Candy Apple Red
- 1 名前:あけそら 投稿日:2006/09/28(木) 13:44
- はじめまして。あけそらと申します。
メロン記念日の4人、中でも村田さんと柴田さんを中心に書いていけたら、と思っています。
- 2 名前:ベイビーイッツユー 投稿日:2006/09/28(木) 13:45
- 今日は珍しく、わたしの部屋にむらっちが来ることになった。
二人でゆっくりする、となった場合。八割方はむらっちの部屋に行く。
わたしは実家が近いこともあって、「寝ることが出来ればいい」くらいの設備しか整えてないから。そこからすると、むらっちの部屋はあったかい「うち」のよう。そう言ったら「別に広さがそう違うわけじゃないよね?」とかわされたけど。
自分が生まれ育った土地とは別のところで、きちんと根を下ろして「住まう」こと。「暮らす」こと。その覚悟が、部屋のあり方に表れているような気がした。
- 3 名前:ベイビーイッツユー 投稿日:2006/09/28(木) 13:45
- 「こんばんは、おじゃましまーす」
別に初めて来るわけでもないのに。必ずむらっちはドアをくぐるときに一言を忘れない。しかも、鍵は渡してあるにもかかわらず。よほどのことがない限りは「家主といっしょじゃなきゃ、ね」と、一緒に入る/一人では勝手に入らない、の原則を貫いている。
しかも、こちらから一声ないと、ずっとにこにこしたまま立っていたりする。
なんで座らないの?と問うたら、「やっぱり、ひとさまのところで勝手気ままにしちゃだめでしょ」なんてにこにこしたまま返すから、最初は正直呆れた。それからは、意識して「座れ」の言葉をすぐさまかけるようにしている。わんこじゃないんだから、さあ。
まあ、それも含めて「むらっち」なんだと。今はもうすっかり慣れたけど。
- 4 名前:ベイビーイッツユー 投稿日:2006/09/28(木) 13:46
- 「ごめん、今お茶入れるから、ちょっとソファにかけててねー!」
「うん、ありがとぉ」
前々から「好きにTVでもラジオでも音楽でもつけてていいから」とは言ってあるんだけど。こういう待ち時間、たいていむらっちは自分のバッグから本を出して、静かに読んでる。その横顔をちょっと盗み見るのも、じつは楽しみのひとつだったり。
- 5 名前:ベイビーイッツユー 投稿日:2006/09/28(木) 13:48
- 部屋に荷物を置いて、上着だけ部屋着に着替えてから。キッチンへ急いで向かって、
ミルクパンでお湯を沸かす。暑いときは冷蔵庫で冷やしたペットボトルのお茶を出
してたけど。やっと秋風も吹いてくるようになったから、久しぶりにポットで紅茶を入
れようかと。
あれはたしか初めてか、二度目にむらっちの部屋に遊びに行ったときのこと。
「ちょっと待っててね」と言われて、のんびりお湯を沸かしだすから。「そんな、
気を遣わないでよ。」と返した時にだったかな。てっきり冷蔵庫からお茶か何かが
出てくるかと思ってたからね。
せっかくこうしてあゆみんが遊びに来てくれたんだから。拙いけれども、ほんの
わずかな「ひとてま」をかけさせてよね。にっこり笑って、ぽんぽん、と頭をなでられ
ながらこぼれた一言が、どうしても忘れられなくて。自室に呼べた時には、ぜひとも
やろう、と心に決めていた。
- 6 名前:ベイビーイッツユー 投稿日:2006/09/28(木) 13:49
- ひとり、ふたり。そして、ポットさんにもおすそわけ。
こないだむらっちからおすそ分けしてもらった丸型の缶から、スプーンで茶葉を掬い
ながらおまじないをとなえる。これも、むらっちのまねっこ。最初に聞いた時には
「なにそれ!」と思ったけど。もう、何度も聞くうちに身体にしみついたみたい。
マグをふたつと、ポット。そして冷蔵庫から牛乳を引っ張り出して、トレイに載せて
ソファの元へ。
- 7 名前:ベイビーイッツユー 投稿日:2006/09/28(木) 13:49
- 「おまたせ、むらっち」
「おー、わざわざありがとぉ、あゆみん」
読みかけの本にしおりをはさんで、やさしいまなざしがこちらに向けられる。
今日はコンタクトじゃなく、メガネをかけてる。レンズを隔てているのに、なぜか
あたたかみはそちらの方が増す感じがする。
「ほい。じゃあ、おつかれさまでした」
わたしが隣に掛けたのを確認して、マグが軽く差し出される。
「おつかれさま、むらっち」
かつん、と自分のそれを軽く当てて、ゆっくりマグを口元に運ぶ。
- 8 名前:ベイビーイッツユー 投稿日:2006/09/28(木) 13:50
- 生まれ月の故か、それとも生まれた日の重なり故か。
むらっちのまなざしからは、いつも春のひだまりをおもわせる、そんなあたたかさと
やさしさが伝わってくる。
もちろん、機嫌が悪くなったり、しんどかったりすることもあるんだろうけど。
わたしたちの前で-そして、わたしの前で。露骨にそれを出すことは、今まで
一度もなかった。
- 9 名前:ベイビーイッツユー 投稿日:2006/09/28(木) 13:50
- どんな時でも笑顔を保っていなければならない。
覚悟はしていたけど、それがどれだけ厳しいことなのかは、自分が身を置いて
痛烈に思い知らされた。
何度も怒られた。何度も悔し泣きをした。怒られたコトへの反発じゃなくて、
「なすべきことを出来ない自分のふがいなさ」に。
そんな時、いつの間にか横に来て、静かにアタマを撫でてくれていたり。
時にはそっと胸元に抱き寄せて泣きやむまでなだめてくれたりしていたのは、
むらっちだった。
- 10 名前:ベイビーイッツユー 投稿日:2006/09/28(木) 13:51
- 「側にいるだけで、優しさが伝わってくる。……おねえさんだねえ」
「ん、なあに?」
もう一度言うのも悔しいから。今度インタビューを受けた時に、
そこで言って、びっくりさせてやろうと。そう心に決めた。
- 11 名前:ベイビーイッツユー 投稿日:2006/09/28(木) 13:52
- 「ベイビーイッツユー」<<END>>
柴田くん視点の村田さんと柴田さん、でした。
おそまつさまでした。
- 12 名前:ピアス 投稿日:2006/09/29(金) 22:44
- わー、すごくいい雰囲気ですね。
メロンに興味津々なので、光景を想像できるお話、堪能しました。
これからも楽しみにしています。
- 13 名前:名無し読書中 投稿日:2006/09/30(土) 02:21
- ミルクティのあたたかさがじんわり伝わってくるような感じ。すごくいいです。
- 14 名前:あけそら 投稿日:2006/10/01(日) 03:12
- >>12 ピアスさん
お言葉ありがとうございます。拙い綴りにそう言っていただけると、とても
励みになります。
>>13 名無し読書中さん
こちらも嬉しいお言葉、ありがとうございます。ミルクティの季節には
一歩早いですが。冬ツアー決定とのことで、お目こぼしいただければ幸い
です。
- 15 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:13
- 「……くん」
「…しばたくん」
- 16 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:14
- 気がつくと、そこにはむらっちの顔のアップが。
「わっ、わわわ!」
自分がどういう状況になっているかのみこめないまま、わたわたして辺りを見回す。
自室でないことは、確か。
えーと。仕事が終わって。むらっちに電話して、「明日一緒の仕事だから泊まりに行って
いい?」って聞いて、寄らせてもらって。確かお茶飲みながらTV見てたはずだけど……
- 17 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:14
- よっ、と小さい声と一緒に、むらっちの腕がわたしの背中に回り込む。
上半身を起こされて、身体から薄手の毛布が滑り落ちる。それではじめて、自分がうた
た寝していたことを知る。
「疲れてるんだろうけど、寝るならきちんと寝なきゃだめだよ」
じっ、と目を見つめられて、子供に言い聞かせるようなトーンで、言葉が渡される。
- 18 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:15
- 面倒じゃなきゃシャワーくらい浴びといで。それも辛かったら、顔洗って、とりあえずこれ
に着替えてきちんとベッドで寝なさい。
その後は背中を向けて、棚から何か取り出しながらにつむがれた。さほど大きくはないけ
れども、きちんと、すみずみにまで届く声。ちょっと語尾にクセがあるけど。そこがまた、優
しさが溢れているところ。
- 19 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:15
- 部屋着とタオルを渡されて、まだぼけたアタマでてくてくと洗面所へ向かう。
どうしようかと一瞬迷ったけど、一日の区切りも欲しかったので。言葉に甘えてシャワー
を使わせてもらうことにした。
- 20 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:15
- むらっちの部屋のお風呂には、保温シートが立てかけてある。
一緒に買い物へ出かけた時に「あー、これこれ」と抱えてたのを、今でもはっきり思いだ
すことが出来る。どうして?との自分の問いに、一瞬んっ、と言葉に詰まった表情をよぎ
らせて。その後、はにかみながらこう答えてくれたから。
- 21 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:15
- 「……あったかいお風呂に入ってもらえるかもしれないなら、その準備だけはしてたいじゃ
ないですか」
それだけ言うと、くるっと背を向けて、とてとてお会計に向かった。
でも、後ろから見える耳は、いつも色白なのに、きれいに朱くなってて。
その時、意味の重みがまたひとつ、分かったんだよね。
彼女が、彼女の「部屋の鍵を渡してくれた」ことの、意味。
- 22 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:16
- *******
「ありがとう、ちょっと目が醒めたよー」
タオルを首に掛けて戻ると、今度はちょっとうつらうつらしていたむらっちが、はっと身体
を起こす。
「んー、よかった。ちゃんと寝ないとだめだからね」
さっきと同じ言葉なんだけど、今度は眠気が彼女に移ったようで。語尾の「ね」が、いつ
も以上にほどけて、「にぇ」の、とろけたカンジに響く。
- 23 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:16
- 「もー。むらっちこそそのまま寝ちゃだめじゃないのさー」
隣に座ってちょん、と肩をつつくと、むきっ、と音が出そうな勢いで顔がこちらを向く。
「ムラタは寝てませんよー。しばたくんがお風呂で寝てないか、そっちが心配だったくらい
ですから」
あーあー、眠いときのくせが出てきた。
普段は決してそんな言い回しはしないくせに。眠くなった時だけ、ほんのちょっと、絡み口
調が顔を覗かせる時がある。まるで、眠くなると赤ちゃんがむずかるように。
- 24 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:17
- 分かるまでは、ついムキになって言い返してしまって。そしてむらっちが「ごめんね。もう、
寝よっか」と宥めてくれる一方通行だったけど。そろそろ、その逆も出来るようにならない
と、ね。
- 25 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:17
- 「うん、そうだね。……心配掛けて、ごめんね。」
にっこり笑って、静かに腕をさする。
「ううん、こっちこそごめんね、あゆみん」
語尾の溶け方は相変わらずだけども。でも、まなざしも同じくらいあたたかくて。
やっぱり「かなわないおねえちゃん」なのかもな、と、こっそり苦笑する。
- 26 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:18
- 「じゃ、明日があるから。今度こそ、きちんと寝ようね」
- 27 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:18
- 二人で一緒にベッドに入って。お互い、向かい合うようにして。
- 28 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:18
- 「おやすみなさい」
- 29 名前:おやすみなさい 投稿日:2006/10/01(日) 03:19
- 「おやすみなさい」<<END>>
秋の夜長の、柴田くん視点の、村田さんと柴田さん、でひとつお願いします。
- 30 名前:名無し読書中 投稿日:2006/10/02(月) 02:17
- 更新乙カレー様です。
お互いを大事にしてる感じがいいですね。村さんはもちろんとして、柴田くんも結構オトナなのが今の二人っぽいのかなーと思いました。
- 31 名前:あけそら 投稿日:2006/10/08(日) 02:17
- >>30 名無し読書中さん
励ましの言葉、ありがとうございます。本来は村田さんの方が数倍お姉さん
なんでしょうけど、「ちょっとばかし背伸びしたおねえさんモード」の柴田
くんが動いて来てくれました。
- 32 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:18
- 「めぐちゃん、だいすき」
「ムラタもあゆみんのこと、大好きですよ」
座ってのんびりしているむらっちの首元にぎゅっ、と抱きつくのが、ここ最近の習い
になっている。
いつもかえってくるのが、この暖かい声音と、見えてはないけど、たぶん三日月型
になったやさしいまなざし。背中を撫でてくれる時もあれば、髪を撫でてくれる時も
あるけど。必ずどこかをやさしく手が動いてくれる。
- 33 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:19
- 声音と、手のぬくみと。そして服越しに伝わる、体のぬくみ。
それら全部含めて「だいすき」なんだけども。
もっともっと。その好きを伝えたい。分かち合いたい。近づきたい。
そんな気持ちが、日に日に強くなってきている。
「好き」って言葉はとても簡潔で、でもいろんな意味がそこに詰まってて。
親愛の気持ちを表すものでもあるんだけれども……じゃあ、それ以上の気持ちがあ
ふれてきた時に。その部分も伝わるのか、って。ちょっと、そんな思いも浮かぶよう
になってきた。
- 34 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:19
- 「…だいすき」
腕に力を込めて。首筋に顔を埋める。
まるで小さい子が甘えるように、くしくし、と、顔をこすりつける。
頭から背中にかけて、あたたかい手がずっと動いている。
