together
- 1 名前:名無し 投稿日:2006/11/12(日) 00:54
-
移動です。申し訳ありません。
- 2 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:56
-
「明日何時から仕事?」
「んん?何時だっけなぁ」
「お〜い。仕事の時間分からなかったらダメだろ」
「ふふ。午後から」
「そんな早くないんだね」
「うん・・・・・よっちゃ〜ん」
「お?」
「今日ここで寝てってもいい?」
確信犯なのか何なのか。上目遣いで首を傾げ俺を見つめる。
のぞみが居れば簡単に「どうぞ」って言える。だけど今日はいない。非常に危ない。
この家に2人だけ。俺の心が危ない。
「帰りなよ。起きたんだし」
「え〜。じゃあ起きてないから寝ていく」
「いや意味わかんないし」
「だって動きたくないんだもん」
- 3 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:56
-
どこまで面倒くさがりなのか。男と2人で家に居ることに危険を感じないのか。
俺だから大丈夫とか思ってるな、こいつ。
早く家に返したいけど、徐々に彼女の瞼が閉じ始めた。
ずっと忙しい梨華ちゃん。休みなんて全く無くて、寝る時間も少ないのだろう。
疲れた顔をしている時がある。でもそんなのテレビでは一切出さない。
ここで寝かせてあげてもいいかなと思い始めてきた。
「梨華ちゃん・・・」
何度呼んでも切なくなる彼女の名前。その度に俺は彼女が好きなんだと思い知る。
「んっ」
ソファから出ている手を握り、彼女の顔を再度見つめる。手はとっても小さかった。
それに気がついた梨華ちゃんはまた目を開け、俺を見つめ、そして微笑んだ。
その顔に吸い寄せられるように俺は顔を近づける。梨華ちゃんはそっと目を閉じた。
- 4 名前:together 投稿日:2006/11/12(日) 00:56
-
触れるだけの軽いキス。俺は彼女にキスをしてしまった。
顔が離れていくのに気がついた梨華ちゃんは、目を開けまた微笑んだ。全く抵抗もなく・・・
そしてまた目を閉じ、本格的に眠りに入っていった。
「今のって」
手を握り締めたまま思う。梨華ちゃんは今のことを覚えているだろうか。
寝ぼけてしてしまったのだろうか・・・・・きっと寝ぼけていたと思う。
だから寝ている梨華ちゃんにもう一度キスをする。
胸が押しつぶされそうなぐらい、苦しかった・・・・・
つづく
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/12(日) 20:41
- 切な〜い
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/12(日) 23:14
- 祝!新レス。
切ないですね、梨華ちゃん覚えてなさそうですね。
のの、まこと用の子ってさゆえり?
次回も楽しみにしてます。
- 7 名前:名無し 投稿日:2006/11/21(火) 03:25
-
>>5:名無飼育さん様
えぇ、切ないですね・・・
>>6:名無飼育さん様
ありがとうございます。
のの・まこと用は・・・そのうち分かりますw
- 8 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:26
-
「んん」
瞼に光を感じて目を開けた。窓を見るとカーテンの間から光が差し込んでいる。
手に温もりがあるのを感じて下を見ると、
よっちゃんが私のお腹辺りに顔を預けて手を握りながら眠っていた。
自然と笑みがこぼれる。
「よっちゃん」
昨夜のことを思い出すと、少し胸が苦しくなった。
彼には他に付き合っていた人がいた。それに気がつかなかった私。
いいだけ泣いて、よっちゃんに迷惑かけちゃったなぁ。
昨日よりも苦しくないのは、きっとあんなに泣かせてくれたから。
スッキリしたんだと思う。
- 9 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:26
-
「ん、ふぅ」
よっちゃんが顔をあげて私の方を見た。
途端に顔が真っ赤になり、握っていた手の温もりもお腹の重みもなくなってしまった。
「おはよ」
「あぁ、おはよう」
照れながら俯いて挨拶をするよっちゃん。そんなに照れなくてもいいのに。
どうしていいのか分からずにキョロキョロしている。
「昨日はありがと」
「え?いや、別に何もしてないし」
「居てくれるだけで良かったよ。なんかスッキリした」
「そっか。そりゃ良かった」
- 10 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:26
-
気まずそうな雰囲気だったから、私は部屋に戻ろうとソファから起き上がった。
少し驚いて離れ、私の顔をずっと見ている。ただ見つめるだけ。
私もそのままよっちゃんの顔を見つめていた。
綺麗な顔。色白で王子様って感じの整った顔。真面目な顔に少しドキドキする。
大人な感じで落ち着いていて。でも笑うと少年のように可愛くなる。
しばらくすると、少し悲しそうな顔をしてよっちゃんは目を逸らし、立ち上がった。
「朝ごはん作るよ。泣いてエネルギー消費したからお腹減ってるでしょ?」
そういえば。さっきからお腹がなりそうだった。
キッチンに向かうよっちゃんの後姿を見て、急に居なくなるような気がして苦しくなった。
別にどこかに言っちゃうわけじゃないのに。なぜか寂しい。
私はよっちゃんの後を追ってキッチンに入っていった。
近づいてきた私に気付いたよっちゃんは、優しい言葉をかけてくれる。
- 11 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:27
-
「座ってていいよ。まだかかるし」
「うぅん」
首を横に振る私に対して、少し顔をしかめて座っているように促す。
「なんで?居てもすることなし」
「あっちに座っててもすることないもん」
「休めばいいじゃん。あんなに泣いたんだし」
そうだ。あれだけ泣いたんだから目が腫れてるはず。早く冷やさないと。
「ねぇ。目腫れてない?」
「あぁ。ちょっと腫れてるのかな。一応冷やそうか」
そう言って氷を用意してくれる。何でも手際よくて羨ましい。料理だって美味しいし。
私なんて料理も出来ないし、掃除も下手だし・・・いいとこない。
そんな女、愛想つかされて浮気されて当たり前よね。
- 12 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:27
-
「よし。これ持ってそっち座ってて」
「なんでぇ?そんなに近くに居てほしくないの?」
「え?・・・・・そうじゃないけど」
「じゃあこっちに居てもいいでしょ?」
「・・・・・いいけど・・・」
納得いかないって感じだったけど、私は側を離れなかった。寂しくないように。
少し手伝おうとすると、「危ないから止めて」とすぐに却下された。
ボーっと料理をしているよっちゃんの後姿を見つめる。大きな背中。結構筋肉あるよね。
細いんだけど割りと筋肉質で、とってもスタイルが良い。
今の格好はダボダボのTシャツにスウェットだけどね。
よっちゃんを見つめているとまた苦しくなった。もしかしたらどこかに行ってしまうかも。
明日私の前から居なくなるかも。そんな不安が心の中を駆け巡る。
- 13 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:27
-
「よっちゃ〜ん」
「んん?」
振り返らずに返事をするよっちゃんの背中に、私は勢いよく抱きついた。
背中に頬を当て、ギュッと抱き締める。
「ちょっ!なに?危ないよ」
「・・・・・」
「包丁持ってたらどうするのさ」
包丁持っている人の背中に抱きつくわけ無いじゃん。ちゃんと見て抱きついたもん。
今なら危なくないと思って抱きついたの。
「・・・・・居なくならないでね」
「はい?」
「私の前から居なくならないでね。ずっと・・・・友達で居て」
「・・・・・・・・・うん。当たり前だろ。ずっと友達だよ・・・・」
- 14 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:28
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
急に静かになった家。香りだけ残して彼女は帰っていった。
苦しい。自分がこんなにも彼女のことを好きだったなんて。
彼女が元彼のこと思っていると思うだけで胸が苦しくなるだなんて。
初めてだ。こんな気持ちになったのは。手に入れたくても入らないもの。
割と何でも欲しいものは手に入れることが出来た。
おもちゃでもお菓子でも女性でも・・・・・
でも今回は違う。なかなか手に入れることが出来ない。
怖くて動けない。もし彼女に振られたらと思うとゾッとする。
きっと彼女は昨日の夜の口づけを覚えてはいない。でもそれでいい。
それが分かったら彼女が離れていく気がする。だから知らないで居てほしい。
俺の胸の中だけにしまっておきたい。
- 15 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:28
-
「ふぅ」
そのままボーっとソファに座り、真っ黒なテレビに映る自分を見ていた。
どのくらいそうしていたか分からないが、玄関の鍵が開く音で意識が戻ってきた。
時計を見ると、もうお昼を過ぎている。
「にぃ、ただいま〜」
「お?おぅ、おかえり」
「ふぅぅ。・・・・あれぇ?梨華ちゃんいるの?」
「え?」
「なんか梨華ちゃんの匂いする。居るぅ?」
「・・・・いや?」
「居たぁ?」
「・・・・・うん」
のぞみはニヤニヤしながらこっちを見てくる。嘘はつけないよな。
昨日の出来事を全てのぞみに話した。
- 16 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:28
-
「なにそれ!そいつ最低じゃん」
「そうだよなぁ」
「あんなカワイイ彼女居て浮気とか。俺絶対許せない!」
「お前は熱い男だな」
「にぃはいいの?梨華ちゃん傷つけられたんだよ?」
「いいの何も。俺にどうすれと」
のぞみは口の端を上げてまたニヤっとした。
「悪いものには罰を与えなきゃね」
そしてカワイイ笑顔でそう言った。
まさに小さな悪魔が笑ったようだった・・・・・
- 17 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:29
-
****************************************
「あっぢぃぃ」
「のん、動けよ」
「だって動いたら汗出るもん」
「はぁ」
日差しがギンギンに照りつける季節になった。もう暑くてたまらない。
今日は2人とも一日中休みで家でゴロゴロ。特にのぞみは起きてからソファでゴロゴロ。
そこから動こうとせず、ご飯も持ってこいという始末。持ってくけけどさ。
あの日以来梨華ちゃんは週4ぐらいで来るようになった。
仕事の関係もあるのんだろうけど、3日連続で来ることもある。
あの時みたく泊まっていくことはないけど、帰るときはきまって寂しくなる俺。
もう少し居れば?って口にでかけて止める。泊まってけば?って頭で考えて止める。
俺と付き合って?・・・・絶対に言えない。
- 18 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:29
-
「にぃ、暇」
「外出て遊んで来い」
「嫌だ、暑い」
「じゃあ暇なのを我慢しろ」
「・・・・・まこと呼ぼ」
そう言ってのぞみはまことに電話をかけると、まことはすぐにやってきた。
俺はこの時、のぞみがこんなにダメ人間なのは、まことのせいなのでは?
と思ってしまった。
いつでもまことが居ると思っているから成長しないのではないだろうか。
俺が甘やかしてるからじゃないような気がしてきた・・・・・
「おめぇは他の人と遊ぶとかねぇのかよ」
「面倒くさいんですよ、誰かと遊ぶの」
面倒くさいならここにも来るなと言いたい。また3人分のおかずを買わないと。
- 19 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:43
-
――――――♪♪♪♪♪♪♪
「ん?美貴?」
とーっても嫌な予感がする。
「もしもし」
『あ、よっちゃん?俺だけどさ、今何やってんの??』
「別に何も」
『じゃあ今日の夜暇だよね?よっちゃん家で飲み会しない?』
「なんで俺ん家なんだよ」
『いいじゃん!広いし。えっとね、俺入れて5人ぐらい行くから』
「はぁ??誰来るんだよ」
『それまでのお楽しみってことで!あ、まことも呼んでおいて』
「いや、もう来てるし」
『さすがだなぁ。じゃ後で。つまみヨロシク』
ブチっ ツー ツー ツー
一方的にきられてしまった。また買い物が増える。
- 20 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:43
-
「美貴にぃ何だって?」
「ここで飲み会やるって」
「うそ!誰か連れてくるって言ってた??」
「あぁ・・・・・5人ぐらい来るって」
「メッチャ大勢じゃん。楽しくなりそう」
お前ら2人はそりゃ楽しいかもしれないよ?でも俺はさ、疲れるんだよ!!
たっくさん作らなきゃいけないし、誰も手伝わないし。
誰連れて来るんだろ。亜弥ちゃん来るのかな。じゃあ梨華ちゃんも来るのかな?
昨日来てないから今日は来るよな。そしたらみんなでワイワイやればいい。
梨華ちゃん来て欲しいな。俺病気だな。石川梨華病。ファンの人はみんなこうなのかな。
はぁ・・・・買い物行ってこよう。
- 21 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:43
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「のん!これ運んで」
「あーい。まことあれ運んで」
「はぁい」
自分で運ばずにまことに運ばせている弟、のぞみ。
自分で運べよ。まことも素直に従うな。少しは動かしてくれ。
どうしようもない弟だな、本当に。
――――――ピーンポーン
「来たぁ!!」
今まで一切動かなかったのに、いきなりソファから飛び降りインターホンに向かった。
そこには美貴と愉快が仲間達が映っていたらしく、
オートロックを解除し、玄関の鍵を開けに行った。
- 22 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:43
-
「どんな人が来るんでしょうね」
「美貴が連れてくるんだから、どうしようもねぇのが来ると思うぞ」
「まぁた吉澤さんはそういうこと言うんだから。石川さんが来たらどうするんですか?」
「え?別にいつも通りにするよ」
梨華が来ようが来なかろうが、俺はいつも通り。いつも梨華が来た時のように接する。
今梨華に見せている姿が俺のそのままの姿なんだから。
「「「「「おじゃましま〜す!!」」」」」
そうこうしているうちに美貴と愉快な仲間達は現れた。
亜弥ちゃんが居て、もちろん梨華ちゃんも居る。あと2人は・・・・・
「まぁまぁ座ってよ。殺風景でたいした部屋じゃないけれども」
「別に帰っていただいてもいいんですけど」
「はは。ジョークだよ、ジョーク」
- 23 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:44
-
俺は料理をテーブルに置き、またキッチンに戻った。誰かがついてくる気配がする。
後ろを振り向くと、ニコっと笑った梨華ちゃんが居た。俺の頬も自然と緩む。
「手伝うね」
「ありがと」
俺は今、どうしようもなくだらしない顔をしているのではと思う。
彼女が隣に居ることが嬉しくて、いつも会っているのに、
みんなから離れてこの空間に2人だけという雰囲気に胸が踊る。
2人だけ特別のような・・・・・今だけ恋人気分ってのもいいよね。
「あの2人って付き合っているんですかぁ?」
傍から見れば確実にそう見える吉澤さんと石川さん。確かに物凄くお似合い。
でもまだ付き合ってないんですよねぇ。
- 24 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:44
-
「そう見えるだろ?男の方がヘタレだからまだなんだよ」
「ほんとどうしようもない兄貴ですよ」
「あ、こいつがね、ヘタレの弟」
「こんばんは、吉澤のぞみです」
「亀井絵里です。ヨロシクお願いします」
亀井さんはニコッと笑った。のんつぁんもニコッと笑い、お互いデレっとなった。
なんか似てるな、この2人。何も考えてなさそうなところとか。
「んで、こっちが・・・ま、いっか」
「ちょっと!!良くない良くない。小川まことです」
「はい、こっちは道重さゆみです」
- 25 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:44
-
道重さんは自己紹介をせずに部屋をキョロキョロ見回している。
そうですか。俺らには興味ないですか。そうですよね、芸能人ですもんね。
美貴にぃさんが連れてきたのが芸能人ということにビックリした。
でも彼女があの松浦亜弥なんだから、そう驚くことでもないって後で思ったけど。
テーブルの上にはたくさんのお酒と、吉澤さんが作ってくれた食べ物が並んでいる。
俺らは未成年だったけど、美貴にぃさんの視線を感じでお酒に手を伸ばした。
吉澤さんと石川さんも一旦手を止め、こっちに来てお酒を持った。
「「「「「「「「かんぱーい」」」」」」」」」
一斉グラスがぶつかり合い、みんなの喉を通っていく。
苦っ。やっぱり俺にはまだ合わないお酒の味。美貴にぃさんは物凄い勢いで飲んでるけど。
乾杯した後、吉澤さんと石川さんはまたキッチンに戻っていった。
本当に恋人同士みたいだな・・・・・
- 26 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:45
-
「本当に付き合ってないんですか?」
「確かに恋人同士に見えるよね」
「俺らに黙って付き合ってるってか?」
「それはないでしょ。隠しきれないって」
あの2人なら隠し事ができないだろうからすぐにバレると思う。
しかも美貴にぃさんと亜弥ちゃんに黙っておけるわけがない。
お互い好意を持っているのは分かるんだけど、踏み出せない何かがあるのかな。
それとも本当にただのヘタレなのだろうか。
お酒も進み良い感じに酔ってきた皆さん。俺はあまり飲めないから意外と普通。
さゆちゃんもあんまり飲んでないみたいで普通。
美貴にぃさん!くっつきすぎだよ。帰ってからにしてくださいよ。
のんつぁんと絵里ちゃんも良い感じだし。
吉澤さんと石川さんも・・・・・なんか石川さん甘えてるよう。どうしようもないな。
- 27 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:45
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「よっちゃ〜ん」
「はいはい」
「返事は一回でいいのぉ」
「はい」
「酔っ払っちゃったぁ」
「飲みすぎだもん」
「ふふ」
酔っ払った梨華ちゃんを初めて見た。今までずっとシラフでしか接したことが無かった。
こんなに甘える人だとは・・・それはそれでいいんだけどさ。俺は嬉しいんだけどさ。
あっちでは美貴と亜弥ちゃんが2人の世界だし。あの4人もそれなりに楽しくやってる。
でももうそろそろお開きにしないと。
- 28 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:45
-
「よっちゃん!!」
「あぃ?」
「今日泊まっていってもいい?」
「え?」
この人はなんてことを言うんだ。家隣だろ。帰りましょうよ。
「隣なんだから眠かったら戻ればいいでしょ」
「なぁんでぇ。この前泊めてくれたじゃん」
「いつ!?」
自分達の世界だった美貴がいきなり会話に入り込んできた。
聞いてないフリして意外と聞いていやがる。参ったな。
「あれは途中で寝ちゃったんでしょうが」
「何の途中で寝たの!?まさか・・・」
「まさか?」
「・・・・・エッチの途中とかぁ!?」
「はぁ!?マジか。ヤッタのか」
- 29 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:46
-
みんなの視線がこっちに向いているのが分かる。当の梨華ちゃんはニコニコニコ。
ヤルわけないじゃん。と言おうとしたその時。
「あぁ!!この前俺が居なかったときだ!梨華ちゃん泊まってた」
「なにぃ!?お前俺に隠してたのか!!」
「違うって」
「なぁにが違うんだよ」
はぁ。説明するの面倒くせぇ。また梨華ちゃんの思い出を甦らせちゃうかもしれないし。
俺も消したい。彼女の思い出を。俺で染めたいから。
「だからさ・・・・色々あったじゃん。泣き疲れて寝ちゃったってだけだよ」
「あぁ」
それだけでみんな分かったらしく、その後は何も聞いてこなかった。
梨華ちゃんだけ分かっていなかったみたいだけど。
- 30 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:46
-
「もうお開きにしましょ。のんとまことは2人送ってけぇ」
「あーい」「はぁい」
4人を見送って片付けに入ることにした。
梨華ちゃんは潰れちゃってるし、美貴と亜弥ちゃんはまだくっついたままだし。
やっぱり1人で片付けかよ。絶対美貴に今度何か奢ってもらおう。
しばらくしてから美貴がキッチンに来て、片づけを手伝い始めた。
「なに?珍しいじゃん」
「あぁ・・・・・よっちゃんさぁ、絶対告白したほうがいいって」
「なんだよ、いきなり」
「好きなんだろ?なにをビビってんだよ」
「ビビってねぇよ」
正直ビビってた。この関係を壊したくないから。今のままでいいから。
友達でいいだなんてただの言い訳。本当は付き合いたい。でもヘタレだから。
彼女を幸せに出来ると思わないから・・・・・
- 31 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:46
-
「俺なんかがさ、梨華ちゃんを幸せに出来ると思うか?こんな凡人がさ」
「何言ってんだよ。俺だって凡人だけど亜弥ちゃんと付き合ってるし」
「美貴はさ・・・幸せに出来ると思うんだよ。強いし。負けないし。
でも俺へタレだし、彼女のこと守れない気がする。だからいいんだよ」
そう言って俺は静かに茶碗を洗った。美貴が横でイライラしているのが分かる。
真直ぐな人間だから。ウジウジしている俺にイラついているんだろう。
「つーかさ、幸せって何よ。金持ちと一緒になることが幸せなのか?
この人と一緒に居たいって人と一緒に居れたら幸せなんじゃないの?
自分の幸せはどうなわけ?人のことばっかり気にしてさ。当たって砕ければいいじゃん」
美貴の言っていることはその通りだと思った。俺は怖いから、自身が無いから。
それだけじゃなく、自分が傷つくことで周りが幸せになれればいいや。とか、
偽善者ぶってたのも事実だった。当たって砕けるのもたまにはいいのかもしれない。
- 32 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:47
-
「砕けるかなぁ?」
「意外といけるんじゃね?」
「ボロボロになってみようかなぁ?」
「はは。行け行け」
片づけが終わったところで、美貴と亜弥ちゃんは俺の部屋に移動してくれた。
そこには俺と彼女だけの空間が生まれている。ここで言わなきゃ後はない。
でも彼女は相当酔っていたはず・・・・・
「梨華ちゃん?」
眠そうな顔で俺を見つめる。そして微笑んだ。天使に出会ったような錯覚を覚える。
それぐらい優しい笑顔をしていた。
「起きてる?」
「うん」
大きく深呼吸。吸ってぇ、吐いてぇ。心を落ち着かせる。
- 33 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:47
-
「俺さぁ・・・・・」
今ここには音はない。俺の声だけが耳に入ってくる。
- 34 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:47
-
「梨華ちゃんが」
「よっちゃんのことが好き」
「え?」
- 35 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:48
-
「よっちゃんのことが大好き」
「うぇ?」
「ライクじゃなくてラブだよ?」
- 36 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:48
-
マジですか?逆に告白されちゃいました?
・・・・・・えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!
俺なんか・・・どうしたらいいの?
「よっちゃんは?」
「え?」
「よっちゃんはどうなの?」
「ん・・・・・・好き」
「本当?」
「うん。ライクじゃなくてラブ」
「ふふ」
梨華ちゃんは安心したようにまた優しく微笑んだ。
きっと分かってたんだね、俺が好きだってこと。驚きも何もないし。
やっと言ったかって感じだし。はぁ、気が抜ける。
- 37 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:48
-
「私のこと、幸せにしてくれる?」
「もちろん」
「初めてなの。こんなに人のこと想ったの」
「え?」
「今まで付き合ってきた人って、好きだったけど、こんなに胸が苦しくならなかった。
よっちゃんに会う度に、近づく度に、胸がいっぱいになっちゃって・・・
亜弥ちゃんに言ったら、それ恋じゃんって言われたの。初めてなんだよ、本当に」
そんな強調しなくても、きちんと伝わってるよ。俺の気持ちも伝わってるのかな?
言葉は少ないかもしれないけど、俺も今までに無いほど胸がいっぱいになってる。
いっつも抱きしめたい衝動に駆られてた。
「ふふ。あの2人に報告しにいかなきゃ」
「あぁ、そうだった」
手を貸してくれた友のもとへ・・・・・
- 38 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:49
-
- 39 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:49
-
リビングのドアを開け、部屋に近づく。
ドアを開けようとした時、怪しい雰囲気に気がつき梨華ちゃんの手を制止する。
『ん、、、ぅう、、、、、、』
『はぁ、我慢してね』
『んんっ、、、あんっ、、、ゃぁ、、、』
『聞こえたら、、、はぁ、、ヤバイから、、、ん』
『だぁっ、て、、、んぅん、、、凄い、んだも、、ゃぁ、ぁん』
おい・・・・人ん家でヤッてんじゃねぇーよ!!
しかも俺のベッドだろ。もう使えねーじゃねぇか。
『やっばい、、、ん、、はぁ、、人ん家っ、て、、興奮する』
『やっ、、、んっ、ふっ、ふぅんっ、、、んっ、ぁ、ぁぁあんっ』
- 40 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:50
-
梨華ちゃんの方を見ると、顔を真っ赤にして俯いていた。そっと声をかける。
「戻ろっか」
小さく頷いて、リビングに戻ってきた。
「ったく、あいつらマジでシバク」
「・・・・・・・・」
「最低だよな、人ん家でとか」
「・・・・・ビックリした」
梨華ちゃんは本当にビックリした様子でしばらくボーっとしていた。
2人がやっていることを想像してしまい、ムラムラしてきた。
さすがに付き合ってすぐは出来ないよなぁ。我慢我慢。
- 41 名前:together 投稿日:2006/11/21(火) 03:50
-
「部屋・・・・・戻るね」
「あ、うん」
「・・・・・一緒に来る?」
「え?」
「ゴメン。何でも無い。おやすみ」
「え、ちょっ」
梨華ちゃんはそそくさと家に戻ってしまった。
俺今・・・・・最高のチャンスを逃したんではないでしょうか?
つづく
- 42 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/21(火) 16:11
- よっちゃんの馬鹿w
行ってしまえ行ってしまえイッ(ry
- 43 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/21(火) 23:29
- 更新お疲れ様です。
よその家でやっちゃ駄目だよぉ美貴興奮するのも分かるけどw
よっちゃん・・せっかくのチャンスをw
- 44 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/22(水) 02:27
- よっちゃん絶好のチャンス逃しちゃダメだよ!!!
