初めてのくちづけ

1 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 22:35
高橋愛さんをメインに書いてみました。
頑張って更新していきますので宜しくお願いします。
少し前のモー娘。メンバーで書いてあります。
それでは宜しくお願いします。


2 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 22:38
初めてのくちづけでした。

私の中で何かが変わりました。こんなに人を愛せるなんて。

…戻ってきて下さい。

……切ないこの気持ち分って下さい。


【彼の本性】

 風が気持ちよかった。
久しぶりの休日、誠はバイクを飛ばしていた。
事務所からはバイク運転は禁止されていたが、これだけは譲れなかった。
関係者に気を使い、ファンには嫌でも笑顔を作ってつくづく嫌になる。
それでバイク禁止じゃ、ストレスで気が変になってしまうだろ。
風を感じながら人目を気にしないでバイクを走らせると
それだけで気持ちが晴れるし、明日から頑張ろう!って気にもなるもんだ。

10月にもなると単車を転がしていても
暑くもなく寒くもなくまさにバイク日和だ!と誠は思った。
ちょうど大きな交差点の所に事務所の先輩グループのコマーシャルの看板が見えた。
チラッと見上げて加速した。
しばらく風を感じながら走り、電車の踏切を越えた時に携帯がブルッた。
このブルり方は彼女からだ。
「チッ!」っと舌打ちして誠は単車を脇に止めて携帯を取り出し、
フルフェイスのヘルメットの前面カバーを跳ね上げ通話ボタンを押した。
3 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 22:43
「もしもし?…どうしたの?」と言いながら側道に腰掛けた。
「エ〜〜?ひどいなそれ!…今?今ね〜、
今日オフだから走らせてるんだ!エッ?大丈夫だよ!安全運転!」
「今度?いいよ!でも、事務所的に大丈夫なの?俺は大歓迎だけど…」
「OK!確かにこっそりってのはスリルあるからね!」
「いいよ!じゃあ、仕事、頑張って!あっ、それと……好きだよ!じゃあね。」

ふぅ〜。誠は深いため息をついて携帯を胸ポケットに入れた。
せっかく気分良かったのに最悪な気分になってしまった。
誠はこういう少女じみた事は好きではなかった。
でも、狙った獲物を狩るにはまめが一番って思ってるし
今までもこのまめさでかなり良い思いをしてきたからな。
気持ちを収める為にポケットからタバコを取り出して火をつけてフゥ〜〜と吐いた。
18才の誠だがタバコは13の時から吸っている。

始めは事務所の先輩達からいわばいじめの形で吸わされた。
この事務所では先輩達が新人をいじめるのが昔からの習わしらしく
事務所側も見て見ぬフリをしていた。
それ位のストレス発散は多めに見よう!という感じだったらしい。

最初おもいっきりタバコの煙を吸わされた時、
目の前が真っ暗になって貧血で倒れてしまった。
気がついたとき先輩達は誰もいなくなっていて
同期の奴らだけが心配そうな顔をして俺の顔を覗き込んでた。
それが今ではタバコがなければ手が震える位までなってしまうとは
人間って変われば変わるもんだとつくづく思う。
4 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 22:44
ビールを飲みたいけど流石にもしかして検問かなんかがあったら
事務所に迷惑がかかるし、何より単車に乗れなくなるのは一番避けたい事だ。
仕方ないのでコーヒーでも飲もうと歩道の方を見ると公園の脇に自販機が見えた。
よいしょ!っとガードレールを飛び越えた瞬間、
斜め後ろに人の気配を感じて振り返えると同時に人とぶつかった。
はずみで尻餅をつきそうになったが
ダンスで鍛えた足腰で何とか踏ん張る事が出来た。
ただ、くわえたタバコは口から飛んで歩道に落ちた。

ぶつかった男はランニング途中の気の弱そうなおやじで、
そのリュックを背負ったランニングウェア姿のおやじはびっくりして
こちらを見ていたが、俺が大丈夫そうだと分ると
「すみません。」と簡単に頭を下げて走り去ろうとしていた。
「ゴラ〜!待てボケ!!てめえからぶつかっといてそれだけか?ざけんなよ!」
{こっちは大事な身体なんじゃ!こんなとこで怪我したら
それこそ事務所に何を言われるかわかったもんじゃない。}
大声をあげて詰め寄るとオヤジは驚いて「すみません、すみません。」
何度も頭を下げて謝った。
チッ!なんておびえた様に謝るんだ!と思うと余計腹が立ってきて
胸ぐらを掴んで「今度会ったら殺すぞ!」と脅してやった。
オヤジはもう一度「すみません。」と謝って
逃げるように公園の方に走っていった。
5 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 22:45
{最悪だ!}
あの女からの電話がなければこんなくだらない事にならずに済んだのに…
絶対近いうちのこの償いは彼女にしてもらう。
と、心に決めて自販機に向かって歩き出すと
向うから女子高生が2人こちらに向かって歩いてくるのが見えた。
{ちょうどいいや!からかってやるか。}
誠は彼女達がここまで歩いて来るのを待って声を掛けた。
「ねぇ?ちょっとぉ〜!お願いがあるんだけど?」

女子高生はヘルメットを被ったままの誠をチラッと見ると
何も無かった様にゲラゲラ笑いながら通り過ぎようとした。
すかさず
「あのさぁ〜、缶コーヒーおごってくれない?」

「ハァ?バ〜カ!何でてめえにおごらなきゃいけねーんだよ?」
「うざってーんだよ!自分で買えよ!バ〜カ!!」

「俺におごると良い事あるよ!確実に。」

「氏ね!お前に会った事が最悪だよ!何者だよ?ボケっ!」
「ギャハハ〜!良い事あるって!うける。ギャハハハ〜!きもっ。」
そう言って彼女達は笑いながら行ってしまった。

馬鹿なクソ女だ。何者?てめえらバカ女がキャーキャー騒いでる
スーパーアイドルグループの誠だよ!
何も知らねぇで勝手な事言いやがって…
そう思いながら自販機の缶コーヒのボタンを押した。

お前らと次元の違う俺がお前らに声を掛けてやったんだぞ!
俺が誠と知ったら泣いて抱きついて来るくせによ。
そう思いながらプルトップを開けて一気にコーヒーを飲んだ。
6 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 22:47
{そうだ!}
誠は思い出したかのように小走りで単車に向かうと
おもむろにエンジンを掛けてグァ〜ンと加速した。

「ねぇ?」と声を掛けた。チラッと見た瞬間に缶コーヒを投げつけてやった。
勿論、中身は入っている。
気持ちが悪くなる程、嫌な化粧をした2人のうちの背の高い方に缶は当たって
中身のコーヒーが制服にかかってシミが出来たのが見えた。
何かわめいているのが聞こえたが無視して中指を立ててから加速した。

誠は笑いが止まらなかった。ヘルメットの中で何度も大声を出して笑った。
危なく信号を無視しそうになって急ブレーキをかけて止まった。
そこはあの先輩達の大きな看板の信号だった。誠はその看板を見上げ
ヘルメットの前面カバーを上げると、その看板に向かってペッ!と唾を吐いた。

信号が青に変わる。後ろの車を見る見る引き離した。
7 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:18
【初めての出会い】

 愛はかなり緊張していた。
このグループに加入して初めての生の歌番組だからではない。
ううん、それもある。でも、もっと心臓が高鳴る事があるのだ。
リハーサル入りで進行表を渡された時、彼のグループの名前を見つけたからだった。
誠…。私がこの世界に入る前から大好きだった人。
憧れだった。
歌も踊りも上手くて格好よく、
それでいて自分達のレギュラー番組では馬鹿な事をやって笑わせてくれた。
コンサがあるとサイリウムとうちわを持って出かけ
そして、そのたびにグッズ売り場で誠のグッズを一杯買ってきた。
親には「同じものをいくつも買って、意味ないじゃん!」って叱られるけど
微妙な違いが親には分らないらしい。

現実に有り得ない事としても、もし芸能界に入れたら誠と同じ番組に出たい!
と思っていた。
でも、夢のような現実として本当に夢が叶ってしまった。
遊び感覚で出した今のグループの追加メンバーオーディションに
合格してしまったのだ。
8 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:20
最初は他愛のないことからだった。
ある日、友達とテレビを見ていた時、
偶然今のグループの5期メンの募集の案内を見た。
友達と笑いながら「暇だから二人で出してみよっか〜!」って軽い気持ちで
パソコンからHPにアクセスしただけなのに
まさかの合格をしてしまったのである。
今でも私が何故、合格したのか理解できない。
私くらいの歌唱力の友達なんかいっぱい居るし、とりわけ可愛い訳でもないし…

私達のカメラリハーサルの順番が来た。
誠たちはまだ来ていない。
9 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:21
今回、歌う曲はドラマの挿入歌だ。
この曲は加入後、何回も練習してるし、曲撮りもしてるし
それに最終オーディションの課題曲だったから歌も踊りも完璧にマスターしてる。
メンバー内のフォーメーションも頭に入っているので
初めての生番組の曲としてはラッキーかもしれないと思った。
先輩の矢口さんが新メンの私達に「頑張っていきましょい!」とガッツポーズした。
左手のリストバンドのビーズが照明にあたってキラキラ輝いた。

そういえば前に「どうしていつもリストバンド着けてるんですか?」って聞いた事があった。
矢口さんは「リストバンドが私の守り神らしいの!これを付けてると嫌な事が
起きないの。だからシックな服の時は大変なの!」と言っていた事を思い出した。
10 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:22
今は歌だけに集中しようと自分に言い聞かせて気持ちを切り替えた。
曲が流れる。この曲のイントロを聞くだけであの辛い最終オーディションを
思い出し不思議と気持ちが引き締まる。
でも、よくあんな地獄の様な合宿に耐えられたものだと自分でも感心する。
根性とか努力とか自分には似合わないものだと思っていたのに
あの合宿で同じ目標に向かって努力してる人を見ていたら負けたくない!
って気持ちが沸いてきて最後には絶対一番で合格してやる!
ってものすごく努力してた。
言われた事が出来ない時は、今まで経験した事が無いくらい悔しくて
{私って感情の起伏が激しかったんだ〜!}って自分で自分を再発見できた。
11 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:23
先輩メンバーとアイコンタクトをとりながら踊る。上手く出来ている。
先輩たちは私たち新メンに気を使いながら踊っているのが分る。
今の私はスタッフさん達にどう映ってるんだろう?馴染んでいるだろうか?と
思いながらチラッと入り口の方に目をやったその時、
一瞬時間が止まった様に感じた。

「誠だ!」
12 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:23
彼らがスタジオにカメリハの為、入ってきたのが目に映った。
「ドクン!」心臓が変な音を立てて動いたのが分った。脚がぎこちなく動く。
自分が何処にいるか分らなくなりそうになったその時、
先輩の矢口さんとぶつかってしまった。
小柄な矢口さんはぶつかったはずみで大きく尻もちをついてしまった。
私は何が起こったのか理解できるまで少し時間が掛かったみたいで
気がつくとオケは止まって、安倍さんと保田さんが
心配そうに矢口さんに声を掛けていた。
13 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:24
「すみません!ゴメンナサイ!」と矢口さんに慌てて頭を下げると
「いい、いい!大丈夫。」と気丈に言ってくれたけど
安倍さんの手を借りて立ち上がろうとしたが腰を押さえてしゃがみ込んでしまった。
「なんか捻ったみたい。ちょっと痛い。」

「大丈夫?」と他のメンバーやスタッフ、マネジャーも心配そうに近づいてきた。
私は自分のした事の重大さに怯えて、
ただがくがく膝を震わせて泣くしかできなかった。
「高橋!あんたも手を貸して。」とリーダーの飯田さんに言われて
足がもつれて転びそうになったけど、泣きながら矢口さんを起こすと肩を貸して
スタッフルームまで運んだ。
14 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:25
途中、誠たちが心配そうに近づいてきて「大丈夫?」と声を掛けてくれたけど
私は自分が責められてる様で、答える事も顔も上げることも出来なかった。
ましてやこんな情けない泣き顔なんて大好きな人に見られたくもなかったし…

「矢口さん、本当にすみませんでした。私…」

「大丈夫だって!少し横になってれば大丈夫だから。気にするな〜!」
「最初は誰でも緊張するし、こんなんツアーだとしょっちゅうだからさぁー。
次、気をつければ良い事なんだからさ!」と、
トレ−ドマークのリストバンドをつけた左手を振った。

矢口さんの優しさにまた涙が出てきて止まらなかった。
しゃくり上げる様に泣く私に、矢口さんの方がビックリしたのか
「おーい、なんかおいらが酷い事したみたいじゃん。高橋〜、泣くな〜!」
って反対に慰めてくれた。
15 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:26
本番までには時間があるからと事務所の人達やテレビ局の人達が話し合って、
矢口さんを病院に連れて行く事に決めたらしくて
その事を矢口さんに話してたら、今度は反対に矢口さんが「イヤだ〜〜!!」と
泣き出してしまった。
病院が大嫌いな矢口さんは「もう大丈夫、もう大丈夫。」と駄々っ子の様に
していたが、マネージャーさんに叱られて半泣きで連れて行かれてしまった。

私は心の中で何度も何度もごめんなさい!と言っていた。
16 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:29
意気消沈で部屋から出ると同期の紺ちゃん、真琴ちゃん、里沙ちゃんが
心配そうに私の所に来てくれて慰めてくれたのはすごく嬉しかった。
合宿の時はお互い敵対意識を持っていたが合格してしまった今、戦友の様な
なんか強い絆で結ばれた様な感じがする。自分だけかもしれないが…
矢口さんが帰ってくるまで気持ちは晴れないけど
どうか大丈夫です様に!と祈りながら4人で控え室に戻った。
17 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:31
控え室は少し重苦しい雰囲気だったけど、
先輩の加護さんが明るく振舞ってくれて笑いが少し戻った。
加護さんは私より年下なのに空気を読んで場を和ましてくれたのには
ものすごく感謝して、私もこうなりたいと思った。
暫くおちょけていた加護さんがさりげに私の側に来て、
耳元で「ガンバ!」って言ってくれた時には、また涙が出た。
「愛ちゃん、泣いちゃダメ。」って小声で言われ一生懸命笑い顔を作ったけど
引きつって変な顔になってたみたいで、加護さんに笑われた。
「こんな顔やんねんで!」と変顔をして私を見た時には
ほんとにおかしくて笑ってしまった。
「そいでええねん。」とピースサインをだして
先輩の辻さんと部屋から笑いながら出て行ってしまった。
ものすごく救われた気持ちになった。
18 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:32
加護さんとは仲良く出来そうだし、相談にも乗ってもらえそうだと愛は思った。

暫くするとリーダーの飯田さんが部屋に入ってきて私たち新メンを呼んだ。
「いい?ちょっとした不注意がこういう事になるの。今回は高橋だったけど、
次は貴女たちかもしれないの。勿論、私達かもしれない。
だから、ステージ上ではどんな時にも集中力を持って流れをよんでほしいの。
そうすればその気持ちメンバーは分るから。」
「はい。」とみんな同時に答えた。
「じゃあ、今から出演者さんと司会者のツモリさんの所に挨拶に行くから一緒に来て!
それと、高橋。さっきハラシのメンバーが声を掛けてくれた時
あんたシカトしてたでしょ!あっしがフォローしといたけど
今から行った時ちゃんと謝るのよ。
こう言う事はきちんとしとかないといけないしそれが礼儀だから。
じゃあ、行くよ!」と手招きをして歩き出した。
19 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:33
慌てて4人で後を付いて行きながら{どうしよう、どうしよう。}と思った。

こんな事が起きて動揺してたけど今から誠に会うんだ。
しかも私の起こした事件の一部始終を見られてて、さらに私はあの時、
誠達が声を掛けてくれた事を知りながらこんな時の情けない顔を見られたくない!
って下を向いたまま通り過ぎた。それをリーダーに見られてて
その事に対してお詫びをしなくちゃいけない。しかも誠にも…
なんて言えばいいの?なんて…
考えがまとまらないうちにハラシの控え室の前まで来てしまった。
リーダーがノックをすると中から聞きなれた声が聞こえた。

「は〜い、どうぞ〜!」

「失礼しま〜す、ウォーニング娘。です。」と言い
リーダーは私達4人を先に入れた。
「あの〜、今度、娘。に新しく加入したメンバーです。宜しく。」と背中を押した。
20 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:34
「小川真琴14歳です。宜しくお願いします。」

「新垣里沙13歳です。宜しくお願いします。」

「あの〜、紺野あさ美15歳です。宜しくお願いします。」

「た、高橋愛15歳です。よ、宜しくお願いします。」

私は緊張のあまりどもってしまった。
「あの〜、さ、さっきはご迷惑をかけてすみませんでした。
あの〜、こ、これから注意します。」
と頭を下げると

「大丈夫だったの?矢口さん。」と聞いてきた。

「大事をとって今、病院に行ってるんですけどもう戻ってくると思います。」
とリーダーが答えてくれた
21 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:35
私がものすごく険しい顔をしてたらしく(後から聞いた。)誠が
「そういえば…」と切り出した。
「そういえば、俺らもあったね!こういう事。前に歌番組の本番の収録中、
先輩の手を借りてバク宙するとこがあってガァーって飛んだら
勢いあまって先輩の鼻をおもいっきり蹴って鼻血ドバ〜!!
先輩も痛みを堪えて踊ろうとしたんだけど、くるっと回るたびに鼻血が飛び散って
結局、中断。鼻血は止まったんだけど先輩の鼻が腫れちゃってどうしよう?
って事になったんだけど、そこからVつないでOK!になったんだよね!
だから、後半は先輩の抜きはなくて、後でえれぇ〜叱られた!」
22 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:36
「おうおう、あったな〜!最初何だか分からなかって、何で赤い液体が
飛んでくるんだ〜?って思って横見たら、芳樹が鼻血飛ばしながら
クルックルッ回ってんじゃん。最初びっくりしたけど笑っちゃったな、あれは!
お前は何者だ〜?って感じでね。ガハハ〜〜!」

「お前〜〜!人事だと思ってひで〜事言うなぁ〜!俺はめちゃくちゃ我慢して
踊ったんだぞ!収録切っちゃあいけないと思って…鼻が取れたかと思った位
痛かったんだからよ。あの後、腫れが引くまでの1週間位鼻に絆創膏貼って
めちゃ格好悪かったんだからよぉ。」
23 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:37
「すんません、あの時かなりてんぱってて先輩に迷惑掛けない様に頑張ろう!
って気持ちが空回りしちゃって勢いつき過ぎちゃったんですよ。
ほんと、迷惑掛けちゃいました。
でも、今じゃあ結構笑い話だし、色んな番組でもその話で
結構おいしい思いしてんじゃん。ねぇ?先輩。」

「まあな、かなりカメ抜いてくれたしな!」

「だから、えっと何ちゃんだっけ?…そう、愛ちゃんもわざとじゃあないんだから
あまり気にしない方がいいよ。
俺、矢口の事、なにげに良く知ってるんだけど…
そういう事、根に持たない性格だから
却って気にするとその事で叱られるよ!きっと。」
24 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:37
「はい、分りました。有難うございました。」
誠は矢口さんの性格を把握してるような口ぶりで私を慰めてくれた。
彼のそういう気配りがものすごく嬉しかったし、益々好きになった。
ただ、矢口さんとはどういう関係なのか、すごく気になった。
矢口さんの事、矢口と呼び捨てしてたし…

「じゃあ、本番は宜しくお願いしま〜す。」とリーダーは頭を下げて
部屋を出て行きかけたので
私達も「宜しくお願いします!」頭を下げて後に続いた。
背後から誠が「愛ちゃん!」と呼ぶのでビクッっとして振り返ると
「頑張れ!」って声を出さずに親指を立てて私を励ましてくれた。
私も思いっきりの笑顔と深々と頭を下げて部屋を出た。
25 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:38
幸せだった。
こんな事があった後であれなんだけど最高に幸せな時が来た!と思っていた。
しかし、矢口さんが帰ってきてその浮ついた気持ちはいっぺんに緊張と変わった。

病院から戻って来た矢口さんは車椅子に乗せられていた。
どうやら転んだ時に変に捻ってぎっくり腰になってしまったらしく
当分は踊りはダメだと医者に言われたらしい。
それでも矢口さんは今日の本番も隠れて踊る!と言っていたらしいが
病院の先生に「もし今日踊ったら即、入院させる!」と脅されたらしく
泣く泣く諦めたらしいとマネージャーとリーダーが話しているのを聞いた。
メンバー全員が集まって心配そうに矢口さんを取り囲んで話を聞いているけど
私はなかなかその中に入っていけなかったし矢口さんもそうとうショックなのか
私と目を合わせようとしなかった。
26 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:39
本番のフォーメーション変更の話し合いがなされ、矢口さんは歌本番は
左端で椅子に腰掛けて歌う様に変更となった。

本番直前、誠が矢口さんの所に近づいて来た。

「おっ、ちびっこ。やっちゃったな〜!大丈夫かい?」

「人事だと思って…踊れないんだよ!」

「元気だけが取り柄のちびっこだからな!まあ、そういう事もあるさ。
なにせ人数多いグループだからな。俺らもある事知ってんだろ?宿命さ!
大人数のグループのネ!
彼女も反省してるみたいだし、お前も先輩なんだからそこんとこ考えろよ!」
27 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:40
「分ってるって!高橋の事は責めてないから。ただ自分に悔しくて、
こんな事でぎっくり腰になって、大好きな歌と踊りが当分出来ないなんて…
ほんと弱い身体が情けなくて。」

「人間の身体なんてそんなもんさ!自虐的に自分で痛めつけても
なかなか壊れないくせに、何かのはずみでいとも簡単に壊れちまう。
特に自分が前向きな時にね!多分、それは何かの警告だと思う。
走っても良いけど自分を見失うな!ってね。」

「……。」
「分ってやれよ!彼女の為によ。」と、誠はこちらにあごを突き出した。
矢口さんは暫くうつむいていたが顔を上げると私に向かってVサインをしてくれた。
28 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:41
「お〜!さすが元気印のちびっこ。」と
誠は椅子に座った矢口さんの頭をつんつん、と指で突付いた。
矢口さんもプゥ〜っとほっぺをふくらましてから笑った。

私は誠と矢口さんの優しさにまた涙が出たが、矢口さんが
「高橋!お前が泣いたってしょうがないだろ?
本番近いんだから化粧が落ちるとメイクさんに迷惑かかるぞ!」
と叱ったのに「ほらな!叱られただろ!」と誠がガッツポーズをとって
得意げになっているのを見て思わず「ほんとだ〜〜!」と驚いてしまった。

矢口さんは「何、何?」と誠に聞いているが、
近くにいた真琴ちゃん達もすごい当たった!って顔をしてこちらを見ていた。
29 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:42
みんなの気遣いもあって色々あった生番組も無事に終える事が出来た。
番組終了後、帰り仕度をしている誠の所に急いで行って、
「今日はほんとに有難うございました。」と、もう一度お礼を言った。

彼は「いいから、気にしないで。お互い様だから。」って笑ってくれた。
ずっと話していたかったけど、まだ仕事があるらしく
慌ただしく出て行ってしまったが、帰りしな誠が握手をしてくれた。
ものすごく暖かだった。やさしい手だった。身体が熱くなるのを感じた。
初めて大好きな人と触れる事が出来た。
この手の感触は一生忘れないでおこうと心に決めた。

 …あぁ、誠。…


          …………
30 名前:NAO 投稿日:2006/03/09(木) 23:44
本日はここまでにします。
続きは明日にでもうpします。
ありがとうございました。
31 名前:たま 投稿日:2006/03/10(金) 05:35
愛ちゃんメイン小説だ♪すごい続き楽しみです☆

あっあのマコは真琴やなくて麻琴です。生意気言ってゴメンなさいです
32 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 20:53
>>31
たまさん、どうもすみません。
これからも誤字脱字があると思うので
いつでも指摘して下さいね。
続き楽しみと言って下さってありがd
それでは本日分をカキコします。
33 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 20:56
         …………


