笑顔のデート のんとのデート
- 1 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/15(火) 23:17
- アンリアルあいのの。
タイトル通り加護さんと辻さんがデートする話し。
他メンも出てきたりこなかったり。
ではよろしくお願いします。
- 2 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:20
- 「♪生まれた環境 なまりも違うわ
だけど私達 出会った
知らない部分 たくさんあるけれど
買い物してて 兄弟なの?って聞かれた
なんだか、嬉しく感じた♪」
あ、うち加護亜依。
プリティーでキュートな18歳♪
なに?ご機嫌やねって?
そりゃぁそうやん。だって今日はのんとのデートなんやもん。
残念ながらまだ付き合ってるわけやなくって、中学時代からのただの同級生で、
デートって言っても、今度みんなで海に行くからそのためのお買い物なんやけど―――
でものんと二人っきりなの!
のんが誘ってくれたの!
ってことでうちはご機嫌なの。
- 3 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:22
- さてなに着てこうかなぁ?
うちはクローゼットをのぞきこんで、
えーっと、どれにしよっかなぁ♪
よし!おっけー!
今日はピンクのキャミに白いスカート♪
それに白いレースのブラウスはおってっと。
「あいぼーん、何でスカートとか白なのぉ?
ピンクの方が可愛いよぉ。
サンダルもバッグもお姉ちゃんのピンクの貸してあげるからぁ」
うわっ、ノックもせんと急に部屋に入ってきたこの人。
うちのお姉ちゃん。
「あぁ、もうお姉ちゃんうっさいねん。
白は今年の流行職なの!
それよりお姉ちゃん、なんでピンクだらけなん?
そんなんきっしょいだけやん!
だいたいお姉ちゃん、センスなさすぎやねん!」
- 4 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:23
- 「あぁ、あいぼんそんなこと言うんだぁ?
せっかく可愛い妹にお小遣い上げようとおもって来たのになぁ」
「あぁん、お姉ちゃんめっちゃ素敵ぃ♪
大好きやでぇ♪」
うちはおねえちゃんに抱き着いて猫なで声。
「もう、あいぼんは調子がいいんだからぁ。
使いすぎちゃだめよ」
へへ、お姉ちゃんからお小遣いもらっちゃった!
- 5 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:24
-
「えいしょっと」
うちはブラシをおいて鏡に向かってスマイル♪
うん、今日も可愛い!
前髪も完璧!
うちは鏡の前の青いボトルを手にとると、
チョウチョ形のキャップをはずし、シュッシュッと2回空中にプッシュ!
そしてその霧をくぐって、お花の香りのフローラルあいぼんに大変身♪
これでのんも―――
ってあかんあかん、お姉ちゃんの病気移ってもうた。
我ながらきしょいわぁ。
これで小指立ってて黒かったら―――
いや、そんなこと言うてる場合やない。
そろそろ急がんと遅刻してまう。
うちはバッグを手にして、サンダルを引っ掛けると急いで家を出た。
- 6 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:25
-
- 7 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:26
-
「あいぼん遅い!」
「あぁ、ごめぇん」
うちが待ち合わせ場所につくと、もうのんがいてむすっとしている。
「待たせたからお昼あいぼんの奢りだかんね」
「えぇ〜?それだけはかんにんしてよ〜」
だっていくらお姉ちゃんからお小遣いもらった言うても、のんが本気で食べたらきっついんやもん。
「ねぇ、なんでも言うこと聞くからかんにんして」
そっぽ向くのんに、うちが一生懸命お願いしていると、
「ほんとに?」
「うん」
「ほんとだね」
「うんうん、なんでも言うこと聞くから」
「よっしゃぁ〜」
その時ののんの会心の笑みを見て、うちはのんにはめられたことに気づいた。
- 8 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:27
-
「あ、のん、まだ時間過ぎてへんやん!」
「そうだよ♪」
「そうだよって」
「別にあいぼんが遅れたなんて一言も言ってないじゃん♪」
「なっ」
「何でも言うこと聞いてくれるんだよねぇ?」
「なんでやねん!遅れてへんのに!」
「約束やぶっちゃいけないよ、あいぼん♪」
「…………」
うちは言葉に詰まって黙ってのんをにらんでたんやけど―――
のんのふにゃっとした笑顔を見てると、うちの頬も緩んで着て―――
もう、うちはほんとにのんに弱いんやから。
- 9 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:27
-
- 10 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:28
-
さて、とりあえずは水着ってことで、デパートの特設会場へとやって着たんやけど
「のん、こんなんどうかなぁ?」
うちはおとなし目のミントグリーンのワンピースを胸の前にあわせて、のんに聞く。
「あぁ、だめ」
「えぇ?なんで?」
「そんなの似合わないよ」
「そうかなぁ?」
なんだぁ、この色いいなって思ったのにぃ。
「あいぼんのはのんが選んであげるから」
「ほんま?」
へへ、のんが選んでくれるんやて。なんか嬉しいやん。
だって自分が着せたいの選ぶってことやろ?
それってうちに興味あるってこと違う?
♪興味ありありは脈ありでっすぅ♪ってな。
はぁぁぁ、どんなん選んでくれるか楽しみぃ♪
「あいぼん、試着しにいこ」
「あ、うん」
うちが舞い上がってるうちにのんはもう水着選んだらしく、
うちをフィッティングルームに促した。
- 11 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:30
-
「はいこれ」
二人でフィッティングルームに入ると、のんがうちに水着を手渡した。
「どうしたの?早く着てみなよ」
いや、どうした言われてもなんや恥ずかしいやん。
女の子同士はもちろん、彼氏と一緒に入ってる子もいるんやから
別に二人でおるんは普通なんやけど―――
「のんじろじろ見すぎ!」
うちが言うと
「そっか」
って言ってふにゃって笑う。
そうして、のんは自分の分を―――
「あれ?のん、自分のも絵ランダン?」
「ふぇ?あったりまえじゃん」
「えぇ?あいぼんに選ばせてくれるんちゃうん?」
「うん」
にこやかに返事されてもうた。
- 12 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:32
- もう、せっかくのんの選ぶん楽しみにしとったのに。
ぶつぶつ言いながらうちは着替える。
今年流行のフリルが着いたピンクの―――ホルターネック?
「なぁのん、これ背中開きすぎちゃうん?」
「うん」
「うんて」
「いいじゃん、セクシーで」
「セクシーって……それにうちこう言うのなんか
紐解けちゃいそうで不安なんやけど……」
「うん」
「うんって」
うんてなにかい?
じゃぁうちは、女だらけの何とか大会の牙戦とかで、
あれぇこの人見たことあらへんでぇなぁんて思ってると
アクシデントがー!!!って言うような役割かい!!!
- 13 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:33
- うちがジト目でのんを見ていると、
「何でも言うこと聞いてくれるんだよねぇ?」
のんがにやにやしながら、うちの顔をのぞきこんでくる。
「な、なんでやねん!」
「あぁ、あいぼん、のんとの約束破るんだぁ」
く、くっそー、その寂しそうな顔、卑怯やん。
うちがのんを見て見ると―――
のんが試着しているのは、胸元やウェストにリボンが着いた
ちょっと大人っぽい白いビキニ。
えへへ、いいこと思いついちゃった♪
こうなったらちょっとぐらい仕返ししたらな。
うちはのんの胸元に指先を伸ばすと
- 14 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:33
-
ペコッ♪ ペコッ♪
- 15 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:35
-
「あ、あいぼんなにすんのさ!」
「えへへ、のんパット10枚ぐらい買わんといかんちゃうん?」
「もう!あいぼんのバカ!」
のんは、へこんだカップを隠していた手を外すと、
真っ赤な顔して飛びかかってきた。
「うぁなにすんねん」
「そんなん言うなら半分よこせ!」
「そんなんできる訳ないってうぁちょっどこ触んねん」
うちらはしばらく取っ組み合いしてて―――
「はぁ、はぁ、もうのんなにするん!
エッチ!ヘンタイ!ドスケベ!」
「へへへ、それよりさ、汗かいちゃったね」
「……うん」
「こんな汗かいちゃったの、返せないよね?」
「あぁ!またはかったな!!!」
のんはまたふにゃって笑う。
もう、まったくのんはぁ。
- 16 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:35
-
うちらが着替えフィッティングルームを出ると、店員さんがなんだか白い目で見てはった。
ははは、そりゃそうやんなぁ、あんだけ騒いどったらなぁ。
うちらは会計を済ますと逃げるようにそそくさとその場を後にした。
あぁ、そうそう、もちろんのんはパットも買ったで。
数?それは言えへんて。
なぁんて隠す方がへんな憶測されそうやから、
のんの名誉のためにもはっきり言っておくで!
二つやで!
左右一個ずつ!
でもめっちゃ分厚いやつやねんけどな。
- 17 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:36
-
- 18 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:37
-
さぁて、お昼♪
何食べよっかなぁ、
なぁんて言っても、ひそかに美味しくって雰囲気のいい店、
あさ美ちゃんに聞いてあんねん。
「なぁのん、お昼なんだけど〜」
「あぁ、あそこいこ」
のんの指差す方を見て見ると、
「焼肉食べ放題!?」
ははは、そうやんなぁ、のんはこっちの方がいいよなぁ。
「どうした?あいぼん、ピザ食べ放題の方がよかった?」
うちがちょっと遠い目をしてると、
のんが心配して聞いてくれる。
それでもやっぱり食べ放題なんやんなぁ。
「ううん、焼肉でええよ」
うちはちょっと可笑しくなって、小さく笑うと
のんの後に着いていった。
- 19 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:38
-
「のん、食べれるだけにしなあかんよ?」
店に入るなり、のんはがんがん肉を運んでくる。
女の子二人ずれのテーブルとは、ぜったい思えへん量のお肉が
テーブルを埋め尽くしている。
「あいぼん、のんを誰だと思ってるのさぁ」
まぁ、確かにのんやもんな。
のんがにこにこしながらお肉焼いてる。
ほんと嬉しそうやなぁ。
うち、のんをここまで笑顔にできたことあったやろうか?
そう思うとなんだかちょっと悲しなった。
お肉に負けるやなんて。
「あいぼん、ほら、これ美味しそうだよ」
軽くへこんでぼうっとしてたら、のんがお肉とってくれてん。
へへへ、のん、優しいから好き。
うちも結構単純やな。
たったこれだけで元気になるんやもん。
- 20 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:38
-
「あ、これもいい感じじゃない?」
「あぁ〜ん」
へへっ、ちょっと調子に乗ってみてん。
そしたらのん、一瞬驚いたような顔してから、
うちの口の中にぽんって感じに放り込んでくれた。
うん、美味しい♪なんかめっちゃ美味しい♪
さっきと同じお肉とは思えへんぐらい美味しい♪
めっちゃ幸せぇ♪
でもその後、のん下向いて黙々と食べ続けるようになって、
あんまり話してくれへんようになってしもうた。
やっぱり調子にのりすぎたんかなぁ。
- 21 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:39
-
「なぁのん、怒ってるん?」
うちは店を出ると、黙って歩くのんに恐る恐る聞いて見た。
「ううん、べつに」
でもなんだかのん、心ここに非ずって感じで生返事。
「……そう」
だからうちもなんて言ったらいいか分らんくって、
ただ黙ってのんの隣を歩いとった。
「……ねぇ、あいぼん」
しばらく歩くとのんが真剣な顔で声をかけてきた。
「なに?」
「あいぼんはさぁ」
「うん」
「ううん、やっぱりいい。ごめん、気にしないで」
のんはちょっと笑ってごまかしてもうた。
いったいなんやってんやろ?
はっきり言うてくれればいいのに。
気になってまうやん。
- 22 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:40
-
- 23 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:41
-
次に来たのはハンズ。
今度はこまごましたもん買いにきてん。
とりあえずうちは日焼け止めゲッツ!
これ買っとかんとえらいめに会うからな。
こう言う時だけはお姉ちゃんがうらやましいわぁ。
「あれ?のん?」
気づくとのんがおれへんようになってた。
のん、どこいってんやろ?さっきまで隣におったのに。
この年で迷子かいな?
うちがフロア一周して見るとのんはいた。
のんがいたのはおもちゃコーナーって言うんかな?
浮き輪とかビーチボールとか並んでるとこやった。
手にしてる籠には既にスイカのビーチボールなんてべたなもんを始め、
浮き輪とか、空気入れるのんとかいくつか入ってる。
で、のんはと言うと、近づくうちにも気づかず、なにかに見入ってる。
なんやろと思ってうちも見て見ると―――
水鉄砲!?
それをすっごく欲しそうな顔してじーっと見詰めてる。
いや、確かになんかごっついやつで、水鉄砲って言うには
失礼な感じもするぐらい立派なやつやねんけどな。
それでもやっぱり水鉄砲や出?
なんかちょっとうち呆れてもうた。
- 24 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:42
-
「のん、なにしてるん?」
「あ、あいぼん」
「どうしたん?それ欲しいん?」
うちがのんの熱い視線の先にあるそれを指差すとのんはてへへって笑う。
「これさ、麻琴がもってたんだけどさ、すっごいんだよ!
ッビュー!って、ッビュー!ってめっちゃすごいの!」
のんは「ッビュー!」の時は腕を思いっきり伸ばして、そのすごさを表現しているらしい。
「なら買ったらえぇやん?」
うちはその動きがかわいくって、笑いながら言った。
「だけどなぁ……」
「どうしたん」
「結構使っちゃったからなぁ……お金。
……海で使う分もあるし……」
のん、メッチャ悩んでるし。
- 25 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:43
-
「じゃぁ、あいぼんが買うてあげる」
「ほんと?」
「うん」
のんの顔がぱーっと明るくなる。
「でもほんとにいいの?」
「うん、ええよ。臨時収入入ったし、うちも遊ぶし」
「やったぁ!」
のん、めっちゃ嬉しそう♪
その笑顔見てるとうちも嬉しくなってくる。
なんだかちょっとお姉さん気分♪ってお母さんな気もせんでもないけどな。
でものんが笑顔になってくれるんならどっちでもいいや。
- 26 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:44
-
それから買い物終わった後もいろいろ見て回ったり、プリクラとったり、
お茶したりして、帰ってきたころにはもうすっかり暗くなっとった。
「今日は楽しかったね」
「うん、送ってくれてありがとう。
のんも気ぃつけて帰ってな」
「うん、のんこそありがとう」
「…………」
「…………」
「……またぁ……二人でぇ、買い物とかぁ……」
「……うん」
「……遊びにぃ、とかぁ……」
「……うん」
「…………」
「…………」
- 27 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:45
- なんとなく二人ともバイバイって言い難くって―――
なんとなく二人ともしんみりしちゃって―――
なんとなく見詰めあっちゃって―――
そしたらのんがうちの肩に手をかけて―――
「……あいぼん」
「……のん?」
これって、これって、このスチュエーションって、まさか?
なんやめっちゃドキドキしてきたんやけど―――
はぁ〜〜〜、神様ぁ〜〜〜、
うち、うち、もうどうなってもえぇです。
「……じゃぁ……またね」
え?なに?なんなん?
のんは静かに言うと、うちの肩からゆっくり手を離して、帰っていく。
「のん?」
あっけにとられていたうちが声をかけると、のんは振り返って、
ふにゃって笑って手をふって帰っていってもうた。
「……のんのアホ」
うちはもう見えなくなった背中に呟くと、熱くなったほっぺを押さえ、家の中に入った。
- 28 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:45
-
- 29 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:46
-
「はぁ」
うちはお風呂から上がると、パジャマに着替え、携帯をもってベットに入る。
うちの携帯には今日のんととったプリクラ。
のんも張ってくれてへんかなぁ?
のんとは長い付き合いやけど、お休みの日に、二人っきりでのお出かけなんて始めてやった。
これからもっと増えるんかなぁ?
増えるといいなぁ。
そんなこと思いながらメールを打つ。
『のん、また二人で遊ぼうな』
短いメールを送信して目を閉じると心地よい疲れが体を包んでいく。
のんからの
『うん』
って、うちよりさらに短いメールの着信を知らせるメロディーを、
うちは夢の中で聞いた。
のん、約束やで?
また、絶対二人でお出かけしような?
- 30 名前:夏のお買い物 投稿日:2006/08/15(火) 23:47
-
FIN
- 31 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/15(火) 23:50
- 一話目完結です。
次回はみんなで海に行きます。
- 32 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/15(火) 23:51
- と言うことで、8月中には更新する予定です。
- 33 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/16(水) 00:00
- *ホルターネック
前身ごろの上からストラップが出ていて首の後ろで結ぶタイプの衣服。
* 文中に出てくるフレグランスは作者の好みで、
ご本人が使ってると言うわけではありません。
- 34 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/20(日) 01:58
- あいののいいですねぇ。
じらすののさんもじらされるぼんさんもカワイイ
- 35 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:06
- 「「♪ここかと思えばまたまたあちら、浮気な人ね♪」」
「「「あいぼぉん!」」」
「「♪サーフィンボード小わきにかかえ、美女から美女へ♪」」
「「「のんちゃぁん!」」」
「「♪ビキニがとてもお似合いですと肩など抱いて
ちょいとおにいさん なれなれしいわ♪」」
あ、久しぶり〜♪ってそうでもないか。
うち、加護亜依♪
プリティーでキュートな18歳♪
今日はレンタカー借りて、みんなで海にお出かけやねん。
で、今は車ん中でのんと歌って盛り上がってるとこ。
- 36 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:07
- 運転?
運転はなぁ
「うぉー!あいぼん、のんかっけー!!!」
運転はこの人。
梨華姉ちゃんの恋人、かっけーよっちゃん。
この人もお姉ちゃんに負けず劣らずの変な人なんやけど、それはまた追々。
で、後は、盛り上がりながらも黙々と口を動かし続けるあさ美ちゃん。
上半身だけで踊りまくるがきさん。
口あけっぱで楽しそうなまこっちゃん。
盛り上がってるのを他所に一人本を読み続ける愛ちゃん。
ちなみにさっきちらっと見たんやけど、藤原の鎌足の本やってん。
ほんま愛ちゃんは鎌足すっきやなぁ。
「あいぼん、なんで私は紹介してくれないのぉ?」
あ、ごめん、忘れてた。
この黒い人がうちのお姉ちゃん、梨華。よろしくなぁ。
「あいぼん、ひっどぉい!」
あぁ、耳元で叫ばんといてぇ!
まぁ、こんなにぎやかなメンバーで海にお出かけ。
楽しくなりそう♪
な、みんなもそう思わへん?
- 37 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:08
-
うちとのんの車内ライヴで盛り上がりつつ海にとうちゃぁっく!
ここ、あんまり人おれへんな。
結構穴場って感じ?
とりあえずパラソル立てて場所確保して、お着替えターイッム!
のんの水着はこの前一緒に買ったから知ってるんやけど、みんなはどんなん着るんやろ?
楽しみぃ♪
あ、そこ!にやにやしない!
- 38 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:10
-
うちが着替えて、パラソルまで戻ってくると、
まだ誰もおらへんかった。
パラソルの影で、みんな遅いなぁなんて思ってると
「あ、あいぼん、早かったね♪」
あ、がきさんに愛ちゃんや。
がきさんは涼しげなブルーのワンピースでパレオ巻いてる。
愛ちゃんは黒いビキニ。
なんだかめっちゃ大人っぽい。
「あいぼんその水着かわいいね」
「うん、よく似合ってる」
「ほんま?これ、のんが選んでくれてん」
って言ったら二人顔見合わせて、にやりって笑って。
そんでもってひじでうりうりされてん。
めっちゃはずいわ。
「あ、愛ちゃんかてめっちゃ大人っぽいやん」
だから話しそらしたんやけど、
「いやいやいやあいぼん、もっとすごい人いるから」
ほらってがきさんが指差す方見たら
- 39 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:11
-
「あさ美ちゃぁん!!!」
うぁ、驚いてもうた。
あさ美ちゃん大胆すぎや!
だって、だってそれって、めっちゃ細いやん!
もしも、もしもずれちゃったらどうすんのって―――
あかん、顔が熱ぅなってきた。
「お待たせ〜」
きっしょい動きでの登場はまこっちゃん。
きっしょいんはもう慣れたからえぇんやけど―――
スクール水着ってどうなん?
あの噂ほんまなんかなぁ?
めっちゃ貧乏で三つ子の弟がいるってやつ。
それとも一部のマニアの方の受けを狙ってるとか???
「みんな早いわねぇ」
あ、お姉ちゃんや。
まぁ、説明せんでもみんな分ってるよな?
ピンクやでピンク。ドピンクのビキニ。
でもこんなんどこに売ってたんやろう?
目チカチカするピンクなんやけど。
- 40 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:13
-
「あぁ!ひとみちゃんかわいい!」
姉ちゃんの高周波に振り返ると
「…………」
まぁどこから突っ込んでいいのやら。
ほら、みんな固まってもうてるやん。
「へへへ、梨華ちゃんこれかっけー?」
「うんうん、かっけー」
「なぁ、よっちゃん、それ、どこに売ってたん?」
うちが代表して聞いて見ると、
「これ?普通にデパートで買ったんさ。
いやぁ、このアカフンと同じ色のセパレーツ探すのに苦労したんだよ」
あぁ、さいですか〜?
つまり、まずはアカフンありきで、上ないん子丸からアカフンと同色のセパレーツ買って、
セパレーツの上、つこうてんですかぁ……
そりゃぁ、かっけーね〜……
「いやぁ、いくらなんでも上ないのは駄目だからさぁ」
いや、そんなこと自慢気に語られても、日本の海でトップレスなんてありえへんからな、よっちゃん。
はぁ、なんやもう疲れたわぁ。
早くのん、きてくれへんかなぁ?
ちょっと遅ない?なんかあったんやろうか?
なんて心配してると、やっと来た。
- 41 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:15
-
「…………」
あかん、めっちゃかわいい!
この前フィッティングルームで見たけど、でも太陽の下で見るとまた雰囲気かわって―――
健康的な肌に白いビキニが映えて―――
はにかんだような笑顔が眩しくって―――
「あいぼん!あいぼん!」
「え?」
「見とれすぎ!」
うぅ、愛ちゃんにつっこまれてもうた。
「え〜、のんつぁん、のんつぁん、あいぼんの水着選んであげたそうですが、
改めて見るあいぼんの水着姿は銅ですか?」
もう!がきさん、なに聞いてんねん!
「あ、いや、かわいいんじゃない?」
なにそれぇ!?のんそっけなくない!?
「あいぼんよかったね」
耳元であさ美ちゃんが囁く。
「なんで?」
うちが聞くとまたまたぁって感じであさ美ちゃんが言う。
「だってのんちゃん、ちらちらこっち見てるじゃない?
あいぼんが気になってしょうがないんだよ」
そっかなぁ?うちにはあさ美ちゃん見てるようにも見えるんやけど。
- 42 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:17
-
さて、とりあえずは日焼け止め塗りっこ。
のんに塗ってもらいたいのはやまやまなんやけど、
そんなことみんなの前でいえるわけないから、うちはあさ美ちゃんと。
「やだぁ、ひとみちゃぁんくすぐったぁい」
「えへへへへ」
うちがあさ美ちゃんに塗ってもらってると、隣でお姉ちゃんもよっちゃんに塗ってもらってる。
それって意味あんの?ただ塗ってもらいたいだけ?
それとも塗らんともっと黒なるん?
気になったけど楽しそうだからまぁいいや。
ん?あれ?あさ美ちゃんなんか辺じゃない?
なにか違和感を感じて打ちはあさ美ちゃんに聞いてみた。
「あさ美ちゃん?チャンと塗ってくれてる?」
「うん、ちゃんとハートの中にNON LOVEって残るように塗ってる♪」
「ちょ、ちょう待ってぇ!なにしてんの!!!」
そんなはずいもん背中にしょって一夏を過ごせって言うん?
「へへへ、じょうだんだよ。じょ〜だん♪」
あさ美ちゃん、真面目に塗り直してくれたんやけど―――
絶対こいつマジやったな!
後でその大福みたいなほっぺに食いついたんねん!
そこっ!うちもやろ?とか言わない!
- 43 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:20
-
「よっしゃぁ、ビーチバレーしよ」
膨らませたスイカのビーチボールをぽんぽん叩いてのんが宣言。
海にも入らんといきなりバレーかい!?って
感じもしたけど、みんなでバレー。
うちとあさ美ちゃん、愛ちゃんとがきさんのかわい子ちゃんチーム(うちが命名)と、
のんにお姉ちゃん、よっちゃん、まこっちゃんのいろもんチーム(上に同じく)に
分れて試合開始!
あぁ、のんはいろもんちゃうんやけどな。
ほら、人数合わせってやつな。
「じゃぁ、負けた方のチームは1日パシリね」
え?よっちゃんそんなん卑怯やん?
こっちは運動苦手なうちや、文化部の愛ちゃんに対して、
そっちはバレー部のよっちゃんとのんがおるんやで?
でも心配することあれへんかった。
それは何で買って言うとぉ―――
- 44 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:22
-
「よっすぃー」
「おー!」
「よっちゃぁん、こっち見てぇ」
「うぉ!あいぼんのっすげー!あっ!」
「のん!トス!」
「おっけー!」
「のんちゃぁん」
「あ、愛ちゃん!ちょっ、やばいってうわ!」
「いっくよー!」
「いやぁん、麻琴ぉ」
「え?あさ美ちゃんだめあっ見えちゃうって、あ〜」
- 45 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:24
- さすがヘンタイチームや。
むこうのトスやアタックの瞬間、色目使ったり、セクシーポーズとると、面白いようにミスしてくれるんやもん。
お姉ちゃんはがんばってたけど、一人ではなんともならず、
終わって見ればうちらかわい子ちゃんチームの圧勝!
は、えぇんやけど
「あぁ、待ってよ〜、梨ぃ華ちゃぁん」
「ひとみちゃんなんか知りませんっ!」
お姉ちゃん、めっちゃ不機嫌になってもうた。
まぁ、そりゃそうやんなぁ。よっちゃん、うちら見て鼻の下伸ばしすぎや!
うちかて、のんがあさ美ちゃんや愛ちゃん見て動揺してるん、ちょっといややったもん。
- 46 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:25
-
それからちょっと海に入って、水かけっことかして、
誰かがちょっとお腹空いたねって言って、お昼することになってん。
早速パシリチームがみんなの注文聞いて海の家まで買出し。
「じゃぁ、ののは飲み物お願いね」
あれ?お姉ちゃん達、のんだけおいて食べ物買いにいってもうた。
「じゃぁ、いってくるね」
「あ、うちもいく」
「もう、あいぼんはのんちゃんにあまいんだからぁ」
後ろからへんな声聞こえてくるけど無視。
だってそうやん?
一人で8人分ももてんやん?
- 47 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:25
-
今日始めてのんと二人っきり。
並んで歩いてるけど、なんだか気まずい。
のんも話しかけてくれへん。
もう、みんな冷やかしすぎや!
うちら付き合ってるわけやないのに。
だいたいのん、うちのことどう思ってるんやろ?
のん、優しくしてくれるけど、のんが優しいんうちだけやないし。
そんなこと考えてるとあっという間に海の家に着いて、
あっという間に帰ってきてもうた。
あ〜ぁ、せっかく二人っきりになったのに。
- 48 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:28
-
パラソルまで帰ってきて、みんなに飲み物配る。
飲み物配った流れ出、うちはよっちゃんとあさ美ちゃんの間に、
のんはお姉ちゃんとまこっちゃんの間にと離れて座った。
「ほれ、あいぼん、お好み焼き」
「ありがとう」
うちはよっちゃんからお好み焼きを受け取ると、気を取り直して食べ始めた―――
はいいんやけどぉ―――
めっちゃ視線感じるねん。
なんかな?そばを通る人達メッチャ見てくねん。
そりゃぁ、うちみたいなかわいい子おるんやから当たり前といえば当たり前なんやけど―――
あさ美ちゃんとよっちゃんのかっこ、すごすぎんねん!
男の人立ちはみぃんなエッチィな顔して見て行くし、
子供が見てたら、お母さんが見ちゃ駄目!って言って、目、隠してつれてきはるし―――
でもあさ美ちゃんはそんなこと気にもせず、
黙々と食事を楽しんでるし、
よっちゃんはよっちゃんで、みんなの水着姿楽しんでるし―――
うちはちょっと情けない気持ちになって、ご飯を食べ続けた。
- 49 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/29(火) 22:29
- ちらっとのんの方を見て見ると、お姉ちゃんやまこっちゃんと楽しそうに話してる。
のんとお姉ちゃん、結構仲いいんや。
「あぁ、もうほら、愛ちゃんなにやってんのさぁ!」
「そんなこといったってぇ、がきさん」
「ほらほらほら、もう、いいからね、あぁ、まったく愛ちゃんは〜」
なんや?愛ちゃんなんかこぼしたみたいで、がきさんが世話やいてる。
ふふ、愛ちゃん、大人っぽいかっこなのに、子供みたい。
なんやほほえましいなぁ。
あの二人付き合ってたりするんやろか?
「なぁなぁ、あさ美ちゃん、あの二人付き合ってるんやろか?」
「ううん、どうだろうねぇ」
あかん、あさ美ちゃんご飯に夢中でそれどころやないみたい。
- 50 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/29(火) 22:32
- 中途半端ですが、更新終了です。
- 51 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/29(火) 22:34
- 8月中にはこの海編、終わらせる予定です。
- 52 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/29(火) 22:39
- レスのお礼です。
>>34さん、今回の二人はどうなるか。ぜひ見守ってやってくださいませませ。
- 53 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/30(水) 04:53
- 更新お疲れさまです
みんな初々しくていいですね
続き楽しみに待ってます
- 54 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/30(水) 22:47
- ちょw吉澤さんの水着・・・
8月中に完結だとすぐですね。次回更新楽しみにしてます。
- 55 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/31(木) 22:36
- こんばんわ。作者です。
今回はお読みになる前に>>12と、>>33あたりで水着の予習をしていただけると
ちょっと分り安いかも?です。
では後半行きます。
- 56 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:38
-
「いくぜ麻琴ー!」
「おう、のん!」
早々とご飯を食べ終えたのんとまこっちゃんは水鉄砲で遊びだした。
そう、この前うちがのんに買うてあげたあの水鉄砲。
ほんまにのんの言う通り、結構すごいパワーあるみたい。
近距離であたったらちょっと痛そう。
二人で波打ち際で夢中で水の書けあ一戸してる。
「かっけー!のぉん!麻琴ぉ!
