虹色コンタクト

1 名前:Analog 投稿日:2006/07/17(月) 22:39
久しぶりに連載しようと思ってます!!
内容は…ほのぼのとしたものが書きたいなと思ってます!
一読いただけた光栄でございます♪♪
2 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 07:50



虹色コンタクト


3 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 07:51

その日、私はきっと虹をみた。

あの人が七色に輝いて見えたのは幻でも、ましてや勘違いでもない。
確かにあの日あの時、あの人の中に、虹をみつけたんだ。
4 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 07:51
虹色のコンタクトをいれられたのは、あなたが最初で最後だよ。
あなたの瞳の底に映えるその七色は、私をどこへ連れてってくれるの?

その虹は、永遠に消えない?

あなたの虹は、永久に、消えたりしない?
5 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 07:53
1−


お気に入りの水色のカーテンをおそるおそるめくるように右手をかける。
全身完璧装備。おでかけモード全開。かみさま、お願いします!!

シャッ

勢いよくあけたカーテンの先の窓の外は、豪雨。
雨というやつはどうしてこんなに人間のことが嫌いなのだろうか。
と、いうよりも、こいつはどこまで私のことが嫌いなのだ。
6 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 07:54

いつもそう。
とびきりお気に入りのワンピースを着れば大雨が空からポツリ。
とびきり大切にしてるミュールをはけば水溜りにバシャリ。

楽しみな週末ほど、雨がふる。

シャッとカーテンを閉めた。雨の鈍い音の切れ端さえ聞きたくない。
はぁ〜あ、とベッドに身を投げる。ぼふっっとパウダービーズのクッションが音を立てる。
突っ伏したまま、口元をもぐもぐさせながら、今後の予定を考える。
7 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 07:55

………

考えが浮かばないから、とりあえず携帯に手を出す。
1年前に買い換えたコイツも今では充電が1日ともたないオンボロになってしまった。
充電という行為は、本当に面倒くさい。
私からすれば単三電池で動けば、いくら機能が減っても申し分ないのだ。

あ、そうだ。

今日は携帯をかえよう。

パウダービーズにあごをうりうりしながら、もう一度窓のほうをみた。
8 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 07:55
暗い影が落ちている水色のカーテンが、昼間なのに真っ暗な外の世界を表している。
持ち主の気分がわかるのか?

そのまま少しだけ、目をとじた。
寝ておきたらきっと、真っ青な青空だ。
遠くからかすかに聞こえる雨音の一定のリズムが心地よい眠気を誘う。
そのまま私は眠った。
9 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 07:57
2−
午後2時。雨は降り続いていた。

起床と同時に…というよりメールのせいで起床。
こんな週末にだれが…っとけ遺体の画面にめをやると、見慣れた絵文字。
亜弥ちゃんだ。
亜弥ちゃんとは高校の同級生で同じクラスなのだが、いつも…常に…いや、四六時中!
かたときも、一瞬足りとも離れず、いや、離してもらえず!ずぅっとベタベタしてる。
というか、されてる。
10 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 07:59
まぁ来るものは拒まず、だが、亜弥ちゃんのスキンシップには少々困る。
毎回恥ずかしいぐらいにラブラブしてくるのだから。
クラスのみんなは、まぁたはじまったよ…ってなかんじで、私たちを見る。
なんというか、ある種の名物行事にみんなは思ってる。
すっごい無慈悲…ひどいよみんな…。美貴は助け舟を待ってるんだよ…
11 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 08:02

そのとき、耳元に置いておいた携帯がまるで驚いたみたいに急に震えだした。
ビックリしてフリッパをあけると、例の彼女の名前が。
うわ、しかも電話だよ。
4コール目まで待って電話にでる。

「こぉりゃあ美貴たん!メールは30秒以内に返信!!基本!」

「あ、あやちゃん…」

「週末の昼間っからぼけーっとして!美貴たんおきろーーー!!!」
12 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 08:05