 俺が、生番組のリハに着いた時にスタジオから
ウォーニングの音楽が聞こえてきた。
今日は娘。と一緒か!と思って、スタジオを覗いたら
見た事ない子達が踊っていた。新メンか?と見ていたら、
誰かと矢口がぶつかって真理が倒れてしまった。

あら?やっちゃったよ!「矢口、大丈夫か?」と声を掛けたけど
それどころじゃないらしく無視されてしまった。
楽屋で待ち時間をのんびりしてたら、ウォーニングのリーダーが
新メンの紹介だと入ってきた。
なるほど、新メンが加入したのか!確かこの子だったよな、ぶつかったのは…
と見たら、ストレートの黒髪に大きな瞳のかなり可愛い子だった。
その目で見つめられた時、不覚にもゾクッときてしまった。
そうとう泣いたらしくかなり目が真っ赤だった。
多分落ち込んでるんだろうな!と思い、俺らの失敗談を話してやった。
でも俺の場合、不可抗力じゃなくてわざとやったんだけどな!
34 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 20:57
性格的に以外に根に持つ俺は、いつかいじめの仕返しをしてやろうと
チャンスを待っていた。
ちょうど新曲の振りの中で俺が先輩の手を借りてバク宙をするところが
入っていた時、ここだ!と思った。
ある日の歌番組収録の前日、芳樹先輩が朝から機嫌が悪くて(女とモメたらしく。)
いつも以上に絡んで来た時があった。
芳樹は機嫌の良い時はまあ普通なんだけど、
機嫌が悪いと誰彼構わず当り散らして手に負えない。
しかもそれを自分で把握できてないのだ。いつもと変わらないと思ってやがる。
当然、グループ内では一番下なのにセンター張ってる俺にその矛先が向いて
まるでパシリの様に荒々しく人を使う。
その日も、まるで自分のイライラを発散するかの様に俺をこき使った。
コンビニまで食べ物を買いに行かされ、
戻ってくると「ごめん、買い忘れたものがある。」と
あたり前の様にもう一度買いに行かされた。

いい加減切れたけどちょうど明日、歌番組のとりがあるから
その時、仕返しをしてやろうと明日を実行日と決めた。
35 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 20:59
リハーサルでわざと失敗して本番には「びしっと行きます!」なんて
謝ったら「よし!ガ〜ンと来い。」なんてバカみたいに張り切ってたから
思いっきりガ〜ンと蹴ってやった。
思いのほか鼻血が多くて収録が中断してしまったのは参ったけど
それよりも芳樹のヌキが後半なくなってしまったのは嬉しい誤算だった。

計算的な仕返し話も、勿論みんなには失敗談としか聞こえなく
彼女も少しは落ち着いたみたいだった。
ここはもうひとつ彼女の気持ちをぐっと惹き付ける為に帰りしなに頑張れ!って
仕草だけで表現してみた。
落しの常套手段でクサイかな?と思ったが、純情だったのか以外にいけた。

番組終了後、もう一押ししとけば完璧だと思ったけど
次の仕事が押してたから時間がないな!と思ったら
彼女の方から来てくれたのは正直、助かった。
36 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:00
第二段階は触れ合いから!で彼女の手を触れる事で反応を見てみたが
これもかなり上手くいった。ビクっとしたのを見逃さなかったのだ。
驚いたのではない、間違いなく意識した反応だった。
俺はこの時、いける!と思った。

にしても、矢口の奴、あの時ほんとに愛って子に怒りゃあがったな。
まさかあんなに上手く思った通りなるとは思わなかったぜ。
俺には落しの神様が憑いてるなと思わずガッツポーズをしてしまったよ。
まさに視界良好!ってやつだな。
ガツかずじっくり時間を掛けて落していくか!
ガツいて上手く行った例がないからな。特に純情そうな彼女だから…


           …………
37 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:01
狭く汚い部屋の隅でナオはパソコンに向かっていた。
まんねん床に座り一人何か呟きながら‥
2ちゃんねるのスレッドのJPEGのアドレスをクリックして画像を見た時、ナオは突然ひらめいた。
「そうか!何で今まで気がつかなかったんだろう?そうだよ!そうだ。」
ナオは暗い部屋で小躍りした。その目は不気味に輝いていた。


          …………
38 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:02
【告白】

あの出来事があって以来、誠の存在は日増しに大きくなっていった。
しかし、あれから色々な歌番組に出演したが誠達と出会う事はなかった。
放送上では競演しているんだが別撮りばかりで、録画したビデオを観て
なんだ?一緒の番組じゃん!って何度も思った。

矢口さんの腰も日薬とはよく言ったもので、暫く踊りを控えて
治療に専念したおかげで、この頃ではもう前の元気な矢口さんに戻って、
病院の先生からも「もう踊っても大丈夫ですよ!」とお許しが出ている。
矢口さんと誠の関係は今も気にはなっているけど、そんな事聞けないし
聞いてしまってもし私が太刀打ちできない関係だったら立ち直れなくなりそうで
怖いので、その事は自分の中で触れない様にしてきた。

次に誠たちと一緒に仕事をしたのは、1ヵ月後の奇しくもあの出来事があった
生放送だった。
39 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:04
私達は前の仕事が押して入りの時間が大幅に遅れて、
慌ただしく入ってすぐに本番用の化粧を始めてしまったので
だれと競演するかなんて気にしてる余裕は全くなかった。
番組スタッフさんから進行表を渡されて初めてハラシがいる事に気がついた。
挨拶に行こうか?と思ったものの冷静な今、
彼のところに行く勇気など持ちあわせていなかった。
ところが矢口さんが偶然にも「高橋!今からハラシのとこ行くけど一緒に行く?
あんた色々誠に世話になったんでしょ、挨拶しときな!」って誘ってくれた。
それを聞いてた加護さんが「加護も行く。」と言い、
辻さんまでも「じゃあ、ののも行くのれす!」って事になり4人で出かけた。
辻さんはお菓子をお土産に持っていくと言って袋に入れていた。
40 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:05
扉に[ハラシ様]の張り紙が見えた。ドキドキして足が震えた。
辻さんと加護さんはツィンボイスの様に同時に「失礼しま〜す。」と
扉を叩くと、向うの返事も待たずに入って行ってしまった。
こんな勇気がほしいな!と思いながら後に続いた。
「今晩わ〜!辻で〜す、加護で〜す、矢口で〜す!」と矢口さんまでもが
辻、加護コンビに乗せられている。私は…私はそれどころじゃなかった。
久しぶりに誠に会える緊張感で喉がカラカラなのだ。

「おっ、ど〜も〜。」
「ひさぶり、加護ちゃん、辻ちゃん、矢口ちゃん。」
「お〜!ちびっこ軍団、元気だね〜!相変わらず。おっ!愛ちゃん、こんばんは!」
と誠が笑顔で迎えてくれた。さわやかな笑顔だった。
この前触れた右手の感触がよみがえり身体が火照るのを感じた。
41 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:07
「はい、これお菓子なのれす。みんなでたべるのれす。」と辻さんが
お菓子を渡さず自分で袋を開けて配っている。
相変わらずこの人は食べ物に執着心があるなと思った。そこが可愛い。
加護さんも「のの〜、加護にもちょうだいよ〜!」と袋に手を突っ込んで食べようとしている。
そんな二人を誠は楽しそうに笑って見ていた。

「もう、辻〜、加護〜!何バカな事してんの!おとなしくしてなさい、全く。
誠、この前の時はありがとね!何回もメェルくれて‥もう腰も大丈夫だって
先生にも太鼓判をおしてもらったし、今日もガンガン行くから見ててよ。」

「おう、良かったな!まあチビだけど人一倍元気なお前だから
心配はしてなかったけどよ。ただ、動けないイライラを彼女にぶつけてないか
心配だったからまめに連絡してたのよ!」と私の方を見て笑った。

「ひっど〜い、そんな事するわけないじゃん。
だいたい何で誠が高橋の事心配するわけ?あれ〜〜?あれ〜〜〜?」
お菓子に夢中になってたののとあいぼんも口を動かしながらこちらを見ている。
42 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:08
「バカだね〜!そんなん決まってんじゃん。俺はいつも可愛い子の味方よ!
な〜んてね!俺ね、愛ちゃんがお前と同じくらい傷ついてると思っているのよ。
お前の性格は良く知ってる。だから、お前が踊れない辛さは痛い程分る。
でもさ、愛ちゃんだってお前をあんなふうにしてしまった自責の念は
ものすごいものだったんだろうと思った訳よ。
だって先輩を傷つけてしまったんだぜ!しかも暫く踊れないって位。
ウォーニングって踊りと歌があってのウォーニングじゃん。
それを奪ってしまった責任の重さは新しく入ってきたメンバーには重いよ!
でも、その重圧をはね返すだけの体力はまだ持ち合わせてないし、
その辛さを話せる人間は同じメンバー内にはいないからね。
43 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:09
だって、そうだろ?いくら年齢が近い彼女達にしたって、同期のメンバーに
したって同じメンバーである以上メンバー同士の相談になんか答えられないしね。
だから、その事が気になってまめにメェルしたって訳さ!
だってあの時少なからず関わってしまったからね。彼女にね。」
そう言って誠はまた私を今度は真顔で見た。その強い目に惹き込まれそうになった。
「そっか〜!誠ってそういうとこ繊細だよね。
大丈夫、私は彼女の事、責める気持ちなんてこれっぽちも持ってないし
これからもないから安心して。ねっ、高橋、良かったな!味方が一人出来て。」
と矢口さんは私を見てヒュ〜、ヒュ〜と囃し立てた。

辻さんと加護さんもお菓子を食べながら一緒になってヒュ〜、ヒュ〜と言ったので
口の中のお菓子が他のメンバーにかかって「汚ね〜〜〜!」と笑われた。
44 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:10
「まあ、そういうこった。愛ちゃんもなんかあったら遠慮なく俺に言ってくれ。
微力ながらお役に立てるかもしれないから。」と言ってくれた。

嬉しくて嬉しくて涙が出そうになったのを我慢をして
「有難うございます、宜しくお願いします。」と言ったので声が裏返ってみんなに笑われた。

「そろそろ本番が近いんで‥」とADさんが知らせに来たので
「じゃあ、本番宜しく!」と矢口さんが言って
まだお菓子を食べてる辻、加護の頭を叩いて出ようとした時、誠が私を呼んだ。

「あのさ〜、またなんか、そう、矢口にいじめられたら迷わず俺に連絡してくれ!
これ、俺の携帯のアドレスだから‥まあ、迷惑だったら捨てても構わないから。」
と言って彼の携帯のメアドを書いた紙をメモにしてくれた。

夢のようだった。あんなに憧れてたアイドルの誠がメアドを渡してくれたのだ。
しかも私に‥ほんの少し前には憧れの眼差しでコンサートを観に行っていた私に‥
放心状態の私に矢口さんは「あらららら〜!」と指を差し
辻さんに至っては「ののにもちょうらい!」と誠に手を出していた。
やさしい誠は辻さんと加護さんにもメアドを書いたメモを渡していた。

程なく本番は始まった。
45 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:11
私達の歌も最高の出来で終わり、あとは他のアーティストの歌を席に座って
聞いて、たまに司会のツモリさんの振りに答えるだけだった。
私はハラシの歌を夢の中で聴いているようだった。あそこで歌っている
私の大好きなトップアイドルのハラシの誠の携帯のメアドを貰った。
今、テレビの前でうっとりと聴いてるほんの少し前の私の様な熱烈ファンが
知ったらマジで殺されそうな事実を私は持っているのだ。
貴方達には到底叶わない事実を‥
46 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:13
浮かれ気分でいる私をもっと幸せにしてくれる事実が彼らの歌終わりにあった。
なんと、私の席の右隣に誠が座ったのだ。
ほんの数センチ隣に誠がいる。彼の体温を右側で感じる事が出来る。
彼の息使いを耳元で感じる事が出来る。歌終わりの荒い息使いがとても苦しそうで
そっと抱きしめてあげたい気持ちになった。
彼はとても甘いにおいがした。どんな香水を使っているのだろう?と思った。
でも、それにもまして彼がこんなに近くにいる事にとてもドキドキして
まともに前を見る事が出来なかった。ずっと下を向いてた。
彼の細く筋肉質の足が汗でキラキラ光っていた。

ツモリさんがハラシに話を振った時、誠が置いたマイクを取ろうとして私の右腿を偶然触った。
身体に電気が走った様な感じがした。奥のほうがジュンとして力が抜けた。
もし、立っていたらきっと座り込んでしまっただろう。
それから最後まで心臓が倍の大きさに感じ、熱があるみたいに身体が熱かった。
47 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:14
お仕事を終え自宅に戻って、愛は自室で髪の毛を乾かしていた。
湯当たりをしたみたいに身体が今も熱かった。
お風呂の湯船に浸かりながら愛は誠が触れた右腿を何度も触ってみた。
こんな変な気持ちは初めてだった。
愛はこの歳になるまで男性と付き合った事がないのだ。
勿論、かっこいいな〜!って思う人はクラスにもいたけど
小6からもう誠の追っかけをしてたから、近くにいる男子なんて問題外!だった。
告られた事も何度かあったけど誠を越える男子なんて皆無だった。
だから男子の間で「あいつはお高くとまってる!」って噂が立ち
中1の時ハブられた時があった。
でも私は誠一途を決めてたし、同じハラシのファンも学校に沢山いたから全然気にならなかった。
48 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:15
鏡台の前に今日、誠がくれたメモがある。
髪を乾かしながらそれをじっと見ていた。メェルして良いものなんだろうか?
と愛はその事をずっと考えていた。
ほんとは今すぐにでもメェルしたい。でも、それが出来ないのだ。
メアドは携帯にメモリした。メェルももう打ち込んだ。
後は送信ボタンを押すだけで彼の元にメェルが行くだけになっているのにそれが出来ないのだ。

辻さんは本番が終わって楽屋に戻ったらすぐに
「そうら、誠しゃんにメェルするのれす。」と言ってその場で真剣にメェルしてた。
加護さんも「何時しようかな〜〜?」って辻さんの携帯を覗き込んでいた。
私もそういう風に軽い気持ちでメェル出来ればいいのに、どうも構えてしまう。
私の中で誠への思いが強いだけに文章が重くなってしまうのだ。
だから、
{今日はお疲れ様でした&有難うございました!
メアド頂いたのでメェルしますね。これからも色々教えて下さいネ。
アッ!それと時々メェルしてもいいですか?
    LOVE(愛)}
と簡単なものにしてみた。

          ……………


でも…
49 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:17
          ……………


 あれから彼女には、なかなか会えなかった。
矢口の怪我にかこつけてメェルしてそれとなく探りをいれてみたけど
あからさまに書くと矢口に勘ぐられるので的を得た答えは返ってこなかった。
しかし、偶然とは不思議なもので、またツモリさんの番組で彼女達と一緒になった。
今回は早めに入る事が出来たので、彼女とまったり出来るかな?と思ったが
彼女達の入りが遅れててクソ!っと思った。
楽屋で本番待ちをしてたら矢口が愛を連れて来てくれたのは感謝した。
俺は女の事になると自分でもビックリする位、頭が回る。
だから下心でまめにメェルしてた事を隠す為におもいっきり屁理屈をこねてやった。
みんなまんまと騙されてやがんの!

帰りがけに愛にメアドを渡した。
これで彼女からメェルがくれば彼女のメアドも分って、これからの戦略に欠かせない
アイテムが手に入る事になる。
辻と加護にもメアドをせがまれたが、無下に断わる事は出来ないので渡した。
50 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:18
彼女達は年齢的に愛と変わらないのだが、どうもやんちゃ盛りの子供の様で
女として見る事が出来ない。
ただ、加護の胸にはそそられるものがあった。
もう少し大人になったら考えてもいいかな?と思うものを持ってる。

今日はこの番組で仕事終わりだったので、皆で風俗に行こうと決めていた。
所謂、芸能人ご用達風俗店である。
電話さえ入れておけば芸能人専用入り口から入店でき、一般客とぶつかる事はない。
まあ、一見さんはお断り!の店だから一般客と顔を会わせる事は無いのだが、
色々な人が出入りしてるので(政治家とか、大手企業の偉いさんとか‥)
芸能人はスキャンダルが命取りになるので、芸能人だけ専用出入り口がある。
まあ、ある種芸能界は独自でかつ閉鎖的な社会を形成してるわけだ。
だから、未成年でも堂々と入店できる。勿論、事務所やマネージャーも公認だ。
51 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:19
車に乗り込んで風俗店に向かう途中、携帯のメェル着信音がした。
よし、愛から来たな!?と思って開けたけど
なんか訳の分らない文章と絵文字で一杯だった。
辻か加護かどちらかだと思うのだが、名前がなかったので分らなかった。

風俗店の中で偶然、大物お笑いタレントと会った。

「自分ら、未成年とちゃうん?ええんかいな?こんなとこ来て?」と言われたが、

「浜畑さんも奥さんいらっしやるのにいいんですか?」と返したら、

「がはは!お互い様やな!ほな、がんばりや〜!」と笑って個室に消えて行った。
大成する人はいくつになっても元気だな〜!とつくづく感心した。
52 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:20
自宅で風呂上りビールを飲みながら誠はすっきりとした気分で、
「ふぅ〜、しかしビールは旨いな!」と
仕事終わりの居酒屋に居るおっさんみたく息を吐いた。
今日の風俗嬢は意外に良かったな!なにげに愛に似てたし!と、思い出して
自分なりに採点していた。

誠は年下はあまり好きではない。どちらかと言えば年上の女が好きである。
年上の方が面倒臭くないし、成熟した身体に性欲を感じるのだ。
今まで付き合ってきた女性は殆ど年上で、
子供体型の身体にはなんの欲求も沸かない。
しかしこの前、愛に初めて会った時、男好きする顔立ちにゾクっときた。
初めて年下の女性を落そうという気になった。
あれこれ考えて、ふとあれから携帯をチェックしてない事に気がついて、
携帯を開けてみると3件の未読メェルがあった。
53 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:22
3件のうち2件はメモリに入れてある相手なので名前が出ていたが、
1件はメアドだけだった。
今度こそ愛か!と思って開けてみたが、加護ちゃんです!と書いてあった。
という事はさっきのメェルは辻からのメェルだったと言う事が判明した。
それにしてもこちらのメェルも訳の分らない文章と絵文字で頭が痛くなった。

「何だかな〜!」と思いながら残りの2件を見る。
1件は矢口から、もう1件はグラビア・アイドル麻由からだった。
麻由は誠にとって都合のいい女だった。
テレビ番組で競演したのをきっかけに付き合い始めた。
とにかく外交的で色んな男性と交流がある麻由だから、
その中に俺が一人ぐらい紛れ込んでも全く不思議ではないし
向うにしたって俺の事を一つの駒にぐらいしか思ってないから後腐れがないのだ。
こちらとしてもたかが数回寝たくらいでぐだぐだ言われるのはアイドルとしても
都合が悪い。とにかくスキャンダルは無いに越した事はないのだ。
54 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:24
{今日は楽しんだみたいね!元気な誠だからまだまだ行けるんじゃあないの?
今度は私と楽しみましょうネ。でも、変な病気貰わないでよ!}

どうやら浜畑さんが麻由にチクったらしい。改めて麻由の人脈の手広さに驚いた。
もしかしたら俺と浜畑さんは兄弟になるのか〜?と考えたらちょっと寒かった。

矢口はいつも番組で一緒になると必ずメェルをくれる。
今日もああだったね!とかあの歌手はこうだったね!とか
どうでもいい事を書いて送ってきた。
多分、それで寂しさを紛らわしているんだろう…
55 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:27
時計を見ると1時を少し回ったところだった。
真里に返信するか?と返信ボタンを押して、メッセージを書き始めると受信マークが点いた。
なんだ?また麻由か?と真理へのメッセージを保存して、開くと
今度こそ愛からのメェルだった。
やっと着たか!とメッセージを開いて読んだ誠は「ヒャッホー!!」と奇声をあげた。
56 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:28
{今日はお疲れ様でした&有難うございました!
メアド頂いたのでメェルしますね。これからも色々教えて下さいネ。
アッ!それと時々メェルしてもいいですか?
恥ずかしいんですが、実は愛は昔から誠さんの大ファンです。
コンサートも何回行った事か…(#^_^#)
(グッツも一杯持ってたりして。エヘ。)
だから、こうして誠さんに色々お話してもらって、メェルも交換できるなんて
夢のようです。
矢口さんの事も誠さんが支えてくれなければ、
多分愛はダメになっていたかもしれません…m(_ _)m
この気持ち、随分迷ったんですがメェルなら打ち明けられると思いました。
ごめんなさい。一方的に書いてしまって…
でも、これ以上自分の気持ちに嘘をつくことなんて…
今日、正確には昨日だけど誠さんが冗談でも愛のこと可愛いって言ってくれた時
涙が出る位うれしかった。
じゃあ、勇気を出して送信ボタン押します。
1,2,3    LOVE(愛)}
57 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:29
ふ〜〜ん、じゃあ手っ取り早いじゃん!むこうがそんな気持ちなら
ご期待に沿うようにしてあげないと失礼だし、こちらも手間がはぶける。
誠は真里へのメェルは後回しにして返信ボタンを押した。


          ……………
58 名前:NAO 投稿日:2006/03/10(金) 21:38
本日はここまでにします。
ありがとうございました。
続きは明日にでも揚げます。
59 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:07
こんばんわ!
本日も勝手に逝きます。
それでは宜しくお願いします。
60 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:08
【夢物語】

 愛は後悔していた。

あれからどうしても気持ちを伝えるには今しか無いと思えて
それとなく告ったみたく内容で送信ボタンを気合つけて押した。
押してすぐ後悔してキャンセルボタンを押したがもう遅かった。
内容は誠の元に送信された。
送信履歴を読み返してため息をついた。
嫌われたらどうしようとか、当たり障りの無い内容にしとけば良かったとか
今さら考えてもどうしようもない事を悔やんでいた。

何度目かのため息をついた時、携帯の受信音がしてビクッとした。
誠から?と思うとメェルを見るのが怖かった。暫くじっと携帯を見ていたが
勇気を出して携帯の折りたたみを広げると
やはり誠からのメェルだった。
心臓がどんどん早くなるのがわかった。
読むのが怖い。ここに何が書いてあるか受信ボタンを押せばそれで済むのに
その受信ボタンさえ指が震えて押せなかった。
でもこのままでは先に進めないと思い、勇気を出して両手で携帯をしっかり持って
震える指先で受信ボタンを押した。
61 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:10
涙が止まらなかった。

{愛ちゃん、こんばんは!メェルありがとうね!
昨日はお疲れ様でした。実は進行表見て楽しみにしてたんだ。
ひさぶりに愛ちゃんに会えるってね。
前に矢口の怪我の時、俺らの楽屋に挨拶に来たじゃない?
その時、愛ちゃんと初対面だったんだけど、
あんな事の後だからすごい険しい顔してて可哀そうと思った。
でも、最後に笑顔を見た時、変な話だけどものすごく可愛いと思ったんだ。
ほんと正直、あれからも気になってたんだ。
心配だった事もあるんだけど
愛ちゃん自身にすごく‥
まめに矢口にメェルしてたのも矢口の怪我も勿論心配だったけど
それより愛ちゃんの事を知りたくてメェルしてた方が大きいんだ。
62 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:11
昨日言ってた愛ちゃんの事、可愛いって冗談みたく言ったのは
本当は本心だったんだ。
なんか、2回しか会ってないのにこんな事言うと
変な奴!って嫌われちゃうんじゃないかって思ってね。
でも、愛ちゃんが俺のファンだったとは、なんか運命みたいなものを感じるね。
愛ちゃんが勇気を出して告白してくれたんだから、俺も言うね!
俺、多分愛ちゃんの事好きだと思う。浮ついた気持ちじゃなくて…。

フ〜〜!俺も緊張したよ。こんな気持ち初めてだからね!(^。^;)
携帯の電番は090-2342-****
だから今から掛けてくれないか?何時までも待ってる。   誠。}
63 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:12
今は話せない。今、彼の声を聞いたら大声で泣いてしまう。
でも、彼は何時までも待ってるって言っている。
一生懸命涙を止めようと鼻をすすって涙を拭いた。
「よしっ!自分頑張れ!!」と気合を入れて愛は電話を掛けた。