がんばれー!」
よっちゃんは、なんかめちゃめちゃごっついヴィデオカメラ取り出して、
二人を撮影しだした。
「よっちゃん、なにそれ?」
「へへへ、かっけーっしょ?この日のために買ったんさぁ。
めちゃめちゃ遠くまではっきりくっきり撮れるんだぜい♪」
「なぁよっちゃん、この日のためって女のこの水着、撮るためやないよね?」
「な、なぁに言ってんだい、あいぼん。
僕がそんなことするわけないじゃないかあ」
あかん、ずぼしやな。僕とか言ってテンパってるし。
それにしてものん、かわいいなぁ。
うちがはしゃぎまくってるのんをぼうっと見ていると
「あいぼん、食べないのぉ?」
あさ美ちゃんがにやにやしながら聞いてくる。
今までご飯に夢中だったくせに、急に冷やかしてきてこの子はぁ。
- 57 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:39
-
「こらー待てのん!」
「うぁあ、ちょっと、たんま、たんまー!」
のんが玉切れ?起こしたらしくまこっちゃんに追い掛け回されてる。
「たすけてー!」
「ちょ、のんなにするん!?」
のんはうちらの方へ逃げてくると、うちとあさ美ちゃんの後ろに隠れた。
「こらのん!観念しろ!」
そしてまこっちゃんの攻撃!
あ〜あ、うちらのご飯は見事海水まみれ。
「のんちゃん、麻琴ー!」
うちの隣からは地獄の底から響いてくるような声。
うちは知らへんで。
「「はい」」
二人は直立不動で固まってもうた。
「のんちゃん!麻琴!
人がご飯食べてる時にねー!」
あー、あさ美ちゃんのマジ切れお説教が始まってもうた。
食べ物の恨みは怖いなぁ、特にあさ美ちゃんの場合。
まだ鉄拳制裁がなかっただけいいけど。
「まぁまぁ、紺野ちゃん、そのぐらいにしてスイカ割りしましょ?」
「はい♪」
お姉ちゃんの仲裁―――
ってより、スイカってキーワードであさ美ちゃんの機嫌も直ったみたい。
- 58 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:41
- そして、じゃんけんでのんが割ることになって、スイカ割りスターと!
「「のんちゃん、右右」」
「の〜ん!あと3歩前〜」
「「のんちゃん、もうちょっと右!」」
「のん、あかんて、左左〜!」
「「嘘嘘右だってー!」」
「もうどっちなのさー!」
うちらの支持がばらばらでのん、混乱してるみたい。
もー!うち、ほんまのこと教えてるのにー!
「そやから、ちょっと左やって!」
「こっち?」
「違うってのんちゃん、右右!」」
「え?こっち?」
「「そうそう」」
「ちょっとのん!」
「あ、そこで真後ろ!」
「うりゃー!」
まこっちゃんの言葉に反応して、のんはまるっきり違うとこ叩いて
「うぁ」
バランス失ってこけてもうた。
- 59 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:41
-
「くっそー!麻琴騙したなあ」
のんは目隠しをとると、そのままの体制で
悔しそうにスイカを叩いて割った。
「「「ははは、のんちゃん最高!」」」
みんなめっちゃ笑ってる。
でもうちはなんか―――
だって、うち、ほんまのこと言ってたのに、のん、みんなの言うことばっかり聞いて、
うちのこと信じてくれてへんみたいで―――
- 60 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:42
-
「のん」
「オッケー麻琴!」
スイカを食べ終わると、のんとまこっちゃん目配せしてる。
あれはまたなにかたくらんでるんやな、きっと。
「「隙あり!」」
「「「きゃー!!!」」」
のんとまこっちゃん、背中に隠してたさっきの水鉄砲で、
今度はみんなを狙いだした。
「きゃー!止めて!」
逃げ惑うあさ美ちゃんや愛ちゃん、がきさんを追い回して、水鉄砲で攻撃。
しかもお尻とかむねばっかり狙って!
でものん、うちにはしてくれへん!
ってして欲しいわけやないんやけど、うちの前で他の子にそんなんしてるの見たない!
「ぅおー、のんと麻琴いいなぁ!うらやますぃー!」
「なに言ってんねん!」
うちは隣でアホなこと言ってるよっちゃんを、すなの上に押し倒した。
- 61 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:43
-
「あぁ、あいぼん!なにすんのぉ!
ひーちゃんには梨華ちゃんがぁって、いやどうしてもと言うなら
そう言うことは梨華ちゃんがいない時に!」
「アホ!なに言ってんねん!」
うちは苛立ちをぶつけるように、押し倒したよっちゃんに
砂をかけてく。
「あぁ、面白そう!」
お姉ちゃんも嬉しそうによっちゃんの体に砂を積み上げてく。
「あー、梨華ちゃんまでぇ。動けないじゃん!」
あっと言う間によっちゃんの首から下は砂の山。
「いいこと思いついちゃったぁ♪」
お姉ちゃんはそう言うと、砂を盛ったり削ったりしてなにかし始めた。
「完成!」
「うぉー!かっけー!!!」
お姉ちゃんが歓声をあげると、よっちゃんも首を持ち上げて自分の体を見て大喜び。
「…………」
うちは突っ込むこともできひんかった。
だって、お姉ちゃんが砂で完成させたのは、砂のムキムキマッチョな体やってんやもん。
「ひとみちゃん、す・て・き♪」
「えへへへ」
お姉ちゃん、すなの胸にほっぺすりすりして喜んでるし。
うちはよっちゃんのごっついヴィデオカメラでそのあほな光景を撮影すると
ビーチボールをもって、その場を後にした。
- 62 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:44
-
「もう、のんもお姉ちゃんもよっちゃんも!」
なんだかうちはつまらなくなって一人で海に入って言った。
波打ち際で、のんの近く通ったけど、まったく気づけへんし。
うちはジャブジャブ海に入っていくと、ビーチボールに掴まってぷかぷか浮かんだ。
「あそこまで行ってみようかなぁ」
うちは浜辺から離れたくなってブイの方へ少し泳いで見る。
だんだんみんなのはしゃぐ声が遠くなってくる。
海って不思議や。
上の方はぬるいのに、下の方はひんやりしていて。
そうしてひんやりした水に身を預けていると、冷静になって、
かってにやきもち妬いてた自分がちょっと恥ずかしなってきた。
気がつくと、浜辺の喧騒ももう聞こえないほどとおくまで来ていた。
ただ繰り返される波の音だけが聞こえ、そのたびにうちの体はゆらゆらと
海を漂っている。
周りを見渡して見ると、広い海にうちだけが浮かんでいて、なんだか寂しなってきた。
- 63 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:45
-
「♪好き好きビーム、出しまくりなのに
さっきからこんなにも、太いビームを♪」
つまらなさそうに歌う。
「♪好き好きビーム、気づいてるのかな?
こんなに好きな恋人なんだもん♪
……はぁ」
大好きな歌の一説を歌い終わってため息をついた時、
ザブーン!
「!!!」
突然うちの目の前に水中から人?が現れた。
いや、人ちゃうよきっと、だってだって!
濡れた前髪がべったり張り付いて、その間からのぞく大きな瞳で
こっちをじっと見詰めて―――
きっと、ここで溺れてもうた人なんや!
そしてうちを引っ張り込みに来たんや!
そううちが思った時
- 64 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:46
-
「ねえ、笑って」
- 65 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:47
- 「ひいーーーー!!!!」
「もう!そんなに驚かなくてもいいじゃん!」
その人は不服そうに言ってから髪をかき上げ
「ねえ、笑って♪
せっかくのかわいい顔が台無しだよ」
と今度は笑いながら言った。
「……あのう」
「ん?」
「人間?です……か?」
うちが恐る恐る尋ねると、
「あったりまえじゃん!」
「ははは、そうですよねぇ」
うちは安心してしまり泣く笑った。
- 66 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:49
-
「でもどうしてここへ?」
「潜って」
「いや、そうやなくって何でここまで?」
「一人でこんな沖までくるなんてあぶないなぁって」
「え?」
「かお、ライフセーバーだもん」
「???」
「かおは、事故を未然に防ぐことも大切だと思うの」
「あぁ」
うちは納得して頷いた。
それにしてもこの人、言葉はしょり過ぎや。
ライフセーバーだもんってだけじゃ普通意味分らんて。
「だから来たの」
「はぁ、そうなんですか?」
「うん」
「あ、ごめんなさい。うちが心配かけたんですよね?」
うちは気づいて誤る。
- 67 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:50
-
「いいのいいの、気にしない気にしない」
「ありがとうございます。
あ、今、監視はいいんですか?」
「うん、もう一人いるから」
ほらって差し出された双眼鏡をのぞきこんで、
指し示されたほうを見ると
「おぇっ」
レンズいっぱいに口開けてウィンクするおばちゃんの顔が飛び込んできて
思わず軽い吐き気を模様してもうた。
「ははは、刺激的なもん見せちゃったみたいだねぇ」
ライフセーバーさんは楽しげに笑う。
こうして見るとめっちゃ美人さんやってんやなぁ。
「で、どうしたの?こんな所で一人で?危ないよ?」
「……いえ、あの〜……」
「なに?好きな子がかまってくれないから?」
「なんで分るんですか!?」
「だってかおだもん」
その人は優しく微笑んだ。
相変わらず言ってることは意味分らんかったけど。
でもなんか、その人の笑顔がとっても優しくって、
うちは安心して今日一日ののんへの不満や自分への苛立ちを
全部打ち明けていた。
- 68 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:51
-
「そっかぁ……いいなぁ」
「え?」
「かおもそんな純粋な恋、したいなぁ」
「恋って」
改めて恋とかって言われると恥ずかしなって、俯いてもうた。
「照れちゃってぇ、かわいい♪」
「……冷やかさんとってください」
「だいじょうぶだよ。その子も照れちゃってるだけだから」
「そう……かなぁ?」
「うん、そうだよ。かおが言うんだから間違いないよ」
「……でも」
「ほら?その子がお迎えに来たよ」
ライフセーバーさんが指差す方向を振り返ると、
のんがこっちに向かって泳いで着ていた。
「あの、何であの子って分ったんですか?」
もう一度うちが振り返ると、ライフセーバーさんの姿は
もうそこにはなかった。
- 69 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:52
-
「あいぼーん!探したんだぞー!!!」
うちがライフセーバーさんの姿を探して水中をのぞきこんでいると、
のんの声と共に強烈な水圧がうなじを襲った。
「もう!のん、なにするん!」
振り返りうちがビーチボールをのんに投げつけると、
「かってにいなくなったら心配する……」
なんかのん、うちの方を見て固まってる。
うちが不思議に思い、のんの視線を追って自分の胸元を見てみると―――
うちの目の前にゆらゆらゆれるピンクの布―――
あぁ、さっきののんの水鉄砲でストラップ解けちゃったんや―――
道理でおなかや胸、ひんやりすると思ってん―――
え?解けた?ストラップが?
胸がひんやり?
「…………」
「…………」
- 70 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:53
-
「きゃー!!!」
- 71 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:54
- うちの叫び声で呪縛が溶けたのんは逃げ出した。
「待てー!」
うちは、あわてて腕で水着を押えると、のんの後を追いかけた。
(のんのアホ!のんのスケベ!)
なんかうち恥ずかしくって、情けなくって、本気で腹立ってもうて、
必死に追いかけるんやけど、全然追いつけへん。
「あっ」
その時、うちの足に激痛が走った。
あかん、足、つってもうたみたい。
うぅぅ、あかん、体が思うように動かへん。
あせればあせるほど、ドンドン体が沈んで行く。
もがくたびにドンドン水を飲んでもうて―――
もう、うちあかんかも?
でも、いやや、まだ死にたない!
そう思った時、うちは誰かに抱き上げられた。
- 72 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:56
-
「あいぼん!だいじょうぶ!?」
「の……ん」
うちは激しく咳き込みながら助けてくれた人の名を呼ぶ。
「あいぼん、だいじょうぶ?」
「だいじょうぶやあれへん!」
うちはいっぱい咳き込んで、いっぱい水を吐き出して、
少し落ち着くと子供みたいにわんわん泣いてもうた。
「あいぼん?」
「のんのせいなんやから……みんなみんな……
のんのせいなんやから」
「……ごめん」
なんか怖かったのと、安心したのと、寂しかったのと、
なんだかいろんな感情がごちゃ混ぜになって自分が押えられへんようになっていた。
でもそんなうちの理不尽な言葉にも、のんはただ優しく誤ってくれる。
「のんのアホ!のんなんか……のん……なんか……
大っ嫌い……」
「……ごめん」
のんはしゃくり上げるうちを抱きしめたまま、寂しそうに呟く。
そしてしばらくのあいだ、うちはのんにしがみついて、ただただ大声を出して泣いてた。
- 73 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 22:59
-
「……ごめんな」
しばらくしてうちは呟く。
「……あいぼん?」
「……のん、ごめん」
「……なんで誤るの?」
なんでって、かってにやきもち妬いていなくなったし、それで心配かけたし、
助けてもらったのにのんに酷いこと言っちゃたし、それに何より―――
大嫌いなんて言っちゃったし―――
でもうちは素直に言えなくって
「……秘密」
「……そっか」
「……うん」
「…………」
「…………」
「……もうだいじょうぶ?」
のんが優しく聞いてくれる。
「……ううん、まだちょっと……」
「……じゃぁ、もうちょっとこうしてよっか?」
のんはそう言うと、優しく抱きしめ直してくれた。
「……うん」
うちは答えて、のんの首筋に顔をうずめる。
潮の香りと、のんのシャンプーの香りがしてなんだか少し
涙がこぼれそうになった。
(ありがとう、のん、大好き)
うちはのんの背中に回した腕に、少しだけ力を込めた。
- 74 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 23:00
-
- 75 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 23:01
-
「「「おじゃましまあーっす」」」
あれから一週間。
あの日、よっちゃンノカメラで撮ったヴィデオ、みんなで見ようと、
うちで鑑賞会することになってん。
「あはは、あのがきさんの顔、最高!」
「まこっちゃんのあのなさけない恰好もいいよね」
みんなそれぞれ知らないシーンとか会って盛り上がってる。
『ひとみちゃん、す・て・き♪』
砂のムキムキボディーにほお擦りするお姉ちゃんと
それをにやにやしながら見てるよっちゃんにはみんな大爆笑やった。
「へへへ、これ、うちが撮ってん」
そのシーンを撮ったうちはちょっと得意気やった。
だけど、次の場面に映ると
- 76 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 23:02
-
「「!!!」」
うちとのんは固まってもうた。
「へへへ、あたしが撮ったんさ」
得意気なよっちゃん。
「「「ひゅ〜!」」」
みんなはにやにやしながら、食い入るように画面に見入ってる。
その画面には海の真ん中でしっかり抱き合ううちとのんが大きく映し出されていた。
「「…………」」
うちとのんは恥ずかしくって、どうすることもできず、ただ真っ赤になって俯いていた。
けどな、けどな?ちょっと嬉しかってん。
だってな、その時ののん、めっちゃ優しい幸せそうな顔やったから。
うちはこっそり隣ののんの手を握る。
のんもためらいがちに、うちの手を握り返してくれる。
うちらはその日、ヴィデオを見終わるまでずっとそうして手を繋いでいた。
- 77 名前:夏の海はロマンチック? 投稿日:2006/08/31(木) 23:04
- 第二話って言うか、エピソード2?終了です。
- 78 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/31(木) 23:07
- 次回は秋ごろ、またデートできたら、「あぁ いいな!」と思っています。
- 79 名前:ぱせり 投稿日:2006/08/31(木) 23:15
- レスのお礼です。
>>53さん、なんか勢いだけで書いたら、みんなこんな感じに
なってしまいました。
しかも実年齢と同じ定にしてたら大学1年の年だったんですね〜。
うっかりしてました。さっき気づきました。
自分は高校生のつもりでこの先の大まかな流れ作ってたんで
これからどうしましょうって感じです(汗)。
>>54さん、突っ込みありがとうございます。
ここの吉澤さんはどこかへんな方向を目指しているようです。
海の話を9月まで引っ張りたくなかったんでちょっとがんばりました。
ぎりぎりでしたが。
- 80 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/02(土) 23:58
- トップレスで抱っこ(*゚∀゚)=3ハァハァ
…は置いといて、設定は高校生でいいと思います。
登場人物がそれぞれ生き生きしてて楽しいし。
- 81 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/04(月) 19:37
- あいののー!!!
あいぼんカワイイです!!
あいぼん、のんちゃんとたくさんデートしちゃてください。
作者さま、これからもイチャイチャデートさせてあげてください。
- 82 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:33
- 「♪真っ赤だな 真っ赤だな
ツタの葉っぱが真っ赤だな もみじの葉っぱも真っ赤だな♪」
あ、どうもぉ、うち加護会い。
プリティーでキュートな17歳。
へへへぇ、今日ものんとデート、いいでしょぅ。
あんなぁ?今回はなぁ?うちが誘ってみてん。
めっちゃ勇気いったんやけどな、のん、普通にオッケーしてくれてん。
えへっ、うち、幸せ♪
- 83 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:34
- えぇっと今日はっと♪
クローゼットに頭突っ込んでお洋服選び♪
って言っても、今日はデニムにカットソーって決まってるんやけどな。
それは何で買って言うとぉ―――
- 84 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:35
-
「じゃぁ、あいぼん、どこいく?」
「ううん、どこでもいい」
「って決めてないのかよ!」
「だってぇ」
「誘ったの自分じゃん?」
「だって、のんの行きたい所にしようと思ったんやもん」
うちがそう言うとのんは、ふにゃって笑って
「じゃぁ、山に紅葉見に行こう」
「しぶっ!」
「えぇ、だめぇ?」
「いや、だめってわけやなくって」
「じゃ、そうしようよ」
「でもさ、いくらなんでもまだ早ない?」
「ううん、この前テレビでやってたからだいじょうぶだよ」
「じゃぁ、見にこっか?紅葉」
「うん」
- 85 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:38
- なんて感じで紅葉見に行くことになってん。
だからな、動き安いかっこってわけ。
「えぇっと、えぇっと」
デニムにカットソーって言っても迷うのが乙女の心理学。
「ううん、どうしよう?
インディゴのブーツカットに……
淡いイエローのカットソー?」
うん、これでいっか。
で、鏡の前に並んだ色とりどりのボトルを見渡して―――
「やぁめたっ」
だって、今日は自然の中やもんね。
それに、お花の香りとかさせとってスズメバチとかに襲われてもかなわんし。
あ、あかん。
デニムの色変更!
スズメバチを気にするんなら濃い色はあかんやん!
ホワイトにしよ。
あ、のんにもメールしといた方がいいよね。
うちは手早くのんにメールを打つと、すぐに返事が帰って来た。
『( ´D`)<あいぼん、心配しすぎ。
でもありがとー、気をつけるね』
もう、うち心配しすぎやろか?
でもこの前、秋の山はスズメバチに気をつけましょうってニュースでやってたんやもん。
そんなこんな言いながら最終チェック。
- 86 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:40
-
「あーいぼんっ♪」
と思ったらお姉ちゃん登場。
「もう、部屋に入る時はノックしてって言ってるやん」
「なによ、みずくさぁい」
「いや、みずくさいとかの問題やなくって。
ってそれよりなんなん?結構急いでるんやけど」
「あぁ、今日は帰ってくるの?」
「な!
うち、固まってもうた。
「ののちゃんとデートなんでしょ?」
「なに言ってるの!
帰ってくるに決まってるやん!!!」
「なぁんだ、つまんない」
動揺するうちを他所にお姉ちゃん、ほんとにつまらなさそうに呟く。
そんなん、うちらまだつきあってへんし……
のんとそんなこと……
のんならいいんやけど……
は、あかん。
時間ぎりぎりや!
「もう、お姉ちゃんがへんなこと言うから、遅刻しそうやん!!」
うちは叫ぶと、お姉ちゃんを押しのけ、スニーカーを履いて飛び出した。
「あいぼーん、べつにお泊りしてきてもいいからねぇ♪」
(アホ!!!)
うちは玄関で大声で叫ぶお姉ちゃんに心の中で叫び返した。
- 87 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:41
-
- 88 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:42
-
「あ、のん、おまたせぇ」
「もう、あいぼんいっつものんのことまたせるんだから」
「だって、お姉ちゃんが出掛けにへんなこと言ってくるんやもん」
「へんなことって?」
「ううん、なんでもない」
あかんあかん、突っ込まれたら答えれへん。
「ふ〜ん」
あ、なんか納得して無い顔してるけど。
「なぁ、のん、急がんと電車間に合わんで」
「あ、ほんとだ」
ッセーフ!
なんとかごまかせたみたい。
それからうちらは、電車を乗り継ぎ、寂れた駅前を通り抜け、山を登り始めた。
- 89 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:44
-
―――
澄み切った高い空。
心地よい風。
そして木々の―――
「なぁのん?」
「ん?」
「あの〜、青々としてるんやけど?」
そう、しばらく上ってもあたりは青々としてて
「ははは、もう少し上ればきっと、色づいてるよ」
「そうやといいんやけどね」
そんな雰囲気はあまり感じられないんやけど、とりあえず、のんの言う通り上ってみる。
二人並んで、木が埋められて階段のようになった坂道を登る。
ほんとに緑はきれいで、そこを拭きぬけてくる風は気持ちいいんやけど―――
日ごろ運動不足のうちは、そろそろきつくなってきた。
これで、紅葉見れへんかったら、ちょっと悲しいでぇ。
なぁんて思ってると
- 90 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:48
-
「えぇっとですね、辻さん?」
「はい?」
「もう山頂なんですけど」
「あっれぇ?おっかしいなぁ、テレビで言ってたのに」
「この山やったん?」
「ううん、富士山だよ?」
「富士山って……上の方だったんちゃうん?」
「うん」
「……はぁ」
「あれ?あいぼん、どうした?」
「あのなのん、この山と富士山とどれだけ標高違うと思ってるん?」
「えぇ?そんなに違うのぉ!?」
「……はぁ」
うちは一気に脱力した。
「ねぇねぇ、あいぼん」
のんが情けない声で話しかけてくる。
「なんですか?」
わざと冷たく答えてやる。
「あぁ、ごめんね、
だってさ、テレビですっごくきれいだったからさ」
「ふ〜ん」
「だってさ、あいぼんときれいな景色見たかったんだもん」
「…………」
もう、ふいにそんなこと言わんで欲しいわ。
なんて言っていいか分らんようになるやん。
でも、きっとのん、意識せんでこんなこと言ってるんやろうな。
- 91 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:49
-
「ねぇ、あいぼん」
「じょうだんやって、怒ってへんから」
「なんだよもう」
今度はすねだすのん。
「もう、すねとらんと、お昼にしよ?
お腹空いてんやろ?」
「うんっ♪」
元気いっぱいよいこのお返事。
- 92 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:50
-
うちらは木陰にレジャーシートを広げると、二人並んで腰を下ろす。
「ねぇあいぼん、あいぼんはなに持ってきた?」
「うちはサンドウィッチやで」
「そっかぁ、のんはおにぎりだよ。
なんか正反対だね」
正反対って……なんでそんなこと言うん?
うち、寂しなってまうやん。
だからうちはせいいっぱいの反論。
「でも、両方手で食べるもんやん?」
「そっか、そうだね」
そう笑いながらのんは、おにぎりにかぶりつく。
もう、のんだって女のこの癖に、ほんまに乙女心、分ってへんのやから。
「ん〜〜!」
おにぎりにかぶりついていたのんが、急にじたばたしだした。
「どうしたん!?」
「すっぱあーい!」
「なんなん?梅干?」
「うん」
「そんなにすっぱかったん?」
「もう、ふざけんなってぐらい」
「そっか」
そしてまたおにぎり齧ってじたばた。
もう、こう言うところがかわいすぎなんやて。
- 93 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:52
-
「も〜らいっ」
「あっ」
うちがぼうっとのんを見てると、のんがうちのサンドウィッチを取っていく。
それはしかも
「あぁ!その卵サンド、一個しかないのにぃ」
「ふぇ?そうなの?」
のんはキョトンとしながら言うと、
「じゃぁ、はいっ」
一口かじった卵サンドをうちの口元に持ってくる。
「…………」
「食べないの?」
のんがあまりに自然に聞くから
「……うん」
うちは戸惑いながら小さく齧った。
すると、のんはまた自分で一口。
あいぼんの卵サンドおいしいねとか言いながら、またうちの口元に持ってくる。
それを数回繰り返して、卵サンドを食べ終える。
「じゃぁ、あいぼん次はどれがいい?」
え?次って?どれがいいって?どういうこと?
「ねぇ?」
なんだかうち、のんのペースに乗せられて。
- 94 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:54
-
「……じゃぁ、ピクルスサンド」
「うん」
のんはピクルスサンドを取ると、うちの口元に。
そして次は自分の口元に。
そして、ピクルスサンドも卵サンドと同じように食べ終えた。
「じゃぁあいぼん、次はハムサンドにしよう」
そんなことを繰り返し、とうとう全てのサンドウィッチを食べてしまった。
「う〜〜〜ん、お腹いっぱいだねぇ」
のんは満足そうに背伸びをする。
ん?お腹いっぱい?
うちそんなんでもないんやけど?
あれ?なんかおかしない?
ふとのんの方を見て見ると、のんのお弁当はいつの間にか空っぽになっていた。
まさか、うちのサンドウィッチ取り上げるためにあんなことしたん?
うち、めっちゃドキドキして味なんか分れへんぐらいやったのに。
うちってアホみたいやん!
のんのアホ!
- 95 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:55
-
「ねぇあいぼん、こうしてるときもちいよ」
のんはシートに仰向けに寝転がって空を見上げてる。
「あいぼんもこうしなよ」
そんなこと言いながら、うちのカットソーの裾をくいくい引っ張る。
だからうちも、のんの隣で空を見上げる。
秋の空は澄み切ってて、高くって、白い雲がぷかぷか浮かんでいて、
なんか素敵。
なんてうちが思ってるのに
「あぁ、あの雲お芋みたい、
あっちは甘栗に似てない?
ねぇねぇあいぼん」
……誰か、この全身胃袋娘。をどうにかしてください。
- 96 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:56
- つづく
- 97 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/01(日) 00:57
- 今回のオープニングの歌はザ・童謡ポップス4より
- 98 名前:ぱせり 投稿日:2006/10/01(日) 01:02
- レスのお礼です。
>>80さん、ありがとうございます。
さりげなく1歳若返りました(笑)
また濃いメンバー達も時々出てきますのでそちらもいつ出てくるか楽しみにしててくださいませ。
>>81さん、はい、いっぱいデートさせちゃいますよ。
気あいいれて夢板に立てさせていただきましたしね(笑)
こうして、季節ごと、イベントごとに更新するつもりなのでちょくちょくのぞいてやってください。
- 99 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/02(月) 02:19
- かわいいのお、若いってええのお
- 100 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/03(火) 00:50
- 更新乙です。1.5人前のののさんと0.5人前のぼんさんワロタ
- 101 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:25
-
「……あれ?」
「あ、起きた?」
気づくと目の前にのんのドアップ。
「うち、寝てたん?」
「うん、すっごく気持ちよさそうに」
「そっかぁ」
うちはどうやら空を見上げてるうちに眠ってしまったらしい。
「ごめんね、せっかく来たのに。
たいくつやったんちゃう?」
「ううん、全然」
のんはにやにや。
ん?もしかして?
「なぁのん、いたずらとかしてへんよね?」
うちが聞いて見ると、
「え?」
明らかに動揺したのんの様子。
- 102 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:26
-
「あぁ!顔に落書きとかしたんでしょー!?」
「なんだよそれ!?
そんなことするわけないじゃん!」
「じゃぁ、なにしてたん?」
「……あいぼんの」
「うちの?」
「あいぼんの寝顔、見てただけじゃんか」
「なんで?」
「……なんでって……かわいいなぁって」
のんがぼそっと言う。
「…………」
「…………」
「……アホ」
うちは恥ずかしなって、呟いて顔を伏せた。
するとのんが肩をつんつん。
顔を上げると、嬉しそうにへへへって笑って手鏡を差し出した。
「なに?」
「見つけたよ、紅葉♪」
鏡には真っ赤になったうちの顔。
「アホ!」
うちはのんの肩をべしっとはたいた。
- 103 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:28
-
「なぁ、それはいいんやけど、なんか空、暗なってない?」
「うん、そうだね、雨とか降りそう。
あいぼん、傘持ってきた?」
「ううん、もってけぇへんかった。
のんは?」
「のんも」
「じゃぁ、急いで下りよ」
「うん」
ってことで、山、下り始めたんやけど、
「あ、降ってきちゃった」
のんの言う通り、ぽつぽつしだした。
さっきまでいいお天気やったのにぃ。
まったく、女心と秋の空とはよう言ったもんや。
あ、うちはそんなことないで。
のん一筋やもん♪
なぁんて、言ってる場合やないぐらい雨脚は増して着て。
あっと言う間にうちらはずぶ濡れ。
カットソーが素肌に貼り付いて気持ち悪い。
- 104 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:30
-
「きゃっ」
「だいじょうぶ!?」
うちは濡れて滑りやすくなった坂道で転びそうになって、のんが支えてくれる。
「うん、ありがとう。あっ!」
でも歩き出そうとすると足首に痛みが走って。
うち、ちょっと足、捻ってもうたみたい。
「だいじょうぶ?」
「うん、なんとか」
「ごめんね、のんのせいで」
のんがちょっと泣きそうな顔してる。
「ううん、のんのせいちゃうよ」
「だってのんが山にこようって」
「うちはだいじょうぶやから」
うちは痛みをこらえて笑顔でのんに答える。
でものんは、泣き出しそうな真剣な顔で
うちの手を引いて、ゆっくり山を下りてく。
- 105 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:31
-
「ほらのん、もうすぐ駅やで)
どしゃ降りの中、時間めっちゃかかったけど、
やっとうちらは駅の近くまで下りてきた。
「な?もうすぐ帰れるから、元気出して」
うちがそう言っても、のんはへこんだまま。
「でもこんなかっこじゃ電車、乗れないよ」
「あ」
確かにうちらはびしょぬれや詩、はねた泥とかで結構汚れている。
「どうしよう、のんのせいだ」
「だからちゃうって、雨降るなんてうちも思わなかったもん」
「…………」
あかん、のん、マジでへこんでる。
どうしたんやろ?
