているのか顔が見えないように抱きしめる腕がより力をこめて私を閉じ込める。
- 701 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:07
- 「明日に備えて寝なきゃ」
「もう今日ですよ?」
「あ、そっか……」
苦笑いしながら抱きしめていた腕をほどき、ちゅっと素早くキスをしてくれた。
なんだか視線を合わすのが照れくさくて俯いているとそっと頭を撫でられる。
「そうだ星がキレイに見えてるよ」
その声と同時に手の感触が離れた。
なんだか寂しくなって顔を上げると穏やかな視線とぶつかる。
「一緒に見よ」
「はい」
窓辺に立って空を見上げる。
さっきまで藤本さんのやさしい視線が注がれていたのは
この星たちが輝いていたから……?
- 702 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:07
- 「流れ星だ」
「あっ……」
「なにか願い事した?」
「早すぎて……」
「そっか」
ほんとは願い事が浮かばなかっただけ。
こんなに幸せだから、それ以上を望んでしまうことができなかったの。
そう言ったらどれだけ素敵な笑顔を見せてくれるだろう?
いまは恥ずかしくて面と向かっては言えそうにないけど……。
二つ敷かれたお布団の真ん中でぎゅっと閉じ込められるように眠りについた。
窮屈だなんて感じないのはやっぱり大好きだからなのかな……
- 703 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:08
-
******
- 704 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:08
- 朝起きると隣にもう藤本さんの姿が無くて……。
「ちょ、さゆみ?」
「・・・・」
「えっ、なに美貴なんかした?」
だって起きたらいないんだもん。
無言でぎゅーっと抱きつくときつく抱きしめ返してくれた。
「ごめん、ご飯作ったら起こそうと思ったんだけど……」
「……ごはん?」
「ちょっとしたものだけどね、食べよ」
髪を撫でる手の温もりに安心したのかひとすじだけ涙が零れた。
なんでもないようにその涙を拭ってくれた藤本さんは
ぜんぜん困ったような顔をしていなくって、ただ優しく微笑んでいた。
- 705 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:09
- 「プリクラでもいく?」
「ほんとですか?」
「たしかどっかにあったと思う」
大学生になってから思ったよりも忙しくなってしまった藤本さんとは
久々にプリクラを撮る気がする。
安倍さんが働く施設内にあるプリクラの機種は意外にもわりと新しかった。
「なんだかやり方がよくわかんない」
「任せてください!」
何ポーズも撮影しているとだんだん飽きてきたのか藤本さんの表情が冴えない。
油断してるそのほっぺに不意打ちにちゅーをした。
ビックリして子供みたいに驚いている表情の藤本さんが画面に表示される。
- 706 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:09
- 「な、なにするんだよ〜」
「だって一度やってみたかったんだもん」
「まぁいいけどさ……」
「ほら、すっごいかわいいみーちゃん」
なにかブツブツと小声で文句を言いながらもイヤではなかったらしく
それをそのままプリントアウトしても怒らなかった。
「配っちゃダメだかんね」
「は〜い」
そんな心配は無用です。
だってこんなにかわいい顔ほかの誰にも見せたくないですから。
- 707 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:10
- 「そうだ、ごめん言うの忘れてたんだけど……」
「さくらんぼ狩り中止のことですか?」
「えっ、なんで知ってんの?」
「さっき安倍さんが言ってました」
「マジで……」
「夜にご馳走してくれるって言ってましたよ、さくらんぼ」
「はぁ、ほんとにごめんね」
「大丈夫ですから、落ち込まないで?」
「うん……」
ただこうしてお散歩してるだけでもとても幸せだって気づいてほしい。
一緒にいられるだけで何もかもが特別になるって……
「へへっ……」
「どうしたんですか?」
「ん〜?なんか幸せだなぁって思って」
緑に囲まれた道を歩きながら、わざと繋いだ手を揺らしてみたりして。
藤本さんの頬がすっごく緩んでいるのがわかった。
- 708 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:10
-
◇ ◇ ◇
- 709 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:11