「…亜弥ちゃん急に電話かけてこないでよビックリするから」

「アホアホ美貴たんは驚かさなきゃわかんないんだから!ありがたく思え!!」

という捨て台詞とともに電話はプツッときれ、また遠くの雨音が部屋の中に居座る。
とりあえずメール返すか…受信ボックスを開く。

亜弥たんフォルダ。

恥ずかしい…今改めて名前を読み返しても顔中がトマトになってしまいそうだ。
無理やり作らされたとはいえ、ハートの絵文字でぶりぶりに装飾されたそのフォルダ名。
改めて亜弥ちゃんの女の子全開っぷりを感じる。
13 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 08:06

そう。
そうなんだ。
亜弥ちゃんは私にはないものをもってる。

例えば、女の子っぽさ。
例えば、可愛い可愛い顔に、甘い声。抜群のスタイル。
なんというか、私はそういうまだみぬ、というか持ち得ぬ部分に惹かれる。
そんなこんなで、なつきまくる亜弥ちゃんから私は逃げられずにいるのだ。
14 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 08:18

「おそい」
「うわぁぁぁっ!なんで!?なんでいるの!!」
「美貴たん?合鍵持ってること、美貴たんのことに関しては短気なこと、知ってるよね?ん?」
「ちょ、亜弥ちゃんてばのっかんないで…うぐ…」
「知らないとはいわせないぞ美貴ぃぃ!!」

ぺちぺちと私の頬をたたくその仕草が、なんだか赤ちゃんみたいで。
可愛かった。

だから今日も、亜弥ちゃんのリズムに持っていかれちゃう。

私は…私は亜弥ちゃんのことが…
15 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 08:22

「わかった!わかったから…なつくなってばっ!」
「ふにゃぁ…美貴たんメールみたぁ?ずっと携帯持ったまま固まってたからさ」

いっこうに私の背中のうえから腰をあげようとしない赤ん坊の妨害にも負けず
私はじわりじわりとほふく全身する。
さっきの衝撃で枕もとまで飛んでった携帯をとりにいく。

私の上の赤ん坊はキャッキャいって喜んでる。


今日はじめて、自分の口元から笑みがこぼれた気がした。
16 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 08:29

亜弥ちゃんからのメール。
タイトル、愛しの美貴たんへ
内容、大好きなたん!おきてるぅ?はやくおきないと…♪♪

そこまで読むと急に亜弥ちゃんが私の背中の上でうつぶせになった。
「いったいってば亜弥ちゃん!!」
「がるる〜〜美貴たんはここかぁ」
「ちょっとちょっと…いてぇっつの」
「おきないと食べちゃうぞ〜〜〜!!!」
まるで特大サイズのテディベアを抱きしめるくらいの勢いで亜弥ちゃんが私を抱きしめた。
恒例行事だ。ぎゅうするのは本当はあんまり好きじゃないけど。

亜弥ちゃんが本当に嬉しそうだから、私はこの行事を断ろうとは思わない。
17 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 08:30
亜弥ちゃんはこうすると喜ぶ。
ぎゅぅっってして、背中ぽんぽんってする。
なんだか、亜弥ちゃんが赤ん坊で私は亜弥ちゃんををあやしてるママみたい。
ふんわりした空気と亜弥ちゃんの甘い香りに包まれて、時間はゆったり流れてる。
私たちの周りのぜんぶが、同じ感情を共有してる。
クッションも、ベッドも、まくらも、このオンボロ携帯も。

きっとこれは

きっと、この感情は

18 名前:  投稿日:2006/07/18(火) 08:33

そのまま私は、二度めの睡眠世界へと向かった。

もちろん、今度は亜弥ちゃんとふたりで。

亜弥ちゃんの「大好き」とちっちゃく呟く時のまんまるな声。
こんなときはいつも…
ねぇ、亜弥ちゃん?
美貴は亜弥ちゃんが好きなんだって、心から思えるんだよ。

亜弥ちゃんとずっとずっと、一緒に…大好きだよ…


そしてもう一度、私は眠った。
赤ん坊を一人、胸に抱きながら。
19 名前:Analog 投稿日:2006/07/18(火) 08:38
次回もなるべくすばやく更新しまっす!!