次回のよっちゃんに期待します。
- 45 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/14(木) 03:58
- 更新してよー、読みたいよー。
- 46 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/17(日) 01:44
- 待ってます。
- 47 名前:名無し 投稿日:2006/12/26(火) 00:19
-
>>42:名無飼育さん様
えぇ。よっちゃんはバカですw
>>43:名無飼育さん様
人の家・・・興奮しないわけないですよねw
まぁ私はされたほうですが・・・
>>44:名無飼育さん様
期待にこたえていますw
>>45:名無飼育さん様
お待たせいたしました。更新です。
>>46:名無飼育さん様
お待たせいたしました。
今回エロですので、苦手な方は読まれないほうが・・・
- 48 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:20
-
暖かかった風が冷たい風へと変わったきた10月。
にぃと梨華ちゃんが付き合い始めてから3ヶ月が過ぎた。
基本、梨華ちゃんがこっちに来て3人で話したりとか、
家族みたいな生活を送っているけど、たまに梨華ちゃん家に2人で篭ることもある。
付き合い始めたばっかりだし、2人きりで居たい気持ちも分かるけど、
明らかに「今からやります!」みたいな雰囲気は出さないでほしい。
「よっちゃん」
「ん?」
「フフ」
「へへへ」
こういう雰囲気になると、必ず梨華ちゃんの部屋に移動する。
弟にバレるような行動は謹んでほしい。
- 49 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:20
-
――――――♪♪♪♪♪♪♪
2人を見送った後にテレビを見ていると携帯が鳴った。
何となく誰からのメールか想像がつく。
最近まことかこの人からしかメールは来ない。
携帯を持って受信メールを開く。やっぱりあの子だ。
≪のんつぁん!お仕事終わったぁ↑↑ ☆絵里☆≫
何の意味も篭っていないこのメール。俺の返信もいつも同じ。
<今日も疲れたでしょ、お疲れ様。>
彼女が何を求めているのか、未だに分からない。
毎日のように繰り返される数回のメールのやりとり。
絵里ちゃんから今日あった面白い話しや、これからの仕事の話とか。
結構楽しかったりする。俺の知らない世界の話だから。
- 50 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:21
-
――――――♪♪♪♪♪♪♪
今度は鳴り止まない携帯の音。そこで電話だということに気がついた。
手に取った携帯のディスプレィには【絵里ちゃん】と出ていた。
「はい」
『・・・・・・・』
「・・・絵里ちゃん?」
『のんつぁん?』
「うん」
『・・・・・あの、毎日メールして・・・ごめんなさい』
いきなりの謝罪に驚いた。謝られることなんて1つもない。メールなんて。
別に強制されてるわけでもない。返したいから返すだけ。
「なんでぇ?謝ることなんてないじゃん」
『でも・・・ウザイかなって思って』
「・・・・・ウザくない」
『え?』
「ウザくないからメールしてきても大丈夫」
- 51 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:21
-
完全に受け身の俺。本当はメールが来なくなったら寂しいんだと思う。
でもそんなこと言えないから、俺はいつでも受け止めるよって、逃げてるだけ。
『本当に?』
「本当にぃ」
『・・・・・良かったぁ。ちょっと心配だったの』
「何がぁ?」
『嫌われてるんじゃないかな?って』
嫌うなんて有り得ない。むしろ・・・・・どうなのかな?自分の気持ちが分からない。
でも嫌いじゃないっていうのは事実だね。
「今度さぁ」
『ん?』
「・・・・・どっか遊びに行こうか」
『え・・・?』
「仕事忙しいとは思うけど」
『全然!!全っ然、忙しくないよ』
- 52 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:21
-
いきなり声が明るくなった。分かりやすいなぁ。
仕事が忙しくて最近はみんなで遊ぶことなんてなかった。
だから絵里ちゃんともメールでのやりとりだけ。
梨華ちゃんみたいに隣に住んでたらいつでも遊べるけど、そうはいかない。
別に付き合っているわけでもないし、2人で会う理由もなかった。
「じゃあ、仕事が休みの日教えてね」
『うん!・・・・どこ行くの?映画とか?』
「う〜ん・・・それはそのうち考えることにしよう」
『えぇ〜、本当に遊ぶ気ある?』
「・・・・・あるよ」
『その間はなにぃ??』
「いや、ほんとにさ。日時決めてからにしようよ」
また嬉しそうな声で返事をした絵里ちゃん。そんなに喜んでもらえるなんて光栄だ。
電話を切ったあと、妙にワクワクしている自分がいる。
実は絵里ちゃんよりも喜んでいるんじゃないかと恥ずかしくなった。
- 53 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:22
-
****************************************
よっちゃんと付き合い始めて3ヶ月。毎日がすごく楽しくて・・・幸せ。
付き合う前から分かってたけど、よっちゃんはとっても優しい。
その上頼りになるし、真面目だし。家も隣だから比較的いつでも会える。
お互い用事がある時は連絡して、無い時は自由に会ったりしてる。
――――――ピーンポーン
よっちゃん?今日は会えないかもって言ってたのに。
私はパタパタと玄関に向かって小走りをし、鍵を開けた。
「え?」
ドアを開けた瞬間、いつもと違うよっちゃんに驚く。
- 54 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:22
-
「こんばんは」
いつもの笑顔なんだけど・・・・・服装が・・・・・
ドアを閉めたよっちゃんに問いかける。
「どうしたの?」
「何が?」
「その・・・・格好・・・」
「ん?・・・あぁ。どう?似合っている」
そう言ってネクタイを締め直す。
いつもはジャージとかスウェットで、たまにジーンズを履くぐらい。
でも今日は・・・・・・初めて見るスーツ姿。
着る物一つで、人の印象ってこんなに変わるものなのね。
やっぱりいつもより、大人に見える。
- 55 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:22
-
「・・・・・なんか大人・・・」
「やっぱり?俺もそう思う」
「スーツ姿の男の人なんてたくさん見てるけど・・・・・違うね」
「えぇ?何が?」
「うん・・・・ちょっと照れちゃう」
そう言って脱いだ上着をハンガーにかけてあげる。
新婚さんみたい。よっちゃんも心なしか顔が赤い気がする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
少しの沈黙が何だか恥ずかしくて、違う話題を持ち出した。
「のんちゃんは?」
「あぁ。なんか遅くなるって言ってたから、直接ここ来たんだよね」
「そうなんだぁ」
「ご飯食べた?」
「うん。よっちゃんは?」
「食ってきた。今日さ、どっかの会社の説明会ってのがあって、それでこの格好」
- 56 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:23
-
さっきから、一つ一つの動作にいつもと違うよっちゃんが見えて、なぜかドキドキする。
上着を脱いだり、ネクタイを緩めてワイシャツのボタンを上だけ外したり・・・
しばらくボーっとその姿を見ていると、「あんま見るなよ」って照れたよっちゃん。
その姿が可愛くて、ソファに座っているよっちゃんの腿に跨った。
「うぅ、重い・・・」
「失礼ねぇ。体型は維持してるんだから」
「そうだよなぁ、少し体型が変わっただけで週刊誌の餌食だもんな」
「そうよ。気ぃ使ってるの」
優しく微笑んで、よっちゃんの首に手を回す。
お互い自然に。ごく自然に顔を近づけ唇を合わせた。
軽い口づけから徐々に激しくなっていく。
私はよっちゃんの髪の毛をクシャクシャにする。
- 57 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:23
-
「ん・・・んぁ」
「・・・ハァ・・ん・・」
静かな部屋に冷蔵庫の音と唇が漏れる声だけが響いてる。
いつもと違うよっちゃんの姿に興奮している自分が居る。凄く恥ずかしい。
だけど止めようとは思わない。止めたくない。
唇を離し、目を合わせる。お互いトロンとした目をしているはず。綺麗な瞳。
きっとこの目を見て、ひとみって名前をつけたんだね。
そんなことを思いながら、ネクタイを外す。よっちゃんは黙ってされるがまま。
ワイシャツのボタンも外して、自分のトレーナーも脱ごうと裾に手をかける。
「待って」
「え?」
「俺が脱がせてあげる」
- 58 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:23
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
今日はいつもと違う格好で、いつもと違う場所を歩き、いつもと違う飯を食った。
だからいつもと違う予定で彼女の部屋を突然訪れてみた。
俺のスーツ姿に意外にも驚いた彼女。顔を見た瞬間にそれは伝わってきた。
その気持ち。俺にはよく分かる。
彼女はテレビに出ているとき、一緒に居る時とは全く違う顔を見せている。
女優として、手を抜くことなく『女優・石川梨華』を演じている。
そんな姿をテレビで見ている俺は、スウェット姿の彼女にドキドキしたりする。
「俺が脱がしてあげる」
彼女が自分でトレーナーを脱ごうとしたから、その手を止め、俺が手をかけた。
「はい、バンザイして」
彼女は笑いながらも素直にバンザイをしてくれた。
脱いだあとの髪の毛が無造作に乱れて、その色っぽさにクラっとする。
- 59 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:24
-
首筋にキスをしながら背中に手を回す。
「ん・・・ふぅ・・」
「外していい?」
彼女はコクリと頷いた。ホックを外すとプルンと音がしそうな豊満な胸が現れる。
「相変わらず綺麗だな」
「フフ、恥ずかしいよ」
我慢できなくなって大きな胸に触れる。
下から持ち上げるように揉み、時々先端の尖った部分に触れると彼女が甘い声を漏らす。
俺も触るのが好きだけど、彼女も触られるのが大好きだ。
唇を合わせながら激しく揉み、徐々に先端を中心に手を動かす。
「んん!・・あっ、はぁん・・」
唇から漏れる彼女の声が俺の興奮を増大させる。
- 60 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:24
-
唇を徐々に下へと移動させ、胸の先端を口に含んだり舌で転がしたりすると、
彼女の声は一層高まっていった。
「ぃや、あぁ・・・ん、はぁ・・・あぁん」
俺の髪の毛をクシャクシャにしながら感じている彼女はとっても綺麗だ。
もっと快感を得ようとグッと俺の頭を抱き、胸に寄せる。彼女の本能だろう。
始まってしまえば彼女は本能のままに動く。
みんなが知っている石川梨華ではなく、俺だけの『石川梨華』だった。
「ん、よっちゃ・・・んん」
「・・・ハァ・・ん?・・・・ハァ」
「あっ、ん・・・大・・好き・・・」
「俺も・・・メッ・・チャ好き」
胸への攻撃を止めずに、手は次の攻撃の準備に入る。
履いているスウェットに手をかけ、少しずらすと、それに気付いた彼女が少し腰を浮かす。
面倒くさくなったから、パンツも一緒に脱がしてみた。
- 61 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:24
-
「・・・えっ?・・・あん、ちょっ」
一気に脱がされたことに気がついた彼女は抵抗の声をあげたが、時既に遅し。
全て脱がし終わっていた。
「ゴメン。面倒だから一緒に脱がしちゃった」
「・・・もう・・・」
彼女を見上げてそう言うと、しょうがないなぁって顔をしていた。
真っ裸でその顔されてもあんまり・・・・ねぇ・・・・
再度先端を口に含みながら、彼女の未知なる部分へと指を導く。
そこはもう濡れまくっていた。準備万端と主張している。
敏感な部分を指で何度もすりあげる。彼女は一層声を上げた。
「んぅ、あっあっ・・・んん!はぁ・・あぁ」
「入れてもいい?」
「ん、聞かなく・・あぁ、たって、ん・・・あっ」
「ですよねぇ、じゃあ遠慮なく・・・」
- 62 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:25
-
擦っていた指をそのまま膣内へと入れていく。一本だからすんなりと受け入れられた。
「あぁぁ!・・・ぅう、ん・・あっあん」
「ふぅ・・・あったけぇ」
「だって・・あっつい・・・もん」
徐々に指を動かし、スピードを上げていく。彼女は凄く気持ち良さそうな顔をしていた。
だからこのまま一回イカせてしまおうという考えが生まれた。
「あっ、いや・・・いっ、あぁ・・イっちゃ、うぅ」
「・・・ハァ・・・いいよ、イって・・・ハァ・・・」
その言葉に導かれるかのように、彼女は絶頂へと達した。
キスをして、落ち着かせる。まだまだこれからだと、俺のモノが主張していた。
- 63 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:25
-
「梨華ぁ?」
「ん・・・何ぃ?」
いまだ絶頂の余韻に浸っている彼女は焦点が定まらない目でこっちを見ている。
首を傾げて「何ぃ?」と聞く姿はメチャクチャ可愛い。
「一緒になりたいんだけど」
「ふふ、しょうがないなぁ」
自分だけイっておいて、「しょうがないなぁ」はないだろうと思ったけど、
ズボンを下ろしてくれている彼女を見て、どうでもよくなった。
もちろんボクサーパンツも一緒に脱がされたため、ソレは反り返っていた。
「いくよ?」
「・・・うん・・・」
なぜか彼女が主導権を握る形になってしまっている。
俺のモノを握り、彼女はゆっくりとソレに向かって腰を下ろした。
- 64 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:26
-
「んん・・・あっ」
「・・・あぁ・・・うぅ」
俺のモノが彼女に包まれる。この瞬間が何とも幸せだ。
大学に入ってからご無沙汰だったこの行為。
初めて彼女としたとき、何も知らない少年のようだった俺。
3年もやってないと、要領がよく分かんなくなる。初めてみたいで恥ずかしかった。
でも今は相当慣れてきた。彼女が不満と思うことはないはず・・・
「んあ、あっあっ・・・あぁん、んん」
俺の上で激しく上下に動きながら、彼女は独特の甘い声で喘ぎ続ける。
乱れる彼女の顔が凄く美しい。半開きの唇に、眉を少し潜めて必死に喘いでいる。
彼女の動きに合わせて俺も下から突き上げる。
対面座位だから目の前には豊満な胸。先端を口に含み、舌で転がす。
彼女は首を振ってイヤイヤとしながらも、相当気持ち良さそうだ。
- 65 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:26
-
「・・ん、あぁ・・・気持ち、いい?」
「はぁ、ああぁん!あっあっ、気持、ち・・・ん、うふ、いい、あっ」
腰を振りながら、俺は限界に近づいてきた。彼女もそろそろだろう。
ってか、ゴムつけてないじゃん。生じゃん。
「梨華・・・・つけるの・・忘、れた」
「え?・・・あぁ、あっ・・何をぉ?・・あん」
「・・・・ゴム・・・」
「ん、あぁん!・・・あっあっっ、イクっ、うん・・・あぁ」
「いや、俺も・・あぁ、やべぇ・・・」
「いいよ」
「え?」
「その・・あっ、ままでぇぇ、あんっ・・あっあっ、もう・・・イクぅっっあああん」
その言葉に甘えて限界だった俺は腰を振りまくり絶頂に達した。
梨華の絶頂も同時だった・・・・・
- 66 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:26
-
- 67 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:27
-
「なんか今日、激しかったね」
余韻に浸ったまま抱き合っていた彼女がいきなりそんなこと言い出した。
激しかったのは俺もだけど、そっちもだよって言いたかった。
「なんかあったのぉ?」
「え?・・・・特には」
「私が興奮していたのかなぁ・・・」
「してたの?」
「ん?ちょっと・・・だってスーツなんて初めて見たし」
服装ですか。ならこれから激しくしたい時はスーツを着てきますね。
どちらからともなくキスをして、繋がったままのソレを引っ張り出した。
「あ、中に・・・出しちゃったんだもんねぇ」
「えぇ?いいって言ったでしょ?」
「・・・・・言ったけど・・・なんで言ったんだろう」
「今更??もうどうにも出来ないよぉ・・・」
「フフ、大丈夫だよ。きっと大丈夫」
- 68 名前:together 投稿日:2006/12/26(火) 00:27
-
そんな楽天的な・・・本当に大丈夫かよぉ・・・
「ねっ!一緒にお風呂入ろう?」
「一緒に?嫌だよ、狭い」
「もう!そこは雰囲気的に、『いいよ』って言うところでしょ?」
彼女は頬を膨らまして口を尖らせている。その姿がまた可愛い。
一緒に風呂なんて恥ずかしいけど、たまにはいいかな?って思ってしまう彼女の仕草。
「俺大好きだ」
「え?・・・急に何ぃ?」
「なんか言いたくなった」
「・・・なんか嬉しい。私も大好き!!」
そのまま一緒に風呂に入って、その後もお互いを求め合った・・・・・
しかしそんな幸せがいつまでも続くことはなかった・・・・・
つづく
- 69 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/26(火) 01:44
- あまーい!あつーい!と思っていたら…
>続くことはなかった・・・・・
(ノ∀`)
- 70 名前:名無し丸の介 投稿日:2006/12/26(火) 06:11
- この名前では初めまして…?w
実は前作から読んだり書き込んだりしてます。
終わり方にドキドキしてます。
まさか梨華ちゃん……!
続きに二つのこと想像。
当たるかなぁw
- 71 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/26(火) 16:23
- ちょ、ちょ、やばいんじゃないすか?!
うわーうわーどーなっちゃうんだ?!
続きが気になります!!
- 72 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/27(水) 02:16
- 最後の一文が気になります…………一体2人に何が起きるのだろう……
また、のんとえりりんも気になりますね。
- 73 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/19(金) 02:54
- 待ちよんやけど……
- 74 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/18(日) 01:11
- そろそろ続きが読みたいですねー
どうなるんだろう
- 75 名前:名無し 投稿日:2007/02/22(木) 19:55
-
>>69:名無飼育さん様
甘いのが好きで熱いのが好きなんですけど・・・・・
難関があるのも好きなんですよねぇ。
>>70:名無し丸の介様
初めましてm(_ _)m
前作から読んでいただいているとは感激です。ありがとうございます。
梨華ちゃん、どうなることやら・・・・・
>>71:名無飼育さん様
ヤバイですよねぇ、どうなるんですかねぇ。
今回は進展無いのですが・・・
>>72:名無飼育さん様
何が起きるのでしょう。今回は特に何も・・・(^^;)
>>73:名無飼育さん様
お待たせいたしました。
>>74:名無飼育さん様
続きです。お待たせいたしました。
- 76 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 19:56
-
「ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ」
「なんだよ」
「今度さ、4人で遊園地行かね?」
「はぁ?2人で行ってくればいいじゃん」
お昼時の大学の学食。席に着いた瞬間に美貴が勢いよく話しかけてきた。
内容は梨華と亜弥ちゃんを含めた4人で遊園地に行こうという話。
お互い恋人同士なんだし、別に勝手に行けばと思った俺は、拒否した。
「なんでだよぉ。親友だろ?」
「いつから?」
「・・・・・ぜってー梨華ちゃんも行きたいと思っていると思うよ?」
そんなこと話題に出たこともないし。
わざわざ遊園地に行かなくても一緒に居れればそれでいい。
それに遊園地に行ったら絶叫ものとか乗らなきゃいけなくなるのが一番嫌だ。
- 77 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 19:56
-
「頼む!!頼む頼む頼む!」
生姜焼き定食を食べている俺に、テーブルに頭をつけながら懇願する美貴。
どうしてそこまで遊園地に行きたいのか。俺らを誘うのか。
「なんでそんなに行きたいの?俺ら誘ってまで」
「いや・・・・あのさぁ・・・」
美貴がその理由を話してくれた。
亜弥ちゃんの両親は仕事が忙しくて、あまり遊びに連れて行ってもらったことがなく、
遊園地的なところには行ったことが無いらしい。
大きくなってから自分で行けばよいと思うけど、今の仕事を始めてしまい、
行く機会を逃した。今更友達に遊園地に行きたいとも言いづらいらしい。
俺は気にすることなく行けば良いと思うけど、芸能人の心は分からない。
「んで、俺が連れて行ってあげようと思ってさ」
そう言った美貴の目はキラキラしている。
- 78 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 19:57
-
「じゃあ2人で行ってくればいい」
「だーかーらー!それが出来ないからお願いしてるんだよ」
「えぇ?」
「何か今さ、亜弥ちゃんの事務所に目つけられてるっぽいんだよ」
亜弥ちゃんの事務所は梨華ちゃんの事務所でもあるんだけどね?
「どういうこと?」
「俺ら、結構外出歩いてるからさ。あんま人の目とか気にせず。
んで事務所の人が気付いたらしく、最近亜弥ちゃんピッタリマークっていうか、
あんまり遊んでるなよ。って念を押されたらしくて。2人で遊園地はマズイかな?と」
そういうことか。俺らは基本的にインドア派だからいつも家でゴロゴロしてる。
お互い外に出たいとは思っていると思うけど、バレたらヤバイっていうのもあるから、
特に口には出さず、インドアをそれなりに楽しんでいる。
- 79 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 19:57
-
「それって俺らはどうしたらいいわけ?」
「よくぞ聞いてくれました!まず、亜弥ちゃんと梨華ちゃんが2人で遊園地に行く。
そしたら事務所の人も2人で遊ぶんだと思って安心する。
んで現地で俺らと落ち合えばよくね?」
いいのか悪いのかは別として、梨華と外に出れることに少しワクワクしている俺。
「でもそれバレたらヤバくね?」
「大丈夫だよ。偶然会ったお友達ですって言えばいいんだもん」
そんなに簡単に行くとは思わないけど、生姜焼き定食も食べ終わったことだし、
その考えにOKを出してオボンを下げた。
遊園地なんて何年ぶりだろう。しかも大好きな彼女と行けるだなんて。
あ、でも絶叫系には乗らないでおこう。吐きそうになるから。
- 80 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 19:57
-
****************************************
――――――――――――ピーンポーン
バイトが終わって今日はのんが居ないことを思い出して、携帯を取り出しメールを打った。
相手はもちろんあの子へだけど・・・。
すぐに返事が返ってきて、彼女の元へと足を動かした。
―――――ガチャ
「おかえり」
ドアが開くと同時に優しい笑顔と心の篭った言葉で俺を迎えてくれる。
あぁ。幸せだなぁ。
「のんちゃん、最近遊び歩いてるね」
「まぁね、高校生活も終わるし今のうちに遊んでおけばいいんじゃね?」
- 81 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 19:58
-
遊びたい盛りの高校生。両親と離れている分、他の子よりも自由な生活のはず。
俺も特にうるさくは言わないし、遊べばいいと思っている。
「誰と遊んでるんだろ」
「え?」
「今日さぁ、事務所で絵里に会ったのね。
そしたら嬉しそうな顔して、「今度のんつぁんと遊びに行くんです」って言ってたからさ」
「・・・・・2人で?」
「そうじゃない?すっごく嬉しそうだったから」
あいついつの間にそういう関係になってたんだよ。今度聞かなきゃダメだな。
「絵里ねぇ、のんちゃんに一目惚れしちゃってたんだよぉ」
「うっそ。ヘラヘラした男が好きなのか?」
「ヘラヘラぁ?カワイイ男の子が好きなんじゃないかな?」
「じゃあ俺でもいいってことか!」
「・・・・・おじさんはタイプじゃないと思うけど?」
- 82 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 19:58
-
おじさんて・・・・・まだ21歳だっての。
「そんなおじさんを好きなのは、どこの誰ですかぁ?」
「は〜い!ここに居る石川梨華でーす」
そう言って梨華が抱きついてきた。2人きりのときは甘えてくれる彼女。
甘えられるのが好きな俺は凄く嬉しいこと。
「いやぁだぁ。ダラしない顔しているぅ」
「誰がダラしない顔にさせたんだよ」
「フフフ」
テレビも音楽もついてないこの部屋。
ソファに2人で並んで座って会話をしているだけで、幸せだと思える。
彼女の香りと甘い声だけが漂っている。
あぁ。この雰囲気すっごいいいや。
- 83 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 19:58
-
「ねぇ」
「ん?」
彼女は黙って目を瞑り、あごを少し上にあげ、こちらを向いている。
俺は彼女の唇の上に自分の唇をのせた。
彼女は嬉しそうな顔をして目を開け、ハニカミながら下を向く。
その仕草が可愛くて、下を向いている唇を下から支えるように口づけた。
予想していなかった行動に驚いていたけど、すぐに合わせてくれた。
口づけを終わらせたくなくて、何度もついばむように口づける。
そのうち自然と彼女が仰向けで俺が覆いかぶさる格好になっていた。
「っ、よっちゃん」
「んん?」
「好き」
「・・・俺も好き」
- 84 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 19:59
-
愛を囁きあい、そのまま深く口づけようとした・・・・んだけど・・・・・
「っん、今日は止めておこう?」
「え?・・・・あぁ・・・」
「ゴメンね、明日朝早いの。なるべくなら・・・」
「全然いいよ。たまにはくっついているだけっていうのも、ねぇ」
「うん・・・・ありがと」
少し気分が乗ってきただけに残念な気持ちもあったけど、
それだけが目当てなわけではないし。今日はここに居る幸せを噛み締めよう。
起き上がってソファに座って俺の肩にちょこんと頭を乗っけた。
彼女の仕草一つ一つが可愛らしい。
- 85 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 19:59
-
「あ、そういえば、美貴が4人で遊園地行きたいって言ってたな」
「遊園地ぃ?行きたい行きたい!」
「本当に?」
「うん!だってしばらく行ってないもん」
「あぁ・・・・・亜弥ちゃんは一回も行ったことないらしいよ」
「うっそ!じゃあ絶対行かないとダメじゃん」
そうなんだけど、やっぱり少し迷う。そんな人前に堂々と出ていいのだろうか。
いつもと違うことをすると、何か不安になる。
「でもさ、そんな人前出て大丈夫だと思う?」
「えぇ?大丈夫だよ。そんなにバレないって」
「・・・・・今までバレたらヤバイからってどこも行かなかったくせに・・・
あ。もしかして面倒くさいから外出なかったとか?」
「・・・・・・・」
彼女は俺の目を一度見て、すぐに逸らした。
こいつ・・・・確信犯か。
- 86 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 19:59
-
「行きたくなかったわけじゃないんだよ?
ほら、お互い忙しいしさ、少しでも家で休みたいじゃない?」
「へぇへぇそうですね」
「なぁに〜、その棒読みな返しかた」
まぁ俺も慌ただしいの好きじゃないし、いいんだけどさ。
「じゃあ美貴に言っとく」
「うん!いつだろ、楽しみだなぁ」
目を輝かせて本当に楽しみというのが伝わってくる。
実際遊園地なんて行けてないだろうし、良かったのかなぁ。
- 87 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:00
-
「ねぇ、私がお見合いとかして結婚することになったらどうする?」
「はぁ?」
「例えばの話だよ?よっちゃんならどうするかな?って思って」
突然そんなことをいう彼女にドキドキする。特に何も思ってないんだろうけど・・・
世間から見れば大女優とただの金の無い大学生。釣り合う要素は全く無い。
今はないだろうけど、そんな話がいつか出てもおかしくない。
俺らは外で会わないようにしているからバレないけど、実際美貴達みたいに出歩くと、
事務所から目をつけられるのも有り得ない話ではない。
今一番輝いている女優のスキャンダルなんて事務所が許すわけないし。
「ねぇ。聞いてる?」
「・・・・え?・・あぁ、聞いてるよ」
「じゃあ、どうするぅ??」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
- 88 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:00
-
「なぁんか言ってよぉ」
「・・・・・・・連れ去るよ・・・・」
俺は梨華の目を見てしっかりと言った。いつ何があるかどうか分からない。
でも俺は彼女を離す気はない。離したら・・・・俺はどうにかなってしまう。
彼女は嬉しそうな顔をして、より一層身を委ねてきた。
「本当にぃ?」
「うん・・・・」
「フフ、私って幸せ者だぁ。チュウしてぇ」
唇を突き出している彼女に軽く口づける。
「絶対近くに居てね」
「もちろん・・・・・近くに居させてください」
- 89 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:00
-
****************************************
「よし、送信」
今日最後の仕事が終わってすぐにメールを打つ。大好きなあの人に向けて。
初めて会った時、すっごくドキドキしたの。
話した事も無い人にこんなにドキドキするなんて思ってもみなかった。
話してみると思った通りの楽しい人で。可愛らしい人だった。
そのまま送ってくれることになった時、さっきまで可愛らしかった彼が、
いつの間にか逞しい男の人になっていて・・・
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「ここで大丈夫ですよ」
「え?まだここ暗いじゃん。明るくなるところまで送る」
「大丈夫ですって」
「大丈夫じゃないよ」
- 90 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:01
-
そう言って手を握られ、どんどん引っ張られた。
さゆ達は逆方向だったから、私達2人だけ。
彼は何も意識せずにした行動だったんだろうけど、私は熱くてしょうがなかった。
「絵里ちゃんてさ、芸能人なんでしょ?」
「え?そうですよ」
「こんなとこ1人で歩いてたら危ないとか思うでしょ」
「あぁ・・・・そう、ですかね?」
「危ないよ。自分の身は自分で守りましょう」
「あ、は〜い」
適当なんだけど優しい言葉に引かれていった。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
- 91 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:01
-
もうあの時には惚れていた私。それからは私から猛アタック。
ほぼ毎日メールして電話して。それが楽しみで仕事を頑張って。
当たり前になってきた頃、彼からのお誘い。そして今日は約束の日。
仕事が終わってから待ち合わせだったから、仕事終わったメールをしたところ。
<じゃ、あそこの公園で。>
返信を読みながらタクシーに乗って、公園の場所を運転手さんに伝える。
メールや電話はしていたけど、会うのはあの日以来初めての事。
胸のドキドキは全然おさまってくれない。
公園が近づくにつれて、もっともっとドキドキしてきた。
タクシーを降りて、公園の中に入ると小さいベンチに座っている彼が目に入る。
ニット帽を被って黒いジャンパーにジーンズとラフな格好。
普通の格好なんだけど、久々に見た姿に嬉しくて笑ってしまう。
- 92 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:01
-
「お、来た」
「ゴメンね、遅くなって」
「いや、そんなには・・・ってか何で笑ってる?」
「ん?・・・・分かんない」
「えぇ?本当に変な子だねぇ。まぁいいや。
そう言って立ち上がり歩き出した。どこに行くとも言わずにただ歩く。私も続く。
少し後ろにいたら、「喋りずらい」って並んでくれた。
本当に隣に居るのが嬉しくて、話しながらずっと顔を見ちゃってた。
綺麗な横顔。笑うと凄く幼くて、でもキリっとしているときもある。
こんなにカッコいいのに彼女が居ないなんて。まさか・・・・・男好き?
