味っ娘。

1 名前:huusai 投稿日:2006/12/21(木) 14:37


はじめまして。
某板でまこあい小説を書いていました。

今回は新作で新スレです。
料亭を舞台に人々の出会いを通して主人公が成長していく姿や恋愛模様を描いていきます。
登場人物、CPも様々です。
とりあえず中心CPは、まこあいで。

ネタが浮かび次第、全く関係のない短編も書いたりします。
では、宜しくお願いします。

2 名前:始まり 投稿日:2006/12/21(木) 19:48

拝啓 おばさん、おじさん
こんにちは。麻琴です。
とうとう到着しました。夢の東京、Tokyoです。
5月の東京はそっちに比べて何だか、暖かいです。
でも、あたしはもっと暑いと思ってました…。
…半袖は流石に寒いです。それも、そんなあたしを見る周りの目で冷たいです。
でも!そんな事でしょげてる場合じゃないんです!
今日から、あたしの板前生活の第一歩の始まり!
おじさん、おばさん、地元ッティー、先生、ポチ、タマ、魚屋のおじ……みんな言ってたきりがない!
みんな、待っててよ。

あたし、板前になります!!!!!
3 名前:上京 投稿日:2006/12/21(木) 20:23



「………寒い。気候も人の目も…寒い。」
五月の東京。平均気温、約摂氏十八度。
空気が悪いとはいえ、普段は心地良い爽やかに過ごせる時期である。とはいえ、いつでも暖かいとは限らない。
本日の東京は、寒かった。太陽も出ていない、曇り空。

まるで麻琴の上京を不服とでも思っているかのよう。

「…東京って人多いなぁ。今日はお祭りかってくらいだ…。」

スクランブル交差点。高層ビル。電気街。危なそうな路地裏。路上パフォーマー。セレブ。ギャル。秋葉系。
どれも麻琴の純な瞳には新しく、珍しく、何か始まりを予感させる物だった。

道行く人。麻琴をチラリ、ジロッと見て、噴き出したり、哀れんだ瞳で見つめる。
それもそうである。現在の麻琴の姿。頭にキャップ、カボチャ色のTシャツにビンテージ物のジーンズ。
大きな黒いリュックサックを背負い、紙袋片手にしわくちゃになった地図を眺めている。
当の本人、自覚がないのかあまり気にも留めていない様子。ド天然。
4 名前:上京 投稿日:2006/12/21(木) 20:27
どれくらい歩いただろうか。寒さにも慣れてきた。
毎日が祭りの都心を過ぎ、下町のような雰囲気が香る街へやってきていた。並ぶ住宅も古い家がちらほら見える。
「…なんか東京っぽくないなぁ。少し歩いただけで街並みがこんなにまで変わるとは…やるな、tokyo。」
最初は寂しかった独り言も、何だか慣れてしまって。今では人の目も気にせず、一人ノリツッコミまでこなしてしまう。
恐るべし、田舎っぺ大将・麻琴。
5 名前:上京 投稿日:2006/12/21(木) 20:41

―――――――ポッ、ポツ、ポツ。

「ちべたっ!!おぉ、恵みの雨ー。アクアフォースー……ってそんな事言ってる場合じゃ。雨!?やばっ!!あたし、傘なんか持ってきてないよ…!」


―――――――ザァァァァァ、ザァァァァァ。
「……チェ。記念すべき上京一日目だっていうのに、お天道様は意地悪だな。まだ料亭の場所だって見つかってないし、半袖だし、傘はないし…。」

麻琴は、走って逃げ場を探した。数分後逃げ込んだのが、人一人見当たらない寂れた商店街。
商店街の隅、リュック背負ったまま何故か正座。髪からは水滴が滴り落ち、地図はもう地図とは言えない代物に変わっていた。
その姿、まるで子犬のよう。

「……これからどうしよう。人に聞くったって、人いないし。」
誰一人、道を通る姿は見当たらず。雨音だけが妙に響いていた。
明るい麻琴でも、ここまで不運だと溜息も出る。そして、俯いた。

