理想と現実
- 1 名前:松竹藤 投稿日:2006/01/20(金) 23:42
- 過去に書いた「理想と現実」の田中さんバージョンのお話を載せたいと思います。
今から載せる話は、下の何年か後という感じでいきたいです。
よろしくお願い致します。
月板過去ログ倉庫「No.1――ナンバー☆ワン」スレ内
214-231 小川麻琴の場合
234-247 249-270 275-288 290-307 紺野あさ美の場合
銀板過去ログ倉庫「Magic of love]スレ内
729-740 藤本美貴の場合
- 2 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:44
-
【ねえ、早く……れいなに逢いたい】
「き、き、き………キタ━━━━━━━━━━━━!!!!」
from絵里。
この萌えメールが送られてから、3日後。
とうとうれいなは、絵里に逢う事になった。
- 3 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:45
- ◇◇◇
- 4 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:46
- 田中れいな、平成生まれの15歳。
福岡で生まれてから、中学卒業までずっと福岡育ち。
高校進学の時に、東京である目的があって上京してきた。
それは、東京で彼女を作る事!!!
上京の理由がおかしいなんて突っ込みは受け付けない。
だって、れいなは真剣なんやけん。
ママのお腹の中で形が出来た時から女の子で、それからもずっと女の子やけど、
好きになる子は男の子じゃなくて、れいなはいつも同性やった。
それが普通と違うって事は小学校中学年くらいから気付いて、それからは、そんな気持ちを表には出さないようにした。
でも、やっぱり人と違うって事は不安で、パパとママに相談したら、超つらそうな顔されて。
……なんで、そげな顔すると。
なんで、そげん顔されないけんの?
それからは、もう何も言わんかったけど、学校でも私生活でもそれはそれはかなり荒れて。
髪の色を変えたり、法律違反な事して、警察のお世話になったり。
色々して、色んな人に迷惑をかけた。
家にもずっと帰らんで、友達ん家転々として。
れいながそんな風になってしまった原因は自分達のせいと思ったパパとママは、そんなれいなに一台のパソコンを与えてくれた。
それが、れいなが福岡から東京へと上京する事になった、きっかけ。
- 5 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:46
- 「…俺達は、れいなのそういう気持ち分からんけど、こん中には、
れいなと同じ気持ちの人、いっぱいおると思うけん………どんだけ繋いでもよかから、頼むから、家には帰ってきんしゃい」
「………パパ…」
異性と恋愛して結婚して、れいなを産んだパパとママには絶対に分からないれいなの気持ち。
やけん、独りでこんな気持ちを抱えて荒れてしまったれいなと同じ気持ちの人がいるという事を、パソコンを買って証明してくれた。
最初は使い方が分からんくて四苦八苦しとったけど、検索して色んなサイト回って、掲示板とかチャットに打ち込んで慣れてって。
そこで、色んな話をした。
友達とか、親に言えん色んな話。
グラビアアイドルの誰々が可愛くて、あの胸を触りたいとか、そういうちょっとエッチな妄想も。
何でも話せた。
誰も引かなかった。皆乗ってくれた。
そこには、れいなと同じ仲間がいた。
同じ悩みを抱えて苦しんでる人とか、意外とあっさりして周囲にカムアウトしてる人とか、こっそり彼女と同棲してる人とか、ホントにたくさんの人が。
ネットの世界はやっぱり広くて。
それに、オフ会なんかがあるのは、やっぱり東京。
中学生で、財布の中は小遣いだけで、どこへ行くにも親に報告しないといけない自分は、その輪には入れない。
後日のオフ会レポを読んで、いっつも羨ましいって思っとった。
れいなも、行きたい。
会って、皆と話したい。
自分と同じ、彼女が、欲しい。
- 6 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:47
- その為には、まず東京へ。
東京やったら、そんな人達が集まるお店もあるらしいし、オフ会でよく使われる土地やし。
何より、色んなところから皆そこに集まってきてるから、色んな人がいっぱいおるし。
福岡の友達と別れるのはちょっとつらかったけど、でも、それ以上にれいなは同じ仲間の人と過ごしてみたかった。
やけん、高校の志望校を、東京にして。
パパとママは渋っとったけど、それでも最後にはOKしてくれた。
それだけやなくて、東京で住む所も当たってくれて。
さすがに高校1年で独り暮らしは心配やからと、親戚の藤本さんの次女・美貴ねえが暮らしてるマンションでれいなが一緒に暮らす事に。
その人はもう大学生で親とは一緒に暮らしてなくて、後輩の人と住んでるらしいんやけど、
れいなのパパとママの申し出に快く応じてくれたらしい。
ハタチ過ぎてるから、保護者代わりにもなってくれるって言って。
なんだかんだで、れいなは周りの人に恵まれてると思う。
- 7 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:47
- そして、やって来た東京。
迎えに来てくれたのは、れいながこれからお世話になる美貴ねえと、その後輩の松浦亜弥さん。
「よっ、久しぶり」
「ひ、久しぶりですっ。よよよろしくお願いします」
「あはは、何緊張してんのー。しかも敬語だし」
「や、だ、だって」
れいなが知ってる美貴ねえは、髪短かったのに、なんかいきなり長くなっとって。
そりゃ、全然会ってなかったんやけん、髪が伸びるのも当たり前なんやけど。
前に会った時は、なんか裏番長やってますって感じやったのに、今はもう、大人のお姉さんみたいな、お色気が。
それに、その美貴ねえの隣におる、松浦さんもまた。
美貴ねえの後輩って言っとったけど、美貴ねえと同じくらい、いや、25歳くらいに(ry
ま、まあ、大人びてるって事で。
そんな松浦さんが、男やったら大好きそうな笑顔と仕草を計算して、れいなに話し掛けてきた。
「どもども田中ちゃん。表向きはみきたんの後輩って事ですが、実はたんの彼女の松浦亜弥でございます」
「えっ?」
「ちょ! あんたいきなり何言ってんの!?」
「だってさぁー、一緒に暮らすんだから、その辺は最初に言っとかないと、困るじゃん色々」
「言われた方が困るんだよ、バカ!!!」
「いった〜っ、可愛い彼女を本気で叩いたよこの人!」
「だから彼女とかこんなとこで言わないでよ!!!」
「や、あの……」
言わないでって言ってる美貴ねえの声の方が大きいんですけど。
…はたしてそれを注意すべきか、それとも自分の事を可愛いって真顔で言ってる松浦さんを突っ込むべきか。
困るじゃん色々の、色々って何ですか、とか。
たくさん、あるけど。
やっぱりれいなは、恵まれている。
まさか、親戚で同じ人がいたなんて。
- 8 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:47
- 「そ、その話、ウソじゃなか?」
「あ………うん、まぁ…」
おそらく黙っておくつもりやったはずの美貴ねえ。
それが松浦さんによってバレてしまって、気まずい顔。
なんでそんな顔するか、れいなには分かる。
大抵の人は引いて、軽蔑してしまうから。
しかも相手は親戚で、これから一緒に暮らすれいな。
でもなんでれいなが東京へ来たのか、美貴ねえ達は知らんみたいで。
「その…さ、もう来ちゃってアレだけど、やっぱり一緒に暮らすのやだったら、違うとこ行っちゃっていいから。
急で行くとこないんだって言うなら、美貴ん家に住ませてもらうように、美貴からも頼むし。
あ、部屋は美貴の部屋使っていいからさ」
レズビアン2人が暮らしてる家になんて住めない、そうれいなが思ってるって、美貴ねえは思ってる。
笑って明るく言ってはいるけど、その心が傷ついてるのが、伝わってくる。
「っていうか……マジで一緒に暮らしてよかと?」
「…れいなが、いいなら。そもそも、亜弥ちゃんがいいって言ったし」
「みきたんフットサル始めて、帰って来るのが遅いから寂しかったんだよ」
「けど…美貴ねえ帰って来たら、邪魔なんじゃ…」
「そこはだいじょーぶ! 部屋はキッチリ分かれてるし、2人きりで色々したい時は、ちゃんとドアノブに入ってくんなって札かけとくから」
「ってか、れいなこそいいわけ? 美貴達その…そういう関係なんだけど」
「ぜんっぜん、構いません」
むしろ、ラッキーというか。
とにかく、そういう事なら、れいなも堂々と自分の気持ちを伝えよう。
「実はれいな、恋愛対象が女の子なんで」
- 9 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:48
-
- 10 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:49
- 家までの、美貴ねえが運転する車の中。
松浦さんはもちろん助手席で、れいなは後部座席。
ややスピード出しすぎの車に恐々としながら、れいなは疑問に思った事を言ってみる。
「なー美貴ねえ」
「ん?」
「思ったんやけど、美貴ねえって確か、前……彼氏おったよね?」
それなのに今、美貴ねえの隣には松浦さん。
考えられる可能性はというと。
「美貴ねえ、バイやったと?」
「や、違う違う。普通だよ。えっと…ノンケっていうんだっけ? それなのに、この人のせいでこんなになったの」
「この人って誰?」
「助手席に乗ってる、今見事にすっとぼけてるアンタの事だよ!」
「にゃはは」
にゃははと笑う松浦さんは、美貴ねえに怒鳴られても全然平気な顔。
そりゃ美貴ねえと付き合うにあたって、こんなんでいちいち怯えてたら一緒に暮らしていられんやろうし。
っていうか、そんな美貴ねえを尻に敷いてると思うのは、れいなだけ?
「れいなはさ、女の子が好きなんでしょ?」
「え? あ、うん」
「美貴はさ、別に女の子が好きなわけじゃないんだ。いいなぁとかって思うのも、やっぱり男の芸能人とかだし」
「あ…そう…」
「たださ、亜弥ちゃんが女の子だったってだけ」
「まぁ、男の子でも超可愛かったと思うけどね」
「そんな性格で男とか、マジきもいんでぇ」
「にゃにを〜?」
ってことは、美貴ねえは、ただ、松浦亜弥って人間が好きなだけで。
れいなみたいに、可愛い女の子を見て色々考えたりせんってわけか…。
でも、ビアンの理解はキチンとしてくれてる。
やけんれいなが言った後も、全然何も言わなかった。
「えっ、そうなの。知らなかった」って、超軽かったし。
それでも顔は、自分たちの関係に引かんでくれてよかったと、ホッとしてたけど。
松浦さんに至っては、「じゃあ3Pとか出来るね!……いやしないけど、冗談だけどさ」――なんて。
すぐさま否定したのは、れいなが顔を赤くさせて、美貴ねえが松浦さんを睨んだから。
- 11 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:49
- 「じゃあ、松浦さんはビアン? ビアンやったら、いつ頃気付いたんですか?」
「んー、あたしはビアンっていうのとちょっと違うかもしんないんだけど…。あ、っていうか敬語いいからね、ほんと。
松浦さんとかじゃなくて、亜弥ちゃんとかでいいし」
「はぁ…じゃ、じゃあ、亜弥ちゃん」
「よろしい。あたしはさー、みきたんみたいに基本男の子が好きじゃなくて、可愛いものとか、可愛い人が大好きなのよ。
で、可愛いものっていうか、可愛いのは、女の子に多いじゃん。で、あたしより可愛い子に逢ってみて、胸キュンっていうか一目惚れみたいなのしてみたかったの。
でも色んなビアンサイト回ってオフ会とか行ったけど、なかなかピンと来る人いなくて。
だけど、世の中捨てたもんじゃないね。あたしは、初めて自分以外の人間に、心底可愛いって思えたの。みきたんを電車の中で見て」
「か、可愛いぃ…? 美貴ねえが?」
「…なんだよれいな、ここで降ろしてやろうか?」
「やややっ、降ろすって、ここ高速やん!」
絶対、可愛いやなくて、怖いの間違いたい。
それなのに松浦さ…じゃなくて亜弥ちゃんは。
「美貴ねえが理想のタイプやったと? でも美貴ねえ、可愛いより、どっちかって言ったら格好いいとか、綺麗系じゃあ…」
「笑った顔が、ちょー可愛かった。彼氏と一緒だった時、喋ってる声が、ちょー可愛かった。仕草とか、ちょー可愛かった。
何もかも全部、あたしにとっては可愛かったの」
「へぇ……」
美貴ねえのすべてを好きで、愛してて。
同性の恋愛はなかなか生きてく上では居心地が悪いのに、亜弥ちゃんは堂々と、ばり楽しそうにしてる。
そんな人と出逢えて、付き合えて、一緒に暮らしてる美貴ねえが、かなり羨ましいと思った。
- 12 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:50
- 「れいなにもそんな人、出来るかな…」
「だーいじょうぶだって! 世の中広いんだからさ。どっかのサイトの人とかの知り合いでアテとかあるの?」
「メッセとかチャットでは話した事あるけど、直接会った事は……」
「そっかー。15歳だし、福岡でオフってなかなかないもんね」
「そういうあんたは、中学ん時から色んなオフ会行きまくってたらしいじゃん」
「東京に住んでたし、チャットで色々可愛がってもらってましたから、んふふー」
「キモっ。笑い方キモっ」
「みきたんの突っ込みヒドっ」
いや、っていうか美貴ねえは会話に入って突っ込むより何より、前を見て運転してもらいたいんやけど…。
なんか微妙に車体フラフラしとぉし。
だ、大丈夫やろかな、本当に。
そんな心配はれいなだけで、当の美貴ねえも亜弥ちゃんも、まったくもって普通の顔・普通の会話。
すごい…すごすぎると、このカップル。
感心してるれいなに、亜弥ちゃんはにっこり笑って。
「あ、そーだ田中ちゃん。あたし、オフ会で知り合った、田中ちゃんと同い年の女の子知ってるよ?
ビアンっていうか、あたしと一緒で可愛いものが好きで可愛い子探ししてるくせに、自分が1番可愛いと思ってるちょっと変わった女の子なんだけど。
その子もいっぱいサイトとか見て回って知り合い多いだろうから、一度その子と会ってみる?」
「マジで!?」
「マジでマジで。可愛い子だよー。あたしとみきたんには負けるけどね」
「よよよよろしくお願いします!!!!」
やったー! やっぱりれいな、マジで恵まれてる!!!!
ビアンに理解ある保護者代わりの美貴ねえに、その彼女でビアンの友達が多い亜弥ちゃん。
福岡じゃ1人の理解者(パパとママは別として)もおらんかったのが、ウソみたいで。
学校の友達に、自分が女の子好きって疑われんように無理やり合わせて、○LAMEの追っかけしてた頃が懐かしか……
- 13 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:51
- 「ってか、れいなはどんな子が理想のタイプなのさ?」
「い、言うけど、まず美貴ねえ、後ろ向かんと前見て運転して欲しいっちゃ…」
ハンドルは握ってるけど、顔は完全に運転席の後ろに座ってるれいなの方へ。
危ない危ない、マジで危ないから!
「でもみきたん、今日は安全運転だよね、割と。ゆっくりめだし」
「うん。れいないるしね」
「これで安全運転!? う、ウソや…」
じゃあ普段は一体どんな運転を。
……気になる。気になるけど聞きとぉなか……。
「
ねー早く教えてよれいな」
「おお教えるから前見てってぇ!」
「田中ちゃんビビリだねぇ」
「あんたらがおかしいと!!!!」
いくられいなが女の子が好きやからって、絶対にこの2人は好きになんかならん!
れいなのタイプは、タイプは……
- 14 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:52
- 「れいなは、守ってあげたくなるような子がよか…」
「へー」
「年とかは?」
「んー、あんまり離れてない方が…それにれいなより下はちょっと…。
あ、あと、外とかでは守ってあげたいけど、家ん中やったらちょっとは甘えたりもしてみたいんで……少しくらい年上の方が」
「そっかそっか」
「そんで、れいながおらんと生きていけんみたいな、なんていうか…要するに、正統派美少女みたいな子がタイプ…」
「正統派って事は、髪の色は?」
「もちろん黒!」
「長さはやっぱりロング?」
「当然ロングでしょ」
「王道ですね〜」
「ですね〜」
「べ、別によかやんっ…」
にやにやと2人に笑われて、なんかちょっと居心地が悪か…。
「それに王道やったら、すぐ見つかりそうやし」
「甘い。甘いね田中ちゃん」
「な…」
「田中ちゃんが来たとこは、東京だよ? 東京に、そんな子が今時いると思う?」
「ハッ……」
そ、そう言われてみれば。
と、東京の女の子と言えば、ギャル(若干思い込みも入ってる)。
コギャルやったりヤマンバギャルやったり、そんなんはもう聞かんけど、ばってん、テレビとかで見る東京の女の子の髪は、ほとんど茶髪。
「あたしとみきたんも茶髪だしさ、オフ会に来てる子みんな、大概染まっちゃってるよ」
「そ、そんな………」
_/ ̄|○ il||li
- 15 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:52
- 最悪たい。人生の終わりたい。
正統派の清純で純情な可愛い女の子を求めて、東京にやって来たのに。
「んな、何もそこまで落ち込まなくても……」
「だって…」
れいなのお願いを守ってくれて、後ろは向かずにバックミラーでれいなの様子を見る美貴ねえ。
「ちょっと亜弥ちゃん、人の親戚凹まさないでよ」
「あー、ごめんごめん。んーでもでも、さ、探したらいるって。
…………あ、そーだ!!! さっき言ってた同い年の子、黒髪ロングだったよ!!!!!」
「マジで!?!?!?!」
「うわっ、立ち直りはやっ!」
そう言う美貴ねえの突っ込みも負けず劣らず早いと。
やっぱりれいな、東京来てよかった。グス。
「まあ、付き合うとかは別にして、とりあえず紹介は必ずしたげるよ」
「亜弥ちゃんありがとう!!」
「その代わり、女同士が結婚出来るようになった時、みきたんの親と兄弟は全然問題ないっていうかむしろ公認なんだけど、
あたしの親説得するの、田中ちゃん手伝ってね?」
「え゛……」
何ですかその、交換条件。
「…紹介、したげないよ?」
「……手伝わせて下さい、お願いします」
「にゃははー! 味方1人ゲットしたよみきたん!」
「それ、脅しだけどね…」
………美貴ねえには悪いけど、れいなは絶対に、いくら可愛い女の子とはいえ、この人とは付き合いたくないです………。
- 16 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:52
-
- 17 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/20(金) 23:53
-
- 18 名前:松竹藤 投稿日:2006/01/20(金) 23:54
- 1レスが長い&改行少なくて読みにくいので流します。
>>2-15「いざ、東京へ。」
更新はゆっくりめになると思いますが、お付き合い下されば嬉しいです。
- 19 名前:日 投稿日:2006/01/21(土) 01:48
- 作者さんのこのシリーズすっごい好きです。
(実はものすごい、こんまこ好きで今でも読み返してますw)
田中さん編も楽しみにしています。っていうか松浦さんが最強過ぎて素敵です。
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/21(土) 14:03
- おもしろいです。
一喜一憂するれいながかわいい。
- 21 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/22(日) 19:37
- キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
ずっとずーっと待ってました
やっぱり最高です!
- 22 名前:名無しβ 投稿日:2006/01/23(月) 00:00
- 松竹藤さんキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・*
また、飼育から目が離せなくなります。
久しぶりの執筆、大変かもしれませんが、頑張って下さい!!
次回更新、楽しみにしてます。
- 23 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:12
- 「れーなも可愛いけどぉ、やっぱりさゆが1番可愛いと思うの。ねぇ、そう思わない?」
「あーそうやね、さゆはばり可愛かよ」
「やっぱり? そうだよね、この可愛さは罪だよね」
これって、会話って言うのかな。
だってそう言うさゆの顔は鏡に向いてるし。
れいなの方なんて、全然見とらんのやけど。
道重さゆみ。れいなとタメの15歳。
亜弥ちゃんからの紹介で知り合ったさゆは、とんでもない変わり者だった。
確かに亜弥ちゃんの言う通り、今時珍しい黒髪ロング。
れいなもこないだまでは黒髪やったけど、高校生にもなったことやしと、茶髪へと染めてしまった。
でもさゆは子供の頃から全然染めてないらしくて、本当に真っ黒で。
くせっ毛だから、とストパーを当てとるらしいけど、それでも理想の女の子であるさゆに、れいなの心はときめいた。
背はれいなよりめちゃくちゃ高くて、かなりへこんだけど。
けど、ときめいたのも最初だけ。
だって、普通、初めて会ったら挨拶とか自己紹介とかやのに、こいつは、このさゆは!
『今日のわたしも可愛いですか?』
――何このナルシスト。
今日とか言われても、初めて会ったばっかやし。
可愛いと聞かれたら可愛いけど、素直に「はい」って言える流れじゃないし。
何回かさゆに会ってた亜弥ちゃんがフォローしてくれんかったら、確実にれいなは切れてた。
自慢じゃないけど、れいなは短気やけん。
話が通じん相手に根気よく話し掛ける程、粘り強くもない。
でもまあ、話が通じんかったのは最初だけで、ナルシストなとこを除けば、普通の可愛い女の子やったから、
れいなはそこで交流を止めんと、月に4回、一週間に1回のペースで、さゆと遊んでる。
遊んでるって言っても、さゆが行きたいとこに一方的に連れ回されとるだけやけど。
- 24 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:12
- 今は、可愛い物探しの買い物が終わって、パフェが豊富な喫茶店の中。
さゆは周りもれいなもまったく気にせず、デカいバッグに入れてた馬鹿デカい鏡をテーブルの上に出して、自分の顔を見てる。
………2人席やから、そんなおっきい鏡置かれると、れいな、テーブルの上に何も置けんのやけど。
運ばれてきたジュースも、れいなはテーブルに置かず、ひたすら手で持っている。
「なぁ、そろそろそれ、仕舞ったら?」
「えぇ〜」
「確かめんでも、さゆはいつでも可愛いんやけん」
「……れーな、やっぱりさゆみの事分かってるの。さてはわたしの事好き?」
「バカ」
「うわひどい〜」
さすがにもう十何回と会ってると、さゆの扱いにも慣れてきた。
初めは、色々からかわれたりするのが嫌で、博多弁を使わんように頑張ってたけど、
さゆはそんなんで人を馬鹿にしたり笑ったりせんって分かってからは、普通に訛りを出す事が出来た。
慣れない標準語は学校ではつらくて、美貴ねえと亜弥ちゃんがいる時くらいしか自分が出せんかったから、嬉しかった。
タメって事もあって、軽口なんかも叩き易い。
それに、女の子の話をしても、さゆは乗ってくれる。
ただ、お互い理想のタイプが違うから完全に話は合わんけど、話を聞いてたら色んな発見や見方が出来て、面白いし。
会うだけやなくて、メールとか電話もしたし、さゆの知り合いで年が近いビアンの人とも仲良くなれて。
れいなってネコ(動物の)みたいとか言われながら、結構可愛がってもらっとる。
- 25 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:13
- 「でもでも、れーな、ほんとはさゆみの事好きでしょ」
「…しつこいっちゃねぇ」
鏡を直してくれたおかげでやっとジュースを置く事が出来た。
氷がいっぱい入っとったせいで、実はかなり手が冷たかったと…。
それでもなんか変なプライドで、全然平気な振りして、さゆの質問に答えを返す。
「好きなんは、友達として」
「何それぇ。つまんないの」
「とか言うさゆも、れいなの事恋愛対象として見とらんくせに」
恋愛対象として見とったら鏡よりれいなを見るけんね、普通。
「なんでだろうね?」
「れいなは見れん原因分かっとぉよ? せっかくときめいたのに、さゆがそれをすべて台無しにしたから」
今日のわたしも可愛いですか?って。
もし仮に上手い事言って彼女彼女の関係になれたとしても、それをいっつも聞かんといけんと思ったら、
せっかく感じたときめきは、一気に消え去ってしまった。
「絶対、これから先さゆと恋愛関係になる人、苦労すると」
「なんでそんな事分かるのぉ。れーなだって付き合った事ないくせに」
「ぐっ……こ、これからすぐ彼女出来るんたい!」
出会い系みたいなサイトで気の合う人とメールもしとるし、さゆに紹介してもらった人ともメールしとるし!
それでもそれ以上発展せんのは、さゆに初めて会った時みたいにときめいたりはせんから。
- 26 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:14
- 「…あーあ、なんかどっかに幸薄そうで人見知りっぽくて気が弱そうな正統派美少女おらんかなぁ?」
「目の前にいるじゃない」
「……さゆは幸薄そうじゃ全然なか。そん顔、自信に満ち溢れとぉやん…」
1番可愛いって自信に。
どっから来るのか分からん自信に。
「まあそんなことはいいじゃん。それより見てコレー。ビアンの友達と写メで撮ったの。
このさゆみ超可愛くない? だから待受けにしちゃった♪」
「んー…?」
「まだれーなに紹介してなかったかな? 亀井絵里っていう子」
「へぇ、あっそう………」
特別興味もなく、チラリと見るだけ。
見るだけ、やったのに。
「んなぁあぁぁああぁあああああ!?!?!?!?!」
「きゃあっ! ちょ、ちょっとれーな、どうしたの!」
- 27 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:14
- な、な、な、なななな何ね、この幸薄そうで人見知りっぽくて気が弱そうな正統派美少女はぁああああ!!!!
さゆの携帯の待受けにされてた、さゆと絵里って子のツーショット。
「し、しかも髪っ、黒髪!! ロング!!」
「あぁ、れーな黒髪ロング好きなんだよね。あややさん言ってた」
「知っとったんやったら、なんで1番にこの子紹介してくれんかったとね!!!」
「えぇ〜? だって、最近知り合ったんだもん…」
「れ、れいなも知り合いになりたい! お近づきになりたい!! 彼女になりたい!!! エッチが――」
「はい、そこまでにしとこうね、ここでは」
「フガフガッ」
ついつい興奮しすぎて、とんでもない事を口走りそうになった時、止めに入ったさゆの手で助かった。
助かったけど、いつまでも離してくれんせいで、今度は窒息死しそうになる。
必死で口を押さえてるさゆの手を叩いたら、やっと気付いてくれて、苦しみから解放された。
「ししし死にかけた!!! った、助かったと……ハァハァ…」
「れーな大丈夫?」
「誰のせいやと……」
「おっきい声出したれーなのせい」
「………ハイ、ゴメンナサイ」
確かに。確かにれいなが悪い。
喫茶店の中で、そんな事を大きな声で口走りそうになったれいなが悪い。
けど、れいなが窒息死しそうになったのは、さゆの手のせいかと…。
- 28 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:15
- とりあえず呼吸を落ち着かせてから、鼻息荒くさゆにさっきの女の子の情報を訊ねる。
写メだけで、一目惚れしたっぽい。
だってまさしく、理想の女の子!
「な、名前、何て言ったっけ?」
「亀井絵里」
かめいえり。亀井絵里。
絵里、エリ、えり……りん。
「えりりんやね、えりりん」
「…えりりんって、なんか昔のアイドルみたいで古臭いの」
軽く軽蔑の眼差しが。
けど、可愛い子には古かろうが新しかろうが、可愛いあだ名が必要なんたい!
