幸せなら

1 名前:メモ 投稿日:2006/01/21(土) 02:20

いろいろな短編です。
2 名前:メモ 投稿日:2006/01/21(土) 02:20
始めは みきいしよし で・・・
3 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:21


ピンポーン ピンポンピンポーン


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あれ?いないのかな?


ピンポンピンポンピンポーン ピンポーン


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン


4 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:22


ガチャ


なんだいるじゃん。


「梨華ちゃん、おはよー」

「お、おは、よう」


梨華ちゃん?息切れしてる。なんで?


「どったの?なんか疲れてない?」

「え?・・・そう、かな」

「息切れしてるじゃん」

「階段、急いで降りてきたからさ」

「そっか、ママさんは?」


5 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:23


あたしはズカズカと梨華ちゃん家に入っていく。



梨華ちゃんとは幼馴染で、家も向かい側にあるから

お互いしょっちゅう家を行き来してる。

梨華ちゃんは小さいころから美貴の後ばっかり着いて来て、

一人じゃ行動できない子だった。

だからいつも美貴が手をつないで梨華ちゃんを引っ張ってた。

梨華ママからは「美貴ちゃんが居れば安心ね」って

よく任されていた。

梨華ちゃんは甘えん坊で、美貴はしっかりもの。

こうやって今まで育って来た。



6 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:25



「今日は誰もいないの。それより美貴ちゃんどうしたの?」

「どうしたのって。暇だから遊びに来たの」

「あ、そっか・・・」



梨華ちゃんは落ち着かない様子でそわそわしながら、

二階を気にしてる。


何か変だ・・・なんだろ・・・



「じゃ、梨華ちゃんの部屋でも行こうかな」

「え?部屋?今汚いから入らないほうがいいよ!
 ほんとヤバイぐらい汚いから。絶対入れないよ」



7 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:26



やっぱり何か隠してる。二階に何かあるんだ。


あたしは「そう」なんていいながら、
二回に行くタイミングを計っていた。



「なぁんか、喉かわいたな。烏龍茶とかある?」

「あ、うん、あるよ。ちょっと待って」



梨華ちゃんが後ろを向いた瞬間に
あたしは二階にダッシュしてみた。



「えっ?ちょ、美貴ちゃん!!ダメェェェェ!!」



8 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:27



梨華ちゃんは叫びながら急いで追いかけてきたけど、
時すでに遅し。

あたしはいきおいよく梨華ちゃんの部屋のドアを開けた。



バンっ!!!



「うぉわ!!」


「・・・・・誰!?」



9 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:28



そこにはあたしの知らない人が座っていた。

しかもかなりくつろいで・・・


その人を凝視する。でもなんかどっかで見たことあるような・・・
・・・・思い出せない・・・



「美貴ちゃぁん、ダメって言ったじゃぁん」



梨華ちゃんは頬を膨らませて怒っているみたいだけど、
そんなこと気にしていられない。いったいこの人は・・・



「梨華ちゃん!!この人誰!?
 変な男を家に上げちゃダメだよ!!」

「美貴ちゃん!!男じゃないよ、女の子だよ!」

「えっっ?」



10 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:30



うーん、確かに良く見ると綺麗な顔してる。美人だ。

でも誰?美貴の知らない梨華ちゃんの友達って誰なんだ〜〜〜!!



「で、どちら様?」

「はじめまして!吉澤ひとみです」



少し怯えながら自己紹介を始めた。

何?そんなに怯えることないじゃん。美貴睨んでたかな?

元々目つき悪いからさ、しょうがないんだよ。



「はじめまして、藤本美貴です。
 梨華ちゃんの幼馴染です。家は向かいです」

「ども・・・」



11 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:31



しばしの沈黙・・・お互い見つめあう・・・

こいつ何者??梨華ちゃんの何なの??

美貴に内緒にするような人ってことだよね。



「美貴ちゃん、分かんない?」

「何が?」



なんかイライラして、そっけなく答えてしまった。

ヤバイ、嫌な言い方しちゃった・・・



12 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:32



「怒ってる?・・・前に見せたじゃん。
 その、あの、私の・・・」



そこまで言われて思い出した。こいつ梨華ちゃんの恋人だ!

くっついて写真撮ってるのを一回見せてもらった。

でもそれがものすごく不快で、すぐに返した。

それ以来梨華ちゃんは美貴の前でこいつの話を一切しなかった。

きっと不機嫌になったからだろうな・・・



「あー、思い出した。恋人さんだ」



13 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:32



梨華ちゃんは顔を赤くして俯いて、小さくうなずいた。


ちゃっかりしてるんだなぁ、美貴の知らないところで。

やっぱなんか、こいつムカつく。

美貴の梨華ちゃん取りやがって!!


美貴のほうがたくさん梨華ちゃんのこと知ってるんだから。

小さいころからずっと一緒なんだから。

お風呂だって一緒に入ったんだから。

他にもたくさんあるんだから・・・・・・



美貴は気にする素振りを見せずに、ベットに寝転がった。
二人は気まずそうな顔をして俯いている。



14 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:33



「美貴ちゃん、喉渇いたって言ってたよね?
 何か飲み物持ってくるね。よっすぃーも要るでしょ?」

「え?あ、うん。要る」



「ちょっと待ってて」って言って、
梨華ちゃんは下に降りていった。


ってかさ、普通二人きりにしないよね?

一回も話したことないんだよ?

メチャクチャ気まずいじゃんか。



15 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:34



ギシっ



恋人さんが徐に立ち上がった。

やっぱ気まずいと思ったんだろうな。


「ちょっと、トイレに」

「あぁ、いってらっしゃい」


別にトイレに行くぐらい何も言わなくていいけどさ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


遅いなぁ、二人とも。眠くなちゃった。

スー スー スー



16 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:35



*****************************




ギュっ




「??よっすぃー?どうしたの?」

「ん?抱きしめたくなったの」


カワイイ。普段は男の子っぽいけど、ふと可愛くなるんだよね。



17 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:35



「あれがいっつも話に出てくる美貴ちゃんだよね?」

「そう!幼馴染の美貴ちゃん」

「生まれてからずっと一緒に居る美貴ちゃんだよね?」

「うん、ずっと一緒にいる美貴ちゃん」

「・・・・目つき悪いね、怖かった」

「あ、ゴメンね。昔から目つきだけは悪いの」



よっすぃーはどんどん私の首に顔を埋めてくる。
どうしたの?って聞いても反応なし。


18 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:36



「よっすぃー??」



私は肩にあるよっすぃーのおでこに口づけをした。

よっすぃーは少し顔を上げて嬉しそうな顔をしたから、

正面に向き直し、首に腕を回して今度は唇に口付けた。



優しく、優しく口づけていたはずなのに、

いきなり激しいもの変わる。



19 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:37



「ん、、んぁ、、、んぅ」



激しく舌を絡め合い、唇から息が漏れる。

よっすぃーの手が服の中に入っていく。



「ん、よっすぃー、、ダメェ」

「我慢できないよ」

「だって、、、美貴ちゃん居るし、、、
 降りてきたらどうするの?」

「大丈夫だよ。・・・さっきの続きがしたい」



20 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:37



さっきの続きというのは、美貴ちゃんが来る前のこと。


私たちがそういうことをしようとした時に、美貴ちゃんが来た。


途中だったから、火照っているのは私も一緒。


でも美貴ちゃんが降りてきたら困る。


絶対に見せたくない、あんな姿。見せられない・・・



21 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:38



「大丈夫、降りてこないよ」

「な、、ンっ、で分かる、、の?」

「さっき眠そうな目してた。だぶん寝てるよ」



そう言いながらわき腹を擦って、私を導いていいく。
幸せの世界に・・・




*****************************



22 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:39



「ん、あぁ、あれ?寝ちゃってた」

「おはよー。疲れてたんじゃない?
 ぐっすり眠ってたよ?」



ホントだ。一時間ぐらい眠ってたみたい。

はぁぁぁぁぁああぅ。梨華ちゃんのベットは気持ちいいなぁ。


横を見ると、梨華ちゃんと恋人さんが笑いながら話していた。


幸せそうな顔。最高の笑顔じゃん。

ってか、なんかスッキリした顔してない?

さっきまではどんよりしてたのに・・・??



23 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:40



「藤本さん。あの・・・」



恋人さんがいきなり話かけてきた。



「その・・・梨華ちゃんのこと、大切にするんで。
 幸せにするんで。あたしに任せてください!」



こいつは何を言ってるのかと思ったけど、その目はとても真剣で。



24 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:41



きっと・・・

ってか絶対に幸せにしてくれるんだろうなって思った。


美貴の大事な大事な幼馴染を、大切にしてくれるんだろうなって。


この目は信じても大丈夫。


変な男に捕まるよりは、この人と一緒に居てくれたほうが安心だ。



「梨華ちゃんを、ヨロシクお願いします」



25 名前:幼馴染 投稿日:2006/01/21(土) 02:42



梨華ちゃんが笑顔で居れるなら。

幸せで居れるなら。

あなたに梨華ちゃんを任せるよ。



美貴の役割はもう終わりかぁ。



「あーあ、美貴も早く恋人見つけようっと」




                          END



26 名前:メモ 投稿日:2006/01/23(月) 00:03



いしよし


27 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:04



付き合い始めて7ヶ月。

私たちはまだキスより先に進んだことが無い。



「梨〜華ちゃん」

「よっすぃー、いつの間に来たの?」

「んん?今」



ここは私の家。よっすぃーには合鍵を渡しているから、出入りは自由。

私が仕事に行っている間に部屋の掃除をしてくれたり、
ご飯支度をして待っていてくれたりする。



28 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:04



私たちが出会ったのは約3年前。

前に住んでいたところでお隣さんだったのが始まり・・・


最初は愛想の悪い人だなぁって印象だったけど、
ある時から話すようになって、
やっぱり話してみなきゃ人って分からないなって思った。

よく笑うし、よく喋る。

私を飽きさせたことは1度もない。はず・・・


でも、ふとした時にすごくせつない顔をしていた。

誰かを思い出しているような、寂しい顔を・・・


29 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:05


私も一緒だったと思う。忘れられない人が居たから。


つらい恋をしてきて、忘れられない人が居て。

あんなに人に話すのが嫌だったのに、
よっすぃーにだけは何のためらいもなく話すことが出来た。

それはきっと、とても優しい目で話を聞いてくれたから、
私も話すことが出来たんだと思う。



「今日は何食べたい?」

「う〜ん、ハンバーグとか?」

「えー、カレーライスでいいでしょ?
 もう材料買っちゃったし・・・」

「・・・最初から決まってるんなら、
 何食べたいとか聞かないでよ」

「いやいや、一応聞いておかないとと思いまして」


30 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:06



よっすぃーは今、調理師の専門学校に通ってる。

就職先ももう決まっていて、免許の取得と卒業を待つだけ。

だからいつもおいしい料理を作ってくれる。

簡単なもののはずなのにとってもおいしい。

才能とかあるのかな?こういうのにも。



「シーフードだよ!今日はエビとかイカとかたくさん入ってるよ」

「美味しそう・・・いつ出来るの?まだまだ?」

「うん、まだまだ」



31 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:07



そう言いながら、私の隣に座る。見つめる。



「どうしたの?」

「ん?カワイイなぁと思って」



ニコニコしながら恥ずかしいことを平気で言ってくる。


カワイイのはよっすぃーのほうだよって言ってあげたいけど、
彼女はそんなこと望んでないだろうなって思う。

言われるよりも言いたい人。

愛されるよりも愛したい人??

違う、愛されたい人。愛されていると感じたい人。

愛されていないと思ったら、逃げちゃう人。

どんなに愛していても、愛されてないと意味がないと思う寂しい人。

32 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:07



1年ぐらい前に私は就職をしたため、引越しをした。

今まで毎日のように一緒に居たのに
急にその当たり前のことがなくなっただけで、
寂しい毎日を送るようになった。

もっと楽しい話を聞きたい。もっとカワイイ笑顔を見ていたい。


会いたい。


そう思ったのは私だけではなく、彼女も一緒だった。



33 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:08



『ダメだ、梨華ちゃん。梨華ちゃんが居ないとダメだ』

『うん、、、ダメだね。寂しすぎる・・・』



お互いが居なくてはダメ。

そう思って、私たちは付き合うことにした。


34 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:08


でもそれは1番ではなくて・・・
忘れられない人が居たから。

だから2人とも『2番目に好き』

そう言い続けてた。



35 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:08



「ねぇ、よっすぃー。いつまで帽子被ってるの?」



彼女はずっと帽子を被っている。来たときからずっと。

青に黄色が入っているニット帽で、相当お気に入りらしい。



「カワイイでしょ、この帽子。もらったさ」

「だれに??」

「・・・分かんない。学校のひと」

「・・・分かんないってどういうこと?」

「だって、もらってください。って言うからもらった」



36 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:09



出たよ、バカ。なんで知らない人から物もらうんだろう。

私なら怖くてもらえないよ。

きっと理想の帽子だったんだろうな・・・

それにしてもカワイイ。帽子被ると倍増するんだよね。



「フフ、よっすぃーカワイイ」

「でしょ?この帽子カワイイっしょ?」

「帽子じゃなくて、帽子を被ってるよっすぃーがカワイイの」

「えー、そうかな?」



37 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:09



私は顔が綻ぶのを止められなかった。

だって本当にカワイイんだもん!!


写真に収めておこうと思い、デジカメを取りに行こうとしたら、
よっすぃーがくだらないことを言い出した。



「どうせさ、前の人のことでも思い出してたんでしょ?
 カワイイ人だったんだもんね」

「なーに言ってるの?思い出してない」

「いいよいいよ。どうせあたしは『2番目に好きな人』だからさ」



38 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:10



よっすぃは口を尖らせて、そっぽを向いている。


私はどうにも我慢できなくなって、
彼女の膝の上に向かい合って座った。



「よっちゃん。なんでそういうこと言うの?」

「だってぇぇ。」

「私ね・・・」



39 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:10



私は完全によっすぃーが1番になっていた。

1番というか、オンリーワンになっていた。



「私、よっすぃーが1番だよ。他に誰も居ない。
 よっすぃーだけ。よっすぃーだけが好きなの」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」



40 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:11



「それ、、、ホント??」

「ホントだよ。もうよっすぃーしか見えないもん」

「そう・・・・・」



沈黙



「あの・・・すっげぇ嬉しい」

「え?」

「すげぇ嬉しい!!マジで?1番?やっと1番?」



41 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:11



あれ、喜んでる。はぁ、良かったぁ。



「梨華ちゃん!!あたしも梨華ちゃん大好き!!」

「ホントに??」

「ホントもホント。マジマジ!!
 好きすぎて、壊れちゃう」



私は安心して、よっすぃーの首に腕を回して見つめあう。

ホント綺麗な顔。そう思いながらキスをした。

優しくて甘いキス。よっすぃーも優しく返してくれる。



42 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:12



「ねぇ、ちょっと・・・我慢できないかも」

「何が?」

「あのさ、、、その、、、ねぇ」

「なぁに?分かんないよ」



よっすぃーは顔を真っ赤にしてモジモジしてる。

分かってるんだけどね、何が言いたいのか。

でも分かってるなんて言いたくないし。


言葉で伝えて?あなたの優しい言葉で教えて?



43 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:12



「・・・梨華ちゃんを・・・・愛したい。
 全身で愛したい」

「ん、、、愛して?愛して?」



激しく絡み合う舌。貪るように交わされるキス。

もう止まらない。明日が仕事でも学校でも・・・



44 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:13



「ん、あ、、、うん、んん」


よっすぃーの手が私のセーターを脱がせて、ブラだけにする。

さらにブラの中に手を入れ、直接触れる。


「あ、、、んぁ、、はぁっ、あ」


ブラを剥ぎ取り、上半身だけ裸になる。


「綺麗・・・梨華ちゃんはどこでも綺麗だね」


よっすぃーがニヤニヤしながら胸を凝視している。

見られているだけ、ドキドキしてきてウズウズしてくる。

触ってほしい。素直にそう思った。


45 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:14


「よっちゃ〜ん・・・早く、、、」

「ん?何が早く?」

「・・・・・触っ、、、て」

「どこを?って聞いたらつら過ぎるよね」


そう言いながら胸の先端を触りながら転がしてくる。


「んぁ、、、はっ、あン、ん」


先端の突起を口に含み舌で転がす。


「あ、いやぁ、ん、、、んぁ、はぁ」

「カワイイ。もっと感じて、愛しまくるから」

「ん、愛し、、て、、、あぁ、たく、、んぁ、ん」


46 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:14


突起を重点的に攻められ、意識が遠のいていく。

よっすぃーの手が下のほうに伸びてくる。

私はその手を止める。


「待ぁって、ん、ベッ、、、ト」

「そうだね、いこうか」



47 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:15



それから私たちは今までの欲求を埋めるかのように、
激しく抱き合った。

何度もキスをされて・・・何度もイカされて・・・

私たちは愛を確かめ合った。

すごく好き。ずっと好き。



48 名前:@番 投稿日:2006/01/23(月) 00:15



「梨華ちゃん、、、愛してる」



よっすぃーの素直な言葉を聞きながら、私は眠りに落ちていく。



とっても心地の良い眠りに・・・・・





                          END



49 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/23(月) 02:04
甘すぎてヤバいです!(>∀<)
短編なのがもったいない
次の更新待ってます(>_<)
   
50 名前:メモ 投稿日:2006/01/24(火) 17:10


>>名無飼育さん

 ありがとうございます。
 読んでくださっている方が居ると思うと、
 どんどんやる気が出てきます。

 早速更新です。
51 名前:メモ 投稿日:2006/01/24(火) 17:11



いしよし



52 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:11



「こんにちは」



声がしたほうを向くと、笑顔の人が立っていた。


だれ?この人・・・



「こんなところで会うなんて偶然ですね」



ここは街の本屋さん。サッカー本を立ち読みしているところ。

あたしは知らない人に話しかけられている。



53 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:12



「あ、どうも」

「この間は楽しかったです。ありがとうこざいました。
 あんなにはしゃいだのって久々で」



はしゃいだ?あたしはこの人とはしゃいだのか・・・

いつ?どこで?

そんなこと聞けるわけない。

眩しいぐらいの笑顔で話されたら・・・



54 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:13



「え、あ、っと、それは良かったです」

「・・・とっても優しくしてくれたし・・・」



優しく?言い方がなんとも・・・エロイ。

つーかこの人自体がエロイ空気出しまくってる。

なんなんだ、この人・・・



「あぁ、はぁ・・・」

「カラオケとかもね、久々だったの。
 仕事が忙しくてあんまり遊べないんだよね」

「あぁ・・・」



55 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:13



カラオケに行ったんだ・・・


あたしは彼女のことを思い出そうと必死だった。

そんなあたしと対照的に、彼女はマシンガンのように喋り続ける。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


彼女は喋るのを辞め、あたしの顔をじーっと見てきた。



「私のこと、、、覚えてないでしょ?」

「え?」



56 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:14



あたしは焦って訳のわからないことを言った。



「スイマセン!!
 あ、その、あの、実はその、全く全然覚えてなくて。
 あの、ホントに、えっと、スイマセン!!」



必死で謝った。

きっと誘ったのはあたしだ。

なのに覚えてないなんて失礼な話はない。


彼女は「やっぱり」なんて言いながら悲しい笑顔だった。



57 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:14



「かなり酔っ払ってたもんね」

「ホントごめんなさい」

「覚えてないよね」



彼女は急にあたしの耳に近づき、耳元で囁いた。



『あんなに激しかったのに』



58 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:14



あたしの顔は火がついたように真っ赤になっていると思う。

彼女はいたずらっ子のような顔をして微笑んだあと、
あたしに背を向けて歩き出した。


あたしはその後姿を見つめながら、彼女の笑顔が離れない。





「え?・・・なに?」



あたしは彼女を追いかけて、腕を掴んでいた。



59 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:15



「あ、ごめんなさい」



彼女はあたしの言葉をじっと待っている。



「どっか、、、喫茶店でも行きませんか?
 忘れちゃってたお詫びと言いますか・・・奢ります」



彼女は優しく微笑んで了承してくれた。



60 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:15



近くの喫茶店に入った。それまでの間、一言も話さなかった。


呆れてるんだろうなぁ。覚えてないとか有り得ないし。

しかも確実に・・・やっちゃってるもな・・・



「何飲みますか?」

「じゃあ、紅茶で」

「何か食べますか?」

「ううん、いらない」

「はい。じゃあたしは・・・」



61 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:16



店員さんを呼んで注文をして、それでも沈黙・・・


聞きづらいけど、聞かなきゃダメだよね。

はっきりしないと。



「あの・・・あたしたちって、いつ会いましたか?
 失礼なこと聞いてるっていうのは分かってるんですけど、
 気になっちゃって」



彼女は「あぁ、そうだね」なんて言いながら話してくれた。



62 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:16



「私が友達と飲んでたときにね、いきなり話しかけてきたの」



これは俗に言う、ナンパというやつだろう。

話しかけたときには、もう呂律が回ってなかったらしい。



63 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:17


*****************************



「お姉しゃん達、一緒に飲みましぇんかぁ?」

「え?」

「一緒に飲みましょうよぉ」

「・・・大丈夫?」

「らいじょうぶれすよ?」

「よっちゃん!!ちょっと、スイマセン」

「いえ、大丈夫ですか?」

「いや〜大丈夫ではないんですけど・・・
 まぁ何とかします」



64 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:17



ほとんど何を喋ってるか分からない状態で。

でも一生懸命・・・ナンパしていたらしい。


はぁ、情けない。酔ったいきおいでナンパなんて。

一生の不覚だ・・・



65 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:18



「はは、面白い!一緒に飲もう!」

「亜弥ちゃん!?」

「いいでしょ?二人よりはたくさんで飲んだほうが楽しいし」

「それは楽しいけど・・・」

「ホントれすか?
 やったぁ、何飲みますぅ?」

「ちょっとよっちゃん!すいません。
 ホントにもう帰りますから」

「なんで〜?いいじゃん!一緒に飲みましょ?」

「あぁ、はぁ」



66 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:18



こうしてあたし達は一緒に飲み始め、カラオケに行ったそうだ。

そこであたしは途中から動かなくなり、
最後にはトイレで吐いていたらしい。

彼女が介抱してくれたそうで・・・

他の二人は盛り上がってしまい、あたしのことをシカト。

しょうがなく世話をしてくれたみたいだ。


さらに二人はあたし達をおいて帰ってしまったらしく、
彼女が家まで送ってくれたらしい。



*****************************


67 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:19



「本当にスイマセンでした!」

「いいよ、もう。済んだことだし」



そこまで話を聞き、あたしはなんとなく思い出したことがあった。

悪友の美貴と飲みに行って、調子に乗って飲みまくった日を。

目が覚めたときには自分の部屋で、
いつものことだから美貴が連れてきてくれたと思っていた。


この人が連れてきてくれたのか・・・全然気にしてなかった。

恥ずかしすぎる!!


あたしは恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。



68 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:20



「誰にでも失敗はあるから。大丈夫」



彼女は優しく微笑んで、
気にしない気にしないって何度も言ってくれた。

彼女の優しさに感謝!!と思いながら、あたしは美貴を恨んでいた。


置いてくなんて酷いよ。今度会ったらガツンと言ってやる!!


彼女が帰る支度を始めた。



69 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:20



「話も終わったし、私帰るね」

「あぁ、すいません、呼び止めたりして」

「特に予定があるわけじゃなかったから、大丈夫よ」



どこまでも優しい彼女。あ、名前聞いてない。



「あの、名前教えてもらえますか?
 あたしは吉澤ひとみです」

「ふふ、知ってるよ。私は石川梨華です」

「石、川さん。覚えておきます」

「今度は忘れないでね?」



70 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:21



どこまでも眩しい笑顔。


こんな可愛らしい人に介抱してもらったなんて・・・

ん?そういえば・・・



「あの、、、さっき言ってた激しかったって・・・」



あたしは勇気を振り絞って聞いてみた。

だって激しいことっていったら、、、あれぐらいしか・・・



71 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:21



「え?あぁぁ、まぁ、そういうことかな」

「そういうことって」

「自分で思い出してね!
 どうもごちそうさまでした」



そう言い残して、石川さんは帰っていった。


はぁ。あたしって最低人間だ・・・



72 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:21


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それから一週間。あたしは石川さんの笑顔が頭から離れなかった。

どこに居ても思い出してしまうあの笑顔。

あの短時間で、優しい笑顔や寂しそうな笑顔、
イタズラっこのような笑顔と、いろんな笑顔を見せてくれた。



73 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:22



「はぁ」

「おっ?どうしたのよっちゃん、ため息なんてついて」



美貴はいつになくテンションが高く、あたしに纏わりついてきた。


あ、そういえば!!



74 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:22



「美貴!!なんでこの間置いて帰ったんだよ!
 いつもならちゃんと送ってくれるのに」



美貴は訳が分からないという顔をして、口をポカンと開けている。



「なんのこと?」

「惚けるなよ!!あたしと石川さんを置いて帰ったでしょ!!」



美貴は「あぁ」と言って、いきなり笑い出した。



75 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:23



「何笑ってるんだよ!!」

「だぁって、
 あれよっちゃんが石川さんと一緒に帰るって駄々こねたんだよ?」

「え?えぇぇぇ?」

「マジだから。マジデジマ」



あたしは一瞬時が止まったように感じた。


駄々こねた?石川さんは何も言ってなかったじゃないか。

そんなの知らないよ。ウソだよ、ウソ!!



76 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:23



「ウソだ!絶対ウソだ!!」

「ホントだって!よっちゃん、石川さんのこと気に入っちゃって、
 全然離れなかったんだから」

「・・・・・・・」



もう絶句ですよ。言うことないですよ。

石川さんに相当迷惑かけてますよ。


あたしは居ても立ってもいられなくなり、
もう一度石川さんに会おうと決心した。



77 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:24



「美貴!!石川さんの連絡先とか分かる!?」



あたしは必死だった。

石川さんにもう一度ちゃんと謝りたいという気持ち。

そしてもう一度会いたいという気持ち。

会いたい気持ちのほうが強かったと思う。

とにかくあたしは必死だった。



=============================


78 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:24



カラン



あたしは今喫茶店に居る。石川さんの名前を知った喫茶店。

待ち合わせ時間の10分前に石川さんは現れた。



「ごめんね、待った?」

「いえ、全然。こちらこそごめんなさい、呼び出したりして」



そういうと石川さんは笑顔で首を横に振った。

優しい笑顔。また見れた。



79 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:25



「でもビックリしたよ。私の番号なんて知らないと思ってたから」

「あ、いや、最初は一緒に居た子に聞いたんです。
 そしたらあたしの携帯にも番号が入ってて・・・」

「そっか」



また笑った。でも今度は悲しい笑顔。

笑顔を作るのが癖なのかな。



80 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:25



「それで、あの、この前のことまた謝りたくて」

「もういいよ。そんなに気にしないで」

「気にします!!」



突然大きな声を出したから、石川さんはビックリしていた。



「だって、お世話になったのに覚えてないなんて、
 酷いことじゃないですか。謝っても全然足りないです」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・沈黙



81 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:26



石川さんは何も言わない。あたしも何も言わない。



あたしが謝ろうと思った瞬間、石川さんが喋りだした。



「ホント最低。酷い。謝られても許したくない」



絶句。ついに言われた。



82 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:26



「あんなに介抱してあげたのに、
 顔すら覚えてないとかありえない」



石川さんの愚痴は続く。



「第一、
 何でわたしが始めてあったばっかりの人の
 面倒見なきゃいけないわけ?
 友達居たでしょ?何で私なの?」



「もう、イライラする」なんて言いながら、
アイスティーの氷をザクザクやっていた。


あたしは申し訳ない思いで全然喋れない。


83 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:27



「でも、、、ホントにもういいから。
 またぶり返されると逆にイヤだ」

「あ、はい。すいません」

「もう謝らないでよ、わたしもスッキリしたし」



石川さんは本当にスッキリした顔をしていた。

それに引き換えあたしの顔は・・・



「出よっか。散歩でもしたいなぁ」



84 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:27



石川さんがそう言うので、あたしは会計を済ませて、
一緒に散歩した。


空は綺麗に澄んでいて、雲ひとつ無い晴天。散歩日和だね。


10分ぐらい歩いたときに、石川さんが言った。



「じゃ、これでもう終わりね」



ドクン



85 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:28



ドクン



あたしの心臓が音を立てて、あたしに何か問いかけてくる。


終わり?これで終わりなの?いいの?終わっていいの?


終わりたくない。何のために今日ここに来たのか。



「あたし・・・」



喋りだしたあたしをじっと見つめる石川さん。



86 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:28



「本当は、謝りたかったのは本当なんですけど・・・
 ただ、あなたに会いたかったんです」



石川さんの目が大きく見開いた。



「ずっと、、、あなたに会ってからずっと、
 あなたの笑顔が頭から離れないんです。
 全ての笑顔を見ていたくて、どんな笑顔も、、、全部」



87 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:29



あたしは思っていることを自然と口に出来た。

素直な気持ち。彼女に出会わなければ持てなかった気持ち。


さらに思う。



「あたしは今、あなたの怒っている顔を見ました。
 笑顔意外も見たいんです。あなたの側で、
 あなたのいろんな表情を見ていたいんです」



石川さんは、今にも泣き出しそうな顔をしている。

そう。あたしはあなたの泣きそうな顔も見たいんだ。



88 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:30







「あたしと付き合ってください」







「はい」







89 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:30




返事は意外と早かった。



「はい」と言われた瞬間、あたしは石川さんを抱きしめた。



耳元で囁く。「アリガトウ」

胸の中で囁かれる。「アリガトウ」



90 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:31



あたし達は必然的に惹かれあったのかもしれない。


ナンパしたのも、本屋さんで会ったのも、
偶然じゃなく必然だったんだ。


出会いがなんであれ、惹かれあった二人が離れることはない。



91 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:31



ふとあたしは思い出したことがあった。


そういえば、あたしたちもうやっちゃってるんだよね・・・


そんなことを石川さんに言うと、彼女は笑って、



「ふふ、あれは、激しく吐いたって意味だよ?
 吉澤さんてエッチなんだね」



92 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:32



吉澤ひとみ、顔から火が吹いています!!



恥ずかしくなって、さらに強く石川さんを抱きしめた。


彼女もギュって抱き返してくれた。



93 名前:笑顔=必然 投稿日:2006/01/24(火) 17:33




あたしが彼女と出会ったのは必然。彼女の笑顔も必然。



だからこれからも彼女とずっと一緒にいるのは必然なのだ。




真っ赤な夕日もお祝いしてくれているよ。





                          END




94 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/24(火) 22:00
テンポが良いから読みやすくて
良いですね〜(^O^)
あと2人とも可愛い感じで♪
黒verとかちょっと読んでみたい
   
95 名前:ななし 投稿日:2006/01/24(火) 22:17
好きです、この感じ^^
96 名前:愛虎 投稿日:2006/01/24(火) 23:06
おもしろい!!
石川さん視点も読んで見たいなぁ。
97 名前:メモ 投稿日:2006/02/07(火) 01:01


>>名無飼育さんサン

 ありがとございます。
 二人ともまだまだ若いときですね、きっと。
 黒verは少し考えて見ます!



>>ななしサン
 
 好きな雰囲気を出せて良かったです。
 設定がバラバラなのでこの先気に入って頂ける
 雰囲気があるか心配ですが、
 気に入って頂けるようにやってみます!!