急に力が加わったことで、一瞬だけむらっちのからだがぴくりと動いたけれども。特
に何かを返すでもなく、穏やかに手は動き続ける。なだらかな熱が、髪から背中へ
規則正しく移動する。
- 35 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:20
- 踏み出したいのに。ほんの一歩なのに。
拒否されるのが怖いんじゃない。理由はないけど、「受け入れてもらえる」確信は胸
にしっかりとある。
でも。その「次の一歩」が。なかなか踏み出せない。
どうすればいいかわからないほど、コドモじゃないはずだけど。
その一歩を前に、どうしても足が竦んでしまっている。
- 36 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:21
- どれくらい、そのままで居たんだろう。
規則正しく動いていた手が、一度背中で止まって。軽くぽんぽん、とたたかれた。
少し間を措いて、普段と変わらぬ声音が耳に届く。
- 37 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:21
- 「あゆみ」
耳に響いたのは、いつもの愛称じゃなく、名前そのもの。
顔を上げると、さっきまでずっとぬくみをもたらしてくれていた右手が、頬に添えられ
ていた。
顔が近づく、と思う間もなく。軽く唇が触れて、そして、離れた。
- 38 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:22
- 何が起こったのか。アタマに状況が届いたのは、二拍も三拍も後で。
そして、それを追いかけるように、一気に顔に熱が集まった。
- 39 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:22
- 「……ムラタは、こういう意味で、あゆみのことが好きだよ」
普段はまっすぐ目を見て話してくれるんだけど。さすがに、この時ばかりは膝元へと
視線が落とされていた。
声音の暖かみも、頬から腕へ移動した手のぬくみも、今までと変わらないけども。
絞り出すような小さな声で、頬を朱に染めて。言葉がこぼれ落ちてきた。
- 40 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:23
- 「……もし、あゆみが思ってる『好き』と違うんだったら」
固まった私の反応を誤解したのか、思わぬ言葉が続いてくる。
- 41 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:23
- 「違う、違うのめぐちゃん!」
思わず大きな声を出して、さっきよりももっと強い力で、むらっちのことを抱きしめる。
離れてほしくなんかない。竦んでいた私に、手をさしのべてくれたんだから。そうして
ほしい、と願いながら。何もできずにいたのは私の方なんだから。
- 42 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:24
- 「好きなの。……めぐちゃんのことが、本当に好きなの。上手く言えないけど、触れ
たいとか、もっと近づきたいとか。思ってたけど、どうしていいかわからなかったの」
とにかく、アタマにある気持ちを、出てくるままに口にする。
もっと近づきたい、との思い。そして何より「好きで、離れてほしくない」こと。そのこ
とを、必死につむいだ。
- 43 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:24
- 「……ありがと、あゆみ。」
抱きしめていたむらっちの体から、緊張がほどけた感覚が伝わる。
それと同時に、自分が如何に必死に腕に力を込めていたのか。内心でごめんなさ
い、とつぶやきながら、少し手をゆるめる。
- 44 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:25
- 「違ってたら、どうしようかって。ずっと迷ってたんだけども……。」
今度はきちんと目を見て言葉がつむがれた
でも、まだ頬の朱みは消えていない。
「でも、違ってなくて、ホントに良かった」
ほうっ、と。息をついて、ことん、と、わたしの胸元にむらっちがアタマを寄せて来た。
さっきとは逆の体制。アタマの重みをすべて託すかと思いきや、むらっちはすっ、と
顔を上げた。
- 45 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:26
- 「じゃあ、改めて。……もう一度、きちんと、触れていい?」
声音のあたたかみも、三日月の目も、いつもと一緒。
でも、さっきと大きく違うのは、お互い「一歩」を踏み出せたこと。
- 46 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:26
- 「うん!」
- 47 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:27
- まだぎこちなさもあるけれど。お互いの「好き」を改めて確認すべく。静かに目を閉じ
て、唇が落とされるのを待った。
- 48 名前:can't get started 投稿日:2006/10/08(日) 02:30
- 「can't get started」<<END>>
おそまつさまでした。
お互い同じところで「次の一歩」が踏み出せなかった、柴田くんと村田さんの
お話です。「言い出しかねて」との素敵な邦訳もある、ジャズのナンバーから
いただきました。
- 49 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/08(日) 23:12
- かわいい村柴をありがとうございます。
二人とも慎重なところありそうですよね(笑
このカプは大好きなので、もっと読みたいです。
- 50 名前:あけそら 投稿日:2006/11/01(水) 01:43
- >>49 名無飼育さん
お褒めの言葉、ありがとうございます。のんびりやのおねえさんといけいけ
ごーごー!の妹に見えて、実のところは慎重かも、なんてことを思っており
ます。これからもおめがねにかなうものが出せますよう、精進したく思います。
- 51 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:46
- 日付変更線はまたいだかな、という時間帯。パソコンから薄く音楽を流しつつ
雑誌を眺めていたら、携帯メールの着信音が短く響いた。差出人は、あゆみ。
登録者全員の割り当てはしていないけど、彼女を含むメンバー分は、メー
ルと通話の着信音を個別に設定してある。
- 52 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:46
- 週に一度はラジオの仕事で必ず一緒になるけれど。夏のツアーが終わった後、
どちらかといえば別々の仕事の比重が大きくなっていた。元から彼女単独の仕
事も多いとはいえ。「一緒」の時間が濃ければ濃いほど、その後の距離がより遠
く思える。そんな気がする。
- 53 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:47
- 叶うことならば、出来る限り近くに居続けたい。でも、それが仕事を妨げては
本末転倒だ。
- 54 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:47
- 「うちに帰ったのかな」
充電器に置いてあった携帯を手に取り、受信メールを確認する。
- 55 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:47
- From:あゆみ
Title:めぐちゃんへ
「だいじょうぶ?」
- 56 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:48
- 本文欄には、たったひとこと。
仕事終わり、あるいは帰宅した。もしくはこちらに立ち寄りたいなら、その意
の言葉が必ず入っている。なのに、どういう意味だろう、これは。
とりあえず、返信。おつかれさま、とのねぎらいの言葉と、うちでゆっくりし
てますよ、との文をつむいで、送信ボタンを押す。
- 57 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:48
- ほどなくして、今度は音声通話を知らせる着信音が響いた。
「はいな、ムラタです。どしたの、あゆみん」
と言いたかったけれども、「どしたの」の途中で、言葉はさえぎられた。
- 58 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:49
- 「めぐちゃん、どうして話しかけてくんないのよ!」
ご機嫌斜めの声が降ってくる。今日は一日別々の仕事だったし、話しかけない
も何も顔を合わせてないし、と、ほけほけとアタマを巡らせる。
- 59 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:49
- 「うちにいて、チャットできる状態なのに。どうして何も言ってきてくれない
のよ!」
反応のなさがさらにご機嫌を傾がせたようで。むーっ、とした顔が浮かぶよう
な声が再度降ってくる。
- 60 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:49
- 「あー……ごめん!」
うちのパソコンはログインすると同時にメッセンジャーソフトが立ち上がり、
そのまま「オンライン」のステータスを表示するようになっている。いい加減
設定を変えなきゃ、と思いつつ。つい面倒がってそのままにしてたんだった。
- 61 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:49
- 灼熱天国ツアーで、あゆみと組んでMCをすると決まった時。打ち合わせをメ
ッセンジャーでやろう、と話し合った。実際、別々の仕事を終えて帰ったあと、
おしゃべり感覚で打ち合わせをして、決めたことのメモをお互いの携帯メール
に送っておく。こうすれば直前に再び見直しも出来るし、「その場で考えなけれ
ばならない」ぐだぐだは回避できる。
- 62 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:50
- まあ、「打ち合わせ」といっても、ある程度の方向性と話題を決めておくくらい
だから。8割方は他愛のないやりとりをしてたし、ツアー中盤辺りからはそも
そもそれ自体もしなくなった。
MCでその「打ち合わせ方法」について触れた時、「居たのに、話しかけてくれ
なかったんじゃない!」と舞台上で危うくへそを曲げられそうになったことも
あった。その時は「まあ、打ち合わせをしなくとも、通じるようになった、っ
てことですよ」との言葉で収めたけど。
- 63 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:50
- そういえば。今日はこちらから「ただいま」のメールは打っていなかった。
出掛けに一通「行ってくるね。あゆみもお仕事がんばってね」とのメールを入
れたきり、そのまま。わたしの仕事は予定より早く終わったけれど、うちに帰
って、パソコンで仕事の調べモノをして。その後ひとしきり四川省で遊んだ後、
気分転換に雑誌を眺めてた、てなとこだったのだ。
- 64 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:50
- メールも入れず、気がつかずにごめんね、と謝ろうと思ったとき。先とは違う、
少し沈み気味のトーンで声が流れてきた。
- 65 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:51
- 「……めぐちゃんに何かあったんじゃないかって。心配したんだから」
- 66 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:51
- その一言に、はっとさせられる。
夏ツアーの直前。元々眠りが浅い質だけど、そこへ「食べられない」が重なっ
てしまった。そこで夏バテをこじらそうになった時、真っ先に気づいたのはあ
ゆみだった。
「大丈夫だよ。ごめんね、あゆみに心配ばっかかけちゃって」
会えないからこそ、手間を惜しまずにひとこと、ふたことのメールを入れるよ
うにする。そう、自分で決めていたはずなのに。それを忘れて、逆に、不安に
させてしまったのなら、元も子もない。
- 67 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:51
- 「ホントに大丈夫か、今から見に行くから」
受けて返ってきたのは、こんな言葉。
え、もううちに帰ったんでしょ?遅いし、明日もあるから、と返しかけたとこ
ろへかぶせるように
「心配かけためぐちゃんが悪いんだから、言うこと聞くの。着いたらもう一度電話するから、ちゃんと鍵開けてね」
と押し切られて、電話は切れた。
- 68 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:52
- 本当ならば、明日の仕事予定を慮って。怒らせようとも泣かせようとも「ダメ」
と言うのがスジのはず。そこを押し切られて-押し切らせてしまったのは、底に
沈めたはずの「逢いたい」気持ち。
- 69 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:52
- もう、コドモじゃないんだから。
折に触れて、彼女から差し出される言葉。
社会的にも、そしてわたしと彼女の関係性を表すものとしても。その言葉は正
しい。でも、わたしの奥底には、まだまだ彼女を「かわいい末の妹」扱いした
い思いが残っているようだ。そのくせ、こうやって心配をかけて怒らせてしま
うのだから、矛盾も甚だしい。
- 70 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:52
- 「ホントは、ワタシの方がオコチャマ、なんですかね」
ため息混じりにつぶやきながらも。それでも、着く頃には温かい飲み物の
ひとつでも用意しなきゃ、と。お湯を沸かしにキッチンへ向かった。
- 71 名前:あいたくなったら 投稿日:2006/11/01(水) 01:58
- 「あいたくなったら」<<END>>
おそまつさまでした。
灼熱天国ツアー終了後の柴田くんと村田さんを、村田さん視点にて。
「村田さんの夏ばて」については、「作者フリー短編用スレ」の822-835(「I say a little
prayer」)を書かせていただきましたので、そちらもご覧頂けると幸いです。
- 72 名前:あけそら 投稿日:2006/11/05(日) 03:08