こんなことめったにないのに。
それよりこんな時はうちが元気出させなあかん。
「ほら、駅前に小さな商店街あったやん?
あそこで、服と傘買お?」
「うん」
うちが笑顔で言うと、のんも少し安心したように頷いてくれた。
やけど―――
- 106 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:34
-
「……あいぼ〜ん?」
のんが情けない声を出す。
あかんて、この商店街ほとんどシャッター閉まっててやってへん。
やっと一軒見つけたお店も
「どうしよう、あいぼん」
「これじゃぁ……」
やってたお店は寝具ばっかりで、
今のうちらに役立つものと言えば、タオル類ぐらいで。
「いらっしゃいませ、あらあらどうしたんだい?」
出てきた店番のおばあちゃんはヌレネズミのうちらを見て、驚いて尋ねる。
でも、このおばあちゃん、どっかで見たことあるような?
うちがそんなこと思ってると、のんがおばあちゃんに尋ねた。
「おばあちゃん、のん達雨に降られちゃったんです。
服とか売ってると子この辺にありませんか?」
「あらあら、それはたいへんじゃったの〜、
じゃがこの辺のお店は、今日はほとんど休みじゃよ」
「そうですか……」
「服ぐらい貸してあげたいんじゃがの〜、わしのじゃ駄目だろうし、
孫のじゃ着れないしの〜」
おばあちゃんはすまなさそうに答える。
- 107 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:36
-
「じゃあ、この辺に泊まれるところはありますか?」
(!!!)
のん!なに聞いてるん!?
うち、声も出んくらい驚いてもうた。
「あぁ、そうじゃの〜、その恰好じゃ帰れんの〜。
じゃがの〜、この辺は泊まりで来るような観光地じゃないからの〜。
この辺の泊まれるところと言ったら……
ツレコミホテルぐらいじゃがの〜」
おばあちゃん、なににやにやしてるん?
って言うか、ツレコミホテルってなに?
いや、言葉の雰囲気から想像はつくけど……。
「どうする?」
のんがうちに聞いて来る。
そんなん聞かれて、うちどうすればいいん?
なんて答えればいいん?
- 108 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:36
-
『あいぼーん、べつにお泊りしてきてもいいからねぇ♪』
- 109 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:37
-
お姉ちゃんの許可は下りてるんやけど……
ちゃうちゃう!そう言う問題やないんやって!!
でもこんなかっこじゃ帰れないし……。
のんと……お泊り……?
- 110 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:37
- ―――
『あいぼん、きれいだよ』
『のん、うち恥ずかしい……』
『もっとよく見せて』
『いや、電気・消して』
―――
- 111 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:39
- あかんあかん!!!
うち、なに想像してんねん!!!
「あいぼん?」
のんが不思議そうに顔をのぞきこんで来る。
うちは真っ赤になった顔を隠すように俯き、覚悟を決めた。
「じゃぁ……そこ……い」
「と言っても、車で1時間はかかるんじゃがのう」
おばあちゃんはひゃひゃひゃと笑う。
「じゃぁ、駄目じゃん」
のんはまたへこむ。
「ひゃひゃひゃ、残念じゃったの〜」
おばあちゃんは真っ赤になってるうちを見て可笑しそうに笑ってる。
このババー!乙女心弄びやがって!!!
「あいぼん?
そんな怖い顔してどうしたの?」
のんが心配そうに聞いてくれる。
「あ、ううん、なんでもあらへん」
あわててうちが答えると、おばあちゃんがうちにウィンク。
「おえっ」
ん?この口開けてウィンクってどこかで?
- 112 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:40
-
「ねぇ、どうしようあいぼん」
のんはまた泣きそうな顔になってる。
「そうじゃの〜、服を乾かすだけなら、
商店街の外れにコインランドリーならあるがの〜」
「あ、そうしよ、あいぼん」
のんが嬉しそうに答える。
「でも、服乾かしてる間、どうするん?」
「そっか〜……」
「バスタオルでも巻いとりゃいいじゃろ?」
「でもおばあちゃん、誰か来たらどうするん?」
「だいじょうぶじゃよ、この辺は年寄りばかりじゃし、
この天気じゃ誰も出てこん」
「あいぼん、それしか方法ないからそうしよ?
誰も来ないように、のんが見張っててあげるから」
「のん」
のんも女の子なのに、うちのためにそんなこと言ってくれるやなんて。
- 113 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:41
-
「うん」
「じゃあおばあちゃん、バスタオルとタオル、二枚ずつください」
「まいどあり。
じゃあ、こんなんで悪いが傘、あげようかの?」
おばあちゃんは小さなビニール傘を
出してくれた。
「「いいの?」」
「あぁ、せっかく服、乾かしてもまた濡れるんじゃ意味ないからの」
「「ありがとうございます」」
うちらは、支払いを澄ませ、おばあちゃんにお礼を言うとお店を後にした。
- 114 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:42
-
「なぁのん?それ動くん?」
うちらはおばあちゃんに教えられた、コインランドリーに来て見たんやけど、
そこにあるのは、誇りかぶったいかにも古そうな洗濯機と乾燥機。
「だいじょうぶみたいだよ、
それより、乾かすだけでだいじょうぶかな?」
「あぁ、そうやね、洗ったほうがいいかも?」
うちらの服はいたるところに泥がはねてて、
このまま乾かすのはちょっと気が引けた。
「へ〜、一回分の洗剤とか売ってるんや。
なんか小さくてかわいない?」
「うん、そうだね」
うちはコインランドリーなんてはじめてで、なんだかちょっと楽しくなった。
うちらは洗濯機の陰で服を脱ぐと、
手早くバスタオルを巻き、濡れた服を洗濯機に入れる。
- 115 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:43
-
「じゃぁ、のん見張ってくるね」
のんはスイッチを入れると、洗濯機の影から
入り口の方へ行こうとする。
「のん、あかんって」
「なんで?」
「のんも女の子やで?
そんな、外から見えるようなとこおったらあかんって。
な?洗濯機の影におろ?」
「でも、のんのせいだから」
のん、まだ気にしてたんや。
「もう、のんのせいやあらへんって」
うちはまだ納得してない感じののんの手を取ると、
洗濯機の影にしゃがませた。
- 116 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:44
-
「なぁのん?この前な?
あさ美ちゃんと美味しいパスタのお店、見つけたんやんかぁ」
「……うん」
「そこな、カルボナーラがめっちゃおいしいんやんか?」
「……うん」
「だからな、こんど一緒に食べにいこ?」
「……うん」
お洗濯の間、うち、一生懸命のんに話しかけるんやけど、
のん、元気のないまんま。
食べ物の話しでも生返事。
ちょっとこれは重症かも?
それにしてもちょっと寒なってきた。
いくら拭いたにしても、髪はきちんと乾いてないし。
でもあかん、うちが寒そうにしてたら、またのん、気にしてまう。
- 117 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:46
-
ピー!ピー!ピー!
「あ」
そんなこと思ってるとお洗濯終了。
のんは洗濯物を乾燥機に移してスイッチオン。
「もう少し待っててね」
「うん」
「あいぼん?寒いの?
唇紫だよ?」
あかん、のん、気づいてもうた。
「ううん、だいじょうぶ」
うちは答えるけど、体が震えだして、ごまかし切れそうになかった。
「あいぼん……ごめんね」
またのんが泣きそうな顔になってもうた。
のん、そんな顔、せんといて。
のんはそわそわと乾燥機とうちの間を行ったり来たり。
- 118 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:47
-
「のん、だいじょうぶやから」
うちはそう言うんやけど、振るえたまんまじゃ説得力がない。
「あいぼん、ごめんね。
のんのせいで……のんのせいで……」
とうとうのんは、声を振るわせ始めてもうた。
「のん、だいじょうぶやから、
うちはのんのせいなんて思ってないから』
「でも、あいぼんが風邪ひいちゃったりしたらのん」
「だいじょうぶやって」
うちはのんに肩を寄せて励ます。
「ほら、こうしてたら少しはあったかいやんか?
な、だからだいじょうぶやて」
- 119 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:48
- 「あいぼん」
「え?」
うちは突然のんに抱き寄せられた。
「こうしてた方があったかいから」
「……うん」
いつもならドキドキしてためらったりするんやけど、
うちはのんのその涙声に逆らうことができず、
導かれるままにのんの胸に顔をうずめた。
のんは、きっとうちに泣き顔見られたくないのもあって、
こうしたと思ったから。
- 120 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:49
- のんの腕の中はほんとにあったかくって、うちはすぐ寒さを忘れた。
「あいぼん、ごめんね」
のんがまた悲しそうに呟く。
「ううん、気にし泣くっていいって」
「でも」
うちはまだ涙声ののんの腕の中からすり抜けた。
「あいぼん?」
「こんどはのんの番」
そしてのんを優しく抱き寄せた。
「あいぼん?どうして?」
「のんも風邪、引くといけないから」
「ううん、そうじゃなくって。
なんで怒らないの?」
のんがうちの胸の中から問いかける。
- 121 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:50
-
「怒ることなんかしてへんやん」
「そんなことないよ!」
のんがぱっと打ちの胸から顔を上げた。
「だって、のんがろくに調べもせずに山にこようって言ったから。
紅葉見れなかったし、あいぼんに怪我させちゃうし、寒い思いさせちゃうし」
「ううん、紅葉はまた見にこればえぇし、怪我もたいしたことないし、
のんのおかげで寒くもなくなったし」
「でも」
「うち、のんと一緒にいられるだけで嬉しいから、
それだけで楽しいから」
「あいぼん」
のんがうちをじっと見詰める。
- 122 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:51
-
「あぁ、えぇっと、のんはなんで?」
うちはその視線で自分が言ってしまったことの意味に気づいて、
恥ずかしなってあわてて話をそらそうとした。
「なんでって?」
「なんでって言うか……あの〜……
今日、へんやん?いつもならそんなに気にせぇへんのに」
うちはなにも考えてなかったけどなんとかうまくごまかせた……つもりやったんやけど
- 123 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:52
-
「あいぼんが大切だから」
「え?」
「あいぼんのこと大切だから、それに……」
「…………」
のんがうちの目を真っ直ぐに見詰めている。
「それに、嫌われるの、怖かったから」
それって……そう言う意味にとらえてえぇの?
のんもうちのこと……?
- 124 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:53
-
「あいぼん」
のんの顔が近づいてくる。
うちはゆっくり目を閉じてその時を待った。
- 125 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:53
-
ピー!ピー!ピー!
- 126 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:55
-
「あ、乾燥……終わった、みたい……だね」
「……そう……みたいやね」
うちらはぎこちない笑みを浮かべてゆっくり離れた。
- 127 名前:真っ赤な秋? 投稿日:2006/10/18(水) 22:56
-
「あいぼーん!これめっちゃ熱いよ」
「今度は熱すぎやね」
うちらはバタバタ扇いで粗熱をとって服を着たけど、
それでもやっぱり熱くって。
「じゃぁかえろっか?ってのん、なにしてるん?」
「いや、ちょっとね」
のんはそう言うと、今乾燥機を叩いた右手で傘をさしかけた。
「そっか」
うちは振り返り、乾燥機に向かって舌を出すと、
「いこ」
のんがさしかけてくれる傘に入る。
「あいぼん、もっとこっちこないと濡れるよ」
「うん」
うちは傘を持ってるのんの右手に、左手を重ねた。
「のん、またこような」
「うん、今度こそ紅葉の次期にね」
うちらはぴったり身を寄せ合いながら、雨の中家路についた。
- 128 名前:ぱせり 投稿日:2006/10/18(水) 22:57
- 真っ赤な秋?終了です。
- 129 名前:ぱせり 投稿日:2006/10/18(水) 22:59
- PCの不調で更新遅れてしまいました。
- 130 名前:ぱせり 投稿日:2006/10/18(水) 23:05
- レスのお礼です。
>>99さん、若いころにしかできない恋、いいですよね。
>>100さん、100getおめでとうございます。
商品はございませんが、よろしければ寝具屋のおばあちゃんの熱〜い接吻でも(笑)
実はののさんは自前で持ってきた分でさへ
1人前じゃなかった可能性も(笑)。
- 131 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/20(金) 21:53
- 更新乙です。二人の距離がなんともくすぐったくて気持ちいい
>>130
例の人の接吻ヤッター('A`)
- 132 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:13
-
「「♪電話がなりました リンリンリン
今時まさかまさか リンリンリン
もしもしもし HELLO HELLO HELLO!
誰ですか? 誰でしょう!♪」」
「私は紺野あさ美でぇす。
どちらさまですか?♪」
「♪かっぼちゃんでっす♪」
あ、やほぉ、プリティーキュートな17歳、加護亜依でぇす♪
「もう、あいぼん止めてよぉ」
あさ美ちゃんがふくれっ面でうちが顔に押し付けたカボチャのランタンを押しのけた。
「だってあさ美ちゃんカボチャ好きやん?」
「食べるのは好きだけど、ランタンにキスされても嬉しくないもん」
「あはは、ごめんごめん♪」
あんなぁ、今日はなぁ、あさ美ちゃんと二人でおうちでハロウィンのお菓子作ってんねん。
なんでかって言うとな、ハロウィンにはいっつも押しかけてくる子がおって、その子のために毎年お菓子作ってんねん。
いつもはお姉ちゃんと作ってるんやけどな、今日はお姉ちゃん、よっちゃんとデートで
出かけてもうてん。
それであさ美ちゃん誘ったってわけ。
- 133 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:14
-
「あいぼん、もうこれくらいでいいかな?」
あさ美ちゃんは焼きあがったカボチャのクッキーをオーブンから取り出しながら尋ねる。
「うぅん、もうちょっと作っとこっか?
あの子、いっぱいお友だち連れてくるし」
「それにのんちゃんの分もいるもんねぇ?」
「な」
驚くうちを他所に、あさ美ちゃんは鼻歌歌いながら、
まだ残ってる生地を丸めてテンパンに並べてる。
それにしてもあさ美ちゃん、なんの曲か分らんで?
「あさ美ちゃんこそまこっちゃんにあげたりしないの?」
「なんで私が麻琴にあげなきゃいけないの?」
あさ美ちゃんが真顔で問い返す。
「え?好きちゃうん?」
「まさか?」
あれぇ、うち、あさ美ちゃんも、まこっちゃんのこと好きなんか思ってたんやけど……
- 134 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:15
-
『へへへ、私、あさ美ちゃんのこと好きなんだよね〜』
- 135 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:17
- うちはでれでれ、しまりのない顔でうちに相談してきたまこっちゃんを思い出す。
あ〜ぁ、まこっちゃん、ご愁傷様。
「じゃぁ、誰か好きな人、おるん?」
「……うん」
「え?誰?誰なん?」
「いいじゃん、べつに」
「なんや?言いなさい。
言わんとこうやで!」
「やー、やめてぇ!」
「あかん、言うまでやめへん!」
うちは逃げるあさ美ちゃんに抱きついてくすぐり攻撃!」
「あ〜、もう、分ったぁ、いうからぁ」
「よしっ、だれなん?」
「えぇっとねぇ……あのぉ……
後藤……さん」
- 136 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:18
- 「ふぇ〜〜〜!!!
後藤さんってあのごっちん!?」
「……うん」
「ごっちんってごっちん!?あのぉ!!!?」
「もう、あいぼん、そんなに驚かないでよぉ!」
真っ赤な顔であさ美ちゃん抗議するけど、驚くなって方が無理やん!
だってあのごっちんやで?
ごっちんってのは後藤真希ちゃんって言って、お姉ちゃんとよっちゃんの仲良しさん。
この二人と仲良しってことは、つまりごっちんも
まともな人やないって分けで……。
「あさ美ちゃん、確かにごっちんは美人さんやけどな、
よした方がえぇで」
- 137 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:19
-
「んあ、あいぼん呼んだぁ?」
振り返ると、そこにはなぜかそのごっちん。
「ひぇー!
ご、ごごごごごっちん!」
「あは、あいぼん、そんなに驚かなくてもいいじゃん」
「驚くって!
鍵かかってたはずやのに、ごっちん、どこから入ってきたん?」
「あは」
いや、なに照れてるん?
「ねぇ、梨華ちゃんは?」
いや、うちの質問はスルーですか?
まぁ、そんなこと言っても、ごっちんには通じんの
分ってるから、うちも素直に答える。
「お姉ちゃんならよっちゃんとデートやで?」
「あは、そうかぁ」
「うん、ごめんなぁ」
「じゃぁさ、あいぼん、ごとーとデートしよ!」
って、いきなり抱きつかんで欲しいんやけど
- 138 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:21
-
「ちょ、ごっちん、離して」
「あは、あいぼん、きもちいねぇ?」
ほへっとした口調でうちの胸にほっぺすりすり。
「ちょ、止めてって」
うちにはのんと言う心に決めた人がいるし、しかも今は―――
めっちゃ殺意の篭った視線が背中に突き刺さってるんやけど?
「あは、デートしよ?デート♪」
「あいぼん!」
とうとうあさ美ちゃんがたまりかねて叫ぶ。
するとやっとあさ美ちゃんがいることに気づいたごっちんは
「あは、紺野じゃぁん!」
「きゃっ、後藤さん!」
あさ美ちゃんに抱きついて言って、胸にほっぺすりすり。
あはは、ごっちん、実はただのおっぱい星人なんや。
- 139 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:22
-
「あは、紺野デートしよ?」
「え?私……ですか?」
「あは、ここには紺野って紺野しかいないじゃぁん」
「……あの〜」
「んあ、あいぼん、いいよね?」
いや、うちに聞かれても?
「あさ美ちゃんが言いなら、うちはかまへんけど?」
「あは、じゃ、いいよね?
いこ、紺野」
って言うとごっちん、あさ美ちゃんの返事も聞かずに、
あっと言う間にあさ美ちゃんを連れて消えてもうた。
って、今ベランダの方、いかんかった?
ひょっとして入ってきたのもベランダ?
- 140 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:23
-
「はぁ……お菓子、つくろ」
うちはお菓子作りを再開
「♪♪♪」
と、思ったらメール?
このメロディーはのんからのメール♪
『( ´D`)<トリックオアトリート』
「( ‘д‘)<仮想した子供にしかあげませんょぉっだ」
『( ´D`)<あいぼんのケチ!!!』
短いやり取りを終え、携帯を閉じる。
山に行った日、うちはあれからなにか進展あるか思って期待してたんやけど……
なんだか前とちっとも変われへん。
メールのやり取りとか増えたし、学校の帰りとか
時々手を繋ぐようにもなったりはしてんやけど……
肝心な事は言ってくれへん。
うちから言ったほうがえぇんかなぁ?
でも、もしかしたら、うちが勘違いしてるだけかもしれへん。
のんはやっぱりうちをただの友達としてしか……
って、もしそうやったらどうしよ?
うち、目、閉じちゃって……
完全にキス、待ってたのばれてるよね?
うぁ〜、めっちゃはずいんやけど?
- 141 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:25
-
ピンポンピンポンピンポン!
そんなこと考えてると、けたたましいチャイムの音。
この鳴らし方はあの子だ。
「はぁ〜い」
「あいぼんさん!とりっくおあとりーとー!!!」
「うぐぅ〜〜」
ドアを開けるなり魔女に抱きつかれる。
っちゅうより、うちよりでかいから抱きしめられ照るって感じ。
「とりっくおあとりーと♪とりっくおあとりーと♪とりっくおあとりーと♪」
魔女はうちを抱きしめたままぴょんぴょんはねる。
いや、これじゃいたずらよりたちが悪い。
って言うか、お菓子あげる前にうち、死んでまう。
「小春ちゃん、苦しいって!?」
「えへっ、あいぼんさん、ごめんなさぁっい☆」
小春ちゃんはぱっと離れるとぺこんと頭を下げる。
「まったく、小春ちゃんはしょうがないんやからぁ」
うぅん、うちはやっぱりこの子に弱い。
小春ちゃんは近所の女の子。
ちっちゃいころからうちら姉妹によぅなついてて、今でもよく遊びに来る。
そして、このハロウィンの日には決まってお友達を連れてこうして尋ねてくる。
- 142 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:26
-
「「「あいぼんさん、トリックオアトリート!」」」
ほら、こうやってね。
って
「ぅぉー!!!」
うち、驚いてもうた。
なんや今日は驚いてばっかりや。
ドアの外には20人誓いオバケ達。
確か、去年は10人ぐらいやったのに。
「小春ちゃん、なんや今年多くない?」
「えへっ☆」
いや、えへっやなくって。
お菓子足りるやろうか?
のんの分……後で作らな。
- 143 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:27
-
「まぁ、とりあえずあがって」
「「「おじゃましまぁっす!!!」」」
どかどかみんな上がってくる。
オバケのキャスパー、ドラキュラにフランケンシュタインに狼男。
うちの狭いリビングはオバケだらけで見ウ簿記もとれへん。
って、よく見て見ると、オバケな子がほとんどなんやけど、
一人だけ白いネコのキグルミを北子が混ざってる。
しかもすっぽり顔まで隠れてる。
暑くないんやろか?
「「「トリックオアトリート♪トリックオアトリート♪」」」
はいはい、分りましたよ。
みんなぴょんぴょん跳ね回ってる。
あかん、早いとこお菓子出さなうちの床、抜けて舞う。
- 144 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:29
-
「はぁ〜い、あいぼん特性のカボチャクッキーやで」
「「「わ〜い♪」」」
うん、みんな声を揃えちゃってかわいいなぁ。
ん?あれ?なんや人数減ってない?
「うぁ〜、ピンクだらけー!きっしょ〜い」
「それになんか、芳香剤くっさぁい」
足らんと思ったらー!
もう、お姉ちゃんにばれたらうちが怒られるやん!
うちは二階に駆け上がる。
「沙紀ちゃん!桃子ちゃん!」
「「あ、あいぼんさん」」
「梨華姉ちゃんの部屋にかってに入っちゃだめでしょ?」
「ふぁ〜い」」
もう、この子達はぁ。
もう中学生なんだからいたずらもタイガイニしなさい!
なんてうちが、自分の中学時代のことを棚に上げて思いながら、リビングに戻ろうとすると、
- 145 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:29
-
「あ、のんさんの写真だぁ!」
「やっぱりあいぼんさん、のんさんのことすきなんだぁ?」
「これはのんさんに報告だねっ♪」
「ちょっと、雅ちゃん!梨沙子ちゃん!」
「「あ、あいぼんさん」」
「あいぼんさんじゃないでしょ!
人の部屋にかってにはいっちゃいけません!」
「心配しないでください。
ちゃんとのんさんに、あいぼんさんの気持ち伝えて起きますから」
「雅ちゃん!」
「うぁ〜あいぼんさん真っ赤だぁ」
「梨沙子ちゃん!大人をからかうもんじゃありません!」
「だってぇ、あいぼんさんの方が梨沙子よりちっちゃいもん♪」
「…………」
く、くっそー!
「もう、いたずらばっかりする子にはお菓子、あげません!」
「「そんなぁ、あいぼんさぁん」」
怒ってリビングに下りてくうちに二人がすがり付いて来る。
- 146 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:31
-
「「「あいぼんさん、おかわり〜!」」」
はぁ〜。
リビングに着くなりオバケの大合唱。
「はいはい」
うちはそのままキッチンへ直行。
まだ焼いてない生地が少しあったから急いでオーブンへ入れて……
焼きあがるまでの繋ぎになにか……
しゃぁない、うちの常備おやつのバームクーヘンでも出すか。
- 147 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:31
-
「あぁいぼんっさん☆」
「あぁ、小春ちゃん」
「お手伝いすることありますかぁ?」
「ううん、えぇよ、小春ちゃんはお客さんなんやし」
「ううん、お手伝いさせてくっださぁい☆」
あぁ、やっぱり小春ちゃんはいい子や。
「でも、もう作る材料残ってへんし」
「あ、じゃぁ、お豆腐あります?」
「うん、あるけど……?」
「じゃ、あれつくりましょっ?」
「あれって、あれ?」
「うんっ☆」
あれってのは小春ちゃんとうちが考えたオリジナルおやつ。
お豆腐にココアパウダーかけたやつで、なかなか美味しいんやで?
「それにしても小春ちゃん、これ作ったのずいぶん前やのに、
よう覚えてたね?」
「うんっ、☆あいぼんさんと作ったやつだもんっ☆」
あぁ、もう、かわいい!
うちは手を伸ばして小春ちゃんの頭を撫でた。
手、伸ばさなあかんのがちょっと悲しいンやけどな。
- 148 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:34
-
「「おまたせぇ」」
うちは小春ちゃんとお菓子を持ってリビングに戻る。
「でねでねっ、あいぼんさんったらねっ、
机の上の写真縦にねっ、のんさんの」
「こら!梨沙子ちゃん!」
「へへぇ」
もう、目、離せへんやん。
あれ?なんや、ネコの子、一人でみんなの輪から離れて寂しそうやない?
「なぁ、どうしたん?」
「…………」
「お菓子食べとる?」
「…………」
ネコちゃんは黙って首を横に振る。
「クッキー、嫌いやったん?」
「…………」
また首を横に振る。
「どうしたん?みんなと喧嘩でもしたん?」
「…………」
また首をふりふり。
ううん、どうしたらいいんやろ?
返事もしてくれへん。
- 149 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:34
-
「なぁ、小春ちゃん、あの子どうしたん?」
「えへぇ、気にしないでいいですよ☆」
って、また抱きつかれて
「うぐぅー、くるしいってぇ」
「えへっ、あいぼんさんだぁいっすき〜☆」
「や、マジやばいからぁ」
「ごめんなさぁい☆」
ふぅ、やっと開放された。
それにしても小春ちゃん、今日、いつも以上にべたべたしてくる。
最近遊んでなかったから寂しかったんやろか?
ふとネコちゃんの方を見て見ると、目が合ってすぐそらされた。
ん?ネコちゃん、なんや、今こっちにらんでへんかった?
- 150 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:35
-
「「「あいぼんさん、ごちそうさまでしたぁ!」」」
かわいいオバケさん達はうちのおやつがなくなると、
声を揃えてご挨拶。
「「「おじゃましましたぁ」」」
そして、パーティーもお開き。
「はい、気ぃつけて帰ってね』
「「「はぁ〜い」」」
「あいぼんさん、また遊びにきますね☆」
「うん、いつでもおいで」
- 151 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:38
-
「ふ〜」
うちは、小春ちゃんご一行を送り出すとやっと一息ついた。
今から、のんのためにお菓子、作らな。
「え?」
リビングに戻ってくるとみんな帰ったと思ってたのに、そこには白いネコちゃん。
「どうしたん?みんなと帰れへんかったん?」
うちが心配して近づいていくと
- 152 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:39
-
バシッ!!!
- 153 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:40
-
「いったー!」
頭をはたかれた。
そして
「もー!いいかげん気づいてよー!!!」
「の……ん?」
「あいぼん、全然気づかないんだもん!
酷すぎ!!!」
「そ、そんなん、顔までキグルミかぶってたら分るわけないやん!」
「分かってよ!せっかくヒントあげてるのに」
「ヒントって?」
「せっかく白いネコのキグルミ調達したのにさ」
「白いネコ?」
「ねぇねぇ、ブタく〜ん、リンゴちょうだぁい」
のんは突然、かわいらしい声で棒読みのお芝居。
- 154 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:41
-
「まさか……ノンたん?」
「……そうだけど?」
のんは憮然と答える。
「きゃはは!」
「なんだよ!」
「そんなん、分るわけないやん!」
「…………」
「それにしても、どうやって潜り込んだん?」
「潜り込んだって……
ちゃんと小春ちゃんに頼んだだけじゃんか」
「はぁ!?」
なんや、小春ちゃんもぐるやったん?
- 155 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:42
-
「♪♪♪」
って思ってるとメール。
- 156 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:43
-
『ノリo´ゥ`リ <あいぼんさん、ごめんなさぁい☆
今日の小春はトリックアンドトリートでしたっ☆
あっ、それからのんさんにもあやまっておいてくださいねっ☆』
- 157 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:46
- もう、小春ちゃんったらぁ。
それにしてものんに謝っておいてってなんやろ?
「あいぼん、誰から?」
のんが、肩口からのぞきこんでくる。
「小春ちゃんからやで」
うちはのんにメールを見せる。
「ふ〜ん、それにしてもあいぼん、小春ちゃんと仲いいんだね?」
ん?なんか怒ってる?
これってまさか?
「なぁにぃ、のん、妬いてるん?」
「そ、そんな分けないじゃん!」
あわてたようにのんが叫ぶ。
ひょっとしてキグルミの下、赤くなってたりする?
そう思ううちっておめでたい?
- 158 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:47
-
「それより……トリックオアトリート」
「ふぇ?」
「トリックオアトリート!」
「もう、お菓子あらへんで?」
「はぁ?なんでだよ?
仮想したらくれるって言ったじゃん!」
「いや、だってあれは……
それより、なんでさっき食べんかったん?」
「だって……」
「なんやのぉ?」
「……のんの分はべつに用意してくれてると思ったんだもん」
え?ちょっとマジでへこんでる?