>>愛虎サン

 ありがとうございます。
 石川さん視点は考え中でございます。
 また楽しんでいただけるようにやってみます!!
98 名前:メモ 投稿日:2006/02/07(火) 01:02



いしよし



99 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:03



あたしは今でも彼女が好き。


でも彼女はあたしの前から姿を消した。


もう2年も会ってない。


いつのまにか20歳になっている。


会いたい。いつも思う。会いたい。



100 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:03



=============================



「よっちゃん!
 今度高校のときの先輩とか友達とかと飲み会あるんだけど、
 行けるよね?」

「へ?いつ?」

「今週の土曜日。行こうね?」

「なに、その強制的なかんじ・・・」

「だって、、、矢口さんとかがよっすぃー連れて来いって
 うるさいんだも」



101 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:04



あたしは美容師の専門学校に通っている。

今一緒にいるのは親友の美貴。こっちは大学生。


久々に会ったと思ったら飲み会の話かよ。

最近金欠だしなぁ・・・



102 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:04



「それ・・・絶対に行かないとダメ?」

「ダメ!絶対行かないとダメ!!」



美貴が「何されるか分からないよ」とブツブツ言っている。


確かにあの先輩達は怖かった。



「でもさ、金無いんだよね・・・」

「大丈夫!!矢口さんが出してくれるから」

「マジ?」

「うん!マジマジ!!」



103 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:04



金がかからないなら行ってもいいかなぁ、なんて思う。

あの先輩達に会うのも久しぶりだしね。



「わぁーった。行きますよ」

「ホント!?良かったぁ。じゃ、土曜の夜はあけといて」

「了解。それより亜弥とか元気?」

「元気元気。みんな元気だよぉ」

「そっかぁ」



104 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:05



あたし以外の仲の良い友達達は、みんな美貴と同じ大学に通っている。

その大学に行くのが嫌で、1人だけ専門学校に進学した。

まぁ美容師に憧れてたってのはあるけど・・・



「あ、美貴バイト行かないと。んじゃまた連絡するから」

「え、あ、うん」



105 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:06



美貴は手を振って行ってしまった。


あたしは美貴たちに会ったあと、必ず思い出す彼女のことを。

苦しくなるほど思っている一つ年上の彼女のことを。



「会いたいなぁ」



106 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:06



土曜日。



あたしは近くの駅で美貴・亜弥・ごっちんと待ち合わせをして、
店に向かう。



「いやーホント久しぶりだよね。よしこ元気だった??」

「元気だよー。誰も連絡くれないんだも」

「よっすぃーからも連絡無かったじゃん」

「そうだけどさ・・・みんなのほうが多いんだから、、、」

「まぁまぁ、今日は会わなかった分の話がたくさん出来るし、
 いいじゃん」



107 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:06



みんな昔と変わらない。

見た目は少し大人っぽくなってはいるけど、中身は子供のまま。


懐かしいなぁ、この雰囲気。癒されるわぁ。。。



「でもホントにさ、今日は楽しくなりそうだよねぇ。色々と。
 ねぇ、よっすぃー?」

「あ、あぁ。楽しいだろうね・・・色々って?」

「ふふ、もしかしてよっすぃー」

「亜弥ちゃん!!ほら、ほらほら、早く行かないと。
 矢口さんたち待たせるとうるさいから」



108 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:07



美貴は話を遮り、亜弥の手を掴んで早歩きになる。



「え?何?なんかあるの?」

「んぁ?知らない」



ごっちんは知らない風で、その雰囲気が別にいっか。

って思わされてしまった。


あたしたちも美貴たちの後を急いでついて行く。



109 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:08



=============================



店に入り、部屋に通されると意外にたくさん人が居てビックリした。



「よっすぃー、久しぶりだねぇ」

「わーい、よっすぃーだぁ!!」



先輩やら後輩やら、色々な人たちが各々で話している。

あたし達は矢口さんたちのほうに通され、久々の再会を楽しんだ。



110 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:08



「相変わらずかっけーな!またイケメン度増したんじゃね?」

「いやー別に変わんないっすよ」

「いや!!絶対カッコいくなった。大人度が増したべぇ」



相変わらず元気の良い矢口さんや、訛りの取れない安倍さん。

交信している飯田さんに、飲み続けている保田さん。

あたしも楽しくて酒が進んでいく。



111 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:10





「遅れてゴメンなさい!!バイト長くなっちゃって」



あぁ、まだ来てない人いたんだぁ。。。


そのまま声がするほうを見る。





112 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:11









・・・・・・・・・・・・・・・・









113 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:11



そこには会いたくて会いたくてしょうがなかった人が立っていた。



お互い時が止まったみたいに見つめあう。


先に目を逸らしたのは彼女だった。


だよなぁ、逸らすよなぁ。会いたくない奴に会っちゃったってか。



「おぅ、柴ちゃんに梨華ちゃん!まぁその辺座って飲め飲め!!」

「はい、飲ませていただきまーす」



114 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:11



横を見ると美貴がじっとあたしのことを見ていた。



「なに?」

「ん?あ、いや・・・大丈夫?」

「知ってたの?」



あたしは怒気を含んだ声で聞いた。



115 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:12



「あ、はい。
 たぶん梨華ちゃんもよっちゃんが来ること知らなかったはず」



だろうね。来ることが分かってたら来ないでしょ。

あたしでさえ知ってたら来なかったよ。



116 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:12



+++++++++++++++++++++++++++++



あたしと梨華ちゃんが出会ったのは4年前。

同じ高校で、梨華ちゃんと美貴が幼馴染だった。

あたしは何かと美貴とつるんでたから、
梨華ちゃんと親しくなるのも時間はかからなかった。


それよりも前に、あたしは梨華ちゃんに惚れていた。

美貴と話しているのを見て、羨ましいなぁって思った。



117 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:12



「梨華ちゃんて・・・恋人とか居る?」

「うぅん、居ないよ」

「・・・あたしさ、、、
 梨華ちゃんのこと好きになっちゃたんだけど・・・」

「へ?」

「・・・付き合ってください!!」



118 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:13





好きになったのはあたし。告白したのもあたし。





OKしてくれたのはあなた。別れを告げたのもあなた。





119 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:13



「別れたいの。ゴメンね」

「なんで?いきなり」

「ゴメンね」

「ちょっ、ちゃんと理由を」

「分かって。このままじゃダメなんだよ。
 お互い幸せにはなれないの」



幸せになれない。梨華ちゃんが幸せじゃないなら・・・

諦めるしかなかった。



120 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:14



梨華ちゃんは美貴と同じ大学に通っていた。

だからあたしは大学ではなく専門学校に進んだ。

彼女に会うのが嫌で・・・

会いたいのに会いたくない・・・矛盾していた



+++++++++++++++++++++++++++++



121 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:14



「ゴメン、黙ってて」

「いいよ、もう」

「ときめいた?」

「亜弥ちゃん」

「だって会ったの2年ぶりぐらいでしょ?」



ときめく?ずっと好きなんだから、ときめくも何もないよ。



「あれぇ?そういえば、
 吉澤と石川って付き合ってるんじゃなかったっけ??」



122 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:15



酔っ払いの保田さんが、余計なことを言い出した。

他の人は顔を見合わせて、呆れた顔をしている。

保田さんの質問は流された。



「よっすぃーさぁ、いい子居ないの?
 もったいないよぉ、こんなカッコいいのに」

「いや〜居ないっすね。今は勉強で精一杯です」

「美容師さんだったべか?今度なっちの髪、切ってほしいべぇ」



123 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:15



少し離れた梨華ちゃんの方を見る。

楽しそうに飲んでいるけど・・・ちょっと飲みすぎじゃないの?


梨華ちゃんて酒強いんだぁ。意外だな。



「あぁー梨華ちゃん飲みすぎだよ。あんま強くないのに」



124 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:15



あたしの目線に気付いたのか、美貴が心配そうに呟いた。


聞こえていないフリをして、目線を戻す。

でも気になるからチラっと見る。やっぱスゴイ飲んでる。


すると梨華ちゃんが立ち上がった。

そのあとを柴ちゃんがついていく。


顔色悪っ。大丈夫かな。



125 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:16



=============================



30分経過。

まだ梨華ちゃんたちは戻ってこない。



「梨華ちゃんたち遅いよね」

「あぅ、ああぁ、そう?トイレかな」



少しすると柴ちゃんが戻って来てあたしに話しかけた。



126 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:16



「よっすぃー?ちょっといい?」

「ん?どうしたの?」

「ちょっと、、、ちょっとお願い」



柴ちゃんは疲れた顔をしていて、
すぐに梨華ちゃん関係だなと思った。



柴ちゃんに連れられてトイレに行く。

一番奥のドアを柴ちゃんが叩いた。



127 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:16



扉の中から「はーい」とのん気な高い声が聞こえる。



「梨華ちゃん!開けてー」

「・・・・よっすぃーは・・・?」

「いるよ」



柴ちゃんに急かされて梨華ちゃんに話しかける。



「梨華ちゃん?大丈夫?」



128 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:17



するとドアが開いて、床に座っている梨華ちゃんが現れた。

梨華ちゃんはふて腐れたように口を尖らせている。



「なんで柴ちゃんが居るの?」

「はいはい、もう行くから。よっすぃーあとヨロシク!!」

「え、ちょーっと柴ちゃん!!」



129 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:17



柴ちゃんは行ってしまった。残されたあたしと梨華ちゃん。


梨華ちゃんは下を向いて黙っている。

あたしもどうしていいのか分からずにぼーっと立っていた。


ふいに梨華ちゃんが顔を上げてあたしを手招きする。




「入って?」




130 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:18



梨華ちゃんに見つめられ、吸い込まれるように中に入る。


二人が入るには狭すぎるので、自然と近づいてしまう。


二年ぶりに間近で見るその顔は、大人の顔になっていた。

目が虚ろで、頬がほんのり赤くなっている。

そしてあたしを見つめ続ける。

その瞳は昔と全然変わってなくて。


ほんとに吸い込まれそうだ・・・


あたしは梨華ちゃんと同じようにしゃがみ込み
話しかける。



131 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:18



「大丈夫?まだ気持ち悪い?」

「うぅ、頭痛い」

「頭?もう、飲みすぎなんだよ。
 あんま強くないんでしょ?」



そう言って、梨華ちゃんの頭を撫でた。


綺麗な髪。この髪もあの頃と変わってないなぁ。



132 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:19



「よっすぃー。元気だった?」

「あ、うん・・・元気」

「そっかぁ・・・学校は順調?」

「ああぁ、それなりに」



それだけ言うと、梨華ちゃんはいきなり抱きついてきた。

あたしはビックリして声も出ない。

しばらく固まっていると、梨華ちゃんが話し出した。



133 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:19



「よっすぃーなら、同じ目線で話してくれると思った」

「へ?何?」

「頭痛いって言ったら、撫でてくれると思った」

「・・・・・・」

「ホント、優しいよ」



梨華ちゃんの言葉の一つ一つが心に染み込んでいく。


あたしはいつの間にか、梨華ちゃんを抱きしめていた。

懐かしい感触。忘れかけていた温かい感覚。



134 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:19



耳元で囁かれる。



「好き」



あたしは一瞬、夢なんじゃないかと思った。

今ここに梨華ちゃんが居ることも夢なんじゃないかと。



「好きなの・・・ずっとずっと好きなの」



そんなはずない。この人はあたしを振ったんだ。

幸せにはなれないって・・・



135 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:20



「ゴメンね、勝手で。
 でももう気持ち抑えられないよ」



耳元で囁き続けていた。

そして耳から顔を離しあたしの目の前に来る。



ちゅっ



136 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:20



キスされた。軽いキス。



ちゅっ



もう一度。さっきと同じキス。

あたしは動けなくて固まっている。


梨華ちゃんはまた顔を耳の横に持ってきた。



137 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:21



思考が停止しているため、考えることは出来ないが、
自分の思いだけは伝えようと思った。


あたしは耳元で囁く。



「止まらないよ?止められないよ?」


「・・・好き」


「・・・あたしもずっと好き」



138 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:22



体を少し離してキスをする。さっきよりも長く。

お互いを確かめ合うように・・・



「もう・・・止まんねぇ・・・」

「止めないで・・・」



梨華ちゃんの言葉があたしに火をつける。


さっきよりも濃厚なキス。苦しくなるくらい熱いキス。


あたしは梨華ちゃんの胸に触れてしまった。



139 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:22



「ん、だめ、、、ここじゃ・・・ダメ」



あたしとしたことが、こんなところで何をしようとしてたんだか。

ちょっと反省。


キスをやめて見つめ合う。綺麗な瞳だな。



140 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:23



「よっすぃー、ゴメンね」

「・・・・・・許さん」

「えー、チュッってしてあげるから許して」



梨華ちゃんはあたしが本気で怒ってないことを分かってる。

だからふざけて返してくる。



「でもなんで?全然分かんないよ」



梨華ちゃんは眉をハノ字にして、口を尖らせている。



141 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:23



「だって。。。ホントにダメだと思ったんだもん」

「なぁにが?」

「このままじゃ、お互い幸せになれないって思ったの」

「なぁんで?」

「だって・・・女の子同士だし・・・」



そう、女の子同士は結婚できないし、子供も作れない。

でも一緒にいることは出来る。

あたしはそれで幸せだと思ってた。



142 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:24



「じゃあ、なんで今こんな風に?」


「・・・・・・・・・・・・・・」

「黙ってたら分かんないっしょ」


「・・・・全然幸せじゃなかったから」



梨華ちゃんは蚊が鳴くような小さな声で答えた。



143 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:24



「え?聞こえないよ?」

「だから、よっすぃーと別れてから全然幸せじゃなかったの!!」

「あらら」

「あらら、じゃないよ。何にも楽しくないんだもん。
 面白いこと言ってくれる人もいないし、頼りになる人も居ないし、
 もうとにかく幸せじゃなかったの!!」



笑っちゃうよね。そんなの当たり前じゃん。

あたしは常に梨華ちゃんを楽しませようとしてたんだから。

それがあたしの幸せだったんだから。



144 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:24



「もっと早く言ってくれれば良かったのに」

「だって〜、何だかかっこ悪いでしょ?
 だから言えなかったの」



かわいいなぁ。ずっと思いを溜めててくれたんだ。


あたしは梨華ちゃんをギュッと抱きしめる。


耳元で囁く。



145 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:25



「もう離さないよ。絶対に何があっても・・・」



「・・・うん・・・もう離れない」



好きな人と一緒に居れるのが、こんなに幸せなことだなんて。


はぁぁ、美貴に感謝だな。もう一度会わせてくれて。



146 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:25



「向こうに帰るの嫌だなぁ。絶対からかわれるよ」

「いいじゃん!見せ付けちゃお」



梨華ちゃんはのん気でいいよな。あたしなんか質問攻めにされて
生きて帰れないかもしれないよ。


でもまぁいっか。




147 名前:彼女だけ 投稿日:2006/02/07(火) 01:26




もう一度掴むことの出来た彼女の手を、もう二度と離さない。


どちらかに何が起こっても、二人なら乗り越えられる。


彼女と一緒に居る限り、あたしは幸せなのだから・・・・・





                            END




148 名前:愛虎 投稿日:2006/02/08(水) 00:09
更新お疲れ様です。
空回りしてた梨華ちゃんかわいいです。
大人なよっすぃ〜カッケー!!
149 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/08(水) 00:55
ちょっw最高だなwwwww
もっともっと書いてくだせー
150 名前:メモ 投稿日:2006/02/08(水) 02:13


>>愛虎サン

 ありがとうございます。
 梨華ちゃんは空回りのイメージがとても強いです。
 だからこの中でもこうなってしまったのかも・・・
 よっすぃ〜は常にカッコいいですね!


>>名無飼育さんサン

 ありがとうございます。
 褒めると伸びるタイプなので、
 どんどんやってみたいと思います!
 空回りしない程度に・・・


 次は[笑顔=必然]の番外編です。
 まだ石verではありません。


151 名前:メモ 投稿日:2006/02/08(水) 02:13



あやみき



152 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:14



「よっちゃーん。ちょっと飲みすぎ」

「らいじょうぶだよぉ。全然飲んでない」



ウソばっか。何杯飲んだかわかんないよ。

また世話するのは美貴なんだからさ、しっかりしてよ。



「ちょっとトイレ行ってくるから」

「おぅ、いっトイレ。なんちゃってー」



153 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:14



はぁ。今どきそんなこと言う奴いないよ。


美貴が足早にトイレを済ませ戻ってくると、
その場所にあのバカは居なかった。



「お姉しゃん達、一緒に飲みましぇんかぁ?」



よっちゃん!?何知らない人に話しかけてるんだよ。



154 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:15



「一緒に飲みましょうよぉ」

「よっちゃん!!ちょっと、スイマセン」

「いえ、大丈夫ですか?」

「いや〜大丈夫ではないんですけど・・・
 まぁ何とかします」



恥ずかしいったらありゃしない。

どうせまた覚えてないんだろうなぁ。



155 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:15



「はは、面白い!一緒に飲もう!」

「亜弥ちゃん!?」



えぇー!!何言ってんの、この人。



「いいでしょ?二人よりはたくさんで飲んだほうが楽しいし」

「それは楽しいけど・・・」



そこであなたも乗るなよ!!二人でも十分楽しいでしょうが!



156 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:16



「ホントれすか?
 やったぁ、何飲みますぅ?」



おいバカ!!何本気にしてんだよ!!



「ちょっとよっちゃん!すいません。
 ホントにもう帰りますから」

「なんで〜?いいじゃん!一緒に飲みましょ?」



そう言って首を傾げて美貴を見る。


ちょっ・・・と、カワイイじゃん。



157 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:16



「あぁ、はぁ」



美貴もなにOKしてんだよ!!非常にマズイでしょう!!


こうして4人は一緒に飲むことになった。

よっちゃんは石川さんがかなり気に入ったみたいで、
ずっと話しかけている。

石川さんは迷惑そうな顔をしながらも、少し嬉しそうだ。



158 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:16



「美貴ちゃんは何歳?」

「へ?あ、21歳です」

「なんだ、同じ歳じゃん。ヨロシクねぇ」

「あぁ、はぁ」



よっちゃんが石川さんばかり構うものだから、
こちらの松浦さんは美貴にばかり話しかけてくる。

そのうちカラオケに行こうということになり、4人で店を出た。



159 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:17



「よっちゃんはかなり酔っ払ってるねぇ。
 連れて帰るの?」

「あぁ、めんどくさいけどそうしないとカワイソウだし」

「だよねー。その辺に置いて帰れないしねぇ」

「・・・・・うん・・・」



よっちゃんは片時も石川さんの側を離れようとせず、
ずっとくっついていた。

それと同じくして、松浦さんも美貴にビッタリくっついてきた。


近いよぉ、胸当たってるよぉ。



160 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:17



「こうしてると温かいでしょ?」

「まぁ・・・温かいことは温かいけど・・・」



いやー気になる。

胸が気になる。

ちょっと離れてくれないかな。


松浦さんは全く離れる気が無く、
カラオケ屋に着いてもくっついたままだった。



161 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:17



美貴たちは一通りカラオケを楽しみ、
よっちゃんはトイレに吐き続けていた。



「よっちゃん?大丈夫?」

「やべー。マジ気持ち悪い」

「だからあんまり飲むなって言ったのに。
 ほら、帰るよ」

「・・・・・・嫌だ・・・・」

「はぁ?帰るっつてんの!!」

「嫌じゃ!!梨華ちゃんと帰る!!」



162 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:18



こいつは何考えとんのじゃ!!バカか。バカなのか!!

うん。こいつはバカだ。相当のバカだ!!



「わがまま言わないの!美貴ちゃんと一緒に帰りなさい」



おぉ!いいぞ、石川さん。その調子でよっちゃんを・・・



「いいじゃん、送ってあげれば」



はぁ?この人はまた何を言ってるんだ?



163 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:19



「タクシーで住所言えば分かるでしょ。
 梨華ちゃん送ってあげなよ。さっきまで面倒見てたんだし」

「でもぉ・・・」

「大丈夫だよ。家ぐらい分かるでしょ。ね?」

「ふぁい!分かります!!」



おめぇ絶対分かってないだろ。今の状況も分かってないだろ。



「よし、決まり!梨華ちゃん、あとヨロシクねぇ」

「え?えっ?」



164 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:19



松浦さんは美貴の腕を掴むと足早にその場から逃げ出した。


この人何考えてるんだよ!石川さんにスゴイ迷惑じゃないか!



「やっぱ戻ります!石川さんに迷惑かけられないし」



あたしが戻ろうとすると、さっきよりも更に強く腕を掴まれた。



「嫌!行っちゃダメ!!」

「え、ちょっ」

「美貴ちゃんが行ったらあたし一人になっちゃう」



165 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:19



うっ、カワイイ。


松浦さんは上目遣いで美貴をじっと見てくる。


そりゃあ一人にはしたくないけどさ・・・

石川さんには迷惑かけられないし・・・



「大丈夫。梨華ちゃんなら大丈夫だから」



大丈夫って言ってもなぁ。よっちゃん、ホントにヤバそうだったし。



166 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:20



「だから一緒に居て?あたしと一緒に」



そんな上目遣いで言われたら・・・・


美貴は自然と頷いてしまい、一緒にタクシーに乗ってしまった。



167 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:20



*****************************



バタン



「どうぞー入ってぇ」

「はい、お邪魔しまーす」



ここは松浦さんのお家。一人暮らしのお家。


なんで着いて来ちゃったんだよ。早く帰らなきゃ。



168 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:21



「あのーもう帰るね。明日も早いし・・・」

「大丈夫だよ。まだ大丈夫」



この人は何を根拠に大丈夫だって言ってるんだ?

ただの口癖にしか思えないよ。



「いや、でも」

「お願い。もう少し一緒にいて?」



169 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:21



うっ、また上目遣い。美貴が弱いこと分かってやってるな・・・

しかもちょっと谷間見えてるし・・・


案の定美貴は誘惑に負けてしまい、松浦さんと一夜を共にした。



170 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:22



=============================



「じゃぁ、もう帰るね」

「うん、アリガト。またね」

「ん、また」



松浦さんの部屋を後にし、自分の家に向かう。


よっちゃん大丈夫だったかなぁ。それより石川さん・・・

申し訳ない・・・



171 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:22



松浦さんと交わした「またね」はもう訪れないと思う。

次のない「またね」。


寂しいよねぇ、こういうの。。。。。



172 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:22



*****************************



あれから二週間ぐらいが過ぎた。

松浦さんとは一切連絡を取っていない。


やっぱりないよね、「またね」なんて。



173 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:23



「はぁ」



お?珍しくよっちゃんがため息ついてる。

なんだろ、なんだろ。


美貴はワクワクしてよっちゃんに話しかけた。



「おっ?どうしたのよっちゃん、ため息なんてついて」



174 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:23



よっちゃんは美貴の顔を見て、
思い出したようにいきなり怒り出した。



「美貴!!なんでこの間置いて帰ったんだよ!
 いつもならちゃんと送ってくれるのに」



美貴は訳が分からず、口をポカンと開けていた。



「なんのこと?」

「惚けるなよ!!あたしと石川さんを置いて帰ったでしょ!!」



175 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:24



石川さん?・・・・あぁ!!

やっぱりよっちゃん覚えてないんだぁ・・・・

知ったら恥ずかしがるだろうなぁ。はは。



「何笑ってるんだよ!!」

「だぁって、
 あれよっちゃんが石川さんと一緒に帰るって駄々こねたんだよ?」

「え?えぇぇぇ?」



ビックリしてるビックリしてる。



176 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:25



「マジだから。マジデジマ」



あららぁ。よっちゃん固まってるよ。



「ウソだ!絶対ウソだ!!」

「ホントだって!よっちゃん、石川さんのこと気に入っちゃって、
 全然離れなかったんだから」



うわぁ、顔真っ赤だよ。

でもなんでいきなり石川さん出てきたんだろ。


よっちゃんは石川さんの電話番号を聞き、
そそくさと行ってしまった。



177 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:25







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







178 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:26







「やっべ。会いたくなってきた」







179 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:26



よっちゃんが石川さんのことを言うものだから、
美貴も松浦さんに、猛烈に会いたくなってしまったのだ。


ってか電話すりゃいいじゃん。

松浦さんなら絶対出てくれるよ。優しい人だも。


さっそく松浦さんに電話する。



180 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:27





トゥルルルル。



トゥルルルル。



トゥル



「はい」



出たーーーーーー!!



181 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:27




「あ、あの。松浦さんですか?」




「・・・・・・・・・・美貴・・・ちゃん?」




「そう!美貴。元気だった?」

「ハハ、元気だよ。いきなり来るからビックリしちゃった」

「ゴメンね。なんかさ・・・・」





182 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:28







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







「無性に会いたくなっちゃって。
 会えないかなぁとか、勝手なこと思っちゃって・・・」





183 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:29





返事がない。


やっぱりあの「またね」は次のない「またね」だったんだ。





184 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:29





「ゴメンね、急に。いいんだ。またさ、また今度」

「会いたい・・・」

「え?」

「あたしも会いたかったよ・・・」



美貴ちゃんフリーズです。その声がなんとも可愛くて。

止まっちゃいました。

どんどん嬉しさがこみ上げてくる。



185 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:29



「ホントに?ホントにホントに?」

「フフ、ホントにほんと」



うれしぃーーー!!美貴ちゃん嬉しぃよ!!

こんな幸せなことないよ。



186 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:30




「またねって。言ったじゃん」




うん、「またね」って言ったよね。




「ずーっと待ってたんだよ、連絡来るの」




そうだよね、「またね」って言ったんだもんね。




187 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:30



「遅すぎです。罰として、今日あたしの家に来なさい」



「はい!!罰受けます!!」



こんな嬉しい罰なら何度でも受けちゃいます。



「じゃぁ、またね」

「うん、じゃぁまた」




188 名前:「またね」 投稿日:2006/02/08(水) 02:31



美貴にも幸せが舞い降りた。


予想だけど、よっちゃんも幸せになってると思う。


二人とも幸せを手に入れた。



この出会いに「また」はいらない。


この出会いだけでいい。この出会いを大切に。





                            END



189 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:31



いしよし



190 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:32



わたしたちは出会わなければ良かった。



出会わなければ、こんな悲しい思いをせずに済んだのに。





悲しいよ・・・・・苦しいよ・・・・・




あなたと出会ったのは19歳のとき。

友達の彼女だった。




191 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:32



*****************************



「こんにちはー」

「あ、よっすぃー。こんにちは」



よっすぃーはごっちんの彼女。

いつも笑顔で優しくて、
わたしもいつかこんな人に出会えたらいいなぁって思う。



192 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:32



「こらー。また梨華ちゃんナンパしてるのぉ?」

「違うよぉ、交流を深めてたんだよ」

「交流?梨華ちゃん変なこと言われたりされたりしなかった?」

「ちょっと!!あたしはどんだけ変態なんだよ!」



いつもこうやって冗談を飛ばしながらワイワイやってる。

この雰囲気がわたしはとっても好き。

見てるだけで笑顔になれちゃうんだもん。



193 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:33



「そういやぁさ、今度先輩たちと飲み会あるんだけど、
 梨華ちゃん行かない?」

「先輩?」

「そう。やぐっちゃんとか圭ちゃんとか」



飲み会かぁ。あんまお酒強くないしなぁ。

でも先輩たちなら顔ぐらい出しておかないとマズイよね。



194 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:33



「分かった、行く」

「ホントに?よかったぁ。来週の金曜日だから」

「了解。その日は空けておきます」



よっすぃーは、「いいなぁ。行きたいなぁ」って駄々をこねてたけど、
ごっちんに却下された。



195 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:33



「じゃ、帰りますか」

「うん。梨華ちゃんは?」

「わたしはもう少し残るから」

「そっか。じゃあまた明日」



わたしは二人にバイバイをし、
じゃれ合いながら帰る二人の後姿に羨ましく思った。




196 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:34



=============================



金曜日。わたしたちは矢口さんの家で飲むことにした。

このアパートには他にも保田さんが住んでいる。


部屋に行くと、わたしの知らない人も何人か来ていた。

ごっちんは知ってるみたいで、仲良く話しているけど・・・・・・

わたしは矢口さんや保田さんと盛り上がっていた。



197 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:34



しばらくすると、ごっちんともう一人の人が、



「圭ちゃん、部屋借りてもいい?」

「え?いいけど・・・どしたの?」

「ちょっとね、、、眠たくなってきたからさ」



そう言ってごっちんは二人で保田さんの部屋に行ってしまった。




「ヤバイな」




198 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:35




矢口さんがビールを飲みながら呟く。

それに続いて保田さんも呟く。




「ヤバイわね」




199 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:36




二人の呟きを不思議に思い、訳を聞いてみる。



「何がヤバイんですか?」

「何って。密室に二人きりよ?ヤバイと思わない?」

「あ・・・」

「ヤバイっしょ?ヤバイんだよ」



そんな・・・ごっちんにはよっすぃーっていう優しい人がいるのに。

ダメ!!そんなの絶対ダメ!!



200 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:36



「わたし見てきます」

「え、ちょっ、石川!!」



わたしはズンズンズンズン保田さんの部屋に向かって歩いていく。

目の前に来て、深呼吸。



スー  ハー  スー  ハー  



201 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:37




ガチャ




開いてる。




ギシ  ギシ




バンっ!!




202 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:38



「梨華ちゃん!?」



「ごっちん・・・」





二人は寄り添った状態で話をしていた。

というよりもイチャついていた。


よっすぃーっていう人が居るのに。どうして。



203 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:39




わたしは混乱して叫びながら部屋を飛び出してしまった。



「だから止めなさいって言ったのに」

「だってー」



途中であった保田さんに泣きついた。



こんなの、よっすぃーが可愛そうだよ。



204 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:39






205 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:39




この飲み会の一週間後に二人は別れた。


ごっちんから別れを告げたらしい。


よっすぃーは全てを分かっていたかのように受け入れたみたい。




206 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:40



=============================



「よっすぃー?今日暇?」



ここ何日間か、よっすぃーは元気がなかった。

だから元気を出してもらおうとご飯に誘ってみた。



「お?いいねぇ。梨華ちゃんが誘ってくれるなんて滅多にないし。
 行きますかぁ!!」



207 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:40





よっすぃーはわたしを心配させないために元気なフリをしてる。





でも分かるよ。それが空元気だってこと。





208 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:40





209 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:41



よっすぃーとはたくさん話をして、

やっぱり大人だなって思って、スゴイ尊敬した。

そして話すたびに惹かれていく。

うぅん。もうずっと前から惹かれてる。

友達の彼女だったころから・・・・・・

でももう遠慮なんてしない。

わたしはよっすぃーが好き。

その思いだけが日に日に強くなっていった。



210 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:41



「よっすぃー?今日わたしの家に遊びに来ない?
 ご飯ご馳走するよ?」

「え?マジ?梨華ちゃん料理できんの?」

「失礼ねぇ。少しぐらいなら作れます」

「んじゃ、ご馳走になろっかなぁ」



わたしは全てをさらけ出そうと思う。

よっすぃーが受け入れてくれるかは分からないけど・・・



211 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:42


=======================


212 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:43




「よっすぃー。よっすぃーの背中、暖かいね」




わたしはよっすぃーの背中にピッタリとくっつく。



よっすぃーは一瞬ビクっとしたけど、特に抵抗はしない。



調子に乗ってどんどんくっついていく。




213 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:44




腕を回して抱きしめる。




少ししてから、よっすぃーがこっちを向いた。



「梨華ちゃん?あたし止まらないよ?」



「・・・・・・いいよ・・・・・・」



その言葉でよっすぃーは動き始める。

止まることのない手の動きに翻弄されながら、
わたしは幸せを噛み締めていた。




214 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:44









それからわたしたちは付き合ったわけではない。









215 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:45



何回も何回も身体を重ねた。


あたしはよっすぃーが好き。だから抱かれる。



でもよっすぃーの気持ちが分からない。どうして抱いているの?


ごっちんの寂しさを紛らわすため?



何を考えているのか分からない。



216 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:46









でも身体を重ねる。何度も何度も・・・・・









217 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:47



「よっすぃー」

「ん?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「どしたぁ?」



わたしは何度も告白をしようとした。

でも出来なかった。

振られたあとに、よっすぃーと気まずくなるのが嫌で。



218 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:47


++++++++++++++++++++++


219 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:48



「こういうのさ、ダメだよね。なんかダメだよね・・・」

「そだね。止めたほうがいいよね。止めよ」



何度も止めようって話した。こんな関係じゃいけないから。

よっすぃーも承諾した。

でもいつの間にか、また身体を重ねている。

止めようって言ったのに、また抱かれてしまう。



220 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:48



*****************************



苦しい・・・・

こんなに好きなのに・・・

悲しい・・・・

身体しか繋がっていないことが・・・

気持ちも繋げたい・・・・

いつになったら繋がるの?いつ?


あなたの気持ちが分からない。




221 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:49





わたしたちは身体だけの関係を続け・・・



関係が終わったのは、あなたがわたしの前から居なくなった時。



あなたは何も言わずにどこかへ行ってしまった。





222 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:50




身体だけの関係でも、わたしはあなたと居れて幸せだった。


わたしは今でもあなたが好き。


あなたがわたしを抱き続けた理由は分からないけど、
特別な想いがあったんだと信じてる。



こんなに悲しいことはない・・・苦しいことはない・・・



あなたに出会わなければ、こんなことにはならなかった。




223 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:51






でも良かった。あなたに出会えて。



あなたを好きになって。





                            END



224 名前:メモ 投稿日:2006/02/09(木) 16:53



スイマセン。名前欄がずっと「メモ」でした。

実際は[繋がらない想い]ってつけようとしてました。

本当にスイマセン!!