- 少し時間軸を戻して。「can't get started」の後、あたりの時間設定で
書かせていただければ、と思います。しばしの間、おつきあいを。
- 73 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:09
- 新曲レコーディングとそれに伴うインタビューラッシュの毎日。忙しくはあるけど、それな
りに何らかの手応えは感じられる毎日。一つでも上のチャートへ。そして、一つでも多く
の「出番」のために。そして、いつかは「単独のコンサート」を叶えるために。うちに帰る
とすでに日付は変わっているなんてざらだったけど、それでも常に気持ちは前向きで居
られた。もちろん、仕事の充実だけじゃなく。いつくしみの気持ちを注ぎあえる相手がす
ぐ隣にいるから、なんだけど。
- 74 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:10
- 次の日は久々の午前オフ。何かと理由をつけてお互いの部屋を行き来することが増え
たけど。朝のんびりできるという気持ちのゆとりも背中を押して、あゆみが嬉々としてわ
たしの部屋に泊まりに来た。
お風呂を入れて、先に入るように促す。その間、録画していたバラエティ番組をのんび
り眺める。一人で居ようと二人で居ようと見るのは変わりないかもしれないけど。せっか
く二人で居られるなら、二人でしか出来ないこと、や時間を持ちたい。なので、こういう
細切れ時間に「自分(だけ)の用事」は済ませるようにしている。
- 75 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:11
- ぺたぺたと足音がして、お風呂上がりのあゆみの気配が近づいてくる。
お風呂上がりのいい香りと、かすかな熱が隣に来る。
あー。またこの子はざくざくっとアタマを拭いただけで上がってきてる。
ドライヤー持って来て乾かさなきゃ、と心の中で呟いて、化粧箱のところへ動こうとした
時に、呼び止められた。
「ねえ、めぐちゃん。」
「ん、なあに?」
テレビはそのまま、でも視線は彼女に向けて、次の言葉を待つ。
- 76 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:12
- 「んと……んーと。」
まるで出会った当時の、まだまだ人見知りの強い時のような言葉がこぼれてくる。こう
いう時にせかしても逆効果。ちょっと間をおくか、空気を変えるか。それが、彼女とのつ
きあいで得た、距離のとりかたのひとつ。
「あー、あゆみん。また髪の毛きちんと拭かないで出て来たでしょ?ちょっとドライヤー
取ってくるから、待ってて」
あゆみも特に次の言葉で押しとどめようとせずに、「ん…」と言葉にならない呟きをクチ
にして、ソファに預けたカラダの力を、少し緩めたようだった。
- 77 名前:Sweet 投稿日:2006/11/05(日) 03:12
- 言葉が見あたらないなら、一歩間をおけばいい。4人の時でも、そして2人の時でも。は
きはきと言いたいことを言いたいようにいうようになった彼女が、久々に言いよどむんだ
から。それなりに重みのあることかもしれない。でも、受け止める側までが重々しくなっ
て、言葉をせき止めてしまっては元も子もない。
一投目を受けるときは、あくまでさらりと。そして必要であれば、それ相応の重みを加え
ればいい。ただでさえ歳の差もあるのだから、急いで彼女を置き去りすることはない。
- 78 名前:Sweet 投稿日:2006/11/05(日) 03:13
- 「ほい、乾かすよん」
瞳や雅恵ほど器用ではないけど。それでも、彼女とこうして過ごすようになって「人の髪
に触れる」ことの心地よさを少しずつ知った。仕事として為すものとは全くレベルが違う
し、そもそも基本的な技術さえおぼつかないけど。好きなひとの髪が、どんどんすべら
かになってゆく過程。触れることで、気持ちがゆるやかに伝わること。そのひとつひとつ
が、静かに、そして確実に、心と体を溶かしてゆく愉悦として、自分のうちに積み重なっ
てゆく。
- 79 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:14
- タオルでざっくり水分はとれているから、あとはもう少し乾かしておくくらい。
最初の頃はあゆみも自分で乾かしていたけど、最近はこうして「途中まで拭いて」出て
くるようになってきた。そして、ドライヤーで乾かすのが、ひとつの習慣になった。
ドライヤーの音にかき消されるのは、まあ織り込み済みだけど。さすがに話を聞くのに、
二重のノイズは要らない。ドライヤーのスイッチを入れる前にそっとリモコンを取り、TV
の音声を消す。モードを温風にセットし、熱くなりすぎないように角度に気をつけつつ。
彼女の髪へ風を当て、指を差し込んでゆく。
- 80 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:14
- 「……めぐちゃんは、さあ……」
ざっくり水気が飛んだ、とおぼしき頃に。あゆみが呟く。
構えぬように注意しながら、軽く、でも、「きちんと聴いている」態度は示す。
「ん、どした?」
ドライヤーを止めて、軽くブラシを入れる。
そのまま、おだやかにアタマを撫でる形へ変える。
静かに、しずかに。決して、急かせることのないように。
- 81 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:15
- 「めぐちゃんとわたしって、『つきあってる』ん、だよね」
- 82 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:16
- さっきより背中を丸める形で、ぽそりとあゆみが言葉を紡ぐ。
これは、きちんと向き合ってした方がいい話。アタマを撫でる手は止めずに、静かにこち
らも言葉を渡す。
「あゆみちゃん、こっち向いて。」
一瞬ためらいをみせたもの、素直にこちらへ向き直ってくれた。
わたしへと向かう目に、特に揺れは見受けられなかったけど。でも、わざわざそう問うて
くるからには、何らかの理由はあるのだろう。
- 83 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:17
- 「ムラタは、あゆみとは『おつきあいしている』と思っているよ。でも、あゆみが何か不安
に思っているなら、それはきちんと解決したいな。」
彼女のことを、決して追い詰めないように。問い詰めないように。
対等な立場であるけど、でも、ホンの少し年の功、ってのもあるつもり。
- 84 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:17
- しばらく躊躇するように視線がさまよった後、胸元に落ちて。それからしばらく言葉を探
すようにくちびるが動いて、言葉が落ちた。
- 85 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:18
- 「……だったら、どうして何もしてくれないの?」
「え、えっ?!」
- 86 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:19
- 思いも掛けぬ方向への投擲に、思わず動揺する。大暴投、っていうんじゃないけど。ま
さか来るとは思わなかった変化球に、後逸してしまったような気分。
「好き、って言い交わした。キスしてくれて、『そういう意味の、好きだ』って言われた。お
つきあいしよう、って言われた。すごくうれしかった。……でも、それだけなの?」
堰を切ったように、彼女から言葉があふれ出る。目尻にはかすかに涙。これはいけない。
ここでボタンを掛け違っては、全く望まぬ結果にすぐたどり着いてしまう。
- 87 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:20
- 「…うん、あゆみの言いたいこと、分かったよ。まず、触れても、いい?」
すぐに抱きすくめて、彼女の言うところの「何か」を実行に移しても良かったんだけど。こ
ちらの思っているところ、行動の理由を分かってもらうために。あえて、許しをえるべく一
段階を踏んだ。
不可解そうな顔はしたけど、黙って首を縦に振る。
そのことを確認してから、ゆっくり彼女の肩へ、手を置いた。
強く力を込めることはせず。熱が伝わったと思うほどの間隔を置いて、ゆっくり、ゆっくり、
肩から腕を静かにさする。
- 88 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:21
- 「ムラタは、あゆみときちんと『おつきあい』したい、と思ってる。それは、おふざけでも意
地悪でも冗談でもなんでもなく。」
「だったらなんで!」
「その場限りとかじゃなくて、出来れば永くありたいから。だから、急ぎすぎたくないんだ
よ」
- 89 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:22
- きっ、と向かってくる彼女をなだめるように、ゆっくり、ゆっくり。彼女の腕をさすりなが
ら、よっ、と一歩距離を詰める。そして、ゆっくりと彼女の身体を抱きしめる。ふりほどく
ことも出来るように、やんわりとした力で。(勿論、本気を出されたら、腕力じゃ彼女の
方が強いんだろうけど)
- 90 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:23
- 「……ムラタは、あゆみのことを抱きたい、と思ってるよ。この『抱きたい』が、今してるよ
うな『抱きしめたい』とは違うこと、分かるよね?」
静かに耳元へ吹き込むと、びくりと腕の中の身体が動く。
強く出てきてはいるけど。やはり、まだまだコドモの部分が残っているのかも。ただ、そ
んな思いはずっと底にしまって。次の言葉を静かに続ける。
「でも、時期が来ていないのに。無理矢理、ってのは。それはムラタの望むところじゃ
ないんですよ。」
- 91 名前:Sweet 投稿日:2006/11/05(日) 03:24
- 「時期が来てないなんてこと、ない」
胸に顔をすりつけてるせいで、ちょっと拗ね気味の声が、こもりながらも胸に直接響く。
ぽくり。力は入ってないけれども、肩口に拳が当てられる。
- 92 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:24
- 「あゆみは……『身体のつながりがなきゃ、つきあっているとは言えない』と思うの?」
ちょっと意地悪かな、とアタマの片隅でちらつくもの。ここをはっきりさせてないと次に
つながらないから、あえて、そのものずばりを言わせてもらった。案の定、抱きしめた
身体の身じろぎが大きくなる。多分、首から耳まで真っ赤に染まっていることだろう。
- 93 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:25
- 少しだけ力を込めて、もう少し、彼女を自分に引き寄せる。隔てるものは服一枚。
彼女の頬の熱と、わたしの鼓動と。それぞれが等価に交換できる位置に。
「ムラタはね、その点が、ほんの少し違うんだ。」
「『抱く、抱かれる』ことを許す相手は『おつきあいしている』相手だけと思ってる。
それは、多分あゆみと一緒。でも、その逆はそんなに焦ることはない、とも思うんだよね。
……それじゃあ、だめかな」
- 94 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:26
- 抱きしめて、優しくアタマから背中へ手を動かす。
うー、とか。むー、とか。言葉にならないうなりが胸元から聞こえてくる。
彼女の言わんとするところも、よく分かる。
ただでさえ初めてづくしのところにきてなおかつ何かしらの「形」もないのだから。せめ
て身体のつながりなりなんなりの確証を得たい、と思うのだろう。
でも。だからこそ、万が一の時のために。彼女が別の道を-もしくは後戻りを望んだ時
に。それを早々に断っておくようなことはしたくなかった。こちらの思いだけを走らせて、
彼女を巻き込むような真似だけはすまいと。最初に思いが生まれた時から、それは強く
自分に言い聞かせていた。
- 95 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:27
- 「…あゆみ。ちょっと、顔上げて。」
- 96 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:27
- しぶしぶ、といった風で、目元を腫らした状態で彼女が胸元から顔を上げる。
片手は背中に回したまま、片手を彼女の頬に回して。猶予を与えず、深くくちづける。
いつもの軽いキス-触れるだけのそれと思っていたのか、こちらの舌の動きにびっくり
したように唇を閉ざす。無理強いはしない、とさっき言った口はどこへやら。やや強引
に舌を滑り込ませ、絡ませる。息を奪うほどの、深さ。
- 97 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:28
- さすがに苦しくなったのか、彼女が肩を強く押してきた。
これ以上追い込むのは本意ではない。素直にくちびるを離し、あゆみを見つめる。多分
先ほどよりも紅さを増した頬と、ホンの少し上下する肩。一生懸命隠そうとはしている
けれど、動揺はそこかしこからにじみ出している。
- 98 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:29
- 「これで、信じてもらえないかな?」
ぎりぎり怒らせるか否か、と思いながら。なるべく笑みを消し、まじめな顔で彼女に問
う。
- 99 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:29
- 「……めぐちゃんの、ばか」
言葉とは裏腹に、耳まで真っ赤にして。ぎゅっ、とわたしの首筋に抱きついてきた。その
背をゆっくり撫でながら、「まだまだ、先は長いかな」なんてことをほんのり思った。
- 100 名前:Sweet Sweet Baby 投稿日:2006/11/05(日) 03:33
- 「Sweet Sweet Baby」<<END>>
おそまつさまでした。
途中、タイトル覧の編集を忘れて「Sweet」のみになっている部分もあります。
ご海容頂ければ幸いです。
「おつきあい」を始めたころの村田さんと柴田くんのお話、でした。やっとこ少し
オトナの村田さんが書けたかな、と思っておりますが……如何でしょうか。
- 101 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/05(日) 17:38
- 読んでて、すごいドキドキしました。
村田さんは焦らず、のんびりタイプなんですね。
それに対して急かす柴田さんが最高です!
