Comparison

1 名前:clover 投稿日:2006/09/24(日) 18:54
A PENTAGON and A QUADRANGLE 2
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1150544976/123-

Comparisonの続きになります。
宜しくお願いします
2 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 18:56
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3 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 18:57
眠ってしまったのんちゃんの寝顔は天使みたい。
吉澤さんが希望だと言ったが吉澤さんにとってだけじゃない。
亀にとっても亀にとってもそうだし、私にとってもそう。

「じゃ、僕はそろそろ。」
「あっうん。下まで送ってく。」

立ちあがった小川先輩に続いて私も立ち上がった。

「小川さん、有り難うございました。また、来てくださいね。」
「はい。」

「お邪魔しました。」と出て行く先輩に続いて私も部屋を出た。

「里沙お嬢さん少し時間いただけますか?」

車の横で突然、真面目な顔をして言う小川先輩。

「えっ。あうん。いいけど。長くは困るかな。亀に言ってないし。」
「はい。寒いので車に入ってください。」

開けられた助手席のシートに座ると直ぐに運転席に小川先輩が乗り込んでくる。

「どうかしました?」
「ちょっと・・・いや。なんか里沙お嬢さんには言っておきたいっていうか知っていて欲しいっていうか・・・。」
「なに?」

あまりに真剣な顔をするので私まで背筋を正してしまう。

「さっき、ここに来る前、僕は多分、過ちを犯しました。死ぬまで誰にも言わずにいようって決めていたことがあって。それを、おそらく一番言ってはいけない相手に言ってしまいました。」
「なに、よ・・・。」
「僕は・・・美貴お嬢様に・・・。」

告白、でもしたのだろうか
フロントガラスを真っ直ぐと見ている小川先輩の横顔
4 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 18:57
「僕らは異母兄弟だと・・・伝えてきました。」

一瞬、何を意味するのか理解できなかった。

私を・・・微笑んでみてくる小川先輩。

「え・・・っと。」
「はい。」

いやいや、「はい。」じゃなくて・・・

「異母兄弟って・・・。」
「異なる母と書いて異母ですね。」
「いやいや・・・それくらいはさ・・・。」
「ですよね・・・。」

分かるよ。漢字はね。
でもさ・・・ありえないいよね・・・だってずっと使用人の子として過ごしてたじゃない。
今は藤本さんたちに使えてるじゃない・・・

「藤本家の子ってことだよね・・・」
「それは違います。認知はされてませんし、してもらうつもりもないですから。僕の父は知らないし。僕も知らないことになってるから。」

私・・・今ちょっとがっかりしてる。
小川先輩が・・・藤本の人間だったら・・・
結婚するのになんの支障もないとか・・・

最低・・・・私。
5 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 18:58
「どうしました?」
「ん。なんでも・・・ねぇ。どうして隠してたの今まで。」
「隠しますよこれかも・・・父は母を愛してる・・・母も父を・・・。二人とも僕を愛してくれてるし僕は二人を愛してる・・・。遺伝子は違うかもしれないけど、僕はあの二人の子だから。僕は幸せに生きてきたしこれからもそうだと思う。」
「そっか。」

いいな・・・そういう考え。
いいな・・・この人に愛される相手。
きっと、それは穏やかで心地よい愛なんだろうな・・・

「里沙、お嬢さん?」

頬に小川先輩が触れる。
優しく、親指が頬に縦に撫でる。

「泣かないで・・・。」

小川先輩の・・・出生の真相を知って流してる涙じゃない・・・
だから、そんなに優しい顔して見ないで・・・
6 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 18:58
「里沙お嬢さんも幸せになれますよ。大丈夫、僕が保障します。」
「えぇ、小川先輩の保障って頼りないなぁ。」

目からはポロポロ涙が零れるのに私は笑ってそう言った。
素直、じゃないな。

「以外に頼りがいあるんですよ?」

ニッコリ微笑む小川先輩。
知ってるよそんなの。

「里沙お嬢さんが困ってたらすぐに駆けつけますよ、いつだって僕は願ってるから里沙お嬢さんの幸せを・・・だから僕に出来ることがあったら言ってくださいね。」

私は小川先輩をじっと見つめた。

「だったら・・・先輩が幸せにしてよ。願うだけじゃなくて・・・幸せにして。」

あぁ・・・何言ってるんだ、私。
小川先輩は困ったようなそれでも嬉しそうな顔してる。

「あはは、僕は本当に幸せ者だな・・・里沙お嬢さんにそんなお願いされるなんて。」

それ、だけ?

「光栄です・・・。」
「あ・・・どうも。」

7 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 18:59
え・・・私って今、告白したんだよね?
告白じゃなかった?
あれ、会話の流れおかしくない?
こんなもんなの?

小川先輩は凄い優しい笑みをを零す。

「里沙お嬢さんの幸せのためなら何だってしますよ。そろそろ、戻ってください。亀井さんが心配しますから。」
「あ・・・うん。そう、だね。」

小川先輩が先に下りてドアを開けてくれる。
車から降りて小川先輩を見上げた。

「里沙お嬢さんの幸せが何なのか分かったら教えてください。精一杯のお手伝いさせて頂きますから。」
「うん・・・。」
「僕の話、聞いてくださって有り難うございます。」
「いえいえ・・・。じゃ・・・。」

「おやすみなさい。」って声を聞きながら私は亀の待つ部屋に戻った。

あれ・・・なんか・・・おかしい流れのままだけど・・・
いいのかな?
8 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 18:59
「おそかったねぇ。何してたのぉ?」

ニヤニヤする亀。
私の表情を見えない亀は・・・気が付かない。

「告白でもしてたんだ?」
「うん。」

亀のニヤニヤした笑みがすっっと消える。
私の声のトーンがちょっと低かったからだろうか、心配そうな顔になった。

「どう、だった?」
「私の幸せが何か分かったら教えてって。手伝ってくれるって。」
「へっ?」
「うん、へっ?だよね。」
「ガキさん?」
「いや、私も・・・なんだか分からないんだよね。」

亀が手を伸ばすからその手を掴んで隣に座った。

「なんて・・・言った答えがそれよ。」
「私を幸せにしてって・・・。」
「ほぉ・・・。」
「何よ、ほぉって。」
「ストレートに言わないと・・・・小川さんてほら、なんかポワーンってしてるから。」
「え・・・告白って思われてないとか、そんな落ち?」

苦笑する亀に私はがっくりと肩を落とした。
でも、なら・・・
あんな顔したの・・・

「嬉しそうな・・・困ったような・・・。」
「えっ?」
「そういう顔してたの、小川先輩。」
「そっか。」
「うん。」
「絵里もきっとそういう顔するかも。」
「え?」
「好きな人に頼られたり、お願いされたりしたら。そういう顔、するよ?」

そっか、そうなんだ。
小川先輩、私のことそういう風に思ってくれてる・・・のかな。
いつか・・・私の幸せはこれだってはっきり言える日がきたら。
小川先輩にもう一度言おう・・・
9 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 18:59
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10 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:00
仕事しなくなってもう数ヶ月・・・
彼女に会えなくなって数ヶ月・・・
小川君が持ってくるDVDに映る僕の愛しい人たちの存在。
微笑む女神と僕の希望。

僕は僕にとって意味のない会話をしなくなった。


髪も髭も伸びちゃったな・・・
こんな髭で希美ちゃんを抱き上げたりしたら
きっと彼女はダメだよって困った顔をするだろう。
その前に希美ちゃんに泣かれちゃうかな。

伸びた髭を触りながらリビングに降りた。

「よっちゃん、今夜、吉澤の家に呼ばれてるから。食事会だって。」

椅子に座って正面にいる美貴と目を合わせる。

「断れたらいいんだけど、無理だから。それ、食べたら髭剃って寝癖直してね。」

テーブルに並べられている朝食に手を伸ばし美貴の声を聞きながら僕は窓の外に目を向けた。
彼女とであったのもこのくらいの季節だった。
早いな・・・1年。
愛しいものたちだけのことを考えてすごすと1日もとても早い。
いつの間にか日が暮れている。

美貴はそんな僕を呆れているのだろう。
黙って僕を見ている。
美貴の親が何を言っても、僕の親が何を言っても。
僕を庇うようなことを言って、僕には直接何も言わない。

そう考えたり思ったりしたのも初めの数週間だけだったかな・・・
いつの間にか僕は・・・
彼女と子どものこと以外に何も反応しなくなってた
なんとも・・・思わなくなってた。
美貴はたまに僕に何か言うけど・・・
その言葉が何を言ってるのすら僕には理解できない
11 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:00
僕の頭も心も・・・
本当に壊れてしまったのかも知れない
反応するのは愛しい二人にだけ
それでいい。それだけで何も不自由はないから。
もともと、僕はそう。そういう人間だったんだと思う。

トップになるという課題を与えられて必死に生きてきた。
そうなるためだけの世界を作って、他には目もくれず興味なんて持たず
意味がないんだと・・・そう生きてきた。
愛し、愛してくれる人を見つけて・・・それだけのために生きる。
やっぱり僕はそういう生き方しか出来ないんだと思う。
生きる、意味がないと生きていけない。
そのためだけに生きようとする僕だから。

「よっちゃん、こっち向いて。」

いつの間にか美貴がシェービングをもって僕の顎を掴んでいた。

ジョリ、ジョリと髭を剃る音が聞こえてくる。
僕はそうされることを嫌がることもなく、庭に目を向けたままでいた。
小川君が植えてくれた寒菊が蕾をつけているから。
彼女の花がもう直ぐ咲くんだ。

「何、笑ってんの・・・ねぇ。行かないとかホント無理だからね。」

希美ちゃんの誕生花は何だろう。
調べよう。

僕は持っていたパンを皿に戻し立ち上がる。

「ちょっと、危ないって。」

立ちたいのに、思い切り押さえつけられて体は椅子に戻った。

「もう・・・危ないから。」

僕の膝に美貴は跨ると反対側の頬をジョリジョリと剃り始める。

「誕生花を・・・希美ちゃんの・・・」

立ち上がろうとする僕に美貴は抱きつくように動くなと声を上げる。

「よっちゃんのお母さんが絶対に連れて来いって言ってるの、お願いだから。」

僕は今、希美ちゃんの誕生花を調べたい・・・

「危ないからっ。大人しくしてて。あっ麻琴ちょっと抑えて。」
「何してるんですか、怪我されますよ。」

小川君は美貴のてからシェーバーを取った。
12 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:01
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13 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:01
無精ひげを生やしたまま吉澤家の食事会に連れて行くわけにはいかない・・・
美貴の言葉なんてもう、全く聞こえてないようなよっちゃんにそれでも話しかける。
よっちゃんの心を壊してしまったのはきっと美貴。きっととかじゃなくて確実に美貴。

麻琴がよく、口にする言葉。
大切な人がどうしたら一番幸せになれるか考えてと・・・。
弟だと告白してきた麻琴。
父親に確認したらあっさりと認めた。

「美貴お嬢様。旦那様が嫌がってますから。」

解放されたよっちゃんは黙って二階に上がっていった。

よっちゃんが座っていた椅子に力なく腰を下ろし、よっちゃんの食べかけの食事を眺める。

「食事の途中に席を立ってはいけません。」
「美貴、お嬢様?」
「子どものころ、そう習ったでしょ。」

「そうですね。」そう言いながら麻琴はそれを片した。

「なんで、突然、髭剃りなんて?」
「今夜、吉澤家の食事会・・・。」
「行かれる気ですか?」

驚く麻琴の顔を見て美貴は力なく笑みをこぼした。

「無理やりでも連れてきてって吉澤のお母さんが・・・。」

出来ることなら美貴だって連れて行きたくない。
もう、よっちゃんの嫌がることはしたくない。

「分かりました。」

麻琴はそういうとシェーバーを持って二階に上がっていく。
14 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:01
麻琴は・・・よっちゃんの話を聞いて笑顔で頷いたりするんだ。
よっちゃんはそれを嬉しそうに見てる。
麻琴はよっちゃんの気持ちを分かるのだろうか。
美貴には分からない、あんなふうになってまで・・・誰かを愛するなんて。

もう、この生活に意味なんてないのかも知れない。
もともとないか・・・そんなもの。

「はは・・・。」

美貴が繋ぎとめたのに・・・
この生活から逃げたいとか思ってる・・・

「アン君・・・おいで。」

窓際の日が当たる場所に蹲っていたアン君はゆっくりと起き上がり美貴の膝をペロっと舐めてから隣の椅子に昇り頭を太腿に乗せた。

「アン君はずっと美貴の側にいてね・・・。」

15 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:02
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16 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:02

旦那様の書斎の扉をノックする。
返事がないのは分かっているのでそっと扉を開けて中に入る。

「何か、お調べですか。」

パソコンの前で熱心にディスプレイを見ている旦那様に声をかける。

「お髭、剃らせてください。」

剃り残された髭にムースを乗せて僕は剃っていく。
剃られていることに何も反応を示さない旦那様。
僕はもう慣れてしまったんだ。
亀井さんとのんちゃんを思って、それだけを必要としてそれだけのために生きている旦那様・・・。
早く、別れさせてあげたいと・・・思う。
旦那様だけでなく美貴お嬢様のためにも

「蛇の目菊か・・・」

髭を剃り終えタオルで拭っていると旦那様が呟く。
僕はそっとディスプレイを望みこむと誕生花というタイトルが目に入ってくる。

10月10日・・・蛇の目菊(いつも愉快)

そんな文字を旦那様は幸せそうに微笑みながらディスプレイを指でなぞった。
17 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:02
「いつも愉快、花言葉通り。のんちゃんはいつも愉しそうに笑ってますよ。」
「そうか・・・。」

旦那様は頷くと僕が渡しているDVDを再生した。

ディスプレイに再生画面が表示されすぐに亀井さんとのんちゃんが映し出される。

「パパだって・・・まだ、会ったこともないのに、分かるのかな希美ちゃん。」

亀井さんと新垣さんがカメラに向かって言っている。
「パパ。見てる?」「のんちゃんパパに手振ってあげて。」
きっと、美貴お嬢様はもう解放してあげたいって思ってる。
許さないのは藤本の両親と吉澤の両親。

美貴お嬢様がこの旦那様の様子を話さないし見せないから・・・

「行きましょうね、今夜の食事会。」

ディスプレイを見ている旦那様は何も反応しない。
「絵里、少しふっくらしてるな。」そう言って微笑む旦那様。
今夜、藤本の両親も呼ばれているだろう・・・

いい機会だと思う・・・。
18 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:03
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19 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:03
小川君に無理やり着替えさせられた久々のスーツはとても着心地が悪い。
美貴は困った顔で僕を見ながら小川君の運転する車の後部座席で僕の隣に座っている。

車の窓から見える流れる景色。
そういえば、彼女とこの道を走った。
今、向かっているであろう店から僕の暮らしていてマンションまでの道。
彼女の言葉が考えが新鮮で愛らしくて・・・
目を閉じれば浮かんでくる彼女の美しい黒い瞳。
そこに映る僕は初めて見る僕の顔だったんだ。

レストランに着き、小川君に引きずられるように車から降りる。

「小耳にはしてたけど・・・」

僕の前に立つ柴田さんとマサオ。
大きなお腹を抱える柴田さんに僕は笑みを零した。

「しばらく、教室で会わないと思ったら妊娠してたんだ。」
「マサオの子・・・今日はこのことを報告する食事会。」
「マサオさんが吉澤家をってこと・・・。」
「私の我侭でマサオに迷惑かけちゃったけど・・・」

柴田さんは僕の前に立つと僕をギュッて抱きしめる。
なんだろう・・・僕、安心してる・・・

「絵里・・・。」

彼女じゃないのに彼女に抱きしめられたときのような安心感。

「辛かったよね。亀井さんと離れるの・・・言葉で言うほど簡単じゃないって私も身をもってしったよ・・・。私は女だから。マサオは吉澤の血縁だから・・・どうにかなったけど・・・辛いよね・・・」
20 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:03
目を閉じて彼女を思い浮かべた。
彼女も僕と同じ気持ちでいるだろう。
愛してる・・・
側にいたい・・・
何より、彼女が必要・・・
僕にとって僕が生きる意味は彼女
僕にとって信じられるものすら彼女だけ

そう・・・彼女だけなんだ・・・

「よっちゃんに何言っても返事なんて返ってこないよ・・・。」
「そう・・・。」

すっと包まれていた温もりが離れた。

「マサオ、行こうか。」
「うん。」

動かない僕の背中を押した。

「行きましょう。」

店に入り奥の個室に通される。
小川君は入口まで僕を連れて行くと戻っていった。

21 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:03
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22 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:04

「ひとみ。お前は全く・・・。」

部屋に入ると吉澤の父親が嫌な顔をしながら呟いた。
言っても・・・よっちゃんにそんな声は聞こえないだろう。
よっちゃんにはもう美貴たちの言葉なんて意味はないから。
美貴はよっちゃんの手を引いて椅子に座らせた。

「美貴さんごめんなさいね。」

吉澤の母の言葉に美貴は「いいえ。」と首を横に振る。
ホントにそうだから。ここにいる皆が・・・よっちゃんを・・・

美貴の両親が美貴を哀れんだ顔で見てる。
こんな男を婿に貰うんではなかった
そんな顔をしている父。
だったら、離婚させてくれれば良いのに・・・信用とお金のためにそれを許そうとはしない。

「今日がいい機会です。僕を使ってくれても構いません。美貴お嬢様の考えてること僕は正しいと思いますよ。」
ここに来る前に
よっちゃんと離婚したいって話してみようと思っていることを言った美貴への麻琴の言葉。
吉澤の親族と藤本の両親が揃っているこの場は丁度いい機会なんだ。

「マサオを吉澤にいれることにした。あゆみさんと婚約したのもあってだが。元々、そうしたいと思って話しはしていたんだが、あゆみさんのためにマサオもやっと入る気になってくれたから、なっマサオ。」

吉澤の父の言葉にマサオさんは幸せそうに微笑んで柴田さんを見つめる。
23 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:04
「じゃぁ、私からも一つよろしいかしら。」

祝福の言葉がマサオさんと柴田さんに向けられる中、私はそう声を上げた。
皆の視線が美貴に向けられ美貴は微笑んでよっちゃんを見た。

テーブルに飾られている花瓶に生けられた花を愛しそうに見つめているよっちゃんには美貴のそんな声もみんなの視線も・・・感じることさえないんだ。

「よっちゃん・・・夫と別れたいって思ってます。」
「美貴っ。」

父親が辞めろと言う顔で美貴を見るが美貴は無視して続けた。

「皆さんに多大なご迷惑をお掛けすると思いますが。近いうちにそうすると思いますのでご報告しておきます。」

頭を下げた美貴に冷たい視線。
吉澤の親族も既に藤本関係に手を出しているのだろう。
美貴たちが離婚することで伝はなくなる。

「勝手は許さんぞ。」という父の声。
「もう少し、待ってやってくれ。」という吉澤の父の声。
もう、十分だって・・・。
うんざりした顔を見せてもどちらの父も認めないといった顔をしている。

「良いじゃない・・・藤本との関係がなくなったって柴田との関係ができるんだから・・・藤本だってそんなに影響ないでしょ・・・よっちゃんが・・・このままの方が問題でしょ。美貴と別れたらよっちゃんは直ぐにもとのよっちゃんに戻る・・・。」

「分かってるんだ。」と柴田さんの声が聞こえて美貴は苦笑した。
分かってるに決まってる。
24 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:05
「ひとみ、離婚したって吉澤に戻れると思ってるのか。もうお前なんか戻すつもりはないからな。」

吉澤の父の言葉に美貴は思わず鼻で笑ってしまった。
怪訝そうな顔をする皆に美貴は睨むように視線を巡らせた。

美貴も・・・この人たちと同じ顔なんだろうな・・・
愛とか恋とか・・・
誰かをおかしくなるくらい愛しく思うとか思いやるとか優しくする・・・
そんなこと・・・分からない

「施設から連れられてきたよっちゃんは母親におもちゃにされているって分かってて人形になりきって・・・それが生きる意味だったから。それしかなかった居場所がそこにしかなかったから・・・。その居場所がなくなって美貴の婿養子になって・・・そこでもよっちゃんは頑張ってたと思う・・・いい婿になろう跡継ぎになろうって・・・でも・・・よっちゃんは居場所見つけてた・・・それなのに・・・美貴も親たちもそんなよっちゃんを無視して結婚した・・・その結果がこれ。」

よっちゃんは花に手を伸ばし優しく触れている。

「もう・・・美貴が疲れた・・・。」

美貴の目から涙が零れた。

「美貴ちゃん・・・。」

母が悲しそうに見てる。
その悲しみってなに?
愛を知らない美貴に対して?
それとも・・・こんなよっちゃんと結婚させたことに対して?

もう・・・全部が疲れた。

「明日にでも・・・離婚届出してくるから・・・。」

椅子から立ち上がり、まだ花を触ってるよっちゃんの手を掴んだ。

「帰るよ・・・よっちゃん。」

美貴の声になんて反応しないよっちゃんの手を引っ張って無理やり立たせる。

「美貴、そんな勝手、許さんぞ。」
25 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:05
また・・・それ。
よっちゃんにも言ってたよね。よっちゃんのお父さん。
勝手は許さないって・・・

「そうだ、ひとみを婿にだした吉澤もそんなことされたら困る。」

美貴の婿養子になりたいってよっちゃん一度でも言った?

二人の父親を美貴は冷たい目で見た。

「息子がこういう状態だって世間にばれるほうが困るでしょ?」

美貴は全然困らないから・・・
黙ってしまった親たちその中で柴田さんだけが微笑んでた。

「いこ・・・。」

花を見てるよっちゃんの手を引いて扉を開けた。

「美貴、どうなるか分かってるんだろうな。」

父親の声に振り返る。
険しい顔の父親たち・・・。
直ぐ横で待っていた麻琴に笑みを向けてよっちゃんを渡すと美貴は再び部屋に入り扉をしめた。


「もういいよ・・・どうなっても。」

そう、言いながら扉に寄りかかった。

「っていうか、美貴がどうかなるの?よっちゃんがどうかなるの?」

美貴の質問に美貴の父親は立ち上がり美貴の前にやってきた。

「なによ。」
「さっきから、その言葉使いは何なんだ。」
「いつもこういう言葉使ってるの。親の前以外では。」

腕を組んで父親を睨んだ。
いつも・・・いい子を演じてた美貴だから驚いているのだろう。
初めて見る本当の娘に・・・

「娘にどんなことするの?別に何してもいいけどね。美貴だってもう大人だし、自分で自分のルート持ってるから。何とかなるからさ。」

そんなの嘘・・・。
ルートなんて何もない。結局、藤本の名前を使うしかないんだろうな。

「好きにしろ・・・。」

父親はそういうとゆっくりと席に戻っていった。
その背中はなんだかとても小さくい。

何でも成功させてきた父親だけど・・・
子育ては失敗・・・だったね。

ごめんね、出来の悪い娘でさ。

「ありがと。」そういい残して美貴はその部屋から出た。

26 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:06
「お帰りですか?」と言うオーナーの飯田さんの声に頷く。
「お気をつけて。」と入口で頭を下げる飯田さんに美貴も軽く会釈してから麻琴が待つ車に乗り込んだ。

「雨・・・降ってきたね。」
「はい。」
「なんか・・・疲れた。」
「おやすみになってください。着いたら起こしますから。」
「ん。」

窓の外を見ているよっちゃんは何が愉しいのだろうか、微笑んでいる。

ねぇよっちゃん。友達になれるかな美貴たち。
なれると・・・いいな。

美貴はゆっくりと目を閉じた。



27 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:06
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28 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:06
保田さんが久しぶりにゴハンを食べに行こうと言い出した。
そういえば、亀が妊娠してから飯田さんのお店にも保田さん1人で行っていたようで私たちは行っていなかった。
久々の外食に喜びながら保田さんの車に乗り込んだ。
車にはチャイルドシートが設置されていた。
保田さん・・・気が早いな。まだ抱いてないとダメなのに。
亀からのんちゃんを預かって亀を先に乗せてからのんちゃんを抱いて私も車に乗る。
それからのんちゃんはお母さんである亀の腕の中に戻った。

「よく、寝てる。」

亀の腕の中ののんちゃんはスヤスヤと夢の中。
見えてない亀にのんちゃんの様子を伝えると亀は頬を緩ませた。

「混んでますね。道。」
「うん。」

飯田さんのお店に向かう道。
いつもはそれほど混んでないのにな・・・

「雨だから、車多いのかな。」

亀の声に「うーん。」と応えて窓の外を見た。
渋滞だよね。異常に車が連なってる。

ゆっくりゆっくり進む車の中。
眠っているのんちゃんは亀の人差し指を掴んでる。

「事故みたいだね。」

保田さんの声に身を乗り出してフロントガラスから前を見た。

「結構、大きいみたいですね。」
「うん。」

パトカーのサイレンが点灯してる。救急車が3台止まってる。

「事故?」

後ろからの亀の声。
29 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:07
「うん。トラックと乗用車かな。多分、トラックが曲がりきれないで乗用車にぶつかったみたい。」
「こわぁ・・・。」
「ね・・・。凄い乗用車が潰れ・・・えっ?」
「どうしたの?ガキさん。」
「うん・・・。」

小川先輩が乗ってる車と同じ車種・・・同じ色。
ボンネットは潰れてしまっていてナンバーが見えない。
違うよね。
あの車・・・多いし。

「事故、ですか?」

保田さんが見物客の人に窓を開けて声をかけた。
傘をさした小太りの叔母さんは良くぞ聞いてくれましたという顔で車に近寄ってくる。

「そうそう、凄かったのよ。バーンって大きな音して。」
「そうですか。」
「トラックがさ、黄色なのにスピード出して右折しようとしたら曲がりきれなくて、信号待ちしてた車に突っ込んじゃったんだって。災難よね。止まってたらいきなり突っ込まれてもねぇ。まだその乗用車の中に人いるのよ。女の人は直ぐ出てきたんだけどねそれでも怪我してたわよ。服に血が付いてて運転席と後ろにまだ乗ってるって。」
「へぇ。」

二人の会話を聞きながら私はドアのロックを開けた。

「ガキさん?」
「うん。ちょっと見てくる。」

そう言って傘を持って私は駆け出してた。
だって・・・同じ車なんだもん。小川先輩と・・・
30 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:07
人ごみを割って救急車に近づく。
女の人は直ぐに出てきたって言ってたよね救急車にいるかな・・・
知らない人だったらきっと小川先輩じゃない。
藤本家の人の顔なら大体覚えてるもん。

「ちょっごめんなさい。すみません。」

白く濁った救急車の窓。
中が見えない・・・

「ごめんなさい。ちょっと。」

再び人ごみを分け入って救急車の後ろに回った。
開かれた後ろの扉の中には隊員に囲まれている女の人・・・

「うそ・・・。えっ?嘘だ・・・」

足の力が抜けた。

「あんた、大丈夫?」

知らない叔母さんに声をかけられ頷いて立ち上がり救急車に近づいた。

「藤本さんっ。」

私の声に藤本さんが顔を上げてキョロキョロと当たりを見渡す。
私は手を上げて存在を知らせた。

声は聞こえなかったけど口の動きは私の名前を読んでいるようだった。
隊員に何か言ってる。
藤本さんはそれほど怪我をしているようには見えなくて安心した。
救急車に駆け寄って私は藤本さんに声をかけた。

「小川先輩は?吉澤さんは?」
「車の中・・・よっちゃん美貴を庇って・・・麻琴は挟まってて・・・。」

ポロポロと涙を零す藤本さん。
私は駆け出してた・・・
警察と消防隊員が囲む車に向かって。

31 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:08
「入っちゃだめだ。」と声が聞こえてくるけど私は走った。
運転席があっただろう辺りで足を止める。
フロントガラスは割れてしまってなかった。
救助隊の人が何かで車を切ってる。

「頑張れ。」って救助隊の人声があちらこちらでしてる。

外された前のドア・・・

「小川先輩。」

手が見えた。
小川先輩のつけてる腕時計。

「小川先輩頑張って・・・。」

「後ろ、出たぞ。」そんな声がした。後ろを見ると。

「吉澤さん・・・。」

ストレッチャーに乗せらてる吉澤さん。
動いてる・・・血だらけだけど・・・何かに返事をしてる
亀・・・

「もう少しだから、頑張れ。」

小川先輩の体が少しずつ見えてきた。
顔が見えない・・・

ポケットの中で震える携帯。
慌てて取り出して耳に当てた。

『こら、早く戻ってきなさいよ。』
「保田さん・・・。」

涙が溢れ出した。

「うっ・・・どうしよぉ・・・。」
『ちょっと、何、泣いてるの?』
「だって、うっ小川先輩のっ車。」
『嘘・・・。』
「今、吉澤さんが助けられてっ、おが、小川先輩が・・・」
『今行くから待ってな。』

ツーツーと聞こえてくる携帯を耳に当てたまま私は足の力が抜けてその場に座り込んだ。

32 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:08
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33 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:08
「ガキさん遅いですね。」という私の言葉に保田さんが電話をしてくれた。
保田さんの「今から行く。」って言う言葉に何かあったのだろうかと不安になる。

「どうしたんですか?」
「絵里も行くよ。のんちゃん私抱くから。」
「えっ?」

ドアが開く音がして保田さんが降りる音。
直ぐに後ろのドアが開いた。

「雨に濡れたらのんちゃん風邪・・・」
「毛布に包んで私が抱くから。絵里も降りて。」

腕の中にあった重みが消えて保田さんがゴソゴソと何かをしてる。
何だろう・・・何があったのだろう。

「事故、小川さんの運転してる車だったみたい。新垣が慌ててるから。」
「えっ・・・それって・・・。」
「吉澤さんも乗ってた。今、助け出されたって。」
「うそ・・・。」
「だから、行くよ。」

保田さんに手を掴まれて車から降りた。
のんちゃんを抱いてる保田さんは速い足取りで私は白杖を使いながら保田さんの肘に離れないように捕まった。
手も足も震えてる・・・
ガキさんは大丈夫かな・・・

「ちょっとすみません。通して。知り合いなんです。」

人が沢山いる気配のなか保田さんが大きな声を上げている。

「絵里、大丈夫。」
「うん。」

私を気遣いながらも保田さんの足は速い。
何度も人とぶつかり、躓きながら歩いた。
34 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:09
「あの、知り合いなんですけど。今、助けられたって・・・吉澤・・・藤本さん。藤本ひとみさんは。」

「あっちの救急車。こっちは藤本美貴さんが乗ってます。」という声。
救急の人の声だろう。

「右だって。」と保田さんに手を引かれる。

「すみません。藤本の知り合いなんですけど。様態は。」
「今から、東京○○病院に向かいますので、どなか乗ってください。」

保田さんが舌打ちしたのが聞こえた。

「絵里、乗っていける?私、新垣と藤本さんの方見てくる。小川さんまだ救出されてないって言ってたから。」
「うん。行く。のんちゃんも私連れてく。」
「大丈夫?」
「うん。」
「よし。」

「この子がついて行きますから。視覚障害あるので宜しくお願いします。」
保田さんがそう言うと「分かりました。」という声が聞こえた。

「保田さん。」
「ん?なに?」
「ガキさんに・・・もし、ガキさん慌ててたり弱ってたら・・・ガキさんの幸せ、手伝ってくれるって言ったんだから、大丈夫って言ってあげて。」
「わかった。」

「こちらから乗ってください。お子さん、一端預かります。」

隊員の人の声がして私の手に触れた。

「はい。お願いします。」

のんちゃんを預けて私は隊員の人の手を借りて救急車に乗り込んだ。

「おい。お子さん。」
「吉澤さん・・・藤本さんの手、握れますか?」

のんちゃんを胸に抱いてから尋ねる。

「はい。ここですよ。」

隊員の人が私の手を掴んで吉澤さんの手に触れさしてくれた。

ちょっと冷たい・・・
私が握っても握り返してくれない手。

「車動きます。」

サイレンが鳴り出して救急車が動くとのんちゃんが泣き声をあげた。

35 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:10
「のんちゃん大丈夫、怖くないよ。ママここにいるでしょ。パパもね・・・ここにいるんだよ。のんちゃん。」

のんちゃんの手を吉澤さんの手に触れさすとのんちゃんは泣き止み私と吉澤さんの手を必死で掴もうと触れてきた。

「あの・・・様態はどうなんですか?」
「隣にいた女性を庇ったようで全身に衝撃があったと思います。意識はさっきまでありましたよ。絵里とずっと言ってました。それと頭を強く打ってますから今はなんとも・・・。」

泣いちゃダメ・・・

「吉澤さん。絵里。ここにいるから。頑張って・・・。」

のんちゃんもいるんだよ。
迎えに来るって約束したじゃん。
約束破ったりしないよね。
お願い・・・頑張って・・・。
36 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:10
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37 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:11
「新垣。大丈夫?」

保田さんの声に振り向く。
亀がいない。車においてきたのかな。

「亀は・・・。」
「今、救急車に乗せた。のんちゃんと。吉澤さんの救急車に。」

大丈夫かな・・・亀・・・。

「小川さんは?」
「まだ、出てこない・・・どうしよう。死んじゃったら。」
「新垣らしくないな。しっかりして。好きなんでしょ。あんたのこと幸せにするって言ってもらったんでしょ?絵里が、だから大丈夫って伝えてって。」
「うぅ・・・亀。でも小川先輩、動いてないの・・・。」
「しっかりしなさい。ほら。」

保田さんは私の手を掴み立たせると救助活動がされている車に向かっていく。
手を引かれている私ももちろんその車に近づいた。

「危ないから、離れて。」

隊員の人がそう言って近寄ってくる。
車の中を覗き込むと小川先輩の顔が見えて私は駆け寄った。

「先輩、小川先輩。新垣です。頑張って。」

危ない。って声が聞こえた。でも私は車に手を入れて小川先輩の顔に触れた。

「幸せにしてくれるって言ったじゃない。」

何も反応してくれない先輩。
「知り合い?声もっとかけてあげて。頑張れって。」

車を切り離してる隊員の人がそう言ってくれた。

「ほら、この手握ってあげて彼、頑張ってるんだ。」

力なくぶら下がってる小川先輩の手を掴んだ。

「頑張って。お願い。目、開けてよ。」

先輩の頬を何度も撫でた。

「小川先輩。お嬢さんって呼んで良いから。敬語でも許すから。目開けて。」

何分だろう、しばらく私は先輩に離しかけてた。
38 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:12
「あっ・・・。」

握っていた手を握り返された。

「先輩、分かる?里沙です。新垣です。」

薄っすらと開いた小川先輩の目は私を捉えて少しだけ微笑んだ。

「美貴お嬢様と旦那様は・・・。」
「うん、大丈夫。今頃病院。」
「そう、ですか。」

もの凄く小さな声。どこかいたいのだろう。顔を歪めてる。
でも、こんなときくらい、使える立場を忘れて自分のことを考えてほしい。

「もう少しで小川先輩も出られるから。頑張って。」
「濡れますよ・・・里沙、お嬢さん。」

小川先輩はまた目を閉じてしまった。

「濡れてもいいよ・・・小川先輩・・・頑張ってよ。私の幸せ聞いてよ。」

「よし。出せる。」隊員の人に離れてと言われ握っていた先輩の手を離した。
直ぐにストレッチャーが用意され切り離した車から先輩が助け出される。
あり得ない方向に向いた足と左手。
下半身は血だらけだった。

「一緒に乗っていきますか?」
「はい。」

救急車に乗り込むと直ぐに車は動き出し、先輩は色んな器具を付けられた。
病院に着くまで私は先輩の右手をずっと握っていた。
39 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:12
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40 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:12
眠っていたと思う。
そう、よっちゃんの笑顔を見てから美貴は目を閉じて確かに眠っていた。

「危ない。」って麻琴の大きな声が聞こえて何かに包まれた。
そしたら凄い衝撃があって・・・耳元でよっちゃんのうめき声が聞こえたんだ。
目を開けても真っ暗で、よっちゃんのいつもの匂い袋の匂いが凄いしてて。

「お嬢様っ。大丈夫、ですか?」って麻琴の声が聞こえた。
「大丈夫?」ってよっちゃんの声も苦しそうで。
どうして、そんなに苦しそうな声なの?
「うん。」って応えた。その後、一度も麻琴の声は聞こえなくて。
「小川君。大丈夫?」ってよっちゃんが何度も苦しそうに言ってたけど返事はなかった。
しばらくしたら窓ガラスが割れる音が聞こえてきた。
「大丈夫ですか?」って声がして。
後ろから引っ張られて美貴の目の前には血だらけのよっちゃんの顔が飛び込んできた。

「怪我は?大丈夫ですか?」そんな声が聞こえた。

雨が体に当たって、外にいることに気がついて、
目の前には半分潰れた車。

「事故?よっちゃん。麻琴は?」

抱えられるように美貴は救急車に連れてこられた。

「名前は?」
「藤本、美貴。」
「隣にいた男性の名前は?」
「よっちゃん。藤本、ひとみ。」
「運転席の男性は?」
「小川、麻琴。」

41 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:13
よっちゃんは、美貴を庇ったんだ。
運転席は潰れていた・・・
麻琴・・・
麻琴もよっちゃんも挟まれていて出れないんだと言っていた。
美貴が出られたのはよっちゃんが美貴を抱え込んだから。
亀井さんのことしか考えてないよっちゃんが美貴を・・・

しばらくしてから新垣さんがいた。
なんでいるのか分からなかったけど。
なぜか居た・・・それから・・・

「藤本さん。」

そう呼ばれて振り向くとまた、なぜか保田さんがいた。

「大丈夫?」
「はい。」
「ご主人、今病院に向かいました。絵里・・・亀井に付き添わせました。」

よかった、出れたんだ。
亀井さんがいるならよっちゃんそのが嬉しいよね・・・

「麻琴は・・・まだ?」
「新垣がついてます。」
「そう・・・ですか。」

なんでよっちゃんは美貴を庇ったりしたんだろう・・・。
美貴がいなくなればよっちゃんは自由なのに・・・

「はは・・・」
「どうかしました?」

美貴の漏れた笑い声に保田さんが不思議そうに見てくる。

「よっちゃん美貴を庇ったんです。だから美貴はこれくらいの傷だけ・・・。」

足と腕にあるきり傷を見せた。
きっと窓ガラスとかできれたんだろう。
もう、消毒をしてもらって痕には残らないほどの傷。
42 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:14

「美貴が死んじゃえばよっちゃんは亀井さんと・・・。なのに馬鹿だなよっちゃん。」
「優しい人・・・絵里が・・・亀井が良く言ってるんですけどね。」

保田さんが苦笑しながら言った。
美貴は知らない、よっちゃんが優しいなんて・・・

「よっちゃんは優しくなんて・・・ない、ですよ?人を見下して蔑んで、自分が常に上にいることを望んで・・・それが美貴の知ってるよっちゃん。優しさなんてない。」

苦笑している保田さんに美貴も苦笑を漏らした。

「保田さんにする、話しじゃないですね。」

保田さんは首を横に振ってから息をふーっと吐き出した。

「絵里は優しいって言ってましたよ。吉澤さんは優しくて弱くて・・・愛に飢えてるって。」
「愛に飢えてる?」
「そう、言ってたわ、愛して欲しい、愛されたいって訴えてるって。そんな純粋な人に出会えた自分は幸せなんだって。だから自分の持ってる全てで愛して愛されたいって。」

そんなこと、一度だって・・・聞いたこと無い
美貴が・・・気がつかなかっただけ・・・なのかな

「もしも、あなたが・・・吉澤さんの望む愛で愛してたら・・・。」
「よっちゃんも?」

頷く保田さん。
よっちゃんの望む愛って何?
ただ、同じになるじゃダメなの?
43 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:14
「分からない、です。よっちゃんが望む愛なんて・・・。」
「分かるもの同士が愛し合うんじゃないかな。」
「はは・・・じゃ美貴は・・・。」

よっちゃんとそんな風にはなれないじゃん。

「小川さんも救出されました。藤本さんも病院に向かいましょう。」

隊員の人に頷くと「私も自分の車で向かいますから。」と保田さんが救急車から降りて行った。

「麻琴、小川麻琴は大丈夫ですか?」という美貴の問いに隊員は「意識が無い状態です。」と早口に応えた。

「私、小川の方に付き添ってもいいですか?」
「大丈夫ですよ、新垣さんという女性が付き添ってますから。」

あぁ・・・そっか。

動き出した車の中で美貴は本当に自分だけが1人、孤独になってしまったように思えた。

どうして・・・美貴だけ・・・。

愛とか信じるとか・・・
それだけで生活できるわけないじゃない・・・
優雅な生活か愛のある生活か・・・

ねぇよっちゃん美貴たちの天秤壊れてるって言ったよね。
じゃぁ・・・何で比べたらいい?
44 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:14
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45 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:14
「亀。」

救急処置室の待合室にのんちゃんを抱いた亀が座っていた。

「ガキさん・・・小川さんは?」
「今、手術室に。」

伸ばされた亀の手を掴み亀に寄り添うように椅子に座った。

「ガキさん大丈夫だよ。小川さん大丈夫。吉澤さんも大丈夫。ねっ。信じてまとう。」

私の震えている手をぎゅっと握る亀。
ねぇ、亀・・・信じててもって思ったりしない?
もしもって思ったりしない?

「二人とも大丈夫?」

保田さんがのんちゃんのカバンを持ってやってきた。

「絵里、のんちゃんにミルク。」
「うん。ありがと。」

保田さんが水筒に入れておいたぬるま湯でミルクを作り亀に渡す。

「のんちゃん、ごめんね。お腹空いてたよね。」
「泣かなかった?」
「うん。ちょっとだけでもパパの手触ったら泣き止んだ。」
「そう・・・。」

そっか、のんちゃん吉澤さんに会うの初めてだったんだもんね。
一生懸命にミルクを飲んでるのんちゃん。
よかったね。パパに会えて・・・

46 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:15
「ご迷惑、お掛けしました。」

突然の声に私たちは声の主を見ると小川先輩のご両親だった。

「小川さん。」
「里沙、お嬢様。お手間かけてしまって申し訳ありませんでした。」

頭を下げるご両親に私は「とんでもない。」と首を横に振った。

「あの、藤本のご両親は・・・。」
「今、お食事会で・・・。」

気まずそうな顔をするご両親。
食事会のが大事ってわけ・・・

「美貴お嬢様から連絡を頂いたんですが・・・お嬢様は。」
「今、処置室です。」

保田さんの言葉にご両親は頭を下げると「失礼、します。」と去っていった。

「息子より、お嬢様・・・娘と息子より食事会・・・大切なもの・・・間違ってるよ。」
「ガキさん・・・」
「うん。大丈夫。分かってる。」

小川先輩の両親は先輩を心配してる。
顔を見れば・・・母親は心配している顔をしていた。
立場があるから・・・藤本さんを優先してるんだ・・・

分かってるけど。

「でも、なんか寂しいね・・・そういうの。」

亀は何も言わず、私の手を強く握った。
47 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:15
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48 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:16
「小川先輩。」

ガラガラという音とガキさんの声。
処置が終わったのだろう。

「ガキさん、行って。」
「うん。」

ガキさんがパタパタとかけていった。
吉澤さんの方が先に処置室に入ったのにまだ出てこない・・・

「あんたが不安そうな顔してるから、のんちゃんもそんな顔になってるわよ。」
「だって。」
「珍しく弱気ね。」
「そんなこと無いもん。ただ、ちょっと遅いなって。」
「あんたたち残して行っちゃうかもって?」
「そんなこと、吉澤さんがするわけないもん。」
「でしょ。」
「うん。」

ありがと、保田さん。
そう、そうだよ。吉澤さんがそんなことするわけない。
49 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:16
しばらくしてガラガラという音。
吉澤さん、だろう。
そう思って立ち上がると足音が聞こえてきた。
藤本さん・・・かな。そう思ってもう一度、腰を降ろした。
保田さんも何も言わないし・・・きっとそうなのだろう。

「いま、吉澤さん行ったよ。」
「藤本さん、付き添ってた?」
「うん。」
「様態・・・分かったら・・・帰る。」
「いいの?」
「うん。」
「そっか。」
「うん。」

足音が聞こえてきた。さっきと同じ藤本さんの足音。

「保田さん。今日は有り難うございました。」
「いいえ。大変でしたね。」
「はい・・・でも、よっちゃんも麻琴も命には・・・。」
「そう、良かった。」
「亀井さん・・・」

藤本さんの声に私はのんちゃんをきつく抱きしめた。
いてはいけない私だから・・・

「すぐ、帰りますから。」
「いいよ。いてくれて。付き添ってあげてそのがよっちゃん喜ぶから。っていうか美貴が付き添っても、よっちゃんには美貴の声届かないし。それに・・・美貴、用事、あるから。帰らないといけないんだ。だから、いてあげて。」
「怪我してる・・・吉澤さんを残してまで行かないといけない大事な用事なんですか?」
「そう・・・とっても大事なね・・・。」

夫でしょ・・好きなんでしょ・・・

「吉澤さんのこと・・・心配じゃないんですか?」
「絵里、辞めなさい。」

保田さんの声に自分の立場を思い出した。

「すみません。余計なこと・・・。」
「心配だよ。よっちゃんのこと。だから、美貴がいるより亀井さんに居てもらいたいの。美貴たち、離婚するんだ。明日、離婚届出してくる。色々、よっちゃんは大変だと思うけど支えてあげて・・・って美貴が言うのもおかしいか・・・」

藤本さんの足音が遠ざかっていった。
50 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:17
「絵里?行かないの吉澤さんの病室。」
「うん・・・行く。」

保田さんに捕まってのんちゃんを抱きかかえて吉澤さんの病室に入った。

「外で待ってるね。」と言う保田さんの声に頷いて私は椅子に座った。

ベッドに手を乗せて手探りで吉澤さんの体を探る。
胸・・・方・・・腕・・・見つけた・・・。

吉澤さんの手をきつく握った。

「ねぇ。吉澤さん。絵里だよ。起きてる?」

返事は返ってこなかった。

「吉澤さん・・・藤本さんの声、凄い寂しそうだった。」

凄く、凄く寂しい声だった。

「どんな生活してたの?」
「絵里・・・。」

不意に吉澤さんの声が聞こえてきた。

「吉澤さん?」
「うん。ここにいる。絵里に触れたいけど。痛くて動けない。」
「動かなくて良いよ。絵里ちゃんと手掴んでるから。」

吉澤さんが絵里の手をギュッと握る。

「絵里のことだけを考えて生活してた。ただ、絵里と希美ちゃんのことだけ考えて。」
「ダメ、だよ?そんなの・・・。そんなことしたら藤本さん・・・。」
「どうしてあげたらよかったんだろう・・・愛を・・・愛するってどんなものか教えてあげたかったんだ。ただ・・・それだけだったんだ。美貴を孤独にしてしまったから・・・愛をいらないって言う美貴に・・・愛を、ただ知って欲しかったんだ。」
「そっか。でもね・・・愛にも色々あるんだよ。吉澤さんの愛は吉澤さんの愛。藤本さんには藤本さんの愛があると思う。」
「そう、か・・・。じゃぁ僕はまた美貴を苦しめたんだ。」
「そんなことはないと思う・・・」
「そっか。明日、離婚届出してくるって言われたよ。」
「うん。」
「とても、悲しそうな顔で。」

見えない私より見える吉澤さんの方が藤本さんの悲しみをダイレクトに受け止めたのだろう。吉澤さんの手から悲しみが伝わってくる。

「とても、寂しそうに自由になってって言われた。」
「そう・・・。」
「不自由なんて思ってなかったんだけど。」
「うん。」
「美貴にはそう見えたのかも・・・ねぇ絵里。」
「ん?」
「希美ちゃんの顔見せて。」
「うん。待ってね。」

フックを外してのんちゃんを膝に抱きなおした。
51 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:17
「ここ、乗せて平気かな?」
「うん。もう少し、左かな。」

のんちゃんを抱き上げてベッドに乗せる。

「僕にそっくりだ。」
「絵里にも似てるでしょ。」
「ん〜。でも僕の方が似てる。」

希美ちゃんって吉澤さんが呼ぶたびにのんちゃんは「あぅ。」とか「うぅ。」とか嬉しそうな声が聞こえてくる。

よかったね。のんちゃんパパに会えて。

「美貴もいつか絵里みたいな人と出会うといいな・・・僕が絵里に出会ったように美貴も・・・。」
「うん。」
「美貴を・・・愛してくれる人・・・」

吉澤さんの声が泣いていた。

「いるよ。どこかに。絶対にいる・・・藤本さんを必要とする人が世界のどこかに。」

うん。という言葉はもう言葉じゃなくて泣き声だった。
のんちゃんがぐずりだした。

「あぁごめん。泣いちゃうね。ごめんね希美ちゃん。ビックリしちゃったね。」
「のんちゃん。大丈夫だよね。パパが心配なんだよね。」

しばらく吉澤さんは泣いていた。
私の手とのんちゃんの手をぎゅっと握って。

二人の生活がどういうものだったのかなんて私には分からない
吉澤さんの悲しみは藤本さんへの謝罪のような気がした
きっと・・・許してくれるよ藤本さんは
きっと・・・
52 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:17
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53 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:17
「よかった・・・」

小川先輩の手を握って私は安堵のため息をついた。
命には別状ない。
両足が複雑骨折。
怪我的には吉澤さんの方が酷かったらしい。
吉澤さんは上半身にも衝撃があったらしくあばらや肩の骨も折れていたようだが小川先輩は足だけ、と言っても大量の出血だったようだ。

「もぉ、心配させた分。幸せにしてよね。」

先輩が死んじゃったらって思ったら・・・
親とか家とかどうでもいい。ただ、先輩が居ればいい。

眠っている小川先輩の唇にそっと唇を重ねた。

「私のファーストキスだからね、光栄に思ってよね。」

でも、きっと私の思いは先輩を苦しめる。
軽率な行動は出来ない・・・藤本さんたちを見てるから

54 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:18
「ん・・・。」
「先輩?大丈夫?」

薄っすらと目を開けた先輩はキョロキョロとしてから私を捉えて微笑んだ。

「里沙、お嬢さん。」
「ん。命は大丈夫だって。」

私の言葉に小川先輩は微笑むとまた目を閉じた。

「夢を見てました。僕は今よりも随分歳を取っていた。緑が多い・・・田んぼが沢山見える田舎・・・手を綱いてました。左手には小さな手。右手には・・・」

ゆっくりと開いた目には私が映っている。

「里沙、お嬢様の手があった。」

涙が零れそうになった。
嬉しくて・・・先輩がそう思っていることが。

「夢・・・ですから。良いですよね。夢で見るくらい。」
「幸せがなんだか分かったら教えてっていったよね?」
「はい。ご協力します。」
「ずっと先輩が私の側にいる。それが私の幸せ。だから・・・。」

小川先輩が私をじっと見てる。

「私は亀と違う・・・信じて待ってるなんて出来ない。」

小川先輩は微笑むと握っていた私の手をしっかりと握った。

「ファーストキスを寝ている間に奪われた僕は里沙お嬢さんを奪っても問題ないでしょうか?」

一気に顔が赤くなった。
起きてたんだ・・・

55 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:18
「問題・・・ないでしょ。」
「じゃぁ少しだけ、この足が治るまで待ってください。あと・・・」
「まだあるの?」
「姉の・・・美貴お嬢様の幸せを見届けてから・・・僕はまだ使用人だから。」

良いよ、それくらい。
それくらい、待ってる。
だって・・・私にはもっと色々問題あるから

「その変わり・・・」
「はい?」
「絶対、幸せにしてね。」
「はい・・・。あの・・・。」
「ん?なに?」

小川先輩は顔を真っ赤にさせて私を見た。

「もう一度・・・僕が起きているときにキスしてください。」

私は微笑んで先輩の頬に口付けた。
唇にされると思ってた先輩は変な顔をしていた。

「動けるようになったら先輩からしてね。」

そう言って頬にもう一度キスをする。
微笑む小川先輩を見ていると涙が零れてきた・・・

「えっ?どうしました?」
「もう・・・死んじゃうかって思って・・・不安だったんだから。」

包帯に巻かれた手で小川先輩は私の頬をなぞった。
何度も、申し訳ありません。といいながら。

56 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:19
「嫌だよ・・・居なくなったりしたら。」
「はい。」
「大好きなんだから・・・。」
「僕も、愛してますよ。里沙お嬢さんを心から。」

微笑む小川先輩の顔を見ていたらこれから待っている不安なんて消えてしまう。
親はどんな顔をするだろう。
何を言ってくるだろう。
ねぇ、二人で頑張ろうね。
亀たちに負けないくらい幸せ作ろうね。
57 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:19
********************************
58 名前:Comparison_本当の僕等 投稿日:2006/09/24(日) 19:19
離婚なんて紙を一枚出すだけで簡単だった。
まだ、入院している麻琴の変わりに藤本の家から使用人がやって来て家のことをしている。
二人とも1ヶ月は入院が必要らしい。
麻琴に関してはその後にリハビリも必要だと麻琴の両親から聞いた。

「アン君、麻琴はもう帰ってこないんだ。よっちゃんも。」

よっちゃんの荷物は先週、美貴が箱詰めした。

「この家に美貴とアン君だけになっちゃうね。」

よっちゃんは病室で美貴に微笑んだ。
「綺麗な美貴に傷がつかなくてよかった。」って。
笑ってた。

一瞬でもあの時、美貴を庇ってくれたよっちゃん
それがよっちゃんの優しさだって愛だって・・・
そんなよっちゃんに美貴ができることはよっちゃんを亀井さんの元に返すこと
そして、美貴自身が幸せになること

「アン君・・・美貴の幸せってなんだろうね。」

膝の上でアン君は上目遣いに美貴を見てる。

「美貴はね・・・アン君・・・笑顔が羨ましい・・・美貴の家は笑顔なかったから・・・自然と零れる笑顔がさ・・・そんな家庭作りたいって思ってたんだ。だから幸せなお嫁さになりたいって・・・子どものころの夢だけどね。」

そう、幼いころそんな夢も持ってた・・・
いつからか、美貴が跡取りにならないとって

アン君の体をぎゅって抱きしめた。

「やり直したいな・・・人生。」

今からでも遅くないかな・・・

59 名前:clover 投稿日:2006/09/24(日) 19:24
本日の更新以上です。

ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1150544976/598-
>>2-58 Comparison 本当の僕等

次でラストになります。
ちょうど良くスレッドに収めるつもりだったのですが・・・
なんだかんだで長くなってしまった・・・

では、新スレの方でも宜しくお願いします。
60 名前:naanasshi 投稿日:2006/09/24(日) 20:14
新スレおめでとうございます!そして更新お疲れ様です
今回もまた涙が溢れてきました
藤本さんにも幸せが来ることを祈るばかりです
次回ラストですかー寂しいですけど楽しみにしています!
61 名前:ももんが 投稿日:2006/09/24(日) 20:30
更新お疲れ様です。
藤本さんが痛々しかった…。藤本さんの決断には悲しい決意を感じました。
ガキさんにも幸せが訪れてよかった!!
次回ラストは寂しいですが、楽しみに待ってます。
62 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/24(日) 21:45
自分もミキティの幸せを祈ってます。
63 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/24(日) 21:55
更新お疲れさまです
本当にハラハラドキドキで心拍数が今確実に上がってて
涙が止まりません。
次でラストですか・・・ミキティにも幸せが訪れることを
祈って更新待ってます!
64 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/25(月) 00:40
更新お疲れ様です。
>54の小川君の台詞で涙が出てしまいました。
ミキティの幸せを祈りつつ、次回も期待しています!
65 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/26(火) 23:10
更新お疲れさまです
美貴ちゃんも自分の幸せを見つけられることを祈って、次回の更新待ってます
66 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/06(金) 21:11
待ってますよ
まだですか?
67 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/07(土) 00:27
あげないでくれ期待しちゃうだろ
68 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/07(土) 18:40
作者さんの更新があるまで落としておきます。
69 名前:けん 投稿日:2006/10/07(土) 21:50
お互いにとっての幸せって、難しい・・・
とりあえず、まことガキさんの進展に期待です。
お疲れ様です。待ってます(´〜`)ノ"
70 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/08(日) 00:33
毎週更新あったから間があいて心配です
最終回、楽しみに待ってます
71 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:25
1ヶ月して退院した吉澤さんは当たり前のように私の部屋に戻って来た。
私の変わりに保田さんのお店を手伝うという条件で。