225 名前:愛虎 投稿日:2006/02/10(金) 23:43
せつないです。
本当に繋がってなかったのかなって思っちゃいます。
いしよしファンとしては・・・。(笑)
やるせない気分になり、最初の作品からまた、読み直しました。
226 名前:メモ 投稿日:2006/02/18(土) 23:30


>>愛虎サン

 繋がっていたと思いたい・・・・
 いしよしファンなら誰でも思うことでしょう。
 読み返していただけるなんて有り難いことです。



次の設定も前回と似た感じですが・・・


227 名前:メモ 投稿日:2006/02/18(土) 23:30



いしよし



228 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:31



「こういうの・・・いつまで続けるんだろうね」

「え?」

「終われないよね」

「ああ・・・」



梨華ちゃんは俯いたままあたしに問いかける。

梨華ちゃんは優しいから、
あたしのワガママに付き合ってくれているのだと思う。



229 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:31



あたしには彼女がいる。

でもそこには愛はない。

ただ、彼女を見捨てることが出来ないだけ。



梨華ちゃんには愛がある。

でも堂々とすることが出来ない。

あたしと梨華ちゃんは浮気の関係。



230 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:32



梨華ちゃんとは昔付き合っていた。

そしてとても愛し合っていた。

あたしは不甲斐ないばっかりに、その関係が壊れてしまったのだ。



あることがきっかけで、あたしは今の彼女のほうへ流れてしまった。


でも梨華ちゃんのことを忘れることが出来ず、
今はこの関係を続けている。



「ゴメンね。こんな酷いことして」

「ううん。それに付き合ってる私も私だし・・・」



231 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:32



*****************************



「よっちゃん?今日は一段と元気がないですねぇ」

「・・・そう?いつも通りだけど?」

「ふ〜ん・・・また悩んでるのですか?」



あたしに話しかけてきたのは親友の美貴。

気を使わなくて良い関係だから居心地がいい。

そんな親友にも梨華ちゃんとの関係を打ち明けていない。


美貴には・・・言っておいたほうがいいのかな・・・



232 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:33



「あのさ、、、」

「あ!来た来た。よっちゃんの嫁さんが来ましたよ?」



美貴が見ているほうを見ると、
亜弥が笑顔で近づいて来ているところだった。



「吉澤さん!今日は一緒にご飯食べれますか?」

「ん?あぁ、大丈夫だよ」

「ヤッター!久しぶりですよね?楽しみだぁ」



233 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:33



亜弥とは半年前に付き合い始めた。

亜弥の猛アプローチに負けたというか、
その時期梨華ちゃんといろいろあり、のりで付き合ってしまってから、
別れられないまま・・・

亜弥には悪いと思っている。

好きでもないのに好きなフリをして・・・



「今日はどこ食べに行く?何食べたい?」

「うーん・・・吉澤さんの家に行きましょうよ。
 私何か作ります!ダメですか??」



234 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:34





家はあまり好きじゃない。梨華ちゃんと入れる唯一の場所だから。



他の人と居たくない。





235 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:34



「うち汚いし。外にしようよ。片付けとかもめんどくさいし」

「そうですかぁ?吉澤さんがそんなに言うならどっか行きましょ?」

「うん。ありがと」



亜弥は不満そうな顔をしていたが、納得してくれた。


今度梨華ちゃんと会えるのはいつだろう。

学校ではよく会うんだけどなぁ・・・


あたしたちはみな同じ大学に通っている。

広いはずの学校なのに、毎日のように会えてしまう。


運命かな・・・やっぱり・・・



236 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:35



*****************************



「亜弥ちゃん元気?」

「・・・うん」

「そっかぁ。風邪とか引いてない?
 最近流行ってるみたいだからさ」

「いや、別に。大丈夫そうだけど?」

「そっかぁ。最近来ないよね、よっちゃんとこ」

「来てると思うけど?・・・ってか、どしたの?」

「え?いや、最近見てないような気がして・・・」



237 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:35



あたしは知っている。美貴は亜弥が好きだ。

でも亜弥の気持ちを知っていたため、
今もこうやってぐだぐだしている。


亜弥は美貴と一緒になったほうが、幸せになれるよなぁ。

あたしなんかと居るよりも・・・



「今度3人で飯でも食べ行きますか?」

「うぇ?いいよ。ラブラブなところ見せ付けられたくないし」

「別にラブラブじゃないけどね。まぁいいならいいけど」

「あ、あの・・・ご飯ぐらい一緒に行っても・・・
 亜弥ちゃん怒らないよね?」

「怒るわけないじゃん。美貴のこと気に入ってるし」



238 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:35



亜弥は美貴のことを優しいお姉さんだと、いつも言っている。


確かに亜弥には優しいんだよね、この女。



美貴と話していると、亜弥がやってきた。



「本人のご登場です」

「あぁ!美貴ちゃん久しぶり〜」

「あっは、やっぱり久しぶりだよね?」



あたしたちは話しながら学食へ向かう。



239 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:36



歩いていると、遠くに愛おしい人を見つけた。

見間違えることのない人。

向こうも気付いたみたいだけど、お互いにそれを出さない。



「あー梨華ちゃんだぁ。もう食べたの?」



美貴が梨華ちゃんに話しかける。



「うん。早めに終わったからさっさと食べちゃった」

「そっか、また飲みにでも行こうねぇ」



240 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:36



「うん」と言って梨華ちゃんは去っていく。

その去り際が、とても悲しそうだったのは気のせいだろうか・・・



それから学校で会う度に浮かない表情で、
あたしの横を通り過ぎていた・・・



241 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:37



*****************************



2週間ぶりに会う約束をした。

嬉しかった反面、梨華ちゃんの浮かない返事に胸騒ぎを覚えた。



ピーンポーン



ガチャ



「どうぞ」

「うん」



242 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:37



やっぱり浮かない顔の梨華ちゃん。


すごく・・・すごく嫌な予感がする・・・


座ろうとしない梨華ちゃんに紅茶をだそうとキッチンに向かう。



「よっちゃん・・・話があるの」



きた・・・・


あたしは何となく予感していた。別れが近づいていることを・・・



243 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:38



「あのね・・・やっぱりこのままじゃいけないと思うの」

「・・・・・・・」

「もうダメだよ。こんな関係は」



あたしは何も言えない。悪いのは全部あたし。

でも・・・・別れたくない。



「嫌だよ。梨華ちゃんのこと好きだもん」

「じゃあ亜弥ちゃんと別れられるの?」



244 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:39



それも出来ないと思う。亜弥はあたしに尽くしてくれている。

裏切ることなんて出来ない・・・

実際はもう裏切っていたとしても・・・



「・・・・・・・・・・・・・・」

「出来ないでしょ?だから・・・ダメなの」



やっぱり梨華ちゃんは大人だ。

感情に流されたりしないで、周りのことを考えている。



245 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:39



「でも・・・また会いたくなるかもしれない」

「会えるじゃない、お友達として」

「たくさん・・・たくさん話したくなるかもしれない」

「大丈夫。いつでもお話聞いてあげるから」

「・・・・・抱きしめたくなるかもしれない」

「・・・・・分かってるよね。それは出来ない」



もう終わりなんだと思った。もう無理なんだって・・・



246 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:39



*****************************



梨華ちゃんに別れを告げられてから、2か月が経った。

それでも消えることのない想い。



「よっちゃん・・・相変わらず元気ないね」

「なんか・・・魂が抜けた感じ。抜け殻ですよ」

「まぁ、しょうがないよ。いろいろあるからさ」



美貴は全て知っていたのかもしれない。

梨華ちゃんとの関係も、あたしの想いも・・・



247 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:40



*****************************



抜け殻状態で学食に居ると、愛しい人が現れた。



「久しぶり。2か月ぶりぐらいかな?」

「あ、あぁ。たぶん」

「元気ないね?悩みなら聞くけど?」



あなたのことで悩んでるんだと言ってやりたかった。

この天然エロが!!



248 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:40



「別に・・・」

「別にって何よ。・・・よっちゃん、髪伸びたね?」

「うん、まぁね」

「冷たいなぁ・・・私は髪の短いよっちゃんが好きだなぁ」



なんだよいきなり!もう関係ないんだから!

うるさいんだよ!・・・・って言ってやりたかった。



249 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:41



「あらそうですか。好みじゃなくてごめんなさい」

「もう!なんなの!子供なんだから」

「・・・・・・・・・」

「あんまり染めないでね。綺麗な髪なんだから」



優しい笑顔。

あたしはどのくらいこの笑顔に元気をもらっただろう。

あたしはどのくらいこの笑顔に幸せをもらっただろう。



「じゃあね。バイバーイ」

「あ・・・・・」



250 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:41





「バイバイ」を言うことすら出来なかった。



それぐらい苦しかった。自分を偽っていることが・・・・





251 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:42



*****************************



「吉澤さん。髪切ったんですね」

「ん?うん」

「私は長いほうが好きだったけどなぁ」

「そう?さっぱりしててよくない?」



あたしはまんまと梨華ちゃんの言う通りにしてしまった。

好きな人の好みに合わせる・・・よくあるよね?



それと・・・

髪を切ったことで、決断したことが一つある。



252 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:43







『亜弥と別れて、梨華ちゃんにもう一度告白する』







253 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:43



もうあたしには梨華ちゃんしか居ないんだよ。

一言であたしを変えるのは梨華ちゃんしか居ないんだよ。


でも・・・亜弥に言えないよなぁ・・・



「吉澤さん。私に何か言いたいことありますよね?」

「え?」



こいつは人の心が読めるのか?



254 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:44



「はっきり言ってください!!」

「は、はい!!」



「ゴメンなさい!!あたしには好きな人がいます。
 その人じゃなきゃダメなんです!!」



「・・・・・・・言えるじゃないですか・・・」



「う・・・ん、、、ごめん」

「もういいです。だいぶ前から分かってたし」



ん?やっぱり人の心が読めるのか?



255 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:44



「吉澤さんの視線を追っていれば分かります。
 いつも同じ人を見ていたから・・・」



そっか・・・無意識のうちに追ってたのか・・・



「ごめん」

「ほんとにもういいですから。私も早くいい人見つけます。
 絶対に浮気をしない人。心も身体も」

「うっ、あ、うん。そう・・・だね」



全部バレてたってか。ウソはつけないもんだねぇ。



256 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:45



「早く行って伝えてくださいよ。
 私が身を引いた意味がないじゃないですか」

「あ、そっか。行かなきゃ」



あたしはジャンパーと財布と携帯を持ち、部屋を飛び出そうとした。



「そうだ!亜弥。幸せはすぐそこにあると思うよ」

「え?」

「じゃ、またね!!」

「あ、はーい。すぐそこってどこよ」



257 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:45




大丈夫。きっと美貴が幸せにしてくれる。

心も身体も、絶対に浮気しないよ。






あたしはとにかく走った。早く気持ちを伝えたくて。

早く・・・梨華ちゃんに会いたくて・・・






258 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:46



ピーンポーン


・・・・・・・・・・・・・・


『はい』

「梨華ちゃん?あたし」

『よっちゃん?どうしたの?』

「話があるんだ。開けてくれないかな?」

『・・・うん、ちょっと待って』



259 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:46



ウィーン



オートロックが開く。

あたしの胸は高鳴る。


心拍数早すぎだよ!!落ち着けー落ち着けー



梨華ちゃんの部屋の前に来たときには、最高潮にドキドキしていた。


ヤべー。ヤーべー!!!!!



260 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:46



ガチャ



「よっちゃん?入りなよ」

「あぁ、うん」

「どしたのいきなり、紅茶でいい?」



紅茶でいい?なんて聞いているけど、
この家に紅茶しかないことは知っている。



「梨華ちゃん」



この前と逆の状況だ。深呼吸しなきゃ。



261 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:47





スー スー スー  




って吸ってばっかじゃダメじゃん!!





262 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:47



「ほんとどうしたの?よっちゃんらしくない」

「・・・実はさ・・・今亜弥と別れてきた」

「え?・・・・・なんで?」

「梨華ちゃんが好きだから。もうウソつけなくて。
 自分に正直に行きたいんだよ」

「亜弥ちゃんは?」

「・・・もう・・・全部バレてたみたいで」

「そっか」



263 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:48



「梨華ちゃんが好きで好きでどうしようもないから・・・
 梨華ちゃんのせいだよ、こんなに苦しいのは」



「・・・・・・・・・・・・」



全部言ったった!想いをぶつけたった!

さぁどうする。梨華ちゃんどうする!!



264 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:48



「私だって・・・ずっと好きだったよぉぉぉぉ」



いきなり梨華ちゃんが抱きついてきた。

それをぐっと抱き返す。

梨華ちゃんは何かを伝えようとしてるんだけど、
泣きすぎて何を言っているのか全然分からない。


でも・・・・・・


もう喋らなくても大丈夫だよ。

十分伝わっているから。

あたしの想いも伝わってるよね?



265 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:49



「よっ、、、ちゃ、、ん、の、、、浮気、、も、の」

「へ?・・・それは浮気相手が梨華ちゃんだからだよ」

「ほ、、、んと、、?」

「ほんと。もう梨華ちゃんしか見えないから大丈夫」



まぁ昔から梨華ちゃんしか見えてないけどね・・・



266 名前:浮気 投稿日:2006/02/18(土) 23:51





「ずーっと一緒に居てね、よっちゃん」



「もちろん、ずっと一緒に居るよ」





                          END



267 名前:愛虎 投稿日:2006/02/19(日) 01:38
更新お疲れ様です。
始まりが始まりだっただけに、ドキドキしながらラストどうなるんだ?
と思ったけどいい感じでラストを迎えて、ひと安心しました。
268 名前:メモ 投稿日:2006/02/21(火) 16:08

>>愛虎サン

 私自信はハッピーエンドが好きなので。
 書くものほとんどがハッピーエンドになってしまいます。
 好きなCPは特に・・・
 これからもいしよしの『ハッピー』を目指します!!


269 名前:メモ 投稿日:2006/02/21(火) 16:08



いしよし



270 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:09



「よし。でーきた!
 早く帰ってこないかなぁ?」



今日は久しぶりに2人で過ごせる夜。

お互い忙しくて、なかなか会う機会がなくて・・・

だから会えることが嬉しくて、頑張って料理しちゃった。


見た目は悪いけど味は大丈夫だし。よっすぃー喜んでくれるよね。



271 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:09







ガチャ







272 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:10



あ、帰ってきた!!



「おかえり」

「・・・・・ただいま」



ん?なんか機嫌悪い?



「よっすぃ?」

「ん?」

「何かあったの?」

「別に。なんで?」

「いや〜何か機嫌悪そうだから」



273 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:10



私がそういうと、よっすぃーはいきなり私を抱きしめた。


何?どうしたの?



「ゴメン、今日機嫌悪いや」



やっぱり・・・仕事うまくいかなかったのかなぁ。。。



274 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:11



「機嫌悪いけど、許して。先に言っておく」

「・・・分かったよぉ。許してあげる」

「ありがと」



それだけ言うと、よっすぃーは私の体を離し、
ソファーに座った。



275 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:11



ホントに機嫌悪いなぁ・・・ま、いっか。

ご飯ご飯っと。



私はキッチンに行き、ご飯の支度を始める。

するといつの間に来たのか、よっすぃーに後ろから抱きしめられた。



276 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:11



「よっすぃー。動けないよぉ」

「・・・・・ほっせぇなぁ・・・・・」

「え〜?何いきなり」

「別に・・・細いなぁと思って」



今日のよっすぃは何か変。

いつもよりくっついてくるし・・・

久しぶりに2人きりで会えたのは嬉しいことなんだけど、
こういう時に常にくっついて居たいのは私のほうで・・・

よっすぃーから来るなんて滅多にない。


相当嫌なことでもあったんだろうなぁ・・・



277 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:12



「そりゃあお腹が出ないように気をつけてるもん」

「・・・・・・太っちゃえばいいのに・・・・・」

「ダメだよぉ。一応アイドルだから、その辺は気をつけないと。
 お仕事出来なくなっちゃうでしょ?」

「・・・・・・辞めちゃえばいいのに・・・・・」



えぇ?よっすぃー自分の言ってること分かってるのかな?

疲れすぎて頭働いてないんじゃないの??



278 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:13



「ねぇ。自分の言ってること分かってるぅ?」

「・・・・・うん・・・・ゴメン・・・」

「いいけどさぁ。ホントどうしたの?」



私が聞くと、いきなり持ち上げられた。



「えっ?何?」

「あっちで話そ。座って」



279 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:13



そう言うと、私を抱きかかえたままソファーに座った。


もう何なの。お姫様抱っことか久しぶり・・・

昔はよくお願いしてやってもらったなぁ・・・


私はよっすぃーが座ったことを確認して、
腿に跨るように座り直す。



280 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:14



「それでぇ?どうしたの?」




「梨華ちゃんさぁ。
 ・・・・・衣装が過激すぎじゃありませんか?」




私は何のことを言っているのか分からず、?を浮かべる。



281 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:14








「いや、だからさ・・・・ステージ衣装とか・・・
 誘いすぎじゃありませんか?」








282 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:15



ここでよっすぃーの言っている意味がようやく理解できた。

きっとライブでの衣装のこと言ってるんだなぁって。



「しょうがないじゃ〜ん。着てって言われるんだもん」

「嫌だって言えばいいじゃん」

「言えるわけないでしょ?そんな権限ないもん」



よっすぃーは俯いて私の顔を見ようとしない。


よっすぃーだって分かってるはず。

あれはしょうがなく着てるってことを。



283 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:15



「・・・・・あとさ・・・・」



まだあるんだ。仕事のことはしょうがないじゃんよ〜



「・・・腰・・・」

「え?腰?」



よっすぃーは顔を上げ、私の顔をじっと見る。

綺麗な目・・・そんなに怒っちゃやーよ。



284 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:16








「・・・・・振りすぎ・・・・」








285 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:16



えぇ〜!!振りすぎって・・・・

今までこれでやってきたじゃんよ〜

何よいきなり!!



「普通だよ!!今まで通りじゃ〜ん」

「・・・・・マンパワーとかデフ・ディバとか?
 めっちゃ振ってるよね?」



デフ・ディバって・・・マンパワーって・・・

古っ!!  結構前だし・・・



286 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:16



「そんなこと気にしてたんだ・・・」

「そんなことじゃないよ!!大事なこと!!」



怒らなくたっていいじゃない。どこが大事なのよ。



「・・・・・今日楽屋でさ・・・・・」



287 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:17



*****************************



なぜか美勇伝の話になったらしい。



「エロイよね」

「エロイです!!あーれはエロそのものです」

「よくやりますよねぇ。あの衣装は絶対に着たくない」

「ってかあれを間近で見てるんだよ、ファンの人は」

「もう誘ってるとしか思えないですね」

「石川さんも男の人を誘惑するようになったんですねぇ」



288 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:17



それから私の腰振りの話になり・・・



「あの振り方は半端無いですよね」

「あれも誘ってるよね」

「どうやったらあんなに激しく振れるんだか」

「まぁ、絵里も負けてないけどねぇ」

「そんなこと無いですよ!!石川さんには勝てないです」



と、こんな感じだったらしい。。。



****************************



289 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:18



「梨華ちゃんってやっぱり・・・・・」

「やっぱり・・・・・?」








「周りを誘ってるの?」






「・・・・・そんなわけないじゃん!!
 どうして私がファンの人を誘うわけ?」



290 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:18



よっすぃーは黙りこみ、しばらくして「わかんない」と答えた。


きっと周りがそういうこと言うから、
素直なよっすぃーは周りの言うこと信じたんだなぁ。

そんなとこもカワイイんだけど・・・

誤解は解いておかないと・・・



291 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:18



「あのね、アレは全部お仕事なの。分かるよね?」



よっすぃーは俯きながら、コクンと頷く。



「好きでやってるわけじゃないの。
 歌うことやダンスは楽しいからね、
 その楽しいことをやるために必要なことなの。」



よっすぃーが顔を上げる。綺麗な顔。



292 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:20




「・・・・・私が誘うのは・・・・」









『よっすぃーだけよ』








293 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:20




チュッ



そう言って口づける。優しく・・・優しく・・・



顔がだんだん赤くなっていくのが分かる。


照れてる照れてる。カワイイー。



294 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:21



「さ、ご飯にしよっか」



私が立ち上がろうとすると、ぐっと腰を戻され、ロックされる。

そして耳元で・・・



「ご飯の前に、梨華ちゃんを食べたい」



ベタな言葉だけど、コクンと頷いてしまう私。



「誘ったのはそっちだからね」



295 名前:誘惑 投稿日:2006/02/21(火) 16:21



分かってる。私はいつだってあなたを誘ってるんだもん。



仕事場でもどこでも・・・



あなたがいるところではどこでもあなたを誘ってる・・・



あなただけを・・・





                          END



296 名前:愛虎 投稿日:2006/02/21(火) 22:34
更新お疲れ様です。
う〜ん。確かに梨華ちゃんの衣装は・・・。
大人な梨華ちゃんと素直なよっすぃ〜サイコーっす。
297 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/22(水) 00:14
あま〜い
いいものありがとうございまいしたw
298 名前:メモ 投稿日:2006/02/28(火) 02:47

>>愛虎サン

 実際の石川さんも大人っぽくなってきたと思いませんか?
 とても大人の色気を感じます。
 時にエロく、時に熱く・・・・・・


>>名無飼育さんサン

 こちらこそ読んでいただきアリガトウございます。
 石川さんのラジオの甘さが大好きな甘党ですので、
 甘甘でいけたらと思います!


299 名前:メモ 投稿日:2006/02/28(火) 02:48



いしよし・あやみき



300 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:49




私たちは別れているはずだった。


みんなの前では・・・


でも実際は忘れることが出来ずに、
今でもみんなに隠れて付き合っている。




301 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:50



「あさってから4日間、
 亜弥ちゃんたちと旅行に行ってくるから」

「はぁ?聞いてないけど。何処行くの?」

「美貴ちゃんの実家。北海道」

「何それ。なんで勝手に決めるの?」

「だって用事あるって言ったじゃん。
 だから誘わなかったんだよ」



302 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:50



よっすぃーはちょうど用事があると言っていた。


だから誘わなかったのに。

どうせどっかの女の人のとこだと思うけど。



よっすぃーと一度別れたのは、そのことが原因だった。

女ぐせがかなり悪い!

私が居ないかのように遊び歩いている。

今もそれは変わらない。



303 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:51



「普通誘うだろ」

「いいでしょ、たまに遊びに行っても。
 よっすぃーみたく毎日遊んでるわけじゃないんだから」



何にも言えなくなってる。いい気味!!

たっくさん楽しんでこようっと。



304 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:52



*****************************



「よっちゃん本当に来なかったんだ」

「いいのいいの。どうせどっかの女と遊んでるんだから」

「ははは。相変わらずだね」



美貴ちゃんは苦笑いしてる。


美貴ちゃんにも分かってほしいなぁ、この気持ち。


よっすぃーが誰と一緒に居るのか気になってしょうがなかった。

いつもは諦めているのに、今日に限ってとても気になる。


なんなの一体。少し離れたらなんでこんなに気になるのよ!!



305 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:52



「でもよくそんなに女居るよね。
 なんでそんなにモテるんだろうね」

「まぁ、顔はいいし。見た目がカッコいいからじゃない?
 でも相当なヘタレだよね・・・」

「う〜ん、ヘタレはヘタレだね」

「梨華ちゃんはどこが良くて付き合ってたの??」



そう言われると・・・

どこが良いのか分からない・・・


ヘタレで遊び人で泣き虫で頑固で・・・

悪いところしか出てこないよ・・・



306 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:53



「どこだろ。分かんない・・・」

「あっちのほうが良かったとか?」

「確かに良かったけど、、、って何言わせるのよ!!」

「あぁ、やっぱりそれで落ちてる人が多いんだね」



亜弥ちゃんはニヤニヤしながら私の顔を見てくる。


もう恥ずかしい!!なんてこと聞くのよ!!


美貴ちゃんは相変わらず苦笑い。

小さくため息までついて。

何かあったのかな?



307 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:54



「美貴ちゃん。なんかあったの?」



私は美貴ちゃんにだけ聞こえるように問いかけた。

亜弥ちゃんはヘッドホンをして、音楽を聴いているようだ。



「いや〜亜弥ちゃんもさ。結構遊んでると思うんだよね」



あーそれでかぁ。浮かない顔してたのは・・・

でもいいじゃない!一緒に旅行できるんだし・・・

ん?もしかして私はお邪魔??



308 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:54



「ねぇ。私実は2人の邪魔になってない??」

「・・・・全っ然。2人のほうが今は少し気まずいかも・・・」



それもどうかと思うけど・・・・

まぁいっか。来ちゃったものはしょうがない。



もやもやした気持ちを持ったまま、私たちは北海道に降り立った。



309 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:54



*****************************



「わぁー!すっごい雪だね」

「すごーい。北海道ってスゴイね」

「そんなにすごいかなぁ。美貴住んでたんですけど」



私たちはたくさんの雪に感激していた。

美貴ちゃんもこの時ばかりは楽しそうに笑ってる。



310 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:55



「やっぱりよっすぃーも連れてくれば良かったよね?」

「そうだねぇ、無理にでも誘えば良かったかな」



綺麗な雪の道。見せてあげたいなぁ。


こんなに楽しいときでも彼女を思い出してしまう。

楽しい時間を共有したいって思っちゃう。


はぁ。重病だよね、これ。



311 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:55



*****************************



私たちの旅行はなんの問題もなく過ぎていった。


でもやっぱり浮かない顔の美貴ちゃん。



「美貴ちゃん?大丈夫?」



美貴ちゃんは私のほうを向き、
急に真面目な顔で訳のわからないことを言ってきた。



312 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:56



「あのさ、梨華ちゃん・・・」

「なあに?」


「・・・・・・ふぅ。浮気してみない?」


「・・・・・・・・・・・・・」


「実際には、浮気相手になってみない?なんだけど・・・」


「・・・・はい?美貴ちゃん自分の言ってること分かってるよね?」

「えぇ、まぁ・・・」

「なんで?」



313 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:56



美貴ちゃんが私に浮気相手を申し込んだわけは、

亜弥ちゃんに見せ付けるためらしい。


今まで美貴ちゃんは亜弥ちゃんの遊びぐせを我慢してきたけど、

もうそろそろ我慢の限界。

だから自分がどんな気持ちを味わってるのか
分かってほしいとのこと。


だからって私を使わないでよ!!無理無理!!



314 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:57



「お願い!!梨華ちゃんしか頼める人いないし・・・
 今付き合ってる人もいないから大丈夫かなぁ。と思って」

「ダメダメ!全然大丈夫じゃないよ」

「な〜んで?お願い!!もうこれ以上のお願いはないから!!」



これ以上のお願いって・・・あったら困るよ。

ほんと無理。私にはよっすぃーがいるし・・・

あっ・・・・



315 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:57







「いいよ。浮気相手になってあげる」







316 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:58



「へ?いいの?」

「うん。どうすればいいの?」



私はよっすぃーに今まで散々嫌な思いをさせられた。

だからこれはいいチャンスかもしれない!

亜弥ちゃんからよっすぃーの耳に入れば・・・



「なんか・・・ヤル気出てきちゃったね」

「そう?さぁ頑張ろう!!」

「あぁ、うん。
 取り合えずイチャイチャするかんじでいいよね」

「そうね。ベタベタする」

「いや、あんまりベタベタされても・・・」



317 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:58



こうして私たちの『相手に同じ思いをさせる』作戦は始まった。


とりあえず意味もなく美貴ちゃんに触れてみたりする。

何となく亜弥ちゃんの視線が向いているのが分かる。



やっぱり嫌なんだぁ。

亜弥ちゃんなんて誰でも構わず触れてるのに・・・



亜弥ちゃんがトイレに立った隙に作戦会議を始める。



318 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:59



「とりあえず意識してたよね」

「ほんと?そっかぁ・・・」

「次はどうするの?キスでもしてみる?」

「え、ちょっ、それは」

「してるフリだよ。美貴ちゃん本気にしたのぉ?カワイイ」

「うっさい!でも堂々とするのは不自然だよね」



堂々とするのは有り得ない。

見られてないと思ってするのが浮気って感じよね。うん。



319 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 02:59



「じゃあ2階にでも行かない?
 私たちが居なかったら、絶対探しにくるでしょ?」

「そっか。じゃそうしよ」

「あくまでもしてるフリだからね」

「当たり前でしょ!
 なんで意味もなく梨華ちゃんとしなきゃいけないの!」



そんな怒らなくてもいいじゃん。冗談なのに・・・・



320 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:00



私と美貴ちゃんは2階の美貴ちゃんの部屋に行き、
とりあえず並んで寝てみる。



「早く亜弥ちゃん来ないかなぁ」

「寒いね、この部屋」

「そだね。あ、誰か上がってくる」



美貴ちゃんが私に覆い被さり、キスをしてるようにみせる。



「ちょっ、くすぐったいよぉ」

「我慢して」



321 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:00



美貴ちゃんの息が首筋にかかってくすぐったい。


いや。変な気分になっちゃう。



「はぁ、美貴、ちゃん、、、ちょっ、、、と」

「どしたの?」

「ううん。何でもない」

「そう」



322 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:01



それだけ言ってまた再開する。


っていうか、これ本当に見てるのかな?

見られてないのにこういうことしてたら・・・



「っあぁ、んふ、、、あ」



美貴ちゃんの唇が首筋に当たってしまい、
甘い声を出してしまった。



323 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:01










バンッ!!










324 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:02



亜弥ちゃん、やっと開けてくれたぁ。


そう思ってドアのほうを見ると、信じられない人が立っていた。



「おめぇら何やってんだよ!!」

「「・・・・・・・・・・・」」

「なんか言えよ!!何やってんだって聞いてんの!!」



ドアの前にはよっすぃーがスゴイ剣幕立っている。



325 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:02



「美貴そこどけ!!」



よっすぃーが美貴ちゃんとの間に割り込んで、
私を守るようにしてくれてる。


どうして?



「・・・・よっちゃん?なんで居るの?」



先に口を開いたのは美貴ちゃん。

私はビックリしすぎて声が出ない。



326 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:03



「そんなのどうでもいいんだよ!!
 おめぇは何してんだって聞いてんの」

「あぁぁ、これは色々事情がありまして・・・」

「事情ってなんだよ!
 気やすくうちの梨華ちゃんに触るんじゃねぇ!!」

「えっ?あ、ゴメン。
 そのぉ、話せばとても長くなるんですけど・・・」

「もういいよ!!聞きたくない!!」

「亜弥ちゃん!?」



327 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:03



亜弥ちゃんはドアに立ちつくして泣いている。


酷いこと・・・しちゃったな・・・



「ごめんなさい!!私が悪いの!!」

「梨華ちゃん!?」

「なんで梨華ちゃんが悪いの?
 無理やり美貴に襲われたんでしょ?」



そんな風に見えたんだ。美貴ちゃんゴメンね。



328 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:03



「違うの。私が襲ってって頼んだの」

「はぁ?なんで。あたしじゃ満足できなかった?」

「そうじゃないの
 よっすぃーは凄く上手だから満足してる」

「じゃあなんで!?」

「梨華ちゃんもういいよ。美貴がちゃんと話すから」



そう言うと、今までの経緯を2人に話した。



329 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:04



「美貴たんのバカ!!嫉妬するに決まってるでしょ?
 嫌なら嫌ってはっきり言ってよ」

「うん・・・ゴメン」



亜弥ちゃんは理解してくれたんだけど・・・

こっちのおバカさんは・・・・



「だからって梨華ちゃん使うなよ!
 他にも居るだろ。もう触るなよ、絶対に!!」



330 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:04





はぁ。なんでそうなるかな・・・


自分は好き放題してるくせに。



っていうか・・・






331 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:05



「よっすぃーなんでここにいるの?
 ここ北海道だよね?」

「うん」

「うんって。どったのさ」

「追いかけてきた」

「梨華ちゃんを?」

「そう」



そうってあなた。簡単に来れるところじゃないよ?



332 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:05



「心配でさ。こういう奴に変なことされたら困るでしょ?」

「こういう奴いうな」

「だって美貴、途中からマジになってたでしょ」

「うっ」

「そう!思ったの!美貴たんあれは演技なんて言えないよ」



面白い。こういう会話も面白いよね。

自分達のことなのに第三者的目線で見ちゃう。



333 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:05



「美貴のことはどうでもいいけどさ、
 やっぱ2人はまだ付き合ってたんだね」

「当たり前じゃん。あたしが梨華ちゃんと別れるとか有り得ないし、
 梨華ちゃんが他の人付き合うのも有り得ないでしょ」



ふふ。すっごい自信。

でも本当にそう。私はよっすぃー以外ありえない。

よっすぃーもそうであってほしい。



334 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:06





その夜私たちは2部屋に分かれて寝ることにした。



もちろん私はよっすぃーと。






いつも通り腕枕をしてもらう。





335 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:06



「こんなところまで来てくれるなんて。嬉しいなぁ」

「だってさぁ。行くとき様子が変だったし。
 何かあるのかと思って」

「変?そうかなぁ?」

「なんかね、よく分からないけど」



ちょっと意識してたのはあるかもね。

私も旅行で他の人見つけてやるぐらいの勢いだったから。



336 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:07



「もうさぁ」

「ん?」

「離れないでよ。梨華ちゃんいないとやっぱりしっくり来ない」

「ふふ、何それ」

「美貴とあんな風になってるの見て、
 ほんとに美貴を殴ろうかと思ったんだよね」

「えぇ?良かったぁ、抑えてくれて」



337 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:07



ギュッと抱きしめられる。

私は腕枕をされながらギュッてしてもらうのが好き。

それをよっすぃーも分かってる。



「これからは本当に梨華ちゃんだけを見ます」

「本当にぃ?」

「本当。約束します」



338 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:08










チュッ











339 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:08





軽くキスをしてくれた。これが誓いってことなんだろうなぁ。





失敗に終わったようで、成功だったのかもしれない。





お互いに幸あれ。







340 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:08


























341 名前:試愛 投稿日:2006/02/28(火) 03:09



「梨華ちゃんさぁ、あん時ちょっと感じてたよね?」

「えっ?」

「感じてたよね?」

「感じてないよぉ」

「ふ〜ん。ならいいけど」





                          END



342 名前:愛虎 投稿日:2006/03/03(金) 23:25
更新お疲れ様です。
333のよっすぃ〜の言葉を読んでうん、うん、頷いちゃいました。
343 名前:名無し飼育 投稿日:2006/03/29(水) 23:19
はじめて読みました!
いやぁ、両方とも好きなCPでとても(・∀・)イイ!!
更新楽しみにしてます
344 名前:メモ 投稿日:2006/04/20(木) 18:20


>>愛虎サン

 いつも読んで頂きありがとうございます。
 作者はいつも思うんです。
 梨華ちゃん無しではよっすぃーは活きてこない。
 よっすぃー無しでは梨華ちゃんは活きてこない。
 大げさですかねw


>>名無し飼育サン

 ありがとうございます。
 両方のCPは作者も大好きなもので・・・
 まぁほとんどいしよしになってますが・・・

345 名前:メモ 投稿日:2006/04/20(木) 18:21




いしよし



346 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:22



「ふぅ」



午後10時30分。

ある店の前。

この時間に毎日この場所に来るのがあたしの日課。



「あたしもいい人過ぎるよなぁ。
 毎日とか・・・自分で呆れるよ・・・」




347 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:22




この場所に来るといつもそう思う。



なんでこんな時間にこの場所に来ているのか。




それは・・・まぁ単純なことで・・・




348 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:23




トントン






ガチャ





349 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:23



「よいしょ、アリガトね、いっつも」

「いやいや、梨華ちゃんのためなら何処まででも
 お迎えにきますよ。な〜んてね」

「ふふ、よっすぃーは優しいねぇ」



いや〜梨華ちゃんのほうが

全然優しいしカワイイし笑顔が素敵だし・・・

はぁ。ほんとカワイイ。



350 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:23



あたしが毎日ここにやってくるわけは、

愛しの梨華ちゃんをバイト先から家まで送るため。



だって危ないじゃん?

