記憶

1 名前:ピェロ 投稿日:2007/02/26(月) 02:06
初めてですが,書かせていただきます。

一応,旅物語のつもりです。

古い(?)メンバーは登場する予定です。
2 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/26(月) 03:10
ガン!!ガン!!ガン!!ガン!!


「グッモーニン♪♪♪朝だょぉ」


古びた鍋をオタマで叩く音とかなり高い変わった声が聞こえる。


「……お、おはよぅ」

「おはよ、ひとみちゃん。もうご飯できてるから、真希ちゃん連れて来てね♪♪♪」

「……うん」


毎朝鍋の音で起こされてるけど、まだ慣れないんだよね。


「はぁ。ごっちんはよく寝てられるなぁ………」


隣のベットを見ると,幸せそうにまだまだ爆睡してるごっちん。


…………なんかむかつく!!!!


近くにあった箒で頭を殴ってやろうとおもいっきり振り下ろす。


「おりゃぁ〜〜〜!!!」


ポスッッ


「残〜念〜。てか寝てる人を襲うなんて卑怯だぞ、よしこ♪♪」

「ごっちんにならいいんだょ!!!」

「ひっど!!!梨華ちゃ〜ん、よしこがいじめるぅ」


ふにゃふにゃした笑顔で梨華ちゃんの所に走って行くごっちん。


………ゃばッッ!!!全然食われる!!!


急いでごっちんの後を追うと、食卓に見知った顔があった。


「ぁれ!?藤本じゃん。」


「ぅぃっす」


「またまっつーとケンカしたんだってさ」


朝食のハムを食べながらごっちんが笑う。


「何、また浮気!?」

「浮気なんてするはずないじゃん!!!あやちゃんの勘違い!!!」


バン!!!


「たん!!!なんで逃げるの!!やっぱり浮気したんでしょ!!!」


右手に包丁、左手に木刀を持って怒りのをオーラ充満されながら松浦が入って来た。


「だから違うって、何回も説明したじゃん!!!」

「じゃぁ、なんで逃げるの??」

「あやちゃんが包丁投げるからでしょ!!!」


この二人がケンカする時は必ず、うちらも巻き添えをくらう。


そしていつの間にか仲直りして、一緒に朝食を食べる。


ケンカぐらい自分達の家でしてほしいものだ。


「はぃ!!ひとみちゃんのベーグル♪♪」


「ぃっただきま〜す♪♪♪」


三人仲良く朝食を食べていると、どうやら仲直りしたらしい藤本と松浦が隣に座った。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/26(月) 07:27
楽しそうな仲間たちって感じですねw
続きも期待していますので頑張ってくださいね
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/26(月) 12:17
面白そうですね。
頑張ってください。
あと、省略ならないくらいに、スレわけしてくれると読みやすいです。
5 名前:ピェロ 投稿日:2007/02/26(月) 13:06
3:『名無し飼育さん』様
とても感激です【嬉´Д`嬉】
頭の中を文章にできるよう、頑張ります。


4:『名無し飼育さん』様
小説を書くことに関して無知なので、これからも助言いただけると嬉しいです【・´〜`・】
500字ぐらぃで区切ればいいのでしょうか………。
6 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/26(月) 13:46
心なしか頬が赤い藤本の腕に笑顔でくっついてる松浦。


「んで、よっちゃんさん達はいつ出発しちゃうの??」


「お金も結構集まったし、明日にでも出発するつもりだよ」


実はうちとごっちんと梨華ちゃんには、幼い頃の記憶がない。


今住んでいるこの村は名前もないような小さい村で、地図にはのってなぃ。


しかしうちらは自分達の荷物を抱え、この村へ歩いてやって来たらしい。


当時、まだ8歳ぐらい。


しかもこの村は樹海で囲まれているのに、おかしすぎる。


うちらもどうして知り合ったとか、どうやって来たとかは覚えてないのだからますます不思議だ………。


うちらの記憶のヒントは、この村に来た時に持って来たらしい荷物のみ。


うちの荷物は「HITOMI」と彫られた木の像と夜になると刃が青く光る剣のみ。


木の像は何かの守り神だろうか………。


剣だって見た目は普通の剣なのに…………。


調べてみたが光る剣なんて聞いたこともない。


何か特別な物質でできてるのかなぁ。
7 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/26(月) 14:04
ボーとしているとごっちんにハムを取られた。


「貰ったぁぁあ!!!」


「ちょっと!!!」


…………お前いくらなんでも食い過ぎだろ。


ちゃんとしてればかなりの美人の彼女も、うちと同じど謎が多い。


背中には大きな傷があるし、今やっと背負うにはぴったりの大きさの剣。


その剣をまだ小さな子供がどうやって持って来たのだろう…………。


「ひとみちゃん!?!?具合でも悪い??」


「…ぇッッ!?」


「よしこさっきからボーっとしてるよ」


キョロキョロと周りを見ると、藤本と松浦の姿がなぃ。
8 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/26(月) 14:17
「あれ!?二人は???」


「さっき帰ったよ。よしこってば、朝から何考えてるのぉ〜??」


「別に変なこと考えてたんじゃなぃって!!!」


「んあー、紅茶おいし♪♪」


「そうそう、美貴ちゃん達が今日泊まるって」


紅茶を飲みながら、梨華ちゃんがこっちをみる。


たぶん梨華ちゃんはどこかのお嬢様のような気がする。


見事に小指立ってるし。
9 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/26(月) 14:30
それに梨華ちゃん武器っぽいものを持ってないし、ピンクが好きだったりとお嬢様という言葉が似合う。


梨華ちゃんが持って来たものは象形文字みたいなものが書いてある暑い本と、古い地図、そして白銀の指輪。


指輪にはピンクの宝石が埋め込まれているので、梨華ちゃんはお気に入りらしい。


「そっかぁ、それじゃぁ二人が来る前に準備しなきゃね」


「準備ってほど荷物なけどね」


紅茶を飲み干し、部屋に行く。
10 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/26(月) 14:48
今日でこの部屋ともお別れかぁ………。


ちょっと切なさを感じながら準備をしていると、窓を叩く音がする。


ゆっくり顔を上げると、女の子達が集まっていた。


「吉澤さぁ〜ん、明日出発なんですかぁ??」


「さびしいじゃなぃですかぁ〜」


次々に行かないでくれと言われたり、好きだと言われる。


なぜかうちはモテるらしぃ。


藤本やごっちんもモテるのだが、二人には想い人がいるので諦めているみたい。
11 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/26(月) 15:02
藤本には可愛いけど怒らせるとかなり怖い恋人がいるし、ごっちんは昔から梨華ちゃんしか見ていない。


ごっちんは周りが気付くくらいハートを飛ばしまくっているのに、梨華ちゃんはまったく気付かない。


梨華ちゃんは鈍感過ぎる。


てかアホだ。


「今日吉澤さん達の為に祭をするので、出席してくださいね♪♪♪」


「了解♪♪」


笑顔で答えると、キャーキャー言いながら走って行った。
12 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/26(月) 15:20
「よしこのタラシ。今度からタラコって呼ぼうかなぁ」


ごっちんがニヤつきながら部屋に入ってくる。


「せっかく二人っきりにしてあげたのに、そうゆーこと言うんだ。」


「………ゴメンなさぃ」


「よろしい。さぁて、道場に行って来るか!!!」


「ぁっ!!うちも行く!!」


うちとごっちんは道場で剣を教える仕事をしてる。


おもいっきり自己流だけど。
13 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/26(月) 15:35
「「梨華ちゃ〜ん、道場行ってくるね」」


「お祭りに間に合うように帰って来てね」


「「はぁ〜ぃ、いってきます!!」」


「いってらっしゃい♪♪」


道場へ行っていつもの様に剣を教える。


うちらが出発した後は、たまに剣を教えるのを手伝いに来ていた藤本が稽古するらしい。


うちらは時間を忘れ稽古に集中し、祭りの時間がやってくる。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/27(火) 10:38
おおー!おもしろそう!
頑張って下さいね。
15 名前:ピェロ 投稿日:2007/02/27(火) 21:11
14:『名無し飼育さん』様
ありがとぅございます(////)精一杯頑張ります!!!!
16 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/27(火) 21:29
ヒューーー、ドドン!!!!


「「「わぁーー、きれ〜♪♪♪」」」


激しい稽古でかなり汗をかいたので、ベットの上に放置されていた服に着替えて外へ出た。


「花火まで打ち上げちゃって、なんかすごいねぇーー」


きっと松浦がパパに頼んだのだろう。


松浦の父はここ村長でかなり顔も広い。


それに娘の亜弥には甘い、かなりの親バカだ。


カラン、コロン、カラン、……


「ねぇーねぇー、かわいくなぁい!?」
17 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/27(火) 21:45
噂をすれば…………自分大好き人間とその恋人がかなり派手な浴衣を着て立っていた。


「かわいい♪♪♪」


((…………派手過ぎ))


うちらはぐるぐると村中を回ったり、くだらない話をしてこの村で過ごす最後の夜を過ごした。


一体何時間ぐらい話ていたのだろう。


もう外は少し明るくなっている。


うちらは3つしかないベットを横に並べ、結果がどうであれ旅を終えたら一度帰って来ることを約束して目を閉じた。
18 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/27(火) 22:04
出発の朝、見事な晴天。


藤本や松浦などに見送られ、うちらを乗せた馬車は村を出発した。


ずっと考えていた自分の過去や家族や故郷、この先つらい事がいっぱいあるかもしれないけど三人で乗り越えていきたいな。


「「「しゅっぱーーつ」」」


************


「ひとみちゃん、ここ何処なの??」


「わかんなぃ」


………何も考えずに出発したうちら、見事に迷いました。


「ぁっ!!!あそこに人がいるょ!!!」
19 名前:〜旅立ち〜 投稿日:2007/02/27(火) 22:31
「ぁの、この近くに街とか城ってありますか??」



眉をハの字にして梨華ちゃんが尋ねる。



『ぁぁ!?おまぃさん達<水の王宮>に行くからこの道歩いてんじゃねすかぁ??』



少し聞き取りずらかったが、この道の先に<水の王宮>があるらしい。



「おじさんも行くの??」



『んだぁ。今日は王様の誕生日だから新鮮な魚届けに行くだぁ』



おじさんに礼を言って<水の王宮>へ行くことにした。
20 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/02/27(火) 22:52
水の王宮(アクアウォーター城)


城下街の奥に城があり、水路で囲まれ中央に大きな噴水がある。


レンガも青っぽく、<水の王宮>の名が似合っていた。


『我が城にようこそ、王への祝いの用事か??』


「は、はぃ」


城の美しさに見とれていた梨華は、とっさに返事をしてしまったようだ。


『そうか、では城の中で待っていてくれ』


とても皆に愛されている王様なのだろう、若い門番は嬉しそうに道を開けた。
21 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/02/27(火) 23:16
城の中に入ると敬礼する青白い服の兵士達が道のように並んでいる。


三人がボーっとしていると奥から一人の女性がもう一人の女性を引っ張って歩いてくる。


「なぁなぁ〜、今年はやけに多いんちゃう!?」
「姐さん!!サボらんとしっかり仕事してください!!」


位の高い人なのだろうか、二人共鮮やかな青い服を着ている。


「どーするの、あの人達こっち来るよ……。」
「大丈夫!!ごとーにまかせて♪♪」


キラリと真希の目が光る。
22 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/02/27(火) 23:37
「次はえらいかわぇぇ子達やん♪♪あんた達も祝い??」


金髪で青い眼をした女の人がデレっと笑う。


「ごとー達は舞を見せに来ました♪♪♪」


「へぇー、若いのに珍しいなぁ。んじゃ楽しいにしとるわ♪♪」


そう言うと二人の女性はスタスタと歩いて行った。


「ごっちん、舞できるの??」
「出来ないけど、音に合わせて手合わせすれば舞っぽいって♪♪」


それでいいのかと思ったが、他にいい案がないので待ち時間に練習することにした。
23 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/02/28(水) 00:08
気持ちを落ち着かせようと三人は大きく深呼吸した。


兵士に呼ばれ王の間に入って、おめでとうございますと頭を下げるる。


さすがに王様の前で真剣を振り回すのは危険とのことなので木刀二本と刃の付いていない槍を借りて、槍で梨華が一定のリズムで床を叩く。


カッ、カカッ、カッ、カカッ……


たまに槍を回したりしながら、一定のリズムを刻む。


その音を聞きながら真希とひとみは木刀を構える。
24 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/02/28(水) 00:32
カン!!!!カン!!!!カン!!!!


乾いた木刀の音が両者の激しい攻防を伝える。


ひとみも力があるが、真希ほどの馬鹿力には勝てないので少し木刀の傾きを変えて力を流す。


突然無くなった反発に真希はバランスを崩すが、木刀を床に突き立て顔に蹴る。


ひとみはその蹴りをのけ反って避け、真希が着地する時に突く。


二人の美しい攻防と木刀の当たる音に重なる槍のリズムに、王の間に集まった人々は大きな拍手を送る。
25 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/02(金) 02:06
この城は武術に力を入れているらしく,とても気に入ってくれたらしい。


「見事な舞じゃ。ぜひ姫にも見せたい。先を急ぐ旅でなければしばらく留まってくれぬか??」


中肉中背,少しヒゲで隠れているが温かい優しい笑顔で王が話す。


その王の側に先程会った二人の女性もおり,青い眼の女性が近くの兵士に耳打ちをしてその兵士が階段へ消える。


「「「はい!!!」」」


三人は緊張していた顔を少し和らげ,お辞儀をした。
26 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/02(金) 02:24
「裕子,みちよ。この方達に部屋を。」
「はい。もう準備させておりますので,準備が終わりまで城の中をご案内します。」
「うむ。」


二人の女性に導かれ階段を降りる。


「あんたらすごいゃん。うちは軍総取締の中澤裕子。」
「うちはなつみ姫の側近やってます,平家みちよ」


「吉澤ひとみです」
「石川梨華です」
「後藤真希でーす」


簡単に自己紹介をし、城の中を案内してもらった。
27 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/02(金) 02:52
格闘場や教会、店に兵士の部屋…、かなり広い城なのでもう覚える気にもなれない。


「ここが部屋。預かってた荷物も中にあるからな。」


部屋に入ると荷物が置いてあり、食事まで用意されていた。


「うまそー」
「めっちゃうまいで。いっぱいあるからたくさん食べゃ。」
「「「ありがとうごさいます」」」


平家さんはこの部屋の鍵と城の地図を机の上に置いて部屋を出ようとした。
28 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/02(金) 03:15
「あたしらは今日は向かいの部屋にいるから、なんかあったら呼んでな。」
「てか自分らあんま夜は出歩かん方がいいで。トイレは三人一緒で風呂はうちらと入ろな。」


ひとみ達は裕子の言う意味が理解出来ず,首をかしげた。


「ここの兵士は女に飢えてる。廊下で悪いのに会ったら襲われても,誰も気付いてくれんよ。」


確かに兵士達はほぼ男で,人々が城下街へ帰る夜になると女はほとんどいなくなっていた。


そんな所に女だけの旅人が泊まっているのだから,狙われる危険が高い。
29 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/02(金) 03:32
考えただけで、鳥肌が立つ。


「まぁ、食べ終わったら風呂に入って鍵かけて眠り。」


裕子達が部屋から出て行き夜の情報集めは止めようと決めて、三人は用意された食事を食べ始めた。


************
コン、コン、コン


「平家やけど、食べ終わったか?」


鍵を開け、二人を部屋に入れる。


「「「とっても美味しかったです♪♪」」」
「「それはよかった。」」


笑顔で答える裕子とみちよだが、急に険しい表情となりドアを睨んでいる。


何事かと思っていると梨華と真希は裕子に押し倒され、ひとみは腕を引っ張られみちよの上に乗る状態になった。
30 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/02(金) 04:03
「キャァッ!!」「んぁ!?」「へっ!?」


いきなりの行動に目をパチパチしていると、荒々しくドアが開いた。


「俺達と一緒に遊ぼうょ♪♪」


酔った様子の兵士が5人部屋に入って来るが、自分の上官と姫の側近の状態を見て一気に酔いがさめたらしく「すみません」と敬礼をして逃げるように部屋を出て行く。


「ったく……。ゴメンなぁ。でももう来んはずやから。」


兵士間の上下関係は厳しいようなので先程の状態が兵士達に伝えられれば、手を出そうとする輩はいなくなるだろう。


裕子とみちよは申し訳なさそうな顔をして、体を起こす。
31 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/02(金) 04:17
自分達は近近いてくる足音にも気付かなかったし、足音だけで何をするかわかったことに驚いた。


きっと二人の戦いの腕は相当なものだろう。


そんなことを考えながら、風呂場に向かう二人に付いて行く。


風呂場に着いて服を脱ぎ、風呂に入る。


真希とひとみは豪華な造りに興奮し、泳いでいる。


「なぁ、何で旅なんかしてるん??別に舞を披露しに旅してるゃないやろ??」


目線を真希とひとみといつの間にか加わって一緒に泳いでる裕子に向けたまま、みちよが尋ねた。


やはり腕が立つ者が見ればあれは舞ではなかったのだろう、梨華は幼い頃の記憶がなく自分達の過去を知る為に旅をしてることを説明した。
32 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/02(金) 04:53
すると泳ぎ疲れたのが、ひとみが梨華の隣に腰をおろした。


「そうなんや。でも剣とかは隠した方がいいで。もし珍しい物で盗まれたら大変や。情報集めはまず子供がいなくなったりしてるか聞いて、大丈夫そうな奴にだけ見せ。」


二人が大きく頷いた所に真希と裕子が帰って来た。


「ふぃーー、疲れた。裕ちゃん早いんだもん。」


すっかり仲良くなったようで、改めて真希の人懐っこさに驚いた。


年の差や二人のオーラや位などは気にしたりしないのだろうか………。


「二人も裕ちゃん、みっちゃんでいいで♪♪」


笑顔の裕子に丁寧に断りを入れる梨華とひとみ。


本人がいいと言っても、呼べる訳がない………。
33 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/02(金) 05:12
「そうだ。明日武器倉庫と図書倉庫に行きたいんだけど、いい??」
「図書倉庫には鍵がかかってるけど、特別に開けてあげるな。」


食事をしたときに、武術に力を入れているのなら武器などの知識が優れているはずたと相談していた。


あれだけ変わった剣だ、もしかしたら場所が絞れるかもしれない。


明日は夕方に姫に舞を見せるので、それまでの間武器について調べることにしよう。


体を洗い、服に着替えて自分の部屋に向かうと、部屋の前に兵士が立っていた。


「みちよ様、明日の旅の方の舞の件で姫がお呼びです。」
「わかった。」


裕子とみちよに鍵をかけて寝るよう言われ、鍵をかけてそれぞれベットに入った。
34 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/03(土) 02:12
みちよは連絡を伝えに来た兵士を帰らせて、裕子と共に先程来た道を戻る。


昼間と違って静かな城の中に二人のブーツの音が響いている。


「姐さん,あの子ら図書倉庫に入れるんですか??」
「………入れんかったら怪しまれるやろ。大丈夫や、うちが何とかしとく。」


裕子は腰にある鍵束の中から古い鍵を手に取る。


「今からですか!?だったらぅちも」
「あんたは姫んとこ行きぃ。怒られるでぇ♪♪」
「……じゃぁ、後で手伝いに行きますわ。」


みちよはこちらを見ずに軽く手を振る裕子の背中少し見つめ、姫の部屋へと急いだ。
35 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/03(土) 03:04
みちよは姫の部屋に着くと走って乱れた服を直し、ノックをして中に入った。


「失礼致します。遅くなりました。」
「遅いべ!!!!なんかあったかと心配したっしょ!!!」


言葉と共に飛んで来た枕をキャッチして、姫であるなつみの側へと向かう。


「申し訳ございません。旅人の世話をしていたもので。」


なつみはみちよの袖を掴んで、引き寄せた。


「悪いと思うなら、抱きしめて。」
「………ゴメンなぁ。」


みちよはなつみを抱きしめ、久しぶりのキスをした。


「んんっ、……はぁ、ん………ふぁぁ。」


みちよは深いキスでトロ-ンとしているなつみの頬を愛おしそうに撫でる。


「全然呼んでくれんから、寂しいかったわ。」


そう呟くと額、瞼、頬、首筋にキスの雨を降らせ、久しぶりの恋人の時間を過ごした。
36 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/03(土) 04:12
一方裕子は図書倉庫のランプに火をつけ、本を集めていた。


「所々抜けると変やからと先代の日記は全部隠さんと……。まぁ、こんなもんか。」


裕子は山積みになった本を見てため息をついた。


朝までに空になった本棚も隠さなければならないし、本の重みで凹んだ絨毯も隠す必要がある。


深呼吸をして目を閉じると裕子の体が白い光に包まれ、右の頬に黒い十字架が浮かび上がる。


そして1番奥の本棚に掌を向けるとゆっくりと上へと上がっていき、後に隠されていた扉が姿を現した。


その扉の上ではぎっしりと本が並んでいる本棚がまるで風船のようにふわふわと浮かんでいる。
37 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/03(土) 18:38
そこへみちよとなつみが手を繋いで入って来た。