「あぁ、だって今から作るつもりやったから」
「…………」
あわてて言うけど、のん、返事してくれへん。
「ちょっと待ってて、すぐできるから、な?」
「もういいもん」
「な、そんなこと言わんと待ってて」
「やだ!怒ったもん!」
そう言うとうちはネコちゃんに抱きしめられ、
「え?」
キグルミの唇がうちのほっぺに触れた。
- 159 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:49
-
「……のん?」
「お菓子くれないからいたずら!」
「……うん」
そして、のんはうちから離れると
「明日、学校でちょうだいね」
「え……うん」
「くれなきゃまたいたずらだかんね」
そう言ってあわただしく帰っていってもうた。
- 160 名前:トリックオアトリート 投稿日:2006/10/29(日) 23:50
-
「……あ、お菓子」
うちはなんだかぼうっとしちゃってたけど、気を取り直すとキッチンへ向かいかけて……
足を止めた。
『くれなきゃまたいたずらだかんね』
「明日……お菓子もってくの……
やめよっかな?」
うちはしばらく、そのまま真剣に考え込んでいた。
- 161 名前:ぱせり 投稿日:2006/10/29(日) 23:52
- 「トリックオアトリート」終了です。
今回はちょっと早めにハロウィンスペシャルをお届けしました。
それにしてもデートしてない・・・。
スレタイ、失敗だったかも?
そして返レスで間違えてるし。
>>130 商品× 賞品○
です。
- 162 名前:ぱせり 投稿日:2006/10/29(日) 23:54
- レスのお礼です。
>>131さん、のんさんの気持ちはどうなんでしょうね?
それでは100GETの賞品でっす。
( `.∀´)<しょうがないの〜
( `.3´)<ブッチュー!!!
- 163 名前:ぱせり 投稿日:2006/10/29(日) 23:54
- また新作、始めさせていただきました。
重めの話ですが、よろしければこちらものぞいてやってください。
DOUBLE VOW
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/dream/1161264694/l50
- 164 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/18(土) 01:39
- のんちゃんとあいぼんがメチャメチャ可愛い(=^▽^=)
また続きを読みたいので楽しみに待ってます!!
- 165 名前:お気に入り 投稿日:2006/11/18(土) 01:40
- のんちゃんとあいぼんがメチャメチャ可愛い(=^▽^=)
また続きを読みたいので楽しみに待ってます!!
- 166 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:20
- 「♪離れた場所で二人は生まれた そして私達出会った
知らない部分沢山あるけれど買い物してて兄弟なの?って聞かれた
なんだか嬉しく感じた♪」
あ、やっほ〜♪
プリティーキュートな17歳あいぼんやで?
なぁなぁ聞いて聞いて?
今日な?久しぶりにのんとお出かけなんやんかぁ?
うち、めっちゃ嬉しいねん。
ここんとこ、学校の文化祭とか、期末試験とか、のんはその追試とか、
まぁいろいろあってなかなかおやすみの日にお出かけできひんかってん。
でな?今日は二人でお買い物やねん。
のんが、なんやいろいろ見たいもんあるんやて。
クリスマスも近いから、のんがどんなもん欲しそうかし〜っかりチェックしてこな。
- 167 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:21
-
「う〜んとえっとえっと……」
うちはクローゼットに頭突っ込んで悩み中。
寒いけど、やっぱりミニスカートの方がのん、喜んでくれるんかな?
ってうちなに言ってんねん!のんも女の子やで?
と言っても、海の時みんなの水着姿食い入るように見てたし……
それにうちに選んでくれた水着も、あんなに背中開いてたし……
そこまで考えて、うちはいらんことまで思い出してもうて……。
あの時のんったら、うちの胸、あんなまじまじと……
あかん、ぼうっとしてもうた。
とりあえず、ミニスカートとニットを着て、鏡の前の青いダイヤモンド型のボトルを
手にとると内腿にシュッと一噴き!
よし、後はコートを着てっと。
「あ〜ら、あいぼんおめかししちゃってぇ、どこいくのかしら〜?」
「はいはい、のんとお出かけですよ〜」
玄関で白々しく尋ねてくるお姉ちゃんを押しのけると、ブーツを履いて
「ちゃんと帰ってくるからね!
じゃあいってきます!」
口早に言うと、まだなにか言いたげなお姉ちゃんを残して欠けだした。
- 168 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:22
-
「ふ〜」
うちは待ち合わせ場所に到着♪
よかったぁ、今日はうちの方が早かったみたい。
あ、そうだ♪
いいこと思いついちゃった♪
長いこと待っててすねたふりしたろ♪
「あいぼん、おはよ〜」
なんって思ってるとのん、登場。
「のん、おぉそぉいぃ〜!
うち、めっちゃ寒かったんやで?」
って言ったんやけど……
「あいぼん、だめだよ、あいぼんが来たの歩道橋の上から見えてたもん」
あちゃ〜、なんやのも〜、お茶ぐらい奢らせたろう思ってたのに。
まぁ、そんなん本気で思ってたわけでもないから気を取り直してお買い物♪
へへっ、楽しみ♪
- 169 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:23
- ―――
「はぁ〜〜〜、いいな〜、かっこいいな〜」
あ〜ぁ、さっきからこればっか。
そりゃぁな、文化祭でバンドやってから、のんがギターに嵌ってるのは知ってたで?
うちからすれば、ただのむさくるしい太ったおっさんを神様のように崇めちゃってさ。
でも、ここまでとは思えへんかった。
さっきからのんは内を引っ張りまわして楽器屋さん巡り。
うちも最初は面白かったで?
いろんな色や形のギターがあって。
でもな?1軒前のお店でな?
- 170 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:26
- ―――
「あぁ、これ、いいな〜」
のんが見てたのはなんかボロボロのギター。
元々は赤やったんやろうけど、手の当たるとことかはげてるし、なんか汚い感じ。
でもうち、のんがそれほど欲しがってるならプレゼントできひんかなあ思ってん。
プレゼントが中古ってのは引っかかったけど、でもこんなに欲しがってるし。
それにな?いくらギターが高い言うてもこんだけぼろぼろなんやで?
きっと内にも手が届く値段……
(6万9千円!?そんなにすんの!?)
あかん、この日のためにバイトしてたけど、どうがんばっても無理や。
ん?あれ?
1、2、3、4。
1、2、3、4。
1、2、3、4。
1、2、3、4。
あかん、なんど数えても0が四つもある。
- 171 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:27
-
「なぁなぁ、のん、これ、値段間違ってるで?」
うちが小声で話しかけると、
「え?どこが?」
のんは気付いてないみたい。
「ほら、これ0が四つもあるやん」
「は〜」
え?なに?
のん、なんでそんな呆れた目でうちのこと見るん?
「なに言ってるのあいぼん、
これ72年なんだよ?ヴィンテージなんだよ?
キャンディーアップルレッドなんだよ?」
はぁ?なに?ヴィンテージってなに?
ヴィンテージったらワインちゃうん?
キャンディーアップル?リンゴ飴?
うそ?これがほんまの値段なん?
69万円って?
あかん、うちには分らん。
店頭に並んどった3万円のやつの方が綺麗でかっこいい思うんやけど?
- 172 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:28
- ―――
そんなことがあってからなんだかうちは気が抜けてもうて。
(は〜)
うちは呆れて心の中でため息を吐く。
「うぁ〜64年だ!」
のんの歓声に顔を向けると、まるで子供のように目をキラキラさせていた。
(まぁ、いいか)
せっかくかわいいかっこしてるのに、うちのこと見向きもせずにおんぼろギターばっかり見てるのは腹立つけど……
のんが楽しそうだからそれでいいやって、うちはそう思うことにした。
- 173 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:31
-
「あいぼん、ごめんね、付き合わせちゃって」
お店を出ると、のんはうちに気を使ってそんな風に言ってくれた。
「ううん、えぇよ」
「あ、もうお昼なんだね」
「うん、のんはなにが食べたい?」
「え?あいぼんは?なにがいい?」
「うちはなんでもえぇよ」
「じゃぁ、のんが決め手いい?」
「うん」
きっとのんはまた焼肉やピザの食べ放題がいいんやろうと思いながらうちはのんに
ついて行った。
- 174 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:34
-
「え?ここ?」
のんに連れられてきたのは最近人気の欧風家庭料理を出してくれる、ちょっとおしゃれな
お店やった。
「いやだった?」
「ぅうん、いややないけど」
「ないけど?」
「のんはえぇの?」
「のんが決めたんだよ」
心配して尋ねるうちに、のんは優しく微笑みかけてくれた。
「ぅぁ〜」
うちはお店に入ると、小さく歓声をあげる。
だって、なんや落ち着いた感じのおしゃれなお店で、
そんなお店にのんが連れてきてくれたかと思うと嬉しくなってん。
- 175 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:35
- 「ねぇ、あいぼんはなににする?」
のんは少し笑いながらこっちにメニューを差し出して聞いてくれる。
うぅん、どうしよ〜?
めっちゃ悩むわぁ。
これがあさ美ちゃんやったら3時間ぐらい悩むんやないかってぐらいみんなおいしそ〜。
「のんは?」
「のんはねぇ、この煮込みハンバーグにするんだぁ」
うぅん、それもおいしそ〜……
のんがハンバーグならうちはぁ……
「じゃぁ、ミックスフライにしようかな?」
「うん、じゃぁ頼もっか?」
「うん」
うちらが呼び鈴を鳴らそうとすると
- 176 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:36
- 「かしこまりました」
「「ひっ!!!」」
「もう、そんなに驚かなくてもいいじゃん」
いや、いきなり現れてそんなこと言われても……
ってあれ!?
「ひさしぶりだね」
「ライフセーバーさん!?」
「いやだなぁあいぼん、かおのことはかおりんって呼んでって言ったじゃん」
いや、言われてへんし、それより……
「あの……かおりん?
……なんで、うちの名前知ってるんですか?」
「だってかおだもん♪」
ってにっこり。
はぁ、またこれや。
- 177 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:38
- 「で?あいぼんはのんちゃんとデート?」
「いや、あの、そんなんちゃいます!だってうちらまだ」
「のんちゃん違うの?」
「え?あの、あ、はい」
「ほらぁ、のんちゃんはデートって言ってるじゃん」
「は、はぁ〜」
「ははは、あいぼん、相変わらず照れやさんだねぇ。
じゃぁ、お料理持ってくるから待っててね♪」
そう可笑しそうに言うと、かおりんはひらひら手を振って厨房の方へ消えて言った。
- 178 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:38
- 「ねぇあいぼん、あの人だれ?」
なんや薄気味悪そうに小声で尋ねるのんに、うちは海でかおりんに会った時のことを
話した。
「ふ〜ん、でも不思議なひとだね〜」
「うん、いい人そうではあるんやけどねぇ」
「お待たせしましたぁ」
ちょうど話し終わったころ、見計らったようにそのかおりん登場。
「あ〜、のん達、ドリンクは頼んでないんですけど〜……」
「いいの、オレンジジュースはかおのプレゼントだから」
「え?いいんですか?」
「うん、食後にはアイスも持ってきてあげるね♪」
「ありがとーございまーっす」
のんはさっきまで、薄気味悪そうにしてたのに、もう人懐っこい笑顔をかおりんに
向けてる。
「バニラと抹茶、どっちがいい?」
「じゃぁ一個ずつお願いしまぁっす♪」
もー!まったくのんは現金なんやからぁ。
- 179 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/09(土) 23:40
- 「あいぼん、のんの煮込みハンバーグ食べてみる?」
しばらく食べてると、のんが尋ねてくる。
「うん」
うちが答えると、
「はい、あ〜ん」
え?……
「ぁ〜ん」
ためらいがちに開けたうちの口にのんのフォークが近づいてきて、そっとハンバーグを
口に入れてくれた。
「おいしぃ?」
「……うん」
なんやろ?夏の時、自分から言って食べさせてもらったことあったけど……
のんから言ってくれたからか、めっちゃドキドキする。
「のんもあいぼんの食べたいなっ♪」
「あ……うん、どれがいい?」
「じゃぁね〜……エビフライ」
「うん、えぇよ」
うちは動揺しながらエビフライをフォークに突き刺すと、のんの口元に持っていく。
「はい」
「あ〜ん、うん、おいしいね〜」
のんは屈託なく笑う。
「あれ?もうえぇの?」
「だってあいぼんの分、なくなるじゃん」
うちはその、三分の二程度になったエビフライの断面を見詰めて……
意を決したようにかじりついた。
なんか、その後からのんの顔、見れへんようになってしもうて……。
こんなこと今までにもたまにあったのに、なんでやろ?
うちは俯きながら、残りのご飯を食べ続けた。
- 180 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/09(土) 23:41
- 更新終了です。
- 181 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/09(土) 23:50
- レスのお礼です。
>>165 お気に入りさん、
( ‘д‘)<いややゎぁ、そんなほんまのこと言うて、てれますやん?
( ´D`)<ありがとーれす♪
二人を気に入っていただけて嬉しいです!
年末年始はなるべく更新したいと思ってますので、またお付き合い下さいませ☆
- 182 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/09(土) 23:50
- それではまた
- 183 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/10(日) 17:11
- こちらも更新あるとは思わなかったので嬉しい(*´Д`)
1話から読んでるとののさんに変化があるのがわかりますね
- 184 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/12(火) 23:00
-
「じゃぁ次はどこ行こっか?」
お店を出ると、のんは楽しげに尋ねてくる。
「う〜ん、未来百貨店」
「オッケー」
のんは大きく頷くと、うちの手をとって歩き出した。
未来百貨店は今要る商店街からは駅の反対側。
駅を突っ切って行けば近いんやけど、駅の東側を回って、ちょっと遠回り。
なんか、クリスマスの飾り付けでいつもと違う街並み、そして行き交う恋人達もいつもよりなんやぴったりくっついてて……
そんないつもと違う雰囲気にうち、飲まれてもうて、ドキドキしてる。
そして、なんや変にテンション上がってもうて、
「あっ、のん、クレープ屋さん、クリスマス限定メニューやて!
あ、たこ焼き屋さんも!
でもクリスマス限定のたこ焼きってどんなんなんやろうね!?」
「うん、どんなんだろうね?」
「後で食べてみよっかぁ!?」
「うん」
未来百貨店に着くまで、お姉ちゃんみたいな上ずった声で一人しゃべり続けていた。
- 185 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/12(火) 23:01
-
「さってと、どこから見る?」
「ぁ、うぅん、特に決め手へんけど」
「じゃぁ、順番にみてこっか?」
「うん」
うちらは未来百貨店に着くと1階の化粧品コーナーから見て回る。
さぁ、あいぼんこっからが肝心やで!!!
のんのプレゼント、ちゃんとチェックしとかな!
うちは密かに気合を入れなおした。
- 186 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/12(火) 23:02
-
「ねぇ、あいぼん、この色どうかな?」
離れたところでなにか見ていたのんが笑顔で寄って来て、うちに口紅を見せる。
「うん、綺麗な色やけど、ちょっと大人っぽすぎん?」
「そう?あいぼんに似合うと思ったんだけどな」
ってうちのかい!?
それでもどうなんやろ?やっぱり大人っぽすぎひんかな?
のん、こう言うのつけて欲しいんやろうか?
「ねぇねぇ、あいぼん、これは?」
あかん、のんの欲しいもんチェックしよう思ってるのに、のんったらうちの物ばっかり
選ぼうとする。
それは2階に上がってお洋服屋さんに言っても同じで、ニット、スカート、デニムに
ブーツ、あらゆるもん持ってきてうちにあわせたり、試着させたり……
なんや小さいころ、お父ちゃんと買い物に来た時のこと思い出すわぁ。
って言うてる場合ちゃう!
これじゃぁ、今日の目的果たせへんやん!
- 187 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/12(火) 23:03
-
「はぁ、お腹空いたぁ。
どっか入ろぉ〜?」
しばらくそんなことを続けていると、のんが情けない声を出す。
うちが時計を見て見ると、いつの間にか4時近くになっていた。
「じゃぁ、どこがいい?」
「う〜ん、気分はなっちゃんのケーキだけど……いまさら戻るのもねぇ」
「じゃぁ、キッチンズバーガー?」
「やだ!最近入ってきたあそこの店長、なんか怖いもん!」
そうなんや?うち、最近言ってないから知らんかった。
「じゃぁ、やっぱりなっちゃんのとこにする?」
「また戻ってくるのめんどくさくない?」
「うちはべつにえぇよ」
じゃぁそうしようってことになって、うちらはまた商店街の方へ戻って言った。
- 188 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/12(火) 23:05
-
「「こんにちは〜」」
「あいぼん、のんいらっしゃぁい♪
なっちゃんが笑顔で出迎えてくれる。
「あ、加護ちゃん、辻ちゃんイラッシャァイ」
その声に奥からミカちゃんも出てきて笑顔でお出迎えしてくれる。
「はぁ〜い、今日はクリスマス限定のプチブッシュドノエルでぇっす」
うちらが席に着くと間を置かずに、なっちゃんがケーキとコーヒーを二つずつ運んでくる。
なっちゃんはいつからか、うちらがくると注文も聞かずにこうやって、その時々の
お薦めメニューを持ってくるようになった。
まぁたまには他のもん食べたい時もあるんやけどな?
でもなんやこのなっちゃんの笑顔とお店の雰囲気が好きで、うちらはみぃんな揃って
学校帰りによく寄ってんねん。
- 189 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/12(火) 23:07
-
「うぅ〜ん、このケーキもおいしいね〜」
「うん、やっぱり、なっちゃんとミカちゃんのケーキは最高やね」
うちらは笑顔でケーキを頬張る。
ほんと、いつもながらおいしい。
このケーキがクリスマス期間しか食べれへんのは残念や。
ん?うちなんや大切なこと忘れて……
あっ!!!そうや!のんのプレゼント!!!
どうしよ?のんの欲しいもん、まだ全然分ってへん。
このさい、本人に遠まわしに聞いてみよっかな?
- 190 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/12(火) 23:08
-
「なぁのん?」
「なに?」
「のんは……サンタさんがいたとしたらなにお願いする?」
のんは顔を上げると、真剣な表情になってしばらくの間考え込んで、
「……亜依……かな?」
小さく呟いて、照れ臭そうに顔を伏せた。
- 191 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/12(火) 23:09
-
「はぁ〜」
そののんの答えにうちは脱力した。
照れ臭いならそんな気障なこと、言わなくてもえぇやん。
でも、負けてられへん!
混ぜっかえされても、なんとか聞き出さな。
「のん、あのさ、愛とか、そう言う形のないもんやなくってさ、普通に
欲しいもんとかってない?」
しまった!プレゼントのことのんに内緒にしよう思ってるのに、ちょっと
直接的すぎたかも知れへん!
「……べつに……」
でものんは、そんなうちの必至な思いも知らずに、ケーキに視線を落とし、
つまらなさそうにフォークで突っついてる。
なんやのもう!うち、真剣に聞いてるのに!
でもどうしよ?のんのプレゼント。
うちはそれからそのことばかり考えてたし、のんもなにもしゃべりかけてこんかったから、
その後はふたり黙ってケーキを食べ続けることになった。
- 192 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/12(火) 23:13
-
「なっちゃん、今日もおいしかったで」
「ほんと?ありがとー♪」
「またくるね」
「うん、それよりのん、がんばれぇ?めげるなよぉ!」
お会計の後、なっちゃんはそう言うと、少し笑いながらのんのお尻をぽんっと叩いた。
ん?なっちゃん、なんのこと言ってるんやろ?
のんも困ったように少し笑ってるし。
まぁ、いいか?
うちらはお店を出ると、また未来百貨店の方へ向かって歩き出す。
それにしてものん、プレゼントなにが欲しいんやろ?
- 193 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/12(火) 23:14
- ちょこっと更新です。
- 194 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/12(火) 23:18
- レスのお礼です。
>>183さん、私もそう言ってもらえて嬉しいです♪
はい、のんさんの態度、少しずつ変わって着てます。
これからどうなるか楽しみにしてやってください。
- 195 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/12(火) 23:19
- 今週中にはこの「冬のお買い物」は完結の予定です。
- 196 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/14(木) 20:06
- 辻さん裏目に出たよ辻さんw
- 197 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:26
-
あれ……?
うちがふと顔を上げると、いつもとなんだか違う道。
のんへのプレゼントのこと考えてたから、いままで気付かへんかった。
でも、この道って……
のん、なんで駅の西側向かってるん?
駅の西側は東側と違って人通りは少ない。
それと言うのも……なんて言うかそのぉ……所謂ホテル街ってやつで……
まさか、違うよね?
いきなりそんなとこ連れてくつもりやないよね?
- 198 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:27
-
「ありゃ?道、間違えちゃった」
のんが間抜けな声を出して、引き換えし始める。
うちは少し安心した。
だって、うちらまだ付き合ってへんのやもん。
のんとそう言う事なるん、嫌やないけど、ちゃんとって言うか、
正式に付き合いだしてからそう言う関係になりたい。
え?でもちょっと待って?
のん、うっかり間違えるって、そんなに頻繁に来てるってこと?
え?誰と?
ちゃうよね?うち、知らへんもん。
うちがちょっと泣きたい気分になったそんな時、
- 199 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:29
-
「あいぼーん!、のんちゃーん!」
大声にはっとして顔を上げると、がきさんの腕を抱きかかえ、楽しげに大きく手を
振っている愛ちゃんだった。
「あ、愛ちゃん、がきさん」
「どうしたん、こんなところで?」
「うん、のん達はお買い物の途中だよ」
「ふ〜ん、なんや帰りかと思ったのに」
「帰りって?」
「ホテル」
「「!!!」」
うちの問いかけにこともなげに応える愛ちゃんに、うちらは石化した。
「あははは、そんなんじゃないよ」
「そうそう、うちら付き合ってる分けやないし」
「なぁんだ」
あわてるうちらを他所に愛ちゃんは詰まらなさそうに応える。
「で、二人は?」
「今から行くとこ」
「「え?」」
「だからホテル」
- 200 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:33
- 「「!!!」」
またもやこともなげに応える愛ちゃんにうちらは再び石化。
「ちょぉーっとまてぇ!」
今まで苦笑を浮かべ、ただ黙って聞いていたがきさんが叫ぶ。
「愛ちゃん何言ってるの!!!」
「がきさんが行こうって言ったんやん?」
「いやいやいや、そうだけどね」
「行かへんの?」
「いやあのそれはねもちろん行くっつーかいやそうじゃなくってさそんなおおっぴらに
こんなとこでね?しかもあいぼんやのんつぁんにね
宣言までしなくってもって言うか、あーーー!!!」
きょとんとして尋ねる愛ちゃんとは裏腹に、がきさんは意味不明なことを言いながら頭を
抱え込み、路上でへんなダンスをし始めた。
「はははは、じゃぁ、のん立ち、そろそろ行くね?」
乾いた笑いを浮かべるのんに頷くと、テンパったままのがきさんを引っ張って行く
愛ちゃんと別れた。
- 201 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:35
-
「……愛ちゃんったらぁ……」
「こっちの方が恥ずかしいよね?」
「うん、それにしてもがきさん……」
うちらはさっきのがきさんを思い出して、顔を見合わせるとくすくす笑った。
さっきまでぼんやりしてたのんも、プレゼントのことでいっぱいいっぱいだったうちも、
愛ちゃんとがきさんのおかげで、いつものペースを取り戻していた。
- 202 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:38
-
「あれ?こんなお店あったっけ?」
百貨店まで戻って着ていろいろ見て回っていると、フロアの片隅に小さな
アクセサリーショップができていた。
「『COCONUTS」だって。
ちょっと見てみよっか?』
のんに促され入ってみると、店内にはシンプルだけど、かわいいアクセサリーで
いっぱいだった。
「「あぁー!かわいい!!」」
うちらの声がハモる。
うちらの心を奪ったのは、ピンクゴールドとホワイトゴールドが絡み合ってるような
デザインの細身のリング。
「手にとってご覧になりますか?」
上品そうな綺麗な店員さんが声を掛けてくれる。
「「はい」」
「サイズはどれくらいですか?」
「あのぉ、よく分んないんですけど……」
「お二人とも指が細そうでらっしゃるので、7号あたりでしょうか?」
店員さんはそう言いながら、リングを出してくれる。
- 203 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:39
-
「あいぼん、手貸して」
のんはさっきまでそうしてたみたいに、真っ先にうちにはめてみる。
「わっ、ほんとにぴったりだね」
「のんは?」
うちは自分の指からリングを抜くと、のんの指にはめてみる。
「のんも同じサイズなんやね」
うちがのんにはめてみると、のんは嬉しそうに自分の薬指にはめられたリングをなんども
手をかえしたりして眺めてる。
「このリングは内側に『FOREVER&EVER』と彫ってあって、恋人への
プレゼントに買って行かれる方が多いんですよ?」
「FOREVER&EVER?」
「『永遠に、いつまでも』って意味なんですよ」
店員さんはにこにこしながら説明してくれる。
「ペアリングにいかがですか?
7号でしたらちょうど2本残って増すよ?」
- 204 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:40
- 「え?いや、あのうちら、付き合ってるとか、そんなんやないんで」
うちは恥ずかしくってあわてて叫ぶ。
そりゃぁ、こんなかわいいん、のんとペアで着けれたら嬉しいけど……
だって、まだのんの気持ち確認してへんのやもん。
うちが一方的に思ってるだけかも知れへんのやもん。
うちは恐る恐るのんを見て見ると、ちょっと残念そうにリングを戻していた。
のん、これ、欲しかったんやろうか?
うちが値段を見てみると、
23100円かぁ……2本は無理かぁ……
1本でもちょっと予算オーヴァーかも?
でも決めた!
のんが欲しいんやったら、ちょっとぐらい無理しよ!
ペアリングはいつかきっと……。
- 205 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:41
-
「あいぼん、いこっか?」
「あ、うん」
「じゃぁ、また来ます」
「はい、お待ちしております」
うちらはお店を後にした。
- 206 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:42
-
「なぁなぁのん、夕飯はどうする?」
「上のレストラン街でいいんじゃない?」
のんは寂しげにぼそっと応える。
うぅん、のんへのプレゼントが決まって上機嫌の内とは裏腹にのんは元気ない。
よっぽどあのリング、欲しかったんやな。
安心してな、クリスマスにプレゼントしてあげるからな?
「のん、ご飯には早いからちょっと屋上いかへん?」
「屋上?」
「うん」
「え?特になにもないじゃん」
のんはためらうのも無理はないと思う。
だって屋上って言っても、ツリーがあるくらいで、特別な飾り付けがあるわけやないし、
人気の夜景スポットって分けやないんだもん。
でもうちは少しでものんに元気になって欲しいから、
「えぇのぉっ」
ちょっと強引やったけど、無理やりのんの手を引っ張って屋上に向かった。
- 207 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:44
-
「のん見てぇ?ほら結構見えると思わへん?」
うちは屋上に出ると空を指差す。
「……ほんとだ」
うちらの街は小さな街。
綺麗なイルミネーションとかほとんどないけど、その代わり大きな町よりは星が見える。
「ねぇあいぼん」
のんが星空を見上げながら静かに口を開く。
「なに?」
「あいぼんは……」
「…………」
「あいぼんは……サンタさんがいたらなにをお願いする?」
唐突なのんの問いかけに、うちの脳裏を翳めたのは隣にある笑顔。
でもそんなこといえるわけもなく、
「雪……かな?」
「雪?」
「うん、イヴに雪降らしてもらうねん」
「…………」
「イヴに好きな人と雪、一緒に見たい」
「……そっか」
のんはずっと空を見上げたまま。
- 208 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:45
-
「あいぼん、今年のイヴは……」
「……うん」
「誰と過ごすの?」
なんやの?一緒に過ごそうって言ってくれるのかと思ったのに。
ちょっと期待したのに。
「予定はないよ」
「……そっか」
「じゃぁのんは?」
それだけしか言ってくれないのんに、のんは誰かと過ごす予定があるんかと心配になった
うちは恐る恐る尋ねた。
「のんも……」
「じゃぁ、イヴは」
イヴは一緒に過ごさへん?
そう続けようとしたのに、口が動かへん。
寒くて凍えてしもうたんやろうか?
あぁ今日は特に冷えるからぁ、ってそんな分けないやん!
なんて一人ボケツッコミしてる場合やなくって。
のんがうちをじっと見詰めて続きを待ってる。
- 209 名前:冬のお買い物 投稿日:2006/12/17(日) 23:47
-
「イヴは……パーティーしよっかっ!みんなで!?」
うちのアホ!
うちのいくじなし!
「うん」
でものんは、いつもみたく笑って頷いてくれた。
「よしっ!ご飯食べにいこ!
のん、お腹空いたぁ」
そしてのんが元気に手をとってうちを引っ張って行く。
「あいぼん、なに食べたい?ねぇねぇ?」
「もう、そんなに引っ張らんといてぇ」
うん、まぁいっかぁ。
うち、イヴには勇気振り絞ってのんにリングプレゼントするから待っててな?
そしてその時……
うちの気持ちも伝えれたらいいなぁ。
リングに込められた思いはうちの思いと一緒だよって。
うちはのんに手を引かれながらそんなことを思っていた。
- 210 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/17(日) 23:48
- これにて「冬のお買い物」終了です。
- 211 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/17(日) 23:50
- レスのお礼です。
>>196さん、そうですよね〜、まったくのんさんも慣れないことするから〜(笑)。
- 212 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/17(日) 23:52
- 次回ですが、クリスマス前に番外編をUPできないかなぁなんて思っています。
- 213 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/20(水) 00:11
- 更新お疲れ様です。
あいぼん不足の身にあいののがたくさん読めて本当に嬉しいです。
- 214 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 21:57
- 「♪1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
お部屋はここかな?
