CLASSIC
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 17:57
- 初めて書きます。
アンリアルで、吉澤さん主役です。
頑張ります。
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 17:59
- 「Yさんも今日の飲み会行きますよね?」
見覚えのない顔の女の子がにへらっと微笑む。
新入生か。
「あー、そだね」
へらへらと対人用の笑みを浮かべて生返事を返す。
「Yさんってお酒強いんですか?」
「いやー、普通だよ。」
「へー」
「強いの?」
「いやー、普通じゃないですかね?」
二人で座り込んで話していたら、
他の1年生が彼女を呼んだ。
練習後のモップがけは1年生の仕事だから。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:02
- すいません。
即効でコピペミスしました。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:03
- 「吉澤さんも今日の飲み会行きますよね?」
見覚えのない顔の女の子がにへらっと微笑む。
新入生か。
「あー、そだね」
へらへらと対人用の笑みを浮かべて生返事を返す。
「吉澤さんってお酒強いんですか?」
「いやー、普通だよ。」
「へー」
「強いの?」
「いやー、普通じゃないですかね?」
二人で座り込んで話していたら、
他の1年生が彼女を呼んだ。
練習後のモップがけは1年生の仕事だから。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:10
- じゃあっと急いで立ち上がった彼女は、
駆け足で女の子の集団に混じっていった。
「おい」
「いでっ」
どすっと後頭部にサッカーボールがぶつけられる。
相手はすぐにわかった。
「シャワー行くしょ?」
「あー先行ってていーよ」
後輩と話していたせいで、
唯でさえ準備が早いこいつよりも、ずいぶん遅れをとっている。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:11
- 「いーよ、待ってる」
「え?なした?」
「いや一人ぼっちじゃ寂しいかと思ってさ」
「なんだよ。きめーな」
らしくないと、ははっと笑いながら、
自分のボールを袋にしまう。
周りをみると、他の部員はもう体育館を後にしていた。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:12
- スパイクの靴紐を緩めながら、
さっきの1年生に気軽にした約束を思い出した。
彼女の名前は・・・知らない。
後で誰かに聞こう。
目の前のこいつは知ってそうには思えないし。
そうだ、今日は新入生歓迎会だ。
「行く?今日の飲み会」
「あぁ、新歓?」
こいつにしては珍しく、ちゃんと行事予定というものを覚えているらしい。
「うん」
「行けたらいくー」
「そっか」
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:14
- ―――――
乾杯の音頭と共にぶつかり合うグラス。
無責任に掛けられる一気コール。
机上の食べ物を取るために交差する幾本かの腕。
赤い顔。白い顔。青い顔。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:16
- 「吉澤さん、なにとりますー?」
「あーじゃあそのサラダを」
「よっすぃー!一気ご指名だってー!」
「へーい」
「よっすぃグラス空じゃん!何飲む?」
「えーと、ジントニ頼んどいて」
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:17
- 中々放してくれないサークルの方々の隙をついて、トイレへ逃げ出せたのは
開始から1時間は夕に経過した頃だった。
ふうっと息を吐いて顔を上げると、鏡の中の自分と目が合う。
アルコールが入ったからといって、
瞳が潤むこともなければ、顔を赤らめることもない。
かわいげがない女だなんて自分でも思う。
けどあの頃より嫌いじゃない
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:18
- ジーパンのポケットが震える。
メールの着信を知らせたものだ。
内容は簡潔で。
今から行く
おせーよなんて思いながら、
そろそろ向こうに戻ろうかなんて思ったりする。
あいつが来たときにあたしがいないとかわいそうじゃん?
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:20
- ―――――
「吉澤さん、出身どこですか?」
「ん、埼玉」
朝練の時の少女の名前は亀井絵里と云うらしかった。
顔を真っ赤にしているものの、
特に意識が錯乱している様でも、吐き気をもよおしているようでもないので
酔っていないのだろう。
「あーけど高校は北海道」
「え?転勤とかですか?」
「うん。親は今でも北海道にいるし」
「じゃあ今一人暮らしなんですか?」
「うん。」
「いいなー、あたし親元離れたことないんですよー」
「いやー1人暮らしめんどいよー。掃除とか洗濯とか」
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:23
- このコはいつでも笑顔だ。
黒目がちな目を細めてずっとにこにこと笑っている。
人当たりもいいし、きっと両親に大事にされて育てられたんだろう。
卑屈になる自分を抑えて、あたしも最大限に顔を緩める。
「吉澤さんって、フットサル上手いですよねー」
「やーそんなことないよ」
「えー、けど1年の時からレギュラーなんですよね?」
「うん」
「高校の時もフットサルやってたんですか?」
「いや、高校はフットサル部自体がなかったから」
「なのにそんなにうまいんですねーすごーい」
