召喚魔法のツカイカタ

1 名前:あみど 投稿日:2007/02/07(水) 21:06
ふぁんたじーっぽくて、かめがきっぽいの
2 名前:  投稿日:2007/02/07(水) 21:06
 
3 名前:  投稿日:2007/02/07(水) 21:07
「ガキさん! 今日は試験の日だよ!」

図書館でうたたねしていると、安倍先生がスパーンと雑誌で頭をはたいてきた。

「え? なんの試験ですっけ?」
「召喚魔法の使い方!」
4 名前:  投稿日:2007/02/07(水) 21:07




召喚魔法のツカイカタ



5 名前:  投稿日:2007/02/07(水) 21:07
私、魔法使い学校生の新垣里沙。
今日は試験っつーわけで山のうえーにあるとある有名な魔法学校の屋上の試験場で黒いローブをまとい、
短い杖を片手に持ち、もう一方の手でカンニングペーパー握ってたらそれは試験監督の安倍先生に取り上げられた。
天気は晴天。冬の冷たい空気が頬を撫でるけど、さっきまで暖房のなかにいた身には心地よい。
……えっと、召喚っていうと、確か杖を振る前に「アンジャカマンジャカ」を唱えるんだった、よね。

「アンジャカマンジャカアンジャジャヤジャジャヤ!」

呪文を唱え、ふいっと杖を一振りする。
ぼんっと白煙が上がり、もくもくと視界を妨げる。
もぞもぞと煙の中で動くなにか。試験での召喚というのは、魔法学校の所有地の森の動物を主に召喚する。
たまに危険そうなトラとかが出てくるけど、試験監督の先生がいるから安全だ。
ガオー、とかそういう雄叫びが授業中に聞こえてきたこともあったっけ。

「ヒャークマーピー」

白煙が途切れ、動いているものがよく見えてくる。
完全に視界がはれたとき、安倍先生が、慌てて中澤校長先生を呼びに行くのが視界の片隅で見えて、
でも私は、ただ呆然と立ち尽くした。
6 名前:  投稿日:2007/02/07(水) 21:08
 
7 名前:  投稿日:2007/02/07(水) 21:08
私が召喚したものは、人間だった。
校長室に即行で連行されることになった私と私が召喚した人間は、道中全く会話をすることもできなかった。
一度も入ったことがない校長室の扉が開かれる。思わずごくんっと息を呑んだ。
私が召喚した人間が先に通され、私は部屋の片隅におさまった。
そして、校長先生と私に召喚された人間の質疑応答がはじまった。

「お名前はあるかな?」
「えっと、亀井絵里です」

なんであんなにクネクネしてるかよくわからないが、笑顔をくずさずに亀井絵里は私のほうに顔を向け、じっと見た。

「絵里、ガキさんに会いたくてきたんです」
「は?」

なんで私の名前知ってんの? ってか、会いたかった?
中澤校長先生と向かい合っていた亀井絵里は部屋の隅にいた私のほうにたったっと駆け寄ってきて、
「ガキさーん」って無駄に甘い声で、ふにゃって笑って、両手広げて、……抱きついてきた。
不可抗力で受け止めたはいいものの、なんていうか、手とか目のやり場に困る。

「え……あの、亀井さん?」
「ぎゅー」

ぎゅー、て。

「ちょっと! 苦しいから! てかなんなのあんた!」
「ガキさんのぉー伴侶!」

私が召喚したものは、私の伴侶らしいです。
8 名前:  投稿日:2007/02/07(水) 21:08
 
9 名前:  投稿日:2007/02/07(水) 21:08
 
10 名前:あみど 投稿日:2007/02/07(水) 21:08
続きます
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/08(木) 09:52
あみどさんキタ!いっぱい期待
12 名前:  投稿日:2007/02/08(木) 13:55
この魔法学校は、世界中の魔法使いの子孫、もはや末裔と言ったほうが正しいのかもしれない──が集っている。
ちなみに、使用している言語は魔法協会共通語である。これは学ばなくとも自然と習得できるものだ。
私の出身国風にいうと、元服くらいの年齢になると魔法使いの子どもたちはこの魔法学校へ送られる。
ここで魔法の基礎を学び、魔法界で活躍するものもいれば、魔法を知らない人々の中で生きていくものもいる。
数年前にこの学校を卒業して森番の役目をしている愛ちゃんは、どちらかというと前者なのかもしれない。

「ほんっと大変だったんだから!」
「ガキさんは苦労人やねぇ」

学校の本館から歩いて10分、学校の所有地の森まで歩いて5分のところに愛ちゃんの家はある。
その家でお茶をしながら私はときどき愚痴をこぼすのだ。今日のテーマは例の亀井絵里。
愛ちゃんは、見かけは猫の魔獣れいにゃを抱いて時にアッヒャーとか言いつつ聞いてくれる。
まあ、愛ちゃんが話す側になると私がツッコミばかりしてしまってその時もアッヒャーなんだけど。
13 名前:  投稿日:2007/02/08(木) 13:55
「面白いねえ。で、その亀井さんって子は今どうしてるの?」
「先生たちで分析中」

そうなのだ。みかけは人間だがしかし人間ではないかもしれない。
その可能性を教師たちは見逃さなかった。
昨日のことだ。私に召喚された亀井絵里は、校長室で私に抱きついてきて、引っぺがされて、
そのままどこかに連れていかれた。
……悪いようにはされていないと思う。そう思いたい。やっぱり私が召喚したからには私にも責任がある。
ずるずるとぬるい紅茶をすすっていると、旧式の黒い電話機がジリリと鳴った。愛ちゃんが受話器を取り上げる。

「はぁい、たかぁしです!」

元気よく名乗って、その後の会話は聞き取れなかったが、少々言葉を交わしただけで通話は切られた。
愛ちゃんがこっちを向いて口を開く。

「亀井さんのことだった」
「……なんて?」
「特に変わったところはない人間。年齢も近いし、しばらく生徒にまぜて様子を見るって」
「そっか」

紅茶を飲み干す。とりあえず一安心だ。遠くから鐘の音が聞こえてくる。

「やっべ、お昼休み終わる! またね、愛ちゃん!」
「ほーい」

魔獣れいにゃをひと撫でしてから私は愛ちゃんの家をあとにした。
自称、新垣里沙の伴侶の亀井絵里が気になったからだ。
14 名前:  投稿日:2007/02/08(木) 13:56


15 名前:  投稿日:2007/02/08(木) 13:56
「ガキさぁーんガキさぁーん」
「……ったく心配して損した」

亀井絵里の所在を職員室で確かめて、心配して保健室に行ったら元気ぴんぴんで亀井絵里は食事を摂っていた。

「なんかねー健康診断みたいなのされてー、
 エヘ、脱いだりしたよーガキさんとならぁーもっかいやってもいいかなー」
「えっちょ、ばっ!」

えへらへらと笑いながらこいつ! 顔が火照るのを感じて、冷たい両手を頬にあてる。

「ウへヘ、ガキさんかわいー」
「なんかあんたから言われても嬉しくないんですけど」
「あんたってやめてよー絵里には亀井絵里って名前があるんです!」
「じゃあカメね! これからカメって呼ぶ!」
「うわ、絵里って呼んでよ絵里って!」
「い・や・だ!」
16 名前:  投稿日:2007/02/08(木) 13:56
引っ付いてくるカメを押しやって、「はやく食べな」と食器を指し示した。