数週間前に藤本さんから私宛に吉澤さんの荷物が届いた。
離婚届を提出しました。というメモが一緒にあったことをガキさんが教えてくれた。

ガキさんは今も入院してリハビリをしている小川先輩に毎日会いに行ってる。
「亀には悪いんだけど・・・今は小川先輩に付き添いたい。」
ガキさんはそう言って謝った。
そんなこといいのに。もう十分助けられたから。
小川先輩とガキさんはなんか二人して照れ合ってて一緒にいるとこっちまで恥ずかしくなる。そんなお似合いの二人。
72 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:26
部屋の隅っこに吉澤さんの気配。
さっきから感じてるんだけど、気がつかない振り。
だって、ヤキモチ焼いているだけだもん。のんちゃんに。

「のんちゃん、おねむかなぁ。」
「あぁぅ。」

のんちゃんをベッドに入れて眠ったのを確認してからまたもとの位置に座った。

「吉澤さん?」
「ん?」
「のんちゃん寝たよ。」
「うん。気持ち良さそうに寝てるね。」
「お店は慣れた?」
「うん。結構なれた。」
「ヤキモチやかないのぉ。」
「妬いてないよ?」

嘘だ。帰ってきて直ぐ、私に抱きつこうとしたらのんちゃんが丁度泣いちゃって。それからずっと私がのんちゃんを構ってたから端っこできっと膝でも抱えて見てるんでしょ。

「おいで。」
73 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:27
両手を広げてみせるとズルズルと畳みの上を這う音。

ほら、ヤキモチじゃん。
私の頬は緩んでしまう。

ギュって腰に抱きついて私の胸に顔を埋める吉澤さん。
のんちゃんと一緒だ。
私を放さないように必死でしがみ付く。
私はここにいるよ、どこにも行かないよ。

そんな吉澤さんの背中を優しく撫でる。

「明日もお店だから寝ようっか。」
「もう少し、こうしてたい。」
「お布団敷いちゃおうよ。」
「もう少し。」
「駄々っ子だ。吉澤さん。」
「駄々っ子は嫌い?」
「そんなことないよ。のんちゃんは駄々っ子じゃないから。丁度いい。」
「僕は赤ちゃん?」
「だって、お布団敷かせてくれないんだもん。」
74 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:27
「もぉ。」って言いながら私から離れて布団を敷き出す吉澤さん。
色んな心配があるんだよね。藤本さんのこと家のこと。
一杯、不安を抱えてるんだよね。

「敷けたよ。」
「ありがと。」

のんちゃんのベッドの隣。一枚の布団に寄り添うと吉澤さんはいつものように私を包み込む。そんなにきつく抱きしめなくてもどこにも行かないのに。
きっと不安がそうさせてるんだと思う。

「吉澤さん。」
「ん?」
「小川さんが退院したらさ。」
「うん。」
「藤本さんに会いに行こう。ちゃんと・・・お別れしてこよう。」
「うん・・・。そうだね。」

そしたら少しは不安なくなるよ。
藤本さんもきっと会いに来くるの待ってると思うんだ。
吉澤さんが気にしているように藤本さんも気にしているだろうから。
75 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:29
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76 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:29
トラックが迫ってきたとき僕はとっさに美貴を包み込んだ。
怪我をしないようにってとっさに思った。

病室で目を覚ましたとき美貴の怪我がたいしたことがなくて僕はほっとしたんだ。
美貴は・・・綺麗だから。傷がつかなくてよかったって。
そんな綺麗な美貴の口から「自由にしてあげる。」って言葉出たときの美貴は悲しそうで寂しそうで・・・僕は結局、美貴に愛がなんだかを教えてあげることは出来なかったんだって思った。
僕の愛と美貴の愛は違う。
彼女に言われて、僕はただ美貴を苦しめただけだったって。

送られてきていた荷物と離婚届を出したというメモ。
あの悲しそうな寂しそうな顔が最後に見た美貴の顔で・・・
僕はこのまま彼女と子どもと暮らしていいのだろうかって不安になる。
そんな不安は彼女はお見通しなのだろう。
母親になった彼女はなる前の彼女よりももっと強くてそんな僕を余裕で受け止める。
そんな彼女に僕は甘えてしまう。
彼女は彼女が持っている全ての愛で僕とのんちゃんを包み込んでいる。
77 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:30
「ねぇ絵里。」
「ん?」
「愛してる。」
「うん。知ってるよ。どうしたの?」

彼女がどこにも行かないようにしっかりと抱きしめた僕の腕の中で彼女は不思議そうにでも嬉しそうに笑ってる。

「天秤・・・。」
「天秤?」
「そう。僕等が持っている天秤。損得を測るための天秤。」
「どうかしたの?」
「損得を比べるためだけじゃないんだって気がついた。」
「他になにがあったの?」
「公平・・・。天秤には公平って意味もある。」
「聞いたことあるよ。弁護士のバッチだっけ。」
「そう。幸せとか愛とかをその天秤に乗せて比べてみるんだ。」
「絵里の愛と吉澤さんの愛を乗せたらどうなった?」
「釣り合った。」
「よかった。」
「うん。だから。美貴にも・・・。」
「居るって。幸せも愛も・・・みんな公平に与えられるんだもん。」
「うん。」

美貴は気がついているだろうか。
僕らが持ってる天秤は・・・狂っているんじゃなくて
測るもの自体を間違っていたことを・・・
78 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:30
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79 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:30
事故から1ヶ月が過ぎて順調に回復しているまこっちゃん。
一緒に1ヶ月を過ごすうちに私は先輩からまこっちゃんにまこっちゃんはお嬢さんから里沙ちゃんにと呼び方が変わった。

「まこっちゃん。りんご食べる?」
「うん。」
「はい。」

剥いたりんごをテーブルに置いてフォークを渡すとまこっちゃんは「えっ?」という顔をする。
こないだまで食べさせてあげてたからそんな顔をするんだろうな。

「リハビリ。リハビリ。もう動くんだから甘えないの。」
「ですよね。」
「はいはい。分かったら食べて元気つけてリハビリ頑張るんだよ。」
「はい。」

亀が幸せそうにしてたのが今凄い良く分かる。
誰かを愛し、誰かに愛されているって言う実感は心を満たすから。
美味しそうにりんごを頬張る姿を見ているだけで嬉しい。

コンコンというノックの音。

「はーい。」と声を出して開けた扉の向こうには藤本さんが立っていた。

「あっ・・・こん、にちわ。」
「こんにちは。麻琴がお世話になってるみたいで。」
「いいえ。勝手に・・・すみません。」

藤本さんは微笑みながら首を横に振って中に入っていく。
私はその後ろで藤本さんを黙ってみていた。
なんだろう・・・なんか柔らかくなった・・・そんな感じ。
80 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:31
「麻琴、順調だってね。」
「はい。」
「これ、お見舞い。食べて。」
「有り難うございます。」
「悪かったね。直ぐに来なくて、ほったらかしで。」
「いいえ。とんでもない。」

藤本さんはそういうとまこちゃんの頭を軽くたたいた。

「いてっ。」
「直ぐに来たの。ホントは。」
「えぇ。」
「事故のあった日、来たよ。美貴もそこまで薄情じゃないから。」
「いや・・・。」
「来たら、二人かキスしてたからそのまま帰ったの。」

「あ・・・。」「あ・・・。」

思わず、声を出してしまう私とまこっちゃん。

「美貴と同じようなことにならないことを願ってるから。」
「お嬢様。あの・・・」
「ん?」
「なんだか、綺麗な蕾に見えます。」

何の話だろう・・・藤本さんはとても綺麗に微笑んでる。
81 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:31
「美貴も・・・誰かを思いやること学んだんだ。よっちゃんがあの事故のときに美貴をとっさに庇ってくれたから・・・よっちゃんの幸せ、願ってる。麻琴の幸せもね。」
「よかった。きっと・・・お嬢様にもいい人見つかりますよ。」
「ん。でもその前に美貴ね、親の会社自分が継ごうって思ってる。」
「えっ?」
「なんか、悔しいから。このままじゃ。それに、美貴。好きなんだよ仕事するの。経営に興味あるんだ。」
「そうですか。応援してます。」
「ばーか。麻琴は美貴の応援より自分のこと考えろ。」
「えっ?」
「新垣のお嬢様に手つけたんだから。」
「はい。」
「自分の持ってるカードは自分の守るべきもののために使いなよ。美貴はいつだって弟だって受け入れるから。」
「お嬢様。」

藤本さんはそう言って微笑むと私を見た。

「馬鹿で、いつもヘラヘラしてるけど。宜しくね。」
「はい・・・。」
「よっちゃんは元気?」
「はい。」
「そう。良かった。美貴も救われる。」

「じゃぁ。」と帰ろうとする藤本さんの手を掴んだ。

82 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:32
「ん?」
「あの・・・今度・・・まこっちゃんが退院したら・・・アン君見に行ってもいいですか?」
「へっ?」
「まこっちゃんが言ってたから大きくて可愛い犬だって・・・。」
「いいよ。」
「亀と吉澤さんも・・・一緒に・・・。」
「うん。待ってる。」

凄い優しい笑顔。
いつか、車の中で見た孤独とか感じない。

「麻琴、早く歩けるようにならないとね。あの家、車椅子は無理だから。」
「はい。」
「あっそうだ。麻琴、うち、クビ。麻琴より使える人が変わりに来てるから。麻琴は普通の大学生に戻って就活しろ。」

そういい残して藤本さんは出て行った。

「まこっちゃんクビだって。」

苦笑してるまこっちゃんの頭を撫でた。

「藤本さんてちょっと言い方きついけどいい人、だね。」
「昔から、いい人でしたよ。優しくて。」
「そっか。私が知らないだけか。」
「不器用・・・なんですよ。素直になれない強がりだから。」
「そっか。それは損して生きてるね。」
「里沙ちゃんも強がりでしょ。素直じゃないし。」
「えぇ。どこがよ。素直ないい子でしょう?」
「僕の前だけ・・・弱くて、素直で、いい子。」

不意にまこっちゃんに手を引かれ私はベッドの上のまこっちゃんに倒れこんだ。

チュッと唇にキスをされ私の顔は熱ってしまう。

「そんな里沙ちゃんが愛しくてたまらないんです。」

至近距離で囁かれ私の顔はもうやばいくらい熱い。

「ばかっ。良いから、そういうの言わなくて。」

慌てて離れて藤本さんが持ってきてくれた果物を冷蔵庫にしまった。
83 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:32
「照れちゃって可愛い。」
「うるさいなぁ。こういうの慣れてないからホント辞めてよぉ。」

まこっちゃんの横に仁王立ちになって睨む。

「慣れてなくてよかった。僕もなれてないから。全てが初めて。」

まこっちゃんが嬉しそうに微笑むから私も微笑んでしまう。

「一杯、思い出作りましょうね。」
「思い出?」
「そう、二人で色んなところ行って、色んなものを感じて。」
「思い出は・・・私はいらない。」
「えっ?」

まこっちゃんの手を取って微笑む。

「思い出なんかに浸るより、今を一瞬一瞬をまこっちゃんと生きたいから。」
「はい。」

私は亀と違うから。
思い出で生きたりなんて出来ない。
目の前にいるまこっちゃんを信じることしか出来ないと思うから。
思い出なんていらない。
ただ、まこっちゃんの側でこうして生きて行きたいんだ。
84 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:32
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85 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:33
美貴が会社に入りたいというと父親は何も言わずに美貴に役職をくれた。
「実力がなければ直ぐにやめさせる。」と言い残して。

必死に、学んだ。
いろんな人の言葉に耳を傾けた。
今までそんなことをしなかった美貴がいろんな人に頭を下げ、いろんなことを学んだ。

吉澤の家とのことで被ったものを取り返すために。
よっちゃんのことを悪く言う人たちにそうではないんだと示すために。
逃げたしたと言われてしまっているよっちゃん。
美貴が追い出した、跡を継ぎたいからって。
会う人、会う人にそう話して回った。

勉強してきて良かったと思うことが色々あった。
美貴の今までは無駄ではなかったとそう思えた。
だから、仕事の毎日が楽しかった。
くだらない大人たちの会話にももう慣れた。
藤本の一人娘だと知られていることで嫌な思いをすることもなく順調に日々は過ぎた。
86 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:33
「ほどほどに頑張ったほうがいいですよ。藤本さん。」

そう、声をかけてきたのは美貴についている部下。
仕事を教えてくれた人。後藤真希。

「いいよ。残業付き合わなくて。明日はイブで週末だし。彼女と予定あるんじゃないの?」
「予定ないし、彼女も居ないから。残業しているほうが寂しくないんです。」
「へぇ。いないの?居そうに見えるけど。」

キーボードをたたきながら苦笑する後藤君。

「仕事人間なんだ後藤君は。美貴と一緒だ。」
「一緒って、結婚暦も離婚暦もないですよ。僕は。」
「ムカつくこと言うね。どうせバツイチですけど。何か?」
「何も。奥さんしてるイメージ沸かないなって。」
「してなかったもん。」
「あぁ、やっぱり。」
「何よ、やっぱりって。」
「家事とか出来なさそうに見えるから。」
「失礼だね。」

後藤君はこうしてたまに美貴たちしかいないオフィスで美貴をからかい出す。
からかわれてるって分かるのに、ついついそれに嵌ってしまう美貴。
後藤君のが美貴よりも何枚も上手なんだ。
87 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:33
「出来ないことするより、仕事しているほうが藤本さんぽいからいいと思いますよ。」
「跡取りだからね、美貴は。」
「そうだった。下手なこと言って首にされないそうにしないと。」

そう言って笑う後藤君に美貴も自然と笑みが零れる。

「もう、11時だし来週でもいいんじゃない?」
「もう少しで終わるから。」
「そう、じゃぁ僕はお先に。」
「うん。お疲れ。」

お疲れ様と帰っていく後藤君に手を上げて休めていた手を再び動かす。

吉澤の家はよっちゃんがどこでも働けないよに力を加えてる。
それをどうにかしたい。亀井さんがいればいいって言っていたけど生きていくにはそれだけじゃ無理だから。もともと、よっちゃんは頭がいい。どこでだって力を発揮することは出来るだろう。
マサオさんも協力してくれて動いている。
そのためにも美貴はもっともっと成績を伸ばしたい。
よっちゃんの幸せのために美貴が出来ること。
麻琴と新垣さんのために美貴が出来ること。

誰かのために・・・美貴が初めてそうしてる。
88 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:34
「はい。スタバのコーヒー。」
「あれ、帰ったんじゃ。」

スタバの紙袋を下げて戻って来た後藤君。

「バツイチで上司でも、一応若い女性を1人置いて帰れないからね。」
「一言余計。」
「失敬。はい。どうぞ。」
「ありがと。」

美貴にコーヒーとスコーンを渡して後藤君も自分のデスクで同じものを食べ始める。
美貴も一口手をつけて再びキーボードをたたき出した。

「頑張るのは前の旦那のため、だよね。」
「ん。まぁね。」

吉澤の家とのやり取りを知ってる後藤君。
今まで何も言わずに手伝ってくれてきたのになんだろう。

「未練?」
「ないよ。それは。」
「じゃ、どうして?」
「よっちゃんが・・・元、旦那ね。」
「うん。」

仕事の手を休めずに美貴は後藤君の質問に応えだした。
89 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:35
「腐った世界だって言ったんだ。美貴たちの環境を・・・だから少しはいい世界にしたいなって思うんだ。美貴たちみたいな思いするだろうこれからの子に少しは力になってあげたいって。そう思う。」
「だから上に行きたいってこと。」
「うん。それと。よっちゃんに美貴が幸せになってるところ見せてあげたんだ。」
「幸せ、じゃないの?」
「今はどうかな。後藤君から見てどう?美貴は幸せに見える?」
「仕事、好きなんだって見える。」
「じゃぁ。まだ幸せじゃないんだなきっと。」
「どうして?」
「幸せな人は、見るだけでその人の幸せが伝わってくるんだよ。」
「それは、お金とか地位とか生活レベルってこと?」
「違う。そんなの無くても幸せな人は幸せをいろんな人に伝えてる。きっと心が幸せに溢れてる人なのかな。」
「そんな人、いるの?」
「いるよ。美貴は見たことある。言葉でその人の環境を説明すると凄い不幸に聞こえるかもしれないけど、その人を目で見ると凄い幸せが伝わってくる。そんな人。」
「知り合い?」
「よっちゃんが愛した子。」
「旦那を奪った相手?」
「奪われてないよ。美貴が奪ったの。」
「返したんだ。」
「それも違う。奪えきれてなかったから。」
「難しい関係だね。」
「そうだね。美貴たちしか分からないだろうね。」

後藤君は「いい?」といいながらタバコを美貴に見せる。

「どうぞ。」

禁煙だけど、もう美貴たちしかいないからいいだろう。
後藤君が吐き出す煙が美貴の元までやってきた。
90 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:35
「好きとか愛とかもううんざり、しない?」
「そんなこと無いよ。美貴はよっちゃんが見つけたみたいに美貴を愛してくれる人、美貴が愛せる人と出会いたいって思ってるし。」
「そっか。いいな、いい、別れ方したんだね。それはきっと。」

美貴は手を休めて後藤君を見た。

「よっちゃんは美貴を愛してはくれなかったけど、愛を教えてくれたから。」
「へぇ。何だったのそれ。知りたいな僕も。」
「愛があるって信じること・・・だと、思う。美貴は信じてなかったから。」
「信じることないよ・・・信じて裏切られたら傷つくだけだから。」
「それでも、信じてた人、美貴は知ってるよ。」

悲しそうな目で美貴を見る後藤君。
裏切られたのだろう・・・愛した人に。

「それはきっと、本当に裏切られたんじゃないんだよ。」
「そうかもね、でも。妊娠したのにその男は他の女と結婚したんだよ。十分、裏切られたって思うけど美貴なら。」

後藤君は煙を吐き出しながら頷いた。

「それは酷いね。それなのに信じてたんだ。その人の愛を。」
「うん。」
「僕なら、憎むな。傷つける。殺すかも知れない。」
「その人は・・・祝福してたよ。子どもも産んで育ててた。その人をただ思って。」
「すごいね。その子。」
「うん、それが愛なんだって。後藤君はさ、ホントに愛してた?愛してた人、殺そうって思うんだ。美貴が知ってるその人たちは・・・必死に生きてたよ。結ばれることを願ってね・・・。」

後藤君は美貴を険しい視線を美貴に向けていた。
91 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:36
「殺すよ・・・あの人に今度会ったら、僕は必ず殺す。そういう、愛。あると思う。」

殺したいほど愛された人。
どんな人、なのだろう。
どうして、彼を置いて消えたのだろう。

美貴は後藤君の視線を逸らさずに受け止めた。

「それが、後藤君の愛なら、あるんじゃない。」

そういう、愛もあるのかもしれない。
美貴は・・・まだ、愛を知らないから。
分からない。

「ある、かな?」
「美貴に聞かれてもね。だって、後藤君はそうやって愛してたんでしょ。」
「愛してた、過去形じゃないよ。今でも、そう殺したいくらい愛してる。」
「なら・・・あるんじゃない。」

その人を思い出しているのだろうか・・・
後藤君は目を閉じると片手で目の辺りを覆った。

「僕はもう・・・こんな思いしたくない、だから藤本さんにも勧めないな・・・誰かを愛するなんて、愛されるなんて・・・辛いだけだよ。」
「幸せを感じてる人もいるよ。」

よっちゃんと亀井さん、麻琴と新垣さん・・・柴田さんとマサオさん
皆、幸せな愛を手に入れてる
92 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:36
「愛してる、でも一緒にいると苦しいの。そう言って僕の目の前で僕の愛してる人は命を絶った。」

後藤君は手で顔を覆ったまま少しだけ低い声で言った。

美貴は・・・何も言ってあげられなかった。
愛すら知らない美貴が
愛している人の前で命を絶った人の気持ちなんて分かるはずもない。

「見て、みたいな。幸せな愛を手に入れた人たちを。」

顔を見せた後藤君は少し赤い目で笑っていた。

「いいよ。今度、会わせてあげる。」

美貴は後藤君の視線を感じながら再び仕事を始めた。

皆には後藤君の愛を理解してあげられるのだろうか
幸せな愛を育んでいるあの人たちには憎む愛を愛と呼ぶのだろうか

93 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:36
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94 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:37
「旦那様、お元気そうでよかった。」

リハビリを終え歩けるようになった小川君が新垣さんに連れられて僕らの暮らす部屋にやってきた。

「旦那様はもう辞めてくれ。」
「今流行ってるんでしょ?旦那様って言うの。絵里、今度メイド服着てあげようか。」

のんちゃんを抱え、そう微笑む彼女に僕が目を細めていると新垣さんが彼女の額をパシとたたいた。

「いたぁい。ガキさんでしょ。」
「あんたねぇ。子どもがいるのにコスプレなんかしようとしないでよ。」

似合いそうで怖いわ。と呟き苦笑する新垣さん。

「そろそろ、行こうか。」

僕の言葉に3人が頷き車に乗り込む。
運転していくと言い張る小川君だが、病み上がりの人に運転をさせるわけには行かない。
新垣さんは小川君を助手席に押し込むと、絵里とのんちゃんと一緒に後部座席に乗り込んだ。

僕は美貴と過ごしたあの家に向かって車を走らせた。
少しだけ、ほんの少しだけ、美貴に会うのが怖い。
95 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:37
「アン君、見に行きませんか?」
新垣さんがそう僕らに言ったのは先週。
退院した小川君も大分よくなったから、行きましょうという新垣さん。
アン君がなんなのか知らない絵里は興味津々に行く、行くと同意した。
美貴がどんな暮らしをしているのか知らない僕は心配すると同時に自分だけ幸せなのに会っていいのだろうかと思ってしまった。
藤本さんにじゃなくてアン君に会いに行きましょう。という新垣さん。
「絵里がいるから大丈夫。行こう。」という彼女に勇気を貰った僕は新垣さんに頷いた。

96 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:38
「なんだか、随分、久々な気がしますね。」

助手席で言う小川君に僕は黙って頷いた。



インターホンを押す小川君。
僕はのんちゃんを抱く絵里に寄り添い、そのドアから美貴が出てくるのを待った。

「いらっしゃい。」
顔を出した美貴は笑顔で、僕の知らない美貴のような気がした。

美貴は新垣さんと小川君を招き入れると僕と彼女を見て微笑んだ。

「よっちゃん久しぶりだね。」
「うん。久しぶり、だね。」
「怪我、よくなってよかった。」
「うん。」
「亀井さんもどうぞ、中に入って。寒いでしょ。」
「はい。お邪魔します。」

彼女が僕の肘に触れ僕は足元を注意しながら家の中に入った。

何も変わっていない部屋。
リビングに入ると随分、大きくなったアン君がソファの上で新垣さんに撫でられて気持ち良さそうにしている。
97 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:38
「亀、アン君いるよ。のんちゃんにも見せてあげなよ。」
「うん。」

彼女は僕から離れ新垣さんに誘導されてアン君の隣に座る。
のんちゃんは初めての犬だろう。
不思議そうにアン君に手を伸ばすとアン君がその手をペロっと舐める。

「のんちゃん、ワンちゃんだよ。大きいね。」

見えない、彼女の変わりに新垣さんがのんちゃんの手を取りアン君の頭を撫でさせる。

「凄い、大きい。」

彼女がアン君の足を触ってそう呟く。

「のんちゃん背中に乗れるくらい大きいよ。」

新垣さんの声に彼女が笑みを零した。
のんちゃんも嬉しそうに笑ってる。
そんな二人を見て僕は微笑んだ。

「幸せそうでよかった。」

美貴はそういうと微笑んでキッチンに姿を消した。
98 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:39
「あっ、お嬢様。僕がやりますよ。」

美貴の様子に気がついた小川君はそう言って立ち上がる。

「ちょっと、まこっちゃんはもう使用人じゃないでしょうが。」

新垣さんがそういうと小川君は困った顔で美貴を見た。

「麻琴、いいよ座ってて。」

キッチンからそんな声が聞こえると小川君はほっとしたような顔で新垣さんに視線を送る。

「お昼、食べて行って、もう少ししたら腕のいいシェフが来るからさ。」

「お抱えシェフ?すごーい。」と言う絵里に新垣さんが苦笑している。

「庭も凄いんですよ。保田さんが色々してくれて、寒くなかったら出れたのに。」

小川君がそういいながら庭を見渡す。
僕らが居たころとは違う花たちが咲いていた。

「暖かくなったらまた来なよ。」

美貴がそういいながらお茶を並べ終えた。
99 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:39
「どうぞ、お茶。よっちゃんも立ってないで座りなよ。」
「うん、ありがと。」
「はい、のんちゃんちょっとママから離れてこっちおいで。」

ガキさんが絵里からのんちゃんを受け取る。

「はい、絵里。カップね。熱いから気をつけて。」
「ありがと。」

僕は絵里の横に行きカップを手渡してあげる。

「凄い、いい香りだ。」

湯気がたつカップに顔を近づけて微笑む絵里が可愛くて僕も同じようにカップに顔を近づけた。

「なんか、よっちゃんが子どもっぽく見える。」

向かいに座った美貴がそう言って微笑んだ。
100 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:39
「のんちゃん、ミルクかな。」

新垣さんの腕の中でぐずるのんちゃん。
絵里は直ぐにカップを置く。

「吉澤さん・・・。」
「うん。」
「のんちゃん、おいで。」
「ミルクつくる?」

美貴の質問に僕も絵里も首を振る。

「奥、借りていい?授乳なんだ。」

奥の部屋を指差すと美貴が頷き、僕は絵里とのんちゃんを連れて奥の部屋に入っていった。

「ここ、椅子があるから。」
「うん。」
「のんちゃん、待っててね。」

早くミルクをくれと絵里にしがみ付くのんちゃんを僕が抱き上げると絵里は授乳の準備をして手を出す。

「のんちゃんおいで。」
「はい。」

のんちゃんを抱きかかえで授乳する絵里の横に僕も座った。
幸せそうに絵里のおっぱいを飲むのんちゃんを見て僕も心が幸せな気分になる。
101 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:40
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102 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:40
よっちゃんたちも麻琴たちもなんだか美貴が知らない顔をしていて
それはなんだかこう、痒いところに手が届かないそんな感じで
でも、それは別に嫌な感じじゃない。
見ていて、幸せそうに見えるから。

インターホンがなりモニターに後藤君が映る。

「シェフが来た。」

アン君と遊んでいる麻琴たちにそう言って玄関に出迎える。

「いらっしゃい。」
「広いな、やっぱりお嬢様の家は。」

いつもスーツを着ているからラフな格好の後藤君はなんだかいつもと違う感じ。

「どうぞ。言われた食材は揃えておいたから。皆、楽しみにしてるよ。」
「そう、じゃ頑張らないとな。」

リビングに後藤君を連れて行くと麻琴も新垣さんも不思議そうに後藤君を見た。
シェフと言っておいたからだろう。

「今日のシェフなんだけど、美貴の同僚の後藤君。」
「どうも後藤です。」

頭を軽く下げる後藤君に麻琴たちも頭を下げた。
あれ?という顔をする後藤君。

「よっちゃんたちは今、子どもにおっぱいあげてるから。」
「そう。じゃぁ僕は下ごしらえしちゃおうかな。」
「僕、手伝いますよ。」

麻琴の言葉に「お願いしようかな。」と後藤君は麻琴に案内されながらキッチンに入っていった。
麻琴ならどこに何があるか美貴より知っているから丁度良いだろう。
103 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:41
「新垣さん、ごめんね、麻琴使っちゃって。」
「いいえ、まこっちゃん本当は自分が色々やりたくてウズウズしてるんですよ。」
「そうだね。言わなくてもやる子だからね。麻琴は。」
「後藤さんって藤本さんの恋人ですか?」
「違うよ、同僚って言ったじゃん。」
「ですよね、なんか、優しい目で見てたからそうかなって思って。」
「後藤君は好きな人居るんだって。殺したいほど愛してる人。」

新垣さんは眉間に皺を寄せて美貴を見る。

「だから、よっちゃんたちと会ってみたいってさ。」
「亀、たちは理想ですよ・・・亀が、かな。」
「そうなんだ。」
「あんなに純粋に人を思う子だから吉澤さんも・・・。」
「でも、殺したいほど愛するって言うのもなんか凄いって美貴は思ったんだけど。」
「そう・・・なのかな。」

新垣さんは困ったようにアン君に「どうなんだろうね。」と言って会話を終わらした。
104 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:41
「部屋、ありがとう。」といいながら出てきたよっちゃんと亀井さん。

「ねぇ、美貴にも抱かして。」

亀井さんの腕の中で笑っているのんちゃん。

「よかったねぇ。のんちゃん。」

亀井さんはそう、言いながらのんちゃんを美貴に向かって差し出した。
よっちゃんを亀井さんを苦しめた美貴にたいしてなんとも思っていないような笑顔を向ける亀井さん。

「ちっちゃいなぁ。泣かないし。」

美貴をじっと見上げているのんちゃんはしばらくすると笑みを浮かべ美貴の顔に手を伸ばす。

「人懐っこいんだ。のんちゃん。」

よっちゃんの言葉通りのんちゃんは美貴の頬や鼻に触れて笑っている。

「あれ、シェフ来たの?」
「うん、今、麻琴と下ごしらえしてる。」

後藤君を呼ぶと手を拭きながらやってくる後藤君。

「同僚の後藤君。」

よっちゃんは「久しぶり、ですね。」と言った。
105 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:42
「あれ、知ってたの?」

後藤君はいつも美貴によっちゃんを知らないような口ぶりだった。

「僕もしばらく、あの会社に居たから、何度か顔は合わせたよ。」

よっちゃんの言葉に後藤君は苦笑して美貴を見ていた。

「この人が亀井絵里さん。」

美貴が亀井さんを紹介すると「亀井です。」と手を出す亀井さん。

「目が見えないので・・・手握ってもいいですか?」
「あ、そうなんだ。」

後藤君は亀井さんの手を両手で包みこんだ。

「これでいいのかな?」
「はい、有り難うございます。」

美貴は手を離した後藤君に抱いていたのんちゃんを見せる。

「この子がよっちゃんと亀井さんの子、のんちゃんだよ。」
「へぇ。吉澤さんにそっくりだ。」
「目がね、よっちゃんだよね。」

よっちゃんは恥ずかしそうにしながら亀井さんの肩を抱き寄せて美貴たちを見てる。

「でも、よく、捨てた元妻のところに恋人と子ども連れて来れますね。」

後藤君の言葉によっちゃんは苦笑し、亀井さんは明らかに困った顔をした。

106 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:42
「後藤君、呼んだの美貴だから。」

新垣さんが立ち上がり美貴の腕からのんちゃんを奪っていった。

「それでも、遠慮ってあるでしょ。」

よっちゃんを見る後藤君の真意が分からず美貴はただ後藤君を見ていた。

「そうだね、でも、僕は美貴に僕等を見て欲しかった。僕が望んだ生活を・・・僕が欲しかった愛を美貴にも知って欲しいって思ったんだ。」

そう言って美貴を見るよっちゃん。

「美貴に・・・伝わってるよ。よっちゃんの気持ち。」

亀井さんとのんちゃんを見て自然と微笑み幸せそうな顔をするよっちゃんからよっちゃんが手に入れた幸せが本当に幸せなんだと伝わってくる。

「失礼なこと、言いましたね。申し訳ない。」
「後藤君が会いたいって言った人がよっちゃんと亀井さんだよ。」

美貴の言葉に後藤君は肩眉をちょっと抱けあげてよっちゃんと亀井さんを見て、そして頭を下げてからキッチンへ戻っていく後藤君。

「寂しい人・・・。」

亀井さんがそう呟いた。
107 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:43

「向こうにもどろ。」

よっちゃんは亀井さんを連れて新垣さんの元へ戻る。

言われたのはよっちゃんなのにそれ以上に亀井さんの方が傷ついて見える
そんな亀井さんを気遣うようなよっちゃん。
お互いがお互い・・・そんな風に見えた。

「あ、アン君のんちゃん気に入ったんだ。」

ソファの上でのんちゃんを体で包み込むようにして眠っている二人、いや一人と一匹。
それを見つめる優しい目・・・

これが幸せの光景というのだろう。
108 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:43
********************************
109 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:43
「出来ましたよ。後藤さん凄い料理上手ですよぉ。」と麻琴が大きな声でキッチンから美味しそうな匂いを漂わせた料理を運んでやってくる。
その言葉通り、匂いでその料理が美味しいのだろうと待っていた美貴たちも期待した。

テーブルに並べられた料理は結構本格的に作られた感じがする料理。
よっちゃんは亀井さんに料理を説明しながらそれを口に入れて微笑み合う。
新垣さんも美味しいと口にして麻琴と微笑み合う。
そんな光景を後藤君はただ眺めている。
その横顔は何だろう・・・悲しそうな・・・辛そうな・・・

「亀井さん。」
「はい?」

突然の後藤君の呼びかけに亀井さんは笑みを浮かべ返事をする。

「吉澤さんが、もしも藤本さんのとこから帰ってこなかったらって思いませんでした。」

よっちゃんは何も顔には出さず、亀井さんの横でのんちゃんの相手をしている。
一番顔に出したのは新垣さん。
何を言うのだという顔で後藤君を見る。

「もしも・・・なんて、ないから。戻ってくるもこないも・・・無いですよ。」

亀井の言葉の意味が美貴には分からない。
後藤君は不思議そうに亀井さんを見ている。

「愛してる。愛されてる。それだけが事実だから。それだけだから。もし、とかないと思うんだけどな・・・絵里。」

新垣さんは頷いている。
ずっと側にいたからだろう。その様子はなんだかしみじみとしている。
110 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:44
「じゃぁさ、目の前に愛している人がいてその人が愛してるって窓から飛び降りて死んだ。」

亀井さんの眉間に皺がよる。
後藤君は以前、美貴に話したときとは違い表情を変えずに続けた。

「その人はなんで飛び降りたんだろう。ずっと側にいるって約束したのに。どうしてだと思う?」

亀井さんは困ったように俯いた。
よっちゃんが心配そうに気にしながら後藤君に視線を向ける。新垣さんも麻琴もよっちゃんと同じように後藤君を見ている。
後藤君はそんな視線を気にせずに亀井さんを見ていた。
111 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:44
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112 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:44
後藤君の質問に絵里は口を閉ざしたまま色々考えているようだった。
美貴が悲しそうに後藤君を見つめている。
何か、知っているのだろう。後藤君がどうしてこんな質問をするのか。
そのために後藤君をここに呼んだのだろう。


「絵里は・・・その人の気持ち分からない。自分から愛している人から永遠に離れるなんてしないもん。間違ってるよ、そんなの。苦しめるだけだもん。絵里は何があっても生きると思う。その人が・・・吉澤さんが愛してくれるなら絵里はずっと生きるし生きたい、生きて愛されて愛したいって思うから。」

絵里の言葉に僕は、彼女と出会えてよかったと改めて思った。

後藤君は少しだけ笑みを見せると美貴に視線を向けた。

「いい子、でしょ。」

美貴の言葉に頷く後藤君。
美貴がとても優しい瞳をしていて僕はなんだか安心したんだ。

113 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:44
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114 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:45
後藤君の愛は間違っているのだろう。
亀井さんの言葉から美貴はそう理解した。
愛する相手のために愛されるために生きていく・・・それが愛で幸せなことなのだろう。

後藤君は寂しそうに自分の料理に手を伸ばし美貴の視線に気がつくと少しだけ微笑んで見せた。

ねぇ、後藤君
後藤君もさ、美貴と一緒に幸せな愛ってやつを探してみようよ。
誰かを殺したいなんて思って生きても楽しくないでしょ。
きっとさ、ほらここに居る幸せそうなよっちゃんたちを見てみなよ。
同じように生きてるのになんか美貴たち損をしている気がしない?
115 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:45
いつか、この輪に入れるといいなって美貴は思うよ。
愛する相手が居て愛されて
それで皆で笑顔でさ、夏になたら庭でバーベキューとかして
子どもが生まれてその輪はどんどん広がっていくの
子どもたちが成長してさ恋愛して結婚して
子どもが生まれて美貴たちはおばあちゃんになって
そんなのいいな・・・

はは・・・美貴、何考えてるんだろう
後藤君を救えるかななんて・・・
亀井さんがよっちゃんを救ったように美貴も・・・
116 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:45
********************************
117 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:46
後藤さんの言葉の意味がなんだか分からないけど
亀の言葉は回りを温かくしてくれる。
藤本さんにも後藤さんにも吉澤さんにも笑みを与える亀の言葉。

まこっちゃんはいつも笑っているからな
私の隣で微笑んでいるまこっちゃん。

亀と吉澤さんは理想。
だけど、私たちは私たちの幸せを作っていこうね。

「ん?」

まこっちゃんの横顔を見ていたら不意に私を見て微笑むまこっちゃん。

「これも美味しいから食べな。」

まこっちゃんの口にから揚げを突っ込んでごまかした。

藤本さんも後藤さんも顔を合わせて微笑んでいる。
なんとなく、二人は上手くいきそうな気がした。亀の言葉を借りるなら
お互いを必要としている。というのだろう。
118 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:46
なんだか、とてもいろんなことがあった
まだこれから色々なことがあるだろう。
私とまこっちゃんのこと。
吉澤さんと亀ものんちゃんが成長していくことで色々あるだろう。
藤本さんにも後藤さんとのこと。
でも、きっと皆、それを乗り越えていくんだろうな。
亀が乗り越えたように、亀が身をもって強さを教えてくれたから。
私たちは幸せや愛を守るために頑張っていくんだろうな。

暖かくなるころ、また皆で集まれるといいな。
色んな幸せを持ち寄って、こうしてみんなで笑っていられるといいな。
119 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:46
********************************
120 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:46
後藤さんの質問はきっと後藤さん自身に起こったことなのだろう。
どうして、絵里に質問してきたのかは分からない。どう応えて良いのかも分からないから自分だったらって応えた。後藤さんにとってそれ望んでいた答えなのかも分からないけど。
でも、藤本さんと笑う声を聞いてなんだか安心した。

藤本さんの声がなんだか労わるような優しい声で、藤本さんにとって大切な人なんだろうと思う。

よかったね、吉澤さん。
藤本さんも幸せを、愛を探そうとしてる気がするよ。

「また、皆で集まってお食事しましょうね。」

私がそう言うと、皆「そうだね。」と同意してくれる。

121 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:46
122 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:46
ねぇ吉澤さんいつか言ってくれたよね。
絵里を美しい花だって

じゃぁ絵里は吉澤さんがいるから美しい花になれたんだよ
吉澤さんが絵里にくれる光と水が絵里を美しく咲かせてくれたの
だから、絵里は枯れたりしないんだ
吉澤さんがずっと愛してくれるから
絵里はずっと吉澤さんの側で咲き続けるよ
吉澤さんとのんちゃんのためにずっと
123 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:47
124 名前:Comparison 投稿日:2006/10/08(日) 23:47
End
125 名前:clover 投稿日:2006/10/09(月) 00:06
本日の更新以上になります。

>>71-124 Comparison


今回は亀井さん、吉澤さん、藤本さんのお話だったので
サイドのカプのことは余りかけてないんですが(^。^;;
期待されてた方もいたようで、申し訳ないです。
その後、として各自妄想していただければ幸いです。

最後までお付き合いくださって有り難うございましたo(*^▽^*)o

次回から更新しようと思っている話も1/3くらい書いてて、
藤本さんが主役のお話をやりたいと思っています。
85年組と1人年上の方が出ています。
こちらもまた、宜しくお付き合いください。

>>60 :naanasshi 様 
レス有り難うございます。

>今回もまた涙が溢れてきました
そう言ってもらえると嬉しいです。有り難うございます。

次回も宜しくお願いします。


>>61 :ももんが 様
レス有り難うございます。

>ガキさんにも幸せが訪れてよかった!!
ガキさんたちにもまた色々別にお話があるのだろうけど今回は吉亀で終わりましたw

次回も宜しくお願いします。


>>62 :名無飼育さん 様 
レス有り難うございます。

>自分もミキティの幸せを祈ってます。
期待に答えられた最後だったでしょうか(^。^?)

次回も宜しくお願いします。


>>63 :名無飼育さん 様 
レス有り難うございます。

>本当にハラハラドキドキで心拍数が今確実に上がってて
>涙が止まりません。
嬉しいお言葉です。有り難うございます。

次回も宜しくお願いします。


>>64 :名無飼育さん 様 
レス有り難うございます。


> >54の小川君の台詞で涙が出てしまいました。
嬉しいです。有り難うございます。

次回も宜しくお願いします。


>>65 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>美貴ちゃんも自分の幸せを見つけられることを祈って、次回の更新待ってます
どう、でしたでしょうかw期待に応えられてるといいのですが

次回も宜しくお願いします。


>>66 :名無飼育さん 様 
レス有り難うございます。

>待ってますよ
>まだですか?

ごめんなさい(苦笑)
次回も宜しくお願いします。

>>69 :けん 様
レス有り難うございます。

>お互いにとっての幸せって、難しい・・・
ですねぇ。価値観が同じ相手を探すのって大変だし

>とりあえず、まことガキさんの進展に期待です。
ぐぅ・・・ここはまた別のお話ってことで妄想していただけると嬉しいかもw

次回も宜しくお願いします。


>>70 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>毎週更新あったから間があいて心配です
>最終回、楽しみに待ってます

どうもです。どうでしたでしょうか。

次回も宜しくお願いします。
126 名前:clover 投稿日:2006/10/09(月) 00:07
隠します
((>。< ) ( >。<))
127 名前:clover 投稿日:2006/10/09(月) 00:07
もういっちょっ隠します
((>。< ) ( >。<))
128 名前:clover 投稿日:2006/10/09(月) 00:08
もう一回かな?
((>。< ) ( >。<))
129 名前:naanasshi 投稿日:2006/10/09(月) 01:18
完結おめでとうございます
そして心温まるお話をありがとうございました
誰かを愛しその人に愛される幸せは人にとって究極の幸せな気がしました
これからのみんなの幸せを勝手に妄想しておりますw

次回作もめちゃくちゃ楽しみにしてますよ!!!
130 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/09(月) 18:33
完結おめでとうございます。
作者さんの影響で亀吉が好きになりました。
次回作でもあるといいな…
131 名前:ももんが 投稿日:2006/10/09(月) 20:20
更新お疲れ様です。
そして完結おめでとうございます。
今回の亀井さんはみんなに幸せを運んだ感じに思えます。
愛の形について考えさせられるお話でした。
次回もかなり楽しみに待ってます!
132 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/10(火) 01:20
完結おめでとうございます。
幸せについて考えさせられる作品でした(ノД`)
お疲れ様でした。
次回ミキティ主役キタ━━━━━━━━ !!
楽しみにしてまーす(・∀・)
133 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/10(火) 22:55
完結おめでとうございます(^o^)
お互いが必要とし愛し合うことは運命かななんておもいました

次の作品も楽しみにしてます
134 名前:clover 投稿日:2006/10/15(日) 23:43
自作に行く前に短編をひとつ。
135 名前:give and take 投稿日:2006/10/15(日) 23:44
お母さんと口喧嘩した私は家を飛び出した。
家出・・・ってお母さん思うかな。
思わない、かな。
私が家にいても気がつかないし、男連れ込んで夢中だからな・・・

余り、夜の街を徘徊したことはなかった。
一緒に遊ぶ友達もいなかったから。

あの、家の子と遊んじゃ駄目よ。

皆、そう親に言われていたみたい。

別に、いいんだけど。

初めて来た夜の街は夜じゃないみたいに明るくて綺麗だった。
136 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:45
色んな人が私に声をかけてくれる。
もちろん、それが下心のあるものだと分かっていた。
それでも、私の存在に気がついてくれる人がいることが嬉しかった。
くっ付いていったりするほど、私も馬鹿じゃない。

優しそうなおじさんだった。なんか疲れた感じのするおじさん。

「お話しない?」って言われてなんだか、本当にそれだけな気がして
丸っこい体で優しそうで、お父さんってこんな感じなのかなって
気がついたら頷いて一緒に喫茶店に入ってた。
1時間くらい、オレンジジュースを飲みながらおじさんと話をした。
一方的に話をされるだけで私のことを聞いたりしてこなかった。
私はただ、見たこともないおじさんの会社の上司や部下の話をただ聞いてた。

店を出ておじさんと別れようとしたらおじさんは私の手を掴んで放してくれなかった。
137 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:45
「はいはい。放して。うちの連れだから。」突然、横から入ってきた声と私の手をおじさんから放す第三者の手。

おじさんは第三者を見て直ぐに去っていった。

「お前、オヤジに食われたいの?」

ブルーのキャップを深く被った背の高い男の人はそう言うと私の手を放した。

「食われたかったなら余計なことしたね。」

何も言わない私に苦笑しながら言うその人に私は頭を下げた。

「有り難うございました。」
「余計なことじゃなくて良かった。」

そう言って笑った顔は凄い爽やかで綺麗だった。一瞬、女の人かと思うくらい綺麗だった。

「子どもがこんな時間に出歩くな。早く帰れよな。」

そう言って手を振って私に背を向けて歩き出した。
138 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:45
その後ろをついて私も歩いた。

その人は色んな人に声をかけられてた「よっちゃん。」とか「よっしぃ。」とか「ひとみ。」とか
色んな風に呼ばれてその度に少しだけ言葉を交わすと笑顔で手を振ったりハグをしたりしてから別れてた。

「もう直ぐ、うちなんだけど、どこまで着いてくんの?」

振り返り笑うその人に私は俯いた。

「家出?なら、友達の家とかいったほうが良いんじゃない?」
「いない・・・友達。」
「そう。じゃぁ家に帰るんだな。」
「家は嫌。」
「じゃぁ、うちに来る?」

白い歯を出して笑うその人に私は「うん。」って言ってた。

「うちに来たら食われるよ。うちに。」

さっき助けてくれた人がそんなことするわけないって思った。
何も言わない私にその人は背を向けてまた歩き出した。
泊めてくれるのだろうと私はまたその人の後ろを着いていく。
139 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:46
高そうなマンション。
見て直ぐそう感じるマンションのエントランスでその人はキーを差し込んで自動ドアを開けて入ってく。
だから、私も閉まらないうちに直ぐに入った。

「ホントに着いて来ちゃったよ。」

エレベータのボタンを押しながら私を見てそう言う人を見上げると苦笑していた。

8階のボタンをその人が押すとエレベータの箱は直ぐに昇り始めた。

140 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:46
部屋は凄い広いけどワンルームみたいだった。
何もない部屋。
ベッドとソファだけがポツンと広い部屋に置かれているだけ。
側面は全部窓ガラス、右端は一面クローゼットのようだ。
玄関からここまであったいくつかのドアはバスルームとトイレかな。

対面式のキッチンに入っていたその人を私はただ立った見ていた。

「温かいの飲みたいけど、ここヤカンもポットもあいにくないからさ。」

そういいながら冷蔵庫から缶ビールを取り出し私を見る。

「あいにく、冷蔵庫に酒と水しかない。どう見ても未成年の子には水かな。」

冷蔵庫のドアを開けて中を私に見せるとペットボトルを取った。
ポンと投げられたペットボトルを私は慌てて受け取る。
141 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:46
「シャワー浴びる?」

そう聞いてその人は冷蔵庫に寄りかかりゴクゴクとビールを飲みながら私を横目に見ている。

「いいです。」

私は首を横に振った。

「そう?まっ、この陽気だし、汗はかかないか。」

その人は冷蔵庫を再び開けてビールを取ると私の前を通ってソファにドカっと座った。

「座ったら?」

自分の横を指しながら言うその人に頷いて隣に座る。

「名前は?」

ゴクと喉を鳴らしてから言うその人に私は首を横に振った。
別に言ってもいいけど、なんとなく。
142 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:47
「それは駄目だよ。ホテルだって名前と住所を記帳するだろ?」

また、ゴクと喉を鳴らす。
白い喉に液体が通る度に喉仏が動いて、それが何か綺麗で見とれてた。

「名前、別に偽名でもいいから。じゃないと。君とかお前とかって呼ばないといけないじゃん。」
「絵里。亀井、絵里。」
「ん。絵里ね。この辺の子?」

頷くとニコっと笑って私を見てきた。

「高校生?まさか中学生じゃないよね。大学生なら家出なんてしないし。」

また、頷いて見せた。

「いくつ?」
「17才。」
「おっ、今度は素直に答えたね。」

その人は笑ってからまたゴクゴクと喉を鳴らして缶をクシャっと潰して新しい缶を開けた。

「これ飲んだら、ベッド行こう。」

もう12時過ぎてるし、そろそろ私も眠いので頷くとその人はニコっと笑って一気に缶のビールを飲み干した。

「おいで。」

大きなベッドに飛び乗ったその人に笑顔で言われて私も同じように飛び乗った。

「フカフカだ。」

そう言うとその人は困ったように笑って私を見下ろしてた。

「さてと。」

そう、呟きながら私の腰の辺りを跨ぐその人を私は不思議に思って見上げた。
143 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:47
「えっ?」

両肩をポンと押されてフカフカのベッドに体が倒れた。

「この世界ってgive and takeなんだよ。」

そういいながら私の着ているブラウスのボタンを外し始めるその人。

「えっ?待って、嫌だ。」

私はそう言ってその人の手を掴んだ。

「絵里はここに泊まる。うちはただで泊めさてあげる義理はないわけ。あいにくお金には困ってないから。」

そう言って再びボタンに手をかけるので私は外された上着を掴んで抵抗した。

「お金もだけど、抱く女にも困ってないんだけどね。お金はどれも同じ価値だけど女の味は違うからさ。」

そう言って笑うその人に私は首を横に振った。

「困ったな。嫌だったら帰るって手もあるんだけど、うち気に入ったんだけど絵里のこと。」

その人は私の頭を撫でて前髪を掬うと顔を近づけてきた。
白い喉が直ぐ目の前にあって私がその喉に見とれているとオデコに温かい感触があってチュッと音がなった。
直ぐにその人が私の顔を覗き込んでニコって笑う。

「可愛いね、絵里。」

そう言われて思わず微笑んでしまった。
暗いとか地味とか言われてたから。可愛いなんて言われたことなかったから。

「笑うともっと、可愛い。」

そう言われてすぐに唇に温かい感触。オデコのときと同じ感触と音。
初めてのキスだった。

なんだか、温かくて優しい気持ちになってそしたら目の前で笑ったその人の顔がぼやけてきた。

「なんで泣くの?」
144 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:48
その人の声は凄く優しくて、余計に涙が出た。

「困ったな。」

そう言いながらその人は私の目じりから零れた涙を唇で拭ってくれた。

誰かに優しくされたことなんてなかったから。
いつも、邪魔扱い。
それならまだいい、私の存在すら気が着いてもらえないことのが多かった。

いても、いなくても一緒。

「泣いた顔も可愛い。」

そういわれてまたキスをされた。

「もう、家に帰りたくない。」

そう言うとその人は私の横にゴロンと横になり肘を突いて手に頭を乗せて私を見た。
今まで直ぐ目の前になった白い喉はなくなってその代わりに白い天井が見えた。

「ママは私が邪魔なの、男を連れ込むのに。」
「そう。」
「学校も嫌い、みんな私を避けるから。」
「へぇ。」
「私なんか居なくても誰も困らない。」
「困るな、うちは。」

天井を見ていた私は顔だけ横に向けてその人を見た。
ニコっと微笑み私の頬に手を伸ばして涙を拭いてくれるその手は温かくて嬉しかった。

「絵里の味見をしようとしてるのに、居なくなられたら困るよ、うち。がっかりする。」
145 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:48
私にそういうことをしようとしたおじさんから助けてくれたその人はおじさんとおなじことを私にしようとしてる。
でも、全然、おじさんたちと違う。
自分のことは話さないで私の話を聞いてくれる。
騙そうとしないで、最初から目的を言ってくれる。
それに、その人の言う通り、無償でここに私を泊める義理はない。

「絵里の味見したら絵里はもういらない?」

体だけで何度も男に捨てられてきた母親を小さいころから見てきた。
母親のようにだけはなりたくないって思ってきた。

「絵里の味が良ければいらなくないかな。」

そう言って私の頭を撫でるその人はなんだか寂しそうな目をしている。

「明日も明後日もずっとここにいてもいい?」

そしたら、give and take なら、私の体はずっと必要なるかな。

「はは。」

その人は声を出して笑うと私の鼻にキスをした。

「絵里、面白いね。」

面白いなんて言われたことなかった。
なんだか、初めて言われる言葉がいっぱいで嬉しかった。

「いいよ。もしかしたら、うちが帰さないかもよ。絵里が帰りたいって泣いても。」
「言わない。」

あの家に帰りたいなんて絶対に思わない。

「ほんとに?うち、約束守れない子駄目だよ。破ったら凄い怖くなるよ。」
「破らない。」

あの家や学校に居るならここに監禁去れてた方が私の存在価値がある気がした。

亀井絵里と言う人間を見てくれているから。
とても大きな目で真っ直ぐ。

「ずっとここに居たい。」

その人はニコっとまた笑って私の唇を親指でなぞった。

「味見、してからだな。」

唇をなぞっていた手が再び私の着ているブラウスのボタンに降りていくとゆっくりとそれを外し始めた。
146 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:49
私はずっとその人の大きな目を見ていた。
私が映っているから。

「よいしょ。」

その人はボタンを全て外し終えると体を起こして再び私に跨った。

「起きて。」

両手を引っ張られて上半身を起こしてその人と向き合う、やっぱり大きな目には私が映っていた。

「そんなにうちの顔見て、楽しい?」
「うん。」
「そう、じゃぁ好きなだけ見てて。」

ゆっくりとブラウスを脱がされ下着だけになった。
水着だと思えば、なんでもなかった。

その人は私の顔を体をずっと見ていた。
それが、凄く嬉しい。

「どうした?」

じっとしていた私は腕を背中に回して下着のホックを外し肩からそれを抜いた。

何も付けていない上半身をその人はじっと見ていた。

「その気になった?」
「もっと見て、ずっと・・・見てて絵里のこと。」

そういえば・・・なんでだろう
なんで私、この人に何でも言えるんだろう

「見てるよ。」

そっとその人の手が私の胸に伸びて来た。
誰にも触れられたことのなかったそこはなんだか変な感じがした。

「気持ちいい?」
「くすぐったい。」
「可愛いな。」

その人はそう言って唇にキスをしてきた。
チュっと音のなるキスじゃなくて、ねっとりとしたキス。
舌と舌が絡み合うような激しいキス。
147 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:49
「んぅ。んっ。」

息ができなくて苦しくて私はその人の肩を叩いた。

「はは。絵里は初めてだな。」

そう言ってその人は笑った。

「初めて、だよ。キスも、こういうことも。」

その人はニコって笑って私の顎をペロっと舐めた。そして首を、鎖骨を舐められて身体が震えた。

「ここ、弱い?」

笑って言うその人の目には笑っている私が映っていた。

「絵里・・・笑ってる?」
「ん?」

ベロペロと鎖骨の辺りを舐めていたその人は私を見上げた。
やっぱりその人の目に映ってる私は、笑ってる。

「笑ったほうが可愛いよ。」

チュッと音を立てて鼻にキスをされた。

「やぁっ。」

胸の先をペロっと舐められえ私は身体を捩った。

「くすぐったいよ。」

私の声にその人は笑いながら、ペロペロと舐めた。

「んぅ。」

パクっと胸の先端を口に含み、吸い上げられる。
上目遣いに私の顔を見ながら。

その目に映る私は微笑んで、その人を見ていた。

その人の手は私の胸を揉みしだき、指先と舌で先端を弄る。

「んぅ・・・あぁ・・・。」

自然に声が漏れ始めてた。
誰に習ったとかじゃないのに、自然に。
148 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:49
ベッドのシーツを握り締めてくすぐったさなのかムズムズとする感覚に耐えていた。

「声、我慢しないで良いんだよ。」

そう言いながらゆっくりと押し倒された。
私に覆いかぶさって微笑みながら私の胸の先端を指で摘んでいた。

「んっ。」

ちょっと痛くて目を閉じた。
チュッっと唇にキスをされて目を開くと真っ直ぐと私を見ているその人がいた。

「絵里もうちを見てて。」

そう言われて頷いた。
身体を起こし私の顔を見ながら私のジーンズのボタンを外しジッパーを降ろすその人をじっと見つめていた。
脱がしやすいように私が腰を上げると微笑んでからジーンズと下着を降ろされた。

その人の目が私のそこ、をじっと見ている。
誰にも、見せたことのない、触れられたことのないそこを。

立てていた膝を撫でられながらその人は私の左足を持ち上げた。
脛、脹脛をツーっと舌で舐められる。
そんなことをされながらその人の横顔が綺麗で見とれていた。

「結構、走るの得意?」
「ん?」

持ち上げた脹脛をプニュプニュと握りながら言うその人。

「軟らかくて良い、筋肉してる。」

そう言って笑うともう一度、ペロっと舐めて足を下ろした。
そして、私の足の間に身体を入れるとそこに手を伸ばした。

さっきから、生理かなって思うくらいそこに違和感があった。
でも、生理なはずがない、こないだ終わったばかりだから。

濡れてるんだ。
149 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:50
その人の手は私のそこに触れた。
何をされているか、分からない。
けど、初めての感覚。お腹の奥の方がムズムズする。

「あっ、あぁ・・・。」

ピチャ、ピチャって音がした。
その人をじっと見つめていた私の目が段々とぼやけてくる。
涙で。

「んぅぅ。はぁっ。あっ。」

その人は顔を寄せて私の瞼にキスをした。
そして涙を掬うようにペロっと舐める。

「あっ。んぅ、んっ。」

私の顔を見つめて微笑んだその人は顎をペロっと舐めて
喉から胸の間、お腹、お臍まで舌で舐めた。

手で触れていたそこを舌でペロっと舐めて私を見る。

「美味しい。」

笑って見せてからその人はペチャペチャと音を立てて
舐め始めた。

「あっ。んんぅ。」

手で触られていたより、ムズムズした。
くすぐったくて、どうしていいかわからずにシーツを握り締めて
されるがまま私は声を漏らした。

「はぁっ、ん、んぅ。」

指と舌でそこを掻き回されて自分の身体が自分のものじゃないみたいな気がする。

「あっ、いゃぁ。あ、あ、んぁ・・・・あぁぁっ。」

身体の力が一気に抜けた。
その人は私の背中に手を回して身体を起こした。
向かい合うと直ぐに唇を重ねた。
150 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:50
私は、雑誌などからだと思う、なんとなく持っていた知識で
その人の上着に手をかけた。
脱がして、男の人のそれを愛撫する。そう確かそんなことをするはずだと思った。

その人は微笑んで手を上げた。
私はTシャツを脱がして、驚いた。

「ん?どうしたの?」

首をかしげて私を見ているその人は女だった。

「本物?」

その人の胸にある膨らみに手を伸ばすとその人は笑った。

「失礼なだ。絵里より小さいけど、本物だよ。」

そういいながら付けていた下着を取った。
紛れもない、女性の身体。
それはとても綺麗だった。

「なに?もしかして男だと思ってた?」

私は素直に頷いた。
だって、普通そう、でしょ。

「着いてきたから、バイかと思った。」

バイってなに?