「間違っても頭とかに落とさんといてくださいね。」
「あれ!?ずいぶん早いやん……ってなっちも連れて来たんかぃ。」


普通ではありえない状況だが、みちよとなつみは驚かない。


「事情話したら来るってゆぅて………」
「まぁ人手は多い方がえぇ。なっちも来たんやから手伝ってな!?」
「うん♪♪♪裕ちゃんのこれ見るの久しぶりだな。」


3人で山積みの本と分解された本棚を扉の向こうへと運び、裕子の力ですべての本棚を浮かせて絨毯を取る。


「「しんどかった……。」」


少し体を休めたい裕子とみちよだが、なつみを部屋まで送るために図書倉庫を出た。


部屋に着くとまだ寝たくないと呟くなつみの頭を2、3回撫で、自分達の部屋に帰り眠りについた。
38 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/03(土) 19:38
コンコンコン
「あのぅ〜〜、石川ですけど〜〜」


ずっと呼んでいるが、裕子とみちよの部屋からは何も反応がない。


「まだ起きてないみたい…。」
「裕ちゃん!!みっちゃん!!起きてってば〜〜!!!」


朝食を運んでくれた世話係の女の子によると、2人は朝が弱くいつもこの調子らしい。


どうしようかと部屋の前をうろうろしていると、眉間にシワを寄せた裕子が顔を出した。


「……おはょぅさん。武器倉庫と図書倉庫やっけ!?んじゃ〜行こか。」


低血圧なのだろうか、かなりふらつきながらまず武器倉庫に案内された。


鉄の扉を開けて中に入ると、剣、刀、弓、槍……かなりの種類の武器が飾ってあった。


梨華とひとみが同じような剣がないか1つ1つ手に取りながら探しているが、真希は壁に飾らている1本の剣を見つめている。
39 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/03(土) 19:51
「ごっちんも探せってぇ〜!!」
「真希ちゃん、どうかしたの??」
「………この剣、ごとーのに似てる。」


真希の言葉に梨華とひとみも駆け付けるが、その剣は真希のものに比べてかなり小さく鞘のデザインも違う。


「全然似てないように見えるんだけど……。」
「うまく説明出来ないけど……似てる気がする。」


その様子を入り口付近でその様子を見ていた裕子はブーツの紐を結び直しながら、苦笑する。


(…………記憶がなくても親の作品はわかるんやな。)


真希はその剣を気にしながらも、全部の剣を見て武器倉庫を後にした。


「もう少しで姫に舞を見せる時間やけど、図書倉庫行くか??」
「うーん、明日でいいや。明日はちゃんと起きてよね!!」


舞の準備の為に部屋に戻ることにした。
40 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/05(月) 06:51
1度王の前で披露したことがあるので、今回は少し余裕があるらしくいろいろ話をしながら準備していた。


「裕ちゃんとみっちゃんも一緒にやんない??人数の多い方が迫力もでるしさ〜。」


真希は梨華とひとみが頷いたのを見てから、裕子とみちよを見つめた。


「なんでうちらが参加すんねん。それにみっちゃんは戦闘員とちゃう。」
「そや。うちは姐さんと違って優しいから、戦闘とかに不向きやねん。」
「嘘つけ!!ただの運動オンチのくせに。ほんま笑えるくらいひどいんやで。」
「姐さん、ひどいわぁ〜〜。」


2人の漫才のような会話に笑いが起こる。


「だから姫の側近をしてるんですね。」
「ねぇ〜、姫ってどんな人なの??」


そういえば、王の誕生日の祝いの場にも姫らしき人はいなかった。
41 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/05(月) 07:21
みちよは頬を掻きながら、姫のことを話し出した。


「姫はとっても優しくてあたたかい人や♪♪」「………かなりの天然さんやけどな。」


「んで、歌がめっちゃ上手やねん♪♪」「………たまに変な訛りが出るけどな。」


みちよの発言に対し裕子がボソッとツッコミを入れるが、みちよの頭の中は姫のことでいっぱいらしく気付いていないようだ。


「んで、太陽みたいに笑う人や♪♪」「それは認める。まぁ、いい人やから大丈夫やで。」

2人の様子からしていい人であることは間違いないだろう。


5人は兵士が呼びに来るまで話をした。


兵士に連れられ王の間に入ると裕子達と同じ青い服の人達が周りを囲み、その中心に王と王妃と姫だと思われる人が座っていた。
42 名前:〜水の王宮〜 投稿日:2007/03/05(月) 07:30
するとひとみ達の前を歩いていた裕子とみちよが深々と礼をして、片足を床につけ忠誠を誓うようなポーズをした。


それん見たひとみ達も慌てて同じポーズをしようとした。


「そんなことはしなくてもよい。先を急ぐ旅かもしれぬのにわがままを言ってすまなかった。珍しい舞でとても素晴らしいかったものでな。」


王が軽く手を叩くと昨日使った木刀と槍を持った兵士が現れた。


「早速だがもう1度見せてくれ。」
「「「はい!!!」」」


3人は笑顔で返事をして、昨日と同じように舞に見せ掛けた手合わせをし始めた。


すると梨華の槍のリズムに合わせてトランペットや太鼓も加わり、まるで祭りのような騒ぎとなった。
43 名前:ピェロ 投稿日:2007/03/12(月) 20:59
小説とは言えないものですので読んでくださっている方がいるのか不安ですが、少し説明を入れさせていただきますm(__)m

今回からまた少し文体が変わります。お付き合い、よろしくお願いします。
44 名前:〜説明〜 投稿日:2007/03/12(月) 21:49
舞台は地球から遠く遠く離れた、地球の4分の1程度の大きさしかない紫色の星。

昔は自然豊かな星だったようだが、人間の愚かな欲によりこの星は姿を変えた。

植物や昆虫や野性の動物達、人間以外のあらゆる生物は全て姿を消した。

そして人間に罰を与えるように発生した紫の霧は大部分を覆い、多くの人間達を死へ導いた。

そこで人間達は霧を避ける為の特殊な装置を発明し、その中で暮らした。

まさに死の牢獄の名が相応しい、安全だと思われたその中の暮らしでは人間が人間を狩り人間を殺す為に時間が過ぎる。

牢獄の中の木々や動植物達はほとんど人工的なもので、自然はごく一部にしか存在しなくなった。

そんな狂った星で生活している人間達のお話です。
45 名前:ピェロ 投稿日:2007/03/12(月) 21:52
次回から続きを書かせていただきます。
46 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/30(月) 00:38
ショート
47 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/30(月) 01:03
ストーリー
48 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2007/04/30(月) 01:06

「まず吉澤さん、お願いしまーす」
「あ、はーい」

自分達は商売をしている。それは確かな事実。でもいったい何を売っているのだろぅ。

「おはようございます。よろしくお願いしまーす」
「「「おはようございまーす」」」

【歌】を売っているのだろうか?いや、きっと違う。もし【歌】を売っているのなら、なぜ【トークの質】を求められるのか。なぜ【写真集】と言う本を出版するのか。
では【表情】を売っているのだろうか。いや、それもきっと違う。

「ワイルドな感じで」パシャ
「次は悲しい表情で」パシャ
「次は色気がある感じ」パシャ
「はい、笑ってー」

注文通りに変える、まるで仮面のようなものを売っているのなら、なぜ【プライベート】を追われるのだろう。
49 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2007/04/30(月) 01:38

「んじゃぁ、サビのところいきます」
「はい」

もうすぐ卒業だ。多くの乗員を加えながら、多くの途中下車する人を見送って来た【モーニング娘。】と言う電車を降りる。不安がないと言えば嘘となる。自分はこの電車を降りた後、どうなってしまうのか。いったい何をして、いったい何を目指しているのだろうか。

「はい。吉澤さんは全部終了です。」
「ありがとうございましたぁ」
「次、高橋さんお願いしまーす」
「はぁい」

スタッフさん達に歩きながら頭を下げ、小さな画面を見つめながら足を組む藤本美貴の隣に座った。

「お疲れ様」
「どーも」

彼女は自分が下車した後、運転席に座る事になっている。無表情で一点を見つめてる彼女。きっと心の中ではいろいろな葛藤がある事だろう。
50 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2007/04/30(月) 09:55
彼女は【ソロ】と言う一人乗りの車からこの電車に移って来た。彼女は強く、冷静に見える。でも誰よりも周りを気にし、意外に弱い。

今回の衣装はそうでもないが、彼女の露出度はかなり高い。しかし気にする様子は見せず、次期運転手として構える。

同期は彼女よりも年下で、6期として加わった。なのに次期リーダー。年齢や性格や責任感などから、彼女が次期リーダーになるのは当然の事。

プレッシャーはあるだろう。だがそれは表には出さない。卒業する自分と年下の仲間達の為に。
51 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2007/04/30(月) 10:22
周りを見渡す。撮影が終わりこちらに歩いて来る高橋愛。逆に撮影に向かう藤本美貴。自分の後ろの方で撮影の様子を眺めている新垣里沙。いわゆる、お姉さんチーム。

子供チームは隅の方でメイキング用のカメラに夢中だ。昔は自分も子供チームだった。そして椅子に座りただ周りを見渡したり、ただ一点を見ている先輩達の姿を不思議に思っていた。

大阪弁の初代リーダー。太陽のような笑顔で笑う先輩。少し不思議な2代目リーダー。冷静沈着かつ熱い先輩。自分に多くの事を教えてくれた恩師。自分と同い年だけど先輩のあの子。

自分は先輩達のように何かを伝える事が出来たのかな。
52 名前:吉澤ひとみ 投稿日:2007/04/30(月) 11:08

今日の仕事はこれで終わる。だから彼女の家行こう。きっと昔よりもピンクが少なくなった部屋から、びっくりした様子で向かえてくれるはずだ。
今日は彼女を腕に抱いて、ぐっすり眠ろう。またおもいっきり走れるように。残る後輩達に何かを少しでも伝えられるように。

「モーニング娘。さん終わりでーす」
「「「「「「「はーい、ありがとうございましたぁ」」」」」」」

電話をかける。コール音が心地良い。一回、二回、三回、四回…。

「ぁ、もしもーし。よっすぃどうしたの!?」
「うん。今から行っていい?」
「ぇっ!?そんな急に!?」
「ダメ?」
「ダメじゃないよ。んじゃ待ってるね」
「うん」

電話を切る。慌てて部屋を片付ける様子が目に浮かぶ。
早く準備して会いに行こう。早く行って少し困った顔を見るのもいいかもしれない。

fin
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/01(火) 06:38
な、なんでそんなことまで知ってるんですかァ〜!?
私とひとみちゃんの二人だけの秘密なのにぃ〜・。
もしかして、ピィエロさんて・・隣のお部屋の方かしら?
だとしたら(ごめんなさいネいつも夜中に迷惑かけ。。)うふっ!
ショートストーリー すごく良かったですョ。
 あ い す く りーむ とぉ〜 myひとみぃ〜〜。
54 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/01(火) 07:47
>>53さん 何よ!何なのよ!? ひとみちゃんは私のなのぉ〜。
偽者は引っ込んでてヨッ!もう〜。あーたねぇ〜作者さんの名前も
間違ってるし、ピィエロ じゃなくて ピェロ ですからァ〜!

作者さん私のお友達のミキちゃんから(続きキボンヌ!)と託けありました。
私も続編希望です。
ひとみちゃんと二人で、うふっ!読みたいので!。




55 名前:ピェロ 投稿日:2007/05/07(月) 01:02
>>53様,>>54
有り難いお言葉、感無量でごさいます。

次はショートではないのですが……出来るだけ早く完結できるよう頑張ります。

話がずれますが、卒業された吉澤ひとみ様と娘の皆様に敬意と忠誠をw。頑張れ(^口^)/
56 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:20
運命と宿命は違うと言う。
運命は変えることができ、宿命は変えることができないと。

"運命の人"……よく愛しい相手に使われる言葉だが、"変える事ができる人"と言う意味なのだろうか。

では"変える事ができない人"という、"宿命の人"は存在するのではないのだろうか。

"運ばれた命"と"宿った命"。

命ある者は皆、"運命"と"宿命"を重ねて生きているのかもしれない。
その違いに気付かずに……。
57 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:24
夏の眩しい陽射しで輝く桜並木をゆっくり歩く少女。身を包むは【可愛い子が集まる高校】と名高い、有名なお嬢様学校の制服。リボンの色が緑色である事らから三年生であろう。
そしてその少女を追い掛ける少女が一人。

「先輩ーー!!おはよぅございまぁす♪♪」
「あら、亜弥ちゃん。おはよう♪♪」

"先輩"と呼ばれた少女の名は、石川梨華。テニス部の元部長で、常に学年上位の成績を保つ才女である。まるで踊るようにテニスをする事から【エリーゼ】の愛称を持ち、多くの残念がる声を受けながら先月部活を引退した。
58 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:26
そして"亜弥ちゃん"と呼ばれた少女の名は、松浦亜弥。彼女は梨華に憧れてテニス部に入部し、部活を引退した後もべったりと懐いている後輩である。彼女の容貌は十中八九「可愛い」と表現されそうであるが、一年生にして二、三年生からエースの座を奪い取ったつわもの。外見は違えど、プレー面では梨華によく似ている為【第二のエリーゼ】と噂されている少女である。
59 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:30
「先輩、一緒に行きましょ♪♪」
「いいけど……朝練は休みなの??」
「休みじゃないですけど、石川先輩に会っちゃったのでサボりまぁす♪♪」
「………よく部長だった私の前でそんな事言えるわねぇ。中澤先生に怒られても知らないよ!?」
「大丈夫でぇす♪♪中澤先生の弱みはしっかり握ってますから。ニコリ」

なぜ亜弥が嫉妬やいじめの対象にならないのかはその可愛さゆえか、……それとも意外に恐ろしい性格を持っているからなのか。その真偽はいじめっ子にでも聞かない限り、確かめる事はできないだろう。
60 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:34
「それより【幽霊の家】の噂聞きましたか?」
「ううん。誰か忍び込んだの??」

学校の裏門近く丘の上に古い洋風の小さな家がある。壁は草で覆われ、窓からは黒いカーテンが見えるだけ。その家は柵で囲まれていて、まるで物語に出てくる幽霊屋敷のようだ。そのような不気味な家には噂が付きまとうのは別に不思議な事ではない。「夜になるといつもは閉じている門が少し開いている」とか「昔あの家で親に反対された恋人達が自ら命を絶った」とか「夏でもあの家の中は異常な程寒く、奥から泣き声が聞こえる」とか……。そのため、ごくごく少数であるが忍び込もうと考える奴が現れるのだ。よくあの家の外見を見て、入ろうと考えるものだ……。
61 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:36
「そうなんです!!!ぁたしの友達なんですけど、一週間前に忍び込んだんです。そしたら……見たんですって!!!髪の長い女の人!!すっごい綺麗な人だったみたいですよ!!」
「ふーん」
「もぅ!!!先輩、リアクションしてくださいょぉ!!!」
「ふーんってリアクションしたじゃない。」

別にこの噂を信じていない訳ではない。寧ろ信じている方だ。だって………梨華も実際に見た事があるのだから。時間にしたらわずか5秒ほどだっただろうが、あの時の事はすぐに思い出す事が出来る……まるで写真のように。
62 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:38
その日は塾があったのだが、大会前と言う事もあり部活がかなり延びてしまった。そこでいつもは不気味なので避けるのだが、塾に遅れてしまうので近道である【幽霊の家】の前を通る事にした。
その時【幽霊の家】の二階の窓から月を眺めながら涙を流す人を見たのである。【幽霊の家】の噂の幽霊はかっこいい少年と綺麗な女の人。しかし梨華が見た人はかっこいい少年のようだったが確実に女の人であった。しばらくすると風でカーテンが揺れ見間違えたのかと思う程に姿を消していたが、窓の淵には涙が落ちたような跡がはっきりと見えた。
63 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:40
「ちょっと先輩聞いてますか!?」
「あ、ゴメン。聞いてなかった。」

ボーとしてるうちに、いつの間にか昇降口に着いていた。

「もぅ!!!だ、か、らー、明日行きましょう?」
「どこに??」
「【幽霊の家】にですよ!!」
「えーー!!!」

怖い気持ちもある。でももう一度あの人に会えるのなら……。そんな気持ちがぐるぐると梨華の頭の中を回る。そんな時梨華の背中をおもいっきり蹴飛ばす、甘えたな後輩。

「ねぇーせんぱぁぃ。行きましょう。石川先輩、ねぇー。」
「もぉ、しかたないなぁ。特別ね。」
64 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:42
時は過ぎ、亜弥と【幽霊の家】に行く約束の日。さすがに真夜中では怖いので、昼に行く事になった。

「遅いなぁ…。」
手に季節と不釣り合いな厚手のコートを抱え、懐中電灯や水などを入れたバックをプラプラさせながら裏門で辺りを見回す梨華。そこへ梨華と同じような物を抱えた、亜弥が走って来た。

「遅れてすいません。さぁて行きましょう♪♪」
亜弥が時間にルーズである事をしっかり把握している梨華は、気にする事もなく亜弥と共に【幽霊の家】へと向かった。【幽霊の家】は昼であっても、かなり異質のオーラを放っていた。
65 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:45
「「…………。」」
「先輩、お先にどうぞ……。」
「こうゆうのは後輩からでしょ……。」
「ぇ、嫌ですよ」
「私も嫌よ」
「んじゃ、せーので開けません?」
「そうだね」
「「…………せーの」」

ギーと唸るドアを開き、素早く中に入った。噂通り異常な程寒かった。
「見て亜弥ちゃん、息が真っ白。」
ハァーと息をはくと、それは綺麗な雲となって空気中を漂い消えていった。
「ほんとだ。コートがあって助かりま……」
亜弥は言葉を止め、大きな目をさらに大きく開き止まっている。
66 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:50
「ちょっとー。怖がらせようとしないでよね。」
梨華は亜弥の視線に合わせようと、ゆっくりと後ろを振り返る。

そこには階段があり、階段の上では髪の長い女の人が腕を組んで梨華達を見下ろしていた。
「あんたら、ここで何してんの?人の家に勝手に入り込むとか、不法侵入だょ。まぢで。」
「「………。きゃぁーー、出たぁぁあ!!!」」
「幽霊だぁ、お化けだぁ、ほんとに出ちゃったぁ」
「ごめんなさい。もう帰ります、今すぐ出ますから……」

明らかにパニックを起こしている亜弥と、ひたすら謝る梨華。その様子を不思議そうに観察している女の人。かなり小さい顔、きつい印象の瞳、少しウェーブのかかった髪。亜弥の友達が見たという人だろうか。
67 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:53
「いや、美貴幽霊じゃないから。」
「「……へ!?」」
「幽霊じゃなくて妖怪♪♪」
「「………」」
「そ、そんな違わんないじゃないですかぁ!!」
「もう帰ります、帰りますから!!」
「ミキティ!!うるせぇょ!!何一人でジャレて………カ…ノン…!?」
「ぁ、よっちゃん。おは……え!?」

自分の事を"美貴"と呼ぶ少女の後ろのドアから、金に染められた頭をガリガリと掻きながら少年のような容貌の人が姿を現わした。その人は梨華達の姿を確認すると、急に倒れてしまった。その人は以前梨華が見た人であった。
68 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 01:57
「ちょ、ちょっと!!!よっちゃん??もしもーし。ダメだ。……そこの人達、手伝だって。どうせ暇でしょ!?」
「「は、い」」

三人で急に倒れた人を部屋に運び、ベットに寝かせた。暗くてよく見えないが部屋の造りも洋風で、家の様子とは違ってかなり片付いるようだ。
「暖炉に火入れて様子見ててよ。美貴は向かいの部屋にいるから、なんかあったら呼んで。」

自分の事を"美貴"呼ぶ少女はすぐに部屋を出て行ってしまった。梨華は人任せだなと思いつつ、でもとりあえず言う事は聞こうと暖炉の方へ向かう。
69 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 02:01
「暖炉ってどうやって使うんだろ。」
「なんか燃やせばいいんじゃないですかぁ!?」
「そんなの当たり前じゃない」
「先輩が聞いたんじゃないですかぁ」

その暖炉はずいぶん長い間使われていないらしく、主のいない蜘蛛の巣がたくさん作られていた。梨華は近くに積んであった薪を暖炉の中に並べ、ライターで古い新聞に火をつけて中へほうり込んだ。火は見事に燃え上がり、部屋の様子がはっきり見えるようになった。
この部屋の主はクリスチャンなのだろうか……。壁には多くの十字架やキリスト像などが飾られている。部屋を見回すと、いっさい電気製品は見られなかった。今時珍しい事である。
70 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 02:04
「あー、石川先輩だぁ。この人と知り合いだったんですかぁ??」
「え!?」