はははっと乾いた笑いを返しておく
褒められるのはあまり好きじゃない。
というより、どう反応していいかわからない。
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:24
- 居心地の悪さを感じて、目の前のグラスに目をやる。
半分以上残っているジントニック。
一気に流し込むと、
喉を焼かれたように熱くなった。
あ、これジントニじゃない
内心とてつもなく焦っているあたしを他所に、
亀井絵里はまだ質問し足りないのか、
あたしの顔を覗きこんできた。
「じゃあ、高校の時は何やってたんですか?スポーツ」
- 15 名前:だい1わ 投稿日:2006/11/14(火) 18:28
- ―――――
静まり返った教室
綺麗に整頓された机
真っ黒な髪
先生の言葉だけが教室に響く
これからの予定や記入しなくてはならない書類が配られ
連絡事項が淡々と述べられる。
その間、誰一人騒ぐことも、寝ることもしない。
- 16 名前:だい1わ 投稿日:2006/11/14(火) 18:29
-
随分真面目そうな高校に入学しまったものだ。
入学早々、あたしは少し後悔していた。
今まで育った地から遠く離れていたこともあり、
あたしは高校に関して全く下調べをしなかった。
先生に決めてもらった志望校の中から、
友達に適当に選んでもらったのがこの学校だった。
私立の女子高
特別進学科
あたしが持っていた情報はこの程度だった。
- 17 名前:だ 投稿日:2006/11/14(火) 18:30
-
「じゃー自己紹介。端から」
少し威圧的な印象のつり目の女教師の号令で
事務的に一人一人が簡単に自分のプロフィールを述べる。
あたしは半分それを上の空で聞いていた。
Yで始まる自分の苗字は、
出席番号は一番最後で、席は一番後ろの窓側。
10年間の学校生活で何一つ変わらない光景だ。
自己紹介の順番が回ってくるにはまだ時間がありそうだったので、
窓の外をぼんやりと眺めた。
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:32
- すいません。
Y→よ です。
- 19 名前:い 投稿日:2006/11/14(火) 18:37
- あたしがいるこの校舎は、
高校の校舎にしては珍しい8階建のビルで、
この教室はその3階だ。
この窓からは、正門と職員用駐車場、そして玄関がみえる。
「あっ」
と、エンジン音と共に正門から2人乗りバイクが入って来た。
運転しているのは茶色い長髪の男で、
後ろに乗っているのはあたしと同じ制服を着ている女だ。
二人ともヘルメットを被っていないし、
どうみたってバイク便には見えない。
どこかの暴走族か不良の方々だろうか。
- 20 名前:1 投稿日:2006/11/14(火) 18:41
-
「ちょっと待ってて」
教師も下の光景に気づいたらしく、
舌打ちをして教室から出て行った。
とたんに教室がざわめいた。
各々が興味津々といった面持ちで、
あっという間に窓側はギャラリーで埋めつくされる。
- 21 名前:わ 投稿日:2006/11/14(火) 18:42
- 「あれ普通科の生徒かな?」
ずいぶん甲高い声だ。
が、返答の声が聞こえない。
あたしに話しかけてるのか?
「え?普通科?」
「うん」
「そんなのあんの?」
「え?知らないの?」
甲高い声の彼女はその声をさらに高くして驚いた。
そんなに有名なのか、その普通科
- 22 名前:だい1わ 投稿日:2006/11/14(火) 18:44
- 「あたし札幌来たばっかでさ」
「あーそうなんだー。地元どこ?」
「埼玉」
目線をそっと地上に戻す。
バイクは止まり、女が降りるところだった。
- 23 名前:だい1わ 投稿日:2006/11/14(火) 18:46
- 「ここの普通科はね」
女が手を振ると、再びバイクは走り出した。
多分新入生だろう。
2,3年生は今日は休みのはずだから。
「偏差値は特進クラスの半分」
女は鞄ひとつ持っておらず、
悠然と玄関にむかって歩いていった。
「卒業後の進路は過半数が水商売」
女が急にぴたっと立ち止まった。
先生とご対面でもしたのだろうか。
「警察沙汰で半数は卒業までに退学」
- 24 名前:だい1わ 投稿日:2006/11/14(火) 18:47
- 屈み込んで地面に手を差し伸べた。
何か拾った?
っと、上を見上げて―――つまり見物しているあたしたちの方を向いた。
左半身を右側にひきつけ、充分に後ろに引いた右腕が力強く体の前を横切った。
とたん、2枚右横のガラスががしゃんっと砕け散った。
幸いにも2重のガラスで生徒に破片は当たらなかったが、
そのガラスの目の前にいた生徒は腰を抜かし、
周りは悲鳴に包まれた。
サッシのうえには何の変哲もない石ころが転がっている。
これ投げたんだ。
- 25 名前:だい1わ 投稿日:2006/11/14(火) 18:51
- 彼女の周りにはガラスの破片が落ちてきているにもかかわらず、そこから動こうとしない。
その凛とした表情は、単純に綺麗だった。
「てめーら、なに見てんだよ!!」
怒鳴った彼女は、即効で駆けつけた先生方に取り押さえられていた。
さすがに先生は殴らなかったようで、
おとなしく学校の中に連行されていった。
「こえー」
これがあたしと彼女との最初の出会い
- 26 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 18:52
- ミスばかりですいませんでした。
今度はもっと頑張ります。
- 27 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/11/14(火) 19:06
- おもしろそうなの発見
頑張ってくださいね
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/15(水) 09:25
- もう作品は完成されてそうですね。
更新楽しみにしてます。相手はあの方かな?