「ガキさんは? もう食べたの?」
「まだだけど、もう時間ないし食べらんない」
「じゃあ一緒に食べよ。はい、あーん」
「いらん!」

しっしっと片手で追い払う仕草をすると、ちぇ、っとカメはつまらなそうな顔をして食事を再開した。
かと思うと両手を合わせて、「ごちそうさま」を言う。

「もういいの?」
「ガキさんが食べないならいい」
「……そんなこと気にしないで食べなさい」
「むむぅー」

その後、食べろ食べろとうるさいので、しかたなくスプーンを借りて少しだけ頂いた。
「間接ちゅー」とかつまらないことを言われたのはこの際、無視する。
17 名前:あみど 投稿日:2007/02/08(木) 13:57
>>11
レスありがとうございます。
来てしまいましたー。よろしくお願いします。
えっと、ご期待に沿えればよいのですが……。

ちまちまとできるだけ平日は毎日更新したいと思います。
18 名前: 投稿日:2007/02/09(金) 12:07
19 名前: 投稿日:2007/02/09(金) 12:07
保健室で食事を終え、どうやらカメは私のクラスにまざってみるらしいことになっているそうなので、
案内をすべく私は立ち上がった。

「行くよ、カメ」
「どこにぃ?」
「教室。授業始まるから。あんたも受けるの」
「えーやだぁー」

首を振っていやいやをするカメを立ち上がらせようと、カメの腕を掴んで力をいれる。
思いのほか強く反抗されて、カメは立ち上がらない。

「……そんなに嫌なの?」
「やだ」

顔を伏せて小さな声でカメは言った。
その表情はよくみえなかったけど、なんだか悲しそうで。

「ガキさん、ちょっと」

カメになにか言葉をかけようと思案していると、
ガラリと保健室の扉が開けられる音がして、藤本先生が顔を覗かせた。
20 名前: 投稿日:2007/02/09(金) 12:08
藤本先生はまだ若い見習いの先生で、最近は保健室で養護の先生まがいのことをしている。
不本意ながら私もお世話になったことがある。……体育の授業中に鼻血だしてぶっ倒れたときだ。
それ以降、親しくなって、「ガキさん」と呼ばれる仲になった。

「藤本先生、あーちょっともう授業始まるし、あの」
「授業はいいから。こっちから言っとく。亀井さんは寝かせてて」
「……はぁ」

その言葉を聞くとカメは自主的にもぞもぞとベッドにもぐりこんだ。
白いシーツが盛り上がる。顔はあっちに向けていて見えない。
気づかれないように小さくため息をついて、私は藤本先生の方へ歩き出した。
21 名前: 投稿日:2007/02/09(金) 12:08
22 名前: 投稿日:2007/02/09(金) 12:09
「あんまり期待とか、しないほうがいい」
「え?」

職員室の奥の応接室に私は通されて、藤本先生と向かい合って椅子に座っている。
緑茶を出されたがまだ手をつけていない。話の内容が気になってのことだ。

「亀井さんのこと。調べた結果、異常はなかったけど美貴は疑う要素がまだあると思う」
「というと」
「うーん、惚れ薬とか、そういうの。だから、過剰な期待とかは持たないほうがいい」
「そんなこと言われなくたって、なんの期待もしてません。なんの期待をしろと」
「誰だって、誰からか好かれることは不快ではない」

藤本先生は、先生の口調になって話し始めた。元々、生物とかそういう分野の先生だから、
生体の検査とかも詳しいのはきっと藤本先生だ。

「今の亀井はガキさんのことが好きだ。ガキさんはそういう感情はない。
 しかし、流されるってことがある。ガキさんが亀井を好きになるとする。
 亀井がなにか、薬のようなものでガキさんに好意を抱いていたとしたら、いつかそれは切れる。
 そのとき、ガキさんが亀井のことを特別視していたら、傷つくのは誰か?」

藤本先生は一気にこれだけ言い切った。
23 名前: 投稿日:2007/02/09(金) 12:09
「……ありえません。私は、私が召喚したから責任を感じてるだけであって」
「流されるなよ」

藤本先生は湯のみを手にして、そこだけ冷たく言い放った。
24 名前: 投稿日:2007/02/09(金) 12:09
25 名前:あみど 投稿日:2007/02/09(金) 12:10
次回更新はきっと火曜日
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/12(月) 19:11
おもすれー!!
27 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/13(火) 08:01
いっぱい期待
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/13(火) 12:39
これ好きだ
29 名前: 投稿日:2007/02/13(火) 15:05

30 名前: 投稿日:2007/02/13(火) 15:05
藤本先生に忠告とお茶の礼を言って、職員室をあとにした。
忠告の礼? これは皮肉だ。
保健室に行くか、教室に行くか悩んだ末に、寮の自室に帰ることにした。今日はサボりだ決定だ。
この魔法使い学校は全寮制で、ふたりもしくはプラスひとりで部屋割りがなされている。
同じ学年で同室になるようになっていて、つまり同い年と同じ部屋になるっていう計算なんだけど、
私の場合はちょっと特殊だ。どこがかというと、学年で言うとひとつ下になる、
道重さゆみっていう優秀な生徒が飛び級で私たちの学年に籍を置いているからである。
そしてその黒いローブが似合う道重さゆみ、愛称さゆは大抵の人からはじめは距離を置かれがちで、
部屋割りのときもじゃんけんで負けた人がさゆと同室! ってなったくらいだ。で、私はじゃんけんに負けた。
しかし、避けられているほどさゆは接しにくい人間ではなかったし、
むしろ優秀なだけあって宿題なんかは手助けしてもらって、私が恩恵を受けているくらいだ。

校舎から寮への渡り廊下を歩いていると、ぞろぞろと寮へ向かう人ごみが見えた。
どうしたのだろう、まだ授業時間のはずなのに。
駆け寄って見知った顔を見つけて、声をかけた。

「さゆ!」
「あ、新垣さん!」

さゆは私の声に気づくと振り返って、人ごみから抜け出してきた。
31 名前: 投稿日:2007/02/13(火) 15:06
「なになに、どうなってんの? 授業は?」
「それが、今日は先生たちが会議だからって。授業なくなっちゃったんです」
「ふうん」

人ごみがある程度ひくのを待って、私たちは寮へ向かった。
寮には広いホールみたいなところがあって、そこで騒いでいる生徒が多かったけど、私たちは自室に直行した。
ドアの鍵を開け、ふたりで室内におさまる。

「さゆ、会議ってなんだと思う?」
「例の新垣さんが召喚した人のことだと」
「そうだよねえ」

寮の各部屋には、壁側と逆の壁側にベッドが設置されている。
お互い自分のベッドに腰掛け、視線を交え会話を交わす。

「さゆもこういう例は知らない?」
「知りませんね。出来る限り調べもしましたけど、今のところなにも手がかりなし」

ふう、とふたりでため息をついたところでコンコンコン、とドアがノックされた。
32 名前: 投稿日:2007/02/13(火) 15:06
さゆが立ち上がり、覗き穴で室内から外にいる人を確認してドアを開けた。