「あはは、全くのノンケみたいだね。」

その人はベッドの端に腰掛けて穿いていたジーンズを脱ぐと私の背後に座った。
真っ白な細い足と腕が私の身体を抱きしめる。
背中に当たるのはその人の胸。

「女にこんなことされてるの気持ち悪い?」

私は首を横に振った。
本当にそうは思わなかったから。

「うちはねビアンなんだ。女の子しか好きになれないの。」

後ろから私の胸を揉みながら耳元でそう言われた。

男だと思ってたから、頭の中が混乱していた。
151 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:51
「レズ・・・。」
「正解。」
「あんっ。」

胸の先端を弾かれてた。

「絵里は、うちとこうしてるの嫌だ?」

顔を後ろから覗き込まれたて私は首を横に振った。
私を見てくれているのはこの人だけだから。
この人にずっと見てて欲しいから。

「ずっと絵里のこと見てて。」
「ん。約束する。」

胸を揉んでいた手がお腹を通って そこに辿りついた。

「いっ。」

指が2本、そこに入っていくのを私はずっと見ていた。
真横でじっと見つめられる視線を感じながら。

「痛い?」
「ちょっと。」
「大丈夫だよ。」

頬をペロっと舐められて私は顔を横に向けた。
微笑んでるその人の目に不安な顔の私が映る。

「んっ。つぅ。」

一気に指を入れられて凄い痛みがそこを襲った。
思わずその人の腕にしがみ付き爪を立ててしまった。

「ごめん、なさい。」
「いいよ。絵里も痛いんだから。」

そう言って笑うその人が涙で歪む。
152 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:52
「こんなに濡れてるから、大丈夫。」

クチュって音は私のそこから聞こえてきた。

「あぁ、ん、んぅ。」

指がそこを行ったり来たりする。
その度に私の声は漏れて、脳がジンジンした。

「あぁ、あぁ。」
「絵里、可愛いよ。」

耳元でそういわれ耳を舐められた。

「いぁぁ、あぁっ、あぁ。はぁっ。」

段々、激しくそこを突かれ私はその人の腕にしがみ付いて
涙を流しながら、喘いでいた。


「あんぅ、あ、あ。んぅ。ぅあぁ。はぁ。」

その人は絵里の髪を耳にかけなおして顎を掴んで横に向ける。

「そろそろ、限界、かな?」

そう言って開いている私の口に吸い付いてきた。
舌を吸い上げられ、そこを突かれ、口の端から涎が零れた。

「んぅぅっ。んっ。んくっ。」

唇を離された瞬間、その人は大きな目で私の顔を片手で抑えて真っ直ぐ見ていた。

「あぁぁ、はぁっ、はぁっあぁぁぁぁぁっ。」







153 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:52
目を覚ますとその人が私を見つめながら頭を撫でていた。

「絵里。」

そう、私の名前を呼んで微笑むその人を私はボーっと見ていた。

この人は、私を見てる。

「ここに、居てもいい?」
「ん。いいよ。」
「絵里の身体でいい?」
「十分、美味しかった。」
「へへっ。絵里、美味しいんだ。」
「ん。すっごく。」

その人はペロッと私の唇を舐めてまた頭を撫でる。

「名前、何て呼べば良い?」
「言ってなかったっけ。」
「うん。」
「吉澤、ひとみ。」
「吉澤さん。」
「皆、よっちゃんとかよっすぃとかよしことか。色々呼ぶよ。」
「吉澤さんでもいい?」
「うん。」

微笑む吉澤さんに私も笑って見せてみた。
なんだか、まだ、頭がボーっとしてて、「おやすみ。」って声が聞こえてきた。








154 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:52
「よっちゃん。なに、また買われたの?」

そんな声が聞こえてきて目を覚ました。
薄っすら目を開けてみると隣に吉澤さんはいなかった。


「買ってないよ。」

吉澤さんの声が聞こえた。

「拾ったの?」

足音が近づいてきて私は目を閉じて様子を伺った。

「拾ったなら犯罪だよ。これ。」

また足音が遠ざかっていく。

「拾ったともちょっと違うかな。」
「じゃ、なに?どう見ても子ども、高校生。」
「身体は大人、美貴よりいい身体してるよ。」
「はぁ?抱いたことないくせに比べるな。」
「だって、美貴タチじゃん。うちもタチだもん。」
「昔はネコだった。」
「知らないし、昔とか言われても。」

何の話なのかいまいち良く分からない。

155 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:52

「で?あの子はなに?」
「ここに住む。」
「はぁ?なに恋人ってこと?」
「ん?どうだろ、昨日会ったばっかだし、絵里、ノンケみたいだし。」
「ノンケの子、無理やりやったの?」
「違うよ。give and take だよ。」
「テイクで抱いて、ギブはなに。」
「泊めてあげた。」
「はぁ・・・あの子が警察いったらよっちゃんパクられるよ。」
「行かないよ。絵里は。」
「なんで?」
「ずっとここにいるから。」
「そう言ったの?あの子。」
「うん。」
「よっちゃん、惚れたの?」
「惚れたっていうか、惹かれた?見ててって言うんだ。」
「何を。」
「自分を。うちも絵里のこと見てたいって思うし。」
「だからって、未成年だし、捜索願とか出されたらどうするのよ。」
「どうにかなるよ。」
「店、どうするの。よっちゃんいなかったらやってけないじゃん。」
「またまた、美貴の力でどうにでもなるでしょ。」
「もぉ。美貴しらないからねぇ。」
「いいよ。知らなくて。」

起きるタイミングがつかめなくてベッドの中でモゾモゾ動いてみる。

足音が近づいてきてベッドが沈んだ。

156 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:53
「絵里、起きた?」

ベッドに膝と手を突いて私の顔を覗きこむ吉澤さん。
私が頷くと吉澤さんは笑顔を見せた。

「おはよう。絵里。」

そう言って、私のオデコにキスをすると今度は唇にチュッっと音を立てた。

「シャワー浴びる?」

私は頷いて布団で胸を隠して身体を起こした。
昨日、脱がされた服が見当たらない。

「服・・・。」
「今、洗ってる。おいで。」

手を引かれてベッドから降りた、もちろん裸で。

ソファに座って私に背を向けている「美貴。」と呼ばれていた人は首を捻って私を見た。
初対面の人に裸を見られることに抵抗がない人間はいるのだろうか。
あ、でも夕べ吉澤さんに見られることに抵抗なかった。
なんで、吉澤さんには平気で美貴、さんには抵抗あるんだろう。

私は吉澤さんの背に隠れ顔だけだして頭を下げた。

「どうも、なんで隠れるの?女同士だから恥ずかしがることないじゃん。」

美貴、さんはそう言って笑った。

「絵里、銭湯とかでも隠すの?」
「行った事ない。」
「広くて楽しいよ。お肉凄い叔母さんとか皮だけのお婆ちゃんとか進化過程が見れる。」

吉澤さんは笑って言いながら私をバスルームに連れて行った。
157 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:53
「石鹸とか分かるよね、適当に使って、バスローブ置いておくから。」

頷くと吉澤さんは直ぐに出て行った。

湯船には何かオレンジ色の入浴剤が入れられてる。
吉澤さんからしていた匂いと同じ匂いがバスルームに漂っていた。

大きな鏡が正面にある。
体中にキスマークがついていた。
いつ、付けていたのだろう。全然、気がつかなかった。

身体を洗ってオレンジ色の湯船に浸かりながらいろんなことを考えた。

ここに、ずっと居る。
居たい。
吉澤さんはいい人、だと思う。
名前とレズだということしか知らない人だけど
私を大切にしてくれる。
何より、私の存在を確かなものにしてくれる。
あの、大きな目で。

吉澤さんに抱かれることは嫌じゃなかった。
寧ろ、あの目で私の全てを見てくれることに喜びさえ感じた。


「じゃぁ・・・ここに居ていいよね。」

バスルームに私の声が響いた。




158 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:53
置かれていたバスタオルで身体を拭いて一緒にあったバスローブを羽織って戻ると
ソファにタバコを吸う吉澤さんの姿があった。

「絵里、こっちおいで。」

手招きされて吉澤さんの隣に座ると吉澤さんは私の濡れた髪をタオルで拭いてくれた。
それから私を片腕で抱き寄せるように座りなおし、私の顔を見て微笑んだ。

「絵里は無口だな。その変わり、目で訴えてくる。」

そう言ってタバコを灰皿に押し付けた。
まだ、吸い出したばかりの長いタバコを。

タバコは嫌い。
お母さんが吸ってたから、狭い部屋に白い煙と匂いがいつも充満していた。

「嫌い?嫌なら辞めるよ。一緒に住むのに嫌だろうから。」

私は首を横に振った。

「嫌いだけど、大丈夫。」

慣れてる、それにここはあの家より広いからそれほど気にならない。

159 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:54
吉澤さんに頭を撫でられているとなんだか心地よくて私は吉澤さんの肩に頭を乗せた。

「おっ、いいね。こういうのされるの好きだよ。うち。」

そう言って吉澤さんは私の頬を指で撫でて笑った。

「絵里、着替え持ってきてないの?」

私は頷いた。
急いで、飛び出してきたから。

「買いに行く?取りに行く?」

買うにもお金は少ししかないし、家には帰りたくない。
困った顔で俯くと吉澤さんが覗き込んでくる。

「買い物行こうか、買ってあげる。可愛い服な。」

そう言って私の髪をクシャクシャと撫でた。


160 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:54
マンションの近くの店で吉澤さんは私をフィッテングルームに入れると
次から次へと服を持ってきた。
私はそれを着せて見せて二人が気に入ったモノを買った。

両手一杯に買ったものをぶら下げてコンビニでお弁当を買ってからマンションに戻った。

「夕方から仕事だから、絵里。ここで好きにしていいから。」

買ってきた弁当を食べながら言う吉澤さんに私は頷いた。

「帰ってきたとき居なかったらうち泣いちゃうよ。」

そう言って微笑む吉澤さんに私も微笑んだ。

「絵里、行くところないもん。」

「そっか。ここにいろ。」と吉澤さんは笑っていった。


吉澤さんは仕事に行くまでソファの上でゴロゴロしていた。
私の膝に頭を乗せたり私の肩を抱いたり。

スキンシップが好きみたいで私はそういうのに慣れていなかったけど
嫌じゃなかた。
したことなかっただけで私も好きなのかもしれない。

私の膝に頭を乗せたまま寝息を立て始めた吉澤さんの顔をずっと見ていた。
あっと言う間に時間が過ぎてしまうくらい吉澤さんの顔を見ていて飽きなかった。




161 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:54
「行って来ます。」

そう言って出て行った吉澤さん。
ラフな格好で夕方から仕事。
何の仕事かは聞かなかった。

美貴さんとの会話のなかで店をやっているといっていたから
何か、飲食店なのだろう、夕方から始まる居酒屋とかそういう店。

一人になった部屋で私はソファにゴロンと横になった。
凄い静かで直ぐに私は目を閉じた。




162 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:54
人の気配と話し声で目を覚ますとソファの横に数人座っていた。

身体を起こして吉澤さんの姿を探すと直ぐ横にいたのが吉澤さんだった。

「よく、寝てた。」

そう言って私の唇にキスをする。
誰がいても、関係なく吉澤さんはキスをするらしい。

朝、会った美貴さん、その隣に1人と吉澤さんの隣に1人女性がいた。

「うちと一緒に働いてる子だよ。」

一応、頭を下げてみた。

「美貴がよっすぃが犯罪者になったって言うから来て見たけど、犯罪だわ。」
「あゆみ、うるさい。犯罪じゃないから。」

吉澤さんの隣にいる、あゆみと言われた人は美貴さんに視線を送り吉澤さんを指差して笑った。

「ごとーも犯罪だと思う。」

美貴さんの隣にいた凄いスタイルのいい人はそう言って笑う。

「ごっちんまで。」

吉澤さんは苦笑していた。
私は身体を起こしてソファに座った。

吉澤さんに負けず劣らず美人な人たちがそこにいた。
163 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:54
「何の、仕事してるんですか?」
「レズバーだよ。」

私の質問に応えてくれたのは美貴さんだった。

「皆、うちと一緒。仲間なんだ。」

苦笑する吉澤さんに私は微笑んだ。
羨ましかった、仲間が居る吉澤さんが。
でも、その仲間を見て微笑む吉澤さんに、私だけを見ていて欲しいって思った。

皆とお酒を飲みながら、私を見て微笑む吉澤さんを私はずっと見ていた。


164 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:55
「何?絵里。」

ソファの上で膝を抱えて皆を見送って戻って来た吉澤さんを見上げると
私の前で困った顔をして笑っている吉澤さんが言った。


「絵里を見て。」

「見てるよ。」と言いながら私の前に胡坐をかいて私を見上げる吉澤さん。

「皆を見てた。」

吉澤さんは真っ直ぐ私を見ている。
瞬きもせずに、大きな目で私だけを

「絵里は何をくれる?」
「ん?」
「住居を得るために絵里は身体を提供したんでしょ。」
「うん。」
「うちに見ててもらうために絵里は何を提供してくれるの?」

吉澤さんはまだ、真っ直ぐと私を見ていた。
この目に私の存在を印すことが出来るなら私は何だって提供する。

初めて、私の存在を邪魔にしなかった人
吉澤ひとみに私は何だってする。
ここで私という人間の存在を認めていてくれる限り

「何が、欲しい?」

吉澤さんは表情を変えずに口を開いた。
165 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:55
「愛。」

私は微笑んだ。
私の中にそれがあるのなら、惜しむことなく差し出すよ。

「いいよ。絵里の愛、あげる。吉澤さんを愛す。もういいよって言うくらい。いくらでもあげる。」

吉澤さんが笑った。

「私の全てをあげる、心も身体もなんだって・・・だから。」
「絵里を見てるよ。絵里だけを。」

吉澤さんはそう言って顔を近づけた。
私の鼻と吉澤さんの鼻がくっ付く至近距離で私を見る吉澤さん。

「良かった、気持ち悪がられないで。」

囁くようにほっとしたように言う吉澤さん。

「身体だけならって子いるんだよ結構。でも恋愛感情が入ってくると駄目だって子のが多い。」

そういいなら吉澤さんは鼻を離して私の顔を見て笑うと首筋に顔を埋めた。
手で私の手を握り閉めながら。

「ずっといな。ここに、うちが、絵里の身体も心も貰うから。」

そう言われて私は頷いた。
吉澤さんの背中に手を回して抱きしめた。

「ようこそ、レズの世界へ。」

そう言って吉澤さんは私の首元で笑った。
166 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:56
この世界は全て give and take なのかも知れない。

私が今まで邪魔にされ存在すら認められてこなかったのは
私が皆に対してそう、だったからかも知れない
どこかで諦めてたんだ、もう、いいやってこのままでいいやって。

でも、吉澤さんには諦めたり出来ない。
初めて、私を認めてくれた人だから、もっともっとって思う。

吉澤さんが私を見ていてくれる限り、私は吉澤さんに全てを捧げよう
出し惜しみせずに、欲しいがるもの全てをあげる


「私を見て、吉澤さん。」


顔をあげた吉澤さんの大きな目に微笑んでる私が映った。


167 名前:give_and_take 投稿日:2006/10/15(日) 23:56
end


168 名前:clover 投稿日:2006/10/16(月) 00:09
>>135-167 give and take
更新以上です。
前に書いておいたやつです。もしよろしかったら読んでください。

>> 134 自作に行く前に短編をひとつ。
思いきり変換ミスしました(/o\)ハズカシ
次作です。はい、今、色々考えながら書いてます。

sage入れておいたのに、途中でsageなかったし、何やってるんだ自分_| ̄|○


>>129 :naanasshi 様
レス有り難うございます。

>完結おめでとうございます
>そして心温まるお話をありがとうございました
こちらこそ、レスいただけて嬉しいです。
レスもらえるとやっぱり、頑張って更新しようって思うので有り難うございます。

>誰かを愛しその人に愛される幸せは人にとって究極の幸せな気がしました
>これからのみんなの幸せを勝手に妄想しておりますw
妄想してください、いつかその後が書けるときが来たら妄想とあっていたか確認して下さいw

>次回作もめちゃくちゃ楽しみにしてますよ!!!
はい、頑張って書いてますw 次回もよろしくお付き合い願いします。


>>130 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>完結おめでとうございます。
有り難うございます。

>作者さんの影響で亀吉が好きになりました。
それは凄い嬉しいです。
>次回作でもあるといいな…
残念ながら亀井さんの出演予定はないのです。
ぶっちゃけ、亀井さんを出すと、亀井さんと吉澤さんをくっ付けたくなってw
途中からそっちに行っちゃうからw
ごめんなさいw
でも、次回もお付き合いいただけると幸いです。

>>131 :ももんが 様
レス有り難うございます。

>更新お疲れ様です。
>そして完結おめでとうございます。
有り難うございます。
毎回、直ぐにレスをいただけて嬉しいです。
おかげで頑張れています。

>次回もかなり楽しみに待ってます!
頑張りますので次回もお付き合い宜しくお願いします。

>>132 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>完結おめでとうございます。
>幸せについて考えさせられる作品でした(ノД`)
>お疲れ様でした。
有り難うございます。幸せって何でしょうねぇ。自分も幸せが欲しいですw

>次回ミキティ主役キタ━━━━━━━━ !!
>楽しみにしてまーす(・∀・)
はい、主役ですw藤本さんがメインですw
宜しくお願いします。

>>133 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>完結おめでとうございます(^o^)
有り難うございます。

>次の作品も楽しみにしてます
宜しくお願いします。
169 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/16(月) 12:47
いいなぁ。
ドキドキしたし幸せな気分になった
170 名前:ももんが 投稿日:2006/10/16(月) 20:53
更新お疲れ様です。
かなり好きな組み合わせの話で嬉しいです♪
色っぽい話かつこんな関係いいなーと思いました。
171 名前:naanasshi 投稿日:2006/10/17(火) 01:17
短編キテター
いやー吉亀いいですね!この二人の独特な雰囲気が好きです
次回作は85年組ということですがこっちも好きだったりw
楽しみに待ってます
172 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/17(火) 22:57
なんか亀井さんの感じが新鮮で良かったです

その後の二人の生活も気になりました
173 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 01:54
9月初旬はまだ、夏の名残で暑い日もあったのに下旬に差し掛かると突然、暑さはいなくなってしまい10月に入ると完全に秋になる朝晩は気温が下がり肌寒い季節になってきた。こんな季節になってくると布団から抜け出すのは中々大変なものになってくる。

朝、7時半起床。
1人暮らしを初めてもう何年だろう。
18歳になって直ぐ、高校を卒業して東京の短大に通うために始めた1人暮らし、当初は1人暮らしというより恋人が毎晩、来ていたからそれほど一人暮らしという感じはなかったな。同棲している感覚だった気がする。19歳の誕生日を向かえる前に本当の1人暮らしが始まったから・・・もう、3年目か。
いつもと同じようにパジャマ代わりの長袖のTシャツにジャージのまま洗面所に向かい顔を洗うとすぐ横にあるキッチンに行き夕べコンビニで買っておいた食パンをトースターに入れて、その間にコーヒーを入れる。焼きあがったパンを皿に乗せ小さなテーブルで1人、朝の情報番組を眺めながらパンを齧りコーヒーを啜る。
それから、寝癖だらけの髪を整えメイクをしてスーツに身を包みカバンを持って戸締りの確認をして自宅を出る。マンションから最寄り駅まで歩いて15分。もう少し近い場所にマンションを借りればよかったが近ければ近いほど家賃が上がる。短大卒の報酬で払える家賃なんて7万が限度、いや結構キツイものがある。2Kの部屋で管理費込みで7万。職場まで1時間弱のこの場所ではかなり掘り出し物だと思って去年引っ越してきた。
オフィス街から1時間程度のこの町はやはりベッドタウンなのだろう駅に向かう人はそれなりに多くホームには人が溢れている。
いつも乗る女性専用の車両がとまる場所にも女性たちがやってくる電車を待って並んでいる。同じ時間の同じ場所にいる人たちは大体いつも同じ人。ホームに流れ込んできた電車の中はもう人が乗れないのではないかと思うほど混んでいてそこにまた人が乗り込み押しつぶされながら目的地までの数十分を過ごす。
これほど混んでいると立っていることが辛く、目を閉じていても眠ることなんて出来ない。他の車両の方が空いていることもあるけれど一度、乗ってからは乗っていない。
別に痴漢にあったとかではなくただ、恋人たちが通勤している姿を数十分みているのが耐えられなかった。押しつぶされそうになる彼女が彼に掴まったり、彼女のために自分が壁になってあげている彼を見ていると胸が苦しくなってしまうから。
174 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 01:57
「おはよう。」と言う聞き覚えのある声に顔だけ振り返ると知った顔がこちらに向かって走ってくる人、スーツ姿のサラリーマンの中、お洒落な私服姿がよく目立つ。

「ごっちん、おはよう。」

隣に並んで歩く彼は後藤真希、高校の同級生。
プログラマーのごっちんの会社は私服で、いつもお洒落なごっちん。

ごっちんに再会したのは入社して直ぐの頃だった。
同僚とランチにオフィスのビルの1・2階にあるレストラン街に向かうためエスカレーターを降りるとビルの入口から走りこんでくる人がごっちんだった。
IDカードを首から提げていたので直ぐにこのビルのどこかで働いていることは分かった。
ごっちんはすれ違うまで気がつかなかったようですれ違いざまに突然足を止めて振り返りそして顔を覗きこんで言った。

「藤本?」
「うん。後藤君、だよね。」
「えっ、あの藤本?藤本美貴?」

あの、とはどの、なのか判らなかったが後藤君は美貴の首からぶら下がっているIDカードを見て納得したようだった。

「すっごい、大人っぽくなった。綺麗になったね。」
「そう?ありがと。後藤君も・・・あんまり変わってないね。」

スーツ姿の男性を見慣れているからだろう、ジーンズにシャツの上にパーカーを羽織ったカジュアルな後藤君は高校生のころとあまり変わったようには見えなかった。

「ひでぇ、こっちは綺麗になったって言ってるのに。」と苦笑する後藤君。美貴は一緒にいる同僚を気にしていた。ランチの時間はどの会社も同じだから早く行かないと店が混んでしまうのであまり待たせたくはなかった。

「これからお昼?」
「うん。後藤君は?」
「今、出社。フレックスだから。」
「そうなんだ。混むから、そろそろ行くね。」
「うん、今度、ゆっくり食事でもしながら。」
「そうだね。」
175 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 01:57
はランチの時間とちょっと飲み物を買いに1階にあるコンビニに降りる程度だから当たり前と言えば当たり前だろう。
再び会ったのは偶然なのかどうか分からないが1日の仕事を終え帰ろうとビルを出た扉の直ぐ横に後藤君がいたのだ。
それから夕食に行くことになり、携帯番号を交換して今では時間が会うときはランチを一緒にしたり飲みに行ったりと同じクラスでも一緒に遊んだりしていなかった高校の頃よりも親しい友達になって行った。

「今日は朝から打ち合わせかなにか?」
「うん。朝一で打ち合わせ、眠いから寝ちゃうかも。」
「ダメじゃん。」と笑みを向けるとごっちんは欠伸をしながら「眠いんだよぉ。」と涙目になっていた。
美貴たちの前を歩くカップルが朝から手を繋いでイチャイチャしている。きっと電車の中でもそうしていたのだろう。

「高校のころのミキティたちみたいだね。」と美貴の視線に気がついたごっちんが言う。
その言葉通り、美貴も高校時代、いや短大の頃も目の前を歩くカップルのようにして通学していた。

高校時代、背の高い美貴の恋人は電車の中でも人より頭ひとつ飛び出していて、小柄な美貴をいつもドアの横に立たせて壁になってくれていた。だからラッシュの電車の中でも美貴の体が誰かに押しつぶされることなんてなくて目の前には恋人の体があっていつも寄り添うよう立って美貴はいつも恋人を見上げて二人しか聞こえないくらいの声で顔を寄せあて言葉を交わしていた。
学校の最寄り駅からの通学路はいつも手を繋いで学校帰り何をしようかと相談しながら3年間、そうして高校を通っていた。
176 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 02:00
「懐かしい?」というごっちんに美貴は曖昧に笑って見せた。
懐かしいというより美貴にとってそれは昨日のことのように思えることだ。二人でしたことは事細かに思い出せる。それくらい濃い生活をしていた。

「もう、会社にも慣れたし、そろそろ恋人つくろうとか思わないの?」
「出会いないもん。」
「会社にいるでしょ、若いのから中年まで。」
「中年って。」

確かにいることはいるけど、彼らに恋愛感情が湧かない。そうした対象で見ていないから当たり前だが。

「ごっちんは?こないだ言ってた派遣の子とはどうなったの?」
「契約切れたからもういないよ。」
「付き合ってたんじゃないの?」
「一度、食べたらあまり好みじゃなかったっていうかさ。」
「サイテー。」
「美味しそうに見えたんだけどなぁ。相性悪かったんだよねぇ。」

美貴の冷たい視線を受けながら苦笑するごっちん。
再会して知ったのだが、ごっちんはかなりの軟派男らしく、高校のころから特定の恋人はいなかったがそれなりに遊んでいたらしい。関係を持ったという高校の女子の中に美貴も知っている名前がいくつも上がり驚くと、「結構、遊び人で勇名だったから知ってると思った。」と言っていたが美貴は全く知らなかった。それくらい美貴は恋人との生活に夢中で他人の恋話など興味がなかったのだ。
177 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 02:02
ビルに入り、お互いのるエレベータが違うのでそこでごっちんとは別れた。
エレベータに乗るための列に並び、やってきたエレベーターに乗れるだけの人がギュウギュウ詰めで乗り込むとオフィスがある17階に向かう。
この空間が大嫌いだ。狭い空間に男性たちの匂いと女性の香水の匂いが交じり合いなんともいえない空気が充満する。

同じ階で降りる人々に「おはようございます。」と頭を下げてIDカードを使って扉を開いて先に上司や同僚たちを中にいれてから美貴も中に入る。
朝の挨拶をしながら自分のデスクに向かうとどっと疲れが出てくる。まだ1日が始まったというばかりなのにこれから長い1日が始まるのかと思うとため息が漏れた。
恋人がいた頃、1日が長いなんて思ったことはなかった、それどころか短いとさえ感じていたのに、恋人が出来ると時間の感覚が変わるのだろう。
178 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 02:02

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179 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 02:03
付き合うきっかけは突然の告白だった。
高校の入学式の日。式を終えこれから一緒に学園生活を送るクラスメイトたちとぎこちなく会話を交わしながら下校しようとしたとき、その人は突然、現れ美貴の腕を掴むと屋上に連れて行かれた。
高校入学1日目にしてこんなことをされるとは思わず驚いていた美貴がったが、屋上に連れてこられて手を掴んでるその男子生徒も同じ新入学生だと気がつき腕を振りほどいた。

「ちょっと、何よ。」とその男子生徒を見上げ、随分と背が高いことに気がついた。
男子学生は美貴が不審がっているにも関らず、物凄い笑顔で美貴を見ていた。

「隣のクラスの吉澤ひとみ。宜しくね、美貴ちゃん。」
と手を差し伸べる吉澤君。
そのあまりにも自然な仕草に美貴はその差し伸べられた手を危うく掴みそうになった。
180 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 02:04
「まって、どうして美貴の名前知ってるの?」
「さっき、そう呼ばれてたから。」と美貴の手を無理やり掴み笑顔で握手をする吉澤君に美貴はあっけに取られていた。

「彼氏いる?」
「いない。なんで?」
「今日からここで僕等は生活するわけで、高校生といったらやっぱり恋愛したいでしょ。僕ね美貴ちゃんと恋愛したいなって思って。付き合って欲しいんだ。」
いいでしょ。と笑みを見せる吉澤君の言葉を理解するのに苦労したというか理解できずに美貴は首を横に振った。

「知らないし、吉澤君のこと。」
今、目の前にいる背の高い、ちょっと美形の顔立ちで突然、告白してくる人。それしか情報がないのに付き合うなんて出来るはずもないだろう。

「それは僕も同じだよ。美貴ちゃんの苗字も知らない。僕より美貴ちゃんのが僕を知ってるじゃん。」
と訳の判らない理屈を並べる。

「なんで美貴?」
他にいくらでも女子生徒はいるのに。

「1つ、ミニスカートがよく似合ってる。2つ、背が低い。3つ、声が好き。最後、これ重要だよ、4つ、顔が好き。」
指を折りながら吉澤君はそう言った。

「全部、見かけじゃん。美貴、性格悪いかもしれないじゃん。」
「顔が好きだから多少の性格の悪さはカバーできるし、僕好みの性格になってよ、そしたらパーフェクトに僕等上手くいくじゃん。」
一方的過ぎる吉澤君の告白に美貴は呆れて帰ろうと思った。
181 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 02:05
「ごめん、美貴は帰るわ。」
歩き出そうとすると「待って。」とまた腕を捕まれる。

「僕も美貴ちゃん好みの男になるから、ルックスはどうにもならないけど中身はいくらだって美貴ちゃんのために変えるから。」
だからお願い。と必死になる吉澤君を可愛いなと思った美貴は吉澤君の影響でちょっとおかしくなっていたのかもしれない。

「美貴ちゃんの理想の彼氏ってどんなの?」
「美貴に優しい人。美貴を大切にしてくれる人。美貴との時間を沢山作ってくれる人。」
「うん。なるっていうかまさに僕じゃん。」

自分を指差す吉澤君だけど、美貴はそれが真実なのかどうか知るはずもなかった。

「約束する。絶対楽しい高校生活にするって。」
「わかった。いいよ。」

吉澤君は笑顔になると掴んでいた美貴の手を握りなおして「じゃぁ、美貴ちゃんと初下校。」と笑顔で言った。

吉澤君は本当に美貴に優しくて、美貴をとても大切にしてくれて、眠る時間を削ってまで美貴と一緒にいてくれた。吉澤君はちょっとロマンチストで純粋で美貴は直ぐに吉澤君に惹かれ始めた。
182 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 02:05

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183 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 02:05
あの時の真剣な顔の吉澤君の言葉は何だが本当にそうしてくれるんじゃないかって美貴を思わせた。人が聞いたら呆れられるかもしれないけど、その時の美貴はそう感じた。
理由を聞かれても答えられないけど、ただ、吉澤君の言葉に真実味があったのは確かで事実、美貴は世界中の高校生の中でも一番楽しい高校生活を満喫したと自信を持って言える。

恋人と過ごした日々を昨日のように直ぐに思い出せるのはきっと別れてからこの3年、常にあの日々を思い出しているからだろう。

携帯が上着のポケットの中でブルブルと震えている。それは直ぐに止まったからおそらくメールだろう。取り出した携帯を開くと予想通りメールが届いていた。

『これから面接。緊張だよぉ。取り合えず頑張ってきます。美貴も仕事頑張れ。』

もう一つの理由がこれだろう。
別れた恋人と今は友達という関係を続けている。

『頑張れ、落ち着いてね。よっちゃんなら大丈夫。美貴も仕事頑張るよ。』
そう返信すると『いってきまぁす。』と返ってきた。
184 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 02:06
1日の仕事を終え帰り支度をしていると同僚に呼び止められた。今夜、これから飲み会があるのだがどうしても面子が揃わなかったから来て欲しいというお願い。何度か誘われたがいつも乗り気でなく参加していた美貴はいつからかこういう役になっていた。

「ん。いいよ。」

あまり邪険にすると仕事に影響があるだろうと思う美貴は作った笑顔でそのお願いに応じる。同僚は「助かる。ありがと。」と手を合わせた。

テーブルを挟んだ向かいに座る初めて顔を会わせる男性4人と食事。
初めて付き合った恋人と別れてもう3年だ。恋心を抱ける相手に巡り逢えればまた付き合うこともあるだろう。でも、そんな人はこの3年美貴の前に現れなかった。それだけのこと。多分きっとこれから先、何人もの人と出会ってもきっとそんな感情を持つことはないと思う。
いつだって比べてしまう。元恋人と美貴に好意を持ってくれる男性を。でも、美貴はその人たちに恋することはないのだ、なぜならば美貴は今でも別れた恋人に恋しているから。
185 名前:静かな愛1 投稿日:2006/10/21(土) 02:08

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186 名前:静かな愛1(訂正) 投稿日:2006/10/21(土) 02:11
【誤】
>>175
はランチの時間とちょっと飲み物を買いに1階にあるコンビニに降りる程度だから当たり前と言えば当たり前だろう。
再び会ったのは偶然なのかどうか分からないが1日の仕事を終え帰ろうとビルを出た扉の直ぐ横に後藤君がいたのだ。

【正】
2年ぶりの再会を果たした後、しばらく後藤君と会うことはなかった。同じビルにいるといっても事務の美貴がビルの外にでるのはランチの時間とちょっと飲み物を買いに1階にあるコンビニに降りる程度だから当たり前と言えば当たり前だろう。
再び会ったのは偶然なのかどうか分からないが1日の仕事を終え帰ろうとビルを出た扉の直ぐ横に後藤君がいたのだ。

187 名前:clover 投稿日:2006/10/21(土) 02:29
本日の更新以上です

>>173-186 静かな愛1

初っ端から、コピペミス\(>。<)/
藤本さん中心のお話になります。
お付き合い宜しくお願いします。

>>169 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>ドキドキしたし幸せな気分になった
有り難うございます。嬉しいです。
静かな愛の方も読んでいただけると嬉しいです。

>>170 :ももんが 様
レス有り難うございます。

>かなり好きな組み合わせの話で嬉しいです♪
そういってもらえると嬉しいです。

>色っぽい話かつこんな関係いいなーと思いました。
なんか、自分の中で続編もいけるかなとか思ってたりしますw

静かな愛のほうも宜しくお願いします。

>>171 :naanasshi 様
レス有り難うございます。

>いやー吉亀いいですね!この二人の独特な雰囲気が好きです
自分も吉亀好きですw

>次回作は85年組ということですがこっちも好きだったりw
こちらも宜しくお願いします。
期待に応えられるといいのですが(^。^;;

>>172 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>なんか亀井さんの感じが新鮮で良かったです
>その後の二人の生活も気になりました
自分も続編できるかなぁなんて思ってたりしました。
静かな愛のほうも宜しくお願いします。
188 名前:ラブ 投稿日:2006/10/21(土) 08:50
みきよしハッピーエンドを激しく祈ってます(>_<)
189 名前:naanasshi 投稿日:2006/10/21(土) 17:19
新作更新お疲れ様です
今回もなんだか波乱がありそうな予感!?
これからどうなってくのか楽しみです
190 名前:ももんが 投稿日:2006/10/21(土) 19:51
更新お疲れさまです。
新しいお話始まりましたね。
85年組も好きなんでこれから楽しみに待ってます♪
give and takeの続編いっちゃってください!
191 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/21(土) 19:59
新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!まってましたよ!
更新お疲れ様ですwktkしながら待ってます。
192 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/21(土) 22:55
激しく待ちます
193 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/22(日) 20:55
待ってます
194 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/22(日) 20:55
私も待ってます
195 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:30
そろそろコートを出しておこう。そんな風に思う10月も半ば仕事を終え帰ろうとする美貴を後ろから呼ぶ声に足を止めた。

「あ、ごっちんも帰り?」
「うん。」といいながら美貴の隣に来たごっちんと並んで駅に向かって歩き出す。

「今日、暇?」とごっちんは携帯を弄りながら言う。
「別に何も予定はない。」
「じゃ、ちょっと付き合って。」と美貴の手を掴み駅に着く前に走ってきたタクシーを止めて美貴を押し入れた。
196 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:31
「どこいくの?」
「レストラン。」
「ごっちんのおごり?」
「もちろん。」と笑うごっちん。
ごっちんの肩が美貴の肩と触れているのに気がつき美貴はそっとドア寄りに体を移動させた。「あっ、ごめん。狭い?」と言うごっちんに首を横に振って見せた。

そんなに気にすることじゃないかもしれないけど。なんとなくダメなのだ。他人と触れ合うことになんとなく嫌悪を感じる。
自分の体の一部分だけが自分の体温と違う体温になる、恋人の体温はあんなにも温かく感じて嬉しくてドキドキして自分からくっ付いていたのに。何故か、他人の温度はダメなのだ。

「着いたよ。ここ。」とごっちんに言われて着くまでずっと景色に目を向けていたことに気がついた。タクシーを降りた目の前には洒落た感じのイタリアンレストラン。

「ごっちん、こういう店よく知ってるよね。」
「好きでしょ。女の子。味より雰囲気だから。」と言って扉を開けてくれるごっちんに「そう、かな。」と答え中に入る。
多分、雰囲気も大切なんだろうけど・・・そんなものに頼らなくても・・・
197 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:31

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198 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:31
入学式の日に告白され、美貴は吉澤ひとみと付き合うことになった。
「初下校。」と嬉しそうに美貴と手を繋いで歩く吉澤君。
無邪気に嬉しがるから美貴も嬉しいと感じてしまう。ずるいよね、笑顔が似合うからなんか何でも許せてしまう。知らない人が散歩している犬を見て可愛いと頭を撫でてしまう感覚に似ているのかもしれない。
その日、吉澤君は美貴に色々なことを聞いてきた。美貴がそれに答えると吉澤君も美貴に教えてくれた。
「血液型は?」
「Aだよ。」
「僕はO。何人兄弟?」
「2人。」
「僕は3人。弟が2人。美貴ちゃんは?」
「お兄ちゃん。」
「得意教科は?」
「体育と音楽、かな。勉強は苦手なの。」
「僕もそう、美術と体育が好き、あと社会は得意じゃないけど好きだった。好きな食べ物はなに?」
「焼肉、特にレバ刺し。」
「肉かぁ、僕はパンが好き。誕生日はいつ?」
「2月26日。」
「つい、こないだか。僕は4月12日。」

「それって、今日じゃん。」と吉澤君を見るとニコニコと美貴を見ていた。
「なんか欲しいものある?」と聞くと
「美貴ちゃんが恋人になってくれたことが今年の誕生日プレゼント。」と言った。

それ以来、美貴たちの間でモノをプレゼントするという行為はしたことがない。お金がなかったというのもあるが、形に残る、目に見えるプレゼントというより二人だけのやり取りがプレゼントというものになった。
199 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:32
初めてのデートはまさにそうだった。
毎朝迎えに来てくれて帰りは家まで送ってくれるその登下校もある意味デートのようなものだった、近くの公園で少し話しをしたり、ちょっと遠回りしたりして、過ごした数日で美貴は既に吉澤君と過ごす日々が楽しくて仕方なかった。
明日初めて学校が休みだという金曜日の昼休み。美貴のクラス、美貴の席で向かい合ってコンビニのパンを食べる吉澤君は突然「美貴ちゃん、明日デートしよう。」と言い出した。

「デートって映画とか遊園地とか行くの?」
「そういうのがいい?」
「他にどういうのある?美貴、ちょうど見たい映画あるし。」
「ん〜。映画代と電車賃・・・。」
「もしかしてお金ない?」
「ん〜。バイトしてないからね。だからといってバイトして美貴ちゃんと過ごす時間が減るのは嫌だし。」と口をモグモグさせながら何かを考えるように机の上にある美貴の指と人差し指で一本ずつトントンと突いていく吉澤君。

「よし、決めた。明日10時に迎えに行くね。」
「ん。どこ行くの?」
「ナイショ。」と歯を見せて笑う吉澤君に美貴は内心ドキドキしていた。初めてのデートがどういったものになるのか。

そしてその土曜日、美貴はあまり眠れずに結局8時前には仕度を済ませて玄関に座って待っていた。
「あんたもやるわねぇ。入学して直ぐに彼氏つくってこんなに朝早くから全く。」と言ってきたのは起きたばかりの母親だ。初めて吉澤君を見た日、お母さんは凄い笑顔で「カッコイイじゃない。」と吉澤君を気に入ったようだった。
200 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:33
10時ピッタリにインターホンがなり美貴が直ぐに出て行くと吉澤君は「私服、可愛いね。」と笑顔を見せた。そんな一言であれこれ着ていく服を悩んだ時間が無駄じゃなかったと思わせる。
「吉澤君もなんか制服と違うね。似合ってる。」と言うと「良かった。」って笑う吉澤君。ジーンズに大き目のポロシャツでとてもシンプルなんだけど、吉澤君自体が派手だからそのシンプルさがよく似合っていた。
「後ろ乗って。」と自転車に跨る吉澤君に捕まって美貴はその後ろに横座りした。

「スカート抑えててね。誰かに見られたら大変だから。」と笑う吉澤君に「了解。」と答えると美貴は片手でスカートを押さえもう片手を吉澤君の腰に回してしっかりと捕まった。

「美貴ちゃんくっ付きすぎ。」と言った吉澤君の後姿が耳だけが真っ赤できっと顔も真っ赤なのだろう、ただ、なんか耳だけ真っ赤な吉澤君が可愛くて美貴はさらに体を押し付けた。吉澤君の耳がさらに真っ赤になったけど吉澤君は顔で美貴に向けてニコっと笑った。

「美貴ちゃんの心臓がバクバクだ。僕もバクバクだけどね。」と言うと自転車を漕ぎ出した。ドキドキしてることを言われて美貴は恥ずかしくて吉澤君の背中にオデコをくっ付けた。美貴も吉澤君と同じくらい顔が赤くなっているだろう。くっ付けたオデコから吉澤君の体温が伝わってきてその体温は美貴より熱くて、でもなんだか心地よかった。

恥ずかしさと照れで上がってしまった体温の体に当たる風が心地よくて顔を上げると夏に向かって育ち始めてる草花の隙間に川が見えた。
人が通り道にしているのだろう、そこだけ草が成長していない道を通って吉澤君は自転車を止めた。

自転車の篭にある大きめのバックからシートを取り出すと大きな石とかを蹴飛ばしてそれを敷いた。
「美貴ちゃんここ、座ってて。」と言う吉澤君に頷いて美貴は1人シートの上に座ると吉澤君はバックから色んなものを取り出してシートの上に並べた。
大きめのお弁当箱、水筒、使い捨てカメラ、フリスビー、カラーボール、ひざ掛け。
201 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:33
「なに?ピクニック?」
「そう、家にあるものでお金掛からないしいいでしょ?嫌だった?」
不安そうに美貴を見る吉澤君に美貴は笑みを見せて首を横に振った。
「よかった。」とほっとしたように笑う吉澤君を美貴はもうどうしようもないくらい好きになっていた。

「もう少しそっちに寄って良い?」とちょっと離れて座っていた吉澤君は美貴の返事を待ってから美貴に体を寄せた。
お母さんに手伝ってもらって作ったというお弁当。見かけは褒められたものじゃないけど、どれも美味しいものだった。

「これ見て。たこさんウインナー。これ、子どものころ好きでさ、懐かしくて教えてもらって作ったの。」と箸で取り上げたたこさんウインナーと吉澤君の笑顔。
「はい、あーん。」という吉澤君に美貴が小さく口を開けるとたこさんウインナーが入ってくる。ちょっと焦げていたけど、それはとても美味しかった。

それから吉澤君とフリスビーをしたけど風が強くて全然出来なくてキャッチボールをした。吉澤君は美貴が投げるどんなボールも簡単に取ってしまって、美貴は取れないボールを投げてやろうと必死になって色んなボールを投げた。
結局、美貴が先に疲れてしまって吉澤君はボールを片手で弄びながら「イヒヒ。上手いだろ?」と自慢気に笑て「全部、取れたご褒美が欲しい。」と言った。

「ん?ご褒美って何?」
シートに座って水筒からコップにお茶を注ぎ一息ついてからまだ美貴の前に立って手の中でボールを遊ばせている吉澤君を見上げると恥ずかしそうに小さな声で吉澤君は呟いた。
202 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:34
「膝、まくら・・・。」
恥ずかしいのだろう美貴から視線を外して頬を赤く染める吉澤君をとても可愛く思えた。

「いいよ。おいで。」
正座していた足を崩して膝をポンポンと叩いて見せると「ホントにいいの?」と美貴の隣にやって来て確認する。美貴がもう一度「おいで。」と言うとゴロンと横になり恐る恐る美貴の太腿に頭を乗せて美貴を見上げる。真上にある太陽が眩しいのか目を細めて嬉しそうに微笑む吉澤君の頭を撫でた。

「美貴ちゃんの膝、僕に丁度いいや。」
「そう?良かった。」
「えへへ、やってみたかったんだ。でも、ちょっと照れるね。」と目を閉じる吉澤君。その寝顔が凄い嬉しそうで美貴は足が痺れたって気にならなかった。

夕方になって少し寒いなと思うと直ぐに何も言わないのに吉澤君は美貴の足にひざ掛けをかけてくれた。「女の子は冷えると良くないんだよね。」と言いながら。

夕べ、あまり眠れなかったのと静かで心地よい気温のせいで美貴がウトウトとしだすと吉澤君は「眠い?」と聞いてきた。
「少しね。」と答えると「退屈?」と心配そうに聞く吉澤君に美貴は慌てて首を横に振った。

「そうじゃないよ。楽しい。ただね、昨日、あまり寝れなかったの。」
「どうして?」
「今日が楽しみで。」恥ずかしくて小声で言うと吉澤君はニコっと笑って美貴の肩を抱きその手で美貴の頭を吉澤君の頭に乗せた。
「いいよ、寝て。これもやってみたかったんだ。」と微笑む吉澤君に美貴も笑みを向けてから目を閉じた。風に乗って吉澤君のいい匂いがした。凄く安心して落ち着く匂いに包まれながら吉澤君が作り出す空間に酔いしれていた。お洒落な場所じゃないけど、そこは二人だけの世界が出来ていた。
203 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:35
「美貴ちゃん。」
「ん?」
夢の世界に引きこまれる少し手前で吉澤君の声に目を開けて視線だけで吉澤君を見上げた。

「好き、だよ。」と真顔で言う吉澤君に美貴の顔は凄い一気に体温が上昇する。
恥ずかしくて吉澤君の肩に顔を埋めると「あはは、照れてる。」と髪を撫でられた。

「美貴ちゃんは?好き?」と聞いてくる吉澤君に美貴は顔を肩に埋めたまま答えた。

「好きだよ。」
204 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:35

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205 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:35
あの時、よっちゃんはどんな顔してたんだろう。
見ればよかったな。恥ずかしさで顔を上げられなかったんだっけ。勿体無いことしたな。

「予約してある後藤です。」と後ろからごっちんが言うと店員の案内で奥のテーブルに連れて行かれた。
「あれ?」案内されたテーブルに座っている女性を見つけて美貴は足を止めた。
連れがいるならそう先に言っておいて欲しかったと後藤君を見ると美貴の視線に気が付なら気がつかない振りをして席に座った。
「だれ、その人。」と先客が美貴を見て言う。
ケバイな。それがその人の美貴の印象。
「後藤の彼女。だから帰って。」という後藤君にその人は吸っていたタバコを乱暴に灰皿い押し付けて帰っていった。

206 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:36
「何、今の。」
美貴は呆れた顔で言いながら椅子に座った。
「しつこくて。」とタバコに火をつける後藤君。
この店はあの人と来るために予約していたのだろうか、それを美貴が変わりにというのはなんだかとても嫌なものだ。

「あ、ここ、今日予約したの。ミキティと夕食にと思って。ついでにあの子と別れただけ、だから。」とドリンクメニューを見ながら言われた。
最後のついで、がなければ気分良く久々の外食を楽しめただろうに。
「ワインでいいよね。」と聞く後藤君は美貴が返事をする前にウエイターに頼んでいた。
こういう、男性を頼もしく思う女性は数多いのだろう。

「よしこと連絡は取ってるの?」
「ん。たまにメールしてるよ。」
「メールだけ?」
「逢うこともあるけど。」
「そっか。僕、高校の友達と逢うのってミキティ位だよ。」
「そうなんだ。」

料理をしながらたわいもない話し。それでも高校の話題になってしまうのは仕方のないことなのだろうか。
ごっちんはあまり自分のことは話さずに美貴に質問ばかりしてくる。

207 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:38
「でもさ、ミキティとよしこは結婚してるって多分、あの高校の生徒皆が思ってるよ。まさか別れてるなんて誰も思ってないよね。」

美貴は曖昧に笑って話を聞いていた。他人からどう見られていたのかなんて今まで知ることはなかったから。

「でも、あんだけ仲良くしててさ、よく分かれてから友達とかしてられるよね。僕、別れた子と友達とかないな。」
「だろうね。」今みたいな別れ方ならそれはそうだろうと美貴は苦笑した。
バックの中で携帯が鳴りディスプレイに表示されている『よっちゃん。』という文字に慌ててごっちんに「ちょっと、ごめん。」と言って美貴は通話ボタンを押した。

「もしもし?どうしたの?」
『美貴ちゃん?』
「うん。どうしたの?」
『あはは、美貴ちゃんの声だぁ美貴ちゃーん。』

明らかに酔っているよっちゃんの声。

『ねぇ美貴ちゃん。最悪だよぉ。』
「どうしたの?」
『就職決まらないしさぁ。約束すっぽかされるし。世の中に取り残されていく気分だよぉ。』
「お店、どこ?」ごっちんの顔を見て美貴はそう言った。これからそこに行くつもりだから。後藤君は肩眉を上げでタバコの煙を吐き出した。
知っている店の名前を言うよっちゃんに「今から行くから。」と伝えて電話を切った。
208 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:38
「今からって今から?」言った後藤君の視線の先には料理を運んでくるウエイターの姿がある。まだ、コースの途中だとわかっていて美貴は「ごめんね。」と携帯を閉まってバックを抱えた。

「元恋人の友達の方が優先されるのは仕方ないか。」と言うごっちんに嫌味が含まれていることは直ぐに分かる。
「他の友達でも行くかな、人を彼女と別れるために使うような友達より他の友達優先する。」と言って席を立った。
ごっちんは苦笑しながら片手をあげて「行ってらっしゃい。よしこによろしく。」と言った。
「ご馳走様。またね。」と笑って美貴は足早に店を出るとタクシーを拾ってよっちゃんが待つ店の名前を運転手に伝えた。

209 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:39
面接が上手くいかなかったのだろう。よっちゃんは素直に思っていることを口にしすぎる。いいことだけれど、全ての人がよっちゃんを理解しているわけではない。
約束をすっぽかされたというのはあの人にだろう。もう、何度目だろう。それでもよっちゃんは待つんだ。来るかもしれないと思って待って、そして諦めたときに負う傷は深い。
あまり強くないアルコールに逃げてしまうのはその傷の痛みを麻痺させるためだろう。そして、アルコールでも麻痺できないとこうして美貴に電話をかけてくる。
友達、として。
でも、最近はなかったのに、どうしたのだろう。

運転手に料金を払って店に駆け込むと一番奥のテーブルにうつ伏せているよっちゃんがいた。他の客がざわざわとしている中、よっちゃんの周りだけ別世界のように静かだった。

「よっちゃん。起きてる?」
隣に座って肩をゆさぶると「ん。起きてる。」と言ってよっちゃんは顔を上げなかった。
泣いているのかもしれない。美貴に見られたくないのだろうか。
元恋人に今の恋人にすっぽかされて泣いている姿を。
ならば電話をかけてこなければいいのにと思う反面、それでも美貴に頼ってくるよっちゃんを愛しいと思う美貴はそうとうよっちゃんに惚れてしまっているのだろう。

よっちゃんが顔を上げるまで美貴はよっちゃんの隣で背中をさすって待った。
こういうときは人それぞれ落ち着くまでかかる時間は別だから。
折角、来たんだから顔くらい上げろって思うのかもしれない。それでも、美貴は急かしたりできない。よっちゃんの時間の流れを良く知っているから。
210 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:40
「あっ、いた。」と声が聞こえて近づいてくる足音に視線を向けると知っている顔が美貴を見て足を止めた。

「藤本、さん。どうして?」
「よっちゃんから連絡あったから。」

明らかに敵視する目で美貴を見るその人に美貴は苦笑した。
別にあなたに、そんな目で見られる筋合いはない。

211 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:41

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212 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:42
よっちゃんと付き合いだして迎えた初めてのバレンタインデー。
いつも教室まで迎えに来てくれているよっちゃんがなかなかやってこなくて教室に独りになった美貴はよっちゃんの教室を覗きに行った。そこによっちゃんの姿はなくて美貴は下駄箱に行きよっちゃんの靴がまだあることを確認して『下駄箱で待ってる。』とメールをしてから上履きを履き替えて下駄箱の端っこに背を預けてよっちゃんが来るのを待っていた。
しばらくして足音が聞こえて、よっちゃんかと思って顔を出すと同じクラスの石川梨華がよっちゃんの下駄箱を開けていた。美貴は慌てて顔を引っ込めた。向こうからは美貴のいる場所は見えないから気がつかれず石川さんは去っていった。
よっちゃんがやってきたのはそれからしばらくしてからだった。

「ごめんごめん。」と謝りながらやってきたよっちゃんに美貴は「何それ。」と両手に持っている紙袋を指差した。
「チョコレート。バレンタインだから今日。」と苦笑するよっちゃんに美貴は明らかに不機嫌ですという視線を向けた。
「美貴ちゃんと付き合ってるって言ってるし皆知ってるんだけど、イベントだから貰ってくれって言われるとね。」と困った顔をするよっちゃんに美貴はため息をついた。

「イベントだから仕方ないか。美貴も一緒に食べていい?」というとよっちゃんは「もちろん。1人じゃ食べきれないよ。」と笑った。
両手でもっていた袋を片手に持ち替えて下駄箱を開けると「あれ?ここにもあった。」と言うよっちゃんは下駄箱の中からピンク色の包装をされた箱を取り出して美貴に見せる。

