恋の神様

1 名前:clover 投稿日:2006/04/16(日) 14:49
この板の「悲しい偶然」スレッドの続きになります。
2 名前:clover 投稿日:2006/04/16(日) 14:57
悲しい偶然の恋の神様
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1141142667/241-

亀井さん・吉澤さん・藤本さん・石川さん・道重さんあたりが出てきます
エロがあるのでsageで進行中です
3 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:09
亀ちゃんから告げられたゲーム終了のコール
予想通りの結果・・・もしかしたら・・・そう思ったうちは愚かだ
この世に無償の愛を提供する人などいないだろう
人間は醜いものだからいつだって自分の利益を要求し優先する。
愛は見えないものだから利益を目で見て測れない
亀ちゃんはうちの愛を欲しかった。
だから肉体を提供した
けどうちは愛さなかった
しばらく様子をみた亀ちゃん
利益を生み出さないから・・・ゲーム終了
肉体だけなら・・・誰だって提供してくれるんだよ・・・

「よっちゃん・・・しよっか?」
4 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:09
3階のバルコニーでタバコを吸っていたら顔を出した石川。
ほら・・・肉体の提供者が来た。
亀ちゃんと違うのは愛を要求しないこと。
どっちが美しい?
無償に肉体を提供しお互いに快楽を求めあう。
そっちの方が綺麗だと思わない?

「ここで?」
「いいよここでも。」

5 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:10
下の階のやつらがバルコニーに出た時点で石川の高い声は聞こえるだろう・・・
明るいバルコニーは庭からはよく見えるだろう・・・

「好きだね。」
「色んな要素が快感を高めるもん。」
「石川の場合は、でしょ?」
「だから・・・早くしよっ。」

うちの首に腕を回し唇を貪ってくる石川。

チュッ、ぺチャ、っと厭らしい音を奏でながら
うちは石川の肉体を覆うわずかな布を剥がしていく

6 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:10
「相変わらずな身体だね・・・。」
「んふふ。」

と艶かしい笑顔を見せる石川
張りがあり、形もよく大きめの二つの塊。
細く引き締まったウエスト。
女らしい形のよいヒップ
そこから伸びる細い足。
石川の持っている全てが厭らしいんだ。

うちは石川の後ろに回り乳房を両手で揉みしだいた。

「あぁ・・・あぁ・・・。」

7 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:11
自分で脇腹を擦りながら快感を高める石川。
背中を押してバルコニーの柵に押し付けた。
既に硬くなって上にツンと起っているそれを鉄の柵に押しつけ捏ねる。

「んっ。つめ、たい・・・あぁ・・・気持ちいい・・・。」
「気持ちいい?よかった。じゃぁ自分でしてて。」

石川の腰にあった手をとり自分の胸に持っていく。
何の躊躇もなく自分の胸を揉み柵に擦りつける石川。

「あぁ・・・。」

うちが次になにをするのか分かっている石川は足を左右に開いた

「よいしょっ。」

8 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:12
石川の足元に座ると目の前には石川のそれが見える。
左右にお尻を開いて穴から菊蕾までペロっと舐めると腰をひくつかせる

「んあっ・・・気持ちいい・・・・あぁ・・・。」

穴の入口とその前にある蕾を舌と手を使って愛撫する。
チュッ、ジュル、クチュクチュと音をたてながら。

「あぁ、あっ・・・はぁ・・・。」

ポタポタと石川のそこから零れだした愛液。
そうだ・・・ポケットにいいものあったっけ。

「石川、後ろいいんだよね?」
「あぁ・・・?」
9 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:12
最中に辞めないでよって顔でうちを見下ろす石川に
ポケットから取り出したものを見せる。

「いい?」
「うん・・・なんでもいいから早く・・・あぁ・・・。」

胸を揉む手を休めることなく石川は応える。
ポケットにあったのはガスライター用のガスボンベ。
ガス欠になったからさっき入れてそのままポケットに入れっぱなしだったやつ。
アルミで出来た冷たいそれを石川のそこに押し付ける

「んぅっ・・・はぁ、あぅ・・・。」

冷たい缶に反応する石川。でも石川のここはそれを喜んでる。

「すげぇ出てきた・・・。」
「あんぅ・・・はぁ・・・。」

10 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:13
缶に満遍なく愛液がついたところでそれを少し上の位置に移動する。
石川が自分の手で尻を左右に開きうちの作業をしやすいようにしてくれた。
ホント、凄い奴だ・・・

「どうも。入れるよぉ。」

ゆっくりとそれは入っていく。

「んぅ・・・ふぅぅぅ・・・」

息を吐く石川。それはどんどんと中に埋まっていった。

「大丈夫?」
「んぅ・・・いい・・・」
「ホント・・・気持ちよさそ。」

石川は息を漏らしながら腰を動かす。
それを出し入れしてやると普段でも高いのにさらに高い声を漏らした。

「あっ・・・あ、あ、あぅ・・・いい・・・こっちも頂戴っ。」
「うん、今あげるから。焦るなって。」
11 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:14
石川が自分のそこの蕾を触っている。
ほら、してあげるから。
石川の手をどけて変わりにうちの指がそこを摘む。

「んんぅ・・・あぁ・・・。」

ちょっとこの体制はしずらいな・・・
石川の腰を引き寄せ、うちの前に座らせる。

「んっ。」

尻を床に付けたことでそこに入れたままだったそれがさらに奥に入ったのだろう。
石川の身体が反った。

「足開いて。」

石川はうちに背を預けて180度近くまで足を開く。

「あぁ・・・早くぅ・・・。」
12 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:14
石川の胸を片手で弄びながらもう片方の手をそこに持っていった。
蕾は赤く膨らみ皮からはみ出てる。

「凄い大きくなってる。見てみ。」

茂みを開いて石川に見えるようにしてやると
うちの肩に乗せていた頭を浮かし自分のそれを見る。

「ホントあぁ・・・真っ赤・・・んっ。」
「あっ今、液出てきた。」

自分のそこを見て感じたのだろう石川のそこから愛液が垂れた

「ここ、気持ちいい?」

入口を弄ると石川が身体を反らして喘ぐ。
腰を動かしながら後ろに入っているそれから少しでも快感を得ようとしている。
13 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:15
「んぁ、あっあ・・・。」
「いいの?」
「いいょぉ・・・お尻もいい・・・。」

石川は涎を垂らしながら気持ちよさそうにうちを見上げる。
零れた涎をペロッと舐めると石川が口を開ける。
その中にうちはトロっと口から唾液を注いだ。
ゴクッと笑顔でうちの唾液を飲み込み

「はぁ、こっち、も・・・入れてよ・・・。」

そこを弄ってるうちの指を自分の中に入れようとする石川。

「じゃぁちょっと待ってね。」

14 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:15
蕾を弄る速度を速め同時に乳首も擦る。
うちの舌は石川の首筋から耳の裏、そして中まで嘗め回す。

「んぅ、あぁ、あ、あっはぁぁんんっ。」

シャーと音を立てて液体は石川のそこから飛びちっり柵の間から下へ落ちていく。

「下に人いたら焦るなっ。あはは。」
「いるかな?あぁ・・・。」
「石川こっち向いて。」
「はぁ、んっ・・・後ろ入ったままだっけ・・・。」

そう呟きながら向きを変えるとうちの首に腕を絡ませた。

「早く頂戴。」
「はいよ。」

15 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:16
ズプッって音が聞こえた。うちの指はすんなり三本、石川の中に納まった。
もう片方の手で石川の後ろにあるそれを出し入れしてやると石川は腰を上下させて
うちの指から快感を得てる。

「あぁあっ、あ、いい、すごぉいぃぃ、あ、あ。」

身体を反らして腰を振り喘ぐ石川。そのさらけ出した腹筋が凄く綺麗で
うちはヘソから胸の下まで舌を這わした。

「んんんぅ・・・あぁ・・・あぁ。」
「ここもして欲しいよねぇ。」

ピンと上を向き大きくなっている乳首に歯を起てた。

「やぁっ、あぁ・・・いいっ、あ、あ。」
「うちの指よりこっちのが太いかな。」

16 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:16
後ろにあるそれを取り出す。

「あぁ・・・。こっちに入れるの?」
「うん。」

石川は肉襞を左右に開き入れやすいようにしてくれた。

「すごっ、ヒクつきまくり。」
「だから、早く入れてよぉ。」
「はいはい。」

ヌルッっとそれは石川のなかに入ってく。
うちはゆっくりとそれを出し入し始める。

「はぁぁ、ああぁ。いい・・・。」
17 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:17
腰を振りながら自分の胸を両手で揉む。
目を瞑り、与えられる快感を前身で感じてる。
出し入れするスピードを上げると石川はバランスを崩しそうになりうちの肩に捕まった。
胸が目の前で上下に揺れてる。
プルン、プルンって音が聞こえそうな厭らしい動き。
その中心にあるそれを口に入れて唇で引っ張りながら舌先で刺激を加えた。

「ああぁ、あ・・・んぅあ・・・よっちゃ・・・。」
「んぅ?もっと?」
「ちがっ・・・え、りちゃ・・・見てる・・・。」
18 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:19
絵里?亀ちゃんか・・・後ろの部屋にいるのだろうカーテンも閉めてないから
外からじゃなくて中からも丸見えだ。

「そっ見たくなきゃ立ち去るだろ?石川は見られたほうがいいんだっけ?」

出し入れをさらに早くして前にある蕾を弄ってやった。

「あぁっぁぁ、あぁ、いいっ、はぁぁ、あぁんぅ・・・あっもっとぉ・・・」

もっとって・・・これ以上かよ。
うちはさらに奥まで缶を突っ込んだ。

「あぁぁぁ・・・おく、まで・・・あ、あ、あっいい・・・あぁ・・・。」
19 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:19
石川はさらに腰を振り、喘ぎ善がる。

「んぁ・・あぁぁ、もぉ・・・いきそ・・・。」
「ん。」

再び乳首を噛み舌を這わせる。

「あぁ、あ、あ・・・んんんんっあ、あ、あ、あぁぁっ。」
「おっと。」

石川が失神して、後ろに倒れそうになったので慌てて抱きとめた。
ゆっくりとそこから缶を抜くと一緒に白い液があふれ出てくる。

「すげぇ・・・。」
20 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:20
完全に開いてるそこ。
失神したままの石川を寝かせて足を持ち上げる。
トロって溢れてるそこに顔を埋め吸い上げる。

「んぅ・・・あぁ・・・。」

失神しながらも感じてる石川。
ジュッ、ジュル。
全部吸い上げて飲み込んだ。最後に尻の方から蕾までひと舐め

「おきねぇ・・・。」

このままここに放置・・・は駄目だよね。
石川の服と転がった缶を手に取り立ち上がる。

「あっ・・・着替えなきゃ。」

石川から出た液がうちのTシャツの裾を濡らしてた。
寝転がっている石川をお姫様抱っこして振り返ると・・・

「あっまだ、居たんだ。」

21 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:20
うちは笑顔で言った。
もう、立ち去っているだろうと思っていたその人
目に涙を貯めた亀ちゃんに・・・

「ウヘヘ・・・すき、です、ねぇ吉澤さん・・・
 絵里、ビックリして、最後まで見ちゃいましたよ。」

涙を零さないようにしてるのか少し顎を上げて笑いながら言う。
いや、笑い顔を作ってだね。

「凄いだろ?石川。」

真っ裸の石川に目をやることもなく亀ちゃんはうちをじっと見てる。

「じゃぁ石川部屋に連れてくから。」

と言って亀ちゃんの横を通り過ぎ部屋を出た。
22 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:21
「ちょっとよっちゃん・・・。」
「おぉ美貴。」

石川の部屋に向かう廊下で美貴に会った。

「おぉじゃないよ。梨華ちゃんのその格好・・・。」
「バルコニーでしてたら失神しちゃってさ。」
「ったく・・・せめて部屋でしろ。」
「だって、バルコニーに居たんだもん。」
「まったく。ほら、服もってあげるから。」
「あんがと。」
23 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:21
服を持っていた手を放し美貴が受け取る。
そう、服と一緒に缶があることを美貴はしらないから
缶は美貴の手に渡らず床を転がった。

「おい・・・まさか・・・いや、二人なら使うか・・・。」
「うん、両方入れたから。」
「マジかよぉ。」

美貴は素手じゃなくて石川の服でそれを包んで拾った。

「石川の部屋ってどっちだっけ?」
「一番奥。」
「そっか、早く降ろしたい。手が限界。」

美貴が足早に石川の部屋の前にたちドアを開けてくれた。
ベッドに石川を寝かせて美貴と部屋を出る。

24 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:22
「部屋行くの?」
「ん〜。これ着替える。」
「じゃぁ洗濯してあげる。」
「うん。」

階段を降りて美貴と二人でうちの部屋に向かった。

「してるときから亀ちゃん見てたらしい。ほんと好きですねって言われたよ。」
「梨華ちゃん見られながらしてたんだ。」
「石川、見られてんの知ってたもん。喘ぎながら亀ちゃんいるって。」
「まったく・・・教育上良くないから。」

部屋に入ると直ぐにTシャツを脱ぎ、美貴に渡した。
えっと・・・TシャツTシャツ・・・。

バックを漁って取り出したシャツに袖を通す。

「そうだ、缶は?」
「梨華ちゃんとこ。」
「そっか。洗えば使えるかと思ったけど・・・。」
「捨てなさい。」
「だよね・・・。」
「亀から聞いたよ。ゲーム辞めたって。」

手を洗いながら美貴の声に耳を傾ける。
25 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:23
「梨華ちゃんにも言われたらしいけど、美貴もちょっと言っちゃった。」
「ん〜。なんて?」

ベッドに座ってる美貴の隣に行きうちは当たり前のように美貴の膝に頭を乗せて寝転がる。
膝枕が好きなんだ、なんか安心するっていうか良く寝れるから。

「亀から辞めたって言うからさ。」
「うん。」
「愛されたいと要求を求めて愛されなかったからって辞めるのは利己な行為だって。」
「まぁ近いものがあるね。ってか亀ちゃん利己って分かった?」

苦笑しながら首を横に振る美貴。

26 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:24
「だろうね。ははっ。」
「説明はしといた。」
「そりゃ、亀ちゃん勉強になってよかった。」
「別によっちゃんの肩をもったわけじゃないんだけどね。
 梨華ちゃんが言ったみたいでそう言われればそうなのかなって。
 でも、愛を求めるのは悪いことじゃないと思ってるよ。」
「ふーん。美貴はね。」
「あのさ・・・。」
「なに?」
「よっちゃんの思う愛ってどういうの?」
「どういのって言われてもね見えるもんじゃないし形じゃないし。」
「そっか、ん〜とぉ。よっちゃんは柴ちゃんを好きになったときさ。」
「ん〜。」

うちは起き上がりベッドの上をノソノソ移動して壁に寄りかかって座りなおした。

27 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:25
「この話するの嫌だ?」
「いや?終わったことだし。もう結構、普通に整理ついてるよ。」
「ん。じゃぁよっちゃんはどんな風に人を愛すのか知りたい。」
「なんで?」
「だって必要ないと愛したことないっていうごまかししか聞いたことなかったから。」
「あぁ・・・。」

28 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:26
あゆみを愛した事実を忘れたことにしていたうちだから
人を愛したことない人間になってたんだっけね・・・

「ただ・・・幸せを願うよ。笑っていて欲しいと願う。悲しませたり苦しめたくはないよ。」
「そっか・・・あのさ。美貴はさ・・・。」

美貴がうちに伝える言葉を捜しているようだったので何も言わず言葉を待った。

「柴ちゃんとの恋愛で悲しい想いをしたからもう愛を必要としないんだ思ってたんだ。」
「うん。あゆみへの愛は姉としらなくて血の繋がりからくる愛だって気が付かなかったんだよ。
 だから、子供だったうちにはちょっとショックだったんだろうねぇ。」
「柴ちゃんとのことは解決って言い方変だけど済んだのに、どうしてまだそうなの?」
「ん〜。」
29 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:26
ノソノソとベッドを這ううちを美貴は目で追う。
ベッドから降りる手かね。床に手を付いてそのまま・・・

「よっ。」

逆立ちしてみた。

「おい。何してんだよ。」
「さか、だぢ。」
「見りゃ分かるよ。いいから辞めろ。で、応えろ。」
「う・・・。」

でんぐり返しして床に座った。

「で?」
30 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:27
「ん〜。愛ってさ・・・やっぱり醜いって思うから。」
「どこがどうして?」
「うちの考えだし。美貴がどうってことじゃないじゃん。」
「でも知りたい。駄目?」
「駄目じゃないけど。」
「じゃぁ教えてよ。」
「アンドロギュスってさ。」
「両性具有者の?」
「じゃなくて・・・まぁそうだけどさ。両性具って・・・。」
「ごめん、話の腰折って。」

31 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:30
苦笑いしてしまったからだろう美貴が続けてと促す。

「プラトンの話あるじゃん。」
「うん。」
「人間は大昔、二つの身体がくっ付いててだから繁殖も出来て、凄い強い奴らで神様に喧嘩しようとして、
 神様が罰を与えて二つの身体を引き裂いた。」
「引き裂かれた二人はお互いを捜し求めることだけをして探し当てたときは強く抱き合って死んじゃうん
 だよね。繁殖できずに。」
「そう、このままじゃ絶滅する。それは神様にとって都合が悪いから性器を作り変えた。今の男と女に。
 でもさ、繁殖できない組み合わせも出来るわけだ。」
「ん?」
「男と女、男と男、女と女の組み合わせがあったから。男の性器と女の性器にされちゃうと男と男、女と女
 の組み合わせは繁殖できない。」
「あぁ・・・同性愛者ってことになるのか。」
「うん。引き裂かれた相手が同性だとそうなるわけじゃん。人間は動物じゃないっていう圭ちゃんの思いは
 ここにあるのかなって。前にね、多分、石川は知らないんだと思うけど、圭ちゃんが言ってたんだ。いつか
 石川を抱きたいって。」
「肉体を無意味って人が?」
「うん。セックスは子孫繁栄の行為だけどそうじゃないときもあるって身も心も一体になりたいと思うから。
 肉体で繋がることは容易いけど心を一体にするのは大変だから心が一体になったとき圭ちゃんは石川を・・・
 抱くんだって。」
「へー。」
「うん。そのとき圭ちゃんと石川は本当の愛にたどり着くんだろうね。」
「で?それは圭ちゃんの話じゃん。よっちゃんは?」
「引き裂かれた相手って結局は自分じゃん。」
「そうだね。」
「自分を愛するわけだよ。全てを分かち合う。相手は自分だから優しくできるんだ。労われるんだ。
 喜びあえるんだ。傷つけたり悲しませたりなんかしないよきっと。自分にそんなことしたくないからね。
 だからとても穏やかで幸せだと思う。セックスだって今してるのとは違うんだ。自分とするから。でも
 独りエッチともまた違うんだ。肉体の快感じゃなくてきっと心の快感なのかな・・・
 それはしたことないから分からないけどね。それが愛しあうってことだと思う。
 さっき美貴が言ってたのもね、利己的な行動でも利他的な行動でもいいんだ。結局は相手は自分なんだから。」

美貴の瞳からポロって涙が零れた。

32 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:31
「なんで泣いてんだ?」
「なんか素敵だって思って。似合わないね美貴に素敵とか。」
「そんなことないけど。」

美貴の頬に伝った涙を指で拭ってやった。

「そんなに素敵なものなのにどうして愛し合わないの?」
33 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:33
「世界に65億人だよ。1分に150人増えてる。その中でさ、見つかるのかな?
 って思わない?みんなその自分を探すために恋をするんだ。愛じゃなくて恋。
 この人が自分かなって付き合い始めて自分じゃないから傷つけ別れる。その繰り
 返しになるでしょ65億人から探すんだから。もしからしたらその自分はもう死
 んでいるかもしれない。もしかしたその自分は既に諦め別の人といるかもしれない。
 自分を見つけたと勘違いして別れない人たちもいる家庭を作ってね。
 あゆみが言うようにそれが愛だと信じてさ。でもそれは決して愛じゃない。
 生きていく手段なのかも知れない。夫の役割、妻の役割、子供の役割。それぞれを
 こなすことで成り立ってそのなかで傷つけ合うこともある。でも別れないう役割は
 続いていくからね。父親の役割、母親の役割、祖父の祖母のって続いてく。
 与えられた役割があるから。生活して生きていかないといけないから。その人たち
 は自分探しを諦め役割に徹するんだ、賢い選択なのかも知れない。多くの他人を傷つ
 けるよりずっと賢い選択だと思う。うちもいずれそうなると思うんだ。それまでに
 わざわざ自分探しの恋をして他人を傷つける必要もないし、傷つけられるのも
 ごめんだ。だから必要ないって思ってる。」

美貴は黙ってうちを見てる。

34 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:33
「これで質問の答えになったかな?」
「うん・・・十分な回答。」
「そ・・・なら良かった。」
「ねぇよっちゃん。」
「ん?」
「抱きしめてもいい?」

うちが返事を変えそうとしたときはもう既に美貴の腕の中にいた。
美貴は優しく労わるようにうちの背中や頭をなで続ける。
美貴の身体が震えてるのは泣いているからだろう。
どうしてないてるのかうちには分からない。
美貴に抱きしめられるのは好きだから美貴が放すまでこうしてよう。

美貴なら分かるだろ?
うちの理解者の美貴なら・・・
35 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:34
あゆみをねうちは愛したと思ったんだ。
あのころ、うちはあゆみを傷つけたり悲しめたり苦しめたりそんなことは
絶対に出来なかった。でも今日、会ってうちは平気でそんなことが出来たんだ。
それは自分じゃないって証拠。そしてまた、あゆみも同じだ。
あの頃のうちの気持ちをしっていて、行為を受け入れた。
姉妹だと知っていながらね・・・そしてうちは傷ついた。

「うちさっきさ・・・。あゆみに嘘ついた。」
「なんで?」

美貴の声が胸から響く。

「あゆみを思ううちの気持ちは愛じゃないのに。愛したって。」
「うん・・・。でも、柴ちゃんは救われたと思う。」
「だといいね。」
36 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:34
お互いを傷つけたうちとあゆみの間に愛なんてなかったんだ。

「でも嘘でもないのかもよ。」
「どうして?」
「よっちゃんの気持ちはあのころも姉への愛だった。
 よっちゃんが知らなくて勘違いしちゃっただけじゃんか。」
「そっか・・・。そうかもね。」

美貴の言う通りかもしれないね。

もうひとりの自分を見つけられる人なんてほんの僅かな数人なんだ。
ほとんどの人が愛を見つけられずに老いて死んでく。
そして、その相手を見つけられないがために自己愛に生き他人を傷つけ争いが起きる。
37 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:36
「うちは・・・」
「ん?」
「植物に生まれ変わりたい。ひまわりがいいな・・・」
「どうして?」
「静かで優しくて綺麗な感じがしない?大地の恵みで生き、
 大地に還り大地の恵みになる。そんな汚れのない世界で生きたい。」
「うん、ひまわりはよっちゃんぽいし。そうだといいね。」

美貴はいつまでもうちを抱きしめてた。
まるで、赤子を寝かしつける母親のようにうちが眠るまでずっと抱きしめてた

38 名前:自分探し 投稿日:2006/04/16(日) 15:37

++++++++++++++++++++++
39 名前:clover 投稿日:2006/04/16(日) 15:41
>>3-38 自分探し

*注意*
神話や哲学などが出てきますが私の知識の範囲なので
間違っていたりなど、多々あると思います。ご了承ください。
40 名前:clover 投稿日:2006/04/16(日) 15:44
隠します (/o\)
41 名前:clover 投稿日:2006/04/16(日) 15:44
もういっこ隠します (/o\)
42 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/17(月) 01:14
うーん・・・・・亀ちゃんがんがれ。
耐えるんだ!

そんで美貴様が慈悲深くてびっくり(ぇ
43 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/17(月) 22:58
いつも読ませて頂いています。
更新が早い作品なのに次の更新が楽しみで楽しみで。
この先の展開がすごく気になります。頑張って下さい。
44 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:00
さゆの部屋でさっき見たことを思ったことを素直に話してみた
言葉にするとなんか分かる気がして

「無表情だった・・・。」

石川さんを抱いている吉澤さんの横顔は無表情だった。
絵里の時もそうだったのだろうか?
いや・・・絵里はいつだって吉澤さんに抱かれながら吉澤さんを見ていた
笑ってくれたり心配してくれたり・・・優しい吉澤さんだった

「絵里を見たとき・・・吉澤さんは悲しそうに笑ってた。」
「絵里・・・距離を置くことも大切なことかもしれないの。」
「そう・・・だね。」
45 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:02
きっとそうかも・・・ある意味それがリセットの方法かも知れない
同じマンションの住人・・・そこからまた始めよう・・・
美貴さんが言うように待つんだ・・・

「絵里が・・・アポロンだね・・・恋の神様の矢に撃たれたまま・・・吉澤さんを追い求めてる・・・。」
「絵里・・・」
「アポロンは・・・結局結ばれず思い続けたんだっけ・・・。
そうなるのかな。」
「そういう風に考えちゃ駄目なの・・・。」
「そうだね。」

ちゃんと笑えてるかな?
さゆ・・・ごめんね。心配かける話ばかりして・・・。
46 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:02
「もう・・・寝よっか。」
「絵里、今日は一緒に寝るの。」

うん。と頷いた。
大きなベッドに二人で入り、手を繋いで寝た。
47 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:02

++++++++++++++++++++++++++++
48 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:03
深い眠りが出来なかった。何度も目が覚めてしまった。
陽が昇り始めカーテンから陽が漏れる。さゆを起こさないようにベッドから抜け出た。

そっとそっと・・・
ドアを閉めて廊下を歩く・・・改めて見るとホント広いお屋敷だな・・・

階段を降りて、エントランスを抜けた。

「あっつぅ・・・。」

思わず手を翳した。太陽がとても眩しい。
庭を抜けて直ぐにある海辺を散歩した。
海は凄く綺麗で透明で・・・ブルーだ。
49 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:03
砂浜に座ってしばらく海を見た。
普段、東京の騒がしい場所にいるからかなとても落ち着く。

バシャ、バシャ・・・ザブン

音の方に視線をやると誰かが海に入っていたようだった
シュノーケルが海面から見える

魚でもいるのだろうか・・・綺麗だろうな・・・
あとで美貴さんにお願いしてやらしてもらおうかな・・・

「絵里ちゃんも朝の散歩?」
50 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:03
いつの間にか後ろから石川さんの声
振り向くとやっぱり石川さんがいた。日傘を差して。

「隣いい?」

頷くと石川さんは絵里の隣に座った。
昨日の姿が蘇る・・・石川さんの首筋にはいくつものキスマーク

「よっちゃんに恋した人はみんな途中で諦めるんだよ。」

いきなりそんなことを言い出した石川さんに絵里はどう反応していいのか・・・
だから黙って海を眺めるさっきは入っていった人の行方を探しながら

「よっちゃんてさ・・・綺麗だもんね。美しいものに惹かれるのは仕方ないもん。」

確かに・・・凄く綺麗な人
51 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:04
「だから皆、よっちゃんを欲しがるんだよね。美しいものを側に置いておきたい。」

うん・・・分かる絵里も吉澤さんの側にいたいもん、一番側に
だから、たまに美貴さんが羨ましいと思ってしまうんだ

「絵里ちゃんはちょっと例外だった。よっちゃんって相手にしないから。言い寄ってくる子。」

へぇそうなんだ、そうだよね。恋愛興味ないんだもん
でもなんで絵里は違ったんだろう・・・さゆの友達だから?同じ階の住人だから?
あぁ・・・絵里って全く吉澤さんのこと知らないんだよね・・・
こうやっていろんな人から吉澤さん情報を仕入れて・・・

「一目惚れだっけ絵里ちゃん。エロスの矢に射られたとか言ってたよね。」
「はい・・・。」
「それってやっぱりよっちゃんの外見に惹かれたってことだよね。」

凄く・・・綺麗でかっこ良かった
雨に打たれて微笑む吉澤さんが・・・

「私そういうの凄く嫌い・・・」
52 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:05
石川さんの声のトーンが少し下がって思わず石川さんに視線を移した。
石川さんは海を・・・違う何も見てない・・・
視点は定まらず睨みつけてる

「外見だけで・・・愛してるなんて簡単に口にする人・・・嫌い。」

石川さんはそれだけ言うと立ち去って言った・・・
絵里って凄く石川さんに嫌われてる?
好かれてはいないよね・・・絶対。

「あっ石川さんおはようございます。」
「さゆ、おはよー。日焼け気をつけなね。」
「はい。」

53 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:06
そんなやり取りが聞こえて見るとさゆがこっちに手を振りながらやってきた。

「おはよぉ。さゆ。」
「もぉ。起きたらいないから寂しかったの。」
「あははごめんね。」

隣に座ったさゆの頭を撫でた。

「石川さん、なんか怖い顔してたの。」
「ん〜。絵里、嫌われてるっぽいから。」
「そんなことないと思うの。」
「どうだろ?外見で一目惚れする人は嫌いって言って行っちゃった。」
「そっか・・・でも、それは仕方ないことなの・・・。」
「ん?」

さゆは石川さんが去っていった方を見た。

54 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:07
「石川さんはね・・・会うといつもさゆに言うの。
 さゆを可愛いって言ってくれる人と付き合っちゃ駄目だよって。」
「どうして?」

さゆは眩しそうに絵里を見た。

「外見は変わるから。」

そうだね、当たり前のことじゃん。生きてれば年をとるから・・・

「今の可愛いさゆを好きだと言う人に老いたさゆを好きって聞いても
 必ずしも好きとは還ってこないからって。」
「そうっか・・・。」
「石川さんがそうだったんだって。高校の時、凄い好きだった人に聞いたら
 そんな先のこと分からないって言われたって。」
「それでなのかな?愛はなかったって言ってたの。」
「うん・・・そかもね。もっと色々あるんだろうけど・・・さゆには知らない。」
「そっか・・・。石川さんと吉澤さんってどうやって知り合ったの?」
「吉澤さんが確か高校1年のときかな・・・声かけられたって。
 その頃から吉澤さんいっぱい女の人いたからその中の一人だったんだけど
 1週間くらい吉澤さんの家に居たの。で、お姉ちゃんもさゆも仲良くなって。
 あの別荘に行ったとき保田さんが引き取った。」
「引き取ったって・・・自分の家とか親は?」
「家出したみたい。高校も2年で辞めたって言ってたよ。」
「で・・・そのまま保田さんと居るんだ。」
「うん。」
「なんか・・・周りの人たちみんな複雑だね・・・。」
「そうなの。でも・・・みんないい人なの。優しい人たちなの。」
「うん。」

それは絵里もそう思う。
前に居たときより毎日が充実してるし・・・
こんなに色々、考えたりしなかったから・・・
ただ、毎日、同じことを繰り返してたもんな・・・

「あっお姉ちゃん潜ってたんだ。」

さゆの視線の先にはさっき海に入っていった人の姿。
55 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:08
さゆの視線の先にはさっき海に入っていった人の姿。

「あれ、美貴さんだったんだ。」
「うん。お姉ちゃんシュノーケリング好きなの、ダイビングも資格もってるよ。
 でもやるの3年ぶり・・・亜弥さんのことがあってから海入らなかったから。」
「そっか・・・。絵里もやりたいなぁ。」
「あとで、やろっ。あっでもその前に飯田さんが観光連れて行ってくれるって。」
「ホントっ?やったぁ。」
「あっお姉ちゃ〜ん。」

美貴さんがフィンをっ手にこちらに向かってくる。

「ちょー綺麗。さいこー。」

笑顔で髪をかきあげる美貴さん。

56 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:09
「あとで、さゆと絵里も連れてって。」
「うん。いいよぉ。あれ?飯田さんと行くんじゃないの?なんか仕度してたよ。飯田さん。」
「そうだ、それで絵里を探しに来たの。」
「忘れるなよぉさゆ。じゃぁ行こうか。」
「うん。」

さゆと二人で立ち上がり戻ろうとすると美貴さんに呼び止められた。

「亀。あのさ。」
「はい?」
「よっちゃんのこと諦めるの?」

絵里は笑って見せた。そして、首を横に振る。

「作戦練り直し中です。」
「そっか。」

頑張れとか応援してるとか美貴さんは言わなかった。
そのまままた海へ入っていった。
57 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:10
「さゆ、行こっ。」

食堂に行き、朝からチョー豪華な朝食を頂いた。
それから、黒服の運転手さんの運転する車に
飯田さんと石川さんとさゆとリムジンに乗り込み市内観光に向かった。

窓から見える町並みをさゆと眺めていると隣の飯田さんとその向かいにいる石川さんの会話が耳に入ってくる。

「石川さんはこちらは初めて?」
「いいえ、中学まではよく夏休みや冬休みに来てましたよ。」
「そう。」
「でも、のんびりするだけで観光とかしてないから。」
「そうですか。」
「飯田さんは?ずっとこちらに?」
「いいえ、大学からこちらで学生時代か吉澤家でバイトさせてもらって卒業してそのまま就職させてもらいました。」
「へぇ。仕事ってどんなことしてるんですか?」
「雑用からなんでもやりますね。秘書的なこともやりますし。」
「ふーん。私、働いたことないからな。」
「今は学生ですか?」
「大学行ってれば3年。高校も卒業してないけどね。」
「では今は何を?」
「ん〜。なんだろ。フリーターでもないし、ニートでもないし。なんだろ?
 良くわからない関係かな?私と一緒にいるだけで良いって言うの。一緒に暮らしてる人。」
「そうですか。」
「保田圭。知ってる?吉澤家となんか知り合いみたいだけど。」
「知ってますよ。」

外を見るのを辞めて絵里は飯田さんを見た。
保田さんのことをもっと知れそうだからそこから吉澤さんの話が出るかもしれないから。
58 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:11
「あっさゆも絵里ちゃんも保田さんに興味あるの?」
「なんとなくなの。あまり自分の話をしない人だから。」
「そうだね。余計なことは口にしないね。保田さん。飯田さんとはどんな知り合い?」
「高校が一緒でした。私の先輩です。」
「へぇなんか保田さんの制服姿とか想像すると笑えるね。」
「怖いの・・・。」

さゆ・・・怖いは失礼だろっ。
あぁでも・・・ミニスカートとかイメージないな・・・

「あはは、普通でしたよ。普通の17才でした。圭ちゃんは音楽部、私は美術部。
 よく部室から圭ちゃんの練習する曲が聞こえてきて。
 私は圭ちゃんをモデルにして絵を描いたのがきっかけで親しくなりました。」
「そういえば、家にサックスとかある。」
「そうですか。持っていますか。」
「なにその意味信ないいかたは。なんかあるの?」
「そうですね、目的地までもうしばらくありますから。昔話でもしましょうか。」

飯田さんは静かに話し始めた。
59 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:11
高校生だった私たちは恋人がいたの
それは純粋な恋で、手を繋いで下校したり、公園で将来を語り合ったり。
別れ際のホームで口付けを交わしたり。そんな微笑ましい交際。
私は恋人と肉体関係になったとたん別れを言われたわ。理由は簡単だった。
恋人と友人は私とどっちが先に寝るか賭けてた。
私は彼らに聞いたはどうして私だったのか。
答えはクラスの中で見た目がタイプだったから。
そんな単純なくだらない理由で私は騙され、身体を許した。
それを聞いたとき、その二人はこんなことも言ったは、
俺と一度やったんだからこいつにもやらしてあげてよって
許せなかった、この男たちがまた女をそういう目で見ると思うとどうにも出来なかった。
襲い掛かってくる二人に私は僅かな抵抗をした。
服を乱されながら私は自分のカバンから必死にパレットナイフを取り出したわ。
そしてそれで恋人だった人を切りつけた。顔を狙ったの。
目をね・・・彼は視力を失ったわ。もう、見た目で人を選別できないように私が下した罰。
もう独りが私を押さえつけてきたところに圭ちゃんがちょうどやってきたの。
私を押さえつけているその人は圭ちゃんの恋人だった。
圭ちゃんはその光景を目にしても冷静だった。廊下に出て大声で誰か来てと叫んだわ。
そして、顔を覆い呻く私の恋人を指差し私を暴行しようとしたと先生に告げた。
60 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:12

「偽りの愛に制裁を・・・。二度と同じように誰かを傷つけないように。」

61 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:13
石川さんが呟いた。飯田さんは微笑んで頷く。
なに?なに?二人で分かり合わないでよ。

「見えるから欲しいと思う。だったら見えなくしてしまえばいい。
 そしたら傷つけてまで手に入れようとしなかったのに。
 別れを予感したとき私はよっすぃに相談して言われた言葉。
 よっすぃは展覧会で会ったの。
 私の油絵を・・・純粋すぎて壊れてしまいそうだって言ったの。
 私を羨ましいとも言ったわ。でもそれを相談したときよっすぃは
 私に言ったはきっともう、あの頃の絵は描けないよって・・・
 実際そうだった。私は絵を描くことが出来なくなっていた。
 デッサンすら出来なくなっていたわ。」

飯田さんは笑っていた。
悲しい話をしているのに、それは嬉しそうにも見えた。
なんで?辛い思い出なのに・・・
どうしてそんな顔してるの?

「飯田さんはそれから恋人できた?」

62 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:14
石川さんの問いに飯田さんは目を伏せてゆっくりと首を振った。

「圭ちゃんはサックスをふけなくなった、サックスを持っても指が動かないのね。
 私はもう誰かを信じたりすることが出来ない。でも圭ちゃんは・・・
 あなたを石川さんを信じようとしてるのね。そうさせる何かが石川さんにあったからだと思う。」
「私に?」
「うん。教えてくれないかな。その何か・・・知ることが出来たら私も誰かをまた・・・」

石川さんは何かを思い出すように考えていた。
飯田さんはじっとその顔を見ている。もちろんさゆも絵里も。

恋愛することを諦めた保田さんに再び恋愛をさせようとした石川さん。
絵里には出来なかったそれをこの人は出来た・・・
愛はないという石川さんが・・・

「私さ・・・分からない・・・だって、愛はないもの・・・」
「そう・・・。残念だわ。」
63 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:15
飯田さんの言葉を最後に車内は静まり返った。
車の音だけが車内に響いた。

保田さんが目に留めたもの・・・
絵里には見えないよ・・・愛がないなんて言う人に
再び愛そうとさせるものなんて・・・あるわけない・・・
64 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:15

++++++++++++++++++++++++++
65 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:15
着きましたという飯田さんに促され車を降りた。

飯田さんについて歩いた。
入口らしきところで飯田さんがチケットを買ってくれてゲートを潜る。
南国を思わせる木々。植物、花が沢山あり公園のような感じがするが、
観光客が多く見られる。きっと観光名所かな・・・
あぁ、入場料払うんだから観光スポットだよね・・・
さゆと手をつなぎらなら景色を見ながら歩いた。

66 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:16
立ち止まったのはちょうど広場の中央辺りにある御影石の鐘の前。

「ここは恋人岬。グアムじゃ有名な場所かな。ここで結婚式とかも出来るんだ。」

飯田さんが恋人岬について説明をしてくれた。
記念碑にはいろんな国の言葉で恋人岬の伝説が書かれている。

「結婚を許されない二人が永遠に結ばれるために身を投げた岬か・・・。」

石川さんが呟く。その瞳は・・・綺麗だった。
絵里が今までみた石川さんの笑顔なんて比べ物にならないくらい・・・
石川さんは今凄く綺麗に見える・・・。

「向こうにその岬があるわ。」

展望台になっているその崖からは青い海。

「こわ・・・。」

離れ離れにならないようにお互いの髪を結んだ二人・・・
それは離れませんでしたか?

「綺麗な海で、二人も幸せなの。」
「うん。綺麗。こんな綺麗な場所なら二人も幸せだよねきっと。 」

本当に美しい海だもん幸せだよ。

67 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:17
「飯田さん。」
「はい?」
「私、日本に帰ります。飛行機手配していただけますか?」
「はい、でもどうして急に?」
「保田さんに会いたくて。」
「そうですか。」

石川さんは凄く優しく微笑んでる。

「石川さん帰っちゃうの?」

寂しそうな顔で石川さんに近寄ったさゆの頭を石川さんは優しくなでて微笑んだ。
飯田さんは携帯で電話をしてる。きっと帰国の飛行機の手配だろう。

「保田さん、私を待ってるからさ。」
「うん。」
「石川さん、夕方の便がありますけど。どうします?」
「それで帰ります。」

飯田さんは頷くとまた電話の相手と会話を始めた。

「どうします?皆で戻ります?」
「タクシーで戻るから、皆は観光続けて。それじゃ。」

って石川さんは笑顔で手を振り駆け出して行った。

68 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:17
「どうしたんだろ。」
「保田さんに会いたくなっちゃったんでしょ。」
「そうだけど。」

なにかあったから・・・急に会いたくなったんだよ
なんだろう・・・

「じゃ、私たちは次の場所へ行きましょうか。」
69 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:17

++++++++++++++++++++++++++
70 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:18
美貴とブラックタピオカ入りのココナツミルクティを啜りながらリビングでボーと過ごす。
美貴は朝からシュノーケリングをしてきたらしく、そこで撮ったデジカメみて楽しんでる。

シュポッ・・・太目のストローからブラックタピオカを吸い込むのが楽しい。
シュポッ。シュポッ、モグモグモグ
シュポッ。

「海いく?」

美貴が、何してるんだよって目でうちを見る。
結構楽しいんだぞこれ。

「日焼けするからヤダ。」
71 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:18
「グアム来て部屋の中にずっと居るのかよ。」
「だって、美貴はこんがりだけどうちは赤くなるんだよ。火傷だもん。」
「せっかくグアムに来てるのに。」
「いいじゃん。バカンスっぽくて。のんびり出来るし。」
「美貴の部屋でいつものんびりしてるだろうが。」
「いいじゃんかよ。シュポッ。シュポッ。」

バタバタって足音と共に「よっちゃぁん。」って高い声。
美貴と顔を見合わせ、苦笑い。
なんだ、騒々しい・・・。
72 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:19
「なんだ、ここに居たのか。」
「なに?」
「私、日本帰る。夕方の便で。」

早口にそれだけ言うと石川は階段を駆け上っていく。

「なに、今の?」
「さぁ・・・うちも分からん。」
「帰るって何でだ?」
「さぁ。」
「まぁ・・・いいか。」
「うん。いいよ。」

シュポッ。
73 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:20
「よっちゃん、夕方から会社の人たちに会うんでしょ?」
「ん〜。なんか言ってたね。」
「柴ちゃんも行くみたいだよ。今朝、早くに出かけるとき言ってた。」
「そっか。」
「よっちゃんが社長さんね。美貴の就職先なかったら宜しくね。」
「無理。」

シュポッ。

「即答かよ。よっちゃんの秘書してあげるよ。美人秘書。」
「美貴、ミニスカートはいてそっ。」
「穿くだろ。そのために美貴のこの美しい足があるんだから。」

足を延ばして見せてる美貴。
モグモグ。このネチネチした食感が嵌まるんだよねぇ。
74 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:22
「ってかうち、社長とかなるつもりないし。」
「はっ?断るの?」
「スーツで仕事とかうちのイメージ合わなくない?」
「でも、それなりに着れば様になるでしょ。」
「あっ美貴が褒めてる。珍しぃ。」

シュポッ。

「パンツスーツとかで仕事してそうだもん。」
「えぇぇ、ヤダ、そういうのやりたいって思わないも時間に追われるし。
 うちはのんびりした仕事を探すよ。」
「無理だろ。跡取りなんだから。」
「それは、あゆみにも権利あるし、あゆみと結婚する人にもあるじゃん。」
「よっちゃん?」
「ん?」
「柴ちゃんに譲るの?」
「譲るっていうか、うちがやりたくないから。あゆみの婚約者って優秀らしいじゃん。
 だったらその人やったほうがいいじゃん。」
「よっちゃんはどうするの?」
「だからのんびりした仕事。」
「どんな仕事だよそれ。」
「わかんない。」

最後の一つだ・・・ストローで狙いを定めてシュポッ。
75 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:23
「よっちゃんそれで良いならいいけど。おじさん説得するのが大変そう。」
「うん、あ、終わっちゃった。」

空になった容器を見せると美貴がすーっと自分の容器をうちの前に差し出す。

「美貴のもあげる。」
「ありがとぉ。」

さっそく。シュポッ。モグモグ。
うん。美味い。

「ほんとよっちゃんて財産に興味ないっていうか欲がないっていうか。」
76 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:23
生きていけるだけのお金があればいい。
多すぎると色々面倒が起こるから。
あぁ・・・眠くなってきた。まだ11時回ったところか・・・

「美貴、膝枕して。」
「寝るの?」

そういいながらソファの端に寄った美貴。

「うん。昼寝。」

美貴の隣に行き横になる。
亀ちゃんの膝枕よりちょっと低い美貴の膝枕。
そういや、今日はまだ、さゆにも亀ちゃんにも会ってないな。
そんなこと思いながらうちは目を閉じた。
77 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:23

++++++++++++++++++++++++++
78 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:24
「どうしてこんなに可愛い顔で寝ちゃうのかねぇ。」
「可愛いよねぇ。ホント。」
「心が子供で頭が大人なんだよね。」
「しかも、頭が良すぎる。」
「梨華ちゃんと保田さんが結ばれたらそれはもしかしたら理想なのかもって言ってた。」
「ふーん。よっちゃんの理想ねぇ。」
「うん。」
「私ね、夕べのよっちゃんとが最後にしようともう。」
「は?」

ん?

「あぁ無理って顔した。」

あぁ・・・石川の声か・・・高ぇ・・・
79 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:24
「無理でしょ24時間そればっか考えてるんだから。」
「ひどぉー。まぁ仕方ないか・・・」
「自業自得だろ。」
「はいはい。でも、ホント・・・最後だよ。保田さんが抱いてくれるまでね。」
「ほー。」

えっと・・・うちまだ寝てたほうがいい?
二人はうちの髪やら頬を撫でながら会話してる。

「私さ、凄い好きになった人いたのね。初めて会った瞬間この人が運命の人とか思ってさ。」
「へぇ梨華ちゃんにもそんなころがあったのね。」
「あるわよ。あったから今の私がいるんだもん。」
「そっか。」
「その人も私を愛してくれてるって思ってた。でもね、身体だけでよかったみたい。
 私の身体目的だったって気が付いてボロボロになって。そのときよっちゃんに会った。」
「声かけたんだっけ?」
「うん。凄いね、救われたんだ。
 よっちゃんがね、セックスで愛なんて図れない気持ちよければいいじゃん。って言ってくれて。」
「それで住み着いたのか。」
「だって、よっちゃんうまいんだもん。」
「確かに。テクはあるね。」

おっ、うちってテクニシャンなんだぁ。

80 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:25
「さっきね恋人岬行ったの。」
「あぁ、さゆたちと。」
「うん。私さ、愛って永遠だって思ってたんだ。永遠に愛されるものだって。」
「それは素敵だね。梨華ちゃんの口からそんな言葉が聞けるとは。」
「あはは、でも思ってたんだよ。その人に永遠に愛されるってね。でもさ。
 セックス目的だとさ、年取ったら愛されないんだって思った。
 実際、10年後も愛してくれる?って質問にその人は頷いてくれなかった。
 付き合ってればさ、セックスってするじゃない。」
「そりゃまぁするね。」
「でも、愛があるからするんじゃないだよ。よっちゃんがいうように欲望なんだよね。」
「ん〜。」
「私はセックスが愛だと思ってたから愛はないって思ったんだけど。その恋人岬でさ、伝説読んで思ったの。」
「伝説って・・・永遠に結ばれるために身を投げたってやつだっけ。」
「うん。二人の生死は分からないけどさ。死んでたとしてもあの世で結ばれてるのかもってさっき思ったんだ。
 そしたら。保田さんって死後の世界を信じてるじゃない。」
「そうだね。その世界でも愛し合えると思ったわけ?」
「そう。だから・・・保田さんに応えてみようって。」
「そっか。」
「うん。じゃぁそろそろ行くわ。毎日会ってるからなんか凄く会いたくなっちゃった。」
「保田さんによろしくね。」
「そうだ、飯田さんにさ、永遠の愛って伝えておいて。チャオッ。」

石川の足音が遠ざかった。
81 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:26
チャオっってさぁ・・・ああいうのもう辞めたほうがいいけど
辞めたら石川じゃないのか・・・仕方ないか

「よっちゃん、起きてるでしょ。」

あ・・・バレてたのかよ・・・
目を開けて寝返りを打つ。
美貴がうちの乱れた髪を直してくれた

82 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:27
「良かったね、梨華ちゃんも保田さんも。」
「んー。圭ちゃんの思想に石川が届くかな。」
「梨華ちゃん頭いいから大丈夫じゃない。」
「どうかね・・・そんなに簡単じゃないと思うけど。いつか、圭ちゃんが抱いてくれるまでって言ってた。」
「そのときってよっちゃんの言う愛なんでしょ?」
「石川は抱かれたいって欲望があるんだよ。抱かれるのが前提で圭ちゃんを愛しても
 圭ちゃんがそれを受け入れるかどうか分からないよ。
 圭ちゃんは精神的に結ばれるのが前提だもん、すれ違う。」
「なるほどねぇ。」

圭ちゃんに抱かれるために他の人としない石川を圭ちゃんは抱かないだろう。
石川が圭ちゃんに欲望を見せたとき圭ちゃんの愛は終わるだろう。
83 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:27
なぁ石川、学んだだろう・・・愛とセックスは違うって
圭ちゃんにその欲望をさらけ出さないでくれ・・・
圭ちゃんの愛ってやつは悲しいくらい純粋なんだ。
圭ちゃん・・・石川さんが圭ちゃんを理解するまで諦めないでくれ
二人が結ばれるのがうちの・・・希望なのかもしれない
84 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:28
「でも・・・梨華ちゃん。なんか顔が凄い優しかったから。美貴は大丈夫な気がするな。」
「そうであってほしい?」
「うん。よっちゃんもそう思ってるでしょ。」

美貴が優しく笑うからうちも美貴に微笑んで起き上がった。
美貴の胸に頬を寄せ、細い腰を抱き寄せた。

「どうした?」
「美貴ってさ・・・なんか落ち着く。子供の頃から一番近くにいたからかな。」

安心するんだ。
美貴は絶対、なにがあってもここに居る気がして
85 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:28
「おーい。また寝るの?」
「んー。」

まったく。っていいながらうちの頭を抱きめる美貴
誰かが誰かを愛そうとするとうちは苦しくなるんだ
呼吸がしずらくなる
傷ついた姿を想像してしまうんだ・・・
愛ではないと知ったときの姿が浮かんでしまうんだ

「よっちゃんて優しい子だよね。昔から。」

美貴の優しい声がうちの耳に届いた・・・

ポタ・・・ってうちの頬に滴が落ちて
美貴を見上げると泣いてた。
86 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:28
ゆっくり美貴から離れて正面から美貴を見た。
何で、泣いているのか分からなくて・・・
でも・・・泣いてる理由よりも・・・
泣いてる美貴は凄く綺麗だったから
うちは惹きつけられるように美貴と唇を重ねた

触れるだけのキス。
そんなキス美貴としたことあったっけ・・・
そんなことを考えながら、長い時間、美貴の唇の温度を感じてた

「ちょっ、お姉ちゃんっ。」

ってさゆの声でうちはら慌てて離れて声の方を見た。
さゆと亀ちゃんとカオリンがリビングの入口で立ち尽くしている。

カオリンは呆れ顔。さゆは困り顔。
亀ちゃんは・・・無表情でうちだけを見てた。

「二人とも飲んでるの?まだ3時だよ。」

さゆが腕時計を指しながら言う。

87 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:29
「そう、お昼にさ。ゴハン食べながら。ちょっとね。度数高いやつちょっと。」

昼なんて食ったか?

「もぉー。ダイビング連れてってもらおうって思ってたのに。お酒飲んだらできないの。」

うちと美貴の間に割り込んできたさゆの頭を美貴は撫でた。

「ごめんね。明日いこ。明日。ね、亀ちゃんもごめんね。」

まだ入口にいる亀ちゃんにも美貴は謝った。

88 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:30
「じゃぁダイビングは明日、手配しておきますね。失礼します。」

カオリンがそういって去っていった。

「絵里もこっちで休もう。結構歩いたから疲れたよね。」
「うん。」

向かいのソファに亀ちゃんが座るとさゆが隣に移動した。
なんかまだ、身体が眠いって訴えてる・・・
よっこら・・・失礼しますね。
美貴の膝に頭を乗せてと・・・こっちの方がフィットするかな。
うちはまた目を閉じた。
89 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:30
「石川さん帰ったの?」
「あれ、そこで会わなかった?さっき帰ったけど。入れ違いかな。」
「会ってないの。」
「そうとう、慌てて帰ったからな。」
「あれ?飯田さんどうしたの?」
「よっすぃ寝ちゃいました?」
「起こせば起きるよ。」
「5時からあゆみさんとよっすぃはパティだから。仕度を。」
「あぁ分かった、間に合うようにさせとくね。」

うちはムクっと起き上がる。

「美貴もいい?」

とカオリンに告げる。
飯田さんは少し考えてから頷いた。
90 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:31
「なんで美貴もなのさ。」
「顔だけ出してそのまま飲みにいくから。」
「そっか。うん。いいね。」
「よっすぃ。お父様の顔を潰すのは辞めてね。」
「ちゃんと挨拶して回るって。大丈夫。」
「ならいいけど、じゃぁミキティもドレス着ていってね。」

美貴が頷くとカオリンはため息をついて出て行った

「さゆたちも行きたいの・・・。」

仔犬のような目で訴えてくるさゆ。
亀ちゃんはうちらの会話を黙って聞いてる
91 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:31
「だめ、ゆたちあれ行ってきなよ。マジックショー見ながらディナー。」
「それいいね。イリュージョン面白いよ。うちも前見たけど。」
「面白そうなの。絵里、いくの。」
「うん。」
「じゃぁそういうことで美貴たちはシャワー浴びて仕度しよう。」

美貴と二人でリビングを後にした。
92 名前:愛とは永遠? 投稿日:2006/04/19(水) 00:31

++++++++++++++++++++++++++++
93 名前:clover 投稿日:2006/04/19(水) 00:40
本日の更新以上です。
>>44-92 愛とは永遠?

>>42 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
えぇ藤本さん慈悲深いですw

>>43 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
楽しみにしていただけて嬉しい・・・メッチャ嬉しいどうしよぉw
頑張りますので宜しくお願いします。
94 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/19(水) 11:40
みきよしの関係がいい感じですねぇ
亀ちゃん応援しつつ、うっすらみきよしに期待してしまう自分が・・・
95 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/20(木) 17:17
ミキティーみたいなお姉ちゃんが欲しいっす!!
96 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/20(木) 19:27
みきよし最高!正直亀ちゃんには悪いがみきよしに期待している・・・
97 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:37
部屋にもシャワーがあるけど美貴と二人で下のジャグジーに向かった。

「あれ、あゆみも来てたんだ。」

中に入るとあゆみがシャワーを浴びていた。

「あっ今、出るところ。汗かいたから着替える前にね。」

あゆみにならんでうちと美貴もシャワーを浴びる。

「よっすぃ相変わらず白いね。」
「あゆみも白いじゃん。」
「でも、こっちに来てから黒くなったよ。」
「ってか柴ちゃんも結構、胸あるね。」
「っや。ないない。」

と美貴があゆみの胸をツンと突く。だからうちも美貴の胸の先っぽを突いた。

「こら、突く場所が違うだろっ。」
「っぃた。」

思い切り頭を叩かれた。

98 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:37
「ホントなかいいね。二人は。」
「柴ちゃん・・・今の仲いいとかじゃないでしょ。よっちゃんがエロイだけだって。」
「あはは、ホントよっすぃはホント、エッチな子になったんだねぇ。」
「違うし。」

あゆみはシャワーを全身に浴びて体の泡を洗い流していく。
少しずつ露わになるあゆみの裸。
触れたいとか・・・あゆみとしたいって気持ちは湧かなかった
姉・・・うちは本当にあゆみを姉としてみてる

「最近の子って皆そういうのしてるんでしょ?」
「柴ちゃん・・・そういうのってもしかして・・・。」
「したことないよ。だって、旦那さんになる人とするって・・・。」

泡を流し終えたあゆみがコックを締めなが呟く

「教わったんだもんね。」

美貴が嫌味っぽく呟く。それに対してあゆみは苦笑した。

「いいんじゃない。それはそれで、純潔って感じじゃん。っ痛いって。」

美貴がシャワーを止めてうちの背中を思い切り叩いた。

99 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:38
「いいこと言うね。よっちゃん。」

だからって叩くな・・・地肌だぞ・・・痛いって

「あはは、もみじになってる。」

もみじって・・・痛いんだけど。

「じゃぁ私先に着替えてるね。」
「うん。美貴も行くから帰りに三人でのみいこう。」
「うん。」

あゆみが去ると美貴もシャワーを後にしてジャグジーに浸かった。
うちも頭を洗ってから美貴の隣に入る。

「んー気持ちいい。」
「だね。よっちゃんさぁ。」
「ん〜?」

美貴がうちの肩に頭を乗せたまま何も言わない。
100 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:39
「亀ちゃんのゲームに乗った本当の理由はさ・・・。セックス相手にちょうど良かったからじゃないよね。」
「さぁ。」
「さぁっか。」

美貴がうちの手を掴み自分の胸に持っていく。

「あれ?うちともうしないんじゃないの?恋するんでしょ。」
「辞めた。」

美貴がお湯の中を移動して、うちの太腿を跨ぎ乗っかる。

「なんで?」

そう聞きながら、うちの右手は既に美貴の乳房の柔らかさを楽しんでいる。

「あっ・・・よっちゃんとするエッチは別なんだ、多分。」

美貴がうちの唇をペロっと舐めてうちらはそのまま舌を絡めあった。

101 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:39

++++++++++++++++++++++++++

102 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:39
ショーが5時からだと知って仕度をしようとなった
着替える前に汗をかいたから、シャワーを浴びようとジャグジーへ向かった。
脱衣場になってドアを開けてさゆが足を止めた。
だから絵里も足をとめる。

「あぁ、あ・・・あ、よっちゃ・・・」

美貴さんの声が聞こえた。
聞こえた時点で直ぐにさゆと引き返せばよかったのに・・・
さゆは中へ入っていった。曇ガラス越に二人の姿が見える。

「さゆ?」

出ようとさゆに小声で合図を送ってもさゆは出ようとせずに
椅子に座り隣に座れと促す。

「あぁ、いい・・・」
「ここ?もっとしてあげる。」

二人の会話が聞こえてくる。さゆは椅子の腕に足を乗せて抱え込んだ。
このまま終わるまで待つの?
絵里は出たい・・・嫌だもん・・・
だから出ようと立ち上がるとさゆに手を掴まれた。
103 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:40
「いるの・・・。」

って言われてまた座らせられる。

美貴さんもうしないって言ってたのに
ウソツキだ・・・
さゆは知ってたんだね・・・二人のこと、驚いてないもん
あ・・・ちょっとごめん。絵里は限界です・・・

ポタポタと足元に涙の滴・・・
さゆが絵里の手をぎゅって握った
さゆ・・・絵里は聞きたくないの・・・ここから出よう・・・
絵里、ひとりでも出たいんだよ・・・

そう訴えてさゆをみるけどさゆは・・・

「これが・・・吉澤さんなの。」

と絵里を放してはくれない
さゆ、絵里は知ってるんだよ。吉澤さんと絵里もこうしたんだから・・・
ひどいよ・・・さゆ・・・
104 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:40
「よっちゃ、ん。やぁぁ、あ、あぁ・・・。」
「美貴いきそう?」
「んぅ・・・あぁ、ダメ・・・もぉ・・・。あっ、あぁっぁぁぁ。」

美貴さんの高い声が聞こえて静かになった。

「絵里・・・いくの。」

服を脱ぎだしたさゆ。
この状況で入るの?やめようよ・・・絵里、普通にしてられない

「好きなんだよね?吉澤さんのこと。」

好きだよ、愛してるよ。だから今は二人を見たくないよ。

「好きなら全てを受け入れるの・・・」
「さゆは?美貴さんがこんなことしてていいの?」

恋人でもない、幼馴染と・・・平気なの?