「占い師を知っているかぁ!」

有名な本の一節を叫んで、はにかみ笑いをして部屋に入ってきたのは久住小春。この学校の有名人だ。
小春の両親は魔法とは無縁の人ながら、小春自身は魔法を使う力を持っていた。
本来、この学校は魔法使いの子孫だけが集うところであるのだが、
小春の力を見つけた魔法協会があの手この手を使い、特別に学校に入れたと聞く。
普通の人間同士の子どもなんて、異端中の異端であり、しかも小春はまだ入学資格である年齢を満たしていない。
それでも入学させるのにはなにか理由があるに違いないが、それを私が知ることはないだろう。
その小春の教育係として優秀なさゆが任命され、同室のよしみで私も小春と知り合った。

「小春、その本好きだねえ」
「はい! 大好きです!」

さゆの言葉にこくんと小春は頷き、元気に返事をした。
魔法使いと占い師の因果な対決を描いた本を小春は大事に持っている。
その本自体は図書館にもあるし、大して重要な書物ではないのだが、魔法使いと占い師のことを
子ども向けに書き直した最初の本だと言われていて、ある程度有名だ。
33 名前: 投稿日:2007/02/13(火) 15:06
「ガキさん、あ、新垣さんは……大丈夫なんですか?」
「あーガキさんでいいって。ん、大丈夫だよ?」
「ならよかった」

小春にとって、「ガキさん」という私の愛称が強烈なインパクトだったらしく、
本人は、「新垣さん」と呼ぼうとしているらしいのだけど、ちょくちょく、「ガキさん」と呼ぶ。
年下から愛称で呼ばれたからといって、特に腹を立てるわけでもないのでいつも、
「ガキさんでいいよ」って言っているのだけど、いつも小春は律儀に言い直す。

「なんか、大変なことになってるって聞いたんで、心配になっちゃって」
「あーほんと心配することないからさ。ありがと」
「そうですか?」

小春はちょいと小首を傾げ、本当に大丈夫? というような表情をした。
にっこり微笑んで、大丈夫だよと肩を叩いてあげて、さゆとふたりで小春をそっとホールへ連れて行った。
実は、他学年の部屋に入ってはいけないからである。小春は他学年だから、見つかったら大目玉だ。
34 名前: 投稿日:2007/02/13(火) 15:06
そろりそろりとさゆと部屋に帰ると、また誰かがドアをノックした。
今度は私が覗き穴で確認する。深呼吸してドアを開けた。

「ガキさぁーん!」
「だぁー抱きつくな!」

両手で、のしかかってくるカメを押し返す。
登場したのはカメと、無愛想な顔した藤本先生だった。

「この子、ガキさんと道重さんの部屋に入ることになったから。よろしく」
「よろしくお願いします」

深々とカメはさゆに向かってお辞儀をした。私にはないんかい。
藤本先生はきっとこの部屋割りには反対なんだろうな、と思う。
……かくして、カメは私とさゆと同室になることになった。
35 名前: 投稿日:2007/02/13(火) 15:07


36 名前:あみど 投稿日:2007/02/13(火) 15:07
レスありがとうございます。こんなにレスもらったのはじめて……!

>>26
ありがとー! これからもがんがります。

>>27
あんまり期待されるとあばばばばばってなっちゃいます。

>>28
ありがとう! その言葉にキュンとしました。
37 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/14(水) 04:49
かめがきキターハァ━━━━ ;´Д` ━━━━ン
好きですこの設定楽しみにしてます♪
38 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/14(水) 12:37
やっべぇ好きw
39 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/14(水) 13:04
小春もキタ!
色々と波乱の予感
40 名前: 投稿日:2007/02/14(水) 16:16


41 名前: 投稿日:2007/02/14(水) 16:16
さゆとカメの相性は抜群だったようで、驚異的なスピードでにふたりは仲良くなっていった。
コンビ名を、「さゆえり」と名乗り、こっそり自室できゃっきゃと遊んでいる。
自室だけで遊ぶのは、ふたりの存在がちょっと異端だから……である。
私の生活は普段と特に変わりはない。授業に出て食べて眠っての繰り返し。
そして、カメは何度も強引に連れて行こうとしたけれど、授業に出ようとはしなかった。
寮の自室に篭っているか、あるいは、機嫌が良ければ保健室にいるようだ。
カメが近くにいないと、もしかして今この瞬間、解剖されたりしてないよな? と不安になったり、
ちゃんとご飯は食べてるのか、とかも気になる。あくまでも、私の責任感が強い故の心配。

カメを召喚してから5日目の晩、同室になってから毎晩のように私のベッドにもぐりこんでこようと
するカメをいつものようにガードしながら、私は訊いてみた。

「カメって昼間なにしてるの?」
「んー、調べものとか藤本先生とお喋りとか昼寝とか」
「……あっそ」
「なになに、絵里に興味持ってくれた?」
「いや、全然」

むぅーと頬をふくらませて不服そうにされても、無視。
42 名前: 投稿日:2007/02/14(水) 16:17
藤本先生に言われたことを思い出す、「流されるなよ」。
大丈夫、流されなんかしない。
43 名前: 投稿日:2007/02/14(水) 16:17




44 名前: 投稿日:2007/02/14(水) 16:17
後の休日、私は小春をお茶に誘った。
小春は魔法協会にとってノーマークの人間同士の子どもであったにも関わらず、
早期に見つけ出されたくらいのオーラをまとっている。なにかいい意見が聞けるかもしれないと思ってのことだ。
もちろん、例のカメ召喚について。

「ガキさん、いや新垣さんが特別な力を持っているのかもしれませんね」
「……まさか」

学校のカフェテリアの端っこの目立たない席で、私と小春は向かい合って座っていた。
全寮制で山の上ということだけあって、この学校の施設の充実度はなかなかのものである。
このカフェテリアも、品揃えは豊富で味はよく価格はお手ごろ、と三拍子揃っている。

きっと職員室でもこの話題で持ちきりに違いない、新垣里沙が亀井絵里を召喚しちゃった事件。
おさらいすると、召喚魔法の試験では普通、学校の敷地内の動物が自動的に選ばれて召喚される。
「何々を召喚しよう」と思って魔法を使うのはもう少し高学年になってからだ。
それが今回の事では、人間が人間を召喚するという高等魔法に属するものを、
ほんの豆っ子にすぎない私なんぞがやってしまった。しかも学校側の強烈な縛りを払いのけて、である。
学校のルールに反する魔法は通常、学校敷地内では誰であっても使用できない。きっと校長先生でも。

「それにその召喚した人、新垣さんのこと知ってたんでしょう? 不思議すぎます、なんか、出来すぎです」
「だよねえ」

小春がアップルティーの入ったカップを持ち上げ、口にする。私もそれにならった。
謎が多すぎて考えがまとまらない。小春にもおおざっぱに状況を話したが特に意見はないようだった。
45 名前: 投稿日:2007/02/14(水) 16:18
本当のところは、藤本先生とか校長先生にも口止めされていて、カメのことは他人に話してはいけないんだけど。
しかし、さゆは同室で顔まで知っているし、噂は広まりに広まってカメの存在を知らない人はいないくらいだ。
広まったものはしかたがないから、と校長先生から出された追加指示は、「せめて名前は伏せろ」とのことだ。
だから小春はカメの名前を知らない。「召喚された人間」とかたまに冗談っぽく「ガキさんの伴侶さん」と言う。
ついでに顔も知らないが、小春に限らず、カメはあまり出歩きはしないから顔が広まる可能性は少ない。
名前を伏せたい理由は学校側にあるのだろう、つまり、カメの存在が都合悪くなっちゃったときに……困るから。
そんなことを考えながらカップを両手で弄んでいると、小春が口を開いた。