「誰だろう。名前ないや。」
「石川さん。さっき入れてたみたい。」と言うと「だれ?それ。」と言われた。
結構、綺麗な子で上級生が覗きに来たりしてるし、毎日、美貴のクラスに来ているよっちゃんだから知っているかと思った。
213 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:43
「うちのクラスの石川さんだよ。」
「わかんないや。」と言いながらその箱を紙袋に入れた。
「毎日、美貴のクラスに来てるのにわかんないのかよぉ。」
「だって、美貴ちゃんしか見てないもん。」と靴に履き替え美貴の手をとるよっちゃんに美貴は腕を絡めてから手を握りなおした。

「あっ、今の嬉しかったんでしょ。」と笑うよっちゃんに美貴は素直に頷いてよっちゃんの肩に頭を乗せて歩き出した。

美貴の家に着くとリビングでよっちゃんは紙袋からチョコレートを出した。
「あら、凄い数ね。」とお母さんが感心すると「沢山もらうより美貴ちゃんからの1つのが嬉しい。」と美貴が今、あげたチョコレートを頬張った。
「あらら、ご馳走様ですね。」とお母さんがコーヒーを出してくれた。
「でも、夕べ徹夜で作ったチョコレートがそれ一つだなんて自分の娘だけどこんなに料理が出来ないと思ってなかったわ。」と苦笑するお母さんを美貴は睨んだ。

「ごめんね。」とよっちゃんに言うと「美味しかった。」と笑う。
頑張ったんだけど、失敗ばっかりでどんどん用意しておいた材料は減っていくばかりで今朝5時に出来上がったのは小さな3粒のチョコレートだった。
214 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:43
買い物に行ってくると言うお母さんに美貴たちも後で出かけると伝えると「戸締りして帰ってこなくてもいいわよ。バレンタインだしね。」とウインクして出て行った。

「これも食べたい。」
と残っている美貴が作ったチョコレート2粒を指差すよっちゃんの手を軽く叩いた。
「ダメ、これはよっちゃんの弟たちの分。」
「あいつらには勿体無い。」と頬を膨らますよっちゃん。
よっちゃんが一杯貰ってきたチョコレートの方が美味しいし喜ぶと思ったけどなんか懐いてくれている小学生と幼稚園児にも作ってあげたいと思った。まさか3粒しか出来ないとは思ってもいなかった。

「食べたいなぁ。チョコレート。」とよっちゃんは美貴の肩に頭を乗せた。
「あいつらにはこっちに一杯あるし、いいじゃん。」
「んー。どうしよっかなぁ。」といいながら美貴はテーブルの上からいくつか箱を手にとって見た。
「食べる?」と言いながらよっちゃんも箱を手に取り包装を破く。
「あぁ、それ手づくりっぽくない?折角綺麗にラッピングしたのに破いちゃって。」
「だって、イベントだって言ってたもん。」と美貴の口の中に黒い塊を入れて微笑むよっちゃん。なんだかこのチョコをくれた子に申し訳ない気がしたけれど、よっちゃんにイベントだと言ったのが悪かったと思うよりほかない。よっちゃんはストレートにちゃんと思ってることを言わないと分からない。素直だから、その言葉をそのまま受け入れるんだ。それはよっちゃん自身がそうするから。
215 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:44
美貴の家から美貴の自転車に乗ってよっちゃんの家に向かう。
「美貴ちゃん、ちょっと痩せた?」と自転車を漕ぐよっちゃんの言葉に美貴は片手をお腹の辺りに当ててみた。
「そうかな?」
別にダイエットをしているわけでもないし毎日体重計に乗ってもいないから今、正確な体重が分からない。
「ペダルが軽いもん。」
よっちゃんの自転車と美貴の自転車の違いなのかもしれない。
「それは良かったね。楽で。」と美貴が言うとよっちゃんは握っていたハンドルの片方を放してその手を美貴のお腹に持ってきた。
「くすぐったいよ。」と言う美貴に「へへ。」と笑うよっちゃん。美貴はよっちゃんの手を捕まえて手の甲をペシっと叩いた。
「危ないから、ちゃんとハンドル握ってね。」
216 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:44
よっちゃんの家に着くと玄関まで走ってくる悪戯っ子の2人。
「美貴ちゃんだー。」と美貴に抱きついてお腹に顔を埋める一番下の弟の頭をペシと叩いて美貴から離すと「美貴ちゃんにそういうことするなぁ。」と言って美貴の前に立つよっちゃん。
「子どもにヤキモチやかないのぉ。」と美貴はしゃがんで手招きして二人を呼んだ。
「あーん。して。」と美貴がいうと「あーん。」と大きく口を開ける素直な子供二人の口に美貴はチョコレートを放り込んだ。

「チョコだぁ。」とモグモグさせて喜ぶ二人を恨めしそうに見るよっちゃん。
「お前らのせいでお兄ちゃんの分減ったんだだからなぁ。ほら。」とよっちゃんが紙袋を渡すと二人は「いっぱいある。」と嬉しそうにリビングの奥に消えていった。

「やっぱりあれのが喜んだかぁ。」と美貴が笑うと「僕が嬉しいだけじゃ足りない?」と美貴の顔を覗きこむよっちゃんに「大満足。」と答えるといきなりよっちゃんは美貴の体を持ち上げた。
217 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:45
「ちょっと何?」と落ちないように美貴はよっちゃんの肩に捕まる。
「お姫様抱っこ、してみたかったんだ。」とよっちゃんはニコっと笑って階段を昇り始めた。「落とさないでよね。」という美貴によっちゃんはわざと美貴を落とす振りをしたりして美貴は思わずよっちゃんに抱きついた。
よっちゃんの部屋でよっちゃんのベッドに下ろされて美貴の隣に座るったよっちゃんは一番下の子がさっき美貴にしたように美貴のお腹に顔を埋める。
幼稚園児と変わらないよっちゃんが可愛く思えてぎゅっと抱きしめた。
よっちゃんはスキンシップが大好きだ。美貴の手を握ったり美貴の肩に頭を乗せたり常に美貴の体とよっちゃんの体の一部はくっ付いている。
それでも美貴とよっちゃんはまだキスもしたことがないプラトニックな二人なんだ。

「よっちゃんってモテルくせにヤキモチ妬きだよね。」と言うとよっちゃんは埋めていた顔を上げて上目使いで美貴を見て言った。
218 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:46
「だって、美貴ちゃんは僕のためにいるんだもん。」と言って拗ねたそぶりを見せると「そりゃ妬くさ。」とまた顔を埋めた。美貴はよっちゃんの頭を撫でながらよっちゃんの言葉に笑みが零れていた。
「じゃ、よっちゃんは美貴のためにいるんじゃん。」
「そうだよ。」とお腹からよっちゃんの声が振動になって伝わってくる。
「美貴だって妬いてるよ。よっちゃん、あんなにチョコレート貰ってきて。」
「じゃ、来年から貰わないようにする。」
自分が持てること分かってるってところがちょっとムカついて美貴はよっちゃんの耳を引っ張った。「痛い、痛い。」と顔を上げるよっちゃんの頬をツンツンと突いた。
「好き、だよ。」と美貴がいうとよっちゃんは頬を赤らめて美貴を抱きしめた。
美貴たちはあまり「好き」と言う言葉を交わしたりしなかった。あまり簡単に言葉にするとなんだか意味のない言葉になってしまう気がして、あくまで美貴はそう思って口にはしなかった。

「僕も好き。だからずっと側にいてね。」と耳元で囁いたよっちゃんの体を美貴はきつく抱きしめた。

219 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:46

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
220 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:46
「よっしー。お姉ちゃん来れないから、帰ろう。」とよっちゃんの向かいに座って石川さんが言った。
よっちゃんは何も反応を示さずにうつ伏せたままだ。
そっとしておいてあげて欲しかった。よっちゃんは今きっと自分の中で葛藤しているのだろうから。面接が上手くできなかった訳を、約束が守られなかった訳をよっちゃんなりに納得のいく答えを探しているのだろうから。

「よっしー。ねぇ、いつまでこうしててもお姉ちゃんこないから。帰ろうよ。」

石川さんはめげずによっちゃんの肩を揺さぶり始めた。美貴は黙ってよっちゃんを見ていた。肩を揺さぶられよっちゃんは眉間に皺を寄せ真っ赤な目で石川さんを見た。そして「また、石川かよ。」って呟くとやっと美貴を見た。
「あ、美貴ちゃんだぁ。」とよっちゃんは笑った。
石川さんと美貴への対応の違いに美貴は困ってしまう。

221 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:47
「もう、帰る?」と美貴が尋ねるとよっちゃんは頷いた。
「私がつれて帰ります。お姉ちゃんに頼まれたし。」と石川さんが立ち上がった。
よっちゃんは石川さんを見上げて困ったように笑った。そして美貴の肩にオデコを乗せて言った。
「美貴ちゃんと帰る。」

石川さんは美貴をじっと見ていた。美貴は苦笑を返すしか出来なかった。

「よっしーがそう言ってるので、宜しくお願いします。」と石川さんは言って乱暴にバックを肩にかけて去って行った。
222 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:47
「よっちゃん、良くないよ。あぁ言う言い方。」
「だって、石川・・・。」よっちゃんはその後なにも言わずに美貴の肩に捕まって立ち上がった。会計は既に済んでいたようで美貴は酔って足元がふらつくよっちゃんを支えて店を出た。
「寒い・・・。」と呟くよっちゃんに「タクシー拾うから我慢して。」と言って大通りまで連れて行きバス停にあるベンチに座らせた。背の高いよっちゃんを支えているだけで美貴は相当体力を使いよっちゃんとは違って暑かった。
大通りを行き交うタクシーはどれも人が乗っていて中々捕まえられなかった。よっちゃんの様子を気にしながらやっとタクシーを捕まえ眠ってしまいそうなよっちゃんに駆け寄った。
「よっちゃん、タクシー捕まえたから立って。」と声をかけてよっちゃんの手を自分の肩に乗せて立ち上がらせた。
「美貴ちゃんの家行くの?」と言うよっちゃんに「よっちゃんの家だよ。」と言いながらタクシーに乗せて運転手によっちゃんの家の住所を告げた。
「美貴ちゃんの家がよかったぁ。」と美貴の肩に頭を乗せるよっちゃん。
「なんで美貴の家がいいのよ。」と尋ねると「温かいじゃん。」と目を閉じたまま笑った。

寒がりな美貴の部屋はいつも温かくしていた。
でもさすがに今は仕事が何時に終わるか分からないからタイマーをつけておくわけにはいかず、帰ったら温かいなんてことはないのだ。それに、前の部屋はワンルームだったから直ぐに部屋全体が温まったけれど引っ越した部屋は前よりも広く直ぐに温まることはないことを今の部屋に来たことのないよっちゃんは知らない。

「よっちゃん、マジで寝ないでね。寝たら美貴ひとりじゃ部屋まで連れて行って上げられないからね。」美貴がよっちゃんの太腿をポンポンと叩きながら言うと、目を閉じて「んー。」と返すよっちゃん。

よっちゃんの住むマンションの近くまで来て美貴は道案内してマンションの前に到着した。
223 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:48
「よっちゃん、起きて。着いたから。」料金を払いながら言うとよっちゃんは「んっ。」と短く返事をして体を起こした。
「よっちゃんの家。着いたから。」先にタクシーから降りてよっちゃんの手を引っ張って降ろした。それからよっちゃんをほとんど背負うような形で歩き出す。
よっちゃんは背が高い。美貴は小さいからきっと美貴たちを背後からみたらよっちゃんが猫背でだらしなく歩いてるくらいに見えて美貴がいることに気がつかないだろう。
やっとの思い出よっちゃんを部屋の前まで連れてきて「鍵だして。」と言うとよちゃんは肩から駆けていたカバンを美貴に渡した。渡されたカバンを漁りキーの束を取り出した。
同じ鍵が2本。美貴が返した鍵がよっちゃんの鍵と一緒に括られていた。鍵を開けてよっちゃんを入れるとよっちゃんは玄関で崩れるように座り込んだ。
靴を脱いであがろうかどうしようか、美貴が座り込んでいるよっちゃんを見ながら考えているとよっちゃんが美貴を見上げて言った。

「帰っちゃう?」と呟くよっちゃんに美貴は首を横に振り靴を脱いで中に入った。
よっちゃんを玄関に残したままキッチンに行き冷蔵庫からミネラルウォーターを取ってコップに注ぎよっちゃんに飲ませた。
「向こう、行こう。」という美貴の言葉によっちゃんは頷いてからだるそうに立ち上がりフラフラとした足取りでソファに倒れこんでそのまま顔を隠すように腕を顔の下にもって行った。美貴はエアコンのリモコンを手に取り暖房を入れた。
さっき、石川さんに邪魔をされてまだ、なんとなくモヤモヤしているのだろう。
美貴はクッションを抱えて床に座った。
別れてから初めて入るよっちゃんの部屋はあの頃と全然変わっていない。だから自然にエアコンのリモコンのある場所も冷蔵庫の中にミネラルウォーターが必ずあることも何も変わってない。
224 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:49
「ねぇ、美貴。」顔を伏せたままのよっちゃんの呼び声に「ん?」と返す。
「大人になるってさ。」
「うん。」
「嘘を平気でつけるようになるってこと、なのかな。」

美貴は直ぐにはなにも答えてあげられなかった。よっちゃんの望む答えが何なのかは分かっている。ただ、それは正解ではないから。

座ったまま膝を抱えなおし顎を膝の上に顎を置いてよっちゃんを眺めた。
一体、面接で何があったのだろう、あの人との間に何があったのだろう。

「まだ、分からない。」よっちゃんはそう言いながら体を起こし胡坐をかいてこちらを見た。その顔からは困惑していることが見て取れる。

「何が分からないの?」美貴が言うとよっちゃんはクシャっと音がするように笑った。

「面接で、会社をどう思うかって聞かれて。」
「そう、答えたんだ。」
「うん。」とよっちゃんは「案内見て行ったけどさ、書いてあることだけじゃ会社のこと分からないじゃん。」と続けた。
225 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:50
美貴は黙って頷いて見せるとよっちゃんは髪をかきながら美貴を見る。
「何十社か受けてその中からどこか内定取れればくらいで受けにきてるんだよね最近の子はって言うんだ。」

美貴は目を伏せた。自分はまさにその最近の子に当てはまるから。生活するためには就職しなければならない、ニートやフリーターになるのは嫌だった。だから事務職を募集している会社を片っ端から受けて受かった中から条件のいい会社、今の会社に決めた。

「やりたいことがあってもその仕事に就けるのは限られた人だし、会社案内に書いてあることなんてどこの会社も同じなんだ、だから言ったんだ。」とよっちゃんは美貴を見て笑った。

「面接しに来たけれど、これは逆に僕があなたたちを面接しているんだって。」

よっちゃんらしいなって思って美貴は思わず笑ってしまった。

「だって、そうだろ?僕は雇われる身になるけど、会社の利益のために働くんだ、この会社のために働きたいって思わないと働けないよ。」
そうだろ?っという顔で美貴をみるよっちゃんに美貴は苦笑を返した。
そう思って働いている人は少ないだろう、みんな自分の生活のためどんな仕事だってどんな理不尽なことのためにだって頭を下げて仕事をしている。
226 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:51
「美貴は違うの?」
「美貴は事務だから、会社の中で会社の雑務をしてるだけ、利益を生み出したりしてないからね・・・どうだろう、営業とか企画とかと違うし。」
「そっか。」

よっちゃんは「うーん。」と手を上に突き上げて伸びをする。
「面接の人たち怒ったんだ。お前に面接される覚えはないって追い出された。」
黙って追い出されるよっちゃんは想像できなかった。

「で、よっちゃんは何て言って出てきたの?」
「あなたたちみたいな上司の下では働けないからこっちからお断りだって。」
よっちゃんはそう言って悪戯っ子みたいに笑った。

人が聞いたらよっちゃんの我侭だと思われてしまうのだろう。けど、よっちゃんにはよっちゃんのスタンスがあってそれに素直に生きているんだと美貴は思う。

「よっちゃんらしいね。いいじゃんそんな会社に入れなくても。」
「だろ。でも、子どもだって言われたんだ。大人は本心を言わないし顔に出さないで話ができるんだってさ。」

きっと、あの人に言われたんだろう。
美貴は「へー。」とだけ答えた。他に何も言葉が見つからなかった。否定することも出来たけど実際そういう大人が多いから。
227 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:51
「美貴ちゃんは顔に出すだろ?」と笑うよっちゃんに美貴も笑みを向けた。
嫌なら嫌だって言うし顔に出す。楽しければ笑みが零れる当たり前のことだから美貴はそうしてる。それが気に入らない上司たちもいるけど美貴は相手にしていない。自分の仕事をきちんとこなしていれば何も問題はない。ただ、それをすることによって上にいくことはないだけの話し。

「今夜、会いたいって言われたんだ。凄い笑顔でさ。僕は嬉しくってちょっと早めに店に行って待ってのに、約束の時間になってもこないから電話したらお客さんが来てるからって、だから待ってるって言ったんだ。そしたらさ。泊まっていくと思うからって。」

よっちゃんは「分かってて好きになったんだから仕方ないけど。」と背を預けため息をついた。

「もう、何度もあったからそういうこと。その度に石川が迎えに来るんだ。」
よっちゃんは苦笑して美貴を見た。

「じゃぁ、なんで今夜は美貴を呼んだの?」
「お姉ちゃんなんかやめろって悪いことばかり言うんだ。そんなの聞きたいと思う?」

美貴は首を横に振った。
石川さんはよっちゃんが好き、なんだよ。あの頃からずっと。
美貴と別れて自分にもチャンスがあると思ったらよっちゃんは石川さんじゃなくてそのお姉ちゃんに行っちゃったから、よく思ってないんだねきっと。でも、そのお姉ちゃんが現れたりしなかったら美貴とよっちゃんは別れることなんてなかったから、きっと石川さんの思いは一方通行。どっちみち同じ結果だったんだ。

228 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:52
「飲み直そうっか。」と言うよっちゃんに「明日、大丈夫なの?」と聞いて明日が土曜日なことに気がついた。

「愚痴きくよ。一杯聞いてもらったし。」と立ち上がるよっちゃんはふらついていたので美貴がやるといってキッチンへ向かった。
お酒の置いてある場所も変わってないキッチンで美貴がグラスと氷を用意して戻るとよっちゃんはソファで寝ていた。持っていたものをキッチンに戻し美貴はよっちゃんの隣に座る。

「よっちゃんベッドで寝よう、風邪ひく。」よっちゃんの手を掴んで腕をトントンと叩くとよっちゃんは「んぅ。」と美貴の肩に頭を乗せた。
無防備な寝顔にキスをしたくなったけれど何とかとどまって美貴は手を伸ばしてエアコンのリモコンを手に取った。温度を2度上げリモコンを戻す。
このくらい温かければ風邪は引かないだろう。
229 名前:静かな愛2 投稿日:2006/10/22(日) 23:52
美貴はよっちゃんの頭に頭を乗せて目を閉じた。
よっちゃんの少し高い体温が心地よく美貴に伝わってくる。
美貴の肩が少しずつ湿ってきたことに気がついてよっちゃんの顔を覗きこむと涙を流していた。
あの人に約束を守ってもらえなかったことによっちゃんの心は悲鳴を上げているんだ。それでもあの人を思って必死で耐えてる。
美貴なら・・・よっちゃんを泣かせたりしない。
あの頃だって一度だってよっちゃんを悲しい思いで泣かせたりしなかった。
あ・・・一度だけあったか。
よっちゃんと別れた日。よっちゃんは悲しそうに泣いたっけ。

友達として、弱っているよっちゃんを抱きしめるくらいいいよね。
美貴はよっちゃんの頭を胸に抱きしめて再び目を閉じた。
230 名前:clover 投稿日:2006/10/22(日) 23:56
本日の更新以上です

>>195-229 静かな愛2

今回は藤本さん主役で、藤本さん視点だけで行こうと思ってて
もしかしたら、説明の部分が足りなくて読みにくいかも・・・
ごめんなさい、と先に謝っておこうw

嬉しいレスが多いので今夜も更新してみました。
今後ともよろしくです。
231 名前:clover 投稿日:2006/10/23(月) 00:02
本日の更新以上です

>>195-229 静かな愛2

今回は藤本さん主役で、藤本さん視点だけで行こうと思ってて
もしかしたら、説明の部分が足りなくて読みにくいかも・・・
ごめんなさい、と先に謝っておこうw

嬉しいレスが多いので今夜も更新してみました。
今後ともよろしくです。




>>188 :ラブ 様
レス有り難うございます。
>みきよしハッピーエンドを激しく祈ってます(>_<)
ん〜。どうだろうw

これからも宜しくお願いします。

>>189 :naanasshi 様
いつも、レス有り難うございます。

>今回もなんだか波乱がありそうな予感!?
どうだろうw
>これからどうなってくのか楽しみです
期待に応えれるように頑張ります。
宜しくお願いします。

>>190 :ももんが 様
いつも、レス有り難うございます。

>85年組も好きなんでこれから楽しみに待ってます♪
有り難うございます。

>give and takeの続編いっちゃってください!
静かな愛が終わったら行っちゃおうと思ってますw
色々、妄想があるのでw


>>191 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!まってましたよ!
有り難うございます。
>更新お疲れ様ですwktkしながら待ってます。
今夜も更新したので読んでいただけたら幸いです。


>>192 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>>193 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>>194 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

232 名前:clover 投稿日:2006/10/23(月) 00:03
あ・・・
ダブって書いてしまった・・・
申し訳ないです。
233 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/23(月) 01:23
更新お疲れ様です!。
いきなり引き込まれる内容ですね
お姉ちゃんの存在がたのしみです。
234 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/23(月) 18:31
どうやって別れたか気になります
235 名前:ももんが 投稿日:2006/10/23(月) 20:45
更新お疲れ様です。
後藤君の軽い感じなかなか好きです♪
藤本さんがこれからどうなっていくのか…。
静かな愛もgive and takeの続編も楽しみにしてます。
236 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/24(火) 11:14
続けて更新うれしっす!(´・∀・`)
モテモテよっすぃ、焼きもちヤキよっすぃ可愛いですね!
237 名前:naanasshi 投稿日:2006/10/24(火) 21:19
更新お疲れ様です
新たな登場人物に胸がどきどきですw

子供でも大人でもないこのくらいの年って色々悩みますよね
吉澤くんの過去と未来が気になるところです

そして横レスですがgive and takeの続編クルー!!!
こっちもかなり楽しみにしてますw
238 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/25(水) 03:16
新作の更新おつかれです!
モテ吉ハァ━━━ン!!!!みきよし??ハァ━━━━━ン!!!!
過去と現在が交互に入り混じってなんかおもしろいです
続きまってます!!(・∀・)
239 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/26(木) 21:00
ウキウキモテ吉♪
240 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/26(木) 23:27
純粋無垢な吉澤さんが愛しい
241 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:00
「ミキティ。ランチ一緒にどう?」
今日は何を食べようかと思いながら1人エスカレーターを降りていると下から声をかけてきたのは2週間ぶりに会うごっちんだった。

別に誰と約束をしているわけでもない美貴は「いいよ。」と答えごっちんと二人直ぐに入れるパスタ屋に入った。

「よしこ、どうだったの?」と席に着くなり言うごっちん。
「大丈夫だったよ。」と答えながらランチメニューを手に取り今日のランチを確認した。

実際、次の日の朝にはよっちゃんは照れ笑いしながら「美貴ちゃんに迷惑かけちゃった。」と良く焼いた目玉焼きとカリカリのベーコンをサンドしたベーグルはよっちゃんの大好物の朝食をご馳走してくれた。

「あの時間に行ってミキティちゃんと帰れた?」とメニューを見ながら言うごっちんに美貴は「泊まったから。」と素直に答えた。別に隠すことではないと思った。
ごっちんは明らかに機嫌が悪そうな顔で美貴に視線を向ける。

「別れた恋人の家に泊まったりするんだ。ミキティて。」
「今は友達だから。」と答えて美貴は注文するために店員を呼んだ。

注文を済ませるとごっちんはタバコに火をつけて煙を吐き出す。
242 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:00
「うちに泊まりに来てって言ったらミキティ来てくれるわけか。」と呟くごっちんに美貴は怪訝な顔をする。
「友達、でしょ。うちら。」

美貴は作った笑みを浮かべて言った。

「よっちゃんは一番大切な友達だから。」

ごっちんは美貴に負けない位の作った笑みを浮かべた。

「僕は何番目くらい?」
「さぁ。一番以外はみんな同じだし。」そう言ってから出てきたパスタを口に運んだ。
ごっちんはそれから何も言わずにパスタを食べていた。

「明日さ、夕食どう?こないだは悪かったと思ってその埋め合わせ。」
店を出てエレベータに向かうフロアでのごっちんからの誘いの言葉に美貴は眉を潜めた。
243 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:02
「埋め合わせ?」
「そう、別れる理由に使ったって言われたから。」と肩をすくめるごっちん。
「あぁ。美貴も途中で帰ったし別に気にしてないから。」
「じゃぁ普通に夕飯どう?」
「ん。いいよ。何時?」
「7時にはあがれるから入口のロビーで。」
「分かった。」

エレベータホールの手前でごっちんと別れた。
ごっちんはほとんど家で夕食を食べないと言っていた。会社帰りに同僚と飲みに行ってしまったり、女の子と夕食を食べに行くと。その相手がいないときに美貴を誘っているのだろう。
244 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:02
午後の仕事に目途がついたころよっちゃんからメールが届いた。
『2次まで通過。あとは面接だけだ。頑張るよ。』と。
こないだ受けるといっていた会社のことだろう。筆記試験、適性検査は大抵パスするが面接で転んでしまうよっちゃん。一緒に行ってよっちゃんがどんなに真っ直ぐに生きているのか伝えてあげたいくらいだ。
『よかったじゃん。面接も頑張れ。』と返し再びデスクに向かう。
7時までには仕事も片付きそうだ。
245 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:02
黙々と仕事をして7時少し前にロビーに着いた。
辺りを見回してもごっちんの姿はなくまだ来ていないようだった。
人が多いロビーに背を向けて窓の外を見た。
夜でも明るいと感じるのはこのビル自体がパークのようになっているからだろう。冬なのにここから星は見えない。
高校を卒業して東京に初めて来たとき「なんか、人工的な町だよね。」と言ったよっちゃんの言葉通りだと思った。

「お待たせ。」とやってきたごっちん。
美貴は時計を見て7時少し過ぎているなとひとり思った。よっちゃんは付き合っている間、1度も遅刻したことなかったなと思いながらビルを出た。

ごっちんのお勧めの店は2つ隣の駅にあった。二人で電車にのってその店に向かう。
246 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:03
「ホント、良く店しってるね。」と感心しながらお洒落なちょっと落ち着いた雰囲気のフレンチレストランに入った。
ごっちんは良く来ているらしく、店員の人に声を駆けられたりしている。
店内は薄暗く、どの席も個室のようになっていた。一番奥の席に着き美貴がメニューを手に取ると「あ、コースで頼んだから。」とごっちんが言った。

次々に運ばれてくる料理は美味しいけれどなんだろう、美貴には上品過ぎる気がする。

「あ、魚、なんだ。」
メイン料理が運ばれてきて美貴はそう言った。
肉、が好きな美貴にとって魚料理より肉料理のが好ましかった。
247 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:04
「魚、嫌いだっけ?」
「嫌いじゃないよ。」と言って魚料理を口に運んでみせる。

お互いをあまり知らない仲だと、こういうことは多いだろう。
些細なことを知っている相手とならばこんなことで落胆することもない。それでも肉が好きだからと言ってもその日によって食べたいものは違うものでそれは本人にしか分からないことであるから出来れば勝手に決めずに意見を聞いて欲しいと思ってしまう。
248 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:04
よっちゃんは・・・自分の考えを話してくれてから、必ず美貴の意見も聞いてくれたな。

ごっちんとよっちゃんは違う人間だから仕方ない。同じだったら怖いし。

「ねぇ、ミキティ。」

デザートを食べ終えようとした頃、ごっちんは持っていたフォークをテーブルに戻して美貴を見た。

「ん?」と美貴はデザートを口に運びながら視線をごっちんに向ける。
「美味しい?」
「うん。」
「良かった。」と微笑むごっちん。

口をモグモグさせながらごっちんがフォークを置いたままなので美貴もそれを置いてゴクっと口の中のものを飲み干してから「何?」と尋ねる。
ごっちんは微笑むと驚くことを言った。
249 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:05
「後藤のお嫁さんになってくれない?」

口の中のものを飲み込んでおいてよかった。出なければ危うく噴き出していたところだ。

「何言ってんの、美貴21だよ。早いよ。」
と言ってから先月、同期の同い年の子が寿退社して行ったことを思い出した。先輩は仕事を仕込んで1年で辞められたと怒っていたっけ。

ごっちんは何も言わずに美貴を見ている。ただ、微笑んで。

「なんで、美貴?ごっちん、いっぱいいるでしょ。いつも違う女の子連れてるじゃん。」
「本気じゃないよ、あの子たちは。」

だったら、余計そんなことをする男のところに嫁になんて行けない。
250 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:05
「ミキティがお嫁さんになってくれたら後藤は絶対に浮気しない。本気だから。」
「美貴の・・・どこがいいの?料理も出来ないしっていうか家事全般が苦手。」
「いいよ、そんなの。」
とさっきからずっと微笑んだままのごっちん。
その笑みがなんだか、怖いと感じた。

「美貴の何が好きか聞いたところで、美貴はごっちんのお嫁さんにはならないんだけどね。」と笑って美貴は残っていたデザートを口に運んだ。
これで、この話は終わり。美貴にその気はないから。

「よしこがそんなにいい?」

美貴は視線だけごっちんに向けて首を少しだけ傾けた。
251 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:06
「まだ、好きなんでしょ。」
「好きだよ。」

ごっちんは嬉しそうに笑った。

「それが理由。」
「えっ?」
「よしこを好きなミキティをお嫁さんにしたい。」
「馬鹿じゃないの。」

美貴はそう言って笑ってから白ワインを一口だけ飲んだ。

「馬鹿でしょ。でも、そうしたいんだ。」
「なんで?」

ごっちんは全く変わらない微笑みのまま美貴を見ていた。
252 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:07
「よしこがやっぱりミキティがいいって戻ってくるのを待ってるんでしょ?」
「そういう時が来たら良いなとは思うけど、それが現実になるか分からないじゃない。」
「後藤はその時が来るって思ってるそれに賭けてミキティをお嫁さんにする。」
「する、って勝手に決めてるし。」

美貴はごっちんの微笑んだ目が怖くてワインを口にしながら視線をそらした。

「よしこが戻って来たとき、もう遅いよって後藤がよしこに言ってやるんだ。」
「なんのために?」
「こんなに愛されてるのにミキティを捨てたよしこへの罰。」
「美貴たち、そういう別れ方してないから。それに、ごっちんに関係ないでしょ。」
「あるよ。よしこへの嫉妬。誰からも愛されるよしこに後藤、嫉妬してるんだ。」

ごっちんはそう言うとワインをごくごくと喉を鳴らして飲んだ。
美貴はなんだか、美貴の知っているごっちんじゃない別人がそこにいるみたいで怖かったけれど、ごっちんから視線を逸らしてはいけない気がした。
253 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:08
「どう?後藤のお嫁さんになってよ。ミキティだってよしこのこといつまで待ってても仕方ないって思ってたりするでしょ。」

ワインを飲み干して微笑み言うごっちんに美貴は眉を顰めて言った。

「よっちゃん、誰からでも愛されたりしてないよ。今、愛して欲しい人に振り向いてもらえなくて苦しんでる。」

ごっちんは口の端だけ持ち上げて笑って言った。
「梨華のお姉さんだっけ。」

ごっちんが、知っていたことに驚いた。
よっちゃんと卒業してから連絡を取っていないから。知っているはずがなかった。

「どして?」
「梨華と高校のときちょっと遊んだから、今でもたまに連絡くらいは取ってる。」
「そう。」
254 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:09
石川さんのイメージって真面目っていうか・・・
美貴を見る目があの頃から敵視されてたから・・・
なんか、ごっちんとそういう関係だったと聞いてなんだか・・・
なんだろ、驚いてるのと、よっちゃんへの気持ちはそんなもんだったんだって
落胆してる自分がいる。
体の関係で人への気持ちを量ることはないけれど・・・
でも、なんか・・・そのごっちんとの行為はよっちゃんへの自分の気持ちを否定するもので裏切るもの、そんな気がする。
男の人は欲求不満だとか言うし、そういうことしないと溜まるとかって言葉を使うけど、女は違う、しなくたって生きていけるって美貴は思う。
体が求めることもあるけれど・・・でも、よっちゃん以外の人にその欲求を満たすことなんて出来ないし、満たしてもらいたいとも思わない。
そう思うのは美貴だけだろうか・・・。
でも、よっちゃんだって、そうだと思う。
もちろん体を重ねることで交わされる愛もあるけれど、美貴たちはそれを急いだりはしなかった、初めてのキスでさえ。
255 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:10

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256 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:11
高校1年の2月も終わりに近づいたころ、美貴にとって16歳になる日がもう直ぐそこに来ていた。よっちゃんは

さくらが咲き始め、3学期の終業式を待つだけの時期の学校はなんだか静かで、そんな学校の教室はもちろん静かでよっちゃんと美貴は何も言葉を交わさずに窓の察しに手をかけて咲き誇る桜を眺めてた。

「この教室とももう直ぐお別れだね。」とよっちゃんは窓の外を眺めながら言う。
「んー。よっちゃんよく通ったよね。ほとんど毎日きたもんね。」と美貴が言うとよっちゃんは「そうだねぇ。」と美貴を見て微笑んだ。

「クラス替え、一緒のクラスになれるといいね。」よっちゃんは再び外を見て呟いた。
「ん。慣れるよ。美貴もよっちゃんも理数系志望だし。」
「そうだね。そしたら、今よりもっと一緒にいられるよ。この教室に来るまで1分弱だからその分。」とよっちゃんは笑った。

「細かいね。」
「でも1日5回ある休み時間で往復2分として1日10分だよ。1年にしたらかなりの時間じゃん。」とよっちゃんは指を折りながら言った。
そんな時間まで大切にしてくれることが凄く嬉しくて美貴はよっちゃんの肩に頭を乗せて、よっちゃんの手を握った。

「これからどれくらいの時間をよっちゃんと過ごすのかな。」
よっちゃんを見上げるとよっちゃんは微笑んで小声で言った。

「永遠。」

よっちゃんは恥ずかしかったのか美貴の頭に頭をコツンとぶつけて外を見た。
だから美貴は「うん。」とだけ答えてよっちゃんと同じように咲き始めた桜を見ていた。
257 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:13
それから数週間後、美貴たちは無事、同じクラスになり、高校2年生になって数日。
1年前、よっちゃんにいきなり告白された同じ場所、屋上。
あれから1年が過ぎ、あの日と同じよっちゃんの誕生日によっちゃんと手を繋いで立っていた。
数ヶ月前の美貴の誕生日によっちゃんはMDをくれた。
よっちゃんの歌声が入ってるMDを。
「大人になったとき、これ聞いたら笑っちゃうんだろうな。」って言いながら美貴がそのMDを聞いている間よっちゃんは凄い恥ずかしそうにしてた。
よっちゃんのアカペラで美貴への気持ちを歌ってるそのMDは今では美貴の子守唄で毎晩それを聞きながら美貴は幸せな気持ちで眠りに着く。

こっそり、誕生日プレゼントを用意しようと思っていたけれど、よっちゃんは「買っちゃ駄目。買いに行く時間があるなら一緒にいて欲しい。」と言われ美貴は素直に従った。
それに、「欲しいものがあるんだ、お金の掛からないもの。」と言われていた。
258 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:14
「寒くない?」
「ん。大丈夫。」
教室は少し暑くてセーターを着ずに腰に巻いていたけど外は少し風があった。でも、丁度いいくらいな気温だ。

「1年、早かったなぁ。ここでいきなり告白されて。」
あの日のことを思い出して美貴が少し笑うとよっちゃんも同じように笑った。

「一つ、聞きたかったことがあるんだ。」と美貴が言うとよっちゃんは首を傾けて「ん?」と言った。

よっちゃんと付き合いだして、よっちゃんを知っていくうちに少しずつ気になり始めてたこと。
あの日、よっちゃんは美貴の苗字も知らないと言った。
付き合う理由は外見ばかりの4つを挙げた。
よっちゃんは凄く、思いを大切にする人で外見で人を判断する人じゃない。それが、どうして美貴を外見で判断して告白してきたのか、それによっちゃんは、美貴の名前を知っていた、その理由を聞いたとき、「そう呼ばれていた。」と答えたけど美貴のことをみんな「美貴」と名前では呼んでいない。
259 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:15
「どうして、美貴の名前知ってたの?」
「えっ?」
よっちゃんは意味が分からないという顔で眉を少しだけ上げた。

「1年前、美貴の名前しってたじゃん。それ、どうして?」
よっちゃんは直ぐに微笑んで答えた。

「美貴ちゃんといた子がそう呼んでたから、そう言わなかったっけ。」
「言った。でも、呼ばれてないよ。美貴のこと皆、ミキティとか藤本さんって呼ぶから。」
よっちゃんはしまったという顔をして頭を掻いた。

「どうして知ってたの?」
美貴はよっちゃんと繋いでいた手を両手で包み込んでよっちゃんを見上げた。
「今、凄い幸せでよっちゃんのことこの1年で凄い好きになって、よっちゃん居ない高校生活なんて想像できないくらいだよ。」
美貴の言葉によっちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
「好きだから、知りたい。よっちゃんが美貴を知っていた理由。どうして、よっちゃんは美貴を選んだのか。凄い知りたい。」

よっちゃんは開いている手をお尻のポケットに入れて取り出しのはパスケース。
260 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:15
「これ、見て。」とよっちゃんは美貴にそれを差し出した。
いつも使っているパスケースにはいつも使っている定期券が入っている。

「中、見て。」とよっちゃんに言われ美貴はそれを開いて直ぐによっちゃんを見た。

「どうして?いつから知ってたの?」

中に入っていたのは今よりも若い美貴の写真。中学生になったばかりの頃だろうか、まだ、今よりも髪は短くて幼い美貴がそこに居た。
261 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:16
「中学校の横に病院あったでしょ。」とよっちゃんは言う。美貴は頷いた。
「入院、してたんだ。2ヶ月くらい。足をね複雑骨折してさ。」よっちゃんは右足をプラプラとさせ、その足を見ながら言った。

「中1のとき。冬だった。僕は出歩けないし暇で隣にあった中学校を病室から見てた。体操着の生徒が走ったりハンドボールしたりしてるのにグランド端で女の子が寒そうにダッフルコートを羽織って気だるそうに歩いてた。体育の見学かな、その子はタイヤで出来た跳び箱に座って僕と同じように生徒たちを見てた。あの子も僕と同じで怪我でもしてるのかなって思ったけど、その子はしばらくするとタイヤの上に立ち上がっていくつも並ぶタイヤをピョン、ピョンって渡って何回か往復してた、凄いつまらなさそうに。でも、白い息で手を温めてる横顔は凄い綺麗でさ・・・その子はいつも体育は見学で、いつもつまらなさそうにしてて、退院する日、僕はその中学校にこっそり侵入したんだ。その子の下駄箱を突き止めて貼ってあったラベルでその子の名前を知った。リハビリのために学校を早退した日はその子に声かけようかなって思って待ち伏せたりしたんだけど、いつも1人で出てきてやっぱりつまらなさそうに帰って行くんだ。」
よっちゃんはそう言うと美貴を真っ直ぐ見てた。美貴はなんだか、どう、反応していいのか分からずによっちゃんを見ていた。
262 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:16

「笑顔を見てみたかったんだ。出来れば、僕が笑顔にしてあげたいって思った。つまらなさそうに中学校の生活を送っていたその子と楽しい高校生活を送りたいって、一緒にって思ったんだ。」
よっちゃんはそう言うと美貴の手からパスケースを取った。

「これ、下校中に撮ったんだ。ちょっとストーカーっぽいね、僕。」
と言ってそれをズボンのポケットに閉まった。

「それが、美貴ちゃんに告白した理由。こんな僕、嫌いになった?」と言うよっちゃんに美貴は首を横に振った。

「好き、凄い、好き。話してくれて有り難う。それと、告白してくれて有り難う。」
と言う美貴は何故か泣いていた。多分、凄い嬉しかったんだ。
そんな美貴の頭を撫でながらよっちゃんは「嫌われなくて良かった。」と呟いた。
263 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:17
よっちゃんはハンカチで美貴の涙を拭いてくれてそして言った。

「誕生日プレゼント貰ってもいい?」
「ん。何が欲しい?」

よっちゃんはハンカチをしまうとニコっと笑った。
「美貴ちゃんの唇。」

美貴の前に立ったよっちゃんは恥ずかしくて俯いた美貴の顔を覗きこんだ。
「キス、駄目、かな?」
と言う声に美貴が顔を上げるとよっちゃんの顔が凄い近くにあった。
「駄目、じゃないよ。」

よっちゃんは「ありがと。」と言ってから美貴の手を握ってゆっくりと顔を近づけてきた。よっちゃんが目を閉じるのを確認してから美貴も目を閉じた。

触れるだけの優しいキスだった。

唇を離すとよっちゃんは美貴とオデコをくっつけて
「ちょっと恥ずかしいね、凄いドキドキしてて、でも凄い嬉しくて、幸せな気分。」と言った。

美貴もよっちゃんも顔を真っ赤にしてしばらく二人でそうしていた。
これが、美貴にとってもよっちゃんにとっても初めてのキスだった。
264 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:17

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265 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:18
「よしこも、馬鹿だよね、別に追いかけなくても寄って来る女がいるのにさ。」

美貴はごっちんを多分冷たいって言われる目で見てる。
この目のせいで、美貴は中学校生活をつまらなく過ごしたんだ、中学校だけじゃない、小学校もそう。

「そんな睨まないでよ。」
「睨んでない、元々こういう目つきなの。」
「それは失礼。」とごっちんは笑ってワインを口にした。

「美貴はごっちんとそういう風にはなれないよ。楽しくない生活はしたくないから。」

美貴の言葉にごっちんは少しだけ口の端を持ち上げた。

「よしこは楽しい?馬鹿みたいにいつも笑ってるから?」
「意味もなく笑ったりしないよ。よっちゃんは馬鹿じゃないし。」と美貴が言うとごっちんはまた笑う。

「あぁ、よしこにはいつも勝てないなぁ。これで2回目。」
「何が?」
「告って振られるの。いつもその相手はよしこが好きな子。」

ごっちんはゴクゴクと残っていたワインを飲み干すと美貴に向かってフニャっと笑った。
266 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:18
食事を終えてタクシーに二人一緒にタクシーに乗り込むとごっちんは自分のマンションがある地名を運転手に告げた。
先に降りるのだろう、いつもは美貴のマンションの近くまで態々送ってくれていたけれど、ここからなら、ごっちんのマンションは美貴のマンションへの通り道だ。
隣にいるごっちんを横目で見たがごっちんは窓の外を見ていた。

「えっ?美貴払うから。」

ごっちんのマンションの前に着くとごっちんは運転手に料金を支払った。
これからまだ乗る美貴が払うつもりでいたから美貴はごっちんにお金を渡そうとバックから財布を出そうとするとごっちんに腕をつかまれ引き寄せられた。
267 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:19
「この人もここで降りますから。」とごっちんは運転手に告げる。
「美貴はまだ・・・。」乗るんだと伝えようとしたら凄い力で引きずり出されるようにタクシーから降ろされた。

「ちょっと離して。美貴は帰るんだから。」と言う美貴はごっちんに手首を握られ引っ張られる。タクシーの走り去る音が背中に聞こえた。

「痛い、ごっちん。痛いよ。」
物凄い力で美貴の手首を握っているごっちんは美貴の声に振り向きもしなかった。
美貴は持っていたカバンを振り上げ掴まれている手首に向かってそれを振り下ろした。
「いたっ。」と一瞬ごっちんの掴む力が緩んだ隙に美貴はそれから逃れ手首を擦った。

「よしこがすっぽかされた時は一晩、慰めたんだろ。後藤のことも慰めてよ。」
振り返り言うごっちんの顔は薄笑いをしている。

何も言わない美貴にごっちんは「一回くらいやらしてよ。別によしこに言ったりしないし。っていうか、二人は付き合ってるわけじゃないから一々伝える必要もないか。」と言った。
268 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:20
「ごっちん。止めて、格好悪いよ。」
「よしこよりマシじゃない?酒飲んで女の前で泣くんだろ?梨華が前に言ってた。」
呆れたように言うごっちんに美貴も呆れた。

「美貴、帰る。」と歩き出そうとするとまたごっちんが美貴の腕を掴んだ。
美貴もまた、カバンを振り上げるとその腕をごっちんに掴まれた。

「結婚の・・・プロポーズしたんだぞ。後藤は。」とごっちんは低い声で美貴を睨んで言った。怖かった、掴まれている手が痛いのとごっちんの表情が。

「離して。」
「男に捨てられて未練たらしく想ってるだけで何の楽しみもない女に、プロポーズしてやったのに。一回くらいやらしてもらわないと気がすまないだろ。」
ごっちんはそう言って美貴の手を降ろして体を引き寄せた。直ぐ近くで見るごっちんの顔から怒りが伝わってくる。プライドを傷つけられたという怒りだろう。
抵抗しても力で勝てるわけが無いと思った美貴は体の力を抜いた。
ごっちんもそれが分かったらしく少しだけ表情を和らげて言った。
269 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:20
「そう、女はそういうほうが可愛いよ。」と握っていた手を美貴の腰に回し顔を寄せようとするごっちんの顔を美貴はバックで横から殴った。

殴られた頬に手を当てて美貴を睨むごっちん。

「ごっちんてさ。いつもレディファーストって言って優しいことしてくれるけど、今のそれが本当のごっちんだよね。自分に自信があって余裕あるときとは全然違う。美貴は本当の優しさとか思いやりとか愛とか知ってるから、分かるよごっちん。」
美貴はごっちんと少し距離をとりながらそう言った。
怒っているのだろう、また美貴にこんなことを言われて・・・ごっちんは眉間に皺を寄せ美貴を睨んでいた。

「ごっちん、ちゃんとごっちんが人を好きにならないとごっちんとちゃんと好きになってくれる人なんていないよ。」

美貴はそれだけ言うとごっちんに背を向けて歩き出した。
追ってくる気配は無い、内心、ちょっと安心しながら美貴は大きな通りを目指して歩く。
これで1人、友達をなくしてしまっただろうか。
会社であったら気まずいのかななんて思いながら美貴はタクシーを拾いマンションに戻った。
270 名前:静かな愛3 投稿日:2006/10/28(土) 23:20
 
271 名前:静かな愛3(訂正) 投稿日:2006/10/28(土) 23:23
【不要】
>>256
高校1年の2月も終わりに近づいたころ、美貴にとって16歳になる日がもう直ぐそこに来ていた。よっちゃんは

コピペミスです。m(。_。)m
脳内削除お願いします。
272 名前:clover 投稿日:2006/10/28(土) 23:39
本日の更新以上です

>>241-270 静かな愛3
静かな愛3もう少し長いのですが、また続きは次回にします。

今日、武道館に行ってきました。
よしかめのしゃぼんだまを見て、妄想がw
早くgive and take の続きを書きたい気分にw
でも、今はみきよしの妄想をしないとw


>>233 :名無飼育さん様 
レス有り難うございます。

>いきなり引き込まれる内容ですね
有り難うございます。そういってもらえて嬉しいです。

>お姉ちゃんの存在がたのしみです。
誰でしょうw

引き続きよろしくです。

>>234 :名無飼育さん様
レス有り難うございます。

>どうやって別れたか気になります
ちゃんと書いてあるので、過去の部分でw

>>235 :ももんが様 
いつも、レス有り難うございます。

>藤本さんがこれからどうなっていくのか…。
藤本さん視点だけなので色々、書けたらいいなって思ってます。

>静かな愛もgive and takeの続編も楽しみにしてます。
早く書きたいですw

今後も宜しくです。

>>236 :名無飼育さん様 
レス有り難うございます。

>続けて更新うれしっす!(´・∀・`)
有り難うございます。明日は仕事、なので(ノ_-)
更新できたらしたいと思います。

>モテモテよっすぃ、焼きもちヤキよっすぃ可愛いですね!
よかったぁ、今、自分の中でよっちゃんは凄い可愛い男の子と想定してるのでw

今後もよろしくです。

>>237 :naanasshi様
いつも、レス有り難うございます。

>子供でも大人でもないこのくらいの年って色々悩みますよね
そうですねぇ、悩んでたらあっと言う間に年取るしw

>そして横レスですがgive and takeの続編クルー!!!
>こっちもかなり楽しみにしてますw
有り難うございますw自分も早く書きたいです。
今後もよろしくです。

>>238 :名無飼育さん様
レス有り難うございます。

>新作の更新おつかれです!
有り難うございます。

>過去と現在が交互に入り混じってなんかおもしろいです
初めて書く書き方なので、色々悩みながらなので
そう言ってもらえてほっとします。

今後もよろしくです。

>>239 :名無飼育さん様
レス有り難うございます。

>>240 :名無飼育さん様
レス有り難うございます。
273 名前:ももんが 投稿日:2006/10/29(日) 03:40
更新お疲れ様です。
自分も武道館行ってきましたよ♪
高校生みきよしかわいらしいですねえ。
なんだか和んでしまいます。
274 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/29(日) 14:13
はぁ…なんかすごくかわいらしいふたりですね。溜め息が出ちゃいます。
後藤君…一体何を考えてるんでしょう。楽しみにしてます。
275 名前:rero 投稿日:2006/10/29(日) 21:22
ごっちんすげー悪役
276 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/29(日) 21:35
めっちゃおもしろいです!(^-^)後藤さんのキャラがダークな感じで新鮮です、ミキティに奥手なよっちゃんキャワ(*^^*)
277 名前:naanasshi 投稿日:2006/10/30(月) 20:29
更新お疲れさまです
甘さとスパイスが効いてますねー

シャボン玉はすごいですよね妄想が膨らむ膨らむw
278 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 00:55
あれから数日、オフィスのビルでごっちんに会うことはなかった。
別に会わなければ会わないで特になにもなく美貴の日常に影響なかった。
毎日会って、話して、触れ合っていたよっちゃんとそれを出来なくなったときの美貴もそうだったな。よっちゃんがいない生活に戻っただけ、でもつまらない生活にはならなかった。よっちゃんに恋をしていたから。

一昨日からよっちゃんは風邪気味らしい。
美貴も気をつけてとメールが来ていた。喉が痛いといっていたから昨日はきっと咳が止まらなくて今日あたりは熱が出ているだろう。

午後の仕事を終えた美貴はよっちゃんにメールをした。
熱は何度?とそれだけのメール。
38度と返ってきたよっちゃんに美貴はこれから行くとメールを返した。
よっちゃんのマンションに向かう途中にある店でハチミツと牛乳を買った。

279 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 00:55
「あ・・・。」
よっちゃんが今、想っている人が今、美貴の前で美貴に背を向けてエレベーターに向かって歩いていた、思わず美貴が零した声にその人の足が止まりゆっくりと振り返る。
そして、美貴を見るとゆっくりと美貴へ5歩、歩み寄って止まった。

「藤本、美貴さん。でしょ。」と言って微笑むその人を美貴は見上げた。
美貴よりも10センチ以上背の高いその人、よっちゃんが今、想っているその人は美貴を知っていた。
妹の石川さんから聞いていたのだろうか、それともよっちゃんから聞いていたのだろうか。それは、美貴にとってどっちでもいいことだった。

「はい。」と答えた美貴にその人は「当たった。」と微笑んだ。

「吉澤君のお見舞い?」と言うその人に頷く。
「丁度、私もそのつもりで来たの。行きましょう。」と歩き出しエレベータのボタンを押した。

280 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 00:56
美貴の足は動かなかった。
そんな美貴をその人は開いたエレベータの扉を押さえながら首をかしげてみせた。

「行かないの?」と言うその人に頷くと扉から手を離し再び美貴の前にやってくる。

「それ、吉澤君にでしょ。」と美貴が持っていた袋を指差す。

「折角だから、私が持ってくわ。」と美貴から袋を取りエレベータに消えていった。

「よかったね。よっちゃん。」と美貴はしまったエレベータの扉に呟き来た道を戻った。

たっぷりハチミツを入れたホットミルクを造ってもらってね。
281 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 00:56

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
282 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 00:57
受験を控えた美貴たちは学校に行く機会はそれほどなくて、代わりに二人で図書館に通う日々を送っていた。
よっちゃんとお揃いの手袋とマフラーは去年の冬に二人で見つけた色違いのもの。
手を繋いで寒い雪道をキュッキュッって雪を踏みながら英単語の出し合いなんかして。

「よっちゃん。顔、ちょっと赤いね。」
図書館で向かいの席に座っているよっちゃんの顔は赤ら顔でボーっと美貴を見てた。

「昨日、咳してたもんね。風邪?」と言いながらよっちゃんの頬に触れると熱かった。

「よっちゃん。熱あるよ。帰ろ。」と美貴は直ぐに机の上のものを片付けてボーっとしてぐったりしているよっちゃんの手を引いて図書館を後にした。

よっちゃんの家に行くと叔母さんは留守で弟たちもいなかった。
取り合えずよっちゃんを部屋に連れて行ってベッドに寝かせた美貴はキッチンに行って水枕を用意してよっちゃんの部屋に戻るとよっちゃんは「寒い。」と繰り返し呟いていた。
そんなよっちゃんの頭に水枕を置いて部屋の暖房を付けて部屋を温めて薬を探そうと立ち上がるとよっちゃんが美貴の手を掴んだ。
283 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 00:57
「ん?どうしたの?今、お薬探してくるから。」
「飲まない。苦いの嫌いだから。」と苦しそうに言うよっちゃんの頭を美貴は撫でた。

「苦いの嫌いって子どもじゃないんだから。飲まないと熱下がらないよ。」
という美貴によっちゃんは「大丈夫だから、ここ居て。」と駄々を捏ねた。
美貴はその場に座ってよっちゃんの手を握った。

大丈夫といわれても結構熱あるみたいだし、どうしようと困っていると下からガチャガチャという音と「お兄ちゃんと美貴ちゃんの靴ある。」という子どもの声が聞こえてきた。

「よっちゃん。美貴、叔母さんに体温計借りてくるから。」とよっちゃんの手を布団の中にしまって階段を降りた。

「あら、美貴ちゃんいらっしゃい。」と叔母さんが笑顔で迎えてくれて美貴の腰には二人のよっちゃんの弟がピタと張り付いてきた。
284 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 00:58
よっちゃんが風邪で熱があるようだと話すとおばさんは「私より美貴ちゃんが作ったほうが治りが早いわきっと。」と言って美貴をキッチンに連れて行った。
鍋と牛乳とハチミツを用意した叔母さんは美貴に牛乳を温めるようにと指示を出し美貴は言われたとおり鍋にミルクを入れて火にかけた。
グツグツと煮だってくると大さじにたっぷりのハチミツを入れてよく溶かして出来上がり。
バグカップにそれを注いでよっちゃんの部屋に持っていくとよっちゃんはフーフーと息を吹きかけてからゴクとそれを飲んだ。

「ん。いつものより甘い。」
「ごめん、美貴が作ったから。」というとよっちゃんは「甘くて美味しい。」とゴクゴクと飲んだ。それから直ぐに布団に入って寝てしまったよっちゃんだけれど、その手は美貴の手をぎゅっと掴んでいて美貴は動くことさえ出来なかった。
あまりにも長い時間よっちゃんの部屋から出てこない美貴を心配したよっちゃんの叔母さんが部屋を覗きに来て美貴の姿を見ると叔母さんは苦笑した。

「本当に大好きなのね。」と笑いながら美貴の隣に座った。
285 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 00:58
小さい頃のよっちゃんの話を聞かせてくれば叔母さん。
よっちゃんは幼稚園のころからしっかりしていて手の掛からない子だったこと。
扁桃腺が弱くて直ぐに高熱が出てしまうけど、薬嫌いで絶対に薬を飲んだりしなくていつも蜂蜜をミルクに溶かして飲ませていたこと。
初恋は中学1年生で大事にその子の写真をパスケースにしまっていたけど絶対に見せてくれなかったと言ったあとでおばさんはクスクスと笑って言った。