(正座、少し痺れてきた。)
重力に従って、髪から滴り落ちる水滴見つめながら、途方に暮れていた。

そんな時

天使は

舞い降りたのであった
6 名前:上京 投稿日:2006/12/21(木) 21:25

「……あのぉ、大丈夫ですか…?」

どこか訛りのある澄んだ声。
麻琴は、ゆっくり、顔を上げた。

「…風邪、引くで?」

和柄の傘、頭の上でお団子にされた髪、淡い桃色の着物。
人形のような、綺麗な可愛げのある薄化粧された顔。…ちょっとサルっぽいけど。

ポカーン。漫画なら絶対に顔の横に書き足される擬音。
口あんぐり。瞬きもしないまま、麻琴は女性と呼ぶには少し早い、少女を見つめた。
7 名前:上京 投稿日:2006/12/21(木) 21:25

少女は、
困ったように、
可憐に、
笑った。
8 名前:huusai 投稿日:2006/12/21(木) 21:30
本日はここまでと言う事で。

更新日時はまばらです。
暇潰し程度に読んで下さると作者も喜びます。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/22(金) 00:16
面白そうです。
続き期待!
10 名前:上京 投稿日:2006/12/22(金) 20:48

「……あの、ほんとに風邪引いちゃう。」
「…………はっ!!ぁ、あの!だ、だ、だ、大丈夫っです!!これくれい!」
「…こんな濡れてるのに、大丈夫なわけないやろ。」
我に返った麻琴の口調は噛み噛み。頬はわずかながら赤らんだ。

麻琴のそんな姿を見て、少女はまた笑う。
少女のそんな姿を見て、麻琴の早くなる。

「…良ければ、家で雨宿りしてって。当分、やみそうにないし。」
「あの、ほんっとに大丈夫です!!お気持ち嬉しいですけど……」
「迷惑になるから、なんて言わんといて。ここで凍え死んでも誰も助けてくれんし。」
「……えっ…でも…。」
「でも、とか言わないで。ほら、行きましょ。」

差し出される綺麗な手。
麻琴は、自分の濡れた手をシャツの裾で拭いた。シャツも濡れているのだから変わりはない。
しかし、今の麻琴はそんな事も分からないくらい、少女に見とれていた。

重なった手。麻琴は少女に引っ張り上げられる。

「…ありがとうございます。」
「以外に力あるやろ、あたし?」
首を傾げて、微笑みながら麻琴の顔を覗く。
麻琴の目は、泳いでいた。心臓は破裂しそうな程脈を打つ。

「ほな、行きましょ。」
「…はい。」
(もしかして傘一つ!!相合い傘ってヤツですよね!?)

密着するほど近い距離で、心臓の音が聞こえてしまわないだろうか。
麻琴の不安は大きくなる。
今の麻琴は板前になるために上京した事なんてスッカリ忘れているようで。

ただただ、少女と心臓の音の事ばかり、考えていた。
11 名前:上京 投稿日:2006/12/22(金) 20:51

商店街には、静けさと雨が降るまで地図だった紙くずが残った。

12 名前:此処が味っ娘 投稿日:2006/12/22(金) 21:19


「……へぇ、今日こっちに来たんか。」
「はい、夢追っかけて勢いで来ちゃいました。」
雨は一向に止む気配もなく。一つの傘に並んだ二つの影にゆったりとした時間が流れていた。
とはいえ、麻琴は未だに緊張やら何やらでぎこちない。歩き方なんて、右足と右手が同時に出る始末だ。

「この坂を上れば、家に着くがし。」
商店街を抜け数分歩くと、石畳が続く、歴史深そうな、神社や寺が並びそうな街並みが広がった。元々京の下町のような街だが、この辺りは京都の石畳道のようで、より本当に京都へ訪れた錯覚に陥りそうになる。
「…古風な街並みですね。そうだ、京都へ行こう…みたいな。」
「フフ…あなたって面白い。」
「あはは、そうですか?…照れるなぁ。」