「ちょっとまとめましょう。もんだいそのいちー」

人差し指を立てて小春は言う。

「召喚された人間は何者か?」
「何者だろうね」
「もんだいそのにー」

もう一本、小春は指を立てた。

「なぜ新垣さんの名前を知っていたか?」
「なぜだろうね」
「もんだいそのさーん」

三本、小春は指を立てた。

「そもそも、なんで伴侶?」
「……さあ?」

それに関しては、まったくお手上げ、である。
ふたり揃って、ため息をついた。
46 名前: 投稿日:2007/02/14(水) 16:19
小春との話し合いもむなしく、なにも得るものがなかった。小春に礼を言い、お互い寮の自室に帰る。
鍵穴に鍵を差し込み、ドアを開けると、まず目に入ったのは、地べたに座布団を敷いて、
その上で正座して本を読んでいるカメ。カメは、ドアが開いたのに気づくと本を閉じて立ち上がった。

「おかえりぃー!」
「だからいちいち抱きつくな!」

すっかり恒例になってしまった、「おかえり抱きつき攻撃」を両手で突っ張ってはねのける。

「いやんガキさんつれなーい」
「つれなくて結構です」

やれやれと自分のベッドに腰掛けると、カメも隣に座ってくる。

「こら、座ることなんて許可してないぞ」
「いいじゃん」
「よくない」
「いいの!」

フン、とカメがそっぽを向く。が、しかし動きはしないようだ。

「ねぇーカメってさあ」
「うん?」

声をかけてみると嬉しそうに振り向く。
続けて、真顔で問うてみた。

「私のなんなの?」
「だから、伴侶。言い換えると、運命の人でもおっけー」
「……はいはい」

えへらと笑顔でべたべたしてこようとするのを避けながら、私はやはりため息をつくハメになる。
47 名前: 投稿日:2007/02/14(水) 16:19


48 名前:あみど 投稿日:2007/02/14(水) 16:20
レスありがとうございます。すごく励みになってます。
今回は動き少なくて申し訳。

>>37
早朝からハァ━━(ry していただき、ありがとうございます。
これからも楽しみにしていただけるようにがんばります。

>>38
ありがとんです。私もあなたが(ry

>>39
小春もきましたよ!
波乱は起こるか否か。
49 名前:37 投稿日:2007/02/14(水) 19:20
夕方もハァ━━━━ ;´Д` ━━━━ン
いい!この作品好きですよ!!
更新乙です!!
50 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/15(木) 08:22
なかなか謎が解けませんね
気になります
51 名前: 投稿日:2007/02/15(木) 14:19


52 名前: 投稿日:2007/02/15(木) 14:20
魔法学校には長期休暇というものがあって、その期間は大抵の生徒が自宅へ帰る。
春休みという名の長期休暇に備えて、各々部屋で荷造りや寮でのしばらくはできない雑談を交わしているなか。
私も春休みは故郷に帰るつもりで荷物をまとめていたのだが、なかなかどうしてカメが邪魔をしてはかどらない。
入れようとした本を勝手に読み出したり、せっかく畳んだ服を広げたり。
さゆは小春との勉強会のためにホールに行っていて、部屋には不在だ。
あまりにもカメが邪魔をするので、私もついに口を開く。

「だあー邪魔するなっての!」
「だってガキさん帰ってちゃったらつまんないつまんない!」

首をぶんぶんと振って、カメが、「やだやだ」と幼稚園児のように駄々をこねる。
半ば呆れてその様子を見てたんだけど。……涙目になるな! ずるいぞ!
しばらく無言でいるとしだいにカメが嗚咽を漏らし出す。
ため息は気づかれてはいけない。ベッドの上で荷造りをしていたのだけど、地べたに座っているカメに
あわせて地べたに敷かれた布団の上に腰を下ろす。

「あのね、カメ」
「……うん」
「ちゃんと帰ってくるって」
「……わかってる」
「いい子にして待てる?」
「ちびっこ扱いするなぁ」

ごろんと肩に頭を預けてくるかと思うと、右手を私の後頭部へ回して無理やり顔と顔を向かいあわせて────。
唇がほんの少し、触れ合った。
53 名前: 投稿日:2007/02/15(木) 14:21
「こういうことも出来るんですからね!」
「ちょ、カメおい!」

新垣里沙、一本取られました。ファーストキス取られました。

「近寄るな! 半径2メートル以内に近づくな!」
「えーなんでぇ」

慌ててベッドの上に舞い戻って、口を手で乱暴に拭う。
ってか、嘘泣きかよ! 騙された!
ニヤニヤとしているカメを見て、今度は本格的に、大げさにため息をついた。

「あのね、カメ」

コンコンコン。
真面目な声を出したところでドアをノックする音。

「ガキさん、ちょっといい?」

藤本先生の声がする。念のため、覗き穴でチェックしてからドアを開く。
54 名前: 投稿日:2007/02/15(木) 14:22
「亀井さん借りていい? すぐ終わるから」
「はぁ」

ちょっと警戒の目で藤本先生を見る。
カメを召喚してから、先生たちの挙動が不審だということには私だって薄々気づいている。
……なにかあるに違いないとは、私や小春は踏んでいる。ただ、なになのかはわからない。
私の警戒に気づいたのか、カメはなんでもないように至って軽く振舞った。

「じゃあ、ちょっと行ってくるね。あ、大丈夫、浮気はしないから!」
「いや、浮気もなに私たちそんな関係ではないと思うのですが」
「恥ずかしがらなくていいのにぃ」
「……もういいです」

カメは私に手を振って、不機嫌そうな表情の藤本先生についていった。
やっとこれで荷造りに集中できる、と服を畳み、トランクに詰める作業を再開してしばらくすると、
今度はさゆと小春がやってきた。

「新垣さん見てください! このさゆ、ちょ〜うかわいくありません!?」
「ガキさんの写りいいですよお」

小春の手には一冊のアルバム。きっと写真が貼ってあるのだろう。
55 名前: 投稿日:2007/02/15(木) 14:23
「この写真、去年のじゃん」
「そうです。夏休みに帰省したときにお母さんとか近所のお姉さんに見せたら、珍しいって喜んでくれました」

アルバムを見てみると、去年の春、ミュージカルを演じた時の写真だった。
私も写っていて、なるほど実物より何割増しか……ってオイ。
これを家族にも見せたということは。

