True dream
- 1 名前:名無し 投稿日:2006/09/07(木) 02:03
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性別が変わっているので、苦手な方は読まないほうが良いです。
それではヨロシクお願いします。
- 2 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:04
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ひとみは今夢の中。心地良い夢の中。
子供と二人で公園で遊んでいる。たぶん自分の子だろう。
「二人ともーご飯にするから帰るよぉ」
たぶん奥さんであろう人がひとみたちを呼んでいる。それは聞き覚えのある声。
小さいときから近くで聞いていたであろう声の主の方を振り返る。
やっぱり。呼んでいるのはあの幼馴染。どうしてだろ?とひとみは思う。
「パパ。いこ」
やっぱりこの子はひとみの子。ということはさっき呼んでいたのも奥さん。
なんで??ひとみの頭にハテナが飛び交う。
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- 3 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:05
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そこで目が覚めた。心地良い夢なんだけど、パッとしない夢。
「ありえない、ありえない。俺があいつと一緒になるなんて・・・ありえない」
ひとみはベットの上で、お呪いのように繰り返している。
そこへ弟のまことがドアを開けて入って来た。
「兄ちゃん?何やってんの?」
「・・・ん?別に」
「・・・そう。朝ごはん、食べるしょ?早く来なよ」
「おぅ」
ひとみは何も考えないことにした。これは夢。現実じゃない。
しかしこの夢が『正夢』になろうとは、この時微塵も思っていなかった・・・。
- 4 名前:True 投稿日:2006/09/07(木) 02:05
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「おはよう」
「おはよう。今日は練習?バイト?」
「練習だけ。夜いる」
「そう。まことは?」
「俺もいる。練習だけ」
「わかった。早く食べちゃってね、さっさと片付けたいから」
「ったく、ゆっくり食わせろよ」
- 5 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:06
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俺は吉澤ひとみ。22歳の大学4年生。生まれた時目が大きかったから『ひとみ』。
大学でフットサル部の主将を務めている。チームはそこそこ強かったりする。
俺もそこそこ上手かったりする。高校のとき1年間だけ留学してたりする。
でも英語は苦手。何とかなるもんでした。
「兄ちゃん。俺今日走りたくない。足痛い」
「じゃ辞めれば?フットサル」
「・・・・うぅ」
今ブーたれてるのが弟のまこと。20歳の大学2年生。名前の由来は知らない。
同じ大学で、一緒にフットサル部入っている。上手いけどサボり症。
- 6 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:06
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「まことー!!急げ!今日1講から小テストだよ」
「うわぁ!忘れてた!!やっべー」
玄関から声がして、
まことはパンを口に押し込んでモグモグさせながら慌てて玄関に行った。
さっきまことを呼んだのはまことの大親友の辻希美。
こいつも同じ大学のフットサル部。キーパーで、今ではチームの主力選手。
顔も良くてかなりモテるけど今は彼女なしらしい。
まことと一緒にサボろうとするけど、人知れず努力してるのを俺は知っている。
「辻、おはよう」
「おはよござぁす!今日は講義あるんですか?」
「ある。今日走るから、覚悟しておいて」
「俺足痛いからヤダ」
「おめぇまぁだ言ってんのか!?今日来んくていい。じゃ辻、あとで」
- 7 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:07
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俺はそれだけ言って、リビングに戻った。
まことは情けない声を出していたけど、辻に促されて家を出た。
あのヘタレは誰に似たんだろうと不思議に思う。父さんも母さんも強くてヘタレじゃない。
吉澤家にヘタレの先祖が居たんだな、きっと。
「今日は何時に行くの?」
「昼から」
「じゃあ洗濯しておいて。暇なんでしょ?」
そう。俺は今物凄く暇。大学の単位は3年生でほとんど取ってしまったため、
学校に行くのはほんとに少し。毎日部活に行くぐらいだ。
就職活動しなくてはならないのだが、フットサルで稼ぎたいと思っているから、
話が来るのを待っている。そんなうまくいくわけないが、希望は捨てない。
「とりあえず、ゴミ出してきて」
「うぃ」
- 8 名前:True 投稿日:2006/09/07(木) 02:07
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「あ、おはよう」
「おぉ、おはよ。仕事か、大変だな」
「別に、いつもと変わらないし。まぁ就職活動もしないで向こうから話来るの待ってる
誰かさんと比べたら大変だけど」
「・・・・・・」
長い髪を揺らしながら俺の横通り過ぎて行った、高い声の女。幼馴染の石川梨華。
小さいときはマンションで隣の部屋だった。まことが小学校にあがるとき、
一軒家を建てたのだが、その隣の家が石川家だったのである。嫌でもずっと一緒。
だから俺のことをなんでも知っている。だから言い返せ無い。事実だからな。
今駅前の歯医者さんで受付をしている。あんな高い声の女が居たら余計に歯が痛くなるな。
- 9 名前:True 投稿日:2006/09/07(木) 02:07
-
俺は母さんに言われた通り、洗濯をしてから大学に向かった。
今日の講義は寝ても大丈夫だし、少し睡眠をとってから練習ことでも考えるか。
取りあえず試合もないし、この夏は走りまくって体力つけないとな。
教室に入るといつもの定位置に仲間たちが座っている。
「うぃ〜」
「おはようちゃん、来週この講義テストらしいよ」
「うそ!やっべーなぁ」
今テストのことを教えてくれたのが、ごっちんこと後藤真希。
小学生のころから一緒にフットサルをやっていて、かなり上手い。
顔もいいし、うちの部じゃ一番モテる。なのに彼女なし。
何人か付き合った人は居たけど長く続かない。
だれか心に決めてる人でも居るんじゃないかと最近は気をつけて見ている。
- 10 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:08
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「よっちゃん、いっつも寝てるもんな、この講義」
「起きててもフットサルのこと考えてて聞いてないし」
「「ヤバイんじゃないのぉ??」」
仲良く俺に忠告してくれた二人。一人は藤本美貴。フットサル部で目つきが悪い。
高校からの付き合いだが、始めは特に仲がいいという感じではなかった。
でも気がつけば一緒に居て、大学も同じところに進学。いつの間にか親友になっていた。
そしてもう一人が美貴の彼女、松浦亜弥。
二人は中学の時から付き合っていて、美貴と仲良くなればもれなく付いてくる。
といった感じの二人である。ただ人を弄るのが大好きなため、イライラすることも・・・
「テストかぁ・・・なんかやる気出ねぇな・・・」
- 11 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:08
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「腹減ったぁ。今日何にすんの?」
「俺カツ丼」
「のんつぁん、この前もカツ丼じゃなかった?」
「好きだからね」
今俺はのんつぁんと学食で昼食をとるところ。
朝から小テストとかやったから、か〜なり疲れたぁ・・・
ついでに練習は走るって言ってたし、憂鬱だ。
「まこっちゃん!お〜はよ」
「お、絵里ぃ。おはよう」
- 12 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:08
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今挨拶したのが亀井絵里。大学1年生で俺の彼女。フットサル部のマネージャー。
俺に一目惚れしたらしく、猛烈にアピールされて付き合うことに。
今では俺もデレデレなんだけどねぇ、あはは〜。
だぁってカワイイんだもん。のんつぁんにはだらしないって言われるけど、
こんなにカワイイ彼女が居たら、誰でもデレデレしちゃうでしょう。
「辻さんもおはようございます」
「おはよ。やっぱ俺はついでか」
「そんなことないですよ!
さゆが辻さんのこと見つけて挨拶しに来たらまこっちゃんがいたんです」
「え?俺がついでだったんだ・・・」
「あの〜、一緒に食べてもいいですか?」
「いいよ」
- 13 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:09
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今一緒に食べてもいいか聞いてきたのが、絵里の親友で俺の幼馴染の石川さゆみ。
この子は自分が大好きで、周りにどんな綺麗な人が居ようとも自分が一番。
そんな自分が一番なさゆみだけど、今さゆみの中で一番なのは、のんつぁんらしい。
絵里がこっそり教えてくれた。こんなに人を好きになったのは初めてだと、
いつも目を輝かせているらしい。
「辻さん、またカツ丼なの?」
「ん?うん。好きだからね。さゆちゃんもまたタラコスパゲティじゃん」
「大好きなの」
「一緒。好きなものはいくらでも食える」
でもこの二人が付き合うなんてことは・・・・・
「じゃあ今度、カツ丼とスパゲティのあるお店に一緒に食べに行くの」
「いや、いい」
ないだろうなぁ・・・・・
- 14 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:09
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「おはよう、梨華ちゃん」
「あ、おはよう、柴ちゃん」
私は今、ロッカー室で着替えをしている。今挨拶したのが同じ受付の柴田あゆみ。
同じ時期にこの歯医者さんに勤めだして、今では大親友。
「彼氏とはどうなったのぉ?」
「んん?ダメになっちゃった・・・」
そう。私は昨日彼氏と別れたばっかり。いきなり電話で「別れて」。
理由も言わずに私の話も聞かずに切られちゃった。別にいいんだけど。
好きで付き合ったはずなのに、その想いはどんどんなくなっちゃって・・・
お互いもうダメだと思っていたはずだから・・・少しは悲しいけど。
- 15 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:10
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「あらぁ・・・今日は飲みに行きますか?」
「ううん、今日は大人しく家に帰ります」
「そっか」
ゴメンね柴ちゃん、いつも心配かけて。でも今日は静かに家で過ごしたい気分。
早く家に帰りたいなぁ。
- 16 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:10
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大学から家への帰り道。外は薄暗いけど、駅までの道をみんなで歩くのは好きだ。
みんな「あーだこーだ」好きなこと言ってワイワイするのが好きだ。
この時間でも日が完全に落ちていないことが、夏を俺達に知らせてくれる。
心地良い風が、練習の後の身体に癒しを与える。
「まっじ、今日の練習キツかったんだけど」
「今走っておかないとさ、
そのうち試合に向けたフォーメーションの練習しなきゃいけなくなるし」
「でもキツイよぉ。もうヘトヘト。家に帰るのやっとだし」
「これを乗り越えれば強くなんだよ」
「ま、キャプテン信じて頑張ろ」
「「は〜い」」
- 17 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:10
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いつも文句を言うのは美貴とまこと。まとめてくれるのがごっちん。
こんな仲間に囲まれて、俺はとっても幸せ者だと思う。
学生時代の友は、大事にするべきだな。うん。
「あれぇ、辻ちゃんは?」
「たぶん自主練。横の動きがどうのこうの言って、納得してなかったから」
「俺が全部止めればチームは勝てるとか言ってたもんね」
単純だけど、そうやって考える辻は凄いと思う。2コ下だけど、頼れる守護神。
あいつが居ないとチームはボロボロになってしまう。
こいつらが居ないと勝てるものも勝てない。負けるものが勝てるかもしれない。
誰一人抜けてもダメな仲間達なんだ。
- 18 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:11
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「「ただいま〜」」
「おかえり〜早く手洗っておいで」
家に着いて飯も食って、テレビを見ているとまことがふて腐れたように俺に言った。
「兄ちゃん、俺のDVDどこやったんだよ。勝手に持ってったろ」
そういえば、この前梨華んとこに持ってったんだった。返してもらうの忘れてた。
でも取りに行くのめんどくせぇな。まことに行かせるか。でも怒るかな。
梨華に持ってこさせるか。もっと怒られるな。やっぱ俺が取りに行くしかないか。
「梨華んとこだ。お前行く?」
「・・・・・・・・・・・・・」
無言の圧力。お前が行けっていう目だな、こりゃ。
普段へタレのくせに、こういう時は強気だな、おい。
「行ってくる」
- 19 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:11
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俺は石川家にベルも押さずに普通に入る。もちろん逆もある。
「こんばんわ〜梨華居ますか」
「あらひーちゃん。上に居るわよ」
「お邪魔しまーす」
俺はドカドカと上に上がって、勝手にドアを開ける。
女の独特な甘い匂いと、この女独特のピンクの部屋にチカチカする。
ベットの上で雑誌を読んでいた梨華は、目を見開いている。
「ちょーっと。勝手に開けないでよ!!」
「あ?いちいちノックとかめんどい」
「着替えてたらどうするわけ?」
「興味ないからどうもしない」
- 20 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:11
-
梨華は大きなため息をつき、「何?」と怖い顔で言う。そんな怒んなよ。
「いや、DVD。この前貸したやつ返してもらいたくて。まことに怒られたから」
梨華は無言で机の上にあったDVDを俺に渡す。今日は一段と機嫌が悪い気がする。
なんかあったな。長年一緒に居ると分かる。行動とか顔色で。
「どした?なんかあった?」
「・・・・・別に」
別にって顔じゃないだろ。まーた溜め込んでさ、いつか大泣きすんだろ。
それなら少しずつ吐き出していけばいいのに。溜め込んで特になることないし。
んじゃそれらしい話題を振るか。
- 21 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:12
-
「最近どうよ、彼氏とは。うまくいってんの?」
「・・・・・別れた」
「うぇ?いつ」
「昨日」
それが原因ですか。朝怖かったのもそれが原因なんですね。別れるなよ、彼氏。我慢しろ。
普通に見たらカワイイ子。見た目だけで我慢して付き合えよ。
中身はめんどくさい女だけど、この女を連れて歩けたら羨ましがられるぞ。
色々めんどいから別れるなよ。今度付き合う奴は我慢強い人にしてほしいな。
「また新しいの見つければいいさ!ほら、俺の胸で今宵は泣きなさい」
「無理。別に泣きたい気分でもないし。お互い飽きてたし」
「・・・・・飽きてたって。好きだったんだろ?泣きたいだろ」
「私はよっちゃんと違うの。ウジウジしないから」
- 22 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:12
-
なんでそんな割り切れるんだよ。俺なんて別れたら1週間は落ちるよ?
これが男と女の違いかぁ。
「ならいいけど」
「DVD取りに来たんでしょ?まこと待ってるんじゃない?」
忘れてた。早く帰ろう。俺は急いで家に帰ったが、「遅い」とまことに睨まれた。
やっぱこいつは吉澤家の人間だな。
- 23 名前:True dream 投稿日:2006/09/07(木) 02:12
-
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「お姉ちゃん別れたんだぁ」
「あ、聞いてたの?」
「聞きたくなくても聞こえてきたの」
ドア開けっ放しだったもんね。勝手に部屋に入って来てドア開けっ放しとか。
ほんとデリカシーのない男。無駄に優しいし。
心配してくれたんだろうけど、不器用にしか慰められなくて。
でもそんな不器用な優しさに何度も助けられたなぁ。
この不器用な優しさにこれから大きく助けられるとは、梨華は思ってもいなかった。
つづく
- 24 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/07(木) 05:21
- イイ(・∀・)!!
次回も期待してます!
- 25 名前:名無し飼育 投稿日:2006/09/07(木) 12:55
- おもしろそう〜期待しまっす
- 26 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/07(木) 19:41
- おもしろい!
頑張ってください
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/07(木) 19:46
- 期待期待
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/07(木) 20:42
- 良いですね、おもしろそう。
引き続き楽しみにしています♪
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/07(木) 22:38
- いい!いい!いい!
おもしろい!!続き楽しみにしてます。
- 30 名前:名無し 投稿日:2006/09/08(金) 15:40
-
>>24-29の皆様
みなさんありがとうごさいます。とても意欲が湧いてきています。
ご期待にそえるよう頑張っていきたいと思います。
もしかしたら嫌いな展開になっていることがあるかもしれませんが、
よろしくお願いします。
- 31 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:40
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夏休みに入ってからも、フットサル部は忙しく活動していた。
休みはお盆だけであとはずっと練習。お盆明けに合宿に行き、帰ってきたところだ。
もちろんみんなヘトヘトだから、3日間オフにした。俺はダラダラと過ごしている。
でも2日もダラダラしてるとやはり暇になるもので、暇つぶしに梨華の家に来た。
梨華は不在だったが、勝手に部屋にあがりその辺にある雑誌たちに手を伸ばす。
「ろくな雑誌がねぇな。もっとアクティブな雑誌ねぇのかよ」
ボーっと雑誌を眺めていると、部屋の主が帰ってきた。
「フー・・・え?」
「おぅ、おかえり」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ただいまだろ。おかえりって言われたらただいまって言うんだろ?」
- 32 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:41
-
梨華はワザとらしく大きくため息をついた。そして俺を睨む。
おいおい、そんな顔してたらモテねぇぞ。黙ってりゃカワイイんだから。睨むな。
もう一度大きなため息をつき、甲高い声で怒鳴った。
「なんでここに居るわけ!?ここ!私の部屋なんだけど!!」
「そんな怒鳴るなよ。キーンてするわ、キーンて」
「ほんっとにデリカシー無いよね。女の子の部屋に、よく平気で入れるよね。
信じられない。悪いとか思わないわけ!?」
早口で喋られて返す言葉が出てこない。言い訳しなきゃ。
「だってさ、別に見られて困るもんなんて無いでしょ。
別に彼氏が居るわけでもないし。無問題、無問題」
- 33 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:41
-
「・・・・・・・・・・・」
あれ?俺余計なこと言った?墓穴でも掘りました?
無言が一番怖いんですけれども・・・
「あ、怒った?」
「よっちゃんが彼女と続かない理由が分かった気がする。
そこそこ格好良くて優しいのになんでいっつも振られるのか不思議だったんだよね。
でも解決。こういうことされたら誰だって別れたくなるわ」
なんだそれ!!彼女と一緒に居るとこ見たことないくせに!知ったかすんな!
俺の恋だって、それなりに理由があって終わってるんだぞ。ちきしょう。
「おめぇだって続かねぇだろうが!さっさと別れやがって。
おめぇのワガママに付き合える、もう少し我慢強い男探せよ!!」
- 34 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:41
-
「何それ。言っておきますけど、彼氏の前ではワガママなんて言いません!
彼氏の言うことちゃんと聞いてるもん。怒らないし」
・・・・・・・意外だな。もっとワガママ言って愛想つかされてると思ってた。
でも昔から周りにいいとこ見せようと頑張っちゃうとこあったからな。それか。
いい子ぶりっ子してるってことか・・・・・・・余計に腹立つな。
つーか俺だって勝手に部屋入るとか全くないし。こんな口調にもならないし。
「俺だって彼女にはこんなことしねーよ。付き合ってたってプライバシーはあるだろ。
こんな口調にもならないし・・・・・なんか最近機嫌悪くね?女の子の日か?」
「そういうところが最低なの!!よく生きてるよね」
今度は人格否定ですか、そうですか。一生懸命生きてますよ。
あんま誰にも必要とされてないですけれども、息はしてますよ。えぇ。
- 35 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:41
-
「梨華ってさ・・・・・・何が原因で別れるわけ?
いい子ぶりっ子してんだろ?なんでだ?」
「知らないよ、そんなの。尽くしたって振られるんだもん。そっちこそなんでよ」
「俺は・・・・」
理由なんてはっきりとは分からない。でも振られる。なんか・・・苦しそうだって。
別に苦しくなんて無いのに、苦しそうだって言われる。
「気使われたくないって言われるわ、よく。たぶん一生気使われそうだって」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「別に気使ってる気はないんだけど」
「私も一緒。気使われると、こっちがしんどくなるって」
- 36 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:42
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俺らってそんな風に見られるんだ・・・確かに嫌われないよう振舞っちゃうけどさ・・・
「取り合えず・・・・・帰って。着替えるから」
「着替えれば?」
「変態。なんでここに居座ろうとするの?帰って」
「嫌だ。だって家帰っても暇だもん」
家に帰ったってやることなくて、ボーっとしてたら母さんに何か手伝わされる。
それならこの家に居てボーっとしていたほうが良い。チカチカするけど。
動かなくて済むし。この高い声は耳に悪いけど。
「暇なんだもんって・・・・・子供じゃないんだから・・・」
「まだまだピュアボーイですよ」
- 37 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:42
-
何を言ってもダメみたいで、追い出されてしまった。外は暑い。もう夜なのに。
まことは亀ちゃんとデートで居ないし、美貴も亜弥と一緒か。残ってるのはごっちん。
・・・・・いや、たぶん寝てるな。はぁ・・・暇だ。
そんなことを思っていると、面白い光景が目の前に現れた。辻とさゆ。
仲良く2人並んで歩いている。さゆはとっても楽しそうで、辻も楽しそうだ。
あの2人って付き合ってたんだっけ?ってか辻、なんでさゆに手出してんだよ!
俺の大事な妹みたいな幼馴染に。
「おい。お前ら何やってんの?」
「あ」
「ひーちゃん、お姉ちゃんとこ行ってたの?」
「そうだけど・・・・・・2人は何してたの?」
「ん?デート。ねぇ?」
- 38 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:42
-
さゆは首をかしげて辻に問いかける。
辻は凄く驚いた顔をして、必死に首を横に振っていた。
「違います!さゆちゃんが買い物付き合ってっていうから。
あの、まことと亀ちゃんはデートで付き合えないから頼むって言われて。
俺も暇だったし、たまには買い物もいいかなと思って。
だから、決して付き合ってるわけではないです。怖い顔しないでください」
俺は相当怖い顔をしていたらしく、辻はかなりビビッて早口で言い訳してる。
そんな辻を見たら可笑しくなってきて、さゆが誰と一緒に居ようがどうでも良くなった。
逆に、辻と一緒に居てくれた方が安心だと思う。良い男だし。
辻の肩をポンっと叩いて通りすぎるときに言う。
「さゆのこと、ヨロシク」
「え、いや、その、だから・・・違うんですってば!!」
辻の雄たけびなんて聞こえない。さゆが嬉しそうにしているからそれでいい。
- 39 名前:True 投稿日:2006/09/08(金) 15:43
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「ひとみ〜、石川さんとこにお芋持ってって〜」
「は〜い」
今日で部活休みの最終日だか、いつも通り何もやる気が起きない。楽しくない。暇。
母さんに言われたとおり隣に芋を持っていくと、
おばさんが家の中の階段の前でそわそわしながら上を見上げている。
「こんちゃ。どしたの?」
「ひーちゃん。梨華がね、風邪引いたみたいなんだけど、昨日から下に降りてこなくて
ご飯も食べてないの」
「えぇ?」
「どうしよ」
- 40 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:43
-
梨華は今、部屋に引き篭もっているらしい。ご飯も食べていないから、母親は心配。
俺が強引に様子見てくればいいのか。どうせ嫌われているし、ちょうどいい。
「んじゃ、俺行ってくるよ。話してくる」
「大丈夫?」
「もう慣れてっから」
おばさんは心配そうに俺の顔見て、お願いと熱い視線を送っている。
ゆっくりと階段を上り、梨華の部屋の前で一度息を吐き、ドアを開けた。
いつもと何も変わらないチカチカする部屋のベッドで梨華は布団に包まって寝ている。
ドアを開けた瞬間、布団が動いたから起きていることは間違いない。
でもいつもみたいに怒鳴っては来ない。相当辛いんだろか。
「梨華ぁ?大丈夫か?」
返事が無い。俺はベッドの近くまで行き、その横に座り込んだ。
気配を感じたのか、もぞもぞと向こうをむいてしまったのが分かった。
- 41 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:43
-
「なぁ。具合悪いなら病院行った方が良いんじゃね?薬もらって寝たらすぐ治るぞ?」
何も言っても反応がない。布団を剥がそうか。いや、それはさすがにヤバイな。
こいつは本当に面倒くせぇな・・・
そんなことを思っていると、いきなり梨華が起き上がり、部屋を出て行った。
いきなりのことにビックリしたが、その後をついていくと2階のトイレに向かったようだ。
トイレからは咳き込むのが聞こえてくる。
やっぱ風邪かぁ。さっさと病院行けよ。なんで嫌がるんだ??
トイレから出てきた梨華はやっぱり元気がなさそうで、そのまま部屋に戻ろうとする。
「な、なぁ。病院行こうよ。俺送ってっから」
「・・・・・・・・・いい」
「なんでよ?薬飲めば治るぞ?」
「治らない」
- 42 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:44
-
いやいやいや。治るだろ。病院の薬って凄いんだぞ!!すぐ治るんだぞ。
こいつ頑固だから俺に言われていくのが嫌なんだな。嫌な奴だ。
わざわざ苦しまなくてもいいのに。
「治らないってなんだよ」
「・・・・・・・・・いいの」
「何がいいんだよ。面倒くせぇなぁ」
「・・・ほんと・・・・・面倒くさい」
ここで俺は梨華の雰囲気がおかしいことに気がついた。つっぱてるようにも見える。
でも何か隠してるようにも感じた。また布団を被ろうとしたから、被らせないようにした。
一瞬ふて腐れたようにこっちを睨み、そのまま横になる。
「どしたぁ。溜め込んでもいいことない。吐き出せ〜」
ベッドの淵に座り、梨華の顔を覗き込むと、何かに怯えてるような顔をしている。
- 43 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:44
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「俺にも言えねえかぁ?いっつも言いたいことは言うくせに」
「別に言いたいこと言ってないもん」
どうしようもなくなり、そのまま部屋を見渡す。それにしてもピンクだな。
なんで女ってピンクが好きなんだろ。こいつは異常だけど。
机の上にある箱に目がとまった。長方形の箱。なんだ?
立ち上がりその箱を手に取る。そこに書いてある文字を見て声が出なくなった。
『×××× ○○ 妊娠検査薬』
そういうことか。具合が悪くても病院に行こうとしない。理由を言わない。
誰にも言わない。言えない。だから部屋に篭る。謎は全て解けた。
「梨華。これ」
梨華は俺のほうを振り返り、箱を見ると慌ててその箱を奪い取った。もう遅いけど。
見られたくないものをその辺に置いておくなよ。バカだな。
箱を抱えたまま、泣きそうな顔をしている。俺もこの状況に動揺した。
とりあえず話を聞こう。
- 44 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:44
-
「ちょっと、座ろ」
梨華をベッドに座らせ、俺はその下に座る。梨華は下を向いたまま。
何から聞こうかな。結果から聞くべきか?いきなりそこか?そこだよな。
「それ使ったんだろ?」
「・・・・・・・・うん」
「どうだったの?」
「・・・・・・・・・」
黙り込んじゃったけど、その反応見たら陽性って分かるじゃん。おい〜どうする。
とりあえず産婦人科に行ってはっきり見てもらうべきか。そうだな。
でも父親は誰だ?今付き合ってる奴居ないはずだし・・・・前の奴か?
- 45 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:45
-
「相手とか・・・・わかるの?」
「・・・・・何となく・・・・・・その人しか居ない」
「前の?」
「うん」
やっぱなぁ。避妊ぐらいしろ。とんでもねえ男だな。婚前交渉は気をつけろよ。
連絡をさせるべきか・・・その前に産婦人科。よし、そうしよう。
「とりあえず病院行こ。話はそれから」
「え?・・・・・怖いよ」
「んじゃずっとそのままで居る気ですか?」
- 46 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:45
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黙ってしまった梨華を立たせて、部屋を出る。おばさんになんて言うかな。
普通に病院連れて行くでいいか。焦らせないようにゆっくり階段を下りる。
階段を下りる音で気付いたおばさんが、梨華に話しかけた。
「あんた、大丈夫なの?お腹減ってるでしょ?」
「具合悪いみたいだから、俺病院連れて行くよ」
「え?いいの?お願いするわ。あ、保険証」
その間も梨華は一言も話さずに黙って下を向いたまま。今どっちの気持ちが強いんだろ。
お腹に子供が居るかもしれない恐怖か、元彼に伝える恐怖か。
愛のない2人の間に生まれてくる子供ってどうなんだろ。お互い冷めてて・・・
おばさんから保険証を受け取り、家から車を出して助手席に乗せる。
「吐きそうとかないか?そこに袋入ってるから、使っていいぞ」
「・・・・・・・・・・」
- 47 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:45
-
ところで産婦人科ってどこにあるんだ?行ったことないから分からんな。
近いとこは止めたほうがいいのかな?誰かに見つかる可能性もあるし。
まぁいずれはバレることだけど。
「どこの産婦人科行く?知ってるとこある?」
「離れたとこがいい」
「ですよね」
少し離れた産婦人科を目指して走り出した。車内はちょうど良い温度で心地いいけど、
どよんとした空気が立ち込めている。
「もしね、」
梨華が話し始めた。
- 48 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:46
-
「子供が出来てても、彼には言わない。喜んでくれないだろうし。もう別れてるのに」
「はぇ?自分の子供が出来て喜ばないわけないだろ」
「みんながみんな、よっちゃんみたいな考え方じゃないの」
なんで?自分の子供だよ?嬉しいじゃん。分かんないなぁ。
言わないってどういうことだよ。シングルマザー宣言ですか?
「まぁ、好きにすればいいさ。後で後悔しても知らないぞ」
「後悔なんて絶対にしないもん。愛のない2人の間に生まれたほうがカワイソウだよ」
同じ考え方ですね。片親だとしても、そこに愛があれば幸せになれる。のかな。
もし父親が子供に対して愛が無かったら、これっぽちも幸せになれないよね。
それならわざわざ言わなくてもいいってことか。こいつ大人だな。
愛のある家庭に育っただけのことはあるわ。
でもシングルマザーなんて、石川家は許してくれるんだろうか。
- 49 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:46
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「石川さ〜ん、中へどうぞ」
「はい」
「俺ここで待ってる」
梨華は頷いて中へ入っていった。
たくさんの妊婦さんと赤ちゃんがいるこの空間に、ちょっとだけ恥ずかしくなる。
初めてきたし。いや、小さい頃は来たかもしれないけど覚えてない。
辺りをキョロキョロ見回していると、小さい男の子が本を持ってやってきた。
そして無言で本を渡される。長いすに手をかけ昇り、さらに俺の上に上ってきた。
読んでもらう体制は整った。あとはお前が読むだけ。みたいな目を向ける。
なぜか頬が緩んでしまう。勝手に膝に乗ってきたのに、カワイイと思った。
俺は本を開いて読み始めた。男の子は楽しそうに話を聞いている。カワイイなぁ。
- 50 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:46
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「じゃあここに座ってください」
「はい」
私は今凄いところに来ている。産婦人科なんてまだまだ来る予定なかったのに。
ずっと生理が来なくて。もしかしたらと思って買った妊娠検査薬で陽性。
もう動揺しちゃって家族に迷惑かけたな。これからもかけそうだけど。
でもよっちゃんには感謝しないと。ここに来ることが出来たんだから。
「石川さん、おめでとうございます。お腹の中に赤ちゃんがいますよ」
やっぱり。検査薬ってあたるんだぁ。どうしよ。パパとママどんな顔するかな。
怒るかな。あきれるかな。育てられるのかな・・・
「今9週目ね。2ヶ月といったところかしら」
「ありがとうがざいます」
- 51 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:47
-
「あら、あんまり嬉しそうじゃないわね。訳ありかしら」
「・・・・・まぁ」
「そうなの?素敵な彼が居ると思ったから、喜ばしいことだと思ったわ。
一緒に座ってた人は違うの?」
あぁ。よっちゃんのことね。確かにこんなところに2人で来てたら相手の人だと思うよね。
「じゃあまたね」
「はい、ありがとうがざいました」
診察室を出てよっちゃんが座っているほうに目を向けると、
小さい男の子がよっちゃんの膝の上に座っていた。本を読んでるみたい。
親子みたいで自然と笑みがこぼれる。もしよっちゃんがパパだったら、子供は幸せ。
あんなに周りを大事にする人なんて居ないもの。子供だったらなおさらよね。
- 52 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:47
-
よっちゃんは私に気付いて手を上げた。それを見た男の子がじーっとこっちを見る。
おもちゃを取り上げられたみたいに少しふて腐れている。カワイイ。
「こんにちは」
「・・・・こんちゃ」
「ママさんが診察中なんだって。兄ちゃんになるんだもんな」
「うん!お姉ちゃんもお腹に赤ちゃんいるのぉ?」
子供って何でも直球で質問してくるのね。今私たちの間では大変な質問なのに。
「そうだよ。ちいっちゃいけど、ここに居るの」
男の子は手を伸ばしてお腹を触ろうとしている。まだ分からないよ。
本当に小さいんだから。それでも私はお腹を触らせてあげた。
- 53 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:47
-
「じゃあママになるんだ!」
その言葉に自分の中にもう一つ命があることを実感させられる。
この中で育って、いつかは地上の空気を吸う。そして泣く。
「良かったね。お兄ちゃんパパになるんだ!」
よっちゃんの方を見ながら嬉しそうに言うこの子を見て、普通に答えた。
「そうだよ。世界一カッコいいパパになる」
よっちゃんは優しい子。男の子に説明するのも面倒くさいし、私にも気を使ってる。
でもその優しさ、今の私には辛いよ。もう、どうしていいのか分からないんだもん。
3人で会話をしていると、男の子のお母さんが出てきたらしく男の子は走っていった。
「石川さ〜ん」
受付から呼ばれて立ち上がり、お金を払って玄関に向かう。
そこでまた男の子が寄ってきた。よっちゃんは軽く抱き上げて、嬉しそうに笑ってる。
- 54 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:48
-
「お姉ちゃん。元気な赤ちゃん産んでね」
「・・・・うん」
「また遊ぼうね」
「もっちろん!またここで会おうな」
そう言って私たちは男の子とバイバイをした。静かに車に乗り込み発進する。
いや〜な沈黙。自分から言うべきなんだろうけど、とりあえずお礼を言わないと。
「今日はありがと」
「おぅ。やっぱり出来てたか」
「・・・・・うん」
よっちゃんは「そっか」って一言呟いて黙っちゃった。
車のエアコン音とわずにかかっているCDだけが耳に入ってくる。
- 55 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:48
-
静かな車内で静かによっちゃんが話し始めた。
「あのさ」
「ん?」
「・・・・・・・・・・」
「何ぃ?」
「・・・・・俺じゃダメかな?」
「え?」
「だからさ・・・・・父親になるの、俺じゃダメかな?」
この人は何を言っているの?そんなとこまで優しさいらないよ。一生のことなんだよ?
