恋するうさぎ
- 1 名前:七作 投稿日:2006/03/12(日) 17:34
- 以前書かせていただいた者です。
石川さん絡みの短編予定です。
よろしくお願いします。
- 2 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:35
-
放物線のその先
- 3 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:36
-
「いっくよー!」
「うん。」
軟式の野球のボールがきれいな弧を描く。
真っ暗な中、そのボールの白さが際立って見える。
ぽーん
ぱこ
私のグローブに吸い込まれるように入っていく。
- 4 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:37
-
「ナイスキャッチ!」
彼女がぐっと親指を立てたのが遠目で分かった。
「ばっちこーい!!」
拳を作った左手をグローブで掴む彼女はどこか上機嫌だ。
「いくよー!」
私の投げたボールはゆっくりと彼女へと届いた。
夜中の誰もいない公園で、私達はなぜかキャッチボールをしている。
- 5 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:38
-
彼女が今日オフだということは人伝えで知っていた。
偶然にも私もオフで、誘おうと思えば連絡もできたのに、それでもできなかったのは断られたときのことを考えてしまったからだ。
モーニング娘。に入る前から彼女に憧れていた。
その圧倒的な存在感。
私の欲しいものを全て持っていた彼女。
彼女の笑顔、歌、ダンス、何もかもが私を惹きつけてやまなかった。
奇跡的に(今でも私はそう思っているのだけど)モーニング娘。の一員になることができて、恐れ多くも同じ舞台に立つことができた私。
初めて会ったときのことは今でも覚えている。
あぁ、後藤真希が目の前にいる・・・!!
まさか、ごっつぁん、なんて気軽に呼べるようになれるとはこのとき、少しも思ってなかったんだよ。
- 6 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:38
-
「ただのキャッチボールじゃ、つまんないねぇ。」
「そう?」
「うん。そーだなぁ・・・。」
彼女がうーんと首を傾げて考え込む。
- 7 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:39
-
そもそもキャッチボールをしようと提案したのはごっつぁんの方だったのだ。
部屋の掃除や洗濯、買い物で終わりかけた今日。
夜になって突然ごっつぁんから電話がきた。
『梨華ちゃん、今、暇?』
「うん、暇だけど・・・。」
『じゃあさ、ごとーとキャッチボールしよ?』
「え?!」
『たまにはさ、足じゃなくて腕を使うのもいいんじゃない?』
「まぁ、そうだけど・・・。」
『今からそっち行くから準備しといてね!』
「あ、ごっつぁ・・・。」
- 8 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:40
-
強引に切られた電話から三十分後に彼女は二つのグローブと一つのボールを持ってやって来た。
「昔、ユウキとよくやったんだよねぇ〜。」
ほい、とごっつぁんはグローブを私の渡す。
「どうしていきなりキャッチボール?」
「やりたかったから。」
そうだ、ごっつぁんは思ったら即行動の人だったっけ?
近くの公園にジャージ姿で私達は入っていった。
芸能人の私達がこんなとこに、しかも夜中にいて平気なのかなぁと思ったのだけど、隣の彼女は一向に気にするそぶりもない。
芸能人じゃなくとも、二十歳の女の子がいたら危ないと思う。
でも、なんだかごっつぁんが楽しそうだから私は断ることができなかった。
ううん、本当は私、ごっつぁんと一緒にいたかっただけ。
電話をもらったときから、私には断るなんて選択はなかったの。
- 9 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:40
-
「そうだ、しりとりしながらやろう!」
いいこと思いついたとばかりにごっつぁんは笑ってる。
「しりとり?」
「うん。投げる人が言うの。ごとーがボール持ってるからごとーからいくね。しりとりのりからってことで・・・リコーダー。」
しゅっとボールが飛んでくる。
「ダ・・大豆。」
「渋いとこくるね。」
私のボールをひょいと取って、ごっつぁんが笑った。
- 10 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:42
-
ごっつぁんへの想いが恋だと気づいたのはいつからだろう。
たぶん、初めて会ったときから、ううん、もしかしたらテレビでごっつぁんのことを見ていたときから、この想いは私の中に在ったのかもしれない。
メンバーとして一緒にいればいるほど、彼女との距離が近くなればなるほど、私の心は彼女を求め始めていた。
女の子のごっつぁん。
私と同じ女の子。
まさか彼女への気持ちが恋だなんて。
でも、もしこれが恋じゃなかったら、今、感じているこの気持ちは何なの?
- 11 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:42
-
いつもあなたのことばかり考えていた。
あなたの笑顔を見ると私までうれしくなって。
あなたが落ち込んでいると私も悲しくなる。
あなたが他の人といると、とても切なくなって。
あなたが私の名前を呼ぶと、幸せになれた。
あなたに触れたい。
あなたが恋しい。
・・あぁ、私が後藤真希が好きなんだ・・・。
- 12 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:43
-
気づいてしまった恋心は私をひどく苦しめた。
気を緩めたらすぐにでも飛び出してしまいそうなほどの私の熱い想い。
それはまるで獣のようだった。
この恐ろしい獣は私だけじゃなく、きっと彼女も傷つけてしまうだろうから。
理性という檻に閉じ込めて、決して外には出してはいけない。
私は心の奥底に静めて封印した。
私は一流の女優にならなければならなかった。
ドラマの演技はうまくはないけど、彼女の前では友達を完璧に演じなければならなかった。
でも、それは意外にもそれほど大変なことではなかった。
友達であれば側にいることができたから。
あなたに嫌われたら私は生きていけないから。
あなたを見ているだけでよかったの。
- 13 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:44
-
一方的なこの想い。
決して自分の望む先には届かないから。
それなら早く消えてしまえばいいのに。
- 14 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:45
-
「図工。」
「ウ、ウサギ。」
「ぎー・・・銀時計。」
「・・椅子。」
「好きだよ。」
- 15 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:45
-
「え?」
ぱこ
白いボールは私のグローブの中。
「・・・・。」
「梨華ちゃん、早く投げろー!」
ごっつぁんの言葉にはっとして、私は慌てて投げた。
「よ、よ・・・よっすぃ!」
少し曲がったボールはしっかりとごっつぁんのグローブに。
- 16 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:47
-
「・・よっすぃって何さ。」
「あ、ごめん。それしか出てこなかったの・・。」
「・・・ま、いいけど・・。」
ごっつぁんは不機嫌そうに呟くと、私に向かってボールを投げた。
「石川梨華が好きだー!!」
- 17 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:47
-
ぽんっ、ぽん、ぽんぽん・・・
白いボールは私のグローブに当たって、足元に転がった。
「梨華ちゃん、ちゃんと受け取ってよ。」
「あっ、ごめん・・。」
私は慌てて後ろに転がったボールを拾う。
しゃがんでボールを掴み、立ち上がると、側に人の気配がして、顔を上げた。
「ボールじゃなくて、ごとーの気持ち。」
外灯に照らされたあなたの真っ赤な顔。
そのまっすぐな視線に私は絡み取られる。
- 18 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:48
-
かしゃん、と心の奥で音が響くと、ゆっくりと這い上がってくる熱いもの。
ねぇ、もう心を偽って演じなくてもいいの・・?
- 19 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:49
-
私は手に持っているボールをごっつぁんのグローブの中に置く。
「ダ・・大好き、ごっつぁん。」
「あ、んがついた。梨華ちゃんの負け。」
「いいよ、負けでも。」
だってとっくに私はあなたに負けているから。
- 20 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:49
-
って、あれ?これって・・。
「ごっつぁん、これってスピードワゴンさんの・・。」
「あ、ばれた?」
「ちょっとぉ!」
「確かに借りたけど、本気だよ。」
「・・・ごっつぁん。」
さっきまで子供ぽい笑顔だったのに、今はすごく大人びてて・・。
そんなあなたの表情に私はまたドキドキして。
- 21 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:50
-
「負けた人は勝った人の言うことを聞かなくてはいけません。」
「そんなの聞いてないよ?」
「今言ったんだもん。」
「何それ?」
いたずらっ子のように笑うごっつぁんに私もふふっと笑ってしまう。
「梨華ちゃん、ごとーの彼女になって。」
「・・・はい。」
- 22 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:51
-
ごっつぁんが私をぎゅっと抱き締めてくれる。
そのあたたかさに思わず涙が出て。
私の投げたボールは、今、あなたのグローブの中。
- 23 名前:放物線のその先 投稿日:2006/03/12(日) 17:51
-
END
- 24 名前:七作 投稿日:2006/03/12(日) 17:52
-
* * *
- 25 名前:七作 投稿日:2006/03/12(日) 17:55
- こんな感じで更新していきたいと思います。
更新はゆっくりめになるかと思いますが、よろしくお願いします。
- 26 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/13(月) 01:17
- >>14にやられました。ドキッとしちゃいました。
更新楽しみに待ってます。
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/13(月) 19:44
- シンプルだけど良いですね♪動揺した梨華ちゃんがすごい可愛かったです。
次作も楽しみに待っています。
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/14(火) 00:12
- 真っ赤な後藤さんも呆然としてる石川さんも目に浮かぶようです。
いいですね。にやにやしながら読んでしまいました。
次も楽しみにしてます。
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/14(火) 01:08
- いしごまイイっすね
- 30 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:05
-
恋苺
- 31 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:05
-
並木道に並ぶ木はいまだ桜色を見せず。
冬の間はどこか物悲しい気分になってしまう。
二月も最後の週。あと数日で三月。
あぁ、もうすぐ春なんだなぁ。
まだまだ寒い日が続くけど、それでも少しだけ風がやわらかくなった気はするのはきっと春に向かっているから。
ダッフルコートをしっかり着こんでいる私は真冬みたいだけれど、それでもあったかいの。
それはね・・・。
- 32 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:06
-
「石川さーん!」
ほら、彼女の声が聞こえてきた。
いつもときっかり八時。桜並木の真ん中。
くるりと振り返って私は笑顔を見せる。
「おはよう、三好ちゃん。」
「おはようございます。」
電車通学の私とバス通学の三好ちゃん。
二人が同じ道を通るのはこの並木道だけ。
テニス部の朝練がないときは私は八時五分着の電車に乗ってたんだけど、三好ちゃんが七時五十八分着のバスで着ているということを知ってから、一つ前の電車に乗るようになった。
毎日同じ時間に三好ちゃんは私の名前を呼ぶ。
それを私はいつもドキドキしながら心待ちにしてるの。
- 33 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:06
-
三好ちゃんがうちの学校に転入してきたのは去年の九月だった。
「三好絵梨香です。よろしくお願いします。」
緊張気味に自己紹介をした彼女。
私ね、会ったときにピンときたの。
きっとこの子とはお友達になれる。仲良くなれるって。
だから、その日の休み時間、窓側の一番後ろに居心地悪そうに座っている三好ちゃんに私は親友の柴ちゃんと一緒に声をかけた。
「三好さん?」
「はい。」
「石川梨華です。よろしくね。」
- 34 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:07
-
「石川さん、現代文の宿題やってきました?」
「うん。結構難しかったよね。」
「あの、後で答え合わせしません?実は今日、絵梨香、当たりそうなんですよ。」
「私も自信ないよぉ。」
「でも、二人合ってたら・・・あ、柴田さんのも見せてもらって三人合ってたら平気ですって。」
「じゃあ、三人ともバラバラだったらどうするの?」
「えっ?!それは・・・。」
- 35 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:07
-
三好ちゃんと出会って半年。
それなのに彼女はいまだ私のことは石川さん、言葉遣いも敬語。
それは私に限ったことじゃなくてみんなにもそうらしいんだけど・・・。
でもね、やっぱり梨華ちゃんって呼んでほしい。敬語なんて使わないでほしい。
前に言ったことがあるんだけど、やっぱり直らないんだよねぇ。
それが三好ちゃんらしさなのかもしれないけど。
やっぱり自分の答えを信じるべきかなぁと悩んでいる隣の三好ちゃんをちらりと見て、私は小さく笑ってしまった。
初めは大人っぽいなとか落ち着いてるなと思ってたけど、実は子供っぽくて、結構個性的な子だって一緒にいるうちに気が付いたから。
- 36 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:08
-
「おはよっ、梨華ちゃん、三好ちゃん。」
教室に入ると、柴ちゃんはもう来ていた。
「おはようございます。」
「おはよう。」
「二人とも朝から仲がよろしいことで。」
柴ちゃんがにやっと笑う。
「ちょっとからかわないでよ!」
私は思わず声を上げてしまう。
隣の三好ちゃんはというと・・・。
「柴田さん、現代文の宿題やってきました?」
・・・何もなし。スルー。
そうだよね、三好ちゃんはそういうこと気にしない人だもんね。
- 37 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:09
-
なんかバカみたいじゃん。
私だけこうやって三好ちゃんのこと、意識してんのって。
朝から三好ちゃんに会いたくて電車を合わせたり、三好ちゃんが最近読んだって本を私も読んでみたり、三好ちゃんが私の白玉食べたいって言うからすっごく力入れて作ったり・・・。
三好ちゃんの隣にいるとドキドキするの。
もっと一緒にいたいの。
片思いだって分かってるけど、期待とかしてるわけじゃないけど。
でも、でも・・・。
・・・・私の心には“春”はやってくるのかなぁ。
柴ちゃんとノートを見せ合いながら笑ってる三好ちゃん。
もうっ!私はこんなに三好ちゃんのこと大好きなのに!
私のこと見てよ!私の名前呼んでよ!
「石川さん。」
- 38 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:09
-
私の心を読んだかのようにタイミングよく三好ちゃんは声をかけた。
「な、何?」
どうしよう、心臓がばくばくしてる。
「現代文の答え合わせしましょ?」
・・・・やっぱりそっちなのね・・。
- 39 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:10
-
昼休み。
三人で屋上でごはんを食べる。
いつもはみんなお弁当だけど、今日は三好ちゃんはコンビニで買ったパンを食べていた。
「今日、お母さんが寝坊しちゃったんですよ。」
あんぱんの袋を開けながら、三好ちゃんは苦笑い。
「よかったらおかず食べない?」
私がピンクのお弁当箱を差し出すと、三好ちゃんの目は爛々と輝いた。
「いいんですか?」
「うん。」
「じゃあ・・・卵焼きもらっていいですか?」
「うん、いいよ。」
三好ちゃんが卵焼きに手を伸ばす。
「梨華ちゃん、食べさせてあげればいいじゃん。あーんって。」
隣で柴ちゃんが言う。そのにやっとした笑い、今日で二回目。
私が三好ちゃんのこと好きって知ってるから、こんな風によくからかってくるの。
あーん、なんてやったことないもん。恥ずかしいって!
私は真っ赤になって首を振ってたんだけど。
- 40 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:11
-
「あ、じゃあ、お願いします。」
三好ちゃんはあっさりとそう言って、口をあけた。
え?マジ?
どうしようと少しパニくる。
でも、口を開けたまま三好ちゃんは待っているので、私は意を決してお箸で卵焼きを掴むと、差し出した。
ぱくっと三好ちゃんが卵焼きを食べる。
「石川さんちの卵焼きって甘いんですね。おいしい。」
ありがとうございます、と三好ちゃんはにっこり。
「私のも食べていいよ。何がいい?」
「えっと・・。」
柴ちゃんと三好ちゃんのやり取りが側で聞こえてたんだけど、私はお箸の先を見つめたまま。
・・・三好ちゃんと間接キス・・。
心臓がばくばくいってて、何だか熱が出たみたいに熱くなって。
顔を上げると二人は柴ちゃんのお弁当箱を覗いている。
お箸で卵焼きを摘んで、私はそっと口に入れた。
- 41 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:11
-
「これ知ってます?」
ごはんを食べ終わると、三好ちゃんがコンビニの袋から箱を一つ取り出した。
「何?」
「今日、コンビニで見つけたんですけど。」
季節限定と書かれたチョコレートのお菓子だった。
「おいしそうだったからつい買っちゃったんです。」
三好ちゃんはうれしそうに箱を開けている。
「限定とか新製品ってついつい買っちゃうよね。」
「うん。特にチョコはなんか買っちゃう。」
三人でうなづき合いながら、チョコを食べる。
「おいしいね。」
「うん、季節限定だけのことはある。」
デザートは別腹。ごはんを食べた後だけどお菓子は食べれちゃうもんだ。
- 42 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:11
-
「そういえばさ、三好ちゃんってストロベリーチョコ好きなの?」
柴ちゃんがチョコ、これもストロベリー味、を口に入れて尋ねた。
そうだ、三好ちゃん、お菓子とかいつもストロベリーを食べてる。
「はい、昔からイチゴ、好きなんです。」
ドキッ
「イチゴって甘酸っぱくておいしいじゃないですか。」
「うん、私も好きだけど、いっつも食べてるよね。」
私の頭の中に半年前の記憶が蘇る。
- 43 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:12
-
彼女が転入して数日後のこと。
一緒にお昼を食べようと彼女を柴ちゃんと誘って、屋上でのランチタイムのとき、急に言われたのだった。
「石川さんってイチゴみたいですね。」
「「え?」」
言われた私だけじゃなく、おにぎりを食べていた柴ちゃんまでもが驚いた。
「・・どういうこと?」
「いや、特に深い意味はないです。」
三好ちゃんはマイペースにサンドウィッチを口に運んでいる。
- 44 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:12
-
「三好ちゃんっておもしろいねぇ。」
柴ちゃんが笑った。
「そうですか?私なんかより柴田さんや石川さんの方がおもしろいですよ?」
「私はともかく、梨華ちゃんはおもしろいよね。」
「私?あ、ギャグ・・。」
「じゃなくて、空回っている行動。」
間髪いれず柴ちゃんのつっこみ。
そして爆笑している三好ちゃん。
「二人ともひどいっ!」
そうして三人で笑いあう。
- 45 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:13
-
ねぇ、三好ちゃん、覚えてる?
私は今でもすっごく覚えてるよ。
少しは期待しちゃってもいい?
- 46 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:14
-
「三好ちゃんって、そんなに・・イチゴ好きなの?」
おそるおそる私が訪ねれば。
「はい、大好きです。」
満面の笑顔。
あぁ、その笑顔に私の心はぎゅっとなって。
私のことを大好きって言われたわけじゃないんだけど、なんだか言われた気分。
そう思ってしまう私は相当重症だ。
- 47 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:14
-
「なんかもうすぐ春なんだね。」
柴ちゃんが屋上から並木道を見つめて言った。
「そうですね。四月になってクラス変えがあっても、こうして石川さんと柴田さんと一緒にいたいなぁ。」
三好ちゃんがフェンスにもたれながら空を見ている。
「そうだね。」
私は三好ちゃんの隣で空を見上げた。
空には三本のひこうき雲。
- 48 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:15
-
春の訪れとともに、私の心にも“春”がやってきますように。
できれば、その“春”が隣の彼女でありますように。
- 49 名前:恋苺 投稿日:2006/03/18(土) 02:16
-
END
- 50 名前:七作 投稿日:2006/03/18(土) 02:17
-
* * *
- 51 名前:七作 投稿日:2006/03/18(土) 02:27
- コメントありがとうございます。
>26様
ストレートにくるよりも後藤さんはこういう方がかっこいいかと思います。
>27様
石川さんの可愛い動揺加減を出したかったのでそう言ってもらえてうれしいです。
>28様
にやにやしながら・・・甘めにしたかったもので。
そう言ってもらえると書いてよかったなぁと思います。
>29様
いしごまはイイっす!
- 52 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/23(木) 00:36
- うわーいいとこ発見しちゃった
いしごまのもりかみよのもすごくよかったです!
更新楽しみにしています
- 53 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 18:58
-
つまりはそういうこと。
- 54 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 18:59
-
「・・・もしかして怒ってる?」
おそるおそる、ちらりと上目で美貴を見る。
「別に。」
そう言って、ふいっと横を向く美貴。
不機嫌そうな表情と仕草はどう見たって怒ってると言ってるようなもの。
美貴はあえてそれは隠したりしない。
だって怒ってるんだから。
だけど、怒ってるなんて口にするのは何か癪だから言わないだけ。
「やっぱ怒ってるんだ・・・。」
とたんにしゅんとなる彼女。
美貴のベッドに座って、青いクッションをぎゅっと握り締める。
「だって二人はお似合いだなって思ったんだもん。」
だからってさ、そんなこと勝手に決めてくんなよ。
- 55 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:00
-
話は十分前に遡る。
隣の家に住んでいる幼馴染の石川梨華が美貴の部屋にやって来た。
やって来たというのは少し違うか。
家に帰ってきて、自分の部屋を開けたら、梨華ちゃんが美貴のベッドの上で寝転がりながら、美貴のマンガを読んでいたんだから。
小さい頃から一緒で、毎日のように行き来してて、まるで二つ家があるようなもん。
お互いの親だってもう当たり前って感じだし、藤本家のリビングに梨華ちゃんがいたとしても、反対に石川家に美貴がいたとしても違和感なんてないくらいだ。
- 56 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:00
-
「おかえりー。遅かったね。」
梨華ちゃんとは高校までは同じ学校に通っていたけれど、さすがに大学は違う。
確か梨華ちゃんは今日は午前中で授業は終わりって言ってたっけ?
でも、美貴が今日はサークルがあるってことはそっちも知っているはず。
「いつから来てたの?」
「うーん、三十分前くらいかな。授業の後に友達とお茶してたんだ。」
「そっか。」
美貴と話している間も梨華ちゃんはマンガから顔を上げていない。
その間に美貴はささっと部屋着に着替えた。
美貴が着替え終わる頃、梨華ちゃんは読んでいたマンガを本棚に戻し、座り直した。
だから美貴も梨華ちゃんの隣に腰を下ろした。
今日は美貴に何か話があるみたいだなと直感で感じた。
別に話なんかなくてもお互いの家に行ってるもんだから、こういう話がありそうって時はなんとなく分かる。
- 57 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:01
-
「美貴ちゃん、今度の日曜日って空いてるよね?」
「うん。」
バイトもないし、予定もない。
「じゃあさ、日曜にデートしてほしいの。」
「デート?」
「そう。」
デート?いつも二人で遊びに行ってたりするじゃん。
彼女の表情からはどんな真意なのかいまいち分からない。
「いいけど・・・どこに行くの?」
「渋谷にしようかなって思ってる。」
渋谷?しょっちゅう買い物とかに行ってるじゃん。
わざわざデートなんて言い方にするなら、いつもと違ったところの方がいいんじゃないかと思う。
「デートならさ、遊園地とかがいいんじゃないの?」
「うん、私もそう思ったんだけど、苦手かなぁって思って。」
苦手?そんなしょっちゅうじゃないけど、美貴と梨華ちゃん、遊園地に行ったりするよね?
別に梨華ちゃん、苦手じゃなかったよね・・?
ちなみに美貴も遊園地は苦手じゃない。お化け屋敷はダメだけど。
- 58 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:02
-
「誰か他にいくの?」
「ううん、二人だけだよ?」
そっか。デートだもんね。
「じゃあ、いつも通りって感じでいい?」
「うん。あ、一つだけ、このお店に寄ってもらいたいの。」
梨華ちゃんはポケットから紙切れを取り出し、美貴に見せる。
住所と地図が梨華ちゃんの手書きで記されている。
「・・・パンプキンハウス?」
「かぼちゃの専門店なんだけど、そこのケーキがおいしいんだって。」
「分かった。ここに寄ればいいんだね。」
「うん、きっと喜ぶと思うから。」
ん?何かその言い方おかしくないか。梨華ちゃんが行きたい店なんだよね?
喜ぶのは梨華ちゃんなんだよね?
そんなことを思っていると、さっきから何か会話内容に違和感があるような・・・。
「あのさ、梨華ちゃん。」
「なぁに?」
「そのデートって梨華ちゃんと行くんだよね?」
- 59 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:02
-
梨華ちゃんはきょとんとした顔になった。
「あれ?言ってなかったっけ。」
「何を。」
美貴が聞き返すと、梨華ちゃんはにっこりと笑った。
「デートの相手、紺野だよ?」
「はぁ?!」
石川さん、一番重要なところが抜けてるって!!
- 60 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:03
-
デートの相手であるらしい紺野あさ美は高校の一つ下の後輩。
梨華ちゃんとはテニス部で一緒で、美貴とは委員会が同じだった。
面倒見のいい梨華ちゃんはコンコンのことを可愛がっていた。
「実はね、数日前に紺野と会って、その時に好きな人の話になったの。」
コンコンは高校の時に好きだった人がやっぱり忘れられなくて、でも学年も違ったし、連絡先も分からなくどうしようかと思っていたらしい。
「その好きな人っていうのが美貴ちゃんみたいなの。」
で、おせっかい焼きの梨華ちゃんはお膳立てをしてあげようと思ったらしく、勝手にデートを決めてきたってわけだ。
「紺野は付き合うことができてもできなくても告白したいみたいなの。だから美貴ちゃん、話を聞いてあげてくれない?」
「そんなこと急に言われても・・。」
コンコンはかわいいと思うよ。性格だっていい子だし。
でもさ、この展開に美貴は無性に腹が立ってるんだよ!!
- 61 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:03
-
で、最初に戻る。
明らかにへこんでいる梨華ちゃんと明らかに怒ってる美貴。
「だってぇ、紺野の力になってあげたかったんだもん・・。」
「・・告白されたとしても美貴は断るよ。それでも?」
「けじめをつけたいって紺野、言ってたから。」
美貴ははぁーっと溜息をついた。
「とりあえず日曜はコンコンとデートするよ。」
「うん、ありがと。ごめんね。」
「ま、いいよ。」
美貴は立ち上がった。
- 62 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:04
-
「美貴ちゃんって、好きな人でもいるの?」
「え?」
座ったままの梨華ちゃんは美貴を見上げている。
「だって、その・・紺野のこと断るって言ってたから・・。」
いつもの美貴だったら、梨華ちゃんのことなんてさらりとかわしてた。
でも、そんな不意打ちは予想外だったから一瞬間が空いてしまった。
「いるんだ、好きな人。」
「えっと、まぁ・・それなりに・・。」
「私の知ってる人?だったら手伝うよ。」
・・・あのね、石川さん。今、あなた、おせっかい焼いて、美貴が怒って、反省したばっかりでしょーが。
だけれど、当の本人はにっこりと一言。
「美貴ちゃんには幸せになってもらいたいし。」
- 63 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:04
-
「あのさ、梨華ちゃん。何で美貴がコンコンとのデートで怒ったか分かってる?」
「勝手に決めちゃったからだよね。」
「それもある。でも、梨華ちゃんがコンコンの気持ちを美貴に伝えたってことも怒ってるわけ。」
「・・・そういうのってやっぱり告白する本人から聞きたいってこと?」
「確かにそういうこともあるかもしれないけど・・。」
「美貴ちゃん?」
「・・つまりは・・・そういうことなんだよ。」
「?そういうこと?どういうこと?」
・・だめだ、やっぱり全く分かってない。
- 64 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:05
-
美貴はゆっくりと深呼吸。
不思議そうに美貴を見上げている梨華ちゃん。
そんな彼女に美貴は言った。
「だから!好きな子から他の人が自分のことが好きだって聞くのが嫌だって言ってんの!」
- 65 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:06
-
美貴と梨華ちゃんが見詰め合うこと数秒。
きょとんとしたままの梨華ちゃん。
こいつ、美貴の言ったこと、ちゃんと分かってんのかなぁ。
さすがにストレートには言えなかったので少し不安になった。
でも、急にかぁーっと顔が赤くなったので、無事に?伝わったらしい。
「で、お返事は?」
「え、え、えーっとぉ・・・その・・、いきなりっていうかぁ・・。」
「いきなりじゃなかったらいつ言うの。」
「や、いつって言われても・・。」
しどろもどろに答える梨華ちゃん。
ったく、そういうところがかわいいんだよ。
そう思ってしまう美貴も相当重症だな。
- 66 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:06
-
「別に今言わなくていいよ。」
「へ?」
「ただし、日曜のコンコンとのデートの後、ばっちり聞くから。」
美貴は梨華ちゃんのおでこを人差し指でぴっと押した。
そうして美貴はドアに向かう。
「ごはん食べていくでしょ?お母さん、梨華ちゃんの分も用意してるって言ってたから。あ、今日はしょうが焼きだって。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。」
さっさと部屋を出て行く美貴の後ろから、少し情けない声が聞こえた。
- 67 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:07
-
END・・・?
- 68 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:08
-
おまけ
- 69 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:08
-
日曜、渋谷、ハチ公前。
あまりの人の多さにうんざりしていながら、待ち合わせ場所に行くと、すでにコンコンは待っていた。
どんな顔して会えばいいのか昨日の夜まで悩みに悩んだが、やっぱり普通にしてるのが一番だなと思い、普通に声をかける。
「おはよう、コンコン。」
すると、コンコンはえっ?という顔で美貴を見た。
「おはようございます・・って、どうして藤本さん、ここにいるんですか?」
「は?どうしてって、梨華ちゃんに言われて・・。」
「石川さん?で、でも、その・・・私・・。」
コンコンは顔を赤くして小さな声で言った。
「後藤さんが来てくれるって・・・。」
「ごっちん?!」
- 70 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:09
-
コンコンから聞いた話によると、好きな人の話をしたにはしたらしいが、肝心の好きな人の名前は出さなかったらしい。
『同じ委員会・一つ学年が上・梨華ちゃんと仲がいい』というキーワードだけで、梨華ちゃんはコンコンが名前を言う前に「分かった。まかせといて。」と言ったのだそうだ。
あまりに自信たっぷりに言うものだから、コンコンはてっきりごっちんだと分かってくれたものだと思っていたのだが・・。
「梨華ちゃんの勘違いかよ。」
「あはは、そうみたいですね。」
せっかくだから、美貴とコンコンは『パンプキンハウス』でケーキを食べながら、今回のデート事件について話していた。
全ては梨華ちゃんの勘違いが原因だったというわけだ。
- 71 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:09
-
「最初っから美貴に相談してくれればよかったのに。」
そうすれば遠回りなんかしないでちゃんと告白できたかもしれないよ?
美貴は店に入って来た人影をちらっと見て、席を立った。
「さて、美貴はそろそろ帰るから。コンコンはもうちょっとゆっくりしてきなよ。」
「でも。」
「コンコンの待ち人が来たからさ。」
「え?」
「あ、こんなとこにいたんだ〜。」
駆け足で近づいてきた人物にコンコンは目を丸くした。
「ごっ、後藤さん?!」
「美貴、この後、大事な用があるんだ。だから、ごっちん、コンコンのお相手よろしくね〜。」
- 72 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:09
-
実はコンコンが席を立った隙にごっちんに連絡していたのだ。
偶然にも渋谷に来ているってことだったのでこの店を教えた。
きっとコンコンは告白できると思う。
もしできなかったとしても、おそらくごっちんからしちゃうだろうから。
高校在学中、ごっちんもコンコンのこと、気になってたみたいだからさ。
- 73 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:10
-
電車に揺られながら、この後のことを考える。
とりあえずは梨華ちゃんの勘違いを正すべきだな。
きっとものすごくへこむだろうけど。
それから、ちゃんとお返事も聞かないとね。
梨華ちゃんは何て言ってくるだろう?
顔を真っ赤にして、「あ、あのね。」なんてどもりながら?
もし断られたとしても、そんなすぐには諦めないから。
っていうか、強引に押し切るぐらいの気持ちだし。
つまりはそういうこと。
美貴は梨華ちゃんが大好きだってこと。
とりあえず、もう一度ストレートに伝えよう。
- 74 名前:つまりはそういうこと。 投稿日:2006/03/25(土) 19:11
-
本当にEND
- 75 名前:七作 投稿日:2006/03/25(土) 19:12
-
* * *
- 76 名前:七作 投稿日:2006/03/25(土) 19:14
- >52様
ありがとうございます。
発見されちゃいました。
ご期待に答えられるようがんばります!