- 29 名前:rero 投稿日:2006/11/15(水) 22:58
- いいもん見っけた
- 30 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 19:44
- その後、ガラスの破片の片付けやら、
ついさっきの事件の説明・・・
っていっても犯人は普通科の生徒でしたぐらいの情報が与えられ、
本日は解散という流れになった。
生徒たちがさっきの騒動のせいで浮き足立っている中、
先生は最後に、ほぼ命令に近い口調で2つの連絡事項を述べた。
「旧校舎には近づくな」
「登下校は必ず正門から」
- 31 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 19:47
- ―――――
プリントを適当に折って、ぺしゃんこの鞄の中に入れていると、
前の席に、さっきの甲高い声のコが後ろを向いて腰掛けた。
「自己紹介ここまで回ってこなかったね」
「あぁ、うん」
「いいなー。あたしああゆうの苦手なんだよねー。すぐ顔赤くなるし、どもるし、噛むし」
ってことは、このコは自己紹介済ましてたのか。
やばい、名前わかんねえ。
しかも、なんか聞きづらい。
「名前なんていうの?」
そうだよね。このコは聞き易いよね。
「吉澤ひとみ、デス」
「ひとみちゃんかぁー、目大きいから?」
「うん、まぁそんな感じ」
- 32 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 19:49
-
ちらっと彼女の胸元をみる。
中学校と違い、高校では名札というものを付けないらしい。
人の名前を覚えるのが苦手なあたしは、
中学時代何度もそれに助けられたのに。
これから先の苦労が目に浮かぶようだ。
「梨華ちゃーん」
ドアのところから目のくりくりした女の子が、
いとも簡単に彼女の名前を呼んだ。
それにしてもあのコ、なんかどっかで見たことがあるような、ないような・・・
ほら、あの朝っぱらからやってる子供向け番組の・・・
「あ、今行くー」
一昔前のトレンディードラマさながらの笑顔で呼びかけに応えると、
彼女・・・もとい梨華ちゃんは、席から颯爽と立ち上がった。
「ひとみちゃんも行こっ」
「あ、うん」
- 33 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 19:52
- ―――――
「ざびぃ」
玄関から1歩出た途端、冷たい風が頬を刺す。
本州からきたあたしにとって、
この寒さは耐え難いものがある。
もう4月だっていうのに、この肌寒い風はなんなんだ。
ブレザーの下に着ているセーターの裾を延ばして、手を中に入れる。
明日からは手袋でもしてこよう。
「えー、あったかくなったよねー」
「Sちゃん、Hちゃんは埼玉から来たんだって」
「あー、だからかー」
柴ちゃん、柴田あゆみというこのコは、梨華ちゃんと同じ中学出身で
彼女もまた特進クラスだということだ。
あたし達が3組で彼女は2組らしい。
- 34 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 19:55
- 「やっぱ北海道は寒い?」
「うん。やばい。あたし、たぶん冬越せない」
「えー暖房あるから大丈夫だよー」
二人は笑っているが、はっきりいって全然笑い事じゃなく寒い。
4月でこの気温だったら、真冬はいったいどうなるんだ。
屋外には暖房がついてないじゃないか。
「それに、門でたらすぐ地下鉄あるし」
「あたしチャリ通なんだよぅ」
地下鉄を利用するほどマンションから学校が遠くなかったから、
引っ越して早々、自転車を買った。
だってこんな寒いと思わないじゃん。
昨日とか晴れてたもん。
- 35 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 19:57
-
「え?だって自転車置き場って旧校舎の方じゃん」
「あー、あっちが旧校舎なんだ。てか、なんで旧校舎って近づいたらだめなの?」
最後の先生の不可解な言葉。
「あっちは普通科の校舎だから」
神妙な顔で梨華ちゃんが嘆く。
「え?それだけ?」
正直拍子抜けした。
同じ高校生に、なにをそんなに怯えることがあるっていうんだ。
確かにさっき石投げたコは恐かったけど、
あんな人は稀だろう。
じゃなきゃ、この学校のガラスは全部無くなっているはずだ。
- 36 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 19:59
-
「それだけって!もーひとみちゃんは知らなさすぎだよ、うちの普通科」
「あーごめん」
「てかさ、早く自転車取りに行かないと無くなっちゃうかもよ?」
柴ちゃんが苦笑いしながら旧校舎の方に足を進めた。
「無くなるって」
冗談だと思った。
だって、ちゃんとチェーンの鍵かけたし。
周りにだってたくさん自転車はとめてあったし。
何だかんだ言って、
梨華ちゃんも自転車置き場まで付いて来てくれたし。
- 37 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 20:02
- 「あ」
がらんとしてる自転車置き場で、
2人組のギャルがあたしの自転車の後輪に向かってしゃがみこんでいる。
見間違いじゃなければ、片割れの手にはニッパが握られていて、
今まさにチェーンを切り離そうとしているところだ。
「やばいよ」
柴ちゃんがぼそっと呟いた。
表情から、盗まれようとしている自転車が
あたしの物だということがわかったのだろう。
あたしも同意見だった。
わざわざ揉めてまで取り返したいほど、あの自転車に思い入れはない。
- 38 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 20:04
-
「ひとみちゃん、自転車あった?」
Rちゃんの高い声は人の少ない自転車置き場によく響く。
ギャルの意識と視線がこっちへ向いた。
「ごめん。梨華ちゃん、空気読むの苦手だから。」
Sちゃんは申し訳なさそうに嘆いた。
いや、君のせいじゃない。
「なんだ、特進か」
つまんなそうに片方のギャルが吐き捨て、
すぐに興味を無くしたことを示すように背を向け、
再びチェーンを切る作業に戻った。
- 39 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 20:14
-
一目であたし達を特進クラスだと判断できたのは、
たぶん見た目からだと思う。
なんだっていうのは、
たとえその自転車の持ち主があたし達だったとしても、
力ずくで盗れるってことか。
完全にあたし達を見下しているってことは、理解した。
少し腹が立ったけど、我慢できないほどじゃない。
ここで無理に取り返す手間と、
再び自転車買う金額を天秤にかけたら、
圧倒的に後者のほうが楽だ。
「ねぇ、それあたしのなんだけど」
どうやら柴ちゃんは、面倒くさいことが好きらしい。
- 40 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 20:17
-
「はぁ?」
さっき悪態をついた女が立ち上がり、つかつかとこっちへ向かってくる。
よく見るとギャルと言うには薄すぎる化粧で、
身長もあたしの肩程度しかなかった。
「じゃあ、ちょーだい」
悪びれもせずそう言うと、柴ちゃんの肩を突き飛ばした。
柴ちゃんは少し後ろによろめいて、
ちょうど後ろにいた梨華ちゃんにぶつかった。
予想していた展開だ。
めんどくさいな
短めの髪の毛を掻く。
- 41 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 20:20
-
「あんさぁ」
「あ?」
ゆっくりと2人の間に割って入る。
相手の女に向き合うと、見下ろす形になる。
いくらイキガッタところで、身長差からくる威圧感は変えられない。
「うぜぇよ、おまえ」
短絡的な頭にわかるように、完結に今の気持ちを表現してあげた。
そして、柴ちゃんにやったように女の喉を突き飛ばす。
うっと息を詰まらせて2,3歩後ずさった女は、
体勢を整えてあたしを睨んだ。
- 42 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 20:22
-
「あさみ!」
後ろにいたもう一人の女が小さい方の女を声で制した。
手にニッパを持ったまま立ち上がると、ゆっくりとこっちへ歩いてくる。
特に何の表情も浮かべないまま、ただ視線はあたしから逸らさない。
背中に冷たい汗が伝った。
ニッパで殴られたら痛いだろうな。
ただ、負ける気はしない。
唇を舐める。
拳を軽く握り締めた。
- 43 名前:だい2わ 投稿日:2006/11/17(金) 20:24
-
二人の距離がちょうど1mまで狭まったとき、
女はぴたっと足を止めた。
さっきの小さい女と違い、彼女はあたしと同じくらい身長がある。
緩いウェーブがかかった茶色い髪と、
少し日に焼けた肌、
はっきりとした顔立ちに、それを引き立てる化粧。
全ての要素が彼女を大人びてみせて、
とても同じ学年には見えなかった。
綺麗な顔をしているから、顔面は殴りたくないな。
ぼんやりとそんなことを考えていると、
「あんた、吉澤ひとみ?」
何の悪意も無い声でそう問われた。
- 44 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/17(金) 20:33
- 長くなりそうだったので、2話は2つにわけます。
>>27 ありがとうございます。 頑張ります!