呼び出し音は1回で止まった。

「もしもし?」

「………。」

「もしもし?愛ちゃん?」

「もしもし…」

「愛ちゃん、ありがとう。俺、めちゃくちゃうれしい。
メェルでも書いたけどほんとなんだ!気持ち…
あの時から何処かで愛ちゃんと付き合えたら最高だな!って思ってた。
だからさっきメェル貰って読んだ時、正直涙がでた。」
64 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:14
「グスッ…。」

「愛ちゃん?」

「グスッ…ううっ!」と愛は嗚咽を漏らした。

「ごめん、愛ちゃん。泣かないで。」

「グスッ、グスッ…わ、わたし…まこ…まことさんの事…す、好きです。」
と勇気を振り絞って言った。

「ありがとう、俺も愛ちゃんの事、可愛くて仕方ない。付き合ってくれないか?」

「ううっ!」

「ダメかな?」

「ううっ!グスッ…は、はい。」愛は咽び泣いた。

「ありがとう!じゃあ今日は遅いからこれで切るね!またメェルするから…
愛ちゃん、好きだよ!  じゃあ、オヤスミ。」
「…おやすみなさい。」かろうじてこれだけ言えて携帯は切れた。
65 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:16
暫く愛は携帯の切れた「プゥ〜、プゥ〜、プゥ〜」という音を聞いていた。
放心状態のまま″切る≠フボタンを押してそのままベットに倒れて大声で泣いた。
階下の親に聞かれようが構わなかった。

その日は結局眠れなかった。

空が白々としてきても愛にはまだ信じられなかった。
夢だったのかとも思う。でも、携帯の送信トレイには私の誠への送信メェルが
履歴として残っているし、受信トレイにも誠からのメェルが残っている。
それに送信通話履歴にもちゃんと誠へ電話した事実も残っているのだから夢ではない。
愛は夜が明けるまで何度も何度も誠からのメェルを読み返していた。
66 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:16
【幸せな日々】

 朝まで眠れなかった愛はそれでも幸せな気持ちでスタジオに向かった。
なんだかいつもと同じ道を通っているのに景色が違って見えた。
スタジオには一番乗りだった。男性スタッフさんにいつもと同じように挨拶したのに
「おっ、今日は元気いねぇ〜!さては昨日ぐっすり眠れたのかな?」って聞かれた。
「ううん、ハラシの誠に告白したの!でね、そしたら彼も私の事好きだから
付き合おう!って言われたの。」って大声で言いたかった。

でも、女性スタッフさんには「何かあったの?」って聞かれた。
殆ど一晩中泣き明かしたので目がぱんぱんに腫れちゃったから
今朝一生懸命、氷で冷やしたんだけどやっぱりまだ腫れてるみたいらしい。

「昨日、怖い夢を見て泣けて寝れなかったの。」と嘘をついた。
女性スタッフさんは「今日が収録の日じゃなくて良かったね!」と
胸を撫で下ろす仕草をして笑って自分の仕事を再び始めた。
67 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:17
暫くして紺ちゃんと麻琴ちゃんと里沙ちゃんが来た。
やはり新メンは他のメンバーより早めに現場に来る。

程なくして先輩達も来た。でも、後藤さんは少し遅刻した。
でも、あの人はリーダーも怒れないオーラーを出している。
あんな風になりたいな!と思った。

これから暫くは初めて経験するアルバム製作や秋のツアーに向けての練習で
忙しい日々が続くんだと思ったが
誠の事を考えると何でも出来そうな気がした。

実際、3週間近いアルバム製作の期間中、何度も誠にメェルや電話をした。
その度にCDの音入れのコツや分らない事を教えてくれた。
「歌手ならあたり前の作業だし
この出来によってファンが喜んでくれるCDが出来るんだから愛もがんばれよ!」
「それに、ツアーは全国の愛ちゃんファンが待ってるんだよ。
愛ちゃんもそうだったんでしょ?楽しみだっただろ?
だから、それに答える為にも頑張って練習して良い物を見せなきゃ!」と励ましてもくれた。
68 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:19
そんなアルバムも最終段階に入った頃、ちょっと納得出来ない事が起きた。
多分皆も一杯一杯でピリピリしてたからだと思うんだけど
些細な事で安倍先輩に叱られた。しかも私は何も悪くはないのに
新メンの連帯責任!とか言われて新メン全員叱られた。
ほんとは安倍さんが確認をしないでした事が原因なのに…

納得できないやりきれない気持ちを忘れ様と誠に電話した。
留守電でもいい、誠に繋がってるって思えるだけで気持ちが落ち着くと思ったから。

意外にも誠が電話に出た。
69 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:20
もしもし?誠?」嬉しさのあまりすこし涙が出た。

「もしもし?どうしたの?」

「さっき先輩に叱られちゃった。でも、私悪くないのに連帯責任だって…」

「エ〜〜?ひどいなそれ!」

「でしょ!あれ?なんか外みたいだけど何してるの?ロケ?」

「今?今ね〜、今日オフだから走らせてるんだ!」

「大丈夫?気をつけてネ!」

「エッ?大丈夫だよ!安全運転!」

「愛も今度、誠のバイクに乗りたいな?ダメ?」

「今度?いいよ!でも、事務所的に大丈夫なの?俺は大歓迎だけど…」

「事務所なんて全然OK!だってコッソリ乗るんだから。」

「OK!確かにこっそりってのはスリルあるからね!」

「でしょ、絶対だからネ!アッ、そろそろ始まるみたい。
ごめんね!慌ただしくて…」

  「いいよ!じゃあ、仕事、頑張って!あっ、それと……好きだよ!じゃあね。」
と言って電話は切れた。
70 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:21
こそこそと戻ると安倍さんが「何してるべさ!」と不機嫌な顔で言ったが
私には全然気にならなかった。愛の力は貴方には分らないでしょ!と
心の中で叫んで「すみませ〜〜ん!」と大声ではっきりと返事した。

安倍さんは少し驚いていた。

それからは終わりまで頑張って仕事が出来た。
終わりしなにメンバーにお疲れ様の挨拶をした。

吉澤さんと石川さんと後藤さんが一緒にいたので声を掛けた。
71 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:22
すると、
「おう!今日の事は気にすんなよ!」と男らしく吉澤さんが…

「そうよ、気にしちゃだめヨ!」と可愛らしく石川さんが…

「ほんと!じゃあ!」とクールに後藤さんが答えてくれた。

みんな気にしててくれたんだと思うと嬉しくて
「お疲れ様でした!」と深々と頭を下げた。

「ヨッスィー、行こう!」と声を掛けられた吉澤さんは
「おう、じゃあな!」と手を上げて2人を連れて出口に向かった。
つくづく男らしくてカッケ〜人だと感心した。
72 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:23
帰り道、新メンの私達は加護さん辻さんに食事に誘われた。
ちょっと高そうな中華料理店に行った。
加護さん、辻さんはビックリする位、注文した。
そして
「さあ、食べてな!」
「みらさん、食べるのれす。」
と次々に料理を私たちに差し出した。
里沙ちゃんはもうその量を見ただけでお腹一杯になってしまったようだ。

でも、それも加護さん、辻さんの優しさと気がついた時には
ほんとに感謝した。

「まあ、今日の事は忘れような!安倍さんも多分イラってたんやと思うねん。
そやからこんな時はご飯食べるのが一番やねん。」

「安倍しゃんもごめんらさい!って言えば分ってくれるのれす。
この後ののは8段アイスも食べるのれすよ。じゃあ、いたらきま〜す。」
73 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:24
私達が叱られたのをちゃんと見てくれてたのだ。そして何も言わずに
食事に誘ってくれた。やっぱりこの人達にも敵わないなと思った。
このグループに加入した事は間違ってなかったと思った。

お腹一杯になってお店を出たがやはり辻さんのリクエストで
8段アイスを食べに行った。
流石に私と里沙ちゃんはごめんなさい!をしたが、紺ちゃんは美味しそうに
完食した。
加護さんも無理、無理!と言ってたはいたが辻さんと紺ちゃんが
あまりに美味しそうに食べていたので「やっぱり、食べる!」と言って注文した。
以外にも後から注文したのに一番早く食べ終わった。
私は里沙ちゃんと顔を見合わせてしまった。

こんなメンバーの気遣いで、もう今日の事は忘れていた。

しかし…
74 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:25
【初めての口づけ】

 しかし…

秋のコンサートツアーも始まったある日、レギュラー番組の収録があった。
この番組は毎回、私達が色々なゲームをしてメンバー内で競うという番組で
今回はメンバーが2チームに分かれて4つのゲームをして、ゲームごとに負けたら
負けチームが罰ゲームをするという内容だった。
私は安倍さん率いるチームになった。1、2ゲームとも私たちのチームが負けて
罰ゲームをした。
まずいシュークリームと臭いお茶を飲まされてみんな凹んでた。
3ゲーム目はフラフープを一人ずつ順番に回してリレーして行き
最後の人が回した時に全員が回せてたら終了で、
そのタイムを競うというゲームだった。
75 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:25
私達チームは私がトップになった。練習ではうまく回せてたので自信があった。
しかし、本番前に安倍さんに「高橋!ちゃんとやりなさいよ。」と言われたのが
プレッシャーになったのか本番は何回やってもすぐ腰から落ちてしまった。
落ちたら最後、また私からやり直しなのでいつまでたっても最後の人まで行かない。
時間だけが無常にも過ぎて行く。
イラついた安倍さんが「もう〜、高橋!何やってんのさ!あんた交代!」
って腕を引っ張って自分がトップで回し始めた。
私は突然の事でびっくりして何処に行けば分らなくて安倍さんの隣にいたら
「ちょっと、邪魔!あんたはそこじゃあないべさ。一番最後よ!」
「も〜〜!バカ!!」
と本番中にも関わらず激しく罵られてしまった。
同じチームで同期の里沙ちゃんも「えっ?」ってビックリしていた。
76 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:27
結局、このゲームも私のせい?で相手チームに負け、
最後のゲームもギクシャクしたまま負けて4連敗し罰ゲームを受けた。
本番終わりの締めで、司会役の元ウォーニングリーダーだった中澤さんが、
そうとう内紛が面白かったのか「次回もこのチームで頑張って下さ〜い。」
って言ったら、「次回はメンバー交代してほしいべさ。」と安倍さんが答えてた。

本番が終わり、そうとう落ち込んでいた私の所に中澤さんが
「いや〜、今日はおもろかったな〜!高橋、なかなか可愛いかったで〜!」と
慰めに来てくれてた。
加護さん、辻さん、同期メンと一緒にいた私の所にこちらも慰めに近寄ってきてくれた。
77 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:28
「まあな、真剣になるとこういう事があんねんや。
まあな、高橋一人を責めてる訳やないと思うねんや。分ったってや〜。」
と優しい言葉を掛けてくれた。
加護さんや辻さんから中澤さんはめちゃ怖い人って聞いてたから
毎回。緊張してたけどほんとは優しくて気がつく人なんだと思った。

「有難うございます!」と言いかけた時、安倍さんが近寄って来て
「もう、高橋〜!真面目にやってよね!」ときつく言われた。

「なっち!もうええやん。みんな真剣にやってるからあんな風に失敗すんねん。
なっ?」て安倍さんの肩を抱いた。
78 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:29
「もう、裕ちゃんは甘いな〜!仕方ない、祐ちゃんが言うなら許すべさ。
のの、おいで!」
と辻さんを手招きして呼んだ。

「ハイれす。じゃあ、あいぼん、愛しゃんまたね!」とバイバイをして安倍さんの方に走って行った。

「なんや〜、辻〜っ!」と中澤さんが笑いながら辻の頭をくしゃくしゃっとすると
怯える様に「テヘ、テヘ。」と笑って安倍さんにしがみついて行った。

3人が出て行くと加護さんが「気にしたらあかんで〜!」と私に言った後、
「実はな!」と話を切り出した。
79 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:31
「実はな!私もののも入った当時、安倍さんに今の愛ちゃんと
同じ様な仕打ち受けててん。
でな、うちな軽いノイローゼみたくなってもうてな!大変やったけどな
他のメンバーが‥特にゴッチンがな、色々気をつこうてくれてな、
立ち直る事ができてん。
でな、今じゃあ加護もののも安倍さんの事大好きやし、安倍さんもああしてののや
うちの事、可愛がってくれんねん。
せやからな、今の愛ちゃんの気持ちうちにはよう分かんねん。
でな、今度はな加護がな、ごっちんみたくせなあかんと思ってな。
せやから、一人で悩まんとうちらに相談してな!」と言ってくれた。
80 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:33
びっくりした。今の元気な加護さんからは想像出来ない事実を知った。
それと同時にこうして気を使ってくれる加護さんに感謝した。
いや、多分安倍さんも含めウォーニングのメンバーは
全員、お互いの事を尊重しあっているんだと思った。
たまたま安倍さんも熱くなってしまってあんな風になってしまったんだろうと‥

今日はこの収録だけであがりだったので明るいうちに家に帰る事が出来た。
加護さんに優しい言葉を掛けてもらったものの、愛は色々考えていた。
浮かない気持ちで誠にメェルしようと思ったけど、声が聞きたかったから電話をした。
仕事かな?と思ったけど、以外に誠も今日は家にいた。
81 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:34
今日の出来事を誠に話した。誠はずっと黙って聞いてくれた。
一気にまくし立てる様に話したら気持ちがすごく軽くなった。
すると、誠が突然、今から会おうか!と言った。初めて誘われた。
どうしよう?と思ったけど、気持ちも滅入ってたし
なにより誠に会いたい気持ちが強かったので会うことにした。

何故か知らないけどフード付きの服を着てきてね!と言われた。

お母さんには、突然打ち合わせが入ったからタクシーを呼んで!って嘘をついた。
82 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:35
指定された場所に着いて携帯に電話したら単車に乗った誠が来た。
私が単車に乗りたいって言ってた事、覚えてくれてたんだ。
かなり大きかったけど革ジャンを貸してくれて、私は誠の後ろに乗った。
初めて単車に乗った。しかも運転しているのは大好きな誠。
しかも誠のお腹に手を回している。ドキドキして頭がポーっとなった。

「行くよ!しっかりつかまってて。」と言われて、グ〜ンと加速した時
正直、ビックリして思わず「キャッ!」と声を出して仰け反ってしまった。

ガクッと単車が減速して慣性の法則で私は誠の背中をメットで叩いてしまった。
すると誠がヘルメット越に「あぶないからそれ位ギュッと抱きしめてて!」
と言った。

恥ずかしさより怖さの方が強くてその通りにした。
83 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:36
最初は初めて乗るので怖くて彼にしがみついて目をつむっていた。
でも、暫くして恐る恐る目を開けてみて驚いた。
今まで見たこともない景色がそこにあった。まさに景色が流れるとは
この事を言うのだと思った。
周りの景色がまるで横に流れる様に見えるのだ。
街路灯やお店の明かりはまるで流れ星の様に見えて、
愛は一気にバイクの虜になった。

暫くタンデム走行を楽しんだバイクは細い道を走り、小さな橋を渡った先の
空き地に停まった。
誠が単車から降りてヘルメットを外し
「ちょっと歩こう。愛に見せてたい物があるんだ!」と言った。
84 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:38
私はなんだか分らなかった。こんな所に何があるんだろう?と考えていると
誠が優しく手を差し出した。
ドキッとしたけどその手を借りて後部座席から降りた。
誠の手はすごく温かだった。
85 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:38
「ゴメン、寒かったね!手がすごく冷たいね。」とさすってくれた時はカァーッと熱くなった。
それから優しく私のメットを外してくれて「行こうか!」と背中を押した。
「あっ!ちょっと待って。」と誠が言ったので何かと思ったら
私のフードを頭にかぶせてくれて、誠もニットの帽子を被った。
「俺はバレても平気だけど愛ちゃんはマズイからな!
これなら誰かわからないから‥」と誠は親指を立てた。

そういうことだったんだ!と感心した。最初、フード付きの服を着てきて!
と言われた時、なんでだろう?と思った。
でも、それは私を気遣ってバレない様に顔を隠す為のものだった。
でも‥でも、「愛は誠と一緒のところを誰かに見られても全然平気だよ!」
って言いたかった。
86 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:39
誠と肩を並べて空き地から道に出た愛は
「あっ!」と声を出して立ち止まってしまった。
川沿いのその道はまっすぐの直線道路でその道路わきに
赤やピンク、白のコスモスが
街路灯に照らされて道に沿ってはるか先まで真っ直ぐ続いていた。
まるで二人の愛の道のようだった。

「きれい!お花のじゅうたんみたい。」と愛はあまりの美しさに声を詰まらせた。

「だろ!どうしてもこれを愛に見せたかったんだ。
この時期にしか見れないから、ちょっと心配してたんだ。
喜んでもらえて良かった。」と誠は私の顔を覗き込んだ。
誠の顔がすぐ近くで笑っていた。
87 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:41
少し歩こうか!と言われて歩き始めて暫くすると誠が肩に手を回してきた。
ビックリしたけど心のどこかで期待もしてたので勇気を出して誠に寄り添った。
でも、恥ずかしくて下を向いたままず〜っと歩いていた。
途中、2組のカップルとすれ違ったみたいだったけど全然気にならなかった。

勿論、愛にとっては男性に肩を抱かれて歩くなんて初めての経験だった。
そういう年齢になった時から誠一筋だったから
現実としてほかの男性との恋愛経験は皆無だったからだ。
ただ、バーチャルとして誠との恋愛は大いにあった。
場所こそ違えど肩を抱かれてたし、チューもしているしそれこそ憧れとしてエッチも経験していたが、
この現実の緊張感は只者ではないな!
と痛感した。
88 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:42
暫くコスモスの道を眺めながら歩いていたが、誠が「土手の方も綺麗だから
行かない?」と誘われた時、ときめくものを感じた。

土手を上り川側に降りるとそこも辺り一面コスモスが咲いていた。
歩道の街路灯は土手のせいで頭しか見えず明かりは届かないが、
今日は月が出ているので月明かりでコスモスがキラキラ輝いて見えた。

「ここなら大丈夫だから!」と誠が私のフードを頭から外してくれた。
冷たい夜風が火照った顔に当たり気持ちが良かった。

最初薄暗くてよく見えなかったけど、目が慣れてくると土手に等間隔で
カップルが座っているのに気がついた。
こんな綺麗なところだからカップルだってほっとかないよね!と思ったけど
どうして誠がここを知ってるのか疑問に思ってそれとなく聞いてみた。
89 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:44
すると「実は事務所の昔の友達に教えてもらったんだ。
近くにすっげー綺麗なとこがあるってね。でも、季節限定だし
そこはほんとに好きな人とでないと行っちゃあいけない場所!って言われてたんだ。
で、今年は来れる!って思って前もって下調べしといたんだ。来れて良かった。」
と嬉しそうに私を見た。

ちょっと向うに行こう!と手を握られた。
誠は「冷たくなっちゃったね!」と言って、私の左手を腰から回し
自分のズボンの左ポケットに自分の左手と一緒に突っ込んだ。
そして右手で私の肩を抱いた。
ピタリと寄り添って川原を歩いた。川面に写る月だけがゆらゆら揺れて
私達と一緒に付いて来た。
90 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:45
暫く無言で歩いて行くと水門があった。
水門は開いているらしくそこだけ川の流れる音が大きかった。
誠が覗き込んだので私もつられて覗き込んだ瞬間、誠が私を肩で押した。
不意の出来事だったので体勢を崩して落ちそうになった。
誠はその身体をグッと抱き寄せ私を抱いた。
一瞬の出来事だったので何が何だか分らないうちに私は誠の胸の中にいた。
落ちそうになった驚きと誠に抱かれている恥ずかしさで
心臓がものすごい勢いで脈打っているのがわかる。
91 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:46
彼の左手が私の背中から離れあごの下に来た。
うつむいている私の顔を上げようと軽く力が入ったのが分かったが
私はキスするのが怖くてなかなか顔を上げる事が出来なかった。
何度もあげようと思うのだが怖くて怖くて途中まで行っては
また下を向いてしまうの繰り返しで、いつの間にか涙が出ていた。
何度目かの力が入った時、勇気を出して顔を上げた。

目はつぶっていたが気配でわかった。

彼の唇が私の唇に触れた。初めてのくちづけ‥
92 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:47
キーンと耳鳴りのような音が頭の中で鳴り響いて足元から
身体が崩れ落ちる様な感覚になり、力が抜けて倒れそうになった私を
誠はギュッとさらに強く抱きしめてくれました。

ヒッ!っと思ったのは、彼の舌が私の唇を割って入ってきた時です。
知識としてディープキスは知ってました。でも、実際にされると
どうしていいのかわからないし、何となく気持ちが悪い感じがしたのも事実でした。
93 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:48
彼の舌が歯茎の辺りから、そして歯をこじ開けて入って来て私の舌に触れた時、
全身に電流が走りました。
気持ちの悪い生き物の様な舌がいつの間にか、
いとおしい物に変わってそれを積極的に受け入れていたのです。
身体の芯が痺れた様になり何かが溢れ出る感覚を覚えました。

彼の唇が離れた時、私は大きく息を吐いてそれと同時に声を出して泣きました。
彼はその涙に優しくキスをしてくれました。

「ごめん。」と一言彼は言いもう一度強く抱きしめてくれました。

初めてのくちづけでした。

私の中で何かが変わりました。

こんなに人を愛せるなんて。


                    ……………
94 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:49
                    ……………


 あれから愛とは何度もメェルや電話をしている。仕事がお互い忙しい事もあって
会う機会はない。
まあ、俺としては別に会わなくても全然問題ないんだけど
何処かで会っておかないと進展がないし自分的に納得できない。

彼女もグループ内の嫌な面をそろそろ経験し始めたみたいで、
先輩にイジメられているらしい。
そんな愚痴を聞かされてかなりうざかったが
まあ、女は所詮、感情の生き物だから、ましてやあれだけの人数がいれば
嫌いな奴が一人や二人いてもおかしくはないし、先輩が後輩をいじめるのは
芸能界という世界では通例になっているから仕方がないなと少し同情した。
95 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:50
俺はといえばそんな気分の時は女を抱く。
それは風俗だったり、同じ芸能人だったりその時によって違うが…
特にグラビア・アイドルの麻由は最高に良い。
彼女はほんとにつくしてくれる。
彼女と寝ると、まさに天国とはこの事を言うんだと思えるし、
彼女のテクニックは今まで寝てきた色んな女の中で一番だと思う。
麻由も色んな男性に抱かれて調教されたんだから、
俺も誰かを調教してみたいと常々思っていた。
出来る事ならまっさらな女を…自分の色に…
96 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:51
昼からの仕事がクライアントの都合で急にキャンセルになって
ひさぶりにDVDを借りて家でまったりと観ていると、愛から電話が来た。
また先輩にいじめられたらしい。彼女のそういうおどおどした態度が
さらに先輩には気に障るんだ!と心の中で叫んでいたが、こういう傷心の時こそ
チャンスだと思って会わないか?と誘った。
97 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:52
何処に行こうと考えたが、時期的にあの場所が最高だろうと思い、そこに行く事に決めた。
そこは俺達には定番の場所で女を落す時はこの時期そこしかないだろう!って所。
現に俺も事務所の奴らもそこに女を連れてってかなりの確率で良い感じにしている。
勿論、麻由や他の女も連れて行ったし、
2日続けて違う女を連れて行って同じ事をした事もあった。
この季節限定だから、同じ日の同じ時間に事務所の奴らと
出くわす事もしばしばあり、その時はお互い知らんぷりをして
次の日にお互いの結果報告をするという事もあった。
98 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:53
待ち合わせの場所もこれまたうちらの事務所の奴ら定番の場所だ。
この駐車場は大通りに面している大型店舗の駐車場のわりに奥まったところにも
駐車スペースがあり死角になって芸能人がお忍びで会うには非情に都合がいい。
現に今日も同じグループの明の単車があった。
ここから何処かに出かけたのだろう。でも、俺とかぶる事は無いと思った。
今から行く場所は駐車出来るスペースが少なくて単車で出かけるのが一番だからだ。