「最初は驚いたし嫌だったよ・・・でも今は理解しようと思ってるの。」

理解って・・・間違えてることは間違えてるって言ってあげたほうがいい

「ほら、早くしないと遅れるの。」

先、行くね。と絵里をおいてさゆは中に入っていった。
105 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:41
「おっさゆぅ。走るな。よっちゃん喜ぶ。」
「いい乳してんなぁ。さゆは。」
「エッチなの。」
「あれ、亀は?」
「今来るの。」
「そっか、美貴たちもう、出るからさ。」

普通に話してる3人・・・おかしいよ・・・
あ、ここで3人になるより・・・中に入って入れ違いになるほうがいい・・・
急いで服を脱いで中に入った。
シャワーを浴びてるさゆ。ジャグジーで寛いでる2人

「おっ亀。」

美貴さんに笑顔を作って見せて足早にさゆの隣に向かった。
シャワーを出して浴び始める。背後で、「出るね。」と美貴さんの声。

「行ってらっしゃい。」とさゆが応えた。

絵里は扉が閉まる音が聞こえたとたんその場に座り込んだ。

「絵里・・・。」

さゆがシャワーを止めてかがみこんで心配してくれるけど・・・
だって・・・やっぱり辛いよ。
106 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:41
ジャグジーで吉澤さんは美貴さんを後ろから抱きしめてた。
当たり前のように・・・美貴さんもしてた。

幼馴染ってそういうもの?
違うよね・・・
一体、なんなの、二人の関係って・・・
生まれたときから側に居るから?
だから、今でも一番近いところにいるの?
それってずるいよ・・・
それなら誰も美貴さんより近いところにいけないじゃん。

「吉澤さんの全てを受け入れないと・・・吉澤さんは絵里のものにならないの・・・。」

そんなこと言われたって・・・
頭で理解しようとしても・・・無理だよ・・・
107 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:41

++++++++++++++++++++++++++

108 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:42
「腰、重い・・・。」

服を着ながら隣で美貴が呟いた。

「アレだけお湯の中で腰使えばね。」
「そっか。」

だるそうな美貴を連れてカオリンの待つ、衣裳部屋へ行った。

「二人とも髪、濡れてるじゃない・・・先にそっちだね。」

カオリンの言葉にメイドが動き出す。
うちらを椅子に座らせてヘアメイクを始めた。
うちも美貴も黙って人形のようにされるがままだ。

メイクが終わり今度は衣装。
カオリンが美貴にドレスを当てていく。

「黒がいい。」

美貴の言葉でドレスが決まる。
うちは何だっていいや。カオリンに渡されたのは光沢のある黒のスーツ。

美貴は背中が大胆に開いた黒のワンピースを着てうちはスーツを着た

109 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:42
「よっすぃは男前だね。」
「どうも。ってか美貴、背中出すぎじゃね?」
「そうそう、胸元だせない代わりに背中をってオイ。」
「自分で言ったんじゃん。」
「ほら、二人とも落着いて礼儀ただしくね。」

母親のようなことをいうカオリンにうちと美貴は姿勢を正してみせる。

「本日はありがとうございます。」

うちの言葉に美貴も一緒に頭を下げてみせる。

「全く、二人とも顔に品があるから得よね。」
「顔だけじゃないかっ。ちゃんとマナーくらいできるから。」
「そうそう、子供の頃、嫌って言うくらいやらされたもん。
 うちの巻き添えで美貴まで。」
「そうだよ。ひとりじゃ嫌だっていうから美貴までさぁ。」
「はいはい。じゃぁ、車きてるから行って。あゆみに声かけてくるから。」

相変わらず大げさだ・・・3人乗るのにどうして付き人が4人も居るんだ・・・
車の前に立ってうちらを待っていた4人の護衛。

ドアを開けさせ中に乗り込む。
110 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:43
「おっシャンパンだ。」

美貴が用意されてるアルコールを漁ってる。

「飲むなよぉ。終わったらいくらでも飲んでいいから。」
「分かってるよ。」

うちの隣に戻ってきた美貴の背中を指てツーってなぞって悪戯してやる。

「こらっ。」
「あはは、まぁ慣れとかないとね。おやじたちが手を添える振りして触るだろうから。」
「間違いなくよっちゃんのおじ様は触るね。」
「触るね。」

うちのおやじは本当に正真正銘のスケベだから・・・
まぁ本人も認めてるし、正直でいいとうちは思ってる。

ドアが開くとあゆみが乗り込んできた。

「お待たせ。」

ドレスを着たあゆみは美貴とは少し違いセクシーというよりエレガント。

「よっすぃカッコイイね。」

と褒められて少し照れる。

111 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:43
「なんで赤くなるんだよバカ。」
「だって、真顔でカッコイイとか言うんだもん。」
「なんだそれっ。」

美貴に突っ込まれながら車はパティが行われるホテルに向かった。

ホテルに入ると直ぐに親父の部下がやってきて会場に通される。

まだ、開始時間までは時間があるのに、既に人が集まって談笑している。
この時間を使って皆、人脈を作るのだろ。
会場はかなり広い。そこに居る人たらも著名人ばかりだ。

さてと、うちも美貴も久々の雰囲気。あゆみは最近ずっと来てるのだろう落ち着いて笑顔を見せてる。
うちらも負けていない、物怖じせず自信に満ちた表情を作り、会釈をしながら親父の下へ。
うちらがこういうフォーマルな衣装を着てこういった場では一際目立つ。
自分で思うのも自惚れだけど、衣装負けしないルックスだからだと思う。

親父に連れられ、知人たちに挨拶して回る。
あゆみは婚約報告もし、うちの話しは後で発表するのだろう、口にはしない。
一通り回り終わったところで開始時間だ。
112 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:45
司会者が話しを進め、いろんな人が挨拶をする。
親父の番になり主催者の親父は集まった人々への感謝を述べ、
今後とも会社をよろしくと手短に話しを済ます。そして、うちの名前が呼ばれた。
打ち合わせなんて何もないけど、こういう場面そ幾度と見てきた。
うちは親父の隣にたち、一礼をする。

「今度、グループ会社の一つを娘のひとみに任せようと思っております。」

その言葉を残して一歩下がった親父の代わりにうちが前へ出る。

「今、父から会社を任して頂けるとお話しがありましたが、私はまだ、学生です。
 社会人経験のない私が人の上に立つことは難しいことだと思っています。
 若干20歳の私が社長というポディションに着くよりも適任が居るのではと思っております。
 今ここでそれが誰だということは出来ませんが、これから父ともう一度話しをしてまたの機会に
 皆様に報告したいと思っております。この場所でこのようなことを発言するのはとても失礼なこ
 とだと重々承知の上でお話しさせていただきました。誠に申し訳ございません。」

頭を下げた。うちの社長就任の報告を祝うために集まった人々だから。
無駄な時間をとらせてしまったお詫びだ。

「ひとみ。下がりなさい。」

親父が小さな低い声で言った。うちは素直に壇上から降りる。
美貴は笑顔で迎えてくれたがあゆみは心配そうな表情。
113 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:46
「大変、申し訳ない。私の意見を聞くと思っていた子供が自分の意思で申しております。
 親子の意思の疎通のない、見苦しいところをお見せしてしまいました。
 いつの間にか大人になっていたひとみの言葉を受け止め、もう一度、話し合い皆様に
 ご報告したいと思おうしだいです。申し訳けありません。」

親父は頭を下げた。うちが下げさせた。

「本日は集まっていただいた皆様に美味しい料理とお酒、
 そしてこの場でさらに、親交を深めていただけたら幸いでございます。
 どうぞ、お楽しみください。」

親父はそういって壇上から降りた。そして、うちらの前にやって来てうちの額を突く。

「先に、言っておけばいいものを。私だってお前の話は聞くぞ。
 要求をのむのまないは別だがな。全く、じゃじゃ馬な娘だ。」

そういって客の相手をしにいった。

「さて、美貴たちは気楽な場所で飲みますか。肩こったよ。」
「そうだね。あゆみも挨拶すんだだろ?」
「うん。」

うちは晴れ晴れした気持ちで会場を出た。
親父へ刃向かったのは初めてだ。
114 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:47
ホテルを出て向かったのは別のホテル。
カオリンに頼んで予約しておいてもらったバーはホテルの最上階。
街のネオンと海が一望できる。そのバーの個室に通された。
二面が窓ガラスになっていて景色は最高だ。
高級シャンパンとフルーツ。

「さてと、姉妹3人の再会に乾杯。」

美貴の声に続いて、うちもあゆみもグラスを傾ける。

子供の頃の昔話に花を咲かせ何時間が過ぎる。
3人とも顔が赤くなってる。
酔った美貴をあゆみは見るのが初めてだろう。
テンションの高い美貴をおかしそうに笑ってる。
そう、あゆみは知らないんだ美貴もうちも酔うとキス魔になることを。

「よっちゃん。こら、お前なぁ心配ばかりかけやがって。」

美貴がうちの膝を跨ぎうちの頭を叩く。
115 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:47
アルコールの酔っていたうちと美貴はあゆみの前で舌を絡ませた。
いつも、二人のときそうしてるように、当たり前に舌を絡ませ唾液を交換しあった。

「ちょっ、おいおい。二人とも。」

あゆみがうちから美貴を引き剥がして辞めさせる。

「ちょっともぉ。何してんのよミキティ。」
「柴ちゃんも美貴としたい?」

支えてるあゆみにぶら下がるようにして顔を近づけるとあゆみは顔を背けた。

「あぁ。柴ちゃんがチューしてくれない。可愛い妹のチューさけたぁ。」

子供のように泣き真似をする美貴に思わず笑いがこみ上げる。
116 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:48
「ちょっと、よっすぃ笑ってないで何とかしてよ。」
「あははは、無理。だって美貴はご機嫌で酔うと朝までこうだもん。しかも潰れないの。」
「最悪だ・・・。」
「ほら、美貴こっちおいで。」

フラフラしながらうちの隣に座りうちの頬は鼻にキスを降らしていく美貴。

「ずっとこうなの?」

呆れ顔のあゆみ。

「そう、ずっとこう。うちが先に潰れて寝ちゃっても寝てるうちにこうしてるって
 さゆが言ってた。」
「それは、さゆみちゃんも大変だわ。」

さゆに同情を示しあゆみは向かいの席に座りなおしてシャンパンを飲む。
結構な量を飲んでいるのにあゆみは顔が赤いだけで崩れたりはしない。
117 名前:元の関係 投稿日:2006/04/21(金) 03:48
「さて、まだ9時だけど帰ろうっか。こんなに酔ってると帰ってのんだ方がいいもんね。」
「えぇもっと飲む。」

と美貴がダダをこねる。

「お姉ちゃんの言うことは聞きなさい。」

美貴を負ぶって部屋から出る。美貴を椅子に座らせあゆみに見ててもらい、うちは会計を済ませた。
そしてまた美貴を負ぶってエレベータに乗り外に出た。

「呼べば来るのに。」

あゆみは車で待っている護衛を呼べばいいとずっと言っている。
でも、美貴の世話はうちがする。いつもしてもらってるから他の奴にはさせたりしない。

「大丈夫、美貴軽いから。」

とその度に返して車に美貴を乗せた。
車が動きだしても美貴はずっとうちのあちこちにキスをしてる。

「そんなにしてると、明日、唇痛くなるぞ。」

あゆみが笑ってみてた。
118 名前:clover 投稿日:2006/04/21(金) 03:55
本日の更新以上です
>>97-117 元の関係

>>94 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
みきよしいい感じですw
自分も大好きなんで、みきよし。

>>95 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
>ミキティーみたいなお姉ちゃんが欲しいっす!!
自分も欲しいですw

>>96 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
みきよし期待してますかぁ。

前スレ 悲しい偶然の方にみきよし短編あげてるので
もしよろしければそちらも御覧ください。

ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1141142667/
119 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/21(金) 18:09
更新お疲れ様です。
亀ちゃんの胸のうちを思うと私まで苦しくなります。
この先どうなるんでしょう?
120 名前:ももんが 投稿日:2006/04/21(金) 21:42
更新お疲れさまです。毎日更新楽しみにのぞいてます。
亀ちゃんに頑張ってほしいなあと思います。続き楽しみに待ってます。
121 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/21(金) 22:41
亀ちゃん・・・・イキロ
122 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/21(金) 23:44
吉澤さんと亀ちゃんは、これからどんな関係を見つけるんだろう
楽しみにしています
123 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:13
さゆと見たイリュージョン。何をやっていたかなんて覚えてない
もちろん、食べた食事の味も覚えてなんかいない。

絵里の頭の中は・・・吉澤さんに抱きしめられてる美貴さんと
美貴さんの濡れた声、美貴さんの名を呼ぶ吉澤さんの声。
こも3つが頭の中をグルグルしてる。

別荘に戻り部屋で独りになってもそれは続いてる

外で車の音がした。まだ10時前。
3人が帰ってきたのだろう。

「ヤバイ・・・。」

絵里の頭の中がヤバイ・・・
頭だけじゃない・・・身体もだ・・・
124 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:14
部屋を出て下に降りるとエントランスに3人の姿。
美貴さんは吉澤さんに捕まって立っているようだ。酔っているのかな。
それにしても、3人とも凄い綺麗だ・・・

「あれ、亀ちゃん。どうしたの?」

とあゆみさんが先に絵里に気が付いた。
絵里は笑顔でお帰りなさいと応え吉澤さんを見た。

「ただいま。」
「美貴が酔っちゃってさ。」

階段を昇ってくる吉澤さん。
あゆみさんと二人で吉澤さんを手伝って美貴さんをベッドに寝かした。
125 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:14
「さてと、私は明日の仕度しないと。」
「明日?」
「うん。またパティに呼ばれてるの。出席者の名前と顔覚えないと。」
「大変だ。頑張って。」

あゆみさんがおやすみと立ち去る。

「さてと、うちも寝るかな。」

そう呟いた吉澤さんの腕を絵里は無意識に掴んでいた。

「なに?どうした?」

不思議そうに絵里をみる吉澤さんに絵里は・・・

「抱いてください。」

と言っていた。
126 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:15
吉澤さんの表情が・・・歪んだ。

「いいよ。おいで。」

手首を掴まれて吉澤さんの部屋へ連れ込まれた。
ベッドに行くのかと思ったけど違う・・・

バンッ・・・
シャワールームの脱衣場・・・
洗面台に思い切りぶつかった。

「イタ・・・。」
「ほら、そっちみて。」

向きを変えられて鏡越しに見える吉澤さん
その表情は無表情

「ほら、脱いで。してあげるから。」

鏡越しに言う吉澤さん・・・
もちろん絵里もその鏡に映ってる
向かい合わせになっている鏡は自分の脱ぐ姿を前も後ろも映し出す。
絵里は見ないように目を伏せて服を脱いだ。
127 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:15
「下着はいいや。」

ブラをとろうと腕を後ろに回すと吉澤さんが抱きしめてくる。
ブラの上から胸をもまれる。
鏡には胸をもまれてる絵里と鏡越しに絵里を見る吉澤さん。
かなりの羞恥心が絵里を襲う。

「亀ちゃんさ。やっぱりエッチだよね。ゲーム終わったのに抱いてってさ。」
「そんな・・・あぁ、んぅ。」
「そんなことない?鏡見てみなよ。亀ちゃん感じてる顔してるじゃん。」

感じてるよ・・・吉澤さんに触れられてるんだもん。

「誰がしたって同じだよ。こないだそれ教えてあげたのになぁ。」
「んぁ・・・あぁ・・・こな、いだ?」

いつ?絵里なんか教えてもらった?

「目隠ししてやったって亀ちゃんは感じてた、しかもいつも以上に。」

あぁ・・・吉澤さんの部屋でか・・・
128 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:16
「見えないから余計感じたんだよね。誰にだって感じちゃうんだ。」
「やぁ・・・あっ。」

ブラ越しに蕾を摘まれて思わず仰け反った。

「ほら、今だって鏡で自分のされてる姿みてこんなに。」

言いながらブラをずらされる。
そこには大きくなってしまった蕾・・・

「ほら・・・前見てみ。」

俯いていたら顎をつかまれ鏡に向かわされる。
そこには・・・胸をもまれて声を上げてる絵里がいた。

「やぁ、っはぁ・・・。」

吉澤さんが前に来て絵里の胸に舌を這わす。

「あぁっあんぅぅ。あ、あ。」
「これいいんだ。」

蕾を引っ張られて腰が疼く・・・

「いたっ・・・。」
129 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:16
痛みの元は吉澤さんが噛んだから。
でも、痛みと同時に快感もある・・・
ヤバイ・・・下着が濡れてる・・・
もぞもぞと足を動かすと吉澤さんの手が太腿の間に入ってくる。

「こっちも触って欲しいんでしょ?濡れてるもんね。下着。」
「あぁ、あんぅ・・・。」

吉澤さんの白い手が絵里の太腿を行ったり来たり撫でる。

「あぁ・・・よし、ざわさん・・・あぁっ。」
「触ってあげる。」

下着の横から指が入って絵里のそこを触れる。

「やぁっあぁっぁ・・・んんっ。」

じれったいって言うのかな?
触って欲しいと思う場所は触ってくれないんだ。

「はぁ、あぁぁぁ・・・。」
「亀ちゃん目、閉じないで。ちゃんと見てよ鏡。」
130 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:18
鏡には薄ら口を開いて涙目の絵里がいた・・・
ははは・・・絵里、厭らしい・・・見たくないよこんな絵里・・・
顔を背けて俯いた。
吉澤さんが絵里の下着を降ろしだす
俯いたから、見えてしまった。
下着と絵里のそこが液で繋がる瞬間を・・・

「ビチョビチョじゃん。」

しゃがんで絵里のそこを見る吉澤さん。
思わず足を閉じた。

「なんで閉じるんだよ。してって言ったの自分じゃん。」
「だって・・・。恥ずかしい。」
「は?」

131 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:18
絵里を見上げる吉澤さんの顔は無表情じゃなくて・・・
怒ってる?どうして?

「開いてよ。できないじゃん。」

それでも開かない絵里。吉澤さんは立ち上がり・・・

「やっ。」

絵里を洗面台に乗せた。
洗面台にある鏡より大きい鏡。その前に絵里は・・・
足を左右に広げられてる姿・・・
そこは・・・濡れてる・・・

「ほら、閉じるなって。」

思わず閉じようとする足をまた広げられ足の間に身体を沈め顔を埋める。

「あっ、あ、あぁぁ、んぅ・・・っ。」

舐められて腰が跳ねる。台から落ちないように縁にしがみ付いた。
132 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:18
「やぁぁ、あっっあ・・・。」

目を開けていると痴態をさらす自分が見えてしまうから目を閉じる。
それにこのタイルで出来た部屋は絵里の声にエコーがかかり響いてる。

「んゎ・・・あぁ。はんぅ・・・。」

弄られる気配が急になくなって目を開けると吉澤さんが手を翳す

「すごいね。」

吉澤さんの指は濡れて、糸をひく・・・
口の周りも・・・濡れてる・・・

「舐めなよ。」

二本の指を口に入れられ歯茎や舌をかき回された。

「んぅ・・うっ・・・。」
「はは、ホントにエッチだね。石川と張るんじゃない?」

そんなことない・・・絵里は誰とでもしない。
133 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:19
「学習しない愚かな子だね。亀ちゃんは。」

口の中で指を転がしながら言う吉澤さん。

「んぅぅ・・・。」
「恋の矢に射られた?それならなんでゲームから降りたんだよ。金の矢なら・・・
 本当の矢ならこのゲームで亀ちゃんが負けるはずないじゃんか・・・
 本当は射られてなんかなかったんだろ?なのに・・・愛してる?ふざけるな。」

指を抜かれ。絵里は息を整えた。

「言ってごらん。うちの何を好きだって?」

吉澤さんは絵里の両脇に手をついて言う。

134 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:20
「優しくて、かっこよくて可愛い・・・ところ。」
「優しい?どこが?こんなことされてるのに?亀ちゃんはM?
 それとも優しいって言葉の意味を理解してないのかな?」

吉澤さんの表情が怒っているようで本当に怖い・・・。

「かっこよくて可愛い?それって容姿を指してるね。それは今だけだ。
 ずっとこのままのわけがない、それだけで愛してる?ふざけるなよ・・・。」

睨まれてる・・・
怖くて・・・声も出ない・・・

「うちを好きでもない人とセックスしないでください?亀ちゃんの愛のが偽者だよ・・・
 自分から始めたゲームを逃げ出したくせに・・・抱いてくれなんて・・・」

だって・・・絵里だっておかしいって思ってるよ。抱いてなんて・・・
でも、身体が・・・

「やぁっ。」

吉澤さんの指が突然、絵里の中に入ってきた。
135 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:21
「ほら・・・単にセックスしたいだけじゃん。」
「あぁあんぅっ、あぁ・・・はぁ・・・。」

かき回されて抜かれた。でも・・・もっとして欲しいとそこは望んでる。

「良く、見て覚えておきなよ・・・」

台の上に完全に乗せられ身体の向きを変えられる。
直ぐ目の前の鏡に足を開き吉澤さんに寄りかかって涎をたらしてる絵里がいた。

「ほら・・・分かる?」

後ろから絵里のそこを左右に開いてみせる吉澤さん
恥ずかしくて、虚しくて涙が零れた。
反らした顔を再び正面に向けられ自分の痴態を見せられる。
そんなことしないでと思う一方、そこは触って欲しくておかしくなりそうだ。

「泣かないでよ・・・うちだってしたくてしてるんじゃないんだから。」

じゃぁどうして・・・

136 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:21
「人を傷つける行為は・・・愚かだって・・・教えてあげてるんだから。」

吉澤さんは・・・悲しい顔で絵里を見ながら言った。そして・・・
絵里のそこにゆっくりと入っていく指・・・
その様子を絵里はじっと鏡越しに見てた

「ぁぁんぅ・・・あぁ、あぁ。」
「恋なんて、傷つけ合うだけなんだよ。」
「あぁ、あ、あっ。」
「こうやって、セックスしたいだけなんだよ亀ちゃんは。」

激しく突かれ絵里は吉澤さんが何を言ってるか理解する余裕なんてなくて

「やぁ、あっ。あぁぁっぁぁ。」

身体が反った。

137 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:21
「ほら、欲望だけじゃん・・・。」
「んぅあぁっ。」

またそこをかき回される。

「あぁ、あ、あ、あ、おか・・・しく、なる・・・。」
「腰、振ってるじゃん。」
「あぁぁ、はぅぅ、んんぅ・・・。」
「ほら、見なよ。快感を得ようと乱れる自分を。」

絵里は・・・いつの間にか自分で両足を抱えて開いてた・・・
そして、吉澤さんの指から快感を得ようと腰を・・・
必死に・・・動かしてる・・・

138 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:22
「締まりだした。また逝きそう?」
「あ、あ、あ・・・あぁんっ。」
「ほら、絶頂を迎える自分を見てみ・・・。」

絵里の耳元で囁く吉澤さん。
その言葉の通り絵里は・・・
その自分の姿を見たとき判らなくなった・・・
吉澤さんだからこうして感じているのか
セックス自体に感じているのか・・・
最低だ絵里・・・涙を流しながら・・・それでも鏡に映る絵里は
悶えてた・・・快感を求めて・・・

「んぁぁ、あっ、あぁぁぁぁっ。」
「噴いて、逝った。凄いね。」
「ちょっ・・・やぁぁ。」

吉澤さんはまだ絵里のそこを弄る
139 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:22
「もっと逝っていいよ。足りないでしょ。」
「やぁ、もぉ・・・あぁっ、あ、あ・・・やぁ・・・。」

足を下ろされ身体の向きが変わる。
吉澤さんがまた足元に座り込み絵里のそこを舌と指で・・・

「んぁっ、あぁぁっ、むりっ・・・もぉあっ、はぁぁぁぁっ。」

ヌチャ、ヌチャ。ジュルジュル。

吉澤さんの舌と指で音が響き渡る。

「あぁぁ、ひっあっ、あ、あ、やぁ・・・。」

鏡に映る絵里は吉澤さんの肩に手を置き、腰を振ってる
そして、その姿を見て・・・絵里は悦んでる・・・

「んぅ、はぁ、あっ・・だめっ、あ、あっあぁぁっぁ。」

鏡に映る絵里が霞んでいく・・・。


140 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:23
 
141 名前:それでも身体は・・・ 投稿日:2006/04/22(土) 12:23
「あっ起きた?」

目を開けるとそこにいたのは吉澤さんではなく美貴さん。

「あ・・・。」

142 名前:clover 投稿日:2006/04/22(土) 12:28
本日の更新以上です。

>>123-141 それでも身体は・・・

>>119 :名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
亀ちゃん、可哀相なんですけど・・・
最後まで見守ってやってください。
宜しくお願いします。

>>120 :ももんが 様
レスありがとうございます。
楽しみにしてもらえてると更新頑張る気になりますw
最後まで宜しくお願いします。

>>121 :名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
最後までよろしくです。

>>122 :名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
最後まで見守って下さい。
143 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/22(土) 13:26
亀ちゃんが可哀相で読んでいられません…

や、読んでますけど!
しかも毎日楽しみにワクテカ待ってますけど!!

亀ちゃん、今が試練の時ですね
144 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/22(土) 21:26
亀ちゃん…(;´д⊂)
145 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/22(土) 22:20
ばかだなぁ二人とも・・・
146 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/23(日) 00:14
素直じゃないよっちぃですね
147 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/23(日) 00:41
ばか!吉ばか!

・・・・・でも切ないです・・・・・
148 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:23
ガウンに包まれた体、吉澤さんのカバンがあるからここは吉澤さんの部屋だ。

ベッドに寝てる絵里の横に腰掛ている美貴さんは困った顔をしてる。

「あの・・・。」
「よっちゃんがね。側にいてあげてって。」
「そうですか。でもどうして?」

吉澤さんは絵里を置いていくんですか・・・

149 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:24
「亀に酷いことしちゃったって言ってた。」
「そんなこと・・・。」
「部屋にきたら、ベッドでその格好だし、酷いことが何なのか想像は出来たけど。」
「別に酷いことされてませんから。」

絵里は体を起こしベッドから降りて服を着た。
美貴さんは何も言わず絵里の様子を見ていた。

「部屋・・・戻りますね。」
「待ってよ。そこに座れ。」

強い口調で言われ・・・絵里は渋々ソファに座った。
美貴さんはベッドに座り足を組み、腕を組んで・・・
絵里を見てる。その表情からは何も分からない。
怒っているのか、悲しんでいるのか・・・どちらかだろう。
150 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:25
「亀、負けたんだよね。」
「はい・・・。」
「今ね、美貴は凄い亀を引っ叩きたい。」

はっ?なんで?
151 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:25
「よっちゃんを苦しめないで。お願いだから。」
「絵里は何も・・・。」

苦しめてるつもりはない・・・

「よっちゃんがさ、亀の気持ち知ってて苦しまないで抱いたと思う?」
「・・・。」
「なんで、ゲームにしたか分かる?」
「吉澤さんはそういうことする相手探さなくて済むから・・・。」
「ホント、殴りたい・・・」

152 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:27
うぇ・・・なんで美貴さんこっち来るの・・・
メッチャ低い声で怖いこと言いながら絵里の前にやって来て・・・
凄い怖い顔で絵里を見る・・・
ホント、怖い、怖いって・・・

「バカな亀に教えてあげる。よっちゃんがゲームにしたのは亀がされるだけじゃアンフェアだから。
 よっちゃんは同じ目的の子としかしない。なんでか分かる?」

分かるわけないじゃん・・・絵里誰とでもしたいとか思わないもん

153 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:28
「恋愛感情が絶対に発生しない。したとしても、それは相手がルールを破ったから
 よっちゃんは悪くない。でも、亀は明らかに恋愛感情からよっちゃんを誘ったの。
 だから、ゲームにした。そしたら、ルールが出来る。破ったのは亀。あんたでしょ。」

破ったっていうか・・・だって、だって・・・

「それに・・・よっちゃんと話ししてて気が付かない?」
「えっ?何を・・・。」

美貴さんは思いっきりため息をついて腕を組みなおした。
154 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:29
「傷つけ合うのが嫌だから恋愛しないって分からない?」

あぁ・・・それはよく言ってたかも・・・

「っとに・・・それなのに・・・ルールを破った上に亀はさらに抱いてって言ったんだよ。
 それを受け入れたよっちゃんの気持ち考えた?」
「だって・・・石川さんは美貴さんとしてたじゃないですか・・・。」
「梨華ちゃんと美貴と亀が立場が違うでしょ。亀は恋愛感情あるんだよ。
 それをよっちゃんは知ってるのっ。」

美貴さんの声が大きくなった・・・
155 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:30
「よっちゃんは・・・亀を傷つけてるって自分を責めるでしょ・・・
 傷つけたくないから恋愛しないよっちゃんを亀が傷つけさせてるんだよ・・・
 傷つけさせるだけじゃない。よっちゃん自身も傷ついてる・・・。」
「そんな・・・絵里はただ好きだから・・・。」
「それは聞いた。好きだって、愛してるって聞いた。だから美貴はよっちゃんを
 ちゃんと愛してくれるって思ってた。ゲームも亀が勝つと信じた。なのにさ・・・。」

美貴さんが・・・泣い、てる?
えっ?涙・・・だよね・・・
156 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:31
「好きなら、ちゃんとよっちゃんの声に耳傾けてよ、よっちゃんの気持ち考えてよ・・・
 自分の気持ちばかり押し付けないでよ・・・もう、これ以上、よっちゃんを傷つけないで。」

美貴さんが・・・絵里に頭を、下げてる・・・
あの・・・そんな、ちょっと・・・絵里そんなに悪いことしましたか?
ただ・・・
157 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:32
「絵里はただ、好きなんです・・・愛してるんです。吉澤さんを。」

ゆっくりと頭を上げた美貴さんは・・・涙を零しながら
絵里を・・・睨んだ
さっきより、凄い怖い表情で・・・

「好きな人の気持ちも分かってやれない奴が・・・」

えっ・・・ちょっ・・・
美貴さんにガウンの胸元を掴まれる・・・
ちょっと・・・苦しいっ
158 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:33
「愛してるなんて軽く言うなっ。」

美貴さんの怒鳴り声と同時にドアが開く音と駆け寄る足音が聞こえた。

「お姉ちゃんっ。」

さゆの声だ・・・助けてさゆ・・・。
視線を送るとさゆは慌てて絵里と美貴さんの間に入ってきた。

「お姉ちゃん。放してっ。」

美貴さんの手をペチペチ叩いて絵里を庇うように前に立ったさゆ。

「はぁ、はぁ・・・。」

苦しかった・・・
159 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:35
「絵里、大丈夫?」

さゆの声に頷く。美貴さんはまだ・・・
睨んでる・・・

「絵里はさゆの大切な友達なの。酷いことしないで。」
「さゆの友達でも・・・美貴の大切な人を傷つけるのは許さない。」

さゆが「お姉ちゃん。」って呟きそして美貴さんを抱きしめた。

「お姉ちゃん、泣かないで・・・」

身長の高いさゆは小さな美貴さんを包み込んで背中をさすってる。
美貴さんは悲しい目で絵里を見て涙をポロポロ零す。
160 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:36
どうして・・・好きなだけで・・・
こんなにも責められないといけないのかという理不尽な思いと
第三者である美貴さんがどうして絵里を責めるのかという怒り・・・
二つの気持ちが絵里の中で湧き上がる・・・勝ったのは・・・

「なんで、関係ない美貴さんに言われないといけないんですか?」
「絵里・・・もうやめるの。」

さゆが顔だけこっちに向けて制するけど・・・無理・・・ごめん
161 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:37
「美貴さんに関係ないじゃないですか。これは、絵里と吉澤さんの問題です。
 美貴さんに言われる筋合いはないと思います。」
「絵里っ。ヤメてっ。」

さゆが珍しく大きな声を上げた。
美貴さんは絵里をずっと見てる。そして、ゆっくり息を吸い込んだ

「関係ない美貴によっちゃんが助けを求めて来た。」

それは・・・幼馴染だから・・・

「初めて助けてって口にした。そんなよっちゃんを美貴は放って置けない。」
162 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:39
はは・・・絵里、吉澤さんに助けてって言われるほど苦しめてるの?
なんで、美貴さんに助けを求めるの?
なんで美貴さんなの・・・ただの幼馴染じゃん・・・

「美貴さん・・・ズルイですよ・・・幼馴染ってだけで吉澤さんを独り占めして。」

ずるいよ・・・。

「さゆ・・・放して。大丈夫だから・・・」

美貴さんはさゆの腕から開放され一歩前に出て絵里を見下ろす。

163 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:40
「一度は亀に任せたじゃない。だからここにも連れてきた。柴ちゃんのことがあるから、
 亀がよっちゃんを支えてくれると思って・・・なのに、放棄したのは亀だよ・・・
 美貴の見込み違いだった・・・任せた美貴が悪いね・・・ごめんね。」

何も言えなかった・・・美貴さんが・・・
絵里をあまりにも切なそうに諦めの目で見るから・・・
言葉の変わりに出てきたのは・・・涙だった

「お姉ちゃんっ。」
「さゆもごめんね。親友なのに・・・美貴、酷いことしちゃった。あとお願いね。」

美貴さんが去ってさゆは、絵里の涙が止まるまでずっと抱きしめてくれていた。
164 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:40
「大丈夫?絵里・・・。」
「うん・・・ごめんね。」
「いいの・・・お姉ちゃんのこと許してあげて・・・
 吉澤さんのこと本当に大切に思ってるの・・・。」

ねぇさゆ・・・絵里は分からないよ・・・
二人の関係を知ってて知らない振りして
おかしいよね・・・幼馴染の関係じゃないよね・・・
さゆの周りにいる人たち・・・みんな考えおかしいよ・・・

165 名前:大切だから怒りが生まれる 投稿日:2006/04/23(日) 15:41
「さゆ・・・。」
「ん?」
「美貴さんは吉澤さんの何?」
「親友。」
「親友が肉体関係になるの?じゃぁ絵里とさゆも?おかしいでしょ。」

さゆは複雑な表情を見せてゆっくりと話し始めた

166 名前:clover 投稿日:2006/04/23(日) 15:45
本日の更新以上です
>>148-165 大切だから怒りが生まれる


>>143 名無飼育さん 様
レスありがとうございます
可哀相なんですけど・・・読んでくださいw
頑張りますのでw

>>144 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>>145 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>>146 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>>147 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
167 名前:ももんが 投稿日:2006/04/23(日) 20:20
前回初めましてと挨拶するのを忘れていました。大変失礼しました。
今回の更新はかなり切ないです。みんなの気持ちが痛いですね。
これからも今後の展開から目が離せません!
168 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/23(日) 23:44
更新お疲れ様です!
ん・・亀ちゃん切ないどーなってしまうんだろ・・・(;´Д`)
前スレのみきよしリクした者ですが買い物篇も読ませて頂きました!
よっちゃんデレデレしすぎです!(ノ∀`) アチャー ミキティのプリクラ一枚で
ご飯5杯くらいけそうな勢いですねw(・∀・)ニヤニヤ また短編でもいいので
みきよしお願いします!|-`).。oO(激エロ希望・・・)
169 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/24(月) 21:14
亀ちゃんにもよっちゃんにも幸せになって貰いたい
170 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:22
亀ちゃんが抱いてくれと言ったとき・・・
うちの中で何かが弾けた・・・
その破片がうちの色んな所に刺さって真っ赤な液体を流した

苦しくて苦しくて・・・
性欲でもなんでもない・・・今のうちにとって
亀ちゃんを抱くことは苦痛だ・・・
亀ちゃんを傷つけるだけだから

気絶した亀ちゃんをガウンで包んでベッドに運んだ。

171 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:23
部屋を出て隣の部屋にノックもせずに入り込む。
ベッドに寝ている美貴の胸に顔を埋めた。

ドクッ、ドクッって美貴の心臓の音が聞こえてくる。

「んぅ・・・あれ?よっちゃん?」

顔を埋めたまま「うん。」と応えた。
美貴が「どしたぁ〜」といいながらうちの髪を撫でる

「たす、けて・・・」

美貴が体を起こすのでうちも自然と顔を上げた。

「いいよ。どうした?」

美貴の顔が霞んだ・・・また、うち、泣いてる・・・・

「よっちゃん・・・どうした?」

美貴が優しくうちを抱きしめる。ホントに優しく・・・

「亀ちゃん・・・うちの部屋にいるから行って。」

美貴はうちの顔を真っ直ぐに見てから頷いた。

「よっちゃんさ。飯田さんところ行ってて。」
「大丈夫・・・ここにいるから。」
「行ってて。」

泣きそうな顔で美貴が言うから頷いた。
172 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:25
一緒に美貴の部屋を出て、美貴はうちの部屋へ入っていった。
うちは一番奥のカオリンの部屋をノックした。

「よっすぃ・・・。」
「美貴がここにって。」

うちがそう言うとカオリンは頷いた。

「ここ、書斎にしてるから、上の部屋にしましょう。」

カオリンはうちの背中に手を添えて歩き出す。
前はこの部屋で寝泊りしてたのにな・・・
いつの間に書斎にしたのだろ・・・
そんなことを考えながら階段を昇り、さゆの部屋を通り越してまた一番奥の部屋の前で止まった。

「今、ここを使わせてもらってるんだ。」

ドアを開けてくれてうちが先に中に入る。
整頓されたシンプルな部屋。

「座って。」

と言われうちは一人がけのソファに座る。

「アルコールじゃないほうがいいかな?」
「むしろアルコールがいい。」

カオリンは何も言わず、グラスに何か注ぎ始めた。
173 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:25
カオリンを抱いたことは一度もない。
出会ったのは夜の街。
うちがいつものように相手を探していたとき。
泣いているカオリに声をかけたんだ。
ホテルに連れ込んだら説教された。
中学生がこんなことしちゃ駄目でしょって。
調子が狂った。そして、カオリンの恋人の話を聞かされた。
体が目的かも知れないと言ったカオリンにうちは言ったんだ。
そいつの目が見えなければ肉体を目的としないよ。って
そうだろ?だって目に見えるから欲しくなるんだもん。って
カオリンはそいつの目を潰したらしい。
二度目に街で会ったときにそう言ってた。そしてその時、
圭ちゃんにも会ったんだ。恋愛に傷つけられて弱った二人に
だから、教えてあげた。
もう、恋なんてしなければ、そんな思いもしないって。
だから、二人は恋をしなくなった。もちろん愛も。

「はい。」とグラスを渡される。

「ありがと。」

グラスには薄い茶色?何かのお茶かな・・・
一口、口に含むとさっぱりしてるけどちょっと苦味がある喉越しだった。
174 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:26
「なにこれ。」
「ハーブティ。」
「ふーん。初めて飲んだ。」
「タイムだよ。」
「タイムか・・・ヘレネだね。」
「そっ。喉にいいし、頭痛にもいいんだよ。」
「へぇ。」

スパルタ王の妻、ヘレネはよく涙を流した。
美しいヘレネが流す涙は魅惑の涙。
男たちを惑わせ、トロイ戦争の引き金になったといわれている。

うちが、ヘレネだったら、涙なんて流さない。
戦争なんて愚かだ。傷つけ合う行為に何があるのか・・・

「よっすぃと二人きりで話すの久々だ。」
「うん。」
「よっすぃが私を救ってくれた。圭ちゃんもだね。どうして石川さんなのかなって思うんだけどね。」
「あぁそいや、石川がカオリンに愛は永遠って言っといてって。」
「フーン。永遠ね・・・。」


カオリンはベッドの上で足を抱えるように座り目を閉じてる。
永遠と愛について考えをめぐらせているのだろう。
うちは窓の外を見た、星の夜空。
美貴と亀ちゃんは大丈夫だろうか・・・
二人は涙を流しているだろう・・・
うちの・・・せいで・・・

「よっすぃ。泣かないで・・・。」

カオリンが抱きしめてくれた。
美貴とは違う温もり。
でも・・・うちの涙は止まらない。
ヘレネの様にはなりたくないのに・・・
あぁ・・・うちには魅了する美しさなど備わってないか・・・
175 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:26
随分、長い間うちは涙を流してた。
カオリンの服にいくつもの染みを作るくらい。

コンコンとドアをノックする音が聞こえて
カオリンがドアを開けると美貴がいた。

「私、書斎で寝るからここ、使っていいよ。」

カオリンがそういって出て行った。
美貴はゆっくり中に入ってくる
笑顔の美貴が・・・

「よっちゃん・・・もう、泣かないでいいよ。」

そっと包まれる美貴の腕。やっぱり安心するんだ。
ほら・・・涙が止まってくる

「美貴が、ずっと守ってあげるから。」

そんな言葉をうちに言ってはいけないよ・・・
美貴がうちのために傷つくことはない。
うちの盾になることはないんだから・・・

「ありがと・・・美貴。」

美貴は優しく微笑んだ。
本当に優しい笑顔・・・ずっとそう・・・笑っててよ。
176 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:26

++++++++++++++++++++++++++
177 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:27
目を覚ますとさゆが絵里を見てた。

「おはようなの。」
「おはよ。」
「顔洗って、朝ごはん食べたら海に行こう。」
「ん。」

頷いて洗面所の前に立つ。
鏡に映った絵里・・・昨日の乱れた自分を思い出した・・・

ただ、快感を求めた・・・おかしくなるくらい・・・
吉澤さんが言うように・・・誰とでもそうなるのだろうか・・・
そうだとしても・・・絵里は・・・吉澤さんだからだと信じたい

それにしても・・・

「酷い顔・・・。」

泣いたせいで目が腫れてる・・・
冷たい水で顔を洗いタオルを濡らして目に当ててさゆの元に戻った

「さゆもさっきまでそれしてた。」

さゆも泣いたもんね・・・

「今日のさゆもかわいいの。」
「うん。可愛い。」

何があっても、毎朝そのセリフは言うんだね。
少しはよくなっただろうかタオルを取ってみた。

「うん。絵里も4番目に可愛い。」
「・・・。」

笑顔で言われた・・・今日くらい責めて2番目にしてよぉ
178 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:28
「着替えるの。」

手にあるタオルをさゆが持って洗面所に行った。
カバンの中からキャミとショートパンツを取り出し着替える。

食堂に行くと既に美貴さんと吉澤さん、柴田さんそれに飯田さんが食事をしていた。

「おはよぉ。」と美貴さん。
「おはよ。」と吉澤さん。
「おはようございます。」と飯田さん。
「おはよう。早く座りなよ。」と柴田さん。

「おはようなの。今日も可愛い?」とさゆの挨拶に笑顔で頷く4人。

「おはよ、ございます。」と絵里も頭を下げて席に着いた。

女の人がパンとサラダとスープそれとソーセージとスクランブルエッグを用意してくれる。

「そうだ、今日はダイビング行くからね。さゆも亀も食べたら水着着てきなね。」

美貴さんは夕べの出来事なんて何もなかったかの様にこれまでと同じ態度だった
だから・・・絵里も何もなかった様な顔をする。
それに・・・吉澤さんも笑顔で絵里を見て笑ったり・・・からかったりしてくる
絵里もいつものように受け答えした・・・
なんか・・・嫌だなこういう関係・・・
夕べのさゆの話を思い出す。
179 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:28
美貴さんと吉澤さんの関係は知ってた。
でも、知らない振りをしてる。
それは、二人が隠してるから、自分がそのことに嫌悪すれば
きっと、二人はその関係をやめる。
でも、それでよかったって思うのは自分だけかもしれない
二人はそうすることで救われてたのにそれを壊す権利が自分にはあるのかと思う。
だから、表面だけでもいつもと同じように生活する。
毎日が楽しく生きていたいから。
人はそれぞれ何かを抱えてる。それはきっと姉妹でも分からないこともあると思う
家族でさえ分かり合えることでもないかもしれない。
そんな時、きっと人は誰かに助けを求める。ひとりではどうしようも出来なくなって
それが、どんな形であれ他人がどうこう言うことではない。
でもね、皆、救って欲しいって思ってると思うんだ。
救ってくれるのはきっと愛し合える相手なんだと思う。
その相手はきっと全てを受け入れ分かり合える唯一の人だから
その人といつか巡り会いたいと願い、求め人は生きる
息絶えたときその人に巡り会えなかったとしてもこの世界のどこかにはきっといたのだと思いたい。

さゆは夕べそう話してくれた。
180 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:29
表面だけでも楽しく・・・
表面だけではないだろう、それぞれの事情を知っているから
それにたいし労わり合いをしているじゃないか。

「美貴、ソーセージあげる。」

吉澤さんの声にあーんと口をあける美貴さん。

「さゆも欲しいの。」
「はいはい。あーん。」

って欲しがるさゆにあげる吉澤さん。
いいな・・・

「ほい。亀ちゃんもあーん。」

フォークに刺さったソーセージを差し出された
やっぱり・・・嬉しい・・・

「あーん。」って口でそれを受け取る。

「亀ちゃん顔が溶けそうなほど笑顔なんだけど。」

柴田さんは大丈夫なのあれ?って美貴さんに聞く。

「いいのいいの。亀はいつもデレって笑顔で独り言ばかりだから。」
「へぇ。面白い子なんだね・・・ホントに。」
「そう、亀ちゃんは面白くて優しい子でさらに変な子なんだよ。」

笑い合う三人。

「変な子じゃないですって。」

絵里が反抗。
前と同じ・・・光景だ。
言いたいことを言い合う光景。でもその言葉は絶対に確信には触れないんだ。

181 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:29

++++++++++++++++++++++++++
182 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:30
海に出てかれこれ1時間。その前にダイビングの基礎を習ってきた。
ボートの上にいるのは5人
絵里、さゆ、美貴さん、吉澤さん、飯田さん

今はダイビングをするために準備中。
美貴さんと吉澤さんはダイビングの資格を持っているから絵里たちは二人に一緒に入ってもらう。
飯田さんは泳げないらしい。しかも陽射しを気にしてこの暑い中バスタオルに包まってる。
何で、ついてきたんだ?

さゆには美貴さんがついて、絵里には吉澤さん。
美貴さんと吉澤さんが先にバシャーンと海に入った。
続いて絵里たちも。
絵里に潜るよと合図する吉澤さん、二人で先に潜る。

シュー・・・シュー・・・

息を吸う音だけが聞こえる。
吉澤さんと手を繋ぎ海の中を進む
珊瑚や小魚たちが絵里たちと一緒に泳いでくれる

吉澤さんが手を解き指差す。
大きなカラフルな魚がいる
きれぇ・・・
このまま、二人きりならいいのに・・・
ダイビングしながらずっと思ってた
二人きりなら・・・美貴さんに助けてなんていわないよね
二人きりなら・・・嫉妬も独占欲もなにもないよね
二人きりなら・・・絶対に愛してもらえるのに・・・

183 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:31
上がろうという合図をする吉澤さん
手を繋いで上を目指す。

海面に出ると少し離れたところにさゆと美貴さんもいた

「どうだった?いいでしょダイビング。」
「はい。綺麗ですね。」
「運がいいとマリンスノーとか見れるよ。美貴も数回しか見たことないけど。」
「マリンスノー?」
「お姉ちゃんの写真で見たことあるの。凄い綺麗なの。」
「海にいる微生物が作る有機物に海中にある粒子がくっ付いて目に見えるくらいの大きさになったものがね
 光に照らされると雪みたいに見えるのだからマリンスノー海の雪って意味だよ。」
「ほぉー。」

吉澤さんが説明してくれた。けどマリンスノーが海の雪くらい訳さなくて分かりますって。

「マリンスターもあるの。」
「星も?」
「マリンスターはマリンスノーにくっ付いてる微生物が驚いて光ったりすると星に見えるんだ。
 うち見たことないんだよね。美貴あったよね。」
「うん。一回だけね。」
「へぇー。凄いなぁ見たいなそれ。」
「まぁこればっかりは運だね。美貴も何年前だっけなぁ見たの。高校1年くらいの時だったもんなぁ。」

ボートの上でそんな話しをしていたらあっという間に沖までやってきた
ボートから降りて吉澤さんはお父さんと用があるというので別れ、
美貴さんがシュノーケリングをやろうと言うので沖でシュノーケリングをすることに。

184 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:32
ボンベがないから泳げれば簡単にできる。
それぞれ海面に顔をつけて海の中を観察することにした。

ビーチに上がって3人でのんびり。
やっぱり美貴さんは夕べのことには触れない。
あまりにもみんな触れないから昨日は何もなかったのかもって思ってしまう。
絵里の夢?みたいな。

「明後日くらいに帰ろうか。」

美貴さんが突然そう言った。

「まだ、夏休みはあるの・・・。」

そうだそうだ、折角のバカンスだし・・・

「ん〜。でも、多分、明後日か明々後日くらいには帰るよ。」
「どうして?」
「こっちでの用事が終わるから。」

あぁ・・・そうだ、バカンスって言っても吉澤さんが呼ばれて着いてきただけだもんね

「用事終わっちゃうの?」

おい・・・さゆその聞き方へんだろ。

「ん〜。多分、今ごろよっちゃんが済ませてる。
 夕べ終わったんだけどね。よっちゃんが皆の前で社長就任断ったから。」
「えっ断ったんですか?」
「もったいないの・・・。」
「ん〜でも、よっちゃんが社長ってガラでもないしね。」
「でも、頭いいし・・・出来そうだけどな。」
「うん・・・さゆもそう思うの。」
「頭よければ出来るってもんじゃないから。よっちゃんが決めたことだし。いいんじゃないの。」

自分で決めたことだからといわれると周りの人は口を出せない・・・
そう・・・この人たちはいつもそう。
本人の意思。自分で決めたこと。だから何も言わない。
それってさ・・・寂しいよ・・・
185 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:32

++++++++++++++++++++++++++
186 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:33
「夕べのはどういうつもりかまず聞こう。」
「まだ、学生だから。」
「いずれ、うちの会社に入るのだから、今から仕事を覚えておいたほうがいいと思って
 任せるつもりだったのに。」

親父の部屋でこないだの話し合い。

「うちってさぁ。絶対、親父の会社に入らないといけないわけ?」

親父は当たり前だろって顔でうちを見る。

「当然だ。私の跡継ぎなんだからな。」
「親父の代で終わりってないの?」
「ふざけてるのか?」
「いや・・・マジだけど。」
「継ぐ気はないと?」
「ん〜。うちには向かないと思う。」
「どうしてだ。」
「理由はいくつかあるよ。一つはうちは多くの人間の中にいるのが嫌い。
 二つ目はうちは限られた人間しか信用しない。美貴とかさゆとかカオリンとかね。
 三つ目はうちは、親父が嫌いだから。」

親父がうちを怪訝そうに見る。
きっと自分は好かれてると思っていたのだろう。
表向き、うちは親父を慕ういい子だから。
187 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:34
「提案として、あゆみの旦那になる人に任せるってのはどうだろう。一応、親父の息子になるんだし。
 親父が言えばあゆみを自分の子に出来るだろう?そしたらその人を婿にすればいい。
 親父にとっては簡単なことだよね。」

あゆみも戸籍上、うちの本当の姉になることを嫌がりはしないだろう。
むしろ、きっと悦ぶ、血の繋がりのある家族が出来るのだから。

「私の何が気に食わないんだ。」
「金で何でも動くと思ってるところ。」
「金があるからひとみ、お前に何不自由ない暮らしをさせてやってるだろう。」
「それは感謝してるよ。おかげで自由気ままな生活が出来てる。」
「じゃぁなぜだ。」
「自由だけど自由じゃないから。」

親父は何を言ってるんだって顔。
きっと分からないよあんたには。
188 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:35
「将来を決められた生活をしてきた。それってどういうことか分かりますか?
 将来のための習い事、将来のために選んだ大学。自由な生活だけど自由な人生じゃない。
 うちは自由な人生が欲しい。」

親父は無言だ。
何も言わず、タバコに火をつける。

5分・・・くらいかな・・・親父はまだ無言だ。

「どうしますか?これで、終わりならうちは日本に戻るけど。」
「お前の我侭のために私は頭を下げたのか。」

確かに、うちの我侭だ、八百屋の子に生まれたら大抵、その子は八百屋に就く
自営業なら大抵はそうだ。

「初めての我侭です。」

親父はうちのことを全く知らない。
どんな性格なのか、何が好きで何が嫌いなのか。
うちが、本当は凄い我侭だということも。

「認めることはできないな。」
「どうして。」
「私は何でも思ったとおりにしてきたからだ。」
「はは・・・うちの我侭は親父から受け継いだみたいですね。
 だから、うちも絶対に継がないです。」

うちは席を立って部屋を出た。

189 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:36
カオリンの部屋にそのまま向かう。
ノックをすると「どうぞ。」と声が返ってきた。

「カオリン、今いい?」

書斎で書類に目を通してるカオリン。

「うん。どうしたの?」
「明日、日本に帰りたいんだ。」
「よっすぃだけ?」
「どうかな、美貴はうちが帰るって言えば帰るだろうけど
 さゆと亀ちゃんは聞いてみないと微妙。」
「そっか。じゃぁどうしようかな。」
「3人が戻ったら確認してみる。」
「うん。もうそろそろ戻ってくるかな。」
「だね。じゃぁ、うち下で待ってるね。」
「うん。これ、終わったら私も下にいくわ。」


美貴たちが戻ってくるまでにうちはもう一つやることがある。

「圭ちゃん?」
『あら、吉澤も戻ったの?』
「いや、まだグアムだよ。明日かえる。」
『そう。』
「石川はどう?」
『うん。空港に迎えに行ったら抱きつかれて驚いたわ。』
「そっか。まぁ、ゆっくり頑張って。」
『そうね。そうするわ。で?それが聞きたくてじゃないでしょ?』
「うん。お願いがあるんだ。」
『私に出来ることなら聞くわよ。』
「できるよ。」

うちは圭ちゃんにお願いを2つした。
協力してくれるという圭ちゃんに感謝を述べて電話を切ると美貴たちが調度戻って来た。
190 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:36
「おっ。どうだった?」

と美貴がポタポタと濡れた水着のまま聞く。

「うん、まぁ何とかね。それで明日帰ろうと思うんだ。」
「明日か、明後日くらいかと思ったけど。」
「うん、うちは明日帰る、皆はまだ居たければ居ればいいよ。」
「美貴は帰る。さゆと亀ちゃんは?」

さゆは返答せずに亀ちゃんに視線をやる。

「じゃぁ二人はまだ居るといい。折角の夏休みだし。カオリンいるから安心だもんな。」
「うん。さゆ、お母さんたちともゆっくりしたいだろうし。そうする?」
「うん。絵里は?」
「絵里は・・・。」
「亀、はっきりしろ。」
「はい・・・えっと、さゆと残ります。」
「了解。じゃぁカオリンに飛行機の手配頼んでくるわ。」
「うん。」
「うちと美貴だけじゃ。今日の便あったらそれでもいいよね?」

頷く美貴に笑顔でありがとと返した。
191 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:37

++++++++++++++++++++++++++
192 名前:タイム 投稿日:2006/04/24(月) 23:37
「なんか、急いでない?」

夕方の便が取れたので美貴と直ぐに帰り支度をして空港に向かった。
出航まで少し時間があるので早めの夕食。

「うん。速いほうがいいと思って。」
「おじさんとのこと?納得してくれたの?」
「してない。」
「逃げ帰るのかよ。」
「ん〜。まぁお互い譲らないだろうから、話し合ってももう無理。」
「ふーん。」
「だから、まぁ逃げるっていわれても仕方ないね。」
「そうだな。」
「うん。」

カオリンが飲ませてくれたタイムのおかげだろう。
親父に本心を言う勇気がでたのは。
そして、もう一つ勇気をくれた。
日本に帰ったら美貴にも話そう。
193 名前:clover 投稿日:2006/04/24(月) 23:42
本日の更新以上です
>>170-192 タイム

>>167 :ももんが 様
レスありがとうございます。

>前回初めましてと挨拶するのを忘れていました。大変失礼しました。
いえいえ、読んでいただいているだけで嬉しいです。

>>168 :名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>前スレのみきよしリクした者ですが買い物篇も読ませて頂きました!
ありがとうございます。喜んでいただけたようでよかったです。
また、区切りがついたら乗せたいと思います。既に出来てあるのがあるのでw

>>169 :名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
194 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/25(火) 11:05
よっちゃんも美貴ティもやさしい子だぁ
この二人には幸せになってもらいたいなぁ
195 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/25(火) 11:49
みんなが幸せになればいいなぁ…
196 名前:ももんが 投稿日:2006/04/25(火) 21:32
毎日なるだけハッピーエンドで終わってほしいなあと思ってます。
これからも更新頑張ってください!
197 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/25(火) 22:17
更新お疲れ様です!みんなつらいですね
ミキティ、よっちゃんの事ちゃんと守ってあげて下さい!

みきよし短編の続編?の方はもう出来上がってるんですか!(゜∀゜)
恋の神様の今後の展開を心配しつつみきよしの方楽しみにしてます(・∀・)ニヤニヤ
198 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/26(水) 16:30
長編で切なく、短編で甘く。
cloverさん最高!!

吉、亀、藤、みんなに幸せになってもらいたいと思いつつ、
痛いの好きな私としては、かなりよい展開でございます。
続きがんばってください。
199 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/26(水) 18:25
結末や展開を示唆するようなレスは控えて貰いたいです。
200 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:33
さゆと二人で食事・・・
吉澤さんと美貴さんはあれから飛行機が取れたと直ぐに行ってしまった。

「明日は水族館に行くの。海の中にあるんだって。」
「うん。」
「吉澤さん帰っちゃって寂しい?」
「まぁ・・・。」
「さゆがいるの。」
「うん。」

やっぱり一緒に帰るべきだったのかな・・・
でも・・・
201 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:34
さゆから吉澤さんや美貴さんの情報を教えてもらうには
ここで残ったほうがチャンスは多いと思った。
あぁ・・・絵里ってなんかいつからこんなに考えて行動するようになったんだろ・・・

朝食を済ませ、飯田さんに連れられ水族館?っていうか
海の中を歩けるようになっていてそこにある窓から海にいる魚たちを見るんだけど
凄い綺麗・・・
202 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:35
それから、レストランで凄い大きいロブスターとステーキ
結局、食べきれず半分以上を残した。
美貴さんがいたらステーキは完食間違いなしだったのになぁ。

それから、DFSでお買い物。お父さんへのお土産と絵里へのお土産。
チョコとアロハシャツなどもろもろ購入した。

ご両親との再会に絵里はじゃまかなって思って夕食を食べ終えた後
さゆを食堂に残し、ひとりプールで泳いでみた。

プカプカって浮きながら暗くなってきた空を見上げて
これから、吉澤さんとどうしとうかなって考える

203 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:35
ずっと何もなかった振りなのかなと思うとちょっと辛いな・・・

「あら、独り?」

くるっと水の中で回転して声の方を見ると飯田さんがカラフルなグラスを持って立っている。

「ドリンク持ってきたけど飲まない?」

スーイ、スーイってサイドまで泳いでプールから出た。
飯田さんが座るベンチの横にタオルを敷いて絵里も座った。
204 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:37
「どうぞ。」
「どうもです。」

一口飲んだら凄い甘いジュース。マンゴー?

「おいしい。」
「疲れてるときは甘いの欲しくなるよねぇ。」

って飯田さんは首をコリコリって回しながらいうからちょっと笑ってしまった。

「日本って最近どう?」
「へっ?日本ですか。」
「うん。もう2年帰ってないんだよね。」
「ご両親、心配しませんか?」
「電話はたまにしてるから。帰るともぉ。結婚しろってうるさくてね。」

苦笑いする飯田さん。
205 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:38
「飯田さんもやっぱり吉澤さん派なんですか?」
「吉澤さん派って。」

面白いって笑う飯田さん。

「よっすぃは愛は必要ないって言ってるもんね。まぁ私も近いかな。」
「近いんですか・・・。はぁ・・・。」

思わずため息を漏らしてしまった。
周りに、愛はある、必要だっていう仲間が欲しい・・・

「ため息つかないのぉ。幸せ逃げるぞ。」
「幸せってなんですかねぇ。絵里は好きな人と一緒にいるだけで幸せだと思うんですけど。
 そうじゃない人もいるみたいで・・・。」
「そうだねぇ。人それぞれ考えはもってるからね。でもね、人を好きになる気持ちは大切だと思うよ。」

ニコって笑う飯田さん。
絵里を否定しない言葉にちょっと涙が出てきた。

206 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:40
「辛い?」

頷くと飯田さんの長い手がすっと伸びて頭を撫でてくれた。

「人を愛するって難しいよね。特に、よっすぃを愛するのは凄く難しいと思う。」
「吉澤さんはどうして愛は必要ないって思うようになったんでしょうか?」
「どうしてかな。私が出会ったときにはもうそうだったから。詳しくは分からない。
 もしかしたら誰も知らないのかもしれない。」
「美貴さんも?」
「彼女は・・・知ってるのかな。ずっと隣にいたから。知ってるかもね。」
「じゃぁどして、助けてあげないんだろ・・・。」
「彼女は助けてって言われたら助けるし、間違えてるって思ったら正すよ。
 まだ、方法が見つからないのか、それとも、必要ないとするしかないのか
 どっちかかな。」
「そうですか・・・。」
「まぁあくまで想定だよ。よっすぃはさ。究極の愛を求めてるんだよ。」
「究極、ですか。」
「うん。ホントの自分探しに疲れたって言ってた。」
「ホントの自分探し?」
「昔、人間は二つの体がくっついてたんだって。それを神様が二つに引き裂いて
 今の人間の体になった。だからその引き裂かれた相手を探したいって。
 でも65億人から探し出すのは大変だって。もう、疲れたって言ってた。」
「それって神話ですか?」
207 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:41
「どうだろ。神話ではないんじゃない?分からないけど。ベターハーフって言うじゃない。
 引き裂かれた片割れをさ。」
「ベターハーフ。」
「うん。でもよっすぃはベターじゃなくてベストを探してるんだよね。きっと。」
「ベスト・・・。」
「ベターハーフって妻とか伴侶とかって意味なんだけどね。」
「へぇー。」
「誰かと比べて自分にぴったりな人じゃなくて、よっすぃの場合、ベストだよね、
 一番じゃないとダメなんだろうねきっと。」
「一番かぁ・・・。絵里はそれになれないのかな。」
「成れる成れないじゃなないんだよきっと。その人は決まってるのよ。
 なれるんだったらきっと形が変わってよっすぃの半身になるんでしょ。
 そうじゃないの。裂かれたときからきっと形は変わってないの。」
「それってどうやったらわかるんですかね。」
「時間は必要だよねきっと。神様じゃないから、会って直ぐとは行かないだろうし。」
「そっか・・・。」
「亀ちゃんの気持ちがさ本物だったら頑張りなよ。」
208 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:41
素直に「はい。」と応えられない。

吉澤さんが望む形になるのではなく。
吉澤さんに合う形が絵里でなければいけない・・・
絵里はその形なのだろうか・・・
一体その形ってなんなんだろ・・・
209 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:42
「よっすぃと愛し合えた人はきっと幸せだよね。みんなよっすぃと愛し合いたいって思うんだよ。」
「飯田さんも?」
「うん・・・でもさ、そこまでいけないの。傷つけちゃうし傷つくから。怖くてね。
 美貴も圭ちゃんも石川さんもね。もしかしたらさゆですら思ってるかも知れない。」
「えっと・・・。」

そんな風に見えないけど・・・

「だって、よっすぃと愛し合えたらホントに究極の愛が手に入るって思わない?
 絶対に傷つけられないで愛し愛されるんだもん。素敵だよね。でも、逆に怖いよね。
 傷つけちゃったとき、傷つけられたときはどうなるんだろうって。」

210 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:43
あ・・・絵里は傷つけたんだよね・・・
絵里自信はそうは思ってないけど・・・
美貴さんはそう言った。

「どう・・・なるんですかね。」
「ん〜。よっすぃのことだからその原因を排除するんじゃない?」

やっぱり・・・ここに残るべきじゃなかったかも
吉澤さんから離れちゃいけなかったかも・・・
もし、絵里が吉澤さんを傷つけてたとしたら・・・
日本に帰ったとき何かがわかってるかも
どうしよ・・・
211 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:43
「亀ちゃん?」
「絵里・・・傷つけたかも、吉澤さんを。」
「それは夕べ?」

頷いてみせる。
どうしよう・・・どうしよう・・・
傷つけちゃったかも・・・
212 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:44

++++++++++++++++++++++++++++
213 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:44
吉澤さんたちから2日遅れて帰国した。
空港まで迎えに来てくれたのは美貴さんひとり。

「お帰り。」とだけ言ってそれから言葉を発しない美貴さん。
美貴さんの凄い運転テクニックに絵里もさゆも必死にシートしがみ付きながら
やっと着いた久しぶりの自宅。

荷物を整理してからさゆの部屋に行くね。と取り合えず自分の部屋に入った。
お父さんはまだ会社だし。スーツケースを開いて洗濯物とかお土産とかの整理をした。

さゆのところに行く前に、会いたい人の部屋のインターホンを押す。

ピンポーン、ピンポーン

居ないのかな?

ピンポーン、ピンポーン

吉澤さんは出てこない・・・
214 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:45
さゆの部屋のインターホンを押すと直ぐに美貴さんが出迎えてくれた。

「あの、吉澤さんはどこか出かけてるんですか?」

玄関先で質問する

「あがりな。」というだけで、質問の答えはくれない。

「さゆ、今、部屋で荷物広げてるから。ちょっと待ってて。」

椅子に座ると美貴さんがアイスティーを入れてくれた。

「美貴たち帰った後は何してたの?」
「水族館とかショッピングを。」
「そっか。」
「はい。」

途切れる会話・・・なんだこの気まずい空気は。
215 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:45
「お姉ちゃんにこれ買ってきたの。」

ジャーンと部屋から出てきたさゆの手にあるのはDFSで買った
チョー土派手なピンク色の前にはイルカがプリントされているのTシャツ
美貴さんは絶対着ないだろうって分かりきってるTシャツ。
思わず、絵里も美貴さんも苦笑

「あ、ありがと。」と受け取る美貴さん
「着てね。」と言うさゆの言葉はスルーしてる。

「こっちは吉澤さんの。」

美貴さんと色違いのTシャツ。青だからまだいいけどでも、吉澤さんも着ないだろう・・・

「吉澤さん呼んでくるね。」

と言うさゆの言葉に直ぐに反応したのは美貴さん。
玄関に向かおうとするさゆの腕を掴んだ。
216 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:47
「どしたの?」
「あ、えっと今、居ないからよっちゃん。」
「そうなの?ビックリしたぁ。いきなり掴むから。」
「ごめん。」

明らかに、おかしい美貴さんの行動・・・
あ・・・怖い・・・なんか怖いよ・・・

美貴さんがさゆにもアイスティを入れるために席を外すと
さゆが携帯を取り出し誰かにかける。

「吉澤さんに電話してみるの。」と小声で言う。

さゆも美貴さんの行動がおかしいと思ったのだろう。
217 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:47
「あれ?」
「どうしたの?」
「かからないの・・・。」

美貴さんがさゆにアイスティーを渡す。

「よっちゃんにかけたの?」
「うん。でも現在使われておりませんってなるの。」

美貴さんは深くため息をつく。
なに?吉澤さんどうかしたの?

「よっちゃんね。家出た。」
「はっ?」
「うそっ。」

素早く反応した絵里たちに美貴さんは「どこいったんだか。」と呟く。
218 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:48
ちょっと、そんな落ち着いてないでくださいよ。
どこいったんですか?
なんで止めなかったんですかっ。

「どこ行っちゃったの?」
「わかんない。今日の朝はもう居なかったから。」

そんな・・・やっぱり私が傷つけたから?

「亀のせいじゃないよ。だからそんな顔するな。」
「でも・・・絵里が傷つけたから・・・ですよね。」
「そうじゃない。よっちゃんは、お父さんの会社継ぐの嫌だから。縁きるって。
 だから出てくって。でも、急にいくとは思ってなかったよ。
 連絡先も知らせないで・・・あのバカ。」
219 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:49
美貴さんにも言わないで行っちゃったんだ・・・
どこ行っちゃったんだろ・・・。

「で、これ。」

美貴さんがすっと水色の封筒を絵里に差し出す。

「何ですか?これ。」
「よっちゃんが、亀にって。」
「吉澤さんが・・・。」

封筒を開けると中には手紙?
それを取り出すとそこには文字が書いてある。
220 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:49
― ― ― ― ― ―― ― ― ― ― ― ―― ― ― ― ― ―
 亀ちゃん

   愛してる
        エロスより
― ― ― ― ― ―― ― ― ― ― ― ―― ― ― ― ― ―
221 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:50
えっとなにこれ?
これだけ?
意味が・・・まったくわらからないんですけど・・・
愛してるって?絵里のこと?吉澤さんが?

「なんだって?」
「これって・・・」

美貴さんにそれを渡すと「なるほどね。」って呟く。
222 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:51
「どういう意味ですかこれ。」
「よっちゃんはエロスってことでしょ。」
「はい。・・・ってえっ?意味わかんないんですけど。」
「恋の矢を射るのは誰?」
「エロスですよね。」
「亀はそれに射られたんでしょ?」
「はい。」
「だから、それを射たのは?」
「吉澤さん?」
「そう。」
「って?絵里だけ?さゆは意味分かった?」
「分からないの。」
「単純によっちゃんは亀を愛してるってことだよ。」

美貴さんは優しく笑った。
223 名前:現実 投稿日:2006/04/26(水) 20:52
「吉澤さん・・・いなくなっちゃったじゃないですか・・・なのに愛してるって・・・。」
「居ないけど。愛してる。それだけ。今までさ、よっちゃんの話し聞いてたら分かるでしょ?
 亀が本当に恋の矢に射られたならさ。大丈夫。」

大丈夫って・・・何が?
で、結局、吉澤さんはどこに?