- 「肉は?ねえ肉どこ?」
「落ちつくべさ、まずは野菜食べなさい」
「やだ肉が良いっ」
「子供じゃないんだから……さゆちゃん言ってあげて」
「お肉ありましたっ!」
「わっ、さゆみ偉い」
「えへへ」
「さすがだ可愛さが違うもんね」
「……なんかムカつくべさ」
安倍さんが用意してくれたバーベーキュー。
野菜だらけの網の上を見てものすっごく不服そうだった藤本さん。
喜ばせたくてお肉を持っていくと、それだけでニコニコが復活して上機嫌。
- 710 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:11
- 「あつっ……」
「だいじょうぶですか?」
「へーきへーき。さゆみも気をつけて」
ふーふーと息をかけて冷ます姿がかわいくて見惚れていると
なにを勘違いしたのか藤本さんがお肉を私にさしだしてくれる。
「さゆみも食べなよ、はい」
「おいひぃ〜」
「あははっ、喋れてないから」
「だってすっごいおいしぃんだもん」
「うん、良い肉だよね〜」
あ〜ん、なんて普段は人前で絶対にしないのに……
リラックスした雰囲気のこの空気がそうさせるのか相当に甘くなってるみたい。
肉に夢中な藤本さんは時より安倍さんからお皿に野菜を乗せられて
子供のように駄々をこねていたけど、私がちゃんと食べましょうねって言うと
渋々ながらちびちびと口に運んでいた。
- 711 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:12
-
「真っ暗になってきましたね」
「そろそろ戻ろうかな……」
「みきつぁん、さゆちゃん送ってからちょっと戻ってきて〜」
「なんで?」
「ケーキあるんだ。みきつぁんが送って行ってる間に取りに帰るから」
「一緒に食べたらいいじゃん」
「あたしはもう食べたからいいんだべ」
「ふーん……わかったありがと」
てくてくとコテージまでの道を歩きながら、ぎゅっと手を握られる。
「すぐ戻るから待ってて」
「はい。ほんとにすぐ?」
「なち姉の家もすぐ近くだからもう戻ってきてると思う」
「じゃあ待ってます」
いい子だねって頭を撫でてからちゃんと鍵を閉めておくように言われた。
誰かが来ても絶対に開けちゃダメだよって。
心配性な藤本さんを安心させたくて素直に頷いてお見送りをした。
「いってらっしゃい」
「うん、いってきます。絶対に戸開けちゃダメだよ」
「はい」
- 712 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:12
-
◇ ◇ ◇
- 713 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:13
- ケーキを持って帰ってきた藤本さんは心なしか落ち込んでいるようだった。
言葉にはしなかったけど私の表情全体で問いかけていたらしく
誤魔化すように笑ってから「星をみよう」と窓辺に誘われた。
「うわぁ……」
「今日は一段と綺麗だね」
「さゆみが?」
「へっ?」
「……藤本さんのバカ。そこは即答してください」
「ちがっ、急すぎたんだよっ!きまってるじゃん毎日綺麗だよ」
「ブッブー不正解!毎日”かわいい”んです、さゆみは」
「……おいっ」
「冗談ですよ」
「面白くない」
むぅっと膨れるとぎゅーっと抱きしめられる
「ばーか冗談だって」なんてキツイ言い方なのに声のトーンがやさしい。
それからまたぎゅうぎゅうと抱きしめられて息が詰まりそうになる。
「痛いよぉ、みーちゃん」
「……ごめん」
抗議するはずが甘くなってしまって。だからなのか腕の力は緩まなかった。
それどころかより強く抱きしめられる。
戸惑いの感情が密着するカラダ全体から流れ込んでくるようで胸が苦しい。
- 714 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:13
- 「安倍さんになにか言われたんですか?」
「……べつに」
「藤本さん?」
「……だいすきだよ」
泣いてるように震える声が胸に突き刺さって、呼吸まで奪われそうになる。
「さゆみもだいすきです」
必死で絞り出した声はすこし掠れていたかもしれない。
「すきなんだ、だいすきで……それだけでいいと思ってたんだ」
「すきだけで……」
「だめなんだって。もっと先のこととか考えろって」
「先のこと……」
「なち姉さ、いろんな経験してて…心配してくれてるのはわかるんだけど……」
「ケンカしたの?」
「ほっといてくれって言ってきちゃったんだ…子供過ぎるのかな美貴たち」
縋るような声で私に助けを求めている。どうしていいのかわからなくて涙だけが頬をつたった。
誰かを想うことに大人とか子供とか関係があるんだろうか?子供だったら人を愛しちゃダメなんですか?