は〜い♪」
あ、どうも。新垣りさ17歳っす。
楽しげに歌ってるのは私の彼女、高橋愛18歳っす。
今は所謂ラヴホってやつの廊下、なんですが……
- 215 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 21:58
-
愛ちゃんは歌いながら部屋を見つけると、鍵を開け部屋に入り、勢いよくベットに
だいぶしていく。
「はぁ〜」
私は続いて部屋に入ると、ベットに腰を下ろした。
「どうしたん、里沙ちゃん?」
「いやどうもしないよ」
愛ちゃんはきょとんと言った感じで問いかけてくる。
まったく、愛ちゃんは〜……
私は愛ちゃんにそっけなく返しながらここまで来るまでの出来事を思い出していた。
- 216 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 21:59
- ―――
朝から買い物をしていた私達は、夕方になると、駅前にある愛ちゃんのなじみの店に服を
見に来ていた。
まあ、なじみの店と言っても―――
「なぁなぁ、これに合う?」
「はいはい、似合いますよ」
私はそんな服、仮想パーティーでしか着ないだろ!って感じの装飾過多のドレスを
合わせている愛ちゃんに投げやりに応える。
「ちゃんと見てよ!」
「ちゃんと見てますって」
こんな感じで普段切れないような服を、当然買うわけもなくただ見ている。
まぁぶっちゃけ、愛ちゃんのファッションショー?コスプレ?に付き合ってる
みたいなもんかな?
- 217 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 22:00
-
「あ〜!これえぇわ〜!高嶺ふぶきさんになったみたい」
「はいはい」
もちろん、高嶺ふぶきさんってのは愛ちゃんがあこがれてるタカラジェンヌで。
それにしても―――
いつものこととは言え、店員さんの視線が痛い。
そりゃぁそうだよね?
愛ちゃん、いつも来て試着しまくるくせに一着も買わないんだもん。
確かに高校生のお小遣いやバイト代でおいそれと買える値段じゃ無いんだけどさ。
私は値札をちらっと見てみる。
まあそうか、それぐらいするよね?
「ねぇ、愛ちゃん、それ欲しいの?」
「欲しいけど……買えないやよ。
高いし、普段着れないし」
分ってんじゃん!
まぁ、いくら愛ちゃんでもこんな服、普段から着ようとは思わないか。
- 218 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 22:01
-
「じゃあ、買ってあげようか?」
「ほんと!」
愛ちゃんの顔がいつもの三倍ビックリしている。
「うん、クリスマスプレゼント」
「里沙ちゃん大好き!」
うわわわわ、こんなところで抱きつくのは、っつうかキスは駄目でしょキスは?
「分ったから、ね?落ち着こう」
「うん♪」
愛ちゃんにはいつも振り回されるけど、こんな笑顔見せてくれるとそれでいいと
思えちゃうから不思議だ。
- 219 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 22:02
-
「おおきに、ありがとうございましたー」
私達は会計を済ますと店を後にした。
それにしても店員さん嬉しそうだったなぁ。
毎週のように来ては試着してるけど、買ったの始めてだしなぁ。
他にも売れてるとことかあんまり見ないし。
店員さん、いいこなのにな〜。
ん?年上の人捕まえて「いいこ」はおかしいかな?
まっいいか。
- 220 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 22:03
-
「里沙ちゃん、ほんとありがとう」
愛ちゃんはよっぽど嬉しかったのか、さっきからなんども嬉しそうに言う。
「うん、喜んでもらえたならそれでいいよ」
「里沙ちゃん、大好き!」
ちょ、ちょちょちょ、だからいくら物陰だからって町中でキスはって、
だから舌を入れるとかだめだから!
って言ってもそれはそれ、こんなかわいい彼女にそんなことされちゃぁ
「愛ちゃん、いつものとこいこっか?」
その気になってしまって、自分から誘っちゃった分けで。
「うんっ♪」
愛ちゃんは嬉しそうにうなずくと腕を組んで歩き出した。
- 221 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 22:06
-
「あ、あそこにいるのあいぼんとのんちゃんにゃない?」
私がはやる気持ちを押え、歩いていると、愛ちゃんが突然進行方向を指差す。
たしかにそこには仲よく手を繋いだのんつぁんとあいぼん。
でも、今声掛けるのはまずいっしょ?
だってあっちって私らの進行方向はってことはだよ?
つまりその帰りってことじゃない?
いくらなんでもそれはむこうがはずかしいっつーか、
「あいぼ〜ん、のんちゃ〜ん」
そんな私の思いを無視して、愛ちゃんは楽しそうに手を振る。
(はぁ、まぁいっか?)
私は愛ちゃんに手を引かれるまま二人に近づいて行った。
それにしてもいつの間に二人、そこまで進んだんだろう?
「あ、愛ちゃん、がきさん」
「どうしたん、こんなところで?」
「うん、のん達はお買い物の途中だよ」
買い物?マジっすか?
「ふ〜ん、なんや帰りかと思ったのに」
愛ちゃんも私と同じことを思ったのか、疑いの目で見てる。
「帰りって?」
「ホテル」
「「!!!」」
うぉ!!人が固まった。
- 222 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 22:06
-
「あははは、そんなんじゃないよ」
「そうそう、うちら付き合ってる分けやないし」
この反応は……どうやら嘘じゃないみたいだなぁ。
まぁ不思議はないか、二人とも結構ヘタレだからなぁ。
「なぁんだ」
まったくね。
「で、二人は?」
「今から行くとこ」
そうそう。
「「え?」」
「だからホテル」
「「!!!」」
そうそういまから二人でホテルにねって
……は?愛ちゃん、いまなんっつった!?
「ちょぉーっとまてぇ!愛ちゃん何言ってるの!!!」
「がきさんが行こうって言ったんやん?」
「いやいやいや、そうだけどね」
「行かへんの?」
「いやあのそれはねもちろん行くっつーかいやそうじゃなくってさそんなおおっぴらに
こんなとこでね?しかもあいぼんやのんつぁんにね
宣言までしなくってもって言うか、あーーー!!!」
- 223 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 22:08
-
―――
それからの記憶は飛んでいて―――
気がつくといつの間にかホテルの受付に来ていて、愛ちゃんが部屋を
選んでいたって分けで――――
「ねぇ里沙ちゃぁん、なんでこっちこうへんの?」
愛ちゃんが自分の横のスペースをぽんぽん叩いて呼んでいる。
うん、そのしぐさとかめっちゃかわいいんだけどね?
もうなんかさっきのでさめちゃったっつーかさぁ。
「里沙ちゃん?なんか怒ってるん?」
気がつくと愛ちゃんが目の前にしゃがみ込んで私の顔をのぞきこんでる。
「……べつに」
「うそ?ねぇ、あぁしなにしたん?
里沙ちゃんなんで怒ってるん?」
これだからな〜。
愛ちゃんはいつもなんで私が怒ってるか分らないからしまつが悪いんだよね〜。
- 224 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 22:09
-
「ねぇ里沙ちゃん……」
私を見詰める愛ちゃんの大きな目にみるみる涙が溜まってきて―――
「……ごめんなさい……謝るから怒らんといて
……あぁしのこと嫌いにならんといて……」
とうとうしゃくり上げだした。
もうこうなったらお手上げ。
泣かれるとこっちが悪いことしてるような気になってしまう。
泣けば済むって思ってんじゃないだろうね?とか思わないでもないんだけど……
「里・沙・ちゃん……」
そんなこと計算できる子じゃないことぐらい重々承知だから、もう怒っても
いられなくって。
「……のんつぁん達にホテルに行くなんて言うから恥ずかしかっただけだよ」
「……ごめんなさい……あぁし里沙ちゃんの嫌がることするつもりじゃ」
「分ってるって」
私は観念して愛ちゃんを抱きしめた。
「あぁしのこと嫌いに」
「なるわけないって」
「ほんと?」
「いつも言ってんじゃん」
「えへへへ、よかぁったぁ」
そう言うと愛ちゃんは涙でぐしゃぐしゃな顔を上げ笑う。
まったくぅ、この無邪気な笑顔にはほんっと適わない。
- 225 名前:あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜 投稿日:2006/12/21(木) 22:10
-
「里沙ちゃん大好き!」
「ぅむ〜」
ちょちょちょ、だからいきなりはっても〜。
私は愛ちゃんに唇をふさがれそのままベットに押し倒される。
「……も〜愛ちゃん?」
「……里沙ちゃん大好き」
こんどは打って変わってかすれたセクシーな声で囁かれて。
あっ、ちょっといきなりそんなとこだめだから!
「ちょっと愛ちゃん!?」
「たまにはあぁしがサービスしてあげる」
いや、そうじゃなくって、ぁっ、ちょっと?ぁっ!
ちょっとぐらい人の話を聞けっつーか、もう少しこっちのことも考えてっっつーか……
でも……そんな愛ちゃんに振り回されるのも悪くはない。
だってそんな裏表のない愛ちゃんが私は何より大好きなんだから。
私は愛ちゃんに身を任せながら、そんな風に思っていた。
- 226 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/21(木) 22:13
- 笑顔のデート のんとのデート、初の番外編、
「あいがき。数え歌〜ラヴホバ〜ジョン〜」でした。
また機会があれば、たまにこうやって違うメンバーの視点でも書けたらなぁって思っています。
が・・・いつも以上にお粗末な気も・・・。
- 227 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/21(木) 22:16
- レスのお礼です。
>>213さん、お役に立てて嬉しいです。
私もあいぼん不足で寂しいかぎりです。
こうやって書くことによって彼女や、オタ仲間を応援できたらなぁと思っています。
今回は違い増したが、また次回からはあいぼん視点なんでまたお付き合い下さい。
- 228 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/21(木) 22:18
- 次回はクリスマスパーチーです。
イヴには更新するつもりです(と言って自分を追い込んでみたり)。
それではまた次回お付き合い下さい。
- 229 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:05
- 「♪真っ赤なお鼻の トナカイさんは
いっつもみんなの 笑い者♪」
えへへぇ、プリティーキュートな17歳、加護合いでぇっす♪
今はな?未来百貨店からの帰りやねん。
と言うのも、のんへのプレゼント、もちろんあのリングな?あれ、とってきた帰りやねん。
え?なんでイヴぎりぎりかって?
それはな、うち、リングに文字彫ってもらっててん。
A TO Nって。
で、今日までかかったって分け。
でもな?やばかったんやで?
うち、あの次の日、みんなと帰るの断って、急いで未来百貨店にお買い物に
行ったんやけどな?あのリング、もう1個しか残ってなかってん。
ほんまやばかったわぁ。
うちは嬉しくって、胸に抱えた小さい紙袋をそっとなでた。
- 230 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:06
-
それにしてもあの「COCONUTS」の店員さん、好きや。
なんかな?すっごい親切やし、リング買いに行った日も、今日もなんや
めっちゃ嬉しそうに接客してくれてん。
大学生になってバイト代とか今より入るようになったら、またお買い物行きたいなぁ。
- 231 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:07
-
「ただいまぁ」
「おかえり〜、あいぼん早く手伝ってよぉ」
「はいはいぃ」
うちが玄関をくぐると、キッチンから今日のパーティーの準備をしている、お姉ちゃんに
呼ばれる。
うちは急いで部屋に荷物を置いて、お姉ちゃんを手伝おうと、リビングに入って―――
固まった。
「お姉ちゃぁんっ!なんやのこの飾りつけー!!!」
うちは奥のキッチンに居るお姉ちゃんに向かって叫ぶ。
リビングはクリスマスカラーなんてもんやなくって、お約束通りと言うかなんと言うか、
ピンク!ピンク!ピンク!!!
ってな感じで無残な有様になっていた。
「なにがおかしいのよぉ?」
お姉ちゃんはキッチンからひょこっと顔を出すと、エプロンで手を拭きながら不満そうに口を尖らせる。
って、エプロンもピンクなんやけどな。
「もぉ〜、自分の部屋やないんやから、もうちょっと考えてよぉ」
「なによぉ、手伝ってもくれないでー!
嫌ならかってに変えればいいじゃない!
それより早く手伝って!」
お姉ちゃんはプンスカって感じに頬を膨らますと再びキッチンへと消えて行った。
「はぁ〜、逆切れですかぁ……」
うちはため息を一つ吐くと、お手伝いするためにお姉ちゃんの後を追った。
- 232 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:08
-
「で、なにすればいいん?」
「チキン、お願い」
お姉ちゃんは顔は手元を見たまま、キッチンの片隅を指差す。
「ほぉ〜」
なぁるほど、なにがなんでもうちが手伝わないと困るのはこれね。
お姉ちゃんの指指す先には丸焼き用のチキン。
お姉ちゃん、嫌いな鳥をがんばって買ってきたものの、調理まではむりやったのねぇ。
「ふぅ〜ん、じゃぁ、お願いしますあいぼん様って言ったらお料理してあ・げ・る♪」
「ぅっぅぅ」
へへっ、お姉ちゃん悔しそう。
「ぅぅ〜、お、お願いします。」
「あいぼん様は?)
「うぅ〜、あ、あい」
「あい?」
「もぉー!あいぼん、いじわるなんだからー!!!」
うわっ!思わぬ反撃や!
耳、キーンしてもうた。
「はいはい、ちきんはお任せくださいな」
「うん、じゃぁよろしくね」
お姉ちゃんは何食わぬ顔でサラダの準備。
- 233 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:09
-
「ところであいぼん」
お姉ちゃんはしばらくすると、スープを作りながら、なんでもないといった調子で
話しかけてくる。
「なに?」
「ののとはどこまでいってるの?」
「…………」
「まだお互い気持ち、確かめあってないんだぁ?」
「……ぅん」
うちは小さく頷く。
「まったくぅ、二人ともしょうがないなぁ」
「……だってぇ」
うちは小さく反論。
「だって?」
「……だ・ってぇ……」
「怖いの?」
「……そんなんやないもん」
「じゃぁどうして気持ち伝えないの?」
「……お姉ちゃんの方がいじわるや」
うちはすこし悲しなって手を止めると、唇を噛んで俯いた。
「ごめんね」
お姉ちゃんも手を止めると、うちの頭おそっと抱き寄せ、
「でも怖がってばかりじゃだめだよ?」
優しく言いながら髪をなでてくれた。
「……うん」
うちはお姉ちゃんの胸の中で頷いた。
- 234 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:11
-
ピンポーン
少しの間そうしていると、玄関のチャイムが鳴った。
「ぁ、うち出て来るね」
うちはちょっと恥ずかしくってそっと離れるとお姉ちゃんの顔を見ないようにして玄関へ
向かった。
「「おじゃましまぁ〜す」」
「いらっしゃぁい」
ドアを開けるとそこには、あさ美ちゃんと愛ちゃんが立っていた。
「早かったね」
「うん、なにかお手伝いしようかと思って」
「ちょっと早めに来たんやよ」
「ありがとー!上がって上がって♪」
「うん、じゃぁおじゃま」
「しつれいっっ」
二人ともリビングに入ると同時に固まってもうた。
「ははは、これお姉ちゃんやねん」
「……そうだろうね」
「こんな飾りつけできるのは梨花殿ぐらいやざ」
「ははは、あのぉ、じゃぁ、ここの飾りつけお願いできひん?」
「「うん」」
これで会場は一安心。
- 235 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:12
-
「さぁってと、お料理も全部オッケーかな?」
「うん、あっ、飲み物とかだいじょうぶ?」
「うん、だいじょうぶよ」
うちとお姉ちゃんがお料理の最終チェックを終えて一息つくと
「「こっちも終わったよぉ」」
あさ美ちゃんと愛ちゃんの声も響く。
二人も飾り付けやテーブルセッティングなんか手伝ってくれてん。
「二人のおかげで助かったわぁ。ありがとうね。
さすが女のこよねぇ」
「いやお姉ちゃん、他の4人聞いたら気ぃ悪ぅするから」
「「「きゃははは」」」
へへへこれで完璧や。
パーティー、ちょっと楽しみになってきたでぇ。
- 236 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:13
-
ピンポーン!
「おじゃましまーっす!!!」
しばらくリビングで4人、くだらない話で盛り上がってると、チャイムが鳴った。
それにしてもまこっちゃん……チャイム鳴らすなり叫ばんでも……
チャイムの意味ないやん。
「はいはいぃ」
「メリークリスマーッゥ!」
「イブかっけー!」
「ぅおー!」
ドアを開けるなり今度はがきさんとよっちゃんのシャウト。
もう、なんや心臓に悪いわぁ。うちドキドキしてもうた。
「あいぼん、メリークリスマス」
「あ……のん、メリークリスマス」
なんや、のんも一緒やったんや。
さっきとは違う意味で心臓がドキドキしてきたり……。
「はいはいそこの二人!玄関先でみつめあわなぁい!」
もー!がきさん!
そんなことばっかり言ぅてるとこの前のことみんなに言ってまうで?
「みんないらっしゃぁい。
さぁ上がって♪」
うちががきさんを軽く睨んでいると、お姉ちゃんも玄関先に出てきた。
「梨花ちゃん今日もかっけーぜ」
「ひとみちゃんこそ」
って二人抱きあってる。
まったく、どんな挨拶やねん。
- 237 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:15
-
「それではぁ!」
「「「メリークリッスマーッスゥ!」」」
よっちゃんの音頭でパーティー開始。
って言うか、みんないきなりお料理にがっつきすぎ!
「あいぼん、チキンおかわりぃ」
「あっ、私も」
「はいはい」
うぅん、お姉ちゃんがチキンに近づけないから必然的にうちが切り分ける役目。
みんなに評判いいんは嬉しいんやけど……
うち、食べる暇あらへん。
「ん?あいぼん貸して?」
「え?」
「さっきからあいぼん食べてないじゃん」
そう言うとのんはさっとナイフとフォークを取る。
……のんってなんでこんなに優しいんやろう?
「あいぼん?」
「……ぁっ、うん、ありがとう」
あかんあかん、ぼうっとしてもうた。
「はい、じゃぁあいぼんの分ね」
「ありがとう」
のん、やっぱり大好き!
- 238 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:16
-
「さってと、そろそろプレゼント交換でもしよっか?
ベイベー達、プレゼント忘れずにもってきたかい?」
ベイベーって……。
とりあえずよっちゃんの言葉にみんなプレゼントを取り出す。
「じゃぁ、一応みんなが自分の似あたらないようにシャッフルしよう」
「シャッフルはいいんですけど……」
「明らかに一つだけ誰が用意したものか分るものあるよねぇ」
がきさんやまこっちゃんの言う通り、明らかに一つだけ浮いたピンクの包みが
あるんやけど……。
「あらそう?」
言われた当の本人はすまし顔。
「じゃぁ、曲かけるぜぃ」
って言ってよっちゃんはCDをかける。
「♪素敵な彼で合いますように♪」
音楽と共にプレゼント交換開始♪
うちの思い付きって言うか、逃げ?から急遽決まったパーティーやったけど、結構楽しい。
「はいはいはい、あいぼん!」
え?
うちがそんなん思ってるとあさ美ちゃんが異様にあわててプレゼントをわたしてくる。
と思ったらピンクの包み。
「のん、早く早くぅ」
うちもあわててのんに渡す。
「あ、あわわわわあ、はい、よっちゃん!」
「ちょっとぉ!みんななによぉ!!!」
そんなうちらをみてお姉ちゃんはかなきり語絵を上げる。
「「「きゃははは」」」
へへっ、ほんま楽しい。
- 239 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:19
-
「♪ぴったりしたいクリスマス まったりしたいクリスマス
頭の中ほとんど彼氏
ぴったりしたい週末 ドッキリしたい年末
頭の中ほとんど彼氏
自慢したいす的な彼氏
頭の中ほとんど彼氏
彼氏 彼氏 彼氏♪」
「よぉっし、終了!」
曲が終わると同時にプレゼント回し終了♪
うちはなんとかピンクの包みは避けられた。
見渡して見ると、どうやらまこっちゃんにあたったみたいで、まこっちゃんはちょっと
放心状態やった。
「麻琴ぉ、それなんだったのぉ?」
のんが尋ねるとまこっちゃんは恐る恐る包みを開けて
「うぉー!」
歓喜の雄たけび。
「「「え?なになに?」」」
意外といい物だったんかと思ってみんなが見てみると―――
うさぎの絵がついたピンクの毛糸の手袋。
って……
「かっわいいなぁ」
まこっちゃんは喜んではめてみて、にまにましてるけど……
まこっちゃんにはなんって言うか、微妙で……
言ってあげた方がいいんやろか?
うちがみんなを見てみると、みんなも視線を泳がせていた。
- 240 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:20
-
「ぅぅっ」
しばらくのその気まずい沈黙の後、あさ美ちゃんが小さくうめく。
ん?どうしたんやろ?と思ってあさ美ちゃんをみて見ると……
「こんなの……」
ちょっと涙目になってなにかを握り締めてる。
「あぁ、こんこんにあたったんだぁ?
それ着てるとこ見せてな?」
よっちゃんがにやけてる。
うちはそのよっちゃんのにやけ顔に不安を感じて、あさ美ちゃんの手に握られた
その小さな布をみてみると
「あいぼん、こんなの履けないよぉ」
それはそれはエッチーなパンツやった。
ははは、罰ゲームはお姉ちゃんのだけかと思ってたけど、よっちゃんもやばいんやったな。
さて、うちはっと。
もうさすがにはずれはないやろぉ……
ははは……宝塚のDVD……か?
チケットも入ってる……あたった人は一緒に行こうねやて……
意外な伏兵やったなぁ……
これが一番の罰ゲームかも知れへん。
- 241 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:25
-
「あいぼん?どうした?」
「うぅん、のんはなんやった?」
「えぇ、のんはこれ」
って言って差し出したのはフユソナのサントラCD。
「のん、好きじゃなかったしさぁ、いまさらって感じだし微妙だよねぇ」
「のん、嫌ならうちの戸代えよっか?」
って言ってうちがDVDとチケットを差し出すと、
「のん、これ欲しかったんだぁ!
フユソナ最高!ヨン様素敵!!!」」
ははは、そうですか?
ん?うちがふと顔を上げると愛ちゃんと視線が合って……
めっちゃ寂しそうにしてる。
……うぅ、そんな目で見られたら……
うちは愛ちゃんに向かって、だいじょうぶだよって微笑んで頷いていた。
あぁーどないしよ!?
- 242 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:26
- ―――
「ジュースとか足らなくない?」
しばらく食べたり騒いだりしていると、お姉ちゃんが口を開く。
「じゃぁ、買って来よっか?」
「うん、じゃぁお願い、あっ、お菓子とかも」
「オッケー!」
そう言うとよっちゃんは車の鍵を掴んで
「あいぼん、行こ?」
「え?うち?」
「うん、一人じゃ大変だからさ」
「分った」
ってうちが立ち上がって、コートを取って帰ってくると
「じゃぁ、行こっか?」
ってちょっとなんで腰に手を回して耳元で囁くん?
「のんも行く!」
うちが少し戸惑っていると、のんがうちの腕を抱えてよっちゃんから引き剥がして、
ぐんぐん、玄関へと引っ張って行った。
- 243 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:27
-
「…………」
「…………」
のんとうちは、コンビニに向かう間、よっちゃんの車の後部座席でただ黙って並んで
座っていた。
のん、妬いてくれるん嬉しいけど、さっきからずっとミラー越しによっちゃんのこと、
すごい目で睨んでるし
「あいぼん、そのコートかわいいねぇ」
でもよっちゃんはそんなん気にもせずにうちにばっかり話しかけてくるし
……うち、どうしたらいいん?
よっちゃん、わざとなんやろうけど、ちょっと調子乗りすぎや。
「あっ、あったかいコーヒー買おうと思ってて忘れた!
あいぼん、買って来てくんない?」
コンビニで買い物を済ませ、戻ってくると、よっちゃんが叫ぶ。
「そんなの自分で買ってこればいいじゃん!!」
とうとうのん、声を荒げてもうて……
「えぇよのん、それより付き合って?」
うちが言うとのんは渋々ついて来てくれた。
- 244 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:28
-
「ありがとうございましたあ」
「「あー!!!」」
のんとうちの声がハモる。
コーヒーを買って帰ってくると駐車場からは車が消えていて。
「吉澤ー!!!」
うゎ、のん、マジで怒ってもうた。
どうしよ?こんなのん、初めてでうち、どうしていいか分らへん。
「のん……」
うちが不安げにのんの顔を見ると
「……ごめん」
のんも少し落ち着きを取り戻してくれた。
「……なぁのん?歩いても15分ぐらいなんやしそんなに怒らんといて?」
「……うん」
のんも頷く。
- 245 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:29
-
うちらは二人、家までの道を並んで歩く。
空を見上げてみると、あいにく分厚い雲に覆われてて星一つ見えない。
なんやうちらの今の心境見たい出ちょっと寂しい……。
「なぁのん、そんなに怒らんといて?」
うちは沈黙に絶えかねて口を開く。
「…………」
「のんだってよっちゃんがすぐ調子に乗るん知ってるやん?」
「……あいぼんは」
「…………」
「……あいぼんは、よっちゃんのことかばうんだ?」
「え?」
「……さっきからよっちゃんのことばっかかばってんじゃん」
のん、それで怒ってたん?
「……ごめんね」
「……なにが?」
「……うぅん、なんとなく」
うちはそう言うとのんの手をとった。
「……うん」
……ぁっ」
のんの呟きに顔を上げると、暗い夜空から白い物がちらちらと舞い降りてきていた。
それはパラパラと言った感じで、ほんの少しの量だけれど、街灯の明かりを受けてとても
綺麗だった。
「……サンタさん、もう来てくれたんや」
「……そうだね」
のんの声もいつもの優しいものに戻っていて、うちは嬉しくなり、無意識にのんの腕を
抱きしめていた。
- 246 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:30
-
「「ただいまぁ」」
うちらが帰ってみると、家の中は閑散としていて、リビングに入るともぬけの空で、
お料理も飾りつけも消えていた。
「……なにこれ?」
「あっ」
うちが呆然としていると、のんがテーブルから紙切れを取り上げる。
「『あいぼん、ののへ。
あいぼんの部屋に行きましょう』……だって」
「……なにそれ?ドッキリ?
みんなうちの部屋におるん?」
「さぁ?とりあえず行ってみようか?」
うちらは2階に上がってうちの部屋のドアを開ける。
「「!!!」」
そこには綺麗に飾り付けられた部屋に、ノンアルコールのシャンパンとケーキが
キャンドルの明かりに照らし出されていた。
- 247 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:31
-
「「ぁぁ〜」」
うちらの声が重なる。
「これってなっちゃんのとこのケーキだよね?」
「うん、メリークリスマスってなっちゃんの字やもん」
「この天使……のんとあいぼんなんかな?」
ケーキの上には、普通ならサンタさんの砂糖菓子とかが乗ってるんやろうけど、
天使の砂糖菓子が二つ乗っていて。
「たぶん」
「ちょっと黒いのがのん?」
「そうやない?そっくりやもん」
「さすがミカちゃんだよねぇ」
「そうやね」
うちらは顔を見合わせ、くすくす笑った。
「……でもこれってさぁ
……なんなんだろうね?」
もう一度、部屋を見渡してのんが呟く。
「あっちょっと待ってぇ?
また手紙」
今度はうちがテーブルの上の手紙に気付き、開いてみる。
- 248 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:32
-
『[ ^д^´)<WE Wish Your Merry Chrismats!
● ´ー`)<のん、あいぼん、メリークリスマス♪しあわせになるっしょ。
● 川o・-・)<作戦成功!完璧です!
川’ー’川<あいぼんとのんちゃんは幸せなんだよ?藤原鎌足は、別に好きでもない人を
主君の
∬´▽`∬<あっ、ごめんね〜。愛ちゃん、ちょっと来ちゃったみたいで。
それよりがんばれ〜♪
(・e・)<雪!キャンドル!二人っきりのイヴが始まったのだ!
(0^〜^0)<さっきはごめんなぁ♪特にのん☆
( ^▽^ )<驚かせてごめんね。これは私達から二人へのクリスマスプレゼント♪』
- 249 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:33
- うちは読んでるうちになんとも言えんような気も血になってきて。
もう、みんなおせっかいや。
ほんとに……ほんとに……ありがとう。
振り返ると、うちの肩越しに手紙を見ていたのんと目が合った。
のんは少し苦笑すると、なにかを言い聞かせるようにゆっくりと頷いた。
- 250 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:34
-
「あいぼん」
のんは座るとすぐに、真剣な眼差しで声を掛けて来る。
「なに?」
「のん、あいぼんに渡したい物があるんだ」
「え?」
「これ……」
そう言いながらのんが差し出したのは、見覚えのある小さな箱。
「開けてみて」
うちがのんに促され箱を開けてみると、ピンクゴールドとホワイトゴールドの
絡み合ったようなデザインの細身のリング。
「このリングの意味……覚えてる?」
「……うん」
「のん……のんの気持ち……なんだ」
うちがリングをつまみあげてみると、内側には
『N TO A』の刻印。
その刻印がだんだん滲んできて。
そしてなんかおかしなってしもうて、うちはくすくす笑い出してもうた。
だって、のんもうちと同じこと考えてたんやもん。
そして、COCONUTSのお姉さん。
お姉さんはみんな知ってて……
そう思うとなんだかうち、笑いがこみ上げてきてしもうてん。
- 251 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:35
-
「……あいぼん?」
のんが不安そうな声を出す。
「ごめん、……これはうちから」
うちは軽く瞳を拭うと、同じ小箱を手渡した。
「!!!」
のんも驚いてるみたい。
そしてしばらくすると、のんもくすくす笑い出した。
「のん達、同じこと考えてたんだ?」
「……うん、そうみたいやね」
うちらは小さく微笑み合った。
- 252 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:36
-
「ぁっ」
うちはのんの手からリングをつまみあげると、のんの左手を取る。
「メリークリスマスのん」
そしてうちはのんの薬指にリングを通す。
「メリークリスマスあいぼん」
のんもうちの手からリングを取ると、うちの薬指に通して
「のん?」
次の瞬間うちはのんの腕の中にいた。
- 253 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:37
-
「あいぼん……大好きだった……ずっと。
これからも……ずっと一緒にいようね」
「……うん」
「あいぼん」
うちが顔を上げると、のんの顔がゆっくり近づいてきて……
うちは瞳を閉じた。
- 254 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:38
-
サンタさん、ありがとうございます。
うちはこの日、大切なものを手に入れることができました。
ずっとずっと、のんと一緒に生きて行きます。
- 255 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:39
-
のん、好きになってくれてありがとう。
うちも大好きよ。
- 256 名前:ぴったりしたいX’MAS! 投稿日:2006/12/24(日) 22:40
-
うちは唇で塞がれた胸の内で、そんなことを思っていた。
- 257 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/24(日) 22:41
- 「ぴったりしたいX’MAS!」終了です。
- 258 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/24(日) 22:42
- イヴに間に合ってよかったなぁって思っています。
- 259 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/24(日) 22:44
- が、日曜日のイヴにせっせと更新している自分がちょっと哀しかったり(苦笑)
みなさん、良いクリスマスを☆
- 260 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/26(火) 22:51
- アイヴォンちょっともらい泣きしたよアイヴォン
更新乙でした
完結だと寂しいけど…晴れてラブラブカップルなデート編とかも読みたいです
- 261 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/27(水) 21:39
- ぱせり様、お疲れ様です。
やばいよ!!!