>>28 ありがとうございます。
ストックはあるんですけど、まだ完結はしていません。
お相手は・・・ご想像におまかせしますww
>>29 ありがとうございます。
- 45 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/20(月) 00:46
- 楽しみにしながら読んでます。吉澤さんの高校時代に一体何が起きてたのか気になります……
- 46 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/11/20(月) 20:14
- 名前が突然イニシャルになるのが気になる・・・
- 47 名前:rero 投稿日:2006/11/23(木) 20:27
- 面白い
- 48 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/02(土) 08:00
- 更新待ってます
- 49 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/04(月) 22:13
- 待ってます
- 50 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:00
-
「あんた、吉澤ひとみ?」
「うん」
まさかいきなり自分の名前を言い当てられるとは思っていなかったから、
纏っていたはずの緊迫感が解けて、 間の抜けた返事を返してしまった。
「中学、埼玉じゃない?」
「うん」
「バレーやってたっしょ?」
「うん」
「ポジションはレフト」
「うん」
「だーよーねー!!」
どんどんテンションが上がっていく彼女を尻目に、
それ以外のあたし含め4人は、揃いもそろって呆気に取られていた。
- 51 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:02
-
「あたしね、里田まい。」
「へ?」
どうして、いきなりこんな友好的な自己紹介が始まってしまったのだろう。
あたしの記憶が確かなら、
ついさっきまで一触即発の雰囲気だったはずだ。
「立ち話もだるいから、何か食いに行こう!」
右腕を強引に掴まれて引っ張られた。
そして左腕に引き止められた。
「ひとみちゃん、どこ連れて行くんですか」
唇をきゅっと硬く結んで、梨華ちゃんはじっと里田まいを威嚇していた。
敬語なのは、里田まいを勝手に年上に設定したからか、
それともこの人の雰囲気に気圧されているからか。
- 52 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:05
-
「あー、なに食いたい?」
「え?」
「何でもいい?」
「うん」
「お好み焼き屋に連れて行く」
そう高らかに宣言した里田まいは
梨華ちゃんを一瞥すると再び強く腕を引いた。
「他の人もいるんじゃないですか?」
梨華ちゃんは怯むことなく、強くブレザーの裾を握りしめたままだ。
彼女とあたしが描いたシナリオはこうだ。
お好み焼きに惹かれたあたしは一人、
里田まいの仲間達が集まる悪の巣窟に連れられる。
3対2よりも、1対大勢の方がより簡単かつ確実だから。
あたしを選んだのは一番生意気そうだから、
あさみと呼ばれた小さい女を突き飛ばしたから、
まぁそんなところだろう。
- 53 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:08
-
「あー、あさみも行く?」
あたし達のそんな思惑など素知らぬ顔の里田まいは、
後ろの小さな女に阿呆面で問いかけた。
「まじで行くの?あいつと」
「うん。どうせ明日会いに行こうとしてたし」
「…あたしはいいや」
「なんで?金無いの?」
「いや…」
口籠る小さい女。
そりゃそうだ。
ついさっき、一触即発の舞台を演じた相手と、
和気藹々とお好み焼きをつつき合うなんて、金貰ったって願い下げだ、普通は。
「なんか、2人だけみたいだよ」
梨華ちゃんの質問に答えたつもりらしい里田まいは、
それでも小さい女の行動が意に解せないのか、
腹いたいの?なんて呑気に心配している。
梨華ちゃんが聞いていたのは、一緒に行く人間ではなく、
待ち伏せしている人間という意味なのに。
この女、はっきりいってバカだと思う。
けど、こんなバカ嫌いじゃない。
- 54 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:09
-
「大丈夫だよ」
未だ心配そうな表情を浮かべる梨華ちゃんに、
にっと笑顔を見せると、
梨華ちゃんは掴んでいたあたしの腕を放した。
「じゃっ、行くか」
-----
- 55 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:12
-
「よっ」
かけ声と共に、目の前でジュウジュウと焼かれるエビ玉が宙を舞った。
「おー、よっすぃーうまいじゃーん」
不器用なのか、目の前の彼女―まいと呼べと言われた―の豚玉は、
無惨にも真っ二つに割れていた。
しかし、それを気にする風でもない彼女は、
ペタペタとヘラでお好み焼きを叩いている。
- 56 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:14
-
「あのさ」
鉄板の上からあたしへ目線を上げた。
「なんであたしのこと知ってんの?」
さっきの、彼女が使ったよっすぃーというあだ名は
小学生のときから呼ばれているものだ。
そう呼ばれることには慣れているけど、
彼女がそれを知るはずがない。
「んとね、テレビと雑誌でみた。」
「は?」
「よっすぃー、自分が思ってるより有名人だよ?」
そんなわけない。
過去の自分のどの行いを振り返ってみたって、
生まれ育った地から遠く離れた、
北海道で有名になるコトに心当たりが無い。
- 57 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:16
-
「いや、まいだけでしょ」
冷静に切り返したのは、結局一緒に来た小さい女―名前はあさみ。
広島焼きをせっせと作る手はそのままに、あたしを見る。
「バレーオタクなんだよ、こいつ」
「そんなことないよ」
不満そうに反論するまいを無視して、あさみは続ける。
「バレーボールマガジン毎月買ってるし、
しかもそれ隅々まで読んでるし、暗記してるし」
「普通だよ!」
「バレーのビデオ、なんま持ってるし」
「普通だってー」
それでか。あたしのコト知ってんのは。
- 58 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:18
-
「てか、なんでよっすぃーはこんな高校にいんのさ!」
突如、こっちに話を振ってきた。
これ以上オタクぶりをバラされるのが嫌だったのだろうか。
「親の転勤で」
「じゃなくてー、同じ札幌にしたってもっと強豪校行けばいいじゃん!