よっちゃんはよっちゃんで好きな人見つけて、その子との子供でいいでしょ?
幼馴染だからって、そんな同情いらないよ。
- 56 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:48
-
「同情なんてしないで。そんなのいらない」
「同情じゃねぇよ」
「同情にしか聞こえない。そんなこと言って私が喜ぶとでも思った?」
「別におめぇを喜ばせるために言ったわけじゃないよ。俺がそうしたいと思ったから」
「なんで?よっちゃんの子じゃないんだよ?人の子なんだよ?」
「でも・・・・・梨華の子だろ?」
そりゃそうよ。私のお腹の中にいるんだから。これで他のママだったら怖いでしょ。
何考えてるか分からない。
- 57 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:49
-
「俺さ、梨華の子なら・・・・・愛せるよ?」
なんで・・・・・そんなに優しいの?
- 58 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:49
-
「お前さ、子供おろそうとか考えてないよね?」
考えてた。パパの居ない子なんて生まれてきても幸せになれないかもしれないって。
それ以上に・・・・・自分が大変だって・・・・・
「せっかくさ、お腹の子は命もらったんだよ?生きる資格を与えられたんだよ?
なのにその資格奪ったらカワイソウじゃん。そうだろ?」
そうだよね。せっかく命もらったんだもんね。ゴメンね、そんなこと考えて。
私はお腹を撫でながら何度も謝った。
「さっきの子にも俺がパパだって言っちゃったしさ。また遊ぶ約束したし。
連絡先知らないから、あそこでしか会えないわけだし。
うん、やっぱパパになるしかないな」
さっきから一人で喋ってるけど、本当にそれでいいの?
私は思うよ。よっちゃんがパパになってくれたら幸せになれるだろなって。でもいいの?
自分の人生をこんなことで決めちゃって。バカな幼馴染のせいで決めていいの?
- 59 名前:True dream 投稿日:2006/09/08(金) 15:49
-
「両親は必要でしょ。俺は本当に愛を持って育てるよ。大切にする。
幸せな子にしたいから。だからさ、俺達が育ってきたように、
この子にも愛をあげようよ。俺ら2人でさ、パパになるから。
世界一幸せな家族の中で、育ててあげよ?な?」
私の目からは大粒の涙がこぼれ、首を縦に振ることしか出来なかった。
すごく嬉しいのに、言葉が出てこない。よっちゃんが幼馴染で良かった。
こんなに甘えられる幼馴染が居て。
でもね、もしとっても好きな人が出来たら、そっちにいっていいから。
自分の幸せも考えて。
ひとみの優しさに甘えた梨華だが、この後2人にいくつもの難関があることを、
まだ知ることはなかった。
つづく
- 60 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/08(金) 23:20
- 更新お疲れ様です。
今の二人の間には愛はないのかな?
この後のいくつもの難関ちょー気になります。
- 61 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/09(土) 02:08
- おぉー、なるほど。そうきたか。
次回も期待してます!
- 62 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/09(土) 19:52
- おー、これまた難しい題材を選びましたね。
よっすぃーの心情の変化が気になります。
そしてこれはそんな簡単な問題でもないし、今後二人が
どう向かい合って行くのかなど興味深く読ませて頂きます。
- 63 名前:名無し 投稿日:2006/09/10(日) 21:01
-
>>60:名無飼育さん様
2人の間の愛は・・・リアル2人の間にはありますねw
>>61:名無飼育さん様
予想と違う展開になったと思います。気長に見てください。
>>62:名無飼育さん様
難しい題材なんですが、
とっても簡単に考えているダメな奴です、スイマセン。
もっと明るい展開にしたかったのですが、なぜか↓↓になってます。
文章もヘタでまとまってないと思いますがヨロシクお願いします!!
- 64 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:02
-
「とりあえず、梨華の母さんに言わないとダメだな」
俺達は近くの公園に車を止め、打ち合わせをしている。話を合わせないと。
俺と梨華は実は付き合っていて、子供が出来てしまった。
卒業したらしっかり稼いで梨華と子供を大切にする。・・・・・よし。
「そんなうまく行くかな。きっと色々突っ込んでくると思う」
「大丈夫だよ。何とかなるさ」
「はぁ。すっごい不安」
色々聞かれそうなのは確かだな。適当に流せばいいさ。変な心配かけたくないし。
昔から一緒に居る俺らなんだから、親も安心するだろ。
- 65 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:02
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「ただいま〜」
「おかえり。大丈夫だった?」
「あぁ、ちょっと・・・話があるんですけど」
おばさんはキョトンとした顔をして、「まぁ入って」と俺らをソファーに座らせた。
斜め横におばさんが座り、2人の顔が見える位置にいる。
「実は・・・病院に行ったことは行ったんだけど」
「なにぃ??」
「産婦人科に行ってきたんだよね」
おばさんは信じられないといった顔で、梨華の顔を見ている。
そりゃ驚くよな。いきなり産婦人科とか言われても。
- 66 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:03
-
今回のことを話、俺の子だということも伝えた。
おばさんは「そう」と優しい顔をしていた。
それ以上何も聞かずに、夕飯の支度にとりかかっている。
「ひーちゃんのパパママには伝えたの?」
「いや、まだ。先に梨華のとこに伝えようと思って。おじさんもうすぐだよね?」
おばさんは何も問題は無かった。問題はおじさんだ。
梨華を溺愛していて、毎回彼氏を追っ払ってる。手強いな。
そこへおじさんが帰ってきた。
「おぉ、ひーくん。どした?飯でも食ってくのか?」
「いえ、今日はお話がありまして」
おじさんは「なんだ?」という顔をしてこっちをジッと見ている。なんか怖いな。
- 67 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:03
-
おじさんにも今回のことを話、俺が父親だと伝えた。始めは強張った顔をしていたが、
だんだん表情が柔らかくなり、最後には笑っていた。
「そっか!いやー良かった」
「え?」
「俺はな、梨華を嫁にやる気なんて無かった。どんな男が来ても断ろうと思っててな。
でもひーくんなら安心だ。任せられる。その辺の男と一緒になるよりは、
ひーくんと一緒になってくれたほうが俺も嬉しい。いやー良かった」
おじさんはそう言いながら、ビールをぐびっと飲み干した。
なんだよ。いいのかよ。ドキドキして損した。こんな簡単にOKされるもんか?
拍子抜けしちゃうよ、全く。
「ところで式はいつ挙げるんだ?婚姻届はいつ出すんだ?子供はいつ生まれるんだ?
家はどうする。どっちかに一緒に住むか?どうせ隣だしな。
やっぱり新婚のときは2人で暮らしたいのか?」
- 68 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:03
-
一方的な質問攻めに何から返したらいいのか困っていると、おばさんが助けてくれた。
「そんなに一気に質問したって答えられないでしょ。
2人とも先にひーちゃんとこに行って来なさい」
「あ、はい」
さすが女は強い。良かったとかいいながら、おじさん動揺してるよ。参ったな。
質問されたこともう覚えてないし。
2人で吉澤家に行くことにした。さっきから何も話さない梨華が気になり声をかける。
「どした?具合悪い?」
「ううん。ただ・・・」
「ただ?」
「ほんとに良いのかなと思って。よっちゃん、良いの?」
- 69 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:04
-
しつこい奴だな。いいって言ってるのに。そんなに俺のこと信用できないのか。
そりゃ今までは頼りなかったかもしれないけど・・・頑張るさ。
「しつこい。怒るぞ」
梨華は泣きそうな顔をして上目遣いでこっちを見てくる。
うわ。この上目遣いに何人もの男が騙されてきたのか。かわいそうな奴らだ。
かわいそうとか言いながら、一緒になろうとしている俺もどうかと思うがな。
最初に妊娠したと聞かされたとき、正直動揺した。梨華が梨華じゃないみたいで。
ずっと俺の側に居た梨華が、誰かだけのものになるなんて想像も出来なかった。
別に今までお互いに恋人が居たし、その時は何とも思わなかったのに。
いざ本当に近くから居なくなると思うと、胸が苦しくなった。幼馴染って凄いな。
車の中で元彼には言えないと聞いたとき、自然と俺が父親になろうかな、なんて考えた。
「心配すんな。ずっと近くに居たんだから、今更何でもないよ」
- 70 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:04
-
家に入ると父さんがテレビを見ていて、母さんが夕飯を作っていた。
すぐに母さんが気付き、「どうしたの?」と聞いてくる。父さんもキョトンとしている。
「ちょっと話あってさ。いい?」
幸いまことは遊びに出ていて家に居ないみたいだ。
あいつが居たらややこしくなりそうだからな。セーフ。
父さんと母さんにも今回のことを話す。
父さんは喜んでいたが、母さんは心配そうな顔をしていた。
「2人で決めたことなんだったら文句はいわない。でもいいの?こんなんで」
「こんなんってなんだよ!自分の息子だろ」
「フフ。しょうがないんで我慢します」
梨華も調子に乗って話を合わせ、3人で笑ってる。俺の選択は間違ってなかった。
そう思いたい。
- 71 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:04
-
とりあえず、お互い家に帰ることにした。
「俺明日から練習なんだけど、病院とか行く時呼べよ。一緒に行くから」
「うん」
「じゃ」
「おやすみ」
梨華が帰ったあとすぐにまことが帰ってきた。特に急いで言う必要もないと思い、
しばらく黙っていたが、お風呂からあがったまことが勢いよくドアを開けた。
「兄ちゃん!」
「んだよ。うるせぇな」
- 72 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:05
-
「結婚するってマジかよ」
「マジだよ」
まことは口をあけたまま呆然とドアの前に立っている。
「とりあえず座れば?」
口を開けたままコクンと頷き、テーブルの前に座った。未だに信じられないという表情。
何から話すかな。別に話さなくてもいいか。聞いてきたら話せばいいんだ。
口開けたままだし。ゴミ入るぞ。入れてやろうかな。
口を開けたままのまことが小さい声で話し始めた。
「なんで?いつから付き合ってたの?」
「んん?いつの間にか」
「なんだよそれ。俺全然知らなかった。みんな知ってるの?」
「誰も知らない」
- 73 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:05
-
「そう。でもなんで今なの?」
あぁ。それは聞いてないんだ。結婚するってことだけか。ストレートでいいよな。
「子供が出来たから」
「・・・・・・・・・・・えぇぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!」
そりゃビックリしますよね。いきなりだし。付き合っているなんて思わないだろうし。
まぁ実際付き合っていたわけじゃないんだけどね。まことに知られたってことは、
明日にはみんなに広まっているんだろうな・・・
まことが亀ちゃんに言って、亀ちゃんが亜弥に言って、亜弥が美貴に言って・・・
伝言ゲームみたいだな。みんなどんな顔するだろ。
- 74 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:05
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
家に帰るとパパがソファーで寝ていた。
よっちゃんの家に行っている間に相当飲んだらしく、空き缶が転がっている。
私はその空き缶を片付けながら、パパの顔を覗き込む。ちょっと強面だけど優しいパパ。
正直こんな簡単に許してくれるとは思わなかった。
今までの彼氏はみんな玉砕してきたんだもん。まず顔でひいてたし・・・
でもきっと、よっちゃんだから許してくれたんだよね。違う人だと無理だったと思う。
昔から知っているから任せられると思ったのかな。
「あの後ね、『酒をもっと持って来い!』とか言い出して、大変だったんだから。
しまいには泣いちゃって。今すぐ出て行くって言っているわけじゃないのにね」
そう言ってママは笑った。
いつかは来る娘の結婚が、こんなに早いなんて思わなかったのかな。
「パパごめんね。幸せになるから。安心して。よっちゃんだもん」
- 75 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:05
-
2階にあがると、部屋からさゆが寂しそうな顔をして顔を出した。
私は優しく微笑んで、おいでおいでをした。
私が言うのもおかしいけど、さゆはシスコンだと思う。私もだけど・・・
何かあるとすぐに同じベッドで寝ようとする。甘えん坊な子。
でも最近は無かったんだよなぁ。辻ちゃんと良い感じみたいだし。
大人になっちゃったなって寂しかったんだから。
部屋に入ってからもさゆは何も話さずに俯いたまま。
「どうしたの?」
「・・・・・・・・お姉ちゃん、結婚するのぉ?」
やっぱりそのことよね。結婚しちゃうと寂しいとか思ってくれたのかな?
でも相手はよっちゃんだよ?さゆの大好きなひーちゃん。
「ひーちゃんだもんね。なら喜べるんだよ?でも・・・寂しいの」
- 76 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:06
-
そう言ってさゆは私に抱きついてきた。カワイイ。いい子だなぁ。
少し離れてお腹を見つめてる。
「ここに赤ちゃんがいるの??」
「うん。いるの」
私も未だに信じられない。この中に赤ちゃんがいるだなんて。とっても不思議。
「ひーちゃんがパパだもんね。なんか不思議。お姉ちゃんの初恋が実ったってこと?」
「さーゆ。何言ってるの」
そう。梨華の初恋はひとみだった。というよりも、今でもひとみが好きだ。
でもひとみにその感情がないことを知っている。だから口に出すことがなかった。
何人かと付き合ったが、ひとみ以上の人は現れなかった。
歳を重ねるごとにかっこよくなるひとみに、ドキドキしていた。
- 77 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:06
-
そして梨華にはまだ隠していることがある。ひとみにも伝えていないこと。
言うべきか言わないべきか。それを伝えたときひとみはどう思うのか。
喜ぶ気がしないでもない。しかし自分を責める気がしないでもない。
それならこのままで墓まで持って行こうかなんて考えている。
このままでも十分幸せになれそうだから。
さゆは部屋に戻っていった。私はベットに横になる。
これから先のことなんて考えられない。幸せになること。それだけを考えよう。
「よし!幸せになるぞ〜」
- 78 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:07
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「ふぅ」
俺は今、部室の前に来ている。緊張するな。みんな知ってるよな、たぶん。
覚悟を決めてドアを開ける。
「おはよう」
「おぅ、おはよう。久々だから俺身体動かないかも」
「自主練すればいいのに、ダラダラしてるからだよ。よっちゃんおはよ」
なんだ?みんな普通だな。聞いてないのか?周りを見てもいつも通り。
緊張して損したぁ。さ、練習練習。
- 79 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:07
-
練習も終わり、各々が着替えをして荷物をまとめている。そこへ美貴がやってきた。
「ちょ、飯食って帰ろう」
「おぅいいね。何食う?」
学校を出て、近くのファミレスに入った。メンバーはいつも通り。
美貴・亜弥・ごっちん・まこと・辻・亀ちゃん・俺の6人。
席に着くとみんな一斉にニヤニヤしだした。まさか・・・・・・
「んで?どういうことなのよ、吉澤君」
「・・・・・・・・・・まこと、何か言われてるぞ」
「ちげーよ。吉澤ひとみ君」
- 80 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:07
-
なんだ、やっぱりみんな知ってたのか。そりゃまことが黙ってるわけないよな。
「まぁそういうことですよ」
「ごまかすなよ〜いつから?」
「いつの間にか」
「なんだよそれ。やっぱ近くに居たらそうなるのかぁ?
しかもばっちり子供作っちゃってるし」
みんな笑っているけど、なんか複雑だな。俺こいつらに嘘ついたことなかったのに。
初めてで最大の嘘。みんな信じているみたいだし。
「ま、良かったよ。やっとって感じだからさ。いつくっつくんだろって思ってたし」
「あたしも。なんか安心した」
- 81 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:08
-
いやいや。くっつく予定なんて無かったし。幼馴染だからずっと一緒に居ただけだぞ。
「やっとって。幼馴染だから近くに居ただけだろ」
「はは。今時そこまで仲の良い幼馴染なんて居ないと思うよ?俺の周りでは2人だけ。
だってまこととさゆちゃんなんてそこまで仲良くないでしょ」
そう言われてみればそうだけど・・・・・あいつらは歳が違うからな。俺ら同い年だし。
・・・・・・・・俺なんで梨華の近くにずっと居たんだろ。離れようと思えば離れられた。
・・・離れたくなかったのか?だから父親になっても良いと思ったのか?よく分からん。
「今度さ、梨華ちゃんも連れてご飯食べに行こう。最近会ってないから会いたい」
「そうだな。お祝いも含めてそうしよ」
「梨華ちゃんが母さんになるのか・・・・・」
- 82 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:08
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
ファミレスを出て、僕、後藤真希はツージーと一緒に帰っている。
よっすぃ〜と梨華ちゃん。あの2人が付き合っていただなんてあり得ないと思う。
梨華ちゃんが好意をもっていたのは何となく分かる。でもよっすぃ〜は・・・
第一毎日のように一緒に居る俺らに隠しきれるわけがない。
「後藤さん。変なこと言ってもいいですか?」
「ん?どした?」
「あの2人が付き合っていたとか、信じられないんですけど」
ツージーはなかなか勘がいい。その通り。あの2人が付き合っていたなんてことはない。
でも子供が出来たのは確かだろう。そんな嘘つくわけが無い。何か隠しているのは確かだ。
そう。よっすぃ〜が必死に隠している。それならこれ以上触れる必要はないな。
「ツージー。このことは黙ってような。2人が考えて選んだろうから」
ツージーは黙って頷いた。
- 83 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:08
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「ねぇ、たん。おかしいと思わない?」
「何が?」
「だって・・・2人が付き合ってたと思う?」
「えぇ?付き合ってて子供できたから結婚するんだろ」
そんな風には見えなかったよ。
だって付き合ってる人達ってそれなりに雰囲気あるじゃない?2人には無かった。
なんか隠してるようにしか思えない。疑いたくないけど、疑っちゃう。
「もしかしたら、よっちゃんの子じゃないんじゃない?」
たんはあたしの顔をジッと見て、「まさか」と漏らした。
「よっちゃん優しいから」
- 84 名前:True dream 投稿日:2006/09/10(日) 21:09
-
そういうことがあるかもしれない。それっていいのかな?
「2人の間に愛はないってことか?」
「ううん。あたしは2人の間に愛があると思ってる。よっちゃんが気付いてないだけ。
たぶん愛があるから父親になる決断できたんだと思うよ?」
「それって・・・いいのか?俺ら、止めた方がいいんじゃない?」
わかんないよ、そんなの。よっちゃん嬉しそうだったし。
本当によっちゃんの子かもしれない。でも違ったら、止めるべきな気もする。
仲間として、2人が一番良い道に進むため、フォローしてあげたい。
つづく
- 85 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/10(日) 22:37
- 幸せになって欲しいねぇ
- 86 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/10(日) 23:45
- 鈍感、よっちゃん。。
でも、二人で幸せになってほすぃ〜。
- 87 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/11(月) 02:10
- ちょっと複雑ないきさつだけどそれをあえて明るくっていうのは良い意味で読者を裏切ってていいですね。
でも梨華ちゃん、まだ何かあんの?(苦笑)
とにかく同じく二人には幸せになって欲しいです。
- 88 名前:名無し 投稿日:2006/09/11(月) 03:05
-
>>85:名無飼育さん様
なってほしいです!
>>86:名無飼育さん様
自分の気持ち気付かない時ってありますよね。
そんなよっちゃんです。
>>87:名無飼育さん様
スイマセン。梨華ちゃんの秘密が読者の皆様を更に裏切ります。
大どんでん返し?あるかもです。
ではヨロシクお願いします。
- 89 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:05
-
10月。妊娠三ヶ月。
「ひとみ、ちょっと」
母さんに呼ばれてソファーに腰をかけた。母さんもその近くに座った。
難しい顔をして俺の顔をジッと見ている。
「なしたの?」
「聞いておきたいことがあって。梨華ちゃんと付き合っていたって嘘でしょ。
お腹の子があんたの子だっていうのも嘘。何十年一緒に暮らしてきたと思ってるの?
お母さんは騙されないわよ」
母はするどい。始めに話した時点で気付いているかもとは思っていたけど・・・
俺は本当のことをきちんと話した。いくら嘘をついてもバレルと思ったから。
母さんは未だに難しい顔をしたまま。心配してくれているのが伝わってくる。
- 90 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:06
-
「あなた達が色々考えていたのは分かったわ。でもそれだけが正解ではないと思う。
もし梨華ちゃんに好きな人が出来て、
その人が子供を受け入れてくれる人だったらどうするの?その逆も有り得る。
ひとみに好きな人が出来たらどうするの?梨華ちゃんを捨てるの?」
「そんなわけないだろ」
「じゃあどうするの?自分の気持ちよりも梨華ちゃん優先に出来るの?
お母さんは反対よ」
そんなこと考えてもみなかった。言葉に詰まり、返すことができない。
俺にこの先好きな人が出来ないとは限らない。梨華はどうだろう。
もしかしたら今好きな人がいるかもしれない。
その人が子供を受け入れてくれたら、その人一緒になる方が幸せだ。
「梨華のことは分からない。でも俺は・・・大丈夫だ。何があっても梨華と子供優先。
最初は世話になるかもしれないけど、働くからさ。2人養っていけるぐらい、
必死に働くから。だから・・・・・頼む、認めてくれ」
母さんは「少し考えさせて」と言い残し、買い物に出かけた。
- 91 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:06
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「梨華、ちょっと」
一方で梨華も母親に呼ばれていた。梨華の母もまた、2人の嘘に気付いていた。
「なあに?」
「ここ座って。話したいことがあるから」
ママがいつになく真剣な顔で私に話しかけるから、とても嫌な予感がした。
テレビも何もつけていなくて、この空間には私とママだけ。変な圧迫感がある。
「ひーちゃんとのことなんだけど。ママに嘘ついていることあるわね?」
隠し切れない。それよりも早く誰かに言って、楽になりたいという気持ちのほうが
強かった。私はママに全てを話した。
- 92 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:06
-
「やっぱりね」
顔が見れない。その声で怒っているって分かったから。
「そこまでしてもらう必要があるの?あの時はOKしたけど、今は反対の気持ちが強い。
どうするの?ひーちゃんに好きな人が出来たら。将来を奪っちゃうようなものよ?」
よっちゃんの将来。フットサルで食べていきたいって夢がある。それは知っている。
私はその夢を壊してしまったかもしれない。
「よっちゃんにもし好きな人が出来たら、私は身をひくつもり。
それぐらいの覚悟はあるわ。」
「じゃあ梨華に好きな人が出来たら」
「大丈夫。よっちゃん以上に好きな人なんて現れないもの。初恋が実ったの。
少しだけでもよっちゃんの奥さんになりたい」
- 93 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:07
-
ママの顔はやっぱり険しかった。ママだって知ってたでしょ?
私がずっとよっちゃんのこと好きだったて。今も好きだってこと。
「ママはひーちゃん好きよ。昔から優しかったし、気も使える子だし。
だからこんなに簡単に決めてほしくないの。1日で決めちゃったでしょ?
梨華はちゃんと考えてると思う。でもひーちゃんがそこまで考えてるとは・・・」
ママ。もしかしてよっちゃんのことバカにしてる?まぁバカだけど。
たぶん今回のこともあんまり深く考えてないけど。あとで気付くこと多いと思うけど。
「ひーちゃんママも今、話していると思うわ。2人でおかしいってことになって、
お互い聞いてみようって話したの。ひーちゃんがそれを聞いてどう思うか。
梨華は信じられる?」
私は自信満々に答えた。
「もちろん」
あの時の言葉を信じてる。「梨華の子供なら愛せるよ?」って言葉。
- 94 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:07
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
私は今、まこっちゃん家の近くの公園に来ている。もちろんまこっちゃん待ち。
学生はお金が無いからって、今日は公園でお散歩デート。天気が良くて気持ちいい。
小さい子があちこちで遊んでいて、ベンチではお母さん達が談笑中。
私もあんな風に普通に幸せになりたいと思う。まだまだ先の話だけどね。
しばらく子供達を見ていると、その中に大きい人が混じっているのに気がついた。
「辻さん?」
まさかと思って近づくと、やっぱり辻さんで・・・
「辻さん!何やってるんですか!?」
- 95 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:09
-
「おおぅ、亀ちゃん!何って。見りゃ分かるでしょ?」
辻さんはニッと笑ってまた遊び始めた。どっからどう見ても砂遊び。
しかも小さい子に混じって。あんまり違和感ないし。
まこっちゃんも子供っぽいと思っていたけど、辻さんは最強だね。
大学2年で砂遊びしている人なんて辻さんぐらい。しかも公園で。
自然と笑顔になってしまう。こんな辻さんが好きだから。ずっと見ていたい。
まこっちゃんに一目惚れしたってことになっているけど、本当は辻さんに一目惚れ。
高校2年生のとき、さゆに付いて行ったフットサルの試合で、初めて辻さんに会った。
背は高くないのに存在感はとっても大きかった。
必死にゴールを守る姿を見て、この人に守られたいと思ったのが本当のところ。
さゆの幼馴染のまこっちゃんに挨拶に行くと、辻さんが一緒に居た。
試合とは違った優しい笑顔にもっと惹かれた。でもそれは叶わぬ恋。
- 96 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:10
-
さゆも辻さんが好きだったから。試合を見に行ったのも辻さんを見るため。
横でずっと好き好きって言われたら、私もなんて絶対に言えない。
その時この気持ちをそっと胸にしまい込んで、鍵を閉めた。
「辻さん。いつまで遊んでるんですか?」
「ん?この子らが帰るまで」
辻さんの周りにはたくさんの子供達が集まっていた。
みんな「のん」とか「のの」とか呼んでいて、とっても仲良しみたい。いいなぁ。
あんな風に辻さんに近づきたいなぁ。
私はとってもずるい。辻さんを諦めるなら、せめて近くに居たいと思った。
だから同じ大学に進んでフットサル部のマネージャーになった。まこっちゃんの彼女にも。そうすれば近くに居れるって、考えたの。ずるいよね。酷いよね。
でもちゃんとまこっちゃんも好き。
- 97 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:11
-
「亀ちゃん何やってんの?暇なら一緒に遊ぶ?」
すっごく遊びたかったけど、服汚れるし。デート前に汚したらまこっちゃんに怒られそう。
だから我慢我慢。見てるだけでも満足です。
「これからデートなんで。服汚せないです」
「・・・・・そっか」
一瞬寂しそうな顔をして、またいつもの笑顔に戻った。
寂しそうな顔にキュンとなって、笑顔にもキュンとなる。閉まったはずなのに。
鍵かけたはずなのに。どうして出てこようとするの?私にはまこっちゃんが居る。
辻さんにはさゆが居る。まだ付き合ってないけどいい感じだし。だから出てこないで。
「亀ちゃん?どした?」
気がつくと、しゃがんでいる私の目の前に砂だらけの辻さんが立ってた。
- 98 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:12
-
「具合とか悪いの?なんか苦しそうだけど」
違うの。あなたを思うと胸が苦しくなる。それだけなの。そんな顔しないで。
「大丈夫ですよ?何でもないです。辻さんが子供だなって思っただけ」
辻さんは笑ってまた砂場に戻っていった。
まだまだ遊んでそうな辻さんを見ていると、まこっちゃんがやってきた。
「のんつぁん!?まーた遊んでるの?」
「お、まこと。一緒に遊ぶか?あ、デートだから無理か」
「いっつもなんだよ。この子供達とは完全に顔なじみ」
まこっちゃんは呆れたように言った。絶対大学生に見えないよねって。
まこっちゃんもあんまり変わらないけどねって言ったら怒るかな?