亜弥がベットの近くにあった写真立てを持って梨華の方へ歩いて来た。写真を見ると、二人の女の人が幸せそうな笑顔で笑っていた。一人は髪の色が銀色であったり瞳の色が青っぽいかったりするが、ベットで眠っている人で間違いないだろう。もう一人は青い涙のような石のネックレスを身につけ、愛おしいそうに隣の人を見つめている。
その人は亜弥にとっても梨華にとっても、見知った顔をしていた。本人ですら、自分だと思ってしまう程に。
71 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 02:07
「なんで!?」
「え!?先輩じゃないんですかぁ??」

そう、写真には梨華がいたのだ。似ていると言うレベルでなく、まさに今の梨華が。でも梨華自身にはまったく覚えがない。二人の後ろはレンガで出来た教会のような建物があった。風景や周りに小さく映っている人から、どうやら日本でないようだ。それに写真もかなりボロボロで、最近撮られた物ではない事が感じられる。しかしそうなるとベットで寝ている人が全然変わっていない事に矛盾が生まれてくる。梨華は写真立てを元あった場所へ戻した。
72 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 09:18
「ほら、似てる人が三人ぐらいいるとか言うじゃない!?きっとそれだよ。」
「……すっごいそっくりですね。」
「だね。」

梨華はベットで眠る人に視線を移した。すると写真にうつっていたネックレスをつけている事に気付いた。どうやらそれには何か文字が彫られているようで、気付くとネックレスに触れるくらいまで手をのばしていた。

ガシ
「触らないで。」
「わぁ!!ご、ごめんなさい」
ネックレスに梨華の手の先が触れた瞬間、手を握られた。透き通りそうな程白い綺麗な手だった。
73 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 09:21
眠っていた人は梨華の手を離すと暖炉の火を毛布で消してランプをともし、ドアに向かって叫んだ。

「おーい!!!ミキティ!!!」

その声を聞いて現れた最初に会った人。その人が部屋に入ると共に、外の冷たい空気が流れてきた。

「大丈夫??」
「ちょっとクラっとしただけ。それより説明してよ。」
「それは美貴も知らないよ。音がしたから部屋から出たらいたんだもん。」
「「誰??」」

2人は梨華達を不思議そうに見つめた。まぁ、当然の反応である。ピンポンもせずに、家の中に侵入して来たのだから。立派な家宅侵入だ。
74 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 09:24
梨華達は、この家が【幽霊の家】と呼ばれてる事。昔自殺したカップルの霊が出ると言う噂がある事。自分達も興味があって忍び込んだ事を正直に話した。

「アハハハ…ヒィ。し、しぬぅ…。やばい……く、るしい。よっちゃん男だと思われてるし、美貴と恋人だってぇ…。アハハハハ」

涙を流しながら笑っている髪の長い女の人。笑うとかなり印象が違った。その様子を少し凹みながら見ている金髪の人。

「ミキティ笑いすぎだって!!しかも死なないから大丈夫じゃん。ぁー、うち吉澤ひとみ。んで今にも笑い死にそうなこれは藤本美貴。」
「い、石川梨華です。」
「松浦亜弥でぇす。」
75 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 09:26
やっと笑いの波が遠退いた美貴が、梨華達に烏龍茶をワイングラスに入れて持って来た。

「でも幽霊だと思われたとはねぇ。一応美貴達も生きてるてのに」
「でもあんまり変わらないじゃん……。」
「あの…、どう意味ですかぁ!?」
「だから美貴達、妖怪だって言ったじゃん。」
「……ミキティ。簡単に妖怪だって話すなって何回言えばわかるの!?退治されたらどうすんのさ!!」
「だってぇ、美貴の事幽霊って言うだもーん。それに退治なんて無理でしょ♪♪」
「まぁね。でもぅちは静かに暮らしたいの!!」
76 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 09:32
"妖怪"などの語が飛び交うが、梨華達にはさっぱり理解出来ない。
「この際だから言っちゃうけど、うち吸血鬼なのね。」
「美貴は雪女。」
「ここ寒いでしょ!?それこいつのせいね」
「ひっどーい!!しかたないでしょー!!」

2人はまだ半信半疑な梨華達に説明てくれた。美貴は雪女で50年近く生きているらしい。実際に美貴が触れた所は見事に氷に包まれ、歩いた場所には薄く霜がおりていた。
そしてひとみは吸血鬼で100年前にイギリスから日本へ移って来たらしい。そう言われれば軽く尖った八重歯ばある。
固まっている梨華達に「人間を食べたりしないから」と美貴達が優しく微笑む。その笑顔は嘘を言ってるようには見えので、緊張を解く梨華達だった。
77 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 09:35
「もう夜だから帰りな。危ないし。」
「ほぉー、ミキティがそんな事。きっと明日は雪、いや氷が降るな」
「う、うるさい!!!」

美貴やひとみと話すのが楽しくて、時間の経過も感じなかった。黒いカーテンを少しめくると、もうすっかり暗くなっていた。

「また来ていいですか?」
「「うん」」
「じゃぁ、学校が休みの日は毎日遊びに来ます」
「亜弥ちゃん、部活は?」
「やだなぁ先輩。休みの日は午前だけじゃないですかぁ♪♪もちろん先輩も来ますよね?」
「行く」

今日持って来たコートを預け、家を後にした。
78 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/07(月) 09:37
ひとみ達に教えてもらった裏道を通って、大通りに出た。この道ならあの家に出入りするのを見られる事はほぼないだろう。今度からは裏道を使った方が良さそうだ。そんな事を考えていると亜弥が立ち止まった。

「先輩、ぁたし頑張ります!!」
「亜弥ちゃん、主語がないとわからないわ。」
「藤本美貴さん。もぉ可愛すぎる♪♪絶対に落としてみせます」

梨華は好きな事にはひたすら全力疾走の亜弥に気に入れられた美貴に軽く同情しつつ、なぜかほっとしたのであった。
79 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/08(火) 21:02
ピェロ様 お待ちしてましたよ!
なんか、なんか、いい感じ。好きなキャラだし。うふっ!。
ワクワク・・ドキドキ・・。
80 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/11(金) 08:54
次の日、亜弥の部活が昼に終わるらしいので、梨華はそれまで図書室で受験勉強していた。
図書室では時計の音と鉛筆が走る音と本をめくる音だけが響いていた。

ガラガラガラ
「先輩!!!帰りますよ!!!」
「亜弥ちゃん、シー!!図書室でそんなおっきな声出しちゃダメでしょ。」
「先輩、早く!!!」

大きな声で叫ぶので図書室にいる人におもいっきり睨まれてしまい、梨華はいそいそと図書室を出た。
亜弥は部室でシャワーを浴びたらしく、髪がしっとりと濡れていた。
急ぐ事が嫌いな亜弥がここまで変わるとは……人生いったい何があるかわからないものだ。
81 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/11(金) 08:56
裏門を目指し、少し小走りで進む。
部活で疲れている亜弥の足も少し運動不足気味の梨華の足も軽々しく見えるのは、きっと気のせいではないだろう。

「ねぇ亜弥ちゃん。お昼ご飯どうしよっか?」
「コンビニで買って行きましょう。きっとあの2人は料理なんてしなそうですから……。」

亜弥の言う通り、きっとあの2人は料理なんてしないだろう。
ひとみはかなり適当そうな感じがするし、美貴はきっと極度のめんどくさがりであるような感じがする。
梨華達は裏道に入る前にコンビニで飲み物やご飯やお菓子を買った。
82 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/11(金) 08:58
コンコンコン
「「お邪魔しまぁす」」
「ほお、ひらっはーい♪♪」

階段の真ん中辺りで歯磨きをするひとみが出迎える。
玄関のすぐ横には昨日置いていったコートがかけられていて、それぞれ自分のコートを羽織り、ひとみの部屋へ向かった。
ひとみはちょうど歯磨きを終えたようだった。

「あれ!?藤本さんは!?」
「まだ寝てる。起こしてきたら!?」
「はぁーい♪♪」

亜弥は買ったものをテーブルの上に置き、美貴の部屋へ走っていった。

「石川さんは行かなくていいの?」
「……吉澤さんは私がここにいるの嫌?」
「そんな訳ないじゃん。」
「ならここにいる」
83 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/11(金) 09:03
梨華はベットに座ってひとみの隣に少しだけ間をつくって腰をおろした。

「ねぇ、吉澤さんってやっぱりニンニク食べれないの?」
「ん!?食べれるよ!?」
「だって吸血鬼なんでしょ?」
「ハハハ♪♪そうゆうののほとんどは思い込みだよ。ほらニンニクって臭うじゃん。だから血を貰ったりする時場所がわかっちゃうから昔の人は食べなかっただけ。」
「じゃぁ太陽の光は?」
「日光に弱いってやつ!?それは半分当たり。うちらって人より五感が鋭いから、苦手って言ったら苦手。」

だからだろうか。ひとみの肌はとても白く、健康的に焼けた梨華と並ぶとかなりの違いがある。
84 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/11(金) 09:05
「じゃぁ噛まれた人は吸血鬼になっちゃうってゆうのは??」
「そんなのないない。そんま力ないし。うちらの力は飛べる以外はほとんど人と同じだよ。人間がパワーUPしたって感じ。」

飛ぶって背中に羽でも生えるんだろうか……。
梨華はひとみの背中に悪魔の羽が付いているのを想像して、似合いそうだと少し頬が緩んだ。

バタン、ドタドタドタ
やけに廊下がうるさい。いったい何をしているのだろう。

「みきたん待ってぇー」
「いやいや、無理だって!!!」
「そんなのしてみないとわかんないじゃん!!」
「だからね、美貴は雪女なのね。そんなのにキスなんてしたら凍るってばっ!!!」
85 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/11(金) 09:08
…………。
どうやら亜弥が美貴にキスをしようと追い掛けているようだ。
雪女が人間に襲われている………かなりおかしな話だ。

「珍しいなぁ。ミキティがあんなにテンパってるよ。」
「フフフ。亜弥ちゃん、キス魔だから♪♪」

ドタドタドタ……シーン
廊下が静まった。
追い掛けっこは亜弥の勝ち。
美貴も能力を使っていないので、それほど嫌な訳ではないのだろう。

「ふぅ♪♪すごーい!!体の中まで涼しい!!」
「……………。」
「何、みきたん。もう1回してほしいの?」
「違ーう!!」
86 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/11(金) 09:11
ドタドタドタ、バン!!
「ちょっと梨華ちゃん!!亜弥ちゃん止めてよー」

首まで赤くなっている美貴がひとみの部屋に飛び込んで来た。
もちろん亜弥も美貴の後を追う。

「フフフ、亜弥ちゃん。美貴ちゃん恥ずかしいんだって♪♪ほら、ご飯食べよ?」
「にゃは♪♪みきたん、真っ赤ー♪♪かぁぃー。」
「……はぁ!?」

亜弥の言葉に睨みをきかせる美貴だが、紅に染まった顔ではまったく効果はないに等しい。
初めて階段で会った怖い女の人とは、同じ人だと思えない。
それだけ梨華達に心を開いてくれたとゆうことだろうか。
87 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/11(金) 09:16
「ひゅー♪♪いい感じじゃん、君達。いつの間にそんな仲良くなったわけ?」
「だってぇ、亜弥ちゃんって呼ばないと拗ねるんだもん。しかも亜弥ちゃんと梨華ちゃんはもう美貴達の初めてできた人間の友達だし。」
「だね♪♪まっつー、梨華ちゃん、よろしくね。」
「フフフ、こちらこそよろしく。美貴ちゃん、ひとみちゃん。」

この日、不法侵入した女子高生2人と妖怪2人組が友達になった。
ずっと4人でいられると思ってた、願ってた。
88 名前:ピェロ 投稿日:2007/05/11(金) 09:18
今日はこれで終わります。

>79様
お言葉、ありがとうございます。もっとドキドキしてもらえるよう、努力いたします。


辻さん、結婚アンドご妊娠おめでとう!!(^O^)
89 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/20(日) 13:23
1ヵ月後。
肌に心地良い季節になった頃、梨華達の日常の中にひとみ達の所へ遊びに行く事がすっかり入り込んでいた。
相変わらず家の中は寒いのだが、以前よりもかなりマシになった。
それは美貴の能力が高くなった為。
雪女は色香で獲物を誘い、生気を吸う。
つまり心を奪えば奪うほど、より多くの生気を奪う事が出来るのだ。
「氷結のくちづけ」………寒い地方に住む人間達はそう呼び、恐れている。

今、美貴が生気を貰っている相手は亜弥。
その生気は十分過ぎるほど潤っている。
力が増すのは当然であろう。
90 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/20(日) 13:25
一度、ひとみ達にどうやって生きて来たのか聞いた事がある。
美貴は血が騒ぐのが抑えられない時のみ街をブラブラしていたようだが、ひとみはずっと長い間血を口にしていないらしい。
家の台所は埃が層となって積もり、まったく使われていない事を物語っている。

「ほんとに何食べて生きてたの……。」
「そうだよぉ……。食べ物も少しは食べるんでしょ?」
「「お腹減ったら、二人で街立ってるんだ。そしたら優しい人が食べさせてくれてた。」」
「「…………。」」

ひとみと美貴の容姿だ。
本当に心の優しい人はいたのだろうか……。
91 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/20(日) 13:27
しかしもうそのような事はしていない。
正しく言えば、梨華と亜弥がさせようとしないのだが……。
今はほぼ100%進路の決定した梨華が最近始めたバイト先のコンビニで売れ残りを貰って来て、それを食べて生活している。
ひとみと美貴はコンビニの食べ物が気に入ったようで、食べ物を抱える姿は子供のようだ。


「お疲れ様でした」


梨華はバイトを終えて、コンビニを出る。
手にコンビニ袋をぶら下げて。
もちろん足はひとみ達の元へと向かう。
3年の梨華はもう午前授業で帰れるのだが、きっと亜弥はテニスコートでラケットを振っているのだろう。
92 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/20(日) 13:43
「お邪魔します」

貰った鍵を使い中に入ると、美貴がひとみの部屋から顔を出した。

「梨華ちゃーん、こっち」
「うん、今行く」

薄暗い階段をゆっくり上がり部屋に入ると、ひとみと美貴がベットの上で向かい合わせで座っていた。

「何してるの?」
「昨日亜弥ちゃんがくれたトランプでババ抜きしてるの」
「二人でやって楽しい?」
「「微妙」」

トランプをベットに置いて梨華の元へ歩いて来た。

「はい、これお土産」
「あのビリビリするのある?」
「サイダーも卵もスルメも貰って来たよ」
「「やった♪♪」」

ジャンプして喜ぶ二人。それを見守る梨華。
93 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/20(日) 13:50
グビグビと喉を鳴らしながらサイダーを飲む美貴。
正座をしてゆで卵の殻を剥くひとみ。

「そうそう。たぶん今日、亜弥ちゃん遅いと思うよ」
「くぅー。なんで?」「お前、オヤジくさい」

サイダーから口を離して問う美貴に、目は卵に離さずひとみが呟く。

「明日大会の予選なの」
「ふーん……。亜弥ちゃんがテニスしてるの見てみたいなぁ」
「ミキティ溶けんじゃね!?」
「溶けねぇよ!!」

イヒヒと悪ガキの笑顔のひとみを美貴が蹴飛ばす。

「三人で応援行こっか♪♪」
「いいのかなぁ」
「きっと亜弥ちゃん喜ぶよ」
「んじゃ、梨華ちゃんお弁当作ってね!?卵入れてよ♪♪」
「はぃはぃ」
94 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/20(日) 13:54
三人でトランプをしたり話をしていると、時計はもう7時を示していた。

「亜弥ちゃん遅いね」
「今日来ないんじゃねぇの!?ほら、こんなに暗いよ。」

ひとみがベットから窓の方へ移動し、少しカーテンを開けて外を覗く。

「うーん。一週間に2回しか遊べないんだから、土日は絶対行く!!って言ってたんだけどなぁ……。」
「拉致られてたりしてぇー」「よっちゃん、悪い冗談はやめて。美貴怒るよ!?」
「やだなぁ藤本さん。もう怒ってるじゃないですかぁ……お!?噂をすれば♪♪」

三人で外を覗くと、暗い夜道をゆっくり歩く亜弥がいた。
95 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/20(日) 14:00
「あれ!?」

見慣れた制服にラケットを背負っている。
しかし心なしか表情は冷たい。
あの『天真爛漫』の言葉がピッタリの亜弥が……。
疲労からの表情ではなさそうだ。

「お邪魔しまっすぅー♪♪」

その声を聞くなり、美貴は玄関へと急ぐ。
声はいつもと全く変わりない。
梨華とひとみも美貴の後を追った
。部屋を出て階段の手摺りに寄り掛かり、亜弥と美貴の会話を聞いている。

「皆でお出迎え!?さてはぁたしが来なくて寂しかったんだなぁ♪♪」

にゃはっと亜弥独特の笑い方をし側に立つ美貴を指で突いて、階段へ歩き出そうとした。
96 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/20(日) 14:06
「どうしたの?」

美貴が横を通り過ぎようとしている亜弥の腕を掴む。

「ん?何がぁ!?」

亜弥は振り返らず、下を見たまま笑顔を浮かべていた。
美貴はドアの方に体を向けていた為、表情はわからないが声から心配の様子が見えた。

「なんかあった?」
「ん!?みきたん何言ってるのー。先輩,たんがおかしー。」

やはり亜弥は美貴の方を振り向かない。

「……美貴には言えないか。やっぱり人間じゃないからかな」

ハハハと乾いた笑いを浮かべ、頭冷やして来ると呟きドアの外へ消える。
元々華奢な美貴の体がより小さく感じた。
97 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/20(日) 14:10
「………もう遅いし、ぁたし帰るね」
「「あ、うん。」」

しばらく黙ったままドアを見つめていた亜弥が梨華達へ笑顔を送る。
バタンと音が響き、しばし静寂。

「梨華ちゃん、どうする?」
「どうしよっか……。」
「「………」」

そのままにしておく訳にはいかない、と言うよりそのままにしておけない。

「私、美貴ちゃんの方行くね。ちょっと話したい事もあるし……。」
「うん。ぅちもまっつーに話したい事ある。」

二人で外に出た。
外はもう暗く月は半分欠けて、肌寒い風が吹いていた。
98 名前:運命or宿命 投稿日:2007/05/20(日) 14:16
「たぶん亜弥ちゃん,家の近くの公園にいると思う。なんかあるといつもそこに行くみたいだし。」
「らじゃ。梨華ちゃん、暗いから気をつけてね。」
「ふふふ、大丈夫。迷ったりしないよ。」
「そうゆう意味じゃないんだけどな……。」
「ん!?」
「ぇ!?何でもない!!」

門を出る。梨華は右へ、ひとみは左へ。

「あいつ強情だから頑張って。」
「あら、そっちだって大変よ!?」
「だな。ったく困った奴ら。」

二人は微笑んで分裂してしまった片割れを捜しに左右に歩き出した。
99 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/12(火) 23:45
んあああああ!すげー気になる!
おまちしてます。
100 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 22:37
(ひとみ・亜弥)

「公園、公ー園、こーえん、こぉーーおぉっ!?発見じゃん♪♪すげぇーー♪♪」

この辺りを歩いた経験などない。
もはや勘。しかし恐ろしい勘である。
見知らぬ入り組んだ団地の中で、亜弥のいる小さな公園を見つけたのだから。

その公園にはあまり遊具がないので、ブランコに座っている人影を発見するのは簡単な事だった。
亜弥は何をするわけではなく、ただただブランコに座っていた。
小さな背中が悲しみと苦痛を訴えているように見える。
しかしアドバイスしてあげられるほど自分は器用ではない、自分らしくいこう。
ひとみは手を組み、空に向かって背伸びをした。
101 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 22:46
「てーい!!」
「!!!!!」

音なく人影に近づき、頭を軽く叩く。
振り返った亜弥は目と口を大きく開いている。
声が出ない程驚いているようだ。

「こんな遅くに何やってるんです?お嬢さん」
「………別に」
「誘拐されちゃうよー。それともナンパ待ちかにゃ?」

ひとみが隣のブランコに座ると亜弥が立とうとしたが、すぐに手を掴まれたので立ち去る事が出来ない。
仕方なく再びブランコに腰をおろした。
その様子を見てひとみは手を離し、勢いよくブランコを揺らす。
やっと順番が来た子供のような表情で。
夜の公園には、一つのブランコが錆び付いた音だけ。
102 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 22:50
「まぁそれよりお嬢さん、聞いてくださいよー。うちの友達のアホ二人がケンカしましてね。どうしたらいいでしょ?」
「…………。」
「片方は何かあったのに心配させないように無理して笑っちゃったりして。もう片方はさ、普段プラス思考なのに好きな奴の事となるとマイナス思考だし。馬鹿だろ?巻き込まれる身にもなってほしいぜ。」