愛の重さの量り方なんて知らないけど、軽い気持ちならきっとこんなに涙は溢れないと思う。
あなたを好きになることが間違っているのなら、私はもう誰も好きになれない……
- 715 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:14
- 涙に気づいた藤本さんは抱きしめていた腕を離した。
離れた温もりに寂しさだけが残るから、温もりを追いかけるようにしてぎゅっとしがみつく。
「ごめん、いっつも泣かせてばっかりだね……なにやってんだろ美貴」
自分を責める藤本さんの声に違うのだと首を振る。
泣いたのは弱い私のせいで藤本さんが悪いんじゃないから。
「好き以外に必要なものってどうしても解らなきゃだめですか?」
「それがわかんないんだ……」
「理屈じゃないって……先生だって言ってたし」
人を好きになることに理屈なんていらんねん、そんな風に話していた。
心が動く人があんたが大切にすべき人やって……。
「答えは自分の中にあるんやで……中澤が言ってたね」
「中澤先生」
「中澤…先生が言ってたね」
呼び捨てを指摘するとすぐに言いなおしてくれた。
顔を上げたらちょっと涙目で、それでも笑ってくれる。
- 716 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:14
- 「いつ言われたの?」
「1年の終業式の日です」
「そっか……」
ちょっとだけ藤本さんは私から視線を外した。
どこか遠くを見てからゆっくりと私をその瞳に映してくれる。
「ちゃんとなち姉に話してくる。いまは見守ってほしいって」
「一緒に行きたいです」
藤本さんは首を横に振りかけてから止まり、すぐに頷く。
そして私の胸元で揺れるベビーリングをそっと手に取った。
「そうだね一緒に行こう」
ぎゅっと握られた手を放さないと誓いながら流れる星に願いをかけた……
- 717 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:15
-
◇ ◇ ◇
- 718 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:15
-
再び会いにきた私たちを見て安倍さんはただ微笑んでくれた。
なんにも言わなくってもわかってるからって。
ほんのすこしだけ意地悪してみたかったんだと穏やかに笑っていた。
いくつもの現実を見てきた安倍さんは、私たちに何かを伝えたかったのだと思う。
夢の中だけでは生きていけないこと、ほんとはわかっています。
でも『人生に無駄な経験なんて無いんやから、何度でも躓いたら良い』とも先生は言っていた。
そして、もう一つ先生から聞いていたことを思い出して……
「あのね藤本さん……?」
「ん?」
「あの……」
「どったの?暑い?真っ赤だよ」
頬に触れられただけでドキドキがありえないことになってしまう。
思い出すんじゃなかった……。
「マジでどうしたの?」
「もう一つ言われたことがあって……」
「中澤に?」
「はい」
呼び捨てとか気にしてる暇なんてなくって…。
もうやばいくらいに心臓が……どうしよう私のバカ!なんで思い出すのかな。
- 719 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:16
- 「何を言われたの?」
「あの……身も心も捧げられる人かどうかも重要だとかなんとか……」
「あんにゃろ……」
「身ってやっぱりあれですよね」
「あれ……あれなんだろうね」
しばらく見つめあったままお互いに固まる。
なんだかわからないけれど目の奥が熱くなりじわぁっと潤んでくる瞳。
不安に震える指先を悟られないようにぎゅっと服を掴んだ。
もうどうしたらいいのかわからなくって口をついて出た言葉に自分でもビックリ…
「さゆみのぜんぶ藤本さんにあげます」
- 720 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:16
-
******
- 721 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:16
-
「おはようございます」
「……おはよ」
ごしごしと目をさすって起き上がった藤本さんは
昨日のことを思い出したのか照れ笑い。
「ご飯できてますから起きてくださいね」
「わっ、作ってくれたの?」
「はい!」
「やった、顔洗ってくるから待ってて」
飛び起きて走り出し転びそうになった後姿を見て