もうちょっと見てたかったな、子供と戯れる辻さんを・・・
- 99 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:13
-
「辻さーん」
遠くから声がする。私が毎日のように聞いている声。さゆの声。
「おぉ。どした?」
「もしかしたらまた遊んでいるかなと思って来ちゃいました」
辻さんは笑って「んじゃ入る?」と砂場を指差すと、さゆは頷き子供達と戯れ始めた。
いいなぁ。私も入りたいのにぃ。この際だから砂場デートにしちゃおうかな。
でもまこっちゃん嫌がるだろうなぁ。さっき呆れてたし・・・
「絵里、行こっか」
「・・・・・うん」
私たちは辻さんたちにバイバイをして、散歩を始めた。まこっちゃんが話しているけど、
全然耳に入ってこない。心がもやもやしているのが分かる。
「ねぇ、まこっちゃん家行かない?お願い」
このもやもやを消すには、まこっちゃんと身体を重ねるしかなかった。
- 100 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:13
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
僕はとある喫茶店で美貴と亜弥ちゃんと待ち合わせ中。
今日はよっすぃ〜と梨華ちゃんについて、少し話そうということになった。
やっぱり気付いたのかな、あの2人も。
「ゴメンね、遅れて」
亜弥ちゃんが一人でやってきた。いつも居る美貴の姿がない。
「大丈夫だけど、美貴は?」
「なんか用事があるとか言われて、先に行けって。彼女置いてくとか酷くない?」
プンプン怒っている亜弥ちゃん。一応フォローはしてみたけど、あんま効果ないみたい。
この2人は本当にくだらないことでよく喧嘩する。その仲介が僕。
よっすぃ〜は「そういうのめんどくさい」とか言って何もしないし。僕だって嫌だよ。
「2人で話すのって久しぶりだね」
- 101 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:14
-
そう言われて気付く。大学に入ってからはそこまで大きな喧嘩をすることもなかったから、
僕が亜弥ちゃんと2人で話すなんて無いに等しかった。隣にはいつも美貴が居て。
でも美貴と一緒に居て笑っているときの亜弥ちゃんが好きだから、それはそれでいい。
そう。僕は亜弥ちゃんが好き。高校の時から好きなんだ。
初めて会ったのは高校1年のとき。美貴のフットサルにいつもくっついてきていた。
最初はただのカワイイ子ぐらいにしか思っていなかったし、美貴という存在があったから、
意識することもなかった。なのにいつの間にか、とても気になる存在になっていた。
本当にいつからかは分からない。いつの間にか・・・
そしてただ一度だけ、僕と亜弥ちゃんはキスをした。
2人が喧嘩をしていつも通り亜弥ちゃんが僕に泣きついてきた。
しかも好きだと気付いた直後だったため、感情が高ぶってしまったのだ。
あの時のことは2人とも口にしない。
「僕ならどんな用事よりも亜弥ちゃんを取るけどね」
亜弥ちゃんが笑いながら「キザー」とか言っている。悪かったね。
- 102 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:15
-
「今日はあの2人の話しに来たんでしょ?」
「そうそう。もちろんごっちんも気付いてた?」
「何となくは。でもいいんじゃない?2人で決めたことなんだし」
「でもよっちゃんだよ?あの気が多いよっちゃん。
確かに優しいし梨華ちゃん大切にしそうだけど・・・
もしよっちゃんに好きな人が出来たら梨華ちゃんと子供はどうなるの?」
「さすがにさ、分かっているでしょ。もう22歳だし」
「それが2人にとって幸せかどうかが気になっちゃって・・・」
「僕は幸せだと思うよ?お互い好きな人と一緒になれるんだから」
「そうだよねぇ」
- 103 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:15
-
どう考えてもあの2人は好き同士。理由がどうであれ、あの2人が一緒になったことは
僕にとってはとても喜ばしいことだった。
「でも・・・・・たんはよっちゃん達と話すって」
美貴ならやりそうだな。うやむやにしておくのが嫌なんだろう。
掘り返さなくていいってこともあると思うけど、自分が納得しないとダメだからな。
僕も2人のホンネを聞いてみたいし・・・
「悪い、遅くなって」
「今話終わったとこ」
「そっか。じゃさっそく2人呼ぶか」
決まったら即行動。頼もしい友達だよ。
- 104 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:15
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「どうしたんだろう」
俺と梨華はいきなり美貴に呼び出された。しかも怒り口調で。
なんだよ、一体。怒られるのなんてごめんだぞ。
そうこうしているうちに喫茶店についていた。
「お、来た来た〜」
「梨華ちゃん久しぶり〜元気だったぁ?」
「亜弥ちゃん!元気元気」
「なんだよ美貴。いきなり呼び出したりして」
元々目つきの悪い美貴だが、今日は更に悪い。こえ〜
こりゃ新入部員なんて入るわけないよなぁ。
- 105 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:16
-
美貴は俺達を交互に見たあと、「嘘をつくな」と一言だけ言った。
俺は最初なんのことだか分からなかったが、よく考えると分かった。
今回のことを言っているんだろう。なんでバレルんだ?言ってないのに。
「なんのことだよ」
「もういいって。俺らに隠し事とか無しだろ」
梨華をほうを見ると、言ってもいいよって頷いた。そして俺は全てを話した。
「俺は反対だ。そんなの無理だろ」
美貴は何でもズバッと言う。今のが本音なんだろう。でも無理の意味が分からない。
本気で考えていることを無理の一言で片付けられてしまい、良い気分はしない。
「無理ってなんだよ。俺はずっげー考えたんだよ。父親になって少しでも助けようって。
出来ることはないんだよ。何でもしてあげたいけど限られてくる。
だから真面目に父親になろうとしているのに、なんだよそれ!!」
- 106 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:16
-
糸が切れたように俺は話始めた。母さんに言われたことと美貴に言われたことが
心の奥底で響いたからだと思う。その音を消すように話した。
「よく考えろ。よっちゃんの子供じゃないんだぞ?愛せるのか?大丈夫なのか?」
また繰り返される、俺の子じゃないという言葉。
「梨華ちゃんはどうなの?」
そう言われた梨華のほうを見ると、浮かない顔で唇を噛んでいる。
なんか言えよ。これでいいんだって言えば、こいつらも納得するって。
「梨華ちゃんの思ってること言って。あたし達は何でも聞くから」
亜弥の言葉に噛まれていた唇が開かれる。
- 107 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:16
-
「・・・・・・・・・・・・・ダメだと・・・思う」
何が?
「・・・・・・・・うまくいかないよ、たぶん・・・」
どうして?
「一生子供を愛してくれる自信ある?」
すぐにあると言えない自分がとても嫌になった。
あれだけ固く決心したつもりなのに、「当たり前だろ」の一言が言えない。
「答えられないでしょ?それじゃあダメなんだよ」
梨華が小さく言う。喫茶店のBGMだけが響いていた。
- 108 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:17
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「あ、今日あの雑誌出る日じゃん」
公園から帰ってボーっとしていると、ふと今日発売の雑誌を思い出した。
歩いて本屋に向かう。もう20時過ぎだと寒くなってきた。
「あれ、今帰り?」
「・・・はい」
大学生だもんな。別に何時に帰ってもたいしたことないか。
亀ちゃんから吉澤家に匂いを嗅ぎ取り、切ない気持ちになった。
初めてあったのは高校最後の大会だった。
さゆちゃんと一緒に来ていて、初めて会ったときからあの笑顔に惹かれた。
俺は亀ちゃんが好きだった。でも亀ちゃんはまことが好き。
だから2人が一緒に居るところをなるべく見たくないと思っていた。
今日もデートだと聞いたとき、なんだか胸が苦しくなって・・・
今でも好きなのかなって少し思う。そうであってほしくない。まこととは争えない。
ただ俺が身を引けばいいだけ。さっさとさゆちゃんと付き合えばいいのに踏み出せない。
- 109 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:17
-
「何処行くんですか?」
「本屋。家どっち?」
「だぶん辻さんが言っている本屋のほうだと思います」
自然と並んで歩くことが出来て嬉しかったりする。まこと怒るだろうなぁ。
きっと送ってくとか言われたのに断ってそうな気がする。なのに俺が一緒だったら・・・
たいしたことねぇか。完璧相思相愛だし、亀ちゃん好きだってのも言ってないし。
「なんでまことなの?」
「え?」
「あぁゴメン。唐突だったね。なんでまこと好きになったのかなと思ってさ」
亀ちゃんはそのまま黙り込んでしまった。まずいこと聞いたかな。普通だろ。
照れてるのかな?特に気になったわけでもないんだけど。
- 110 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:17
-
「そんな考えないでよ。特に興味あるわけじゃないから」
そう言うと、亀ちゃんは優しく微笑んだ。この顔だよ。俺が惚れたのは。
目をつぶって深呼吸した。そうしないと今にも抱きしめてしまいそうだったから。
「辻さんはどうして彼女作らないんですか?」
これまた唐突。やり返されたな。
「作らないんじゃなくて、出来ないんだよ」
「それは嘘。さゆはあんなにアピールしているのに」
確かに。あれで気付かない奴は居ないと思う。でもさゆちゃんは違うんだよ。
なんか妹みたいな感じだから。付き合えば変わるのかもしれないけど。
- 111 名前:True dream 投稿日:2006/09/11(月) 03:18
-
「妹みたいだからさ。まだ女性として見れないっていうか」
「そっかぁ。さゆ頑張ってるのになぁ」
「申し訳ない」
「好きな人は居ないんですか?」
素直に「ここに居るよ」って言ったら、どんな顔をするだろう。見てみたいな。
でもそんなたちの悪いことしたら、まことに怒られそうだから止めよう。
「居たけどね。もう他の人にいっちゃったから。少し近くに居るだけでいいんだよ」
「絵里もです。少しでも近くに居てくれればいいって思ってます」
「えぇ?まことは物凄く近い場所にいるじゃん?
もしかして他に好きな人が居るとか?まことカワイソウだねぇ」
くだらない話をして歩く時間が、俺にはとても楽しい時間だった。
つづく
- 112 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/11(月) 18:49
- 連日の更新ありがとうございます。
親の翻意など二人を含めて周りが何やら雲行きが怪しい感じですね。
こういう話なんで筋道を立てるのとか大変だと思いますが
頑張って下さい。続き楽しみにしています!
- 113 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/11(月) 22:12
- 更新お疲れ様です。
主役?の二人以外もなんだか複雑に絡み合ってますね
梨華ちゃんの秘密ってよっちゃんに関係してるんですよね?もしかして・・・・
話を壊してしまうといけないので心の中で思っておきます。
- 114 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/12(火) 21:00
- 更新楽しみにしてます
- 115 名前:名無し 投稿日:2006/09/12(火) 22:17
-
>>112:名無飼育さん様
こちらこそ読んでくださってありがとうございます。
周りが渋ってるのも、実はあの方の鈍感さが・・・
>>113:名無飼育さん様
みんな複雑に絡み合わせていますw
梨華ちゃんの秘密・・・合ってるかもしれないですね。
よっちゃんが大いに関係しております。
>>114:名無飼育さん様
ありがとうございます。頑張ります。
- 116 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:18
-
「ちょっと考えさせて」
そう言ってよっすぃ〜は席を離れ、店を出て行った。
僕は少し心配になり、梨華ちゃんの肩をポンっと叩き店を出た。
少し歩くと公園に入っていくのが見えたから後を追い、声をかける。
「大丈夫?」
「あぁ、ごっちん・・・・・俺って何なんだ?迷惑かけてるだけなのか?」
今にも泣きそうな顔をしながら弱弱しく話す。こんなよっすぃ〜を見たのは初めてだ。
「俺はさ、そのほうが良いと思ったからそうしたんだよ。なのに・・・
1人で育てるよりは2人で育てた方が良いじゃん」
さっきから梨華ちゃんのためみたいな言い方してるし・・・
まだ気付いてないのか、自分の気持ちに。どんだけ鈍感なんだ。
言わないと気付かないかな。本当は自分で気付いてほしかったんだけどな。
- 117 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:20
-
「さっきから梨華ちゃんと子供のためみたいな言い方してるけど、
自分の気持ちはどうなわけ?子供が居るからってだけで一緒になろうとしてんの?
梨華ちゃんを好きなんじゃないの?ずっと側に居たいって思ったんじゃないの?」
僕が凄い勢いで話し出したからよっすぃ〜はビックリして固まっている。
でも少しずつ考えるような顔になって、僕に問う。
「俺・・・梨華のこと好きなのか?だから子供も受け入れられるのか?
わかんねぇよ。そうなのか?これって好きってことなのか?」
僕はゆっくり頷くと、まだ信じられないという顔をしてブツブツ言っている。
第一今まで気づかなかった方が信じられないよ。
「そっか・・・・・」
「今から言ってくれば?好きだって伝えればいいじゃん」
また考え込むように難しい顔をして、とってもヘタレな発言をした。
- 118 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:20
-
「でもさ、梨華がダメだって思うならダメじゃん。俺が好きでも梨華はさ。
やっぱり一緒にならないほうがいいんだよ。あいつ言ってたもん。
・・・・・諦めるしかないしょ」
なんでこの人は変なときにヘタレになるんだろ。やっぱまことと兄弟だ。
僕には分からない。お互い思いあってるのに一緒にならないなんて。
こいつは自分が幸せだって気付いてないんだな。
一生片思いの人の気持ちなんて・・・・・考えたこともないだろう。
「勝手にすれば?僕はもう知らない」
- 119 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:21
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「お姉ちゃん?」
家に帰るとさゆが心配そうな顔をして話しかけてきた。情けない顔でもしてたかな。
妹に心配かけるなんてダメなお姉ちゃんだよね。
よっちゃんが出て行ってからは3人とも無言になっちゃって。
沈黙に耐えられなくなった亜弥ちゃんが本当の気持ちを聞いてきた。
私はもちろん、本当は一緒になりたいって2人に言った。だって好きだもん。
よっちゃんの気持ちが確かめたくて、あんなこと言っちゃったけど・・・
即答で返してくれるのかと思ったら詰まっちゃって。本当にヘタレなんだから。
「結婚式あげるの?」
「ううん。籍入れるだけじゃないかな」
「いつお家出て行くの?」
「まだ分からない」
- 120 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:21
-
本当に何も決めてないんだもん。よっちゃんは部活で忙しいし。
しかも迷ってるみたいだし。このまま一生この家で暮らすかもね。
その方がさゆは喜んでくれるのかな。
「お姉ちゃんが居なくなったらさゆみどうしよ」
「さゆには辻ちゃんが居るじゃない」
初めて辻ちゃんを見たとき、一瞬にして恋に落ちてしまったさゆ。
そのことは一番に教えてくれて、私もうまくいってほしいなぁなんて思ってた。
あれから何年も経ってるのに2人は進展ないのよね。
辻ちゃんにならさゆを任せられるんだけど。
「辻さんは大好き。でも辻さんはさゆのこと、妹としてしか見てないもん」
そう言ってさゆはとても寂しそうな顔をする。確かに一緒に居るのを見ても、
辻ちゃんはさゆのこと世話の焼ける妹的目線で見てるかも・・・
- 121 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:21
-
「それにね」
さゆは続けた。
「辻さんは絵里が好きなの。ずっと・・・絵里だけを見てるの」
そうだったんだ。辻ちゃんはカワイイ後輩として接してきてはいたけど、そう言う話、
聞いたことなかったなぁ。とってもモテる子だとは思うけど。
それに絵里ってまことの彼女じゃない。だから実らないのね。
それを知っているのに辻ちゃんを思い続けているなんて・・・健気な子・・・
「そう。でも辻ちゃんが好きなのね」
「うん!だーいすきなの!!」
そう言って笑うさゆは、最高にカワイイと思った。
- 122 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:22
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
翌日の夜。
夕食を済ませて部屋で雑誌を読んでいると、下から聞きなれた声が聞こえ、
階段を上がってくる音がする。今日は珍しくドアがノックされた。
「はい」
「あ、よっちゃんでーす」
ドアを開けて部屋を見回しながら、私が腰掛けているベッドの隣に腰を下ろした。
そのあとも何も言わずに部屋を見回している。
私は沈黙が嫌になって、問いかけた。
「どうしたの?」
「ん?うん・・・・・やっぱさ、梨華の気持ちを尊重しようと思う」
- 123 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:22
-
最初、よっちゃんから発せられた言葉の意味が分からなかった。
真剣な目。そこから言いたいことが読み取れた気がする。
「やっぱダメだったんだよ。諦めるしかないかなって」
やっぱりそこまで考えてくれてなかったんだ。簡単に諦めちゃうなんて。
きっとのりであんなこと言ったんだよね。優しい人だから。
「そう」
私はよっちゃんと逆の方を向いてまた雑誌を読み始めた。なんかイライラする。
自分から言ったことだけど、それに対してイエスを出したよっちゃん。
やっぱり生む決心なんてしなければ良かった。やっぱシングルマザーじゃん。
「もう一つ、聞いてほしいことがあるんだけど・・・」
私が怒っていることが分かったのか、恐る恐る話しかけてくる。
- 124 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:22
-
「これは本当に言いづらいことなんだけど・・・・・」
ごもごも喋るから聞き取りずらい。男のくせに。はっきり喋ってよ!!
「簡単に言うとね、俺さ、梨華のこと好きなんだよ」
「・・・・・・・・・・」
「子供が居るからとかそういうの抜きで。一人の女性として好きらしい」
らしいってなによ。今更そんなこと言って。本当に勝手なんだから。
そうやって自分勝手にどんどん進んで。
「だから、好きな人の意思を尊重したいって言うか・・・」
よっちゃんは「それだけ言いたくて」と言って部屋から出て行こうとする。
ほんと、何も分かってない!!
- 125 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:23
-
「ちょっと待ちなさいよ!」
私の怒りは頂点まで来ていた。あんまり妊婦怒らせるんじゃないわよ。
「どうせそのぐらいの気持ちだったんでしょ?
何も考えずに適当に優しい言葉かけただけなんでしょう?」
「違うよ!あの時は本当に。父親になろうと思ってた」
「じゃあなんで止めようなんていうのよ!!」
「それは梨華が」
「私が本当にダメだなんて思っているわけないでしょ!?
よっちゃんの気持ちを確かめたかったの。本当にそれでいいのか!」
私は今すごい顔をして怒鳴っていると思う。
でも止まらない。止める必要なんてないよね、この際だから。
- 126 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:23
-
「ヘタレ!!もっと強引に『一緒になろう』って言えばいいでしょ!?」
「あ、いや、え・・・」
「そしたら・・・・・どこまでもついて行くよ・・・・・」
私はあなたにどこまでもついていく覚悟は出来ていた。だって好きなんだもん。
一緒に居られるだけで幸せでしょ?よっちゃんは呆然としたまま何も言わないけど。
私は疲れてベッドに横になった。一生懸命怒鳴ったから疲れたわよ。
もう少し妊婦を労わってよね。
よっちゃんは変わらずドアの前で呆然としている。考えているのか考えていないのか。
そして突然思い出したように部屋を出て行った。
もう何なの?何にも言わずに出て行くとか・・・ないよね・・・
私はドアに背を向けて横になる。
- 127 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:23
-
しばらくするとまたドタドタと階段を上がる音がする。戻ってきた?
こんな乱暴に戻って上がってくるのはよっちゃんしかいない。
ベッドから起き上がり部屋に入ってくるのを待つ。
ドアが開けられ、思ったとおりよっちゃんが入ってきた。近づいてくる。
そして次の瞬間、ギュッと抱きしめられた。
「・・・え?なに?」
「抱きしめたことなかったなと思って」
そりゃ無かったけど。いきなりどうしたのってことでしょ。
嬉しいけどさ。今までで一番近くに感じるような距離。心臓の音まで聞こえてきそう。
「あのさ、俺と結婚してくれないか?」
「え?」
「なんかもう分からなくなっちゃって。梨華が側にいてくれればそれでいい。
つーか側に居てほしい。つーか俺が死ぬまで側に居ろ」
- 128 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:24
-
そう言ったよっちゃんの顔は本当に優しい顔をしていて、私が大好きな顔だった。
そんな優しい顔して命令口調だったら、誰でもOKしちゃうよ?
他の人に今の言葉言わないでよね。私だけの言葉にして。
私はギュッとしがみつき、よっちゃんの腕の中で何度も頷く。
「良かったぁ」
ちらっと顔を見ると、本当に安心しきったような顔をしていた。
「顔崩れてるよ?」
「えぇ?だって嬉しいんだもん。崩れるっしょ」
まぁそんな顔も好きなんだけどね。周りの人にはあんまり見せないその表情が。
少し離れ見つめ合うと、ゆっくりよっちゃんの顔が近づいてくる。
私はそっと目を閉じると唇が重なった。
- 129 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:25
-
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
- 130 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:25
-
さっき出て行ったのは、よっちゃんママに自分の気持ちを伝えるためだったみたい。
正直に自分の気持ちを伝え「結婚する」っと言ったら、よっちゃんママは
「それを聞きたかったの。あんたが梨華ちゃんのこと好きって気持ちが」
そう言って笑ったんだって。自分の気持ちに気付かない息子にイライラしてたとか。
自分のためだと言ってほしかったみたい。
そりゃあ人のためより自分のために幸せになってほしいと思うのが親心よね。
「美貴たちにも言わなきゃな」
「そうだねぇ」
「・・・・・もう一回していい?」
「・・・・・・・・うん」
私は笑顔で答えた。
- 131 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:26
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
梨華に自分の気持ちを伝えた次の日。大学で美貴たちにも伝えた。
美貴たちは「最初から素直になれば良かったんだよ」って笑ってた。
そんなこと言われても、最初はそんな気持ち無かったっていうか、
気付かなかったわけだし・・・しょうがないじゃないか。
「じゃあさ、就職活動しなきゃダメじゃん」
そうだった。今まで余裕こいてたけど妻と子供を養っていくにはまず就職。
っていっても一度も就活したことのない俺はどうしたら・・・
「フットサルどころじゃなくなるね」
うぅ。俺にはフットサルが梨華と子供の次に大事なのに。でも梨華達の方が大事だから、
フットサルを諦めるしかないのか・・・あぁ。
- 132 名前:True dream 投稿日:2006/09/12(火) 22:26
-
「じゃあ後は俺に任せて、フットサル部引退したらどうだ?」
「嫌だ」
「いやいやいや。任せておけって。試合も出なくていいから」
そんな冷たい言い方するなよ。せっかくこの時のために一生懸命やってきたんだから。
出なくていいとか・・・・・グレてやる。
「何とかなるよ。最後の試合なんだしさ。みんなで頑張ろ」
あーまだまだ俺には試練がたくさん残ってんなぁ・・・・・
つづく
- 133 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/12(火) 23:28
- 連日の更新お疲れ様です。
ようやく、やっと自分の気持ちに気付きましたね
試練がまだまだあるけど愛する梨華ちゃんたちとの幸せの為にガンバレ!よっちゃん!!
- 134 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/13(水) 22:08
- 更新お疲れ様です。
なんだかみんなにいろいろな物語があって
とても奥が深いなぁと感心しております。
これからも頑張ってください!!
- 135 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/13(水) 22:50
- とりあえず二人はこれでやっと本当のスタートラインに立った訳ですね。
続き楽しみにしています。
- 136 名前:名無し 投稿日:2006/09/14(木) 01:12
-
>>133:名無飼育さん様
やっと気付きました。幸せのためによっちゃんは一生懸命です。
>>134:名無飼育さん様
そう言って頂けるとありがたいです。
いろんな話が入り混じっていますが、気長にお願いします。
>>135:名無飼育さん様
これから二人で頑張っていかなくてはいけないのですね。
- 137 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:13
-
11月。妊娠4ヶ月。
今月は大会がある。今まで土日は朝から晩まで練習をしていて、遊ぶ暇が無かった。
今度の日曜日は久しぶりに午前練だけで、午後からはオフだったから、
どっか遊びに行かないかまことを誘おうと思っていた。
「まこと〜、今度の日曜さ」
「ゴメンのんつぁん。日曜絵里と映画見に行く約束してるんだよね」
そうだよな。久しぶりに遊びに出かけられるんだから、デートしますよね。
どうせ俺には彼女居ないからまことしか誘うことが出来ませんでしたよーだ。
「切ない」
「え?なに?」
「何でもねぇ。遊びすぎて疲れて倒れろ」
- 138 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:13
-
まことは「なんだよそれ」って笑いながら流したけど、寂しいんだぞ、俺も。
公園でも行くかな。子供達居るかもしれないし、そしたら寂しくない。
「あ、まこっちゃん!」
うぅ。また俺の胸を締め付ける奴が現れやがった。
声聞いただけで苦しくなるとか、もしかして重症かな。
あまり2人の前に居たくないから俺はさっさと昼食を済ませ、席を立つことにした。
「あれ。もう行くの?」
「うん。あんまり見せ付けられると寂しさが倍増するから」
笑いながら席を離れると、すぐにさゆちゃんが後を追ってきた。
何も言わずに後をついてくる。ときどき上目遣いで俺の顔を見たかと思うと、
またすぐに俯いてしまう。言いたいことがありそうな無さそうな。
「何か?」
- 139 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:14
-
話しかけると考え込むような顔をして、俺を見上げ、また俯く。
なんだこの子。本当によく分からないな。何考えているんだか。
「辻さんて」
突然言葉を発したさゆちゃんのほうを振り向く。
「絵里のこと好きですよね?」
なんで分かるんだ?人前では絶対に態度に出さないようにしてたのに。
なるべく見ないようにしてたし、話さないようにもしていた。
全く話さないのも変だから、自然に自然に。
「さゆちゃん。今度の日曜暇?」
「え?」
突然話を変えられて困っているのが手に取るように分かる。
- 140 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:14
-
「暇だったらどっか遊びに行こうよ。寂しく1人なんだよね。付き合って」
とても動揺した。すべてを見抜かれていそうで。
こんなにポワワンとしているのに、核心をついた言葉に焦ってしまった。
その話題に触れないように話をどんどんずらしていった。
逆に怪しいと思うけど、その話をするよりはマシ。心を乱されるから。
「じゃあケーキでも食べに行こっか。チョコレートが好きなんだよね」
「はい!覚えててくれたんですか?」
あれだけチョコレート好きを宣言されれば、忘れようと思っても忘れないよ。
さゆちゃんの行きたいところに付き合ってあげよう。
振り回されそうだけど、たまにはそういうのもいいかもしれない。
久々の休みに思いっきりはしゃぐっていうのもありだよね。
「ばっちりお洒落してきてね」
「もちろんです」
- 141 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:14
-
^^^^日曜日^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「間違ったぁぁぁぁぁぁ!!」
「またぁ?」
よっちゃんは就活のために履歴書を書いている真っ最中。でもさっきから間違えっぱなし。全然先に進まないの。慣れてないからとか言い訳してるけど、集中力が足りないのよ。
「もう止めた。休憩」
「さっきもしたでしょ?そんなんじゃ本当に就職できないよ」
唇を尖らして、「だって」とかまた駄々をこねている。最近はずっとこれ。
父親になるって人が子供みたいなことしてどうするのよ。
「頑張ろ?ね?」
- 142 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:15
-
よっちゃんをため息をついて、俯いている。
「俺には向いてないんだよ、就活とか。もっとこう華やかにパパッと決めたい」
「無理。さっさと履歴書書いてね?」
私が怒り半分でニコッとして言うと、「へーい」とまたペンを動かし始めた。
お願いだから就職してね。嫌よ、ニートの妻とか。生活できるぐらいは稼いでね。
最初は満足な生活が出来ないかもしれないけど、徐々に良くなるはず。
まずは就職よ。私達のために。
「次の検診いつだっけ?」
「水曜日の1時半」
「じゃあ1時ぐらいに出ればいいな」
「うん」
- 143 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:15
-
よっちゃんは病院に行くたびに必ず車を出してくれて、先生の話も一緒に聞いてくれる。
とっても熱心なパパねって言われるぐらい、真剣に何でもしてくれる。
先生の話に喜んだり驚いたり。いっつも笑われているんだよね。
お腹を触ってはいつ出てくるのか話しかけたり。
あんまり話しかけるとバカがうつるかもしれないから止めてね。
「そういやさ。やっぱり結婚式ってあげたい?」
「あーでも子供生まれてからでもいいかな?とか思う。そんなに焦らなくても」
「そっか」
そんなに焦る必要はないよ。出来なかったらそれでいいし。学生なんだからお金もない。
籍入れれるだけども十分。それもまだしてないけど。
「じゃあ籍はいつ入れる?いつでもいい?」
特にこだわりは無いんだけどなぁ。なるべくなら早くしたいかも。
紙一枚だけど、あれを出せばみんなに認められた気がして実感が湧くと思うし。
- 144 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:15
-
「早くがいい」
「ん。じゃあこれ書いて」
そう言って出してきたのは婚姻届。いつもらってきたの?
しかもそんな雑に扱わないでよ。大事なものなんだからね。
「明日にでも出しに行こう。それから俺らは夫婦。しっかりしろよ、嫁」
「よっちゃんがお婿さんに来てくれるんじゃないのぉ?」
「はぁ!?そんな話してないだろ」
だって石川家は女2人だし。長女の私がお婿さんもらうべきでしょ?
吉澤家はまことが居るし、別に1人ぐらい居なくても大丈夫じゃない?
「婿さんなの?確かに石川家は女2人だから・・・
そうしたほうがいいのかもしれないけど・・・」
- 145 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:16
-
あーあ。真剣に考えちゃった。言ってみただけなのに。
「嘘だよ。気にしないで。私は吉澤家に嫁ぎますから」
「いいのぉ?」
「いざとなったらまことにさゆと結婚してもらって、お婿さんに来てもらえばいいし」
そうだねってよっちゃんも笑いながら承諾しちゃった。有り得ないことなんだけどね。
話しているうちに、よっちゃんがまた履歴書をグシャグシャに丸めた。
「また間違ったのぉ?」
「う〜ん。なんで出来ないんだろ。出来ないことなんてなかったのに」
小さいときからよっちゃんは何でも出来る子だった。何をさせてもうまくこなす。
逆にまことは不器用だったから、いっつもお兄ちゃんを尊敬の眼差しで見てたなぁ。
でも何でも簡単にこなしちゃうから、打ち込めるものがなかったんだよね。
ダラダラ適当に過ごしていた気がする。
- 146 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:16
-
「ダメだ!!気分転換に球蹴りしてくるわ」
そんなよっちゃんが初めて打ち込めたのが小学校の時に始めたサッカー。
中学校に入ってからはスピード感があって面白いからってフットサルに転向。
それを大学卒業するまでやっているんだから凄いことよね。
きっと卒業してからもどっかでやるんだろうなぁ。
私はルールとかよく知らないけど、フットサルをしているよっちゃんは別人みたい。
目から違うのよね。あの真剣な眼差しからフットサル好きなんだなって分かる。
「私も行くぅ」
ずっと家の中に居てもつまらないし、外の空気も吸わないと。
公園でゆったりするのも嫌いじゃない。天気もいいし最高。
手をつないで公園に向かう。最初は恥ずかしかった手を繋ぐことも、だいぶ慣れた。
子供が生まれたら子供に取られるかもしれないから、今のうちに繋いでおこうって。
なかなかカワイイこと言うんのよね、よっちゃんて。
途中仲良く並んで歩いてくるさゆと辻ちゃんに会った。
- 147 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:16
-
「あ、お姉ちゃん。2人で何処行くの?手なんて繋いじゃって」
さゆがニヤニヤしながら近づいてきて、
後を追って辻ちゃんもニヤニヤしながら近づいてきた。
「2人でサッカーでもするんですか?」
「んなわけねーなだろ。公園行くんだよ、公園」
2人は「ならついて行こう」と言うので、4人で公園までの道を歩いた。
その間も、手を離すことはなく繋がれたままで。
「お前らこそ何やってんだよ。最近2人で居ること多くないかぁ?」
「そりゃ友達が恋人同士ですからね。自然と一緒に居ますよ」
「そんなこと言って、お前らもデートしてんじゃん」
- 148 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:17
-
よっちゃんは冷やかすように言ってるけど。2人とも複雑なのよ。
好意を持たれててもそれに答えられない子と、
自分の友達を好きだって分かってるのに諦められない子達なんだから。
それでも辻ちゃんは笑って返してくれるのよね。
「そうですよ。デートです。ね?」
「え?・・・・・はい」
「俺のカワイイ妹に手出してんじゃねーぞ!泣かしたら承知しねぇからな」
「・・・・・任せてください。俺と一緒に居れば幸せになりますよ」
辻ちゃんは笑いながらよっちゃん言った。それが本心なのかどうなのか。
その顔からは全く読み取れない。分かりやすい子だと思ったのに、結構深いのね。
逆にさゆはとっても切ない顔をしていた。どう反応していいのか分からないような。
そのまま公園に入り、よっちゃんと辻ちゃんはパスをしたり、リフティングをしたり、
楽しそうに過ごしていた。私とさゆはベンチに座り話しをすることにした。
- 149 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:17
-
「さっきの辻ちゃん。なんだったんだろうね。まだ付き合ってないんでしょ?」
さゆは俯いてコクリと頷いた。そうよね、付き合い始めたらまず私に報告するもんね。
ただの冗談なのかな。さゆの気持ちを知っていて、そんなこと言う人じゃないと思うけど。
「この前ね、辻さんに絵里のこと好きなんでしょ?って聞いたの。
はぐらかされちゃったけど」
なかなか正直には言えないよね。そんなことを直接聞くさゆも凄いけど。
「もうこの際だから、アタックしちゃえばいいじゃない」
「・・・・・・・・・でもダメだったら・・・・・今の関係壊れない?」
今まで友達としてたくさん遊んできた2人。普通ならぎこちなくなりそう。
でも辻ちゃんなら・・・・・
「さゆの好きな人は辻ちゃんよ?