まこっちゃんとすっごい仲良いし。有りえなくないかも・・・・・
「百面相」
「え?」
「何1人でブツブツ言って百面相してんのぉ?」
- 93 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:02
-
また1人の世界に入っちゃった。恥ずかしいなぁ。
そんな私を見てケラケラ笑っている彼は、やっぱり良い人だと思う。
「えっと・・・・・凄く疑問に思っていることがあって」
「なにぃ?」
「そのぉ・・・あのですね」
「なぁにさ」
「・・・・・どうして彼女いないんですか?」
「えぇ?」
「だって、居てもおかしくないじゃないですか」
私がそう言うと、さっきまで笑ってた顔が急に寂しい顔になった。
「それ聞いちゃうの?」
「・・・・・ごめんなさい」
「いや、謝らなくてもいいんだけどさぁ。ま、いいじゃない。さ、行こ」
- 94 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:02
-
そう言って私の手を握りズンズンと歩き出した。
手を握られてるのが嬉しい反面、そのことが気になってしょうがなかった。
向かった先は映画館。前に見たいって言ってた映画を覚えていてくれた。
スクリーンを前に座ったはいいけど、隣が気になってあまり集中出来ない。
彼の1つ1つの動きが気になる。少しでも触れるとドキドキする。
だからあんまり内容が分からないまま終わってしまった。
「どうだったぁ?」
「ん?うん・・・・・楽しかったですよ」
「見てなかったくせにぃ?」
「え?」
「またさゆちゃんとでも来たらいいよ、なかなか面白かったから」
ちゃんと見てないのバレてたんだ・・・・私が見たいって言ったのに。
それでも彼は笑いながら「飯食お」って言ってくれる。
- 95 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:02
-
トコトコついていくと、こじんまりとした喫茶店の前で止まった。
「ここでもいい?」
「はい、どこでも」
彼はまた笑ってドアを開けた。カランと音がして、「いらっしゃい」と声がする。
「奥開いてるぅ?」
「あらぁ、ののぉ。久しぶりだね。元気だったかい?」
「うん、この通り元気ぃ」
「そっかい、そっかい。開いてるからどうぞ」
私は店主に会釈をして彼の後を付いて行った。馴染みがありそうな2人の会話。
私の知らない彼がまだたくさん居るんだと思う。
「ここね、中学の時からよく来てたんだよねぇ。最近は来てなかったけど」
- 96 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:03
-
今の言葉の裏には、何かが隠されている気がした。よく来てたのに来なくなった。
すぐ近くだから来ようと思えばいつでも来れそうな場所。
雰囲気もとっても落ち着くし、疲れたときに来たい感じのお店なのに・・・・・
「何食べる?ここのオムライスは絶品だよ。俺毎日食ってたもん」
自分の知らない彼を少しでも知りたくて、私もオムライスを頼んだ。
「絶対損しない」って言っていただけあって、本当に美味しい。
あんまりお腹は減ってなかったのに、一気に食べちゃった。
―――――――――カラン
ドアが開いて人が入ってくる。入ってきた人と店主の会話が耳に入る。
「あんらぁ、久しぶりだねぇ。今日は懐かしい人がたくさんだわぁ」
「近くに来たらやっぱり食べたくなっちゃって、オムライス」
「そっかい。嬉しいねぇ」
ここに来る人はきっと、店主の人柄とこの美味しい料理に癒しを求めてくるんだと思った。
- 97 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:03
-
「いいお店ですよねぇ」
「へへ、ありがと」
自分のお店でもないのに本当に喜んでる彼は、とっても素直。羨ましいくらい真直ぐ。
さっき入ってきた人がカウンターに座って、店主と色々話している。
こっちはこっちで話したいことがいっぱいあったし、向こうの声は入ってこなかった。
「はは、本当に面白い世界だよねぇ」
「でしょう?入りたくなった?」
「全然。俺はこのままで良い。ちょ、トイレ行ってくるわ」
彼は立ち上がりトイレに向かう。私は楽しくて1人でニヤニヤしていた。
「のんつぁん!?のんつぁんやん」
彼が呼ばれているのが聞こえて、カウンターのほうを見ると、さっき入ってきた人だった。
名前を呼ばれた動かなくなった彼。それでも彼女は話しつづける。
- 98 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:03
-
「久しぶりやね。1年ぶりぐらい?」
「・・・・・・・・」
「元気してた?」
彼は力なく頷いた。その姿を見て、私は何かあるなと感じた。
「そっかぁ。もう進路とか決める季節でしょ?どうするの?」
「まだ決めてない」
「・・・・・怒ってる?」
「・・・・・別に」
あんなに冷たい彼を見たのは初めてだった。いつも明るくて笑ってて優しいのに・・・
今は別人みたい。表情が無くて、目が泳いでいる。
「ゴメンね」
「なんで謝るの?謝られた方が辛いんですけど・・・」
「・・・・・・・・・」
- 99 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:03
-
彼は何も言わずにトイレに入っていった。
カウンターの女性は店主を見て苦笑いをしている。店主の困ったという顔。
「あーいう態度取られるのは分かってたことだけど、実際やられるとキツイやね」
「あの子は純粋だから。心が綺麗すぎるの。何も受け入れられないんだべさ」
2人に何かあったというのは分かる。それが何であったかも想像がつく。
私の知らない彼が、すぐそこにいた。トイレから出てきた彼はカウンターを素通りした。
「ゴメンね、なんか遅くなった」
「ううん。大丈夫」
「・・・・・聞こえてた・・・よね?」
「うん・・・・少しだけ」
彼は少し俯いて、それから真直ぐ前を見て話してくれた。
- 100 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:04
-
「まぁ簡単に言えば、あの人に捨てられたんだよねぇ」
笑いながら言ってたけど、切なさが心に伝わってきた。
「中2の時に付き合い始めて、高2の夏に振られた。好きな人が出来たって。
別れた1週間後に新しい人を作られたときには・・・キツかったなぁ」
その表情から、その時のことを思い出したんだと感じとれた。
水が彼の喉を通っていく。その動きをじっと見ていた。
「そんな捨てられかたしてもさ、あの人以上の人が居なくて続かないんだよね。
だから今も彼女居ないらしいよ」
「らしいよって」
「まことに言われたからさ、あんまよく分からなくて」
切ない顔は消えなくて、彼女に会ったことでまたそれは強くなったんだと思う。
私はどうしようも出来なくて、ただただ彼を見つめ続けた。
- 101 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:04
-
しばらく経って、カウンターの女性が立ち上がり彼に声をかけた。彼も反応する。
「のんつぁん!あたし彼と別れちゃった。なんか・・・・違った」
「・・・・・・・・」
「じゃあね、ちゃんと進路決めるんだよぉ」
彼は手を上げるだけで、一言も話さず彼女は出ていった。
また無言の空間。時間だけが過ぎていく。
店主がすっと横に来た。
「あいちゃんね、ののと別れてからここに来たの今日が初めてだったべさ」
「え?」
「ののも今日が初めて。お互い大切に思っていてくれた場所ってことだべか?」
店主がそう言うと、彼は難しい顔をした。
「でもその場所に来れたってことは、吹っ切れたってことじゃない?お互いに」
その言葉にフフっと笑い、「そうだなぁ」と言った。すごく優しい顔で。
- 102 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:04
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「ふぅ。ゴメンね、何か一瞬暗くなっちゃって」
「ううん、全然。楽しかったよぉ?」
「そう?良かったぁ。こっからどうやって帰る?やっぱタクシーかぁ」
「帰りたくない」
「・・・・え?」
「って言ったらどうするぅ?」
「・・・・・・・・・・」
「あ、怒った?」
「うん、怒った」
「ごめんなさい、もう言いません」
ケラケラ笑いながらタクシーを停めてくれた。帰りなさいってことだね。
「また今度遊ぼ。そちらが暇なら」
「うん!絶対遊ぶぅ!!またメールするから」
- 103 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:05
-
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「た〜ん、ただいまぁ」
「亜弥ちゃ〜ん、おかえりぃ」
とりあえずお帰りのキスをする。これはとっても軽く、触れるだけのキス。
ここは亜弥ちゃんのマンション。俺は毎日のようにここに来ている。
忙しい彼女に会うにはこの方法が一番手っ取り早い。
俺の家でもいいんだけど、
亜弥ちゃんのことを考えると自分の家のほうが落ち着くだろうという勝手な考え。
「明日は早くないから今日はゆっくりできるのぉ」
「そっか。じゃあ今日は泊まっていこうかなぁ」
「いいよぉ」
- 104 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:05
-
俺はそのままソファに座って、亜弥ちゃんは着替えにいった。
テレビを見ていると、梨華ちゃんが出てきた。スタイル抜群の美しい身体。
すげぇなぁ。よっちゃんこの体を好き放題できるんだもんなぁ。
ぼーっと梨華ちゃんを見ていると、亜弥ちゃんに頬を抓られた。
「いやらしい顔してるぅ」
「うぅ。ひてないよぉ」
「そんなに梨華ちゃんがいいなら、よっちゃんに貸してもらえば?」
そう言って手を離し、お風呂に行ってしまった。
いつも主導権を握られている俺だけど、ヤキモチ焼くのはいつも亜弥ちゃん。
それがまたカワイイんだけどねぇ。
こういうときは一緒にお風呂に入るが一番!!
俺はすぐに亜弥ちゃんの後を追って風呂場に入っていった。
- 105 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:05
-
「ちょ〜っとぉ。なんで来るのよぉ」
「俺も入りたいからだよ。さ、脱ごうっと」
嫌な顔をする亜弥ちゃんを無視して、俺は素っ裸になった。
「汚い」
「なんだよぉ、いっつも見てるくせにそれはないっしょ」
亜弥ちゃんはため息をついて、しょうがなく服を脱ぎ始めた。綺麗な体が現れる。
俺の息子はすでに反応しそうになっていた。
「先に身体洗おうか」
そう言って俺は亜弥ちゃんを座らせ、ボディソープを手に取り体に塗りたくる。
手で洗うのが気持ちいいのか、亜弥ちゃんも体を任せてきた。
調子に乗った俺は、豊満な胸を重点的に洗うようにする。
- 106 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:05
-
「ん・・・ちょっ・・・あ」
ぬるぬると滑るから俺も気持ちがいい。突起を重点的に責め始める。
そうすると本格的に亜弥ちゃんの甘い声が聞こえてきた。
「ふぅ、ん・・・あん、あ・・・ん」
「亜弥ちゃん?どうしたの?」
「いや、たん・・・ん、あん・・・意地悪しないで」
「え?身体洗っているだけなんだけどなぁ」
俯いて息が荒くなってきた亜弥ちゃんを見て、俺も興奮してきた。
右手をそのまま下に滑らせ、内腿を優しく撫でる。
完全に体を俺に預けた亜弥ちゃんは、首を後ろに向けてキスを求めてきた。
最初から濃厚な舌が絡み合うキスに頭がクラクラする。
クラクラしながらも辞めない手の動き。俺は亜弥ちゃんが感じてる姿を見るのが大好きだ。
なんてったってカワイイ。俺だけに見せてくれるその姿。
- 107 名前:together 投稿日:2007/02/22(木) 20:06
-
深い深い口づけをふいに止め、彼女は懇願する。
「んぅ、たん・・・あ、ダメェ」
ここまでしておいて「ダメ」って意味が分からないけど、
とりあえず「今はだめ」ってことなんだろうと解釈して手を離した。
「ん・・・・もう、本当に手癖が悪いんだから」
「・・・・・そんな風に悪くさせたのは誰の身体ですかぁ?」
「知らない!!早く入ってあがる」
「早く上がって何するのぉ??」
「たん!!うるさい!!」
頬を膨らませた亜弥ちゃんだけど、あがった後はしっかりやっちゃいましたとさ。
つづく
- 108 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/22(木) 23:05
- 更新お疲れ様です。
いしよしはあまあまで最高だし、ののえりは初々しくてカワイイし、
あやみきはじゃれあいつつあま〜いし、最高です。
でも・・・梨華ちゃん何か隠してますよね?
次回楽しみにしてます。
- 109 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/28(水) 22:05
- マータリお待ちしております
- 110 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/04(金) 01:05
- 4人で行く遊園地楽しみだなぁ。
- 111 名前:名無し 投稿日:2007/05/18(金) 22:26
- 皆様、お待たせして申し訳ありません。
もう眼中にないって方も居るかと思いますが、勝手にやらせていただきます。自己満です。
更新していなかった期間に色々なことがありましたが、いしよしは変わりません。
というか、変わって欲しくないですね・・・・・
よっちゃん、卒業おめでとうございます。男に設定してスミマセン!!
でも男らしいよっちゃんが私は大好きです。
これからも梨華ちゃんと仲良くしてください。
あんまりモテるからって、嫁を泣かすようなことは控えてくださいね↑
というわけで、これからも続きます。ヨロシクお願いします。
- 112 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:27
-
『遊園地人目を気にせず楽しもう計画』を美貴と2人で立てていた。
ほぼ完璧な計画が出来上がったところであのワガママ娘が一言。
「ねぇ、たん。やっぱ動物園がいい」
「えぇ?」
これには俺も驚いた。
自分から遊園地に行きたいから連れてけとか言っておいて、
ほぼ決まったところで違うとことに行きたいとか・・・
アホかぁ!!さすがの美貴もこれには怒るだろうと思ったが・・・
「マジ」
「マジマジ」
そこだ!怒れ!いつもの調子でキレまくれ!!
「う〜ん・・・しょうがないなぁ。じゃあ動物園計画に変更しようか」
- 113 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:27
-
え・・・俺は美貴の発言に問いかけた。
「藤本君、今なんて?」
「しょうがないなぁって」
「・・・その後は?」
「ん?・・・えっとぉ、動物園計画にしよっ」
答えている途中の美貴の腕を引っ張って、隣の部屋まで連れて行った。
イライラが最高潮にきていた。
「おんめぇ、いい加減しろよ!!」
「なんだよ・・・いきなり」
「なんだよじゃねぇーよ!!あんだけ苦労した計画を無しにするのか!!!」
計画を立てるのは本当に大変だった。気付かれず楽しむ。すっごい難しい。
俺らの計画に何度もダメだしをしてきた亜弥ちゃん。
そこは見つかるだの、そんなんじゃ楽しくないだの、
俺は非常にイライラしていた。
でも彼女達を楽しませるために、
何度も何度も考え直してやっと出来かけたのに・・・
- 114 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:28
-
「今回だけは絶対に譲らん」
「なぁにを固いこと言ってんだよ。2人が楽しめなきゃ意味ない」
「梨華は楽しいはずだ」
「・・・・・たま〜に頑固になるんだよな、よっちゃんて」
「譲らん」
「はぁ・・・・・なぁ頼むよ。亜弥ちゃん、マジで楽しみにしてるからさ」
そんなの知るか。あんのワガママ娘。俺の知ったこっちゃない。
ちょっとは我慢しろ!!ってんだよ、いつも振り回しやがって。
―――――― コンコン
「よっちゃん?入るよ?」
高い声が聞こえ、ドアが開いた。そこに立っているのは愛しいあの人。
眉毛がハの字になっている・・・・・俺のせい?
- 115 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:28
-
「美貴ちゃん、あっち戻って?」
首を傾げて言う姿はやはり可愛い。
ちなみに梨華は美貴のことを、何故か「ちゃん」付けする。
カワイイんだとさ。
「うぃ」
美貴はそそくさと出て行った。2人きりになった部屋。
俺はまだそっぽを向いている。
本当は梨華の顔が見たいけど、男としてのプライドが・・・
「いつまでスネてるのよぉ。亜弥ちゃんも元気なくなっちゃたんだから」
「知るか」
「・・・・・なんで突然子供になるのよぉ。
動物園計画で作り直してあげて?お願い」
ウルウルとした瞳で見られると、「うん」と頷いてしまいそうだ。
でも今回は必死に凝られる。
- 116 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:28
-
「梨華には分からないんだよ。俺らがどれだけ苦労したか」
「そりゃ分からないよ。だって作ってないもん」
なんだよ。どの開き直りみたいな言い方は!!ムカつくなぁ・・・
「亜弥ちゃんね、のんびり遊びたいんだって」
「・・・・・」
「美貴ちゃんと2人で遊びに行ってもバタバタで落ち着けないって。
遊園地でも結局そうなっちゃう気がするからって」
そんなの・・・・・遊園地に行ったことないから行きたいって。
だから色々考えたのに・・・
「じゃあ俺らみたいに家でゆっくりすればいいじゃん」
「もう。それじゃあ味気ないじゃない。私達とあの2人は違うのぉ」
「わかってるよぉ・・・・・」
もう動物園でいいって思っているけど、言い出せないのが男のプライド?
なんか負けたみたいで嫌だ。素直に「いいよ」なんて言えない。
- 117 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:29
-
「お願い。遊園地は、今度2人で行こうよ。2人っきりで」
俺は言うタイミングを探していた。いつ言えば格好悪くないか。
どう言えば俺の方が大人だからって思ってもらえるか・・・
もう十分、子供だってことはバレてるんだけどね。
「ダメェ??」
うぅ。その攻撃は反則だって。俺が弱いの知っててやってるなぁ。
・・・・・本当にこの人には勝てないな・・・
「わぁーったよ。動物園ね」
「いいのぉ?ほんとにほんとにぃ??」
俺はコクリと頷いた。
何だか、この人さえ居れば何でもいいとか思っちゃう自分が居るわけで。
完全に嵌っているなって実感する。もう逃げられない。
というか、逃げようと思わないわけで・・・
- 118 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:29
-
「はぁい、動物園に決定!!」
部屋を出た梨華の声に、亜弥ちゃんが目を輝かせた。
「本当にぃ?いいのぉ?」
「いいのいいの。楽しもうねぇ」
嬉しそうにしている2人が犬に見えた。
ご主人様が散歩に連れて行ってくれると、喜んで尻尾を振っているようだ。
そんな2人の姿にニコニコしてしまう俺や美貴も、大概犬のようだ。
「んじゃ、練り直しますか」
「そうっすね。ワガママなお嬢さんたちのために」
- 119 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:29
-
****************************************
動物園計画は順調に進み、後はその日を待つだけとなった。
俺も含めて4人ともその日が楽しみでならない。
「うー。まださみぃなぁ」
4月の新学期を迎え、春の陽気にウキウキすることもあるけど、
やっぱりまだ肌寒い時期。家に帰るところだった。
「すいません」
少し下を向いて歩いていると、前に黒い影ができ顔を上げると、
そこにはイカツイ男が立っていて、俺に話しかけてきた。
「・・・・・はい?」
- 120 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:30
-
「藤本美貴って男・・・知ってますよね?」
その男は名前も名乗らずいきなり質問を投げかけてきた。
初めて会った人に話しかけるときは、まず自分が何者か名乗るべきだと思った俺は、
何も反応せずにジッと男を見ていた。怖いもの知らずだよな。
「知ってますよね?」
「・・・・・あんた誰?」
男はジッと俺を見て、やがて名刺を取り出した。
そこには『ハローウィングス』と書いてある。梨華と亜弥ちゃんの事務所だ。
「俺に何の用ですか?」
「藤本さんに伝えてください。身を引けと」
事務所から反感を買うことは覚悟していたことだ。
トップアイドルのスキャンダルは、事務所に大ダメージを与えることだろう。
でもなんで俺に言うんだ??
- 121 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:30
-
「どうして俺に言うんですか?自分で言ってください」
「・・・・・直接会ったら殴ってしまいそうなんで。
先に忠告しておきます。よろしく」
それだけ言って男は去っていった。
俺にどうしろと・・・・・。別れろなんて言えるわけが無い・・・・・。
でも、もしかして凄いヤバイことになってるのか?
もし別れなかったらボコボコにされるのか?
今回は美貴だけに忠告だったけど、もし俺と梨華の関係がバレたら・・・・・
やべぇ。俺ちょっとビビッてる。さっき目の前に居たときは怖くなかったのに。
今すんげぇ怖い・・・・・どうなるの?俺。
まずは美貴に言うべきか。何を言っても聞く耳持たないと思うけどなぁ・・・
一応伝えるだけ伝えたほうがいいよな、うん。
- 122 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:30
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「おぅ、入れー」
俺はその脚で美貴の家に行った。何事も早い方が良いからな。
「どしたぁ?うち来るなんて珍しいじゃん」
「あぁ・・・・そうだな、久しぶりだ」
「なんだよ。梨華ちゃんと喧嘩でもしたの?」
「いんや、おめぇのことだ」
美貴は首を傾げて眉間に皺を寄せ、俺の言葉の続きを待っていた。
俺はさっきあったことを淡々と話した。それは聞いて美貴は笑った。
「ハハ。そんなのにビビッてたら、アイドルとなんて付き合わねぇよ」
「いや、俺もそう思ったんだけどさ、一応報告として」
「そりゃどうも。ってか自分だってヤバイじゃん。相手は大女優だも」
「こっちはバレてないっぽい。あんま外で歩かないからね」
- 123 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:31
-
さっきの話をしても美貴が気にしないのは分かっていた。
でも何だか嫌な予感がしたんだ。伝えなきゃいけないって思った。
イカツイ男だったからなのか、俺がビビったからなのか。
嫌な胸騒ぎは収まらないけど、これ以上何を言っても美貴は笑うだけ。
こいつにもそれなりの覚悟があるはずだ。
「もしさぁ」
「え?」
「もし、亜弥ちゃんがお見合いして結婚することになったらどうする?」
「は?有り得ない。亜弥ちゃんは俺以外の奴と結婚しない」
「でもさ、無理やりっていうか、どうしてもしなきゃいけなかったら?」
「なんだよ、その質問」
「どうすんだよ」
美貴は少し考えてたけど、答えはそれしかなかった。俺と同じ。
「2人で夜逃げするかな?あいつがいるなら何処へでも行けるね」
亜弥ちゃんを愛している証拠だ。
- 124 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:31
-
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美貴の家から帰る途中、梨華からメールが届いた。
今日は早く終わり、もう家にいるとのこと。
今日あった話をするべきかどうか迷っていた。梨華はどう思うのか。
もしかしたら事務所から亜弥ちゃんの方に何らかの話がされてるかもしれない。
聞きたい気持ちと聞いてはいけないと思う気持ちが交差する。
「ただいまー」
「おかえりぃ、美貴ちゃん家に行くなんて珍しいね」
「ん?まぁちょっとね」
「なぁに?隠し事?」
ちょっと不安そうな顔をする彼女に、今日の出来事を話した。
彼女は驚き、自分の今日あった出来事を話してくれた。
事務所の個室の呼び出され、プライベートを根掘り葉掘り聞かれたこと。
梨華の後に入った亜弥ちゃんが叫んで事務所の人と、喧嘩していたこと。
そして、正直に今彼がいると答えたこと。
- 125 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:31
-
「そんなことまで話したの?やばくない?」
「う〜ん・・・・ちょっとね。でも亜弥ちゃんよりは大丈夫」
「なんで?」
「『別れろよ』って言われた時、私は適当に相槌打っといたから。
でも亜弥ちゃんは『絶対ヤダ!!別れない!!』って言い張ってた」
亜弥ちゃんらしいと言えば、亜弥ちゃんらしい。梨華らしいと言えば梨華らしい。
でも俺は少し寂しかった。頭が良いのは梨華だ。
嘘でも「はい」と言っておけば、話はすぐ終わる。すぐ帰ることができる。
それに引き換え素直な亜弥ちゃんは、いつまで経っても帰れない。
要領が良いのは梨華だけど、男としては寂しい気もする。
「どしたの?いきなり暗い顔して」
「う?いや。何でもないよ」
「嘘だぁ。今何か考えてたでしょ」
「・・・・・別に。んで、亜弥ちゃんは帰れたの?
