〜寝る前に読む短編集U〜

1 名前:ねこじゃらし 投稿日:2006/08/14(月) 04:23
題名どおり、寝る前に読むといい夢が見れそうな短編を書けれたらいいなと思ってます

更新速度は遅いですが悪しからず…。
2 名前:ねこじゃらし 投稿日:2006/08/14(月) 04:27
度々ごめんなさい、では今度こそ参ります

「初夏の陽気に包まれて」

どぞ
3 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:28
「体育委員はこの後、プール掃除があるのでちゃんと行くこと」
今日は土曜日。
授業は昼まで。
まだ11時を回ったところ
どこへ行こうかな、なんて言う考えは甘くて、私は体育委員なわけで
4 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:28
季節は‘夏’というにはまだ早くて、‘春’と言うには遅すぎて
こんな日のために‘初夏’と言う語句が生まれたのだろう

時折なびくカーテンからは美しい青空が望める
辺り一帯草原で、この青空を仰げば、
鳥のように飛んで行けるんだろうな
なんて事を考えてしまう私はまだまだ子供なのかなぁ・・・
5 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:28
ふと我に返り、周りを見渡す

だれもいない教室
いつもは聞こえない自分の息遣いまでもが聞こえてくる
普段の空気とはまた違う雰囲気を醸し出していた

机の横にかけてあるトートバックを手に取り席を立つ

私はそのまま校舎出口に向かった
6 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:29





              ▽



7 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:29
外に出ると物凄い日差しが地面を照りつけ、
遠くの方に陽炎を作っていた

私はというとまだ、校舎の日除けの下にいた
眼下に広がるこの灼熱の世界に何もかもが億劫になったのだ
8 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:29
と言ってもここでずっと突っ立ていても仕方がない
また大きくため息をつき、その世界へ足を踏み入れた

途端、風が吹き荒れる
それほど強くない風、だが心地よいと言うような風ではなく
帽子を被っていたら、思わず頭を押さえてしまいそうな強さ
9 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:30
煽られたスカートを手で押さえながら空を見上げた

「悪くないな」

相変わらず日差しは強くて暑いが
その風はヒンヤリとした西から来た風だった

しばしの間それに酔いしれる
10 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:30
「・・・っし」

どうやら体は満足したようだ
気合が入る

早くプールへ行って仕事を済ませないと夕方までかかってしまう
早速向かうことにした
11 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:30
気分がいいのでどんどん速足になっていく
挙句の果てに走りだした

迸る汗が何とも心地よい
いつもの私なら、ぎゃーぎゃー喚きだして
すぐにシャワーを浴びるだろう
だが、これからプール掃除
どうせ濡れるのだから同じだ
12 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:30
走りだしたは良いのだが、別に何キロも離れている訳ではないので
ものの数秒で着いてしまう

少し虚しくなりながらも、到着したので
まぁいいかで終わらせた
13 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:31
入り口は更衣室を兼ねたコンクリートの簡易的な部屋
中は両サイドにロッカーが設けられておりその奥に
プールへと繋がるドアがある

中は窓がないので常に薄暗い
太陽に慣れていた目が唸る
14 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:31
コンクリート製と言う事で中は結構温度が低くて涼しい
まぁ、だが、こんな薄暗い、陰湿な雰囲気の中では興ざめしてしまう

ということで早速着替える事にした
淡いグリーンの長袖の体操服に紺色のハーフパンツ

そのまま、プールへと繋がるドアを出た
結構な日差しがまだ照りつけている
まだ、1時だ
15 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:31
10Mほどの通路の脇にデッキブラシが立てかけてあった

「・・・2本?」

なんだか分からないが2本あった
デッキブラシを睨みながら考える


ま、いいかで終わらせた
16 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:32
それを両手に持ち、プールサイドへと向かう
ちょうどプールサイドの真ん中あたりに出る

叫びたくなる衝動を必死に抑えながらプールを一望する
17 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:32




・・・と、
18 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:32
前方、左、プールへ入るための短いはしごがあるところ
一人の女の子が足をぶらぶらさせながら、縁に座っていた

誰だろう・・・

青いチェックのスカートに半袖のカッターシャツを着ている
心地よい風になびくその長い髪は清涼感に溢れていた
19 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:33
顔まではっきり見えないがきれいな女の子だなぁって思った

彼女がこちらに気づいたようだ
プールにピョンと飛び降り、こちらに向かってくる
途中、何かを拾った
青いながーいもの

・・・ホース?