もしダメでも、あの子なら今までどおりに接してくれると思うわ」
- 150 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:17
-
自信なさげに小さく頷いたけど、私は大丈夫だと思う。
そんなことで態度が変わる子には思えないし。でも辻ちゃんの気持ち聞きたいわね。
私はよっちゃんを呼び、ジュースを買ってきてもらうように頼んだ。さゆと一緒に。
よっちゃんは「なんで俺が」とか文句言ってたけど無視無視。
「なんか言いたいこととかありますか?」
辻ちゃんは私の行動で何かを悟ったのか、横に座り笑顔で話しかけてきた。
勘がいい子。たぶん聞きたいことも分かってるはず。
「何言いたいか分かってるんでしょ?」
「まぁ何となくは。さゆちゃんをどう思っているのか?」
そう言った辻ちゃんはとても真剣な目をしていた。
いつもニコニコしているから、真剣な顔はフットサルでしか見たことがなかった。
まるで百面相ね。さっきニコニコしていると思ったらすぐにこんな顔になるんだもん。
- 151 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:18
-
「好きですよ、さゆちゃん」
さゆのいいところをたくさんあげて優しい顔をしている。
「でも女性として好きなのは絵里なんでしょ?」
前を向いたままだったけど、驚いているのが分かった。そして頷いたのも。
正直こんな簡単に認めるとは思ってなかったから、なんて言葉を返していいかわからない。
「みんながみんな、好きな人と付き合えるとは限らないんですよね。
自分が好きでもその人が違う人を好きだったら、一緒になれないんですよ。
もし俺が好きだって伝えたとしても、幸せになれる人なんて居ないんです。
みんなを悲しませるだけですから」
その言葉から本当に悩んでいるんだって伝わってきた。誰にも言えなかったんだと思う。
親友の彼女が好きだなんて。唯一相談できる人の彼女を好きなんだから。
ずっとその苦しみを抱えていたんだと思うと、私は泣きそうになってしまった。
周りにはそんな素振りを全く見せずにいつも笑顔でみんなを笑わせて。
私は何も考えずに、気付くと辻ちゃんを抱きしめていた。
- 152 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:18
-
「吉澤さんに見られたら、俺殺されますよ」
「だって・・・・・苦しかっただろうなぁ思って」
首を横に振りながら笑っているのが分かったけど、
それでも抱きしめずには居られなかった。何も言わずに抱きしめられている辻ちゃんは、
本当は誰かに聞いてほしくて、抱きしめられたかったのかもしれない。
少し経ったところで私は辻ちゃんから離れた。するとすぐによっちゃん達が帰ってきた。
「ありがと」
「もう帰ろ。履歴書書かんと」
そう言ってよっちゃんは乱暴に手を差し出す。私もその手を握る。
きっと2人はどこかで見ていたのだと思う。だって少し怒っているもん。さゆも。
帰り際に辻ちゃんが私に言った。
「大丈夫大丈夫。今幸せですよ」
いつもの辻ちゃんの最高の笑顔で。
- 153 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:18
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
2人が帰ってからもさゆちゃんと2人で公園に残っていた。
もう日が落ちてきて、周りで遊んでいる子なんて居ない。
お互い何も話さないから音がこの世にないような錯覚陥るぐらい静かだ。
何から話せばいいのか分からないし、こういうシチュエーションが苦手だし。
もう決めたんだ。さゆちゃんと付き合おうって。グチグチしてても何も始まらないし。
「さっき・・・・・お姉ちゃんと何話してたんですか?」
さゆちゃんがきっかけを作ってくれた。俺は乗らなくてはいけない。
「ん?さゆちゃんを任せてくださいって言ったんだけど?」
ビックリした顔で俺を見て、何か言いたそうに口をゴモゴモしている。
そりゃビックリしますよね。いきなりそんなこと言われたら。
「さゆちゃん。付き合ってください」
シンプルに。頭が悪いんだからなんでもシンプルにいかないと。
- 154 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:19
-
「でも・・・・絵里のことが好きなんでしょ?
さゆみじゃなくて絵里に言いたい言葉でしょ?」
おっと信用がない。少し合ってるけど根本的に違うな。
亀ちゃんを好きなのは事実だが、言いたいのは亀ちゃんではない。
「今はね。亀ちゃん好きだよ・・・・・でもいつか、さゆちゃんが一番になると思う。
っていうかそうしたい。そうなってください」
唇を噛み締めたまま何も言わない。気持ち伝わらないかな・・・・・
そのうち目に涙を溜め始めた。ヤバイ。泣かしちまう。
「さゆみに我慢しろってこと?一番になるまで我慢しろって」
「いや、そういうわけじゃ・・・・・」
「・・・・・いいよ!!しょうがないから我慢してあげる。だから早く一番にして」
泣きながら笑い、抱きついてきたさゆちゃんを思いっきり抱きしめる。
分かったと返事をするように、気持ちが伝わるようにキツクキツク。
- 155 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:19
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
部屋のドアを閉めると同時によっちゃんが後ろから抱きしめてきた。
ふいな心地よさに身を預けてしまう。
「どうしたのぉ?」
「どうしたもこうしたもねぇよ。なんで公園で辻を抱き締めてるんだよ」
やっぱ見てたんだ。ヤキモチ?辻ちゃんとなんて何があるわけでもないのに。
最近全てにヤキモチ妬くよね。病院の先生がお腹触るだけでも嫌な顔するし。
カワイイんだけどいきすぎなのよね。
「さゆが泣きそうな顔してたから気になっただけだよ」
そんなこと言いいながらギュって力が入るのはなんでかな?正直に言えばいいのに。
私はよっちゃんの方をクルっと向いて、顔を見上げる。そしてチュっと唇に触れる。
- 156 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:19
-
「こういうことしたいと思うのはよっちゃんだけよ」
よっちゃんの顔はどんどん赤くなり、その顔を隠すように正面からギュッと抱きしめ、
顔を私の肩に埋めた。しばらくその状態で居たかと思うと、首筋にキスをしてきた。
「そういやさ、俺らってしたことないよね」
「・・・・・何を?」
「分かってるくせに聞くな」
そして今度は唇にキスをしてくる。だんだん激しいキスになり気持ちも高ぶる。
なのにこの人は。
「別に急いでるわけじゃないけどね」
これだけ上げておいて落とすとか・・・・・
- 157 名前:True dream 投稿日:2006/09/14(木) 01:20
-
「でもしたこと無いじゃん。だからどんなものなのか分からないよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・聞いてる?」
聞いてません。聞く気もありません。それよりさっさと履歴書仕上げなさいよ。
私と子供の将来が心配だわ、本当に。生きていけるのかしら。
「でも妊娠中ってしていいのか?赤ちゃん大丈夫なのかな。
今度の検診の時に聞いてみよう」
「止めてよ恥ずかしい。それより早く履歴書書けば?」
ベッドの上に腰をおろし、終わらせるように促す。ペンは持っているけど上の空。
この人本当に聞いちゃいそう。次は1人で行こうかな・・・・・
つづく
- 158 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/14(木) 20:51
- よっちゃん
安定したらしていいんだよw
- 159 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/14(木) 22:49
- 辻ちゃんも、さゆも切ないですね人の心はそう、変わらないと思うけどガンバレ!
よっちゃんと梨華ちゃんはもうすっかりラヴラヴですね。
たしか、5,6ヶ月位になってお腹に負担をかけなければOKだよ、よっちゃん。
- 160 名前:名無し 投稿日:2006/09/15(金) 00:45
-
>>158:名無飼育さん様
なるほどф(○^〜^○)メモメモ
親切にありがとうございますw
>>159:名無飼育さん様
片思いって辛いんですよね。2人が幸せになることを願っています。
(○^〜^○)(^▽^)は新婚ですからw
そして親切にありがとうございますw
- 161 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:46
-
12月。妊娠5ヶ月。
4年生最後の大会は全国ベスト8で終わった。
最後の最後まで競っていたけど、終了間際に決められそのままゲーム終了。
決められたことを辻さんはいつまでも悔やんでいた。
全国で初めて取られたゴールが、4年生の最後を決めてしまった。
決して辻さんを責める人は居ない。けれど辻さんは自分自身を責め続けていた。
マネージャーとしてベンチで応援していた私は、あの顔が忘れられない。
あの悔しそうな顔が。1番最初に声をかけたかったけど、そんな雰囲気ではなかった。
控え室に戻り、みんなが着替えをしている時辻さんはその場にいなかった。
みんな居ないことに気付いていたと思う。でもあえて誰も何も言わなかった。
藤本さんは「2点取れれば勝ったんだよな」って、みんながみんな自分を責めていた。
「亀ちゃん。辻探してきて。風邪ひくぞって」
私は控え室を飛び出したけど、どこに居るのかあてなんてない。辻さんの行きそうなとこ。
「あ」
- 162 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:46
-
思い出した。高校最後の大会もここだったんだ。さゆと2人で見に来た試合。
負けちゃって、声もかけづらくて、帰ろうかなって考えていた時に見つけた辻さんの姿。
俯いて泣いているようだったから声もかけずに帰ったんだけど、あそこは人気がなかった。
もしかしたらまたあそこに居るかもしれない。その場所に急いで向かった。
「はぁ、はぁ」
息を切らしながらその場所を見ると、やっぱり辻さんの姿が。
俯いて居るけど、泣いているようには見えなかった。近づいて声をかける。
「辻さん?風邪引いちゃいますよ?」
辻さんは顔をあげると、「うん」と静かに笑った。
でもそこを動く気配がなかったから、持ってきたジャージを背中にかけ隣に座った。
ジャージをかけると「ありがと」とまた笑った。そして空を見上げポツリと言った。
「負ーけちゃったぁ」
その言葉からは寂しさがとても伝わってきた。とっても仲の良い4年生の最後の試合。
まこっちゃんも「この大会にかけてる」って言っていたけど、きっと辻さんも。
- 163 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:47
-
「よく分かったね、ここ。誰も知らない秘密の場所なんだけど」
なんと言葉をかけていいのか分からなかった私に、違う話題を振ってくれた。
「何でも分かりますよ、辻さんのことなら」
おどけて言う私に辻さんはニヤニヤしながら「そう」とだけ返してきた。
そのときは全く、ニヤニヤの意味も分からなかったけど・・・・・
何の前置きもなく不意に抱きしめられた。本当に優しく、フワッと。
「じゃあ俺の気持ちも分かってる?」
気持ちって何?ドキドキしすぎて考える余裕もないし、言葉も出てこない。
「こんなとこ見られたら何人に殺されるだろ。まこととさゆちゃん以外にもやられるな」
そう言いながらも、
小さい声で「もう少しだけこのままで」っていう辻さんは子供みたいだった。
- 164 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:47
-
「よし。ありがと。復活」
ドキドキを悟られないように、あえて笑顔で「良かったです」と返した。
この行動の意味なんて分からない。ただ癒されてくれればそれでいいと思った。
控え室に戻るまで無言だったけど、ドアを開けた瞬間、いつもの辻さんに戻った。
「スイマセン!!入れられたから負けちゃって。本当にスイマセン!!」
「ほんとだよ〜あれ止めていればPKで勝ったかもしれないのに」
藤本さんは冗談交じりで言う。そんな藤本さんに辻さんも言い返す。
「でも!!それよりも前半ラストの藤本さんですよ。あのシュートは決めどこです。
まぁ決定力不足ですね」
「てめぇ〜」とか言いながら藤本さんは辻さんを追いかけ、辻さんは逃げる。
周りには笑いが起こっていた。私も心から笑ったけど、少し寂しくもあった。
このメンバーで活動することはもう無い。最後の試合だったんだから。
4年生は卒業に向けて準備をし、他の部員は練習に励む。
一緒に居ることがなくなるんだと思うと、泣きそうになった。
- 165 名前:True 投稿日:2006/09/15(金) 00:47
-
そんな大会から一ヶ月。街はクリスマスに向けて大忙し。
もちろん私もまこっちゃんに何をプレゼントしようか考えていた。
「絵里〜、辻さんに何あげたらいいと思う?」
「絵里も迷っているんだよねぇ。まこっちゃん何欲しいんだろ」
「まーちゃんは〜・・・・・『絵里がプレゼント』って言えば喜ぶ気がするの・・・」
いや、そんなベタな・・・・・・・喜ぶよね、きっと。
でもそんな恥ずかしいこと出来ないよ、大学生にもなってさ。
「さゆこそ辻さんに、『さゆがプレゼント』って言えば喜ぶんじゃない?」
「辻さんはそういうの喜ばないの。<絵里がプレゼントなら喜ぶかもしれないけど>」
「ん?なんか言った?」
「ううん。何でもないの」
- 166 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:48
-
さゆと辻さんが付き合いだしたって聞いたときはとってもビックリしたけど、安心もした。
さゆが辻さんのこと大好きだって知っていたし、何よりも私の気持ちが落ち着いたと思う。
「よっ!何2人で難しい顔してんの?」
肩を叩かれ後ろを見ると藤本さんと亜弥ちゃんが居た。2人とも昼食を取りに来たみたい。
でもいつも一緒の後藤さんと吉澤さんは居ない。
「後藤さんと吉澤さんはどうしたんですか?」
2人は私達の横に座った。どうも後藤さんは吉澤さんの手伝いをしているらしい。
どんなに頑張っても内定がもらえないらしく、焦っているんだとか。
「だから最初からしておけば良かったのに。俺らの中で決まってないのあいつだけ」
「お姉ちゃんも心配してました。『ニートの妻になるぅ』って」
今の調子だったら確実にその通りになるよね。やる時はやる人だから大丈夫そうだけど。
- 167 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:48
-
「2人は何話してたの?難しそうな顔してたよぉ」
いろいろ考えてたからね。そう見えたのかも。
プレゼントどうしようなんて、実は贅沢な悩みかも。あげる人が居るってことだし。
さっき話していたことをそのまま話すと、2人はゲラゲラ笑い出した。
「確かに!まことならそれで喜ぶだろうな。ハハハ」
「お金掛からなくていいじゃん!一番楽で喜んでもらえるプレゼントだよ」
そうなんだけど・・・・・やっぱり嫌だよ。そんなの。
「さゆちゃんは何あげるのぉ?」
「まだ決めてないんです。何が欲しいとか分からなくて」
「さゆちゃんも自分をプレゼントすれば?意外に喜ぶかもよ?」
これをきっかけに話は下トークに突入しました。藤本さんて、本当に好きだよね。
別に嫌いってわけじゃないけど、この2人は何でもズバズバ聞いてくるから・・・・・
- 168 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:48
-
「さゆちゃんてもうヤッタの?」
ほら、超ストレート。もう少し変化球で様子をみてもいい気がする。
実際私も気になるところだけど。さゆからそういう話、まだ聞いてない。
「してないですよ。キスもまだです」
「「はぁ?キスもまだぁ?」」
ハモってますよ、お2人さん。まだ何もしてないんだぁ。辻さんて純情そうだもんね。
今まで何人の人と付き合ったのか分からないけど、私が知る限り、
出会ってからは一度も付き合っていないと思う。知らないだけかもしれないけど。
「あいつはヘタレか!どうしようもねぇな」
「でもまだ付き合って一ヵ月だし・・・・・」
「ばぁか。俺らなんて付き合って1週間でヤッタぞ。キスなんてその日にしたし」
- 169 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:49
-
2人の話はどうでもいいですよ。亜弥ちゃんも「うん」なんてウットリしてないで。
こんなところでノロケとかいいですから。
「亀ちゃん達はどれくらいでヤッタ?」
きた。なるべくなら存在消したかったんだけど。
「覚えてません」
「うっそだぁ!私なんて一部始終覚えているよ?」
また2人の世界に入りそうだよぉ。「俺も」とか言ってる場合じゃないですよ。
ここ学食だし、お昼だし。止めてください、そういうの。
完全に2人の世界に入ってしまったから、さゆと学食を出ることにした。
「なんだったんだろ。ただノロケたかっただけ?」
「そうじゃない?藤本さんだし」
- 170 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:49
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「ごっち〜ん。どうしたら就職できるんだぁ?」
そんなこと僕に聞かれてもねぇ。協力はしてるけど、全然ダメだよね。
今までにないぐらい頑張っているからどうにかしてあげたいけど。
「努力すればいつか報われるよ」
「いつかっていつ?卒業してからじゃダメなんだよぉ」
そうだよね。妻子持ちは就職しないと。大好きな梨華ちゃんのためにも。子供のためにも。
周りはクリスマスの話で会話が弾んでいる。クリスマスかぁ。僕には縁のない話だな。
恋人達の日だもんな。今年は一人で過ごさなきゃいけないんだ。
「クリスマスかぁ」
よっすぃ〜は僕が呟いた言葉に凄い勢いで反応してくる。
「クリスマス!パーティーしようぜ!」
- 171 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:49
-
「えぇ??」
「だってさ、学生最後じゃん。来年はみんな就職して集まれないかもしれない。
なら今やるしかないでしょう」
そうだね。来年はみんなバラバラで、クリスマスだから休みってのは無いと思う。
それぞれの用事もあるだろうし。集まれるのは今だけかも・・・・・
「んあ、賛成!学生最後ってのに惹かれた。でもどこでやる?」
よっすぃ〜は「う〜ん」て真剣に考えているけど、なかなか出てこないみたいだ。
パーティーだから広いところがいいよね。家とかだと迷惑かかりそうだし。
どっかの店貸切にしてもらうとか・・・・・そうだ!
「知り合いの店、貸切にしてもらえるようにお願いしてみよっか?」
「マジで!?」
「クリスマス当日は無理かもしれないけど、個人でやっている喫茶店だから、
何とかなるかも」
- 172 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:50
-
嬉しそうに「うんうんうんうん」と何度も頷いている。
僕もなんだか楽しみになってきた。最後のクリスマスパーティー。
なんか面白いことが起こればいいのになぁ。
「プレゼント交換しようぜ。音楽流して回すんだよ!楽しみだなぁ」
こういうの好きだよね。プレゼント交換なんて小学校以来したことないよ。
みんな大変だと思うよ?まずが恋人に買わなきゃいけないんだから。
そういえばこの人は買ったのかな?
「ねぇ。梨華ちゃんにプレゼント買った?」
「プレゼント?・・・・・あぁ!忘れてた。買ってない!」
やっぱり。すっごい慌ててるけどさ。お金とか持っているのかね?
「何が欲しいか聞いてこないと。じゃ、場所取りヨロシク」
そう言うと、カバンを抱えて颯爽と出て行った。
- 173 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:50
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「こんちゃあ」
乱暴に玄関のドアが開かれ、ドカドカと居間に入ってくる男の人が1人。
ええ、私の旦那さんです。そんな風には全然見えないけど。
婚姻届は出しました。今は『吉澤梨華』です。いつまで続くか分からないけど。
この人が就職出来るまで、私は石川家に居座ることにしました。
下手に出て行くと引越しが大変だし。パパは喜んでくれてるし。
今この家には私一人。みんな出かけているから、ソファーでグターとしていたの。
「どしたの?そんなに慌てて」
「今12月でしょ?」
「そうだね」
「12月といったらクリスマスでしょ?」
「そう・・・・・なのかな?」
- 174 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:50
-
「んで、プレゼントは何が欲しい?」
いや、あんまり繋がってない気がするんだけど・・・・何が欲しい?
私もプレゼントのことなんて忘れてた。そんな行事もあったのね。
今欲しいものかぁ。でも無駄遣いとかしてほしくないしなぁ・・・・・あっ!
「内定」
「はぁ?」
「内定が欲しい。そうすれば生活も確実でしょ?」
よっちゃんはため息をついて不貞腐れている。だってお金の掛かることしてほしくないし。
大事でしょ?内定もらうの。今一番欲しいものだよ。
「最近ずっとそれだな」
「だって仕事がなかったら困るでしょ?子供が出来て現実的になったの」
- 175 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:51
-
「俺だってやってるよ。でもダメなんだもん。しょうがないじゃん」
「頑張っているのは分かってるよ。あのね、プレゼントなんかにお金使って欲しくないの。
無駄遣いしないでさ、溜めようよ。今欲しいものとかないから」
まだ不貞腐れてるよっちゃんをなだめ、2人で並んでテレビを見る。
突然思い出したようにクリスマスパーティーの話をしてくれた。楽しそう。
来年からは子供中心になりそうだし、今のうちに遊んじゃおうかなぁ。
「安定期に入ってるし、大丈夫っしょ?」
「全然大丈夫だよ。みんな来るのぉ?」
「まだ声かけてないけど、みんな来るだろ」
そうだよねぇ。楽しいこと大好きな人達だもんね。でもカワイイ服とか着れないかも。
ちょっとお腹出てきたし。いっか、ママファッションで。
- 176 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:51
-
「ただいま〜」
「おぅ、さゆお帰り」
「2人だけ?」
「うん、出かけてる」
さゆは「そっかぁ」とか言いながら隣のソファーに腰をかけた。
ため息をついて、よっちゃんの方を見てる。なんだろ。
「さゆみ、魅力ないのかなぁ?」
「「え?」」
いきなりの発言にハモってしまった。妹からこんな言葉を聞くだなんて。
よっちゃんはニヤニヤしているけど、私としては複雑よ。
「辻さんに、まだキスもされてないのは遅すぎるって、藤本さんが」
あの人はまた変なこと言って〜!さゆを悩ませてどうしたいのよ。
- 177 名前:True dream 投稿日:2006/09/15(金) 00:52
-
「あいつ相当奥手だからねぇ。さゆに魅力がないわけじゃない」
「本当に?」
「うん。初めてした時は、彼女からだったらしいよ。いつまで経っても何もしないから、
彼女もいい加減イライラしてたんじゃない?」
辻ちゃんは純粋そうだもんね。うちの旦那さんとは違って。ごっちんタイプね。
モテるんだけど、そう簡単に手は出さないっていう。さゆを任せて良かったわ。
「そんな焦ることじゃないよ。ゆっくりでいいじゃない」
「・・・・・うん」
「そうだ!クリスマスパーティーやるから辻とか亀ちゃんとかに言っておいて」
さゆは嬉しそうに頷いて部屋に戻っていった。
つづく
- 178 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/15(金) 03:03
- この物語大好き。
辻が絵里とくっついてくれないかな〜。
- 179 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2006/09/15(金) 08:23
- 何かまこっちゃんがかわいそうと思ってるのは
自分だけだろうか
- 180 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/15(金) 12:15
- 本当に好きな人と付き合う方が
結果的に傷付けたり傷ついたりするダメージは少なくなると思う。
ジーツーとエリザベスはそこんとこよく考えて!
- 181 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/15(金) 13:39
- 俺は絵里が酷い女に見える。
- 182 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/15(金) 20:26
- おまいら好き勝手言いすぎだべさ。更新がなくなったら呪うぞ
- 183 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/15(金) 22:20
- 相手の気持ちがわからないと臆病になっちゃうよね
- 184 名前:名無し 投稿日:2006/09/16(土) 02:08
-
>>178:名無飼育さん様
ありがとうございます。あの2人は・・・・どうでしょうw
>>179:名無し募集中。。。様
確かにかわいそうになっています。スイマセン。
>>180:名無飼育さん様
アドバイスありがとうございます。
なかなか噛みあわないんですよ、お2人さんは。
>>181:名無飼育さん様
そうですね。酷い女です。許してください。
>>182:名無飼育さん様
北海道の方でしょうかw空気読まずに更新してます。
>>183:名無飼育さん様
えぇ、人は臆病な生き物だと思うんです。
分からないからみんなもう一歩踏み出せないんだと思います。
みなさんそれぞれ思うところがあると思いますが、私の感性で進んでいこうと思います。
ヨロシクお願いします。
- 185 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:09
-
「なっち〜。久しぶり」
「あ〜らごっちん。珍しいべさぁ」
僕は今クリスマスパーティーをするために、喫茶店を貸しきってくれるか頼みに来ている。
なっちこと安倍なつみは、いとこで北海道出身。後輩と2人で喫茶店を経営している。
そこそこ繁盛していて、毎日忙しいそうだ。僕がここに来たのは半年ぶりぐらい。
就活や部活でなかなか来ることが出来なかった。何でも美味しいんだよね、ここは。
お菓子を作るのが大好きだったなっちがパテシエになり、この店を開いた。
その後輩はなっちを慕っていて、同じくパテシエになろうと学校に通っている。
今はバイトだが、とっても美味しいお菓子を作ってくれる。
「今日はちょっとお願いがあってさぁ・・・」
「なんだべ。お願いなんて珍しい」
この店を貸しきってクリスマスパーティーをさせてくれないかと頼んでみる。
なっちは少しだけ考えて、クリスマスの後なら良いと承諾してくれた。
そしてご飯やケーキを作ってくれるとまで言ってくれた。
- 186 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:09
-
「そんな、悪いよ。僕らで適当にやるからさ」
「そういうわけにはいかないべ。
この店でやるんだから、この店の物を食べてもらわないと」
なっちはニコニコしながら言ってくれる。そうする方が楽しいらしい。
お礼に僕に手伝えることがないか聞いてみる。
「じゃあ、クリスマスの2日間、ここでバイトしてくれないべか。
去年は2人でやって大変だったのさ。今年はもっと人が入るような気がして。
コンコンにも中で手伝ってもらいたいから、接客する人が居なくて。
お願いできるべか?」
迷うことなくOKした。今年のクリスマスは予定がないし、1人で居るよりは、
ここで働いていた方が有意義に過ごせる気がする。接客は嫌いじゃない。
2人で談笑していると、なっちの後輩のコンコンが買い物から帰ってきた。
コンコンこと紺野あさみは専門学校の2年生で、来年春に卒業するらしい。
僕らと一緒なんだね。
- 187 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:09
-
「ただいま〜」
「おかえり、こんにちは」
コンコンは「あ」という顔をして、少し俯きながら「こんにちは」と言った。
初めて会ったときからこんな感じで、あまり会話をしてくれない。
コンコンが作ったお菓子を褒めると最高に良い笑顔するんだけどなぁ。
「26日、コンコン働いてくれるべか?」
「え?はい。大丈夫ですよ?」
なっちはコンコンにクリスマスパーティーの話をし、
僕がクリスマスにここでお手伝いすることも話した。コンコンは少し驚き僕の方を見た。
なんだろ。
「クリスマス・・・・・・予定とかないんですか?」
「あ、そうだべ!忘れてた。予定があるなら無理しなくてもいいから。
何となく言ってみただけだべさ」
- 188 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:10
-
なっちは慌てて「いいべいいべ」と首を横に振っている。予定が無いからOKしたのに。
「予定なんてないよ。1人で過ごすところだったし。手伝い出来て嬉しいよ」
2人とも疑いの目を向けてくるけど、今年は本当に何も無いんだってば。
寂しいクリスマスなんだから思い出させないでよ。
「本当だべか?」
「本当。そんな嘘つかないよ」
安心したように2人とも目じりを下げている。姉妹みたいだな、この2人って。
なっちは昔からポワポワしてたけど、コンコンもポワポワしてるんだよね。
コーヒーも飲み終わり、僕は帰ることにした。
「じゃあ26日ヨロシクです」
「こちらこそ24・25日よろしくだべぇ」
僕は頷いて店を出た。
- 189 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:10
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「辻さん」
「ん?」
「クリスマスプレゼント何がいいですか?」
クリスマスプレゼントねぇ。ぶっちゃけ何でもいい。別にいらないぐらいだし。
無駄遣いしてほしくないしな。
クリスマスにプレゼントあげるって決まっているわけじゃないし。
・・・・・・・・・・まぁ俺はもう買ったけど・・・・・・・・・・
だってさゆに似合いそうなかわいいブレスレットがあったんだもん。つい買っちゃうさ。
ちょうどクリスマスだし、プレゼントしようと思って・・・・・地味にまめなんです。
本当は今すぐにでもあげたいんだけど、我慢我慢。喜ぶ顔が見たいけど、我慢我慢。
「さゆがくれるものなら何でも嬉しいですけど?」
熱い眼差しで見つめられる。「本当?」とか言ってちょっと上目遣いに。
そういえば吉澤さんが石川さんの上目遣いはヤバイとか言ってたな。さすが姉妹。
- 190 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:10
-
「じゃあ・・・・・・・・さゆみがプレゼントでもいい?」
え?うぇぇぇぇぇ?今何て言ったか分かっているのかな?意味分かっているのかな?
そんなこと言うとは思ってもみなかった。うまく喋れない。
「ビックリしたぁ?」
ビックリするに決まってるじゃないですか。
小悪魔のように微笑むさゆちゃんに、苦笑いする俺。
もしかして手の上で転がされてる?主導権はどう見てもさゆちゃんだよね。
「それで?欲しいもの本当にないですか?」
「そだねぇ。今はない」
「じゃあさゆみが欲しくなったら言ってください。いつでもプレゼントします」
こんな言動をカワイイと思ってしまうのは、ペースを掴まれいてるからでしょうか?
- 191 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:11
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「まこっちゃんはさぁ、クリスマスに何くれるの?」
「それって聞くことじゃないよね?」
だって何あげていいか分からないんだもん。先に聞けば、思いつくかもしれないし。
でもほとんど毎日一緒に居るから、プレゼント買ってる気配とかないんだよねぇ。
「そんなに聞きたい?プレゼント何か」
「聞きたい!」
「プレゼントは・・・・・・・・・・俺!!」
はぁ。それって普通女の子がやるものじゃないの?
まこっちゃんある意味プライドない人だよね。その顔カワイイけどさ。
- 192 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:11
-
「バカ彼氏」
「え?何か言った?」
「バカ彼氏!!」
あーあ、いじけちゃった。誰がそんなことしろって言ったの?
絶対まこっちゃんの考えじゃないよね?・・・・・もしかして兄ですか?
「だって兄ちゃんが昔年上の彼女にやったら喜んでたって言うから」
「もう。絵里年上じゃないし」
まこっちゃんはもっとシュンとなって、下唇を突き出している。
私はそっと近づき、おでこにキスをする。一瞬驚いたけど、すぐにデレデレ顔になった。
分かりやすいんだから。年上なのにそんなところがカワイイんだけど・・・・・
そのまま唇にキスをし、どんどん深くなっていく。耳元で囁かれる。
「やっぱりもらってくれるんだ」
まだクリスマスじゃないんだから。新しいプレゼント考えてね。
- 193 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:11
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
- 194 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:13
-
まこっちゃんに抱かれているときは、まこっちゃんのことだけ考えられる。
ふとした瞬間に辻さんのことを考えてしまうけど、こういう時は大丈夫。
まだ軽く震えている私を、優しく抱きしめて何度も髪の毛にキスをくれる。
落ち着かせてくれる腕の中。私の胸元には赤い点がいくつか付いている。
まこっちゃんは絶対に見えるところには付けない。
冷やかされるのが嫌なだけかもしれないけど、そこには優しさを感じる。
自分だけ見れれば良いって考えているのかもしれない。前に聞いたときは、
「大学生にもなってそれはないでしょ。見せびらかすものじゃないし」って言ってた。
大事にされているなって思う。喧嘩だってしたことがない。
喧嘩になりそうになると、まこっちゃんが必ず折れる。その辺は大人だよね。
きっと色々溜め込んでいるんじゃないかと思うけど、何も言わない。
「そういえばさ、クリスマスパーティーやるって言ってたよね。
兄ちゃん張り切ってたよ、梨華ちゃんが呆れてたもん」
- 195 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:13
-
「そういうの好きだもんねぇ。私も好きだよ、みんなで集まるの。みんな来るよね?」
「そりゃ来るでしょ。クリスマス当日ってわけでもないし」
辻さんも来るよね。さゆと一緒に来るのかな?きっと近くに居るんだろうなぁ。
・・・・・・ダメダメ。辻さんのことは考えない考えない。さゆが居るの。
私の隣にはまこっちゃんが居る。辻さんのことはたまに思い出すけど、
まこっちゃんの存在はとても大きくなっていた。ずっと一緒に居るから。
近くに居ないと凄く寂しいんだよね。何よりも落ち着く。
安心できる場所がここだと思う。どうしても帰ってきたい場所はまこっちゃんのとこ。
「まこっちゃん」
「んん?」
「好き」
「えへへ〜、俺も好き」
- 196 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:13
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
今日は検診の日。いつも通りよっちゃんが車で送ってくれる。
クリスマスパーティーが相当楽しみみたいで、ずっとその話ばっかり。
どういう風に盛り上げようか。お酒はどのくらい買おうか。酔い潰れたらどうしようか。
私は一緒に帰るのは無理よ。妊婦なんだから、こんな重い人一緒には帰れない。
「潰れたらごっちんにでも送ってもらってね。私は無理」
「えぇ〜!愛する夫を置いて帰るのかよ」
「うん」
即答だよ。何の躊躇いも置いていけるよ。ごっちんに預ければ安心だし。
構っていられないよ、無理無理。
まだまだ止まらないクリスマスの話をしていると、いつの間にか病院に着いていた。
「いや〜今日は喋ったなぁ」
「ほんとにね」
- 197 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:14
-
中に入り、ベンチに腰をかけるといつも通り子供達が遊んでいる。
みんな元気いっぱいで、汗だくになりながら楽しんでいる。
たまにママのところへ行き、汗を拭いてもらい飲み物も飲んで、また遊びに行く。
ママさんはみんな特に気にするでもなく、お喋りをしたり本を読んだりさまざま。
私もいつかあんな風に余裕を持って暮らしことができるのかな?
