こわごわ

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/06(火) 10:41
ttp://mseek.xrea.jp/grass/1119580865.html

上スレの設定です。ツイです。
2 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:42
終わった。ミキの青春が…
始まったのに終わりやがった

「おっせーよ、バカ」

電話ボックスから出てなん分たった?
遅い。遅すぎ

モグモグ声だったから、たぶんオヤツタイムだったな
関係ないか。普段やたらとお世話してるからな
ミキのコールを受けたら飛んでくるのがスジだ

もしも『オヤツ>ミキ』と炭水化物より後回しにしてたら
必殺キックをお見舞いする
3 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:42

藤本美貴の第一章が終わった

アキだな
やっぱり終わりといえばアキなんだな
アイシュウのシュウだな

フラフラとたどり着いた公園
見付けたベンチにへたばった
肩をすくめても、吹き抜けていく風の冷たさは骨身にこたえる

他のこと、考えよう
イヤなことは忘れていこう
……肉のことでも考えるか
ジュージュー炭火で焼かれていく肉を思いだすか
寒いしちょうどイイか


……ムリだな
マッチを売るあたりから始めないとそんな白昼夢ムリがある

ミキって繊細だから
こんなときか細い神経に振り回されるみたいだ
4 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:43

普通に座っているのもツライ
ブロークンなハートは想像を上回る重量だな
中学生のうら若き乙女だけど、寝ころがるしかない

昨日雨だったっけな?
このベンチしめってるんだけど

おっせーな、よっちゃんのヤツ

空気の乾燥シーズン到来
90度回った世界に舞いおどる枯れ葉がアイシュウ
こんなところで、こんな姿のミキがかもすペーソス

母親と手をつないだ子供がじーとコッチを見ながら歩いていく
おい母親、失恋にうちひしがれるミキをチラ見するな
かといって、直視はするな
5 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:43
いつまで待たせるんだ、あのバカは

傷心中だぞ
運命をかぎ分ける器官、絶対おとろえてるんだよ
例えば、通りすがりの人に差し出されたハンカチ一つで
誤作動しかねないわけ
叩き売りの運命なんかミキは欲しくないんだよ

安い運命がころがり込んで来る前に
全速力でむかえに来いよ

風が強い。目が乾く
こんなときにドライアイかよ
眼球の潤いのために目を閉じた
こめかみを横に流れていく気持ちワルイ感触は無視した
6 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:44


「あー美貴ちゃん。こんなトコいたのかよ」
聞き慣れたとぼけた声がする

瞼をゆっくり開けたら、超至近距離によっちゃんの顔
まじまじと見るとコイツ、ホント目でけぇな
ムダモテの支えだろうな
興味深そうにミキを覗き込んでるから、通常のなん割増しかでデカイ
年中ドライアイ注意報発令だな

「遅いんだよ、バカ」
泣いていたのはバレないように
いつものミキで。健気の鏡なミキで

「美貴ちゃんが泣いてる」
触れずにやり過ごすせ。めいっぱい気をつかえ

声を弾ませ手を伸ばしてくるよっちゃん
ソノ指先が乾ききらない涙の跡をなぞった


……身体の真ん中がキュンと鳴いた

7 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:44

「気安く触るな」
嘘だよ
なるか、こんなヤツに

「あーいごめんなさい」
「待たせすぎ」
「ごめんなさい」

気まずさを紛らすため
ブラザーを脱いで着いてもいないホコリを払う
上着をバサバサ

バカは嬉しそうニタニタ笑った
「闘牛ごっごする?」
やるなら、ミキから遠く離れて1人でやれ
8 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:44
「帰るぞ」
「あ、待って。泣いてる美貴ちゃんにハンカチ貸したる」
あわててパンツのポケットに手をつっこむ
全てのポケットを探って、勝手に肩を落とした

「よっちゃん、上着のポケット」
ソレがあったかと嬉しそう
「あ、あった。どぞ」
うやうやしく差し出された無愛想な色の布きれ

受け取って、安堵した
ミキの運命、ソコまで値崩れおこしていない
地の底まではいっていない
9 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:45
なにかのクズがそこかしこに付着している
よっちゃんのポケットに注目。明らかにふくれている
中身は容易に透視できた

「よっちゃん、ポケットにベーグル入れてるだろ」
「すげー。よく分かったね」
あり得ない
ポケットから出てくる裸のベーグル、しかも半分
当然みたいな自慢顔をするな

ドラえもんだってポケットからどら焼き出したりしないじゃん
いや、出すときもあるかもしれないけど
四次元を持ってしてもそうそう出さないじゃん

「じゃあ、泣いてた美貴ちゃんにベーグルをプレゼント」
「よっちゃんじゃないからそんなのでテンションあげないから」
「そんなこという美貴ちゃんにはあげない」
いらないっていってんじゃん
10 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:46
「肉すればよかったか」

想像した
ポケットから出てくる肉
なぜだか想像のソレは生肉だった
コワイ
あり得ないと言い切らせない幼馴染みがコワイ

「よっちゃん、ポケットにジューシーなモノ入れるの禁止」
「どして」
「洗濯のとき苦労する」
「あーお母さんがね。美貴ちゃん優しいね」
「知ってる」
「油汚れかな?」
「知らない」
焼くのか?ちゃんと火は通すつもりか?
11 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:46

自転車のスタンドを上げたよっちゃん
当たり前のようにミキにハンドルを渡そうとする

「今日はよっちゃんが前」
「了解」
「安全に送りとどけろよ」
「ガンバル」

無事に帰れるかな?
冷静なときのミキなら、こんなキケンは完全回避だけど。今日は

恋が終わったんだから、自暴自棄にならないと
ミキがブンゴウだったら心中未遂おこさないと
心中だから恋が終わる前に実行しないと

フラフラと自転車は走り出す
フラフラしたまま、安定する様子はない

「よっちゃん、ヒザ破けてない?」
「ん?来るとき事故っちゃった」
前方確認を平気でおこたって振り返るよっちゃん

「取りあえず、横によせて停車しろ」
「了解」
目的地まではまだまだある
疑問はすっきりさせよう
12 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:47
「ころんだの?」
「うん、さっき」
それで買ったばかりのジーンズのインディゴブルーはすり切れたと
ざーっていった感じじゃん

「人身?自損?」
「自損。カードレールにぶつかってこけただけ」
じゃあイイや
オマエ以外になに事もなければミキの心は痛まない

「食べながら走ってきただろ」
「うん」
「自分で分かってないの?
オマエは二つを同時に出来る能力ないんだよ」
「出来るって、あたしだって中学生だもん」

身の程知らずが
オマエを普通の中学生のくくりに入れたら全国の中学生がデモ行進だ
13 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:49
「よっちゃん、残念なお知らせがある」
「なに、なに?」
「自転車1人で乗るの禁止されると思う」
「ヤダよ、そんなの」
「キケンはのばなしに出来ないからな」

「えー。あ、でもお母さんにバレなければ、だいじょぶじゃね?」
「バレるよ」
ミキが包み隠さず報告するから
オマエは完全に気がついていないけど
周りは完璧なスクラム組んでるから

「ねー美貴ちゃん、悲しくないなら運転替わんね?」
「今日はヤダ」

ケンキョにケンキョに考えて。コレって『借り』になるのかな

ミキからの『借り』が積もりつもって
返済不能、自己破産しかないよっちゃん相手だとしても
堅気のミキとしては『借り』をそのままには出来ない
コイツはすぐ忘れるとしても、心情的に
よっちゃんに『借り』があるなんて。生きてけないほどハズイから
14 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:49

「よっちゃん」
「ん?」
「よっちゃんが振られたら、むかえに行ってやるから電話しろ」
「はぁ?」

「とにかく、行ってやるから。1回だけ」
「じゃあ恋人つくらないとか」
そして、振られなきゃだな
「つくれつくれ、イイぞー恋は」
「今の美貴ちゃんがいうか?」
黙れ

「あたし恋人できっかね」
「まぁ、ムリだろうね」
「ひっでーな」
「ムダ話してないで出発しろ」

「了解」
自転車はまた、頼りない走行を始めた
15 名前:終わり、始まり。 投稿日:2006/06/06(火) 10:50
(0^〜^) 中学1年生 (VvV从



                   終了
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/06(火) 21:30
前のから大好きでした。
今回も楽しくて素敵です(笑)
17 名前:konkon 投稿日:2006/06/09(金) 00:10
昨日ハケーンして前作から読みました!
マジこの二人面白いっす!
あっ、一応黒い人も入れて三人ねw
今後も更新待ってます。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/09(金) 11:44
>>16
素敵かな?。だとイイな。
>>17
白と黒と、もう1人は何色が正解でしょうね。
19 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:44
自分でよごしたら、自分で掃除しなさい
ママがいってた
ミキはそうしてる。最悪よっちゃんを駆使して部屋はキレイにしている
人間として当然のことだ

そのミキが、社会科準備室の掃除なんて不条理だよな
教師って掃除の仕方も知らないわけ?
せめて掃除当番なんて制度は止めて、有志をつのれ
ホントに尊敬されてたら集まるだろ?

「あ、あの。掃除終わりにしませんか」

する。そっこー持つだけ持っていたホウキをしまった
20 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:45
デートがないから帰ってテレビだな
ジャマ者が来ないとイイな
よっちゃんとか、よっちゃんとか

あ、そうだ。今日はいるかな
昨日のかわいそうな子

いないだろうな
よっちゃんの恋人なんて設定の幻だった気がする
昨日のミキはお疲れだったんだろうな

ムカツク社会科準備室のドアを力任せに閉めた
21 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:46
「藤本さん、吉澤さんと付き合ってなかったんですね」
立ち止まっていた前にいた人に声をかけられる

正しくない単語の並び方。今、完全な名誉毀損が発生した
若干、目に力を入れた
一緒に掃除をしていた=同じ班=同じクラス
見たことある気はする
話しかけられるの初だよね

「藤本さん?」
でも、この子自身ではない気がする。ちょっと違う
デジャビュ?似てる人?
思い出せない。気持ちワルイ
ドッカで見た
「ふ、藤本さん?」
ドコで?
…もっと、平面だった気がする
平面、平面……テレビ?

「怒ってます?」
ヤバ、本格的に睨んでた?
今ミキ、記憶をあらうのに忙しいから待って

テレビ〜。芸能人とかか?
誰だろう……

あっ

ピンときた
22 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:47

緑のカイブツ

子供番組で、お茶目だけど万能ですよキャラの緑
ペアの赤いモッサいのが文句いわないのをイイことに
これみよがしにひけらかすイヤミな緑

ウザイんだよな、アレ
あんなヤツは絶対小学校高学年になったらハブられる

よく見てろ。競技によっては体型変わってる
あくまでも1体だけです、みたいに。もともとこんなですよ、みたいに
ズルだろ、アレ
子供心に『うわ、今日足長っ。身体細っ』って思ってた
中にいる、その道のプロのガンバリは買うけど、ズルは教育上よくない


「あの、藤本さん」
「え?なんだっけ?」
この子に緑を重ねちゃいけない

「だから、藤本さん達付き合ってなかったんですねって」
「…あー。面と向かっていわれたの初めて」
「噂でしたよ」
「あそ〜」
この子のファーストインプレッションは『失礼』で
名前は、なんていうんだろ
掃除班固定なのに、今更聞くのはマズイよな

名前をつけてやるか
心の中でしか呼ばないから自由発想で

「すみません、梨華ちゃんの友達なので気になって」
23 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:48
そうだな、若干ぼかすか

決めた。『チャピン』

濁音を抜くことで生まれた、ニゴリのないノドごし
弾むようなリズム感まで与えた
チャピン
ワルくない。端々に抑えきれないミキのセンスを感じる

「あー、石川さんね」
やっぱり幻じゃなかったか
存在しているのか

「複雑だとは思いますけど
できれば梨華ちゃんのことキライにならないでください」
「複雑?勘違いしてる人多いけどミキただの幼馴染み」

ミキの努力で、よっちゃんの本性完璧に隠れてるからな
ルックス判断だから、止めなかったチャピンに落ち度はないな
きっと、顔のイイのつかまえたね。よかったねと思ってるんだよね
手放しで喜んじゃってるんだよね

「昨日梨華ちゃんから電話あって。ポーッとしてたんですよ」
夢心地なら、そのままでいさせてあげたいよね
気持ちの優しい部分でそう思う

ミキも石川さんみたいな人早く欲しかったし
利害の一致っていうの?
24 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:48

「梨華ちゃん、ずっと吉澤さんが好きだったんです」

…ずっと、だと
昨日のやりとりからしてタイミングの問題じゃなかったじゃん
フィーリングだもん
いってしまえば入学式でも卒業式でも同じ結果じゃん

石川さんの片想い期間、タイムロス
ミキの権限で言い切る


ミキ、ずっと石川さんの出現を待ってた
来る日も来る日も夜空のお星様にお願いしてた

……カワイイな、そんなミキ。想像したら犯罪的にカワイイな
25 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:49
「きっかけが変わってるんですよ」
「きっかけ?好きになった?」
アイツ、名前も知らなかったよ?クラスも違うし初対面と思っていた

「はい。入学した頃、中庭を通っていたらキレイな人がパンを食べていて
梨華ちゃん、思わず足を止めちゃって」

入学当初か。アレだな、ベーグル制限の時期
受験ストレスと偽ってオヤツ食べ過ぎて体重増えて頃
ミキの目を盗んで食ってたんだな

「見ていたら吉澤さん、パンを半分くれたんだそうです」

先を待っていたのにチャピンは話を区切った
26 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:49
「…え、きっかけソレなの?」
「はい」
ナゾは全て解けた
だよな。でなきゃ、よっちゃんなんかなしだもん

食料への行きすぎた感謝の気持ちだな。恋心と混同したんだな

「…石川さんて貧しい?」
「……そんなことないと思いますよ」
違うのかよ
万が一の可能性として、ミキに火の粉をかぶらないように
金銭目的なら、いくら相手がよっちゃんでもミキが断固阻止と思ったのに

やっぱりただの不幸体質か

パンを分け分けで、恋が進行形なのね
よくある、よくある……
27 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:50
「梨華ちゃん余計なくらい一生懸命だし、融通のきかない真面目な子で
周りが見えてないヘンなコですけど、一途なイイ子ですから」
チャピン、誉めきれてないよ
「そっか。よかった」
「認めてあげてくださいね」
ミキがどうこういうところではない

「イイな〜石川さんにはイイ友達がいて」
フォローしようと挑んでくれる友達がいて
「藤本さんだって吉澤さんと仲良しじゃないですか」

「ミキは幼馴染み」

重要ポイント。幼馴染みではあるけど友達ではない

双方の差はね、ミキが選べたか
生まれたときに近くにいやがれば幼馴染みにはなってしまう
28 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:51
「とにかく梨華ちゃんのこと、よろしくお願いします」
「はいはい。バックアップはするよ」
アフターサービス。義務感すら抱いている
長引かせるために、チャピンは石川さんフォローを頼む

「じゃあ、私友達待ってるんで」
「石川さんと帰らないの?」
「大丈夫です。私、友達いるんで」
若干、引っかかる
私はいる。石川さんは…いない?