「どう呼んで、どうさゆに思われようがそんなんどうでもよかと」
「……ひどいの。せっかく絵里の情報教えてあげようとしてるのに、さゆみがどうでもいいとか」
「あああああっ、せ、世界で一番可愛いさゆ様っ、どうかこの失礼な発言をしたれいなをお許し下さい!
って、てか、さゆがどうでもいいとか言っとらんよ…?」
「さゆみは、エリザベスがいいと思うの」
――って、人の話最後まで聞いとらんー!!!
しかもエリザベスって。エリザベスってなんよ。そっちの方が昔っぽいやん。
「他には、エリーゼとかエリドリアンとかエリックとかかめりんとかキャメイとか」
「そげんバリエーションはいらん」
れいなはえりりんでいい、えりりんで。
- 29 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:16
- 「で、このえりりんは、どこに…?」
「ここだよ? 生まれも育ちも東京の子」
「マジ?!」
「うん」
それやのに、よくもまあこんなにおしとやかな正統派美少女に育ったもんっちゃね。
これぞ、神が、もといえりりんパパママが作った奇跡。ミラクル。ミラコーやね。
「それと…これ、なんか制服っぽいの着とらん? 高校生…やんね?」
セーラー服のさゆに、ブレザーっぽい感じのえりりん。
なんちゃって女子高生…には見えんし。
「学校帰りに待ち合わせして、遊んだから」
「タメ?」
「一個上だよ」
「理想!!!」
年上にはまったくもってこの写メでは見えんのがまた!
それでも2人っきりになったりした時にちょっとお姉さんぶったりとか、分からんとこがあったら勉強教えてもらったりとか!
――嗚呼、そんな年上って素晴らしい。
ギャルゲーでは、幸薄そうな年上って、なかなかお目にかかれんから。
気が強くてやたら豪快で面倒見の良い年上は、美貴ねえだけで十分たい。
- 30 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:17
- 「で、でも、こんな可愛い子が、マジでビアン?」
「ビアンサイトで知り合ったからそうだと思うよ。絵里とはれーなみたいに、女の子の話とかはしないけど」
「え、じゃあ何の話しとーと?」
「ホントに普通の会話かな。年上だけど、なんか親友みたいな感じなの。だから恋愛にはならないけど」
「ふぅん……ウマが合うんやね」
正直ちょっと、羨ましか。
あ…でも、れいなは友達以上になりたいけん、やっぱりよかと。
「で、どうする?」
「へ?」
「絵里」
「それは…どーいう…」
「紹介しようか?ってこと」
恵まれてる。何度も言うけど、れいなはすっごい恵まれてる。
世界中で1人で同性愛に悩んでる皆さん、本当に申し訳ないです。
れいな1人幸せでごめんなさい。
東京へ出て来て半年もせん内に、理想の彼女が出来そうです。
- 31 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:17
- 「是非紹介を!」
「あ、でも、絵里人見知りするからなぁ…」
「え…」
話振っといて喜ばしておいて、なんね、それは…。
「オフ会で会ったなっちさんって人の知り合いらしくて、そのなっちさんって人と絵里と一緒に何人かで会ったんだけど、
最後までずーっとなっちさんの後ろに隠れてたもん、絵里。わたしは絵里と年が近いって事でちょっとは会話出来てメアドも交換したけど、
それ以外の人が話し掛けても絵里泣きそうになるだけだったから、メアドも何も交換してなかったし…」
「激しいんやねぇ、人見知り…」
そんなんやったら、オフ会に付いてこんかったらよかったのにと思ったけど、
自分と同じ想いの人に会いたかったっていう気持ちがあったんかなぁって。
だって、れいなもそうやったけん。
けど、せっかくさゆに紹介してもらって会っても、打ち解けるまでに時間がかかるんじゃ、どうしよう。
別にがっついてその日の内にベッドイン――なんてことは、ほんの少ししか期待しとらんけど。
「じゃあさー、会うまでにメールとかすれば? そしたら、初めて会うって感じとかもそんなにしないだろうし」
「あっ、それいいっちゃね!」
「れいなの写メ撮って、1回絵里にメアド教えてもいいかって聞いてみる」
「お願いします!」
そして出来れば、いい返事を。
カチカチと携帯のボタンを押すさゆの指を、じっと見つめて。
送信した後、携帯をじっと見つめて。
返事を待つ……んやけど。
- 32 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:18
- 「……来んね」
「うん。絵里、結構遅いから」
「返事?」
「うん」
携帯操作に慣れないとか? でも、都会っ子やのに。
それとも返事を考えるのに時間がかかるとか?…想像したら、かなり可愛かった。
やばい。写メ1枚で、れいなおかしい。
声も聴いた事ないのに、こんなにドキドキしとぉ。
心配と期待が五分五分のドキドキに息苦しさを感じながら、待つ事10分。
♪♪♪
軽快な着うたが鳴った。
「絵里だ」
「なななんて?!」
個別設定してたのか、画面も見んと確信しちゃってるさゆ。
待ちきれず前のめりでがっついたれいなに、さゆはにっこり笑いながら見せてくれた。
- 33 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:19
-
【件名:OK!ъ( ゜ー^)】
【本文:絵里の事可愛いって言ってくれて嬉しいよぉ(*´ー`*)
やっぱりさゆより絵里のが可愛いって事だね、なんちゃって(笑)
絵里でよければお願いしますって事で、れいなcにヨロチク〜♪(>▽<)】
- 34 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:20
-
そして、文の1番下には、照れくさそうに笑って顎ピースしてるえりりんの写メが。
- 35 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:20
- 「彼女、ほんとにすぐ出来そうだね、れーな」
「ヘヘヘヘ………ウヘヘヘヘヘ…………」
「…れーな…その顔、可愛くない通り越して、気持ち悪いの…」
その前にえりりんが可愛すぎて、れいなは色んなとこにイッてしまいそうです、神様。
- 36 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:20
- 从*´ ヮ`)
- 37 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/23(月) 00:21
- 从;・ 。.・)
- 38 名前:松竹藤 投稿日:2006/01/23(月) 00:28
- >>23-25「正統派美少女」
レス本当にどうもありがとうございます…グス。
>日さん
過去ログ読み返してびっくりしたんですが、理想と現実って2年以上前の話だったんですよね。
それでも今でも読み返してくださっているということで、嬉しいです。
松浦さんのキャラがまったく違う点は、年月が経ったからということでお願いしますw
>>20さん
最後まで田中さんがかわいいと言ってもらえるかどうかは自信がありませんが、
喜怒哀楽が激しい田中さんで終始いきたいと思います。
>>21さん
キチャッタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*
一体どれほどお待たせしてしまったか分かりませんが…お待たせしました…
まだまだ出だしですが、飽きられず頑張りたいです。
>>名無しβさん
松竹藤でキチャッタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*
ある程度ストックが溜まっているのですが、まだ手元では完結していないので、
スピードは遅いかもしれないですが、頑張ります!
12分後に次回更新(;´Д`)ハァハァ
- 39 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/23(月) 00:30
- 見たいけど超眠い(-_ゞゴシゴシ
- 40 名前:JOJO 投稿日:2006/01/23(月) 00:34
- 見つけた━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
飼育で再開したと風の便りで聞いたので飛んできましたw
なぜか(;´Д`)ハァハァと(・∀・)=ャ=ャが交互にこみ上げてきて凄い面白いです。
黒髪えりりんは奇跡!!
12分後を楽しみにしてますwww
- 41 名前:松竹藤 投稿日:2006/01/23(月) 00:39
- _| ̄|○
今回更新>>23-35ですよ…
- 42 名前:JOJO 投稿日:2006/01/23(月) 00:45
- おっと、俺は意味を取り違えてしまったようだ…orz
- 43 名前:日 投稿日:2006/01/23(月) 17:01
- ものすごいさゆペースが素敵……w 可愛い、さゆはいつでも可愛いよ。
れいなの喜怒哀楽が面白くて大好きです。
続きもまったり楽しみにしています。
- 44 名前:桜桃 投稿日:2006/01/23(月) 21:18
- 理想と現実从*´ ヮ`) verキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!
すいません!鼻血と涎が止まらないんですがどうしたらいいですか!?
ちょっと、れいな!鼻の下伸ばしすぎ!
さゆみんが可愛すぎると思います。彼女にしたいです(爆
続き、楽しみにしてます。
- 45 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:32
- メールのやりとりを始めて、1ヶ月。
毎日5回は必ずしてきた。
最初の頃は、お互いの色んな事(例えば、家族とか趣味とか好きな物とか)聞いたりしとったけど、1週間も経てば落ち着いて、
今度は日常でおこった楽しかった事とか悲しかった事を報告しあうようになった。
メールの中での呼び方も、れいなc(cはchanの略)かられいなになって、れいなは亀井さん(心の中ではえりりんやったけど)から絵里になって。
とにかく、絵里はベッドから転げ落ちる程可愛い。可愛すぎる。
写メのやりとりは最初の1回しかしとらんから、顔の可愛さとかじゃない。
ちょこちょこドジした話とか、しょうもない事でいちいち報告してくれる文章すべてが可愛い。
れいなはあんまり顔文字とか使うのは苦手やったりするけど、絵里は超使ってて。
そういうとこは今っぽいなと思うけど、ギャル文字を多用する程でもなくて。
れいなにとって、程よい感じ。まさしく理想の女の子。
こんなにピッタリな子がすぐ見つかっていいのかって思えるくらい。
- 46 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:32
- ただ、毎日メールしてても分からない事がある。
それは、絵里の声。絵里の私服姿。
メアドは知ってるけど電話番号は知らんし、まだ逢った事がないから。
だから、色々想像する。
絵里の声はか細くて、んでもってちょっと小さくて聞き取り難い感じ。
私服はやっぱり、白とか大人しめの色で、勿論スカートで。
…なんて、そんな想像をしてたら、胸がきゅうっと締め付けられた。
ダメっちゃね……れいな、絵里の事好きすぎる。
あー、逢いたいなぁ。
マジで逢いたかー。
じゃあなんで誘わんかって、人見知りする絵里から誘ってもらった方がいいから。
だって、人見知りする絵里が誘ったって事は、もうれいなに慣れて、絵里の方から逢いたいって思ってくれとるって事やし。
でも焦らず騒がず。
がっついたりして、大人しい絵里に引かれたら、れいなはもうどうしていいか分からんから。
絵里の興味と気持ちがれいなにしっかりと向いて、心の準備が出来るまで、れいなは待つ。
- 47 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:32
-
- 48 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:33
- メールを始めて1ヶ月半。
さゆから絵里画像を送ってもらって、逢えない思いを我慢しているれいな。
といってもさゆはバイトを始めたらしく、絵里を紹介してもらってから忙しくなったから、最新の絵里画像はなくて。
だからといって絵里に最新画像送ってとも言えず、今の絵里をまた想像する。
れいなが紹介してって言った時に送ってくれたメールの時はパッツンパッツンしとった前髪。
それから1ヶ月半経った今、どんな前髪しとるんやろう。
……考えれば考えただけ、絵里に逢いたい。
これまでに何回、【逢わん?】って送りそうになった事か。
けど、それで絵里が無理して逢ったら、人見知りの絵里の事やけんやっぱり緊張するやろうし、心から楽しめんと思って、自分の思いを必死で我慢する。
絵里が…絵里から、言ってくれたら。
れいなはたとえ何があったって、絶対に絵里に逢うのに。
こんだけメールしてるのに、逢おうって1つも送られて来んって事は、れいなは所詮メル友止まりなんやろうか?
今日も今日とて普通の日常メール。
10回くらい続いた後、特にこれ以上話を続けられそうになかったから、そのままにしてたら絵里からまたメールが着た。
「……ん? なんやろ」
れいなにとっては話続けられんと思ったけど、絵里は返事が欲しかったのかな。
やけん、返事催促メールか何かと思って受信メールを開いたら、そこには。
【話変わって、いきなりなんだけどれいな、今週の日曜日空いてるかな…?】
- 49 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:33
- 「え…」
お、落ち着け。落ち着けれいな。
まだ喜んじゃいけん。
ちゃ、ちゃ、ちゃんと、確認せんと。
【それって初デートの誘い?(笑)】
あくまで冗談っぽく。
ここでマジでがっついたりして引かれたら、今まで我慢してきたのがすべて水の泡になってしまうけん。
絵里からの返事が怖い。
心臓がありえんくらいの速さで、すごい音立てて鳴ってる。
…れいな、マジで絵里が好き。
メールの文章1つで落ち着けんくらい、マジで。
送って2分くらいして、返ってきたメール。
【そうだね、初デートだね(笑)】
- 50 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:34
- 「で、デート……初デート………!」
デートじゃなくてただ遊びに行くだけだよぅ、とかって返ってきたらどうしようとか思ったりしたんやけど。
絵里は、デートって送ってくれた。
…ただ、れいなのメールに合わせただけかもしれんけど。
でもそれは違うって、その後、れいなが返す前に続けて送られてきたメールを見て気付いた。
【ねえ、早く……れいなに逢いたい】
顔文字も絵文字も何も使われてない、シンプルな文章。
それが絵里の飾らん本気の気持ちなんやって思うと、もう、嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。
- 51 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:34
- ◇
- 52 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:35
- 3日後の日曜日。
まだ東京に来て日が浅いれいなでも知ってるとこで待ち合わせって事で、亜弥ちゃんに教えてもらったオシャレなカフェ。
駅前にすぐあるとこで、言ったら絵里も知ってるって事やったんで、そこに13時に待ち合わせ。
今は、12時30分。
そう、早く来過ぎやったりする。
「……」
コーヒーなんて飲めないれいなの前には、オレンジジュース。
運ばれて来てから大分経ってるんやけど、まったく減ってないオレンジジュース。
飲む気になんか、とてもじゃないけどなれんくて。
- 53 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:35
- さっきからずっと、両膝の上に両手を置いて縮こまって。
お客さんが入ってきた時にドアの音とか、店員さんが「いらっしゃいませー」って言う度、反応する。
絵里かな。絵里かも。絵里やったらどうしようって。
お互いの顔は最初に送った写メの画像でしか知らんけど、
絵里もれいなもいちいちどんな格好してるとか言わんでも分かるって事で、伝えんかった。
好きな人の顔なんやけん、当たり前たい。
…絵里も、そうなのかな。
さゆに送ってもらったれいなの顔の画像を死ぬ程見てるから、見たらすぐに分かるって言ってくれたんかな。
やっぱり、相思相愛?
「へへへ…」
――って、いけん!
まだそう決めるのは早かね。
それににやけてたら、変な人に思われるけん。
このタイミングで絵里が来て、にやけて気持ち悪いれいな見て、何も言わんと帰っちゃうかもしれんし。
ちっちゃい鏡をバッグの中から出して、顔を引き締め直す。
よし今日も可愛い、なんて事はれいなは絶対に言わない。
- 54 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:36
- それから時間が過ぎて、ただいま13時15分。
……そう、過ぎてるんですけど。
「…えーと?」
待ち合わせ、確かに13時やんね。れいな、間違っとらんよね?
けど念の為、場所と時間を打ったメールを探し出して確かめてみる。
…うん。13時。昼の1時。
なのになんで絵里は来んのやろ。
しかも遅れるんやったら遅れるって、連絡くらいしてくれればいいのに。
テーブルの上に置いてた携帯を開いて、絵里にメールを打つ。
電話番号はまだ知らんかったから、かける事は出来んくて。
送って更に15分。
絵里が来る事もなければ、メールが返って来る事もなかった。
- 55 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:36
- ……まさかれいな、遊ばれた?
誘われてほいほいここに来たれいなを見て、絵里がどっかで友達と笑ってたりとか?
――そぎゃん事、絵里はしない。
それは、れいなの中での想像なだけやったけど。
それでも絵里は絶対にせんって、すぐに否定出来た。
けどじゃあ、なんで?
もう1回携帯を開いて、今度は電話をかける。
相手はさゆ。
- 56 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:37
- 『もしもーし』
「あ、さゆ…」
『そうなの。今日も可愛いさゆみなの♪』
いつものテンションでそう言うさゆに、いつものテンションでれいなは返せなくて。
すかさずそんなれいなに気付いたさゆが、ちょっと声のトーンを落としてれいなに聞いてきた。
『どしたの? 絵里と逢ってなんかあったの?』
「えっ。な、なんで絵里と逢う事知っとるん?」
『だって今日、わたしバイト休みだから久しぶりに絵里と遊ぼうと思って昨日絵里に電話したら、今日れーなと逢うからダメだって言われたもん』
「え…」
『どうしようどうしようどうしようってすっごいうるさかったの。聞いたら、自分から誘ったらしいのに。
まだ人見知りしてるんだったら誘わなきゃよかったのにって言ったら、
『人見知りとかじゃなくって、相手がれいなだから緊張するの!』って今度は怒られたの…』
「じゃあ…」
今日がれいなと逢う日って事、忘れてるわけじゃなくて。
しかも、相手がれいなだから緊張するって事は、脈アリって事で。
……けど。
- 57 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:37
- 「絵里………13時に約束してんのに、まだ来てないんっちゃけど…」
『あー、絵里遅刻魔だから』
「そ、そうなん?」
『それに、なんか前髪が揃っててれーなに笑われたら嫌だから、れーなに逢う前に美容院に行くって言ってた』
「でも、それで遅れるとしたら、連絡くらい…」
『携帯忘れたとかで連絡出来ないんじゃない? 絵里、慌てたりしたらよく忘れ物するらしいし。
それに前わたしと遊んだ時なんか、2時間遅れて来たんだよ? で、携帯忘れて連絡出来なかったとかって言って。
しかも2時間はまだいい方で、最高7時間遅れた事あるって。
っていうか2時間も辛抱強く待ってあげたさゆみって、なんて可愛くて優し…』
「分かった。じゃあもうちょっと待ってみる。あんがと」
『え、まだ続きが――』
ごめんさゆ、と思いながら途中で電話を切った。
絵里が来ん原因は大体分かったし、7時間でも24時間でもとことん待つ気になれたし。
遅刻魔ってとこは短気なれいなにとってはマイナスポイントやったけど、短気を直すにはちょうどいいと思い直して、
マイナスポイントをプラスポイントに変える。
- 58 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:37
- それからまた30分後。
じっとしてた足は、さっきからイライラと動いてる。
貧乏揺すりってやつ。
……やばい。1時間でこんなんじゃ、24時間待てるかな。
緊張してた顔が段々と引き攣ってきた矢先。
ハァハァと息を切らして入ってきたって言うより、店に突撃してきた女の子。
茶色く染まった髪はボッサボサ。
多分走ってきたからやと思うけど。
それにその子も気付いたのか、一旦トイレに入ってしばらくして息と髪を整えて、また戻って来た。
「……」
お1人ですか?って言う店員さんに「待ち合わせなんです」って言って、キョロキョロと辺りを見渡し始める。
カジュアルなパンツスタイル。
似合ってるけど、残念ながられいなのタイプじゃない。
れいなのタイプは、だって絵里やし。
でもその絵里はまだ姿が見えんので、暇つぶしにまだ人捜しをしてるその子をじっと見てたら、目が合ってしまった。
- 59 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:38
- 「あっ」
瞬間、パァッと笑顔になって。
嬉しそうに、なんでかこっちにやって来た。
後ろを振り向いてみるけど、後ろには誰もおらんくて。
その子が向かってる方向には、れいなだけ。
誰…?
れいな、こんな子知らんのやけど。
それでもその子は、なんでだかれいなを知っていて。
とびきり嬉しそうに、
「れいな!」
そう、れいなの名前を呼んだ。
- 60 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:39
- 返事はしなかった。
しなかったけど、睨んだ。
なんで名前知っとるん、って。
言わんかったけど、顔にモロ出して。
したら、その子が恐る恐る聞いてきた。
「れ、れいな…だよね?」
「…」
「田中れいな…ちゃん、だよね…」
「……なんで」
「えっ?」
「なんで人の名前、知っとーと。れいな、あんたの事知らんのに。
っていうかれいな、人待っとるけん。どこの誰かも分からんあんたの相手してる暇なんかないと」
「ぅえええええ? わ、分かんない?」
「はぁ?」
「絵里、誰か分かんない? あ、髪切ったからかな…そ、それとも、1時間遅れた事に怒って切れてるとかっ?
違うのれいな聞いてっ、携帯家に忘れちゃって取りに帰りたかったんだけど取りに帰ったら美容院の予約に間に合わないと思ったから…。
で、美容院に行ったんだけど、『前髪だけじゃなくて全体も切って思い切ってショートにしてみたら?』って美容師さんに薦められてっ、
明るくなるとか色々言われて明るくなって人見知りが直ったらいいなぁって思ったからショートにして色々ヘアアレンジしてもらってたら遅れちゃったの!!!」
「…………………え?」
「ごめん…ほんっとに、ごめんね…ごめんなさい。せっかく…そのぉ………は、初デートなのに」
- 61 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:39
- ――――嘘だ。
これは、何かの間違いでは。
だってれいなの中の絵里は、黒髪ロングで幸薄くてスカートで色白くて大人しくて。
正統派美少女が。
それなのに。それなのに。
今、目の前におるのって。
「え…絵里?」
「あ…うん!」
この、茶髪ショートで幸なんか全然薄そうじゃなくて、っていうかバカっぽそうで色黒くて落ち着きがない、この子が。
――――これじゃ、正統派美少女じゃなくて、ただの可愛いギャルやん。
- 62 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:39
-
れいなの理想のタイプが。
れいなの想像というか、妄想が。
音を立ててすべて崩れてった瞬間やった。
- 63 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:40
- ノノ*^ー^)
- 64 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/24(火) 16:40
- リd*^ー^)
- 65 名前:松竹藤 投稿日:2006/01/24(火) 16:47
- >>45-62「Who are you!」
亀井さんのメールですが、色じれ台詞の名前差し替えでお願いします。
>>39さん
超眠い中レスありがとう(*´∀`)
>>JOJOさん
風の便りで飛んできて下さりどうもですw
黒髪えりりんはちゃいこーでつよね!(;´Д`)ハァハァ
書き方が悪かった自分も悪かったです、申し訳orz
>>日さん
从*・ 。.・)<あなたよくさゆみの事分かってるの!
しばらく田中さんの哀が続きます…
>>桜桃さん
つ□<ティッシュどうぞ
道重さんを彼女にすると大変だと田中さんも言っておられるので、考え直された方がよいと思われますw
- 66 名前:& ◆/p9zsLJK2M 投稿日:2006/01/24(火) 23:13
- なんと!こうなりますか・・・
なんとも言えないえりりんの流されっぷりが・・・素敵です(*´Д`*)
えりりんはどんなえりりんでも可愛いんだ。良く見やがれ〜!(発狂
と、れいなにお伝え下さい。
- 67 名前:桜桃 投稿日:2006/01/25(水) 00:13
- つ□<どうも。 チーン!(違
ほ、ほら良く言うじゃないですか。た、大変な子ほど可愛いって…
私もれいなと同じで女の子は黒髪ロングが好きです。
えりりんには天然街道を突っ走ってもらいたいです(笑
可愛いなぁ、もう。
- 68 名前:日 投稿日:2006/01/25(水) 00:14
- はぅ……さゆ可愛い(*´∀`)ポワワ
違う、違う絵里はいつでも可愛いですよ?w
やっぱり田中さん視点よかですたい。
(自分も黒髪の亀井さん好きです、さくらで着物着てる頃……)
- 69 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/25(水) 23:40
- うひゃ〜おっもしろいスレめっけ!
- 70 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/25(水) 23:43
- うわっ!ごめんなさい(汗 間違ってあげちゃいました(滝汗
- 71 名前:JOJO 投稿日:2006/01/26(木) 00:13
- 展開早いですねぇw
えりりんいつでも可愛いよえりりん…
れいながこれからどんなことするのか凄い気になりますw
変なことをしないのを祈るばかり…
- 72 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:30
- 「ウヘヘ…な、なんか緊張しちゃうね、やっぱ。メールと逢うのとじゃなんか…ね、ウヘヘ…」
「………」
ウヘヘ、って。
ウフフ、とかってイメージやったのに。
多分緊張とか照れて顔赤くなったりとかしとるんやろうけど、色が黒くてよく分からん。
………こんなはずじゃ。
マジで、こんなはずじゃ……。
「れいな…?」
呼ぶ声は、可愛いのに。
甘くて、ちょっと細くて、女の子らしくて。
「あ…れ、れいなも緊張してるの? さゆかられいなは人見知りしないって聞いてたけど…」
「…え? あ、う、うん…ちょっと…」
「じゃあ、絵里と一緒だね、へへ…。あ、でも絵里は救いようのないくらいもっと人見知りしちゃうけど」
へらって笑ったら、八重歯が見えた。
可愛い…確かに顔は可愛い……けど。
- 73 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:31
- 「髪…勿体ない…」
「ふぇ? あ、あー…短くしすぎちゃったかな」
そう言って首の後ろを撫でつける。
長かったはずの髪は、首より下からバッサリ切られてて。
しかも、黒かったはずの髪が、茶色くなってて。
「変……っていうか、似合ってない…かな?」
「…いや」
そげんことはない、けど。
けど。けど。けど。
れいなの理想のタイプじゃなくなってしまった。
ただ、それだけ。
- 74 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:31
- 「美容師さんが言ってくれたおかげで、なんかね、思い切ってショートにして前より明るくなれた気がするんだぁ。
髪の色変えたって事もあるんだけど、今だって、緊張してるけどれいなとちゃんと話せてるし。まぁ、切って色変えたの、さっきなんだけどね、ウヘヘ」
クソ美容師め、余計な事を!