やっぱりいまはかわいい藤本さんが一番好きだと感じた。
昨晩はあの後、ふたりとも緊張しすぎて言葉数がすごく少なくなって……
- 722 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:17
-
◇
- 723 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:17
- 熱く甘い感覚は思考を霞ませカラダの力を奪っていく。
口づけたまま美貴にカラダを委ねると、より鮮明に美貴の心音を感じられた。
唇の輪郭を確かめるように舌先でなぞられ、優しい動きにただなすがままになる。
熱い吐息が唇を掠め名前とともに愛の言葉が囁かれる。
『すき』というありふれたフレーズなのにそれだけでまたカラダは熱を上げていく。
喘ぐように少しだけ開いた唇からするりと舌をからめとられ甘噛みされた。
すぐにやさしく舐められ口内で互いの唾液がねっとりとからみあう。
ふいに離れた唇の軌道を追って視線を上げると、真剣な眼差しとぶつかる。
問いかけるような瞳にただ頷いた。大丈夫、あなたになら私はすべてを……
そんな風に思ってみても頭の片隅にはまだ慣れないことへの恐怖があった。
そっと素肌に触れられただけでビクンッと反応してしまい行為をなんども中断させる。
その度にやさしい眼差しが大丈夫だとさゆみを安心させてくれた。
繊細なガラス細工に触れるように慎重にカラダをすべる冷たい手が徐々に温もりをおびていく。
艶かしい色を宿しはじめた眼差しに見つめられカラダの奥のほうから熱が沸きあがってくるようだった。
- 724 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:18
- 朦朧とする意識の中で慣れない感覚にまだすこし怯えていた。だけど美貴が名前を甘く呼ぶから、
安心させようと抱きしめてくれるから、すこしづつだけど怖くないのだと思うことができた。
所在無げに震えていた指先も美貴は一本一本絡ませ固く握りしめてくれる。
「…んっ……ぁっ…………」
唇をつよく引き結ぼうとしても美貴の愛撫がそれを許してくれない。
熱すぎるほどに熱をおびたカラダにやさしいキスを落としながら、探るように舌を這わせ反応を確かめている。
気づけば美貴の額にも汗が滲んでは流れ、その汗が胸の上にすべり落ちてくる。
こんなにも一生懸命に自分を愛してくれる美貴が愛しくてたまらない。
「………ぁ、ぁっ……」
美貴の舌先が胸の先端に触れ声にならない声が喉元からこぼれおちる。
口内でやさしく舐められ吸われ胸元からビリビリとした快感がひろがっていく。
さゆみの口から甘い息が漏れるたびにやわらかな舌の動きが少しだけ激しくなる。
でも昂ぶりに溺れることはなくあくまでも自分のことを優先してくれているのが
美貴のすべてから伝わり、こんなにも大切にされているんだと泣きたくなった……
- 725 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:18
- 胸元から腰のラインを行き来していた手の動きが止まり「これ以上はだめむりしにそう…」
ふいに泣きそうな顔でそんなことを言われて。どうしてだろうすごくホッとした。
髪を撫でると気持ちよさそうに目を閉じて美貴は胸に顔を埋める。
汗ばんだ背中を撫でながら、なんだかぐったりとしている美貴の様子を窺う。
「だいじょうぶですか?」
「ん……さゆみこそだいじょうぶ?」
緊張とかいろんな感情が入り乱れて潤み続けていた瞳。
ほんのわずか浮かんだ涙を指で拭って美貴は心配そうに問いかける。
「はい…でもカラダに力が入らないです……」
「美貴も…」
「これって途中、なんですよね?」
「途中っていうかなんていうか……」
「もっと先とかになったら大変そう…」
「……かもしれないね」
「やっぱりキスが一番好きかな」
「うん、すっごくそう思う」
「でも……」
「でも?」
きょとんと胸元からさゆみを見上げる美貴の表情があまりにも無防備で。
こんな風にじゃれてるのがいまは合っている気がした。
まだぜんぜんお子ちゃまなふたりだけど、それでいいと思った。
- 726 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:19
- 「なんでもないです」
「なんだよ〜気になるじゃんか」
「だって恥ずかしいんだもん」
「教えて、気になって寝れないから」
真顔でそんなことを言うからちょっと噴出す。心外だと言わんばかりに拗ねてる表情も