お得意の悪ガキのような笑顔で笑い、ブランコのスピードを落としてゆく。

「別にさ何があったかとか言わなくていいからさ、無理して笑うのはやめろって。特にあいつの前ではさ。体にも毒だぜ、たぶん」

手をのばしてポンポンと亜弥の頭を叩く。
梨華とは違うが、似た温かさを感じる手。
103 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 23:06
「嫌われちゃったな」
「今頃梨華ちゃんに愚痴ってんじゃね!?」
「たん、泣きそうだった」
「………雪女は泣けないんだ。吹雪になるからね。雪女が泣くのは一生に一度だけ。心が溶けた時だけだよ。」

夜空を見上げる顔は少し悲しそうに見えた。
しかし見間違いかと思うほど、すぐに元の笑顔に戻る。

「ほら、もう帰るべ。四角いヤツ光ってるし」

ひとみは亜弥の胸ポケットの携帯を指差し、ブランコから飛び降りた。

「明日皆で応援に行くから♪♪負けるなよ!!」

ひとみは背を向けたまま手を挙げて、暗い闇に消えて行った。
その姿が目で確認出来なくなると、自宅へと走ってゆく。
普通なら5分で着く距離も、今日はもっと早いだろう。
重く感じていたラケットも羽のように感じた。
104 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 23:10
(梨華・美貴)

「あれー?どこ行ったんだろ……」

さっきからウロウロしてはいるが、まったく人影がない。
それになったく見た事のない景色だ。

「………私、帰れるかな」

梨華の目の前にはかなり年期の入ったトンネルがあった。
手を伸ばせば上に届く位低く、あまり長さがない為か電灯が3つしかなかった。

「ちょっと不気味。もしかしてここの先かな……」

梨華がトンネルの中に一歩足を踏み入れると、近くにある電灯がチカチカと点滅し始めた。

「ひゃっ。怖いよぉ、ひとみちゃ〜ん」

こんな不気味な所にずっと居るわけにもいかない。
意を決して、一歩踏み出す。
105 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 23:14
早く通り過ぎてしまおう。
梨華はひしひしと感じる恐怖を掻き消すように、先程より大股でまた一歩足を出した。
ガシッ急に大袈裟に振り上げた右の手首を掴まれた感触。
全身の血液がサーと冷たいものへと変わってゆく。

「キャーーー!!!」「梨華Chan、うるさい!!!」

恐る恐る声の方を振り返ると、そこには眉間にシワを寄せた美貴がいた。
漫画等ではよく見られる光景。
実際でも起こるんだなぁと変な事を考えながら、見慣れた顔に安心を覚えた梨華であった。
106 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 23:20
「何してんの?この先は色街だよ?」
「色街!?」
「うん。もしかして梨華ちゃん、美貴達に内緒で良からぬバイトを……」「ちが、違うよ!!!」

美貴に手を引っ張られ、トンネルの外へと出る。

「んじゃあ、迷った?……それとも美貴を追い掛けてくれたのかな?」

普段と変わらぬ様子。
いや、そう見えたと言うべきだろう。
付き合いは全然浅いが、美貴の性格はある程度把握しているつもり。
プライドが高いくせに淋しがり屋で、思った事は口にしないと気が済まないくせに凄く周りに目を配ってて。
だから慰めるような言葉を掛けるつもりはなかった。
ただ亜弥の態度の意味を知ってほしかった。
107 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 23:25
「もう遅いし、送るよ」
「いいよ、いいよ」
「ここがどこかわかんの!?」
「……お願いします」
「それに……このまま帰したら、美貴殺されちゃうし。」「???」

トンネルから離れ、梨華の家の方向へとゆっくり足を進める。

「あのね、ちょっと美貴ちゃんに話したい事があって………」
「亜弥ちゃんの事??」
「うん」
二人は歩みのペースを緩めた。
少し後ろを歩く梨華は、美貴の長い髪が風で揺らぐ様子を見ながら口を開く。
美貴の普通より少し尖った耳には、それはまるで物語のようにも聞こえた。
108 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 23:35
その物語はなんの序章もなく、突然始まった。

「あの高校を選んだ理由は制服が可愛いからなんだって。亜弥ちゃんらしいよね。だから最初はテニス部に入ろうなんて考えてなかったと思う。でも入学式の日にたまたま外で練習してる私見て、楽しそうだと思って入部してくれたみたいなの。それでね、入部してからはもうすっごい積極派。他の皆はあんまり近付いて来ないのに、すごいベッタリで。始めはビックリしちゃった」

髪を弄りながら昔を懐かしむように微笑む。
109 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 23:39
亜弥の性格だ。
きっと相手が梨華でなかったら怒りを感じ、仲良くなんてならなかっただろう。
成績優秀、お金持ちのお嬢様、テニス部のエース………他人とは異なる扱いをされ、孤独の中で暮らしていた梨華でなかったら。

「それで一緒に朝練とかするようになって、才能あったからどんどん上手くなったの。一年生で即レギュラー。すごいよね……」

微笑んでいた顔に少し歪みが入る。

「もしかして、イジメとかあったの?」
「………一時期ね。でも努力してるのは見てわかるし、明るい性格だからすぐなくなったよ」

梨華の様子から嘘を言っているようには見えなかったので、美貴はホッと胸を撫で下ろした。
110 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 23:42
やはり強豪テニス部。
入部してくる人はある中学のエースだったり、腕に自信のある者が多い。
その人達にとって、初心者かつ年下がレギュラーの座につくのはかなり心痛い事だろう。

「……イジメはなくなったけど、笑顔以外見せなくなったの。前は悔しいとか嬉しいとか、感情表してたのに。きっと学校では、美貴ちゃん達の知らない亜弥ちゃんが笑ってるよ」
「でも………だったら!!!美貴達の前でまで無理しなくても!!!」

後ろに立つ梨華を力強く振り返る。
静かな団地に美貴の声が綺麗に響いた。
111 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 23:48
「美貴ちゃんの前だから笑顔でいたいんじゃない。好きな人の前だから、嫌われるなくて済む表情でいたい………そう思ったんじゃないかなぁ」

感情のままに声を発した美貴に対して、落ち着いた優しい声の梨華。
梨華自身も亜弥と会うまでは精一杯、皆に憧れるお嬢様を演じてきたのだろう。

「………バカだね」
「そう?」
「……どんな顔してても、、嫌いになったりしないのに」
「フフフ。明日、直接亜弥ちゃんに言ってあげてよ」

"好き"と言う表現を用いないのは、美貴の照れ隠しだろう。
梨華と向かい合っていた美貴がまた前を向く。
少し疑問に思った梨華が隣に行くと、俯く美貴がいた。
112 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/14(木) 23:52
髪で顔は隠れているけれど、すぐに美貴の表情が想像できた。
隙間から覗く赤い耳のおかげで。
少し意地悪を言おうと思ったが、その後の事が容易に想像出来たので美貴の手を取ってブンブンと振り回しながら足早に引っ張る。

「ぉわっ!!ちょっと、梨華ちゃん!?」
「明日楽しみだねぇ♪♪♪」
「え!?う、うん」
「晴れるといいな」

今宵の空はいつもより星の輝きが強い気がする。
だから明日はきっと晴天だろう。

やはり握った美貴の手は冷たかったが、梨華にはいつもよりも温かく感じた。
113 名前:ピェロ 投稿日:2007/06/14(木) 23:56
>99様
とても有り難いお言葉(T_T)
美貴ちゃんの事で少々ダメージを受けましたが、大好きな人であるのには変わりないので更新です♪♪♪
finを置けるよう、精進致しますm(__)m

文才の無さに吐き気を感じますが、読んでくださる方がいるなら幸いですm(__)m
114 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/15(金) 00:41
やべー。超楽しみです。
頑張って下さい。
115 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/15(金) 06:18
ピェロさま更新お疲れ様です。
リアル世界では色々ありますが、人生波乱万丈でも良いんじゃないかと。
ピェロさまもお体に気を付けて。次の更新も楽しみにしてます。
116 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:02
やはり本日は晴天なり。
見上げると青一色で雲ひとつ見当たらない。
激しく燃える太陽と体の熱を冷ましてくれる風が心地良い。
そんな日の正午少し過ぎ、梨華はひとみ達の家を訪れていた。
今日は亜弥が所属するテニス部の予選。
試合自体は朝から始まっているのだが、当然シードなのでこの時間にバタバタ準備してるのである。

「梨華ちゃーん、サングラスとかない?」
「あるよー!?」
「外眩し過ぎて目開けらんないや」
「貸してあげるー」

自分の部屋と向かいにある美貴の部屋を行ったり来たりしているひとみが叫ぶ。
美貴はというと、只今お風呂中。
サバサバしているとはいえ、少しいつもより長い入浴時間から女の子っぽい性格が感じられる。
117 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:04
「梨華ちゃーん!!パンツどっかいったー」
「いや、美貴ちゃん………。それはわからないわ」
「あれぇ!?よっちゃーん」

梨華に貰ったバスタオルを体に巻いて、風呂場から出てくる。
濡れた髪、バスタオルから覗く細い足。
その姿は妖艶と表すのにはもってこいだった………ただ、美貴の歩いた後は足型に氷が張ってはいるのだが。

「だから左のタンスの下から2番目!!!いい加減覚えろって」
「あぁ!!そうだった」

風呂場に戻る美貴。
要領悪く部屋の行き来を繰り返すひとみ。
その様子を腕時計を見ながら玄関に立ち、ため息が多い梨華が眺める。
118 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:07
「ねぇー。昨日お昼ちょっと過ぎには出るって言ったよね?」
「「だって、さっき起きたんだもん」」
「……そう」

亜弥の試合は13時から。
予選会場までは車で30分………間に合うのだろうか。
車は梨華の家の執事にお願いしているが、きっと少し走らなくてはならないだろう。
梨華はヒールの高い靴を履いて来た事を少し後悔した。

もう数回目のため息。
時刻は12時32分。
やっと準備が終わったようだ。
最初に現れたのはひとみ。
少し緩めのジーパンと紫のシャツ、見た目はかっこいい男の子のよう。
119 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:09
「遅ーい」
「だって梨華ちゃんが甚平ダメって……」
「お祭じゃないんだから、そんな格好したら目立つでしょー」

テニスの応援に甚平かつサングラス……いくら容姿が整っていても、それではおかしな人だ。

「さぁ、行こー」
「美貴ちゃん、遅いよ」
「ごめんごめん」

スラーと長い足を出し、全体的に露出が多い格好の美貴がやっと降りて来た。

「急ご!!試合始まっちゃう」

急いで外に出て、近くのコンビニで30分以上待ってくれている車へと走る。
やはり足に痛みを感じる。
きっと小指の辺りは靴ずれを起こしているだろう。
120 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:13
コンビニに着くと、光を反射させている黒い車が停まっていた。
ある程度近付くと、その車から60代ぐらいの細身の優しいそうな男が降りてドアを開ける。

「待たせちゃってごめんなさい!!」
「いえ、気になさらないで下さい。どうぞ」
「「お願いしまーす♪♪」」

ひとみ達は初めて車に乗るからか、興味津々。
広めの後部座席に美貴・ひとみ・梨華の順に座り、車が発進する。
今の時刻は12時45分、試合まであと15分。
そんなすぐには勝敗が決まる事はないだろうが、亜弥の試合は1試合しかない為見逃すと次は少し遠出をする必要がある。
バイトがある梨華には少し難しい。
121 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:15
「今日混んでましたか?もうすぐ試合が始まっちゃうんです」
「えぇ、休日ですので少しだけ。でも裏道などは大体把握していますので、20分ぐらいで到着しますよ」

バックミラーに優しい表情が映る。
梨華はいつも試合の時はこの人に送り迎えしてもらっていたなぁと思いだし微笑んだ。

「梨華ちゃん、お弁当は?」
「ちゃんとあるから、試合が終わったら皆で食べようね」

試合前なので亜弥も満腹になる程は口にしていないだろう。
昔はあまり得意でなかった料理も練習のおかげで多少作れるようになった。
……さっき走ったので崩れてぐちゃぐちゃになっていないか心配ではあるが。
122 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:18
「その時日蔭にしてね。出来るだけ涼しい格好にしたけど、直射日光はキツイからさ」
「そうそう、こいつ溶けるからさ」
「溶けないつーの!!!よっちゃんは美貴の事、氷の塊とでも思ってるわけ!?」

応援に行こうと提案したのは外ならぬ自分だが、二人は吸血鬼と雪女。
命の危険などはないのだろうかと梨華は心配している。
なのでひとみの冗談をいつものように楽しむ事は出来なかった。

「梨華ちゃん!?どうしたの?」

気付くとひとみに顔を覗き込んでいた。
美貴も心配そうにしている。
見慣れた景色にもうそろそろ着く事がわかった。
123 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:21
「……大丈夫だよね?」
「「何が?」」
「………外に出ても」

頭にポンポンという感触………温度的に考えてひとみの手。

「よっちゃんがふざけるからー」
「大丈夫だよ、梨華ちゃん」
「美貴は冷気が守ってくれるし、よっちゃんは慣れてるから」
「別に慣れてる訳じゃねぇーよ。もう人間に近くなってるだけ」

車が停まる。
不安は無くなっていた。
二人が本当に優しい顔で笑うから、大丈夫だよって心地良い声で話すから。

「お嬢様、お帰りは何時頃になりますか?」
「少し遅くなるかも。その時は電話します」

三人はお礼を言いつつ、車から降りた。
124 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:24
「ふぃー。いい気持ちぃ♪♪」
「すげぇ、空青いなぁ」

ひとみと美貴は車から出て空を見上げて、両手を高く上げて数歩前に立っていた。
常識的に言えば"悪魔"の枠に括られてしまうひとみと美貴。
でも梨華には"天使の羽"が見えた気がした。

「あっ!!あれじゃない?」
「うおっ!!まっつーの試合始まってんじゃん!!」
「えぇ!?」

普通なら肉眼では確認出来る訳がない距離にあるテニスコート。
吸血鬼のひとみだからなせる事。

「梨華ちゃーん、始まってるみたい」
「行こ」
「あ、うん」

まだ一歩も進んでいない梨華を呼ぶ。
125 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:29
二人の"天使"が手を差し延べられ、その手に導かれるように歩いてく。

「カメラ持ってくればよかったなぁ」
「かめら?」
「亜弥のけいたいにかめら付いてたけど、梨華ちゃんのにはないの?」
「画質が違うんだよ」

?を浮かべて首を傾ける二人の手を引っ張ってテニスコートへ急ぐ。

携帯じゃなくてちゃんとしたカメラで撮りたかった。
もしかしたら写るかもしれないから。
太陽を背にして手を差し延べる二人の"天使"が。
写真の技術はなくても、どんな高価な写真や絵よりも綺麗な。
今度からは常にカメラを持ち歩く事にしよう。
126 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:31
…………でも今はカメラよりも何よりも、この二人を見張る事に集中しなくては。

「あっ!!亜弥ちゃんだ」
「うわぁー、スカート短けー」
「……前に見たやつより短い。なんかムカツク」
「うわ、恐っ!!どうどう、気のせいだって。まず落ち着け」

周りから聞こえる好奇の声。
きっと目を離せば囲まれる事は間違いない……。

「二人とも絶対離れちゃダメよ!?」
「「はーい♪♪」」

最悪、どこかに連れていかれる可能性も無くは無い。。。
梨華の心配をよそに、はしゃぎまくる二人。
梨華の心配が一回り大きくなったのは言うまでもないだろう。
127 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:34
亜弥の試合はもうすでに点差がついていた。
梨華達は大きな木が作ってくれた日蔭で応援している。
当然三人の容姿のおかげで人が集まっている。
二人を心配している梨華だが、自分が一番人を集めている事に気付いていない。
自覚がないというのは、時には罪になるのではないか……。

「亜弥ちゃん、気付かないねぇ」
「試合中だもん」
「手振れば気付くんじゃねぇの!?おーーい」
「よっちゃん、恥ずかしいって!!」

手を大きく振るひとみに見事にスマッシュを決めた亜弥が気付く。

「ほれ、気付いた」
「いや、そんな大声出したら普通気付くって」

亜弥はこちらに向かって少し照れた顔で手を振る。
128 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:39
それを見て、三人も応える。

「あいつ余裕だなぁ」
「フフフ♪♪亜弥ちゃん、そーとー強いのよ」
「踊ってるみたいだね……」

美貴の目はボールではなく、亜弥の姿を追っているようだ。
その視線に気付いたのか否や、亜弥も美貴を見る。
亜弥は声には出さず口の動きで伝えた。

『ご』『め』『ん』『ね』

美貴は首を横に振り、同じように応える。

『が』『ん』『ば』『れ』

亜弥が笑う。
本物の笑顔で。

「スピードが……上がった!?」
「ったく、現金な奴」

声の届かないくらい離れている会話だけど、隣に立つよりも近くに感じただろう。
時間にするとわずか数秒だけれど、その時間の世界には亜弥と美貴以外存在していないよう。
129 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/19(火) 23:50
その光景を見て梨華とひとみは微笑み合う。
その声に気付いて少し耳の赤い美貴が振り返る。

「何!?」
「なんでもない♪♪」
「みきたんは可愛いねぇって話♪♪」
「なっ!!!」

梨華の目の前で顔の赤い美貴がひとみを蹴りまくっている。
"キジも鳴かずば撃たれまい"とはまさにこの事。

「ほーら、亜弥ちゃんの応援しよ!?」

三人は会話をするでもなく、亜弥の試合を見た。
試合終了。
結果は言うまでもなく、亜弥の圧勝。
きっと今日の亜弥に勝てる選手などいないだろう……最愛の人が応援しているのだから。
対等に戦えるとしたら梨華ぐらいだろう………もちろん同じ条件の。
130 名前:ピェロ 投稿日:2007/06/19(火) 23:58
>114様
恐縮です(////)
もっと頑張ります!!!!
本当はもう完結のはずが……予想外に延びてしまいました。
どうか、finまでお付き合いお願い致しますm(__)m

>115様
確かにそうですね(^O^)
H!Pの方々は今の私の癒しですから♪♪w
少々夏ばて気味ですが、大丈夫でありますp(^^)q


更新終了です。
ちょっと不自然な区切り方になってしまいました↓↓↓
もっと勉強する必要がありますねm(__)m
では。
131 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 01:25
亜弥もとい梨華の高校はなんの心配なく、予選を通過。
今は予選会場の近くの公園の日蔭で遅い昼食をとっていた。

「「んまーい」」
「先輩、料理上手ですねー」
「おいしい?よかったー。味見しないから心配だったんだよね」

梨華が作ったお弁当は好評で、すぐに4人の腹の中へと消えていった。

「食った、食ったー」
「なんか美貴眠くなってきちゃった……」
「ちょっと、たん。汚れちゃうよ?」
「んじゃぁ、お昼寝ターイムってことで♪♪」
「ひとみちゃんまで……」

芝生の上にゴロンとねっころがる美貴、少し遅れてひとみも。
その様子を見て亜弥と梨華も同じような態勢になった。
132 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 01:30
芝生が頭や足に刺さって、痛く痒いような感覚。
もう夏は過ぎたというのに、風や空はまだ夏を忘れていないようで。
食後の昼寝には調度いい天気。
夢へと誘う声がする……。

「「「おやすみぃ」」」

目を閉じる3人を尻目にひとみは頭の後ろで組んだ手を枕にし、大きな口で欠伸をした。
右を見ると、そこには向き合うように眠る亜弥と美貴。

「ったく。仲直りしたのはいいけどよー、お礼ぐらい言えつーの!!ねぇ!?梨華ちゃん?」

起こさない程度の音量で、自分の左側にいる梨華の方に顔を反対に向けた。
しかし返答はない。
梨華はすでに夢の中ようだ。
ひとみ自身、本当に返答を期待していた訳ではないのだが。
133 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 01:33
「皆寝んの早いなぁ。」
ひとみは顔を空に向けながら、独り言を呟く。
空は相変わらず青い。

「あの雲、わたあめみてぇ」

きっと自分達の遥か上空は風が強いのだろう。
大きいわたあめが空を横切る。

「綺麗だねぇー。」
「……よっちゃん、うるさい」
「あれ?起きてたの?」
「今起きたの!!せっかくいい感じだったのに!!」
「それはすんましぇん」

美貴の訴えを軽く流す。
美貴だって本気で怒っているのではないし、謝罪を求めているのでもない。
長い付き合いだから今の美貴の頭の中ぐらい、簡単に想像出来る。
きっとさっきの独り言は美貴の耳へと入っただろう。
134 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 01:37
「あのさ………。えっと……」
「ん?」
「あ、あり…がとね」
「ハハハ、なんだよ気持ち悪いなぁー。」
「人が折角言ってやったのに、何だよ!!」