あの卓球のお話は、あけそらさんが書かれたんですか
柴田さんは、いつも村田さんを見てるって感じがしますね。
- 102 名前:名無し飼育 投稿日:2006/11/06(月) 01:46
- こんな良い作品があったなんて(*´Д`)
次の作品も、とても楽しみにしています。
- 103 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/06(月) 18:07
- すごい好きな感じのアレですw
ドキメキました
- 104 名前:あけそら 投稿日:2006/11/22(水) 07:13
- >>101 名無し飼育さん
二人のことを好き、と言っていただけて、とてもうれしく思います。
村田さんはやはり「おねえさん」だなあ、と、昔のラジオを聞き返して
より思いを新たにしました。
卓球の話も気に入っていただけると幸いです。
>>102 名無し飼育さん
うれしいお言葉、本当にありがとうございます。
次の話も、おめがねにかなうものでありますように、と。ちょっとどきどき
しております。
>>103 名無し飼育さん
好きな感じ、とのお言葉、大変励みになります。
これからもドキメキしていただけるよう精進します。
- 105 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:16
- 毎週月曜日、生放送で2時間のラジオの仕事。
事前打ち合わせ用の集合時間はあるけど。終わり次第、あとは開始前の集合まで各自
のんびり過ごすのがわたしたちの流儀。
マサオくんは「ちょっとコンビニへ行ってくる」とおでかけ。
ひとみんはのんびり雑誌を眺めている。ずっとファッション雑誌だったのが、最近猫モノもま
ざってきてる。
あゆみは「向こうのソファでちょっと寝てくる」と眠そうな声。おいおい、足取りがもうへろへ
ろしてるよ。こりゃ、本格的に眠いんだね。
- 106 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:17
- 楽屋用にあてがわれている会議室は、物置場でもあるようで。隅に置かれた各種グッズ
類からジャンパーを2枚掘り出し、抱える。
「ひとみん、ちょっとあゆみんとこ行ってくるね」
雑誌に目を落としたままなのだろう。少しうつむき加減の「んー」との声を背に、隣の応接
室へ向かう。
- 107 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:18
- 軽くノックしてドアを開けると、もう本格的に寝入ったあゆみの姿が。
携帯は耳元に置いてるけど。こりゃ、少し早めに起こしに来た方がいいかね。
しゃりしゃり音を立てすぎないように気をつけながら。肩口と、腰に。一枚ずつジャンパーを
掛ける。
「おつかれさま。後で起こしにくるから、それまでゆっくりおやすみ」
ささやきを残して、そっと部屋を出る。プレートを「来客中」表示に変えてから、会議室へ
戻った。
- 108 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:18
- ブース入り時間の10分前に、携帯のアラームをセットする。これなら、まあ、起こせるまで
の余裕はあるな、との見込み。
- 109 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:19
- 「あゆみ、寝ちゃってた?」
雑誌から顔を上げて、ひとみんが話しかけてくる。
「うん。疲れてんのかね、もう本格的に寝てたよ。ま、入り10分前には起こしにいくけど」
「優しいよね、ムラは。」
ごくごくいつもどおりのやりとりのはず、なんだけど。ホンの少しだけ、ちょっと耳に残るもの
があって。流すんじゃなく、ちょっと聞かなきゃかな、と。
- 110 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:20
- 「ん、どした?」
いつもより、のんびり。決して問いただすトーンにはならぬように。にっこり笑って、ひとみん
に言葉を渡す。
「や……。うーん、ごめん。今の、忘れて。」
人一倍気ぃ遣いさんで、細やかなおねえさん。悩み事があればあるほど、内へ内へと抱え
込んじゃう。ぱっと見そうは感じさせないから、余計にしんどい時もあるんだろうね。
- 111 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:20
- 「いやいや。ムラタ博士のお悩み相談室。何でもどんとこいですぞよ。」
おどけた口調で返す。ここではいそうですかと流しちゃうと、多分彼女はそのまま荷物を抱
え込んでしまう。それは、決してわたしの、そして他の二人-特にマサオくんの-望むところ
ではない。
「時間無制限の上に無料!大出血サービス開催中ですぞよ。」
さらにもう一押し。おふざけで、へろっとして。冗談口で済ませられる、テイを。
生真面目な彼女を動かすには、これが一番効くはず。
ほどなく吹き出して、大笑いした後。ほつりほつりと話してくれた。
- 112 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:21
- 「あのさ。……マサが、ね。優しいし、大事にしてくれてるんだ、とは思うんだけどさ。私が思
うほどには、向こうは思ってないのかな、って。たまに考えちゃうことがあるんだよね。」
「んと。それは行き違いか、そのたぐいのことがあったのかな?」
「うーん、そういうことじゃないんだけど、ねえ……」
自分の内にあるものを、どう表現して良いのか分からない、てな様子。
そもそも、それ自体がどんなものなのか。形も中身も把握できない。
ハの字に下がった眉から、困惑がこぼれてくる。
- 113 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:22
- 「マサは、優しいからさ。私の手を振り払っちゃ悪い、って。それで、今に至るのかなあ、っ
て。嫌な考えがぐるぐるしちゃうのよ」
仕事仲間である上、最大公約数的なお手本のない「おつきあい」。
たのむところが自分たちのココロの在りようだけ、ってのは。見知らぬ荒野を丸腰で歩くよ
うな厳しさと不安との戦い、なところが強い。
しかもこの二人は、何かとお互いには遠慮しぃなところが強いときている。仕事ならとも
かく、プライベートの「おつきあい」なら、別にわがままをぶつけあったってかまわんでしょう。
自分のことを棚に上げて、そっと心の内で呟く。
- 114 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:23
- 「いつもあゆみを怒らせちゃうわたしが言っても、説得力ないだろうけどさ。そういうことは、
ちゃんとマサオくんに伝えて、ちゃんと二人で解決した方がいいよ」
「うーん、そうなんだろうけど、さあ……」
「あのね。ひとみんたちは、はっきり言って遠慮しすぎだから。」
お互いがお互いを思う気持ちは、側で見ていれば明々白々。それだけ強く思っていなが
ら、何を不安に思うのさ、と、つっこみたいくらい。
むーむーと言葉にならない細い声をこねくりまわしているひとみんに、違う角度から言葉を
渡そう。
- 115 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:24
- 「こないださ、夜遅くに雨が降り出した時があったじゃない。4人の仕事のあと、あゆみが別
の仕事医って、ひとみんはあっちゃんたちと会ってた日」
「あー、うん。あったね。」
「あの日、マサオくんと一緒にごはん食べに行ったんだけどさ。雨降り出したとたん、あのコ
の第一声が『ひとみん、腰大丈夫かなあ』だったんだよ。」
「えー、ほんとにぃ?」
「ホントホント。マサオくん、雨降ったり、寒くなったりする度に、まずそう言うもん。傘どうし
よう、とかよりも先にだよ。」
ひとみんの声が止まる。
- 116 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:25
- メンバーとしての、共に戦う仲間としての。「大切」や「大事」の気持ちは、ちゃんとある。で
も。それとはまた違う優先度は、「おつきあい」してる相手には、あると思うんだよね。
こと、わたしについて。
今だって、寝に行くのがひとみんだろうとマサオくんだろうと、まあ、気にはかける。寒そうだ
と思えば様子も見に行く。でも、部屋を出る姿を見て、ありゃすぐ沈没だな、と即行動に
移すのは。やはりあゆみだから、ね
- 117 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:26
- 「マサオくん、何か見る度に『ひとみん、これ気に入るかなあ』って、わたしやあゆみに聞く
からね。こないだなんて、コンビニのチョコの棚からしばらく動かなかったって、あゆみが呆
れ顔で言ってたよ。まぁしい、自分からそんなにチョコ食べる人じゃなかったよね?って」
昔持たせてもらっていたラジオ番組で「早食い競争」企画があった。その1つにチョコが当
たった時、爛々と目を輝かせていたひとみんに対して、マサオくんは途中でちょっとげんな
りしてたくらい。頂き物はおいしく食しますけど、「チョコまっしぐら!」なのは、まあ、ひとみん
くらいだからね。
- 118 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:26
- 「……そう、なんだ……。」
微かに声が漏れる。
うん、そうだよ、と。軽く肩に触れようか、と手を伸ばした瞬間。
マサオくんが少し大きめの袋を下げて帰ってきた。
- 119 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:27
- 「ただいまー。なんかチョコの新しいのが出てたから、買ってきちゃった。」
- 120 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:27
- おかえり、の言葉より先に。悪いけど笑い声が出てきた。
勿論マサオくんは何がなにやらだから、ぽかんとしたまま。
- 121 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:28
- 計ったかのように、机に置いた携帯が鳴る。さっきセットした「あゆみを起こす時間」のアラ
ーム音だ。
「おっと、あゆみを起こしに行かなきゃ。応接室、行ってくるね」
その後、ひとみんにだけ届くように。そっと耳元へささやきを落とした。
「……お邪魔虫は消えるから。ま、ちゃんと仲良くするんだよ?」
- 122 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:29
- ムラ!との声と、照れた手が背中に飛ぼうとするのを避けて。
携帯を持って、眠り姫が居る隣の部屋へと向かった。
- 123 名前:恋のショットガン 投稿日:2006/11/22(水) 07:32
- 「恋のショットガン」<<END>>
おそまつさまでした。
斉藤さんと大谷さんの話を、村田さん視点にて。
- 124 名前:ROM読者 投稿日:2006/11/22(水) 19:40
- 我慢できずに書き込んじゃいました。
村田さん素敵です!
- 125 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/23(木) 02:01
- 村柴に続き斉大ですか、イイですね!
斉藤さん、すごく気を使いそうですもんね。
それに気づかないところが大谷さんらしいですw
- 126 名前:あけそら 投稿日:2006/12/09(土) 14:12
- >>124 ROM読者さん
お褒めのお言葉、励みになります。4人が4人それぞれ素敵な部分がある、と
思いつつ。ついつい、最年長のおねえさんの一挙手一投足に心奪われる昨今です。
>>125 名無し飼育さん
斉大もお口に合えば幸いです。この2人は、とても気ぃ遣いさんだと思うのですが
時にその方向がずれて、じたばたすることがあるんじゃないかと。そんなことを
思わせてくれるところもあります。
- 127 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:16
- ベッドをくっつけてある壁の出窓は、普通より一回り大きめのものらしい。
昔居た部屋の、一間用のカーテンを吊しているけど。端だったり、真ん中だったり。いつもどこか
に隙間が出来て。気がつくと、月の光や夜空の気配を伝えてくれる。
眠りが決して深い方ではないのだから。もっと遮光性が高いモノ、いや、それ以上にちゃんと寸法
の合ったものを吊さなきゃ、と思いつつ。眠りに入る前や、途中で目が醒めた時の景色が存外気
に入ってることもあって、つい、そのままにしてしまっていた。
- 128 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:17
- ----------------
世間的にも、自分たち的にも、特段「イベントがらみの日」ではなく。ごくごく普通の、仕事と仕事
の合間の日だった。終わりこそ夜深いが、翌日の入りは午後の遅い時間。なので、常の習いで、
めぐみの部屋にあゆみが泊まりに来た。軽くお茶を飲み、お風呂に入った後、「今日はゆっくり寝
られるね」とくつろいだところまでは、今までと全く変わらなかった。
あゆみはベッドに腰掛けて足をぶらぶら。めぐみは床のクッションにぺたんと座って雑誌をめく
る。よくあるかたちの、寝る前の過ごし方。
- 129 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:18
- 「ねぇ、めぐちゃん」
「はい、なんでしょう?」
さあ聴くぞ、なんてかしこまり方はしないけど。あゆみが話しかけると、めぐみは必ず手を止めて
にっこり顔を合わせてくれる。そんなわずかな気遣いでも、うれしさが、体中に満ちる。
- 130 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:18
- 「……あの、ね。」
いざ、心を決めていても。それでもやはり、言葉にするのは恥ずかしい。
いちばん最初にそのことをぶつけた時は、深いくちづけを返されて。それでもういっぱいいっぱい
になっちゃったけれども。その時とは、もう違う。「時期が来てない」だなんて、言わせない。
- 131 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:18
- あゆみが言いよどむ時の常で、めぐみは決して「続き」を焦らせることはしない。あゆみの隣に腰
掛けなおし、こつん、と額をくっつけて。言えそうなら言ってごらん。でも、焦らなくていいから、と。
言葉にせず、ただただ温かな笑みを注ぐだけだ。
- 132 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:19
- 「わたし。……わたし、ね。」
上手く紡げぬ言葉の助けに。そっ、と胸元に引き寄せられて、やさしくアタマを撫でられた。でも、
めぐみからの言葉は、まだ出てこない。
察して欲しい、と思う時も、多々ある。変なところで遠慮深いめぐみは、決して無理強いはしてこ
ない。ある意味、こちらがじれったくなるくらいに。決して手を振り払うことなんてないのだから、少
しくらい強引にしてくれてもいいのに、と思うんだけど。
- 133 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:20
- 「めぐちゃんと、ちゃんと最後まで抱き合いたい。ただ抱きしめられるだけじゃなくて。それ以上の
意味で。」
- 134 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:20
- 一気に言い切る。
まるで短距離走でも走り終えたかのように、息が荒くなる。どんどん頬に熱が集まってくるのも相
まって、うつむく以外のことが出来なくなった。
- 135 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:20
- アタマから背中に下りた、めぐちゃんの手。一瞬止まったけれども、また、ゆっくりと上下にやさし
くさするように動いている。でも、頬をつけている胸元からも、ことことと駆け足リズムの音が響い
てくる。手ののんびりさ加減とは、えらく違う。
しばらく沈黙があった後に。深く息を吐いて。それから後、めぐちゃんの手がぎゅっ、と身体を引き
寄せた。
- 136 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:21
- 「痛い思い、させるかもしれない。泣かせるかもしれない。なるべく気をつけるけど、決して気持ち
よい、だけじゃないかもしれないんだよ。それでも、いいの?」
- 137 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:21
- 押し殺したような。そして、ホンの微かに泣きそうな。そんな部分が入り交じった声が、耳元に降
ってきた。思えば、「つきあおう」と決めた時も。最初に「つきあっているなら、もっと先を」と望んだ
時もそうだった。自分の気持ちよりも、なによりもあゆみのそれを、あまりにも強く先んじるひと。
自分の望みは奥底に秘めて。それでいて、叶えてほしい、と。ちいさく、呟きを漏らすのだ。
- 138 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:22
- 「わたしが、そうしたいの。」
胸元から、くっ、と顔を上げて。めぐちゃんの目を見て、そう言い切った。
- 139 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:22
- ----------------
- 140 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:23
- 額へ。頬へ。首筋へ。軽く、舞うように。まんべんなく。静かに口づけが降ってくる。その合間を縫
って、ひとつずつ、パジャマのボタンが外されてゆく。
髪を撫で、頬を撫でてくれる、めぐちゃんの手。細くて、長い指先。何度も触れられているけれど、
今日の感覚は、また少し違うモノがある。
- 141 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:23
- こわばりが溶けたとおぼしきころに、前の合わせを一気にはだけられる。
反射的に、つい手で顔を覆ってしまった。
- 142 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:24
- 「あゆみ。顔、見せて?」
「……ねえ、めぐちゃん」
「……なあに?」
「めぐちゃんも、肌、見せてよ。」
一瞬きょん、とした顔をしたけれども。すぐに笑みへ戻って、めぐみは一気に身にまとったものを
脱ぎ捨てた。
「これで、いいかな。」
左の肘をベッドについて、右手で優しくアタマを撫でられる。
そして、重みは掛けぬようにしながら、身体を触れさせてくる。
その感覚に背を押され、めぐみの首にぎゅっと手を回した。
- 143 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:24
- いつも、いつも、あゆみがする癖。
甘えたい時。何か言いたいけど、上手く言葉に出来ない時。二人の「好き」を重ねて確かめた時
も、あゆみはこうしてめぐみの首に抱きついてきた。
「もう、これから先は。何て言われても、止めないよ。本当にいい?」
一度強く抱きしめられて、その後、めぐみから目を見つめて渡された言葉。
望んだのは、他でもない自分。めぐみのためだから、ではなく。自分がそうしたいから。望んだの
だから。
「うん。……止めないで。」
- 144 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:26
-
残りの服もゆっくり脱がされて、お互い一糸まとわぬ姿になる。
先ほどの優しさとは少し角度を変えて。それと意図を含んだ動きが身体に落ちてくる。
今まで感じたことのない感覚に、思わず身体がびくりと跳ねる。
触れられた部分と、そして腰の辺りにじんわりと熱が上がってくる。
くちびるでもたらされる熱。指先で呼び覚まされる、奥底からせり上がるような感覚。それらに耐
えきれず、自分のものとは思えない声が漏れ出る。
- 145 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:26
- 「がまんしなくていいからね。……声、聴かせて」
余裕綽々な言葉を吹き込まれて、一気に頬に熱が集まる。
噛み殺そうとしても。喉の奥から、声と、息が漏れ出る。
そこから先は、もう。次から次へと寄せる波に揉みしだかれるばかり。
ただひたすらにしがみついて。声が嗄れんばかりにめぐちゃんと名を呼んで。
何か言葉をもらったような感覚もあったけれど。一番の大波の後、そのまま、引く潮に意識を委
ねてしまった。
- 146 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:27
-
快楽は与えられるものだけ、と思っていたけど。
意外にも、与えることで降る悦楽、もあるらしい。
あゆみが果てるとほぼ同時に、自分の内にも強烈な愉楽が走った。
与えられる波とは質が異なるもの。あからさまに強く中心線を貫く感覚に打ちのめされ、そのまま
倒れ込んでいた。
呼吸がなかなか整わない。
身体の負担はあゆみの方が大きいだろうに、自分に降った感覚を扱いあぐね。しばらく、目を閉
じて。静かに意識を手放した。
- 147 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:27
- 小半時ほどそうしていたのだろうか。
胸元に差し込む光に、意識が戻される。
隣に眠るあゆみを起こさぬように、そっと身体を起こす。
先ほどまでの波も、熱も、やっと凪いで、今は静かに眠りに身を任せている。多少のことで起こし
はしないだろうけど。それでも、やはり。要らぬ気遣いはさせぬように、一挙手一投足に気を配
る。
- 148 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:28
- 彼女も、自分も。共に一糸まとわぬ姿で居る。
お互い望んだことでもある。機が熟するまで待てと、自分にも彼女にも何度となく言い聞かせた。
その上で、互いが選択した「一歩先」のはず。
でも、「彼女の道を過たせてしまったのではないか」との思いが、どうにも拭えずにいた。
まだまだコドモだ、と思っていた。ずっと、守らなければ、と思っていた。
自分の思いはずっと心の底に秘めたまま。優しい「おねえさん」で居られたらいい。そう、思ってい
た。はずだった。
- 149 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:29
- さすがに肩口に冷えを感じて、脱ぎ捨てた上着を取ろうとベッドの下へ手を伸ばしかけた時。
ぐっ、と手をつかまれた。
- 150 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:29
- 「……いっちゃ、やだよお……」
ねぼけているのかと顔を見ると、まだ焦点はぼやけていそうなもの、それでもしっかりとこちらの
目に合わせようとしているあゆみが居た。
- 151 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:29
- 「……めぐちゃん、いっちゃ、やだ」
つかんだ手を引っ張られる。どうやら、ベッドの外へ行ってしまうのではないかと心配になったらし
い。
- 152 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:30
- 「だいじょーぶ。ちゃんと、居るから」
上半身は起こしたまま、彼女の方を向いてアタマを撫でると。違う、とばかりに力を込めて再度手
を引っ張られた。バランスを崩し、彼女の上に再度かぶさるような形になるのを、ぎりぎりのところ
で重さを掛けないようにするのがやっとだった。
- 153 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:32
- 「からだ、あずけて?もっと、ぴったりして?」
背中に腕を回され、引き寄せられる。
重くないかな、とか。大丈夫かな、との思いをかき消すかのように。重なった肌の熱に、再度火が
つきそうだった。
アタマで後悔しながら、身体は熱を帯びる。
そんな自分の浅ましさに、ため息が漏れ出そうになった瞬間
- 154 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:32
- 「……めぐちゃん。ごめんね」
肌の下から、あゆみの声が届いた。
「謝るのは、わたしだってば。……つらいとこ、ない?だいじょうぶ?」
- 155 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:33
- 謝るべきはこちらであって、あゆみが謝る点はひとつもない。
コドモだ、と思いこむことで枷を掛けていた自分に。もうオトナなのだと、背伸びしながら。奥底に
鍵を掛けた思いに軽々と手を伸ばし、引っ張ってくれた。
いや。そう思い込むことで。自分の欲望を上手く押しつけてしまっていたのではないか、と。そん
な嫌悪感に、じわりじわりと苛まれているのに。なのに、何故謝られるのか?