- 77 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/26(日) 10:03
- みんなかっわいいなあ……w
かぼちゃプリンみたいにおいしかったです。ごちそーさまでした。
- 78 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/26(日) 14:31
- いいですねーここ
ホッとするというか優しい気持ちになりますわ
みんなかわいいくて最高
- 79 名前:いろは恋歌 投稿日:2006/04/02(日) 00:58
-
いろは恋歌
- 80 名前:いろは恋歌 投稿日:2006/04/02(日) 00:59
-
いつからだろう。
廊下ですれ違って小さく会釈した君。
初めはあたしにじゃないと思った。
二度三度続けば偶然じゃないと分かる。
ほぼ毎回なら確信する。
変だな、気味が悪いとは思わなかった。
というのも、目が合う=自分も見ているということが分かっていたから。
ちらりと一瞬。一秒のアイコンタクト。
理由なんて一つしかない。
温くなったコーヒー。
ループする君の笑顔。
思わず口元が緩んでしまう。
忘れることなんてできやしない。
かなりやばい、自分でも分かってるさ。
予想以上にあたしは君が好きってこと。
- 81 名前:いろは恋歌 投稿日:2006/04/02(日) 00:59
-
たくさんの人に好きだと言われ、付き合った。
恋愛というよりもまるでゲーム。
それなりに楽しかったけれど、本気になんてなれなかった。
つまらなくなってやめて、それの繰り返し。
年がら年中誰かが側にいて、恋人に不自由なかったあたし。
なのに君に対してはまるで初めて恋をしたかのように余裕も自信もない。
らしくないって自分でも思うんだ。
- 82 名前:いろは恋歌 投稿日:2006/04/02(日) 01:00
-
向かいのホームに君の姿。
運命だって勝手に思った。
“石川さん!”
乗りかけた君の腕を引っ張って。
驚いた君の顔。
口を固く結んで、あたしをじっと見つめてる。
やるべきことは決まってる。
まだきちんと話したことだってないけれど。
- 83 名前:いろは恋歌 投稿日:2006/04/02(日) 01:01
-
怪訝そうにあたし達を見ては通り過ぎていく人達。
二人は恥ずかしくなってうつむく。
鼓動はどんどん速くなる。
笑顔を作ろうとしてもうまくいかない。
手にはじんわりと汗がにじんで。
“あ、あの、いきなりで悪いんだけど・・・。”
さすがに緊張。一つ深呼吸して。
“君のことが好きなんだ。・・・付き合ってくれない?”
ゆっくり顔が上がって、視線がぶつかる。
目をすっと逸らして。
耳まで真っ赤な君は。
静かに、こくりとうなづいた。
- 84 名前:いろは恋歌 投稿日:2006/04/02(日) 01:02
-
“吉澤さん。”
いつも願ってたよ、君があたしの名前を呼んでくれるのを。
もっともっと呼んでほしい。
- 85 名前:いろは恋歌 投稿日:2006/04/02(日) 01:02
-
切に願うのはただ一つ。
ずっとあたしの側にいて。
- 86 名前:いろは恋歌 投稿日:2006/04/02(日) 01:03
-
END
- 87 名前:七作 投稿日:2006/04/02(日) 01:04
-
* * *
- 88 名前:七作 投稿日:2006/04/02(日) 01:11
- 短いですが、今回は少し雰囲気を変えて。
自分なりにいろいろとがんばってみました。
気づいてくれる方、いらっしゃるでしょうか・・。
コメントありがとうございます。
>77様
おいしく食べていただけたようでよかったです。
>78様
これからもかわいくて優しい気持ちになれるような話を書けるようがんばります。
- 89 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/03(月) 19:39
- おお!
きちんとストーリーになっているし、すごいですw
- 90 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/03(月) 22:14
- うわあ感動だ……普通やろうと思いませんよこれ。
それに、言葉だけなのに「歌」って感じがしましたよ。好き。
- 91 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:14
-
友情〜最高な奴ら!〜
- 92 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:15
-
ふらふらふら
校舎の廊下を歩いている一人の学生。
足取りも重く、あきらかに不機嫌オーラを出しまくっている。
すれ違う学生はその暗い雰囲気にぎょっとして、そしてそそくさと離れていく。
普段から彼女が人目置かれる存在であったことは確かだ。
しかし、今の彼女には触らぬ神に祟りなし。
誰もが関わりたくないと思っている。
- 93 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:15
-
そんな彼女を見つめるのは三人の学生。
「美貴ちゃん、大丈夫かなぁ。」
「まさかあんな風になっちゃうなんてさ。らしくないっつーか。」
「まぁ、ミキティもああ見えて女の子だし。」
三人は同時に溜息。
三人が心配そうに見つめているのは彼女たちの親友である藤本美貴。
普通にしててもガン飛ばしていると誤解されてしまう彼女はその強気な性格もあいまってまわりからはどこか一歩距離を置かれてしまうということがしばしばあった。
そんな彼女に臆すこともなく、傍にいる稀有な友人がこの三人、石川梨華、吉澤ひとみ、後藤真希だった。
- 94 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:16
-
「もう一週間だね・・。」
「そんなに経つんだねぇ。ミキティにしては長い感じがする。」
「いつもだったらそんなショックもなかったのに。」
「でも今回は結構入れ込んでたじゃん、美貴ちゃん。」
美貴が廊下の角を曲がって姿が見えなくなり、三人は慌てて追いかける。
今の美貴は不安定。目を離したらどうなるか分からない。
「いつもは振る側だったしさ。」
「そうそう、飽きたの一言でね。」
美貴を追いながら三人は話を始める。
「今回は振られたわけだから普段よりはショックっしょ。」
「でも一週間は長くない?」
「それだけ相手が好きだったってことか・・。」
ひとみの言葉に真希と梨華は二ヶ月前の美貴のことを思い出す。
- 95 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:16
-
当時の恋人、つまり今回振られた相手であるが、その恋人との甘い日々を惜しげもなく三人に話しまくり、のろけまくり。
時にはつっこまれ、呆れられ、よかったねぇとまるで子供をあやすような反応をされ、それでも気分を害することなく、にこにこしている美貴を見て、三人は少なからず微笑ましく思っていたのだ。
今まではそんなことはしなかったから今回は本気なのかと思っていた。
今思えば、あの頃が今回の恋愛の絶頂期だったわけだ。
- 96 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:17
-
「そろそろどうにかしないとね。」
「どうにかってどうやって?」
「慰めるしかないじゃん。」
「でもそういうのってあまり美貴ちゃん好きじゃないんじゃないの?」
プライドの高い美貴は同情されることをひどく嫌がっていたところがある。
「そうだけどさ、このままじゃねぇ・・。」
「あんな感じじゃ、うちらも調子狂うって。」
「そうだけど・・。」
- 97 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:18
-
自販機の前で飲み物を買っている美貴を見つけ、三人は傍の物陰に隠れる。
がちゃんと音がして、美貴は取り出し口から缶を取り上げる。
力なくかしゃかしゃと缶を振り、プルタブを開ける。
ぷしゅー
「うわわわわ・・。」
勢い良く飛び出す中身。慌てる美貴。
「あちゃー・・。」
「あれは結構重症だね。」
「こうなったら・・・。」
真希がよしっとうなづく。
「ごっつぁん?」
首をかしげる梨華と呆れ顔で美貴を見ているひとみに真希は言った。
「アレしかないっしょ!」
- 98 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:19
-
「美貴ちゃん、こっちだよ。」
「ん〜・・・。」
梨華に手を引かれ、美貴は気の抜けた表情で歩いている。
二人の後ろには両手にスーパーの袋を持っている真希。
「ごっつぁん、荷物重くない?」
「んん、大丈夫。それより、梨華ちゃんはミキティを頼むよ。」
「うん・・・。」
三人が向かっているのは一人暮らしの梨華のマンション。
真希が出した案というのは飲んで忘れるというひどく単純な案だった。
- 99 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:19
-
梨華のマンションは大学から一番近いこともあって、四人の溜まり場になることが多い。
ピンクだらけの部屋も通い詰めれば慣れてくるものだ。
買って来た材料をキッチンに置き、真希はエプロンを着けるとさっそく料理に取りかかる。
その間、梨華は酒の缶を冷蔵庫に詰め、美貴はリビングでぺたっと座り込んで、ぼぉーっとしてる。
「梨華ちゃん。」
「うん、分かってる。」
時計の針は五時を過ぎたところ。
料理が出来てないとはいえ、飲み始めるには少し早い時間。
それでも関係ないと、梨華はチューハイを二本掴むと、美貴の横に座る。
そしてプルタブを開けて、一本を美貴に渡す。
「はい。」
「あー、ありがと。」
ごくごくと二人は飲む。
- 100 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:20
-
「ありがとね。」
「何が?」
「みんな、美貴のこと、気にしてくれて。だから焼肉なんでしょ?」
大学生の四人はそう毎回はお店で焼肉は食べられない。
だから梨華のマンションでプレートを出して、手の届く値段の牛肉を買い込んで焼肉パーティー。
「私も焼肉食べたかったからだよ。」
梨華の言葉に美貴は小さく笑った。
- 101 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:21
-
「美貴自身もこんなに落ち込むとは思ってなかったんだよ。」
どうやって本題に持っていこうか悩んでいた梨華は、美貴の方から話し出してくれたことに内心感謝していた。
「今までの恋愛って美貴の方から振ってたから、振られるってことに慣れてなかったんだ。今まで美貴に振られた人ってこんな風に感じてたのかなぁって少し思った。」
「そうだねぇ。」
梨華は相槌を打って、チューハイを一口。
「同じバイト先の後輩だっけ?」
「うん。」
「もしかして今もバイト先に・・・?」
「いや、もうやめた。」
「そっか。」
「向こうから告白してきて、最初はいいかなぁくらいで付き合ったんだけど、だんだん好きになっちゃってさ。きっとはまるってこういうことを言うんだってくらい好きになってた。」
「美貴ちゃんにしては珍しく入れ込んでるなぁって思ってた。」
「だよね?美貴も思うもん。」
美貴の缶が空になっていることに梨華は気づくと、冷蔵庫から新たに二本缶を持ってきた。
今度は美貴自身が自分で缶を開けた。
- 102 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:21
-
「他に好きな人ができたんだって。」
「・・そう。」
「どうしても諦められないんだって。」
「・・・うん。」
「告白しても付き合うことができるとは限らないのにさ。」
美貴は持っている缶をぐぐっと一気に喉に流し込む。
「でも、他の人を好きなまま、美貴と付き合ってられないんだって。」
「・・・・。」
「美貴はそれでもいいと思ったのに!!」
梨華は美貴をゆっくりと抱き締める。
梨華の胸の中で美貴はぐすぐすと泣き始める。
こんなに弱った美貴ちゃんは見たことがない。いつも強いイメージだったのに。
梨華は小さい子をあやすようにとんとん、と背中を叩いた。
- 103 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:22
-
「今でも・・・その人のこと、好き?」
「・・うん。やっぱり好き。」
「そう・・だよね。」
梨華は美貴を抱き締めたまま、その髪をなでる。
「あのね、童話でこんな話があるの。」
もしかしたら読んだことがあるかな?
そう前置きして梨華は話し出す。
- 104 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:24
-
「きつねの男の子がある日、森で黄色いバケツを見つけるの。それはとてもきつねの男の子に似合ってて、どうしてもそのバケツが欲しいと思ったの。そのバケツの持ち主は誰だか分からなくて、そこできつねの男の子は友達のくまの男の子とうさぎの女の子と話をして、一週間元あった場所にそのバケツを置いておいて、もし持ち主が現れなかったら、そのときはきつねの男の子がもらおうって。この話、知ってる?」
美貴は知らないと横に首を振った。
「それから毎日毎日きつねの男の子はそのバケツと過ごすの。水を入れたり、持って歩いたり。雨が降ったり、風が吹いたら、きつねの男の子はそのバケツが大丈夫かどうか心配して見に行ったり。きつねの男の子はそのバケツが自分のものになったときのことを夢見て、その一週間を過ごすんだけど・・。」
「それで・・・?」
梨華の胸の中からちょこんと目を上げ、美貴はその先を促す。
- 105 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:24
-
「一週間後の朝、きつねの男の子がその場所にやって来ると、そこには黄色いバケツはなかった。」
「そんな・・。」
「あんなに気に入っていたバケツなのに、きつねの男の子はそんなに落ち込んではいなかった。あのバケツはもう自分のところにはないけれど、一緒に過ごした一週間はこれから先も消えることはないって。その一週間は、あのバケツはきつねの男の子のものだったから。」
「梨華ちゃん・・・。」
「私はね、その人のことを早く忘れろとは言わないよ?でもね、その付き合ってた間はその人は美貴ちゃんのことが好きだった。それだけは確かだってこと。」
そう話す梨華の横顔がひどく大人びているように美貴は感じた。
- 106 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:25
-
二人は三本目の缶を開ける。
目が少し真っ赤になってしまった美貴は少し恥ずかしそうに、それでもごくごくと豪快に飲んでいる。
「・・・ところで、何でその童話知ってるの?」
小さい頃とかに読んだの?
美貴が尋ねると、梨華は少し困ったように笑った。
「実は前に失恋したとき、かおたんが話してくれたの。」
「何だよ、飯田さんの受け売りかよ!」
梨華ちゃんがそんな話、知ってるはずないもんねぇ、と美貴が言えば、ひどーい!と梨華が拗ねて、二人はあははと笑った。
- 107 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:25
-
「っうわ、外、さっみぃ〜。」
ひとみが黒いマフラーに顔を埋めながら部屋の中に入ってきた。
「おかえり〜。もうすぐ出来るよ〜。」
キッチンからは真希の間延びした声。
あ、梨華ちゃん、プレート出して〜。はーい。
梨華はぱたぱたとキッチンに向かう。
「何だよ、二人とももう飲んでるのかよ。」
リビングに転がってる缶を見て、ひとみはむくれる。
「へへ〜、いただいちゃってるよ〜。」
「ミキティ、もう酔ってる?」
「いいや、これからこれから!」
今日は飲み明かすんだからね!と拳を上げる美貴にひとみはおうよ!と答える。
- 108 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:26
-
テーブルにプレート、野菜、牛肉、それから真希が作ったつまみなどが運ばれ、四人が囲んで座る。
「じゃ、まずは乾杯ということで。」
「もう出来上がってる奴らはいるけどな。」
「よっちゃん、うっさい。」
「何に乾杯する?」
「そうだね〜・・。」
「ミキティ、失恋かわいそうだね、乾杯。」
「同情すんな、バカ!」
「とっ、とりあえず、お肉スキスキ、お腹スキスキ・・で乾杯!!」
「「キショ。」」
「ごっつぁーん、二人がぁ・・・。」
「んあぁー、梨華ちゃん、よしよし。」
- 109 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:26
-
「さて、さっそく焼きますか!」
「「うん。」」
「と、その前にさ。」
肉に箸を伸ばした三人をひとみが止めた。
「よっちゃん、早く焼かせろ。」
ぎろりと美貴はひとみを睨む。
肉を前にした美貴を止める行為はそうとう危険であるのだが、しかし、そんな美貴をひとみは無視。
「今度の土曜、三人とも予定空けといて。」
「え?何でよ?」
「その日、合コンだから。」
- 110 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:27
-
じゅわー
黒い丸の中に鮮やかな黄色が一つ。
ひとみの箸に摘まれたかぼちゃが熱させたプレートにのっかった。
「あっ、何、野菜入れてるのさ!」
「いいじゃん、別に。」
「最初は肉って決まってんの!」
「誰がそんなこと決めたんだよ!」
「美貴だよ、文句ある?」
「あるよ、大あり!」
ぎゃーぎゃー言い合ってる美貴とひとみの横で、梨華と真希はマイペースに肉と野菜を次々焼いている。
「ごっつぁん、このお肉おいしーね。」
「結構安かったのにね〜。あ、このピーマンもう焼けてるよ、ほい。」
「えー、お肉はぁー?」
「野菜もちゃんと食べなくちゃダメだって。」
「・・はーい。」
「あっ!もう二人食べてるじゃん!!」
「二人ともおいしーよ?」
「肉っ!にくっ!!」
「ミキティ、がっつきすぎだって。」
「腹こわすよ?」
すごい勢いで肉を口に入れている美貴を見て、三人は顔を見合わせ苦笑い。
- 111 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:28
-
もし誰かが落ち込んでたら、そのときはバカ騒ぎして、テンション上げよう。
ぶつかった問題を乗り越えるのは結局本人だから。
だから、それを見守っていくのも友達の役目じゃん?
大丈夫、彼女なら解決できる。
だって、うちらの最強の親友だよ?
「あ、デザートはごとー特製フルーツゼリーだから。」
「「「やった!」」」
- 112 名前:友情〜最高な奴ら!〜 投稿日:2006/04/09(日) 00:28
-
END
- 113 名前:七作 投稿日:2006/04/09(日) 00:30
-
* * *
- 114 名前:七作 投稿日:2006/04/09(日) 00:35
- 自分が思う85年組の感じ。
コメントありがとうございます。
>89様
分かっていただけたようでよかったです。
なんとか物語にさせました。
>90様
先にタイトルだけが浮かんできて完成させるまで少し時間がかかってしまいました。
好きと言っていただけて光栄です。
- 115 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/09(日) 01:42
- んー。なんか、すごく清々しい気分です。
これからも楽しみにしています。
- 116 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/09(日) 02:21
- 友情。。いいですね!
梨華ちゃんとミキティの場面グッときましたよ。
更新たのしみにしてます。
- 117 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:17
-
メイサクドウワ
- 118 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:17
-
むかーし、むかし、ある小さな村に瞳の大きな女の子が住んでいました。
その女の子はかつては天才的美少女だとみんなから褒められていました。
女の子がまだ小さかった頃、おばあさんは赤い布でずきんを作ってあげました。
そのずきんが女の子にとてもよく似合っていたので、みんなからはあかずきんちゃんと呼ばれるようになりました。
- 119 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:18
-
しかし、それも昔の話。
女の子は外見的にはきれいに成長したものの、まるで男の子かのような性格に育ってしまったのです。
「赤よりもさぁ、黒の方がかっけくね?っていうかさぁ、そもそもずきんっていうのが古いよね。」
- 120 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:18
-
ある日、おかあさんがあかずきんちゃんを呼んで言いました。
「よっさん、これを森に住んでいるごっちんとこに持ってって欲しいねん。ずっと寝っぱなしだから少しは栄養あるもんとらんと。」
「そーいやぁ、最近ごっちんに会ってないなぁ。中澤さん、いいっすよ。」
おかあさんはあかずきんちゃんにバスケットを渡しました。
「よっさんのことだから平気だとは思うけど、森にはそれは恐ろしいおおかみがいるって話や。気をつけていくんやで。」
「うっす。」
- 121 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:19
-
ここは森の中。
木の陰には何やら黒い影。
「ちゃんちゃかちゃーん!」
ひょっこりと現れたのは恐ろしいと言われているおおかみでした。
「なーんかつまんないなぁ。誰か来ないかなぁー。」
おおかみがそう思っていると、足音が聞こえてきました。
「あ、誰か来た!」
おおかみはそっと草陰に隠れます。
「えーっと、ここはどこだぁ。こっちでいいわけ?」
それはあかずきんちゃんでした。
バスケットを左手に持ち、右手に持った紙切れを見ながらきょろきょろとあたりを見回しています。
完全に迷っていました。
「中澤さん、書き方悪い〜。」
- 122 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:19
-
「あれは女の子だわ。こんな森に来るなんて。」
おおかみが見ているということも知らず、あかずきんちゃんはぶつぶつと独り言を言っていました。
「ほんとに赤い屋根の家なんてあるのかよ。」
あかずきんちゃんの言葉を聞いて、おおかみは森の奥にある一軒の家を思い出しました。
「赤い屋根?確かいつも寝てばっかの人がいたはず。あそこに行こうとしてるのかなぁ?」
そのとき、おおかみのおなかがぐぅと小さく鳴りました。
「なんだかおなかがすいてきた・・。・・そうだ!あの女の子を食べちゃおうっと。」
そうと決めたおおかみはあかずきんちゃんに襲いかかろうとしました。
しかし。
「あぁー分かんねぇー!!」
あかずきんちゃんは急に大声で叫ぶと走っていってしまいました。
おおかみはその行動にあっけにとられてしまい、気づいたときにはもうあかずきんちゃんの姿は見えなくなってしまいました。
おおかみはしょうがなく、赤い屋根の家に向かって走っていきました。
- 123 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:21
-
こんこん
おおかみは家のドアを小さくノックしました。
しかし中からは返事がありません。
まだあかずきんちゃんは着いてはいないようでした。
「今日も寝てるのかなぁ。」
ゆっくりとノブを回すと、ベッドではおばあさんが気持ちよさそうに眠っていました。
すすすとベッドにおおかみは近寄りました。
「眠ってる人を食べちゃうってのはなんか嫌だなぁ。どうすれば起きるかなぁ。」
おおかみはおばあさんの耳元で言いました。
「朝ですよぉー、起きてくださーい!」
しーん。おばあさんは目を覚ましません。
「おいしいお菓子があるよぉー!」
しーん。まだ起きません。
「うーん、どうしよう・・。」
そのとき、おおかみはぴんっとひらめきました。
「矢口さんが泉のところで待ってるって。」
するとどうでしょう。
さっきまでぴくりともしなかったおばあさんが勢いよくベッドから起き上がりました。
「やぐっつぁん、待ってて!今行くから!」
近くにいたおおかみのことにちっとも気づくことなく、家を出て行ってしまいました。
- 124 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:21
-
あまりのスピードに唖然としているのはおおかみです。
「あーあ、食べ損ねちゃったぁ・・。でも、女の子がいるからいっか。」
おおかみはのんきにそう考え、ベッドに腰掛け、あかずきんちゃんを待っていました。
しかし・・。
「遅いなぁ・・。まだ迷ってるのかなぁ。道案内してあげたらよかったかな?」
一向にやって来る気配はありません。
そのうち、おおかみは眠くなってしまいました。
「ちょっとこのベッドで休ませてもらおーっと。」
おおかみは勝手にタンスを開け、中からピンクのパジャマを見つけると、うれしそうにいそいそと着替え始めました。
「ちょっとだけおやすみなさーい。」
そうしておおかみは眠ってしまいました。
- 125 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:22
-
木々の間からオレンジ色の明かりが差し込んできた頃、ようやくあかずきんちゃんはお目当ての赤い屋根の家にたどり着くことが出来ました。
ドアをノックしようとしたとき、あかずきんちゃんは思い出しました。
「そうだ、ごっちんは寝てるからノックしても気づかないんだっけ?」
あかずきんちゃんはがちゃりとドアを開けました。
「やっぱりまだ眠ってる。」
- 126 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:22
-
あかずきんちゃんはベッドに近づくと驚きました。
「ごっちんじゃないじゃん!」
ベッドではいまだにおおかみが眠っていたのです。
しかし、あかずきんちゃんはおおかみがどれだけ恐ろしいのか分からなかったので、警戒しませんでした。
「・・ちょっと、この子、かわいいんじゃないの・・。」
むしろ知りたいと思いました。
少しの間、おおかみを眺めていると、あかずきんちゃんはどうしようもない気持ちがふつふつと湧き出てきてしまいました。
「・・よし。」
あかずきんちゃんはそっとふとんを剥がし、おおかみに覆い被さりました。
そしてそぉーっとそぉーっと起こさないようにパジャマのボタンを外し・・。
- 127 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:23
-
「んぅ・・?」
何やら気配を感じて、おおかみはゆっくりと目を覚ましました。
するとそこには自分に覆い被さっているあかずきんちゃんの姿が。
「ちょっと、何して・・。」
「あ、目ぇ覚めた?」
にやっと笑うあかずきんちゃんを見て、おおかみははっとしました。
「あ、あなたは・・。」
「寝てる顔もかわいかったけど、起きてる方がやっぱりいいねぇ。」
あかずきんちゃんはぎゅっとおおかみを抱きしめて言いました。
「では、いただきまーす!」
「え、あ、そのっ・・。」
そうして、あかずきんちゃんはおおかみをおいしくいただいてしまいました。
それからというもの、あかずきんちゃんとおおかみは赤い屋根の家で一緒に仲良く暮らしましたとさ。
おしまい。
- 128 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:23
-
* * * * *
- 129 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:23
-
『“作・朗読、藤本美貴。”
“松浦亜弥。”
“誕生日おめでとう、よっちゃん。”
“おめでとうございまぁす。”
“どうせ今も梨華ちゃんと一緒にいるんでしょ?”
“もしかしてベッドの中だったりして・・きゃぁっ!”』
- 130 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:24
-
「・・・読まれてるね、よっちゃん。」
予想通り、ひとみと梨華はベッドの中にいた。
コトを終えて、二人まったりしているところにひとみが美貴からMDをもらったのを思い出したのだった。
「どうせあいつらも今頃はやってるじゃん。」
二人仲良く手繋いで帰ってったし。
「よっちゃん、ストレートすぎ・・。」
- 131 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:24
- 『“ま、いつまでもバカップルでいなよ。”
“あ、よっすぃ、ほどほどにね。梨華ちゃん、次の日とか結構辛そうにしてたりするからさぁ、きゃはは。”』
「っ?!!」
「梨華ちゃん、体力ないなぁ。」
「よ、よっちゃんがありすぎなのっ!」
- 132 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:25
-
『“あ、こないだよっちゃんと話しててさ、聞いちゃったんだけど。”
“なになに?”
“うん、梨華ちゃんって意外と・・・・。”』
プツ
「・・・切れた。」
MDに入りきらなかったらしい。
- 133 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:26
-
「ちょっとよっちゃん、美貴ちゃんと何話したのよ?」
「・・何だろう?」
「ごまかさないで。」
「いや、ごまかしては・・・あ。」
「何?」
「前に楽屋でやったときのことかも。」
「な、な、なに話してるのよぉ!!」
「いや、聞かれたからさ・・。梨華ちゃんって結構・・・。」
「やめてやめてやめてぇー!!」
- 134 名前:メイサクドウワ 投稿日:2006/04/12(水) 20:27
-
<<迷作童話>>FIN
- 135 名前:七作 投稿日:2006/04/12(水) 20:27
-
* * *
- 136 名前:七作 投稿日:2006/04/12(水) 20:28
- 吉澤さん、お誕生日おめでとうございます。
こんなんですみません。
- 137 名前:七作 投稿日:2006/04/12(水) 20:31
- コメントありがとうございます。
>115様
清々しい気分になっていただけたようでよかったです。
>116様
石川さんと藤本さんの場面はちょっとがんばってみました。
最初はギャグっぽくしようかと思っていましたが無理でした。
- 138 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/13(木) 09:41
- アイディアが斬新で面白かったです!
いしよし万歳
- 139 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/15(土) 22:31
- あやみき万歳w
- 140 名前:七作 投稿日:2006/04/15(土) 23:38
-
『では、松浦亜弥で“砂を噛むように・・・NAMIDA”』
ごはんを食べ終えて紅茶を飲みながらソファで音楽番組を見る。
「やっぱりこの曲、いいよねぇ。」
あややの明るい曲も好きだけど、こういうミディアムテンポな曲も好き。
でもどんな歌も好きなの。
他の人の歌も上手に歌えちゃうのもすごいなぁって思うし。
「ねぇ・・。」
「ちょっと待って。」
「ねぇ、こっち向いてよ。」
「今いいところなの。」
「・・・。」
「・・・。」
「もぉ!!」
横からぎゅっと抱き締められる。
「本人がここにいるのにどうしてテレビなんか見るの!」
- 141 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:39
-
恋人はスーパーアイドル
- 142 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:40
-
「亜弥ちゃん、ねぇ、亜弥ちゃんったら。」
「ふんっ。」
ソファに正座で座ってる私と体育座りの彼女。
目の前の彼女は拗ねている。完全に不機嫌モードだ。
「だって、亜弥ちゃんが出てるんだよ?」
「まつーらはここにいるじゃん。」
「でも、私、亜弥ちゃんの歌ってる姿見るの好きなの。」
「だったら、ここであたしが歌う。」
あぁ、なかなか機嫌は直らない。
そりゃ、そうだよね。
亜弥ちゃんは久々のオフ、ようやく二人で会えたっていうのに。
私は構ってあげなきゃいけないのに・・。
- 143 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:41
-
「ごめんね、亜弥ちゃん。」
「・・・・。」
「ねぇ、どうしたら機嫌直ってくれる?」
「・・・して。」
「え?」
「キス、してくれたら許す。」
き、キス?!
「ねぇ、してよ。」
亜弥ちゃんは私をじっと見つめて、んっと顎を上げる。
「え、えーっと・・。」
恥ずかしいよぉ・・・。
何もないけど、きょろきょろ辺りを見回してしまう。
「りーかーちゃん!」
「・・・分かった。」
催促され、は意を決してゆっくりと顔を近づける。
亜弥ちゃんはすーっと目を閉じた。
・・・自分からするなんて恥ずかしくてしたことがないのに。
- 144 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:42
-
自分の鼓動が早くなっている。
間近に亜弥ちゃんの呼吸が聞こえる。
なんだかすっごく緊張してきて。
私と亜弥ちゃんの距離はゼロになる。
すぐに離そうとすると、背中に手を回された。
強い力で抱き締められている。
彼女の肩を押してもびくともしない。
抵抗しているうちに亜弥ちゃんの舌が私の中に入り込んできた。
「ん、んぅー・・。」
そのままぐっとソファに押し倒される。
こ、この展開は・・・。
- 145 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:42
-
唇が離れ、彼女は私を見下ろす。
肩で息をしている私ににこっと笑う。
「一晩中まつーらに付き合ってもらうから。今日は寝かせないよ?」
眩しいほどの笑顔に私の顔は青くなったに違いない。
- 146 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:42
-
***
- 147 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:43
-
スーパーアイドル松浦亜弥と平凡な大学生の私、石川梨華が出会ったのは共通の知人である藤本美貴の紹介だった。
美貴ちゃんが一人暮らしをしている私のマンションに遊びにくる日だった。
チャイムが鳴って、「美貴―。」という声がしたので開けたら、目の前に松浦亜弥が立っていた。
「こんにちは、松浦亜弥でーす!」
「は?」
こ、これは何事?!
すぐに何が起こっているのか理解できなかった。
理解しろってのが難しい。
- 148 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:44
-
「ま、松浦亜弥?!」
私の第一声はそれだ。
するとドアの影からひょっこりと美貴ちゃんが顔を出した。
にやっと笑ってる。
「驚いた?」
「驚くにきまってるでしょ!!」
そんな私達のやりとりを亜弥ちゃんはにこにこと見つめていた。
- 149 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:44
-
美貴ちゃんのお母さんの従姉妹の子供が亜弥ちゃんという遠い親戚関係の二人。
北海道から東京の大学に進学するため上京した美貴ちゃんと姫路から芸能活動をするために出てきた亜弥ちゃん。
住んでいるところも全然離れていたし、ほとんど接することはなかったらしいのだけれど、お互い東京で一人暮らしをするようになって、急激に仲が良くなったのだそうだ。
「美貴ちゃんの親戚が松浦さんだなんて。何で教えてくれなかったの?」
「うん、何か照れくさくってさ。」
二人には家に上がってもらった。
私達の話を聞きながら、亜弥ちゃんはそのとき、私が淹れた紅茶を飲みながら黙って話を聞いていた。
- 150 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:45
-
「もうすぐ美貴、北海道に戻るじゃん。だから梨華ちゃん、亜弥ちゃんと仲良くしてあげてほしいなって。」
一人暮らしって結構寂しいじゃん。
・・・そりゃ、私だって一人暮らし。その気持ちは分かる。
美貴ちゃんはお父さんが病気で入院することになり、その看病のために大学を休学して北海道に戻ることになっていた。
美貴ちゃんは私が大学に入って初めてできたお友達。
だから最初その話を聞いたときは正直ショックだったんだけど。
お父さんが大変なときだもの、ねぇ。
- 151 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:45
-
「よろしくお願いしまっす。」
「あぁ、こちらこそ。」
亜弥ちゃんはにっこり笑って手を差し出した。
何だか人懐っこい感じの子だな、というのが最初の印象。
もちろんすっごいかわいい子だとは思った。
テレビで見るよりも断然。
私は亜弥ちゃんと握手をしながら、芸能人と握手してるんだなぁとミーハー気分でいた。
- 152 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:46
-
***
- 153 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:46
-
「りぃかぁちゃん・・。」
「なぁに?」
「まつーらのこと好き?」
「うん、好きだよ。」
- 154 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:47
-
美貴ちゃんが北海道に帰ってから定期的に亜弥ちゃんはうちに遊びに来るようになった。
正直、何かあったときに手を貸してあげてほしいっていう意味だったと私は理解してたのだけど、本当に遊び友達になって欲しいということだったらしい。
いつのまにか友達から恋人になっちゃってるけど・・。
・・・美貴ちゃんには何て言えばいいんだろう?