「彼女の美貴ちゃんに初恋の話を聞かせるのはおかしいわね。」
美貴は首を横に振りながら微笑んだ。
そのパスケースの中にいたのは美貴だから。
286 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 00:58
「うち、男ばっかだから美貴ちゃんが娘みたいでなんでも話しちゃうわ。駄目ね。」と苦笑する叔母さん。

「さっきも、一緒に台所に立てて嬉しかったのよ。男の子だとそんなことしないじゃない。」としみじみ言う叔母さんに美貴は微笑んだ。

「そろそろ、美貴ちゃんも帰らないと遅くなっちゃうわ。」と言って美貴の手を掴んでいるよっちゃんの手を離してくれた。

「もう少し、したら帰ります。」と美貴が言うと叔母さんは「少しだけよ。」と言って部屋を出て行った。

「よっちゃん。起きてるでしょ。」と言うと薄っすら目を開けて美貴を見るよっちゃん。
「ハズイよ。母さんあんな話してるんだもん。」と掠れた声で言うよっちゃんの顔は図書館にいた頃より大分よくなっていた。

「ハチミツ効いてる?」と美貴がよっちゃんのオデコに手を当ててみると熱さは大分下がっている。
「もう、帰る?」と美貴を見上げるよっちゃんは仔犬みたいで可愛い。

「明日は図書館いけないね。よっちゃんゆっくり眠らないとね。」とよっちゃんの頭を撫でるとよっちゃんは目を細めて「明日には治ってるよ。」と言った。


よっちゃんは言葉通り次の日には熱も下がりいつものよっちゃんに戻っていた。それからよっちゃんが風邪をひくと美貴は必ずよっちゃんの家にいってハチミツたっぷりのほっとミルクを造っていた。
287 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 00:58

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288 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 00:59

少し歩いたところで足を止めてよっちゃんのいる部屋を見上げた。
ハチミツ多目に入れてもらって早くよくなってね。

心の中で呟いて美貴は自分のマンションに戻った。



289 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:00

次の日、よっちゃんから朝一番でメールが来ていた。
昨日はハチミツありがとう。って言うメールだった。
ハチミツのことはよっちゃんの家族と美貴しか知らないことだから、美貴だと分かったのだろう。もう、熱も下がって今日も就職説明会に行っているようだ。
290 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:00
その日のランチタイム、エスカレータを降りると意外な人が立っていた。その人は誰かを探しているようで辺りをキョロキョロと見回し美貴を見ると歩み寄ってきた。

「昨日はどうも。」と美貴が頭を下げるとその人は微笑んだ。

「梨華から勤め先、聞いたの。お昼、一緒にしない?」と言う言葉に美貴は頷いた。

レストランに入ると「随分良い、ビルにある会社に勤めてるのね。」といいながらコートを脱ぎながら言う。美貴は曖昧に微笑んで先に椅子に座った。

「ハチミツ、吉澤君喜んでたわ。これで直ぐに治るって。」といいながら座る彼女に美貴は「そうですか。」とランチメニューに視線を向けた。

「自己紹介、してなかったわよね。あ、でも知ってるみたいね。私のこと。」

美貴は頷いてからメニューを彼女に渡した。

「でも、私の記憶だと藤本さんに会うのは昨日が初めてのはずなんだけど。あなたは私を知ってるみたいだった。私は梨華から写真見せてもらってたから知ってたけど。」
どうして?と言う彼女に美貴は苦笑して見せた。

「別れた日、あなたを見に行きましたから。」
291 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:01

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292 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:01
東京に来て初めてのクリスマス。
よっちゃんは色んな雑誌を買ってきて「東京らしいクリスマスを過ごしてみよう。」と計画を立ててくれた。

美貴とよっちゃんは人ごみのなか二人より沿ってイルミネーションを見ていた。沢山いる恋人たちの中で美貴たちが一番、愛し合ってる恋人たちだろう、とちょっとした優越感を持ちながら東京に来てから二人でコツコツと溜めたお金で普段来れないようなレストランで都会のクリスマスの夜景を楽しんで食事をした。
それから、よっちゃんが予約してくれていたホテルに向かった。その間よっちゃんは無口で美貴もなんとなく言葉を出さなかった。
よっちゃんがカードキーでドアを開けて「どうぞ。」といいながら美貴を部屋の中に入れるなんだかその仕草が面白くて美貴は笑いながら部屋に入った。
美貴たちの溜めたお金じゃ最上階なんて泊まれるわけもなくてビルとビルの間から夜景が見える部屋だった。

「なんか僕らにこういうのはまだ早かったね。」とよっちゃんは美貴の隣に並んで窓の外の景色を眺める。
「うん。もう少し大人になってからまたやろう。」と美貴が言うと「そうだね。」とよっちゃんは笑った。

「でも、凄い嬉しいし、楽しいよ。」と美貴はよっちゃんの腕に腕を絡ませて寄り添うように立つと窓ガラスに映る自分たちを見て二人で照れ笑いを浮かべた。
付き合って3年半以上が過ぎていたのに美貴たちはいつまでたってこんな風に照れて微笑み合ってお互いの全てに愛しさを感じてそんな時間を楽しんでいた。
293 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:02
自然と向かい合うように抱き合った美貴はよっちゃんの腕の中にすっぽりと納まってしまう。そんな美貴をいつもよっちゃんは「ちっちゃくて可愛い。」と言ってくれた。

「今夜はいつもより美貴ちゃんが綺麗に見える。」と耳元で囁くよっちゃんを見上げて美貴は微笑んだ。

「今夜だけ?」
「間違えた。いつも綺麗で可愛い。」

そう言って笑ったよっちゃんの顔から自然と笑みが消えて美貴を目を閉じた。
重なった唇は一瞬だった。

「シャワー浴びてくるね。」と美貴はよっちゃんの腕からすっと抜けてバスルームに向かった。
熱いシャワーを浴びているとドアがノックされ「入っていい?」と言う声が聞こえてきた。美貴がシャワーを止めて扉を開けると何も身に着けていないよっちゃんがたっていた。
湯煙の中の美貴をよっちゃんはじっと見つめて足を踏み入れる。

「一緒に入るの初めてだね。」と美貴は照れながら言うとよっちゃんは頷きながら美貴の濡れた髪に手を通した。

「大好き。」そう呟いて美貴はよっちゃんと唇を重ねそして首、胸に唇を落としていった。
よっちゃんは「美貴。」と名前を呼びながら美貴の髪を梳くように何度も頭を撫でた。
294 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:02
「美貴。」と呼ぶ声に顔を上げるとよっちゃんは優しく微笑んで美貴の顔を引き寄せて唇を重ねた。よっちゃんの手も美貴の手もお互いの体の温もりを探るように互いの体に触れ合いながら愛し合った。

湯船の中で美貴がよっちゃんの足の間で膝を抱えて小さくなるとよっちゃんは美貴を手と足て包み込んだ。

「二人でお風呂はいるの初めてだね。」とよっちゃんは嬉しそうに囁いた。
「うん。」と頷くと「恥ずかしい?」とよっちゃんが美貴の顔を覗きこむ。

初めてよっちゃんと愛し合ったときも体を見られることに恥ずかしさは無かった。寧ろ全てをよっちゃんに見れることに嬉しさがあったくらい。
恥ずかしいのはよっちゃんとこう甘い時間を過ごしていること。

「美貴ちゃん、可愛い。」とよっちゃんが美貴の体をぎゅっとする。
そして美貴の頬に頬を擦り付けて「あはは。」と笑うよっちゃんに美貴も笑みが零れる。

「よっちゃん。」
「ん?」と美貴の声に顔を覗き込んで返事をするよっちゃん。

「素敵なクリスマスをありがとう。」と美貴が言うとよっちゃんはニコっと笑った。

「美貴ちゃんがいるから素敵なクリスマスになったんだよ。お礼を言うのはこっち。ありがとう。美貴ちゃん。」とよっちゃんは美貴の頭を撫でた。

295 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:02


そんな、幸せなクリスマスを過ごして1週間がたとうとした頃、二人で大晦日を過ごした直ぐ後のことだった。
美貴の部屋にやってきたよっちゃんはなんだか様子がおかしくて美貴と目を合わせようとしなかった。

「よっちゃん。変。どうかした?」という美貴の言葉に隣にいたよっちゃんはソファから降りて床に正座すると美貴を見上げた。

「なに?どうしたの?」とよっちゃんの行動の意味が分からなかった美貴は笑いながらよっちゃんと同じように床に正座した。

でも、よっちゃんが美貴を見ている顔を見てなんとなくよっちゃんが言い出すことが何なのか分かってしまった美貴はいつの間にか笑みが消えじっとよっちゃんを見ていた。
ゆっくりとよっちゃんを知って好きになって愛してきたから。
よっちゃんのことが凄く良くわかってしまう。大晦日の少し前からよっちゃんはおかしかった。苦しそうで仕方なかった。

「もう、嘘つけないって顔、してる。」と美貴が言うとよっちゃんは涙をポロポロと零して「ごめんね、美貴ちゃん。」と言った。

そのごめんね。は美貴が思い当たることなのだろうと美貴はよっちゃんにすっと近づいて手を握った。
296 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:03
「理由、教えて?」と美貴が言うとよっちゃんは片手で涙を拭いて美貴を見た。

「大学の先輩・・・守ってあげたいんだ。悲しそうに笑ってるんだいつも。」と小さな声で話すよっちゃん。
よっちゃんの涙を拭いながらよっちゃんの言葉に頷く美貴は、案外冷静だった。

「わかった。」と美貴が言うとよっちゃんはもう一度「ごめん。」と呟く。

「でも、一つお願いがあるの。」と言う美貴によっちゃんは美貴を見た。

「その人を、見たい。会うんじゃなくていいの見たいだけ。」

よっちゃんは次の日、大学に連れて行ってくれた。正月休みでもおそらくその人はいるだろうからと言って。
美貴がその人のことを知りたいというとよっちゃんは大学に行くまでにその人のことを教えてくれた。
知っているのは飯田圭織と言う名前と大学院に来ている人だということだけで何度か話して顔見知りなだけだと言う。
297 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:04
誰も居ないキャンパス。一度だけ東京に来て直ぐのころよっちゃんに連れてきてもらったその場所は季節のせいか違って見えた。

「あの人。」と言うよっちゃんの声。
よっちゃんの視線の先、随分離れたところに背の高い綺麗な人がいた。
植えられた木々を眺めながらゆっくり歩きながらなんだか、木々と話しているように見える。

「あの人が好きなの?」美貴はその人を目で追いながら尋ねた。

「分かんない。」と呟くよっちゃんを見上げると困ったように笑ってた。

「分からないから、美貴と別れるんだよね。よっちゃんは正直だから、そんな気持ちで美貴といられないんだよね。そういうよっちゃんが美貴は大好きだよ。」

よっちゃんは真っ直ぐ美貴を見て「ごめんね。美貴ちゃん。」と言った。

「振り向いてもらえるといいね。」と美貴が微笑んで言うとよっちゃんは「うん。」と笑った。

「美貴たち、これから、今から初めて友達になるんだよね。」
「ん?」
「だって、初めて会って恋人になったからさ。これからは友達。」

よっちゃんは「ありがと。美貴ちゃん。」と言って手を差し出した。その手を美貴はしっかりと握って言った。

「じゃぁね。バイバイ。よっちゃん。」
298 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:04
よっちゃんに背を向けて歩き出した「またね、美貴ちゃん。」と言う声を背中で聞きながら、二人で来た道を一人で歩いた。

涙は出なかった。
悲しいとか悔しいとかそういう気持ちがなかった。
よっちゃんが大好きで凄く愛しいと思った。
よっちゃんを好きになって良かったって思った。
299 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:05

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300 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:06

「それ、いつかな?」と言う飯田さんに美貴は首を傾げて見せた。

「よっちゃんから聞いてないですか?」

飯田さんは頷いてから手を上げて店員を呼んだ。

店員がやってくると「藤本さんからどうぞ。」と言った。

「Aランチ。」
「あ、私もAをお願いします。」

飯田さんは「同じだったね。」と笑った。

「3年前かな、2004年の1月3日。」
「そう、まだ私が大学院生のころ、だね。」と言う飯田さんに美貴は頷いた。

「聞いても良いかな?答えたくなければ聞き流してくれて良いんだけど。」と言う飯田さん。

「答えられないようなこと、なんですか?」と美貴が言うと飯田さんは「どうかな。」と笑った。

「ただ、私が聞くのはおかしいかも知れないな。」そんなことを言う飯田さんは美貴の顔を見て笑った。

「なら、聞かないでって顔してる。」
「どうぞ、答えたくなければ美貴は答えないですから。」

飯田さんは笑って「ありがと。」と言った。
301 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:06
「藤本さんはまだ、吉澤君が好きだよね。」と真っ直ぐ美貴を見る飯田さんに美貴は「はい。」と頷いた。飯田さんは「やっぱり。」と微笑んだ。

「前に、吉澤君と約束していたんだけど、急用が出来ていけなくなったの。携帯に連絡してそう伝えたんだけど。吉澤君、待ってるしか言わなくて。梨華に行ってもらったわ。梨華から藤本さんが吉澤君を連れて帰ったって連絡があった。吉澤君が藤本さんが良いって言ったって、梨華に怒られたわ、無駄足したじゃないって。」

飯田さんは苦笑して水を一口飲んだ。

「夕べ、藤本さんから受け取ったハチミツをね、そのまま舐めさせてあげようとしたの。殺菌とか抗菌作用があるっていうじゃないハチミツって。吉澤君にミルクに入れてっていわれてそうして飲ませたわ。その後、咳も止まってぐっすり眠ったわ。」

店員がランチを持ってやってきたので飯田さんはそこで話をやめた。

「よっちゃん、喉が弱いから。多めにハチミツ入れてあげると直ぐよくなるんです。良かった、良くなって。」と店員が去ってすぐに美貴が言うと飯田さんは「そう。」と言って静かに笑った。

「私ね、不倫してるの。知ってるかな?」と言う飯田さんに美貴は首を横に振った。
よっちゃんから聞いていたけれど、美貴は知らない振りをした。
302 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:06
「高校のときの先生だった人。私が18で先生が22歳。大学卒業して直ぐ先生としてきた人。その頃は私の片思い。でも卒業するまでにお互い好きになってたわ。卒業して付き合いだした。大学3年のころ、だったかな、今の吉澤君や藤本さんと同じくらいのころ、結婚しようって言われたの、でも私は断ったわ。好きだけど私は結婚とかは望んでなかったから。多分、これから先も望まないと思う。誰かの奥さんとかお母さんになりたくないの、飯田圭織でいたい。でもその人のことが好きで、好きで堪らないの。」

飯田さんは美貴に話しているという感じではなく自分の気持ちを言葉にしているようだった。美貴はランチを口に運びながらそれを聞いていた。

「吉澤君は私に泣いてってよく言うの。泣いてるのに笑ってるって変なこと言うの。私はいつも言うは、泣いてないよ、自分で選んだことに後悔なんてしてないって。吉澤君は勝手にそう見えてるのよ。お節介なの、不倫なんて辞めなって、傷つくだけだからってね。」

美貴はフォークを置いて飯田さんを見た、きっと睨んでると思う。

「美貴ちゃん。」

飯田さんは笑みを消した表情で言った。思わず美貴は「えっ?」と声を漏らした。

「吉澤君が夕べ、寝言で呼んだ名前。」

飯田さんはそう言ってランチを食べ始めた、何を言っていいのか分からないのとちょっとした嬉しさがあった。
303 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:07
二人ともランチを食べ終え店員が空いた皿を提げるとコーヒーが運ばれてきた。

「今朝、吉澤君起きて言った言葉なんだと思う?」と言う飯田さん。

熱が下がって目を覚ますとよっちゃんはいつも「美貴ちゃんのハチミツミルクのおかげで熱が下がった。」と笑っていた。まさか、飯田さんに向かってそんなことを言うわけないか。

「美貴ちゃんのハチミツはやっぱり凄いな。って体温計見ながら言うの。わざと言ってるって顔見たら分かったは、私にヤキモチでも妬かせようとしてるのね、必死になってるのが良く分かるの最近、よく藤本さんの名前を出すから。美貴ちゃんは、って。」

飯田さんは苦笑した。
304 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:08
「弟にしか思えないの。いくら、頑張っても私は吉澤君に恋愛感情は持てない。でも、言えないの、仔犬みたいな顔されると言えないのよね。」と飯田さんは笑った。

出来れば言ってあげて欲しい、言われるまでよっちゃんはきっと諦めずに頑張るだろうから。お酒に逃げる自分を惨めに思ってしまっているだろうから、

「藤本さんから戻ることって出来ないかな?」

美貴は黙って飯田さんを見た。
飯田さんは表情に何も出さずに美貴を見ている。

「よっちゃんはそんなの望んでないと思いますよ。」

よっちゃんは、いっぱい、いっぱい時間をかけて遠回りして自分の気持ちに正直に生きる。だから、飯田さんが気になってしまった時点で美貴と別れたんだ。
気持ちが分からないから美貴とは一緒にいられなかったんだ。

「きっと、よっちゃんは時間をかけて飯田さんに恋して・・・好きになって行ったんだと思うんです。だから、ちゃんと飯田さんが答えてあげて下さい。」

飯田さんは少しだけ微笑んだ。
305 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:08
「それによっちゃんは誰かに言われて気持ちを変えられるほど器用じゃないです。また時間を沢山かけて気持ちの整理を付けていくんじゃないかな。」

美貴が言うと飯田さんは微笑んだまましばらく美貴を見ていた。
そして、飯田さんはコーヒーを一口飲んで口を開いた。

「じゃぁ、まだ、藤本さんのこと整理ついてないんじゃないかな。」

飯田さんはそう言ってまたコーヒーを飲んだ視線を美貴に向けたまま。

美貴はそれはない、そう思った。
飯田さんを気になり始めて、美貴と友達と言う関係になって、その中でよっちゃんは美貴から飯田さんへと気持ちを移していったのだ。
だから、美貴とのことはきっとよっちゃんの中で整理ついているだろう。だから、美貴と友達でいられるのだから。

「私、一度も吉澤君に好きだと言われたこと、ないの。」

よっちゃんは飯田さんに恋をしているのだと思っていた美貴は驚いた。

「ただ、私の側に居ようとするのよ。」

飯田さんは困ったように笑った。

「じゃぁ、よっちゃんは飯田さんの側に居たいって思っているじゃないですか。」

飯田さんは少しだけ笑って「そうなのかな。」って呟いた。
そうなんだと思う、よっちゃんは自分の気持ちに正直だから。

「クリスマス、一緒にイルミネーションを見に行こうって誘われてるの。」とまた、困ったように言う飯田さん。
306 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:08
「行くつもり、ないんだけどね。」
「どうしてですか?」
「嫌いなの、そういうの。クリスマスだから、バレンタインだからってはしゃいだりするの。おかしいかな?」と笑う飯田さんに美貴は首を横に振った。

「行かないって、よっちゃんに言いました?」
「言ったよ。待ってるって言われたけど。」
「それでも、行かないんですか?」

飯田さんは「行かないわ。」と言ってまた笑った。

飯田さんは「時間取らしてごめんね。」と言って帰って言った。
結局、飯田さんが美貴に聞きたかったこととはよっちゃんへの美貴の気持ち、だったのだろうか。確かに飯田さんが気にすることでも聞くことでもないことだ。美貴はなんだかおかしくて仕事をしながら少し笑った。
美貴も中学まではクリスマスとかバレンタインとか嫌いだった。皆で楽しそうにしている姿を態々見に行くこともないし、一緒に騒ぐ気にもなれなかったから。
307 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:09
仕事を終えて帰ろうとエントランスに降りる途中、ごっちんを見かけた。
声をかけるべきなのか迷ってから美貴は壁に寄りかかっているごっちんに向かって足を進め直ぐに止まった。
ごっちんに駆け寄っていく女の子を見つけたから。

「なんだ。」美貴は思わずそう呟いて少しだけ笑った。
気にすることもなかったのだ。美貴は別の入口から出て家に帰った。

1人コンビニのお弁当を食べながら、大して面白くもないバラエティ番組を眺めていた。
映像を見ながら、頭の中では今日会った飯田さんとの会話のことを考えてばかりいてテレビの会話が入ってこない。

308 名前:静かな愛3 投稿日:2006/11/01(水) 01:09
よっちゃんは、何を躊躇って飯田さんに告白しないで居るのだろう。
もう既に、気持ちを伝えているものだとばかり思っていた。
よっちゃんのことは何でも理解してあげられると思っていたのにな。
飯田さんを好き、と言う気持ちは間違ったりしていないと思う、そうでなきゃお酒逃げたりしないだろうから。
好き、なら直ぐに伝える人だ、よっちゃんは。
真っ直ぐすぎる人だから。
好きになったらその人のためにその人の気持ちになって行動する人。
だから、美貴はどんどん好きになっていったんだ。
美貴のために美貴を優先して美貴を想って接してくれるよっちゃんだったから。
よっちゃんの影響で美貴もそうするようになっていた。
よっちゃんのためによっちゃんを優先してよっちゃんを想って接していた。
だから、美貴たちは何だろう、雰囲気を言葉で表すと、優しいとかゆったりとか暖かいとかそんな感じの時間を過ごしていた。

今のよっちゃんの飯田さんへの行動が分からない・・・

こんなの初めてだよ・・・。

309 名前:clover 投稿日:2006/11/01(水) 01:18
本日の更新以上です

>>278-308 静かな愛3
やっぱり月末は忙しくて、更新予告してたのに出来ずにすみませんでした。
ってことで、今夜更新してみました。
読んで頂けたら幸いです。

おやすみなさい・・・。

273 :ももんが 様 
いつもレス有り難うございます。

>自分も武道館行ってきましたよ♪
どこかですれ違ってるかも知れませんねw

>高校生みきよしかわいらしいですねえ。
>なんだか和んでしまいます。
有り難うございます。こういう高校生活送りたかったw

今後もよろしくです。

274 :名無飼育さん 様 
レス有り難うございます。

>後藤君…一体何を考えてるんでしょう。楽しみにしてます。
後藤君をどう、使おうって悩み始めてたりしてますw

今後もよろしくです。

275 :rero 様
レスありがとうございます。

>ごっちんすげー悪役
すみませんw

276 :名無飼育さん 様 
レス有り難うございます。

>めっちゃおもしろいです!(^-^)後藤さんのキャラがダークな感じで新鮮です、ミキティに奥手なよっちゃんキャワ(*^^*)
有り難うございます。嬉しいです。

今後もよろしくです。

277 :naanasshi 様
いつもレスありがとうございます。

>甘さとスパイスが効いてますねー
有り難うございます。

>シャボン玉はすごいですよね妄想が膨らむ膨らむw
やばかったですw頭の中が大変なことになってしまってw
ちょこっと亀吉も書き始めようかとw
310 名前:naanasshi 投稿日:2006/11/01(水) 01:41
更新お疲れ様です!
純粋な吉澤くんが切ないですねえ
今は複雑な関係ですがこれからどうなるか楽しみです♪

亀吉もマッタリ待ってます!w
311 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/01(水) 03:28
更新お疲れ様です!
吉澤くんも切ないけどミキティはもっと切ない 。・゚・(ノД`)・゚・。
あああ幸せになってくれええええ
312 名前:ももんが 投稿日:2006/11/01(水) 21:42
更新お疲れさまです。
よっちゃんの真意、これから語られるのを楽しみにしてます♪
毎回どうなるんだ!と思いながら読んでます。
313 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/07(火) 09:11
切ないなぁ
今後4人がどうなっていくのか楽しみに更新待ってます
314 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:21
『近くまで、来てるんだけど、夕食一緒にどう?』

よっちゃんからそんなメールが来たのは土曜日の夕方だった。
予定の何もない美貴は洗濯と部屋の掃除を終え、これからお風呂の掃除でもしようかとしていたが直ぐに予定を変更してシャワーを浴びて支度をしてから家を出た。

よっちゃんが指定してきた待ち合わせ場所は美貴の会社があるビルだった。
そこであった合同会社説明会に出ていたらしい。

電車を降りて通いなれた道を歩きながらワクワクしている自分に幸せを感じている。
いつもと違う足取りでビルに着くまでが異常に長らく感じられた。
315 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:22
何棟かある高層ビルの間にあるちょっとした庭のような空間。
クリスマスを前に既にクリスマス一色になっている。
オブジェに寄りかかり単行本に目を落としているよっちゃんを見つけ、美貴は足を止めた。

少しはなれたところからよっちゃんを観察する。
この時間が好き。
美貴を待っているよっちゃんを観察するのが好き。

よっちゃんは時計を見てから本をカバンにしまい、両手をポケットに入れてあたりをキョロキョロと見回した。
そして、空を見上げて微笑む。
だから、美貴もよっちゃんが微笑んだ空を見上げた。
まだ一番星は見えないみたいだ。田舎の空と比べたら落胆するだけか。
美貴は少し微笑んだ。
316 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:23
「よっちゃん。」
キョロキョロしているよっちゃんに声をかけて小さく手を振った。

「ごめんね、休みなのに呼び出しちゃって。」と笑うよっちゃんに美貴は首を横に振った。

「ここで美貴は働いてるんだ。」
そう言ってビルを見上げるよっちゃん。

「美貴はあっちの塔だよ。」と自分の職場があるビルを指差した。
「凄いなぁ。地震あったら揺れない?」と美貴を見るよっちゃん。

「揺れが少ないようになってるんだよ。」
「そっか。そうだよね、こんなに細長いのに揺れたら怖いもんね。」

笑うよっちゃんに美貴も笑った。
細長いといわれたビルを見上げながら、そう言われれば細くて不安定な場所で美貴は仕事をしているんだなと思った。
よっちゃんは、少し人と違う見方をする。だから、よっちゃんと居ると新鮮で楽しいことが一杯ある。
317 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:24
「この中に美味しいお店ある?」

ビルを見上げていた美貴はよっちゃんに視線を向け、首を少し傾げた。

「ここ、高いよ。」
「バイトしてるよ。」
「来週、クリスマスじゃん。無駄遣いして大丈夫?」

飯田さんと、約束あるんでしょ。

よっちゃんは、少しだけ微笑んでビルを見た。

「僕は多分、ここで働くことはないから、記念にね。」

よっちゃんはそう言うけど、飯田さんとクリスマスを過ごすことはないと分かっているのだろう。

「説明会、駄目、だった?」
「ん。僕は、何か駄目だよ。こう時間に追われるの。説明会の人たち忙しそうに走り回ってた。」

それが、社会人としてここの暮らしでは当たり前だろう。
忙しくなかったら、こんなところにオフィスを持てない。

「そっか。」
「だから、記念に。」
「何の記念?」
「ここの説明会を受けたって言う。」
「何それ。」

美貴が笑うと「いいの。」とよっちゃんは笑って美貴の手を引いて入口へ向かう。
318 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:25
繋がれた手を意識してしまうのは美貴だけだろう。
この場所でよっちゃんと、こうして歩けるなんて思ってなかった。

「ん?何笑ってるの?」

振り向いて言うよっちゃんに美貴は「なんでかな?」と言った。

「笑うのって良いことだよね。」

よっちゃんは美貴の右手を掴んだまま後ろ歩きをして美貴を見ながら言う。

「よっちゃんが、教えてくれたんじゃん。笑うこと。」

よっちゃんに会うまで笑うことなんてなかった。笑えることがなかったから。
そう言えば、自然に笑うのって久しぶりかも。

「そうだっけ?」
「そうだよ。美貴を笑顔にしてくれたのよっちゃんじゃん。」

よっちゃんは「そっかぁ。」と頭をかきながら前を向いた。


319 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:25
レストラン街をキョロキョロしながら「一杯あるから迷うね。」と呟くよっちゃん。
無意識、なのか美貴と手を繋いだままだ。

「美貴、何食べたい?」

「なんでもいいよ。よっちゃんが良いのにして。」と美貴が言うとよっちゃんは美貴を見ると足を止めた。

「駄目、だよ。」とよっちゃんは繋いでいた美貴の手を両手で掴んだ。

「美貴も食べたいものある、でしょ。食べたくないものにお金払うのはおかしいよ。」
「そうだね。じゃぁ、美貴はしょうが焼きが食べれるところがいい。よっちゃんは?」
「僕は、そうだな、パスタがいい。」

美貴は思わず笑ってしまった。

「ん?何かおかしい?」
「このビルは専門店ばっかりだから、しょうが焼きとパスタを食べれるところはないよ。」
「そっかぁ。どうしようかな。」

店を見回すよっちゃんの手を美貴は引いた。

「向こうにある。両方あるところ。」
「よし、そこにしよう。」

早歩きになるよっちゃんは左右に分かれる通りにでると足を止めた。

「どっち?」
「こっちだよ。」
320 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:26
美貴はよっちゃんと手を繋いだまま駆け出した。
「待って。」と美貴に合わせて駆けるよっちゃんを美貴は振り向いて見た。
笑っているよっちゃんと美貴。
ビルに向かう人並みに逆らって美貴たちはイルミネーションの中を手を繋いで駆け抜けた。まるで、恋人同士のように笑い声を漏らしながら。
ただ、走っているだけなのに楽しいのはよっちゃんと手を繋いでいるから、よっちゃんと走っているから。

「はぁはぁ、ここ。ここなら、両方あるよ。」

オフィスビルから少し離れた場所にあるファミレス。
ここになら、何でも揃ってる。

「はぁはぁ、そう、だね。いつもと変わらないけどね。」と息を切らして笑うよっちゃん。

「寒いから入ろう。」

美貴はよっちゃんと未だ繋がれたままの手を引いてファミレスのドアを開けた。
321 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:26
一番奥の席に二人並んで座る。
よっちゃんはカルボナーラ、美貴はしょうが焼き定食。

「よっちゃん何飲む?オレンジジュース?」
「うん、オレンジ。」
「りょうかぁい。」

ドリンクバーに最初に行くのは美貴。
2回目に行くのはよっちゃん。
これは恋人同士だった頃に自然と決まった二人のルール。
未だにこうしてしまうのは仕方ない。

料理がくるまでジュースを飲みながら今日受けたよっちゃんの説明会の話を聞いた。

「必死に働くのは贅沢をするため、なのかな。少しでも、いい暮らしをするためなのかな。」

よっちゃんは頬杖をつきながら「なんで、会社に入るんだろう。」呟く。

「人、それぞれなんじゃないかな。あとは、そうだな、福利厚生とか勤めれば厚生年金になるし、健康保険も組合とかあるから色々、メリットもあることはある。年金は美貴たちが貰うころにはどうなってるか分からないけどね。」

ストローをクルクル回しながら、美貴はそう答えた。
呻っているよっちゃんを見ているのは楽しい。
色々考えてるよっちゃんを素敵だと思う。
322 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:27
「僕は贅沢な暮らしなんていらない、生きていくために必要なお金があればいい。贅沢な暮らしするために時間に追われて慌しい生活をするのは嫌だな。」
「うん、それは美貴も思うよ。美貴は事務だからあんまり残業ないから、その辺はクリアされてるかな。」
「そっか、じゃぁ美貴は今の生活に満足?」

美貴は直ぐに「うん。」とは頷けない。
だって・・・よっちゃんと一緒じゃないから。

「満足じゃないの?」と心配そうに言うよっちゃんに美貴は微笑んだ。

「100パーセント満足な生活をするのって難しいよね、何をもって100パーセント満足とするか、それは人それぞれだし。高校生活は100パーセント満足な生活だったよ。よっちゃんと居たから。恋人が出来たら今の美貴は100パーセント満足、かな。」

よっちゃんは「僕も、そう、かな。」とオレンジジュースを飲んだ。

「飯田さんとはどう?」
「進展、ない。」
「飯田さん、美貴のところに来たよ。クリスマス約束したって。」

よっちゃんは驚いた顔を見せてそれから苦笑を漏らした。

「その約束、きっと守られないけどね。一応。」

323 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:28
「お待たせしました。」と美貴たちの前に置かれる湯気の立つ料理。
美貴はよっちゃんにスプーンとフォークを渡した。

「温かいうちに食べよう。」と美貴が言うと「そうだね。」とよっちゃんはクルクルと上手にパスタをフォークに巻きつけてそれを頬張る。

「おいしい。」と微笑むよっちゃん。
美貴も割り箸を割って大好きなお肉を頬張った。

「おいしい。」と美貴も微笑む。
高級レストランだから美味しいとは限らない、ファミレスだって、コンビニのお弁当だってきっとこうして笑い合って食べれば美味しいんだと思う。

「飯田さんは。」
突然、飯田さんの話をし始めたよっちゃんに美貴は視線を向けた。

「飯田さんが、何?」
「飯田さんは僕を子ども扱いするんだ。」
「いくつ、上だっけ。」
「3つ。年齢、じゃなくて、考え方が子どもだって。」
「美貴は、そう思わないけどな、よっちゃんらしいって思うよ。」
「不倫を理解出来ないんだ。」

324 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:29
よっちゃんは苦しそうな顔をしていた。
笑顔にしたい相手を理解できない、よっちゃんにとってそれは苦痛だろう。

「不倫は、悪いことじゃないって言う人もいるよ。好きになった相手に家族がいたっておかしいことじゃないじゃない。」

「美貴は理解、できるの?」とよっちゃんは驚いた顔で美貴を見る。
美貴はちょっと笑って首を横に振る。

「理解はしない。でもそれは飯田さんじゃなくてその相手にね。妻子が居るのに、飯田さんとも付き合うその行為には軽蔑するな。」
「でも、飯田さんはそれを望んでるんだ。」

そうだね、だから、それを辞めさせる権利は誰にもない。
よっちゃんもだから、否定的なことは言えずにただ、待っているだけなのかな。

「よっちゃんは、気持ち、伝えたの?」

伝えてないと知っていて、美貴は質問をした。
その理由を知りたいから。

「まだ・・・。」
「どうして?」
325 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:30
よっちゃんは空になったグラスを手に取って「美貴ちゃん、同じのでいい?」と美貴のグラスに手を伸ばす。
美貴が頷くとよっちゃんはドリンクバーに行った。

言いたくないのだろうか、言えないのだろうか、よっちゃんの顔が困っていた。

「はい。」と美貴の前にグラスを置いたよっちゃんはゴクっと自分のジュースを飲むと美貴を見た。

「僕って不器用じゃん。」
「そうだね、一つのこと一つ一つやってくタイプだもんね。」

だから、美貴はよっちゃんに一つ一つを大切にされて過ごしてきたんだ。

「理解できない飯田さんじゃ駄目、なんだ。だから、まずは別れてもらいたい、だから僕と居る時間を増やしたい。」

「間違えてるのかな。」と言うよっちゃんに美貴は首を横に振った。

「よっちゃんのペースで良いと思うよ。」

奪う、なんてことはよっちゃんには出来ないと思う。
激しい愛し方じゃないから。
一時の感情で激しく燃えて消えてしまう、そんな愛じゃない。
ゆっくりと時間をかけて優しく、大切に深く愛するのがよっちゃん。

「美貴に話す話じゃないね、この話。」

「ごめんね。」と言うよっちゃん。

「大丈夫だよ。美貴が聞いたんだし。」
326 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:30
3年、待ってよっちゃんは飯田さんへの気持ちの整理を付けられないのだ。
そうじゃないのかも、3年たっても二人の関係は何も変化していないのかもしれない、変わったのはよっちゃんがお酒に逃げ出し始めたこと。

「美貴とは何でも分かり合えたのにな、美貴は僕を否定したりもしなかったね、いつも僕の理解者だった。今もだけど。だからかな、美貴に聞いて欲しいって思うんだ。」

美貴は微笑んでよっちゃんを見た。
よっちゃんは気持ちをストレートに言葉にしてくれるから嬉しい。
言わなくても、分かり合える。それでも言葉で確認できるともっと深く分かり合える。
必要なときに必要な言葉があるんだと、よっちゃんはそれを教えてくれた。

高校2年生のクリスマス。
よっちゃんと迎える2度目のクリスマスは美貴にとってきっとよっちゃんにとっても大切な思い出だろう。
あのクリスマスの夜もよっちゃんは気持ちをストレートに話してくれた。

327 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:31

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328 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:31
「クリスマス。どうしようか。」

学校帰り、よっちゃんはクリスマスのイルミネーションを飾り付けている商店街を見て言った。

「んー。そうだねぇ。もうクリスマスかぁ。去年はよっちゃんの家でケーキ食べたね。よっちゃんサンタの格好したもんね。」
「弟たちがしろってうるさいから。今年は二人で過ごそうか。」
「うん。そうだね。」


クリスマス当日、よっちゃんは朝から美貴の家に来ていた。
二人で計画したクリスマス。
午前中は美貴の部屋でプレゼント交換。プレゼントはお金をかけないクリスマスカードと約束をした。
それから美貴のお母さんが作ってくれたお昼を食べて午後は河原までお散歩。
その後、イルミネーションを見て夕食をして帰ってくるというデートプラン。

329 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:32
プレゼントのクリスマスカードを交換して二人でドキドキ、ワクワクしながら中身を確認して、そして同時に大笑いした。よっちゃんから受け取ったカードの中身は美貴の似顔絵。そして美貴もよっちゃんの似顔絵を描いたのだ。

「これ、僕に似てるの?」と言う疑問系言うよっちゃんに美貴は笑った。
「下手なんだもん、美貴。」

ベッドに並んで二人でクリスマスカードを眺めでクスクスと笑った。

「似てる?」
「うん、美貴は?」
「まんま、美貴ちゃんだよ。」

そんな会話で美貴たちは笑い合えた。

美貴のお父さんとお母さんと4人でご飯を食べたあと家を出た。
手を繋いで河原まで歩く、寒いから自然と肩と肩がぶつかるくらい寄り添って歩いた。

330 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:32
二人で過ごす時間はゆっくりで流れる川を見ながら、こないだ配られた進路アンケートのことを話した。

「よっちゃんは、大学だよね。頭良いし。」
美貴はよっちゃんの肩に頭を乗せて呟いた。
同じ大学には行けないだろう、美貴は余り成績はよろしくないから、短大を出て就職するんだろうな。

「美貴ちゃんは行かない?」
「美貴は短大、かな。」
「じゃぁ東京の短大にしない?」

美貴は頭を上げてよっちゃんを見た。

「東京の大学行くの?」
「こっちじゃ、大学の数少ないし、東京も見て見たいって思うんだ。」
「そっか、親と相談、だな。美貴はよっちゃんの側にいたいけど。」
「うん。僕もそうだよ。美貴が無理ならこっちの大学にするよ。」

よっちゃんはそう笑って美貴の肩に手を回し髪を撫でた。

「何をしたいって分からないから大学行く、美貴ちゃんと一緒がいいけど。」
「美貴は大学はちょっと無理だ・・・ごめんね。」
「僕が短大に行こうかな。」
「よっちゃんは大学行ったほうがいいよ。男の子の短大って余り聞かなくない?」
「そうだね、なんでだろう。」
「なんでだろうね。」

笑いながら、東京ってどんなところだろうって行った事のない美貴たちは想像を膨らました。
331 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:33
笑いながら、東京ってどんなところだろうって行った事のない美貴たちは想像を膨らました。

イルミネーションは綺麗だけど、小さな町にはそこしかイルミネーションがなく人で溢れかえっていた。
どの店も人で一杯で美貴たちはマックでセットを買って公園のベンチでそれを食べることにした。
寒いけど、いつも食べてるマックだけど、こうして夜の外で食べるのは初めてでなんだかいつも以上にハンバーガーが美味しかった。

「星、一杯だね。」
美貴の肩に頭を乗せているよっちゃんは空を見上げて呟いた。

「オリオン座だっけあれ。」美貴は小学生のときに習った記憶のある星座を指差した。

「うん。」
「流れ星が見えてる間に3回願い事言うとかなかったっけ。」
「あった、あった。」
「よっちゃん何お願いする?」
「んー。しない。」
「えぇーお願いないの?」
「美貴ちゃんは何する?」
「よっちゃんとずっと一緒にいれるようにかな。」
「じゃ、僕もそうする。でも、星ってさ僕らがみてるのは過去のものなんだよ。」
「ん?そうなの?」
「そう、星はここからすっごい遠くにあるんだ。だから、光が僕等の目に届くまで凄い時間かかるの、だから、もしかしたら今、こうして見ている星はもうないかも知れないんだよ。」
「なんかそれじゃ、お願いしてもない星にお願いしてるかも知れないだ。」
「そう、だから、僕は星じゃなくて美貴ちゃんにお願いする。」
「美貴に?」
「そう、僕と一緒にいてね。」

美貴の肩に頭を乗せたまま美貴を見上げるよっちゃんに美貴は頷いた。
332 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:34
「そろそろ、帰ろうか。寒いし。」

10時を過ぎた頃、美貴がそういうとよっちゃは美貴の肩から顔を上げて美貴をじっと見た。

「どうしたの?」と美貴が聞くとよっちゃんは急に美貴を抱き寄せ首に顔を埋めた。

「生まれたままの美貴ちゃんを、知りたい。」

美貴の背中をぎゅっと抱くよっちゃんの手が少し痛い。

「美貴ちゃんが、そう、思ってなかったら待つよ。」

耳元でそう囁き美貴の顔を覗きこむよっちゃんの顔は緊張と言うか不安と言うか、そんな顔をしていた。
今度は美貴がよっちゃんの首に顔を埋めた。

「美貴も、知りたいし、知ってほしいよ。美貴をもっと、知ってほしい。」

背中にあったよっちゃんの手が美貴の頭を撫でて「良かった。」と呟く。

「不安だった?」と美貴がよっちゃんの顔を覗きこむ。

「ちょっとだけ、でも、美貴ちゃんもそう思ってるってそんな気がしてた。」

333 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:35
美貴はずっと前から気がついてた。
よっちゃんがそう思ってるって。
美貴もそう思ってたから。

「女の美貴から言うのもおかしいじゃん。」
「うん。」

微笑むよっちゃんの唇を指でなぞった。
よっちゃんの顔からすっと笑みが消えた。

「よっちゃん、緊張しすぎ。行こう。」

緊張しているよっちゃんに美貴は無理に笑って見せた。
ちょっとだけ、大人ぶって。
よっちゃんを安心させたくて。

「行くってどこに?」と手をとって立ち上がった美貴を見上げるよっちゃんを見て美貴は思わず笑った。

「美貴をここで生まれたままの姿にする気?」

よっちゃんは顔を真っ赤にさせて立ち上がると美貴の手をとって歩き出す。
人ごみを掻き分けるように、よっちゃんは美貴の手を引いて歩いた。
334 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:35
近くの駅に着くとよっちゃんは切符を2枚買って1枚を美貴に渡した。
260円の切符だった。
美貴はとっさに運賃表に視線を向け行き先の駅を確認して笑みが零れた。

改札を抜けて二人でホームに並んで電車を待つ間、よっちゃんはいつもより強く美貴の手を握っていた。

黙って、二人で来た電車に乗り込む。
いつもみたいに美貴は車両の角にたちよっちゃんは美貴を守るように壁になる。
人の少ない電車なのによっちゃんは美貴を包み込むように守ってくれる。

いつも降りなれた駅に電車が止まると美貴たちは自然と電車を降りた。

手を繋いでいつもとおなじ道だけど、いつもと違う景色。
真っ暗な道をよっちゃんと美貴は寄り添って歩いた。
335 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:36
「大丈夫なの?」
閉じられた門を登るよっちゃんに美貴はそう声をかけた。
公園からココまで一言も言葉を交わさずに来たけれど、さすがに不法侵入を黙ってみてるわけには行かない気がした。

「大丈夫。今日はクリスマスだからキリスト様が許してくれる。」と笑うよっちゃんは美貴に両手を差し出した。

「キリスト教じゃないじゃん。」と美貴は笑いながらその手を掴んで門を超えた。
「共犯。」と笑い美貴の手を掴んで駆け出すよっちゃん。
非常階段を駆け上った。
昇りきると二人でその場に座り込んだ。
乱れた息が苦しくて言葉を交わすことなんて出来なくてそれでもよっちゃんは美貴の手を離そうとはしなかった。
336 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:36
はぁ、はぁ、と言う二人の息の音と風の音が聞こえた。
誰もいない美貴たちの学校の屋上。
仰向けになって寝転ぶと満点の星空が美貴たちを見ていた。

「美貴ちゃん。」と声がしてよっちゃんに顔を向けるとよっちゃんの顔が月に照らされていた。

「愛してる。そんな言葉で伝えきれないくらい。美貴ちゃんの全てを。」

よっちゃんはそう言うと身体を起こして美貴の上に来て顔を覗きこんだ。

「美貴ちゃんに会えて、一緒に居れて幸せだよ。」と言うよっちゃんの頬に手を添えた。

「美貴もだよ。」

その一言が、合図だった。
よっちゃんは美貴を抱き起こし唇を重ねた。

「美貴ちゃん。」と名前を呼ぶよっちゃんに今度は美貴が唇を重ねた。
337 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:37
身体が緊張してる。
唇を離すとよっちゃんは着ていたダッフルコートを脱いで、横に広げて敷いた。
美貴も着ていたコートを脱いで横に置く。
よっちゃんは「寒くない?」と美貴を出し決めた。

「大丈夫だよ。ドキドキしすぎて、暑いくらい。」と美貴が言うと「僕も。」とよっちゃんが少し笑った。
「いい?」と聞いて美貴の頬を撫でる。

「うん。」と美貴が頷くとよっちゃんは美貴の上着を脱がせた、下着姿の美貴をよっちゃんは目を細めてみていた。

「怖い?」
「大丈夫、よっちゃんは?」
「大丈夫だよ。」

よっちゃんは美貴の下着に手をかけて、それを取った。
美貴の身体を見て「どうしよう。」と言うよっちゃん。

「何が・・・。」

美貴は、美貴の身体がよっちゃんにとって期待外れだったのかと不安になった。

「綺麗過ぎて・・・なんか、感動してる僕。」

嬉しい、言葉だった。
思わずよっちゃんの身体を抱き寄せた。

「全部、美貴は全部よっちゃんのものだから。」

338 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:37
「美貴ちゃん。」と囁いて美貴をゆっくりとよっちゃんのコートの上に寝かせるとよっちゃんは唇を重ねてきた。
よっちゃんの唇と舌、美貴の唇と舌。
両方のそれがどっちのものか分からないくらい、絡み合って吸い付き合った。

よっちゃんの手が美貴の胸を捉え、舌がその中心に吸い付くと美貴はよっちゃんの背中に手を回し、よっちゃんの着ている服をきつく握り締めた。

「あぁ・・・んっ。」

中心を噛まれて漏れた美貴の声に「ごめん。」とよっちゃんが顔を上げた。

「大丈夫。続けて。」
「痛かった?」

美貴は首を横に振った、痛さだけじゃないから。

「大丈夫。」と美貴が笑うとよっちゃんはホッとしたような顔をして上着を脱いだ。
美貴よりも色の白いよっちゃんの身体。
美貴は身体を起こしてよっちゃんが美貴にしたようによっちゃんの胸の中心をペロっと舐める。
頭の上で「美貴ちゃん。」と聞こえてくるよっちゃんの声。
美貴はよっちゃんの背中を撫でながらよっちゃんの厚い胸板に舌を這わせた。
よっちゃんの手が美貴の胸のふくらみを揉みながら美貴の耳を舐めてきた。

339 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:39
「美貴ちゃん・・・。」

よっちゃんの切ない声に顔を上げるとよっちゃんはそっと美貴をまた横たわらせた。

短めのスカートによっちゃんが手をかける。

「かっこ悪いな僕、美貴ちゃん、これどうなってるの?」

横にあるボタンと内側のフックで止めてあるそれをよっちゃんは外せないようだった。

「かっこ悪くなんかないよ。」と美貴は自分でそれを外した。

「ありがと。」とよっちゃんはそれを脱がし下着に手をかけた。
月明かりだけ、でも美貴の全てをよっちゃんには見えているはず。
美貴がよっちゃんを見えているように。

340 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:40
抱き合っているその時からよっちゃんの下半身の変化に気がついていた。
美貴にとってそれは子どものころお父さんのを見たくらいで意識してみたことなんてなかった。
お兄ちゃんがいるから、それなりにそういうのを知っているし、お兄ちゃんの部屋にはエッチなDVDとかあったけれどそれは女の裸であって、男のものではない。だから、男性のそれは美貴の記憶の中にはっきりとしたものはない。

そっと太腿によっちゃんの手の温かさを感じて美貴はよっちゃんの顔を見た。

「真っ赤だ。よっちゃんの顔。」
「美貴ちゃんも真っ赤。」
「よっちゃんも、脱いで。」

生まれたままの姿になった美貴は身体を起こしてよっちゃんのジーンズのボタンを外した。
よっちゃんは立ち上がり、美貴に背を向けてジーンズを脱いだ。
ボクサーパンツのよっちゃんが振り返ると美貴の視線は膨らんでいるよっちゃんのそこに行ってしまう。

「凄いね、男の子って。」

よっちゃんは恥ずかしそうに膝を付くと「女の子だって、神秘的だよ。」と笑った。

自然と唇が重なり、よっちゃんは覆いかぶさるように美貴を押し倒した。
胸を揉まれ、舐められ、お腹を舐められ美貴は身体を捩り声を漏らした。

よっちゃんは美貴の足の間に身体を滑り込ませ美貴のそこを見た。
341 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:40
「よっちゃん・・・。」

どうにかしてほしいくらい、そこの感覚がおかしい。

「あぁ・・・。」

よっちゃんの手が美貴の中に入ってくる。
痛いのかなって思っていたけどそれほど痛くなかった。

「よっちゃん。」

舌と指で愛撫するよっちゃんの髪に手を通して、美貴はよっちゃんの名前を何度も呼んだ。
12月で寒いはずなのに、こんな格好で夜空の下にいるのに。
身体の奥の方からどんどん暑くなってくる。

「あぁ・・・」

時折漏れてしまう声が凄く恥ずかしくて、でもよっちゃんだけしか居ないからと思うとなんだか安心した。

「美貴ちゃん・・・」

顔を上げたよっちゃんに美貴は手を伸ばし引き寄せて唇を奪った。

「んぅ・・・。」

よっちゃんの口の中を舌で掻きまして、どうにかなりそうな美貴のこの感覚をよっちゃんに伝えたかった。

「よっちゃん・・・」

唇を離すとよっちゃんは微笑んで美貴の頬を指でなぞった。
342 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:41
「痛かった?」
「大丈夫。」
「涙。」
「ん。何か、凄いの、身体、暑くて。」
「僕も。」

よっちゃんは美貴のオデコにキスをすると立ち上がり、美貴に背を向けてボクサーパンツを脱いだ。

「凄い・・・ね。」

それがこれから美貴の中に入ってくるのかと思うとちょっと怖い気がする。
よっちゃんは苦笑しながら膝を付くと脱いだジーパンのポケットに手を入れた。

「待ってね。」とよっちゃんは苦笑するとポケットから取り出したゴムを自分のそれに被せ始めた。
美貴は、興味、と言うか自分にないものだからか気になってじっと見ていた。

「美貴ちゃん、見すぎ。」
「よっちゃんも美貴の見たじゃん。」
「ん。そうだけど、恥ずかしいよ。」
「同じ、だよ。」

美貴が笑うとよっちゃんは「そうだね。」と美貴を抱き寄せてもう一度キスをした。

343 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:42
「じゃぁ、いい?」
「うん。」

よっちゃんは美貴をゆっくり寝かせるとゆっくり美貴の中に入ってきた。
入っていく、様子をじっと見ているよっちゃんのその顔を見ているとなんだか、恥ずかしさが込み上げてくる。

「いっ・・・。」
「ごめん。大丈夫?」

痛みに襲われ、もう、入ってきているのだと思った。

「まだ、全然なんだけど・・・。」
心配そうに美貴を見て言うよっちゃんの言葉。

「まだ、なの?」
「うん、まだ。」
「そっか・・・。」と美貴は苦笑した。

「大丈夫?」
「うん、続けて。」

頷いたよっちゃんは美貴の右手を掴んでまた、同じようにゆっくりと動き出した。

344 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:42
「んぅ・・・。」

痛さでよっちゃんの手をぎゅっと握るとよっちゃんは身体を倒して美貴の覆いかぶさるとキスをしてきた。

「大丈夫?美貴ちゃん。」
「うん。もっと、キスして。」

よっちゃんは微笑むとキスをしながらゆっくりと美貴の中に入ってきた。

「いたっ・・・。」

思わず美貴はよっちゃんの背中に手を回してしがみ付いた。

痛い、凄い、痛い。
「はぁ・・・。」とよっちゃんの息が耳元で聞こえてくる。

「よっちゃん?」
「美貴ちゃんの中、温かい。」

一つになったままよっちゃんは動かずに美貴の顔中にキスをした。

「ごめんね、美貴ちゃんだけに痛い思いさせて。」
と言うよっちゃんに美貴は笑みを零した。
345 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:43
「でも、凄い幸せ。」
「僕も。」
「よっちゃん、動いていいよ。」

「大丈夫?」と言う言葉に頷くとよっちゃんはゆっくり動き始めた。
痛いけど、よっちゃんの漏らす吐息と表情で我慢できた。

「んぅ、あぁっ。」

痛みは段々と慣れてきて、身体の奥の方がさらに熱くなってくる。

「よっちゃ・・・あぁ。」
「美貴ちゃん。中、凄くいいよ。」

よっちゃんがいいなら美貴もいいんだ。

美貴は微笑んでよっちゃんの背中にしがみ付いた。
少しずつ早くなってくるよっちゃんの動き。

「あっ、あぁっ。」

なんだか、もう限界、そんな気がした。

「美貴ちゃんっ。んっ。」

よっちゃんは美貴の名前を呼びながら倒れこんできた。
346 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:45
汗ばむよっちゃんの身体を抱きしめながら美貴は夜空を見た。
なんだか、凄い幸せな気持ちで一杯になっていた。

「よっちゃん・・・。」

耳元で息を切らしているよっちゃんの頭を撫でた。

「美貴、なんか凄い幸せなんだけど、どうしよ。」

涙が出てきた。

「美貴ちゃん・・・」
身体を横にずらして美貴の頬を撫でるよっちゃん。

「大丈夫?」
「うん。よっちゃんと一つになれて幸せ。」
「僕も幸せ。」

よっちゃんはそう言うと敷いてあるダッフルコートで美貴を包み込んで抱きしめた。

「風邪、ひいちゃう。」
「よっちゃんも。」
「うん。服、着ようか。」と笑うよっちゃん。
347 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:46
学校の屋上で裸の男女がいるなんて通報されたら困る。
でも、よっちゃんがこの場所を選んだのは分かる気がする。
美貴もココが良かった。

よっちゃんと付き合いだした場所。
よっちゃんと初めてキスした場所。
よっちゃんと初めて結ばれた場所。

美貴たちはいつだってココから始まるんだ。

服を着ながらなんだか気恥ずかしさなのか言葉を交わす余裕がない。
二人、黙って背を向けて脱いだ服を身に着けた。
348 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:47
「美貴ちゃん着た?」とよっちゃんの声に振り返るとコートを着たよっちゃんの背中があった。
美貴はよっちゃんに歩み寄りその背中に抱きついた。

「美貴ちゃん?着たの?」
「うん。」
「どうしたの?」
「素敵なクリスマスをありがと。もう、終わっちゃうから今日。」

よっちゃんの腕がごそっと動いた。腕時計を見たのだろう。
「ホントだ。」とよっちゃんが呟いた。

「僕もね、こんな素敵なクリスマス初めてだよ。いつも家族と過ごすから。」

よっちゃんは振り返ると微笑み、美貴をギュッと抱きしめる。
よっちゃんの腕の中は凄く暖かくて心地良が良かった。
349 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:47

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

350 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/11(土) 04:59
本日の更新以上です

>>314-349 静かな愛4

まだ、4が続きます。
途中からsageとか(苦笑)
すみません。

田中・亀井・道重・久住のハロプロアワーがちょっと自分の中で楽しすぎてw
こんな時間に見てしまいましたw


>>310 :naanasshi 様 
レス有り難うございます。

>純粋な吉澤くんが切ないですねえ
>今は複雑な関係ですがこれからどうなるか楽しみです♪
もっと4人で遊ばせようとか思ってたり、思ってなかったりなんですけどw

>亀吉もマッタリ待ってます!w
今週はそっちを書いちゃってましたw
シャボン玉影響でw

今後もよろしくです。

>>311 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>吉澤くんも切ないけどミキティはもっと切ない 。・゚・(ノД`)・゚・。
>あああ幸せになってくれええええ
幸せにしたいw