やっと顔の見える位置まで来たので表情を伺って見る
なんだか怒っているようだ
ホースからは結構な量の水が出ている

「まさか」

シャーー

「きゃー」

・・・

「おそーい!」
20 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:33
散々濡らされた後なんか怒られた

俯いたまま、のびた髪先からポタポタと落ちる水を見つめる
“どうせ濡れる”どころじゃないじゃないかと自問
ホースを持つ彼女をにらみつける

私の目付きは結構やばいらしいのだが、彼女は動じない
まぶしそうな目付きで見つめてくる
21 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:33
「ばかれいな」

小さな声で呟かれたが確実にそう聞こえた
彼女は変わらず眩しそうに私を見つめている

「れいなのことずっと待ってたのに」

と、また小さく呟いた
むっとした表情がなんだか・・・その・・・

私はというと、なんだか良く分からず、はてな顔で
その女の子を見つめていた
22 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:34
それより
「何で私の名前・・・」
そう、私は彼女にここで初めて出会った

これは何かの間違いだと自分に言い聞かせようとするが
どうにもこうにも、“れいな”は私の下の名前
なぜか彼女は“田中”ではなく“れいな”と言った
どんどん訳が分からなくなる
23 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:34
そうやって考えること5秒ほど

「何でって・・・知ってるんだから知ってるの」

理不尽だ、全くもって理不尽だ、理不尽極まりない
そして私は意味不明
24 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:34
「えーりー」

妙な世界に潜り込んでいた私を現実に呼び戻すその声
はてな顔を彼女の向ける

「私の名前ー」

唐突に言われ、彼女を見つめる
相変わらず眩しそうな笑顔だ
25 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:35

“襲われる!”“逃げなきゃ!”という感情は沸いてこず
なにかまた違う不思議な感情に囚われる
知らない人に名前を知られている
悪い感じはしない
別に嫌じゃない

なんだろう・・・

26 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:35
彼女がプールの中から手を差し伸べて来た

“よろしく”の握手かな?

その手を静かに握りしめる

細くて長い指と奇麗な肌
少し冷たい・・・冷え性なのかな
なんて勝手に模索していると

「ん〜!」
と手をぶらぶらと揺って来た
何だか不満そうだ

何々?よろしくの握手じゃないの?
と、また自問
27 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:35
「持ち上げてよぉー」

あぁそー言うことか
納得

見た目どおりひょいと軽く持ち上げることができた
なぜか少し彼女はびっくりしている

まさか、持ち上げれるなんて思っていなかったのだろうか

「ありがと」
と、気恥ずかしそうにうつむき加減の上目使いで礼を言って来た
28 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:35
そんなことよりさっきから気になっていたことを聞かなくては

「なんで私のこと知っとう?それにあんた誰?」

「・・・」

何も言わない
うつむいたまま黙り込んでしまった
29 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:36
「あぁー言わんとわからん」

俯いたままで少し心配になってきた
傷つけてしまったのだろうか・・・下から覗き込み表情を伺ってみる

「うぅっ!」
と、唸りそっぽを向いてしまった

なんだかあまりよろしくない雰囲気に戸惑いながら、どうしようかと考える
30 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:36
「“えり”だったよね?えりちゃんでよかと?」

意外だったのかこちらに向き直り小さく口を開き、またすぐに笑顔に戻った

「うん!でも“ちゃん”は要らないよ、絵里って呼んでね」

このこだわり方が何ともいえない
31 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:36
初めて会う人間を呼び捨てで言うのはやはり抵抗がある
が、その“絵里”自身は私の事を“れいな”と呼ぶ
“絵里”でいいのかなぁ、なんて事を考える