まっさかねぇ〜。あぶないよ、ソレ
よっちゃんに関わる時間取り放題じゃ人体へ影響でるよ

「さよなら」
「じゃあね」
やるだけのことはやったチャピンは颯爽と階段を下りていった
後ろ姿のさわやかさに、本家の緑がダブった
29 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:52


「美貴ちゃーん、帰ろ」

廊下の向こう10センチサイズに見えるバカが手を振っている
隣でがっつり腕を掴んでいる人影は、石川さんか
「おっせーからむかえに来た」
周りを見渡たして他の生徒がいないことに安堵

「はーやーくー」
「だまれ」

近づいていく
ミキにすがる目をよこして石川さんが身振り手振りでジタバタしている
どうやら、ミキへメッセージ送信中

肩を叩く、両手で四角を描く
30 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:53


「……よっちゃん、帰るならカバン」
「あ、忘れてた」
「ミキのも取ってこい」
「了解」
走り出した背中を安心したように石川さんが見送った

「石川さん、それぐらい気付いたときにいった方がイイと思う」
注意は別れる理由にならないから

想像しなさい
『帰るからカバンを持ちなさい!』(石川さん)
『なんだと!そんなこというなら別れてやる!』(よっちゃん(バカ))
会話じゃない
日本語が交わってない

「が、頑張ります」
31 名前:イイがかり 投稿日:2006/06/09(金) 11:53

                   終了
32 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/09(金) 17:13
あー、面白い
幸せ
33 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/09(金) 17:37
やったー!復活だぁぁぁ!!ww
更新楽しみにしています♪
34 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/09(金) 20:44
いいですよ。
素敵です(笑)
35 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/10(土) 01:06
あーやばい!すげぇおもしろいです
復活してくれてものごっつい嬉すぃ!
36 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/10(土) 19:31
頑張れ、石川さん。w
37 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/10(土) 20:32
電車の中でニヤニヤしちゃったよ。
38 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/13(火) 17:14
>>32
安心しました。
>>33
蘇り過ぎですね。
>>34
持続できたらイイな。
>>35
低いハードルでしたら跳びます。
>>36
「ムダに頑張れる子です」(チャピン)
>>37
怪しまれると思われます、きっと。

先は長いので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです。
ガンバロ
39 名前:孵化直前。負荷。 投稿日:2006/06/13(火) 17:14
「美貴ちゃん今日あたしのことムシしてなかった?」
「日直でいそがしかっただけじゃん」
面倒な黒板けしとか、微罪を先生にチクったり

「あーそっか。あたし日直やりたくねーな」
そこまでいうならミキが
出席簿からよっちゃんの名前、抹消しようか?
率先してやるよ

「てゆーかさ、今日は日直だっていったよね?」
「いってた」
「1人なんだから気合い入れろっていったよね」
ミキとすればホントは毎日1人がイイ
でもお母さん同盟から圧力がかかっている
か弱い小学生のミキはしょうがなく、忘れないかぎりは一緒の登下校
学年が上がるにつれ、圧力に切実さが見え隠れしてきて笑えない

「いってた、かも」
「なんで自分で気づけないの」
「なんでだろうね」

よっちゃんが1人登校を主張したのは昨日
40 名前:孵化直前。負荷。 投稿日:2006/06/13(火) 17:15
時間に厳しい布団だから、早く起きちゃダメなんだ
いつのも時間に起きなきゃダメなんだ
それでも毎朝、ゆっくり寝ててねっていわれるんだ

おとぎの国なら、よっちゃんはきっと幸せに暮らしていける
本人のためにも、どうか神様
今からでも遅くない

必死に説きふせようとするほどフビンさが際立つ
まともに聞いてると疲れるから
ちゃんと来いと念押しだけして諦めた

それで今朝、ミキはよっちゃんをおいて先に学校に行った


「ドコにあったの?」
「ん?玄関」
おくな、背負ったままでいろ
たいそうくたびれる荷物なんて入ってないだろ
ペラペラな教科書たちの重みで後ろに倒れたりしないだろ
41 名前:孵化直前。負荷。 投稿日:2006/06/13(火) 17:15

朝の会
日直のミキは教室の前に立っていた
遅刻ギリギリ、滑りこんで来たよっちゃん
ミキと目が合わないように不自然な下むき

『吉澤さん……』(言葉を失った先生)

よっちゃんの背中に、ランドセルがいなかった

やっぱりやったか、バカ
よっちゃんちに毎朝行くミキからしたら
朝チェック第1項目なくらいで、よくある光景

でも、背中が軽くても平気で登校できるのは
小学生界にとっては衝撃だった

微妙な空気を肌で感じたか、顔を上げるよっちゃん
みんなの視線、集中

生まれ持ったただ一つの武器を使う
ヤツはとりあえずニヘラと笑った
よくわかないときは、スマイルで乗り切る。本能
42 名前:孵化直前。負荷。 投稿日:2006/06/13(火) 17:17

教室を包んだままの静けさ

無言の総意をくみ取って
ミキが黄色い帽子のよく似合う頭を張りとばした
響いたのは、やけに軽い音。中身が足りないと鳴いた

頭をおさえたよっちゃんはニヤけたままランドセル捜索にむかった
もちろん、出席簿には遅刻と記された


ランドセルを忘れるような幼馴染みがいることを
今日だけでもクラスメートに忘れてもらうため
よっちゃんを1日中ムシした
りっぱに日直を勤め上げるために不可欠だった

近寄ればいつでも相手にしてもらえると思っているよっちゃんが
言いつけを守っているのだとしても
無言でまとわりつかれるのは、かなり気持ちワルイと知った
43 名前:孵化直前。負荷。 投稿日:2006/06/13(火) 17:18

「よっちゃんまた、よっちゃんのお母さんに叱られるよ」
「美貴ちゃん他人行儀は止めてって、またお母さんに叱られるよ」
他人だけどね、完全に
よっちゃんのお母さんは呼ばれ方にこだわる
どうもミキのような出来た娘が欲しかったみたい
気持ちはわかる

「よっちゃんのお母さんの前では使わないし」
TPOをわきまえて、よっちゃん関係には可能なかぎり距離をとる
まだ人生1桁だけど、自然と身に付いた

「賢いなー。でも、あたしも今日は叱らんねーよ
先生、連絡帳に書かなかったもん」
忘れたんだなきっと。もうけもうけ。とよっちゃんは笑う


そんなんじゃないと思う
登校時間外に1人で引き返す児童を止めないほど
先生自身もショックがデカかったんだ
血のつながりまである親のショックに配慮した
オブラートに包んだ表現が浮かばなかったんだと思う

はなはだしいうっかりさんです。とかじゃ伝わらないもん

44 名前:孵化直前。負荷。 投稿日:2006/06/13(火) 17:18

「バレるよ、絶対」
「だーいじょぶだって」
「バレるよ。ミキがゆーから」
「えー!内緒にしといてよ」
「ヤダ」
メリットない
ミキ算数はキライだけど、そういう計算は得意

「いわねーで、オヤツなしになっちゃう」

そんな中途半端なバツでお茶を濁すから
いつまでたってもバカは覚えられないんだな

「ミキにオヤツ全部よこすなら、考えてやってもイイ」
「うわー」
歩きながら、頭を抱えるよっちゃん
突如わき上がった大問題にもだえてる
45 名前:孵化直前。負荷。 投稿日:2006/06/13(火) 17:18

「よっちゃん、止まって考えろ」
でないとマンガみたいに電柱にぶつかるでしょ
絶対ないと思うことだから、やるでしょ

フラフラした足取りが立ち止まる頃
「……わかった、内緒ね」
駆け引きの結果が出ていた

でもさ、よっちゃん
叱られるのがイヤじゃなくて
オヤツが食べられないのがイヤだったんだよね?
結果同じなんだけど

「あー楽しみだったのにオヤツ」
知るか、ミキが代わりに楽しみにしてやる
それなら文句もないだろ

46 名前:孵化直前。負荷。 投稿日:2006/06/13(火) 17:18

「今日のオヤツなに?」
「分かんねーけど肉じゃねー」
まぁーな
肉をオヤツなんて軽率な気持ちで食しちゃならないからな
メインだ。メインのディッシュであるべきだ

「よっちゃんはもう少し肉食べたほうがイイよ」
うまくいけばミキのように賢くなれるかも
手遅れで、すがるものは1つもないんだから
かすかな可能性だとしても、やれることはやってみたらイイと思う

「肉はいんね。ウシに恨まれる」
「生きてくってのはそーいうこと」
強が弱を喰らうまでだ
小学生のミキだってわかる

「あたしはよー、ベーグルに恨まれてーの」
誇らしそうに胸を張るよっちゃん
自慢する点は1つもない

あんな味のないボソボソ
あっ、よっちゃんにとっての弱は小麦か
なんだかシックリくる。コワイほど合点がいく

47 名前:孵化直前。負荷。 投稿日:2006/06/13(火) 17:19

いっている間によっちゃんちに到着した

「たでーま」

「だだいまはちゃんと言いなさい」
「へい、ただいま」

「ヒーママ、こんにちは」
「こんにちは。美貴ちゃん連れて帰ってくれてありがとうね」
深々とミキに頭を下げたオバさん
大の大人にそこまで感謝の意を表されても困る

「ひとみ、ランドセルおいて手洗いなさい」
「へーい、お母さんオヤツなに?」
「ベーグル」

「ヒーママ、よっちゃん今日
ランドセル家に忘れて遅刻したんだよ」

「えー!?」


48 名前:孵化直前。負荷。 投稿日:2006/06/13(火) 17:20
(0^〜^) 小学3年生 (VvV从



                   終了
49 名前:konkon 投稿日:2006/06/14(水) 01:25
この頃からミキティは・・・
よっちゃん、賢くなろうよw
50 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/14(水) 02:30
ふか(笑)
付加で賦課。
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/14(水) 22:54
まとめは封印?w 復活本当に嬉しいです
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/15(木) 22:57
1人PCの前で爆笑。

笑いがおさまった時の静けさといったら…w
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/16(金) 14:46
47の訂正
真ん中辺の『オバさん』→『よっちゃんのお母さん』
どっちでもイイといえばイイ

誤字脱字、見逃してください。

>>49
ブレません。雀百まで踊り忘れず。
>>50
タイトル決めるのが鬱です。言い訳は不可。
>>51
無理矢理感が時として辛いのです。
>>52
岩にしみいる蝉の声。夏先取り。
54 名前:押しつけ。しつけ。 投稿日:2006/06/16(金) 14:47
昨日までの苦労の嵐
解放されたはずなのに

もしもさ、苦労ってものが目に見えたら
近づいてきたら誰だってさけようとするでしょ?
買ってでもしよう、なんてりっぱな志も
石川さんみたいな、特殊な嗜好も
どうかしてるって思うでしょ?

「美貴ちゃん、見て見て」

ミキの前には形を持った苦労が嬉々としてあらわれる
55 名前:押しつけ。しつけ。 投稿日:2006/06/16(金) 14:47

「来るなよ、コノ失敗頭」
「失敗なんかしてねーよ。ね、石川さん?」
「う、うん……ダメな子犬みたいでカワイイよ」
「でしょでしょ」

…石川さん今つまったね
ちょっと考えちゃったよね
心から湧き起こった自然な感想ではなかったよね

まがいなりにも最愛に位置している人間に対して
比喩だとしてもはっきりダメって表現したし

子犬ね
生まれたばかりの脳みそって意味なら深いな
これからしつけにかかりますの意味なら深いな

叩きこめ!早急に!

あ、しつけるときに水鉄砲使うとイイってよ
よっちゃんには特別、水じゃない方でもイイ気がする
56 名前:押しつけ。しつけ。 投稿日:2006/06/16(金) 14:48

「す、すみません。お休みのところ」

そう、お休み中なんだよ
主婦でいうところの小正月なの
胃腸だってお粥で休ませてやるわけでしょ
バカを相手にしてたんだから有給での休暇を申請したい立場なの
芸能人だったら常夏の楽園ハワイでのんびりしたいトコなの

「あ、石川さん。あけましておめでと」
「お、おめでとうございます」

ミキ達が年始のあいさつを交わす間に
よっちゃんは失敗頭を振り乱して楽しみだした

「石川さん、よっちゃんは病気?」
「あ、あの。シシマイに遭遇してしまいまして」
その名残だと、説明になっていない説明
さり気なく、止めようとはしている
57 名前:押しつけ。しつけ。 投稿日:2006/06/16(金) 14:49

「本年もソイツの面倒よろしくね」
「は、はい。ソコはしっかり頑張ります」
イイ心掛けだ
高望みしてアレもコレもと手を伸ばし
結果、意識サンマンにならないように
照準をソコだけに絞って、ミキのため鋭意努力しなさい

愛想笑いをしていた石川さんが
調子に乗って続いているよっちゃんの頭を
両手で強引に挟んだ
止まった
ナイス判断
58 名前:押しつけ。しつけ。 投稿日:2006/06/16(金) 14:49

「ねぇー見てよ美貴ちゃん」

コイツは小正月の訪問者だな、まさに
知ってる?小正月の訪問者って

ナマハゲ

ミキのハクシキっぷりにひれ伏せ

もちろん、丁重にもてなされる存在って意味じゃない
お堅いニュースの間に挟まれる
地域のほのぼのレポート的価値もないし、コイツには

『よっちゃん』とかけまして
『子供にとってのナマハゲ』ととく

その心は?



59 名前:押しつけ。しつけ。 投稿日:2006/06/16(金) 14:50


『存在として迷惑』


「じゃーん。大凶」
両手で自慢げに広げた薄い紙『大凶』
神様、意外とよく見てるんだね

「バカじゃん」
「なんで?すごくね、大凶。初めて見た」
「吉澤さんどうしても見せたいって結ばなかったんです」
解説ご苦労様です

「あ、あの、呪われたりしませんかね」
おみくじを結ばないだけで?
そんな了見の狭いヤツのお告げなら耳を傾けるな

「だいじょぶだいじょぶ」
むしろヘンなのに呪われている可能性はミキ達の方が高い
60 名前:押しつけ。しつけ。 投稿日:2006/06/16(金) 14:51
「レア、レア」
落ち込んでいる石川さんの真剣な相談に
割ってはいる心配をうえつけた張本人
「ねーレアレア」

さすがに見たことはなかったけど
まぁミキみたいな存在が周りにとってのラッキーガールに
お目にかかる機会がなくて当然だな

「石川さんソイツをよく無事に連れ帰ったね」
「はい、頑張りました」
ガンバルしかないよな。人ゴミによっちゃん
ミキは心からのハクシュをおくる
一緒になって手を叩くバカは放っておく

「なん時から出掛けてたの?」
今は夕方
「8時には出たのですが」
旅あけでその時刻、はりきり過ぎ
よっちゃん、テメー休みなら早起きするんだな

だいたいさ、初詣だよ
神社ってそんなに時間つぶせるスポットじゃない
小金を放り投げる以外すること少ない
61 名前:押しつけ。しつけ。 投稿日:2006/06/16(金) 14:51

「ドッカよってきたんだ」
「いえ、初詣だけです」

…あー目に浮かぶ

手が離れる
石川さんが振り返る
お約束のように姿を消しているよっちゃん
泣きそうになる石川さん
探さなきゃと駆け回る石川さん
やっとつかんだ手
人の苦労をみじんも察することなく
楽しいことに夢中でニマニマ笑っているよっちゃん

出店の綿アメにでも囓りついてた時には
衝動的に首に手が伸びたとしても誰も責めたりできない

「石川さん、殺意ってどんな感じ?」
冷たいの?温かいの?

否定の言葉もなく、曖昧に笑ってごまかす痛々しさ
62 名前:押しつけ。しつけ。 投稿日:2006/06/16(金) 14:51

石川さんが望むなら、この先もずっと。今日みたいな…
いや、そんなもんじゃない
それ以上の。想像の限りの、想像以上の
苦労、心痛が付きまとうんだ

でも、ソコにエントリーさせれてるの石川さんだけだし
時々、自薦は届くけど害は広げたくないし
石川さんしか思いつかないミキは、推すよ
力いっぱい推し続けるよ

「石川さん、コレ欲しいよね?」
「ううん、大丈夫。いらないよ」
いらないよね、そんな不吉な紙
「オミヤゲ忘れたから、美貴ちゃんにあげる。特別」
「いらねーよ」

石川さんはどんな祈願をしてきたのかな
若干気にはなるけど、今は尋ねてイイ空気ではなかった
63 名前:押しつけ。しつけ。 投稿日:2006/06/16(金) 14:52
                   終了
64 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/16(金) 21:40
ダメな子犬w
言いえて妙ですね
65 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/19(月) 20:39
よっちゃんもそうとうなラッキーガールだと思う。まいししw
66 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/20(火) 12:11
>>64
誉め言葉ではありますが、正解なのか不安であります。
>>65
その通りだと思います。御本人の名言には敵いません。
67 名前:えいきゅう、うみだぬき、 投稿日:2006/06/20(火) 12:12
今日も寒いね、なんて間を埋めるだけの会話
コタツでミカン食べちゃったり
時代劇の再放送見ちゃったり
まったりした空気

おかしくない?
3人揃うが普通になりつつあるのって、おかしくない?

「前言ってたけど、石川さんの誕生日っていつなの?」
「あ、そーだぁ。いつなの?」
遠回しなアピールを受けたんだから
あの後すぐに情報仕入れるべきだったろ?

石川さんもさ、相手がよっちゃんなんだから先手先手で
カレンダーにこっそりと、赤丸とかつけて目立たそ
年1度のおおっぴらな上納日だよ?
68 名前:えいきゅう、うみだぬき、 投稿日:2006/06/20(火) 12:12
「19日です」
「もうすぐじゃん」
「おめでとー」
「も、もうすぐなんです」
「ちょうど土曜じゃん。よかったね」
「は、はい」

「どーお過ごしで?」
「あ、あの。まだ吉澤さんの予定聞いてなくて」
ソレは一緒に過ごしたい方面の気持ちから?
取りあえずプレゼントだけは確保したい方面の気持ちから?