推薦とか貰えたっしょ?」
「は?よっすぃーってそんな有名な選手なの?」
あさみは卵を割る。そろそろ仕上げらしい。
あたしもソースを塗ろうとテーブルの隅に手をのばす。
「そんなことないよ」
それは謙遜でもなんでもない。
- 59 名前:‘ae“n?b 投稿日:2006/12/08(金) 05:20
- 「去年全中でベスト8になったぐらい」
あたしの上は腐るほどいる。
ただ、他校から推薦が来たのも確かだったけど。
「へー、なんかすごそうだねー」
あさみはがしがしと広島焼きを切り分けながら素直に感心してる。
「いや、全中ベスト8ってめちゃめちゃすごいから!
しかもよっすぃーの場合、県代表にも選ばれてんだよ!」
「よく知ってんね」
苦笑いが溢れる。
バレーオタクってのは本当らしい。
「よっすぃーってあだ名も雑誌で?」
「うん。てか、試合もみたし」
ソースを塗ると、鉄板に垂れた部分がバチバチと跳ねた。
ソースの焦げた匂いが食欲を掻き立てる。
うまそうだ。
「食っていい?」
にへらっと笑って向かいの席の二人に問いかけた。
二人もちょうどソースを塗るところだ。
「おーいいよ。食いなー」
あさみが快く了解してくれた。
- 60 名前:?第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:22
-
――――
「いや、まじで勿体無いって、よっすぃー」
食後の一服をしながら、まいは話を蒸し返した。
彼女のハスキーな声はコノ白い煙が原因じゃないだろうか。
結局あたしとまいが3枚、あさみが2枚お好み焼きを平らげた。
腹一杯、もう食えない。
「うちの高校なまらバレー弱いよ?てゆうか、活動してんの?って感じ」
煙を吐きながら、まいは熱く語る。
- 61 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:23
-
「んー、べつに高校でバレーやんなくてもいいかなーって」
「は?勿体無いって!弱くてもいいならうちの高校でやろーよー」
「んー」
「よっすぃーやんなら、、あたしも入るし、バレー部」
「いやーいいよー」
「えーやろーよー」
「もー、よっすぃーがいいって言ってんだからいいじゃん」
あさみが呆れたように、まいを宥める。
あたしは苦笑いを返した。
「むー」
まいは拗ねたようにあさみを睨むと、
右手のタバコを灰皿に押し付けた。
- 62 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:24
- 一転、あたしの顔をみて、にやっと笑う。
何を企んでいるんだ。
まいはぺちゃんこのスクールバックの中をごそごそ漁ると、
一枚のくしゃくしゃの紙を差し出した。
それはもう、誇らしげな顔で。
「なに、これ?」
ごみか?ごみだよな。うん。
「ま、見てみ。」
言われるがままに丸まったその紙を開いてみる。
- 63 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:26
-
「あー」
それは名簿表だった。
名前と出身中学校が、組別に出席番号順で記されている。
そういえば、朝配られた気がする。
そして捨てた気がする。
ほら、いらないもの持ってると、散らかるじゃん。
「で?」
これがなんだっていうんだ?
「奇跡が起こったんだよ」
「は?」
- 64 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:28
-
目を輝かせながら、まいは隣の席に移動してきた。
「まずこの人」
興奮気味に名前を指す。
3組12番 是永美紀 五軒中学校
「この人がどうしたの?」
「去年の白鳥杯の最優秀選手。ポジションはレフト」
「白鳥杯?」
「札幌市の大会」
そんなんあるのか。
- 65 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:31
-
「札幌選抜にも選ばれてたし、普通にうまいよ。
何でもできるって感じ」
「へー、じゃあなんでまたそんな人が、この高校に?」
素朴な疑問。
本州育ちのあたしはともかく、
彼女は札幌の人なのだから、ここのバレー部のことぐらい知ってた筈だろう。
「さぁ?」
さすがのバレーオタクでもソコ迄はわからないらしい。
「特進クラスだし、学業重視って感じなんじゃん?