彼女は単車に乗るのは初めてだから少しでも密着させようと乱暴に発進した。
おかげで振り落とされまいとしがみついて来た。単車のタンデムはこうでなければ…
寒い季節なんで冷たいでしょ?って感じで手を触ってみた。
良い感じかな?と男の勘で思った。
99 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:55
コスモスが真っ直ぐに道沿いに咲いているこの場所は何回見ても綺麗だと思う。
俺が綺麗だと思うんだから愛がそう思わない筈がない。
案の定、ビックリした様に立ち止まっていた。
万が一、見られたらまずいと思ったので彼女にはフード付きの服を着て来いと
言っておいたので顔隠しの為にフードを被せた。その方が彼女だって大胆に
なれるってもんだ!
感動してるどさくさに紛れて彼女の肩を抱いた。きっかけは早い方がいい。
(これからお決まりのパターンになるんだから…)
100 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:56
道の先に妙に不釣合いのカップルがコスモスをバックに写真を撮っていた。
女の方は小太りで派手な服装、男の方は背が高くて野暮ったい服装だった。
女は多分、飲み屋の女だろう。酒嗄れした声を張り上げて男に何か言っている。

俺たちがそのカップルの横を通り過ぎようとした時、
フラッシュの光が妙な方向に光った気がした。
「エッ?」と思ったが別段変な素振りも見せず、相も変わらずだみ声を張り上げて
男に指図をしていた。男はこちらに背を向けていたので背中しか見えなかった。
101 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:58
土手をあがる道の所に少し車を置ける場所があるがやはり一杯で単車も置ける
スペースもなかった。あそこに停めて正解だった。

川側は薄暗いので気持ち的に大胆になれるから、なるべく肌の触れ合いを
多めにとっておいた方がこの後の事を考えれば都合が良いと考えて
彼女の手を冷たいね!とか言いながら自分のポケットに入れさせた。
必然的に密着度が高まる体勢なわけよ。

あれだけ車が停まってても人が少ないと言う事は、
こちら側にカップルが居ると言う事だし、視覚的にもそういう気持ちが高まる
雰囲気は俺にとってもさらに都合がいい事になる。
102 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 20:59
暫く歩いた先に水門がある事も分ってる。で、そこでする事もいつものパターンだ。
そこで抱きしめちゃえばなんとかなる。いくらウブな女だってね。

案の定、彼女もその気になったみたいだった。やはりキスは初めてだったらしく
かなり躊躇してうざかったけどなんとか出来た。
大人なキスの味ってやつを教えてやった。これがセックスの第一歩ってやつを…

ウブな彼女は泣いていた。ただ暗闇で見た彼女の瞳には吸い込まれそうになった。


          ……………


 帰りの誠の背中はすごく大きく感じて、とても暖かかった。
その背中に寄り添っているとほんとに幸せを感じた。ずっとこのままでいたかった。 


           ……………
103 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:08
【切ない思い】

 あの日以来、愛は誠の事が頭から離れなかった。
華やかないつもの生活なのに淋しいのは
誠に会えないからだと思いました。
また会えない時間が長ければ恋しい気持ちが募る事も知りました。
もう、全てが誠を中心に回ってる感じがした。
時々ボーっとしてる事があるらしく
リーダーの飯田さんや矢口さんに「何してるの!高橋。しっかりして!」
と叱られた。

誠とは忙しくてなかなか会えないが、あれから2回、二人で会った。
ただマスコミの事もあるのでドライブをするくらいなのだが…
でも、帰りには必ずキスをしてくれた。
ぎゅっと抱きしめられるといつも頭が真っ白になる。
この前はキスの時、背中をすぅ〜とされて意識が飛びそうになった。
胸も触られた。恥ずかしかったけど嬉しかった。
誠になら全てをあげても良いと思ってる。
104 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:10
「この頃の高橋っておかしくない?」とリーダーの飯田は保田に聞いた。

「確かに!あいつ矢口の事があってから結構真面目に取り組んでたけど
近頃なんかボーっとして他ごと考えてる感じなんだよねぇ。」

「でしょ!この前もあっしが注意したのよ。したらさ、すみません!
って感じで言ってんだけど〜、なんか上っ面だけで気持ちが入ってないよね〜。」

「なんかさぁ、悩みとかあるのかなぁ?
そういえばさぁ、なっつぁんにかなりやられてたじゃん。あれがきいてんのかな?」

「一回、5期のやつらに聞いてみるか!なんか話してんかも知れないし。」と
飯田は5期メンをなにげに呼んで聞いてみたが、誰もわからないという返事だった。

どうしたものかと思っていると加護、辻が笑いながら歩いてきた。
そういえばあいつら、高橋と仲良かったな!と思い出した飯田は二人を呼んだ。
105 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:11
「なんやの?リーダー。」

「なんれしょうか?いいらさん。」

「お〜、実はな。お前ら高橋と仲良かったじゃん?あいつさ〜、なんかおまえらに
相談とかしてない?近頃、変なんだよね〜。」

「そやねん、うちらも気になってたんや〜。
なんか愛ちゃんおかしいな!ってののと前に話とったんや。なあ?のの。」

「へい、そうれす。愛しゃんどうしたのかな?悩んでるのかな?って
あいぼんとお話してたのれす。」

「じゃあさぁ、それとなくあいぼん達、聞いてくれないかなぁ?
多分うちらが聞いても教えてくれそうもないんだよね!」と保田さんが言った。
106 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:12
「そりゃあ、おばちゃんには話さへんわな!」と加護が突っ込みを入れた。

「こら!あいぼん。おばちゃん言うなぁ!」と保田が加護の頭を軽く叩いた。

「ちょっと、圭ちゃん。」と飯田が笑いながら保田の手をつかんだ。

「ほんとにぃ、頼むよ!辻、加護。それとなくだからね。
あんまり露骨だと何も言わなくなっちゃうからさぁ。
今のままだと高橋一人が遅れて行く気がするのさ!
折角、良い感じで新メン全員が伸びてきたとこなのにぃ…」と保田が心配そうに言った。

「うん、分ったで。それとなく聞いてみるからな…」と加護が答えた。

辻は「露骨ってなんれすか?」と飯田さんに聞いていたがみんな無視した。
107 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:14
それから数日後、お昼の空き時間に加護、辻は愛をマックに誘った。
辻は趣旨も忘れてビックマックセットのポテトLサイズに
単品でナゲットを注文しておいしそうに食べていた。

加護はそんな辻をあきれて眺めながら、
レモンティーを飲みながら高橋に話を振った。

「愛ちゃんな、この頃どやねん。安倍さんとしっくりいってんの?」

高橋はコーヒーを飲みながら
「うん、あまり気にしない様にしてる。
ただ前より安倍さんも私をいじめなくなったみたいだし、
私も言われても流せるようになったから。」と笑った。

「なんか、愛ちゃん強なったな〜!それに何ていうんか、大人びたって言うんか
綺麗になった感じがすんねん。」

「エッ?そんな事ないって!加護さんや辻さん達が味方だと思うと
案外我慢できるんですよ!それに…」と言いかけて愛はまたコーヒーをすすった。
108 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:16
「何、何?なんやねん!それに何?言いかけて止めるのって
めっちゃ気になるんやけど。」とここが核心だと信じて詰め寄った。

「ん〜〜、どうしょうかな?誰にも言わないで下さいよ!
実は…あ〜〜、どうしょう!」と愛は言うのをためらっていた。
ほんとはみんなに誠の彼女と自慢したいのに…

すると今まで一心不乱にハンバーガーを食べてた辻が
「好きな人がれきたのれすか?」とあっさりと聞いた。

加護はこいつは何も考えないでいつも物を言うけど
案外、的を得てるんだよな!と感心した。
109 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:16
愛は突然ビンゴな言葉が思ってもない人から出たので
カ〜ッと顔が赤くなってそれからゆっくりと
「実は…その〜、好きな人が出来たんです。
でも、仕事とプライベートはきっちとり分けてお付き合いしてるつもりなんで、
皆さんに迷惑を掛ける様な事はないと思います…」と恥ずかしそうに答えた。

「エ〜〜〜ッ?って事は同業者って事になるやん。まじぃ?誰やねん?」
と加護は飛びついた。

「それは…加護さんでも言えないです。ごめんなさい!」と愛はきっぱりと言った。

「そやな、そこまで聞くほど野暮じゃないし…ええなあ〜!加護も恋愛したいな!
愛ちゃんがうらやましい!」と加護は答えておいた。
110 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:17
さあ、任務完了だ!と加護は思った。レモンティーを一気に飲むと
「そろそろ時間がきそうだから行こうか?」と立ち上がった。
辻はマックシェイクが飲みたいとゴネてたけど無視した。

その日のうちにリーダーにその事を加護は報告した。
加護は仲の良い愛を騙した事に罪悪感を感じていたが
これも愛とウォーニング娘。の為になるんだ!
と自分に言い聞かせて心を鬼にして割り切る事にした。
111 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:20
飯田は
「ビックリだよね〜!恋煩いとはね〜。しかし誰なんだろうね〜?お相手はさ〜!」と驚いた。

保田に至っては
「なんだよぉ!高橋の奴。私を差し置いて彼氏なんか作ってさぁ、
10年早いんだよぉ!」と半分以上やっかみで言った。

「ま、圭ちゃんはさて置いてさぁ〜、どうする?
このままだとまた怪我とか起こしそうだしさ〜、今後の事も考えて注意しとく?
でも、相手も芸能人な訳でしょ。誰なんだろうねぇ〜?」
と飯田はリーダーらしく個人の事としてではなく
ウォーニング全体の事を考えて言った。
112 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:21
「でもさぁ、なんて言う?あからさまに好きな人がいるんでしょ!なんて聞いたら
加護たちがチクッた事がバレバレになって、あいつらが悪者になるじゃん。
どうしたもんかなぁ?」と保田は困り果てた顔で飯田を見た。

「しゃ〜ない。あっしが悪者になるさ!辻、加護にも迷惑かかんね〜様に
なんとかやるさ!前に裕ちゃんがした様にさ!」と飯田は決意した様に言った。

「裕ちゃんかぁ、あの時は大変だったもんなぁ!
あんなふうになったらかおりんも私もどうする事も出来ないからねぇ!
あんな風にならないうちに何とかしといた方がいいかもね。
でも、あん時ほど裕ちゃんはすごいと思った事はなかったね。」

「ほんと、あんな風になっちゃったら、あっしらじゃどう対処していいかわかんね〜からさ!
早めに言うよ。高橋だって多分、分ってくれるよね。」
と飯田は保田に確認するように言った。
113 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:49
ちょうどそこに矢口と石川が

「梨華ちゃん、きもい!」

「何でですか〜?矢口さ〜ん。」
とふざけ合いながら通りかかってこちらを見ながら
「あれ?かおり、圭ちゃん。何怖い顔して話してんの?」
と近寄って来た。

「いやぁ〜、ちょっとね!」と飯田が言っても良いものかといった感じで答えた。

「あれ〜?何かあるな!おいらに隠し事してもダメだよ。
付き合い長いんだから、分っちゃうよ!」
と見透かした様に二人を交互に見た。
114 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:50
「んじゃあ、矢口には話すわ!悪い、石川。
ちょっと向うに行っといてくれる?」と飯田は石川に言った。

「え〜〜、私には教えてもらえないんですか?チャ〜ミ〜、悲しいな!」
と石川は親指を立ててからラブのLの字を指で作って
「グッチャ〜!」と言って離れていった。

「石川!それもきもい!」と笑いながら手を振るとこちらに向き直った。
向き直った時にはすでに真顔だった。

飯田と保田はこれまでの経緯を矢口に話した。
115 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:51
「そっか〜、確かにこの頃の高橋、おかしかったもんな!
好きな人が出来たんか〜。ふ〜ん、誰なんだろうね?」
と言いながら無言のまま暫く見つめあっていたが、急に
「ん?ちょっと待てよ!もしかすると…」
と突然、口を開いた。

「何?」

「ちょっとこの事、私が預かってもいいかな?」

「それはいいけど心当たりでもあんの?矢口。」と保田は聞いた。

「確信は無いんだけどさ、ちょっと気になる人がいるんだ。」

「え〜〜?誰?」

「ん?まあね、明日には白黒はっきりさせるからちょっと待ってよ。」

「OK!わかった。じゃあ矢口、頼むわ。」と飯田は矢口に言った。
116 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:53
その夜、矢口は電話を掛けた。
「もしもし、誠。おいら…あのさ、あんた、うちらのメンバーの高橋と
付き合ってない?おいらに嘘ついてもダメだかんね!」と矢口はいきなり聞いた。

誠は
「なんだよ!いきなり。普通そんな話から始まるかぁ?」と誠は呆れた様に言った。

「面倒な事が嫌いなのさ!どうなのよ。」と矢口はしつこく聞いた。

「もう、おまえにゃ敵わねえな。そうだよ、付き合ってるよ!愛ちゃんと。」
と誠は白状した。
117 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:54
「やっぱりな!なんかおかしいと思ったんだよ。
私がぎっくり腰になった時
よく電話くれてたじゃん。あん時だって妙に高橋の事聞いてきたし、
歌番組で一緒になった時もなにげに高橋の事見てたの、
おいら知ってんだよ。
それがこの頃、急に高橋の事何も言わなくなったからおかしいと思ってたのよ。
その位からだよ!高橋がおかしくなったの。」と矢口は一気に言った。

「何?愛ちゃんがおかしくなったってどういう事?」
118 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:55
「あいつさ〜、この頃、ボ〜ッとしちゃって仕事に身が入ってないんだよね。
一人ならいいんだけどグループだとみんなに迷惑かかるし、
前みたく怪我とか起こしたら大変だからさ、みんな心配してるんだ。
この前もリーダーに叱られたんだけどあんまり効果ないみたいなんだ。」

「そうか〜、それ俺のせいになるのかな?
でも、俺らの商売は人に見られて何ぼの商売だからな!まずいな。」

「でもさぁ誠。あんた高橋の事、真剣なの?
だって前から年下は面倒だから嫌いだって言ってたじゃん。」
と矢口は心配そうに聞いた。
119 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:57
「嫌いだよ、実際年下は。だけど何だろうね〜!なんか気になるんだよな!彼女。」

「もしもし、ちょっとそんな軽い気持ちで遊ばないでくれる?
真剣すぎるのも重いけど誠みたくエッチだけの関係って言うのも女には敵なのよ!
高橋には特に…多分彼女まだ知らないと思うから。って、あんた!まさか…」
と矢口は声を荒げた。

「してね〜よ!矢口!ぜってーやってねぇ〜って。これだけは誓う。」と誠は慌てて否定した。

「ほんとうだろうね!正直おいらの二の舞だけはさせたくないんだ。
メンバーにはね。」と矢口は弱々しく言った。

「矢口、お前まだ…」

120 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 22:59
【弱者の行く末】

「矢口、お前まだ…」

………

 誠は思い出していた。

ナオ…この世界に入って一番最初に仲良くなった男。

そして矢口の元彼。

ナオは俺と同じ時期に事務所に入った。俺より2つ年上で兄貴みたいな存在だった。
いつも一緒に行動して、よく相談に乗ってもらっていた。
俺が最初にタバコを無理やり吸わされて貧血でぶっ倒れた時も
最後まで看病してくれたのもナオだった。
121 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:00
おれがハラシのメンバーに大抜擢された時も
他の同期の奴らはやっかみの目で俺を見てたけど、
ナオだけは心から喜んでくれた。
だから、ハラシの番組が始まった時、最初にナオをレギュラーに推薦した。

番組に出演する様になってからも俺はナオと
一緒にデュエットする企画なんかを提案して番組で競演したりした。
当然、露出も多くなればそこそこ人気も出てナオもソロでCDを出すか?
ってとこまでになった。
122 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:01
ある日、ナオからウォーニングの矢口って可愛いな!って話を聞いた。
俺は何度か話した事があるんで、今度食事でも行かないか?って聞いてみるよ!
と言ったらナオは超喜んでいた。
以外にも話がまとまって俺らはナオともう一人、同期で良って奴と3人、
むこうは矢口、保田と市井の3人で合コンをした。

ナオはかなりテンパっていたがその分、妙におかしくてかなり矢口と盛りあがった。
その日のうちにメアド交換をしたらしく喜んでいた。
それから程なくして二人は付き合い始めた。
かなり最初からしっくりきていたんだろう。急速に愛情が深まったみたいだった。
123 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:02
ナオ達がラブラブなある日、先輩からパーティーをするから
お前も同席しろ!と言われた。
なんでも女の子達が俺がいるなら出席してもいい!と言ったらしく
先輩命令で有無も言わさず同席させられた。
俺は一人はイヤだからナオを連れて行った。

そのパーティーはあるお店を貸し切って盛大に行われた。
女の子達はレースクィーンだと聞いていたので
どうせ2流企業のレースクィーンだと思って会場入りしてみたら
以外にもマスコミでも超有名で
へたなアイドルよりもはるかに綺麗な一流企業のレースクィーン怜子が居た。

彼女が他の女の子達を誘ったらしく、俺がいるなら皆を集める!
と言っていたのも彼女だった。
124 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:04
俺は最初からここに来るのは強制的だったから乗り気ではなかった事もあって
隅の方で静かに酒を飲んでいた。
最初のうちは女の子達が俺目当てに入れ替わり立ち代り訪れて
サインしたり写真に納まったりしていた。
一通りそんな事も済んで一息ついていると、怜子がお酒を持って
「未成年がお酒飲んで大丈夫なの?って私もか!」と笑いながら近づいてきた。

「しかし、貴女みたいな人がここに居るとは思わなかった。」と誠が言うと

「ほんとはこういう雰囲気な事、好きじゃあないの!
でも、貴方がどんな人か見てみたかったから、貴方が来るならみんなを集めるって、
貴方の事務所の先輩に言ったの。」と言った。

「へぇ〜、そうなんだ!で、どう?感想は。」と誠が聞くと

「まあまあネ!」と怜子はグラスを上げた。
125 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:05
暫く二人で話していると完全に出来上がったナオが近づいてきて、
怜子を無理やり引っ張ってパーティーの輪に強引に連れて行ってしまった。

大丈夫かな?と見ていると程なくして王様ゲームが始まった。
全員参加!と先輩に言われたので、渋々俺も参加した。

最初は当たり障りの無い命令だったが、
酒も入っているため、段々過激になっていった。

俺にも指定された女性とチューをしろ!と言う命令が出たけど
相手の女性はアイドルとチューが出来ると泣いて喜んでいた。
しかし、中にはそういう事が嫌いな人も当然いる訳で、怜子もその中の一人だった。
126 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:06
何回目かのゲームの時、怜子のスカートを下ろせ!という命令が出た。
そのスカートを下ろす役がナオとマサという先輩の二人だった。
当然、怜子は拒否したが周りから下ろせ!コールが起こり
酒も入っている事も手伝って、
半ば押さえ込むような形で無理やり脱がせてしまった。
当然、周りは拍手喝采に包まれたが
怜子は屈辱的な顔のまま部屋の隅でスカートを穿いていた。
それからは彼女は参加する事もなく数人の女性と
ソファーで冷めた目でそのバカ騒ぎを眺めていた。
127 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:07
そんなお祭騒ぎも忘れかけたある日、衝撃的な出来事が起きた。
なんとその時の俺らの失態が写真誌に掲載されたのである。
勿論、出所は怜子である。
屈辱的行為を受けてプライドを傷つけられた仕返しをしたのである。

レースークィーンだけあってカメラ小僧やパパラッチの知り合いの多い怜子は
その時、他の女の子達が撮ったデジカメの画像を、
そういう人達を介して売ったのだ。
128 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:08
大手出版社はこんなすごい特ダネは喉から手が出るほどほしいのだが
相手が芸能界一の大手事務所の所属芸能人で
今こんな記事を載せてしまったら
今までの付き合いが全てパーになる事を恐れて尻込みをした。
自社出版の雑誌から彼らが抜けたらそれこそ大損害になるのだ。
一時の話題性だけでこれからを棒に振りたくないのだ。
しかし、三流、四流のパパラッチ写真誌は初めから失うものはなく、
うまくして売れれば大金が入る夢を抱いて飛びついた。
129 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:09
写真誌は瞬く間に売れた。
芸能レポーターも当然この話題に飛びついて芸能界は騒然となった。
最初は真意の程がどうなのか?と騒がれたが
出所が人気レースクィーンの怜子だと分かりレポーターが殺到した。

果たして彼女は事実と証明し、一番の加害者はナオとマサだとテレビで答えてしまったのだ。
そうなるとその芸能番組を見ていたパーティーに参加していた
他のレースクィーン達も他には誰々がいた!とかレポーターに言い始めて、
この乱交パーティーが明るみになってしまった。
130 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:11
当然、その名前の中には俺の名前もあり、
その会場にいた奴らは全員事務所に呼ばれた。

最初、事務所側はなんとか穏便に済まそうとしたが、
余りに事が大きくなってしまった為に謝罪だけでは済まなくなってしまった。
誠意を見せる為に怜子が被害を受けたと証言したナオとマサ、
そして先輩の中から比較的売れてない奴らを数人、事務所はクビにした。
それで事務所的にはけじめをつけた事にしたかったのだろう。
俺たち売れてる奴らは一週間の謹慎になった。
131 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:14
当然、クビを切られた奴らは納得がいかなかった。
ナオ以外も先輩なんで俺は呼び出され顔以外のところを殴られた。
それで済むなら俺は我慢しようと思った。もし俺が同じ立場だったらやはり同じ事をしたに違いない。
何で俺らだけクビになるんだと言うやるせない気持ちは十分に分るからだ。

それにも増してナオの事がすごく気になった。
もし、俺があの時誘ってなかったらこんな事にはならなかったのだ。
しかしナオは「暫くおとなしくしてそれから他の事務所で頑張るよ!」
と軽い気持ちでいた。
132 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:15
確かにここの事務所ではそこそこの人気だけかもしれないけど、
他の事務所ならそれこそトップアイドルとして
売り出す事が出来るのだ。
それ程、うちの事務所はレベルが高いのだ。

しかし、大人の世界はそんなに甘くはなかった。
もし彼らと契約したら事務所を潰すとうちの事務所が
他の事務所に圧力をかけていたのだ。
そんな事とも知らずナオ達は数ヶ月のんびりしたのち
他の事務所にアプローチを掛けたがことごとく不採用になった。
133 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:16
最初は余裕で構えていた彼らもさすがにおかしいと思い始めた。
そしてある時、その事実を知って愕然とした。
もうどうあがいても芸能界に戻る道は閉ざされてしまったのだ。

勿論、ナオもあせった。
当然芸能界に戻れると確信していたのにそれが出来なくなってしまったのだから。
最初は何とかなるから気にするな!と俺に言っていたが
何時までたってもどうにもならなかった。
俺とナオは連絡を取り合った。
そしてナオだけは何とかしてもらおうと事務所に嘆願したが
事務所は逆に俺たちの関係を裂き始めた。
あくまでも勝ち組、負け組みと割り切れ!と言ってきたのだ。
そして俺の知らない所で事務所はナオに接触した。
134 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:17
俺は携帯を変えさせられナオとの連絡は出来なくなった。
突然、携帯をマネージャーが持ってきてメモリのバッアップもさせてもらえないまま
前の携帯を取り上げられた。
携帯にしか電番を入れてなかった俺は誰とも連絡が出来なくなった。

ナオに連絡をとるには矢口しかいない。
しかし、ウォーニングと俺たちのグループが同じ番組に競演する機会はそれから1ヶ月近くなかった。
ナオのアパートに出かければそれで済む事だったのだのが、
あれ以来、寮にはマネージャーが常に張り付いていて
俺を監視していて出かける隙もなかった。
135 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:19
番組収録の日、矢口にナオの携帯の番号を聞こうと
ウォーニングの楽屋をなにげに覘いた時、矢口はいなかった。
仕方なく戻ろうとした時、向うから矢口が歩いてきた。
矢口は俺を見つけると露骨に嫌な顔をしたが、
無視をして楽屋に入ろうとした。
おれは矢口を引き止め、事情を説明してナオの電番を聞こうとしたが、
矢口は大きな声で「偉そうな事言って表面的に心配なんてしないでくれる?
同情なんてたくさんよ!」とまくし立てた。
136 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:20
楽屋にいた当時リーダーだった中澤さんが
俺らのやり取りに気が付き、楽屋から出てきて
「何、大声出してるの!矢口。」と叱ったが、
矢口は「何もありません。」とそのまま楽屋に入っていってしまった。

