古の血
- 1 名前:M_Y_F 投稿日:2006/01/21(土) 00:59
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久しぶりに書かせていただきます。
読み苦しいところがあるかもしれませんが
最後までお付き合いください。
- 2 名前:M_Y_F 投稿日:2006/01/21(土) 01:00
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カツカツ・・・
ハイヒールの音が甲高く響く。
電柱には薄黒く光る灯り。
細く入り組んだ道を灯すには暗すぎる
大きな通りが10Mほど行けばあるとは思えない。
「嫌だなあ・・」
いかにも痴漢が現れそうな道。
慣れた道とはいえ、歩く速度も上がる。
「寒――い」
背中を丸め、手をこすりながら歩く。
北風に長髪がなびく。
白い吐息が顔を覆う。
あと2,3分でアパートにたどりつくところだった。
肩を軽く上下させ、バッグの紐の位置をずらす。
いつもの光景が目に入る。
ポストからはチラシがあふれていた。
「いい加減にしてよね」
つい愚痴がこぼれてしまう。
何の変哲もない一日が終わるはずだった。
- 3 名前:始まり 投稿日:2006/01/21(土) 01:01
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ズザァーーー
突然、何かが倒れる音がした。
頬に何かかすった感触が残る。
「やばいな」
その倒れた音の方から声がした。
視線は必然的にその声の主に移る。
「うっ・・・」
声がそれ以上出なかった。
あまりの無残な格好に言葉が思いつかない。
映画やTVでしか見たことがない光景。
自分がいる場所がどこだかわからなくなった。
背中に感じる冷たい視線。
足がすくんで動かない。
- 4 名前:始まり 投稿日:2006/01/21(土) 01:02
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アパートの入り口の光が妙に明るく見える。
―嘘でしょう―
目を何度も見開く。
そこには全身血だらけの女性が倒れていた。
―救急車―
バッグの中の携帯に手が伸びる。
「死にたくなかったら動かないで」
呟くような小さい声。
声に逆らって携帯を握った。
「後は知らないよ」
生ぬるい息が耳に注ぎ込んでくる。
全身が硬直していく。
目の前を長身の女性が横切っていく。
顔ははっきりわからなかった。
ただ、異様なオーラを発しているように見えた。
- 5 名前:始まり 投稿日:2006/01/21(土) 01:03
- 長身の女性は血だらけの女性のところへ歩み寄っていく。
「裕ちゃんもいいところあるんだ。
あのまま避けていれば怪我せずにすんだのに」
長身の女性は笑いながら話しかける。
「そんなことないわ・・
圭織、腕落ちたとちゃうんか?」
「簡単に死なれたら面白くないでしょう?」
長身の女性と血だらけの女性が話しているのが聞こえてくる。
- 6 名前:始まり 投稿日:2006/01/21(土) 01:04
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ポタポタ・・
長身の女性の足元に赤い液体が広がる。
予想もしない展開に思考が飛んでいく。
「逃げろ!」
血だらけの女性の声も聞こえない。
「裕ちゃん、さよなら」
長身の女性の足元から白い獅子が現れた。
「そうはさせん」
血だらけの女性の足元からも赤い鳳凰が現れた。
映画のようだった。
現実を忘れるには十分だった。
- 7 名前:始まり 投稿日:2006/01/21(土) 01:05
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強風が吹き荒れ、小石が顔に当たる。
頬に小さな痛みを感じた。
ふと我に戻る。
―やばい・・―
思ったときには目の前が真っ暗になっていた。
薄れゆく感覚。
滴り落ちる血。
―死にたくない―
一瞬、竜のようなものが見えた。
- 8 名前:始まり 投稿日:2006/01/21(土) 01:05
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「きゃーーー」
目の前の悪夢を振り払うように飛び起きた。
白い壁と白いカーテン。
いつもの場所とは違っていた。
辺りを見回すと見慣れないものばかり。
自分の体は包帯だらけ。
「先生、目が覚めました」
薄いピンク色の服を着た看護士が声をあげる。
傷の具合を確かめる医師。
不思議な感じだった。
何があったか思い出そうとするが思い出せない。
帰宅途中だったことまでは覚えていた。
- 9 名前:始まり 投稿日:2006/01/21(土) 01:06
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「治療中、すみません
私、警察の安倍なつみといいます」
「はい」
突然のことに頭が回らない。
「後藤真希さんですね」
「は・・・い・・」
首を傾げながら返事をする。
「何があったか教えてください」
「何があったって・・・」
思いつく節がない。
こっちが教えてほしいくらいだ。
10分ほど質問が続いたが何も回答できなかった。
- 10 名前:始まり 投稿日:2006/01/21(土) 01:07
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警察が帰ったあと、記憶の糸を懸命に辿った。
何も思い出せなかった。
- 11 名前:始まり 投稿日:2006/01/21(土) 01:07
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「さて、次は先日起こった事件の続報です」
「えっ」
TVの画面に思わず絶句した。
そこはアパートの前だった。
アスファルトにこびりついた血。
―そんな・・―
顔が引きつっていく。
―私・・・―
何かから逃れるようにベッドへと急いだ。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/26(木) 01:37
- 続き期待
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/27(金) 09:32
- ゆうちゃん発見!うれし〜!!