224 名前:clover 投稿日:2006/04/26(水) 21:01
本日の更新以上です
>>200-223 現実


>>194 名無飼育さん
レスありがとうございます。
最後まで見て守って下さい。

>>195 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
最後まで宜しくです。

>>196 ももんが 様
レスありがとうございます。
最後まで頑張ります。

>>197 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
短編も頑張るので宜しくお願いします

>>198 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
>cloverさん最高!!
ありがとうございます(*^-^*)> ぽりぽり てれるぞ・・
頑張ります

>>199 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
225 名前:ももんが 投稿日:2006/04/26(水) 21:15
物語急展開ですね。
次はどんなんだろうとワクワクしてます♪
226 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/27(木) 23:34
更新お疲れ様です。
いつも読ませてもらってます。

これからどーなるんでしょうか…次回更新がすごく楽しみです!
良い方向に行くことを願って…w
227 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:08

吉澤さんが行方不明・・・
家出か・・・いや違う、自立して出て行ったって聞いたから
ここを出て行って早くも半年以上が過ぎた・・・

228 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:08
_________________________________________________________________________
絵里はもう直ぐ高校2年生になります。
引っ越してきて1年経ちます。
さゆは相変わらずですよ。毎朝、かわいい?って聞かれます。
美貴さんは・・・吉澤さんがいなくて寂しそうです。
お酒の量がちょっと増えてますね。
こないだ、石川さんが来ました。
美貴さんにケチョンケチョンに言われながらも楽しそうにお酒を飲んでいました。
保田さんとの関係もあまり変わっていないようです。

吉澤さん。今、何してますか?
今日は満月ですね。
昨日の夜は雨だったのに、今日は凄い晴れてる。
あっ、昨日、言い忘れたんですけど昨日、犬を飼いました。
ラブラドール・レトリバーです。名前はよっちゃん。
美貴さんが吉澤さんに似てるからって。
今、そのよっちゃんのお散歩中です。まだ、凄い小さい赤ちゃんです。

_________________________________________________________________________
229 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:08
_________________________________________________________________________

吉澤さん。
今年の夏休みもなんとか試験をクリアしたので海に行こうって話してます。
吉澤さんがいなくなって1年です。
早いなぁ・・・
でもこうやって毎日、吉澤さんに話しかけてると寂しくないのが不思議です。
今年の水着はどうしようかな。
何がいいと思います?
今年は露出少なめで行こうかな。うん。そうしよう。うん。

あ、今、頷いてるって笑いました?
頷いたっていいじゃないですかっ。
レトリバーのよっちゃんは結構大きくなりましたよ。
美貴さんが色々芸を仕込んでます。でも・・・
独りで飲むのが寂しいってよっちゃんにも飲ませるのは・・・
酔っ払うと家の中を走り回って大変なんです。

_________________________________________________________________________
230 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:09
_________________________________________________________________________

ハッピバースディ・トゥ・ミー
17才ですよぉ。今日は絵里の誕生日です。
吉澤さんもお祝いして下さいね。

冬休みです。明日はクリスマスイヴ。
さゆと美貴さんと夕食を食べに行こうと計画中です。
レトリバーのよっちゃんはお留守番です。かわいそうだけど。
吉澤さんは?
イヴはどんな風に過ごしますか?
素敵なクリスマスを過ごしてくださいね。

_________________________________________________________________________
231 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:09
_________________________________________________________________________

高校3年になりました。
あ、美貴さん。就職しましたよ。
出版社だそうです。ファッション雑誌の。
先月は研修だとかでお泊りしてきたんですが・・・
疲れきって帰ってきました。社会人って大変ですね。

絵里も受験生です。毎日、さゆと勉強してますよ。
吉澤さんがいたら教えてもらえたのにな。
でも、大丈夫。かなり頑張ってるから。
今年の夏は遊ばずに勉強ですよ。

吉澤さんは?仕事してるんですか?
どうですか、仕事は。頑張ってくださいね。
絵里も頑張りますから。

_________________________________________________________________________
232 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:09
_________________________________________________________________________

吉澤さん。第一志望に合格しましたよ。
絵里、凄くないですか?
頑張った甲斐がありました。
経営学科で簿記とかパソコンとか習います。
事務職に就きたいなって思ってるから。
さゆは別の大学に行きましたよ。
学校は違うけど、方向は一緒だから帰りに待ち合わせしようって
もっと驚きなのが、美貴さんが担当する雑誌のモデルに
さゆと絵里で出ることになりました。
美貴さんがいきなり、雑誌にでってくれない?ってか出ろ。
って言い出して。美貴さんぽいでしょ。
見てくださいね。

_________________________________________________________________________
233 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:10
_________________________________________________________________________

初めてコンパってものに行きました。
短大で仲良くなった子に人数あわせで頼まれて・・・
いいものではないですね。
でも、勉強にはなりました。
やっぱり、絵里は吉澤さんが好き。愛してる。
会えなくたって吉澤さんはいつも絵里の側に居る気がするんです。

_________________________________________________________________________
234 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:10
_________________________________________________________________________

19歳。十代最後の年になっちゃいました。
今日は凄い冷え込みますね。
吉澤さんは風邪ひいてないですか?
絵里は最近、寒いのでレトリバーのよっちゃんと一緒に寝てます。
温かいですよ。でも多分、吉澤さんのが温かいかな。

そう、こないだ、美貴さんのご両親が見えました。
美貴さんにお見合い写真を届けにです。
こんなのと結婚できるかって一喝して帰してました。
さゆと二人で見ない振りしてました。

_________________________________________________________________________
235 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:10
_________________________________________________________________________

吉澤さん25歳のバースデーですね。
おめでとうございます。

就職活動って大変ですね。
足が浮腫んで大変です。リクルートスーツは暑いし。
まだ、内定が取れません。
周りの子何人かは内定取ってるから焦りますね。
夏までには決めておきたいなぁ。
あっ何気に絵里ってスーツ姿が似合いますよ。
自惚れじゃないですからね。

_________________________________________________________________________

236 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:10
_________________________________________________________________________

最近、メチャクチャ暑いですね。
夏ばてしてませんか?
絵里はもうバテバテです。
面接会場行くまでにバテちゃいます。

夏になるといつも海に行きたくなります。
吉澤さんとボートに乗ったのが凄く楽しかったから。
今日みたいに時間が出来るとひとりで来ちゃうんです。
見てるだけでなんかリフレッシュできますよ。
吉澤さんも海みてますか?

_________________________________________________________________________

237 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:11
_________________________________________________________________________

祝20歳。
成人しましたよぉ。お酒飲めちゃいます。
って飲んでましたけどね。
来月は成人式です。
こないだ、さゆと振袖を作りに行きました。

吉澤さんに会ったときはまだ、15歳だったから
もう5年ですね。
今日は、あのグランドに行ってきました。
ノンちゃんとあいぼんいましたよ。
あいぼんにおばちゃん扱いされて凹みました。
二人とも吉澤さんに会いたがってましたよ。
のんちゃんはキャプテンになってました。
褒めてあげてくださいね。

_________________________________________________________________________
238 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:11
_________________________________________________________________________

小さな会社に就職決まりました。
卒業式ギリギリに決まってよかった。
もう直ぐ社会人ですよ。

そうそう、さゆが凄い人気なの。
だから吉澤さんも知ってるかな?
前に出た雑誌のモデルでさゆが可愛い衣装着れるって
それからチョクチョク出るようになって
見てあげてくださいね。

成人式のとき自分の髪で結いたいって思って
伸ばしたんですけど、切ろうかなぁ。
どっちがいいですかね?

_________________________________________________________________________
239 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:11
_________________________________________________________________________

朝起きて会社行って、入力作業して帰ってきてゴハン食べて寝る。
そんな毎日です。
社会人になるってこんなものですかね?
でもその代わり、吉澤さんのことを想う時間が増えて嬉しいですけどね。
最近、吉澤さんの言ってたことが分かるようになって来ました。
上司の奥さんや旦那さんの愚痴とか聞いてるとうんざりです。
吉澤さんは毎日楽しいですか?

_________________________________________________________________________
240 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:15

++++++++++++++++++++++++++++
241 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:16
「絵里・・・お腹すいたの。」

インターホンが鳴りドアを開けると疲れきった顔のさゆ。

「どうぞぉ。今までバイト?」
「うん・・・お姉ちゃんはまだやることあるって。」
「大変だね。」
「あれ、絵里も食べてないの?」
「うん、お父さん今日から出張なんだって。独りだと洗濯とかしちゃって食べはぐるんだよね。」
「分かる。お菓子とか摘んでおしまいなの。」
「そうそう。ってことで、作ってないから冷凍してあるカレーでいい?」
「うん。何でもいいの。」

電子レンジで解凍してっと・・・
242 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:16
「さゆ大学はどう?」
「うん。特に楽しいことも嫌なこともないの。ただ、周りがうるさいの。」
「ファンの子?」
「写真撮らせてとかサイン頂戴とか。」
「あぁ仕方ないよ。人気者だもんね。」
「その中に王子様がいればいいけど。」

おい・・・20歳になってもまだ言うか王子様って・・・

「絵里、冷たい視線で見ないで欲しいの。」
「見てないよ。さゆらしいなって。来るといいね王子様。」
「絵里は見つかってるけどさゆは見つけるところから始めないといけないの。」
「がんばれぇさゆ。」
243 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:16
「吉澤さん元気かな?」
「元気だよ。」
「なんで分かるの?」
「絵里が元気だから吉澤さんも元気なの。」
「でも柴田さんの結婚式も来なかった。来るかなって思ったんだけど。」
「あぁそうだったね。」
「会いたい?」
「・・・。」
「会いたいよね。」

レンジが鳴った。
解凍されたカレーをお皿に盛ってさゆと二人で食べる。
244 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:17
「おいしい。」
「よかった。」

おいしそうに食べてくれると嬉しいな。
吉澤さんにも食べさせてあげたいな。

「絵里は会社にいい人いないの?」

さゆの言葉に驚きを示すとさゆは悲しい目で絵里を見る。
245 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:17
「もう、5年だよ・・・吉澤さんは帰ってこない。ずっと思い続けるの?」
「さゆは無駄だと?」
「そうじゃないけど・・・絵里が可哀相過ぎるの・・・。」
「愛してない人とでも一緒にいるほうが幸せ?」
「孤独は埋まると思うの。」
「絵里は孤独なんかじゃないよ。不思議なんだけどね。寂しいけど孤独ではないの。」
「強がりじゃない?」
「違うよ。ただ、愛してるの。吉澤さんだけを。愛してと思うのはやめたの。
 そしたらね、孤独じゃなくなった。愛するだけで幸せなの。ただ、愛する人がいる。
 それだけで十分なんだ。」
「そう・・・絵里が幸せならそれでいいの。」
「うん。」

さゆが笑ってみせるから、絵里も笑顔を返す。
246 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:18
「明日なんかあるの?」

壁に掛けてあるカレンダー。
6月8日に付けられた○印。

「初めて吉澤さんに会った日。」
「雨の日の?」

そう、もう丸5年。
247 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:18
「毎年、その日はあの公園行くの。」
「そっか。」

いるかも知れないって期待してね・・・

「さゆたちってあの頃のお姉ちゃんと吉澤さんと同い年になっちゃったね。」
「そうだね。」

早いね年取るのって・・・
二人でため息交じりに呟いた。

絵里たちおばちゃん扱いしてたもんね。
今、思うと失礼だよね。
248 名前:亀井の想い 投稿日:2006/04/29(土) 15:18
「明日は・・・会えそうな気がする。」
「どうして?」
「そんな気がするの。去年も一昨年も思わなかったんだけどね・・・」
「不思議なの。」
「うん、不思議・・・約束なんかしてないのにね。」

249 名前:clover 投稿日:2006/04/29(土) 15:23
本日の更新以上です
>>227-248 亀井の思い

>>225 ももんが 様
レスありがとうございます。
はい、そろそろラストに向かっている感じです。
最後までよろしくです。

>>226 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
>いつも読ませてもらってます。
嬉しいです。頑張るので宜しくです。

250 名前:ももんが 投稿日:2006/04/29(土) 21:39
亀ちゃん健気ですね。
かわいいなあと思いながら読んでます。
最後まで頑張ってください!
251 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/30(日) 16:52
>そろそろラストに向かっている感じです。

やはりそうですよね
毎日楽しみにしているので、終わりが近づいていると思うと…
ずっと読み進めていきたい作品ですが、完結しないわけには
いきませんもんね(>_<)
大人しく最後まで見守らせていただきます
252 名前:吉澤の想い 投稿日:2006/05/01(月) 21:31
「うち、ここ出るわ。大学も辞める。」

グアムから帰って直ぐにうちが言った言葉に美貴は凄く驚いた。
でも、もう決めたこと。圭ちゃんに住居の手配と大学の退学手続きを頼んだ。
もう、後戻りできないように。

親父の後を継ぎたくないという理由だけでは美貴は納得してくれない。
それも確かに一つの理由。
でも本当の理由はもう一つ。

253 名前:吉澤の想い 投稿日:2006/05/01(月) 21:31
「なんで、亀ちゃんのゲームに乗ったのか本当の理由わかる?」
「相手探さなくてすむからって言ってなかったっけ。」
「うん。言った。でもさ。あのゲームって亀ちゃんが逃げ出さない限り
 ずっと続いたんだよね。」
「そうだね。」
「一人の子とずっと・・・ずっとだよ。」
「亀が辞めなければね。」
「うん。辞めて欲しくなかった。」
「えっ?」
「恋はしたくないけど、愛し合いたいなって思ったんだ、亀ちゃんと・・・
 自分勝手な話しだけどね。」

初めて亀ちゃんに会った時・・・
滑り台の下にいた亀ちゃんの手をとったとき
懐かしって感じたんだ。
254 名前:吉澤の想い 投稿日:2006/05/01(月) 21:32
だから、もしかしたらこの子が?って思った
うちはラッキーなのかもって思った。
65億人の中から相手を見つけられたかもって・・・
もしそうなら、また会えるって思ってたら同じマンションでさ
確信が強まったんだ。
亀ちゃんから告白されたときはまだ、確信が100パーセントじゃなかったから
受け入れることは出来なかった
でも、ゲームを始めれば100パーセントになる確率は上がるだろうって
亀ちゃんがうちから逃げ出さなければって思ったんだ
でも、逃げられた。
255 名前:吉澤の想い 投稿日:2006/05/01(月) 21:32
パンドラの箱には希望が残ったでしょ。
だから・・・最後のうちの希望・・・
亀ちゃんが本当にうちの相手なのか知りたいんだ
うちはエロス。
亀ちゃんが金の矢に射られたならそれを撃ったのはうち。
そして、うちは自分を矢で傷つけたんだ。
亀ちゃんはプシュケだね。

256 名前:吉澤の想い 投稿日:2006/05/01(月) 21:33
離れていて会えなくて触れられなくても、うちを思っていてくれる?
いろんな誘惑があるなかで迷わずうちを思ってくれる?

それを確かめたいんだ。

「わかった。でも・・・なんかあったら直ぐに戻ってきなよ。」
「ありがと。」
「よっちゃんが今度ひまわりに生まれ変わりたいって言ったじゃん。」
「うん。」
「美貴もそうなりたい。で、よっちゃんの隣に咲きたいな。」

美貴にもきっとこの世のどこかにいるはずだよ
美貴のもう独りの美貴がさ。
会えるといいね、会えたらとても素敵だよ
257 名前:吉澤の想い 投稿日:2006/05/01(月) 21:33
美貴は優しい笑顔でうちを送り出してくれた。
それから2年。
美貴の就職祝いをしようとメールで美貴を呼び出した。
もちろん、亀ちゃんやさゆには内緒で美貴はやってきた。

「よっちゃん・・・冷蔵庫空っぽなんだけど。」
「だって作らないもん。」
「どうやって生きてんだよ。」

うちの収入源は株の売買。
親父とは縁を切ったつもりだからもう金は当てにしない。
結構、株だけでも生活は出来るものだ。
ネットで簡単に出来るから。うちはあまり家からでない。
出てもコンビニに行くくらいだ。
だから、買い物にも行かないから冷蔵庫に食料があるはずない。

「ピザでも取ればいいじゃん。」

ピザなんて電話すれば直ぐに来るし。
258 名前:吉澤の想い 投稿日:2006/05/01(月) 21:34
「よっちゃんさぁ。髪切らないの?」
「たまに自分で切ってるけど。」
「染めてもないよね・・・黒いもんねほとんど。」
「うん。」
「引きこもってんの?」
「近いね。」
「寂しくない?つまらないでしょ。」
「そうでもない。亀ちゃんのこと考えてるから。」
「そっか・・・。」
「うん。美貴からくるメールでかなり楽しんでるよ。」

美貴が、週に何回か亀ちゃんの近況を報告してくれる。
亀ちゃんが誰からに思いを寄せた時点でうちのゲームは終了だ。

「まだ、続けるの?もう2年だよ。亀だってよっちゃんのこと裏切ってないのに。」
「うん。」
「気持ちが変わらなかったら・・・うちは迎えに行くよ。愛してるからね。」
「もしさ・・・もし・・・。」

美貴がいいにくそうにうちを見る。

259 名前:吉澤の想い 投稿日:2006/05/01(月) 21:34
「亀ちゃんが誰かを好きになったら?」
「うん。よっちゃんどうするの?」
「どうなるかな?分からない。」

そっか。と美貴は不安そうにうちを見る。
どうなるかなんて決まってる。
亀ちゃんはもう一人のうちだってこの2年で分かったんだ。
でも、まだ迎えにはいけないそれは一度、亀ちゃんが逃げ出したから。
これが、本当に最後のチャンス。
もし、亀ちゃんがまた逃げ出したら・・・
260 名前:吉澤の想い 投稿日:2006/05/01(月) 21:35
愛するものを見ることのないこの目も
愛する人に愛してると言えないこの口も
愛する人の声を聞けないこの耳も
愛する人の香りを感じれないこの鼻も
愛する人に触れられないこの手も
愛する人に歩み寄れないこの足も
持っていても意味がないんだ・・・だから要らない

261 名前:clover 投稿日:2006/05/01(月) 21:41
本日の更新以上です
>>252-260 吉澤の想い

えぇっと多分、次でラストになる(多分)と思います。
恋の神様が終了したら、短編をいくつかやりたいと思ってます。

>>250 ももんが 様
レスありがとうございます。
亀ちゃんは可愛いですw
もう可愛くて仕方ないですw
ラストまでよろしくです。

>>251 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>ずっと読み進めていきたい作品ですが、完結しないわけには
>いきませんもんね(>_<)

そんな風に言ってもらえると素直に嬉しいです(#^.^#) エヘッ
次で完結の予定です(多分)
最後まで宜しくお願いします。
262 名前:ももんが 投稿日:2006/05/01(月) 22:21
よっちゃん純粋ですよね。
いよいよラストなんですね〜。楽しみです!
263 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/01(月) 22:24
うぉー!次で終わりですか!!
楽しみだけど、寂しい…

お、お、大人しく待ってますw
264 名前:タラク 投稿日:2006/05/01(月) 22:56
遂に次でラストですかぁ…今回の更新もかなり泣けたんで、ラストは私どうなることやら…wそれでも最後までしっかり読みます!
265 名前:オレンヂ 投稿日:2006/05/02(火) 01:25
以前から読ませていただいていたのですが初めてレスさせていただきます
読んでるとすごくドキドキしてうわぁー!って叫びたくなってしまうのですが
おとなしく次回を待たせていただきます。がんばれ・・・
266 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/02(火) 08:54
きゃーどうなるんでしょう?心配です。
ラスト楽しみに待ってます。
267 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:27
「まだ、会いに行ってないんだって?」
「うん。」

圭ちゃんの家に昼飯を食べに来たら石川が凄い怖い顔して出迎えてくれた。
5年ぶりなのに、そんなそっけない態度かよ・・・石川。
その石川は今、キッチンで食事の仕度。
圭ちゃんはうちの前に座って冷たい麦茶を出してくれた。
圭ちゃんとも5年、連絡を取ってなかった。

「うん・・・って5年もほったらかし?」
「ほったらかしてないよ。愛してる。」
「それが、吉澤の愛ってやつ?」
「どうだろ・・・ただ、愛してる。」

ドン
268 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:28
「はい。取り合えず、サラダ食べてて。」

ってテーブルの真ん中に大きな器を石川が置いてまた戻る。

「ねぇ圭ちゃん・・・なんで石川、機嫌悪いの?」
「さぁ・・・まぁ私のせいではないね。」
「うちのせいってこと?」
「いつも、吉澤は酷いって亀井が可哀相って言ってる。」
「なんだそれ・・・」
「まぁね。皆は事情をしらないから。吉澤は悪者だね。」
「まじでぇ?まぁいいけど。」
「愛してるって書置きだけ残して失踪って残されたほうが可哀相でしょ。どう考えても。」
「そうかな?愛してるのに。」
「まぁいいわ、吉澤を理解できる人は藤本くらいだろうし。」
「美貴も前にもういいんじゃないかって言われたけどね。」

ドン、ガシャ、ガシャ
石川が乱暴にテーブルの上に食器を置いていく。
うちと圭ちゃんは姿勢を正してその様子を黙ってみる。

269 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:28
「食事できました。」

石川が圭ちゃんの隣に座って言う。

「ありがと。」って圭ちゃんの言葉に石川は笑顔を見せる。

「うまそうだね。」ってうちの言葉に石川は睨んでくる・・・

「あのね、よっちゃん。」
「はい。」
「どこにいたの。絵里ちゃん可哀相でしょ。」
「ってか、まて、前の石川なら何も思わないだろ、亀ちゃん可哀相とか。」
「それは・・・。」

言葉に詰まった石川は圭ちゃんに視線を向ける。

「私、保田さんのこと愛してるの。」

幸せそうな顔でうちを見る石川。

「圭ちゃんとしたの?」

顔を横に振る石川。
でも、その表情は幸せそう。
270 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:28
「もう、セックスとかどうでもいいんだ。ずっと一番側にいてくれる人だから。」
「そっか。」
「うん。永遠に側にいてくれるって。」
「よかったね石川。」

それが、圭ちゃんにとって石川からの愛なのかはまた別だけど
石川がそれを愛というなら石川にとってはそれでよいのだろう。

「だから絵里ちゃんが凄く可哀相。」

うん、だからってのが意味分からないだろ・・・
石川は側にいてずっと好きだといってくるのが愛だけど
それは石川だけの愛の形だ。

「亀ちゃんはきっと可哀相だって思ってないよ。」

そう、思っていたら困る。思っていたらそれはうちのもう一人のうちじゃないから。

「どうして?」

271 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:29
圭ちゃんが不思議そうにうちを見る。
えっ?圭ちゃんも分からない?
肉体に意味がないという圭ちゃんなのに?

「どうしてって・・・圭ちゃんなら分かると思ったけど。」
「分からないわよ。側にいてあげたほうが可哀相ではないと思うわ。」

そうだね、それはそう。
でも、お互いがお互いをたった一人の相手だと確信できたときにそうすべきなんだ。
うちらの場合はね・・・
一度、亀ちゃんが逃げたしたから。

「うちがうちを可哀相って思ってないから、亀ちゃんも思ってない。」
「何それ?よっちゃんの意見だけ?」
「亀ちゃんの意見でもあるよ。」
「なにそれ・・・意味分からない。」
「石川がわかる必要はないんだよ。うちと亀ちゃんのことだから。」

頬を膨らます石川。
圭ちゃんは分かったのか、そっかなるほどね。と呟く。
272 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:29
「愛し合う二人は考えも思いも一緒ってこと。」
「似たようなものかな。ちょっと違うんだけどね。」
「なによ、教えなさいよ。」
「簡単だよ。うちは亀ちゃんで亀ちゃんはうち。同じものなんだ。」
「二人で一つってことでしょ?私のと何が違うの?」
「圭ちゃんはさ、石川がもしも、この世からいなくなったらどうする?」
「石川を思って生きるわ、だから肉体に意味はないんだから。」
「それもいいと思う。でも、うちはね、多分、死ぬ。」
「絵里ちゃんを追って死ぬの?」

首を横に振った。

「うちは肉体に意味があると思うから、この体は亀ちゃんのためにあるから。
 例えばね、亀ちゃんが声の出ない子だったら、うちはきっと耳が聞こえないと思う。」

亀ちゃんの声を聞けない耳は意味がない。必要ないんだ。

「それが、吉澤の愛か・・・で?いつ迎えに行くの?」

圭ちゃんは理解してない石川をおいて話しを進めた
うちは石川の作ってくれたサラダに箸を伸ばした。

「あっ、結構うまい。」

二人はうちがいつ迎えに行くのか答えを待ってうちを見る。

「えっと・・・明日行く。」
273 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:30
亀ちゃんに初めて会った日だから。
亀ちゃんがそのときのうちと同い年になってるから。
亀ちゃんもきっとこの5年でうちと同じ愛を感じたから。

「じゃぁ、早く食べて行きなさい。」
「うん、行ってあげて。」

二人とも優しい表情でそういってくれた。

「うん。」

石川の料理は結構、おいしくて箸が進んだ。
それから、石川が仕事を始めた話とかこの5年の二人の様子を聞いて
夕方にうちは圭ちゃんの家を出発した。
274 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:30

++++++++++++++++++++++++++++
275 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:31
深夜・・・3時。
ゆっくり運転してきたけど結構、早めに着いてしまった。
マンションの横に車を止めて仮眠した。

早朝6時。
美貴がマンションから走って出てくる。
うちは身をかがめて美貴に見つからないようにした。

「遅刻か?」

美貴は全く車に気づかずに駅の方へ走っていった。

「亀ちゃん・・・。」

2時間後に出てきたのは亀ちゃん。
うちはまた身を屈め隠れる。
車の横を通り過ぎうちは体を起こしてサイドミラー越しに亀ちゃんの姿を見る。
276 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:31
髪染めたんだぁ。大人っぽくなったね。
それに、耳にかかるくらいで前よりちょと伸びたね。
あ、スーツじゃないんだ。
美貴が事務って言ってたもんな。

「さてと・・・。」

うちは車をゆっくり走らせ、都心に向かった。
277 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:32
朝の道は混んでる・・・
事故渋滞に巻き込まれ目的にに着くまでにかなり時間がかかってしまった。
目的地は亀ちゃんの会社。

「10時過ぎか・・・」

先に昼ごはんにしよう・・・お腹減ったし。

近所のファミレスに入ってブランチ。
ファミレスに車を止めたまま亀ちゃんの会社の入口が見える場所に身を潜める。

12時5分・・・制服姿の亀ちゃんが出てきた。
あ、上司かな?呼び止められた。
ランチ誘われてるのかな?
亀ちゃんが頭を下げて一人で歩き出す。
あはは、潔癖だね。
反対側の歩道を歩いて亀ちゃんの後を付けた。
278 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:32
あれ、コンビニのごはん?
袋をぶら下げて出てきた。
会社でたべるんじゃないんだ。
公園かぁ。
小さな児童公園に入りベンチに座っておにぎりを食べ始める。
小さな子に声をかけられて笑顔で応えたりしてる。
縄跳び誘われちゃったよ。
幼稚園児と一緒に縄跳びをやってる。
あはは、可愛いな亀ちゃん

12時40分。公園を出て会社に戻る亀ちゃんを見届けてうちは車に戻った。

279 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:32

++++++++++++++++++++++++++++
280 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:32
ピンポーン

エントランスでインターホンを押す。

「どちらさまですか?」

ってさゆの声。

「吉澤です。」
「えっぇっ?」
「開けてよ。下の扉。」
「はいっ。えっ?」

あはは・・・扉開けてくれたのいいけど、これじゃ不審者も入れちゃうね。

エレベータに乗って目的の階に行く。
あ、うちが住んでた部屋まだ、そのままなんだ。
表札にYOSIZAWAって入ってる。

足を止めていると隣の部屋のドアが開いてさゆが出てきた。
281 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:33
「吉澤さんっ。」

驚いた表情で立ち尽くしてるさゆ。

「さゆ。久しぶりだね。綺麗になった。」
「吉澤さん・・・絵里・・・絵里、会社なの。」

涙を零しながら言うさゆの頭を撫でてた。

「知ってる。見てきたから。」
「えっ?」
「朝からつけてみました。」
「怖いの・・・。」

さゆが真顔で言ってから笑った。

「様子を見たかったんだよ。それより中入れて。」
「うん。」

美貴の家は5年前と全く変わっていなかった。
282 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:34
「あれ、そういや、さゆ大学は?」
「昨日、撮影で遅かったから今日は休み。そのお陰で吉澤さんに会えたの。」
「ほうほう。仕事は順調そうだね。よく雑誌でみるよ。」
「見てくれてるの?」
「うん。見てる。」

嬉しそうに笑うさゆは15歳の頃とさほど変わらないが、
やはり5年という月日はさゆを大人にしたのだろう。
可愛いというより綺麗になった。

「お姉ちゃんがね、絵里載せれば吉澤さんもきっと
 どこかで見るからってそれで二人でやったのがきっかけなの。」
「うん。」

知ってるよ。美貴から聞いてたから。

「吉澤さんお昼は?」
「いや、朝が遅かったからお腹減ってない。」
「よかった、さゆも遅かったの。それに、作れないし。」
「そっか。相変わらず美貴任せ?」
「うん。お姉ちゃん仕事で遅いときは絵里の家で。」

亀ちゃん料理上手だもんね。

283 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:34
「さゆ、今日の予定は?」
「特にないの。」
「そっか、じゃぁ。3時に起こして。」
「ん?」

首を傾げるさゆ。あれ?分からない?

「あんまり寝てなくてさ・・・昼寝したいんだ。」
「あっ。うん。」
「そっちのソファで寝ていい?」
「うん。」
「あ、亀ちゃんに連絡とかしないでね。」
「分かったの。」

3時ね。ってさゆの頭をポンと叩いてうちはソファに横になった。

284 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:34

++++++++++++++++++++++++++++
285 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:34
「わさん・・・しざわさん。吉澤さん。」

ん・・・あ、3時?
さゆが覗き込んでる。

「ありがと。」
「ぐっすり寝てたの。」
「うん。なんかこの家落ち着くからさ。」
「吉澤さん、自分の家にいるよりここにいるほうが多かったからなの。」
「そうだね。」
「家族みたいなものなの。」

優しい笑顔のさゆ。本当に大人になったなぁ。

「ありがとぉ。さゆは可愛いなぁ。」

頭を撫でてやるとあの頃と同じように嬉しそうに微笑む。

「さてと、うちそろそろ、行くね。また後で来るから美貴に言っといて。」
「うん。」

玄関まで着いてきてくれたさゆ。
286 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:35
「んじゃ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」

通路を歩き出すと後ろから「吉澤さん。」とさゆに呼び止められた。
振り返ると、さゆが凄い笑顔でうちを見てる。

「なに?」
「絵里のことギュってしてあげてね。」
「うん。じゃぁね。」

ギュっだけじゃすまないよ。
287 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:35

++++++++++++++++++++++++++++
288 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:35
練習している子供たちの姿を少しはなれたところから見ていると
うちの姿に気が付いたのは多分、あいぼん
子供は5年でかなり成長するんだね
小学6年になるあいぼんはかなり女の子。もう女性の身体つきだ。

微笑みながら階段を上ってくるあいぼん。前みたいに走ったりはしない。

「自分、なにしとったの?」

うちを見上げて笑うあいぼん。
289 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:36
「まぁ愛ってのを探しに旅にでてた。」
「あほっ。亀ちゃんよくここにきとったよ。独りでニコニコしてなぁ
 頭、いかれたんかと思った。可哀相に。」
「いやいや、それが亀ちゃんだから。いかれてないって。」
「まぁええけどな。」

大人ぶるあいぼんが凄く面白くて笑った。

「の〜ん。」

あいぼんが叫ぶと練習中のののが駆けてくる。
290 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:36
「ののは変わらないねぇ。」
「キャプテンやで。」
「おっ。すげぇ。」
「よっちゃん、どこにいたんだよぉ。」
「旅にね・・・。」
「亀ちゃんがよっちゃんいなくなったって笑っておかしくなっちゃったんだからね。」
「あぁ・・・。」

亀ちゃん・・・ちょっとどんな笑いかたしてたんだよ

「よっちゃんリフティング上手くなったんだよ。競争してよ。」
「あぁ、今日はごめん。これから用事あるからさ。今度、亀ちゃんと来るから。」

残念そうな顔をするノノの頭を撫でてうちは二人と別れた。

291 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:36

++++++++++++++++++++++++++++
292 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:37
懐かしい公園。
うちは滑り台の天辺に座った。見計らったように降り出した雨。
あの時と同じ。違うのは傘がないのがうちってだけ。

目を閉じて思い出す。

ここで初めて亀ちゃんに触れたとき、まさかと思う気持ちと
期待、希望がうちを支配したんだ。
それから始まった二人のゲーム。
酷いことしたけど負けずとうちを愛した亀ちゃん。
いつも、へらへら笑って。ポロポロ涙を零して。
大丈夫ですって強がって。愛って必要ですよって必死で。
ウヘヘって笑って。うんうん。って頷いて。
愛してますって囁いて。
愛を下さいって逃げ出して。
それでもうちを愛してる
この世でたった一人のもう一人のうち。

ほら・・・目を開けばそこにいる・・・
293 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:37
無言で無表情でこっちにやってくる子。
青いビニール傘をさして

「傘、ないんですか?」

うちを見上げて尋ねるその子。

「あいにく、持ってないんだ。」
「じゃぁこれ貸してあげます。」

挿していた傘を閉じて柄をうちに突き出す。

「濡れるよ?」
「もう、濡れてます。」

その子は両手を広げて空を見上げた。

「結構、気持ち良いですよ。」

って笑顔を見せる。
294 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:38
濡れた滑り台をトントントンと駆け降りて
両手を広げ笑顔を向けるその子の胸に飛び込んだ。

ギュッて抱きしめるとギュッて抱きしめられる。
ほら、うちは君で君はうち。

「愛してます。吉澤さん。」

うちの胸の中で囁かれた言葉は雨の音に邪魔されることなくうちの体に響いてくる。

「愛してるよ。亀ちゃん。」

耳元で囁くうちの言葉もきっとそう。
そして自然とどちらからでもなく重なる唇。
思うことも同じだね。

触れるだけのマニュアル通りのキス。
295 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:38
「吉澤さん・・・泣いてる。」

うちの頬に手を添える亀ちゃん。

「亀ちゃんが泣いてるから。うちも泣いてるんだよ。」

雨と涙の区別がつくのはお互いが涙を流してるって自覚しているから

「だって・・・嬉しいから。」

知ってるよ。うちも嬉しいから。
皆に祝ってもらおうよ。きっと美貴もさゆも悦ぶよ。

「美貴さんに報告しなくちゃ。さゆにも一杯心配してるから。」
「行こうっか。」

同じタイミングで手をとり相合傘をして歩き始める。
296 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:38
「夕飯何にしましょうか。」
「亀ちゃん作ってくれるんだ。」
「はい。冷蔵庫にあるものでですけどね。あぁ買い物しておけばよかったな。」
「いいよ。亀ちゃんの料理美味しいから。」
「うへへ、そうですか?」
「うへへ。そうですよ。あはは。」
「もぉー。」
297 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:38

++++++++++++++++++++++++++++
298 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:39
二人で笑いながらマンションにたどり着く。

ピンポーン
亀ちゃんが
美貴の家のインターホンを押すとドアが開く。

「えっ?石川さん?」
「石川?あ、圭ちゃん。カオリン。何でいるの?」

出迎えてくれた3人は笑顔でうちらを見てる。
そんな3人を掻き分け登場したのは美貴。

「はいはい。はやく上がってぇ。亀、夕飯の仕度手伝って。ってまず家でシャワー浴びてきて。」
「あっはい。」
「よっちゃんもシャワー浴びなさい。」
「はぁい。」

亀ちゃんがまた後でって慌てて自分の家に戻った。
うちも美貴の家のシャワーをお借りしてさっぱりする。
299 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:39
シャワーから出たら既に亀ちゃんはエプロンをつけて美貴と料理中。
何作ってんのかな?ちょっと覗いてみる。

「よっちゃん邪魔。料理できないでしょうが。向こうで待ってろ。」
「あい。」

亀ちゃんがバイバイって手を振るからうちも振り返しおとなしくダイニングに行った。

「カオリンなんで日本にいるの?」
「仕事で一昨日からね。隣の部屋、売却するって話しをまとめにね。」
「マジ。じゃぁうちが買ってもいい?」
「ホントに?」
「うん。安くしてね。」

苦笑いを返すカオリンの横でさゆも安くしてあげてってお願いしてる。

「さゆー。よっちゃん連れてきて。ゴハンあげないと。」

亀ちゃんの声が聞こえる。
よっちゃん?

300 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:39
「分かった。鍵は?」
「カバンの手前のポケット。」

さゆが亀ちゃんのバックをガサゴソして鍵を取り出すと外に出て行った。

「なに?よっちゃんって、うち?ん?」
「犬だって。」
「うちと同じ名前なんだ。」
「美貴ちゃんがつけたんだって。」
「ほぉー。」

バタバタバタバタって足音がしたと思ったら。

「っわぁ。」

思い切りうちの両肩が重くなった。

「ぅわぁ、ちょっ、なっ。」

背後から思い切り首やら耳やら頬やら舐めまくられまくり・・・
301 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:40
「こら、よっちゃん。やめるの。」

さゆのひとことですっとうちの肩は軽くなる。
頭はいいんだねぇ。
うちの横で静かにお座りしてるよっちゃんを横目にうちは顔中についた涎を拭った。

「はいはい。よちゃん。これ食べててね。」
と美貴が器に入れたドッグフードを床に置く。
でもがっついては食べないらしい。餌を目の前にまだお座りして待ってる。

「くわねぇぞぉ。」
「大丈夫なの。」

さゆはよっちゃんの横に座り頭を撫でる。

「はぁい。皆さんのも出来ましたよぉ。」

亀ちゃんの手によってうちらの食事もテーブルの上に並んだ。

「はい。じゃぁ皆さん。頂きます。」

美貴のその声を合図に皆も「頂きま、ワンッ。」
ワン?あ・・・お前もちゃんとするわけだ。
302 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:40
お行儀よく、少しずつドックフードを食べていくレトリバーって・・・

さて、さて、んと、これは亀ちゃんが作ったっぽいな。
茄子を肉で巻き万能ネギが塗されたそれを取り皿にとり
パク・・・モグモグ。

「うまぁ。さっぱりしてて美味しい。」

「よかったぁ。」って声はやっぱり亀ちゃん。
「これも、美味しいと思いますよ。」って皿にのせてくれる。

パクッ・・・モグモグ・・・
おぉごま油の風味に豆腐とエビと卵
モグモグ・・・
ちょっと甘めで

303 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:41
「すげー美味い。」

「よかった。」

って笑顔の亀ちゃん・・・カオリン、石川・・・あっ
圭ちゃん、さゆ、美貴・・・なに見てんだよぉ。

「幸せそうでようございますこと。」とポンポンと美貴に肩を叩かれる。

「幸せですもん。」って亀ちゃんがサラダを頬張る。

「幸せだもん。」ってうちもサラダを頬張った。

「いたっ。」

思い切り美貴に頭を叩かれる。

「だもんっ。じゃねぇよまったく。美貴にいはいつ現れるんだ・・・」

大丈夫、美貴は素敵な子だからきっと現れるよ。

圭ちゃんとカオリンが三十路になったってからかったりして皆で笑って楽しい一時。

石川たちはここに泊まるというのでうちは亀ちゃんの家へ。
304 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:41

++++++++++++++++++++++++++++
305 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:41
「昨日からお父さん出張なんですよ。」

って言いながら亀ちゃんが玄関を開けると犬のよっちゃんがまず入っていく。

「そうなんだ。じゃぁうちここ、泊まれる?」
「もちろん。」

嬉しそうにうちの手を引いて部屋の奥にあるソファに座らせる。
向かいのソファにはレトリバーのよっちゃんがお座りしてじっとうちを見てる。

「コーヒー入れますね。」

亀ちゃんがキッチンに行ってしまって。レトリバーのよっちゃんと見つめ合う・・・
なんだよ・・・なにそんなに見つめてくるんだよぉ
取り合えず目をそらして家の中に目をやった
初めて亀ちゃんの家に入ったな。
いつも美貴の家だったから。
かなり片付いた部屋。亀ちゃんが綺麗好きなのだろうか?

「はい。どうぞぉ。」
「ありがと。」

添えられたミルクを入れてカフェオレにして飲む。
隣に座った亀ちゃんも同じようにして飲んだ。

「あれ、砂糖は?」
「絵里も大人になりましたから。」
「そっかぁ。」
306 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:42
亀ちゃんは黙ってうちの手をとるとそのままうちの胸に顔を埋め
ギュッてうちの腰にしがみ付く。

「ねぇ、吉澤さん。」
「ん?」

亀ちゃんの髪を撫でながら亀ちゃんの言葉に耳を傾けた。

「吉澤さんがエロスだったってことはぁ。」
「ってことは?」
「吉澤さんが絵里に矢を撃ったんですよね?」
「そんなことしてないよ。」
「でも、絵里撃たれたもん。」
「あはは、射たかもしれない。で、うちも矢を射られた。」
「んとぉ・・・」

顔を上げて分からないってうちの顔を見る亀ちゃん。
可愛くて亀ちゃんのおでこにキスをする。
307 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:42
「エロスはどじなんだよ。」
「どじ?」
「そっ、どじなんだ。そして、悪戯好き。」

うちはエロスの話をしてあげた。

308 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:43
プシュケという美しい女性がいてね。
あまりの美しさにエロスの母から嫉妬を買い、誰とも結婚できないで居たんだ。
あるときエロスはね、母親の差し金でプシュケと醜い男を結ばせようとしたんだ。
でもねベッドに眠るプシュケのあまりの美しさにエロスは見とれてしまって
どじなエロスはプシュケに射るはずの金の矢で自分の指を傷つけてしまったんだ。
金の矢で射られたエロスはプシュケに恋をしてしまった。
エロスとプシュケは結婚したんだけど
とっても優しい夫なんだけどプシュケは夫がエロスだとは知らない。
いつも暗闇で一緒に寝て夜が明ける前に夫の姿はなくなっているから。
一度、夫に姿を見たいと頼んだら私の愛を疑うのか?とはぐらかされてしまった。
それでも夫に愛され幸せな暮らしだった。
夫に頼んで姉たちを招いたら姉たちはプシュケが生きていたことに喜んだが
自分たちよりよい暮らしをしてるプシュケに嫉妬した。
夫の姿を見たことがないと聞いた姉たちは怪物からもしれない殺してしまえと唆した。
夜になりプシュケはロウソクに火を灯し眠っている夫に近づいた。
明かりに照らされたのは怪物ではなく美青年のエロスだった。
驚いたプシュケはエロスにロウソクを垂らしてしまって焼けどを負わせた。
エロスは悲しみの表情で私の愛を疑ったのか?と言い残し姿を消した。
宮殿も消えてしまい森の中に取り残されたプシュケは愛するエロスを探し森を彷徨った。
いくつもの難問をプシュケはエロスに会いたいがために必死にやり遂げた。
その姿を見ていたエロスは許しプシュケを神の仲間にしたんだ。
309 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:43
「いい話もあるじゃないですか。」

って不貞腐れてる亀ちゃん。
そんな亀ちゃんの頬に手を添えた。

「うちがエロスだから亀ちゃんがプシュケだね。」
「そっか、そうですね。でも絵里は探さなかった。」
「どうして?」
「どうしてだろう・・・姿がなくても側にいる気がしてたからかな。
 吉澤さんは絵里を愛してるって信じてたからかも。」
「そっか。」
「吉澤さんは?どうしていなくなったの?」
「確かめてた。亀ちゃんがもうひとりのうちかどうか。」
「どうでした?」
「もう一人のうちだったから今、ここにいるんじゃん。」
「うへへ。そっか。」
310 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:44
「プシュケってね魂って意味なんだよ。エロスの性愛とプシュケの魂が結ばれて喜びが生まれたんだ。」
「喜び。」
「それが恋の神様の恋物語。でもね、うちは神でもなんでもない人間だから。本当はエロスでもないわけだ。」
「えぇぇ。そうなんですか?」
「そうだよ。だって人間だもん。いつかは老いて死んでしまう。」
「悲しいこと言わないでくださいよ。」
「ごめんね。でもそうでしょ。」

亀ちゃんを引き寄せて抱きしめた。

311 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:44
「うちさ、愛なんて必要ないって言ってたでしょ。」
「はい。」
「愛する人はもう一人の自分だって思ってるからなんだ。」
「もう一人の自分。」
「うん。神様に引き裂かれたもう一人の自分。
 亀ちゃんがもう一人のうちでうちは亀ちゃんのもう一人亀ちゃん。」
「うん。」
「うちと亀ちゃんは二人で一人の人間だったんだ。
 だから亀ちゃんがする行動はうちの行動でもあるわけだ。」
「同じってことですよね。」
「うん。前に亀ちゃんはうちに愛されたいって思ってたでしょ。」
「思ってました。絵里がこんなに愛してるのにって思ってた・・・。」
「でも今は?愛されたいって思う?」

首を横に振る亀ちゃん。
嬉しくて笑みがこぼれた。
312 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:45
「よかった。」
「だって、愛してるもん。」
「うん。うちもそう。」

亀ちゃんがうちを愛するからうちも亀ちゃんを愛してる。
疑わない。愛されてる?て疑うことなんてないんだ。

「うちと亀ちゃんは心も体も一つだから。」

嬉しそうにうちの腕の中で微笑む亀ちゃん。
でもちょっと眠そうだな。

「寝る?明日も仕事でしょ?」

頷く亀ちゃんをお姫様抱っこして立ち上がる。

「部屋どこ?」
「そこです。」

嬉しそうに指差すドア。
やべぇ両手がふさがってて開けれないとドアの前で立ち尽くすと
レトリバーのよっちゃんが器用にドアノブを回してくれた。
313 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:45
「お前頭いいなホントに・・・ありがとう。」

よっちゃんにお礼を言って部屋の中へ・・・
入って直ぐに立ち尽くす。

「凄い・・・ね。」
「あ・・・。」

苦笑いする亀ちゃん。
洋服が散乱してる亀ちゃんの部屋。
綺麗好きではないらしい。

取り合えず亀ちゃんをベッドの上に降ろした。

「片付け苦手なんです。」
「うちが好きだから大丈夫。」

そっと亀ちゃんの唇を奪った。

「寝よう。」と促し二人で布団の中へ。

亀ちゃんはうちに抱きついて、うちも亀ちゃんを抱きしめて目を閉じる。
314 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:45
ずっとこうしていようね。
どちらかの命が尽きるまで。
そのときはきっと残ったほうも命が尽きる。
見つけた相手がいなくなったら生きてる意味がないからね
相手を見つけるために生きてるんだから
だからきっと自然に力つきるんだよ

315 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:45

++++++++++++++++++++++++++++
316 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:46
今日は朝から吉澤さんが凄く側にいるように感じてた。
先輩に捕まらないように定時になったら直ぐに会社をでた。
電車にのって地元の駅に着いたら雨。
天気予報的中だ。5年前の今日。吉澤さんからもらったビニール傘を差して
きっと吉澤さんが居るはずの公園にゆっくりと向かった。
約束なんてしてないけど、今年は絶対来ている気がした。
317 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:46
雨の中、傘もささずに滑り台の上に座っている人。
髪は伸びて黒いけど、吉澤さん。

「傘、ないんですか?」

見上げて尋ねると笑っている吉澤さん。
ちっとも変わらない愛しい笑顔。

「あいにく、持ってないんだ。」
「じゃぁこれ貸してあげます。」

傘を閉じて吉澤さんに渡した。

「濡れるよ?」
「もう、濡れてます。」

両手を広げて空を仰ぐ。あの時、吉澤さんがしたように。

「結構、気持ち良いですよ。」

って笑顔を見せる。
318 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:47
トントントンって滑り台を駆け降りて絵里に飛び込んでくる吉澤さん。

ギュッて抱きしめられるたからギュッて抱きしめた。

「愛してます。吉澤さん。」
「愛してるよ。亀ちゃん。」

そして自然とどちらからでもなく重なる唇。

「吉澤さん・・・泣いてる。」

雨と涙が一緒になってるけど頬に伝うのは涙。
そっと手を添えて拭った。

「亀ちゃんが泣いてるから。うちも泣いてるんだよ。」

そう、絵里も泣いてる。

「だって・・・嬉しいから。」

吉澤さんの体温を感じれたから。凄く嬉しい。

「美貴さんに報告しなくちゃ。さゆにも一杯心配してるから。」
「行こうっか。」

吉澤さんが傘を開き絵里は自然と吉澤さんと手を繋いだ。
319 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:47
マンションに戻って美貴さんの家に行ったら皆さん勢ぞろい。
美貴さんにシャワーを浴びるように言われ吉澤さんと別れて家に戻る。
早く戻りたくて急いでシャワーを浴びて美貴さんの家に戻った。
吉澤さんはまだのようで美貴さんとキッチンへ。
みんなによかったねと言われ。
美貴さんは何も言わずに微笑んでくれた。

それからみんなで食事をして吉澤さんと二人で絵里の家へ。

吉澤さんがエロスの恋の話をしてくれた。
凄く幸せな話し。
でも、吉澤さんが言うとおり絵里たちは神様じゃない。

絵里は吉澤さんの相手で吉澤さんは絵里の相手
この世でたった一人の相手。
恋の矢に撃たれたって思っていたけど違うんだ。
たったひとりの相手だったから
絵里の心が反応したんだよ。
320 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:47
だってほら、
吉澤さんに抱きしめられて眠るだけでこんなに安心する。
心も体も一つだからきっと吉澤さんもそのはず。
愛して欲しいなんてもう、思わない。
だって、絵里は吉澤さんだから絵里が愛せば愛される。
そう信じることもしない。
疑うことすら必要ないから。

だって・・・
吉澤さんは絵里だから。


そっと目を開けて吉澤さんを見上げると
安心しきった寝顔が見える。

可愛い・・・。
321 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:49
ねぇ吉澤さんも感じてますか?
絵里の体温。
絵里は今、吉澤さんの体温を凄い感じてます。
抱き合うっていいですね。
温かくって凄く気持ちいい。

おやすみなさい。吉澤さん。

322 名前:恋の神様 投稿日:2006/05/02(火) 22:49
END
323 名前:clover 投稿日:2006/05/02(火) 23:02
本日の更新以上です。

話に出てきます、神話等の話はcloverの知識内の話です
色々な説があります、間違っているかも知れませんので
ご了承ください。

>>267-322 恋の神様

「恋の神様」はこれにて終了となります。
お付き合いくださった皆様ありがとうございました。
また、これからも続けて更新していくので宜しくお願いします。

>>262 ももんが 様
レスありがとうございます。
こんな感じのラストでした。
どうだったでしょうか?
これからも宜しくお願いします。

>>263 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
また、短編をいくつかと長めの話を始める
予定(あくまで予定ですw)なので宜しくお願いします

>>264 タラク 様
レスありがとうございます。
どうでしたでしょうか?
ご期待に沿えたラストだったら良いですが。
また、始めますのでそちらも宜しくお願いします。

>>265 オレンヂ 様
レスありがとうございます。
読んでいただけて嬉しいです。
さらに、ドキドキまでして頂けて☆〜( ^o^)o_彡☆
嬉しいです。
これからもお付き合い宜しくお願いします。

>>266 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
心配は解消されたでしょうか?
また、これからも宜しくお願いします。


今後の予定として、あくまで予定なのですが
短編、みきよしのシリーズを2つやってから
長めの話、85年組+6期のを載せたいと思ってます。
324 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/02(火) 23:34
完結おめでとうございます。
そして、素敵なお話をありがとうございました。
色々タメになって、少し頭が良くなったような気分になりました。
325 名前:タラク 投稿日:2006/05/03(水) 00:47
完結おめでとです。感動しました…こんな素晴らしい作品に出会えて本当に良かったです。ありがとうございました。次も楽しみにしてます!
326 名前:ももんが 投稿日:2006/05/03(水) 20:53
完結おめでとうございます!
素直に感動できたお話でした。
これからも作品楽しみにしてます。
327 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/04(木) 03:21
お疲れさまでした。
吉亀の組み合わせがよかったです。
次も楽しみにしてます。
328 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/04(木) 15:10
完結おめでとうございます
毎回、心を揺さぶるお話をありがとうございました
最後は温かい気持ちになれる感動をありがとうございました

これからも応援しています☆
329 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/05(金) 16:56
簡潔おめでとうございます。
良い作品に出会えて感激です。
更新ペースも早いし・・・・作者さんすげーな、と

これからもどこかでお目にかかれることを楽しみにしています^^
330 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:02
よっちゃんが美貴の家に住み着いて助かることがあった
よっちゃんはキレイ好きらしい
だから炊事洗濯はよっちゃんがやってくれる
これは面倒臭がりの美貴にとってかなり嬉しいことだ

「美貴ちゃーんお風呂掃除したよぉ。」

風呂場から顔を出して笑ってるよっちゃん

「よっちゃんいい子だねぇ。お湯も入れてね。」

そういってあげると「はーい。」と返事してお湯をはりに行く。
あはは、可愛いやつだ。
331 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:02
「あと15分で沸くって。」

ソファで寛いでる美貴に駆け寄ってくるよっちゃん

「ん〜。じゃぁ沸いたら入ろう。」

床に座って美貴の膝に頭を乗せて甘えるよっちゃんの頭を撫でてやる

「美貴ちゃん、今日は何曜日か知ってる?」
「金曜日。」
「明日は?」
「土曜日。」
「そうだよ、お仕事お休みだよ。」

332 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:03
なぜ、こんなことを確認してくるのかというと
よっちゃんのエッチはかなり激しく
一緒にお風呂に入れば必ずエッチなことをしてくるわけで
ベッドに入れば必ずエッチなことをしてくるわけで
3回、4回くらい逝かされてたまに失神までさせられて
次の日、仕事だともう仕事にならないわけで
金曜日だけ一緒にお風呂に入っていいことにしたのだ

「まだ、沸いてないでしょ。」

と笑顔を見せるとデレェっとした顔を見せる
こんなに好きになられると可愛くて仕方ない

「はやく沸かないかなぁ。」
「15分でしょ。」
「じゃぁ先に入って体洗ってるうちに沸くよ。」

いいこと思いついたとばかりに立ち上がり美貴の手を引く

333 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:05
「沸くまで待とうよぉ。シャワーとか使うとお湯溜まるの遅くなるから。」
「美貴ちゃんとお風呂はいりたい。」

美貴の手をプラプラさせるよっちゃん。

「じゃぁ沸くまでここおいで。」

ポンポンと膝を叩いてみせると笑顔でソファに飛び乗って
美貴の膝に頭を乗せて寝転がる

「あと10分くらいだから待ってようね。」
「はーい。」

いい子になったよっちゃんの頭を撫でてあげる
334 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:06
「美貴ちゃん、髪の毛洗ってあげるね。」
「うん。」
「美貴ちゃんも洗ってね。」
「はいはい。」
「うちは美貴ちゃんの身体も洗うんだよ。」
「それはいいから。」
「洗ってあげるのに。」
「大丈夫、自分で洗えるから。」

洗ってもらったら絶対に洗い終わらないもん

「あれってどこに売ってるかな?」
「あれってなに?」
「こないだホテルで見たビデオで使ってたやつ。」
「ん?」
335 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:06
そう、こないだ初めてよっちゃんとラブホに行った
美貴は別に初めてじゃないけどよっちゃんは初めてだったみたいで
しかもエッチビデオを見るのも初めてだとか言ってたし

「ヌルヌルしてるやつ。」
「あぁ・・・」

ローションね。

「あれ、欲しいなぁ。あれ美貴ちゃんに塗りたい。」
「いやいや・・・。」
336 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:07
塗りたいとか言われても・・・
そう、よっちゃんは美貴がファーストキスだったらしくて
それまで全くそういうの経験なかったらしい
雑誌やマンガで知識は多少あったのね・・・
知識はあったのにやったことなかったから
よっちゃんはエッチに興味深々で・・・
覚えたことを美貴としたがるわけですよ
お風呂でエッチすることもビデオみて知ったから
したくてしかないらしくだから毎晩するようになっちゃったのね

「ああいうの売ってるお店あるかな?」
「ん〜。でもほら、必要ないでしょ。」
「でも使ってみたい。」

これを許したら他のおもちゃも使ってみたいってなるから絶対だめだ
337 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:08
「使わなくても美貴は十分満足だよ。」

そう、慣れてないはずなのによっちゃんは凄く上手いんだ

「ホント?美貴ちゃん気持ちいい?」
「うん。だから、要らないよ。」
「そっかぁ。でもあったらいいよね。」
「でも、ないからいいよ。」

ピピピッピってお風呂の準備が出来た音が鳴った
よっちゃんの意識をローションから離さなくちゃ

「よし、今日は体、洗ってもらおうかな。」
「ホント?」
「うん。だから、入ろっ。」
「はーい。」

「おっ風呂、おっ風呂。」って言いながら美貴の手を引くよっちゃん
可愛いんだけどね、知識がなさ過ぎてエッチだから大変なんだよね
それに、気に入るとそれしか見えなくなっちゃうから
338 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:08
「脱がしてあげよっか?」

脱衣所でさっさか自分の服を脱ぎ終えたよっちゃんは
美貴が脱いでる姿を見ながら言ってくる

「大丈夫、先に入って体洗っておきなよ、頭洗ってあげるから。」

素直に先に入っていくよっちゃん
よっちゃんの扱いに慣れたなぁ美貴。
脱がされるのってちょっと恥ずかしいからね・・・

339 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:09
後から入ると鼻歌を歌いながら体をゴシゴシしてるよっちゃん

「背中洗ってあげる。」

スポンジを受け取ってよっちゃんの背中を洗ってあげる
真っ白でキレイな背中なんだよねぇ

「はい。洗えたよ。次、頭洗うね。」

頭も洗って、シャワーで流してあげると楽しそうに美貴を椅子に座らせる

「えっ?」

前から洗うのかよ
美貴の前に座り込んでスポンジを泡立ててるよっちゃん
340 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:10
「こっちの手から洗うね。」

美貴の右手を取ってゴシゴシしだす
凄く楽しそうに
だからまぁやらせてあげる

「はい、こっち。」

今度は左腕

「よし。次はぁ。」

美貴の体を見て次に洗う場所を考えるよっちゃん
ちょっと、恥ずかしいぞ・・・

「美貴ちゃんうーして。」

首を上げてうーってすると首と肩と鎖骨までを
ゴシゴシってする

「次は、お腹にしよぉ。」

お腹にスポンジを当ててゴシゴシ

「次はぁ。」

お腹を洗うなら胸まで洗って欲しい・・・
胸だけ泡がついてないのこ格好・・・
341 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:11
「ちょっと、よっちゃんなんでここ洗わないんだよ。」
「あとからちゃんと洗ってあげるから。」

って笑顔を見せられても、恥ずかしいってば・・・

「よし、足洗うね。」

右足を自分の膝に乗せて足の指から太腿までを
ゴシゴシ
左足も同じようにゴシゴシ

「次、背中ね。」

後ろに回って背中をゴシゴシ
342 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:12
「美貴ちゃん立って。」
「なんで?」
「お尻洗うの。」
「そこらへんは自分でやるよ。」
「洗わしてくれるって言った。」

はい、言いました・・・
仕方なく立ち上がるとよっちゃんがお尻をゴシゴシ

「美貴ちゃんのお尻かわいいね。」
「もう、洗ったでしょ。座るよ。」

恥ずかしいから直ぐに座った。
343 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:12
「じゃぁ次おっぱい。」

おっぱいって言うな・・・
よっちゃんはスポンジを置いて掌にボディーソープをつけて
泡立てる・・・手で洗うのか・・・

「これね、さっき思いついたの。」
「なにが?」
「これ、あのヌルヌルの代わりになるでしょ。」

あぁ・・・思いついちゃったんだ・・・

「ほらヌルヌルするもん。」

楽しそうに掌を美貴の乳房に当ててゆっくり円を掻く様に撫でるよっちゃん

ヤバイ・・・

344 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:13
「気持ちいい?」
「ん、けど、洗う手つきじゃないんだけど。先に洗おうよ。」
「そっか。そうだ、洗ってたんだ。」
「うん。洗ってたんだよ。」

美貴の胸を掌で揉むように洗い出すよっちゃん。
いつまでやってるんだ・・・

「もぉ、いいと思う。シャワー出して。」
「まだ、洗ってないとこあるから待って。」
「なに、どこ?」
「ここ。」
「やぁっ。」

すっと美貴の足の間から入ってきたよっちゃんの手

「美貴ちゃん濡れてる。」
345 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:14
そりゃ、あんなふうに胸触られたら濡れるって・・・

「あ、ちょっ。待って、よ。」

よっちゃんの指が美貴の敏感なそこを擦る

「洗ってあげるからこれ開いて。」

美貴の膝をポンポン叩く

「これじゃ洗えないよぉ。」

洗う手つきじゃないじゃんかよぉ。

「やぁ、あっ。あぅ。」

美貴の膝を左右に広げ始めるよっちゃん
まって、後ろに転ぶ、危ないって

346 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:15
「ちょ、ストップ、あ、待ってって。」

バシッと頭を叩くとやっとよっちゃんの手が止まる

「もぉ・・・。危ないでしょ、後ろに倒れるから。」
「あ、ごめんなさい。した座って。」
「もぉ。」

椅子から降りてマットの上に正座する。

「美貴ちゃん意地悪だぁ。それじゃ洗えない。」
「よっちゃん、今、手にボディソープ乗せたでしょ。」
「あ・・・。」

悪戯がばれた子供みたいな顔してるよっちゃん

「もぉ、普通にしようよ。ねっ。」

もう、美貴の体は熱りだしてるんだよ
よっちゃんのお遊びに付き合って待ってられないの
347 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:15
「これしたかったのになぁ。」
「普通にしてから、それしていいから。」
「ホント?」

ホントって言う前によっちゃんを手を引き寄せてキスをした
もう、我慢できないんだもん
よっちゃんにキスして欲しくて触って欲しくて

「んっうっ。」

やっぱりよっちゃんはエッチが上手。
キスだけで凄く気持ちいい

よっちゃんの手でが美貴の胸を触る
まだ石鹸がついてたからヌルヌルしてて凄く気持ちいい
348 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:16
「あぁ、よっちゃん・・・。」
「美貴ちゃん気持ちいい?」
「うん、いい・・・あぁ。」
「乳首おっきくなってきた。」

って美貴の乳首を指で擦ったり引っ張ったりするよっちゃん
舌でして欲しいのに、いつもなら直ぐに吸いて来るのに
今日はしてこない

「よっちゃん、舐めてよぉ。」
「石鹸ついてるんだもん・・・。」

残念そうに言うよっちゃん・・・
流せばいいじゃんかよ・・・

美貴はコックを捻ってシャワーで体の石鹸を流す

「はい。して。」
349 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:17
赤ちゃんみたいに美貴の胸に吸いついてくるよっちゃん

「んっ、あぁ・・・あっ。」

ペロペロって舐めながら美貴の足を擦ってくる
美貴の顔を確認しながらお腹もペロペロ舐めて

「美貴ちゃん、可愛い。」

美貴の唇にチュッってしてまた美貴の胸に舌を這わす

「ちょっ、あぁ、よっちゃ、ん・・・。」
「美貴ちゃん気持ちいい?」
「うん、こっちも、して。」

足を開いてよっちゃんの手を美貴のそこに持っていく

「凄い濡れてる。」

だって、気持ちいいんだもん

350 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:18
「これ、おっきくなってる。」

硬くなってるそれを指で遊ばれてそれだけで美貴は逝きそうになる

「やぁぁ、あ、あ、あんぅぅ。」
「いい?これ気持ちいい?」
「ん、あ、いい、あぁぁ、あっ、あっっ。」

それだけ触られて美貴は逝った。

「はぁはぁ。」

肩で息をしてる美貴をマットに寝かせると
よっちゃんは美貴の足を左右に開いて体を入れると
腰を掴んで美貴のそこに顔を埋める

「あ、あ、あ、ちょっ、やぁ、んっ、あぁ・・・。」

今度は足を持ち上げて

351 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:18
ズプッ

「っあぁぁ。あ、あ、あ、あはぁ・・・。」

いきなり指を入れられて掻き回される

「美貴ちゃん、凄い可愛い。」

跳ね上がってしまう腰を抑えられて

「あ、あ、あ、うぅぅ、あ、あぁ、あっ。」

おヘソもペロペロって舐められて

「やぁあ、あ、あ、ダメ、イクっ、あ、あ、んぅあぁぁぁっ。」
「かーいぃ・・・。」

脱力した美貴に覆いかぶさって
チュッってキスして笑うよっちゃん
352 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:19
「気持ちよかった?」
「うん。良かった。」
「じゃぁこれするね?」

ってボディソープを手にするよっちゃん

まて、今はそれされたらヤバイ・・・

「一休みしてからにしよぉ。」
「大丈夫だよ。疲れてないもん。」

いやいや、美貴が・・・

「やぁっ。」

ちょっと冷たい感覚とよっちゃんの手の温もり

「ピクってなった。かわいい美貴ちゃん。」
「あぁ、あ、あ、あぁあぁ、んぅぅ、あっ。」

もう片方の手で胸まで愛撫されて
353 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:20
「やぁあ、あ、あっんぅっあぁ。」

出る・・・出ちゃうっ・・・

「あ、あ、あぁぁぁぁっ。」

よっちゃんがじっと見てた
美貴のそこから出るものを

恥ずかしいなぁ・・・

「美貴ちゃん、気持ちよかったの?」
「うん。」

美貴の体を抱き上げてギュッて抱きついてくるよっちゃん

354 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:20
「美貴ちゃん、大好き。」

って顔中にキスを降らす。
力が入らない美貴によっちゃんはシャワーを当てて
石鹸を洗い流すと抱き上げて湯船に入る

よっちゃんに後ろから抱きしめられながらボーっとしてる美貴

「毎日、一緒にお風呂したいなぁ。」
「無理・・・。」
「どうして?」
「だって、まだするんでしょ・・・。」

よっちゃんの手が美貴の胸を揉み始めてる

「だって、美貴ちゃん可愛いんだもん。」

って美貴のあそこにも手を這わす

「あっあぁ・・・っあんぅ、あぁ、あっ。」
「美貴ちゃん、腰動いてるよ。」

美貴の胸に夢中のよっちゃんは指をそこに入れたままで
動かしてくれない・・・
355 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:21
「だって、あぁ、あ、っんぅ。」
「可愛すぎる美貴ちゃん。」

お尻を持ち上げられて美貴は浴槽の縁に手をついた
後ろから舐められて指を入れられて奥まで突かれる
これ、こないだのビデオで見たやり方だね・・・

「あぁぁ、あっあ、あ、あ、あっあ・・・。」

もう直ぐで逝きそうだったのに急にやめるよっちゃん

「どしたの?」

よっちゃんは不満そうな顔して美貴を引き寄せる

「なに?」
「これ、美貴ちゃんの顔見えない。」

って頬を膨らませるよっちゃん
可愛い・・・
356 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:22
「じゃぁこれでいい?」

よっちゃんに跨ってよっちゃんの肩に捕まった

「うんっ。」

って笑顔になるよっちゃん

「あぁぁ、気持ちいぃ・・・あぁ、あ、あっ。」

再び美貴のそこに入ってきたよっちゃんの指
自然に美貴の腰も動き出す。
よっちゃんが美貴をじっと見上げてる

「あぁ、あっ、あぁぁぁっ。よっちゃんっ、あ、あっ。」
「いい?気持ち良い?」
「いいっ、あっ、あぁぁぁっあっイクッ、あ、イクぅあぁぁぁぁっ。」

よっちゃんに抱きついて今日3回目。

357 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:23
「はぁ・・・。」
「美貴ちゃん、凄い可愛い。」

美貴の背中を撫でながら肩にチュッってするよっちゃん

「のぼせそう・・・。」

力が抜けてしまった美貴をよっちゃんは慌ててお風呂から出す

体も拭いてもらってベッドまでお姫様だっこしてもらう美貴

よッちゃんとお風呂に入るといつも最後はこうなるんだ
だから、次の日が休みの金曜日じゃないとダメなわけ
358 名前:.日常-お風呂篇- 投稿日:2006/05/07(日) 00:23
「美貴ちゃん。水飲んで。」

ってコップを渡してくれるんじゃなくて
よっちゃんの唇が美貴の唇を塞いで流れ込んでくる水

そのまま舌も入ってくるんだよね。

「んっうぅ・・・んっ。」

それでよっちゃんの手は美貴の胸に・・・
このまままたするんだ美貴たちは
よっちゃんが眠るまで

よっちゃんのお風呂の方程式は
お風呂=体の洗いっこ+石鹸使用の全身愛撫+湯船でエッチ+ベッドでエッチ
だから、金曜日しかダメなの
359 名前:clover 投稿日:2006/05/07(日) 00:47
GW旅行に行ってラッシュに巻き込まれながら深夜に帰宅
そして、みきよしエロを更新してる(苦笑)
今日はレス返しから

>>324 :名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
最後までお付き合いくださりありがとうございます。

>色々タメになって、少し頭が良くなったような気分になりました。

えっ!そんなコメントが来るとは;-ロ-)!!ビックリしてますw
神話とかその辺のところなのでしょうか?
もしそうなら神話とかが間違ってたらごめんなさいm(。_。)m

これからも宜しくお願いします。

>>325 :タラク 様
レスありがとうございます。
最後までお付き合いくださりありがとうございます。

>感動しました…こんな素晴らしい作品に出会えて本当に良かったです。

そんな風に言って頂けてかなりすんごく嬉しいです。ありがとうございます。
これからも、頑張るので宜しくお願いします。

>>326 :ももんが 様
レスありがとうございます。
最後までお付き合いくださりありがとうございます。

>素直に感動できたお話でした。

ありがとうございます。そう言っていただけでよかったです。
これからも宜しくお願いします。

>>327 :名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
最後までお付き合いくださりありがとうございます。

>吉亀の組み合わせがよかったです。

ありがとうございます。亀井さんが最近、可愛くて・・・
どうしてもくっ付けちゃうんですo(〃^▽^〃)o

これからも宜しくお願いします。

>>328 :名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
最後までお付き合いくださりありがとうございます。

>毎回、心を揺さぶるお話をありがとうございました
>最後は温かい気持ちになれる感動をありがとうございました

そんな・・・(#^.^#) エヘッ
ありがとうございます。ヤバ・・・嬉しいです。

>これからも応援しています☆

ありがとうございます。宜しくお願いします。

>>329 :名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
最後までお付き合いくださりありがとうございます。

>良い作品に出会えて感激です。
>更新ペースも早いし・・・・作者さんすげーな、と

(〃^ー^〃) テレテレ
ハイペース更新が今のうちだけにならないように頑張ります☆〜( ^o^)o_彡☆

これからも宜しくお願いします。
360 名前:clover 投稿日:2006/05/07(日) 00:47
本日の更新
>>330-358 みきよしシリーズ 日常-お風呂篇-

みきよしシリーズは前スレ「悲しい偶然」から始まってますのでよろしければ読んでください

みきよしシリーズ 勝手な人
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1141142667/947-958n

みきよしシリーズ バカとの出会い
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1141142667/961-981n

みきよしシリーズ 日常-買い物篇-
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1141142667/984-999n

361 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/07(日) 01:43
よっちゃんが可愛すぎる。
そして帝も甘やかしすぎたよ帝w
362 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/07(日) 16:20
みきよしお風呂篇-キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
エロ過ぎです!さすがの美貴様もノックアウトか
よっちゃんが完全に子どもですね(・∀・)ニヤニヤ
363 名前:ももんが 投稿日:2006/05/07(日) 20:58
みきよしのお風呂篇すごすぎです!
鼻血でそうでした(笑)
ラブラブなみきよしごちそう様です♪
364 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:48
美貴と出会った次の日、よっちゃんはバイトを首になっていた
まぁ当たり前だよねぇ。

よっちゃんは行動派らしい
ってか行動派だよね、美貴にくっ付いてきちゃうんだから
で、次に見つけてきたのは警備員のバイト
しかも美貴のオフィスがあるビルの・・・

365 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:48
よっちゃんが作ってくれた朝食を食べると
美貴より先によっちゃんが出勤する
美貴はそれからお化粧して着替えて出勤

美貴は電車で行くんだけどよっちゃんは何故か自転車なんだよね
通勤費ためるんだって張り切ってた・・・

オフィスの入口には制服を着た警備員が3人立ってる。
その中の一人がよっちゃん。
出勤してくる人たちに「おはようございます。」って言いながら
IDカードを持ってるかチェックする

美貴は毎朝こうやって・・・怪しいことをしなければならない
何が怪しいかって?
それは、ビルから少し離れたところにあるオブジェの影から
警備員さんたちに見つからないようにビルの入口を伺うのよ。
怪しいでしょ?普通、朝なら直ぐにビルに入ってデスクに着きたいでしょ?
美貴も今まではそうしてたのよ。それでコーヒー飲んでゆっくりしてから
仕事を始めてたのよ。でもね・・・
366 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:49
よっちゃんがあそこにいるのよ。
美貴が普通に出社する人に紛れて入っていったらどうなると思う?