こんな夜中にカワイイ子が1人で歩いてたらさ。

だからあたしが毎日送ってあげてるわけですよ、はい。



351 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:24



「でもさぁ、こんなに毎日迎えに来てくれるなんて、
 よっすぃー相当暇なんだね」

「え?暇じゃないよ。忙しい合間をぬって来てるんですけど?」

「あらそう?ならお忙しいところありがとうございます」

「いいえー」



こんな他愛も無い会話が楽しい。

彼女と一緒に居られるだけで幸せなんだ。



352 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:24



あたしたちは付き合ってるわけではない・・・

ただのお友達・・・


出会ってまだ1ヶ月。

あたしがコンビニでバイトをしていた彼女に一目惚れ。

その日から猛アプローチ。

毎日毎日通い続け、待ち伏せをしていた。


これってストーカーだよね。

でも彼女は怖がらずに嫌な顔せずに、

いつも笑顔で受け答えをしてくれていた。



353 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:25



初めて車で送って行った日。


「梨〜華ちゃん!」

「あ、こんばんは」

「ねぇねぇ、歩いて帰るの?危なくない?」

「大丈夫だよ。いつもだし」

「あー!こんなところにあたしの車がある!」

「フフ」

「そうだ!ついでだから梨華ちゃん送ってあげるよ!!」

「え〜?いいよー歩いて帰れるから」



354 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:25






今日は絶対に車に乗せてやる!!






355 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:26



「ダメだよ!危ないじゃん。
 こんな暗かったら変な人に襲われちゃうかもしれないよ?」

「う〜ん。その車に乗ったほうが危ない気がする・・・」

「え?なんか言った?」

「うぅん、何でもない。大丈夫だからさ、気をつけて帰ってね」



うぅ、こんなんじゃダメだ。押されてる。

こうなったらぁ・・・



356 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:26



「お願いします!!乗ってってください」



あたしはついに頭を下げた。

だって送りたいんだもん!!



「そんな、そこまでしなくても」



彼女は困ってしまったらしく、少しオドオドしてる。

よし、このまま押してしまえ!!



357 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:26



「やっぱさ、いつもは大丈夫だけど
 今日は変な人が現れるかもしれないでしょ?
 変な人って、いきなり現れるもんだからさ」

「・・・・・そうだねぇ。
 (確かにこの人いきなり現れたもんなぁ)」

「だから、ね?」

「・・・・分かった。じゃあ送ってもらおうかなぁ」

「待ってました!どうぞどうぞ。乗ってくださいな!!」



358 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:27



よっしゃ!!うまくいったぁ。


今日は部屋にあがるのはさすがに無理だよね・・・


まぁ一回乗っちゃえば、気を許して毎回乗ってくれるだろうし。


グフフ。グフフフフ。



359 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:27




これが初めて送った日のこと。

あれ以来ずっと送り続けてるし、だんだん普通なことになってきた。

彼女はあたしが迎えに来るのが当たり前だと思っている。

でも・・・・・



まだ一回も家に入れてもらってないよ!!

これってほんとにただのアッシー君かな・・・・・



360 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:28



「よっすぃー。今日私飲みたい気分なんだけどなぁ」

「え?」



おいおいおい。梨華ちゃんがおかしなこと言い始めたぞ。

これって・・・・もしかして・・・・・



「家・・・来る?」



361 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:28






キターーーーーーーーーーーーー!!





いよいよか、いよいよなのか!!




362 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:29



「え、あ、いいいいいいの?」


「いいよ?お酒買って帰ろうか」


「はい、買って帰ります」



363 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:29



あたしと梨華ちゃんは途中お酒を買って、家に向かった。

梨華ちゃんは少し悲しい顔をしている気がする。


どしたんだろ。ってかお酒飲みたいとか・・・・

何かあったんだ、きっと。



364 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:29



「梨華ちゃん?何かあった?」

「え?どうして?」

「いや、悲しい顔してるような気がしたからさ」

「そう?」

「だってお酒飲みたいとかさ・・・初めてじゃん」

「別にいいでしょ?未成年じゃないんだから」

「いいんだけど・・・」



365 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:30



やっぱり今日の梨華ちゃんはおかしい。

辛そうっていうか・・・


あたしは少しの疑問を持っていたけど、
彼女家に行けることを心から喜んでいた。



366 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:30



------------------------------------- ガチャ



「どうぞぉ。綺麗な部屋ではないけど」

「お邪魔しま〜す」



367 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:31




おわぁ!きったねぇ〜部屋だな。



綺麗な部屋ではないという前に、かなり汚い部屋だった。



どうやったらここまで汚くできるんだよ。



368 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:31



「その辺に座っててぇ」



その辺て・・・・・



どの辺だよ!!座るとこなんてないじゃないかよ!!


座れるとこといえば、ベットの上だけだった。

服が散乱して、ゴミも落ちまくり・・・

まぁ1Kだから
少し片付けないだけでこうなるのかもしれないけど・・・



369 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:31



「あのさぁ・・・この辺片付けてもいい?」

「え?・・・なあに?」

「この辺・・・片付けたい」

「ほんとに!?片付けてくれるのぉ?
 なかなか片付かなくて困ってたんだよねぇ
 お願いしちゃおっかなぁ」

「いいよ。あたしもこの部屋じゃ飲めない・・・」

「ちょっと何よそれ!失礼じゃない?」



370 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:32




梨華ちゃんはプンスカ怒ってるけど、

そんな風に言われてもしょがな部屋だとあたしは思いながら、

せっせと片づけを始めた。




371 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:32









======== 30分後。








372 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:33




「ふぅ。やっと片付いたよ」



「ほんとだぁ。アリガト、よっすぃー」




373 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:34




彼女はあたしに近づいてお礼を言った。

んだけど・・・



酒臭い・・・



こいつ・・・



先に飲みやがった・・・




374 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:34





「梨華ちゃん?どうして先に飲んじゃったの?」



「えぇ〜。だって我慢できなかったんだもん」





375 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:35



上目遣い・・・カワイイィィ↑↑↑↑↑

ヤベー!!上目遣いヤベー!!

しかも我慢出来なかったとか・・・

えっちぃし・・・



そんな顔されたら・・・



376 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:35





「そうだよね!我慢なんて出来ないよね!
 むしろ飲んでてくれてアリガトってかんじだよ!!」



「そうぉ?フフ、よっすぃーも早く飲もう!!」





377 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:36





それからあたしたちの二人だけの飲み会が始まった。



最初はお互いのバイト先であった出来事とか、


家族や友人の出来事を話しながら楽しい時間を過ごしていた。





378 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:36





「んでぇ、その美貴が恋人の前ではヘタレ君になるんだよねぇ」

「へぇ、凄いギャップ」

「でしょ?まぁ親友だからさぁ、
 こうやって笑い話にできるんだよね。
 悪友って言ったほうがいいかもだけど」

「いいねぇ・・・そういう関係」





379 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:37





突然彼女が遠い目をしながら呟いた。



悲しそうな目。





380 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:37



「梨華ちゃんは親友とか居ないの?」

「・・・・・・・・・・・・・」



梨華ちゃんが急に黙り込んでしまった。


これか・・・元気がなかった原因は・・・


あたしは自分が持ってる一番優しい声で問いかける。



381 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:38



「梨華ちゃん?何あったぁ?」



首を振る梨華ちゃん。



「どしたぁ?あたしは何でも聞くよ」



今まで彼女のグチは全部聞いてきたつもり・・・

まだまだたくさんあるかもしれないけど、
出来る限りストレス発散してほしくて・・・



382 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:38





どこまでも悲しそうな彼女がとっても小さく見えて・・・




無意識に抱きしめた。





383 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:39





「梨華ちゃんの悩み、全部知りたい。
 あたしで解決できるなら、解決してあげたい」





梨華ちゃんはあたしの腕の中で、少しずつ話し始めた。





384 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:39



梨華ちゃんは好きな人が居て、
その人のことをずっと親友に相談していた。

恋愛経験の少ない彼女は、親友の言うとおりに、
毎日メールを送ったり、電話をしたり、
一生懸命頑張っていたらしい。


相手も良い感じに受け取ってくれていたらしく、
二人は良い感じだったとか・・・


でもある時から連絡が来なくなり、
「しつこい」と言われるようになったとか・・・



385 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:40




「あたしは梨華ちゃんから毎日連絡来たら嬉しいけどなぁ」


「もう!ちゃんと聞いてくれるんじゃなかったのぉ?」


「ああ、ゴメンゴメン」




386 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:40



向こうからの連絡は一切無しで、
困った梨華ちゃんは親友にまた相談したんだけど・・・

「押せ押せだよ」と言われ、しつこく連絡してたらしい・・・


普通気付くよな・・・なんて素直な子なんだ・・・


それから向こうが携帯自体を替え、
連絡出来なくなって、運が無かったんだと思っていたんだけど・・・



387 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:40



「今日ね、その子と彼が手繋いで歩いてるの見たの」

「うぇ?」

「だから私、二人のところに行ったの。
 事情を聞こうと思って」



普通行かないよね。行動派だね、梨華ちゃんは。



「そしたら・・・」



388 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:41



その子と彼は付き合っていて、
梨華ちゃんをからかっていただけだと・・・


そんな酷い話があるかよ!!



「あんたなんて相手にするわけないじゃんって・・・
 言われちゃったぁ」



389 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:41







梨華ちゃんの頬に一粒の雫が流れた。







390 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:42





本当に恋をしていたんだろう。


好きだったんだろう。


あたしが梨華ちゃんを想っているぐらいに・・・





391 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:42





梨華ちゃんはあたしに抱きついてきた。




ギュッと・・・ギュッと・・・




離さないでほしいと言ってるかのようにキツク・・・





392 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:43



「梨華ちゃん」

「ゴメンね、こんな話・・・」



あたしは返事の代わりに抱き返す。

気持ちを込めて・・・

離さないという気持ちを込めながら・・・



393 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:44


「でもね、もういいの」

「大丈夫なの?」

「バイト中はね、そればっかり考えてた。
 もう本当に仕事が手につかなくて・・・
 間違えっぱなしだったの」


彼女はゆっくりと話す。


「でもなんでだろ。
 外に出て、よっすぃーの顔見た瞬間、
 そんなこと吹っ飛んじゃった」

「えぇ?マジぃ?」

「マジぃぃ。なんか穏やかになってね・・・」


394 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:44





嬉しいこと言ってくれるじゃないですか!!


吉澤役にたってるんじゃないのぉ??





395 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:45



「よっすぃーが居れば大丈夫かなぁって・・・」




「またこうやって抱きしめてくれる??」



396 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:45










カワイイ・・・










397 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:45



「ももももももちろん!!」



「ほんとにぃ?ギュッてぇ?」



「うううううん。ギュって。したげるよ」



「フフフ、ありがとぉ」



彼女は安心したのか、あたしの腕の中で寝てしまった。




398 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:46





誰かに怒られた時、上手くいかなかったとき、裏切られたとき・・・




1人で居るのはとても辛いこと。




そのことばかり考えてしまう。





399 名前:信頼 投稿日:2006/04/20(木) 18:47



でも自分が信頼できる人が近くにいれば、自然と心が安らぐ。



あたしは梨華ちゃんにとって、そんな存在になりたいと思った。




っていうか、なってみせるさ!!v(O^〜^O)v





                          END



400 名前:名無飼育 投稿日:2006/04/21(金) 22:05
頑張れ!よっちゃん!!w
401 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/26(水) 23:49
君ならなれるよ!!
402 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/06(土) 14:46
次回作楽しみにしています!
403 名前:メモ 投稿日:2006/05/21(日) 02:24


>>名無飼育サン
 いつでも一生懸命なよっちゃんです!

>>名無飼育さんサン
 現実にはもうなってる??w

>>名無飼育さんサン
 ありがとうございます。
 ご期待に沿えるよう頑張ります。
404 名前:メモ 投稿日:2006/05/21(日) 02:25

今回は短編ではなく少し長めです。
お付き合いください。


いしよし


405 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:26



ある事務所のちょっとした小部屋。
あたしはお偉いさんから呼び出された。
よくヘマをするから、
首にされるのかと思いドキドキしながら部屋に入る。


コンコン


「失礼します、おはようございます」

「おう、おはよう。まぁ座れ」

「あ、はい」


机と椅子しかないその部屋はとても息苦しい。
こういう雰囲気は苦手だ。
お偉いさんが話し出す。


406 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:26


「どうだ?仕事慣れてきたか?」

「あぁ、、、いや、はい・・・」

「な〜んだ、どっちだよ。慣れたのか?慣れてないのか?」

「慣れたといえば慣れましたけど・・・」

「ったく、はっきりしない奴だな。
 まぁいい。お前には今日から一人で仕事をしてもらう」

「えっ?一人ですか?」

「そうだ、出来るだろ?」

「あぁ、、、はい」

「つーか出来ないなんて言ったら首だけどな」


407 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:27


そう言ってお偉いさんはガハハと笑う。

無理だよ、いきなり。
そういう雰囲気醸し出してくれないとさ、心の準備があるじゃん。
人を管理するなんて、あたしにはまだ無理!


408 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:28



あたしの職場は芸能事務所。
仕事はタレントをフォローすること。
いわゆるマネージャーってやつで・・・
でもあたしはまだ一人で仕事できるぐらい有能じゃない。
まだまだ教わることはたくさんあるし、
教わったことさえ出来ない。

そんなんでタレントを守ることなんて出来ないよ・・・



409 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:29



「んで、その相手なんだけど・・・」


あたしが一人立ちってのは決まりのようで。。。
誰のマネージャーなのか、気になるところ。

お願いだから大物さんは辞めてください!!
安倍さんとかだったらマジ無理だよ。
胃壊しちゃいそうだし・・・


「安心しろ。大物じゃない」


思っていたことをズバリ言われてドキッとした。

この人心の中読めるんじゃないの??怖いな。


410 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:30



「実はな、新人なんだ」



新人!?新人同士で組ませる気かよ・・・



「街でスカウトした子なんだけどな。
 これがまたカワイイんだ!!惚れるなよ〜」



惚れるわけないだろ!いいから誰か教えろよ!



411 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:30



「20歳。神奈川県出身。胸はデカイ」



なんだよ、そのどうでもいい情報は!!



「名前は石川梨華。ちょっと幸薄そうなんだけどな。
 あれは磨けば絶対に光る」



412 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:31



お偉いさんが鋭い目であたしを見てくる。
この人が『いい』と言った子は、今まで必ず売れてきた。
女優であっても歌手であってもアイドルであっても・・・
あたしもこの半年間でたくさん羽ばたいた人を見てきたので、
その言葉に確信を持っていた。



「それって・・・あたしにかかってるって感じですか?」



お偉いさんがニヤッとして言う。



「よく分かったな。
 今まで売れてきた奴は、みんなマネに恵まれてきた。
 そうだろ?」



413 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:31



確かに。安倍なつみにしても後藤真希にしても松浦亜弥にしても。
みんな良いマネージャーを持っている。
その人達はみんな代わることがない。

でも・・・そんなことがあたしに出来るのか・・・
入ってまだ半年。この間高校を卒業したばかりなのに。



「お前なら出来ると思ってる。
 お前は気が利く。気がつく。
 それはみんなが持っているものじゃない。」



お偉いさんは続ける。



414 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:32



「良いマネージャーには共通点がある。
 それは厳しさ。タレントに甘くては上手くいかない。
 でもそれと同時に相手を和ませる優しさを持ってる。
 お前はその両方を持ってると思う。
 ただ厳しいだけでも優しいだけでもない」



お偉いさんの言うことを黙って聞いていた。
あたし自信はそんなこと分からない。
自分の思ったことを行動しているだけ。



「あとは・・・信頼だな。
 お前のことなら信頼してくれるだろうと思う」

「ありがとうございます」

「あんま気負いするな。普段どおりでいい」



415 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:33



笑顔でそんなこと言われても・・・
責任ある仕事じゃん。いろいろ考えちゃうよ・・・



「午後から会ってもらって打ち合わせとかしてもらうからな。
 焦るなよ。向こうのほうが緊張してるんだから」

「そうですよね。はい、しっかりします」

「ん、じゃ頼んだぞ」



416 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:34



肩をポンっと叩いて部屋を出て行った。

やべー緊張するなぁ。最初が大事だよなぁ。
厳しくいくべきか・・・いや、始めは優しくで徐々に・・・

嫌だなと思う一方で楽しみにしている自分がいる。
初めて任された仕事で、しかも一押しの子だから・・・
頼られてるようで嬉しかった。


部屋を出て自分のデスクにつく。
前にいる一つ先輩の藤本さんがニヤニヤしながら見てくる。



417 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:35



「なんすか。ニヤニヤして」

「いや〜よっちゃんも十分ニヤニヤしてるけど?」

「えっ」



あたしは無意識のうちにニヤニヤしてしまっていたらしい・・・
恥ずかしい・・・



「仕事もらったんだぁ。早いね」

「え、なんで分かるんですか?」

「ん?なんか自信に満ちた顔してるから」



418 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:35



そんな・・・自信なんて全然ないのに・・・



「自信なんて無いですよ。しかも新人の人らしいんで・・・」

「いくつぐらい?若いの?」

「えっと、、、確か20歳って言ってましたよ?」

「あ、タメだ。ってことはよっちゃんにしたら年上?」

「そうなりますね」

「うわぁ、やりずらそう・・・。美貴は絶対無理。
 基本的に年上苦手だし。年上に良い人いないし・・・」

「悪かったわね、良くない人で」

「うわぁ!」



419 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:36



あたしと藤本さんはいきなり出てきた先輩にビックリして、
椅子ごとひっくり返りそうになった。



「はは。別に良くないとは・・・」

「良い人居ない=良くない人は居るじゃないの?」

「そんな・・・まさか・・・はは」



うわぁ、藤本さん焦ってるよ。
でもあんな顔されたら焦るよなぁ・・・怖っ



「まぁいいわ。覚えておきなさい、藤本」



420 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:36



また飲みに付き合わされるんだ。かわいそう・・・



「それよりあんた、松浦迎に行かなくて大丈夫なの?」

「え?あぁ、今日はこっちの仕事残ってるから違う人に頼みました」

「また後で言われるわよ、なんで迎えに来ないんだって」

「そうなんですよねぇ。会うのが怖いです」



421 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:37



松浦亜弥。アイドル界のトップに君臨する事務所一押しタレント。
去年デビューしてから爆発的に人気が出た。
そのマネージャーが藤本美貴。
人気が出たのも藤本さんの努力のおかげだとか・・・

そんな亜弥ちゃんは藤本さんが大好きで、
迎えに来ないだけで機嫌が悪くなる。
今日も機嫌が悪いだろう・・・



422 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:37



「そんなことより吉澤、あんた仕事もらったんだって?」

「あ、はい。おかげ様で」

「スゴイわねぇ。藤本でさえもっと後だったわよね?」

「んぁ。一年は経ってないけど、もっと後だったね」

「!?後藤、いつの間に現れたの?」

「今」

「あら、そう」



423 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:38



神出鬼没な何を考えてるか分からないこの人。
後藤真希。歌姫。事務所で歌唱力ナンバーワン。
業界でも一目置かれる人物。
ただ何を考えてるか分からないから、周りはやりずらいらしい・・・
そんな後藤のことを良く理解してるのがマネージャーの保田圭。
かなりの敏腕で、その腕をかわれて後藤のマネージャーに。

保田にも分からない神出鬼没な性格。
これは最近分かったことだが、保田さんに似てきたんだと思う。
この人もかなり神出鬼没だ。

ごっちんとは同じ歳でお互いさばさばしているため、
気が合い仲良くしている。よくご飯とかも行く。



424 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:38



「よしこスゴイねぇ。才能ありそうだったもん」

「はは、ありがと」

「これからが勝負よ。
 タレントを生かすも殺すもあんた次第なんだからね!」

「保田さん。今日は一段と力入ってますね」



みんなの顔が引きつる。



「最初が肝心だからね。藤本のときもそうだったでしょ?」

「まぁそうですけど・・・」



425 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:39



あたしはみんなの会話に耳を傾けながら、
どういう風に接しようか悩んでいた。

年上だしなぁ。やっぱ敬語かな。
でもフレンドリーにしたほうが楽しくやっていけそうだけど。

ワクワクしながらその時を待っていた。


426 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:40



午後一時。
あたしは上司に呼ばれ、さっきより広い部屋に連れて行かれる。



「まだ来てないけど、一応先に行って待ってたほうがいいだろ」



そう言われ、なぜがあたしだけ残される。

みんなじっと待ってるのが嫌なだけじゃん・・・
あー緊張してきた。



427 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:40



コンコン



「!?・・・はい」



ガチャ



「失礼します」

「こ、、、んにちは」

「こんにちは。よろしくお願いします」



428 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:41



うわぁ〜カワイイ。
こりゃ人気出るわ。なんていうか、雰囲気がカワイイし・・・
つーか声。どこの声優だよ。アニメすぎるだろ。


一人で彼女につっこみを入れていた。



「あの〜ここでいいんですよね?」



あたしが何も言わないのを見て、彼女が聞いてきた。



「ぁあ!そうです、ここです。今上の者呼んで来るんで」



429 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:42



そう言って部屋を出る。

なんか自信なくなってきたなぁ・・・
可愛すぎる。売れなかったらほんとあたしのせいだ・・・
あんなの任せるなよ。もっと人居るだろ・・・はぁ・・・

ため息ばかり出てしまう。

お偉いさんを呼んで打ち合わせが始まる。
特に変わったことはなく、淡々と説明が行われた。



430 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:42



「何か聞きたいことなどないかい?」

「いえ、特には」

「そう。ならマネージャーを紹介します。
 マネージャーとは常に二人三脚で頑張ってもらうから」

「はい」

「じゃ、吉澤。自己紹介なんてどうだ?」



自己紹介?全然考えて無かったよ。
まぁ適当に名前と年齢を言えばいいか。



431 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:43



「えっと、吉澤ひとみ、19歳。
 あたしも新入社員なんですけど、一生懸命サポートするんで
 ヨロシクお願いします」

「こちらこそ。わからない事ばかりで迷惑かけると思うんですけど、
 よろしくお願いします」



石川さんはわざわざ立って頭を下げている。
あたしも慌てて立ち上がり、頭を下げる。



「よし、じゃあこれから仲良くやってくれな」



432 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:43



お偉いさんは石川さんを見てニコッと笑い、部屋を出て行った。


取り残されたあたし達は明日の予定を話、
今日は解散ということになった。

石川さんを玄関まで送る。



「あの、明日からほんとによろしくお願いします」



また深々と頭を下げる石川さんに、こちらこそと頭を下げる。
きっと物凄く不安なんだろう。
一人で右も左も分からない業界に飛び込んで・・・
出来る限りサポートしてあげようと心に誓った。



433 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:44





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434 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:44



次の日から二人三脚での仕事が始まった。
まだ名前を知られていないタレントを売り出すのは大変。
少しでも多くの編集者の人などに
興味を持ってもらわなければならない。


それは以外にも簡単なことだった。
こんなカワイイ子を放っておく人はいない。
たくさんの人が食いついてきた。

あたしはその人達の対応に大忙しで、
肝心の彼女を話す暇がなかった。



435 名前:for 投稿日:2006/05/21(日) 02:45



「お疲れ〜。なかなか頑張ってるみたいじゃない?」

「あ、保田さん。もうヘトヘトですよ・・・」

「いいことよ。忙しいっていうのは」

「そうなんですけど・・・体持たないっす」

「若いのにー。それで?どんな方向に進もうと思ってるの?」

「どんな方向・・・ですか」

「そう。彼女だってやりたいことあるでしょ。
 まさか聞いてないとか」

「・・・・・・・・・・」

「あんたねぇ。マネがタレントを動かしてるんじゃないの。
 タレントのためにマネが動くの」



436 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:45



保田さんの言葉は心の奥に突き刺さる言葉だった。
今まであたしは自分の考えた仕事を彼女にやらせてきた。
でもそれは彼女がやりたくない仕事だったかもしれない。
今はまだ売れていないからいろいろな仕事をしなければならないが、
何れは彼女のやりたい仕事をさせてあげなければならない。
そんなこと考えていなかった。彼女のやりたいこと。
なんだろう。。。



437 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:46



「「お疲れー」」

「お疲れ様でーす!」

「石川さん、お疲れ様です」

「お疲れ様です」

「今日なんですけど、夜あいてますか?」

「え、あ、はい。仕事ですか?」

「いや、そうじゃないんですけど・・・
 まだ一回もちゃんと話したこと無いなぁと思って。
 どうすか?」

「ぜひ。お願いします」



石川さんは満面の笑みで答えてくれた。



438 名前:for 投稿日:2006/05/21(日) 02:46










439 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:47



あたし達は何となくその辺のファミレスに入った。
そこでお互いの話をした。
家族のこと。友達のこと。
そして、お互いどうしてこの仕事をしようと思ったのか。



「私は結構小さいころからの夢だったんです。
 でも勇気が無くて、オーディションとかも受けれなくて・・・」

「で、運よくうちの事務所からスカウトされたと」

「そうです。最初は騙されてると思いました。
 なんか小さい人が話しかけてきて・・・」



あぁ、矢口さんか。あの人スカウトやってたんだ。



440 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:48



「小さいころ、なんでタレントになりたいって思ったんですかね?」

「小さいころは分からないですけど、今は分かります」

「なんでですか?」

「人を感動させたいんです。歌でも演技でもいいから、
 心から良かったと思ってもらいたい」



彼女から出た言葉はとても力強かった。
同時に自分が情けなくなる。
今までしてきた仕事は、
彼女のビジョンにあってないと分かったから。



441 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:48



「そうですか・・・今日はこうして話が出来て良かったと思います」

「私もです。吉澤さんが楽しい人だって分かったし」


あたし達は笑いながら楽しいひと時を過ごした。



442 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:49





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443 名前:for 投稿日:2006/05/21(日) 02:49



「おはようございまーす」

「あー、よっちゃんおはよ」

「今日はお迎えいいんですか?」

「良くない」

「大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃない。でも体が持たない」

「ですよね。あたしには無理です。
 梨華ちゃんで良かったぁ」

「おぃー。って、梨華ちゃんとか呼ぶようになったんだ。
 美貴のことはまだ藤本さんなのに」

「そりゃ年上の次元が違いますから。梨華ちゃんは大丈夫なんで」

「いやいや意味が分からないよ」

「分かりますよ」



444 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:49



藤本さんは意味不明的な顔をしてたけど、
やっぱりずっと一緒に居ると敬語とか嫌になってくる。
だからお互いタメ口でってことに。
呼び方も変えた。
あたしは梨華ちゃんと呼び、梨華ちゃんはよっちゃんと呼ぶ。
他の誰かに呼ばれるよりもそれは心地よく聞こえる。


「はあぁ。ねむ」



445 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:50



この事務所には恒例の行事がある。
それは選ばれた誰かがビキニ写真集を出すというもの。
今年それに選ばれたのが我らが梨華ちゃん。
カワイイビキニを着てる梨華ちゃんを見てみたいとおもいつつ、
他の誰かに見てもらいたくないとも思う。せつない・・・

その話をしたとき、梨華ちゃんの顔がかなり曇った気がした。
今までグラビアの写真はいくつも撮ってきたが、
ビキニは初。その分緊張が大きいんだろう。



ビキニ撮影当日。
やはり梨華ちゃんの顔は曇っていた。



446 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:51



「大丈夫?」

頷く。

「具合悪い?」

首を横に振る。



「じゃぁ、始めましょうか!!石川梨華ちゃん!
 よろしく〜」



447 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:51



呼ばれた梨華ちゃんの顔は暗いまま。
カメラの前に立っても服を脱げずに居た。



「おーい。脱がないと撮れないよぉ?」



梨華ちゃんの様子が明らかにおかしくなっているのが分かった。
あたしはすぐ止めに入る。



「すいませーん!今日石川調子悪いんですよ。
 少し待ってもらえませんか?」

「まぁいいけど。今日は絶対に撮るぞ!」



448 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:52



照明内に入り、梨華ちゃんをカメラの前から退けさせる。
下を向いたままの梨華ちゃんに話しかける。



「大丈夫?やっぱり具合悪い?」



首を横に振る。



「ごめんなさい。なんか緊張しちゃって・・・
 なんか、誰も見てくれなかったらどうしようとか、
 凄く不安で・・・」



やっぱ緊張するんだなぁ。

あたしは梨華ちゃんの手をとり、顔をじっと見つめる。



449 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:53






「そんなに不安がらないで。
 誰も見てくれなかったとしても、あたしがしっかり見てるから」






450 名前:for her 投稿日:2006/05/21(日) 02:57



目を逸らさずに、梨華ちゃんだけを見つめる。
彼女に自信をつけさせたい。
彼女の笑顔をたくさんの人に届けたい。
ただただそう思った。

梨華ちゃんもじっとあたしを見つめ、やがて力強く頷いた。
これで大丈夫。彼女は大丈夫。


その後の梨華ちゃんは、
いつもの輝きの梨華ちゃんを取り戻していた。



                    to be Continuation



451 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/22(月) 22:17
更新お疲れ様です!
自分が知らないだけなのかも知れませんが、二人のこういう設定はなかなか無いのですごく興味をそそられますし話も面白いです♪
よっちゃんと梨華ちゃんの成長とふたりの関係がどうなっていくのか、続きを楽しみに待っています。
452 名前:メモ 投稿日:2006/05/24(水) 12:16

>>名無飼育さんサン
 ありがとうございます。
 この設定、なかなか難しかったです(^^;)
 二人の成長を見守ってあげてくださいw

453 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:18



デビューして一年。
いろいろな番組に出演できるようになり、
バラエティだけでなく、ドラマにも出演できるようになった。
彼女は誰もが知ってる石川梨華になりつつあった。

あたしは仕事帰りに梨華ちゃんを家まで送り、
事務所に戻る。

事務所には藤本さんが残っていた。



454 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:19



「お疲れ〜」

「あ、お疲れ様です
 こんな遅くまで珍しいですね」

「まぁね。今日は早めに仕事終わらせようと思ったんだけど、
 うちのお姫様がどうしても迎えに来いって言うもんだからさ。
 長引いちゃって」

「はは。いつもいつもご苦労様です」



455 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:19



「よっちゃんもだいぶきてるね。売れてくると仕事増えるから。
 頭使わないといけないし」

「そうなんですよ。
 どう考えても頭悪いのに、どんどん増えるから」

「まぁいいことでしょ。無くなっていくのも辛いもんだよ」

「今がいい時ってことですか?」

「そういうこと。この状態を維持するのって大変なんだから」



456 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:20



売れ始めると逆にプレッシャーがかかる。
この業界は、ちょっとしたことで人気がなくなる。
使えないと分かると、すぐに仕事がなくなる。
常に戦いをしているような世界。



「最近さ、亜弥ちゃん変なのにつけられてるらしいんだ」

「変なのって・・・ファンの人とかですか?」

「う〜ん、それか週刊誌とか。
 何かスクープないかって嗅ぎまわってるのかも」



457 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:21



大物は違うな。梨華ちゃんにもそれぐらいになってもらわないと。
ん?それもそれで困るな。まぁ適度に。

梨華ちゃんはいろいろな方面から人気が出てきていた。
あの独特な声が好きな人や、磨かれたボディが好きな人。
演技をしている真剣な姿が好きな人や、天然なところが好きな人。
これだけいろいろなファン層があれば、もちもん変な奴も出てくる。



458 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:21



「よっちゃんも気をつけてね。梨華ちゃん弱そうだから」

「はい。気をつけます」

「じゃ、美貴帰る」

「お疲れさまです」

「お疲れ、また明日」



459 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:21



藤本さんは手を振りながら出て行った。

いくらファンの人だからって、梨華ちゃんを襲うことはないよな。
逆に嫌われちゃうし。有り得ない、有り得ない。
でも一応注意はしておくべきか。
何かおかしなことがあったら、すぐに連絡してもらおう。

そんなことを考えながら、あたしは仕事をしていた。



460 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:22





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461 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:22



「最近、誰かにつけられてるような気がするの」



思っていたよりも早く、彼女の口から発せられた言葉。



「うそ。家の前に誰か居るとか?」

「う〜ん。いつも同じ車が止まってて、必ず人が乗ってるの
 それでじっと見られてる気がする」

「でも家まで送ってるし」

「その後、買い物とか行くでしょ?コンビニとか。
 なんか怖くて」



462 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:23



そっか。家に送ったら、もう家から出ないと思ってた。
そんなわけないよね。


「ちょっと怖いね。いや相当怖いね」

「うん・・・」

「じゃあ、家に帰る前にコンビニとか寄って、
 必要なもの全部買っちゃおうよ」

「そうだね、、、そうしよ」



あたし達の考えはそれでまとまった。
それからは買い物をしてから帰るようになり、
梨華ちゃんも車の存在を気にしなくなった。



463 名前:for 投稿日:2006/05/24(水) 12:24



仕事を終え、梨華ちゃんと共に事務所に戻ると、
珍しくいろんな人が集まっていた。



「吉澤〜!今日飲みに行かない?
 っていうか行くわよ」

「うぇ?強制ですか?」

「ええ」

「あ、そうですか」

「よしこ〜。行こうよ!」

「ごっちんも行くの?未成年じゃん」

「だって同じ歳なのに一緒に行けないなんてズルイもん」



464 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:24



「そんなこと言われても・・・」

「連れてってもいいけど、あんたはジュースよ!」

「分かってますよ〜」

「石川!あんたも行くでしょ?
 今日は奢ってあげるから」

「いいんですか?行きます!」

「タレントが行くんだから、マネージャーも行かなきゃダメよね?」



465 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:25



保田さんは、ニヤっとこっちを見て笑う。

分かりましたよ。行けばいいんでしょ、行けば!!