のんにキュンキュンされまくりです。
2人とも可愛い!!
続編、、、あればうれしいなv
- 262 名前:行く年来る年♪ 投稿日:2006/12/31(日) 20:05
- 「♪お食事とかしてお話しをいっぱいしたい
お正月の予定 計画も立てたいな
LALALA……
全てあなたの事ばかり
好きよ のん 好き♪」
「あいぼん、恥ずかしいってぇ」
へへっ、のん、真っ赤になってもうた。
あっ、こんばんわぁ、
プリティーでキュートな17歳、
のんの彼女!のんの彼女!!のんの彼女!!!加護亜依でぇっす♪
あのなぁ?今はなぁ?うちの部屋で二人でまったりしてんねん。
今日はのん、お泊りってわけやないんだけど、一緒に年越しすることになって、遊びに
来てんねん。
後3時間、年の締めくくりをのんと過ごせるなんてうち、幸せ♪
- 263 名前:行く年来る年♪ 投稿日:2006/12/31(日) 20:06
-
「なぁのん?」
うちはのんの腕を抱えて上目遣いでおねだり。
「あいぼん」
するとのんがそっと顔を近づけて―――
へへへ、ほんま幸せぇ♪
もう、あれから一週間、なんどもチューしてるけど、ほんま幸せな気持ちになれる。
「なぁ、もぅぃっかぃぃ」
そしたらこんどはぎゅってしてくれて―――
「あいぼん、のの?一緒におみかんでも食べない?」
もー!タイミング悪いんやからー!
お姉ちゃんの言葉に驚いてうちらはぱっとはなれた。
「うん、今行く」
「じゃぁ、和室に来てね」
「うん」
まぁいっかぁ、のんとはこれから、いつでもいちゃいちゃできるわけやし、のんと一緒に
おこたでおみかんってのもなんやえぇやん?
- 264 名前:行く年来る年♪ 投稿日:2006/12/31(日) 20:08
-
「おう、いらっしゃいバカップル」
和室に入るなり、よっちゃんが冷やかしてくる。
「それだけはよっちゃんには言われたくないですぅ!」
「そうや、いつもいつもお姉ちゃんとバカップルぶり、めっちゃくそ発揮してるやん?」
「あのなぁ、わたしと梨花ちゃんのはだなぁ」
「なんやの?」
「えっとえぇっと……」
「応えれないんじゃん」
「うっさい!」
「もう、3人ともなに言い争いしてるの?
さぁ、おみかんたべましょ?」
お姉ちゃんがお茶を持って入ってくる。
「だってぇよっちゃんがぁ」
「もう、いちいちひとみちゃんの言うこと気にしないの」
「「は〜い」」
「梨花ちゃん何気に言うことひどくない?」
「そう?」
お姉ちゃんはよっちゃんの不満そうな口調にも動じず、おみかんの筋を取りながら
すまして応えてる。
今まで気付けへんかったけど、こうしてみると、お姉ちゃんがよっちゃんをお尻に
敷いてたりするんかな?
何年か立ったらうちらはどうなってるんやろ?
- 265 名前:行く年来る年♪ 投稿日:2006/12/31(日) 20:11
-
(ぇ?)
そうしてしばらくの間、みんなでテレビを見ながらおみかんを食べていると、打ちは脚に
なんや違和感を感じた。
(え?これって?)
違和感って言うのは、うちの脚に触れてるもの。
最初は誰かの脚に触ってるだけなんかなぁって思ってたら、さけてみても
ついてきて―――
まぁいいかと思ってほかってたら、そのうち、なんや膝の辺りをなで回してきて―――
(絵?のん?のんなん?
だってうちにこんなことするの、のんぐらい……だよね?)
うちがのんを見てみると、テレビを見ながらゲラゲラ笑っていて。
なんやの!?そんなん見ながらうちにそんなエッチないたずらするん!?
なんて思ってるとだんだんその手が太腿の方に上がってきて―――
うちは腹立ったから、思いっきり手の子尾を抓ってやった。
- 266 名前:行く年来る年♪ 投稿日:2006/12/31(日) 20:12
-
「いぃぃぃっつ!!!」
「え?」
うちはのんから視線をはずし、声の方を見る。
「よっちゃん!?」
「え、あいぼん!?」
「よっちゃん最っ低ー!」
うち、お姉ちゃんの彼女のよっちゃんが、お姉ちゃんのいる前で、うちにそんなこと
してきたことがショックで、思わず泣き出してもうた。
「え?なに?あいぼん、ひとみちゃんどうしたの?」
泣きだしたうちを見て、お姉ちゃんがあわてる。
「違うよ!違うんだよ梨花ちゃん!
わたしはあいぼんが梨花ちゃんだと思ったら梨花ちゃんがあいぼんで!」
「なに言ってるか分んないよ!
よっちゃん、またあいぼんになにかしたんでしょ!?」
「のん、またってなんだよ!?
脚触ってみたら梨花ちゃんがあいぼんだったんだよ!」
「なに逆切れしてんだよ!?
よっちゃんが、あいぼんの脚触ったんでしょ!?」
「だから梨花ちゃんがあいぼんいだなあ」
「ひとみちゃん?とりあえず私のお部屋にいきましょうね〜」
「ちょ、ちょちょちょ、だから誤解だって!いてててて」
よっちゃんはお姉ちゃんに耳を引っ張られて連れられて行ってもうた。
- 267 名前:行く年来る年♪ 投稿日:2006/12/31(日) 20:15
-
「あいぼん、だいじょうぶ?」
のんが優しく抱きよせて、うちの涙を拭いてくれた。
「うん、ありがとう。ごめんな、もうだいじょうぶ。
ちょっと驚いちゃっただけやから」
「それにしても吉沢……」
あぁ、のんがまた怖い目してる。
いつもはのんとよっちゃんも仲良しなんやけど……。
どうもうちのことになると、のん、冷静やなくなってもうて……
うち、嬉しいような困ったような……
やっぱりちょっと嬉しいのが勝つかな?
- 268 名前:行く年来る年♪ 投稿日:2006/12/31(日) 20:16
-
「なぁのん、そんなに怒らんといて?
お姉ちゃんと間違えてタだけみたいやし」
「またよっちゃんかばうの?」
「そうやないって……」
「じゃーあいぼんは同じことのんがされたらどうなのさ?」
「それは嫌!」
「でしょ?」
「でもそんなに怒らんといて?
のんだと思ってたうちも悪いんやから」
「え?のんだと思ってたの?」
「うん」
「じゃぁ……のんが同じことしたら抓るんだ?」
え?なんやちょっとへこんでる?
「だってテレビの片手間にそんなことしてるかと思ったら腹立ったんやもん」
「あ、そっか、そっかそっか」
なににやけてるん?
- 269 名前:行く年来る年♪ 投稿日:2006/12/31(日) 20:16
-
「なぁのん、そんなことしてみたいん?」
うちがジト目で聞いてみると
「いやそんなんじゃないよ!ただ彼女に嫌がられたらいやだなぁって!」
「ふぅん?」
「……あいぼんのいじわる」
のん、口尖らせて俯いてもうた。
「へへっ、そんなん言わないの。
あいぼんが腕まくらしてあげるから」
うちが横になり腕を伸ばすと、のんはいそいそと隣に潜り込んで来て、うちの胸に顔を
うずめた。
「のん、機嫌直った?」
うちはのんの髪をなでながら尋ねる。
「うん」
うちの胸からくぐもった幸せそうな声が聞こえる。
うちは嬉しくなって、力いっぱいのんの頭を抱きしめた。
- 270 名前:行く年来る年♪ 投稿日:2006/12/31(日) 20:19
- ―――
「二人とも、そろそろ起きなさぁい。
年越しそばができたわよ」
「「ぅ〜、あっ」」
うちらはお姉ちゃんに起こされ目を覚ますと、お互いの顔を見詰め真っ赤になった。
だって、うちらいつの間にか寝てもうてて、しっかり抱き合って眠ってるところ
お姉ちゃんに見られたんや紋。
これでよっちゃんにまで見られてたらなに言われるか……
「いやぁ、二人とも仲いいなぁ」
っておったんかい!?
「ふぅんっだ!どうせよっちゃんなんて仲直りとか言ってエッチしてたんでしょぉ?」
「あは、あはははは」
ってずぼしかい!?
うち、冗談やったのに。
「ひとみちゃん!?」
「あ、ごめんなさい!」
あらら、よっちゃん、今日のところはお姉ちゃんに頭、上がらんみたい。
これでちょっとはおとなしくなるかな?
よっちゃん、来年は調子乗り過ぎんようにしてな?
- 271 名前:行く年来る年♪ 投稿日:2006/12/31(日) 20:20
-
―――
さて、おそばも食べ終わって、後は年越しを待つばかり。
テレビもそろそろカウントダウンの準備に入って。
「梨花ちゃん」
「ひとみちゃん」
この二人もなんや準備に入ったで?
『それでは5!4!』
テレビの中からカウントダウンが始まると―――
あかん、見てるこっちが恥ずかしなるぐらいのチューしてる。
『3!2!1!』
「あいぼん」
「え?」
うちはのんに抱き寄せられて
「おめでとうございまーっすー!!!」
「…………」
そっとのんの唇が触れた。
「あいぼん、今年もよろしくね」
「うちこそ」
うちらは小さく微笑み合った。
- 272 名前:行く年来る年♪ 投稿日:2006/12/31(日) 20:23
- ―――
「じゃぁひとみちゃん、のののこと、ちゃんと送ってあげてね」
「よっちゃん、のんにへんなことしたら許さんからな」
「はいはい、分ってますって」
「じゃぁあいぼん、明日……もう今日か、10時ごろ来るね」
「うん」
「ひとみちゃんも遅れないでね」
「ふぇ〜い」
12時半を回って、初詣の約束をすると、のんとよっちゃんが帰って行った。
なんや寂しいなぁ。
のんと、もっともっと一緒にいたい。
今年はそうなれるといいな。
うちはそう思いながら、少しの間眠るためにお部屋に戻って行った。
- 273 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/31(日) 20:24
- 年内最後の更新でした。
- 274 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/31(日) 20:35
- レスのお礼です。
実はこのお話、完結にしようかどうか迷ってました。
ここで終わっておく方が綺麗かなと思い増して。
ですが、お二人にいただいたレスにより当初の予定通り続けることになりました。
またこれからもよろしくお願いします。
>>260さん、二人が幸せになれて私も感無量です。(笑)。
これからはラヴラヴで行きます・・・たぶん。
>>261さん、続編、、、ありましたV
これからもキュンキュンしていただけると嬉しいです。
あっ、様付けは恥ずかしいのでぇごじゃいますです、はい。
- 275 名前:ぱせり 投稿日:2006/12/31(日) 20:37
- 今年一年、ここのあいぼんとのん、ならびにぱせりを応援いただきましてありがとうございました。
みなさんのレスにはいつも励まされております。
またよろしければ、来年もぜひお付き合い下さい。
それではみなさん、良いお年を。
- 276 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/01(月) 06:11
- 更新乙&あけおめです。
しばらく新作は読めないかと思っていたので非常に嬉しいです。
今年もぜひあいののをラヴラヴさせちゃって下さい!
- 277 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/03(水) 16:12
- 今年あいぼん復帰って話があるそうですよ!もいっこの方もあって大変でしょうけど更新楽しみにしてるんでがんばってください!
- 278 名前:初詣 投稿日:2007/01/04(木) 21:40
- 「♪ラン ラララララララン
ラン ラララララララン
フォヮァ〜ゥア〜〜〜ラララー♪」
「あいぼんあいぼん、なにそれ?」
「のん、何言ってるん?お正月によくかかるお琴と笛のあの曲やん」
「って分んないって」
「うっさい」
「いてっ」
- 279 名前:初詣 投稿日:2007/01/04(木) 21:41
- 「あ、失礼しました。
気を取り直しまして、
おほん、えぇ、みなさま、新年明けましておめでとうございます。
プリティーキュートな17歳、加護亜依でございます。
昨年中は皆様に応援いただき、無事のんの彼女になることができました。
今年は二人仲よく、いちゃいちゃ、ラヴラヴして皆様に見せ付け茶ったり
しちゃおうかなぁなんて思って下りますので、
今年もなにとぞお付き合いくださいますよう、よろしくお願いします」
「あっ、あいぼんとできるだけ仲良くしてこうと思って増すので、よろしくお願いします」
「のん?できるだけってどう言う意味なん!?」
「だってさ、喧嘩しちゃうこともあるかも知れないじゃん」
「ぅっ、そ、そうかも知れへんけど、こう言う時は喧嘩もせずに仲良くしていきますって
言うのが普通やない!?」
「まぁまぁ、二人ともお正月から喧嘩しないの。
みなさぁん、グッチャァ〜〜〜、あいぼんの美しく優しい姉、梨花でーっす♪
今年はもっと活躍しますのでよろしくお願いしますね〜」
「って活躍するんかい!?」
「正月かっけー、お屠蘇かっけー」
「って、ひとみちゃん!ちゃんと晴れ着着てって言ったでしょ!?
なんではっぴに股引なのよ!?」
「そうやで、みんな晴れ着着てご挨拶って言ったやん」
「そんな堅苦しいかっこ、苦手なんだよ」
「まったく、よっちゃんはしゃぁねぇなぁ」
「って感じではございますが、皆様
「「「今年もよろしくお願いします」」」」
- 280 名前:初詣 投稿日:2007/01/04(木) 21:42
- 「じゃぁ、そろそろ初詣に行きましょっか?」
お姉ちゃんが出かける準備を整えて言う。
「うん、でも、その前に」
「よっちゃん気が餌さんとな」
「そうね」
うちらはいまだに股引姿のよっちゃんに、じりじり詰め寄る。
「お、おい、みんななんだよ?来るなって」
「あかん!」
「そんな恰好じゃ外には出しませんからね」
「一緒に歩くのん達の身にもなれ」
「うわわわ、止めろって、こんな恰好はってあ〜!!!」
- 281 名前:初詣 投稿日:2007/01/04(木) 21:44
- ―――
「ひとみちゃん、かわいいわよ」
「ほんま、よっちゃんも意外と似合うんやな」
「馬子にも衣装ってね」
「おまえらぁ、かってなことばっか言いやがって〜、
後で覚えてろよ?」
「はいはい、後で飴ちゃん買うてあげるから機嫌直してな?」
「イカ焼きとか焼き鳥の方がいい?」
「あ、そっちの方が……って違ぁっう!」
「じゃぁ、ひとみちゃん私はお酒買ってあげるから」
「…………」
へへっ、よっちゃん黙ってもうた。
「さぁさ、行きましょ」
「「はぁ〜い」」
うちらはそれぞれ手を繋いで家を出た。
- 282 名前:初詣 投稿日:2007/01/04(木) 21:45
- ―――
「やっぱ人多いね〜」
「そりゃぁ、お正月やからね」
近くの神社まで来てみると、人がいっぱいで。
小さな神社だから、そんなには多くないけど、屋台とかも出てて賑わってる。
「…………」
って内がのんを見てみると、屋台の焼き蕎麦に視線が釘付けで……
まったくぅ。
「のん、お参りの後にしような?」
「あっ、うん」
もうのんったらぁって思っていると
「よっちゃん、お参りの後にしようね?」
後ろからの声。
ってよっちゃんもかい!?
まったくうちら姉妹はこんなタイプに弱いんやろうか?
- 283 名前:初詣 投稿日:2007/01/04(木) 21:49
- 本殿に到着すると、パンパンと柏手を打ってお祈り。
(のんとずっと仲よくしていられますように。
のんが、健康で幸せであれますように)
「ねぇ、あいぼんはなにお願いした?」
「教えへん」
「なんでさ?」
「だって、願い事言ったらあかんって言うやん?」
「へぇ?そうなの!?」
え?のん、知らへんかったん?
なんかのん、だからかぁっとかぶつぶつ言ってる。
「なぁのん、どうしたん?」
「いやぁ……」
「なんなん?」
なんかのん、言い難そう。
「いや、今までずっとお願いしてきたこと、人にしゃべってたけど、
去年たまたま風邪ひいて喉痛かったからしゃべらなかったら叶ったなぁって思って」
「ふ〜ん、それってなんなん?」
「ぇ?」
「そやから、その願い事」
「んなんいいじゃん」
って、のん、急に足速めて……
お姉ちゃん達とはぐれてもうたやんって、迷子とかになるほどの所でもないから
いいんやけど、
- 284 名前:初詣 投稿日:2007/01/04(木) 21:50
-
「ちょっとぉ、のん」
ん?もしかして
「なぁのん、ひょっとして、お願いして太乗ってあいぼんのこと?」
「……うん」
あかん、なんや嬉しい!
だってずっとうちとこうなることお願いしててくれてんやろ?
「なぁのん、どれくらい前からそうお願いしてたん?」
「いいじゃん、そんなこと」
「えぇ、えぇやん?教えてよぉ」
「いやだ」
のん、真っ赤になって口、尖らせてもうた。
あんまりいじめてもなんやから、このぐらいにしとこ。
ほんまはちゃんと聞きたいんやけどな。
「あはは、ごめんなぁ、じゃぁ、焼き蕎麦食べにいこ?
うち、奢っってあげるから」
「チョコバナナも」
のんがぶっきらぼうに応える。
「はいはい」
もう、のんったらかわいいんやから。
- 285 名前:初詣 投稿日:2007/01/04(木) 21:53
-
「あぁっいぼんさんっ☆」
「ぅぉー」
のんと二人焼き蕎麦を食べてると後ろからの衝撃。
「小春ちゃぁん!?」
「あいぼんさん、あけましておめでとうございまぁっす☆」
「うん、おめでとう。
って苦しいんやけど?」
「あぁ、いいなっいいなっ、おいしそう」
うちの抗議は無視して、後ろから抱きついたまま、あ〜んってしてて
「はいはい」
うちは少し焼き蕎麦を分けてあげる。
「えへへ、ぉぃしぃ〜」
「ほんま?」
「うんっ☆」
ほんま小春ちゃんはかわいいなぁ、こんな妹、欲しいわぁって
- 286 名前:初詣 投稿日:2007/01/04(木) 21:53
-
「……の、のん?」
うちがのんを見てみると、なんや怖い目してこっち見てて
「のんさぁんっ☆」
でもそんなん気にせず今度は小春ちゃん、のんに抱きついてって
「あけましておめでとうございまぁっすぅ☆」
「あ、あけましておめでとう」
さすがののんもすっかり小春ちゃんのペースに飲まれてる。
「のんさん、これから、よろしくおねがいしますねっ☆」
「あ……うん」
「これからはのんさんも小春のお姉ちゃんみたいなものですから」
「お姉ちゃん?」
「はいっ、あいぼんさんの彼女さんは、小春のお姉ちゃんといっしょですぅ☆」
「ははは、そうだね、よろしくね」
「って、小春ちゃんそんなんどこから聞いたん?」
「え、えっとぉ〜、ないしょ☆」
って言うと小春ちゃんはてけてけとかけだして行ってもうた。
え?うちらが付き合いだしたん知ってるのって、まだクリスマスパーティーの
メンバーぐらいなんやけど、どっから情報漏れてるん?
「あいぼん、小春ちゃんってかわいいね」
うちがそんなこと考えてるとのんが急に言う。
「なんやの?さっきまであんなに妬いとったくせにぃ」
「いいのっ、だってのんはお姉ちゃんだし」
「はいはい」
のんが小春ちゃんに妬かなくなってくれるのはありがたいから、まっ、いっかぁ。
- 287 名前:ぱせり 投稿日:2007/01/04(木) 21:55
- 中途半端ですが、更新終了です。
- 288 名前:ぱせり 投稿日:2007/01/04(木) 21:56
- 三が日中には更新しようと思っていたのですが、書いているうちに長くなり間に合いませんでした(苦笑)
続きは2,3日中にでも。
- 289 名前:ぱせり 投稿日:2007/01/04(木) 22:01
- レスのお礼です。
>>276さん、あけおめです。
そう言っていただけて私も嬉しいです。
本人からの挨拶の通りたぶんラヴラヴで行くと思いますので楽しみにしてやってください。
>>277さん、その日が本当に待ち遠しいですね。
私も両方がんばって書いて行きますので、どうぞ暖かく見守ってやってください。
- 290 名前:初詣 投稿日:2007/01/07(日) 22:33
-
「のんちゃぁん、あいぼーん」
こんどは二人でチョコバナナを食べていると、がきさんと愛ちゃんの声。
「「のんちゃん、あいぼん、あけおめー、ことよろー」」
「「あけおめー、ことよろー」」
「なぁなぁ、あいぼん」
挨拶を交わすとすぐ、愛ちゃんがすすっと寄ってきて耳打ち。
「なに?」
「のんちゃんとはもうエッチした?」
「!!!」
うちは固まった。
「なぁどうだった?
気持ちよかった?痛なかった?」
うぅん、愛ちゃん、こういう話し好きなんやろか?
そりゃぁ、うちかて嫌いか言われたらそうでもないけど、やっぱりこう言う話は
修学旅行とか、誰かんちにお泊りした夜なんかに話しするんがいいと思うんやけど……?
ここ、お人がウジャウジャやし、だいたい、お正月の神社でこう言う話ってバチ、
あたらへん?
「なぁ、あいぼん」
「まだしてへん!」
うちは小さな声で叫ぶ。
「なぁんや」
愛ちゃんはそう言うと、のんと話してるがきさんの所に行って耳打ち。
「愛ちゃぁん!?お正月早々なぁに聞いてんの!?」
「だってぇ、がきさんも気にしてたやん?」
「いやそうだけどねっ」
ってがきさんもかい!?「あいぼん、なんの話し?」
「さぁ?」
うちはとぼけて
「いこ?」
まだなにか言い合いを続けている二人と分れた。
- 291 名前:初詣 投稿日:2007/01/07(日) 22:35
-
「ああいぼんっ、のぉんちゃんっ」
「「あけおめー」」
ぶらぶら屋台を見ながら歩いていると、今度はあさ美ちゃんとまこっちゃんに遭遇。
「二人っきりって珍しくない?」
「そりゃぁね、のんちゃんがあいぼん取っちゃうからしょうがなくねぇ」
あさ美ちゃんがニヤニヤしながらのんに応える。
「そうそう、しかたなくね〜」
まこっちゃんもにやにやしてるけど、たぶん違う理由なんやろうな。
でも、そう言えばあさ美ちゃん、ごっちんとはどうなってんやろ?
あの後、なんども聞こうしてんやけど、なんやごまかされ続けてんねん。
「ねぇねぇ、あいぼん、おみくじどうだった?」
そうまこっちゃんに聞かれてはっとした。
「そうや!?のん、うちらおみくじしてへん!」
「あ、そうじゃん!」
「私ね〜、大吉だったんだぁ」
「だめじゃん、おみくじわすれちゃぁ、行って来たら?」
「ほら見て?『待ち人来る」って、今年恋人できるんだって』
「じゃぁいこ、あいぼん」
「うん、じゃぁまたねあさ美ちゃん」
「うん、またね」
「って私の話しきいてよぉ〜!!!」
うちらは二人と分れて、また本殿の方へと戻っていった。
- 292 名前:初詣 投稿日:2007/01/07(日) 22:37
-
「「すみませぇん、おみくじくだ」」
「はいはい、二人分ね」
「「ひっ」」
「だからそんなに驚かなくてもいいじゃん」
いや、だって
「か、かおりん、なんで巫女さんなんですか?」
「バイトに決まってんじゃん」
「バイトって、あのお店は?」
って尋ねると、ふふっと笑って髪をかき上げ
「かおは、さすらいのアルバイターなの」
ってかっこつけてはるけど、フリーターってことですか。
「それより200円ね」
「あっはい」
うちらはお金を払うとおみくじの筒を抱えてガシャガシャ振る。
「何番だった?」
「えぇっと、16番と22番です」
「はいはい、これね」
うちらはおみくじを受け取ると、かおりんに挨拶をして、その場を離れようとして
「あっ、のん、お守り買ってかへん?」
うちはのんに話しかける。
「お守り?」
「うん、のんにあげたいねん」
「のんに?」
「うん、怪我とかせにょうに」
うちらは隣にあるお守りコーナーへ向かった。
- 293 名前:初詣 投稿日:2007/01/07(日) 22:39
-
うぅん、でも一応受験やから、合格祈願とかの方がえぇんかな?
でもなぁ、やっぱり交通安全とかあげたい。
うちが一生懸命選んでいると、
「決まったかしら?」
「!!!」
顔を上げて驚いた。
こ、この人って。
「あんたなら水難のお守りとかの方がいいんじゃないかしら?」
って言ってウィンク。
「おえ」
うちはまたもや軽い吐き気を模様してもうて。
「おえってなによ!?」
「あっ、おばちゃん、ごめんなさい!」
「おばちゃんってなによ!?」
「あー!、キッチンズバーガーの!」
「あら?あんたはこの前おばちゃん呼ばわりシタガキね?
まったく、二人揃って失礼ね!」
「「ごめんなさい」」
うちらは、巫女姿のくせに青筋立てて切れまくっているおばちゃんに謝った。
「あのぉ……」
「なによ?」
うちが疑問に思っていることを聞こうとすると、ギロっと睨まれる。
「あのぉ……まさか海でかおりんとライフセーバーやってた人ですか?」
「そうよ。あの時のあんた達の光景は目にしっかり焼きついているわ」
「「ははは、あのぉ」」
「気にしなくていいわ、他言はするつもりはないから」
ってまたウィンク。
1日に回はきついって……
と思ったけど、うちらは耐えた。
だって、これ以上機嫌損ねるのはまずいと思ったから。
「じゃぁ、これください」
「あっ、のんも」
「え?のんも買うん?」
「うん、のんはあいぼんに」
「あらあら、見せ付けてくれるわね」
っていいながらおばちゃんがそれぞれ手渡してくれる。
「「ありがとうございましたぁ」」
「ほほっ、あんた達にはまたどこかで会える気がするわ」
あ、あかん、今振り返ったらあかん。
きっとおばちゃん……
3度目はぜったい耐えれへん。
- 294 名前:初詣 投稿日:2007/01/07(日) 22:41
-
「あいぼん、おみくじなんだった?」
うちらは木陰でおみくじを見せ合う。
「うち、大吉やった。
のんは?」
「のんもだよ。今年一年、いい年になりそうだね」
「んあ、二人ともいいねぇ」
「「ごっちん!!!」」
「んあ、あけおめぇ、ことよろぉ」
「あけおめー、ことよろー、って言うかごっちんいつからいたの?」
「あは」
いや、だからなに照れてるん?
「いいねぇってごっちんはなんやったん?」
「あは、大凶だよ」
「それはまた……」
「なんと言うか……」
「んぁ、辻ちゃんがあいぼんとっちゃうからねぇ、
まぁそれだけでごとーにとっては大凶なのであります」
「「え?」」
「ごっちん、あいぼんのこと好きだったの?」
のんが少し警戒するように尋ねる。
「あは、だってさぁ、ごとーの理想だったんだもん」
「え?あいぼんが!?」
「そうだよ。あいぼんのが」
って笑うと、
「あは、またね〜」
と手を振ってごっちんは帰って行った。
「そっかぁ、ごっちん、あいぼんのこと……」
のん、なんか考え込んでるけど、気にせん方がいいと思うんやけど……
だってごっちん『あいぼんの』って言ってたし。
どうせまた胸のことやで?
でもな、のんには教えてあげずにちょっといじわる。
「のん、なぁに?うちがモテモテで心配なん?」
「心配って言うかさぁ……」
「言うか?」
「……なんか今日のあいぼんいじわるじゃない?」
へへっ、いじわるしすぎたかな?
「ごめんな?」
うちはのんの腕を抱え込んで、
「のん、うちはのん一筋やで?」
って言ってほっぺにチュってした。
- 295 名前:初詣 投稿日:2007/01/07(日) 22:45
-
「あらあら、最近の若い子は大胆だねぇ、なんまらびっくりしたっしょ?」
「Oh、なつみサンアメリカではこれぐらい挨拶ですよ?」
「「あっ……」」
うちらは聞き覚えのある声に振り返って真っ赤になった。
「いやぁ、梨花ちゃんから聞いてたけど、ほんとにラヴラヴだねぇ」
「二人ともお似合いですよぉ」
「「あはは、ありがとう、なっちゃん、ミカちゃん」」
うぅん、知り合いにこんなとこ見られるんはめっちゃ恥ずかしい。
「あいぼん、シャメ撮ってあげるからもう一回のんにチューするっしょ?」
「なっちゃん!」
「あははは加護ちゃん耳まで真っ赤だよ」
「もー、ミカちゃんまでー!」
「「きゃははは」」
二人ともうちらをからかって楽しそうに笑ってる。
もー、そんなことばかり言ってると、ケーキ食べに行ってあげへんからねっ!