「うーんとね。その日はー、バイト」
「そっかぁ……」
一緒に過ごしたい方面か…
69 名前:えいきゅう、うみだぬき、 投稿日:2006/06/20(火) 12:13

「バカ、休め」
「ズル休みしちゃダメなんだって」
「ズルじゃねー、ズルじゃ
今電話しろ、今すぐ休みを確保しろ」
ワルイよぉとか口にしながら行動では止めに走らない石川さん

言われたからケイタイを出し、よっちゃんが電話をかけた
「もしもし、お疲れ様です。吉澤です。今お時間イイですか――」

…よっちゃんのくせに普通に会話してる
驚くというか、なにソレ
そんな引き出しあったのなら、ソコ以外カギ閉めろよ



「――申し訳ありませんが、よろしくお願いします。はい、失礼します」

70 名前:えいきゅう、うみだぬき、 投稿日:2006/06/20(火) 12:13

ケイタイをおくといつものニヤけ顔でピース
石川さんは胸の前で拍手
こんな些細なことでホレ直しちゃったツラだ、絶対

「ズル休みできた」
「ごめんね、大丈夫だった」
「だいじょぶ」
「…よっちゃん、普通に話せるんだね」
「大人だもん」

そうよ、そうなのよと石川さんの首肯が激しい
この組み合わせを認可したのはミキの過ちかもしてない

「石川さん、よっちゃんでだいじょぶ?」
「なにが、ですか?」
「いやーいろいろ」
「血液型判断では大旨、良好な結果でした。大丈夫です」
「おー、O型でよかったー」
「ホントだね」
71 名前:えいきゅう、うみだぬき、 投稿日:2006/06/20(火) 12:14
血液型、ね
人間を4種類にしただけので占ったのか
石川さんがなに型か知らないけど16通りから選ばれただけでしょ?
ソレで良好じゃ心もとなくない?

O型にだってピンからキリまでいて
キリだよ、コイツ
見紛うことなきキリ中のキリ。ぶっちぎりトップランナー
ココまでくると血の区分の問題かなー?のレベル

「私はA型なの」
あ、誕生日の失敗は繰り返さないね
いつなにがあるかわからないから、ソレ大事な情報だしね

「血あげれねーや。美貴ちゃんにもらってね」
バカ、余計な注釈を付けるな

「……藤本さんもA型なんだ」
ゆっくりとミキに視線をよこす石川さん

うわ、気付いちゃってる
一瞬だったけど超コワイ顔だった、今
72 名前:えいきゅう、うみだぬき、 投稿日:2006/06/20(火) 12:14
「吉澤さんはどんな人がカワイイと思う?」
なかったみたいに。話と視線がよっちゃんに移る
「えーっと」
頭に足りてない血流を促すよっちゃんはぐっるーと首を回す

転がり込んできたチャンスは見送らない
ミキはコタツを抜け、石川さんの視界に入らない位置へ

手を振ってサインを出すとよっちゃんがミキを見た

『石川さんと言え』

伝わる気がしないから、口パクもした
「へっ?」
不思議そうに、コテッと首を倒しミキをガン見
バカっ!石川さんが振り向いたらどうすんだよ

「ねぇー、どんな人?」
幸い、石川さんはよっちゃんにしか心向けない
73 名前:えいきゅう、うみだぬき、 投稿日:2006/06/20(火) 12:15
ミキ、ガンバ!

『イ』 唇を大げさに横に
「えーっと、シ?」
ちっげーよ、バカ。先にイだろ、イ

「シ?シがどうしたの?」
石川さんごめん、ちょっと待って
まだ食いつかないで

「わかった!イ」
正解…。わかったとか口に出すな

「イ。イ?」
石川さんは不自然さに動じたりしない
背中しか見えなくても
ワクワクした瞳がよっちゃんに向けられているのがわかる

『シ』 …ちっ、口の形さっきと同じじゃん
しょうがない。石川さんの耳に届くリスクをおかしても
シーと息を吐いてみる

「あっ、シ」
よっちゃんが一発で当てたってことは
音声で届いたんだろうな…
石川さんにもバレたんだろうな…
74 名前:えいきゅう、うみだぬき、 投稿日:2006/06/20(火) 12:15

「わかった!石川さんて言いたいんだ」
パッと挙手した石川さん。早押しクイズの勢い

……うん。ミキの誘導に触れるつもりはない、と

もうちょっとの我慢だったのに
あとちょっとで、よっちゃんから引き出せたのに
石川さんの焦り、イイ方向に回ってないよ

「あ〜。石川さん」
「私?」
「そー。石川さん…が、どーしたの?」
よっちゃんの頭からはすでに設問が消えていた

「だからぁ、石川さんがカワイイって吉澤さんは言いたいんでしょ?」
「そー、石川さんかーいー」
「ありがとう。あとは、どんな人がカワイイと思う?」

えーまだやるの
ミキそろそろコタツに戻りたいんだけど

「かーいー人?かーいー人かーいー…」
よっちゃんの場当たり思考には、なん人か連れてきて
『この人は?この人は?』ってやる以外の方法でデータはとれない

「他にもいるでしょ?」
「んー、じゃー美貴ちゃん」
「藤本さん、カワイイよね」

……ほら来た
振り返った石川さんの目つき、凍っていた
ミキがコタツから抜けてるの、気付いてた
75 名前:えいきゅう、うみだぬき、 投稿日:2006/06/20(火) 12:16
報われねーな
もう止め。本日の石川さんボランティア終了
「あー寒」
「ちゃんとコタツ入ってないと風邪ひくよ」

他人の恋を円滑に進めるのは大変だな
イイなぁー、恋のキューピッド
ちょっと弓引いて、矢がぶっ刺されば終了

現実はさ、ソコからじゃん
そっから勝負じゃん

神様みたいな人の進路調査にキューピッドって書けば良かったな
どう考えてもオイシイもんな

不釣り合いカップルが世の中には腐るほどいるってことは
適当にノルマさえこなせばイイんだろ
チャラい職業だ


「ミキはキューピッドになるぞ」
「ふ、藤本さん?」
「かっけー。いつ、いつ」

「来世」
「おー美貴ちゃんクピド、クピド」
「はぁ?」
「美貴ちゃんエロス、エロス」

「はぁ?よっちゃん、頭の中が風邪」

76 名前:えいきゅう、うみだぬき、 投稿日:2006/06/20(火) 12:16
                   終了
77 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/20(火) 21:49
よっちゃんがナニゲにハクシキですね
倫理の授業で習ったばっかりだったのかしら
78 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/23(金) 15:55
>>77
忘れがちですが、そこそこ勉強が出来る読書家だったはずです。
79 名前:探偵。端艇。 投稿日:2006/06/23(金) 15:56

「誰もいねー」
「誰のせいだよ」

夕暮れ差し込む廊下
吹奏楽部の耳障りな音は遠くから聞こえてくるけど
まっすぐ伸びた廊下には人影がない

「すげー怒ってたね」
「担任、よっちゃんのことキライだからね」
「マージでー」
でなきゃ、あんな小さなことでこんな時間まで引っ張らない
巻き添えくらったミキの身にもなれ
80 名前:探偵。端艇。 投稿日:2006/06/23(金) 15:56

一昨日のミキの掃除当番のことで呼び出しくらったんだけど
怒鳴られたのに納得がいかない

結果が全てじゃん
掃除に滞りはなかった
ソレでイイんじゃないの?

当番はミキだけど、よっちゃんに委託はした
100歩ゆずって……ムリだな、ゆずる気にならない
掃除当番に求められることは全うした

たまにはよっちゃんでもお役に立てると証明したじゃん
いっしゅ利害の一致
ミキもよっちゃんも不満なし
81 名前:探偵。端艇。 投稿日:2006/06/23(金) 15:57

「掃除終わりの報告までよっちゃんが行ったりするからだよ」
「みんな忙しそうだったんだもん」
親切を振りまく前に立場をわきまえろ

ミキには予定があった
呼び出されたのは昨日だったけど、うっかりのフリしてそっこー帰った

そしたら今日、超いかってた、担任のヤツ
人間のサイズがバレるよね

『掃除は誰も楽しくてやってるわけじゃない
みんなが気持ちよく学校生活を送れるように
みんなで協力してようって決めたことだろう』

アレね、語尾にはいちいち感嘆符付けてね
あくまで掃除=生徒の自主性スタンスでね
ミキのツッコミ冴えわたっちゃいけない空気でね
82 名前:探偵。端艇。 投稿日:2006/06/23(金) 15:57

「用事ってなんだったの?」
「ドラマの再放送」
中学生にだってゆずれない用件はいくらでもある
再放送は生で見ることに意義がある
微妙な時間帯に、放送時は見向きもしなかったドラマを
だらだら見ちゃうのがオツなんだ

「恋人いないと美貴ちゃんの生活、自堕落だよね」
恋人ができないよっちゃんの場合はドコまでも落ちていくだけか
人生=落下のヤツに、どう思われてもイイ

「なんとでも言え。もしかしてよっちゃん誰かアッセンしてほしいの?」
「美貴ちゃんの前の恋人とか、前の前の恋人とか、前の前の前の――」

「オマエ、そろそろ黙らないと、ヤバイよ」
「ごめんなさい」

厄日だったな
面白いことを探し出して、今日は±0をゼロを目指すか

廊下を見渡した

83 名前:探偵。端艇。 投稿日:2006/06/23(金) 15:58
発見した

「よっちゃん、コレの名前知ってる?」
指さした先をのぞき込んでよっちゃんが頷く
「プラグ」
知名度高いんだな、コレ
「じゃーさ、コノ向こう側になにがあるか知ってる?」
「え?なんかあるの?」
あるだろー穴開けたくらいだから

「考えろよ、小さい頃砂場で山つくってトンネル掘っただろ?」
「うん、よくやった。美貴ちゃんにいっつも砂かけられた」
「全然覚えてない」
「超イテーの、アレ。ヒキョウ」

ミキみたいなまっすぐな人間を、オマエは今どう評した?
「浅い。例えばよっちゃんが砂をもったら人にかけれるか?」
「やんねー、イテーもん」
「だろ。ミキだってそれぐらいわかるわけ
ソノためらいを乗り越えて、行動に移せた実行力を買え」
「あーなるほど」

「そんな決断力のあるミキは――」
「えーっと。美貴ちゃんさん、かっけー」
はい、正解。良くできました
他にも言葉にならないモドカシサの表現とか、人聞き良く飾ってイイぞ
84 名前:探偵。端艇。 投稿日:2006/06/23(金) 15:58

「戻るけど、よっちゃんがトンネルを掘ったのはなぜだ」
「んーと……ソコに山があるからさ」
「ちげーよ。ミキが向かい側にいるからだよ」
「そーか?」

「そーだよ、決まってんじゃん
向こう岸が見えないのにボートがあったからって乗るか?」
「うん。面白そうじゃん」
コノ例えは失敗だった
沈め、ボートの底に穴が開け
または、ウサギさんのすすめでドロの舟に乗れ

「とにかく、向こうになにかがあるから穴はできるんだよ」
「へー」

「だから、トライ」
差し出した鉛筆をすんなり受け取った
「へ?」
それから不思議がる
「え?指すの?」
ソレ以外で向こう側の世界を知る方法ないだろ

「向こうから覗いてる人いたら超キケンじゃん」
人がいる前提か
「よっちゃんだって、目に刺さりそうなら逃げるだろ」
「うん」
「じゃーいてもだいじょぶじゃん。やってみろ」

85 名前:探偵。端艇。 投稿日:2006/06/23(金) 15:59



よっちゃんは、本当に実行した

バーンてなった

ミキたちは逃げた
いや、遅くならないように慌てて下校した


86 名前:探偵。端艇。 投稿日:2006/06/23(金) 15:59


「差し損だったね」
これからなにかを失えば確かに損だ
好感度とか、内申点とか
ミキの手腕にかかってる

「明日さ、いろいろあると思うけど成り行きはミキに一任しろ」
「よくわかんねーけど、了解」

「最終的にムリを通せない空気になったら
単独犯での全面自供とっけんをよっちゃんにあげる」
「とっけん?特別券?」

どれでもイイや
自首が成立するギリギリラインを見極めなきゃな
反省しています感を演出できるタイミング
情状シャクリョウ狙いだな
87 名前:探偵。端艇。 投稿日:2006/06/23(金) 16:00
「覚えとけ。すぐに白状するのは血が流れた時だけだ」
科学の力は甘く見られない
他は、人生を和やかに送るため黙秘権行使

「嘘ついてイイの?」
「言わないのは嘘ではない」
「なるほど。了解しました」

「よし、じゃー復唱」
「えーと。血が流れるまで待て!」
たぶん違ってるけど、まーイイや

あかるい日と書いて、明日
面倒くさいと分かりきってても、明日

「明日、休むか」
「明日は体育があるからヤダ」
88 名前:探偵。端艇。 投稿日:2006/06/23(金) 16:00
                   終了
89 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/23(金) 17:26
これは前に話に出たアレですかw
90 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/27(火) 11:45
(0^〜^) 中学3年生 (VvV从  
を入れ忘れてました。


>>89
おそらくご想像のアレで間違いないかと
91 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:46
「よっちゃんはコワイものある?」
例えば、昨日の石川さんとか
例えば、石川さんの本当の姿とか

「コワイもの、えーっとね。チョコレート」
まんじゅうコワイみたいな面白話ではないだろ、ソレ

「チョコ食べ過ぎると鼻血出るって噂はホントだった?」
「ん、ウソと思う」
「出なかったんだ。全部食べられたの?」

「チョコレートいっぱい食べないといけない時はしりとりするとイイよ」
「へー。よっちゃん頭だいじょぶ?」
甘みは脳をむしばむんだな。勉強になる

「あんね、石川さんが気を紛らせればイイって」
「で、しりとりしながらチョコ食べたの?」
「うん」
「超ナイスアドバイスじゃん」
「うん」
相談できる相手が石川さんだけの状況になったとしても
石川さんにだけは相談してはいけない。勉強になる
92 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:47
「しりとりしてると甘いのとかわかんなくなんだよ」
味覚は耐えられるラインを超えると麻痺する、と
人体の神秘。腹も身のうち
ミキも肉はおいしく食べれるラインで止めておこう

「大発見じゃん」
ダンスしてしまえ
「うん。でも夜、頭痛が痛くなった」
ただの国語が不自由なバカ発言なのか
重ね重ねしんどかったってことなのか、微妙

「石川さんからは?」
「もらった。ソレは見てない時に食べてって」
乙女心だな。律儀さとソレのアンバランスが問題だけど

「食べたの?」
「しばらくチョコレート見たくないから冷蔵庫」

ミキには計り知れないだけで
石川さんの戦術に壮大な理由があって欲しい
正攻法が効かないよっちゃんという強敵を負かすための
綿密な作戦であって欲しい
そうじゃないとミキ、石川さんの戦術『裏目』と呼んでしまいそう
93 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:47

「美貴ちゃんはちゃんと恋人に渡せた?」
「言わずもがな」
「ずもがな?」

「あー、ずもがな」
「おー!ずもがなずもがな」
よっちゃんが鼓舞したようにはりきって拳を振り上げた
世間様の目があるから、ミキの拳がソノ後頭部をとらえた

「ずもがなずもがな」
頭を押さえながらもまだ続ける
このポンコツはとうとう本格修理の時期かもしれない

「ずもがなずもがな」
「よっちゃん?」

「ずもがなずもがな。どーしよ美貴ちゃん、楽しくなってきちゃった」
コイツは遊興費かからないでうらやましいよ
嘘。ちっともうらやましくない
94 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:47

「お、おはようございます」
目の前に、昨日と同じ人とは思えない晴れやかに微笑む石川さん
「お、おはよー」
不覚にもミキはビビッている

「石川さん、ずもがなずもがな」
「うん、ずもがなね」
スゴイな。圧倒的なその許容力
ミキが1番注意するべき人物かもしれない

石川さんを見ているとドッジボールで最後まで残っちゃった子を思い出す
肩が強いでもないのに
走り回って気付くと最後に残っちゃった子
外野と内野に踊らされても
よける技術だけムダにあっちゃった子
お願いだから当たってくれ
このゲームを終わりにして次の始めようよと味方にまで思わせる子

絶対しつこいもん
投降だけはしないタイプじゃん
戦う相手として1番厄介なタイプ
95 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:48

「ずもがなずもがな」
「うん、楽しいね」
おかしな能力をどんどん上げていく

ミキは指を咥えた傍観者だ
石川さんもよっちゃんもイイ方向に導きたいなんて
志が、そもそも人間ワザじゃないんだ

「よっちゃん、日曜バイト休みでしょ」
「うん。ずもがなずもがな」
「ミキんち来いよ」
視界に入る石川さんのガッカリ顔
別にアナタのジャマをする気はないよ

「どして?ずもがなずもがな」
「そろそろ誕生日プレゼントつめて考えるから」
「了解。ずもがなずもがな」

「石川さんも一緒に招待するから、ソノうるさいの止めて」
招待状なくたって散々来てるんだから、今更遠慮しないで
96 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:48


日曜日

「ヒーちゃん達来てるよ」

まだ午前中
ママに頼まれて早起きして買い物に行った
タイムサービス品をぶら下げて帰るともうヤツらは来ていた
集合時刻、早過ぎ

97 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:49

「ただい――」
ミキの部屋、ドアを開け視界に飛び込んできたのは
唇に人差し指を当て、鬼の形相で睨んでくる石川さん

ベットの上にはスヤスヤおやすみ中のよっちゃん

忍び足で近づいてきた石川さんに押されて
2人で部屋を出るとドアはそーっと閉められた

「え?なに?」
「あ、あの。吉澤さん眠いそうなので寝かせてあげてください」

…だったら、もっとゆっくり来たら良かったんじゃない?
ミキだってたまたま早起きだっただけだよ
石川さんは逸る気持ちを抑えられなかった?