天然なのか。多分、天然である。
13 名前:此処が味っ娘 投稿日:2006/12/22(金) 21:55
「到着〜。」
数十メートルの緩やかな坂の上に見えたのは、土壁の低い壁。中央には木の扉。
扉を潜ると、豊かな新緑の中に見えたのは古い木造の建物。暖簾や看板は出ていないが、何かしら店をやっている雰囲気が漂っていた。
手入れされた新緑と建物まで続く砂利道。

麻琴はこの神秘的な全てに魅了されていた。
玄関の扉は引き戸。あの、ガラガラと横に引く扉の事である。
傘を閉じ、少女が扉を開く。


14 名前:此処が味っ娘 投稿日:2006/12/22(金) 21:55
「…ただいま帰ったとぉ。」
「お邪魔しま……。」
扉を潜った瞬間、目の前に広がるのは席の並ぶカウンター、そして六人掛けのテーブルが数個並ぶ座敷。座敷の奥の廊下には、個室のような襖が並んでいた。
その風景に、麻琴の動きが止まった。

すると、個室らしき襖から箒片手に姿を現したのは、臙脂色の着物を身に纏った色の黒めな少し顎がしゃくれた女性。
15 名前:此処が味っ娘 投稿日:2006/12/22(金) 22:04
「お帰りなさい、愛……って、あら?お客様?」
「この人、今日上京したてで行く所も分からずに福田商店街で雨宿りしてたんやざぁ。家で雨宿りさせちゃ駄目?」
「全然いいわよ〜。何だか、すっごい人の良さそうな男の子みたいだし。」
「梨華姉、この子女の子やって!」
「あら!ごめんなさい、帽子深く被ってるものだから。つい。」
オホホホ、口に手を添えながら恥ずかしそうな笑い声を上げる。

すると、固まっていた麻琴が口を開いた。
「……ここって、料亭、やってるんですか…?」
「ほやよ?」

「…すごい!!本物の料亭!!すごい…木造の建物に手入れされた木々。此処は全室個室性じゃなくて、カウンターや座敷もある。…カウンターは調理も出来るようになっている…って事は、親方とかがここで魚をさばいたりもするのかな。」
先程から押さえていた物が破裂したように、はしゃぎ出す。テーブルなどいちいち触りながら、独り言を呟いて店内を歩き回る姿は生き生きしていた。
そんな姿を、愛と梨華は困惑したような顔つきで目を合わせて、同時に首を傾げた。
16 名前:此処が味っ娘 投稿日:2006/12/22(金) 22:11

店内を歩き回っていた麻琴は、愛の目の前で足を止めた。キラキラした子犬のような眼差しで愛を見つると口を開く。

「…あの!このお店、名前は何て言うんですか?」
「あっ…味っ娘…。」
「あ、あ、あ、味っ娘…!?あの味覚の味に、娘って書く…あの味っ娘ですか?」
「……うん。」
前のめりに愛に聞きより麻琴の勢いに、愛の大きな瞳が驚いたように、いつも以上に大きくなる。
麻琴の瞳は輝いた。店の中をグルグル、何度も見渡して。完全に、自分の世界に入り込んでいた。
17 名前:此処が味っ娘 投稿日:2006/12/22(金) 22:14


「…此処が味っ娘…。」


麻琴の中は何か始まりそうな、新しい予感でいっぱいになった。
18 名前:huusai 投稿日:2006/12/22(金) 22:22
本日の更新終了です。
今日は少女の正体とチャーミーの登場がメインでした。
商店街の名前もメンバーから取ってたりします。使える名前がたくさんあるので、楽しいですね。

>>9
ありがとうございます。
期待に応えられるよう頑張りたいと思いますので、宜しく御願いいたします。

応援のコメントがあると執筆も心が弾みます(^∀^)
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/22(金) 23:59
麻琴のキャラがいいですね。
面白いです。
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/23(土) 00:30
まこあい大好きなんで続き楽しみにしてるぜ!
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/04(木) 18:06
続き読みたいよ〜
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/10(水) 05:50
かわいいよマコww

Converted by dat2html.pl v0.2