恥ずかしくて言えない。
- 155 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:47
-
「まつーらも梨華ちゃんのこと、大好きだよ!」
ぴたっと私の背中に抱きついて後ろから抱き締めてくれる。
いつだって亜弥ちゃんは私にたくさんの愛をくれる。
私はどれだけ亜弥ちゃんに返せてるかな?
- 156 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:48
-
「ちょっと亜弥ちゃん。」
「何?」
「どこ触ってるの?」
「どこって梨華ちゃんの胸。」
「いや、そうなんだけど。」
そうだけど、そうじゃなくって!
亜弥ちゃんは私の耳元で囁く。
「今日は寝かせないって言ったじゃん・・。」
「あ、明日、亜弥ちゃんお仕事でしょ?」
「午後からだし、それにパワー充電しないと仕事なんてできないもん。」
話しながらも亜弥ちゃんの手は私の体を撫で始めていて・・・。
- 157 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:48
-
暴走特急の彼女に押され気味の私。
いつもこんな感じだけど。
それでも私は亜弥ちゃんのこと、大好きよ。
私の自慢の恋人はスーパーアイドル。
- 158 名前:恋人はスーパーアイドル 投稿日:2006/04/15(土) 23:49
-
END
- 159 名前:七作 投稿日:2006/04/15(土) 23:50
-
* * *
- 160 名前:七作 投稿日:2006/04/15(土) 23:54
- コメントありがとうございます。
>138様
そう言って(書いて)いただけてとてもうれしいです。
いしよし万歳!!
>139様
あやみき・・いいですよねぇ。
次あたり、あやみきを書いてみたいなぁ。
- 161 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/16(日) 00:57
- 更新お疲れ様です☆
梨華亜弥って滅多に見れないだけに凄く新鮮ですね。
面白かっただけに続きが読みたくなってしまいます!
あやみきを検討されているようですが、
やっぱ梨華ちゃんを絡めて欲しいなぁと思うので
今作の番外で何がしかの話を書いて頂きたいです。
出過ぎた発言でしたら申し訳ありません。
次回作も楽しみに待っています♪
- 162 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/16(日) 20:21
- か、可愛いですね。
珍しい組み合わせですが、堪らんです。
はまりそうです。
- 163 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/17(月) 00:06
- ほんとめずらしい組み合わせですね。
読んでるとすごくアリな気がしてきました。
更新楽しみにしてますよ〜。
- 164 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 02:53
-
雨のち晴れ
- 165 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 02:54
-
「みきたんのばかぁー!!」
怒声と同時に頬に鋭い痛み。
だだだっと走り去る音をぼぉーっと立ち尽くしたまま聞いてる美貴。
ばたんと閉まるドアの音。
あたりがしんと静かになって初めて「あ、叩かれたんだ。」と気づいた。
(誰もいなくてよかったな・・。)
普段はめちゃくちゃ人がいてうるさすぎる楽屋に今は美貴以外いない。
まぁ、メンバーがいないから彼女もこんな行動ができたんだと思うけど。
美貴はパイプ椅子にどかっと座りため息をつく。
「全く亜弥ちゃんは・・。」
頬に手を添えるとじーんと熱さを感じた。
- 166 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 02:54
-
ガチャ
楽屋のドアが開いて美貴ははっと顔を向けた。
「なーんだ、ミキティだけか。」
ずかずかと入ってきたのはよっちゃんだった。
「おはよう。」
「おはよ、早いじゃん。」
「まぁね。」
だって仕事前に亜弥ちゃんが話があるっていうからね。
最近会えなかったから昨日は楽しみでなかなか眠れなかっていうのにさ。
よっちゃんは美貴の隣のパイプ椅子に座った。
「もみじ。」
「は?」
「ミキティの頬、赤くなってる。」
よっちゃんに指摘され、美貴は自分の顔が赤くなるのを感じた。
何?!跡ついちゃってる!!
「あややと喧嘩でもしたの?」
何で分かるの?そんな目を向けると、よっちゃんはにやりと笑った。
「ミキティにこんなことできるの一人しかいないからね。」
あ、そーゆーこと。
- 167 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 02:55
- 「・・結構目立つ?」
「うーん、そんなことはないよ。すぐに消えると思うけど。」
「そ。」
「で、何したの?」
「いや、別に・・。」
「叩かれて別にってことないでしょー。ま、言いたくなきゃいいけどさ。」
よっちゃんはバックから雑誌を取り出し、ぱらりとめくり始めた。
「浮気。」
「え?」
「浮気したって亜弥ちゃんに言われた。」
「マジ?!」
驚いてるよっちゃんに美貴は首を横に振った。
「誤解だっつーの。そんなことするわけないじゃん。」
「そーだよね、あやや一筋のミキティだもんな。」
よっちゃんはそう言ってからふふふと含み笑いをする。
「でもミキティがプチ浮気しかけてんの知ってるけどー。」
「はぁっ?何言ってんの!」
よっちゃんは美貴の目の前でびしっと指を指す。
- 168 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 02:56
-
「結構ミキティっていろんな子にべったりだよね。」
「・・・それはさ、スキンシップっていうかさ。」
「ハロモニでかおりんのこと、かわいいかわいい連発だったしー。」
「だって二十四にもなってあんな子供っぽい行動はかわいいじゃん。」
「紺野とべったりくっついて写真なんかとっちゃってるしー。」
「カントリー娘。に一緒にレンタルでいってたし、フットサルも一緒なんだから仲良いに決まってんじゃん。」
「梨華ちゃんに対する視線がなんか狙ってる感じだしー。」
「・・・。」
「ちょっと何で言い訳しないのさ!」
「何?した方がいいの?」
「梨華ちゃんはウチのなんだからね!」
「はいはい、分かってるって・・。」
全くよっちゃん、子供だな。
- 169 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 02:57
-
「とにかく美貴は浮気なんてしてないんだよ。」
「誤解されるようなことするのがいけない。」
「美貴はしてるつもり全くないよ。」
「んー、ミキティが自覚してないだけだー。」
「あのねぇっ!」
というかそういうあなたが誤解するようなことしちゃってるんでしょうが。
人知れず梨華ちゃんが溜息をついているのを美貴は知ってるんだから!
「でもさ、自分はしてるつもりないけど、そう思われることってあるよねー。」
経験者は語るってやつ?
「まぁね。」
「ウチも結構妬いてたりするんだよね、これでも。」
「よっちゃんが?」
どちらかというと梨華ちゃんが、だよねぇ。
- 170 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 02:58
-
「後輩の面倒とかよく見てるじゃん?そういう性格って分かってんだけどさぁ。なんていうのかなぁ、もっとウチのこと見てくれっていうか。」
何?結構よっちゃんって甘えたがりなわけ?
「三好ちゃんの梨華ちゃんを見る目、なんか違うんだよ。あれは絶対に好きだよ。ま、同じグループだからってのもあるけどさぁ。」
むっとしてるよっちゃん。
「いざ自分がそういう立場になると分かるもんだよ。嫉妬してくれてるの分かっててメンバーにべたっとくっついたこともあったけど、前よりはしなくなった。」
・・・そういうもんなんだ。
「あややはソロじゃん。ウチらみたいにグループじゃないからあまりよく分からないだけだけど、狙ってる人、多いんじゃないの?」
なんたって天下の松浦亜弥だよ?
そう言ってよっちゃんは苦笑いした。
確かにソロのときはあまりまわりにいなかったから嫉妬されることなんてなかった。
娘。に入ってからだ。
- 171 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 02:59
-
亜弥ちゃんを不安にさせたんだ。
自分ではしてるつもりなくても、不安にさせちゃったんだ。
・・美貴、謝らないと!
- 172 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 02:59
-
よっちゃんに礼を言ってあたしは亜弥ちゃんの楽屋に走った。
ごめんって謝って、今日仕事帰りに焼肉でもって・・・。
頭の中でごめんの練習をしながら、亜弥ちゃんの楽屋の前に着くと、一つ深呼吸した。
普段はあんまり緊張なんてしないんだけどな。
こんなにいっぱいいっぱいになる美貴って亜弥ちゃんの前だけなんだよ。
よしっと気合を入れて、ドアをノックしようと手を挙げたその時。
「ちょっと・・・。」
かすかに聞こえたのは、聞き覚えのある声とガタンと大きな音。
「だ、だめだって・・。」
この楽屋から聞こえるには珍しいその声に美貴は思わず、ノックもせずに開けてしまった。
- 173 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 02:59
- 一段高くなっている畳の上に女の子二人。
押し倒しているのは天下のスーパーアイドル。
押し倒されているのは美勇伝のリーダー。
その光景に一瞬止まってしまった。
迫ってくるスーパーアイドルの肩を必死に押しとどめながら、彼女は美貴の姿を目にすると、切羽詰った声で美貴に言った。
「た、助けて美貴ちゃん!!」
梨華ちゃんは「亜弥ちゃん、冗談はこれくらいに・・。」とぐいぐい押さえているのだが、亜弥ちゃんは一向に止めようとしない。
「ね、美貴ちゃんが誤解するから・・。」
「みきたんはいいの!あたしだって浮気してやるんだから!!」
その言葉に美貴は二人に駆け寄ってばっと梨華ちゃんから亜弥ちゃんを引き剥がした。
- 174 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 03:00
-
「何すんのよ!」
「美貴は浮気なんてしてないって。」
「嘘!」
「嘘じゃないよ。」
「みきたんはあたしのことなんてもう好きじゃないいんでしょ?」
「好きだよ!!」
「・・・。」
「・・・。」
ぷつっと会話は途切れ、美貴達はお互い視線を外した。
どうすればいいんだ・・。
- 175 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 03:01
- 「あ、あのぉ・・。」
下から小さな声が聞こえて、その声の方向を見ると、梨華ちゃんがすまなさそうな顔で横になっていた。
「ごめん、どいてもらえるかなぁ。」
その言葉に美貴と亜弥ちゃんは慌てて立ち上がった。
「ごめんね。」
梨華ちゃんは髪を直しながらゆっくりと起き上がった。
「梨華ちゃん、ごめんなさい。」
亜弥ちゃんがしゅんとなってると、梨華ちゃんがそっと肩に手を乗せて。
「ちゃんと二人で話し合ってね。」
そう言うと美貴にも目で「がんばれ」と送って、楽屋を出て行った。
「・・どうして梨華ちゃんがいたの?」
「たまたま廊下で会って、なんか元気ないねって言われたからちょっと相談に乗ってもらってて・・話してるうちにまた腹立ってきちゃって・・あたしも浮気してやろうって思って・・。」
「・・・。」
「梨華ちゃん隙ありまくりだし、簡単に押し倒せそうだったし・・。」
「そっか。」
「・・・。」
そうしてまた沈黙になってしまった。
- 176 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 03:01
-
「美貴、亜弥ちゃんを不安にさせてたんだね。気づかなくてごめん。」
自然にごめんの言葉が出てきた。
どう言おうか結構悩んでたのに、いざその時になると、出てくるもんなんだ。
「あたしの方こそ、みきたんに怒鳴っちゃって、叩いちゃってごめんね。痛かったよね?」
「いや、大丈夫だよ・・。」
またぷつりと会話が途切れてしまった。
普段はこんな間なんてなくて、会話が途切れることなんて全くないほどで。
こういうとき、どうしたらいいのかと迷っていると、亜弥ちゃんが口を開いてくれた。
- 177 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 03:02
-
「今日、みきたんち行ってもいい?」
いつもみたいに「みきたんち行くから」じゃない、ちょっとおずおずといった感じ。
「うん、全然いいよ!」
いつだって亜弥ちゃんは大歓迎なんだから。
「今日の仕事は遅くまであるの?」
「ううん、そんなに遅くならないと思う。みきたんは?」
「美貴もそんなには。だったら帰り一緒にごはん食べに行こうよ。」
「うん!」
いつものあややスマイル。
やっぱり亜弥ちゃんの笑顔、美貴は好きだなぁ。
「じゃあ、仕事終わったらメールして?迎えにいくから。」
「うん。」
- 178 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 03:02
-
亜弥ちゃんに心配させた分、今日はたっぷりサービスするから。
これからもずっと美貴の隣で笑っててほしいな。
- 179 名前:雨のち晴れ 投稿日:2006/04/23(日) 03:03
-
END
- 180 名前:七作 投稿日:2006/04/23(日) 03:04
-
* * *
- 181 名前:七作 投稿日:2006/04/23(日) 03:13
- とりあえず予告通り?あやみき。
前作を多少ひきづってしまいすみません。
コメントありがとうございます。
>161様
ご丁寧にどうもです。
りかあやの続編は自分でも書きたいと思ってまして現在執筆中です。
よろしければ続編もぜひ読んでいただければと思います。
>162様
りかあやは可愛らしさを出したかったので。
あまり見かけないCPなんですよね。残念なところです。
>163様
自分の中では全然アリなのに、一般的にはマイナー・・。
デフディバとか見てると、りかあやいける!と思うんですけどねぇ。
(でもいしごまも考えてしまう自分・・)
- 182 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/26(水) 00:21
- そうか、よっすぃーは反省してたのか。w
いしごまも期待!
- 183 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/26(水) 12:03
- ここのお話ぜんぶがいい感じで癒されました……
あたたかさのあるお話が好きなので今後も楽しみにしています。
- 184 名前:スイートルーム 投稿日:2006/04/30(日) 14:10
-
スイートルーム
- 185 名前:スイートルーム 投稿日:2006/04/30(日) 14:10
- ひざまくらをしてあげて、ゆっくりと髪をなでてあげると、この子は気持ちよさそうに目を細めた。
「ん〜、気持ちいい。」
ほぅっと溜息をつく彼女を見て、かおりはなんだか猫みたいだなぁと思った。
きれいなかわいい黒猫。
かおりの愛しい黒猫。
- 186 名前:スイートルーム 投稿日:2006/04/30(日) 14:11
-
年下メンバーにはお姉さんぶりを発揮して何かと世話をやいてる彼女だけど、年上メンバーには結構甘えてる。
特にかおりにはべったり。
まぁ、かおり自身、許しちゃってるところあるけど。
娘。に入った当初はおどおどしてて自信なさげでほんと大丈夫かなぁって思っちゃったけど、今では美勇伝のリーダーだもんね。
普段は引っ張っていけなきゃって気を張ってるから、今くらい気を抜かせてあげたい。
- 187 名前:スイートルーム 投稿日:2006/04/30(日) 14:11
-
「かおたん?」
梨華ちゃんがじっとかおりを見上げてる。
「ん?」
「もっと撫でて?」
あ、考えことしてたから手が止まってたね。
ごめんと言って、また撫でてあげるとぎゅっとかおりの腰に手を回してきた。
こんな姿、年下メンバーが見たらどう思うんだろう?
見せるつもりは毛頭ないけど。
- 188 名前:スイートルーム 投稿日:2006/04/30(日) 14:11
-
「ねぇ、かおたん。」
梨華ちゃんがかおりのお腹に顔をくっつけながらしゃべる。
なんかちょっとくすぐったい。
「何?」
「リーダーって大変だね。」
かおたんが娘。にいた頃、見てて大変だろうなぁって思ったけど、実際自分がなってみると、見てた以上に大変。
梨華ちゃんが苦笑いしてる。
「そうだねぇ。」
「美勇伝は他に三好ちゃんと岡田ちゃんの二人だけど、娘。ってその何倍もメンバーいたじゃん。かおたんってすごいと思う。」
「大変だったけど、圭ちゃんや矢口がいろいろフォローしてくれてたから。かおりよりも裕ちゃんの方がすごいよ。サブリーダーもなしにまとめてくれてたんだから。」
「うん。中澤さんも尊敬しちゃう。」
すると梨華ちゃんはむくっと起き上がる。
そうしてかおりの膝にのっかった。
「かおたんのことも尊敬してるよ?」
「ありがと。」
かおりはもう一度頭を撫でた。
- 189 名前:スイートルーム 投稿日:2006/04/30(日) 14:12
-
「もうひざまくらいいの?」
「うん。」
それよりもね。
梨華ちゃんは言葉を止めると、かおりの首に手を回す。
「ちゅう、してもいい?」
至近距離で梨華ちゃんが囁いた。
かおりは返事の代わりにちゅっと小さな唇に口付ける。
すると、彼女は拗ねた表情。
「どうしたの?」
「私からちゅうしたかったの。」
そう言うと、梨華ちゃんはかおりの頬を両手で包んで、そっとキスをした。
- 190 名前:スイートルーム 投稿日:2006/04/30(日) 14:12
-
「ほんと甘えんぼだね?」
「甘えんぼな梨華は嫌い?」
「どこでそんな台詞覚えてきたの。」
「うふ、秘密。」
まぁ、出所は予想つくけど。
「そろそろお風呂入ろうか。」
「うん、薔薇の入浴剤入れてもいい?」
「いいよ。」
矢口からもらったという入浴剤が最近の梨華ちゃんのお気に入り。
うちに泊まりに来るときは必ず持ってくる。
- 191 名前:スイートルーム 投稿日:2006/04/30(日) 14:13
-
かおりの作ったごはんを一緒に食べて。
薔薇の香りのお風呂に一緒に入って。
そして一緒のベッドで眠る。
二人だけのスイートルーム。
誰にも見せてあげない。
- 192 名前:スイートルーム 投稿日:2006/04/30(日) 14:14
-
END
- 193 名前:七作 投稿日:2006/04/30(日) 14:15
-
* * *
- 194 名前:七作 投稿日:2006/04/30(日) 14:19
- 石川さんの「かおたん」って言い方が好きです。
コメントありがとうございます。
>182様
期待されてしまいました。プレッシャーだ(汗)
いしごま好きの人って多いんですねぇ。
>183様
自分的にハッピーエンドなあったかい話の方が好きなのでそっちな感じになってしまいやすいです。
お時間あれば今後もよろしくです。
- 195 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/01(月) 00:39
- おー!かおりか!?
これまたなかなか見ないCPだけに不思議な感じ。
梨華ちゃんの甘えたなキャラが良いです。w
確かに梨華ちゃんの「かおたん」って言い方はいいッスね!
なかなか見ないCPという事で言えば、いつか機会があったら
梨華唯を書いて頂けたら嬉しいです。(あくまで機会があったらという事でw)
- 196 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/01(月) 04:15
- 悶絶しました・・・・・・。
- 197 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/04(木) 23:35
- いいですね〜かおりか…素敵な短編をありがとうございます
この二人の組み合わせにはどこか耽美な香りがします
なんというかふたりとも責任感が強くて
想いこんだら必死になっちゃうあたりとても似てるし
実生活でもお姉さんキャラ(飯田家2人姉妹の長女)と妹キャラ(石川家3人姉妹の真ん中)だから
感覚的に安らげる間柄でとても合うのかもしれませんね
- 198 名前:七作 投稿日:2006/05/05(金) 15:41
-
まばゆいほどのライトの降り注ぐ中、一人の少女がステージめいっぱい歌って踊ってる。
ステージに立っているのは今をときめくスーパーアイドル、松浦亜弥。
「みんな、まだまだいけるー?」
観客に問い掛ければ、おぉーという男の人達の声援。
あややの言動行動一つ一つに観客は動かされている。
私は二階席からその光景を見ていた。
二階席といっても一番前、とてもよく見える場所。
ちらりと横を見渡せば、スーツを着ているような人達の姿も。
少なくともこの階には一階席のお客さんとはタイプが異なってる。
それもそのはず、ここは関係者席なのだから。
私は松浦亜弥の関係者としてここに招待されたのだ。
- 199 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:42
-
恋人はスーパーアイドル2
- 200 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:43
-
「ねぇねぇ、梨華ちゃん。」
「なぁに?」
いつものように夜、亜弥ちゃんはお仕事を終えて私の部屋にやって来た。
私が作ったパスタを食べて、今は紅茶を飲みながら二人まったりしてる。
「今度まつーらのコンサートがあるんだ。梨華ちゃんに来てもらいたいなって。」
はいっ、と一枚チケットを差し出す亜弥ちゃん。
受け取った私はチケットを見た。
日付は一ヵ月後の日曜日の夜。
「それ、今やってるツアーの千秋楽。ぜひ観に来てもらいたいんだ。」
「ありがとう。絶対行くね。」
私がそう言うと、亜弥ちゃんはうれしいって抱きついてきた。
「梨華ちゃんが観に来てくれると思うと、俄然やる気が出ちゃう!」
「そう?」
「うん!終わった後、楽屋にも来てね。」
「でも、疲れてるんじゃ・・。」
「もうっ!」
亜弥ちゃんは拗ねた表情。
「疲れてるから梨華ちゃんに会いたいんじゃん。」
・・・やだ、何かすごくうれしい。
亜弥ちゃんの言葉に私は思わず笑ってしまう。
- 201 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:44
-
「なぁに笑ってんのぉ?」
「だってうれしくて。」
「うれしい?」
「亜弥ちゃん、私のこと好きでいてくれるんだなぁって。」
「いっつも好きって言ってるじゃん!」
「うん、そうなんだけど。」
なんかね、なんかさ。
とにかく私はうれしかったの!
- 202 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:44
-
「そういう梨華ちゃんは?まつーらのこと好き?」
「好きだよ。」
「ほんとに?」
「ほんとだよ。」
「ふふ、あたしもだーい好き!」
なんかそういうやり取りができるってすごく幸せだなぁって。
私はそんな些細な幸せに浸っていた。
- 203 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:45
-
***
- 204 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:46
-
アンコールも終わり、会場のライトが付く。
いまだにあややコールがやまない。
そういうのを見ると、松浦亜弥は芸能人なんだなぁと実感する。
いつも私の家で笑ってる亜弥ちゃんなはずなのにどこか遠くに感じてしまう。
- 205 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:46
- いけない!
亜弥ちゃんに楽屋に来てって言われているんだだっけ。
会場に入るときに渡されたパスを警備員の人に見せると、すんなりと通してくれた。
はぁ・・なんか緊張するよぉ・・。
こんなところに入るなんて今までなかったし・・。
ってまさか入ることになるとも思ってなかったし。
ばたばたと忙しそうにスタッフの人達が走り回ってる。
その間を邪魔にならないように通り抜ける。
楽屋ってどこかなぁ・・。
聞きたいけれどなんかみなさん忙しそうで聞くに聞けない。
- 206 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:47
-
「あ・・。」
あれって・・・。
きょろきょろ見回していると、見覚えのある人を見かけた。
見覚えといっても直接会ったわけじゃない、いつもテレビで見かける芸能人。
わぁ、芸能人見ちゃったよぉ。感動!
なんかオーラが違うっていうか、かっこいい。
やっぱりこういうところにいるんだ・・。
・・・あ、亜弥ちゃんも芸能人だったじゃん。
でも、芸能人だけど、私の・・・恋人、なわけだし・・。
って私、何言ってるんだか。
は、早く亜弥ちゃんを探さないとっ。
- 207 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:47
-
「あっ、梨華ちゃん!!」
後ろから元気な声。
「亜弥ちゃん。」
振り返るとまだアンコールの衣装のままの亜弥ちゃんがタオルと飲み物を持って立っていた。
「お疲れ様。とても楽しかったよ。」
「ほんとに!ありがと!!」
コンサートを終えたばっかりなのかちょっとテンションが高い。
- 208 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:48
-
亜弥ちゃんに誘われて楽屋に入ると、ぎゅっと抱き締められた。
「亜弥ちゃん?」
「今日、めちゃくちゃがんばった。ね、褒めて?」
上目遣いでおねだりしてくる亜弥ちゃん。
「うん、すっごくがんばったね、えらいえらい。」
頭を撫でてあげると、ふにゃって笑う。
「ご褒美のキスして?」
「え?!ここで?」
「うん。」
そう言って亜弥ちゃんは目を閉じる。
ここって楽屋でしょ?!いつ誰が入ってきてもおかしくないじゃない!
「はぁやぁくぅ。」
躊躇してると亜弥ちゃんは甘えた声を出した。
・・・平気、よね?
誰も入ってこないことを祈りつつ、私はゆっくりと顔を近づけて・・・。
- 209 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:49
-
トントン
私は思わず、亜弥ちゃんの体をがばっと離した。
ドアが開いて、顔を覗かせたのはきれいな女の人。
「松浦?」
「あ、飯田さん。」
飯田さん、と呼ばれた女の人は私を見ると、小さく会釈した。
私も慌てて頭を下げる。
「まだ衣装のままだったの?」
「あっ、はい。」
「ここ出なきゃいけないから早くね。」
「分かりました。」
ドアが閉まった後、私は溜息をついた。
- 210 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:51
-
「今のはまつーらのマネージャーさん。」
「きれいな人だね。」
「前はモデルやってたらしいんだけどね。」
「そう。」
それより、と亜弥ちゃんは私の腕を掴む。
「ね、さっきの続きは?」
「だめ。」
「何で?」
「早く出なきゃいけないんでしょ?」
「でもぉ・・。」
膨れる亜弥ちゃん。
そんな彼女がなんかかわいくて、しょうがないなぁって感じで。
「さっきの続きはうちでね。」
そう耳元で囁けば亜弥ちゃんは満面の笑みでうなづいた。
私たちは順調にいってるってこのときまではそう思ってたの・・。
- 211 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/05(金) 15:52
-
つづく
- 212 名前:七作 投稿日:2006/05/05(金) 15:53
-
* * *
- 213 名前:七作 投稿日:2006/05/05(金) 16:04
- 前に書いたりかあや続編。
ちょっと長くなった感じなので途中まで。
コメントありがとうございます。
>195様
りかゆい・・・実は気になってたんです。
で、ちょこちょこと書き始めてたりも。
今回の話の後にでもここにあげられたらいいなと思います。
>196様
お褒めの言葉として勝手に受け取らさせていただきます。
>197様
こちらこそありがとうございます。
確かにかおりかは耽美な香りしますね!
- 214 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/05(金) 20:09
- りかあややばいなぁ嵌りそうですよ
- 215 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/06(土) 09:43
- こ、こんな所できるなんて…!
続きを心待ちにしてます!
- 216 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/06(土) 21:11
- ど、どどうしよう(w
作者さんの所為でハマってしまいそうです!w
続きが待ち遠しいです
- 217 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/07(日) 17:04
- りかあや続編キタ━━━(・∀・)━━━ッ!!
なんだろう、なんでこんなに七作さんのりかあやにハマってるんだろう…。w
あーでも気になる切り方!!つ、続きを…っ!!!ww
- 218 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:27
-
***
- 219 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:28
-
ツアーの後、亜弥ちゃんはドラマの撮影と写真集の撮影に入ってしまい、なかなか私の家に来ることはできなかった。
だから毎日のようにメールと電話。
でも、それでも会えない日々が続くと寂しくて。
・・・私の中で日々、松浦亜弥の存在が大きくなっていた。
好きだよと電話で何度も言ってくれても全然足りないよ。
ぎゅっと抱き締めてもらいたいの。
私と同じくらいの大きさの体。
それでも大きな心が私を包んでくれた。
ねぇ、早く私のところに来て。
あなたのぬくもりが欲しい・・・。
- 220 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:29
-
そんなときだった。
ある雑誌に亜弥ちゃんのスキャンダル記事が出たのは。
『松浦亜弥熱愛!お相手は綾小路文麿!』
- 221 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:30
-
大学の授業が終わった後、近くの女子大生が話していたのを偶然聞いてしまった。
「あややって文麿様と付き合ってるらしいよ。」
俳優の綾小路文麿。
彼は今最も有名な若手俳優。
ファンからは文麿様と呼ばれている絶大的な人気を誇ってる人だ。
私も好きで彼の出てるドラマはちゃんと観てた。
私はコンビニでその記事が載っているという雑誌を買った。
『松浦亜弥と綾小路文麿のデート現場を激写!!』
でかでかと書かれた見出し。
中を開くと二人がどこかのお店から出てくるところの白黒写真が掲載されていた。
二人とも帽子とサングラスで顔を隠しているけれど、これは確かに亜弥ちゃんだ。
記事を読んでみると、七時すぎにイタリアンレストランに入って九時すぎに出てきたとのこと。
とても親密そうな雰囲気で、終始二人は笑顔だったよう。
何の話をしていたかまでは分からないようだが、ときおり亜弥ちゃんは笑いながら綾小路文麿の腕を叩くこともあったらしい。
- 222 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:31
-
ぱたんと雑誌を閉じた私は放心状態だった。
信じられなかった。
亜弥ちゃんが文麿様と付き合っているなんて。
でも、あの日・・・コンサートのあの日、確かに私が見たのは・・・。
まぎれもなく綾小路文麿だった。
ラフな服装で、どことなくお忍びって感じ。
廊下をささっと歩いていくその姿。
それでもやっぱり芸能人ってオーラが見えて、かっこいいなぁって。
あのときの私は深く考えずに感動しちゃってたけど・・。
- 223 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:31
-
私のこと好きだって・・・・あれは嘘だったの?
なかなか彼と会えないから、寂しさ紛らわすために私と・・・。
・・・そうだよ、そうじゃなきゃ、おかしいよ。
売れっ子アイドルとただの大学生だなんて。
全然住む世界が違うじゃない。
・・バカだなぁ、私って。
今頃気づくなんて遅すぎだって・・・。
涙が止まらなかった。
部屋で一人、体育座りの私は泣くことしか出来なかった。
その日、亜弥ちゃんから電話もメールもなかった。
- 224 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:32
-
「あぁ〜・・。」
朝起きて洗面所に立ってる私は情けない声。
鏡の中の私はとても目が腫れていた。
ということは私の目は腫れているわけだ。
しょうがないじゃん、昨日は泣きまくったんだから。
泣きすぎたせいかな、少しすっきりした。
亜弥ちゃんのことは・・・。
もうあまり考えたくない。
- 225 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:33
-
〜〜〜〜〜♪
この着信音・・・。
私はテーブルの上に置いてある携帯の画面を見る。
『亜弥ちゃん』
手が止まる。
着信音は鳴り続ける。
・・・・・
・・・止まった。
ふぅー・・。
思わず溜息。
- 226 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:33
-
〜〜〜〜〜♪
息を呑んだ。
『亜弥ちゃん』
私は無視して洗面所に戻る。
ひどい顔の私。
冷たい水で顔を洗う。
歯磨きをする。
着信音は鳴っている。
キッチンで朝食の準備をする。
トースト、目玉焼き、サラダ。
着信音は鳴っている。
洋服に着替える。
メイクをする。
着信音は鳴っている。
- 227 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:34
-
「・・・はい。」
『梨華ちゃん。』
二日ぶりの彼女の声。
『おはよう。』
「何か用?」
『今、山奥で撮影してて、携帯圏外になっちゃって昨日連絡できなかったの、ごめん。』
「・・そう。」
『あのさ・・。』
「私、もう大学に行かなきゃいけないから。」
『見たんだね・・。』
電話を切ろうとした私に亜弥ちゃんはぽつりと言った。
「・・・何を?」
『あれは嘘だから。』
「嘘・・・私とのことが?」
『違うっ!!まろとあたしはそんな関係じゃ・・・。』
「まろ、って呼んでるんだ。」
『ちょっと梨華ちゃんっ・・・』
携帯を切った。すぐに電源も落とした。
- 228 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:35
-
ポス、とソファに体を沈める。
深い溜息。
言い訳なんて聞きたくない。
何を言われたって変わらないじゃない。
ねぇ、もう嫌だよ。
苦しいよ。
苦しくてたまらない。
彼女のことが憎い。
でもね、彼女のことが好き。
まとまらない思いはぐるぐる頭の中に回ってる。
- 229 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:35
-
もうやめよう。
考えるのはもうやめよう。
目を閉じる。
大学なんて休んじゃえ。
何もしなくていい。
このままここで眠ってしまおう。
そして目を覚ましたとき、私は・・・・。
- 230 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/10(水) 23:36
-
つづく
- 231 名前:七作 投稿日:2006/05/10(水) 23:37
-
* * *
- 232 名前:七作 投稿日:2006/05/10(水) 23:45
- すみません。もうちょっと続きます。
コメントありがとうございます。
>214様
りかあやはやばいですよ!ぜひはまってください。
>215様
珍しくつづきものです。
もう少しつづきますので、お付き合いよろしくお願いします。
>216様
ばんばんはまっちゃってください。
次回更新もせひお付き合いお願いします。
>217様
おそらくりかあやの魅力でしょう。
どんどんはまってもらえたらうれしいです。
- 233 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/11(木) 16:17
- 更新お疲れ様です
いくらでも続いて下さい
楽しみに待っています
- 234 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/12(金) 00:24
- 更新おつかれさまです
また気になるところで…続きをズットマッテマス
- 235 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/12(金) 18:10
- 続きを…!!