やっぱりかわいくて……。
「言ったらみーちゃんぶっ倒れそうだもん」
「倒れないから、教えて?」
「やです」
「やじゃないでしょ?」
「やだもん」
「教えてくれなきゃ泣いちゃうぞ!」
ちょっと甘えたような声色を作って言う美貴。
ついでに 泣き真似までして…胸に顔を擦り付けたらくすぐったいですってば。
駄々っ子みたいに教えてと繰り返す姿はそうとうにかわいいけれど……。
でも勢いを失っちゃったらすっごく言い辛いこと。
どうだった?なんてこと簡単には言えない(聞かれて無いけど)
でも美貴の上目遣いに負けてしまう……
- 727 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:19
- 「1回しか言いませんからね」
「うん、1回で良い。ちゃんと聞くから」
「……耳貸してください」
「ほい」
美貴は返事をすると素直に胸元から顔を上げて耳を近づける……。
その耳元にそっと囁いたら途端に真っ赤になって、あたふたと意味も無く髪の毛を掻き乱す。
「そ、それってマジですか?」
「……マジです」
ドキドキしっぱなしで冷静に考える余裕はなかったけれど、ちゃんと心が感じていた。
美貴に愛されているということ。とても心地よくて気持ちよかった。
触れる肌が指が舌が……美貴のすべてが自分を包み込んでほんの少しだけ未知の世界をみせてくれた。
「ほんとに好き?」
「……好きです」
「でも、すっごいドキドキしてたから……」
「みーちゃんだって……」
「めちゃくちゃ緊張したからね……でもよかったぁ」
「よかった?」
「二度としたくないって思われたらどうしようかと思った」
「そんなこと思ったりしません」
「ねえ……」
「ん?」
「みーちゃんは?」
「なんだろうな…すっごい満たされてる。んっとね、幸せ」
「さゆみも幸せです」
- 728 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:20
- あたたかな腕の中に抱きしめられる。
華奢なその腕がぎゅうぎゅうと閉じ込めるようにさゆみを抱きしめた。
ふたりの熱が交じり合った心地いい温度に包まれて、すうっと眠りに落ちかけた時
やさしく瞼にくちづけられるのを感じた。
不器用だから愛の言葉がいくつも紡ぎだされることは無い。
でもだからこそありふれた一言に誰よりも重みがあって
さりげない仕草だけでこんなにも満たされていく……
- 729 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:20
-
◇
- 730 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:21
- 「さゆみ?」
「あっ、パンが焦げちゃう!」
「だいじょぶ、美貴がトースターから出しといたから」
「……ごめんなさい」
「どしたの、なにか考えごと?」
「流れ星にお願いしたのかって聞かれたじゃないですか〜?」
「んっと、最初に星を見たとき?」
「そうです」
「それがどうしたの?」
「お願いごとね、ほんとは……」
幸せすぎて浮かばなかったんです。そういうと嬉しそうに口元を綻ばせる。
もっと早くに伝えていればきっとあんなに悩むことは無かったのかな……。
「あっ、でも昨日はお願いしました」
「なんて?」
「素直に気持ちが言えますようにって」
「……さゆみはいつも素直だよね?」
「ううん。たまに心の中で止めちゃうから」
「そうなの?」
「はい。だって恥ずかしくって幸せすぎるって言えなかったし…」
「そっか。でもいま聞けて安心したしすっごく嬉しい」
いつか、そういつか……
あなたにすべてをほんとにあずけられた時
また違った世界が見えるのかもしれませんね
- 731 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:22
- 「すき」
「へぇっ?」
「だいすきなの」
「と、突然だね」
「だって……」
甘えるように服の袖を握りしめるとわかってると言いたげな顔で微笑んでくれた
その顔はやっぱり困ってる風ではなくて、むしろすごく嬉しそう
甘い瞳の中に自分の姿を確認してゆっくりと瞼を閉じた
「すきだよ。さゆみがだいすき」
いつかあなたが囁いた言葉が耳の奥で再生される。
『スキって言うたびにキスをしよう』
それはキモチを確認したがる幼い私たちを繋ぐ、くちづけの儀式……
きっといろんなことを超えてしまえば、目に映る景色は色を変えてしまう
そして、いまと同じキモチではいられなくなると思うから