「小春に魔法使いの力があるってことは、家族もみんな知ってるの?」
「はい。ちゃんと入学前に校長先生が説明してくれました。近所でも有名ですよ?」
「へえ」

アルバムをぱらぱらとめくる。何人がこのアルバムを目にし、なにを思ったのだろう。
昔より魔法使いの数は減ったものの、知名度は上がっているそうだ。
数々の武勇伝を残す魔法使いたちは子どもたちのヒーローとなり、そう、小春が好きな物語の占い師は、
「お前なんか占い師だ!」という風に子どもたちの間で使われる。つまり悪役に近い。
実際の史実ではどうなのだろう。今度さゆにでも訊いてみよう。
3人で雑談を交わして、カメが部屋を後にして2時間経ったところで私は腰を上げた。

「ちょっと迎えに行ってくる」
「え?」

小春が不思議そうな顔をする。言い訳っぽく私は言う。

「ああ、例の召喚した人。藤本先生に連れてかれたからさ」
「なるほど。いってらっしゃあい」

へらへらと笑顔で見送られながら部屋を出ようとしたが、見つからないうちに、と小春もホールへ連れて行った。
56 名前: 投稿日:2007/02/15(木) 14:23


57 名前:あみど 投稿日:2007/02/15(木) 14:23
レスありがとうございます。こんなにつくとは思いもしていなかったので嬉しい戸惑い。

>>49
落ち着いてください(笑)
息切れしない程度に追っていただけると嬉しいです。

>>50
そろそろ解け出すのではないのでしょうか。
すぱっと解決すればよいのですが。
58 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/15(木) 18:49
ぬはー。このお話好きです!
先が気になるっ。
59 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 14:56


60 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 14:58
俗っぽい話になるが、この魔法使い学校を卒業するとある程度の地位、職業をまず間違いなく得ることが出来る。
本人にその気がないのならもちろん別だけど。働かなければ稼ぎはない。
食べるのに困らないくらいの安定した収入が欲しいのは、魔法を使えようが使えまいが関係ないこと。
そういう理由で一時期、この魔法使い学校へ入学を希望する、魔法使いの子孫でない人々が増えた。
入学試験の時点でもちろんそういう人ははじかれるんだけど、例えるなら昔流行った超能力、
スプーン曲げのようなあれである────で、誤魔化して入学しようとする輩もいた。
その昔は素質があれば生まれに関わらず受け入れをしていた学校側もそういう姑息な手段には腹を立てて、
ある時期から入学資格に、魔法使いの子孫であること、をはっきりと追記した。
私が知っている例外として小春がいるが、小春は学校側からの要請で入学したのだし、
特に問題はないように見えた。
もはや学校の怪談と化しているが、理事長は小春の件で、「ミラクルや!」と叫んで失神したらしい。

カメがどこに連れて行かれたか、はある程度の検討がついた。
保健室か職員室が妥当なところだろうと踏んで、まず保健室に向かった。
申し訳程度に保健室のドアをノックしてガラリと引き戸を開ける。

「新垣でーす」
「ああ、ガキさん」

回転椅子に腰掛けた藤本先生が椅子をくるりと回転させてこちらを向いた。
藤本先生はすっかり憔悴してしまった様子で、目にも力がない。ついでに、カメの姿は見当たらなかった。

「カメはどこですか?」
「奥だよ。簡単な検査をしてもらってる」
「検査って、なんですか?」
「今日はやけにつっかかるねえ。もしかしてあの子に惚れた? そんなに気になる?」
「冗談言わないでください」
「ならいいんだ」

ギッ、と椅子をきしませ藤本先生が立ち上がる。
61 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 14:59
「安心したよ。流されていないようで」
「そうですね」
「今日であの子を召喚して何日目か知っているか?」

いきなりの質問だったが、落ち着いて頭の中で簡単な計算をする。いち、に、さん、し、ご、ろく。

「ええと、6日目ですね」
「信憑性はないに等しいが、6日目の夜というのはなにかが起こると言われている」

そういう話なら聞いたことがあった。6というのは悪魔に関する数字で、なにかと縁起が悪いそうだ。
その話通りなら、今晩なにか悪いことでも起きるのだろうか。

「美貴は今日、ここを出るよ」
「え?」

突然の言葉に戸惑う。
藤本先生は胸元のポケットから煙草の箱を取り出し、「吸ってもいいかな?」と許可を求めてきた。
どうぞ、と言うと、いかにもまずそうに煙草をくわえて火をつける。

「なんだかね、あの子といると俗っぽいことが恋しくなってね」
「カメといるとですか?」
「そう。なかなか面白い子だよ、あの子」

くっく、と思い出し笑いなのか、藤本先生が微笑んだ。
62 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 15:00
「好きな食べ物だとか、天気の話だとか、恋の話だとか、あの子はそういう話を楽しそうにする」

近くの机の上の灰皿を左手で引き寄せて灰を皿に落とし、藤本先生は続けた。

「運命だとか言うんだ。
 このところ、そういう話を聞いてなかったからかな、なんだかこっちまで楽しくてしょうがない」
「はあ」

いまいち話が掴めないまま、私は相槌を打つ。
研究中心の生活を送っていた藤本先生にとって、カメの言葉がきっと新鮮だったのだろう。
そうでなくとも、魔法使いは運命だとかそういうことを嫌う傾向にあるのだ。

「すべてを知るにはまだガキさんは幼すぎる。今回のことは忘れなよ」
「あの、全然話がわからないんですけど」
「いいんだ。ちょっとした独り言」

藤本先生は灰皿で煙草の火を揉み消して、2本目を取り出した。
煙草も俗っぽいことのひとつだろうか、と私は思う。

沈黙を破るかのように保健室の中の、更に奥のドアが開き、カメが現れた。

「あ、ガキさんだぁ」

にへらと笑顔で私を見る。2時間前となんら変わりない表情だったけど、口元にほんの少し陰りが見えた。

「どうかした?」

思わず眉根を寄せて強く訊いてしまう。なんでもないよ、とカメは首を振った。
63 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 15:00


64 名前:あみど 投稿日:2007/02/16(金) 15:02
>>58
レスありがとうございます。てかありがとうございます、嬉しいです。
先はどうなるんでしょう、謎です。
65 名前:あみど 投稿日:2007/02/16(金) 17:26
明日、急展開?

ノノ*^ー^) ・e・)
66 名前:あみど 投稿日:2007/02/16(金) 23:10
完成したらすぐあげたくなるタチらしく、やっぱり更新
67 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 23:11


68 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 23:12
「亀井さん、奥で寝といて」
「はい」

藤本先生の言葉にこくんと頷いてカメはまた奥の部屋に行ってしまった。
ふう、と藤本先生が紫煙を吐き出し、まだ吸い始めたばかりの煙草を灰皿に押し付けた。
どさっと回転椅子に腰掛けなおして、私の方を向いた。

「亀井さんの体内に新種の病原体が見つかった」

唐突に、こんな言葉を浴びせられてどんな反応ができようか。

「……冗談でしょ?」
「いいや。だから今日中に学校から出て精密検査が出来る機関に行ってくる」
「カメに、ちゃんと会わせて」
「駄目だよ。空気感染の疑いも捨てきれない。もうひとりの同室の人によろしく」