今後もよろしくです。

>>312 :ももんが 様 
レス有り難うございます。

>毎回どうなるんだ!と思いながら読んでます。
嬉しいです。有り難うございます。

今後もよろしくです。

>>313 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>今後4人がどうなっていくのか楽しみに更新待ってます
有り難うございます。

今後もよろしくです。
351 名前:clover 投稿日:2006/11/11(土) 05:00
名前変え忘れたし(ノ_-)クスン
352 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/11(土) 15:06
ついにキタ━━从VvV)^〜^0)━从 *Vv)〜^* )━从 *´)`* )━━ !!!!!
初めてが学校の屋上だなんて(´Д`;)ハァハァハァハァ
吉澤くんの初々しさがなんともいいですね(・∀・)ニヤニヤ
353 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/11(土) 17:06
なんていうか…艶かしさのある二人じゃないのが新鮮に感じます。
すごく爽やかな恋だなぁと。更新お疲れさまです。
354 名前:ももんが 投稿日:2006/11/11(土) 21:28
更新おつかれさまです!
学校の屋上でなんてそんな…!!
なかなかすごいとこでしますね(笑)
355 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/12(日) 00:14
更新乙かれ様です
すごく2人の雰囲気がいいですね、
続き待ってますね。
356 名前:naanasshi 投稿日:2006/11/12(日) 01:48
更新キテター!
高校生時代の爽やかっぷりが良いですねーこんな青春羨ましい!
あと、どんどん4人で遊ばせちゃってくださいw
357 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/12(日) 03:49
純粋なよっちゃんにやられてます!!!冷静になったら「えっ屋上で……」ってなりますが、それを感じませんでした。
358 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/11/12(日) 16:05
更新お疲れ様です。
みきよし大好きでcloverさんの作品はずっと読ませていただいていますが、
今回ほどせつなさを感じる作品はないってぐらいハマリこんでいます。
マジでヤバイです。
高校時代と現在が交差する中、二人がどう進むのか。目が離せないです。
359 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:31
「分かってて好きになった。」

よっちゃんの言葉に美貴は首を傾げた。
よっちゃんは「飯田さんが不倫してるって。」と言葉を付け足す。

「あぁ。うん。知ってたんでしょ。」
「美貴と別れてから、しばらくして知ったんだ。」

真っ直ぐ過ぎるんだよ、よっちゃん。
飯田さんが気になった、その時点で美貴に後ろめたさを感じたんだね。
だから、直ぐに美貴と別れようって思ったんだ。

苦笑して、ため息をつくよっちゃん。

「好きになった・・・ってのも正確な言葉じゃない。」

よっちゃんはオレンジジュースを飲み干して再びため息をついた。
今度は凄い深いため息。

「よっちゃん?」

「ん?」と俯いていた顔をあげるよっちゃん。

「大丈夫?」

よっちゃんは笑顔、ではなかった。

「美貴には何でも言えるのに。」そう言ってよっちゃんは笑った。

360 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:32
「なんでも聞くよ。」と美貴は微笑み、よっちゃんの空になったグラスを取った。

「入れてくる、オレンジでいい?」

頷くよっちゃんにもう一度微笑んで美貴はドリンクバーに向かった。

好きになったは正確な言葉じゃない。
飯田さんには何でも言えない。

この二つの言葉がよっちゃんを苦しめている。
そう思いながら、もしかしてよっちゃんは飯田さんの言う通り美貴のことを整理できていないのかもしれない、と少し嬉しい気分になった。
美貴だって、まだ、全く、よっちゃんのことを整理なんて付けられていないから。

よっちゃん以上に美貴を大事に愛してくれる人なんているのだろうか。
よっちゃん以上に美貴に優しい時間を与えてくれる人なんているのだろうか。
よっちゃん以上に美貴を夢中にさせてくれる人なんて・・・

どれもよっちゃん以上なんて人、美貴には居ない・・・そう思う。

グラスをよっちゃんの前に置くと「ありがと。」と微笑むよっちゃん。
361 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:32
「圭織さん・・・なんか言ってた?」
「ん?」
「僕のこと、なにか。」
「言ってないよ。クリスマス約束したってだけ。」
「そっか・・・あっ。」

ストローをクルクルさせていたよっちゃんは何か思い出したように顔を上げた。

「なに?」
「ハチミツ。こないだ僕が風邪ひいたとき。」
「あぁ、うん。途中で飯田さんに会ったから、渡したの。」
「ありがと、おかげで次の日良くなってた。」

微笑むよっちゃんに美貴も微笑む。

「美貴と別れてから自分で作ってたんだ。」
「そっか。」

よっちゃんはオレンジジュースを啜ると腕時計に目を向けた。

「時間、まだ大丈夫?」
「うん。」
「飲みに行こうか。」
「いいね。」

「じゃ、行こう。」とよっちゃんは伝票を手に取り立ち上がる。

362 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:34
美貴はよっちゃんの後に付いていき財布を取り出した。
よっちゃんがレジで支払うと美貴は1500円をよっちゃんに出した。

「いいよ。僕が誘ったんだし。」
「割り勘だよ。よっちゃんいつも言ってたじゃん。」

美貴はそう言ってよっちゃんの手にお金を乗せた。

「ん。そうだったね。」とよっちゃんは素直にそれを受け取った。

夜の街を歩き、久しぶりによっちゃんと一緒に電車に乗った。
人の少ない車両で二人肩を並べて座る。

363 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:34
「美貴はいつもこの電車?」
「うん。」
「混んでる?」
「結構。」
「1人で大丈夫?美貴、小さいから押しつぶされてない?」
「慣れたよ。」

「そっか。」とよっちゃんは呟くと首を捻って窓の外を見た。

「もう、2年だもんね。別れて。」

流れる夜の景色を見ながら言うよっちゃんに「そう、もう2年が過ぎて3年目。」と美貴も外を見た。
何処もクリスマスに向けてのイルミネーションがチカチカしている。
364 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:35
美貴の家の近くまできて、イングリッシュパブに入った。
美貴は先に席につくとよっちゃんがカウンターで頼んだビールを持ってきてくれた。

「フィッシュアンドチップスでいいよね。」とよっちゃんはつまみにそれを持ってきた。

向かい合って座り、それをつまみながらビールを飲んだ。

「美貴の家この辺なんでしょ。」
「うん。ここからなら歩いても20分くらいかな。」

よっちゃんは美貴の今のマンションには来たこと無い。
美貴の部屋に来る理由なんて、別れたあとに無かった。

「東京に出てきてさ、別れるまで僕はほとんど美貴の家に泊まってた。」

よっちゃんはそう言って懐かしむように笑った。

「家賃、勿体無かったよね。」と美貴が言うとよっちゃんは笑って頷く。

「楽しかったなぁ。あの頃。」呟くよっちゃんはなんか寂しそうだった。

「今は、楽しくないの?」

そんな悲しそうな顔、しないで欲しい。
よっちゃんが美貴に楽しいこと、嬉しい感情、幸せな気持ちを教えてくれたのに。
365 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:35
「楽しいよ。今、凄い楽しい。久しぶりに楽しい。」とよっちゃんは笑った。

よっちゃんは、最近見た映画や、DVDの話を一杯してくれた。
楽しそうに、あぁだ、こぅだって言いながら。
でも、最後の結末は言わない。
結末を知ったら美貴はそれを見たりしないから。

「見てみて、面白いんと思うよ。」と最後にそう言う。
美貴は「うん。」と笑顔で頷いた。

「どの映画もひとりで見たんだ。高校のときはさ美貴ちゃんと割り勘でよくDVD借りてみたよね、二人で色々感想話したな。」

美貴が頷くとよっちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
この、笑顔が大好き。

「誰と?」と言うとよっちゃんが「ん?」首をかしげた。

「今は誰と見てるの?飯田さん?」美貴の言葉によっちゃんは苦笑して首を横に振った。
366 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:36
「圭織さんとは食事か飲みに行くか、どっちか。それも、途中で帰られたり、来なかったり。僕には理解出来ないところでもあるけどね。それが、圭織さんなんだって。」

奥さんや母親にはなりたくはないけれど、その不倫の相手を飯田さんは本当に好き、名のだろう。いつでも側にいてくれる人よりも、不倫でもその人との時間の方が大切で、何よりもその時間を優先する。
愛人。そんな言葉が飯田さんを指す言葉に適しているかもしれない。不倫相手と称するより、愛人。
その相手をただ、愛する人。
きっと、飯田さんには不倫をしていると言う自覚はないかもしれない。
なに、美貴は飯田さんを分析しているのだろう。
おかしくなって少し笑ってしまった。

367 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:37
「美貴ちゃん、どうしたの?ひとりで笑って。」と笑うよっちゃんは何杯目かのビールに既に顔が赤くなっている。酔っているのだろう、その証拠に「美貴」ではなく「美貴ちゃん」と呼んでいる。
よっちゃんは酔っ払うと付き合いだしたころのように美貴をちゃん付けで呼ぶ。
そして、美貴によく、美貴に甘えてきったっけ。普段は美貴が凄い甘えているのに、酔ったときはよっちゃんが甘える。そんなよっちゃんは凄い可愛くて、初めて酔って甘えてきた次の日はそのことでよっちゃんを一日中からかっていたっけ。

「よっちゃん、酔ってるね?」
「酔ってないよぉ。」と言って「あーん。」と口を開けるよっちゃん。
美貴はそのよっちゃんの口にチップスを入れてあげた。

「美味しい。」と微笑むよっちゃんを美貴は頬杖をついて見つめた。
付き合っていた頃みたいに。

368 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:37
「美貴ちゃんも食べる?」とチップスを手にとって美貴に向けるよっちゃん。

「あーん。」と美貴が口を開けるとチップスが入ってきた。

「美味しい?」と聞くよっちゃんに頷くとよっちゃんは満足そうに微笑んで残っていたビールを飲み干した。

「もう一杯買ってくる。美貴ちゃんは?」と言うよっちゃん。

「美貴が買ってくる。」と美貴は立ち上がりカウンターに向かった。
酔ってるよっちゃんは足元がふら付くから。
大分酔ってるし、一人で家まで帰れないだろう。
もしかしたら・・・
最初からよっちゃんはそのつもりだった?

よっちゃんの方を見るとチップスを一人モグモグと食べて微笑んでいる姿があった。

そのつもりなら、最初に言うか・・・

受け取ったビールを持って席に戻った。
369 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:37







370 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:38
案の定、そろそろ店を出ようとなるとよっちゃんは1人では歩けずに美貴が肩を貸した。

「よっちゃん、タクシーで家まで帰れる?」と大通りに向かいながら聞くとよっちゃんは「美貴ちゃんとまだいる。」と言った。
付き合っていた頃のように、美貴に甘えるよっちゃん。

錯覚してしまう。
まだ、美貴はよっちゃんと付き合っているんじゃないかって。
隣で微笑み美貴の手をとってふらついた足取りで歩くよっちゃんを見ながら美貴は自分のマンションへ向かって歩いた。

「みーきちゃん。」と呼ばれて横を見るとよっちゃんは空を見上げていた。

「なーに?」 と美貴が聞き返すとよっちゃんは「ふふっ。」と笑った。

ただ、呼んだだけ。
昔も良くよっちゃんは美貴の名前を呼んでいた。
371 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:38




マンションに着くころにはよっちゃんの酔いも醒めたようだった。
美貴の部屋のラブソファにチョコンと座って部屋をキョロキョロ見回しているよっちゃんを見ながら美貴はキッチンでコーヒーを入れた。

「はい、ミルクたっぷりのコーヒー。」とよっちゃんの前にコーヒーを置いて美貴は床に座った。

よっちゃんがコーヒーを飲む姿を見上げて、美貴の錯覚はどんどん酷くなる。

「ん?」と美貴の視線に気がついたよっちゃんはカップをテーブルに戻して美貴を見た。

「なんでもなーい。」と美貴は微笑んだ。
よっちゃんを見ているのが好き。だから、昔からいつも見つめてた。
よっちゃんの一つ一つの行動を、次は何するの?あっ、笑ったっていつもよっちゃんは美貴を楽しませてくれる。
372 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:39
「眠い?」

眠そうに美貴の視線を受け止めているよっちゃんは首を横に振った。

「帰らないと・・・。」と呟きコーヒーを飲んで立ち上がった。

心の中で帰っちゃうんだ・・・と残念がっている美貴。
引き止める、なんて出来ない。よっちゃんを混乱させてしまうだけだから。
一つ、一つ自分の中で整理していくよっちゃんだから。
飯田さんのことが終わるまで、美貴はゆっくり待っているって決めたんだ。
美貴のペースでよっちゃんを待とうって。

「タクシー大通りに出ればまだ、あるね。」と美貴も立ち上がりった。

玄関で「今夜はなんだか、凄い楽しかったよ。」と言うよっちゃん。
「美貴も、楽しかった。」と返し、見送った。

大通りまで送ろうと思ったけど、なんだかそこまで行ったら引き止めてしまいそうで怖かった。

よっちゃんが座っていた場所に手を当ててみた。

「あったかい・・・。」

よっちゃんの温もりが残ってた。
なんだか、急に寂しくなって涙が零れてくる。

「よっちゃん。」と名前を呼べばいつも直ぐそこに笑顔で居てくれたっけ。

もう慣れたはずなのに、1人で居ることに・・・
373 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:40




あの夜からよっちゃんからの連絡は何もないまま数日が過ぎ、明後日はクリスマスイヴだ。
明日は祝日。
隣の席で、明日から彼と旅行に行くと嬉しがっている人とそれを羨ましがっている人。
美貴はそれを聞き流しながら仕事の手を動かした。

よっちゃんから、飯田さんとの待ち合わせ場所を聞いていなかったのが幸いだ。
聞いていたら、イヴに行ってしまう。絶対に行ってしまう。
美貴はよっちゃんを慰めるために別れたんじゃない。
よっちゃんに時間をあげたんだ、美貴に対して苦しまないように。
美貴はよっちゃんを苦しめたくないから。

カタカタとキーボードを打ちながらそんなことを考える。
頭の中がよっちゃんのことで一杯になってしまうのは出会った頃からだ。
美貴はその阻止の仕方を知らない。

昼休みになっても美貴の頭の中はよっちゃんのことばかりで、余り仕事ははかどらなかった。飯田さんが来なかったらよっちゃんはどれほど傷つくのだろうか。
慰めに行ったら・・・美貴が行ったら・・・美貴は・・・
戻って来てと言ってしまう。よっちゃんが気持ちの整理をする前に、言ってしまう。
それだけはしたくない。
374 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:41

ランチを食べる気にもなれず美貴はショッピングモールになっている1階を1人プラプラと歩いた。歩いている途中でクリスマス一色のモールを歩くんではなかったこと後悔した。

嫌でもイヴのことを考えてしまう。
昼休みの時間はまだまだあるが、オフィスに戻ろうと来た通りを戻った。
エスカレーターが見えてきたころで美貴は足を止めた。
ごっちんがいたから。

足を止めた美貴を見つけたごっちんはなんでもない顔で美貴に歩み寄ってきた。

「久しぶり、だね。」と言うごっちんに美貴も同じようになんでもない顔で「だね。」と答えた。

「お昼、食べてないの?」と腕時計に目を向け言うごっちん。

「ちょっと食べる気にならなくてね。」
「体調悪いの?風邪でもひいた?」

美貴は首を横に振って少し微笑むとエスカレーターに向かって足を進めた。
合わせて着いてくるごっちん。
375 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:41
「こないだ、悪かった。ちょっと悪酔いしてた。」と美貴の顔を覗きこみ、手を合わせた。
悪酔い、なんてするほど、飲んでないだろうと美貴は苦笑した。

「別に、なんとも思ってないよ。」と言ってエスカレーターを降り自分のオフィスがあるエレベーターに向かう。ごっちんは美貴とは反対方向のエレベーターのはずなのにまだ、美貴についてくるごっちんに見かねて美貴は足を止めた。

「なに?」と美貴が振り返り言うとごっちんは苦笑した。

「クリスマスイヴ、暇?」と笑顔で聞いてくるごっちんに美貴は苦笑した。
今、一番触れたくない話題。

「イヴだからって一緒に過ごす予定は誰ともないし、予定を立てる気もない。」

ごっちんは苦笑して、「そうか、後藤も。」と言った。

ごっちんは、その気になれば直ぐに誰かと過ごす予定を立てることは出来るだろう。

「じゃ、行くね。」と美貴は再びごっちんに背を向けた。

クリスマスは1人で過ごす。
今、そう決めた。
誰かと居れば、気は紛れるかもしれない。
でも、紛らわしたりしたくない。
だから、1人で過ごそう。
飯田さんを待ちながらよっちゃんもそう、過ごすのだろうから。
376 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:42




いつも以上に増して、人の多い街は、カップルで溢れていた。
腕を組み微笑み合う、男女。
数人で盛り上がる若い、男女。

初めて、東京で過ごしたクリスマス、美貴はこの世で一番幸せだと感じていた。
隣によっちゃんがいて、繋がれた手から伝わってくるよっちゃんの体温があって。
そんなことを考えながら歩く22歳のクリスマスイヴ。

「イヴなのにひとり?」と声をかけてくる男を無視して美貴はよっちゃんと見たイルミネーションを見ながらひとり歩いた。
よっちゃんと別れてからイヴに外にでることすら初めてだ。
家で特番を一人見ながら、頭の中はやっぱりよっちゃんのことで一杯で、よっちゃんもひとりで見ているんだろうと思った。
気がついたら、美貴もひとりで見に来てた。
377 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:42

足を止めて振り返り今、歩いてきた道を眺めてきた。
通ってきた通りには人が溢れている。
こんなに、人って一杯いるんだ、そう改めて思った。

こんなに人がいる中で、美貴はよっちゃんに見つけてもらって幸せを貰って愛を貰って恋して、愛する心を貰った。何に対しても無関心だった美貴をよっちゃんは夢中にさせてくれた。
よっちゃんは美貴を見つけて、美貴を愛した。
飯田さんにも・・・そう、なのだろうか。
愛しているのだろうか・・・。
それとも、飯田さんが言うように、美貴をまだ・・・。

美貴は駆け出した。
何度も人にぶつかりそうになりながら、イルミネーションの中を白い息を吐きながらよっちゃんの通う大学に向かって。
378 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:43



はぁ、はぁと美貴の口から漏れる息は白い。
よっちゃんが初めて連れてきてくれたときに言っていた。キャンパスにある大きな木はクリスマスになるとツリーに見立てて電飾が飾られる。
大きな木の下にあるベンチによっちゃんの姿があった。

少し離れたところで足を止めて腕時計を見た。
10時前。

まだ、待つだろう。
イヴが終わるまであと2時間と少し。
それが過ぎたら美貴はよっちゃんの前に姿を現し、気持ちを確認しようと思った。
12月の外は当たり前に寒くて、美貴は少し震えながらよっちゃんを見守った。
よっちゃんが中学3年間、美貴を見守ったように、美貴もそうしたい。
よっちゃんがしてくれたこと、美貴もそうしたい。
そう、思ったからココに来た。
379 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:44
寒い日に外に出るのは嫌いだった。
寒いなら、温かい場所に居ればいいことだしって思ってた。
だから、冬の体育は大嫌いだった。マラソンなんてやってられなくていつも仮病。先生も仮病だと分かっていて見学させてくれていた。
よっちゃんと付き合いだしてからだった、寒い日に外に出るのが好きになったのは。
よっちゃんの暖かい体温をいつも以上に感じることが出来るから。

12時までもう少し。よっちゃんはじっと、ベンチに座って大きな木を見上げている。

よっちゃんが座るベンチから左に視線を動かした。
何か、動いた気がしたから。
気のせいじゃなかった・・・。
街灯の下に石川さんがいた。よっちゃんを見てる石川さんが。
380 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:44
あぁ・・・高校のころから、石川さんはこうしてよっちゃんを少し離れたところから見てたんだ。その隣にいつも美貴は居たんだ。敵視されるのは仕方ないな。
美貴はそう思って少し笑った。
触れられないもどかしさ、寂しさ。
それを美貴は今、味わってる。
凄いな、石川さん。ずっと、諦めずにそうやって見守ってきたんだ。

でも、ごめん。石川さんだけに見守る役目、任せられないや。
12時になったら・・・美貴はよっちゃんを迎えに行くから。

あと、20分。
飯田さんは予告どおり来ないみたい。

よっちゃんは腕時計と夜空に向けて視線を行ったらり来たりさせている。

「まって・・・。」と美貴は声を漏らした。
12時なる前に石川さんが動き出したから。
美貴の漏れた小さな声は誰にも届くはずはなくて、石川さんの足音によっちゃんは視線を彼女に向けていた。

あと、15分。待って欲しかった。

よっちゃんは苦笑して腕時計に視線を落としている。そんなよっちゃんに石川さんは駆け寄り何かを言って、よっちゃんの手をひっぱり、立ち上がらせた。
381 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:45
あと、15分。待とうよ。
飯田さんとの約束の日はまだ終わってないじゃん。

よっちゃんはひかれた手を振り払い再び、ベンチに腰を降ろした。
石川さんもその隣にそしてよっちゃんに何かまた言っている。

「美貴の出番なくなっちゃったな。」と苦笑と一緒に美貴の口からそう漏れた。
まぁ、見守るって決めたから良いか。
腕時計を見るとあと3分で今日が終わる。

よっちゃんは12時になると立ち上がり大きな木を見上げながらその回りを歩き出した。
石川さんはベンチに座ってその様子を見ている。

「石川さぁ。そうやって、自分のお姉さんのこと悪く言って楽しいか?」とよっちゃんが大きな声で叫ぶように石川さんに聞く。
ここからじゃ、石川さんの表情は確認できない。

「僕ね、別に好きじゃないんだ。飯田さんのこと。」と言うよっちゃんの言葉に「はぁ?」と言う石川さんの声がやけに甲高く聞こえてきた。

「好きになれなかった。本当の笑顔みたいって思った、してあげたいって。でも、あぁやって笑うのが飯田さんなんだって。今夜ね、来ないって分かってた。それで、気持ちの整理付けようって。本当はもう、付いてたんだ。僕の気持ちはちゃんと、分かってた。」

よっちゃんの言葉の意味は色々な撮り方が出来て、美貴はそれを美貴なりによっちゃんは飯田さんとのことに整理付けられたんだと解釈した。

今夜は帰ろう。
美貴はよっちゃんをもう一度見てからその場から立ち去った。

街はまだクリスマスイヴの余韻が残っていて、美貴たちだけがイヴの終わりを感じているんだと街の人を見ながらマンションに帰った。
382 名前:静かな愛4 投稿日:2006/11/19(日) 20:46




年末は何かと忙しい。忘年会の支度、仕事納めの納会の準備。
よっちゃんから、同窓会に行くかと言うメールを貰って、そういえば葉書が来ていたと思い出した。社会人になる前に会おうというコメント付きだった葉書を見て、短大に行った人は既に社会人やってるよと思った記憶があった。

返信しないままだったっけ。

余り、クラスの人と親しくしていなかった。よっちゃんと常に一緒にいたから。だから、1人で行っても仕方がないのだ。

よっちゃんは行くの?と言うメールを返すと「行くよ。」とメールが返ってきた。

年末は実家に帰る予定だし、突然行っても問題はないだろう。
よっちゃんに「美貴も行く。」と返した。
383 名前:clover 投稿日:2006/11/19(日) 20:59
本日の更新以上です

>>314-382 静かな愛4
今週、更新したつもりに勝手になってた(^。^;;
なんだか、もう年末に向けて忙しくなってきますね世間は・・・
早いなぁ一年・・・


>>353 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>なんていうか…艶かしさのある二人じゃないのが新鮮に感じます。
自分で書いててもエロクない吉澤さんに笑ってましたw

引き続き宜しくです。

>>354 :ももんが 様
いつも有り難うございます。

>学校の屋上でなんてそんな…!!
エロクなかったからシチュエーションだけとかw
しかもクリスマスの設定だしw

引き続きよろしくです。

>>355 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>すごく2人の雰囲気がいいですね、
ありがとです。頑張ります。
引き続きよろしくです。

>>356 :naanasshi 様
いつも有り難うございます。

>更新キテター!
きてましてよw
週末で更新できたらって思ってるんでよろしくです。

>高校生時代の爽やかっぷりが良いですねーこんな青春羨ましい!
こんな高校生いたら見たいw
引き続きよろしくです。

>>357 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>純粋なよっちゃんにやられてます!!!
ありがとうです。
>冷静になったら「えっ屋上で……」ってなりますが、それを感じませんでした。
屋上です、初めてが野外ですw

引き続きよろしくです。

>>358 :名無し飼育さん 様
レス有り難うございます。

>みきよし大好きでcloverさんの作品はずっと読ませていただいていますが、
嬉しいです!有り難うございます。

>今回ほどせつなさを感じる作品はないってぐらいハマリこんでいます。
>マジでヤバイです。
恐縮ですw期待に応えられるように頑張ります。

引き続き宜しくです。
384 名前:ももんが 投稿日:2006/11/19(日) 21:06
更新お疲れ様です。
美貴ちゃんの部屋によっちゃんのいない切なさが伝わってきました。
今回美貴ちゃん視点ということもあって、かなり美貴ちゃんい感情移入してしまいます。
385 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/20(月) 01:10
一体2人はどうなるのか非常に気になります……。よっちゃんがどの様な答えをだし、行動するのか楽しみしてます。
386 名前:naanasshi 投稿日:2006/11/20(月) 19:21
更新お疲れ様です
藤本さんが切ないですねぇ吉澤くんの中の答えが気になります
石川さんと後藤さんは珍しくダークな感じですねwそんな二人も今後変わっていくのか楽しみです
387 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:02
年末、会社の納会を終えた美貴はその足で実家に帰った。
よっちゃんと別れてから、一度も実家には帰っていなかった。
ひとりでこの電車にのるのは初めてだ。

実家に着いたのは夜の11時を過ぎたころだった。お母さんは美貴の帰りを凄い喜んでくれた。東京に出て4年。帰ったのは短大1年の夏休みの一度きりだ。

「ごめんね、なかなか、帰れなくて。」と言いながらソファに座った。
テーブルの上にはラップのかかった夕食が並んでいる。お父さんはまだ帰ってないのだろう。

「ホントよ。仕事、忙しいの?」と美貴にお茶を入れてくれるお母さんに「まぁね。」と答えてそれを飲んだ。

「全く、成人式も帰ってこないで。」とぼやくお母さん。

「就職活動で忙しかったんだよ。」

それは本当のことだ。あの頃はまだよっちゃんとの連絡も今ほど取ってなくて、美貴は自分のやらないといけないこと、まずは就職をすることを優先に生活していた。そうするように自分で思わせていたんだ。
388 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:03
「振袖、お父さん買ったのよ。」
「あぁ、ごめん。」
「22歳だけど、写真くらい撮りに行こうよ。」
「まだ、21歳だし。」と美貴は笑った。

お父さんは帰ってくると凄い喜んで美貴に晩酌をつき合わさせた。
たまには帰ってこようと、ご機嫌にお酒を飲むお父さんを見て思う。

次の日、美貴はお父さんとお母さんに連れられて2年遅れの成人式の写真を撮った。
振袖を着て帰るのがなんだか恥ずかしかった。もう成人して結構経っているのに。
美貴は嬉しそうにはしゃぐ両親をよそにひとり俯きながら家まで帰った。

お母さんに手伝ってもらって振袖を脱ぎ始めるとお母さんは急に静かになって美貴の脱いだ振袖を畳み始めた。
美貴はそんなお母さんを見ながら長じばんを脱いでTシャツに手を通し、スカートを穿いた。

「お父さん、喜んでて良かったわ。」といきなり言い出すお母さんに「うん。」と答え脱いだ足袋と帯紐を片付けた。

「心配してたのよ。吉澤君と別れたって。」

お母さんは美貴を見ないでそう言った。
誰から、聞いたんだろう。
美貴はお母さんの背中をみながら心当たりの人を考えたが、よっちゃん以外いなかった。
389 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:03
「知ってたんだね。」と美貴は長じばんをハンガーにかけた。

「吉澤君が言いに来たわ。一昨年のお正月に。」

美貴は振り返ってお母さんを見た。
そんなこと、よっちゃん言ってなかった。

「何て、言いに来たの?」とお母さんの横に跪き顔を覗きこむとお母さんは微笑んだ。

「僕の我侭で美貴ちゃんと別れました。すみません。ってそれだけよ。」とお母さんは美貴の頭を撫でた。

「喧嘩別れじゃないんでしょ?どっちが悪いでもないんでしょ?」

お母さんの言葉に美貴は黙って頷いた。

「それなのに、美貴が何も言ってこないから、本当は別に何かあったんじゃないかって、お父さん、東京は怖いから、って心配してたのよ。帰ってこないし。」
「東京は怖いからって・・・何も、無いよ。ホント、普通にバイバイって別れただけ。」

お母さんは「そう。」と言って畳んだ振袖を部屋の端に置くと部屋を出て行った。
美貴もお母さんの後について部屋を出た。リビングでお父さんがタバコを吸ってる。
390 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:04
「お父さん、散歩行かない?」と美貴が声をかけると驚いた顔して美貴を見るお父さん。
「行こうよ。」と美貴がもう一度言うとお父さんは慌ててタバコを消した。

「ちょっと出てくる。」とお母さんに言うお父さんの声は少し嬉しそうだった。

お父さんの隣に並んで歩く道は懐かしくてよっちゃんとの思い出が一杯だった。

「よっちゃん、来たんだってね。美貴、知らなかったよ。」
「あぁ、そういうことも、あったかな。」とお父さんは遠くを見ながら答えた。

「今、よっちゃんと友達やってるんだよ。たまにご飯食べたり、お酒飲んだり。」
「そうか。」
「うん。美貴、傷ついたりしてないから、心配しないで。」

お父さんは何も言わなかった。

よっちゃんとよく自転車で来た草むらが見えると美貴は足を止めた。

「どうした?」と振り向き足を止めるお父さんに美貴はゆっくり歩み寄りまた足を止める
391 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:04
「あそこ、よく、よっちゃんと来て色々話してたんだ。」と美貴は川岸を指差した。お父さんは眉間に皺を寄せて美貴の指先に視線を向けた。

「美貴ってずっと冷めた子で可愛くなかったでしょ。」
「そんなことないぞ。可愛かったぞ。」
「そう?でも、全然笑ったりしなかったでしょ。小学生のときも中学生のときも。」
「難しい、年頃だからな。」
「色んなことがくだらなくて、馬鹿らしくて、つまらなかったんだ。あの頃。」
「そうか。」
「よっちゃんに出会って変わったの。今までくだらないって思ってたことが大切になって馬鹿らしいって思ってたことが素晴らしいって思えて、つまらなかったのが全部楽しくなった。そしたら、美貴、いつの間にか笑うようになってた。」

お父さんは背の高い隙間からちょっとだけ見える川を見ながら何も言わずにただ、美貴の話を聞いてくれた。

「よっちゃんのこと凄い好きでよっちゃんと出会えて良かったって思ってる。凄い、いい恋してるって思ってるんだ。」

美貴が笑ってお父さんを見上げるとお父さんは難しそうな顔して美貴を見た。
392 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:04
「恋、してるって進行形なのか?」

美貴は黙って微笑んだ。

「帰ろうか。もう直ぐ夕飯だし。」と美貴は来た道を戻り始めた。ゆっくりと美貴の後ろを着いてくるお父さんの手をとるとお父さんは照れたように困ったような顔をしたけれど嬉しそうに笑った。


393 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:05
 
394 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:05
大晦日、お兄ちゃんは彼女を連れて帰って来た。
年が明けたら結婚すると決まっている。
ただ、籍を先に入れて結婚式は夏あたりになるみたいだ。

「なつみさん。お腹触っていい?」

お兄ちゃんの彼女、なつみさんは美貴が中学のころから家によく来ていたからよく知っていた。お兄ちゃんの中学生の頃からの恋人。

「いいよぉ。」と微笑むなつみさんのお腹に手をあてた。

「予定日、いつだっけ。」
「2月20日だよ。」
「美貴と近いな。」
「もう、男の子か女の子か分かってるの?」
「分かってるけど聞いてないんだ。」
「そっか、楽しみだね。」
「生まれたら見に来てね。」と微笑むなつみさんに美貴も微笑んで頷いた。


395 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:05
紅白歌合戦も中盤に差し掛かった頃、美貴の携帯の着メロが鳴り響いた。
美貴はディスプレイを確認してから通話ボタンを押して耳に当てた。

「どうしたの?」
『もう実家にいる?』
「うん。一昨日の夜帰ってきたから。」
『そっか。早かったんだ。』
「東京にいてもやること無いしね。」
『初詣、誰かと行く約束してる?』
「してない、親と行こうかなって思ってた、お兄ちゃんも帰ってるし。」
『そっかぁ。』
「よっちゃんは?」
『美貴と行こうかなって。』
「美貴とか。」
『うん。無理そう?』
「大丈夫だよ。」
『じゃぁ、迎えに行く。』
「大丈夫、どこかで待ち合わせにしよう。」
『どうして?叔母さんにも挨拶したいし。』
「気まずくない?」
『大丈夫。美貴が気まずい?』
「そんなことないよ。」
『じゃ、迎えに行く。30分後くらいでいい?』
「うん。」

後で、と電話を切るとお母さんもお父さんもお兄ちゃんも美貴を見ていた。
396 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:06
「吉澤君?」と聞くお兄ちゃんに美貴は頷いた。

「なに、彼氏?あぁ、高校の時からラブラブの?」と言うなつみさんに美貴は苦笑した。

「別れた男と良く、普通にしてられるなぁ美貴は。」と言うお兄ちゃんの背中を思い切り叩いた。

「いてぇなぁ。」と言うお兄ちゃん。

「美貴とよっちゃんは友達なんだからいいじゃん。」
「男と女に友達とかあるかバーカ。」
「あるよね、なつみさん。」
「んー。ある、かな。」
「でしょ。」と美貴はなつみさんに笑顔を向けた。

「でも、恋愛感情、一度でも持ったら、成り立たないんじゃないかな。」

ほら見ろという顔のお兄ちゃんに美貴はベーと舌を出して見せた。

「美貴とよっちゃんは友達になれてるよ。」となつみさんに言うと「そっか。」と笑ってくれた。

397 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:07
よっちゃんは30分後ぴったしに迎えに来た。
お父さんは顔を出さなかったが、お母さんが美貴と一緒に玄関にやって来た。

「ご無沙汰してます。」と白い息を吐き出して言うよっちゃんにお母さんは「美貴のがご無沙汰なのよ。」と笑った。

「帰ってなかったの?」とよっちゃんは美貴を見た。

「忙しかったの、就活で、その後は仕事で慣れるのにさ、色々ね。」

美貴はそう言って、コートを羽織って靴を履いた。

「じゃぁ、行ってきます。」と美貴がお母さんに言うとお母さんは手を振った。

「お借りします。ちゃんと、送り届けますから。」とよっちゃんは頭を下げた。
398 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:07
よっちゃんと並んで歩く、懐かしい道。
別れてから初めて歩く、二人の思い出の道。
いつも手を繋いでいるか、自転車に二人乗りして通るその道を初めて少し距離を置いて並んで歩いた。

「よっちゃん、美貴と別れてからうちに来たんだってね。」

美貴が最初に口を開きそう言うとよっちゃんは「うん。」と美貴を見て微笑んだ。

「別に、いいのに、親になんか報告しなくても。」
「駄目だよ。親は子供のこと常に心配してるんだから、特に女の子はいろんな意味で。」
「ん。そうだね。お父さん、凄い心配してたみたい。」

よっちゃんは「そっか。」と申し訳なさそうに呟いた。
399 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:08
「よっちゃんのせい、じゃないよ。美貴のせいでも、誰のせいでもない。」
「そうかな。僕の気持ちが100パーセント美貴に向かわなかったせい、それははっきりしてることだよ。」

常に、100パーセントの気持ちで美貴を思ってくれてたよっちゃん。
きっと、よっちゃんだから、100パーセントじゃないと駄目なんだろうな。99パーセントの気持ちでも付き合ってる人たちなんて一杯いるんだろうけど。よっちゃんは駄目なんだ。だから美貴も100パーセントの気持ちでよっちゃんを思ってた。よっちゃんがそうしてくれたように美貴もそうしてた。

よっちゃんはそう言いながら美貴の少し前を歩いた。

「実家にね。」と言うよっちゃんの背中に「うん。」と答えるとよっちゃんは一瞬振り返って笑った。いつも真横にいたからこうやって話すのはなんだか新鮮だった。

「実家に帰るといつも思うんだ。僕って実家に帰っても友達いないなって。高校の友達って美貴か石川しか連絡先しらないの。それ、気がついたの美貴と別れてから。」

よっちゃんは振り返り、美貴を見ながら後ろ向きで歩いた。
美貴はそんなよっちゃんに「転ばないでよ。」と少し微笑んだ。
400 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:09
「美貴を中学のころから追いかけて高校3年間、ほとんど毎日一緒に過ごして、東京に行った。」
「うん。」
「22年生きて来て、6年以上を美貴と過ごしてさ。ここら辺にある僕の思い出って美貴とのことばっか。他に思い出す記憶なんてないくらい。」
「美貴もだよ。」
「そっか、よかった。僕だけじゃなくて。」と笑うよっちゃん。

なんでそんな話をするのか美貴は少しだけ不思議に思った。
よっちゃんはくるっと背中を美貴に向けて歩き出す。

「明後日、クラス会じゃん。」
「うん。」
「石川に言われた。美貴と二人で来たら皆、僕等のことまだ付き合ってたのかって話題になるよって。」
「ごっちんも言ってた。皆、まさか美貴たちが別れてるなんて思ってないって。」

よっちゃんは振り返り「そうなんだ。」と笑った。
401 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:09
「美貴ちゃん、それ分かっててクラス会行く?」

歩くペースを緩めて美貴と並ぶよっちゃんに美貴は笑顔を向けた。

「ん。大丈夫だよ。別に気にしない。」
「そんなの全然、気にしないでクラス会行こうなんて誘っちゃったからさ。」
「美貴が他人の言うこと気にするとでも?」

よっちゃんは見上げた美貴の顔を見て「思わない。」と笑った。

402 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:09
近所の神社はここら辺の人が皆集まって、東京とは比べられないけどそれなりに人が溢れている。
よっちゃんは後ろにいる美貴を気にしながら人ごみを別けて美貴の歩く道を作ってくれてる。付き合っていた頃は美貴の手を引いてくれてたな。なんて思いながら美貴はよっちゃんの後をついて歩いた。


「なに、お願いした?」

お参りを追えて人ごみから少し離れた場所で屋台で買った焼きそばとたこ焼きを頬張る。

「よっちゃんの仕事が決まるようにって。」と美貴が笑うとよっちゃんも「なんだよぉ。」と笑った。

403 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:10
「はい。たこ焼き。」と美貴は半分残したたこ焼きとよっちゃんの手の中で半分残る焼きそばのパックを交換した。
いつもしてたから、凄い自然に、そうしてた。

「美貴は変わんないね。」とよっちゃんはたこ焼きを頬張った。

「美貴は変わらないよ。だって、よっちゃんに会って美貴は変わったんだから、もうこれ以上何に変わる?」と言って美貴も焼きそばを頬張った。

よっちゃんは「何だろうね。」と言いながらまた、たこ焼きを頬張った。
食べきれなかった美貴の焼きそばはよっちゃんのお腹の中に納まるのもいつものことだ。
404 名前:静かな愛5 投稿日:2006/11/24(金) 23:10
除夜の鐘を突いてからよっちゃんに家まで送ってもらった。
家の中ではお父さんとお兄ちゃんがお酒を飲んでいてキッチンでは楽しそうにお母さんとなつみさんが御節の仕度をしていた。

美貴はカップに紅茶を入れて自分の部屋に入った。
カーテンを開けて見上げた夜空は星が一杯見える。
よっちゃんも見ているかな。なんて思いながら美貴はしばらくその星空を見上げていた。


405 名前:clover 投稿日:2006/11/24(金) 23:23
本日の更新以上です

>>387-404 静かな愛5

もう、今月も終わりですねぇ。
藤本さんの写真集とリボンのDVDが楽しみです。

また、長くなるのでクラス会は次の更新にしました。

吉澤君の行動・・・どうしよう(;^。^A アセアセ・・
どうにかなるはずw

>384 :ももんが 様
いつもレスありがとうございます。

>今回美貴ちゃん視点ということもあって、かなり美貴ちゃんい感情移入してしまいます。
藤本さん視点だけなんでよっちゃんのことどうしようか悩みまくりですw

最後までよろしくです。


>385 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>よっちゃんがどの様な答えをだし、行動するのか楽しみしてます。
どうしようw

最後までよろしくです。

>386 :naanasshi 様
いつもレスありがとうございます。

>藤本さんが切ないですねぇ吉澤くんの中の答えが気になります
どうしようw

>石川さんと後藤さんは珍しくダークな感じですねw
ダークですかなりw

最後まで宜しくです。
406 名前:naanasshi 投稿日:2006/11/25(土) 21:24
更新お疲れさまです
友情と愛情の間を迷う二人がもどかしいw
マイペースなよっちゃんとそれを見守る美貴ちゃんがなんだかほんわかしてて良いですね
407 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/26(日) 01:42
飯田さんに幸あれ
408 名前:ももんが 投稿日:2006/11/26(日) 20:55
更新お疲れさまです。
よっちゃんわざわざ実家に行くなんて、律儀ですね〜。
一足お先に年末気分を味わえました。
409 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/27(月) 00:03
更新お疲れ様です!
実家に来てくれるのは嬉しいけど
ちょっと辛い感じがしますね。・゚・(ノД`)・゚・。
よっちゃんの今後の行動楽しみにしてます
410 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 20:59
クラス会の日、よっちゃんは家まで迎えに来てくれた。
「懐かしくない?」と自転車を見せるよっちゃんに美貴は微笑んで、あの頃のように後ろの荷台に座った。

ゆっくり、動き出す自転車。
美貴の掌に伝わってくるよっちゃんの体温。
時間が戻ったみたいになる。

よっちゃんは黙ったまま、美貴を乗せて、クラス会の会場に向かった。会場は美貴たちが通った、学校の目の前のレストラン。
美貴はよっちゃんの背中に頭をくっつけて流れる景色を懐かしんだ。
何度、この景色をこうやって見ただろうか。
また、こうやって見れることが凄く嬉しくて、幸せだった。
411 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:00
「よっしー。おそーい。」と言う甲高い声が聞こえてきたのは学校の門の前に着くと直ぐだった。
石川さんの声は特徴があるから直ぐに分かる。

「別に石川と待ち合わせしてないし。」とよっちゃんは言った。
よっちゃんは、ある意味冷たい。
それは、正直だからだと美貴は思う。
よっちゃんは大切にするものだけを大切にする人だから。
その大切になれた美貴は幸せだけど、そうでない人から見たらよっちゃんは冷たい印象しかないのかもしれない。

「あ、藤本さんも一緒だったんだ。」と近づいてきた石川さんは敵意の声で言う。
美貴は「美貴も一応、クラスメイトだし。」と苦笑した。

「美貴、行こう。」とよっちゃんはレストランに向かって歩き出した。



412 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:01
レストランにはもう、既に人が集まっていて、美貴たちが入ると冷やかしの歓声が沸いた。
皆、美貴たちはまだ、続いていると思っている。
美貴とよっちゃんは苦笑しながらそれらの言葉を聞き流した。

「あれぇ、二人別れたんだよ。」と聞こえてきたのはごっちんの声だった。
皆が「うそ。」とか「なんで?」とかごっちんに向けて質問を投げだすとごっちんは美貴を見て笑った。

「本人たちに聞けばいいじゃん。」とごっちんが言うと皆は一斉に美貴たちに視線を向けた。

「僕と美貴の問題だから、皆に関係ない。」とよっちゃんはそれだけ言って奥の席の方に美貴を連れて行った。

皆はよっちゃんのその言葉に静まり返りまた「久しぶり。」などと回りの人と会話をし始めた。

「よっちゃん、言い方悪いよぉ。」と美貴がグラスに置いてあったジュースを注ぎながら言うとよっちゃんは「しょうがないじゃん。」と向かいに座ったごっちんを見た。

「えぇ、後藤が悪いの?事実じゃん。」と言うごっちん。
美貴はよっちゃんにグラスを渡してごっちんの分も注いだ。

「私もここに入れて。」とやって来た石川さんにもジュースを注いで渡した。

「ありがと。」と言う石川さんはさりげなくよっちゃんの隣に入った。美貴は苦笑してごっちんの隣に移動した。
413 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:03
「中澤先生がいらっしゃいました。」と言う幹事の声。
入口から入ってきた中澤先生は当時も派手だったのに、更に派手になっていて美貴たちは少しだけ笑った。

先生の挨拶の後、近くの席同士で懐かしい話に花を咲かせる元クラスメイトたち。
美貴だけがなんだか微妙だった。

「あ、この料理ってこないだ行った店のに似てない?こっちのが美味しいよ。」と魚料理を前にごっちんが美貴の皿に取り分けてくれた。

「ごっちんと食事行ってるんだ。」と石川さん。
「たまにね、オフィスが同じビルだから。一緒になったときとかね。」

美貴はなんでもないように答えて取り分けてもらった魚を口にした。

「ね、こっちのが美味しいでしょ。あの店だめだなぁ。」と言うごっちん。

「美貴はこっちのが好きだろ。」とよっちゃんが美貴の皿にお肉料理を取り分けてくれる。

「じゃ、よっちゃんこれ食べて。食べきれないよ。」と美貴は残っていた魚料理をよっちゃんの皿に乗せた。
自然にそうしてた。
付き合っていた頃、そうしてたから。
思わず、そう、してた。
414 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:03
「別にあげなくても、まだあるよ。ミキティ。」と言うごっちん。
ごっちんと石川さんの視線に気がつき美貴は苦笑した。
よっちゃんは「いいよ、勿体無いし。」と美貴の残りのそれを食べている。

思えば、初詣の夜も昔と同じように食べ物を分け合っていたなとよっちゃんに視線を向けながら思った。よっちゃんも気にしていないように、美貴も今まで気にしていなかった。
美貴たちの間でそれは当たり前のこと、だったからだろう。
でも、友達だったら違うんだ。
ごっちんとそんなことしないし。

なつみさんが言っていた「恋愛感情、一度でも持ったら、成り立たないんじゃないかな」
と言う言葉が思い浮かんだ。

美貴とよっちゃんは成り立ってない?

「美貴、何飲む?」とよっちゃんが言うのと同時にごっちんが空いた美貴のグラスに白ワインを注いでいた。
美貴は苦笑してよっちゃんを見た。

「これでいいよ。」
「そう、次、飲みたいの言えな。」と言うよっちゃんに美貴は笑みを返す。

「違うのが良かった?」
「大丈夫。」

ごっちんはよっちゃんを見ながら自分のグラスにもワインを注いだ。

415 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:04
「よしこさ、ミキティと別れたのに自分の女みたいに振舞うのやめない?」

いきなり言い出すごっちんに美貴は驚きよっちゃんはごっちんをじっと見ていた。

「別にそんなつもりないけど。」と言うよっちゃんにごっちんは苦笑した。

「なら、入ってきたときに皆に言えばいいじゃん。別れたって。後藤が言わなかったら皆二人は付き合ってるって思ったまま、クラス会始まってたよ。」
「別に皆に一々、報告すること?付き合ってるって報告だってしてないんだからいいんじゃない?」
「ミキティだってよしこがそんな態度だと困るだろ。」

よっちゃんの視線が美貴に向いて美貴は少しだけ微笑んだ。

「美貴も別に皆に報告しないととか思わないよ。よっちゃんと美貴の問題だし。」
「一番大切な友達の肩持つのは当たり前?それとも未練ある男の言いなり?」

美貴はごっちんを呆れた顔で見た。

「美貴は別に他人にどう見られてようと気にしないって言ってるの。皆が付き合ってるって思ってようが別れたって思ってようが美貴には関係ないの。どっちの肩もつとかじゃないから。」

美貴はそう言うとよっちゃんは苦笑していた。
よっちゃんも美貴と同じ考えなんだろう。

多くの人にいい人だとか優しい人だと親切だなんて思われたくない。だからと言ってわざと意地悪なことをするわけじゃないけれど。
美貴は本当に大切な人だけにそう言う人間で居たい。別に恋人に限らず家族も含めて。自分の中で特別な存在な存在の人だけに。
416 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:04
「それって自分勝手だよね。」と石川さんの視線を感じた。
「そうかもね。でも、それが美貴だから、仕方ないじゃん。そんな美貴でも受け入れてくれる人いたからいいし。」

美貴がよっちゃんを見ると「美貴が自分勝手なら僕もそうじゃん。」とよっちゃんは微笑んだ。

「よっしーは自分勝手なんかじゃないよ。優しいよ。」と微笑む石川さん。
よっちゃんは苦笑してからため息をついた。

「石川に優しくした覚えなんて一度も無いけど。」
「されたこと無いね、うざがられるばっかり。」

笑う石川さんの笑顔はなんだか、悲しそうだ。

「お姉ちゃんのどこがいいんだか、」とため息をつきながら呆れたように石川さんは笑った。

「寄って来る女がいるならその中で済ませればいいのに、態々追いかけたりしなくてもさ。相手にされてないんだろ?梨華のお姉ちゃんに。」

よっちゃんはごっちんの皮肉な言葉に反応しなかった。
ただ、黙ってごっちんを見るだけのよっちゃんに苛立ちを感じているごっちん。
そんな風に見えた。
417 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:05
「中学のときからそうだよな、ストーカーみたいに気に入った女のことだけ追いかけるの。」

そう言えば、よっちゃんはごっちんと石川さんと同じ中学だったっけ。
それなのに、よっちゃんは石川さんのことをキチンと認識したのは高校2年のときだ、同じクラスになってから同じ中学だったことも知った様子だったっけ。


「部活も辞めて、美貴のこと追いかけて。自分勝手にも程があるっての。」

ごっちんはそう言ってからタバコに火をつけた。
よっちゃんは黙って聞いているだけ、別に反論もしないだろう。
興味を示してないもん、ごっちんに対して。
こうやって、第三者を交えて会話をすると美貴と一緒にいるときのよっちゃんと全く違うことが凄い良く分かる。
全く違うって言うのは言葉が違うかな。
よっちゃんは凄い偏った生き方をする人だから、興味のないものに対して全く反応しないだけ。だから、自分勝手に見える。実際、そうなのかもしれないけど。
美貴もそう、興味のないものに反応しない。でも社会人になって、少し人と合わせることが出来るようになったかな。

「ごっちん、言い過ぎ。別にごっちんに迷惑かけたわけじゃないじゃん。」とごっちんと咎めたのは石川さんだった。
ごっちんは、石川さんを見ると苦笑した。

「迷惑かけられてるよ。」と呟いて煙をフーっと吐き出した。

418 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:05
「なんや、クラスになじんでなかった人らでかたまっとるんか?」とやって来た中澤先生。

「挨拶こんのお前らだけや、こっちっから来てやったわ。」とごっちんの隣に腰を降ろした。

「なんや、吉澤。」と振られたよっちゃんは中澤先生に首を傾げた。

「僕?」
「つまらなさそうな顔してるやんか。」
「別につまらなくないですよ。」
「石川とは同じ大学いったけど皆とは久しぶりなんやろ?」
「そうでもないですよ。美貴とは会ってるし。」

中澤先生は美貴の方を向いて笑った。

「なんや、別れてもくっ付いてるん?」

美貴は苦笑して「友達だから。」と答えた。

「で、藤本は短大でて何しとるん?」
「事務職に就きました。」
「無難やな。藤本らしくないなぁ。」

美貴らしいってなんだ?普通じゃいけないのか?と美貴は苦笑した。
419 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:06
「もっと、なんか人と違うことするかと思っとったわ。後藤は?」
「後藤、ミキティと同じビルで働いてます。」
「何の仕事や?」
「システム開発。」
「ほぉー。女の尻追いかける仕事につかなかったんか。」

ごっちんは苦笑して「その仕事、あるならしたいですよ。」と言った。

「今でも、してるじゃん。」と美貴が言うと先生は大笑いをした。

「なんや、うちにもお誘い来てや。後藤なら大歓迎や。もう生徒と教師の関係じゃないしな。」
「簡便してよぉ。」とごっちんは頭を書いた。
「なんや、年上は好かんか?」
「そこまで、許容範囲は広くないです。」

よっちゃんの視線を凄い感じてよっちゃんに視線を向けて美貴は笑った。
嬉しくて。

あの頃、美貴が暮らすの男子に話しかけられたりしてるとこういう目をよくしてた。
そんな日は決まって美貴を屋上に連れ出して、キスをしてきたっけ。
「美貴ちゃん独り占めの時間。」とか言って美貴に膝枕をねだったりしてきた。

「あ、先生ビールでいいですか?」

空いていたグラスに気がついてそう尋ね確認してからビールを注いだ。

「なんで、あんたら別れたん?」ビールを注いでる美貴の顔を覗きこみ言う先生に美貴は笑みを返した。

「秘密主義は相変わらずか。」と中澤先生は笑ってビールを飲んだ。
420 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:07
「ちょっと、失礼。」と立ち上がったよっちゃんに美貴は視線を向けた。
口だけ動かして「トイレ。」と言い残していくよっちゃん。

「あんたら、東京でも集まってんのか?」

中澤先生の質問に応えたのは、石川さんだった。

「私はよっしーと大学一緒だから、ごっちんとミキティは同じ場所で仕事してるし。でも4人でって言うのはないですよ。」
「藤本は吉澤と会ってるんやろ?」と言う中澤先生に頷くと先生は笑ってから石川さんを見た。

「それでなんで4人で会わへんの?」
「だって、別に・・・。」

石川さんは言葉に詰まりごっちんに視線を向けた。

「恋敵がいたら石川的には動き難いか?」
「そんな・・・恋敵なんて。」

石川さんは困ったように笑って、ごまかすように中澤先生のグラスにビールを継ぎ足した。

「もう、藤本と終わってるんやから、遠慮もなんもいらんやろ?」

石川さんは苦笑しながら自分のグラスにもビールを注ぐ。

「それが、そうでもないんですよ。」
「なんや?」

笑って言うごっちんに中澤先生は興味深々といった目で見る。

別に、誰も事実を話されて困ることはない。
そう思ったから、美貴はごっちんを止めたりしなかった。
石川さんが困ったようにごっちんを見てる。

「よしこ、今、梨華のお姉ちゃんに恋してるから。」

中澤先生は「あはは。」と声を出して笑った。

「なんや、あんたら、部外者に吉澤とられたんかいな。」

思わず苦笑してしまった。
421 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:08
「しかも、石川のお姉さんか。あぁ、綺麗な子やったもんな。」

「知ってるんですか?」と言うごっちん。

「1年の夏までうちの高校に居たからな。離婚されてお父さんと東京にいったんやったな?」と言う先生に頷く石川さん。

だから、苗字違うんだ。と美貴は1人納得していた。

戻って来たよっちゃんは美貴たちの会話に何も興味を示さずに自分の元居た場所に腰を降ろす。

「吉澤は相変わらずやなぁ。藤本と別れて石川のお姉さんとは。先生もビックリや。」

よっちゃんは「言ったの?」と言う目で美貴を見る。
美貴が苦笑すると、よっちゃんはごっちんと石川さんを見てため息をついた。

「なんや、そのため息は。」
「別に好き、とかじゃないですよ。気になっただけ。」

ごっちんは「はぁ?」と声を出した。

「なんや、それだけで別れたんか。」

よっちゃんは笑った。

「それだけ、って思うか思わないかは人それぞれじゃないですか。」
「まぁ、そうやな。」
「ねぇ、先生。」と尋ねるよっちゃんに先生は「ん?」と聞く体制に入った。

生徒だったころから思ってたけど、中澤先生は言いたいことズバズバ言う人なのに。聞くのも上手。聞き出すのが上手なのかな。先生が自分のこととか思ってることを話してくれるから、話したくなるのかな。
422 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:08
「大人って。本当のこと言われると、凄い起こるよね。」
「怒られたんか?」
「いつも、怒られてるよ。面接で。」

中澤先生は笑った。よっちゃんのビール瓶を突き出して「飲め。」と言ってグラスに注ぐ。
ごっちんも石川さんもよっちゃんと先生の会話をじっと聞いていた。もちろん、美貴も。