れいながそう思ってるって知ったら、絵里、どうするんやろう…。
言わんけど。言えんけど。
「れいなも、髪、染めたんだね」
「…あぁ、うん」
れいなの髪を眩しそうに目を細めて見る絵里。
元々ちょっとつり目で、それ程目がおっきくない絵里。
「けど何で染めたって知っとぉと?」
「え? だって、さゆから写メ送られて来た時、黒かったじゃん」
「あ、そっか」
そういえば、そうだった。
れいなも写メ撮って送ったんやった。
あの頃から確かに髪の色は変えたけど、髪の長さはれいなは変えてない。
- 75 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:31
- 「っていうか、知らなかったんだけど、れいなは東京出身じゃなかったんだね」
「………」
「あ、別に変だって言ってるんじゃないよ?」
「じゃあなんね」
「やー…そのぉ……」
うんとね、えっとね、って。
言い淀むそれは、気が弱そうで守ってあげたくなる感じやったけど。
絵里、クネクネしすぎ。
モジモジやったら可愛いのに、クネクネって。
…なんか、想像とまったく違うんですけど。
勝手に想像したれいなが悪いんかなぁ? ぐすん。
けど、写メだけやったら、マジで理想やったと…。
「…別に無理してフォローなんてせんでもよかよ」
「む、無理なんかしてないよぅ! ただ、ちょっと…」
「ちょっと?」
「言うのが、恥ずかしいかなって…」
「…」
上目遣いで見てくれるんはいいけど、何かが足りない。
そう、顔の横からサラサラと流れる、黒髪。
それが邪魔で耳にかける仕草。
どうしたらいいか分からん時、指で髪をくるくる巻く癖。
あぁ…なんで、なんで髪切ったとね、絵里…。
- 76 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:32
- 「あ、あのね、れいな」
「…うん?」
やっと言う決心がついたのか、テーブルの上に乗せた拳に力を込めて。
唇を舐めるのは、絵里の癖なのか、そうじゃないのか。
絵里の癖は長い髪を指でくるくる巻いたりする事を想像していたれいなにとって、もうそれはどうでもいい。
っていうか今から絵里が言う事すら、どうでもいいとか思ってる。
期待が大きかった分、落胆はその倍以上大きくて。
「えーと、えっとね…うんとね……その方言…」
「博多弁」
「あ、博多弁なのかぁ。…博多弁、変じゃないよ」
「…あー、ありがと」
「可愛い、よ」
「…………」
最後のその言葉言うだけで、あんなに言い淀んでたと?
色が黒くても赤いのが分かるくらい、照れて。
「……ありがと」
ほんとにその言葉は凄く嬉しかったけど。
……絵里、ごめん。
れいなは絵里に、「髪切っても似合ってる」って言えない………。
- 77 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:32
-
- 78 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:33
- 途中で絵里と別れて、れいなはやっと…と言っても、居候先の家やけど、家に帰ってくる。
ただいまって言ったら出迎えてくれたのは、亜弥ちゃんのみ。
「あれ、美貴ねえは?」
「たんはフットサルの練習。もう帰って来ると思うけど。っていうか、ねねっ、どうだった?」
「え…な、なんが…」
「しらばっくれちゃってぇ〜。今日デートだったんでしょ、なんだっけ…絵美ちゃん?」
「違う、絵里」
「そうそう、絵里ちゃん」
自分と美貴ねえ以外にあまり興味のない亜弥ちゃんは、人の名前を覚えるのが苦手やったりする。
これで、何回訂正した事か。
それなのに、今日、れいながデートって事はしっかりと覚えてて。
忘れてくれてたらよかったのに……あぁ、何て答えよう。
- 79 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:33
- 「可愛かった?」
「…世間一般で見たら、可愛いと思う…」
「? あ、じゃあ田中ちゃんから見たら、超可愛いとか?」
「超可愛い………はず………やったのに」
「んー?」
「絵里のアホー!!! なんで髪短くしたとー!!!!!!」
つい、感情が高ぶって、亜弥ちゃんを絵里に見立てて怒鳴ってしまった。
きょとんとする亜弥ちゃんを置いて、れいなはあてがわれた部屋へと逃げた。
バカ絵里。アホ絵里。
れいなの一目惚れを返せ、くそう。
- 80 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:34
-
「ただいまー…っていうか、あれ、なんなの」
「あ、たんお帰り。それが、よく分かんない」
「亜弥ちゃん変な事言ったんじゃない?」
「言ってないよぉ。ただ由里ちゃんとの初デートの感想聞いただけだもん」
「ふーん………っていうか、絵里じゃない?」
「――あ」
- 81 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:34
-
- 82 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:35
- 今日、すっごい楽しかった!だから、その……今度また逢えるかなぁ?】
お風呂に入っている間に着たメール。
見てもう大分経つけど、まだ携帯を手の中で転がしたまま、れいなは返事が打てないでいる。
…どうしよう。逢って、どうしたらいいんやろ。
友達として付き合うんやったら、別に問題なんかない。
でも絵里は、最初から友達として逢ったんやなくて、恋心に下心ありでれいなは逢ってたから、今更普通に友達とか、れいなには無理。
けど絵里はこうしてれいなにまた逢いたいって言ってて。
…それって、どういう意味やろ。
ただ単に、友達としてなんかな。それとも……。
「あ〜もぉっ!」
絵里が髪長くて黒いままやったら、このメール死ぬ程嬉しかったのに。
なんで。なんで髪切ったん。
顔はタイプやのに、髪型が、性格が、理想と全然違ってて。
それでも性格なんかは、長い黒髪であれば全然よかったのに。
れいなの理想のタイプの最重要ポイントであるロングの黒髪が、なくなってしまった。
うじうじ悩んでたら、うるさい携帯の音が鳴って着信を知らされた。
絵里やったらどうしよ、って一瞬思ったけど、名前は絵里じゃなくて。
- 83 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:35
- 「…あー、さゆ?」
『うん。今大丈夫?』
「うん、だいじょーぶ」
そんなに高くないさゆの声は、れいなを少し安心させてくれた。
生で聞いた絵里の声はすっごい女の子らしくて可愛かったけど、髪を切った事によって落胆させられたから。
『今日あれからどうだったのかな〜って。絵里来た?』
「来た…」
『よかったよかった。でもなんか声元気なくない?』
「…来たけど、絵里、髪切って染めてた…」
『髪切って染めて、変になってたの?』
「変やなくて…そうじゃなくて…」
似合っていると思う。
可愛いと思う。
でも期待が大きすぎて。
髪切って染める前の絵里が、理想通りすぎて。
目の前に現れた現実に、ショックを受けた。
- 84 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:36
- 『れーな?』
「うん…」
『変じゃないなら、いいじゃん。絵里いい子だったでしょ?』
「うん…」
色、黒かったけど。
スカートじゃなかったけど。
変な笑い方やったけど。
クネクネしとったけど。
絵里は、悪い子じゃない。
悪い子は、れいなだ。
- 85 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:36
- 「なんか、さっき絵里から、また逢えるかなぁってメール着てて」
『うんうん』
「なーさゆぅ…どうしたらいいと思う?」
『え?』
「なんかれいな…もぉ分からんと」
『絵里の事好きなんでしょ?』
「それは…」
髪を切って染める前の絵里の話。
今はもう、正直………。
勝手かなぁ…勝手やねぇ…。
分かってるけど、気持ちは元に戻らんっていうか。
なんか色々妄想してたんが、バカみたいで。
理想のタイプやからって勝手に妄想して、髪切って染めたからって勝手にガッカリして好きじゃなくなって、
悪いのはれいなって分かってるけど。分かってるけど。
『…んー、なんかよく分かんないけど、友達として逢うのか、恋人になってもらいたくて逢うのか、それはちゃんと絵里に言った方がいいと思う。
友達として逢うのもイヤでも、もう1回きっちり逢って直接言った方がいいよ』
「………うん」
『けどね、れーな』
「…?」
『全部が理想通りの人なんて、いないよ?』
「…………」
そんなん、さゆに言われたくなか……。
白馬に乗った王子様なんか、それこそおらんのに……。
- 86 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:37
- 電話を切った後、メール作成画面を開く。
遅くなったけど、絵里にメールを返す為。
返事はもう、決まってた。
【今日はありがと。いいよ、次いつにする?】
続きはまた逢った時、言おう。
絵里にメールを送る度ドキドキしてた心。
絵里から返事が返ってくるまでワクワクハラハラしてた心。
もう、メールを送っても返ってきても、何も反応はしなかった。
- 87 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:37
- 川 V)y-~~~
- 88 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/01/29(日) 23:38
- 从*^ 。 ‘)
- 89 名前:松竹藤 投稿日:2006/01/29(日) 23:46
- >>72-86「初デート、そして次の約束」
>>& ◆/p9zsLJK2Mさん
えりりん推しですか?(;´Д`)ハァハァ
田中さんにはきちんと伝えますw
>>桜桃さん
黒髪ロングもいいですけど、茶髪ショートもいいですよ?
リアルの不思議天然系のキャラでいきたいですが、どちらかというと、ここでは加入当初のような感じになりそうです…>えりりん
>>日さん
从*・ 。.・)<そうなの、さゆみは絵里よりかわ――
リd*`ー´)<……
さくらで着物…さくら満開ですね! パッツン前髪萌えw
>>69-70さん
おもろいスレと言って下さりどうもです。
ageはお気になさらず!
>>JOJOさん
書きたかったのは2人が出逢ってからだったので、そういえば展開早いですね…
田中さんは…こんな感じになってしまいました…
- 90 名前:松竹藤 投稿日:2006/01/29(日) 23:54
- ちょ、ちょっと待って…今すごく大きな間違いに気付きました_| ̄|○
田中さんが亀井さんに写メで送った時、既に髪の色は茶色だったという事実。
えー、えー……文章訂正します。すみません…
- 91 名前:松竹藤 投稿日:2006/01/29(日) 23:55
- >>23の11行目
確かに亜弥ちゃんの言う通り、今時珍しい黒髪ロング。
れいなもこないだまでは黒髪やったけど、高校生にもなったことやしと、茶髪へと染めてしまった。
でもさゆは子供の頃から全然染めてないらしくて、本当に真っ黒で。
を、以下訂正↓
確かに亜弥ちゃんの言う通り、今時珍しい黒髪ロング。
れいなも黒髪は黒髪やけど、小学校の頃は茶髪で、中学の時は校則が厳しかったから黒にしたけど、
この度高校生にもなったことやしと、もうすぐしたらまた茶色くする予定。
- 92 名前:松竹藤 投稿日:2006/01/29(日) 23:57
- リd;´ー`)<>>90-91ごめんなちゃい…
- 93 名前:日 投稿日:2006/01/30(月) 20:12
- 更新お疲れ様です。从*・ 。.・)<作者様どんまいなの
田中ちゃんの気持ちは痛いほどにわかるけど……切ないですね。
続きもまったりお待ちしています。
- 94 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/04(土) 00:05
- ドキドキしながら読みました
心理描写が巧みでひきこまれます
- 95 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:03
- 「れいなさぁ、最近えりりんからメール見てもにやけなくなったね」
夜ご飯中、でっかいメール着信音が鳴って携帯を開いたれいなを見ていた美貴ねえ。
音楽は個別設定してるから、相手が誰か美貴ねえも分かってて。
最初の頃、れいながえりりんえりりん言ってたから、美貴ねえも移ってしまったらしい。
…相変わらず亜弥ちゃんは、まだ絵里の名前を覚えとらんみたいやけど。
ちなみに食事は当番制。
今日は美貴ねえの番。
美貴ねえとれいなの時は必ず肉料理なもんで、亜弥ちゃんは美貴ねえの横でうんざりしてる。
「なに、早くも倦怠期とか?」
「違う。それにまだ付き合ってもなか」
「そうなの?」
「まだ1回しか逢ってないし」
「へー」
意外と奥手だね、って言う美貴ねえ。
…美貴ねえはさゆに送ってもらった画像しか、知らんけん。
変わってしまった絵里を見て気持ちが冷めてしまったって、まだ誰にも言えてない。
- 96 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:03
- 作った人が洗い物をするっていう、この家のルール。
それでも亜弥ちゃんが作った時も、美貴ねえがしてるみたいやけど。
今日はどのみち美貴ねえが作ったから、全員食べ終わった今、美貴ねえはキッチンでカチャカチャ鳴らしながら洗ってる。
ピンクのラブソファには、亜弥ちゃん。
その横は美貴ねえの指定席なんで座らず、じゅうたんの上に座って、亜弥ちゃんに聞きたかった事を聞いてみる事にした。
「ねー亜弥ちゃん」
「ん?」
「あのさ……美貴ねえに一目惚れしたって、言ってたやん?」
「うん。田中ちゃんも真里ちゃんに一目惚れしたんでしょ?」
「やけん、絵里……まぁ、それは置いといて」
「はいはい、置いといて、何?」
わざわざジェスチャー付きで、それを横に置いて。
亜弥ちゃんは前のめりで聞いてきた。
- 97 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:04
- 「あの…一目惚れって……最初に惚れちゃった分、後でガッカリした事とかなかったと?」
「ガッカリ?」
「そ、そう」
「ないなぁ……しょうがないなぁとか思うとこはあるけど。それも全部、みきたんは可愛いから」
「で、でもでも、亜弥ちゃん、一目惚れして、すぐに美貴ねえにアピったりはしなかったとやろ?
でもその間に色々考えたり想像とかしたりするやんっ」
「うん、したした。にゃはは、一緒だねぇ」
握手握手って求められて、はい握手…って、じゃなくて!
「じゃあなんで、ガッカリとかせんかったと?! 声は確かに可愛いかもしれんけど、実は超言葉遣い悪くてガサツで、
細く見えて実は腹ぽっこりしてたりとか、そんなん話したりして分かったのに、なんで!!!!―――って、ハッ」
「あ、たんごくろーさまぁ」
- 98 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:05
- は、背後にものすごい殺気が…!
や、やばい。振り向いたら殺されると。
でも振り向かんでも、殺されてしまうと。
「あ、洗い物早かったとね…あはは」
「ああそうだね」
「はは、ははは…」
あぁ! ど、どげんしたらよかとね!!
とりあえず訳を。訳を話したら美貴ねえも!
「あ、あの、美貴ねえ、これにはワケがあっ――――」
「ワケもクソもあるかれいなぁあああ!!!!!」
「ぎゃー!!!」
蹴られた! 後ろから飛び蹴りされた!!!
前がラブソファじゃなかったから、確実にれいな死んでたと!!!!
こんな親戚、ありえれいな!!!
- 99 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:05
- 「こらみきたん。田中ちゃんになんて事すんの!」
「ぐ…」
「あ、亜弥ちゃん…グスッ…」
悪魔しかおらんと思ってたこの部屋に、天使がおった…。
ごめん亜弥ちゃん、恋愛対象外とか言って、ホントにごめん。
「田中ちゃんがいなくなったら、結婚の説得の時に仲間がいなくなるじゃん!」
「――お前は大悪魔じゃあ!!!!」
恋愛対象外とか言って、ホントにごめんとか思ったの、取り消し!!! あぁ! 忘れたい!!!
「嘘だって、うそうそ。そんな、泣かないでよ」
「あー、亜弥ちゃんがいたいけな高校生を泣かせたー。いーけないんだいけないんだぁ、おじさんとおばさんに言ってやろぉ」
「いやいやいやいや」
……グス。
最初にいたいけな高校生を飛び蹴りしたのは、どこのどいつとね…。
こっちがパパとママに言ってやると……グスッ。
- 100 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:06
- 「ごめんね、田中ちゃん。ほんと冗談だから」
「……もぅいいです」
実際亜弥ちゃんには、身体的には影響を及ぼされとらんし。
問題は、美貴ねえたい。
「…正直、飛び蹴りはやりすぎたと思ってる。往復ビンタくらいにしとけばよかった」
「や、往復ビンタも困るんっちゃけど…」
「でもそれはれいなが言うからでしょーが」
「あ、あれはぁ…」
ハッ、そうたいそうたい。
亜弥ちゃんからの返答まだ聞いてなかったと!
「ああ亜弥ちゃんっ、さっきの話やけど!」
「え? なんだっけ?」
「……や……」
人の名前だけやなくて、人が一生懸命言った話まで忘れるんやね、亜弥ちゃんは…。
「やけん、ガッカリしたかどうかって」
「あー、そうだったそうだった」
「…何の話?」
「や、あの…」
美貴ねえには聞かれたくなかったから、洗い物してる時に聞いたのに。
だって、美貴ねえに言ったら絶対言われる事、分かっとぉもん。
なのに亜弥ちゃんは言い淀んでるれいなに気付かず、美貴ねえにベラベラと。
- 101 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:07
- 「さてはれいな、実際逢ってえりりんにガッカリしたな?」
「う……」
「あんなに『可愛い可愛い好きだ好きだ』って言っといてさぁ」
「ぐっ…」
にやにや笑ってそう言う美貴ねえ。
くそ…ホント意地悪や、美貴ねえは。
「でもなんでなのさ。実は送った画像は別人だったとか?」
「…まあ、ある意味」
「えっ、マジで?」
「えー。でもプリさゆちゃんの友達なんだから、それはありえなくない?」
ちなみに亜弥ちゃんが言った「プリさゆちゃん」とは、さゆの事。
パソコンのHNが『プリンセス☆さーゆ』らしくて、略してプリさゆ。すっごいさゆらしいHN。
絵里の名前は未だに覚えんくせに、美貴ねえとネット上の友達なんかは覚えてるらしい、よく分からん亜弥ちゃん。
- 102 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:07
- 「っていうか別人じゃないなら、ある意味って何?」
「……」
「――あ。分かった」
「ん? 何亜弥ちゃん」
「髪切ったのがどうとか?」
「…っ」
覚えてたか…忘れてくれとった方がよかったのに…。
「え、じゃあ何。髪切ったからガッカリしたって事?」
「なんか超怒ってたもんね、田中ちゃん」
「だって…だって……黒髪ロングは、れいなの…れいなの超理想のタイプやったのに…」
ショートになってて。茶髪になってて。
れいなの理想のタイプじゃなくなってた、絵里。
- 103 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:08
- 「ふーん…それで好きじゃなくなったってわけか」
「……」
「あんなにメール見て一喜一憂してたのに、れいなはえりりんの中身じゃなくて、外見だけが好きだったんだ」
「え…」
「理想の人捜すのは勝手だけど、でも、外見はいつかは変わるよ?」
「な、なん…言ってる意味が分からん…」
「じゃあ、れいなが子供って事だよ」
「こ、子供じゃなかっ!」
「そうやってムキになるとことか、正に子供」
「っ! 美貴ねえのアホ! どっかいけぇ!!」
「あ、田中ちゃーん?」
「いいよ、ほっときなよ。…っていうか人にどっかいけとか言っといて、れいながどっか行ったね…」
「にゃはは、そだね」
- 104 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:08
-
- 105 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:08
- ムカつく! ムカつく! ムカつく!
れいなは子供なんかじゃなか! もう高校一年で、15なんやけん!
れいなの気持ち分かってくれん美貴ねえの方が子供やん!
「くそ…っ」
黒髪ロングにこだわって、何が悪いと。
絵里の事好きじゃなくなって、何が悪いと。
れいなは、子供なんかじゃ………
………子供、なんかなぁ。
- 106 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:09
- 从+` ロ´)
- 107 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/09(木) 00:09
- 从;´ ヮ`)
- 108 名前:松竹藤 投稿日:2006/02/09(木) 00:12
- >>95-105「子供じゃないけど子供なのかな」
>>日さん
さゆみありがとうさゆみ・゚・(ノД`)・゚・
ホントにまったり待って頂けると助かります…ゲームに浮気中なものでw
>>94さん
ドキドキして頂いて嬉しいです。
心理は段々とめちゃくちゃになっていきますが、見捨てず読んでもらえると頑張れます。
- 109 名前:日 投稿日:2006/02/11(土) 20:51
- この3人の掛け合いが楽しい。
松浦さんの最強具合がとっても素敵ですw
- 110 名前:konkon 投稿日:2006/02/13(月) 22:42
- ミキティの調子が絶好調w
れいにゃのがんばりが何かポワワッときていい感じっすね!
これからも楽しみにしてます♪
- 111 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/14(火) 16:35
- がんばれいな!
- 112 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:14
- ユーウツだ……ユーウツって漢字、どう書くんやったっけ?
なんかもうそうやって別の事考えんと、どうしていいか分からん。
今れいなは、前に絵里と待ち合わせをしたカフェにおる。
今日もここで待ち合わせ。
相手は――――
- 113 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:14
- 「ご、ごめんれいな!!!」
「あー…」
前と同じように髪を乱して走ってきた、絵里。
…やっぱり髪、短い。
…そりゃそうたい、数週間で伸びたらバケモノやもんね…。
「ごめんねごめんね」
「てか、なんで謝ると? 絵里今日は遅れとらんよ、今日は」
今日は、ってとこを力強く繰り返し言うれいなは、やっぱり嫌な奴。
でも絵里はそんなれいなの嫌味を気にしてないのか気付いてないのか、笑顔で。
「あ、ホントだ! なんだよかったぁ、遅刻かと思っちゃった。うへへ」
「……」
………絵里って、バカ?
- 114 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:15
- 「なんかやっぱ、緊張するね」
注文を聞いて持って来てくれたウェイトレスさんが行った後、絵里が呟くように言った。
「そう?」
「れいなはしない?」
「うん」
「そっかぁー……」
「なん?」
「ん? んーん、なんでもない」
一瞬寂しそうな顔したから、なんやろと思って聞いたら、あっさりと首を振られて何事もなかった顔された。
そこで深く追求してもよかったんやけど、深く追求する程今の絵里に興味がなかったれいな。
やけんそのまま、突っ込まず今の顔はなかったことにした。
目の前には、まだちょっとぎこちないながらも一生懸命喋る絵里。
意外と身振り手振りが多い。
もっと大人しくて、かしこまって喋るのかと思ってた。――それも全部妄想。れいなの勝手な理想。
- 115 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:15
- ユーウツだ……ユーウツって漢字、どう書くんやったっけ?
「ってかさ」
「ん?」
「絵里……日サロとか、海でも行ったと?」
「え、なんで?」
「肌…写メで見た時よりも、黒いけん…」
写メの絵里は、髪が長くて髪が黒くて制服で肌が白くて。れいなの、理想で。理想のタイプで…。
なのに目の前の絵里は、髪が短くて髪が茶色くてボーイッシュスタイルで肌が黒くて。れいなの、理想じゃなくて。苦手なタイプで…。
逢うまでのやりとりのメールで、焼けたとかそんなん、なかったのに。
「自黒なんだよぉ、絵里」
「…へ?」
「携帯で撮った時、光が反射したりとかで、白く見えたのかな」
「嘘やろ……」
「???」
じゃあ、あの写メに萌えたれいなって一体何?
そりゃ勝手に萌えたれいなが悪いけど……でも………。
あぁ…なんか、マジで無理。
余計にテンション落ちた感じ。
絵里には悪いけど、れいな…無理です。
- 116 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:15
-
- 117 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:16
- しかし。
無理っていうものの、どう言ったらいいのか。
そもそも絵里は、れいなの事どういう風に思ってるんやろう?
友達? それとも…
さゆみたいな普通の友達付き合いを望んでるんやったら、別にれいなもそれでいい。こっち関係の友達、まだまだ少ないし。
ただ、恋愛としての付き合いをもし絵里が望んでるんやったら、れいなは断わらんといけん。
だけどそれは勘違いやったとしたら、超恥ずかしい。
だかられいなは、今後の絵里との付き合い方を言い出せないでいる。
一言、これからも友達でおろうねとか言ったらいいんやけど。
元々そんな台詞言うキャラじゃないっていうか、そんな台詞寒いと思ってしまうから、余計言えんくて。
あー、どうしよ。
空はもう結構暗くなってて。
門限が厳しいらしい絵里は、もうすぐ電車に乗って帰らんといけん時間。
次また逢った時にしてもいいけど、そのままズルズルってのもなんか嫌で。
あーあーあーあー。
どうしよどうしよどうしよって、悩んでたその時。
横に並んで駅までの道を歩いてた絵里が、れいなの小指を控えめに握った。
- 118 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:16
- 「わっ」
「あ、ご、ごごごめんっ」
「あ…いや…」
それに驚いて、思わず握った手を振り解いてしまった。
当然絵里は謝って、なんか泣きそうな顔で。
違う、嫌やったわけじゃなくて………だけど、言葉が出てこなかった。
「ど…どうしたと?」
「う、うん。あ…あのね、えっとね、うんとね…」
「………うん」
手を振り解いてしまった事は謝らず、そのまま流して。
絵里の言葉を待つ。
あ、でもこの流れって……まさか――――
「次は………友達としてじゃ、なくて…こ、恋人として逢いたい…っ」
――――やっぱり。
- 119 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:17
- 絵里のれいなへの気持ちは、間違いなんかじゃなかった。
絵里は、れいなを好きやった。
好かれて、人としては嬉しい。けど……
「………………ごめん、絵里。れいな、絵里とはそういう風に、逢えん」
「ぇ…」
「…ごめん…け、けど友達としてやったら…!」
「………」
黙って俯いてしまった絵里。
傷つけた。分かってる。れいなはひどい。それも、分かってる。
「……なんで…とか、理由聞いてもいいかな…」
「それは…」
納得出来ん絵里の気持ち。分かってる。
れいなからメールしたいって言って、あんなに楽しくメールのやりとりしてたのに。
「…れいな…長くて黒い髪の女の子が……」
理想の1番大事な部分がなくなっただけ。それが、理由。
言うのは、どうかと思った。
けどもし言って、絵里がもう1回伸ばして色も戻すって言ってくれたら――――そんな自分勝手な願望は、見事散る。
- 120 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:17
- 「あ〜…そっかぁ。そーなんだぁ…それじゃあ、無理だね…へへ…」
「え、絵里…」
「絵里髪切っちゃったし、染めちゃったし……。うん、実はちょっと分かってた。逢った時、しばらく経たないと絵里に気がついてくれなかったし。
なんかずっと悲しそうだったし………でもそっかぁ、それが理由かぁ〜……」
短くなった髪を撫で付けながら、絵里が半分笑いながら呟く。
笑ってはいるけど、痛々しいそれ。
そうさせたのは、れいな。
「ここで、また髪伸ばして色も戻すって言ったら、れいなは考えてくれるかもしれないけど…でも、それは言えない…。
絵里は、今の絵里をれいなに好きになって欲しかったから。髪長い頃の人見知りしちゃって上手く話せなかった自分には、戻りたくないから。
…っていっても、今もそんなに変わんないかな…ウヘヘ…あ、でも、れいなに頑張って告白出来たしっ。
…………でもね、れいな。性格とかクセで断わられるならいいけど、外見で断わられるのは、つらいよ……」
途中から俯いてた絵里が、顔を上げる。
その瞳に、涙が溢れてて。
- 121 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:18
-
頬に一筋。
光る。零れる。流れる。消える。
ビックリした。
- 122 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:18
- 「絵里は、れいなの中身がすっごく好きだったよ。…2回しか逢った事ないけど、メールの内容とか、全部。博多弁も。
れいなも、そうだったらいいなー…って、思ってた。でも、違ったんなら、しょうがないね」
じゃあ、バイバイ。
泣きながら絵里は走って、駅の改札の中へと消えた――――。
- 123 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:19
- ◇
- 124 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:19
- 「ただいま……」
「うわぁっ!? び、びっくりしたぁ…幽霊かと思ったじゃん!」
「失礼な…」
帰ってきて、失礼な事を言う美貴ねえに噛み付く元気もないまま自分の部屋に行こうとしたら、美貴ねえに腕を掴まれ阻止された。
「…なんね?」
「それは、こっちの台詞。何、どうしたの」
「どうもこうも…」
「…えりりん、フッたの?」
――そう、フッた。
れいながひどいフリ方して、フッた。
なのに、なんで……
れいな、こんな失恋したような胸の苦しさがあるんやろ………………
- 125 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:20
- リd*´ー`)
- 126 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/14(火) 23:20
- リd*;´ー`)
- 127 名前:松竹藤 投稿日:2006/02/14(火) 23:24
- >>112-124「告白と涙」
>>日さん
松浦さんちゃいきょー伝説をどんどん作っていきますよ?