亜弥の体の向こうから、美貴の少し赤い顔が見える。

「ほら、ハニーが起きちゃうだろ!?」
「なっ、アホ!!」
「照れるな、照れるな♪♪」
「うっさい。美貴寝る!!」
「はいはい。もうケンカくだんねぇすんなよー」

美貴からの返答はない。
真面目な言葉を受け止めるのはむず痒い。
ふざけながら笑いながら交わす言葉だけで充分。
ひとみは口角を上げて目をつぶる。

しばらくすると、木陰から4人の寝息が聞こえてきた。
それぞれの顔から幸福の色がにじみ出ている。
いったいどんな楽しい夢を見てるのだろうか。
135 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 01:39
ポツリ
「んっ……」

亜弥の頬に雫が落ち、気持ちの良い空間から帰ってきた。
どのような夢だったかはぼんやりとしか思い出せない。
ただ、美貴とひとみと梨華と自分が笑っていたのは確かだと思う。

ポツリ
今度は梨華の頬に雫が落ちた。
梨華もまた帰ってくる。

「おはよぅ、亜弥ちゃん」
「雨……ですかね?」

空を見上げると、どんよりとした雲の間から赤く染まった空が見えた。

「一雨きそうね」
「起こした方がいいですよね」
「うん」

それぞれ、自分の隣で眠る肩を揺らす。

「ひとみちゃん、起きて」
「おーい、たん。もう夕方ですよー」

その声で2人も起きる。
136 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 01:41
「ふぁー、よく寝た」
「背中に草が刺さってる感じする……」

眠い目擦り、服の汚れを叩く。

「ねぇ見て、空真っ赤!!」
「なんか林檎みたいですねー♪♪」
「林檎より人参じゃね!?形的に…」

あれほど爽やかな青だった空は、夢を見ているうちに赤へと変化していた。

「ちょっと亜弥ちゃん、ひとみちゃん!!電話してるんだから、近くでそんな変な例え言わないでよー。笑っちゃうでしょ」

電話を片手に梨華が笑う。
それに対して亜弥とひとみは人差し指を口元に立て、しーと声を漏らす。
その声を聞きながら、美貴だけはまだ空から目線を戻さなかった。
137 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 01:43
亜弥は"林檎"のようだと例え、ひとみは"人参"のようだと例えた空。
梨華がこの空をどのように例えたかはわからないが、"綺麗"だと思っただろう。
しかし美貴には違う印象を持った。

「"血"が流れてる……」

黒い雲の細長い隙間から見える赤。
その様子はまるで"闇"で"血"が流れているよう。

「たん、車来たよー」
「お前何やってんの?」
「あ、うん。今行く」

美貴は心に過ぎる不安から逃げるように少し早めに歩き出した。

しかし確実に、美貴の不安は現実へと歩き出していた。
138 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 01:46
行きと同じ車に乗り、ひとみと美貴は近くのコンビニで降りた。

「「ありがとうございましたー」」
「本当にここまでで宜しいのですか?少し雨も降り出しましたし……」
「近いんで大丈夫です」
「じゃあね」

後部座席に座る梨華と亜弥に手を振って、自分達の住家に帰る。
一粒一粒の空の涙が道路の色を濃くしている。

「ほら、お前がキモい事ゆうから雨振ったんだよ」
「えー、美貴のせいじゃないって」
「お前雪女じゃなくて、雨女なんじゃねぇの?」
「はぁ?」

家に着いた頃には大分雨が強くなっていた。
カーテンの後ろで雨が窓をノックしている。
その音は風で強くなったり、弱くなったりを繰り返す。
139 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 01:50
「ふぁ。うち疲れたから、もう寝るわ」
「ん、おやすみ」

ひとみは少し怠そうに階段を上り、自分の部屋に入っていく。
そして美貴も自分の部屋へ。
パタン静かな家にドアの閉まる音が響く。

「………寝れる訳ないよなぁ」

ベットに入っても眠気がやって来る事はなく、なんとなく美貴は部屋を出た。
コツコツと靴の音。
美貴が止まると雨と風の音以外しない………はずだった。

ドクン、ドクン…
異常なまでの心臓の鼓動。
鼓動はひとみの部屋から聞こえて来る。

「よ、よっちゃん?もう寝た?」
「………起き、テるよ」

その声を聞いて、美貴は不安が現実となってしまったと悟った。
140 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 01:52
「……早く言えよ、バカ!!!今部屋のどの辺にいるの?」
「……ドアの右、十字架ノ前」
「動かないでね」

美貴はひとみの部屋の方に手を向け、目を閉じる。
するとひとみの部屋のドアが氷づけになってゆく。

ピキピキ−−ピキン
「ふう。どんな感じ!?」
「……大、丈夫」
「苦しくない?」
「余、裕」

少し曇ったひとみの声。
ドアが完全に凍っている為美貴がひとみの様子を確認する事は不可能だが、氷は美貴の命令通りにひとみの首から下を覆っていた。
十字架を背にして、膝を床につけた格好で固まっている。
きっと首から下はピクリとも動かせないだろう。
141 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 01:54
「悪イ、今日ずっト力使ッテて、疲、テンのに」
「大丈夫。………もうよっちゃんは休みな!?」
「悪イ………頼ム、ネ」
「わかってる。入れないよ、誰も」

雨が止んだ。
静けさがこの空間を支配し、肌に感じる邪悪な存在。
最近は梨華達と出会ってからは訪れる事がなかったこの日。

『……ククク。久シブリニ出テ来タラ、マタ貴様カ……雪女』

ひとみの声に重なる、低くかすれたもう一つの声。
血統の遠い吸血鬼や混血児に現れる呪い………"ひとみ"が表だとすると裏の人格。
非道で欲望のままに血を求める、より吸血鬼らしい"ヒトミ"が眠りから覚めた。
142 名前:運命or宿命 投稿日:2007/06/30(土) 02:04
『邪魔ナ奴ダ』
「美貴達にはあんたが邪魔」
『ククク、オ互イ様か。ドウシタ、冷気ガ弱イゾ。食サレル気ニデモナッタカ?』
「ふん、誰が!!だったら希望通りにしてあげる!!」

ピキピキと音を立てながら家の中の温度を下げる。
まだ冬は早いはずなのに、美貴の息は白い。きっと、"二人"のひとみの息も。

「……我慢比べだよ」
『ハハハ。何日持ツカナ!?』
「さぁ、気分次第ではいくらでも」
『楽シミダ。最初ノ食事ハ貴様ニシヨウ」

声でどんな表情なのか想像出来る。
ニヤリと口角を上げ、鋭い牙を覗かせながら食事を心待ちにしている顔。
美貴は手をぎゅっとにぎりる。

亜弥と梨華が電話で笑いながら話している頃、【幽霊の家】には本物の悪魔が舞い降りた。
143 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/01(日) 05:07
ピェロさまァーーー!

ドキ!ドキ!ドキ!…。
144 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:13
「もう、今週は忙しかったなぁ」

亜弥の試合を応援に行った日以降、ひとみと美貴に約一週間ずっと会えていない。
もちろん試合の為、遠くに行ってる亜弥にもだが。
何故か進路についての三者面談が急に入ったり、バイトの子が流行ってもいないインフルエンザで休んだりとまるで行くなとのサインばりに予定が入った。

今日は久しぶりの休日、ひとみ達の所に行かない訳がない。
裏道を歩きながら亜弥にメールの返事を送信する。

「亜弥ちゃんなしで準決勝か……。ちょっと危ないかも」

どうやら今終わったばかりの試合で亜弥が軽くではあるが足を負傷してしまったらしく、明日の試合はベンチだという。
145 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:15
当然、亜弥以外も実力者ばかりである。
しかし各地の強豪が集まる場所では、少し霞んでしまうのは仕方がない。
かといって、無理に亜弥を出して来年の夏に使えないなんて事は避けたいのが事実。

「亜弥ちゃん……責任感じちゃってるかなぁ。でも明後日帰って来るし、美貴ちゃんに頼めば大丈夫よね♪♪」

こっそりと人目を気にしながら、玄関のドアを開けて体を滑り込ませる。

「えっ寒い!!!」

いつもよりも異常に低温な家の中、梨華の言葉は白く空気中に残る。
それに家の中は雪が積もり、巨大な氷の柱。
季節に合った服装の梨華は寒さで体を震わせた。
146 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:18
「あぁ、梨華ちゃん……。寒い?ゴメンね……今日はちょっと遊べないんだ」

美貴とひとみの部屋を結ぶ廊下の真ん中で、美貴は何をするでもなくただ立っていた。

「美貴ちゃん!?いったい…どうなってるの?」
「どうもしないよ。ほら、たまに力を放出させないとへばっちゃっうからさ」
「でも……具合悪そうだよ?」
「気のせいじゃない?」

美貴の様子を見ながら、凍って滑る階段をゆっくり上がる。
露出の多い服装に少しヒールのあるサンダル………亜弥の試合を応援しに行った日と同じ格好。
美貴は壁によっ掛かるのでも手摺りに捕まるでもなく、ただ立っていた。
その様子がさらに不自然さを膨らます。
147 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:21
「梨華ちゃん、危ないって。そっから先はもっと凍ってるよ」

階段を上がると廊下はスケートリングのように氷が張っていた。
しかし梨華の目を奪ったのは床でも美貴でもなく、自分のすぐ右側にあるひとみの部屋のドア。

「えっ!!!美貴ちゃん、ひとみちゃんは!?もしかして中にいるの?」
「大丈夫だってば」
「大丈夫って……」

ひとみの部屋のドアは10センチぐらいの厚みの氷で包まれていた。
とても開け閉め出来るようには見えない。
いったい何があったのか聞こうと美貴の方を振り返ると、先程よりはっきり美貴の状態を確認する事が出来た。
148 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:24
目をギュッとつぶり、ヒールでカタカタと音をメロディを刻むように奏でながら立っている。
その様子は何かに耐えているようにしか感じられない。
ゆっくりと美貴に近付き、肩を触ろうと手をのばす。

「ダメ!!!今、美貴に触んないで……」
「あっ、ゴメン」
「低温火傷しちゃうから……触らないで」
「……いったい何があったの?」

のばした手を自分の元に戻す。
何でもないの言葉で納得など出来ない。
この空間にあるもの全てが"異常事態"だと教えているようなものなのだから。

「ねぇ、何かあったんでしょ?美貴ちゃん……」
『オ嬢サンハ人間カ?』
「えっ!!!」

声は氷の向こう側……ひとみの部屋から。
149 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:27
「黙れ」
『ククク、今回ノ我慢比ベハ、貴様ノ負ケジャナイカ?』
「黙れ、気が散る!!!…梨華ちゃん、今日は帰ってくれないかな?」

重なった声………かすれた低い女の人の声と聞き慣れた優しい声。
そして実際に今姿が見えない人の部屋から聞こえている。

「ひ、とみちゃん……?」
『アハハハハ。コイツハマダソノ名ヲ名乗ッテイルノカ!!!自分ガ殺シタモ同然ノ女カラ貰ッタ、ソノ名ヲ!!ククク、ソレハソレハ傑作ダ』
「梨華ちゃん!!今日は帰って!!」
「何が起きてるの……?」

『最高ノ"NIGHTMARE"ダヨ?』

氷の向こう側で"悪魔"が笑う。
150 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:31
『"ヒトミチャン"ニ会イタイ?』
「耳を貸しちゃダメだよ。全部嘘だから」
『今、ソノ雪女ハ能力ノ使イ過ギデ、フラフラデネ。立ッテイナイト、保テナイ状態ナンダヨ。チョット壁ニ向カッテ、体ヲ押シテゴラン?』
「梨華ちゃん、あいつの言葉なんて無視して!!」

"悪魔の誘惑"……どんな心の持ち主でも誘いに乗ってしまう程魅力的に光るもの。
それは梨華にしても同じだったようだ。
掌に低温火傷特有の痛みを気付いた時にはもう、美貴の肩を壁に軽く押し付けていた。

「んっ……り、かちゃ」

ガクリと気が抜けたように美貴は床に伏し、深い眠りへと吸い込まれていった。
151 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:35
美貴の意識が現実から消えた同時に、家中の氷が光の粒になって消えてゆく。

『ハハハハハ、サァ食事ノ時間ダ』

声高らかに笑いながら、氷が消えた扉が開かれた。
人工的に染めたようなな色ではない銀色の髪。
海よりも空よりも青い眼。
まるで物語に出てくる魔女のように長く黒い爪。
出会ってすぐに部屋で見た写真の中のひとみがいた。

「ひと、みちゃん…なの……?」
『オヤ、君ハ……。アァ転生シタノカ』

一瞬梨華に目線を合わせたが、足音なく梨華の横を通り過ぎて横たわる美貴の側による。
ニヤリと笑う口元からは鋭い牙。
いつもはそこまで強調されていないのに、今は嫌でもそれが目に入ってしまう。
笑顔もひとみだと思えないくらいひどく冷たい。
152 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:39
『最初ノ食事ハ、オ前ト決メテイタガ、意識ノアル方ガ美味ソウダナ』

美貴の顎を指で上げ、牙を舐める。
普通なら色気を感じていただろうが、目が獲物を見つめるようで恐怖しか感じなかった。

「あなたは誰なの?」
『"ヒトミチャン"ダヨ。君ノ前世ヲ自殺ヘト追イ込ンダネ』
「えっ!?」
『前ニアンナ事ガアッタノニ、マタコイツノ近クニ転生シテキタナンテ、余程コイツニ殺サレタイラシイナ』

固まる梨華を見ながら美貴の顎に触れている指を離し、ゆっくりと立ち上がる。
逃げなければまずいと体中で警報がなっているのに、金縛りにでもなったかのように動けない。
153 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:41
『大丈夫。痛イノハ一瞬ダカラ』

吸血鬼は冷たい綺麗な笑顔でジリジリと距離を縮めてゆく。
獲物まであと三歩、……あと二歩、………あと一歩。
相変わらず梨華の体は機能を拒否し、目線を青い眼から外せない。
美貴とは違ったひどく冷たい手が梨華の首を掴む。
美貴の手は"氷のような手"であるが、今梨華の首にある手は"血液が通っていないような手"。
梨華は人生で初めて死ぬという事を覚悟して目を閉じた。

『イイコダネ。心配シナイデ、見タ目トハ違ッテイタブル趣味ハナイカラ』

口が開かれる音がして、鋭いものが首筋に当たる感触がした。
154 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:44
♪♪〜♪♪♪♪〜
『ナッ!!ナンダ!?』

吸血鬼は首筋に埋めていた顔を上げ、梨華の側から飛びのいた。
恐る恐る目を開けると、吸血鬼の足元には右足を掴む美貴。

「残念だったね……どうやら神様はこっちの味方らしいよ」
『クッ!!!!』

パキパキと掴まれた右足から吸血鬼の体が氷で包まれてゆく。
完全に体が氷で包まれ、氷の中で吸血鬼が瞼を閉じた。

「まじで危なかった……。大丈夫?」

力が抜けたようにしゃがみ込んだ梨華の側に美貴が腰を下ろした時、梨華のジャケットから流れていたメロディが止まる。
それを取り出してみると、画面には"松浦亜弥"と表示されていた。
155 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:50
「もし電話が鳴ってなかったらどうなってたか!!!」
「ゴ、ゴメンなさい」
「はぁ。もう少ししたらよっちゃん元に戻るはずだから」

氷の中のひとみの髪が少し金に近くなっている。
その表情に先程の恐怖は感じない、"悪夢"は覚めたようだ。

「でも亜弥ちゃんすごいなぁ。最高のタイミング」
「あっ、かけ直さなきゃ」

手の中の携帯を開き、着信履歴の一番上から亜弥の番号を呼び出す。

「はぁい」
「もしもし?」
「先ー輩ー、どうしました?」
「どうしましたって……、電話くれたじゃない」
「え?あたしかけてないですよ?」
「え?でも……」

梨華も美貴も着信履歴に"松浦亜弥"の名前を確認している。
それに実際にその履歴を使って、電話している。
156 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:53
しかしこんな事で亜弥が嘘を言うとは考えられない。
でもその着信で救われたのは事実。

「もしもーし、先輩?」
「あ、何?」
「側にたん居ますか?」
「うん、いるよ?声聞きたい!?」
「はい!!」
「もう仕方ないなぁ」「にゃは、ありがとうございまぁす♪♪♪」

電話を美貴に渡す。
美貴は自分を指差し、携帯を受け取る。
まさか自分に代わるとは予想していなかったらしい。

「え、美貴?」
「亜弥ちゃんが代わってって。耳に当てて普通に話せばいいんだよ」

梨華の言うとおりに耳に当てる。
凍らせないように注意しながら。
157 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:55
「も、もしもし?」
「あっ、美貴たんだぁ♪♪てかさ、携帯買ってよ。一週間も声聞けないとかきついもん」
「いや……それは」
「あたしの事好きでしょ?」
「え?う、うん」
「ちゃんと言ってよー」
「えー!!いや、その……」

顔を赤く染め、オロオロしている。
いったい亜弥が美貴に何をお願いしているなんてすぐにわかって、梨華はその様子を笑いながら見る。
そして視線を後ろのひとみに移した。
もうだいぶ普段のひとみに近くなっている。
氷も段々と光になって消えているので、目を覚ますのはあまり遠くないだろう。
158 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 00:59
「うーん。す、きだよ?」
「なんで?がつくのさ!!」
「恥ずかしいんだって!!」
「……あたしは好きだよ、たんの事。たんは?」
「………好き」
「じゃぁ、携帯買え」
「えー!?」

肩を叩かれ振り返ると、美貴が朱色を残した顔で携帯を差し出して来る。
携帯からは亜弥の声が聞こえる。
どうやら対処に困ったらしい。

「フフフ。もういいの?」
「……パス」

美貴の希望通り、携帯に耳を当てる。

「あんまり困られせちゃダメじゃない。美貴ちゃん、顔真っ赤よ?」
「写メ送って下さい♪♪」
「嫌よ、怒られたくないもの」
「ぶぅ」
「じゃぁ、ちゃんと冷やすのよ?」
「はぁい。よっすぃにもよろしくでぇす」
「ひとみちゃんが起きたら伝えとく」
159 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 01:02
相手が電話を切ったのを確認して、電話を閉じた。
きっと落ち込んでいた気分もすっかりHighになり、足の怪我の治癒が早まった事だろう。
かと言って、明日試合に出る事は変わらないのだけれど。

「よいしょ」

後ろを振り返ると美貴が氷の呪縛を解き、床にひとみを寝かせていた。
もう髪も元に戻り、気配も温かい。
梨華はやっとひとみが帰って来たと実感した。

「ここじゃ体痛くなっちゃんから、ひとみちゃんの部屋連れて行こうよ」
「それもそうだね」

両脇を抱え、ひとみをベットに寝かせる。
そのベットの側には伏せられた写真立てと見覚えのあるネックレス。
160 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 01:08
梨華は写真立てを手に取った。
最初に目にした以来、頭から離れなかった写真。
そう考えた事もなったが、本当に前世だったとは……。

「この人、自殺したんだってね」
「………聞いたの?」
「ほんの少しだけね」

美貴が部屋の外へと歩いて行き、梨華に向かって手招きをする。
梨華は写真立てを元戻りに戻して、後を追った。
部屋を出ると、美貴が階段の所に座っていた。
梨華も隣に座る。

「よっちゃん何も覚えてないから、今日の事は言わないであげて。あと亜弥ちゃんにも」
「大丈夫、言う気ないよ」
「ありがと」

話す吐息はもう白くはならなかった。
161 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 01:10
「でも、どうゆう事なの?」
「なんかよっちゃん、人間と吸血鬼の混血児らしくてさ。裏の人格にたまに支配されちゃうんだって。本当はちゃんと血を飲んでれば支配されないんだけど……、よっちゃん血飲まないから」
「どうして飲まないの?」
「………それは、本人に聞いて見なよ。美貴も詳しく知らないし…」

美貴は膝を抱えてぐったりと階段の手摺りに体を預けた。
一週間ぐらい一睡もせず、休憩もなしに力を使って来た。
強制的ではあったものの、少しだけ回復した力も空っぽの状態。
大袈裟に言うのではなく、今の美貴はかなり限界に近い。
162 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/07(土) 01:12
そんな美貴の状態を感じ取ったのか、梨華は手を取って美貴の部屋の中へと引っ張って行く。

「ほら、美貴ちゃんも眠らないと。寝てないんでしょう?」
「あー…」
「私なら大丈夫だよ?」
「ほんとに?」
「だって、ひとみちゃんだもん。大丈夫じゃない訳ないじゃない」

美貴はまたひとみが暴走すると心配しているのではない、梨華のひとみに対する反応が心配でならなかった。
しかし梨華の言葉に強がりや意地は感じられず、心配は粉々に消えた。