- 14 名前:M_Y_F 投稿日:2006/01/28(土) 23:08
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>>12 名無飼育さん
>>13 名無飼育さん
レスありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。
不定期の更新になりますけど
- 15 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:09
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―やばかったな―
裕子は座禅を組んだまま、圭織との戦いを振り返っていた。
圭織の力は十分にわかっていた。
倒せない相手ではなかった。
―こいつのおかげで―
裕子はくるぶしの内側のひときわ赤い斑点を見つめた。
そこだけがまだジンジンと痛みがある。
どんな重傷でも怪我な半日あれば治る。
だが、この傷はなかなか治らない。
「新しい仲間を見つけたのか・・」
裕子は少しばかりの不安を覚えた。
脳裏にその場面が蘇ってくる。
- 16 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:10
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圭織との戦いの最中だった。
有利に戦いを進めていたはずだった。
- 17 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:11
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チクッ
くるぶしにかすかな痛みを感じた。
足元を見ると、虫のようなものがいた。
よく見ると蠍だった。
気づいたときには蠍の姿はない
- 18 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:11
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「うぁーーー」
足の痛みに集中力がなくなっていく。
圭織の獅子の爪と牙が次々と襲ってくる。
防戦一方だった。
足の痛みが全身へと伝わっていく。
裕子の鳳凰の翼から羽根が飛び散っていく。
―死―
その言葉が頭をよぎった。
- 19 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:13
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すべてを覚悟したときだった。
―うそや―
いきなり、青く輝く竜が現れた。
こんなところで古の血の持ち主に会うとは思わなかった。
裕子の脳裏に真希の横顔が焼き付けられた。
- 20 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:13
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―絶対に・・・―
裕子は静かに目を閉じた。
- 21 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:14
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- 22 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:14
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「あの女、頭にきた!」
圭織は頭を左右にふる。
ソファの上のクッションを窓へ投げつける。
「アハハハハー」
その圭織を見て笑う別の人影。
「なんだよ・・・その笑いは」
「だってさ・・・ずっと同じこと繰り返しじゃん
DVD見てるみたいだ」
笑いは止まらない。
「いい加減しないと怒るよ」
頬を膨らます。
- 23 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:15
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「でもさ、せっかくチャンスをあげたのにさ」
「それは、あの女が・・」
圭織は唇を噛む。
「まぁ、あんなのが現れるのは想定外だよね」
「まずいなあ」
圭織は頭を抱える。
- 24 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:16
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「圭織、おいらに任せとけって
おいらは正体ばれてないし」
「矢口、大丈夫?」
「やるしかないでしょう・・
裕ちゃんと組まれたら、厄介だよ」
「そうだよね」
圭織は頷く。
力は本物だった。
味方にしておくほうが得だ。
一つの間違いは圭織が攻撃したところを見られたことだった。
- 25 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:16
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「あのさ、お願いがあるんだけど・・」
「何?」
改まった顔に圭織は不安げな表情を浮かべる。
「おいら、もう少しここにいていい?」
「かまわないけど・・」
「やった。バイト、首になったからさ」
「また・・」
「悪りぃ。」
手を合わせて頭を下げる姿に圭織はため息一つついた。
- 26 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:16
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- 27 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:17
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「これは・・・」
コーヒーに口をつける
先に出る言葉を飲み込むようだった。
真希が入院している病院ではカルテを前に頭を抱える医師の姿があった。
ネームプレートには保田圭と書かれていた。
- 28 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:18
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―血液のこの値・・・―
常人では考えられないものだった。