有無言わせぬオーラに押されて
ミキは石川さんとその場に座った
ミキの家で、ミキがよっちゃんに気をつかう不条理
98 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:49
爪をいじりながら話題を探す
石川さんとのフリートークに見合った話題

「ふ、藤本さんのお母さん。ヒーちゃんって呼ぶんですね」
そうだよね。早くに気付いたはいたけど主題はよっちゃんだよね
ヤダよね、かなり

「小さい頃、よっちゃん自分でもそー言ってたから」
ひとみだと3文字もあって、言いにくいから
1文字にしろよと命令したような、してないような

「…そうなんですか。藤本さんは呼ばないですよね」
「よっちゃんの方が言いやすいから」
あとは、名字の方の1文字ってよそよそしさに惹かれた

「あ、あの。本題に入りたいと思います」
今のは前振り?
「……藤本さんのお母さんから引き出した情報ですが」
コワイんだけど…聞いたんですけど、とかじゃないのが

たぶん、そんなに話し込む時間はなかったよね
短時間に聞き出すべきことに集中した会話
流れを楽しまない会話
石川さんのコミニュケーション能力。発達が特殊な方に顕著だな
99 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:50

「なに?」
「……藤本さん、小さい頃。吉澤さんと結婚すると言っていたと」
「言ってない」
「お母さんははっきりと証言してくれました」

「ママの勘違いじゃん?」
「いえ、言ったはずです。言いました」
断定?そのときいなかった石川さんが決定してイイの?

言ったかどうかは覚えてないけど、ママもまた余計なことを
今晩ミキの名前の付いたワラ人形誕生しちゃうよ
石川さんがそんなことしないと誰も言い切れないんだよ

知れば知るほど
可能性のパーセンテージを上げざるおえない人物なんだよ

「万が一言ってても、結婚の意味を知らない頃だよ」
気の迷いって言葉すら使いたくない
言ってても、そんなの便利だろうからってだけじゃん
従えるだけの制度と勘違いしていただけの話じゃん
それ以外考えられないじゃん

「知識の問題でしょうか」
厄介な人だ、ホント
100 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:51
「あ、思い出した。ケライにしたいって言ってた」
「え、ケライ?」
「そう、ケライ。言った、口癖だった。滑舌ワルかったんだな、ミキ」
苦しいぞ、ミキ
でもガンバ、ミキ

「ケライ、ですか?」
「そうだよ。元々ケライとケッコンってよく聞き間違えるからね」
似てるでしょ
ミキはまだ聞き間違えたことないけど、似てるでしょ

「そーゆーのってあるよね、よく」
「…ありますかね?」

1万回くらい唱えてみてよ
ケがかぶっている以上1回や2回そう聞こえる可能性
否定できないよ

ケライケライケラ…ケッライ…ケッコ…ケッコン

なんなら今ミキが実演するよ
この際、手っ取り早く6回目くらいからケッコンって言うよ
コレきっかけに職業選択に女優も入れるくらい自然に演じる自信ある

「あるある」
「そう、ですかね?」
101 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:51


「ずもがなー!」


「あ、よっちゃん起きた」
ドアの向こうからバカの目覚めの一声

「おはよう」
石川さんは、ミキをおいてよっちゃんの元に走った

ミキに残ったのは、早朝にあるまじき虚脱感
ぼんやりしながら、よっちゃんの今回のナイスタイミングだけは
プレゼントの金額に考慮してやってもイイかと優しいミキは思った


102 名前:ほしくず、ずじょうちゅうい、 投稿日:2006/06/27(火) 11:52
                   終了
103 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/27(火) 22:00
すげー(笑)
頑張ったミキちゃん・゜・(つД`)・゜・
104 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/28(水) 07:55
ずもがな〜
やべぇ〜 楽しいです
105 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/28(水) 20:22
つーか石川さんこえーw
106 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/30(金) 12:15
>>103
一難が去っただけですがベストを尽くしたと思います。
>>104
声に出したら70回目くらいから楽しくなるかもしれません。
>>105
通常は穏和な人柄です。愛ゆえです、ソイツのせいです。
107 名前:快走。回想。 投稿日:2006/06/30(金) 12:16
「石川さん、ホントにイイの?」
「な、なにがですか?」
「いや、ソイツにしなくて」
「私は吉澤さんしか考えられません」

春休み初日
初っ端から残念というか面倒というか大仕事
ソノ都合で石川さんが単品でやってきた

「石川さんて、根気強いね」
「し、しつこいってよく言われます」
自覚症状ありですか、そうですか
ミキ思いついたら、聞こえのイイ言葉で誉めてあげるから時間はちょうだい

「やっぱり、よっちゃんにするんだ」
「当然です。私バカみたいに吉澤さんが好きです、好き過ぎます」
あ、そういうのはイイや
聞いていて、申し訳ない
聞いていて、気分がワルイ
108 名前:快走。回想。 投稿日:2006/06/30(金) 12:16
「石川さん、かけよーか」

「ま、待ってください。心の準備が」
ちょっと震えちゃって、マジ怯え
よくよく話を聞いたら、ソイツの声を聞くのもコワイんだって
好きな人に、恐怖感を与えただけなんて
バカだな、ソイツも
よっちゃんとは違う方面でのバカだな

なかなか決心がつかないのか
頭を振りながら両手でTをつくりタイムのアピール
「石川さんのタイミングでイイけど」
「す、すみません」

石川さんは溜息を響かせてから
おいてあったスクールバックを引き寄せた
素速くファスナーを開いて、なにかを取り出した
しっかり胸に抱く
「なにソレ?」
体の力を抜いて、石川さんがソレをミキに示した
109 名前:快走。回想。 投稿日:2006/06/30(金) 12:17

「私にパワーをくれるんです」
よっちゃんの写真。2L版。フレーム入り

ミキの知らない間に逝ったとかじゃないだろう?
抱きしめない、写真なんか抱きしめないで
自ら偶像崇拝さを高めていかないでよ
アナタ、彼女なんだから
終わったら存分に生身を抱きしめたらイイじゃん
想像したら、ちょっと薄気味ワルイけど止めないから

石川さんは写真のよっちゃんに話しかけている
こんなの遠い世界の出来事だと嬉しいけど

「……よしっ」

「充電完了?」
「は、はい」

「じゃー、かけるよ」


110 名前:快走。回想。 投稿日:2006/06/30(金) 12:17



「終わった」
「は、はい。ありがとうございました」
「あのさ、途中から泣き声っぽく聞こえなかった?」
「…ええ。勘違いではないと思います」

「おっはよ」

「あ、吉澤さん」
石川さーん、テンションの急上昇は体に良くないよ
見ているコッチの気分を害するよ
「おー石川さん、おはよー」
昼だけどな。タモさんもうテレビに出てねーし

「吉澤さん、私頑張ったよ」
先ほどのフレーム写真を掲げて伝える
なんのアピールなのかはさっぱり分からない

「おーよくやったよくやった」
一切の疑問も挟まず
状況を理解する努力なしに朗らかに誉めたたえた

数メートルの距離を保って全力で手を振り合う2人
ココは埠頭であるべきだ

111 名前:快走。回想。 投稿日:2006/06/30(金) 12:18

「石川さんはよっちゃんが好きなんだって」
「知ってる」
「違います、藤本さん。好きすぎてバカみたいなんです」
どうせならシンプルにしようよ
好きとかキライとか抜きにしてイイんじゃない?
なんなら、みたいも抜いても使えない?

「バカには見えないよ」
ソレにしか見えないよっちゃんに言われてもな
「ありがとう。好き過ぎて、困るの」

ホント、困ったよね
気持ちはこめられないけど
ソレ以外どの言葉も思いつかない

112 名前:快走。回想。 投稿日:2006/06/30(金) 12:18

「よっちゃんも困った方がイイよ」
「好きだけど、困んねーよ」
「困らなくてイイよ。好きならソレでイイの」
石川さん、もっと上を目指せ

釣り合いを考えて
よっちゃんは上って、石川さんが下りてくる平均点
ソコがミキに対してもベストに思える

「石川さんも困ることないよ」
「?」
「人間には自分でどーにもならないことがあるさ」

さ、のトコが爽やかなの
少女のマンガだと、歯がキラーンと太陽光を反射するわけ
そんな笑顔で無垢な乙女は溶けるわけ

アホか

113 名前:快走。回想。 投稿日:2006/06/30(金) 12:19
「よっちゃん、消えて」
迅速に、確実に

「だってそうじゃん。あたし100メートル6.5秒で走りたいけど走れないよ」
よっちゃんの野望の果てしなさ

6.5秒
3秒とかなら、くだらない冗談と笑って終わりのラインだけど
8秒とかなら、そのうち人類でも出来るのかなラインだけど
6.5秒

コンマを刻んでまで立てた目標ラインなのがツライ
現在のワールドレコード
いうならば10秒の壁を破りましたー、ね

目標設定までのスタートはココね

9秒後半で走れる人がいる
       ↓
きっとガンバれば8秒いけるな
       ↓
ものスゴくガンバれば7秒いけるんじゃん?
       ↓
6秒は無理か。謙虚に.5の余裕を持つか
114 名前:快走。回想。 投稿日:2006/06/30(金) 12:19
よっちゃんは、ギリギリの現実ラインで据えてる
違うと嬉しいけど、悲しいことに間違えはないだろう

あ、前提忘れないでね
人類最速の男が挑むんじゃなくて
体育が大好きだよってだけのよっちゃんがだから
クラウチングスタートになると両手両足が一緒になって
直している間にほぼレースが終わっているよっちゃんだから
よっちゃん脳への伝達が不自由な人だから
難しいことを追加されるとダメなんだよ

ソコの改善から始めないとのラインなんだよ

胸の痛みすら覚える
身内にこんなヤツいたら、毎日泣いて暮らす自信ある
115 名前:快走。回想。 投稿日:2006/06/30(金) 12:20
「吉澤さんの言うとおりだね。でもやっぱり私、頑張るから」
「よっちゃん、ガンバる石川さんに努力賞をあげなさい」
「ほーい、なに欲しい?」
「急に言われても…」

「家帰って、写真の代わりに抱きしめてやれ」
「おーハグハグ」

「ありがとうございました。それでは失礼します」
目にもとまらぬ速さで
写真をスクールバックにしまい込んだ石川さん
「美貴ちゃんじゃーね」
石川さんに手を引っ張られながら帰っていった

あっけなかったな
コレならデート入れておけば良かったな
今日はもうアイツら来ないだろうし

電話して、恋人に会いに行こうっと
116 名前:快走。回想。 投稿日:2006/06/30(金) 12:20
                   終了
117 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/01(土) 02:31
走ってますねえ
どこに向かってるのかなよっちゃんはw
118 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/04(火) 15:21
>>117
意義がない時でも、楽しく走れるのは強みかもしれません。
119 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:22
「BTS美貴ちゃんも喰うでしょ?」
「いらねーよ」
「えーもうお母さん作ってる」
「どーせ自分で2コ食べたいから聞いたんだろ?」

軽快なトークを繰り広げる

「あ、そーいえば補習だけですんだの?進級できそ?」
「あったりまえだろ。ミキを誰だと思ってんだよ」
「え?うーんと……美貴ちゃん」

春休み。うららかな日差しの下

「石川さん、生きてますか」

1人、顔面蒼白の石川さん
よっちゃんの腕をぶら下がるようにつかまえながら
生まれたての小動物ちっくにふるえている
蒼白といっても、客観的にはよっちゃんより健康的に見えるから彼女なりにだけど

「は、は、はい」
今日の口ごもり方、ハンパない
120 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:22

「てゆーかさ、今までもお泊まりとかしてたじゃん」
ミキの問いかけに口をパクパクさせるのに声がついてこない
あまりに愉快なテンパリ方

「石川さんどーぞ」
よっちゃんが手にしていたペットボトルを差し出す
良かったな、よっちゃん
オマエの人生でまさか『見かねる』が経験出来ると思ってなかっただろ

砂漠で得た命をつなぐ水のように
ふるえ続ける石川さんのノドからコクコク音がする

「だいじょぶ?」
「だ、だ大丈夫」
絶対ダメだよね

「ホントに今日が初顔合わせなの?」
「は、はい」
「会わないように避けてたの?」
「違います。ただ吉澤さんのお部屋にこもっているので…」

うぜぇ
石川さんの、よっちゃん集中力からいくと
あり得ない事態があり得てしまうからコワイ

「だいじょぶよ。お母さん、美貴ちゃんよりはコワくないから」
121 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:22


数日前にさかのぼる


よっちゃんの両親旅行中にお泊まりしにきていた石川さんを
いつも以上に使い物にならなくなったよっちゃんの元から拉致った
ミキのお手柄。不純なんとか交遊防止

ミキはその時、彼女に新たな悩みを打ち明けられた

『私まだ。吉澤さんのご両親に会っていないんです』
ビックリだよ、普通に
よっちゃんちに石川さんしょっちゅういたし
マージで?と疑った

でも確かに、よっちゃんの部屋にいて
よっちゃんのお母さんが顔を出すことは滅多にない
元々働きに出ていてあんまり家にいないし
もしかすると娘という名をした厄介動物に関わりたくないのかも

『そろそろ、正式にご挨拶に伺わなくてはと思っています』

石川さんは決意を表明した
ミキはただ、正式ってなんの?と思った

『タイミング合うとイイね』
無難に乗り切ったつもりだった
122 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:24

夕食後、石川さんをよっちゃんちに送り届けた

よっちゃんは復活はしていたけど仲間はずれにふて腐れ
電気をつけない部屋の中イジイジベーグルをかじっていた
そんなのしかと
石川さんの意向はいつ叶えられるか訊ねてみた

『お母さんなら、帰ってきた次の日もズル休みだよ』
ついでに、よっちゃんも休み
早々に訪れる絶好の機会

『お母さん家いるからオヤツにBTS作ってもらうんだ〜』
『あ、あの吉澤さん。お、お母さんに、ご、ご挨拶に伺うね』
テンパってる石川さんをよそに
『うん。BTSうめーよ』
まるで石川さんの発言が食べ物目当てかのように
よっちゃんはあっさりと了承した

善は急げの運びとなりましたとさ。おしまい


123 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:25
おしまいなわけねーよ

「でさ、どーしてミキ同伴なの?」

決戦日。春休みのミキの家にどーしてだか、石川さんが来て
どーしてだか、よっちゃんが迎えに来て
どーしてだか、ミキもろともよっちゃんの家に向かっている

「どうしてと言われましても。旅は道連れとしか」
ソレしか答えようないか?

「旅じゃないじゃん」
「人生とは旅。なんだそうです」
「…あそー」

仲人的な立場を求められてる?

微妙なムードとか、頃合いをはかって
シシオドシのBGMに乗せて
『まーまーココは若い2人に任せて』
そんなトークを同級生のくせに繰り広げなきゃダメなのか


そんなこんなで到着したよっちゃんちを前に
石川さんは肺活量限界の深呼吸中
124 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:26

「ただいまぁ」
まずはよっちゃんが大声で叫ぶ

「ドコ行ってたの?BTS出来たよ」
キッチンからお母さんの声がする
「美貴ちゃんち」

どーでもイイけど、BTS
吉澤家ではまかり通るBTS
Bagl Tamago Special
ミキは何度見てもスペシャル感がわからない
あと、玉子は日本語のままTで押す頑なさもわからない

「ヒーママ、おじゃまします」

いつの間にかよっちゃんの横から離れていた石川さんを振り返る
緊張の極限で門扉のトコで固まっている

「だいじょぶだから」
戻って手を引くと転びそうな勢いで右手と右足が一緒に動く
マンガ的緊張表現に感動
125 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:27
「美貴ちゃん来てくれたのぉ」

「いるよ、石川さんも入って」
鼻をクンクンさせてるよっちゃんが呼びかけた

「誰っ!!石川さんてっ!!」
勢い込んだよっちゃんのお母さん
エプロンで手を拭きつつ真顔で走ってくる

ミキの隣で俯いている石川さん

見開いた目でソレを見つめるよっちゃんのお母さん

126 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:27
「よっちゃん、ご紹介」
わかりやすく、ミキは注釈入りでお楽しみ下さい

「石川さん、コレお母さん」
注)母親をコレ扱い

「……」
注)息を飲み頷く緊迫の石川さん

「お母さん、石川さん。シーシー」
注)よっちゃんは、she=彼女=恋人と紹介している、つもりだな

途端に赤くなり頬に手を当てる石川さん
注)よっちゃんのがちゃんと伝わっているゆえの珍現象

「……ひとみが、ひとみが美貴ちゃん以外のお友達を連れてきた…」
注)大事な部分は伝わっていないけど、別の大きな感慨にヒタヒタのよっちゃんのお母さん
127 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:28

「ヒーママ、上がってイイ?」
もう疲れたから、後は適当に察して

「あ、どうぞどうぞ。上がって上がって」
そう言うとクルッと背を向けスゴイ勢いでキッチンに戻っていった

ミキに向いた石川さんの視線
きらわれましたか、私…目がそう訴えかけている


「美貴ちゃんお願い!」
ぱたぱたスリッパの音を立てながら再びなにかを手に戻ってきた
「なに?」
「コレ、コレを」
息も絶え絶えソレをミキに押しつけた

携帯だった

パントマイムでミキに伝えようとする
はいはい、開けって?
で、どーすんの?
128 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:28
「と、撮って。撮ってちょうだい。写メってちょうだい」
すっげ、娘のお友達が来た記念
そして、よっちゃんのお母さん
携帯カメラで撮影することを写メだと思ってる

だよね?まさかメールに添付しないよね?