「うん、最後まで譲らなかったけどね。相手が疲れちゃったみたい」
- 126 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:31
-
俗に言う、粘り勝ちってやつね。美貴大丈夫かなぁ・・・・・
「美貴ちゃんならさ、何があっても亜弥ちゃん離さないよねぇ」
「うん。ってか美貴は亜弥ちゃんが居なきゃ生きられない人間になっちゃてるからな」
「・・・・・愛されてるなぁ」
「ビンビン伝わってくるからね。そこが良いところなんだろうけど」
優しい顔をしながら「そうだよねぇ」なんて言っている彼女は凄く魅力的だ。
ホント、誰にも渡したくないね。こんな近くで見れるのは俺の特権だ。
俺の視線に気付いてこっちを向いた。そしてニコニコ。少し俯いてニコニコ。カワイイ。
俺もニコニコ。幸せそうな光景だ。衝動的に彼女をギュッと抱きしめる。
「うぅ。どうしたのぉ?」
「なぁんか、ギュッてしたくなった」
「ふふ、もっとギュってしてぇ〜」
その言葉に応えるかのように、力を込める。でも優しく。
- 127 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:32
-
ギュッとしていると、自然と思っていることが口に出せたりする。
普段は照れくさくて言えないような言葉。
「愛してる」
この言葉だけで、俺の気持ちは伝わってるはずだ。
恥ずかしくて顔を上げられなく、そのまま彼女の首に顔を埋めていた。
- 128 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:32
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1週間後。梨華から嫌なメールが届いた。
『美貴ちゃん危ない』
絵文字無しで緊急な感じだった。
美貴ちゃん危ない。とっさにあの男の顔が浮かんだ。
すぐに美貴に連絡したが、繋がらなかった。
梨華ちゃんに連絡しても繋がらない。もちろん亜弥ちゃんも。
俺はどうすることも出来ずに、しばらくその場に突っ立っていた。
「探すか」
一度気持ちを落ち着かせ、取りあえず美貴の居そうなとことを探すことにした。
学校、バイト、家。どこを探しても美貴は居ない。
- 129 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:32
-
「どこ行ったんだよ・・・・・」
近くの公園の前を通りかかった時、一瞬寒気がし、嫌な予感がした。
別に霊感があるわけでもない。ただ、嫌な予感がした。
そのまま公園に入り、あらゆるところを探す。
この公園は意外と広く、アスレチックもあれば小さな丘も木も草むらもある。
どこか視角になりそうなところはないか、注意深く探していった。
「ふぅ。いねぇなぁ」
嫌な予感は外れた。どこを探しても美貴は居ない。
もう一度携帯に電話をかけた。
♪〜〜♪〜〜
「え?」
聞こえてきたのは美貴の携帯の着信音だった。
振り返るとそこにはトイレ。
- 130 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:32
-
「ここか!!」
トイレに入ると入り口に美貴は倒れていた。
「おい!美貴!大丈夫か!?美貴!!」
美貴は俺の呼びかけに微かに目を開けて安心したように微笑んだ。
「どうしたんだよ!何があった!?」
美貴はボロボロだった。顔の形が変わるぐらい殴られている。目もほとんど開かない。
体中に痛々しい傷があり、動けない状態だ。それでも微かに笑っている。
- 131 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:33
-
「さすがよっちゃんだな。もう見つけてもらえないかと思ったよ」
苦しそうにしながらもポツリポツリと話してくれた。
家に帰る途中、大きな男が前に現れそのまま公園まで引きずられた。
第一声が「松浦と別れろ」だったそうだ。
そんなことに耳を貸すわけが無い美貴は、「嫌だ」と言った。
その瞬間、思いっきり腹を殴られその場に蹲った。その後はほとんだ覚えていないそうだ。
「でもさ・・・・別れろって言われ続けたのは覚えてる」
美貴をヤッタのは確実に事務所の息がかかった奴らだ。それは間違いない。
どうしても別れさせたかったのだろう。それは当然といえば当然だ。
事務所の稼ぎ頭に何かスキャンダルがあったら大変だ。大損害。
事務所は亜弥ちゃんたちを人として見ていない。完全に商品として見ている。
だからこんなこと・・・・・
- 132 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:33
-
「よっちゃん」
弱弱しい声で美貴が話しかけてきた。
「俺すげぇよ。マジ・・・・カッコいいよ」
「なんだよ、いきなり」
「俺さ・・・・・
どんだけ殴られても蹴られても、絶対別れないって言い通した。
金もやるって言われたけどさ、、、俺が求めてるのはそんなんじゃねぇもん。
俺が求めてるのは、亜弥ちゃんだけだからさ・・・・・
何言われても、動じなかった。
これってさ、メッチャカッコよくね?」
- 133 名前:together 投稿日:2007/05/18(金) 22:33
-
美貴は笑ってそう言う。
俺は涙が溢れ出しそうだった。
ただ好きになっただけ。
ただ一緒にいたいだけ。
ただ出会っただけ。
ボコボコにされても引かない。それだけ亜弥ちゃんのことを愛している。なのに・・・
たまたまアイドルを好きになり。
たまたまその人が運命の人で。
本人達は普通に付き合いたかっただけなのに・・・・・
俺は涙で美貴の顔が見えなくなった・・・・・
つづく
- 134 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/18(金) 22:35
- 更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━
しかもリアルタイムでキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━
美貴さんかっけぇよ美貴さん
- 135 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/19(土) 01:33
- 美貴カッケー!!
よっちゃんにもこんな日が来るのかな。
- 136 名前:名無し 投稿日:2007/05/19(土) 11:25
-
>>134:名無飼育さん様
私の中で美貴ちゃんはカッコいい存在なんです
>>135:名無飼育さん様
よっちゃんには・・・・・どんなことが起こるのでしょう
調子こいて続けざまに更新です。
次までの期間長くなっても怒らないでくださいm(__)m
- 137 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:25
-
とりあえずボロボロの美貴を抱え、タクシーに乗って病院に行く。
かなり出血しているし、俺もどうしていいのか分からなかった。
病院に行けば何とかなるという安易な考えでタクシーに乗り込んだ。
「どうってことないよ。病院なんて」
美貴はそう言ったが、尋常じゃないぐったりさに俺はビビッていた。
ボコボコにされて死んだ人は何人も居るはずだ。
その中の一人になったらどうしようと、ビクビクしながら隣に座った。
「階段から落ちたって言えば、信じるかな?」
聞かれた時のことを考えているんだろう。
「アスレチックから落ちたって言えば?」
「あぁ、それが無難だな・・・・・っておい!俺今何歳だよ」
これだけ突っ込みが出来れば大丈夫か。と内心安心していた。
- 138 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:26
-
病院に着いて色々な治療をしてもらってる間に、俺は梨華と連絡を取ろうとした。
美貴は無事だと伝えなくては。心底心配していると思う。
外に出て、携帯を取り出してかけるが出る気配がない。
あのメールも絵文字無しの素っ気ないもの。
向こうでも何かがあったのかもと不安になった。
「あぁ。俺のイケメンがぁ・・・」
戻ると治療室の前に美貴が顔を触りながら座っていた。
「今までがイケメン過ぎたから、丁度いいんじゃね?」
「いやぁ・・・・・さすがにこれはないよ」
そう言って大きなため息をついた。
- 139 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:26
-
「まだ検査あるらしい。用事あるなら帰れ」
「ここまで連れてきてもらって、帰れはないだろ」
美貴は俺から視線を逸らし、手の甲でポイポイとやった。
本当は寂しいくせに強がりだから困るんだよなぁ。
「俺暇だからまだ居るわ。1人でタクシー乗るより、2人で乗った方が安いし」
「あっそ。じゃ居れば」
素直じゃねーなぁ。亜弥ちゃんはこいつのどこがいいんだぁ?
「あ、亜弥ちゃんに連絡しないと」
「あぁ。梨華に連絡したけど繋がらないんだよねぇ、もちろん亜弥ちゃんも」
「・・・・・なんでおめぇ亜弥ちゃんの番号知ってんだよ」
「はぁ??そこ気になったの?普通繋がらないってとこ気にならない?」
「あ・・・・・なんで繋がらないの」
「それが分かったら苦労しないんだけどねぇ」
- 140 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:26
-
病院内はザワザワしているのに、
俺らのところだけ静かでゆっくり時間が流れている気がした。
その後は特に会話もせず、美貴の検査が終わるのを待っていた。
でもやっぱり2人のことが気になる。
美貴がボコボコにされるのは分かっているはずだ。じゃなきゃあんなメール来ない。
それを知った2人はどうするか。とりあえず偉い人のところへ行くだろう。
でもあの松浦亜弥だ。何を言われても別れないと言っているはず・・・・・
「大丈夫かなぁ」
「何が?」
「おわっ!ビックリした」
色々考えているうちに美貴の検査が終わったらしい。
「いや、梨華と亜弥ちゃんのことが気になって」
「う〜ん・・・とりあえず家に戻ろう」
- 141 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:27
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「ただいま〜」
「はい、おかえり〜」
タクシーに乗って美貴が言った行き先は俺の家。別にいいんだけどね。
「殴られたら腹減ったなぁ」
「痛いんじゃないのかよ」
「減った」
本当は体中が痛いはずなのに、そんな素振りを一切見せずに笑っている美貴は凄い。
強いなぁ。とことん弱さを見せない男だ。
「なぁ美貴。亜弥ちゃんに連絡してみてよ」
「えぇ?」
「だって繋がらないの心配じゃね?」
携帯を持って少し考えてから、操作せずに机の上に置いた。
- 142 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:27
-
「大丈夫だよ・・・・・亜弥ちゃんだも」
亜弥ちゃんなら自分でどうにかする。そんな顔だった。
「それより梨華ちゃんが心配なら、メールでもしておけばいいじゃん」
あ、そっか。美貴のこともメールで伝えて、連絡くれって言えばいいんだ。
「美貴、頭いいな」
「普通分かるだろ。頭わりぃな」
「うっせぇ」
そんな軽口を叩きながら、美貴がここに居ることと、
今日あったことについて話がしたいと言うこと打った。
- 143 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:27
-
また沈黙の時間が流れる。
正直今回のことは非常に怖いことだ。
殴られた当人は相当なダメージを受けているはず。
「・・・・・大丈夫か?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・俺今さ・・・・」
「ん?」
「1人になりたくないんだよね・・・・・」
これが本音だと思う。あれだけボコボコにされて、平気なわけがない。
「怖くてさ・・・またいつあいつらが現れるかもしれないと思うと・・・・
1人で居るの嫌なんだよね」
「・・・・・そっか」
「ごめんな、迷惑かけて」
「なんだよ今更。今までのほうがよっぽど迷惑」
美貴は笑っていたけど、心の中は傷ついている。
亜弥ちゃんしか、癒せないんだよなぁって、強く思った。
- 144 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:27
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「うぅ、ぐっ、ひくっひっ、うぅ、はぁ」
「亜弥ちゃん」
「たーん」
私は今事務所の個室に亜弥ちゃんと2人で居る。
亜弥ちゃんは泣き止むことがなく、ずっと美貴ちゃんを呼んでいた。
「大丈夫だから。美貴ちゃんだもん。よっちゃんにメールもしたし」
「そっんなこ、と言ってもっ、ひくっ、たーん」
泣き止む気配はない。
私達が呼び出されたのはお昼を過ぎたぐらいのこと。
私が個室に入ると、すでに亜弥ちゃんがそこには居た。
- 145 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:28
-
========================================
「おぅ、ご苦労さん」
「どうしたんですか?いきなり呼び出しなんて」
ご苦労さんと言ったのは事務所の社長、寺田さん。
私達を育ててくれた恩人。今この仕事しているのもこの人のおかげ。
「お2人さん、プライベートもよう楽しんでるそうやないの」
それは明らかに彼のことを指していた。
「えぇ。楽しんでますよ?1人の女ですから」
ズバッと言ったのは亜弥ちゃん。怖いもの知らずもいいところね。
私は亜弥ちゃんの押されて何も言えなかった。
- 146 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:28
-
「自分の立場わかってんのんか?アイドルやぞ」
「アイドルです。でも1人の女でもあります」
「自分中心に物事進める気か。ワガママに育ったもんやな」
社長の声が段々と荒々しくなる。
それでも亜弥ちゃんは負けずに自分を押し通す。
「好きな人が出来て、一緒に居るのがそんなにダメなんですか?
私ぐらいの年齢なら誰でもそうですよ」
「せやから立場を考えろって言うとるやろ。今スキャンダルになってみぃ。
大ダメージや。俺はな、お前らだけに金やってるとちゃうねん。
社員全員の生活を背負ってんねんぞ」
社長の言っていることはよく分かる。
アイドルの亜弥ちゃんに彼氏が居たとなると、離れていくファンの人も居るはず。
その分いろんな面で収入がなくなる。仕事も変わってくるかもしれない。
- 147 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:28
-
「だからって私の自由を奪うんですか?
私は彼が大好きなんです。彼が居るからこの仕事だって頑張れる」
亜弥ちゃんの言ってることもよく分かる。私も彼が居るから。
大好きな人と会えると思うと仕事を頑張ろうって張り切っちゃう。
今までだって普通に頑張ってきたんだけど、それ以上に。
ほら、よく言うじゃない。彼氏がいたほうが女は綺麗になるって。
「自由を奪うって・・・・せやったらお前は俺らの生活を奪うねんな」
その言葉に一瞬詰まってしまう。私達だけの問題じゃない。
社員の人とその家族にも迷惑が掛かることになる。生活が変わってしまう。
自分の主張ばっかりしていたら・・・・・ダメなのかもしれない。
「バレなきゃいいんですよね?」
「アホか!もうバレとるわ。あんだけ遊び歩いておいて」
「・・・・・でも私は別れません」
- 148 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:28
-
「そうやって言ってられるのも今のうちや」
吐き捨てるように社長が言った。なんか、凄く嫌な予感がする。
「どういうことですか?」
しばらく黙っていたけど、気になって言葉を発した。
社長は驚いた顔でこっちを見た。
「・・・・・いたんか」
そりゃ居るでしょう。呼び出しておいてそれはないわよ。
「どういうことも何も・・・・・そいつを潰せばいいだけやろ。
居なくなればええねん」
その言葉で体中に電流が走った気がした。
潰すってどういうこと?居なくなるってどういうこと?
- 149 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:29
-
「ちょっと!!たんに何するの!?」
亜弥ちゃんが凄い剣幕で怒鳴りだした。
「たん?藤本のことか?・・・・・今ごろ形なくなってんのとちゃうか?」
2人とも目を見開き、亜弥ちゃんは泣き出した。
私は訳も分からずよっちゃんにメールを打った。
「なんで!?何したのよぉ!!たん、たん」
「いくら男でもな、殺されると思ったら別れるって言うはずや。残念やったな」
酷すぎる。2人はただ好き同士で、運命の人だっただけなのに・・・・・
「お前らあっちの部屋で存分に泣いてきたらええやん」
そう言われ、亜弥ちゃんは社長の顔を見たくないとばかりに飛び出していった。
私も後をおいかけた。
========================================
- 150 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:29
-
そんなことがあり、今はこの状態。
よっちゃんと連絡が取りたいけど携帯は向こうの部屋に置いてきちゃった。
「ふぅ〜」
「落ち着いた?」
「うん・・・・・こんなとこで泣いているより、たんを捜さなきゃ」
「そうだね」
さっき居た部屋に戻り、携帯を確認すると、よっちゃんから着信がたくさん来ていた。
その他にメールが一件。
『そっちは大丈夫?美貴は無事に保護しました。今俺の家に居る。
亜弥ちゃんが居るなら来て欲しい。会いたがってる。』
「亜弥ちゃん!美貴ちゃん、よっちゃんの家に居るって」
「本当に!?行こ!早く!」
亜弥ちゃんはカバンを引っつかんで部屋を飛び出した。
- 151 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:30
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
――――――――― ピーンポーン
「お?誰だ?」
チャイムが鳴ったのでドアを開けると、
亜弥ちゃんが何も言わずに居間の方へ走っていった。
「おぃ」
俺が後を追いかけると、ソファーに座っていた美貴を優しく抱きしめていた。
「たーん。ゴメンね、痛かったでしょ?本当にゴメンね」
「なんも。亜弥ちゃんが悪いわけじゃないよ。あいつらが悪いだけ」
「ゴメンね、ゴメンね」
亜弥ちゃんは何度も謝る。その亜弥ちゃんの頭を美貴が優しく撫でる。
胸がギュッと締め付けられた。当人同士は何もかも。全て分かっている。
それでもそこには大きな壁があり、乗り越えることは難しい。
- 152 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:30
-
「よっちゃん」
「ん?」
振り向けばそこには愛しい人が立っている。
「ありがとう」
「いや、俺は別に何もしてないから。タクシー拾ったぐらいかな」
「フフ」
梨華の笑顔にまた違った意味で胸が締め付けられる。
カワイイなぁ・・・・ん?でも待てよ。俺にもこういう場面が訪れるかもしれないのか。
「梨華ぁ」
「んん?」
「・・・・・俺についてきてくれな」
「・・・・・フフ・・・・」
梨華はまた優しく笑った。
でも「ついてきてくれ」に対する答えは聞くことが出来なかった。
- 153 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:30
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
その夜、男と女は別々の家で寝た。
亜弥ちゃんは離れたくないって言ってたけど、美貴は怪我してるし、
ゆっくり寝かせてあげたいと思ったから無理やり梨華に連れて行ってもらった。
「はぁ」
「どした、ため息なんてついて」
「いや、動物園行けないだろうなって思って」
「そうだなぁ、無理はダメだな」
本当に行きたがってからな、亜弥ちゃん。それを近くで見ていた美貴だも。
やっぱりショックはデカイですよね。彼女の嬉しい顔は誰でも見たいわけで・・・
- 154 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:31
-
「よっちゃん、俺さ」
「ん?」
「北海道に行こうかと思うんだよね」
「はぁ?北海道?」
「うん・・・・・じじばば向こうに居るしさ、なんかのどかでいいかなって」
「うぇ?向こうで就職探すってこと?」
「そう」
美貴の突然の発言に心底驚いた。
だってそんな話・・・・一度もしたことなかったじゃん。
でもやっぱり気になるのは亜弥ちゃんのこと。
「亜弥ちゃんどうするんだよ」
「ん?・・・・・連れてくよ」
「連れてくって、仕事どうするんだよ」
「・・・・・そうだなぁ」
「そうだなぁって」
- 155 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:31
-
考えているのか考えていないのか分からないけど、きっと考えているはずだ。
「俺思ったんだよね、今回のことで」
「何を?」
「あの事務所に居ても、亜弥ちゃん幸せになれないじゃん」
美貴はきっぱりと言い切った。
確かに美貴をボコボコにするような事務所じゃこの先が心配だ。
「何つーかさ、俺なら・・・・・絶対亜弥ちゃん幸せに出来るんだよね」
そう言った美貴は、メチャクチャカッコ良かった。
「今より収入が減ってさ、普通の暮らしになるかもしれないけど・・・・・
俺は幸せにする自信がある。自信過剰かな?」
自信過剰なわけじゃない。亜弥ちゃんの顔を見れば、どっちが幸せかすぐに分かる。
「カッコいいな、お前」
「今頃気付いたのかよ」
- 156 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:31
-
****************************************
亜弥ちゃんはすぐにそのことを事務所に報告。芸能界を引退することになる。
それでも彼女は凄く幸せそうだった。
あれだけ美貴をボコボコにした事務所も、
全く折れない2人と接するのが疲れたのだろう。
それと、まだ人の心が残っていたのかもしれない。
2人の深い愛に、心動かされたのだと思いたい。
「良かったよなぁ。でも北海道かよ」
「なに?寂しいの?」
「いんや」
「即答するなよ。少しは考えろ」
ずっと近くに居た幼馴染が遠くに行くのは、やはり寂しいものがある。
でも2人の幸せを願わずにはいられない。
「もう少し先のことだから。亜弥ちゃんの仕事が落ち着いたらね」
- 157 名前:together 投稿日:2007/05/19(土) 11:32
-
仕事をきっちり終わらせてから北海道へ。
これは2人が決めた絶対条件。
「よっちゃんも覚悟しておいた方がいいよ?」
「もう出来てますよ。美貴のあの顔見たらさ」
「はは。そんときは写メ送ってな」
「嫌だよ」
こんなバカ話も出来なくなるんだなぁとしみじみ思った。
でももう人のことを心配していられなくなる。
覚悟していた所とは違う方向からバクダンが振ってくることに・・・・
つづく
- 158 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/19(土) 22:44
- ち、違う方向からの爆弾!!
メッチャ続きが気になるぅー。
- 159 名前:名無し 投稿日:2007/06/03(日) 22:25
-
>>158
はい、爆弾入りま〜す
- 160 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:26
-
『今日も遅くなりそうだから・・・また今度ね。』
最近こんなメールばっかりだ。
梨華には一週間近く会っていない。隣の部屋なんだから会おうと思えば会えるはず。
だけど最近は避けられているような気がする。だから俺も無理には言わない。
こんなことになっている原因はわかっている。今回の事件のことだ。
美貴と亜弥ちゃんだけのことではなく、梨華にもダメージを与えている。
「梨華ぁ」
会えない時間と比例して、不安な気持ちでいっぱいになる。
今までなら梨華の気持ちが手に取るようにわかったのに、
今は何を考え、思っているのかもわからない。
- 161 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:26
-
****************************************
「ハリウッド!?・・・・ですか」
「おぅ。そうや。大きな仕事来たやろ」
「・・・・・・・・」
「なんや?嬉しくないんか?お前の実力が認められたっちゅーことや」
事務所のいつも会議室。
新しい仕事と言われて出されたのは、大舞台ハリウッド映画の出演依頼だった。
信じられなくて何度も資料を見るけれど、しっかり自分の名前が書かれている。
嘘じゃない。あのハリウッド映画の出演依頼。
「返事はOKっちゅうことでしてあるから。こっちの仕事も気ぃ抜かんようにな」
「・・・・・はい・・・」
「元気ないなぁ。大仕事過ぎてビビってんのか?」
「・・・・・嬉しいんですけど・・・信じられなくて」
「ほんまのことや。お前には期待しとんねん。俺も事務所のみんなも」
- 162 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:27
-
この仕事の大きさはいわれなくてもわかってる。
きっと今までで一番大きな仕事。
色んな映画やドラマに出てきたけど、外人と競演したことはないし。
第一、 私英語話せないじゃない。
「私、英語話せないんですけど」
「日本語での出演や。さすがに短時間で英語ペラペラは無理やろ」
「でも・・・・・」
「なんやねん。やりたくないんか」
そんなことはない。こんなよい仕事、次は無いかもしれないし・・・・
ただ・・・・凄く不安。知らない土地で知らない人との慣れない撮影。
「向こうで撮影ですよね?どれくらいですか?」
「3ヶ月ぐらいちゃうの?たいしたことないやろ」
- 163 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:27
-
3ヶ月。短いようで長いようで。
その人の気の持ちようによるんだろうけど、今の私には長いと思える3ヶ月。
よっちゃんに会えない3ヶ月。
今でも全然会ってないし、会っても何だか微妙な空気。
3ヶ月会わないのもそれはそれでいいのかもしれない。
よっちゃんも就職活動で忙しくなるだろうし・・・
「先に言っておくけど・・・・」
「なんですか?」
「俺らを裏切ることだけはしないどいてな」
「どういう意味ですか?」
「スキャンダルや。変な写真撮られてこの仕事パァになったら、
俺らは全員路頭に迷うことになるやろな」
「・・・・・・・・・・・・・」
「松浦のせいでかなりの大損害や。みんな給料削減。こっちはのん気にしてられへんねん」
- 164 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:27
-
もうやるしかない。
自分勝手な感情で周りに迷惑をかけるわけにもいかないし。
こんなに良い仕事もらえてるんだもん。こんなに期待してくれてるんだもん。
・・・・・・もう、ケジメつけなきゃいけないよね。
「しっかり頑張ります」
「おぅ、頼むで。あっちでたくさん磨かれてこいや」
「はい」
小さい頃から憧れていた女優になれて。
素敵な仕事をやらせてもらって。
本当に周りのみんなに支えられてきたから。
この恩返しできるのは、私が成長すること。
頑張らなくちゃ。
- 165 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:28
-
****************************************
『今日会いたいんだけど、家にいる??』
このメールが来たのは昼過ぎ。
学校に居たけど、夜には家に居る予定だったから、『OK』と返した。
でもこのメールを見たとき、俺の心がいきなり暴れ始めた。
何か起きそうな・・・そんなことを予感したかのようにドキドキしていた。
「何日ぶりかな」
会ってもそこまで会話が弾まずモヤモヤしたものが2人の中にあった。
今日はそれを打開しようといろんなネタを考えてある。
会話が止まらないように、ずっと話していようとしていた。
「遅いなぁ・・・」
約束の時間は19時。
もう20時を回っていた。
- 166 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:28
-
――――― ピーンポーン
チャイムが鳴り、インターホンを見るとそこには梨華が写っていた。
そのまま玄関に行き鍵を開ける。
ドアを開けると、俯いたままの梨華がいた。
「お疲れ、どうぞ」
軽く頷き中へと入る。
なんだか様子が変だ。
咄嗟に嫌な予感が頭を過ぎった。
それだけは・・・・・・絶対に嫌だ。
- 167 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:28
-
「今日は早く終わったんだね。最近忙しそうだし」
「約束の時間は1時間以上も過ぎてるけどね」
確かに過ぎてるけど・・・
そんなこと今までだって何回もあったし。そんなこといちいち言う仲でもないし。
トゲのある彼女の言葉に少しびっくりした。
やっぱりいつもと違う。
「あのね」
「ん?」
「今日は話があってきたの」
話。それは明らかに良くない話だろうと想像はついた。
彼女の態度。それから言って、最悪な話になりそうだ。
- 168 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:28
-
「あたしね、ハリウッド映画に出ることになったの」
彼女の一声に少し安心する。予想していたこととは違う言葉だったから。
「え?マジ?すげーじゃん」
「うん・・・・・凄いことだよね」
凄い話をしているのに浮かない顔。
必ず裏に何かある。女優・石川梨華としては良いこと。でも・・・
「撮影とかっていつから?結構長くなるの?」
「撮影は1ヶ月後。期間は3ヶ月」
3ヶ月。短いようで長い。少なくとも今の俺にはそう感じる。
「じゃあしばらく会えなくなるんだね・・・・
でも帰ってくるんだし、問題ないか」
俺はワザとに笑ってみせる。
そうでもしないと、今の梨華の雰囲気に飲み込まれそうだから・・・
- 169 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:29
-
「よっちゃん」
「俺待てるよ。全然。3ヶ月なんて、すぐだよ。すぐ」
何か言いたげな彼女の顔を見ながら、また愛想笑いをする。
こんなことしても、彼女にはすべてわかられているはず。
「あのね」
「どこで撮影するんだろうね。ニューヨークとか?
帰ってきたらニューヨーカーだよ、ニューヨーカー」
彼女に話をさせないとばかりに俺は喋る。彼女の口が開くのが怖かった。
「だから」
「どんな人と競演すんの?ジョニーとか?