- 156 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:33
- 「抱き合いたい、って言ったのに。……わたしばっかりで、ごめんね。」
耳に届くか届かないかの細い声。でも、あまりにも予想外の言葉に、心臓が大きく跳ねた。思い
はあれこれ身体の内を駆けめぐるのに。なにひとつとして、言葉にすることができない。
- 157 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:34
- 出来ることは、もう。ただただ、あゆみの身体を抱きしめるだけ。
とんでもなく頬が真っ赤になっているんだろうな、と感じつつ。いつもあゆみがするように、彼女の
首筋に、ぎゅっ、と自分の顔を埋めた。
- 158 名前:Hold me Thrill me Trust me Love me 投稿日:2006/12/09(土) 14:35
- 「Hold me Thrill me Trust me Love me」<<END>>
おそまつさまでした。
村田さんと柴田さんの、いわゆる「はじめて」の、話です。
- 159 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/09(土) 22:10
- ぬくもりと匂い、質感を感じました。
言葉でも感じることができるものなのですね。
よいものを読ませていただきました。
これからの紡ぎ方も、奏で方も楽しみにしてます。
- 160 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/10(日) 00:38
- もうホントに『わぉ!』って感じですw
雰囲気と言うか空気感がかなり好きです。
- 161 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/11(月) 01:01
- あまりにも、きれいな文章に溜息が漏れてしまいました。
村田さん優しすぎです。
柴田さん可愛すぎです。
2人の間にある「空気」が伝わって来ました。
- 162 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/11(月) 19:49
- 素敵な関係ですね。
- 163 名前:あけそら 投稿日:2006/12/23(土) 00:28
- >>159 名無し飼育さん
こちらこそ素敵な言葉をありがとうございます。
感じる力、それを発する力の強い彼女たちの、ほんの欠片でも
写し取ることが出来れば、と思っております。
>>160 名無し飼育さん
空気感・雰囲気を好きといっていただけて、とても嬉しく思います。
元々の彼女たちの発する「素敵な力」だったり、4人でなくてはならない雰
囲気だったり。そんな諸々に惹かれて、今に至ります。微力ではあります
が、その少しでも伝えることを念頭に、精進したいと思います。
>>161 名無し飼育さん
村田さんも、柴田さんも。そして斉藤さん、大谷さんも。彼女たちは本当に
「優しい」し、「思いやりがある」と。ライブのMCや、ラジオ番組でその一端
に触れる度、思いが強くなっております。
その空気の一端でも伝えられましたら、幸いです。
>>162 名無飼育さん
お互いがお互いを自然に思いやれる関係、というのを、何かに触れる度に
強く思わせてくれるこの4人。つたない筆ではありますが、少しでもその一端
を表すことが出来れば、と思うことしきりな今日この頃です。
- 164 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:29
- 新幹線で約1時間半の移動。
私はあゆみと、まぁしいはむらっちゃんと、それぞれ並んでの席。
別にこれが固定ってわけでもないけど、「お菓子をわいわいつまみたい」チー
ムと「ゲーム対戦するか寝るかどっちか」チームに今日は分かれた。
しばらくぶりの、ホールツアーの初日。
ライブハウスツアーと、メロンラウンジ2回。あゆみはハワイツアー、わたしと
まぁしいとむらっちゃんはベリーズの子たちとのお芝居。スケジュールはいろ
いろ詰まっていたけど。4人での、「メロン記念日」としてのホールツアーは
ちょうど一年ぶりで。おしゃべりや音楽を聴いて気を紛らわせてはいたけど、
少しずつ、緊張が増えてゆく。
- 165 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:30
- 手帳にしまったメルの写真を引っ張り出してみたり、お気に入りの香水が鞄
に入っているか再度確認したり。なるべく静かに動いてたつもりだけど、隣の
あゆみから
「ひとみん、名古屋はまだもう少し先だから。大丈夫だいじょうぶ。」
笑ってぽんぽん、と肩を叩かれた。
干渉じみたことは一切言ってこないコなだけに、余計にその気遣いが沁み
る。
- 166 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:30
- 「うん、ありがと」
笑みを返して、それからは、しばらくたわいない話で盛り上がった。
新発売のお菓子がどーだの。こないだはジャージいっぱい買ったねえ、だっ
たり。クリスマスプレゼントは何が欲しいだとか、もう、オンナノコの会話で
みっしり。おかげで、変な緊張からは解き放たれて、「さあ、やるぞ!」てな
意気込みで会場へ向かうことが出来た。
- 167 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:31
- 楽屋に荷物を置いて、それぞれの鏡前を決めたらあとはしばしの自由時間。
お昼→各自それぞれのメンテと準備→リハ→ゲネ→開場→開演、てな流れ
だけど。お昼の準備がもうしばらくかかるとのことで、すこし自由時間が延び
ることになった。
わたしは荷ほどきと、あとは鏡前にメルの写真を出したり、短時間だけど「居
心地の良い空間作り」に精を出す。
まぁしいとあゆみは「探検ー!」と行ってあちこちを見回りに出て行った。
そんな二人をむらっちゃんが「いいねえ、若いモンは」と横になりながら送り
出すから、思わず吹き出しそうになった。
「体力温存しないと本番でエンスト起こしそうなんだもーん」と、ちょっとぶー
たれた声が帰ってきたので。よしよし、と機嫌直しにアタマを撫でてあげる。
にゃーにゃー甘え声が出てくるあたり、メルちゃんならぬ「めぐちゃん」だ。
- 168 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:31
- 一回りして気が済んだのか、2人がわいきゃい騒ぎながら帰ってきた。
「今日のケータリング、きしめんもあるみたいだよー」
「ねーねー、ここのお風呂、すんごいおっきいんだよー!」
ケータリングは分かる。けど、お風呂って……この会場、別に初めて来た訳
じゃない、よね?まあ、久しぶりってのは分かるけどさ。ま、終演後にさっとで
も汗を流せる時間と設備があるなら、それはそれで嬉しい。
あゆみがむらっちゃんにケータリングの種類を事細かに話している。それを
眼を細めてにこにこ聞いてるむらっちゃん。やー、ほほえましいこと。
- 169 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:32
- なんてことを思ってたら、ちょん、と隣に腰掛けたまぁしいが一言。
「あたし、ひとっ風呂浴びてくるわ」
はい?
ゲネ後にシャワー浴びるなり、終演後にさっと汗を流したい、ってんならまだ
分かるけど。身体が温まる前に一汗流して体力大丈夫なの?
