糸
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/31(火) 10:55
- 藤本さんが主役です。
- 2 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 10:57
- 放課後、美貴は後輩の男子に告られた。
後輩といっても面識のない、顔も名前も知らない相手。
練習用のユニホームからバレー部、上履きのライン色から一年生とだけ、かろうじてわかる。
今どき珍しい綺麗な黒髪に、凛々しい眉毛。
顔はまあ、カナリの美形。
身長だって見たとこ170センチ台後半くらいはありそうな感じ。
そんな、黙っていても女の子がいくらでも寄ってきそうなほどのイケメン君から突然の告白。
女の子なら多分、誰もが憧れ羨むようなシチュエーション。
- 3 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 10:58
- 「好きです、僕と付き合ってください」
極々シンプルでストレートな言葉には好感を持てたが、せめて自分の名前くらいは名乗って欲しい。
どちらにしろ付き合う気なんて毛頭ないけれど。
二つも年下だからとか、美貴のことを何にも知らないのにとか、もっともらしい理由ならいくつでもあった。
だけど自分を好きだと言ってくれる相手には、できるだけ正直に応えるのが美貴流だ。
「ゴメン。好きな人いるから無理」
だから、美貴の断り文句はいつも決まってコレになる。
- 4 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 10:59
- 「知ってます。でも、付き合っているわけじゃないんですよね?」
「そうだけど、ゴメン。美貴はその人だけだから、他の人と付き合うとか考えられない」
そこまで言われて、傍目からでも分かりそうなくらいにガックリときた表情を浮かべているイケメン君。
いつもならコレで諦めてくれるか、はたまた逆ギレされるかでとりあえずの決着を迎える。
「わかりました。でも、これからも好きでいていいですか?」
「止めた方がいいよ、美貴なんか。キミならいくらでもカワイイ女の子が寄ってくるでしょ」
「でも、僕が好きなのは藤本先輩だけです。振られても、好きでいることだけは絶対に止めませんから」
- 5 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 11:00
- 真っ直ぐな言葉に、ズキリと胸が痛む。
まだまだあどけなさの残る顔をキリリッと引き締めて、きっぱりとそう言い切るイケメン君はかっこよかった。
惜しいことをしたのかも、なんてほんの少しだけ思ってしまう。
だけど、ゴメン。
美貴が好きなのはやっぱりあの子だけだから。
- 6 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 11:01
- 恋愛ってヤツは、どうしてこうも上手くいかないんだろう。
「失礼します」なんて律儀に一礼して去っていく後姿を見送ったら、一刻も早くあの子に会いたくなった。
だから美貴は、今日も家路を急ぐ。
夕日の中をチャリンコかっ飛ばし、あの子が待つ我が家へと向かってフルスピードで駆け抜けて行く坂道。
温かくて、でもなぜか寂しげに見える夕暮れのオレンジは、どこかあの子の笑顔に似ている。
寂しくなんてないよ。
美貴がいるから。
ずっと側に、いるんだから。
- 7 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 11:01
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◇
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/10/31(火) 11:04
- 次からは他のハロメンも出ます。
- 9 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 23:29
-
◇
- 10 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 23:31
- 本鈴と担任の小言をBGMに教室へと飛び込んできたのは、運動部に所属しているクラスメイトたちだ。
バタバタと慌しくそれぞれの席に散っていく、毎朝の恒例行事。
隣の席のよっちゃんもそのひとり。
「おっはー」
「おはよう、よっちゃん」
「ミキティさ、熊井ちゃんのこと振ったんだって?」
「クマイちゃん?」
「熊井奈理友、男バレの一年生。黒髪、長身の美少年」
そういえば、よっちゃんもバレー部だ。
うちの女バレは全国レベルの強豪で、男バレとの合同練習もよくやっていると以前に聞いたことがあった。
しかも、よっちゃんは女バレのキャプテンらしい。
- 11 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 23:33
- 「あのイケメン君、クマイナリトモっていうのか」
「名前も聞いてないのかよ」
「だって名乗らなかったんだもん、クマイ君が」
「アハハッ、熊井ちゃんらしいな。でもさ、アイツって結構モテるんだよ」
「だろうね。かっこいいし、性格も良さそうだった」
「それでもダメなんだ?とりあえず付き合ってみりゃいいのに。どうしてもダメなら別れりゃいいんだし」
- 12 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 23:35
- 美貴の親友よっちゃんは、自称、恋多き女。
顔良し、スタイル良し、性格良し、スポーツも万能。更に、家がお金持ちというおまけ付き。
ちょっぴり頭は悪いけどそれもまたご愛嬌。
天は二物を与えずなんて諺があるけれど、二物どころか三物も四物も与えられているのがよっちゃんだ。
そんなよっちゃんだから、とにかくモテる。
それをいいことに、恋愛なんてゲームだと臆面もなく言い放ち、次から次へと相手を替えて楽しんでいる。
はっきり言って、ただのタラシだ。
しかも、その対象は老若男女問わずだったりするから余計に性質が悪い。
- 13 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 23:44
- 「告白されたからとりあえず付き合ってみるなんて、美貴はそういうの絶対無理だから」
「アタシだって好みのタイプを選んで付き合ってはいるんだよ、これでも」
「どんなんだよ、よっちゃんの好みって」
「うーん。アタシのこと好きって言ってくれて、顔が良ければいいかな」
「誰でもいいのと一緒じゃん、そんなの」
「ミキティは、よっぽどイモウトチャンのことが好きなんだねえ?」
ストレートな言葉で核心を突いて、ニヤニヤと含み笑みを浮かべるよっちゃん。
なんで美貴はこんなヤツに秘めたる想いを打ち明けてしまったのか。
そもそもなんでこんなヤツと親友になってしまったのか…なんて悔やんではみても、既に後悔先に立たず。
- 14 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 23:46
- 「好きだよ、大好きだよ。で、何か文句あんの?」
「不毛だ。不毛すぎるよ、ミキティ」
「いや、よっちゃんだけには言われたくないから」
「アタシはさー、赤い糸の相手をアクティブに探してるだけだから。見つかるまでは、寄り道だって存分に楽しむわけだよ」
「今どき赤い糸って、小学生でも信じないし」
「バカ言うな、赤い糸は絶対に運命の人に繋がってんだ!」
- 15 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 23:48
- タラシのよっちゃんは、実は相当なロマンティストでもあったらしい。
ホームルームが終わって一時間目の授業もとっくに始まっているというのに、さっきから延々と続くよっちゃんの赤い糸話。
適当に相槌を打ちつつ、美貴は居眠りの体勢を整えて目を閉じた。
夢の中でもあの子に逢えますように、と願いながら。
- 16 名前:糸 投稿日:2006/10/31(火) 23:49
-
◇
- 17 名前:読み人 投稿日:2006/11/01(水) 18:52
- 面白そうですね
期待してます
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/02(木) 20:06
- おおっいいの見つけた!
この先どうなるのかワクテカ
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/03(日) 03:24
- 続きはないんでしょうか?
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