スポーツ推薦採ってんのバカ校ばっかだし。」
あさみがあまり興味なさそうに言った。
あたしの勘だけど、
あさみは特進クラスの人が好きじゃないのだと思う。
さっき自転車置き場でだって、
すごい敵意を感じたし。
- 66 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:32
- 「あとね」
気を取り直して、まいは次の人を指差す。
9組14番 後藤真希 栄街中学校
「このコは札幌選抜候補までいった筈」
「はず?」
「なんか選考会サボったらしいよ」
「はぁー」
俗に言う問題児ってやつか。
- 67 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:34
-
「背はそんな大きくないんだけど、肩がなんま強いし、ミートもうまい。ポジションはレフト。」
「詳しいね。」
さっきの是永さんと違って、
この後藤さんは代表だとかの表舞台に立ってないらしいのに。
「このコ、同じ地区だったから、何回か試合したことあんだよね」
「へー、どっちが強かったの?」
「んーとね、チーム的にはどっこいどっこいかな。
後藤さんのチーム、他があんま上手くなかったから」
「てゆうかあのチーム、試合前に酒飲んでたもん」
あさみが説明を笑いながら付け足した。
- 68 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:37
-
「あさみもバレー部だったん?」
「うん。リベロ。チビだからね」
「まいは?」
「あたしレフト」
「へー」
どうでもいいけど、みんなレフトだな。
- 69 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:39
-
「あとはね…」
まいが言いにくそうに顔を顰めた。
10組 藤本美貴 滝川中央中
コノ名前どっかで見たことがある。
どこだっけ?
「こいつはねー、後藤さんを上回る超問題児」
「いや、美貴もまいには言われたくないと思うよ」
「うっさい。ともかく、美貴はやばいから」
まいはタバコを指に挟んで、
ブレザーのポケットから100円ライターを出した。
- 70 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:43
- 「じゃあなんで紹介してんのさ」
あさみが反論する。
「だってさー、やっぱ一番戦績がすごいのって美貴じゃん」
「けど、美貴ってけっこー前にバレーやめたっしょ?」
なんか、二人はこの藤本美貴という人で
熱く盛り上がってるみたいだ。
いや、熱くなっているのはまいだけか。
割り込んでしまってもいいだろうか。
「その、藤本美貴って人はポジションどこなの?」
「全中優勝した時はライト、まーあのチームは2セッターだったんだけど」
「全中優勝?!」
「うん。2年前の。」
「…あー」
そういえば、中二の時の全中って北海道のチームが優勝した気がする。
あたしは当たんなかったけど。
すんげー小さいチームに日本一持ってかれたって、
先輩達が騒いでいたような。
- 71 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:49
-
「ちなみに、道代表の時はセッターだったよ」
「へー」
「アクエリアス杯でベストセッター賞貰ってたし、
小学生の時も全国で3位までいってた。」
「すっげー。エリートじゃん」
アクエリアス杯っていうのは都道府県対抗だから、
つまりはそのコは北海道で一番、
いやベストセッター賞ってぐらいだから、同年代のセッターで一番ってコトか。
あたしなんかより、全然すげーじゃん
- 72 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:54
- 「ただね、性格に問題ありなんだよ」
「まい、普段仲良いくせに」
「あ、知り合いなの?」
さっきから二人とも美貴って呼び捨てにしてるから、
なんとなくそうかなっと思ったけど。
「うん。」
「てか、よっすぃーも今日見たんじゃん?
美貴、特進クラスの窓ガラス割ったって言ってたから」
蘇る光景。
落ちていくガラスの破片と反射する太陽光。
凛とした態度で睨みつける女。
「あー!!って、あれが藤本美貴?」
- 73 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 05:56
-
「恐いべ?」
「かわいいよね」
「は?」
結構距離離れてたけど、
あたし目いいからちゃんと顔覚えてる。
二人はごにょごにょと小さい声で相談を始めた。
「よっすぃーってちょっと変だね」
「恐いものしらずってゆうか世間知らずってゆうか」
「あれかな?レズなんかな?」
「えー!?確かによっすぃーかっこいい顔してるけどさ…」
「おーい、全部聞こえてるよー」
ぎょっとした顔で二人同時に振り返った。
「あ、まじで」
「ちなみにあたしレズじゃない。中学ん時彼氏いたし」
- 74 名前:?第二話 投稿日:2006/12/08(金) 06:02
-
「なんかそれはそれで残念だわ」
まいは正面向いて座り直すと、面白そうに笑った。
この人は一体あたしに何を期待しているんだ。
「美貴顔はかわいいけどさ、あいつまじ危ないから。」
「確かに」
スポーツマンとしてどうかと思うよ、あれ。
「だから、美貴を誘うのはお勧めしないけど、
他の二人誘えばあたしら会わせて五人じゃん。」
頭のなかで指を折る。
1、2、3、4、5人
ホントだ。
- 75 名前:第二話 投稿日:2006/12/08(金) 06:03
-
「もう一人どっかから連れて来れば試合できっしょ!」
「ちょっと、あたしリベロ」
「だからよっすぃー、一緒にバレー部入ろう!」
あさみの訴えを無視して、熱血先生さながらの熱い瞳をあたしに向けた。
ははっ
「う、うん」
あたしは昔から押しに弱かった。
- 76 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/08(金) 06:23
- 更新遅れてすいませんでした。
次こそは早め早めの行動を心掛けます!
>>45 ありがとうございます。
吉澤さんの高校生活はやっぱりスポーツなイメージで。
>>46 すいません。毎回コピペミスしちゃってますね。
今度こそ頑張ります!
>>47 ありがとうございます!
>>48、49 次回は早く更新できるように頑張ります!
- 77 名前:名無し読者 投稿日:2006/12/08(金) 10:20
- こ、これは・・・面白い!期待してますよ!
- 78 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/08(金) 18:34
- どんな展開になるのか楽しみです。後から出てくるメンバーとの絡みがどうな感じになるのか気になります。
- 79 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/08(金) 23:19
- おもろいっ!!