「あたしが撮ったげるよ」
ぼんやり突っ立ていたよっちゃんが手を伸ばした

「イイから」
よっちゃんのお母さんは咄嗟に、その手を叩き落とした
本能がよっちゃん(実の娘)への信頼感の薄さをさらけ出した名場面

「美貴ちゃんにお願いするから、ひとみは手を洗ってきなさい」
悲しい目がつぶらな娘に、なんとか母性は失われずにすんだ
「忘れてた。ほーい」
スキップで洗面所に消えた

よっちゃんのハートのヤワさは特注品
なかなか傷ついたりしない
アレだ、斬鉄剣でも切れないコンニャクみたいなもんだ

ごめん、今のは適当だった
たぶんそーゆー感じじゃない
129 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:29
「ほら、石川さん上がって。一緒に撮りましょう」
「イイんですか?」
「お願い、感動してるの。とっても嬉しいの」
急かされて石川さんはおずおずと靴を脱ぐ

交際相手の母親。娘の彼女
微妙なのは予想出来たけど。予想とは違う方面に微妙

よっちゃんのお母さん。感動に包まれ過ぎ
石川さん。何回も泊まりに来てんじゃん、始めて来訪感を出さない
よっちゃん。コノ場の架け橋はオマエであるべきだ

笑止

浮かされている今に便乗して
恋人なんだとぶっちゃけた方があとあと楽なんじゃないの?

結局、オヤツを待ちきれないよっちゃんがごねだすまで撮影会は続いた
130 名前:イレギュッッラー 投稿日:2006/07/04(火) 15:29
                   終了
131 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/05(水) 00:51
ヒーママかわいいよヒーママ
132 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/07(金) 16:04
>>131
同意。さすがあの子の成分の半分。
133 名前:酔い。余意。 投稿日:2006/07/07(金) 16:05
「石川さん急いで」
ミキの勢いに面食らってる場合じゃない
早く歩け
慌てて鞄をつかんだのを確認して連行する
石川さんのクラスメートがひいてるくせに注目している
強引なのは百も承知だ

石川さんには放課後の予定を訊ねる必要がない
用があると断られたためしがない
急によっちゃんのスケジュールに変更があっても
すぐに対応できる態勢なんだと思う

「あ、あの、吉澤さんは?」
「実験だから、早く」
「じ、実験?」

ミキにキレられためにか一応ついてくる
ちょこちょこ歩きがささやかな抵抗

よっちゃいるところ、湧き出すように出現する石川さん
徹底した人生マンツーマンマーク姿勢

コレって一方通行の引力なのか?
逆ってどーなの、と

134 名前:酔い。余意。 投稿日:2006/07/07(金) 16:07
しばらくすると牽引していた手がふと軽くなる
アタリがきた

「内緒で帰るのなし」
石川さんというエサによっちゃんが食い付いた

そっかぁ、石川さんだけで発生してるんではないのか
釣れなきゃ釣れないで困るけど
釣れたら釣れたで、相乗効果に未来の希望が抱けない

「うるさい」

石川さんも無抵抗に戻る
そう思ってまた歩き出したのに、重い
まだ、なにか心残りがあるわけ?
振り返ってみた
135 名前:酔い。余意。 投稿日:2006/07/07(金) 16:07
左手をミキに引っ張られている石川さん
右手をつかんでいるよっちゃんがニヤニヤしながら動かない
両腕はいっぱいいっぱいにのびている
真ん中で割かれるのも時間の問題だ
拷問だ

「よっちゃん、目的はなに?」
「美貴ちゃんを大変がらせる」
目的としていない普段の行動だけで間に合ってる

「放せ」
キャッチ&リリースで
よっちゃんなんかリリースで
「やーだー」
「石川さんが痛がってる」
「痛い?」
「ちょ、ちょっとだけ」
「美貴ちゃんに攫われないようにガンバルから、もちっとガマンして」

「あのな、そーゆー場面だと、取られると分かっていても
愛する人を痛めつけたくないと、放すもんなんだよ」
「へー。でも石川さんもつかんでるからムリ」
「…じゃー歩け」
「へーい」
136 名前:酔い。余意。 投稿日:2006/07/07(金) 16:08
春休みが終わり、新学年
作為という名の悪意によってミキはまたよっちゃんと同じクラス

「ね、石川さんのクラスに特別よっちゃんあげるよ」
「…どんな権限で仰っているのですか?」
「1人2人増えても支障ないし」
「ありませんかね?」
ないない。ミキの支障さえ取り除かれるなら万々歳じゃん

「それより、吉澤さんの誕生日どうしますか」
「どーって、2人でお出かけでもすれば」
「イイんですか?藤本さんご一緒じゃなくて」

イイもなにも、ミキ恋人とデートの予定だし
恋と青春の謳歌に大忙しなんだから
よっちゃんと石川さんにかまってばかりはいれない
137 名前:酔い。余意。 投稿日:2006/07/07(金) 16:08
「ど、どうしよう」
予想外だったの?
コイツ相手なら独占禁止法には引っかからないから
法律には触れないから安心してイイよ
「遊園地行けば?ベタでイイんじゃん」

「な〜んの話?」
チャリを引いてるよっちゃんが口を挟む

「お前の誕生日サプライズ計画」
「あたしも混ぜて」
「サプライズさが落ちるからダメ」
「仲間はずれ?」
「そうだ」

「ちくしょう、グレてやる歌ってやる。♪七夕さーらさら。落ち葉に揺れる」
「吉澤さん、歌詞が違うよ」
石川さん、まず季節はずれ感を注意しよう
春はなはだしい4月だよ、今

こんなあやしいのと一緒に歩いていると
国家権力に拘束されても文句言えなくない?
138 名前:酔い。余意。 投稿日:2006/07/07(金) 16:08
「よっちゃん5駅だったよね」
「ちっげーよ、6駅。超進歩」
いいよなあ、上を見ない生き方。現状で満腹の生き方

「なんの話ですか?」
「コイツ乗り物酔いヒドイから
6駅より遠出するなら酔い止め与えて」

「はい」
石川さんは、手帳に書き込む
名前を書くと死ぬってノートあったよね
アレだとイイな

石川さんの手帳
きっと、なにからなにまで
よっちゃんの生態が書かれてるんだろうな
レアもの。コノ世界で無用の長物
よっちゃんが無用

「三半規管が弱いらしいから」
「それで歩くのが好きなんですね」
「関係ないと思う」
139 名前:酔い。余意。 投稿日:2006/07/07(金) 16:09
「あ、遊園地。ダメじゃないですか」
気付いちゃったか
だって面白いじゃん
ミキは行かないし、話聞くだけなら笑えるでしょ

「そーなんだけど、初めての経験は石川さんとがイイでしょ」
「…初めて、を」
「そう初めてを」

全然深い意味はないのに、意味深に
決意を固めたのか石川さんがしっかりと頷いた

「ねーねーあたし誕生日ないよ」
「だまれ」
140 名前:酔い。余意。 投稿日:2006/07/07(金) 16:09
                   終了
141 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/07(金) 20:22
え、ないの?w
142 名前:konkon 投稿日:2006/07/08(土) 00:47
相変わらず笑わせてくれますねw
文句ではないですけど特別出演で85年組みで出して・・・何でもないです!
次も待ってます!
143 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/08(土) 23:52
藤本さんが不憫になってくるw
144 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/11(火) 14:15
>>141
みたいです。前スレから彼女が言い張るので困っています。
>>142
役不足になりそうなのでこのままいくのでしょう。こちら側の力不足です。
>>143
好きなのでしょうね、そういう位置が。と思うしかないようです。
145 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:16

「なんでミキまで来なきゃいけないの?」

「行きたいなって言ったの美貴ちゃんじゃん」

よっちゃんには理解できないだろうよ
言ったよ、テレビ見て

「チューリップいっぱいだよ。嬉しいよね、石川さん?」
「そうだね」
146 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:16
先夜、バイト帰りによっちゃんがお邪魔に来た

ゴールデンな連休までもう少しだから
つけていたテレビで行楽地情報がやっていた
割と家から近い自然公園が映って

咲き誇る色とりどりのチューリップ
『あーキレイ。見てみたい』呟くミキ


ソコで完結じゃない?
乙女なミキから思わずこぼれちゃっただけじゃん
言葉にしただけで、大満足だったのに
147 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:17


デートのない休日。ゆっくり寝ていたかった
無情に叩き起こすママ。告げられた訪問者

玄関には
今どき水筒タスキ掛け、背中にはなんか括ってるバカ
隣には、石川さん
こちらも負けじと、背負うリュックがいけてない

もう1度眠りにつくべきだ。そう思った

両人の目に余る準備万端ぶりに
行ってあげなさいとママが意見した
148 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:17


「あ、あの人かっこイイね?」
「ん?そだね。つける?」
石川さんの小さな舌打ち
控えめなミキは極力黙ってますから

「イイよぉそんなこと」
「かっけーんでしょ?勿体ないじゃん」
「よ、よく見たらそんなでもなかった」

「そ?石川さん目ワルイの?」
「ワルくはないけど…吉澤さんは?」
「あたしはワルイよ、本読むから。賢そうでしょ」
短絡イメージで応酬

「吉澤さんは火曜日と金曜日どっちが好き?」
あ、切り替えた
見事。日に日に上手くなってる
賢いとは肯定せずに移行した辺りが心憎い

「金曜日」
唐突な質問も、待ってましたの勢いで返せる
通じ合うとか合わないじゃないな
149 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:18

仰ぎ見る青天は、雲1つない

五月晴れって5月と6月どっちで言うのか躊躇うよね
そんな賢そうな疑問でも抱えておかないと
知らぬ間に迷い込んだエリア51から抜け出せなくなる

この空を見よ
どこかに必ず未確認の飛行物体がある

そうであって欲しい
150 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:18
暑いのに、そこそこの人入り

緑を満喫してくださいな押し付けがましい風景
計算し尽くした木々は等間隔で整列
不自然極まりない自然公園で小高くつくられたウォーキングコースを行く

「ゴールデンウィークなら来週じゃん」
「ん。先取り。前のめりで」
「石川さん、よっちゃん迷子にしないでね」
「は、はい」
がっつり腕を捕らえ手を握っている
いつもは人目を考えて欲しいけど、今日は許す
一時の油断も厳禁

「石川さん、手がかゆい」
「ごめんね、でもダメなの。離せないの」
「どして」

「迷子になっちゃうよ」
「あーなるほど。んじゃ」

脇見していたミキの手が捕まった
151 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:18
「んーだよ。つなぐな、バカ」
「迷子になるって。ゴールデンウィークだったら大変だよ
ね、石川さん?」
「……」
「なんねーし、なっても問題ねーよ」
オマエの捕獲はゴールデンとは無関係だし

「……」
石川さん、せめてコメントはだそ?
名前呼ばれつつの会話だったじゃん

力強く握るなって、バカ
石川の、視線が……

なんだ、コノ影。3人並列
視聴率捨てたダメドラマのオープニングみたいな爽やかさ
ミキの青春の1ページに書き加えたくない

「組み体操できるね」
「1人で組んでろ」
「……」
「オオギね」
「1人でやれって」
「……」
「ガンバルね」
コイツ、聞いてねえ

152 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:19

「真ん中、突っ立ってるだけじゃん。身長さえあればイイですよ、じゃん」
「オオギの真ん中は命がけなんだよ、与一に射抜かれる」
「話が見えないんだけど」
「美貴ちゃん教科書読んでないでしょ」

「それより。放せ」
「だーかーら、迷子になるよ」
「……」
「ならないから、放せ」
「石川さん、美貴ちゃんがワガママ言うよ」

「……放したらイイと思うよ」
清々しいほどに素っ気ない石川さんの声
「じゃそーする」

手からよっちゃんの温もりが消え、背中には冷たい汗が落ちていった
153 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:19


「スケボーどーすんの」

「石川さんから見たいってリクエストが来たの」
背中に括っていた板を出した
「水筒持ってくれる?」
「うん」
石川さんの手が放れた

よっちゃんは滑らせたボードに飛び乗った

「人様を巻き込むなよ」
「了解」

ザーザー風きる

「かっけー?」
「うん」
石川さんが褒めちぎる
ソノ感動が伴走を買って出そうで
ミキはさり気なく、彼女のリュックのヒモを握った
154 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:19
「見てて」

空き缶が落ちいてた
よっちゃんが向かっていく
直前でテールで蹴って、ボードごとJUMP
転べ、ミキは祈った

でも、着地もキレイに決まってしまう
運動神経だけは恵まれてんだよな、つまんねぇ

「オーリー成功」
よっちゃんはして板を止めた
「あ、エコエコ」
缶を拾い、ゴミはゴミ箱へ

戻ってくる時に、両手はピース
メッセージ性を読み取れない
ミキは、おそるおそる。隣の石川さんを一目
うん、コッチでもダブルピース

平然と通じ合えるわけは宇宙人にだって分からない
155 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:20

「あっ!川」
興味に一直線のよっちゃんが板を手に
舗装道路からコースアウト

「あの、バカ。ってちょっと!」
石川さん、後追い開始
ミキは、握ったままだったヒモをそっと放した

「見てー!魚いる」
小川の縁で膝を抱えているよっちゃん
「ホントだ、たくさんいるね」
石川さんはあっという間に隣をキープした

「美貴ちゃんも早く!!」
興味ない。見ても喜べない
「藤本さん、たくさんいますよ!」

…分かった、分かったよ
行けば満足なんだろ?バカップル
156 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:20
「いるな」
コヤツラの頭越しに水面をのぞいた
黒っぽい点が見える。お子さんなら大喜び

「捕まえたら怒られる?」
「怒られる」
公共物だ。まずミキが先鋒きって怒る

「小さいね、なんの魚だろうね」
よっちゃんがかじり付かなかったら
石川さんだって、なんの魚だろうが興味ないくせに

「イサギコ」
熱心に見入っているよっちゃんからの呟き
「あーイサギコか」
石川さんの素早い同意

……イサギコ?