矢口の変わり様に驚いた俺は
中澤さんから矢口の態度がこの頃おかしい事を聞き
思いきって当時ウォーニングのリーダーだった中澤さんに相談する事を決めた。

中澤さんは矢口の態度がこの頃おかしいので話を聞こうとしたが
何も無い!の一点張りで困っていたらしく
ナオとの関係を驚いていたが理由がわかり納得していた。
137 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:21
矢口はその事でそれから中澤さんと話し合いをしたらしい。
最初「どうしてメンバーに私の事をチクッたのさ?」と電話口でまくし立てられ
「お前の為だよ!」と答えたら「大きなお世話よ!」と罵倒されたが、
それからかなり色々あって矢口は誠と別れる事になった。

そしてナオの消息は途絶えた。

それから俺と矢口はそれだけ色々あったから
逆になんとなく友情の様なもので結ばれている。
男と女に友情は成り立たないと言うが、俺と矢口の友情は本物だと思っている。
138 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:24
【意外な事実】

 「矢口、お前まだ…」

「当然、忘れれる訳無いじゃん。
でも勘違いしないでよね!彼を忘れられないんじゃなくて
あの時の自分の馬鹿さ加減とメンバーの思いやりが忘れられないのよ。
だから、高橋には同じ過ちをしてほしくないし、それを救ってあげるのも
やっぱりメンバーだと思っているのよ。だから誠、正直に答えて…」

「ああ、分ってる。
確かに俺もあの時の事は忘れようとしても忘れられないし
ナオに関しては俺に責任があると思ってっから、
お前の為にも正直に言うよ。
139 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:26
最初、彼女を見た時…確かお前がぎっくり腰になった時だったな。
あん時、俺らの楽屋に愛たちが挨拶に来たんだ。
その時の彼女ときたらあんな事があった後だから
えらく動揺しててまるで小動物みたく怯えてた。
ウブだね〜!と顔をよく見てみると結構好みの顔をしてた。
そん時遊び心が芽生えて、ちょっと落しちゃおうかな?って思ったんだ。
お前の前でなんなんだけど上手く行って頂けたら最高かな!ってね。
そしたら意外にも昔から俺のファンだったらしくて…」

「えっ?それってマジで?」
140 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:27
「うん、そう言ってた。だから、じゃあ話が早いじゃん。
頂き!って感じでね。
でも、あまりに露骨にそれ目当て!って言うのもあれだし
彼女、純情ぽかったし多分そういう経験もないと思ったし
いきなりそういう関係を迫るとひいちゃうと思ったから
徐々に落そうといつもの手で優しくロマンチックにした。
そんでお前も行った事があると思うけど
例のコスモス街道を見に行った時キスをした。」

「ああ、あそこね!ってもうしてんじゃん。」と矢口は突っ込んだ。
141 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:29
「えっ?まあ、キスはね。その時は極めるつもりで誘ったから…
でもさ〜、何だろ?あの時、彼女の瞳を見た時、
あれ?俺ってもしかしたらって思ったんだ。
なんか知んねぇけど、すげぇ〜いとおしく思えたんだ。」

「もしもし?ちょっとそれってマジって事なの?」

「分んないんだよ。
だって今まで俺は後腐れない女性としか付き合った事しかないんだから。
だからこれが恋愛感情なのかって聞かれてもうまく答えられない。
でも、今の愛の状態はすごく気になるし…
どうしたらいいんだ!矢口。」
142 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:31
「エ〜〜?そんな今聞いてすぐに答えなんてでないよ。
それに電話じゃあ旨く言えないから…
明日の夜に歌番組の収録があるじゃない!ハラシも確か出るよね?
その時にちょっと話さない?おいらもそれまでにまとめておくから、
誠も正直な気持ちを考えておいて!分った?」

「ああ、分った。じゃあな!」

「あっ!待って。この事うちのメンバーの圭織と圭ちゃんに話すかんね!
彼女達も心配してたし、相談もしたいから。」

「分った。じゃあ明日。」と言って電話は切れた。

矢口はフゥ〜っと深いため息をついてから、いけない、絶対いけない。
私と同じ過ちを愛にはさせてはいけない、何とかしなくちゃ!と思った。
143 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:33
その夜、矢口は眠れぬまま朝を迎えた。
それは当事者の誠も、矢口から電話を貰った保田、飯田も同じだった。
立場こそ違えど皆、矢口の時に関わった人間だからだ。
皆、一様に愛にはあんな風になってほしくないと願っていたからなのだ。

次の日の歌番組の収録の空き時間の時、
誠達は番組スタッフにお願いして部屋を一室借りた。
なるべく皆に変な詮索をされない様に
お菓子や飲み物を持って行き部屋のドアは開けっ放しにておいた。
こうすれば単に世間話をしている様に見えるだろうと考えたからだ。
誰かが見つけて入ってきてもその人達に話を合わせればそれで済む。
圭織は共演者へ挨拶をしてから行くから、ちょっと遅れる!と言っていたので
誠と矢口と保田の3人で部屋に入った。
144 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:35
「で、どうなの?」と保田がいきなり切り出した。

「まずは誠の気持ちを聞くのが先じゃあない?」と矢口が答える。

すると誠が
「ああ、俺もあれからかなり考えたんだけど、いまいち結論が出ねえんだよ。
ただ、彼女の事が気になるのは確かなんだ。」

「はぁ?何!それって好きって事じゃん。」と保田は吐き捨てる様に言った。

「そうなのかも知れない。ただ、昨日も矢口に言ったんだけど
そういう感情で恋愛をした事がないからそれが愛情なのかってわかんないだよ。」

「ひどい付き合いだね!女からしてみたら最低の男だよ!」
と保田はなおも食って掛かっていった。
145 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:36
「まあまあ、圭ちゃん。怒らないでよ。誠だって多分かなり悩んだんだと思うよ。
おいら多分、誠が高橋の事気にかかっているのは本心だと思うんだ。
もし、誠が遊び感覚で高橋の事、考えてるって言ったらおいら全力で阻止するけど
誠がこれだけ真剣に自分の気持ちに向かい合って出した結論は
大事にしたいと思ってる。」

「じゃあ、どうすんのさ。誠がマジだとして高橋にはどう言う?」

「そこなんだよね〜…」と言いかけた所で廊下の方で聞きなれた声がした。
146 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:38
「矢口しゃん、おばちゃん。あで?誠しゃんもいる!」辻だった。

「あれ?ほんまや!こんばんわ〜。何してるん?」加護だった。

「またチビッコは一緒かよ!」と矢口は二人を見た。

「矢口しゃんもチビッコれす。ねえ!あいぼん。」

「そやで!矢口さん。」

「うるさい!何しにきたんだ。」

「おしっこに来たのれす。ね!あいぼん。ねえ?おばちゃんも行くのれす。」
と辻は保田の手を引っ張った。

「何だよ〜!辻〜っ。分ったよ!行くから、行くから。」と
保田は辻に手を引っ張られ立ち上がった。

「ちょっと行ってくるわ!ごめん、後で…」
そう言って保田は辻に手を引かれ部屋を出て行った。

「ほな、加護も。」と加護も後に続いた。
147 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:38
「なんかあの二人見てると気持ちが安らぐな!」と
誠が二人を目で追いながら言った。

「たまに会えばね!一緒にいるともういい加減嫌になってくるね。
しょっちゅう怒ってばっかりだよ。」

「確かにそうかもな!」と誠は笑いながらい見ていたが、
こちらを向いた時には真顔になっていた。

148 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:40
「おいらとしては誠がそういう気持ちなんだったら、
どうこうしようという気持ちは更々ないんだ。
ただ高橋に自覚を持ってもらえればそれで良いと思ってるんだ。
アイドルとしても一人の女性としてもね!
だから分って貰える為にこっちも真剣な気持ちでぶつかって行く。
だから誠もそれとなく高橋に話してくれない?その事を…
もし高橋が私みたくなったら、あんたどうするの?」

「まあ、本人を前に言うのもなんだけど、あんな面倒な事は御免だな!」
と誠はきまり悪そうに言った。

「やっぱりね!」と本音を聞いた矢口は、缶ジュースを一口飲んでから笑った。


          ……………
149 名前:NAO 投稿日:2006/03/11(土) 23:42
本日はここまでにします。
ありがとうございました。続きは…
明日にでも。
150 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 16:34
こんにちわ!
今日はこの時間に書かせていただきます。
ちょうど物語は真ん中あたりまできました。
宜しくお願いします。
151 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 16:36
 愛はそわそわしていた。
ここのところお互いに忙しくてなかなか顔を見る機会が無かった。
久しぶりに誠に会えるのだ。
さっき楽屋の前を通った時には彼はいなかった。
トイレに行くついでに、もう一度さりげに楽屋に行ってみようと思い歩きだした。
廊下を歩いていると10センチ程扉が廊下側に開いてる部屋があった。
なんか危ないな!っと思ってなにげに部屋を横目でチラッと見た時、
身体が固まってしまった。
誠の横顔が見えたのだ。それと見覚えのある女性も…
「矢口さん!」愛は思わず声が出そうになったが、
手で口を押さえ後ずさりした。
足がガクガク震えて立っていられなくなり、
壁を左手で押さえながら壁に背中をつけた。
152 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 16:38
二人は何やら顔を近づけて笑っていた。

愛はこの時、確信した。

前々から誠と矢口さんはおかしいと思っていた。
二人とも妙になれなれしい言葉使いで話してるし
前に誠が「俺は矢口の事よく知ってる」って言ってたのは
付き合ってるからそう言えたんだ。

「ひどい!」と愛は心の中で思った。
私の事を好きだ!って言ってくれたのに
それなのに…ほんとは矢口さんと愛し合ってたなんて。
私は騙されていたんだ。遊ばれてたんだ。そう思うと悲しくて涙が出た。
それと同時に矢口さんに対する怒りも沸いてきた。
153 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 16:39
二人になった時、誠が私の事を話して
矢口さんはそれを聞いて「バカな女!」って笑ってると思うと無性に腹が立った。

涙は悲しみから怒りの涙に変わっていった。
きっとバカな女だ!と腹の中で思ってるんだ。
私の誠を好きになるのは10年早いってね!
そういえばこの頃、矢口さんの私を見る目が違うって思ってた。
あれは哀れみの目で私を見てたからなんだ。
叶わぬ恋なのに背伸びして、おこちゃまがさ!ってね。

愛は怒りに満ちてトイレも行かず震える足取りで引き返した。


          ……………
154 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 16:41
「そういえば圭ちゃん遅いね!」と矢口は扉の方を見た。
さっき辻達が出て行った時、加護が扉を中途半端に閉めて行った。
開けといて!と言おうかと思ったけどすぐ帰ってくるからいいか!
と思って何も言わずにそのままにしておいた。

その時、人影が見えて扉が開いた。圭織だった。

「あれ?圭ちゃんは。」と飯田は部屋を見渡して言った。

「さっき辻、加護が来て一緒にトイレに行ったんだけど、
全然帰って来ないのよ。どうしちゃったんだろう?」

「おおかた二人に何かせがまれてるんでしょ!それよりどうなった?」

「うん、やっぱり誠は、気持ち的に高橋の事、どうやら好きみたいなのよ。
だからどうするって言ったって、結局は二人の問題になってくるから
私達は忠告する位しか出来ないんじゃあないかな?」
155 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 16:42
「それって矢口の事、話すって事?重いなぁ〜!」

「大丈夫、かおりや圭ちゃんには迷惑掛けないから…私だけで何とかする。」

「何?それって矢口一人で高橋に言うって事?」

「うん、今回はやっぱり私に任せてくれないかな?自分のした事に今回で
ケリがつきそうな気がするんだ。
だから、いいかな?圭織。」と矢口は言った。

「わかった、そこまで言うなら矢口に任せるよ。
にしても誠!あんたさっきから黙ってっけどあんたこそどうすんのさ!」
と飯田はお前が当事者だろうって顔で誠を見た。

「俺は…俺は、愛ちゃんに気持ちを伝えるよ!
今までの経緯を全部話して。その上できちっと言う。」
と飯田を真っ直ぐ見て言った。
156 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 16:43
その時、廊下の方で「テヘテヘ!」と笑い声がして3人が戻って来た。

「遅いよ!圭ちゃん。何処までトイレ行ってたの?」と矢口が呆れ顔で言った。

「んんなん、この辻がさぁ〜、ジュースがほしいって言うもんだから
自販機に行ったのさ。
したらオレンジジュースか、りんごジュースかで悩む、悩む。
全然決まんないんだもん。結局、両方買わされちゃったよ。全く!」
と辻の頭を叩いた。

辻はそれでも嬉しそうに缶ジュースを前に出して笑った。

「もう、お前達早く行きな!」と飯田が辻、加護に行った。

「ここでジュース飲むのれす。」と辻は缶ジュースを机に置いて座ろうとした。

「辻〜!いい加減にしろよな!向うへ行けってんだよ!」と矢口が睨んだ。

「のの、行こう。」と加護が矢口の怒りを察知して辻を引っ張った。

「へい、ごめんらさい。」と辻も慌てて缶ジュースを抱えて立ち上がった。
157 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 16:44
「じゃあな!お二人さん。」と誠が笑いながら手を振ると、
二人は首をすくめて怯える様に出て行った。
「あんな言い方して大丈夫か?」と誠が矢口に言った。

「全然、平気。あいつらは全然応えてないって。いつも右から左だもん。」
と矢口が言い終わる前に、廊下から二人の笑い声が聞こえた。
「ほらね!あんなもんよ。」と矢口は笑った。つられてみんな笑った。

「御免、で、どうなった?」と保田が聞いた。

「矢口が高橋に話す事になったよ。自分の気持ちにケリをつける為にもだって。」

「そっかぁ、じゃあ頼むよ!なんかあったらいつでも連絡して。」
と保田は矢口に手を差し出した。
矢口も保田の手を握り握手をした。

「今日これが終わったら全員事務所に行くじゃない。その時に話すわ。」
と矢口が言うと同時にスタッフが誠を呼びに来た。

誠は矢口に「じゃあ、頼む。」と言ってお辞儀をして出て行った。
158 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 16:46
「軽いもんだね、本心なのかね?」と保田が誠の出て行った辺りを見ながら言った。

「私さ、あれからずっと誠の事、見てきてるじゃない。
あいつさぁ、結構つっぱってんだけど以外に寂しがりやなのよ。
だから、それを悟られない為に変につっぱってんのよね。
きっと根は良い奴だと思うんだ。不器用なだけで。」
と矢口は缶ジュースを指でなぞりながら言った。

「さあ、あっしらも行こうか!」と飯田が立ち上がった。

3人は決意を胸に楽屋に戻った。

楽屋には全員いた。高橋は隅でこちらを怖い顔で睨んでいた。
その目は冷たく刺さるように鋭かった。
159 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:43
矢口は高橋の所に歩み寄ると
「今日、これが終わって事務所に行った後、少し話しがあるんだけど…いいかな?」
と聞いた。

すると「別に話す事はありませんけど。」とやけに冷たく言い放った。

ちょっと驚いた矢口は「何でもいいから少し付き合ってくれない?」と語気を荒げて言った。
すると「そんなに矢口さんが言うならお付き合いします。
私もこの際、聞いてみたい事があるので。」
と高橋は妙に含みのある言い方をした。

「何を?」と矢口が聞き返すと
「別にその時でいいんじゃないですか?」と感情の無い冷たい言い方で答えた。
その間、高橋は一度も顔を上げなかった。

……………
160 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:44
高橋はその日の収録は終始ぶっきらぼうだった。
帰りのマイクロバスの中で高橋は飯田に注意を受けたが、
ぼそりと「すみません。」と答えた以外は下を向いて何も言わなかった。

事務所で明日のスケジュールを聞いて高橋と矢口は事務所の会議室に行った。

飯田と保田は近くの行きつけのバーにいるから
なんかあったら電話して!と言ってくれた。

この会議室は昔、私が元リーダーだった中澤さんに呼ばれて話をした場所。
私は敢えてこの場所を選んだ。
私にとっても全てをリセットして再出発する為にも…
161 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:46
「お疲れさん。何か飲む?」

「いりません。」と高橋はきっぱり言った。

「そう、じゃあおいらは喉が渇いちゃったから…」
と矢口はそう言って給湯室に向かった。

その背中に吐き捨てるように
「矢口さん。私、疲れてるんで言いたい事があったらさっさと言ってもらえません!」
と高橋は言った。
162 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:47
矢口はピクッとして立ち止まり振り返ると
「ちょっと高橋!あんたそれどういう意味よ。
だいたい今日一日のあんたの態度は何よ?
何があったか知らないけどふてくされてさ!
私たち芸能人は見られて何ぼの世界なのよ。
いくらその日に気分が悪くても現場に着いたら笑ってないといけないのよ。
それがプロってもんなのよ!」
と語気を荒げて言った。

「そんな事分ってます。でも、私がこうなった事は
矢口さんが一番知ってるんじゃあないんですか?」
と刺す様な視線で矢口を睨んだ。
163 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:48
「何よ?それ。言ってる意味が分んないんだけど」
と言って矢口は高橋の方に近づいて行った。

「分らないんでしたら別にいいです。
じゃあ私、疲れてるんで帰ります。
お疲れ様でした。」
と頭を下げるとくるりと後ろを向き、部屋を出て行こうとした。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!まだ何も終わってないんだけど。
あんた、何言ってんのさ!」
と矢口は高橋を睨み付けた。
164 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:49
振り向いた高橋はその視線を真っ直ぐ受け止めて
「言っておきますけど私、矢口さんの事、大っ嫌いです。ううん、違う。
人間として最低な人だと軽蔑してます。
だからはっきり言わせてもらいますけど、貴女と話す気持ちはありませんので。
でも、これだけは言わせてもらいます。
私、絶対貴女には負けませんから!じゃあ。」
と高橋は歩き出した。

「ちょっと待ちなさいよ!負けるとか負けないとか意味分んないんだけど
おいらはあんたとハラシの誠の事で言っておきたい事があるだけなんだよ!」と言った。
165 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:50
高橋はほらね!と思った。
「分ってますよ、矢口さん。誠さんと別れろ!って言う為に呼び出したんでしょ!
最低ですよ、矢口さん。私、絶対諦めないから。
誠を思う気持ちは矢口さんには負けてないって自信ありますから…
でも、矢口さんって卑怯ですよね!
誠が私と遊んでるのを知りながら影で私の事、笑ってたんだから。
最初からおかしいと思ったんですよ。
なんか二人とも馴れ馴れしかったし
怪我の時も誠、すごく心配してたから何かあるな?って思ってた。
でも、憧れだった誠が私を好きだと言ってくれたから
だからその時にはそんな気持ち全部飛んでしまった。
誠が私を選んでくれたんだって…でも違ってた。
今も誠と矢口さんはそういう仲なんですよね!」
166 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:52
「ちょっとあんた。何、勘違いしてんのさ!そんな事ある訳ないじゃん。」

「しらばっくれないでくれます?
現に今日だってコソコソ隠れて二人で会ってたじゃないですか!
私、見たんですから!二人で寄り添って笑ってたのを。
きっと私の事で笑ってたんだわ。」と高橋は苦々しく言った。

「ハア?何、寝言言ってんの?確かに今日、誠とテレビ局で会って話したわよ!
けど圭ちゃんやかおりもいたわよ。
それにそれだってあんたの事、心配しての事なんじゃない。」
と矢口は反論した。

167 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:53
「矢口さん!子供じゃないんだから
嘘をつくならもっとマシな嘘をついてもらえます?
もしそうだとしたら、保田さんや飯田さんは透明人間だったんですね!
アハハ!バカらしい。人をバカにするのもいい加減にして下さい。
これ以上ここにいても時間の無駄ですから…」
と高橋はは出口に向かった。

「待ちなさいよ!」と矢口は高橋に近づくとその腕をつかんだ。

すると高橋は
「やめて下さい!」とおもいっきりその手を振り払ってこちらを向いた。
168 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:54
「私は誠になら全てを預けても良いと思ってる。
誠以外に考えられないし、
それで娘。を辞める事になっても全然構わないって思ってるのよ。
だから矢口さんには絶対負けたくない。
絶対に絶対に誠をこちらに向かせてみせる。
その為には矢口さんを先輩なんて思わない!矢口さん言う事なんて聞く気にもなれない。
そりゃそうですよね〜!騙されてたんですからね!
先輩面した矢口さんに!
じゃあ、私は帰りますから。」
と高橋は一方的にまくし立てて踵を返そうとした。

その瞬間、パチーンと乾いた音が部屋に響いた。
高橋は頬を押さえて矢口を睨んだ。

矢口は泣いていた。
169 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:55
「バカ!高橋。あんた、何で分ろうとしないのよ。
おいらはあんたに私と同じ過ちを犯してもらいたくないだけなんだよ!
あんた、昔から誠のファンだ!って言ってるらしいわね。
だったら前に同じ事務所の人が解雇された時の事は覚えてるわよね?」

愛は矢口が何を言おうとしてるのか理解できなかった。
でも、その事は覚えていた。
乱交パーティーをしてそれが週刊誌に載ってしまい、その人達がクビになった。
その中に誠の名前もあって、当時その写真を週刊誌に売った
なんとかってレースクィーンに騙されたんだってファンの間で大騒ぎになった。
結局、誠は謹慎だけですんで、あの時ホッとしたのを覚えている。
170 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:56
矢口はフ〜ッと息を吐いてから
「あの時クビになった中にナオって人がいたんだけど
おいらその人と付き合ってたんだ。」

愛は驚いて矢口を見た。
ナオって言えば誠達の番組に出てて、よく誠と一緒に歌ってた人じゃん。
覚えてる!
私の周りにもナオファンの人達、一杯いたし、コンサのバックでも踊っていた。
171 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:58
「おいらとナオは誠が仲を持ってくれたの。私たちすごく気が合っちゃってさ。
初めて合コンした日に彼とならうまく行くかも?なんて思っちゃったのよね。
それからのお付き合いは順調だった。
それこそ今の高橋みたく浮かれちゃって、よく裕ちゃんに叱られた。
でも、そんな時にあんな事があってナオは芸能界を追い出されちゃったの。
でも私的にはどこにいようとナオには変わりなかったし、愛していたから
ナオについて行こうと決心したの。
でも、その頃からナオの態度が急変したの。
私に暴力を振るうようになった。
それでもおいらはナオの側を離れられなかった。
暴力を振るわれてもそれも愛情なんだと思った。
172 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 17:59
ある日ナオが、俺がこの世界戻れないのは誠のせいだ!
と私をぶった時、私は誠を憎んだ。
確かに誠だってあの時、一緒にいたのにナオだけクビになって
誠は芸能界でチヤホヤされてる。
だから誠が電話をしてきた時、二度と私に近づかないで!と言った。
それから暫くして、リーダーだった裕ちゃんに呼ばれてナオとの関係を聞かれた時
誠がメンバーにチクりゃがったと思い、私は誠に怒りの電話を入れた。

その事で私、完全に切れちゃって‥

もうウォー娘。辞めてナオの側に居ようと決心したの。
173 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:00
その事を事務所に言う前にメンバーに言ったら、その夜、裕ちゃんに呼ばれた。
そう、ここにね!
色々かなりきつく言われたけど、おいらの気持ちは変わらなかったし
言われる事もうざかった。
かなりひどい事を言われて…ううん、後から思えば
裕ちゃんの優しさだったんだけど、
あの時はそんな事も考えられない程一途にナオの事、愛してたから。
174 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:01
それでもう何が何だか分らなくなっちゃって…」
と言って矢口はトレードマークのリストバンドを外して私の目の前に手首を見せた。