はい、よっちゃんと出会った日。
よっちゃんが美貴についてきたように・・・
そうです、着いてきちゃうんです。
そうするとどうなるかって言うと
仕事をしないわけで、IDチェックとかしないと色々ね・・・
だから、こう美貴は人が途切れたときに行かないと
367 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:50
そろそろ人が途切れるかなぁって頃合いを見計らって
隠れながら出て行くのよねぇ。
なぜ、隠れながらかって言うと
こんなところで見つかってしまったら
よっちゃんは犬のようにこっちに駆け出してきちゃうから

よしっ。今だっ。

人が途切れた隙に美貴は走りだす。

あっ気がついた?大丈夫?
あぁ来ちゃう。来ちゃったよぉ。

「みきちゃぁ〜ん。寂しかったよぉ。」
368 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:50
美貴の姿を見つけて凄い速さで駆け寄ってきて
歩道のど真ん中、会社の真ん前で抱きしめられる。

「っう。くるじぃ・・・放せ。」
「美貴ちゃんも寂しかったでしょ?」
「うん。だから離れてお願い。」

よっちゃんの腕の中からスルスルと抜け出して
乱れた衣服を整える。

毎朝これなんだよ・・・もぉ・・・

369 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:50
「IDカードチェックしまぁす。」

ビルに向かって歩き出すとよっちゃんが美貴の前を後ろ向きに歩く

「はい。持ってますよ。」

IDカードを見せる。

「美貴ちゃんの下着チェックしまぁす。」
「バカか?」

昨日はベロチェックとか意味不明なこと言ってたな・・・

370 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:51
「見せてよぉ。見せてくれないとスカート捲くっちゃうぞ。」

スカートを抑えながらビルに向かって足を速める。
よっちゃんはバカだから本当に捲くるからね。
人がいようと道の真ん中だろうと関係なくね
関係ないっていうかもうよっちゃんには他人の存在がないんだよね
美貴とよっちゃんだけの世界に生きてるっぽいから。

「みせてぇ。見たい。」

あぁヤバイ人が来る。早く入らないと。

「こら、掴むな。」
371 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:51
よっちゃんが美貴のスカートの裾を掴む。
こんなところでスカートめくりなんかされたら・・・
小学校じゃないんだからやめろよぉ。

「捲くるなよ。」
「見たい。見せて。今日は何色?」
「変態。」
「変態でもいいもん。」
「こら、太腿触るなっ。」
「みたぁいぃぃ。」

ちょっと重いって、遅刻するってぇ。
美貴の足に腕を絡めて座り込むよっちゃんをスカートを抑えながら
必死で引きずるって引きずれるわけないだろうがっ
372 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:52
「放してぇ。遅刻するって。美貴が上司に怒られてもいいの?」
「ヤダ。」
「じゃぁ放して。」
「見たい。」
「分かった。後で、ほら昼休みに見回りくるでしょ。」
「うん。」

美貴も座り込んでよっちゃんの耳元で囁く

「そのときトイレで、ねっ。」
373 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:53
よっちゃんの顔がデレェってなって足を掴む力が抜けた。
よし。今だ。

美貴はビルに向かって走りだす。

「あっ、乗る、乗ります。」

閉まりかけたエレベータに何とか滑り込んでと・・・

「はぁ・・・。」

疲れた・・・毎朝何かとこうなるんだよねぇ。

目的のフロアで降りてやっと自分のデスクに座ると同時に始業時間

374 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:53
375 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:53
「美貴、お昼いく?」

同僚に誘われて頷く。財布を持ってオフィスから出ると
先に出た同僚が急に立ち止まるからぶつかった。

「どしたの?」
「なんか・・・いる。」

恐れながら指差す先に視線をやると・・・
376 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:54
「ごめん、お昼やっぱり美貴いいわ。先行って。」

同僚に先に行かせて、廊下の端に凄い顔で立ってるよっちゃんに歩み寄る

「涎・・・目が逝ってるよ。よっちゃん。」

そんな厭らしい、危ない目でしかも涎垂らしていたら皆、怖がるから

ハンカチで涎を拭ってあげながら廊下に人がいないか確認。
それにしても・・・普通の顔でいればかなりルックスはいいのに・・・
きっと既に頭の中では妄想が始まってて
意識が逝っちゃってるよっちゃんの手を引いて女子トイレに入る。
377 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:54
鏡の前に立たせて蛇口を捻ってっと
出てきた水でハンカチを濡らしてよっちゃんの顔に当てる。

「わっ。あ、美貴ちゃん。」

帰って来たよっちゃんは美貴を見てまた涎を垂らす。

「涎・・・」

仕方なくてまた拭ってあげる。

「しったぎ、しったぎ、みっきちゃぁんのパンティはなぁに色?」

いきなり変な歌を歌うよっちゃんの口を慌てて手で塞ぐ。

「しぃー。」

他にいないよね人・・・トイレを見渡して確認。
良かったいない。よし、放して平気だ。
378 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:55
「見せて。」

いつも見てるのに・・・どうしてそんなに見たがるんだ・・・
下着以上のものも全て見てるのに・・・

「みせぇてぇ。」
「はいはい。」

よっちゃんを連れて個室に入って鍵を閉める。

「はい。どうぞ。」

379 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:56
よっちゃんは立っている美貴の前にしゃがむとスカートの裾を持って
ニタニタ・・・
ホントに変態に見えてきたよ・・・

「くろのレースだぁ・・・ムフフぅ。」

スカートをペロッと捲って美貴の下着を正面から凝視。

「ちょっと、もう良いでしょ。」

そんな風に見られたら恥ずかしいから。

「なっ。おい。」

380 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:56
よっちゃんは何がどうしてそういうことするのか美貴にはわからないけど
スカートを持つ手を放してスカートの中に頭を入れて
美貴のその、そこに顔をくっ付ける。

「ちょっとバカっ。」

スーって息を吸うよっちゃん
よっちゃんの鼻は美貴のそこにくっ付いてて・・・

「変態。きゃっ。ちょっ。」

舐めるな・・・。誰か来たらどうするんだ。

「ちょ、やぁあぁぁ・・・。」

下着脱がすなって・・・
381 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:57
「やっあぁんぅぅ。」

声が廊下に漏れないように美貴は口を手で覆った。

「うっんぅっ・・。やぁぁっ。」

よっちゃんはペロペロ舐めながら指で美貴の一番敏感なところを転がす

「あ、あぁ・・・。」

立ってられない・・・便座にパタンって座ると
よっちゃんは美貴のスカートの中に頭を入れたまま
離れないでペロペロ、ピチャピチャ、ジュルジュルって・・・

「んっんんんっ。あぁっ。」

ヤバイ・・・気持ち良い・・・。
声出ちゃうよ。
382 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:57
「んっ。」

よっちゃんの指が入ってきてかき回される。
よっちゃんの舌が蕾を吸いあげる

「んっんんんんんっくっ、ああぁっ。」

逝っちゃったよ・・・

ジュル、ズゥズズゥーってよっちゃんが吸い上げて

ペロペロって舐める。

「はぁ。美味しかった。」

ってスカートから顔を出した笑顔のよっちゃん。

この笑顔を見ると・・・怒れなくなるのは
美貴もよっちゃんを好きになっちゃってるからなんだよなぁ。
383 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:58
「はぁ・・・。」
「今日のお昼ごはんは美貴ちゃんジュースでおしまい。」
「ばぁか。」

よっちゃんのオデコをペシっと叩く・・・

ニヒヒと笑いながら美貴をぎゅっと抱きしめて
チュッっと美貴の鼻にキスをするよっちゃん。
なんかムカついたからよっちゃんの鼻に噛み付いた。

「イタッ。痛い。」
「アハハ、赤くなってやんの。」

痛がってるよっちゃんの前で美貴はトイレットペーパーを
カラカラカラと手にとって拭く。
拭かないとね・・・。これからまだ仕事あるし。

よっちゃんが見たがった下着を穿いてと・・・

よし、そっとドアを開けて人が居ないか確認して外に出る。
384 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:59
「よっちゃんも手洗って。」

美貴のそのそれが着いたままで仕事されても嫌だからね。

「はぁい。」

って自分の指をペロペロっと舐めてから手を洗うよっちゃん。
・・・段々、変態になってってる気が・・・。

ちなみによっちゃんがここの警備員にバイトで来てからは
1日1回は必ずこのビルのどこかの女子トイレで必ずしてる・・・

よっちゃんの会社のトイレのイメージはこっそりエッチをする場所らしい。

おかげで美貴はお昼を食べれない日が・・・
午後の仕事きついなぁ。
385 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/07(日) 23:59
「あっ。」

手を洗いながら叫ぶよっちゃん。

「なに?どうしたの?」

よっちゃんはシマッタという顔で美貴を見る。

「忘れた。」
「何を?」
「美貴ちゃんのブラジャー見るの。」
「・・・。」
「もう一回だ。」
「わぁっ。ちょっと。ダメ、もう直ぐ皆来る。ゴハン食べ終わって歯磨きしにくるって。」

美貴を連れて再び個室に入ろうとするよっちゃん。美貴は必死に洗面台にしがみつく。
386 名前:日常-お仕事篇- 投稿日:2006/05/08(月) 00:00
「だって、ブラジャー。」
「後で、あと、残業前にねっ。」
「約束だよ。」

って小指を立てるよっちゃん。
もぉ・・・美貴は仕事しに来てるんだよ・・・
よっちゃんはエッチしに来てる感じだよね・・・。

「指きりげんまん、嘘ついたら」

でも、指きりするよっちゃんは子供みたいで
可愛いんだよなぁ・・・

「エッチ千回さーせて。指切った。」
「・・・。よっちゃん。」
「ん?」

そんなにしたら美貴のそこ確実壊れるから・・・
嘘はつかないでおこう・・・

「6時に待ってるね。」

387 名前:clover 投稿日:2006/05/08(月) 00:07
本日の更新以上です
>>364-386 みきよしシリーズ 日常-お仕事篇-

みきよしシリーズは前スレ「悲しい偶然」から始まってますのでよろしければ読んでください

みきよしシリーズ 勝手な人
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1141142667/947-958n

みきよしシリーズ バカとの出会い
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1141142667/961-981n

みきよしシリーズ 日常-買い物篇-
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1141142667/984-999n




>>361 名無飼育さん様
レスありがとうございます。
みきてぃはよっちゃんには甘いのですo(〃^▽^〃)o

>>362 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
みきてぃもよっちゃんになら何でもOKなんです☆〜( ^o^)o_彡☆

>>363 ももんが 様
レスありがとうございます。
鼻血出さないでくださいヾ(∇^〃)
388 名前:ももんが 投稿日:2006/05/08(月) 12:32
みきてぃはよっちゃんに甘すぎです!
でもそんな二人が大好きです♪
よっちゃんのエロさにノックアウト(笑)
389 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/08(月) 18:07
更新お疲れ様です!よっちゃん完全に変態だよwww
トイレなんてシュチュエーションエロすぎです(*゚∀゚)=3ハァハァ
clover様が書くみきよし最高です!
390 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/09(火) 22:37
エロすぎる…!!
391 名前:clover 投稿日:2006/05/10(水) 13:17
レス返しからさせていただきます。

>>388 ももんが 様
レスありがとうございます。
よっちゃんが変態になってきてしまいましたがw
まぁいいかなって☆〜( ^o^)o_彡☆あははっ

>>389 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>更新お疲れ様です!よっちゃん完全に変態だよwww
変態にしちゃいましたw

>clover様が書くみきよし最高です!
ありがとうございます。

>>390 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>エロすぎる…!!
アハハ(^。^ )( ^。^)


さて、次の話に行きたいと思います。
85年組+6期メインで行きたいと思います。
えぇ、更新頑張るので宜しくお願いします。
392 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:30
10畳ほどの広めの薄暗い部屋にテレビだけがチカチカと画面の色を変え音声が流れている。

続いては芸能コーナーです。
今日は・・・

ミディアムボブで金髪、整った顔立ちに色白、誰もが美人と思うだろう顔立ちの
吉澤ひとみはベッドの中で眠っていた。
テレビの音が聞こえ夕べ付けっぱなしで寝てしまったのだろうかと夕べを
思い返しながら寝返りを打ちテレビの方に顔を向けゆっくりと目を開く。

「何でいるんだ?」

開いた大きな瞳に映ったのはテレビに向かって座っているロングヘアーを
緩く一つにまとめアップにしている可愛い顔立ちの石川梨華の横顔。
寝起きの吉澤の掠れた声に石川は笑みを向ける。

「夜勤明け。」
「それはお疲れ。」

石川は看護学校に進学し看護士になってまだ3ヶ月。

「白衣の天使は大変なんだよ。分かる?よっちゃん。」
「大変な仕事なのは分かるけど、どうしてここにいるの?」
「そんなの決まってるじゃん。よっちゃんに会いにきたの。」
「いやいや、いつも会ってるじゃん。疲れてるなら家に帰って寝たら?」

石川は吉澤が寝るベッドまで四つん這いで近寄り顔を近づける。
393 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:31
「寝るより、よっちゃんの顔見るほうが癒されるんだよねぇ。」
「癒されるのと疲れが取れるのは違うでしょ。」
「まぁそうだね。」
「でしょ。帰って寝たほうがいいよ。」
「うん。でももう少しここに居たいな。」
「うちももう直ぐバイト行くよ。」
「じゃぁそん時、一緒に出る。」
「しょうがないな。」

もう直ぐバイトと言ってはみたがバイトは4時からだ。
今は10時。あと6時間も石川が起きているのは無理だろう。
それでも石川の負けず嫌いな性格だと無理をしてでも起きていようとするだろう。
そう思った吉澤はベッドの端にずれて石川のスペースを空けた。

「やったぁ。」

石川は満面の笑みで吉澤の隣に入った。
よほど疲れていたのだろう。石川は直ぐに寝息を立て始める。
そんな石川を優しい眼差しで見ていた。
394 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:32
石川は昔から夜になると吉澤の家にやって来てこうして寝ていた。
吉澤の家はいつもたまり場となる。
向かいの家の石川梨華。左隣の家の藤本美貴。右隣の家の後藤真希。
吉澤とは同い年の幼馴染。高校まで一緒に過ごしてきた。

吉澤は眠っている石川を起こさないようにベッドから抜け出しテレビの電源を切り部屋を出た。
395 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:32

*****************************
396 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:33
藤本美貴は大学の講義を終え、耳あたりからゆるいパーマのかかった髪をなびかせヒールの高い靴を履きコツコツと音を立てながら家に向かって歩いていた。
たった、一コマの講義を受けるためだけに大学に行かなければならない。
別に必須科目ではないからとらなければ今日は休みのはずだがその教授に魅力を感じた藤本はその一コマを取った。

改札を抜けてやっと住宅街に差し掛かったところで藤本は足を止めた。
黒いエルグランドが藤本の横に止まったからだ。
車の中は窓がスモークになっていて様子が分からない。

まさか、拉致?
と思った時、車のドアがスライドし人が降りてきた。

397 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:33
「なんだ、ごっちんか。」

車から降りてきた後藤真希は帽子を深めにかぶりサングラスをかけていた。

「お疲れ様でした。」と後藤は運転席の人に声をかけドアを閉めると車は立ち去っていった。

「ミキティの姿見えたから降ろしてもらった。」

二人は家に向かって歩き出す。

「仕事、終わるの早いね。」
「冗談。昨日、家に帰ってないから。」
「そっか。それは大変だ。お疲れ。」
「ヘトヘトだよぉ。」

後藤真希。高校1年のときに街でスカウトされたちまち人気が出た。
出始めはアイドル志向だったが、今ではドラマにも引っ張りだこだ。
398 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:34
「お昼まだでしょ?」
「うんまだ、夜食も食べずに撮影だったからペコペコ。」
「一緒に食べよう。」
「じゃぁ後藤が腕を振るいますか。久しぶりによしこにも手料理食べさせてあげたいけどなぁ・・・バイトだよね。」
「今日は夕方からだから居るよ。」

後藤は藤本が吉澤の日常を把握してることに少し胸が痛んだ。
芸能の仕事を始めるまでは藤本よりも石川よりも吉澤の側に居たのは後藤だったが今は多分一番離れた位置に居るだろう。

自分たちの家の前まで来ると二人は吉澤の家のドアを開け勝手に中に入っていく。
鍵がかかっているときは合鍵を使って中に入っていくこともある。
2年前に吉澤の両親が転勤になり吉澤が一人で暮らすようになったときに3人が合鍵を作ったのだ。
399 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:34
「あれ、梨華ちゃんも居るみたい。」

玄関にあるピンクの靴を見て藤本が呟きながら先に入っていくと
寝癖をつけた吉澤がリビングでお湯を沸かしていた。

「よっちゃん、今起きたの?」
「ん。今、起きた。あ、ごっちんだ。仕事は?」
「さっき終わったの徹夜で仕事してきた。」
「大変だね。テレビいっぱい出てるもんね。」
「忙しいんだよねぇ。今。ドラマやってるから。」

後藤はバッグをソファに置くと冷蔵庫を開け、材料を取り出し料理の仕度に取り掛かった。

「あれ、ごっちん作ってくれるの?」
「うん。パスタでいい?」
「うん。」

藤本が食器棚からコーヒーカップを3つ取り出し吉澤が沸かしていたお湯でコーヒーを入れる。
吉澤は「ありがと。」と藤本に告げ、自分のカップを持ってソファに座った。
藤本もカップを手に取り吉澤の横に座る。
400 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:35
「あ、梨華ちゃんも食べるかな?」

パスタを見せながら後藤が吉澤に尋ねる。

「夜勤明けだって、さっき寝たばっかだから起こしたら可哀相かも。」
「じゃぁいいね。」

後藤は3人分のパスタを茹で始めた。

「朝来たの?」

藤本が聞くと吉澤は首を振ってからコーヒーを一口飲んだ。

「さっき起きたらうちの部屋でテレビ見てた。」
「まったく、昔から梨華ちゃんはよっちゃんの家で寝る癖あるよね。」

藤本は呆れように言う。

「美貴、大学行ってきたんだよね。」
「行ってきた。1つだけだから今日。」
「うちバイト4時からだからさ。」
「夕飯になったら梨華ちゃん起こせばいいんでしょ。」
「うん。よろしく。」

401 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:36
後藤が出来たよと声をかけたので二人はテーブルに移動した。
テーブルの上にはサラダと野菜のパスタが並ぶ

「うまそぉ。」

と吉澤が早速パスタを口に運んだ。
後藤はその様子を嬉しそうに見ている。

「どう?」
「ごっちんの手料理久しぶり。美味い。」

後藤は笑みを零した。

「ごっちん、良いお母さんになるよね。料理も上手だしお菓子とかそこらへんで売ってるのより美味しいもんね。」
「またまた、ミキティそんなに褒めても何もでないよ。」

3人ともあっという間にパスタを食べ終え藤本がまたコーヒーを入れる。

「ごっちんちょっと痩せた?」
「そう?」

吉澤の言葉に後藤は自分の腕を触ってみる。
藤本も後藤の体を見るが以前の後藤と比べても分からなかった。

「今、忙しいし不規則だからかな?」
「ちゃんと食べないとダメだよ。」

吉澤が心配そうに忠告した。

「大丈夫だよ。食べてるから。」
「ならいいけど。」

吉澤はまだ、心配そうに後藤を見ている。
402 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:36
「それよりよしこ、これからバイトって何時まで?」
「んと、4時から10時。今日は遅いんだ。いつもは10時から6時なんだけどね。」
「毎日だったけ?」
「週休2日だよ。」
「そっか。」
「美貴だけまだ学生だよ。早く社会人になって自由なお金を増やしたいよ。」
「いいじゃん、学生。後藤なんか高校も遅刻早退ばっかだったじゃん。だから学生生活ってエンジョイしてないから羨ましいよ。」

後藤は下校帰りに皆で遊びに行ったりできなかった。
制服姿で歩けば写真を撮られ週刊誌に載る。

「1回だけだったねごっちんと梨華ちゃんと美貴と4人でさ帰りにゲーセン寄ったら次の週の週刊誌に載っちゃって。」
「あったあった、美貴たちまで載って他の学校の人に追い回された。」
「あったねぇ。」

後藤が申し訳なさそうな顔をする。
デビューして間もない頃、国民的アイドルとなった後藤を付回すマスコミは多かった。
吉澤たちもルックスが良かったためにマニアックな追っかけが学校に押し寄せ一時は大変な思いで登下校をしていたのだ。
その件以来、後藤の登下校は送り迎えつきになってしまった。
403 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:37
「でも、あの時、梨華ちゃん自分もスカウトされたらどうしようって言ってたよね。」
「ないない。梨華ちゃんがなれるならその前に美貴がなるって。」
「いやいや美貴はアイドルって感じでもないでしょ。」
「何それ、どういう意味?よっちゃん。」
「いやいや、アイドルって可愛い系でしょ?ねっごっちん。」
「さぁ〜どうだろう。後藤は可愛い系ではないと思うけどなったよ。」
「ごっちんっ。」

睨む藤本から後藤に助けを求めた吉澤だったが、後藤が面白がって助けてはくれなかった。

「どういう意味?」
「ほら、美貴は綺麗じゃん。うん。綺麗。でもぶりっ子とかしないじゃん。だから、アイドルとは違うかなって。」

藤本は苦笑いする吉澤のおでこを突いた。
綺麗だといわれて悪い気はしない。
藤本は照れ隠しで不貞腐れた顔を見せる。

「はいはい。どうせ美貴は可愛げのない女ですよ。」
「でもミキティが一番もてたよね。小学のときも中学も。高校でももててた?」
404 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:38
それぞれにルックスの良い4人の中学時代は校内でもカリスマ的な存在だった。
吉澤と藤本は剣道部に所属し石川は剣道部のマネージャー。
帰宅部だった後藤はいつも三人が部活を終えるまで屋上や保健室で時間を潰し4人で帰っていた。
高校ではあまり一緒に過ごすことのできなかった後藤は3人の様子をあまり知らない。

「よっちゃんが一番もててたよ。いっつも呼び出されてたもんね。」
「えぇそうなのよしこ。」
「そんなことないと思うけど。」
「いっつも断る時どうしようって言ってたじゃん。」
「へぇなんて断ってたの?」
「今、部活だけでいっぱいいっぱいだからごめんねって。」
「いつも一緒にいた美貴たちがとばっちり受けてたもん。邪魔だとか言われて大変だったんだから。」
「へぇ楽しそうでいいなぁ。後藤も高校卒業してからスカウトされれば良かったのに。」
「でも、18歳じゃ遅いんじゃない?今、皆若いもんね。美貴の大学にも居るよアイドル目指してオーディション受けてるけど20歳超えたらオーディションすら受けれないって。」
「そうそう、皆若いの。21歳とかじゃおばちゃん扱いだよ。」
「まじでぇ。それも辛いね。」
「20歳過ぎてからの女の魅力ってのがあるのにね。」
「あはは、確かにそれあるね。ミキティも高校の時より綺麗になったもんね。」
「ホントに思ってる?」

藤本が疑いの目を後藤に尋ねる。

405 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:39
「思ってるって、うちの事務所にいる子より全然いけてるよ。二人とも。」
「ごっちん何気に酷いこと言ってるぅ。まぁ美貴もそれなりにもてますから当然だけどね。」
「へぇ、美貴、大学でもててるんだ。」

吉澤は藤本と同じ大学に進学したが1年半で退学した。

「声とかかけられるよ。」
「へぇでどうするの?」
「睨む。」

藤本らしい対応だと吉澤と後藤は腹を抱えて笑った。

「でもいいなぁ後藤はそういうのないからさ。」
「ないの?よくあるじゃん共演がきっかけでとか。」

藤本がワイドショーとかでよくやってるよと尋ねる。

「うちの事務所厳しいから、ないよ。」
「そっか、そういえば、ごっちん芸能人の友達とか連れてこないもんね。」
「出来ないよ。もう5年もこの世界にいるけどホントいないね。何度か共演しててもその場限りだね。」
「でもまぁ、うちら幼馴染が居るからいいじゃん。ってかうちら他に友達できないよね。」

吉澤が藤本の肩を抱き同意を求める。

406 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:39
「一緒に居すぎだから、他の人入って来れないもんね。」

と藤本も言って3人で頷いた。

「ぁぁはぁっ。」

と後藤が欠伸をする。

「あっごっちん寝てないんだよね。」
「うん。でも大丈夫。よしこと会うの久々だし。明日仕事休みだから。」

ゆっくり眠れると後藤は笑顔を見せた。
それでも目の下に隈を作っている後藤を吉澤が気遣う。

「まだ、バイトまで3時間あるから、久しぶりに皆で昼寝しよっか。」
「よしこ、久しぶりって一緒に昼寝してたの幼稚園の頃じゃん。」
「いいじゃん。しようよ。ねっ美貴。」

吉澤の気遣いに気が付いた藤本も賛成を示す。

「しよっ。美貴も昨日、遅かったから眠いしさ。梨華ちゃんも寝てるんだし。」
「じゃぁしますか。」

後藤も嬉しそうに笑って見せた。
407 名前:A PENTAGON and A QUADRANGLE 投稿日:2006/05/10(水) 13:40
3人でそっと二階に上がり吉澤と後藤は吉澤の部屋にそっと入る。
ベッドの上では熟睡状態の石川が気持ち良さそうに眠ってる。
藤本は隣の部屋からダブルの敷布団を持ってやってきた。
後藤と二人でそれを床に敷き、吉澤はクローゼットから掛け布団を取り出した。

吉澤を挟んで3人で横になり一枚の掛け布団を横にして3人で使う。

「あは、なんか懐かしくていいね。」

と後藤は嬉しそうに呟くと直ぐに寝てしまった。

「ごっちんも梨華ちゃんもお疲れだね。」

と藤本が小声で呟くと吉澤も頷いた。
そしてしばらくすると吉澤も寝息を立て始める。
一人眠っていない藤本は吉澤の寝顔をじっと見つめていた。
ベッドで眠っていた石川は人の気配を感じ薄っすらと目を開けていた。
そして、藤本が吉澤をじっと見つめる様子をしばらく見てまた眠りについた。

408 名前:clover 投稿日:2006/05/10(水) 13:45
本日の更新以上です。

>>392-407 A PENTAGON and A QUADRANGLE

タイトルが長かった・・・(^。^;;
これから更新のときは短くP&Qにします

しばらく、この4人でお話し進む予定です。
409 名前:ももんが 投稿日:2006/05/10(水) 22:29
更新お疲れさまです。
85年組大好きなので今回の話も楽しみにしてます♪
410 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/11(木) 18:15
更新乙です。
新しいのかなり楽しみにしてました!!
85年組たまらんです(ジュルリ
CPどーなるか気になりますね☆
これからも頑張ってください!!
411 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:31
藤本は目を覚まし壁に掛けられている時計に目を向ける。
針は3時10分を示している。
吉澤も後藤もまだ眠っている。ベッドに居る石川も寝ているようだ。

「よっちゃん。おきて。」

藤本は吉澤の耳元で囁いた。
薄っすら目を開けた吉澤。

「バイトの時間だよ。」
「んぅ・・・。」

ぼうっとした様子で体を起こした吉澤は壁の時計に目を向け時間を確認し後藤と石川に目を向けると藤本に視線を戻した。

「行ってくる。」

と小声で告げた吉澤は後藤を起こさないように気遣いながら部屋の外に出る。
そして藤本も吉澤と同じように部屋を出た

412 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:32
「まだ寝ててもいいのに。」

リビングに来た吉澤はコーヒーを入れてる藤本の背に言った。

「美貴も、レポートとあと来週から教育実習あるからやることあるんだよ。」

マグカップを吉澤の前におきながら藤本が応えた。

「教育実習かぁ。うちらの高校いくの?」
「そうだよ。」

藤本は答えながらリビングを出て洗面台に行き、ヘアーワックスを手に取ると再びリビングに戻る。ワックスを手に取り吉澤の背後に立つと吉澤の寝癖だらけの髪をスタイリングした。吉澤はじっとしてやってもらう。

「よし。いいよ。」
「あんがと。」

藤本はまた洗面台にワックスを置きに行った。
413 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:33
「それじゃ、行ってくるのであとは適当によろしく。」

リビングに戻って来た藤本に吉澤がそう告げる。

「了解。てかその格好でいくの?」

行く気満々の吉澤は寝ていたときと同じ服装のジャージだ。

「うん。どうせ制服に着替えるし、バイクで直ぐだもん。」

藤本は呆れながらため息をついた。
見かけがいいのに着るものに気を使わない吉澤。
お洒落な服を着こなせるスタイルを持っているのに勿体無いと藤本は思う。

「せめてジーンズとかに履き替えれば?」
「いいのいいの。行ってきます。」

藤本の言葉をよそに吉澤はテーブルの上においてあった財布をポケットに詰め込み出て行った。

「まったく・・・さてと・・・。」

藤本は椅子に腰を下ろしカバンの中から教材やプリントを取り出し寝ている二人が起きるまで大学に提出するための課題をやり始めた。
414 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:34

*****************************

415 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:35
住宅街を抜けて直ぐにある公園の隣にある。喫茶店。
一見、ログハウスのような建物。
吉澤は喫茶店と公園の隙間にHONDAの50ccバイクゴリラを止めると喫茶店の中に入っていく。

店内は4人掛けのテーブル席が6つカウンターには7席あり暗めの照明にクラッシックが流れ、ゆっくりと寛げる雰囲気。

吉澤はカウンターの中にいるオーナーの中澤裕子に「こんにちは。」と声をかけ店内を見渡した。
平日の夕方がサラリーマンの客が多い。
テーブル席の5つが埋まっているがどれも一人の客のようだ。

「着替えてきますね。」

再び中澤に声をかけSTAFF ONLY と書かれたドアを開け中に入っていく。
4つのロッカーと長椅子が置いてある更衣室。
吉澤は一番奥のロッカーの前に立ちトレーナーを脱ぎロッカーに放り投げ変わりにワイシャツを取り出し袖を通す。ジャージのズボンも同じようにして黒いパンツを穿き。最後に黒いベストに袖を通しロッカーを閉めて部屋を出た。
416 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:35
カウンターでは中澤がエスプレッソメーカーを火にかけていた。
吉澤はカウンター入り中澤の隣に行く。

「オーダーですか?」
「いや、自分の。よっちゃんも飲むか?」
「いただきます。」

喫茶店の名前は LOSE。
失うとか無いとかの意味。
募集要項に書かれた、学生不可、やることの無い人募集。
吉澤はここのバイト募集を見て直ぐに大学を辞めてバイトを始めた。

吉澤たちは中学生の頃からこの店にはよく来ていた。
安くて美味しい。ホットが200円。サンドウィッチが300円。
500円で長い出来る最高の場所だった。

ボコボコとメーカーが音を上げだし中澤が火を止め2つのカップに注ぐ。

「旨い。」
「当たり前や、うちが入れたんやから。」

中澤は吉澤のおでこを突いた。
417 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:36
中澤にとって小さい頃から知っている吉澤は可愛い子供のようであり妹のようでもある存在。運動神経がよく活発で目立つ吉澤が大学を辞めてバイトをさせて欲しいと尋ねてきたときは驚いた。「他にすることないんか?」と聞くと作った笑顔で頷いた吉澤に中澤はそれ以上何も聞かずバイトさせ始めてもう1年半が過ぎた。

「それじゃ、うちこれから用事あるからあと宜しくな。」

空になったカップをシンクに置いて中澤がカウンターから出て行く。

「行ってらっしゃい。」

吉澤が声をかけると中澤は手を上げて店を出て行った。

それから数人の客が店を後にし数人の客がやってきた。
吉澤はなれた手つきでオーダーされたコーヒーや紅茶を作りテーブルに運んだ。
418 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:36

*****************************

419 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:37
藤本がリビングで課題をしていると石川が姿を見せた。

「あっ起きた?」
「よっちゃんは?」
「バイト行ったよ。」
「そっか・・・美貴ちゃん何やってるの?」

石川は藤本の手元を覗きこんだ。
藤本は参考書の背表紙を見せた。

「もう直ぐ、教育実習なんだ。」
「へぇ大変そう。うちの学校いくの?」
「うん。」

石川が席に着くと藤本が腰を上げ石川にコーヒーを入れてやる。

「あっそういえば、ごっちんも寝てたね。」
「うん。」
「なんか色々大変そうだよね。」

石川が同情するように呟いてコーヒーを飲んだ。
藤本は何が大変なのか意味が分からず石川を見る。
420 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:37
「あれ?週刊誌見てない?」
「なんか、書かれてたの?」
「スキャンダルがない女優って。なんか患者さんが言ってた。」
「出なくていいじゃん。」
「21歳にもなって男との話題が一つもないって嗅ぎまわってるんでしょ。」
「スクープか。」

高校時代の記者たちの姿を思い出し藤本は呆れた顔を見せた。

「まぁ騒がれるってことは人気があるってことだし。良いといえば良いことだよね。」

石川はコーヒーを飲みながら人事のように呟いた。

「度が過ぎると迷惑だけどね。」

しばらくすると後藤がまだ眠そうな顔で姿を現した。

「ごっちん、起きてきて直ぐで何だけど夕飯食べる?」

藤本が寝ぼけてる後藤を椅子に座らせながら訪ねた。

「んぅ・・・まだ食べれない。」

後藤が呟くと藤本は「だよね。」と苦笑いを零した。

「じゃぁ私、作る。」
421 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:38
石川はコーヒーを飲み干すと夕飯の仕度を始めた。
藤本はテーブルの上に広げてある資料を片して後藤にコーヒーをだして隣に座った。
後藤はなんだかだるそうにカップを手で弄ぶ。

「疲れてるね。」

藤本の言葉に後藤は頷いた。

「ごっちん点滴すると直ぐ元気になるよ。」

トントントンと包丁の音を立てながら石川が言った。

「んぅ・・・病院嫌い。」
「でも、ホント疲れてたら梨華ちゃんにお願いしなね。」

藤本の言葉に後藤は頷く。

「そうだ、後藤、聞きたいことあるんだけど。」

いきなり尋ねる後藤に藤本を首を傾げる。

「ん?」
「後藤たちの歳の子って大抵、彼氏居たりする?」

藤本は苦笑いを見せた。
422 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:38
「普通の子って美貴たち一般人ってこと?」

後藤は頷く。

「いや、美貴は居ない。」

申し訳なさそうに呟く藤本の後に「私も居ないよぉ。」と石川も続いた。

後藤はそんな二人にため息をついてみせる。
二人に恋人が居ないことは知っている。
それを今更言われても後藤が求めてる答えではない。

「二人じゃなくて一般的に。」

藤本は後藤の言葉に引きつった笑顔で応えた。

「んと、大抵居るんじゃない。ね?梨華ちゃん。」

藤本に同意を求められた石川は鍋に蓋をしてから二人を見た。

「ん・・・大方いるね。いないとしても付き合ったことはあるんじゃない。」

後藤はその言葉に「そうなんだぁ。」と関心した声を漏らす。
423 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:39
「ごっちんそんなこと聞いてどうするの?」
「今やってるドラマの役がごく普通の女子大生だから。」

自分はごく普通ではないのかと藤本は再び顔を引きつらせて笑った。

「あぁ見てる。見てる。」

石川が鍋をテーブルの真ん中に置きながら言う。
藤本が席を立ち食器をテーブルに並べた。

「見てくれてるんだありがとぉ。」

後藤が嬉しそうに石川を見る。

「見てるに決まってるじゃん。美貴ちゃんもよっちゃんも見てるよ。」
「ホント?」

器に料理を盛り付けてる藤本に後藤が視線をやると藤本は頷いた。

「あれどう?後藤はさ、あの子の気持ちとか分からなくてさ。」

藤本も石川も後藤と同じだ。
後藤が演じてる人物の気持ちを理解することは出来ない。
恋多き乙女。合コンに参加しいい男をゲットしようという女子大生。
それが後藤が今回演じている今時の女の子。

「二人も分からないよね。」

二人は苦笑しながら頷いた。

「冷めないうちに食べよう。」

石川の言葉に藤本と石川は夕飯を食べ始めた。
後藤はそんな二人の様子を黙ってみていた。
424 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:41

*****************************


425 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:41
9時になり店内の客は一番奥のテーブルに一人だけ。
カランカランとドアの鐘がなり店に入ってきた客はカウンターに座った。

「相変わらず、この店はいらっしゃいも言わないんだ。」

カウンター越しに吉澤にそう言ったのは帽子を深く被った後藤だった。
吉澤は少し驚いた表情をしたが笑顔を返す。

「料金にサービス代は入ってないからね。」

中澤がいつも言っている言葉だ。
ここのコーヒーが安いのはサービスしないから。コーヒーだけの値段だからだという。
だから、いらっしゃいもおありがとうございましたも言わない。
客は座ってコーヒーを頼み居たいだけ居てお金を置いて帰る。

426 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:42
「ごっちん一人?」
「うん。夕飯3人で食べたんだけどね。なんだか昼間寝すぎて寝れなくて。暇だし。」
「美貴たちは?」
「ミキティは課題残ってるって梨華ちゃんは明日早いから寝るってさ。」

後藤は少し不貞腐れた顔を見せると吉澤が笑う。

「そっか。じゃぁここでゆっくりするのが得策だ。」
「うん。」
「何にする?」
「ん〜寝れなくなると困るからなぁ。」
「コーヒーじゃないのもあるよ。」

後藤がメニューを見ながら何にしようかと迷う。

「ホットココアにしとこうかな。甘すぎるけど。」
「じゃぁちょっとだけコーヒー入れてモカジャバは?」
「うん。それでいい。」

後藤は笑顔で吉澤にメニューを返すと吉澤は早速作り始めた。

427 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:42
白いカップを後藤の前に置くと後藤は嬉しそうにカップの縁に飾られたホイップに舌を近づけペロと舐めた。

「甘い。」

と呟く後藤は幸せそうな顔をする。
吉澤はそんな後藤を優しい目で見ていた。
一人残っていた客が席を立ったので吉澤がレジに向かい会計をすると客は何も言わずに店を出て行った。
仕事をしている吉澤の姿を始めてみる後藤はなんだか寂しさで一杯だった。
いつも大勢でワイワイ騒いでた吉澤の姿は今は全くなくなってしまった。
仕事の忙しさで吉澤が大学をやめたと聞いたときも何も話が出来ず、ただ石川から報告されただけだった。辞めた理由も詳しく教えてもらえなかった。というよりも石川自身も知らなかったようだ。

「バイト楽しい?」
「うん。」

カップを洗って片付けている吉澤に尋ねると手を止めずに応える吉澤。
中学時代の楽しそうに剣道をする吉澤を知っている後藤から見れば今の吉澤は楽しそうには見えない。
428 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:43
「そっか。いいね。楽しいんじゃ。」

吉澤は手を止め後藤を見た。

「ごっちんは?楽しくないの?」
「ん〜。どうかな。忙しすぎてね。それもありがたいんだろうけど。」

そう言う後藤の表情は言葉通り忙しすぎて疲れきっていた。

「こうやってゆっくりよしこと話すのも久しぶりだし。」
「だね。」

吉澤は再びカップを洗い始めながら返事をする。

「今日は久々で楽しかったよ。梨華ちゃんも全く変わってないしさ。」
「うん。相変わらずあのままだね。」
「ミキティとよしこはちょっと変わったよね?」

吉澤はカップを棚にしまい。片付けを終えるとカウンター越しに後藤と向かいあった。

「変わったかな?」
「二人とも隠し事するようになった。」
「隠し事?何もしてないけど。」

吉澤は本当にしていないという顔で後藤をじっと見る。

429 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:43
「大学辞めた理由、ミキティだけ知ってるでしょ?後藤も梨華ちゃんも詳しいこと知らないもん。」

寂しげな顔で言う後藤。

「理由?言わなかったっけ?言ったよ。」
「やること無いから辞めるって。」
「うん。そう、それが理由。」

後藤は納得できない顔で真っ直ぐ自分を見てる吉澤を見た。

「剣道は?」
「剣道がどうしたの?」
「剣道やるために大学いったんじゃん。なんで辞めたの?」
「つまらなくなったから。」

後藤は吉澤の本心かどうかじっと表情の変化を伺った。
小学生の頃から藤本と二人で始めた剣道。
楽しそうで、全日本に出るんだと一生懸命取り組んでいた。
中学も高校も全国大会に出場し、吉澤と藤本は注目を集めていた。
藤本は剣道を子供たちに教えたいと高校教師を目指すといって大学では剣道部ではなく同好会に入ったが吉澤は剣道の推薦で大学に行き剣道部に入った。それがつまらなくなったからと1年ちょっとで大学を辞めるだろうか?
吉澤の表情に変化はない。
430 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:44
「そろそろ閉店だ。それ下げていい?」

言葉を返さない後藤に吉澤は空になったカップを指差した。

「うん・・・。」

後藤はカップを吉澤に渡した。吉澤は手際よくカップを洗い棚に戻すと店を閉める準備に取り掛かる。後藤はその姿を目で追った。

「2人はよくここ来るの?」

後藤はテーブル席の椅子をテーブルに上げていく吉澤の背中に声をかけた。

「梨華ちゃんは仕事帰りにたまに寄るよ。」
「ミキティはこないんだ。」
「そんなことも無いけど。梨華ちゃんのがよく来る。」
「いいなぁ。3人ともちょくちょく会ってるんだ。」

後藤は一人仲間はずれな気がして寂しそうに呟いた。
吉澤は椅子を全て挙げ終えて後藤の後ろに立つと頭を撫でる。

「ごっちんとだって会うじゃん。」

後藤は頭を撫でられながら指先を弄り俯く。
そんな後藤を吉澤は困った顔で頭を撫でた。
431 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:44
「昔みたいにずっと一緒には居ないって梨華ちゃんだって仕事で不規則だし。」
「ミキティとは一緒にいるでしょ?」

後藤は体の向きを変え吉澤を見上げた。

「そんなことないよ。大学だって学部違ったしさ、今はうちは昼間仕事だし、美貴もレポートとかで忙しいし。」

後藤は数時間前の石川の言葉を思い出していた。
夜勤明けちょうどこの店が開店した時間だったので吉澤に会いに立ち寄ったら中澤さんに今日は夕方からだといわれそのまま吉澤の家に行った。
石川は吉澤のバイトの時間を把握していなかったのだ。でも藤本は今日は夕方からだと知っていた。たまたま、藤本が知っていただけかも知れない。石川に会ってれば吉澤は伝えていたかも知れない。それでも後藤はそうは思えなかった。昔から吉澤はあまり自分の話をしなかったから。

「ミキティにはバイトの時間も伝えてるじゃん。」

吉澤はその言葉に何を言っているんだという表情を示した。
432 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:44
「ミキティにだけ何でも話してるんでしょ?」
「ごっちん?」
「前は毎日、後藤にもメールくれてたのに。今はくれないじゃん。」
「ごっちん忙しそうだから。」
「後藤は忙しくてもちゃんと返すよ。だからメールくらいしてよ。」

仕事を始めてあまり一緒にいられなくなった後藤に吉澤はその日にあったくだらない出来事や後藤のドラマの感想など毎日メールをしていた。大学を辞めようと思い出した頃からそれもしなくなっていた。
後藤が忙しそうだからというのは言い訳だと吉澤自身分かっている。
ただ、メールする内容が無いだけだ。もちろん後藤の出る番組は時間があれば見ている。
その感想だけでもメールすべきだったのかもしれない。

「ごめん、メールするから。うち、着替えてくるから待ってて。」

吉澤は後藤に継げ更衣室に入っていった。
久々に3人に会った後藤は吉澤と藤本が以前よりも遠い存在に感じて寂しくてならなかった。藤本への寂しさというより吉澤への寂しさのが遥かに勝る。
そして藤本が自分よりも吉澤の側に居ることへの焦りがあった。
それだけではない、今の仕事への不安もあった。
主役を務めるのは初めてではないが後藤には一つ胸につかえる部分がある。

戻って来た吉澤と店を出た。
吉澤はバイクを押しながら後藤と並んで歩く。

「なんかごめん。後藤、なんか・・・。」
433 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:45
上手く気持ちを言葉に出せない後藤を吉澤は優しい目で見守った。
後藤は言葉をあまり発するほうではない。それは吉澤も同じ。
気持ちを上手く言葉として伝えられない。
だからたまに行き違い喧嘩になることもあった。

「後藤からメールとかすればいいんだよね。」

吉澤は笑って見せた。

「後藤からするからよしこちゃんと返してね。」
「うん。うちからもするよ。」

後藤は笑顔を見せ頷いた。

自分たちの家の前に来ると吉澤は後藤が玄関に向かう背中を心配な表情で見ていた。
後藤は仕事の愚痴とかをあまり言わない。自分の中で溜め込んでしまう。
誰かが気が付くまで我慢してしまう。そんな後藤を吉澤は心配していた。
後藤が家に入る前に振り向き手を振ってから中に入るのを見届けてから吉澤も自分の家に入った。

434 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:45

*****************************

435 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:46
家に入ると「お帰り。」と美貴の声が聞こえてくる。
声のするリビングに入るとテーブルの上に資料を積みノートパソコンを弄っている美貴の姿があった。

「あれ、ずっとここでやってたの?」

吉澤はテーブルにある本を一冊手に取りパラパラとめくる。

「うん、なかなか終わらなくてさぁ。参ったよぉ。」
「レポート?」
「うん。」
「へぇ大変だねぇ。」
「うん。」

藤本は自分の前の席に座った吉澤を不思議そうに見た。
いつもなら藤本がこうしていても勝手にお風呂に入るか夕食を食べ始める。
それが、今日に限っては何もせずに藤本を待っているようだった。

「どうしたの?」
「ん?それ終わってからでいい。」

藤本は一瞬考えたが全ての教材を閉じ片付けた。
436 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:46
「いいよ、別に急いでないから。」
「ごめんね。」
「どうかしたの?」
「ごっちん様子どうだった?」

藤本は眉をひそめた。

「ごっちんどうかしたの?」
「店に来たんだ。」

藤本は後藤の様子を思い出してみたが疲れていることと役作りに悩んでいること以外は思い浮かばない。

「うちが大学と剣道やめた理由聞いてきた。」
「梨華ちゃんから話行ってるはずだよね。」

藤本は吉澤に確認するように尋ねる。

「うん、伝わってたけど、なんか勘ぐって来てさ。」
「そっか。なんでだろう。」

吉澤と藤本は不思議そうに顔を見合した。

「ここでなんかそんな話題になったのかなって思ったんだけど。」
「今回の役作りに悩んでるって話だけだったよ。あとは、梨華ちゃんの職場の話。」
「疲れてるようにはみえたけど・・・なんか不安ぽいっていうかなんだろう・・・。」
「ごっちん言わないからねぇ」

困ったね。と吉澤と藤本は頷きあう。

「また倒れなきゃいいけど・・・。」

吉澤は心配そうに呟いた。
そして藤本もまた同じように心配そうに頷いた。

デビューして直ぐに後藤は撮影中に倒れた。
慣れない仕事に加えハードスケジュール。睡眠時間は全くなく移動中のみだった。
入院したほうが良いと言われたがスタッフに迷惑がかかるからと点滴を打ってその日に帰り次の日から仕事に戻った。
そんな後藤を吉澤たちはただ見ていることしか出来なかった。

「よっちゃんの声聞くだけでごっちんは元気になるから大丈夫だよ。きっと。」

安心するように笑顔で言う藤本を吉澤は複雑な思いで見た。

「うちは・・・応えられない・・・。」
437 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:47
吉澤のこの言葉を藤本は以前にも聞いた。
高校を卒業するちょっと前のことだ
その日、吉澤と藤本は久しぶりに後輩の稽古をつけると部活に顔をだし
石川は一人先に帰った。
仕事で学校にこれなかった後藤も仕事を終え石川と二人で吉澤の部屋で二人の帰りを待っていた。
吉澤と藤本が帰ると吉澤の母親が二人が来てると言うので吉澤たちは二人を驚かせようと藤本と二人で忍び足で部屋に向かった。
部屋から聞こえてくる声にクスクスと二人で笑いながらドアを開けようとしてが
「よっちゃんが好きなの。」という石川の声に吉澤は手を止めた。
そして二人の顔をから笑顔が消え、部屋から聞こえる声に耳を傾けた。
「後藤も好きだよ。よしこのこと。」
吉澤は入ったほうがいいのか待ったほうがいいのか分からず藤本に視線を向けるが藤本は俯きながら声に耳を傾けていた。
「友達としてじゃないんだよ、好きなの愛してるの。」
「分かってるよ。後藤もだもん。」
吉澤は今は中に入れないと判断し、ゴクッと生唾を飲み込んだ。
「きっとミキティもよしこを好きだよ。」
聞こえてきた後藤の声に吉澤は手を胸にあて目を閉じている藤本を見た。
「ライバルってこと?」
藤本は石川のその言葉を聞き終えて直ぐに部屋のドアノブを回した。

「ただいまぁ。」

藤本はいつもの調子で中に入っていく。

「ビックリしたぁ。」

驚く石川に藤本はとぼけながら尋ねた。

「何がライバル?」
「後藤のライバルがいっぱい居るって話だよ。それよりよしこは?」

部屋の中から聞こえてきた後藤のごまかしの言葉。
吉澤は「ただいまぁ疲れたよ。」と何も聞いてなかった顔をして部屋に入った。
その日の夜。石川と後藤が帰った後、部屋に残っていた藤本に吉澤は今と同じ言葉を言ったのだ。
そして藤本は「美貴のはごっちんの勘違いだよ。」と吉澤に笑顔を向け
「忘れよう、聞かなかったことにしよう。二人も知られたくないみたいだったし。」と続けたのだ。
438 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:47
吉澤は藤本をじっと見つめ言葉を待った。
藤本はこれ以上目を合わせているのは耐えられずその吉澤から目をそらした。

「うちは・・・どうしたらいい?」

目をそらした藤本に吉澤はさらに答えを求める。

「ただ、こうして幼馴染で居ることが二人にとって大切なんじゃない?」

自分がそうだから。そう付け足しそうになって藤本は口を噤んだ。
サイドから吉澤視線を感じながら藤本はその視線には耐えた。

「そっか・・・でも、あの時からうちらってもう幼馴染じゃないんだよね。」

それは藤本にも分かってる、幼馴染の枠を超えた感情を持っているのだから。
それでもその枠を超えないようにその感情を抑えてる。
壊してはいけない幼馴染の関係があるから。
藤本も石川も後藤もそう思ってる。いや、そう3人で決めたんだ。
進路が違った石川が真っ先に藤本に不安をぶつけてきた。
自分も後藤も吉澤が好きだ。藤本も好きなのか?好きなら抜け駆けはやめよう。
皆の吉澤で我慢しようと。藤本もそれが一番いいと思った。
ただ・・・そのとき藤本は一つだけ嘘をついた。
自分は吉澤に石川たちと同じ感情を持ってはいないと。
石川や後藤のように言葉に出してしまったら。
その感情を抑えきる自信が無かった。

「美貴たちは幼馴染だよ。最強のね。」

藤本は真っ直ぐに吉澤を見て言った。
439 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:48
「じゃぁ・・・そうする。」

吉澤は呟いて目をそらした。
吉澤は藤本の意見を絶対に否定しない。
バレーボールを始めた頃からの吉澤はそうだった。
藤本の言うとおりの作戦でプレーすると絶対に負けなかった。
吉澤の藤本は正しいという思考経路。

「うん。そうして・・・」

藤本は切なそうに悲しい目で吉澤を見た。

「もしさ・・・。」

吉澤が真っ直ぐ藤本を見て言うと藤本は首を傾げ吉澤を見た。

「もし、あの時ごっちんが言った言葉が本当だったら、うち応えてたよ。」

藤本の目は潤んでいた。零れそうになる涙を零さないように少しだけ顎を上げた。

「勘違い、だって。」
440 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:48
吉澤は藤本のその表情からその言葉が嘘だと気が付いた。
それでも騙されることにした。藤本がそれを望んでいるから。

「そっか・・・ごめんね変なこと言って。」

藤本は首を横に振りながら教材をカバンに詰め込んだ。

「ビックリするからもうそういうの言うなよなぁ。」

作った笑顔で言う藤本に吉澤は寂しげな笑顔を返した。

「じゃぁ美貴、帰るね。明日、朝から大学だし。」
「うん。」
「夕飯、一人にさせちゃって悪いけどさ。これ、梨華ちゃん作ったやつだから食べなね。」
「うん。」
「じゃぁおやすみ。」

藤本は片手を挙げて部屋から出て行った。
カチャっと玄関の鍵が締まる音が聞こえたのと同時に吉澤の瞳からポロっと涙の滴が零れた。
441 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/11(木) 23:49
更新お疲れさまです!
待ってましたぁー!!
85年組と6期が大好きなので続きがめちゃめちゃ楽しみです♪
442 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:49

*****************************

443 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:49
石川は明日も早いから疲れた体を休めようとシャワーを浴びてベッドに入ったが眠れず
ベッドの上に膝を抱えて座って悩んでいた。
眠る吉澤を見つめる藤本の表情を思い出してしまい落ち着かないのだ。

「やっぱり好きなんだよね・・・美貴ちゃんも。」

そうではないと否定した藤本だが石川の目にはそうは映らない。
高校を卒業した頃から吉澤が自分と距離を置いたように思えた。
前はふざけた振りして抱きつくと吉澤もふざけて抱きしめてくれたのに上手く交わされて離れさせられたり、ベッドで眠らせてはくれるが抱きしめてはくれなかったり思い当たるところは多々あった。
吉澤と同じ大学に行った藤本がこれからは一番側に居ることになるから後藤の言葉が本当だったらと不安でもあったから、だからあの時、藤本に確認したのだ。
そして、3人で決めた約束。絶対に誰も裏切ることは無いはずだ。
なのに、どうして吉澤は距離をとるのだろう。
自分だけにではない、後藤にも藤本にもだ。
大学を辞めるときも誰にも相談せずにやめた。
辞めると聞いたときの藤本の表情を見る限り藤本にも相談はしていないと思った。
だから距離を置こうとしている吉澤に石川は繋ぎとめようとなるべく吉澤に会いに行くようにしているのだ。そしてバイトをしている吉澤の様子を確認している。
自分たち幼馴染以外に親しい人が出来てしまったら吉澤は本当に自分たちから離れてしまいそうな気がするから。

「嫌な女になったなぁ私・・・。」

石川は膝に顔を埋めた。
本当はこんなことしたくない。
でも、吉澤が好き。幼馴染でよかったと素直に喜べないのが辛い。
きっと後藤も藤本もそうだろう。
444 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:50

*****************************

445 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:50
藤本はシャワーを浴びながら声を殺して泣いていた。
大切な、大好きな人に嘘をつかなければならない。
吉澤のあの悲しそうな目を見ていられなかった。
吉澤の気持ちを知ったのは吉澤が剣道部を辞めたときだった。
部室の荷物を取りに一緒に行ったとき二人きりの部室で言われた。

「梨華ちゃんやごっちんがうちを好きなようにうちは美貴が好き。」

そう言われたとき藤本は「美貴たちは幼馴染だよ。」とだけ言った。
あの時も吉澤は今日のような目をしていた。
そして次の日、吉澤は急に退学すると言った。
剣道部を辞める理由は知っていた。吉澤の腰は趣味で剣道が出来ても勝つための練習が出来る腰ではなかった。でも大学を辞めるとは言っていなかった。
剣道は老人になっても出来る武道だ、腰が悪いからと全て諦める必要はない、趣味としてやることも出来るし、吉澤なら教えることもできる。
退学手続きに一緒に行ったときにもう一度ちゃんと考えたらと言ったら、吉澤は悲しそうに言った。

「同じ大学だと幼馴染で居るためには美貴と距離が近すぎるんだ。」

と藤本は何もいえなかった。自分がそう望み吉澤の出した答えが退学だったから。
446 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:50
吉澤の気持ちは嬉しかった。
自分も同じ気持ちだから。
でも、応えることは出来ない。
石川や後藤に悪いからではない。
自分が弱いからだ。

「ごめんね・・・よっちゃん。ごめん。」

藤本は自分の体を抱きしめて吉澤に抱きしめられたときのことを思い出した。
退学して数日後、プライベートの付き合いはない吉澤だったが、部活では人気者だった吉澤に剣道部が送別会を開いた。
吉澤が飲みすぎたから迎えに来てくれというマネージャーからの電話で藤本は店まで迎えに行った。送るという部員に藤本を呼べと騒いだらしい。ふらつきながら歩く吉澤をタクシーに乗せ連れて帰った。家に入ると吉澤はしっかりとした足取りで、酔っているようには見えなかった。玄関の鍵も自分で閉め、チェーンまでかけた吉澤は藤本の腕をつかんで自分の部屋に連れて行った。
戸惑う藤本を吉澤はベッドに座らせて酔っているようには見えない目で真っ直ぐに悲しそうに藤本を見つめて言った。