「でもさ、ほんとによかったよ」
「え?なにが?」
「いやぁ、お互い勇気出さないし、出したと思ったら空回りだしね」
って言ってなっちゃんはのんに微笑みかける。
「のん、なんのことなん?」
「あら、あいぼん、まだ気付いてなかったのかい?」
「え?なにが?」
ってうちさっきから聞いてばっかりや。
「ねぇのん、サンタさんになに、お願いするぅ?」
って行き成りなっちゃんが胸の前で指を組んでキラキラお目目で、アニメ声。
まさかこれってうち?
それじゃぁお姉ちゃんやん?
「のんが欲しいのは、亜依さ」
そんなん思ってると、ミカちゃんがまるで宝塚のようなオーヴァーリアクションで応える。
え?え?あの時のそう言う意味やったん?
「うわわわわ、二人ともなに言ってんのさ!!!」
のんがあわてて二人に飛びかかって行く。
うちはなんや胸がジーンとしちゃって、ぼんやりとその光景を眺めていた。
- 296 名前:初詣 投稿日:2007/01/07(日) 22:46
- ―――
「なぁのん、さっきのほんまやったん?」
神社からの帰り道、うちはのんに尋ねてみた。
「なんのこと?」
「さっき、なっちゃんが言ってたこと」
「……そうだよ」
うちは思わず組んだ腕をぎゅって抱きしめた。
「どうしたの?」
「……嬉しくって」
「のんもだよ。あの時さ、勇気振り絞ったのにあんな風に言われたから
遠まわしに嫌いだって言われたんかと思ったもん」
そう言いながらのんがうちの肩に手を回した。
「ごめんな?うち、あの時……」
「謝ることじゃないじゃん、今はこうやっていっしょにいるんだもん」
「……うん」
うちらはそのまま家まで黙って歩いた。
- 297 名前:初詣 投稿日:2007/01/07(日) 22:47
-
「じゃぁ……またね」
家の前まで来て、のんとお分れ。
また明日会えるけど、やっぱり寂しい。
のんともっとずっといっしょにいたい。
「……うん……後で電話していい?」
「うん、待ってる」
そう言うとのんはゆっくりうちを抱き寄せて―――
神様、今年一年、のんと二人、幸せに暮らせますように。
- 298 名前:ぱせり 投稿日:2007/01/07(日) 22:51
- 「初詣」終了です。
- 299 名前:ぱせり 投稿日:2007/01/07(日) 22:56
- 今回はお正月スペシャルと言うことで、今まで出てきた娘。メンバー總登場でした。
前回本人達に挨拶させておいて自分が挨拶するの忘れておりました。
みなさん、今年もあいののを中心にいろいろ書いて行きたいと思って
おりますので、どうぞよろしくお願いします。
駄文ではありますが、よろしければお付き合い下さいませ。
ぱせり
- 300 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/09(火) 16:53
- 大量更新されてる!作者さんあけましておめでとうございます
今年も更新楽しみにしています
- 301 名前:風邪をひいちゃいました 投稿日:2007/01/21(日) 22:20
- 「♪風邪をひいちゃいました ひいちゃった
風邪をひいちゃいました ひいちゃっ♪
ゴホッゴホッ」
あ、ごめんなさい、プリティーキュートな17歳、あいぼんです。
って言いますかぁ、あほな替え歌歌ってる場合やない。
せっかくののんとデートなのに頭、くらくらすんねん。
- 302 名前:風邪をひいちゃいました 投稿日:2007/01/21(日) 22:22
-
「えぇっと」
うちはがんばってクローゼットの前に立って、
うぅん、今日はなんや寒いからババシャツ二枚重ねて、タートルネックのニットと……
デニムにしとこうかな?
うちは着替え終えると、鏡の前のボトルをとろうとして
「ぁっ」
ふらついて壁に手、ついてもうた。
うぅん、も〜!あいぼんしっかりしなさい!せっかくののんとのデートなんやで?
でもなんで今日、こんなに寒いんやろ?
めっちゃ背中、ぞくぞくする。
うちがそう思い、壁から手を離し、起き上がると、
- 303 名前:風邪をひいちゃいました 投稿日:2007/01/21(日) 22:24
-
「あぁいぼんっ」
「あ、お姉ちゃん」
「今日もののとおでかけ……ってあいぼんどうしたの!?
顔色真っ青じゃない!?」
うちが振り返るとお姉ちゃんは超音波を放つ。
もう、頭余計くらくらするから、今日はその声やめて欲しいのに……。
「だいじょうぶ、なんでもあれへん」
「なんでもないわけないでしょ!?」
そう言うと、お姉ちゃんはうちのおでこに手を当てる。
「なにが『なんでもない』よ!?すごい熱じゃない!?」
「もう、だいじょうぶやから」
うちは邪魔臭そうに手を払いのける。
「なに言ってるの!今日はおでかけ禁止!
今日はもう寝なさい!」
「いや!だってのんとデートなんやもん」
うちがそう言うと、お姉ちゃんは呆れた様にため息を吐いて
「あいぼん、子供じゃないんだからぁ」
「だってぇ」
うちは唇を尖らせる。
「だってじゃありません!
ののにはお姉ちゃんから電話しておきます!」
そう言うとお姉ちゃんは、テーブルの上に置いといたうちのケイタイを手にとる。
- 304 名前:風邪をひいちゃいました 投稿日:2007/01/21(日) 22:26
-
「分ったぁ……自分で電話するから」
うちはお姉ちゃんに手渡されたケイタイを開くと
「はぁ〜……」
ため息を一つ吐いて、のんに電話する。
『あいぼん、どうした?』
「あのな?……えっと……」
うちがためらっていると、お姉ちゃんが手を伸ばしてケイタイを渡せって言ってくる。
うちはそれに観念して、のんに事情を説明し始めた。
「あのな?……うち、風邪……ひいてもうてん」
『ほんと!?だいじょうぶ?』
「うん、だから今日……」
『うん、分った』
「ごめんな?」
『んなんいいよ。それよりのん、お世話しにいこうか?』
「うぅん、えぇよ。風邪移るとあかんし」
『そう……?』
「うん」
『じゃぁ……ゆっくり休むんだよ?』
「うん、ごめんな?」
『だからいいって』
「うん、おやすみ」
『おやすみ』
「はぁ〜」
うちは電話を切るとまたため息。
「そんなに落ち込まないの。
もうののとはいつでもデートできるでしょ?」
「そうやけど……」
「ほらぁ、そんな顔しない」
お姉ちゃんはそう言うとうちの頭をくしゃくしゃにする。
「……うん」
「ほら、パジャマに着替えてもう寝なさい」
「はぁい」
うちはお姉ちゃんの言うことにおとなしくしたがい、パジャマに着替えてベットに入る。
「なにか欲しい物とかある?」
「うぅん、いぃ」
「そう、じゃぁまた後で様子見に来るからね?なにかあったらすぐ呼ぶのよ?」
「お姉ちゃん?」
うちはそう言って部屋を出て行こうとするお姉ちゃんに声を掛ける。
「なぁに?」
「ありがとう」
「うん」
お姉ちゃんは少し笑って部屋を出て行った。
- 305 名前:風邪をひいちゃいました 投稿日:2007/01/21(日) 22:27
- ―――
「うぅん」
「あいぼん、起きちゃった?」
「ぇ?なんで?」
「なんか飲む?」
うちが目を覚ますと、なぜかそこには、のんがいた。
ちょうど交換しているところだったのか、もう既に溶けてしまった凍りまくらと、新しい
氷まくらとを、それぞれ両手に持っている。
「のん?なんで?」
「ん?梨花ちゃんに呼ばれたんだよ?」
「お姉ちゃんに?」
「うん、なんかバイト先の子が風邪で休んじゃったとかで、
急に出なきゃいけなくなったからあいぼんの看病してって」
「そ〜……」
「やっぱりのんもあいぼんに合いたかったしさ、だから来ちゃった」
「……ありがとう」
「うん」
そう言いながらのんはグラスにスポーツドリンクを注ぐと
「喉渇いてるでしょ?」
って言って手渡してくれる。
「ありがとう」
「うん、それよりさ、あいぼん、お薬飲んだ?」
「うぅん」
「だめじゃん!じゃぁお薬飲まないと。
あっ、それより先になにか食べなきゃいけないか」
「うぅん、いぃ」
うちは力なく応える。
「なんで?」
「食欲ない」
「何言ってるの?こういう時こそちゃんと食べないと」
「……でも」
「のんがなんか作って来てあげるから」
「でもぉ……」
「じゃぁなにかい?のんの料理は食べれないって言うのかい?」
「いや、そうやないけど」
「なら決定!」
そう言うと、のんはうちをベットに押し込んで、
「なんかあったら呼ぶんだよ?」
って言って下に下りて言った。
- 306 名前:風邪をひいちゃいました 投稿日:2007/01/21(日) 22:30
- ―――
「あいぼん」
「のん?」
うちはのんに声を掛けられ目を覚ます。
「もうすぐご飯できるよ。起きれる?」
「うん」
うちはゆっくりベットの上に上半身を起こす。
「ちょっと顔色よくなったかな?
気分はどう?」
「うん、ちょっとよくなった」
「そっかぁ。
あれ?あいぼん、結構汗かいてるね?着替えたほうがよくない?」
「うん、そうする」
「着替えどこ?」
「クローゼットの中」
「分った」
うちが応えると、のんはクローゼットへ向かう。
「あ、待ってのん」
しばらくしてうちがはっとして止めたけど、
「え?なにあいぼん」
振り返ったのんの腕には、もう着替え一式とタオルが抱え込まれていて
「なんでもない」
うちは抱え込まれているその一番上に乗せられた物を見て、恥ずかしなって俯いた。
「はい、あいぼん早く着替えて」
そう言ってのん、着替え渡してくれるんやけど……
なんでのん、こんなとこには気が回らないんやろう?
寄りに寄ってこんなん、一番上に置くやなんて……。
「ねぇあいぼん、早く着替えたほうがいいよ」
うん、そうやけどね……
のん、こっちじ〜っと見てるんやもん。
「のん、後ろ向いてて」
「なんで?」
なんでって?
「早く」
「は〜い」
ってなんでのん、ちょっと残念そうなん?
うちはのんが後ろを向いたのを確認すると、手早くパジャマを脱いで汗を拭く。
「でもさぁ、あいぼん、かわいいのばっかり持ってるね?」
後ろ向いたままののんが、ふいに話しかけてくる。
「え?なにが?」
「それでよかったかな?
あいぼん、小さいのばっかりでさ、あんまりあったかそうなのなかったから
どれにしようか迷っちゃって」
「…………」
うちは今まさに履こうと、手にしたその一番上に乗っていた物を握り締め、耳まで
真っ赤になった。
「のんのアホ!!!」
そして、叫ぶと同時にいっぱい咳き込んでしもうて
「あいぼんだいじょうぶ!?」
「見たらあかん!」
振り向きそうになるのんにまた叫ぶ。
「あ、ぼめん……だいじょうぶ?」
「うん」
うちはいっぱい咳き込んだ後、なんとか着替え終わってから憮然と応えた。
- 307 名前:風邪をひいちゃいました 投稿日:2007/01/21(日) 22:31
-
「ごめんねあいぼん、のんさぁ……なるべくあったかいのと思って……
ほら、腰冷やさないほうがいいって言うし……さぁ」
のんなりの気使いは分ったけど、それでもやっぱり恥ずかしいし……
さっきの視線を思い出すとなんや信用し切れへん所もあって。
「うん、もうえぇよ」
うちは俯きながら応えた。
「あいぼん、じゃぁ脱いだの貸して?」
するとのんは立ち上がって手を差し出す。
「いや」
うちはあわてて脱いだ服を抱え込む。
「洗わないとだめじゃん」
「いや」
「なんで?」
「だってぇ」
だって、のん……
「だって?」
「だってのん……パンツ……見るもん」
「そ、そんなん見るわけないじゃん」
のんは真っ赤になってあわてて応える。
「ほんまに……パンツ……見ん?」
「見ないって」
「ほんま?」
「ほんとだって、どれだけのん、エッチなんだよ?」
「ほんまに?」
「洗濯機に放り込んでくるだけだからさ」
そう言うのんに
「ほんまに見んといてね」
ってねんを押してパジャマを手渡すと、のんは
「そんなにのん、信用ないんかなぁ」
とかぶつぶつ言いながら部屋を後にした。
まったくぅ、のん、エッチな目で見てたり、時々エッチないたずらしてきたりするん、
自覚ないんやろうか?
- 308 名前:風邪をひいちゃいました 投稿日:2007/01/21(日) 22:33
- ―――
「どぉっこいぃっしょっと」
しばらくするとのんは大きな土鍋を載せたトレイを抱えて戻って来た。
「あいぼん、ご飯できたよ」
「ありがとう」
「はい、のん特性の雑炊だよ」
「ありがとう。
でもいっぱい作ったんやね?」
うちはのんからお茶碗を受け取りながら尋ねる。
「だってあいぼんいっぱい食べないと」
「うん」
「それにのんも一緒に食べようかなって思ってさ。」
そう言うとのんは自分の分もよそって、向かい合わせに座る。
「じゃぁ、いただき増す」
うちは、のんの作ってくれた雑炊を救うとふうふうして一口頬張る。
「どう?」
「うん、おいしい」
「よかったぁ」
のんは嬉しそうに言うと、自分も勢い良く食べて
「ぅむ〜」
口を押えて蹲る。
「どうしたん?」
「……熱かったぁ」
「もう、のんったらぁ」
うちは少し笑った。
「お?元気出てきたね?」
「うん」
「お代わりは?」
「うん、食べる」
うちが言うと、のんがまたよそってくれる。
- 309 名前:風邪をひいちゃいました 投稿日:2007/01/21(日) 22:36
-
「よかった、いっぱい食べれたね」
しばらくすると、あれだけあった雑炊はすっかり空っぽになっていた。
「のんの雑炊、おいしかったもん」
そう言うとのんは照れ臭そうにへへっって笑って、
「そう言えばさ、のんの料理食べるの初めてだよね?」
「うん、のんはうちの食べてばかりやけどね?」
「はははそれを言わないでよ」
「また作ってな?」
「うん、機会があればね」
もう、のんったらぁ、あんまり作る気ないでしょ?
「さぁって、ご飯も食べたし、お薬飲まないとね」
ご飯を食べ終えるとのんはお薬とお水を手渡してくれる。
「飲まないとだめぇ?」
「なあに子供みたいなこと言ってるの?」
うちが上目遣いで尋ねると、のんはちょっと怒ったふりで応える。
「はぁい」
うちは渋々お薬をお水で流し込む。
「さぁ、お布団に戻りましょうね?」
なんかのん、妙に楽しそう。
「あ、シーツも代えた方がいいかな?
シーツの代えある?」
「うん、クローゼットの奥に」
「オッケー」
のんは新しいシーツをとってきて、鼻歌混じりにベットメイキングを終えると、
うちをベットに寝かせる。
「じゃぁのん、ちょっと片付けしてくるからね?」
のんはうちに布団をかけると、土鍋の乗ったトレイや、シーツを抱えて出て行った。
「ありがとう」
うちはそれを見送ると、新しいシーツの心地よさと、お薬が効いて来たのとで
うとうとし始めた。
- 310 名前:風邪をひいちゃいました 投稿日:2007/01/21(日) 22:39
- ―――
うちがそうしてうとうとしていると、いつの間にかのんが戻って来ていて、優しく髪を
なでてくれていた。
なんかそれはうちの心をすごく落ち着かせてくれる。
うちは目を閉じたまま布団の中から手を伸ばし、のんの開いている方の手を探す。
するとのんはうちの手をとって、布団の中に戻すと優しく握りなおしてくれる。
「のん、大好き」
うちが呟くと、のんの髪の香りが近づいてきて、柔らかなものが唇に触れた。
「のん?風邪、移っちゃうよ?」
「だいじょうぶ。
そうなったら今度はあいぼんに看病してもらうから」
ってちょっと笑うと、のんはうちの隣に潜り込んできて、うちを抱きしめる。
「のん?」
「のんも眠くなっちゃった」
のんは耳元で囁くとうちの頭を胸に抱き寄せる。
うちもゆっくりのんの背中に手を回した。
「おやすみあいぼん」
うちはのんの暖かさに包まれて、ゆっくりと優しい眠りへと落ちて行った。
- 311 名前:風邪をひいちゃいました 投稿日:2007/01/21(日) 22:40
-
のん、今日はいろいろありがとう。
元気になったらまたいっぱいおでかけしような?
- 312 名前:ぱせり 投稿日:2007/01/21(日) 22:41
- 更新終了です。
- 313 名前:ぱせり 投稿日:2007/01/21(日) 22:49
- レスのお礼です。
>>300さん、今年もよろしくお願いします。
そして300GETおめです。
特に賞品などは考えておりませんでしたが、
二人にこんなデートして欲しいとか、
このメンバーおもっと出して欲しいとかありましたらお聞かせ下さい。
3月以降にご希望にお応えできるようにしたいと思います。
- 314 名前:ぱせり 投稿日:2007/01/21(日) 22:50
- それでは次回更新は2月上旬の予定です。
そうです、その日の前後です♪
- 315 名前:300 投稿日:2007/02/03(土) 23:59
- 今回の二人も可愛かったです。室内デート(?)もいいですねえ
リクエストを聞いてくださるということで、今度はののさんの部屋に行くあいぼんとか・・・
二人とも妙な期待で空回りしそうですがw余裕があれば検討してやって下さい
- 316 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:33
- 「♪My Happy Birthday Comes
ついにくるわ 夢に描いていた 充実の
My Happy Birthday Comes♪」
はぁ〜い、プリティーでキュートな18歳、あいぼんやで?
え?17歳やないんかって?
実はうち、今日お誕生日やねん。
へへっ、今日はのんが誕生日お祝いしてくれるんやて。
だからな、学校の帰りにお買い物とお食事すんねん。
楽しみぃ♪
- 317 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:35
- さぁってと、とりあえずは学校いく準備しなくっちゃ?
うちはクローゼットから制服を引っ張り出して……突然昨夜のこと思い出して手を止めた。
- 318 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:36
- ―――
「あ〜いぼん」
「お姉ちゃん?どうしたん?」
昨夜、うちが眠ろうとしていると、突然お姉ちゃんが部屋に入ってきた。
「あいぼん、明日ののとデートなんでしょ?」
「うん」
「じゃぁ、ちょっと早いけど、これ、お誕生日プレゼント。
明日着ていって♪」
そう言ってお姉ちゃんは小さな包みを手渡してくれた。
「ありがとう」
「ほら、開けてみて?」
「うん♪」
うちは、なにくれたんやろうと思って、わくわくしながら包み、開けたんやけど……
「…………」
「どう?」
「…………」
どう?言われても、うち、どうしたら良いか分からんくって、固まってもうた。
- 319 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:37
-
お姉ちゃんにもらった包みの中から出てきたのは、下着のセットで。
まぁ、ブラはえぇで?ちょっと大人っぽいって感じなだけやし。
だけどな、パンツが……
なんて言うか、ちっちゃくって細くって……
あっ、横で結ぶんや。ってそうじゃなくって
「なぁお姉ちゃん、これどうするん?」
「どうするって履くに決まってるじゃない?」
「こんなの履けるわけないやん!」
「なぁに言ってるの?もう付き合い出して1ヵ月半、そして、お誕生日。
明日がX DAYに決まってるじゃない?」
「そんな!」
「そして、そんな日は勝負下着で望まなくっちゃぁ」
「…………」
「いやぁ、あいぼんもとうとう大人になるのねぇ」
お姉ちゃん、胸の前で指組んで、遠くの方見てるけど……
「でも!そうかも知れないけどぉ!」
「そうかもしれないって、やっぱりあいぼんも期待してるんだぁ?」
お姉ちゃんは楽しそうに尋ね返す。
「そんなんやなくって!
こんなエッチなの!」
「えぇ?のの、喜ぶと思うけどなぁ?」
「そんな?」
「まぁ、いいわ、明日までよく考えなさい。
あいぼんにとって大切な日なんだから」
そう言ってお姉ちゃんは笑顔で部屋を出て行った。
- 320 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:38
- ―――
「大切な……日……」
うちはそっと昨日お姉ちゃんにもらった包みを開いてみた。
これ着たらほんまにのん、喜んでくれるんかなぁ?
うぅん、でもちょっと待って!
そんなん、エッチするかどうか分からへんやん!
でも……もしすることになるんやったらやっぱり……
うちはしばらく迷ってから、結局その下着を着け、制服を着ると、急いで家を出た。
- 321 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:39
- ―――
「あいぼん、待った?」
「うぅん、だいじょうぶ」
授業後、うちが校門で待っていると、すぐにのんはやって来た。
「じゃぁいこっか?」
「うん♪」
うちはのんの腕を抱きしめて歩き始める。
- 322 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:40
- 「ねぇ、あいぼん、プレゼントなにが欲しい?」
「えぇ?うぅん……うち、なんでもいい」
「なんでもいいじゃ困るんだけどなぁ。
最初の誕生日プレゼントだし、ずっと大切にして欲しいから
あいぼんの欲しい物がいいと思ったんだけど……」
「え〜?」
のんの言うことも分かるからうちは少し考えてみる。
「ねぇあいぼん、なにがいい?
なんでもお願い聞くからさぁ?」
うぅん、そんなにせっつかれても困るんやけど、
「ねぇねぇあいぼん」
あっそうや。
- 323 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:42
- 「なぁのん、じゃぁこれからは亜依って呼んで?」
「えー!?」
「なんでそんなに驚くん?」
「え、だっていまさらそんな」
「だってみんなと同じように『あいぼん』じゃなんか特別って感じしないんやもん」
「え?……でもさ」
「お願い聞いてくれるんちゃうの?」
うちが寂しそうに尋ねると、のんはほんとに困った顔をして、口をもごもごさせている。
ちょっとかわいそうやけど、そんなのんにうちはだめ押し。
「うち、のんにとって特別やないん?
……うちはのんのこと大好きやのに……」
そう言うとのんは観念したようにため息を吐くと、
「分かったよ、のんの負け」
「ほんま?」
「うん、これからはちゃんと亜依ちゃんって呼ぶよ」
「えぇ?」
うちは頬を膨らませる。
「え?なに?」
「亜依って呼び捨てにしてくれへんの?」
「だって、なんか呼び捨てってさぁ」
「だってそれじゃぁ愛ちゃんと変わらんやん?」
「そんなことないよ!
あいぼん呼ぶ時の『亜依ちゃん』ってのは愛情を込めて呼ぶんだもん!」
のんはなんか真っ赤になりながら叫ぶ。
分け分からん理屈ではあるんやけど、なんかそんなのんがかわいくって、
そして言ってくれたことも嬉しくって、うちは抱きしめたのんの腕をぎゅってする。
- 324 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:43
-
「でもさ、それはそれとして、他に欲しい物ないの?」
「うぅん、じゃぁ、のん、選んで?」
「え?」
「のんに選んで欲しい」
「うぅん、分かった」
のんはそう言うと、うちをぐんぐん引っ張って行った。
- 325 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:45
- ―――
「え?ここ?」
うちが連れてこられたのはあの『COCONUTS』で。
「嫌だった?」
いや、嫌なわけやないけど
「のん、だって高いやん?」
うちは小声で言うんやけど、のんはかまわず入っていく。
「いらっしゃいませ」
うちらがお店に入ると、あの綺麗な店員さんが嬉しそうに出迎えてくれる。
「お二人ともよくお似合いですね」
店員さんはうちらの手元を見て嬉しそうに言ってくれる。
うぅん、ペアリングのこと言ってくれてはるんやろうけど、なんや、うちらのこと言って
くれてるみたいでちょっと恥ずかしい。
「へへへ、亜依ちゃんにクリスマスにもらったんです。
って絢香さん、知ってたんでしょ?」
のんのツッコミに店員さんはふんわり微笑む。
って店員さん絢香さんって言うんや。
のん、いつの間に名前まで聞いてんやろ?
なんか楽しそうに話してるし。
もー、のんは綺麗な人に弱いんやからぁ。
- 326 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:46
- 「きょうは何かお探しですか?」
「亜依ちゃん、今日誕生日なんでプレゼントを探しに来たんです」
「あら、そうなんですか?おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
うぅん、でも絢香さんやっぱり笑顔とかも素敵で。
なんやうち負けた気分。
「こちらは2月の誕生石のものになりますけどいかがですか?」
絢香さんが見せてくれたのは、アメジストがついたアクセサリー。
ペンダントとかピアスとか、いろいろある。
「へ〜2月の誕生石って紫なんだぁ?」
のんはどうやら知らなかったらしく、嬉しそうにそれらを眺めてる。
「ねぇ気に入ったのある?」
「うぅん……」
確かにかわいいのばっかりなんやけど、なんとなくピンと来ない。
「あっ」
その時一つのアクセサリーがうちの目に止まった。
それは小さな乳白色の石の付いたペンダントで。
うちはその優しい光に心を奪われた。
「そちらはムーンストーンになりますね」
「ムーンストーン?」
「はい、6月の誕生石ですよ」
「あっ、のんの誕生石なんだ?」
うちは、そののんと絢香さんの会話で決心した。
- 327 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:47
- ―――
「のん、ありがとう」
「うぅん、でもよかったの?ムーンストーンだっけ?
亜依ちゃんの誕生席とかじゃないけど」
「うん、だってのんの誕生石やし」
「え?」
「なんかな?のんの誕生石着けてたら、
会えない時でも傍にいてくれるような気がするやん」
「そっかぁ」
「それにな?……なんかのんみたいやってん」
「なにが?」
「なんか優しい感じが」
そう言うとのんは急にうちを抱き寄せて―――
唇を重ねる。
「ちょっとのん、こんなところで」
「ごめん、だって嬉しくって」
「……うん。
あ、それより、ご飯どこで食べるん?」
うちはちょっと気まずい雰囲気を変えるために、のんに尋ねてみた。
「のんちで食べよ?」
「うん」
なんや、せっかく二人っきりやと思ったのにな。
って言うか、まさかおじさんやおばさんに付き合いだした報告とかする……わけはないか。
- 328 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:48
- ―――
「さぁ、入って」
「おじゃましまぁす」
うちはのんに促され、のんのうちに入る。
あれ?でもなんや静かやない?
「のん、おばさん達は?」
「最近お父さんもお母さんも遅いんだ」
「そう……なんや」
ちょっと待って!って言うことは二人っきり?
うぅん、二人っきりは嬉しいんやけど。
いや、そうやなくって!
だって誰もいない時に家に呼ぶってことは……
あかん、なんやめっちゃドキドキしてきてもうた。
「亜依ちゃん、ちょっと待っててね、ご飯の準備するから」
「う、うん」
のんはそう言うと、うちを残し、部屋を出て行った。
うちは今の内に落ち着きを取り戻さなくて鳩思い、部屋の中を見渡してみる。
沢山のぬいぐるみ、机の上のうちの写真。
かわいらしいデザインのカーテンに、綺麗に整えられたベット。
のん、いつもは起きたまんまになってるのに。
そこまで思って、またドキドキし始めた。
だってそうやん?のん、やっぱり、今日そのぉ……
エッチしようと思って準備してるってことやない?
うちはもう一度ベットに視線を向ける。
うち、あそこでのんに……
だめ!あいぼん、いいから落ち着くの!
今日はその覚悟してきたやない。
それにうちだってのんとそうなること、望んでたんやない。
うちは自分にそういい聞かせ、胸に手を当て深呼吸をした。
- 329 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:49
-
「おっまたせ〜」
うちがやっと落ち着いたころ、のんがお料理の乗ったトレイを抱えて帰ってきた。
「うわぁ、すご〜い」
うちはその沢山のお料理に歓声をあげる。
「昨夜のうちに作っといたんだぁ」
のんはちょっと自慢げにトレイをテーブルに置く。
「のんが作ってくれたん?」
「だってこの前、また作ってって言ったからさ」
そう言いながらのんはグラスにジュースを注いでうちに手渡してくれる。
「亜依ちゃん、誕生日おめでとー」
「ありがとー」
二人のグラスが軽やかな音を起てた。
- 330 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:50
- ―――
「のん、ありがとー、ほんとにおいしかったぁ」
「ほんと?よかったぁ」
うちはさっきまでの緊張を忘れ、のんとおしゃべりしながら楽しくお食事をした。
「じゃぁ、ケーキ食べよっか?」
「うん♪」
「ほい、これはのんの作ったのじゃないけど」
そう言って、のんは見慣れたケーキボックスからケーキを取り出す。
「うぅん、ありがとう」
「まぁ、なっちゃんの所のは美味しいからさ」
のんは手早くケーキにろうそくを立てて、火を灯す。
「さぁ、お願いして」
のんは電気を消して、うちの隣に座る。
「うん」
(のんとずっとこうしていられますように)
うちは、ろうそくの火をそっと吹き消した。
「亜依ちゃん、おいしい?」
「うん」
それからうちらは並んでケーキを食べる。
「あー!」
「ぅっ、むーっ!」
のんが突然大声出すから、うちはケーキを喉に詰まらせそうになった。
「のん、どうしたん?」
「まだ、プレゼント渡してなかった!」
「あー!」
そう言えば、プレゼント買うてもらったけど、まだ渡してもらってはいなかった。
- 331 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:51
- 「じゃぁ、改めて。
亜依ちゃん、お誕生日おめでとー」
「ありがとう」
のんはペンダントを取ると、うちに着けてくれる。
「亜依ちゃん……かわいいよ」
そしてうちの首に手を回したママの体制で囁く。
「ぁ、ありがとう」
「亜依ちゃん」
そしてのんは、うちを抱き寄せ、唇を重ねる。
のんは、いつもみたいにすぐ唇を離さず、なんどもなんども角度を変えてキスしてくれる。
うち、やっぱりちょっとは驚いたけれど、そのままのんに身を任せた。
のんは、うちを強く抱きしめ、唇をついばむようにキスをする。
のんの右手がためらいがちにうちの左胸に触れた。
そしてのんは、うちの唇の間からそっと舌先を滑りこませようとする。
うん、のん、えぇよ。
うち、心の準備できてるから、
のんに全部あげるって、のんの物になるって、決めてるから。
だけど、うちがそう思った瞬間、のんの動きは止まり、
のんの唇はゆっくり離れて行った。
「のん?」
うちがのんを見ると、のんは跋が悪そうに微笑んで……目を伏せた。
もう、ここまでしておいてヘタレなんやからぁ。
- 332 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:52
- ―――
「のん、今日はありがとう」
「ほんとに送ってかなくっていいの?」
「うん、えぇよ」
「……怒ってるの?」
「なんで?」
「だって……」
うちが問い返すと、のんは寂しそうに俯いてしまった。
もう、そんな顔せんといて。
うち、怒ってなんかないから。
「怒るようなことなんて何もなかったで?」
「…………」
「今日、すごく楽しかった。ありがとう」
「うん♪」
うちがほっぺにキスすると、のんも笑顔を見せてくれた。
「じゃぁまた明日、学校でな?」
「うん、気をつけて帰ってね」
「うん、帰ったらまたメールするな?」
「うん」
うちはのんに見送られ、のんの家を後にした。
- 333 名前:18〜My Happy Birthday Comes 投稿日:2007/02/07(水) 21:54
- ―――
最後はちょっと肩透かしやったけど、でもほんとに楽しい一日やったなぁ。
のんの家からの帰り道、うちがそんなことを思っていると、コートのポケットの中で
ケイタイが振るえ、出てみるとのんからの電話だった。
「のん、どうしたん?」
『なんかやっぱり心配で差、お話してれば安心かなって思って』
「ありがとう」
『それに……声聞きたくなって』
「…………」
うちはそんなのんの優しさに胸がいっぱいになって。
『亜依ちゃん、どうした?』
「うぅん、ありがとう」
うちはのんとお話をしながら、とても幸せな気持ちで家路についた。
- 334 名前:ぱせり 投稿日:2007/02/07(水) 21:56
- 更新終了です。
- 335 名前:ぱせり 投稿日:2007/02/07(水) 21:58
- レスのお礼です。
>>315さん、こんな風になりました。
実はここでのんさんの家に行くのは当初からの予定だったのですが、いかがでしたでしょうか?