- 236 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/12(金) 22:10
- 悲しいよね、悔しいよね。・゚・(ノД`)・゚・
続きを楽しみにしています♪
- 237 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:22
-
***
- 238 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:23
-
風が吹いた。
そっと私の頬にやわらかな感触。
すべては幻。
部屋は鍵がしまったまま。
ここには私一人。
目を開けた。
まだ意識はうつらうつら。
視界には白い天井。
そのまま視線をずらす。
壁に掛かってる時計の針は12時過ぎたとこ。
・・・そんなに時間は経ってない。
- 239 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:23
-
「梨華ちゃん。」
かわいい声。
一気に目が覚めて私は体を起こした。
彼女がいた。
折りたたみの椅子に座ってこっちを見てる。
今にも泣きそうな顔。
- 240 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:24
-
「・・・どうして・・・?」
「会いたかったから。」
「お仕事は・・・?」
「今日はもうない。」
朝電話したときはもう仕事は終わってたんだ。
早朝のロケだったから。
亜弥ちゃんは椅子から立ち上がった。
「でも、例え仕事があったとしても。」
まつーらはここに来る。
- 241 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:25
-
「お願い、帰って。」
「嫌、帰らない。あたしの話を聞いて。」
「言い訳なんて聞きたくない。」
「言い訳じゃない。誤解なの。」
「誤解?私とは遊びだったんでしょ!」
「違う!!」
彼女の強い声。
びくっとして私は動けなくなった。
真剣な目が私を射抜く。
初めて見るこんな亜弥ちゃん・・・。
- 242 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:25
-
「そんなこと言わないで。あたしは、あたしは・・・・。」
彼女が私のもとに寄ってくる。
膝立ちでソファに座ってる私と同じ高さになると、そっと私の頬に亜弥ちゃんの右手が添えられた。
私はそんな亜弥ちゃんから視線を逸らすことができなかった。
私を見つめる熱い視線。
「あたしは梨華ちゃんのこと愛してる。」
- 243 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:26
-
「嘘・・。」
「嘘じゃない。」
「だって、だって・・・。」
「あたしには梨華ちゃんだけだよ。梨華ちゃん以外見えないよ。」
どうして彼女を信じることができなかったんだろう。
こんなにもあなたは私のことを真剣に見つめてくれているのに。
彼女を信じ切ることができなかった自分がとても情けなくて、悔しくて。
でも、それと同時に亜弥ちゃんの言葉にうれしさを感じている自分もいて・・。
・・人ってうれしくても泣けるんだね。
熱い涙が私の目から溢れ出て頬を濡らす。
亜弥ちゃんは私の目尻を指で抑える。涙を拭いてくれる。
でも止まらない。
- 244 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:27
-
「・・・ごめ・・・ごめん・・・な・・さい・・・。」
私は亜弥ちゃんに抱きつく。
すると亜弥ちゃんもあたしの背中に腕をまわしてくれた。
ぽんぽんっとあやすような手つき。
すごく安心する。
私の欲しかったぬくもり。
ずっとずっと寂しかったの。
「私も亜弥ちゃんのこと、愛してる・・・。」
- 245 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:27
-
「ねぇ、どうやって部屋に入ってきたの?」
仲直りをした私達はベッドの中にいた。
仲直り、といっても、私の一方的な勘違いだったんだけど。
まだ外は明るいのに、というのはこの際目を瞑る。
「ベランダからちょちょって。」
「ベランダ?!ここ二階だよ?!」
「うん、でも登れそうだったし。」
あ、そうそう、窓開けっ放し。危ないからちゃんと閉めなきゃだめだよ。
「もう危ないからやめてよぉ・・。」
- 246 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:28
-
「あ、やっぱりちゃんと言っておきたいんだけど。」
「何?」
「まろ・・綾小路文麿のことなんだけど。」
「・・・うん。」
「実は彼、高橋愛と付き合ってるの。」
「えぇ!!」
高橋愛っていったら、人気のある歌手じゃない!
嘘、あの二人が・・。
すごいカップル・・。
「愛ちゃんとあたし歌番組で一緒になってから仲良くなって。で、まろともCMで競演したことあって仲良いんだ。だから二人が付き合ってることも知ってていろいろ話とか聞いてあげてたの。」
ほら、隠してるからそういう話あまり人にはできないしね。
「そうだったんだ。ごめんね、勘違いして・・。」
「ううん、分かってくれたからいーよ。」
「じゃあ、こないだのコンサートのときに文麿様がいたのって・・。」
「あ、見たんだ。うん、観に来てくれたの、愛ちゃんと一緒に。」
「そう・・。」
- 247 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:28
-
「っていうかさぁ。」
亜弥ちゃんは口を尖らせる。
「梨華ちゃん、文麿様って呼んでるの?」
「え?!」
「もしかしてドラマとか・・あのまろが司会やってる番組とか見てるの?」
「えーっと、うん、まぁ・・。」
一般の女の子の悩みを聞いてくれる文麿様司会の番組なんか毎週かかさず見てたりする。
お決まりのセリフ、【僕には分かる】なんてもうかっこよすぎて・・・。
「ちょっと梨華ちゃん!」
「そ、そんなたくさん見てるわけじゃ・・。」
「えぇ〜、ほんとにぃ?」
疑わしそうに見つめる亜弥ちゃん。
あぁ、これからは見るの控えなきゃダメかしら。
- 248 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:29
-
「梨華ちゃん、お腹すいた。」
「じゃあ、何か作ろっか。何食べたい?」
「そうだなぁ・・。」
うんうん唸りながら考えてる亜弥ちゃんはあの日、ステージで踊ってたアイドル松浦亜弥じゃなくて、その辺にいる普通の女の子と同じ。
かわいいかわいい19歳の女の子。
「決めた!」
「何?」
「梨華ちゃん。」
「は?」
って何で私を押し倒してるの?!
「ちょ、ちょっと・・・。」
「もうちょっと梨華ちゃん、味合わせて?」
- 249 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:30
-
あぁ、やっぱり私はこの子に敵わない。
なんかいっつも流されてる気がするけど。
ちょっとエッチな、でもとびきりかわいい彼女。
いつまでも私の側にいてね。
私の自慢の恋人はスーパーアイドル。
- 250 名前:恋人はスーパーアイドル2 投稿日:2006/05/14(日) 23:30
-
END
- 251 名前:七作 投稿日:2006/05/14(日) 23:31
-
* * *
- 252 名前:七作 投稿日:2006/05/14(日) 23:36
- りかあや万歳!
作者自身もかなりはまっています。
コメントありがとうございます。
>233様、234様、235様、236様
続きを待っていただきましてありがとうございます。
また機会がありましたらよろしくお願いします。
- 253 名前:名無飼育 投稿日:2006/05/15(月) 22:20
- 梨華ちゃんが素直で良かったなぁ。w
今回、続編まで続いたりかあや。ひじょーに良かったです♪
文麿のカプが結構ツボでこれまたあまり見ないCPなんで
この話の流れで見てみたい気はします。
それでは次のお話も楽しみに待っています!
- 254 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/17(水) 21:06
- りかあや最高!
やっぱ作者さんの作品で、りかあやに目覚めたかもw
これまた結構ツボになりそうな2人ですが、あまりないですからねー
次回の作品はどんなCPなのか楽しみです!
- 255 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/18(木) 10:08
- ごちそうさまでした!
りかあやいいですね。
次の作品も楽しみにしてます。
- 256 名前:関西娘のちょいジェラシー 投稿日:2006/05/21(日) 14:40
-
関西娘のちょいジェラシー
- 257 名前:関西娘のちょいジェラシー 投稿日:2006/05/21(日) 14:41
-
なぜかテレビ収録が終わってから彼女の機嫌が悪い。
三好ちゃんはこのあと用があるからと、着替えおわるとお疲れさまでした、とすぐに楽屋を出ていった。
そして今、私は彼女と二人きりになっているのだが、なんかすねている様子。
「岡田ちゃん、どうかした?」
そっとしておこうかと思ったけど、放っておくわけにもいかず、ここはやっぱりリーダーの私が、と思い、できるだけやさしく尋ねたのだが・・。
振り向いた彼女は頬を膨らまし、むっとしている。
「岡田ちゃん?」
「石川さんは・・。」
そう言うと、ふいっと横を向いた。
- 258 名前:関西娘のちょいジェラシー 投稿日:2006/05/21(日) 14:41
-
「石川さんはやっぱり私より絵梨香ちゃんの方が好きやねん。」
「え?」
急に何?!
「えっと、あの・・どういう・・・。」
そう思われることに、全く心当たりがない私は正直困ってしまう。
すると彼女はしゅんとなって言った。
「さっき、白い煙が出たとき、絵梨香ちゃんに抱きついてた。」
さっきまで行っていたテレビ番組の収録はゲームコーナーのゲストで、問題に答えられないと罰としてばぁーっと白い煙が吹き出るというものだった。
あまりにも勢いがあったからびっくりしてしまったということや、私は二人より前に座っていたからたくさん煙に当たったということもあって、とっさに三好ちゃんに抱きついてしまったけれど・・。
えっ?岡田ちゃんがすねてるのってこれが理由?!
- 259 名前:関西娘のちょいジェラシー 投稿日:2006/05/21(日) 14:42
-
「いつも写真撮影のときは、絵梨香ちゃんばっか向いてるし。」
それは単に右向きの写りの方が好きなだけであって・・。
「二人は同い年やし、名前も似てるし。」
それはたまたまなだけであって・・。
「石川さんは私のこと嫌いなんや・・。」
そう言って、じとーっと私を見つめる。
「そんなことあるわけないじゃない。」
「じゃあ、なんで私に抱きついてくれなかったんですかぁ?」
「いや、それは、偶然というか。別に深い意味はないよ?」
私が答えると岡田ちゃんはまだ納得してないような表情。
普段は大人っぽく見える彼女も今はなんだかすごく子供っぽい。
すると彼女は急に私をぎゅっと抱きしめてきた。
そして私の顔を自分の胸にぐーっと押さえつける。
え?何?技かけられてるの?結構苦しいんだけど・・。
「ちょ、ちょっと岡田ちゃん?!苦しいって!」
少し力が緩まったものの、私を放してくれる気配はない。
「・・どうしたの?何してるの?」
岡田ちゃんの腕の中で私は問い掛ける。
顔が上げられないので、いまいち岡田ちゃんの顔が見れない。
- 260 名前:関西娘のちょいジェラシー 投稿日:2006/05/21(日) 14:43
-
「ノーサツしてるんです。」
「はぁ?!」
ノーサツ、のうさつ・・・「悩殺」?!・・・私にってこと?
「えっと・・・何の為に・・?」
そう言うと、岡田ちゃんははぁーっと溜息。
え?呆れてる?
「石川さんって天然やな。」
てっ、天然って?!
「ちょっと岡田ちゃんに言われたくないよっ!」
「せやかて・・・普通分かりますやろ?」
「えーっと、えーっと・・。」
そんな私を見て、本日二度目の溜息。
「・・訂正しますわ。天然やなくて鈍感です。」
「どっ、どっ、鈍感―?!」
そんなきっぱり言わなくても!
- 261 名前:関西娘のちょいジェラシー 投稿日:2006/05/21(日) 14:44
-
岡田ちゃんは私の肩に手を置いて、私の目をしっかり見つめる。
岡田ちゃんの目って結構おっきいよねぇって、そうじゃなくって・・・。
「つまり、岡田は石川さんの事が好きなんです。」
少しの間。
「えぇーっ!!」
「何でそんなに驚くんですかぁ。」
「だって三好ちゃんは?」
「絵梨香ちゃん?何で絵梨香ちゃんが出てくるんですか?」
「だってだってだって・・。」
すっごく仲がいいし、一緒にいて楽しそうだし。
「ですけどぉ、岡田は石川さんが好きなんです。」
そう言うとにっこり笑う。いつものほわぁーっとした笑顔。
そんな表情を見てると、こっちも何だか笑顔になって・・・。
「いいですかぁ?」
「・・?いいって何を?」
「キス。」
「はぁ?!」
何でいきなりっ?!
と、私が何かを言う前にすっと岡田ちゃんの顔が近づいてきて、もう少しで触れそう・・?!
私は思わずぎゅっと目を瞑ってしまって・・・。
- 262 名前:関西娘のちょいジェラシー 投稿日:2006/05/21(日) 14:44
-
突然、“カッチョイイぜ!JAPAN”の着メロが鳴った。
この着メロは・・・。
私はささっと岡田ちゃんから離れて、携帯を耳に当てた。
「もしもし、三好ちゃん?」
『あ、石川さん。』
「どうしたの?」
『明日の集合って十一時でしたよね?』
「うん、そうだよ。」
『よかった。十時だったかもって急に思っちゃったもので。ありがとうございました。』
「ううん、いいよ。」
『あ、そうだ、まだ唯ちゃんと一緒にいます?』
三好ちゃんに聞かれ、どきっとする。
まさか今、キスされそうになっていたとはさすがに言えない。
「あぁ、うん、いるよ。変わろうか?」
『いえ、結構です。お疲れ様でした。』
- 263 名前:関西娘のちょいジェラシー 投稿日:2006/05/21(日) 14:45
-
携帯を切ると、岡田ちゃんはふくれた顔で私を見てた。
「えっとぉ・・。」
直前までキスしようとしてたと思うと恥ずかしくって、何と言えばいいか正直困ってしまった。
「あ、あの、岡田ちゃん。」
「石川さん!」
「は、はいっ。」
「お好み焼き、食べにいきましょう!」
「え?」
「東京でおいしいお店見つけたんです。」
「あ、うん・・。」
「早く、早く!」
ぐいぐいと私の手を引っ張る。
「あ、ちょっとカバンが・・。」
岡田ちゃんは私の手を離さずに私と自分のカバンをひょいひょいっと片手で取る。
「本当においしいんですってば。」
「あ、う、うん・・・。」
- 264 名前:関西娘のちょいジェラシー 投稿日:2006/05/21(日) 14:45
-
何だか私、岡田ちゃんに振り回されてる?
ちらりと岡田ちゃんを見ると、楽しそうにしてるから、私もくすっと笑ってしまう。
どうやら私はこの子に甘いらしい。
岡田ちゃんの言うのと同じ好きかと聞かれたら困ってしまうけど。
でも、妹みたいにとってもかわいいって思ってるよ。
とりあえず、今度から写真撮影、岡田ちゃんの方に顔を向けるようにするね。
- 265 名前:関西娘のちょいジェラシー 投稿日:2006/05/21(日) 14:46
-
END
- 266 名前:七作 投稿日:2006/05/21(日) 14:47
-
* * *
- 267 名前:七作 投稿日:2006/05/21(日) 14:56
- 一年前くらい、セカンドシングル発売後ぐらいの設定。
ネタが古くてすみません。
ずっと気になっていたことを話にしてみました。
コメントありがとうございます。
>253様
そう言っていただけてすごくうれしいです。
>254様
りかあやに目覚めたのが七作の話だとは!
ありがとうございます。とてもうれしいです。
>255様
おそまつさまでした。
おなかいっぱいになっていただけたら幸いです。
またいつかこの設定でりかあやが書けたらいいなと思っています。
そのときはお付き合い、よろしくお願いします。
- 268 名前:名無し 投稿日:2006/05/21(日) 18:48
- 初めてりかゆい見ました!
気になっていたCPなので嬉しいです。
唯ちゃんの子供っぽさがいいですね。
ぜひ、また書いてください!
- 269 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/21(日) 20:41
- 更新お疲れ様です。
これまた珍しい組み合わせでおもしろかったですよ!
色んなCPが見れてみんな魅力的に書かれててすごいなぁ。
次も期待しています。
- 270 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:41
-
眠り姫と満月
- 271 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:42
-
仕事を終え、家に帰ってきたのは八時すぎ。
カバンの中から鍵を取り出し、鍵穴に差し込んで回すと、いつものカチャリという音がしなかった。
あれ?おかしい。
ゆっくりとドアノブを回したらドアはすっと開いて・・。
やばい、もしかして朝、鍵掛け忘れたとか?
そーっとドアを開けると、部屋の明かりが付いているのが玄関から見えた。
・・・誰かいる?
まさか泥棒が入った?
けれども部屋の中からはかすかにテレビの音声が聞こえる。
泥棒がテレビを付けるなんて考えにくい。
となると、合鍵で開けたと考えた方が妥当だ。
- 272 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:42
-
合鍵を持っているのはあたしの他には二人しかいない。
一人は北海道に住んでいる親。
でも、こっちに来るときは事前に連絡をよこす。
今回はかかってこなかったのできっと親じゃないだろう。
ということは、残るは一人。
あたしはブーツを脱いで、端に揃える。
「ただいまー。」
普段は絶対に言わない言葉。
待ってる人がいないときは言ったところで無償に悲しくなってしまうだけだ。
いつもはすぐに「おかえりー。」って高い声が聞こえるのに今日は聞こえない。
・・なんか怒らせたかな?
拗ねるととたんに無口になるから。
でも、あたしは怒らせた覚えはない。
- 273 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:42
-
リビングに入ると、テレビは付いたまま。
肝心の彼女の姿はなし。
「え?」
驚いていると、布のこすれる音が聞こえた。
もしや・・。
ソファに近寄ってみれば気持ちよさそうに眠っている彼女がいた。
あ〜あ、こんなとこで何もかけないで寝てたら風邪ひくって。
いくら最近あったかくなったからってさ。
- 274 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:43
-
「梨華ちゃん、起きて。」
「んぅー・・・。」
「ほら、寝るならちゃんとベッドで寝る。」
「・・・まいちゃん?」
なんとか目を開いた梨華ちゃんはとろーんとした顔であたしを見つめてる。
「おかえりぃ・・。」
「うん、ただいま。」
ぎゅっと梨華ちゃんが抱きついてくる。
「眠いならあっちのベッドで・・。」
「やだ、まだ寝ない。」
やだって子供みたいだな。
「だってまいちゃんと映画みようと思って、DVD持ってきたんだもん。」
「そっか。じゃ、ちょっと待ってて。あたし、コートも脱いでないし。」
「脱がせてあげる。」
「ちょ、ちょっと?!」
梨華ちゃんはするりとあたしの体からコートを脱がす。
そうして、あたしのコートを持ったまま、すたすたと寝室に歩いていく。
クローゼットに仕舞ってくれるらしい。
- 275 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:43
-
その間に手洗い、うがいを済ませて、リビングに戻ってくると、梨華ちゃんはキッチンでお湯を沸かしていた。
ここに住んでいるわけじゃないのに、まるで住人みたいに勝手知ったる行動。
「紅茶でいい?」
「うん。」
棚から紅茶の缶を取り出してる彼女がなんかかわいくて、あたしは近づいて抱き締めた。
「なぁにぃ?」
「いや、梨華ちゃん、かわいいなぁって思って。」
「やだ、恥ずかしい・・。」
「なんで照れるの?」
「だってまいちゃん、あんまりそんなこと言ってくれないもん。」
「そう?」
「そうだよ。いつも、セクシーとか・・エロいとかさぁ・・。」
「なんかあたし、おっさんみたいじゃん。」
「みたいじゃなくて、おっさんだよ。」
「はいはい、おっさんですよ。」
「あー、開き直ってるー!」
くすくす笑ってる彼女をもう一度ぎゅっと抱き締めた。
- 276 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:44
-
「ラブストーリー?珍しいねぇ。」
梨華ちゃんが持ってきたDVDを見て少し驚く。
彼女はこう見えてラブストーリーとかよりもアクション系の方が好きだ。
だからてっきりそういうのを持ってきたと思ったんだけど。
「それね、高橋が貸してくれたの。」
「あー、愛ちゃん。」
そういえば以前、梨華ちゃんは宝塚のDVDを愛ちゃんから借りたことがあった。
あんまり興味なかった梨華ちゃんは見ずに返そうとしたけど(結構失礼だとは思うけど)、絶対にいいですから!と言われ、返せずにあたしんちに持ってきたことがある。
あたしだって興味はない。
でも、見なきゃ返せないと半泣きしてる彼女をまぁ、ほっとけなかったわけで。
二人でお菓子を食べながら二時間見た。
- 277 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:44
-
「これって結構いいって評判の映画だったよね?」
「うん。高橋は麻琴と映画館で見たんだって。で、よかったからDVD買っちゃったんだって。」
「そう。そういえば最近映画観に行ってないね。」
「そうだね。まいちゃんと観るといったらテレビでサッカーだもんね。」
二人してテレビの前で騒ぎまくってる。
「久しぶりに今度、映画観に行こっか。」
「あぁ、いいね!何か観たいものある?」
「今、何やってるんだっけ?」
「ん〜・・・私も分かんない。」
「じゃ、次回までにそれぞれ観たい映画を決めとくってことで。」
「うん!」
- 278 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:45
-
話がまとまったところで、梨華ちゃんがDVDレコーダーにディスクを入れる。
あたしもささっといろいろ準備。
そしてあたしと梨華ちゃんはお行儀よくソファに座る。
目の前のテーブルにはお菓子と飲み物。
完全にDVD鑑賞準備は万端だ。
さて、では見ますか。
- 279 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:45
-
* * *
- 280 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:46
-
王道中の王道。
ラブストーリーってどこかパターンが似てる。
ベタな展開がこうも続いてくると、これはコントじゃないかって思う。
こんな見方をするあたしは相当嫌な奴かな?
で、隣のこの子もベタな展開。
気持ちよさそうに眠ってる。
途中からぴたっと動かなくなった。
前もこんな光景見た気がするなぁ。
- 281 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:46
-
「梨華ちゃん。」
「・・・・。」
反応なし。
完全に爆睡。
こんなところで寝ると風邪ひくっていうのに。
しょうがないなぁ。
あたしは彼女を起こさないようにそっと離れて、毛布を持ってきてかけてあげる。
全く無邪気な顔で寝ちゃってさ。
- 282 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:47
-
キッチンで後片付けをする。
開いていた小さな窓から月が見えた。
まんまるのお月様。
今度二人で観に行く映画は絶対にアクション系だ。
食器を洗いながら次のオフはいつだったかなと思った。
- 283 名前:眠り姫と満月 投稿日:2006/05/28(日) 18:47
-
END
- 284 名前:七作 投稿日:2006/05/28(日) 18:48
-
* * *
- 285 名前:七作 投稿日:2006/05/28(日) 18:53
- あまりキャラが分からないのに書いてしまいました。
でも好きなCP。
コメントありがとうございます。
>268様
岡田さんはなんか子供っぽいところがあると思うんですよね。
機会があればまた書いてみたいなぁと。
>269様
珍しいCPを書こうと思って書いているわけではなく、なんとなく自分的にアリだと思っているCPがなぜかマイナーという・・。
そう言っていただけてうれしいです。
- 286 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/29(月) 14:48
- いしさとCPは初めて見ました!なんか良いもんですね、このCPも♪
そういえば確かなんかのラジオで、梨華ちゃん家にまいちゃんが来てDVD見てたら梨華ちゃんが途中で寝てたとかいう話を聞いた事があります。w
このお話を読んで、ふと思い出しちゃいました。
次は梨華ちゃんが誰と絡むのか楽しみにしています。^^
- 287 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/31(水) 21:07
- 新鮮ですがあったかくてすっごくよかったです!
まいちゃんがラジオでリハのご飯休憩で必ず傍に梨華ちゃんが来るって
言ってたのを思い出しました
- 288 名前:七作 投稿日:2006/06/04(日) 15:13
- 本当は違う短編を載せるつもりだったのですが、287様の
>>まいちゃんがラジオでリハのご飯休憩で必ず傍に梨華ちゃんが来るって
言ってた
という一文からついつい書いてしまいました。
- 289 名前:ランチタイム 投稿日:2006/06/04(日) 15:14
-
ランチタイム
- 290 名前:ランチタイム 投稿日:2006/06/04(日) 15:15
-
気づいたらいつも彼女は傍にいる。
といっても隣にいるってわけじゃなくて、あたしのグループと彼女のグループが隣合っているといった感じ。
背中しか見えないときもあれば、横顔が覗いているときもある。
楽しそうに話している彼女が見れるとうれしいと同時に少し悲しいときもある。
あたしはたいていいつもカントリーのメンバーやアヤカ、よしこといったメンツと食べていることが多い。
一方、彼女は美勇伝メンバーはもちろん、柴ちゃん、辻ちゃんやモーニング娘。のメンバーと一緒に食べている。
梨華ちゃんをごはんに誘おうと試みたことはある。
けれどもいつも出遅れてしまっているのだ。
あぁ、一緒にごはん食べたいなぁ。
ふぅーっと溜息がでた。
- 291 名前:ランチタイム 投稿日:2006/06/04(日) 15:15
-
「まいちゃん。」
振り返るとにこにこ顔で梨華ちゃんが立っていた。
「お疲れ。」
「お疲れ様。ね、今日一緒にごはん食べよ?」
彼女からのお誘い。
「うん、いいけど・・、他の子達は?」
すると梨華ちゃんはあひる口。
「私はまいちゃんと二人でごはんが食べたいんだけど・・ダメ?」
なんて上目遣い。
この子は無自覚でこんなことをやってくる。
「ううん、いいよ。」
そんなことされちゃあたしには断るなんてできないじゃん。
もともと断る理由もないけどさ。
- 292 名前:ランチタイム 投稿日:2006/06/04(日) 15:16
-
あたし達はトレーに好きなごはんをのっけて、みんなから少し離れたところに座った。
「一緒にごはん食べるのって今回のリハに入ってから初めてだよね?」
「そうだね、まいちゃん、アヤカちゃんやよっすぃと食べてるもんね。」
「梨華ちゃんだって柴ちゃんや辻ちゃんといるじゃん。」
「まぁ、そうだけど・・。」
「でも、別々に食べてたけど、いつも梨華ちゃん、傍にいるよね。」
カチャン
梨華ちゃんの手からスプーンが落ちた。
「バレてたの?!」
「え?」
「あっ、まぁー・・そのぉ・・。」
なんか梨華ちゃん、すごく慌ててるんだけど・・。
「?」
「・・だからね、だからぁ・・・。」
梨華ちゃんの顔が赤い。
なんか恥ずかしそうにうつむいている彼女を見たら、もしかしてちょっとその気になってもいいのかなぁなんて。
- 293 名前:ランチタイム 投稿日:2006/06/04(日) 15:17
-
「あのさ。」
「うん。」
「あたしも梨華ちゃんと一緒にごはんが食べたいって思ってたよ。」
「まいちゃん・・。」
「だから今日ごはんに誘ってくれてありがとう。」
すると梨華ちゃんはぱぁーっと笑顔になって。
「私もまいちゃんとごはん食べれてうれしい。」
傍でまいちゃんの笑顔を見てるよりも一緒にこうやって笑ってる方が断然楽しいな。
- 294 名前:ランチタイム 投稿日:2006/06/04(日) 15:17
-
もしかして。
梨華ちゃんがあたしの傍に来てた、と、梨華ちゃんもあたしも思っていたけど、あたしだって梨華ちゃんの傍に来てたのかもしれない。
いつも近くにいる彼女を少し気になって見ていたのだから。
なんかそんなこと思ったら笑えてきちゃって。
「どうしたの?まいちゃん。」
急に笑い出しているあたしをきょとんとした顔で見つめている梨華ちゃん。
「あはは、何でもない。」
「えぇー、何でもなくないよぉ。教えて?」
「秘密。」
「まいちゃんのいじわる!」
- 295 名前:ランチタイム 投稿日:2006/06/04(日) 15:18
-
またこうやって二人でランチタイムを楽しもう。
今度はあたしから梨華ちゃんを誘うからさ。
- 296 名前:ランチタイム 投稿日:2006/06/04(日) 15:18
-
END
- 297 名前:七作 投稿日:2006/06/04(日) 15:19
-
* * *
- 298 名前:七作 投稿日:2006/06/04(日) 15:24
- 勢いで書き上げてしまいました。
なんかちょっと違うかも・・。
コメントありがとうございます。
>286様
実は自分もその話を聞いたことがありまして、そこからこの話が浮かびました。
>287様
勝手に使わせていただきすみません。そしてありがとうございました。
この話は知らなかったので妄想が進んでしまいました。
- 299 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/04(日) 16:43
- やっぱりここいいですねぇ
出てくるカプ全部好きになっちゃいますよ
これからも期待してますよ〜
- 300 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/05(月) 13:34
- 作者さんの所為で、あやりかにハマったんですが、
この2人もイイ!!
よければ、チャミラブみたいですw
- 301 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/05(月) 21:00
- 287です!作者様こちらこそ更新ありがとうございますw
ニヤニヤしながら読ませていただきました〜
作者様のお話ほんとにだいすきです!
補足情報…食べきれないと(*^▽^)<まいちゃん食べて?って可愛く言うらしいです
- 302 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/06(火) 00:54
- りかまい(米の品種みたいだなw)良かったです♪
ラジオ関連で言えば結構りかみきもネタは多いですよね。
例えばプレゼントでミキティ自筆の犬の絵がプリントされた靴下をもらったとか。(ペアでw)
そんな訳で作者様のりかみきも一度読んでみたいのでいつか書いてみて下さい!