魚肉方面に思い入れはないからな
魚編になんと書く?
漢字にしたところで解せたりしないけど
157 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:21
「ね、美貴ちゃん。イサギコ」

さっきの石川さんの同意は、いつもながら迷いがなかった
よっちゃんが知っていて、ミキが知らないとか
この世にあってはならない

「あ、あ〜イサギコか」

知ってた知ってた
確かね俗称なんだよ、イサギコ
天然モノだと60センチくらいになるよね
淡泊な白身魚でムニエルとか割といけるよね

…よしっ、コレで分かってる感はアピールできたな
より詳しい情報はさかなクンに求めてくれ

「いつまでたってもチューリップ畑につかないぞ」
「ほーい、行こ行こ」
158 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:21
コースに戻った後、ミキはボードを取り上げて座る
石川さんを相乗りさせる

「よし、引け」
「えーズルイよー」
オマエが言い出したんだ
馬車馬のように働くべきだ

同じ方向に歩いていくのは親子連れが多い
自動(人力)で進んでいくミキたちは子供らの羨望の的

「あ、なんか面白そー」
また止まったよっちゃんの視線の先

周りの子供らがココにきて俄然元気を取り戻す
段ボールを抱えてソコに一直線
ミキたちを追い越していく

「なに?」
下車して、標識を読む

『自然の大滑り台』

見渡した
青々した短い芝の生えた斜面
ただの土手だ

持参の段ボールをお尻の下に敷いて滑っていく子供ら
芝で滑りはワルそうだけど意外と斜度はキツイ
159 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:22
もろもろの状況を把握してから、質す
「よっちゃん…なに考えてる?」

「コレで滑ってみる」
もちろん、スケボー

「よ、吉澤さんキケンだよ」
やってみろと背中を押したい
けど、石川さんがいる

「だいじょぶ。あたし大人だから」
よっちゃんは自信満々の笑み
確かに周りの子供らは、ほとんど就学前くらいだとは思う

「…でも」

「いってきまーす」

石川さんの停止を退けて
ちょっとした助走までつけて
バカはスケボーで急勾配へ飛び出した
160 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:25

……予想的中

加速につぐ加速
1人冬季五輪開催中

「はえー」
「………」
石川さんは言葉もない
無理もない

シャレにならない速度のまま斜面を下りきった
平地へと突入
ソコでも、スピードは殺せない

そのまま、ぐんぐん背中が小さくなっていく

「………」

そして、急に。消えた

161 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:25


「いなくなっちゃったね」
「…はい」

「意見を聞かせて?消えた辺りどーなってるかな」
「…はい。更なる高低差が見受けられます」
だよね。ミキにもそう見える

「石川さん、残念だけど。よっちゃん神隠しにあわれた」
「落ちたのだと思います」

待って、ね?
今、姿を確認できてないんだよ
てことは、落ちたという事実があったとしても
神隠しにあっているのを否定する材料もないわけ

『自然の大滑り台』はアノ速度を出すと、秘密の扉が開ける
そんな最新メカニズムを取り入れたのかもしれないじゃん
162 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:26
石川さん、周りを見て。こっそりと

休日ほのぼの親子の群れが
ミキたちを駆け抜けていったバカの連れと判断しようとしている
さり気なく、動向に注目が集まってるんだよ

イイ歳して無謀行動したバカは救うより
犠牲にして、忘れるのがベストな選択なんだよ

「帰ろ」
お願いします、空気を察して下さい
「え、見捨てるんですか?」

「いや、ミキ今日石川さんとハイキングきただけじゃん」
手始めは、記憶の改ざんから
ただのアクティブなお休みだったと演出しよ?
気の持ちようじゃん

ミキはいちはやく
イイ思い出がつくれなかった自然の大滑り台に背を向けた
163 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:26

「あっ、見て下さい、藤本さん」

「ヤダ、ミキはなにも見たくない」

「お、お願いですから」

石川さんも石川さんで
1人で受け止めるのはツライみたい

ミキは無理矢理、反転させられた

164 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:27


「…ニコニコしてます」

言われなくても目に入っちゃう
ジーンズの両膝下、ドロまみれ
白かったTシャツがアバンギャルドなむら染め

「スケボー壊れた!!」
ボードを持つ手を脳天気に振り回している

「叫びました」

聞こえたよ
周りの人々が呼ぶ先にいるミキたちを
仲間だと最終判決を下した時を同じくして

「速いでしょ!!」

大声での自慢をおやめ下さい
そのためなら敬語くらい使ってやるから
165 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:27
よっちゃんが腰を屈めて膝に付着するドロを払い始めた

その時だった

滑りきれずに斜面に点在している子供ら
どの子が始めたのか
1人、また1人。拍手を始めた

なに事だろう
よっちゃんもそう思ったらしく、顔を上げた

拍手が大きくなった


キョロキョロして、どうも喝采が自分宛だと気付くと
誇らしそうに胸を張り、手をあげて応えた
166 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:27


バカだ、アイツ


速く滑った→スゴイ
ソレに乗ってた→スゴイ
だから、アイツはスゴイ
よっちゃんの支持層は発展途上の短絡思考世代だ

「ヒーロー扱いです」

「石川さん、コノ光景を目に焼き付けなさい」
アナタの恋人が賞賛される場面は
もう二度と用意されていない可能性が高いから


167 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:28

「そして石川さん、きっぱりスケボー禁止令を出しなさい」
「…でも壊れたみたいですよ」

「アノ顔は、再購入してもやる」
懐は潤沢なはずだから
子供らとは違い、思ったら買えてしまう

「はい。ちゃんと言います」

後ろにいた子供が、今のスッゲーと興奮気味に口走った
絶対マネしないのよ!と母親に戒められた

申し訳ありませんでした
ミキと石川さんは、肩身が狭いってヤツを実感しながら
「♪さ〜い〜た〜、さ〜い〜た〜」
ご機嫌で鼻歌交じりのヤツを待つしかなかった


「……帰ろう、ね」
「……はい」

チューリップが咲いていようが散っていようが
もう、どうでもイイ

168 名前:にぐるま、まとはずれ、 投稿日:2006/07/11(火) 14:28
                   終了
169 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/12(水) 08:04
爆笑した!!
次も期待してます。
170 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/12(水) 15:55
電車の中なのに声出して笑いそうになった
171 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/12(水) 18:03
イサギコw 知らなかった
172 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/14(金) 16:30
>>169
期待は淡いと嬉しいです。
>>170
冷笑だと小音でバレにくいかと。
>>171
呼び方に地域差があるようです。
ごめんなさい。
173 名前:呼ぶ。及ぶ。 投稿日:2006/07/14(金) 16:31
「行かないって言っても来るまで待ってますって言うんだもん」
「永遠に待たせとけ」
運が良ければ、待ち合わせに便利な銅像に採用される

強く押せばどうにかなると1度思わせたら負けだろ
ほほんさを包容力と勘違いさせるだけだ

「ドコに呼ばれたの」
「2階の北側のさ、奥のトコ」
「アノ薄暗いトコ?」
「ん。あそこオバケ出るんだってね」

空気がピクリとも動かない感じ
幸い、日当たりゼロでどんよりしている
なにが出ても驚かない

そんな場所で下級生女子と対峙中

精一杯ミキを睨んでいる、普通にカワイイ子
よっちゃんなんかにつまずいたことが悔やまれる
君はまだ若い
将来がある。これからに賭けたらイイ
今回のコノ過ちは、過ちだと気づかないように
ミキが叩きつぶしてあげる
174 名前:呼ぶ。及ぶ。 投稿日:2006/07/14(金) 16:31


「コレ、ミキのだから手出さないでもらえる」

しゃべるな令でよっちゃんは
ミキの後ろに控えてぼんやりしている
見方によっては
彼女に見つかって気まずくって黙っていると取れなくもない

「石川先輩とつきあってるって聞いたんですけど」

石川さんなら良くてミキなら止めた、と取れなくもないよね
判断の分かれ目はドコだった?

見た目としたら、かなり納得はいかないけど
致命的な判断ミス

痛い目を見るよ
中途半端な闘争本能でよっちゃんなんかに手を出すと

よっちゃんが絡んだとき
敵に回してはいけない人物トップは石川さんだ
もれなく、石川さん怨念がついてきます
175 名前:呼ぶ。及ぶ。 投稿日:2006/07/14(金) 16:32
「あ〜よっちゃんが貢がしてる子ね」
「そんなことしてるんですか!」
よくもやすやすとフィクションに乗るもんだ
ドラマチックさ夢見すぎ

「アナタも適当に遊ばれたいの?」
「遊ばれる、とか…」
「そーゆーのでイイなら、いくらでも貸してあげる」

しびれるな、コノ悪女ぶり
ミキの美貌に裏打ちされた説得力
芯のぶれない余裕。上からあざ笑う感じ名演技

下級生女子の目が、強さをなくしていく

勝ちに酔うミキの後ろで、ドサリと物音がした
176 名前:呼ぶ。及ぶ。 投稿日:2006/07/14(金) 16:32

「…オバケ?」
よっちゃんが小声で怯えた

死角になった避難扉の後ろ
こんな場所に来るヤツがいるとは思えない

「よっちゃん、見てこい」
体裁があるので小声のやりとり
フルフル頭を振ってハッキリとした瞬きを1度した

「行けって、向こうでオモシロイことやってるから」
「オモシロイこと?」
「そーそー」

口車でよっちゃんは動いた
177 名前:呼ぶ。及ぶ。 投稿日:2006/07/14(金) 16:32


神妙な顔で戻ってきたよっちゃん
手招きされて、耳を寄せる

『……人が、落ちてる』

「そーか」
『どーしよ』
「見て見ぬふりするか」
耳打ちトーンと地声の会話は
人数のいらない伝言ゲームの装いを呈する

『でもね、石川さんに見える』
「……落ちてる人?」
『うん』

ミキの危機管理レーダーの針が振り切れた

「拾え!早く拾え」
「え、でもなんかコワイ。動いてないんだもん」
のほほんと怯えさせている場合じゃない

「拾えって」
「だいじょぶか確認してよ」

ヤダ
のぞき込んだ瞬間、バッチリ目が合ったら
ミキ確実に寿命を縮められる
178 名前:呼ぶ。及ぶ。 投稿日:2006/07/14(金) 16:33

「あ、あの…」

忘れてた
あ〜そうだ。こうなった要因、コイツじゃん

「あのね、ソコに噂の石川さん倒れてるから
コイツに貢ぐために働きすぎて身体を壊したわけ」
「え?」
「ソレもコレもアナタのせいだから」
「え?」
「取りあえず、生存確認をアナタがするべき」
「で、でも」
「呼吸があれば、あとはコッチでどうにかするから
取りあえず確かめて。つーかやれ」

泣きそうになりながら、なん度も振り返り
石川さん(未確定)の元に行った

「どー?」

「だ、大丈夫です。息、しています」


179 名前:呼ぶ。及ぶ。 投稿日:2006/07/14(金) 16:33

石川さん生存の喜びで下級生女子には恩赦が言い渡された
もうイイよ、と言った瞬間逃走した

よっちゃんと更なる確認作業を続けた
結果、どう見ても石川さんで。どう見ても気絶していた

直接の引き金考えると
これから待っている楽しいデートも台無しの気分になる
考えません、ミキ

「じゃ、運べ」
しゃがみこんだよっちゃんが、石川さんの足首をつかんで
用意は出来ましたぜ、の目

「…なにしてんの?」
「美貴ちゃんが手持つの待ってる」
よっちゃんの想像図だと
吊される石川さんは気を失ってる場合じゃないだろ

「オマエの彼女なんだからオマエの力だけで運べよ」
「あ〜はーい。んじゃ引きずる」
「待て」
クルッと回転して早速引きだすすんで封じた
180 名前:呼ぶ。及ぶ。 投稿日:2006/07/14(金) 16:33
「なに?」
「ダメだろ、ずるの。ずんない」
「なんで?」
自分が当たり前だと思うことに素直な疑問が挟まると困る

「なんかほら、アレ。汚れる」
「あー」
「制服だからクリーニング屋で手間とお金がよりかかる」
「あーなるほど。じゃ、ジャージ持ってくる」

ジャージなら汚れたって平気だね
…コノ状態で着せ替えるすんの?

「違うだろ、こーゆーときは抱きかかえろよ」
ほら、すっげーサムイ名前の抱え上げ方あるじゃん
ほら、膝の下と首辺りに腕入れて

こーだ、こう。ミキのジェスチャー
目をまん丸にしながら、コクコク確認の頷きをするよっちゃん

「だよ、ほら。やれ」
「ムリ」
「やれって、オマエ期待されんだってそーゆーの」
「ムリでしょ、落としたら大変」
大事なこと全般無謀なくせしやがって
時々慎重さをのぞかせんじゃねーよ

181 名前:呼ぶ。及ぶ。 投稿日:2006/07/14(金) 16:34
「石川さん喜ぶよ」
「気失ってるのに?」
「携帯で記念撮影してやるから」
気も目的を失っていても、石川さんなら喜んでくれる
絶対、自信あり

「えー、でもなぁ…あ、実験成功したらにする」
「実験?」
「ん。美貴ちゃん抱えてみる」
「落ちたらどーすんだよ」
「受け身をお願いする」

ダメか。どんなことであろうが
コイツに一抹の期待もムダだった

「普通におぶえ」
「あ〜。もー最初に言ってよね」
「……ワルかったワルかった」

182 名前:呼ぶ。及ぶ。 投稿日:2006/07/14(金) 16:34
                   終了
183 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/14(金) 20:25
いつにもましてミキちゃん無茶クチャやん(笑)
184 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/14(金) 22:55
いしよしなのかみきよしなのかはっきりしてほしい
185 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/15(土) 00:16
イイヨーイイヨー
186 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/07/15(土) 16:05
噴きました
最高です
187 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/07/17(月) 18:34
この空気感が大好きです
188 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/18(火) 15:26
>>183
『無茶苦茶』と『滅多矢鱈』は食してみたいとよく思います。
>>184
お手持ちの計測器の値をご覧頂ければと存じます。
>>185
シンシャシンシャ
>>186
片腹を痛めておいででないか心配です。
>>187
『Don't Think. Feel !』とトラックスーツの人に言われました。
189 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:26

通じるよな、普通は
もしかして、ミキ意外と嫉妬深いのかな
だったらウザイとか思われちゃうよな

なんだか不安になった

ミキだったら無理
なにがって、まぁ。先ずはミキの脳内劇場、開演


190 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:27


石川 「藤本さん、お話があります」

藤本 「どーしたの?なんかあった」

石川 「実は、私…。藤本さんの恋人が、好きなんです」

藤本 「はあっっ?!」

石川 「吉澤さんなんて取っ掛かりでした。ホントは藤本さんの恋人狙いでした」

藤本 「やっぱりか。よっちゃんが好きなんてオカシイと思った」

石川 「はははっ、やっと気付いたか。オロカモノ」                        

藤本 「ミキ負けない。人類のために戦う!」
                        
                                          つづく 
                                  特別出演 石川さん


続かないし、ミキの想像だし、勝手に石川さんを出演させたけど
殺意を抱く展開だな
191 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:28


「石川さんカシコイね」
「ちょっとテレビで見ただけだよ」

じゃー試すなよ
幸せそうによっちゃんの手をとり
きっと出来もしない手相見をしている石川さん
相手がよっちゃんなのをイイことに
生命線がとかソレっぽいことをぬかしている

石川さんめ
止められないコノ気持ち

「あとは、あとは?」
「そんなに覚えてないよ」
「雰囲気でイイから」

ミキは邪推の眼差しを送る
ヤベ、気付かれた。と苦笑いでごまかしながら
視線が泳ぐ石川さんはよっちゃんの手を放した

「おしまい」
「えー面白いのにぃ」

ヤマシイ気持ちを見透かされたと思ってるんだろう

違うんだよ
石川さんがよっちゃんに
なにしようと、されようと全然興味はない
192 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:28

「じゃーオヤツの玉子ゆでてくるぅ」
よっちゃんが出て行く

俯いた石川さん
見据えるミキ
充満する微妙な空気

ミキは普段、八つ当たりとか人の道を外れたことしないよ
でも、ほら。恋路だし
無礼講?無法地帯?じゃん
妄想きっかけだけど、ミキのせいじゃない

恋のせいだ

石川さんが……ニクイ

193 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:28
ゆってもミキ、石川さんについて知ってること少ない
軽いジャブくらいのセリフ、なんかない?

あーそうだ
突ける弱点、1個あるじゃん

はははっ
ちょっとムッとするだろうな
ワルイ女だな、ミキって
194 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:29

「石川さん、ミキね。よっちゃん好き」

「イヤァーーー!!!」

…ヤベッ
思いの外、効いちゃった

両手で耳を塞いだ石川さんが、絶叫してベットにダイブ
フトンの中に籠城した


…よ、よっちゃん、戻ってこーい

今すぐ戻って、扱いに困る恋人をどうにかしろ
本格的に人格の崩壊が始まる前にくい止めろ

195 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:29

「よっちゃん!」
届くわけがない
湯加減に付きっきりのヤツに届くはずがない
…やっちゃったな、ミキ

「い、石川さん?」
「イヤーー」
ヤバイよな…
このまま石川さんの気が触れたら

「い、石川さん、聞こえる?」
「イヤーー」
よし、聞こえてる
ミキ、ガンバ

「じょ、冗談だよ」
「イヤー」
「イヤーじゃなくて、ミキの楽しい冗談だよ」
「イヤ…」
「ウイットに富んだジョークだよ」

196 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:29

「……ほ、本当ですか。信じてもイイんですか」

恐る恐る、フトンが少しだけ持ち上がる
暗い中、光る目。ヘンにギラギラしてるよ
そんな目しちゃダメだよ

「ホントホント。よっちゃんのために石川さんの愛の深さを試した」
「本当、ですよね」
「ホントホント。よかったなぁ、よっちゃん愛されてて」

石川さんは、しばらく思案タイムをとってから
照れた顔してフトンから出てきた

「ビックリしちゃいました」
うん、ミキも

「私本当に大好きなんです。正直、冗談通じません」
うん、身をもって知った
ミキがワルかった

「ごめんごめん」

しがみついてきた石川さんを抱き留めた
ギュッと縋り付く彼女を安心させたくて優しく背中を叩く

…うん、なにしているんだろ
197 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:30
背中で、ドアがバタッと開いた

…あっ
微妙な体勢であるミキ達は固まった

慎重に首を回して

両手に玉子のよっちゃん
目の前で捉えようによっては修羅場スタートのシーン

フンフンご機嫌鼻歌ヤロウは気付いていない

首を上下させリズムをとる
シャツの肘でテーブルをキュキュッと拭いて
玉子を慎重に置いた
ゆだっているから慎重に置く必要はない

それから2個を満足げに眺めだした
198 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:30

突然、パチンと手を叩く
なにかを言おうとして、詰まった

頭をテーブルに近づけ
口からポコッと、真ん丸の玉子が生まれた
…ピッコロかオマエは

「塩忘れた、塩」
一人言を残して出て行った

「…3個もゆでてきましたね」
「口の中に収納可能だとはね」
なんて、うっかり抱き合ったまま

すぐによっちゃんは戻ってきて

もう、ミキとしては
どこまで気付かないのか実験
199 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:30

1個目が丁寧に食される様を見つめた

「2人ともなにしてんの?」
ようやくよっちゃんが触れた

「なにって、見て分かるでしょ」
「石川さんが美貴ちゃんにギュッてしてもらってる」
「う、うん」

「ねーねーあと2つあるけど分けた方がイイ?」
「いらない」
「私もイイから、吉澤さん食べて」
「ん、そーする」

ムシャムシャ次に食らいつく
待て、待て
好物よりも片を付けるべき問題が山積みだろうが

『移り気疑惑』と『オヤツ』を乗せた天秤
故障中だな、ソノ天秤

200 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:31
だいじょぶ、石川さん
ミキが伝えてみせるから
絶望の淵を歩くときの顔は止めなさい
支えている腕、力がとても必要とされている

「よっちゃん?」
「ん?」
「ミキにギュッとされている石川さんは、どーなの」
「え?ギューギュー。漢字だと牛牛」

上手いこと言った、なんて顔させねーからな
ミキの正義の鉄槌を

「よっちゃん、テメェー!」

キック姿勢に入る直前
玉子は全てよっちゃんのお腹におさまった
201 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:31

「よし、石川さん。あたしがギューしてあげよっか?」
悠長に両手を広げた

その一言で
支えがなくなり崩れかけた石川さんが
信じられない切り返しをみせる

ほとんどタックルの威力でよっちゃんの腕の中にダイブ
よっちゃんからグフッてヘンな音が漏れたけど
別に、どうでもイイ

「ギューね、ギュ」
ホールド力のよっちゃん
この世の春に浸る石川さんを容赦なく締め上げにかかる

「ギューね、ギュ」
ものともしない満面笑顔の石川さん
苦痛知らず、防御に長けている

ゴングは鳴っていた
コノ勝負の行方はいかに!