かつてないほど冷たく、藤本先生が淡々と言葉を紡ぐ。
動こうとしない私を見て、藤本先生は続けた。

「なに? なんか問題ある?」
「…………いや、ない、です」
「じゃあもう出かける準備するから。ガキさんは寮に帰りな」

追い出されるようにして、呆然としたまま冷たい廊下に放り出される。
何も考えずに歩いて、寮への渡り廊下を足早に過ぎ去る。
ホールへ続く扉を開く。暖房のあたたかい空気が押し寄せる。
さゆと小春の姿を見つけて、そちらへ歩いた。

「例の人はどうだったんですか?」

小春が無邪気な笑顔で訊いてくる。私は、笑えなかった。

「カメは今夜は帰ってこない」
「絵里、どうかしたの?」

さゆが本から視線を上げた。
びくっ、と小春の身体が緊張したように震える。

「それが……」

私が藤本先生から聞いたことを言おうとした時だった。

「……亀井絵里?」

小春が驚きを隠せないような、それでいて冷ややかな声を出した。
69 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 23:12
「それなら、召喚されたのが亀井さんなら……」
「どうしたの、小春」

小春がうつむき、小声で早口に言った。

「すべて辻褄があいます! 亀井さんを助けなきゃ!」
「待って、小春なんでカメの名前を」
「親戚の、近所のお姉さんです! 辻褄が、そう新垣さんの写真を見せて名前も教えた。
 新垣さんを見てすぐ名前を言える。召喚される方法もある。亀井絵里は……占い師の末裔です!」

もしも、占い師の末裔が魔法学校に入ってきたとしたら。きっと生きては帰れない。絶好の実験対象だからだ。
魔法使いとは対になるとされている占い師はほとんど滅びていて、生き残った僅かな者はひそやかに生きている。
小春が立ち上がり、渡り廊下の方へ走り出す。
一拍とおかずに緊急時のサイレンが甲高く鳴り響いた。
ウウーキイイー、というサイレンの音にまざって、ホールの大きな窓ガラスがパンッ、とはじけるように割れた。
夜気が冷たくホールに吹き抜ける。わけもわからず、割れた窓ガラスの方を向いた。
そこに見えたのは黒いローブに身をつつみ、ぐったりとしたカメを抱えて箒にまたがった藤本先生だった。
闇と一体化して見えにくいのと、風がこちら側に吹き付けてきて目が開きにくいので、認識が一瞬遅れた。

「小春、来い!」

藤本先生の声が鋭くとがってホールに響く。
70 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 23:12
箒が一本、小春に向かってホールに投げ込まれ、それを小春が掴んだ。
素早くそれにまたがり、すぐさま上昇した小春は私とさゆに向かって叫んだ。

「前々から言ってくれてたんです! 逃がしてやるって! ここにいても研究のダシになるだけだからって!
 藤本先生はきっと亀井さんも逃がすつもりで……!」
「なんで、なんで小春が!」

私も出来る限りの大声で叫び返した。
小春がなにを言っているか、私がなにを言っているかはほとんど理解できなかった。

「私が、魔法使いと占い師の混血だからです!」
71 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 23:13


72 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 23:13
名前を伏せた、会わなかった。だから小春はカメを知ることができなかった。
もしも、もっとはやくに知ることができていたら、この物語の最後は変わっていたかもしれない。
73 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 23:13


74 名前: 投稿日:2007/02/16(金) 23:13

75 名前:あみど 投稿日:2007/02/16(金) 23:14
謎は少々残ってますがとりあえずここまで
76 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/17(土) 02:12
うぁー!かめがき+@いいー!!
やっぱいいですよこのストーリー展開!!
好きっ!!!!
77 名前: 投稿日:2007/02/17(土) 16:35


78 名前: 投稿日:2007/02/17(土) 16:36
小春と藤本先生とカメの影が完全に見えなくなって、ようやく事態の急変に気づいた。
サイレンは緊急時にしかならない。それが今鳴っている。放送のスイッチが入り、
生徒に動かないように指示をだす校長先生の声がスピーカーから響く。

「新垣さん! 追いましょう!」
「っ、言われなくとも!」

慌てて駆け出してホールの扉を抜ける。背中すれすれで、ホールの扉がガシャンと自動的に閉められた。
さゆのほうが若干走るのが速くて、半歩遅れて追いかける形で私は駆けた。
向かう先は、体育倉庫。箒が仕舞ってある。
飛行方法はまだ初歩しか習っていなかったが、四の五の言っている場合ではなかった。
力任せに体育倉庫の引き戸を開け、一番上等の箒をさゆが手にする。

「使える?」
「もちろん」
「さすが飛び級」
「この程度たいしたことないです」

学校校舎と寮への渡り廊下の窓を割り、外へ飛び出す。箒ふたり乗りは初めてだ。
79 名前: 投稿日:2007/02/17(土) 16:37
「カメの体内に病原体うんぬんは嘘だったのかな」
「なんですか、それ?」
「いいや、カメを今日連れ出すための表向きのいい訳だと思う。でも、どっかでバレちゃったんだろうね」

俗っぽいことをしたくなったという藤本先生。きっと誰かを助け出すなんてことは、そういうことなんだろう。
ぐったりしていたカメが気になる。小春はきっと大丈夫だろう。あの子の潜在能力は並々ならぬものではない。
校舎より高い位置まで浮遊し、向かう方向を定めるために考える。

「学校の敷地の出入り口は……」

呟いた時、稲妻のような閃光が空に一筋走った。

「あっちです!」

稲妻の落下地点を目指してさゆが箒をあやつる。私は振り落とされないようにしがみつくので精一杯だった。
どんどん加速して私たちは夜空を駆ける。煙があがっている場所の上空に到達した。

「います! 3人とも! ……いや」
「4人いる!」

煙がはれて、闇の中でも視界が明るくなる。
80 名前: 投稿日:2007/02/17(土) 16:37
「藤本ぉ、お前も偉くなったなぁ。大事なミラクルさんたち逃がそうなんて」

男の声が聞こえる。祭典の時などによくスピーチをするその声は、理事長のものだった。
箒を旋回させながら低空に移り、ほどよい高さになった時、飛び降りた。

4人の視線が私に集まる。カメは自力で立っていた。

「ここであったが100年目ぇ!」

意味はよく知らないけど、叫んでみた。
ベルトに差してあった短い杖を手にし、攻撃魔法を使用するために呪文を唱える。

「オンキリバリタル……」
「ガキさん、駄目だ!」

藤本先生の声で呪文が遮られる。声につられてそちらを見ると、箒は滅茶苦茶に裂け、
しかも藤本先生のローブも所々赤黒くなっているように見えた。

「魔法を使っちゃいけない! 理事長がもう魔法返しを使った!」

魔法返し。
それは超高等魔法で、自分に向かって使われた攻撃魔法を相手側に返すというものだ。
81 名前: 投稿日:2007/02/17(土) 16:38
「逃がさへんでえ!」
「うるせえ! てめえはシャランキューにでも戻ってろ!」

理事長のつんく♂と藤本先生が、もはやこれは口喧嘩だ。
シャランキューとは貧しい人々の住処で、最近ではスラムと化している。理事長はそこの出身らしい。
しかしこちら側が攻撃魔法を使えないとなると、どうしようもない。
現状を打破するには理事長をとにかく戦闘不能に陥らせるのがいいだろう。でも、どうやって。