「やー。ここの会場のお風呂、おっきいっしょ?久しぶりに手足伸ばしてゆっく
りお風呂つかりたいなー、と思ってさあ。そいじゃ、行ってくるっすー」
- 170 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:33
- 「ちょ、マサ!」
「ん、どうした、ひとみん?」
「や、どうしたもこうしたもなくてさ。シャワーだったらイヤなの?お昼もリハも
ゲネもまだなのに、お風呂入ったりしてばてない?」
「や、今朝シャワー浴びたんだけど、ちょっと寒くってさ。せっかくだから、お湯
ためて、大きなお風呂で悠々とこう、足伸ばそうかなー、って。」
言い出したら聞かないのはもう重々承知してるから。ならば、せめてきれい
なお風呂に入ってほしい。その辺り、意外と頓着しないところがあるんで。
- 171 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:33
- 「まだ、お湯ためてないんだよね?」
「うん。これからためて、それからゆっくりつかろうと思って。まだ、時間あるっ
しょ?」
「じゃあさ。手伝うから、とりあえずお風呂掃除してからお湯入れようよ。自分
ちのお風呂じゃないから、いつ使われたか、とか、分かんないしね」
「そっか。全然そんなことに気が回らなかったよ。ありがと、ひとみん」
まっすぐにっこり笑って言葉を渡されたら、それでもう、良くなってしまう。
……ずるいよ、マサ。
- 172 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:34
-
*************************
確かに2人が言ってたとおり、お風呂は結構広めの造りだった。
4人で入っても十分。コンサートだけでなく、芝居もあるらしいから、そうなると
大人数でお風呂を使うもんねー、と要らぬ感心をしながら、掃除道具を引っ
張り出す。
銭湯やら温泉やらはそれなりに掃除が行き届いてるけど、それがメインの場
所ではないし。脱衣所の隅っこに少し埃が積もってたりしたから、「掃除した
方がいい」との判断は正しかったかも。
- 173 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:35
- 二人して裾をまくって、しゃこしゃこと床のタイルや浴槽を磨く。
「なんだか学生時代みたいだよねー。ひとみん、たのしいよー、これ。」
「ねー。なーんか、お風呂じゃなくてプール掃除のノリだよねえ」
勿論、「風呂」掃除なんてのはなかったけど(実家のそれは別として)。
デッキブラシでタイルをこすったりするしぐさは、懐かしい昔を彷彿とさせてくれ
る。学生、という立場から離れて、結構経つけど。こうして思い出としてきちん
と振り返ることが出来るようになるとは、当時はあまり思えなかった。必死に
走って、走り続けて。まだゴールが見えたわけじゃないけれど、こうしてある
程度の「形」が残せるようになったから。やっと、振り返ることの出来るものも
ある。
- 174 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:35
- 浴槽と床をざっと磨き終わって、ホースで全般的にすすぎ水を撒き、〆にブラ
シやタイルをすすいで用具入れにしまった後。お湯のカランを回して浴槽に湯
を貯める。熱さ加減を手で確かめて、少し水を足してみて。彼女の好きな、少
しぬるめのお湯になるようにする。
- 175 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:36
- 「いろいろさせちゃって、ごめんね。んで、ありがと、ひとみん」
流れる水に手を触れさせている背中に、やわらかな声が響く。
そんなに大きい声じゃないけど、さすが風呂場。結構響きがいいのね。
「ん、どうせ入るんだったら、気持ちよく入って欲しいし、さ」
湯加減も良いようなんで、さてと立ち上がろうとした時。すい、と、背中から抱
きしめられる。立ち上がろうとしたタイミングにきれいに合わせてくれたおか
げで、びっくりはしたけれど、バランスを崩したりはせずに済んだ。
- 176 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:36
- 「マサ?」
「……なーんか、いっつもひとみんに心配とか、負担とかばっかかけて、
ごめんね」
首筋に頬を埋めるようにして、ぽそり、と呟かれる。
あんまり人目のあるところでは意思表示はしないひとだけど。中でも仕事
モードである時にこうした表現をすることも珍しい。
「緊張してるから、お風呂に入って気持ちと身体ほぐしてー、って思ってた
んだけど。そのこと言っちゃうと、ひとみんに心配掛けそうだったから、さ。」
言葉の響きが、胸の響きが。直接、触れ合った背中に伝わってくる。
4人4様の、緊張の形はどうしてもある。
でも。出来るなら、それは前向きなパワーへ変えてゆきたい。どんなコン
サートでも変わらないつもりだったけど。久々の「東名阪ホール」ツアーって
のが、どこか必要以上の緊張を-こわばりをもたらしていたんだろう。
- 177 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:37
- 「マサ、顔、見てもいい?」
背中から包み込まれるあたたかさも、勿論嬉しいんだけど。
こういうことは、出来ればちゃんと顔を見て伝えたいから。
どうぞ、と手の力を緩めてもらい、半身を返してしっかり向き合う。そして、
先ほどとは逆に。こちらからまぁしいの首元に手を回す。
- 178 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:37
- 「心配とか、負担とか。そんなことは、お互い様だから」
そっと耳に吹き込むと、とたんにまぁしいの顔が真っ赤になる。
「こっちの思いが、マサにとって重くなかったら。それで、いいから」
ただ、次の言葉は。言い終えるかどうかのうちに、ぎゅっと腕に力を込められ
た。普段は腰の悪さに気をつかって、「大丈夫?」と必ず尋ねてくれるのに。
- 179 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:38
- 「「重いなんて、一度も思ったこと、ないから!」
お風呂場中に、ちょっと泣きそうな声の響きが満ちる。
「上手く気遣えないのはホントに悪いと思うけど。でも、ひとみんのことは、す
んごく大事に思ってる。そのことは、信じてよ……」
じゃなきゃ。いくらメンバーといっても、こういう形で、触れたいとかは思わな
い。耳に届くかどうかな程度のささやきと。耳たぶに軽いキスが降ってきた。
- 180 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:39
- 嗚呼。そういえば、むらっちゃんにも、あゆみにも。「まぁしいは、ひとみんのこ
とをほんとに思ってるんだね」と、何度も言われてるんだった。
その度に嬉しい、とは思いつつ。ついつい「でも、自分の気持ちの方が重くて
、きれいに天秤がつりあわないんじゃあ」と心配が先に立ってしまって。
ボーイッシュ担当、なんてキャラ付けで仕事はしてるけど。多分、メンバー内
で一、二を争う「オンナノコらしい気遣いさん」だと思う。一番、と言い切れな
いのは、むらっちゃんの気遣い力の強さもかなりなもんだから。
とても照れ屋さんで。人目のあるところでは常識人を貫き通してるけど。
でも、何かあった時には、必ず優しさを注いでくれるひと。
- 181 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:39
- 「ごめん。今のは、こっちも言い過ぎたね。」
ちゃんと目を見て。そして、軽くくちびるにキスをする。
びっくりした顔になってるのをにっこり見つめて、それからちょうどたまったお
風呂の水栓を止めにゆく。
- 182 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:40
- 「さ、お湯、入ったよ。なんだったら、一緒に入る?」
ちょっとニヤり笑いを添えて言ったら、とたんにあわあわするまぁしい。
うん、やっぱり純情でかわいらしいひとだ。
- 183 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:41
- 「やー、嘘だってば。ゆっくり、あったまっといでね。」
一緒に脱衣場に出た後、足を拭きつつ。きちんとフォローの言葉を渡して
おく。あんまりあわあわしたままお風呂に入って、のぼせられても困るから
ね。
んじゃねー、と脱衣場を後にしようとした時、「ひと!」と声を掛けられる。
ん?と振り返ると、こっちゃこっちゃ、と手招きしてる。なんだろ。もう何か
言われることはないはず、なんだけどなあ……。
- 184 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:41
- てくてく寄ってくと、ぐい、と手を引かれて、耳元にささやきを落とされる。
「一緒に入りたいのはヤマヤマだけど。今だと、もっと触れたくなっちゃう、からね」
- 185 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:42
- 向こうも真っ赤だろうけど、こっちも負けじと真っ赤、のはず。
ああもう。こういう時だけピンポイントで殺し文句を放ってくるんだから。
このまま帰ったところで二人に何を言われるか分かったもんじゃないから。
とりあえず、ほてった頬が醒めるまで。そこらを軽く歩いてから、楽屋へ戻る
ことにした。
- 186 名前:Little Love 投稿日:2006/12/23(土) 00:48
- 「Little Love」<<END>>
おそまつさまでした。
「FRUITY KILLER TUNE」初日コンサートのMCから想を得たお話しです。
東京、大阪ではどんなMCを聞かせてくださるのか、楽しみにしております。
- 187 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/23(土) 12:36
- お風呂の話は携帯サイトで知りました。
「開場時間が押したのは風呂のせいじゃないよ」と言う大谷さんが可愛くて仕方ありません。
ライブに行く前に、このお話を読めて良かったです。
興奮してきたところで東京厚生年金会館に行ってきます!!
- 188 名前:あけそら 投稿日:2006/12/24(日) 02:43
- >>187 名無し飼育さん
ライブ前の一助になりました……でしょうか?
名古屋では大谷さんが「お風呂一時間入ったー」だの。斉藤さんが「掃除手伝って、
お風呂覗こうとしたら鍵掛けられちゃってた」なんて、とてもステキな(笑)MCが展開
されてました。
彼女たちの間にある「信頼感」。その欠片でも、写し取れたら、と思っています。
- 189 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:50
- わたしが「欲しい」って思うものとか、こととか。
とてもさりげない形で、するするっと引き出すくせに。
こと「何が欲しいの?」と聞いても、なんやかんやとはぐらかす。
贈り合うようになって、それなりの年月は経つけれど。いっつもこの時期にな
るとアタマを抱える。そう、クリスマスのプレゼント。
- 190 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:50
- こないだのラジオの収録中にも「ねえねえ」と聞き出そうとしたけど。
結局はこっちの「欲しいもの」に水を向けられ、その上ちょっとにやっと笑って
「欲のない女だねぇ」なんて一言を投げてよこしてきた。
まあ、確かに。あの時は言葉にしなかったけど。「二人で一緒の時間を共有
すること」がわたしの望みだったから。言葉の底にあるものはきちんとすくい
取ってくれた、と思いたいけど。向こうが言ってきたのは「エビフライの着ぐる
み」だしねえ。しかもあんなところで言うから、絶対ファンの人から贈られた
り、あるいはライブに着て来る人も出てくるだろう。
- 191 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:51
- うーん。じりじりと日は迫ってるけど、いっかな打開策は見えてこない。
うんうん唸ってるうちに、もう冬ツアーの初日になってしまった。
- 192 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:51
- 今回の移動はひとみんとわたし、むらっちとまぁしいの席順。
特に固定ってわけじゃないけど、あれこれわいわいしてたい時とか、お菓子
を食べたい時とか。むらっちとはまた違う意味で「おねえちゃんに甘えたい」
ような気持ちになった時には、ひとみんの隣が一番落ち着く。実際、撮影な
どでふと手が触れたとき、それが冷たかったりすると。「大丈夫?」と、自分
のことはさておき、一生懸命フォローしてくれる。
- 193 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:51
- 前の二人が音楽に熱中するか、はたまた仮眠を取ったら。ひとみんにそっと
相談しよう、と思ってた。
……けど。うーん、さすがに彼女も「久々のホールツアー、しかも初日」っての
に、結構緊張してるみたい。メルちゃんの写真を眺めてみたり、お気に入りの
香水が鞄にちゃんと入っているか、再度チェックしてみたり。
末っ子が生意気を言うのもなんだけど。やっぱり、おねえちゃんが緊張してる
のは、少し楽にしてあげたいな、って思うから。
- 194 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:52
- 「ひとみん、名古屋はまだもう少し先だから。大丈夫だいじょうぶ。」
ぽんぽん、と肩を叩いて、にっこり言葉を渡す。
さすがにおねえちゃん。それからはにっこり「ありがと」と返してくれて、たわ
いない話で盛り上がった。クリスマスプレゼントの話もしたけど、ひとちゃん
の中の87%はもう「メルちゃん」のこと。うーん。むらっちが何を欲しいと思っ
てるの、と聞くどころか。そもそもまぁしいには何をあげるつもり?とすら聞き
出せなかった。うーん。メルちゃんにまっしぐら!なのはまぁしいも納得して
るんだろうけど。さすがにクリスマスくらいはまぁしいの方を向いてあげても
いいんじゃない?なんて。こっそり、心の中だけで呟いてみる。
- 195 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:52
- 駅からは車に乗ってまっすぐ会場へ。楽屋へ荷物を置いて、自分の鏡前を
決めたら、ほんの少し自由時間。本当はお昼ご飯のはずだったんだけど、
準備が遅れてるみたいで、それまで少しのんびりしてなさい、とのことだった。
- 196 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:53
- 「じゃ、会場の探検に行ってこよっかなー」
まぁしいがうーん、と伸びをしながらひとりごちる。
行くかい?てなお誘いの視線を感じたので、隣のむらっちにこっそり眼で
「いい?」と伺いを立てる。だまってにっこり笑ってくれたから、「好きにし
といで」ってことなんだろう。
- 197 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:54
- 「じゃあ、行ってきまーす!」
二人で声を揃えて、ぺたぺたつっかけで楽屋を出て行った。
廊下で準備中のケータリングをわいわい言いながらチェックしたり。
楽屋側の案内図を見て、「次、ここ行ってみよう!」なんてぱたぱた行って
みたり。まぁしいと二人で出歩くなんて、結構久しぶりかも、なんて思いなが
ら。あちらこちらの場所を見てまわった。
- 198 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:54
- 「あ、ここって結構お風呂場広いんだね」
汗を流せる場所も見ておきたい、とのリクエストで、お風呂場チェックに
行ったんだけど。思った以上に広めの浴槽で、二人してびっくりした。
確かにまぁしいはお風呂好きだから、時間が許すならこういうところでのん
びりしたいんだろうなあ、と思ってたら。
- 199 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:55
- 「……あゆみ、むらっちのことで、なんか考え込んだりしてない?大丈夫?」
さらっ、と隣で言葉をつむがれた。
真面目な響きだけど、必要以上にこちらを問いただすものじゃなく。ひとみん
やむらっちとはまた違う、彼女なりの「おねえちゃん」としての気遣いが、そこ
には見て取れた。
- 200 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:55
- 「うーん。考え込んだり、ってのはないけど。もしあるとすれば、クリスマスプレ
ゼント、何がいいかなあ、ってことかなあ。」
さっきひとみんには出せなかった言葉を、ここで改めて問うてみる。
まぁしいは割とむらっちと遊ぶ頻度も高いから、何か知ってるかな、との思い
も込めて。
- 201 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:56
- 「あー。こないだのラジオのことかい?」
にこにこしながら顔を向けられた。
あれ?あの時、まぁしいはひとみんと一緒のチームで、こっちの話は聞こえて
なかったと思うんだけど……。
- 202 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:56
- 「あの後、ちょっとむらっちから相談されてね。『イルミネーションはキレイだけ
ど、あんまり人目がうるさくないところって、ない?』って。んなもんあるわけな
かろーが、と一蹴したんだけどさ」
とたんに顔が赤らむ。ほんのちょっとの、やりとりだったと思ってた。
でも、まさか、そんな風に思ってくれてるなんて……。
- 203 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:57
- 「ま。逆に人が多すぎるところだったら、普段遊んでる時の格好してりゃ大丈
夫でしょ、って言ったんだけどね。あゆみんは、それでいいのかな?」
「う、うん……。」
どうしよ。こっちが何も出来てないのに、むらっちはもうそんだけ先んじてくれ
てるなんて。でも、何が欲しいのか、とか。手がかりがない状態でどうしたら
いいのか、分かんないんだよ。
うんうん唸ってるのも想定の内だったのか。ぽんぽん、とアタマを優しく撫で
られた。
- 204 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:58
- 「心配することないって。むらっちはあゆみんが居てくれたらそれで嬉しい、っ
て思ってるし。だからこそ、「モノ」について、あんまり言わなかったんだと思う
よ。」
「うーん。でも、なあ……」
「そいや。むらっち、ずっと『本物のクリスマスツリーが欲しい』って言い続け