しかしこのふたりのあまあまを書くのは難しいですね。
精進させていただきます。
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/18(火) 22:19
おぉぉお!あやみきww
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/18(火) 23:38
あやみきいいですね〜
雰囲気もすごくいいかんじですね
暖かい感じがします
次回も期待して待ってます
22 名前:  投稿日:2006/07/24(月) 08:48

「ふぁ〜あ…ねぇむいねぇ美貴たん」
「そだね…昨日寝てないもんね…」

昨日の雨がウソのような快晴。
窓の外には青空しかみえない。絵に描いたような青空。
私の隣には相変わらずの、あの声。

まだ二時限目が終わったところだというのに、教室中がぐだぐだしている。
まぁ週明けは無理もない。
このクラスは部活生も多ければ街中へ繰り出してブイブイ言わせてる女の子も多い。

人それぞれ、時間いっぱい週末を生きた人たちばかり。
1時限目が古典だったこともあって、このムードを一気に加速させた。
23 名前:  投稿日:2006/07/24(月) 18:37

「ねぇねぇ美貴たん…おなかすいたよ」
「そう?食べたらお弁当?」
「でたよ…いちいち冷たいなぁ!ばか美貴!わかんないかなぁこのオーラを…」
「あぁんしてほしいんでしょ?みーえーみーえ。」
「もういいもん…ねるっ!おやすみなさいぃ!」
「子守唄うたったげよかぁ?」
「またばかにしてぇ!美貴たんってば!!」
24 名前:  投稿日:2006/07/24(月) 18:40


「あぁいかわらずバカやってんね」

吉澤ひとみ。このクラスの男形。
私たちのクラスは女子しかいないから、フットサル部キャプテンの彼女は人気の的だ。
この前も放課後隣のクラスの女の子に告られていた。

スポーツをやる姿に女の子は弱いらしい。

私としては唯一気を許せる、というか何も考えずにいれる友達みたいなやつで
そのほがらかな空気とスポーツマンバリバリなオーラ。
それがまた心地よい、本当にいいやつだ。

コイツは物事を冷静にみてるから、だれそれが付き合ってるだの
そういう色恋沙汰にはめっぽう強い。
かくいう私たちも…そんな風に思われているのだろう。
25 名前:  投稿日:2006/07/24(月) 18:40

「よしこちゃんたら…もう…照れるよ…ふふ」
「うぉおい頬を染めたよこの娘!バカって言われたんだよ亜弥ちゃん?」
「ふぇ?えぇぇぇ!!よしこ!!怒るよ!」
「ちょっとフジモっちゃん、よく耐えれるねこんなの」
「よしざわぁ!まぁたややこしい発言すんなっつの」
「がるる…がるぅ…ばう!!ばう!!」

また出てきたよ亜弥犬。
26 名前:  投稿日:2006/07/24(月) 18:40
「あぁ、また亜弥犬が…吉澤、購買でメロンパン買ってやってコイツに」
「ふぇ!?何でアタシが??」
「いいから!はよいかんかい!!」

おどおど焦る吉澤の背中をどんと押して、そのあと顎でもう一度促す。
隣でまだ威嚇してる亜弥ちゃんの手を吉澤に握らせ、もう一度顎で催促。
はいはい、といった表情を残して吉澤と亜弥ちゃんは教室をでていった。

平和とは、この瞬間のことをいうのだろう。
眠い…ねよ…

27 名前:  投稿日:2006/07/24(月) 18:41



「いや…フジモっちゃん…」

「うぉぉい!ビックリさせんなってば」
「だから…これこれ…」

吉澤が目で促した視線の先には、私の机の足をしっかり握って
まるでお猿さんのように頑なにその場を離れることを拒んでいた。
そのふくれっつらといい、眉間のしわといい…