- 303 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:26
-
甘酸っぱいケチャップライスにふわっとあつあつたまご。
白いお皿にきれいにくるまっているのはオムライス。
- 304 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:27
-
天使のオムライス
- 305 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:27
-
「うわ、うまそー。」
ごとーの力作を「いただきまーす。」と言って、よしこがスプーンですくう。
口に入れて「うん、うまい。」と一言。
「やっぱごっちんは料理上手だねー。」
「そりゃ、どーも。」
がつがつと食べているよしこを見ていたら、ふとこの前のことを思い出した。
よしことは反対に一口一口ゆっくり食べながら、「おいしー。」と言ってくれた彼女のこと。
- 306 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:28
-
「ごっちん?」
「え?」
「なんかさー、こっち見てにやにやしてるけど・・・食べたいの?」
「いや、別に。」
食べたかったら自分で作るさ。それよりも・・・。
「ごとー、にやにやしてた?」
「うん、かなり緩い顔してた。」
やばっ、あの子の事思い出してたからだっ。
「もしや、梨華ちゃんのこと思い出してたんじゃないの〜?」
「ふぇっ!」
図星つかれて変な声が出た。
「やっぱりね。」
よしこはふふんと勝ち誇ったように笑ってる。
恥ずかしかったけど、ま、いっかと思いなおす。
「実はさ、こないだ梨華ちゃんにもオムライス作ってあげたんだ。」
- 307 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:28
-
そしたらさ、めちゃくちゃ幸せそうに笑って「おいしい。」って。
ごっちんのオムライスって天使のオムライスみたいって。
ふわふわのたまごが羽根みたいだからって。
もうすっごい笑顔でさ・・・。
- 308 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:29
-
「そんなこと言われてにやけないはずないじゃん。」
「何だ、のろけ話かよ。」
よしこはわざとらしくはぁーっと溜息をついて肩を竦める。
「確かにごっちんのオムライスはまじでうまいと思うよ。でもそれって梨華ちゃんに作ったからじゃん?」
あたしのはきっとふつーのオムライスだね、と付け加えてもぐもぐ。
「え?作り方は全く同じだよ?」
「そうじゃなくって。」
よしこは食べかけのオムライスに何かを振り掛けるジェスチャーをする。
「ごっちん特製の愛情スパイスが入ってるってことだよ。」
「えぇー、一応よしこのにも入れたぞぉー。」
「少しね。」
そう言うと、よしこは残りをまた食べ始めた。
- 309 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:30
-
食べ終わったよしこに昨日作った手製のプリンを出した時、テーブルに置いてあった携帯がブルブル震えた。
「もしもし。」
『あ、ごっつぁん?』
携帯越しに聞こえるのは高めのかわいらしい声。
「もしかして梨華ちゃん?」
小さな声でよしこが聞くのでうなづく。
- 310 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:30
-
『もうお仕事終わった?』
「うん、今日は早かったから家にいるよ。」
『そうなんだ。・・あのね?』
「うん。」
『これからごっつぁんのおうちに行ってもいい?』
「え?!」
『なんか急にごっつぁんのオムライスが食べたくなっちゃって・・。もしよかったら、作ってもらいたいなって。』
「いいけど・・・。実は今、よしこが来てて・・。」
そう言うと、携帯の向こうの梨華ちゃんは慌てた様子で。
『あ、そうなの?じゃあ今日はいい・・・』
すると、よしこがごとーからばっと携帯を奪うと耳に当てた。
- 311 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:31
-
「あ、梨華ちゃん?・・・うん、いや、別に、ごはんごちそうになっただけで、そろそろ帰るとこだったんだよ。・・・うん、そう。・・・ほんとだって。明日も仕事だしさ。・・・オムライス作ってくれるって話を前に約束しててね。・・・うん、だから梨華ちゃんとはすれ違いだけど。・・・今度ごはんでも食べに行こうよ。・・・うん。じゃ、ごっちんに変わる。」
ほいっと携帯をごとーに渡してきたので、耳に当てる。
- 312 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:31
-
「もしもし。」
『ごっつぁん、何かごめんね・・。』
「いいって。気にしないで。」
『よっちゃんにもオムライス作ってたんだ。』
「偶然ね。」
『ふふ、先越されちゃったな。』
ちょっと拗ねた声の梨華ちゃん。そんな彼女に。
「大丈夫。ふつーのオムライスを作ったから。」
『え?』
「梨華ちゃんには天使のオムライスを作ってあげるよ。」
『・・ありがとう。』
一瞬の間。梨華ちゃんの頭にはてなマークが出たっぽいな。
「じゃあ、気をつけて来てね。」
『うん、じゃあまた後で。』
- 313 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:32
-
「ごっちんも大変だねぇ。」
「まぁね。」
「梨華ちゃん鈍感だから、ちゃんと言わないと伝わらないよ。」
「そうなんだよね・・。」
たくさんたくさん好きって気持ちを込めてるのに、彼女は気づいているんだか気づいてないんだか。
「がんばんな。」って肩をぽんっと叩くと、「ごちそうさま。」とよしこは帰っていった。
- 314 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:33
-
さぁーってこれから気合入れて作りますか!
大好きって気持ちを込めた梨華ちゃんにだけの天使のオムライス。
そしたら、「おいしー。」って最高級の笑顔をごとーにちょうだい。
- 315 名前:天使のオムライス 投稿日:2006/06/11(日) 12:34
-
END
- 316 名前:七作 投稿日:2006/06/11(日) 12:34
-
* * *
- 317 名前:七作 投稿日:2006/06/11(日) 12:38
- いつも作者のつたない話を読んでいただきありがとうございます。
いろいろとコメントも書いていただき、うれしく思っています。
ここでは基本的にリクエストというものは受け付けておりません。
というのも作者自身器用ではありませんので、書こうと考えて書いているというよりも思いつき
で書いていることが多いからです。
なので、たくさんあるカップリングの中には苦手なものもありますし、なかなか書けないものも
あります。
読みたいと書いていただいた一つのCPは書いたのに、もう一つは書いていないというようなこと
も十分にありえます。
作者の未熟さゆえに皆様のご希望に全てお答えできないことをご了承いただければと思います。
わがままを言って申し訳ありません。
七作の書いたこのCPが読みたいと言っていただけるのをとても光栄に思っています。
なるべく皆様のご要望にお答えできるようがんばりますので、これからもよろしくお願いします。
- 318 名前:七作 投稿日:2006/06/11(日) 12:39
-
* * *
- 319 名前:七作 投稿日:2006/06/11(日) 12:45
- 久しぶりのいしごま。
コメントありがとうございます。
>299様
ありがとうございます。がんばります。
>300様
ここにもあやりか信者(勝手に失礼)が!
いしさともいいですよ。
>287様
補足情報までいただいてしまったら・・・書かないわけにはいかないじゃないですか(笑)
というわけで・・・。
- 320 名前:彼女のお願い 投稿日:2006/06/11(日) 12:46
-
彼女はあまり食べないくせにたくさん注文する。
「だってどれもおいしそうなんだもん。」
「だからって食べれる限界ってものがあるでしょ。」
「だってぇ・・。」
彼女は首をかしげる。
「いろんなもの食べたいって思わない?」
なんて笑って言われちゃ、あたしは反対することなんてできない。
いつだってあたしは梨華ちゃんに甘い。
- 321 名前:彼女のお願い 投稿日:2006/06/11(日) 12:46
-
で、結局大半が残ったまま。
「もうダメー・・食べらんない。」
「だから頼みすぎだって言ったじゃん。」
「でも食べたかったんだもん・・。」
「ほら、あと一口。」
梨華ちゃんの口元にフォークを近づける。
「やぁ。」
ふいっと顔を横にずらす。
「りぃかぁちゃん!」
すると彼女は上目遣い。
「まいちゃん食べて?」
「?!」
うわ、可愛すぎる・・。
絶対顔真っ赤にしてるよ、あたし。
っていうかさ、この台詞ちょっときわどくない?
ここがレストランじゃなくてうちだったら完全に押し倒してたね。
- 322 名前:彼女のお願い 投稿日:2006/06/11(日) 12:47
-
「・・しょうがないなぁ。」
そしてあたしははちきれそうな胃にさらに食べ物を押し込む。
「ありがとぉ。」
にっこり笑う梨華ちゃん。
はは、あたしってば完全に梨華ちゃんに振り回されてる。
でも、こんな関係、意外にあたしは好きだよ。
おわり
・・・失礼いたしました。
- 323 名前:七作 投稿日:2006/06/11(日) 12:50
-
>302様
りかまい・・確かに米の品種みたいですね(笑)
りかみきのその話は作者も聞いたことがあります。
仲がいいのは(作者の妄想を刺激して)とてもよいことです。
- 324 名前:302です 投稿日:2006/06/11(日) 13:26
- リアルタイムで読ませて頂きました!いしごま&りかまいw共に良いですね♪
作者様の描かれる梨華ちゃん像はすごく甘くって可愛らしくてめちゃめちゃ好きです。^^
>リク
催促する様なレスを付けてしまい申し訳ありませんでした。
それではまたの更新を楽しみに待っています。
- 325 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/11(日) 16:49
- いしごまは本当に吉澤さんと同じく、がんばれって後藤さんの肩を叩いてあげたいw
いしさと?りかまい?は幸せな感じで癒されました。
- 326 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/11(日) 22:54
- 287です、すいませんそしてありがとうございますw
作者様の描かれるどのカプも魅力的でだいすきです
ごっちんの健気な感じとまいちんの甘やかす感じ最高です
- 327 名前:夜の電話 投稿日:2006/06/18(日) 13:52
-
夜の電話
- 328 名前:夜の電話 投稿日:2006/06/18(日) 13:52
-
『明日コンサートしたくない。』
6月9日金曜日夜。梨華ちゃんとの電話中。
仕事一筋といっても過言でない彼女からそんな言葉が出た。
- 329 名前:夜の電話 投稿日:2006/06/18(日) 13:52
-
「何で?」
『だって‥。』
電話越しにでも分かる完全に拗ねた声。
『メロンのコンサート行きたかったんだもん。』
「秋にもあるよ?」
『でも今回のは明日と明後日だけじゃん。』
「まぁ、そうだけど。」
『見に行きたいよぉ。』
「無理でしょーが。」
だってあなた明日は福山、明後日は奈良にいるでしょ。
『そうだけどさぁ。なんか悔しい。』
単独コンサート楽しみにしてたのに。
- 330 名前:夜の電話 投稿日:2006/06/18(日) 13:53
-
梨華ちゃんはよく私のコンサートを見に来てくれる。
それはとてもうれしいことだ。
コンサートが終わると、ひょっこり楽屋に顔を出してくれて、興奮気味にあれがよかったこれがかわいかったと話してくれる。
正直、私から見ても彼女はメロンファンだ。しかもハロー1の。
「三人にも来たかったって伝えておくから。」
そんなわけで、梨華ちゃんが来るときは三人はめちゃくちゃやる気になるのだ。
今日梨華ちゃん来るって、と楽屋とかでメンバーに伝えた日にはアドリブが増したりする。
『ね、DVD絶対にちょうだいね。』
「うん、分かった。」
『ありがと、生で見れないのは残念だけど。』
おそらく梨華ちゃんはほんとに残念に思ってくれてる。
- 331 名前:夜の電話 投稿日:2006/06/18(日) 13:54
-
『あ、私いいこと思いついた。』
彼女がそう言うときはたいていよくないことだ。
あまり聞きたくないけど、聞かないといじけるので尋ねた。
「何を?」
『うん、あのね、メロンと美勇伝でコンサートすれば万事解決だよ!』
そしたら、私が見逃して悔しいって思いしなくていいじゃん。
「まぁ、そりゃそうだけどさ・・。」
「絶対にいいものができるって!」
「うん、そうだね。」
『なんでそんな乗り気じゃないのよ。」
「いや、そんなことはないけど。」
その前にそんな話ないから。
「それにさ、柴ちゃんと一緒にコンサートしたいもん。」
毎年夏にやってたハロープロジェクトのコンサート。
今年は全員ではやらなくて、ワンダフルハーツ組のみ。
毎年、冬と夏の二回は必ず梨華ちゃんとは同じステージに立っていたけど、今年はないんだなぁ。
- 332 名前:夜の電話 投稿日:2006/06/18(日) 13:54
-
『ねぇ、柴ちゃん。」
「何?」
『好きだよ。』
「うん、知ってる。」
『む。』
「どうかした?」
『言ってよ。』
「何をさ?」
『柴ちゃんも好きって。』
「やだ。」
『何でぇ?減るもんでもないじゃん。』
「いや、減るから。」
『何それー。』
柴ちゃんって薄情。少しくらいサービスしてくれてもいいじゃん。
ぶつぶつ言ってる梨華ちゃん。
- 333 名前:夜の電話 投稿日:2006/06/18(日) 13:55
-
最近、梨華ちゃんはほんっと大人っぽくなった。
もともと真面目だったけど、リーダーになってからよりしっかりになったというか。
でも、私の前じゃなんか無邪気で子どもっぽい。
結構そういう梨華ちゃんがね。
「あのさ。」
『んー?』
「好きだよ。」
『えっ?』
「じゃ、おやすみ。」
『ちょっと、柴ちゃ…』
- 334 名前:夜の電話 投稿日:2006/06/18(日) 13:56
-
ぷつんと切った電話。
さて、明日はコンサート。
梨華ちゃんが嫉妬するほど、中野サンプラザをメロン一色にしちゃいますか!
- 335 名前:夜の電話 投稿日:2006/06/18(日) 13:56
-
END
- 336 名前:七作 投稿日:2006/06/18(日) 13:57
-
* * *
- 337 名前:七作 投稿日:2006/06/18(日) 14:09
- 親友な二人が大好きです。
コメントありがとうございます。
>302様
ありがとうございます、石川さんはかわいくっていうのが作者のモットーでして(笑)
こちらこそわがままを言って申し訳ありません。
読みたいと言っていただけるのは本当にうれしいです。
りかみきに関しましては近いうちに書ければいいなと思っています。
302様の思うりかみきとは違うかもしれませんが・・。
そのときはぜひ読んでいただければと思います。
>325様
後藤さんががんばってくれないと鈍感石川さんは気づきません。
この際、オムライスに「大好き」とケチャップで書くくらいしないと。
でも、きっと
( ^▽^)<ありがと、ごっつぁん。
で終わってしまう気が。
>287様
ありがとうございます。
魅力的に書けるようがんばります!
- 338 名前:302 投稿日:2006/06/19(月) 02:18
- いえいえ、それはもうこちらが不躾なレスをしてしまったので。;
それなのに検討してくださる?という事でホントにありがとうございます。
私が思うりかみきというよりも、作者様の描くりかみき像が読みたいと思い
あんな事を申し上げてしまったのです。なのでそんな感じでお願いします。w
っていうか、いししば初めてです!いいですね。柴っちゃんの梨華ちゃんとの
距離感がとっても素敵です。次もまた楽しみにしてます♪
- 339 名前:mine 投稿日:2006/06/25(日) 22:27
-
mine
- 340 名前:mine 投稿日:2006/06/25(日) 22:28
-
なんで恋に落ちたかなんて。
そんなのこっちが知りたい。
どちらかっていうと苦手なタイプだったのに。
性格だって正反対。
だけど。
別れ際に「バイバイ、またね。」って言った君の顔が忘れられなくなっちゃったんだよ。
- 341 名前:mine 投稿日:2006/06/25(日) 22:29
-
これでもさ。
美貴はけっこーもてる方なんだよ。
確かに素でいるとがんとばしてるとかヤンキーっぽいとか、性格も男っぽいし、そういうんで怖いと思われてるみたいだけどさ、でもラブレターだってよくもらうし、差し入れだってたくさんもらうし。
つまり、恋人候補には不自由してなかったってこと。
- 342 名前:mine 投稿日:2006/06/25(日) 22:29
-
ちょっとしたイタズラ心と手違いで。
美貴と彼女の唇がほんの少し触れた。
彼女はかわいそうなくらい顔を真っ赤にして。
口元を手で隠しておろおろしてる。
生真面目な彼女らしいその行動に美貴の顔が緩みそうになった時、彼女がつぶやいた言葉。
「私・・恋人がいるの・・。」
ど、どうしよう?なんて眉毛を八の字に下げてる。
どうしようなんて言われてもさ、そんなの美貴は知らない。
ただね、そんな君がすごく欲しくてたまらなくなったよ。
- 343 名前:mine 投稿日:2006/06/25(日) 22:30
-
言ってしまえばただの事故。
でもそれを事実にしてしまおうか。
彼女の頬を両手で挟んで。
今度はさっきよりしっかりと彼女にキスをして。
驚いている彼女に一言。
「美貴のものになっちゃいなよ。」
- 344 名前:mine 投稿日:2006/06/25(日) 22:31
-
恋人がいるからって簡単に諦めらんないよ。
きっと優等生の君は「そんなのできない。」って言うに決まってるから。
その言葉が君の口から出る前に美貴の唇でふさいでやった。
何も抵抗しないのはやさしいから?
それとも美貴のことが少しでも好きだから?
美貴は彼女をきつくきつく抱きしめる。
「美貴ちゃん・・。」
美貴の腕の中で美貴の名を呼ぶ彼女が愛しくて。
- 345 名前:mine 投稿日:2006/06/25(日) 22:32
-
美貴のものになればいいのに。
ずっと美貴の傍にいてよ。
だってもう美貴の心は梨華ちゃんのものなんだから。
- 346 名前:mine 投稿日:2006/06/25(日) 22:32
-
END
- 347 名前:七作 投稿日:2006/06/25(日) 22:34
-
* * *
- 348 名前:七作 投稿日:2006/06/25(日) 22:36
- 強引な藤本さんが好きです。
コメントありがとうございます。
>302様
こんなんですみません。
- 349 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/26(月) 09:10
- 短いのに雰囲気がすごく良いなー
藤本さん、超かっけーです。
- 350 名前:302 投稿日:2006/06/26(月) 12:12
- とんでもないです!すごい面白い♪
ミキティの強引さと梨華ちゃんの押され弱さがイイカンジ。w
次もまた楽しみにしています。^^
- 351 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/26(月) 20:03
- りかみききた〜!
藤本さん→石川さんってツボなんですよね。
これからも楽しみにしてます。
- 352 名前:七作 投稿日:2006/07/02(日) 22:36
-
どんよりとした灰色の空。
絶え間なく振り続ける細い雨。
静かに全てを支配する。
まるで永遠に続くかのよう。
でも私は知っている。
永遠なんてこの世にないってことを。
いつかは終わりが来るということを。
- 353 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:37
-
紫陽花の咲く頃
- 354 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:38
-
今はほとんど使われていない東館。
その四階の窓から外を眺める。
このあたりには高い建物なんてあまりないから遠くまで見通せる。
ここから見える景色は別に物珍しいものがあるわけではない。
でも私は今年もその光景を見ている。
目を閉じてみる。
湿った雨の匂い。
しとしとという雨音。
その中にかすかに油絵の具の匂いがするのは気のせいだろうか。
もうこの部屋が美術室という役目を終えて結構な時間が経つというのに。
それは私の忘れられない過去の記憶が呼び出したものなのだろうか。
- 355 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:38
-
下を見下ろすと色とりどりの傘が見えた。
その隙間から見えるセーラー服の生徒達。
六月から衣替え。
黒い長袖から白い半袖に変わった。
かつては私もあの制服を着ていた。
もう何年も昔のことだけど。
- 356 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:38
-
*****
- 357 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:39
-
私がこの女子高に通っていたときもこの東館はほとんど使われていなかった。
ここは音楽室や美術室などの施設が入っていたのだけど、新しく西館ができて全てそちらに移ったため、ただの空き教室として存在することになった。
四階のこの部屋は「第二美術室」という札が付けられたけれど、授業でも美術部の生徒も使うことはなく、もっぱら一人の美術講師のアトリエとなっていた。
私は昔から美術は大の苦手だった。
高校に入って芸術科目は選択になるというので絶対に美術なんてとるもんかと思っていたけれど、私は選択用紙に美術と記入していた。
それは一つの目的のために。
- 358 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:39
-
入学式の後、私は校舎を散策していた。
新しい環境に不安はあったけど、ドキドキ・ワクワクの方が大きかった。
だから私にとって校舎を歩くことは一つの冒険のように感じていたんだと思う。
教室や職員室が入っている大きな中央校舎。
最新機器の揃った施設の入っている西館。
そんな綺麗な校舎の並んだ隅にひっそりと建っている古びた東館。
勇者は迷いもせずに東館にも足を踏み入れる。
- 359 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:40
-
タンタンタン・・・
響く足音。
ひんやりとした空間。
昼間なのに薄暗い。
怖い、けれども何かに引かれるように足は進む。
四階まで登ってきて一つの部屋に明かりが付いているのに気づく。
そこはゴールなのだろうか。
迷いもせずに私はゆっくりとドアを開けた。
- 360 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:40
-
***
- 361 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:41
-
「なんか石川は怯えたように描くね。」
「え?」
「もっと堂々と描いていいんだよ。」
「でも私、絵下手だから・・。」
「上手下手はあると思う。でもさ、心で描くんだよ。石川の見つめた先のものをただ素直に。」
「・・・はい。」
私が鉛筆を動かすと、先生がふっと笑ったような気がした。
「ねぇ、石川はどうして美術をとったの?」
私はあのときの先生の問いになんて答えたんだろう。
たぶん絵がうまくなりたかったとか、きっとそんなことをなんとか口にしたと思う。
でも本当は先生に近づきたかっただけなの。
あの日、入学式の後に見た先生の真っ直ぐな瞳と筆を持つ白い長い指とそしてやさしい雰囲気が忘れられなくなってしまったから。
- 362 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:41
-
先生は放課後、いつも第二美術室でキャンパスに向かっていた。
そこは先生のお城だった。
乱雑に置かれているものや壁にかけられているもの、全てが先生の作品。
たまに先生のお気に入りの曲が流れていたり、好きなコーヒーの香りが漂っていたり。
そこにいるだけで私は先生に包まれているような気がした。
「石川は変わってるね。」
「そうですか?」
「ここにいて楽しい?」
「はい。私、先生の作品、大好きなんです。」
- 363 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:42
-
部活のない日は用事がない限り、この第二美術室に通っていた私。
先生の描いている姿を見るのが好きだった。
先生の手から生み出された絵が好きだった。
先生が好きだった。
でも、臆病な私は遠まわしに伝えるしかできなかった。
ねぇ、先生。
あなたはきっと私の想いにとっくに気づいていたんでしょう?
先生はまるで人の心を読んでいるかのように敏感な人だったから。
それでもなお私を拒絶しなかったのは少しでも私に好意を持ってくれていたからと自惚れてもいいのですか?
だからあのとき・・・。
- 364 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/02(日) 22:45
-
つづく
- 365 名前:七作 投稿日:2006/07/02(日) 22:46
-
* * *
- 366 名前:七作 投稿日:2006/07/02(日) 22:52
- 少し長くなりそうなのでこの辺で。
コメントありがとうございます。
>349様
そう言っていただけて大変うれしいです。
>302様
お待たせしました。
機会があればまたりかみき、書けたらいいなと思っています。
>351様
作者も藤→石、大好きです。
いいですよねぇ・・。
- 367 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/02(日) 22:59
- うわ。こんな所で切っちゃいますかw
どきどきしながら続き待ってます。
- 368 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:29
-
***
- 369 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:30
-
春、夏、秋、冬。
私はこの第二美術室にたくさん訪れ、先生と過ごした。
夏はここでアイスを食べ、秋はここで読書をして、冬は先生の淹れてくれたココアを飲んだ。
少しづつではあったけれど、先生と距離が近づいたと感じていた日々。
そして、先生と出逢った春がまた訪れた。
私は先生とこうして一緒の時間をこれからの一年も過ごせるだろうと思っていた。
でも現実はそう甘くなかった。
- 370 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:30
-
「先生!」
「どうしたの、そんなに慌てて。」
ばたばたと足音を立てて第二美術室に入ってきた私を先生はいつものようにゆったりと迎えた。
そんな先生の態度に私は少しだけむっとした。
「さっき職員室で聞いてしまったんです。先生がこの学校をもうすぐやめるって。」
一気にしゃべった私に先生は「あぁ、そのこと。」とさらりと言った。
「どうしてですか?なんでいきなり・・。」
「パリに留学しようと思って。」
「パリ?!」
「うん、絵の勉強をね、もう一度ちゃんとしたいなって。」
「絵の勉強はここでもできないんですか?」
「何だろう、もう一度、ちゃんと絵と向き合いたいと思ったんだ。」
だから芸術の都、パリに。単純かな?
先生が清々しく笑うものだから、責めようと思っていた気持ちはしゅんと小さくなってしまった。
- 371 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:31
-
先生と離れてしまう。
そう思った瞬間、私の目から一気に涙が溢れた。
「石川・・。」
「い、嫌・・です・・・。」
「・・・・。」
「せん・・せぇと・・・は、離れ・・ちゃう・・なんて・・ぃや・・。」
すると先生がふわっと私を抱き締めた。
先生にそうされることは初めてだった。
「そう言ってもらえると先生冥利につきるな。」
「せんせぇ・・。」
あったかい先生の腕の中で私はただただ涙を流すことしかできない。
そうしてようやく落ち着いてきたころ。
「ねぇ、石川。」
「・・はい・・。」
「私がここで描く最後の作品に・・・石川、モデルになってくれない?」
- 372 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:32
-
先生の作品はいつも風景画で人物画はほとんどなかった。
前に先生に尋ねたことがあった、「どうして人を描かないのですか?」と。
そうしたら先生は少し苦笑いで答えた。
「人を描くにはその人の奥の奥まで見つめなければならない。それはとても精神力を使うし、責任もあるの。別に風景画が簡単だとかそういうわけじゃないよ。ただ人物を描くのは赤ちゃんを産むのと同じだと私は思うんだ。」
「私なんかでいいんですか?」
「石川がいいんだよ。」
そう言った先生のやさしい笑顔は未だに脳裏に焼きついている。
そうして残り少ない先生との時間を私はモデルとして過ごすことになった。
- 373 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:32
-
***
- 374 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:33
-
キャンパスと先生の前でシーツ一枚を身に纏う私。
最初に先生に裸で、と言われたときは正直驚いた。
もしかしたら、という思いはあったものの、それが現実のものになると恥ずかしいという思いが先行してしまった。
けれども断ることはしたくなかった。
先生が私をモデルに選んでくれたこと、それは私にとって最高の喜びだったから。
モデル初日。
がちがちに固まっている私に先生は苦笑いをした。
「もっとリラックスして。」
「はい・・。」
うなづいたものの、やっぱり緊張はとれなくて。
すると先生は隅に置いてあったCDラジカセに向かう。
〜〜〜〜♪
きれいな外国語の歌が流れた。
それに合わせて先生も口ずさむ。
「最近のね、私のお気に入り。」
毎日聴いてるから覚えちゃったよ。
そう先生は照れたように笑って、そして鉛筆を手にした。
- 375 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:33
-
***
- 376 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:34
-
「ごめん、遅れた。」
ばたばたと先生が第二美術室にやって来た。
私は窓際から外を眺めていた。
季節は梅雨。
窓の外は最近珍しくもない雨。
私が先生の絵のモデルになってからすでに二ヶ月近く経っていた。
「いえ、私も今来たところですから。」
「もう、教頭が長ったらしくしゃべるからさ。」
話している間も先生は準備の手は止めない。
- 377 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:34
-
「何か面白そうなものでも見える?」
「いいえ、特に。」
「じゃあ石川は何を見ているの?」
白衣を着た先生が私のもとに寄ってくる。
「あそこに・・。」
「あそこ?」
私が指差す方向を先生の目が向かう。
「あの公園に紫陽花が咲いているなぁって。」
「ほんとだ。」
「あまり気にしていなかったんですけど、結構紫陽花っていろんなところに咲いてるって最近気づいたんです。私、紫陽花、好きなんです。」
「紫陽花の花言葉って知ってる?」
「いえ・・。」
「“移り気”、“心変わり”」
「えっ?!」
「花の色が変化するでしょ。だからそう言われてるんだよ。」
- 378 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:35
-
***
- 379 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:35
-
先生は絵を描くとき、すっと目が細くなる。
瞳の奥に白い光が一筋見えて、それがとてもきれいだった。
私はそんな先生の瞳を探って見るのが好きだった。
もうすぐ完成すると先生は言っていた。
どんな絵が出来上がるのだろうかというドキドキ感。
それと同時に二人の時間が終わってしまうという寂しさ。
私の心は複雑だった。
- 380 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:36
-
ずっと迷っていることがある。
先生に自分の気持ちを伝えるかどうかということ。
もうすぐ学校をやめてしまう先生。
私の想いを伝えるべきなんじゃないかって。
でも、私の気持ちは先生にとって迷惑なんじゃないかと思う。
先生は私のこと、ただの生徒としか見ていないから。
ねぇ、どうすればいいんだろう?
誰にも相談できなかった。
自分の中で自問自答してみることしかできなかった。
でもいくらたっても答えはでない。
- 381 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:36
-
先生が筆を置いた。
「石川。お疲れ様。今日でモデルは終わり。」
「出来上がったんですか?」
「ううん、まだ。あとちょっとだけね。でもモデルしてもらうほどじゃないから平気。」
「見せてくれないんですか?」
「まだ、ね。」
先生は途中の絵を決して誰かに見せようとはしなかった。
先生は私にシーツをかける。
「石川、長い間ありがとう。」
「こちらこそ・・私なんかをモデルにしていただいてありがとうございます。」
すると先生はふぅと溜息をつく。
「石川、私なんかってよく言うけど、それはやめなさい。」
「先生・・・。」
「石川には石川のよさがある。自分を卑下にしちゃいけないよ。」
「でも・・。」
先生はぴんっと私の額を人差し指で押した。
「石川、もっと自信を持ちなさい。」
「・・・はい。」
「よろしい。」
- 382 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:37
-
先生は笑ってゆっくりと私に背を向ける。
その瞬間、思わず私は先生の腕をとっていた。
「石川?」
なんだか今、すごく先生を遠く感じたの。
これで最後だってそんな感じ。
ダメ、私はまだ先生と離れたくないの。
自信・・そんなのこれっぽっちもない。
でもね、私は、私は・・・。
「先生、私のこと・・・・。」
思わず口に出た。
「抱いてください。」
- 383 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:38
-
先生がゆっくりと私に近づく。
私は先生の大きな瞳をまっすぐ見つめた。
「石川・・。」
先生の手が私の肩に置かれる。
私は見上げてうなづいた。
先生は悲しそうに笑う。
そして。
するっとシーツが床に落ちた。
- 384 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:39
-
- 385 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:39
-
静かな雨の音。
部屋の隅のソファ。
あたたかな体温。
先生の長い白い手。
熱い吐息。
ずっと願っていた抱擁。
うれしいはずなのにそれはひどくせつなくて。
先生の手は魔法の手だ。
美しい絵を生み出すだけじゃなく、私をいとも簡単に天国へと導く。
こんなにも私を幸せにしてしまう。
きれいな手は私の体を撫で、そのたびに私をせつなく鳴かせる。
- 386 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:40
-
「先生・・・せんせい・・・。」
私は先生にしがみつき、何度も何度も先生の名を呼んだ。
愛しくて愛しくてたまらないの。
「・・梨華・・・。」
愛する人に耳元で囁かれた自分の名前。
こんなに美しく響いたことは生まれて初めてだった。
- 387 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:41
-
先生が自分の左手と私の右手をぎゅっと絡ませる。
「梨華。」
今にも飛びそうな意識をなんとか持ち直して私は目をあける。
先生がやさしく笑っていた。
私も笑う。
ねぇ、先生。
今なら言ってもいい?
困らせてしまうかもしれないけど、でもね、どうしても伝えたいの。
「先生、大好き・・。」
先生は何も答えず、私の唇に自分のものを深く重ねた。
私の体の中で先生を感じる。
私が先生でいっぱいになる。
先生・・今、すっごく幸せだよ。
どこまでも二人、昇っていけそう。
永遠に続けばいいのにって願っちゃダメかな。
- 388 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:41
-
***
- 389 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:41
-
「新入生だよね?」
「あ、はい・・・1年A組の石川梨華です。」
「そう。私は飯田圭織。美術の講師、よろしく。」
「よっ、よろしくお願いしますっ・・。」
――――――ねぇ、先生、どうして急にいなくなってしまったの・・?