メッチャ綺麗な人とか」
「よっちゃん!!いい加減に話し聞いて!!」
キーンとする高い声で彼女は叫んだ。
俺は黙るしかない。これ以上の悪あがきは意味がない。
- 170 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:29
-
「お願いだから聞いて。大事な話なの」
今まで見たことのないくらい真剣な目をして俺を見ている。俺も目が離せなくなった。
「この仕事ね、本当に凄い仕事だと思うの」
「うん、そうだね」
「私の力だけじゃなく、周りの人の力があってここまでこれた」
「そりゃそうだ。梨華も凄いけどね」
「・・・ありがと・・・私ね、この人達を裏切れない・・・」
「そんなこと・・・しないでしょ?」
「・・・・これが・・・裏切りに繋がるかもしれないの」
「これ・・・・って」
「よっちゃんと付き合ってることが・・・」
「・・・・・・・・・・」
梨華を見たまま声が出なくなった。
俺と居ることが周りの人達への裏切り?わからない・・・・・
- 171 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:29
-
「今私にスキャンダルはダメなの」
「・・・・・・」
「問題が起きたら今の仕事は無しになる」
「でも・・・・アイドルってわけじゃ・・・」
彼女は首を横に振る。
心臓がはちきれそうなぐらいドキドキしていた。
「もう・・・・・別れるしかないの」
まさかこんなことになるとは思わなかった。
いつまでも、彼女と一緒に居られると思ってた。
今は無理でも、いつか彼女と結婚して、子供も生まれて、必ず幸せな家庭になると・・・
信じていたのに・・・
事務所に殴られる覚悟は出来ていたし。
なのに・・・・こんな・・・・・
- 172 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:30
-
「俺、バレないようにするからさ。ほんと。3ヶ月なんて余裕で待てるし」
「・・・・・ダメ」
「なんでだよ。別れること・・・ないじゃん」
「私の仕事の邪魔しないで。お願いだから別れて」
梨華は凄く冷静に、ジッと俺の目を見てそう言った。
俺はもう泣きそうだ。
彼女の優しさが好きで。声が好きで。
笑った顔も、怒った顔も、泣きそうな顔も・・・俺は彼女の全てが好きだ。
彼女を好きになって、こんなにも苦しい思いをするなんて。
邪魔は出来ない。彼女には彼女の人生がある。俺の勝手な感情で壊せない。
もっと俺が立派だったら。金持ちだったら。大人だったら。
きっと無理やりでも彼女を連れ去って外国にでも行くのに。
金も仕事もない学生。胸を張って彼女に会えない男。
《俺について来い》なんて、言えるわけがない。
- 173 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:30
-
「わかった」
俺は彼女の目を見てはっきりとそう言った。
彼女の目が少し潤んだ気がした。
「ありがと」
そう言って少し俯いてしまった彼女の近くにいく。
最後だから・・・・これぐらいしてもいいよね・・・・・
小さく俯いている彼女を、そっと抱きしめる。
一瞬ビクッとなったけど、彼女はそのまま俺に身を預けた。
彼女の手が俺の背中に回る。それを確認して、気持ちいっぱいに抱きしめた。
- 174 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:30
-
「俺は石川梨華が大好きだ」
梨華の手に力が入ったのがわかった。
- 175 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:31
-
「もう、こんなに人を愛することはない」
梨華の額が俺の肩にグッと押し付けられる。
- 176 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:31
-
「いつでも戻って来い」
梨華が少し頷いた気がした。
スーッと額が離れ、背中に回された腕が離れる。
ギューっと胸が締め付けられ、一気に寂しさが押し寄せてくる。
- 177 名前:together 投稿日:2007/06/03(日) 22:32
-
少し顔上げて梨華は俺を見ている。
その瞳は潤んでいて、でもキラキラ輝いていた。
まさに、天使の瞳。
梨華の顔が近づいてきて、その瞳に吸い込まれそうになる。
目を閉じると、唇に・・・・本当に軽く唇が触れた。
目を開けるともう梨華は居なくて・・・・・
最後に天使が贈り物をくれたようだった・・・・・
つづく
- 178 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/04(月) 12:37
- うわ
これすごい文体ですね
- 179 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/04(月) 23:08
- まさに爆弾ですね。
二人の気持ちが切なすぎて読んでて涙が止まりませんでした。
よっちゃん、待っててあげてイツノヒカ・・・。
- 180 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/05(火) 18:59
- な、涙で画面が見えない…
- 181 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:05
-
>>178:名無飼育さん
読んでくださってありがとうございます。
>>179:名無飼育さん
涙していただき、ありがたい限りです。よっちゃんは、、、そういう人です。
>>180:名無飼育さん
こんな文章でも泣いていただけるなんて、こちらが感動で涙でそうです。
- 182 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:06
-
最終話です。
- 183 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:07
-
梨華と別れてから早くも3ヶ月が経った。
あの日のことは昨日のように思い出される。
忘れなきゃいけないんだろうけど、唇にはまだ残っている。
「にぃ。就活してるの?」
「いや」
「大丈夫なの?もう8月だけど」
「んなことお前が心配するな。俺は何とかなるんだよ」
のぞみは元気のない俺を見て、何かと気にかけてくれる。
就活は別れてから全くしていない。する気がおきない。
もう本当に魂を抜かれたようだ。
きっぱり諦めなきゃいけないと思うけど、どっかでまだ期待している。
- 184 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:07
-
会ってはいないけど、いろんなところから梨華の情報は入ってくる。
まだ隣に住んでいるみたいだけど、偶然会うことはない。のぞみは会ったみたいだけど。
今は映画の撮影のため外国にいる。
これは亜弥ちゃん情報。向こうでも相当苦労しているみたいだ。
しっかし・・・ハリウッド女優って。
全く手の届かない、遠くへ遠くへ行ってしまったみたいだな。
「にぃ!にぃってば!!」
「お、おぅ?」
「だから、携帯鳴ってる!」
「あ?あぉ、ありがと」
「もう・・・しっかりしてよ」
まさかのぞみに怒られる日が来るとはな・・・・・
- 185 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:07
-
「はい」
『あ、よっちゃん?生きてる?』
「えぇ、生きてますよ」
『暇だよね?ちょいさ、旅行行かない?』
「いやいや。暇だって決め付けるな」
『はいはい。ね?行こうよ。学生最後の夏休み。就職決まってないけどいいっしょ?
どうせ就活する気ないんだし』
「・・・・・。どこ行くんだよ」
『まぁ、、、ちょっとそこまで』
- 186 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:08
-
****************************************
「はは」
美貴の誘いを受け入れて旅行へ行くことにした。
『ちょっとそこまで』って言うぐらいだから、近場の温泉でも行くのかと思ったら・・・
- 187 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:08
-
「ここって日本じゃありませんよね?」
「えぇえぇ、ここは日本ではありませんよ」
「ここはオーストラリアですよ」
「オーストラリアって外国のオーストラリアですよね?」
「日本にオーストラリアはありませんよ」
「外国にあるオーストラリアですよ」
そう。ここは外国にあるオーストラリア。『ちょいと近場』のオーストラリア。
「いやぁ、それにしても気持ちいいね、亜弥ちゃん」
「ねぇ!来て良かったぁ」
そしてなぜか亜弥ちゃんもいる。俺だけ場違いな気がするのですが・・・
「つーか、2人で来れば良かったじゃん。なんで俺も?」
「はぁ」と美貴はため息をついた。
俺を誘ってくれた理由はなんとなく分かっている。
ここ何ヶ月かの俺を見兼ねて、気分転換にでもと思ったのだろう。
- 188 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:08
-
「ま、ありがと」
「なんだよ、意外と素直じゃねーか」
「うっせ」
「とりあえず、動物見にいこ、たん」
「そうだねぇ。そのために来たんだし」
動物って・・・あの計画ダメになっちゃったからなぁ。
遊園地とか行きたいって言ってたし、来れて良かった。
ただ俺の隣に彼女がいないのが、、、寂しいな・・・
「あ、よっちゃんも来たかったら来てもいいよ?
ホテル戻っててもいいし」
「いや、せっかくだから行く。幸せな奴の邪魔をしてやりたい気分だ」
「ははは。どんなことしても邪魔にはならないと思うけどね」
「そうだ。よっちゃん1人部屋だから。俺ら2人部屋だけど」
ニヤニヤして言う美貴に心底ムカついた。
ちきしょう。ここで女の1人や2人、捕まえてやる。
んでもって部屋に連れ込んであいつに自慢してやる。
- 189 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:09
-
****************************************
「楽しかったねぇ」
「ねぇ」
「あー疲れた」
ずっと2人に合わせて歩き回っていた俺は、さすがにヘトヘトだった。
3ヶ月引きこもり状態だったからな。体力落ちてるわ。
こんな顔してたら、梨華に「しゃきっとしなさい!」って言われるんだろうな。
はぁ。
「さて、夕食にしましょう」
「んだなー、俺腹ペコペコりんだよ」
「「・・・・・・・・」」
「・・・・・なんだよ」
「お前、いっつもそんなこと言ってたの?」
「え?」
「そりゃ梨華ちゃんも嫌になるわな」
「うっせーよ」
「あははぁ。でもそんなとこが好きだったんだと思うけどね、梨華ちゃんは」
- 190 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:09
-
『好きだった』・・・過去形なのが何とも悲しい。
亜弥ちゃんは梨華の気持ちを色々知っているんだろう。
俺が会っていない間の梨華のことも知っているはず。
今何をしているのかも、何を考えているのかも、だいたい分かるはず。
「梨華は元気?」
「ん?あ、うん。元気みたいだよ」
「そっか」
「何?よっちゃんまだ好きなの?」
「悪いかよ」
「お、開き直りやがった」
美貴に何を言われようが俺はずっと梨華が好きだ。
もう振り向いてもらえなくとも、笑顔を近くで見れなくても、俺は好きだ。
「でもね、向こうの仕事は大変みたいよ?」
「そうなんだ」
「まず、言葉が通じないでしょ?だから求められている演技をなかなか出来ないんだって」
「へぇ。やっぱ女優って大変なんだな」
「そうだよぉ、たん。アイドルなんかよりも数倍大変」
- 191 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:09
-
前までの俺なら、そんな大変な仕事でも支えてあげられたかもな。
今の俺はどうしようもない、ダラしのない男だから支えるも何もないけど。
彼女が大変なとき、辛いとき、ずっと側にいるって言ったんだけどな・・・・・
そんなこと考えてばっかりいても無駄だし、この旅行を楽しまなきゃね。
「ま、やりきるでしょ、あいつなら」
「まぁね。でも支えてくれる人が居たほうが頑張れるだろうね」
「そうだなぁ。支えてくれる人がな」
なんなんだよ、2人のその目線は。
俺はフラれたんだぞ。一緒に居たいと思っても、向こうにその気がなきゃ無理だろ。
「んだよ、その目は」
「「別に〜」」
意味ありげじゃねーか!!
- 192 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:10
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
俺らはそんな話をしながら夕食を済ませ、ホテルに戻った。
あいつらはもう外へは出てこないだろう。
部屋に居ても言葉の分からないテレビしかやっていない。本も全て読めない。
ただただ無駄な時間が過ぎていくのが嫌だ。ここで変わりたい。
「散歩でもしてこよ」
ここは何ていう街が知らないけど、このホテルの近くには海がある。
入り口を出たらすぐ目の前にキラキラと光る海が広がっている。
月明かりに照らされて、何とも輝いて見える。
「梨華の目みたいだな」
- 193 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:10
-
道路を越えて、海岸沿いを少し眺める。
ポツリポツリとカップルの姿が見えるだけで、人はほとんど居なかった。
「結構落ち着けていいよなぁ」
半ば無理やり連れてこられたオーストラリアだったけど、今は有難く思う。
こんな綺麗な海を見ていると、今までのモヤモヤが飛んでいきそうだ。
これまでの人生を見直せる。心が洗われる。
楽しかったことを綺麗な思い出に出きる。
大きく息を吸って目を閉じ、息を吐きながら目を開けた。
やっぱり変わらないキラキラした海。
ふと、視界の右に1人でポツリと居る髪の長い女の人が入ってきた。
自然とその人に目が奪われる。
俺も大概女好きなだな、と自嘲した。
- 194 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:10
-
まっすぐ前を向いていた女の人が、少しだけ横を向いた。
その瞬間俺の心拍が早まる。驚きすぎて声も出ない。
ただただその人を見つめていた。
どんどん上がっていく心拍数。今にも動き出しそうな足。
そこに居たのは紛れもなく、俺が今一番会いたいけど、会いたくない人。
ジッと見ていたら、目からキラリと光るものが落ちた。
誰が見ても気付く・・・・・
彼女は涙を流していた。
その涙を見た俺の足は、自然と彼女へと向っていた。
- 195 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:10
-
「・・・・・梨華」
俺は彼女の隣に行き、座っている彼女の横にしゃがみこんだ。
ゆっくりと振り向き、俺の顔を見た瞬間、彼女の目が大きく開いた。
そしてそこからは大粒の涙が溢れ出している。
声を発さず、感情に任せて抱きついてきた。
グッと、崩れないように何かに掴まるように・・・・・
その状態のまま大きな声で泣き出した。それはまるで子供のよう。
今まで我慢していたであろう涙が一気に溢れ出たようだった。
なぜ彼女がここにいるのか。なぜ泣いているのか。
そんなことは何一つ分からない。
今の俺にできることは、彼女を抱きしめてやることだけだ。
- 196 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:11
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
いいだけ大きな声で泣いた彼女の呼吸が収まり、恥ずかしそうに俺から身体を離した。
「大丈夫?」
「・・・・・・・・」
「まだ泣く?」
首を横に振る。
「そっか」
2人の間に沈黙の時間が流れる。
まさかこんなところでこんな形で会うなんて思わなかった。
それは梨華も同じだろう。
いつか会うことはあると思っていたが、ちょっといきなり過ぎた。心の準備が。
「どうしてここにいるの?」
先に口を開いたのは梨華の方だった。
- 197 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:11
-
「ん?旅行」
「旅行?」
「そう。美貴と亜弥ちゃんが夏休み最後だから旅行に行こうって」
「・・・・・そう」
3か月ぶりに会った梨華は、何だか疲れているように感じた。
そりゃこっちに来て忙しいんだろうけど、それだけじゃなく、全てに疲れているようだ。
でも、久しぶりに会っても変わらない声と横顔にちょっとだけ安心した。
一番みたい、笑顔はまだ見れていないけど。
「でもまさかこんなところで会うとはね」
「きっと亜弥ちゃんが仕組んだことだろうね。
あそこのホテルに泊まってるでしょ」
「ん、そう。まさかあのホテル?」
「うん」
- 198 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:11
-
ただ遊びに来ただけかと思っていたけど、ちゃんと考えてくれてたんだ。
まぁ亜弥ちゃんもこんなところで俺らが会うなんて予想してなかっただろうけど。
「どう?お仕事の方は」
「・・・・・・うん、まぁまぁかな」
梨華は「まぁまぁ」と言っているけれど、凄く大変で、不安なのが伝わってきた。
仕事を見ても、うまくいっているかどうかは俺には分からないことだけど、
彼女のちょっとした変化を見ると、調子が良いか悪いか分かってしまう。
「俺なんてさ、就活全然してないよ。この前のんに怒られちまった」
「えぇ?のんちゃんに怒られたのぉ?」
「そう。『いい加減に就活しろ!』みたいな感じで」
「あはは。立場逆転じゃん」
「昔から立場は弱かったけど、最近完全に下になったね」
お互いが知っている話題で他愛の無い会話をする。それだけで幸せな時間だと思えた。
話をしているうちに、彼女にも笑顔が戻ってきた。俺も一緒に笑顔になる。
でもやっぱり、これからの彼女のことが心配だ。このまま笑っていられるだろうか。
- 199 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:12
-
「その笑顔」
「ん?」
「その笑顔、やっぱ好きだわ」
「なぁに急に」
「いや、、、その笑顔が見たい人、きっと他にもたくさん居るんだろうなって思って」
「どうだろ?」
「梨華の笑顔が見たいと思っている人、必ずいると思うんだよね。
だからさ、いつでも笑っててよ。悲しい顔は、みんな見たくないはず」
「・・・・うん」
「悲しい顔はさ、俺だけに見せてくれればいいよ」
また泣きそうな顔で俺の顔を見ている梨華。
「誰にでも辛いときってあるしょ。そういう時さ、俺によっかかれよ。
みんなに笑顔見せておいて、疲れたらここで全部吐き出せ」
今の俺にはそれしかできない。
仕事で大変な彼女にしてあげられるのは、曝け出せる場所を作っておくこと。
安心できる場所で、待っててあげること。
海を見て、そう思った。
昼は太陽に照らされてみんなに見られているけれど、夜は月しか見ていない。
海にだって落ち着ける時間がある。だからあんなにキラキラしていられるんだ。
- 200 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:12
-
「無理すんな。俺にも仕事をくれ」
笑いながら言うと、梨華も笑って「職探しなさい」と言い、目元がキラリと光った。
なんだか凄く、穏やかな気持ちになる。彼女と居るからだろうか。海のせいだろうか。
海で出会う恋人っていうのは、こんな気持ちになってしまうんだろうか。
「なんかよくわかんないけどさ」
「うん?」
「俺には梨華が必要なんだよね」
自然と言葉は出てくる。
- 201 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:12
-
「愛しすぎちゃってんだ。側にいてよ」
心で思っていたことがとめどなく溢れてくる。
- 202 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:13
-
「梨華も俺が居ないとダメっしょ?」
自分だけが必要なようで悔しかったから、ちょっと調子こいてみた。
梨華は微笑んで俯く。すぐに顔を上げて、首を縦に振った。
- 203 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:13
-
****************************************
次の日の朝。
「おっはよ〜」
「お、はよ」
「おはよう」
「よっちゃん、やけに機嫌よくない?」
「そうか?普通だと思うけど」
「もしかして、女連れ込んじゃったりした?」
「はは〜。まぁね」
「マジかよ」とか言いながら美貴は目を丸くしているけれど、
連れ込んだのはお前も知ってる女だよ。
あのあと彼女を離したくなくて、ワガママを言って部屋に泊まってもらった。
「明日の仕事に響くから嫌!」とか言いつつ、しっかりと俺に抱かれた梨華。
今日の仕事にはいい感じで響くんじゃないかな?
いい顔してると思うよ。
- 204 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:14
-
オーストラリア旅行はそれなりに楽しんだ。
最終日の夜。
お互い離れたくない気持ちはあったけど、仕事だからと言い聞かせ、最後の夜を楽しんだ。
「あー楽しかった」
「また来ようね、た〜ん」
「ね〜」
このバカップルには本当に感謝だな。
もう駄目だと思っていた関係だったのに、ここに連れてきてくれたおかげで元に戻れた。
いや、それ以上になったかもしれない。
- 205 名前:together 投稿日:2007/06/06(水) 01:14
-
一回離れて互いの大切さに気付くってよく言うけど、今回は本当にそれを実感した。
近くに居すぎるとそれが当たり前になってしまって、
居なくなっても大丈夫だって思ってしまう。
でもそれは間違っていた。
テレビがなくなるようなもの、携帯がなくなるようなものだ。
楽しみがなくなって、凄く不安になる。
無くても大丈夫だと思っても、いざなくなると焦る。
人間て面倒くさいな。
『頑張れ!日本で待ってる』
短くて味の無いメールだけれど、彼女にとっては凄く安心できるメールのはずだ。
『うん!浮気は駄目よ、待っててね、ダーリン♪』
だってこんなメールでも嬉しいんだから。
終わり
- 206 名前:名無し 投稿日:2007/06/06(水) 01:19
-
長い間お付き合いいただきありがとうございました。
皆さんが読んでくださっていたので、途中で投げ出すことなく終えることができました。
面白くなかった部分もあるかと思います。
ですが、最後まで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。
これからもいしよしが幸せであることを願って応援し続けます。
また会う日まで!!失礼します。
- 207 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/06(水) 09:25
- すばらしい
この世界の中の梨華ちゃんが好きでした
- 208 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/09(土) 10:59
- あー…良かったねぇ4人とも
一旦決断したときのいしよしのやり取りが
誠実で、なんかよかったです
- 209 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/16(土) 00:32
- 完結お疲れ様です。
4人とも幸せになってホント良かったです。
作者さん、また会える日を楽しみにしてます。
- 210 名前:名無し 投稿日:2007/06/16(土) 21:41
-
>>207:名無飼育さん
>>208:名無飼育さん
>>209:名無飼育さん
ご感想ありがとうございます。
これを書いている間に色々あったので、考えることが多々ありました。
私たちを楽しませてくれる彼女たちはたくさんのものと戦っていると思います。
ただ応援することしか出来ないのが悔しくもありますが、
いつまでもハロプロのメンバーを応援して考えています。
読んでいただき本当にありがとうございました。
そして、また新しいものを書いていこうと思います。
今までのように遅い更新になるかもしれませんが、よろしくお願いします。
- 211 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:44
-
ある街に仲の良い3夫婦が住んでいました。
それぞれ隣同士に家を建て、それぞれ子供も授かりました。
ある年の1月19日 『保田家』に女の子が、
2月26日 『中澤家』に男の子が誕生しました。
その年の4月12日 『中澤家』の旦那さんの愛人が男の子を生みました。
次の年の9月14日 『飯田家』に双子の女の子が誕生しました。
その次の年の
10月29日 『保田家』に男の子が誕生しました。
そのまた次の年の
10月20日 『飯田家』に男の子が、
12月23日 『中澤家』に女の子が誕生しました。
そのまたまた次の年の
7月13日 『保田家』に女の子が誕生しました。
中澤家は長男・美 貴、 次男・ひとみ、 長女・絵 里。
保田家は長女・梨 華、 長男・麻 琴、 次女・さゆみ。
飯田家は長女・亜 弥、 次女・ 愛 、 長男・里 沙。
この子供たち9人のお話。
- 212 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:44
-
今日はさゆみちゃんが生まれたお祝いに、中澤家でバーベキュー。
子供たちは大はしゃぎ。親たちは大忙し。
「美貴たん、待って〜〜〜」
「もぅ、来ぅなよ〜」
「梨華ちゃん!梨華ちゃん!梨華ちゃん!梨華ちゃん!」
「なぁに?ひーちゃん?」
「あ〜いちゃん」
「はい」
「たたぁたぁたぁ」
「たたたたぁぁた」
あっちへドドドド、こっちへドドドド。
小さな怪獣たちはなかなか静かになりません。
そんなときは大きな怪獣が登場します
「ええ加減にジッとせぇ!!」
中澤のパパは怖いのです。子供たちは一気に静かになりました。
静かになった子供たちは各々座ってお話をしています。
- 213 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:44
-
「梨華ちゃんは〜大きくなったらひーちゃんのお嫁さんでしょ?」
「うん!ひーちゃんのお嫁さん」
こちらはすっかり良い雰囲気の梨華ちゃんとひとみ君。
ひとみ君は梨華ちゃんが大好きで、どこへ行っても梨華ちゃん梨華ちゃん。
梨華ちゃんもひとみ君のことが大好き。仲がとっても良い2人。
「美貴た〜ん。亜弥は美貴たんのお嫁さんになうぅ」
「しょんなのわかんないよ、勝手に決めないでぇ」
「いいの!亜弥は美貴たんのお嫁さん」
美貴君と亜弥ちゃんはどっちかというと亜弥ちゃんが積極的。
でも美貴君も嫌いではない。ちょっとオマセな美貴君は恥ずかしがり屋なんです。
「でへへ〜」
「あっちに行きたい!!ひーちゃんのところに行きたい!!」
愛ちゃんと麻琴君。実は愛ちゃんはひとみ君のことが好きなんです。
もちろん麻琴君は愛ちゃんのこと好きだから、一度掴まえたら離してくれません。
しかもひとみ君は梨華ちゃんと良い感じなので邪魔も出来ない。
子供ながら迷う、切ない恋心です。
- 214 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:45
-
「本当にうるさい子達なんだから」
「静か過ぎるよりは良いでしょ」
ママたちも子供たちを見ながら楽しそうにお話しています。
「でもさぁ、あの中で本当に結婚しちゃう子とか居るのかな?」
「いるんでない?1カップルぐらいは」
「一番有力なのは、梨華ちゃんとひとみかな」
「あぁ、あそこは生まれたときからあんなだったもんね」
お気楽なママたちはこんなことを話していました。
子供の成長が、何よりも楽しみなんですよね。
「でも美貴君と梨華ちゃんが結婚するかもよぉ」
「あぁぁ、無いとは言えないよねぇ」
「どっちにしても保田家の子が嫁ってことかぁ」
「「「ハハハハハ」」」
ママたちの世間話はいつまでも続くのです。
- 215 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:45
-
****************************************
- 216 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:45
-
毎朝みんなで一緒に幼稚園バスを待ちます。
美貴君と梨華ちゃんは年長さん。ひとみ君は年中さん。亜弥ちゃんと愛ちゃんは年少さん。
麻琴君たちはお留守番です。
幼稚園バスに乗り、幼稚園に向います。
ここまではとても楽しいと思う、ひとみ君と亜弥ちゃん。
この後大好きな人と離れてしまうのです。
「い〜や〜だ〜!梨華ちゃんと一緒がい〜い〜」
「美貴たんと一緒がい〜い〜」
「もういい加減にしなさ〜い、はい、自分の教室に入って〜」
「「い〜や〜だ〜」」
毎朝この繰り返し。2人で嫌だと叫んで美貴君と梨華ちゃんの後を追う。
先生に捕まる。そのまま自分たちの教室へ。
先生たちも日課のような気になってきています。
「しょうがないでしょ、2人の方がお兄さんとお姉さんなんだから」
「なぁ〜んで〜、俺も6才だよぉ」
「でも2人の方がお兄さんお姉さんでしょ?」
「ぶぅぅぅぅぅぅ」
- 217 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:46
-
ひとみ君はどうしても諦められません。
いろんな手を使い、梨華ちゃんの教室に行こうとします。
踊りながら自分の教室の部屋を出て、梨華ちゃんの教室に行ったり、
トイレといって抜け出し教室へ行ったり。あの手この手全て使います。
初めは気付かれずに一緒に居れることが多かったけど、最近では全て見つかります。
先生たちが凄く気をつけてひとみ君の動きを見ているのです。
今日はどうやって抜け出そうか考えているひとみ君。
考えていると隣の子が突然お腹を押さえて蹲りました。
“これだ!!”
「先生!!○○君が変です」
「え?あ、○○君、どうしたの」
「お腹痛い」
「大変。すぐ保健室行かないと」
先生が教室を出て行くのと同時にひとみ君も教室を出ました。
- 218 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:46
-
タタタタタタタタっ
「梨〜華ちゃん、梨〜華ちゃん」
「ひとみく〜ん。どこ行くのかなぁ??」
“ドキっ!この声は斉藤先生”
「トイレ」
「そう・・・・そっちにトイレは無いわよ?」
・・・・・・・・・
ダダダダダダダダダダ
「こら!!待ちなさい!!」
こうして毎日が過ぎていくのです。
- 219 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:46
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
- 220 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:47
-
皆が幼稚園に行っている間、麻琴君はとっても暇なのです。
「パパぁ、幼稚園行きたい」
「もう少ししたらなぁ」
「今がいい」
「だぁめ。大人しくそっちで遊んでろぉ」
保田家のパパは専業主夫。ママはさゆみちゃんを生んですぐに仕事復帰。
だから家にはいつもパパがいるのです。
「行きたい!行きたい行きたい行きたい行きたい!!」
「うるさい!!あっち行ってろ」
麻琴君は大声で怒られて不貞腐れてしまいました。
1人で遊んでも何も楽しくありません。
「パパなんて嫌いだ。意地悪だもん」
そう言いながら麻琴君は外に出てしまいました。
- 221 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:47
-
“そうだ、このまま幼稚園に行こう”
麻琴君は幼稚園に向って歩き出しました。幼稚園はそんなに遠くありません。
一度パパと梨華ちゃんを迎えに行ったから、その道を覚えているのです。
麻琴君は意外と記憶力がいいんです。
小さい子が1人で歩いていると、たくさんの人が振り返ります。
不思議な顔をして見てきますが、麻琴君には関係ありません。
どうしても幼稚園に行きたいのです。
“わっせ、わっせ、わっせ”
何とか幼稚園に着きましたが、門が閉まっていて中には入れません。
麻琴君は疲れて、その門の前に座り込んでしまいました。
ジッと、羨ましそうに中を見ています。
「愛ちゃん、どこにいるのかなぁ?」
- 222 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:47
-
そんな麻琴君に気が付いたのは、
次はどうやって梨華ちゃんのところに行こうか考えていた、ひとみ君でした。
「あ、麻琴だ」
「んん?どうしたの?」
「麻琴居る」
「麻琴?」
先生はひとみ君が指を指している方向を見ました。
門の前に小さい子が1人座っています。
「知ってる子?」
「梨華ちゃんの弟。麻琴」
先生は麻琴君を幼稚園の中に入れ、一緒に遊ばせてあげました。
パパにはものすごく怒られたけど、大満足の麻琴君。
- 223 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/16(土) 21:48
-
こんな子供たち9人のお話。
つづく
- 224 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/17(日) 00:58
- 今回のは、今までの作品の雰囲気と違いますねカワイイ系のも好きです。
梨華ちゃんスキスキビームのひーちゃん可愛すぎw
- 225 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/17(日) 03:23
- 続きが楽しみです!!