「藤本さん行かないんですか?」

「あぁ、亜弥ちゃん行く?」

「美貴たんが行くなら行く〜」

「松浦はほんとに藤本大好きね」

「当たり前じゃないですか!私たち愛し合ってますから」



466 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:25



亜弥ちゃんもいつもの乗りについていけず、
藤本さんは苦笑いしている。



「あら、でもタレントとマネージャーの恋愛はダメよ」

「だって私、男女交際も禁止されてるんですよ?
 美貴たんと恋愛したっていいじゃないですか」

「ダメなものはダメ」

「ぶぅ」



あたし達はそのやり取りを笑いながら見ていた。
でも・・・梨華ちゃんだけが悲しい笑顔をしていたのは、
気のせいだろうか。。。



467 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:26



保田さんに付き合わされて、いい感じに酔ってきた頃、
解散ということになった。
お酒を飲んでいるため、梨華ちゃんをタクシーで帰す。
あたしもタクシーで帰る。

家に着いてベットに倒れこむ。
疲れているのにお酒を飲んだため、かなり回ってきていた。



「ヤベー。明日起きれるかな」



そのまま夢の世界に引き込まれた・・・



468 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:26





ピーンポーン!ピーンポーン!ドンドンドン!!!




ドンドンドンドン!!ピンポンピンポンピンポンピンポーン!





469 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:27



「んだよ。誰だよ」



時計を見ると夜中の2時。
眠りについてから、まだ1時間しか経っていない。
こんな時間に来る奴なんていない。
だからと言って、勧誘なわけがない。

あたしは働かない頭で、玄関に行く。



470 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:27



「どちらさま?」

「・・・・梨華です」

「誰?・・・・・・・・梨華ちゃん!?」



あたしは急いで鍵を開ける。
そこには間違いなく石川梨華が立っていた。



「うぇ?どしたの、梨華ちゃん」

「急に・・・ごめんなさい」



471 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:27



梨華ちゃんは俯いて謝ってきた。

別にいいんだけど・・・
なんでここに居るのかを教えて欲しいんだよね。



「まぁいいや。立ち話もなんだから入りなよ」

「・・・うん」



あたしの部屋は1Rで広くないので、
取れあえずベットに座ってもらい、
梨華ちゃんの好きな紅茶を淹れてあげる。



472 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:28



「んで?わざわざどうしたの?なんかあった?」

「・・・・・・・・」

「りぃかちゃん?」

「変な人が居たの」

「変な人?前と同じ感じ?」

「たぶん・・・そう。
 今日は車から降りて待ち伏せしてた」



マジかよ!本当にヤバイじゃん。週刊誌とかではないっぽいな。
やっぱり過剰なファンの人かな?



473 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:28



「タクシーで帰った後、喉が渇いてお茶を買いに行ったの」

「あ、今日送れなかったからコンビニ寄らなかったんだ」

「うん。それで帰ろうとしたらマンションの前に変な人が居て・・・
 怖くてよっちゃんに電話したんだよ。でも出ないし」



あたしは近くにあった携帯を見る。
確かに着信が入っていた。
バイブになっていたため気付かなかった。



474 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:28



「だから美貴ちゃんに連絡して、住所教えてもらったの」

「そうだったんだ。ゴメンね。
 でもそのまま藤本さんのとこ行けば良かったのに」

「だって・・・亜弥ちゃん居るっぽかったんだもん」



あぁ・・・それはさすがに行けないね。
今度会ったときが怖いもん。あたしでも無理だよ。



475 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:29



「じゃあ今日はうちに泊まってさ、
 明日は一緒にマンション見に行くから。
 もう寝よ。明日起きれなかったら困るし」



そう言ってTシャツとジャージを梨華ちゃんに渡してあげる。
少し大きいけど気になるほどではないので、
梨華ちゃんも躊躇い無く着てくれた。
あたしは眠たさで頭が半分ぼーっとしている。



476 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:29



「梨華ちゃんベットね」

「え?よっちゃんは?」

「ん?下」

「ダメだよ!よっちゃんの家なんだから、
 よっちゃんがベットで寝て!!私下でいいから」

「いやいや。
 マネージャーがベットに寝ることなんて出来ないですよ」

「いや!!私ベットでなんか寝ない」



477 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:30



変なところ頑固なんだよな、梨華ちゃんて。
別にそんなの気にしなくていいのに。

意地でもベットで寝ようとしない梨華ちゃんを、
何とかして寝かせよと考える。



「お願い。寝てよ、ベットで」

「・・・だって・・・」



出たよ。『だって』星人。何がだってなんだよ。



478 名前:for 投稿日:2006/05/24(水) 12:30



「よっちゃんの家だもん。よっちゃんがベットで寝て。
 それがダメなら・・・私もベットで寝るから・・・
 一緒に寝よ?」

「一緒に?この狭いベットで?」



あたしのベットは普通のシングルなので、二人寝るのは少しキツイ。
かなりくっついて寝ることになる。
そう考えるだけで、あたしは熱くなってきた。



「大丈夫だよ。寝れるよ?一緒に寝よ?」

「いやぁ・・・」



渋っていると、梨華ちゃんが切ない顔をしてきた。
あたしがこの顔に勝てるわけがない



479 名前:for 投稿日:2006/05/24(水) 12:31



「分かったよ・・・一緒に寝よっか」



彼女の顔が太陽を浴びたように明るくなった。
ほんと甘えたがりだよな。

楽屋で二人きりになったりすると、よくくっついてくる。
それで彼女はとても寂しがりやなんだと気付いた。
いつも誰かが側に居ないとダメな人。
きっとマンションの一人暮らしも寂しいはず。
一つ年上だけど、普段はそんな風に見えない。
どう見てもあたしと居る時は年下の甘えたさん。
それも可愛かったりするから、割と嫌ではない。むしろ嬉しい。

明日のことも考え、二人で歯を磨いて布団に入り、
あたしは何だか恥ずかしくて背を向けて横になる。
すかさず彼女がくっついてくる。



480 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:31



「ねぇよっちゃん。なんでそっち向いてるの?」

「・・・・・いや別に。向かい合って寝る必要も無いかなと」

「そう・・・だよね・・・
 でもくっついててもいい??」

「あぁ、それは別に構わないよ。梨華ちゃん寂しがりやだから」



ぎゅっと梨華ちゃんはあたしに抱きついてくる。

あんまり抱きつきすぎると・・・胸が・・・
ちょっと変なこと考えちゃいそうだよ!!
もう少し・・・もう少し離れて欲しいような・・・
ほしくないよな・・・



481 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:32



「あのね、私よっちゃん怖い人だと思ってた」

「えぇ?なんで?」

「だって最初のほう全然話してくれなかったし、
 打ち合わせのときも送り迎えの時も怖い顔してたし」



そうかなぁ?まぁあの時はかなり必死だったからそうなってたかも。
そこまで怖くは無かったと思うんだけどなぁ・・・



482 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:32



「でもね、一緒にご飯食べに行ったときから印象が全然変わったの。
 すっごい仕事に対して真面目な人なんだって」

「あぁ・・・あれはあたしも楽しかった。
 いろいろな梨華ちゃんが見れて、仕事への考え方も変わったんだ」

「ほんとに?じゃあお互いあの時から心開いたってかんじ?」

「う〜ん、、、まぁそんな感じじゃない?」



あたしは体を半回転させて梨華ちゃんと向き合う。
顔が近くにあってドキドキする。



483 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:32



「私よっちゃん大好き!優しいし、しっかりしてるし。
 よっちゃんがマネージャーで良かった」

「はは。アリガト」

「明日もお仕事頑張ろうね」



そう言いながら、梨華ちゃんにぎゅっと抱きしめられ、
あたしも抱き返した。

この時あたしの中で、梨華ちゃんの大好きとは別の、
『好き』という感情が生まれ始めていた・・・



それから梨華ちゃんはよく泊まりに来るようになった。
マンションで一人で居るのは寂しいだろうし、
変な人が全く居なくなったわけではない。
少しでも落ち着ける場所になればとあたしも了解している。



484 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:33



「お疲れさまでーす」

「お疲れ〜」

「あ、保田さん。ごっちん今回の曲かなり良いらしいですね!」

「そうなのよ!
 月Hのタイアップだし、後藤自身も気合入ってるから」

「そうなんですねぇ。頑張ってください」

「当たり前でしょ!あら、石川。先に送らなかったの?」

「あぁ、はい。こっちの仕事すぐに片付きそうだったんで」

「そう」



485 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:33



保田さんは怪しんだ目であたし達を見ていた。

なんだよ。別にいいだろ。
仕事が終わればプライベートで仲良くしても。



486 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:34





===============================





487 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:44



次の日。
デスクの前に座っていると、保田さんが近づいてきた。



「あんた・・・石川とヤバイ関係になってないわよね?」

「はい?ヤバイ関係ってなんですか?」

「だいたいわかるでしょ?」



・・・・・・・恋人関係ってことか?ただの友達だよ。
あたしはそういう感情持ってるけどさ・・・

梨華ちゃんと一緒に居るうちに、
その感情は本物のものになっていた。
でもそれはタレントとマネージャーの関係では持っていけないもの。
十分に分かっていたから、この関係のままで良いと思っていた。



488 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:44



「ないです。なんですか、いきなり」

「別に・・・・ならいいわ。
 禁止されてることなんだからね」

「分かってますって」



だから気持ち抑えてるんじゃないですか・・・



489 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:45



その一週間後、あたしは上司に呼び出され、
石川梨華のマネージャーを降りるように言い渡された。
また新人が入ってくるらしく、そっちのほうを見て欲しいとのこと。
あたしが悪いんじゃなく、良いから新人を。

あたしは納得いかなかった。
今まで一生懸命二人三脚でやってきたのに・・・
いきなり・・・



490 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:45



「どうしてですか!今まで一生懸命やってきたのに」

「だからお前が悪いんじゃない。新人が入ってく」

「じゃあその新人を誰かにやってもらえばいいじゃないですか!」

「お前の気持ちも分かる。
 でもな・・・石川からのお願いでもあるんだ」

「え?どういうことですか」

「マネージャーを変えて欲しいって・・・
 石川から言ってきたことなんだ」



491 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:46



あたしは呆然としていた。

梨華ちゃんがあたしを嫌だと言ったの?
なんで?あんなに仲良くしてたのに。
どうして?何が悪かったの?

頭の中は梨華ちゃんでいっぱいだった。



「そういうことだから。
 今日のうちに新しいマネージャーにいろいろ説明しておいてくれ」



492 名前:for her 投稿日:2006/05/24(水) 12:49



上司が部屋から出て行く。
その後すぐに部屋を出た。
頭が働かない。でも仕事はきちんとこなしていた。
引継ぎもきちんとできた。
これでいいんだ。あたしの任務は完了。



それから梨華ちゃんと会うこともほとんどなく、
事務所で会っても軽く挨拶を交わす程度。



こうしてあたしと梨華ちゃんは遠い関係になってしまった。




                        to be continues


493 名前:愛虎 投稿日:2006/05/24(水) 20:27
更新お疲れ様です。
すれ違う二人がせつないです。
これからの展開を楽しみにしてます。
494 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/25(木) 15:00
うわぁ〜、ツラ〜イ!
恐らく二人とも… とは思いますけど
出会いが出会いだけにツライ現実ですね。
続きが気になります。楽しみにしてます。
495 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/27(土) 11:51
うー…良い方向に行ってほしい!
二人ともがんがれ〜
496 名前:メモ 投稿日:2006/05/28(日) 17:39

>>愛虎サン
 ありがとうございます。
 すれ違うのは二人の運命??

>>名無飼育さんサン
 よっちゃんはぞっこんなんでw
 梨華ちゃんがどうかって感じですかね!

>>名無飼育さんサン
 二人とも頑張りまっす!!
497 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:40



「よっちゃん遅ーい!!」

「もっと早く!走ってー」

「おめぇら!!自分の荷物ぐらい自分で持て!」

「だってうちらのマネージャーやろ?持ってくれてもええやん」

「いいじゃん」



こいつら・・・



498 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:41



梨華ちゃんのマネージャーを変わってから半年が過ぎた。
あたしが新しくマネージャーに着いたのは元気の良い子供。
辻希美・加護亜依。
おっとりとマイペースな辻に、突っ込みが光る加護。
かなり良いコンビだと思う。
ただこいつらは自由すぎて、手が掛かりすぎる。
今もこうして二人の荷物を持たされている。



「いい加減にしろ!!あたしはお前らの荷物もち係じゃない」

「こわ〜。のん、あんま近づかないほうがええで」

「そうみたいだね。のん気をつけるよ」



499 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:41



はぁ。梨華ちゃんはこんなに手掛からなかったのに・・・
逆に『よっちゃん重くない?少し持とうか?』
ぐらい言ってくれたのに・・・

梨華ちゃんにも新しいマネージャーがついている。
柴田あゆみ。あたしの二つ上で問題なく仕事こなす人。
梨華ちゃんとも気が合うらしく、仲良くやっているみたいだ。

辻加護の人気は上がりっぱなしで下がることを知らない。
今までも忙しかったけど、自由すぎるせいで余計に忙しくなった。

なのに、心にポッカリ穴が開いているように感じるのは、
梨華ちゃんが側に居ないからだろうか。
あの笑顔を見れないからだろうか。



500 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:41



「吉澤〜。今日飲みに行くで」

「今日ですか?明日も早いんですけど・・・」

「なんや先輩の言うことが聞けんのか」

「あ・・・いえ」

「裕ちゃんの誘いはさすがに断れないわよね」



中澤裕子。マネージャーの中で一番偉い人。
もしかしたらこの事務所で一番権力があるんじゃないかとまで
言われている。



501 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:42



「一緒に飲ませていただきます」

「ん、じゃすぐに出るで〜」



はぁ。また寝不足だよ。
朝からテンションの高い奴らの相手しなきゃいけないのに・・・


あたし達は中澤さんのおすすめの居酒屋に向かった。



502 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:42



「どうや。辻加護は」

「いいですよ。いろんな分野で使ってもらえるんで。
 二人も楽しそうにやってますし」

「ならええわ。最初は心配やったんよ。ちゃんと仕事できるのか」

「あたしも心配でした。でもやる時はやる子たちなんで」



普段はふざけていても、打ち合わせはきちんと聞くし、
分からないところがあれば理解するまで質問する。
二人の真剣さにあたしも頑張ろうと思ったのは事実。
梨華ちゃんのマネージャーを外されてから、
仕事に気持ちが入ってけど、二人のおかげでやる気が出た。



503 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:43



「石川もよう頑張ってるな。人気も衰えんと」

「そうですねぇ」



梨華ちゃんの話を振られて少し焦った。
なるべくなら梨華ちゃんの話は避けたい。
今まではそうしてきた。中澤さんなら全部知ってるはず。
梨華ちゃんのマネージャーが変わった理由を。



504 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:43



「最初に石川のマネージャーを吉澤にしてくれって頼んだのうちなんよ」

「へ?そうだったんですか?」

「うん。あれは絶対輝くと思ってたから。
 でも勝手に輝くものじゃないし、色々考えたんよ。
 誰をマネージャーにしようかと思ったときにな、
 あんたの顔が浮かんで。面白いんちゃうかな思って。
 まぁ正解やったんやな」

「それって褒めてくれてるんですよね?」

「当たり前やろ。今日だけや。
 明日からはまたビシビシいかんと。
 ほんと吉澤にして良かったわ。土に埋もれたままにならんで」



505 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:44



今日の中澤さんは優しい。
今まで一度も褒めてくれたことなんてないのに・・・
嬉しいもんだな、認めてもらえるのは。

その日は良い気分で家に帰り、眠りについた。



506 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:44



=================================



「吉澤さん、ちょっといい?」

「え?あ、はい」



事務所で仕事をしていると、
梨華ちゃんのマネージャーの柴田さんに呼ばれてた。

なんだろ。



507 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:45



「あのさー、梨華ちゃんが変な人につけられてるかもって話、
 聞いたことある?」

「あーありますよ。
 危ないと思って、なるべく外に出ないようにしてましたから」

「そうなんだぁ」

「まだつけられてるんですか?」

「うん・・・郵便受けに変な手紙とか入ってるみたい」

「うわ、マジすか」

「梨華ちゃんも精神的にまいっちゃってて」



508 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:45



だから最近体調悪そうだったのか・・・
笑顔とか完全に作り笑顔になってたし。

梨華ちゃんのマネージャーを辞めても、
活動は気になるから出演してる番組はほとんど見てる。
まぁそれは口実で、本当は梨華ちゃんが見たいだけなんだけど。
どんどん綺麗になっていく梨華ちゃんに引き込まれてる。
目が離せなくなってる。

はぁ。つらい。



509 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:46



「よしこ〜」

「おぁ、ごっちん。仕事終わったの?」

「うん、今日はもう終わり〜」

「そっか。お疲れ」

「よしこの相手してあげたいんだけど、今日は予定があって・・・」

「別に相手してもらおうと思ってないから大丈夫だよ」



「そっ」っと言って、ごっちんは事務所を出て行った。

週刊誌とかに取られないのかなぁ・・・
遊びに行くってことでしょ?たぶん彼のとこだろうし・・・



510 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:46



「保田さん?」

「ん?どしたのぉ?」

「いや、ごっちんって遊び歩いてて週刊誌とかに撮られたり
 しないんですか?」

「あぁ、後藤は大丈夫よ。遊びに行くって言っても、
 恋人に会うだけだろうし」

「でも恋人と居るところを撮られたら?」

「ふふ。そんなヘマはしないわ、あの子たち」

「はぁ」



511 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:47



あの子達?あぁ、保田さんはごっちんの恋人を知ってるってことか。
マネージャーに信頼されてる恋人ってすごいな・・・
あたしは・・・辻加護に恋人が出来たら認めれないな。
あいつらはまだあたしの手元に居て欲しいし・・・
梨華ちゃんに恋人が出来たら・・・考えたくない・・・

そうだ、梨華ちゃん大丈夫かな。
だんだんエスカレートしてるみたいだし。
マンション見に行ってこよ。梨華ちゃんにバレなきゃいいか。
嫌いな奴に家着て欲しくないだろうし・・・

仕事が終わると、そのまま梨華ちゃんのマンションに向かった。



512 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:47



怪しい車が一台止まっている。
すると梨華ちゃんがマンションから出てきた。
買い物にでも行くのだろう。

少し経ってから車から男が一人出てきて、
梨華ちゃんの後をつけていく。あたしもその男の後をつけた。

コンビニで買い物をした梨華ちゃんの後をさらにつけていく男。
その男の後をつけるあたし。

なんか男のストーカーみたいだな、これじゃ。



つけていたつもりが途中で見失ってしまった。



513 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:48



「やっべー」



このままだとこの暗い道。梨華ちゃんが襲われても不思議ではない。
取りあえず走りまわる。

こんな暗い道通るほうが悪いんだ。



「きゃっ」



!?近くで叫び声をかき消されたような声が聞こえた。
取りあえず走る。

すると道の少しいりくんだところに人影が見えた。

居た!!



514 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:52



「こらぁ!!何やってんじゃー!!」



あたしは男に飛びかかり梨華ちゃんから引き離した。
すぐに梨華ちゃんの様子を見る。
震えていて、呼吸も落ち着かない。
自分のジャケットをかけて、落ち着かせる。
梨華ちゃんはあたしも服の匂いが落ち着くと言っていた。

男が起き上がったのが見えたので、再び飛び掛りボコボコにした。
たいしたことのない奴で、あたしに殴られ続けている。
さすがに死んだら困ると思い、途中で止めた。



「二度と近づくんじゃねーぞ、ボケっ!!」



515 名前:for 投稿日:2006/05/28(日) 17:53



その言葉に首を一生懸命縦に振りながら逃げて行った。

居なくなったのを見届け、梨華ちゃんに側に行く。



「大丈夫?」



少しは落ち着いたみたいだか、まだ震えている。
あたしは梨華ちゃんの体を包み込むように抱きしめる。



「大丈夫。もう怖くないよ。逃げてったから。
 大丈夫。あたしが居るから。大丈夫」



516 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:53



梨華ちゃんは顔を上げて、あたしの顔を見ると、突然泣き出した。
うわぁ〜っと泣き出し止まる気配が無い。
今日はこのまま思う存分泣いてもらおうと思った。
泣きたいときは泣いたほうがいい。すっきりしたほうがいい。


しばらくそのままでいると、梨華ちゃんはゆっくりあたしから離れ、



「ごめんね。うちで紅茶でも飲む?」

「いいの?」

「うん。嫌じゃなかったら」

「嫌なわけないよ、ご馳走になります」



517 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:54



少しでも会話できたことが嬉しかった。
もう話も出来ないと思ってたから。

コンビニの袋を持ち、梨華ちゃんの家に向かう。

肩にかかってるジャケットに気付き、



「これ、アリガト」

「ううん。まだ着てていいよ」

「ほんと?じゃあ遠慮なく」



梨華ちゃんが笑った。まだ完全な笑顔じゃないけど、
笑顔が見れたことが嬉しかった。



518 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:54



家に着くと、梨華ちゃんが手際よく紅茶を淹れてくれた。
部屋を見渡せば全てがピンク。

うわぁ。さすがに気持ち悪いな。

紅茶を淹れた梨華ちゃんがあたしの前にコップを置き、
隣に座った。



「はい」

「アリガト」



こうやって二人きりで居られるのは久しぶりだ。
何を話そうなんて考えたけど、梨華ちゃんはあたしと話したくないかも。
すぐに帰ろうと思った。

沈黙を破って話し始めたのは梨華ちゃんのほうだった。



519 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:55



「ずっとね、連絡しようと思ってたの、よっちゃんに」

「変なやつのこと?」

「そう。どんどんエスカレートして。怖くて。
・・・・でももう甘えちゃいけないと思って」

「そんな。相談なら全然聞くよ」

「でも・・・・もうマネージャーじゃないし」



自分から変えてくれって言ったくせにさ。
マネージャーじゃないしなんて。



「柴ちゃんには言ったけど、
 どうしていいのか分からないみたいだったし」



だから相談しに来たのか。



520 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:55



「あんま迷惑かけちゃいけないと思って・・・
 大丈夫だよって言ってたんだけど」

「マネージャーに迷惑かけるのはしょうがないことだよ。
 あたしなんて毎日のように辻加護に迷惑かけられてるから」

「・・・・ふふ。あの二人カワイイよね」

「そうかな?もうカワイイとか思えなくなっちゃったよ」



「なんかさ、悩みとかあったら言ってよ。
 あたしで良かったら相談にのるから」

「・・・・・うん」

「一人で抱え込まないで。
 いつでも見てるって言ったじゃん」



521 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:57





梨華ちゃんが泣きそうな顔をしながら抱きついてきた。
あたしの心の中はグチャグチャだった。
タレントとマネージャーという立場を考えなければならない。
でももう一つの感情が抑えられないぐらいに前に出てくる。





522 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:57










「もう抑えられない・・・・・・」










523 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:58



梨華ちゃんの背中に手を回し抱きしめ、
そのままソファーに押し倒した。

下からあたしを見つめる目が綺麗過ぎて・・・
引き寄せられるように唇を重ねた。
軽くキスをして、また見つめ合う。

嫌がらないの?続けていいの?止まんないよ?

あたしの心を読んだかのように、彼女は優しく微笑み囁く。



524 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 17:59










「ソファーじゃイヤ」










525 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 18:00



夢?現実?本当にここに梨華ちゃんが居る?

困惑してる頭の中とは反対に、口から出たのは冷静な言葉だった。






「はい、お姫様」






526 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 18:00



梨華ちゃんを抱きかかえ、ベットに行く。
そこもピンクだらけで見てるだけで具合が悪くなりそうだけど・・・
今は梨華ちゃんしか見えないから大丈夫。
どんな部屋でも気にならない。

ベットに寝かせ、その上に覆いかぶさる。
我慢できずにすぐにキスをする。
最初は軽く優しく。お互い居ることを確かめながら。
次第に深く深く、自分の気持ちを知ってもらうように。
好きだと知ってもらうように。

あたしの動きに一生懸命合わせてくれる梨華ちゃんが愛おしい。
喉響く梨華ちゃんの声。かすかに耳に聞こえる梨華ちゃんの声。
全てが愛おしい。

一旦唇を離し、また見つめ合う。
トロンとした目であたしに心に火をつける。



527 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 18:01










「痛いのイヤ」










あたしは優しく微笑んで、「うん」と頷いた。



528 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 18:02



*********************************



「ん、ん〜」



見慣れない部屋。ベット。
でも隣に居るのは、半年前まではよく隣にあった顔。
ただ違うのは、お互い裸であるということ。

はぁ。理性に勝てずにしちゃったけど・・・
これバレたら絶対クビだな。
新しい就職先でも探しておくか。

隣で気持ち良さそうに眠っている梨華ちゃんを見て幸せな気分になる。
でもしてしまったのはあたしの勝手な感情。
弱ってる梨華ちゃんを狙った悪い奴。

梨華ちゃんの唇にキスをし、「ゴメンね」と言い、
マンションを出た。



529 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 18:03



その後すぐに梨華ちゃんは地方に撮影に行ってしまい、
会話するどころか、顔を合わせることすらなかった。



530 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 18:04



=================================



「吉澤。ちょっと」



嫌な予感。それは的中した。



531 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 18:04



「突然で悪いんだけど、シカゴのほうに行ってもらいたい」

「シカゴ?外国ですか?」

「そうだ。向こうに行ってたやつの父親が倒れてな。
 日本に帰らなきゃいけなくなったんだ。
 それで変わりにお前に行ってもらおうと思って」

「ちょっと待ってください。あたし英語も話せないし、
 しかも急すぎですよ」

「すまん。でも決まったことなんだ。
 若いし向こうで少し勉強して来い」



勉強って。人と会話できないのに勉強なんて無理だよ。



532 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 18:05



「辻加護のことは他の奴に頼む。
 まぁお前に懐いてたから少し大変だと思うがな」

「いつからですか?」

「あさってだ。あさって飛んでもらう。
 通訳もいるから大丈夫だ、頑張ってこい」



533 名前:for her 投稿日:2006/05/28(日) 18:06



あさってって。梨華ちゃん帰ってくる前の日じゃん。
謝れないじゃん。あんなことしておいて海外行くとか・・・
最低だよ、あたし。





神様・・・どうしてあたし達を引き裂くのですか?





                        to be continues



534 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/28(日) 18:29
リアルタイムで読ませて頂きました♪w
でも、この先どうなってしまうんでしょう?
梨華ちゃん、よっすぃー…。

続き楽しみにしています!
535 名前:メモ 投稿日:2006/05/30(火) 01:29

>>名無飼育さんサン
 自分にも結末が見えませんw
 まぁ自分の好みは・・・


536 名前:メモ 投稿日:2006/05/30(火) 01:30

今回は石川さん視点で、今までの流れを軽く追います。
ヨロシクです。


537 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:31



あなたは初めて会ったときから怖い顔ばかりしていた。
いつも真剣で、話すのは仕事の予定ばかり。
ほとんど笑ってなんてくれなかった。
最初は苦手だった・・・最初は。



「よしこはね、真剣になるとそれしか見えなくなっちゃうの」



538 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:31



嫌われてるんじゃないかと思ってごっちんに相談したの。
でもごっちんは大丈夫だって。そういう人だって教えてくれた。

慣れてきた頃にあなたがご飯に誘ってくれて・・・
嬉しかったぁ。自然に話できたことと、あなたを知れたことが。

それからのあなたは笑うことが増えて、私も自然と笑うことが出来て。
「よっちゃん」「梨華ちゃん」て呼び合うことも出来て。
毎日が楽しい時間だった。



「石川ぁ!最近生き生きしてきたなぁ。
 仕事どうや?楽しいか?」

「はい」



539 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:32



中澤さんにはまだビクビクしてるって言われ続けてたけど、
その頃には「良い感じや」って言われるようになった。

どんなにお仕事が大変でも、あなたが側に居てくれたから・・・
励ましてくれたから頑張れた。



順調なお仕事が続いていたんだけど、、、
事務所恒例の写真集発売の話が私に回ってきて。
大勢の人の前でビキニ姿で写真を撮られるなんて無理だった。
そんな恥ずかしいこと出来ない。
やったとしても誰も見てくれないかもしれない。
そしたらみんなが私に興味ないことが分かっちゃう。現実は見たくない。

頭の中はグチャグチャ。



540 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:32



「じゃぁ、始めましょうか!!石川梨華ちゃん!
 よろしく〜」



カメラマンさんの声は耳に入るんだけど、体が動かなくて。
そのうち何も聞こえなくなっちゃって。頭真っ白で・・・

だけど、、、不思議なんだけど・・・
あなたの声だけは耳に届いたの。
「大丈夫?」っていうあなたの声だけが・・・

心配させちゃいけないと思うんだけど、
やっぱり緊張しちゃってて。もうどうしようもなくて。

ごめんなさいって何度も頭の中で繰り返してるうちに、
あなたが私の手を取って言ったの。



541 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:33



「そんなに不安がらないで。
 誰も見てくれなかったとしても、あたしがしっかり見てるから」



あなたの優しさに感動。
わたしの目をじっと見て、大丈夫って伝えてくれる。

そのおかげで無事に写真集も撮れて、たくさんの人に見てもらえた。


でもたくさんの人に見てもらわなくても良いって思っちゃった。
あなたにだけ見てもらえば良いって。
あなただけに見てもらいたいって。



542 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:33










私はあなたに恋をしたの。ただ単純に、あなたを好きになったの。










543 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:34



デビューして@年が経ったころ、
変な人が私の周りをウロウロし始めたの。
私のことを待ち伏せしているかのようにずっと・・・

怖かった。あなたなら助けてくれると思って話したの。
そしたらすぐに解決策を出してくれた。
外に出なければ変な人を見ることもない。
それに毎日一緒に買い物できることが嬉しかったの。
なんか新婚さんみたいで・・・



544 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:34



ある日みんなで飲みに行くことになった。
私が行くならあなたも行かなきゃいけないみたいで。
困った顔してたから悪かったかなと思ったけど、
あなたと一緒に居る時間が多くなると素直に喜んだ。



「当たり前じゃないですか!私たち愛し合ってますから」



亜弥ちゃんは積極的に美貴ちゃんにアプローチしてる。
少し羨ましい。私たちはまだあそこまで仲良くないし。



「あら、でもタレントとマネージャーの恋愛はダメよ」



545 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:34



・・・・・・そうなんだ。タレントとマネージャーってダメなんだ。
じゃあ私とあなたの恋もないのかな。
一方的に思ってるだけだし・・・



その日の飲み会は楽しくて。少し飲みすぎちゃって。
みんな飲んでたから帰りはタクシー。
いつも送ってもらってたから変な感じ。

家に着いて喉が渇いたんだけど何も無くて。
しょうがないからコンビニまで買い物。
飲み物を買って帰ると、マンションの前に変な人が立ってた。
絶対待ち伏せされてる。

直感でヤバイと思ったの。だから逃げた。
逃げたけど行くとこなくて。あなたに電話。
でもあなたは出てくれなくて・・・
どうしようもなくて美貴ちゃんに電話。
もう家に帰るのは怖いから、
泊めてもらおうと思ってたんだけど・・・



546 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:35



『はいー』

「美貴ちゃん?」

『うん、どしたの?』

「実はね」

『美貴たん!!誰!?早く終わらせて〜』

『ちょっと待って。大人しくして』



美貴ちゃんの家には亜弥ちゃんが居るのは確実。
泊めてなんて絶対に言えない。
とりあえずあなたの住所聞き出し、タクシーであなたの家に。



547 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:35



家に着いて、ドアを叩いたり呼び鈴を鳴らしたり・・・
するとあなたが眠そうな顔をして出てきた。

最初は誰か分からなかったみたいだけど、
私だということに気付いて少し目が覚めたみたい。
部屋に入れてくれて、紅茶を淹れてくれた。

そしてさっきの話をする。
深刻そうなんだけど眠そうな顔をしているあなた。
もう限界なんだろうなと思った。



「じゃあ今日はうちに泊まってさ、
 明日は一緒にマンション見に行くから。
 もう寝よ。明日起きれなかったら困るし」



548 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:36



やっぱり。自分が眠たかったんだよね。
こんな時間に起こしてごめんね。



「梨華ちゃんはベットね」

「え?よっちゃんは?」

「ん?下」



そんなのダメ。あなたの家なの私がベットなんて。
勝手に押しかけたのに、そんなの絶対にダメ。

頑固な私にあなたは困ってた。ゴメンね、変なとこ頑固で。
でもここは譲れない。
そんなことを思っていたら、いいことを思いついたの。



549 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:36



「よっちゃんの家だもん。よっちゃんがベットで寝て。
 それがダメなら・・・私もベットで寝るから・・・
 一緒に寝よ?」



あなたは凄く困った顔をしていたけど、
私はそれ以上に切ない顔をしたの。
そしたら分かったって。あなたの隣で寝たかっただけなのに。
こんなに切ない顔できる私って、やっぱり女優に向いてるのかな?

だけどいざ一緒に寝るとなると恥ずかしくなっちゃった。
あなたも恥ずかしがって背を向けてたけど、
私は少し寂しくなってくっついちゃった。
少しビクってなって、ちょっと面白かった。

それでもこっちを向いてくれなかったから、
さらにくっついたの。
あなたの背中はとても温かくて、幸せだった。



550 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:37



何気ない話をしていると、あなたはやっとこっちを向いてくれた。
でも実際に向き合うと凄く恥ずかしい。
嬉しいんだけど恥ずかしい。

私の口からその言葉は自然とこぼれた。



「よっちゃん大好き!優しいし、しっかりしてるし。
 よっちゃんがマネージャーで良かった」



本当に良かったと思ってる。
あなたが居たから今の私がいる。

それ以来毎日のようにあなたの家に行き、
あなたと一緒に眠った。凄く幸せな日々だった。

だけどそれは長くは続けられなかった。



551 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:37



「石川。ちょっといい?」



ある日私は保田さんに呼び出されたの。
何を言われるのか検討もつかなかった。



「ゴメンね、呼び出して。大事な話なの」

「大丈夫です。何の話ですか?」

「・・・・うん。あなたと吉澤のこと」



私の胸はドクン大きく波を打った。
何を言われるのか予測が出来たから。



552 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:38



「かなり仲良いみたいだけど。それ以上のことはないわよね?」

「ありません」

「石川の気持ちは?
 タレントとマネージャー以上の感情は?」

「・・・・・・・・・・・」

「石川?」



553 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:38










「・・・・・・・・・・・あります」










554 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:39



私は正直な気持ちを保田さんに伝えた。
でもやっぱりそれはダメなことで・・・



「分かってるよね?この事務所の決まりごと」

「分かってます。でも気持ちは変われません」

「そう・・・・・じゃあマネージャーを変わるしかないわね」



マネージャーを変わるだなんて。思ってもみなかった。
ずっと二人三脚でやってきたのに。
成功してきたのに。そんな簡単に変われるの?