- 390 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/08(土) 22:42
-
つづく
- 391 名前:七作 投稿日:2006/07/08(土) 22:43
-
* * *
- 392 名前:七作 投稿日:2006/07/08(土) 22:44
- コメントありがとうございます。
>367様
もう少し続きます。
お付き合い、よろしくお願いします。(一礼)
- 393 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/08(土) 22:55
- やはり相手はこの人でしたか。
この人の前だと石川さんは少女ですよね。
ていうか、七作さんの石川さん可愛すぎるんですが…
- 394 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/11(火) 10:00
- ドキドキ
- 395 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:24
-
*****
- 396 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:25
-
ゆっくりと目を開ける。
まわりの建物は変わってしまったけれど、側の公園の紫陽花はあの頃と変わらずに咲いている。
ここに立っている私は女子高生から教師となった。
ただ私の中にある想いは今・・・。
「石川先生。」
一気に現実のもとに引き戻される。
私ははっとして振り返った。
- 397 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:25
-
ドア付近に一人の女子生徒が立っていた。
「吉澤さん、こんな時間にこんなところでどうしたの?」
まさかこんな場所で誰かに、それも生徒に会うとは思ってもみなかった。
吉澤さんはかすかに笑った。
「先生、よくここに来てますよね?」
「・・・知ってるの?」
「えぇ、見てましたから。」
吉澤さんは失礼します、と言って中に入ってきた。
「先生はいつもここから遠くを眺めてた。何を見ていたんですか?」
「何ってただ景色を・・。」
そう答えると吉澤さんはふふっと笑った。
「はぐらかされちゃったな。」
「はぐらかしてなんか・・。」
まるで私の心を見透かしているようで居心地が悪い。
今日に限らず、吉澤さんと接するとき、なぜかそんな気分になることがある。
- 398 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:26
-
「出発は来週だっけ?」
「はい。学校に来るのは今日で最後です。」
吉澤さんはお父さんの仕事の関係で海外に引っ越す。
行き先はフランス。
「寂しくなるな。」
「ほんとですか?」
「うん、吉澤さんみたいに熱心な生徒がいなくなるのは悲しいよ。」
「熱心なのは石川先生の授業だけですよ。」
「お世辞でもそう言ってくれるとうれしいな。」
- 399 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:26
-
「先生。」
吉澤さんが大きな瞳で私をじっと見つめている。
真剣な表情。
私の心はざわざわする。
吉澤さんを見ると思い出してしまうの。
そしてどうしようもなく私をせつなくさせる。
前から感じていた、吉澤さんの視線。
それはとてもやさしく熱いものだった。
けれども私はそれに気づかないふりをしてやり過ごしていた。
だって私には・・・。
それなのに、時間というものは恐ろしい。
忘れたくなくとも美しい思い出は薄れていってしまう。
そして残るのは恋の余韻。
- 400 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:28
-
「先生、一つお願いがあるんですけど。」
「何?」
吉澤さんが私に寄ってくる。
思わず、私は一歩後ずさりしてしまう。
一歩距離が縮まれば、一歩空き、そしてまた一歩縮まる。
私の右足の踵が壁にぶつかった。
距離は縮まる。
「吉澤さん・・。」
私と彼女、半歩の距離。
見上げる私、見下ろすあなた。
「石川先生のことが好きなんです。」
突然の、けれども少し予感はあった告白。
- 401 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:29
-
「私は・・・。」
「先生の心の中に誰かがいるってこと、知ってます。それでも諦められない。」
「吉澤さん・・・・。」
大きな瞳。白い肌。長い指。
あなたを見ると重ねてしまう。
「石川先生。」
でも最近、影が薄れていっていることに気づいてる。
先生がぼやけてしまって・・・彼女がくっきりと浮かび上がってく。
「あたしがここを発つ前に・・・。」
吉澤さんの右手がすぅーっとのぼってきて、私の頬に添えられる。
どくんと胸が高鳴る。
「先生を抱かせてください。」
- 402 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:29
-
- 403 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:31
-
静かな雨の音。
部屋の隅のソファの上。
重なる肌と肌。
そして深い口付け。
「吉澤さんの鼓動、速いよ?」
「先生だって・・。」
熱い二人の体。
吉澤さんは口の端をひゅっとあげる。
そして私の鎖骨に舌を這わす。
「んぁっ・・。」
「もっと先生の声聞かせて?」
吉澤さんはその白い長い手で私の体を撫でる。
何もかも知っているかのような手つきで隈なく触れる。
私の体に散らばる赤い華。
一つまた一つと彼女を刻んでいく。
- 404 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:32
-
「吉澤さん・・・。」
「ひとみって呼んでください。」
「・・・ひとみ・・。」
ねぇ、私のことも・・・。
分かってますといった風に彼女はうなづく。
そして耳元で囁いた。
「梨華・・・。」
涙が溢れた。とめどなく流れる。
自分でも分からなかった。
ただどうしようもなく泣きたかった。
彼女は何も言わず、指で唇で私の涙を拭う。
それはひどくやさしくて。
「好きです。どうしようもなくあなたのことが好きです。」
泣きそうな顔でひとみは言う。
心の中からぐっと上がってくるもの。
私はぎゅっと彼女の首に腕を回し、抱きつく。
「私も好き・・。」
そして私からキスをした。
ちゅっと触れるだけのフレンチキス。
顔を離したら、彼女の方から顔を寄せてきた。
するりと舌を絡め取られる。
- 405 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:33
-
「もっと・・・。」
「ん・・・?」
「もっと・・・・あたしのことを感じてください。」
「ひとみ・・・。」
「今、あたしだけを見てください。」
- 406 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:33
-
響く水音。
感じる彼女の指。
「んぁっ・・・んんぅ・・・あぁっ・・!!」
「・・梨華・・梨華・・・・。」
もう何も考えられない。
あなただけ、あなただけしか・・・・。
- 407 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:34
-
- 408 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:34
-
雨は変わらず降っている。
湿った空気とだるい空気が混ざり合って教室はまるで霧がかっているようだ。
- 409 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:35
-
ソファに横になっている裸の私の傍には学校指定のジャージに着替えたひとみが座っている。
「なんでジャージなの?」
「楽だから。それにあたし、あまりスカート好きじゃないんで。」
「そう?私、ひとみって制服似合うと思うけど。」
「あたしは先生のセーラー姿見たいな。」
「今、私が着たらコスプレじゃない。」
「コスプレでも何でもいい。着て?」
そう言って自分のセーラー服を私に押し付ける。
「似合わないよ。」
「ぜってぇ似合う。あたしの頭の中じゃばっちりだから。」
「何考えてるのよ、もう・・・。」
期待してる目でにこにこ見てくるものだから、しょうがないなぁと思いつつ、着てみる。
- 410 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:35
-
「やっぱり似合う!」
「恥ずかしいよ・・。」
「大丈夫、あたししか見てないから。」
そしてぎゅっと私を抱き締め、耳元で囁く。
「それに他に誰にも見せたくないし。」
「ひとみ・・。」
そのままぐっとソファに押し倒された。
「なんかセーラー服の先生見たら押し倒したくなっちゃった。」
「ちょっと、ひとみ・・・。」
抱き締められたまま、首筋にひとみが顔をうずめる。
ぴたっとそのままで、ひとみはじっとしている。
「ひとみ?」
「先生、このままで聞いてもらえますか?」
ひとみの声は掠れていた。
- 411 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:36
-
「ある学校に一人の美術講師がいました。独特な自分の世界を持っていて、放課後はいつも一人で絵を描き続けていました。そんなところに一人の女子生徒がやってきた。」
「生徒は美術講師の絵を気に入ったのか時間があるときはいつも美術室に出入りするようになっていました。最初は誰かがいることにやりづらかった講師だったけれど、いつのまにか生徒がいることに慣れてきて、いないときはどうも落ち着かなくて。」
「そんなある日、講師はフランスに留学しようと決意する。もう一度絵の勉強をするために。それは女子生徒と過ごした時間の中で絵と向き合う喜びを改めて感じたからでした。そして学校を去る前にその生徒をモデルにして自分の作品を残そうと決めた。」
「ねぇ、その話って・・。」
「でもこれは表向きの話。本当の話は違うんです。」
- 412 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:37
-
「実は美術講師は病に冒されていました。医者からはそう長くは生きられないと言われていたんです。本当はフランスに留学すると言ってた日は病院に入院する日だった。それが病状が悪化して予定よりも早く入院することになってしまったんです。女子生徒に最後のモデルをしてもらった次の日、講師は急遽入院しました。女子生徒には何も言うこともできず、完成した絵を見せることもできず。」
「・・・あのとき、絵は完成してたの・・?」
「いえ、ほとんど完成してたようですが、あともう少し手を加えるところがあったようです。入院中に絵は完成しました。そして、その絵は講師の最後の作品となりました。」
「それって・・・・!!」
- 413 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:37
-
「講師には年が離れた妹がいました。両親が離婚したため、別々に暮らしていましたが、講師の入院中、妹はよくお見舞いに行っていました。徐々に弱々しくなっていく姉を見て、妹は心を痛めていました。けれども、姉は女子生徒のことを話すときだけはいつも穏やかな表情でした。だから、妹はよくその話をねだったんです。・・・話を聞くうちにいつのまにか妹もその女子生徒のことを好きになっていたんですけどね。」
「講師が息を引き取る間際、女子生徒の絵が妹に渡されました。自分が最後に愛した人だと添えて。それはとても美しくそしてとてもせつない絵でした。そしていつかこの絵を女子生徒に渡して欲しい。これが講師の願いでした。」
- 414 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:38
-
「妹はどうしても姉の願いを叶えたかった。名前は聞いていたけれど、どうすればいいのかなんて全然分からなかった。だからとりあえず姉の働いていたこの学校に入学した。だめもとだったんです。それなのに、女子生徒はここにやって来た。大人っぽくなっていたけれど、絵の中そのままで最初見たときはとても驚いた。でも本当にあの女子生徒なのか・・。でも、彼女が放課後になるとよく第二美術室に足を運ぶということを知って、確信をもったし、正直うれしかったんです。まだ姉のことを覚えてくれてるって。」
ひとみは私から離れて立ち上がる。
そして美術室の隅にひっそりと立てかけてあった白い布に包まれたものを持ってきた。
「先生、姉の最後の作品、受け取っていただけますか?」
- 415 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:39
-
ひとみの手から受け取る。
自分の手がかすかに震えているのに気づいた。
私はひとみの顔をうかがう。
彼女はうなづく。
私は一つ深呼吸して、ゆっくりと白い布をはがした。
そこには・・一人の裸の少女がまっすぐに見つめていた。
強さと熱さとやさしさが混じった視線。
笑っているような泣いているような。
楽しいような悲しいような。
あの頃の想いが蘇ってくる。
「先生・・・。」
- 416 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:39
-
涙が流れた。
愛しさが溶け込んだ涙。
走馬灯のように先生との思い出が頭の中と心の中を駆け巡る。
忘れかけていた小さな記憶も、忘れられない大きな記憶も、全てが交じり合って私を埋め尽くす。
「姉はあなたを愛していました。でも自分の命が長くないから言えなかったんです。」
- 417 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:40
-
先生、ごめんなさい。
急にいなくなってしまった先生のこと、少しだけ憎んでしまったの。
何も言わずに私の前から消えてしまった先生。
完成した絵を見せてくれるって約束をそのままに。
でもそれと同時に私自身をずっと憎んでいた。
私が抱いてほしいなんて言ったばっかりに先生を苦しめてしまったんだって。
「姉は天国で喜んでいると思います。あなたのもとにこの絵が届いたことを。」
- 418 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:41
-
止まない雨はない。
晴れない霧はない。
いつだって太陽は私たちに光を差し込んでくれる。
私は先生を愛していた。
それは決して色褪せることのない思い出。
そして今、私は愛する人を見つけたの。
- 419 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:41
-
私はひとみの胸に飛び込む。
ぎゅっと抱きつくと抱き締め返してくれた。
「ひとみ、愛してる。」
すると彼女は私をやんわりと離して、私の目を見た。
「私は姉とは違います。必ずあなたのもとへ戻ってきます。約束しますから。紫陽花の咲く頃、あたしはあなたを迎えにきます。」
「・・はい。」
そうしてひとみは私にやさしいキスをおとす。
先生、ありがとう。
完成した絵をちゃんと見せてくれて。
そして・・・ひとみに逢わせてくれて。
- 420 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:42
-
*****
- 421 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:42
-
「紫陽花の花言葉って知ってる?」
「いえ・・。」
「“移り気”、“心変わり”」
「えっ?!」
「花の色が変化するでしょ。だからそう言われてるんだよ。」
「なんかショック・・。」
「でもね、他にも花言葉があるの。」
先生はふわっと笑った。
「ひたむきな愛情って言うんだよ。」
- 422 名前:紫陽花の咲く頃 投稿日:2006/07/16(日) 15:43
-
END
- 423 名前:七作 投稿日:2006/07/16(日) 15:44
-
* * *
- 424 名前:七作 投稿日:2006/07/16(日) 15:48
- 最終回拡大版。少し長くなってしまいました。
最初考えてたのとはなんだかずれてしまいました(苦笑)
コメントありがとうございます。
>393様
相手はこの方でした。
( ^▽^)<かわいいだけじゃダメかしら・・
いつか大人っぽい石川さんが書けたらいいなぁと思ってはいるのですが。
どうもかわいい路線に走ってしまうのです。
>394様
ドキドキしていただけたようで、七作としてはうれしい限りです。
- 425 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/16(日) 16:50
- とても良かったです
切ないけどあたたかい話しをありがとうございました
- 426 名前:名無紹介者さん 投稿日:2006/07/16(日) 19:53
- この方でしたか…!
可愛い石川さん大好きなのでどんどん突っ走ってくださいw
- 427 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/17(月) 16:01
- なんか時間軸がおかしいなと思ったらそういう事だったんですね。
>>377での先生とのやりとりが最後にリンクする終わり方が凄い好きです♪
せつなくも愛しさに溢れる物語をありがとうございました。
また次の作品も楽しみにしています。
- 428 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/17(月) 17:41
- フレンチキスはいわゆるディープキスと同じ意味なんですけど
- 429 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/18(火) 02:23
- あーーーー切ないよぅ。・゜・(ノД`)・゜・。
一番最後の言葉にすっかりやられてしまいました。
- 430 名前:七作 投稿日:2006/07/23(日) 14:51
- 今回、前作、前々作と多少似かよっています。
この時期ならではということでどうしても書きたくて書いてしまいました。
一応、前々作のものとはつながりはなく書きましたが、続きともとれるかもしれません。
そのあたりは読んでくださった方におまかせします。
- 431 名前:梅雨の季節 投稿日:2006/07/23(日) 14:52
-
梅雨の季節
- 432 名前:梅雨の季節 投稿日:2006/07/23(日) 14:52
-
さっきまで晴れていたと思ったら急に雨が降り出した。
「雨、降ってきちゃった・・。」
「そうだね。」
運悪くもちょうど美貴達は店を出たところ。
ちらっと店の中を振り返ればさっきまで美貴達が座ってた場所はもう他の誰かが座っていた。
ただ今店内満席中。
- 433 名前:梅雨の季節 投稿日:2006/07/23(日) 14:53
-
彼女はカバンから折り畳み傘を出す。
相変わらずのピンク色。
美貴、傘忘れた、なんて言ったら相合傘してくれる?
一瞬そう思った。
でもそれは言わず、美貴もカバンの中から出した。
最近不安定な天気。
折り畳み傘は必需品だ。
こないだ偶然見つけたおいしいケーキ屋さんに彼女を誘った。
一瞬困ったように瞬きをして、それから口元だけ笑ってこくりと首を縦に動かした彼女。
「大丈夫だから。」
何が大丈夫か分からないけど美貴は言った。
「うん。」
彼女はうなづいた。
- 434 名前:梅雨の季節 投稿日:2006/07/23(日) 14:53
-
足早に駆けて行く人の波の中、ゆっくりと歩く美貴達。
人が少なくなった住宅街、ピンク色と黄緑色だけがカラフルに浮いている。
「あ・・。」
彼女が横を向いた。
「どうしたの?」
「・・・ちょっと寄り道していい?」
申し訳なさそうに問う君に美貴は笑ってうなづいた。
- 435 名前:梅雨の季節 投稿日:2006/07/23(日) 14:54
-
誰もいない公園にすたすたと入っていく梨華ちゃん。
その後ろを付いて行く美貴。
横目で見やる遊戯物。
雨に打たれる滑り台やジャングルジムは物悲しい。
それらの横で足を止めた彼女。
「・・・紫陽花?」
「ここにも咲いてたんだ・・。」
「美貴、知らなかった。」
「私も。」
- 436 名前:梅雨の季節 投稿日:2006/07/23(日) 14:54
-
そっと手を伸ばす彼女の横顔は大人っぽくてどこかせつない表情だった。
黙ったままの彼女。
そんな彼女を静かに見つめる美貴。
何だろう、すっごくドキドキする。
雨音がなければきっと彼女にも聴こえてしまうだろうほどに大きく高鳴っている。
ねぇ、君は今何を思ってる?
彼女の横顔に心の中で問う。
それは・・・あの子のこと?
- 437 名前:梅雨の季節 投稿日:2006/07/23(日) 14:55
-
彼女の隣にいるあの子はみんなから頼りにされていて人気があって。
まるで太陽のような子。
美貴は自分に自信があった。
それがあの子の前になるととたんに自信がなくなるような気分になる。
まるで心に雨が降り出すように。
あの子がいい子だってこと、美貴だって知ってる。美貴も大好き。
でも彼女の恋人であるあの子は正直憎い。
- 438 名前:梅雨の季節 投稿日:2006/07/23(日) 14:55
-
「紫陽花好きなの?」
「うん、結構好き。」
「そっか。」
ねぇ、梨華ちゃん、好きだよ。
美貴は梨華ちゃんのこと、愛してる。
- 439 名前:梅雨の季節 投稿日:2006/07/23(日) 14:56
-
「美貴、思うんだけど。」
「うん。」
「紫陽花って晴れている時よりも雨の時の方がなんだかきれいに見えない?」
「・・そうかな?」
「そうだよ。」
だから、梅雨の時期に咲くんじゃない?
美貴がそう言うと、梨華ちゃんはそうなのかなぁと呟いた。
紫陽花は雨の中の方がとても美しい。
お互いを引き立たせるものの傍にいるのが一番ふさわしい。
「梨華ちゃん、これから美貴んちに来ない?」
ピンクの傘が揺れて梨華ちゃんが美貴を見る。
彼女は美貴の顔をじっと見つめてから、首を横に振った。
「・・今日は遠慮しとく。」
「・・・そっか。」
- 440 名前:梅雨の季節 投稿日:2006/07/23(日) 14:57
-
公園を出て歩き出す。
「ごめんね。」
ふと彼女がぽつりと言った。
「何が?」
尋ねれば「ううん、いいの。」と梨華ちゃんは言った。
少し傘を持ち上げて空を見た。一面灰色。
雨はまだ降り続いている。
止む気配はない。
- 441 名前:梅雨の季節 投稿日:2006/07/23(日) 14:58
-
END
- 442 名前:七作 投稿日:2006/07/23(日) 14:58
-
* * *
- 443 名前:七作 投稿日:2006/07/23(日) 15:02
-
強引になりきれない藤本さんが書きたかったのです。
今度りかみきを書くときはハッピーなものにしたいです。
コメント、ありがとうございます。
>425様
こちらこそありがとうございます。
>426様
では、どんどんかわいい路線で突っ走らせていただきます。
>427様
分かりづらかったみたいですね。すみません。
一応、
***** が入っているところは過去→現在、または、現在→過去と時間が経過して
*** が入っているところは過去の中での時間経過という風にさせていただきました。
ご丁寧にありがとうございます。
>428様
ご指摘、ありがとうございます。
作者の知識のなさを暴露してしまいました(汗)
428様、読んでいただいたみなさん、申し訳ありません。
該当箇所に関しましては、
「ちゅっと触れるだけの軽いキス。」
という風に訂正をお願いします。
>429様
今回はせつなさをテーマに書いてみました。
なんとか伝わったようで、よかったです。
- 444 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/23(日) 18:24
- 更新お疲れ様です
藤本さんかわいいなぁ応援したくなります
次回の更新も楽しみにしています
- 445 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/24(月) 21:39
- ミキティの梨華ちゃんに対する想いと
実際の二人の距離感の違いがもどかしさと
切なさが胸を締め付けますね。
ミキティの目に見える紫陽花はどう見えたんでしょうね。
次回作も楽しみにしています。
- 446 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/25(火) 13:51
- ミキティ切ないですねぇ。
・・うん私も雨に濡れてる紫陽花好きですよ。
強引になりきれないミキティがなんからしくてかわいいです。
- 447 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:27
-
あーしのせんせぇ
- 448 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:28
-
そわそわそわそわ・・・
あぁ〜、落ち着かん。
あーしは部屋の中を行ったり来たり。
テーブルの上はばっちり準備。
あとは待つだけ。
そわそわそわそわ・・・
ちらりと壁にかかってる時計を見る。
そろそろだ。
時計の針は五時五分前。
- 449 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:28
-
ぴんぽーん
待ってましたとばかりにだだっと階段を下りて、ドアを開ける。
飛び込んできたのはにっこりスマイル。
「こんにちは、愛ちゃん。」
「せんせぇ、こんにちは!」
今日は待ちに待った家庭教師の日!
- 450 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:29
-
あーしの通っている高校は大学の付属。
だからそれなりの成績をとっていれば進学できるのだけれど、合唱部にばかり力を注いでいたあーしは徐々に成績が落ちてしまった。
「こりゃ、駄目だわ。」
通知表を見たお母さんはばっさり一言。
そしてあーしの意見もなしに勝手に家庭教師をつけることに。
お母さんのお友達の娘さんが大学生でアルバイトを探しているとのことで、ぜひともあーしの家庭教師になって欲しいと頼んだのだ。
正直いって憂鬱。
いきなり家庭教師、いきなり勉強しろ、いきなり明日から。
ほんなのこっちだって反抗するって!
- 451 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:29
-
なのにあーしは反抗するどころか嬉々として勉強。
最初は二日だった家庭教師を三日に増やした。
急に勉強熱心になったあーしをお母さんは不思議に思いながらも喜んでくれて。
成績もだんだんと上がってきたし。
それもこれもせんせぇのおかげやざ!
- 452 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:29
-
「せんせぇ、ここが分からないんですけどぉ?」
「え?どこ?」
すっとせんせぇはあーしの右に寄ってくる。
そしてノートを覗き込む。
「えっとぉ、この数式のぉ・・。」
せんせぇの甘い香水の香り。
どきどきしてしまう・・・。
「うん。ここはね・・。」
あーしが分からないところをせんせぇは丁寧に教えてくれる。
すると魔法がかかったみたいに、あーしはすぐに理解できる。
「分かったぁ!」
「うん、よかった。」
あーしが分かると先生はすごく喜んでくれるんでの。
- 453 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:30
-
休憩時間にお母さんが持ってきたシュークリームを二人で食べる。
せんせぇはリスみたいにシュークリームを食べるちゅうでの。
それがとってもかわいくて、思わずふふっと笑ってしまうの。
「なぁにぃ?」
せんせぇはきょとんとしてる。
「何でもないやざ。」
「今、笑ったじゃん。」
「せんせぇはかわいいなぁと思って。」
するとせんせぇはちょこっと怒ったようで。
「大人をからかうもんじゃありません。」
ぷいっと横を向くほんな仕草もとってもかわいいんやざ。
- 454 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:31
-
「もうすぐ中間テストだね。」
「はい・・。」
あぁ、もうほんな時期やざ。
「心配することないよ。愛ちゃん、ちゃんとできてるから。」
「でもぉ・・。」
「大丈夫だって!」
せんせぇが強くいってくれたので、あーしはうなづく。
「そうだ、もし今度のテスト、成績上がったらご褒美あげる!」
「ご褒美?」
「うん、愛ちゃんの好きなの、何でもいいよ!」
あーしの好きなのって言ったら・・・。
「あ、あまり高いものとかあげられないけど・・・。」
「せんせぇとデートしたい。」
「え?」
「へ?」
思いっきり驚いてるせんせぇ。
あっ、あーし思わず口に出してたでの。
- 455 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:32
-
「あ、こ、これはその・・。」
「そんなんでいいの?」
「ほぇ?」
「じゃあ、二人でデートしよう。」
ねっ?と首を傾げてにこっと笑うせんせぇ。
あーしの気合は最高潮に達したのは言うまでもない。
結果は当然のこと、今までで一番いい成績だったやざ!!
- 456 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:32
-
***
- 457 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:32
-
「愛ちゃん、家庭教師、お母さんには先ほどお伝えしたんだけど、三週間ほどお休みをさせてもらうことになったから。ごめんね。」
突然の衝撃告白。
「ど、どうしてですか?」
「私、教育実習があって。その代わりの先生は見つけてきたから。」
「せんせぇ・・。」
「心配しないで。優秀な先生だから。」
心配はほんなことじゃないちゅうんやざ。
教育実習っていったら、学校のせんせぇになるってことやざ。
そしたらあーしだけのせんせぇじゃなくなるってこと!
- 458 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:34
-
「い、嫌ですっ!」
「大丈夫だよ、家庭教師のアルバイトやってる子だから。やさしいしいい子だからね。」
せんせぇはあーしの心配している内容にまるっきし気づいてえん。
ちょっと鈍いところもあーしは好きだったりするけど、このときばかりは・・・。
「あーしはせんせぇのこと・・・!!」
「え、何?」
にこにことあーしの言うことを聞いているせんせぇ。
「あーしは・・・。」
「ん?」
「あーし・・・。」
「愛ちゃん?」
「・・・・せんせぇが戻ってくるまでがんばりますから。」
「うん、がんばってね。」
はぁ〜・・・あーしも相当な意気地なしやざ。
- 459 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:34
-
「そうだ、私もご褒美欲しいな。」
「ご褒美?」
「うん、愛ちゃんから教育自習がんばった私に。」
あーしなんかせんせぇにご褒美なんてあげられないのに。
どうしよう?何て思っていると。
「私が教育実習から戻ってきたら、また二人でデートしようね。」
せんせぇからのお誘い!
「はい!」
思いっきり元気よく答えるあーしってば現金?
「じゃあ。そろそろ勉強しよっか。」
「はい。」
できればせんせぇ、あーしだけのせんせぇでいてほしいな。
- 460 名前:あーしのせんせぇ 投稿日:2006/07/30(日) 21:35
-
END
- 461 名前:七作 投稿日:2006/07/30(日) 21:36
-
* * *
- 462 名前:七作 投稿日:2006/07/30(日) 21:48
- 以前リクエストしていただいた(と思う)いしたか。
いんちき福井弁で申し訳ありません。
コメント、ありがとうございます。
>444様
从VvV)<応援して!そしたら梨華ちゃんは美貴のものになるから。
>445様
ご丁寧に感想、ありがとうございます。
二人の温度差みたいなものが伝わったら、と思いながら書きました。
>446様
強引な藤本さんも強引になりきれない藤本さんも作者は好きです。
- 463 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:10
-
華盗人
- 464 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:11
-
その言葉を聞いたとき、絵梨香の頭の中には彼女の笑顔が浮かんだ。
- 465 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:11
-
「おはよう、絵梨香ちゃん。」
美勇伝様、と書かれた紙の貼ってある楽屋をゆっくりと開けると、聞こえたのはのんびり声。
「おはよう、唯ちゃん。今日は早いね。」
「あたしだって早いときくらいあるって。」
「そっかそっか。」
パイプ椅子に座ってる唯ちゃんの前のテーブルには青いカバンともう一つ白いカバン。
おそらく石川さんのものだ。
いつだってリーダーは一番最初に来ている。
「石川さんは?」
「今、スタッフさんと打ち合わせやって。さっき楽屋を出てったで。」
「そう。」
絵梨香もテーブルにカバンを置くと、唯ちゃんの隣の椅子に腰掛けた。
- 466 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:11
-
「そういや、今、絵梨香ちゃんのお母さん、こっちに来てるんやろ?」
「うん。久しぶりに手料理食べたよ。」
「ええなぁ。あたしもお母さんの手料理食べたいわ。」
「うちのお母さんのでよかったら今日食べに来てよ。予定じゃ、早く終わりそうだし。」
「ええの?」
「大歓迎だよ。お母さん、唯ちゃんに会いたいって言ってたし。」
- 467 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:12
-
「何話してるの?」
がちゃりという音と共に、高い声。
「あ、石川さん、おはようございます。」
打ち合わせから戻ってきた石川さんが絵梨香のもとに歩いて来る。
ふわりと甘い香水のにおい。
「おはよう、三好ちゃん。何の話してたの?」
「今、うちのお母さんがこっちに来てるんです。それで、手料理の話をしてて、ね?」
「はい。今日お仕事の後、絵梨香ちゃんの家でごちそうになるんです。」
唯ちゃんが絵梨香の話を引き継いでうなづく。
「あれー?私は誘ってくれないの?」
石川さんが少し拗ねたように言うので、絵梨香は少し慌ててしまった。
「あっ、よかったら石川さんも・・。」
「ありがとう、と言いたいところなんだけど、この後、他の仕事も入っちゃってるの。」
だからまた今度。自分から振っといてごめんね。
石川さんは申し訳なさそうに笑った。
- 468 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:12
-
「あ、岡田ちゃん、スタッフさんが呼んでたよ。第二会議室に来てくれって。」
「はーい。」
唯ちゃんはマイペースに返事をして出て行った。
「岡田ちゃんはのんびりしてるね〜。」
唯ちゃんの後姿を見ながら、石川さんはふふふと笑う。
あ、なんだか、小さい子供を見つめるお母さんみたいなやさしい表情。
「私はどちらかというとせかせかしてるから、たまに岡田ちゃんがうらやましいなぁって思うときがあるよ。」
「そうですねー。でも、眠そうなときの石川さんってすっごくのんびりしててかわいいですよ。」
「それって褒められてるの?」
「はい、ちゃんと褒めてます。」
「じゃあ、ありがとう。」
石川さんはくすくすと笑った。
- 469 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:13
-
「石川さんってやっぱりそうですね。」
「ん?何が?」
いきなりの絵梨香の言葉にさっきまで唯ちゃんの座ってた椅子に腰掛けた石川さんはきょとんとしてる。
石川さんの問いには答えず、絵梨香はそのまま話を進める。
そのことに石川さんは特に何も言わなかった。
- 470 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:13
-
「“花明かり”って言葉知ってます?」
「花明かり・・・ううん、知らない。」
「さっきも言ったと思うんですけど、今、絵梨香の母親が来てて、母が最近読んだ本にこの言葉があったらしいんです。」
「意味は分からないけど、なんとなくきれいな感じはするよね。」
「はい。絵梨香も意味が分からなくて、母が言うには、あ、実際は本の受け売りですけど、満開の桜のまわりには夜でもほのかに明るいってことみたいで、そこから人をひきつけるオーラのことも指すんだそうです。」
「へぇ・・。」
「あの人には花があるね、とかって使うじゃないですか。絵梨香もそんな風になれるようがんばりなさいって母から言われたんです。でも。」
「でも?」
「この言葉を聞いたときに真っ先に石川さんのことが思い浮かびました。」
「えぇっ?!私?!」
目を真ん丸くしてびっくりしてる石川さんを見て、思わず笑ってしまう。
「石川さんは多くの人を引き付ける魅力があるなぁって、特に笑顔とか見てるとすごく思います。」
「なんかそんなこと言われるとすごく照れるんだけど・・。」
石川さんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
- 471 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:13
-
昔、どこかで聞いたことのある話。
世界三大美人の一人である楊貴妃の美しさを梨の花に例えたということ。
石川さんの梨華という名前はそこから来ているわけではないらしいけど、「梨華」という漢字はまるで今の石川さんを表しているかのよう。
- 472 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:14
-
「石川さんに心奪われるたくさんの人・・・絵梨香もその一人ですよ。」
「三好ちゃん・・・もしかして私のこと、口説いてる?」
絵梨香と視線が合うと、すっと逸らす石川さん。
石川さんって結構大胆なときもあるのに、基本的には恥ずかしがりやだと思う。
「そう受け取ってもらっても結構ですけど。」
すると、石川さんはむっとした顔。
「・・・ずるい。」
「そうですか?」
「そうだよ。」
そんな言い方されちゃうと期待しちゃうじゃん。
上目遣いにそんなこと言うなんて反則ですって、石川さん。
- 473 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:14
-
一輪のとても美しい花。
あまりの美しさに人々は遠巻きにその花を見つめる。
本当は自分のものだけにしたいのに躊躇してしまうほどの存在。
誰かのものではなくみんなのもの。
それは暗黙の了解だった。
けれども、愚かな一人の人間が自分の欲望に勝てず、ふらふらとその花のもとへと近寄る。
あいにく側には誰もいない。
- 474 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:15
-
右手をゆっくりと伸ばし、そっと花に触れる。
そのやわらかな感触に胸の中は感動の波で溢れた。
いつもより強く甘い香りを感じ、花との距離が近いことを現実だと感じさせる。
そしてもっとその香りをかぎたくて顔を近づけた。
「あなたが望むならば。」
あなたに恋焦がれる多くの人を敵に回してもいい。
そして私の心をあなただけに捧げましょう。
- 475 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:15
-
「好きなの。」
小さな声が聞こえた瞬間、二人の唇は重なった。
ふわりとやわらかく。
花の蜜のように甘い口付け。
「好きです。」
数秒のキスの後、今度は絵梨香が呟く。
石川さんはうれしそうに目を細め、そしてぎゅっと絵梨香に抱きついた。
「あのね・・。」
- 476 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:15
-
ここが楽屋で、いつ誰が来てもおかしくない場所だということはこのときすっかり頭の中から抜けていた。
ドアの開く音がして、絵梨香達は慌てて体を離す。
「二人とも何しとるんですかぁ?」
不自然にお互い反対の方向を向いているので、入って来た唯ちゃんは首を傾げてる。
「何でもないよ。」
絵梨香がそう言うと、唯ちゃんはじとーっと絵梨香と石川さんを交互に見つめる。
そして何回か往復するとふぅーん、とうなづいて空いている椅子に座った。
意外に唯ちゃんは勘が鋭いところもあるから気づかれたかもしれない。
- 477 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:16
-
スタッフさんに呼ばれ、絵梨香達は楽屋を出る。
唯ちゃんが一番前を歩き、その後ろに石川さん、絵梨香と続く。
唯ちゃんに気づかれないように、絵梨香は石川さんの横に並び、小さく聞いた。
「さっき言いかけたこと、何ですか?」
「あぁ、うん。」
すると石川さんは絵梨香の耳元で囁く。
「私のこと、梨華って呼んで。」
梨華ちゃんとさえなかなか呼べず、いまだに石川さんなのに、梨華ですか。
「・・・努力します。」
そう答えた絵梨香の腕に自分の腕を絡ませ、期待してるから、と耳元で呟いてから、石川さんはするりと絵梨香から離れ、前を歩く唯ちゃんへと駆けて行く。
- 478 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:16
-
軽やかな足取り。
ひらりひらりと舞うスカート。
そんな彼女の姿が一瞬、蝶に見えた。
美しい花だと思っていたが、実の正体は美しい蝶だったのか。
花だとしても蝶だとしても、一つ言えることは。
絵梨香はその美しさの虜になってしまったということ。
きっとあなたからもう離れることはできないでしょう。
- 479 名前:華盗人 投稿日:2006/08/06(日) 01:16
-
END
- 480 名前:七作 投稿日:2006/08/06(日) 01:17
-
* * *
- 481 名前:七作 投稿日:2006/08/06(日) 01:19
-
久しぶりのいしみよ。
三好さんの石川さんに対してなかなか敬語がとれないところが結構好きだったりします。
- 482 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/06(日) 03:06
- 私もこの二人の微妙な(?)関係に萌えてしまう一人です。
実際はみーよのほうが数ヶ月お姉さんなのにね。。。
- 483 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 16:53
- いしみよもいいですねー
楽しませて頂きました
- 484 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:41
-
夏休み残り2週間
- 485 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:41
-
みーん みーん みーん みーん・・・
住宅街に響くうるさすぎるセミの声。
太陽はらんらんと輝いて夏真っ盛り。
「暑い・・暑すぎる・・。」
一軒の家の前。
あたしは数分前からここに立っている。
たらりとあたしの顔に汗が流れる。
それは暑いってだけじゃない。
めちゃくちゃ緊張しているせいだ。
- 486 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:42
-
何をやってるんだ、小川麻琴!