凄く心配で、ずっと見ちゃいそう。
ふと隣を見ると、よっちゃんは隣のママさんと話をしていた。
「そうなんですよ。5月に生まれます」
「もう少し先ね。楽しみでしょ」
「はぁい。あ、こっちが妻です」
「妻です」なんて照れるじゃない。いっつも言わないくせに。顔が赤くなっちゃうよ。
隣のママさんは軽く会釈をして、「今が一番動きやすいかもね」と言った。
「そうなんですかぁ?」
なんでよっちゃんの方が興味津々なのよ。ここはママさんトークにいくところでしょ!
- 198 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:14
-
「もう少し大きくなると、だんだん動くのが辛くなってくるから」
よっちゃん!そんなに頷かなくていいのよ。笑われているじゃない。
お願いだから恥ずかしいことだけはしないでね。ここにずっと通うんだから。
隣のママさんと会話をしていると、名前を呼ばれた。「吉澤さん」って。
こういうので結婚したんだなって感じるのよね。
超音波などの診察が終わり、あとは先生の話を聞くだけ。順調とのこと。良かったぁ。
診察室を出ようとした時、よっちゃんが思い出したかのように、
とんでもないことを先生に聞きだした。
「そういえばこの前聞くの忘れたんですけど、エッチってもうしていいんですか?」
先生は一瞬を驚き、大声を出して笑い出した。
「大事よね、そういうこと。いいわよ。お腹に負担がかからなければ」
先生もそんな直球で答えないでよ。この飯田先生って、結構ズバズバ言うのよね。
2回目に行ったときもよっちゃんを見て、「この人の種じゃないんでしょ?」って。
そんなこと普通聞かないよね。いや、聞くのかな。私が分からないだけ?
- 199 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:14
-
「そうですか。安心しました」
「もうヤッタの?」
「いえ、まだです。でももうそろそろしようかなと」
誰も承諾してませんけど。勝手にもうそろそろとか言わないでよ。
先生もヤッタのとか聞かないでください。この場から早く逃げたい。
「でも初めてってことになるんでしょ?」
「そうですね〜でも自信あるから大丈夫ですよ」
なんの自信よ!何が大丈夫なのよ!そんな自信いらないから・・・・。
わざわざ先生に報告しなくてもいいから。先生も試してみたいとか言わないで。絶対ダメ。
結婚しているんだからね。お試しとかそういうのないの。
「じゃ、頑張って」
「はい」
- 200 名前:True dream 投稿日:2006/09/16(土) 02:15
-
そんな笑顔で「はい」とか言わないでよ。怖いわ・・・・・。
よっちゃんは「そっかぁ、大丈夫なんだぁ」とか呟いているけど、
まさか今日するとか言わないよね?思ったら即行動の人だから心配。
「梨華。今日家泊まりに来い」
「はぁ?する気満々じゃない。絶対に嫌」
「なんで?先生の許しが出たんだよ?」
わざわざ「今からします」みたいなことしなくていいじゃない。
自然にそういう雰囲気になればいいと思う。
「焦らないで。ゆっくりでいいじゃない」
よっちゃんは納得してなかったみたいだけど、そのうちね・・・・・
つづく
- 201 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/16(土) 02:36
- 吉澤さんのストレートな発言にかっこよさを感じました(笑)
- 202 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/16(土) 13:06
- よっちゃんの頭ん中はそればっかなのか?w
ちなみに今やお腹の中の赤ちゃんを4D、
つまり立体映像を動画で見る事ができるそうですよ梨華ちゃん。
- 203 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/16(土) 13:13
- よっちゃん心広いね
自分だと分かってる事だけど子供の父親に嫉妬しそう
だから梨華ちゃんさせてあげてw
- 204 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/16(土) 20:34
- 梨華ちゃんとよっちゃんはいい感じで新婚さんしてますね。
亀ちゃんって、まっこちゃんの事も好きなんですよねそんなふうに思えました
辻ちゃんへの思いって一度言葉に出したらスッキリするんじゃないかな。
思いを伝えてないからモヤモヤするって自分も経験あるから。
- 205 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/17(日) 21:08
- 飯田せんせ〜w
- 206 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/17(日) 21:52
- >>180でした。更新お疲れ様です。
生意気なこと言ってすいません!
というかちゃんと更新あってホっとしましたw
次回も期待してます!よっちゃん良かったねw
- 207 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/18(月) 02:16
- 新婚さんなのに熟年夫婦みたいな二人の雰囲気がイイw
- 208 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/18(月) 14:19
- 妊娠中はナマでも安心らしいぞよっちゃんw
- 209 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/19(火) 21:31
- 結婚したんだから赤ちゃんできてもいいじゃん。
- 210 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/20(水) 10:36
- マコが切ない…
- 211 名前:名無し 投稿日:2006/09/21(木) 03:39
-
>>201:名無飼育さん様
カーブは投げられないんですw
>>202:名無飼育さん様
そればっかりですw
立体映像で見れるとか凄いですね。そして物知りですね。
>>203:名無飼育さん様
よく言えば心が広い、悪く言えばバカなんですw
>>204:名無飼育さん様
もちろんまこっちゃんのことは好きなんです。
もやもや・・・・・自分にも経験ありです。
>>205:名無飼育さん様
こんなところで使わせていただきましたw
- 212 名前:名無し 投稿日:2006/09/21(木) 03:43
-
>>206:名無飼育さん様
いえ、それぞれ考えはありますから。
また読んでくださって光栄です。
>>207:名無飼育さん様
長年こう、一緒に居ますのでw
>>208:名無飼育さん様
よくご存知でw勉強になります。
>>209:名無飼育さん様
そう言われてみればそうですねw
>>210:名無飼育さん様
切ない設定にしてしまってスイマセン。
- 213 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:44
-
クリスマスイブ。
街はクリスマス一色。カップル達や家族連れでいっぱいだろう。
でもそんなところにわざわざ行く必要はない。外は風がピューピュー吹いている。
風邪をひくようなことをすることはない。家でゴロゴロするのが一番。
「ねぇ!行こうよ。ちょっと見るだけなんだからいいじゃん」
「嫌だ。寒い」
「暖かい格好すればいいでしょ?ねぇ。行こ?」
上目遣いで首を傾げるなんて反則だ!!許しちゃうじゃないか!
俺は今非常に迷っている。結婚して初めてのクリスマス。
来年には子供が居るから、2人きりのクリスマスなんて歳をとるまでないと思う。
それをどう過ごそうか。高そうなレストランにでも行ってみようかと思ったけど、
「そんなことに使わなくていい!」って怒られるから止めておいた。
- 214 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:44
-
だからお金を使わなくていいように、家でゴロゴロ2人で居ることに決めたのに。
いきなり言うんだも。
「イルミネーションが見たいの!すっごく綺麗なんだよ。絶対に幸せな気分になるもん」
「別にそんな気分になろうとも思っていないし、見るだけなんてつまんないだろ」
なんで女はああいうのが好きなんだろう。
イルミネーション見たって、腹が満たされるわけじゃないし、逆に腹が減るだろ。
人ごみで疲れてヘトヘトになるのがオチだ。
まことは亀ちゃんの誘いを断ろうともしないから、ニコニコしながら出て行ったけど、
俺はそんなに甘い男じゃない。行かないっつったら行かない。
「あのイルミネーション・・・・よっちゃんと見るの夢だったのに・・・・」
・・・・・そんなこと言われても・・・・・嬉しいけど。
喜ばせてあげたいけど。でもなぁ。
- 215 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:45
-
「ずっといつか一緒に見たいって思ってたのに・・・・・」
神様!!なぜに俺はこんなに梨華に弱いのですかぁぁぁ!!
「分かったよ!行くよ、行く。さっさと着替えて来い」
梨華は目を輝かせて部屋に着替えにいった。
はぁ。俺はこれからの人生、梨華中心で生きることになるのかぁ・・・・・
これって尻に敷かれているっていうのかな。こんなの美貴には見せれない。
どんだけバカにされるか。でもあいつも亜弥の言いなりだし、一緒か。
俺も着替えてこよっと。
「梨華ー。俺も着替えてくるから、待っててな」
「わかったぁ」
急いで家に帰り、着替えをした。
寒いからたくさん着込んでいこう。
- 216 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:45
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「辻さん、この帽子良くないですか?」
「えぇ?さゆちゃんにしてはボーイッシュすぎるでしょ」
「違います。これは辻さんにです」
さゆちゃんと2人で買い物中。
どうしても街のイルミネーションが見たいっていうから、連れて来たんだけど、
「まだ空明るいね」っていうから暗くなるまで買い物することにした。
さっきから帽子を真剣に見てるから、帽子欲しいのかと思ったら・・・・・
「クリスマスプレゼントですよ?何がいいか分からないから、一緒に見ようと思って」
なるほどね。最初から買い物もしたかったわけか。そう言えばいいのに。
なんか遠慮しているところがあるんだよなぁ。本当はワガママのくせに。
- 217 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:45
-
「これどうですか?あんまり良くないですぅ?」
「さゆちゃんが選んでくれたのがいい。自分で選んだら意味ないじゃん」
そう言うと、さゆちゃんはニッコリ笑って「これにします」とレジに向かった。
店から外を見ると、カップルや親子ずれがいっぱい。信じられないぐらいの人。
来年は吉澤さんが子供連れてこういうとこ歩いてるのかなぁ。想像付かない。
子供と一緒に怒られてそう。なんか笑えてくる。
人ごみの中に手を繋いで歩いているまことと亀ちゃんを見つけた。
やっぱみんなイルミネーションとか見にくるんだなぁ。
「お待たせしましたぁ」
「おかえり」
「どこか行きたいところありますか?」
「さゆちゃんはどこ行きたいの?」
- 218 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:46
-
さゆちゃんは首を傾げながら悩んでいる。マイペース。この言葉が一番似合うな。
俺もよくマイペースって言われるし、案外合ってるのかも。
「お腹すきました。何か食べましょ?」
「そうだね。クリスマスだし、ちょっと贅沢に美味しいもの食べよっか」
「はぁい、美味しいもの食べたいです」
その笑顔に胸がキュンとなる。俺もしかしてはまってきてる?
最近ずっと一緒に居るし、亀ちゃんと全然会わないし。
近くに居れば悪いとこも見えるけど、良いところもたくさん見えてくる。
こんなに好かれてて、きっとこの先も好きで居てくれると思う。幸せ者じゃん。
すっごく簡単なこと。2人で幸せになるには、俺が変わればいいだけ。
さゆちゃんしか見えないくらい好きになればいいだけ。簡単だよ、簡単なのにな。
- 219 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:46
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
石川家に戻ると、まだ着替えをしているらしく降りてきていなかった。
イライラしてきて2階に上がり、部屋のドアをノックする。
「まだかよ。早くしろぉ」
返事がない。勝手に開けてみる。クローゼットの前で仁王立ちしている妻がいた。
「何してんの?さっさと着替えてよ」
「だぁってぇ」
口を尖らせて俺の顔を見てくる。そんな顔されても。どうにも出来ないし。
何に迷っているのか文句を言っているのか分からないし。
側までいっても、何に対して腹が立っているのか分からない。
「どうしたんだよ」
- 220 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:47
-
話を聞くと、お腹が出てきたためカワイイ服が着れなくて不貞腐れていたとのこと。
そんなことどうでもいい。いつもの服着りゃいいじゃん。こだわるなよ。
「分かったから、取りあえず適当に着ろよ。あとで買ってやるから」
「ほんとにほんとに?」
梨華の顔が一瞬にして明るくなって、パッパと着替えを始めた。
最初からその服着れば良かったじゃん。決まってるんじゃん。
買い物の付き合わなきゃいけないってことか。めんどくせぇなぁ。
着替え終わり、「どう?」と首を傾げる。俺は○を出し、2人で家を出た。
外はやっぱり寒くて、梨華のお腹が少し気になる。きっと暖かくはしていると思うけど。
「お腹大丈夫かぁ?」
「うん。暖かくしてるよぉ」
- 221 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:47
-
やっぱり街には人が溢れていた。酔いそうになるぐらいの人の波。
今更後悔しても遅い。妻に負けた夫か悪い。
それに梨華の嬉しそうな顔を見れたら、まぁ良かったかななんて思ったりする。
さっそく服を探しに店に入る。意外にも早く買い物が終わった。
いろいろ迷うかと思ったけど、目に留まったものがあったらしい。
「飯でも食うか?何がいい?」
「う〜ん、、、美味しいもの」
「えぇ?具体的には?」
「パスタとかでいいや」
「いいやってなんだよ」
「あんまり高いとこいってお金なくなったら嫌だし」
そういうことね。しっかりしてるな、うちの奥さんは。
金の管理を任せて大丈夫だな、うん。
- 222 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:48
-
適当に夕食を済ませ、お目当てのイルミネーションを見に行く。
この街には小さなイルミネーションがいくつもあり、
中心に大きなイルミネーションが1つある。
何度か見たことはあるけど、特に感動するわけでもなく、流して見ていた。
男ってそういうもんでしょ?女はこだわるけどさ。
「あ、まことだぁ」
梨華の目線を追うと、そこにはまことと亀ちゃんが居た。
あいつは相変わらずデレデレしてるなぁ。シャキッとせい、シャキッと。
亀ちゃんは違う方をジッと見ている。彼女を楽しませないで自分だけ楽しむとか。
家帰ったら説教だ!!ダメ弟め。
そのまま亀ちゃんの視線を追うと、そこには辻とさゆが居た。
あいつらも来てたんだ。そのうち美貴と亜弥も現れそうで怖いな。
「梨華、あっち行こ。ベンチある」
「うん」
- 223 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:48
-
大きなイルミネーションを見ながらウットリした顔をしている梨華。何がいいんだか。
でもイルミネーションと見ている梨華を見るのは悪くない。
目がキラキラしていて、おもちゃを買ってもらった少女のようだ。カワイイ。
今までこんなのに感動している女なんか別に何とも思わなかったのに、
俺の隣に居る女は今までの女とは違う。カワイイ。一言。カワイイ。
「なぁに見てるのぉ?ちゃんとあれ見てよ。綺麗でしょ?」
ふとイルミネーションを見る。確かにキラキラしていて綺麗だけど・・・・・
外見だけだ。中身がない。それなら・・・・・
「梨華のほうが綺麗だな。外見も内面も」
さらっと言ってしまった言葉に自分で驚いた。もちろん梨華も驚いている。
俺ってこんなにキザだったっけ。どっちかっていったらヘタレで、何も言えない男だよな。
梨華は俯き、顔を赤くした。照れてる。こっちまで照れるじゃねーか。
「帰ろっか」
コクンと頷いた梨華の手を握り、人ごみの中を掻き分けながら家へ向かった。
- 224 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:48
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「ごっちん!オムライスあがったよ」
「はぁい!あ、チョコケーキお願い」
「了解だべさ」
僕はなっちの店で慌ただしく働いている。
次から次へと店に入って来くるから、応対するので精一杯。料理を運ぶ暇もない。
たまにコンコンがフロアに出てきて料理を運んでくれている。
なんかあんまり役に立ってないような・・・コンコンが調理に集中できるようにって、
僕を使ってくれているのに。よし!!頑張ろう。
「すいませーん」
「はぁい!今行きます!」
- 225 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:49
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
- 226 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:49
-
「やぁっと一段落したべさ。あとはささっと片付けるだけだべぇ」
「ゴメンね、役に立ってなくて」
「なぁに言ってるんだべ。ごっちんが居なきゃこんなに売上伸びなかったし、
完全にパンク状態だったべさ。ありがとねぇ」
優しい顔でありがとうと言う、なっちとコンコン。こっちがアリガトって言いたいよ。
疲れたし大変だったけど、この店で働くのはとっても楽しかった。
お客さんの「美味しい」と喜ぶ顔が見れたり、「来て良かった」と嬉しそうな顔が見れたり。
心がとっても暖かくなった。
「そうだ。明日も忙しいから、今のうちに2人でイルミネーション見てきたらいいべさ」
「あのでっかい?」
「そうだべ。コンコンはまだ見たことないから連れてってあげてくれるかい?」
- 227 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:49
-
イルミネーションかぁ。そういえばここの定番だよね。
コンコンは去年の春にこっちに来たばかりだからまだ見ていないらしい。
「いいです、いいです!まだ後片づけが残っていますし、明日の仕込みも」
「そんなのなっちに任せるべさ。あれは見ておいたほうがいい。とーっても綺麗だからね」
うん。あれはとってもキレイだ。見てないならぜひ見せてあげたい。
「僕で良ければ付き合うよ?片付けはその後でみんなですればいいんだし」
コンコンがまだ考えている。何をそんなに・・・・・あ、そっか。
「彼氏と行きたいから僕とは行けないんだね。ゴメン、勝手に」
首を激しく横に振って否定する。もう、はっきりしないなぁ。
「そうじゃないなら、早く行くよ!急いで着替えて」
「はい」と嬉しそうな顔をして階段をのぼっていく。
1分もしないうちにコートを羽織って現れた。僕はジャケットを羽織外にでる。
- 228 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:50
-
外にはまだ人が居て、みんな笑顔が耐えない。
さすがにこの時間だと、親子連れはいないなぁ。カップルだらけだね。
なっちの店からイルミネーションまで距離はなく、すぐそこ。
お店に来ていた人も、「キレイだったねぇ」なんて話している人もいた。
イルミネーションに近づくにつれて、コンコンの目が輝いてきたのが分かった。
やっぱり女の子ってこういうの好きなんだね。僕もよく来たなぁ。
「キレイでしょ」
「はい!とっても」
そう言って口を開けたまま見ている。なんか入れてやりたい。目大きいなぁ。
僕はイルミネーションを見ずに、コンコン観察をしていた。
「良かったね、見れて。今度は彼氏と来るといいよ」
「・・・・・・はい」
- 229 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:50
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
どうしても見たかったイルミネーションを見て、大満足の私。
その隣には、なぜかそわそわしている旦那。少し落ち着きなさいよ。
クリスマスイブなんだから。もっと紳士的になれないのかしら。
イルミネーションを見ながらあんなことを言った自分にビックリして、そわそわとか。
どこまでヘタレなのよ。男の子だったらヘタレに育っちゃうのかなぁ。
そんなの嫌。絶対たくましく育てるんだから。
「よっちゃん。ちょっと落ち着きなさいよ」
「え?あぁ」
返事はしたもののずっとそわそわトイレを行ったり来たり。
更には逆立ちとか始めちゃうし。そのうちリフティング始めそう。
「どうしたの?さっきからそわそわして」
「別に」
- 230 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:50
-
どう見たってそわそわしてるじゃない。もう訳わかんない。横になろう。
私はよっちゃんに背を向けて、ベッドに横になった。
眠たいわけじゃないんだけど目を瞑ると、だんだんウトウトしてくる。
ちょっと歩いたから疲れたのかなぁ。いい運動になったと思うけど。
そのまま眠りに入ろうと彷徨っている時に、誰かに左手を触れられ、
更には指に冷たい感触が伝わってくる。目を開けると、そこにはよっちゃんが居て。
左手の薬指にはシルバーの指輪がはまっていた。
「え?」
「クリスマスプレゼント」
私の指にはめられた指輪はキラキラ光っている。少し笑ってキスをされた。
「何がいいのか分からなくてさ。そういえば指輪あげてないなぁと思って」
嬉しくて嬉しくて。私はよっちゃんに抱きついた。涙がだんだん止まらなくなってきて。
そんな顔見せたくないから胸に顔を埋め続ける。
- 231 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:51
-
「おーい。泣きすぎだろう。そんなに嬉しかったぁ?」
「うぅ、嬉しかったよぉ〜」
まだ顔を上げられない私の頭を優しく撫で続けてくれる。
大きな手に安心感を覚える。こんなサプライズ、予想できなかったよぉ。
一通り泣いて泣き止んだ私の肩をそっと離し、唇を合わせる。それは最初から激しくて。
この雰囲気なら。全然大丈夫。自然な形だもん。抱かれたいって思うもん。
そっと私を倒し、またキスをしてくる。何度も何度も確かめるように。
額・目・鼻・頬・口。顔中にキスを降らして気持ちを高められる。
そして私の目を見て・・・・・
「じゃあ、しよっか」
え?じゃあって何?なんか引っかかるんだけど。
「ちょっと待って。『じゃあ』って何?それいらなくない?」
- 232 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:51
-
いらないよね?別に普通にそのまますればいいじゃん。こんなとこ気になるのって変?
でも気になるよぉ。じゃあって最初からしようと思ってたみたいじゃん。
確信犯的じゃん。そんなの嫌よ。さっきまで良かったのに。
「なんで『じゃぁ』って付けたの?さっきまでなら良かったのに、今は嫌」
「えぇ??そんなぁ。俺準備万端なのに」
そんなの知らないわよ。自分が悪いんでしょ?私には雰囲気が大事なの。
それに・・・・・子供が居るのにするのってちょっと怖い。気使わなきゃいけないし。
微妙なのよね。
「ちょっと怖いの。お腹に子供が居る状態でするの」
「先生も問題ないって言ってたじゃん。大丈夫だって」
なんでそんなに楽天的なのよ。もし赤ちゃんがダメになったらどうするの?
そういうの全然考えてないよねぇ。よっちゃんだもん。
- 233 名前:True dream 投稿日:2006/09/21(木) 03:52
-
「ダメになったらまた作ればいいじゃん。俺の子じゃないし」
よっちゃんは言った後にハッとした顔をしたけれど、私は何とも思わなかった。
最初は大事にしなきゃダメだとか言ってたくせに、性欲には勝てないわけ?
簡単にそんなこと言って。なんか腹たってきた。
「よっちゃんは自分の家に帰って寝てね」
「えぇ?マジかよ。本気?」
「当たり前でしょ。それと・・・・・」
よっちゃんがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。
「クリスマスパーティー。楽しみにしててね」
私はニコっと笑って、布団を被り夢の中へ・・・・・
つづく
- 234 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/21(木) 20:21
- よっちゃぁん
言っちゃいけない一言だったね
- 235 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/21(木) 23:26
- んー言っちゃいけないよね、でも本気で言ったんじゃないだろうし許してあげてよ。
それにしても梨華ちゃん、クリスマスパーティーで何するんだろ。
- 236 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/22(金) 00:46
- 一言余分とはまさにこのこと
正直わくわくしてたのにw
- 237 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/22(金) 01:36
- 更新お疲れさまです。
うん、まぁこれは実感の違いもありますよね。
梨華ちゃんにすればまさに自分の身に起こっている事だし
よっすぃーはまだ父親になるどころか夫である実感も無く彼氏彼女気分。
もちろんそれ以前の問題発言ではあるんですけど。(^^;)
梨華ちゃんが何を企んでいるのか…、ちょっと恐いですね。w
- 238 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/22(金) 22:30
- クリスマス楽しみですね
- 239 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/23(土) 17:29
- 更新お疲れさまです。
よっちゃん!めっちゃ期待してたのに!ばか!w
- 240 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/28(木) 20:37
- 作者さんがんばってね!
楽しみに待ってます。
- 241 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/30(土) 16:33
- 待ってます
- 242 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/30(土) 23:19
- 最初から読み返してみまた
今更ながら>>77が気になったり
- 243 名前:名無し 投稿日:2006/10/06(金) 03:42
-
>>234:名無飼育さん
居ませんか?こういう一言多い人。
>>235:名無飼育さん
梨華ちゃんはたいしたことしませんw
>>236:名無飼育さん
期待を裏切りってスイマセン
>>237:名無飼育さん
別に企んでいなかったりw
>>238:名無飼育さん
季節はずれですがみんなは楽しんでますw
>>239:名無飼育さん
ばか!!で申し訳ないです。
>>240:名無飼育さん
ありがとうございます。頑張りまっす。
>>241:名無飼育さん
お待たせしました。
>>242:名無飼育さん
その答えが・・・・・
更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
これからもゆっくりになると思いますが、ヨロシクお願いします。
- 244 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:44
-
今日はクリスマスパーティーの日。
みんなで集まるのも久しぶりだし、俺はとってもテンションが上がっている。
貸切だからたっくさん騒げるし飲めるし。最高だぁ!!
「まことぉ、行くぞ〜」
「は〜い」
兄ちゃんも楽しみみたいで昨日からそわそわしながら、「寝れない!」とか言ってた。
動き回るから母さんがキレてたな。
「梨華ちゃんは?」
「一緒に連れて行くよ。運動運動」
梨華ちゃんと結婚してから、もの凄く優しくなった兄ちゃん。
もともと優しかったんだけど、前よりも更に優しくて気持ち悪いぐらい。
- 245 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:44
-
「さゆも一緒に行くから、もれなく辻がついてくるぞ」
あの2人が付き合うだなんて思ってもみなかった。
のんつぁんから直接聞いたけど、最初は騙されてるんだと思ってたぐらい。
どう考えても妹にしか思ってないだろうと思っていたし、どちらかといえば・・・・・
「おぅ、まこと。今日もヘタレ顔だ」
「うっさいなぁ。のんつぁんだって意外とヘタレのくせに」
「う、それは言わないでください。まことと一緒にはなりたくない」
「な〜んでだよぉ。親友じゃないか!」
のんつぁんは「はは」と笑ってさゆの元へかけていった。
さゆは満面の笑みでのんつぁんを迎えていた。
結構お似合いなのかな、あの2人。有り得ないとか思っても有り得てるわけだし。
兄ちゃんと梨華ちゃんもそうだ。ただの幼馴染だったくせに結婚したりして。
俺って見る目ないのかなぁ。
- 246 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:45
-
5人で歩いて店に向かっている。兄ちゃんは梨華ちゃんの側にピタッと張り付いてるし、
のんつぁんとさゆも2人で楽しそうに話している。俺1人。
なんでこの組み合わせなんだよ。ってかのんつぁん別に来なくていいじゃん。
「まこと?なんか怒ってない?」
「別に」
「まこっちゃんの別には何かあるときなの」
「なんもないよ」
1人だから不貞腐れてるなんて言えるわけないじゃん。どうせ笑われるだけだし。
あぁー!!俺にもパートナーをください!
「そういやさ、まことクリスマスに何あげたの?迷ってたじゃん」
「好きな服買ってあげた。誕生日も一緒でいいって」
- 247 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:45
-
最初は本当に何もいらないって言ってたんだけど。そういうわけにもいかず。
だから簡単に買い物行って好きな服を買ってあげた。喜んでくれてたし。
「着いた」
兄ちゃんの声に顔を上げるとキレイな飾りがしてあるお店の前だった。
「ここなの?すっごくキレイだね」
梨華ちゃんとさゆは「うわぁ」とか言いながら目をキラキラさせている。
女の人って本当にこういうの好きだよね。
まぁ俺も好きだけど。でもこれはキレイだ。大きな木にたくさんの電飾。
壁もキラキラしていて、見惚れてしまうほど。
「あ、来た来た。寒かったでしょ。早く入りなよ」
入り口から後藤さんが出てきて俺達を中へと促した。中もキレイな飾り付けがされている。
テーブルには美味しそうな食べものがたくさん並んでいるし・・・
やっべーテンション更に上がってきたぁ!!
- 248 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:46
-
「「「「「「「「「「「かんぱ〜い!!」」」」」」」」」」」
掛け声を合図にどんどんお酒がなくなっていく。たくさんあった料理も。
ここを貸してくれたなっちさんが料理を作ってくれたみたいなんだけど、
みんなの勢いに足りないだろうとまた作り始めた。
それを手伝っている一人の女の子。同い年くらいかな?