「美貴を抱いていい?」

藤本は首を横に振った。幼馴染だからだめだと。
でも吉澤は藤本をベッドに押し倒し、藤本は抱かれた。
終わった後に瞳に涙を貯めた吉澤にそっと優しくキスされた藤本は

「酔った勢いの過ちだよね。」

と吉澤の頭を抱きしめて囁いた。

447 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:51
本当に嫌がったら吉澤はしなかっただろう。
吉澤だけがしたかったわけじゃない藤本も吉澤としたかった、抱かれたいと思った。
まるで、自分は犠牲者のような顔をしても本当の犠牲者は吉澤だと藤本は思った。
448 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:51

*****************************

449 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:51
後藤は濡れた髪をタオルに巻き手には台本を持ってソファに座っていた。
ペラ、ペラとセリフを口に出しながら覚えていく。

「キス、しよっか。」

後藤はそのセリフを指でなぞる。ト書きにはゆっくりと重なる唇と書かれている。

初めてのキスシーン。
後藤にとってそれはファーストキスになる。
相手は好きでもない俳優。
それがファーストキスの相手。

この仕事が来たときにキスシーンがあるとマネージャーに言われた。
動揺を見せた後藤にマネージャーは21歳にもなってキスくらいで同様するなと言った。
そのあとに、ファーストキスでもあるまいし、20歳超えたらベッドシーンだってどんどん入ってくるよ。と付け足した。
21歳でもキスもしてない人だっているだろう。大体15歳からこの世界に入り、恋愛禁止をさせておいていつキスをする相手が出来るのだ。
オファーを受けてしまった以上、今更、このシーンをカットしてくださいなんて言えない。
仕事に対して後藤なりにプライドを持っている。
演じることも楽しいと思えるようになってきた。
ここ数年で役になりきって演技が出来るようになってきたのに・・・
クラスメイトに片思いしている役や、友達の恋人を好きになってしまった役、難病を患っている役、犯罪を犯してしまった高校生役などが多かった後藤。
キスシーンもいずれはあると思っていた。
舞台をやれば年下の役者は芝居の中で何度もキスをしている。
役になりきれば出来るだろう。でも、今回は役になりきることが出来ない。
初めての社会人役で大人の後藤が見れると巷では話題になって取り上げられている。
ここで、コケル訳にはいかないのに役になりきれないまま撮影は進んでいる。
実際、もう制服を着て演技するには違和感もあるだろうし大人の役は無理だったと思われたら仕事の量は減ってしまうだろう。
将来は女優一本で行きたい後藤にとって正念場なのに。
450 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:52
「ふざけてでも、よしことキスしておきたかったな。」

撮影スケジュールは決まっている。
明後日は必ずキスシーンの撮影だ。逃げ出すわけには行かない。

「・・・っぅ・・・。」

後藤は自分のお腹に痛みを感じて手を当てた。
台本を置いてバックからピルケースを取り出した。

「あっないや・・・。」

ピルケースの中身は空だった。
このところずっと胃薬を飲んでいる。

「どうしようっかな・・・。」

いつもはマネージャーに買ってきてもらっているが明日は休みで会わない。
親に頼むと心配するだろうし。
明日家の近所のドラッグストアーまで自分で買いに行こう。
後藤は痛む胃を摩りながらベッドに横になった。
451 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:52

*****************************

452 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:52
石川が作った料理を温めて一人で食べた。
いつもなら美貴が一緒に居てくれるのに、あんなことを言わなければよかったと吉澤は後悔していた。
いつもそう、素直にさらけ出して後悔する。
吉澤が藤本の気持ちに気が付いたのは高校3年の冬だった。
テスト休みで部活もちょうど休みだったとき、家で一人昼寝をしていたら誰かが部屋に入ってくる気配を感じたが吉澤はまだ眠くて意識は起きていたが体を起こすことはしなかった。部屋に入ってきた人は吉澤はまだ眠っていると思い込み頬を撫でたり髪を撫でたりしてから吉澤の唇に自分の唇をそっと重ね、何もなかったようにテレビを見始めた。
吉澤は薄目を開けてその人を見た。
テレビの前で膝を抱えて座っていたのは藤本だった。
吉澤は嬉しくて寝返りをうって顔を布団に隠して微笑んだ。
自分が好きな人が自分を好きで居てくれるそれが嬉しかった。
でも、直ぐにそれを否定された。石川と後藤の話を立ち聞きしてしまったときに。

同じ大学に入り、4人で居るときよりも2人で居るほうが長くなってどんどん藤本を好きになっていった。剣道部を辞めるときも藤本と過ごす時間が増えると嬉しい部分もあった。藤本と同じように教師になって子供たちに剣道を教えるのも良いかもしれないと思った。

でも、あの時も素直になって気持ちを伝えて後悔した。
大学を辞めて気持ちを抑えようと決めたのに未練がましく抱きたいと言ったときもそうだ。
嫌がったが受け入れてくれた藤本を本当に愛しいと感じたときに酔った勢いの過ちだと藤本に言われ後悔した。
453 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:52
吉澤も藤本の言うことを理解している。
石川も後藤も大切な大好きな幼馴染なのだ。
誰かを特別扱いしたりしない。同じように皆、大切で大好きなのだ。
だから、吉澤は少しだけ3人と距離を置いた。
このままじゃ、石川と後藤を傷つけてしまいそうだったから。
いつも4人でいることに息が詰まりそうだったから。
自分から近寄ることを辞めた。向こうから来たら今までどおり接するだけにした。
果たしてそれが今までどおりの幼馴染なのか分からないが幼馴染という関係を保つには
吉澤はそうするしかなかったのだ。

シャワーを浴びてベッドに入ると石川の香水の香りがした。
石川の気持ちも嬉しいし、行動を見ていれば石川の気持ちにも気が付く。
でも、吉澤にとって石川は幼馴染以上にはならない。
後藤も同じだ。
でも藤本だけは違う。1日でも会えないと寂しくて仕方が無いのだ。
大学の部活で遠征に行ったときに何度も味わった。
会いたくて、会いたくて声が聞きたくて仕方ない。
でも、幼馴染以上になってはいけない。
吉澤、藤本、石川、後藤の四角形を壊してはいけないのだ。

もう、後悔もしたくないし藤本を泣かせたくない。
だからもう、二度と藤本に自分の気持ちを正直に伝えることを辞めよう
吉澤はそう決心して目を閉じた。

454 名前:P&Q 投稿日:2006/05/11(木) 23:57
本日の更新以上です。

>>411-453 A PENTAGON and A QUADRANGLE


>>409 ももんが 様
いつもいつも、レスありがとうございます。
85年組みが上手くいかせるか不安ですが(^。^?)
頑張ります。

>>410 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
CPはどうでしょぉw
頑張りますので宜しくです。
455 名前:clover 投稿日:2006/05/11(木) 23:59
あ・・・名前変え忘れましたorz

まだまだ、展開がない状態でつまらないかも・・・
展開があるところまで頑張って更新するので
宜しくお願いします。
456 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/05/12(金) 01:07
お疲れ様です。
やばいです。ほんとに4人それぞれの心情の表現が上手すぎて
引き込まれます。
みんな切ないけどすごくおもしろいです。
457 名前:名無 投稿日:2006/05/12(金) 17:03
更新お疲れ様です。
85年組大好き☆☆
続きが気になります。
458 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:20
8時に目を覚ました吉澤はいつもどおり寝癖をつけたままリビングに降りていくといつもどおり藤本が朝食の仕度をしていた。
一瞬、夕べのことを思い出した吉澤だったがいつもどおり席についた。

「おはよぉ。」

席に着いた吉澤のいつもどおりの挨拶に藤本もいつもどおりカップにコーヒーを注いで吉澤に差し出した。

「おはよぉ。よっちゃん、顔くらい洗ったら。」
「いいのぉ。行くとき洗うから。」

吉澤はコーヒーを啜りながらいつもの会話をした。

「今日さぁパンきれててさぁゴハンなんだぁ。」

藤本はお茶碗を二人分用意しながら言う。

「じゃぁ、うち帰りコンビニで買っとくわ。」
「うん。よろしく。」

出来上がった朝食を二人で食べていると後藤がやってきた。

「あっごっちんおはよぉ。」

眠そうな後藤の姿を見ながら声をかけた藤本は席をたち後藤の朝食も用意してやる。

「おはよぉ。」

隣に座った後藤に吉澤も声をかける。

「おはよぉ。」

眠そうに二人に朝いつをする後藤。
藤本が用意してくれたコーヒーを啜って目を擦る後藤を吉澤と藤本は苦笑いしながら見ていた。
4人の中で一番寝起きが悪いのが後藤だった。相変わらずだなと二人は思う。
459 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:20
「あれ、ゴハンだ。」

前に置かれたお茶碗を手に持ち後藤は不思議そうに藤本を見る。
吉澤がパン食だからいつも朝食はパンなのだ

「パンきれててさ。」

後藤はなるほどと用意された朝食を口に運んだ。

「うん。ミキティにしては美味い。」

と後藤は無表情に言う。吉澤は笑いながら藤本を見た。
藤本は不貞腐れた顔を後藤に向けるが後藤は藤本を見ずに箸を動かした。

「どうせ、ごっちんに料理は勝てませんよ。」
「いやいや、食べれるから大丈夫だって。」
「よっちゃんフォローになってないから。」

後藤はそんな吉澤と藤本のやり取りを笑いながら見ていた。

「じゃぁ美貴、先に出るからあとやっといてね。」

藤本は食べ終えた食器をシンクに入れた。

「あ、ごっちんよっちゃん行く前に顔洗わしてね、寝癖も直して。」

藤本は吉澤の寝癖を触りながら後藤にお願いする。
後藤は笑いながら「分かった。」と吉澤の寝癖に手を伸ばした。
460 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:21
「そこまで子供じゃないから。」

と吉澤はモグモグと口を動かす。

「じゃぁ行ってきます。」

藤本はカバンを手に取り出て行く。

「行ってらっしゃい。」と吉澤が送り出す。
「気をつけてね。」と後藤が手を振る。

「ミキティ、昨日も思ったけどスカート短いね。」

と藤本の姿が見えなくなると呟いた。

「もう直ぐ夏ですからねぇ。」

と吉澤は箸を勧めながら応えた。

「あれじゃ見るなって方が無理くない?」
「まぁ見せれる足だからいいんじゃない?」
「確かに綺麗な足だけど、電車で痴漢とかさぁ危ないくない?」
「大丈夫だよ美貴は、強いから。」
「あぁ・・・。そうだね。」

納得した後藤は持っていた箸を置きコーヒーを啜り頷いた。

まだ、後藤がスカウトされる前に4人で電車に乗っていたときだ。
石川が痴漢に合い痴漢です。と言う前に車内で痴漢をボコボコにしたのを覚えてる。
他にも中学のときにしつこく言い寄ってきた隣のクラスの男をボコボコにした。

「ご馳走さまでした。」

吉澤は綺麗に全て食べ終え箸をそろえると御辞儀をして食器をシンクに入れ藤本の分と自分の皿を洗い出した。
461 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:21
「よしこ、これも食べない?」

洗い終わった吉澤に後藤が申し訳なさそうに言う。
後藤の前に置かれた朝食は7割がた残っていた。

「お腹すいてないの?」
「うん、最近あれだよ、朝から撮影とかで食べてなかったからさぁちょっとキツイ。」
「そっか。」

吉澤は残ったおかずとゴハンを掻きこむように食べた。

「食いすぎだ・・・。」

吉澤は後藤に笑顔で言うと後藤は申し訳なさそうに「ごめんね。」と呟いた。

「いいけどさぁ、ごっちんマジで大丈夫?ホントに細くなってるよ?」
「んぅ・・・忙しいからだと思うけどねぇ・・・」

後藤は席を立ちソファにゴロンと寝転がった。
吉澤は後藤の前の席に座り細くなった後藤の姿を眺める。

タンクトップから覗く後藤の腕は本当に細い。
ショートパンツから覗く足も本当に細い。
石川や藤本も細いほうだ一時期は二人の方が後藤より遥かに細かった。

「てっか何食ってるの?そこまで細くなるか普通。」

後藤は片足を上げて見ながら首をかしげた。
462 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:22
「いや、でも事務所の子もこんなもんだよ。ちょっと太ると直ぐ言われるからね。」
「いやいや、別にもう、ごっちんグラビアとかじゃないでしょ。」
「でもねぇ色々あるわけよ。体系は維持しないとねぇ。」
「維持っていうかコケてきてるじゃん。」

吉澤は後藤の前に座り込み細くなった後藤の二の腕を掴む。

「また、倒れたら大変だよ。」

心配そうに後藤を見る吉澤に後藤は微笑んで見せた。

「大丈夫だって。心配してくれてありがとうね。」
「でもさぁ。」
「よしこの顔みれてこうやって話してるだけで後藤は元気になれるから。」

吉澤は困った顔で後藤を見た。

「ホント、昨日と今日でかなり元気になってるって。明日から撮影頑張れそう。」
「なんか役で悩んでるって聞いたけど。」
「あぁ、まぁねぇ。」

後藤は体を起こしてソファに座りなおす。
吉澤の目の前には細い後藤の足が見えた。
後藤は寝癖の着いた吉澤の髪を少し触ってから立ち上がり洗面所に向かった。
吉澤は心配そうに俯いた。
整髪剤を手に戻って来た後藤は再び吉澤の前に座ると吉澤の髪に整髪剤をつけてスタイリングを始めた。
吉澤はされるがまま心配そうに後藤を見ていた。
463 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:22
「今のドラマさぁ。あの役どうも後藤には理解できなくてね。」
「いまどきの子じゃん?」
「そのいまどきってのが後藤には分からなくてさ。」
「ふーん。」

演技のことは全く分からない吉澤は台本に書いてあるセリフを言うのに理解など必要なのかと思ってしまう。
ならば、犯罪を犯した少女の役をするには犯罪を犯した少女を理解しなければならないのだろうか、そんな気持ちを理解などできるのだろうか。
吉澤はそう思いながら後藤を見た。
後藤は苦笑いを浮かべた。

「色々あるんだって、セリフだけ読んでも気持ちがこもってないとドラマも映画もいいものにならないんだよ。わざとらしく喋ってても感動しないでしょ?」
「まぁそうだね。」
「その子の役になりきって演じないといけないんだけどね、それには理解することが必要なのだよ。」
「ごっちんが頭いい人に見える。」

後藤は吉澤の頭をぺシっと叩いた。
確かに4人の中で一番成績が悪かったのは後藤だった。
運動神経は良い、歌も上手い、ただ勉強は苦手だった。
一番成績が良かったのは藤本と吉澤だ、中学も高校も必ず5位までに入っていた。
石川も真ん中より上に居ただろう。後藤は真ん中くらいだった。

「だって、ごっちん頭悪いイメージあるんだもん。」
「もう5年もこの仕事してるからそれなりに分かるよ。」
「そっか。で?なんでいまどきの子が理解できないの?ある意味、等身大の役じゃん。」

後藤は苦笑いを浮かべて吉澤を見た。
464 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:23
「よしこは合コン行ったことある?」
「ない。」
「逆ナンしたことある?」
「ないに決まってるじゃん。なんでナンパとかしないといけないのさ。」
「ほら、分からないでしょ。」
「あぁ・・・。」

後藤は吉澤の寝癖を直し終え整髪剤をテーブルに置いた。

「分からないんだよねぇ。顔で選別して経済力で選別して付き合うってどんなのかさ。」
「うん。」
「大体、後藤は付き合ったことが無いわけだよ。デートもしたこと無いのにね。」
「今までどうしてたの?少年院にいる役とか高校の先輩を追っかけたりとかしてたじゃん。あれは?どうやってたの?」
「手記みたいなの読ませてもらったりしてた少年院の子のね。片思いくらいは・・・。」

吉澤を見ながら言葉を止めた後藤に吉澤は気が付かない振りして頷いた。

「そっかそっかなるほどねぇ。で今回はいまどきの子に取材とかしないの?」
「だから、ミキティと梨華ちゃんに聞いたけどよしこと同じ反応なのさ。」
「げっ、うちらっていまどきじゃないのかよぉ。」
「みたいだよぉ。どうするよ。あはは。」
「まいったねぇ。それは。」
「ホントだよぉ。まぁねぇ軽い女が純愛に目覚めていくってストーリだから最初はホントに軽い女に見せないとさぁ。」
「こないだの1話でしょぉ。今何話取ってるの?」
「明日から3話。」
「大変なんだね。」
「まぁでも何とかするよ。」

後藤は笑顔を見せる。
465 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:24
「何とかなるものなんだ。」
「一応、後藤は女優ですからっ。」
「よっ大女優っ。」
「あははっ。」

二人は笑いあった。

「ってかよしこそろそろ着替えて、顔洗ってきな。」

後藤の言葉に時計を見ると9時を過ぎたところだった。
吉澤は立ち上がると洗面所に向かい顔を洗って部屋に向かった。

後藤はソファに座って夕べから痛む胃をさすっていた。
ゴハンを一口食べただけで胃が痛む。
ジャージに着替えてきた吉澤が戻ってくると後藤は笑顔を見せる。

「ちょっと後藤も着替えてくる。」
「ん?」
「マスカラきれちゃってて喫茶店の先のドラッグストア行きたいから。」
「そうなんだ、じゃ待ってる。」

後藤は小走りに吉澤の家を出ると自分の家に入っていった。
直ぐにジーンズとTシャツに着替えキャップを深めにかぶり吉澤の家に戻った。

「お待たせ。」

玄関から声をかけると吉澤が鍵を持って出てくる。

「大変だねぇ。」

吉澤は後藤のキャップを突きながら笑った。
家の鍵を閉めると喫茶店に向かって歩き出す。
吉澤はいつもバイクのゴリラでいくのだが、少し早めに出た今日は後藤と二人で歩いた。
466 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:24

*****************************

467 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:25
喫茶店で吉澤と別れた後藤はドラックストアーに入って胃薬と頭痛薬を買って店を出た。
公園によってブランコにでものってみようかと通りかかった公園で足を止めたが辞めた。
胃の痛みが夕べより増している。
家に戻りキッチンで今買ってきた胃薬を飲んだ。

「あれ、真希ちゃん起きてたの?」

背後から母親に声をかけられ胃薬をポケットに閉まって笑顔を見せる。

「おはよぉ。もう、よしこの家で朝ごはんも食べてきた。」
「そぅ、ホント仲いいわね。」
「んふふ。幼馴染だからね。」

後藤は母親が座る席の向かいに座った。
母親が入れてくれたお茶を啜りながらこうしてのんびりするのも久々だと思った。

「明日からまた忙しいの?」
「ん〜。ドラマ始まるとどうしてもねぇ。」
「そう、ちょっと痩せてきてない?大丈夫?」

最近、後藤を見るたび皆痩せたと言う。確かにそうだけど毎回だと気になってしまう。

「大丈夫だよ。ちゃんと食べてるし。」
「ならいいけど、気をつけてね。」
「うん。」
「昨日、遅かったみたいだからまだ寝てれば?」
「昨日早かったの。よしこの家で皆で昼寝してた。」
「そう、良かったね。」
「うん。梨華ちゃんも仕事大変みたい。」
「看護士さんだっけ、あのおっちょこちょいの梨華ちゃんがねぇ。」

母親は何か思い出したのかクスクスと微笑んだ。
468 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:25
「白衣の天使だもんねぇ。まぁあのスタイルで白衣着てたら男の人たちは喜ぶんじゃない?」
「綺麗になったしねぇ梨華ちゃんも。美貴ちゃんもモデルさん顔負けの服で出かけてくの見るし、あぁひとみちゃんはおじさんぽいよねぇ。相変わらず。」
「あはは、よしこはあれが自然体でいいんだよ。ちゃんとした格好すると凄い綺麗だしね。」
「4人で幼馴染とかグループで売り出せば?」
「無理でしょっあはは、いいかもしれないけど無理だよ。絶対ミキティとか嫌がるもん。」
「そうかなぁお母さん、売れると思うけどなぁ。4人で並ぶと結構、見栄えいいのに。」
「もしやったとしても歌は無理だからタレントだよ。」
「なんで歌ダメなのよ。美貴ちゃんも歌上手だったじゃない。」
「よしこもミキティも上手いけど梨華ちゃんが、あれはちょっとねぇ。」
「あぁ・・・。」

後藤は納得する母親を見て苦笑いをした。

469 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:25
「まぁミキティは高校教師になるって夢あるし梨華ちゃんは看護士になったし。それぞれやりたいことあるからね。」
「そうねぇ。あとはひとみちゃんだけだね。剣道も大学も辞めちゃってどうするって?」
「ん〜。警察官になって剣道やるのが夢だったからね。」
「頭いいのに大学まで辞める必要なかったのにね。」
「喫茶店でも開くんじゃない。」

後藤は笑って見せた。吉澤がなにをしたいのか分からない。
何をしたいのかとも聞けない。夢を叶えている石川は夢に向かっている藤本。
自分の仕事で成功をしている後藤を前にそんなことを聞く人は誰もいないだろう。

「さてと、セリフでも覚えるかな。」
「お昼何にする?買い物行くけど。」
「ん〜。」

後藤は少し考えた。

「昼はよしこのバイト先でゆっくりしながら食べるよ。セリフ覚えるのにもあの店静かでいいし、夕飯はミキティとかと食べるからいいや。」
「たまにはお母さんとも食べてね。」

寂しそうに言う母親に後藤は申し訳なさそうな顔をする。

「ホントごめん。今度、早く終わったら家で食べるから。」
「約束だよ。」
「うん。」

後藤は「ごめんね。」と言って部屋に戻った。

470 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:26

*****************************

471 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:27
藤本は大学の講義のふたコマ目を終えラウンジでコーヒーを飲んでいた。
昼時だが朝食がゴハンだったためかお腹が空いていない。
この後に講義があるわけでもない教授のところに行って教育実習に行くための資料を見てもらいアドバイスをもらうだけだ。

吉澤が居た頃はいつも一緒にラウンジか食堂で時間を潰していたが居なくなってしまった今の藤本はいつも一人だった。誰かとつるむのは好きではない。
そう考えると本当に吉澤や石川、後藤以外の友達は居ないに等しいだろう。
藤本だけではない吉澤、後藤も中学も高校も自分たち以外に親しい友達を作らなかった。
こちらからも親しくなろうとは思わないが逆に回りからは声がかけづらいらしい。
だが石川は声をかけやすいらしく良く、吉澤に伝えてくれだの後藤にサインをもらってくれだの頼まれていた。部活の中でもそうだった石川伝いにキャプテンの藤本に話が回ってきたりすることが多かった、もちろん部活の仲間とは仲が良かったがプライベートで遊んだり、部活以外で話をすることは無かった。

藤本は飲み終えたカップをゴミ箱に捨てて腕時計に目をやった。
12時30分ちょうど、そろそろ教授も食事を終えているだろう。
1時からの講義に間に合うように今行くと丁度いいだろうと藤本は教授の部屋に向かった。
472 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:27
ノックをして藤本だと名乗ると教授の「どうぞ。」という声が返ってくる。
中に入ると椅子を回転させて藤本の姿を確認する教授。

「お忙しいところすみません。教育実習の資料を確認していただきたくて。」

藤本は手に持っていた資料を教授に渡した。

「そこに座ってて。」

藤本は頭を軽く下げて椅子に座り教授が資料に目を通す姿を見ていた。

「いいんじゃない。よく出来てるよ。」
「ありがとうございます。」
「来週からだったよね。」
「はい。」
「もう、高校には顔を出したの?」
「今日、これから時間を取っていただいてます。」
「そう、じゃぁ大丈夫だね。」
「はい。」
「頑張ってきなさい。」
「はい。」

資料を再び手に取り藤本は部屋を出た。
473 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:27

*****************************

474 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:28

LOSEの中は新聞を広げたり本を読んだりしてる年配の客が数人来ていた。
その中に制服を着た高校生が一人カウンターの一番奥に座っていた。
吉澤はオーダーされたメニューを出し終え昼に備え下ごしらえを始めた。

「あの、聞いてもいいですか?」

カウンター越しの声に吉澤は顔を上げ自分を見ている高校生を見た。

「なに?」
「ここって、自給いくらですか?張り紙に書いてないから。」

吉澤は張り紙と聞いてドアに張ってある求人の張り紙を思い出した。

「中澤さん、あっ店長が決めるからそれぞれ違うんじゃないかな?」

吉澤が面接したとき中澤はいくら欲しいか逆に聞いてきた。
バイトの時給の相場が分からなかった吉澤は600円くらいと応えると中澤は大笑いしたのを覚えてる。

「そうなんだ。」
「うちの場合は900円だけど。高校生不可って書いてあったでしょ。」

高校生は頷いた。

「年齢制限はないですよね。」

確かに高校生でなければいいわけだからそうなるだろう。
吉澤は不安げに頷いた。
475 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:28
「保田先生って知ってる?」

吉澤の問いに驚いた顔をする高校生。

「うちもその制服着てたんだぁ。3年前まで。」
「卒業生ですか。」
「うん、圭ちゃん良い先生でしょ。」

高校生は首を傾げた。

「担任だけど、転入したばかりだからよく知らないです。」
「そっかぁ。悩み事とか相談乗ってくれるよ。」

転入してきて学校になじめずサボっているのだろうと思った吉澤は優しく微笑んで言った。

「別に悩みとか無いですから。」

高校生はそういうと席を立ちレジの前に言った。
吉澤は苦笑しながら「そっかそっか。」と伝票に目をやる。

「抹茶オレで280円になります。」

高校生は丁度280円を吉澤に渡し軽く御辞儀して店を出て行った。
吉澤はその姿を見送ると下ごしらえの作業に戻る。
476 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:28
11時くらいになると朝から来ていた客がどんどん帰りだし変わりに昼食を取りに来る客が入ってくる。吉澤は手際良くオーダーを取りテーブルに運んでいく。

12時近くなると店内は満席状態になっていた。
ドアの前で店内を見回している後藤に気が付いた吉澤は店内を見回し奥のテーブル席の客が丁度たったので入れ替わりに後藤を座らせた。

「今、片すから待ってて。」

吉澤は後藤にそう告げると席を立った客の会計をして直ぐに食器を提げてテーブルを拭いた。

「混んでるね。」
「お昼どきだからね。何にする?」

後藤は手渡されたメニューを見た。
胃薬を飲んだがまた食べると痛むだろうと思った後藤は飲み物だけを頼むことにした。

「ゴハン食べてきたから、ミルクティだけでいいや。」
「了解。」

吉澤がメニューを持って去っていくと後藤はカバンから台本を取り出し読み始めた。

吉澤はトレイにミルクティと後藤の好きなポッキーを乗せて運んだ。

「こっちサービスね。」

後藤の前にそれらを置くと後藤は嬉しそうに吉澤を見た。

「セリフ覚え?」

後藤の手にある台本を指差し吉澤は小声で尋ねる。

「ドラマの。」
「そっか、頑張ってね。」

頷く後藤に笑顔を返して吉澤は仕事に戻った。

477 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:29
2時ごろになり店内が空きはじめると店長の中澤がやってきた。

「お疲れぇ。」

カウンターに入ってきた中澤は吉澤の肩を叩く。

「お疲れ様です。」
「昨日、悪かったな。」
「いえいえ。」
「よっちゃんがいて助かったわ。」
「あっ、そういえばさっき高校生がバイトのこと聞いてきましたよ。」
「うちは高校生ダメやで。」
「言ったんですけどね、年齢制限はないですよねって言われました。」
「おもろい子やな。」
「そうですねぇ。でも制服着てたんですけどね。」
「まぁバイトしたいならまた来るやろ。よっちゃん、お昼休みはいってええよ。」
「はぁい。あっごっちん来てるからあっちでもらっても良いですか?」

吉澤は台本に目を通してる後藤の席を指差した。

「おっ凄い久しぶりやなぁ。」
「夕べも来たんですよ。」

中澤は台本を読む後藤をしばらく見てから言った。

「じゃぁよっちゃん、今日はもう上がってええわ。」
「え?」
「ごっちんも休みやろ?なんかやつれてるから元気にしてあげな。」
478 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:29
中澤は中学のころいつも吉澤の隣で笑っていた後藤を思い出していた。
吉澤と居ると元気になるんだと言っていた後藤と石川。
なんだか疲れたように見える後藤、きっと吉澤の側にいたくてここに来たのだろうと思ったのだ。

「店長命令や、はよ着替えておいで。」

中澤の言葉に素直に従い更衣室に入っていく吉澤。
中澤は後藤のいる席に向かった。

「久しぶりやなごっちん。」
「あぁ裕ちゃん。」

笑顔を見せる後藤の頭を帽子の上から中澤は撫でた。

「今、よっちゃんくるから、二人で遊んできな。」
「でも6時までバイトじゃないの?」
「今日は特別休暇や、ごっちん折角休みやからな。」

後藤は嬉しそうに笑った。
479 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:29

*****************************
480 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:30
電車に乗り懐かしい駅で下車し懐かしい道を歩いた。
見えてきた懐かしい校舎を藤本は懐かしそうに眺めてから客人用の入口から中に入った。

「保田先生。」

職員室の入口から見えた懐かしい顔に声をかけた藤本。
保田と呼ばれた先生は直ぐに駆け寄ってきた。

「待ってたわよ、藤本。」
「どうも。」

藤本は全く変わっていない保田に笑みを零す。

「なによ。」
「いや、変わってないなって思って。元気だし。」
「いつも若い子相手にしてるからね。今年も2年に凄いやつ二人いるから。」
「へぇ。」
「噂をすれば・・・。」

保田の視線を藤本も追うと廊下の角から顔を出してる子供が居た。

481 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:30
「なんで、小学生がいるんですか?」
「あれでも、高校2年だよ。」
「マジっ。みえねぇ。」
「見かけだけじゃなくてやることも小学生だから手を焼くのよね。」

保田は困ったもんよ。と腰に手を当ててコソコソと壁伝いに歩いてくる二人を見た。
藤本も忍者のようにやってくる二人に苦笑いを漏らす。

「美貴、1年でしたよね担当。」
「うん。」
「良かった・・・。」

途中までやってきた二人はいきなり藤本たちに向かって駆け出した。

「「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン。」」

見事に声をそろえて藤本の前に立ち止まる二人を藤本は口の端を引きつらせながら見ていた。
482 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:31
「2年F組辻希とぉ。」
「2年F組加護亜依。」
「二人合わせてぇ。」
「「・・・」」

「まだ、ユニット名きめてないやん。」と加護と名乗った方が言った。

「あんたたち、授業は?」
「英語なのぉ。ケメちゃん怒ると小じわが増えるよぉ。」

辻と名乗った子の頭を保田が叩いた。

「ところで、この綺麗なギャル姉ちゃんは何者や?」

加護と名乗った子が藤本の短いスカートの先をペラペラと弄りながら見上げる。

「来週から教育実習に来るここの卒業生。」

保田の言葉に二人は「ほぉ。」と呟きながら藤本をまじまじ見た。
藤本は顔を引きつらせながらその視線に耐える。

「折角、卒業生くるならのんは後藤真希がよかったなぁ。」
「あいぼんもそっちのが良かったぁ。変えられへんの?」

保田に尋ねる二人をよそに藤本は拳を握り拳骨をくれてやりたい思いを何とか耐えた。
483 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:31
「変えられるわけないでしょうが。まったく。」
「ファンなの?」

藤本の言葉に辻と加護は首を横に振った。

「ファンじゃないのにごっちんのがいいとか言うなよ。」

藤本は横を向いて小声で言う。

「あんたたち、教室戻るか戻らないなら静かにしてなさいよ。」

教師ならぬ言葉を発する保田を藤本は変わってないなと微笑んで見た。

「ケメちゃんとお茶にするぅ。」

辻が保田の腕に自分の腕を絡ませて甘えた。

「私はこれから、藤本と教育実習の打ち合わせがあるの。」
「いいよ。のんも付き合ってあげる。」
「しゃぁないな、あいぼんも付き合ってやるわ。準備室で茶でも飲もっ。」

保田は苦笑いを見せながら藤本に行こうと告げる。
藤本もたまに吉澤と授業をサボったときは保田のところでお茶を飲んだものだ。
484 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:32
階段を昇るのも辻と加護は楽しいらしく、二人でコソコソ笑いあいながら藤本と保田の先を行く。

「小学生みたいでしょ。」

保田は二人の様子を微笑みながらみて言った。

「F組ってことは推薦ですよね?何のですか?」
「辻は剣道。加護はピアノ。」
「へぇ。じゃぁ美貴、剣道教えるんだ。部活見ることになってるから。」
「そうだねぇ。」
「えっのんに剣道教えてくれるの?よろしこー。」

会話が聞こえたのか上の段から敬礼する辻を藤本は睨んだ。

「厳しいよ、私。」
「こわっ。」

辻は加護に隠れて笑った。
準備室に入ると辻と加護は慣れた手つきでお茶を入れる。

「二人の部屋みたいになってるし。」
「いつも来てるからねぇ。」

保田は苦笑いしながら椅子に座り藤本も向かいに座った。

「えっと、3週間だよね。」
「はい。」
「計画表見せて。」

藤本が保田に資料を渡すと辻がお茶を持ってきた。

「どうぞぉ。安いお茶ですが。」

そういいながら藤本の前にお茶を置く。

「どうも。」

とお茶を自分の前に引き寄せる藤本の顔を辻はじっと見ていた。

「なに?」
「どっかで見たことある。」

辻はじっと藤本の顔を見て腕組しながら考えていた。
485 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:33
「あっ、部室だ。部室の写真にいる人だ。」
「人って・・・。」
「全国大会行ったときの写真に居た。」
「あぁあの写真まだあるんだ。」
「先鋒の藤本美貴だ。」
「そうそう、よく知ってるね。」

辻は嬉しそうに笑顔を見せながら胸を張って偉ぶった。

「だって、のんの憧れだもん藤本美貴みたいな剣道したいって。」
「・・・。」

憧れなら最初に会ったときに顔くらい思い出して欲しいと藤本は顔を引きつらせた。

「あぁのん言ってたなぁ藤本美貴と吉澤ひとみの試合は面白いって。」

奥の椅子に座っている加護が思い出したように言った。

「そうそう、その人だよこの人。」
「この人って・・・。」

保田は資料に目を通しながら藤本たちの会話を聞きながら笑っていた。

「なぁおばちゃん煎餅とかないんか?」

加護が資料に目を通す保田に聞いた。
保田は顔を引きつらせながら加護に視線を向ける。

「あいぼん。せめてケメ子かケメちゃんにしておばさんはキツイわ。」

加護は悪戯な笑みを浮かべた。

「すまん、すまん。ケメちゃん、お煎餅ないんか?」
「無いわよ・・・あんたわざとおばちゃんって言ったでしょ。」

加護はとぼけた振りして窓の外に目をやった。
486 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:34
「最近の高校生ってみんなこうなんですか?」

藤本は加護の様子を横目で見ながら小声で保田に尋ねた。

「この二人くらいよ、でもね、藤本さぁ。」

保田は窓に自分たちの顔を映して喜んでいる辻と加護に目をやって微笑んだ。

「なんですか?」

藤本も自然と二人に目を向ける。

「あの子達は珍しいくらい純粋な子だと思わない?」

保田は再び資料に視線を戻した。

「あぁ純粋というか子供っていうか。」
「16歳、17歳なんて子供でしょ。」

確かにそうだ、大人ぶる未成年者が多くて大人たちも子供を大人だと錯覚しているのかもしれない。藤本はそう思いながら二人を見ると何故か可愛く見えてきた。

「うん、なかなかいい計画じゃない?まぁ大抵、計画通りには進まないと思うけど。」
「やっぱり進みませんか。」
「進めようと思えば進むんじゃない。でもその授業の内容は最低だと思うけど。」
「ほぉ〜。」
「まぁ頑張りなさい。」
「うん。」
「はい。でしょ。」
「はぁい。」

藤本が保田におでこを突かれているとそのやり取りを聞いていた辻と加護は藤本を見てニヤニヤと笑う。

「先生のくせに怒られてるぅ。」

辻が楽しそうに藤本の横に来てからかう。

「子供っていうかクソガキですよね。」

保田は苦笑いしながら辻の頭を撫でた。
487 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:34
「先生じゃなくて先生の見習いだよ。藤本は。」
「ふーん。のんも教わる?」
「教わらない。藤本は1年担当だから。」
「そっかぁ。じゃぁ後藤真希はくる?」

加護は辻の質問を笑って見ていた。

「後藤真希は先生にならんから来ないって。」

加護が言うと辻は本当に残念そうな顔をした。

「ごっちんのファンじゃないのに会いたいの?」
「ごっちんとかなれなれしく呼ぶな。」

辻の言葉に藤本は苦笑する。
後藤真希とフルネームで呼び捨てと愛称で呼ぶのとどっちもどっちだろう。

「後藤は元気にしてる?」

保田が藤本に尋ねた。
辻と加護はなんで藤本にそんなことを聞くのかと保田を見た。

「疲れが溜まってるみたい。ドラマで忙しいみたいで。」
「なんで知ってるの?」

辻の言葉に加護も頷く。

「さぁ何ででしょう?」

藤本は悪戯っぽく笑顔を見せた。

「同級生やからクラスメイトかなんかや。」

加護は思い出したように呟いた。
488 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:35
「まぁ正解でもなくはないか。」
「なんやそれ。勿体ぶってないで言ったらええやん。」

加護の言葉に藤本はベーと長い舌を見せる。

「吉澤と石川は?石川は看護士になれたんだっけ?」
「うん。二人とも元気だよぉ。梨華ちゃんも仕事忙しそうだけど相変わらず。」

保田は高校生だった石川を思い出して一人笑った。

「吉澤は?剣道頑張ってるの?」

その言葉に藤本は少し俯いた。

「ケメちゃん知らないの?吉澤ひとみは剣道辞めたんだよ。」

藤本が知らせる前に辻がそう伝えた。
保田は「そうだったの?」と藤本を見る。

「腰がねぇ。もうボロボロで試合は無理。」
「そう、でも、吉澤なら勉強の成績もいいからどうにかなるわね。」

藤本は首を横に振って見せた。

「剣道、辞めたときに大学も辞めちゃった。」

489 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:35
保田はこの準備室でよく4人で話していた姿を思い出した。
石川が白衣の天使になって病気の人に自分の笑顔で元気をあげるんだと語ると余計に具合が悪くなるとからかっていた吉澤と藤本。
藤本が剣道部を引退するときに今度は自分が教師になって剣道の面白さを教えてあげるんだと語ると絶対、怖がられると笑う吉澤と石川。
後藤は今はアイドルだけど演技に興味があるから将来はそっちでやっていきたいと打明けてくれた。
それぞれが夢へと着実に向かっていき、叶えているなかで吉澤はひとりどんな気持ちで一緒にいるのだろうか。保田は吉澤の気持ちを察した。
警察官になって剣道をやりたい、全日本で優勝したい、世界でも剣道をやる人口は増えてきてるから世界相手にもやってみたいんだと言っていた吉澤。
そんな吉澤は辛いだろう保田はそう思った。

「吉澤、何してるの?」
「バイトしてる。喫茶店で。」
「そっか。辛いね。」

藤本は少し顔を歪めて頷くと沈黙が訪れた。

「ねぇなんで後藤真希のこと知ってるの?」

思い出したように質問し沈黙を破ったのは辻だった。

「よっちゃんもごっちんも美貴の大切な幼馴染だから。」

藤本は優しい笑顔で静かに辻にそう言った。

「じゃぁ連れてきてよ。先生やってってお願いして。」

辻の馬鹿げたお願いに藤本も保田も加護も笑った。

490 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:36

*****************************

491 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:36
吉澤は後藤を連れてパンを買ってから家に戻った。
何をするってわけでもないただ部屋でごろっとする。
昔からこうしてた、家の中が一番落ち着くから。

「よっちゃん起きてる?」

ベッドの上で横になっている後藤が床に横になっている吉澤に声をかけた。
吉澤は目を閉じたまま返事を返す。

「起きてなぁい。」
「そっかぁ。じゃぁ後藤独り言でもいうかなぁ。」

吉澤は目を閉じたまま後藤の言葉に耳を傾けた。
後藤はそんな吉澤をベッドから眺めて話し出した。

「よっちゃんは後藤にとって植物なんだよねぇ。よっちゃんが酸素をくれるの。
 昨日と今日で凄い酸素補給できたからもう少し仕事頑張れそうだよ。
 だからまた後藤がどうしようもなくなったら酸素ちょうだいね。」

吉澤が目を閉じたまま微笑むと後藤は満足気な笑みを浮かべ枕に頭を沈めた。
昨日もゆっくり眠ったせいか、このごろこんなに睡眠をとってなかったせいか
後藤はなかなか寝付けずに居た、時々襲ってくる胃の痛みのいなのかもしれない

ベッドの下からは吉澤の寝息が聞こえてくる。
後藤はベッドから顔を出し吉澤の寝顔をみた。

「梨華ちゃん、美貴ちゃんごめん・・・。」

後藤はそっとベッドから降りて眠る吉澤の横に膝を着いた。

二人に心の中で謝りながら後藤は眠る吉澤に顔を寄せ目を閉じた

492 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:37
そっと、一瞬触れただけのキス
これだけで後藤は満足だった、明日のドラマ撮影はきっと滞りなく進むだろう
自分のファーストキスの相手は吉澤だ。
明日するキスは自分じゃない、演じる役がするんだ。

目に涙を浮かべた後藤は吉澤が眠っているのを確認して部屋を出た。

洗面所で顔を洗っていると藤本の声が聞こえてきた。

「よっちゃぁん?」

後藤はタオルで顔を覆いながら廊下にでると藤本が足を止めた。

「あれ、ごっちん。よっちゃんバイトは?」
「今日、早くあがれって中澤さんが。今、上で寝てる。」

藤本はタオルを取った後藤の目が少し赤いことに気が付いたが何も言わず笑みを返した。

リビングに座り二人でコーヒーを飲みながら再放送のドラマを見ていた。

「ごっちんは?昼寝しないでいいの?折角の休みだし。」
「折角の休みなら普通、買い物でも行けばっていうんじゃないのぉ?」
「だって、ごっちん、買い物より何より寝ることが好きじゃん。」

藤本が悪戯っぽく笑うと後藤は少しだけその笑顔に心を痛めた。

「さぁてと、昨日、梨華ちゃん夜勤明けって言ってたから今日は帰ってくるよね。」

藤本は立ち上がりキッチンに向かった。

「後藤も手伝う。」

二人でエプロンをつけてキッチンに並ぶのは凄く久しぶりだった。
二人とも楽しそうの料理を始める。
493 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:37
「ミキティが買い物も行ってるんだ。」
「うん。パンはねよっちゃんのこだわりがあるらしいから買わないけどね。」

後藤はさっきの真剣な目つきでパンを手に取っていた吉澤を思い出して笑った。

「そうそう。美貴、今日さ高校行って来たんだ。」
「うちの?」
「うん。教育実習のお願いにね。」
「ミキティが先生かぁ。」

後藤はイメージしようとうるが出来ずに笑った。

「なんで笑うんだよぉ。」
「だって、なんか高校生と喧嘩するくらいしかイメージできない。」
「ひどぉ・・・。」

藤本は今日の辻と加護のやり取りを思い出し後藤の言葉も遠からずだと苦笑した。

「まぁ、いいや。でねそこに面白い高校生がいてさ。」

藤本は辻と加護の様子を後藤に話して聞かせた。

「後藤真希ってフルネームなんだぁ。でも面白いね二人。」
「うん、面白いよしかも似てないような似てるような感じの二人なの。」
「後藤も見て見たいなぁ。」
「二人も会いたがってたよ。後藤真希を美貴の代わりに教育実習にこさせろって。」

藤本は「失礼しちゃうよね。」と頬を膨らませた。

「あはは、後藤はできないよぉ。あんま授業出てないし。」

後藤は出来上がった料理をテーブルに並べながら笑った。
丁度「ただいまぁ。」と高い声の主、石川がやってきた。
494 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:38
「おぉ良い匂い。やっぱりごっちんが作るのはおいしそうだよね。」

荷物をソファに置きながらテーブルに並んだ料理に笑みを浮かべる石川。

「おい、梨華ちゃん。毎日作ってる美貴に失礼じゃないか?」

藤本は腰に両手を当てて仁王立ちをしてみせる。

「あっと、手を洗ってこよ。」

石川は足早に洗面所に向かった。

「酷いよなぁ梨華ちゃん。」

まだ、頬を膨らます藤本に後藤は笑った。

「ねぇ、よっちゃん具合悪いの?靴あったけどバイトは?」

手を洗い戻って来た石川は藤本に目を向けた。

「なんか中澤さんが早めに上がらせてくれたみたいよ。寝てる。」

藤本は天井を指差して応えた。

「じゃぁ起こしてこよぉ。」

石川は笑顔でそういうと階段をかけ上がった。
ドアをそっと開けると床で眠っている吉澤の姿。
石川はその寝顔を見てさらに笑みを浮かべた。

「あれ・・・。」
495 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:39
吉澤の唇に薄っすらと残るリップに気が着いた石川の笑みは一瞬にして消えた。
石川は藤本と後藤のリップを思い出そうとしたが思い出せずにいた。

「よっちゃん。起きて。」

石川は無意味に吉澤の顔に接近して囁くと吉澤は薄っすらと目を開け、身体をずらして石川から顔を離す。

「おはよ。」

と目を擦る吉澤。

「よっちゃんなんで逃げるのよ。」
「梨華ちゃんいつも顔近いんだもん。」

吉澤は身体を起こし伸びをしてから立ち上がる。

「あれ、ごっちんが先に起きてるなんて珍しい。」

誰も居ないベッドを見て吉澤が言った。

「ごっちんが寝てたんだ。」
「うん。」

吉澤が寝ている間にキスをしたのは後藤だなと石川は思った。

「昼、抜いたからお腹すいたぁ。」

と呟きながら部屋を出る吉澤の後を石川も追った。
496 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:40
「おぉ、うまそぉ。」

テーブルに並ぶ料理を見ての吉澤の第一声。
藤本と後藤は満足気な表情をした。
あとから来た石川は後藤の唇を見て吉澤にキスをしたのは後藤だと確信した。


「あれ、梨華ちゃんも座りなよ。」

藤本に声をかけられ後藤の隣に座る石川。
全員が席に着くと夕食が始まった。

藤本が保田が元気だった話をし、石川が今日した失敗の話をし
4人で笑いあいながらの食事。
そんな中、後藤の箸があまり進んでいないことに3人は気が付いていた。
そして時折、お腹をさする仕草も見逃しはしなかった。

食事が済むと後藤が明日は朝が早いからと帰っていき、キッチンでは石川と吉澤が食器を洗い藤本はテレビを見ていた。

食器を洗い終えると吉澤が藤本の隣に座り、石川が向かいに座る。

「ごっちん、体調悪そうだったね。」

と藤本がテレビのボリュームを下げながら言った。
それに頷く二人。
497 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:40
「看護士さんから見てどうなの、あれはまた胃?」

藤本の言葉に石川は後藤の様子を思い出してから答えた。

「多分、でも酷かったら立ってられないからね。まだ軽い症状だと思うけど。」
「食べてなかったもんね。」

吉澤が心配そうに呟いた。

「でも、今日、よっちゃんと入れたから少しは元気になったんじゃない。」

と石川が言った。二人はその言い方に棘があるように聞こえ顔を見合わせる。

「医者、行く暇ないのかな。今日、連れて行けばよかったかな。」

泣きそうな顔で吉澤が藤本に言った。

「ん〜。でも今はドラマあるからね・・・具合悪いからって休めないだろうし。」

石川は二人が心配そうにしている横で後藤が吉澤にキスしたことに対して苛立っていた。

「ごめん、美貴そろそろ帰る。実習の準備まだ完璧じゃないからさ。」

藤本が立ち上がると吉澤が「おやすみ。」と声をかけた。

「おやすみ。梨華ちゃんも早く寝なよ。」

と藤本が言うと石川も「おやすみ。」と頷いた。
藤本が帰ると石川が立ち上がり吉澤の横に移動する。

「ごっちん。ストレスかな。」

まだ後藤の心配をする吉澤。
石川はため息をついた。
498 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:41
「ごっちんだって大人なんだから、痛かったら病院行くよ。」
「でも、ごっちん忙しいし。」
「あのね、忙しいのは皆一緒。社会人なんだから。」

社会人という言葉に吉澤は返す言葉を詰まらせた。
自分は学生でも社会人でもないフリーターだ。

「あ、ごめん。別によっちゃんが忙しくないとかそういう意味じゃないよ。」
「うん。」

慌てて謝る石川に吉澤は笑顔を向けた。

「でも、よっちゃんが心配してもごっちんがどうなるってことじゃないから。」
「そうだね。でも、ごっちんってあんまり自分のこと言わないからさ。」
「そうだけど、子供じゃないし。」
「うん。我慢しちゃうじゃん。前みたいに倒れたら可哀相だから。」

石川は心配される後藤に対して嫉妬を覚えた。

「よっちゃんさ、私たちだって体調悪くたって患者さんには笑顔を見せるんだよ。私たちだけじゃないよ。頭が痛くてもお客さんとかには笑顔を見せて働いてる人は沢山いるの。みんな我慢してたりするんだよ。ごっちんだけじゃない。社会に出るってそういうことだよ。美貴ちゃんだって卒業したらそうなる。よっちゃんだってバレーしてるとき仲間に迷惑かけないように辛くても笑ってたでしょ。同じことだよ。」

石川の言っていることは分かる。
後藤のことばかり気にかけて石川は妬いているのだろうと吉澤は思った。

「ごめん、梨華ちゃんも疲れてるよね。うち、バイトだからさ。今日みたいに早く上がらせてもらったりするし、一応、客商売だけどあそこは接客とかないからさ・・・分からなくてごめんね。」
499 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:41
謝る吉澤に石川の胸は苦しくなる。
自分が取り残された言い方をするようになったのは大学を辞めてからだ。
劣等感を含んだ言い方をしたり自虐的な言い方をしたりする。
今、そういわせたのは自分だと石川は思った。

「ごめん、よっちゃん心配してるだけなのに責めるみたいな言い方して。」
「そんな風にとってないよ。社会人って大変なんだなって勉強になったし。」

いつだって吉澤のが石川より上にいたのに、そんな言い方をされるとなんだか虚しくなってくる。勉強だって運動だって吉澤のが上に居た。
社会人になったからと言って石川のが吉澤より上に居るわけではないのに。
石川は寂しそうに笑顔を向ける吉澤を見た。

「よっちゃん、これからどうするの?ずっとバイト?」

いきなり話を変えられて吉澤は返事に遅れた。

「あぁ、まだ、ん〜分からないけどしばらくはそうだね。」
「将来は?」

吉澤は応えることが出来なかった。
夢だったものはもう諦めた。

「したいこと見つからないの?」

吉澤は笑顔だけを返した。

500 名前:P&Q 投稿日:2006/05/12(金) 19:41
見つかっていたらあのバイトは辞めている。
それは石川だって知っているはずだから。

「さて、そろそろうちも風呂入って寝るかな。」

と吉澤が立ち上がる。

「久しぶりに一緒に入ろうか?」

と笑顔を見せる石川に吉澤は苦笑いを返す。

「合宿じゃないから、風呂狭いし。帰って自分とこの入りな。」
「結構、患者さんに一緒に入りたいって言われるのに。」
「エロ親父と一緒にしないでよぉ。」

吉澤は笑いながら石川の頭をポンと叩く。

「梨華ちゃんも帰って寝たほうがいいよ。」

素直に頷きカバンを手に取ると玄関に向かった。

「またね。」と玄関まで送ってくれた吉澤に手を振って石川は帰っていった。
501 名前:clover 投稿日:2006/05/12(金) 19:47
本日の更新以上です
>>458-500 A PENTAGON and A QUADRANGLE

6期がまだ出てこない(;^。^A アセアセ・・
必死になって更新してる自分が居ますが・・・
長いけど、読んでくださいm(__)mペコッ

>>441 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>85年組と6期が大好きなので続きがめちゃめちゃ楽しみです♪

まだ、6期出てこないので頑張って更新します!
最後までよろしくです。

>>456 名無し飼育さん 様
レスありがとうございます。

>やばいです。ほんとに4人それぞれの心情の表現が上手すぎて
>引き込まれます。
>みんな切ないけどすごくおもしろいです。

いやいや、全然ダメなんで、褒めないでください(*^-^*)> ぽりぽり
酷い駄文なんでホント・・・
最後まで見守ってくらはい。

>>457 名無 様
レスありがとうございます。

>85年組大好き☆☆
>続きが気になります。

期待にそれるよう、頑張ります。
最後までお付き合いください。
502 名前:ももんが 投稿日:2006/05/12(金) 22:32
85年組のそれぞれの気持ちが交錯していて、これからの展開が楽しみです♪
Wの二人がいい味だしてます(笑)
503 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/13(土) 00:12
みきよし。゜(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
504 名前:clover 投稿日:2006/05/13(土) 00:20
訂正です。

>>498
×「よっちゃんさ、私たちだって体調悪くたって患者さんには笑顔を見せるんだよ。私たちだけじゃないよ。頭が痛くてもお客さんとかには笑顔を見せて働いてる人は沢山いるの。みんな我慢してたりするんだよ。ごっちんだけじゃない。社会に出るってそういうことだよ。美貴ちゃんだって卒業したらそうなる。よっちゃんだってバレーしてるとき仲間に迷惑かけないように辛くても笑ってたでしょ。同じことだよ。」
○「よっちゃんさ、私たちだって体調悪くたって患者さんには笑顔を見せるんだよ。私たちだけじゃないよ。頭が痛くてもお客さんとかには笑顔を見せて働いてる人は沢山いるの。みんな我慢してたりするんだよ。ごっちんだけじゃない。社会に出るってそういうことだよ。美貴ちゃんだって卒業したらそうなる。よっちゃんだって剣道してるとき仲間に迷惑かけないように辛くても笑ってたでしょ。同じことだよ。」

バレーじゃなくて剣道です。すみません。
505 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/13(土) 00:37
更新お疲れ様です!
4人が複雑に絡み合っておもしろいですね
続きがすごい楽しみです(*´∀`)
506 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/13(土) 18:58
更新お疲れ様です!
>>441なのですが、更新途中にレスしていたことに今気づきましたorz
なんて書こうか考えているうちに…
作者さん、読者さん、本当にすみませんでした
今後気をつけます
507 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/13(土) 19:03
いいですねーほんといいですねー(ニヤニヤ

6期がこれからどー絡んでくるのか楽しみです!
508 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:14
吉澤の家では石川が朝食の支度をする藤本をニヤニヤしながら眺めていた。

「はい、どうぞぉ。」

藤本が石川を睨みながらテーブルにパンとジャムを置く。

「なんで、睨むのよぉ。」
「なんで、ジロジロ見るんだよ。」
「んふふ、男子校だったら美貴ちゃんマドンナ先生だったよねぇ。」

藤本はマドンナとか古いと思いながら石川の言葉を無視した。

「スカート短すぎない?それに体のライン出すぎじゃない?」

藤本は黒のタイトスカートに白いブラウスを合わせた格好をしていた。
普段、膝上10数センチのスカートを穿く藤本にとって膝上5センチくらいのこのスカートは決して短いものではない。

「学校の先生には見えないよねぇ。」
「この上にジャケットも着るから大丈夫。」
「でも見えない、腰掛OLくらいにしか見えない。」
「同じようなもんだろ、先生もOLも。」
「先生ってさぁほら、圭ちゃんみたいにカチっとしたスーツでさぁ。」
「梨華ちゃんはセンスってのがないからね・・・参考にならないからいいって。」
「ひどぉい。」
「はいはい、もう、食べなよ。」

藤本は自分のパンをテーブルに置くと朝食を取り始めた。
509 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:15
「いいなぁ、また高校行けて。」
「別に美貴が高校生になるわけじゃないからね。」

吉澤がジャージ姿でリビングに入ってくると藤本の隣に座る。

「おはよ。よっちゃん。」
「ん。おはよぉ。」

石川の満面の笑みの挨拶に吉澤は眠そうに答えた。

「おはよ。はいコーヒー。」
「ありがと。」

藤本から渡されたコーヒーを啜りながら藤本の皿にあるパンを食べる吉澤。

「あ、今焼きたてあるのに。」
「んー。これでいい。」

藤本は「もー。」 といいながら吉澤のために焼いたパンを食べた。

「美貴、今日からだっけ。」
「うん。」
「その格好で教壇立つの?」
「そう。」
「なんか美人教師って感じでいいね。」
「でしょ。」

藤本は石川に笑みを向けた。

「梨華ちゃん、今日遅番なの?」
「うん。」

吉澤の質問に笑顔で頷く石川。

「お昼、よっちゃんの店で食べていくから。」
「わかったぁ。」

藤本はパンを食べ終え席を立つとジャケットに袖を通す。

「梨華ちゃん、よっちゃんの髪やってね。」
「はいよ。」
「行ってきます。」
「「行ってらっしゃい。」」

カバンを肩にかけ剣道の防具と竹刀を持って出て行く藤本の背中を吉澤と石川は見送った。
510 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:15
「ご馳走様でしたぁ。」

パンを食べ終えた吉澤は席を立ち洗面所に向かう。
石川も吉澤のあとを追いかけた。

歯を磨く吉澤の後ろから石川がスタイリング剤で寝癖を直す。
石川は楽しそうに鏡に映る吉澤を見ながら直していた。

「はい、顔洗って着替えてきなね。」

頷く吉澤を置いて石川はリビングに戻り朝食の後片付けをした。

「梨華ちゃん行くね。」

リビングから吉澤が声をかけると石川は手を拭きながら吉澤の見送りに行く。

「お昼に行くからね。」
「うん。分かった。行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」

吉澤は石川に笑顔で見送られて家を出た。
511 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:15

*****************************

512 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:16
教壇にたった藤本を保田のクラスの生徒たちは羨望の眼差しで見ていた。

「今日から、教育実習生として皆さんに化学を教える藤本美貴です。」

生徒から拍手とざわめきに藤本は笑みを返す

「3週間ですが、宜しくお願いします。あと、このクラスには剣道部いるかな?」

手を上げたのは一番後ろの席の色の白い子と一番前の席のショートカットの子。

「二人ね、私、剣道部も見るから宜しくね。」

と笑顔を見せる。
笑顔を返す生徒たちの中に独りだけ藤本に視線を送らない生徒がいた。
一番後ろの窓際の席でつまらなそうに外を見ている生徒。
制服の着方から見て藤本はクラスで浮いているだろうなと思った。

「はい、じゃぁ今日から宜しくお願いします。」

藤本は頭を下げて、隣に居た保田と入れ交わる。

「はい、じゃぁホームルームはおしまい。」

保田が言うと一番前のショートカットの子が「起立。」と声をかけた。

「気をつけ、礼。」

ありがとうございました。という生徒の声と椅子を引いて座る音。
その中で一番後ろの窓際の子は座ったままだった。

「藤本いくよ。」

保田に促されて藤本は教室を出た。
513 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:16
「あの二人はマネージャーだからね。」

職員室に戻る廊下を歩きながら保田が言う。

「んと道重さんと亀井さんだっけ。」
「おっ、覚えてきたとは関心だこと。」
「あのクラスだけ、あと2クラスは授業だけだからまだ覚えてない。」
「まぁ一度教えれば覚えるでしょ、藤本なら。」

保田は笑顔を見せた。

「ギャル発見っ。」
「おっ、ホンマや。」

藤本を指差し前に立ちはだかる辻と加護。

「ギャルじゃないし。」
「こら、騒ぐな。」

保田の言葉に耳を貸さない辻と加護。
辻は藤本の後ろに回りこんだ。

「なんや、こないだより地味やな自分。」
「あれは大学行った帰り、きゃっ。」

藤本は悲鳴を上げて手でお尻を押さえた。

「隙ありっ。」

辻が両手を合わせて人差し指と中指を立ててみせる。

「浣腸かよ・・・高校生にもなって。」

呟く藤本に保田は笑った。

「藤本行くよ。」

保田は先を歩き出し、藤本も辻を睨んでから後を追った。
514 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:17
「もぉ。なんなんだあいつらぁ。」

職員室で教材をまとめながらブツブツと文句を言う藤本。
保田はお茶を啜りながら笑ってる。

「あのクラスの授業なくてよかったね、あったらさすがの藤本も根をあげてたわ。」
「そんなにキツイの?」
「4時間目、私やるから見に来る?藤本空きでしょ?」
「うん。行く。」
「この時間は空きだから、授業の準備しておきなさいね。」
「はぁい、終わったら見に行っても良い?」
「いいわよ。」

保田は教材を持って席を立った。

藤本は授業の準備を追え、必要なものをもって化学準備室に向かった。
隣の部屋からは保田の声と生徒の声が聞こえてくる。

515 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:18
廊下に出た藤本は保田の授業を窓越しに見ていた。

「きゃっ。」

静かな廊下に響く藤本の悲鳴。
藤本はお尻に手を当てながら振り返る。
そこに居るのは案の定、辻。

「もぉ・・・。入りな。」

静かな廊下では怒れない藤本は辻を準備室に入れた。

「美貴ちゃん何やってんの?」
「美貴ちゃんじゃないでしょ先生でしょ。」
「いいじゃん。ケメちゃんと美貴ちゃんで。」

言っても無駄と思った藤本は諦めた。

「保田先生の授業の見学してたの。」
「へー。暇なんだ美貴ちゃん。のんも暇なんだよ。遊ぼうよ。」
「暇じゃないから。ってか辻さん授業あるでしょ。」
「国語だもん。」
「こないだ英語だもんって言ってたよね?あんた、何の授業でてるわけ?」
「体育と音楽と美術。」

元気良く指で数えながら言う辻に藤本は苦笑いを漏らした。

「加護さんは?」
「あいぼんは英語と数学だけ出ない。」

まだ、ましだなと藤本は頷いた。

「あれ、化学は出てるんじゃないの?」
「出てるよ、ケメちゃんの授業は出る。」
「なんで?」
「面白いから。」

保田の授業を自分たちもサボったことはなかったなと思い出した。

「なんで面白いの?」
「美貴ちゃん、その前に、お茶とか飲もうよぉ。」

辻は藤本の肩をポンポンと叩いて棚からお茶を取り出す。

516 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:18
「はぁ・・・良かった1年の担当で。」

歌を歌いながらお茶を入れる辻を見て藤本はため息をついた。

「はい、で?何が楽しいかだっけ。」
「そうそう。」

藤本は辻の入れたお茶を啜った。

「他の先生はのんのこと邪魔にするから嫌いなの。」
「へぇそんなことするんだ。」
「するよ、質問するとね、お前は分からなくて良いって言うんだよ。」
「それは酷いね。」
「まぁのん頭悪いからしかたないんだけどね。」

藤本は辻がどれほど成績が悪いか分からないが
この高校は文武両道といってスポーツ推薦でもある程度の学力がないと
入れないはずだと首をかしげた。

「でもケメちゃんはちゃんと教えてくれるんだよ。」
「へぇ。」
「だからケメちゃんの授業はサボらないの。」
「出席たりなくない?」

と言ってから辻が2年に進級してることに気が付いた。

「のんスポーツ推薦だから大丈夫。」

自分と吉澤もスポーツ推薦だったけどダメだったと藤本はさらに首を傾げた。

「加護さんも?」
「あいぼんは成績いいもん。」
「へぇ。他の先生は怒らない?」
「授業がはかどるから遊んできていいって。」

藤本は顔を引きつらした。
517 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:19
チャイムがなり保田が準備室に入ってくると二人の様子を見てため息をついた。

「なぁにのんびりお茶してるのよ。藤本、大丈夫なの?」
「あぁ多分、やってみないと分からないけど。」
「ホントに・・・辻は?4時間目は化学だからね、来なさいよ。」
「はぁい。」

手を上げ元気に返事を返す辻。

「次、体育だからのん、行くね。」

と準備室を飛び出していく辻の後姿を保田と藤本は笑いながら見送った。

「じゃぁ、藤本先生のデビュー授業をゆっくりと拝見しようかなぁ。」

保田は辻が残していったお茶を飲みながら笑って見せた。

「美貴、あんまり緊張とかしない方だから大丈夫。」

と藤本も笑みを返した。
518 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:19

*****************************

519 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:19
吉澤はいつものように仕事をこなしてお昼時前の下ごしらえをしていると石川がやってきた。
手を振りながら吉澤に笑顔を投げかける石川に吉澤は少し顔を引き攣らせる。

「いつものでいい?」

吉澤が尋ねると笑顔で頷く石川。
吉澤は直ぐにアイスコーヒーとサンドイッチを作り石川の前に置くと次々にやってくる客の相手を始める。
石川はサンドイッチを頬張りながらそんな吉澤を目で追っていた。
仕事にも慣れてきている様子だし、このままここで働くのもありだろうと石川は思った。
2時までには職場に行かなくてはならない石川はゆっくりしていたい気持ちを堪えて店をあとにした。
520 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:20
石川と入れ変わり店にやってきたのは中澤。
昼が過ぎ店内の客も減り吉澤が昼食を取る時間。
カウンターの端で吉澤がサンドイッチを頬張る姿を中澤はいつも眺めている。

「なんか、ソワソワしてるな?」
「そうですか?」

吉澤はモグモグと口を動かしながら首を傾げる。

「なんか気になることあるのか?」
「ん〜。気になるっていうか今日から美貴が教育実習だから。」
「上手くやってるか心配なんや?」
「まぁ。美貴ってほら、突っ込みとかキツイじゃん。生徒大丈夫かなって。」

中澤は笑みを返した。
この子達は4人の狭い世界で生きてきてそこから抜け出せなかったのは吉澤だけだろうと中澤は思っていた。

521 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:20
「よっちゃん、まだ、やりたいこと見つからんのか?」
「ん〜。」
「見つかったらいつでもやめてええんよ。」
「じゃぁ見つからなかったらずっとここで働かしてくれます?」

中澤は寂しそうに吉澤を見つめた。
やりたいことを探すつもりのない吉澤の目。
その目はもうあの頃の輝きを取り戻さないのだろうか?