ただ押すだけじゃないか!
思い切って押してしまえ!
あたしの手はそろそろとインターフォンに伸びる。
しかし、ぴたっと止まってしまう。
何を迷っているんだ、小川麻琴!
約束の時間はもう迫ってるんだ!
何も躊躇することなんてないじゃないか!
あたしの指はインターフォンにゆっくりと向かって・・。
- 487 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:43
-
ところでセミっていつから鳴き始めてるんだろう?
ふと頭によぎる疑問。
気づくといつのまにかセミって鳴いてるんだよねぇ。
あまり考えたことなかったけれど・・・って、いやいや、そんなことは今はいい。
あたしにはやらねばならないことがある。
よし、押すぞ。
ごくり。
・・・・。
直前で止まったままの指、ひとつ深呼吸。
・・・・。
押すだけだ、押すだけ。
別に簡単なことじゃん。
ぴんぽーんってぽちっと・・。
- 488 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:43
-
「まこと?」
自分の名前を呼ぶ甲高い声。
はっとして振り向けばにっこり笑ってる梨華さん。
ピンクのTシャツにホットパンツ。
ビーチサンダルをはいてるすらっとした綺麗な足。
手にはコンビニの袋。
なんてこったい、ふいうちだ。
- 489 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:43
-
「外暑かったでしょ?」
「あぁ、はい・・・。」
梨華さんに連れられて家の中にお邪魔する。
「ののー、まこと来たよぉー!!」
玄関で梨華さんが大声で言う。
すると居間からひょっこりと顔を出したのんちゃん。
のんちゃんこと辻希美はあたしの親友。
今日はのんちゃんちで一緒に宿題をすることになっていた。
「おっす、まこと!」
「おっす。」
「まこと、アイスティーでいい?」
「あ、はい、ありがとうございます。」
梨華さんに続いて、あたしは居間に入った。
- 490 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:43
-
「って、何でいるんスか。」
居間に入って一言。
ソファにぐたっと寝べそべってる人物。
人んちで何やってんだよ!
その人は目だけあたしに向けた。
「美貴は梨華ちゃんと遊ぼうって思ってきたの。」
「美貴ちゃんもアイスティー飲むでしょ?」
「うん、いるー。」
キッチンからの梨華さんの声に当たり前のように返事をする藤本さん。
藤本さんは梨華さんの親友。
別に遊びに来ていても不思議じゃないんだけど。
- 491 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:44
-
「まこと、何つったってんの?」
のんちゃんがアイスティーののったトレーを手にキッチンから出てきた。
「あ、うん。」
あたしは椅子に座る。のんちゃんはその横に座った。
「めんどくさいね、宿題。」
「そうだね。」
「何か終わってる?」
「とりあえず読書感想文は終わった。」
「マジでー?のん、何も終わってないよ〜。」
二人してはぁーっと溜息。
- 492 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:44
-
「とにかく、今日は数学は終わらせよう。」
「そだね。」
「分かんないことあったら梨華ちゃんに聞けばいいし。」
のんちゃんがそう言うと、またまたキッチンから声が。
「私に頼らないでちゃんと自分達でやるんだよ?」
「分かってるよ、ちゃんと!」
でもきっと無理だろうなぁ。
だってうちら、数学は大の苦手だもん。
「今、どんなのやってんの?」
藤本さんがのんちゃんの前に座って、ぬっと教科書を覗き込む。
お、もしや救世主がもう一人?
いつもはただのお邪魔虫だけど役に立つかも。
「あぁ、これねー。」
「ミキティ、分かるの?」
すると藤本さんはさらっと。
「んーん、分かんない。」
だって美貴、数学苦手だったもん。
・・・やっぱりただのお邪魔虫だった。
- 493 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:44
-
「美貴ちゃん、邪魔しちゃダメだよ。こっち。」
「はーい。」
二人はソファに座る。
あ、藤本さん、梨華さんにくっつきすぎなんだよ!
あ、何膝枕なんてしてもらってんだ!
藤本さんはにやっとあたしを見る。
こやつ・・分かってやって・・・!!
「まこと?」
のんちゃんがきょとんとしている。
「あ、勉強しなきゃね。」
そうだよ、今日は勉強をしに来たんだ。
あたしはノートを開く。
- 494 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:45
-
「梨華ちゃん、こないだのアイスクリーム屋さぁ・・・。」
「あ、あれね、おいしかったよね。」
「また二人で行こうよ。」
「うん。」
「二人で観に行った映画、ごっちんも観たんだって。」
「そうなんだ。」
「梨華ちゃんが号泣した場面、ごっちんも泣いたって。」
「そうだよ、あそこは泣くところだよ。それなのに美貴ちゃん、けろっとしてるんだもん。」
「えぇ、だってさぁ・・。」
- 495 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:45
-
いらいらいらいらいら・・・・
何なんだ、この甘ったるいトーンは。
まるでまるでまるで・・・・恋人じゃないかっ!!
二人は付き合ってはいない。
こないだ勇気を持って梨華さんに尋ねたら笑顔で「違うよぉ。」って言ったから。
くそー、わざと見せ付けるとは!
どうにかして二人を離さねば・・。
- 496 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:46
-
「梨華ちゃーん・・。」
「どうしたの?のの。」
「やっぱ分かんない。助けてー。」
「しょうがないなぁ。」
ちょっとごめんね、と言って梨華さんは立ち上がる。
膝枕を外されてこてっとソファに寝そべったままの藤本さん。
むっとした表情。
ナイス、のんちゃん!!
「どこぉ?」
「うん、ここなんだけどさぁ。」
のんちゃんの前に座って問題集を覗き込む梨華さん。
あぁ、今日もかわいい・・・。
「ここはね・・。」
「うん、うん・・。」
のんちゃんに丁寧に教えてる梨華さん、素敵です・・!!
- 497 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:46
-
「まことは大丈夫?」
「はぇ?!」
うわ、いきなり振られた!!
「あ、えっとぉ・・。」
「まこと、全然進んでないじゃん。」
のんちゃんに真っ白なノートを見られ、しまったと思う。
「ほ、ほら、数学苦手だしさぁ・・。」
梨華さんを見てました、なんて言えない。
「分からないところあれば言ってね。教えるから。」
「はい。」
にっこりと笑う梨華さんに見とれていると、なにやら視線を感じ・・。
振り返れば藤本さんがあたしにがん飛ばしていた。
へへーんだ、全然怖くなんてないよーだ。
- 498 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:46
-
「りぃかちゃ〜ん。」
気味悪いほど甘ったるい声を出した藤本さん。
「なぁに?」
「こっち来て、美貴と一緒にゲームやろう?」
「んー、でも、のの達、勉強がんばってるから・・。」
「うっ・・。」
藤本さん、振られてやんの。
あたしがにやっと笑うと、藤本さんはぎっと睨んできた。
- 499 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:47
-
ぴんぽーん
ドアフォンが鳴って、梨華さんがぱたぱたと玄関に駆けていく。
お客さんかな?もしかしておばさん、帰ってきたとか・・。
すると二割り増しくらい弾んだ声が聞こえてきた。
「裕子さん!!」
「うそっ、裕ちゃん!」
隣ののんちゃんも急に立ち上がって、ばたばたと玄関に走っていく。
残されたのはあたしと藤本さん。
「・・・誰?」
「知らないっス。」
うちらは顔を見合わせるだけ。
- 500 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:47
-
足音が聞こえてきて現れたのはにこにこ顔の辻家の二人と見知らぬ女性。
「ん?友達来てんの?」
「うん、のんの親友のまことと梨華ちゃんの友達のミキティ。」
紹介されてあたしは思わず立ち上がった。
「あ、こんにちは、小川麻琴です。」
「藤本美貴です。」
「こんにちは、中澤裕子です。」
中澤さんがにっこりと笑う。
「裕ちゃんはね、お母さんの妹なんだ。」
- 501 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:48
-
「これ、美勇伝の抹茶ケーキ。友達にも出してやり。」
美勇伝って、あの超高級和菓子店!
しかも抹茶ケーキって新作じゃん!!
数が限定されてて、並ばなきゃ買えない並んでも買えない代物だよ・・!!!
「きゃあ、裕子さん、大好き!!」
梨華さんがぎゅっと中澤さんに抱きついた。
うおっ、うらやましい!
梨華さんは中澤さんからケーキを受け取ると、キッチンに入っていった。
- 502 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:49
-
「裕ちゃんってほんと、梨華ちゃんに甘いよねぇ。」
「そうか?」
「そうだよ、美勇伝の抹茶ケーキ食べたいって梨華ちゃんが言ってたから買ってきたんでしょ?」
「いいやないの。」
「それにのん知ってるんだから。こないだ裕ちゃんと梨華ちゃん二人でデートして、洋服買ってあげたり、おいしいケーキ食べたりしたってこと!梨華ちゃん、すっごく楽しかったって幸せそうに帰ってきたもん。」
- 503 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:49
-
「まこと。」
「藤本さん。」
うちらはソファに座って小さな声でこそこそしゃべる。
「ライバル出現ですか?」
「それも相当な強敵がね。」
「みんな、おまたせ〜!!」
三割り増しの嬉しそうな声が聞こえて、梨華さんが切り分けたケーキを持って登場。
「なんか悔しいけどさ。」
「はい。」
「とりあえず、抹茶ケーキを食べよう。」
「そうですね。」
そうそうめったに食べられないしね。
- 504 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:49
-
「まこと、美貴ちゃん?」
「二人とも食べないの?」
「あ、今いきますー。」
「美貴もいく!」
- 505 名前:夏休み残り2週間 投稿日:2006/08/19(土) 23:50
-
END
- 506 名前:七作 投稿日:2006/08/19(土) 23:51
-
* * *
- 507 名前:七作 投稿日:2006/08/19(土) 23:55
- 呼び方に関しては変えさせてもらいました。
コメント、ありがとうございます。
>482様
三好さんの方が年上なのに。
そこはこのCPのポイントなのではとひそかに思っています。
>483様
この機会にぜひいしみよに興味を持っていただけたらと思います。
- 508 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/20(日) 09:35
- 石川さんモテモテですねー
何気にかわいそうな扱いの藤本さんが好きです
- 509 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/21(月) 00:04
- 新作おもしろかったです!
この話の続きがめっちゃ読みたいです
- 510 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/21(月) 01:02
- 楽しませて頂きました
モテ梨華いいですねぇ〜大好きです
次回作も楽しみにしています
- 511 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:05
-
My Sister
- 512 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:05
-
私が朝起きたら、まずすること。
顔を洗うことでも、制服に着替えることでもない。
隣の部屋で寝ている姉を起こすことである。
- 513 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:06
-
ピピピピ・・
六時にセットした目覚ましの音に私はすぐに目が覚める。
どっかの誰かと違って、朝は強いし、寝起きも良い。
ジリリリリ ジリリリリ
少し遅れて隣のうるさい目覚ましの音。
私の部屋にまで聞こえてきたと思ったら、すぐに止まった。
おそらく寝ぼけて止めたに違いない。
私は小さく溜息をつき、布団から出ると、自室を出て隣の部屋に直行した。
ノックをしたところで中から返事があるとは思えないから、何もせずドアを開ける。
一面ピンクの世界。
私もピンクは好きだけど、このセンスはよく分からない。
初めてこれを見た人は目がチカチカするといった初期症状が出るみたいだけど、そういうのにはもう慣れた。
だってもう十何年も一緒にいるんだから。
- 514 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:07
-
いまだ布団には一つの山。
私が近寄ると、何かが足に当たる。視線を落としてみると。
(止めたんじゃなくて叩き落としたんだ・・。)
この部屋には不釣合いな黒の飾り気のない目覚まし時計が床に転がっていた。
見た目よりも音のうるささで母が買ってきたもの。
しかし、その効果は全くなし。
不憫な目覚ましを拾って、サイドテーブルに置くと、私は大きめの声を出した。
「お姉ちゃん、もう朝だよ。起きて!」
壁の方に向けてた顔がゆっくりとこちらを振り返る。
「ん〜・・・。」
いまだ目は開かず、うなっている。
「もう少し寝かせて・・・。」
少しかすれ気味の声。
「お姉ちゃん、遅刻するよ!」
- 515 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:07
-
しかし。
「・・・・・。」
ぴたっと反応がなくなり、微かな寝息。
飽きれてものもいえないというのはこのことだ。
毎日同じパターン。
そしてこの後の私の行動も決まってる。
私はそのピンクの布団を思いっきりがばっと剥がした。
掛けるもののなくなったお姉ちゃんは体育座りみたいにぎゅっと両足を抱えて小さくなる。
「さゆ〜、寒いよぉ〜。」
「もう朝だよ。起きなさい。」
「・・・はぁーい。」
私がびしっと言うと、ようやくお姉ちゃんはもそもそと起き上がる。
毎朝、こんな大仕事を私はやらなくちゃいけない。
これが結構疲れるの。
- 516 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:08
-
「お姉ちゃん、ミルクティー飲むでしょ?」
「うん・・。」
まだまだ眠そうな顔でお姉ちゃんは椅子に座る。
お母さんが作ってくれた目玉焼きとトーストの横に私はカップを置く。
「・・ありがと。」
「ほら、早く食べないと。準備もまだでしょ。」
「うん。」
そんな私達の姿にキッチンから出てきたお母さんは苦笑い。
「これじゃどっちが姉か分からないわね。」
「私の方がお姉ちゃんだもん。」
トーストをもぐもぐ口にいれながらしゃべるお姉ちゃんに私とお母さんは顔を見合わせ、困った顔をした。
- 517 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:08
-
「お姉ちゃん、行くよ!」
「ま、待ってー!」
ばたばたと階段を駆け下りてくるお姉ちゃん。
玄関のところで立ってる私は行く準備万端だ。
「じゃ、行ってきまーす。」
お姉ちゃんが革靴を慌てて履く。
「梨華、お弁当忘れてる。」
リビングからぱたぱたとスリッパの音を鳴らせながらやって来るお母さんから私はお弁当を受け取る。
「行ってくるね。」
「いってらっしゃい。」
- 518 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:09
-
「はい、お姉ちゃん。」
歩きながら私はさっき受け取ったお弁当をお姉ちゃんに渡す。
「ごめん、ありがと。」
お姉ちゃんはカバンの中にお弁当箱を入れようとがさがさやってる。
そんなとき、後ろから車が来たのに気づいて私はお姉ちゃんの腕を掴んで、道の端に寄った。
「さゆ、ありがと。」
お母さんの言葉じゃないけど、どっちがお姉さんなんだって思っちゃう。
- 519 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:10
-
バスで登校している私達。
私達が乗り込むバスは始発なので大抵座ることができる。
後ろから三番目の二人席が私達の特等席だ。
窓側がお姉ちゃん、廊下側が私。
朝に弱いお姉ちゃんはバスの中では静かだ。
そして、二つ目のバス停を通過する頃にはお姉ちゃんはもう寝てしまってる。
バスの揺れでこてんと私の肩にお姉ちゃんの頭がのっかる。
しょうがないなぁ。
いつも私はそのまま、肩を貸してあげる。
これが私達の登校風景。
「お姉ちゃん、降りるよ。」
私が小さく声をかけると、はっと目を覚ます。
「うん。」
少し首を振って、すっと立ち上がるお姉ちゃん。
その姿は先ほどまでのだらけた感じじゃなくて・・・。
- 520 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:10
-
「おはようございます、先輩!」
「おはようございます!梨華先輩。」
「おはよう。」
次々に声をかけられるお姉ちゃん。
その大半は名前も知らない生徒ばかり。
高等部の生徒に限らず、中等部の生徒まで。
なんたってお姉ちゃんはうちの学校の有名人だもん。
- 521 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:11
-
高等部の生徒会役員。
中等部入学からずっと学年トップをキープ。
テニス部では毎年県大会でいい成績を残し、中等部の時は部長をしてた。
しっかり者で誰にでも分け隔てなく接して、先生からも生徒からも信頼が厚い。
外観だって、まぁ私の方がかわいいけど、きれいだし。
容姿端麗、才色兼備。
でも、近寄りがたい雰囲気は全くないから、全校生徒の憧れ。
だから、「りか」という名前は学校でも何人もいるのにみんなして「梨華先輩。」と呼ぶ。
「道重」という苗字は私とお姉ちゃんの二人だけだというのに。
ちなみに私は「しげさん」と呼ばれることが多い。
その呼び名は、私が中等部に入学してすぐの頃、お姉ちゃんから友達だという吉澤さんを紹介されたとき、「よろしく、しげさん。」と言われてからだ。
吉澤さんも学校の人気者で、その人が「しげさん」と呼んだというのがまたたくまに広がって今じゃ誰もが呼ぶ。
学校の中で呼ばないのはお姉ちゃんと絵理とれいなだけだ。
- 522 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:11
-
みんなは私のことをうらやましいと言う。
あんなにいいお姉ちゃんを持って、とか梨華先輩を独占できて、とか。
そりゃ、学校にいるときのお姉ちゃんは優等生だし、理想の姉と言ってもいいかもしれない。
でも家に帰れば・・・。
みんなは家の中でお姉ちゃんがどうだなんて知らないから言えるんだ。
あんな手のかかる姉なんてそうそういない。
- 523 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:12
-
「おはよう、さゆ。」
「おはよー。」
「おはよ、れいな、絵理。」
教室に入ると、れいなと絵理が私のところにかけてきた。
「今日も梨華さんと登校か。うらやましい。」
れいなが言った。
れいなは大のお姉ちゃんファン。
れいな、なんてお姉ちゃんに呼ばれただけで大興奮してる。
- 524 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:12
-
「梨華さんはもう部活引退したもんね。」
「うん。」
お姉ちゃんは今までテニス部の朝練で私よりも早く家を出ることが多かった。
だから一緒に登校することはそう多くなかったのだけど、引退してからは毎朝一緒。
ちなみに、朝練で早く出なきゃいけないときでも起こしていたのは私。
「梨華さんは受験生で忙しいだろうね。やっぱり国立?」
「うん。地元の国立。」
お姉ちゃんの成績だったら全然おっけーなはず。
親も先生もそう言っていたのを聞いたことがあるもん。
「来年は梨華さんいないのか・・。」
れいながぽつんと言った。
- 525 名前:My Sister 投稿日:2006/08/27(日) 21:12
-
つづく
- 526 名前:七作 投稿日:2006/08/27(日) 21:13
-
* * *
- 527 名前:七作 投稿日:2006/08/27(日) 21:20
- エコモニ。で写真集出したときだったかの石川さんのコメントで「さゆに甘えてる」みたいなことを言っていたのを思い出し、書いてみました。
でも、自分の思う道重さんとはなんかキャラが違うような・・・(苦笑)
コメント、ありがとうございます。
>508様
最初はりかまこにするはずがあんなラストに・・。
作者としては藤本さんが何気にポイントです。
おそらく彼女を出したためずれていってしまったと思います。
>509様
続編は全く考えていなかったのですが、もし書けたら載せたいと思います。
>510様
作者はモテ梨華主義です(笑)
- 528 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/27(日) 22:50
- いいですねぇ、この姉妹☆
梨華ちゃんのギャップがホントにそれっぽいというかw
なんかさゆの姉御肌っぷりがうまくハマりますね♪
今後どんな展開を見せるのか、続き楽しみにしています。
- 529 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/28(月) 21:53
- モテ梨華最高ですね!
そして大好きなエコモニ姉妹のお話
続きがめっちゃ楽しみです!
- 530 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:26
-
昼休み。
いつものように絵理とれいなとお弁当を食べようとしたとき、来客がやって来た。
「さぁゆ!」
教室の入り口付近でピンクの小さなカバンを持って手を振っているのはお姉ちゃん。
みんなが注目している中、ちょこちょこと私のところにやって来た。
- 531 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:27
-
「ねぇ、一緒に食べよ?」
「後藤さんや吉澤さんは?」
「今日はさゆと食べたい気分だったの。」
「や、私は絵理とれいなと食べるから・・。」
私がそう言うと慌てたのは絵理とれいなだ。
「ほら、姉妹水入らずで食べてきなよ。」
「いつも家で一緒だし。」
「梨華さんももうすぐ卒業だしさ。」
卒業まであと半年くらいあるけど・・。
「二人ともごめんね。」
お姉ちゃんは私の腕をぐいぐいと引っ張っていく。
「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん!」
私はお弁当箱のカバンを慌てて掴んだ。
- 532 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:27
-
「もう、どうしたの?急に。」
中庭でベンチに座りながらお弁当を広げている私達。
当然中身は同じ。
今日は卵焼きとハンバーグ。
「うん、なんか二人でごはん食べたくなって・・。」
「そんなの、いつも家で食べてるのに。」
「うん、そうなんだけどね・・。」
そう言ったきりお姉ちゃんは黙ってしまった。
- 533 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:28
-
あまり人の来ないところのせいか、全く人影はない。
お姉ちゃんは有名人だからいるだけで目立つ。
だから横にいる私は人の視線をよく感じるのだけど、今はそんなことはない。
それが少しうれしかった。
私達は言葉数なく黙々とお弁当を食べ終わる。
お姉ちゃんは話し好きだから家でもすっごくしゃべってるのに、今日に限っては全くない。
なんだかすごく変。
「ねぇ、お姉ちゃん、何かあったの?」
「さゆ、・・さゆ、あのね・・・。」
- 534 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:28
-
「やっぱりここか。」
少し低めの声がした。
「よっすぃにごっつぁん。」
声の方を向くと、吉澤さんと後藤さんがこちらに歩いてくるところだった。
「携帯かけても繋がらないから。」
後藤さんが言うと、お姉ちゃんはブレザーの中の携帯を慌てて見た。
「あ、ごめん。全然気づかなかった。」
「姉妹水入らずのところ悪いと思ったんだけど、中澤先生が梨華ちゃんのこと探してたから。」
「中澤先生?」
「うん、なんか大事なこととか言ってたけど。」
「そう。」
お姉ちゃんは急いでお弁当箱をしまうと立ち上がった。
その姿は朝、バスの席を立ち上がるときと似ていた。
- 535 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:29
-
「さゆ、ごめん、もう行くね。」
「うん・・。」
「ごめんね、しげさん。邪魔しちゃってさ。」
「いえ、平気です。」
お姉ちゃんたちは校舎に向かって歩いていった。
お姉ちゃん、何を話そうとしたのだろう?
考えようとしたとき、予鈴が鳴ったので私も慌てて教室に戻っていった。
- 536 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:29
-
部活を終えて家に帰ると、玄関にはお姉ちゃんの靴があった。
今日は塾がない日だったっけ?
お姉ちゃんが私より早く帰ってるのは珍しい。
「ただいま。」
「おかえり。」
ピンクのジャージを着たお姉ちゃんがリビングのソファに座ってテレビを観ていた。
「お母さんは?」
「買い物に行ってる。」
今日はグラタンだって。
「そう。」
「もうちょっと感動したらぁ?」
「感動ってねぇ・・。」
まだ何か言ってるお姉ちゃんを置いて、私は着替えに行った。
- 537 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:30
-
リビングに入ると、お姉ちゃんはニュースをじっと見てた。
「他に面白いものないの?」
「結構ニュースも面白いよ?」
やっぱり受験に必要なのかな?
私はお姉ちゃんの隣に座る。
急にお姉ちゃんは私の膝に頭を乗っけてきた。
いつものことだ。今更文句も出ない。
「気持ちいい、さゆの膝枕。」
「よかったね。」
「全然感情がこもってない。褒めてるのに〜。」
「それはありがとう。」
「・・・。」
お姉ちゃんは唇を尖らせる。あ、拗ねた。
- 538 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:30
-
「私、さゆ離れできないかも。」
「何それ。」
「だってさゆに頼りっぱなしだもん。」
「朝だって一人じゃ起きれないしね。」
「ほんと、さゆがいないと私って駄目だよ。」
なんだかお姉ちゃんがしんみりしてる。
「・・どうしたの?お姉ちゃん。」
お姉ちゃんはむくっと起き上がって、私に向かい合った。
珍しく真面目な顔。
なんだか緊張しちゃう。
- 539 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:31
-
「実は、私、東京の大学に行こうと思ってるの。」
「え?」
何それ・・・。嘘だよね・・?
だってお姉ちゃん、地元の国立大学に進学するって前に言ってたのに!
「い、いきなりそんな・・・。」
「前から考えてたことなの。指定校推薦受けられることになって、もう願書も出した。」
「・・お姉ちゃん・・。」
「ごめん、ずっとさゆには言わなきゃって思ってた。でも、なかなか言い出せなくて。」
「やだよ!」
「・・さゆ。」
「やだ!お姉ちゃんと離れたくない!」
- 540 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:31
-
お姉ちゃんがふわりと私を抱き締めた。
「さゆ。」
昔、泣いていた私を慰めてくれたときみたいなやさしい声だった。
「私だってさみしいの。でも、やりたいこと見つけたから・・。」
「やりたいこと・・・ここじゃダメなの?」
「うん。」
強くうなづいたお姉ちゃん。
「たった四年だよ。それに定期的に帰ってくるから、ね?」
私がいなきゃお姉ちゃんはダメ、なんて思ってたけど、ほんとは反対かもしれない。
私の方がお姉ちゃん離れできてないみたい。
「お姉ちゃんはやっぱりお姉ちゃんだね。」
「え?」
「がんばってね。かわいいさゆのこと置いていくんだから途中で諦めちゃダメだからね。」
「お姉ちゃん、がんばる。」
- 541 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:32
-
お姉ちゃんのあったかい体に包まれながら目を瞑る。
「ねぇ、お姉ちゃん。」
「ん?」
「今日、一緒のベッドで寝よう?」
「・・・うん。」
お姉ちゃん、いつまでも大好きだよ。
- 542 名前:My Sister 投稿日:2006/09/03(日) 23:32
-
END
- 543 名前:七作 投稿日:2006/09/03(日) 23:33
-
* * *
- 544 名前:七作 投稿日:2006/09/03(日) 23:37
- なんか終わり方が微妙ですみません。
コメント、ありがとうございます。
>528様
外ではしっかり者、家では甘えん坊な石川さんが書きたかったんです。
>529様
作者もエコモニ姉妹、大好きです。
- 545 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/05(火) 03:10
- 可愛い姉妹ですねー
楽しませて頂きました
- 546 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/05(火) 12:31
- シスコンな二人最高に可愛いですね!
おもしろかったです。次回作も楽しみにしています♪
- 547 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/05(火) 19:46
- いい姉妹ですねぇ。ちょっぴり切なくなりました。
学校での石川さん格好良いですね!
しっかりもののさゆがすごくはまってて実際もこんな感じかな?
なんて想像してしまいました。
- 548 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:30
-
バタンッ
突然の大きな音にキッチンにいた私の体はびくっとした。
ガチャリと音がしたので帰ってきたんだと思ったのだが、その乱暴な音に私は洗い物をしていた手を止めた。
ダダダダダダダ・・・
階段を駆け上がる音。
あまりの勢いのよさに家が揺れたように思う。
女の子なのに、と少し思ったが、元気なことは何よりだわ、と変に納得してしまった。
ばたんと部屋のドアの閉まる音が聞こえ、一気に静かになる。
嵐の去った静けさでも言おうか。
一連のその行動は普段の娘からは考えられないもので、すぐに何かあったんだと気づいた。
- 549 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:30
-
そもそも帰ってきたときに「ただいま。」の声がなかった時点でおかしかったのだ。
いつもだったら玄関のドアを開けたと同時に「ただいま。」と言って、赤いランドセルをしょったまま、洗面所で手を洗い、リビングにやって来る。
そして「おなかすいたよ、おやつは?」と催促する。
・・・学校で何かあったのだろうか。
テストの点が悪かったのかな。友達と喧嘩でもしちゃったのだろうか。いや、もしかしたらいじめにでもあったとか・・。
そう考えてはっとする。
すぐネガティブ方向に考えがいってしまうのは昔からの私の悪い部分だ。
私は濡れた手をタオルで拭いた。そして深呼吸をする。
とにかく娘に何かあったのだ。
確かにいい子だし、手のかからない子ではあるから自分で解決できるかもしれないけど、まだ小学五年生。
放っておくのは母として耐えられない。
- 550 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:31
-
コンコンッ
「愛ちゃん?」
「AI」と書かれたプレートのドアを軽くノックする。
「・・・うん。」
少し遅れて返ってきた返事は涙声だった。・・泣いてるんだ。
「どうか、したの?」
私はそう聞いたが応答はない。
あまり親には知られたくないことなのかもしれない。
・・それだったら聞かないでおこう。話したくなったら話すだろうし。
2.3日元気がなかったらその時はもう一度聞こう。
・・とは思うもの、親として、やっぱり感情はそうではない。
だから私は去る前に言った。
「おやつ買ってあるからね。『タンポポ』のケーキ。」
『タンポポ』とは駅前にある小さなケーキ屋さんのことで、愛はそこのショートケーキが大好きなのだ。
今日駅前に買い物に行ったのでその帰りに買ってきたもの。
こんなことが起こるとは全く予想はしていなかったのだが。
愛にとって大好物のケーキ。どれだけ我慢ができるか・・。
- 551 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:31
-
十分ほどして愛はリビングに下りて来た。
すでに紅茶の準備は済ませてある。
「ほら座って。紅茶も入ってるわよ。」
少し目を赤くしてドアの所に立ち尽くしてる愛に私は手招いた。
こくりとうなづくと、ちょこちょことやって来て椅子に座った。
冷蔵庫の中からショートケーキを取り出し、愛の前に差し出すと「いただきます。」と言ってから食べ出した。
次から次へとフォークが進み、あっという間に平らげてしまう。
その間に沈んでいた顔が笑顔に戻っているんだから、ケーキの力はすごい。
- 552 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:32
-
「お母さんは初恋って覚えてる?」
紅茶を一口飲んでから愛はそう切り出した。
「初恋、ねぇ。覚えてるわよ。」
遥か彼方の記憶となってしまったけれど。
「・・それって叶った?」
「叶う?」
私が聞き返すと、愛は少しうつむいた。
「初恋って叶わないものなんでしょ?あさ美ちゃんが言ってた。」
あさ美ちゃんとは愛の一番のお友達で、よく遊んでる子。
頭がよくて、しゃべってることがたまに大人びててこっちが驚いてしまうことがあるくらい、少し不思議な子だったりする。
- 553 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:32
-
・・・もしかして愛の泣いてた理由ってこれ?