てたな。でも、お世話しきれないし、一人の部屋ででっかいモミの木がある
のもなあ、って、ぶちくさ言ってたよ。」
「え、ホント?」
「ホントホント。実際、人工モノだけど、ツリーはあるっしょ?あの人んち。」
たしかに。部屋の隅にそっと、だけど。結構な背丈のツリー(ただし人工モノ)
はずっと飾ってあった。しまうにしまえないんだよー、ごめんね、とは言ってた
けど。そっか。「モミの木」もいつかは欲しい、と思ってたんだ。
- 205 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:59
- 「むらっち、お花とか植物、好きだもんね」
「そうそう。うちのひとちゃんも、メルちゃんまっしぐら!でもあるけど、昔から
お花は部屋に切らさないね。でも、こないだ遊びに行ったら、ほぼメルちゃん
にかじられて、へこんでたけど」
からっ、と笑って言葉をつなぐまぁしい。
ここの二人は、一見分からないようでいて。すごく深いところでつながってる
んだなあ、と。改めて思った。
- 206 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 02:59
- 「まぁしいは、ホントにひとちゃんのことが好きなんだね」
しみじみ言ったら、言葉より前にごくごくやわらかくアタマをはたかれた。
「生意気言うんじゃないの。」
でも、眼は笑ってる。だから、まぁしいのことを-や、まぁしいと、ひとみんの二
人の在り方を、それはそれでお手本にしたいな、と思うんだ。
- 207 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:00
- 「さてさて。あんまり長く出歩いてると、二人がにゃーにゃーぶーたれるから。
そろそろ帰ろうか。」
「うん。」
- 208 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:00
- 「ただいまー!」
二人で声を揃えて楽屋に戻ると、のんびりリラックスムードのひとみんと
むらっちが出迎えてくれた。
「今日のケータリング、きしめんもあるみたいだよー」
「ねーねー、ここのお風呂、すんごいおっきいんだよー!」
次から次へと、見てきたものをおしゃべりする。それを、にこにこ眼を細めて、
うんうん頷いてくれるむらっち。「それから?」だったり、「そいで、その先には
何があったの?」だったり。聞き上手のあいづち上手ってのは、こういうことを
言うんだろうねえ。
- 209 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:01
- と、あれこれやいやいしゃべってたら。隣でひとちゃんがちょっと大きめの
声を上げた。何かと思えば、まぁしいが「お風呂に入ってくる」と言ったみたい
。ゲネもリハもまだだけど、早速お風呂とはまた豪気な。
- 210 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:01
- 止めても聞かないのはもう承知してるから、「せめて掃除してから入れ。手伝
うから」との結論になったみたい。行ってくるねー、と声を掛けて、今度はまぁ
しいとひとちゃんが楽屋を出て行った。
- 211 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:02
- ん?出しなに、まぁしいがちらっ、とこっちに笑顔を送ってきたけど。
……今の内に話をしなさい、ってこと、なのかな。
ちょうど、このばたばたで一旦会話も止まったし。話を切り出すには、いい
きっかけなのかもしれない。
- 212 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:03
- 「ねえ、むらっち。」
「ん、なあに?」
さっきと同じ笑顔で、まっすぐ目を見て返してくれる。決して言葉を急がせ
ない。のんびりのんびり、こちらの機が熟するのを、いつまでも待ってくれる。
「あのさ、クリスマスプレゼントのことだけど、さ」
「うん。あゆみんが欲しいのは、『イルミネーションを見に行く』でよかったんだ
よね?」
にこにこしながら返してくる。いつもの通り、あくまで優先度は「わたし」の気
持ちに重きがある。それはそれで嬉しいんだけど、今回ばかりは、ちょっと違
うことを言いたいのよねん。
- 213 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:03
- 「んと。それはすごく嬉しいし、出来たらお願いしたいなー、って思ってる。
でも、わたしからむらっちへの、プレゼントのことなの。」
一瞬眼がきょん、としたけど。すぐさまいつもの三日月の眼に戻って、そして、
いつもの言葉を返された。
「ムラタは、あゆみんが居てくれたら。それでいいんですよ。」
うん。それは、何物にも代え難い、大事な言葉。重みのある思い。
でも、ね。こう、たまには、何か形のあるものも渡したい、と思うんですよ。
こっちは。
- 214 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:04
- ひとつ、深呼吸をして。それから、えいやっ、と、思いを言葉にした。
「あの、あのね。今年のクリスマスには……もしかしたら、来年とかにも間に
合わない、かもしれないけどね。いつか、むらっちと二人で。本物のクリス
マスツリーがある部屋を持ちたいの。」
- 215 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:04
- 「……し、しばたくん?」
どちらかというと切れ長の眼のひとだけど。めずらしく大きく見開いて、固まっ
てる模様。眼の大きさならこっちの方が勝つんだけどなー、なんて、関係の
ないことがアタマをよぎる。
- 216 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:06
- 「意味分かって言ってる?なんてこと、言わないでよね。わたしはむらっちと、
二人で。本物のクリスマスツリーがある暮らしを、この先持ちたい、と思って
るの。」
そりゃあ、わたしは永遠に末っ子ですとも。
でもね。1年1年、むらっちたちが歳を重ねるのと一緒に、わたしだって歳を重
ねている。自分の気持ちの在り方も。貫き通すことによるイイコトもワルイコトも。
ちゃんと「分かった」上で、選択してるんだから。
- 217 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:06
- 「……本当に、本当に、いいの?」
しっぽを巻いた犬みたいな。不安げな表情で問うてくる。
この人は、自分に向けられる気持ちについては、とんでもなく臆病だ。
- 218 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:06
- 「わたしが、そうしたいの。むらっちは、その望み、聞いてくれないの?」
意地の悪さは重々承知の上で。この人にだめ押しをするには、こういう表現
が一番効く。
- 219 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:07
- 「……ありがとう、あゆみ。」
ほうっ、と息をついて。その後、やっといつもの笑みが戻ってきた。
- 220 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:08
- これから仕事の本番だし。本来ならば許してくれはしないんだろうけど。
二人だけで居られる時間は、在る意味貴重だから。
- 221 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:08
- 「いつ、ってのは約束できないけど。でも、『そうしたい』って気持ちは、ちゃん
と、約束したいから。」
それだけ告げて。それ以上反論やら何やらが出てこないように、むらっちの
くちびるを深くふさいだ。
- 222 名前:my love, my love 投稿日:2006/12/24(日) 03:12
- 「my love, my love」<<END>>
おそまつさまでした。
>>164-185の「Little Love」と、対になるお話しです。
今ツアーのクロージングソングも、クリスマスにちなんだ曲です。
今日はクリスマスイブ。彼女たち4人にとっても、素敵な日でありますように!
- 223 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:06
- めぐちゃんのことを擬音で、しかも一言で表せと言われたら。
うーん。
- 224 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:06
- 仕事中なら「きりり」。
ふだんなら「ほんわり」。
- 225 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:06
- ぴりぴりしそうな時でも、めぐちゃんのおかげで場がなごんだり。
あるいは、こっちがいっぱいいっぱいになってどうしようもない時に、思い
がけない救いの手を差し伸べてくれたり、なひとなんだけど。
ごくごくたまに。そこに、違う色味が載ることが、ある。
- 226 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:07
-
************
- 227 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:07
- おかげさまで、毎年恒例となりつつある冬のホールツアー。
初日はいろいろトラブルが重なって随分開演が押しちゃったけども。
それでもなんとか温かい拍手の中、初日の幕を下ろすことが出来た。
- 228 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:08
- 月曜日に4人でラジオの仕事をやった後は、2公演目の週末までそれぞれの
仕事や単発のお休みに突入。会おうと思えば時間も作れたけど。ライブ本番
前になるとてきめんに眠りが浅くなるめぐちゃんだから、少しでもゆっくりして
いてほしくて。
- 229 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:09
- 「ちゃんとベッドで寝なさいよ」と、おやすみメールにくっつけて送る程度で、
我慢してた。普段なら、会わない時はメッセンジャーでやりとりしたりもする
んだけど。あのひと、パソコンの前に座ると寝るの忘れて四川省に精を出す
からなあ……。
- 230 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:09
- そして、土曜日。
本番は夜だけど、集合はそこそこ早め。めぐちゃん、わたし、まぁしい、ひと
ちゃんと拾ってもらって会場へ向かうパターン。
- 231 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:09
- マネージャーさんとスタッフさんに「おはようございます」と挨拶して、開けて
もらったドアから車に乗り込む。この順だと、わたしの座席はめぐちゃんの隣。
- 232 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:10
-
……?
- 233 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:11
- なんだか、いつも以上に帽子を目深にかぶってる。
外に出る時ならまだ分かるけど。割とめぐちゃん、車内じゃさっさか帽子をとる
ひとだったような気がするんだけど、なあ。
それに、普段ならめぐちゃんから「おはよう、あゆみちゃん」と言ってくるだろう
に、全くそれもなし。
- 234 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:11
- そっ、とめぐちゃんの方をうかがうと。
- 235 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:11
-
ああ。やっぱり。
- 236 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:12
- わかりやすいくらいに、口元がにやにやしてる。
小学校に上がるかどうかくらいのオトコノコが、見え見えのびっくり箱を後ろ
手に隠し持ってるような。言いたくて。びっくりした顔がみたくて。わくわくが
止まらない。そんな顔。
- 237 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:12
- そして。それは、おつきあいを始めてから、知った彼女の表情のひとつ。
「見え透いたわくわくとにやにや」を見せてくれるのは、基本的にわたしの前
でだけ、ってこと。
- 238 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:13
- 多分、髪型を変えたか何かしたんだろうな、てなとこだろう。
でも。
せっかくだから、めぐちゃんの望む言葉を渡そうと思う。
- 239 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:13
- 「ねえねえ、めぐちゃん。どうしたの?」
- 240 名前:With this Affection 投稿日:2007/01/10(水) 21:17
- 「With this Affection」<<END>>
おそまつさまでした。
少し時期はずれになりましたが、12/23東京公演でのMCを元に
させていただきました。冬ツアーの衣装にも、エルダコンの衣装にも、
とても似合っている村田さんの髪型について。柴田さん視点でお送り
しました。
- 241 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 21:37
- 去年の12月23日を思い出してニヤけています
村田さんの髪型かわいいですよね(*´▽`*)
エルダーでは思わず見惚れてしまいました…
- 242 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 22:36
- ↑ E-mail欄に sage って入れて
- 243 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/11(木) 21:00
- すいません、下げます。
- 244 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/11(木) 21:01
- すいません、下げます。
- 245 名前:あけそら 投稿日:2007/01/15(月) 22:23
- >>241 名無し飼育さん
あの空間を思い出していただけたとは、嬉しいお言葉感謝です。
エルダも幕が開いた瞬間、全員のあの衣装に息を呑みました。あれは
もう、おねえさん組の特権、ですよね。(もちろん、ワンダはワンダとしての
「彼女たちにしか出来ない」色があるわけですが)
>>242-244 名無し飼育さん
sageか否かにはそうこだわりませんが、「ochi」はスレの更新終了時に
使わせていただきたく思います。生意気ですが、ご了承いただければ幸い
です。
- 246 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:23
- 「わー、遅くなっちゃった。ごめんね、まぁしい!」
- 247 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:24
- ばたばたっとあゆみんが駆け出て来る。
今日は珍しく2人で仕事終わりにレンタル屋に行くことになった。お互い
コイビトが別件の用事あり、だけど明日はオフ、てな微妙な空き方をした
ので、「じゃあ、何か見るもの借りに行こう!」てな流れになった次第。
- 248 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:24
- わたしは「家でのんびり好きな格好でDVDを見たい」ひとだけど、あゆみんは
どちらかといえば「映画館で映画は見たい」ひと、のはず。
珍しいなあ、と思って尋ねると、
- 249 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:24
- 「明日なら一緒に見られるかも、って言われたし。あと、むらっち、大きな音が
苦手だからねえ」
- 250 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:25
- との返事。確かにむらっちが「映画館で見た」と言ってるものって、アクション
モノは少ないかもしれない。こないだあゆみんが一人で映画に行って来たと
聞いてびっくりしたけど。タイトルを聞いてなるほど納得。そりゃ、むらっちは
耳塞いで身体縮こめてるでしょうよ。
- 251 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:25
- タクシーで行ってもよかったけれど。最近ウォーキングに凝ってるわたしと、
なるべく身体は鍛えておきたいあゆみん。二、三駅ほどある距離を、いろ
いろとおしゃべりしながら歩く。
- 252 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:26
- 最近好きな音楽のこと、とか。街で見かけたオモシロイ雑貨、とか。
気負うことなくぽんぽんとやりとりし、そして笑いあう。
上京当初のわたしに、「心配しなくても、大丈夫だからね」と言ってあげ
たい気分。
- 253 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:26
- というのも。「メロン記念日」としてスタートを切ってからもからしばらく、あゆみ
んとはどう接して良いか分からなかった時期があったから。仲が悪いとか
そりが合わない、とかじゃなくて。本当に「どうしてよいか」分からなかった。
方向性は違うけど、向こうもこちらもそれぞれ引っ込み思案だったのも、
時間がかかった一因かも。
- 254 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:27
- そんなあゆみんとわたしをつないでくれたのは、その当時リーダーだった
むらっち。
あゆみんが一番最初になついたのがむらっちで。そこから少しずつ、わたし
たちとの距離感を縮めていってくれた。ひとみんは元々おねえちゃん育ち
だったから、一旦縮めるとそこから先は早かったなあ。
- 255 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:27
- むらっちのような気配りは出来ないし。ひとみんのような「優しいおねえ
ちゃん」役も上手く出来そうにない、と。実は結構悩んだ時期もあった。
それがほどけたのが、確か何かの「映画」の話をしてた時だったかな。