「……んじゃあ、お言葉に甘えて」
「よろしい♪♪おやすみ」

美貴は念のためにドアは閉めずに、ベットの中に入った。
163 名前:ピェロ 投稿日:2007/07/07(土) 01:14
>143様
ピェロ自身……ドキ!ドキ!ドキ!ドキ!な状態であります(>_<)
お言葉、ありがとうございました(__)


159ですが。
「明日試合に出る事はー」でなく、正しくは「明日試合に出れない事はー」です。
他にも日本語のおかしな所があったりと、申し訳ありませんでした。
164 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 06:30
作者様。少々の誤字など気になさらないで。
それよりもこのドキドキをどうしましょう…。
165 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 07:02
これからの季節ミキがいればクーラーいらないね。
166 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 22:33
梨華は部屋と部屋のちょうど真ん中辺りにいた。
右を見ても左を見てもドアは開かれていて、それぞれの部屋の中が薄暗い中ぼんやりと見える。
十字架など西洋のものが多く飾られているひとみの部屋、ベット以外何もない美貴の部屋。
左右を見比べると全く違う。
もう一度ひとみの部屋に目を向けた時、布団から出た手が少し動いた。

「ひとみちゃん、起きたの?」
「っ………え!?」

ゆっくり部屋に近付きながら声を掛けると、ひとみが急に顔を上げた。

「な、なんで?」
「何が?」
「ミキティは!?」
「寝てるよー」

部屋の入口に立って、美貴の部屋を指差す。
梨華の肩越しに膨らんだベットが見えた。
167 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 22:36
「……いつからいたの?」
「さっき来たばっかりだよ」
「……もしかして、"アイツ"に会った?」
「……うん。でもすぐに美貴ちゃんが凍らせちゃったから」
「よかった」

確かに美貴に言わないでと言われたが、例え言われなくてもひとみに言えるはずがなかった。
もし"噛まれそうになった"なんて伝えてしまったら、自分達の前から消えてしまうような気がして……。
梨華の目の前のひとみは、自分よりも弱々しく見えた。

「…話したくないならいいんだけど、なんで血を飲まなくなったの?飲めば大丈夫なんでしょ!?」

前々から聞きたかった質問の一つを思い切って口にしてみた。
血を吸わない吸血鬼に……その理由を。
168 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 22:40
「人間を食事だなんて見れなくなったからね……」

意外にも簡単に答えが返って来た事に、梨華は正直驚く。
もしかしたらどんな質問をされたとしても、全て答えるつもりなのではないかと思うほど潔い答えだったから。

「いや、早く死にたかったからかもね」「………。」

梨華は伏せられた写真立てを手に取って、ひとみに渡した。
その写真を見るひとみの顔は、表現するのが難しいほど痛々しかった。

「ねぇ、聞いてもいい?」
「いいよ」
「嘘、つかないでね?」
「嘘なんてつかないよ」

写真を見る事をやめたひとみと複雑な表情をした梨華の視線がぶつかり合う。
169 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 22:43
「……私がその写真の人に似てるから、ずっと今まで仲良くしてたの?」
「違うよ!!」
「嘘つかないで!!ちゃんと私を見てくれてた?誰かを重ねてたんじゃない?!」
「嘘なんかついてない!!」

音量が増していく二人の声。
声が止めば恨めしいくらいの静寂となる。
心地良かった会話のない時間が今では数秒でも痛い。

「うちは梨華ちゃんに"カノン"を重ねた事なんてない!!」
「じゃぁ……なんで、なんであのネックレスしなくなったの?」

「……昔の夢を見たくないからだよ」

そう、初めて会ったあの日からひとみの首にあのネックレスはなくなっていた。
170 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 22:46
「全部話すよ。カノンの事、全部」

ひとみは梨華の手を引いて、ベットに座らせた。
ベットが軋む。

「うちはその時ルーマニアの小さい村にいた。そこで"カノン"に会ったんだ……本当の名前は知らないけど」
「"カノン"って名前じゃないの?」
「一応名前だけど……シスターになると新しく名前を貰うらしくて、本名じゃないんだって」

梨華はシスターと聞いて、写真で二人の背後にあった建物を思い出した。
そう言われれば見えなくもないが教会にしては随分と小さい気がした。
171 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 22:49
「嵐の日に狩りに失敗して傷だらけになったのを助けてくれたんだ。すぐに吸血鬼だってわかるのに、放っておけなかったんだろうね。その日からよく会うようになったんだ」

ひとみは話しながらシーツを強く握っていた。
梨華には何かに悔しんでいるように見えた。

「大好きだった。だから手紙を書いて驚かそうと思って、一生懸命勉強したよ。喋れても読み書きは難しくてさ、完璧に使えるのに五年もかかったっけ」

ひとみはもう今は無理だけどね、と笑った。
ルーマニアではラテン文字を使用していたはず……。
文体に触れる事などなかったのなら記号のようにしか見えなかっただろう。
172 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 22:53
「なんとか綺麗な便箋を用意して、彼女が世話してる木に括りつけておいた。一週間後返事が同じ場所に括られてたよ……。」

ひとみは写真立ての後ろに隠してあった古い小さな便箋を梨華に渡した。
中には二枚の手紙が入っていた。
梨華は手紙に目を通すも、授業で習っているはずもないので読む事など出来る訳がない。

「なんて書いてあるの?」
「一枚目は、『驚きました。私に隠れて何をしているのかと思っていたら、言葉の勉強していたのですね。ちゃんとした文になっていましたよ。』」

確かに数行ではあるが、全文頭に入ってしまうほど読んだんだろうなぁ…と梨華の心に少し痛みが走った。
173 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 22:55
「二枚目には、『明日、あなたを殺すようにと言われました。ごめんなさい、私はあなたを選べなかった。今まで楽しかった、さようなら。』もう村に来るなって事だとすぐに理解したよ。別に彼女になら殺されてもよかったけど、うちの為に罪を負わせたくない。だからその日のうちに村を出た」

シーツを握る手が震えている。
その手を握ってあげたかったがその行動は寧ろ逆効果に思え、梨華は静かに話を聞いていた。

「数ヵ月後、村からかなり離れた街で暮らしていたら、彼女が死んだ事を噂で知った。崖から誰かに落とされたんじゃないかって……」
174 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 22:58
梨華は耳を疑った。
ひとみの裏の人格は"自殺"だと言っていたのに……。

「最初はうちを殺してないのがバレたんじゃないかって思った。……でも違った。真実を確かめる為に村に行こう思ってとコートを羽織ったら、ポケットにあったんだ。彼女がいつもしてたあのネックレスが……しかも傷だらけで」

引き出しからネックレスを出して、梨華見せる。
振り子のように揺れるそれには何に叩きつけられたような傷が刻まれていた。
初めて見た時に文字だと思ったものは、生々しい傷だった。
175 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 23:02
振り子が完全に止まった頃、ひとみはネックレスを元の引き出しにしまった。

「なんでこれがここにあるのかわからなかった。でも鏡にうつった自分を見て、理解した。昔から感じてたもう一人の自分が殺したんだ、この手で彼女を崖から突き落としたんだって」

ひとみは自分の手を見ながら一粒涙を流した。
その涙を見た瞬間、梨華の頭の中で『違う!!』という声が聞こえた気がした。
視線をベットの上に移すと、古い手紙が一枚裏返しになっていた。
そこには一行の英文。
『May God bless you』……それを見て自分の予想が当たっていると確信した。
176 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 23:07
「違うと思う……」
「え!?」
「ううん、絶対違う」

ひとみは流れた涙を気にする事なく、梨華を見つめた。
その場にいた訳でもない、しかしなぜか梨華には自信があった。

「たぶん手紙の『あなたを選べなかった』って言うのは、神様と比べてじゃないかな。もし私だったらひとみちゃんと遠くに逃げるのを選ぶよ。でもその人はシスターなんでしょ!?だったら吸血鬼のひとみちゃんと逃げるなんて事出来ない、かと言って殺す事も出来ない。だから…」
「そんな事で自殺するなんて……有り得ないよ」

ひとみは何回も首を横に振る。
自分が殺したという事が真実で、慰めなどいらないと言うように……。
177 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 23:14
「それに、手紙の裏に『May God bless you』って書いてあったの。英訳して『神のご加護がありますように』。もし逃げてっていう意味の手紙だったら変だよ」
「それは、離れても元気でって意味じゃ…」
「どうして神様にひとみちゃんの無事を願うの?神様にしたら"悪"のはずなのに……。きっと神様宛てなんだよ。感謝とか敬意を込めての…遺書みたいな」

ひとみは言葉に詰まった。
そう考えると、英語など知るはずもないのに英文で書かれているのにも納得がいく。
しかし長年思っていた事を、簡単にそうなのかと変える事は出来なかった。
178 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 23:18
「でも、ネックレスはうちのポケットにあった。自殺ならここにネックレスがある訳がないよ」
「……実はちょっとだけひとみちゃんの裏の人格とお話したの。私の顔を見て、"自殺した"って言ってた。たぶん現場に行ったんだよ。そしてひとみちゃんを傷付ける為にネックレスを持ち帰ったんだと思う」

梨華の話はただの推理なのだが、全てが繋がった。
しかしそれが事実かどうかは、裏の人格とカノン以外知らない。

「でも、あの日うちを助けなかったら死ぬなんて事は……」
「生まれ変わりの私がここにいるんだし、後悔なんてしてる訳ないでしょ!?」
179 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 23:23
梨華の笑顔を見てまた涙が流れ、何か重たいものが心から取れた気がした。
ひとみはベットの上の手紙と写真立てをネックレスと同じ引き出しにしまった。
そして片付けたその腕で梨華を引き寄せ、きつく抱きしめる。

「信じて。これまで一度も梨華ちゃんにカノンを重ねた事なんてない」
「……本当?」
「うん、梨華ちゃんが一番好きだよ」

梨華は涙を浮かべた笑顔でひとみの背中に手を回した。

コホン
「あのー。これからお取り込みに突入するなら、ドアを閉めてほしかったりするんだけど」
「えっ!!」「……普通、邪魔するかな」

部屋の入り口には腕を組む美貴。
恐らく大声を出した辺りで目を覚まし、ずっとこちらを気にしていたのだろう。
心配しながら……。
180 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/17(火) 23:32
美貴の声で離れてしまった梨華。
それに対しひとみは少し残念そうだ。

「誰かさんがいないからって、あたんなって……」
「あのねぇ、……君達美貴の事忘れ過ぎだよ。誰のせいでこんなに疲れたと思ってんの?」
「「……ごめんなさい」」
「まぁさ、お腹へったからご飯食べようよ」

美貴はジェスチャーでも空腹を示して、階段を降りて行った。
ほぼ一週間絶食。
いくら妖怪であっても腹はへるもんだ。

「ひとみちゃん、行こ!?」
「あ、うん♪」

手を繋ぎながら追う。
それを見た美貴に小言を言われたのは言うまでもないだろう。

一見幸せな時間だが、この時にはすでに運命の結末が決まっていたのかもしれない……。
181 名前:ピェロ 投稿日:2007/07/17(火) 23:37
>164様
そのお言葉、とても助かります(T_T)
もうすぐ"fin"となる予定ですので、それまでお付き合いしていただければ嬉しいです。

>165様
冷房は必要ありませんが、暖房が必要になるかもしれませんね………美貴様の機嫌によってはwww
182 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/18(水) 15:05
ピェロ様 更新お疲れさま。
もう少しのところで「キ、キス…」かもだったのに、雪女メ!邪魔しやがったなー。
183 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/18(水) 21:42
更新お疲れさまです。気になりますねー。
184 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/19(木) 07:07
すみません作者さまお気を悪くさせたらごめんなさい。
『ベット』ではなく『ベッド』にしてくれると違和感なくなると思います。
こんなに良作品なのにもったいなくて…。
185 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/27(金) 13:36
「「ごちそうさまでした…」」
「はぁーい」
「やべー、食い過ぎた…。く、くるひぃ」
「梨華ちゃん、いくらなんでも作り過ぎだったって。美味しかったけどさ……」
「だって〜、賞味期限ギリギリのがいっぱいだったんだもん!!」

あれからすぐに梨華は料理を始めた。
保存がきくものばかり冷蔵庫に保管していたものの賞味期限がそろそろ危ないものが多く、それらを消費する事を考えていたらかなり膨大な量になってしまった。

「でも、残して明日食べたらよかったのに」
「その手があった……」
「美貴、当分食べなくても平気だと思う。。。」
186 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 13:40
さすがに量が多すぎた……全て二人の胃袋に入ったのが不思議でならないくらい。
さっきからぐったりして動かないひとみと美貴を心配そうに梨華が見つめながら、食べ終えた食器類を片付けようとする。

「あっ、片付けは美貴達がやるよ……少し休んだら」
「ほら、もう夜だし。今日はありがとね」
「ううん。じゃあ、亜弥ちゃんが帰って来たら二人で朝から来るね」
「一人で大丈夫?」
「うち、送ってくよ」
「大丈夫よ♪♪じゃあね」

梨華は薄いピンクのエプロンを畳み、二人に手を振って帰って行った。
ひとみと美貴も笑顔でそれを見送る。
187 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 13:43
バタンと玄関のドアが閉まった。
その瞬間二人の顔から笑顔が消え、真面目な顔に変わる。
さっきまで食べ過ぎで苦しんでいた人達とは、到底考えられない。

「……この前の話だけど、なるべく早くしよう」
「それ美貴も思った。やっぱり侵食が早い」
「……決行は?」
「出来るだけ早く。さすれば……」
「「今夜」」

最後の言葉とほぼ同時に座っていた椅子から腰を上げた。
美貴は台所へ行き、隅に隠すように置かれた古い袋に入ったものを……ひとみは洗面所へ行き、滅多に開く事がなかったタンスから黒いマントのようなものを持って来た。
188 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 13:45
袋の中のものを玄関前の比較的広めのスペースに並べ、ひとみが持って来た黒いマントのようなものをそれぞれ羽織る。
床には十三本のろうそくの炎が床に敷かれた古い布の周りを囲み、古い本を見ながらなにやら布に描き始めた。

「あー、よっちゃん。さっそくそこ違う、そこ」
「えっ、どこ!?」
「それ。よっちゃんの右手の側のやつ」
「どれだよ……」
「だからそれだって!!」
「あ、これか?」

布には三重の円が描かれ、それぞれの間にどこの国の文字とも違う文字が並んでいる。
これらは"魔界の文字"。
そう、二人は"魔界"との接触を試みていた。
189 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 13:47
「てか最初から印刷しとけって感じじゃね!?」
「知るかよ」

ひとみは文句を口にしつつ、作業に戻った。
黒いペンキで描き、間違っては白いペンキで塗り潰す。
地味でかつ細かい作業。

そして時が流れ、描き始めて四時間経過して空が薄くなった頃。
書くべき所はやっと全て埋まった。
二人は本を見ながら、間違いがないか確認する。

「完成!?」
「たぶん、、ね」
「んで、次は何?」
「えーと、"円の心へ汝の血を一雫"……だって」
「とにかく、真ん中に血を垂らせばいいんでしょ!?」

美貴がナイフで指先を切って、円のちょうど中心へ一滴血を落とした。
190 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 13:49
すると円の中で青い炎が上がった。
けして熱は感じない。
ひとみも円の中心へと一滴血を落とした。
今度は赤いの炎が上がる。
それらは合わさって一つの炎となり、布を囲むろうそくの火が強まった。
だんだんと消えてゆく炎の中に小さな人影が見えた。

「どーもー、小春ちゃんでっす♪♪」
「「ど、どうも」」

人影はまだ幼い女の子だった。
ひとみ達のような黒いマントをまとい、分厚い本を持っている。

「なんの御用ですかぁ?仲間の捜索・寿命の契約・能力の封印開放……えーと。。」
「どれも違うよ」
「美貴達の"アレ"、君なら知ってるんでしょ?」
191 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 13:54
熱の感じない炎が大きく揺れた気がした。
女の子は一瞬驚いたような顔をしたが、次の瞬間にはフニャフニャした笑顔に戻っていた。

「…確かにわかりますけどぉ、何するんですか?」
「閻魔様の遣いなら想像出来るでしょ?」
「てか一つしか考えらんないじゃん」

揺れてた炎がピタリと止まり、ひとみと美貴を包み込んだ。
やはり熱は感じない。
感じるのは体の中に何かが入り込んで来るイメージ。
その感触に二人は目を閉じた。

「わかりました。でもちゃんと理解してますかぁ?」

女の子が声を掛けると体から異物の感触が消えた。
目を開けると女の子の手には黒いカード。
192 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 13:58
「ちゃんと理解してるって。な、ミキティ?」
「もちろん」
「お二人の残りの寿命は半分近くあります。なのに"死ぬ"んですかぁ?」

目線をひとみと美貴に向けたまま、黒いカードに長い鳥の羽根の付いたペンでサラサラと書いてゆく。
もちろん笑顔は絶やさずに。
その様子を見て、ひとみが話し掛ける。

「あっ、片仮名ふっといてね。」
「知ってますよぉ、担当してる人はたまにチェックしてますもん」「じゃあ、最初からわかってたんじゃん」

女の子は書き終えるとカードを同色の封筒に入れて、ひとみと美貴の前へ差し出す。

「どうぞ。お二人の"本名"です」
「「どうも」」
「では、あっちでお待ちしてまぁす」
193 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 14:02
「あ、たぶんもう必要なさそうなんで〜持って帰りますねぇ」

女の子がヒラヒラと手を振ると炎が一気に強まり、ろうそくや布と一緒に消えた。
さっきまでの炎の明るさに慣れていた二人の目では、家の中はとても暗い闇で包まれていた。

「……明後日だっけ?二人揃って遊びに来るの」
「もう朝になったから、正しくは明日じゃない!?」
「……納得してくれっかなぁ」
「説得しかないでしょ」

目が元の暗さに慣れてくると、同じ黒い封筒を見つめながら立っている互いの姿が確認出来た。

「とりあえず、風呂入って来るわ」
「ねぇ、よっちゃん。久しぶりに一緒に入ろ!?」
「ハハハ♪♪いーよ」

二人はマントを脱ぎ、風呂場へ歩いて行った。
194 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 14:05
閻魔を"父"とする全ての者の悲しい宿命。
それは寿命以外で命を絶つ方法が『一番愛する者に自分の本当の名を呼ばれる事』であり、それが出来ない者はどんなに辛い事があっても生き続けなければいけないという事。
今、浴槽の中でふざけ合っている二人の願いはただ一つ。
それは愛する者の為であり、自分を救う為。

「うわっ、冷た!!いくら吸血鬼だからって、これはキツイって!!」
「あ、ごめんー。よっちゃん平気そうだから、どこまで大丈夫かなぁって思って♪♪」
「あんなぁ!!とりゃっ!!」
「ちょ、ゴホ、少し飲んじゃったじゃん!!」
「痛ぇ!!氷は反則じゃね。。普通」
195 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 14:09
決して広くはない浴槽に並んで入っている二人。
笑い声と、もはや水と化したお湯の音が響く。

「ねえー、よっちゃん」
「ん?」
「今日は一緒に寝ようね」
「なんだよ、すっごい甘えんぼ♪♪」
「いーじゃん、別にぃ!!最後なんだし」
「……最後かぁ」

明日になれば、ずっと恐れ憧れていた"死"がやって来るはずだ。
……意外に頑固な二人がそれを認めたらではあるが。

「よし、もう出よう!!風邪引いたらシャレになんねぇ」
「吸血鬼で馬鹿なんだから大丈夫じゃない?」
「失礼だな!!」

ザバァと浴槽から出て適当な服に着替え、二人は美貴の部屋へ向かった。
196 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 14:12
部屋に向かうとすぐにベッドに直行したものの、なかなか寝付けない。
数時間前に仮眠を取ったからか……、それとも恐怖からか。
二人は昔を振り返り、出会った日の事や始めてケンカをした日の事などを話した。
太陽が真上に近い状態になるまでずっと、笑い声が止む事はなかった。

そして美貴が目を覚ました時空は暗く、カーテンのすき間の少しの空で月が輝いていた。
今宵は金色の満月、最後の夜が始まっている。

「やばっっ。皿とかそのまんまじゃん!!よっちゃん、起きろ!!」
「んぅぅー、ぉきたー」
「起きてねぇだろって!!」
「……ふぁい、起きます」
197 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 14:14
ひとみは渋々、まだ眠りへと手招きしているベッドから体を離した。
なかなか離れようとしない体に勢いをつけて。

「ふぁーあ。ねみ……」
「ちょっと話し過ぎたね」
「てかいつ寝たか覚えてねぇし」
「美貴も」

まだはっきりとしない視野と眠気を何とかしようと、ひとみは洗面所へ向かって顔を洗いに行った。
目が覚めてしまえば掃除にやる気を出すのはひとみの方で、徹底的な掃除に飽きた美貴が色々とちょっかいを出す。