あ…まただ…

また、これがきた…
28 名前:  投稿日:2006/07/24(月) 18:41

心臓があつぅくなる感じ。
グゥッって内側から心臓が突き上げられるような。
彼女の匂いがフラッシュバックしてきて。
まるで彼女以外なにも存在しないように、私の視界には彼女しかいない。
周囲の空間も景色も、ぐるっと表情を変える。
それはまるで虹色のコンタクトをいれたみたい。
静寂が支配し、そのまま私を吸い込んでいってしまいそうな幻覚にさえ陥る。

まばたきすら許されない。
目をそらすなんて、到底無理で。
29 名前:  投稿日:2006/07/24(月) 18:42

想ってしまっている。

この一瞬が、私の中でこんなにも長く感じられている不思議を

この一瞬が、私の中で何かが、私を確かにつかんで離さないでいる甘い痛みを

この一瞬が示す、私の気持ちを。

あぁ…何度私はこうやって気づかされるんだろう…

この胸が必死に伝えてる。
この虹色の景色は、私の中のあなたを彩る愛の色なんだって。
30 名前:  投稿日:2006/07/24(月) 19:56

「美貴たんがそばにいないならパンはいらないもん、ってきかないんだよ」
「そ・・・そっか。ゴメンね、吉澤。また今度3人でいこうよ。おごるから」
「おっ…おう…どした?急に…目がうつろだよ?」
「ばか言うな…これは眠たくてだよ…そんな…」
「美貴たんのばか…知らないもん…アタシだけどっか隔離してぇ・・・」
「ほらもう亜弥ちゃん。そんなとこ掴まらないの。こっちおいで」

いつもの笑顔が戻ると、ふんわりしたあの匂いと共に、虹色は消えた。
でも確かに、手が届く。
今の私は、あなたに手が届く。
31 名前:  投稿日:2006/07/24(月) 19:57
抱きついてきたあなたを抱きしめる。ぎゅうってする。

明日…メロンパン買ってやるか…

シャンプーのいい匂いがあなたの髪からすると
私はビックリするぐらい自然と落ち着けるんだ。

それからゆっくりと目を閉じて、あなたの存在と私の気持ちを
もう一度ゆっくり確かめるんだ。

この虹色を、見失わないように。
32 名前:通りすがり 投稿日:2006/07/25(火) 00:49
あやみき好きっす。
作者さんのあやみきかわいいっす。
33 名前:Analog  投稿日:2006/07/25(火) 09:16
>>20
名無さんレスありがとうございます’▽’*
ビックリをこれからもっと提供していきたいっす笑
これからもごひいきによろしくお願いしまっす!
>>21
名無さんレスありがとうございます’∨’*
ほのぼの感、出せましたでしょうか?
ご期待に添えたなら嬉しいっす!これからもよろしくお願いしゃす!
>>32さん
通りすがりさんレスありがとございます'ω'*)
このカップリングは書いてるうちに甘甘になっていきます笑
これからももっと精進してかわいく描いていきます!
これからも読んでいただければ嬉しいです!!
34 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/07/25(火) 10:45
いい!
あやみきはやっぱいいですね〜
どんどん甘甘になっちゃっていいですよ(笑)
35 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/22(火) 16:45
まだかなあ
36 名前:A 投稿日:2006/11/25(土) 23:14
待ってます。
37 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/26(日) 03:35
       
38 名前:Analog 投稿日:2007/01/02(火) 16:29
「ねぇ、亜弥ちゃん」
「…ん?」
「重いんだけど…」
「ふぅん…」
「うぉい!どけろっつったんだよ亜弥っ」

いやいやと首を横に振りながら、全体重を私の背中に預ける亜弥ちゃん。
背中にうりうりとアゴを押し当てながら「いぃやぁぁぁあ」だって。

本当に本当に苦しいんだけど、可愛いんだよな…
39 名前:  投稿日:2007/01/02(火) 22:35
こんな風に、亜弥ちゃんの一挙一動が可愛いと思うようになってからというもの
私の休日のひと時はほとんど亜弥ちゃんつき。
毎週土日にお泊りをせがむ亜弥ちゃん。