- 226 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/17(日) 20:11
- なんか癒されますね〜!!
続きが楽しみです!!(^∀^)
- 227 名前:名無し 投稿日:2007/06/17(日) 23:37
-
>>224:名無飼育さん様
ちょっと違うのも書いてみたくなりました。
1回1回でどんどん成長させていきますのでv(^o^)v
>>225:名無飼育さん様
ありがとうございます。
更新は不定期ですが、よろしくお願いしますm(__)m
>>226:名無飼育さん様
ありがとうございます。
小さい子って可愛いですからねぇ(´О`)
- 228 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:38
-
そんなこんなで美貴君と梨華ちゃんは小学校に入学。
ひとみ君と亜弥ちゃんは2人と離れ離れになってしまいます。
「俺も小学校行く〜」
「亜弥も〜」
幼稚園と小学校は逆方向。どうしても玄関でお別れになってしまいます。
「梨華ちゃ〜ん」
「美貴た〜ん」
2人とも大騒ぎ。ママたちはどうすることも出来ずお手上げ状態。
こんなことが毎日続いてはいけないとあれこれ考える父母の方々。
ここは中澤パパの登場しかない。
- 229 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:38
-
「うっさいわ!いつまで騒いどるんや?」
「だって」
「ひとみ。お前もう年長さんやろ。この中で一番お兄ちゃんとちゃうか?
美貴はどうやった?ちゃんとみんなの面倒見てたやろ。今度はお前の番や」
そう。ひとみ君は年長さんで、この中では一番お兄ちゃんなんです。
今までは美貴君が居たから好き勝手できたけど、今度からは違います。
中澤パパは分かってほしかったのです。
ひとみ君はすぐ上にお兄ちゃんがいることで、自由に育ってきました。
何かあればお兄ちゃんがどうにかしてくれました。甘えん坊です。
そんなひとみ君がしっかりした男になるチャンスなのです。
「頼むぞ、お兄ちゃん。カッコいいぞ、お兄ちゃん」
「カッコいい?」
「おぅ。梨華ちゃんも惚れるだろうなぁ」
- 230 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:38
-
ひとみ君はニヤっとして、梨華ちゃんの方を見ました。
学校に行きたくても行けない梨華ちゃんが不思議そうな顔でこっちを見ています。
“お兄ちゃんはカッコいい、俺カッコいい”
ひとみ君の脳の中は単純に出来ています。
カッコいいと言われれば、その通りにしてしまいます。
だからひとみ君はお兄ちゃんになろうと決めました。
「亜弥ちゃん。幼稚園行くよ」
亜弥ちゃんの手を取って歩き出そうとしています。
「嫌だ〜美貴たんは〜?」
「帰ってきたら遊べるんだよ?一緒に幼稚園行こう?」
亜弥ちゃんは不満そうな顔をしていましたが、
ひとみ君の優しい笑顔に「うん」と頷きました。
- 231 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:39
-
「じゃあね、梨華ちゃん!また後でね!」
ひとみ君が大きく手を振ると、亜弥ちゃんも一緒に手を振りました。
それを見た美貴君と梨華ちゃんも手を振ります。
「うん!後でね、ひーちゃん」
美貴君と梨華ちゃんはランドセルをひとみ君に向けて歩き出しました。
2人がとっても大きく見えます。ひとみ君もすぐにそっちに行きたいと思いました。
でも今はお兄ちゃんです。
「じゃあ幼稚園行こう。麻琴、ちゃんとついてくるんだよ」
「うん!」
麻琴君は念願の幼稚園に行けて、毎日楽しいのです。
「愛ちゃん、手繋ごう?」
麻琴君は可愛く首を傾げて言いました。
- 232 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:39
-
「嫌や」
愛ちゃんは麻琴君ではなくひとみ君と手を繋ぎたいのです。
でも麻琴君はヘラヘラ笑って強引に手を繋ぎました。
いつもはヘタレだけれど、こういう時は積極的な3歳児です。
愛ちゃんもしょうがないなぁって顔で手を繋ぎました。
4人で仲良く幼稚園バスのくる場所へと歩きます。
ひとみ君は一番前を歩き、胸を張っています。お兄ちゃんです。
「もう少しだからね」
幼稚園バスが来るのはすぐそこだけど、ひとみ君は皆に声をかけます。
そんなひとみ君にきちんとついていく3人。
周りで見ている人にしてみれば、微笑ましい光景でした。
- 233 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:39
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
- 234 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:39
-
こちらは小学校へ登校中の美貴君と梨華ちゃん。
梨華ちゃんはお友達が出来るのか、とっても不安でした。
「お友達、出来るかな?」
「大丈夫だよ。すぐ出来る」
「本当に?」
「うん、たぶん」
ネガティブな梨華ちゃんは何でも心配するのです。
でも楽観的な美貴君がいつもその不安を解消してくれます。
「出来なくても俺と一緒に居ればいいじゃん」
「・・・・・そだね」
たちまち梨華ちゃんの不安は消えます。
生まれたときから近くには必ず美貴君がいました。いつも守ってくれました。
だから美貴君が一緒居てくれると思えば安心するのです。
美貴君も頼ってくれることに対して、悪い気はしていません。
梨華ちゃんが頼れるのは美貴君なのです。
- 235 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:40
-
****************************************
- 236 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:40
-
ひとみ君は幼稚園から帰ってくると、家でジッとしています。
梨華ちゃんが帰ってくるのを待っているのです。
「ひー君。おやつは?」
「いらない」
「そんなジッとしてなくても梨華ちゃんは帰ってきますよ」
今日は梨華ちゃんと何をして遊ぼうか考えています。おやつよりもそっちが大事なのです。
「ただいま〜」
ダダダダダダダダダダだダダダダダッ
美貴君が帰ってくると同時にひとみ君は走り出します。
美貴君が帰ってきたということは、梨華ちゃんも帰ってきたことになります。
走って保田家へと向うのです。
一方、美貴君はそんなひとみ君の姿に呆れています。
- 237 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:41
-
「梨〜華〜ちゃ〜〜ん」
「あぁ!ひーちゃん。どうぞ」
梨華ちゃんも嬉しそうにひとみ君を迎え入れます。
玄関から居間までの短い時間でも手を繋ぎます。一時も離れたくないのです。
お兄ちゃんを演じているひとみ君は、梨華ちゃんに甘えたい願望が強いんです。
「お、いらっしゃい。もうすぐホットケーキ焼けるから待ってて」
保田パパはいつもおやつを出してくれます。とっても優しいパパです。
「今日はね、足し算やったんだよ」
「足し算?」
「そう。ひーちゃんももう少し大きくなったら分かるよ」
そんな梨華ちゃんの一言がひとみ君には不満です。
ひとみ君はいつも梨華ちゃんを守ってあげたいと思っています。
でも実際は美貴君が梨華ちゃんを守ってあげて、ひとみ君はそのお手伝いです。
自分が梨華ちゃんより下なのが不満なのです。
- 238 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:42
-
「俺もやる。足し算やる」
「ひーちゃんはまだわかんないよ〜」
「わかるもん」
「わかんない」
「わ〜か〜る〜のぉ」
「わかんないってばぁ」
梨華ちゃんとひとみ君は言い合いになってしまいました。
こういうときは保田パパの出番です。
「ほぉら、喧嘩しないの。梨華が教えてあげればいいだろ」
「うん・・・・・」
梨華ちゃんが浮かない顔をしています。
ひとみ君は梨華ちゃんの笑顔が大好きです。笑っていて欲しいのです。
「もういいや。足し算いい。ホットケーキ食べよう」
「うん!」
梨華ちゃんはすぐに笑顔になりました。
ひとみ君は梨華ちゃんの笑顔が大好きなのです。
- 239 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:42
-
でも毎日遊んでくれるわけではありません。梨華ちゃんは宿題がある日もあるのです。
そんな日のひとみ君は・・・・・
ゴロゴロゴロゴロ・・・・・ゴロゴロゴロゴロ・・・・・
ゴロゴロしながら梨華ちゃんの宿題が終わるのを待ちます。
あっちへゴロゴロ、こっちへゴロゴロ。
梨華ちゃんが気にならないわけがありません。
「ひーちゃん!ゴロゴロしないで!!」
「うっ、、、はい」
怒られる日もあるのです。それでもジッと出来ないのがひとみ君。
あっちへウロウロ、こっちへウロウロ。
「ひーちゃん」
梨華ちゃんは本当に怒っています。そんな時は麻琴君の部屋へ逃げるのです。
- 240 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:42
-
「ま〜こ〜と〜」
「あ、ひー君。これ見て!パパに買ってもらったの!」
麻琴君は買ってもらったばっかりのミニカーをひとみ君に見せます。
2人はミニカーで遊び始めました。ドンドン騒いでいます。
しばらく遊んだ後に、麻琴君が疲れて眠ってしまいました。
ひとみ君は梨華ちゃんの部屋に戻ります。梨華ちゃんはまだ宿題をしていました。
麻琴君と遊んで疲れたのか、ひとみ君は梨華ちゃんのベッドで横になりました。
「ふぅ」
宿題を終えた梨華ちゃんがベッドを見ると、スヤスヤ眠っているひとみ君がいます。
その可愛い寝顔を見て、思わず笑ってしまいます。
「可愛い」
梨華ちゃんはそのままひとみ君の頬にキスをしました。
そんなこととは知らずにひとみ君は梨華ちゃんと遊んでいる夢を見ていました。
- 241 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:42
-
****************************************
- 242 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:43
-
梨華ちゃんにあゆみちゃんというお友達が出来ました。
たまにはあゆみちゃんと家で遊ぶこともあります。ひとみ君とは遊べません。
そんな時ひとみ君は、保田家の庭で麻琴君と愛ちゃんと楽しそうに遊びます。
なぜ保田家なのか?梨華ちゃんが居るからです。
なぜ楽しそうにするのか?梨華ちゃんの気を引くためです。
「麻琴〜いくぞ〜」
「痛いよ〜」
“友達がなんだ!俺と遊んだほうが楽しいのに”
「楽しそうだねぇ」
「いつでもあんな感じだから」
梨華ちゃんは気にしていません。
いつでもあんな風に楽しく遊べるから、今日はあゆみちゃんと遊ぶのです。
お友達は大切なんです。
- 243 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:43
-
そんなこんなで、どんどん小学生になっていく9人の子供たち。
美貴君とひとみ君はサッカーを始めました。
2人は運動神経がいいので、どんどん上達していきます。
梨華ちゃんはお友達と仲良く、買い物に行ったり遊びに行ったりしています。
亜弥ちゃんは相変わらず美貴君を追いかけ、愛ちゃんはバレエを始めました。
麻琴君もサッカーがしたくて練習場の横で一緒に走っています。
- 244 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:43
-
高学年になるにつれて、ひとみ君は梨華ちゃんと居ることが恥ずかしくなってきました。
周りの友達に冷やかされるからです。
「お前いっつもあの人と一緒だよなぁ、好きなんだろ!」
昔はこんなこと言われても、「うん、好き」と言えたけど、今は違うって言ってしまう。
ひとみ君は小学生ながら悩んでいるのです。
それからは梨華ちゃんと一緒に登下校をしなくなりました。
「ひーちゃんはぁ?」
「先に行った?」
「え?なんで?」
「知らない。俺先に行くからって、絵里連れて出て行った」
ひとみ君は冷やかされるのが嫌なのです。
でもいきなり一緒に行かなくなったことで梨華ちゃんは心配します。
「何かあったのかな?」
「いや、気にするな」
「でも・・・・・嫌われたかなぁ」
「その逆だ」
- 245 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:44
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
- 246 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:44
-
それでもひとみ君は梨華ちゃんのことが好きなので、梨華ちゃんに会いに行きます。
学校では素っ気なくしなきゃいけないひとみ君も、
家に帰れば好きなだけ梨華ちゃんと話せて遊べます。
「梨華ちゃ〜ん」
「ちょっと待ってね。もうすぐ終わるから」
梨華ちゃんは真面目なので、帰ってきたらすぐに宿題をやります。
ひとみ君は勉強が嫌いなので後回しです。
「ひーちゃんも一緒に宿題やろうよ」
「いや、勉強はまだいい」
ひとみ君はサッカーが無い日は毎日梨華ちゃんの家に来ます。
梨華ちゃんもサッカーが無い日は家にいるようにしています。
ただ何もせずにお互い好きなことをしていることが多いけど、
2人はそれが心地よかったりするのです。
いつまでたっても仲の良い2人なのです。
- 247 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:44
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
- 248 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:45
-
「美〜貴た〜ん」
「はい〜」
「ね、アイス食べて帰ろ?」
亜弥ちゃんは飯田パパから買い物を頼まれて、お金をもらっていたのです。
「駄目だよ、おつかいのお金でしょ?」
「大丈夫大丈夫。パパ優しいもん」
おつかいのことを知っている愛ちゃんは止めようとします。
パパは娘に甘い。どこの家でも一緒のようです。
「でも・・・ママに怒られるよ?」
「パパに隠しといてもらうも〜ん」
そう言って亜弥ちゃんは3人分のアイスを買いました。
駄目だと止めていた愛ちゃんも、もらってしまえば食べるしかありません。
- 249 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:45
-
「ただいま〜」
「はい、お帰り〜」
「パパはぁ?」
「庭に居なかったかい?」
亜弥ちゃんはママにバレル前にパパに会いたいのです。
急いで庭に行きます。パパがいました。
「パパ〜ただいま〜」
「おぉ、お帰り」
「ねぇパパぁ、亜弥ね、途中でアイス食べたくなって、
おつかいのお金でアイス買っちゃった。ごめんなさい」
亜弥ちゃんは本当に申し訳なさそうな顔をしています。
パパはいっつもこれに騙されているんですね。
「ま、今日は暑かったからしょうがないな。また行ってきてくれるか?」
「うん!行く!」
「もう駄目よ〜亜弥には行かせない」
現れたのはいつもは優しいけど、怒ると怖いなつみママ。
この後パパと亜弥ちゃんと愛ちゃんはきっちり怒られましたとさ。
- 250 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/17(日) 23:45
-
こんな子供たち9人のお話。
つづく
- 251 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/18(月) 00:23
- 連日の更新、お疲れ様です。
ただ何もしないで二人で居ることが心地いい。
まさに、いしよし ですね。
- 252 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/18(月) 03:14
- いいですね〜
大好きですよこの物語^^
更新乙です
- 253 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/19(火) 01:45
- >>2前のストーリはどこで読めるんですか?
- 254 名前:名無し 投稿日:2007/06/19(火) 07:01
-
森板 True dream
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/wood/1157562209
の>>323からです。
- 255 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/20(水) 03:44
- どうも
- 256 名前:名無し 投稿日:2007/06/23(土) 22:17
- >>251:名無飼育さん様
見ていても心地よいのが いしよし ですね。
>>252:名無飼育さん様
ありがとうございます。
引き続き頑張って書いていきます。
>>253:名無飼育さん様
前回の分も読んでいただければ幸いです。
- 257 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:17
-
美貴君と梨華ちゃんは中学生になりました。
「今日からお前が全員連れて行けよ」
梨華ちゃんの制服姿に見とれていたひとみ君ですたが、
美貴君に言われた言葉を思い出し、顔を引き締めました。
「本当にひー君は男前だべさ」
「背も高いし、ジャニーズなんてええんやないの?」
「まだまだ子供だよ。卵料理が無かったら、朝泣くもん」
ひとみ君の意外な一面を聞いた、なつみママとあつこママは、
どこか安心したような顔をしています。
「やっぱ子供なんや」
「里沙でもそんなことで泣かないべさ」
「だからまだ子供なの」
身体は大人、頭脳は子供のひとみ君なのです。
そんなひとみ君は2人が歩いていく姿を見て、ちょっと複雑な気持ちになりました。
- 258 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:18
-
****************************************
- 259 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:18
-
「取れよ、麻琴!!」
ひとみ君はサッカーの練習中。かなりイラついています。
朝の光景を思い出しているのです。
「そんなの取れないよぉ」
「じゃあ抜けろ」
「えぇぇ」
いつもはこんなことに言わないのに・・・と周りの仲間たちも心配しています。
ここで八つ当たりしてはいけないと分かっていても、
他にぶつける場所がないため、麻琴君に被害がいってしまうのです。
「どうしたの?」
「別に」
明らかに怒っていても「別に」で片付けてしまいます。
そんなところに噂の2人が現れました。
- 260 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:18
-
「オーッす!」
「美貴君!カッコいい!!」
「うわぁ、学ランだぁ」
口々に美貴君の制服姿の感想を言い、冷やかしています。
一緒にいた梨華ちゃんも冷やかされ始めました。
「なんかお似合いだねぇ。ニヤニヤ」
「付き合ってるみたいだねぇ。ニヤニヤ」
そんな皆の言葉が気に入らないのがひとみ君です。
そもそも2人で登場したことに腹を立てています。
「なんなんだよ」
不貞腐れて輪から離れていってしまいました。
それに気付いたのがやはり梨華ちゃんです。
ひとみ君の元へとテクテク歩いていきます。
- 261 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:18
-
「ひーちゃん?どうかしたの?」
ひとみ君が振り返ると、そこにはいつもと違う、大人っぽい梨華ちゃんがいました。
そんな梨華ちゃんを見て恥ずかしくなったひとみ君は、目を背け、話そうとしません。
「ひーちゃん?どっか痛いの?」
「別に」
ついつい冷たい態度を取ってしまいます。梨華ちゃんも面白くありません。
“せっかく一緒に帰ろうと思ってきたのに”
梨華ちゃんもひとみ君に会いたかったのです。
「ひーちゃんが別にって言うときは、何かある時だもん」
「別にそんなことないよ」
小さい頃から一緒に居る梨華ちゃんは、だいたい皆の癖が分かっているのです。
特に一緒にいたひとみ君のことを、分からないわけがありません。
- 262 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:19
-
「もう」
頬を膨らまして梨華ちゃんは輪に戻ってしまいました。
冷たすぎたかなぁと少し反省としているひとみ君です。
「素直じゃないなぁ」
その光景を見ていた麻琴君は、ひとみ君の意地っ張り加減に小4ながら呆れていました。
せっかく来てくれた好きな人を邪険に扱うなんて、麻琴君にはできません。
麻琴君は好きな人が来てくれたら尻尾を振る勢いで喜びます。
「うるさい」
昔から皆がいる前ではなかなか素直になれないひとみ君です。
2人になると何故だか甘えてしまうんですけどね。
- 263 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:19
-
そんなこんなの帰り道、美貴君と梨華ちゃんとひとみ君と愛ちゃんと麻琴くんの5人です。
ひとみ君はワザとに美貴君と梨華ちゃんの間に割って入ります。
そして何も無かったかのように普通にしています。
「なんだよ」
「何が?」
「分かりやすい奴」
「え?何か?」
こんな行動をするなんて、明らかに梨華ちゃんが大好き。
でもそれが面白くないのが愛ちゃんです。
少し離れて歩こうとします。麻琴君はそれに気がつき、少し遅れて歩きます。
麻琴君のさりげない優しさです。
けれど愛ちゃんを元気付けようとくだらない話をたくさんして、空回っています。
「もうええわ」
「う、ごめん」
麻琴君は必ず尻に敷かれるタイプです。
- 264 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:20
-
家の前まで来ると、亜弥ちゃんが待ち構えていました。
「たん!どこ行ってたの?」
「え?小学校」
「どうして!?中学校まで迎えに行ったのに・・・」
「行ったの!?」
亜弥ちゃんは美貴君に早く会いたくて、中学校まで迎えに行っていたのです。
しかし美貴君は小学校へ。少しの入れ違いでした。
「でね、今日中学校でナンパされちゃった」
「・・・・・ナンパねぇ・・」
亜弥ちゃんはその辺の小5よりはかなり大人っぽいため、中学生に話しかけられたのです。
「ねぇ、凄い?ナンパだよ?やっぱ可愛いのかなぁ?」
そこに居た誰もが自分で言うなと思ったが、口には出しません。
美貴君にヤキモチをあ焼いてもらいたい亜弥ちゃんですが、
美貴君は少しも興味はありませんでした。
- 265 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:20
-
****************************************
- 266 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:20
-
美貴君はサッカー部に入りました。梨華ちゃんはサッカー部のマネージャーになりました。
美貴君は1年生ながら、大活躍をしています。
今日は恒例のバーベキューの日。
美貴君と梨華ちゃんは部活のことで盛り上がります。
「あのシュート凄かったよね!」
「俺もあれ入るとは思わなかった」
「えぇ!そんな凄いシュートしたのぉ?凄いね、美貴たんは」
話はよく分からないが、美貴君の側を離れたくないがために一緒に盛り上がる亜弥ちゃん。
一方で自分の知らない話で2人が盛り上がっているのが面白くないひとみ君。
「はい、にぃ」
ひとみ君はお肉が大好きな美貴君にお肉を渡してあげました・・・・真っ黒焦げの。
「こんなの食えない」
「それはさすがに無いね」
「ひーちゃんどうしたんだろう?最近元気ない気がする」
- 267 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:21
-
梨華ちゃんが中学校に行き、部活を始めてから会える時間が少なくなったため、
ひとみ君は元気がなくなっていました。
「反抗期じゃない?」
「あ、そうかも。俺はまだだけど」
「反抗期なのかなぁ?」
「梨華ちゃん、話しかけてみてよ」
亜弥ちゃんは梨華ちゃんに話しかけさせようとします。
美貴君と2人になりたい願望も入り混じっています。
「うん、ちょっと話しかけてみる。最近話してないし」
素直な梨華ちゃんはひとみ君に話しかけに行きます。
ひとみ君は端の方で野菜を食べていました。
- 268 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:21
-
「ひーちゃん」
「おわっ、何」
「何ってことないでしょ?最近元気ないなぁって思って」
「別に」
「あー。また別にって言ったぁ」
ひとみ君は何かあるとき、必ず「別に」と言うのです。
理由はあっても言えないときもあるし、言えない人もいるのです。
「あーあ。ひーちゃん早く中学生になってくれないかなぁ」
「え?」
梨華ちゃんの思わぬ言葉に顔が少しニヤけてきます。
「だって、ひーちゃんが居ればもっと強くなるもん、サッカー部」
そっちか・・・と少し残念だったけど、素直に必要とされていることが嬉しいひとみ君。
顔がどんどんデレデレになっていきます。
- 269 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:21
-
「絶対、エースだよねぇ。楽しみだなぁ」
梨華ちゃんが隣に居るだけでも嬉しいのに、褒められてますますデレデレです。
「たん、見て、ひー君の顔。ヤバイぐらいデレデレだよ」
「うわ、キモ。マンガに出てきそうな顔してる」
遠くから見ていた美貴君と亜弥ちゃんは呆れ顔です。
「ひー君ってさ、本当に分かりやすい男だよね」
「あの父さんの子だからね」
「たん、わかりずらいよね」
「そんな簡単な男じゃないからね」
ジーッと美貴君の顔を見つめる亜弥ちゃん。そんな亜弥ちゃんをチラチラ見る美貴君。
ちょっとずつ大人の体になってきた亜弥ちゃんに、実はドギマギしている中一男子。
色々なことに興味を持ち出す年頃なのです。若いって素晴らしい・・・・・
- 270 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:21
-
****************************************
- 271 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:22
-
中学生にもなると、女の子は友達関係で色々と悩むのです。
梨華ちゃんもその1人。悩みを聞いてあげるのはいつも美貴君です。
今日は帰りに公園で悩み相談。
美貴君に聞いても解決しないけれど、誰かに話したいんです。
「難しいな、女って」
「本当に、難しいよね」
少し薄暗くなった公園の横を通るひとみ君。
2人が座って話しているのを見てしまいました。
“もしかしてあの2人、本当に付き合っているかもしれない・・・・・”
ひとみ君の不安は募るばかり。イライラも増すばかり。
家に帰っても収まりません。2人が何を話していたのか、凄く気になります。
そして無性に梨華ちゃんに会いたくなります。
そこへ美貴君が帰ってきました。
美貴君が帰ってきたということは、梨華ちゃんも帰ってきたのです。
- 272 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:22
-
――――――――― ピーンポーン ガチャ
勝手に開けて家の中に入っていきます。この3家族はどこもそうしているのです。
ズンズン階段を上り、梨華ちゃんの部屋の前まで来ました。
それでもまだイライラしています。
―――――― バンっ
・・・・・・・・・
――――――――――― バンっ
ひとみ君は勢いよくドアを開け、勢いよくドアを閉めました。
さっきまでのイライラは消え、何だかモヤモヤしています。
“・・・・・今のは・・・”
ひとみ君が見たのは下着姿の梨華ちゃんでした。着替え中だったのです。
- 273 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:22
-
「ひーちゃん?」
ボーっとしていると、着替えを終えた梨華ちゃんが出てきました。
意外と普通の顔をしています。
「どうしたの?どうぞ」
ひとみ君は何も言わずに中へ入ります。何も言わないのではなく、何も言えないのです。
さっきの光景が、何度も頭を過ぎります。
中学1年生の梨華ちゃんは、大人の体をしていました。
さっきまでのイライラが消え、ドキドキに変わっています。
着替えも見られたのにもかかわらず、いつもの笑顔の梨華ちゃん。
それに安心したひとみ君はいつも通り部屋で過ごします。
梨華ちゃんの笑顔に癒されたひとみ君は、さっきのことなどすっかり忘れ、
ご機嫌で帰っていきました。
- 274 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:23
-
****************************************
- 275 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:23
-
時は過ぎ、美貴君と梨華ちゃんが3年生に、ひとみ君2年生になりました。
入学してすぐにサッカー部に入ったひとみ君は、もちろん大活躍。そしてモテモテです。
1年生の時から何度も告白されてきました。
でもひとみ君の答えはNO。当たり前です。梨華ちゃんのことが好きなんですから。
「中澤先輩。好きです。付き合ってください」
「・・・・・ゴメン。今そういうの興味ないから」
いつも決まった一言で断ります。興味がないわけではない。興味のある人はいるのです。
「ふう」
「ひーちゃん。見ちゃったぁ」
ひとみ君は一番見られたくない人に見られてしまいました。
梨華ちゃんはニヤニヤしながら近づいてきます。
「ひーちゃんてさ、本当にモテるよね」
「全然」
「もう。いっつも告白されてるく・せ・に」
- 276 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:23
-
梨華ちゃんがからかってくることが面白くないひとみ君。
「どうでもいいじゃん、そんなこと」
「女の子がかわいそう。あんなにたくさん振ってさぁ。
あれだけ告白されてるんだから、1人ぐらい付き合っちゃえばいいのに」
その言葉にムカっときたひとみ君は梨華ちゃんを睨みます。
「なんで好きでもねぇ奴と付き合わなきゃいけないだよ。
梨華ちゃんはそういう女なんだね」
そう言い捨ててその場を離れました。ビックリしたのは梨華ちゃんです。
まさかあんなに怒るとは思っていませんでした。
言ったことを今更ながら後悔しています。
それ以来、ひとみ君は何となく梨華ちゃんを避けるようになりました。
梨華ちゃんもまた、避けられているのに気付いています。
- 277 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:23
-
「ねぇ、美貴ちゃん。ひーちゃんに避けられてるぅ」
「は?」
「全然目も合わせてくれないし、遊びにも来てくれない」
「・・・・・。
あいつ今でも遊びに行ってるの?」
「え、うん。来てる。でも最近来ないのぉぉぉ」
美貴君は少し呆れ顔です。
まさか今でも梨華ちゃんの部屋に遊びに行っているとは思ってもみませんでした。
「仲良いねぇ」
「美貴ちゃんだって、亜弥ちゃんと遊んでるじゃない」
「あれは勝手に部屋に来てるだけだよ」
「同じようなものじゃない。もうそんなことどうでもいいの!