「あ、そういえば、れいなって体育委員だよね?」

そうだそうだ忘れてた、早く終わらせないと夕方までかかってしまうのだ

「あ、うん、じゃー始めよっか」

うん、と嬉しそうに頷き絵里は2本のデッキブラシを取りにひょこひょこと走り出した
途中何度も風が吹き荒れ彼女の短いスカートが危うくなる
32 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:36
―――ぁっ

って、何で私は興奮してんだろ・・・

「ん?どうしたの?」

赤くなった私を見つめるその瞳はガラス玉のように美しかった
「なんでもなかっ!」

と半ば強引に引き離しデッキブラシを取ってプールに下りた
「はよーせんと夕方までかかってしまうけん」

ようやく彼女もプールに降りてきた
「待ってよれーなぁ」
33 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:37
端の方からゴシゴシゴシゴシ
近くでもゴシゴシ聞こえる
振り向くと真後ろでゴシゴシやっているではないか

「あたしこっち半分するから絵理こっち半分やって」
「ん〜!」

彼女の反抗を無視しそのままゴシゴシを続ける
時折振り向くと爽やかな笑顔をふりまいてくれる
が、生憎私は今、非常に不機嫌なのだ

「もう!絵理あっちやってって言ったろぅ!」
私の罵声に驚き脅え小さくなってしまった

「むぅ・・・」

と上目使いで見つめてくた
が、さっきも言った通り私は非常に不機嫌なのだ
34 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:37
「わたしこっちやるけん、絵理あっちやって、そうせんとはよー終わらんよ」

と、出来る限り優しい声で言った

「・・・わかった」
小さく頷き再び私の顔を見つめてきた
さすがにもう怒鳴れないなと思いながら彼女に微笑む

「れーな、優しいね」
「へっ?」

んへへーと笑い声を出しながら、向こうへ去って行く

心の端で少し可愛いと思ってしまう自分は何なのかと
自問するが答えが出てくるはずもない

再び作業を開始した
35 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:37


        ▽

36 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:38
「うぅ〜終わった〜」
「だね、良かった、まだ3時だよ」

今まで気づかなかったが彼女の左腕には
可愛いピンクの時計が付けられていた

「それ、可愛いね」
「えっ?あ、これ?うへへっ」
37 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:38
くねくね

その動きはあまりにも彼女に
はまっていて何だか少し可愛くて
見ていると顔の筋肉がどうにも緩くなってしまって
それを隠すために私は背を向けた
38 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:38
「あぁ、そうだ」

何かに気づいたような声に振り向くと彼女は走り去っていった

「ちょ、どこ行くと?」

その華奢な体はシャワー室の陰に消えた

ゴォォォォーー

な、何?

ジャーーー
39 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:38
さっき彼女が座っていたプールの端のパイプから
水がどばどばと出ている
あぁそういうことか、早速水を張るらしい

絵理はというとシャワー室の陰からひょっこり顔だけだし
こちらに笑顔を向けている
40 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:39
「すごかね、絵理」

気休めの言葉にも彼女は余程嬉しいのか、
れーなーと甘ったるい声で意味もなく名前を呼び出したり、くねくねと動き出したり

くるくると目まぐるしく変わる彼女の動作に私の頬は緩みっぱなしだし
でもそれを認めたくないと思いながらも心の底では可愛いなと思ってしまう自分がいるわけで・・・。
41 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:39
「れいなこっちこっち」

手招きをされたどり着いた先
ちょうどプールの最初の地点
飛び込み台があるところにふたりして座った

水はまだ足に掛る程たまっていない
42 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:39
私はただその増え続ける水を見つめていた
透き通り、何とも言えない角度で太陽の光を跳ね返している
こんなにいっぱいどうするんだろうなぁ、なんて
訳の分からないことを心で呟く

絵理はというと、私を見つめたりニヤニヤしたりクネクネしたりと
やたら忙しそうだ
43 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:39
今なら聞けそうかな
ふと、先程の疑問を持ちかけた

「ねぇ、もっかい聞いてもいい?」
ん〜、と首をかしげ私を見つめてきた

「私のことなんで知っとうと?」

彼女は前に向き直り首をふらふらさせながら
ん〜?と再び唸り、遠くを見つめながら微笑んでいた
44 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:40