>>konkonさん
今回の田中さんはどうだったでしょうか…なんか段々田中さんへの反応が怖いですw
>>111さん
(*^▽^)<うん!梨華がんばる!
从;´ ヮ`)<いや、石川さんじゃないし。っていうか石川さん、今回出とらんやん
- 128 名前:松竹藤 投稿日:2006/02/15(水) 10:45
- >>115の一行目はなかったものとしてお読みください。
お分かりでしょうけど、初歩的なコピペミスですorz
ミスが多くて、本当に申し訳ありません…
- 129 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/19(日) 06:44
- えりりん…⊃Д`)
- 130 名前:日 投稿日:2006/02/20(月) 00:17
- 頑張ったのに、頑張ったのに・゚・(ノД`)・゚・
れーなのぽけぇ……でも葛藤してるのが可愛くて好きかもw
(从*・ 。.・)<間違いなんてシャボンだま〜!どんまいなの)
- 131 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/21(火) 00:00
- すみません、漏れも昔の彼女が茶パツショートで...同じような経験が
- 132 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 15:59
- 絵里をフッてから1ヶ月。
なんかもう、無気力で。
いつもやったら学校帰りに友達と服見に行ったりとかしとったのに。
なんか、なんもする気が起きん。
なんでやろ……恋が冷めたからかな。
今までずっと絵里の事ばっか考えてた時間を、どう使えばいいか分からんくて。
福岡で仲良かった友達と写メのやりとりした時、自分の画像送ったら「なんか最近ブスやね」とかメールで返ってきたし。
失礼な話やけど、れいなも正直そう思う…。
顔は元気ないし、喋らんから暗く見えるし……ブス、やと思う。
これじゃ、いつまで経っても彼女なんか出来んね………。
あんまり食べる気もせんから、体重も減って。
元々細かったから、美貴ねえとか亜弥ちゃんも心配して焼肉とか連れてってくれるんやけど、どうも調子が出ない。
しかも原因が分からんから、どうしたもんかと思ってた時、久しぶりにさゆから遊びのお誘いがかかった。
- 133 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 15:59
-
- 134 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 15:59
- A型らしいさゆは、おっとりしてる外見とは違って、実は時間にはきっちりしてる。
約束した時間の5分前には必ずいて、今日もれいなを待っていた。
「何分前に来てた?」
「10分くらい。そんなに待ってないよ。それにまだ約束の時間じゃなかったし」
「そっか」
久しぶりのさゆ。
ちょっと、背ぇ伸びたような気がする。れいなは全然伸びんのに…。
食べてないから伸びんって言われたらそうっちゃけど、それでなくてもいつになったら訪れるのか分からない、れいなの成長期。
「れーな、縮んだ?」
「さゆが伸びただけやろっ」
……超悔しい。
- 135 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 16:00
- 待ち合わせしてた駅からちょっと歩いたとこにあるマックに移動。
上京して1年も経ってないれいなと遊びに行く時、どこに行こうと主導権を握るのはほとんどさゆやった。
話を聞いたら実は山口出身らしいけど、東京歴はれいなより長くて、山口弁が出てるとこなんて、聞いた事がない。
久しぶりやったけど相変わらずの「〜なの」口調で、さゆはれいなとは対照的に元気に話し出した。
それに相槌だけ打つれいな。
いつもやったら突っ込みとか、自分の話も聞いてって言って話したりするのに、やっぱりおかしい。
それはもちろん、さゆも気付いてて。
「……やっぱり元気ないね、れーな」
「え…」
けど、やっぱりって。
絵里と逢う前からバイトで忙しかったさゆに会ってなかったから、れいなが今どんな状態か知らんはずやのに。
さゆにはあんまり心配かけんとこうと、メールでは普通に返してたし。
なのになんで、やっぱりとか。
「あややさんがメールで言ってたから」
「あややさん…あぁ、亜弥ちゃんか…」
ネット上での亜弥ちゃんのHN。
名前に“や”付け足しただけやんって感じやけど、れいなもあんまり人の事が言えないので突っ込まない。
オフ会で知り合いらしい、亜弥ちゃんとさゆ。
メアド交換してたようで、れいなの知らんとこでれいなの情報を流していたらしい。
それで心配になって、さゆがれいなを誘った。
バイトですっごい忙しそうやのに悪いなと思う反面、ほっといてくれとかも、思ったり。
- 136 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 16:00
- 「原因って、やっぱ絵里?」
「……」
――ほら。
絶対その名前が出て来ると思った。
やけん、さゆに知られるのは嫌やったと。
もう忘れたい。忘れて、新しい恋捜したいのに。
「でも、なんでれーなが元気ないのかがわたしには分かんないんだけど…。だってれーな、フッたんでしょ? 普通、絵里のが元気なくない?」
「べべ、別に元気ないわけじゃ…」
どもりながらそう言っても、全然説得力なんてない。
「こないだ絵里がバイト先に遊びに来てた時、絵里は元気そうだったんだけど…」
「え――」
なん、それ。
ふ、ふーん。
そっかそっか……へえー…。
フリ方が悪かったとか色々気にしとったのに、絵里はもう、忘れてるんや…。
れいなの事、好きとか言ってたのに。
…ま、まあ、もうあれから1ヶ月経つんやけん、当然か。当然やね。
- 137 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 16:01
- 「っていうか2人、メールとかしてないの?」
「…しとらん…」
「えー、なんで? 恋人にはならないけど、友達は続けるんじゃないの?」
「れ、れいなは…続けてもいいけど…」
こんなとこでも負けず嫌いのれいな。
続けたいじゃなくて、続けてもいい。
けど現状、メールはいつまで経っても鳴らない。
「なんか、歯切れ悪いの」
「…」
「……実はれーな、絵里をフッてから理想にこだわりすぎたとか、後悔してるんじゃないの?」
「そっ、そんなんじゃなか!!!!」
「わっ」
「そりゃっ、フリ方が悪かったとは思ってるけど…!」
その言葉に思わずカァッとなって、立ち上がってテーブルを叩いてしまった。
さゆも驚いとったけど、それ以上に周りにおった人が驚いて、れいな達を、っていうかれいなを見てる。
- 138 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 16:01
- 「…とりあえず、座った方がいいと思う」
「っ…」
さゆの言葉に従うのはシャクやったけど、それが1番正しい事。
座ったら、れいなに向いてた視線はまた元通りになって。
れいなを見てるのはさゆだけになる。
「…あはは」
「なっ、なん笑っとぉーと」
「んー…元気あるじゃん、と思って」
立ち上がって大声で否定する元気。
「や、やけん元気ないって誰も言っとらんやろ!」
「おー、いつものれーなだぁ」
「さゆは少し元気ない方がよかっ」
きゃっきゃっと騒ぐさゆ。
それに突っ込むれいな。
いつもの調子。いつものやりとり。
やっとなんか、忘れられたような気がした。
- 139 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 16:02
- 「とにかく。れいなは次なる新しい恋を捜すと。その為に東京に来たんやし」
「黒髪ロングの正統派美少女?」
「そう」
「まだ理想にこだわるんだ?」
「あぁこだわるね」
だってそれがれいなの理想なんやけん。
理想の人を捜して、理想の人と付き合いたいと思うのが、何がいけんと。
誰にも怒られる権利なんか、なか。
「じゃあさ、れーな」
「ん?」
くいくいと手招きするから顔を近付けたら、さゆがこっそり耳打ちしてきた。
その内容は。
2つ右隣のテーブルの女の子見て。
黒髪ロング。
控えめに笑う、大人しそうな女の子がいた。
- 140 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 16:02
- 「れーなの理想のタイプっぽくない?」
「あ、あぁ……うん…」
「?」
確かにさゆの言う通り、見た目はモロれいなの理想の女の子。
「反応悪いの……。なんで? 可愛くない?」
「えっ!? や、可愛い。超タイプ!」
「じゃあ、声かけてくればいいの」
「いやややっ…だ、だって一方的にこっちが見てるだけやし、それに、あの子の前男いるやんっ。アピっても無駄やろ…」
「そっかぁ〜」
「そ、そうそう」
恋して即失恋とかは勘弁やし。
次の恋は、慎重に。そう、慎重に。
…そんなわけでいちいちがっついたりせんのに、さゆは、可愛くない勘違いを。
「…やっぱりれーな、元気ないね」
「だ、だからぁ…」
「――今度、いつ遊ぼうか?」
「…………は?」
「元気ないれーなを、さゆみが元気にしてあげるの。時間かかるかもしれないけど、れーなを元気に出来る方法、分かったから」
しかも人の話を最後まで聞かずに、さゆは勝手に次の約束を、もうこの時に日時や待ち合わせ場所も全部決めてしまった。
バイトはどうするとって言ったけど、「いいのいいの」なんて結構軽くて。
バイトをしてないれいなは、断わる理由がなかった。
- 141 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 16:03
-
そして1週間前からさゆにメールや電話で何回も念を押されてやって来た、当日。
そこには、さゆだけじゃなくて、なぜか、絵里もいた――――。
- 142 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 16:04
- 从*・ ー.・)
- 143 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/02/25(土) 16:04
- Σ从;` ロ´)
- 144 名前:松竹藤 投稿日:2006/02/25(土) 16:07
- >>132-141「元気だせ」
>>129
リd*´ー`)<ね…何この展開…
>>日さん
すみませんorz
さゆみに頑張ってもらいますw
>>131さん
茶髪ショートもいいですよ?(;´Д`)ハァハァ
- 145 名前:日 投稿日:2006/03/01(水) 20:35
- れいながんばれ……ひっそりおいらも見守っていますw
(さゆ可愛いししっかりものだしいい子だねさゆ)
- 146 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/18(土) 19:18
- うーむ、次どうなるのか予測できん・・・
超続きが気になる・・・
- 147 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/20(月) 00:14
- が、がんばれいな!
石川さんには言ってませんからねw
- 148 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:10
- 「あ、れーな来た来た。はい早く絵里の隣座って、隣」
「……え、えっと……」
ちょっと待て。ちょっと待ちんしゃい、マジで。
なんか当たり前のようにさゆが指示してるけど、れいなはまったく聞いてなかったんやけど。
聞き逃してたっていう事も、絶対にない。
こいつ………絶対、わざとや。
「ほられーな、早く座らないと店員さんも戸惑ってるよ」
「そんなんどうでもいいから、ちょっと来い」
「きゃーっ、れーなに襲われるよぉ」
「黙ってついてきんしゃい!」
さゆの首根っこを掴んで立たせて、そのままズルズルとさゆを店の中にあるトイレに連れて来る。
中にれいな達以外の人がいないのを確認して、さゆから手を離した。
- 149 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:11
- 「…やばい。さゆみ、れーなに犯される」
「犯すか!」
真面目な顔になって謝るかと思えば、何を…。
「それを言うなら怒られるやろ!」
「なんでさゆみがれーなに怒られるの〜」
「こ、こいつ…」
よくもまあ、そげん事が言えるとね。
「なんで、ここに絵里がおると!」
そんなんれいなは聞いてない。
さゆも言ってない。
今初めて知った。
だから怒ってんのに。
「…いちゃいけないの?」
「は?」
「絵里、ここにいちゃいけないの?」
「え……」
何、このれいなが悪者的な視線。
「や、まあ…ここはお店やし、絵里が入っちゃいけんなんて決まりはないから、別におってもいいけど……。
け、けど、なんでさゆと一緒に絵里がおるとって、れいなは言いたかっただけで」
「だって、あたしが呼んだから。絵里を」
「やけん、なんで呼ぶん!」
「一緒に遊ぼうと思って。3人で遊んだ事、まだなかったよね。きっと楽しいよ」
「………いや、だから」
うーん…何て言ったらさゆは分かってくれるかな。
- 150 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:11
- 「とにかく、困る」
「なんで?」
「なんで、って…」
フッたれいなとフラれた絵里。
そんな2人が、いくらさゆがおるとはいえ一緒に遊ぶとか。
それまでにメールとかして普通通りになってたらいいけど、気まずい別れ方をしてから、今日初めて会ったのに。
「れーな、友達だったら絵里と続けてもいいって言ってたじゃん。まだまだ数少ないオフラインでのビアンの友達は大事にした方がいいと思うの」
「それは…そうっちゃけど…け、けど、絵里の方は…」
「絵里も全然問題ないって」
「…それ、絶対嘘やろ」
れいなが登場した時、「……え、えっと……」とかって明らかに動揺しとったし。
こいつ…絵里にまで黙ってやがったな。
「結局さゆは……一体、どうしたいと?」
「んー?」
もう観念したけど、トイレから出て行く前に、それだけは聞いておきたくて。
分かっていたようで完全にはまだ分かっていないさゆの性格。
気まずい2人を取り持つだけでもきっと大変やのに、なんでこんな事たくらんだのか。
「どうしたいって…だから、れーなを元気にさせてあげたいんだよ?」
「………」
元気になんかなるか…おかげで余計ユーウツたい………。
- 151 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:11
-
- 152 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:12
- 「ごめん絵里、お待たせ」
「あ、んーん。だいじょぶだいじょぶ、全然だいじょぶですよ?」
「っていうか見たら分かると思うけど、今日れいなも誘ったの」
「う、うん」
「……久しぶり」
「そだね…久しぶりだね」
無理に作りましたって感じの笑顔。
さゆにしつこく促されて絵里の横に座ったけど、……超居心地悪い。
「あのね絵里、今日はね、れーなが元気ないから励ましてあげようと思って。
それで、さゆみだけじゃ無理みたいだから絵里も一緒にって思って。言わなくてごめんね」
「う、ううん」
ここで、「ごめんで済んだら警察いらねーんだよ!」とかさすがに絵里は言わんか…。
言ったらビックリした後、れいなは拍手してあげるんやけど。
しかもれいなが隣にいるんで、思ってても言えんよね、やっぱ。
「でも…元気ないの?」
「え゛」
心配そうに覗き込んだ絵里の顔。
心臓の鼓動が急に速くなって、苦しくなった。
きっと、いきなり絵里が覗き込んだせい。きっと。
「大丈夫。その内元気出るよ。さゆみが協力してあげてるし」
「って、さゆが答えるな!」
「…プッ」
――あ。
笑った……。
…って、そりゃ、怒る時もあれば、笑うし。
いちいち何を反応しとーと、れいなのアホ…。
- 153 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:13
- それからも相変わらず話を振るのはさゆで。
れいなはそれにただ頷くだけで。
絵里はさゆの話に乗ったり同意したりとしてたけど、隣同士のれいなとの会話はまったくなくて。
最初は顔を上げてその様子を見てたけど、段々つまんなくなって顔を俯かせたら、そんなれいなにさゆが気付いた。
「ごめん、ちょっとトイレの鏡見てくるの」
「はぁっ? ちょ…っ、さゆ!」
そんな事言われて、そのまま顔を俯いたままでおれるわけがない。
だってさゆがいなくなるという事は、絵里と、2人になるわけで。
「く…っ」
「あー……行っちゃったね…」
「う、うん…」
れいなが呼び止めたにも関わらず、さゆはトイレの中へと消えてしまった。
っていうか、わざわざトイレの鏡見てくるとか遠まわしな事言わんと、素直にトイレ行ってくるって言えばいいのに…。
そもそも、ホントにトイレ行きたかったかどうかもあやしい。
周りはカップルとかがいちゃついて、友達同士が楽しそうにしてる。
れいな達が座ってる席だけ、静かで。
あー、なんか喋らんと。
うるさいっていつも怒られるのに、こういう時に何言っていいのか分からんれいなは、やっぱり天才じゃなかったのかな。
でも、フッた相手にどう喋れば…。
顔には出さず心底困り果ててたら、横から、危うく聞き逃してしまいそうな小さい声。
- 154 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:13
- 「ほんと…久しぶりだね」
「ぁ…うん」
「れいな…痩せた?」
人見知りやったはずやのに。
声の大きさ以外は絵里はもう普通に、れいなに話し掛けてきた。
まだちょっと、おどおどしてたけど。
話し掛ける言葉が何も思い浮かばんかったれいなとは、違う。
それは、年上やからか、それとも髪切って絵里の中で何かが変わったからか。
どっちにしても、何か話す事が出来て助かった。
「…痩せた…かな。けどそんなん…よく分かるね」
「分かるよ。だって、見てたもん」
「え」
「あ、ちが…み、見てたって、別にストーカーしてたわけじゃないよ?
そのっ、逢った2回れいなずっと見てたから……だから、1ヶ月以上逢わなかったら…そんな変化くらい分かるよ」
「……ふぅん」
れいなも、絵里の事、分かる。
だって、見てたから。
- 155 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:14
- 「…髪、短くしたっちゃね」
「あー……へへ、うん。れいなもよく分かったね」
ずっと絵里の髪ばっか、見てたから。
前逢った時より、ちょっと後ろが短くなってた。
「なんか1回思いっきり切ったら、こう、首の後ろがチクチクしてかゆくなってきちゃったりして」
それを聞いて、絵里はもう当分髪を伸ばす気はないんだと思った。
「そっか」
首の後ろを何度も撫でつける絵里。
眉毛が、ハの字になってる。
「あ、あのね、れいな」
「…?」
「えっとね、うんとね…」
「うん」
なんやろう?
そういえば、前逢った時も、こんな時があった。
あれは……確か、れいなの博多弁を可愛いって言った時。
それと、告白された時。
…なんでれいな、絵里にガッカリしてたのに、覚えてるんやろ。
- 156 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:14
- 「その…メール、しないでごめんね」
「え…?」
「あれから…」
あれから――。
絵里に告白されてから。
一向に鳴らなかった、絵里からの個別設定された着うた。
「なんか、なんて送ったらいいのか分かんなくて…ウヘヘ…それに、こいつまだ諦めてないのかよみたいに思われるのもアレだし…」
「べ、別に、絵里だけが謝る事じゃなか」
「んぇ?」
「れいなだって……メール送らんかった」
前はあれだけ1日にずっと送ってたメール。
「じゃあ、お互い様だね。へへ」
「……うん」
ホントに、そうなんかな。
お互い様、なんかな。
だって絶対、れいなが悪いのに。
あんな理由でフッた、れいなが悪いのに。
- 157 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:15
- 「あ、あのさ、絵里…」
「ん?」
「その、あの時…」
「…?」
「髪の事…」
「あぁ」
フッた理由。
少なくとも絵里は、傷ついてた。
だから、遅くなったけど、謝ろうと思って。
「ご、ごめ――」
「いーよ。もう絵里へーきだから」
「で、でも」
「逆に謝られた方がつらいよぉ……。もう吹っ切ったから、大丈夫。うん。だからこれからは、れいなの応援するよ、絵里」
「は? 応援って…」
八重歯を見せて、絵里が、笑って。
「見つかるといいね、れいなの理想の子」
「う、うん…」
- 158 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:15
-
――――あぁ。
なんでやろう、胸が、苦しい。
そうたい。
絵里の言う通り、理想の女の子をこれから捜すのに。
応援、大歓迎なのに。
元気になんか、ますますなれんかった。
- 159 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:16
- 从*・ 。.|
- 160 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/03/23(木) 12:17
- 从;´ ヮ`)
- 161 名前:松竹藤 投稿日:2006/03/23(木) 12:23
- >>148-158「応援するよ」
更新するのを忘れてたとかそんなことはないと俄然弱めにゆいたいです…
>>日さん
がんばれいなで田中さんに頑張って欲しいです、自分も…
>>146さん
遅くなって申し訳orz
千奈美に自分もまだラストが書けてないっていう(ノ∀`)
>>147さん
(T▽T)<…先に言われちゃったんだけどぉ
从*´ ヮ`)b<147さんGJ!
- 162 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/26(日) 10:28
- ほんとに揺れてますね〜
今後の展開をこっそり見守っています。がんばれいなっ!
(そして石川さんごめんねw)
- 163 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/26(日) 14:03
- 更新乙です。
いつも最後についてる2個のAAが超キャワですね。
次も楽しみに待ってます。
- 164 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/27(月) 22:30
- すっっごく気になる作品です。まったり待ってますんで、頑張ってください。
- 165 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/28(火) 03:30
- 更新乙です
胸が苦しくなりました
涙まで出てしまいました(ノ∀`)
さゆえりれいな&作者さん、がんばれいな!
- 166 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:38
- それからしばらくして、さゆが戻ってきて。
3人での会話が始まる。
さゆがトイレ行く前と行ってからの違いは、絵里がれいなにも話を振るようになった事。
周りから見たら、仲良し3人組って思われてると思う。
――でもれいなは、さゆがトイレ行く前より、この席の居心地が悪かった。
話を振られたら、投げやりな返事して。
ジュースについてるストローを噛みながら、外の風景を見る振りして、絵里を見る。
絵里は、相変わらずさゆとの話に夢中。
元々さゆとウマが合うから、話はいつまで経っても尽きる事がない。
- 167 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:38
- ホントに、さゆが言ってた通り、絵里は元気そう。
現にれいなにも、絵里はさっき言ってた。
もう吹っ切ったから、大丈夫って。
れいなは失恋したらすぐ立ち直れる自信なんかなかったけど、絵里は、すぐ立ち直れるんや……。
そんな風に、見えんのに。
……あの時、絵里は泣いてた。
れいなの言葉に対して。
それを思い出して胸が痛むのは、一体なんなんやろう……。
絵里を傷つけたって思ったからだとばっかり思ってたけど、謝ったら、絵里は「へーき」って言って笑って。
れいなはもう、何も気にせんでよくなったのに。
……なんでっちゃろ、胸が、痛む。苦しい。
- 168 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:39
- 「れいな、大丈夫?」
「ふあっ?」
――って、いきなり絵里が声かけたからビックリして変な声出た。
やばい。超ハズい…。
「れーな、顔真っ赤」
「う、うるさいバカさゆ!」
「ひどいひどいひどい! ホントの事言っただけなのに、れーな、さゆみの事バカって言った!!」
「あー、バカやけど、さゆは可愛い」
「…れーな、やっぱりいい奴なの♪」
さゆはやっぱりバカ…って事は、言わない。
れいなは天才なんで、それを言ったらどうなるか分かってるけん。
うるさくなったと思ったらまた鏡を見てにっこり笑い始めたさゆを見てたら、横からまだ心配そうな絵里の声。
「……大丈夫?」
「え、何が」
さっきも聞こうと思ったらさゆに邪魔されたけど。
なんで急に、「大丈夫?」って声かけられたんかなって。
- 169 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:40
- 「なんか、胸のとこの服、ぎゅって掴んで苦しそうにしてた」
「え…」
「れ、れいなもしかして心臓病!?」
「……はぁ?」
そりゃ、色んな検査もしてないから、その可能性がゼロじゃないわけじゃないけども。
なんでそーなると。
「原因は、こっちが教えて欲しか…」
「えっ、自分で分かんないの? 病院行った方がいいよ、絶対」
「うん…」
「でも病院行ってホントに心臓病だったら…」
「それ、考え過ぎやから」
行ったら、教えてくれるかな。
この胸の痛みの原因――――。
- 170 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:40
- 気にしたりするからダメなんやと思って、気分を変えてれいなも会話に参加する。
恋愛感情とか、そんなの全部排除して。過去の気持ちも、忘れて。
友達として。
皆に思われてるような、仲良し3人組として。
れいなもそれを望んでたし、絵里もれいなの新しい恋も応援してくれるって言うし。
それが1番いい、この関係。
胸の痛みや苦しみなんて、昨日食べた晩ご飯のメニューと一緒に、忘れてしまったらいい。
それに、ほら。
余計な事考えんで、こうやって喋ってたら、れいなは今普通に出来てる。
胸なんか痛くないし苦しくないし。
絵里とも自然に話せて笑えて、フッた人とフラれた人っていう関係とは思えない。
居心地悪かったこの席も、自然と緊張も嫌な感じも取れてきて。
まだ相手がさゆみたいに、気軽に肩叩いたりとか、出来んけど。
このままいけば。
今日、このままいけば、大丈夫。
絵里と普通におれる。
普通にメールも返せる、きっと。
そこまで思えた、その時。
- 171 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:40
- 「って、あれ? カメじゃん」
「「「?」」」
割って入ってきた声。
振り向いて見てみたら、知らない顔。
「誰?」
「さあ…」
さゆに聞いてもれいなと同じような顔。
その後で、気付く。
…さっきこの人、カメって言ったっちゃね…って事は。
「ガキさん!」
「奇遇だね、友達? でも学校では見た事ないような…」
やって来た女の子に反応したのは、絵里。
カメって呼ばれた、亀井絵里。
そしてその絵里に、ガキさんって呼ばれた、見た感じ人見知りらしい絵里と結構仲良さそうな人。
「うん、2人とも高校違うから。なんていうのかな…趣味の友達?」
「いや、疑問系にあたしに聞かれても分かんないけどさ」
ここはやっぱり頭を下げとくべき?――そう思って、軽く、そのガキさんって人にさゆと一緒に頭を下げた。
したら、ガキさんも慌てて頭を下げてくれた。
- 172 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:41
- 「あー申し遅れましたっ、あたし新垣里沙ですっ。カメの…あ〜じゃなくって、絵里ちゃんの幼馴染ってやつです。
ニイガキなもんで、カメとか友達からガキさんって呼ばれてます」
「そうなんですかぁ〜。わたし、道重さゆみです」
「あ、田中れいなです…」
喫茶店で初対面の挨拶をするれいな達。
…正直ちょっと、恥ずかしい。
「と、とりあえず座りません?」
このまま立って会話するの、しんどいし。
そう思って、さゆの隣に座ってもらおうとしたんやけど、「ややややや」って、オーバーに断わられた。
「友達ともうすぐ待ち合わせだから」
「愛ちゃん?」
「うん、そう」
「そっかぁー」
「それじゃあ。カメは、また明日ね」
「うん。ガキさんばいばーい」
最後に絵里にもう1回手を振って、ガキさんはこっちからは死角になる奥のテーブルに座った。
- 173 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:41
- 座ったのを見てから、さゆが鏡を直して絵里に訊ねる。
「おさななじみ?」
「うん。家、近所なんだよね。同い年で同じ学校で」
「へぇ」
「でもあの人…ガキさん? ガキさんは、わたし達が知り合ったきっかけとか、知らないんだ?」
さゆと絵里が知り合ったのは、どっかのビアンサイトのオフ会。
ガキさんって人が絵里がビアンって知ってたなら、絵里もそう言ってたはず。
だけど言わなかったって事は、多分さゆが言った通り、ガキさんは知らない。
「あー…うん。絵里が男の人苦手っていうか、無理って事は知ってるんだけど」
「え、無理って、どれくらい?」
そう聞いたのはれいな。
そりゃ、女が好きなだけあって、れいなも男の人と恋愛なんて、無理やけど。
話したりカラオケ行ったり、友達としては、男友達の方が付き合いやすい。
「触られたりするのも、ちょっとヤダ」
「え…」
けど絵里は、友達として接するのも無理らしくて。
「…もしかして、小さい頃、何かされたとか?」
一般的に言われる普通の恋愛から、異常と言われてしまう恋愛に変わる原因の1つ。
過去の出来事によるトラウマ、拒絶。
れいなはそんなものはなくて、産まれた時からやったけど。
触られたりするのもヤダっていう絵里は、きっと違う。
- 174 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:42
- 「いや〜…」なんてごまかし笑いをして俯く絵里。
さゆも珍しく真面目な顔になって、「そうなの?」って前のめりになる。
眉間にシワが寄ってて、ちょっと怖い。
「れいな、顔怖いよぉ」
「え、れいな?」
「うん」
だけど怖かったのは、さゆじゃなかったみたいで。
顔を上げた絵里に、ふにゃふにゃ笑われた。
「2人とも心配してくれてありがと。でも、だいじょぶ。何かされそうになる前に、助けてもらったから」
「な、何かされそうになったって事!?」
ガタンとおっきな音立てて、立ち上がる。
――ん? なんでれいな、立ち上がってるんやろ…。
「れーな、必死すぎ」
「ち、ちが…っ」
真面目な顔も眉間のシワも崩したさゆに、笑われる。
真っ赤になってまた座り直したら、待っててくれたのか絵里が続きを話してくれた。
- 175 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:42
- 「あのね、絵里が幼稚園の頃にね、公園でガキさんとお兄ちゃんと妹と遊んでたの。
お母さん達はお兄ちゃんがいるからって事で安心してたみたいで、お喋りに夢中で。
で、お兄ちゃんは妹がこいでるブランコ押してあげてて、ガキさんは別のコと遊んでて、絵里1人だったのね?