「見て見て、蛇だよ〜」
「ぇ!?ってそれヒモじゃん」
「バレちった?」
「んなこといいから、掃除しろ!!」
「へいへい」
198 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 14:17
最初は使った食器などを片付けるだけのつもりが、意外に細かいひとみによって家の全てを掃除する事になってしまった。
おかげで徹夜での大掃除になった。

「おぉー、こりゃ見違えますな」
「疲れた……。なんで徹夜で大掃除しなきゃいけない訳?」
「ま、いいじゃん♪♪長い間住ませてもらったお礼って事でさ」
「……ま、確かに」

この数日ですっかり吸血鬼らしい生活のリズムになってしまったものだ。
もう二時間もすれば梨華と亜弥がやって来るだろう。
それまでまた二人で風呂に入り埃や汗を流して、パジャマではなくちゃんとした服に着替えたりして時間を過ごした。
199 名前:運命or宿命 投稿日:2007/07/27(金) 14:21
二人が選んだ服は"あの日"と同じ。
興味本位でこの家に入り込んで来た梨華と亜弥に出会った、始まりの日と同じ。
着替えを終えて美貴が部屋から出ると、ちょうどひとみも部屋から出て来た。

「考えてる事は同じってか?」
「みたいだね♪♪でもあのネックレスは付けないの?」
「あぁ、あれは封印」
「そっ♪♪」

美貴は安心したように笑うとぐるりと家中を見回し、ひとみもそれにつられる。
埃を掃ったからか、若干ランプの光が強い。
耳を澄ませば風の声も聞こえる。
それに重なる愛しき声も……。

「「来たね」」
階段の中央に立って、玄関が開かれるのを待つ。
それぞれ黒い封筒を大事に抱いて。
200 名前:ピェロ 投稿日:2007/07/27(金) 14:28
>182様
そーですねぇ。。。
雪女サンに伝えておきますwww

>183様
大変嬉しい限りです(>_<)v

>184様
「bed」ですもの、ベッドですよね↓↓↓
なまっているからでしょうか。。。
これからもご指導、お願い致します(__)

###
185ですが、やってしまいました↓↓↓
自己嫌悪です(xx;)
ですが、この話はあと少しの予定ですので……どうかお付き合いをm(__)m
201 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/28(土) 03:19
うわーードキドキして来た!
チヨイ役の小春ちゃん可愛かったス
202 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:23
運命か、それとも宿命か?
だったら「どっちでも関係ないじゃん」って答えてあげる。

だって全部神様が指示してたなんて考えるとムカつくから。
あの日忍び込んだのも、仲良くなったのも、好きになった事さえも、"指示"だなんて言いたくないし認めたくないもん。
どうせ信じないだろうから誰にも話してあげないけどね。

秋が来たらあの日からもう六年だね。
ねぇ、たん。
約束通りあたしらしく生きてるし、結構幸せだと感じてるよ。
だからあんたも約束守ってよね。
嘘ついたら許さないんだから。
203 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:26
あたしは今、もう温くなって味も薄まってしまったアイスティーを持ちながら人を待っている。
指定された時刻はすで過ぎているのに、電話をかけても聞き慣れたお姉さんの声が聞こえるだけ。


相手は社会に出て一番最初に認めてくれた人で、この人のおかげで今の生活があると言ってもいい。
だから感謝はしてるけどあたしはどっかのピンク好きほどお人よしではない。
性格上待つのは嫌い。

例え屋根があっても薄着であっても暑いものは暑くて、我慢出来ずに待ち合わせ場所から離れようとしたらポケットの携帯が震え出した。
誰かからメールが来たらしい。
204 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:29
少し浮いた腰をもう一度降ろしてメールボックスを開いてみる。
送信者の欄には『中澤さん』の文字。
『悪い、まだこっち片付かんねん。奢るから涼しいとこで待っとって!!』だって。


まぁせっかくのご好意なので遠慮はしない。
しかし今はあまりお腹が空いていない、だから『んじゃあ、近くの喫茶店にいますね。今度美味しいお料理お願いしまぁす♪♪』と返信した。


とりあえずここから避難しよう。
辺りをキョロキョロと見回してあまり込んでいなそうな喫茶店を探す。
あるなら子供や女子高生やらのいない所がいい。
あの生物は涼しい場所だとよりうるさい……。
205 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:33
待ち合わせ場所から離れて、様子を見ながら歩く。
子供達が元気に遊んでいる噴水を中心にして輪のように並んでいるこの場所。
いつ中澤さんが来るかわからないけど、この輪から出ない方がいいだろう。


しばらく歩いていると静かな雰囲気の喫茶店を見つけた。
うん、ここにしよう。
途中で持っていたアイスティーだったものをゴミ箱に捨てて、カランカランという音と一緒に中に入った。


涼しい。
さっきまで吸っていた空気には酸素がなかったんじゃないかと思うくらい清々しい。
あたしに気付いた店員さんに案内された席に座って、アイスコーヒーを注文した。
206 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:35
中澤さんが何の話をする為にあたしを呼んだのかはだいたい予想出来る。
まだ季節は夏だけど、秋の新作の件だろう。


あたしは一応アクセサリーのデザイナーをやっている。
しかも自分で言うのも何だけど、結構有名だし人気もあるんだよ。


この職業を選んだ理由は物凄く単純、梨華ちゃんの大学の姉妹校で唯一興味の持てそうなのがデザイン学科だったから。
それを梨華ちゃんに伝えたら「それでいいの?」なんて言われちゃったっけ。
でも深く悩むのは好きじゃなくて、思い立ったらすぐ決定するのがあたしで。
これこそ運命か宿命のどっちかなんだと思う。
207 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:39
この待ち時間に少しアイディアでも練ろうとカバンから赤い革の手帳を取り出す。
お父さんと約束した事だからと、卒業するとすぐにアメリカへ行ってしまった梨華ちゃんからの卒業祝い。
届いた時はシンプルで大人っぽい手帳で安心した。
正直、ピンクでフリフリとかだったら喜べない気がして……。
だから結婚する事が決まったのを聞いて、そのお礼もかねて婚約指輪をデザインさせてもらった。


手帳を開くと一番最初のページにはその指輪のデザイン画。
うん、やっぱいい感じ。
改めて満足していると、注文したアイスコーヒーが来た。
208 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:43
ミルクだけを入れてクルクル混ぜながら一枚一枚めくってく。
すると半分に折られた紙がヒラリとテーブルの上に現れた。


アイスコーヒーを三分の一くらい飲んで、その紙を開く。
まだ未完成のデザイン画。
あたし達四人の思い出を残したくてずっと考えてる、でもどうしても完成出来ない。


四人で見た夕日も思い出せるのに……。
あの家の温度も暗さも忘れていないのに……。
さよならの日に初めて合わせた肌も初めて見たの涙も初めて聴く甘い声もまだ全身に残ってるのに……。
どうしても納得出来るモノにならない。


ねぇ、たん。
形にするなって事なの?
209 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:45
視線を窓の方に移してみた。
ただなんとなく空が見たくて……。


でもいつの間にか外は曇っていて、今にも雨が降りだしそうだった。
腕をひっくり返して時計を見ると、待ち合わせ時間からちょうど一時間経っているのに気付く。


どうしてか外の空気に触れたくなった。
空だって見えないんだけど、曇っていてもムシムシするだろうけど。
思い立ったらすぐ決定。
まだ冷たいアイスコーヒーを半分まで飲んで、手帳と広げた紙を大切にバックにしまって喫茶店を出た。


案の定外はムシムシしてたけど嫌な感じはしなくて、近くにある三人掛けのベンチに座る事にした。
210 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:48
座るとすぐに空から雫が落ち始めて道路の色を濃い黒へと変えてゆく。
目を閉じると雨の音がだんだん強くなるのがわかった。


そういえば、あの家も雨の音がうるさかったなぁ。


ふと視線を感じて目を開けて右を見ると、一人分の距離を空けて黒い毛玉丸がまって座っていた。


「うわぁ!!??ビックリしたぁ!!」


声に驚いたのか毛玉が動く。
尻尾をぴょこんと動かして、顔を一度上げてすぐに戻す。
まるで「うるせーよ」って言ってるみたい。


……仕方なくない?
音もなく、いつの間にか隣に座った君が悪いんだよ?
小さいくせに生意気なやつだなぁ。
211 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:51
どうやらこの毛玉はエスパーらしく、失礼な事思ってんじゃねぇとゆう感じにグレーの瞳で睨んで来た。


「ねぇ、あんたも誰か待ってんの?」


毛玉は睨むのを止めて瞼をおろした。
動かないからもしかしたら寝るのかもしれない。


「ぉーーぃ」



やっぱり毛玉は動かない。
警戒心とかはないのかなぁ……。


触れてみたくて静かに手をのばす。
するとあと少しの所で目を開けて、ベンチから降りてしまった。
しかも逃げないであたしの足の近くで睨んでる。


「ゴメンってばぁ。いいじゃんか、少しくらいさぁー」


………周りから見たらなんてマヌケな図なんだろう。
212 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:53
しばらくするとまた携帯が震え出した。
今度は電話らしい。


「もしもーし」
『あ、松浦?うちから呼び出しておいてこんな待たせてゴメンなぁ。今そっち向かってるとこやから、もう少し待ってて』
「はぁぃ。了解でーす。ディナー楽しみにしてますね♪♪」
『……まぁ、しゃーなぃな。そんな高いのやめてや!?』
「にゃは♪♪んじゃ、待ってますねぇ」


電話を切ってバックにしまうと、視界の端に黒い毛玉がいないのに気付いた。


いなくなっちゃったか……。


なぜだか悲しくなって、毛玉が丸まっていた自分の隣に視線を移してみた。
213 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 02:56
「って、まだいるし!!」


それも前よりもグンと近くに。
毛玉はあまり距離を取らず隣に座ってあたしを見上げてた。


「あんた何がしたいの?暇なわけ?」
「ニャー」


たまたまなのかもしれないけど、会話をしてる気分。
ちゃんと座ってるから毛玉の様子がよくわかった。


真っ黒な毛並みにグレーのアーモンド型の生意気そうな瞳、体は意外に小さくて音の鳴らない鈴がついた赤い革の首輪をしてる。


「ニャー」「ん?」


毛玉が遠くの方を見始めたから飼い主でも現れたのかと、視線を追ってみる。
雨は止んでいた。
そしてこっちに向かって来る見知った車が見えた。
214 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:01
「あっ中澤さんの車だ。もうバイバイだねってあれ!?」
 
毛玉は隣にいなかった。
なんて音のしない子なんだろう。
 
辺りを探しても小さな後ろ姿は見つけられなかった。
キキーと車のブレーキ音が聞こえる。
後ろを向いてた体を戻すと窓から顔を出す中澤さんがいた。
 
「何しとんの?」
「今、黒猫がここに…」
「猫?自分一人やったやん。」
 
中澤さんに促されるまま助手席に乗って、噴水を一周して大通りに出る。
もう二度と会う事が出来ない、そんな気がした。
 
「ディナーの代わりに無茶なお願いしてもいいですか?」
「え゙!!よくない!!」
「大丈夫です、中澤さんの会社にとっては得な事ですから♪♪」
215 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:03
目の前にいる時は全く感じなかったけど、今思えば誰かさんの姿がよく被る。


約束、守ってくれたんだね。



確かにあんたは動物に例えると黒猫っぽい。
よっすぃは犬っぽいよね、それも大きいの。
梨華ちゃんはうさぎかなぁ。
だったらあたしは何だろう、たぶん猫でも犬でもうさぎでもない。


だって四人共性格がバラバラなんだから。
一つの色で形で表現しようする考え自体おかしいかったんだ。


中澤さんに頼んで会社に向かってもらう。
静かで集中出来て、色んな資料がある場所がいい。
だから中澤さんの会社が最適。


ねぇたん、これからもっと忙しくなりそうだよ。
216 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:06
* * * *
 
 
「ねぇ亜弥ちゃん、美貴と約束して?」
「グス…な、に?」
「これからも亜弥ちゃんらしく生きるって」
「いッやだょ、グス。ずっと一緒ッッにい…ッて!!」
「……亜弥ちゃんが幸せだなって感じられるようになったら、絶対会いに行くから。どんな姿でも会いに行くから。」
 
 
「また美貴が美貴で、亜弥ちゃんが亜弥ちゃんで生まれた時……今度はずっと一緒にいよ?また四人で過ごそう?」
「約束、ね」
 
 
ーー責任取ってよね、もうあなた以外愛せなくなったらーー
 
 
ーーいいよ、こっちだって君を離すつもりなんてないからーー
217 名前:ピェロ 投稿日:2007/08/06(月) 03:09





一部・fin
218 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:12
運命か、それとも宿命か?
うーん、根本的にはあまり違いがないんだから「どっちでもいい」と思うな。
それに例え変えられたとしても、変えるつもりないもの。
あの日から数ヶ月間はひどく悲しんだけど、私を選んでくれた事が嬉しく思えた。


愛する息子はもうすぐ二歳になります。
旦那さんの事はひとみちゃん以上には好きになれないけど、とても大切にしてくれて幸せだよ。
私はひとみちゃんにいっぱい会ってるんだもん、また出会えるよね?
そしたらまた四人で過ごそう。
今度は人間に生まれようね、もちろん四人全員。
219 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:15
私は今アメリカで、もうすぐ二歳になる息子のお母さんをしています。
旦那さんは私より五歳年上で世界で活躍してる会社の社長さん。



元々中学生の時に両親が決めた許婚で、大学を卒業してすぐに結婚を前提としたお付き合いをしてそのまま結婚したの。
亜弥ちゃんには「どうして好きでもない人と結婚するの!!」って怒られたりしたけど、何とか納得してくれて婚約指輪をデザインしてくれた。



本当にすっごい可愛いの。
パーティーでもよく褒められるんだ♪♪
大切な宝物。



アイドル系人気デザイナーの活躍はこっちでもよく耳にしてるよ。
頑張ってるんだね。
220 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:18
もう二年も帰っていない。
でも子供もだんだん手がかからなくなって来たし、そろそろ帰ろうかなぁなんて考えてる。


亜弥ちゃんとの手紙のやり取りで、あの家がついになくなってしまった事を知った。
今は駐車場になっているらしい。
四人の思い出のあの家がなくなって悲しいはずなのに、自然に受け入れられた。
亜弥ちゃんの手紙にもそんな感じの事が書かれてたね。
 
 
 
ある日、久しぶりに亜弥ちゃんから手紙が来た。
ペーパーナイフで封を開けると、中にはたった一行『今年の秋に出すつもりなんだけど名前考えて』と書かれた手紙と四枚のデザイン画のコピー。
221 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:21
今までで一番短い手紙の内容に戸惑いつつも、全てをテーブルの上に並べてみる。



四枚のうちの二枚はピアス、残り二枚はネックレスのらしい。
やっぱりあの子の考えている事がわからない。
四つも考えられなかったのか、それともいい名前が浮かばなかったのか。



並べてみると歯車の形をしているのがよくわかる。
歯車と言っても丸みを帯びた可愛い感じ。
色や飾りは違うし微妙な形の違いはあるけどガラスの歯車。
シルバーアクセサリーを好んでいる亜弥ちゃんには珍しく思えた。



それにしてもどうして私に?
「センス悪ーい」ってよく笑ってたくせにさぁ。
222 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:25
何となく眺めていたら私達四人の事が頭を過ぎった。
"秋"や"四"というワードのせいかもしれない。
"四"人で過ごした最後の季節が"秋"だったから。
  
  
少し透ける程度の黒い歯車のピアス。
どうしてかな、雪の結晶に見えて美貴ちゃんを思い出させた。
黒も好きだったし。
でも小さなシルバーの鈴の飾りが付いているのはなんでなんだろう……。
   
   
透明に近い白の歯車のピアス。
それにはシルバーのハートの飾りが付いている。
デザインもさっきのと似ているから、きっと亜弥ちゃんの事なんだろうな。
シンプルな色も好きだったし。
223 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:28
青く透ける歯車のネックレス。
それには小さなシルバーの涙の形をした飾りが付いている。
ひとみちゃんが最初にしてたネックレスだね。


ここまで来ると次が私の事なんだろう。
ピンクの透ける歯車に小さなシルバーの十字架の飾り。
私がよく十字架のアクセサリーを好んで選んでたのを覚えててくれたみたい。
……それにしても余白に「出来るなら少し黒を混ぜて」と書かれてるのは私に対しての嫌味か何かかしら。



頼まれたんだからいい名前を付けたい。
パソコンの前に座り込んで色々考えて返事を書いた。
四つの名前と近々帰る事だけを伝える短い手紙。
224 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:30
そして今、旦那さんの許しをもらって数日間の帰国をさせてもらってます。
子供と旦那さんはアメリカでお留守。
お友達の命日なのって言ったらすんなりOKをくれた。
別に嘘は言ってないもん。
だって本当に命日なんだから。



帰って来た事を亜弥ちゃんに電話で伝えたら、「もっと早めに教えてよ!!仕事まだ終わんないよ!?」って本気じゃないけど怒られちゃった。
だから亜弥ちゃんの仕事終わるまでお散歩をする事にした。



このお店まだあるんだぁとか、裏山平になっちゃんたんだなんて考えながらゆっくり歩く。
変化はしているけど、やっぱり私の育った街。
225 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:33
私もおばちゃんになったものだなぁ。
久しぶりの運動に少し疲れて、バス停のベンチで休む事にした。
たくさんの人を乗せたバスが目の前を行く。



青いベンチは太陽に照らされて以前よりも色が薄くなった気がした。
ちょっとグラグラしていて壊れそう。
それが何より懐かしかった。



「ちょっとバス行っちゃったんじゃない?」
「んー」
「ちょ、ちょっと聞いてる?歩きながら雑誌見ないの!!」



声のする方を見ると二人の女の子がこっちに歩いて来ている。
話の内容的にさっき出発したバスに用があったみたい。
私はベンチの真ん中から端の方に移動した。
226 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:38
そんな私を見て少しウェーブのかかった髪の礼儀正しそうな女の子がペコリと軽く会釈した。
もう一人のストレートの髪の女の子は時刻表とにらめっこしてる。


「アヒャー。三十分待ちやよ、ガキさん」
「愛ちゃんが早く歩かないからでしょ!!」
「な、これ見て」
「コラァーー」


笑っちゃダメだと思いつつもまるで漫才みたいな二人の会話に声は出してないけど笑ってしまった。
ストレートの子がウェーブの子に人気のファッション誌を見せる。


初めて亜弥ちゃんのアクセサリーが載った雑誌。
わざわざ送ってくれたんだよね、あの子。
自分の事みたいに嬉しかった。
227 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:41
二人が座ってベンチがキシリと鳴いた。


「これ四人でオソロにせん!?」
「んぅ、どれ?」
「これこれ」
「"松浦亜弥"の?いいねいいね♪♪」


急に聞こえた親しい友人の名前にビックリした。
でも中傷とかじゃなくてよかった。
そんなひどい子言うような子達には見えないけど。


「ピンクの『Reticulum(レチクル)』があさ美ちゃんやろ、んでブルーの『Hercules(ヘラクレス)』が麻琴」
「じゃあ、愛ちゃんは黒と白どっちがいい?」
「あーしが決めてえぇの?じゃあね……黒の『Monoceros(モノセロス)』!!」
「OK♪♪私、『Aquila(アクイラ)』ね」
228 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:43
世界に出回る前から知っていた名前。
他の誰かの声で聞くそれに頬が上がる。


どれがどの名前かなんて手紙に書いてないけど、亜弥ちゃんはきちんと私の思う通りに結び付けてくれていた。
私達以外の人には名前の由来なんてわからないだろうな。
調べてもわかる事は星座である事ぐらいなんだから。


名前自体には意味はないの。
たけど本人達には通じる、とある法則。


「この四つのアクセサリーの噂知ってる?」
「何がぁ?」
「本当に仲良い四人組がオソロでつけると、皆同じ夢見るんだってー」
「うそだぁ、どうせ噂やよ」
「愛ちゃん、冷めてるぅ」
229 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:45
「気付くと古い家の玄関の前に一人でいて、中に入るとすごく暗いんだって。それでの階段の所に人がふた
「あ、バス来たで」
「コラァーー!!話聞けぇ!!」


「だって怖い話みたいやもん。ヒヒヒ、今日麻琴んちにお泊まりやで?そんなん話して寝れるんかー?」
「ゔ…」
「一緒に寝ようよぉ〜って、あーしの布団に入って来るの誰やったっけ。イヒヒ♪♪」


二人は手を繋いでバスに乗って行った。
一人は意地悪な笑顔で、もう一人はアヒル口で耳を赤く染めて。


話は途中だったけど、すぐに絵が浮かぶ。
他の人の夢に出るくらいならまず私のとこに来なさいよ!!
230 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:48
そんな事を思ってみるけどすぐに自分で否定する。
だってきっとその夢は私達の想いが見せる幻だと思うから。



そもそもあの二人は全く知らない人達の夢に出る程、サービス精神旺盛でないし。



ねぇ、ひとみちゃん。
私の心配なんてしなくていいよ。
だからちゃんとお願いしてて?