「例えばさ、自分のほしいものとかだったら、それについて知りたいと思わない?」
「へ・・・」

返答に詰まる

「わたしだったらどんなに手間が掛っても絶対調べ出すよ」
「・・・」

この子は一体何を言おうとしているのだろう

―――私の心は知っている
でも、それを覆い隠している
まるで何も知らなかったかのように―――
45 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:40
ひんやりとした感覚が足先を伝った
どうやら水が溜まったようだ

絵理はまた走りだし、シャワー室の陰へと向かった

帰って来るなり絵理はこんなことを言い出した

「泳ごうよ!」
「えぇ!?」
46 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:40

これはやばいことになった

私は体操服だが絵理は制服だ
いったいどうするつもりなんだろうか・・・

彼女は飛び込み台後方に下がり出した
ある程度まで下がると
ぐっと身構え、プールに向かって走りだした

調子にのって叫び出した

「きゃ〜れいな〜」

などと叫んでいる
飛び込み台を越え
小気味好くプールに飛び込んだ
47 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:40
ドバァァーーーン

ここまで飛んできた水しぶきに私は後ずさる

「れーなぁ、きもちぃよぉ」

笑顔でこちらに手を振っている
髪はすっかり濡れてしまい顔にへばり付いている
重量が増したその髪は心なしか先程より長く感じた

「れーなも泳ごうよ」

ん〜この際だから濡れてもいいか
いや待て、何を考えているんだ水着じゃないんだぞ

と、心の葛藤は続く
48 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:41
「絵理ーいくよー」
「うん!」

絵理と同じように下がり、ぐっと身構える
前を見ると絵理も受け止めるように構えていた

「危ないって」
「だいじょうぶー」

「よしっ」

走りだし、飛び込み台に片足で乗り、力を込め、飛んだ
49 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:41
ドバァァーーーン


ゴボゴボゴボゴボ
ふはぁー

水面へと顔を出す、まず日差しが照りつけた

あぁきもちいなぁなんて思ってたら

今度は絵理が視界に入った

「だいじょうぶ?れーな」
「へぇ?あぁ、大丈夫だよ」
50 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:41
私の“いってる”顔を見て、なぜか心配する絵里
そんなすごい顔してたっけ?

少々落ち込みながらも一年ぶりのプールを愉しむ
重力を感じさせないその快感と、抱きしめられている様な、ささやかな水の束縛感

また妙な感慨に浸っていると、絵里が突然私の手を取り先導しだした

「ええっ?ん?今度は何すると?」
「ん〜?秘密、そんなことより、ほらほらこっちこっち」

謎に満ちた彼女の行動に少々戸惑いながらも従う私
私ってMなのかなぁ、なんて今始めて思った
ということはまさかこの子はSなのか?
51 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:41
どぎまぎしながらも連れてこられた場所

プールのど真ん中

周りを見渡す彼女はどうやら中心かどうかを確認しているみたいだ
先ほど通ったできブラシが置いてある廊下も確認している

誰もいないことを確認しているのかな?
意外と恥ずかしがり屋だったりして

と、いろいろ想像しながら彼女を見つめていると
ふと目が合う
52 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:42
きゃはは、と笑って水の中にもぐってしまった

つられて笑う

ぼこぼこと泡を立てながら水から出てきた彼女

「れーな…」

真剣な表情で見つめられる
水に濡れた髪が真っ直ぐ肩に伸びている
今にも泣き出しそうなその表情に少し心配になり声をかける

「どげんしたと?」

右手をほほにあてがい
首筋に持ってゆくと彼女はすっと目を閉じ身震いをした
53 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:42
「だ、抱きしめても…いい?」

うっすらと目を開け、震えた声で私に思いを打ち明けている

「よかよ」

ぽちゃりと水の音がしたと思うと二人の体が合わさった
54 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:42
彼女は静かに語りだした

「始業式のときに見つけたんだ、あの子可愛いなぁって」


再び水音を上げ、上半身だけ離し彼女と顔をあわせる

潤ったその瞳に見つめられる
頭がおかしくなりそうだった
55 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:42