目がクリクリしていてとってもカワイイ。
でも初めて会う俺達に遠慮して、なかなか輪に入ってこようとしなかった。
ある程度料理ができ、2人が戻ってくると同時に俺は彼女に話しかける。
「もっと輪に入りましょうよ。気とか使わなくていいから。見れば分かると思いますけど」
「あ、はい。ありがとうございます」
「この店で働いてるんですか?」
「はい」
「失礼ですけど・・・おいくつですか?」
- 249 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:46
-
女性に年齢を聞くのは失礼かと思ったけど、話を膨らませるには必要だよね。
彼女はニッコリ笑って「たぶん同い年です」と答えた。
後藤さんから俺達のことを聞いていたみたいで、だいたい分かるそうだ。
「話に聞いていた通り。楽しい人ばっかり」
「でしょう?ちょっとうるさすぎるけどね」
話してみるととても面白い子で、俺に似ているところもある。
好きな食べ物とか。マイペースだし。
「こんこ〜ん。これ美味しい」
後藤さんが遠くから紺野さんの料理を褒めた。
紺野さんは嬉しそうに、でも恥ずかしそうに笑顔を向けていた。これって・・・・・
「俺もコンコンって呼んでいい?」
「うん」
- 250 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:46
-
「コンコンってさ・・・・・後藤さんのこと好きでしょ?」
コンコンは目を見開いて顔を真っ赤にしている。やっぱりな。分かりやすいよ。
何で分かるの?って顔しているけど、分かりまくりですよ。
顔に出やすい性格だね、うん。
「後藤さんは知っているの?」
「ううん。そんなこと一言も言ったことないし」
「気付いてるんじゃない?」
「・・・・・意外と鈍感な人だと思うから」
確かに。告白とかされても、「あの子はよっすぃ〜のこと好きだと思ってた」とか、
気付かないこと多いかも。それなら余計に伝えないとダメじゃん。
「いいの。こういう関係で楽しいから」
- 251 名前:True 投稿日:2006/10/06(金) 03:47
-
「まこっちゃん。お酒なくなりそう」
コンコンと会話していると、絵里が近づいてきてそんなことを言った。
それは俺に買って来いと言っているのか?無言の圧力。
分かりましたよ。行きますよ。
「じゃあ俺お酒買ってきます」
「おぅ。弟よ。頼むぞ」
兄ちゃん飲みすぎじゃね?首まで真っ赤じゃん。俺置いて帰るからね。
梨華ちゃんだって面倒見てくれないよ、きっと。知らないから。
「じゃあ俺も行くよ」
のんつぁんが立候補した。隣に居たさゆは寂しそうな顔していたけど、
「すぐ帰ってくるから」というのんつぁんの一言に笑顔で返していた。
仲良いなぁ、おい。俺なんか買いに行けって言われたのに・・・・・
- 252 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:48
-
店を出て聞いたとおりの道を歩き、コンビニを目指す。
「たくさん買ったほうがいいかなぁ」
「あの調子じゃまだまだいくだろうね」
だよなぁ。コンビニの酒買い占めるぐらいの勢いじゃないかぁ?勘弁してよ。
寒い夜に男2人で買出しとか。あ、俺聞きたいことあったんだ。
のんつぁんに聞きたいこと。急に思い出した。前から言おうと思っていたこと。
絵里の気持ちには気付いていた。最初は気付いてなかったけど。
目で追っているのが俺じゃなくてのんつぁんだと気付いた。
どこに居ても絵里はのんつぁんを見ていた。そして逆もだと気付いた。
のんつぁんは絵里を見ていた。俺が見つける前に必ず見つける。
「あっちに居た」とか「あそこで見てた」とか。
お互い想いあってるって気づいた時には、俺は絵里のことが大好きになっていた。
離したくないと思えるぐらいに・・・・・
だから気付いていないふりをしていた。いつか言おうとは思っていたけど。
そんな勇気ないから。
- 253 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:49
-
でも今回はいい機会かもしれない。
そこそこアルコールも回っているし、本音を聞けるかもしれない。
「のんつぁんてさぁ」
「ん?」
「絵里のこと好きだよね?」
一瞬顔が固まった気がしたけど、何でもないような顔をしている。
別に好きでもいいんだけどね。
「・・・・・だった。かな?正直自分でも分からないから。
結構さゆのことしか見えなかったりするんだよね」
のんつぁんの正直な気持ちだと思う。でもここで「絵里ものんつぁんが好きなんだ」
って言ったらどうなるだろう。きっとのんつぁんはそのことを知らない。
「親友だけど・・・・・のんつぁんにはあげない、絶対に」
「まことには勝てないだろうな」
やっぱり分かってない。絵里の気持ちを言えないのは、俺が弱いから。絵里が好きだから。
- 254 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:49
-
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まこっちゃんを取りあえず買い物に行かせた。
パーティーが始まってから、紺野さんばっかりと話して私とは一切話してくれない。
私は私で話しているからいいんだけど、なんか面白くなかった。
だってずっと笑ってるんだもん。いっつも私に見せてくれるあの笑顔を。
だから意地悪して買い物に行かせちゃった。本当にお酒無くなりそうだったし。
安倍さんが買いに行きそうな感じだったから、普通そうなまこっちゃんにお願いした。
藤本さんには「尻にしいてるな。将来が大変だ」とか言われたけど気にしない。
今は紺野さんとの会話が大事。
「紺野さんて、彼氏とか居ないんですかぁ?」
「え?あぁ、居ないんですよ」
「好きな人は?」
「・・・・・居ます・・・けど」
- 255 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:49
-
居るんだぁ。でも今好きになっちゃったってこともあるかもしれないし。
ここは確認しておかないと。
「どんな人なんですかぁ?」
「え?えっと・・・・・優しくて、格好良くて、サッカーが上手で、料理も出来て、
落ち着いていて、何でもこなせちゃう人です」
う〜ん・・・残念ながらまこっちゃんでは絶対にないのね。
途中までは良かったけど、料理出来ないし落ち着きないし不器用だし。良かったぁ。
なんかすっごい安心してる自分がいる。まこっちゃんを取られると思ったから?
だから安心したのかな。やっぱ、大好きなんだ。いつの間にか。
まこっちゃんだけになってたんだ。辻さんよりも全然。
「ただいま〜重いよぉ」
「おかえり〜。ありがと♪」
「へへ」
このだらしない笑顔が好きなんだよねぇ。
- 256 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:50
-
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
楽しみにしていたクリスマスパーティー。やっぱり楽しくて。
仲間っていいなぁって思う。料理も美味しいし。ごっちんのおかげだよね。
みんな盛り上がっちゃって誰が何を言っているのか分からない状況に。
あーあ、よっちゃんあんなに飲んじゃって。今のうちにごっちんにお願いしておこうかな。
飲んべぇの旦那とかすっごい嫌なんですけどぉ。
私はお酒飲めないけど、雰囲気に酔っちゃう。
「よし!じゃあここで暴露大会を開催しまっす」
美貴ちゃんがいきなりそんなことを言い出した。暴露大会って。
誰も暴露しないわよ。こんなみんなの居る前で。
「いいねぇ!じゃあ美貴から」
よっちゃんも乗らないでよ。あなた暴露すること無いでしょ?
そのうち回って来るんだよ?分かっているのかなぁ。
- 257 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:50
-
「えぇ〜俺?なぁいなぁ」
無いの!?ならそんなの提案しないでよ。実はみんな真面目に考えているだよ?
暴露することはないかって。
「私もなぁい」
だよね。2人はいっつもオープンだから。
「よっちゃんは?」
「なぁい」
だよね。あなたもオープンだもんね。
みんなに秘密にしていることなんて無いよね。・・・・・あ、私あるじゃん。
みんなに秘密にしていることあるじゃん。
「はいはいは〜い」
さゆが元気よく手を上げ、美貴ちゃんが当てる。
- 258 名前:True 投稿日:2006/10/06(金) 03:51
-
「さゆみは辻さんが大好きです!!」
それは暴露って言わないんだよ。みんな知ってることなんだから。
誰にでも伝わってる。さゆが辻ちゃんを思う気持ち。
「じゃあ絵里いきます!」
「どうぞ」
「本当は、まこっちゃん意外に大好きな人が居ました。ずっと好きだった。
でも、今はまこっちゃんだけが大好きです!!」
これは・・・・・暴露かも。よっちゃん口開いたままだし。
でもまことは普通ね。知ってたんだ、きっと。辻ちゃんは・・・・・あくび?
「そんなラブラブな2人は、初Hのことを暴露してください、まことさん」
「いやですよ!2人だけの秘密です」
- 259 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:51
-
そうね。私も聞きたくないわ。断って正解よ。
「ところでさ、辻ちゃんとさゆちゃんはもうしたの?」
今度はそっちですか。辻ちゃん呆れてるし。
「まだですよ。その時は報告します」
「なんでやらねぇんだよ。自信ねぇのか」
よっちゃん!なんてこと言うのよ。私はホッとしてるのよ。さゆがまだ・・・・・
だからそういうこと言わないで。辻ちゃんはさゆを大事に思ってくれてるの。
「そういうんじゃないですよ。そういう雰囲気になったらそのときです」
辻ちゃん。真面目なこと言ってるみたいに聞こえるけど、実際変なこと言ってるのよ?
焦らなくていいから、ゆっくりでいいから。さゆを大事にして。
- 260 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:52
-
「じゃあ僕から、大暴露していいかな?」
「お、なになに?」
ごっちんが暴露するなんて。今まで外から見ているだったのに。
咳払いを一つして、深呼吸をする。本当の大暴露が起こりそう。
「美貴。僕ね、亜弥ちゃんのこと好きなんだ」
「はぇ?」
「でも美貴から奪う気はない。美貴と一緒に居る亜弥ちゃんが好きだから」
淡々と話すごっちんにみんな驚き、声も出ない。でも一番驚いているのは亜弥ちゃん。
ごっちんを見つめたまま、口を開けている。
「僕は新しい恋を見つけるよ。素敵な人を。以上。僕の暴露でした」
- 261 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:52
-
空気が重くなった気がする。それはきっとごっちんも感じているはず。
言わなければ良かったと後悔しているかもしれない。
私が何か言おうとしたその時、コンコンが話始めた。
「私も・・・・・振り向いてもらえるように頑張ります」
この空気をどうにかしたいと思ったんだと思う。暴露じゃなく宣言になっちゃったけど。
そんなコンコンを見て、みんなが笑い出した。
「紺野ちゃん最高。頑張れ〜。それにしてもごっちんが亜弥狙いだったとは」
「ビビッタよ。相当ビビったよ、俺」
「だろうね。顔も性格もごっちんのがいいし」
「だろ?今最大のピンチだったよ、人生最大の」
そんな会話にまたみんな笑う。ごっちんが勇気を振り絞ったんだもん。
私もみんなに秘密にしていること言わなきゃ。
- 262 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:53
-
「私からもいいかな?」
「おっと、1番危なそうなのが来ましたけど?」
「フフ。今から私が言う意味分かる人と分からない人が居ると思うんだけど」
私は大きく深呼吸をしてみんなを見る。それぞれ興味津々のような顔をしている。
「あのね」
大きく息を吸い込む。吐くと同時に言葉を発した。
「お腹の子。よっちゃんの子だと思うの」
- 263 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:53
-
「梨華ちゃん何言ってるの?そりゃ兄ちゃんの子でしょ」
まことはそう言うよね。きちんと話してないから。さゆもそう思っているはず。
2人には話すタイミング逃しちゃったし。
「待って。どういうこと?よっちゃんの子って」
亜弥ちゃんはそういう反応よね。全部話してるつもりだから。
ごっちんとかもそうよね。あーなんか気まずいなぁ。
「・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?俺の子ぉ!?」
よっちゃん・・・・・そうだよね。ビックリするよね。黙っててごめんね。
でもこれは間違いないと思うの。ずっと誰にも言えなかったんだけど。
私は取りあえずさゆ達に今までのことを話した。
その間もよっちゃんは「どういうことだ?どういうことだ?夢か?」って騒いでたけど。
それから私は『よっちゃんの子』の理由をみんなに話すことにした。
- 264 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:53
-
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だんだん暑くなり始め、もう夏が完全に来たと思われた7月初め。
私は彼氏とうまくいっていなかった。お互い仕事が忙しかったっていうのもある。
だけど明らかにお互いの愛が冷めはじめているのがわかった。
そんな時にみんなから呼び出しがかかった。
よっちゃんが彼女と別れたから慰め会をするとのこと。
久しぶりにみんなに会えるのと、よっちゃんが別れたと聞いてすぐに行こうと決めた。
「なぁんで、おんなはぁ、おとこをぉ、愛し続けられらいんら?」
「よっちゃん飲みすぎ」
「もうそろそろ帰ろうか」
「梨華ちゃんもかなり飲んだみたいだけど大丈夫?」
「うん?らいじょ、うっ、ぶ」
私とよっちゃんはタクシーに乗せられて、家まで向かった。
よっちゃんを石川家に運んだ。その時には結構酔いも冷めてきていて・・・・・
- 265 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:54
-
「よっちゃ〜ん。歩いてよぉ」
「あうけましぇん」
「もう。酔っ払い親父!!」
そのまま床に倒し、私はすぐにベッドに入る。でも少し気になる。
何となくキスをしてしまった。触れるだけの軽いキス。
「梨華ぁ?」
よっちゃんは寝ぼけ眼で起き上がり、そのまま口を塞ぐ。
そして抱きしめられてベッドにダイブする。唇が離れることはない。
必死で抵抗して、塞がれていた口が開けた。
「よっち」
今度は深いキス。口を開いた隙を狙われた。もう止まろうとしないよっちゃん。
- 266 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:54
-
よっちゃんの右手が胸を掴む。手に力を入れて抵抗してみるけど、敵うわけがない。
その時、もういいかなって思っちゃった。よっちゃんだし。1回くらいならって。
私は抵抗を止めて、よっちゃんの動きに合わせ、溺れていった・・・・・
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
そのまま寝ちゃったよっちゃんに服を着せ、私も服を着た。
覚えてないと思ったから。こんなことしたって分かったらよっちゃん悩むと思ったから。
だから、1回だけだし私の胸の中にしまっておこうって決めたの。
予想通りよっちゃんは何も覚えていなくて、ただよく寝たとだけ言っていた。
- 267 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:55
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「ひでー男。今でも分かってないんでしょ?」
「あぅ」
「それはいいんだけど、よくよく考えたらつけてなかったなと思って。
しかもそのまま出したなと思って。私も酔ってたから気をつけれなくて」
「だからよっちゃんの子だと」
「うん。前の人とはしてない時だったから。よっちゃんしか居ないかなって」
みんな「うんうん」って頷きながら真剣に聞いてくれた。
よっちゃんはまだ頭がこんがらがっているみたいだけど、
落ち着いたら分かってくれるよね。
「じゃあ心配すること無いんだね。本当に2人の子なんだもん」
「そっか。俺の子なんだ。2人の子なんだ。誰のものでもなく俺らのなんだ」
- 268 名前:True dream 投稿日:2006/10/06(金) 03:56
-
よっちゃんはいきなりぶつぶつと呟き始め、
そして「よっしゃー!!」と言ってまたお酒をガブガブと飲み始めた。
「やべー。すっげぇ嬉しいかも。お前ら祝えー!!」
みんなにもお酒を持たせて飲ませ始める。つられてみんなガブガブ飲む。
でもよっちゃん。酔い醒めたらどう思うんだろ。失態だよね。
酔った勢いでやっちゃって子供できちゃいましたとか。
よっちゃんは私の近くまできてお腹に耳を当てる。
「はぁ。俺の子かぁ。どうしよ、父じゃん。やっべーまじやべー」
そう言いながらまた輪に戻っていく。醒めた時が楽しみだなぁ。
つづく
- 269 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/06(金) 17:12
- 何となく予感はしてましたが、良かった良かった。
- 270 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/06(金) 23:08
- 予感的中!!
ホントよかった。
周りのみんなの恋もうまく回り始めたようですね。
酔いが醒めたよっちゃん楽しみにしてます。
- 271 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/06(金) 23:51
- 予想もしてなかったです…
いや、でもよっちゃん、そんなことしちゃダメだけど、だめなんだけど
こーゆう場合は結果オーライなのかなぁ?
とりあ、お幸せにっ!
- 272 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/14(土) 19:32
- なるほど、そう持っていったかって感じですね。w
まぁ、これはこれで続きが楽しみになりました。
よっちゃんの自分の失言に対する後悔の度合いも気になりますね。
続き楽しみにしてます♪
- 273 名前:名無し 投稿日:2006/10/29(日) 10:05
-
>>269:名無飼育さん様
予感的中おめでとうございます。良かったです。
>>270:名無飼育さん様
みんなが幸せであればHAPPYって感じですw
>>271:名無飼育さん様
みなさん予想通りだと思っていたので新鮮です。
騙されてくれてありがとうございますw
>>272:名無飼育さん様
こんな持っていきかたになっちゃいましたw
- 274 名前:名無し 投稿日:2006/10/29(日) 10:08
-
何となく中途半端な感じなのですが、今回で終わりにします。
なんだかダラダラいつまでも続いちゃいそうな感じだったのと、間が開きすぎてしまうと思ったので。
では最後。よろしくお願いします。
- 275 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:09
-
クリスマスパーティーの日。
よっちゃんは物凄く酔っ払っちゃって、私一人じゃどうにも出来ないから、
ごっちんに手伝ってもらって部屋まで運んでもらった。
そのままベッドでグーグー寝ちゃって・・・さゆがえりの家に泊まるって言ってたから、
私はさゆのベッドで寝ることにした。
お昼前に起きて部屋に戻ったけど、よっちゃんはまだ寝てて。
息しているのを確認してからご飯食べたり洗濯したり。
お昼過ぎてさゆが帰ってきた。
「ただいま〜。あれ、ひーちゃん居ないの?」
「ん?まだ寝てる」
「あー昨日かなり飲んでたから」
私は呆れてるって顔をしてさゆを見た。
さゆはしょうがないじゃないって顔をして、そのまま階段を上がっていった。
- 276 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:10
-
「・・・・・もうそろそろ起こそうかなぁ」
そう思って部屋に向かう。
おはようのキスでもして起こそうかと思ったけど、
カワイイ寝顔を見ていたら起こすのが可愛そうになってきて、
そのまま寝かせておくことにした。ベットに寄りかかり、雑誌を読む。
「んぅ、、、、うぅ。んん?」
しばらくするとよっちゃんが唸り始め、起き上がった。
「あったまいってぇ〜」
そりゃあれだけ飲んだら頭も痛くなるわよ。学生最後だったから許すけど。
唸りながら部屋を見回して私の方を見る。
「喉渇いた」
- 277 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:10
-
え?それって水持って来いってこと?わざわざ私のベッドで気持ちよく寝かせてあげて、
しかも起こすこともしなかったのに、命令するわけですか・・・・
私はジッとよっちゃんを睨む。その視線で察したであろうよっちゃん。
「水飲んできま〜す」
そう言って部屋を出て行った。
結構普通だったよっちゃんを見て、少し不安になる。昨日のことを覚えているのかな。
私の予想は覚えていないだけど・・・あの時でかなり飲んでたし。
雑誌を床に投げ、ベッドに横になる。まだよっちゃんの温もりが残っていた。
「よっちゃん・・・」
「呼んだぁ?」
声がして慌ててドアの方を見ると、ペットボトルを持ったよっちゃんが立っていた。
- 278 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:11
-
「ベッドの上で俺の名前呼ぶなんて、そんなに愛おしかったのぉ?」
ニヤニヤしながら近づいてくるよっちゃん。やっぱり覚えていなさそう。
「いやー昨日は飲んだなぁ。久しぶりにあんなに騒いだよ」
私の隣に腰をかけ、嬉しそうに昨日の話をする。
どこまで覚えていてどこから忘れているのか・・・
「なぁんだよ、浮かない顔して。楽しくなかったか?」
「まさか。すっごい楽しかったよ!!」
「だよな〜、やっぱ仲間っていいわ」
「・・・・うん・・・・・」
どうしても楽しい顔が出来なかった。
心配するだろうなぁって思っても、勇気を出して話したのに覚えてなかったらって・・・
- 279 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:11
-
「でもあれだな。みんなそれぞれ内緒にしてる話とかあるもんだな」
「え?」
「ごっちんとかさ、俺マジでビビったし。美貴とか青ざめてたよ」
それって・・・覚えてるってこと?私の話も?
聞きたいけど自分からなんて言い出せなくて、よっちゃんの言葉を待った。
「・・・・・ゴメン!!本当にゴメン!!俺マジで覚えてなかった。
あの日メッチャ飲んでたのは覚えてるんだけど、途中で全く記憶無くて。
何かやらかしたかな?とは思ったけど、梨華の部屋だったから大丈夫だと思ってた」
よっちゃんは正座して深く頭を下げて必死で謝ってきた。本当に申し訳なさそうに。
「俺本当に最低だわ。勢いでやって子供作っちゃうとか。
酔ってたっていっても許されないわ。梨華の人生変えちゃったわけだし」
- 280 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:12
-
さっきから謝ってばっかりのよっちゃん。
謝るよりもさ、本当に自分の子っていう嬉しさを持ってほしい。
私はすっごく嬉しいんだもん。別に怒ってないし。
逆にこういう人生に変わってくれて良かったと思ってる。
あのままだったらダラダラ過ごして、何も満たされないで毎日が楽しくなかったし。
今は赤ちゃんのこととかよっちゃんのこととか考えるの楽しいもん。
「よっちゃんは嬉しくないの?」
「ふぇ?」
「私のお腹の中に居るのが自分の子だって分かって嬉しくない?嫌だ?」
よっちゃんは激しく頭を横に振り、お腹をジッと見つめ、そこの触れた。
「ここに俺の子供が・・・」
「まだ小さいけど、ちゃんと大きくなるんだよ。いっつも見てるでしょ?」
- 281 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:12
-
口を開けたまま、目を離そうとしない。その姿が可愛くて、自然と頭を撫でる。
頭を撫でられたことに気付きちょこっと顔を上げて、デレっと笑った。
「嬉しいよ。すっげー嬉しい。だってなんか・・・・・
今までだって自分が父親だって思っていたはずなんだけど、
やっぱりどっかで違うんだって思ってたのかもしれない・・・・・
こんなに嬉しいんだもん。どうしよ」
嬉しそうにお腹を撫でながら興奮が収まらないみたい。
でもそんなに喜んでくれると言って良かったって思う。
すっごく悩んで沈んじゃうんじゃないかって思ったから。
「でもその時の行動は許されることじゃない。マジでゴメン。
俺本気で家探すわ。3人で暮らせる家」
私はニッコリと微笑んだ。
「その前に就職先探してね」
- 282 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:12
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「うぅ、っんん」
カーテン越しに光が差し込んでいる。時計を見ると朝の9時だった。
朝方まで飲んでたからまだまだ眠れそうだ。
「ふぅ、ん?」
「っあ」
俺は横を見て驚いた。丸くなったさゆちゃんが寝ていたから。
でもすぐに帰りのことを思い出した。思わず頬が緩む。
- 283 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:13
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- 284 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:13
-
「じゃあお開きっつーことで。ごっちん、よっちゃんヨロシク」
「うん・・・・・なんか美貴、僕に冷たくなかった?」
「う〜ん・・・ちょっとだけ」
各々が帰る準備をして外に出た。なっちさん達にお礼を言い、みんなで歩く。
さゆちゃんは俺の隣にピッタリとくっついて離れない。
凄く眠そうだったんだけどね。
「今日は疲れたしょ?ゆっくり休んでね」
「・・・・・あのぉ」
「ん?」
「今日・・・・・辻さんの家に泊まっちゃダメですかぁ?」
- 285 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:13
-
その言葉に俺は口を開けたまま何も言えなかった。
黙っているからダメだと思ったのか、さゆちゃんは謝ってきた。
「ゴメンなさい。急にそんなこと言っても迷惑ですよね。本当にごめんなさい」
「いやいや、別に迷惑じゃないんだけどさ、泊まってもいいんだけどさ、
梨華ちゃん怒るでしょ」
「本当ですか!?絵里の家に泊まるって言ってあるの」
こいつ・・・・・確信犯じゃんって俺は思った。
亀ちゃんはまことの家に泊まるって言ってたし、最初から俺のとこ泊まる気だったな。
そんなことが分かっても断れるわけはなく、2人で家に向かった。
家に着くともう眠たくて眠たくて。
さゆちゃんも眠たそうだったし、俺は客間に布団を敷いてそこに寝てもらおうとした。
- 286 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:14
-
「少し待ってね、すぐ敷くから」
「ここ・・・・ですか?」
きっと俺の部屋に敷くと思って居たのだろう。でもそれはダメだと勝手に思った。
だからここに敷いて寝てもらおうとしたのに・・・
「辻さんの近くで寝たいです。一緒にここで寝てください」
「ここで?それはちょっと・・・」
「じゃあ部屋で寝たいです」
口を尖らせ目を潤ませて訴えかけてくる。はぁ。この顔には勝てない。
仕方なく布団をそのまま自分の部屋に持っていった。
幸い部屋は片付いていて、布団を敷く部分もありそこに敷いてみた。
「その格好で寝るの苦しいよね?俺ので良ければスウェット上下貸すよ?」
「本当ですか!?お願いします」
- 287 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:14
-
少し大きめのスウェットを来て嬉しそうにしているさゆちゃんを横に、俺は布団に入った。
もう眠たくてどうしようも無かった。いっつも12時には寝てる。
こんなに起きていたことはない。
「おやすみ〜」
「・・・・・おやすみなさい」
さゆちゃんの声を聞き、心地よい眠りに入ろうとしていた。
その時何か大きな物が自分の身体に乗っかってきたのだ。
何となく予想はついたけど・・・・・なんか大胆すぎじゃねぇか?
「・・・・・重い」
「ひど〜い!女の子にそういうこと言っちゃいけないんですよ?」
意識はあるけど目が重たくて開かない。さゆちゃんのことを見ることが出来なかった。
しばらく何も喋らず動かず居ると、
俺の隣にゴロンと寝転がり背中にピッタリくっついてきた。
- 288 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:14
-
「辻さん、寝ちゃいましたぁ?」
「うん」
「うそつき。起きてるの」
「うん」
「・・・・・・・・・・・・・」
さゆちゃんが話さなくなった。寝たかなって思ったけど、そんなに早く寝るわけないし。
不貞腐れてるのかな。
「どしたぁ?」
「・・・・・さゆみって、魅力ないですか?」
「はい??」
- 289 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:15
-
この子は何を言っているんだろう。魅力ないわけないと思うけど・・・
梨華ちゃんの妹だけあって、出るとこ出てるし。って俺は何を考えてるんだ。
「だって・・・こんなに近くに居るのに何もしてくれないじゃないですか」
「・・・・・」
「だから魅力ないのかなって」
「いや、そんなことはないですけど」
「辻さんになら抱かれてもいいの。抱いてほしいの」
そう言ってさゆちゃんは後ろからギュッと俺を抱きしめた。
そんなこと言われてもなぁ。もう眠たいし。酔ってるし。
俺はさゆちゃんの方を向き、ギュッと抱きしめおでこにキスをする。
真っ赤になりながら顔を上げたさゆちゃんに自分の気持ちを伝えた。
- 290 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:15
-
「魅力がないわけじゃないし、抱きたくないわけじゃない。
大事にしたいんだよ。今俺酔ってるし。ちゃんとシラフの時に抱きたい。
適当にしたくないってこと。分かってくれる?」
口を尖らせながらもコクリと頷いてくれた。
「このままで寝てもいいかな?今日は抱きしめて寝たい気分」
さらに強く抱きしめ、自分の腕の中にしまいこんだ。
「苦しいの」と言いつつも嬉しそうなさゆちゃんを見て安心する。
唇にキスをして、「おやすみ」とお互いに言い合った。
焦ることはない。チャンスといえばチャンスだったのかもしれないけど。
ただ、どうにもこうにも眠たかった。
- 291 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:16
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
- 292 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:16
-
そんなことがあった今朝。帰らなくてもいいのかな?まぁ今日は休みだけど。
母さんはもう仕事行ったかな。父さんは行ってるだろうな。
そんなことを考えながらベッドを抜け出しキッチンに行く。
「何もねぇな。水でも飲むか」
冷たい水が喉を通って心地いい。
ふとさゆちゃんの顔が浮かんで部屋に戻ることにした。
「あ、起きた?」
さゆちゃんはベッドに座って俯いていた。目をウルウルさせながら。
「どしたの?怖い夢見たとか?」
首を横に振る。それでも俺から目を離さない。隣に座ってもまだ見つめてくる。
- 293 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:16
-
「起きたら・・・・隣に居なかったの」
「え?」
「ずっと居ると思ってたのに居なかったから・・・寂しかったの」
やられた。俺のツボを突きやがった。やっぱ梨華ちゃんの妹だ。
隣に居るさゆちゃんをギュッと抱きしめてキスをする。離れるのが嫌で長く長く・・・
「ん、、、、んん」
そのままゆっくりとベッドに寝かせる。それでも止まらずに深く口づけた。
さゆちゃんは一瞬ビクっとして固まってしまった。
「ゴメン」
「違うの、謝らないで」
- 294 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:17
-
さゆちゃんは俺にしがみついてジッと見つめてくる。
「嫌なわけじゃなくて・・・・ビックリしただけなの」
そりゃビックリするよね。いきなり舌が入ってきたら。でも止まれないんだよね。
またキスをする。今度は最初から深く。
朝からかよって自分でも思ったけど、止めようなんて一切思わない。
ただたださゆちゃんを抱きたくて。離れたくなくて。愛しちゃってるんだなって思った。
「ん、ぅん、、、はぁ」
時折漏れる声が興奮を一層高めていく。
首筋に顔を埋め、そのまま耳に移動し囁いた。
「愛してる」
- 295 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:17
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
- 296 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:17
-
「痛かったの」
「ゴメン」
体力を使い果たした俺達はベッドで横になっていた。もちろん腕枕で。
さゆちゃんはやっぱり初めてだったみたいで、かなり痛がっていた。
一応優しくしたつもりだったんだけどなぁ。俺も久々だったし。少しぎこちなかったかも。
「こんなに痛いと思わなかったの。絵里は意外と大丈夫って言ってたから」
「まぁ人によるんじゃない?」
「でも痛かったの」
「だーかーらー、ゴメンって」
「許さないの」
- 297 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:18
-
自分から抱いてって言ったくせにこれかよ。俺は口を尖らせて困った顔をした。
「でも、キスしてくれたら許すの」
なんだ。そんな簡単なこと。こっちから喜んでしますよ。チュッと優しくキスをした。
「ふふ。痛かったぁ」
「まだ言う?でも最後の方は痛そうじゃなかったじゃん。逆に・・・」
キッと睨まれ続きを言うのを止めた。何されるか分からない。
最初は本当に痛そうで、ずっと眉間にしわが寄っていた。
「止めようか」って言ったけど「いや」って言うから続けた。
痛そうにしているさゆちゃんには悪いと思ったけど、俺はすっごく気持ちよかった。
そのうち痛そうにしていた声が変わってきたのに気がついた。
眉間のしわも無くなってたし。きっと気持ちよくなってたはず・・・
- 298 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:18
-
「あーあ。初体験しちゃった」
「そうだね。良かったの?俺なんかで」
「いいの。だってずっと初めては辻さんって決めてたんだもん」
そうやって自然と嬉しい言葉をかけてくれる彼女に、
俺はどんどん嵌っていくんだろうなぁって思った。
「あ!みんなに報告しないと」
「いいよわざわざしなくても」
「だぁってみんなに言うって約束したの」
「大丈夫だよ。2人だけの秘密ってのも大事じゃない?」
- 299 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:19
-
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12月31日。
「あー俺らはギリギリで行くわ。寒いし」
『分かった。こっち着いたらまら電話くれ』
「おぅ。じゃ後で」
「美貴ちゃん?」
「ん?そう」
美貴との電話を切ると梨華が聞いてきた。
今日はみんなで初詣に行こうという話になっていて、もう集まってるらしい。
俺はというと、梨華に負担かけないためにギリギリに行くと言ってある。
本当は寒いから並ぶのが嫌なだけなんだけど・・・
- 300 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:19
-
「行ってきていいよ?私明日の昼でもいいもん」
「ダメだよ。赤ちゃんのために安産のお参りしないと」
「別にすぐしなきゃダメってものでもないでしょ?」
「ダメなの。俺がダメなの」
梨華は訳が分からないという顔をして台所に戻っていった。
初詣に行く前に年越しそばを食べようということで、準備してくれている。
なんだかんだで俺はずっと梨華の家に居る。どうせ隣だし、なんてことない。
大学卒業してもこのままなんじゃないかと少し不安ではある。
ダメだ俺、しっかりしろ。
「はい、お蕎麦」
「お、ありがとう」
「パパも食べる?」
「いや、まだいい」
- 301 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:19
-
梨華はそのまま俺の隣に座った。ここ最近はずっと料理の勉強をしているらしい。
今日も豪華な料理がいくつも出てきた。どれを梨華が作ったのか・・・
たぶん無かっただろう。でも頑張っているというのは分かっていた。
やっぱり家を出て3人で暮らしたいとは思う。そのために俺は職を探し、梨華は料理する。
「ひーくん。仕事は探せそうか?」
「あー頑張ってはいます」
「そうか。実はおじさんの知り合いで会社経営している奴がいてな。
人が足りないみたいなんだよ。普通の営業なんだけど、面接だけでも行ってみるか?」
思ってもみなかった梨華パパからのお話。俺はすぐに「はい」と返事した。
もう働けるところならどこでも良かった。しかも知り合いというなら安心でもある。
こんなにお世話になって良いのかとも思ったが、言ってくれているのだから甘えよう。
「まぁ、受かるかどうかは分からないけどな。俺の知り合いだから。人物重視だ」
「それなら大丈夫ね。学力重視だったら絶対無理だろうけど」
- 302 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:20
-
絶対とか言わなくてもいいじゃん。それなりに頑張っているんだし。
今まで受けてきた会社の見る目が無かっただけだよ。俺を落とすなんて勿体ない。
あとで後悔するさ。あの時採っておけば良かったって。
蕎麦も食べ終わり時計を見ると、もう11時40分だった。
ここから歩いて5分ちょいだがみんなを探すとなると少し時間がかかる。
「梨華、もう行かないと」
「え?もうこんな時間?」
俺は食器を台所に持っていき、おじさんの蕎麦を茹でているおばさんにご馳走様をした。
「はーい。ひーちゃん気をつけてね。あそこ階段長いし。梨華ドジだから」
「分かりました。気をつけます」
「よっちゃん、早く〜」
梨華に呼ばれて慌ててジャケットを羽織り、家を出る。
- 303 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:20
-
「うわぁ、やっぱり寒いね」
「大丈夫か?もう一枚着てくれば?」
「ううん。身体は暖かいから大丈夫。手も暖かくして?」
首をちょこっと傾げて手を小さい手を出す。今の俺の顔。誰にも見せたくない。
きっともの凄くデレっとしてるに違いないから。
出された小さな手をギュッと握り、ジャケットのポケットにしまう。
腕も絡めて寄り添って神社までの道を歩いていく。いいねぇこういうの。
入り口に着くと美貴が不貞腐れながら立っていた。
「おっせーよ!電話しても出ないし」
あ。携帯忘れてきた。慌てて出てきたからしょうがないよね。
それにしてもここに迎えに来てくれるだなんて、やっぱ仲間はいいねぇ。
- 304 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:20
-
「ったく、なんで俺がお前らを迎えに来なきゃいけないんだよ」
「なんだ嫌々か」
「じゃんけんで負けたんだよ。迷ったらかわいそうでしょって、亜弥ちゃんが」
口を尖らせながらグチグチ言ってる美貴。本当に亜弥には弱いんだな。
美貴に連れられてみんなの並んでいる場所に着いた。
そこに居たのはいつものメンバー6人。偶数か、ちょうど良いじゃね?