「よっちゃんの好きにしたらええよ。」

吉澤は「ありがと。」と笑顔を向ける。

「ごっちんは元気になったか?」
「ん〜。ここんところ夜中に帰ってきてるみたいだけど会えてない。」
「大変やなぁ。女優さんも。」
「うん。」

吉澤が心配そうに頷いた。

「それだけ心配してくれる友達がいるだけ幸せ者やな。」

吉澤は少しだけ笑みを向け食べ終えた食器を片しだした。

522 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:20

*****************************

523 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:21
藤本は保田の授業を教室の後ろから見学していた。
辻は理解が遅いらしい。何度も質問をしようとする。
その前に保田が辻の横に行き教え、その間は他の生徒がノートを写す時間になるという効率の良い授業を行っていた。

「さすが、圭ちゃんだわ。美貴なら辻さん見放しそう。後でおいでってなっちゃうかも。」

準備室に戻った藤本は関心したように言った。

「私も昔はそうだったわよ。遅れてる子は放課後教えてあげるってやってた。」
「まだ、クラス全体みて授業できないもんなぁ美貴は。」

藤本は先ほど終えた初めての授業を思い出し。

「教育実習生の中では優秀なほうじゃない?」
「そう?良かった。」
「大抵、質問攻めになるわよ。プライベートについて。」
「あぁ。」

実際、自分が生徒だったころ教育実習生に授業をさせなかったのを覚えてる。
恋人はいるかだの、初体験はいつだったのかだのそんな質問で潰してた。

「お昼どうする?私はお弁当なんだけど。」
「美貴はコンビニ。」
「じゃぁここで食べよう。辻と加護も来るから。」
「なにそれ。」
「辻が最近、料理にはまってるらしくて私の分も作ってくるのよ。」
「へぇ。じゃぁ美貴とってくる。」

藤本は職員室に戻り来る途中にコンビニで買ったおにぎりをもって準備室に戻った。
524 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:21
「なにそれ・・・。」

保田が手にしているお弁当は子供の作った工作のようなお弁当。
保田は苦笑いを返しそれを口にしていた。

「ってかなんで辻さんのお弁当と圭ちゃんのお弁当違うのよ。」
「これ、お母さんが作ってくれた。」

藤本は保田が毒見させられてるように思えて可哀相になった。
加護は辻の横でパンを頬張っている。

「まぁまぁね。何の味だか分からないけど食べられないこともない。」

保田は律儀に味の評価までしてあげていた。

「美貴ちゃんにも作ってきてあげようか?」

コンビニのおにぎりを頬張る藤本は首を横に振った。

「あ、そうだ、圭ちゃんに聞きたかったことがあるんだけど。」
「なに?」
「なんで、辻さんうちの高校は入れたの?」

藤本のストレートな聞き方に保田はため息をついた。

「あんた聞き方他にないわけ?」
「まぁこれが美貴だし。」
「ったく。辻はまぁ特別なのよ。校長変わったでしょ?」
「あぁ娘さんだっけ?こないだ挨拶した。安倍なつみ校長だよね。」

保田が頷く。

「なっちって面白いよね。」
「なっちって・・・。」

辻の校長の呼び方に藤本は呆れた。
525 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:22
「なっち、のん親戚だもん。」
「ほぉー。」

藤本が驚くと保田が説明を続けた。

「辻のこと大好きみたいでね。他の高校だと可哀相だからってここに。」
「可哀相だからって・・・高校それで入れるのかよ。」
「まぁ幸い、剣道でいろんな高校から推薦あったみたいでね。」
「のん、特待生なんだよ。凄いでしょ。」
「はは。凄いね。」

藤本は顔を引き攣らせて笑った。
あんなに若い校長でいいのかとは思ったがさすが私立だと藤本は思った。

「後藤だって、同じようなものだったじゃない。前校長がファンだったから。」
「あぁ、そうだったかも。」

バイト禁止だったはずが後藤だけ特別待遇で仕事を続けていいとしたのは校長だった。

「剣道そんなに推薦来るほど上手いんだ。」

藤本の言葉に辻は首を傾げる。
自分ではどうなのかわからないのだろう。

「まって、辻さんって辻希美だったよね。」
「そうだよ。」

藤本は大学時代に読んだ剣道雑誌を思い出した。
最小剣士の中学生という見出しの記事。

「得意技って小手?」

頷く辻。保田は不思議そうに藤本を見ていた。
526 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:22
「この子って身体能力凄い良い?」
「陸上部より走らせたら速いでのんは。」

と加護がお茶を啜りながら言った。

「じゃぁあの辻かぁ。」
「知ってるの?」
「うん。雑誌で読んだ。写真なかったから気が付かなかったけど。」
「へぇ結構、辻って有名なの?」
「凄い動きの良い剣道するって書いてあった、小学生のとき全国で上位だったはず。」

保田はそれは凄いと感心した。

「中学でも全国行ってたよね?高校になったらいけてないんだ。」

辻は藤本の言葉に首を傾げた。

「のん、試合出てないもん。」
「なにそれ、顧問変わってないよね?」

と藤本は保田を見た。頷く保田。

勝つための剣道をさせる顧問だったはずだ。
団体か個人戦に使っても良いはずだが、上級生たちがでたのだろうか。
藤本たちがいたころは団体戦は顧問がメンバーを選抜していたが
個人戦は校内で試合をして出る人を決めていた。

「個人戦って校内試合で決めてるの?」
「そうだよ、のん勝てないからでれないんだ。」

その表情には試合に出れない悔しさもなにもない。

「辻さん部活の時、美貴の相手して。」
「いいの?やったぁ。」

と嬉しそうに笑う辻。
これで、辻が強かったら、顧問に文句を言ってやろうと藤本は意気込んだ。
527 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:22

*****************************

528 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:23
バイトを終えた吉澤は一人リビングに座っていた。
バイトが終って直ぐに藤本からまだ帰れないとメールが来た。
石川は遅番だからもちろん帰って来れないだろう。
後藤も仕事で帰って来れない。
いつも一緒だった幼馴染がいないというのはなんだか変な感じだった。

後藤も石川も一緒の時間が減って寂しく不安だったのだろうと
初めて二人の気持ちを理解した。
そして吉澤は幼馴染が社会にでて大人になっていく中で自分だけが取り残されているように思えた。

テレビをつけると後藤が写る。
化粧品のCMだ。
こうして後藤の仕事を見ることが出来るから高校の頃から独り仕事をいていた後藤を遠くに感じたことはなかったが今日はなんだか違った。

後藤だって、スカウトされていなかったら・・・
吉澤と同じだったはずだ。
小さい頃から夢を持っていたのは石川と藤本だ。
大きくなったらなりたいものというテーマに直ぐに応えていたのは二人だった。
吉澤と後藤はしっかりとした意思なんてなかった。

運が良い後藤と運が悪かった吉澤。

吉澤はそんな風に思えてしまう自分自身に苦笑した。

「最悪・・・。」

吉澤は頭を冷やそうと風呂場に向かった。

いつもは沸いているお風呂。
藤本がやってくれていたのだろう、藤本がいないときは石川か後藤が。

「シャワーでいいや。」

529 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:23
3人が自分より遥かに大人に感じてしまう。
やってもらうのが当たり前になっていた。
いや、やりたいのだからやらしておこうという気持ちだったかもしれない。
髪もそうだ、一度、藤本がやっているのを石川が見てやりたいと言い出した。
それからだ、自分でやらなくなったのは。

シャワーを浴びてリビングに戻っても頭の中はさっぱりしない。

夕飯の仕度の出来ていないテーブル。
自分が最後のこのキッチンで料理を作ったのはいつだっただろう。
もう、思い出すことも出来ない。
両親が単身赴任してから作ったのは1度か2度だろう。
うちが作ろうとすると誰かが作りたがる。
そして、うちに美味しいかきいて満足そうに笑うんだ。
嬉しそうだからうちはいつも作ってもらっていた。
作れないことはないのに。いつのまにか作ってもらうのが当たり前になってた。

作って、藤本たちの帰りを待つべきなのだろうか?

吉澤はキッチンの前に立ち独り悩んだ。

530 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:23

*****************************

531 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:24
藤本は帰りのホームルームを終えた後、道着と袴に着替え剣道場にいた。
次々に袴姿でやってくる剣道部の部員たちは藤本の姿を見るとざわめき頭を下げていく。

「藤本と吉澤はあいつらの憧れらしいぞ。」

隣で顧問が笑顔でいう。

「別に全国行っただけで全国では負けたのにな。」

他にも名の知れた選手はいるだろうと藤本は思った。

「まぁ自分の学校の先輩は凄かったってだけで会場では居心地良いからな。」

無名校よりは実績のある高校の方がやりやすいだろう。
レッテル負けすることはないだろうから。
ただ、それでも自分たちの実力が伴わないのは格好悪いと藤本は思う。

「美貴ちゃんっ。」

入口から凄い速さで剣道場を突っ切って駆けてくる辻。

「はやっ・・・。」

藤本は辻の走る速さに驚いた。

「美貴ちゃん、のんとやるんだよね。」
「うん。やるから防具つけてきな。」
「試合やるの久しぶり。」

藤本はその言葉を少し疑問に感じながら防具をつけるように促した。

「わかったから、防具つけな。」
「待ってねぇ。」

と笑顔を向けて駆けていく辻。

「辻希美って強いんですよね?」

辻の後姿を見ながら顧問に問いかける藤本。

「まぁな。」
「なんで試合に出れないの?」

顧問はため息をついてベンチに座った。

「まぁ地稽古なら問題ないんだけどな。」

という顧問に藤本は首をかしげた。
防具をつけた部員たちが4列に並び準備体操を始める

「ってか辻さんてホントに小さいね。」

藤本がいた頃より平均身長が高くなっているのだろうが辻はひとり明らかに身長が低い。

「懐に入りやすくていいんだけどな。」

と辻を目で追いながら言う顧問。
それなら絶対に試合に使うべきだと藤本は思った。

532 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:25
準備体操を負え竹刀を持って素振りを始める部員を藤本は見て回った。

素振りを終え生徒が面を持って整列する。
藤本と顧問は生徒の向かいに正座した。

「もくそー。」

とキャプテンであろう子が声を張り上げ藤本は膝の上に手を組み目を閉じた。

「やめっ。」

と声がかかりゆっくり目をあける。

「神前に対し拝礼。」

と声がかかり神棚に頭を下げる。

「先生方に対し礼。」

との声に生徒たちと頭を下げあった。

「今日から3週間、教育実習生の藤本も剣道部を見てくれる。」

顧問の言葉に藤本は頭を少し下げた。

「お前たちの先輩で知ってると思うが強い。色々、技を盗めるチャンスだから見取り稽古もするように。」

顧問の言葉にいっせいに「はいっ。」と返事をする生徒。

「じゃぁ、藤本どうぞ。」

と顧問に言われ藤本は頭を下げた。
533 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:25
「3週間よろしくお願いします。」

生徒たちも頭を下げ、藤本は言葉を続けた。

「えぇっとそうですね、私は剣道を教えたくて教師を目指しているので、授業より剣道のが楽しみなんですが、多分、隣にいる顧問より私のが厳しいです。」

生徒たちが苦笑いをする様子を藤本は楽しそうに笑った。

「最初に言っておきたいことがあって、私は顧問と意見が違うので皆に教えるとき顧問と違うことを言うと思います。」

藤本は隣にいる顧問に目を向けた。
顧問は苦笑しながら続けろと促す。

「生徒だった頃から意見が食い違って言い合いしてたんですけどね。」

と藤本は笑った。

「顧問はこう教えてくれたと混乱するといけないので先に知っておいてください。どちらの意見を取り入れるかは皆の自由だと思います。私の意見を聞かないからと言って苛めたりしないので安心してください。以上。」

手を突いて頭を下げる藤本に生徒たちも同じように頭を下げた。

「じゃぁ始めて。」

顧問の言葉に生徒たちは姿勢を正す。

「面付けっ。」

号令に一斉に手ぬぐいをかぶり面を付け始める生徒を見ながら藤本と顧問は椅子に座りなおした。

「全く、相変わらずだな、お前は。」
「美貴は個性を大事にしますから。」

苦笑いしながら呟く顧問に藤本はニッコリと笑みを見せる。
534 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:26
面を付け終えた生徒たちが二人組みになり並ぶ
藤本は席を立つと竹刀を手に持ち生徒たちを後ろに回った。

切り替えしを始める生徒を藤本はじっと見ていた。
剣道の基本である切り替えし。
満点を付けれる生徒は30人ほどいる中で数人しかいないと藤本は思った。

右に回りながら相手を変え切り替えし続ける生徒。

「ちょっといい?」

藤本は次が始まる前に声をかけ生徒たちが作る円の真ん中に入った。

「元に立って。」

キャプテンに声をかけて藤本は竹刀を構える。

「切り替えしは基本だからね、アップ感覚でやっても意味無いから。」

藤本は頷く生徒を確認しながら指導を始めた。

「速くやろうとして大きく振りかぶってないよ皆。それだと見た目は早くてもしっかり打ててないからダメ。基本だから早くやる必要はないから。」

「はい。」と返事が返ってくると藤本は大きく振りかぶって見せた。

「ここまで振りかぶること。それと左右面はしっかり手を返す。これも皆、早くやろうとして返してない。これがちゃんとできないと返し技とか出来ないからね。」

藤本は元に立たせた生徒の右面をパンと打ってみせる。

「これ、分かる?返すとき皆の左手は体の中心から外れてるけど基本は外しちゃダメだからね。常に左手は体の中心。もう一回そこ気をつけやってみ。」

藤本が言い終わると生徒は「ありがとうございました。」と頭を下げ構えなおし切り替えしを始めた。
535 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:26
「藤本はスピード勝負だろ?」

隣に来て言う顧問に藤本はため息をついた。

「だから、スピード勝負でも基本が出来てないと結局は遅いんですって。」

学生時代からいつもこうして顧問と言い合いをしていた。

試合に勝つ剣道を教える顧問は剣道の基本は中学で身に着けているし今から直しても遅いし間違って身に着けてきたものを今から直すのは大変だといい基本重視よりもスピード重視だった、それだと反射神経がよければ何とか勝つことは出来る。でも上に行けばそれは通用しない。
大学まで剣道をやっていたというだけの実績の持たない顧問。
大きな試合にでたことはもちろんない。

吉澤と藤本がここに来たときに二人は顧問にものともせずに勝った。
全国に出たのも藤本と吉澤がいた時代だけだった。

「オレの面子丸つぶれだよなぁお前がここにきたら。」
「立てますって。」

ため息交じりにいう顧問の肩を叩きながら藤本は笑った。

藤本も吉澤も顧問より強いからと生意気な態度は取らず敬って接していた。
いくら、顧問とは強いとは言え年齢が上の人間を邪険には扱わない、それに剣道はそれなりの年数をやっていないと段を取ることは出来ない。もちろん高校生だった藤本たちより段位が上の顧問はやはり立場は上になるのだ。

一通りの基礎練習を藤本は指導し休憩を入れる。

「15分休憩してから地稽古。」

顧問が言うと生徒は道場の隅で面を外した。
536 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:27
藤本はタオルと携帯を持って席を立った。
道場の外に出て携帯を操作し遅くなると吉澤にメールをした。

「大丈夫かな・・・。」

石川が遅番だと言っていたことを思い出し藤本は吉澤の夕飯を心配した。

道場に戻るとマネージャーの亀井が藤本に冷えた麦茶を持ってきた。
それを飲んでから藤本が面を付け始めると既に面をつけていた生徒が横に来て座る。

「宜しくお願いします。」

深く頭を下げる生徒に藤本は面紐を縛りながら「宜しく。」と返す。
小手を嵌めて竹刀を取り立ち上がると軽くジャンプする藤本を生徒たちはじっと見ていた。

「切り替えし、係り稽古してから地稽古。」

前に立つ生徒にそう告げると一礼してから蹲踞し立ち上がる。
藤本は切り替えしをする生徒の元立ちをしながら生徒の剣道を観察した。
係り稽古をさせるとスピードだけで闇雲に打突してくる生徒。
藤本は先ほどの練習を見ていても相手を全く見ていないとは感じていた。

最後に面を打たせ体を裁きながら生徒の胴をポンと触れる。
係り稽古終了の合図。
生徒は息を整えながら元の位置に着く。

537 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:27
藤本は生徒の息が落ち着くのを待って小手の甲を向ける。
3本勝負の合図。
生徒が「お願いします。」と礼をすると藤本と生徒は竹刀を納め9歩の間合いを取った。
他の生徒たちがそれぞれ地稽古をする中、残りの生徒たちはじっと藤本の様子を観察していた、マネージャーの道重はビデオカメラを用意し撮影する。
その隣にいる亀井の表情はワクワクしているような笑顔を見せている。
次に藤本に相手をしてもうために並んでいる辻も面がねの間からじっと見ていた。

藤本たちは一礼すると大きく3歩出て蹲踞する。
お互いの様子を見ながら立ち上がると直ぐに面を打ってくる生徒。
だがその竹刀は藤本の面に届くことはなく生徒は後ろに倒れた。
藤本は何もしていない。ただ、藤本の剣先が生徒の胸に突き刺さっただけだ。
生徒は慌てて立ち上がり再び藤本と竹刀を交え、気合の声を出す。
再び闇雲に打ってくる生徒を藤本は竹刀を少しだけ動かし足を裁いて交わしていく。
生徒が息をつき足を止めた瞬間に藤本は素早く反応し右足を大きく前に出し突き刺すような面を打つ。

「メーン。」という藤本の声とパーンと面を打つ竹刀の音が響いた。

「はい、2本目。」

唖然とする生徒に藤本はそう言った。
再び位置に着き竹刀を交え気合の声を出し合う。
今度は慎重になったのか打ってこない生徒。
藤本はジリジリと自分の間合いに責める。
生徒は気が付いていない、自分の剣先が中心を捕らえていないことを
藤本の剣先は真っ直ぐと生徒の喉元を捕らえている。
生徒が動こうとしたそのとき藤本の右足を出していた。

「ツキっ。」

真っ直ぐ伸びた藤本の両腕。
藤本の剣先は生徒の喉元の突き垂に見事に納まっていた。

「はい、終わり。」

藤本が告げると生徒は竹刀を交え蹲踞する。
礼をすると直ぐに藤本に指導を貰おうと駆け寄る生徒に藤本は手を突き出して返す。
一礼してから帰る生徒。
辻は横目でその生徒を見ながら一歩前に出て藤本に視線を向けた。
538 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:28
面がねの隙間から藤本は辻を真っ直ぐに見た。
お互いに一礼して大きく3歩踏み出し蹲踞する。

切り替えしをするのかどうか様子を伺う辻。

「3本。」

藤本がそう告げると辻は気合の声を出した。
先ほどの生徒とは違い間合いを詰めながら剣先で中心を取ってくる。
練習を見ていても思ったが辻は基本通りの剣道をしていた。

きっとここで自分が半歩前にでたら辻は迷わず面、あるいは小手を打ってくるだろう。
藤本は辻に剣先の中心を譲り半歩からだを前に出した。

「コテッ。」

藤本の思惑通り打ってきたところで竹刀を上手く返して鍔迫り合いの体制にはいる。
近距離にある辻の目はじっと藤本を見ていた。

藤本は左に竹刀を担いで面を打つフェイントをかける
辻が面を避けようと腕を少し上げると藤本は左足を大きく後ろに下げて
竹刀を振り下ろした。

藤本の声とパーンと胴を打ついい音が響き渡る。

下がる藤本の喉に剣先をつけて追いかけてくる辻。
その素早さに藤本は感心した。
もしも今の引き技が決まっていなかったらこの後にでるであろう辻の技が決まる確立が高い。

「胴アリでいい?」

藤本が残心を取りながら言うと頷く辻。
元の位置に戻り辻は大きな気合を出す。

藤本は辻の打ってくる機会を見ようと藤本は技を繰り出した。
辻の竹刀を上から払い面を打つと辻は体を裁き直ぐに藤本に向かい合う。
藤本は直ぐに間合いを詰めて連続技を繰り出した。
辻はそのスピーとに戸惑いながらもしっかりと対応する。
藤本がさらに面を打とうとする瞬時、辻が出頭を狙って小手を打ってきた。
藤本は大きく振りかぶり辻の竹刀は空を切るそのまま藤本の竹刀が辻の面を打った。

「メーン。」という藤本の声。
辻は直ぐに振り返ると藤本は残心を取っていた。

「勝負あり。」

辻は残念そうに位置に着き藤本と竹刀を交え蹲踞した。
539 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:28
一礼すると辻は駆け寄ってくる。

「美貴ちゃんのさっきの技なんていうの?」

藤本は面の中で苦笑した。
普通ならば稽古をつけてもらった礼をまず言うものだ。
「失礼します。ありがとうございました。お願いします。」
そう言って指導を願うのになと思ったがそれをしたら辻ではないのだろうと
藤本は笑顔を見せた。

「一本目は逆胴でしょ、二本目は小手抜き面。」
「へぇやっぱり凄いね美貴ちゃん。」
「辻も打つところはあってるよ、後は駆け引きだね。良い剣道だよ。」

藤本が辻の頭にポンと手を置くと辻は嬉しそうに笑った。

「ありがとうございました。」

と去っていく辻。
アレだけ相手を見て打ってくる辻と他の生徒とやらせたら絶対に辻が勝つはずだと藤本は不思議に思った。

その後も何人かの稽古をつけたが皆、闇雲にスピードだけで勝負する剣道だった。
540 名前:P&Q 投稿日:2006/05/13(土) 22:29
稽古が終わり整列して面を取る。

真っ赤な顔をした生徒たちは顧問の話に耳を傾ける。

「じゃぁ、藤本何かアドバイスあるか?」

藤本は道着の胸元を正しながら口を開いた。

「そうですね、一つは無駄打ちが多すぎる。それは逆に相手に対して打つ機会を与えてることになるから辞めたほうが良いね。あとは技練習の仕方だけど、例えば出小手の練習で言うと、元立ちは小手を打たせるように面を打ってるでしょ。それじゃ練習の意味はないよね、試合のときに誰も小手を打たせるように面を打つ人はいないんだから。そういうところからしっかり練習したほうがいいと思う。以上。」

一斉に頭を下げる生徒。顧問は隣で顔を引き攣らせた。
541 名前:clover 投稿日:2006/05/13(土) 22:37
本日の更新以上です。
>>508-540 A PENTAGON and A QUADRANGLE

早く、6期を出したい(;^。^A アセアセ・・
もう少ししたら出てくるので(>。<)
お付き合いください。

>>502 ももんが 様
レスありがとうございます。
ノノが好きなのでノノの出番が多くなってしまいますがw
時々、W出てきますので!

早く6期出さないと(^。^;;


>>503 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>みきよし。゜(゚´Д`゚)゜。ウァァァン

みきよし好きなのに何故か離してしまうんです(苦笑)


>>505 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>続きがすごい楽しみです(*´∀`)

ありがとうございます。最後まで宜しくお願いします。

>>506 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>>441なのですが、更新途中にレスしていたことに今気づきましたorz

大丈夫ですよ。
最後まで宜しくお願いします。

>>507 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>6期がこれからどー絡んでくるのか楽しみです!

早く殻ませないと(;^。^A アセアセ・・
頑張りますので宜しくお願いします。
542 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/14(日) 01:15
帝かっけー!

それぞれの思いが交錯しててとても読みごたえがあります。
これからも期待してます^^
543 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/14(日) 16:00
自分が中高生のとき剣道をやっていたので
稽古の描写とかが正確なのに驚きつつうれしくなりました。

それにしても美貴さん引き逆胴とは・・・おそろしい〜
544 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:52
石川は患者たちに薬を配り終え今日の自分の仕事はおしまいだ。
今日は遅番で半日のシフト。本来なら患者たちの夕食が6時からでその後、薬を配り7時くらいには終わるのだが、終わったことはない。患者たちと言葉を交わしながら回っているとどうしても遅くなってしまう。
それでも今日は7時半、早く終わったほうだろう。
このまま、お疲れ様でしたと帰宅しても良いのだが、石川は担当の患者の病室に訪れた。

「ゴハン、残してたね。」

石川は患者の夕食を下善したときに殆ど残していたことが心配だった。

「ごめんなさい。」

ベッドの上で申し訳なさそうに言う患者。
17才の高校生、新垣里沙。友達からガキさんと呼ばれ
石川もそう呼んでいた。

夕方になると同級生や後輩が良く見舞いに訪れている。
石川は友達が多い明るいイメージの印象を持っていた。

石川は笑顔を見せてから新垣の鼻からつながれた酸素を確認してベッドの横にある椅子に座った。

「調子悪かった?」

新垣は首を横に振る。
最近の調子はいい、本人も医師もそう感じていた。

「大分、落ち着いてきてるもんね。」

新垣が倒れてこの病院に搬送されてきたのは2ヶ月前だ。先輩看護士と一緒に担当していたが新垣の様態が大分落ち着き石川一人が任された。
545 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:53
慢性呼吸不全。
酸素が上手く血液に回らなく呼吸不全になってしまう。
2ヶ月前、新垣は学校の体育の授業に参加したようだ。
運動をすれば酸欠になると判っていて新垣は運動をした。

「石川さん、もう帰るんでしょ?」
「うん。」

新垣はサイドの棚に置かれた時計に目をやった。

「酸素、測らして。」

石川は測定器を新垣に見せると。新垣は人差し指を石川に差し出す。

「97パーセント。大丈夫だね。」
「苦しくないですもん。」
「良かった。」

笑顔を見せる石川に新垣も笑顔を向ける。

酷い症状になると日常は携帯酸素と在宅酸素を必要とする。
だが、新垣はそこまで酷い症状ではない。
運動さえしなければ普通に生活することは出来る。

「石川さん、早く帰らないと後藤真希のドラマ始まっちゃいますよ。」

新垣に言われ、今日、後藤のドラマの放送日だったことを思い出す。

今から帰れば間に合うがいつも夕食時には新垣の見舞いに来ているはずの友達が来ていない。面会時間は8時までだからもう来ないだろうと思った。
それに夕飯を残したことも気になった石川はテレビのリモコンを手に取った。

「ここで一緒に見て良い。」

新垣は個室だしここにいても問題はないだろう、自分の勤務時間は終わっている。

「帰らなくていいんですか?」
「うん。急いで帰るのもなんだし。いい?」
「いいですよ。」

「じゃぁ着替えてきちゃう。」と石川は新垣の病室を出た。

546 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:53
ナースステーションに戻り、声をかけ更衣室に行くと着替えた。
時計を見ると8時15分を過ぎていた。
今日から藤本の帰りも遅くなるんだと思いながら石川は新垣の病室に戻った。

「じゃぁん、今日の梨華のファッションチェックする?」

ピンクのチェックのスカートに薄いピンクのニットを合わせた石川。
新垣は少し顔を引き攣らして笑みを浮かべた。

「石川さんって個性的ですよね。」

新垣は看護士にはナース服があってよかったと思った。

「ありがとぉ。」

と嬉しそうに笑う石川。
ポジティブ思考だと思う新垣。

新垣は体を起こしテレビ雑誌を手にした。

「えっと、今日は・・・あぁもう3話なんですね。」
「そうそう。」
「前回、見逃しました。」

新垣はそういいながら雑誌をペラペラとまくりドラマの特集ページで手を止めた。

「ごっちんファーストキス。初めてのラブシーンに挑戦中。」

記事の見出しを新垣は声に出して読んだ。

「えっ?」

と雑誌を覗き込み石川。
そのページには後藤が俳優の頬に手を沿え、
二人の唇が重なろうとしているところの写真だった。

「どうしたんですか?」

じっと雑誌を見つめる石川に声をかける新垣。

547 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:54
「いやいや、ちょっとビックリ。」
「21歳ですよ、今までなかったのが不思議ですよね。石川さんも同い年でしたよね。」
「うん。」
「石川さんはキスっていつしました?」

キスをしたことがあると前提に質問する新垣に石川は戸惑う。

「えぇガキさんは?」
「1年の時ですかね。」

平然と言う新垣に最近の子はすることが速いなと歳の差を感じた。

「今の子ってもうキスとかしてるんだぁ。」
「そうですねぇ中学ですませてるんじゃないかなそれ以上もしてる子いるし。」

新垣は切なそうに言う。
その顔を見て石川は気が付いた。
この子はキスをすることが出来てもそれ以上は出来ないのだ。
愛しい人と結ばれ一つになることは命を無くすかも知れない。

「私はまだキスもしたことない。遅れてるよね。」

石川は自虐的に笑いテレビをつけてチャンネルを合わせた。
テレビは丁度、バラエティ番組のエンディングトークがされている。

「見せて。」

テレビを見ている新垣に断り石川はテレビ雑誌を手に取った。

撮影の様子が書かれている文章を黙読する石川。
そこには緊張した様子だったが本番になると女優の本領発揮、一発OKと書かれていた。
色んな角度から撮影をするため何度もキスシーンをしなければいけないが後藤は難なくこなしたと付け加えられている。

石川は以前、吉澤の唇についていた後藤のリップを思い出した。
ファーストキスがこの俳優の男性では嫌だったのだろう。
そう石川は察した。
548 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:54

*****************************

549 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:55
部活を終え、雑務を終えてから藤本は家路に着いた。

まだ8時半だからと吉澤の家へと入っていく。
社会人になったら石川や後藤のように直接自分の家に帰る日も出てくるだろうと思いながら藤本は吉澤の家の玄関を開けた。

吉澤の靴だけがある玄関。
寝てしまっているだろうかと藤本は静かに中に入っていった。

「寝てる?」

藤本はそっとソファにバックを置くとテーブルにうつ伏せになってる吉澤の顔を覗き込んだ。
テーブルには吉澤がつくったのだろう夕食にラップがされている。
藤本はそれをレンジに入れた。

「ん・・・。」

物音に目を覚ました吉澤はキョロキョロと周りを見回して藤本の姿を捉える。

「お帰り。」
「ただいま。」

藤本は笑顔を見せる。

「食べないで待ってたの?」

藤本の問いに頷く吉澤。

「じゃぁ食べようっか。久々に剣道したらペコペコ。」

藤本はレンジからおかずを取り出して並べた。

「どうだった?授業は?」
「上手く出来たよぉ。」

藤本は笑顔を返しながら吉澤の作ったおかずを口に運んだ。

「よかった。部活は?あの顧問とまだいるの?」

吉澤は嫌な顔をしながら言う。
藤本は苦笑いしながらおかずを箸でかき回した。

「よっちゃんこれ野菜炒め。」
「そうだよ。」
「肉がない・・・。」

藤本は箸を口に入れた。

「野菜炒めだもん肉ないよ。」

吉澤は笑いながらそれを口に入れた。
550 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:55
「肉ありのがよかったぁ・・・。」
「美貴、肉食いすぎなんだよ。野菜たべないから偏ってるし。」
「肉が好きなんだもん。」

藤本は頬を膨らます。

「まぁ仕方ないか・・・。」

藤本は野菜炒めを口に運んだ。

「で?顧問と喧嘩しなかった?」
「美貴も大人になりましたから。」
「ほぉー。生徒はどう?強い子いた?」
「うん、こないだはなした辻って子。」
「あぁ小さい子供だ。」
「うん。あの子、思ったよりいいよ。ほら前に雑誌に取り上げられてた最小剣士覚えてる?」
「あぁ、あったね。」
「それ、辻だった。」
「へぇ・・・。」

吉澤はここ最近、自分の母校の大会の成績が良かっただろうかと思い返した。
藤本が良いということは実力があるのだろう、藤本はめったに誰かを褒めたりしないから。

「でも試合出さしてもらってないみたいなんだよねぇ。」
「あの顧問が?」

藤本は首を横に振った。

「校内試合で個人戦は決めてるみたいだから。それはないと思うんだけどね。」

藤本は首を傾げた。

「明らかに辻のが強いんだよ。」
「不思議だねぇ。」
「そうなんだよぉ。」
「試合させてみた?」
「まだ。」
「じゃぁやらせたら分かるね。」
「うん。」
551 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:56
藤本はお茶碗に残った最後の一口を放りこんだ。
どんな試合をしたら辻はあの子達に負けるんだろうか
藤本は考えながらモグモグと口を動かした。
吉澤は困惑している藤本を久しぶりに見ながら微笑んだ。
剣道のことになると藤本はいつも一人で考える。
そんな藤本を見ているのが吉澤は好きだ。

吉澤は開いた皿をシンクに運び洗物を始めた。

「あっ、ごっちんのドラマだ、今日。」

吉澤は食器を洗い終えながら思いだした。
その声に慌ててテレビをつけに席を立つ藤本。

9時を過ぎてはいたがテレビ画面にはオープニングのタイトルが流れている。

「間に合ったっぽい。」
「うん。」

吉澤は良かったといいながら藤本の隣に腰掛けた。

自分たちが知っている後藤ではない後藤がそこにはいる。
吉澤は後藤の演技を見ているとおかしな気持ちになっていた。
顔は自分が良く知る後藤なのにそこから発せられる言葉は後藤の言葉ではない
まるで別人が後藤の体を乗っ取って話をさせているそんなように思える。

今もテレビに映る後藤は男に腕を絡ませて楽しそうにお酒を飲んでいる。

「そういやごっちんとちゃんと飲みに行ったことないね。」

藤本がテレビを見ながら呟く。
名が知れた後藤を連れてどこかで飲むのは無理だろう。
大体、めったに外で飲んだことはない。
成人式の日に3人で飲みに行っただけだ。
成人特集の番組に新成人として出ていたからその日、後藤は一緒には行けなかった。
あとは、大学の集まり程度でそれほど長いしたことはない。
成人式の日、藤本は酒が入るとテンションが上がり石川もそれにつられてハイテンションになり二人で騒ぎまくって店内で注目を浴びて恥ずかしい思いをしたのは吉澤だった。
そんなところに後藤を連れて行ったら騒がれてしまうだろう。
それから、一度も外で飲んだことはなく家でちょこっと飲む程度だけだ。

吉澤は苦笑した。

酔った次の日、藤本も石川も何も覚えていないのだ。

「あ・・・。」

藤本が声を漏らし、吉澤も顔からも笑みが消えた。
552 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:57
男が止めたタクシーに後藤が乗ろうというシーン。
後藤が男を呼びとめ笑顔を向けキスをした。

「キスシーンあるなんて聞いてなかったね。」

藤本が呟いた。
テレビ画面はテーマソングとキスシーンがまだ流れてる。

「うん。」

藤本も吉澤も放心したように幼馴染のキスシーンを見ていた。

後藤が笑顔で独りタクシーに揺られているシーンに変わると二人はそろって息を吐き出した。

「はは・・・なんか幼馴染のキスシーンとかこっちが照れるね。」

藤本は振り返って吉澤の顔を見た。

「照れるね。ってかごっちんファーストキスだよね。」
「そうだね。あの、男だれ?」
「知らない・・・。」

二人は苦笑しながらテレビに視線を戻した。

後藤が親友役の女優と笑いながら歩いているシーン
そのままドラマのエンディングになった。

553 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:57

*****************************

554 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:57
石川は駅からの家路を何度もため息をつきながら歩いた。

新垣の病室で見た後藤のドラマ。
キスシーンがあると分かって見ていたもののなんともいえない気持ちだった
仕事だとは言え好きでもない人とキスをしなければならない
断ることは出来なかったのだろうか。

後藤の家の前に止まっている黒いエルグランド

石川は足を止め後藤が出てくるかも知れないとその車を見た。

5分くらいだろうかまだ出てくる気配のない後藤
石川は車に近づいて窓をノックした。
外から中は見えないようになっているが中からは石川が見えるだろう
石川は手を振って見せた。

車の中で後藤はマネージャーに文句を言っているところだった。
窓越しに手を振る石川を見て後藤は冷静さを取り戻した。

「また、明日話しよ。勝手に進めないでね。」

後藤はそういうとドアを開けた。

「やっぱり乗ってた。」

そういう石川の表情は笑顔だ。手を振っているときから笑顔だった石川。
後藤はもしも自分が乗っていなかったら石川はどうするのだろうと苦笑した。

「梨華ちゃんも今帰り?」
「うん。病院でごっちんのドラマ見て帰ってきた。」
「そっか、今って何話放送してるっけ。」
「今日は3話。キスシーンみたよぉ。」

なんでもないようにキスシーンの話をする石川。
それでもその表情は硬かった。

「そっか。」

後藤もなんでもないように返す。

「よっちゃんの家寄ってく?」

石川は腕時計に目をやった。

「疲れてるし明日速いからシャワー浴びて寝るわ。」
「そっか。」
「じゃぁおやすみ。」

後藤が自分の家に入っていくと石川も自分の家に入った。

555 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 04:57
後藤が自分の家に入っていくと石川も自分の家に入った。

後藤が家に入ると母親が出迎えた。

「夕飯は?」
「食べたよ。」

後藤は笑顔を返し自分の部屋に入った。

手に持っていた映画の資料を机に投げたベッドに座った。
映画の仕事が来ているというのは聞いていたが映画の内容までは知らなかった。

「はぁ・・・。」

ため息をつきながらもうテーブルの資料に手を伸ばした。

556 名前:clover 投稿日:2006/05/15(月) 05:03
出勤前の更新終了です。
>>544-555 A PENTAGON and A QUADRANGLE

1時間間違えて早く起きてしまった・・・何やってんだろう・・・
おかげで更新できたからいいかなヾ(∇^〃)

>>542 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>それぞれの思いが交錯しててとても読みごたえがあります。
>これからも期待してます^^

期待を裏切らないように頑張ります。
最後までお付き合いください。

>>543 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>稽古の描写とかが正確なのに驚きつつうれしくなりました。

良かったぁ。(^▽^) ホッ
バレーにしようか剣道にしようか迷った挙句剣道にしたのでその言葉嬉しいです。
ありがとうございます。

また、何度が試合が出てきますので頑張ります。



夕方にまた更新できたらしようと思います。
557 名前:ももんが 投稿日:2006/05/15(月) 12:24
剣道のシーンが出てくる話って珍しいですね。
ガキさんとかいろんな人が出てきて読んでて面白いです♪
更新楽しみに待ってます。
558 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/15(月) 18:18
更新お疲れ様です。

映画、どんな内容なんでしょーか。
気になります。
559 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:34
藤本は保田と辻と加護と昼食を取っていた。
辻は昨日の技の出し方や自分の技のことについてきいてきた。
藤本は一つ一つ丁寧に説明し教えた。
そんな様子を保田と加護は嬉しそうに見守っていた。
辻はこの高校に来て教師からは邪険にされ部活では試合に出れず
楽しいことは体育の時間と準備室にいるときだけだった。

熱心に藤本が説明していると準備室のドアがノックされた。

「はぁい。」

保田が大きな声で返事をすると生徒が扉から中の様子を伺う。

「あら、田中。どうした?」

保田が立ち上がり田中に近寄る。

「お食事中すみません。あの・・・放課後また来ます。」

田中はそういうと頭を下げて去っていった。

「なんだろ。」

保田は心配そうな顔をする。

「田中れいなさんだっけ?」

藤本の言葉に頷く保田。

「ヤンキーれいなでしょ。」
「なにそれ。」

辻の言葉に藤本は笑った。
藤本からみて田中が荒れてるようには見えない。
教室では外を眺めていることが多いが授業はきちんと出ている。

「転校してきたとき髪が茶色だったからヤンキーれいな。」

辻が自慢気に言う。
藤本はなぜ自慢気なのか分からない。

「へぇ。転校生なんだ。」
「ひと月前、転校してきたの。前の学校は染めても良かったみたいでね、うちはダメだって言ったら次の日戻してきたんだけどね。」
「ふーん。」
「亀と重さんの幼馴染なんだって。剣道部だよ。」

辻がそう言った。
560 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:35
「なんで剣道部?来てないじゃん。」
「そうだね。」

辻は笑った。何が面白いんだと思う藤本。

「たまに、学校も休むんだよねぇ。何かあるのかも。」
「そうだったんだ。」

藤本も保田と同じように心配そうな顔をした。

「大丈夫っちゃ。」

いきなり辻が大きな声で二人に言う。

「ちゃって、なんやねん。」
「ヤンキーれいなが亀ちゃんに言ってた。あいぼんみたいに方言なんだよ。」
「あぁ田中、福岡からきたんだ。」

保田の説明に藤本も加護も理解を示した。
561 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:35

*****************************

562 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:36
吉澤はLOSEのカウンターに座ってコーヒーを飲んでいた。
中澤はカウンターの中で忙しそうに働いている。

「手伝いましょうかぁ?」

中澤に声をかける吉澤だが中澤は「大丈夫。」と応える。
吉澤は冷めてしまったコーヒーを一口飲んでタバコに火をつけた。

店が落ち着く時間になると客がいなくなったのを確認して中澤は吉澤の隣に座った。

「あんたいつからタバコ吸い出した?」
「剣道やめてから。」

中澤が咥えたタバコに吉澤が火を灯す。

「バイト休みなのに他に行くところないんか?」

吉澤は苦笑いを返す。
いつもは昼過ぎまで寝ていれば藤本が大学から帰ってきて話をしたり買い物に行ったりするが、こないだから藤本は教育実習が始まり帰りが遅い。

「中澤さんってうちの歳のときって何してました?」
「よっちゃんいくつになったっけ?」
「21歳。」
「21かぁ。」

中澤は煙を吐きながら目を細める。

「店出す金、必死で溜めてたな。」
「この店?」
「そうや、喫茶店やるのがうちの夢やったからな。」
「へぇ。」
「バイト掛け持ちしてた。」
「何のバイト?」
「昼間はガソリンスタンド、夜はキャバクラ。」

中澤のキャバ嬢姿を想像し吉澤は少し笑った。

「24歳で開店や。」
563 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:37
吉澤はこの店が出来たときのことを思い出した。
小学6年生の頃だったはずだ。

「もう、10年になるんだ。ってことは中澤さん34歳だったんだ。見えないね。」
「まだ9年や。33歳で誕生日まだやから32歳や。」

中澤は顔を引き攣らせて言うと吉澤は笑った。

「見えない見えない。若いよ。中澤さん。」
「歳の話はえぇわ。藤本はどうだったって?」
「うん、上手く出来てるみたいだよ。なんか部活に気合入ってるみたい。」
「そっかぁ。よっちゃんはもう剣道しないんか?」
「ん〜。」

吉澤は新しいタバコに火をつける。

「趣味程度にならできるんやろ?」
「まぁ。」
「したくないんか?」

あれほど好きだったのにと中澤は目を寂しそうな目をした。

「したくなくもないけど・・・。」
「なんや?」
「勝てないなら意味ないんだよね、うちは。」
「なんやそれ。意味分からんわ。剣道するだけじゃだめなんか?」

吉澤は向きになる中澤に少しだけ笑ってみせる。

「試合に参加することに意味があるって言う人と試合は勝たなきゃ意味ないって言う人いるでしょ。うちは後者なわけ。」
「なんで意味ないん?」
「竹刀じゃなくてさ、本物の刀だったら負けたら死んじゃうもん。」
「あは、ははははっ。」

真面目な顔して言う吉澤に対し中澤は大笑いをした。

「そんなに笑わなくても・・・。」
「ははっ。あはは。でもなぁ、うちは好きやったでぇ。」
「ん?なにが?」

吉澤はタバコの灰皿に押し付けながら首を傾げる

「よっちゃんと藤本が語り合ってる姿がな、攻めがどうだの駆け引きがどうなの良くはなしてたやろ?」
「あぁ。」

564 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:37
一番奥のテーブル席
いつも藤本と剣道の話をしていた。
藤本の剣道論を聞くのは吉澤の楽しみでもあり勉強にもなった。

「うちは好きやったんやぁ。それ見てるのがな。」

中澤が目を細めて笑う
吉澤は悲しい目で中澤をみた。

「その時って、ごっちんと梨華ちゃんてどうしてた?」

吉澤は藤本と話に夢中になっていたときの2人を思い出すことが出来なかった。

「楽しそうによっちゃんを見てたで。」
「うちだけ?」
「そうやな、藤本やなくてよっちゃんを見てた。」

中澤は吉澤の表情をじっと見ていた。

「なんでそんな顔するんや。」
「どんな顔してます?」

吉澤はテーブルに肘をつき手に頭を乗せて中澤を見上げた。

「どんな顔って・・・寂しそうやで?」
「そうなんだ。」

中澤は眉間に皺を寄せた

「いつも側におってくれる子たちおるのに、なんで寂しいん?」
「なんでだろうね?」

吉澤は残っていたコーヒーを飲み干すと席を立ち料金を置いて店を出て行く。
中澤は吉澤の気持ちが分からずその背中を黙って見送った。
565 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:38

*****************************

566 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:39
藤本は教壇の横で生徒たちの様子を見ていた。
教壇では保田が明日の連絡事項をしている。

ホームルームが終わり帰宅する生徒、部活に向かう生徒がそれぞれ教室を出て行く。

「保田先生?」

教壇に立ったままの保田に不思議そうに声をかける藤本

「先、行っていいわよ。」

保田は田中に視線を向けたまま告げた。
藤本は昼のことを思い出し自分もいても良いのかと考えた。

「藤本先生。行かないんですか?」

声をかけてきた生徒は亀井だった。

「あぁ、うん。行くよ。」

亀井は藤本の視線が田中にあることに気が付き俯いた。

「れいなも剣道部なんですよ。凄い強いんです。」

亀井の隣にきた道重が言う。

「部活こないんだ。」

頷く二人。
藤本は保田を見てから自分はいないほうが良いだろうと判断した

「いこっか。」

亀井と道重に笑顔を向け一緒に教室を出た。

567 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:39
「田中さんと幼馴染だってね。」

廊下を歩きながら藤本が尋ねると亀井も道重も作った笑顔で頷く。

「二人も福岡にいたの?」

亀井が首を横に振って口を開いた。

「れいなもこっちに居たんだけど小学4年生のときに転校しってたの。」
「あぁなるほどね。」
「れいな幼稚園のころから剣道やってて強いんですよ。」

道重が自分のことのように自慢気にいう。
そんな道重の姿が石川の吉澤を語るときの姿にかぶり藤本は笑みを零した。

「で?二人は一緒には剣道やらなかったんだ。」
「だって、痛そうなんだもん。」

亀井が藤本の腕に出来た痣を指差し言った。

「まぁ、外されたら痛いね。確かに。」

藤本はどのスポーツも同じだろうと思いながら腕をさすった。

「でも一緒にやりたいからさゆみたちはマネージャーになったんですよぉ。」
「そう、戻ってくるって聞いて、剣道部に入って待ってたんだけどねぇ。」

二人は残念そうに言った。

「剣道部なんでしょ?田中さんも。」
「でも来ないんだもん。」

道重がそう言って頷くと亀井も頷く。

「誘わないの?一緒に行こうって。」
「誘ったけど、ほっといてって怒るから。」

亀井が悲しそうに呟いた。

「そっかぁ。」

階段を降り終えたところで藤本は職員室に寄ってから行くと二人と別れた。
568 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:40
職員室のデスクに戻り藤本は資料を整理して保田が来るのを待った。
だが、20分しても戻ってこない保田。
部活がそろそろ始まると藤本は職員室をでて武道場に向かった。

そのころ保田は田中を連れて化学準備室に居た。
椅子に座って空を見ている田中の様子を見ながら保田はお茶を入れた。

「どうぞぉ。」
「どうも。」

頭を下げる田中の前に保田は腰を下ろしお茶を啜った。

「こっちの学校なれた?」
「まぁ。」
「そう。部活は?」
「行ってないです。」
「あら、亀井と道重が田中が剣道部入るからってマネージャーになったのに。」

田中は苦笑してお茶を啜った。
保田は田中が部活に出ていないことは亀井たちから聞いて知っていた。
喧嘩をした覚えはないと二人は話していたから田中になにか問題があるのだろう
だがこちらから話をさせるより田中から相談してくるまでは口を出さずにいようと
保田は思っていた。
こうして、相談があるといってきた田中に保田は嬉しく思う。

「保田先生って。」
「ん?」
「れなが遅刻しても怒らないんですね。」
「怒って欲しいの?」

田中はくすっと笑いながら首を横に振った。

「田中、笑うと可愛いじゃない。」
「えっ?」
「いつも、つまらなそうに外見てるからさ。笑えば可愛いのに。勿体無い。」
「面白くないのに笑えんとぉ。」
「あんたね、私なんか笑うと怖いとかキモイとか言われるんだからね。」

田中は声を出して笑った。
普段、方言を隠す田中だったが方言で笑うその様子を保田は目を細めて見守っていた。

「で?話ってなに?」
「あぁ、れな高校辞めようと思うんですよ。」

簡単に言う田中に保田は苦笑いした。

「ご両親は?」
「言ってないです。」

保田は大げさにため息をついて笑った。
569 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:40
「あのねぇ。ご両親福岡でしょ?」
「はい。」
「娘は転校して一人で頑張ってるって思いながら入学金と学費払ってるんだから。」
「だから?」
「だから、田中の気分で簡単に決めることじゃないと私は思うは。」
「まだ、決めたわけじゃないですよ。」

田中はずっと無表情だった。

「そうね、思ってるだけだったわね。」
「はい。」
「そう思う理由をまず聞こうかな。」
「ここに居てもれなのしたいことはないです。」
「したいことって何?」
「まだ、分からないですけど。」
「じゃぁここに居てもいいじゃない。」
「でも、ダメなんです。」
「どうして?」
「ダメだからダメなんです。」

無表情にダメだとしか言わない田中を保田は子供らしい反応だと心の中で笑った。

「よし、分かった。辞めたいと思っている田中に私の意見を言うわ。」
「意見・・・。」
「そう、辞めちゃダメだとは言わないけど考える材料を提供するね。」
「はぁ。」
「16歳の子供がねやりたいことを見つけてそれをやるために学校を辞めるのもありだと私は思う。でもやりたいことが見つかってないなら高校生活を続けるべきだと思う。辞めてもきっとすることないだろうし、だらだらするなら学校に来たほうがいいでしょ。」
「ここに3年間いてやりたいこと見つからなかったら?だったら色んなもの見たほうがいいと思う。」

保田は笑みを浮かべた。

「だから、今のは私の意見。田中が辞めるか辞めないか決断する材料にしてよ。よく考えなさい。私は暇だからいつだって話を聞くわよ。寂しいことにデートに誘ってくれる人もいないからね。」

田中はクシャっと鼻に皺を寄せて笑った。
570 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:41

*****************************


571 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:42
藤本は道着に着替え剣道場に入ると部員たちは既に面をつけて基本練習をしていた。

「あの、練習試合させてもいいですか?」

藤本は椅子に座って練習を見ている顧問に尋ねた。

「まだ、試合近くないけどなんで?」
「辻さんがどうして試合に出れないのか知りたくて。」

藤本の言葉に顧問は顔を引き攣らせた。

「辻さんは明らかに他の子より強いですから。」

藤本がそういうと顧問は立ち上がり部長を呼んだ。
試合をすると告げる顧問の様子に藤本は満足気に笑みを浮かべた。

「辻。」

藤本が呼ぶと素早く駆け寄ってくる辻。

「なに?美貴ちゃん。」

藤本は美貴ちゃんと呼ぶのは辞めてくれという表情で辻の面を軽く叩いた。

「これから試合やるよ。辻が元に立ってやる形式ね。」

辻は頷くと試合の準備をする部員の中に入っていった。

「美貴が仕切っていいですか?」

既に辻に指示を出した後に顧問に言う藤本を顧問は顔を引き攣らせて頷いた。

「どうも。」

頭を下げて藤本は部員の中に入っていった。

「辻に対して皆が試合して。まずは2年から順に。他の子は面取っていいよ。」

返事をして散らばる部員。
3年の生徒3人が審判旗を持ってコートに立つと藤本は主審の位置に着いた生徒から旗を取った。

「私、一人がやるから良い。」

頭を下げて去ったキャプテンは他の部員にも下がるように指示した。

「亀井は時間計って。3分でいいや。道重はビデオね。」

笑顔で返事をする二人に藤本も笑顔を返す。

572 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:43
「始めるよ。」

藤本の言葉に辻と最初の相手、山本がコートに一歩入ると頭を下げ蹲踞をする。

「ハジメっ。」

藤本の合図に二人は立ち上がり気合を出した。

攻めているのは辻だ。
中心を取りながら間合いを詰める辻。
詰められると後に下がり間合いを取る山本。
何度か同じことを繰り返すと辻が山本の竹刀を払い素早く間合いを詰めた。
それでも山本はコートを回転するように動き間合いを開く。

「何やってんだよ。」

藤本は呟いた。
山本は打つ気が全くないのだ。
間合いを取って打たれない位置に逃げる。
藤本は顧問をチラッと見た。
引き分けをさせたいときによく生徒にやらしてた手だ。

「時間です。」

亀井の声が聞こえる。

「やめっ。」

藤本の声に辻と山本は開始線に戻る。

「引き分け。」

二人は蹲踞すると後に下がり一礼した。

結局、辻が攻めて間合いを取るだけで打つまで行かず終わってしまった。

「亀井ちょっと来て。」

藤本は手招きをした。
亀井は慌てて立ち上がりやってくる。

「辻の試合っていつもこうなの?」
「はい。」

笑顔で返す亀井に藤本はため息をついた。
今の試合の意味が分からないのだろう。
野球ならば敬遠されたのと同じようなものだ。

「ありがと、下がって良いよ。」

亀井は「はい。」と笑顔で返事し戻っていった。

藤本は次に試合をする生徒の前に立った。
生徒の垂を見て名前を確認する。

「鈴木も山本と同じような試合をするの?」

藤本の質問に鈴木という生徒は戸惑いながら頷く。

「じゃぁやんなくて良い。意味無いから。」

藤本は無表情のそう言うと辻の方へ歩き出した。
鈴木という生徒は怒られたと思ったのか「申し訳ありません。」と頭を下げていた。

「辻、試合しなくて良いよ。この子達とやっても無駄だから。」

辻は意味が分からずに藤本をただ見ていた。
573 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:44
「あのね、あの子たち皆ね、辻と試合やるつもり無いの。勝負する気ないの。だから間合い取らないの。分かる?」
「なんでのんと試合してくれないの?」

藤本は涙を浮かべる辻を見て心を痛め保田の言葉を思い出した。
子供らしい子供だと藤本はそう思った。
試合に勝つために卑怯な手を使い勝負をしない子に比べ辻は素直で良い子だ。

「皆ね、辻より弱いって認めてるの。勝てないから試合しないんだよ。」

藤本は他の部員に視線を向けた。

「そうでしょ?」

藤本の問いに黙り込む部員たち。

「あんたたちさぁ。剣道やる意味がないっていうか資格もないよ。」

藤本は腕を組み部員たちの前に立った。

「山本に質問。」

山本は返事をし姿勢を立たす。

「今の辻との立会いをどう思う?」

山本は俯きながら応えた。

「間合いが取れず・・・。」
「取れず?」

言葉に詰まる山本を藤本が煽る

「攻めることが出来ませんでした。」
「終わり?」
「はい。」

藤本はため息をついて顧問に視線を向けた。
574 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:44
「嘘つくのはどうかと思うな。攻めなんかするつもり無かったんでしょ?」

部員たちは山本に向けられた言葉を自分たちにも向けられていると捕らえ俯いた。

「剣道やって試合に勝つだけ?精神も鍛えるのが剣道の基本だと思うけど。」

藤本は怒っていた表情を和らげた。

「打たれて負けて、そこから学ぶことって沢山ある。気持ちで負けたらその試合に勝つことはない。打たれて感謝することもあるよ。自分の隙を教えてくれてありがとうって。私はそう思う。参考にして。」

返事をする部員に笑みを向ける藤本。
その様子を保田が入口から優しい眼差しで見守っていた。

「さて、それをふまえて辻と試合してくれる人いるかな?」

一斉に手を上げる部員。
藤本は先ほど尋ねた鈴木に辻の相手をさせた。

先ほどの試合内容とは全く違った。
打ってくる鈴木の竹刀を交わし技を仕掛けようとする辻。
連続技を出す鈴木は全く辻の動きを見ずに自分勝手に打っていく。

「コテッ。」

辻の竹刀の打突部がパシッといい音を響かせ鈴木の小手を打った。

「小手あり。」

辻は息を整えながら開始位置に戻る。

「二本目。」

先に動いたのは辻だった。
鈴木の竹刀を裏から払い鈴木は小手を避けようとしたところ
辻は既に面を打っていた。

「面あり。勝負あり。」

拍手をする部員たち。
藤本はその様子を見て、これからは辻とちゃんと向き合って勝負をするだろうと
笑みを浮かべた。

575 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:45

*****************************

576 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:45
吉澤は幼い頃に通った道場を窓ガラス越しに覗いていた。

がんばれ。

吉澤は先生に倒された子供を見ながら心の中で囁いた。
小さな体に重い防具をつけると動くだけでも大変だ。
それに加え竹刀を振り左足を右足より前に出さないようにすり足をしなければならない。
先生の竹刀に推されれば直ぐに倒れてしまう。
小さい頃から体が大きかった吉澤はそうではなかったが藤本はよく倒されていた。
それでも、必死に立ち上がり気合を出して向かっていく藤本。
藤本がいたから吉澤は頑張れた。一人で始めていたらきっと途中で挫折していただろう。

吉澤はいつの間にか笑顔で子供立ちを見ていた。

「何、笑ってるんですか。」

隣から聞こえてくる声に吉澤は笑みを消し隣を見た。
そこにいたのは先日、バイトのことを聞いてきた高校生。

「あれ、どうしたの?」
「昔、通ってたから懐かしくて。」

窓越しに道場の中の様子を見る高校生を見て吉澤も再び視線を戻した。

「うちもここで習ったんだ。」
「れなは途中で引っ越しちゃったからな。」
「れなって言うんだ名前、うち吉澤。」
「吉澤?」

高校生が驚いて吉澤を見上げた吉澤は不思議そうな顔を見せる。

「吉澤・・・だけど?」
「うちの卒業生の吉澤さん?」
「そうだけどなに?」
「あ・・・田中れいなです。」

田中は姿勢を正し頭を下げた。
吉澤は話がとぶなと苦笑した。

「れいなちゃん、ね。」
「はい。すみません、吉澤さんだって気が付かなくて。」

再び頭を下げる田中。
吉澤は慌てて頭を上げさせた。
577 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:46
「ちょっなに?意味分からないんだけど。」
「面をつけてるところしか知らないから、顔わからなくて。すみません。」
「やっ、ちょっと、頭上げてよ。」
「お会いできて嬉しいです。」
「はぁ・・・どうも。」

吉澤は田中に手を握られ困惑する。
田中は嬉しそうに吉澤を見ていた。

「ねぇれいなちゃん部活は?剣道部なんでしょ?」
「あぁ・・・。」
「藤本って先生行ってるでしょ?」

手を放し頷く田中。

「サボると怒られるよ藤本先生怖いから。」
「れな、一回しか部活行ってないから・・・。部員だって知らないと思います。」

田中は不貞腐れた言い方をする。

「剣道やめるの?怪我とかしたの?」

心配そうに聞く吉澤に田中は首を振った。

「まぁ、嫌になる時もあるよね。」

吉澤は勝てなくなったとき、剣道をやめようかと思った時のことを思い出した。
そのときは藤本に叱られ続けたのだ。

「吉澤さんなんであそこでバイトなんかしてるんですか?」
「えっ?」
「だって、学生剣道大会出てましたよね?」
「あぁ一昨年でしょ。うん。出た。負けたけどねぇ。」
「でも、1年で準々決勝まで行ってたじゃないですか凄いですよ。」

褒める田中に吉澤は苦笑いした。

「腰、やっちゃってさ。もう長い時間練習できないから。大学辞めたの。」
「そうだったんですか、知らなくてすみません。」

申し訳なさそうに頭を下げる田中。

「よくある話だから別に・・・。」

吉澤はそう言って道場の中を見た。


578 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:46
「れなもバイトできないですかね?」

田中も道場の中を見ながらそう言う。

「こないだも言ってたね、高校生不可だよ。」
「退学してきたら出来ますよね。」
「ん〜。でも別に辞めるまでしなくても他にもバイト先あるじゃん。」
「高校つまらないから。行ってても意味無いんですよ。」
「部活は?」
「あそこでは剣道やりたくないんで。」
「顧問と合わない?あいつ強制するからなぁ。」
「まぁ・・・。それもありますね。」
「でも今、美貴・・・あぁ藤本先生いるからきっと大丈夫だよ。」
「それだけじゃないですから。」
「そっか。」
「はい。」

二人の言葉はそこで終わり練習が終わるまで子供たちの練習を見ていた。
579 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:46

*****************************

580 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:47
後藤は事務所の一室で事務所のスタッフ2人と話をしていた。

「前は出さないんだぞ?」

一人がそう言うと後藤は睨み付けた。

「それでも嫌。」
「うちの企画映画なのに事務所の顔のお前が出ないのは無理だろう。」

製作を後藤の事務所が行うらしいその映画。

「これって後藤が脱ぐ必要ないじゃん。」

映画の内容は誘拐された監禁され強姦を受けた少女がたくましく生きていく内容。
本を読む限り自分が脱ぐ必要はないと後藤は思った。
他のスタッフもそう思っているのだろう何も言わない。

後藤が脱ぐ。それを話題にしたいだけなのだ。

「後藤は見世物じゃない。絶対に出ないから。」

立ち上がり部屋を出ようとする後藤をマネージャーが止める。

「上にはそれじゃ通用しないんだよ。いいじゃんかちょっと背中とお尻だけだし。」

後藤はマネージャーの頬を叩いた。

「見世物じゃないって言ってるでしょ・・・。」

後藤はそう言うと左手でお腹を押さえ右手で口を押さえ俯いた。

ゴホッと咽る後藤。右手の指の間から赤い液体がポタポタ垂れた。

「おいっ。大丈夫か?」

マネージャーの声に反応することも出来ず後藤は崩れ意識をなくした。

「おいっ、救急車。」
581 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:47

*****************************

582 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:48
石川は病室を回り終え新垣の病室に顔を出した。

「散歩行く?」

石川の声に頷く新垣。
石川は新垣を車椅子に乗せ病室を出た。

「散歩行ってきます。」
ナースステーションの前で石川は声をかけてからエレベータに乗る。

「忙しいのにいいんですか?」

エレベータの中で石川の仕事を気にしながら言う新垣。

「大丈夫だよ。それに、私も休憩できていいの。」

石川は新垣の耳元で小声で言って笑みを見せる。
その笑みが新垣の笑顔も引き出した。

1階ロビーに着くと病院の裏側の扉から外に出る。
喫煙所を通り抜けて庭に出た。

「ここでいい?」
「はい。」

車椅子を日陰になっているベンチの横に止め石川はベンチに座った。

「この時間でも暖かいね。」
「もう7月になりますからね。」
「そうだねぇ。もっと暑くなるんだよぉ。日焼けしちゃうなぁ。」
「夏休みまでには退院できますかね?」

石川は笑顔を見せて頷いた。

「出来ると思うよ。落ち着いてるし。」
「良かった。友達の発表会があるから。」
「へぇ。昼間来ている子たち?」

新垣は嬉しそうに頷いた。

「皆、ダンスやってるんです。カッコいいんですよ。」
「凄いねぇ。」
「まこっちゃんがリーダで振りとかつけてて。」
「小川さんだっけ。」

新垣は嬉しそうに笑った。
しばらく、小川のダンスの話をしてから病棟に戻るとナースステーションの前で看護士長に石川が呼び止められた。
583 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:49
「変わるね。」

別の看護士が石川の手から車椅子を取り新垣を病室に連れて行く。

「救急で来た患者さんが入院になったから、迎えに行って。」
「あ、はい。」
「石川さんが担当の患者さんになるから。」
「はい。」

初めて最初から任される患者が初めてだった石川は少し緊張を顔に出した。

「大丈夫よ。軽度の胃潰瘍で投薬と内服薬で様子みる患者さんだから。」
「はい。」
「外来内科の処置室にいるから。患者さんへの説明とご家族のケアも一人でやってみて。」
「はい。」
「これ、患者さんのデータ。カルテは外来にあるから。」