───初めて会ったんだよ、名前も知らなかったんだよ…でも、その瞳が愛しすぎて心が静められなくなっていた

56 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:43
「宿泊研修のときの二日目に同じ講義を受けることになってたから、“やったぁ”って思ってその夜ずっと眠れなくて」

まだ新しい記憶で鮮明に思い出す
確かに彼女はいた、しかし

「でもね、クラス違うから、声もかけられなくて、なんだか遠い存在なのかなって思って・・・」

私のクラスは2組、彼女は近くには見当たらなかった

「それから帰ってきて球技大会があったよね?私たち一緒に戦ったんだよ?」

その記憶は無い、何しろたくさんのチームと戦ったから

「バレーの3回戦のとき、れーなに一番近いところに行きたいから、前に出て必死にボール上げたし、でもれーな一番遠いところだったから」

そう、私はいつもサーブを打っていたから、一番後ろに居たんだ

「絵里のクラス負けちゃって教室戻らなくちゃならなくて、もっと居たかったけど、仕方なくて…」

優勝したんだっけ?最後は9組と戦ったんだよね?

「それから廊下ですれ違うくらいしか会う機会なくて…」
57 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:43
彼女の切な過ぎるその行動に心が痛む

平々凡々と過ごして来た私と
日々、ある一人の女の子に恋をし、切ない気持ちを必死に抑え、耐えてきた一人の少女

何でもっと早く気付いてあげれなかったんだろうと嘆息を漏らす
こんなにも美しい純粋な心を持った彼女
58 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:44
「それでね、二日前、知ったんだ、プール掃除があるって私のクラスの女の子が言ってたの」

くじを引いたんだ、一週間ほど前に体育委員で集まってどのクラスがプール掃除をするかを
なぜか2クラスが選ばれることになったんだっけ?

「女の子にもう一人誰が来るの?って聞いてみたら、田中っていう子だよって聞いて」

そうか、そー言うことか、
私のために絵里は時間を割いてまで、プール掃除という疎ましいものに手を貸してくれたわけだ
59 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:44
「会いたかった、すごく」

愛しく美しい表情で見つめてくる
そんな彼女をよそに私は微笑した

「まるでスパイっちゃね」

むぅ!と唸る絵里を見て今度は本気で笑ってしまい彼女からを離してしまった

「やだ、れーな」

だが、しっかりと私の胸に抱きついてきた
折角捕まえたんだからもう離さないよっとでも言いたそうな目つきで
私に訴えかけてくる

そっと背に手を回し、それに答えた

「ありがと、絵里」

うへへっと笑い声が聞こえる

「私のこと、好きになった?」

胸にしがみついたまま問いかけてくる
心なしか耳が赤い
60 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:44
「うぅ〜ん、内緒」

そんな恥ずかしがり屋の彼女にいたずらっぽい表情を浮かべながら彼女に囁いた

「んじゃ私もれーなのこと好きってこと、内緒にする」
「はぁ?意味わからんばい」

向き合い二人で笑いあった
61 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:45
純粋なその彼女の思いは太陽の光をはじくプールの水のように透き通り
そしてそれを受ける彼女の心はどこまでも広がる真っ青な空のように美しい

「ほら、絵里、入道雲」
「うん、おっきいね」
「もうすぐ大雨になるばい」
「そんなんなったら大変だね」

遠くのほうには空高く入道雲が出来上がっていた

「びしょ濡れになるよ?」
「もうびしょ濡れ、絵里のばーか」
「あぁ、そっか」
62 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:45
再び賑やかな笑い声が木霊した

夏を目前にして今、ここにひとつの物語が始まろうとしていた
63 名前:  投稿日:2006/08/14(月) 04:46








                    end
64 名前:ねこじゃらし 投稿日:2006/08/14(月) 04:47
以上、「初夏の陽気に包まれて」でした

いい夢は見れそうですか?
65 名前:konkon 投稿日:2006/08/15(火) 00:27
胸がドキドキして眠れそうにないですw
66 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/26(土) 14:38
おぉ〜いい感じ
67 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/16(土) 13:51
昼間に読んでしまったけどw
いい話じゃないか
いい夢見れそうな話だったよ
次の話カモーン

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