愛の「初恋」には心当たりがある。
実は愛は近所に住んでいる男の子が好きなのだ。
幼稚園の頃から一緒で、よく二人は手を繋いで幼稚園まで通った記憶がある。
親同士も仲が良くて家族ぐるみの付き合いもあるおうちだ。
愛から直接、彼が好きだとは聞いていないが、行動とか仕草とか見ていてすぐに分かる。
小学校に入った頃は一緒に学校まで行っていたけど、大きくなるにつれ、男の子と女の子ということを意識したのか一緒に行かなくなり、あんなに一緒に遊んでいたのに今では全く遊ばなくなってしまった。
「そうね、よく初恋は叶わないって聞くけど。」
「やっぱりそうなんだ・・。」
愛はしょぼんとしている。
「確かにお母さんの初恋も叶わなかったかな?・・ううん、絶対に叶わないものだったの。」
「え?」
愛はうつむいていた顔を上げた。
なんだか目が好奇心に満ちている感じ・・。
こういう部分はなんだか父親似なのかしら。
そう思って、私はくすっと笑ってしまう。
「お母さんの初恋はね・・・。」
- 554 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:32
-
- 555 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:33
-
今日の家事を全て終えた私はソファで少しまどろんでいた。
さきほど夫からもうすぐ帰るという電話があったので待っているのだ。
ソファに体を預けると、一日の疲れがどっと押し寄せてきて、それが睡魔となって私を襲う。
付けているテレビ番組も耳に入らないで、うつらうつらと夢の世界へ・・というところで玄関から「ただいま。」という声がした。
迎えに出ようとしても何だか体が動かなくて、そうこうしているうちに夫はリビングに入って来た。
「・・おかえりなさい。」
「うん、ただいま。」
「ごめんね。ちょっと疲れちゃって。」
「いいよ。ゆっくりしてて。俺、着替えてくるから。」
夫はそう言うと、二階の寝室に向かう。
「あ、ごはんは?」
私が呼び止めると、「うーん、お茶漬けでいいや。」という声が廊下から聞こえた。
- 556 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:33
-
私が台所でお茶漬けの準備をしていると夫はパジャマに着替えて降りてきた。
「もうちょっとでできるから。」
「ありがとう。」
夫は椅子に座るとふぅーっと溜息をついた。
「お疲れ様。」
「あはは、ちょっと今日は忙しくてね。」
夫はそれだけしか言わない。
家に仕事のことをあまり持ち帰らない人なのだ。
夫がお茶漬けを食べている間、私は日本茶をすすっていた。
「愛はどう?」
「え?」
黙々とお茶漬けを食べている夫がそう切り出した。
「最近、帰るの遅くて朝も早いから愛にずっと会ってない気がするよ。」
「そうね・・。」
愛も「お父さん、元気なのかなぁ。」って言ってたっけ。
「うん、あの子は元気よ。」
「そう。それならよかった。」
夫は安心したようにふっと笑う。
- 557 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:34
-
「そういえば今日、愛が泣きながら帰ってきたのよ。」
「えっ?」
さきほどの安心したような表情から一変心配そうな顔。
「それがお友達から初恋は実らないって話聞いたみたいでね。」
「初恋、か。・・斜め前のマンションの子のことかな。」
「たぶんね。」
「それで?」
「大好きなケーキをおやつに出してあげた。」
「何それ。」
私の言葉に夫は意味が分からないというようにクスクス笑った。
「それから私の初恋の話をしたわ。」
「・・そうか。」
夫は席から立ち上がると「風呂に入ってくるよ。」と一言言ってお風呂場に向かった。
- 558 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:34
-
* * * * * * * * * *
- 559 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:34
-
私が初めて恋をしたのは幼稚園の頃だった。
その頃の私はいつも近所の男の子達にいじめられて泣かされていた。
私は高校生くらいまで男性恐怖症みたいなところがあったんだけど、きっとこのときの経験が原因だったのではないかと思っている。
あのときもいじめられて泣いていた。
公園で、男の子五六人が私をぐるりと囲んで、からかったり髪を引っ張ったり、私は一人、泣いているだけだった。
誰も助けてなんかくれない。
少しでもそういう行動をとろうものなら自分がいじめられてしまうから。
それでもずっとずっと心の中では誰か助けてって叫んでいて。
だから「おまえら何やってんだっ!」て声が聞こえたときは私の声が届いたんだってすごくうれしかった。
- 560 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:35
-
「誰だよ、おまえ。」
男の子の一人が私の救世主に言う。
私を囲んでいた円が崩れて、私はその人を見ることができた。
白いTシャツに赤いハーフパンツをはいた私と同じくらいの女の子が腰に手を当てて男の子達を睨みつけていた。
この辺では見た事のない顔の、きれいな女の子だった。
「おまえもいじめられたいのかよ。」
「痛い目にあうぞ。」
そんな男の子の言葉に少しも動じず、ずんずんと歩いてくる。
一人の男の子が女の子の腕を掴んだ。
しかし、振り払われて反対に男の子の方が転んでしまう。
それを見た他の男の子も女の子に食ってかかったのだが、やはりあっさりと投げ飛ばされてしまった。
私はそんな光景を見ていることしかできなくて・・。
そのうち男の子達はその子に敵わないと思ったのか、さっさとその場から逃げていってしまった。
- 561 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:36
-
「大丈夫?」
女の子はにっこりと笑って私に手を差し出した。
「ありがと・・。」
私はその手をぎゅっと握る。
女の子はすっと私を立たせてくれた。
そして、私のスカートに付いていた砂をぱんぱんっとはたいてくれた。
私達はとりあえずベンチに座った。
その女の子は私より少しだけ背が高かった。
大きな瞳がきらきら輝いていて幼い私でも「きれいな子だなー。」と思った。
「助けてくれてありがとう。」
「ううん、気にしないで。」
笑顔がまたきれいで私はなんだかドキっとしたのを覚えている。
「この辺に住んでるの?」
「うん、そうだよ。あそこのマンション。」
私は公園から小さく見える白いマンションを指差した。
「そうなんだ。」
「えっと・・、あなたは・・。」
私がそう言いかけるとその子はふっと笑った。
「あ、名前はひとみだよ。」
「私はりか。」
「りかちゃんか。」
お互い顔を見合わせてふふふと笑う。
- 562 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:36
-
「ひとみちゃんは・・・。」
「え?」
ひとみちゃんがきょとんとしている。
「なぁに?どうしたの?」
私が聞くと、「ううん、何でもない。」とひとみちゃんは言った。
不思議に思ったけれど、それ以上私は聞かなかった。
「ひとみちゃんはこの辺に住んでるの?」
「違うよ。埼玉に住んでる。この辺には親戚の人が住んでて、遊びに来てるんだ。明日には帰るけど。」
「そうなんだ・・。」
私はしょんぼりした。
せっかくお友達になれたのにすぐに離れなければならない。(ちなみにここは神奈川である。)
私達は幼稚園のこととか友達のこととかいろいろなことを話した。
ひとみちゃんは幼稚園ではなくて保育園に通っているらしく、普段は男の子達と一緒にサッカーやおにごっこをして遊んでいるらしい。
弟が二人いて、よく喧嘩をするけど、負けたことは一度も無いとか。
ゆでたまごが好きでいつも食べているとか。
いろんなことを楽しそうに話してくれるひとみちゃんを見て、私もたくさん笑った。
- 563 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:36
-
太陽はすでに傾いていて、夕日が私達二人を真っ赤に照らしている。
そろそろお互い帰らないといけない時間である。
「また・・会える?」
私が聞くと、ひとみちゃんは笑ってうなづいてくれた。
それを見て、私は笑顔になる。
今思えば住所とか電話番号とか聞いとけばよかったのにと思うのだが、さすがにそこまで頭は回らなかった。
バイバイと手を振って走っていくひとみちゃんの後姿を見つめていた私はきっとまた会えると信じて疑わなかった。
けれどもそれは無理なことだったのだ。
- 564 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:38
-
それから小学校、中学校、高校・・と私は進んでいったのだが、ひとみちゃんと会うことは一度もなかった。
しかし、ひとみちゃんとの出会いは、たった一度しか会っていないのに私に大きく影響したのだった。
友達と恋について話しても、街や学校でかっこいい男の子を見ても、頭の中に過ぎるのはひとみちゃんのこと。
私を助けてくれたひとみちゃん。きれいな笑顔。
私の理想。王子様的存在。
あの頃は認めることはしなかったけど、確かにひとみちゃんは・・・私の初恋だったのだ。
- 565 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:38
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* * * * * * * * * *
- 566 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:39
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寝る準備を整え、ダブルベッドの中に潜り込むと、先に入っていた夫が私のぎゅっと抱き締めた。
夫はお風呂から出たばっかりなので、すごく体が温かい。
ふわっと抱き締めるその腕はとてもここちよい。
私達は結婚してすでに十年近く経つ。
けれども、私が言うのもなんだが、いまだにラブラブだと思う。
両親も近所の人も今も付き合いのある友人達もみんな私達は仲がいいねと言ってくれる。
喧嘩は多少するけど、離婚とまではいってない。
一応浮気もない、と思う。
「あのさ。」
「ん?」
「さっきの話だけど。」
「さっき?」
「初恋の話。」
「あぁ。それがどうしたの?」
なんだかやたらと遠まわしに聞いてくる気がする。
「愛は納得した?」
「うん。すっかり元気。夜も御飯を二杯も食べたし。」
「そっか。」
夫は私にちゅっと軽くキスをした。
- 567 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:39
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- 568 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:39
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夫と出会ったのは私が短大の二年生の時だった。
高校の先輩の矢口さんに半ば強制的に連れて行かされた合コンで夫と知り合った。
それまでも何度か合コンは行ったけれど、自分には何だか合わないと思っていたので今回ので最後にするつもりだった。
結局それは本当に最後になったのだが。
「今回の合コンは私大の男の子達となんだけど、かなりレベル高いよ。」
矢口さんはフリーターなのだが、やたらと顔が広い。
合コンの幹事なんかしょっちゅうらしい。
今まで私が行ってた合コンは三人三人とか四人四人くらいだったが、今回のはもっと大勢の飲み会という感じらしく、二十人くらい集まるらしい。
親友の柴ちゃんも参加するというので、私は彼女と一緒にその場所へと向かった。
- 569 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:40
-
「こっちこっち〜。」
飲み屋に入ると、奥の方で矢口さんが手を振っていた。
私達が最後のようだった。
「すみません、遅れて。」
「平気平気。じゃ、さっそく始めよっか。」
とりあえずそれぞれ飲み物をオーダーし、お酒が来たところで乾杯。
それから簡単に自己紹介をした。
女の子側は高校の先輩である飯田さん、安倍さん、同級生のあいぼんとのの、後輩の亜弥ちゃんとその他に私の知らない人もいた。
正直言って、かなりの美少女揃いだ。
一方、男の子側も矢口さんがレベル高いと言っていただけのことはある。
かなりの美形が集まっている。
矢口さんの言った通り、今回の合コンはすごい。
そんな中で、やっぱり私は自分が場違いな気がしてならなかった。
何度も経験はないんだけど、こういう場所はどうしても慣れないとつくづく思った。
- 570 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:41
-
夫は、彼はその中でも一際かっこよかった。
大学四年生で、私より二つ上。
私の好きなタイプだったというのもあるけど、笑顔がとてもきれいな人だった。
飯田さんや矢口さんが彼と席が近かったせいか、盛り上がってて少しうらやましかった。
そもそもレベル的に私と釣り合わないんだけど・・。
私はカクテルを飲みながら、目の前で面白い話を話し続けている男の子に相槌をうったりなんかしていた。
- 571 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:42
-
みんなほろ酔いになって、席も何もかもぐちゃぐちゃになっていた。
あいぼんとののが男の子達と一緒にものまねを披露していたり、亜弥ちゃんがある男の子にべったりくっついていたりするのをちらりと見ながら、何杯目かのサワーを飲んでいるとふいに誰かが私の隣に座った。
「石川さん。」
ふっと隣を見ると、それは彼だった。
ドキンと胸が高鳴った。
彼自身も結構なお酒を飲んでいるはずだったが、全く普通だった。
「お酒は強いの?」
「ううん、そんなに強くないよ。」
「大丈夫?さっきからたくさん飲んでるみたいだけど。」
「そう?」
「そうだよ。」
彼はやっぱりきれいな笑顔で笑った。
正直、このときはかなりの量を飲んだ。
そのおかげでこの後の記憶は断片的にしかない。
王様ゲーム、二次会のカラオケ、みんな部分部分。
けれどもどのシーンでも私の横にいるのは彼だった。
そして私は笑っていた。
- 572 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:43
-
次の日、目を覚ますと、頭痛と吐き気がひどかった。
(結構飲んだもんなー・・。)
私はベッドで寝ていた。
ぐるりと見回してみると、そこは見慣れた風景。
とりあえず一人暮らししている自分の家だったので、ちゃんと帰れたことにほっとした。
どうやって帰ってこれたのかは不明だけど・・。
壁にかかっている時計を見ると、すでにお昼の十二時を回っていた。
今日は特に何も予定がなかったから大丈夫だ。
ベッドの中でう〜んと伸びをして、それからテーブルに置いてある携帯に手を伸ばして取った。
メールが届いていた。
半分寝ている状態でメールを開く。
見慣れないメアド。
誰だろうと思って見てみる。
「!!」
一気に眠気が吹っ飛んだ。
合コンが私に残していったものは二日酔いと彼の携帯番号だった。
- 573 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:43
-
私達が付き合うようになるのにそれほど時間はかからなかった。
後で聞いた話だが、合コンで彼も私のことを気に入ってくれたみたいだった。
けれども矢口さん達が離してくれなかったらしく、なかなか私の元に来れなかったんだとか。
柴ちゃんに彼と付き合うことを報告したら、彼女も合コンで知り合った人と付き合うことになったらしかった。
- 574 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:44
-
確かに初恋は女の子で、ときおり彼女のことを思い出すことはあっても、今まで男の人と付き合ったことがないわけではない。
高校まではどこか苦手意識があったけれど、大学に入ってからは二人付き合った。
結局、それほど続いたわけではないけれど。
彼と付き合い始めてまだ日は浅いけれど、今まで付き合ってきた人とはなんとなく違うように思える。
というのも、会うたびに違う一面が見えてどんどん好きになっていくのがすごく分かるからだ。
こんな感覚は初めてで、きっとこれが恋してる状態なのかな、なんて少し思ってしまったりもして。
「なんか梨華、きれいになったね。」と友達も言ってくれた。
- 575 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:44
-
けれども最近、よくひとみちゃんのことを夢見る。
いつも私を助けてくれる夢。
ひとみちゃんは今、どうしてるのだろう。
会ってみたい気持ちはあるけど・・。
そんな気持ちでいた私は、とうとうひとみちゃんと再会することになる。
- 576 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:46
-
その日は彼と映画に行く約束をしていた。
待ち合わせは渋谷。
平日でも人が多くて、少し人ごみが苦手な私は何となくそわそわしながら待ち合わせ定番スポットのハチ公前に立っていた。
三日前、この映画を見たいんだと話したところ、じゃあ行こうよ、なんて彼は言ってくれた。
- 577 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:46
-
ふいに私の前に誰かが立って、彼が来たんだと、私はふっと顔を上げた。
そこには笑顔の二人の男の人。
なんだか見ていて気分を害するような下心があるような笑い方だ。
「ねぇ、一人?」
金髪でだらっとした服を着ている男の人がにやりと笑う。
「いえ、人と約束してるんで。」
不機嫌な私の声。
誰が聞いたって迷惑してるって分かるはずなのに全く気にする素振りを見せない。
「じゃあさ、その子も一緒にさぁ。」
私の待ち合わせてる人が女の子だと思い込んでる。
「結構です。」
私はきつくきっぱりと断る。
それなのにこの人達は一向に離れてくれなくて・・・。
私はどうしようかと困り果てた。
- 578 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:46
-
「ごめん、待たせちゃったみたいだね。」
彼の落ち着いた声が聞こえて、私はぱっと笑顔になる。
彼が私に笑いかけてから、男の人達に冷たい視線を向ける。
男の人達は何だか気まずそうにそそくさと去っていって、彼はその姿をじっと睨んでいた。
「ありがとう。」
私がそう言うと、彼は少し慌てた。
「大丈夫?」
「うん。」
「嫌な目に遭わせちゃったみたいでごめん。」
自分のせいじゃないのに彼はすまなそうな顔をする。
「ううん、助けてくれてうれしかったよ。」
私は彼の腕に自分のを絡ませる。
彼はにこっと笑ってくれた。
きれいな笑顔。さっきの人達とは比べ物にならないほどのもの。
- 579 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:46
-
そのとき、ふっと過ぎったひとみちゃんとの思い出。
私を助けてくれた王子様。
なんだか一瞬だぶって見えた。
そして彼といるのに他の、まして初恋の人を思い出してしまった自分が少し嫌になった。
- 580 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:47
-
映画は有名なハリウッドスターの出るラブストーリー。
散々CMで宣伝してて、それを見て面白そうだと思ったからなんだけど、私の興味を引く大きな理由があった。
その映画は初恋を題材にしているものだったのだ。
私は正直、引きずっているのだ。
私を助けてくれたひとみちゃんのことを。
昔に一度しか会ってないから、長い年月がどんどんひとみちゃんを美化していく。
強くてやさしくてきれいなひとみちゃん。
私の心の中で大きく大きく膨らんでいく。
- 581 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:47
-
彼女はもう私のことなんて覚えていないかもしれない。
たった一度きり、親戚の家に遊びに来たときに助けた女の子のことなんて。
その可能性の方がずっとずっと高い。
会うことだって無理だと思う。
そして長い年月が彼女を美化するのと同時に記憶の中の彼女の顔や姿も霞みかかってしまってきていた。
でも私は捨てきれないでいる。
今、こんなに素敵な彼がいるというのに。
ひどいことに初恋の彼女と彼をだぶらせてしまってもいる。
- 582 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:48
-
もし、ひとみちゃんと再会してしまったら。
私の想いはどうなるのだろう。
彼とひとみちゃん。
あのときのように笑ってくれたら・・・私はひとみちゃんに傾いてしまうの?
こんなにも彼のことが好きなのに。
ぐるぐるぐるぐる気持ちは巡り、どこにもたどり着くことなく止まることもない。
私は醜い人間だ。
二人の人を天秤にかけている。
- 583 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:48
-
「梨華?」
彼の声が私を現実に戻す。
「どうした?」
「ううん、何でもないよ。」
私達は映画館に入る。
人気の作品のせいか結構込んでいて、席もなんとか見つけたという感じ。
とりあえず席を確保して、始まる前に私はトイレに向かった。
途中、誰かにぶつかった。
「すみません。」
ふっと顔を上げると相手の女の人も「すみません。」と頭を下げた。
視線が合う。
「!」
・・どこかで会ったことがある。
瞬間にそう思ったが、よくは思いだせない。
そして相手も小さな反応を示したようだがそれっきり。
私達は話すこともなくそのまま別れた。
- 584 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:48
-
誰だったかなぁと記憶を思い出しながら、席に戻ってくる。
「遅いから心配したよ。」
「あ、ごめんね。ちょっと会ったことのある人を見かけたんだけど、思い出せなくて。」
「そっか。」
「向こうも私に見覚えがあるって気づいたみたいなんだけど・・。」
そうこうしているうちにビーという音が鳴って、だんだんと照明が落ちていった。
とりあえず私はそこで考えるのをやめた。
- 585 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:49
-
『おまえと彼女はただの幼馴染なんだろ?』
『あいつがさ、君のことが好きだって。』
『あなたってほんと鈍感ね。』
『ずっと側にいたから分からなかった。ほんとはずっと君のこと・・。』
『きっとこれは初恋なんだ。』
『遠回りしたけれど、あなたとこれからはこうして一緒にいられる。』
- 586 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:49
-
最後はハンカチを手放せなかった。
何だか自分の気持ちと登場人物の気持ちがとても重なるようで感情移入してしまった。
「梨華は泣き虫だな。」
「いいじゃない。だって感動したんだもん。」
「ま、そういうところもかわいいけど。」
彼はぽんぽんと私の頭を撫でた。
「もう、子供扱いするんだからー!」
彼に反論しかけた、そのとき、私は思い出したのだ。
「さっきの人・・!!。」
私が立ち上がったとき。
「梨華ちゃん。」
私を呼ぶなつかしい声がした。
- 587 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:50
-
「久しぶりね。何十年ぶりかしら。」
すらっとした美人の女性。
最後に会ったのは私が幼稚園の頃。
さっきは一瞬だったからよくは分からなかったけれど、面影はしっかりとある。
「お久しぶりです。綾香さん。」
彼女は神奈川の実家の近所に住んでいたお姉さんでよく遊んでもらった記憶がある。
「最初、誰だか分からなかったわ。あの頃からかわいらしかったけれど、すごく綺麗になちゃって。」
「綾香さんはあいかわらず綺麗じゃないですか。」
綾香さんはお父さんの仕事の関係でハワイの方に行ってしまったのだ。
すごく、すごくなつかしい。
- 588 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:50
-
綾香さんが私の横、彼に視線を移す。
「あ。」
私が彼を紹介しようとすると予想外のことが起きた。
「あれ?なんでここにいるの?」
「綾香?!」
彼と綾香さんはお互いに見合っている。
っていうか、知り合い?!
「いつ日本に戻ってきたんだよ。」
「今年に入ってから。おばさん達元気?」
「まぁね。」
え?え?どういうこと?二人はどういう関係?
めちゃくちゃはてなマークを飛ばしてる私に綾香さんは気づいたようだった。
「実はね、従兄弟なの。」
「そう。俺の母親の兄の娘。」
「え、えぇー!!」
何て偶然。そして何て狭い世界。
こんなことってあるんだ・・。
「ここにいるのもなんだから、もしよければこれからお茶でもしない?」
綾香さんのお誘いに私はただうなづくだけだった。
- 589 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:50
-
映画館の近くにあるカフェに私達三人は入った。
彼と綾香さんはコーヒーを、私は紅茶をオーダーする。
「まさか二人が付き合ってるなんて。」
合コンで知り合ったこと、最近付き合い始めたことを綾香さんに話した。
「梨華と綾香が知り合いっていう方が驚いたよ。」
そして彼には小さい頃近所に住んでいたことを話した。
綾香さんの故郷は神戸で、お父さんの仕事の関係で神奈川にやって来たが、すぐにハワイへ行ってしまったので結局数年しか暮らさなかったらしい。
綾香さんがうちのマンションの隣にあるマンションに引っ越してきて、何かのきっかけで知り合いよく遊んでもらった。
何がきっかけだったかはとうの昔のためよくは覚えていない。
- 590 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:51
-
「神奈川には結局一回しか遊びに行かなかったよな。」
「そうそう、埼玉に帰る日に帰りたくないって駄々こねたよね。」
綾香さんがくすっと笑うと彼は顔を赤くした。
「だってあれは・・。」
「ま、昔のことだからね。ところで梨華ちゃんはまだあのマンションに住んでいるの?」
綾香さんが急に話を振ってきたので私はカップから口を離した。
「いえ、あの後一軒家に引っ越したんですよ。あのマンションからそれほど遠くないところですけど。今は東京で一人暮らししてます。」
「そっか。」
「綾香さんは今は日本で暮らしてるんですか?」
今度は私が聞いてみる。
「うん、一応ね。でも通訳の仕事してるから外国にいることも多いよ。」
「通訳ですか・・。すごいなぁ〜。」
美人で仕事もできる綾香さん。なんか尊敬しちゃうなぁ。
- 591 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:52
-
話はいろんな方向に移り、さきほど見た映画の話に変わった。
「初恋なんてもう昔のことだから覚えてないわよ。・・梨華ちゃんは?」
「え?初恋ですか?」
私が慌てて切り返すと、綾香さんはふふっと笑った。
「あ、その反応、まだ覚えてるんじゃないの?」
「あ、その・・。」
おろおろしながらちらりと彼を見た。
いくら子供の頃の話だからといって今の彼の前で話すのはどうなんだろうと気が引けた部分もあったし、ましてそれが女の子となれば・・。
彼の顔は聞きたそうでも聞きたくない感じでもどちらにも取れる様な表情をしていたのでよけいに混乱してしまった。
- 592 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:52
-
「あ、そういえば。」
そんな私に気遣ってくれたのか綾香さんが口を開いた。
「あんたの初恋は『お姫様』だったよね?」
「綾香?!」
目の前の彼はあたふたし始めた。
「ピンクのワンピースを着ためちゃくちゃかわいい子だったっけ?」
「ちょっと綾香・・。」
止めようとしている彼とそれを面白がって続きを話す綾香さん。
見ていて面白い。
彼の初恋の人か。複雑な気もするけど気にもなる。
だから私は止めなかったのだ。
- 593 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:52
-
「まだ保育園だったよね。」
彼の初恋は保育園なんだ。
「一回だけうちに遊びに来たときだよね。一人で探検だーなんて外に飛び出してったときに偶然会ったんでしょ?公園で。」
出会いは公園なのか。
「男の子達に絡まれてる女の子を見つけて助けてあげて。」
男の子達に絡まれてる・・?
「助けてくれてありがとうって言ってくれた笑顔がキュートで一目ぼれ。」
・・・・。
「日が暮れるまでいろんな話をして。」
・・・ちょっと待って・・。
「その子がめちゃくちゃかわいくてお姫様みたいって私にすごい勢いで話したよね。」
・・・もしかして。
「あの子ともう一回遊ぶんだーって帰るとき駄々こねたのすごく覚えてるんだから。」
綾香さんはなつかしそうに話し、彼の顔は真っ赤で。
「あの頃はかわいかったよ、ひとみは。」
私の中であの頃の記憶と今が繋がった。
- 594 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:53
-
「そろそろ行くわ。実はこの後約束があるの。」
綾香さんはそう言うと、伝票を持って喫茶店を出て行った。
「言い逃げかよ。・・・全く。」
彼はぶつぶつと文句を言った。
そして俯いている私の方に向き直った。
「梨華。これから・・。」
「『ひとみちゃん』・・・。」
「・・梨華?」
- 595 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:53
-
何で気づかなかったんだろう。
彼の名前、「ひとみ」だったんだよね。
女の子みたいだから名前で呼ばれるのを嫌がって、友達からは苗字の吉澤やよっすぃって呼ばれていた。
私はみんなと同じが嫌だからひーくんって呼んでいるけど。
きれいな笑顔も私を助けてくれたことも・・王子様みたいなところも・・・全然変わってないよ・・・。
ずっとずっと女の子だと思い込んでて私、気づかなかった・・。
- 596 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:54
-
「『ひとみちゃん』・・。」
私がもう一度あのときのように呼んだ。
すると頭に彼のあったかい大きな手のひらを感じ、私はふっと顔を上げた。
彼は・・『ひとみちゃん』はきれいな笑顔で笑っていた。
あの頃と変わらないきれいな笑顔。
「『りかちゃん』だよね?」
私はこくりとうなづく。
「初めて合コンで会ったとき、もしかしたらって思ったんだ。でも梨華は俺の事覚えてないみたいだし、違うかなと思ってたんだけど。」
「ごめんね、私、気づかなくて・・。実は『ひとみちゃん』は女の子だと思いこんでたの・・。」
「あ、やっぱり。」
彼は苦笑いした。
「あのとき、俺の事、ちゃん付けで呼んだからもしかしてそうかなって。小さい頃は結構女の子に間違えられてたし、名前も女っぽいからきっとそうだろうなって思ったよ。」
「どうして男の子だって言ってくれなかったの?」
「だってさ、男の子からいじめられてたから、俺が男だって言ったら怯えちゃうかと思ったんだよ。もっと梨華と話したかったからさ。」
照れくさそうに話す彼を見て私はくすくす笑った。
- 597 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:54
-
「あーあ、悩んで損しちゃった。」
「梨華?」
「だって初恋の人が女の子なんて言えないって思ってたから。」
「え?」
「私の初恋は『ひとみちゃん』だったんだよ?」
- 598 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:54
-
* * * * * * * * * *
- 599 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:55
-
「『ひとみちゃん』大好きだよ。」
「俺も愛してるよ、『りかちゃん』。」
お互いそう言ってから顔を見合わせて笑い合う。
結果的には初恋は叶い、彼は夫となった。
こんなことは奇跡としか言いようがないけれど。
でも初恋は叶わないってわけじゃないから。
- 600 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:55
-
愛、きっとあなたの気持ちも麻琴くんに伝わると思うよ。
信じていれば絶対にね。
- 601 名前:初恋 投稿日:2006/09/10(日) 11:56
-
END
- 602 名前:七作 投稿日:2006/09/10(日) 11:56
-
* * *
- 603 名前:七作 投稿日:2006/09/10(日) 12:00
- コメント、ありがとうございます。
>545様
ありがとうございます。
>546様
あの二人ってシスコンが似合う気がするのですが、そう思ってるのは作者だけでしょうか・・?
>547様
作者の中だと鏡ばっかり見てる道重さんのイメージが強いのですが、たまにはこういうしっかりものもいいのではないかと。
石川さんって外ではしっかり、家ではぬけてる(失礼)感じがするんですよねぇ。
- 604 名前:七作 投稿日:2006/09/10(日) 12:07
- 読んでくださっている方、いつもありがとうございます。
もしかしたら少しの間、更新できないかもしれないため、今回、一気にあげてさせてもらいました。
今回あげた話は苦手な人もいるかもしれません。
それを本編に入る前に書き忘れてしまいました。すみません。
そろそろ容量もなくなりかけているので、近々新しいところに移ろうかとも考えています。
思いつきの神様がいつまで七作のところに来てくれるか次第ですが(苦笑)
そのときはぜひよろしくお願いします。
- 605 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/10(日) 16:32
- 更新楽しみにしてました!ありがとうございます
とても素敵な話ですね〜ラストで感動しちゃいました
もしかしたら少しの間、更新できないかもしれないとの事
それは残念…ですが、次回作を楽しみに待ってます
新しいところに移転したら教えて下さいね
- 606 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/23(土) 14:22
- 意外なラストで面白かったです。
次回作も期待してます。
- 607 名前:七作 投稿日:2006/09/24(日) 03:28
- コメント、ありがとうございます。
>605様
ありがとうございます。
さっそくお引越しをしましたので、新しいスレもよろしくお願いします。
>606様
ありがとうございます。
容量がなくなってきたので新しいところに引越しました。
よろしくお願いします。
新スレ「うさぎの王子様」
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