555 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:39



「よく考えて。石川との関係が上にバレたら、吉澤はクビ。
 あの子には才能があるの。それを潰すの?」

「関係って。今の関係のままなら何も起こらないじゃないですか」

「わたしには今の関係のまま居られるとは思わない。
 必ず変化する」

「そんなの分からないじゃないですか!!」

「分かるの!!あなた達のような関係の子が居た。
 そのマネージャーは才能あったんだけど、
 償うために事務所を辞めたの。
 相手の子もかなり動揺して、しばらく仕事にならなかった。
 あなた達にはそうなってほしくないの」



556 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:39



保田さんの言葉はとても力強くて。
自分の気持ちを抑えなきゃダメなんだって。
そのためには離れなきゃいけないんだって気付いたの。

あなたと離れるのはとても寂しかった。
いつも側に居てくれたのに急に居なくなって。
自分勝手なのに胸が苦しくて。
居ないあなたをいつもどこかで探してた。
近くに居すぎたんだね。居なくなると途端に泣きそうになるの。
あなたが私の涙腺を締めてくれてたのかな・・・



557 名前:for 投稿日:2006/05/30(火) 01:39





















558 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:40



新しいマネージャーの柴ちゃんになって半年。
とても優しくてフレンドリーなマネージャー。
楽しく仕事は出来てたけど、
どこか虚しいのはあなたが近くに居ないからかな。

あなたは元気な二人組みのマネージャーになった。
いつも二人に振り回されてるあなたを見るのは嫌いじゃない。
私はあんな風になれなかったなぁ。
もう、私のことなんてほとんど忘れてるだろうなぁ。
寂しい。私の想いはこんなにも強くなるのに。



559 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:40



そんな時に嫌なことは多発するのね。
変な人から過剰なアプローチが始まったの。
毎日手紙が入ってて。それも不気味で。

柴ちゃんに相談したけどどうしたらいいか分からないって顔してた。
これ以上迷惑かけちゃいけないと思って、
無理して笑って「大丈夫だけどね」って。強がっちゃた。

強がったのはいいけど、やっぱり怖くて。
あなたに何度も連絡しようと思った。
でも出来なかった。
だって事務所で会っても挨拶程度、会話なんて全くなし。
話なんて出来ないって。
忙しいんだから余計な仕事増やしちゃいけないって。
連絡出来なかった。



560 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:41



そんな日が続いた夜。コンビニに行ったの。
その帰り道、明らかに誰かにつけられてる気がして。
咄嗟にヤバイと思ったけど、もう遅くて。

後ろから口を押さえられて草むらに連れてかれ、
押し倒されたの。本当に怖かった。もうダメだと思った。

でもそこに王子様は現れたの。あの時は本当に輝いてた。
出てきた瞬間に相手をボコボコにして。
少し可愛そうだった。顔が腫れてたもん。

でもその時はそんな余裕無くて、ただただ震えてた。
そんな私をあなたは優しく抱きしめてくれて。
すごく心が温まったの。あなたの感触に。

安心したら涙が止まらなくなっちゃって。
それでもあなたは抱きしめ続けてくれた。



561 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:42



少ししたら涙も止まって。あんなに泣いたのが恥ずかしくって。
感謝の気持ちを込めて家に誘ったの。
でも嫌がられるんじゃないかって、ドキドキした。

家に着いても特に会話もなくて。
紅茶を飲んだら帰っちゃいそうで。
私から話しかけた。

今回のことを一通り話と、あなたは前と変われない笑顔で、



「一人で抱え込まないで。
 いつでも見てるって言ったじゃん」



嬉しくて嬉しくて、思わず抱きついちゃった。
そしたらいきなりあなたは言ったの。



562 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:42










「もう抑えられない・・・・・・」










563 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:43



って。抑えられないのはこっちだよ。
そんな優しいことばっかりして。好きにならないほうが変だよ。

ゆっくりとソファーに押し倒され、
下から見上げるあなたはとても綺麗。
そしたらどんどん顔が近づいてきて、唇が重なった。
ほんの少しのキスだったけど、気持ちが凄く伝わって。
自分の気持ちも伝えたの。



「ソファーじゃイヤ」



そしたらあなたは優しく微笑んで、



564 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:43






「はい、お姫様」






って。やっぱり王子様だったんだね。



565 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:44



ゆっくり抱き上げられ、ベットに寝かされた。
横になったらすぐにキスをされて。
それがどんどん深くなるキスで。
全てが溶けそうだった。

あなたと過ごすこの時間が、とても幸せだった。



566 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:44



朝起きるとあなたは横には居なくて、
夢なのかと思ったけど、体中に痛みがあるから夢じゃないはず。
でもあなたの姿はどこにもない。

これから地方に撮影に行くため、しばらく会わない。
でも帰ってきたら、たくさん話そう。
自分の気持ちを伝えよう。そう思ってた。なのに・・・・



567 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:44



「海外!?」

「そう。変わりに行っちゃった」



地方から帰ってきた私に最悪の事態。



「いつ帰ってくるの?」

「う〜ん。たぶん一年後」



568 名前:for her 投稿日:2006/05/30(火) 01:45



せっかく一緒になれたのに。同じ気持ちだと思ったのに。





神様・・・どうして私たちを引き裂くのですか?





                        to be continues



569 名前:愛虎 投稿日:2006/05/30(火) 22:14
更新お疲れ様です。
梨華ちゃん視点も読んでみたいなぁーって思っていたのでよっかたです
幼い感じの梨華ちゃん可愛すぎです。
それにしても、一年って長いですねでも大丈夫ですよね、この二人なら。
570 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/30(火) 22:24
ひーん(;へ;)
そんなのいややぁ…
571 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/30(火) 22:34
更新お疲れさまです。
梨華ちゃん視点良かったです。
でもツライっすよね、これは。
次の展開が気になります。
572 名前:メモ 投稿日:2006/06/13(火) 23:07

>>愛虎サン
 ありがとうございます。
 二人なら大丈夫と信じたいです。

>>名無飼育さんサン
 う〜どうなるんでしょうw

>>名無飼育さんサン
 ラストです。結末です。


573 名前:メモ 投稿日:2006/06/13(火) 23:08


いよいよラストです。
みなさんの予想通りの展開になると思いますが・・・
最後までヨロシクです。


574 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:09



シカゴに来てもうすぐ@年が過ぎようとしていた。
日本に帰国する辞令も出てる。あとはこっちの仕事を片付けるだけ。

帰国が嬉しい反面、心の中は不安でいっぱいだった。

こっちに来てからも梨華ちゃんの日本での活躍は耳に入ってくる。
彼女が目指していた、『感動させる女優』になりつつあった。
映画やドラマに引っ張りだこで、
彼女をイメージして作られる作品もしばしばあった。

知らないうちに梨華ちゃんはどんどん羽ばたいていて、
あたしの手の届かないところに行ってしまっている。



575 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:09



そうじゃなくても、あんなことして何も言わずに姿を消すような奴、
梨華ちゃんは会いたくないだろうな。

一度も忘れたことなかったけど。会いたいってずっと思ってたけど。
そんな言い訳梨華ちゃんに聞いてもらえるわけないし。

帰国が近づけば近づくほど不安になっていた。



576 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:10



「吉澤〜!電話来てるぞ」

「はい、すいません」



誰だろ。もう特に予定はないはずなんだけど・・・



577 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:10



「お電話変わりました、吉澤です」

「あ、よしこ?後藤だけど」

「ごっちん!?どうしたのいきなり。久しぶりだね」

「ね〜!今レコーディングでシカゴに居るんだけどさ、会えない?」

「マジ?会える会える!今どこ?」

「今ぁ?わかんない。ってかさ、今夜泊めて」

「はぁ?ホテルとってるでしょ?」

「たまにはゆっくり話ししたいじゃん」

「まぁいいけど・・・」



578 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:10



その夜ごっちんの居るところまで迎えに行った。
そこには保田さんも居る。当たり前か。



「久しぶり。元気してた?」

「お久しぶりです!もういつも通りっす」

「それは良かった。
 悪いわね、この子あんたんとこ泊まるってきかなくて」

「全然大丈夫ですよ。あたしもごっちんと話したいし」

「そう。じゃあヨロシクね」

「はい、お預かり致します」

「んあ、後藤は物じゃない!」



579 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:11



笑いながら保田さんは帰っていった。

それから近くのスーパーで食べ物を買い込んで、
今日はじっくり話す気満々って感じで。



「もうそろそろ帰ってくるんでしょ?」

「あーうん。帰る」

「そっかぁ、やっとかぁ。長かったねぇ」

「そうだねぇ。仕事は毎日追われてばっかりで早く過ぎたけど・・・」

「梨華ちゃんに会うまでに長かった?」

「うん・・・・・・って、えぇ??」



580 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:11



あたしは思わず素直に答えてしまった。

ごっちんなかなかやるな。
流れ的には上手い持っていき方だ。
って感心してる場合じゃない!!



「なんで?」

「知ってるのって?」

「・・・・・・・うん」



581 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:12



ごっちんはニヤっと笑って、私は何でも知ってる風な顔をしている。

早く言えよ!もしかしてあたしの気持ちを読めるとか?
エスパー後藤!?



「誰だって分かるよ。よしこの顔とか反応とか見れば」



うっそ。誰でもわかっちゃうの?なんで?
だって言ってないじゃん!!



582 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:13



「事務所中が知ってるよ、よしこの気持ち。
 だからワザと離れさせるようなことしたんだよ」

「・・・・・・・そっか。
 じゃあ梨華ちゃんも気付いてるんだ」

「いんや、梨華ちゃんは気付いてない。と思う。
 だって鈍感だもん」



確かに。彼女は鈍感だ。
前に男がアピールしてたけど、全く気付いてもらえずに諦めてた。



583 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:13



「事務所が離そうとしてるだけだからさ」

「タレントとマネージャーの恋は禁止だもんね」

「まぁね。特に圭ちゃん」



さすが仕事に真面目なだけあるな。
あたしも一回だけ注意されたし。



「でもさぁ・・・よしこはそれでいいの?」

「何が?」

「梨華ちゃんとの恋。終わらせていいの?」

「だって。無理じゃん。そんなに警戒されてるんだし」



584 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:13



隙がないよ。
もし上手くいったとしても、いつかバレて完全に離される。
それよりは関係者として近くに居るほうがいい。

楽なほうへ・・・安全なほうばかり考えていた。



「後藤は違うと思う」



そんなこというけど・・・
どうにも出来ないでしょ。



「後藤のさ、恋人の話ってしたことなかったよね」

「あぁ。そういえば聞いたことない」

「実はね、元は後藤のマネージャーだったの」

「へ?」



585 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:14



あたしはビックリした。
ごっちんの恋人がこの事務所に居たこと。
さらにごっちんのマネージャーだったこと。

知らなかった。保田さんがデビューの時からずっとだと思ってた。



「圭ちゃんと同期でね。よしこみたいに才能を見込まれて、
 最初っから後藤のマネージャーだった」

「そうなんだ・・・」

「あは。ビックリしたでしょ」

「そりゃあね」



586 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:15



それからごっちんは二人の話をしてくれた。

好きになったのはごっちんの方で、毎日一緒に居たくなった。
そのうち相手もごっちんのことを気になりだし、
自然と休みの日とか一緒に居たり、泊まったり・・・

ある時気持ちが抑えられなくなり・・・


ここまで話を聞いて、あたしは恐ろしくなった。
何もかもが梨華ちゃんとの関係と一緒で。



「後藤はさ、やっと結ばれてんだって思った。
 これでずっと一緒に居れるって」



その時を思い出しながら優しい顔をするごっちんに、
あたしは見惚れていた。



587 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:16



「でもね、事務所が許してくれなかった」



事務所に二人の関係がばれて、相手のほうが呼び出された。
そこで
「お前を失くすのはもったいない。後藤を切る」
とお偉いさんに言われたらしい。



当時まだそこそこしか売れていなかったごっちんより、
将来有望なマネージャーを取るという選択だった。



「気にしないで後藤のこと切ってくれれば良かったのにさ。
 将来の夢とか話してたから・・・」



ごっちんの夢を知っていた相手の人は、
自ら退職願を出して、事務所を去った。ごっちんには何も言わず・・・



588 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:17



「それから連絡も取れなくて・・・
 もう何もかもがやる気起きなくて、
 完全に落ちちゃった時期があってさ」



やる気のない奴をここに置いておく訳にはいかない。
ごっちんは事務所から切られそうになった。

その時助けてくれたのが保田さんだったらしい。



「圭ちゃんがさ、あいつの思いを無駄にするな!って。
 すっごい怒られて。同期だし、才能あったし。
 力になれなかった自分に相当イライラしてたみたい」



589 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:17



保田さんの言葉に奮起したごっちんは、
また頑張ろうとやる気を取り戻したとか。
その前に保田さんが相手の人を見つけ出して、会わせてくれて。
相手の人の後押しもあったんだとか・・・



「そういうことがあったからさ、圭ちゃんは厳しいんだよ」

「なるほどね」

「両方とも失いたくないから・・・。
 後藤はね、梨華ちゃんにはよしこが必要だと思う」

「そんなことないよ。梨華ちゃんはどんどん成長してる。
 評価されてるじゃん」

「でも梨華ちゃんの力ってあんなもんじゃないよ。
 よしこと居たときの方がパワーあったもん」

「そうかなぁ・・・・」

「はぁ、、、鈍感な人は本当に困るよ」

「え?何か言った?」

「いやいや、こっちの話」



590 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:17



話してるうちにお互い睡魔が襲ってくる。
明日も早い。
あたしはもやもやが抜けないまま寝むりについた。



ごっちんは朝早くに仕事に向かい、
あたしも帰国の片付けを進めていた。

ごっちんはあんなこと言ってたけど・・・
梨華ちゃんがどう思ってるか分からない。
別にあたしが居なくたって、梨華ちゃんはやっていける。
必要ない。ただこっちが彼女を追っているだけ。

梨華ちゃんへの思いを心にしまい鍵をかけ、日本に帰ることにした。



591 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:18



















592 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:18



「よっちゃ〜ん!お帰り〜」

「ただいま戻りました」

「いや〜いきなり飛ばされたから、もう帰ってこないのかと思ったよ」



日本に戻り事務所に行くと、たくさんの人が待っていてくれた。
二人の無邪気な子供達も飛びついてくる。



「よっちゃん遅いよ!いきなり居なくなって〜」

「そうやそうや!!置いてきよって。
 どんだけ寂しかったと思っとんねん!」

「なぁんだ。二人とも寂しかったの?」



593 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:19



加護は「あっ」っという顔した後に、



「そんな訳あるかい!うちらは大丈夫やったんやけど、
 みんなが寂しい思いしとっただけの話や」



と言った。

あとから聞いた話によれば、あたしが急に居なくなったとき、
二人とも大泣きしたんだとか・・・
カワイイなぁ。普段は生意気すぎてムカつくけど・・・



594 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:19



「よっちゃんこの後休みでしょ?」

「あぁ、はい。でも少し残って仕事しようかと」

「そんな頑張らなくてもいいんじゃない?
 明日でも出来る仕事だろうし」

「そうなんですけどね・・・」



そう言いながら仕事を始める。
藤本さんは呆れたって顔をしてたけど、家でじっとしているよりは、
仕事をしていたほうが楽だと思った。
あの家に居ると、嫌でも梨華ちゃんと一緒に居たときのことが
思い出されるから・・・



595 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:20



「さ、頑張ろっと」



あたしは夢中で仕事に打ち込んだ。



596 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:21



「じゃ、よっちゃんお先!あんま無理しないでねぇ」

「は〜い、お疲れ様です」



気がつくと事務所はあたし一人になっていた。

あぁ、もうこんな時間か。
仕事もだいたい片付いたし、もうそろそろ帰るかな。



597 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:21



「よっちゃ〜ん!居る〜?」



この声は・・・辻!?
あいつ帰ったんじゃなかったのかよ。

ドアが開いたほうを見ると、予想通り辻と・・・・・
予想していなかった人が立っていた。



598 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:21



「居た居た!今ね、梨華ちゃんとご飯食べに行ってきたの」

「へ?あ、そう・・・良かったね」



あたしは焦ってるのを隠そうと努めて笑顔で辻と話す。
そんなことに気付かず、辻は話続ける。
でもほとんど右から入って左から抜けてる感じで・・・
梨華ちゃんが気になってしょうがなかった。
目を合わせるのは気まずいので、チラチラ見る。
1年前よりさらに綺麗になってる。
というか、大人になってる気がする。
綺麗なお姉さん。その言葉が似合う人だと思った。

梨華ちゃんは事務所をキョロキョロ見渡しながら、
あたしの存在を気にも止めていないかのよう。



599 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:22



「でね、そこのパフェがすごい美味しいの!!
 よっちゃんも今度食べに行こうね!!」

「うん。一緒に行こ。
 んでさ、なんでここに居るのかな?」

「う〜ん・・・・・・なんでだろ」

「おいおい。そのまま帰れば良かったじゃん」

「そうなんだけどね、何となくよっちゃんに会いたくなったの。
 まだ事務所に居るんじゃないかと思って」



この子の勘というか、本能というか。
間違っていないのはいつもすごいと思う。
何も考えてないようで、ちゃんと考えてるし。
分かってないようで、分かってるし。

そんなことを考えてると、辻の携帯が鳴った。



600 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:22



「もしもし?うん。そう事務所。
 え、近いの?じゃあ待ってる」



携帯を切った辻が「お父さんから」っと言った。
たぶん迎えに来てくれるんだろう。



「すぐそこに居るから迎えに来るって。
 梨華ちゃんも・・・あぁ、いいっかぁ。」



おい!いいっかぁ。ってなんだよ!
送って行けよ!!どうするんだよ、梨華ちゃん!



601 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:22



「え、ちょっ、辻」

「じゃぁのん帰るね!また明日」



そう言って手を振りながら去っていく。
梨華ちゃんも笑顔で手を振っている。
あたしはその光景をぼーっと見ていた。

ドアが閉まると、梨華ちゃんはこっちを向き微笑んだ。



602 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:23



「久しぶり。一年ぶりぐらい?」

「・・・・・・・・・・・・・」



あたしは言葉が出なかった。
話したいことはたくさんあるはずなのに・・・



「どうだった?海外のお仕事は」

「あぁ、、、うん・・・」

「何ぃ?どうしたの?」

「いや・・・別に・・・」



緊張して話せないなんて言えないし・・・

何とか笑顔を作ろうとして頑張ってみたんだけど、
おかしかったみたいで、梨華ちゃんは「ふふ」と笑った。



603 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:23



「なんだよ」

「別にぃ」

「・・・・・・・どう?仕事の方は」

「おかげさまで順調」

「んん?なんかあたしが居ないから順調みたいな言い方」

「そんなことないよ」



なんか・・・気に障る言い方だなぁ。

そんなことを考えていると、梨華ちゃんがあたしの側に来た。
すごく近くて・・・ドキドキする。
胸が締め付けられる・・・



604 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:24



「髪・・・伸びたね。綺麗な髪の毛・・・」



そう言ってあたしの髪に触れる。
近くで見る梨華ちゃんの顔は1年前と変わっていなかった。
遠くで見ると大人びて見えるのに、近くだとあの時のまま。
懐かしくて、自然と笑みがこぼれる。



「えぇ〜。何笑ってるのぉ?」

「あ、いや・・・・懐かしいなぁと思って」



605 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:24



梨華ちゃんは「そう?」とまた微笑んだ。

切なくて苦しくて。この人を自分のものにしたいけど、
そんな資格が無いことは分かってる。



「梨華ちゃんさ、綺麗になったよね」

「なぁに?いきなり。何もあげないよ?」

「いやいや、何も求めてないし。
 なんか綺麗なお姉さんになったってかんじ」

「そう?やっぱ恋してるからかな」



606 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:25



・・・・・・だよね。
恋ぐらいするよね。だからそんな綺麗になったんだ。
あたしってバカだなぁ・・・・
どっかで期待してる部分とかあったし・・・
ほんとバカみてぇ・・・・



「そっか・・・・それは良い恋?」

「あんまり・・・。相手の人が鈍感すぎて。
 すっごいヘタレだし」



なんでそんな奴好きになるんだよ・・・
他に良い人いるんじゃないの?
あたしが納得出来る人にしてくれないと困るよ?



607 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:26



「それってダメな奴じゃないの?大丈夫?」

「フフ。うん。たぶん大丈夫。私が好きな人だから」



かっけー。今の言葉かっけーよ。今度使ってみよ。
まぁね、梨華ちゃんが選んだ人なら大丈夫だと思うけどさ・・・
これって失恋?あぁ。ごっちんに頑張れって言われたのに。
帰ってきてそっこう失恋ですか・・・



608 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:26



「でもね・・・・・・ほんとに酷い人なの・・・」

「そんなに?」

「うん・・・・・・
 良い人だと思ってたの。優しくしてくれたし。
 変な人に襲われそうになったときに助けてくれたし」



609 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:38






んん?また襲われそうになったのか?
しつこいヤローだ。もっとボコボコにしておくべきだったな。
そっか・・・助けてもらって恋に落ちたのか・・・






610 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:39










「すごく優しいのに・・・何も言わないで私を抱いたの。
 私は好きだったからいいと思ったんだけど・・・
 でもね、朝起きたら居なかったの。何も言わずに・・・」










611 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:39








んんんんん?なんか・・・・ん?なんか・・・・







612 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:40










「次はいつ会えるかなって思ってたら、
 いきなり海外行っちゃうんだよ?何にも言わずに・・・
 酷い人でしょう」










613 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:40





・・・・・・・それって・・・・・え?それってさ・・・・・
まさかねぇ。まさかまさか。海外に行っちゃった?
あたし・・・海外行っちゃったよね?





614 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:41






「でも好きなの。すっごく好き。ずっと待ってた・・・
 帰ってくるの・・・・」






615 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:41



梨華ちゃんは泣きそうな顔をしながらあたしの目をじっと見てくる。
あたしも目が離せない・・・

これってそういうことでいいのかな?



「梨華ちゃん・・・・」



あたしは梨華ちゃんを抱きしめた。強く強く。



616 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:42



「よっちゃん・・・いつまで待たせる気だったのよぉ。もう。バカ」

「ゴメンね・・・・・ほんとゴメンね」



いつの間にか梨華ちゃんは腕の中で泣き始めた。
「遅い遅い」って言いながら・・・・



「ゴメンね、いきなり居なくなってさ・・・
 ほんと急だったんだよ。なんか。連絡する暇もなくて・・・
 ごめんなさい」



泣きながら「わかった、もういいよ」って言ってくれた。



617 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:42



「だってさ、ここによっちゃんは居るんだもん。
 ほんとに・・・・もう離さないよね?」

「うん!絶対!もう絶対離さない!
 あたしは無理だもん。梨華ちゃんを離すなんて・・・
 無理無理無理無理!!」

「うん、絶対だからね」

「おぅ、絶対!」



離すわけない。
せっかく神様がくれたチャンスを自分で潰すことはしない。

梨華ちゃんは上目遣いであたしを見てくる。



618 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:42



「じゃあ誓いのキスは?」

「え?あぁ、はい」



なんかいい感じ。

目を閉じる梨華ちゃんにゆっくり顔を近づけていく。
もう少し・・・



619 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:43








ガチャッ








620 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:44








「「「「「「「どわぁーーーーー」」」」」」」








621 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:44




いきなりドアが開いて、人がなだれ込んで来た。

なんだ!?この光景・・・

あたし達は抱き合いながらその光景を呆然と見ていた。



622 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:44



「ちょっと圭ちゃん・・・重いぃぃぃぃ」

「うるさいわね!そんなに太ってないわよ!」

「美貴たん!私たちもチュウしよ」

「ちょっ、亜弥ちゃん!!」

「ぐるしぃよぉ」

「のん!大丈夫かぁ?中澤さん、はよどけて」

「何やねん、人を邪魔者みたいに」



623 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:45



ゴチャゴチャ言ってる人達を見ると、何となく分かってきた。
こいつら仕組んだな。



「みんなして何やってるんすか!!」



みんな「ハハハ」って笑ってるけど・・・
やっちゃったって顔してる。
この人達は・・・・本当に・・・・



624 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:45



「さ、みんな帰ろうか」

「そうね、明日も早いし」

「今日美貴たん家に泊まる」

「ダメだよ、朝ここに来て残ってる仕事するんだから」

「あーあ、せっかく二人のキスシーンが見れると思ったのに」

「中澤さんが押すからやで」

「なんでや!自分らが押したんやろ」



625 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:45



言いたいことをそれぞれ言いながらドアを出ていく。
嵐の後の静けさ・・・・・・



「あれは・・・いったい・・・」

「フフ、なんか笑えてきちゃう」

「はは、そうだね。笑えるわぁ」

「いい人達・・・面白い人達ぃ」



ほんといい人達だよ。いつでもどこでもあたし達を助けてくれる。
かけがいのない仲間だよ。ほんとアリガト。




626 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:46






クイクイ






627 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:46



梨華ちゃんがあたしの袖を引っ張って上目遣いで見つめてくる。

あぁ、そういえばまだだったね、誓いのキス。

梨華ちゃんの唇にそっと自分の唇を重ねる。
もう愛おしくてたまらない。このまま押し倒したい気分。



「梨華ちゃん。一緒に幸せになろうね」

「うん。私はよっちゃんが居れば幸せ」

「あたしも」





神様。幸せをありがとう。
この幸せ。絶対に逃しません。



628 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:46














629 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:47



「うわぁ、ほんとにしちゃった」

「人がしてるの見るとドキドキするわね」

「美貴た〜ん」

ちゅっ

「亜弥ちゃん!?」

「やっとしたよぉ。全くのんたちが居ないと何も出来ないんだから」

「よっちゃんヘタレやからな。これからも面倒みてやらんと」

「お前らが言うな。さぁみんな!飲み行くで〜」



「「「「「「は〜い」」」」」」



630 名前:for her 投稿日:2006/06/13(火) 23:47



「辻加護はジュースやで」



「「は〜い」」





                            END





631 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/14(水) 08:06
完結おつかれさまです!!
途中胸が締め付けられそうに苦しくなりました・・
新鮮な設定で面白かったです!
632 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/14(水) 13:17
完結おめでとうございます♪
自分的に、こういう設定が大好きです☆
この2人のこれからが気になるんで、番外編とか、ひっそりと期待してます(笑)

恋愛禁止はどうなったんだろ?ボソッ
633 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/14(水) 21:45
完結おめでとうございます。
やっぱいしよし最高ですね♪
次回作も楽しみにしてます!
ありがとうございました。^^
634 名前:愛虎 投稿日:2006/06/14(水) 23:22
完結お疲れ様です♪
ハッピー!な終わり方で良かったです。
新作も楽しみにしてます いしよしサイコー!!
635 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/15(木) 02:33
完結おめです

今回の話のあやみきバージョンなんて見てみたいなぁ〜
あやみきでユニットも決まりましたし(笑)
636 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/15(木) 13:01
>>635
作者さんは別にリク受けつけてる訳じゃないんだから
そういうレスはどうかと思うよ?
おまけに今回の話にそんな深く関ってないし。

>作者様
スレ汚し申し訳ない。「for her」完結オメです!
いしよしの珍しい設定にドキドキしながら読ませて頂きました♪
また次の新作を今か今かと楽しみにさせて頂きますんで頑張って下さい!
637 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/15(木) 22:43
切 な す ぎ る !!

そんで

甘 す ぎ る !!

(´∀`*)
638 名前:メモ 投稿日:2006/07/02(日) 15:52

>>名無飼育さんサン
 ありがとうゴザイマス。
 苦しめてしまってスイマセンw

>>名無飼育さんサン
 ありがとうございます。
 この二人に恋愛禁止なんて通用しません!
 すいません、苦し紛れですw

>>名無飼育さんサン
 ありがとうございます。
 いしよし最高です!!

>>愛虎サン
 ありがとうございます。
 やっぱりハッピーが一番ですw

>>名無飼育さんサン
 ありがとうございます。
 考えて見たり見なかったり・・・w

639 名前:メモ 投稿日:2006/07/02(日) 15:56

>>名無飼育さんサン
 ありがとうございます。
 頑張らせていただきます!!

>>名無飼育さんサン
 甘いの大好きなんでw



こんなにたくさんの方が読んでくださっていたことに驚き、
かなり感動しています。
これからも頑張りたいと思いますので、ヨロシクお願いいたしますm(_ _)m

640 名前:メモ 投稿日:2006/07/02(日) 15:57



いしよし



641 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 15:58



今日は梨華ちゃんが家に来る日。
ハロモニ。の収録が終わった後、お互い別の仕事に向かった。
たぶん梨華ちゃんのほうが早く家に着くだろうけど、
あたしの家はいつも片付いてるし、合鍵を渡してあるから心配ない。

久しぶりだなぁ、梨華ちゃんと二人で会うの。
もう着いてる頃だよなぁ。

そんなことを思いながらタクシーに乗り込んだ。



642 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 15:59




―――――――――― ガチャガチャ、、、ガチャ。




643 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 15:59



ドアを開けて玄関に入ると、やはり灯りが点いていて、
明らかに自分のものではない靴を目にする。
奥からはテレビの音も聞こえていて、そこに梨華ちゃんが居ると
思うだけでワクワクしてくる。

ほんと久しぶりだもんなぁ。

収録とかで会ってても、やっぱり二人きりとは違うし。



ドアを開けてリビングに入る。
いつもなら開けた瞬間に抱きついてくるのに、今日はそれがない。
寂しい気持ちになったが、ソファを覗いて思わず顔がニヤける。



644 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 15:59



「カワイイ」



それは自然に出た言葉。
彼女はソファで丸くなって、スースー寝息を立てながら寝ていた。

疲れたんだろうなぁ。
コンサートとミュージカルのリハーサルもあるし。
なのにわざわざ来てくれて・・・嬉しいなぁ。

あたしはそのまま梨華ちゃんの寝顔を見続ける。
見てるだけで満足できるなんて、幸せものだと思う。



645 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:00



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



見続けるのも飽きてきた・・・
起きてる顔が見たいけど、起こすのもかわいそうだと思い、
そのままシャワーに向かった。




646 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:00















647 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:01



「あれ、起きたの?お嬢様」



シャワーから出てくると、梨華ちゃんが起きていた。
ソファの上で体育座りをし、下を向いている。
返事がないので隣に座り、もう一度話しかける。



648 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:01



「ただいま、お嬢様」

「・・・おかえり」

「今日はご機嫌が宜しくないのでしょうか?」

「・・・別に」



明らかにふて腐れてるみたいだけど、
別にって言うならいいやと思い、飲み物を取りに立ち上がろうとした。



649 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:01



グイっ



「え?」



梨華ちゃんがあたしのシャツを掴んだから、上手く立てない。



650 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:02



「どした?」

「・・・なんで起こしてくれなかったの?」

「だって気持ち良さそうに寝てたから」

「それでも起こしてよ。
 せっかく二人で居られるんだから、もったいないでしょ!?」



カワイイ。
こんなとこで可愛さアピールしなくてもいいのに・・・



「ゴメンね、今度からは起こすよ」



梨華ちゃんの寝顔をずっと見てたなんて決して言わない。
あたしだけ見てたって分かったら怒りそうだから。



651 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:02



「ねぇ、ひとみちゃん」



ひとみちゃん!?なんだよいきなり。
いつもそんな風に呼んでないじゃん!!
よっすぃとかよっちゃんとか・・・まぁ、たまにひーちゃんとか・・・
それでも恥ずかしいのにひとみちゃんとか・・・



「急に何!?久々に聞いたよ、その呼び方」

「そう?今日呼んだじゃない」

「あ・・・」



652 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:02



今日はハロモニ。で幼稚園児の格好をしたんだった。
その中でひとみちゃんて・・・
あれは収録だから良かったものの、プライベートで呼ばれると・・・
なんか照れるなぁ。。。



「ねぇ、ひとみちゃん」

「ちょ、止めてくれない?その呼び方」

「なんで〜?いいでしょ、久々だし」

「いや〜良くない。調子が狂う」

「いいの。狂わせたいんだもん」



意味わかんねぇよ。痒くなってきた・・・



653 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:03



「今日可愛かったな、よっちゃん」



お、呼び方直った。ラッキー!



「何が?」

「幼稚園児の格好したでしょ?
 なんかね、似合ってた。可愛かった」

「そう?かなり痛かったと思うけど」

「全然!美貴ちゃんも可愛かったし、まだまだいけるよ!」



いやいや。あの格好でどんな仕事をしろと・・・
ただのコスプレじゃねぇかよ!!