それで砂場で遊んでたら、知らない男の人がなんか話し掛けて来て、車に乗ってどっか行こうみたいな事言ってきたんだよ。
その時…っていうか今もなんだけど、絵里、車超好きでさぁー。だってなんか車ってドアとか窓開けなかったら密室じゃん。狭いじゃん。
で、その人の車ちっちゃかったから、喜んで乗ったの。
そしたらなんか、覆い被されて…………変な事されそうになった時、ガキさんが助けに来てくれたんだぁ。
『かぁーめぇーをたすけにきましたぁ!』
とか何とか言って。すぐにお母さん達も気付いて、その人捕まったんだ。
だから何かされなかったのは、ガキさんのおかげで、何かされそうになったのは絵里のせいなんだけどね。うへへ…」
……普通、お菓子とかにつられるなら分かるけど、
狭いとこが好きとかいうのでついてく絵里って、心底どうなんよとか思ってしまったけど。
自分がバカだったって絵里はよく分かってて。
その事が怖かったから、今も男の人は無理で。
それでも絵里は、れいなやさゆにこれ以上心配かけんようにって、笑ってる。
- 176 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:43
- 「そっかぁ……じゃあ、ガキさんに感謝だね、絵里」
「うん。絵里さ、それだけじゃなくて、ずっとガキさんに助けてもらってるんだよね。
ホントに救いようのない人見知りのせいで、なかなか小学校になっても友達出来なくて…ガキさんがいなかったら、ずっと絵里、1人ぼっちだったから」
そう言って、死角になって見えない、ガキさんがいる席を優しく見つめる絵里。
「本人の前では言えなくて、ついつい反抗したりとか生意気な事言っちゃうんだけど、ガキさん、大好きなんだよね。絵里」
――――痛。
…え、なんで。忘れてたのに。
ずっと、おさまってたのに。
「そっか、ガキさん大好きなんだ、絵里は」
「あっ、でもガキさんには言っちゃダメだよ?!」
「知り合いじゃないのに言えないの」
「そっかそっか。うへへへ」
絵里、ガキさんの事……
そっか、そうなんちゃね………
じゃあれいなも、応援せんといけんよね。
絵里は、れいなの恋、応援してくれるから。
- 177 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:43
-
あぁ、でもなんでやろ……「応援するよ」って、最後まで結局言えんかった。
- 178 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:44
- Σ||c|・e・)| リd*^ー^)
- 179 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/02(日) 22:44
- ||c|・e・)| ノ Σ(^ー^*bリ (´ロ `;从
- 180 名前:松竹藤 投稿日:2006/04/02(日) 22:49
- >>166-177「ガキさんは幼なじみ」
ぉぉぅ…久々にあげてしまったorz
>>162さん
どうかれいなをこっそり見守ってあげてください。
(;^▽^)<謝るならあたしに冷たくしないでよ!何なの何よ!大の大人が(ry
>>163さん
AA超キャワどうもです!
まったり更新ですが、イライラせずにお待ち頂けると嬉しいです。
>>164さん
すっっごく気になって頂き感激です。
本当にまったりお待ち下さい_| ̄|○
>>165さん
さゆえりれいなだけじゃなく、作者にもがんばれいなって言ってくれたワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*
ありがとうございます、ほんとw
- 181 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/03(月) 20:51
- はぅぅぅぅう……なんかめちゃめちゃ青春してますねw
おいらも胸が痛いですが見守っています。
(石川さん可愛いから、からかうと面白いんだもん、ごめんね好きだよw)
- 182 名前:konkon 投稿日:2006/04/04(火) 08:57
- なかなか複雑な関係ですね〜
途中に入ってるAAにワラタ
- 183 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/13(木) 22:41
- ちくしょーもっと早くこのスレ発見したかったぜ!!w
切なくて、でも笑えますた。
ガキさん最高!w
- 184 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:53
- ねー田中ちゃあん」
「はーい」
れいな用にと空けてくれた部屋でくつろいでたら、ドアの向こうかられいなを呼ぶ亜弥ちゃんの声。
さすがに亜弥ちゃんは、血の繋がりがないからか、ノックも声かけもせんで、美貴ねえみたいに足で蹴ってドアを開けたりはしない。
「何?」
開けて亜弥ちゃんを迎え入れて。
呼ばれた理由を聞いたら。
「ヒマ」
「――は?」
だけど、美貴ねえよりも意味の分からん事を言われた。
- 185 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:54
- 「たん、またフットサルの練習でさー。何もする事ないしもうヒマでヒマで」
「はあ」
……だかられいなにどうしろと?
「田中ちゃんもヒマじゃない?」
「いや、れいなは別に…」
確かにくつろいどったけど、やらなきゃいけない事は探せばいっぱいある。
たとえば部屋の片付けとか、MDに新しく音楽録音したりとか、メールしたりサイト回ったりとか。
…明日の学校の準備とか宿題とかは、やらなきゃいけない事には入ってない。
でもそれが、亜弥ちゃんには気に入らんらしい。
「田中ちゃん、そこは『そうですね』とかって、いいとも風に言ってくれないとダメだよ」
「そうですか…」
「そうですかじゃなくてー、そうですね」
「…失礼ですけど松浦さん、バカですよね?」
「うわっ! 超失礼だよ田中ちゃん!」
「やけん最初に『失礼ですけど』って言ったやん」
「『超失礼ですけど』とは言ってない」
「こ、この……っ」
ああ言えばこう言う。
そもそも、美貴ねえを手の平で転がしてる人にれいなが敵うはずなんてないと。
ノンケやった美貴ねえをオトした、やり手の亜弥ちゃんなんやけん、色んな意味で無理。
- 186 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:54
- 「ってことで、超失礼な事言った罰として、あたしをプリさゆちゃんのバイト先に連れてってくれない?」
「えーっ」
「あ、それちょっといいとも風だった、にゃははっ」
にゃははって笑う亜弥ちゃんは、ネコ風。
外見はれいなのが、ネコ風やと思うけど。
「ってかなんでさゆのー」
不満たっぷりのれいな。
だって今くつろいどったし、外出るのめんどくさいし、何よりさゆのバイト先は結構遠い。
3回くらい行った事あったけど、さゆは忙しそうに店内を走り回っててちゃんと話せんかったし。
「だってプリさゆちゃんのバイト先って、制服可愛いんでしょ?」
「あー、まあ」
可愛いもの好きのさゆが選ぶんやから、そこは当然頷く。
けどれいなの趣味じゃない。
ピンクとかフリルとか、たまにウサギのカチューシャとか。
……なんかこれだけじゃそっち系の店みたいやけど、外見も中身も普通のレストラン。
ほら、色々制服が選べる18禁の恋愛シュミレーションゲームのような、あんなやつ。
え? なんで15歳のれいなが知ってるかって?――――ノーコメントで。
- 187 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:55
- 「メールで可愛いって聞いて、可愛いもの好きのあたしが見てないのはおかしい!」
「いや、そうれいなに言われても」
じゃあこんなとこで怒らんと、早く見に行けばよかやんって言おうとしたら、さっきの「罰」とかって言葉を思い出す。
「それにあたし、プリさゆちゃんのバイト先どこにあるか知らないし」
「で、れいなに連れて行けと」
「行け、とは言ってないよぉ。命令じゃなく、お願い」
瞳をキラキラさせて、拝むように顔の前に手を絡ませて合わせる亜弥ちゃん。
…っく………可愛いと思ってしまう自分が、悔しい。
「しょ、しょうがなかね…」
「やったー! ヒマが潰れて可愛い制服が見れるぅー!」
「まったく…」
ブツブツ言いながら服を着替えようとしたれいなを、にやにや笑顔で見つめてくる亜弥ちゃん。
…うぁ、何かすごい変な事考えとぉ顔…。
「田中ちゃん、あたしに惚れるなよ」
「惚れるかっ!!!」
「にゃはは」
可愛いと思う事はあっても、それだけは絶対断言出来ると!
…なんかれいな、ここに来て血圧上がったような気がする………
- 188 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:55
-
- 189 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:55
- 「あはは。じゃあれーなは案内役だったんだ?」
「そうたい。わざわざ電車まで乗って来たのに…」
「あややさんに途中で捨てられちゃった、と」
「…ほんと、訴えてやろうかな、あのバカップル…」
テーブル席で頭を抱えて、ぶっそうな事を呟くれいな。
だって、だって。
「普通、自分が連れてけとか言ったのに、美貴ねえから早く終わったとかってメール着たからって、途中で帰るかぁ?!」
「まぁまぁ」
「置いてけぼりにされたれいなの気持ち、さゆに分かって欲しくて…」
グスン。
それに、途中まで来て帰るのは余計疲れる気がして。
グチを聞いてもらうがてら、こうしてさゆのバイト先へ。
- 190 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:55
- 「…っていうか今日は制服着とらんのやね」
「今日は早上がりなんだよ。で、着替えてた時にれーなが来たって聞いたから」
いきなり亜弥ちゃんに言われたし、バイト中は携帯見れないって言っとったけん、
メールもせんで行ったもんだから、もう少しずれてたらすれ違うとこやった。危ない危ない。
さゆの姿が見えんかったので、他の店員さんにさゆを呼んでもらって、今こうしてさゆと一緒にテーブルについてる。
「でも、メーワクじゃなかった?」
来てから聞くのも変やけど。
最近いつも忙しそうなさゆやけん、この後もホントはなんかあったんじゃないのかなとか思って。
「うん、だいじょーぶ。それにれーなと会うのもひさしぶりだもんね。絵里と3人で遊んだ時以来だっけ?」
「かな?」
メールはいつものように続けてるけど、またそんなに間が空いてたとは。
まあ、同い年やけど学校が違うし、バイトをしてるさゆとバイトしてないれいなとでは、なかなか時間が合わないのは仕方ない。
「けどまだ元気そうじゃないね」
「……まだ言ってるし。れ、れいなは全然元気やし」
「さゆみがちゃんと元気にしてあげるからね」
「あー、はいはい」
会わない間も相変わらずさゆは意味不明。
やけん、何度も言うけど、れいなは全然……。
- 191 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:56
- 「そういえば、絵里とはあれからメールしてるの?」
「んー」
「そんな返事じゃどっちか分かんないの」
「…たまーにしてるだけ」
「ふぅーん……じゃあ、れーなは知らないかな…」
「は?」
なん、その気になる呟き。
眉が上がって、眉間にしわが寄って。
さゆに、続きを促す。
ストローでころころと、溶けて小さくなってく氷をかき混ぜるさゆ。
視線は下に落ちていて。
……何か、あんまりいい気分じゃない。
- 192 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:56
- 「なんね」
「んん……あのね、絵里からガキさんて人についてのメールとか、着た事ある?」
「ガキさんて…絵里の…幼なじみの…」
絵里の、おそらく今の好きな人……。
「そうそう、そのガキさん」
「着た事はないけど…」
絵里は、れいなには一切、ガキさんのガの字も送ってこない。
色々あったわだかまりも解けて、また前みたいに友達としてメールを続けるようになった今でも、日常でドジった話とか、そんなもんだけ。
毎日じゃなくなって、1日にするメールの回数ももちろん減った。
メル友とも、言えんかもしれん。
と言っても、もう少ししたら部活の陸上部での競技会か何かがあって忙しいとかって言ってたから、それも関係してるかもしれんけど。
「あのね、わたしよく、絵里からよく電話とかメールでガキさんの話とかされるのね。で、そのメールがあまりにも多いもんだから、
それって友達としてじゃなくて、恋として好きなんじゃないのー?とか茶化して聞いたら、『そうかも…』とか返ってきて。
なんかそれから色々と聞いたら、その、……れいなにフラれて落ち込んでた時慰めてくれたのガキさんらしくって。
それから幼なじみから絵里の心が変わったみたいなんだよね………」
「ふ、ふぅん…」
「あれ? 驚かないの?」
「だって…多分、そうなんやろーなぁって、思ってたから…」
あの時、「好き」って言ってたし。
友達としての目じゃないように、れいなは見えたから。
…でもそっか。
そんな風にガキさんを見るようになったのは、れいなが絵里をフッたからなんや……。
- 193 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:57
- 「知ってるなら話が早いの。ねーだからさ、れーな、絵里の恋応援してあげようよ!」
「えっ?」
「友達でしょ?」
「それは…そうっちゃけど」
「みんなの日程が合う日にでもさ、4人で遊園地とか行って、絵里とガキさんをカップルにしてあげようって作戦ね。
ガキさんが絵里をどう思ってるかがよく分かんないけど、絵里可愛いから何とかなるよね、きっと」
「いや、でもれいなは…」
「…あ。実は今になって絵里をガキさんに奪われるのが、いやだとか?」
「ちちちっ、ちが!!!!」
「――じゃあ、いいよね?」
「う…」
頷く以外許さないって感じのさゆ。
結局れいなは負けてしまって、また決まり次第メールするって言ったさゆに、黙って手を振って別れるしかなかった。
- 194 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:57
- 从*・ 。.・)ノシ (´ヮ `;从
- 195 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/04/20(木) 10:58
- 从*・ ー.・)
- 196 名前:松竹藤 投稿日:2006/04/20(木) 11:03
- >>184-193「絵里の好きな人」
>>181さん
なかなかもやもやうじうじが続く話ですが、見守っていて下さると俄然強めに頑張ろうと思えます。
(*^▽^)<っていうか告白されちゃった!ハッピー♪
从;` ロ´)<本編に出とらんくせにコクられるとかありえれいな!
>>konkonさん
AAネタがもう既に尽きてますorz
>>183さん
もっと早くに発見して下さっていたら、続きをもっとお待たせさせる事に(ry
リd*`ー´)<ムッ…絵里の方がちゃいこーですよ?
||c|;・e・)|<こんなとこまで対抗意識燃やさなくてもいいんじゃない?しかも最高じゃなくちゃいこーとか…
- 197 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/20(木) 19:51
- 更新おつかれいなです!あぁ、これまたドキドキな展開……
見守りますとも、何があっても見守っています。
(そういえば石川さん出てなかったのだっww)
- 198 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/27(木) 23:42
- 183でした!
可愛いレス返し、ちゃいこーですw
続き、いくらでも待ちますから〜!
- 199 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/30(日) 02:59
- おもしろいです、自分的には「れなさゆ」の2人の関係がとっても好きです
更新楽しみに待ってます
- 200 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/06(土) 12:33
- おもろい!!
続きが気になるよ〜
ダブルデートどうなるんだ
頑張って下さい
- 201 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:42
- 「じゃーれいなバイバーイ」
「んー」
つまんない学校が終わったその帰り道。
駅が途中まで一緒やった友達と電車の中で別れの挨拶をして、れいなは電車の中に残る。
電車通学なれいなやけど、電車はあんまり好きじゃない。
帰宅部なれいなが帰る時間は、他の学校のみんなもそうで。
あっちこっちでぎゃあぎゃあ騒いでる声が、いちいちうるさいから。
彼氏がどうとか、あの人がカッコいいとか。
その子達とは違うれいなには、絶対に頷けん話。
さっき別れた友達も、昨日彼氏と喧嘩したらしくて、電車の中で最後までれいなにグチっとった。
そんなグチを聞いたり、意見を言ったりは出来る。
けど、れいなのグチを聞いてもらったり、その事に対しての意見を、れいなは友達に求められない。
それってやっぱり、ちょっと悲しい。
- 202 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:42
- 手を繋いだりは出来るかもしれんけど、堂々と交際宣言をしたり、人前でキスしたり。
恋人同士やったら当たり前の事、れいな達は出来んくて。
やろうと思えば出来るけど、そこまでの勇気がれいなにはない。
パパとママと美貴ねえ達には言えたけど、それ以外の大人の人や友達には絶対に言えそうになかった。
好きになる相手だって、場合によっちゃどれだけ想っても叶わん事がある。
亜弥ちゃんみたいなとんでもない人間やったら、美貴ねえみたいなノンケの人をオトす事も出来るかもしれんけど、そんな人、多くはおらんし。
れいなは、好きになった相手の絵里がさゆからの紹介で、絵里もビアンらしいって事を知ってたから、色々と言えた。
特に悩みもせんと、絵里に逢ったら告白しようって思っとったし。
…でもまあれいなは、結局しなかったけど。
逆に絵里にされて、断わったけど。
じゃあもし、好きになった対象が、ビアンじゃなかったら――――。
どうやって気持ちを伝えたらいいんちゃろ。
どうやったら、両想いになれるんちゃろ。
今、絵里が好きらしいガキさんは、どうなんちゃろ………。
- 203 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:42
- 絵里は、男じゃなくて女の子の方が好きって事は、ガキさんに言ってないって言った。
仲良さそうやったのに言ってないって事は、ガキさんがきっと、自分達と同じじゃないから。
引かれるとか、もう友達じゃなくなるかもとか、そう思って言ってないんやろうと思う。
絵里は結構、怖がりらしいから。
…少なくなってしまったメールのやりとりで知った、新しい絵里の性格。
じゃあやっぱり、さゆの言う通りれいな達が応援したらんといけんよね…。
でも…そう思うと、胸が苦しくて…。
れいな、病気かも。
「はぁあ…」
胸を押さえて、前のめりになって。
また、絵里の事を考える。
笑えない。
楽しくない。
元気ない。
絵里をフッてから、ずっと。
今までずっとそれを気付かんよう、認めんようにしてたけど、もうごまかせない。
………れいな、絵里の事………
- 204 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:43
- 理想のタイプじゃなかった。
やけん、幻滅して気持ちが冷めて、フッた。
けどそれで、絵里を泣かせてしまった。
それからずっと絵里の事を考えるようになった。
前まで毎日着てたメールが来なくなって、気にするようになった。
でも久しぶりに逢った絵里は、元気やった。
絵里をフッたれいなの新しい恋を応援するって、言った。
胸が、苦しくなった。
絵里が新しい恋をしているらしい事を知った。
れいなは絵里みたいに、「応援するよ」って、言えんかった。
――――今更、絵里を好きになってしまった。
ドジが多い絵里。
結構頭が悪い絵里。
変な笑い方の絵里。
声が可愛い絵里。
ふにゃふにゃ笑顔の絵里。
美容師さんに流されて髪を思い切って切った、人の意見や頼みをなかなか断われない絵里。
れいなを好きになってくれた絵里。
…れいな、絵里の髪しか、見てなかった。
…れいな、自分の理想が崩れた事しか、考えなかった。
今になって美貴ねえの言葉が、分かったと。
れいな、ほんとに子供っちゃ…。
- 205 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:43
- 好きになった理由は、絵里の外見。
だけど好きになった気持ちを大きくしたのは、絵里とのメールのやりとり。
絵里がドジだった事。お母さんに怒られたくだらない理由。妹と喧嘩して負けてしまって悔しいとか。
純粋に、可愛くてたまらなかった。
顔とか髪型とかそんなの忘れて、そのメールの絵里が、すごくすごく好きやった。
メル友のOKをもらった後、さゆに聞いた事がある。
絵里の、理想のタイプ。
聞いたタイプは、全然れいなと被ってなくて、正直かなりへこんだ。
でも絵里は、れいなを好きになってくれた。
博多弁も、メールの内容も、全部。
なのにれいなは…………。
- 206 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:44
- 絵里を少しの間でも傷つけてしまったれいな。
絵里はもう大丈夫って言ったけど、傷つけてしまった事には変わりない。
そんなれいなが絵里にしてあげれる事って、やっぱりガキさんとの恋を応援する事しかないのかな…。
自分の気持ちを自覚してしまった今は、嫌で嫌でしょうがないけど。
それは、れいなへの罰。
絵里の内面を、ちゃんと見なかった、れいなへの罰。
「…ふぅ」
余計に苦しくて痛くなった胸。
それを隠して我慢して、やっと顔を上げたら。
「………あれっ?」
…どこ、この駅。
ちょうど停車したとこの前に、駅名があって。
…………やばい。
絵里の事考えて胸押さえながら下向いてる内に、降りる駅を通り過ぎてしまった。
慌てて中身の入ってない鞄を掴んで、よろめきながら、知らんその名前の駅で降りる。
東京来てから行き先って言えば大体決まってたから、まったく分からんくて。
それでも行き過ぎたんやから、ようするに戻ればいいと思って、反対方向の電車の乗り口を探してたら、どっかで見たような顔を見つけた。
- 207 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:44
- 「え…あれって…」
あの時は私服やったけど、間違いないと思う。
だってれいな、あの人の顔、ずっと見てたから。
あの人――ガキさんだ。
絵里の事もロクに知らんけど、ガキさんの事はもっとよく知らん。
ここが家の最寄駅かもしれんし、誰かと待ち合わせしてるとかってのも、考えられる。
でも「こんにちは」って声をかけられる程仲良くなかったし、一回しか会ってないし。
だからなんとなくぼーっとガキさんを見てた。
ガキさんは、なんでかキョロキョロしとって。
れいなみたいにこの辺の地理とか構造が分からんって事はないと思うのに。
絵里と幼なじみって事やから、東京やって事やし。
なんかを捜してるみたいな、そんな感じ。
- 208 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:44
- …もしかして、絵里と待ち合わせなんかな。
でも絵里、ここんとこずっと、毎日部活らしいし。
まさか、部活サボってまでガキさんと逢いたいとか…。
いやでも、もうすぐ競技会が近いっていう陸上部(っていうかあの性格で足が速いとか、ちょっと今でも信じられん)の絵里がサボるなんて事、
きっと回りは許してくれんと思うし……。
そしたら、あと考えられるのは――思った、その時。
「おーっ、ガキさぁん!」
「あっ、まこちぃ! 遅いよもー!」
「でへへへ…ごめんごめん」
男にしたらちょっと小柄なド金髪の人が、笑いながら謝ってガキさんに近寄って、抱き締めた。
その後すぐ、恥ずかしかったのか金髪の人の頭を叩いて離れたけど、2人の手は繋がっていて。
たまに、ド金髪の人がガキさんの肩とか腰に手を回して、それに対してガキさんが笑って何か言いながら、
そのまま出口の方へと歩き出して、見えなくなってしまった。
- 209 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:45
-
「なん、あれ…」
金髪の人は制服じゃなかったから、何歳か、それすらも分からんかったけど。
でも、あんな風に仲良さそうに手を繋いで肩や腰に手を回す2人の関係は、何となく分かった。
………ガキさん、彼氏おるんやん………
絵里は、知ってんのかな。
幼なじみやし、知っとるよね、もちろん。
それなのに絵里は、ガキさんが好きなんかな………
- 210 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:45
-
その日の夜。
さゆから電話が来て。
4人で遊園地は、今週の日曜日に決まった。
- 211 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:46
- ∬*´◇`)人|(・e・*|b||
- 212 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/12(金) 22:46
- 川o・-|
- 213 名前:松竹藤 投稿日:2006/05/12(金) 22:47
- >>201-210「目撃」
手元でなかなかこの話が完結してくれません_| ̄|○
思えば、この話を作るきっかけとなった2人が卒業とか……
>>197さん
感想ありがとうさちゃんピースです!(無理やり
見守っていてください・゚・(ノД`)・゚・
Σ从;` ロ´)<てかちょっ、石川さん出てないとか、今頃!?
(*^▽^)<この人の脳内ではあたしがいつも主演だったから、気付かなかったんでしょ?
从;` ロ´)<…
>>198(183)さん
ちゃいこーですコメント、ちゃいこーです!w
ありがたいお言葉で、つい甘えてしまいそうになります…
>199さん
ありがとうございます。
そして、れなさゆ表現、今回なくてすみません。
>>200さん
ダブルデートはこの次で…千奈美に自分の手元でもまだダブルデート中っていう_| ̄|○
が、頑張りますです。
- 214 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/13(土) 00:56
- わわわっ!そうきたか!!
と、PCの前で1人ニヤニヤしてますすいません。
次回も楽しみだぁ〜
- 215 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/13(土) 18:05
- き、き、き………キテタ━━━━━━━━━━━━!!!!
更新乙です!待ってましたよぉ
マターリ待っていますので、作者さんのペースでがんばってください
ホントは今すぐにでも続きを読みたいけどw
- 216 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/13(土) 22:13
- 更新お疲れ様です。そしてまたまたドキドキな展開!?
○○がなぜガキさんといたのか物凄い気になる……終わりまで見守っています。
まったり作者さんのペースで進めてくださいね。
(れいな冗談だから。出てないの知ってるからww)
- 217 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/05/13(土) 22:22
- >>211
>>212
キャー!!!