「大人が困る質問ばっかしとるんやろ。何言ったん?」
「志望動機を聞かれて。」
「で?」
「会社に魅力は感じませんでした。あなたなちはこの会社にどんな魅力を感じますか?」

先生は大笑いした。
石川さんとごっちんは苦笑している。
美貴は、よっちゃんらしいなって思って笑った。

「魅力、感じなかったなら受けに行くなよ。」とごっちん。
それに、同意して頷く石川さん。

「聞きたかったんやろ。大人が何を思ってその会社で働いてるのか。」
「うん。それと、質問するなら、した方の意見も聞きたかった。」
「いいと思うで吉澤の生き方。でも、会社に勤めたりできんやろな。よっぽど評価してくれる採用担当の人間がいない限り。」

よっちゃんが笑うと
「先生。駄目だよ。ちゃんと就職するように言って下さいよ。」と言う石川さんに先生は苦笑した。

423 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:09



424 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:11
レストランでの1次会が終わり、2次会に行くという話があるなか、レストランをでるとよっちゃんは美貴の手を掴んだ。
よっちゃんを見上げると視線を店の前にある学校に向けるよっちゃん。
美貴は頷いて微笑んだ。

卒業してから一度も来ていなかった学校。

2次会に行く人たちを見送って美貴とよっちゃんは学校に向かって歩き出した。

「私も行きたい。」と背後から足音と石川さんの声。
よっちゃんはあからさまに嫌そうな顔をする。

「そんな顔しないの。美貴たちだけの学校じゃないんだから。」
「分かってるよ。美貴と二人で久々に回りたかったからさ。」

ごっちんも「卒業式以来だし。」とやってくる。

4人で門を抜け懐かしい下駄箱がある入口を目指した。
自分たちが使っていた下駄箱を探した。
425 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:12
「亀井さんって子が今、使ってるんだ。」

美貴が使っていた下駄箱は今は別の生徒が使っている。当たり前だけど。
どんな子だろうな。いい子かな。なんて考えてしまう。

「僕のところは田中君だ。」
「私のところは道重さん。」
「後藤のところは新垣君。」

みんなの下駄箱もそれぞれ別の生徒。
どんな子だろうとか話しながら教室に向かった。

「かわってねー。」とごっちんが一番に教室に入っていった。

「私、最後この席だった。」と自分が使っていた席に座る石川さんに続き「後藤、ここ。」とごっちんも自分の席だったろころに座った。

二人とも、その席だったんだ。と今、初めて二人が教室のどこにいたかを知った。
426 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:13
「美貴はそこだよね。うちもほとんど授業以外ここにいたな。」とよっちゃんと美貴は美貴の席だった場所に座る。

美貴の席の前の椅子を引いて背もたれに手をかけて美貴を見るよっちゃん。
こんな光景が毎日あった。
休み時間になるとよっちゃんは直ぐにココにきて、美貴の前の席だった人・・・誰だっけ。その子は直ぐにいなくなってくれてた。それでよっちゃんがこうやって座って。今日の帰りどこ行こうとか、今日はどっちの家で勉強するとか・・・
毎日が楽しすぎた。

「ちょっと、二人の世界はいらないでよ。」と寄って来る石川さん。
ごっちんは苦笑しながら一番後ろの席で石川さんを見ていた。

「後藤、体育館みてくるわ。」とごっちんが言って立ち上がる。
「私も行きたい。」と言う石川さん。

「よっしーもいこうよ。」
「体育館は別にいいや。行ってきなよ。」とよっちゃんは石川さんに手を振った。
仕方ないという顔でごっちんの後を追って教室を出て行く石川さん。
427 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:13
「やっと、二人になれた。」と微笑むよっちゃん。

「何その言い方。彼女に言う言い方みたいじゃん。」
「そっか、そうだね。ここにいると高校生に戻ったみたいに思っちゃうよ。」

笑うよっちゃんに美貴も笑った。
美貴も錯覚しちゃう。この場所とよっちゃんの言葉に。

「屋上、行かない?」と立ち上がるよっちゃん。

美貴は苦笑して首を横に振った。
あの場所は思い出が多すぎる。
行ったら、本当に錯覚しちゃう。
間違ったことしちゃう。
そんな気がした。

「じゃ、待ってて見てくるから。」とよっちゃんは美貴の頭にポンと手を乗せて教室を出て行った。
428 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:14
窓から見える景色は美貴が通っていた頃とあまり変わっていなかった。

「いつか、一緒に屋上行ける日がくるといいな。」

窓の外を眺めながらそんなことを呟く自分に苦笑した。
そんな日ってきっと寄りを戻したときだけじゃん。

きっと美貴はよっちゃん以外好きにならないと思うから。
429 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:15
先に戻って来たのはごっちんと石川さんだった。
よっちゃんはと言う質問に美貴は「ひとりで校舎見てる。」とだけ応えた。
家族と予定があるというごっちんは先にひとり帰っていった。

石川さんと教室に二人きりになった空気は凄い気まずかった。

「藤本さんてまだ、よっしーを好きなんだね。」と聞こえてきた石川さんの声に外を見ていた美貴は振り返った。
一番後ろの席の机にお尻を乗せた石川さんが美貴を見ている。
美貴は何も言わず、ただ微笑んだ。

「今日、見てて思った。高校生のころみたいだったもん、二人とも。」

美貴は思わず苦笑した。
誰が見ても、美貴はよっちゃんを好きと分かるんだな、なんて。
でも、事実だから別にいいんだけど。
それってよっちゃんにも分かってるってことだよね。

「美貴とよっちゃんて友達には見えない?」

石川さんは顔を少し引き攣らして笑った。

「見えるわけないじゃない。」
「そっか。」

やっぱり、友達ってわけにはいかないのかな・・・
430 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:16
「よっしーってお姉ちゃんの前だと大人ぶってちょっと笑えるんだよ。」

クスっと笑う石川さんを美貴は眺めた。景色を眺めるみたいなそんな感じ。
なんだろう、美貴の知らないよっちゃんのことの話しなんだけど。
別に、って感じで・・・

「藤本さんといるときって甘えたり、いつも笑ったりしてるじゃない。私といるときはムスってしててさ。ウザイですって思い切り顔に出してさ・・・でもいいの。中学のころから同じだったのに存在すら覚えてもらってなかったのに、今はまた、石川かよって言ってもらえるくらいになったし。」

石川さんは嬉しそうに話してる。
美貴はそんな石川さんの気持ち、理解できない。
だって、美貴が知る前からよっちゃんは美貴を知っていたし。

「私ね、よっしーがお姉ちゃんに振られるの待ってるんだ。まだ、告白してないみたいだし。そしたら、振られたら、今度は私の番。」

黒板を見ていた石川さんがゆっくりと美貴を見た。
不意に合った視線に美貴の身体は金縛りにかかったみたく、動けなかった。

「だから、邪魔、しないでね。藤本さん。」

石川さんが笑った。
431 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:17
「クリスマス・イヴの日。大学にいたでしょ。」と言われ美貴はドキっとした。

「知ってたよ。お姉ちゃんからイヴの約束、石川さんに話したって聞いてたから。来るかなって思ってたらホントにいるんだもん。でも、その時思ったの。もしかして藤本さんより戻そうとか思ってるんじゃないかなって。違うかな?」

美貴は息をゆっくり吐き出した。

「好きだよ。よっちゃんのこと。それは認めるよ。美貴たちがより戻すときってよっちゃんの気持ちが美貴に戻って来たときだから・・・美貴がどうするとか、ないよ。」

石川さんは「安心した。」と笑った。

ガラガラと扉の開く音がして視線を向けるとよっちゃんが立ってた。

教室に視線をめぐらすよっちゃん。

「ごっちん、帰ったよ。」と美貴が言うとよっちゃんは「そっか。じゃ、うちらも帰ろう。」と言った。

美貴は頷いてよっちゃんの元に歩み寄る。

「石川さんは?」

座ったままの石川さんを見て言うと石川さんは「もう少しいる。」と手を振られた。

「行こう。」とよっちゃんに促されて扉を閉めた。
432 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:18
「石川と何はなしてたの?」

廊下を歩きながら聞いてくるよっちゃん。

「気になる?」
「んー。だってどうせ僕のことでしょ。」
「うん。そうだね。」
「で?教えてくれないの?」

美貴を見下ろして笑うよっちゃん。

「どうしよっかなぁ。」と美貴は笑った。

「えぇ、知りたいっ。」
「えぇ。知りたいの?」
「教えろぉ。」と美貴の後ろにまわり肩に手を置いて歩くよっちゃん。

「教えて欲しい?」とアゴをあげてよっちゃんの顔を見上げるとよっちゃんは凄い笑ってた。

「教えて、美貴ちゃん。」と泣きまねするよっちゃん。

「あはは、うそうそ。教えるって。」と肩にあったよっちゃんの手をとって美貴の横にくるように促した。

「飯田さんの前だとよっちゃんは大人ぶるって、石川さんにはウザイって顔して、美貴の前だと笑ってるって話だよ。」
「なんだよ。それ。」

よっちゃんは不貞腐れたように美貴の隣を歩いていた。
433 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:20
「大人ぶってるんだ?」
「だって、子ども扱いするからさ。でも、もうやめた。」
「辞めたの?」
「うん。疲れた。なんか。」
「そっか。」
「うん。」

疲れた、って言う言葉の意味は諦めたことと一緒なのかな。
気持ちを伝える前に、諦めちゃったのかな。
それとも、伝える気持ちがなかったのかな。
よっちゃんの顔を見ながらそんなことを色々考えた。

「ん?」と美貴の視線に気がついて笑うよっちゃん。
「なんでもないよぉ。」
「見てただけ?」
「そ、見てただけ。」
「見とれてたんだ。」
「見てただけ。」

美貴が小走りに階段を降り始めると「見とれてたんだろぉ?」と追いかけてくるよっちゃん。なんか、本当に高校生のころに戻ったみたいじゃん美貴たち。
434 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:22
下駄箱に着くと丁度、部活を終えた生徒がいた。
美貴が使っていた下駄箱に手を伸ばすちょっと大人しそうな子。

「亀井さん。」と美貴はさっき見たラベルに書いてあった名前を呼んでみた。
驚いたように振り返り美貴とよっちゃんに視線を送る亀井さん。

「えっ?あ、卒業生の方ですか?こんにちは。」と御辞儀する亀井さん。

「絵里、なにしとるん?はよ、しぃー。」と戻って来た男子生徒は美貴たちに鋭い視線を向けて亀井さんの隣に並んだ。

「なん?この人たち。」
「卒業生っぽい。」

小声で話す二人を見て美貴とよっちゃんは笑みを零した。

「付き合ってるんだ。二人。」とよっちゃんはさりげなく繋がれている二人の手を指差して微笑んだ。

恥ずかしそうに俯く亀井さんと堂々としている男子。

「亀井さんが使ってる下駄箱、美貴が使ってたんだ。」と言うと亀井さんは嬉しそうに顔を上げた。
435 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:22
「そうなんですか?なんかすごーい。でも、そうですよね。机とかも絵里が使う前が別の人が使ってたんですよね。そう考えると凄くない?ねぇれーな。」とテンションが急にあがってはしゃぐ様に話す亀井さん。

「すごかね。」
「れーなのところは誰が使ってたんだろ?あの、ここの下駄箱は誰が使ってました?」と亀井さんが指を刺した下駄箱はよっちゃんが使っていた場所だった。

「僕。偶然だね。」と笑うよっちゃん。

「すごーい。えっえっ、もしかして二人って付き合ってたりします?」
「何、失礼なこと聞いとぉーと。」
「だって、付き合ってたらジンクスみたいになるじゃん。ここの下駄箱使ってる二人は恋人とかさ。」
「アホくさ。」
「なんでよぉー夢ないなぁ。」
「そんなジンクスあったら迷惑な人だっておるっちゃろぉ。」
「んー。」

二人の姿がなんだか可愛らしくて美貴は自然と微笑んでた。

「付き合ってたよ。1年から卒業しても。」とよっちゃん。
「えっ。すごっ。ほら、れいな、やっぱりジンクスだよ。絵里たちも1年からじゃん。」

嬉しそうに笑う亀井さん。

「ジンクス、にはしない方がいいかな。僕等のことがジンクスになると二人は別れるよ。卒業してから。」

亀井さんの顔から笑顔が消えて美貴に視線を向けてきた。
美貴は苦笑して「二人はそうならないといいね。」と言った。
436 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:25
「僕等は別れたりせんもん。ずっと一緒におるっちゃけん。」と言う田中君だっけ。
よっちゃんもずっと一緒ってよく言ってたな。
側に居てってよく言ってた。
でも、離れていったのはよっちゃんからだったっけ。

「だから、ジンクスになんてしない方が良いって。」

よっちゃんは田中君を見て微笑んだ。

「彼女と過ごす時間、大切にしな。それだけで卒業してからココに来ると凄い幸せな気持ちになれるから。それが、ひとりでも来たとしてもね。」

微笑むよっちゃん。
屋上の景色はどうだったんだろう。
美貴と過ごした時間を思い出して幸せな気持ちになったのだろうか。
凄い、良い笑顔だ。

「だって。良い思い出一杯作りなね。」

二人は笑顔で頷くと手を繋いで去っていった。

437 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:26
「かわいいねぇ。なんか。」

靴を履き替えながら言うとよっちゃんは「そーだね。うちらのがラブラブだったけど。」と笑ってた。
よっちゃん、今日はやたら、高校のころの美貴たちを口に出すな。思い出すのは美貴もそう。だって、この場所には二人の思い出しかないし。仕方ないこと。
でも、この雰囲気に流されたらなんだかいけないって思う。

「乗って。」と自転車に跨るよっちゃんに頷き美貴は荷台に乗ってよっちゃんに捕まった。

「何回、こうやって美貴のこと乗せて帰ったかな。」と自転車を漕ぎながら懐かしそうに話すよっちゃん。
美貴はよっちゃんの腰に捕まって「何回かなぁー。」と応えた。
数え切れないもん。毎日、毎日。こうやって二人で帰ってたもんね。
438 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:27
「美貴はいつももっとギュッて僕に捕まってた。背中に顔くっつけて、よっちゃんの背中あったかーい。ってさ。」
「うん。してたね。」
「それ、されるの凄い好きだったなあ。」
「そうだったの?」
「うん。僕の背中は美貴のものー。みたいな、なんかすげー嬉しかったんだよね。」
「そっか。」
「んー。してくれないね、今日。」
「当たり前じゃん。今、よっちゃん彼氏じゃないもん。」

悪戯っぽく言うよっちゃんに美貴は背中を叩いて笑った。
「だよねー。」と笑うよっちゃん。

叩いていたよっちゃんの背中に美貴はオデコをくっ付けた。

「どうしたー?」と背中から響いてくるよっちゃんの声。

「よっちゃん。」
「ん?」
「冗談でもさ。そういう話するのやめよ。」

気持ち、抑えきれなくなるよ。待つって決めたのに。
戻って来てって、言っちゃいそう。

「ごめんね。」
「ん。」
「なんか、懐かしすぎてさ。」
「うん、分かってるよ。美貴も懐かしすぎたよ。」

キュっと止まる自転車。
顔を上げると懐かしい公園があった。

「同じ大学行ってたら・・・今も二人で通ってたかな。」と言うよっちゃん。
439 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:27

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440 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:28

美貴が先に短大の合格通知を貰って。
その1ヶ月後によっちゃんの大学の合格通知が届いた。
学校にも行かなくて良くて、二人で毎日通っていた図書館にも行く必要がなくなって、遊びに行くっていってもお金がない美貴たちのすることは散歩。
お金も掛からなくて二人でまったり出来て、美貴たちにとって、それは凄い幸せな時間だった。

「明日、卒業式だねぇ。」と美貴の肩に頭を乗っけて夜空を見上げるよっちゃん。
白い息をふーって吐くよっちゃんの頭に美貴は頭を乗っけた。

「卒業だよぉ。早かったね。3年。」
「ん。早かった。」
「楽しかった?」
「高校生活?」
「うん。」
「凄い楽しかった。よっちゃんと居られたからだね。」

「ありがと。」とよっちゃんの頬にキスをした。
微笑み、美貴を見上げるよっちゃんは美貴の頭を引き寄せて唇を重ねた。
441 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:28
「大好きな人にそう言われるとすげー幸せ。」と笑うよっちゃん。

「美貴もよっちゃんが笑うと凄い幸せ。」

照れながら二人で頭をくっ付けてまた夜空を見上げる。

「美貴ちゃんのマンションと僕のマンションまで歩いて10分。」
「うん。」
「勿体無いな、その10分。」
「じゃぁ。お泊りだ。」
「いいの?」
「一緒にいるんでしょ。美貴とずっと。」
「うん。居る。」
「じゃ、お泊りでしょ。」

「お泊りだぁー。」と美貴のお腹に顔を埋めてギュッ抱きついてくるよっちゃん。

凄く大切な存在。
美貴を幸せにしてくれるたった一人の人。
442 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:29
「東京でも楽しい毎日送ろうね。」とお腹で呟くよっちゃんに「うん。」と応えてよっちゃんの頭を撫でた。
お腹だけが凄い暖かくて、もっと暖かくなりたくてよっちゃんに覆いかぶさるように抱きつくとよっちゃんは「あったけー。」と笑う。

「美貴も凄い暖かい。」とよっちゃんの背中に顔をくっ付けて笑った。

443 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:29

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444 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:31
「ずるいよ。よっちゃん。」

自転車から降りた美貴をよっちゃんは苦笑して見ていた。

「やっぱり、ずるいよね。」と自転車のペダルをクルクルと回す。

同じ大学いけないのは仕方ないことで、それが原因で美貴たちは別れたんじゃない。

「同じ大学行ってたら、よっちゃんは飯田さんのこと気になったりしなかった?」

黙って首を横に振るよっちゃん。

「美貴から離れたのは、よっちゃんでしょ。」

昔から、美貴はよっちゃんに対して、お姉さんになる。
それは、よっちゃんが逃げたりしようとするとき。
逆に、美貴がそういうときはよっちゃんがお兄さんになる。

黙って美貴をみているよっちゃんの顔をあの頃、美貴がお姉さんになって怒っているときとはちょっと違って見えた。

「よっちゃんだったよね。飯田さんが気になるって言ったの。」もう一度、確認するとよっちゃんは頷いた。

「じゃぁ、そういうこと言わないの。」

よっちゃんは頷いて「ごめんね。」と謝る。
美貴はまた自転車に跨ってよっちゃんに捕まった。

「よし、じゃぁ。帰ろう。」とよっちゃんの背中をポンポンと叩いた。
445 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:33
「美貴はやっぱり美貴のままだ。」と振り向いて笑うよっちゃん。

「何それ。」
「ん?美貴は今でも高校生に見えるってことだよ。」と笑って自転車を漕ぎ出した。

「無理だよ。コスプレになっちゃう。さっきの亀井さんとか凄い若いもんピチピチだし。」と美貴は笑った。

よっちゃんの言っている意味がそういうことじゃないのは分かってる。
美貴は・・・よっちゃんと別れた日から時間が止まってるんだ。
それに気がついたのは、よっちゃんと教室に1人になったとき。
本当に一瞬だったけど、その時、初めてきちんと実感した。
よっちゃんと別れたんだってことを。
よっちゃんと屋上に一緒に行けなかったのはそのせい。

よっちゃんと別れても美貴はちゃんと実感してなかったんだ。
別れた現実より思い出の方が現実みたいで・・・。思い出にひとり取り残されてる。
友達だからって理由を作ってよっちゃんと会ったり、メールしたりして。

美貴もずるい。

でもさ・・・でも・・・
よっちゃんとの思い出多すぎて、濃すぎて消えないよ・・・
消せない・・・
消したくない・・・
よっちゃんは美貴とのこと整理できた?
美貴・・・できないよ。
446 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:33
ぎゅっとよっちゃんの腰を掴んだ。
ヤバイ、泣きそうだ。
オデコをよっちゃんの背中にくっつけて必死に泣くのを堪えた。

「してくれたじゃん。それ、やっぱり好きだなぁ。」と聞こえてくる声。

でも、美貴はその言葉に何も応えられない。
応えたら、泣いちゃいそう。
よっちゃんのこと待てなくなっちゃう。

「美貴?・・・美貴ちゃーん?どした?」

キーと自転車のブレーキがなって止まる。
よっちゃんに振り向いて欲しくなくて更に腕に力を入れた。
腰を掴む美貴の手に手を当ててポンポンと叩くよっちゃん。

「みーき?どうしたの?」

どうしよう・・・

「いいよ。ゆっくりで、待ってるから。自転車このまま止めておく?それとも恋で他方がいい?」

それにも応えられない美貴によっちゃんは「このままが良い?」ともう一度聞いてくれたので美貴はオデコを背中につけたまま首を横に振った。

「よし、出発。」と言って漕ぎ出すよっちゃんに心の中で「ありがと。」と呟いた。
447 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:34
「遠回りしような。」とよっちゃんは自転車を漕ぐ。別に美貴の返事を期待しない言い方で、よっちゃんは鼻歌を歌いながら美貴を乗せて自転車を漕いだ。

しばらくして、落ち着いてきた美貴はよっちゃんの背中からオデコを離して景色を見た。

美貴の家がある住宅街から少し離れた、長閑な田園風景が見える土手沿い。

「よっちゃん。ごめん。疲れたでしょ。」と言った美貴の声は少し掠れてた。

「大丈夫。美貴ちゃん軽いし。高校3年間でそーとー鍛えられてるから。」
「だから、美貴は軽くないって。」
「軽いよ。すげー軽いんだよ。だから、美貴がこうやって僕の腰に捕まってたり、顔を背中にくっ付けてると、美貴を乗せてるって実感してたんだ。」

美貴は黙ってよっちゃんの背中に頬をくっ付け目を閉じた。
昨日のこと見たく蘇る高校生活。

あぁ・・・よっちゃんだけがいけない訳じゃない。
美貴から離れたのはよっちゃんだけど・・・
100パーセント美貴だけを思ってもらえなかった美貴も悪い・・・
高校生の時と何が違ったんだろう。
448 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:35
あの頃は、いつも二人で過ごす時間大切にしてた・・・
高校のころは朝、よっちゃんが迎えに来てくれるのが嬉しくて早く朝にならないかなって毎晩思ってて・・・
東京に行って・・・目が覚めると隣によっちゃんが居て美貴はよっちゃんの寝顔がみたくていつもよっちゃんより少し先に起きてたっけ。
卒業しても、美貴の気持ちは何も変わってなかったはず・・・
よっちゃんが好きで、愛しくてたまらない気持ち。

「よっちゃん。」と美貴が呼ぶと「んー?」と背中から伝わってくる振動。

「美貴は何が足りなかった?」
「ん?」
「何パーセントくらい、飯田さんに気持ち行ったの?」
「1パーセントくらい。」と即答するよっちゃん。

「その1パーセント。美貴は何が足りなかった?」

よっちゃんはしばらく黙って自転車を走らせた。
美貴はよっちゃんの体温を頬に感じながらよっちゃんの答えを待った。

別れた恋人とこんな話をしながら
その人の背中に頬を当てて幸せを感じている。
やっぱり、美貴たちおかしいよ。
今の美貴たちを見たら誰だって恋人だと思うよね。
449 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:44
「ホントは100パーセント。」と突然、聞こえてきたよっちゃんの声と伝わる振動。

「僕って馬鹿だよね。たった1パーセントの気持ちで・・・好きになんてなれないよ・・・どう考えても・・・なれなかった。美貴に何かが足りないとかじゃないよ。僕は美貴を100パーセント以上、想って一緒にいたんだ。・・・僕の勝手。1パーセントでも美貴以外の誰かを思ってる自分が美貴と居ることに許せなかった。」

よっちゃんは自転車のスピードを緩め首を捻って美貴を見る。

「答えになってた?」と聞くよっちゃん。

堪える時間なんて無かった。
よっちゃんの顔を見た瞬間、美貴の目から涙が零れた。
450 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:44
美貴の涙を見て驚いた顔のよっちゃんは慌てて自転車を止めて美貴を降ろした。
ガシャンと自転車が倒れる音。
美貴がよっちゃんに抱きついたから・・・
よっちゃんの手は押さえてた自転車から離れて美貴を抱きとめてくれた。

「泣かしちゃってごめんね。」

美貴の頭を撫でながら「ごめんね。」と繰り返す。

美貴は声を漏らしてよっちゃんの胸の中で泣いた。

「っう。もぉー。泣く、つもり、無かったのに・・・」

やっと収まりかけてきた涙。
ゆっくりとよっちゃんの胸から顔を上げると優しい目で美貴を見ているよっちゃん。
頬に残る涙をよっちゃんの指が優しく拭ってくれる。

「よっちゃん。」
「ん?」
「馬鹿やろー。」
「知ってる、美貴の前だと僕は馬鹿だから。」と笑うよっちゃん。

「よっちゃん。」
「ん?何だよ。今度は笑って。」

美貴はきっと満面の笑みだろう。
泣いてすっきりしたんだ。

「別れてよかった。」

よっちゃんは「そっか。」と悲しそうに笑った。

「うん、良かった。」
「どうしてって聞いて良い?」
451 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:45
よっちゃんの身体を抱きしめた。
背の小さい美貴はよっちゃんの心臓辺りにほっぺをくっ付ける。

「どした?」
「今の美貴は中学生のときのよっちゃん。」

それだけ言って離れた。
よっちゃんは美貴を見て微笑んでる。

「バイバイよっちゃん。」

美貴の想い、考えをよっちゃんは分かってくれたんだと信じたい。

ゆっくりと後ずさる美貴をよっちゃんはニコニコしてみている。

「泣くなよ。」
「泣いてない。」
「泣きそうだぞ。」
「泣かないもん。」

二人の距離が離れていく。
452 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:46
「送らないでいいの?」
「大丈夫。歩いて帰る。」
「結構、あるぞ。」
「3年はかからないで帰れる。」
「当たり前じゃん。」
「よっちゃん3年、美貴を見てたんでしょ。」
「うん。」
「美貴もあと半年でよっちゃんと同じになる。」

よっちゃんはもう、何も言わなかった。
だから、美貴ももう何も言わず、右手を胸の前で左右に振った。

よっちゃんも同じように手を振る。

あと、5歩・・・下がったら背を向けよう。
そう、決めて手を振りながらゆっくり5歩下がってよっちゃんに背を向けた。
453 名前:静かな愛5 投稿日:2006/12/01(金) 21:46
中々、動かない美貴の足。

「美貴、空見てみてみ。」

背中から聞こえてくるよっちゃんの声。
ゆっくりと空を見上げると夕焼けの中に一番星が見えた。

動き出した美貴の左足。
きっと、美貴たちも何か動き出すよね。

美貴たちは友達でも恋人でもない。
別れた、恋人って言う関係。
そこから、またきっと何か始まるはずだよね。


454 名前:clover 投稿日:2006/12/01(金) 22:01
本日の更新以上です

>>410-453 静かな愛5

ちょっと、藤本視点だけだと文才のない自分にはよっちゃんの気持ちの変化とか・・・
どやって書いたらいいんだ・・・状態なんですが・・・
伝わっているでしょうか・・・心配だ。

>>406 :naanasshi 様
毎回レス有り難うございます。

早く、どうにかしたい感じの二人なんですがw
まだ、しばらく・・・続くかな

最後まで宜しくです。


>>407 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

えぇっと飯田さん。あまり登場しないかも(苦笑)


>>408 :ももんが 様
毎回、レス有り難うございます。

実家に態々行く人、あんまり・・・いや、いないですよね(苦笑)

最後までよろしくです。

>>409 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

別れた相手が実家にこられてもって感じしますよね(苦笑)

最後までよろしくです。
455 名前:naanasshi 投稿日:2006/12/02(土) 00:48
毎回大量更新お疲れ様です
なんか高校時代に戻りたいと思ってしまいましたあの頃は楽しかったなあ(遠い目)
よっちゃんと美貴ちゃん大人の階段登ってますねこれからが楽しみです

そして亀ちゃんの名前にめちゃくちゃ反応した自分は相当…すいませんw
456 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/02(土) 00:52
ミキちゃんセツナイよ
幸せになって欲しい
457 名前:名無し通りがかり 投稿日:2006/12/02(土) 01:07
一番のりだ。作者さん、乙です。

吉澤くんの心情なんとなくわかりますよ。
どっちにもなりそうでもどかしいです。私としてはハッピーエンド希望です。
これからも頑張ってください。
458 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/02(土) 08:42
み、美貴ちゃん・・・?
459 名前:ももんが 投稿日:2006/12/02(土) 21:10
更新お疲れ様です。
なんで藤本さんとよっちゃんはこんなに切ないんだ!
やきもきやきもきしてます。
後輩たち可愛かったです♪
460 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/02(土) 21:40
ミキティの言葉を受けてよっちゃんがどの様な行動をするのか、とても気になります。
461 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/03(日) 02:16
更新お疲れ様です
ミキティ視線だから読んでて
すごく辛いですね〜
まだまだ明るい光は見えそうにないですねw
462 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/12/08(金) 01:04
更新お疲れ様です。
うぅ〜せつないせつなすぎる!
こんなに胸がキュンとするみきよしはズルイです。
毎回泣きそうっす。
463 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 02:57
明けまして、おめでとうございます。今年も宜しくおねがいします。
そんな挨拶をしながら、仕事を始める。

新年を迎えた東京は賑やかだった。
東京にはなれたはずなのに。
久々に実家に帰ったから・・・うそ。
よっちゃんとあの町で過ごしたから。

よっちゃんは飯田さんを好きになれなかったって断言してた。
だから、きっともう、整理はついているんだろうな。
だから・・・錯覚するようなこと言ったりしたんだろうな。

よっちゃんの気持ちがあの頃と同じくらい美貴に向いてくれいるのかどうか・・・
向いてくれているんだと思う。
でも、それじゃ、また・・・
464 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 02:57
あのとき・・・美貴に何かが足りなかったんじゃなくて・・・
100パーセント以上美貴を想ってくれていても、1パーセントでも気持ちが別のものに向いてしまったら、よっちゃんは美貴から離れてしまう。
それを聞いたとき、ちょっと怖くて不安になったけど・・・
嬉しくて、幸せな気持ちになった。
それがよっちゃんだし、真っ直ぐなよっちゃんで。
誰よりも真っ直ぐな気持ちで美貴を見てくれる人。

だから、美貴はよっちゃんが大好きで、よっちゃんじゃないと駄目なんだ。

よっちゃんがちゃんと飯田さんから離れたらよっちゃんを迎えに行こう。
465 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 02:57
 
466 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 02:59
「藤本さん、受付にお客さんだって。石川さんって人、あがってもらう?」と声をかけられたのは社内に飾ってあった鏡餅を片していたときだった。

「あぁ・・・私が下行きます。」

「あと、やっておくから。」と言ってくれた同僚に礼を言って2階の受付に向かった。

ラウンジのソファに座っている石川さん。
美貴が歩み寄ると立ち上がった。

「どうしたの?」
「仕事中にごめんね。」と言う石川さんの表情は悪びれてないことに美貴は苦笑した。

「あんまり、時間は取れないけど、下のカフェはいろっか。」
「うん。」

カフェに向かう美貴についてくる石川さん。
石川さんが1人で美貴のところに来ること事態、想像もしていなかったから何の話しか凄い気になった。ホットコーヒーを2つ頼み、向かい合って座ったけれど、なんだか居心地が悪い。
467 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 02:59
さっきから、石川さんは眉間に皺を寄せて美貴をじっと見ている。
「で・・・何?」と石川さんが口を開かないから美貴がそう先に尋ねた。

「よっしーにアクションかけないって言ったよね?」
「ん?」
「藤本さんから、より戻したりしないって教室で言ったじゃない。」
「あぁ・・・うん、言った。」

よっちゃんと何かあったのか・・・

「お姉ちゃんがよっしーがバイバイしに来たって言ってた。」
「そっか。で?なんで、それで石川さんが美貴に会いに来るわけ?」

美貴は苦笑しながらコーヒーを啜る。

更に、眉間に皺を寄せる石川さん。
そんなに皺寄せたら跡つかないかな・・・
468 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 02:59
「次は私の番って言ったじゃん。」
「うん。」
「なんで、また藤本さんに戻るわけ?」
「告白したの?」
「そういうのが嫌い、余裕であせったりしないで・・・それ、凄い嫌い。」

美貴は苦笑した。
石川さんに嫌いって言われてもなんでもないから・・・。
逆に困る。

「藤本さんより私の方がずっと前からよっしーのこと知ってるんだから。中学生の頃の藤本さんが知らないよっしーのことだって。全部知ってるんだから。」
「うん。そうかもね。」
「そうやって・・・他人に何言われても関係ないって顔して・・・二人の世界作って・・・ずるいよ。」

イライラ・・・してくる。
早く、用件だけ言って欲しい。
こっちは今、勤務時間中で抜け出してきてるんだ。
469 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:00
「で、何が言いたくて来たの?」
「美貴が待っててくれてるんだ。そうお姉ちゃんに言ったって。これ、どういうこと?」

「美貴は待ってるなんてよっちゃんに言ってない。」

言ったのは、よっちゃんと同じになるってことだけ・・・
それをよっちゃんが待ってるって解釈しただけの話。

「じゃぁ、どうして?」
「よっちゃんに聞けばいいじゃない。」
「聞けたら聞いてるわよ。聞けないから来てるんじゃない。」

ため息をつきながら言う石川さんの顔を美貴は驚いてみた。

「聞けないってどういうこと?」

え?と言う顔で美貴を見る石川さん。
美貴もきっと同じような顔で石川さんを見ているだろう。
470 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:01
「藤本さんのところじゃないの?」
「話が見えないんだけど。」
「マンションには居ないし、携帯はずっと留守電だし、お姉ちゃんに藤本さんが待ってるって言ったからてっきり藤本さんのところにいると思ったんだけど。」

美貴の頭はフル回転しだした。
よっちゃんが居なくなったってこと?

「別に大学に退学届けも休学届けも出してないからそのうち来るんだろうけど。」と付け足す石川さん。

「ホントに知らないの?」
「知らないよ。」

よっちゃんは動き出したんだ。そんな気がした。
そう、思うと自然に笑みが零れる。

471 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:01
「知らないよ。」
「就職も決まってないのに・・・。」とため息を漏らす石川さん。

「よっちゃんにはよっちゃんの時間の流れがあるんだよ。皆と一緒じゃないから。」
「藤本さんだって、就職したじゃない。普通でしょそれが。」

美貴は「美貴、仕事やめるんだ。」と数時間前に上司に告げた言葉を口にした。

「東京は美貴に合わないみたい。」最後にそう言って美貴は席をたった。


472 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:01



473 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:02
「お母さん。美貴だけど。」

実家に電話するのは物凄く久々だった。
お正月に会ったばかりのお母さんは凄く驚いた声を出していた。

『何かあったの?』
「うん、あったっていうか、2月に実家にもどってもいいかな?」
『いつでも顔出しなさいよ。美貴の家なんだから。』
「長く、居てもいい?」
『ん?いいけど、仕事は?』
「来月で辞める。」
『・・・そう、じゃぁ家でゆっくり花嫁修業でもしなさいな。』
「ありがと。じゃぁそういうことでよろしく。」

お母さんは何も聞かずに電話をきった。
分かってるのかな・・・
474 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:02
よっちゃんはどこに行ったんだろう。
きっと、何かを決めにいったんだと思う。
どこか静かな場所に。
自然が沢山の・・・きっとあの場所だろうな。

マンションの窓から遠くに見えるビルたち。
よっちゃんは、この景色を好きじゃないって言ってた。

飯田さんと離れたら・・・そう思っていたけれど
よっちゃんにはまだ時間が必要らしい・・・
475 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:02

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
476 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:03
「美貴。」

「ん?」と土手に寝転がったよっちゃんを見ると目を閉じている。

「なぁにぃ?」
「美貴もここ。」と自分の隣をポンと叩くよっちゃん。
美貴は素直によっちゃんの隣に寝転がった。

「目、閉じてみ。」とよっちゃんの指示。

目を閉じると川の流れる音と草が風に揺れる音とどこかで鳴いている虫たちの声。
隣から、よっちゃんの息使い。

「自然補給は身体にいいよ。」と言うよっちゃん薄っすら目を開けてみると、よっちゃんは目を閉じたまま微笑んでいた。
美貴は身体を少しずらして、よっちゃんの身体にピッタリくっ付いて目を閉じる。

「ついでによっちゃん補給。」
「ついでなの?」
「ついでだよぉ。」
「ひっでぇ。」と言いながらよっちゃんの腕が美貴の首の後ろに回り肩を抱かれた。

「気持ちいいな。」
「うん。」

しばらく、二人で自然の音に耳を傾けていた。
夏を目前に心地よい空気に包まれながら
477 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:03
ここ、数日、毎日こうしている。
学校が終わるとこうしてココに来てよっちゃんは自然補給をする。
だから、美貴も自然補給。

何も言葉を交わさないで・・・
よっちゃんは何か考え事してるみたいだから。
美貴はその答えを待ってる。

まだ、美貴とよっちゃんは進路調査票を出してない。

美貴の答えは決まってる。
よっちゃんから離れたりなんて出来ないから。


478 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:04
「大学・・・東京にしようと思うんだ。」
「うん。」
「美貴は、東京これそう。」

よっちゃんの動く気配に美貴は閉じていた目を開けてよっちゃんを見る。

「なーんて顔してるの。」と不安そうな顔のよっちゃんの頬を突いた。

「行けるよ。美貴はよっちゃんと一緒に東京行くよ。」

「よかった。」と笑うよっちゃんが愛しくてたまらなかった。

よっちゃんの顔に顔を埋めると「美貴、暖かい。」とよっちゃんは美貴の頭を撫でた。

「同じ大学は無理だけど・・・」

「ごめん。美貴は頭が悪いから。」と呟くと「一緒に東京に行けるだけで十分。」と応えてくれた。

「ごめんね、待っててくれたんでしょ。」
「ん?」

よっちゃんの胸の上で顔の向きを変えてよっちゃんの顔を見る。

「僕が決めるのさ・・・。」

美貴は微笑んでよっちゃんの唇を奪った。
479 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:04

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
480 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:05
よっちゃんは簡単に思いつきで行動したりしない。
美貴のことを考えて、自分のことを考えて・・・
二人の幸せを考えてくれる・・・

だから、美貴はいつだって信じてる。


481 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:05
 
482 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:05
「仕事、辞めるんだって?呑み行こうよ。」とごっちんに仕事帰りに声をかけられたのは石川さんからよっちゃんが居なくなったと知らされて1週間が過ぎたころだった。

ごっちんに連れて行かれた店には先客がいた。

「こんばんは。」と先客である石川さんに声をかけて向かいに座った。
間にごっちんが座り「何の呑もうかなぁ。」とメニューをひらく。

なんか凄い居心地悪いんだけど・・・。
483 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:06

ごっちんと石川さんは以前見た映画の話で盛り上がる。
その会話に入れない美貴はひたすら呑みに徹した。
お酒は弱くない・・・はずだったのに・・・
あんまり食べない上にペースが速かったのかな・・・
ちょっと酔いがまわってる・・・


484 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:06
ガシャン
そんな音と「ミキティ大丈夫。」と言うごっちんの声。

袖がワインで濡れていた。

「あっ、ごめん。」

拭いてくれているごっちんに謝って濡れた袖を洗うためにトイレに向かおうと立ち上がったけど直ぐに椅子に腰を降ろした。

「ミキティ酔いすぎ。」

そうかも・・・

「一緒に行くわ。」と石川さんの声が聞こえて手をとられた。

フラフラする美貴を連れて行ってくれる石川さんに素直に肩を借りた。
トイレに入りシミになってしまった袖を水で洗う。

485 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:07
「そんなに酔って平気?」

背後からの声に鏡に目を向けると腕を組んで立っている石川さんが映ってた。

「ん。ペース早かったかな。」
「よっしー。今夜来るのに。」
「え?」

シャーと言う水の音と石川さんの笑み。

「よっしーの実家に電話したの。実家に居たよ。よっしー。」
「そう。」

蛇口を止めて袖をハンカチで押さえた。
振り向こうとして足が縺れる・・・酔いが醒めない・・・
しがみ付いた洗面台は凄い冷たかった。

「かなり呑んだもんね、度数強いの。」
「え?」
「ごっちんが選んでたのどれも強いお酒だよ。」

コンコンと入口のドアがノックされた。
486 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:07
「ひとりで戻れるよね。」そう言って石川さんは出て行った。
洗面器に捕まりながら美貴も入口へ向かう・・・
けど足が縺れて上手く歩けない・・・
洗面台や壁に捕まりながら必死に入口に向かって寄りかかるようにして扉を開けるとごっちんがいた。

「大丈夫?」と笑顔で手を出してくれるごっちんの手に捕まった。
けど、やっぱり足は縺れてごっちんの胸に倒れこんだ。

ぎゅっと抱きしめられる。
487 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:07
「ごっちん、やめて・・・。」

体温が・・・嫌だ・・・
でも・・・立ってられない・・・

「いいじゃん、一人で歩けないんだろ?」と耳元で囁かれて鳥肌がたった。

「お願い・・・やめて。」

美貴の言葉なんか聞こえない振りして美貴を腕の中に閉じ込める。

「石川なにやってんの?」と聞こえてきたよっちゃんの声。
488 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:09
身体が硬直していく気がした。

「美貴・・・。」と聞こえてくる小さな声。

「違う。」と言った美貴の声はごっちんの胸の中に消えていく。

「離してごっちん。お願い。」美貴の声は涙声になっていた。

ゆっくりと緩むごっちんの腕の中でよっちゃんの声がした方を見ると呆然と美貴を見ているよっちゃんと、その隣で冷たい目で美貴を見ている石川さんがいた。
よっちゃんはゆっくりと後ずさる様に美貴の視界から消えていった。

「よっちゃん。違う・・・。」と言いながら美貴はゆっくりと膝から崩れていった。

「見られちゃったね。」と美貴に視線を合わせるごっちん。

なに・・・これ・・・
489 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:09
「ほら・・・」とごっちんにまた抱きかかえられるように立たされた。

「やめて・・・触らないで。」

ごっちんの手を振り払うと美貴はまたその場に倒れこんだ。

「よっちゃん・・・。」
「梨華が付いてるよ。よしこには。」

よっちゃんは・・・美貴が他の人に触れることを凄い嫌がった・・・
だから・・・きっと美貴はよっちゃん以外の人の体温に嫌悪を感じるようになったんだ
なのに・・・
折角・・・
美貴たちまた動き出したのに・・・
490 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:10
壁に伝って何とか立ち上がった・・・
追わないと・・・
よっちゃんを・・・
追いかけないと・・・

壁に寄りかかりながら何とか店のフロアーに出て美貴たちがいたテーブルを見るとよっちゃんの姿も石川さんの姿も荷物もなかった・・・

「ミキティ・・・ひとりじゃ無理だよ。」と聞こえるごっちんの声を無視して店を出ようと必死に歩いた。そこら辺の物に捕まりながら客の視線を感じながら・・・

みっともないなんて思わない。
今はよっちゃんを追わないと・・・

店を出て左右を見回した・・・
でも、よっちゃんの姿はなくて美貴は支えていた手を離して歩道に座り込んだ。

491 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:11
「ミキティ・・・。」

呼ばれた声に顔を上げるとごっちんは凄く驚いた顔をして慌てて跪き美貴に視線を合わせた。

「泣いてるの・・・?。」

当たり前じゃん。
今、泣かないでいつ泣くんだよ・・・

みっともないとか恥ずかしいとか無くて美貴は声を上げて涙を零した。

「ごめん・・・。」と聞こえてきたごっちんの声に美貴は首を横に振る。

ごっちんが悪いんじゃない。
タイミングが悪かっただけ。
違うか・・・お酒を飲んだのは自分の意思。
よっちゃんがあのタイミングで来なければなんて関係ない。
実際、美貴はごっちんが居なければ立っていられなかった・・・
美貴が悪い・・・

「タクシー拾ってもらえる。」

乱れる息でそう呟くとごっちんは「うん。」と返事をして立ち上がった。
492 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:11
頬を流れる涙を手の甲で拭った。
化粧、ボロボロかな・・・

「ミキティ。乗れる?」と美貴に手を貸してくれようとするごっちんの手を払いのけた。

「ごめん大丈夫だから。」そう言ってごっちんが拾ってくれたタクシーまで這うようにして近寄りガードレールに捕まって立ち上がってタクシーに乗った。

「ありがと。バイバイ。」とごっちんに手を振ってから運転手によっちゃんのマンションの住所を告げた。

「美貴、最悪・・・。」そう呟いてシートに身体を預けた。
よっちゃんは・・・美貴をどう思ったかな
そう考えるだけで胸が痛くなる。

「ごめんなさい。」と自然に謝っていた。
よっちゃんはここに居ないけど。謝りたかった。

悲しい想いをさせてごめんなさい。
傷つけてごめんなさい。

493 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:12
よっちゃんの部屋の電気はついていなかった。まだ、帰ってないのか・・・
ふらつく足取りでエレベータにのり、よっちゃんの部屋の前でインターホンを鳴らす。
返事はなかった。
ドアに寄りかかってそのまま座り込んだ。

寒いなぁ・・・
よっちゃんも外にいるのかな・・・


494 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/10(日) 03:12
「美貴。」

いつの間にか眠っていたのだろうか肩を揺すられて目を覚ますとよっちゃんがいた。

「よっちゃん・・・」

困った顔のよっちゃん。

「ごめんね。美貴は何も・・・変わってないよ。あの頃の美貴のまま・・・そして、昔のよっちゃんと同じ、だよ。」

今、自分が言える精一杯のよっちゃんへの想い。

「それだけ・・・伝えたかったの。」

黙って美貴を見ているよっちゃんに笑みを向けて立ち上がろうとしたら、立てなかった。
一体、美貴はどれだけ飲んだのだろう・・・
まだ、アルコールが残ってる。

「美貴ちゃん。」
「ん?」
「中、入って、身体冷え切ってる。」

包み込まれるように抱き上げられた。
よっちゃんの体温は暖かくてほっとする。

「ごめんね。」と言った美貴によっちゃんは笑みを向けてくれた。

495 名前:clover 投稿日:2006/12/10(日) 03:32
本日の更新以上です

>>463-494 静かな愛6
そろそろ、終わりに向かってる感じです。
もう少しで終わるのでお付き合いください。

>>455 :naanasshi 様
レス有り難うございます。

>毎回大量更新お疲れ様です
いえいえ、読んでいただけて嬉しいです。
そろそろ、書き溜めていたものがなくなってきたかな(苦笑)

>なんか高校時代に戻りたいと思ってしまいましたあの頃は楽しかったなあ(遠い目)
たしかに楽しかったぁ・・・

最後まで宜しくです。

>>456 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>ミキちゃんセツナイよ
>幸せになって欲しい
どうなるのかw
最後まで宜しくです。

>>457 :名無し通りがかり 様
レス有り難うございます。

>吉澤くんの心情なんとなくわかりますよ。
有り難うございます。よかったー。

>どっちにもなりそうでもどかしいです。私としてはハッピーエンド希望です。
どうなるのかw
最後まで宜しくです。

>>458 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>み、美貴ちゃん・・・?
えぇ、美貴ちゃんw
最後まで宜しくです。

>>459 :ももんが 様
レス有り難うございます。

>なんで藤本さんとよっちゃんはこんなに切ないんだ!
>やきもきやきもきしてます。
自分も書いてて、早く結末書きたくなってますw

>後輩たち可愛かったです♪
亀井さん出すとそのまま長く書きそうで怖かったんですけどw
セーブしました。
最後まで宜しくです。

>>460 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>ミキティの言葉を受けてよっちゃんがどの様な行動をするのか、とても気になります。
ちょこちょこ動き出すので最後まで宜しくです。

>>461 :名無飼育さん 様
レス有り難うございます。

>まだまだ明るい光は見えそうにないですねw
どうでしょうw
最後まで宜しくです。

>>462 :名無し飼育さん 様
レス有り難うございます。

>うぅ〜せつないせつなすぎる!
>こんなに胸がキュンとするみきよしはズルイです。
>毎回泣きそうっす。
有り難うございます。嬉しいです。
最後までよろしくです。
496 名前:ももんが 投稿日:2006/12/10(日) 13:41
更新お疲れさまです。
ごっちんと梨華ちゃんはなんだか悪役ですね〜。
美貴ちゃんボロボロな感じで痛々しい…。
497 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/11(月) 17:55
よっちゃん好きだぁ〜!!
 
やっぱ美貴ちゃんはよっちゃんの胸の中が一番よね
498 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/11(月) 18:28
更新お疲れ様です
後藤君と石川さんの動きが気になりますね
藤本さんが(T_T)
吉澤君、藤本さんを頼みますよ
499 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/12(火) 12:12
更新お疲れ様です
ミキティ・・あともう少し
ラストに向けてファイトォ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*!!!☆
500 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:16
「お風呂、沸いたら入って、それまでこれ飲んで。」とソファに降ろされ出されたホットコーヒー。
身体の中から暖かくなってくる。

「お風呂、沸いたみたいだ、1人で行ける?」と言うよっちゃんに頷いてから壁に手をついて立ち上がった。

「借りるね・・・。」と呟いて、美貴は風呂場に向かった。

綺麗好きのよっちゃん。
相変わらず。お風呂は綺麗になっていた。
美貴の好きなローズの入浴剤。
まだ、使ってくれてたんだ。

暖かいお風呂はまるでよっちゃんに抱きしめられてるみたいに思えた。
501 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:17
身体が温まってからお風呂から出た。
濡れたままの髪をまとめてリビングに戻ると部屋は既に暖まっていた。

「お風呂、ありがと。」とクッションを抱えて床に胡坐をかいているよっちゃんに告げソファに座った。

「美貴のアップ久々に見れたな。」と笑うよっちゃん。美貴は困ったように笑った。

「凄い、綺麗になったね。何か凄い大人って感じがする。」
「変わってないよ、美貴は。」と笑った。

「コーヒー入れなおすね。」とよっちゃんはカップを持ってキッチンに姿を消した。

美貴を見るよっちゃんの目はさっきからずっと悲しそうで・・・
胸が苦しくなる。
よっちゃんをそんな顔にさせているのは美貴だ。
早く、帰ったほうがいいかな。
伝えたいことは・・・もう、伝えた。

502 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:18
「一杯、考えたんだ。」とカップを美貴の前に置きながら言うよっちゃんに「うん。」と頷きながら、カップを両手で受け取った。

「大切なものって側になくなってから・・・それがどんなに大切なものだったかって気付くって良く言うでしょ。」と美貴の向かいに座るよっちゃん。

「うん。」

よっちゃんの声だけが静かな部屋でとてもクリアに耳に直接聞こえてくる。

「美貴はいつだって僕の側に居た。別れてからも友達だって言って僕の側にいてくれた。」
「うん。」
「美貴が一番愛してるのは僕でそれは付き合っていた頃も分かれた後もそうだって勝手だけどそんな風に思ってた。美貴が僕以外の誰かを愛したりするわけないって。だって・・・美貴は、僕しか見ていないから・・・。」
「うん。そうだよ。」

503 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:18
美貴の想いを・・・気持ちを知っていてくれたことが素直に嬉しかった。

「それは僕も一緒なんだ・・・圭織さんを、飯田さんを気になったりしてしまったけれど、それでも、ずるいけど、あの人を愛することは出来なかった、好きになることさえも、それは・・・僕は既に美貴を愛しているからだって・・・」

よっちゃんはコーヒーを一口飲んでから苦笑した。

「だから、また付き合ってなんて直ぐに言えない。都合がよすぎるよ・・・美貴を不安にさせないって約束できる方法・・・どうしたらいいかずっと考えてた。」
「答えは何だった?」
「世界が滅んでしまえばいい・・・僕と美貴だけの世界になってしまえばいい・・・。」

「無理だよ・・・。」と言ってみたけれど、よっちゃんなら出来るんじゃないかないかなんて思ってしまう。
504 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:19
「そうだね。僕は神でもなんでもない・・・ただの人間だから・・・。覚えてる?」
「ん?」
「美貴が流れ星にお願いしたとき、僕は美貴にお願いをしたことがあったろ。」
「うん、もう無い星にお願いなんて出来ないって・・・」
「そう。やっぱり美貴にお願いするしかない。僕を信じて、不安になんてならないで・・・。」
「なったりしないよ・・・美貴は信じてる。だから・・・いつだって美貴は・・・。」
「僕は・・・初めて不安になった・・・さっき、ごっちんと抱き合ってる美貴を見て不安で堪らなくなった・・・美貴は凄いなって思った。もしね・・・美貴を追いかけている間、美貴が誰かと恋をしたりしていたら、僕は待っていられただろうか、美貴に告白していただろうかって・・・今までの僕等が崩れてしまうくらい不安になった・・・。」

美貴をじっと見て話すよっちゃん。
美貴はその視線をしっかりと受け止めてたけれど・・・何も、言えなかった。

「そんな僕の不安は美貴に直ぐに伝わって・・・そしたらどうなるんだろうって、あの頃と同じようにいられるのかなって・・・」

一度、別れた美貴たちにあの頃と同じ関係はないだろう・・・
一つだけ、方法があるって美貴は知ってる。

505 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:19
あの頃よりももっとお互いを愛し、信頼すること。

一緒に居られなくなってお互いをあの頃より必要としてる。
でも、それだけじゃ・・・きっと駄目なんだと思う。
あの頃以上に愛を持って、あの頃以上に信頼していなければならない。

506 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:19
「美貴を愛してる、誰よりも・・・信じてる、美貴に側に居て欲しいし側に居たい。」
「うん・・・。」

嬉しい言葉に美貴の胸の痛みがひいていく。

「もう少しだけ・・・時間が欲しいんだ・・・」

いくらだって待ってる、よっちゃん以外の人なんて考えられないから

「世界を滅ぼすことなんて出来ないし、他人と関らずに生きていくことも出来ない。」
「そうだね。」
「少し、大人になれたと思ってたんだけどね・・・ごっちんと美貴を見て、違うって分かっていても僕の心は不安になる。」
「ごめん。」
「美貴はなにも悪くないんだ。僕が弱くて、子どもなんだ。」

よっちゃんは苦笑した。
507 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:20
「他人なんて関係ない、そんなの間違えてた。他人の言葉も大切だよね。」
「よっちゃん。」
「でもね、だからって、自分を曲げたりしないよ。自分の持ってる信念みたいなのは持ち続けたい。強くなるんじゃなくて、不安になったりしない精神が欲しい。美貴みたいなそんな精神が・・・。」

よっちゃんはまた、コーヒーを飲んでから美貴を見た。

「こんな僕だから・・・もう、待つの嫌になるかもしれないけど・・・美貴が待ってるって信じてていたい・・・さっきから勝手なことばかり言ってるね・・・でも、答え必ず見つけてくるから、だから美貴ちゃんも僕を信じて・・・待っててくれないか。ちゃんと大人になって、美貴に似合う男になって迎えに行くから。」

涙が零れて言葉が出てこない。

「ありがと。」

やっと出てきた言葉は感謝の気持ちだった。

「今日は泊まっていきなよ。これから帰るんじゃ湯冷めする。」
508 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:20
よっちゃんは美貴にベッドを貸してくれた。
よっちゃんの匂いがする枕と布団。
凄く落ち着いて、安心できて・・・美貴の心が、身体がよっちゃん以外を受け付けない。

だから、美貴はいつまでだって待つよ。
よっちゃんの時間の流れの中で美貴も生きていたいから。

目を閉じてからどのくらいたったのだろう。
ドアが開く音で目を覚ました。
薄っすらと目を開けるとよっちゃんが入ってくるのが分かり美貴は目を閉じた。
509 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:21
よっちゃんの気配が横にあってそっと頬に触れられた。
優しく、壊れ物を扱うようなよっちゃんの手。

暖かいよっちゃんの手。
その手に手を重ねたい衝動を堪えて美貴は寝ているふりをする。

「ごめんな。美貴の理想の彼氏に今度はなるから。」と小さく聞こえてくるよっちゃんの声。
そして、そっと重ねられた唇。
数年ぶりのよっちゃんの口付けはあの頃と何も変わっていなかった。
抱きしめて欲しい気持ちと抱きしめたい気持ち。
もっとして。
そうねだってしまいそうなほど、よっちゃんの口付けは優しかった。

ゆっくりと離れた唇とよっちゃんの体温。
ドアが閉まる音と同時に美貴は目を開いた。
510 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:21
よっちゃんの温もりが残る唇を指先で確かめる。

理想の彼氏・・・。
付き合と決めた時、美貴が言った理想。
よっちゃんだよ・・・。
美貴を大切にしてくれて、優しくて、時間を作ってくれる。
まさに、よっちゃんだよ・・・。



511 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:21
512 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:21
結局、朝まで眠れずにベッドの中でよっちゃんの温もりに包まれていた。

「美貴、起きてる?」とドアをノックする音に身体を起こし「うん。」と返事を返した。

「入るよ。」とはいってくるよっちゃんに美貴は笑顔を向けて「おはよ。」とベッドから降りた。

「すげー寝癖は相変わらずだね。」と美貴のクシャクシャの髪に指を通すよっちゃん。

「顔洗っておいで。」と促され美貴は洗面所に向かった。
昨日は気にならなかったが美貴が使っていたものがそのまま、そこにあった。
ブラシも化粧水とか洗顔料とか・・・

「使用期限過ぎてるよ。」

思わず笑ってしまった。

自分のポーチから化粧道具を取り出してメイクをしてから髪を整えた。


513 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:22
リビングに戻るとテーブルの上にはコンビニのサンドイッチ。
今朝、買いに行ってくれたのだろう。

「座りなよ。」と言われ椅子に座るとよっちゃんがコーヒーを出してくれた。

「ありがとぉ。」
「なんか、あれだね、夕べあんな話したばかりでこんな朝、ありかよ。って思ったんだけどさ。」

よっちゃんは苦笑しながら自分のカップにもコーヒーを注ぐ。

「そうだね。変だね。」

美貴が笑うとよっちゃんも笑った。

「でも、こういうの美貴たちっぽいって思うな。」

友達にはなれない・・・
恋人にしかなれないんだ。
恋人じゃない今の美貴たちは・・・変な関係。
誰かにこの関係を説明しろといわれてもできない
でも、それはそれでいい

「うん。そうだね。」
514 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:22
「うん。そうだね。」

あ・・・説明できるかも
過去の恋人で未来の恋人。
今は両想いの人。

二人で笑い会う。
このまま・・・初めてしまってもって思うけど。
けど、駄目なんだ。

「食べな。」といわれて差し出される袋から出してくれたサンドイッチを受け取った。

3年半じゃない・・・
これからずっと一緒に居るために

515 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:23





516 名前:静かな愛6 投稿日:2006/12/16(土) 01:23

仕事の引継ぎはそれほど時間を要しなかった。
今月一杯で去る予定だったが、残っていた有給を使い実質、早めの退社をした。
数週間過ごすだけに困らないものだけを残して部屋のものをダンボールにつめて実家に送った。

それから、しばらく何もなくなった部屋でひとりいろんなことを考えた。
東京で頑張った数年。
後悔なんてしてない。
よっちゃんと別れたことも今こうしていることも。
全て、美貴たちにとって一番いい結果を導くものになったんだって思う。
今、一瞬の幸せや、愛の言葉より、永遠の幸せや、愛を・・・

美貴はただ、よっちゃんを愛して信じて存在していればいいんだ・・・

517 名前:clover 投稿日:2006/12/16(土) 01:30
本日の更新以上です

>>500-516 静かな愛6
まだ、ラストまでかけてないので小出しに進めようかと(苦笑)


>>496 :ももんが さま
いつもレス有り難うございます
>ごっちんと梨華ちゃんはなんだか悪役ですね〜。
今回、そんな役しかなくてw
ファンの方にはもうしわけないんですけどねぇ。
そういう配役もいないとw

最後までよろしくです。

>>497 :名無飼育さん さま
レス有り難うございます
>やっぱ美貴ちゃんはよっちゃんの胸の中が一番よね
そうですよね!