その目がさ、うるうるしてんだよ。うるうる。

断るわけにゃぁ…ねぇ・・・
っていうか、こんなにごり押しされてるアタシって、幸せもんだよな…あは…

「みぃきぃたぁん」
「どっ!びっくりした!急に話し掛けないでよ亜弥ちゃん心臓とびでる!」
「今みきたん、なぁんかニヤニヤしてたぁ」

見られてる。

「おっ、思い出し笑い!よく、あ、あるでしょ?亜弥ちゃんも…たは…」

視線がいたい…
40 名前:  投稿日:2007/01/02(火) 22:36
「顔も真っ赤だしぃ…ろれつも回ってない…なぁにを考えてたんだ美貴っ!!亜弥さんに教えなさい」
「なっ、なにも考えてない!!ホントだから!」
「あぁやぁしいなぁ・・・言わないと…こちょこちょの刑っ!!」
「ひっ!」

亜弥ちゃんの両手がアタシのわき腹に触れた瞬間、私の自我はとんだ。





「それで、亜弥のこと考えてたよ、って言ったわけね」
「ばっ、声でけぇよ吉澤っ!アホかぁ!…そんなんじゃねぇよ」
「フジモっちゃん顔にでやすいからなぁ〜♪マジで♪顔に浮かび上がるもん言葉が」

あのメロンパンの日以来、私と吉澤と亜弥ちゃんはつるんで遊ぶようになった。
丁度フットサルの大会が終わり、一段落ついたらしく、放課後も一緒にでかけたりしている。
41 名前:  投稿日:2007/01/02(火) 22:36

この前もゆったけど、こいつは感が鋭い。
一緒に遊ぶうちに気づいたのだろう。
何が確信になったのかは教えられてない。

亜弥ちゃんの一口目は必ず私があぁんしてあげるからか。
放課後は常に手を繋いでるからか。
それとも本当に、心が読めるのか…って、アホらし…

なんにせよ、私が隠し事ができないのは火を見るよりも明らかで。
今だってきっとハタからみたらどうだろう。ニヤニヤしてるに違いない。
明日からはマスクしてこよ。ちょっとはカモフラージュになるだろ。
42 名前:  投稿日:2007/01/02(火) 22:37

「お、ワイフのお帰りだぞフジモっちゃん♪」
「アホか!そのへらず口を「とぅぁーーだいまぁぁっ!!!フルーツ牛乳とメロンパン買ってきたぁ♪」

うぉい!セリフの途中だっ!亜弥ちゃん!

「じゃぁ愛しの美貴ちゃまにあぁんしてもらわなきゃだねぇ亜弥ちゃん♪」
「ばば、ばばばかっ!吉澤っ、ふざけんな!」
「顔が真っ赤ですぜ、アニキ」
「本当だぁ♪みきたん、顔が真っ赤っ赤ぁ♪どしたのぉ〜」
「ちょ…亜弥ちゃんまで…みられんだろみんなに…」

「ほら、はやくはやく♪いとしの亜弥ちゃんが待ってるから〜」
43 名前:  投稿日:2007/01/02(火) 22:37

あぁ〜んと大きな口をあけて、時折ぱくぱくしながらじっと待ってる亜弥ちゃん。
ますます顔を背けたくなるような、可愛い仕草。
見られたくない。こんな真っ赤な顔。恥ずかしい。

でも、目をそらせないのは、きっと私が亜弥ちゃんを求めてるからだ

最近は、この胸が熱くなる感じを覚えるペースが速くなってる。
臨界点が徐々に上がってきてるのがわかる。
もっと、もっと亜弥ちゃんを見てたい。目に焼き付けたい。私のそばにいてほしい。

亜弥ちゃん…

44 名前:  投稿日:2007/01/02(火) 22:38





「みきちゃん?」

ハッと気づくと、目の前には亜弥ちゃんの顔があった。心配そうにこちらを見てる。
いつもより、ハッキリと亜弥ちゃんが見えるのはなんでだろう。

いつも見慣れてる顔なのに、距離なのに、なんで?