どうなってんの?まさかそう来るとは…。
でもこの二人好きだよ。こないだの娘。コンですっごい抱き合ってたしw
- 218 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/17(水) 02:51
- 更新乙です
田中さんの悩みがとてもリアルでいいですね
あと松浦さんはとんでもない人間でいいと思います
- 219 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:07
-
天気は快晴。
対するれいなの心は、曇り。
最悪の遊園地日和やった。
- 220 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:08
- 「れーなくらぁーい」
「うるさい」
「新垣さぁん、れーながこわーい」
「あはは。まぁまぁまぁまぁ」
遊園地の入場ゲート前に、れいなとさゆと、そしてガキさん。
会うのは2回目なくせして、もうガキさんと打ち解けてるっぽいさゆ。
れいなも会うのは2回目(一方的にガキさんを見つけたのは除いて)やけど、さゆみたいに打ち解ける事は出来んくて。
といってもさゆの場合、絵里にどうやらガキさんのメアドを聞いたらしく、そこでのやりとりで仲良くなったっぽい。
でもれいなは、さっきからたまにガキさんがれいなにも話を振ってくれるけど、一言二言で会話がどうしても終わってしまう。
…だって。
自分の気持ちを認めたれいなにとってガキさんは、恋のライバルってやつで…。
だけどガキさんには金髪のまこちぃ(多分、マコトって名前かなんかで、まこちぃはあだ名かと)っていう彼氏がおって……。
それでも、絵里の好きな人で………。
あああ。
なんか頭が痛くなってきた。
- 221 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:08
- 「田中っち、大丈夫?」
「へ?」
ついつい頭を押さえたれいなを心配して言ってくれたんやろうけど、聞き逃せん言葉が。
『田中っち』って…なん?
「あ、ごめん! や、あたしのクラス…あ、カメも一緒なんだけどね。あたし達のクラスでさ、田中って苗字の子がいて、
あたしその子の事『田中っち』とかって呼んでるから、つい田中さんの事も田中っちって呼んじゃった。ごめんねごめんね」
「別にいいですよ、田中っちで。可愛いし」
うん、まあ…別に。
――けど。
「やけんなんで、れいなの事やのにさゆが答えると!」
「いいじゃん。田中っち」
「さゆは田中っちって言うな!」
「あー、まあまあまあまあまあまあまあまあ」
「『まあ』言い過ぎちゃろ…」
「うそぉ? あたしそんなに『まあ』って言った?」
「言いましたよ。30回くらい」
真顔で言ったのは、さゆ。
「うそぉ?! えーっ、それうそでしょ。ねえうそだよね?」
「ええうそですよ。でも『うそ』も言い過ぎですよね」
オーバーに驚いたのは、ガキさん。
最後に呆れて突っ込んだのは、れいな。
なん、この集まり……超疲れるんですけど…。
- 222 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:09
- っていうか、絵里。
絵里はどこ。
「絵里、寝坊かな」
「カメが遅れてくるのは当たり前みたいになってるからね」
「…っていうかガキさんと一緒に来ればよかったんじゃ?」
幼馴染っていうんやから、家も当然近いはず。
なのにガキさんは1人で来て、こうしてれいな達と一緒に、今日も遅れてる絵里を待っている。
ちなみに、こないだ3人で遊んだ時、れいなが来た時に既に絵里はおったけど、
絵里はれいなと一緒の待ち合わせ時間じゃなく、れいなより3時間早く待ち合わせて先にご飯を食べるって約束をしとったらしいけど、
結局1時間絵里が遅れてる間にさゆは1人でお昼を食べたらしい。
今日は、遊園地が営業してる時間までに来るやろうか……と、ほんの少し心配していたら、大分向こうの方から、ハァハァ息を切らしながらやってくる絵里の姿が見えた。
- 223 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:10
- 「あ、絵――」
「カメ来たカメー! うおーい!!!」
見つけたのはきっと、れいなが1番早かったのに…。
れいなより先に声を張り上げ、遠くで呼びかけられた絵里は、れいなよりもさゆよりも先に、ガキさんを見つけて笑った。
…苦しいよ、絵里…。
絵里も、れいなの一言で、こんな想い、したんかな?
でも今は、れいなの隣で手を振ってるガキさんを、絵里は好きで……。
「ハァハァッ…ご、ごめぇん」
「もー絵里おそーい」
「そうだそうだ。遅いぞカメ」
「カメだけにカメなんだよぉ。うへへ」
「何がカメだけにカメだっつーの! あんた今超特急でここまで来たじゃん」
「ウヘヘ…」
「笑ってごまかすな!」
「いったー! ガキさんぼーりょくぅ。PTAに訴えるもん」
「PTA会長、あたしのお母さんだけど」
「……絵里が悪かったです、すいませぇん」
「分かればよろしい」
…あぁ、ほんと絵里は、楽しそう。
ふにゃふにゃ笑ってクネクネする絵里は、本当に可愛い。
なんで前のれいなは、これがダメやったんやろう…。
- 224 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:10
- れいなには、何が出来る?
さゆの言う通り、絵里の恋の応援?
でもでもでも、ガキさんには、学校が終わって手を繋いでどっかに行く男が……。
絵里の笑う顔は、物凄く可愛い。
れいなはもう、絵里の泣き顔を見たくない。
絵里にはいつでも、笑ってて欲しい。
だから、だから……。
- 225 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:11
- 割引を持ってるっていうさゆについてチケットを購入して、入場する。
その時に小さいパンフレットみたいなんをもらって、最初にどこへ行こうって相談してるガキさんとさゆを確認してから、れいなは絵里の腕を引っ張った。
「ん?」
「絵里、ちょっと」
「な、なに…?」
戸惑う瞳に、うっすらと赤いほっぺた。
そのほっぺた見て、まださっきの息切れが残ってるんやろうか、と、少し心配になったけど、聞きたいのはそれじゃない。
「あのさ、絵里…」
「……うん」
「絵里…ガキさんの事………好いとぉとやろ?」
「ふえ? スイトーと?」
「…好きってこと」
「あぁなるほど。うん、好きだよ」
「それって…その……友達として……じゃなく……?」
最後の方はほんとにちっちゃい声になってしまった。
れいな自身が、聞きたくなかったから。
でももう一度確認する為に、頑張って言った。
そしたら絵里は、
「うん」
やっぱり笑顔で、頷いて。
――――泣きそうになる、ちょっと。
- 226 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:11
- 「…でも、なんで?」
「え?」
「なんでそんな事、聞くの?」
なんで、って。
「それは…」
「…………まさか…れいな、ガキさんの事、好き…なの?」
「…はっ?」
絵里より小さい背のれいな。
そのれいなを覗き込むように見える絵里の顔。
その顔は、すごく心配そう。
そりゃそうやんね。
だって改まってこんなん聞いたらそう思うのも無理ないし。
れいながガキさんの事好きやったとしたら、絵里にとってれいなはライバルになる。
「や、別に…」
「っていうかガキさん、れいなのタイプじゃないじゃん。そりゃっ、髪は長いかもしんないけど、でもでも、茶髪だよ? れーな黒髪好きなんでしょ?
絵里も大概だけどっ、でもその絵里よりガキさんのが茶色いよ?」
- 227 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:12
- 人が口を開いてる途中で、早口で絵里に捲し立てられた。
…っていうか、早く喋れるんや…すっごいマイペースそうやのに。
――なんて感想思ってる暇があったら、早く誤解を解かんとダメっちゃね。
「いや、違う。絵里違うから」
「ぅえっ?」
「れいなガキさんの事好きじゃないから」
「え…それって……ホントに?」
「ホントに」
疑い深く真剣な目で問い掛けてくる絵里に、同じように真剣な目で頷く。
だってそれは、ウソじゃないから。
れいなの好きな人は、今、目の前におる人やから。
通じたのか、ホッとした笑顔になった絵里。
れいなと恋のライバルにならなくてよかったって、思ってるんやろうなぁ…。
- 228 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:12
- 「でも、絵里、ガキさんは…」
途中で絵里の勘違いによって中断されたけど、れいなが本当に言いたかった事。
絵里はガキさんの事好きでも、ガキさんは…。
「ん?」
「ガキさんは…止めた方が…」
「は…? なんで…?」
「…絵里にはガキさんより、もっといい人、捜せばおると思う…」
絵里をれいなに向かせたいからじゃなくて。
だってガキさんには、相手がおるから。
絵里の笑顔がその事で曇ってしまうなら、事前に言っといたら、少しはそれを防げる事が出来るかなって、れいなは思ったのに。
「……何、それ」
「へっ?」
「れいなに…れいなにガキさんの何が分かるの? れいな、今日で会って2回目でしょ?
ガキさんは………ガキさんは絵里の恩人で、ガキさんは絵里の1番の………っ」
「え、絵里…」
「なのになんでれいなにそんな事言われなきゃいけないのっ、そんなのれいなに関係ないじゃんっ」
普段の絵里から想像つかんような、おっきな声。
ビックリしたのは、れいなだけじゃなく、パンフレットに視線を落としてた、さゆやガキさんも。
「…ガキさんの事、もうそーゆー風に言わないで」
それから絵里は、涙目でキツくれいなを睨んだ後、さゆとガキさんの所に戻って行った。
- 229 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:13
-
「…何か絵里に言ったの?」
「………」
動けなくなったれいなの手を、こっちにやって来たさゆが優しく引いて問い掛けてくれたけど、答える事は出来なくて。
だってれいなは、絵里の為を思って言ったのに。
絵里が笑顔でおれるように。絵里が、傷つかんように。
ガキさんを友達としてじゃなく好きなのは、止めた方が…って。
それでも絵里にとって、言葉は詰まったけど、ガキさんは絵里の1番の好きな人で。
そんでもって…………今日でれいなは、絵里の1番嫌いな人になったかも、しれんと。
- 230 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:13
- _| ̄|○ ←れいな
- 231 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/18(木) 14:14
- _| ̄|○ _| ̄|(:;.:... _| ̄!:. ::;....... _i:.....:...:: ::;.:;..
- 232 名前:松竹藤 投稿日:2006/05/18(木) 14:14
- >>219−229「遊園地日和」
なんとか順調にいけたので、更新。
5月には完結出来る…かなぁ。
>>214さん
PCの前で1人ニヤニヤは自分の得意技ですニヤニヤ
次回、こんな感じになりました…
>>215さん
お待たせしてすみませんorz
すぐではなかったですが、続き、ドゾー
>>216さん
ドキドキというよりもやもやな展開続きで申し訳orz
从;` ロ´)<知っとったとか!れいなをからかって遊ぶなんてひどいと!
( ^▽^)<子供だからからかうと面白いのよ、れいなはw
从;` ロ´)<てか本編に出とらんからって、石川さんはここに出てこんでいいし!
>>217さん
抱き合ってたとかマジネタですかー!ハァハァ
モーチャンでも何でも、ガキさんは本当にあの人好きですよね。最近つづく思います。
>>218さん
リアル…ですかね。ありがとうございます、嬉しいです。
てか、ちょw とんでもない人間ってw
- 233 名前:214 投稿日:2006/05/18(木) 23:35
- ひーん(;へ;)
がんがれ!みんな幸せになってくれぇ
- 234 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/20(土) 17:05
- 更新乙です!
うわぁ…胸が痛くてしょうがないです
>>231
ちょwwwイ`…!!
- 235 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/20(土) 23:45
- 更新お疲れ様です。登場人物の会話がリアルに想像できて惹きこまれます。
続きを固唾を呑んでまっています。
(まいど石川さん乙w 密かにレスが楽しみです)
- 236 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:21
- 4人一緒に行動はしてるけど、どっかよそよそしい感じ。
ガキさんとは何とか普通に喋れるくらいには仲良く出来たけど、絵里とは必要な事しか喋ってない。
さっきの妙なフンイキで、れいなと絵里がおかしいって事にあんまり2人から突っ込まれたくないのか、
表面上は普通にしてるけど、でもそれは全然分かり易くて。
さゆもガキさんも、れいなや絵里に気を遣ってくれてる。
「おっ、ねえねえ、アレ乗らない? あたしまだアレ乗った事ないから乗りたいんだけど」
そう言ってガキさんが、前方にある、一回転が売りのジェットコースターを指差す。
さっきから、妙にハイテンションな絵里が引っ張ってアトラクションに乗ってたけど、
絵里が指差すのは子供でも平気で乗れるような、まったりと楽しいもの。
でも遊園地なんやけん、ガキさんの指差した先の絶叫系にそろそろ乗りたいなぁって思ってた頃で。
いつもやったられいなが皆の手を引っ張って誘導してくところっちゃけど、絵里と微妙な感じやけん、ずっと我慢しとったと。
「あ、れいなも乗りた…」
「絵里はいいや、うん。うへへ…3人で行ってきて?」
はいはいはい、とガキさんにならって主張しようとしたら、横から入ってきた絵里の声。
なんか微妙に、みんなから一歩下がってる気がする…。
- 237 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:22
- 「ちょっとかぁめぇ? ノリ悪いよ」
「えーっ! だってヤなんだもん絶叫系! 絵里が絶叫系乗れないのガキさん知っててそう言ってるんでしょお」
「あれ? 乗れなかったっけ?」
「うわっ、わざとらしぃ…」
目の前で始まる言い合い…っていうか、じゃれ合いにしか、れいなには見えない。
ガキさんも絵里も楽しそうやし……。
そもそも、絶叫系が苦手とか、今初めて知ったと。
やっぱり幼馴染の絆は、深い。
「大丈夫大丈夫。1回転つっても、すぐだから。もう、バァーッて過ぎちゃうから」
「やだやだやだやだっ、絵里見学」
「見学とかあんた、今体育の授業じゃないでしょーが」
「っていうか絵里が乗らないと、3人になって1人余るじゃん」
「じゃあさゆも一緒に見学しよーよぅ」
「だってさゆみもちょっと乗りたいもん」
むぅ、と見るからに膨れた絵里は、誘うガキさんやさゆも無視して、近くのベンチに座って、絶対動かない事をアピールしだした。
さすがにそこまでされて無理やり連れてく事は出来ず、かといって乗るのもやめる事もせずに、結局絵里をそのままにして、れいな達は順番に並ぶ事にした。
- 238 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:22
- 「で、でも、よかったと?」
「ん?」
「絵里、1人…」
並んでるここからは、絵里が座ってるベンチが見えんけん、今、絵里がどんな顔してるか分からない。
今から乗るジェットコースターの怖さより、れいなは1人にしてきた絵里の方が心配やった。
「じゃあ今から、れーな戻って傍にいてあげたら?」
「へ?」
「でも田中っちも乗りたいってさっき言ってたじゃん。それにカメは大丈夫だって。
乗るより、1人で待つ方が嬉しいだろうから気にしなくていいよ」
「……はあ」
肩をポンポン叩かれて、ニッコリ笑われる。
何かそれって、幼馴染の余裕っていうか、絵里に好かれてる余裕っていうか……れいなの気持ちは、複雑になる。
でも戻って傍にいる事も、さっきの気まずさから出来なくて、係員の人に促されるまま、れいな達は乗る事になった。
- 239 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:22
-
- 240 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:23
- 「あれ? 絵里いなくない?」
そう言ったのはさゆ。
想像より怖かったジェットコースターに、ぎゃあぎゃあ言いながら乗り終わった後、元の位置に戻ったら、ベンチに絵里の姿が見えん。
「トイレとか?」
「あ、でもちょっと待って」
「?」
近くのトイレに探しに行こうとしたら、ガキさんに手を引っ張られて止められた。
「なん…」
「カメ、いた」
やけんどこに……さっき見たベンチには、2人の男の後ろ姿しかなかったのに。
ガキさんに指差されるまま、もう1回そのベンチを見てみると、その男の後ろ姿が横にずれ、男に重なって座っていた為隠れてた絵里が、見えた。
……何、どーゆー事?
「なあさゆ、誰、あれ」
「わたしに聞かれても知らないよ」
今日一緒に遊園地に来たのは、れいなとさゆとガキさんだけで、絵里に今親しそうに喋ってるあの男なんていない。
じゃあ、あれって………ナンパ?
1人で座って待ってたのが、寂しい女の子みたいに見えたのか、ナンパの理由なんて分からんけど。
よく見たら、絵里の顔が困ってる。
男が苦手な絵里。今まで1人だった絵里。
いつから絡まれてたか、それすらも分からんけど、助けなきゃって。
絵里に近付くなって、思わず駆け出しそうになったれいなの横を、ガキさんが通り過ぎた。
- 241 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:23
- 「すいませんすいませーん! その子引き取りにきましたぁ」
「え。あ、何。この子の友達?」
「じゃあ君もオレらと遊ばない? 野郎同士で遊園地来ても面白くなくてさぁ。さっきからこの子にも言ってんだけど、
俯いていっこも喋ってくんないのよー」
「この子人見知りなんでね。でもすいません。今日お父さん達と来てるんで」
「えっ、そ、そうなの?」
「そうなんですよ! あっ、おとーさん、こっちこっち!!」
「ええっ、じゃっ、じゃあオレら行くわ!」
駆け出しそうになった足が、動かない。
声が、出ない。
その間に、ガキさんはナンパ男を追い払って、絵里を、また助けた。
「カメ大丈夫?」
「うー……怖かったぁ」
「よしよし。じゃあ今度から1人で見学しないで、一緒に乗ろうね。またアレ乗ろうとは言わないからさ」
「…うん」
絵里の横に座って、頭を撫でて。
絵里はガキさんに抱き着いて、肩に顔埋めて。
その2人を見て、思わず噛み締めた、下唇が痛い。
- 242 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:24
- これは、嫉妬。
その気持ちに気付いたのは、すぐやった。
れいなは絵里と全然口を利けんのに、楽しそうに絵里と話をするガキさんが、憎い。
手を繋いで腕を絡ませて、絵里の隣で乗り物を乗るガキさんが、羨ましい。
ガキさんには、まこちぃって人がおるんやなかと?
気がないんやったら、絵里にそんな優しくせんで。絵里が、可哀想。
……違う。絵里が、じゃなくて。
お願い。絵里に、優しくせんで。
ガキさんが優しくする度に笑う絵里を見るれいなが、可哀想。
自分が、その笑顔を見る権利を、放棄したくせに。
苦しいよ。
苦しいよ、絵里。
片想いって、超苦しい。
好きな人にそっけなくされて、冷たい言葉言われる事がこんなにつらかったなんて、今、身を持って知ったと。
絵里、絵里。
ごめん…ごめんね。
もう1回、謝らせて………そんで、叶うならもう1回、れいなを好きになって――――
- 243 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:24
- 空元気すら、なくなった。
さっきから何回もガキさんがれいなに向かって「大丈夫?」って声かけてくれるけど、頷く事しか出来んくて。
さゆは心配してくれてるのか、「もうちょっとだから頑張ってれーな」って、そればっか。
絵里は、チラチラって何回か目が合うけど、れいなに向かって発せられる言葉はなかった。
そんなこんなで、日も暮れて。
時間もいいぐらいになって、最後の乗り物を決める事になって。
「やっぱ最後は観覧車?」っていうフンイキを、さゆが「お化け屋敷がいい!」ってぶち壊し。
この遊園地のお化け屋敷は、乗り物に乗って回るやつもあるけど、期間限定で、歩いて進んで行く方法で、人間がお化けになって驚かすっていうのがあるらしい。
さゆが言ったお化け屋敷は、後者の方。
ガキさんはちょっと乗り気やったけど、ビビりの絵里は当然嫌がった。
「無理だから絵里ぜっっったい無理だから!」
「無理も何も入ってみないと分かんないの」
「入んなくても分かるもん! だってもう建物の時点でもう怖いもん!」
「中入ったら結構楽しいかもよ? カメ」
「楽しいわけないじゃん! だって悲鳴聞こえてるよ?!」
「「聞こえてない聞こえてない」」
「絵里もう聞こえる…」
「「いや聞こえないから」」
さゆとガキさんが2人一斉に突っ込むも、聞こえん声が聞こえてる絵里には、聞こえる声が聞こえんらしい。
16歳の女の子やったら、普通、絶叫系とか大好きやと思うんちゃけど…。
お化け屋敷は怖いにしても、ここまでの人なんて、れいなは見た事ない。
そう言うれいなは、もうなんでもよかった。
嫉妬なんかしてしまう自分が嫌で。ガキさんと絵里を、見たくなくて。
早くこの時間が終われば…って、ずっと思っとった。
- 244 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:25
- 結局、ナンパを追い払った後、ガキさんと「一緒に乗ろうね」って約束した事を引っ張りだされ、絵里も1人で見学せんと、お化け屋敷に入る事に。
最後まで絵里は「でもこれ乗り物じゃないもん、入って歩くんだから乗らないもん…」なんて、ブツブツ言ってたけど。
中に入ってすぐ、まだ誰も驚かしに来てないのに、既にキャーとか言ってて、正直うるさい…。
「先行っちゃダメだからね? 逃げるとかやだよ? 手ぇ離さないでね?」
「はいはいはいはい」
「絵里怖がりぃ〜」
ガキさんとさゆを両サイドに置いて、2人の腕に自分のそれを絡ませてる絵里。
「田中っちも繋ごう?」
「ん、れいなはいい…」
「え。つ、強いね田中っち…」
1人後ろに遅れて歩いてる形のれいなに、空いてるガキさんの手が伸ばされたけど、断わった。
…ホントは、1人で怖かったけど。
容赦なく驚かすお化け役の人達。
その度に声を上げ、どこかへ逃走しようとする絵里を必死に止めるガキさん。
「大丈夫! お化けは触れない約束になってるから!!」
とか、いつそんな約束が出来たか分からん事を絵里に言って安心させようとしてるガキさんやけど、肝心の絵里は何一つ聞いてない。
っていうか、怯えてる。
- 245 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:25
- それでもなんとか進んで、あともうちょっとで出口っていう感じの所で、ここに入ってから1番ビックリした登場の仕方で、お化け役の人が現れた。
「ぅわおおっ?!」
なんとも女らしくない悲鳴を上げて、思わずさゆと一緒に抱きつく。
絵里はガキさんと…?と思って、その方向に向いた時やった。
「もぅやだぁああああ!!!!!」
「ぎゃっ、ちょっとカメぇ!」
ガキさんごとお化けを突き飛ばして、なんと絵里が、逆走してどこかへ消えてしまった。
「い、いたたたっ……あ、ごめんなさいごめんなさい」
加害者は絵里で、ガキさんもお化けの人も被害者やのに、丁寧にお化けの人に謝るガキさん。
れいなやったらきっと謝る事なんてせんと思って、ガキさんとれいなの違いに、やっぱり悲しくなる。
ガキさんはやっぱり、れいなより大人で……絵里も、そんな大人なガキさんを好きになったんかなって…。
「――って、絵里!!!!」
「あっ、そ、そうだ。絵里! どうしよう、戻っちゃったの…」
慌ててオロオロするれいなとさゆ。
ガキさんも困ったように、頭を掻く。
絵里が戻ってくる気配は、ない。
- 246 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:26
- 「あの子探しに行かないとやばいかも」
カメの甲羅じゃなく、どっかの隙間に入り込んで出て来ないかもしんない――そうガキさんは続けた。
「ってことで、あたしまたちょっと、世話の焼ける幼馴染を助けに行ってくるよ」
突き飛ばされたのに。
何気に、絵里やさゆ程じゃないけど、ガキさんも怖がってたのに。
ガキさんは、絵里を、助けに行くって…。
絵里が男の人にいたずらされそうになった時みたいに。
絵里がナンパされて困ってた時みたいに。
今度も、また、ガキさんが………
「れーな、いいの?」
「ぇ…?」
「ガキさんが行っちゃって、いいの?」
「……」
怖いお化け屋敷の中、さゆが、れいなに向かって優しい顔で笑う。
なんで。なんで。
さゆは、絵里とガキさんの恋を応援するんじゃなかと…?
そんな事言われたら、れいな…れいな…………
- 247 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:26
- 「れ、れいなが行く!!!」
「んぉ?」
気付くと、行こうとするガキさんの手を掴んで、そんな事を口走ってた。
「ガキさんとさゆは、待っとって。れいなが、絵里を探しに…助けに行く!」
「あ、そ、そう? じゃあいいけど…てかやっぱり3人で行こうか?」
「でもあんまりゾロゾロみんなで戻ったりしても、後から入ってくる人に悪いから、ガキさん、さゆみと一緒に出口で待ってましょう?
れーなは、絵里をちゃんと連れて来てね?」
「…うん」
「それでこそれーなだと、さゆみは思うの」
ふんわり笑う、さゆ。
絵里とガキさんの恋を応援してるらしい、さゆやのに。
鏡ばっか見てるくせに、実は何気に感が良さそうなさゆの事。
きっと、れいなが絵里の事好きって事に、気付いたんやと思う。
だから、ガキさんじゃなくて、れいなに行けって促してくれた。
絵里の好きな気持ちをまたれいなに戻す事は出来んかもしれんけど、それでも、
さゆの応援に応える為にも、れいなはまた怖いその道を、1人で引き返す事にした。
- 248 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:27
- (((リd;´ー`)))クネクネブルブル
- 249 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/05/24(水) 08:27
- 三ヘ从;` ロ´)ノダッ
- 250 名前:松竹藤 投稿日:2006/05/24(水) 08:28
- >>236-247 「れいなが行く!」
あの…言い訳を…。
これを書いていた時は、ハロモニでの絶叫CMのお化け屋敷で道重さんが
まさか亀井さん以上にあそこまで怖がっていたとは知らなかったので…。
まあ、妄想ということで、また1つよろしくです。
それと、5月に完結は無r(ry
>>233(214)さん
みんな幸せにしてあげたいです。
>>234さん
今回ので少しは胸の痛みが取れたでしょうか?
从;´ ヮ`)<ありがと…なんとか復活したっちゃ
>>235さん
続きお待たせしました。
(*^▽^)<なんだかんだ言ってあなた、乙とか楽しみとか、あたしの事やっぱ好きなんじゃなぁ〜い
从;` ロ´)<…しゃこーじれいってもんを石川さんは知らんと?
(;^▽^)<れいなは社交辞令の漢字すら知らないじゃない!っていうかれいな、入ってきた頃あたしのファンだったくせに!
リd*^ー^)<それこそしゃこーじれいですよ?
Σ(;^▽^)<え、絵里…
- 251 名前:233 投稿日:2006/05/24(水) 22:59
- ガキさんw
触れないんだよ、そうだよwww
あの回ほんと面白かったですねー
れーな、がんがれ!