ってか美貴が居ると奇数になるから追い出されたんじゃねーの?
そんなこと口に出したらあとで何されるかわかんねぇな。
それじゃなくても亜弥とごっちんが話しているのイライラしているのに。
そう思った瞬間に美貴は2人の間に入り込み、ごっちんを一睨みした。
あーあ、ごっちんもバカなことしたよなぁ。あんなこと言わなきゃ良かったのに。
あとの2カップルはいつも通り仲がよろしいことで。
ん?なんか辻とさゆ・・・前より良い感じになってないか?
俺がジッと見ていることに気付いた梨華が話しかけてきた。
- 305 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:21
-
「あの2人。うまくやっているみたいだよ。この前さゆが嬉しそうに話してくれたの」
「・・・・・どういう意味だ?もうやったってことか」
「まぁそんな感じかなぁ」
あいつ・・・・俺の大事な妹に手出しやがって。しかも報告しないとか。
しかも俺らより先にやるとか・・・・・許せん。
「俺らより早いとか・・・生意気だ」
「そうでもないでしょ?私達のほうが早いの」
そう言われて自分の失態を思い出した。
梨華は良いって言ってくれてるけど、まさか一発で出来るとは。俺の精子恐るべし。
「ほら〜早く並んでお参りするよぉ」
梨華に手を引っ張られ、列に並ぶ。
- 306 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:21
-
1月1日午前0時
ゴーン、ゴーン、ゴーン・・・・・・・・・・・
鐘が鳴り、年が明けたことを知らせてくれる。今年は去年より楽しい年になるだろう。
俺らの番が来た。
カラン、カラン、カラン。パンパン。
静かに手を合わせてお願いをする。
元気な子供が生まれますように。梨華と子供とずーっと一緒に居られますように・・・
俺がここにいられるのは梨華が居てこそだと思っている。
どんなに辛くてもどんなに苦しくてもいつも側にいて声をかけてくれた。
照れくさくて口に出しては言えないけど、すごく感謝している。
ひょんなことから出来てしまった子供。
だけどそのおかげでダラダラ生活から抜け出そうと思えた。
「何お願いしたの?」
「ん?色々と」
「あんまりたくさんお願いしたら叶わないかもしれないじゃない」
- 307 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:21
-
そんなことをいう梨華の頭を笑ってポンポンと叩く。そういう子供みたいなとこ・・・
好きだな。うん、すっごく好きだ。
「大丈夫。悪いことしなければちゃんと叶えてくれるよ」
手を繋いでみんなのところに駆け寄る。
「今年も始まったねぇ」
「あー大学生活終わりかよ。めんどくせぇ」
「俺らまだ2年もあるし」
「絵里たちなんて3年もありますよ?」
「お前らなんかムカつく」
「また来年もこうやって初詣に来たいの」
- 308 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:22
-
俺もそう思う。それぞれバラバラになっちゃうけど、初詣ぐらい一緒にしたいな。
「来年はもう1人連れてくることになるんじゃない??」
「あぁ。今はお腹にしまわれてるけどねぇ」
みんなで梨華のお腹を見る。このお腹がどんどん大きくなって、いつか生まれる。
その時はきっと感動するんだろうなぁ。男の子か女の子か。それも気になる。
俺に似てイケメンか、梨華に似てカワイイか。
「でも男の子でよっちゃんに似ちゃったら大変だよな。
酔った勢いで子供作っちゃうヘタレだよ?ちょっと嫌だな」
「もし女の子の子供が私達に出来たら、その子と近づけちゃダメね。
酔った勢いで子供作らされるかもしれないから」
「お前ら・・・・・本当に反省してるんだから止めてくれよ・・」
みんなケラケラ笑ってる。梨華まで。俺らのこと言われてるのに笑うなよぉ。
なんかムカついたから話を辻に振ってみた。
- 309 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:22
-
「辻。こういうことになるから、ちゃんとゴムはつけるんだぞ。
この前はゴムつけたのか?」
笑っていた辻の顔が突然驚きの表情になった。
まさか知られてるとは思わなかったんだろう。甘いな。
「ちょっと、よっちゃん!!」
「えぇ??そこヤッタのか。さゆちゃん初体験終了じゃん」
「おめでとう。痛かったでしょ?」
「すっごく痛かったの」
「おい」
「いいじゃない、別に。この仲間達だよ?」
「だから嫌なんですけど・・・」
- 310 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:23
-
話が一気に辻に傾いた。俺の勝ち。でも隣で奥さんは口を尖らせて怒っている。
バラしたからってそんなに怒ることないじゃん。笑いだよ、笑い。
「さゆに内緒ねって言われたのに。私がお喋りみたいじゃない」
「だってお喋りじゃん」
尖らせた口をつまんで言った。「ブーブー」言ってるけど無視無視。
やっぱり冬は寒い。もうそろそろ帰らないと完全に体が冷えてしまう。
「帰ろうか。体冷えちゃうから」
「・・・・・うん」
まだガヤガヤしている輪から抜け出し、俺達は家に向かって歩き出す。
美貴にメールしておけばいいよな。そういえばごっちん居なかったような・・・
「ねぇ、ごっちん消えてなかった?」
「うん?色々あるんでしょ、ごっちんにも」
- 311 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:23
-
何か知っているような顔で笑っている。前から何かと仲良いんだよな、この2人。
俺らがバカみたいに騒ぐから、
落ち着いている2人がやけにお似合いに見えたこともあった。
今となってはただ仲の良い友達って感じだけど。
ごっちんは俺らに言えないようなことも梨華には言っているみたいだし。
言いづらいこととかあるだろうからまぁそれはそれでいいんだけれども。
「来年は3人で来なきゃねぇ」
「んだな。あー早く生まれないかなぁ」
「あと5ヶ月待って」
5ヶ月かぁ。楽しみで楽しみでしょうがない。
何をして遊ぼうかとか、お風呂に入れなきゃとか考えてしまう。
「良いパパになってね」
「任せとけって」
- 312 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:23
-
****************************************
- 313 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:23
-
翌年。1月1日午前9時。
「大丈夫かぁ」
「うん、大人しいから大丈夫」
「よし、俺が抱っこする」
今俺は初詣に来ている。さすがに夜中は止めた方が良いということでこの時間。
もちろん一人増えたから三人で向かう。
そこにはもう仲間達が来ていた。
「おぉ来た来た!ちゃんと暖かくしてる?」
「大丈夫。バッチリ」
「わぁ。大きくなったねぇ。見ないうちに。カワイイ」
「もう7ヶ月だもんな。大きくもなるよ。そのうち喋りだすんだろうなぁ」
- 314 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:24
-
そう。子供が生まれて7ヶ月。すくすくと成長しております。
生まれたのは男の子。名前は「華人」。
単純に梨華の「華」とひとみの「ひと」を取ってつけました。捻りはないです。
俺の就職先も決まり、今は3人で実家の近くのアパートに住んでいます。
なかなか泣かないからママは楽だそうです。
ババ達に聞くと俺も梨華もよく泣く子だったようで、その辺誰に似たのかは不明。
まことが一番泣かなかったようなので、きっと吉澤家の遺伝でしょう。
「それにしても華人イケメンだなぁ」
「ねぇ。こんな時からイケメンだったら将来どうなるのぉ」
そう、華人は物凄くイケメン。今は。赤ちゃんて顔が変わるっていうし。
でもやっぱり俺似なのかな?とも思ったり。最近ではごっちんに似てるという話も・・・
そういやぁごっちん泣かない赤ちゃんだって言ってたな。まさか!!
ないない。あの2人は絶対にない。それにごっちん見たら泣くし。
- 315 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:24
-
「俺らの赤ちゃんは女の子かな?」
「私は女の子が良い」
そういえば、美貴達も子供が出来ました。3月が予定日だから、ギリギリ同じ学年。
もうパンパンのお腹を抱えながら元気に過ごしています。
それからごっちんにも彼女が出来ました。なっちさんとこの紺野ちゃん。
紺野ちゃんが勇気を出して告白したところ、迷いもなくOKだったとか。
まぁこれも梨華から聞いたんだけどね。ごっちん自分の話しないし。
あとは・・・・・まぁ今まで通り仲の良い関係が続いております。
それぞれで会うのはよくあるけど、みんなで会うのは去年初詣以来。
「こうやって集まるのも一年ぶりだぁ」
「来年はまた1人増えるわけだし」
「毎年増えるってなんかいいよね」
来年も再来年も。5年後も10年後も。こうやって仲間でいられたらって思う。
どんなに増えても変わらない俺達で居たいなって。
- 316 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:24
-
****************************************
- 317 名前:True dream 投稿日:2006/10/29(日) 10:25
-
3年後。
華人も3歳になった。今は公園で遊んでいる。
「二人ともーご飯にするから帰るよぉ」
この光景。どっかで見たことあるような・・・・・忘れた。まぁいいや。
梨華は大きなお腹を抱えて俺達を呼んでいる。華人の弟か妹がもうすぐ生まれるのだ。
「パパ。いこ」
手を繋いで公園を出る。真っ赤な夕日が俺達家族を照らしていた・・・
END
- 318 名前:名無し 投稿日:2006/10/29(日) 10:26
-
無理やり終わらせた感ありありですが、許してください。
今までありがとうございました。
気が向いたら新しいのを書きたいと思っています。
失礼しました。
- 319 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/30(月) 12:24
- お…おわってしまった!!!
次回作期待してます。
また性別このままだといいな
- 320 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/11/03(金) 20:00
- 完結お疲れ様でした。
なんにせよちゃんと完結させたのだから偉いですよ。
無責任にほったらかす人だっているんだから。
次回作、楽しみに待っています。
- 321 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/05(日) 23:27
- 完結お疲れ様です。
320さんの言うとおりだと思いますよ。
みんな幸せになって良かったです。
次回作、まったり待ってます。
- 322 名前:名無し 投稿日:2006/11/07(火) 23:27
- >>319:名無飼育さん様
ご希望通り、またそのままの性別ですw
>>320:名無飼育さん様
ありがとうございます。次も頑張ります!
>>321:名無飼育さん様
ありがとうございます。幸せという言葉が好きなので。
皆さんありがとうございました。
懲りずにまた書いてみました。前回と同じ性別です。
CPやキャラは変わりますが、やっぱり吉澤さんと石川さんがメインです。
更新速度は遅いかと思いますが、またよろしくお願いします。
- 323 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:29
-
「のん!遅れるぞ!」
「やばぁいよー!また遅刻だぁ!!」
「だーから何回も起こしただろ」
「眠たかったんだもん」
「いってきます」とパンを咥えて家を出ていった。いつも通りの慌ただしい朝の風景。
のぞみが行ってからゆっくりと朝食をとっている俺は吉澤ひとみ。21歳。大学3年生。
さっき家を出たのが俺の弟。のぞみ。18歳の高校3年生。
1年前に両親が海外に転勤になったため、今は2人でこのマンションに暮らしている。
父親はまぁまぁ金を持っているからなかなか良い所に住ませてもらっている。
両親が帰ってくる予定は今のところなく、
お互いが稼ぐようになるまではここで暮らすだろう。
「ふぅ。あいつ間に合ったかな」
- 324 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:30
-
俺は物凄く心配性。弟のことに関しては特に。周りはそれをブラコンというのだけれど・・・
両親が海外に行ってから、家のことは全部俺がしてきた。
のぞみが出来ないしやらないのもあるが、甘やかしすぎだとも言われる。
ワガママぐらい聞いてやらなきゃと思ってしまうのは、やはりブラコンだからなのか・・・
毎朝起こしてご飯を作って掃除して。洗濯ぐらいは自分でやってくれる。
――――――――― ピーンポーン
こんな朝早くに来る奴はあいつしかいない。テレビ付きインターホンに出る。
そこには予想通りの奴が写っていた。
「はい」
『俺俺』
「なに?」
『開けてよ。まだ朝は寒い』
オートロックを解除し玄関の鍵を開けておく。勝手に入ってくるだろう。
思っていた通り勝手に入ってきた。
- 325 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:30
-
「おはようっす」
「何しに来たの?今日午後からじゃなかった?」
「まぁそういうなよ。おっ、またのぞみは寝坊したのか」
「あぁ。まだ始まって一ヶ月ぐらいしか経ってないのに、半分は遅刻してるはず」
のぞみは一度寝るとしっかり睡眠が取れるまで寝てしまうらしく、
いくら起こしても起きないことがある。
最近では諦めているけど、それも良くないと言われた。叩き起こせと。
「社会に出たらどうすんだよ。いつまで経っても起きれなかったらすぐ首だぞ」
俺に説教しながら飯を食ってるのが藤本美貴。俺の幼馴染。
引っ越すことが決まった時、「じゃあ俺も近くに引っ越すわ」と付いてきた。
俺らが好きでしょうがないくせに、いつも否定する。素直になればいいのに・・・
- 326 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:31
-
「なんか毎日暇だよなぁ。もうそろ彼女欲しくね?」
「う〜ん・・・」
「居たらいたで楽しいと思うよ?ビビっとくる出会いが欲しいな」
「そんなことあるわけねぇだろ」
「わっかんねぇよ?すぐそこにあるかもしれないじゃん」
すぐそこねぇ。あったらもう手に入れてるだろうが。無いから彼女居ねえんだって。
しばらく彼女というものに縁のない俺達。
大学に入ってからは、ホモ説が出るくらい俺らに女の影は無かった。
「久々に合コンでもすっか」
「嫌だ。疲れる」
合コンにも何回か行ったことはあるが、良い女にめぐり会ったことなどない。
気を使うし楽しめないから嫌だった。
- 327 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:32
-
つけっ放しのテレビから芸能ニュースが聞こえてくる。
『2人は破局したのではないかと言われています』
『なぜでしょうかねぇ。なかなかお似合いだと思いますけど』
『色々あるんでしょ、あの子達も』
「あー松浦亜弥かぁ。俺すっげータイプ」
「なんか気取ってて嫌だな」
「いや。きっと物凄く甘えたがりのはずだ。表でこんなに頑張ってんだもん」
「でも後藤真希と付き合ってんでしょ?」
「今破局したって言ってた」
「どうだか」
芸能ニュースってのが好きじゃない。人のプライベートを明かして楽しんでる。
法の下にすべての国民は自由なんだから何したっていいだろ。と思う。
- 328 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:32
-
「俺出会ったら全力で落とすよ」
「出会ったらって有り得ない事言うね」
「夢はでっかくですよ、お兄さん」
「おめぇの兄ちゃんじゃねぇっての」
こんなに大きな都市で、そんな偶然あるわけがない。芸能人見たことねぇもん。
着替えてこようっと。
『続いては最近人気急上昇中の女優。石川梨華さんの話題です。
また映画の出演が決まったとか』
『彼女いいですよ。芝居が暖かい』
『見てて引き込まれますからね。
これからもどんどん仕事が増えると思いますが、頑張ってほしいですね。
続いては・・・・・」
- 329 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:33
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「ふぅ」
「石川ぁ。今日もお疲れさん」
「お疲れ様です」
私は石川梨華。21歳。芸能活動をしていて、今は演技に力を入れています。
いろんな人から褒められて気分はとってもいいんだけど、
さすがに最近の多忙な感じには疲れてきちゃった。贅沢な悩みよね。
―――― ♪♪♪♪♪♪ ♪♪♪♪
「もしもし」
『おぅ、俺。仕事終わった?』
「うん、今日は終わり」
『お疲れさん。声が疲れてるな。明日は?朝早いの?』
「ゴメン。明日もドラマの撮影入ってて早いの」
『そっか・・・・しゃーないな。お互いこういう仕事だっての分かってるし』
「うん・・・本当にゴメンね」
『謝んなって。明日も頑張れよ、身体に気をつけて。じゃあまた連絡する』
「うん、おやすみ」
- 330 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:33
-
これも大きな悩み。彼に全然会えなくなっちゃった。
彼もこの仕事だから分かってくれてるけど、やっぱり会いたいって気持ちはある。
声を聞けるだけでも嬉しい。結構マメな人だから連絡はくれる。
それがせめてもの救いなのかな。
「どうだ?新しいマンションは。いいとこだろ」
「はい!あんなに大きなマンション用意していただいて、ありがとうございます」
「たいしたことないよ。セキュリティーがバッチリなところじゃなきゃな。
困ってることとかないか?」
「特にないです。快適なので」
仕事が増えてからは実家の神奈川から通うのは大変だと思い、
4月から一人暮らしを始めた。事務所が全部やってくれたから私は何もしてないの。
大きくてキレイなマンションだったから文句も一切ないし。
2LDKだから一人で住むには少し大きすぎて寂しい気もするけど・・・
家に帰って寝るだけだし。料理も全然出来ないからお弁当とかで済ませちゃうし。
あ、コンビニ寄っていかないと。お腹減っちゃった。
「すいません。近くのコンビニで降ろしてもらえますか?」
- 331 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:33
-
近くのコンビニで降ろしてもらいお礼を言う。ここからマンションまでは徒歩2分ぐらい。
明るい道だから全然怖くないの。
「今日は○○弁当にしようっと」
芸能人がこんなところでお弁当買ってるだなんて、恥ずかしいことだよねぇ。
もっと豪勢に色々食べたいけど・・・1人じゃ寂しいし。
買い物をしていつもの明るい道を帰っていく。ふと感じる視線。振り向いても誰も居ない。
マンションの前でも感じた。
{誰かに見られてる}
そんなことを思いながらマンションに入って急いでオートロックを解除した。
さすがに中までは入ってこないみたい。
「まことぉ。明日迎えに来てねぇ」
「嫌だよ。のんつぁん絶対寝坊するじゃん」
- 332 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:34
-
大きなロビーで高校生ぐらいの2人組みの男の子が大声で話している。
若いっていいなぁ。あんなに大きな声が出せるんだもん。
「いいじゃ〜ん」
「嫌だ!ったら嫌だ。俺まで遅刻しちゃうもん」
「まことのケチ〜。それでも親友かよ」
「そこ親友関係ないだろ。だってのんつ」
微笑ましい喧嘩を見ながら、エレベーターのドアを閉めた。
あんな風に痴話喧嘩できる友達居ないなぁ。彼とだって喧嘩しないし。
喧嘩になりそうになったら必ず向こうが折れてくれる。それって悪いのかな?
言いたいこと言い合った方が良い関係って築けるのよね。
無駄に広い部屋に入り、ベッドに寝転がりながらそんなことを思っていた。
- 333 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:34
-
****************************************
「梨華ちゃん、おはよ」
「あ、亜弥ちゃん。おはよう」
「う〜ん、お疲れモードだね」
「良いことのはずなんだけどなぁ」
仕事がどんどん忙しくなって、彼には全くあっていなかった。
会えない寂しさにプラスして、家の近くで誰かに付けられていると確信していた。
視線を感じる。振り返っても誰も居ないけど、必ず誰かが見ていると悟った。
もしかしたらストーカーか。またはスキャンダルと狙うカメラマンか。
もしそうなら彼と会わないのはお互いのためにも良かった。
「ごっちん。おっはよ」
「おはよ、僕のハニー」
- 334 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:34
-
紹介が遅れましたが、最初に挨拶してくれたのが松浦亜弥。19歳。今年20歳になるの。
とっても明るくて元気なんだけど、言うことが大胆でズバズバ言うから、
事務所の人は何を言い出すのかいつもドキドキしているそうです。
アイドルだけどアイドルみたいじゃない。自由奔放な彼女。
そして次に来たのがごっちんこと後藤真希。20歳。超美少年で女性のファンが絶えない。
見た目はキザっぽくて関わりにくそうだけど、実は物凄く人懐っこくてカワイイ。
実はこの2人、付き合っているんじゃないかという噂が出ていたの。
でもそんなこと全く無く、仲の良い友達同士。よく3人でご飯を食べに行ったりする。
「そんなこと言ってるから勘違いされるんだよぉ」
「あー梨華ちゃん。おはよ。僕は普通にしてるだけなんだけどなぁ」
「みんなごっちんの美少年さに嫉妬してるんだよ。だからあんな記事出るの」
確かに誰もが羨む綺麗な顔。きっと女装したら男性のファンも増えそうな感じ。
- 335 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:35
-
「ねぇ!久しぶりにご飯食べに行こうよ」
「いいねぇ」
「ごめ〜ん。行きたいんだけどまだ仕事あるぅ」
「梨華ちゃん本当に働くよね。身体大丈夫?」
本当に最近働きすぎよね。
体調管理には気をつけてるけど、少しでも気を抜いたら一気に来そうな感じがする・・・
「休息も大事なんだから、無理しちゃダメだよ」
「うん。アリガトね、2人とも」
優しい仲間が居て良かったぁ。もし死んでもお葬式には来てくれそうね。
ちゃんと発見もしてくれるかも。はぁ。何考えてるんだろ。
「じゃあ2人で行こうか」
「え〜また面倒くさいことになるじゃん。誰か誘おうよ」
- 336 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:35
-
そうねぇ、誰か誘った方がいいかも。『復縁か』ってまた出ちゃうかもよ。
亜弥ちゃんが暇そうな2人を連れてきた。えりとさゆ。
お互いソロでバラエティーに出てるけどとっても仲が良い。
「じゃあ行こうか」
「もちろんカワイイ後輩に奢ってあげるんだよね?2人とも」
亜弥ちゃんとごっちんの目が光った。
悪いことしたかなって一瞬思ったけど、それぐらいのことしなきゃね。
「梨華ちゃん。今度会えるの楽しみにしているから」
「僕も。楽しみにしているよ」
2人は不適な笑みを浮かべてご飯に向かった。
- 337 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:35
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「「ただいま〜」」
「またまこと来たのか」
「にぃ。まことも食べてくって。今日カレーだから大丈夫だね」
のぞみはいつもまことを連れて帰ってくる。
仲が良いのはいいんだけど、まことは家に帰らなくていいのかといつも思う。
もしかしたら帰りたくない理由があるかもしれないし、なるべく聞かないようにしていた。
夕食は多めに作っているから食べていっても問題はないし。
のぞみに言われたら断れないし。
「まこと〜、明日って日本史小テストだっけ?」
「うん、そう。結構難しくするって言ってた」
弟は大丈夫なのかと心配になる。俺もそうだが頭が良い方ではない。むしろ悪い。相当。
その分スポーツがメチャクチャ得意だ。神は何か一つ得意分野を与えるものなんだな。
スポーツが出来る奴は大抵モテるんだけどな・・・どうなんだろ。
いきなり聞くのも変かな。でも気になるな。
- 338 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:37
-
「のん。おめぇ彼女居るの?」
「え?今は居ないけど」
正直安心した。俺に居ないのに弟に居たらちょっと嫌だからな。
ん?今はってことは、前は居たってことか。いつだ?そんなの一回も見たことない。
「3ヶ月ぐらい前だっけ?あれなんで別れたの?」
「合わなかった」
「何が?性格とか?」
「それもだけど・・・まぁ色々と・・・」
色々とってなんだよ・・・弟はそこ重視だったのか。
カワイイ顔してちゃっかりしてる。兄はちょっと悲しいぞ。
「でもメッチャ可愛かったね、あの子」
「う〜ん・・・外見は。中身重視だからあんまし」
- 339 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:37
-
はぁ。子供だと思ってたのにいつの間にか大人になってる・・・
俺も弟離れしなきゃいけないんだなぁ。
2人の会話を聞いてそう思った。俺の知らないところでどんどん成長している。
もしかしたら俺の方が子供なのかもしれない。
「にぃは?居ないの?」
「俺なんて大学入ってからずっといねぇよ」
「マジですか!?吉澤さんメッチャもてるじゃないですか」
「そうでもねぇよ?本気の人なんていねぇもん」
「あぁ。憧れってやつですか」
「にぃはカッコいいからね。誰でも憧れるでしょ」
「嬉しいこと言うじゃねぇか」
のぞみは得意げな顔をしてニコニコしている。
本当に好きにならなければもう付き合わないと決めた。
別に何かがあったわけじゃないんだけど、変に真面目なとこがある。
だから真直ぐに生きたいと思った。大切にしたい人が必ず現れる。そう信じてる。
- 340 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:37
-
****************************************
今日も誰かにつけられてる気がしていた。コンビニからずっと後ろをついてくる。
なるべく気にしないように歩こうとするけど、やっぱり気になる。
チラッと後ろを見た。暗くて見えないけど背の高いスラっとした男の人。
怖くてすぐに前を向いたから、こっちを見ていたかどうかまで分からない。
怖いなぁ。このまま家に入られたらどうしよう。私は最悪の事態まで考えていた。
マンションの前につき、オートロックを解除する。その人も同じところに来た。
やっぱりつけられてる・・・・今日はついに襲われるのぉ?
エレベーターがちょうど下に降りてきた。一緒に乗りそうな気配がする。
私はエレベーターの前で一度止まり、その人の様子を伺うことにした。
しかしその人は何の迷いも無くエレベーターに乗り込んだ。勘違いなのかな?
「乗らないんですか?」
その人は私を見て話しかけてきた。やっぱりヤバイ人かも・・・
- 341 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:38
-
じっとしている私に更に話しかけてくる。
「乗らないならいいんですけど・・・
ここのエレベーター長いから待つことになりますよ?」
そうよね。ここのは長いの。本当は乗りたいの。
あ、でも長いってことを知っているってことはここの住人よね?安心じゃない。
私は「乗ります」と言ってエレベーターに乗り込んだ。
その人は優しい笑顔で迎えてくれた。
でも待って。なんでこの人私の階を知っているの?やっぱり変な人?
もしかしたら近くに住み始めたのかもしれない。
そんなことある訳ないのに妄想が広がってしまう。警戒しながら静かにしていた。
エレベーターが部屋の階に着き、その人は「どうぞ」と通してくれた。
でも他の階を押していなかったってことは、ここで降りるはず。
案の定私のすぐ後に降りた。進む方向も一緒。
もしかしたらドアを開けた瞬間に入られるかもと思い、
ゆっくり歩き、抜かしてくれるのを待った。
すぐに私を抜かし、隣の部屋に入っていこうとしている。それを見つめる。
- 342 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:38
-
「・・・・・どうかしました?」
「え?」
「いや、ずっと見てるから」
逆に変な人になっちゃった。きっとここの住人ね。どうしよ。
「いえ、何でもないです」
すぐに部屋の鍵をあけ、「すいません」とだけ言って中に入った。
「ただのお隣さんじゃない。絶対変な人って思われたよぉ」
- 343 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:38
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「ただいま〜」
「おかえり〜」
「のんさぁ、お隣さんて見たことある?」
「うぅん。でも最近だよね、引っ越してきたの」
「やっぱそう?前まで居なかったよな」
「うん。なんで?」
「いや今会ったんだけどさ、なんか変な人なんだよね」
行動がおかしかった。途中で止まったりチラチラ後ろ見たり・・・
最後にはこっちジッと見てたし。
何かに怯えてるような・・・ビクビクしてたな。
「へぇ、女の人なんだ。でもこんな大きいマンションに住んでるってことは、
相当なお金持ちか誰かと住んでるってことだよね」
「そうだよなぁ。1人暮らしなら相当VIPだな」
- 344 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:38
-
でも別に普通の人だったような・・・やっぱ誰かと住んでるのか。
見たことなかったから挨拶もしたこと無かったや。
これからは見かけたら挨拶しよう。
「どんな人だったの?大人の女性?」
「う〜ん・・・まぁお前よりは上だな。俺と同じぐらいかちょい上か」
「セレブっぽかった?最近IT会社の社長さんと結婚とかよくあるじゃん、若い人でもさ」
「あぁ、、、別に普通の人だったと思うけど。よく見てないからわかんね」
帽子被ってたし、女性のことをマジマジと見れないしな。
エレベーターのとこと部屋の前でちょこっと見ただけだし。
まぁでもカワイイ子だったな。うん、かわいかった。久々にカワイイ子見つけた。
美貴に自慢してやろう。
「見たいな、その人」
「そのうち見れるだろ。隣に住んでるんだから」
「挨拶しに行こうよ」
「わざわざ行かなくてもいいだろ。いつか会うよ」
- 345 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:39
-
****************************************
「よっちゃーん。彼女欲しいよぉ」
「またかよ。その辺の女と付き合えばいいじゃん」
「その辺の女じゃ満足できない」
最近はこればっかりの美貴。モテないわけじゃないんだから、選ばなければすぐに出来る。
好みがうるさいから出来ないんだよ。『松浦亜弥』みたいなの居るわけないじゃん。
「はぁ・・・・でも俺はもう恋に落ちてるんだよ」
「はぁ?」
「俺の心を奪ったのは紛れも無くあの子」
「誰だよ」
「・・・亜弥ちゃん」
「出た」
「だぁって俺に向かって微笑みかけてくれるんだぜ?落ちないわけないじゃん」
とうとう狂った。テレビに向かって微笑みかけるのは当たり前だろ。
自分にってところがイカれてる。
- 346 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:39
-
「まぁ頑張れよ」
「よっちゃんは無いのかよ」
ん?別に無いなぁ・・・あ、でもあれは一応出会いか。でも変な人だったし。
言ったら羨ましがるな、きっと。
「あったよ」
「ふーん・・・・・あったぁ!?」
「うん」
「誰だよ」
「隣の部屋の人」
「どういうことだよ!説明しろ」
この前の話を一通りすると、美貴はため息をついて面白くなさそうな顔をした。
そして「いいなぁいいなぁ」と連呼している。そんな良いことでもない。
知り合いになったわけじゃないし、ただの隣の女の人。
- 347 名前:together 投稿日:2006/11/07(火) 23:41
-
「いや、それは運命だよ」
「どの辺が?お前隣の人を運命の人だと思うのかよ」
「思わないけど、よっちゃんの場合は運命だよ」
どういう理由で運命になるんだ。ほんと適当だな、この男は。だから彼女いねえんだよ。
「あー俺も亜弥ちゃんと運命の出会いしてぇなぁ」
「無理」
美貴はジッと睨んできたけど、正論を言ったまでだ。芸能人と出会うなんて無い。
「そんな出会いたいならテレビ局とか就職すれば?」
「え・・・・その手があったな!」
「マジかよ」
「バイトないか探してくるわ」
美貴は颯爽とかけていった・・・・・
つづく
- 348 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/08(水) 00:01
- 前作完結お疲れ様です
今回のもおもしろそうですね〜今後どうなっていくのか楽しみです!