「あっ!」と声が出た。

「そう、そこの給湯室に置いてあった果物包丁でリストカットしたの。」

愛は心臓が激しく脈打つのを覚え、膝ががくがく震えてその場にへたり込んだ。
175 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:02
「切った事は覚えてないの。
でも、滴り落ちる自分の血を見た時、何でこんな事したんだろう?
すごく痛い!って後悔した。
で、その出血の多さにビックリして意識が飛びそうになった時、
裕ちゃんが駆け寄って来て自分の穿いてたパンストを手首にぐるぐるきつく巻いて
おいらの頬をぶって
「しっかりしなさい!自分の心臓より上に手を上げてないさい!」
って叱ってくれたの。

それですぐ他の人を呼んで来て、隠密に病院で手当てをした。
幸い早めの応急処置が良くて大事に至らなかった。
その時、事務所にはメンバー全員心配して居てくれてたみたいで
真っ先に部屋に駆け込んで来たのがメンバーだった。
176 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:05
その日は病院に大事をとって入院したらしいんだけど…

おいらは興奮してたみたいだから安定剤を注射されて朝までぐっすり寝てたみたい。
でも朝、目が覚めたら隣に裕ちゃんと圭ちゃんと圭織が居た。
みんな一睡もせずに付っきりでいてくれたみたいで、
私が目が覚めたとき何事もなかった様に
「おはよう!」って言ってくれた。
3人とも真っ赤な目をしてひどい顔だった。
その時、おいら分ったの。私の居る場所はこっちだって。
こんなに良い人達が側にいるのに、何てバカだったんだろうってね。
だからおいらはそれから自分でけじめをつける為にナオに別れを告げた…」
177 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:06
「ねえ?高橋。」と矢口は愛を抱き起こすと椅子に座らせた。

「私ね。男と女の仲は考えて行動するものじゃないと思うの。ましてや恋愛はね!
でも、それでも時には考えてみる事も必要だと思うの!
そして高橋にはそれが今だと思うの。
どうだろう?考えられないかな?
おいら、高橋においらと同じようになって貰いたくないよ。
こんなバカはメンバーに一人で十分なの。」
と矢口は泣きながら言った。
178 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:08
高橋は何も言えなかった。余りに衝撃的な事実だったからだ。
こんなに元気な矢口さんにそんな過去があったなんて…
それに今の今まであのリストバンドはお守りだと思っていたのが
手首を切った傷を隠す為の物だったなんて…

「高橋!」と矢口がもう一度言った時、
会議室の扉が開いて飯田と保田と中澤が泣きながら入ってきた。

飯田は座って泣いている愛の肩を抱いて
「矢口!もういいよ。高橋も分ってくれるよ。」と言った。

「矢口!お前、大人になったな!」と中澤は矢口を抱きしめて言った。

「なんか心配で裕ちゃん呼んじゃったよぉ。」
と保田は何かのビニール袋を差し上げて言った。

「エヘヘ、なんだよ。裕子!なんでいるんだよ!」
と矢口は中澤の胸で思いっきり声を出して泣いた。

「うん、うん。よお頑張ったなぁ〜!えらいでぇ〜。」と頭を中澤は撫でて言った。
179 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:09
「ねえ、高橋。矢口がここまで自分の恥を話したのは何でだかわかる?
勿論、高橋の事を一番に考えての事なんだけど、他にもあるの。
こいつ、この会議室には絶対に近づかなかった。
そりゃそうだわね。嫌でも辛い過去を思い出しちゃうもんね。
でも、そんな矢口がここをお前との話し合いの場に選んだ。
何でだろう?それはお前を助ける事で自分も過去を断ち切りたかったのよ。
高橋を助けて自分も再出発するんだ!って言う強い気持ちがね。
だから、高橋。矢口のそんな気持ちに答えてあげられないかな?
ほんのちょっと自分の気持ちをセーブするだけでいいんだよ。」
と飯田は言った。
180 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:10
「あんな、高橋。みんなはな、お前の事責めてへんのよ。
誰かて人を好きになるんやし、お付き合いかて自由やん。
せやけどな、こういう世界に入った以上どっかでなんかを犠牲にせなあかんのんや。
矢口もそれが分からへんかった。せやから、あないな事になってもうた。
でな、この頃の高橋を見ててな、自分とだぶって見えたんやろな!
そんでなんとかせなあかん!って思った訳やろな。
こいつも真っ直ぐなとこがあるから…
こないして言ってもらえるうちが華やで。ほんま、高橋〜っ!」
181 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:11
愛は飯田に背中を押されて立ち上がった。
そしてゆっくりと
「うまく言えないけど私も舞い上がっていた様な気もします。
だって昔から憧れていた誠に告白されて夢の様な気持ちだったし。
私、ほんとに恋愛をした事がなかったんで、全てが新鮮でまるで別世界にいる様だった。
何もかも見えなくなり誠中心に生活が回っていた。
人を好きになる事がこんなに素敵でそして切ないかを知った。
会えない時間を考えると誠に会うたびに悲しくなって、
いっそこのままずっと誠の側に居ようかと思った。
でも、私にもお仕事があるし彼にもある。
そのジレンマに陥ってお仕事がおろそかになってしまってた。
自分でも分ってたんです。
でも、どうする事もできなくて…ウ、ウッ。ごめんなさい。」
と高橋は涙で声を詰まらせた。
182 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:13
「もぉ、ええ!なんも言わんで…」と中澤は言った。

「よし、乾杯だ!」と保田は持っていたビニール袋を開けて中からお酒を出した。
「ほら、みんな!」と紙コップを渡し、その中に日本酒を入れた。
「高橋と矢口は未成年だけど、まあいいっか!」と保田は言って笑った。

「ええで!お祝いやしな。こら、圭ちゃん!もっと入れてえな。」
と中澤はコップを突き出した。

「じゃあ、リーダー。乾杯の音頭をとって!」と保田が言った。

「あっし?なんか裕ちゃんがいると照れるな。
じゃあ、高橋の恋愛再出発と矢口の人生再出発に乾杯〜!」

「かんぱ〜い!!」とみんなはコップを上げた。
183 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:14
初めて口にしたお酒の味はまずかった。喉から胃がカ〜ッと熱くなった。
でも、この感覚は忘れないでおこうと思った。
これでやっと本当の意味でウォーニング娘。の一員になれた様な気がした。

「さあ〜!飲み直しやでぇ。よぉし、全員参加!行くで〜、高橋、矢口。」
と中澤は二人を引っ張って行きつけの飲み屋に誘った。

私は乾杯のお酒で酔いが回り、その後の事は殆ど覚えてなかった。
ただ、トイレで何回も吐いた記憶だけはある。

その後、中澤さんがタクシーで家まで一緒について来てくれた。
親には飲み屋に行く前に電話を入れてくれていた様だったみたいで何も言われなかった。

次の朝、所謂二日酔いで目が覚めた。
頭がガンガンして気持ちが悪かったけど
すがすがしい朝だった。
184 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:15
【裏切り】

 最悪の体調でレギュラー収録に向かった。
矢口さんもそうとう辛そうで司会役の中澤さんに「矢口〜〜!」
って抱きつかれて
「裕ちゃん、止めて。頭、ガンガンする。」と言っていた。
みんな変わらず接してくれたのが嬉しかった。
特に中澤さんは「今日のゲームはお前ら、休ましたるな!」
と言っておきながら
「はい!高橋。」「はい!矢口。」の連続で、それを楽しんでいる様だった。
でも、それもあの人の優しさだと思った。
収録終わりに飯田さんや保田さん、矢口さんが握手をしてくれた。
その時、矢口さんの手首にリストバンドがない事に気が付いた。
新しい人生の始まりなんだと思った。

その夜、愛は誠に電話をかけた。


     …………
185 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:16
誠もここ2日何となく眠れない日が続いていた。
昨日、遅くに矢口から電話が入った。
なんか酒を飲んだらしくてロレツが回ってなかったけど
ものすごく嬉しそうに
「おいら、高橋に全部話しちゃった。したら、もう最高!」って叫んでいた。
あぁ、もう解決したんだ。
後は俺の気持ちだけだな!って思ったけど、
こんなの初めての感覚で何となく気持ち悪かったのだ。
それでも電話をしなければと携帯の待ち受け画面をそれとなく見ていたら
愛の方から電話がきたので驚いた。

「もしもし、愛?」

「誠?こんばんわ!」

「御免ね、こんな時間に。」

「いや、全然構わないよ。」
186 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:18
「あのね、昨日矢口さんと話し合ったの。
それで私、矢口さんの過去を知った。
正直驚いた。私の知らない所でそんな事があったなんて…。
でね、私、気が付いたの。ううん、気が付かされたのが正解かな?
私の重い気持ち誠の負担になってるんだってね。!
私、いつでも誠の側に居たかった。誠の全てを知っていたかった。
でもね、ほんとの恋愛は知らない所があった方が良いって事を教えられた。
でも誠を愛するその気持ちは変わらないの。これからも…
でも、今迄の気持ちのままじゃいけないって事も教えられたの。
変わらなければ矢口さん気持ち、踏みにじる事になるし。
だから私、プロとして自覚を持って誠と付き合って生きたいの。
だから、誠の気持ち教えて!」と愛は冷静に言った。
187 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:19
「もしもし、俺な。あれから色々考えてたんだ。
ほんとにゴメンだけど最初、愛の事遊びだった。
でも、何時からだかわかんないんだけど、
今まで感じた事のない気持ちが沸いてきたんだ。
それが愛って感情なのかもしれない。
とにかく今まで感じなかった気持ちなんだ。
それで昨日矢口から電話があった時、
あいつ、もうリストバンドはしてないって言った。
あんな小さい物なのに
こんなに腕が軽く感じるとは思わなかったって不思議がってた。
それを聞いた時、あいつはもう呪縛から解けたんだな!って思った。
だから今度は俺の番だと思った。」
「もしもし、愛?」

「はい。」と愛は返事をした。
188 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:19
「本当の気持ちで言う。ズルイかもしれないけど、
俺のほんとの気持ちを知る為にも付き合ってくれないか?
ひどい事、言ってるのは分っている。それでも敢えて聞く。
そうでしか自分で自分を見つけるのは…」と誠は言った。

愛は暫く黙っていたが「ありがとう。宜しくお願いします。」と言った。


みんな新しい船出だと愛は思った。
189 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:22
それから皆はお互いの生活を楽しんだ。
矢口は前にも増して元気に仕事に打ち込んだ。
勿論、あれからリストバンドはしていなかった。
愛と誠もお互いに仕事とプライベートをきっちり分けて、良い恋愛をしていた。
皆が幸せに過ごせると思っていた。
190 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:26
そんなある日、愛たちは朝からレギュラー番組の収録のために
テレビ局に詰めていた。
収録前の時間、みんなと遊んでいると、
中澤さんが慌てて入ってきて私と矢口さんを呼んだ。
なんだろう?と近づくと
「大変や、ワイドショーがえらい事になっとるで!これ見てみ!」
と一冊の週刊誌を差し出した。

表紙に書かれた文字の意味を理解できるまでに数分掛かった。

『トップアイドルグループH≠フ超人気M≠フ夜のご乱交。
グラビア・アイドル&寄り添う女性。』
191 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:27
震える手でページをめくって愕然とした。
そこにある写真の一枚に見覚えがあるのだ。
ピンボケてはいるものの間違いなくコスモスを見に行った時のものだった。
フードをかぶり下を向いているので人には分らないけど、
誠から借りた革ジャンと誠のニット帽はあの時のものだった。

「なんやわからへんけど、騒ぎになるで!高橋、電話しとき!」
と中澤さんが言ってくれたので急いで楽屋に走り電話をした。
ワンコールで誠は出た。
誠もマネージャーさんに聞かされて今テレビを見てるとこだった。
192 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:27
「もしもし、愛?今、俺も見てる。
なにが何だか分らないけど、とりあえず事務所に行ってくるよ。
暫く連絡できないかもしれないけど、なるべく電話するから。」
と誠は言った。

「あっ、誠?あの時の…コスモス見に行った時の写真が出てるの。」
と愛は言った。

「えっ?マジで?分った。
俺はまだ週刊誌見てないんでなにも分らないから見て確認するわ!
愛には迷惑かかんないと思うけど、もし何かあったら携帯に連絡して!
そろそろ、マネージャーが来る頃なんで切るね!」
と言って誠は電話を切った。

スタジオに戻ると「どうだった?」と聞かれ、先程の誠の話をした。
数人のメンバーはスタジオ横のテレビでワイドショーを見ていた。
ものすごく気になったが愛は敢えて見ないようにした。


          ……………
193 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:29
 ある朝、誠は電話で目が覚めた。
「誰だよ!こんなに朝早く。」と半眠り状態で携帯を取るとマネージャーだった。
とにかくテレビをつけろ!と言うので何だよ!
とテレビをつけて目を疑った。
なんだか俺の事が話題になってる様だった。
「とにかく今から迎えに行くから支度をして待ってろ!」と言われた。

 誠は訳が分らないまま電話を切って着替えながらワイドショーを見た。
どうやら俺の私生活を暴いた盗撮写真を、誰かが週刊誌に売ったらしい。
芸能レポーターが盛んに写真の説明をしていた。
グラビア・アイドルとのデートや深夜の密会などが載ってるらしかった。
何だ?
グラビア・アイドル?麻由か?
194 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:30
麻由だとしたら何度も会ってるから撮られた可能性もあるな!
しかし深夜の密会も麻由か?と考えていると携帯が鳴った。
マネージャーにしては早いな?と思ったら愛からだった。
愛は週刊誌をもう見たらしく、中澤さんに言われて電話を掛けたと言った。
コスモスを見に行った時の写真が載ってる!って言われた時
信じられなかった。
どうしてそこまで撮られてるんだ?
まるで俺をストーカーみたく狙ってる奴がいるみたいじゃないか!と思った。
とにかく愛には迷惑をかけないからと言って電話を切ると
すぐにマネージャーから着いたからと電話があり部屋を出た。

195 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:32
車中、マネージャーが来る時に買ってきたと言う問題の週刊誌を渡された。
手に取って表紙を見た。
『トップアイドルH≠フ超人気"M≠フ夜のご乱交。
グラビア・アイドル&寄り添う女性。』
なんだかすごいな!と人事の様に感心した。
これだったら俺でも見るわな!と変に関心した。
表紙をめくると問題の写真は次のページにあった。
そのピンボケた写真を見た時、あっ!と声が出た。
196 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:33
あの時の写真だ!確かあの時…そうだ!
あのカップルの横を通った時だ!
カメラのフラッシュが変な方向に光って、おや?と思ったんだ。
やっぱりあの時、撮られたんだ!
覚えてるぞ!背の高い男とだみ声の女。
不自然だと思ったんだ。クッソー!あいつら。
あそこまで先回りしてやがったのか!
そう思うとムカついて、思わず車のソファーを拳で叩いた。
「許さねえ!」と声が出てしまった。
197 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:34
次の写真はつい最近のものだった。
それは麻由の22歳の誕生日パーティーをした時の写真だった。
パーティーで借りたフランス料理店から2次会に行こうと
お店を出た所を撮られたものだった。
まるで二人仲良く出てきた様に写っているが、
お店の中には麻由の仲の良い芸能人も沢山いたし、
この写真にしたってわざとツーショットになる様に端をカットしてあった。
現によく見ると俺の隣に一緒に出てきた
俳優の叶良の左足が見えるのだ。
この時、良はエナメルの白い靴を履いてきて、
皆に「それはないだろう!」とからかわれていた。
そのエナメルの靴が見えるのだ。
198 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:35
明らかに俺を狙った記事だ。

「くっそー!何だってこんな事をしやがるんだ。何が目的なんだ!」
と誠は苦々しく言った。

マネージャーは「これは事実なのか?」と聞いた。

「本当の事を言わなきゃいけないのか?
プライベートは干渉しないが事務所の方針だったけど…」

「勿論、干渉はしない。
でもこうして週刊誌に出てしまった以上、
事務所としても善後策を考えないといけないから。」
と言った。
199 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:36
「ボケてる写真はコスモスを見に行った時の写真で間違いない。
でも相手はマネージャーでもいえない。これだけは察してくれ。」

「と言う事は同業者か!」

「ああ、そうだ。こればっかりは相手がいる事だし、
相手の事務所にも迷惑がかかるから勘弁してくれ。
幸いな事に彼女の顔は全くわからないからバレる事はないと思うし。」

「わかった。じゃあ聞かない。それじゃあもう一枚の写真はどうなんだ?」

「あれは完全にハメられたよ。写真を細工してある。
この写真は麻由のバースデー・パーティーによばれた時の写真だ。
パーティー会場から出た所を撮られたらしい。
でも、この時だって他の奴らもたくさんいたし、
それを俺と麻由のところだけカットして載せてやがる。
こんなの、麻由や良に連絡を取れば絶対に説明してくれるよ。」
200 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:37
「そうか、分かった。しかしお前、何にしろ誰かにはめられた事は事実だからな。
誰かに恨みを買われる様な覚えがあるのか?」

「この世界にいれば何処かで誰かに恨みなんて買われるものさ。
そんな事、マネージャーが一番分かってるだろう。」

まあな!とにかくこれから事務所に行ってどうするかは決めるけど、
暫くはおとなしくしてろ。」
とマネージャーは言った。

事務所に着くとすでにマスコミが大勢入り口のところに陣取っていた。
誠は後部座席に身を隠して入り口を通り抜けた。
201 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:37
事務所で色々話し合った結果、とりあえず会見をする事になった。
麻由とのツーショット写真は切り取られた写真だと言う事を前面に出して
コスモスの写真はボケてるから本人ではないと言う方向で
話を持って行く様にした。
その前に俳優の良にも電話をして、
この前の麻由のパーティーの事がフォーカスされた事を伝えた。
良は笑っていたが、それなら俺がいくらでも事実を答えてやるから
マスコミをこちらにまわせ!と言ってくれた。

1時間後、誠達は会見を開いた。
マスコミはこの写真は事実なのか?もう一人の女性は誰なのか?
と言う質問に終始した。
202 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:38
グラビアアイドルの麻由さんとのツーショット写真は?と聞かれた時
それは写真を細工されてこの写真の右隅に写ってる白い靴が俳優の叶良で
本人に確認を取ってもらえば事実が分るとレポーターに言った。
じゃあ、この少しボケの写真は?と聞かれたが

「こんなの俺だって分ります?
ここに一緒に載ってるから俺かと思っちゃうだけで
これが単独であって誰だ?って聞かれても
絶対誰だか分らないと思いますけど?
こんなの僕じゃあありませんよ。
第一こんな女性知りませんし、
忙しくて暇がない事位皆さんの方が知ってるじゃありませんか〜!」
と誠は笑いながらレポーターに答えた。
203 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:39
「とにかく今回、何らかの形で誠ははめられてしまいました。
それが誰かは雑誌社の方に確認を取れば分る事です。
誠も言っています様に事実無根もいいとこです。
これからこちらサイドからこの雑誌社側に事実確認をしたうえで
何らかの形で対処したいと思います。
それが損害賠償になるかはあちら側の出方しだいになりますが…
とにかく今回はこういう形ではめられてしまったんですが、
誠もファンに迷惑をおかけしたと反省しておりますんで…」
とマネージャーが頭を下げた。
204 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:40
最後に一言と言われ

「僕を応援してくれている皆さん、ほんとにごめんなさい。
こんな事になってしまったのは僕の気の緩みだったと反省してます。
これからはこんな事にも負けないで一生懸命頑張って行くんで
応援よろしくお願いします。
ほんとにすみませんでした。」
と誠も頭を下げた。

結果的にこの会見を開いた事は正解だった。
この写真の真実を追究される事なく、こちらが被害者になる事が出来たからだ。
それに、事務所側が動く前にマスコミの方が先に出版社の方に出向き、
写真誌の記事の事実を追求し始めていたのだった。
205 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:41
初め写真誌側は言論の自由を脅かすもので
名誉を傷つけられたとして訴えると息巻いていたが、
マスコミの執拗な質問に次第にボロが出てしまった。
そうなるとマスコミの鋭い質問にたじたじになり、
とうとう写真の出所や
おかしいと知りながら記事を載せた事などを認めてしまったのだ。
206 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:42
確かにこう言った暴露記事は出所さえしっかりしていれば爆発的に売れる。
まさに誠の事務所の記事なんかは良い例だった。
あの時は出所が有名な人気レースクィーンだったので
三流週刊誌でもマスコミに叩かれる事もなく、
むしろその記事が手柄のように扱われ、
結果その週刊誌はその後もスクープ週刊誌として爆発的に売れ続けた。
小さかった出版社は企業拡大して行き、
みるみるうちに業界大手の出版社に成り上がって行った。

(余談だが、あの記事を売ったレースクィーンは後に、
この記事が縁でここの二代目と結婚してセレブな奥様に納まっている。)
207 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:43
しかし、今回の様にマスコミに睨まれると
それこそこの業界で生きていけなくなる位叩かれる。
それは彼ら芸能レポーターも同じ土俵で戦っている、
いわば敵同士の関係に他ならなかった。

同じ芸能ネタで飯を食っている以上、
推測や所謂金儲けのヤラセなどで荒らされたら
それこそ死活問題になりかねないのだ。

その為には危険分子はとことん協力して潰していく。
でないと、自分達の地位まで危うくなると言う
変な連帯感が働くらしい。
今回の記事もそれと判断したようだった。
結果、真実探しに奔走しあっと言う間に写真の出所を見つけ出してしまった。
208 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:44
その人物は下町のスナックのママで
ある人物に頼まれて写真を週刊誌に売ったと言った。
そしてプロの芸能レポーターの巧みな話術で、
そのある人物が誰であるのかも聞きだしてしまったのだ。

その人物の名前を聞いてレポーター達は色めき立った。

その名前は誠の耳にも入りそのうえでコメントを求められ、
その日の昼のワイドショーに緊急生会見となった。
209 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:45
誠は困惑していた。
あまりにも意外な人物の名前が出たからだった。

ナオ…
今になってナオの事を聞かれてもコメントのしようがなかった。
ただ、わからない。と言うしかなかった。
ワイドショーは何故今になって彼がこのような行動に出たのか
興味津々だったが
誠にはナオの真意が全く理解できなかった。


       …………
210 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:45
昼休みの時間、愛達はワイドショーを見ていた。
その後の事が気になって仕方なかったからだ。

しかし、そのワイドショーの見出しを見て驚いた。
取り分け矢口さんは相当驚いたらしく、
思わず食べていたおにぎりを落としてしまった。

211 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:46
仕方のないことだった。
いくらつい先日、昔の自分に決別したと言っても、
なかなか過去は消える事はない。
記憶と言う物は脳の引き出しに何時までも納まっているものなのだ。
ただそれを日々の出来事で薄らげる事は出来る。

思い出としてその事を引き出しても時間が経てば薄れて行くのだが、
映像として自分の視覚に入ってくれば、
フラッシュバックする割合は高くなる。
まさにこの事件は矢口にとってそのものになってしまった。
212 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:47
最初に口を開いたのは中澤だった。
「なんやの?これ!誠がフォーカスされたのってあのナオにって事?」

「わかんない!マジで?」と飯田が困惑したように答えた。

愛と矢口はただ画面を食い入るように見ていた。
誠も全く理解できない様子でかなりの困り顔で画面に映っていた。

「なあ、矢口。あんた大丈夫か?」と中澤は聞いた。

「エッ?あっ、な、何言ってんの裕ちゃん!大丈夫に決まってんじゃん。」
と矢口は言っていたが、動揺しているのは誰が見ても明らかだった。

「しかし、なんで今更こんな事するのかな〜?何かあったんかな〜?」
と中澤は独り言の様に言った。
213 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:49
矢口は暫く考えた様子で黙っていたが
「多分、彼は逆恨みしてんだよ!
彼が今どんな生活をしているか知らないけど
多分、今の生活に満足してないと思うんだ。
それをきっと誠や周りのせいにして…自分で努力もしないで。
今こうなって気がついた訳じゃないけど、
ほんとあの時おいらは馬鹿だった。
今更だけどマジで裕ちゃん、ありがとう!
それにおいらは自分の中で結論を出したの!あの時に。
あの時、あそこに行って全てを曝け出さなかったら、
今もっと動揺してたかもしれない。
でもリセットできた今は動揺してないって言ったら嘘になるけど、
以外に冷静でいられるの。」