- 252 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/29(月) 23:17
- 更新お疲れ様です
今後の展開もひっそり見守ってます!れーにゃがんばれっ
(AA劇場が素敵、そしてそんなえりがすきですよ?……ありがとうございますw)
- 253 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:32
- 「ぎゃぁああああっ?!」
1回通ったはずの場所やけん、大体お化けがどっから出てくるとか分かっとぉはずやのに、やっぱりビックリしてしまう。
っていうか、向こうも、逆走してるれいなを見てちょっとビビってて、お互い様かもしれん。
ってかてか、れいなはまたお化けを体験しに戻ってるんやなかと。
そう、逃げ出した絵里を探しに来てるわけなんっちゃけど…………一向に、見つからない。
「絵里ぃ、絵里ーっ?」
呼んでみるけど、前から後ろから聞こえる悲鳴に混じって、多分絵里には届いてない。
だから当然、それに返ってくる声もなくて。
そもそも、一体どこに……。
まさか、入り口まで戻ったとか?
逆走にも程がある。
でも、ロクに前も見れてないあの状態で、入り口まで戻れるとも思わんし…。
きっとどっか近くでへたりこんでて、結構簡単に見つかると思ったのに、絵里の姿は見当たらない。
れいなを避けて隠れてるってわけじゃない。
絵里はまだ、どっかで怯えてて。
助けに来てくれるのを、待っている。
……助けに来たのがれいなやって知って、絵里は嫌がるかもしれんけど……。
- 254 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:32
- 「あ、あのすいませんっ、どっかでショートの女の子見ませんでした?」
「そんなん知るワケないでしょ!」
「はぁ、すいません…」
すれ違う人達にそう聞いてみるけど、皆、出て来るお化けにビクビクしながらで、ロクに答えてくれず。
目撃情報も、まったくなし。
もう結構戻ったのに、相変わらずれいなは、絵里と出逢えてない。
暗いし。
怖いし。
ビックリして、心臓止まるかと思うし。
絵里、おらんし。
出口に向かって歩き人達に、すれ違う度変な目で見られるし。
れいな、何してるんやろう、って。
ガキさんさえぎって、、1人で張り切って、1人で戻ってきて。
「絵里ぃ……出て来てよ…」
返事もないのに、呼び続けて。
…なんか…悲しくなってきた。
ヒックウェックって、泣いてる音。
………ん?
れいな、悲しくなってきたけど、まだ、泣いてない。
――じゃあこの音って、どっから?
- 255 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:33
- 暗い中、目を凝らして辺りを見渡す。
このお化け屋敷の中は、病院って設定になってて、どうやらここは院長室ってやつらしい。
なんか椅子とか本とかあってやっぱり怖かったけど、それでもよく見てみたら、白衣を着た、多分院長役のお化けの人が、隅っこの方にしゃがんで、困っとった。
え…大の大人がそんなとこで泣いてると…?
一瞬引きかけたれいなやったけど、その院長の人の向こうに、暗いながらも見慣れた姿を見て、誤解が解ける。
「ぇ…絵里!!」
「ヒャァアアッ!!! うぇぇん、もうやだぁ、やだよおおおお」
「ええっ? 絵里ぃ?」
何かもうワケが分かってないらしくて、絵里はパニックに陥ってるらしい。
「あぁ…君、この子の友達? よかった…なんとかしてくれない? さっきからずっとこの隙間に入って出て来てくれないんだけど…」
「絵里っ、絵里っ」
驚かす事も忘れて、素で困ってる院長を押し退けて、丸まってしゃがんでる絵里の肩を掴む。
陸上で結構ガッチリしてそうに見えて、絵里の肩は結構細くて……そして、震えてた。
「絵里、れいなっちゃ。分かる?」
「れ……ぃな?」
「そう、れいな。分かるんやね」
「…………ぅん」
「もう大丈夫。こっから助けに来たけん、一緒に出よう?」
やっと見つけた絵里。
やっと、絵里と普通に喋れた。
色んな事が、今、れいなは嬉しい。
でも、絵里は。
「……むり……」
「えっ…」
やっぱり、れいなダメなんかな…。
肩を掴んでた手をゆっくりと下ろそうとしたら。
「……だって立てないもん……」
――涙目の上目遣いで、超可愛い事を言った。
…ここが、暗くてよかった。
だって明るかったら、真っ赤なれいなの顔、絶対に見られてる。
- 256 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:33
- れいなは背中から、絵里の腋の下に手を入れて、院長役の人は前から絵里の手を引っ張って、2人がかりで立たせる。
れいな1人でやったらよかったんやけど、れいなは絵里よりちっちゃいくて、体重も軽かったので、無理やった。
そんなわけで2人で立たせたら、すんなりと立たす事は出来たけど、ちょっとふらつくみたいで、れいなに抱きつくような形になる。
「ご、ごめ…っ」
「だ、大丈夫」
っていうかむしろ、嬉しいんっちゃけど…。
で、でも、絵里が素で怖がってるのに、れいながそんなよこしまな気持ちでおったらいかんと。
「気をつけてね」
「はい」
院長役の人が手を振って見送ってくれた。
…お化け役の人に気をつけてって言われるのも変な感じやったけども。
「ってか絵里、なんであんな隅っこの隙間におったと?」
れいなの右腕にしがみついて離さない絵里に、少しでも気を紛らわせようと話し掛ける。
幸い、院長室を抜けたこの通りはちょうど、お化けは出てこんくて。
その分、周りの作りとか、なんか物音とかなる仕掛けとかは怖かったけど、まだマシな所。
「隙間に入って落ち着かせようとしたんだもん…」
「はぁ? あ、あー……隙間好きやったとやね、そういえば…」
「でもそしたら今度は立てなくなって、なんか変な人は絵里の前に来るし…」
変な人ってのはきっと、院長役の人の事やと思う。
でも、向こうからしてみれば、隅っこの隙間に入った絵里が、変な人やったと思う。
- 257 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:34
- 「逃げるからやん、絵里が」
そもそもの原因は、ずっとひっついてたガキさんを突き飛ばしたから。
ずっとひっついてたら、絵里が隙間に入る事もれいながこうして絵里と2人で歩く事もなかった。
「だってだってだってだって! 超ビックリしたんだもん!!」
「うん、ビックリしたけど」
ビックリしすぎっちゃ、マジで。
絵里のそのビックリに、みんな1番ビックリしたと。
「…2人、出口で待ってるけん」
「うん……ごめんね、れいな」
「? なんが?」
「だって、わざわざ絵里…」
「気にせんでよか」
だってそれは、れいなが望んだけん。
ガキさんにこの役、渡したくなかったけん。
一度でいいかられいなも、絵里のヒーローになりたかったから。
…れいな、絵里のヒーローになれたかな。
絵里よりちっちゃくて、頼りなくて、言葉は悪かったけど。
もう、絵里の好きな人にはなれなくても、この時だけのヒーローに、れいなはなりたかった。
……ほんとは、もう一度、絵里の好きな人にも、なりたかったけど。
- 258 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:34
-
- 259 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:34
- やっとの思いで出口に出たら、おかしい事が1つ。
「……さゆ達がおらん」
「ぅええ?」
「おかしいっちゃね…出口で待ってるって言ったのに」
出口は1つ。
ここ以外の出口はない。
なのになんで…。
「ちょっと電話してみる」
こういう時に便利なんが、携帯電話。
お化け屋敷の中は、圏外になってておらんくなった絵里に電話する事が出来んかったけど、ここなら電話をかけられる。
『はいはーい、れーな?』
「あ、さゆ! 今どこにおると?」
『お化け屋敷から絵里助け出せた?』
「うん。あ、代わる? 絵里、さゆが」
「あ、うん」
携帯を渡して代わると、すぐに携帯から『えりり〜ん』なんてさゆの声。
ちょ…えりりんって、れいなが使ってた、絵里の心のあだ名やん! 自分はエリックとかエリザベスとか、そんなん候補にあげてたくせに!
でも今はえりりんじゃなくて、絵里って呼んで、親密さがアップしたっぽいし…とか自分で慰めてたら、なんか、電話中の2人の間で、変な展開になったっぽい。
- 260 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:35
- 「えー? ちょっと待ってよさゆ、何それ」
『…、……』
「なんでよぉ〜」
「なん? どーしたと?」
お化け屋敷から出て来た人の声とかが混じって、電話のさゆの声が聞こえん。
絵里の話だけじゃ分からんくてたずねたら、もっと意味が分からんくなった。
「……なんかさゆ、ガキさん気に入ったらしくて、2人っきりにさせてって」
「はあっ?!」
「電話、切れちゃった…」
なんそれなんそれなんそれ。
確か今日って、絵里の恋を応援しにセッティングしたんやなかと?
しかも、言い出しっぺはさゆで……。
なに恋のライバルになってるん、って話っちゃ。
あ、でも、れいなが絵里の事好きって気付いたから、気ぃ遣ってくれたとか?
でもでも、だからってその気遣い方は間違ってるかと…。
「…どーしよっか」
「どーしよっかって…」
そんなん、答え求められても困る。
だって、何て答えたらよかと?
じゃあ2人っきりで楽しもうって、言いたい。
言いたいけど、絵里はきっと、あっちの2人を気にしてる。
だって絵里は、ガキさんが好きやけん………。
このまま、2人でいたい。
出ても、離す事を忘れてる絵里の腕を、感じてたい。
だから何も言えずに俯いてたら、絵里が、バカな勘違い。
- 261 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:35
- 「……やっぱれいな、ガキさんの事好きじゃないの?」
「はっ…?」
「だって電話終わった後、すごい気にしてつらそうな顔してるし…。
さっきガキさんの事あー言ったのだって、絵里がガキさんの事好きって言ったから、遠まわしにライバル減らそうとしてとか……けど、絵里は…」
「やけん違うって! ガキさんの事は、好きは好きやけど、そーいう好きじゃないと」
勘違いしてる絵里の言葉をさえぎって、もう1回否定する。
そこは、間違えて欲しくない。
「じゃあ、じゃあ………さゆ、とか?」
「違う!」
ガキさんでもない。
さゆでもない。
れいなが気にしてるのは。
れいなが、好きなのは。
「れいなは…………絵里が……絵里の事が………」
- 262 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:36
- 好き。
胸が苦しくなる程。
息が出来なくなる程。
悲しくなる程。
あの時の事、思い出して後悔すればする程。
絵里が、好き。
「な、何それ。こんなとこでじょーだんとか、れいなやめてよ」
「…じょーだんやなか」
「うそ…でしょ?」
「うそでも、なか」
――寂しい。
ずっと掴まれてた腕から、絵里が離れた。
もう、絵里を感じれない。
「絵里は…今の絵里は、れいなのタイプの黒髪ロングじゃないんだよ? 茶髪だよ? 短いよ?
よく変な笑い方って言われるし、なんか妄想してそうとかって言われるし、独り言多いみたいだし、絵里…………れいなに、フラれたんだよ?」
「…………うん」
「すっごいショックだったんだよ、すっごい泣いたんだよ…。それでも頑張って、れいなの新しい恋応援するって言ったんだよ」
「…………うん」
「なのに、なんで……」
天才かも、って事あるごとに言ってたれいなは、バカで。
子供じゃないって強がってたれいなは、子供で。
理想ばっか追い求めてたれいなは、現実を全然見てなかった。
あの時、美貴ねえに言われて、絵里が泣いて、ガキさんとあそこで会わなきゃ、気付く事が出来なかった。
- 263 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:36
- 「…絵里がもう、れいなの事好きじゃないって、知っとぅ。ガキさんの事、好きって事も知っとぅ…」
「は、ちょ…」
「いいけん、聞いて」
何か言いたげな絵里を制する。
ここで一気に言わんと、もうきっと、言えんと思ったから。
後で何言われても何されてもいいから、最後まで言わせて欲しかった。
「それに…フッたのはれいなやけん、ガキさんやめて、またれいなにしてってみたいな事、言えん……。
けど、これ以上絵里に誤解されるの嫌やったし、もう1回、ちゃんと、あの時の事謝りたかったからっ」
傷つけて、ごめん。
泣かせて、ごめん。
勇気振り絞ってしてくれた告白、あんな風に断わって、本当にごめん。
「も、いいよぉ…やめてよれーなぁ…」
頭を下げ続けるれいなに、再び触れてくれる絵里。
絵里、絵里……どうせなら、ほっといて欲しいのに。
もっと、怒ってくれたらいいのに。
絵里は、優しくて。
絵里は、あったかくて。
れいなはつい、甘えて、希望を持ってしまう。
- 264 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:36
- 「今度の土曜……もし、もし、…もし、絵里がれいなの事を許してくれるんやったら、あのカフェに、来て欲しいと…。
あの時と同じ時間に、ずっと、待ってるから」
「え、今度の土曜って…ちょっと待ってよ」
「来なかったら、すっぱり諦めて、今度はちゃんと、心から、彼氏がおってもガキさんとの恋上手く行くように応援するけん……」
「ええっ、な、何彼氏って。ガキさん彼氏いるのぉっ?」
「やけん、最後のチャンス、れいなに下さい!」
「だだ、だからちょっと待ってよ! い、行けないよ、絵里っ」
「でも待ってるから…」
「だから、行けないって!」
分かっとう。そげん言わんでも、分かっとう。
もうガキさんが好きで、れいなの所には行けんって、分かっとう。
だけど最後のチャンス……絵里の優しさとあったかさに甘えて。
これは、れいなの勝手なわがまま。
れいなは、恋でも聞き分けのいい良い子にはなれんかったと。
もうそれ以上「行けない」って言葉を聞くのがつらくて、れいなは、最後にもう1回「待ってるから」と告げて、走って帰った。
せめて、土曜に一方的に待ち合わせたカフェの閉店時間まで、もうちょっと、希望を持ってたかったから――――。
- 265 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:37
- リd;`ー´)
- 266 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/01(木) 09:37
- リd;´ー`)
- 267 名前:松竹藤 投稿日:2006/06/01(木) 09:38
- >>253-264 「君が好き」
予定ではあと2回くらい…の、はず…はず…
っていうかいつまで続くのこの田中さんのネガorz
>>251(233)さん
あの回は絵里推しとしてはとてもおいしく頂けましたw
ガキえりも楽しいですよね、すっごく。
从*` ロ´)<がんがるっちゃ!
>>252さん
どうかラストまでひっそり見守っていてください。。
リd*^ー^)<ウヘヘヘ…絵里人気者で困りますよ?
(;`▽´)<あたしの陰が薄くなるじゃない!(プンプン
从;` ロ´)<石川さん、影が薄くなる以前に本編に(ry
( T▽T)<何なの!何よ!
- 268 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/01(木) 12:07
- 251でした!
おつかれーな!!
あとは亀さんがどうするか…
多分ホントに用事がありそーですねw
次回も期待してます^^
- 269 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/01(木) 13:04
- 絶対二人とも本気で困ってるのに思いっきり笑っちゃった…
ごめんよれなえり… …www
- 270 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/01(木) 21:38
- 更新お疲れ様です。激しくふたりのやりとりににやけていましたw
シリアスなはずなのににやけてごめんちゃい…どこまでもひっそり見守っています
(そしてやっぱりAA劇場だいすきですww石川さんもかわいいですよ?)
- 271 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/01(木) 22:57
- 从*´ ヮ`)<えりり〜ん♪
…1回でいいから聞いてみたい
- 272 名前:無色 投稿日:2006/06/02(金) 11:35
- れいな!頑張って!
ドキドキ。。。次の話、待ってます!
- 273 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:16
- 『どうだった〜?』
「……なんがよ」
『絵里と2人きりのお化け屋敷と、その後じゃん』
遊園地から1人で帰ったその夜、さゆからの電話。
声が何か楽しそう。
「ってかさゆ、どーゆー事?」
『何が?』
「絵里とガキさん応援しようって言ったん、さゆやん」
『あー』
いや、「あー」とか答えになっとらんし。
やっぱりさゆは、分かったようで分からん。
「さゆ、ガキさんの事別に気に入ってないっちゃろ」
『そんなことないよ。ガキさん面白いし、好き』
「…。でもガキさんと2人っきりにしてとか、絵里に言ってどーすると。
絵里がガキさんの事好きって、さゆ、絵里から聞いたんちゃろ?
それってある意味、いくられいなに気ぃ利かせたからっていっても、絵里からしたら裏切りやん…」
『でもれーな、絵里の事好きでしょ?』
「んなっ…っていうか、話が繋がってない! それに、絵里はガキさんがっ…」
『だいじょーぶだよ、きっと』
「そ、そんなん分からんやん…」
だって絵里は、「行けない」って。
ガキさんが好きって言ったのを、この耳で聞いたのはれいな。
それでも、小さな希望を抱いて、絵里にすがったのも、れいな。
- 274 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:17
- 『絵里と付き合う事出来たら、れーな、元気になるよね』
「はぁっ?」
『ちょっと時間かかっちゃったけど、これで元気になるかな』
「ちょ、さゆ、意味が分からんっちゃけどっ」
『絵里とガキさんより、さゆみは、絵里とれーなの恋の応援してるって事だよ』
「でも…」
絵里は、ガキさんの事が。
それは、さゆから聞いて、絵里本人からも聞いた事。
れいなを応援してくれるのは嬉しいけど、じゃあ、絵里の気持ちは。
「さゆ、絵里から相談とかされてるんやったら、れいな応援しても無駄とか、分かるっちゃろ。なのになんでそんな……。
確かにお化け屋敷の時とか、あー言ってくれて、れいなは嬉しかったけど……」
『とりあえずさぁ、れーなは絵里に自分の気持ち言ったの? それ先に教えてよ』
「……言った、けど」
『え、そうなの? 絵里に聞いても教えてくんなかったから、何も言わなかったんだと思ったぁ。
じゃあじゃあ、返事聞いたら、真っ先にわたしに教えてね! 約束!』
「や、さゆ、あの、ちょ…」
勝手に約束を取り付けられて、勝手に切られた。
れいな、まださゆから何も聞いてないんっちゃけど…。
自分大好きなナルシストは、人の話を聞かんとこまでそっくりだと、この部屋の隣におるもう1人のナルシストを思い浮かべながら、れいなは溜め息をついた。
- 275 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:17
-
- 276 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:17
- そして、やってきた当日。
おかげさまで、昨日、全然眠れんかった…。
この日が来るまで、絵里から何通かメールが着たけど、その内容は見てない。
どうせ、【行けない】ってメールって分かっとったから。
そのメール見て諦めるより、れいなは、ちゃんと今日行って、閉店になるまで絵里が来んかったら諦めるって決めたけん、もう変わらんもん。
でもそのメール見たら、諦めんでも切なくなりそうやったけん、見る事はしなかった。
「っていうかれいな、邪魔なんだけど」
「あ」
洗面台の鏡の前で目の下のクマを見てたら、後ろから鏡越しに寝起き丸出しの美貴ねえが。
居候の身ってのもあるし、寝起きの美貴ねえは怖いので、ここは素直にどいておく。
「どっか行くの?」
「ん」
れいなの服を見ながら、美貴ねえが言う。
どこも行かん時は一日ジャージで過ごしているれいなやけど、外に出る時は派手な服装になるので、
今その服を着ているという事は、そういう事。
- 277 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:18
- 「絵里と、待ち合わせ」
「え? えりりん?」
「うん」
れいなの口からまた「絵里」って名前が出たのがそんなに意外だったのか、眠たそうやった目が大きく開かれる。
「なになに、なんで?」
「……もう一回、やり直したいから」
初めて逢った、あの時から。
「…れいな、やっぱ子供やったと」
「ん?」
「れいな、確かにあの時、黒髪ロングじゃなくて、毎日メールしてた絵里の事が好きやったのに」
「気付いたんだったら、いいじゃん」
「…うん」
ほんとは、絵里もまだ同じ気持ちでいてくれたら、もっと嬉しかったけど。
でも、美貴ねえの言う通り、気付けたから。
自己満足でしかないけど、絵里にもう一回謝れて、気持ちを伝える事が出来たから。
そして今日、それに対する絵里の返事を聞く為に。
「今度さ、えりりん紹介してよ、美貴達に」
友達か恋人か、どういう風に紹介出来るかはまだ分からんかったけど、れいなは元気に頷いた。
- 278 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:18
-
- 279 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:19
- あの時と同じ席に、同じオレンジジュースに、同じ時間の13時。
そんでもって、あの時と同じように、絵里は来ない。
身体全部、そわそわしてる。
ドアが開く度、店員さんが「いらっしゃいませ」って言う度、視線を送るけど、れいなが待ってる絵里じゃない。
分かってたけど。
けど、絵里は遅刻魔でマイペースやけんって、認めたくなくて。
1時間過ぎても、2時間過ぎても、ずっと。
そんなこんなで、時間は18時になった。
絵里は、まだ来ない。
オレンジジュースの氷が溶けて、お水が入ったガラスコップの表面は汗かいてて。
身体のそわそわした感じもなくなって、なんか、脱力したように、れいなの身体から力が抜けてた。
5時間放置してたオレンジジュースを飲んだら、ぬるくて不味かった。
これからどうしたらいいのかが、分からない。
でもずっとって絵里に言ったけん、このカフェが閉店する21時まで待ってようかなって。
少しでも長く希望を持って、まだフラれて失恋してないって思いたかったからかもしれん。
そのせいか、待つのは全然苦じゃなかった。
それでも気分はやっぱり落ち込んでるみたいで、もう夕食の時間やのに、お腹も空いてない。
けど来た時にジュース1つ頼んだだけじゃさすがに悪くて、今度は頑張って、コーヒーを頼んだ。
……やっぱり、苦かった。
れいなはまだ、大人になれない。
- 280 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:19
- もっと砂糖を入れて甘くして、お子様コーヒーでも作ってヒマを潰そうとしてたら、れいなの携帯から着信。
まさか絵里、と思ったけど、絵里はそういえばれいなのメアドは知ってても、携帯番号は知らない。それは、れいなも一緒。
じゃあ誰だと思って見てみたら、さゆの文字。
「…もしもし」
『れーな、今日行ったの?』
「は? どこに」
こないだ電話をぶっつり切ってから初めてかけてきたってのに、相変わらず意味の分からん事を。
さゆの話は主語がない。
「今れいな、カフェにおるけど」
『えっ? 絵里の陸上見に行かなかったの?』
「……………はっ?」
『絵里から今日、競技会だって聞かなかった? わたしはバイトだから行けなかったから、れいなに結果どうだったか聞こうって思ったんだけど。
絵里に電話しても全然出ないしさ〜。…あ、そういえば絵里から告白の返事ってどうなったの?』
「ちょ、ちょ、ちょっと待って」
『?』
「なん、それってマジ?」
『それってどれ?』
「今日、陸上、試合」
『うん。っていうかなんでカタコトなの?』
「……」
- 281 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:20
- え。え。じゃあ、じゃあ。
今絵里来んのって、そのせい?
でも待って、そんなんれいな、聞いてない。
…あぁ、そういやれいな、絵里からのメール、見てなかった。
とにかくさゆからの電話を切って、メールを確かめてみたら、ちゃんとメールに【土曜は試合だからどうしても行けない】って書いてて…。
絵里の「行けない」には、れいなの事を好きじゃないからって理由の他にも、ちゃんとした理由があって。
れいなはその理由も聞かずに見ずに、自分が傷つきたくないから、少しでも希望を持っていたいからって、無視してた。
で、結果が、今独りぼっち。
…………じゃあ、もういっか。
もう、待たんでいいよね。
もう、認めてもよかよね。
れいなは、絵里にフラれて、失恋した事。
競技会があったから絵里は来んかったって、もう言い訳にはしない。
きっと、待ち合わせを競技会のない来週にしてたって、一緒やったと思う。
- 282 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:20
- 伝票を持って、立ち上がる。
下を向いたら、泣きそうやった。
認めたら、つらくて悲しくて寂しい現実が待ってて。
それでも、認めんとダメで。
理想ばっかりじゃなく、ちゃんと現実を見んとって、顔を上げたら――。
ハァハァと息を切らして入ってきたって言うより、店に突撃してきた女の子。
茶色く染まった髪はボッサボサ。
カジュアルなパンツスタイルじゃなくて、ジャージ姿。
どっから走ってきたんやろう、前髪が、汗でおでこに張り付いてる。
肩にかけたおっきなバッグには、学校名が書かれてて…。
「待ち合わせなんです」
息を整える事も、トイレに駆け込んで髪を整える事もせんと、キョロキョロと見渡すその子。
泣きそうやった。
だって、その子の待ち合わせ相手は、れいなやったけん。
- 283 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:20
-
目が合う。
見つめ合う。
お互いの名前を、呼び合った。
「…ごめんね、れいな」
「絵里ぃ……」
- 284 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:21
- 从 ´ ヮ`)
- 285 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/13(火) 02:21
- 从 ;´ ヮ`;)
- 286 名前:松竹藤 投稿日:2006/06/13(火) 02:22
- >>273-283 「待ち人来たる」
次でラストにしたい…。
>>268(251)さん
次回少し遅くなってすみませんでした…。
>>269さん
分かってないのは超鈍感な2人だけっていう・゚・(ノД`)・゚・
>>270さん
どこまでもひっそり見守ってくれるとか萌え(ry
(;^▽^)<石川さん「も」の「も」が気に入らない!
リd*^ー^)<石川さんよりも絵里のが可愛いって言われなかっただけマシじゃないですかぁ?