「みきたん…大丈夫?どしたの…」

唇が動いた瞬間、胸がぐって締め付けられた。
いつもよりも大きな力。
苦しいんじゃない、酔っ払ってるんじゃない…

鮮明すぎる。
まぶしすぎる。
息ができない。

「やだっ・・・」

ガタガタと机にぶつかりながらわきをすり抜け、私は一目散に廊下へ出た。
それから、走った。
どっかにいっちゃった自分に追いつかなきゃ、まずい気がしたから。
45 名前:  投稿日:2007/01/02(火) 22:38

「「美貴ちゃん!」」

吉澤と亜弥ちゃんの叫ぶ声が聞こえたけど、立ち止まることなんて到底できなかった。
顔が熱い。体中のあちこちがあつぅくなって、いらいらする。
もぉ、どうしちゃったんだよ美貴は…何やってんだよ藤本っ!!

目にとまった保健室に一目散に逃げるように入る。
そのままベッドに直行して、布団にもぐりこむ。
46 名前:  投稿日:2007/01/02(火) 22:39
全力で走ったおかげで息はあがって、私の呼吸の音が誰もいない保健室中に響いてる。
心臓の音も、とてつもなくおっきなスピーカーにつないで流してるみたいに世界中に響いちゃいそうなぐらい叫んでる。
心臓がばくばくゆってる。顔が火照る。熱い。やけどしそうだ。


本当にもう、どうしっちゃったの、私は…

47 名前:  投稿日:2007/01/02(火) 22:39
呼吸が一段落したところで、冷静に自分の行動を振り返ることにした。
まず、吉澤にちゃかされて、いつのまにか我を忘れて、で、全力疾走して気が付きゃ保健室…

「ありえねぇ・・・なにやってんだ私は…もぅ・・・」

我ながらあんなに小学生がゆうような茶化しに過剰に反応したうえ
亜弥ちゃんから逃げるように走り去ってしまったことが情けないうえに亜弥ちゃんに申し訳なくて。
ふたりは追っかけてきてくれてたんだろうけど、とまれなかった自分がイヤになった。

お昼の休憩時間の終わりを告げるチャイムが校舎内に流れ、慌しい足音と笑い声が瞬く間に消えた。
さっきまでうるさかった校庭も、廊下も、静寂だけが支配し、なんだか寂しささえ感じる。
呼吸はいつのまにか落ち着きを取り戻した。
落ち着いた途端、眠たくなってきた。
この時間だけ寝て、6時間目に教室戻って、あやまろ…そうしよ…

顔の半分だけ布団から出して、右隣ににある窓から校庭を見つめる。
今日は驚くような快晴で、ちょっとずつ傾く日差しが虹色に光って私の網膜を刺激する。
あったかい日差しに包まれて、気づいたら私は眠っていた。

48 名前:Analog 投稿日:2007/01/02(火) 22:51
どうもご無沙汰しておりました。
何だかんだとめちゃくちゃ時間がかかりました理由はパソコンが壊れたからです。
根っからのwindows98ユーザーなもので、最近の使用にはどうもついていけません笑

のんびりな私を待っていてくださる方々がおられるのがわかり、とても嬉しい反面申し訳なく
感じていました。こんなペースでこんな文章ですが、どうかやんわりとこのお話を見守ってください。

それでは、また。
49 名前:Analog 投稿日:2007/01/02(火) 23:41
>>34さん
どんどん甘甘を提供していくように日々甘甘精進しておる所存でござんす笑
のんびり更新ではありますが待っててくださいな!!
>>35,36,37さん
待ってくださってたのホンマに嬉しかったっす!!
期待にこたえれるようなクオリティに自らを引き上げれるよう、がんばります!!
50 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:20