ねぇ、どうしよう。謝ったほうがいいよね?」
「もうほっとけよ。あいついっつもそうじゃん」
よくあることだけど、今回は自分が悪いと分かっている梨華ちゃん。
気になってしょうがありません。
- 278 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:24
-
そんな梨華ちゃんを見兼ねて、美貴君はひとみ君と話をすることにしました。
素っ気なくても優しい美貴君です。
「お前なんで梨華のこと避けてんだよ。あいつ心配してたぞ」
「別に」
「別にじゃねーよ。理由を言え、理由を」
「何でも無いって」
「じゃあなんであいつはあんなに悲しい顔してるんだよ」
「・・・・・・・・」
「急に遊びに来なくなったら誰だって気にするだろ」
「だって・・・」
「何だよ」
「俺の気持ちも知らずに、誰かと付き合えばいいじゃんとか言う梨華ちゃんが悪い!」
やっぱりそんなことかとまたまた呆れ顔の美貴君。
「お前らもう面倒くさい」
関わることを止めた美貴君でした。
- 279 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:24
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
- 280 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:25
-
「ひとみ。今日母さんから買い物頼まれてるから門のとこで待ってて」
「えぇぇぇ」
「分かったな、じゃ」
美貴君はひとみ君を門の前で待たせることにしました。
これはある作戦を実行するための口実です。買い物なんて頼まれていません。
「あ、忘れ物しちゃった!梨華ちゃん、先帰ってて」
「え、ちょっと、柴ちゃん」
今度はあゆみちゃんです。美貴君とグルになり、2人を一緒に帰そうとしています。
「もう、柴ちゃんは」
プンスカ怒りながら校門まで来た梨華ちゃん。
門の前でひとみ君に気が付きました。もちろんひとみ君もです。
「「・・・・・・・・・・」」
- 281 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:25
-
何となく気まずい2人。先に口を開いたのは梨華ちゃんでした。
「帰らないの?」
「にぃ待ってる」
ひとみ君は必要最低限の言葉しか発しません。
「美貴ちゃん、さっき裏から帰ったと思うけど」
「はぁ?」
「『早く帰って昼寝しよ』とか言ってたよ?」
「あのヤロー」
その話を聞き、今の状況と合わせて嵌められたと気付いたひとみ君。
でも久しぶりに梨華ちゃんと話せて嬉しかったりもします。
「帰ろ」
何となく誘ってみたひとみ君。
もちろん梨華ちゃんも久しぶりに話せて嬉しいので、ひとみ君の後をついていきます。
- 282 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:25
-
しばらく無言でしたが、お姉さんの梨華ちゃんのほうから謝りました。
素直になれなかったひとみ君ですが、避けていたのは事実なので謝ります。
そこから話は盛り上がり、そのまま梨華ちゃんの部屋に行くことにしました。
「眠い」
「いいよぉ、寝ても」
「うん、寝る」
何ともいえない甘えた表情のひとみ君に、優しく笑う梨華ちゃん。
2人はお互いに暖かい気持ちになります。
「カワイイ」
ひとみ君の寝顔を見て素直にそう思ったのです。
でも梨華ちゃんはひとみ君にイマイチ甘えられません。
少しお姉さんだからでしょうか。美貴君だけに甘えられるのです。
- 283 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:26
-
****************************************
- 284 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:26
-
次の日梨華ちゃんは美貴君にお礼を言いました。
でも美貴君は「何が?」という顔をしています。
「美貴ちゃんは本当に優しいね」
「どこが?」
「いろいろと。美貴ちゃんが幼馴染で良かったぁ」
「こっちはその分大変だけどね」
美貴君はボソっと言います。
梨華ちゃんと居るのは大変だけれど、嫌ではない美貴君。
頼られた嬉しい部分もあるのです。
いつまでもこのままの関係で居たいと思う、美貴君なのでした。
- 285 名前:幼馴染 投稿日:2007/06/23(土) 22:26
-
どんどん大人に近づいていく、思春期の9人の子供たちのお話。
つづく
- 286 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/23(土) 23:02
- はわー!イイ!!
- 287 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/24(日) 00:23
- 亜弥ちゃん可愛い!w
亜弥ちゃんにももっと頑張ってもらいたいw
- 288 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/24(日) 00:55
- ひーちゃん、早く梨華ちゃんに甘えられるといいね。
- 289 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/09(月) 23:14
- まだ☆カナ…
中学生になった亜弥ちゃんのお色気と共に待ってますw
- 290 名前:名無し 投稿日:2007/07/14(土) 20:21
-
>>286:名無飼育さん様
「ハワ、イい」ですかぁw
いいネタをお持ちのようで!
>>287:名無飼育さん様
私と気が合うようでw
今回は・・・・・ニヒヒw
>>288:名無飼育さん様
梨華ちゃん大好き人間ですからね v(O^〜^O)v
>>289:名無飼育さん様
お待たせいたしました!!
自然と出てしまうんですよねぇ、亜弥ちゃんはw
- 291 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:22
-
美貴君と梨華ちゃんにとって、最後の大会が近づいてきました。
2人は気合入りまくり、つられてひとみ君もヤル気マンマン。
そんな3人を見て一緒に気合を入れようとする亜弥ちゃん。
「亜弥ちゃんてさ、誰にでも合わせられるよね」
「え〜?そんなことないよ」
「だって今は亜弥ちゃん気合入れなくてもよくない?」
「いいの。たんと一緒の気分になれればいいの」
亜弥ちゃんは自己中ではなく、美貴中なのです。
しかし美貴君はサッカーのことで頭がいっぱいのため、なかなか構ってくれません。
それどころか、チームがうまくいってないので、凄くイライラしているように見えます。
「そのパスとれなきゃ勝てねぇだろ!!」
「にぃ・・・メッチャ切れてる」
「美貴ちゃん、落ち着いて」
梨華ちゃんが落ち着かせようとしますが、
もう自分の世界でそんなこと耳に入らない美貴君なのです。
- 292 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:22
-
ここ数日間イライラしている美貴君の元へ、
空気の読めないクラスメイトがやってきました。
「なぁ美貴。1年の双子のカワイイ子いるじゃん?あれ友達でしょ?
紹介してくれない?亜弥って子」
“こんな忙しいときに”
美貴君のイライラは止まりません。
「今それどころじゃないから。話したいなら自分で話しかければ?」
美貴君は素っ気ない対応をし、全く取り合いませんでした。
そのクラスメイトもムカっときたような顔をしています。
でもそんなこと美貴君には関係ないのです。
「どうしたらうまくいくんだろう」
美貴君はサッカーのことを考えながら、ブツブツ独り言を言いながら、
その場を離れていきました。
- 293 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:22
-
その日の帰り道。
「ねぇ、たん、聞いてぇ。今日も告白されちゃった」
可愛くて少し大人びた感じの亜弥ちゃんは、ひとみ君に負けず劣らずモテモテなのです。
告白されるたびに美貴君に報告。ヤキモチを焼いてくれるのを待っています。
しかし今日の美貴君はいつも以上に冷たく接します。
「だから?」
「もしさ、誰かと付き合うことにしたら、たんどうする?」
「別にどうもしないけど」
「え〜。何かあるじゃん。どうするぅ?」
あまりにもしつこい亜弥ちゃんに美貴君のイライラはMAXに達しました。
「しつこい!!亜弥ちゃんがどうしようと、俺には関係ない」
「関係ないって何ぃ?たん、最近怒りっぽすぎる」
「亜弥ちゃんには関係ないだろ。もう勝手にしなよ、そんなこと」
「そんなことって・・・・・」
怒った亜弥ちゃんは先に行ってしまいましたが、美貴君は気にしませんでした。
- 294 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:22
-
****************************************
- 295 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:23
-
次の日から亜弥ちゃんは美貴君の前に現れなくなりました。
事情を知らない梨華ちゃんとひとみ君は心配します。
事情を何となく察した愛ちゃんは何も言いません。
「ねぇ美貴ちゃん。練習も見に来ないなんて、亜弥ちゃんどうしたのかな?」
「知らん」
「・・・・・絶対理由知ってるじゃん」
「ってか、にぃが原因なんじゃない?」
「俺は何も知りません」
美貴君は何も話そうとしません。
怒ると怖いので、2人はそれ以上聞くのを止めました。
「だから、そこで決めなきゃ負けんだって!!」
相変わらず怒りまくりの美貴君。自分でシュート決めました。
「よっしゃ」
入った瞬間、いつも亜弥ちゃんがいるところを見てしまいました。
美貴君がシュートを決めると大騒ぎする人が今日はいません。
何だか凄く寂しい感覚に襲われました。
- 296 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:23
-
「美貴ちゃん。今日寂しかったでしょう」
「・・・・・何が?」
「とぼけちゃって〜。決めた後、ジッといつものところ見てたじゃない」
美貴君が一瞬止まったことを、梨華ちゃんが見逃さなかったのです。
そんなところを見られていたことに少し動揺する美貴君。
「謝ったら?」
「なんで」
「どっち悪いの?」
「・・・・・・・」
「ん?」
「・・・・俺・・・かも・・・」
「じゃあもうやること1つじゃない」
梨華ちゃんは美貴君が亜弥ちゃんに謝れば丸く収まると思ったのです。
しかし美貴君は素直になれません。
- 297 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:23
-
「でも俺ばっかりが悪いわけじゃない」
「それはそうだろうけど、きっかけが必要でしょ?
亜弥ちゃんを1日も見ない日なんて初めてだもん。
相当怒ってるんだよ」
確かにあの時の言い方は悪かったと思う美貴君。
さりげなく優しい美貴君だが、頑固なところがガンである。
「なんか嫌だ」
「えぇ?もう、どうしてそう頑固なのぉ?」
「別に頑固じゃないし」
「早くしないと手遅れになるかもよ?亜弥ちゃんも頑固だから」
そう。亜弥ちゃんも美貴君に負けず劣らず頑固なんです。
一度決めたらなかなか考えを変えない。
今までは、いくら頑固でも美貴君が一言言えばその通りにしてきました。
美貴中なので。しかし今回はそううまくいきそうにありません。
少し頭を抱える梨華ちゃんでした。
- 298 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:24
-
亜弥ちゃんが美貴君の前に現れなくなって3日が経ちました。
本当に心配し始めた梨華ちゃん。
愛ちゃんに聞いても学校には行っていると言います。
「ねぇ美貴ちゃん」
「梨華ちゃん、しつこいよ。会いたくないならそれでいいじゃん」
「そんなぁ」
こんなこと言っていても、いつもより元気が無いことに気付いている梨華ちゃん。
美貴君は頑固で強がりなのです。
そんな話をしている帰り道。美貴君は見たくないものを見てしまいました。
すぐにその視線を逸らします。しかしひとみ君が気付いてしまいました。
「あれ?亜弥ちゃんじゃない?」
「え?どこどこ?」
梨華ちゃんが慌てて亜弥ちゃんを探します。
少し遠くに見つけた亜弥ちゃんの隣には、いつもと違う人がいました。
- 299 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:24
-
「誰?あれ」
「彼氏とか?」
「えぇぇぇぇ!?」
「梨華ちゃん声でかいよ」
今まで亜弥ちゃんの隣にいる人といえば、必ず美貴君でした。
梨華ちゃんもひとみ君もその光景しか見たことがなかったのです。違和感があります。
「ちょっと美貴ちゃん!いいの!?」
「俺には関係ない」
「でも」
「別に付き合ってるわけじゃないし。ただの幼馴染だよ」
素っ気なく、気にしてない風に見せている美貴君ですが、
その言葉には寂しさがありありと溢れています。
正直ショックだったのです。美貴君自信も、亜弥ちゃんの隣は自分だと思っていました。
- 300 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:24
-
それから何度か2人が一緒に帰ったり、
学校内で話したりしているのを美貴君は目撃していました。
梨華ちゃんやひとみ君よりもはるかに目撃する回数が多いのです。
どこかで亜弥ちゃんを見つける能力が身についてしまったのでしょう。
2人よりも先に見つけてしまいます。
「あの2人、まだ付き合ってないらしいよ」
どこからかひとみ君が聞いてきました。
「でも時間の問題だって。あの男マジらしいから」
別にそんなこと関係ないとでも言いたそうな顔をしていますが、
その瞳の奥は揺れています。
「寂しくなるねぇ。ずっと一緒だったのに」
「それが普通なんじゃね?俺ら仲良すぎ」
「・・・・・素直じゃないんだから」
- 301 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:24
-
その日の夜。美貴君は自分に問いかけました。
俺にとって亜弥ちゃんはどういう存在なのか。ただの仲の良い幼馴染なのか。それとも・・・
考えれば考えるほど分からなくなります。
「はぁ」
亜弥ちゃんは小さい頃からずっと一緒でした。美貴君の側を全く離れなかったのです。
2歳違いということもあり、学校が別々になってしまう時期がありましたが、
それ以外は朝も昼も晩も美貴君の側にいました。
小学校低学年のときに一度、亜弥ちゃんが居なくなったことがありました。
学校から来ていないと連絡があり、大騒動になったのです。
その時美貴君は風邪をひいて家で寝込んでいました。
真里ママがちょっと出かけてくるからと家を出たのは、亜弥ちゃんを探すためでした。
そんなこととは知らずに美貴君は布団の中でぐっすり寝ていたのです。
目を覚ますと布団の中には亜弥ちゃんがいました。一緒に寝ていたのです。
その手にはお守りが握られていました。
- 302 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:25
-
亜弥ちゃんは美貴君が風邪だと聞いて、少し遠くにある神社へ向っていたのです。
早く治るようにお願いをしに行ったのです。
お爺ちゃんが具合悪くなったときに来たのを覚えていました。
お賽銭はありませんが、
しっかりと手を合わせて「早く治りますように」と何度もお願いしました。
それを見ていた神主さんが亜弥ちゃんに声をかけ、事情を聞き、お守りをくれたのです。
お守りをしっかり握って美貴君の家に行き、誰も居なかったので勝手に入って、
美貴君の布団に入り、一緒に寝ていたのです。
まさかそんなところに行っていると思わない父母の方々は、
近くの公園やお店屋さんを探しまくりました。
警察に届けを出そうとしていたところで、
中澤家に亜弥ちゃんの靴があるのに気付き安心した父母の方々。
亜弥ちゃんの願いが届いたのか、次の日美貴君は復活しました。
その代わり、亜弥ちゃんが風邪をひいたのです。
- 303 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:25
-
昔のことを思い出して、美貴君は笑ってしまいました。
美貴君のことを一番心配してくれたのは亜弥ちゃんです。
ケガをしたときもテストの点数が悪かったときも、いつも心配ばかりしていました。
そして一緒に悩んで元気づけてくれたのです。笑わせてくれたのです。
亜弥ちゃんのおかげで乗り越えられたことはいくつかあります。
そんな人が居なくなってしまうかもしれないのです。
他の男のものになれば、今までどおり仲良くはできないでしょう。
向こうの男中心になるでしょう。美貴君はない頭を必死に絞って考えます。
「亜弥ちゃん・・・・・必要じゃん」
美貴君の考えが変わりました。
- 304 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:25
-
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- 305 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:25
-
とうとう大会の日がやってきました。ここで負ければ美貴君は引退です。
「やっぱり亜弥ちゃん来てないね」
亜弥ちゃんは今までの試合全て応援に来ていました。
最後の集大成に居ないというのは凄く寂しいことです。
「居ても居なくても一緒だよ」
強がり美貴君は健在です。梨華ちゃんもしつこく言うのは止めました。
最後の大会です。サッカーに集中しなければなりません。
「頑張ってね!」
「おっす」
試合は最初から相手ペースで進みます。なかなか自分たちのペースを掴めません。
チーム全体がピリピリした空気に包まれていました。
お互い点数が入らないままハーフタイム。
皆疲れきっているのがわかります。
- 306 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:26
-
「くそっ」
うまくいかないことで美貴君のイライラは最高潮です。
さらに亜弥ちゃんが来ていないことも関係しています。
「何もかもうまくいかね」
「これからだよ!そんな顔しないで!」
「そうだよ!俺がバシバシ決めてやるから」
「ゴール前で3本もチャンス逃した奴が何言ってんだよ」
「うぅっ」
ひとみ君は今回絶不調だったのです。
「とりあえず1点だ。1点取って守りきろう」
みんなはまた気合を入れなおしました。
これに負ければ引退なのです。みんな必死です。
- 307 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:26
-
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- 308 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:28
-
後半戦が始まりました。お互い一歩もひかない緊迫した試合展開。
しかし徐々にこちらのチームのスピードが落ちてきています。
少し相手が攻める時間が多くなってきて、こちらは守るのに必死です。
美貴君は心の中で「くそっ、もうダメか」と思っていました。
何とか守ってはいますが、延長ともなれば体力的な差で完全に負けです。
そんなことを思っている美貴君の視界に、
いつも必ず決まった場所で応援している亜弥ちゃんが入ってきました。隣にあの男。
美貴君はいろんな感情が入り混じり、ついに試合中にも関わらず叫んでしまいました。
「おい!!そんなとこにいねえで、いつものところで応援しろ」
亜弥ちゃんはいつもと違う場所で見ているだけです。
「どこで見ようが私の勝手でしょ?なんで指図されなきゃいけないの!!」
負けじと亜弥ちゃんも言い返します。
美貴君は何か言おうとしましたが、ボールが来たので中断です。
その後もちらちら亜弥ちゃんと目が合いますが、逸らされ続けます。
- 309 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:28
-
「いいからいつものとこ行けよ!!」
「ヤダ!!」
どっちもひきません。何度かその会話が続きました。
「亜弥ちゃんがいつものところに居ないから勝てないんだよ!!」
「私のせいにしないで!!
ベンチからは2人が言い合いをしているのは聞こえません。
美貴君は普通にプレーして、ただ声を出しているだけのように見えます。
体力を消耗するどころかどんどん元気になっているように思えました。
一歩も引かない亜弥ちゃんを見て、美貴君は諦めて素直になることにしました。
「お願いだから!!いつもいる人がいないとダメなんだよ!!」
亜弥ちゃんは急に弱々しくなった美貴君をじっと見ています。
「絶対勝つから!!亜弥ちゃんが応援してくれれば勝つから!!
んでもって勝ったら・・・・・ずっと俺の側にいてくれ!!」
- 310 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:28
-
「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
それまで2人の言い合いを聞いていた観客がどよめきました。
中学生らしからぬ大告白です。
亜弥ちゃんは目を見開いて、今にも涙がこぼれそうでした。
それを堪えていつものところへ行こうとしますが、あの男に腕を捕まれました。
「どこ行くんだよ」
「あっち。離して」
「ここでいいだろ」
男は腕を離そうとしません。それを見て美貴君はまた叫びました。
「俺の女に触るんじゃねぇ!!」
「「「お〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」
また観客がどよめきました。
思わず男は手を離し、その隙に亜弥ちゃんは走り出しました。
そしていつもの低位置につき、大声で応援しています。
- 311 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:29
-
「た〜ん!!頑張れぇ!!」
亜弥ちゃんの応援に2人のやりとりを見ていた観客も一緒に応援を始めました。
その場一体が応援団になっています。
美貴君の大告白が周りの人達の心を打ったのです。
「頑張れー!!」
「頑張れ!負けたら側にいてくれねぇぞ!!」
「勝って!!絶対勝ってー!!」
そんな大声援に応えようと、皆の足がまた動き出しました。
ヘトヘトな体に鞭を打って点を取りに走っています。
闘志が溢れています。顔が一気に引き締まりました。
美貴君も負けじと点を取りに走り回ります。
「たーーーん!!いけぇぇぇぇぇ!!」
- 312 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:29
-
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- 313 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:29
-
「たん、カッコ良かったぁ」
「ねぇ。さすがキャプテン。頼りになるよね」
試合のほうは美貴君がゴールを決めて勝利しました。愛のパワーは凄いんです。
しかし、ご機嫌なはずの美貴君ですが、浮かない顔をしています。
原因は腕を絡ませ胸を押し付けてくる亜弥ちゃんです。
「暑いんですけど」
「だぁってぇ、側にいてって言ったでしょ?」
今更ながら、美貴君は自分の言った言葉に後悔しています。
少し調子をこきすぎたのです。
「こんなに近くとは言ってない」
「郷里がどれくらか指定されてないも〜ん」
ニコニコしながら抱きついてくる亜弥ちゃんに、
「まぁいっか」と満更でもない顔をしている美貴君でした。
- 314 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:29
-
一方、ずっと黙ったままのひとみ君。
口を固く結んで今にも泣きそうな顔をしています。
そんなひとみ君に優しく声を掛けてくれる梨華ちゃん。
「ひーちゃん。誰でもうまくいかないときはあるよ」
ひとみ君はこのチームのエースですが、今日は絶不調。l
美貴君にも「お前いらね」と言われ、1つも良いところがありませんでした。
「また頑張ればいいじゃん。・・・もう、泣かないの」
梨華ちゃんに慰められれば慰められるほど、
自分が情けなく感じてついに泣いてしまいました。
「うぅ、う、うっ」
「また泣いてんのかよ、中二にもなって」
ひとみ君は体が大きくてカッコいい割りに、昔から泣き虫だったのです。
小さい頃は美貴君に口で勝てなくて良く泣いていました。
その度に梨華ちゃんが慰めてくれていたのです。
- 315 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:30
-
「誰も怒ってないし、責めてないから大丈夫」
梨華ちゃんは本当に優しいお姉ちゃんです。
お兄ちゃんが冷たい分、余計にそう感じます。
ひとみ君もだんだん泣き止んできました。
「今日の夕飯なんだろうねぇ」
「うちはカレー」
「なんでわかんの?何カレー?」
「試合の日はいっつもカレー。
おめえがいっつも試合の日はカレーがいいって言ったんだろ。だからカレーなんだよ」
「そうだったっけ?もう忘れた」
「忘れっぽいからシュートの打ち方も忘れたんだな」
「美貴ちゃん!!」
また傷をえぐられたひとみ君でした。
- 316 名前:幼馴染 投稿日:2007/07/14(土) 20:32
-
大人になるにつれて『素直』になれなくなります。
どこか格好つけて、素直になることが恥ずかしくなるのです。
でもその大切さに気付いたとき、また1つ成長するのです。
どんどん成長していく、9人の子供たちのお話。
(0^〜^)(^▽^ ) つづく
- 317 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/14(土) 21:15
- やば、ひーくん萌え…
- 318 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/14(土) 21:26
- 亜弥ちゃんの作戦勝ち!?w
この2人が刺激になって、他のみんなもちょっとずつ影響出てくるのかな
- 319 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/25(水) 23:10
- あやちゃんおめでとー!
っていうか美貴君マジかっけー!惚れそうw
中学生でこんだけラブラブだったら、高校生編がすごく楽しみなんですけどw
- 320 名前:名無し 投稿日:2007/08/13(月) 10:09
-
>>317:名無飼育さん様
萌えていただけましたか、うれしいですw
>>318:名無飼育さん様
亜弥ちゃんは策士ですからw
まんまと引っかかった美貴君の図です
>>319:名無飼育さん様
美貴君のお父さんはなんと言っても中澤パパですから、
あっちの血も少しは・・・w
中学生ですから、健全なお付き合い!・・・のはず・・・・
皆さんからのレスは凄く励みになります。
いつもありがとうございます!
- 321 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:09
-
だんだん寒くなり始めた11月。美貴君と梨華ちゃんは高校受験を迎えます。
この地域には高校が2つあり、1つは有名な進学校、もう1つは悪が集まる学校です。
大抵の人は進学校を目指して受験勉強をします。2人も例外ではありません。
「う〜ん、わかんない。なんで美貴ちゃんそんなに出来るの?」
「さぁ?俺意外と出来る男なんだよね」
この会話の通り、美貴君は意外と勉強できる男なのです。
梨華ちゃんも頭が悪いわけではありませんが、美貴君よりは劣っています。
美貴君は進学校に受かることは確実ですが、梨華ちゃんはギリギリのライン。
そこで梨華ちゃんは家庭教師を雇うことにしたのです。
少しでも安全ラインに乗せたいという思いから、親友のあゆみちゃんに相談したところ、
良い家庭教師が見つかったのです。
「頑張って美貴ちゃんに追いつくからね、待ってて」
「抜かしてくれても結構ですよ」
美貴君はそこまで勉強に興味がないのです。
- 322 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:11
-
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- 323 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:11
-
「梨華ちゃん!今日練習休みになったから遊びに行くね!!」
「あ〜ゴメンね、ひーちゃん。今日家庭教師が来るから遊べない」
「??・・・かてい?・・きょうし?」
ひとみ君は家庭教師が何なのか、全く分かっていません。
誰かが梨華ちゃんの家に来るとしか今のところ理解できていないのです。
「そう。だからまた今度ね」
「・・・・・うん・・・・・」
誰が来るのか気になっているひとみ君。でもしつこく聞けないお年頃の14歳。
しばらく考えていると、そこに美貴君が通りかかりました。
「にぃ。かていきょうしって誰?」
「あぁ?・・・・あぁ、男だって言ってたよ」
「男!?その人が来るから今日は遊べないって言われた」
「そりゃお前居たら邪魔だろ。家庭教師だぞ」
- 324 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:11
-
ここでひとみ君は少し勘違いをしています。
最終的には合っているのですが、根本的な部分が間違って解釈しているのです。
まず、[家庭教師]のことを[かていきょうし]という名前の男の人だと思っています。
勉強を教える人だと思っていないのです。
そしてその人が居ると遊べない理由はもちろん、勉強をするからというわけですが、
ひとみ君の中では[かていきょうしさん]は凄い人で、
その人と遊ぶからから自分とは遊べないと思っているのです。
だから梨華ちゃんと[かていきょうしさん]は2人きりだと思っています。
ここは間違いではないのですが、目的が間違っているのです。
「いつからそんな人・・・・・」
「今日からだよ。あいつも必死だからな」
必死になるぐらい大切な人なのかとまたまた勘違いをしてしまいます。
ひとみ君はない頭で色々考えますが、考えていても無駄だと気付き、
麻琴君を口実に使おうと企みながら、その足で梨華ちゃんの家に向いました。
- 325 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:12
-
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
- 326 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:12
-
梨華ちゃんの家に着くと、見慣れない自転車が置いてありました。
これは[かていきょうしさん]の自転車に違いないと思い、
それを蹴ってやろうかとも考えましたが、あとで梨華ちゃんに怒られるので止めました。
とりあえず勝手に中に入ります。ピンポンなんて無用です。
そこには明らかに男物の少し大きな靴がありました。
「お、ひーくん。どしたぁ?」
「いや、麻琴は?」
「部屋でゲームでもしてるんじゃないかぁ?