- 256 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:28
- あんまり「映画館」で映画を見る習慣がないわたしが、たまたまその映画は
スクリーンで見ていて。そのことをきっかけに、お互い踏み込んでいろんな
話が出来るようになった、てな記憶がある。
- 257 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:28
- それからも、しょっちゅう遊ぶ、ってことはないけど。仕事で組む機会がある
と、一番ワルノリーズになりやすいコンビ。それが、わたしとあゆみんの距離
と、関係性。
- 258 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:29
- おねえちゃん、として出来ることは少ないかもしれないけど。
何かあったら、ちゃんと頼ってきてね。
- 259 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:29
- こっそり、心にしまいながら。またたわいない話のキャッチボールを始めた。
- 260 名前:Sisterhood 投稿日:2007/01/15(月) 22:30
- 「Sisterhood」<<END>>
おそまつさまでした。
メロンのおねえさん3人(村田さん・斉藤さん・大谷さん)は、みんなそれぞれ
の形で末っ子(柴田さん)を愛してるなあ、と思うのですが。今回はそのうち
の、大谷さんから見た柴田さんを取り上げました。
エルダのひな壇ではしゃぐ二人は、ある意味「おねーちゃんと妹」というより、
「オトコノコ2人がやんちゃしてる」ようでかわゆかったです。
- 261 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:31
- 初めての、全編生バンドのコンサート。同じステージに立つのは、表現能力
も身体能力もダントツに飛び抜けたごっちん。
かつては、彼女に「帯同」の形だったけど。今回は、主従の差はない。
ごっちん、自分たち4人、そしてバンドのメンバーさん5人の合計9人。この9人
で「新しい形」を作るんだ、と。必死に練習も重ねたし、それを上回る歓声も
頂けた。そのことは、何物にも代え難く嬉しいものだった。
- 262 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:32
- でも。さすがにこのハイスピード・ハイテンションを、7回連続で保つのは相当
きつい。ステージに立てば背筋も伸びるし、縦横無尽に走ることも出来るけ
れど。ステージとステージの間では、楽屋でぐったりしてるか、あるいは胃に
響かない程度の食べ物か、おやつををつまむようにしている。
- 263 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:32
- 7タテのきつさも、残すところあと1つ。
軽くシャワーを浴びて、気持ちを切り替えて。ケータリングコーナーにあった
チョコとミネラルウォーターのボトルをを抱えて、楽屋に戻ってきた。
- 264 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:32
- 「ただいまー」
軽く一声掛けてドアを開けると、そこには仮眠モードのめぐちゃんが静かに
横になってるだけ。といっても、彼女が好きな聖飢魔IIがそこそこの音量で
鳴り響いていたから、「静か」かどうかはちょっと疑問だけど。
- 265 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:33
- 起こさないように、そっと鏡前の椅子に腰掛ける。
でも、完全に眠りに入っていたわけではなかったようで。むにゃむにゃした
声ながら、「おかえり、あゆみん……」との声が返ってきた。
さすがに身体を起こすことは出来なかったようだけど、へにょっ、と手が
上がって。こっちこっち、と、招く動きをした。
- 266 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:33
- 眠い時は、甘えん坊の顔が覗くめぐちゃん。
いつもなら、ひとみんやまぁしいも居るから、そんなにべったりすることはしな
いんだけど。二人が居ないのをいいことに、彼女のリクエストに応えることに
した。彼女が横たわる畳敷き部分へ移動して、枕元にちょん、と正座する。
- 267 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:33
- 「おつかれさま。」
ジャージをかぶって、二つ折りにした座布団に頭を預けているめぐちゃん。
そっとその頬を撫でる。普段ならめぐちゃんがこの手を差し出してくれるんだ
けど。さすがにお疲れだから、たまにはこうして逆の立場になるのも、ね。
- 268 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:34
- つむった目はそのままだけど。目の形と、頬のラインが。すっ、と柔らかくなっ
た感覚が伝わる。肌から肌に伝わるぬくみ。自分の温度が、相手を安らぎへ
導けること。その喜び。全部、めぐちゃんから教えてもらったんだよなあ、と。
今までの年月の重ねが、ふと胸に去来した。
- 269 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:34
- 「先に、チョコ、もらうね。……めぐちゃんの分もあるから、後でよかったら
食べて」
耳元でささやいて。手持ちの粒の包装紙を、そっとはがす。
横にならない代わりに、軽く食べることでエネルギー補給。
そう思って口に放り込んだ褐色の粒は、自分の想像以上にカカオ分の主張
がきついものだった。
- 270 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:35
- 「わ、苦っ!」
休みの邪魔はしないように、と心がけていたのもどこへやら。
嫌いじゃないけど、クチが想定していた「甘さ」とは違うものに、思わず通常の
音量で言葉がこぼれ出る。
- 271 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:35
- とりあえず、ミネラルウォーターをひとくち。ううん。欲しい時ならおいしくいただ
けるだろうけど、「甘み」が欲しい時に、これはちょっと違う選択だった。
もう一度ケータリングコーナーへ戻って、甘い紅茶か何かをもらってこよう。
そう思って立ち上がろうとした時。今までずっと横になってためぐちゃんが、
起き上がってわたしの腕を掴んだかと思うと、強い力で抱きすくめてきた。
- 272 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:36
- 「ちょっ…!」
めぐちゃん、との言葉を紡ぐことも許されず、くちびるを重ねられた。
そこにある熱は、何よりも確かなもので。
そして、何度重ねても、慣れることを許してはくれない。
一方的に息を奪われて辛くなる、ってことはさすがになくなってきたけど。
息をつなぎつつ、「もう少し」を求め続けられることに。改めて、思いの強さを
教えられた気がした。
- 273 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:36
- 「甘い飲み物もいいだろうけど。……時期なんだし、こういう甘さも、いいん
じゃないの?」
- 274 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:37
- 最後の一息すら自らのものとするように、どこか心を残した風でくちびるを
離したかと思ったら。その次につむがれたのが、こんな言葉。
- 275 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:37
- ライブのリハ中と、本番中は。お互い泊まり合うことは止めておこうね、と。
かつてそう言ったのは自分だったけど。
でも、へとへとになって帰った部屋で。ふと、隣に彼女のぬくみがあったらと。
そう願わなかった日がなかった、といえば、それは嘘になる。
そんな、自分の意地っぱりも、全部お見通しと言わんばかりに。こうして、さら
りと、一番欲しいモノを、渡してくれるなんて。
- 276 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:37
- 「……めぐちゃん、ずるい。」
初めて、深くくちづけられた時にも。同じようなぐずり方をした記憶がある。
そして、その時と違わぬ優しい手が、ずっとわたしの背を撫でてくれている。
- 277 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:38
- 「ムラタは、これでもちょっぴりあゆみよりもジンセイ長いですからね。
その分、ずるいんですよ。」
正直、負けず嫌いとしては「もー!」って思うんだけど。
でも、やっぱり。この辺りはかなわない。うん、惚れた弱み、かもだけど。
- 278 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:39
- 「バレンタインの日は無理かも、だけど。このツアーが終わったら、二人で
一日、部屋でゆっくり出来たらいいね」
強く引き寄せられて、そっと耳元に落とされる言葉に。ただただ頬が紅に
染まるばかりで、何も返せなかった。
- 279 名前:Sweet, Bitter -So,Sweet 投稿日:2007/02/14(水) 00:43
- 「Sweet, Bitter -So,Sweet」<<END>>
おそまつさまでした。
ハロ☆プロオンステージ2007「ROCKですよ!」、2/12の昼夜公演の間、の
設定で、柴田くん視点でお送りしました。
この日の夜公演MCで、村田さんと柴田さんは「バレンタインにチョコレートを
送ったことがない」と言ってたのですが。……キミら二人で贈り合ってるんぢゃ
ないのか!と、こっそり思ったことを告白いたします。
- 280 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/14(水) 21:09
- 12日昼に行って来ました。
私が帰った後、そんな事があったとは・・・・
ニヤニヤが止まりません
間違いなくチョコの交換はしてますよ、この2人は
- 281 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/28(水) 00:47
- うーん、甘い。素敵です。
- 282 名前:あけそら 投稿日:2007/03/03(土) 19:56
- >>280 名無し飼育さん
12日の昼をご覧になっていらしたのですね。
夜に「バレンタイン送ったことない」発言があったんで、「うそつけー!」と
叫びながら思わず書いてしまった次第です。ええ、人に言わないところで
こっそり交換してるんですよ、あの二人は(笑)。
>>281 名無し飼育さん
もしかして、分類板経由でいらしていただけたのでしょうか?
べたべたに甘いものばかりの揃えになっておりますが、お気に召していた
だけましたら、幸いです。
- 283 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 19:56
- ケーキも。海辺のレストランも。ワインも。ブランドものも。
全部きれいに「いらない!」と言えるほどの悟りはご縁がないし、むしろ「努力
で自分の手に入るモノなら、どんなきついものでも立ち向かっていきましょう
?」と燃える性分。
- 284 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:07
- でも。やっぱり「あったら、うれしい」と思うものごと。
ひとつは、7年目を共にした仲間たちと、今後も一緒にやっていけること。
もうひとつは、仲間以上の存在である、めぐちゃんの「笑顔とココロ」。
その二つが、これからもずっと欲しい。そう思う、2月21日の深夜。
22日に向けて、デジタル時計がカウントダウンを刻んでいる。
- 285 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:07
- 「あゆみん、誕生日、おめでとう!」
日付が変わったと同時に、メールや着信で携帯電話が大忙しになる。
家族のものも、親友のものも。仕事で関わったひとたちのものも。それら
全てが嬉しいけれど。一番待ち遠しいものが何故かぴくりとも届かない。
- 286 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:08
- 「うちに来てくれてもいいのに……」
自慢じゃないけど、わたしは滅多に自分の部屋へ人を上げない。
大事なメンバーではあるけど、実はまぁしいに至っては部屋に上げたことが
ないくらい、「誰かを部屋に招く」のが苦手。ひとみんも買い物帰りにちらっと
立ち寄ったくらいだし、めぐちゃんですら1度か2度、なほど。
他のみんなのように、「誰かを招いても大丈夫」な造りにしていないのが大き
い。根を下ろす、というよりは、「とりあえず実家とは別のところに自室の出張
所を持ちました」といったココロモチだからかな。リビングを持たず、プライベー
ト部分だけだから、やっぱり気恥ずかしくてね。
- 287 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:08
- だけど。せっかくの誕生日くらい、びっくりさせるためにこっちに来る、とかって
発想はないの?と。みんなからのメールや電話のひとつひとつに応対しなが
ら、ちょっぴり子供っぽい気持ちが湧いてきた。
- 288 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:08
- 「めぐちゃんの、ばかー!」
- 289 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:09
- 返信が一段落した頃、携帯に向かって叫んでみる。
明日はガッタスの練習で早出だから、そのことを考えてくれてるのかも、とは
思うんだけど。でも。でもさあ。何かしら、「トクベツノヒトコト」とかさ。そういう
ものがあってもいいんじゃないのっ?
- 290 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:09
- 自分からお願いしてもらうものではない。
でも、心の底から「欲しい」と思っているもののひとつ。
しかも、在ることが、当然」とも思っていたこと。それが「得られない」なんて、
実は想像もしてなかった。
- 291 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:09
- ……そんなに、難しいお願い事じゃないはずなんだけどな。
- 292 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:10
- 日付が変わってきっちり、なんてことは無理にしてもさ。どさ。たとえ時間が遅
くなっても、せめて夜の時間帯に、なにかヒトコト欲しいってのはワガママな
のー!と。黙り込んだ携帯を前に、気持ちがジェットコースターのように上下
する。
- 293 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:10
- その時、やっと携帯が短い着信音を鳴らした。
メール。相手はめぐちゃん。
遅い、遅すぎる!とぶーたれながら、受信ボックスの未読部分をクリックした。
- 294 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:11
- ------------------
From:めぐちゃん
To:あゆみ
遅くなったけど、お誕生日おめでとう。
明日は早いから、もう休んでるかな?もしも起こしちゃったらごめんね。
あゆみが新しい歳を重ねる瞬間に、隣に居たいとは思うけど。
やはり仕事が第一だから、今回は敢えて、ずらした時間のメールにしました。
こういうところが、もしかするとあゆみを怒らせちゃうのかもしれないけど。
どんな時も、離れていようとも。あゆみのことは、ずっとココロの中の、大事な
場所に置いてあります。
今日という日に、隣でぎゅっと抱きしめて伝えることは出来ないけど。
思いはいつも、あゆみの隣にあるつもりです。
改めて。誕生日、おめでとう。
そして、これからもよろしくね。
あゆみが新しい歳を迎えた「今日」。そして、これからの毎日も。
わたしはあゆみへの恋心をを新たにしています。
------------------
- 295 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:11
- ひょうひょうとしてて。何かとはぐらかして。そいでもって、「相手に一番適した
助けの手をさりげなく出せる」ひとだとは思ってたけど。
……これは、ずるいよ。
こんな直球の文章、めぐちゃんからもらったことなんて、なかったよ。
- 296 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:11
- へにゃへにゃっ、と力が抜けて。体勢はそう変わらないのに、床にすとん、と
へたりこんでしまったような感覚を覚えた。
何度見ても、そこにあるのは携帯画面の文字列のみだけど。まるで、背中か
らゆっくり抱きしめられているような気分。
明日のガッタス練習で、チームメイトから嬉しいお祝いもあるんだろうけど。
直接もらうものよりも、何よりも。この言葉が、胸をあったかくする。
- 297 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:12
- 「めぐちゃん、すんごい、ずるい。」
でも、だいすき。
- 298 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:12
- 上手く返せないのは重々承知してるんで。呟いた言葉をタイトルに。
その後の気持ちを本文に。シンプルな返信文を作成して、送信ボタンを
押した。
- 299 名前:WOMAN・S 投稿日:2007/03/03(土) 20:20
- 「WOMAN・S」<<END>>
おそまつさまでした。
遅くなりましたが、柴田あゆみさん。23歳の誕生日、おめでとうございました。
これからも、ずっとずっと素敵な歌と、そしておねえさんたちとの仲良しぶりを
見せていただけると幸いです。
また、こちらのスレ容量もおかげさまで残り少なくなりました。
まだ1本ほど書けるかな?というところではありますが、同じ草板に新しい
スレを立てさせていただきました。
「あたらしい愛の詩」
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/grass/1172919487/
一本目は、村田めぐみさんの誕生日記念です。
こちらもご愛顧いただければ幸いです。
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