石川はファイルを開き患者のデータに目を通し、表情を硬くした。
「後藤真希さん21歳。」
「はい・・・。」
「有名人みたい、私は疎いから分からないんだけど603の個室用意したから。」
「行ってきます。」
584 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:49
石川はエレベータに向かったがなかなか上がってくる気配が無く階段を駆け下りた。

「全く、なにやってるのよ。」

石川は駆け下りながら呟いた。
外来の診察が終わり人がいない院内
石川は小走りに内科の処置室に向かった。

「失礼します。内科病棟の石川です。」

声をかけながらカーテンを開ける石川。

処置室のベッドには横たわって眠っている後藤の姿があった。
石川は事務所の人間と何度か会ったことのあるマネージャーに頭を下げ外来の看護士に歩み寄った。

「迎えに来ました。」
「お疲れ様。これ、カルテね。」
「はい。」
「あと、病室に名前掲示はなしで。」
「はい。」

石川はカルテを受け取り眠る後藤の姿に目を向ける。

「吐血したんですか?」

後藤の服に付いている血痕を見て石川が尋ねる。

「うん。そのまま意識なくしたみたい。今はぁ・・・。」

外来の看護士は後藤の顔を覗き確認した。

「寝てるね。さっきまで起きてたんだけど。」
「良かった、意識戻ってて。」

石川は安堵のため息をつき後藤の横に立った。

585 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:51
「後藤さん。起きれますか?」

後藤の肩を叩きながら呼びかける石川。
うっすらと目を開けて頷く後藤に石川は車椅子を用意する。

「後藤さん車椅子乗れますか?」

痛み止めのせいかボーっとしている後藤を支えながら車椅子に乗せる。

「後藤さん入院ですから、病棟に行きますね。」

石川の声に後藤は顔を上げ石川を見上げた。

「あれ、梨華ちゃんだ。」

石川は呆れながら笑顔を向けた。

「関係者の方も手続きと担当医からの説明がありますのでこちらへ。」

石川は車椅子を押して病棟に向かった。

「梨華ちゃんが後藤の担当?」
「そう、初めて最初から任されたのがごっちんだよ。」
「こわぁ。大丈夫なの?」
「大丈夫に決まってるじゃない。もぉごっちんの方が大丈夫なのだよまったく。」
「あはは。面目無い。」

エレベータに乗り目的の階に付く。

「ごっちん、ちょっと下向いてて。」

石川は下を向かせ肩にかかっていた髪を前に下ろすと顔を見えないようにした。
足早に病室に後藤を入れる。

「はい。いいよ。ベッドに移って。」

後藤を支えながらベッドに移すと石川はマネージャーを病室に入れた。

586 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:52
「えっと、まず入院の手続きですが、こちらに記入してください。それと保証人2名の署名と捺印が必要になりますので、それと一緒に下の会計に提出していただくんですが・・・後藤さんのご家族に渡しますね。」

頷くマネージャー。

「じゃぁ手続きなどは後でご家族に説明しますから。」
「あの、どのくらい入院になりますか?」
「手術はしないと聞いてますが、あとで担当医が来ますのでそのときに確認しましょ。」

石川は後藤を見る。

「お母さんに連絡した?」
「まだ・・・だと思う。」

後藤はマネージャーに視線を向ける。

「まだしてない。」

マネージャーが応えると石川はため息をついた。
一人娘が胃潰瘍で吐血して倒れたんだから直ぐに連絡してあげて欲しいと石川は思った。

「私がします。」

石川は少し起こりながら言った。
そんな石川を後藤は苦笑いしながら見ていた。
587 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:53
「じゃぁまずこれを腕に付けさしてください。」

石川は後藤の氏名、生年月日、性別、血液型が書かれたビニールを後藤の左手首に止めた。

「体温も測ってください。それと血圧、測りますね。」

体温計を脇に挟んだ後藤の逆の手に測定器をつけ石川は血圧を測る。

「ちょっと高いね。」

石川はそういいながら用紙にデータを記入した。

「熱はないと。」
「梨華ちゃんナースっぽい。」

笑う後藤。

「ぽい。じゃなくて正真正銘ナースです。」
「あはは。」
「じゃぁまた来ますね。」

石川は車椅子を片して病室を出た。
ナースステーションに戻ると直ぐに後藤の自宅に電話する。

後藤が職場で倒れて搬送されてきたことを伝えると
電話の向こうで慌ててる様子が分かった。

「手術とかじゃないですから、落ち着いてください。」

石川は安心させるように言い。
着替えと身の回りの必要なものを持ってくるように告げた。
588 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:54
「石川さんの知り合いなの?後藤真希って。」

先輩看護士が興味を示して聞いてくる。

「幼馴染なんで。」

ぎこちない笑みを返し石川は担当医の元へ行き、指示を仰ぐ。
家族が来たらまた呼びにくると伝え。
指示通りの薬を確認し手に取ると後藤の病室に向かう。

「失礼します。」

マネージャーと話をしてる後藤。石川が入るとマネージャーが後ろに下がる。
石川は頭を下げてベッドの隣に行くとテーブルに持ってきた薬と機材を置いた。

「点滴しますね。左腕がいいかな。」
「それするの?」

テーブルの上に置かれた大きい点滴薬。

「そっ、入院中ずっとだね。」

石川は後藤の腕を出し血管を捜した。
腕にゴムのチューブを巻きつけて腕を指でなぞる石川。

「ちょっと手を握ってもらえますか。」

後藤はぎゅっと手を握った。

「んー。ここが良いかな。」

石川は打つ場所を決めて太めの針を手に取った。
589 名前:P&Q 投稿日:2006/05/15(月) 23:54
「太くない?」
「ずっとするからこれ、ここに刺しっぱなしにするの。何回も針さすと痕のこるから。」

石川は後藤の腕を良く見ながら説明した。

「はい。じゃぁ、刺しますね。」

後藤は目をつぶり襲ってくる痛みに心の準備をした。
針はすっと後藤の腕に刺さり赤い血が逆流してくる。
石川は手際よくチューブとつなぎラインを確保した。

「はい。楽にしてください。」

石川は腕のチューブを外すと点滴を吊り下げ確保したラインに繋げる。
後藤の手首に触れながら滴下速度を調節する。

「よし。おしまい。また後でもう一つ点滴始めるから。」
「えぇ。」
「えぇじゃないよ。食べれないから栄養剤もやるの。」
「はい。」
「おばさんに電話しておいたから来たら医師呼ぶね。」
「うん。」
「よっちゃんたちにも連絡しておくからね。」
「はい。」
「じゃぁ、私いくね。」

石川は腕時計に目をやり慌てて病室を出た。
他の患者は夕食の時間だ。
石川はナースステーションに戻ると「ちょっとすみません。」と声をかけ
控え室に駆け込んだ。
ロッカーから携帯を取り出し吉澤に電話をかける。

「早く出てよ。」

何度目かのコールでやっと吉澤の声が聞こえた。

「もしもし、よっちゃん?」
『どした?』
「ごっちんが倒れて運ばれたの。入院するから来て。」
『えっ?大丈夫なの?』
「うん、大丈夫だよ。重症ではないと思う。」
『美貴には?』
「お願い。」
『分かった。直ぐ行くね。』

電話を切ると石川は直ぐに自分の仕事に戻った。

590 名前:clover 投稿日:2006/05/16(火) 00:00
本日2度目の更新以上です。

>>559-589 A PENTAGON and A QUADRANGLE

>>557 ももんが 様
レスありがとうございます。

>剣道のシーンが出てくる話って珍しいですね。

自分がやってたスポーツのが書きやすくて(^。^ゞ
剣道にしちゃいました・・・

>ガキさんとかいろんな人が出てきて読んでて面白いです♪

ありがとうございます。


>>558 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>映画、どんな内容なんでしょーか。
>気になります

あぁ、ごめんなさい、そんなに内容とか出てこなくてorz
申し訳ない。ただ、ストレスの溜まる話にしておきたかったので・・・

最後まで宜しくお願いします。
591 名前:ももんが 投稿日:2006/05/16(火) 12:33
6期の3人も結構出てきはじめましたね。
cloverさんの書くお話は何回読んでも飽きません♪
592 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 21:57
「ごめん、急用できたから行くね。」

吉澤は携帯を操作しながら田中にそういうと走り出した。
道に止めておいたバイクのゴリラに跨ると携帯を耳に当てる。

「まだ、部活かな。」

吉澤は腕時計に目をやると携帯をGパンのポケットにしまいエンジンをかけると走りだした。

スピード違反だろう。バイクのゴリラ、最大のスピードで住宅地を走りぬけた。
母校の中もバイクのゴリラで入り体育館の裏にある道場の前につける。

「吉澤?ちょっと。」

道場の入口にいた保田が吉澤を呼び止めるが吉澤は気にせず足を進める。
道場の扉を全て開き神棚に一礼して中に入った。

「よっちゃん?」

試合でもしていたのだろう吉澤は生徒たちの様子を見ながらそう感じた。
生徒たちが自分の名前を呼びながら頭を下げる姿を横目に吉澤は藤本の腕を掴んで入口に連れてく。

「なに?どうしたの?」

吉澤の慌てた様子に藤本も何か急用だろうと思う。

「ごっちん倒れたって。梨華ちゃんのとこに入院するって。」
「まじ?」

吉澤が頷くと藤本は顧問のところに走った。
593 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 21:57
「ちょっと吉澤どうしたのよ。慌てて。」

道場から出てきた吉澤に保田が再び声をかける。

「あ、圭ちゃん。」
「どうかしたの?」
「ごっちん倒れた。」
「様態は?」
「梨華ちゃんは大丈夫だって。」

保田は強張らした表情を和らげた。

「看護士が大丈夫って言ってるんだから、慌てないで行きなさい。」
「うん。」
「行くまでに吉澤と藤本が事故起こしたら大変だからね。」
「そうだね。」

少し落ち着きを取り戻した吉澤のもとに藤本がスーツに着替えやってくる。

「圭ちゃん、美貴、行くね。」

頷く保田に藤本は頭を下げた。

「出して良いよ。」

バイクに跨って待っていた吉澤に藤本が声をかけると吉澤はグリップを握りエンジンをかけ勢い欲走り出した。

「風紀的には良くないけど、カッコいいよなあの子達がやると。」

保田が遠ざかるバイクを眺めながら後藤の様子は明日、藤本に聞こうと思った。
594 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 21:57

*****************************

595 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 21:59
病院の救急入口から入った吉澤と藤本はヘルメットを外すと中に駆け込んでいく。

「どっち?どこ?」

慌ててキョロキョロする吉澤とは反対に案内板から内科が何階かを調べる藤本。

「よっちゃんこっち。」

エレベータに乗ると藤本が6階を押す。

「6階なんだ。」

吉澤が通過される階を見ながら呟く。
6階に着くと飛び出してナースステーションにかけていく吉澤のあとを藤本も追う。

「あの、あれ、えっと、ごっちん・・・。」

慌てて中にいる看護士にそう呼びかける吉澤の手を藤本は引っ張る。

「すみません。石川さん呼んでいただけますか。」

「お待ちください。」と返す看護士に笑顔を向ける藤本。

「慌てるなよ。多分、ごっちんがいるって伏せてるでしょうが。」
「そっか。」

医師と言葉を交わしながらナースステーションに戻って来た石川は二人に気が付くと
手を上げて医師との話を続ける。

「じゃぁ、採血して回しておきますね。」

石川は医師に頭を下げると採血の器具を手に取り二人のもとへやってきた。

「ごめん、こっち。」

廊下を曲がると直ぐにある個室の扉をノックする石川。
596 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 21:59
「失礼します。」

石川に続いて吉澤と藤本も中に入る。

「あ、よっちゃん。ミキティ。」

後藤が嬉しそうに笑顔を向けると吉澤はその場に座り込み藤本が支えた。

「もぉ、よっちゃん大丈夫?」

石川は苦笑しながら後藤の右腕を取る。

「ごっちん、ちょっと採血させて。」
「うん。」

吉澤を立たせ、藤本は後藤の母親に頭を下げた。

「よっちゃん慌てまくって大変だったんだから。」

採血している後藤に藤本が言葉を投げかける。
吉澤は仕事をしている石川の姿を感心してみていた。

「はい。楽にして。ここしっかり抑えてね。」

藤本も初めて見る石川の仕事をする姿に感心した。

「梨華ちゃんってホントに看護士だね。」

藤本が石川の背中に向かって言うと石川は器具を片付けながら
苦笑いをして藤本をみた。

「それ、さっきごっちんにも言われたんだけど。」
「あはは、後藤も言った。」

ベッドの上で後藤が笑う。

「もぉ・・・私、まだ仕事あるから行くね。」

石川はそう言って部屋を出て行った。

「真希ちゃん、お母さん飲み物買ってくるね。」

母親の言葉に後藤は笑顔で頷く。
母親が出て行くと藤本はベッドサイドにあるパイプ椅子に腰を降ろした。
吉澤も藤本の横に移動すると後藤の腕につながれた管を目で追う。

「なんか病人ですって感じだね。」

藤本が点滴を見ながら言った。
597 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 22:00
「これ、寝るときもだって。」
「そりゃ寝相の悪いごっちんにはキツイね。」

吉澤が苦笑しながら言った。

「入院はどのくらいになるの?」
「ん〜2週間ってさっき先生が来て言ってた。」
「仕事は?」

藤本の質問に後藤は顔を引き攣らせて笑う。

「今、マネージャーが関係者と話ししてると思うけど・・・。」
「けど?」

藤本は腕を組むと鋭い目つきで後藤を見た。
以前も仕事があるからと入院を拒否した前例がある。
2週間も休めなければ無理にでも退院するだろうと藤本は思った。

「まぁ後藤の計算だと休めるのは精々3日が限度なんだよね。」

苦笑する後藤に藤本はため息をついた。
吉澤は何も言わずただ、心配そうに二人の会話を聞いていた。

「3日ってさぁ。治らないじゃんか。どうするのよ。」
「休めなかったら降板だろうねぇ。代役が後藤より良かったら評判落ちるなぁ。」

後藤は困ったという顔をする。

「評判とかより体のが大事でしょうが。」
「まぁ健康であるのが一番だけどね。」
「だけどねじゃなくて。」

後藤は鋭い目を藤本に向けた。
一瞬、息を呑む藤本と吉澤。
後藤がこんな目を向けるのは初めてだった。
598 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 22:01
「仕事だから。体調悪いからって無責任なことは出来ない。大勢に迷惑かけるし。」
「でも、から・・・。」

藤本が言い換えそうとすると吉澤が腕を掴みとめた。

「よっちゃん?」

藤本が何?という顔で吉澤を見る。

私たちだって体調悪くたって患者さんには笑顔を見せる
社会にでるとはそういうこと

吉澤は石川の言葉を思い出していた。
自分も藤本もまだ社会に出てるわけではないある意味、自分たちは世間知らずのお子様だ。

吉澤はやはり困った顔を見せているだけだった。

ノックの音がすると後藤の母親が入ってきた。

「これ、飲んで。」

渡されたペットボトルを受け取り頭を下げる吉澤と藤本。

「真希ちゃんはお母さんがいるより二人がいたほうがいいでしょ。」

母親は後藤の手が届く位置に買ってきたペットボトルを2本置いた。

「そうでもないけどそうかな。」

笑ってみせる後藤の額をペシと叩いて母親は笑った。

「じゃぁお母さんまた明日来るね。」

後藤は手を振って病室を出る母親を見送った。
藤本は頭を下げた。
母親の表情からは心労が見て取れる藤本は後藤を見るとやはり言わずにはいられなかった。
599 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 22:01
「ごっちん。仕事だけ迷惑かけなければいいの?」
「だって、後藤の代わりはいないんだよ。」

後藤は少し声を大きめに言った。

「お母さんにとっても娘はごっちんだけだよ。」

後藤は辛そうに顔を背けた。

「美貴。やめっなよ。」

吉澤が口を挟むと藤本もつらそうに俯いた。

「ごっちんだって分かってるよね。」

黙って頷く後藤。

「あとは事務所の人とちゃんと話さないとね。それにお医者さんの言うことも聞かないとダメだよ。」

再び頷く後藤。
藤本は自分が言うより吉澤が言ったほうが後藤は素直になるんだと改めて思った。
自分が後藤の立場でもそうだろう、吉澤が言えば頷いてしまう。

ドアがノックされ振り返ると石川が入ってきた。

「マネージャーさんが帰えるからって。」
「そう。」

後藤は無表情に答えた。
マネージャーは自分の体のことより仕事の差障りを気にするだろう
きっとこれからドラマプロデューサーと連絡を取り話し合いだ。

「ごっちん。点滴もう一個追加になった。ごめんね。」

石川は点滴を吊るすと後藤の腕から延びる管に繋いだ。

「脈とらして。」

後藤の手首に触れて滴下を調節する石川。

「針は痛くない?」
「うん。大丈夫。」
「気になるけど我慢してね。」
「うん。」
「あとまた、体温測ってもらえるかな。あと血圧ね。」

石川は体温計を後藤に渡すと後藤はパジャマの襟元から脇に挟んだ。

「梨華ちゃん。ごっちんて安静にしてないとダメなんでしょ?」

血圧を測りだした石川に尋ねる藤本。
600 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 22:02
「ん〜。今は痛み止めの薬飲んで点滴もしてるから痛みは大分引いてるけど。」
「引いてるけど?」
「これしてなかったら相当痛いだろうし、悪化するだろうから今度は手術だよ。」
「ってことは安静にしてないと駄目だってことだよね。」

藤本の言葉を背中に受け石川は後藤が仕事に戻るとでも言ったのだろうかと感じた。

「はい、やっぱりちょっと高いね。痛みがあるせいだと思うけど。」

石川はそういいながらデータを書き込む。

「今の状態で退院の許可は出ないだろうね。」

石川が後藤を見て言った。

「でも、仕事がある。」

子供のように不貞腐れたように呟く後藤。

「医師と事務所の人と相談してみないとね。でもさぁごっちん。」

石川は膝を付いて後藤と視線を合わせた。

「先生も言ってたでしょ。これは神経性のものだから、ストレスの原因を取り除かないとまたなるよって。」

後藤は石川から視線をそらした。

「ごっちんの心が助けてって言ってるのに気が付かない振りするから体に痛みを与えて気が付いてもらおうってしてるんだよ。分かるよね。」

後藤は黙って返事もしない。
吉澤と藤本は困った表情で後藤を見ていた。

「みんなちっとも分かってない。」

後藤は涙目になりながら呟いた。

「何が?」

石川が優しい声で尋ねた。

「後藤真希は一人しか居ないの。代わりなんていないんだから。」
「それは分かってるよ。」

藤本が優しい声で呟いた。
601 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 22:03
「分かってない。今、降板したら、そしたら後藤、絶対にあの映画に出ないといけなくなる。それは絶対に嫌だ。」

3人は顔を見合わせた。

「あの映画って?」

石川が尋ねるが後藤は「嫌だ。」しか言わず泣き続ける。

「よっちゃん・・・。」

藤本は吉澤の背中をそっと押して前に出した。
吉澤は藤本の表情を見て頷く。

「ごっちん、あの映画ってなに?」

吉澤は後藤の手を握りながら尋ねた。

「くだらない映画・・・後藤が脱ぐって話題づくり見え見えの最悪なの。」

吉澤は悲しい表情で後藤の涙を指で拭う。
その後ろで藤本が舌打ちをした。
石川もなんともいえない表情で立ち上がった。

「嫌だって言ったの?」

石川が尋ねると後藤は頷く。

「だから、今は休めないよ。」

後藤は自分でもどうして良いのか分からないのだろう。
涙をポロポロと零した。

「とりあえず、明日にでもマネージャーさんとお医者さんと話ししよう。」

吉澤が後藤の頭を撫でながら言う。

「だから今日はもう寝よう。寝たらきっと落ち着くし。ねっ。」

興奮してしまっているのだろう、後藤はヒクッヒクッと呼吸を乱し泣き続ける。

「ちょっと待ってて。」

石川は藤本にそう伝え病室をでた。

「ごっちん。大丈夫だから落ち着いて。」

吉澤が優しく囁きながら後藤の涙を拭い手を握るが後藤は嫌だと呟き呼吸を乱す。

「ちょっと、大丈夫?」

藤本も心配そうに近寄った。
吉澤の手を離しお腹を押さえて苦しみだす後藤の様子を見て藤本はナースコールを押した。
602 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 22:04
「どうしました?」

ナースコールから看護士の声が聞こえる。

「苦しみだして、痛いみたいなんですけど。」

藤本が伝えると「伺います。」と切れるナースコール
直ぐに入ってきたのは石川だった。

「ナースコールした?」

後藤の様子を見て石川が尋ねると藤本が頷く。
続いて入ってきた看護士も後藤の様子を見て直ぐに石川の横に来る。

「先生呼んで。」

看護士に言われ石川が返事をするとナースコールを手に取り医師を呼ぶ。

「血圧下がってる。」

もう一人の看護士が言うと石川は病室を飛び出て言った。

「すみません、外でお待ちください。」

入れ替わりに駆け込んできた医師いいわれ吉澤たちは病室の外に出た。

「梨華ちゃん。」

器具が乗ったカートを押して駆けてきた石川に声をかけるが石川は返事をせずに中に入っていった。

「大丈夫かな。」

吉澤が心配そうに呟く。
藤本もその横で唇を噛んでいた。
603 名前:P&Q 投稿日:2006/05/16(火) 22:04
しばらくして医師が出てくると藤本は頭を下げた。
「どうぞ。」と言い残し去っていく医師。

二人が中に入ると後藤は眠っているようだった。

「胃痙攣起こしたみたい。」

石川はもう一人の看護士に薬を渡しながら言った。

「興奮させちゃダメよ。」

その看護士は言いながら後藤の細い腕に注射器の針を刺した。

「こんなに細くなって、痛くて食べれなかったんだよね。大変よね。芸能人も。」

と続けた。注射が終わると看護士はカートを押して部屋を出て行く。

「食べてないの気が付いてたのに、具合悪そうなのも気が付いてたのに。」

吉澤は呟くように言いながら眠る後藤に近づくと顔を寄せた。

「ごっちん、ごめんね。」

吉澤は後藤の髪を撫でながら謝った。
藤本と石川はなんとも言えずただ、吉澤の姿を見ていた。

604 名前:clover 投稿日:2006/05/16(火) 22:12
本日の更新以上です。
>>592-603 A PENTAGON and A QUADRANGLE

なんか、ハイペースで更新していってるけど、
読んでくれている方にとって読むの大変になってないだろうか?
絡みが出るまでこのまま更新続けようとか思っていたりするのですが(;^。^A



>>591 ももんが 様
毎回、レスありがとうございます。

>6期の3人も結構出てきはじめましたね。

はい、まだ絡みがないので早く絡ませていきたいと思ってます。

>cloverさんの書くお話は何回読んでも飽きません♪

(*^-^*)> ぽりぽり てれます・・
ありがとうございます。
605 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/16(火) 22:26
早い更新大歓迎です!!
毎日更新されるの楽しみに待ってます。
606 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/16(火) 23:01
大変じゃないですよ!すごい楽しいです
607 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/16(火) 23:16
ほんと、全然大変じゃありませんよ
毎日更新楽しみにしてま〜す
608 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/17(水) 01:49
あぅ(泣
ごっちん…
609 名前:ももんが 投稿日:2006/05/17(水) 12:25
毎日の更新かなり楽しみですよ♪
ハイペース更新ありがたいです!
ごっちんが痛々しいです…。
610 名前:clover 投稿日:2006/05/17(水) 18:22
「よっちゃん。朝ごはん食べないの。」

藤本は時間を気にしながら吉澤がいるベッドの横に座っていた。

「美貴、行かないと遅刻するよ。」

吉澤は枕に顔を埋めて呟く。
遅刻は出来ないけど夕べの夕飯も食べようとしなかった吉澤を放って行く事は出来ない。

「ごはん食べてよ。美貴作ったから。」
「んー。でもさ。」

吉澤はモソモソと起き上がるとため息をついた。

「ごっちんのこと気になるのは分かるけどさ。」

藤本は吉澤の隣に座り頷く吉澤の背中をさすった。

「取合えず食べて。ね。それで元気にお見舞いいこっ。」
「うーん。」
「ほぉらっ。」

藤本は立ち上がると吉澤の腕を引っ張って立たせる。
吉澤の背中を押して部屋を出させた。

「はい。ベーコン乗せてね。あとゆで卵もあるからね。」

椅子に座らした吉澤の前に朝食を並べると吉澤の寝癖を直し始めた。

「はい。顔洗ってから行ってね。」
「ありがと。」

朝食にまだ手をつけない吉澤。
藤本は手を洗うと吉澤の隣に座ってゆで卵の殻をむき始める。

「よっちゃんってホント手のかかる子供みたいだよもぉ。」

吉澤は苦笑しながら藤本を見た。

「早く、ごっちんママにも元気になって子育て手伝ってもらわないとねぇ。」

藤本は笑いながら殻の剥いた卵を吉澤の口に入れた。
モゴモゴとさせながら卵を食べる吉澤。
藤本は笑み浮かべ吉澤の頬を撫でた。

吉澤は触れらた頬が熱くなっていくのを感じ慌てて目をそらす。

「あと、ちゃんと食べるから。美貴いきなよ。遅刻するでしょ。」

藤本は時計に目をやると慌てて出かけていった。

611 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:23
「あんなふうに照れられたらこっちも照れるじゃんかよ。」

藤本は呟きながら玄関を出た。

吉澤は藤本に触られた頬を触りながらため息をついた。

藤本が好きだという気持ち
後藤と石川が大切だという気持ち
どれも失わずにいるには幼馴染でいるほか無いのだろうか
吉澤は頬をさすりながら再びため息をついた

「今は、ごっちんに良くなってもらうことが先決だな・・・。」

吉澤はベーコンをパンに乗せると頬張った。

612 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:23

*****************************

613 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:24
「後藤はどうだった?」

朝は忙しく報告できずにいた藤本に保田がそう尋ねてきたのは
辻と加護と一緒の昼食の時間だった。

「神経性の胃潰瘍。」
「そんなにストレス溜まってるのあの子は。」

藤本はモグモグとさせながら頷いた。

「2週間入院って言われてるけどそんなに休めないって言ってるし。」

保田は辻の作ってきたお弁当のおかずを箸で挟むと首を傾げてから口に入れた。

「でもそれはそれで仕方ないわよね。」

藤本はその言葉に疑問の表情を保田に向けた。

「仕方ないって、体調悪いのに無理させるの?」

保田は藤本の反応を意外だと思いながら口を開く。

「だって、仕事だもの。それでお金をもらっているんだから。」
「でも、具合悪いのに出来ないじゃないですか。」
「休みたいと言っても会社が休ませてくれなかったら辞めるしかないよね。」
「辞めるって。」
「契約にもよると思うけど。後藤の場合は普通と違うだろうし。有休とかあるのかな?」
「さぁ。」
「高校生の頃は1ヶ月休みとかあったじゃない。」

藤本は頷いた。
スケジュールが空いたからと後藤は仕事を一ヶ月ほどしない時があった。

「そういうの時々あるならそういう契約なんだろうし。休めないっていうのはそういうことだろうから。仕方ないわよ。」
「でも・・・。」
「教師だってそうよ。藤本が具合悪いからってしょっちゅう休んでたら授業が遅れる。」
「まぁ。」
「生徒と変わりに授業する同僚に迷惑がかかるわ。」
「そうですね。」
「無責任なことは出来ないでしょ。後藤だってそう思ってるんじゃない。」
「でも入院しないとダメなのに。」
「だから、そのときは辞めるほか無いでしょ。」

藤本は黙り込んだ。
そんなに簡単に仕事を休むことは出来ないのかとため息をついた。
そういえば父親が風邪を引いたとき大事な打ち合わせがあるからと無理して家を出たことがあったなと藤本は思い出した。
614 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:24
「まぁね、私らの場合は代わりはいるじゃない。化学の教師は沢山いるから。」
「んー。」
「私が休むから代わりに藤本にお願いすれば済むことだけど後藤は違うもんね。」
「後藤真希は一人しかいない。」
「うん。後藤も責任もって仕事してるってことよ。」

藤本は頷いた。
仕事をしている石川を見て自分が知ってる石川の印象が全くなかった。
自分が授業をしている姿もそう映るのだろうか。

「美貴ちゃん。」
「んー?」

食事を終えた辻が藤本の前にやってきてノートを開いてみせる。

「これ教えて。」

ノートを見ると昨日の辻の試合についてのメモのようだった。

「どれ?」
「出頭が遅れることが多くてね。どうしたら決まる確立あがる?」
「今までどうしてた?」
「今までは少し遅れてものんのが速かったんだよね。」
「うん。そっか。」

高校生になって本格的にトレーニングをするようになった相手に出遅れたらその時点で決まることは無いだろう。

「辻はどういう風に出頭打つの?」
「相手の起こりを見て打つ。」
「うん。それは正解。でもその起こりはどうやって出来る?」
「相手が攻めようとしたとき。」
「うん。それで辻が出頭打つと遅れるよね。」
「そうなの。」
「相手をねコントロールするの。誘うって分かる?」

首を横に振る辻。

「相手に面を打つって決めさせるんじゃなくて辻が決めるんだよ。」
「のんが?」
「そう、わざと面を打たせる機会をあげるの。」
「分かったっ。それしたら面に来るタイミングが分かるんだ。」
「そう。面打ってくださいって打たしておいて自分が出頭を決める。」
「美貴ちゃん頭いいっ。」

辻はノートにメモを取りながら喜んだ。
その様子を藤本と保田と加護が優しく見守った。

615 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:24
「あ、田中さんは?今日も朝いなかったね。」

藤本は昨日のことを思い出し保田に尋ねる。

「あぁ、なんか学校辞めたいって思ってるんだって。」
「どうして?」
「やりたいことが無いって。」
「辞めるとやりたいことが見つかるんですかね。」
「さぁ。でもまぁ別になにかあるんだろうね。それが本当の辞める理由。」
「で?圭ちゃんは何て言ったの?」
「考える材料の提供。」
「圭ちゃんの意見を言ってみたってことかぁ。」

藤本はなるほどと頷いた。

「でも、なんだろう本当の理由って。」

保田は「さぁ。」といってお茶を飲んだ。

616 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:25

*****************************

617 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:25
「また、サボり?」

吉澤は朝から来てカウンターを陣取っている田中に声をかけた。

「はい。オーナー・・・中澤さんでしたっけ。」

吉澤が頷く。

「バイトさせてくれるか聞こうと思って。」
「おぉ。でも中澤さん来るの昼過ぎだよ。」
「待ってます。どうせ暇ですから。」

吉澤は苦笑した。
どうせ暇なら学校でボーっとしてても同じだろう。

「じゃぁこれ、お昼ゴハンにどうぞ。」

吉澤はホットドックを田中の前に置いた。

「サービスだよ。」

吉澤は笑顔を向ける。

「ありがとうございます。」

嬉しそうに頭を下げる田中。

店が混み始めると吉澤が忙しそうにカウンターとテーブル席を行ったり来たりする様子を田中は観察していた。
618 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:25
「おつかれさん。」

片手を挙げながら入ってきた中澤に吉澤が合図を送る。

「なんや?」
「こないだ言ってたバイト希望の子です。」

中澤は田中に視線を向けると田中が頭を下げる。

「よっちゃん、客くるまで休憩はいって。」

吉澤にそう告げて田中に歩み寄る中澤。

「バイト希望やて?」
「はい。田中れいなです。」

立ち上がり頭を下げる田中。
中澤は礼儀はある子だなと思いながら田中の全体を見た。

「よし、奥のテーブルで話きくわ。そっちで待ってて。」

中澤がそういうと田中は返事をして奥のテーブルに向かった。

「可愛い子やないの。」

カウンターでアイスコーヒーを作りながら言う中澤に吉澤は頷いた。

「いい子だよ。剣道やってるんだって。」
「ほぉ。奇遇やな。」

中澤は笑みを浮かべながらグラスを二つ持って田中の待つテーブルへ向かった。

吉澤は体を捩ってその様子を目で追う。
619 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:26
「どうぞ。飲んで。」

田中の前にグラスを置くと中澤も自分のグラスをストローでかき混ぜてから飲んだ。

「ありがとうございます。」

頭を下げてから田中もストローに口をつけた。

「うちの店な高校生不可なの知ってんのやろ?」
「はい。」
「自分、田中さんやったな、高校生やろ。」
「退学してくればバイトさせてもらえますか?」

中澤は笑った。

「辞めてまでココでバイトしたい理由は?」
「やりたい事ないんです。」
「それだけか?」

田中はしばらくじっと中澤を見つめた。

「ホントは高校を辞める理由にしたいからかもしれないです。」

中澤は笑顔を見せた。

「あんた正直やな。」

田中は首を振りながら俯いた。

「高校は出といたほうがええ。」

田中は顔を上げ中澤を見た。

「バイトはダメってことですか?」
「剣道やってるんやって?」
「はい。」
「部活やってたら、バイトする暇はないやん。」
「部活は辞めます。あそこではやりたくないから。」
「丁度、ええタイミングに藤本が実習行ってるやろ。」
「はい。」
「なら、勝ったらバイトさせてやってもええよ。」

田中は首を傾げる。

「藤本と試合して田中が勝ったら、雇ってやる。但し学校帰ってきてからな。」

中澤は藤本に田中は勝てないだろうと思ってそう言った。
田中は嬉しそうに笑顔を見せる。

「勝つ自信あるんか?藤本強いで。」
「勝つ気持ちがない時点で負けですから。」

笑顔で言う田中に中澤は大した者だと笑みを浮かべた。

背中越しにその話を聞いていた吉澤もまた苦笑していた。
高校生相手に藤本が負けることは低い確率だ。
中澤の提案の意図は結局、雇うつもりは無いのだと吉澤は思った。

「それじゃ、今日、放課後、試合してきます。」

田中はそういうと「ご馳走さまでした、失礼します。」と頭を下げて店を駆け出していった。

620 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:26
「よっちゃん。どう思う?」

吉澤の隣に移って笑みを浮かべる中澤。

「中澤さんの作戦勝ちかな。でもぉ。」
「ん?」
「福岡でやってたみたいだからなぁ。」
「福岡ってなんかあるんか?」
「こっちより盛んだし、高校生とかだと九州は強いんだよね。荒い剣道っていうか。」
「ほぉ。よっちゃん、あとで行って見てきてな。」
「あぁ、そのまま帰ってよければ。」
「なんかあるん?」
「ごっちん昨日、入院しちゃって。お見舞い行くから。」
「大丈夫なんか?」

心配そうに尋ねる中澤に吉澤は頷いた。

「良かった。じゃぁそのまま行ってええよ。」
「ありがと。」
621 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:26

*****************************

622 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:27
「梨華ちゃん暇だよぉ。」

病室に体温と血圧を測りに来た石川に後藤は子供のように言った。
石川は笑みを向けながら血圧を測る。

「我慢してくださいね。安静が大事ですから。」

石川は幼馴染としてではなく他の患者と同じ対応をした。

扉がノックされ後藤が返事を返す。
やってきたのはマネージャーだった。

「どうも。」

石川に頭を下げるマネージャー石川も会釈をする。

「あの、1週間にはならないですかね、入院。」

突然、石川に尋ねだすマネージャーに石川は困った表情を向けた。
後藤はじっとマネージャーの様子を見ている。

「さっきまで色々手を尽くしたんですけどね。やっぱり仕事詰まってて。」

額の汗を拭く姿は本当に走りまわってきたのだろうと後藤は思った。

「ドラマ、1週間も遅れて大丈夫なの?」

後藤の質問にマネージャーは笑みを向けた。

「1週は特別番組にして繋ぐって、だから1週間。他の仕事はキャンセルした。」
「そう。じゃぁ良いじゃん。1週間で退院するよ。」

石川は困った顔で後藤を見た。

「医師の指示が出ないと。退院の許可が。」
「ダメって言われても退院する。」

後藤が強い視線で石川を見た。

「医師、呼んできますのでお待ちください。」

石川は呆れたように言って病室を出た。
623 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:28
「ドラマはやるから。映画は出ないよ。」

後藤がそういうとマネージャーは聞こえない振りをして手帳に視線を落とす。

「どうせ出たってまた倒れて今度は降板になる。」

後藤はじっとマネージャーを見ながら続けた。

「それでも出すなら、後藤、事務所辞める。」

マネージャーは顔を上げると後藤を見た。

「強く出るな。まぁアイドル志向のうちの事務所より女優を目指すなら俺も移籍を進めるよ。」

マネージャーは笑みを浮かべた。

「失礼します。」

医師を連れて入ってきた石川。

「1週間ですって?」

医師は後藤を見ながら尋ねる。

「うん。1週間で治して。ダメでも出る。仕事抜けれないの。」

医師は苦笑して椅子に座った。

「外出にしましょうか。仕事終わったらここに来てください。」
「深夜になるけど大丈夫?」
「飲み薬を増やしましょう。あとはここに居られる時間は点滴。」
「うん。」
「もちろん、入院は長引きますよ。」
「仕事しながらでいいならそっちのがいい。」
「じゃぁまずはちゃんと1週間はここで静かにして静養してください。」

医師は笑みを向けて立ち上がると病室を出て行った。

「良かったですね。」

石川が笑みを後藤に向ける。

「梨華ちゃんが後藤につてきて待ち時間とかに点滴してよ。」
「無理です。よっちゃんたち来たら教えてあげなよ。心配してたから。」

後藤は頷いた。

「じゃぁそういうことですので。」

マネージャーに会釈して石川は病室から出た。

「移籍するなら相談くらいしろよな。一応、多少の力にはなるから。」

マネージャーはそういい残して出て行った。

「移籍かぁ。」

確かに後藤の事務所はアイドルばかりで女優という肩書きの人材は数少ない。

「それもアリかな・・・。」

スカウトしてくれた事務所を辞めるのは気が引けると思う後藤。
それでも自分の意思に反した仕事をするならそうすべきだろう。
後藤は考えながらいつの間にか眠りに着いた。
624 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:28

*****************************

625 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:28
ホームルームが終わると田中が教壇にやってきた。

「昨日の続き?」

保田が田中に尋ねると田中は首を振り藤本を見た。

「ん?私?」

ドアの横にいた藤本は保田の隣に歩み寄った。

「れなと試合してください。」
「は?」
「剣道の試合してください。」

教壇の目の前の席にいた亀井と道重は驚いて駆け寄った。

「れいな?」

亀井が田中の肩に手をかけるが田中は真っ直ぐと藤本を見ていた。
藤本は田中を見ながら苦笑する。

「試合する意味は?」
「れなの問題です。付き合ってもらえませんか。お願いします。」

頭を下げる田中を見て藤本は保田に視線を向けた。

「やってあげなさいよ。」

保田が言うと藤本は頷いた。

「いいよ。」

頭を上げて藤本に笑顔を向ける田中。
その笑顔に藤本も笑みを返した。

「でも、理由は教えて。」

田中は少し考えてから口を開いた。

「れなが勝ったられなの望みが叶うんです。」
「そっか。じゃぁ負けたら部活にでるって条件加えて良い。」
「はい。勝ったら部活辞めます。」

勝つ気なのだろう自信のある返事に藤本は苦笑した。

「じゃぁ。私から顧問に言っておくから支度して待ってて。」
「はい。」
「亀井と道重手伝ってね。」

頷く二人に田中も頭を下げる。

「じゃぁ行こうか。」

道重が田中と亀井の手を取り3人で教室を出た。
626 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:29
「なんでいきなり試合なのよ。藤本先生メチャクチャ強いよ。」

亀井が心配そうに言う。

「でも、負けたられいな部活でるんだもんね。」

嬉しそうに道重が田中の腕に腕を絡めた。

「れなは勝つとぉ。負けんとよ。」
「れいな部活辞めたいの?」

亀井が悲しそうに尋ねる。

「あんな顧問に指導されたくないっちゃ。」
「でも藤本先生来たら、雰囲気変わったよ。」

亀井の言葉に道重も頷いた。

「藤本先生のが強いもん。立場上って感じだもんね。」

道重が感心したように言った。

「強いから立場が上とか剣道にはないっちゃ。」

田中は呆れた口ぶりて呟く。
更衣室に入り田中が真っ白な道着に着替えると道重と亀井は笑顔を向ける。

「れいなカッコイイっ。」

抱きつく道重を必死に引き剥がそうとする田中を亀井は笑ってみていた。

「防具つけるけん、さゆ放して。」

やっと道重が離れ息を整える田中。
垂と胴をつけると面を持って道場に出た。

「あっヤンキーれいな。久しぶり。」

田中を見つけた辻が駆け寄ってくる。

「ヤンキーじゃないですって。」

田中は苦笑して辻と肩を並べながら他の部員たちの前を横切った。
他の部員たちと同じように一番端に面をおくと田中はストレッチを始めた。
627 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:29
「ヤンキーれいな何してるの?」

辻が不思議そうにストレッチをする田中を見る。

「だから・・・」

ヤンキーじゃないと言おうとして田中は諦めた。

「これから藤本先生と試合するんです。」
「いいなぁ。めっちゃ強いよ。」
「やったことあるんですか?」
「うん。地稽古してもらった。」
「どんな感じですか?」
「早いし、のんは中心取れなかった。」
「へぇ。」
「ってかヤンキーれいなって強いの?」

辻の素朴の疑問だった。
ここの部員は誰一人、田中の剣道を見たことがない。
田中の道着姿も初めて目にするのだ。

顧問と藤本がやってくると一世に挨拶をし会釈する部員。
顧問が挨拶を返しながら田中の元にやってっくる。

「お前は、いきなり来たら勝手なこと言ってるな。」

田中は「すみません。」と頭を下げた。

「藤本にそっくりだ。ホント。好きにしろ。」

顧問はそういうと去っていく。入れ替わりに苦笑しながら藤本がやってきた。

「練習始める前に田中と藤本が試合するから。」

顧問は部員にそう伝えると椅子に座る。

「ってわけで、直ぐ試合なんだけど。」
「はい。」
「審判どうする?つける?」
「要らないです。」
「そっか。じゃぁ3本勝負で。」
「お願いします。」

藤本は笑みを向けてその場を離れた。
628 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:31
田中も藤本も自分の面の横で竹刀を振りフォーミングアップをしてから面をつけた。

道場の外では保田と吉澤が入口から二人の様子を見ている。

「田中と知り合いなの?」
「まぁ。なんて言って試合することになったの?」
「勝ったら部活辞める。負けたら続けるって。」

吉澤は笑みを浮かべ田中の素振りを見た。

「基本はかなりいいね。」

吉澤はそう呟いた。

面を着け終えた藤本は田中に歩み寄り声をかける。

「体動かないとなんだし、切り替えしと打ち込み数本してからでいい?」

頷く田中。二人は直ぐに礼をして蹲踞をして立ち上がる。
切り替えしをする田中を観察する藤本。
打ちは軽いが基本はしっかりしている。
手の返しもしっかり出来ていた。
打ち込みはスピードが感じられないなと藤本は思った。
田中も藤本と同じように元立ちになると藤本を観察した。
スピードのある動きに感心しながらやり難いかもと思った。

「よし、じゃぁ勝負着くまで無制限ね。」
「はい。お願いします。」

開始位置に着くとお互いに礼をして大きく三歩前に出て竹刀を交える。
お互いの目を見ながら立ち上がると藤本は慌てた。

亀井と道重も辻も部員たちも驚いた表情を見せる。
629 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:31
田中が上段の構えを取ったからだ。
中段の構えだと思い込んでいた藤本が慌てて剣先を喉元から田中の左拳に映した。
その隙に田中は間合いを詰めていた。

「美貴が慌ててる。」

吉澤が呟いた。

藤本は右に動きながら間合いを取るが田中の間合いから抜け出せない。
藤本は動きを早めて間合いを作った。
田中はじっと藤本の動きを観察しながら間合いを詰め藤本が仕掛けてくるのを待つ。
田中の間合いにならないように気にしながら藤本は自分の距離を確認した。
上段の場合、中段の構えより遠い間合いから打つことが出来る。
藤本は田中を中心に右回りに早い足裁きで移動しながら間合いを詰めた。
仕掛けなければ勝負はつかない。田中の竹刀が下がったところがチャンスだ。

藤本がスッと前に来たところを田中は直ぐに反応した。
藤本の竹刀を抑えて右に足を裁きながら竹刀を返し面を打とうとしたが
思ったようには行かなかった。それよりも早く藤本が田中の前にいたのだ。
田中は藤本の早い動きに動揺した。
てっきり左小手を打ってくると思ったが
藤本は鍔迫り合いの体制にしたかっただけなのだ。
田中はそれに気が付き面の中から藤本の目を見た。
しっかりと鍔を組み合わされ動けない田中。

田中は後ろ足を引いて藤本との間に隙間を作る
真っ直ぐ立っている竹刀を寝かしながら藤本と距離をとっていく。
早く上段の構えにもって行きたいが田中は慎重に距離をとっていく。
きっと上段の構えにしようとしたとき藤本は打ってくるはずだ
田中はそう予想していた。

630 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:32
藤本はジリジリとゆっくり距離をとる田中の目をじっと見ていた。
中段同士で打ち合ったら絶対に自分が有利だ。
だから鍔迫り合いの体制に持ち込んだ。
本当ならそこから引き技を仕掛けたかったが
田中が直ぐに反応したため仕掛けられなかった
吉澤がよく使う手だと藤本は思った。
さぁいつ上段を取る?
藤本は楽しみながら田中の様子を見た
竹刀の中結いが交じり合う近い間合い。

動きを見せたのは田中だった。
竹刀を素早く裏に回し藤本の竹刀を刷り上げながら右足を前に出す。
藤本は慌てて竹刀で受けようとするが田中の竹刀は既に藤本の面を打っていた。

「メーンー。」

田中は藤本の右を通り抜け残心をとる。

「面あり。」

藤本はそう呟いた。
部員たちは唖然として見ているなか道重は拍手を送る。

「裏から刷り上げ面。基本技だけどな。」

吉澤は自分も良く使った技だと思いながら見ていた。

「藤本より強いの?」

保田の質問に吉澤は首を傾げる。

「今のは美貴の読みが甘かっただけだと思いたい。」

きっと藤本は上段の構えを取るだろうと読んでそこを打つつもりだったのだろう。
だから反応が遅れた。吉澤はそう思った。
631 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:32
開始位置に着き気合を出すと直ぐに上段の構えをとる田中。
藤本は田中の喉元に剣先をつけると右回りに回りだす。

早いな・・・。
田中は回る藤本を追いながら思った。
どんどん近い間合いに入ってくる藤本。
この間合いでは田中が打ったとしても元打ちになってしまう。
近間まで入ってきた藤本がパンと右足を踏み込みフェイントをかけてくる
田中その度に一瞬、構えを崩す。

次のフェイントで面か小手を打ってくるだろう田中はそう読んだ
構えを崩さないように藤本のフェイントに引っかからないように
精神を集中させる。

さぁこいっ。

打つ素振りを見せる藤本
藤本が打とうとする瞬間が見えた引っかかるなと自分に告げる田中

パンっという藤本の踏み込んだ足の音と藤本の竹刀が歪むのが見えた
その後に一瞬息が止まり喉とお尻への痛みを感じた田中

すっと延ばされた藤本の左手と右足。
藤本は左手一本で竹刀を握り思い切り田中の突き垂れの中心に竹刀の剣先が突き刺さした
藤本の踏み込んだ勢いで田中と藤本に挟まれた竹刀が湾曲し
衝撃に耐えられずに田中は後ろにふっ飛び尻餅をついていた。

632 名前:P&Q 投稿日:2006/05/17(水) 18:33
「やっれいな大丈夫?」

亀井が泣きそうな顔で言う。
道重はまるで自分が突かれたかのように両手で喉を覆った。

「藤本って小さい癖に凄い力ね。」

保田が感心しながら言った。

「うちもあれやられるとふっ飛ぶよ。」
「そうなの?」
「ど真ん中突いてるんだ、美貴の体全部の力がその一点にかかるの。」
「痛いだろうね。」
「そりゃぁ。きっと田中の喉は内出血してるだろうね。」

吉澤の言葉に保田は痛そうに顔をしかめた。

「突きありでいいかな?」

倒れたままでいる田中に藤本は残心を取りながら告げる。

「はい。」

田中は喉を押さえながら立ち上がる。

「大丈夫?」
「だいじょぶと。」

田中は咳払いを数回してから既に開始位置で待っている藤本に向かい合った。

「勝負。」

藤本の声に田中は直ぐに上段を取る。

次で最後だ。
633 名前:clover 投稿日:2006/05/17(水) 18:43
本日の更新以上です。
>>610-632 A PENTAGON and A QUADRANGLE

>>610 名前を変え忘れましたorz

このペースの更新でよいみたいで良かったです。
レスくれた方ありがとうございます。
こんな感じで更新していけるところまでしていきますw

>>605 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>早い更新大歓迎です!!
>毎日更新されるの楽しみに待ってます。

良かったです。このペースで頑張ります。
最後まで宜しくお願いします。

>>606 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>大変じゃないですよ!すごい楽しいです

ありがとうございます、このペースで頑張るので宜しくです

>>607 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>ほんと、全然大変じゃありませんよ
>毎日更新楽しみにしてま〜す

良かった、安心しました。
最後まで宜しくお願いします。

>>608 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>あぅ(泣
>ごっちん…

ごっちんちょっと可哀相にしちゃいました(^。^;;

>>609 ももんが 様
レスありがとうございます。

>毎日の更新かなり楽しみですよ♪
>ハイペース更新ありがたいです!

そういっていただけで安心しました。
このペースで頑張りますので
最後まで宜しくお願いします。
634 名前:ももんが 投稿日:2006/05/17(水) 22:23
美貴さんとれいなの息つまる攻防戦がいい!
わくわくしながら読んでます♪
635 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/17(水) 22:41
更新お疲れ様です
ちょこちょこみきよしがあってうれしいミキモチ♪
続き楽しみにしてます。
636 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/18(木) 00:10
うぉーキタキタキター!!
二人ともかっけー!!
637 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/18(木) 12:54
さっき発見して一気に読ませてもらいました
面白いです。次回更新を楽しみに待っています
638 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:21
二人は慎重に間合いの取り合いをした。
最初は基本通り田中の左拳に剣先をつけていた藤本だが
今は真っ直ぐ田中の喉に剣先をつけている。
余り近い間合いに入ればさっきのように突き業を出すだろう
田中は警戒しながら間合いを取る

中々、間合いを取らせない田中
藤本は最初と同じように一気に間合いを詰めて
鍔迫り合いにもっていった
田中が離れようと後ろに下がれば直ぐに着いて前にでる
距離をとらせずに引き技を出す機会を伺う藤本

田中はしっかりと鍔を組んでくる藤本を足を使って
上から抑えられないように鍔の位置を入れ替える
藤本も同じようにして競り合う
藤本が田中を下げて攻めようと一押しすると田中はすかさず技を仕掛けた
藤本が押した力を利用して引き面を仕掛けるが藤本がそれを返して
連続技を繰り出してくる田中は避けながらまた同じ様に鍔迫り合いの体制になった。

どっちが先に仕掛けるかお互いに探り合う。
お互い仕掛ける気が無ければ間合いを取る合図を送るが
どちらからも合図は出ない。
田中が鍔を重ねたまま左右にリズムを取るように動き出す。
隙を作るリスクはあるが動かなければ相手の隙も作れないと田中は考えた。
同じ動作を繰り返せば次の動きで藤本が仕掛けてきてしまうだろう
田中は違う動きをするように心がける

藤本は田中の動きを見ながら仕掛けるタイミングを計る
左右に移動する際に小手があくがきっとそれは承知だろうと考える
そうなればそこを仕掛けたところできっと返し技等を仕掛けてくるだろう
藤本は打てずにいた田中は継続的に鍔を支点に竹刀を入れ替え位置を変えてくる
藤本は中心を取られないように田中に合わせる
639 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:22
田中は様子を見るにとどまる藤本だがしっかりと中心を取られていることに気が付く
同時に仕掛けたら藤本のが速いだろうと必死に竹刀の柄と鍔を利用して一気に身を
半分以上動かした慌てて着いてくる来ようとする藤本。
だが、突然の大きな動きに完全には着いていけなかった
田中はそれを見逃すことなく技を仕掛けた回転と同時に
藤本の左半身を正面に取った田中はすかさず後ろに下がりながら
丸明きになっている面を打った。
上段の構えで一気に下がっていく田中の胸元に剣先を合わせ追いかけるが
田中は一定の距離を下がると足を止め上段の構えから残心をとる。

「面あり。」

そう言ったのは藤本だ。
田中は笑顔を見せる。見学していた部員たちは唖然としている。
道重は拍手を送るが亀井は素直に喜ぶことが出来なかった。
田中が勝ったということは田中が部活を辞めるということだ。
田中が剣道部に入るからと言ってマネージャーになったのに意味がなくなってしまう。

吉澤はニヤリという顔をして田中を見ていた。
田中の攻め勝ちだと吉澤は思った。

「じゃぁ圭ちゃんうちごっちんところ行くね。」
「うん。今度、私も行くって言っといて。」
「うん。ごっちん喜ぶよ。」

吉澤は手を振ると愛車のバイクに跨り颯爽と去っていった。

「相変わらずカッコいいわね・・・。」

保田はそう呟くと職員室に向かった。
640 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:22
「ありがとうございました。」

田中は面を取ると藤本に駆け寄り正座をすると手を突いて頭を下げた。

「こちらこそ、ありがとうございました。」

藤本も同じように手を突いて頭を下げる。

「いやぁ。参った。田中って中段でも全然いけるでしょ。」
「上段は始めたばかりです。」
「だよね、高校からだもんね。」
「はい。」
「これで、田中の望みが叶うんだ。」

田中は嬉しそうに笑みを浮かべ頷いた。

「そっか、美貴も精進しないとなぁ。今度また相手してね。」
「お願いします。」
「剣道が嫌いになったわけじゃないんだよね。」
「違います。好きです。」
「うん。よし、じゃぁそっちのなんか分からないけど頑張って。」
「はい。失礼します。」

田中はもう一度、頭を下げると立ち上がり面を持って更衣室に入っていく。
それを追いかけたのは亀井と道重だ。
641 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:23
「れいな、ホントにやめるの?」

亀井が尋ねるが田中は胴と垂をとり起用にクルっと回しながら
胴紐で垂を縛り面を乗っけて防具袋にしまう。

「剣道は部活じゃなくても出来るけん。」

袴の紐を解くとストンと床に袴が落ち田中の真っ白な足が見える。
正座をしてついついその白さに見とれてしまう二人。

「そんなにじっと見んといてよ。恥ずかしいっちゃ。」

田中はスカートに足を通した。

「れなバイトするっちゃ。喫茶店で。」
「「バイト?」」

見事に声がそろった二人を田中は声を出して笑った。
道着の紐を解くと田中は二人の視線を感じて背を向けて脱いだ。
ブラジャーをしていない真っ白い小さくて綺麗な背中にやはり
見とれてしまう二人。
田中はすばやくブラを手にとってつけるとブラウスを羽織って振り返る。

「やけん、そんなに見んといてって。」

ボタンを留めながら苦笑する田中。

「バイトってお金に困ってるの?」
「そんなことなかよ。仕送りくるっちゃけんね。」

田中は袴を広げて折り目を整えると慣れた手つきで綺麗に畳む。
道着も畳み終えると防具袋に仕舞い。竹刀も鍔を外して袋にしまった。

「よっこらしょ。」

田中は声をかけながら胡坐をかく。

「じゃなんでバイトって。」

亀井の質問。いつもどうして?なんでときいてくるのは亀井だ。
642 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:24
「したいことがないとよ。やけん、バイトしてみるっちゃ。」
「剣道は?」
「剣道は別っちゃ。」
「絵里たちれいなが剣道部入るからってマネージャーになったんだよ。」
「やめればよかよ。」

亀井は黙って頬を膨らます。
田中は困ったなと頭を掻いた。

「れなは別に全国大会行きたいとかないけん。部活でやることないっちゃよ。」

田中は中学でも部活に所属していたわけではない町道場に通っていただけだ。
吉澤に憧れて上段にした、教えてくれたのは道場に来ている会社員のおじさんだ。

「折角、3人で同じ部活だったのに。」

亀井が残念そうに呟いた。

「同じクラスやけん、れなはそれだけで嬉しいっちゃ。」

田中がそういうと亀井は手を着いてた中の前に行くとそっと手を伸ばし
田中の喉に触れた。

「内出血してるよぉ。痛い?」

もう、剣道部を辞めるという話は終わりのようだ
田中は話が飛ぶなと苦笑した。

「痛いにきまっとぉ。」

藤本に突かれた部分は直径4センチ程の赤紫色の痣になっている
唾を飲み込んでも痛いくらいだ。

「冷やす?」

道重が痛々しい表情で尋ねる。

「大丈夫っちゃなれてるけん。それよりれな行くとこあるとぉ。帰るね。」

田中は立ち上がり防具と竹刀袋を手に取った。

「ねぇ、バイト行くの?」

亀井が部室を出ようとする田中に駆け寄る。

「そうっちゃ。」
「んー。いっちゃヤダ。」
643 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:24
亀井が田中の腕を掴んで俯いた。
田中は道重に助けてと視線を向ける。
助けを求められた道重は亀井の手を掴んだ。

「れいなが困ってるよ絵里。放して。」
「むぅ。」

亀井は納得できないという表情をしながら腕を放す。

「そんなか顔せんでも・・・。」

田中は持っていた竹刀袋を自分の体に立てかけ亀井の頭を撫でた。
一生の別れではないし、大体、福岡にいた頃より会う機会は増えてる
というか毎日会ってるではないかと田中はため息をついた。

「じゃぁ。いくっちゃね。」

田中はまだ、俯いている亀井を気にしながら道重に笑顔を向けて更衣室を出ていった。
644 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:25

*****************************

645 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:25
吉澤はベッドで眠る後藤を起こさないように静かに椅子に座っていた。
テーブルに置いてある台本を手にとって見る。

「今のドラマかぁ。7話ねぇ。」

吉澤は中を見ようと表紙に手をかけたが開かずにテーブルに戻した。

「しかし、良く寝てるな。」

すーぅ。すーぅ。と寝息を立てる後藤の寝顔。
吉澤は病室を出ようとドアに向かった。

ノックの後に直ぐに開くドア。

「あれ、よっちゃん。来てたの。」

石川がカートを押して入ってくる。

「うん。」
「帰るとこ?」

ベッドに背を向けている吉澤に尋ねた。

「ううん。飲み物買いに行こうと思ってさ。」
「そっか、ちょっと待ってて、私も行く。」

石川はそういうと後藤の腕に繋がれた点滴を取替えた。

「よし。行こうっか。」
「それって、ホント一日中やんだ。」
「炎症抑えるためにね。」

病室を出ると二人で団欒ルームへ入っていく。

「梨華ちゃん何飲む?」

椅子に座った石川に吉澤は自動販売機にコインを入れながら尋ねた。

「コーヒーがいいな。」

吉澤はコーヒーのボタンを2回押す。

ガタンっ。ガタンっ。と落ちてきた缶を取り出すと一本を石川の前に置いた。
646 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:26
「ってか、サボっていいの?」
「終わったの。」
「ほぉ。そうか。」

ゴクッとコーヒーを飲むとフーと息を吐く石川。

「よっちゃん帰るとき一緒に帰ろうかな。」
「ん〜。梨華ちゃん今日スカート?」
「うん。」
「バイクだけど大丈夫?」
「見えるかな?」
「乗るときと降りるときはね。」

石川はクスっと笑った。吉澤はん?と首を傾げる。

「それならよっちゃんにしか見えないからいいじゃん。」
「なぁにそれ。」
「よっちゃんになら見られてもいいの。」
「ふーん。」

吉澤は意味が分からなかったがそれ以上、聞かずにコーヒーを飲んだ。

「ご馳走様。私、着替えてくるね。」

石川が缶をゴミ箱に捨てて出て行く。
吉澤は時計に目を向けた。5時半を示す針。
藤本はまだ部活だろう。
今日は来るのかどうか聞けばよかったなと思いながら後藤の病室に向かった。
647 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:26
寝ているだろうとゆっくり音が立たないようにドアを開けていく。

ベッドの上で起きていた後藤はゆっくりと開くドアを怯えながら見ていた。
不審者が入ってきたらどうしようとナースコールと手に取り押せる準備をする。

「なぁ〜もぉ。」

開いたドアから入ってきた吉澤を見て後藤は体の力を抜いた。

「起きてたのかよぉ。」

吉澤の笑顔を見て後藤も笑顔で頷くとナースコールを置いた。

「ん?どっか痛かったの?」

吉澤がナースコールを見て言う。

「そうじゃない。」
「そっか。」

吉澤は椅子に座って後藤を見る。
昨日より大分顔色はよく見える。

「具合はどう?」

吉澤の言葉に後藤は笑顔を向けた。

「痛みがないから凄い楽。」
「そんなに痛いなら早く病院行けばよかったのに。」
「だってぇ。」
「仕事が忙しいかった。」
「正解。」

吉澤と後藤はクスクスと笑う。
648 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:27
「今日、ミキティはくるかな?」
「ん?」
「昨日、心配してくれたのに八つ当たりみたいに言っちゃったから。」
「気にしてないよ。美貴は。」
「ん〜。でも、謝っておきたいし。」
「今日はどうだろう。まだ、部活だろうし。」
「そっか。」

後藤は残念そうに言った。

「そうだ、今日ねちょっと中澤さんに頼まれごとがあってさ。」
「頼まれごと?」
「うん。うちの高校に行ってきたんだ。」
「いいなぁ。」
「圭ちゃんに会ってね、今度、お見舞い来るって。」
「ホント。」

後藤は嬉しそうに笑みを浮かべる。

「うん。来るって。」
「会いたいなぁ。ケメちゃん。」

後藤は懐かしさを覚え保田の姿を思い浮かべた。

コンコンとノックが聞こえ吉澤と後藤はドアに視線を向ける。

「なんだ、梨華ちゃんか。」

藤本かもしかしたら保田かと思った後藤はそう口にした。

「なんだって何よぉ。」

私服に着替えた石川は頬を膨らませてベッドの横にやってくる。
649 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:27
「だって、梨華ちゃんの顔1日中見てるからさぁ。」
「良いじゃない。嬉しいでしょ。可愛い梨華ちゃん見れて。」

満面の笑みを向ける石川に後藤の顔は引き攣った。
その様子を見て吉澤はその歳でそのキャラはキツイだろうと笑いを堪える。

「あっ、そうだ。ごっちん明日から流動食始まるって。」
「流動食かぁ。」
「うん。でも食べれるだけ良いじゃない。」
「これ減る?」

後藤は点滴を指差す。

「まだ、減らす指示は無かったけど。明日出るかな。」
「減るといいなぁ。」
「でも1週間はきちんとしないとね、2週間目からは仕事するんだし。」

石川の言葉に吉澤は驚いて声を上げた。

「なにそれ。1週間で治るの?」

石川は後藤を見て話してないの?という顔をする。

「だって、よしこ今、来たんだもん。」

今ではないのにと吉澤と石川は苦笑した。

「仕事休めるのが1週間なんだって、だからその後は外出って形で治療するの。」

石川の説明に不審な表情をする吉澤。

「それで大丈夫なの?」
「医師が許可したから大丈夫だと思うよ。」
「そっかぁ。」
「まぁこの1週間でごっちんがどこまで回復するかだね。」
「頑張るから大丈夫。」

後藤が二人に笑顔を向ける。

それからしばらく話をして吉澤と石川は帰って行った。
650 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:28

*****************************

651 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:28
「こんばんは。」

勢い欲、開かれた扉から田中が入ってきた。
中澤はドアが壊れると眉間に皺を寄せたが田中だと分かり笑みを向けた。

「きよったか。」
「はい。勝ちました。」

カウンターに駆け寄る田中。
中澤は田中の喉を見て顔をしかめる。

「なんや、勝ったのにそれか?」

中澤は自分の喉をさすった。

「突きを食らいまして吹っ飛びました。でも勝ちました。」
「ん。よっちゃんから連絡きた。見事な剣道やったって。」

田中は吉澤が見に来ていたことに驚きの表情を見せ
褒められたことに笑みを浮かべた。

「明日から学校終わったらおいで、自給は800円でいいか?」
「はい。そんなに良いんですか?」
「なら、減らすか?」
「いやっ、800円で。」

中澤は笑いながら田中にオレンジジュースを出した。

「これ飲んだら帰り。」
「はい。」

中澤は元気良く返事をする田中に笑みを向けると仕事に戻った。

652 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:28

*****************************

653 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:29
藤本は部活を終えシャワーを浴びてから化学準備室に入った。