「魔法返しを破る方法があるの」

さゆが箒から、とん、と優雅に降り立って囁いた。

「なに!? はやく……!」
「でもそれは占い師しかしらない」
「……っカメ!」

大声でカメを呼ぶ。カメはこちらを戸惑いの眼差しで見ていた。

「できるけどやだもん! ガキさんに嫌われたくないもん!」
「だああ、なにやっても嫌わないからさっさとしろ!」

この状況でなにを言ってるんだカメ! このままじゃどうなるかわからないってのに!
82 名前: 投稿日:2007/02/17(土) 16:39
ちょっと躊躇いの仕草をみせて、カメはこちらに走ってきた。
私の真正面に立って、腰にゆるく手を回してくる。
時間がとまったかのように、誰も動かない。私も、動けなかった。

「……怒らないでね」
「だからぁ」

はやくしろ、と言おうとした時、口を口でふさがれた。

「……んっ」

腰の辺りにあったカメの手が私の後頭部に回される。
口内に今まで感じたことのないあたたかさを感じて、思わず息が漏れる。
誰も動かなかった。誰も動けなかった。占い師が使える唯一の魔法。魔法返しを返す魔法。

「……これで、ガキさんは魔法返しにあわない」

にへら、といつもの笑みでカメは言った。
83 名前: 投稿日:2007/02/17(土) 16:39


84 名前:あみど 投稿日:2007/02/17(土) 16:40
>>76
レスありがとうございます。
やっとカメガキっぽくなってきました。
ありがとう! ありがとうっ!
85 名前:あみど 投稿日:2007/02/17(土) 16:40
ながし
86 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/17(土) 16:56
!!
何とっ!
87 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/17(土) 18:21
ぬあっ。かめがきっっ!
88 名前:76 投稿日:2007/02/17(土) 22:54
((((((ノノd*^ー^)<ガキさーん  繁lc|*・e・)|l<!

こんな↑カンジですね!!
作者さん更新乙です!!かめがき好き〜っ♪
こちらこそありがとう☆ありがとう☆でございます!!
89 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/18(日) 23:36
あらま、よいかも
90 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/19(月) 19:42
カメに惚れたw
91 名前: 投稿日:2007/02/19(月) 21:06


92 名前: 投稿日:2007/02/19(月) 21:08
ちょっとちょっとちょっとちょっと。
まさか本当にこれで魔法返しにあわない?

「……嘘だったら怒るからね」
「本当だもん!」

自信ありげにカメは言う。
そこまで言うなら、信じてみよう。それしか道がないのなら。

ぎゃあぎゃあと言い争いのようなことをしている理事長と藤本先生の方を向く。
杖を手にし、考える。……えーと、なんの魔法を使えば?

「アラマッタタララララダ!」

私が逡巡している隙に、小春の声で呪文が唱えられる。
ウオォォォ、と唸り声を上げながら、大きな、図鑑でしか見たことがないペガサスが現れた。
聞いたことがない呪文だったが、召喚魔法だったのだろう。
召喚魔法は攻撃魔法ではないから、魔法返しにあわない。

「小春ちゃんすごーい。さすがだね」
「亀井さんの魔法のお陰で、数秒間、誰も動かなかったから」

カメと小春が言葉を交わす。親戚というのは本当だったようで、ふたりは親しげだ。
ん? よく考えるまでもなく、最初から小春が召喚魔法を使えばよかったのでは、と私は気づいた。
93 名前: 投稿日:2007/02/19(月) 21:08
「ちょっと待て。私が魔法返しにあわないようにした意味は」
「あの魔法って、使おうとすると魔法使いは動けなくなるんだよね。
 その隙に小春ちゃんになんとかしてもらおうと思って」
「……最初から私に頼る気はなかったのか」
「なんのこと?」

ふふ、と不敵な笑みでカメ。
騙された。すっかり騙された。

そうこう言っているうちに小春が召喚したペガサスが理事長を足蹴にし、
「さすがはミラクルやな」というどうでもいい捨て台詞のようなものを呟いた理事長は倒れた。
どうやら気絶したようだ。ぴくりとも動かない。

校舎からのサイレンは相変わらず鳴り続けている。
緊急事態、緊急事態。
94 名前: 投稿日:2007/02/19(月) 21:09
「さあ、ここを出るか!」

藤本先生が高らかに宣言した。
しかし、正規ルートをたどって出ようものならすぐに捕まってしまう。どうするのだ。
私の心配をよそに、藤本先生はあてがあるのか、傷だらけの身体を引きずって歩き始めた。
方角は森の方。さゆが藤本先生に駆け寄って、箒に乗せた。

「ちょっと手間取ったけど、まだ大丈夫。森番の家に向かうぞ」
「愛ちゃんの家?」
「そう、そこが出口。そして新しい世界への入り口」

にやり、と藤本先生が笑った気がした。
校舎から、そこを動くなという意の言葉が聞こえるが、みんなして無視。
藤本先生とさゆが箒ふたりのりをして、私とカメと小春は小走りにその後を追った。
95 名前: 投稿日:2007/02/19(月) 21:10
深い闇に飲み込まれそうになる錯覚に襲われながら、走り続けた。
小さく見えた家が徐々に大きく見え始める。そういえば、と思い出して私はカメに声をかけた。

「カメ、大丈夫?」
「ん、なにが?」
「寮の窓から見たときぐったりしてたから……」
「あぁー絵里の寝起きが悪かったから藤本先生が強引に箒に乗せて」
「私の心配を返してください」
「ええーガキさん、絵里のこと心配してくれたのー?」

って嬉しそうに言うな! ったく。

しばらくすると、愛ちゃんの家の前に着いた。
藤本先生が箒から降りる。私たちも走るスピードを緩め、
ほっとして歩き出したが、なんと、藤本先生が家のドアを蹴破った。

「たのもー!」

藤本先生が愛ちゃんの家の中に怒鳴り込んでいく。
どうやらここでも友好的にはいかないらしい。

「……とうとうこの時が来たんやね」

と、愛ちゃんの声が聞こえる。

「最後の砦はお前だ、愛ちゃん」

藤本先生が、傷ついた右腕を上げて家の中の愛ちゃんを指差した。
96 名前: 投稿日:2007/02/19(月) 21:10


97 名前:あみど 投稿日:2007/02/19(月) 21:13
レスありがとうございます。
そろそろ怒られそうでびくびく。

>>86
なんとこんなことに、いやんいやんハワイ(ry

>>87
ようやくカメガキっぽいところが書けました。
かめがきっ!

>>88
AAかわいいですね。
ありがとうございますです!

>>89
あらま、本当ですか?