- 80 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/09(土) 01:49
- ははっw
押しに弱いんだw
- 81 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/11(月) 17:30
- 待ってましたよー
いい展開
- 82 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/14(木) 16:06
- 待ってます
- 83 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/20(水) 19:47
- 待ってますよー
- 84 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/26(火) 22:29
- 待ち
- 85 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/03(水) 16:06
- 明けましておめでとうございます
更新待ってます
- 86 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/03(水) 16:06
- 明けましておめでとうございます
更新待ってます
- 87 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 17:52
-
すすきのから豊平川に向かって、緩やかな坂道が続く。
晩御飯を済ませたあたしの、自転車を漕ぐ足は軽く、
繁華街を背に、帰路を順調に進んでいた。
4月だっていうのに、札幌の夜はまだ肌寒く、
冷たい風に肩が竦む。
この前、曇りの日に学習した筈なのに。
あたしはバカだ。
ラグランの裾を伸ばして、手の甲を隠すと、少し暖かくなった気がした。
あ、うちの制服
道沿いのコンビ二から出て来た少女が目に留まったのは、
そんな簡単な理由だった。
うちの制服のスカートは、ド派手な水色と青のチェックなので、
いくら上半身に指定ではないセーターを着ていても、
見間違えようがない。
- 88 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 17:54
-
覚束無い足取りで歩道に出て来たその少女は
体を支えるように道路脇の電信柱に凭れ掛かった。
酔っぱらいかな
夜道の闇に紛れて、顔までは確認できないが、
その様子から、平常でない事は簡単に伺い知れた。
触らぬ神に祟りなし
そんな格言は一般常識として身に付いていた筈なのに
距離が近づいていくにつれ、彼女の姿を目で追ってしまう。
変態か?あたしは。
- 89 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 18:11
-
「あ、やばいかも」
そう思ったのか、実際に声に出したのかはわからない。
タクシーを止めるような仕草で、
少女は不用意に車道へ足を踏み入れた。
ヘッドライトが目に飛び込んで、眩しさに目を細める。
甲高いブレーキ音と、鈍い音が耳に響いた。
瞬間をみていないものの、
信号も無いのに止っている車とーもちろん、タクシーじゃないー、
その脇に転がっている女子高生が、嫌が応にも状況を説明してくれている。
今まで漕いでいた勢いそのままに
倒れている少女のすぐ横まで駆け寄って
自転車のスタンドを立てた。
「大丈夫ですか?」
ここで返答が無ければ、即刻救急車を呼ばなくてはと、
片手に携帯電話を握りしめていたあたしは、相当冷静だと思う。
- 90 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 18:24
-
「いってぇ」
少女はゆっくり上半身を起こすと、左膝を抱え込んだ。
短いスカートが捲れて、パンツがみえる。
「あの、パンツ…」
少女は気にしない様子で、
擦りむいた膝に、ふーふーっと息を吹きかけている。
「あ、血でてる」
慌ててジーパンのポケットを探る。
ハンカチなんて気が利いたものが出てくる筈もなく、
さっき街角で貰った消費者金融のポケットティッシュを掴んで、
はいっと差し出した。
「あ」
顔を上げた少女は、他人と言うにはあまりにも似過ぎていた。
間違いない。
入学式の日に暴れてたコだ。
- 91 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 18:27
-
「ありがと」
素っ気なくそう言ってティッシュを取ると、おもむろに鼻をちーんっと咬んだ。
そういう使い方をされるとは思っていなかったけど、
とりあえず、膝の他に出血をしてる様子も無く、
大事に至るような怪我はしていないみたいで安堵する。
「救急車とか呼ぶ?」
「いや、いい」
少し釣り気味の強い目が不機嫌そうに、
あたしを見つめた。
それはどこか虚ろで不思議と恐くなる。
- 92 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 18:33
-
「美貴手上げてたよね?」
「へ?」
「道路渡るとき」
自身を美貴と呼んだ女は、あたしの返答を待たず、
むかつくなぁと嘆いて立ち上がった。
多分美貴は道を渡ろうとしたんだと思う。
小学生のように手を挙げて。
ただ、彼女の立っている場所に横断歩道は無く、
彼女がどこを渡ろうとしたのか、あたしにはわからない。
立ち上がった彼女、美貴は、あたしより随分背が低く華奢で、
まいの言うような才能溢れるバレーボール選手にはとても見えなかった。
ただ気が強そうなところはスポーツに向いていると思うけど。
スカートに付いた埃を払うのに夢中な横顔に
あのさ、と声をかける。
- 93 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 18:38
-
「朝高?」
朝高、というのは、あたしの通う朝比奈女子高校の略称、
というのを今日梨華ちゃんに聞いた。
実際に使ってみると、なんだか格好つけてるみたいで、
少し恥ずかしい。
「そうだけど」
「あたしもなんだ」
「へー、何年?」
「1年」
「あー、じゃあ美貴と同じだ」
淡々と会話を繋いでいく。
何故だか、それはとても不自然なコトのように感じた。
- 94 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 18:41
-
「おいっ!何処見て歩いてんだよっ?!」
割れた怒鳴り声が会話を遮る。
運転手が車から降りて来た。
声の主の若い男は20代前半といったところだろうか。
ツンツンに立てた汚い金髪も、高圧的な態度も、気に食わない。
まぁ私の個人的な感情はさておいて、彼が怒るのも無理は無かった。
美貴の意図はどうあれ、彼女は突然車道に飛び出したのだから。
「うぜぇ」
一言そう呟くと、美貴は1度足下に目線を落として、
石ころを軽く蹴飛ばした。
男はバンパーのへこみを気にして、私達に背を向けているから、