私はいま、夢の中にいる。

夢の中で、寝転んでる。

夢の中にいる、なんて流暢なことをゆってる時点で夢かどうか胡散臭いところではあるが
このふわっとした感じは間違いなく夢だ。

マシュマロみたいなのが私のおなかの上でぐりんぐりん回転してる。
触ろうとするけど手は思うようには動かない。夢である所以はそこにある。

あれ、マシュマロがのぼってきたぞ…
ぷよぷよ動いて、る…?
なんだこのマシュマロ…虹色だ…あったかくて、呼吸してる…

呼吸…


51 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:23


「おはよ♪みきたん、ぎゅぎゅぅ〜〜」

寝ぼけ眼からさめていくうちに、マシュマロが顔をもち、あの愛しい笑顔に変化した。
カーテンごしに差し込む柔らかい午後の日差しが亜弥ちゃんのの横顔を美しく照らしてる。
この子はいったいいつの間に布団の中に潜り込んだんだろう。
私は夢の中でも、亜弥ちゃんと一緒で、幸せを感じていた。

「ふぇ?あ、あやちゃん?授業は??」
「そんなもんより、美貴たんのが大事だから、校内あちこち探しまくったの」
「ちょ、ごめんね亜弥ちゃん…私のせいでそんな…」
「ねぇ、みきたん?」

突然、亜弥ちゃんが目を伏せた。
52 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:25
私が謝ったことで悲しませてしまったのだろうか。
脳みそいっぱいにごめんなさいのセリフが浮かぶけど、なかなか口から出ていこうとしない。

「…みきたんは、あやのこと…どんな風な位置においてるの?」

目を伏せたまま、こちらをチラリとも見ないで亜弥ちゃんは言った。
おそるおそる、探るように、後悔しないように、訂正できるように、
ゆっくり、ゆっくり亜弥ちゃんはそう言った。
53 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:26
こんなにも真面目に。
こんなにも答えづらい質問を投げかけてきた亜弥ちゃんを、私もまた、見れなかった。

たくさんの言葉が体中をいったりきたりしてるのがわかる。
どれかひとつ、それらしい言葉を、なんてことはない言葉を取り出して並べれば、きっと今この場は丸く収まる。

でもそれが、私にはできなかった。

不意に諦めたくなって、適当な言葉で誤魔化したくなる。

でも

それだけは、私はしたくなかった。

だって、私自身が一番、中途半端なままで、立ち止まっていたから。
たった一言で片付いてしまいそうな感情だからこそ、一歩をどれだけ慎重に踏み出したらいいのか分からずに。
54 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:26

私はどうしたいのか。亜弥ちゃんと友達として、今までどうりワイワイするのか。
亜弥ちゃんの気持ちにはずっと気がついていたし、何より自分自身もいつのまにかそうゆう関係のつもりでいた。

自分が苦しくなるのがイヤだったんだ。
だってこんなにくるおしいの。亜弥ちゃんを愛してるの。
でも言葉にしちゃえば私は私じゃなくなって、自分も、亜弥ちゃんも見えなくなっちゃう。
もっとうまくやればいいのに。

でも…私にはできないんだもん…
55 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:27

視線をほんのちょっとだけあげて、亜弥ちゃんの方をうかがう。
ずっと下を向いたままの亜弥ちゃんの顔をちょっとづつオレンジ色になる日差しが鮮やかに染めていく。
オレンジ色の静寂の中で、私たち二人は、こんなに近くにいるのに、途方も無いぐらい遠くに距離を感じてる。

愛されたい。亜弥ちゃんに愛されたいよ。
でも、一言がゆえない。こんな中途半端な感じでゆえない。
それこそ私は自分のことだけ考えて好きっていうことになっちゃう。
56 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:28