…興味ない
ドッチかが絞め殺されるまで続くのかな
出来れば、相打ちがイイな
202 名前:くうふく、くじゃく、 投稿日:2006/07/18(火) 15:32
                   終了
203 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/18(火) 20:40
よっちゃんやっばりアフォだ
それとも純粋なのか?
204 名前:ななし 投稿日:2006/07/19(水) 10:56
あーおもしれぇ(笑)レスすんの初めてだけどまぢいいっす!!
205 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/07/19(水) 17:31
また噴きました
飲み物はささっと片付けてから読まないと危険ですね
206 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/21(金) 14:48
>>203
混ざりにくい体質なのかもしれません。
>>204
なによりです。真面目に取り組んでいきます。
>>205
どうか水分補給を最優先にご検討下さい。
207 名前:乞い。故意。 投稿日:2006/07/21(金) 14:48
デート、デート、デート
有意義な休日の始まり
「いってきます」

まだ梅雨は明けていないけど
輝く太陽。晴れわたる空
ミキのカジュアルな装いにマッチしたサワヤカなデート日和
完全に、日頃の行いの良さがものをいった

出してきたチャリを止め、門扉を閉めた

よし行くかとスタンドを蹴り上げようとした時
イヤな予感のかたまりが目に入った

数メートル先の電信柱
その後ろ。隠れて覗いているつもりの人影2つ

うん、見えない
ミキには、なにも見えてない
しかとだ、しかと
208 名前:乞い。故意。 投稿日:2006/07/21(金) 14:49
『吉澤さん、自転車だよ』
『どーしよ、石川さん走れる?』

…アイツら追いかける気満々じゃん

ご近所の人に目撃されたくない
ミキのチャリ速度だと、ヤツらも必死になるだろうから
ジョギングと銘打つようなムードは出せないだろう

「石川さん、なにしてんの」
声をかけるしかなかった

『ヤベ、石川さん見つかってるよ』
オマエもばっちり見えてる
『…ごめんね、足引っぱって』
どうせならソコに身を隠せる可能性にかけたことを反省しろ

そしてソコにいたことを悔い
ついでに隣のヤツの存在自体の引責もお願い
209 名前:乞い。故意。 投稿日:2006/07/21(金) 14:49

「なんなの朝から」

「追跡調査」
諦めのよっちゃんがつまんなそうに出てきた
連鎖の石川さんは悔恨の真っ只中
せっかくの上天気なのに、どんよりしている

「なんの」
「美貴ちゃんの」
「なんで」
「恋人見れるかなーって」

「……石川さん?」
ミキの地を這う声に石川さんは顔を上げた


『言ったよね?言わないって』
『言ってません。私、言ってないんです』
『じゃーなんでソイツがミキの恋人に興味を持ってるの?』
『きっと、なんとなく思いついただけです。そういう人なんです』
――眼差しの会話

震えるように小刻みに首を振る石川さん
気分を害しているミキ
板挟みの位置でもニヘラ笑いのよっちゃん
210 名前:乞い。故意。 投稿日:2006/07/21(金) 14:50
切り替えよう、デートなんだから

「尾行なんかするなよ」
「ほーい。だってさ、石川さん。ダメだよ」
「へっ?」
石川さんはポカーンと口をあけた


ミキの自問自答クイズのお時間です
2択問題です。直感でお答え下さい

Q.よっちゃんの言葉に石川さんが呆然としています
  よっちゃんがそんな放語をした理由はどちらでしょう


1.ミキが石川さんには強くでられないと計算して
彼女の仕業にして収束を図った

2.単純に忘れている
  今となっては、石川さんが言い出したと心底信じてる
  便利な脳みそだけど、人間としては末期


A.「2番」

211 名前:乞い。故意。 投稿日:2006/07/21(金) 14:50
「「へっ?」」

「いや、なんでもない。よっちゃん、道の真ん中辺り立ってみ」
「へーい」
距離にして、5メートル

「石川さんは塀による」
「は、はい」
いちいち動作が大げさな石川さんが
両手をひろげ張り付いたのを確認した

スニーカーはやっぱりベストチョイスだったな
サックっと成敗できる
かかとを外して、つま先につっかけた

「ねーねーなにすんの」
ノンキなターゲット
212 名前:乞い。故意。 投稿日:2006/07/21(金) 14:51


「遠隔キーック」

低い位置から放たれた高速の弾丸スニーカー
ライズボールよろしく浮き上がっていく
狙い通り、キレイによっちゃんのアゴにヒットした

「いでっ」
アゴを押さえ崩れ落ちた
ワル者はやっつけた
せいせいした

ミキ、ストライカーって職種もありだな
決定力不足のチームに引き抜かれてやってもイイかな
213 名前:乞い。故意。 投稿日:2006/07/21(金) 14:52
「大丈夫?」
「いたい、痛いよ。ベロ噛んじゃたよ」
よっちゃんの元には専属救急隊員が駆けつけている
石川さんて結果が見えている時でもミキを野放しにする時がある
自分で叱責はできないのと慰める役割を担いたいが主な理由の気がする

「おうち帰ってうがししてこよ?」
「う〜。口の中レバ刺しの味がする」
「吉澤さんレバ刺し食べたことあるの?」
「ううん。勘」
石川さん、どうでもイイとこで脱線してるよ

「食べてことあるだろ」
「そだっけ?」
焼き肉屋ではレバ刺しつかまえて
血だー血の味がするーって今と逆のこと言ってた

回顧している場合じゃなかった
デートだ、デート

「おい、よっちゃん」
「なんだよぉ。ごめんなさいしても許してやんないよ」
「するか、バカ」
「ベロ痛い」


「イイから、靴とって」

214 名前:乞い。故意。 投稿日:2006/07/21(金) 14:52
                   終了
215 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/21(金) 19:22
さすが美貴様
飛び蹴り炸裂かと思ったら新技だったw
216 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/07/23(日) 03:28
この時間に読んでツボに来た
217 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/25(火) 15:01
>>215
必殺技でていませんね。拙い。
>>216
魔の時間は存在するのですね。有り難い。
218 名前:じゅんい、いのしし、 投稿日:2006/07/25(火) 15:02
「鳴くよウグイスホトトギス。鳴かすなら鳴かせてみようホトトギス」
「…イイ加減だまれ」
「また赤点取っちゃう?」

『お〜わった』といちぬけしやがったよっちゃんは
年号を叩きこんでいるミキたちの横で陽動作戦を開始した

「あーもう。石川さん、ちょっと休憩しよ」
「はい」
「おい、冷たい飲み物をお出ししろ」
219 名前:じゅんい、いのしし、 投稿日:2006/07/25(火) 15:04
ほいほいと返事してよっちゃんがお盆に麦茶をのせてきた

「オマエ、もーだいじょぶなの?」
「うん、完璧。はい、美貴ちゃんの」
「おう」
「はい、石川さん」
「ありがとう」
「はい、吉澤さん。ありがとー」
1人芝居を交えながら、氷の浮かんだ麦茶を並べた

テストなんて大キライだ
石川さんも顔に疲労が浮かべている
ただ1人よっちゃんだけがのうのうと。神様は不条理だ

勉強しなきゃって時ほど、部屋の掃除したくならない?
脳が勉強方面から目を反らさない?
いつもならどうでもイイと放っておいたことが気になる
220 名前:じゅんい、いのしし、 投稿日:2006/07/25(火) 15:05

「石川さんて常に吉澤さんって呼んでるの?」
「はい」
「どーなの、よっちゃん」
「どー?あたし吉澤さんだから正解と思う」

「石川さん的にどー思ってるの?」
「吉澤さんって呼ぶことですか?」
「やっぱ名前で呼びたいとかないの?」

「ヤーダー、ダメ、ヤーダー」
いきなり吠えたよっちゃんが遮る

「呼ばれちゃえよ」
「ヤダヤダ。『私、藤本美貴。ミキティって呼んでね』
なんて恥ずかしい会話したくないっ」
羞恥心があったのはなによりだ
だけど、例にミキの名前を用いるな

「うっせーな『わかった、私はひーちゃんて呼ばれてるんだぁ』
とか返せよ。大人になれよ」
言外に強要をこめても、にこやかな会話をしろ
青春の一環には寒々さも付き物だ

「ヤダヤダ。意地でも呼ばないっ」
「天の邪鬼」
「美貴ちゃんに言われたくなーい!大人になんかなりたくなーい!」
ピーターパン症候群の重症患者は叫んだ
末期だ、末期

221 名前:じゅんい、いのしし、 投稿日:2006/07/25(火) 15:05

「…私、キラわれてるのでしょうか」

石川さん、ソレは違うよ
「ココは1つ『照れ屋さん』ておでこをツンとしたらイイよ」
きっとミキの手は、一瞬叩きのめそうと動くけど
石川さんならキッチリやりきるだろうから、NO暴力で見過ごすよ

「…はい。でも、今グルグルしていてソレどころじゃないのですが」

放置の間によっちゃんは耳を塞ぎゴロゴロ転がっていた
よっちゃんがガムテみたいな掃除グッズだったら役立てた

「そーいえばさ、遊園地どーだったの?」
「い、今その話ですか」
「うん。楽しめたの?」
「あの、手始めにチビッココースターに乗りました」
「うん」
「吉澤さん使い物にならなくなりました」
ミキ的には賛成だけど
石川さんって時々恋人としてあるまじき言葉選びに走るよね

「そーだったんだ」
「はい。フリーパス買ってすぐでした」
「無駄金だね。でも帰ってきたの夕方だったよね?」
「歩けるまで快復したのは午後でした」

222 名前:じゅんい、いのしし、 投稿日:2006/07/25(火) 15:06

「最悪じゃん。で、後は?」
「動くもの全てに怯えていました」

石川さん、作文得意じゃないでしょ?
思い出を語るのになにその淡々とした羅列
なにそのよっちゃん観察記

「フリーパスは?」
「そして私たちはミラーハウスを楽しみました」
「…ん?」
「ミラーハウスです。鏡の館です」
ミキそこまで英語不得意じゃない
それよりも口調が直訳みたいだよ

「楽しめるんだ、ミラーハウスって」
「吉澤さんが何人もいました」
アッチにもコッチにもよっちゃん。地獄絵図

223 名前:じゅんい、いのしし、 投稿日:2006/07/25(火) 15:06

「私はあの世界に行きたいと思いました」

さすがビジュアル先行でココまで来ちゃった人
だったら、そのまま。2人して帰ってこなければ良かったのに

「…良かったね」
「20回は入りましたのでフリーパスの元は取れました
だけど後半、係員さん投げやりで接客がなっていませんでした」

いくら相手が案内するプロだったとしても
イイ加減ほか回れよって気持ちになるのは押さえられない
人として自然な心の流れだから

ごめんね、当日の係員。遠くの空からお詫びをする

「でだ。ミキが言いたいのはね。よっちゃん自転も弱いよ」
「え?な、なにがですか」
「三半規管」
引き続き、回転中のよっちゃんを指した
「あっ」
「引き際読めないから気が向いたら救ってやって」
224 名前:じゅんい、いのしし、 投稿日:2006/07/25(火) 15:06
「はいっ」
石川さん、すぐさま捕獲準備
タイミングを計りながらジリジリにじり寄る
両手を広げ、ハンターは目を細める

眺めながら思い起こすのは

冬場にエサを求め、村に下りてきたしまった野生動物
ご苦労様、村役場の皆さん
アレだ、生け捕りは手間取るなら猟友会の皆さんにお世話になろう
さすがに石川さんにソノ役目はむごいだろうから
ミキの出番
一点の曇りもない完全な良心から、仕方ない風で名乗り出る
手を貸すよ。進んで、迷いなく
サクッと撃ち込む

「それっ」
ガバッと
倒れ込みながら組み敷こうとした
制動に失敗して巻き込まれ、一緒に回転
まぁ楽しそう

雑伎団を結成するべきだ
恋人同士の戯れでも、アヤしさは皆無
ただただ
ガンバ、次代のムツゴロウ
目指せ、猛獣使い

225 名前:じゅんい、いのしし、 投稿日:2006/07/25(火) 15:07

2体は、ゆるゆると部屋を横断して
壁にぶつかると停止した

「気持ちワルイ?」
「う〜ガリレイ」
「…大丈夫?」
「地球がグルグルしてる……」

背中に石川さんを重ねたまま、よっちゃんは力尽きた
合掌
226 名前:じゅんい、いのしし、 投稿日:2006/07/25(火) 15:07
                   終了
227 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/26(水) 00:55
合掌
てかよかったな、撃たれなくて
美貴様ホントにやりそうだもんなw
228 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/26(水) 13:37
この二人といると美貴ちゃんがマトモに見える
229 名前:名無し 投稿日:2006/07/27(木) 08:08
石川さんの観察文
ハゲワロスwww
230 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/27(木) 22:47
ああもうパソコンの前でニヤニヤしそうで顔がおかしなことになってしまいます。
周りに家族がいるんでどうにかしてくれませんかね?笑
231 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/28(金) 15:46
>>227
手元にあればヤルのでしょう。
>>228
間違いなく彼女はカタギです。
>>229
読書感想文を母親に託すタイプ。
>>330
ご家族をどうにかするだなんて良くないと思います。
232 名前:かすりきず、ずいい、 投稿日:2006/07/28(金) 15:47
めんどくさ
ちょっと早く生まれただけでエラそうに

ミキの宿命なのは分かってる
出過ぎた杭は打ちたくもなるんでしょ

「アンタ、生意気なの」
「すみませんでした」
心にもないのに取りあえず謝る大人な姿勢。見習え

ミキの美貌がもたらした淋しい事件
「謝ってすむと思ってんの?」
「ちょっと男子にカワイイとか言われて調子に乗ってんでしょ」

ちょっと、だと?
ミキはな、調子の方が乗ってくださいと頼みに来るレベルなの
中身と外見の完全さは否定しようがない
カワイさだけでも大概のことを許される自信がある

か弱いミキ1人でどうするか
しおらしく手出ししない方が手短に終わるかな

でももし、殴られたら…
本能がなぁ、ミキの成分に含まれている若干のワンパクさがなぁ
まぁ、どさくさに1発くらいなら

よしっ、1番ムカツクヤツじっくり選ぼ
233 名前:かすりきず、ずいい、 投稿日:2006/07/28(金) 15:47

「あー美貴ちゃん発見っ!」

あ〜、面倒磁石のバカ登場
動じず、両手を振りながらタッタカ近づいてくる

「昨日の算数プリントなくしちゃった。コピーさせて」
「今持ってない」
「うん、だから早く帰ろ」
神様、今だけでイイ
金輪際、過当な望みは捨てるから
どうか今このとき
バカにも空気を読む能力を与えてください

「美貴ちゃんは今忙しいの」
示し合わせてドッと笑う

「よっちゃん、先帰ってて」
「宿題できねーからダメ。明日だよ、先生に怒られる」
234 名前:かすりきず、ずいい、 投稿日:2006/07/28(金) 15:48