作者さんのペースで頑張ってください
- 349 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/08(水) 22:52
- 新作おめでとうございます。
ブラコンよっすぃ〜いいですねー。
梨華ちゃんとの今後の展開を楽しみにしてます。
- 350 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/09(木) 00:55
- 美貴ちゃん…w
- 351 名前:名無し 投稿日:2006/11/12(日) 00:27
-
>>348:名無飼育さん様
ありがとうございます。頑張ります!!
>>349:名無飼育さん様
ありがとうございます。優しいお兄ちゃんなんです。弟も弟で・・・w
>>350:名無飼育さん様
単細胞みたいですねw
- 352 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:29
-
今日も部活が終わって帰るところ。いつものようにスーパーに寄って買い物をする。
何にしようか考えながら買い物を済ませマンションへ向かう。
あーまたまこと来るのかな。なんか美貴も来そうな気がする。
バイトダメだったとか言ってたし。またグチグチ言いに来そうだな。
はぁ。なんであいつらのことばっかり考えなきゃいけないんだよ。もっとあるよな。
ため息をつきながらエレベーターに乗り込む。ラッキーなことにすぐ降りてきたから。
閉のボタンを押そうとした瞬間。
「待ってください!!」
女の人が叫びながら必死に走ってきた。
あぁ。このエレベーター一回逃したら長いからなぁ。
そんなことを思って開を押し続けた。よく見るとこの前の女の人。お隣さんだ。
- 353 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:30
-
「こんばんは」
「え?・・・あ、こんばんは」
向こうも気付いてくれたみたい。やっぱ普通に綺麗な人だな。
このマンション住んでるんだからやっぱ金持ちの妻とかなのか。男見たことないけど。
「あんなに走って大丈夫ですか?」
「え、あ、、、はい。このエレベーター長いので」
そう言ってはにかんだ彼女の笑顔。胸がドクンとなる。やべー。久々にドキドキしたよ。
男のツボ分かってそうだよなぁ。純情そうだけど意外に凄い人っているし。
「最近引っ越して来られたんですよね?」
「えぇ。1ヶ月くらい前だと思います」
「やっぱり。お隣さん居ないなぁと思ってたんで。僕弟と2人で住んでるんですよ。
たまにウルサイかと思いますけどよろしくお願いします」
「いえ。こちらこそよろしくお願いします」
- 354 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:31
-
彼女は深くと頭を下げている。そんな下げなくてもってぐらい深く。
礼儀正しい人なんだ。挨拶しているうちにその階についていた。
「それではまた」
「はい。失礼します」
また深く頭を下げてそそくさと部屋に入っていった。
なんか・・・・・警戒してるよな、いろんなことに。
挨拶はきちんとしてくれるって分かったし、まぁいいや。
俺も家の鍵を開け部屋に入る。玄関には俺とのぞみ以外の靴が2つ。
「にぃお帰り」
「お帰りなさい」
「おぅ、ご苦労」
「ただいま・・・・・」
ってなんでお前はそんなに偉そうなんだよ!!人の家来てダラダラしやがって。
用事ないなら帰れよ。家すぐそこだろ・・・
- 355 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:32
-
「今日の晩御飯はなんだぁ?」
「おめぇのはねーよ」
「え!?なんでだよ」
「3人分しかない。俺とのんとまことの分」
「はぁ!?なんでまことに有って俺に無いんだよ」
そんなの当たり前だろ。のんが食わせろっていうからまことにも食わせてるんだよ。
別に美貴にも食べさせてとか言われてないから作る必要なし。
そんなことも分からないなんて本当にバカだな。
「えぇ〜!お腹減ったんですけど・・・」
「米はやるから納豆でも食べれば?」
「うぅ・・・」
いい気味だ。いっつもうちに入り浸ってる罰だと思え。
- 356 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:33
-
「にぃ。今日の朝、お隣さんに会った」
「お、マジで?俺も今さっき会った」
「挨拶してくれた。いい人っぽいね」
「そうだな。嫌な顔せずにしてくれたから」
「でもどっかで見たことある顔なんだよねぇ」
「近くのコンビニとかですれ違ったんじゃねぇの?」
「う〜ん・・・・・そんなとこでかなぁ・・・」
だって同じマンションに住んでるんだも。近所で見かけたことがあっても不思議じゃない。
俺は見たことないけど・・・・・でも綺麗な人だよな、ほんと。
「俺も会いたい」
「は?」
「俺もお隣さんに会いたい」
「お前のお隣さんじゃないだろ」
- 357 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:33
-
本当に出会いがほしいんだろう。いつまでもしつこく言ってくる。
「おかずお裾分けですとか言ってさ」
「無理」
ただのお隣さんがたいしたこと無い料理持っていっても迷惑だろ。しかも男がさ。
変に警戒されるっつーの。美貴は人見知りとかないから良いかもしれないけど。
彼女はすっごい人見知りかもしれないじゃないか。
「誰かと住んでるかもしれないし。こんな大きいマンションに1人暮らしって微妙だろ。
男と住んでるんだよ、きっと」
「えぇ〜。せっかく出会いのチャンスだったのに・・・
今度会ったら1人暮らしかどうか聞いてみてよ」
「そんなこと聞けるわけ無いだろ」
そんな失礼な質問出来るわけないじゃん・・・
- 358 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:34
-
****************************************
「ここでお一人で暮らされてるんですか?」
聞けるわけない質問を俺はしてしまった。きっと自分でも気になっていたからだろう。
エレべーターの前で彼女と会い、また一緒に乗った。
普通に挨拶できたから何となく聞いてしまいましたとさ。彼女は普通に答えてくれた。
「はい。1人です。お部屋広いから少し寂しいくらいなんです」
1人なんだ。何だかホッとしている自分が居る。別に誰かと住んでいたっていいのに。
俺には関係ないのに・・・・・
寂しいと言いながらも微笑んだ彼女の笑顔に胸がキュンとなる。
あれ・・・・・ドキドキしてる。この笑顔にヤラレちゃいました?
自分に問いかける。返ってきた答えはイエス。どうやら俺は恋をしちゃったらしい。
ある意味一目惚れ?名前すら知らないお隣さんに恋をしちゃった俺。
バカだな、俺って本当にバカだな。ここで恋するかよ。
名前とか聞いちゃっていいのか?まずは俺から自己紹介なのか?
- 359 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:35
-
「あの・・・」
「はい?」
「吉澤ひとみと言います。大学3年生の21歳です」
「あ、はい・・・・・・・あっ、私は石川梨華です。21歳です」
「あ、タメですか?」
「私早生まれなので誕生日来たら22歳になるんですけど・・・」
「じゃあ1コ上ですね。僕は誕生日来たばっかりなんで」
「そうですね」
よし、名前と年齢は聞いたぞ。あとは・・・・・
たくさん聞きたいことがあったのに、エレベーターは着いてしまった。
「それじゃあ・・・」
部屋の前で挨拶をする。このまま終わっていいのか?俺。
「あの!」
閉じられようとしたドアがまた開いた。
- 360 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:36
-
「どうかしましたか?」
「実はおかずを一回にたくさん作ってまして、2人で食べきれないんですよ。
もしよろしければ、今度食べに来てください」
「・・・・・・・・・」
あ、ひいた?もしかして強引過ぎた?
「・・・・・いいんですか?」
「え?」
「食べに行ってもいいんですかぁ?」
「・・・・・もちろん!!ぜひ来てください!」
わぁ〜、絶対神様って居るよ。ちゃんと生活してたら幸福をくれるんだよぉ。
「じゃあまた」と言って彼女はドアを閉めた。
今すっごい嬉しいよ。俺こんな風に誘ったことないぞ。こんな押したことないぞ。
すげーな。恋の力ってすげーな。
そう思いながら玄関を開けると、そこにはのぞみが立っていた。ニヤニヤしながら。
- 361 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:36
-
「にぃ。何やってたの?」
「え?何が?」
「玄関の前で大声で何喋ってたの?お隣さんと」
「・・・・・・・・・・どこから居たの」
「う〜ん・・・ぜひ来てくださいってとこ」
あぁ。結構あとか。でも俺が誘ったってバレバレだな。今日はのぞみだけで良かった。
ってかなんでこいつは玄関まで来てるんだぁ?
「にぃが帰ってきたと思ったから、玄関までお出迎え」
ニッと笑った弟の顔にデレっとなったのが分かった。カワイイ弟だなぁ。
お出迎えに来る犬みたいだな。
あ、ヤバイヤバイ。こんなこと言ったらまたブラコンとか言われる。
「それで?お隣さん誘ってたの?」
中に入って夕食を作っている最中も、しつこいぐらいに質問される。
- 362 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:37
-
「だから、一人暮らしだっていうから誘ったんだよ。
飯はたくさんで食った方がいいだろ?」
「本当にそれだけの理由かなぁ・・・」
「当たり前だろ」
のぞみは納得していなかったけどそういうことにしておこう。
面倒くさいことは後回し後回し。
夕食を済ませ風呂に入り寝る準備をする。
今日もいつもと変わらない1日が終わる。
『亜弥ちゃんは仲の良い芸能人居ますか?』
『はぁい。あのー、石川梨華ちゃんとは同じ事務所でぇ、よくご飯食べに行きますね』
『そうなんですかぁ。最近映画にドラマに活躍してますよね』
『そうなんですよ、お互い忙しいのであんまり会えてないんですけど』
『2人ともお忙しいですもんねぇ、頑張ってください』
『はぁい。ありがとうごさいまぁす』
- 363 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:38
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「今日も会っちゃった」
1人部屋で呟く。エレベーターで一度会い、私が変な人ではないかと勘違いした人。
会う度に彼のことを知っていく。まだ名前と年齢だけだけど・・・
今度ご飯食べにきてくださいと言われて、素直にOKしてしまった。
私何やってるんだろ。何も知らないただのお隣さんと仲良くなって。
確かに近所付き合いは大事にっていうけど、家にお邪魔するってことではないよね。
なんかあの照れたような笑顔がかわいいなぁと思っちゃった。
もう。絶対彼に会ってないからだよ。うぅ。忙しすぎ。
広い部屋を見渡し、ため息をつく。
「寂しいなぁ、1人って」
- 364 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:38
-
****************************************
「梨華ちゃ〜ん」
「あぁ、亜弥ちゃん」
「ねぇ。今日家遊びに行ってもいい?明日休みなんだぁ」
「いいなぁ〜。私仕事だけど午後からだからいいよ。遊びに来て」
「やった〜!久々だよね、お泊り。あ、でも彼と遊ぶ約束してたとか無いの?」
「ないない。向こう仕事だし・・・最近会ってないなぁ」
「寂しいんだ」
「そりゃあねぇ」
そんなわけで亜弥ちゃんが急遽泊まりに来ることになった。
いっつも汚い部屋だけど、昨日掃除したんだよねぇ。良かったぁ。
「じゃあ仕事終わったら連絡する」
「うん、またあとで」
久しぶりに人と一緒に居られる夜にワクワクしながら、仕事をこなしていった。
- 365 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:39
-
- 366 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:39
-
「お邪魔しま〜す」
「どうぞぉ」
お互い仕事が終わり、意外にも早く家に着くことが出来た。
コンビニで買ってきたお弁当を二人で食べながら仕事の話やプライベートの話まで、
今まで話していなかった分を喋り続けた。
「んでさぁ、そいつ超ウザイの。一回言ったら分かるのに、3回繰り返すんだよ?
その分の時間無駄なんですけど〜みたいな」
「いるよねぇ、説明長い人。もっとまとめて言ってほしいと思うもん」
「でしょ〜」
仕事の話と言えば愚痴がポロポロ出てくる。しょうがないよね、こういう仕事だし。
プライベートの話もたくさんあった。
「どうなの?彼とは」
「ん〜?全然連絡取れてない」
「ま〜じ〜で〜?向こうから連絡来ないの?」
「うん・・・・・私からすることってあんまり無かったし」
- 367 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:40
-
今すごく危ないところにいると思う私と彼の関係。ここ1週間連絡を取っていない。
今までずっと待っている方だったから自分からは連絡しずらかった。
それに連絡できないってことは忙しいからかもって。
今まで通り待ってようと思ったんだけど、甘かったかなぁ・・・
「それヤバイじゃん。電話とかした方がいいよ」
「う〜ん」
「なんでぇ?考えることないじゃん」
「そうなんだけど・・・・・」
なんか分からないけど、このまま終わるんじゃないかって予感がするの。
だから無理に電話しようとか思わないし。
前はこんな気持ちになること無かったのに、もういいやって思っちゃってる。
「私の話はもういいよ。亜弥ちゃんこそどうなの?」
「あたしぃ?全くないよ・・・運命の人に出会いたいなぁ。
この人と一緒に居れるなら仕事辞めてもいい!って思える人」
でもこの後亜弥ちゃんは、運命の人と出会うことになるんだけど・・・
- 368 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:41
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「まじ!?1人暮らしだったの?」
「のん。あんま言うなよ」
「ごめんなさい」
「何してる人なの?ここに1人暮らしってことは、どっかの社長とか?」
「さぁ?」
そういえば聞いてなかったな、何しているのか。
ここに住んでるんだから学生ではないだろう。女社長か・・・
そんな高飛車な感じもなかったけどなぁ。
「んでね、にぃがご飯に誘ってた」
「のん!!」
「な〜んだよお前、やることやってんじゃん」
美貴がニヤニヤしながら見てくる。まことものぞみもニヤニヤ。こいつら・・・・・
- 369 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:41
-
「じゃあ今誘えばいいんじゃないですか?こんなにありますし」
まことは俺が作ったおかず達を指差してニコニコしながら言った。
こんなにあるって誰が作らせたんだよ!
おめぇらが足りないって言うから作ったんだろうが!!
ったく、毎日のように家の飯食っていきやがって。
「いいなぁそれ。そうしよ。よっちゃん行くぞ」
「ちょ、待てって。迷惑だろうがいきなり行ったりしたら」
「じゃあ連絡先知ってるのかよ。聞くチャンスじゃん」
いやいやいや。絶対迷惑だって。居るかどうか分からないし。
そう思いながらもどこか期待している自分が居る。
この前来るって言ってくれたしな・・・・・来てくれるかな・・・・・
美貴に押されたフリをして、お隣さんに声をかけにいった。
- 370 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:41
-
――――――― ピンポーン
とうとうベルを押してしまった。もう後戻りは出来ない。大きく息を吸い込んで吐く。
『はい』
「あ、突然スイマセン。あの、吉澤です」
『・・・・あぁ、こんばんは』
「こんばんは。実はですね、今日友達が来てて夕食をたくさん作ったんですけど、
よろしければ一緒にどうですか?」
『・・・・・・・・・・・・』
あぁ。また沈黙だ。横を見ると玄関を開けて3人がこっちを見ている。
美貴が「押せ押せ」と口パクで訴えてきた。
「僕結構料理には自信あるんですよ。喜んで頂けると思うんですけど・・・」
『・・・・・実は今友達が来てて。そのぉ、、、友達も一緒にいいですか?』
「え?・・・・・全然いいですよ。むしろ大歓迎です。たくさんあるんで」
- 371 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:42
-
おぅ。また神が光臨したようだ。食事が一緒に出来るだなんて。
『準備したらすぐに伺います』
「はい!待ってます」
家に戻ると3人がよくやったと頭を撫でてくれた。
別にそんな・・・・・たいしたことはしてないよ。
「友達が来てるから一緒に来るって」
「本当かよ!やべー。運命の人かもしれない」
「松浦亜弥じゃなかったの?」
「・・・・・運命だも。色々あるさ」
意味わかんねぇよ。あ、友達来るならもう少し作らないとダメじゃん。
「まこと〜、手伝って」
「あ、はぁい」
- 372 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:42
-
しばらくしてチャイムが鳴った。
「美貴出てよ」
「嫌だよ、恥ずかしい」
「はぁ?のぞみ頼む」
「はぁ〜い」
「素直だなぁ、本当に」
「ブラコン」
結構結構。美貴みたいに捻くれなくて本当に良かったよ。
リビングのドアが開けられ彼女達が入ってきた。
「こんばんは〜、お邪魔します」
「どうぞどうぞ」
「すいません、お邪魔します」
「お友達ですか」
「はぁい、あたしまでスイマセン」
「いえいえ。どうぞ」
- 373 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:43
-
他の3人を見るとみんな口を開けたまま固まっている。
ボーっと彼女達を見つめていた。
「お前ら何ボーっとしてんだよ」
「・・・・・・・・松浦・・・亜弥」
「えぇ?」
「・・・・・石川・・・・梨華・・・」
「はい?」
「そっかぁ。俺なんか見たことあると思ったら、隣のお姉さんをテレビで見たんだ!」
どういうことだ?テレビ?こいつら何言ってるんだ?
「はじめまして!藤本美貴です!
女みたいな名前ですけど男です。21歳の大学3年生です」
「はじめまして。松浦亜弥です。19歳のアイドルです」
松浦亜弥?あの松浦?後藤真希と付き合ってた松浦?歌うたってる松浦?
嘘だろ。なんで家にアイドルが・・・
- 374 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:44
-
「はじめまして。石川梨華です」
「はじめまして。吉澤のぞみです。17歳の高校3年生です」
「同じく小川まことです」
一通り自己紹介が済んだ後に俺は衝撃の事実を知った。
石川さんも芸能人だった。女優だそうで。テレビをほとんど見ない俺は気付かなかった。
はぁ。芸能人かよ。そりゃあんなカワイイ笑顔できるよな。
全くチャンスないじゃん。芸能人を好きになるなんてただのファンだ。
「ビックリしたなぁ。こんなところで松浦さんに会えるなんて」
「はは。亜弥でいいよ、堅苦しいじゃん」
「ですよねぇ。女の人が1人でここに住んでる理由が分かりましたよ。
芸能人だとこんないいところに住めるんだねぇ」
「ここは事務所が用意してくれたの。どこがいいかなんて分からないから」
確かに芸能人ならここで1人暮らしでも不思議じゃない。
あれ。松浦さんお酒飲んでるよ。まだ未成年じゃなかったっけ?
別に家の中だからバレなきゃいいか。
- 375 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:44
-
「美貴たんはさぁ、彼女居るのぉ?」
「美貴・・・たん?」
「美貴たんはねぇ、ずっと居ない」
「本当にぃ?絶対モテルじゃん」
「運命の人を探してたから、出来なかった。でももう見つけた」
完全に酔っ払いの会話だよ。こいつここで寝てくんだろうなぁ・・・
「えぇ!?見つけちゃったのぉ?」
「うん!!ここに」
そう言って松浦さんを指差し、ニコニコしている美貴。
それを見て驚き、一緒にニコニコしている松浦さん。意外に会うかもな、この2人。
あ、そうだ・・・あのこと振ってみよう。
「でも松浦さん後藤真希と付き合ってたんでしょ?」
俺って意地悪だなぁ。美貴。その子はあのイケメンと付き合ってたんだぞ。
- 376 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:45
-
「亜弥でいいってばぁ。ごっちんとはお友達。同じ事務所で歳が近いだけ。
梨華ちゃんと3人でよくご飯食べに行くもんねぇ」
「うん」
石川さんもニコニコしている。本当なんだ。つまんねーなぁ。
調子に乗ってるからちょっと落とそうとしてたのに。
「じゃあじゃあ、亜弥ちゃんは今彼氏居ないの?」
「居ないよ、美貴たん」
「ま〜じ〜で〜?」
もうYOU達付き合っちゃいなよ。そこの雰囲気異質だよ。
ってか高校生コンビ寝てるし・・・しゃねぇなぁ、布団敷いてやるか。
のぞみの部屋の押入れから布団を出し敷き始めた。
先にのぞみを抱えてベッドに寝かせ、続いてまことを起こす。
「まこと。布団敷いたからそっちで寝ろ」
まことは素直に頷いて布団に潜り込んでいった。
- 377 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:45
-
「吉澤さんて優しいですよね。面倒見が良いっていうか」
「あぁ、よく言われます。いい人だって」
「うん。本当にいい人」
いい人。嬉しい言葉なんだけど、石川さんに言われると切なくなる。
きっといい人止まりなんだろうなぁ。悲しくなったから片づけをすることにした。
明日に残すのは面倒だから、今日中にやってしまおう。
俺が立ち上がり片付け始めると、石川さんも立ち上がり手伝ってくれた。
「いいですよ、俺やります」
「いえ、ご馳走になったし。それにあそこには居づらいです・・・」
確かに。2人は見つめ合って話をしている。お互い目がハート。
あんなところに入っていこうとする奴は居ないだろう。
「あれ・・・・いいのかなぁ。酔ってるからあんな感じですか?」
「いえ。気分は良くなってると思いますけど、頭ははっきりとしていると思います」
「そうですか。美貴結構本気っぽかったんで。遊びじゃないなら良いです」
「ふふ。やっぱり優しいですね。友達思いで」
- 378 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:46
-
友達思いだけど、あなたのことも想ってます。なんて言えない。
俺もたくさん飲んどきゃ良かったな。そしたら言えたかも・・・・・
「亜弥ちゃん。もう好きになってますよ、美貴クンのこと」
「マジですか?」
「だってあんな亜弥ちゃん見たことないもの。子供っぽくて、かわいい」
そっか。これって奇跡じゃないか?普通なら有り得ないだろう。
ファンだった人とこんな風に一緒に居られるとか・・・まして想ってもらえてるとか。
美貴は幸せ者だな。それもこれも俺と石川さんのおかげだけど。
「美貴クンはどうなのかな?」
「本気ですよ、どっからどう見ても」
「そっかぁ。良かったぁ」
石川さんは本当に安心した顔をしていた。
「石川さんはどうなんですか?」って聞きたかったけど、怖くて聞けなかった。
彼が居ると聞いたときのショックが大きいと思ったから。
今一緒に居れればいいかなって。この時は本当に思っていた。
- 379 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:46
-
「吉澤君はどうなんですか?彼女とか」
向こうから振ってくるだなんて。こっちも聞かなきゃいけないじゃないか。
「俺は居ないっすよ。美貴と一緒で大学入ってからは全く」
「うそ〜、モテそうなのに」
「いやいや。全然モテないって」
いつの間にかお互いタメ口になってて、少し嬉しかった。友達になれたかなって・・・・
「石川さんは?居るの?」
「・・・・・・・」
沈黙。居るってことね。芸能人だから言いずらいのかもしれない。
別に聞きたくなかったんだけどね。流れ的にさ。
「居るんだ」
- 380 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:46
-
石川さんはコクリと頷いた。けれど少し寂しそうな顔をしている。
芸能人だもん。色々あるよな。
「大変だよね、そういう仕事しているとさ」
石川さんは悲しそうに微笑んで話してくれた。
今彼と連絡を取っていないということ。いきなり連絡が無くなったということ。
待っているだけだということ。
「それダメじゃん」
「え?」
「なんで待ってんの?連絡したいならすればいいじゃん。
声聞きたいなら電話すればいいじゃん。どんなに忙しくても一言ぐらい話せるでしょ」
何だか聞いていたらイライラしてきて石川さんに説教してしまった。
バカだぁ。俺バカだぁ。説教親父だよ、これじゃ。
それでも石川さんは何も言わずに悲しい顔をして微笑んでいた。
- 381 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:47
-
****************************************
翌朝。石川さんたちはあの後自分の家に戻っていった。
美貴は亜弥ちゃんとの別れを惜しんでいたが、ちゃっかり番号とか交換していたし。
あの2人が付き合い始めるのも時間の問題だなと思っている。
そんな俺もちゃっかり石川さんと番号とアドレスを交換していた。
どっちからともなく、美貴たちがしてるからしておくか。みたいな感じで。
土曜日ということもあり、俺達は昼過ぎまで寝て、その後もグダグダ。
やっと美貴とまことが帰り、のぞみと2人で夕食をとった。
「美貴にぃと亜弥ちゃん付き合うのかな?」
「付き合うんじゃね?」
「ほんとに!?アイドルと付き合うとかカッコいいなぁ」
「いいんだか悪いんだか」
「にぃは梨華ちゃんとどうなの?」
「どうってなんだよ」
「結構2人で話してたらしいじゃん」
「誰が言ってたんだよ」
「美貴にぃ」
- 382 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:47
-
あいつは余計なことを。こっちには興味ないフリしてちゃんと分かってたんだな。
どうしようもない奴だな、本当に。
「俺芸能人が姉ちゃんとか超嬉しいんだけど」
「いや姉ちゃんになってねーし。向こう彼氏居るしな」
「うっそ!誰々?芸能人?」
「知らね。詳しく聞かなかったし」
「誰なんだろう。やっぱ芸能人だよなぁ。にぃ奪っちゃえば?」
「バカか。もし芸能人だったら、そんなのに勝てるわけないだろ」
お互い忙しくて連絡できない。何となく同じ仕事してるんだろうなって思った。
他にも忙しい仕事はあるかもしれないけど、お互い時間が不規則とか言ってたし。
そんな奴に勝てるわけないだろ。金のない学生が。部活しかやっていない学生が。
弟に飯作ることしか出来ない男が。勝てるわけ無い。
「普通ってのに惹かれるかもよ?いいなぁって」
「無理だよ。合わないって」
- 383 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:47
-
****************************************
- 384 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:47
-
あれから一ヶ月が過ぎた。
美貴と亜弥ちゃんはあの後すぐに付き合い始め、
今は手が付けられないぐらいのラブラブっぷりだ。
俺はというと、密かに梨華ちゃんとのメールのやりとりをしている。
お互いさん付けだったのをちゃん付けに変えた。彼女はよっちゃんと呼んでくれている。
「おっはよぉ、よっちゃん」
「おぅ。今日はテンション高いな」
「だってさぁ。今日は亜弥ちゃんが泊まりに来る日なんだよ」
「お。初お泊りですか?」
「そう!今日が初夜です」
「はは。良かったなぁ」
「ちゃんと報告するから!隅から隅まで」
そんな報告いらねぇよ。美貴のテンションは明らかにおかしかった。
今日はヤルぞっていうのが体中から出ている。
- 385 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:48
-
「梨華ちゃんとはどうよ」
「別に。普通だけど」
「まぁだ何にもねーのかよ」
「あるわけないだろ。向こう彼氏居るんだぞ」
「奪っちゃえよ」
「簡単に言うな」
ちょくちょくご飯を食べに来るようになった彼女。やはり1人での食事は寂しいと。
のぞみと以上に仲良くなり、俺並みの可愛がり方をしている。
ついでにまことも可愛がっている。
そんな生活をしているもんだから、彼女のことはだいたい分かってきた。
かわいい顔してるのに、頑固で負けず嫌い。曲がったことが嫌いだからとても真直ぐ。
そのくせとってもネガティブだったり・・・・・
彼とはほとんど連絡を取っていなく、もう2ヶ月ぐらい会っていないそうだ。
やっぱり芸能人だった。落ち込む彼女を励ますのが俺の役みたいになってる。
- 386 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:48
-
「もうちょっと押さなきゃダメっしょ。好きなんだろ?」
「・・・・・たぶん・・・」
「はっきりしねぇ野郎だな」
「うるせぇ」
俺が彼女を好きなのは間違いない。でも彼女にそう想われていないのも間違いない。
結局永遠の片思いなわけですよ。遊びに来てくれるだけでいいです。
「そうだ!!亜弥ちゃんと言ってたんだけど、またみんなでご飯食べようぜ。
今度は亜弥ちゃんの友達も連れてきてくれるって。のぞみ達用に」
「えぇ?どういう意味だ?」
「だから、高校生ぐらいの子を連れてきてくれるってさ」
「あぁ。なるほど」
また家でねぇ。まぁ楽しいからいいんだけどさ。
- 387 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:48
-
- 388 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:48
-
夕食を済ませ、ボーっとテレビを見ていた。暇だなぁ。もう寝ようかなぁ。
今日のぞみはまことの家にお泊りだった。
いつもお世話になっているからと呼ばれたらしい。お世話してるの俺なんだけどな。
そんなことを思いながら、何となくベランダに出てみたくなった。
鍵を開け窓を開けると、さっきまで降っていた雨の匂いがする。大きく深呼吸。
「う、グスッ、、、はぁ、、、、、うぅ」
隣から泣き声?梨華ちゃん?
「梨・・・華ちゃん?」
「へ?・・・・グスっ、、、よっちゃん?」
「どしたの?何かあった?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・俺でよかったら聞くけど」
「・・・・・・・行ってもいい?」
「あ・・・うん」
- 389 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:49
-
すぐにチャイムがなって、彼女を家に招きいれた。
明らかに泣いてましたっていうか、泣いてますって顔をしている。
そんな顔もカワイイと思っている俺は重症なのかもしれない。
「聞いてくれる?」
「うん」
「あのね・・・」
彼女は泣いていた理由を話してくれた。
それは彼が他の女性と一緒にマンションに入っていくところを、
週刊誌に撮られたということ。
亜弥ちゃんから聞き、すぐに彼に電話したところ事実だと認め、浮気発覚。
あまりにも会えなかったから我慢できなかったと。我慢できなかったとか。
バカかと。こんなカワイイ彼女が居るくせに、そのくらい我慢しろと。
曲がったことが大嫌いな梨華ちゃんは、すぐに別れを切り出しすんなりと別れた。
切り出したのはこっちなのに、浮気をされていたという事実が酷く悲しかったらしい。
- 390 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:49
-
「そっか。でも別れて正解だよ、そんな奴」
「うぅ、、グスッ。そうだよね」
「もっといい人居るって」
「うん・・・・グスっ、悲しいよぉ」
心が傷ついてしまった彼女を見て、俺も胸が痛くなった。
黙っていられなくて、そっと梨華ちゃんを抱きしめた。
「グスッ。え?・・・・・うぅ」
「いいよ。泣きたい時は泣きなよ。んで明日からまた元気になればいいさ。
今日で全部流しちゃえばいいんだよ」
「う、うぅ、グスッ。ふぅ・・・・グスッ」
「大丈夫だよ。みんな居るからね。俺らは裏切らないよ」
「うぅぅぅぅ、うぁぁあん。グスッ、うぅぁあぁぁぁ」
俺は彼女を抱きしめ、頭をずっと撫でていた。
- 391 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:49
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- 392 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:50
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一通り泣いた彼女はソファの上で寝てしまった。
明日大丈夫なのかな?と思いながら、布団をかけて寝顔を見つめる。
たくさん泣いたせいだろうか。瞼が少し赤くなっている。
彼女は何に対してあんなに泣いていたのだろう。彼がそんなに好きだったのか。
それとも浮気が許せないのか。裏切られたからなのか・・・・・
俺ならそんな思いさせないのにとか、彼のことを聞く度に思っていた。
「・・・よっ・・」
「え?」
今俺の名前呼ぼうとしたのか?寝言か?そう考えていたら彼女の瞼がだんだん開いてきた。
「・・・よっちゃん?」
「ん?」
「寝ちゃった」
そう笑った彼女の顔がキュンと胸を締め付ける。
抱きしめたい衝動に駆られたけど、グッと抑えた。
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