他の医師なら、すべての医師にそのことを告げたであろう。
しかし、圭にはできなかった。
検査のデータを改ざんし、真のデータは自分の机に隠した。
もちろん、違反であることは承知していた。
真希が運びこまれたとき、真っ先に治療にあたったのが圭だった。
- 29 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:18
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「類は類を呼ぶ」
皮肉なものだった。
恐れていたことが怒るのか。
圭の手が震えていた。
科学が進んだ時代に、古の戦いが蘇るのかと。
- 30 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:19
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圭は一冊の本を取り出した。
ボロボロの本だった。
アラビア語で書かれた文章。
院内では誰も読めるものはいない。
―私と同じ・・―
圭は絶望を隠しきれない。
人間として医師として、それはあまりにも悲惨なものだった。
- 31 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:19
-
ゆっくりとページを開く。
そこには誰も知らない話が書かれていた。
何度も目を通してきた文章だ。
希望の道を模索するが何も見つからない。
天にすべてを任せることしかできない
- 32 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:20
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“古の血”
それは古代から受け継がれてきた血。
太古の昔、人間は自然の一つにすぎなかった。
しかし、人間はあまりにも非力すぎた。
哀れに思った神々は人間に知恵を与えた。
そして、気まぐれな力も・・
気まぐれな力は極一部のものだけに与えられた。
しかも、その力を引き出すには多くの条件が必要だった。
神々は人間を軽く見ていた。
- 33 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:21
-
だが、人間が知恵をつけ始めると状況は変わった。
偶然の産物は人間を悪魔に変えた。
この古の血を利用しようとあちらこちらで争いが起きた。
神々は争いを止めようとしたが止められない。
神々は同じ力を他の人間に与えた。
その人間たちよって、力は封じ込められた。
- 34 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:21
-
しかし、それは完全なものではなかった。
時間がすべてを振り出しに戻す。
古の血を巡り死闘が繰り返されてきた。
決して、表に現れることはなかった。
- 35 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:22
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すべての血が獣に変わる。
すべての血が地に染み込む
すべての地が闇に消える。
- 36 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:22
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そして、この時代でも死闘が繰り返されるのか・・
- 37 名前:思い 投稿日:2006/01/28(土) 23:23
-
圭は本を読み終えると屋上へと足を運んだ。
圭は祈るように空に輝く星たちを見ていた。
- 38 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/01(水) 18:19
- はじめまして!
引き込まれました。
次回が楽しみです。
- 39 名前:M_Y_F 投稿日:2006/02/04(土) 23:48
- >>38 名無飼育さん
ありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。
- 40 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:49
-
「後藤さん、身体の調子はどう?」
グレーのパンツスーツ姿の女性が真希の病室へと入って来た。
「刑事さん、いつも来ていただいてありがとうございます」
真希は深々と頭を下げる。
「刑事さんはやめて」
「安倍さんでいいですか?」
「いやぁ、“なっち”って呼んでよ」
「でも・・・」
「なっちさぁ、堅苦しいの嫌いなんだよね」
そこにいたのは、最初に事件のことを聞いてきたなつみだった。
「では、なっちさん・・」
「もう!“さん”はいらないって言ったべさ」
「べさ・・」
真希の口元がヒクヒクと動く。
「あぁーー!なっちのこと、馬鹿にしてるだべ」
「そんなことないけど・・・アハハハハ」
「ひどいべさ!」
頬を膨らますなつみ。
腹を抱えて笑う真希。
なつみは怒って見せるものの笑みを浮かべた。
それは子供を暖かく見守る母のようであった。
- 41 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:50
-
「ごめんなさい・・」
落ちついた真希はなつみに頭を下げた。
「いいよ。いつものことだから・・
でも、笑いすぎだべ」
「ごめん・・」
肩をすくめる真希になつみは笑ってみせる。
―やっと笑顔が見れた―
なつみはほっと息をつく。
事件があってから真希と会ってきたが、今までこれほど笑顔を見たことはない。
これで少しやっと一歩進める気がした。
- 42 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:51
-
「後藤さん、あの事件で他に覚えていること教えてくれない?」
真希は肩で大きく息をすると、何かを考えるように目を閉じた。
沈黙が続く。
なつみは何も言わない。
事件が事件だけに相手の傷をえぐるようなことはしたくなかった。
本当なら、もう尋ねたくはない。
警察の職務上尋ねないわけにはいかない。
- 43 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:51
-
時間だけが流れていく。
今までと変わらない時間だった。
- 44 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:52
-
「ごめんね・・
嫌なこと思い出させて」
なつみはその場を立った。