「吉澤さん、帰ってよ」
「コノ人知らない。なのに、あたしの名前知ってるよ。コワイ」
ルックスのせいで知名度あるんだよ、オマエ
若干柔らかい口調もソレのおかげだ

「うるせえよ、帰れ」
神通力が届かない1人が凄味をきかせ腹から怒鳴った
「コワ〜イ。ははっ顔赤い」
ミキに怒鳴られ慣れているよっちゃんには通じない

「無視」
声に出さなきゃ意思統一を図れない程度のグループが

再びミキに向く鋭い目つき
「あーヒドイ」
よっちゃんがいると好転は見込めない。いなくなれ
235 名前:かすりきず、ずいい、 投稿日:2006/07/28(金) 15:48

「で、藤本は――」

ミキだけが見ていた
まん丸に見開いた目を輝かせるよっちゃん
イイこと思いついちゃった顔
ヤ、ヤバイぞ

よっちゃんが右手をピンと上げた

ちょ、オマエ
ミキは小さく首を振る
止めたかった

予想通り伝わらないから

よっちゃんはスタートをきった

236 名前:かすりきず、ずいい、 投稿日:2006/07/28(金) 15:49

あ〜あ、ミキ知らない

「ジャーンプ」
飛び上がって

「で、キーック」
1人の背中を完璧にとらえた

つんのめって無様に転がるヤツ1名
肩から地面に落ちてバウンドしても嬉しそうヤツ1名

「ははは、成功成功」
高らかな宣言から間髪おかず
ミキを囲っていた愉快な仲間達のボールと化した

237 名前:かすりきず、ずいい、 投稿日:2006/07/28(金) 15:49


「バーカ」
「いてぇいてぇ」

よっちゃん総攻撃に満足して引き揚げて行った

帰り道。よっちゃんはわざとらしく足を引きずって
自分で仕掛けたくせにブーブーうるさい

「やってみたかったんだもん、美貴ちゃんの必殺技」
「あーそー」

「どーだった?」
「飛びがあまい」
とび蹴りだからな。飛びが最重要
素人にアノ助走距離は短すぎる
的を志望するならそのうちレクチャーしてやってもイイ

「何ともないわけ?」
「ん〜体いたい。あばら折れてたらどーしよ」
「困るね」
「困るよね」
238 名前:かすりきず、ずいい、 投稿日:2006/07/28(金) 15:49
そんな間に、よっちゃんちに到着

「じゃー」
「ちょっとぉ。算数プリントねぇんだってば」
遅刻以外の決まり事にはとことん忠実

「数学だろ」
「美貴ちゃんもなくした?」
一緒にするな
白紙のプリントがキレイなまま教科書に挟まってる

「早く入れ」
「宿題大事だろ」
「うるさい、持ってきゃイイんだろ」
「このままコピー行いきてーの」

「うるさいっ、届けてやるって言ってんでしょ」
「コピーは?」
「うるせー、ミキがどーにかする」

「あ、おごり?」
「だったらなんだよ」
10円で過大に恩きせてやる

「美貴ちゃんさんは親切親切」
「知ってる」
「じゃー後でね」

あ〜めんどくさい
239 名前:かすりきず、ずいい、 投稿日:2006/07/28(金) 15:50
(0^〜^) 中学2年生 (VvV从



                   終了
240 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/28(金) 17:54
美貴ちゃんが・・・
241 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/28(金) 21:51
よっちゃんこれ狙ってやってたらスゴイな。
んなわけないか。
242 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/28(金) 22:37
よっちゃんになりたいと思った
毎日楽しいんだろーな
243 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/28(金) 23:48
「あんましゃべんな」っていう小4からの
「遅刻以外の決まり事」を破ってるから、狙ってるんじゃないかなー
邪推かしらw
244 名前:名無し 投稿日:2006/07/29(土) 07:10
よっちー惚れるぜ
245 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/01(火) 15:17
>>240
どーされました?
>>241
ですよね。
>>242
そー思います。
>>243
そーきますか。
>>244
怨念注意報発令。
246 名前:中元。忠言。 投稿日:2006/08/01(火) 15:18
携帯は携帯しろ、バカ
どれだけ煩わせたら気がすむんだ

ママ連盟から上った外食案に乗ったら
よっちゃん確保の貧乏くじを押し付けられた

よっちゃんちと一緒によく外食するけど、だいたい焼き肉
1匹混じった草食動物は、端っこで
添え物をせっせと焼いてオリジナル野菜丼で喜ぶ
よっちゃんの肉嫌いには誰も触れない

短期間働いてたトコだからコソコソ裏にチャリを止めて
時間をつぶせる店を物色中だった
背筋に寒気だして。慌てて、辺りを見渡した
247 名前:中元。忠言。 投稿日:2006/08/01(火) 15:18

…石川さんだな、アレ

向かいの本屋
1カ所、空気が違う
草原のシマウマ。お腹をすかせたライオン
首にガツッといったろ、なロックオンの緊迫感

…本屋のおじさんあやしがってるから、確保しないと

近づくほどに増す恥ずかしさ
夜にサングラスとマスク、度胸がある
『変装してますよー』叫んだらイイ

普段ピンクふんだんな石川さんが目立たぬようモノトーン
押さえに押さえて、胸元の差し色にこだわりのピンク
なにが悲しいって、今まで見たどの私服よりセンスを感じる
248 名前:中元。忠言。 投稿日:2006/08/01(火) 15:19
「……石川さん」
「あっ藤本さん。……違います」
「ん?」
「石川ではありません」
良かった。ミキが藤本さんじゃなかったって衝撃事実ではなくて

「誰ですかソレ?とかじゃないと肯定と同じだよ」
探偵方面に進みたいなら頭に入れといて
次から唇を噛まずにすむからね

「なにしてるの」
「…吉澤さんによくメールをしてくる子が、同じシフトだと突き止めまして」

まずね、よっちゃんに照会しよ?
恋人だからみすみす見逃してはいるけど
それ以外の場合、完全に規制法に引っかかるよ。石川さんの想い方


お先に失礼しますとごねる石川さんを引っ捕らえたまま
従業員出口でよっちゃんを待った
249 名前:中元。忠言。 投稿日:2006/08/01(火) 15:19

「おーお迎えだ」
よっちゃんは1人で出てきた
荷台に石川さん。急いでチャリに飛び乗った

「走れ!」
「なんで?」
「キケンだから」
容疑者と鉢合わせてワラ人形になるのを想像したくない
超特急でずらかった
250 名前:中元。忠言。 投稿日:2006/08/01(火) 15:19

「つーかーれーたぁ」

ミキだって腿がワナワナしてる
チャリを止めて振り返る
よし、ココまで離れれば問題ないだろう

「2人で遊んでたの?」
「ちげーよ」
「じゃーどしたの、石川さんまで」

約束もないのにこの時間だもんな
『だってぇ急に逢いたくなっちゃったんだもん』甘え声に上目遣いでごまかしなよ
石川さんに関しては寒さの許容でミキが取りまとめるから

「えっと、あのね…」
苦し紛れかバックの中を探り始めた
スクールバックから希望の光は掴み取れそう?
だいじょぶだよ。無理なフォローするから

「あの、コレ。吉澤さん好きかなって」
ミキたちの注目
おずおず差し出された手に握られていたのは――

「あ、ヨーヨーだ」

251 名前:中元。忠言。 投稿日:2006/08/01(火) 15:20

「どうかな?」
「やってみたい」

うん。そうだよね
張り込みの必需品。ヨーヨー
ちょっとした空き時間に。急な敵の襲撃に


「……石川さん、どーしてこんなの持ってるの?」
「タイミング、的に」

普通に出てきた
見た瞬間、いろいろなしだと思った
そんな女子高生に問うのが無粋とは分かってる
252 名前:中元。忠言。 投稿日:2006/08/01(火) 15:20

「与えてはいけませんか?」
「イイよ、続けなよ」
見ろよ、みたいな。買えよ、みたいな
深い理由はないけど無関係でもない気になったから許す

「私こう見えてヨーヨー上手いんです」
「あたしもやっから見てよ」
糸を巻いてスタンバったよっちゃんまで登場

「吉澤さん、いっせーのでやろ?」
「ほーい」
両名の手に仲良くヨーヨー

ミキのいたたまれなさをだけ置き去り
訝しそうに過ぎていく人の目
涙が溢れないように上を向いてるか

もう、どうとでもなれ

「いっせーのせ」

253 名前:中元。忠言。 投稿日:2006/08/01(火) 15:20
悲しみが募る
得意なはずのヨーヨー所有者
口でシューと効果音をつけてもスピード感がない
いっそ、止まってくれたら笑いとして消化できた
「あれ、おかしいなぁ」
きっと湿気とか繊細な関係でたまたま不調なんだね

「見てー!あたし超うめー」
明らかに違う、風切る音
一瞬で体得したよっちゃん
生きていく上で不必要なものに限った適用力。小器用さ

「スゴイ?」
「…うん、スゴイね。スゴイ」
噛みしめないで
沈まないで、ヨーヨーなんかで
ただ、なにを思って忍ばせたのか解明できたら教えて

「楽しー。上がったり下がったりするだけ?」
「ワザ、あるよ」
「教えて教えて」
無様さ晒したばかりの石川さんに頼むな
「おうちに本あるよ」
…結構本腰入れて取り組むつもりだね
「すげー今度行ったら見せて」
「うん、来てね」
254 名前:中元。忠言。 投稿日:2006/08/01(火) 15:21
良かった、徐々に復活してる
もう一押し
「そーだ。よっちゃん今日夕飯ないって」
「なんで?」
「知らない」

「ふーん。石川さんご飯食べた?」
「まだ。…あの、うちで食べる?
ヨーヨーも出来るよ。もう遅いから……お、お泊まり来る?」
「行くー!あ、美貴ちゃん平気?」
「平気じゃない。ミキは伝言に来ただけ」

「あら、あんがと」
「ソイツよろしくね」
「はい。ありがとうございました」

清々しいイイ夜だ
疫病神不在の嬉しい報告を携えて
報酬の肉をたらふく食うぞ

軽快なチャリで風を突き抜けてやるか


「あー自転車貸してー!」

やなこった
ミキは愛しい牛の元に急いだ
255 名前:中元。忠言。 投稿日:2006/08/01(火) 15:21
                   終了
256 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/02(水) 00:43
美喜ちゃん、いつもいつもお疲れ様です。
257 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/08/04(金) 10:53
最高です。
258 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/04(金) 14:58
>>256
ホントにね
>>257
どーでしょ?
259 名前:ゴール、スタート。 投稿日:2006/08/04(金) 14:58
「治った?ゴワゴワ」
「んーあんま」
「どうしようか?えっとぉ、する?」
「な、なに?」

「そうしたら治るって、藤本さんが」
「う、うん。でもあーーっと」

「どう、する?」

「す……やめとく
だって…死んじゃう。あたし死んじゃうと思う」

「死んじゃわないと思うよ」
「いや、死んじゃう。死んじゃうな、あたしに限って
うん、そだそだ。まだ死にたくない」
260 名前:ゴール、スタート。 投稿日:2006/08/04(金) 14:59
物事にはタイミングがあって、逃してはならないチャンスがある

レモンのような香りはした?
おもしろ半分で石川さんに尋ねたら
よほど口惜しかったようで詳細に語られた

微妙な空模様の帰り道
今朝からずっと、割増でボーとしているよっちゃん
少し離れてビニール傘2本とピンクの傘1本を胸に抱えてる

「したくないの?」
「う、うるさいなぁイイでしょ、別に」
よっちゃんは頬を染めてモゴモゴ

「手も繋いでくれないんです…」
そういえば、石川さんがいると
昭和の女房の香りでよっちゃんは3歩下がる

「前の方が良かった?」
「譲歩すると、そうなるかもしれません…」
「記憶なくす?」
温存してあるとび蹴りで外傷性ショックはいかが?

「イイんです…私と吉澤さん、純愛です」
そういうの出来るだけ他人に言ってもらおうね
接触が不純て思ってないのはありありだから
負け惜しみと呼んじゃうよ
261 名前:ゴール、スタート。 投稿日:2006/08/04(金) 14:59
「決めるトコで決められないなんて、価値ゼロだよね」
「そんな、ゼロではないですよ」
控え目だけど、完全に恋人の欲目発言だわ、ソレ
揺るがない事実を突きつけられるのはキツイ?

「イイもん、別に
価値なくっても、石川さんいるし、美貴ちゃんもいるから」
いじけるよっちゃんは唇をとがらせる

季節は秋なのに
石川さんが蕩けるのは、真夏のアイスよりも早かった
「…私がいるだけで、イイの?」
「うん」

幸福だと思い込む力に無茶も感じて、石川さんが心配
だってさ、クズに掴まったら9割9分の暴力だのの理不尽も
甘いセリフ1つで帳消しタイプじゃん
はまったら、落ちるトコまで落ちる

今も理不尽方面でソレに近いけど
金品に被害がないのと、ビジュアルを評価してね

「よっちゃん」
「なに?」
「ミキはその仲間に入れないで」

今はトレーニング期間
人生でけつまずきそうな時に
今つけている心身の筋力は活躍すると思う
262 名前:ゴール、スタート。 投稿日:2006/08/04(金) 15:03
「そうだ。ちゃんとミキの前ですんだよ、チュウ」
「え!な、なんで」
「当たり前じゃん。証人いる」
「あ、そっか…わかった、ガンバル」
「吉澤さん?いらないんだよ、証人なんて」
「え?あーそっか…わかった、ガンバル」

「藤本さん!守ろうとするんですから間違った知識与えないでくださいっ」
コワッ。二度とチャンスを逃さないために必死だね

だってさぁよっちゃんだよ?
からかって、ちゃんと反応あるなんてキセキだよ?
遊ばないと勿体ない

「石川さん、ミキがチュウしてあげよーか?」
なんなら
肩を抱き密着。唇を寄せていくと
よっちゃんが強引に傘で分け入ってくる

「ダメー、ダメーだー」
コワッ。よっちゃんが妬いてる
叫ぶから、下校中の小学生にまで冷めた目をされた
263 名前:ゴール、スタート。 投稿日:2006/08/04(金) 15:04
「こんなヤツ、捨てなよ」
「イヤぁーだ」
「大丈夫。信じて、私のこと」

「超めいっぱい信じてるっ!」
「信じてる度を表現してみろ」

「石川さんにならダマされてもイイっ!」
「嬉しいっ」
信じてないじゃん

「バーカ」
「バカって言う美貴ちゃんがバーカ」
「…ヤルぞ、調子に乗ってるとマジでヤルぞ」
石川さんに近づけもしないフヌケのくせに生意気

「言ってみたかったんだもん」
「吉澤さん、言われるからって人に言ったらダメだよ」
「…はーい」

叱られてやんの、バーカ
264 名前:ゴール、スタート。 投稿日:2006/08/04(金) 15:09
「ね、石川さん。距離感の解決はむずしいよ」
よっちゃんの成長を祈り
その時を待て!と歌いたいけど、無理だよ

「行きなよ」
「あ、そうですね」
石川さん、くるり
後のよっちゃんも振り返っていた

「よし、ゴー」
走り出す石川さん。逃げ出すよっちゃん

「なんで逃げるのぉ」
「な、なんとなく」

よっちゃんは時々後ろを確かめる
等間隔を保つ

「待ってよぉ」

追いかけても、追いつけない
離されないけど、追いつかない
新手の拷問か苦行だな

「できるだけ、ガンバル」

バカだ。素直になれない小3カップルだな
なんの根拠もなく

は〜。ミキ、ガンバ
末永く、ガンバ
265 名前:ゴール、スタート。 投稿日:2006/08/04(金) 15:11
(0^〜^)     小3 
( ^▽^)     勝算
川VvV)    降参

                   終了
266 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/04(金) 15:12
バカではない某リーダーの何でも言ってくれそう力と
某魔女の奥深い優しさと某ヨーヨー使いの笑ってよさそうな悲壮感が頼りでした。
(0´〜`)< ズモガナ ズモガナ

執拗なダメ話を読んでくれた方、レスくれた方とかまぁいろいろ ありがとうございました。 Adieu
267 名前: 投稿日:2006/08/04(金) 15:12



                            こわごわ 終了
268 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/04(金) 17:48
え〜っっっ
とっても寂しいズモガナ〜

毎回楽しみにしてたんで、またのご帰還お待ちしてます。
269 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/05(土) 00:45
まとめ復活キターと思ったら終了ですか寂しいのう
お疲れ様でした
次回作も楽しみにしてます
270 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/05(土) 01:31
最後まで変わらず楽しかったです
スレの使い切り方もお見事!
271 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/06(日) 00:08
絶妙なバランスの3人が愛おしくて愛おしくて
読んでいると自然と顔が綻びました。
終わってしまったのがとても寂しいです。
またこの3人に会える日が来ればいいな。

お疲れ様でした。楽しい作品ありがとうございました。

272 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/08/06(日) 15:18
お疲れ様でした。
すっげー大好きな作品でした。

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