気付いていないだろうけど。
- 95 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 18:53
-
ねぇ、と声を掛けられると同時に、
美貴の手が、あたしの手首を掴んだ。
「これ、貸して?」
美貴は冷めた声で言い放つと、あたしの目をじっと見詰めた。
口元が薄く微笑んでいるのは、愛想笑いのつもりだろうか。
0円にもなんねぇよ。
掴まれた手首に巻かれている銀色の腕時計を外して、
彼女の左手に握らせた。
「ちゃんと返すから」
確かに端からみたら、恐喝にでもみえるだろうな。
少し笑いそうになった。
「あとコレも」
美貴はあたしの返答を待たず、
自転車のハンドルに引っ掛けてあったU字ロックを手に取ると、
鼻を小さく啜った。
街頭の淡い光に照らされる彼女の横顔は、
酷く冷たかった。
- 96 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 18:59
-
車までの3歩の助走は獣のようにしなやかで、
勢いのまま美貴から放たれた半円の金属は、
工事現場のような音をたてて車にめり込んだ。
テニスの素振りのようにそれを繰り返す度、
ドアは抵抗することなく歪んでいく。
「てめぇ、なにしてんだぁあ!!」
4度目のスイングを終えた後、
男の怒鳴り声と同時に、
美貴は突き飛ばされるように投げられ、道路に転がった。
当然のコトだが、美貴の凶行に男は明らかに怒っていた。
眉間に皺を入れ、傍目から観てわかる程歯を食いしばっている。
「おめー、まじふざけんなよ」
そう言って男は美貴に詰め寄る。
そんな男をみて、美貴は笑った。
それを人は狂気と呼ぶのだろうか。
だとしたら、それはとても美しいものだ。
- 97 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 19:07
-
立ち上がる美貴と掴み掛る男が交差する。
瞬間、空気を切り裂いて、U字ロックが男の顔面めがけて飛んでいく。
それはトビウオが跳ねるみたいな軌道で向かい、
男の腕をすり抜け、見事に着地した。
テレビや漫画みたいな、派手な音はせず、
その代わりに、男の鼻血が、アスファルトを赤く染めた。
うぅっと唸って、鼻を押さえる男を、美貴は容赦なく殴りつけた。
何の躊躇もなく、淡々と。
飛び散る男の血が、美貴のベージュのセーターと
薄い茶色の髪の毛を赤く染める。
横っ腹に金属がめり込むと、男の膝はガクっと折れ、地面に踞った。
男を見下ろす美貴は、殴りたい衝動に身体を支配されているみたいだった。
たぶん、美貴はこの男を殺すんだろう
- 98 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 19:11
-
美貴は、飽きたとでも言うように、U字ロックを放り投げると、
手首に嵌めていたあたしの腕時計を、ナックルのように付け替えた。
ゆっくりと男に跨がると、
体重を十分にのせて、拳を男に叩き付ける。
5度目のパンチで男は抵抗をやめた。
だらんと伸びた両腕は、
そのまま生への放棄にみえる。
漂って来た血の匂いは生臭かった。
- 99 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 19:26
-
「みきたん!!」
怒りを含んだ呼び声が、美貴の動きをとめた。
隣に並んだセーラー服の少女の気配に、あたしは全く気付かなかった。
魅入っていたんだと自覚する。
「亜弥ちゃん」
美貴は彼女に向けて笑った。
とても場違いに甘ったるく。
無垢な少女のように。
それだけで、あぁ美貴はこの亜弥というコのコトが好きなんだな、と理解した。
それは、べつに恋や愛とか、そんな下らない概念ではなく。
だから、美貴が一目散に亜弥に駆け寄った時も、
初めて見るのに、なぜだかそれはすごく自然なコトのように思えた。
- 100 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 19:27
-
「何してんの?」
亜弥のその問いかけには、幾分かの怒りが含まれていて
少しトゲトゲしかった。
まぁ、この惨状を見れば当然だけど。
「んとね、車に轢かれたから怒ってた」
「はぁ?嘘でしょ」
「いや、まじ」
美貴は思い出したようにあたしを見て、
ねっ、と同意を求めてくる。
「あー、はい。車とぶつかってました」
急に振られても、と思いながら、
亜弥をみてきちんと応える。
- 101 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 19:30
-
「ほらー」
美貴は得意げな子供のように、亜弥に主張する。
「にしては、あんた随分元気だね」
尤もな感想を述べると、亜弥は美貴の頬をぎゅっと掴んだ。
いたいーっと騒ぐ美貴の声より遠くで、サイレンが聞こえた。
誰かが警察を呼んだのだろうか。
「やばっ」
「おー」
「おーじゃないっ!逃げるよっ!」
「はーい」
亜弥はまるで保護者のように美貴の手を引いた。
なぜか、美貴はその手が無いと生きていけないみたいにみえた。
勝手にそんなコトを考えているあたしは
そうとう気持ち悪い。
- 102 名前:3 或る街の群青 投稿日:2007/03/10(土) 19:32
-
「じゃあ、おねーさんも頑張って逃げて下さい」
亜弥が律儀にあたしに手を振った。
美貴はあたしに、1度目より上手な愛想笑いを浮かべた。
2人はあたしに背を向けると、
夜の街へ、ビルから落ちる早さで駆けて行く。
その姿をみて、あたしは1つの漫画を思い出した。
2人の男の子の話だ。
何となく、美貴と亜弥が彼らに似ていると思った。
まだ、彼女達のコト、何一つ知らないけど。
なんとなく、そう思った。
- 103 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/10(土) 19:51
-
更新しました。
遅れてしまってごめんなさい!!
パソコンが壊れてました orz
これからは、サクサクいきますです。
レス、ありがとうございます
>>77
ありがとうございます
>>78
頑張ってうまいこと絡ませたいっス!
>>79
ありがとうございます
>>80
吉澤さんってそういうイメージですww
>>81-86
遅れてしまってすいませんでした。
次回こそは、素早い更新を目指します。
- 104 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/11(日) 21:52
- 続きが気になりますね
更新楽しみにしています。
- 105 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/14(水) 00:22
- 更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
待ってましたー!!
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