- 336 名前:ぱせり 投稿日:2007/02/07(水) 21:59
- ここ一週間のうちにできれば2話UPしたいと思っていますので、またのぞいてやってくださいませ
- 337 名前:ぱせり 投稿日:2007/02/07(水) 22:00
- あいぼん、誕生日おめでとう。
ぱせりはいつまでもあいぼんを応援してます。
- 338 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/07(水) 22:47
- あいぼん誕生日おめでとう 作者さん更新ありがとう
- 339 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/10(土) 23:21
- 更新乙です
リクエストがあっという間に叶ってしまいましたwののさんもう一押し!
またupがあるようなので楽しみに待ってます
- 340 名前:あいのレクチャー 投稿日:2007/02/11(日) 23:54
-
「♪愛それはルルルル〜
愛それはララララ〜♪」
はぁい、セクシーでキュートな18歳、あいぼんでぇっす♪
プリティーとちゃうんかって?
もう18やもん、プリティーはきつない?ってことでこれからはセクスィー目指して
がんばることに決め手ん。
- 341 名前:あいのレクチャー 投稿日:2007/02/12(月) 00:00
- 「よいしょっと」
うちはシャワーを止め、バスタオルを巻いてバスルームを出る。
ん?みんななんか期待してない?
ちゃうよ、のんといるわけやないよ。
今日はな、愛ちゃんちにお泊りやねん。
ちゃうって、浮気やないって。
うちがそんなことするわけないやん!
あのな、なんでお泊りかって言うとな、みんな覚えてる?クリスマスのパーティーのこと。
あの時もらった宝塚のチケットの日が今日やってん。
それで、帰り遅くなったから、愛ちゃんちにお泊りやねん。
- 342 名前:あいのレクチャー 投稿日:2007/02/12(月) 00:01
-
うちは体を拭き、愛ちゃんが用意してくれたパジャマを……
パジャマ……パジャマァ……パジャマ……やない!
なんど見ても、どう見てもパジャマやない!
なにこれ?愛ちゃん、うちになに着せるん?
こんなん着て寝る人なんか、世界中どこ探してもおらへん!
そう思っても他に着る物もないから、仕方なくそれを着て、愛ちゃんの部屋に向かった。
- 343 名前:あいのレクチャー 投稿日:2007/02/12(月) 00:03
-
「愛ちゃん、これはなんや……の?」
ははは、なんで愛ちゃんん、そんな服着てるんかなぁ?
うちは部屋に入るなり、愛ちゃんに抗議しようと口を開きかけたんやけど、愛ちゃんの
姿を見て口を噤んだ。
「あ、あいぼんおかえり〜」
それでもやっぱり聞かずにはいられへんくって、一応聞いてみる。
「なぁ、愛ちゃん、なんでこんなドレス用意したん?」
「ん?ほんとはあぁし、娘役の方がえぇんやけど、あぁしとあいぼんならやっぱり娘役は
あいぼんかなぁって」
「だから、娘役ってなんなん?」
「え?だから女の子役やって」
「いや、そうやなくって、なんで寝るのに娘役って」
「え、あいぼん、ヴェルバラごっこせんの?」
愛ちゃんはそれがさも当たり前のことのように、きょとんとした表情で問い返す。
「いや、普通はしないでしょ?」
「えぇ、あいぼん、ヴェルバラごっこしようよぉ?」
うぅん、そんな目で見られてもうちは負けへんで。がきさんやないんやから。
「あいぼぉん」
「…………」
うちはかわいい表情でお願いしてくる愛ちゃんから目をそらす。
「あいぼん、やっぱり宝塚嫌いなんや……
今日も、嫌々付き合ってくれたんや……」」
愛ちゃんは俯き、寂しそうに呟く。
「そんなことないって、結構面白かったし」
「ほんと!?」
うちがあわててホローすると、愛ちゃんはぱっと顔を上げる。
「じゃぁ、してくれるん!?ヴェルバラごっこ」
「う、うん」
うちは愛ちゃんの勢いに思わず頷いてもうた。
ひょっとしてうち、はめられた?
- 344 名前:あいのレクチャー 投稿日:2007/02/12(月) 00:04
-
「えっとね、あぁしがフェルゼンやるから、あいぼんはマリーアントワネットね」
「……分かった」
「じゃぁ、いくよ?」
「うん」
愛ちゃんは嬉しそうに言うと、表情をがらっと変え、お芝居をし始める。
「陛下」
「あ〜フェルゼン」
「あいぼん!もっとちゃんとやって!」
あぁ、やっぱり適当にやるんは許してくれんのね。
「あ〜ぁ、フェルゼン!」
うちは半ばやけくそで、今日見たのをまねしてやってみる。
「これでいい?」
「よろしい」
うちが尋ねると、愛ちゃんは満面の笑みで頷く。
誰も見てへんのに、こんなん一生懸命やるんむなしいんやけど……。
「あ〜、マリーアントワネット様ぁ」
嬉しそうにお芝居始める愛ちゃんに逆らえるはずもなく……。
はぁ、長い夜になりそう。
のん、助けて!
- 345 名前:あいのレクチャー 投稿日:2007/02/12(月) 00:05
- ―――
「あいぼん、やっぱりうまいね〜」
「そっかなぁ?」
うちはパジャマに着替え、愛ちゃんが自分のベットの隣に敷いてくれた布団に入る。
あれからうちは、なんだかんだ言いながら、思いっ切り熱演してもうて。
そして愛ちゃんのお母さんにうるさいって怒られたところで、うちらのヴェルバラは
終焉した。
「でさぁ、あいぼん」
「なぁに?」
しばらく今日の宝塚の話しで盛り上がった後、愛ちゃんが改まった口調で言う。
「のんちゃんとはどこまでいった?」
やっぱりそれなんやな。
でも今日は聞かれること予想してたからうちも素直に答える事にした。
- 346 名前:あいのレクチャー 投稿日:2007/02/12(月) 00:06
- ―――
「ふぅん、やっぱヘタレやなぁ」
「うん、それものんのいいとこなんやけど」
「いや、のんちゃんだけじゃなくあいぼんも」
「え?うち?」
「そうやで、別にのんちゃんからするの待っとらんでも、
あいぼんからすればいいんやから」
「えぇ!でもぉ!」
「そんなこと言ってるから1ヵ月半も何もないんやない」
「……やっぱり遅いんかなぁ?」
うちはそんなん言われてちょっと凹んで尋ねる。
「うぅん、あぁしもどれくらいが普通かは分からんけど」
「愛ちゃんはどれくらいやったん?」
「あぁし?あぁしらは、2度目のデートやで?」
「ふえぇー!?」
「あいぼん、うるさい」
「……ごめん」
うち、驚いて思わず大声あげてもうた。
「でも、2度目のデートでって早すぎん?」
「そう?」
「だってもうちょっとお互いのこと理解しあってからとか、そう言う」
「なぁに言ってんの?あぁしら、1年半も友達やったんやで?」
「そう・やね」
「あいぼんとのんちゃんなんか中学から一緒なんやから、いいとこも悪いとこも
しってるでしょ?」
「うん」
「やったらなに迷う必要があるん?」
「いや、迷ってるわけやないんやけど」
「だったらガツンと行きなさい」
「だって自分からするのはずいやん、なんやエッチな子って思われるのもいややし」
「もう、だからヘタレなんやってば」
ヘタレか……層化も知れへんけど。
- 347 名前:あいのレクチャー 投稿日:2007/02/12(月) 00:08
-
「なぁ、愛ちゃん、愛チャン達の最初の時ってどっちから?」
「ん?あぁしからやで?」
ははは、やっぱりそうか。
「だからあいぼんもがんばりなさい」
いや、そう言われても、うち愛ちゃんとちゃうし、それに……
「でも、どんな風にすればいいか分からへんもん」
「え?そう言う本、読まへんの?」
うちがすねたように言うと、愛ちゃんはいつも以上のビックリ顔で尋ねてくる。
「読んだ事あるけど……だって本だけじゃ分からへんやん」
「そっかぁ」
愛ちゃんは楽しそうにそう言うとうちの布団に潜り込んできた。
「え?どうしたん愛ちゃん」
「じゃぁ、あぁしがぁ、教えてぇ、あ・げ・る♪」
愛ちゃんは妖しく微笑むと、うちにすり寄ってくる。
「え、えー!」
「だって、本じゃ分からないんでしょ?」
「そうやけど」
「どうすればいいか分からんからできんのでしょ?」
「う、うん」
「だからあぁしが教えてあげる」
「いや、それとこれとは。
だってうちにはのんが、それに愛ちゃんだってがきさんが。
な?浮気になってまうやん?」
うちはじりじり迫ってくる愛ちゃんから後ずさりしながら説得するんやけど。
「浮気やないよ、だって練習や紋」
聞く耳もってくれへん。
「そんな」
「な、お姉さんに任せなさい」
そう言うと、愛ちゃんはうちを捕まえ、覆い被さってくる。
「ちょ、ちょっと、いや!」
うちはキスしようとする愛ちゃんの下からあわてて逃げだした。
- 348 名前:あいのレクチャー 投稿日:2007/02/12(月) 00:11
-
「あいぼん、真っ赤になっちゃってかわいい」
すると突然愛ちゃんが楽しそうにケラケラと笑い出した。
「……愛ちゃん?」
「冗談に決まってるやん」
「愛ちゃん!」
「いくらなんでも里沙ちゃんに怒られるって」
「…………」
「それにあぁしは里沙ちゃん一筋やもぉん♪」
そう言って愛ちゃんは飛びっきりの笑顔を見せて自分のベットに戻っていく。
もう、愛ちゃんはぁ。
うち、どないしようか思ったやん!
「もう、愛ちゃん、めっちゃ驚いたやん」
うちの抗議を無視して愛ちゃんは楽しげに続ける。
「でもさ、3ヶ月経ってもまだそんなこと言ってたら、ほんとに教えてあげるからな?」
「いやですぅ」
「嫌ならがんばりなさい。
最初はみんな手探りなんやから」
愛ちゃんは急に真面目な声になって諭すように言う。
「そっかぁ」
「のんちゃんばっかりに負担かけ茶だめやよ」
「……うん」
(そっかぁ、結局告白モのんからやったもんなぁ)
うちはそう言われて、一人思いにふける。
- 349 名前:あいのレクチャー 投稿日:2007/02/12(月) 00:11
-
(でも、うちから……
やっぱりそれははずいし……
でも考えてみればのんだってそうなんだよね?
やっぱりうちからしてあげないといけないんやろうか……
そうしたらのん、喜んでくれるんかな?
でもこの前はなんで途中で止めたんやろう?
あれってやっぱり使用としてたんだよね?
のんはやっぱりまだ早いとかって思ったんかなぁ?
それならうちからしたら嫌かも?)
「なぁ、愛ちゃん?」
「…………」
うちは愛ちゃんに意見を聞いてみようと声をかけたんやけど、穏やかな寝息だけが
返ってきた。
「愛ちゃん、寝ちゃったんや」
うちは呟き、お布団をかぶりなおす。
のん、のんはどうしたいん?
どうして欲しいん?
うちはそんなことを考えながら眠りに落ちていった。
- 350 名前:ぱせり 投稿日:2007/02/12(月) 00:12
- 更新終了です。
- 351 名前:ぱせり 投稿日:2007/02/12(月) 00:14
- 今回は外電といったところでしょうか?
期待されてた方すみません。
- 352 名前:ぱせり 投稿日:2007/02/12(月) 00:16
- レスのお礼です。
>>338さん、こちらこそ読んでいただきありがとうございます。
>>339さん、ほんとにもう一押しだったんですけどね〜(笑)
それでは、次回は2,3日中に。
- 353 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/14(水) 00:00
- 次回は期待しちゃっていい☆カナ
- 354 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:13
-
「♪シャラララ 素敵にキッス
シャラララ 素直にキッス♪」
こ〜んばぁんゎっ♪
セクスィーキュートな18歳、あいぼんでぇっすぅ♪
あんな、今はな、のんのお部屋に来てんねん。
今日はヴァレンタインデーやから、二人でお祝いしようってことになって、学校帰りに
のんちに来てん。
- 355 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:15
- 「おっまたせ〜」
お茶を入れにいっていたのんが帰ってくる。
「ありがとう」
「へへへ、今日はとって置きのお茶だよ」
のんはそう言いながらうちの隣に座る。
「えぇの?」
「うん、今日のために買ったんだもん」
「そうなん?」
「うん、それよりパーティー始めよう」
「うん」
じゃぁってことになって、お茶で乾杯。
ちょっとへんやけど、いいよね?
- 356 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:16
-
「はい、のん、ハッピーヴァレンタイン♪」
「ありがとう」
うちは、用意してきた箱をのんに手渡す。
のんは笑顔で受け取ると、早速箱を開ける。
「うぁ〜すご〜い!これ手作り?」
「うん、ガトウショコラ。昨夜作ってん」
「やっぱりハート型なんだね」
「あかんの?」
「うぅん、嬉しいよ」
うちがすねたように尋ねると、のんは笑顔で応える。
「じゃぁ、こんどはのんね?」
そう言ってのんは小箱を取り出して
「亜依ちゃん、ハッピーヴァレンタイン♪」
手渡してくれる。
「ありがとう」
「開けてみて?」
「うん」
うちがその小さな箱を開けてみると、少し不恰好なトリフが並んでいた。
「一応手作りなんだよ」
「のん、すっごぉい、難しなかった?」
「へへへ、結構失敗しちゃった」
「ほんま?ありがとう」
「うん、じゃぁ食べよ?」
「うん」
うちらは、ガトーショコラとトリフを分けて仲良く食べる。
「はい、のん、あぁん」
うちはトリフをのんの口元に持っていく。
「あ〜ん」
へへっ、幸せ♪
- 357 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:18
-
「あ、そうだ」
しばらくそうやっておしゃべりしながら食べていると、のんは、突然そう言って、
どこからともなく、スティック状のチョコレートを取り出してきて、
「ん?」
くわえてこっちに付きだす。
「え?」
「ひょら、はいひゃん」
え?なんなん?
ひょっとして、反対側くわえろってこと?
今時そんなんするん?
って言うかのん、このためにこれ、用意したん?
うちがいろいろ思ってる間も、のんはそのままの体制で待っている。
もう、のんったらぁ。
うちはちょっと呆れながらのんの差し出しているチョコレートをくわえた。
のんがゆっくり近づいてくる。
もう何回ものんとキスしてるけど、こんなにゆっくり近づいてくるとなんかいつもより
ドキドキしてまう。
そしてとうとうのんの唇がうちの唇に触れた。
あれ?でもこの唇の隙間に残ったチョコレートの欠片、どっちが食べるん?
うちがそう思った瞬間
(え?)
のんがうちの口に、その欠片を押し込んだ。
(え?のん?)
そして途惑ううちを他所に、のんはうちの中でゆっくりチョコレートを溶かしていく。
甘くほろ苦い味が口の中いっぱいに広がっていった。
「のん」
唇が離れるとうちはのんに抗議しようと思って口を開いたんやけど、うちの意思に反して、
囁くような声しか出なかった。
「ん〜」
そしてまたすぐに唇を塞がれる。
そして、またさっきみたく、……
もう、のんったらぁ……
もう溶かす物なんてないのに。
そんなことを思っていると、うちはのんに強く抱きしめられた。
そして次の瞬間、うちの視界には天井が映っていた。
もしかして、のん、このままうちを?
そう思うと、心の準備ができてなかったうちは急にドキドキし始めた。
のんが唇を塞いでてくれなかったら心臓が飛び出てた化も知れへん。
のんはキスをしたまま、脚を絡めてくる。
(のん、だめ!そんなんしたらスカートが)
そう言いたくても唇は塞がれたままで。
のんはスカートが捲れるのもかまわずに、さらに強く脚を絡めてくる。
うちは、直接触れた、のんの柔らかく熱い体に、頭に血が上ったみたいになって。
そしてのんがうちの胸に触れた瞬間、うちは緊張のあまり意識がどこかへ飛んで行った。
- 358 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:20
- ―――
(え?いつの間に?)
うちが肌寒さに正気を取り戻すと、いつの間にかうちは、下着姿で、のんのベットに
寝かされていた。
見上げると、のんも同じ姿でそこにいて。
のんがうちの背中に右手を差し込むと、軽い衝撃と共にうちに開放感が訪れる。
のんは、そっと腕から下着を抜くと、自分の物も外して、一緒にベットから落とす。
「亜依ちゃん、お尻あげて」
のんはそう言うと、うちの腰に手をかける。
うちも無意識のうちに、そののんの言葉に従っていて。
のんは、またさっきと同じように、自分も脱いで一緒にベットから落とす。
そしてのんは、二人を隔てるものがなくなると、うちに覆いかぶさり、痛いほどのキスを
する。
(のん……)
うちはベットで気付いてから、のんの手馴れた様子に、いつもと違う激しいキスに、
知らないのんを見せつけられたようで、寂しい気持ちになっていた。
(そんなの気にしちゃだめ!
のんが今まで付き合ってた人がいてもいいやない。
今はうちを好きって言ってくれてるんやもん。
ほら、こんなにうちのこと求めてくれてるやない?
だめ……泣いちゃ……のんが気付いちゃう)
でもそう思っても、瞳には自然と涙が溢れてきて。
「え?亜依ちゃん?」
すすり泣く声に気がついて、のんが手を止め、うちを見詰める。
「亜依ちゃん、ごめん、いやだったの?」
あわててのん、訊いてくれるけど、うち、今声出したら涙止まらなくなりそうで。
だからうちは首を振るだけで応える。
「亜依ちゃん、ごめんね」
のんは、そう言って抱きしめてくれる。
のん、悪いことなんてなんにもしてないのに。
うちはそう思うと、余計涙が止まらなくなって、のんの胸に顔を埋めた。
- 359 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:21
- ―――
「のん、ごめんなさい」
しばらくしてやっと泣き止んだうちは、のんに謝る。
のんは、泣いているうちの背中をずっと優しくなでてくれていた。
「うぅん、のんこそごめんね」
のんは辛そうに応える。
「のんもさ……初めてでテンパッちゃって……
亜依ちゃんのこと、ちゃんと考えてあげれなかった」
「え?」
うちはその言葉に、驚いて顔を上げた。
「のん、初めてやったん?」
「……うん」
「ごめんなさい」
うちは恥ずかしくって、再びのんの胸に顔を埋めた。
「え?どうしたの?」
うちはかってにやきもち妬いて泣いたなんて、ほんとは話すの恥ずかしかったんやけど、
ちゃんと泣いた理由を話さなければ、のんが誤解して、自分を責めてしまうと思ったから、
きちんと話すことにした。
- 360 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:22
- ―――
「そうだったんだぁ」
「ほんとにごめんなさい」
「うん、ひどいよ、のんが馴れてるなんて思うなんてさ」
のんがからかうように言う。
「ごめんなさい」
のんは気にしたような風もなくそう言ってくれるけど、でもうちは恥ずかしくって、
申し訳なくって。
「でもさ、妬いてくれたのは嬉しいよ」
のんはそう言って、優しく抱きしめてくれた。
「でもぉ……」
「もう気にしないで、のんが強引だったのも悪いんだし」
「……うん」
うちは小さく頷く。
「もう、笑え〜」
「いや、ちょっ、やめっ」
のんは沿ういうとうちをくすぐりだした。
「もう、のんはぁ」
「へへっ、やっと笑った」
うちが笑うと、のんも楽しそうに笑う。
「のん、ありがとう」
「うぅん、それよりさ、のん達こんなかっこでなにしてんだろうね?」
「ほんま、さっきまであんなにドキドキしてたのにね」
うちらは声を揃えて笑った。
- 361 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:23
-
「でさぁ、今日はぁ」
のんは視線を泳がせながら、ためらいがちに口を開く。
「のんはどうしたい?」
「え?亜依ちゃんは?」
「うちが訊いてるんやけど?」
うちがいじわるして尋ねると、のんは視線をそらして、
「……したい……けど」
ぼそっと呟いた。
「のん」
うちは顔を上げたのんにキスをした。
うちからするはじめての深いキス。
そして唇を離すと、
「じゃぁ、して?」
そっと囁いた。
- 362 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:25
-
今度はのんからのキス。
さっきとは違って、あったかい気持ちになれるような優しいキス。
そんなキスをされていると、やっぱりさっき、のんも自分をうしなってたんだなぁって
思う。
のん、ほんとにごめんな?
そんなことにも気付いてあげれなくって。
それからのんは、いっぱいキスしてくれた。
キスの合間に『大好きだよ』とか『かわいいよ』とかいっぱい言ってくれながら。
でもな、のん、ちょっといじわるやねん。
うちが恥ずかしいって言ってるのに、エッチなこと言ったり、声出ちゃって
恥ずかしいから止めてって言うのに、激しくしたり。
そして、しばらくそうしていると、
「亜依ちゃん、いい?」
のんはうちを抱きしめて、優しく尋ねてくれる。
「うん」
うちは覚悟を決めると、のんの瞳を見詰めて、しっかりと頷いた。
「痛かったら言ってね?」
のんはそう言いながら、さっきまでキスしていた場所に指を添える。
そしてうちが頷くのを確認して、のんはゆっくり入ってくる。
「うぅ〜」
うちはのんの背中に回し縦に力を込める。
「だいじょうぶ?」
「うん」
確かに少し辛いけどだいじょうぶ。
だってのんが優しくしてくれるから。
こうなる日を夢見てたから。
「のん……」
うちはのんを受け入れた後、落ち着くまで待っていてくれたのんに声を掛けた。
のんは頷くと、そっとキスをして、ゆっくり動き始める。
のんの動きに連れ、徐々に甘い感覚が広がっていく。
そして、うちはのんの温もりに包まれながら、白い世界に落ちていった。
- 363 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:28
- ―――
「亜依ちゃん、ありがとう」
のんの腕の中で息を整えていると、のんはそっとうちのおでこにキスをする。
うちはそんなのんを強く抱きしめると、柔らかな膨らみの先端に唇を寄せる。
「え?亜依ちゃん?」
うちは驚くのんを他所に、キスを続ける。
「亜依ちゃん、疲れてるでしょ?のん、今日はいいよ」
のん、まだ息の整わないうちに気を使ってそう言ってくれるけれど、
「一緒の日がいい」
うちがそう言うと、のんも素直に身を任せてくれた。
うちは自分からそんなことし始めたものの、どうしたらいいか分からなかったけど、
さっきのんがしてくれたことを思い出しながら同じようにしてみる。
「ぃゃ」
繊細な部分に唇で触れると、のんが小さく呟く。
のん、さっきまでかっこよかったのに、今はすごくかわいい。
うちは、キスするたび、ふ触れるたびに、のんが喜んでくれるのが嬉しくって、
愛しくって、いっぱいいっぱいキスをした。
のんもさっき、今のうちと同じように思っててくれたのかな?
そうやったらうち、嬉しいのに。
「亜依ちゃん、のん、もう」
「うん」
うちはのんを抱きしめ、キスをする。
「痛かったら言ってな?」
「うん」
うちはのんに頷き反すと、ゆっくりのんの奥深くへと入っていく。
「うぅ、ぁー」
「だいじょうぶ?」
のんはさっきのうちとは比べ物にならないぐらいに辛そうで、苦しそうにうちの背中に
爪を立てる。
「だいじょうぶ?やめる?」
「うぅん、やだ」
うちは心配になって尋ねるけど、でものんは続きを促して。
うちはなるべく優しく、のんに入っていく。
「のん、もう終わったよ」
「亜依……ちゃん」
うちがそう言うと、のんは涙を浮かべながら、笑顔を見せてくれた。
「亜依ちゃん……のん、今ね、すっごく嬉しい」
「うちも」
うちはのんに、今日、何度目かのキスをする。
「亜依ちゃん、お願い」
「うん」
唇を離すと、うちはのんに促され、ゆっくり動き始める。
最初はまだ少し苦しそうだったのんの声も、次第に甘い声に変わっていった。
そして突然、うちにもさっきまでの感覚が蘇ってくる。
「のん?」
「亜依ちゃんも一緒に」
うちが問い返すと、のんは優しく微笑む。
「うん」
なんか、のんのその言葉が、思いが嬉しくって、うちも頷く。
- 364 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:29
-
うち、今までエッチって、恋人同士がただエッチなことして気持ち良くなるものなんか
思ってたけど、違った。
こうやってのんと愛し合っているとほんとに優しくって、あったかくって幸せな気持ちに
なれる。
「亜依ちゃん」
「のん」
のんがうちの名前をなんどもなんども呼んでくれる。
うちも、なんどもなんどものんの名前を呼ぶ。
のん、うち幸せよ。
なぁのん、のんも同じ?
のんも幸せ?
「亜依ちゃん、大好きだよ」
「うちも大好き」
触れ合うたび、言葉を交わすたび、甘い感覚が、愛しさが、暖かさが体中を満たしていく。
のん、ほんとに大好き。
大好きって言葉じゃ足らないくらい。
お願い、もっと近くに来て。
二人の境目がなくなるぐらい。
のんと一つになりたいの。
「のん、のん、愛してる、愛してるの」
「亜依ちゃん、のんも愛してる、誰よりも」
「のん」
「亜依」
二人の声が、思いが重なり、うちらはそのまま白い世界へと落ちていった。
- 365 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:31
- ―――
うちらは、あれからしばらくの間、黙ったまま、ベットの中で互いのぬくもりを
確かめ合っていた。
「のん」
うちは、のんの声を聞きたくなって話しかける。
「なぁに?」
「のん、大好き」
「うん、のんも亜依ちゃん大好き」
でものんは、うちの望む言葉を言ってくれなくって。
「のん、大好きぃ」
「うん、のんも」
もう、分かってないんやから。
「のん」
「なぁに?」
「もう、さっきみたいに呼んでくれへんの?」
「え?」
のんはきょとんとして問い返す。
のん、とぼけてるん?
「さっき亜依って呼んでくれたやん?」
「いやぁ、あれはぁ……さぁ」
のんは真っ赤になって、しどろもどろ。
「のぉん〜」
うちが甘えて、胸に頬擦りすると、のんは観念したのか、一つ深呼吸すると、
意を決したように
「亜依、愛してるよ」
耳元で小さく囁いて、抱きしめてくれた。
- 366 名前:SWEET VALENTINE 投稿日:2007/02/14(水) 23:32
-
のん、ありがとう。
うち、今日のこと一章忘れないから。
これからどんな辛いことがあっても、のんを信じてがんばって行くから。
うちは胸の中で、のんにそう囁いた。
- 367 名前:ぱせり 投稿日:2007/02/14(水) 23:33
- 更新終了です。
- 368 名前:ぱせり 投稿日:2007/02/14(水) 23:36
- レスのお礼です。
>>353さん、期待にお応えできたでしょうか?
作者も二人と同じくテンパっていたので少々不安です(笑)
- 369 名前:ぱせり 投稿日:2007/02/14(水) 23:38
- 次回は3月中に更新できればなぁと思っています。
それではまた。
- 370 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/15(木) 23:33
- もう期待以上でどうしたらいいのやら(*゚∀゚)=3ハァハァ
- 371 名前:ぱせり 投稿日:2007/03/26(月) 20:00
- みなさんこんばんわ、作者です。
この二日感、事態の推移を見守ってまいりましたが、
オフィシャルサイトにて残念な発表がありました。
こうなってしまったからには、この作品を続けることは
困難な状況です。
キリのいい所でもありましたし、この作品に関しましては、
ここで筆を置かせていただくことにしました。
長らくのご愛顧ありがとうございました。
夢板で続けているもう1作に関しましては、そちらでコメントさせていただきますので、
両方ご覧いただいていた方にはそちらも目を通していただけるとありがたいです。
本当にありがとうございました。
- 372 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 22:28
- 作者さん乙でした。本当に楽しませてもらいました。
作品の中で加護さんが満たされたことが救いのようにも感じます。
現実でも彼女の幸せを願ってやみません。今までありがとうございました。
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