あとでお菓子持ってってやるから行ってろー」
ひとみ君は靴を脱いで階段を上がりました。
階段を昇ってすぐの部屋が麻琴君の部屋ですが、
そこを通りすぎて梨華ちゃんの部屋に近づいていきます。
「へぇ、そうなんですかぁ。なんか意外だな」
「でしょ?人は見かけによらないって」
梨華ちゃんの部屋からは楽しそうな声が漏れています。ひとみ君はイライラし始めました。
- 327 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:12
-
「あれ?ひー君」
そう呼びかけてきたのは麻琴君です。ひとみ君のイライラに気付かずヘラヘラしています。
そんな麻琴君をギロリと睨むひとみ君。どんどん麻琴君に近づいていきます。
麻琴君はヘラヘラしながら首を絞められ部屋に連れて行かれました。
「麻琴。[かていきょうし]ってどんな奴だ」
「家庭教師?・・・あぁ今日来てる人ね。結構カッコ良いよ。なんか個性的。
確か高校生って言ってたかな」
ひとみ君は眉間に皺を寄せ、下唇を噛んでいます。
「梨華ちゃんとはどういう関係?」
「え?・・・・・だから家庭教師だよ。勉強教えてもらってるんでしょ」
「勉強?なんの勉強だよ!!2人きりで部屋に居るなんて・・・まさか・・・」
ひとみ君も中学2年生。それなりの知識はあります。
間違った方向に進んでいるとは気付かず、不安は募るばかり。
「それはダメだ、それはダメだ」と呟き続けています。
麻琴君は訳が分からず口をポカンと開けたままひとみ君をじっと見ていました。
- 328 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:12
-
「ダメだ!!」
ひとみ君はそう叫んで、麻琴君の部屋を出て梨華ちゃんの部屋に向います。
そしてそのままに勢いでバタンと梨華ちゃんの部屋にドアを開けました。
「梨華ちゃん!ダメだよ!!」
そこに居たのはこの部屋の主、梨華ちゃんと一人の男の人。
梨華ちゃんは机に向かい、その横でジッと梨華ちゃんを見ている[かていきょうし]さん。
その光景を見たひとみ君は、梨華ちゃんにその家庭教師が近づいているのが気に入らず、
「ちょ、離れろよ」
[かていきょうし]さんを梨華ちゃんから離しました。ポカンとする他の2人。
ひとみ君の目は真剣です。
「何やってたんだよぉ」
「何って・・・・勉強だけど?」
- 329 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:13
-
勉強の邪魔をされて少し不機嫌になる梨華ちゃん。
それでもひとみ君は引き下がりません。
「なんでそんな必要があるんだよ」
「あのねぇ、私は受験生なの。来年は高校に行かなきゃ行けないの。だから勉強してるの」
その梨華ちゃんの言葉に少し???を浮かべるひとみ君。
徐々に自分は何か違うことをしていると気付き始めました。
「・・・・・この人は?」
「この方は私の家庭教師してくれる大谷さん。柴ちゃんの知り合いの人」
「柴ちゃん・・・・・あぁ、柴ちゃん」
「何を考えたのかわからないけど、今は真面目に勉強してるからまた後でね」
そう言われてひとみ君は部屋を追い出されます。
出て行く際、何か言わなければと梨華ちゃんのほうを振り返りました。
「頑張ってね、勉強」
梨華ちゃんはコクンと頷いて、また机に向いました。
- 330 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:13
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部屋を出て、何となく気まずいひとみ君。麻琴君がそこには立っていました。
「おんめぇ、なんで先に言わないんだよ!!」
「言ったよぉ。でもブツブツ訳の分からないこと言ってたんじゃん」
「うるせぇ。もう今日は麻琴の部屋にあるマンガ全部読み切ってやる」
マンガを漁りだしたひとみ君ですが、どれも読んだものばかり。
「なんで新しいのがねぇんだよ」
「・・・・・・・・・」
「おい、聞いてんのか?」
「いっつもいっつもここでマンガ読んでたら読むもの無くなるに決まってるじゃん!!」
いきなり大声を出した麻琴君にビックリしましたが、
ひとみ君は動じず、また漁り始めました。
麻琴君はそんなひとみ君にイライラしながらも、一緒にマンガを読みましたとさ。
- 331 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:13
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- 332 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:13
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一方梨華ちゃんの部屋では、梨華ちゃんが大谷さんに謝っていました。
「すいません。いきなり変な人が来て」
「はは。いやビックリしたけどね、面白いわ」
「考えずに行動するみたいで」
梨華ちゃんは「うちの主人がどうもすみません」とでも言うように、
呆れながら謝っています。
「あゆみから少しは聞いてたんだよね」
「柴ちゃんから?何をですか?」
「ん?もしかしたら、大きな犬が邪魔をしてくるかもしれないって」
「大きな・・・・犬ですか・・・」
「そう。でも家に犬なんて飼ってる様子ないし、何のことだろって思ってたんだけどさ」
あゆみちゃんはひとみ君が必ず気にして絡んでくると読んで、
大谷さんに犬と表現して注意していたのです。
- 333 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:14
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「でも良い彼氏だね。頑張ってって言ってくれるんだもん」
「そうですねぇ・・・って、彼氏じゃないですよ!何言ってるんですか!?」
「え?違うの?彼氏じゃなかったらあそこまで気にしないでしょ」
「ただの幼馴染です」
梨華ちゃんはキッパリと言いましたが、何だか胸がモヤモヤします。
「本当に?『だって俺の女に手を出すな!』とでも言い出しそうな雰囲気だったじゃん」
「でも・・・・・」
「でも?」
梨華ちゃんは頭の中を整理します。今までずっと一緒に過ごしてきました。
休みの日はよく一緒に遊びます。一緒にお昼寝をしてしまう時だってあります。
でも付き合ってと言われたことは一度もありません。
好きだと言われたことも一度もありません。だから彼氏ではないのです。
「好きだって言われたことないですし・・・」
「へぇ。じゃあ今彼氏いないんだ」
- 334 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:14
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「いないですよぉ」
「・・・・じゃあ俺狙っちゃおうかなぁ」
「え?」
「実は俺タイプなんだよね」
バタン!!!
そう言った瞬間部屋のドアが勢いよく開き、
そこにはおやつを持ったひとみ君が立っていました。
「休憩タイムです!さぁ、どうぞどうぞ」
ズカズカと入ってきて小さなテーブルにおやつとジュースを3つ乗せました。
「3つって」
「俺の分。ここで一緒におやつ食べる」
「そう。じゃあ食べましょう」
梨華ちゃんは気にすることなくひとみ君の隣に座り、大谷さんも呼びました。
大谷さんは今の会話が聞こえていたのではないかとヒヤヒヤしています。
- 335 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:14
-
「あ、家庭教師さん」
「ひーちゃん、間違ってないけど大谷さんって言うんだよ」
「そっか、大谷さん」
「はい・・・・」
「受験に受かるための勉強を教えてくださいね。他の余計なことは教えなくて良いので」
「・・・・・・はい」
「なんかひーちゃん、パパみたい」
梨華の笑顔につられてデレデレしてしまうひとみ君に、冷や汗が止まらない大谷さん。
この対照的な2人。
梨華ちゃん争奪戦(そうでもない?)はひとみ君に軍配が上がりそうです。
「おいしいね、このお菓子。やっぱ圭パパは主夫だ」
満足そうなひとみ君でした。
- 336 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:15
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- 337 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:15
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年も明けた1月。コートを着ないと外を歩くことが出来ません。
梨華ちゃんの勉強も順調で、志望校へ合格出来そうです。
「梨華ちゃんおはよう。勉強のほうはどう?」
「おはよう、亜弥ちゃん。順調だよ。今のままなら合格できる」
「良かったねー。これでまた皆で同じ学校に通うこと出来そう」
「無理だよ」
朝から浮かれ気分の亜弥ちゃんに、水を差したのは美貴君でした。
「なんでぇ?私だって頑張るもん」
「亜弥ちゃんの問題では無いんだよねぇ」
亜弥ちゃんは???を浮かべていますが、梨華ちゃんは分かったようです。
「ひとみだよ。あいつ馬鹿だもん」
そう。ひとみ君はなんと学年でビリの1・2番を争うぐらいの馬鹿なのです。
いつも「ブービー賞だ」と喜んでいますが、周りは呆れ顔。
- 338 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:15
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「えぇ?ひー君って馬鹿だったの?たんが頭良いから出来る子だと思ってた」
「俺は母さん似でひとみは父さん似だから」
そんなことを話していると、ひとみ君がやってきました。
「何々?面白い話?」
何故だかニヤニヤしているひとみ君。自分のことを話されていたとは思っていません。
「特に面白い話ではないから」
「え〜なんでぇ?教えてよ」
「・・・・・・・・」
「無視かよ」
ひとみ君があまりにもしつこいので、3人は無視をして歩き出しました。
その3人の後についていくひとみ君ですが、相変わらず騒いでいます。
「俺だけ仲間外れかよぉ」
それでも気にしない3人なのでした。
- 339 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:15
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- 340 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:16
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「受かったぁ!!」
季節はだんだんと春の日差しが見え始めた3月。
梨華ちゃんは見事志望していた高校に合格しました。もちろん美貴君も。
そんな2人の合格&卒業祝いとして、今日は中澤家でパーティーです。
「「「「「「「「「「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」」」」」」」」」」
全員が揃ったのは久しぶり。
パパもママも忙しいため、前のようにいつでもパーティーはできないのです。
子供たちもパパもママも大はしゃぎ。
「いやぁ、でも良かったねぇ、2人とも合格できて」
「ねぇ。また同じ学校だべさ」
「いつまで一緒なんだか」
「くされ縁よねぇ」
父母の方々が大きくなった2人を見て、感慨深げに話をしています。
一方の子供たちも自然と2人に近づき、労いの言葉をかけています。
- 341 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:16
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「お姉ちゃん頑張ったんだねぇ!」
「頑張ったよぉ。必死だったもん」
「絵里も梨華ちゃんの高校行きたい」
「じゃあ今から勉強しておこうねぇ」
仲良しの絵里ちゃんとさゆみちゃん。
梨華ちゃんはこの2人にとって、憧れのお姉さんです。
「いいなぁ、さゆは梨華ちゃんがお姉ちゃんで」
「ふふふん。いいでしょう」
「絵里なんて冷たいお兄ちゃんと馬鹿なお兄ちゃんしかいないもん」
「おい!俺は冷たくないぞ!」
「・・・・・あなたは馬鹿なほうのお兄ちゃんですけど」
その場にいた子供たちは大笑い。
誰もが「冷たい=美貴君」「馬鹿=ひとみ君」と思っていたことでしょう。
でもひとみ君は自分が馬鹿だという自覚がないのです。
テストで最下位争いをしていても、気付いていないのです。
- 342 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:16
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「ひーちゃんもお勉強しないとねぇ」
「えぇ〜、俺はこのままでいいよ」
「ひーにぃ高校いけなくなっちゃうよ?」
「・・・・・ま、そのうちね」
何となくその話題が終わってほしいと思い、勝手に話を終わらせたひとみ君。
ちゃっかり梨華ちゃんの隣をキープしています。
もちろん亜弥ちゃんも美貴君の隣をしっかりキープ。
麻琴君は愛ちゃんのパシリのように動き回っています。
そして里沙君も絵里ちゃんとさゆみちゃんにいいように使われています。
そんな子供たちを見ている父母の方々。
「どうもこの子達は女の子のほうが強いわね」
「男どもは使われまくりだべさ」
「子は親の背中を見て育つから」
「俺らの縮図やな」
「何かおっしゃいましたぁ?旦那様方々」
パパたちは逃げるようにキッチンへ行きました。
- 343 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:16
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戻ってきた旦那様の手にはたくさんのお酒。
「どんどん飲んでください」
「まだまだたくさんありますんで」
「ありがとぅ」
今日の料理担当は保田パパ。専業主夫だから料理がとっても得意なのです。
「パパぁ、手伝うことある?」
「ん〜?特にないから楽しんでなさい」
「そっか。いつも美味しいご飯ありがとね」
梨華ちゃんの最高のスマイルにデレっとなる保田パパ。
保田パパは子供たちが可愛くて仕方がないのです。
できれば嫁にやりたくない。そう考えています。
「はい〜これでラストの料理です」
「うわぁ、相変わらず旨そうやなぁ」
- 344 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:17
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「いやぁでもさぁ。もうそろそろ恋人が出来る時期だよね」
「もう高校生だからね」
「すでに付き合ってる奴らおるやろ」
バっと一斉に中澤パパを見ました。目を大きく見開いて、興味津々です。
「誰が!?」
「誰って・・・・そんな目すんなや。ええやろもうおっても」
一番反応したのは保田パパです。
一番年上のお姉さんである梨華ちゃんはその確率が高いのです。
「よくない」
「なんでそんな怒ってんねん。あんたん家の子やないから安心しぃ」
「・・・・・なぁんだ。じゃあいいや」
「え、でも気になる。誰?」
「うちの子」
「あぁ。美貴君もひー君もモテそうだもんな」
「と、亜弥ちゃん」
「・・・・・はぁぁぁ!!??」
- 345 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:17
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一番大きな声を上げたのは飯田家のパパ。
大きな目が更に大きくなっています。
「誰!?どっち!?」
「そりゃ亜弥ちゃん見てたらわかるやろ。美貴や」
飯田パパはそのままギロっと美貴を睨みました。その隣には亜弥ちゃんがいます。
可愛い娘を取られたような感覚に陥り、ふつふつと怒りが沸いてきています。
しかし美貴君の隣にはすごく笑顔の亜弥ちゃん。
その笑顔を見ていると、なんだか許せてきちゃう飯田パパ。
「まぁ今日のところはお祝いだし。決闘は次だな」
「子供と決闘すんの?」
「するよ。亜弥は渡さない」
「無理やって。でも中1で初体験とか早いなぁ」
また大きくなる飯田パパの目。目が血走っています。
「本当に付き合っていたとしても、してるかなんてわからないじゃない」
「何言うてんねん。俺の子やぞ」
- 346 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:17
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確かに美貴君は中澤パパの子である。しかしそれを真里ママは真っ向から否定する。
「パパの子だけど、私似だから大丈夫よ」
「だよね〜。良かったぁ」
「・・・・・まだだとしても時間の問題やな。美貴はもう高校生やし」
「パパ。いづれ訪れることなんだから、そんな顔しないの。
早いか遅いかの違いだべさ」
飯田パパはなつみママに怒られ、口を尖らせています。中澤パパはニヤニヤ。
「そうだよ、いづれ訪れることなんだから」
「人ごとだと思って。梨華ちゃんなんてあれだけナイスバディなんだから、
高校行ったらすぐだね」
「梨華はそんな軽い女じゃないから」
「・・・・・梨華ちゃんも時間の問題やろ。またしてもうちの子」
保田パパは顔をしかめて、ひとみ君を見ました。確かに2人は一緒にいることが多いです。
中澤パパが言っていることは、あながち嘘ではないかもしれません。
「そんな日もいつか訪れるんだ」と心の準備をする保田パパなのでした。
- 347 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:17
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「ひーちゃん家来たの久しぶりだなぁ。いつも私の家に来るもんね」
「ん?あーそうかも。本当にしばらく来てないんじゃない?」
飲んで騒いだ大人たちと食べて遊んだ子供たちは、寝ている人が何人かいます。
起きている大人たちはお喋りに夢中。
そこには梨華ちゃんとひとみ君だけになりました。
「ねぇ!久しぶりにひーちゃんの部屋行きたい」
「えっ!?駄目。やめたほうがいい」
「なーんでぇ?掃除してないとか?」
「そうそうそう。今すっごい汚いから見せられない」
「いいよぉ。汚くったって」
ひとみ君の部屋は基本的にきれいです。整理整頓がきちんとされています。
でも部屋に入れたくない理由があるのです。それは思春期の男の子が興味をもつもの。
ひとみ君の部屋には至る所にそれらしき物があります。
少しでも漁られたら確実に見つかってしまうでしょう。
- 348 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:18
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「ねぇ。駄目ぇ??」
首を傾げて上目遣いで言われたら、もう駄目とは言えません。
観念して部屋に行くことにしました。どうか見つからないようにと神様にお願いして・・・
「きれいじゃない。ただ入れたくなかっただけでしょう」
「いや、別に・・・そういうわけじゃないんだけど」
梨華ちゃんは部屋をグルリと見渡して、まず初めに本棚に近づきました。
そこにはたくさんの漫画の本と一緒にあの本も置いてあります。
「相変わらずきちっと整頓してるんだねぇ」
「ん、うん」
ひとみ君はドキドキです。中2男子はそれを見られるのが最も恥ずかしいのです。
梨華ちゃんは一段一段じっと見ています。その本は一番下の段にあります。
下の段に近づき、もう駄目だと思った瞬間、梨華ちゃんはそこから離れました。
そうです。梨華ちゃんは飽きっぽいのです。一通り見たらもうそれで満足なのです。
とりあえず一安心のひとみ君。しかしこれからが大変です。
- 349 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:18
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「部屋の感じも大人っぽくなったかもぉ」
ひとみ君は部屋に飾り物をするのが大好きです。
サッカーボールのミニチュアやユニホーム、レゴなんかも飾っています。
色んな種類の箱も飾っていますが、そこにはなんととんでもないものが飾ってあるのです。
「このミニチュア可愛いねぇ。こんなの売ってるんだぁ」
ひとみ君はそれどころではありません。もう汗がどんどん流れてきます。
見られたら困る箱とは、赤ちゃんが出来ないように男性がつける「あれ」です。
友達とふざけて買い、調子に乗ってそこに飾ったのです。そして忘れていました。
梨華ちゃんが箱ゾーンに突入しました。徐々に「それ」に近づいていきます。
「あーもう駄目だ」と思いましたが、梨華ちゃんはその箱を素通りしました。
梨華ちゃんは箱に興味が無かったのです。きちんと見ていませんでした。
「あーDVDだぁ!」
梨華ちゃんが見た先はDVDゾーン。最も危険なゾーンであります。
- 350 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:18
-
「ねぇ、どれか見ようよ。おすすめは?」
そんなことを言いながら梨華ちゃんはDVDを漁っています。
先輩から譲り受けたエロDVDがたくさんあるそのゾーンへ突入していきました。
ひとみ君の汗は全く止まりません。
「ひーちゃん聞いてる?どれがおすすめ?」
「おすすめは『後藤真希の秘密』だよ」と心の中で思っていても、口には絶対出せません。
ひとみ君が固まっていると、梨華ちゃんはDVDプレーヤーに手を伸ばしました。
そこには昨日見た、ひとみ君おすすめの『後藤真希の秘密』が入っています。
「梨華ちゃん!!何してるの?」
「ん?何入ってるのかなぁと思って」
そう言いながらテレビとDVDの電源を入れます。
ひとみ君は慌ててテレビの前に立ちはだかりました。
- 351 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:19
-
「いや、たいしたもの見てないからさ、あの、ほら。もう下行こうよ」
「えぇ〜。だって下戻っても暇だもん」
「もうそろそろ片付けとかしてるかもしれないし。ね?」
ひとみ君は見られないために必死です。
必死なひとみ君におかしいなと思いつつ、渋々納得する梨華ちゃん。
部屋を出つつ、梨華ちゃんはジッとひとみ君を見ています。
その視線に気が付いて一瞬固まるひとみ君。
「・・・・・何?」
「ん?別にぃ?」
「・・・・・なんで見てるの?」
「・・・ひーちゃん。見られたくないものあるんでしょ」
ひとみ君はドキっとしました。あれだけ必死で拒否すれば、だいたい変に思うものです。
「いや、全然ないよ。オープンオープン」
「ふ〜ん。じゃあいいや」
- 352 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:19
-
そう言って、トテトテと階段を降りていく梨華ちゃん。
ほっと安心するひとみ君。
下に行くと、ひとみ君が言っていた通り片づけが始まっていました。
「ひーちゃんの言ってた通りだったね」
「ん?あーうん、そうだね」
2人も一緒に片付けます。酔っ払って寝ている父達。
「パパが酔っ払ってるの久しぶりに見たかも」
梨華ちゃんは保田パパの顔を見ながら呟きました。
それに対してひとみ君も中澤パパの顔を見ています。
「いっつも見てるな、こんなの」
中澤パパはお酒が大好きで、毎晩のように飲んでいます。
ひとみ君にとってもいつもの光景なのです。
- 353 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:19
-
「よし、だいぶ片付いたわね。さ、飲みなおしましょ」
「「え?」」
「ん?どうしたの?」
「帰るんじゃないの?」
「まだ帰らないよ。帰りたいなら帰りなさい」
プゥっと膨れる梨華ちゃん。家に帰っても一人です。帰りたいわけがありません。
時間は夜の11時。もう他の子供たちはその辺に寝ています。
美貴君と亜弥ちゃんがいないことは敢えて触れません。そこは大人な梨華ちゃんです。
とりあえずひとみ君の部屋に行くことにしました。
「ひーちゃん、暇ぁ」
「俺も暇ぁ」
「なんか面白い話してよぉ」
「面白い話!?そんなの無いよぉ。もう俺寝よっかなぁ」
「え〜。私一人じゃん」
「梨華ちゃんも寝ればいいじゃん」
「・・・・・じゃあ一緒に寝る?」
- 354 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:19
-
ドキっとするひとみ君。この年頃で一緒に寝るだなんて。
しかも梨華ちゃんはスタイルが抜群。男として色々我慢できない部分が出てきます。
「え、いや、あの、、、ほら」
「なんでそんなに焦ってるのよぉ。冗談です」
ホッとする反面、ちょっと残念なひとみ君。
前は一緒にお昼寝などしていましたが、今は全くしなくなりました。
お互い大人になったのです。
シーンと静まった2人の空間。梨華ちゃんが高校生になればまた2人は離れ離れです。
そんなことを考えると、なんだか寂しくなってきます。
「梨華ちゃん高校生かぁ」
「どしたの急に?もうお姉さんでしょ?」
「・・・・・ほんと、お姉さんだね」
「今日は妙に素直じゃない?」
「たまにはこういう時だってありますよ」
「そう?」
フっと笑った梨華ちゃんの顔がとても綺麗だとひとみ君は思いました。
- 355 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:20
-
「ひーちゃんもあと1年すれば高校生じゃない。お勉強しないとね」
「いや、いい」
「どうして?一緒の高校行けないじゃない」
「・・・・・・・・・・」
ひとみ君は馬鹿ながらも考えていることが1つありました。
まだ誰にも言ってない大事なことです。
「どうしたの?」
黙ってしまったひとみ君を心配して梨華ちゃんが声をかけます。
ひとみ君は口をギュっと結んでジッと梨華ちゃんを見ました。
「俺さ、皆と同じ高校行かないよ」
「え?・・・・・勉強すれば行けるよ」
「いや、そうじゃなく、敢えて行かないの」
「・・・・・・・」
「サッカーの強い高校に行きたいんだ」
そう言ったひとみ君の目は真剣で、梨華ちゃんはドキっとしました。
- 356 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:20
-
「サッカーの強い高校って」
「どこでもいい。とりあえず地元じゃなくて、遠くに行くことになると思う」
梨華ちゃんは予想もしていなかったひとみ君の言葉に驚き、ショックを受けました。
もちろん1年間は離れ離れだけど、またすぐに一緒の学校に行けると思っていたのです。
「だって勉強できないしさ。それなら得意なサッカーでやっていきたいじゃん」
ひとみ君はこのことを本当に考えていました。
強いところで自分の技術を向上させたいのです。
梨華ちゃんと別々になることを覚悟の上で・・・・・
「そっか・・・・なんか寂しいなぁ」
「まだ誰にも言ってないから。父さんと母さんにも言ってないし」
「いつ言うの?」
「・・・・・そのうち」
「いつかは離れ離れになるんだけど、ずっと一緒だったからね・・・・・
余計にそういうこと聞くと寂しくなる」
- 357 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:20
-
ベッドに腰をかけ、隣同士に座っている2人。
梨華ちゃんがひとみ君の肩にちょこんと頭を乗っけました。
体が強張るひとみ君。
「本当に寝よっか」
「え?」
「だってまだ終わりそうにないし」
下からは笑い声が聞こえてきます。まだまだ盛り上がっている様子。
「眠たくなっちゃった」
梨華ちゃん呟き、なんだかひとみ君も力が抜けていきます。
「じゃ、寝よ。梨華ちゃんベッドで寝て」
「えぇ〜。一緒に寝ようよ。もう無いかもしれないじゃない」
その言葉にキュンとなるひとみ君。
今のこの雰囲気。告白するには絶好かもしれません。
- 358 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:20
-
『そんなことないよ。これから何度も夜を共にしよう』
『え?いいの?私でいいの?』
『もちろんさ。ずっと一緒だよ』
『うん』
こんなことが言えたらと、ひとみ君は心の中で思います。
「はい、ひーちゃん。ここね」
そう言って梨華ちゃんはベッドの端により、ひとみ君のスペースを開け、
そこをポンポンここに来いと叩いています。
そうなったら行かないわけにはいきません。恐る恐るベッドに入るひとみ君。
梨華ちゃんはベッドに入ったひとみ君を見て、「よし」と言いました。
「おやすみ、ひーちゃん」
「あ、うん、おやすみ」
梨華ちゃんはそのまま身体をひとみ君のほうに向け、くっつきながら目を瞑りました。
ひとみ君のドキドキは止まりません。だって中2に男の子ですもの。
- 359 名前:幼馴染 投稿日:2007/08/13(月) 10:21
-
しばらくすると、梨華ちゃんは寝息を立て始め本当に寝てしまいました。
その寝息が首筋にかかり、興奮してくるひとみ君。そりゃ男の子ですから。
ちらっと横を見ると幸せそうな寝顔。思わずフニャっと笑ってしまいます。
「あー幸せだ」と思いつつ、ひとみ君も深い眠りへと・・・・・
誰もが好きな人と一緒に居れれば幸せです。
誰もがその人と結ばれるわけではありません。
誰もが色々な理由でその恋を諦めてしまうことがあります。
そんな色々なことを経験している9人の子供たちのお話。
(O´〜`)(´▽` ) つづく
- 360 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/13(月) 21:12
- 美貴くんと亜弥ちゃんはどこ行ったんだろうね(・∀・)ニヤニヤ
- 361 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/14(火) 11:36
- え、・・・諦めちゃうの? そんなことないよね、やる時はやる人だもんね。
今度こそ、梨華ちゃんの初めての人になれますように。
ガンバレ!!よっちゃん!!
- 362 名前:名無し 投稿日:2007/08/20(月) 19:45
-
>>360:名無飼育さん様
どこへ行ったのでしょうねww
>>361:名無飼育さん様
応援してあげてください!!
同じ森板に新スレを立てました。
『幼馴染』です。今後ともヨロシクお願いします。
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