>>90
リd*^ー^)<まいどありぃ
98 名前:あみど 投稿日:2007/02/19(月) 21:14
次回、最終回かもしれないのだ
99 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/20(火) 08:50
思ってたよりシリアスじゃなかったw
終わっちゃうの〜?
100 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/20(火) 12:43
カメガキ最高w
終わっちゃうのかぁ。。。
101 名前: 投稿日:2007/02/20(火) 18:00


102 名前: 投稿日:2007/02/20(火) 18:01
「あたしが卒業して何年たつかね。ずっと待ってた」
「なるべく早く来るつもりだったんだけど、小春を待つ必要が出来てね」

愛ちゃんと藤本先生が知り合いであってもおかしくはない。
ふたりともこの学校の出身者だし、学年的にも少々かぶる。
それぞれ、卒業して学校の職員になったという共通点もある。

「この学校もすっかり腐ったね。こんなとこで食ってくのはこりごりじゃない?」
「例の占い師の件にまだこだわってるのか、美貴ちゃんは。正義感強いの?」
「そんなことはまったくない。生きたいように生きるだけさ」
「この魔獣れいにゃがここを出られないから、あたしは出るつもりはないよ」

愛ちゃんはベッドに腰掛けていて、その膝の上には猫の姿の魔獣れいにゃがごろりとくつろいでいた。

「愛ちゃんがどうしようと構わない。さあ、出口を教えて」
「うーん構わないけど、クビになったら困るんだなあ」

あくまでものほほんとしている。
後ろからなんだったが、私も口をはさんだ。
103 名前: 投稿日:2007/02/20(火) 18:01
「愛ちゃん、お願い。出口教えて」
「あらま、ガキさん。ガキさんがそういうなら聞いてやらないこともない」

魔獣れいにゃが身体を伸ばした。愛ちゃんの膝の上から飛び降りる。
それからこちらにやってきて、にゃあにゃあと私の足元をぐるぐるとまわりはじめた。

「手荒なことは好きじゃない。教えるよ、こっちだ」

愛ちゃんはあっさりと私たちを家の中に導いた。
れいにゃが後ろからついて来て、にゃーと一声鳴いた。私に、さよならを言っているように聞こえた。
104 名前: 投稿日:2007/02/20(火) 18:02
通された室内は、いつもの愛ちゃんの家と変わったところはないように見えた。

「ほれ、オープン」

愛ちゃんが壁に手をついた。そこがゆっくりと沈み込んでいく。
ゴゴゴ、という低い音とともに、床が一部分へこんでいった。

「……やっぱり地下道か」

藤本先生が呟いた。
床はどんどん地下道らしくなっていく。

「……ガキさん」

カメが私の腕をつかんだ。
ぴったりと身体を私の身体にくっつけ、すこし震えている。

「……大丈夫、たぶん」
「たぶんってぇ」
「どうせ私は頼りにならないんでしょ?」
「そんなことないもん」

カメが口を尖らせた。
105 名前: 投稿日:2007/02/20(火) 18:04
「じゃあ、みなさん元気でね」

地下道は完全に出来上がったようだ。愛ちゃんが私たちに向けてお別れを言った。

「ありがとう。この恩は……たぶん忘れない」
「一生忘れるな、ハゲティめ」
「なんだとこら」

禁じられたあだ名を口にした愛ちゃんと藤本先生が喧嘩をはじめようとしたところで小春が割ってはいった。

「行きましょう。まだ、先があるんでしょ?」
「そうだね。行こうか」

すぐに藤本先生は冷静さを取り戻して、足を地下道に向けた。
私たちもそれに続く。

「愛ちゃん。元気でね」
「おう、ガキさんもな」

愉快な森番と、一匹とはもう会うことはないだろう。
106 名前: 投稿日:2007/02/20(火) 18:04
地下道は本当になにもないただの道だった。ひたすらに歩く。

「そろそろ種明かししよっか?」
「なんの?」

にこにことカメが私に引っ付いたまま、言う。

「なんで、ガキさんが絵里を召喚したか」
「ああ、なんで?」

ずっと、疑問だったこと。

「運命の人だから。おかーさんがね、占ってくれたの。絵里が呪文を唱えたとき、
 召喚魔法を唱えている人のところに召喚されて、その人が伴侶さんだって」
「呪文って……」
「ヒャークマーピー」

楽しそうにカメが歌った。

「……そっか」

カメの手を握ってやる。驚いたように一旦手を引っ込めかけたカメだけど、
すぐに調子に乗って指と指とを絡めようとしてきて、それは阻止した。
107 名前: 投稿日:2007/02/20(火) 18:04
階段になっている部分をとんとん、と登っていくと、ある瞬間からぞわっとまわりの空気が変わった。
ガタンゴトン、と列車が線路を走る音が聞こえる。

「……ここは」
「駅。プラットホーム」

と、小春に藤本先生。

「お別れだよ、ガキさん、さゆ」

藤本先生が言った。

「やっぱり、別々なんですね」
「そうだね。元は敵同士なわけだし。美貴はふたりをちゃんと家に送っていく」

さゆが藤本先生と話しているのを、私はぼんやりと聞いていた。
私とさゆは魔法使い。カメは占い師、小春は混血。

「……最初から、藤本先生はこうするつもりだったんですね」
「そう」

私の言葉に、藤本先生は頷いた。
108 名前: 投稿日:2007/02/20(火) 18:05
あの学校を抜け出す。
研究材料にされそうな子をついでに助け出す。
おまけのようについてきた、私とさゆは、藤本先生にとってなんなのだろう。
藤本先生が私とさゆに向かって言葉をかける。

「ふたりが乗る列車がじきに来る。それに乗って、一回家に帰りな。
 これからどうするかはその後考えればいい。」
「魔法使いじゃなくても、さゆかわいいですし、大丈夫です」
「私も、なんとかします」

さゆと私も頷きあった。
カメが小声で呟く。

「……ガキさん」
「ん」
「もう、お別れ?」
「そうみたいだね」
「あっというまだったね」
「うん」
「楽しかった。ありがとう」

ピルルルルルル、とプラットホームに放送が入る。
列車が来るようだ。
109 名前: 投稿日:2007/02/20(火) 18:05
やってきた緑色の列車に私とさゆが乗り込む。カメと繋いだ手を離した。
座席に着き、窓を出来るだけ大きく開けた。

「藤本せんせー! お世話になりました!」
「元気でな!」

さゆがプラットホームに向かって叫んで、手を振る。
窓の外を見ると、小春も手を振っていた。

「ガキさーん! 離れても、絵里はずっと」

ピィーっと大きな音で汽笛が鳴り、カメの声は聞き取れなかった。
列車が動き出す。私とさゆは千切れんばかりに大きく窓の外に向かって手を振った。

朝焼けが眩しい。これから、私はどうなるのだろう。
でも、たぶんきっと、短いようで長いこの一週間に関わった人たちのことは忘れないだろう。
もちろん、カメのことも。
110 名前: 投稿日:2007/02/20(火) 18:06
111 名前:あみど 投稿日:2007/02/20(火) 18:08
レスありがとうございます。
>>99
全然シリアスじゃなかったですね。
終わりましたーありがとうございました。

>>100
くっ、100とられた!
終わっちゃいました。カメガキやほーい。

最後に。
読んでくださった方、レスを下さった方、などなど管理人さんふくめ、
すべてのこのスレに関わってくれた人にありがとうを。ありがとうございました。
112 名前:あみど 投稿日:2007/02/20(火) 18:08
またどこかでー
113 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/20(火) 21:53
終わってしまいましたか…。
さわやかな読後感が素敵です。
ありがとうございます。
114 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/07(水) 22:12
一気に読みました。
面白かったです。カメガキ最高!
またいつかこのコンビが見れたら嬉しいです。
ありがとうございました。
115 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/28(水) 00:33
この世界観好きです
プレストーリーや続編が読みたいなぁ

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