654 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:03



「あたしはそういう趣味ないんで」

「趣味?まさかプライベートで着て欲しいとは思ってないよ。
 仕事だったから可愛かっただけ」

「・・・・・・分かってるよ」



655 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:03



でも梨華ちゃんにはプライベートでもあんな格好をしてほしい。
と密かに思っていた。
すごく似合っていたから。
優しい保母さんって感じで・・・甘えたくなるような・・・
そう思いながら梨華ちゃんの腿に頭を乗っける。久々の膝枕。

やっぱ寝心地がいいなぁ。。。

梨華ちゃんは優しく微笑んでくれた。



656 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:04



「どうしたの?今日は甘えモード?」

「ん?・・・わかんない」

「わかんないって何よぉ。素直になりなさい」

「・・・・・・甘えモード」



腿に頭を預けたまま腰に抱つく。梨華ちゃんの匂いがする。
甘くて優しい匂い。そのままずっと匂いを嗅いでいた。



657 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:04



「ちょっと〜そんなにクンクンしないでよぉ」

「だぁ〜て、すっげーいい匂いするんだもん」



梨華ちゃんは「そうかなぁ」とか言いながら、
自分の匂いを嗅いでいるけどわからないみたいだ。
自分の匂いって、自分じゃ分からないんだよね。
他の人の匂いならすぐ分かるのに。
あたしは昔から梨華ちゃんの匂いが好きだった。
だから今でも心が落ち着く。


梨華ちゃんはあたしの髪を撫でながら、優しく見つめてくる。



658 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:05



「ほーんと大きい赤ちゃんみたい」

「赤ちゃんよりは成長してるでしょ」

「ベットの上では成長しすぎかな」

「はは。ベットの上って。
 誘ってるの?久々だから?」



あたしがニヤニヤしながら聞くと、
梨華ちゃんは意外にも冷静受け流した。



「別に私はしなくても生きていけるし」



659 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:05



絶対ウソ!始まっちゃえば激しいくせに。

少しイタズラをしたくなって、梨華ちゃんの服の中に頭を突っ込んだ。



「ちょっと!!よっちゃん!?」



そこで思いっきり息を吸う。梨華ちゃんの匂いが体全体に広がる。
微妙に肌に触れるから、梨華ちゃんはくすぐったそうに、
声を漏らす。



660 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:06



「よっちゃん、くすぐったいよぉ。
 ふ、うん・・・やぁだぁ」



頭を戻して梨華ちゃんを見つめる。これでエロスイッチが入ったはず。
切なそうにあたしを見ている梨華ちゃんを、切なそうに見つめ返す。

絶対梨華ちゃんから言わせてやる。



「よっちゃ〜ん」

「なぁに?」



梨華ちゃんは視線を外し、言おうか言わないか迷っている。
そんな仕草が可愛くて、さらにイタズラしたくなってきた。
もう一度頭を突っ込み、お腹の辺りを唇で擦る。
微妙に触れ合う肌に、こっちも興奮してきた。



661 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:06



「ぁはぁ、くすぐっ、たいってば」

「あぁゴメン」



そう言って、じっと見つめる。
梨華ちゃんは観念したように、小さく呟いた。



「ベットいこ」

「ん?もう寝るの?あたしはまだ寝ないから、
 先に寝てていいよ?」



我ながら意地悪だと思う。こんな言葉がスラスラ出てくるなんて。
梨華ちゃんは口を尖らせて、抗議した目でこっちを見る。



662 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:07



「違うのぉ」

「何が違うの?ベット行くってことは寝るんでしょ?」

「・・・・・・違うのぉ。分かってるくせに」



かわいい。ふて腐れてるよ。
あたしは頭を起こし、梨華ちゃんの横に座りなおす。
そんなあたしを睨む梨華ちゃん。



「睨むなよぉ」

「いじわる」

「どこがぁ?」

「全部」



663 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:07



ふて腐れてる梨華ちゃんが可愛くて可愛くて。
見てるだけで生きていけるんじゃないかと思ってしまう。
そんなことを考えていると、
梨華ちゃんが突然あたしの腿にまたいで座ってきた。



「梨華ちゃん?」



首の後ろに手を回され、思わずごくっと唾を飲み込む。
優しく微笑んで、唇を寄せてきた。
唇と共に、梨華ちゃんの匂いが鼻をくすぐる。

うわぁ・・・ドキドキしてきた・・・

ドキドキしてきたっていうのに、
更にドキドキするようなことを言ってきた。



664 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:08










「ここでもいいんだよ?」










665 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:08



心臓が体を突き破って出てきそうなぐらいドキドキする。
こうやって座ることだって、別に珍しくない。
なのにこんなにドキドキするのはなんでだろう。

なんか・・・・・・・
先生に迫られてる生徒の気分。さっきまでの話が尾を引いている。
普通ならここで押し倒すはず。
でもそんな子供みたいなことはしない・・・・



666 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:09




と言いたいけど・・・我慢できるわけがない。

あたしはそのまま腰をキツク抱いて唇を奪う。
最初から激しく。優しさなんて見せない。

ふいに唇が離れたときに梨華ちゃんが一言。



「落ち着いて」



あぁ・・・かなり取り乱してしまった・・・
でも誘ったのは梨華ちゃんなわけで。
落ち着けなかったのは梨華ちゃんのせい。



667 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:09



「やっぱさ・・・・・・ベットいこ?」

「うん・・・」



こんなときにだけ素直になる自分が嫌だったりする。
梨華ちゃんはしてやったりって顔してるし・・・



668 名前:匂い 投稿日:2006/07/02(日) 16:10



やっぱりこのお姉さんには勝てないと思う。
あたしが落ち着く場所も言葉も匂いも・・・
この人がすべて持っている。敵うわけが無い。

でも別に敵おうなんて思ってない。
今のまま・・・落ち着ける場所、言葉、匂い・・・

これを持っている梨華ちゃんに溺れていたい。





                             END



669 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/03(月) 20:57
アマ━━━(・∀・)━━━イッ!!!
その人の持つ匂いってひとつの魅力ですもんね。
結局、手綱を握ってるのは梨華ちゃんなんか。w
次作も楽しみにしてます♪
670 名前:愛虎 投稿日:2006/07/05(水) 23:05
更新お疲れ様です。

やっぱり、いしよしはあま〜〜いのが一番ですね♪
ハロモニのプッチゲームでのいしよしの絡みを毎回楽しみにしているので
その後を覗けたみたいで楽しかったです。
671 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/06(木) 02:08
ハァ━━━━━━ ;´Д` ━━━━━━ン!!!
甘々大好きです!
二人ともかわいくって魅力的ですねぇ。
672 名前:メモ 投稿日:2006/07/18(火) 01:21

>>名無飼育さんサン
 もちろん梨華ちゃんですw

>>愛虎サン
 ありがとうございます。胃もたれにお気をつけくださいw

>>名無飼育さんサン
 いしよしは可愛さも魅力ですね〜

673 名前:メモ 投稿日:2006/07/18(火) 01:23

今回も長くなります。
今までと違う感じで展開していくので、ヨロシクお願いしますm(_ _)m

一応 いしよしののみき ぐらいだと思います。

674 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:24






――――父さん、母さん。あたしにどうしろって言うんだ。
    あたしらを残して逝くなんて・・・どうすれば・・・







675 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:25



ひとみは体中に痛みを感じ、ゆっくりと目を開ける。
そこは18年間住んでいた、間違いなく自分の家。
だが家を出ていたひとみには少し懐かしい。

「ふぅ」

逆のソファーに目をやると、女の子が一人。
まだ目を覚ます気配はない。
ひとみは女の子を見つめながら、これからのことについて考えていた。


ひとみは14歳のときに母親を亡くしている。事故だった。
買い物帰りに青信号を渡ったところ、暴走したトラックに轢かれたのだ。
病院に着いたときにはもう息をしていなかった。



676 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:25



それから2年後、ひとみが高校生になったとき、
父親は再婚すると言い出した。母親が死んでまだ2年。
ひとみには「早すぎる」と感じたのだ。
しかし父親は反対を押し切り再婚、相手にも連れ子がいた。
それが先ほど逆のソファーに寝ていた女の子である。
名前は希美。この家に来たときは小学4年生だった。
いつも笑顔を絶やさずにひとみにも懐こうとしていたが、
ひとみ自身がそれを許さなかった。
いきなり再婚したことに腹を立て、新しい母親の存在を無視し続けた。
そのうち家にも帰らなくなり、友達の家をフラフラ回っていた。
そんな生活が3年間続き、高校卒業と同時に家を出た。
だから希美とは一切会話することが無かったのだ。

家を出て3年、今は介護士として病院に勤めている。
順調に仕事をしていた矢先に入った朗報。父母の事故死。
二人で出かけた際、またもやトラックに車ごとぶつかられた。
希美は部活だったため助かったが・・・



677 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:26



「どうすんだよ。・・・話したことねーよ」



希美は高校に入ったばかり。この家に一人で住ませるわけにはいかない。
かと言って親戚もいない。身内はひとみだけ。血のつながりはないけど。
希美を守らなければいけない。ひとみはもう怒ってなんていない。
ただ家に顔を出すのが恥ずかしかっただけだ。
もっと早く・・・素直になっていれば・・・

ひとみがじっと希美の顔を見ていると、希美の目が開いた。
昨日さんざん泣いたせいで、目が腫れている。



678 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:26



「おはよ」

「・・・・おはようございます」



希美は目を合わせようとしない。
ほとんど話したこともない人に寝顔を見られれば、
誰でも恥ずかしくなるだろう。
しかしひとみもかける言葉は見つからない。

沈黙に耐えかねて、ひとみがトイレにたった。



「ダメだ。話せん」



これから二人で暮らしていかなくてはならない。
たくさんの不安がひとみの頭を過ぎる。
まずはやることを片付けよう。それから考えるんでも遅くはないはず。
取りあえず、マンションを解約しなきゃいけないとひとみは考えた。



679 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:27










**********************************










680 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:27



「うぅ」

ひとみは心地よいベットの上で目が覚めた。
3年も居なかったのに部屋があり、しかもベットも綺麗だった。
たぶんいつでも帰ってこれるように、
母親が綺麗にしてくれていたんだろう。

『ありがとう』

ひとみは心の中でお礼を言った。

希美は昨日、部屋から出てこなかった。
昨日は良かったが、今日は学校がある。
行かせなければならない。



681 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:28



コンコン



部屋をノックする。返事はない。
もう一度ノックするが、返事が無いので声をかけようと思ったが、
ここでひとみは重大なことに気付いた。

『あたし、この子の名前・・・呼んだことない』

いくら話さなくても名前ぐらいは知っている。
しかし呼んだことが無い。照れくさい。
学校は休ませられない。

『頑張れ、あたし』
「の、希美・・・ちゃん。朝だよ。学校行かないと」



682 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:29



初めて呼んだ、初めて出来た妹の名前。
ひとみは実際に呼んでみて、綺麗な名前だと思った。

するとドアの向こうから返事があった。



「今・・・・行きます」

「ん、分かった」



683 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:29



ひとみはキッチンに向かう。だが料理が出来ない。
いつもお弁当やパンだったから、一人暮らしでも料理が出来ない。

キッチンにぼーっと立っているひとみを見て、希美が声をかける。



「ご飯いらないです。お腹減ってないし」



そう言ってリビングのソファーに座り、テレビをつけた。
ひとみはほっとして、もう一つのソファーに座る。

座ったと同時に家にチャイムが鳴った。
その後玄関のドアを開ける音が聞こえ、リビングのドアも開かれた。
開いたドアの前に立っている人物を見て、希美は笑顔になった。



684 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:30



「美貴ちゃん!おはよ」

「おはよう!ちゃんと起きれたんだ」

「うん。。。昨日寝すぎたからかな」

「そう。今日は元気いっぱい?」



「うん」と言って希美は美貴に抱きつく。
その光景をひとみはぼーっと見ていた。

今家に不法侵入したのは美貴。ひとみの幼馴染で隣の家に住んでいる。
小さいころからひとみと行動を共にし、男っぽい態度だが、
ほんとはとっても乙女だ。

ひとみは少し面白くなかった。
希美が美貴に懐いていることと、勝手に家に上がってくること。



685 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:30



「おめぇ。不法侵入だよ」

「あら、居たの?存在感皆無だから気付かなかった」

「うっせぇ。何の用だ」

「何その言い方。相変わらず嫌な奴。
 こんな奴と一緒に住むなんて、かわいそすぎるよ」

「だから、何の用?飯も作れねぇくせに。
 なんでなっちゃんじゃなくて美貴なんだよ。
 なっちゃんなら飯作ってくれるのに」

「お姉ちゃんだって色々忙しいの。しょうがないでしょ?
 美貴だって、パンぐらい焼けるんだから」



686 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:31



ひとみは美貴の顔をじっと見て、こいつはほんとに変な奴だと確信した。
パンなんて誰にでも焼ける。
でもそんなことを言えば余計に言い返されるだけだと思い、
口には出さなかった。



「別に飯なんていらねぇけど」

「はぁ?さっき飯がどうのって言ってたでしょ?」

「いや、いらね。ね、希美ちゃん」



希美はいきなり話を振られてビックリしている。
そしてゆっくりと首を縦に振った。



687 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:31



「ちょっと。気安く希美ちゃんとか言わないでくれる?」

「いいじゃん、妹なんだから」

「妹?今まで一回も話したことないくせに」



ひとみは言葉に詰まってしまった。
確かに美貴の言うとおりである。今まで一度も話したこと無いのに。
少し反省した。でも美貴に言われたのは腹が立つ。



「ほんと口悪い」

「よっちゃんに言われたくない」



688 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:32



美貴の隣に居る希美を見ると、俯いたまま顔を上げない。
こんなバカ話してる場合じゃないとひとみは思った。



「の、、、ぞみちゃん。ご飯ほんとにいいの?」

「・・・はい。大丈夫です」

「そっか。もう学校行く時間じゃない?」

「あ!遅刻するぅぅぅ」



689 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:32



希美はカバンを急いで持ち、玄関へ飛び出して行った。
ひとみは取りあえず一息つく。
一応姉妹だが、実際は他人みたいなもので・・・かなり気を使う。
ただ疲れるだけなのだ。


無理だ・・・こんな生活を続けていくなんて・・・
気を使う生活なんて・・・



「よっちゃんさぁ、やっていけるの?ののちゃんと」

「・・・・・・無理」

「はぁ」



690 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:32



美貴は大きなため息をついた。
ひとみの発言に呆れたという感じだった。
美貴としては無理な状況だとしても、
どうにかして頑張る意欲を持ってほしかったが、
ひとみにそれを求めるのはかなり難しいことだと分かっている。
しかし希美のことを本当の妹のように可愛がってきた美貴は、
二人がどうにか上手く生活してくれることを望んでいるのだ。



「ののちゃんさぁ、本当に良い子なんだよ?
 人の気持ちに対して凄く敏感で、
 この人落ち込んでるな、悩んでるなってすぐ気付くの。
 実際美貴もいろいろ助けてもらった。近くにいるだけで癒されるから」

「・・・・・うん」



691 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:33



ひとみにもそれは分かっていた。
あの子は人の心に敏感に反応する子だと。
ひとみが困っていると、決まって自分は大丈夫だとアピールしてくる。

さっきだってお腹が空いていたはずなのに、
料理ができないことを察知して「いらない」と言った。
ひとみもそれぐらい分かっている。



「だからね、ののちゃんを悲しませないでほしい、これ以上。
 おじさんとおばさんが居たころみたいに、愛で包んであげて」



そんなことが自分に出来るのだろうかとひとみは思った。
愛を受け付けなかった自分が、愛をあげれるのかと。
全く自信が無い。かけらもない。



692 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:34



「じゃ、美貴も学校行くから。よっちゃんも仕事でしょ?」

「あぁ。そうだった・・・気をつけて」

「うん、よっちゃんもね」



美貴はそう言って玄関を出た。ひとみは仕事に行く準備をする。


何時に帰るとかメモ残したほうがいいのかな・・・
メール・・・ってアドレス知らねぇよ。教えてくれるかな。
いや、教えてもらおう。連絡取れないと色々不便だ。
今日夜ご飯どうしよ。何が好きなんだろ。
高校生だからダイエットとかしてるのかな?


そんなことを考えながらひとみも家を出た。



693 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:34









*******************************










694 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:35



――――――― ぐぅ〜



学校に着いた希美はすぐにお腹を鳴らした。
毎日朝ごはんを食べている希美にとって、朝食抜きはかなりキツイ。
でも今朝のあの状況でお腹が空いたとは言えなかった。
美貴が来たときに食べれるかと思ったが、
よく考えたら美貴は料理ができなかった。
朝食抜きを確信した時だった。



「・・・・のんつぁん?おはよ」

「・・・あ、おはよう」

「・・・大丈夫?」

「え?・・・・あぁ、何とかね」



695 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:35



話しかけてきたのは一番仲が良い小川麻琴だった。
みんな落ち込んでいる希美の姿を見て話しかけずらかったが、
麻琴だけは違った。逆に元気に話しかけようとしていた。
そんな麻琴を見て、いつものおどけた調子で朝食抜きの話をした。



「んでね、ご飯食べれるかなぁって思ったんだけど、
 美貴ちゃんもご飯作れなかったってオチですよ」

「はは!ついてねぇ」

「ほんと同じ突っ込みしたかったもん、、、」



696 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:35



希美は言葉に詰まってしまった。
本当はひとみのことを言いたいのだか、
なんと呼んでいいのか分からない。


お姉ちゃん?って感じじゃないんだよねぇ。
ひとみさん?・・・・なんかキモイ。
これから一緒に住むのに、名前も呼べないなんて・・・


希美もまた、不安を抱えていた。



697 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:36









*******************************










698 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:36



「はぁ」

「美貴ちゃん、幸せが逃げるよぉ」

「逃げるほど無いから大丈夫」


〈今日はいつもに増してため息多くない?〉

〈だよね?そりゃ幸せなんてないよ〉



ため息をついてる美貴の横で梨華とあゆみがヒソヒソ話している。
三人は同じ学部でいつも一緒にいる。
ため息をつくのが癖である美貴だが、
朝のこともあり、今日はいつもに増してため息がでてしまうのだ。



699 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:37



「ねぇ、今まで話したこと無い人といきなり一緒に住めって
 言われてもやっぱ無理?」

「え?・・・・・あ、幼馴染さん?」

「そう。一昨日お葬式が終わって、
 昨日は抜け殻状態だったんだけどさ、
 今日から本格的に二人なんだけど・・・」

「うまくいきそうにないんだ」

「もう全くダメ。美貴はさ、やっぱ仲良くしてほしいじゃん?
 でも他人なんだよね」

「でもののちゃん良い子じゃん!
 幼馴染さんだって良い人なんでしょ?」

「そりゃあね、何とかうまくやれると思ってたんだけど、
 お互いのよそよそしさを見てたら、無理かなって・・・」



700 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:37



「こればっかりはどうにも出来ないよね・・・
 変に口出ししてもさ」

「そうだよねぇ・・・」

「取りあえずさ、
 美貴ちゃんを含めて仲良くするようにすればいいんじゃない?」

「あ、それいいね。一緒にご飯食べたりして」

「そうするかぁ。どうせよっちゃんご飯作れないし。
 お姉ちゃんも大勢の方が喜ぶし」

「そうしな、そうしな」

「よし。よっちゃんから食費ボッタくろっと」



こんな話をしてても面白いことを言う美貴は凄いと思う、
梨華とあゆみだった。



701 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:38









*******************************










702 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:38



「は〜い、腕上げてください。拭きますよぉ」

「あぁ、いつもありがとう」

「いいえ〜、綺麗にしてお孫さんに会わないと」

「そうねぇ、また元気でるわぁ」



ひとみはおばあちゃんの世話をしている。
これからのこと考えると頭が痛くなるので、
仕事場ではなるべく考えないように、いつも通り仕事をこなしていた。

病気を持っているお年よりも居るが、
骨折などで入院しているお年よりも少なくない。



703 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:39



このおばあちゃんは一週間に一日来る、
お孫さんを心待ちにして毎日を過ごしている。
お孫さんは祖母ちゃん子で、毎日でも通いたいみたいだ。
楽しみにしているのはおばあちゃんだけではなく、
ひとみも彼女が来るのを楽しみにしていた。

初めて会ったときの美しい容姿が目に焼きついて離れなくなり、
一週間に一度来る彼女を見るのが楽しみになってしまった。
もしかしたらおばあちゃんよりもワクワクしているかもしれない。



「やっぱ今日も夕方ぐらいですかね?」

「そうじゃないかなぁ?学校帰りにいつも来るからねぇ」

「大学生でしたっけ?いいなぁ、夏休みとか長いんだろうなぁ」



704 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:40



「そうなのかい?」

「えぇ。あたしにも大学生の幼馴染が居るんですけど、
 その子は夏中ずっと家でゴロゴロしてて、
 お姉ちゃんとかに怒られてるんですよ」

「あらぁ。そう。暑いからゴロゴロしたくなる気持ちも分かるわ。
 ひとみちゃんには兄弟いないの?」





・・・・・・・・・・・・・・





705 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:41





「いますよ。高校1年の妹が」





「あらぁ、カワイイでしょう」

「えぇ、まぁ」



ひとみは希美のことをカワイイと思ったことなどまだない。
けれど自分に妹が居るということは自覚しようと思い始めていた。



706 名前:支え 投稿日:2006/07/18(火) 01:42



「さ、綺麗になりました」

「ありがとう。気持ち良かったわぁ」

「これでお孫さんが来ればばっちりですね!石川さん」



二人で笑いあって、あたしは病室を出た。





                        to be continues



707 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/18(火) 08:29
朗報て…
708 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/18(火) 09:05
おもろ〜いよ
709 名前:メモ 投稿日:2006/07/18(火) 13:06

申し訳ありません。勉強不足です。
「朗報」をずっと「悲しい知らせ」だと思って生きてきました。
間違ってしまって申し訳ありませんm(_ _)m

710 名前:愛虎 投稿日:2006/07/18(火) 22:17
更新お疲れ様です。

おもしろいです!この先の展開を楽しみにしてます。
711 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/26(水) 19:52
続き気になりますね。楽しみに待ってます!
712 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/21(月) 11:36
あら、意外なつながり。w
おもしろいですね、続き楽しみにしていますよ!
713 名前:メモ 投稿日:2006/08/22(火) 19:22


>>名無飼育さんサン
 ご指摘ありがとうございました。

>>名無飼育さんサン
 ありがとうございます。もっと面白くなるように頑張ります。

>>愛虎サン
 ありがとうございます。待っててください。

>>名無飼育さんサン
 ありがとうございます。待たせてすいません。

>>名無飼育さんサン
 ありがとうございます。必ずどこかで繋がってるみたいですw

714 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:24



午前中の仕事を一通り終え、
ひとみは同僚の看護士、真希と昼食をとっている。
朝何も食べていないせいか、いつもより量が多い。



「よしこ食べるねぇ。お腹壊さないでよ〜」

「大丈夫。朝飯食ってないし。余裕で入る」

「そんなに一気に食べたら胃がビックリするよ」

「そうかな」



真希はひとみの事情をよく分かっている一人で、
新しい二人での生活が大丈夫なのか気になっていた。



715 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:24



「どう?妹さん」

「・・・・ん〜まだよく分かんない・・・」

「やっていけそうなの?」

「どうだろ・・・だってさ、名前も呼べないんだよ?
 なんて呼んでいいか分かんなくてさ・・・
 たぶん向こうも悩んでると思うけど・・・」



ひとみは希美のことを考えながらため息をついた。
妹なのに希美のことを何も知らない。
どんな部活に入っているのか。どんな友達が居るのか。
成績はどうなのか。知らないことだらけである。



716 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:25



「まぁ悩んでてもしょうがないっしょ。なるようになる」

「・・・・・簡単に言うなよぉ。家帰るの憂鬱」

「そんなこと言わない!元気に行こう」

「はぁ・・・」



ひとみの幸せは確実に逃げていた。



717 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:25



















718 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:25



夕方。ひとみは今日の仕事の締めに入っていた。


いつもなら帰れるの嬉しいんだけど・・・今日は嬉しくないなぁ。
もう帰ってきてるかな。部活があるならまだか。


ひとみは家に帰る不安と同時に、
彼女が来る喜びの両方を抱えていた。
もうすぐあのおばあちゃんのお孫さんが来るはずだ。
彼女と話をしたくて急いで仕事を片付けていく。

ひとみは一通り仕事を終え、おばあちゃんの病室に向かう。
もうそろそろ来てる頃だろう。自然と笑みがこぼれる。



719 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:26



「石川さんっ」

「あらぁひとみちゃん」

「あ、こんにちは。いつもお世話になってます」

「いえ、いつも楽しませてもらってます」



そこにはひとみが予想していた通り、
お孫さんがベットの横の椅子に座っていた。


眩しいなぁ、石川さん。いい笑顔だぁ。


ひとみは彼女に見入ってしまいそうになるのをグッと押さえ、
おばあちゃんに話しかけた。



720 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:27



「どうですか?調子は良い?」

「ええ、もうばっちり。孫が来てくれてるから余計にねぇ」

「そうですねぇ。顔色ばっちりだ。
 あたしもお孫さんが来ると元気になっちゃいますよ」

「ふふ、もう吉澤さんはいつもそればっかりぃ」

「ほんとですって。一週間のエネルギーになりますよ。
 昨日なんてエネルギー切れる寸前だったんですから。
 ねぇ、石川さん」

「あら、ひとみちゃん昨日休みだったじゃない。
 そっかぁ、梨華に会ってないから休んじゃったんだ」

「そうです!体に力が入らなくて。休んじゃいました」



721 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:27



「でもひとみちゃん、しばらく来てなかったわね?
 本当に体調悪かったの?」

「あぁ、いえ、ちょっと色々ありまして・・・」

「そう。ひとみちゃん頑張りすぎちゃうから」



おばあちゃんが優しく微笑んでひとみの顔を見ていた。
ひとみは少し照れたように笑う。
梨華はひとみの照れた笑顔を見て、素直にカワイイと思った。

この病院に入院して、初めてお見舞いに来た日。
初めてひとみに会った。
どの患者さんにも同じように接し、同じ笑顔を見せていた。
そんなひとみを自然と目で追うようになっていた梨華。
同じ歳ぐらいの人が仕事している姿に尊敬の眼差しを送っていた。



722 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:29



「じゃ、石川さん。あたしもう帰りますんで」

「うん。また明日ね」

「よろしくお願いします」

「はい、任せてください」



ひとみは二人に手を振って病室を出た。



病院を出て携帯を見ると、メールが一件。
美貴からだった。

【今日の夜はうちにおいで〜。お姉ちゃんが作ってくれるって!】



723 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:30



マジかよ!良かった〜。今日もろくなもの食えないかと思ってた。


ひとみは安堵のため息をもらした。
希美と二人きりになるよりは、誰かが一緒に居た方が良い。
今までの分からないことも聞きやすいかもしれないと思った。
しばらくは一緒に暮らすことになるのだから、
知っておかなければならないことも多くあるだろう。


取りあえず携帯の番号とアドレスを教えてもらわなきゃ。


ひとみはお腹を空かしながら美貴の家に向かった。



724 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:30










*******************************










725 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:30



♪♪♪♪♪〜〜〜〜



「ん?誰だぁ?」



希美はダンス部の部室で着替えをしていた。
しばらく休んでいたこともあり、体が鈍っている。
今日は思いっきり踊って、嫌なことを忘れようと思っていた。



726 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:31



「のんつぁん?まだぁ?」

「ゴメン、メール来ててさぁ。今返事返してた」

「ほんとに踊るのぉ?やっぱもう少し休んだ方が・・・」

「なんでぇ?全然平気だよ!体動かしたいし。
 それに今日美貴ちゃん家でご飯だからお腹空かしていかないと」



希美は美貴の家で何度もご飯を食べているため、
その美味しさをよく分かっている。
お腹を空かした方がもっと美味しいということも。



727 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:32



美貴の家は今、姉妹で二人暮らしをしている。
両親は父親が九州に転勤になったため、母親もついて行った。
こっちで大学や仕事があった姉妹は二人で残ったのだ。
美貴は料理が出来ないが、姉のなつみは料理が上手で、
希美もなつみのことが大好きなのだ。



「そっか。じゃ行こ」

「うん!行こ行こ!!」



728 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:33



麻琴は希美が空元気だということに気がついていた。
教室ではいつも通りの希美を演じていたが、
ふとした瞬間に何かを思い出すように泣き出しそうな顔をしていた。
母親が再婚してからとても幸せな生活を送っていたが、
その幸せがたった一瞬で崩れてしまったのだ。
悲しくて、苦しくないわけがない。
そんな希美を思うと、麻琴も胸が締め付けられるほど苦しかった。



「のんつぁん、今度アイス食べに行こね」

「あぁいいね!行こう!あ、でも今日はダメね。
 美味しいご飯が待ってるから♪」

「分かってるよぉ。ほんと食に対する執念は凄いね」

「あはは〜」



この笑顔がなくならないように、
麻琴は希美を支えてあげようと強く思った。



729 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:33










*******************************










730 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:34



「こんちゃあ〜」

「あら、よっちゃん。早かったねぇ」

「なっちゃんのご飯食べれると思ったら、
 嬉しくて飛んできちゃったよ」

「相変わらず口がうまいんだから」



なつみは意外に元気そうなひとみを見て安心した。

美貴がひとみの声を聞いて二階の部屋からおりてきた。



「声でかい」

「おめぇだってデカイだろ」

「はぁ。やっぱりののちゃんだけにすれば良かった」

「そんなこと言わないの。たくさん居たほうが楽しいんだから」



731 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:34



ひとみと美貴は小さい頃からいつも一緒に居て仲が良かった。
しかし希美が来てからのひとみの態度が気に入らなく、
美貴はひとみに敵対心をむき出しにしている。
もっとも、お互いもう敵対などという感情はないが、
しばらくこうしてきたため、癖が抜けないのだ。



「早く来るのは全然構わないんだけど、
 ののは部活終わって帰ってくるの7時過ぎになっちゃうから」

「そうなんだ・・・なんの部活入ってるの?」

「聞いてないの?」

「聞いてるわけないじゃん。会話皆無だもん」

「うっせぇ」

「自分で聞けないからって人から聞こうとするなんて、せこい」

「美貴ぃ。いい加減にしなさい」

「は〜い」

「ののはね、ダンス部」

「ダンス部?」

「そう。凄く上手なんだよ。キレがあって。かっこ良かったなぁ」

「見たことあるの?」

「一回だけね。中学の時の学祭だったべか」



732 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:34



ひとみには意外なことだった。
どっちかっていうと、ばりばりの体育系に見えていた。
筋肉もあるし、なんといっても太ももがガッチリしていた。


まぁダンスとかでも太ももはガッチリするかぁ・・・



733 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:35










*******************************










734 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:35



「うりぁ!おりゃ!」

「っく、ちしょう!うわぁ」

「そりゃ!!チャッチャチャーン!」

「う、また負けた・・・」

「弱っ!ほんと弱い。よっちゃんそのもの」

「うっせぇなぁ」



美貴とひとみは希美が帰ってくるまでの間、
ゲームをして待っている。
昔からよくゲームはしていたが、ひとみはいつも負けていた。



735 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:36



「もう一回!!」

「いやだ。もう疲れた」

「勝ち逃げせこいぞ!」

「何回やっても一緒だから、勝ち逃げも何もない」



ひとみが一人闘志を燃やしているところに希美が帰ってきた。



736 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:36



「ただいま〜」

「あ、のの帰ってきたべさ」



希美がリビングのドアを開けると、美貴が抱きついてきた。



「おっかえり〜!待ってたよぉ」

「ただいま美貴ちゃん」

「ののぉ、手洗ってきてねぇ」

「は〜い」



737 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:37



ほんとの家族みたいなやり取りに、ひとみは孤独を感じていた。


あたしのことは無視かよ。
居ることにも気付いてなかったっぽいし・・・
なんだよ、なんなんだよ!あたしは姉でしょ?
姉に気付かないってどうなの??


