謎残し、この場去る

1 名前:ひらひら 投稿日:2007/02/06(火) 21:33
タイトル通り、謎を置いていきたいと思います。
2 名前:ひらひら 投稿日:2007/02/06(火) 21:33
ゲームを始める。
彼女たちは、様々な環境にいながら、全く同じ試練を受ける。
私の手のひらの上で。
私は彼女たちから、それぞれ、一つだけ奪う。
そして、ゲームをクリアした者には一つだけ与える。
さあ、ゲームを始めよう。
3 名前:ひらひら 投稿日:2007/02/06(火) 21:34
気が付けば、私は知らない部屋で寝ていた。
灰色の壁、クリーム色の床、じじっと音をたてる蛍光灯。
寝ぼけ眼が、徐々に焦点を合わせて、内装の形がはっきりしてくる。
かび臭い空気と、窓は一つもないところから地下室のようだった。
横たわっていた体を、起こす。
体中に凝りを感じる。相当長い時間、横になっていたのだろう。
ここに至るまでの経緯を思い返してみる。
「…………思い出せない」
一つも思い出せない。
そして…奇妙な感覚が頭を覆った。
経緯どころではなかった…
すべての記憶がない…
思い出せど、思い出せど…真っ白い光景が続く。
自分の名前も…年齢も…家も…なにもかも…
真っ白な綿の中にある。
いよいよ、恐ろしくなって、頭を抱え込んだ。
なんで……
なんで……?
なんでもいいから、思い出したかった。
意識の中をもがくように、記憶を必死に探す。
だが、どこまでも空虚な意識が広がっていた。
4 名前:ひらひら 投稿日:2007/02/06(火) 21:34
しばらく悩んだ後、それに飽きてとりあえず部屋を見渡した。
全く、見覚えが無い。(記憶がないから当然といえば当然か)
と、ふと違和感を感じた。
立ち上がり、周りを見渡す。
家具の類はなにもない無機質な部屋。
なんだ…?
違和感。
必要なものがない。
大事なものが欠けている。
その感じ。
「……あ…」
気付いた。
この部屋にはドアがない。
では、どこから、入ってきたのか?
そして、どうやって出て行けばいいのか?
そんな事を考えている裏側で、恐怖がせり上がってきた。
閉じ込められている!?
5 名前:ひらひら 投稿日:2007/02/06(火) 21:34
閉所恐怖症ではない(記憶はないが、わかる)が、緊張で指先が痺れてきた。
慌てて、壁に張り付いて、どこかにドアがないのかを探す。
壁の色と同化して、分からないだけなのかもしれない。
だが、その期待に反して、手には壁の感触だけ。
「……床か?」
部屋を壁伝いに一周して、今度はしゃがみこんで、床を見渡す。
だが、開きそうな場所はない。
今度は天井。
…どこにも開きそうな場所はない。
完全に閉じ込められていると分かると、緊張と動悸のせいか、なんだか息苦しくなってきた。
落ち着く意味も込めて、深呼吸をする。
すー、はー、すー、はー
すー、はー…
………?
どれだけ呼吸をしても、息苦しさは拭えない。
息苦しいというより、空気が薄いような、そんな気がした。
はと、と気付く。
この部屋には窓もドアもない。
外界と繋がっていない。
……つまり、この場所の空気は有限なのだ。
6 名前:ひらひら 投稿日:2007/02/06(火) 21:35
空気が段々薄くなってきている!
緊張と焦りから、荒くなっている呼吸を両手で塞いだ。
間違いない。
空気は確実に薄くなってきている!
それはそうだ。分かっている!
落ち着け!まずは、この部屋から出る方法だ!
だが、その考えに反して、空気ばかりが気になる。
ここの空気は、あと、どれくらいもつんだ?
どれくらい寝ていたかは分からないが、その間も空気は消費している。
息苦しくなってきたことも併せて考えると、時間は残り少ない。
早く、部屋を脱出する方法を見つけなければ……
私はまた、壁にへばりついて、壁を調べ始めた。
7 名前:ひらひら 投稿日:2007/02/06(火) 21:35
数分後。
結局、出入り口は見つからず、私はへたりこんだ。
薄まった空気のせいか、眩暈がしはじめている。
頭も重い。
多分、空気中の酸素と二酸化炭素の濃度がいよいよまずいことになっている。
どうすればいい!?
先程まで、ひたすらそれを考えていたはずの思考回路が何度か停止しそうになっている。
いつ、気を失ってもおかしくない。
私は壁を意味もなく、かりかりと引っ掻いた。
すぐに、正気を取り戻して、それをやめる。
まずい……
意味が分からなくなってきている……
空気が薄くなると、身体より先に意識に問題が出てくるのだろうか?
それとも、ただ、参ってるだけか?
呼吸に気を付けながら、もう一度、冷静さを取り戻そうと努めた。
再三、確認した床をもう一度確かめる。
8 名前:ひらひら 投稿日:2007/02/06(火) 21:35
私がここにいるということは、超能力者でもない限り、出入り口があるということだ。
出入り口は確実にある。
だが、心の何処かで、嫌な声がした。
(本当に出入り口があるのか?)
(もし、入ったところが、内側から開かないようになっていたら?)
だが、そんな考えをかき消すように手探る。
だが、やはりない。
私は立ち上がると、壁を見た。
そして、そのまま壁に向かって体当たりする。
壁はわずかな振動も起こさず、私は壁から反動で弾かれる。
今度は床を蹴りつける。
こちらも同じ。全く崩れる気配はない。
ならば、天井……
手が届かない。
もしかしたら、天井は脆く、そこから出れるかもしれない。
「くそっ」
どうにかして、天井に触れたいが、触れることができない。
虚しく、その場でジャンプを繰り返した。

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