- 45 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:52
-
「待って、なっち」
「どうしたの?」
いつもと違う態度になつみは椅子に座りなおす。
「馬鹿にしないでね・・」
「わかったよ。なっちも馬鹿だからさ」
真希の申し出になつみは頷く。
- 46 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:54
-
「あのとき、二人の女の人がいたことは言ったよね」
「誰にも信じてもらえそうにないから隠してたんだけど」
「うん」
「実はね・・二人の女性の近くでライオンと鳥が戦っているのが見えて
わけがわからないうちに、私も怪我しちゃって・・
死にたくないと思ったら、突然、龍が現れてさ
気づいたら、病院にいてさ」
真希はすべてを告げるとなつみの顔を見た。
「えっ・・・」
なつみの表情は真希の予想と違っていた。
笑われて、一言二言何か言われると思った。
しかし、なつみは右手をあごに当てて何かを考えているようだった。
真希の言葉を無視しているかのようだった。
- 47 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:54
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「おかしいでしょう?」
「・・・・」
なつみは無言のまま。
「もう聞いてるの!なっち!」
「ごめん・・・」
「なっちだから、話したのに」
「本当にごめん」
真希はベッドの中に潜りこんだ。
- 48 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:55
-
布団の隙間から、そっとなつみを見る。
そこには難しい表情をしたなつみがいた。
何か知ってるようにも見えた。
「なっち、何か知ってるの?」
「ううん・・・」
なつみは慌てたように首を振る。
「な・・・」
真希はその先の言葉を飲み込んだ。
なつみは真希の言ったことをすべて否定はしてないように思えた。
それに、なつみの様子を見ると聞けるような感じじゃなかった。
- 49 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:56
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なつみは天井を見上げながら、あれこれ考えていた。
顔を戻すと、そこには真希の心配そうな顔が見えた。
「そろそろ退院じゃない?」
なつみはちょっと上ずった声で質問する。
「だと思うんだけど」
なつみの言葉に真希はあいまいに答える。
「もう、特に悪いところないんでしょう」
「そう言われてるけど」
真希は渋々頷く。
「担当の先生は?」
「保田先生だよ」
「保田先生か・・・」
なつみは思い出すかのように首を傾げる。
- 50 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:57
-
「保田先生、知ってるの?」
「噂だけはね」
「教えてよ」
「あくまでも噂だからね」
真希の興味津々な顔になつみは人差し指を口を当てながら話し始めた。
「腕はいいらしいよ」
「それは、知ってる」
真希はうんうんと頷く。
「けど、食べ物とかお酒はオヤジが好きなものばかりで、色気ないんだって」
「そう・・」
なつみの話は続く。
真希はときより笑いながらその話を聞いていた。
- 51 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:58
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えっちな話題にも話が移る。
「後藤さん、狙われてるんじゃない?」
「ちょっと、やめてよ」
「だって、両刀使いだって、噂もあるよ」
「私はそんな気ないから」
「でもかわいいからさ・・わざと退院させないとか」
なつみは調子によってしゃべる。
しゃべっていくうちに、真希の顔が何故か引きつっているのに気づいた。
「どうしたの?」
「あのぉ〜」
真希はなつみの肩のあたりを指差す。
そのしぐさになつみは嫌な感じがした。
後ろを振り返ろうにもできそうもなかった。
背中に視線が突き刺さってるのがビンビン感じる。
- 52 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:58
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「あなたたち」
なつみが振り向くとそこには圭の姿が。
かすかに肩が震えていた。
- 53 名前:記憶 投稿日:2006/02/04(土) 23:59
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「ごめんなさい・・・これで」
それは一瞬だった。
「あぁ、なっちだけずるい」
真希は、なつみが慌てて病室を去っていくのを見ているしかない。
「あぁ・・・」
口が開いたままだった。
- 54 名前:記憶 投稿日:2006/02/05(日) 00:00
-
「ご・と・う・さ・ん」
静かな口調だった。
真希は慌てて背筋を伸ばす。
「ごめんなさい」
真希はあやまるしかなかった。
「ちょっと、言っておくわね」
圭の説教が始まる。
真希には苦痛の始まりだった。
すぐに帰ったなつみがうらやましかった。
- 55 名前:記憶 投稿日:2006/02/05(日) 00:00
-
「私はノーマルだからね」
「は・・・はい」
「今度、変なこと言ったら」
圭は軽く真希の頭をこつくと病室を出た。
―怖い―
圭の後ろ姿にある意味で恐怖を感じていた。
- 56 名前:記憶 投稿日:2006/02/05(日) 00:01
-
なつみは病院を出ると、近くの公園のベンチに腰をかけた。
缶コーヒーを口をつけながら、真希の言葉を思い返す。
―ライオンに鳥に龍―
なつみには他人事に思えなかった。
- 57 名前:記憶 投稿日:2006/02/05(日) 00:01
-
―幼稚園時代に交通事故にあっていなかったら―
真希の言葉になつみは自分の過去を振り返っていた。
笑い話で終わらせるはずだった。
交通事故に遭うまでは、なつみにも同じような経験があった。
交通事故を境にその経験はしていない。
- 58 名前:記憶 投稿日:2006/02/05(日) 00:02
-
忘れ去られようとした記憶が蘇ろうとしていた。
- 59 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/07(火) 22:49
- 面白そう
続き待ってます
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