「お疲れ様。」
「お疲れ様です。」

仕事をしていた保田が手を休めてお茶を入れてくれる。

「負けちゃいました。田中に。」

保田は頷いて笑顔を向ける。

「見てたわよ。」
「そうですか。」

保田は吉澤が来ていたとは言わなかった。
田中と知り合いだという吉澤だ田中となにか関係があるのだろう。
藤本が聞いたら吉澤はきっと田中がどうして試合をしたのかを詳しく知ってしまう。
それを知る必要はないと保田は思った。
田中はきっと学校を辞めずにやりたいことを見つけるだろうと
今日の田中を見て保田はそう感じた。
また何かあったら話してくるそれまでは何も聞かずにいようと思った。

「あの子強いです。辻より強い。」
「へぇ。まぁ藤本に勝つくらいだものね。」
「いやいや美貴は別に強いわけじゃないですから。」
「全国行ったじゃない。」

保田はお茶を渡しながら藤本の頭を撫でた。

「まぁ、行きましたけど。でも、美貴より強いですよ。」
「吉澤とはどっちが強い?」

藤本はお茶を啜りながら考えた。

「精神面では辻が一番強いかも。あの子は駆け引きとか技術とか教えれば凄い伸びる。」
「辻がねぇ。」
「うん。真っ直ぐだから。それが剣道にも出てた。」

藤本は辻との立会いを思い出しながら話した。
654 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:30
「剣道って運動神経がいいから強いとかじゃないんですよ。」
「そうなの?」

保田は吉澤も藤本も運動神経も成績も良かったから剣道も強いのだと思っていた。

「精神面が一番大事。気持ちで攻めるから。どのスポーツもそうですけどね。」

運動が苦手な保田にはよく分からなかった。

「走るのが遅くても剣道ってのは強いわけ?」
「走るの関係ないですから。」
「あんなに動くじゃない。」
「80歳のおじいちゃんとうちの部員がやったらおじいちゃんが勝ちますよ。」
「へぇ。」
「辻はまぁ運動神経も良いのもあるだろうけど。」
「足がとにかく速いのと球技が得意みたいよ。」
「へぇ。辻はとにかく素直な剣道ですね。」
「素直な子だもの。あの子は。」

保田は優しい笑みを浮かべた。

「田中はどんな剣道なの?」
「んー。なんか必死だったな。自分のためって感じじゃないんですよね。」
「ん?」
「強い自分でありたいっていうか、なんだろう。強くないといけないって感じ。」
「強くないといけない。」

二人はしばらく言葉を止めてその意味を探る。

655 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:30
「凄い攻めなんだけど、自分を犠牲にする危なっかしい剣道・・・かな。」
「危なっかしいねぇ。確かにそんな感じがするかも今の田中は。」

保田は苦笑しながら藤本に同意を求めた。

「ですね。ってか何だろう田中の望みって。」
「さぁ。きっといつか分かるわよ。」
「美貴のいるうちに分かるといいなぁ。」
「焦らないで待つことね。」
「はい。」

藤本は笑顔で返事をすると残っていた仕事を始めた。
保田も藤本の様子を見てから仕事に戻った。
656 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:30

*****************************

657 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:31
「よっちゃんのバイクに乗るの久しぶり。」

駐車場の隅っこに止められたバイク。
吉澤は石川にヘルメットを渡す。

「梨華ちゃん、短すぎだよ。それ。」

ちょっと腰を曲げたら確実に下着が見えてしまう
そんな短いスカートを穿いている石川。

「だって、ピンクで可愛かったんだもん。」

可愛い言い方をするが吉澤は呆れてため息をついた。

「乗って。」

吉澤が先にバイクに跨る。

「なんだ、よっちゃんが先に乗ったら下着見えないじゃん。」
「別に見たいって思ってないから。早く乗って。」

吉澤は呆れた顔でそう言う。

「よいしょ。」

バイクに跨った石川は必要以上に吉澤にくっ付く。

「梨華ちゃん。そんなにスピードで無いから。くっ付かなくていいって。」

吉澤の背中に石川の胸が当たり吉澤が恥ずかしくなる。

「えぇ。くっ付きたい。」

さらにぎゅっとしがみ付く石川。
これ以上というともっとくっ付いてくるだろうと吉澤は何も言わず走りだした。
658 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:31
家に着くと石川は直ぐに手を洗い夕食の準備をしようと冷蔵庫を開ける。

「美貴ちゃんがいないから冷蔵庫からっぽだ・・・。」

ソファに座っている吉澤に聞こえるようにいう石川。

「あっ、昨日もアレだったし。買い物行ってないね。」

吉澤は時計を見た。8時になるところだ。
そろそろ藤本も帰ってくるだろう。

「美貴が帰ってきたらどっか食べに行く?」
「それいい。そうしよう。」

喜ぶ石川に吉澤も笑顔を向けた。
それから直ぐに帰ってきた藤本。
659 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:32
「ただいまぁあれ、ゴハンできてないの・・・。」

お腹が減ってるんだと示すようにお腹をさすりながらリビングに入ってきた。

「買い物し忘れた。いつも美貴に任せちゃってたから。ごめんね。」

吉澤が申し訳なさそうに言う。

「んーいいけど。みんなゴハンは?済ませたの?」
「久しぶりに食べに行こうって話してたの。」
「うちらも今さっき帰ってきたからさ。」

藤本は笑顔で自分の前に立つ石川を下から上まで見た。

「もうちょっとどうにかならない?」
「ん?」
「なんでスカートピンクでTシャツまでピンクかなぁ。」

藤本は無表情にそう告げる。

「可愛いでしょこのスカート。」
「わかめちゃんかお前は・・・。」
「なによぉ可愛いでしょ?」

藤本は吉澤の隣に座った。

「で、何食べいく?」

吉澤は笑いながら石川を見た。

「なんでも、いいよ。」
「じゃ、焼肉決まり。」

即行、決める藤本に吉澤は頷きながら笑った。

「美貴ちゃん、私には意見聞いてくれないの?」
「よっちゃんが食べたいのでいいよっていうでしょ。」
「うん。」

笑顔で頷く石川。

「いちいち、ぶりっ子しながら言わないでいいって。」
「ぶりっ子してないもん。素だもん。」

手を胸の前に組んで言う石川。
米神がぴくぴくしている藤本を見て吉澤は立ち上がり石川の前に立った。

「はい、行こう。焼肉食べに行きましょう。美貴も立って。」

660 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:33
吉澤が二人の間に入って3人並んで歩く。
石川は吉澤の腕に腕を絡ませてご機嫌の様子。
焼肉を食べた藤本は機嫌がいい。好きな肉を好きなだけ食べた。

「今日さぁ試合したんだぁ。高校生と。」

呟くように言う藤本。吉澤は黙って藤本の横顔を見ていた。

「へぇ。コテンパにボコボコしたの?」

石川が茶化すように行く。
藤本は唇の端を少しだけ上げた。

「してないし。美貴が負けたから出来ないし。」
「えぇ。美貴ちゃんが負けたの?なんで?」
「なんでって負けたもんは負けたんだよん。なんでもくそもないじゃん。」
「くそはないよ。やだぁ美貴ちゃんくそだってぇ。」
「はいはい。打たれるの覚悟して打ってくるってなんか凄いよね。」

藤本は夜空を見上げた。
吉澤はさっきからずっと藤本の横顔を見ていた。
見ていたというよりも見とれていたのだ。

「なんかさぁ。凄い強い視線だった。」
「なんか美貴ちゃんがそういうの言うの珍しいね。」

藤本の変化を感じた石川は茶化すことをやめ藤本を見た。

「んー。そうかも。打つチャンスあったのに美貴は打てなかった。」
「どうして?」

吉澤が聞いた。
鍔迫り合いのとき確かに田中には隙があった。
アレだけ左右に動けば小手も面も胴も打てたはずだと吉澤は思った。

「誘ってるのかと思ったんだ。だらか打たなかったんだけど。」
「じゃぁ、打てなかったんじゃないじゃん。」

石川がそう言葉を正した。
相変わらず藤本は夜空を見ながら歩いてる。

「誘ってたんじゃなくて打たれるの覚悟で隙を作ってたんだよ。」
「何それ。」

石川がありえないという顔で呟いた。

「誘ってるなら美貴が仕掛けるまで待つのにあの子は打ってきたんだもん。」

吉澤はそれで出遅れたのかと納得した。

「なんで、あんな剣道するのかなぁ。あれじゃ負けることも多いよ。」

藤本は不思議だぁ。と呟きながら月を眺めて歩いた。
吉澤は藤本の言葉を聞きながら田中と立会いをしてみたいなと思った。

「その子に聞けばいいじゃん。なんで?って。」
石川がそういうと藤本と吉澤は苦笑しながら石川を見た。

聞けなかったからこうして藤本は考えているんだ。

吉澤はまだ、空を見ている藤本が転ばないようにと
そっと手を握って歩いた。
661 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:33

*****************************

662 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:34
亀井はお風呂を出て自分の部屋に向かった。
もう、両親は寝てるようだったので静かに足を進める。
2階に上がり自分の部屋とは逆を見た。廊下の突き当たりにある窓からは
道重の部屋が見える。電気が消えているから既に寝ているのだろう。
亀井は苦笑しながらまだ9時なのに良く寝るなと思った。

自分の部屋に入るとカーテンを開く。
田中の部屋が直ぐそこに見える。カーテンは閉まっているが電気はついている。
携帯を取って田中に電話をかける。何回かのコールで田中の声が聞こえてきた。

『もしもし?』
「絵里だけど。」
『なんね?』
「そっちいってもいい?」
『ん。』

窓を開けると田中もカーテンを開き窓を開ける。
亀井はサッシに足をかけ田中の部屋の窓のサッシに足をかけた。

「よいしょ。」

田中に手を借りながら田中のベッドの上に降りたった。

「どうしたと?」

ベッドに二人並んで座ると不思議そうに尋ねる田中。
亀井は膝を抱えて膝にオデコをくっ付けている
田中からは亀井の表情は分からない。

「れいなと久しぶりに一緒に寝たい。」

亀井は顔を見せないままそう言った。

「そんなこと?いいっちゃよ。」

田中は何か深刻な悩みかと思ったら一緒に寝たいという子供のような
亀井の言葉に笑いながら言った。

「さゆ、怒るかな?」

亀井は顔を上げ心配そうにそう言った。

「なんでさゆが怒ると?」

不思議そうに言う田中を見て亀井は苦笑した。

「絵里とれいなが一緒に寝たって知ったら焼きもち妬くでしょ。」
「あぁ・・・。」

田中は明らかに不愉快だという顔をした。

「怒った?」
「さゆに焼きもち妬かれるの嫌なら自分の部屋で寝たらよか。」

亀井はまた膝に顔を乗せて俯いた。
663 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:35
「もぉ、なんね?」

田中は立ち上がりテーブルの上にある携帯電話を手に取った。

「さゆもよんでここで3人で寝ると?」

亀井は顔を上げてさらに困った顔をする。

「さゆもう寝てる。」

亀井ん言葉に田中は体全身にどっと疲れを感じた。

「どげんすると?」

田中はベッドに座りながらため息をついた。

「ん・・・寝るのは諦める。けど、ちょっとだけ話したいかも。」

田中は頷く。残念そうな顔をして。

「一緒に寝たかった?」

悪戯っぽく笑う亀井。

「アホっ。ただ、懐かしいなって思っただけっちゃ。」

田中は膝を抱えて顎を膝の上に乗せた。

664 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:36
「ねぇ。なんでバイト始めようとしたの?」
「んー。したいことないけん。」
「で、バイトなわけ?」
「うん。したいことない人しかできんバイトっちゃ。」
「えっ?何それ。」

亀井は変なバイトだと笑った。

「本当は学生は雇ってくれんとよ。試合に勝ったら雇ってくれる約束っちゃ。」
「それで、試合?」
「そうっちゃ。」
「良かったねって言ったほうがいい?」
「ん?」

当たり前だろうという顔をする田中を亀井は切ない目で見た。

「絵里は部活やめて欲しくなかったけどれなは辞めたかったんだもんね。良かったねだよね。」
「部活じゃなくてもこうして会えるけん。そんな顔せんで。」

田中が亀井の髪を撫でると亀井は嬉しそうに微笑んだ。

「好き・・・」

亀井がそう呟いて田中の肩に頭を乗せた。
田中も亀井の頭に自分の頭をくっ付ける。

「れなも好いとぉよ。」

亀井は優しい笑みを浮かべる。

「おやすみ。」

亀井は小さな声で囁くとすばやく田中の頬に唇を寄せると
窓から自分の部屋に帰っていった。

665 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:36
田中はしばらく亀井が何のをしたのか分からずに固まっていたが
頬にキスをされたと理解すると慌てて窓を振り返った。

「なにしよぉとぉ。」

既にカーテンが閉まっている亀井の窓にそう呟いた。

亀井はカーテンを閉めるとベッドに座って自分の唇を指でなぞった。
田中も好きだといってくれたが亀井の好きとは違うのだ。
ただ、亀井はそれを田中は知らなくて良いと思っている。
3人は幼馴染なのだから。
666 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 13:44
本日の更新以上です。
>>638-665 A PENTAGON and A QUADRANGLE

やっと、6期たちの話も始まりました(^▽^)
今日は夜にもう一度更新できたらしたいと思っています。

>>634 ももんが 様
レスありがとうございます。

>わくわくしながら読んでます♪

早く人間関係的にもワクワクしてもらえるように頑張ります。

>>635 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>ちょこちょこみきよしがあってうれしいミキモチ♪

もう少し、したらもっとみきよし出てくると思うのでw
お付き合いください。

>>636 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>二人ともかっけー!!

カッコイイですw

>>637 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>さっき発見して一気に読ませてもらいました

ありがとうございます。
最後まで宜しくお願いします。
667 名前:clover 投稿日:2006/05/18(木) 13:45
あぁ・・・>>666 名前変え忘れましたorz
668 名前:ももんが 投稿日:2006/05/18(木) 19:14
6期3人の関係の今後の展開が楽しみです。
もちろん85年組もですが。
みんなかわいいなあと思いながら読んでます♪
669 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/18(木) 20:41
亀ちゃんに頑張ってほしいですが…どうなるんだろうw
670 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/18(木) 22:03
なるほど、上手いですね作者さん!
そーゆうふうにリンクするとは…
あんまり書くとナタバレになるんでここら辺で失礼しますw
671 名前:670 投稿日:2006/05/18(木) 22:04
「ナ」タバレじゃなく、「ネ」タバレです、失礼しました^^;
672 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 23:19
いつもと同じ朝。
藤本が朝食の支度をし石川がそれを手伝い。
吉澤はボーっと椅子に座っている。

「ごっちん。明日から仕事するんだっけ。」

藤本がサラダを皿に盛りながら石川に尋ねた。

「そうだよ。」
「体、本当に大丈夫なの?」
「んー。まだ、普通の食事は無理なんだけどねぇ。」
「食べるシーンとかあったらごっちん食べちゃうじゃん。」
「そうだけど・・・それはこっちから言ってあるもん。」

どうしようもないと石川は口を閉じた。

「よっちゃん。今日は休みだったよね。」

藤本はサラダを吉澤の前に置きながら尋ねた。
吉澤はまだ完全に起きていないのか頷くだけだ。

「美貴さ、今日は保田先生と行くから。」

吉澤は頷く。
藤本は苦笑しながら続けた。

「遅くなるかも知れないから、買い物しておいてね。」

再び頷く吉澤。

「私、いこっか?今日、午後からだし。」

吉澤の様子を見た石川がそう言う。

「大丈夫。ちゃんと買い物できる。」

幼稚園児と会話してる気がして藤本はクスクスと笑いながら吉澤の寝癖の着いた頭をクシャクシャとなでた。
673 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 23:20
朝食を食べ終えると藤本が家をでて、石川も食器を洗ってから自分の家に戻った。
吉澤はボーっとしながらソファに座る。
田中が一昨日からバイトに来ている。
時たまでる墓多弁が可愛いななんて思いながら吉澤は仕事を教えていた。
今日は中澤と二人だが大丈夫だろうか。
伸びをしながら吉澤はそんなことを考えていた。

「何しようっかな・・・。」

まだ9時前を指す時計。
後藤の面会は2時からだ。
石川は出勤時間まで寝るだろう。
自分ももう少し寝てもいいが、起きれないだろう。
さて、困ったものだ。
掃除は藤本がやってくれているから特に今日やるひつようもない。
藤本が仕事に就いたら色々と自分も忙しくなる。
それほど、藤本に頼って生活していたといいうことなのだろう。

「とりあえず、顔を洗うか。」

吉澤はノソノソと洗面所に向かった。
水を勢い良くだして顔をザブザブと顔を洗った。
鏡に映る自分の顔を見て吉澤は苦笑した。

「なんだ、この寝癖は・・・。」

逆立った髪を水で濡らして均した。
いつもは誰かがスタイリング剤を使ってやってくれるが面倒だ。
それから歯を磨いて部屋に行きジャージからGパンとTシャツに着替える。

財布をポケットに仕舞い、鍵を持って家を出た。

24時間営業のスーパーまでバイクを飛ばし。
適当に肉や野菜、牛乳、インスタント食品を購入してから家に帰った。
674 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 23:20

*****************************

675 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 23:21
田中は藤本の試合以降、遅刻せずに登校するようになっていた。
田中にとってそれは平穏ではない学園生活の始まりでもあったのだ。
毎日、休み時間の度に教室にやってくる怪獣がいる。

「ノンちゃん参上っ。」

チャイムが鳴ると同時に教室の後ろの扉を開けてポーズを取る辻。
クラスは大爆笑をするが、田中は顔を引き攣らせる。

「ヤンキーれーなぁ。勝負しろ。」

田中は慌てて机に顔を伏せ寝たふりをする。
辻はそんな田中を見つけるとズカズカと教室に入ってくる。

「寝てんのぉ。」

辻は田中の周りを一周すると悪戯な笑みを浮かべた。
何をするのだろうと隣の席の道重とそこにやってきた亀井は心配そうに見ていた。

「おりゃっ。」

辻は田中の背中に指を置き、ブラウスから透けているブラのフックを摘んだ。

「ブラ外しの刑っ。」

田中は慌てて顔を上げると背中を押さえた。

「何するんですか。」

ブラウスの上からじゃなかなか上手く止められない。
必死に止めようとする田中の手を掴んで止めてあげたのは亀井だった。

「辻先輩。もぉ。何してるんですか。」

亀井が辻に言うと辻は悪戯っぽく笑い亀井に近寄る。
676 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 23:22
「わっ。」

亀井はフワっと捲くれた自分のスカートを抑え顔を真っ赤にした。

「黒だぁ。大人だねぇ。」

笑う辻。道重は顔を赤くして亀井を見ていた。

「もぉ、何してるんですか。毎日、毎日。」

田中は呆れた様子で言った。

「だから、ノンの勝負しろって言ってんだよぉ。」
「嫌ですって言ってるじゃないですか。れなもう剣道部じゃないですから。」
「ノンはしたいの。」

ガキみたいなことを言うなと田中は相手にするのを辞め、次の授業の準備をする。
チャイムが鳴ると教師が入ってきて辻を見てため息をつく。

「辻さん。また1年生やりたいならいてもいいけど嫌なら出て行って。」

はーい。と返事をしながら教室を出て行く辻。
田中はため息をついた。
ふと隣を見ると顔を真っ赤にして固まっている道重。

「さゆ、何、赤くなとぉ?」
「えっ、あっ、え?」
「真っ赤っちゃ。」

道重は両手で頬をさすると深呼吸をして教科書を開いた。
677 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 23:23
授業が終わるとため息をつきながら廊下を歩く田中。
昼休みはさすがの辻も教室にはやってこない。
毎日、こんなことされてたら身が持たない。
保田に相談しようと化学準備室に向かった。

扉の中から聞こえてくる声。
辻もいるようだ。丁度いい、直接本人に言ってもらったほうが良いだろう。
田中はノックすると扉を開いた。

「ヤンキー田中、勝負する気になったか?」

辻は田中の前に駆け寄って言う。
田中は顔を引き攣らせながら辻の横を通り過ぎ藤本と保田の横に立った。

「どーしたの?」
「ってか何あれ。」

田中に視線を向ける保田と辻を指差す藤本。

「毎日、休み時間になると辻先輩が教室に来て・・・大変なんです。」

田中が疲れきり呆れた表情で言うと藤本が同情の表情を向ける。

「何が大変なのよ。」
「勝負しろって来て、ブラのホック外したりスカート捲くったり背中に乗ったり噛み付いてきたり。小学生みたいなことしてくるんです。」

保田も苦笑する。

「辻。何やってんのよあんたは。」
「だって、勝負してくれないんだもん。」

辻は自分は悪くないという顔で保田の前に座る。

「何?勝負って。」
「剣道の勝負。」
「あっそれ、美貴も見たい。」

ボソっと口にする藤本に田中は相談する相手を間違えたと思った。

「れなは剣道部やなか。そげん言われて迷惑っちゃ。」

普段は標準語を話す田中が方言を発したことに辻も保田も藤本も驚く。

「なんや自分も方言かいな。うちと一緒やな。」

加護が笑みを見せると田中はだから何だという顔で頷いた。

「のんは勝負したいっちゃっ。」

辻が田中の方言を真似して声を上げる。
田中は苦笑した。

「こらぁ辻、我侭言わないの。田中は剣道部じゃないんだから。」
「したぁい。」

保田の言葉に愚図る辻。
藤本は仕方ないといった顔で田中を見た。

「田中がやりたくなったら勝負するって約束でいいんじゃない?」

藤本は田中にウインクしてみせる。
田中は頷くと笑顔を見せた。

「はい、れなやりたくなったら道場行きます。だから辻先輩教室来ないでいいですよ。」

田中が言うと辻は嬉しそうに田中を見た。

「待ってるっちゃ。約束っちゃ。絶対っちゃ。」

辻の田中の方言を真似た喋り方に皆が苦笑した。

「いつか行きますから・・・。」

田中はそう言って準備室を出て廊下を歩いた。

「疲れる・・・。」

階段を下りながら思わず口からため息が出た。
678 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 23:23

*****************************

679 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 23:24
吉澤はLOSEに来ていた。
店に入ってきた吉澤を中澤は呆れた顔で出迎える。

「そんな顔しなくても・・・。」

吉澤は顔を引き攣らせながらカウンターの一番奥の席に座った。

「ほんま、あんたすることないんやな。」

だから、ここでバイトしているんだと吉澤は心の中で思った。

「何にする?」
「ホットドックとアイスコーヒー。」

中澤がホットドックとアイスコーヒーを出すと吉澤は直ぐに食べ始めた。
昼前で客が席を埋めだす中澤はテーブルとカウンターを行ったり来たりしている。

「そうや、よっちゃん。」
「ん?」

ホットドックを食べ終え紙ナプキンで口を拭いながら返事をする吉澤。

「夏休み入ったらバイトの時間すこしずらしてもらってもええ?」
「うん。いいよ。」
「田中に朝から来てもらってよっちゃん1時から9時にしたいんやけど。」
「了解。」
「じゃぁそれで頼むは。」
「うん。」

吉澤はコーヒーをゴクゴクと飲み干す。

「これからどっかいくんか?」
「ごっちんとこ。」

中澤は心配そうな顔をする。

「結構良いみたい、明日から外出許可もらって仕事いくって。」

中澤はため息をついた。

「そんな働かなあかんのか。」
「そうみたい。じゃぁ行ってきます。」

お金をレジにおいて吉澤は店を出た。
愛車のバイクを軽快に飛ばして病院に向かう。
680 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/18(木) 23:25
更新お疲れ様です!
6期の3人もだんだん絡んできましたね
みきよし楽しみにしてます!
681 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 23:25
まだ、面会時間ではないので庭で休もうとロビーを突っ切って
病院の裏庭にでた。

「あれ、梨華ちゃんだ。」

ベンチの横に止めた車椅子に座っている少女と楽しそうに話す石川の姿が見える。
吉澤は二人のいるほうへ歩き足す。
近くまで来ると石川が吉澤の存在に気がついた。

「よっちゃん。」

石川が立ち上がると車椅子の少女が吉澤に向かって頭を下げた。

「こんにちは。」

吉澤は笑顔で挨拶を返す。

「よっちゃん面会時間まだだよ。」
「うん。だからココで昼寝でもしよっかと思ってきたら梨華ちゃんいるし。」
「ココで昼寝って日に焼けるよぉ。」
「梨華ちゃんは黒くなるけどうちは大丈夫。」
「あはは。」

吉澤と石川の会話に笑う車椅子の少女。

「ガキさん何笑ってんのよぉ。」
「いやいや、笑ってないです。」
「笑ってるじゃない。」
「笑ってないですって。」
「もぉ。どうせ地黒ですよぉ。」

石川が頬を膨らませてベンチに座る。

「梨華ちゃんが担当なの?」

吉澤が石川の隣に座りながら尋ねる。

「はい、新垣里沙です。」
「梨華ちゃんおっちょこちょいでピンク好きで変な子だけど宜しくね。」
「はい。」

笑い合う吉澤と新垣の間で眉間に皺を寄せる石川。

「でも石川さん凄い良くしてくれて助かってるんですよ。」
「だって、見直した?」

偉ぶる石川に吉澤ははいはい。と頷いた。

ピピピッとなる石川のポケベル。
石川は腰のポケットからポケベルを取り出す。

「ごめん、ガキさん呼ばれちゃった。戻って良いかな。」
「もう少しココにいます。自分で帰れますから。」
「そう?」

心配そうな顔をする石川に新垣は笑みを向ける。

「今日、体調いいし大丈夫ですって。行ってください。」
「じゃぁ面会時間になったらうちが押してくよ。」

吉澤が言うと石川「お願いね。」と言って駆け出して言った。
682 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 23:27
「心配性だよね。梨華ちゃんって。」
「でも、親身になってくれていい看護士さんですよ。」
「そうなんだ。」
「私、結構、入院するんですよ。小さい頃から。」
「そうなんだ。」
「石川さん面白いし、今までの看護士さんと違ってフレンドリーで。」

吉澤は笑みを見せながら新垣の話に耳を傾けた。

「勤務時間終わってからも話し相手に来てくれたりして。」
「へぇ。」
「それだけじゃなくて、採血とかも上手で痛くないし。」
「そっか。」
「いい、看護士さん、ですよ?」

身振り手振りを加えながら最後を疑問系にしながら言う新垣。
吉澤はツボにはまりながら笑いを堪えた。

「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「うん、ガキさん?面白い。」
「いやいや、面白くないですよ。」
「面白いって。」
「そうですかぁ?ありがとうございます。」
「あはは。」
「吉澤ひとみ、さんですよね?」

突然、フルネームを言われ吉澤は笑いを止めた。

「ん?そうだよ。」

自己紹介していないことに気がついた吉澤は慌てて自己紹介をした。

「吉澤ひとみ。21歳。石川梨華の幼馴染です。よろしく。」
「はい。」

笑顔で返事をする新垣をやはり吉澤は面白いと笑ってしまう。

「よく、話してくれますよ。幼馴染4人の話。」
「まじ?どんなこと言ってるの?」

新垣は笑みを浮かべる。
683 名前:P&Q 投稿日:2006/05/18(木) 23:27
「21歳にもなって、顔洗いなさいとか着替えなさいとか言われてるって。」

吉澤は頭をポリポリとかいた。

「ホントなんだ。嘘かと思ってたのに。」
「面目ない。他には?」
「学生時代に痴漢に合ったときボコボコにした美貴ちゃん?」
「あぁ、あったあった。」
「ホントなんですか?」
「うん。ボコボコにしてたね。満員電車の中で。」

新垣はうそぉ。と良いながら笑った。

「何、梨華ちゃんうちらのことばっかりネタにしてるの?」
「あと、ごっちん?が小学正の頃、窓から吉澤さんの家に入ろうとして落ちて壁を登った。」
「あった、懐かしいね。下まで落ちないでね壁を登ったんだよ。」
「凄いハプニングだらけですね。」
「梨華ちゃん自分の話はしないの?」
「んー。ない、ですね。」
「ずるいなぁ。じゃぁバラしちゃおう。」

小声で言う吉澤に新垣も「なんですか?」と小声で返す。

「梨華ちゃんの部屋は絨毯もベッドカバーもテーブルも本棚も全部ピンクなんだよ。」
「またまた、いくらピンク好きでも落ち着かないですよ。」
「マジ、梨華ちゃんはきっと色彩感覚がおかしいんだよ。」
「ホントに?」
「ホント。聞いてみ。」
「じゃぁ今度、部屋の写真とってきてもらおう。」
「うん。そうしな。ビビるっていうかひくかも。」
「あはは。」

しばらく、吉澤と新垣は石川を話しのネタに楽しんだ。

「今日って、誰かのお見舞いですか?」

面会時間がまだだと言っていたことを思い出した新垣。

「んー。ごっちんが入院してるんだ。」
「幼馴染の?」
「そう。」

新垣が知らないということは石川も話していないのだろう。
それに、ごっちんが芸能人の後藤真希だとも知らないだろう。
吉澤は後藤のことを詳しくは話さなかった。

「そろそろ、戻ろうっか。」

吉澤は時計を見ながらそういうと新垣は頷いた。

「あ、ありがとうございます。」

車椅子を押す吉澤に新垣はお礼を言った。

684 名前:clover 投稿日:2006/05/18(木) 23:35
本日2度目の更新以上です。

>>672-683 A PENTAGON and A QUADRANGLE

ストックが少なくなってきてたりするけどw
頑張って書いていこうと思ってます。


>>668 ももんが様
レスありがとうございます。

>6期3人の関係の今後の展開が楽しみです。

色々絡ませる予定になってるので
ご期待に応えられるよう頑張ります。

>>669 名無飼育さん様
レスありがとうございます。

>亀ちゃんに頑張ってほしいですが…どうなるんだろうw

亀井さん結構出てくる予定なので、自分が好きだからって理由だけですがw
楽しみにしててください。

>>670 名無飼育さん様 
レスありがとうございます。

>そーゆうふうにリンクするとは…

( *^。^* )ありがとうございます。
685 名前:clover 投稿日:2006/05/19(金) 00:32

>>680 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。
すみません見落としてましたm(。_。)m

>みきよし楽しみにしてます!

期待に応えれるよう頑張ります。



読み返してたら変換ミスが目立ってますね・・・
ごめんなさい・・・。脳内再変換してください((--))
686 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/19(金) 07:05
みきよし(・∀・)ニヤニヤ
がんばって
687 名前:ももんが 投稿日:2006/05/19(金) 12:29
辻ちゃんのキャラ好きです♪
亀ちゃん黒なんですね(笑)
688 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/19(金) 17:03
更新お疲れ様です!
がきさんおもしろいですね
>>680
更新途中でスイマセンm( __ __ )m
689 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:08
石川はナースステーションに入り先輩看護士から指示された仕事を終えると
カートを押して後藤の病室に入った。

「ごっちん。検温と血圧あと採血も。」

後藤の腕を取って石川は血圧を測る。

「ねぇ梨華ちゃん。」
「ん?」

石川は血圧を記録しながら返事をした。

「これさ、どうやったら消える?」

点滴の針が刺さった腕を指差す後藤。
針が刺さっている周りが紫色になってしまっていた。

「んー。暖めれば少しだけ薄くはなるけど・・・」
「衣装ね、半袖なんだよねぇ。ファンデで隠すか。」
「うーん。そうだね。完全には消えないから。」

石川はそういうと再び点滴がされていないほうの腕を取る。

「グッて握って。」

石川は血管を探し出すと針を刺した。

「はい。楽にして。ここ抑えてね。」

後藤はアルコール綿でしっかりと抑える。

「ねぇ梨華ちゃん。」
「んー?」
「よしこのこと今も好き?」

いきなりその話題?と石川は驚いて後藤の顔を見た。

「好き?」
「まぁうん。変わってないけど。どうしたの?」

後藤は無表情だった。

「後藤、こないだね。梨華ちゃんとミキティとした約束破った。」
「何?」
「抜け駆けしないって約束。」
「あぁ・・・。」
「よしこが寝てる時に後藤さ。」

石川は前に吉澤の唇に後藤のリップが着いていたことを思い出した。

690 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:09
「キスしたんでしょ。」

後藤は知ってたの?という顔で石川を見た。

「よっちゃん、普段リップしないのにごっちんのリップついてたから。」

石川は器具を片しながらなんでもない風に言った。

「怒らないの?」
「しちゃったものは仕方ないじゃない。」
「そっか。」
「キスシーンする前にしたかったんでしょ?」

後藤は石川の顔をじっと見た。

「違う?」

石川が器具を片しおえて後藤と視線を合わす。

「正解。」
「ナース服着てるときにこういう話したくないな。」
「ごめん。」
「ごっちんが良くなったら話そうよ。」

そういうと石川はドアに向かった。

「うん。でもね、それじゃ遅いから。」

後藤が慌てて出て行こうとする石川の背中に言った。
足を止めて振り返る石川。

「遅いって?」
「今度、ベッドシーンあるんだ。」

石川はまさかという顔をする。

「ベッドーシーンする前によっちゃんとってこと?」
「よしこが抱いてくれるか分からないけど伝えたい。」

石川はじっと後藤を見つめ後藤もその視線をしっかりと受け止めた。

「うん。聞いてみれば。」

石川はそういうと病室を出た。
寝ている間にキスをする後藤だ、面と向かって伝えることは出来ない。
石川はそう思った。想いが通じ合わなかった時に元の幼馴染には戻れない
その覚悟は後藤にはないと後藤の目を見て感じた。
691 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:09

*****************************

692 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:10
新垣の病室に新垣を連れて行きベッドに横になったのを確認してから
吉澤は後藤の病室に向かった。

ノックをすると「はい。」と後藤の声が聞こえドアを開ける。

吉澤の顔を見てベッドの上の後藤は笑顔を見せる。

「どう?」
「うん。良い感じ。」
「明日から仕事でしょ。大丈夫そう?」
「うん。」

この一週間で後藤の顔色は随分と良くなった。

「今日、美貴が圭ちゃん連れてくるって。」
「おぉ。嬉しい。」

吉澤は後藤の膝の上に置かれた台本に視線を向けた。

「セリフ覚えてたの?」
「うん。」
「完璧?」
「まだ、かな。」
「邪魔しちゃった?」
「大丈夫。」
「覚えてていいよ。うち、雑誌でも読んでるし。」
「うん。」

吉澤の言葉に素直に台本を開く後藤。
吉澤はベッドの横の椅子からソファに移って雑誌を手に取った。

後藤がブツブツとセリフを読む声だけが聞こえてくる。
吉澤は気にせずに雑誌をペラペラと捲っていた。

「人肌恋しいっていうかさ、誰でも良いから抱いて欲しいんだ。」

後藤がはっきりとセリフを口に出し吉澤は驚いて後藤に視線を向けた。

「これってどんな心境だと思う?」

無表情に後藤が尋ねる。

「さぁ・・・うちには分からない。」

吉澤は笑いながら応えた。

「そのままベッドに押し倒し唇を重ね合いながらお互いの服を脱がす。」

後藤は台本に視線を落としト書きを読んだ。

「それ、ごっちんの役?」
「そう。」

吉澤はそれ以上なにも聞かず後藤から視線をそらした。

「よしこ演技練習の相手してくない?」

視線をそらした吉澤に後藤はそう言ってみた。
引き攣った顔を後藤にむける吉澤。

「うち、学芸会とかでもヘタだったの知ってるじゃん。無理だよ。」
「だよね。」

後藤は笑って見せてから再び台本をブツブツと読み出した。
そんな後藤を視界の端に捕らえながら吉澤は居心地の悪さを感じていた。
後藤の気持ちを知らなければ、何言ってるんだと茶化すこともできた
だが、後藤の目は冗談とは取り辛い目をしていた。
吉澤は目を閉じてゆっくりと息を吸って吐いた。
693 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:12
1時間ほどして後藤が台本を閉じた。
それに気がついた吉澤は立ち上がりベッドに近づく。

「終わり?」
「うん。疲れたから休憩。」
「大変だねぇ。暗記でしょ?」
「まぁねぇ。」
「ごっちん暗記とか苦手だったのに。」

後藤は「仕事だからね。」と笑いながら台本をテーブルに戻した。

「ミキティちゃんと先生やってんのかな?」
「やってるんじゃない。想像は出来ないけど。」
「確かに。」

後藤と吉澤は笑いながら藤本の教師姿を想像する。

「梨華ちゃんもそうだけど仕事場の雰囲気ってうちの知ってる皆と違うんだろうね。」
「あぁ。」
「ごっちんも仕事場と今とじゃ違うでしょ?」
「うん。違う、かな。」
「うちの知らない皆があるわけだよねぇ。」

吉澤が静かな声で呟くように言う。
後藤はなんだか吉澤が寂しそうに見えて吉澤の手を握った。

「よしこだけじゃないよ後藤も知らない皆があるもん。」

皆一緒だよ。そんな気持ちをこめて後藤は優しく笑ってみせる。

「そうだね。」

吉澤も笑みを返した。
694 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:13

*****************************

695 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:16
藤本は部活を途中で抜けて保田の運転で病院に向かっていた。

「圭ちゃんって結婚しないの?」

助手席にいる藤本の突然の質問に保田は顔を引き攣らせた。
結婚できるならしたい歳だ。

「貰ってくれる人いたら行きたいわよ。」
「だよねぇ。」

保田はさらに顔を引き攣らせる。
そんな保田に全く気が付く様子のない藤本。

「あんたたちは?良い人いないの?」
「いない。」

即答する藤本。
保田は意外だという顔をしながらハンドルを切った。

「4人とも?」
「うん。いない。」
「あんたたち皆、ルックスよくてモテルでしょ。」
「それなりに、声をかけられるけど。」

モテルに対して全く否定しない藤本に保田は再び顔を引き攣らせた。

「付き合ったりしないの?」
「んー。付き合うほどの人がいない。」
「釣り合う相手ではないんだ。」
「まぁ。そういうことかな。」
「ルックス的にあんたたちに釣り合う人って探すのが大変だね。」
「そうだねぇ。」
「あんた、ちょっとは否定しなさいよ。」

藤本は笑いながら保田を見た。
わざと言っていたと気が付いた保田はやられたという顔をする。

「4人とも好きな人はいるんだよ。」
「どうして付き合ったりしないの?」
「勇気がないから。」

悲しそうな藤本の表情を保田は視線の端に捉えていた。

「勇気がないとか藤本らしくない言葉ね。」
「まぁ。美貴にも怖いものはありますからねぇ。」
「これ以上は聞かないほうがいいのかしら?」

藤本は視線を保田に向けて笑みを浮かべた。

696 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:17
「聞いても良いですよ。核心には触れず応えますから。」
「まったく・・・。」
「あはは。」
「でも、私は藤本の弱点知ってるわよ。」

保田が真面目な顔をして言う。
前を見ている保田のその横顔を藤本はじっと見つめた。
冗談ではなくこの人なら本当に知っているかもしれない。

「言ってみてください。」
「吉澤。」

即答され、藤本は息を呑んだ。

「その反応だと正解みたいね。」
「さぁ。」

藤本は前を向いて口を閉ざした。

「石川と後藤の弱点も同じよね。」

保田はチラっと藤本の顔を見て言葉を続けた。

「あんたたち分かりやすかったわよ。吉澤がいるだけで表情が違うもの。」

藤本は黙って顔を引き攣らせる。

「それがどんな感情なのかまでは私には分からないけどね。」
「大切な幼馴染、それだけですって。」

藤本は静かな声でそう言った。

「なんかあったら相談くらい乗るわよ。恋愛相談も。」

藤本は笑みを浮かべて頷いた。

病院に着くと藤本の案内で後藤の病室に向かった。
697 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:18
ノックをして中に入るとベッドの上から後藤が嬉しそうに保田を見ていた。

「ケメちゃんっ。」

手を振る後藤に保田は変わらないなと思いながら笑みを返した。

「テレビで見てるから久々な気がしないわ。」

保田はそういいながらベッドの横の椅子に座った。

「よっちゃん帰った?」

藤本はそう聞きながらソファに座る。

「うん。ちょっと前に帰った。」

後藤は藤本に応えると保田を懐かしそうに見て笑顔を見せる。

「もう、夕飯すんだの?」

テーブルに置かれたトレイを見ながら保田は聞いた。
そんなに多いおかずではないのに残されている野菜やおかゆ。

「ん。終わり。」
「痛むの?」
「大丈夫だよ。」

後藤の笑顔を保田はじっと見てから手を伸ばして後藤の頭を撫でた。
大丈夫だよという後藤の目は強がっていると保田にはそう見えた。

ノックの音に保田が振り返ると石川が入ってくる。

「圭ちゃん。」
「様になってるじゃない。」

石川は嬉しそうに笑みを浮かべ、後藤の横に行く。

「採血もう一回させてください。」
「さっきやったじゃん。」
「うん、もう一個別の検査に回すから。」

石川は「ごめんね。」といいながら後藤の腕にチューブを巻き血管を指で探る。

「ギュって握ってください。」

石川は注射器を用意しながら起用に血管を捜した。

「はい。チクってしますよぉ。」

すっと後藤の腕に針が刺さると保田は痛そうに顔をゆがめた。

「はい。おしまい。抑えてね。」

採った血液をシャカシャカと振りながら器具を片付ける。

「あと点滴終わってるよねぇ。」

石川は終わった点滴を新しいものと取り替える。

「それと、食後の薬は・・・。」

テーブルの上に置かれた空の薬を確認する石川。

「呑んだと・・・ゴハン食べれなかった?」

石川は後藤を見ながら尋ねる。

「食べたよ。」

明らかに残ってる食事を目の前に食べたという後藤。
石川は苦笑した。
698 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:19
「痛みはありますか?」

首を横に振る後藤。石川はデータを見ながら後藤が朝と昼の食事を食べたのか確認した。

「朝も昼も残してるねぇ。点滴減らしたのにこれじゃまた点滴になっちゃうよ。」
「大丈夫。お腹減ってないし。美味しくないんだもん。」
「そういう問題じゃないんだけどな・・・。」

石川は困った顔をしながらデータに記入をした。

「明日は外出、朝7時からだよね。その前に注射があります。それと、普通食はダメだから気をつけてください。それとぉ。激しい痛みとか症状がでたら直ぐに病院に連絡入れてくださいね。分からないことがあったら明日の朝また聞いてください。」

石川はそう言うとボールペンを胸のポケットに仕舞う。

「圭ちゃんと話したいけど仕事残ってるんだ。この時間から看護士減るから忙しくて。」
「いいわよ、またゆっくり学校にでお顔だして。」
「うん。そうする。」
「にしても、ちゃんと仕事してるじゃない。安心したわ。」

石川は鼻に皺を寄せて笑みを浮かべると病室から出て行った。

「すっかり看護士でしょ。後藤さんとか呼ぶんだよ。」

後藤がアルコール綿を取って針の跡を見て止まっているのを確認するとゴミ箱に捨てた。

「幼馴染でも仕事とプライベートと別けてるんでしょ。プロフェッショナルじゃない。」

保田が感心した様子で言う。
後藤は皆、同じことを言うんだなと微笑む。

「ミキティの先生はどんな感じ?」

自分の名が出た藤本は雑誌を読んでいた手を休め後藤と保田に視線を移した。

「ちゃんと先生よ。学生だったころとは全く違うから驚くわ。」

保田が藤本を見ながら言う。

「生徒と喧嘩したりしないの?」

後藤が笑いながら言うと藤本は眉間に皺を寄せた。

699 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:20
「なんで、喧嘩しないといけないのよ。」
「ミキティってそんな感じしない?授業中にふざけた生徒とかボコりそう。」

保田は笑いながら後藤の頭を軽く叩く。

「ちゃんと相手しながら流すところは流してるわよ。子供じゃないんだから。」

保田の言葉にそうだ、そうだと頷く藤本。

「えぇ。ミキティっぽくない。」
「ぽくないとか関係ないからそんなのしてたら教師になれないじゃない。」
「まったく、2人とも変わらないわね。」

保田が笑いながら懐かしい顔を見せる。

しばらく、昔の話や近況を話した保田はそろそろと時計を見る。

「藤本どうする?送ってくけど。」
「んー。」

藤本は後藤を見てから保田に視線を移した。

「美貴、もう少しいるから、下まで送ってく。」

そう言って保田と藤本は病室を出て行った。

「私がいたら出来ない話があるのかした?」

保田は悪戯っぽく笑いながら藤本を見ると藤本は笑って流す。

「別に話なんて、毎日会ってるから。」
「そっ?」

保田はココでいいとエレベータを降りたところで足を止めた。

「じゃぁ。石川にも宜しく言っておいてね。」
「うん。」

手を上げて帰っていく保田の背中を藤本は見送ってから後藤の病室に戻った。
700 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:21
「送ってもらえば良かったのに。」

後藤の言葉を聞き流し藤本はソファに座ると足を組み腕を組んだ。

「話しがあるって顔してたから残ったんだけど?美貴、勘違いだった?」

後藤は苦笑して笑った。

「あはは、分かった?」
「何年の付き合いだと思ってるのよ。」
「そっか。よしこは気が付かないからさ。」

藤本は吉澤絡みの話なのだろうと目を少し伏せた。

「よっちゃんは気が付かないんじゃなくて気が付かない振りが得意なんでしょ。」
「後藤より演技派だよね。」

藤本は少し笑うと息を吐きながら後藤を見た。

「で?何よ。」
「んー。梨華ちゃんにはもう話したんだけどね。」
「うん。」
「後藤、抜け駆けしたの。」
「なんの話?」
「よっちゃんが寝てる時にキスしちゃった。」

藤本はじっと後藤を見つめた。
吉澤と一緒に見た後藤のキスシーンが読みがえる。

「いつ?」
「んーと・・・。後藤が久しぶりに休みだったとき。」

藤本は思い出そうと思考を巡らせた。

「よっちゃんバイト早退させてもらったときか。」

後藤が頷くのを確認すると藤本は立ち上がりベッドに近寄った。
後藤は黙って藤本を見てどんな反応をするのだろうと様子を伺っていた。

「で?それを美貴に言ってどうしたいの?」

後藤は何も言えず、俯いた。
ただの報告。約束したから、それを破ったから、それの謝罪。
それを言って自分は藤本になんていって欲しいのだろ。
石川のように「知ってた」と何でもないように言われてしまったほうが良かった。
701 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:21
「黙ってれば分からないのに正直者だよね。でも・・・。」

藤本は言葉をとめた、後藤が何?と俯いていた顔を上げると
藤本はじっと藤本と目を見た。

「キスした相手のよっちゃんには言えない卑怯者。」
「それは・・・。そうだね。」

後藤は昼間に来た吉澤とのやり取りを思い出して苦笑した。
役の練習相手をしてと遠まわしに話して逃げられてごまかした。

「でも、それは美貴も梨華ちゃんも同じ。」

藤本は自分が一番卑怯者だと心の中で呟いた。

「好きでもない人とファーストキスしたくないって気持ちはなんとなく分かるよ。」
「ん?」
「ドラマのキスシーンがファーストキスじゃ寂しいもんね。」
「ミキティもそれ知ってたのかぁ。」
「もってことは梨華ちゃんも?」
「うん。」

藤本は「そっか。」と笑った。

「じゃぁ美貴、帰るね。」

後藤が頷く前に藤本は背を向けて出て行った。

702 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:22

*****************************

703 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:23
「休みの日までココにくるんですか?」

ウエイトレス姿の田中がカウンターに座る吉澤に尋ねた。
中澤と同じことを言う田中に吉澤は苦笑する。

「すること無いから、いくところもないわけです。」
「なるほど。」

田中はカウンターの中で食器を洗いながら頷いた。

「田中ちゃんは?すること無いけどいくところはあるの?」
「んー。幼馴染が隣の家にいるから、そこに行くくらいですかね。」
「うちもそう。同じだ。」
「じゃぁそこいけば良いじゃないですか。」

なんでいかないんだ。という顔で見てくる田中。
吉澤はため息をついてから説明した。

「学生の頃はね、必ず誰かはいるんだけどね、皆働き出すと誰もいないわけだ。」
「吉澤さんだけバイトなんですか?あっ藤本先生は学生か。」
「でも来年はきっと教師。」
「そっか。それって寂しいですね。」

田中は「そうなるんだぁ。」と呟きながら食器を洗う。

「幼馴染ってことは田中ちゃんだけ福岡行ってたの?」
「そうです。」
「戻って来たんじゃ、懐かしいくて遊びたいんじゃないの?」
「そうでもないですよ。毎日会ってるし。二人はベタベタしてくるんですけどね。」

田中はくすぐったそうに照れながら言う。

「嬉しそうじゃん。」
「れなだけ福岡行ってたからかもしれないけど、なんか全部一緒っていうのが窮屈で。」
「へぇ。」
「なんだろう、3人だけの世界に居たくないって思ってるれながいるんですよ。」
「なんか大人だね田中ちゃん。」
「そうですか?」

食器を棚に仕舞いながら笑う田中。
吉澤は自分が田中の歳のころそんなことを考えたりしなかった。
考えていれば今の関係は少し変わっていたのかもしれないなと吉澤は思った。
704 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:24
「吉澤さんは藤本先生とはずっと一緒なんですか?」
「うん。生まれたときから今も。」
「へぇ凄いですね。」
「あと2人いるんだけどね。」
「4人でずっと今も?」
「うん。」

田中は驚いてコップを落としそうになる。

「いつも一緒なんですか?」
「そうだよ。うち今、両親仕事で居ないからうちで皆でゴハンだし。」
「はぁー。れなも一人で戻って来たけどそれはないですよ。」
「そうなの?」
「息苦しくなるときないですか?」

田中は客が来ないのを確認するとカウンターから出て吉澤の隣に座る。

「ない・・・ある・・・」
「どっちですか。」

田中は笑って吉澤を見る。

「1人の子にはそういうの感じたことないけど・・・。」
「2人にはあるんだ。」
「まぁ。」

吉澤は言い難そうな顔で頷く。

「れなはどっちもですね。引っ越す前はそんなこと無かったんだけど。」
「変わったんだ、田中ちゃんが。」
「そうかもしれないですね。」
「で、このバイト?」
「はい。すること無いのと自分の時間欲しいから。」
「自分の時間かぁ。」
「吉澤さんは?」

田中は体を吉澤に向けながら尋ねた。

「うちはぁ。ホントにすること無いんだよ。休みの日まで来るくらいね。」

吉澤が笑って言うと田中は不思議そうにじっと吉澤の目を見た。

「剣道はもう全くしないんですか?」
「ん?」
「道場で教えるくらいは出来るじゃないですか。」
「あぁ。教える気とかないから。」
「そうなんだ。」
705 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:25
吉澤はタバコを取り出すと火をつけて煙を吐き出す。
田中は目を細めて吉澤は見た。

「休みにここに来るってことは恋人もいないんですか?」

吉澤は笑いながら頷く。

「もてそうなのに。」
「出会いがないよ。」
「あぁ。」
「あぁって。」

吉澤はまた笑った。

「田中ちゃんは?いないの?」
「福岡に居たときは居ましたけどね。」
「へぇ。」
「まぁ片思いでしたけど。」
「片思いねぇ。」

しみじみ片思いという吉澤の姿を田中は笑ってみていた。

「なんで笑うの?」
「なんか恋愛に疲れたおばちゃんみたいですよ。」
「ひでぇ。」

笑いあっているとカランカランと扉が開く音がして田中は慌てて立ち上がった。

706 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:25
「絵里、さゆも?なにしとぉ。」

「エヘヘ。来ちゃった。」

亀井が頭をかきながら入ってくる。

「れいな、可愛い。さゆもそれ着たぁい。」

道重が田中の制服を見て飛び跳ねる。
吉澤は二人を横目にタバコを消した。

「さゆ、うるさか。」

田中は唇の前に指を立ててシーっとやってみせる。
吉澤は自分たちも周りから見たらこんな感じだろうと笑みを浮かべた。

「あ、れいなの幼馴染の亀井絵里です。」

礼儀正しく吉澤に挨拶をする亀井。

「3人の中で一番可愛い、道重さゆみです。」

亀井の横にきて挨拶をする道重に吉澤は石川に似ているキャラだと笑った。

「すみません。さゆ、可愛いとかいらんちゃ。」

2人が来てから田中が方言を出していることに気が付いた吉澤は
本当に仲良いのだろうと思った。

「ここでバイトしてる吉澤ひとみです。よろしくね。」

吉澤が言うと亀井が「こちらこそ。」と頭を下げる。

「こないだ、ちょっと道場にいらしてましたよね。」
「あ、二人も剣道やってるんだ。」
「私たちはマネージャーを。」
「おぉ。そっか、座れば?」

いつまでも立っていてもなんだろうと吉澤が席を詰めて二人を座らせる。
707 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:26
「メニューです。」

田中が二人にメニューを渡した。

「よし、毎日来て全部制覇しよっ。」

道重が笑顔で言うと田中はため息をついた。

「場所、教えなければよっかったとぉ。」
「なんでよぉ。嬉しい・・・。」
「絵里、アイスカフェオレ。」

亀井が道重の言葉の途中でオーダーをした。
田中は苦笑しながらメニューを受け取るとカフェオレを作り出した。

「さゆは、何にすると?」
「いちごミルク。」
「ん。」

コーヒーを沸かす間に田中はイチゴをミキサーにかけてミルクを入れた。
吉澤は慣れたもんだと関心しながら田中の作業を見ていた。

「藤本先生と一緒に全国行ったんですよね。」

亀井の質問に「うん。」と頷く吉澤。

「凄いですよねぇ。藤本先生って顧問にもズバズバ言うし。いつもそうなんですか?」
「んー。筋が通ってない奴にはね。でも言われるならまだマシ。」
「え?」
「相手にしなくなるから、きついよ完全に無視するからね。」

吉澤は中学時代、藤本に付きまとっていた生徒を思い出し苦笑した。
最初のうちは言葉を返していたがいつからだったか完全にいないものとして生活していた。

「強いなぁ。」
「はい、アイスカフェオレ。といちごミルク。」

田中はテーブルにそれぞれを置くと直ぐに使った道具を洗い始める。
亀井はその姿をじっと見ていた、亀井のその目を見た吉澤はなんとなく
亀井はそうなのだろう、と思った。

「んっ。おいしいぃ。れいな料理上手だね。」
「料理じゃなかと。ミキサーにかけただけっちゃ。」

そういいながらも田中はなんだか嬉しそうだ。

「さて、そろそろ美貴も帰ってくるから、帰るかな。」

吉澤は代金を田中に渡して席を立つ。

「じゃぁ、また来てね。」

吉澤は亀井と道重にそう声をかけると帰っていった。
708 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:28
「吉澤さんって素敵だね、王子様みたいな感じなの。」

道重はストローを加えながらそう言った。

「貴公子って感じは確かにあるね。」

亀井もそういう。

「恋人いないっていっとぉよ。」

田中の言葉に亀井は作った笑顔を見せた。

「じゃぁ、れなが行けば?」
「れなは恋愛とか今はいいけん。」
「そっか。じゃぁさゆは?」
「さゆは、絵里とれながいればいいの。」

道重は亀井の肩に頭を乗せて甘えてた仕草をする。
亀井はその道重の頭を手でどかすした。

「絵里は?」

田中の言葉に亀井は悲しい目を一瞬見せて再び作った笑顔を見せる。

「絵里には見合わないよ。」

そう言って、吉澤が使っていた灰皿に視線を移した。
まだ、長いタバコが何本もあった。
吸いきる前に消してしまったようだ。

「お疲れさん。」

カランカランと入ってきたのは中澤だった。

「なんや田中の友達か?」
「はい。」
「ゆっくりしってってな。」

中澤は二人にそういうと奥の扉に消えていく。

「こわっ。」
「怖いの。」

小声でそう呟く二人に田中は苦笑する。

「バリいい人っちゃ。」
「田中もう直ぐ上がりの時間やからもうえぇよ。着替えてきぃ。」
「はい。」

田中は返事をすると洗い終わった道具を片付けて更衣室に入った。
709 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:28
「名前なんていうん?」

道重に向かって聞く中澤。

「道重さゆみです。」
「道重な。そっちは?」
「亀井絵里です。」
「亀井。うん。そうか、よろしゅうな。」

中澤はそういうとホットサンドを作り出す。
制服に着替えてきた田中は吉澤が座っていた席に座って
二人が飲み終わるのを待った。

「ほい。お疲れ。」

中澤が田中の前にアイスティを置く。

「ありがとうございます。」
「ん、ええよ。あとこれも3人で食べてな。」

ホットサンドがのった皿を置く。

「良いんですか?」

悪いですという田中に中澤は笑顔を向けた。

「どうせ、コンビニかインスタントやろ。えぇから食べ。」
「はい。」

その様子を見た亀井と道重は田中が言うように良い人なのだと思った。

美味しいという3人を中澤は懐かしい目で見ていた。
よく、吉澤たちもこうしていたものだ。
後藤が仕事を始め、石川が仕事を始め、藤本は来年から仕事だ。
吉澤だけがあの時のままココで立ち止まっているのだと中澤は思った。


「さぁ食べたら帰りもう7時や。」

中澤の声にご馳走様でしたとお礼を言って仲良く帰っていく3人。
最後に出た亀井がもう一度頭を下げてからドアを閉めた。
710 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:28

*****************************

711 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:29
「おっよっちゃん、どこ行ってたんだよ。」

玄関前でバイクから降りる吉澤に家に入ろうとしてた藤本が声をかけた。
ヘルメットをとりながら藤本の姿を確認する吉澤。

「お帰り。」

駆け寄ってきてそういう吉澤をついつい可愛いなと思って笑顔を向ける藤本。

「ただいま、買い物は?」
「ちゃんとしたよ。」

吉澤は玄関を開けて藤本を先に入れる。

「梨華ちゃん夜勤だから二人だね。」

藤本は吉澤のその言葉がひっかかった。
後藤も遅くまで仕事だから石川が夜勤のときは二人のときが多いのに
わざわざ、確認することでもない。

「んー。これってシチューが食べたいってことかな?」

藤本は冷蔵庫の中を見てテーブルに置かれたシチューのルーを手に取り言う。

「うん。でも時間かかるから他のにしよう。」
「だね。」

藤本は苦笑して頷いた。

結局、簡単に出来る野菜炒めをおかずに二人で食事をすることに。

「ごっちん喜んでた?」
「うん。」
「そっか良かった。」
「うん。」

美貴がうん。しか言わないの気にかかり吉澤は端を止めた。

「美貴どうかした?」
「ううん。別に。」
「ん。ならいい。」

明らかに作った笑顔の藤本に吉澤は気が付かない振りをする。
もう、気が付かない振りをすることには慣れた。
吉澤は心の中で苦笑した。
712 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:30
「あ、明日は大学だ。」
「土曜日か。部活はあるんでしょ。」
「うん。大学いってから顔出せたら出す。」
「忙しいねぇ。」
「まぁ今年はこのあと就活だしね。」
「うちの高校?」
「まぁ入れたら良いけど。私立が良いんだよね。移動ないから。」
「ほぉ。私立か。」
「うん。」
「頑張ってね。」

藤本は吉澤はどうするんだと聞こうとして辞めた。
このままで良いと思っていないことは分かっている。

「うん。ありがと。」

吉澤は優しく微笑む。

「ねぇ。よっちゃんさ。」
「んー?」
「寝てるときって無防備だよね。」

吉澤は意味が分からずに藤本を見つめた。

「まぁ良いんだけどね。」
「なにが?」
「なんでもない。」
「なに、気になる。」
「いいんだよぉ。」

藤本は手を伸ばして吉澤の頬を抓った。

「いだだぁ。」
「さて、美貴はお風呂入って寝るかな。」
「いってぇ。なんだよもぉ。」

吉澤は解放された頬を擦りながら帰っていく藤本の背中を見送った。
それから後片付けをしながら藤本の言葉の意味を考えたが
まったくその意味が分からなかった。
713 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:30

*****************************

714 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:30
亀井はベッドに入る前に田中の部屋の様子を確認した。
電気はついているからまだ起きているのだろう。
本当なら明日からテスト勉強を一緒にしたかったが、田中はバイトだ。
道重と2人で勉強することになるだろう3人一緒がよかった。

「れいな勉強、大丈夫かな・・・。」

亀井はカーテンの閉まった田中の部屋を心配そうに見つめた。


その頃、田中は必死に勉強をしていた。
来週から試験が始まりテスト返却後そのまま夏休みだ。
良い成績をとりたいわけではない。
単に、補習にならずにパスできればそれでいいのだ。

「あぁ、ここもわからんとぉ・・・。」

サボったところが全く分からない。
田中はペンを置いて椅子の上に胡坐をかいた。

「こりゃ、誰かに教えてもわんとだめっちゃね。」

田中はノートと教科書を閉じるとため息をついて立ち上がった。
亀井が起きていたら教えてもらおうとカーテンを開く。

「絵里。」

窓の向こうには亀井が立ってた中を見ていた。
田中と亀井は窓を開けた。

「なにしとると?」
「あっ、うん。えっとぉ。鍵。」

亀井は窓の鍵を指して慌てる。

715 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:32
「鍵?」
「うん。鍵がかかってるか確認・・・。」
「丁度よかった、絵里に勉強教えてもらいたいとよ。」
「あっ、うん。いいよ。」

亀井は窓を伝って田中の部屋に入る。

「サボってたのいけんと、全くわからんっちゃ。」
「もぉ。」

テーブルにノートと教科書を広げて亀井に教えてもらう田中。
亀井はなんだか嬉しかった。
道重にこうして教えることはあったが田中にこうして教えるのは初めてだ。

「何、笑っとぉ?」

視界の端に亀井の笑みが写った田中は不思議そうに訪ねた。

「ウヘヘ。」
「ウヘヘってなにいいよぉ?」
「こういう勉強って中学か高校でしか出来ないでしょ。」
「うん。」
「だから、れいなと出来て嬉しいなって。」
「なんね、照れるけん、やめて。」
「イヒヒッ。れいな照れてるの?」

隣に座る田中にぎゅっと抱きつく亀井。

「わっ、やめっなにしとぉ。」

照れる田中がなんだか小学生のころの田中のようで亀井は嬉しく感じた。

「もぉ、照れちゃってぇ。昔はれいなから手とか繋いできたくせに。」

離れながら亀井は悪戯っぽく田中の顔を覗き込む。

「子供の頃の話っちゃろっ。もぉ。」
「だって、れいな引っ越して帰ってきたらいきなり大人びてるからさぁ。」
「15歳やもんこれが普通っちゃ。」
「昔はいっつも3人でいたのに今は1人でどっかいったりするじゃん。」

田中は当たり前だという顔で亀井を見る。
716 名前:P&Q 投稿日:2006/05/19(金) 20:32
「高校生にもなってそんなんすることないっちゃ。」
「でも、なんか寂しいんだもん。」

大人しくて人前であまり話しをすることが出来なかった亀井。
メルヘンチックな事ばかり言う道重。
そんな二人だから幼稚園でも小学校でも男の子にからかわれたり
女の子に苛められたりしていた。その度に田中が庇って助けていた。
だからいつも3人は一緒にいたのだ。
福岡で1人になった田中は1人が慣れてしまったのだ。
いつも、何するのも3人でとはいずれ行かなくなると思ってる。
だったら、今からそれぞれの道を行くべきだ。

「幼馴染はいつまでたっても幼馴染やけん。でも、進む道は別々っちゃ。」
「でも、今は一緒でもいいじゃん。さゆだってそう思ってるよ。」
「急にバラバラになるより今から少しずつのが寂しくなかよ。きっと。」

亀井は悲しそうに田中を見た。
田中の言ってることはもっともなことだ。
いずれは別々の道を行かなければならない。
でも、幼馴染はずっとそのままだ。
ずっとそのままの方が良いに決まってる。

「うん。そうだね。大人にならないとね絵里たちもう直ぐ16歳だもんね。」

分かってくれたのだろうと田中は笑みを浮かべ亀井の頭を撫でた。
717 名前:clover 投稿日:2006/05/19(金) 21:21
本日の更新以上です。

>>689-716 A PENTAGON and A QUADRANGLE

やっと、6期とよっちゃん絡んできましたw



>>686 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

頑張ります。

>>687 ももんが 様
レスありがとうございます。

>辻ちゃんのキャラ好きです♪

のの可愛いですw

>亀ちゃん黒なんですね(笑)

自分の妄想です。

>>688 名無飼育さん 様
レスありがとうございます。

>>更新途中でスイマセンm( __ __ )m

大丈夫ですw
718 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/19(金) 23:00
更新おつかれさまです。いつも面白く読ませてもらってます。
吉と6期のこれからの絡み具合や85も気になりますねー。
ところで容量が俄然やばめのようですよ。
719 名前:clover 投稿日:2006/05/20(土) 00:36
>>718
レスありがとうございます。

>ところで容量が俄然やばめのようですよ。

気にしてなかった(^。^;;ありがとうございます。

というわけで、また、幻版に新しいスレッド立てましたので
引き続き宜しくお願いします。

A PENTAGON and A QUADRANGLE
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1148052894/
720 名前:ももんが 投稿日:2006/05/20(土) 21:49
みんなの気持ちが絡みあってますね。
毎日楽しみです♪
721 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/01(木) 14:22
スレ移動という事なので落とさせて頂きますね。
引き続き楽しみにしてます。

Converted by dat2html.pl v0.2