ひとみはイライラしながら食卓につく。
そんなひとみに気付いたなつみが優しい笑顔を向けた。



「今は慣れてないの。よっちゃんもそうでしょ?
 いつか必ずね、心通じるときが来るから。
 それまでよっちゃんも頑張らないと」

「・・・・・・うん」



738 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:37



なつみが話し終わると同時に希美がリビングに入ってきた。
ひとみが居ることに気付き、少し気まずそうな顔をしながら、
ひとみに挨拶した。



「こんばんは」

「おぅ、おかえり」

「ただいま」

「硬いなぁ。ほらののちゃん座りなよ」

「ほ〜ら、今日はシチューだよぉ」



739 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:38



シチューを見た途端に希美の顔は明るくなり、
笑顔で美貴と食卓につく。
そんな希美を見て、ひとみも少し笑顔になった。


この子、食べ物一つでこんなに変わるんだ。すっげー嬉しそう。
こんな顔で食べてもらえたら、なっちゃんも作りがいがあるよなぁ。


ひとみは希美のことを少し知れた気がして嬉しかった。
ほんの小さな希美の一面だが、それすら知らなかったのだから。



740 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:38



「今日は部活だったんでしょ?久々でどうだった?」

「疲れたよぉ。やっぱ常に動いてないとキツイ」

「ダンスだっけ?見てみたいなぁ」

「また見せれるときがあるかもしれないから、
 そのときは見にきてください」

「えっ?いいの?」

「はい!」

「行く!絶対行くから!」

「良かったねぇ」

「ダンスなんて分からないくせに、終わったあととか、
 『良かったよ。キレがあって』とかそれらしいこと言うでしょ?」

「言わねぇよ」



741 名前:支え 投稿日:2006/08/22(火) 19:39



ひとみと美貴のやりとりを見ながら、希美となつみが笑っている。
この小さな食卓で、ひとみは家族の温かさを感じた。





                        to be continues



742 名前:愛虎 投稿日:2006/08/23(水) 22:48
更新お疲れ様です。

よっすぃ〜の気持ちを分かてってくれてる人達がいてよかったです。
安倍さんとか、ごっちんとか。
本当のよっすぃ〜を知ればのんちゃんも最高の笑顔をしてくれますよね。
743 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/24(木) 23:57
更新お疲れ様です☆
よっすぃーも色々と大変だろうけど良い友達に恵まれてますね。週イチのお楽しみもあるし!w
何気によっすぃーアプローチしまくりですねぇ。今後どうなっていくのか楽しみです♪
744 名前:メモ 投稿日:2006/09/07(木) 01:36



>>愛虎サン
 いつもありがとうございます。はい、よっすぃ〜はいい子なんですw

>>名無飼育さんサン
 いつもありがとうございます。ヘタレだけど押しの吉澤ですからw



745 名前:メモ 投稿日:2006/09/07(木) 01:37


あと2回の予定です。(今回を含め)


746 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:38



久しぶりに温かい食事を終えた二人は、家に帰ることにした。
なつみは「泊まっていきな」と言ってくれたが、
あまり迷惑をかけてはいけないと思い、二人は遠慮した。

仲良くなったようにみえたひとみと希美だったが、
二人きりになるとどうしてもうまく話せない。



『やっべー。さっきあんなに話せたのに、全っ然ダメじゃん』

「お風呂沸いたからいいですよ?」

「え?あ、ありがと。じゃお先に」



747 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:38



ひとみは取りあえず風呂に入り、何か会話の糸口を見つけようと思った。
一方、希美も何か会話することはないかと考えていた。
でも会話は自然と出来るようになるものじゃないかと、
ひとみ以上に大人な考えも持っていた。



「別に無理しなくてもいいよね。疲れるだけだし」



そう思い、希美は部屋に上がっていった。

ひとみがお風呂からあがると、希美はリビングに居なかったため、
上に上がりお風呂をどうぞと言いに行く。



748 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:39



『なんて呼ぼう。なっちゃんはののって呼んでたな。パクろ』

「のの〜。お風呂どうぞ」

「はい、ありがとうございます。今行きます」



希美はそう言うと、すぐに出てきた。
ひとみは明日早いため、もう寝ることを希美に伝え自室に入っていった。
その瞬間、希美はとても悲しい気持ちでいっぱいになった。
一人になったような気がして、泣きたいのを必死に我慢していた。



749 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:39










**********************************









750 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:40



お葬式が終わって1週間が過ぎた。
ひとみは仕事で帰りが遅くなったが、
希美はもう寝ているだろうと思った。

静かに階段を上り、自室のドアを開ける。
部屋に入ろうとしたとき、泣き声が聞こえてきた。
小さくすすり泣く感じだが、明らかに希美の部屋から聞こえている。



「マジかよ」



ひとみは希美が夜な夜な泣いていることに気付かなかった。
先に寝ることが多く、部屋もそこまで近くないから、
一度寝てしまったら、気付くことがなかった。



751 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:41



希美は寂しさで押しつぶされそうになっていた。
自分の気持ちを分かってくれる人は居ない。
学校や部活で何があっても、聞いてくれる人は居ない。
会話はそこそこするようになったが、
何でも話せるような仲ではまだない。
1人で何でも抱え込んでしまい、ストレスで夜泣いていたのだ。



「もしかして・・・・毎日か?」



ひとみもまた、悩みを抱えることになってしまった。



752 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:42









*******************************










753 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:42



「っていうわけなんだよ」

「きっついねー」

「正直ね、もうどうしたらいいか分からない。
 なんて声かけたらいいのかも・・・」

「これは・・・私にも分かりませんね」

「ですよね」



ひとみは何も解決策がないまま、仕事に気合を入れることにした。



754 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:43



「石川さん、大丈夫?」

「う〜ん、何かね調子良くないわぁ。ただの風邪かね」

「そうだね。今骨折して身体弱ってるから治りづらいのかもね」



ひとみと仲の良いおばあちゃんは風邪をひいて体調を崩している。
なかなか治らないため、心配しているようだ。
そして今日はお孫さんが来るらしい。



「お孫さん、来るんですよね?」

「そうなんだけど、風邪うつったら困るし、あんま好ましくないわぁ」

「そうですねぇ」



755 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:43



そうこう話している間に、梨華が現れた。



「こんにちは」

「こんにちは、お世話になってます」

「いえ、どうぞ」

「どうも。おばあちゃん、大丈夫?具合悪くない?」

「大丈夫よ。寝てればそのうち治るわ。ここ病院だしね」



おばあちゃんがそう言って笑うと、梨華もつられて笑っている。
それは心からの笑いではなく、
心配の方が大きい笑いだとひとみは思った。



756 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:44



「あんまり一緒に居ると風邪がうつるかもしれないから」



そう言っておばあちゃんは梨華を病室の外に出した。
梨華の不安そうな顔を見て、ひとみは話しかけた。



「今って時間あります?あたしもう上がりなんで、
 少しだけ話しませんか?あ、嫌ならいいんで」

「全然、嫌じゃないです。お話しましょ?」

「はい!ちょっと待っててください」



ひとみは急いで着替えをし、梨華のもとに向かった。



757 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:45



「すいません。遅くなって」

「全然早いですよ?そんなに急がなくても良かったのに」



ひとみは梨華と話が出来ることに舞い上がってしまい、
うまく会話ができない。
そんなひとみを見て、梨華はおばあちゃんの話を持ち出した。



「なんか、変な病気じゃないですよね?」

「おばあちゃんですか?」

「はい、だって。風邪ってこんなに長く続きますか?」



758 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:46



「今は身体が少し弱ってるから治りが遅いんですよ。
 でも日に日に元気になってるから大丈夫です」

「そうですか。吉澤さんが言うなら安心です」

「いや、でも医者じゃあ無いんで」



そんなことを言いながら、自然と笑いも出てくる二人。
ひとみは良い感じだなぁっと心で思いながら会話をしていた。
このままずっと話せてたらいいのに、と。



759 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:47



「私ね、凄いおばあちゃん子なんです。だから毎日寂しくて。
 体調悪いって聞いて、どうしようって。
 このまま居なくなっちゃったらどうしようとか考えたんです」

「そうですか・・・・・
 今のうちに祖母孝行しておいたほうがいいですよ」

「吉澤さんはおばあちゃんとか居ないんですか?」

「居ないですねぇ・・・っていうか両親も居ないんですよ」



760 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:47



ひとみは何故か今まで自分の身に起こったことを話した。
知ってほしいと思ったのだ。
梨華はひとみの話を聞きながら胸が苦しくなった。
自分はなんの不自由もなく暮らしているのに、
こんなに悩んでる人がいることに。
そして、
ひとみは梨華の友達の幼馴染だということにも何となく気付いた。
断片だけでも聞いたことのある話。
しかし梨華は余計なことは言わずに、ひとみの話を静かに聞いた。



761 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:47










*********************************










762 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:48



「ただいまぁ」



ひとみが家に帰ると、ひとみと希美のものではない靴があった。
たぶん美貴だろうと思ってリビングのドアを開けると、予想通り居た。



「なしたの?ののは?帰ってるよね?」

「2階で寝てる。ってか安静にして寝てろって言われたから」

「は?誰に」

「医者」

「・・・・・どういうこと?」

「倒れたの、疲労で。あんた仕事だから美貴が病院連れてった」

「そう・・・・・笑ってくれてたんだけどなぁ」

「笑ってたのはウソじゃないと思うよ。でも相当気を使ってたみたい。
 ののちゃんの友達が言ってた」



763 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:49



ひとみは何も力になれなかったことと、気を使われていたことに
とても落ち込んでしまった。



「泣いてたもんなぁ。夜泣いてたんだよ。でも何も出来なくて」

「そっか。とうぶんさ、うちで寝かせるよ。
 お姉ちゃんと仲良いし、たぶんお姉ちゃんも喜ぶと思うから。
 一人で寝るよりはいいっしょ?」

「・・・・・・・お願いするわ。あたしには今何も出来ない」

「いいんだよ、普段どおりで。ののちゃんが慣れればいいの」



764 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:49



その日は美貴が希美の部屋に泊まり、
次の日からは美貴の家に泊まるようになる。
ご飯だけはひとみもなつみの手料理を食べているから、
会話がないわけではない。
ただ二人には埋めきれない隙間があった。



765 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:49










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766 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:50



今日は梨華がお見舞いに来る日。
おばあちゃんもすっかり良くなって、元気にリハビリしている。
あの日以来、帰りに少し話をするようになった。
ひとみは少しずつ距離を埋められていると嬉しく思う。
また梨華もひとみの優しさ、素直さ、可愛さに惹かれていた。



「じゃあね、おばあちゃん。また来るから」

「また明日。リハビリ頑張りましょうね」

「うん。二人とも気をつけてね」



767 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:50



二人でいつものベンチに腰をかけ、いろんな話をした。
ひとみが突然、希美の話をし始めた。



「もう、どうしたら良いのか分からないんですよ。
 泣くなって言っても泣いちゃうだろうし。
 今はだいぶ落ち着いてきたんですけど・・・」

「そっか・・・・・お互い悩み抱えてるんだもんね。
 簡単にはうまくいかないと思うけど」

「難しいっす」

「でも、一回ちゃんとぶつかった方がいいと思う。
 お互い自分の言いたいこと言って、
 信じあえる仲になるべきじゃないですか?」

「それは、そうなんですけど」



768 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:51



「ぶつかって、自分に何でも話して来いって安心感を与えてあげれば、
 とっても落ち着くと思います。私ならホッとする。
 こんな風に言ってくれる人が側にいるんだって」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「ゴメンなさい、余計なこと言って。
 何も分からないのに勝手に喋っちゃいました。
 帰りましょ、暗くなってきたし」

「なんか・・・ありがとございます。逃げてたんですよ、所詮。
 妹の存在から逃げて来たんです。ちゃんと受け入れてなかったんです。
 ぶつかります。思いっきり」



そう言ってひとみは笑った。梨華は応援するように優しく頷く。
また一歩近づいた二人の距離。
その前に縮めなければならない距離がある。ひとみと希美の距離。



769 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:51










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770 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:52



「ただいま」

「おかえり〜ご飯出来てるよ」

「ありがと。ののは?」

「今お風呂入ってるけど・・・・どうかした?」

「うん・・・ぶつかろうと思ってさ、ありったけ」

「やっとぉ?良かった」



なつみは優しく笑って、ひとみのご飯をよそう。
ひとみは腹が減っては戦は出来ぬ状態で、どんどんかきこんでいった。


771 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:52



しばらくすると希美がお風呂からあがってテレビを見始めた。
ひとみは食事が終わるとすばやく希美の近くに座る。
希美は不思議そうにひとみを見ている。
ひとみは話を切り出した。



「ののさ、あたしのこと・・・怖い?」

「え?急にどしたの?」

「どうかなって思って」

「・・・・・・全然。怖くないけど」

「そっか。そっか、そっか」



ひとみは取りあえず安心した。
怖がられてたらそこから直さなくてはいけない。



772 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:53



「あのね・・・・・ののと家族になりたいんだ」

「家族・・・だよ?」

「なんていうか、、、もっとぶつかってきてほしい。
 あたしもそうだけどさ、気使うとか辞めようよ。家族に気使うとか。
 もうさ、なんだってワガママ言っていいんだよ?
 どんなことだって聞くさ。楽しかったことも、悲しかったことも、
 昔父さん母さんに話してたみたいに話してよ。溜めないでさ。
 吐き出してこうよ」



希美は俯いたまま、顔を上げようとしない。
そんな希美にひとみが少し苛立ち始めた。



「顔・・・・あげてよ。真直ぐ見てよ!マジでさ。溜めんなよ。
 あたしのこと信用しろって」

「だって・・・・・ワガママ言って、嫌われたくないもん」

「え?」



773 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:53



希美の目から大粒の涙が溢れ出していた。



「うぅ、だぁっ、て・・・つ、まら、ない、話っ、うっっして・・・
 嫌わ、っれ、たく・・・ない、っっもん」

「そんなことで誰が嫌うんだよ。くだらんこと言えるのが家族だろ」

「だぁ、って」

「あのさ、あたしの周りの人・・・全員がのののこと愛してるんだよ。
 父さんも母さんもなっちゃんも美貴も・・・・・
 あたしが信用してる人達全員が愛してる子を・・・・
 嫌いになると思う?ありえいっしょ。
 もうさ、家族として愛してるよ、のののこと」



774 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:54



希美は泣きながらひとみに抱きついた。
ひとみの服を精一杯掴んで、大泣きしている。
つられてひとみも軽く泣いた。なつみも泣いた。美貴は号泣した。
ひとみと希美の隙間は、完全に埋められた。



775 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:54










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776 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:55



「よっちゃ〜ん!!朝だよ〜!!遅れるよ〜!!」

「う・・・わぁ!うるせぇ!起きるよ!!」



ひとみは布団の中。希美はひとみのベットの上でポンポン跳ねている。
これは毎朝希美がひとみを起こす目覚ましになってしまった。
あれから2週間がたった。二人は急激に仲良くなり、元気に暮らしている。
希美は料理を覚え、毎日頑張って作っている。
でもたまになつみの作ったおかずをもらってきてもいる。



777 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:55



「今日は友達と遊びに行くから夜遅くなる」

「・・・・・友達って誰?」

「誰でもいいじゃん。友達は友達」

「・・・・・名前言わないと遊ばせない」

「えぇ?何言ってんのぉ?まことだよ」

「まこと・・・・・あぁ!!あのデレデレした奴か!」

「そうそう、デレデレしてるね、いっつも」

「止めとけ、今日は早く帰ってきなさい」



ひとみはいつの間にか父親みたいになっていた。
娘が遊びに出かけようとすると怒る頑固親父みたいに・・・
希美のことが可愛くてしょうがないのだ。



778 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:56



「よっちゃんだって、今日遅いかもって言ってたじゃん。
 誰かとご飯食べに行くって」

「あ・・・そうだった!!今日行くんだ。でもこれとそれとは話が別」

「いや、意味わかんない。あ、もう行かなきゃ」

「ダメだって!」

「なんで!?学校も行っちゃダメなの?」

「え?あ、いってらっしゃい」

「いってきます」



779 名前:支え 投稿日:2006/09/07(木) 01:56



希美はふて腐れたまま家を出て行った。
ひとみはちょっとやりすぎたかと少し反省している。
だがその顔も、だんだんとニヤけてくる。



「そうだぁ。今日はご飯食べに行くんだった、石川さんと」



ひとみは希美と仲良くなれたことを梨華に報告し、
さらにお礼の意味もこめて食事に誘ったのだった。
梨華のほうはもちろんOKで、今日はその日であった。



「やっべー!!テンション上がってきたぁぁぁぁぁぁぁ!!」





                        to be continues



780 名前:愛虎 投稿日:2006/09/07(木) 23:07
更新お疲れ様です。

ののちゃんと仲良くなれてよかったです。
次回で最終回なんですね寂しくなりますでも、梨華ちゃんとの食事回?楽しみにしてます。
781 名前:メモ 投稿日:2006/10/06(金) 23:57


>>愛虎サン
 遅くなって申し訳ありません。
 あと一回と前回書きましたが、終わりきれませんでした。
 もう少しお付き合いください。


782 名前:支え 投稿日:2006/10/06(金) 23:59



「すいません、遅くなって」

「いえ。全然大丈夫っすよ」


いつも通りに仕事を終え、ウキウキしながら待ち合わせ場所に向かった。
そこに着いた時には待ち合わせの30分前。
ひとみは興奮しすぎてとても早く着いてしまったのだ。
一方梨華は急いでそこに向かった。
授業が終わってギリギリの時間だった。


「じゃ行きますか」

「はい」



783 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:00



ひとみはくわしく希美と打ち解けられたことを話した。
梨華は「そうですかぁ」と言いながら優しい笑顔を向けている。


「本当に石川さんのおかげですよ。奮い立たせてくれたっていうか」

「フフ。私だけじゃないですよ。吉澤さんが頑張ったからです」


そんな梨華の言葉に、ひとみはドキドキしていた。
『本当に優しいよなぁ。カワイイし』
自分が彼女に恋をしていることは分かっているが、
そのことを言い出す勇気はまだまだ無かった。ヘタレだから。


「あのね、私内緒にしてることが1つあるの」


突然そんなことを言い出す梨華に心臓が暴れだすひとみ。



784 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:01



「吉澤さん、藤本美貴って知っていますか?」

「え?・・・・・はい」

『なんで美貴の名前が出て来るんだよ。どういう繋がり?
 まさか美貴の彼女とか・・・・・有り得ない・・・・・よね?』

「友達なんですよ、大学の」


暴れまくっていたひとみの心臓は落ち着きを取り戻し、正常に機能した。
でもまさか知り合いだったとは思わず、ビックリしている。


「あー同じ大学なんですね。全然気がつかなかった」

「まだ美貴ちゃんにも言ってないんですよ。確信が持てなかったし」



785 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:02



梨華は美貴たちに、
ひとみのことは伏せとっても良い人が居るとだけ話していた。
美貴たちは梨華がその人のことを好きだと分かったから、
何度も会わせろと言っていた。幼馴染だとも知らずに・・・・・


「そうなんですか・・・・あいつウルサイですよね?すいません」

「全然。とってもいい子ですよ。いっつもお世話になってるし」


ひとみは美貴が羨ましいと思った。毎日のように会えるのだから。
きっとご飯とかもよく食べに行くのだろう。
もしかしたらお泊りとかもしているかもしれない。膨らむ妄想。


「美貴ちゃんから色々聞いてたんですよ、吉澤さんのこと。
 大変な幼馴染が居るって。すっごく心配してました」



786 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:02



『そっかぁ。あいつも考えてくれてたんだ。根は優しいからね』


「色々聞いていたから、
 なんか力になりたくて出しゃばったこと言ったんですけど。
 よい結果に繋がって良かったです」


そう言って梨華は微笑む。ひとみも照れながら笑う。
2人の距離も縮まっていた。


「じゃあ今度美貴たちとご飯でも食べに行きますか?」

「いいですね。きっと美貴ちゃんビックリしますよ」


また会う約束をして、お互い家路に着いた。



787 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:02










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788 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:03



「まことぉ。今日どこ行く?」

「どこでもいい」


希美とまことは放課後、どこに行こうか考えていた。
部活が無い日はよく遊びに行く。2人の方が気が楽なのだ。
特に行きたいところもなかったため、いつものコースとなる。


「このまことの顔最高!」

「のんつぁんだって凄い顔してるよぉ!」


いつも通りプリクラを取り、ファーストフード店に入る。
特に食べたいわけではないが、話をするにはここが1番良かった。
まことは最近希美に本当の笑顔が戻ったと感じていた。



789 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:04



「最近楽しそうだよね、色々と」

「そうかなぁ?」

「そうだよ。前は家に帰るのが1番憂鬱みたいな顔してたのに、
 今は喜んで帰るじゃん」


希美はニコっと笑い、「だって楽しいも〜ん」と呟いた。
いつもの希美に戻ったことがとても嬉しかった。


「ねぇ、ケーキバイキング行かない?甘いもの食べたくなった」


今日の夜ご飯はケーキか・・・・・と思うまことだった。



790 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:04










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791 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:05



「美貴ちゃんおはよう」

「おはよう」


ひとみと食事をした次の日、梨華はさっそく昨日のことを話した。


「それでね、美貴ちゃん達と一緒に食事しようかと思って。
 会いたいって言ってたでしょ?」

「本当に?行く行く。もち焼肉だよね?」


どこまでも肉が好きな美貴に合わせて焼肉することにした。
ひとみも美貴の肉好きを知っているからもちろんOK。



792 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:06



「やっと会えるのかぁ。どんな人か美貴が見定めてあげる」

「フフ。きっと大丈夫だと思うけどなぁ」

「梨華ちゃん凄い自信だねぇ。美貴。これは強敵かもよ」

「大丈夫。相応しくなかったら潰すから」


そんな美貴の一言に、冗談だと思っていてもゾッとする2人。
言葉が悪いから怖くなってしまう。梨華はそう思った。


「でもそんなに仲良くなっていたとは思わなかった。意外とやるじゃん」

「お友達だもん。普通でしょ?」

「「お友達ねぇ」」



793 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:06










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794 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:07



4人で食事をする日。ひとみはワクワクしていた。
美貴がどんな反応をするのか。想像すると楽しみでしょうがない。
さらに梨華と会えることも楽しみなのだ。
あの日以来会っては居ないが、メールは毎日していた。
どちらからともなく、お互いのタイミングで続けている。


「いい感じだよなぁ」

「何がぁ?」

「おわ!勝手に入ってこないでよ」

「いやいや、開いてたし」



795 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:08



希美は妙に機嫌の良いひとみに気味悪さを感じている。
もともと変だと思っていたけれど、今日は特に変だと。


「じゃあ行って来るから。戸締りきちんとね」

「うん。まこと泊まりに来るし大丈夫だよ」

「まこと?泊まりに来る?」

「うん。言ってなかったっけ?明日休みだから」


ひとみは面白くない顔をする。でもダメだとも言えない。
自分だって遊びに行くんだし、希美の友達なんだし。
ただ希美が自分よりもまことの方が好きだということに
嫉妬しているのだ。



796 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:08



「とりあえず行ってくるけど、早めに帰ってくるから」

「別にゆっくりしてくればいいじゃん」

「いや、帰る。早く寝るんだぞ」

「はいはい」


ひとみはモヤモヤした気持ちのまま家を出る。
だがそれも、梨華に会うことでなくなっていく。
待ち合わせ場所に着くと、美貴がこっちをジッと見ていた。


「なんで居るの?」

「なんでって。一緒に焼肉食べるんでしょ?」

「は?どういうこと?」



797 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:09



美貴は少しイライラしている。騙されていたとでも思っているようだ。
騙されていたのではなく、黙っていただけなのだが。

「この人が話していた人。吉澤さん。美貴ちゃんの幼馴染?」

「そうですけど・・・・・ワクワクして損した。騙された?」

「騙したわけじゃないよ。本当にただの偶然だもん」


美貴は大きくため息をつき、「早く肉行こ」と先頭を歩き始めた。
その横をあゆみが「幼馴染?イケメンじゃん」とか言いながら歩く。
その後ろをひとみと梨華がついて行く。


「怒らせちゃったかな?」

「大丈夫っしょ。いっつもあんな顔してる」



798 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:09



店に着くと美貴がすぐに肉を注文し、
飲み物が来たところで尋問が始まった。


「で?いつから?」

「何が?」

「いつから付き合ってるのかって聞いてるの」


どうにも美貴は勘違いしているらしい。2人が付き合っていると。
一言もそんなことは言っていないが、
梨華の話とひとみを知っている美貴なら、
そう思ってもしょうがないかもしれない。


「付き合ってないよ。なぁに言ってんだよ」



799 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:10



「嘘でしょ?まだ付き合ってないの?」

「そんなに驚くことないじゃない。この前もお友達って言ったでしょ?」


美貴はまだ疑いの目で見ている。
梨華はいつも嬉しそうにひとみの話をしていた。
ひとみは手が早いと昔から有名だったし、
こんなカワイイ梨華ちゃんなら完璧手を出していると思っていた。


「意外だなぁ。よっちゃんがまだとか」

「美貴ちゃん?なにかな?」

「そのうちバレるんだからさ、真面目振るの止めたら?」



800 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:11



ひとみは何も言えずにチラっと梨華のほうを見た。
何?という感じで首を傾げている。「かわいい」とひとみは思う。
昔は昔。大事なのは今だと思うひとみ。

食事も済んでこのままカラオケにでも行こうかと話しているときに、
ひとみは希美のことを思い出した。


「ゴメン。カラオケはまた今度で。家帰らなきゃ」

「え〜?今日まこと来るって行ってたし、別に帰らなくてもいいじゃん」

「だから帰るんだよ!」

「いや、意味わかんないし」

「取りあえず、また今度。石川さん。またメールします」



801 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:11



ひとみはそう言い残して帰っていった。


「どしたの?」

「たぶん妹が心配でしょうがないんだよ。
 泊まりに来るのもただの友達なのにさ。完全に親バカ」


そんなことを聞いて梨華は自然と笑みがこぼれる。
あんなに悩んでいたことが良い方向に向かっていることが嬉しかった。
前よりも全然明るい顔をしていたから。


「んで?梨華ちゃんはどうなわけ?」

「くわしくはどっかお店に入って聞きましょうか?」



802 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:12



3人はファミレスに入って話し始めた。
話題はもちろんひとみと梨華のことである。


「本当に付き合ってないの?」

「付き合ってないよ」

「なんで?梨華ちゃん相当好きじゃん、よっちゃんのこと」

「・・・・・・・・・・」

「まさか自信が無いとか言わないよね?吉澤さん相当デレデレしてたし」

「本当にだらしなかった。幼馴染として恥ずかしいぐらい」


ひとみは食事中、久しぶりに会ったということもあり、
梨華のことばかり気にかけ、美貴もあゆみも呆れてるぐらいだった。



803 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:12



「まぁそんな急ぐことでもないけどさ」

「そうだね。きちんと報告してくれればいいやぁ」


大丈夫だという2人に対して、
本当に大丈夫なのだろうかと不安でもある。
急激に仲良くはなったが、ひとみが自分と同じ気持ちを抱いているか、
直接誰も聞いていないのだから心配だった。
お互い忙しくて会えることも少なく、メールをしているだけ。


「そうなれればいいけど・・・・・」


ひとみの気持ちがはっきり分からないため、
モヤモヤした気持ちを抱えていた。



804 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:13










*********************************










805 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:15



「よっちゃん」


仕事を終え家に着くと、隣の家から美貴が出てきた。
ジャージを履いているからコンビニでも行くのだろうとひとみは思った。


「ののちゃんとかどうだった?」

「ん?普通だった」

「だから言ったでしょ?もったいないことしたよね。
 そんなにしょっちゅう会えるわけじゃないのに早く帰るとか」


ひとみは昨日のことを少し反省していた。
いくら妹が心配だからと、いつでも会えるわけじゃないのに帰ったこと。
相手にも失礼ではないかと思っていた。



806 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:15



「石川さん何か言ってた?」

「あぁ。幻滅したとか言ってたかな」

「うぇ?帰ったから?」

「嘘だよ。別に何も言ってなかったけど・・・・・
 よっちゃんがヘタレじゃなきゃなぁって美貴は思った」


ひとみには美貴の言っている意味が分からなかった。
美貴はひとみがもう一歩踏み出せば2人は結ばれるけど、
ひとみの性格からいってなかなか難しいということを言いたかったのだ。
ヘタレな性格なのは自分でも分かっているつもりのひとみ。


「そりゃヘタレだけどさ。よく意味が分からないよ」

「簡単に言えば・・・・・梨華ちゃんにもぶつかれってこと」



807 名前:支え 投稿日:2006/10/07(土) 00:15



そう言われて何となく分かった気がした。
簡単そうだけれども、ひとみにとっては難しい問題だった。
今まで何人もの人付き合ってきたが、
自らの気持ちを伝えたことは無かった。
だけど今回は、自分から気持ちを伝えなければならない。
自分を変える壁が立ちはだかっていた。





                        to be continues



808 名前:愛虎 投稿日:2006/10/07(土) 22:31
更新お疲れ様です。
よっちゃんの告白楽しみにしてます。
809 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/15(金) 20:29
上手くいくといいなぁ
続き楽しみにしています♪
810 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/17(水) 11:05
楽しみに待っていますよ♪
頑張って。^^
811 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/01(木) 01:23
待ってます。
812 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/06(金) 01:08
続き楽しみにしています
813 名前:メモ 投稿日:2007/09/30(日) 22:49


大変お待たせいたしましたが最後です。
今までありがとうございました。

814 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:50



ひとみは心を決めていた。今日告白しようと。
今までたくさんの女性と付き合ってきたけど、
こんなに胸が締め付けられ、愛おしいと思った人はいなかった。


「よっしゃぁぁぁぁ!!」

「なぁに大きな声出してるのさぁ!」

「あぁ、ごめん」


ひとみは最近希美に弱くなっていた。
だんだんとヘタレな部分が目立つようになり、
希美も言いたいことを言うようになってきたのだ。



815 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:51



「なんか良いことでもあったの?」

「ん?いんや、これから良いことを起こそうとしてんの」

「大丈夫かなぁ」

希美は心配する。ひとみはしっかりしているようでたまにヘマをするからだ。
でもひとみはどこか自信に満ち溢れた顔をしていた。
あれからずっとメールや電話、たまに会ったりもして、
鈍感なひとみもよい感じだと感じていた。
あとは勇気を出して告白するのみ。

「よし!じゃあ頑張ってくるから」

「うん、そこそこに頑張ってきてね」



816 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:51










***********************************











817 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:51



「ゴメン、待ったかな」

「ううん、全然待ってないよ」

「へへ、良かった。じゃあ行こうか」

「うん」


ひとみと梨華は並んで歩く。
ひとみは告白しようとしているからガチガチだ。
梨華はいつも通り変わらず笑顔で話し続ける。
2人の話題は色々と尽きないが、やはり希美のことと美貴の話が多くなる。


「美貴ちゃんってそんな子なの?」

「そうだよ。石川さんの前では猫被ってるんだよ」



818 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:52



実はひとみは、梨華が美貴の話をすることが面白くなかった。
自分を一番に考えて欲しいひとみは、美貴を悪いほうへ持っていこうとする。


「そっかぁ。でもそれはきっと吉澤さんに心許してるからだよね」

「えぇ?そうかなぁ」

「絶対そうだよ。気を許した幼馴染だからそうやって言えるんだよ」


少し考えつつもひとみは何だか嬉しく思った。
幼馴染ってこっちも頼りに出来るし、落ち着く人でもある。
梨華の言うことに妙に納得してしまった。



819 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:52



「でもね、吉澤さんといると落ち着くからその気持ち少し分かるんだぁ」

「えぇ?」

「心を許しちゃう気持ち。自分を全部出せる気がするの」


ひとみは思わずニヤける。
「そう?」と言いつつも内心凄く嬉しい。
ちょっと期待しちゃう。


「吉澤さんも美貴ちゃんには素直になれるでしょ?」

「あぁいつもの自分を出してるかもしれないね」

「じゃあさ、私には?」



820 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:53



「え?」と固まってしまうひとみ。

『これは・・・・どうしたらいいんだ?
 え、告白する場面?え?なになに?』


「なぁんてね、気にしないで」


気にしないでと言われても気にしてしまう。
「行こう」と手を引かれるがままに歩き出すひとみ。
なんかチャンスを逃したような気がしている。


「今日行くパスタ屋さん、凄く美味しいんだよ。
 柴ちゃんとよく行くんだぁ」



821 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:53



ひとみは梨華との会話も右から左へ抜けてしまうほど考えていた。

『今絶対チャンスだったよね。はぁ、情けない』

告白はタイミングが大切だと思っているひとみは、
このチャンスを逃したことを後悔していた。


「吉澤さん?聞いてる?着いたよ?」


手を引かれたままいつの間にか梨華のお勧めの店に着いていた。
ただ呆然として「ゴメン」と謝るひとみに首を傾げる梨華。


「どうかした?」

「ん?いや、なんも。ご飯食べよ」



822 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:53



梨華は嬉しそうに店の中に入っていった。
そしてひとみは本当に気持ちを固めていた。
自分と妹を救ってくれた、勇気を持たせてくれた。
梨華に感謝し、自分の気持ちをしっかり伝えようと考えた。


「石川さん」

「ん?」


食事が済み、イルミネーションがキレイな道を2人で歩く。
最初は会話があったけど、だんだんと無くなってきた。
ひとみはここだと思い、思い切って話しかけた。



823 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:54



「あたしさ、本当に石川さんには感謝してる」

「え?・・・どうしたの急に」

「いや、ちゃんとお礼を言おうと思って」

「・・・・・」


2人の仲に沈黙が流れる。梨華も少し違った雰囲気のひとみに緊張した面持ちだ。
ひとみも緊張して次の言葉が出てこない。
そこには2人しかいなくて、本当に静かな空間だった。


「石川さん。あたしはあなたが好きです」



824 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:54



まだ2人の沈黙は続いていた。ひとみの告白に対して梨華の反応はなかった。
ひとみは少しうな垂れた気分になる。失敗したと思った。


「吉澤さん」


梨華がゆっくりと口を開く。それは本当に落ち着いていた。


「私・・・・でいいの?」

「え?」

「だって吉澤さん・・・・今まで何人もの人と付き合ってきたんでしょ?」

「え?うぇ?な、なんで」



825 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:55



「美貴ちゃんにそう聞いた」


ひとみは美貴を恨んだ。相当遊び人だった過去を梨華に話している。
絶望的だった。梨華はそういう人を嫌うだろうと考えたのだ。


「いや、それはまぁ、そうだけど。でも今は違う!今は・・・・石川さんだけ」


梨華は下唇を噛みながら考えている。そして上目遣いでひとみの顔を見た。
なんだかその上目遣いが可愛くて思わずニヤけてしまいそうになる。
でもそんな場面じゃないと顔を引き締める。


「本当に。石川さんだけが好きだから。もう誰になびいたりもしない。
 こんなに胸が苦しくなるのは初めてなんだよ」



826 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:55



「・・・・・信じるよ?私幸せになれる?」


梨華は泣きそうな顔をしてひとみの言葉を待っていた。

ひとみは梨華を抱き寄せ、思いっきり抱きしめた。
それから耳元で囁く。


「幸せになれる。絶対幸せにするから。信じて」

「・・・・・うん」


梨華は涙を流しながらずっと頷いてた。
ひとみも梨華のそんな姿が愛おしくてさらにギュッと抱きしめた・・・・・



827 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:55










**********************************










828 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:56



「「やっとかよぉ」」


声を揃えたのは美貴とあゆみだった。
はっきりしないひとみと梨華の態度にイライラしていた。


「すいません」

「でも良かったよ。やっと幸せになれてたさ」

「もう面倒くさいことなしね」

「なんだよ、それぇ」

「仲良くしてねって意味です」

「はい」



829 名前:支え 投稿日:2007/09/30(日) 22:56





色々な苦労がこれからもあるかもしれない。
でも2人なら乗り越えていける気がする。
ひとみと梨華はそう思っていた。そうしようとしていた。



たくさんの苦労を一緒に乗り越えながら、2人は幸せになる。






                                      END



830 名前:メモ 投稿日:2007/09/30(日) 22:57







831 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/01(月) 06:31
うわー!良かったァー!
ひとみの告白もだけど作者さんのお帰りも嬉しいです!
832 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/01(月) 06:36
今まで本当にお疲れさまでした。
これで最後なんて言わずにまたのお帰りをお待ちしております。

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