いま感じているキモチを大切にしながら
ふたりだけのペースで想い出を重ねていきましょう……
- 732 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:23
- グラジオラス:花言葉【ひたむきな愛、楽しい思い出】
- 733 名前:グラジオラス 投稿日:2006/07/13(木) 00:23
-
- 734 名前:日季 投稿日:2006/07/13(木) 00:25
- 从*VvV)<誕生日おめでとう。
从*・ 。.・)<憧れのセブンティーンなの。
彼女にとって素敵な一年になりますように……
願いを込めて>>688-732更新終了です。
今回が最後の更新になります。
あたたかいレスほんとにありがとうございました。
ヘタレな自分ががんばれたのも読んでくれる人がいたからです。
レスを読んで思いついたお話もあったりしました。
拙い文にお付き合いいただいてありがとうございました。
今後もひっそりと藤道書いていきます。その時はまた読んでいただけたら幸いです。
(興味のある方はメール欄を覗いてみてください)
- 735 名前:日季 投稿日:2006/07/13(木) 00:26
- レスほんとにありがとうございました。
皆さんのレスがかなり励みになりました。
从*・ 。.・)*VvV)<心から感謝しています。
>>682 名無飼育さま
ありがとうございます。最高といってもらえて嬉しいです。
かわいいと思ってもらえたら本望です。
>>683 名無しさま
ありがとうございます。道重さん褒められるとほんとに嬉しいです。
そして美貴さんもかわいいと思ってもらえてよかったです。
>>684 konkonさま
ありがとうございます。甘いといってもらえて嬉しいです。
心臓止まらない程度に萌えていただければ幸いですw
>>685 初心者さま
ありがとうございます。甘いと言ってもらえて嬉しいです。
いろいろと想像を裏切ってないか心配ですがこんな感じになりました>旅行
かわいい二人になってると良いのですが……
>>686 ななしさま
从*^ー^)<ドキドキ
- 736 名前:konkon 投稿日:2006/07/13(木) 00:57
- 更新お疲れさでした。
もう最高の一言に尽きます!
ここまで感動を呼び起こす作者様に脱帽します。
また今後に書かれる小説も楽しみにしてます。
本当にありがとうございました〜。
- 737 名前:初心者 投稿日:2006/07/13(木) 01:24
- さゆ誕生日おめでとう
17才がさゆにとって素晴らしい年になりますように
裏切るなんてことは全然ないですよ
最後までさゆ美貴2人のペースでとっても良かったです
そして日季様本当にお疲れ様でした
小説でこんなに温かい気持ちになったり笑ったり泣いたりしたのは初めてでした
素敵なお話ありがとう
- 738 名前:名無し 投稿日:2006/07/13(木) 07:57
- 更新おつかれ様です
一生懸命に互いを思いあう二人に感動しました
おとなっぽいことも考えてるさゆと
実は子供っぽいミキティーがかわいくてかわいくて
だいすきです
最後まで二人らしくって安心しました
さゆみき最高です!!
- 739 名前:前29 投稿日:2006/07/13(木) 08:02
- ラストですか・・・
読んでしまったあとの幸福感と寂しさが入り交じって
複雑な感覚です。
どこをとっても日季さまの温かくて美しくて流れるような言葉が紡がれていて、
ここの二人もこれだけ丁寧に日季さんに描いてもらって
幸せだったろうな・・なんて思ってしまいました。
スレ完結、本当にお疲れさまでした。
今後も楽しみにしています。
- 740 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/21(月) 22:58
- また帰って来てくださいね日季さま
さゆ美貴・石吉 最高でした
- 741 名前:名無し 投稿日:2006/08/25(金) 23:30
- ここの作品で、すっかり、さゆみきのトリコです(笑)
ぜひ、ドキみきのお風呂ネタで書いて下さい!!
- 742 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/28(月) 18:28
- いつも楽しく読ませて頂きました。
また新しい作品をお待ちしています。
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