「何や、今更!照れるがな。それにしても強くなったな〜!矢口!」

「あたり前でしょ!女は度胸よ!」と矢口はやっと笑った。
214 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:49
「しかし、誠も色々大変やな。
高橋!あんた心の支えになってやらんとあかんで。
あの子多分ナオの事、心の何処かで信じてたと思うねん。
それを裏切られた格好になって。
あの子も男言うても、うちらからしてみたらまだまだ子供や。
つっぱって生きてても脆い所があんねん。
今回の事で限界を超えたら潰れちゃうかもしれへんからな。
ええか!高橋。」

「はい!」と愛は心に決めた様に力強く答えた。
215 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:50
その夜、愛は誠に電話した。
誠はまだ事務所にいると言っていた。
事務所としても相手がナオだとわかって、
誠が何故狙われたか理解できたようだった。

「今は、まだ事務所にいるから帰ってからもう一度、電話するよ。
心配かかけちゃったね。
それと…いやこの話は家に帰ってからにするよ!
周りに聞かれたくないからね。」
と言って誠は電話を切った。

その夜遅く、誠から電話があった。
216 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:51
「もしもし、愛。今日はごめんね。なんかビックリさせちゃったね。」

「ううん、大丈夫。それより誠の事が心配で。」

「おれは大丈夫だよ!
それよりもコスモス見に行った時の写真、載っちゃったね。」

「私、週刊誌見て驚いちゃった。全然、知らなかったし…」

「俺は…覚えてるよ。
あの時、なんか不釣合いのカップルが居た事。
あれがナオとスナックのママだったんだ。
今日の昼のワイドショーで出てたおばさんのだみ声を聞いて間違いないって思った。
あのだみ声も覚えてる。」

「そうなんだ。私、何も覚えてないの。ダメね!」

「そりゃ、あんなに緊張してたら覚えてないでしょ!」
と誠は笑った。
217 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:53
「やだ!誠ったら。なんか恥ずかしい。
でも、誠が笑ってくれてちょっと安心したヨ。」

「俺は大丈夫だって。心配しないで。
でも、こんな事があったから暫くは会えないね!その方が淋しいよ。」

「うん。でも仕方ないよ。
それにそろそろツアーがお互い始まるじゃない?
その前に新曲発表もありそうだし、
なんかゴタゴタしそうだから丁度良かったのかもしれないね。」

「そうだな。そのうちこの話題も時間と共に忘れ去られて行くよ。
芸能界って色んな話題が次から次へと出てくるからね。」
と笑った。
218 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:54
「そうね。」

「あっ、そうそう。
そういえば大阪で同じ日にコンサートする日があったじゃん。
その日俺、前の日に取材が入って前日入りなったんだ。
確か愛達って2day'sだっただろう?
夜会おうよ!その頃にはこの事も収まってると思うから。」

「え〜!本当なの?嬉しい。うん、楽しみに待ってる。」

「OK!じゃあ、今日はなんか疲れちゃったからそろそろ寝るよ。
声が聞けてよかった。」

「うん、私はいつも誠の側にいるよ。誠への防波堤になるよ!」

「おいおい!それは逆だろう?」と誠は笑ってから
「じゃあ、お休み!」と言って電話は切れた。

愛は携帯に「愛してる。」と言ってキスをした。
219 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:55
誠が言う通りそれからすぐ大物俳優と大物女優の離婚、
大物歌手と女優の不倫、
若手俳優の熱愛など、立て続けに大きな出来事が続き、
誠の事はワイドショーでも取り上げなくなっていった。
220 名前:NAO 投稿日:2006/03/12(日) 18:56
本日はここまでにします。
明日はこちらに来れないので
明後日にうpします。
有難うございました。
221 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:36
こんばんわ!
今日も一人遊びをします。
宜しくお願いします。
222 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:38
【現実とのはざま】

誠がマンションに入ろうとした時、
マンションの街路灯の脇で人影が動いた。
何だ?リポーターがまだいるのかよ。
邪魔臭いなと急ぎ足で扉に近付くと「誠!」と呼び止められた。
その声に聞き覚えがあった。
先ほどの街路樹の人影が車道の街路灯に照らされて
シルエットになってゆっくりと近付いてきた。
暗闇からマンションの明かりの下に近付いた人物は
思っていた通りナオだった。
2年ぶりに会うナオは顔色も悪く荒んだ生活感が漂っていた。
223 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:40
「ナオ!ずいぶんな事をしてくれたじゃないか。
おかげでこっちはえらい迷惑を被ったんだぞ!
よくものこのこと俺の前に現れたもんだな!」
と誠はまくし立てた。

「おいおい、2年ぶりの再会なのにいきなりそれはないだろう。
俺としてはお前をぐっと抱きしめて背中を叩きたい心境なんだぞ。」

「ふざけるな!」
224 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:41
「ふざけるなだと!その言葉、そっくりお前に返してやるよ。
誠、あれから俺がどれだけ泥水を啜って来たか、お前は分かるか!
周りからチヤホヤされて生きてきたお前によ!
お前の裏切りから生まれた結果に、
俺の人生がどれだけ振り回されたか、お前は理解できるか!
だからよ、ここで一発大きい花火を打ち上げてやろうって
色々準備してきたって訳さ。
実際、色々大変だったんだぞ。
人を頼んでお前を見張り、あの写真の時だって
一か八かの賭けであそこに先回りしてたんだからな。
225 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:42
まあでも実際のところ、十中八九あそこに来ると踏んでたけどよ。
あの時期あそこに女を連れて行くのはあの事務所の定番だからな。
案の定、お前が来た時にはあまりの能のなさに笑っちまったよ。
でもそのおかげでいい写真を撮る事が出来た。
相手の顔は写らなかったけど、そんなもんどうだっていい。
その事実さえ写真に納まればな!
あんなもん取っ掛かりに過ぎねぇんだからよ。」 
226 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:43
「なあ、ナオ。お前のでっかい花火ってあれな訳か?淋しいもんだな。」

「あ〜そうだよ、淋しいもんだよ。
お前が最後の拠り所の真里まで奪っていってしまったんだからな。
だからあんなデブな中年女としたくもないセックスをして
食いつないできたって訳さ。
それもこれも全てお前のせいさ。分かるか、誠。」

「わからねぇよ!」

「ふん、そうか。だったら教えてやるよ。
お前の華やかな人生と俺の哀れな人生の関係をよ!」

「何だよ!関係って?」
227 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:46
「お前の華やかな人生と俺の哀れな人生は裏表って訳さ。
一枚の紙のな!
で、だ。表と裏が一緒って事は裏のピンチは表のピンチってなる訳よ。
ましてやお前が俺を裏にしたんだからな!
あの事さえなければ俺もお前と同じ様に表になっていたんだからな!
そうだろ?誠。」

「ナオ、お前何が言いたいんだ。」

「アレ〜?まだ分かんね〜の?
まあ、芸能界でチヤホヤされて生きてきた誠には
厳しい現実は理解できね〜かな。
まあ聞けや。
228 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:48
芸能界から追い出され真里をも奪われた俺は
あれから地方の水商売の世界に入った訳さ。
暫くは芸能界でもそこそこ売れてたから人気もあってな。
あそこのクラブに行けば芸能人のナオに会えるってな感じでな。
しかし、ホストの世界はそんな甘いもんじゃなかった。
芸能界でチヤホヤされて過ごしてきた俺には
太刀打ちできない厳しさがあった。
当然だよな。客として女が来る訳だからな。
奴らは最高の接客を求めてそこに来る訳なんだから、
こっちが満足感を与えない限り成り立たない訳だ。
そう、まさに芸能界とは全く逆の世界だった訳さ。
そんなんだから珍しさが過ぎてしまえば指名もなくなり挙げ句、
客は来なくなる。
229 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:50
他のホストの奴等は、
客が来なくなったのはお前の客に対する接客態度が悪いからだ!
芸能人崩れが生意気にホスト気取りしやがってと俺を責め
自分達の態度を棚に上げて俺を殴り、
ヘルプにも着かせてもらえず毎日便所掃除や片付けをさせられた。
当然収入だって客が付かないんだから激減さ。
でも、一度上の生活を知ってしまうと
なかなか生活レベルを戻す事は難しいんだよな。
そうなるとお決まりのパターンだな。サラ金から裏金ってやつさ。
当然返す当てなんてありゃしねぇから
利息を払うのにまた裏金ってな!気がつきゃ膨大な借金って訳よ。
裏金の奴らだって金の回収に必死だから、
怖い奴らがクラブにまで取立てにくる始末。
230 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:51
さらに運が悪い事に
クラブのオーナーと裏金とが対立するやくざの傘下だったもんだから
大事になっちまって、隠れるように逃げて来たって訳だ。
ただそれもいつまでも逃げ切れる訳ねぇ。
裏金もクラブのやくざもどっちも俺を探してるしな。
それに今回、あのバカばばぁのお蔭で俺の事がテレビに出てしまった。
出てしまった以上、奴らだってこっちの組員使って
捕まえようとするのは目に見えてる。
捕まったら最後、殺されるかもしれない。
そこで俺は考えた訳よ。
金を返せば丸く収まるんじゃないか!ってよ。
裏金だって回収できれば何も文句はない訳で、それこそお客様だし、
ホストの方にしたって、俺が金さえ返してそれなりの謝礼をして
落とし前をつければ義理が立つ。
231 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:53
そこでだ!長々くだらねぇ事喋っちまったけど、誠!
お前に借金の肩代わりをしてもらおうかな!って考えた訳さ。
元をただせば、こうなったのもお前が原因だしな。
それにお前にとっちゃ、あんな金額、屁でもないだろうからな〜!
毎年高額納税者にランキングされる誠さんならよ。
あっ!そうそう、金額をまだ言ってなかったな。
2千万だよ、2千万。なっ!安いもんだろう、誠。宜しく頼むわ!」

ちょうどその時、
マンションの近くを女子高生二人が通りかかり誠をみつけて騒ぎ出した。
「ちょっとミホ!うそ〜!誠だよ。マジ〜?」
「いや〜、いや〜、マジ!信じらんない。やだ〜!やだ〜!」
二人は誠を指差してギャ〜ギャ〜騒いだ。
232 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:54
ナオはその女子高生に向かって
「ギャーギャーうるせぇんだよ!ブスが!
こちは大事な話をしてんだからとっとと消えろ!
あんまりしつけーとてめえらまとめて姦すぞ!」
と怒鳴った。
女子高生はなんでこんなやくざな男と
誠が話しているのか不思議に思ったみたいだが
「バ〜カ!てめぇじゃね〜んだよ!」
と吐き捨てて走り去った。

「さて、邪魔者も居なくなったし、話の続きをしようか。誠。」
と言った。
233 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:55
誠は暫く黙っていたがゆっくりと喋りだした。
「なあ、ナオ。お前があれから色々辛い経験をした事はよく分かった。」

「おぅ、じゃあ肩代わりをしてくれるのか?」

「まあ待て、最後まで話を聞けよ。
確かにナオがこうなったのは俺にも責任があるかもしれない。
あの時、お前を俺が誘わなければこんな事にはならなかっただろうし…
矢口の事にしたっていらん節介だったのかもしれない。
でもな、この頃になって前に事務所の人が言ってた事が
何となく理解できた様な気がした。」
234 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:55
「何だよ、事務所の奴が前に言った事って。」

「あぁ、人間には勝ち組と負け組みがあるって事さ。」

「どういう意味だ。まさか俺が負け組みだって言うんじゃないだろうな!」

「俺はあの時、ハラシのメンバーに大抜擢された。
そしてナオは選ばれなかった。
いくらあの時、お前が俺の推薦でテレビの番組に出ていて売れてたとしても、
所詮あの時点で決まってたのさ。勝ち組と負け組みがな!」

「ふざけるな!てめぇ。自分勝手な推測を正当化するんじゃねえよ!」
235 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:57
「いいや!これが事実なんだよ。
そしてお前の方こそ勝手な理屈を並べてんじゃねぇよ!
それこそが負け組みの哀れな戯言でしかないんだよ。
勿論、お前に金を払う気なんてさらさらない。」
そう言って誠はバッグから財布を出して
1万円札を5枚財布から抜き取った。
「まあ、でもな。お前もここから逃げる金も必要だろうし、
俺もそこまで冷酷な人間じゃない。
情けをかけてやるよ。
これをくれてやるから金輪際、俺の前には現れないでくれ。
もうお前との接点は今日で終りにしたいんだ。
さあ!」
と誠はお金をナオの前に差し出した。
236 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:58
「てめぇ〜!ふざけた事してんじゃねえぞ!
こんなはした金で俺の過去を消せるとでも思ってんのかよ!
ああん!誠よ。
たいがいにしとかねえと、後悔するぞ!てめぇ。」

「後悔?どう後悔するんだ?勝ち組の俺が…
なあ、ナオ。今のお前の顔、鏡で見せてやろうか!
まるで裏金の取立てのチンピラみたいだぜ!
じゃあな!ナオ。
芸能人は忙しいんだ。
さっさと受け取って消えてくれよ。」
と誠はお札をナオのシャツの胸ポケットにねじ込んで、
踵を返し片手を上げてマンションに向かった。
237 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 21:59
その時、「まこと〜〜!」とナオが怒鳴り声を上げて近付いてきた。

しつこい奴だと振り向いた時、わき腹に衝撃があった。
耳元でハアハアとナオの荒い息遣いが聞こえる。
一瞬、何があったか分からなかった。
暫くしてわき腹が熱く感じてそれから激痛が走った。
その場所をゆっくり首を動かし見てみると、
ナオの持ったナイフが半分以上わき腹に刺さり、
出ている部分がマンションの明かりでキラキラ輝いていた。

「ナオ!お前。」
辛うじて出た言葉にナオはハッとして自分の手元を見た。

「あわわわ〜!」と奇妙な声をあげたナオはその手を離し、
二、三歩後ずさりしてその場に尻餅をついた。
238 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:00
「いってぇ〜!」と誠は大声で叫んでナオを睨みつけた。
刺された場所は麻痺して感覚がなかったが、
腹の中は熱く、心臓の鼓動と共に血液がドクドク溢れているのが分かった。
ナオを殴ってやろうと歩こうとしたが、
次第に息が出来なくなり、その場に崩れ落ちた。
「あ…い…。」誠は苦しく名前を呼んだ。

「キャー!」と言う悲鳴がマンションの端から聞こえた。
ナオはビックリしてそちらを見た。
先ほど追い払った筈の女子高生が驚きの悲鳴をあげた。
彼女達はその場所で一部始終を見ていたのだった。

ナオは慌てて起き上がると転げるように逃げ出した。


         …………
239 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:00

「あ、あの、あの…ハラシの誠が…誠が…誰かに刺されて…
死んじゃう、死んじゃう。早く、早く!救急車を!早く来て〜!」


         …………
240 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:02
愛は夕食後、今度の新曲のデモMDを聴いていた。
今度の新曲はサブセンターを任され、ソロのパートも多く気合が入っていた。
MDに合わせて歌いながら振りを思い返していた。
誰かが呼んだ様な気がして振り向いたが誰も居る筈はなかった。

ひとしきり練習をし、汗ビッショリになったので
そろそろお風呂に入ろうかな!と思っていると
階下から「愛!」とお母さんが呼んだ。

さすが、お母さん!分かってるね〜!
とタンスの中から着替えの下着を出していると、
今度は部屋までお母さんが来た。

「愛!大変。あんた、今テレビで速報が出たんだけど、
ハラシの誠が誰かに刺されて重体だってよ!」
241 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:03
愛は突然の事で言ってる意味が理解できなかった。

「ちょっと、愛!聞いてるの?あんたの好きだった誠が刺されたのよ!
テレビでやってるから!」

誠が刺された?どういう事?なに訳分かんない事言ってるのお母さん!
愛は階段から落ちそうになりながら応接間のテレビの前に立った。

ちょうど報道番組の司会者が現場のレポーターを呼んでいる所だった。
確かにテレビ画面のテロップには『ハラシの誠、刺され重体!』と出ていた。
愛はめまいを起こしそうになったが
辛うじてソファーに両手をついて踏ん張った。

「嘘?誠。どうしちゃったのよ?」
愛は涙を流してテレビ画面を見つめた。

その時、画面が司会者に切り替わり信じられない言葉を言った。
242 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:04
「たった今、ハラシの誠さんが収容先の病院でお亡くなりになりました。
もう一度お伝えします。ハラシの誠が亡くなりました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
さて、今回の事件をもう一度振り返って……」

………この司会者!何言ってるの!
お亡くなりになりました?
お亡くなりになりました?
誠が死んだ?
何言ってるの?
誠が死んだ??
誠が?
誠??
誠…
愛は心の中でパチッとスイッチの切れる音を聞いた。
243 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:06
【記憶の防波堤】

「毎日、毎日すみません。お忙しいのに…」
愛の母親は毎日入れ代わりにお見舞い来て
声をかけてくれるウォー娘。のメンバーに頭を下げた。

「とんでもないです。高橋はうちらの仲間ですから当然ですよ!」
と矢口は笑いながら言った。

「それでどうですか?お母さん。」と飯田は母親に聞いた。

「ええ、全然。全く目覚める気配もないんです。
このまま愛自身が生きようと言う意思が働かない限り、
この子は眠りながら死んで行ってしまうそうです。
現に内臓の機能も低下し始めてるみたいで、
いずれ自分自身で機能を停止してしまうみた…ううっ。」
と言いかけて母親は声を詰まらせた。
244 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:07
「お母さん、大丈夫!高橋はきっと戻ってきますよ。
だから…泣かないで下さい。」
と矢口は涙声で言った。

「しかし、高橋は私達の声も聞こえているんでしょう?」
と飯田は鼻からチューブ入れた高橋の顔を覗き込んで聞いた。

「ええ!本当に寝てるのと変わりないみたいですから、
この子には皆さんの声も私の声も全部聞こえてる筈です。」

「そうなんだよね〜!おい!高橋。いい加減起きてくれよ!
早くみんなと一緒にステージに上がろうよ。
みんな待ってんだぞ!」
と矢口も高橋の顔を覗き込んで言った。
245 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:08
ちょうどその時扉をノックする音が聞こえ病室に中澤が入って来た。
「みんな何、高橋の顔覗き込んでんの?何!目覚めたの!」

「あっ!裕ちゃん。
ううん、今、高橋に声が聞こえてるのなら早く起きろ!って叱ってた所なの。」

「ふ〜ん、そっか〜。まだ目覚めてへんのや。
あっ、お母さん!これ、栄養ドリンク。
昨日話してたやつですわ。めっちゃ効きますよって今から飲んで下さい。
私も今朝飲んできましたからに。」

「あれ?裕ちゃんの栄養ドリンクはお酒じゃないな?」
と飯田が言ったので全員に笑いが戻った。

「うるさい!それは夜の栄養ドリンクなの!」

「それよりそっちの袋は何なの?」と矢口が聞いた。
246 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:09
「これ?これはなぁ。ジャ〜ン!CDウォークマン。
高橋は音は聞こえてる訳やん。
そやったら音楽でも聴かせて刺激与えて
うまく行ったら目覚めるかな〜?なんて感じで…」

「おっ!さすが裕ちゃん。だてに栄養ドリンク飲んでないね!」
と矢口は突っ込んだ。

「関係ないやろ!」と中澤は矢口の頭を軽く叩いた。

「いった〜い!で、何を聴かせるの?やっぱりうちらの曲?」

「あぁ、これ買うてきてん。」と袋からCDを一枚出した。

「えっ?これってハラシのアルバムじゃん。これはまずいっしょ!」
と飯田は言った。

「そうだよ!裕ちゃん。さすがにこれは聴かせられないよ。」
と矢口も反対した。

「そっかな〜!私はこれが一番ええと思うねんけどなぁ」

「そんな〜!」と矢口はなおも反対した。
247 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:10
すると隣で聞いていた高橋の母親が
「私は中澤さんの意見に賛成です。
この子の一番大好きなハラシの曲を聞かせる事が
この子は一番喜ぶと思います。」
と言った。

「ほらな!おこちゃまには分からへんのや、
大人の意見ちゅうのがな!」

「もお!辻、加護と一緒にしないで。」
と矢口はプゥっと頬っぺたを膨らませて言った。

「ほな、するで。」
と中澤はCDをウォークマンに入れてイヤホンを高橋の両耳に入れた。

「よし、スタート!」と矢口はスタートボタンを押した。

イントロに続いて誠の歌声がイヤホンから漏れて聞こえてきた。


     …………
248 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:11
     …………


愛は夢を見ていた。
少女が大きなアルバムを床に置いてそれを開こうとしている。
顔は見えないがそれが自分だという事は分かっていた。

少女がアルバムの表紙をめくる。

突然、目の前に誠と一緒に行ったコスモスの街道が見えた。
誠に抱きしめられて歩く自分が見える。
まるで実際にそこに行って二人を見ている様な感覚だった。
自分で自分を見る感覚は不思議な感じだったが、何故か心地良かった。

…あ〜、誠!大好き。いつまでもこうしてキスしていたい…
249 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:12
少女が二枚目のページをめくった。

突然目の前に見える景色がウォー娘。の5期オーデションの
合格発表の会場の場面に変わった。
私は合格したのが信じられないのかキョトンとしている。

…あ〜、あの時はまさか合格なんて思いもしなかったなぁ〜!
でも、すごく嬉しかった…
250 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:13
三枚目をめくる。

次は中学の日本史の試験の答案用紙を先生から貰っている所だ。
藤原鎌足の問題が出ていて、私だけが正解して先生に褒められてる。

…藤原鎌足は大好きだもん。当然でしょ…

そうして少女がページをめくるたびに人生を遡って行った。
しかも、どれもこれも楽しい思い出ばかりで愛は幸せな気分になった。

早く次が見たくて
「早くページをめくって!」
と心の中で叫んだ。

すると少女は察したようにページをめくるスピードを上げた。
愛は当然だよね!だってページをめくってるの私だもん!と心で思った。
251 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:14
家族で大好きな宝塚を観に行った事。
小学校の時、かけっこで一番になった事。
家族で潮干狩りに行った事。
楽しい思い出が次から次へと目の前に広がった。

気がつくとアルバムのページはあと3ページになっていた。
目の前の自分は保育園児で先生のピアノに合わせて愉しそうに踊っている。
次は何かな〜?
と少女がページをめくろうとした時、その手を誰かがつかんだ。
その瞬間、少女はこちらを向いた。
愛は思わずヒッ!っと声をあげた。
こちらを向いた少女は私ではなかった。
いや正確には私自身に間違いないのだが、
悪意に満ちたその顔はまるで鬼のようだった。
252 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:16
突然、目の前の景色が再びコスモスの街道に戻った。
しかし、今度は景色を見ているのではなく、そこにいた。
自分の目で遠くまで続くコスモスを見ていた。

愛以外には誰も居なかった。
ただ、雨でも降ったのか月明かりに浮かんだコスモスは
風が吹くたびにキラキラ輝いて、まるで別世界にいる様だった。
とても静かで時が止まっている様な感覚だった。

遠くからオートバイの音が聞こえてきた。

「誠だ!」愛は確信した。

ヘッドライトが近付いてくるのが見えた。
愛はそちらに向かってマッハで走り出した。
253 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:17
オートバイは街路灯の下で停まった。
オートバイから降りた人物はヘルメットを外しこちらを見た。

やっぱり、誠だ!と愛は走りながら「誠〜!」
と手を振りながら走った。

誠は笑っていた。

ハアハアと息を切らしながら愛は誠の所まで駆け寄ると、
誠におもいっきり抱きついた。

「誠!」

「愛!」

誠は息を切らして抱きついた愛をきつく抱きしめてくれた。
254 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:18
「すごいスピードだったね!陸上選手になれるよ。」
と誠は笑った。

「も〜!ひどい。誠ったらこんな遠くにオートバイ停めるんだもん。」
とおでこで誠の胸を押した。

「ごめん、ごめん。なんだかコスモスに見惚れちゃって…」

「ひど〜い!でも綺麗だよね。キラキラ輝いてる。」

「うん。でも愛のほうがもっと輝いてるよ。」

「愛!今度は俺が愛への防波堤になるね。」

「えっ?どうしたの急に…」

見上げた愛に誠はキスをした。

私の中で何かが変わりました。

誠…まこと…ま、こ、と…ま……………
255 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:20
【新たなる旅】

しまった。ハラシの曲聴きながら寝てしまった。
やばっ!今、何時だろう?