「あや…ちゃん…あの、あのね・・・」

おそるおそる名前を呼ぶ私を、ゆっくりと顔をあげながら、じっと見つめてる亜弥ちゃん。
その瞳が、何かをすでに語っていたのを、私は気づいていた。


刹那


雲が太陽を隠して、保健室に一瞬、薄暗い静寂が宿った。


「うざかったんだよね、ずっと…美貴たんは亜弥のことは、そこまで親しくしたくない人なんだよ…ね…」

「え…?」
57 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:28

予想外の言葉が鼓膜を震わせ、三半規管の統制を奪う。
ぐるり、と目の前が回ったような気さえした。
それぐらい強烈だった。
今の言葉が私の頭の中で絶え間なく響いている。
亜弥ちゃん。
私の知ってる亜弥ちゃんが、走馬灯みたいに脳裏に浮かび、私は回顧する。

けれど

そのどの想い出の映像を見つめても

こんなにも落ち着いていて
こんなにも青白くて
こんなにも元気がなくて

こんな言葉を私に投げかける

そんな松浦亜弥は、私の記憶にはこれっぽっちもなかった。
58 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:29

私は、見逃していたのだろうか。
それとも、とんだ思い違いをしてしまっていたのだろう。
今更、本当に今更私は気づいてしまった。

松浦亜弥。
私の愛しい人。

でも私は、そんな亜弥ちゃんの本心を欠片ひとつも見つけることができていなかった。

心臓が痛いぐらい叫んでるのに、頭の中はとても静かで、透き通っている。
妙に冷静な私の脳と、このままではまずい、と焦る私の心臓。
59 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:29


ゆっくりと雲が太陽から遠ざかっていく。
ゆっくりと亜弥ちゃんの顔がオレンジ色に染まっていく。

オレンジのベールが、亜弥ちゃんの顔を包む。
これから始まるであろう、私のいない生活や休日を思い描いたのだろう。
まっすぐな瞳が、私をとらえる。

はじめてみる、深く沈んだ色をした、亜弥ちゃんの瞳が私をとらえる。
ついさっき教室を出る前に目に焼き付けたはずの亜弥ちゃんの満面の笑顔が、どうしても浮かばなかった。
60 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:30

チャイムが鳴った。
時計は、終業時間を過ぎていた。
ざわざわと、みんなの声がきこえる。
あんなにも静かだった校舎が、一気に活気付く。

でも、私たちには、そんな賑やかな声たちも、うるさい雑音でしかなかった。

「ごめんね…みきたん…そろそろ帰らなきゃ。また明日…ね。」

「あ、亜弥ちゃ…」

61 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:30
 





62 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:31


伸ばしかけた手を、ぐっと握り締めて、胸においた。
この手じゃもう、亜弥ちゃんに触れることはできないんだ。
こんな私だから、亜弥ちゃんを苦しめて、悲しくさせたんだ。
自分に言い聞かせる言葉のどれもが、亜弥ちゃんに対する謝罪の言葉ばかり。

大切なものは、失う直前にわかる。

なんてことはない、いつもの放課後。
私は 大切な人を なくしました

追いかけようと思えば追いかけれたけれど、これ以上は無駄だと思った。
というより、私にはその資格も、度胸も、覚悟もなかった。
63 名前:  投稿日:2007/01/04(木) 18:33

亜弥ちゃんは、あの時からずっと、泣いていた。
夕陽でオレンジ色に染まった亜弥ちゃんの頬が濡れていたのをみて、私はもう無理だと悟った。

夕陽は落ちて、外にはもうすぐ夕闇の気配。
騒がしさが徐々に薄れてゆく校舎の中をも、夏の夕闇が支配している。
夜が始まろうとしている。

亜弥ちゃんは、いつの間にか姿を消していた。


途方にくれる私ごと包み込んで、闇夜は深まっていった。
64 名前:Analog 投稿日:2007/01/04(木) 18:34
今日はここまでっす!
またの更新ばまっちょってください!
65 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/05(金) 00:42
やばいやばい
めっちゃ続き気になる
更新待ってます

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