最後まで宜しくです。

>>498 :名無飼育さん さま
レス有り難うございます

>後藤君と石川さんの動きが気になりますね
悪者の二人になっちゃってるけどw

最後まで宜しくです。

>>499 :名無飼育さん さま
レス有り難うございます
>ミキティ・・あともう少し
もう少しですw

最後まで宜しくです。
518 名前:naanasshi 投稿日:2006/12/16(土) 01:34
久しぶりに来たら更新イッパイキテター
しかもリアルタイムに読んでました
ようやく気づいたかーよっちゃん!
最後までがんばってください!
519 名前:ももんが 投稿日:2006/12/16(土) 10:35
更新お疲れ様です。
美貴ちゃん健気だなあ…。
こんな子いたらいいのに(切実)
最後まで頑張ってくださいね!
520 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/17(日) 16:58
更新お疲れ様です!
おお!やっとミキティに幸せが・・・
あと少しよっちゃんがんばれ!
521 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/19(火) 18:25
更新お疲れ様です
よっちゃん気がついたのはよかったけど
もどかしい(笑)

次回、楽しみに待ってます
522 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:32
「よっちゃんがまたいなくなった。実家にもいない。」とやってきた石川さん。

美貴の何もない部屋を見て「ホントに実家に帰るんだ。」とラグの上に座った。

「どうして、石川さんが美貴のマンション知ってるの?」

壁に寄りかかり腕を組んで尋ねる美貴に石川さんは「ごっちん。」と呟いた。

「そう。」

お茶を出す気は無かった美貴は寄りかかったままの姿勢で上から石川さんを見下ろした。
あの夜、よっちゃんを追いかけていった後、二人がどんな会話をしてどうしたなんて美貴は知らない。

「藤本さん・・・さっきから私のこと睨んでない?」と苦笑する石川さん。

「美貴、もともとこういう目つきなの。っていうか何しにきたの?ごらんの通り、引越しで忙しいんだけど。」

「そっか、ごめん。帰るね。」と石川さんは苦笑しながら立ち上がった。
523 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:32
「私、よっしーとねたよ。」

すれ違い様に石川さんは早口に確かにそう言った。

ガチャンとドアの閉まる音がした。
美貴はその言葉を信じたりしなかった。

だって、よっちゃんは美貴を悲しませたりしないから。
信じないよ・・・石川さんの言葉なんて・・・

524 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:32
525 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:33
頭の隅で石川さんの言葉を気にしながら部屋の片付けに没頭していた。
夕方になるとインターホンがまたなった。
なんだか、来客が多いな・・・
石川さんが座っていた場所に座るごっちん。

美貴は捨てるつもりのチェアに膝を抱えて座った。

「梨華、来た?」
「うん。」

「やっぱり・・・」と呟くとごっちんは苦笑した。

「いつ、帰るの?」
「月末あたり。」
「そ・・・。」



526 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:33
ごっちんは急に立ち上がると美貴の前までやって来た。
なんとなく、その表情がいつかの表情と似ていて怖かった。
美貴は無意識にチェアに乗せていたを足を降ろして立ち上がろうとした。
けど・・・立ちあがれなかった。

「やめてっ。」

抱きしめられた途端、そう叫んだ。
叫んで放してくれるならごっちんは美貴を抱きしめたりしないか。
自分の行動と考えの違いに抱きしめられたまま苦笑した。

「どうしたの?」とごっちんが美貴の顔を至近距離で覗き込んでくる。

頭で放してくれないって分かっていても身体は正直だ。
嫌悪感・・・
拒否反応・・・

ガタガタと震える美貴の身体。
527 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:33
驚いているごっちんの身体を突き放した。
尻もちをつくごっちんを見ながら美貴はチェアに足を乗せて自分を抱きしめた。
ごっちんの体温が早く消えるように身体を擦る。

「なに?・・・ミキティってなんか持病とかあるの?」

聞こえてくるごっちんの質問に笑みが零れた。
これが、病気ならそれはそれでいいのかも。
よっちゃんしか受け付けない美貴の身体。

「病気、かもね。よっちゃんしか治せない。」

収まってきた身体の震え。
ゆっくりと顔を上げてごっちんを見た。

「ごっちんの体温が嫌なの。」

ごっちんは苦笑した。
528 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:34
「後藤、今日はミキティをものにしに来たんだけど。」とごっちんは立ち上がった。

言葉の意味に美貴は笑い出した。
あり得ない、出来るわけない。
だって、ごっちんは・・・

「好きなんでしょ・・・石川さんのこと。」

ごっちんの目が細くなって眉間に皺を寄せる。

「愛してるんだよね。」

ごっちんはため息混じりにニコっと笑った。

「うるさいよ。ミキティ。」

ごっちんがすっと一歩、前に出たと同時に手首をつかまれた。

チェアから落とされるように床に仰向けになるとごっちんに上に乗られる。

「痛い・・・。」
「うるさい。」
529 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:35
お互い睨みつけるように視線を交わす。
抑えられている手首から、乗られている腰から・・・
ごっちんの体温が伝わってくる

「よしこ以外だと震えちゃうんだろ。」とごっちんは震える美貴の頬に触れた。
思わず顔を背けたけどアゴを捕まれ、前を向かされる。

「ごっちん・・・美貴としたら辛くなるだけだよ。美貴はよっちゃんが好きなんだから。」

身体の力を抜いてそう言った。
震えはどんどん酷くなる。

「お互い、傷つくだけだと思うけど・・・。」

ごっちんの手が美貴のアゴを放す。

「石川さんがよっちゃんと寝たって言い残して帰っていったよ。」と美貴はごっちんの下から逃れた。

「こういうことするのとそれ、関係ある?」
530 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:36
ごっちんから離れて立ち上がる。
少し距離をとって美貴は跪くごっちんの背中を眺めた。

「ごっちんと石川さんのことに巻き込まれるの凄い迷惑。」

ごっちんは振り返ると美貴を睨んだ。

「迷惑?それはこっちの台詞だよ。」とごっちんは胡坐をして美貴を見る。
美貴は壁に寄りかかり「どうして?」と尋ねた。

「よしこなんていなくなっちゃえばいいんだ。このまま消えちゃえば。」

美貴は「そう。」とそっけなく相槌を返す。
ごっちんにそう、思われてもよっちゃんもそう返すだろう。

「惨めな男・・・そんな目で見るなよ。」と悲しそうに自虐的に笑うごっちん。

「惨めっていうか・・・美貴はそうなりなくないって思うだけだよ。」

本当の気持ち。
こんな風に、生きたくないし愛したくない。
531 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:39
「ミキティ。」
「ん?」
「梨華とよしこがねたって聞いて平気なの?」

美貴は少しだけ微笑んでストンとその場に座った。
膝を抱えアゴを乗せる。

「寝てないよ。あの二人。」

ごっちんは、フッと笑った。

「信じてるんだ。よしこのこと。」
「どうかな。」
「でも、男だよ。誘われたら抱くよ。」

「ごっちんが言うとなんか真実味があるね。」と美貴は笑った。

「でも、ないよ。よっちゃんは皆と違う。」

ごっちんは「確かに違うな。」と笑った。

532 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:40
「ごっちんさ、石川さんのことずっと好きだったんでしょ。」
「ミキティたちより長いよ。小学生のころからだから。」

驚いた。とっかえひっかえ女と遊んでるのに、気持ちはずっと・・・
でも、だったら・・・
心だけでなく、身体も一途で居てあげれば良かったのに・・・
そしたら・・・

「どうして、石川さんと関係持ったりしたの・・・。」
「よしこの携帯とメルアド知りたいって。」

ごっちんは床に手を付いて足を伸ばすと天井を見上げた。

「それ、教える代わりに?」
「そう、何でもするから教えてって。だから身体要求した。それが初めて。そのあと、よしこが行く大学知りたいって来た。」

何も言えなかった、そんな気持ち・・・美貴に分からない。

「東京の住所知りたいって来て・・・梨華はよしこのためなら自分のバージンだって後藤に奉げちゃう・・・それくらい好きなんだよ。」

やっぱり・・・分からない・・・
533 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:41
「よしこの居場所、教えてあげるよ。後藤に抱かれてくれるなら。」
「知ってるの?」
「知ってるよ。梨華に頼まれて探したから。」

ごっちんは、ニコっと笑って美貴を見る。
美貴は視線を受け止めて首を横に振った。

「教えてくれなくていいよ。美貴は待ってるから。」
「よしこのためにそこまで出来ない?梨華のがよしこを思う気持ちは大きいんだろうな。中学のころからずっとだし。」とごっちんは呆れたように呟いた。

「よっちゃんのためにごっちんと関係持てない。美貴の身体はよっちゃんのものだから。」

そう、美貴はよっちゃんのもの。
身も心も・・・
534 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:42
初めて抱かれたとき、美貴はよっちゃんに・・・
美貴を全てあげたんだ
だから、美貴から離れていったって美貴はずっとよっちゃんを想ってる。
美貴の身体だけど
美貴の心だけど
それはよっちゃんのものだから

じっと、待ってる
それが、美貴の愛だから。



535 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:42


「梨華・・・抱かれたりしてないよ。よしこに。」

ごっちんはそういうと伸ばしていた足を引き寄せ胡坐を組む。
美貴は「うん。知ってる。」と答えると満足げに笑った。

「石川さんがじゃなくて、よっちゃんが石川さんを抱いたりしないの間違いでしょ。」と美貴は笑った。

「そういう時は普通、男じゃなくて女を立てるだろ。」
「よっちゃんは普通じゃないんだって。だから好きでもない子がいくらスタイルよくて色っぽく誘ってきたってよっちゃんは感心持たないよ。」
「それって男としてちょっとどうなの?」と笑うごっちんの表情にもう、怖さは感じられなくて安心した。

「やっぱりスタイルいい子とか胸の大きい子だとごっちんは嬉しいんだ。」
「そりゃぁ、下半身は反応する・・・けど・・・」

ごっちんは美貴が座っていたチェアに座りなおすと悲しそうに美貴を見た。

「梨華を抱いたとき、後藤は泣いたよ。」と悲しそうに笑う。
536 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:43
「愛してるんだ・・・なのに、どうして石川さん以外を抱いたりするの。」

ごっちんは美貴の質問に「分からないの?」という顔を向ける。
美貴は「ん?」と答えを促した。

「愛してるからだよ。」
「分からないんだけど。」

ごっちんは「はー。」とため息をはく。

「梨華を抱いたとき、虚しさ、悲しさ・・・絶望感だけだった。愛してくれない、余所見をしている女を抱くなら、後藤を見てくれる女を抱いてたほうが楽しい、梨華だと思って抱いてるんだ。その方が、心が痛まない。」

自虐的に「後藤、サイテー。」と呟くごっちん。

苦しいのに、気持ちを断ち切れないのは凄い良く分かる。
側に居たいのに居られない辛さも・・・
537 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:43
「逃げちゃ、駄目なんだと思う。ごっちんはごっちんの愛し方で愛してあげれば・・・。」

きっと石川さんだって、その愛に気がつくはずだよ。

「6年だよ。」
「ん?」
「梨華を好きになって6年目で抱いたんだ。もう、十分だろ。小学5年に同じクラスになって好きになって、それからずっと梨華の一番側にいたよ。気持ちも何度も伝えた。それでも梨華はよしこが良くて、後藤は梨華にとって自分のために動いてくれる使い勝手のいい男なんだろうな。それでもいいって思った。梨華の側に居られれば、それでもいいって。」

それは、それで、ごっちんの考えだし・・・
ごっちんと石川さんのことだし。

「そう、じゃぁ。それでいいんじゃない。」
「いいの?」
「二人のことだし。」
「そうでもない、梨華はミキティが邪魔なんだよ。」

ごっちんは美貴を真っ直ぐ見ていった。
538 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:44
「梨華なら後藤にミキティを殺してって言うかも。」
「へっ?」
「言いかねないよ。梨華、それくらい欲しいんだよ。よしこが。」

あり得ない。
手に入らなかったら殺す?

「馬鹿馬鹿しい・・・。」
「犯してって頼まれた。そしたらミキティのことだからよしこに申し訳なくてあえないだろうからって。10年、相手にされなかったんだ。後藤より梨華のが辛いかもね。」

だからって、ごっちんは・・・
美貴にそんなことしないはず。
するわけない。
石川さんを愛してるならなおさら出来ない。

「で・・・それをしようとここに来たの?」

539 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:46
格好だけ、本気でする気はなかった・・・
そう、だよね。
だって、本気なら美貴が震えたって関係なくしてたはずだもん・・・

「使えない男になりなくない・・・梨華にとって、周りにいる大勢の中の男の1人になりなたくない。」

「情けなさ過ぎだろ・・・。」とごっちんは笑った。

「だからって、ミキティを抱く勇気もない。」

ごっちんは俯きながら肩を震わせていた。
泣いているのだろう
美貴は何も言わず、ごっちんが落ち着くのを待った。
美貴によっちゃんがそうしてくれたように・・・

「男が泣くなんてかっこ悪いね・・・しかも女のことで。」

「はー。」と息を吐きながら言うごっちん。

「昔の美貴なら、多分、追い出してたと思う。よっちゃんに会う前の美貴ならね。」

「そうなんだ。」とごっちんは目を擦りながら美貴を見た。
540 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:47
「何、泣いてるの?馬鹿みたい。泣いてかっこ悪いと思ってるなら泣くなよって思ってたと思う。」
「キツイな。」
「でしょ。」と思わず、美貴も苦笑してしまう。

「でも、今の美貴は泣けて良かったねって思う。泣いたら、すっきりして、よく眠れて、きっと明日は元気になって、何もかも上手くいくよ。」

ごっちんはニコっと笑って「そうかもね。」といった。

「よっちゃんがよく美貴たちが喧嘩して美貴が泣くと言ってた言葉なんだけどね。」
「喧嘩してたんだ。」
「するよ。些細なこと、だけどね。」
541 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:47

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
542 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:47
よっちゃんの部屋に行くか、美貴の部屋に行くか。
下校しながら、どうしようかと毎日相談する。

「美貴ちゃんの家のがゆっくりできるんだけど、一緒にいる時間は短くなるんだよなぁ。」と美貴を乗せて自転車を漕ぎながらよっちゃんは考える。

「じゃぁよっちゃんの家にする?」
「弟いるもん。」
「いいじゃない。」
「入ってくるもんあいつら。」
「いいじゃん。美貴も会いたいよ。」

あっ・・・怒った。
口を噤んで美貴の家に向かうよっちゃん。

「昨日買ったCD、よっちゃんの家じゃんか。」
「あ・・・。」

よっちゃんは行き先を自分の家に変えて無言になる。

「なんで、喋んないのぉ。」とよっちゃんの家の前で自転車から降りて先に玄関を開ける美貴によっちゃんは「別に。」と不貞腐れる。
543 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:48
玄関を開けて「お邪魔します。」とおばさんに聞こえるように言うと元気の良い足音がバタバタと聞こえてくる。
小さな怪獣2匹は美貴の姿を目に留めると笑顔を見せて飛び掛ってきた。

「美貴、いらっしゃい。」と声を揃えるよっちゃんの弟二人の頭を撫でながら「あがって。」と声をかけてくれるおばさんに「お邪魔します。」と返した。

「こっちこっち。」と怪獣2人に手を引かれリビングに通されラグの上に座らされる。
よっちゃんはつまらなさそうに怪獣2人を見ていた。

「よっちゃんも遊ぼうよ。」

今まで遊んでいたのだろう、床に散乱しているLEGOを指差すとよっちゃんは不貞腐れながらも美貴の向かいに座った。

弟たちの声に笑顔を返してるけど、ホントの笑顔じゃないよっちゃん。
美貴は二人の相手をしながらずっとよっちゃんのことを気にしていた。

遊びつかれた二人をソファに寝かして、美貴たちはよっちゃんの部屋へ移動。
544 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:48
「もぉーあいつらはしゃぎすぎ。」とよっちゃんはため息混じりにベッドに腰を降ろす。美貴もその隣に座ると思わずため息が漏れた。

「CDだっけな。」とよっちゃんは直ぐに美貴の隣からいなくなりCDをセットした。

「なんでそっち座るの?」とコンポの前に座ったよっちゃんに不貞腐れてみる美貴。

「美貴は僕といるより弟たちと遊びたかったんだろー。」
「はー?いつそんなこと言った?」
「さっき。」
「言ってないし。」
「久々に会いたいって言ったろ。」
「それは言ったけど、よっちゃんと居るよりなんて言ってないもん。」
「そー聞こえた。」

美貴はため息をついた。

「なんだよ。」
「別に。よっちゃん、そんなんだし、美貴、帰る。」
545 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:49
立ち上がり、部屋を出てもよっちゃんの美貴を呼び止める声は聞こえないし追いかけてくる足音も聞こえない。

「あら、もう帰るの?」と言うおばさんの声に作り笑顔を向け「お邪魔しました。」と家を出た。
少し歩いて振り返ってみたけどよっちゃんの姿はなくて・・・

「ばーか。」と呟いてみる。

何度も振り返る自分の行動に苛立って美貴は駆け出した。
息が切れてやっと美貴の住む住宅街に入ったところで走る足を止めた。

「ホントに来ないし・・・。」

膝に手を付いて息を切らしてる時運が悲しくなる。

ポケットの中で震える携帯の存在に気がついて美貴はそれを取り出した。
よっちゃんの名前が表示されているディスプレイを見て涙が出てくる。
546 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:49
「もしも・・・。」
『どこにいるんだよ。』
「もう直ぐ、家。」

追ってこなかったくせになんだよ。と思うとそっけなく答えてしまう。

『どの道、通ってんだよ。ったく。』と携帯電話からと背後から聞こえてきた。

振り返ると美貴と同じように息を切らしたよっちゃんの姿。
よっちゃんは携帯をポケットにしまいながら美貴に近づいてくる。

「ったく・・・はぁ、はぁ・・・。」

美貴の前で足を止めたよっちゃんは深呼吸をしながら美貴を見る。

「なによ・・・。」

来てくれたことが凄く嬉しいのに、行動は思いと裏腹だ。

「何よじゃないでしょー。」とぎゅっと抱きしめられる。
547 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:49
「遅いし。」
「美貴がいつもと違う道使うからだろ。」
「夢中で走ったんだもん。」
「ばーか。」
「馬鹿じゃないし。」
「ごめんな。弟にヤキモチやいて・・・。」
「うん。」

ぎゅっとよっちゃんの背中に手を回して抱きしめた。

「僕、美貴のこと、大好きなんだ。」
「知ってる。弟にもヤキモチ妬いちゃうくらい。」

耳元で笑いながら言うよっちゃんに美貴も笑った。

548 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:50

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
549 名前:静かな愛7 投稿日:2006/12/23(土) 21:50
「それが・・・喧嘩?」と苦笑するごっちんに美貴は頷く。

「あはは、なんかさぁ、もう、二人で好きにしてくださいって感じ。あぁー梨華も馬鹿だなぁこんな馬鹿相手にするなんて。」
「なんか馬鹿馬鹿言い過ぎなんだけど。」

ごっちんは「言い過ぎじゃないし。」と立ち上がった。

「帰るの?」

美貴の声に立ち止まり美貴をみおそるごっちん。

「うん。よしこの居場所・・・。」

美貴は微笑んで首を横に振った。

「分かってるんだ・・・。」と部屋の中を見渡すごっちんに美貴は「なんとなくだけどね。」と返した。
550 名前:clover 投稿日:2006/12/23(土) 22:12

更新以上です

>>522-549 静かな愛7
次の更新で静かな愛は終わりになるかと思います。
そして、年内の更新は今日が最後になるかと。
今年、ここで書き始めたわけですが、レスを下さる皆さん有り難うございます。
そして、来年もまた書いていきたいと思っているので宜しくお願いします。

みなさん、良いお年を


>>518 :naanasshi様
レスありがとうございます。

>ようやく気づいたかーよっちゃん!
よっちゃんも色々うらで考えてるはずw

来年も宜しくです。

>>519 :ももんが様
レスありがとうございます。

>美貴ちゃん健気だなあ…。
>こんな子いたらいいのに(切実)
ホント、居たらいいっすねw

来年も宜しくです。

>>520 :名無飼育さん様
レス有り難うございます。

>おお!やっとミキティに幸せが・・・
もう、ラストなんでw

来年も宜しくです。

>>521 :名無飼育さん様
レス有り難うございます。

>よっちゃん気がついたのはよかったけど
>もどかしい(笑)
確かにw

来年も宜しくです。
551 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/24(日) 11:51
更新お疲れ様です
よっちゃん何処にいるんだ
ミキティ頑張って
来年も楽しみにして待ってます
お疲れ様でした
552 名前:ももんが 投稿日:2006/12/24(日) 12:23
更新お疲れさまです。
ごっちん切ないなあ…。
愛の形もいろいろなんだなあって思います。
来年も続きを楽しみにしてます。
553 名前:naanasshi 投稿日:2006/12/24(日) 12:32
更新お疲れ様です
ごっちんも石川さんもなんか切ないですね〜
世の中幸せな愛もあれば報われない愛もありますね
今年は本当に作者さんの素晴らしい作品を読めて嬉しかったです
来年も楽しみにしてます!それでは良いお年を
554 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/26(火) 22:27
微笑まし過ぎる喧嘩…
555 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/04(木) 16:10
あけましておめでとうございます
更新お疲れ様です(・∀・)
ラストの更新楽しみにしてます
みきよしヽ(´ー`)ノマンセー
556 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:12
「なに、この料理・・・。」

美貴はテーブルに並べられた料理の多さに驚いた。

「美貴が帰ってくるからって母さん張り切ったんだよ。」と既にほろ酔いのお父さん。

「おかーさん。こんなに、誰が食べるのよぉ。」

キッチンを覗きそう声をかけるとお母さんは「お兄ちゃんも来るからいいのよ。」と嬉しそうに笑っていた。

「美貴も飲むか?」と差し出されたグラスを受け取り美貴は先にお父さんと呑み始めた。

「で、花嫁修業するんだって?」
「しないしない。少しゆっくりするだけ。」

しばらくはココに居させてもらうつもりだけど、何年も居るつもりは無い、仕事を見つけて出て行くつもりだから。
557 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:12
「結婚する気はないのか?嫁に行ってもいい年だろ。」
「まだ、21だって。」
「今月22だろ。」
「大学行ってたら卒業する年じゃん。」
「母さんだって、22で嫁に来たぞ。」

美貴は「そっかぁ。」といいながらビールを喉に通した。

「早まらなくていいのよぉ。」と料理をもって入ってくるお母さん。

「焦ると失敗するからねぇ。よく選びなさいよぉ。」
「何だよ失敗するって。」
「なんでしょうねぇ〜。」と美貴を見て笑うお母さんに美貴も「ねぇ。」と笑って見せた。

お酒を飲みながらお母さんの料理を食べてしばらくするとお兄ちゃんとなつみさんがやって来た。

5人で楽しく食事をして美貴は部屋に戻った。
558 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:12
まだ、開けてない段ボール箱を抜けて窓を開ける。
冷たい外気がアルコールで熱った体に気持ちいい。

ベランダに出て見る景色は東京と全然違ってなんだか美貴を落ち着かせる。

よっちゃんの家がある方を見てしまうのは癖だから仕方ないなと苦笑しながらしばらく酔いを醒ましていた。





559 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:13
次の日から部屋の段ボール箱を片して、お母さんと洗濯をしたり、買い物に一緒に行ったりするようになった。
思えばお母さんとこんな風に過ごしたことなかったな。
近所の人に「あら、美貴ちゃん?綺麗になったわね。」と声をかけられるとお母さんは嬉しそうに笑顔で応えていた。

「お母さんさ。」
「ん?」
「お父さんと恋愛結婚だっけ。」
「そうよぉ。」
「何年付き合ってたの?」
「3ヶ月。」

「はやっ。」と美貴はサラダを盛り付けながら笑った。

「この人とならずっと笑って暮らせるって思ったのよ。」
「へぇー。で、どうなの?」
「笑ってるでしょ?」

確かに、そう思いながら美貴はサラダをテーブルに運んだ。
タバコを吸いながらテレビを見ているお父さんを横目にサラダをおいてキッチンに戻る。

「お父さんって面白いの?」
「美貴たちにはお父さんだけどお母さんの前だと違うのよ。」

フフっと笑うお母さんはいい年をして乙女に見えた。
560 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:14
561 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:14

毎日ゆったりとした日常。
時間に終われない生活、ひとりじゃないという安心感。

洗濯物を干し終えて自分の部屋で本でも読もうかと思っていると下から母の声が聞こえた。

「だれ?」と顔を出すと「高校生。」と笑うお母さん。

上着を羽織り玄関に向かうとお正月に会った亀井さんだった。

「こんにちは。」と微笑む亀井さんに美貴は戸惑いながらも「こんにちは。」と返した。

「えぇっと、どうしたの?」
「ちょっと外に・・・いいですか?」
562 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:14
お母さんに「出てくるね。」と言って外に出た。
歩き出す亀井さんの横を美貴もゆっくり歩いた。

「れいなは東京の大学に行くんです。」
「ん?」
「えぇっとこないだ一緒にいた・・・彼氏です。」
「あぁ、うん。」
「絵里はこっちの短大なんです。」
「そっか。」

仕方のないことだよな。と思いながら辛そうにしている亀井さんの横顔を見ていた。

「やっぱり、東京って綺麗な人とか可愛い子多いから不安になるんですよぉ。」

二人の関係を知らない美貴は何も言ってあげられず、ただ頷いていた。

「だから、自信っていか、信じれるものっていうか、ジンクスっていうか・・・絵里も言ってて良くわからないけど・・・まぁ、見たいなって。」

全然意味が分からなくて、「へぇ。」と苦笑する美貴の手を亀井さんは握ると笑顔を向けて、そして、走り出した。
563 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:14
564 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:16
「学校・・・。」

付いた場所は学校だった。
亀井さんは笑顔で「こっちですよ。」と美貴の手を引く。
若い子は息すら切れないのかと自分の衰えに悲しくなった。

「じゃぁ、絵里はここで。ハッピーバースディ藤本先輩。」可愛らしい笑顔とウインクをする亀井さんは美貴を校庭に取り残し駆けていった。

誰も居ない校庭の真ん中にポツンと美貴は立っていた。
そういえば、今日、誕生日だっけ。
なんで、あの子知ってたんだ?

まだ、2月だから桜の木は蕾みだけで、なんだか寂しげに思える。
よっちゃんは満開の桜の季節に生まれたんだよなぁ。
なんか、いいなぁ。
565 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:16
「卒業生の藤本美貴さん。至急、屋上まで来てください。繰り返します、藤本美貴さん、至急、屋上まで来てください。」

スピーカーから聞こえてくるちょっとイントネーションのおかしな標準語。
亀井さんの彼の声だな・・・

「なに?」

美貴はゆっくりと校舎に向かう。

「藤本先輩、走ってっ。」と聞こえてくる声は亀井さんだ。
あの子たち、何してくれるんだ?

苦笑しながら、素直に小走りする。

階段を3階まで昇ったところで自然に足が止まった。
566 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:16
行きたくないって・・・身体が勝手に・・・
手すりに捕まって気持ちは上ろうって思ってるのに・・・
身体が動かない。

5分・・・10分・・・

567 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:18
「藤本美貴さん、至急・・・。」

田中君の声は途中で切れた。

「行きたいけど、行けないんだよ。」と苦笑してしまう。
思い出の場所なのに・・・
思い出の場所だから・・・
屋上には1人で行きたくない。

「藤本先輩・・・」と聞こえてきた声に振り返ると亀井さんが居た。

「校庭までって言われてたのにな・・・」
「言われてた?」

亀井さんはごまかすように笑った。
568 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:19
「至急、屋上まで行ってください。って放送流れますよ。」
「何、企んでるんだか・・・それに素直に従う美貴も美貴なんだけどね。」
「行かないんですか?」
「行きたくても、行けないの。昇れない。」
「どうして?」

美貴は階段にストンと腰を降ろす。
階段の冷たさが、直に太腿に伝わってくる。

「よっちゃんと一緒にじゃないといけない場所だから。」

いつも、よっちゃんが美貴の手を引いて・・・この階段を・・・

「行ってください。じゃないと・・・絵里たちも終わっちゃう気がするから。」と美貴の手を握る亀井さん。

「きっと、素敵なプレゼントがあるはず。」
「プレゼント?」

頷く亀井さんは美貴の手を引いて立ち上がらせる。

「バースディプレゼントが待ってますから。」と美貴は背中を押された。
つんのめるようにして階段を一段上って振り返ると亀井さんは笑顔で頷いた。
569 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:20
素敵なプレゼント・・・
よっちゃん?

亀井さんの笑顔を信じて美貴は階段を昇りだした。
鉄の扉をゆっくりと開ける。

差し込む日差しは冬なのに暖かくて懐かしい。

「美貴・・・。」と聞こえてきた愛しい人の声に一歩踏み出した美貴の目からは涙が零れた。

歪む、愛しい人の姿。
ちゃんと見たいのに見えないじゃんか。

「美貴。」

近づいてくるよっちゃんの声と足音と姿。

「美貴ちゃん、返事は?」

俯く美貴の肩に乗るよっちゃんの暖かい手。
美貴はよっちゃんの胸に額をくっつけて泣いた。
570 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:20
「ごめんね。」と言いながら美貴の身体を包み込むよっちゃん。

「心臓、痛いよ・・・。よっちゃんの馬鹿。」
「心臓?」と美貴の顔を覗き込もうとするよっちゃんを美貴は拒んで抱きついた。

「心臓、ズキズキした。あの階段、1人で昇ったことないから。」
「うん。」
「怖くて、ズキズキした。」
「ごめん。」

よっちゃんはゆっくり美貴を身体から離すと美貴の両頬を包み込むようにして涙を拭ってくれた。

「そんなに泣いたら、可愛い顔が台無しだ。」
「泣き顔も可愛いって前に言ったのは嘘だったの?」
「可愛い。」
「じゃぁ、いいじゃん。」
「いいよ。」

クスっと笑うよっちゃんに美貴もつられて笑ってしまった。
571 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:21
「誕生日プレゼント、受け取ってくれる?」
「うん。」

「ずっと、美貴の側に居させて。」
よっちゃんは真っ直ぐ、美貴を見つめてそう言った。

「告白・・・なんだけど・・・。」
「よっちゃんは・・・。」
「ん?」
「ずるいよ・・・。」
「どうして?」
「美貴が欲しいものを絶対くれる・・・。」
「ずるく無いじゃん。」
「ずるいよ。好きになりすぎちゃう。」

ぎゅっと抱きしめられて「じゃぁ、もっとずるくなりたいな。」と囁かれる。

「もう、十分だよ。」
「告白の返事は?」と顔を覗きこむよっちゃんの唇を一瞬だけ奪った。

「居させてあげる。」

ニッコリと笑ったよっちゃんが今度は美貴の唇を奪う。
572 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:23
「ありがと。」と届かないと分かっていて美貴は呟いた。
亀井さんが来て、背中を押してくれなかったら・・・
きっと、美貴はあの階段を昇れなかったから。

「春から、この学校で働くこと、決まったんだ。」
「へっ?」

突然、嬉しそうに言い出すよっちゃんに美貴はただ、驚いた。

「教職とってたから。」
「あぁ、うん。」
「免許も取れてたし。」
「そっか。」
「先月、採用試験受けたんだ。」
「また、どうして突然、教師?」
「こないだ、同窓会の日、ひとりでここに来て、決めたんだ。」
「理由は?」
「ここには、美貴がいるから。美貴の気配があるから、凄い落ち着くんだ。」
「美貴がここに居るのに?」

よっちゃんはニコっと笑った。
573 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:28
「大好きな場所で働きたいんだ。ここで、僕等みたいな子、一杯見れたらいいなって。」
「亀井さんたちが、1号だ。」
「そうだね。」

よっちゃんはあの頃みたいに美貴を抱きかかえて屋上からの景色を見て微笑んだ。

「美貴、仕事辞めたんだ。」
「知ってる。」
「どうして?」
「石川が来たから。」
「来たんだ。」
「うん。ごっちんが居なくなるほうが、自分にとって大変だって気がついたって。」
「そっか。」
「なんで、僕に付きまとったんだろう。」

見上げるとよっちゃんは本当に不思議そうな顔をしていて美貴は思わず笑ってしまった。

574 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:30
「ねぇ、美貴。」
「ん?」
「もう、一個プレゼントあるんだ。」

よっちゃんは美貴を背後から抱きしめたまま美貴の左手を目の前に翳し薬指に指輪を嵌めた。










575 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:31
576 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:32
よっちゃんが教師をしだして直ぐの誕生日。
美貴は、プレゼントを何も用意していなかった。
いつもどおり、欲しいものがあるからお金を使うなと言うよっちゃん。

夕方、学校の屋上に呼び出された美貴は鍵を貰った。

「一緒に暮らして欲しい。」と言う言葉と一緒に。



小さなアパート。
狭い部屋だけど、よっちゃんと二人で楽しい、幸せな生活。
よっちゃんは学校の近くのスーパーで働く美貴を自転車に乗せて送ってくれる。
577 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:32
578 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:33
夕方に終わる美貴のパート。
働くスパーで買い物をしてから大好きな風景を見ながら歩いて帰る。
よっちゃんが帰ってくるのを待ち遠しく思いながら。

今日はオムライスにしようかな。

579 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:34
あ、そうだ。よっちゃん。
美貴ね、今度の誕生日に欲しいものあるんだよ。
気がついてるかな。
気がついてるね。

引き出しに閉まってある紙、見なかったことにしておくね。
誕生日まで、よっちゃんの言葉を楽しみに待ってるから。

580 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:34
581 名前:静かな愛7 投稿日:2007/01/06(土) 02:34
582 名前:clover 投稿日:2007/01/06(土) 02:35
明けましておめでとうございます。
もう、逆さまはちょっとキツイかも(苦笑)

えぇっと、
眠すぎるのでレス返しは明日。
すみません。
583 名前:clover 投稿日:2007/01/06(土) 02:39
だーもう寝ぼけてるな自分。

>>556-581 以上で静かな愛は終了とします。

読んでくれていた方々。
有り難うございました。
584 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/01/06(土) 18:07
完結お疲れ様です。
こんなにもせつなく温かく泣けるみきよしは初めてでした。
この素晴らしい作品に出会えたことが何よりうれしい。みきよし最高!
またcloverさんの次回作品に期待しています。
585 名前:clover 投稿日:2007/01/06(土) 18:26
えぇ、自分で書いて
>もう、逆さまはちょっとキツイかも(苦笑)
なんの意味だか分からないと・・・orz
すみません。

今後の予定、以前書くと言ってたよしかめの短編をもって
このスレは終わりになるかと思います。

また、えぇっと沢山人が出る感じの話しを書きたいと思ってて
もちろん、吉澤さんメインになるんですが。
自分、それしか書いてないって言う・・・
えぇー吉澤さん卒業ということで寂しいのですが
妄想するネタも減ってしまうのかと残念なのですが
前向きに、これからもみきよし、よしかめなどなど
書かせてもらいたいと思っておりますので
今年も宜しくお願いします。

レス返しさせていただきます。
551 :名無飼育さん様
レス、有り難うございます。

>よっちゃん何処にいるんだ
よっちゃんもよっちゃんで頑張っていたってことでw

今年も宜しくお願いします。

>>552 :ももんが 様
毎回レス、有り難うございます。

>ごっちん切ないなあ…。
>来年も続きを楽しみにしてます。
最後まで藤本さんのことしか書きませんでしたw
まわりの方は妄想してください。

今年も宜しくお願いします。

>>553 :naanasshi 様
レス、有り難うございます。

>今年は本当に作者さんの素晴らしい作品を読めて嬉しかったです
>来年も楽しみにしてます!それでは良いお年を
毎回、レス嬉しいっす。有り難うございます。
今年も宜しくお願いします。

>>554 :名無飼育さん 様
レス、有り難うございます。

>微笑まし過ぎる喧嘩…
こんなんで済む喧嘩してみたいっすw
今年も宜しくお願いします

>>555 :名無飼育さん 様
レス、有り難うございます。

今年も宜しくお願いします。

>>584 :名無し飼育さん 様
レス、有り難うございます。

>完結お疲れ様です。
>この素晴らしい作品に出会えたことが何よりうれしい。みきよし最高!
>またcloverさんの次回作品に期待しています。
有り難うございます。
今年も頑張るので宜しくお願いします。
586 名前:ももんが 投稿日:2007/01/06(土) 20:56
完結おめでとうございます。
最後よっちゃんの藤本さんへの気持ちの強さに感動しました。
次回のよしかめ、そしてこれからの作品楽しみにしてます!
587 名前:naanasshi 投稿日:2007/01/06(土) 21:58
完結おめでとうございます
最後はすごく暖かい気持ちになれました
次回作も楽しみに待ってます!!
588 名前:名無し飼育 投稿日:2007/01/11(木) 19:24
完結お疲れ様です
こんなふうに結ばれた二人の数十年後を見てみたいですね
暖かい家庭になってそう

次回も楽しみに待ってます
589 名前:Give and take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:06
「ただいまぁ。」

仕事を終えた深夜、マンションに戻ると玄関まで走ってくる絵里。
そのままうちに抱きついてくる絵里を片手で抱きとめて靴を抜いだ。

「お帰りなさい。」

微笑む絵里の頬にキスをするとフニャっと笑う絵里。
凄い、可愛いと思う。

「吉澤さん、抱いて。」

絵里はそう言うと微笑みうちの手を引いてベッドへ向かう。
背中から、寂しさとか孤独とかそんな空気が漂ってくる。
ベッドに着く前にうちは思わず絵里を後ろから抱きしめた。
590 名前:Give 投稿日:2007/01/23(火) 21:06

「ん?ここでするの?」

うちの腕の中でうちの腕を掴み、首を捻ってうちを見上げる絵里。

「留守番、寂しかった?」

絵里の顔は急に寂しそうになって頷いた。
どうしてそんなに寂しそうな顔するんだ。
そんな顔をするから、放っておけなくなるんだ。

絵里の頬を撫でると絵里はじっとうちの目を見てくる。

「絵里が映ってる。」

微笑む絵里の唇を夢中で奪った。
そのまま絵里を抱きかかえるようにベッドに向かい、押し倒す。
絵里はうちにされるがまま、ベッドの上で少しだけ口を開けじっとうちを見ていた。
591 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:07
絵里に馬乗りになって、その開いた口に舌を突っ込みかき混ぜる。
絵里の舌に吸い付いて吸い上げると絵里がうちの腕をぎゅっと掴んだ。
苦しそうにしながらうちの舌に絡ませてくる絵里の目はそれでもじっとうちを見ていた。

「んぅ、うぅ。」

息が苦しくなって口を離し上から絵里を見下ろすと嬉しそうに微笑み、うちを見てる絵里がいた。


「どうしたの?」

絵里の声にうちは少しだけ微笑んだ。

「どうもしないよ。」

うちは絵里の隣に倒れこむと絵里を腕の中に包み込んだ。
592 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:07
「しないの?」
「したいの?」
「だって、give and take でしょ。」
「ん。そうだね。」


最初にそう言ったのはうち。
絵里は身体も愛もうちにくれる。

でも、それは全て give and take だから。

「吉澤さん?」

不安そうにうちの頬を手を添えて覗き込んでくる絵里の頭をゆっくり撫でた。

愛しくて仕方ない存在。
593 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:07
「好き、だよ。」
「絵里も好き。」

うちが言う言葉に素直に同じ言葉を返すんだ。

「絵里ちゃんが思っている以上にうちは絵里ちゃんが好きでたまらない。」

絵里は少し首をかしげてうちを見ていた。

うちは息を吐きながら絵里を抱きしめる腕を緩めて天井を見た。

give and take だから・・・
そんなこと言っても絵里が困るだけ。

一晩泊めるのに抱こうって、軽い気持ちだったのにな。
こんなにはまるなんて思ってなかった。
594 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:08
「絵里のこと見て。」

うちの頬を掴んで自分に顔を向かせる絵里。

「見てる、一緒にいないときだって、頭の中に絵里ちゃんがいていつも見てる。」

嬉しそうに微笑む絵里は本当に可愛い。

ヤバイ・・・涙が出そうだ。

絵里はうちをじっと見てそっと口付けてきた。

「絵里、どうしたらいい?」

絵里は身体を起こしてうちに跨った。

「絵里はこうやって吉澤さんの目に映ってないと不安。寂しいよ。」

顔を近づけて至近距離でうちの目を覗き込む絵里の頬をうちは撫でた。

「この目、あげるよ。」

絵里はクスクスと笑った。
595 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:08
「駄目だよ。吉澤さんの目じゃないと意味無いもん。絵里のものになったら意味ないもん。」
「そっか。」

絵里は笑うと自分の上着に手をかけてそれを脱いだ。
上半身だけ下着姿になりうちの手を掴んで身体を起こす。

「絵里の身体、いくらでもあげる。足りないならもっとして。」

絵里はうちの足に乗っかって、うちを見下ろしながらそう言うと下着のホックを外して胸を露わにさせた。

「だから、そんな困った顔しないで。絵里どうしたらいいかわからないよ。」

そう言って絵里はうちの頭を抱え込み胸に抱き寄せる。
軟らかい絵里の胸は心地よくて思いのほか絵里の心臓の音が早く聞こえてくる。

「絵里も多分、好きだと思う。吉澤さんといると安心で、幸せでずっとココに居たいって思うの。」

絵里はゆっくりとうちの頭を撫でながらそう言った。

「初めて、生きてて良かったって今思ってるんだよ。それが吉澤さんと同じ気もちなのかどうか、絵里にはまだ分からないの。」

うちは顔を上げて絵里の唇を引き寄せた。
チュッ、チュッと何度も絵里の唇を奪った。
596 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:09
「絵里ちゃんが可愛すぎるから困るんだぞ。」

うちが笑うと絵里は嬉しそうに微笑んだ。

「ねぇ吉澤さん。」
「ん?」
「絵里、ずっと待ってたの。寂しかったんだよひとりで。」
「うん。」
「絵里の全部見て。」
「うん。」
「いっぱい、見て。」
「わかった。」

うちは絵里の胸に手を当てた。
うちの掌に収まる胸は柔らかくて頭の上から聞こえてくる絵里の声に興奮してくる。
硬くなってきた蕾を手で擦りながら絵里の顔を見ると絵里はじっとうちを見ていた。

「気持ちいい?」
「ん。」

頷きながら声を漏らす絵里の顔は切なくて綺麗だった。

「これは?」
「あぁ・・・んぅ・・・。」

蕾を口に含み舌でその先を擦ってあげると閉じたい瞳を必死に開けて涙ぐみながらうちを見てる絵里がいた。

胸を愛撫され感じる絵里とうちに見られて感じてる絵里がそこにいる。
597 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:10
多分、うちは独占欲が凄い強い。
今まで付き合った女の子は皆、重いとか苦しいとか言う言葉を置いて消えて行った。

全てが欲しくなる。
誰にも触れさせたくなくなる。
出来るなら、二人だけの世界で生きたいとさえ思ってしまう。
何人目かの恋人に消え去られたとき、諦めた。
うちの求める相手は居ないって。

美貴たちとふざけて騒いで、たまに女に買われて、買ってそんな暮らしも悪くないって思えてきたころだったのに。

絵里が現れた。

「あぁっ、あっ・・・。」

うちの上で胸の蕾を貪られて妖艶な表情でうちを見下ろす絵里。
この姿を見ていいのはうちだけ。
でも、きっと住む場所を提供してくれる人に絵里はこの姿を見せるのだろう。

うちじゃなくても・・・

そう思うと、どうしようもない嫉妬心。
598 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:10
絵里のお腹や脇腹に舌を這わせてから絵里を膝から降ろした。
仰向けになる絵里。絶対にうつ伏せの姿勢を嫌がるんだ。
見えないからって理由で。

スカート巻くって下着を降ろして膝辺りでその手を止めた。

「どうしたのこれ。」

うちが聞くと絵里は恥ずかしそうに笑った。

「こないだ美貴さんが来たときに聞いたの、どうしたら吉澤さんが喜ぶかなって。そしたら、パイ、パン?がいいんじゃないって。」

美貴のやろぉ・・・

「ネットで調べたら、こうしてること言うって書いてあったから。さっきやってみた。」

うちは止めていた手を動かして下着を抜き取ると床に落とした。

「好き、だけどね。強制とかしないよ。うち。」
「吉澤さんが好きなら絵里、何でもするよ。」

なんだか、うちのものだって言う満足感。

「ありがと。じゃぁ、今日は絵里ちゃんを天国に連れて行こうかな。」
599 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:10
うちは絵里の足を持ち上げて、肩にかけた。
直ぐ目の前にある絵里のそこ。
綺麗に閉じていたそこは足を広げたことによってパックリと開いて濡れていた。

指でさらに開いて様子を見る。

「見らると絵里ちゃんは凄い感じるんだね。」
「うん。嬉しいもん。」

ヒクヒクするそこから溢れてくる液。
絵里ちゃんの顔を見ながらそこにゆっくりと舌を伸ばすとすると
絵里ちゃんは微笑んだ。

「ひゃぁっ。」

ペロっと舐めると聞こえてくる絵里の声。

更に左右に開いて奥まで舌を突っ込むと甲高い声を上げた。
溢れてくる蜜を舌でかき出しながら絵里の中をかき混ぜる。

「あ、あ、あ・・・よし、ざわさんっ。あぁ。」

うちの頭を掴んで悶え、うちの名前を呼ぶ絵里。

絵里のそこから顔を離して絵里を見た。
不満そうな顔をする絵里にうちは笑って見せる。
600 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:11
「呼んだでしょ。何?」
「意地悪だぁ。吉澤さん。」
「逝きそうだった?」

頷く絵里のそこに指を突っ込んだ。

「あっあぁ。」

絵里は目を閉じないでうちを見てる。
うちが指を動かしだすとそれに合わせて腰を振る絵里の表情を見ながらうちも逝きそうになってた。

「あ、あ、もっ、あっん、ん・・・。」
「逝く?」
「あぁ、あ、いっ、いくっ、あ、あぁぁぁ。」

身体を逸らせた絵里だけど、逝ったんだろうけどうちは手の動きを辞めなかった。


「えっ?あ、あ、あ、やぁあ、あ、んぅ。」

絵里の身体を起こして片手で支えながらもう片手で絵里のそこを掻き回した。
至近距離で絵里の苦悶する顔を見ながら絵里もうちを見ている。

「よしざっあ、あ。」

うちの腕に爪を立てて腰を振る絵里。

「ちょっ、あぁ、あ、あ、ダメっあ・・・。」

泣きそうな顔でうちを見ながら、動かすうちの腕を止めようと掴んだ絵里。
うちはそんな絵里に笑みを浮かべて、唇を奪った。

「ん、んっ。んぅ。」
601 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:11
「ん、んっ。んぅ。」

愛しいと思いながら誰かを抱くのが久々だった。
初めて絵里を抱いたとき、その時から愛しさがあった。
守ってあげたいという気持ち、独占したいという気持ち。
とにかく、愛しくてたまらなかった。
常に、うちを見ているこの目が・・・


唇を重ねているときでさえ、絵里は目を閉じたりしない。

「んぅっ、あぁぁっ。」

絵里は身体をそらしてうちから唇を離すと脱力した。

「可愛いな。絵里ちゃんは。」

放心状態になりながらもうちを視線で捉えようとしている絵里を横たわらせた。
顔を覗きこむと嬉しそうに微笑みうちの首に腕を回し引き寄せて唇を奪う絵里。

うちは絵里の唇と舌に応えながら、胸や脇腹を愛撫した。
身体を捩り愛撫に反応する絵里が可愛らしくて愛撫を続けた。

腰を浮かして跨っているうちの太腿に自分のそこを擦りつける絵里。

いつの間にかされてるだけの子じゃなくて、積極的な子になってた。
少しザラザラする絵里のそこ。

「あぁ、んっ。」

声を漏らしながら必死に快感を得ようとする絵里。
うちはまだそこには触れず、胸を貪っていた。
602 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:11
再び絶頂を迎え、朦朧としているのだろうトロンとした目でうちを見ている絵里。

「吉澤さーん。」

うちに髪を撫でられ気持ち良さそうに微笑み、うちの名を呼ぶ愛しい子。

「なに?」
「ずっと居ていい?」
「うん。」
「ギブアンドテイクじゃなくても・・・いい?」
「ん?」
「だって、住まわしてもらうからって絵里は身体提供してたのに・・・今は絵里が望んでる。」
「うちも望んでるよ。」
「でも、それじゃギブアンドテイクじゃなくなっちゃう。」
「いいよ。もう、ギブアンドテイクじゃなくて。全然、いいんだ。」

ここに居て、うちが愛する分、絵里もうちを愛して。

抱きしめた腕の中で不思議そうにうちを見上げている絵里。

「いいって?」
「こうしてたいんだ。ずっと。」

ニッコリと微笑む絵里は目を閉じた。
安心したようにうちの胸に頬を寄せて。
603 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:12
「うちのこと見てなくていいの?」
「うん。」
「そう。」
「ずっとこうしてよ。」

目を閉じたまま言う絵里の頬を撫でるとくすぐったそうにギュッと抱きつかれた。

「幸せってこういうの言うのかな?」
「こういうのって?」
「すっごい、安心してるの絵里、今。」
「そうかもね。うちも今そうだ。」

絵里がこうしてくれているだけで凄い安心してる。
居なくなったらなんて
誰かに取られたらなんて
焦りも不安もなくて

独占したいなんて欲もない

だって絵里はうちがいるから安心しているんだ
もう、大丈夫
604 名前:Give_and_take2 投稿日:2007/01/23(火) 21:12
これからの give and take
絵里の安心とうちの安心
絵里の愛とうちの愛

ずっとこうしてよう。
605 名前:clover 投稿日:2007/01/23(火) 21:37
>>589-604 Give and take2

更新しました。

前に書いたものの続きです。

さて、今書いてるんですけど新しい話。
来月くらいから更新したいと思ってます。
そちらの方もまた宜しくお願いします。

>>586 :ももんが 様
いつも有り難うございます。

>最後よっちゃんの藤本さんへの気持ちの強さに感動しました。
みきより不滅です。よっちゃんが卒業しても、妄想の餌は減るかと思いますが
書き続けますw

>次回のよしかめ、そしてこれからの作品楽しみにしてます!
有り難うございます。
今、書いているんで、宜しくです。

>>587 :naanasshi 様
いつもありがとうございます。

>最後はすごく暖かい気持ちになれました
よかったです。あっけない終わりだったのでw
どうなんだと思いながら書いてたんですが。

588 :名無し飼育 様
有り難うございます。
>こんなふうに結ばれた二人の数十年後を見てみたいですね
>暖かい家庭になってそう
えぇー。そうでしょうきっとw
妄想してくださいw



次回の話しも宜しくお願いします。


606 名前:naanasshi 投稿日:2007/01/24(水) 20:31
続編吉亀キター
アダルティなのに純粋な感じでこーゆーのもイイ!ですね
頭の中ではシャボン玉が映像つきで流れてますw
新作も楽しみに待ってますよー
607 名前:ももんが 投稿日:2007/01/24(水) 21:21
更新お疲れ様です。
やっぱりこのよしかめは最高です!
特に亀ちゃんがかわいすぎです。こんな子いいなあ・・・。
新作も楽しみにしてます♪
608 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/01/24(水) 21:57
更新キテター!
亀吉いいですね
亀ちゃんかわいいし
続続編に期待なんてしてみたりw
新作楽しみにしてます
609 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/02/05(月) 19:00
待ってます
610 名前:clover 投稿日:2007/02/14(水) 00:39
>>606 :naanasshi 様
レス有り難うございます。
>アダルティなのに純粋な感じでこーゆーのもイイ!ですね
有り難うございます。
>新作も楽しみに待ってますよー
同板にスレたてましたので引き続き宜しくお願いします。

>>607 :ももんが 様
レス有り難うございます。

>やっぱりこのよしかめは最高です!
>特に亀ちゃんがかわいすぎです。こんな子いいなあ・・・。
亀井さん可愛いですwこんなだったらいいのにって妄想で書いてますw

>新作も楽しみにしてます♪
同板にスレたてましたので引き続き宜しくお願いします。


>>608 :名無し飼育さん 様
レス有り難うございます。

>亀吉いいですね
どうもです。

>続続編に期待なんてしてみたりw
どーだろ。今はいっぱいいっぱいなのでw

>新作楽しみにしてます
同板にスレたてましたので引き続き宜しくお願いします。


>>609 :名無し飼育さん 様
レス有り難うございます。
>待ってます
同板にスレたてましたので引き続き宜しくお願いします。


新スレ立てました。引き続き宜しくお願いします。
ルーズボール
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/mirage/1171380256/
611 名前:clover 投稿日:2007/02/14(水) 00:40
下げ忘れました・・・すみません。

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