愛はベットの中でそう思った。

しかし、身体が鉛の様に重く思うように動かなかった。
それに鼻から何かが入っているのか
鼻から喉にかけてすごく気持悪かった。

明かりが眩しくてそーっと薄目を開けるとなかなか焦点が合わなかったが
天井の明かりは自分の部屋の明かりとは違っていた。

あれ?ここどこ?と瞳を横にもっていくと
お母さんが立って誰かと話をしていた。
座っているので誰かはわからないが視界の隅に3人いるのが見えた。
256 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:21
愛は声を出そうとしたが
鼻から入った管のような物が邪魔をしてるのか「あうぅ。」としか出なかった。

最初に気がついたのは矢口だった。
自分の後ろからうめく様な声が聞こえて
びっくりして椅子から落ちそうになった。

「ちょっと!!今、声聞こえたよね!」
と振り返るとベットの高橋の顔を覗き込んだ。
「マジ?マジで起きてんの?高橋!」と矢口は顔を見つめた。

母親が慌ててベットの側まで来て
CDウォークマンのイヤホンを耳から外して覗き込んだ。

「愛!起きてるの?愛!」

ベットの高橋の目が薄く開いて母親を見た。
257 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:22
「愛!」母親は急いでナースコールを押した。

ドクターがすぐに病室に来て
愛を確認し鼻から入ったチューブを抜いた。

ゲ〜って音が出てしまう程気持ち悪かったけど
異物がなくなってすごく楽になった。

「お母さん!私…どうしゃったの?」と愛は母親に聞いた。

「高橋!」と横から声が聞こえたのでそちらを見てびっくりした。

矢口!その横にかおりんもいる。えっ?中澤姉さんも??
高橋は驚きのあまり身体が硬くなった。

「高橋、良かった〜!心配したんだぞ!」
と矢口は泣きながら言った。

「お前、お母さんに心配かけて…もう!」
と中澤も泣きながら近付いた。

「早く、身体戻して早く一緒に頑張ろうね!」
と飯田も言った。
258 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:24
「あの…ウォー娘。の矢口さんと飯田さん、中澤さんですよね!」
と高橋は3人に聞いた。

「高橋?何言ってんの?あたり前じゃない。どうしたの?」

「あの…どうしてウォー娘。がここにいるの?」

「ちょっと、高橋。何言ってんの!
あんた、ウォー娘。のメンバーでしょ!」

「えっ?私がウォー娘。メンバー?」

「ちょっと、高橋!ほんとにわからないの?」
と矢口が心配そうに聞いた。

「愛?あんたほんとに覚えてないの?先生!これって…」
と母親は先生に助けを求めた。

愛は何を言ってるか分からなかった。
そっちこそ分かんない事言って!と思った。
259 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:26
先生が「名前は?」と聞いた。

何言ってんの!と思ったが「高橋愛。」と答えた。

「年齢は?」

「15歳。もう先生!先生まで私を変に思ってるんですか。」

「いいえ、高橋さん。でも医者はね、疑う事から始めるんです。
そこから検査や問診をして一つ一つ削除して病状を診断するんです。
だから不愉快な思いをかけるかもしれませんが許してくださいね。」
と医者は言った。
「では、高橋さん。貴女は何故ここに入院されたか覚えてますか?
貴女は2週間もここで眠っていたんですよ。」
260 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:27
「えっ?2週間も眠ってた…」

「覚えていませんか?」

「…はい。」

「それではもう少し前の事を聞いてもいいですか?
貴女は先ほど、私がウォー娘。のメンバーですか?と聞きましたよね。
それは貴女がウォー娘。メンバーと言う事をご存じないと言う事ですか?」

「知りません!私がウォーム娘。のメンバーになってるなんて…」

「高橋、ほんとに覚えてないの?」と矢口は高橋を見た。

「はい…」

「じゃあ、今回の事も…」と圭織が言いかけた時
中澤が圭織を手で制した。
261 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:30
「今回の事?」と愛が飯田を見た時、医者は機転を利かし
「話がわき道に逸れてしまったので元に戻しますね。
それでは、貴女が覚えてる一番最近の貴女の出来事を教えて下さい。」
と高橋に聞いた。

愛は暫く考えて思い出したように言った。
「確かあの時…知里とネットで遊んでいた時
たまたまウォー娘。の5期オーディションの募集を見つけて
それで応募して… それで、それから…」
と愛はその後を思い出そうと努力した。
しかしそれ以降の事はいくら思い出そうと努力しても
思い出せなかった。

「その募集の後からは思い出せないんですね。」
262 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:31
愛はそれでも思い出そうと一生懸命考えた。
しかし、考えても考えても何も思い出せなくて
仕舞いには頭が割れそうに痛くなった。
愛は頭を抱え込んで「あーぁ!」っと唸った。

「愛!大丈夫?」と母親は愛の肩を抱いた。

「お母さん、ダメ!私、全然思い出せないの。」
と愛は苛立ちのあまり自分の髪をかきむしった。

「高橋さん、ごめんなさいね。苦しい事をさせてしまって…
もういいですよ考えなくて。もう大丈夫ですよ!」
と先生は高橋に言った。

「先生!私どうなっちゃうの?どうして思い出せないの?
お母さん!私…私に何があったの?」
と愛は泣きながら叫んだ。
263 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 22:32
「高橋。」矢口はそう言って高橋を見た。

「高橋さん、
たぶん一時的に記憶が飛んでしまったのではないかと思います。
よく頭をぶったりするとなってしまうタイプのやつですね。
2週間も眠っていたのだから
何かの原因でそうなってしまったのだと思います。
今日は今から安定剤を注射してもらって、
明日念のためCTとMRIの検査をする事にしましょう。
多分問題は無いと思いますが…
それでは今から処置をしますので暫く待って頂けますか。」
と先生は看護士と共に出て行った。

全員が出て行った扉を暫く見ていた。
264 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:05
母親は抱いた肩をさすりながら
「愛、ほんと良かった。
お母さん、このまま愛が目覚めなかったどうしようかって
毎日、毎日愛の寝顔を見てたのよ。
お母さんの声が聞こえてたら返事をして!って…
毎日声をかけてたの。
ほんとにほんとに戻ってきてくれてありがとう!」

「お母さん!」愛は母親の胸に顔を埋めて泣いた。
265 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:06
「高橋。とにかくほんとに目覚めて良かった。
あんたは今、うちらとの関係を覚えてへんと思うけど、
高橋がウォー娘。の一員言う事は紛れもない事実や。
そやからな、何も焦って思いださんかてええ。
ゆっくり時間を掛けて思い出せばええのんや!
何ヶ月もの記憶がなくなってしまった訳やろ?
そんな長い時間の事、急に思い出そうちゅう方が無理な話やん。
焦ったかてろくな事あらへん。
ゆっくり思い出してき。
その方が楽しいで!なっ、高橋。」
と中澤は高橋に優しく言った。

愛は中澤の顔を何も言わずに見た。
266 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:07
「愛!お母さんもそう思うわよ。
お母さんね、さっきみいたいな辛い顔の愛を見たくないの。
だから焦らないでお母さんと一緒にゆっくり思い出して行きましょう。ねっ!」

「どうかな?高橋。考えてみてくれるか?」と中澤は念を押した。

愛は暫く考えていたが母親の顔をみながら、うんと頷いた。

「よし!決まりや。ほな私は事務所に電話を入れますよってから。」
と言って中澤は部屋を出て行った。
267 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:08
「じゃあ、私もお父さんやおばあちゃんに電話をします。
みんな毎日愛が目覚めるのを待っていましたから。」
と中澤の後に続いて母親も出て行った。
中澤と母親の出て行くのを目で追いながら
「裕ちゃんはやっぱりすごいな。」と矢口が言った。

「ああ、あっしらいつまでたってもあの人に敵いそうもないや。」
と飯田も笑いながら言った。

「高橋、とにかくほんとに目覚めてよかった。
メンバーもあんたの事心配して毎日誰かが見舞いに来てたんだよ。
今はうちらの事受け入れられないかもしれないけど
あんたがウォー娘。の一員である事は現実なのよ。
だからこれから徐々に思い出してまた前と同じ様に
ウォー娘。としてパフォーマンスをして行こうね。」
268 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:09
「でも、私‥」

「もう今日は色々考えるのやめにしときな!
今日はゆっくり休んで‥って今まで寝てたからゆっくり休んではないか!」
と飯田は言って笑った。

暫くしてドクターが戻ってきて愛に鎮痛剤を注射した。

「先生、注射してまた眠ってしまって大丈夫なんですか?」
と飯田が聞いた。
先生は笑いながら
「大丈夫ですよ!」と言って飯田の顔を見た。

矢口は自分に注射されているかの様に瞼をギュッとつむって
注射が終わるまで横を向いていた。


         …………
269 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:10
次の日、マネージャーとリーダーの飯田、矢口、
そして中澤の4人は揃って病院を訪れた。
病室に向かう途中、ちょうど高橋の母親とドクターが
こちらに歩いてくる所に出くわした。

「ちょうど良かったです。
今から高橋さんの病状についてお母様にお話する所でした。
関係者として一緒に聞いて頂きたいのですがよろしいでしょうか?」
と医者は聞いた。

「分かりました。」と4人は一緒に診察室に入った。
270 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:11
医者はCTやMRIの検査結果を見せながら
「念のために検査をしてみましたが脳には異常は見られませんでした。
やはり心因性健忘症かと思われます。
俗に言う記憶喪失と言うやつでね。
高橋さんの場合、余程精神的ショックが強かったのか
眠りから醒めてもなお記憶を封印しようとしていらっしゃるみたいです。」

「じゃあ、先生。愛は記憶を取り戻せないのですか?」
271 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:12
「それはなんとも言えません。
何かのきっかけで思い出すかもしれませんし、思い出さないかもしれません。
どちらにしても今の時点では原因となった記憶は
彼女自身が防波堤を作って記憶に鍵をかけてしまわれてます。
今思い出してしまうと精神崩壊をきたすと
彼女自身が判断されたのでしょうね。
無意識のうちに自分自身でストップをかけてしまっています。」

「じゃあ今記憶が戻ったとしたら!」
272 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:13
「いいえ、今すぐ思い出すことはまずないでしょう。
今思い出したらどうなってしまうか…
それは彼女自身が一番分かっている事ですからね。
これは無意識の防衛本能ですね。
ただこれから社会に戻って今まで通りの生活をしていけば
外からの情報は次から次へと高橋さんの元に入っていきます。
何かのはずみで記憶の扉が開いてしまう可能性だってあります。
また彼女自身がなくした記憶を知ろうと躍起になればなるほど
その波が高くなり自分自身が作った防波堤を越えてしまうかもしれません。
273 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:14
そうなると鍵を持っているのは彼女自身ですから
記憶の扉を開けてパンドラの箱も開けてしまうことになるかもしれません。
ですからその時の衝撃を軽減させる為にも予備知識として
皆さんから記憶をなくしてしまった時点から今日までの事を
折を見て高橋さんに話して頂きたいのです。

「えっ?じゃあ高橋と誠の関係と今回の事件の事も話すんですか?」
274 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:14
「いえ、それは危険過ぎます。
高橋さんと誠さんがお付き合いされてた事は他の方はご存知なのですか?」
と医者は聞いた。

「あちら側はどうか分りませんが
こちら側は事務所の一部とメンバーの数人です。」

「そうですか。それなばら今回の事は伏せておいて下さい。
ただ誠さんが亡くなられた事だけは高橋さんにお話しておいて下さい。」

「え〜〜〜〜!きついな〜!!だって先生、先生には話してなかったけど
高橋って昔から誠の追っかけしてた程のファンみたいだったから…」
と矢口が困惑した顔で言った。
275 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:15
「そうですか…それなら好都合かもしれませんね。
今回の事は彼の死というショックで
記憶が飛んでしまったという事に出来ますからね。
どうでしょう、お母様も事務所サイドもそういった方向で
話を進めて行くという事で。」

「実のところ、正直に言いますとこちらといたしましても
これから高橋にもメンバーにもどう話していけばよいのか
迷っておりました。
話の方向性が出来てこちらも対応し易くなるので
出来ればそうして頂けると助かります。」
とマネージャーはホッとしたように言った。
276 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:16
「そうですか。ではお母様はどうですか?」
と医者は母親に向き直って言った。

母親は暫く考えていたが
「あの子を騙す様で…もし愛がこれから先、
本当の事を知った時のあの子の気持ちを考えると
親として娘に嘘をつくのは気が引けて…」
と困惑した表情で言った。
277 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:17
「確かに我が子に嘘をつくのは気が引けるかもしれませんね。
でも現実として娘さんは精神的ショックから記憶喪失になってしまった。
その原因をストレートに話す危険性や情報を与えず
彼女自身が色々詮索して記憶を引き出す機会を速める怖さの方が心配です。
お母様の気持ちもよく分かりますが、
ここはお子様の事を理解して考えて頂けないでしょうか。」
と医者は言った。

母親は暫く考えていたが
「分かりました。あの子の為になるならそうします。」
と決心した様に言った。
278 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:18
「有難うございます。それでは宜しくお願いします。
それでは今から高橋さんに検査結果と
大まかな症状と原因をお話しますので。」
と医者は立ち上がった。

「あの、先生。それで愛は何時頃退院出来るのでしょうか?」
と母親は心配そうに聞いた。

「何しろ2週間近く流動食だけで
まともな食事を摂っていませんでしたから
体力的にかなり落ちています。
これから徐々に食事を増やしていって、
体力さえ回復すればいつ退院なさって頂いても構いませんよ。」
と医者は母親に言った。
279 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:19
「そうですか、有難うございます。」

「それでは参りましょうか。」
と医者は歩きだした。

病院の廊下を歩きながら矢口は飯田に
「しかし、これからどう話すかまとめておかないといけないね。」
と小声で言った。

「うん、なんか私そういうの苦手だから
変な事言っちゃいそうで心配なんだよね。」
と飯田は眉間に皺を寄せて言った。

「ちょっとかおり!
あんたリーダーなんやからしっかりせなあかんやんか!
あんたがそんなんやったら下の子達かて動揺するで。」
と中澤は圭織の背中を叩きながら言った。
280 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:20
「あ〜、なんかプレッシャーだな〜!」

それを聞いていた医者は
「大丈夫ですよ。そんなに深く考えないで
あった事だけを高橋さんに話して差し上げてください。」
と飯田に言った。

飯田は「はぁ〜〜!」とため息を一つついた。

病室に入ると高橋はベットから出て窓から外を見ていた。

「お〜!もう起きれるんだ。」と矢口は感激した様に言った。

愛はニコッと笑って頷いた。

「はぁ〜!若いつぅのはええ事やなぁ〜。」
と中澤は感慨深げに言った。
281 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:20
愛はマネージャーを怪訝な顔で見て軽く会釈をした。

矢口はそんな高橋とマネージャーを交互に見て
「そっか〜!分かんないんだ。この人うちらのマネージャーの大野さん。
当然高橋のマネージャーでもあるんだけどね。」
と笑ってマネージャーを見た。

「何だか変な気分だけど初めましてになる訳か。
ウォーニング娘。のマネージャーの大野です。
心配しましたけど元気そうで安心しました。
メンバーも喜んでいましたよ。これで一安心ですね。」
と嬉しそうに言った。
282 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:21
「愛、先生からお話があるからこちらにいらっしゃい。」
と母親は愛をベットの方に手招いた。

医者はベットに座るのを見届けてから
「今朝の検査では異常は見つかりませんでした。
やはり心因性健忘症、
俗に言う記憶喪失というものではないかと思われます。
記憶が一時的にパニックをおこして
思い出せなくなってしまう症状をいいます。
283 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:22
ただその記憶も何かの拍子で思い出すこともあります。
それが何かは私には分りませんが、
本当にちょっとした事で思い出す事が出来る可能性はあります。
今は不安でしょうがお母様やここにいらっしゃる方々に
失くしてしまった時間の出来事を教えて頂いて
記憶を埋めていきましょうね。」
と医者は愛の顔色を伺いながら言った。
284 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:23
「高橋!高橋の失くしてしまった時間であっしらと過ごした時間は
あっしらが責任を持って埋めてあげるから」
と飯田は高橋の手を取って言った。

「そうそう!おいらも頑張っちゃうからね。
高橋にはぎっくり腰にさせられた辛い過去があるおいらだからね。」
と矢口は腰をさすりながら言った。

愛はエッ?と言う顔で矢口を見た。

「こら!矢口。そんな事言うたら高橋がビックリするやないか!
まあ確かに事実やけど気にせんでええからな!」
と中澤は矢口の頭を押さえつけて笑った。
285 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:24
「すみません。」と愛は恐縮して小声で謝った。

「ほらぁ〜、高橋が落ち込んじゃったやないの!
もっと他に色々あるやろ!楽しい事とかぁ。
そう言う事から埋めていき!」
と中澤は矢口の首を絞める仕草をしながら言った。

「デヘヘ。」と矢口は笑った。

「お母さんも愛との時間の大切さを理解してるから
何でも聞いてちょうだい。
答えられることはちゃんと愛に話すから!」
と母親は愛を優しく見つめて言った。

「お母さん。」と愛は母親を見た。
286 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:24
「そうそう、体力的に回復したらいつ退院してもいいんだってよ!
良かったね。」

「えっ!そうなんですか。」

「はい、検査に異常は見られませんでしたので
体力的に回復すればいつでも構いませんよ。
暫く自宅で療養すればお若いからすぐに回復して
また仕事に復帰する事が出来るでしょう。」
と医者は言った。
287 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:25
「ええなぁ〜!若いって。」と中澤はため息混じりに言った。

「なんか裕ちゃん、そればっかりだね!」
と矢口は中澤を指差して言った。

「うるさい!矢口も年取ったら分かるんや。
ねぇ、お母さん。」
と中澤は母親の顔を覗き込んで笑った。

つられてみんなも笑った。
こんなに心から笑うのは久しぶりだとみな思った。


      ………………
288 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:26
数日後、愛は退院した。
記憶がなくなってしまった原因が
誠の死だったと聞かされてビックリした。

それもナオに刺されて殺された事実を聞かされた時は
頭が真っ白になった。

どうして?って飯田さんに聞いたけど、
ナオは誠を刺した後、ビルから飛び降りて自殺したらしく
理由はよく分からないと言われた。

色々、自分なりに記憶喪失の原因を思い出そうと努力したけど、
そんな事実を聞かされたら当然だろうなって思った。
289 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:27
きっと記憶があった頃はどこかの歌番組で
誠と会っていただろうし
記憶があれば誠の存在を心に留めておく事が出来たのにと悔やんだ。

暫くは落ち込んだけど
ウォー娘。としての忙しい日々を過ごして行くうち、
愛の中で誠の占める割合は少なくなって行った。

それでも時々、誠の事を考えると
モヤモヤしたものが頭の中を駆け巡り気分が悪くなった。
290 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:28
その事を母親に話したら、
あなたの中でその事は思い出したくなって身体が訴えてるんだから
あまり考えるのはよしなさい。
時期が来れば思い出す事が出来るんだから。
と言われ、自分の中で納得して考えない様に努力した。

それでも部屋の中にあるポスターや
グッズを見る度に気持ちが沈んで行った。
捨ててしまおうかとも考えたが、
自分の中の誠の存在までも捨てる様な気がしてそのままにした。

どんな形にせよハラシの誠との繋がりは
いつまでも持って行こうと心に決めた。
291 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:29
憧れはたとえ誠がこの世にいなくても
私の心の中にいるんだしDVDを観ればすぐに会う事だって出来るんだ!
そう考えたらすごく楽になった。

私はウォー娘。の高橋愛なんだ!
誠と一緒にみんなに夢を与えて行くんだ。
今から出発だ!とポスターの誠に話しかけた。

彼の顔も笑ってうなずいた様に見えた。
292 名前:NAO 投稿日:2006/03/14(火) 23:31
本日はここまでにします。
あと少しで完結します。
明日のアップで終わります。
ありがとうございました。
293 名前:NAO 投稿日:2006/03/15(水) 20:43
こんばんわ!最終章を更新します。
294 名前:NAO 投稿日:2006/03/15(水) 20:44
【始まりの場所】

愛はロケバスのカーテンの隙間から外を見ていた。
今日は早朝からロケがありバス移動をしていた。
殆どのメンバーは朝早い事もあって寝ている。
チラッと後ろを見たが起きていたのは麻琴ちゃんだけだった。

彼女はいつも早起きらしくいつも朝からテンションが高い。
退屈なのか目が合うと両手を振ってとびっきりの笑顔を見せた。
先輩メンバーが寝ている以上、彼女も騒げないのだろう。
あのいつも元気な加護さん、辻さんも今は静かに眠っている。
295 名前:NAO 投稿日:2006/03/15(水) 20:44
バスは小さな橋を渡り信号を右折した。

愛は思わずカーテンを手で上げた。

「綺麗!」思わず愛は声をあげた。
そこには道路の端にコスモスの花が道に沿って
白やピンク、赤と色とりどりに花を咲かせていた。
296 名前:NAO 投稿日:2006/03/15(水) 20:45
身を乗り出してバスの前方を見てみると
直線道路の彼方まで真っ直ぐにコスモスの花が
まるで絨毯の様に続いていた。
明け方まで雨だったせいか
風が吹くたびに朝日を浴びてキラキラ輝いて見えた。

「すごい!」と愛は興奮気味に声をあげた。
隣に寝ていたガキさんが寝言の様に「なに?」と言ったが
目を開ける様子はなかった。
297 名前:NAO 投稿日:2006/03/15(水) 20:46
愛はカーテンの隙間から顔だけ出して
この夢の様な景色に見入っていた。
こんな近くにこんな素敵な場所があったんだと
興奮気味に見つめていると
突然後方から猛スピードで追い越しをかける単車が視界に入った。
突然の事でビックリした愛はカーテンの隙間から顔を出したまま
その単車を目で追った。
298 名前:NAO 投稿日:2006/03/15(水) 20:47
単車は愛の席のあたりまで来ると突然スピードを緩めてこちらを見た。

「ヤバっ!」と愛はカーテンの隙間から顔を離すと
カーテンの端をつまんで隙間を塞いだ。
「やだ!見られちゃったじゃない。何?ヲタ?」と愛は思った。

でもあのメットの中の顔見覚えがある……

……えっ?誠??
299 名前:NAO 投稿日:2006/03/15(水) 20:50
愛は慌ててカーテンの端をつまみ上げて見たが単車はもういなかった。
立ち上がって前を見るとちょうど単車がロケバスを追い越して
前に出た所だった。

単車は片手を上げると猛スピードでみるみる見えなくなった。

突然、頭の中でこの場所を誰かと歩く姿が浮かんだ。

誰?………

外にはコスモスが風に揺れてキラキラ輝いていた。

       -終-
300 名前:NAO 投稿日:2006/03/15(水) 21:06
ありがとうございました。これで完結です。
この小説は2003年、娘。小説が華やかな頃に
自分も書けるのだろうか?と思い書き始めました。
途中、1年以上も放置プレーをしてしまいました。
その間に登場メンバーも卒業してしまい
登場人物を変更して書き直そうとも思いましたが
元気な矢口さんのイメージを残しておきたかったので
あの時のモー娘。で最後まで書き続けようと心に決めました。
読んで頂いた方(いるのかな〜?)有難うございました。
感想など書いて頂けたら幸いです。
301 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/18(火) 23:51
読む人は気をつけて。男とメンバーの恋愛モノです。
少なくとも自分は不快極まりなかった。
個人的にはオススメ出来ません。
302 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/23(日) 15:21









男×ハロメンはここじゃないだろ

ちゃんと確認しろ

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