从;` ロ´)<何気にれいなより毒舌な絵里…ガクブル
>>271さん
超聞きたい_| ̄|○
>>無色さん
次の話遅くなりましたがどうぞ。
- 287 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/13(火) 21:38
- 更新お疲れ様です。ひっそり見守りながら泣きそうでした・゚・(ノ▽`)・゚・。
愛しい二人をラストまで正座して待ってるくらいの気持ちで見守っていますw
(AA万歳。毒舌えり素敵wそして我侭な石川さんも素敵ww)
- 288 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/15(木) 22:18
- ばかれーな!(;д;)メール見てよぅ…
- 289 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:39
- 絵里がカフェに来てくれたのはいいけど、なんか、いっぱい聞きたい事とか言いたい事があったのに、言えなくて。
喉渇いてたのか、絵里は運ばれてきた水を、一気に飲んだ。
喉渇いてたんやったら頼めばいいのに、ご注文は、と聞く店員さんには首を振って断わる。
その店員さんが軽く頭を下げてカウンターに戻ってったのを見送ってから、絵里が、申し訳なさそうにれいなに向かって、口を開いた。
その申し訳なさそうな顔見て、思った。
――断わられる。
絵里は優しいからきっと、れいなを許してくれたわけじゃなく、わざわざ、今日、断わる為に来てくれたとね…。
でも、来てくれただけで嬉しい。
でもでも、やっぱり悲しい…。
覚悟して目を瞑ったら、絵里の口から出たのは、意外な言葉。
「あのさ、ほんと悪いんだけど、絵里ん家門限あって……ここ出て、駅まで歩きながら話しちゃダメかな?」
「へ…? あ、うん。全然よかよ」
「…ごめんね、れいな」
「……やけん、いいって。謝らんでよ」
つらくなる。
せっかく、断わられるのが先延ばしにされたって喜んだのに。
とりあえず伝票を持って、れいな達は、絵里と初めて逢って初めて待ち合わせしたそのカフェを出る事にした。
- 290 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:40
-
- 291 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:40
- 駅まで、って事やったけど、少しでも長く絵里と並んで歩いてたくて、遠慮する絵里の家まで送る事にした。
その途中、競技会が終わって、学校で反省会なんかをした後急いで来たから遅くなったって、絵里は言った。
メールで来れないって入れてもれいなからの返事がなかったから、もしかして待ってるかもと思って、って。
しかもまた家に携帯忘れたせいで、連絡も出来んくて。
でも予想以上に遅くなって、もうれいなはおらんと思ってたから、おって、ビックリしたって。
そんなこんなで、時間はもう夜の7時を過ぎてた。
絵里が、さっきから何度も腕時計を見てる。
女の子やのに珍しく腕時計なんてしてるのは、陸上部でタイム計ったりするからかなぁ…。
どうでもいい事考えながら、今度こそ覚悟を決めた。
ほんとは反省会の後まっすぐ家に帰ったらよかったのに、寄り道してれいなのとこに来てくれたから、こんな時間になってて。
もう、絵里を解放してあげんと。
もう、絵里に気ぃ遣ってもらわんように、せんと。
もう、絵里をちゃんと応援してあげんと。
大きくない公園の前で、れいなはゆっくりと足を止めた。
それに気付いて、不思議そうに絵里が振り返る。
- 292 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:41
- 「…絵里、今日はありがと。わざわざ来てくれて…」
「ぁ、ううんっ」
ぎこちない笑顔で絵里が笑う。
れいなは1つ、大きな深呼吸した。
さあ、頑張って言おう。
「……もう、いいよ。はっきり言ってくれて。絵里優しいけん、言い出しにくいのは分かるけど…」
「…へ?」
「今日来てくれたの……ほんとは、れいなの事許して付き合ってくれるんじゃなくて、ちゃんと断わるつもり…なんやろ?」
「ちょ、ちょっと待って。ちょっと待ってよれいな」
「…なん?」
「意味分かんない…ちょっと待って」
両手でれいなを制して、急に頭を押さえて難しい顔し始める絵里。
その態度に、れいなの方が意味が分からん。
「だって、れいな言ったよね?」
「え、何を」
「な、何をって…言ったれいなが忘れたのぉっ?」
信じらんない、って、今度はそんな顔。
けどそんな事言われても…。
「いつどこで言った言葉?」
「だから、お化け屋敷出た後……カフェで待ってるって…」
「あぁ…」
「れいなの事許してくれるなら、あのカフェに来て欲しいって」
「…うん」
「…………だから絵里、急いで来たんだよ?」
「あ、そう……」
そっか…そうやんね……そうそう……――――って、
「えーーーーーっ!?」
- 293 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:42
- それって、つまりどういう事?
待って待って、れいなこそ待って。
れいな天才じゃなくてバカやったけん、頭ん中整理してもっかい考えんと分からんと。
「じゃ、じゃあ絵里は、フッたれいなを許してくれた…って、事?」
「許すとか………でも絵里は、まだ、れいなの事好きだったから…」
「は? ちょ、え、何? 絵里、ガキさんは?」
超嬉しい言葉が聞けた気がしたけど、それ以上に気になる事が。
だって、なんかおかしいこの展開。
ずっと望んでたけど、いざこうなると、色々ナゾな事がありまくる。
「っていうかさ、なんでれいなガキさんガキさんばっか言うの? やっぱりれいな、ガキさんの事好きなんじゃ…」
「ちがくて! ガキさんを好きなんは、絵里っちゃろ!」
「そりゃ好きだけどぉ」
「ほら見ぃよ! やっぱり今日れいなをフリ返しに来たとね、絵里は…」
「だから違うって! ガキさんの好きは、れいなの好きと違うもん! だって………れいなだけだよ、絵里は………。
今でも忘れらんなくて、こんなに胸が苦しいの……」
――れいなだって。
れいなだって、胸が苦しい。
無性に泣きたくなる。
- 294 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:42
- 「け、けど絵里、ガキさんと喫茶店で会った時、ガキさんの事大好きって…」
「それは幼なじみとしてだよぉ」
「じゃあほらあの時っ、遊園地の時、れいなにガキさんの事、友達としてじゃなく好きって言った!」
「え…? あの時って、友達としてって聞いたんじゃなかったの?」
「違う…『友達としてじゃなく』って言った…」
「友達として、しか聞こえなかったよ……れいな、声ちっちゃい…」
「ぐ…」
あぁ、だからあんなにはっきり笑顔で「うん」って……。
でも、でもでも。
「絵里、さゆにガキさんの事ばっか話してるんやなかと? そんでさゆが『ガキさんの事好きなんじゃない?』って聞いたら、『そうかも』とかって言ったって」
「ええっ? 何それ何それ。そもそも絵里、さゆにガキさん話なんてしてないよ! だからそんな話ウソだよぉ」
「あ、あいつ…」
初めっから、そのつもりやったとか。
そう気付いたら、3人で遊んだ時とか遊園地の話持ちかけたりとかお化け屋敷での事とか、告白したって言った後の言葉とか、すべて納得がいった。
「…待って。でも待って。絵里、れいなの恋応援するって言った」
「あー、言ったねぇ」
「もうへーきとか、吹っ切ったって…。なのに、なんで?」
あの時、ショックやった。
自分でフッといて、絵里にそう言われて。
れいなの事すっかり忘れて、そんで、ガキさんに新しい恋したんやって、悲しかった。
だけどそれは、違ってて。
「だってああ言わないと、未練がましくて余計うざいとか思われちゃいそうだったんだもん…。れいな、そう思いそうだし」
「や…何気にそれひどくない?」
「ひどいのはあんな理由でフッたれいなじゃん!」
「ちょっ、やっぱり全然へーきやないやん! っていうか吹っ切っとらんやん!」
「だからまだ好きって言ってるじゃん!」
「え? あ、そ、そっか…」
「……そうだよ」
怒ってた絵里が、急に静かになった。
俯いて、ぎゅっと、れいなの手を握ってくる。
- 295 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:43
- 「ねぇれいな…」
「は、はいっ?」
か細い、胸がキュンってなるような、絵里の声。
れいなの声はというと、可愛さのかけらもなく裏返って、緊張してる。
握られた手の部分だけじゃなくて、身体全部が熱い。
「髪、茶色くても…短くても……ホントに今の絵里の事、好き?」
「ぇ…」
「いきなりで予想なんてしてなかったけど、告白してくれて、嬉しかった。こんなに遅くなったのに待ってくれて、嬉しかった…。
でもまだ、信じらんなくて………だって絵里はれいなの理想のタイプじゃなくなったわけだし…」
「じゃあ絵里だって…。れいな、あんな風にフッて、そんでまたコクったりして…勝手な奴って、嫌いにならんかったと?」
「んー…保存してたれいなの受信メールとかは全部消去したけど、それでも、嫌いにはなれなかった。っていうか、忘れられなかった。
だって、れいなとメールしてた日々、超楽しくて、幸せだったから、絵里」
「れいな…れいなも……。超楽しかった。毎日絵里からメール来る度、喜んで、にやけとった。
ドジした話とか、ほんとにバカで…でもそれが可愛くて………そういう絵里がすっごい好きやったのに……」
最初に好きになったきっかけは、外見やったけど。
それ以上に好きになったのは、絵里の、中身のおかげ。
子供やったれいなは、やっと気付いた。
「髪茶色くても短くても、黒くても長くても、もう、なんでもいい」
少しずつ顔を上げ始めた絵里。
れいなの方が背が低いのに、上目遣いがちな瞳が、れいなをくすぐる。
「れいな、絵里の事が好き……」
- 296 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:44
- やっと、やっと、目を見て言えた。
はっきり、口に出せた。
――――やっと、絵里の笑顔が見れた。
「バカぁ……あの時そうやって言っててくれたら、もっと早く恋人同士になれたのにぃ」
「へへ、そうっちゃね、れいなバカやね…」
「バカだよぅ。バカバカバカ」
「じゃあそんなバカを好きな絵里は?」
「………もっとバカかも」
「――ははっ」
「…プッ。ウヘヘ…」
「やけんウヘヘとかキモイってー」
「でも好きなくせにぃー」
ああそうったい。
好きよ。好いとぉよ。
7時間でも24時間でも、絵里の為なら待つとよ、れいな。短気やのに。
「あの時は言えんかったけど、絵里、その髪似合っとぉよ?」
「ほんと?」
「うん。触ってもいい?」
「え、う、うん」
握ってる手はそのままで、空いてる方の手を、絵里の髪まで伸ばす。
指先で触れた絵里の髪は、公園の灯りにうっすらと照らされて、明るくて。
そんでもって、細くて、柔らかい。
「……また伸ばして、黒くしなくてもいい?」
「ん?」
「このままでも、れいな、ずっと好き?」
「うん、好き」
中身がずっと、絵里のままなら。
外見がどんな風になったって、もうきっと変わらない。
- 297 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:44
- 「…絵里ぃ」
「なに?」
「……怒らん?」
「なぁにぃ」
「…………キスしたいんっちゃけど、今」
れいなのファーストキス。
絵里は、どうかなあ。
したいかな、れいなと。
れいなが、絵里のファーストキスの相手でいいのかな。
「…絵里も、したい」
「ファーストキス?」
「そうだよ…」
言いながら見つめたら、赤くなった。
ちょっと背伸びして顔を傾けながら近付けたら、目を閉じた。
- 298 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:45
- ファーストキス。
絵里と。
あともうちょっとで――――
「あれっ? ぅおーい、そこにいるのはカメと田中っちではないかい?」
「ワンワン!」
――――空気を読めん人と犬に、邪魔された。
- 299 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:46
- よく考えれば、そうたい。
ここは、絵里の近所の公園。
ということは、絵里の幼なじみのガキさんの近所の公園でもあるって事で。
そんなとこでキスしようとしたられいな達も悪かった。
けど、まさかこんな展開になるどころか、れいなはフラれると思ってここにしたわけで、まさかファーストキスがここになろうとは一ミリも思わんかったわけで。
まあそのファーストキスは、今目の前に来た人と犬に邪魔されたわけやけど。
「ガ、ガキさん! っていうかアルもぉ?」
「アル?」
「あ。この犬、うちの家の犬なの」
あと数センチってところやった絵里の唇の距離が、人と犬――ガキさんとアルによって、1メートル程離れてしまった。
赤い顔は、まだ当分引いてはくれんけど。
「カメがなかなか帰って来ないからって、おばさんに、あたしが散歩頼まれたわけよ」
「うわ…ごめんね。お母さん怒ってた?」
「そんなに怒ってはなかったけど。っていうか、長い事放置されてたアルの方が怒ってたよ」
「アルごめぇん」
ハァハァ舌出してしっぽを振ってるアルの頭を撫でて、謝る絵里。
許してくれたのかどうか分からん顔で、アルは、近くのブランコの柵に、足を上げてシャーッと。
……アルは、男の子らしい。
「っていうか、どうしたの。田中っちってこっちの方向だったの?」
「あ、いやそうじゃないけど…」
よかった…絵里とのキス未遂は見られてなかったらしい。
や、多分見られてたんやろうけど、まさか女同士がそんな事しようとしてるなんて発想がガキさんにはなくて、キス未遂と思われなかったとか。
「あー! そうだ! ガキさん彼氏いるって何!?」
ここで何をしてたかそれ以上突っ込まれたくなかった絵里は、おっきな声で急に話を変えた。
- 300 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:46
- 「は!? 彼氏? 何それ!!」
その話に同意するどころか、理解不能の顔してガキさんが大声を上げる。
…近所から苦情とか来んやろうか……近所じゃないれいなが心配する。
「何それって、絵里が聞きたいよ! なんで絵里に黙って隠してたのさー」
「や、だから意味分かんないんだけど。は? 彼氏? 誰に? あたしに?」
「そうだよ。ね、れいな」
「ふえ? あ、う、うん」
いきなり絵里に話を振られた事に驚いたけど、そういやその話は、れいなが絵里に言ったんやった。
そんで絵里は、今聞いてご存知の通り、知らんかったらしくて…。
こうして、れいなは聞けんかった、直線本人に聞いてみたら、何か、話が合ってない。
「だってガキさん、こないだ、駅で金髪の男の人と手ぇ繋いどった」
「駅で金髪の男の人と手を繋いでた…?」
「なんやったっけ……ま、ま…」
ま、なんとか…。
あの時ガキさんが言ってた相手の人の呼び方を忘れてしまって、それ以上思い出せん。
出て来るのは、ま、ま、まつうらあや、ばっかりで、れいなはこれ以上思い出す事をやめた。
こんな時まであの人を思い出したくない……。
「ちょっと待って……ま、なんとかって………まこちぃ?」
「あ!! そうそうっ、まこちぃ!」
「まこちぃ?」
諦めたれいなの代わりに、ガキさんが。
ああ、すっきりした。
そして、眉間にずっとシワ寄せてたガキさんの顔も、同じく。
すっきりしてないのは、まこちぃって人を知らん絵里だけ。
- 301 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:47
- 「あー、はいはいはいはいはいはいはいはい。まこちぃね、まこちぃ」
『はい』言い過ぎっちゃろ、っていう突っ込みはとりあえず置いといて。
「あれはねぇ、違うのよ田中っち。まこちぃは彼氏じゃなく、友達。っていうか、あたしがバイトしてるとこの、一個上の先輩なんだよね。
同じ学校じゃないから、カメは知らないし」
「そっかぁ。でも手繋いでたってれいな言ってたよ? 友達だからって男の人と手ぇ繋ぐ? 絵里は絶対出来ない…」
「いや、それはあんた男嫌いだからで…まああたしも出来ないけどさ」
「けどそのまこちぃって人とは手ぇ繋いでたんでしょお?」
「うん。繋いでた。まこちぃスキンシップ大好きだから」
「じゃあじゃあ…」
それってやっぱり、彼氏なんじゃ。
彼氏じゃなくても、友達以上恋人未満とか。
でもそれは全部、違くって。
「あのね、まず根本的に間違ってるのよ。まこちぃ、男の人じゃなくて、女の子だからね?」
「「はっ?」」
お、女の子…?
つまり、れいな達と、一緒?
確かに背はそんな高くなかったけど、で、でも髪短かったし胸もなかっ(ry
――って、あぁ。
またれいな、やってしまったと。
また外見で判断してしまった……。
まあこの場合は、確かめてもないし、遠目やったんで仕方ないって事で……。
- 302 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:48
- 「っていうかまこちぃ、スキンシップ大好きだけどちゃんとあさ美ちゃんっていう相手いるしねぇ。
あの後だって、一緒に遊ぶ予定で、あさ美ちゃんが待ってるとこまで言ったら、手ぇ繋いでるの見て、あさ美ちゃんずっと怒ってたからね。
しかも、あたしに対しては全然普通なんだけど、まこちぃが言う事だけ全部無視なの。いやー、あれは可哀想だったな、うん」
「「へぇ……って、え?」」
なんか、疑問部分が。
ユニゾンしてた絵里も、気付いたっぽくて。
れいなと絵里、思わず顔を見合わせる。
「ねえガキさん。まこちぃって人も女で、そのあさ美ちゃんっていう人も、女だよね…?」
「つまりそれって…」
「んぉ?……って、うわあああっ?! い、言っちゃった! 言っちゃったよぉおお」
「「……」」
「ねっ、こ、これ、言っちゃダメだよ? あ、でも2人はまこちぃとあさ美ちゃんの事知らないか…。
あ、でもでも、引いたりとかしないでね? 確かに日本じゃ受け入れられにくいけど、好きに形はないじゃん?」
慌てて言うガキさん。
言葉は早口で、妙に言い訳くさかったけど、2人の事を理解して応援してるのは、伝わってきた。
「ってか絵里、そんなんやったら、ガキさんにも言えたやん」
「あ…そうだね。じゃあ…今言っちゃった方がいいかな…?」
「言っちゃおっか?」
ガキさんに引かれて離れて行っちゃうかもって、ずっと怖くて、自分が同性愛者やって事、大好きな幼なじみで命の恩人でもあるガキさんに言えんかった絵里。
だけどそれがこんな形で、引かれんし離れんやろうって事が分かったから。
「あのね、ガキさん……ずっと黙ってたんだけど、絵里とれいなとさゆも、実はそうなんだよね。…あ、さゆはちょっと違うかな」
「そんでもって、さっき、れいなと絵里、そのまこちぃとあさ美ちゃんって人みたいな関係になったんです」
「……………うそぉ?!」
たっぷり15秒の沈黙の後、予想通りの反応をガキさんはしてくれた。
- 303 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:49
- 「ちょ、ちょっと待ってよ……ねえ待って。お願い」
「いや、お願いされんでも待ってますけど」
「確かにカメには男の子と浮いた噂1つもなかった。それどころか好きな人の話すら聞いた事なかったですよ、ええ」
「…っていうかガキさん、何その喋り方…」
「うっさいバカメ!!!」
「なっ…!」
ちょ…バカメって……バカとカメ足して、バカメ?
それってどうよ。どうなんよ。
でもなんか急にシリアスなフンイキになって、口には出せんかった。
「いきなりそーゆー事言われて混乱してんの! 分かる!?」
「わ、分かってるよ。でもっ、このタイミングで言った方が一番いいかなって思ったんだもん!」
「タイミングもハミングもないよ! なんでそーゆー事、ずっと一緒にいたあたしに隠してたの!」
ちょ…ハミングって柔軟z(ry
ダメだ……このノリで、突っ込めん。
「だ、だからそれは…ガキさんが………でも今、そういうのでも引かずに応援してるって分かったから…」
「…バカだよ、ほんとにカメは。あんた、あたしが引いて、もうカメと付き合わないと思ったの?
そりゃまこちぃ達の関係初めて知った時はビックリしてちょっと距離置いて最初はぎくしゃくしたけど、それでも、2人は普通にお互いを好きで……
なんでそれがいけないんだろうって、性別を見て恋愛するんじゃなくて、人間を見て恋愛するんだから、同性同士だっておかしくないじゃんって、その内思って…。
今は普通に友達で、2人の応援もして、たまに仲裁役にもなりながら、仲良くやってる。
…………カメもそうだって知ってたら、今までもっと色んな事聞いてあげれた。
カメとは腐れ縁じゃん。何したって、もう切れないよ。それに……カメは元が変なんだから、ちょっと人と変わった事言ったって、あたしは、カメを軽蔑したりしないよ」
「ガキさぁ〜ん…」
「ごめんね、今まで言えなくて苦しかったんだよね。気付いてあげられなくてごめんね」
「ヒック、そ、そんな事ないぃ…絵里こそ言わなくてごめんぅうう」
「田中っちとそういう仲になったんなら、ほら、田中っちに慰めてもらいな。その代わり、田中っちとケンカしたら、あたしが慰めてあげるから」
「ング……ぅん」
- 304 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:49
- ガキさんは、ほんとに人間としてどんな時でもカッコよかった。
こんな人が近くにおって、絵里がれいなを好きになってくれたのが不思議なくらい、カッコよくて。
れいなもこんな風になりたいって、本気で思った。…ハ○ングは、置いといて。
「……ところで、さ」
「「?」」
「ごめん。……ちょっと興奮して、リード途中で離しちゃってて、今気付いたら、アル、いなくなってた」
「「……………うそぉ?!」」
そんなカッコいいガキさんの真似を、たっぷり15秒の沈黙まで絵里と揃えて。
……カッコいいっていうか、ガキさんは、バカッコいい。
- 305 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:50
-
結局アルはなかなか見つからんくて、絵里とガキさんの家族総出で探して、30分後に見つかった。
- 306 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:50
-
- 307 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:50
- 日曜日。
さゆとれいなと、そして絵里。
「2人ともおめでとー」
パチパチ、と、さゆの白いちっちゃい手で拍手する音が、喫茶店の中で響く。
ほんとは喜んでいい所なんやろうけど、さゆには、他に言いたい事がいっぱいある。
「よくも、ある事ない事、れいなに教えてくれたな、さゆ…」
「何? れーな怒ってんの? っていうかなんでわたしが、可愛いって言われるなら分かるけど、怒られなきゃいけないの?」
「さゆが、絵里がガキさん好きとか言うからっちゃろ!」
おかげで、れいながどんだけ悩んだか…!
しかもそのおかげで、遊園地で一時絵里に嫌われかけたし。
まあ、その後、お化け屋敷で絵里助けて、さゆのおかげで仲直り出来たようなもんやけど…。
「だって、そう言わなきゃれーな、絶対絵里に告白したりとかしなかったでしょ」
「えっ、そ、それは…」
「絶対絵里の事気にしてるって見てて分かってたけど、れーなは認めようとしないしさぁ。
絵里の気持ちもさゆみは知ってたし、こうなったらウソでもついて、2人くっつけてあげなきゃって思ったの。
だから2人は、今日ここでさゆみに、チョコレートパフェをおごらなきゃいけないの」
「はぁ? ふざけんなっ」
「やだよぅ。絵里お金ないもん」
「……ふーん、恋のキューピットに、そーゆー事言っちゃうんだ……」
恋のキューピットって…そんな可愛らしいかぁ?
…ま、顔は可愛いけど。
でもでもでも、絵里の方が可愛い。
- 308 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:51
- *「もういい。一応報告はしたし、絵里、今度は美貴ねえと亜弥ちゃんに紹介するけん、今から行こ」
「ぇえ? さゆは?」
「あのバカはもうほっといたらよか」
どうせ一緒におっても鏡見るだけやし、チョコパをおごらんといけんなんて、ごめんやし。
絵里の手掴んで立とうとしたら、
「……れーな、いいの?」
なぜか、そのさゆに不敵に笑われた。
「は…? な、なんがよ?」
「このわたしに、そんなこと言っちゃっていいんだぁ……じゃあれーなのあんな事も言っちゃっていいかなぁ?」
「あ、あんなことってなんよ…?」
べ、べべ別にれいな、さゆの前でそんな変な事はしとらんはず…。
絵里にバレて困るような事は、絶対に……
「なになに? 絵里の知らない事?」
「うん。あのねれーなね、絵里の画像初めて見た時ね、
『知り合いになりたい! お近づきになりたい!! 彼女になりたい!!! エッチがしたい!!!!』って、ここで大声で叫んでたんだよね」
「――――」
- 309 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:51
- サァーっと血の気が引く。
そ、そういえばそんなこともあったような……。
「で、でも! エッチがしたいって最後まで言っとらんよ?! だってエッチがしたいって言う前にさゆ止めたやん!!」
「れーな、声がおっきい」
「ハッ…」
クスクス漏れる笑い声があちこちから。
注目されてる。れいな。
ああどうしよう。どうしたらよかと?
絵里、助けて、絵里………
- 310 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:52
- 「え、絵里?」
全身真っ赤にした絵里が、気付いたら震えてた。
これって………誰のせい?
っていうかこれって、恥ずかしいからか怒ってるからか、一体、どっち?
「…ぃな………い…」
「え?」
「…………エッチしか頭にないれいなは、嫌い!!!!!」
「ぶふぅっ?!」
恥ずかしくもあり怒ってもいる絵里に、超協力なビンタをされて、吹っ飛ばされた。
そして陸上選手の絵里は、超特急で消えてって。
………………なんなん、この展開。
- 311 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:52
- 「れーな、フラれちゃったね……可哀想に。でも大丈夫! またさゆみが仲直りさせてあげるから」
「うぅ、ありがとさゆ………って、あんたのせいやろおおおおおおお!!!!」
美貴ねえ、ごめん。
れいな、まだ美貴ねえの元に絵里を彼女として連れてくのは、もうちょっと時間がかかりそうです……。
「絵里ぃっ! ちょ、待って! 絵里ぃいいいいいいいい…」
- 312 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:53
-
理想と違って、現実は、なかなか手厳しいもんやね…。
从*´ ヮ`)从*^ー^)<まっ
从*` ロ´)从*`ー´)<俄然強めんたいこ!
ヽ从*´ ヮ`)(^ー^*从ノ
>>289- 「これから始まり」
以上にて「理想と現実―田中れいなの場合―」は終了です。
今まで読んでくださいました方々、本当にありがとうございました。
今まで書いてたカプとは違って、田中さんと亀井さんメインで初めてした文、
書きなれてなかったり間違った事もたくさんありましたが、楽しかったです。
スレ容量はまだ残ってますが……また何か思い浮かんだらって、事で…
短編は、名無しで実は書いている森板の「一期一会」スレにて、またマターリうpさせて頂きます。
では、また、会える日がきましたら………
ありがとうございました。
>>287さん
( T▽T)<今日で終わりだから、このやりとりも最後だね…ウッウッ
从;` ロ´)<ショ、ションナ!!憧れの石川さんにツンデレのツン部分を楽しんでたのに…!
从;^ー^)<デレが始まる前に終わってしまいましたよ?
(*^▽^)<あ、デレはいいの。だってあたしMだから♪
从;´ ヮ`);^ー^)<……
>>288さん
从;´ ヮ`)<ばかでごめん…
- 313 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:54
- 从*´ ヮ`)从*^ー^)<まっ
- 314 名前:理想と現実―田中れいなの場合― 投稿日:2006/06/18(日) 21:54
- ヽ从*´ ヮ`)(^ー^*从ノ
- 315 名前:松竹藤 投稿日:2006/06/18(日) 21:56
- 氏にたい_| ̄|○
最後の最後で大失敗とかほんとマジ勘弁_| ̄|○ _| ̄|(:;.:... _| ̄!:. ::;....... _i:.....:...:: ::;.:;..
その為に削除依頼出すのもアレなんで、読みにくいってか萎えますが、もうこのままで…スミマセンスミマセン
- 316 名前:桜桃 投稿日:2006/06/19(月) 00:21
- 从*^ー^)<どんまい!
从*・ 。.・) <気にすることないの!
更新お疲れ様です。
いやーこのシリーズはこんまこの頃から見てますがどれも大好きです。
個人的には道重さゆみの場合を読んでみたいですw
いや、もちろん亀井絵里の場合もです!!
- 317 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/19(月) 01:12
- よかった!ガキさん最高だよガキさん!
そして作者さん最高だよ作者さん!!
- 318 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/19(月) 16:21
- 更新&完結お疲れ様です。某カプの心配を密かにしてたので最後にわかって安心しましたw
個々のキャラ設定がよくて読みやすかったです。
ほんとに楽しく時に切ないお話を読ませていただいて感謝です。
終わりも、ものごっついよかったですw
(そして石川さん遊んでくれてありがとうだいすき。゚(゚´Д`゚)゚。)
- 319 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/21(水) 10:29
- お疲れ様でした。
とても面白かったです。ちゃいこーです。
そして「一期一会」スレ見てます。本当にありがとうございました。
- 320 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/03(日) 10:31
- ochi
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