何人もの人間の命奪ったという過去の罪はあるけど、あの四人が人間として同じ星の同じ時代に生まれますように……。
次に会う時はあなたとずっと一緒にいられますように……って。
231 名前:運命or宿命 投稿日:2007/08/06(月) 03:50
* * * *


「実は忍び込む前にひとみちゃんの事見てるの、この窓の所で」
「マジで?」
「うん。ほんといっぱい接点あるよね」
「なんてったって、うちは梨華ちゃん王子様ですから♪♪」「フフフ、じゃぁ私お姫様ね♪♪」


「……なんかね、ひとみちゃんがいなくなるのはすっっごい悲しいけどまた会える自信あるの」
「当然、そうじゃなきゃ困るし!!お願いしとくよ」
「しつこいぐらいね?」



ーー次も心の底からあなたを愛すから、あなたも心の底から愛してねーー



ーー次はきちんと言葉で伝えるから、君は黙ってキスして下さいーー
232 名前:ピェロ 投稿日:2007/08/06(月) 03:52




fin




233 名前:ピェロ 投稿日:2007/08/06(月) 03:54
>201様
こんなの小春ちゃんじゃないとクレームが来たらどうしようかと、バクバクでした。
お言葉を聞いて、有頂天です↑↑↑



やっと終了です。
次はとりあえず短編の"予定"ですので、またお付き合い頂ければ嬉しいです。
234 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/07(火) 12:19
ピェロ様更新お疲れサマ。
私もアメリカに住んでいるので、もしかすると
吉澤さん似?の子供を連れた梨華ちゃんに会えるかも?ですね
次のお話も期待して待っていますねー
235 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/07(火) 12:48
作者さんお疲れ様です
個人的にはまだ終わってほしくないような気持ちでした
心残りですが… 有難うございました。
236 名前:台風一家!? 投稿日:2007/08/12(日) 02:52
【台風】
中心に向かって反時計回りに風が吹き込み、風速は中心から少し離れたところが最大。
しかし中心では静穏になっていることが多い。


この言葉は時に人間に対しても用いられることがある。
例えばこの三人のような……。


「絵里ぃー、そろそろ起きんと遅刻やでぇ」
「んー。まだ大丈夫ぅ…」
「昨日もそんな事言ってギリギリだったくせに」


他の二人がほぼ準備を終えているというのにまだ布団から出てる気のない少女、亀井絵里。
そして絵里を起こそうと声を掛けた制服の少女、高橋愛。
白いスーツを着て怠そうに朝食を食べる女性、藤本美貴。
237 名前:台風一家!? 投稿日:2007/08/12(日) 02:54
この三人の関係は従姉妹で幼い頃に数回遊んだ程度であったが、絵里と愛が通う高校に生物の教員である美貴が赴任して来たのをきっかけになぜか一緒に暮らすようになった。
この三人は他校にまで名前が知れ渡る程多くの人に好意を持たれているというのに、本人達は全く自覚していない。
絵里は根っからの天然であり、愛は自分の事には極度の鈍感、美貴は興味のない事には一切目を向けない。


周りがいくら騒げども騒げども、自分達の事だなんて考えてすらいない。
……"台風"だと例えられるには相応しい人達である。
238 名前:台風一家!? 投稿日:2007/08/12(日) 02:56
「あーしもう出るわ」
「んー、いってらっしゃい」



演劇・合唱部の部長である愛は朝練の為に早めに学校へ。
今の時期は秋に行われる文化祭で披露するミュージカルの稽古でもするのだろう。



「亀井さーん……。オラァ、亀井!!起きろ!!」
「……ふぁーぃ」



台風娘が住むとあるマンションには今日も美貴の怒鳴りり声が響く。
そしていつも通り朝練を終えた愛が自分の席で居眠りを開始し、絵里がチャイムと共に鍵を開けくれていた窓から教室に入り、スーツを脱いで涼しい格好に着替えそれを白衣で隠した美貴がどこかのクラスで授業を始める。
239 名前:台風一家!? 投稿日:2007/08/12(日) 03:00
(3-A)
ガラガラ
「よし、始めるぞー。えっと昨日の続きのP122からな」
「zzz…」
「愛ちゃん、先生来たから。おーい」
「んぅ?お、麻琴ぉ♪♪ぉぁょー」
「うん、おはよ♪♪っじゃなくて教科書出して!!」
「はぁーい♪♪」



愛の前の席に座る台風の被害者一号・小川麻琴。
幼なじみであり恋人で、眠った愛を起こす事の出来る数少ないうちの一人。
頼まれると断れないヘタレな性格なので、面倒だと名高い図書委員会の委員長で部活には所属していない。



「…zzz」
「………おい小川、高橋を起こせ」
「ちょっと、愛ちゃーぁん」
240 名前:台風一家!? 投稿日:2007/08/12(日) 03:03
(2-F)
キーコンカーコン、キーコンカーコン
「だぁあ!!セ、セーフ」
「コラァーー!!何回ちゃんと起きなさいって言えば起きるの!?」
「だってぇ、眠いんだもん♪♪」
「『もん♪♪』じゃないでしょーが!!」



たまたま発見した近道と非常階段をダッシュして教室に来る絵里の為に毎朝非常扉と窓の鍵を開けておいてくれる、台風の被害者二号・新垣里沙。
絵里の親友で、愛の幼なじみかつ愛を起こす事の出来る数少ないうちの二人目。
そして数人しか知らないが、美貴とは赴任して来る前からの恋仲である。



……一番の苦労人と言っても八割程度は間違いでないだろう。
241 名前:台風一家!? 投稿日:2007/08/12(日) 03:06
(1-C)
キーコンカーコン、キーコンカーコン
「細胞壁とは……お、じゃあここまで。次の問題、宿題!!」
「起立ー、礼ー」
「あ、そうだ田中さん。ちょっと生物室に来て」
「??わかりましたぁ」



ガラガラガラ
たった今美貴の授業が終わったこのクラスの窓際の一番後ろに座る、少しヤンキー風な少女。
台風の被害者三号・田中れいな。
頭の上には?がいっぱいだ。



「ちょっとれーな、何したの?」
「別に何もしとらん。とにかく行って来る……」



見た目は多少問題児風ではあるが悪さをする事に興味がないので、思い当たるふしなどない。
特に美貴の授業は携帯すら開いていないのだ。
242 名前:台風一家!? 投稿日:2007/08/12(日) 03:10
一階の教室を出て南校舎に移動して四階まで一気に駆け上がる。
生物室は遠い、運動部ではないれいなの息は当然荒くなった。



息を少し整えて中に入ったが美貴の姿がない。
そうなるとクーラーやソファーなどが置かれ授業がない時は鍵をかけて隠れている、秘密を知る人以外入れた事のない生物準備室にいるのだろう。



「せんせー、れいなですけどぉ」
「開いてるから入って」
「お邪魔しまーす」
「単刀直入に言うけと、亀井絵里なんとかしてくんない?」
「はぁい?」



美貴は黒いソファーに座って足を組み、口元からコーヒーらしき液体が入れられたマグカップを離さずに言った。
しかもれいなが中に入った瞬間に。
243 名前:台風一家!? 投稿日:2007/08/12(日) 03:15
流れから予想出来てしまったかもしれないがれいなは絵里の恋人である。
先程教室で話し掛けて来た絵里の幼なじみである道重さゆみによって、かなり強引であったが最近くっついたばかり。
なかなかくっつかない絵里とれいなにさゆみがしびれを切らしたらしい……。



「だからー、毎朝毎朝起こすのが大変なんだって。だから何とかして」
「れいなが…ですか?」
「あんた以外に誰がやんの。ま、話は以上」



れいなは授業に遅れるぞと美貴に外に出され、覚えていないが気付くと教室に戻っていた。
れいなはまだ台風に近付いたばかり、慣れるのには多少の時間と苦労の経験が必要なようだ。
244 名前:ピェロ 投稿日:2007/08/12(日) 03:17
【fin?】
245 名前:ピェロ 投稿日:2007/08/12(日) 03:19
>234様
アメリカですか、憧れます(>o<)ノ゙
もし出会ったら、二人の首元に注目してみて下さい。
もしかしたら、歯車が光っているかもしれませんょ♪♪


>235様
ご期待に応えられず、申し訳ありませんでした(__;)
妄想の種はあったのですが、どうしても芽が出ず↓↓↓
どうか今回もお付き合い、お願いします。


今回の話ですが、もしかするともう少し続きを書いてしまう可能性が高いため【fin?】とさせていただきました(x_x;)
ご意見やご感想などを頂けると、嬉しい限りです。
246 名前:名無しです 投稿日:2007/08/13(月) 00:57
是非是非続きが読みたいです!!
とくにガキさんの巻き込まれとか…w

苦労人を見るのが大好きなんです!!w
247 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/13(月) 11:49
ピェロ様 レスありがとうございます。
もし遇えたら見てみますね
新作も意外なカプで面白そうです頑張って!
248 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/13(月) 12:36
私は一番初めに書かれていた物語の続きが読みたいのですが、書かれないのでしょうか?
249 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:10
「カメ、先に戻ってて。トイレ行って来る」
「絵里も一緒に行くぅー」
「いいけど、数学の宿題やったの?次だよ?」
「あ゙っ!!……えへへへ、ガキさぁん♪♪」
「はいはい。机の中にあるから、どうぞ?」
「ありがと!!助かる♪♪」


四時間の移動教室の帰り、案の定宿題をやっていなかった友人を先に戻らせて一人で途中のトイレに入った。
換気のおかげで通路は涼しいけど個室に入ってしまえば話は別。
四枚の壁と少しのすき間をつくる天井と床のせいで、気持ちの悪い空気が充満してる。
250 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:14
用を足し終えて暑過ぎる個室から出ようと鍵に手を掛けた時、外から三人の声が聞こえて来た。


「次って何だっけ?」
「大柴だよ」
「マジで!?寝れないじゃん……」


名前は知らない同学年の新体操部仲良し三人組。
彼女達の言う"大柴"とは英語教師の事で、彼の授業で居眠りをしてしまうと次回からもしつこく当てられ続ける……と一歳年上の幼なじみ達から報告を受けている。


「そうだ、聞いてよ♪♪昨日美貴先生と一緒に帰ったんだぁ」
「「嘘ぉー!!」」
「ほ、ん、と♪♪」


突然聞こえた愛しい人の名前に驚いて、開きかけた扉を再び閉めてしまった。
暑いのに何をしてるんだろ……。
251 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:16
きっと恋人の名前を出したのは背が高くて大人っぽいあの子だろう。
話し掛ける度に必要以上に接近している子、本気で恋してることなど周りは簡単に気付けるのに……。
でも本人は懐かれているとしか思っていないから、尚更私の心拍数が上げる。


「また一歩前進じゃん!!」
「いいなぁ」
「昨日は先生達で飲み会の予定だったんだけど、なんかキャンセルになったんだってぇ〜。だから少しデートしちゃった♪♪」


心臓がゴトリと横にズレたような気がした。
暑い空気も感じない。
確かに昨日は飲み会だと言っていたけど、中止になったとは言っていなかった。
252 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:18
まさか、ね。
でも『帰って来たよ』とメールが来たのはいつもより早い時間だった。
信じてない訳じゃない、だけど不安が消える事はない。


またあの子の声が聞こえて来て、離れていた思考が戻って来る。


「美貴先生に会ったら首元に注目!!これと同じばんそうこうが張ってあるから♪♪」
「……もしかして、キスマーク?」「えぇ!?」
「ピンポーン♪♪薄いからすぐ消えちゃうだろうけどね」


時間が止まる。
だけど今回も人より優位になりたいだけの作り話だって自分に言い聞かす。
これまでに流れた噂だって事実は微々たるものだったじゃないか……。
253 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:21
ーー大丈夫、大丈夫。落ち着いて……。


幼い頃から怖い夢を見たときや不安なときにいつも母が言うおまじないを胸に手を当てて小さな声で呟く。
目を閉じ、自分にしか聞こえないような声で。
気付くと外から声は消えていた。


「ふーぅ」


ドアを開けて通路に出ると皮膚の感覚が戻って来た。
手を洗って、鏡を見ながら髪を整える。
湿気のせいでせっかく朝に巻いた髪が緩んでいるが、部活もあるのでわざわざ巻き直したりはしない。


私は演劇部に所属してる。
何回も耳にした高橋愛の"一生のお願い"で何となく演劇部に入部したものの、正直ここまで熱中するとは思っていなかった。
254 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:25
髪をいじるのをやめてもう一度手を濡らす。
あいにくハンカチは持っていない。
かと言って今や普通となった、膝上まで切ったスカートや指定外の開襟シャツで拭くのはいい気持ちがしない。
カッコ悪いし、冷たいし。


「トイレットペーパーでいっか」


鏡の横に積まれたトイレットペーパーで手を拭き、水を吸ってボロボロになったのを丸めて後ろにある小さな青いゴミ箱にシュートした。
見事にゴール。
昔バスケをしていた時に感じたシュートが決まる気持ち良さを思い出し、落ちた気分が元通りに回復しかけた。


なのにあるモノがゴミ箱の近くに落ちていた。
心に、深く鋭い痛み。
255 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:28
花のイラストが印刷された輪の形で床に落ちているばんそうこ、そしてそれの包み。
誰かが指に巻いていたものを新しく変えたみたい。
あの子の声が帰って来る。
その誰かがあの子だという証拠はない、そう言い聞かせるようにしながら教室へ戻った。


「ガキさん、遅いよう!!」
「…ちょっと先生に手伝わされちゃってさ」
「相変わらず運がないね♪♪」
「コラァーー!!今度から宿題見せてあげないぞ」
「えぇ!?それ困るぅ」


チャイムが鳴ったので自分の席に座る。
ど真ん中、カメの隣。
教師の目の前で最悪だと思ったこの席も慣れてしまえば何ともない。
適応能力は高い方らしい。
256 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:30
置き勉主義の隣と違って余裕のある机から教科書を取り出しながら思う。
本当は先生に会ってもいないし、手伝ってもいない。
嘘をつく必要はなかったけどスルリとわずか数秒で出た嘘に、演技が上手くなったと喜ぶべきか……自然に嘘が口から出る人間になったと悲しむべきか……。
どうやら先程のせいで少々後ろ向きになっているらしく、後者を選んで軽く苦笑した。


「なんでニヤけてるの?サブいよ」
「ニヤくてないし、もっとサブいカメには言われたくなーい!!それにしても先生遅いね」
「ポッチ、また忘れてたりしてぇ♪」
「だったらラッキーだねぇ」
257 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:33
"ポッチ"とは太った数学教師の事で、生徒の間では名前よりもあだ名で浸透している。
そのため「〇〇先生に用があって来ました」と言えずに職員室の前をウロウロしている人達をよく目にするし、名前を聞いても顔が出て来ない。


教師のいない2-F。
ここでは各自好き勝手な事をしている。
しかしここは女子高、女の子の頭は勉強以外でもよく働くもんだ。
もし教師が忘れていたとしても呼びに行かなければ後々面倒。
しかしまだ呼びには行かない、せめて授業が半分程度潰れてから。
それまでは他のクラスにいる教師が見に来られては困るので、誰かが提案した訳ではないのに自然に声の音量を落とす。
258 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:36
ガラガラ
「ごめん、内山先生早退したの忘れてた。今日は自習ね」


授業開始から十五分程過ぎてやっと現れたのはポッチではなく、藤本先生だった。
ポッチこと内山先生は早退したらしい。
周りから喜びの声が聞こえる。
自習だからではない、違う理由。


「宿題やった意味なーい!!」


実際には自分で宿題をした訳ではないカメが隣で膨れている。
普段なら少々落ちていても「あんたはやってなかったでしょーが!!」なんてツッコんでいただろうが、体が金縛りのように固まって動けなかった。
原因は……目の前の人。
首に見覚えのあるばんそうこが張られていた。


嫌な予感はよく当たるものだ……。
259 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:39
右から左へプリントを配りに移動してく。
いつもならたまに目が合うことが嬉しくてずっと追ってしまうのに、プリントを後ろに回した後すぐに問題を解くふりをして視野の中から消してしまった。


「この時間終わったら回収だから、真面目にするように。わからなかったら教科書を見て調べることー」


目の前の教卓に座る気配がする。
目で見ていなくても、見えてしまう姿。


ーー昨日、本当は誰といたんたですか?


ーーあなたは、誰のものですか?


プリントの文字が揺れる。
動けない、瞬きすら出来ない。
……泣きたくない、泣いちゃいけない。
260 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:41
なのに考えは加速する。
秘密がバレてしまうのが怖くてずっと外でのデートを拒否してたから飽きちゃったのかな……。


だって責任を取らせられるのはきっと"先生"、そしたら離れて行ってしまうかもしれない。
考える演技をしながらそっと目元に手を置いた。
雫が指を流れてく。
髪を伸ばしていてよかった、きっと周りには見えていないはず。
でも一度クリアになってもすぐに歪んでしまうのは止められない。
隣で空気が動いた気がした。


「せんせー」
「ん、何?」
「新垣さんが具合悪いみたいなんでぇ、保健室連れて行っていいですかぁ?」
「えっ!?そうなの?」
261 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:44
どうやら近距離ではごまかせなかったらしい。
でも限界が近いのは自分でも感じていたので、問い掛けに声は出さずに頷いた。
零れないようにゆっくり。


「……じゃあ、亀井さんお願いね」
「はぁい。ガキさん、行こ」


右手から筆記用具を抜かれてうつむいたまま教室の外へと引っ張られて行く。
教室から出ても無言で、ただグイグイ引っ張られる。
歩く振動で涙が廊下に落ちた。


ガラガラ
「安倍せんせー、ガキさんお願いしまぁす」
「あれ、珍しいねぇ。はい、亀ちゃんは戻るべ」
「はぁーい」


ドアが閉まる。
人前で泣くのは恥ずかしい、でももう抑えられなかった。
262 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:46
「んっ…く、ぅんっ」
「よしよーし」


言葉通り泣き崩れてしまった。
頭の上には温かい手、"なっち"の愛称を持つ一番好きな先生の優しい手。
もちろん違う気持ちだけど。


「…っ、ぃゃだょぉ…ヒック」
「ガキさん、とりあえず座るべ。なんかなっちがイジメてるみたいっしょ!?」
「ヒック、っくぅ……、んっ」


普通に息も吸い込めない。
こんなに泣くのは幼稚園以来だろうか……。


安倍先生に支えられながら近くのソファーに座った。
ぼやける視界でも把握出来た、離れてく安倍先生の白衣があの人を思い出させる。
狂おしいくらい好き…言葉の意味を理解した。
263 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:49
「はい、なっち特製ティー・夏バージョン♪♪」


戻って来た先生が白いマグカップに入った紅茶を手の中に入れてくれた。
一口飲むと、冷たさが体の真ん中を通ってゆく感覚に呼吸は落ち着いた。


「おいしいっしょ?」
「……はぃ」
「ねぇ、ガキさん」


頬に優しい手が触れた。
顔を上げると、座っているので高い位置にある先生の視線にぶつかる。
柔らかいんだけど、心の奥まで見られるくらい強い光。
しばらくするとフワリと微笑んだ。


「我慢はよくないべ。何があったかは知らないけど、わがままも嬉しいもんだよ?」
「えっ……」
「だって、そんな目してる」
264 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 01:51
"わがまま"が嬉しい?
そんなはずない、だってあの人は…私よりずっと大人で…教師。
困らせたくない、迷惑かけたくない。
……だけど離れないでほしい、私だけを好きでいてほしい。


マグカップの中で波紋がひろがった。
自覚する独占欲……。


「相手の人は、そんなに自分の事しか考えない人?」
「いやっ!!そういう訳じゃ…」
「好きな人に困らせられるのは迷惑と違うっしょ?」


そうとだけ言って、自分のマグカップを流しに置きに離れて行った。


ーー伝えてもいいの、かな?


胸のポケットに入れていた携帯が震える。
授業中、送り主は…『藤本美貴』。
265 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:02
『だいじょうぶ』
全て平仮名で疑問文にすらなっていないメール。
無理して授業中に送らなくてもいいのに……、あと七分ぐらいで授業は終わるんだから。
嬉しくないはずない。



ーー正直になっていいですか?


ーーちゃんと受け止めてくれますか?


顔を上げると安倍先生が流しの所に立っていた。
逆光で表情はわからないけど、柔らかく笑ってる気がした。


「……話してみます」
「ん♪♪」
「あ、紅茶ありがとうございました」
「どーいたしまして」


近づいてマグカップを手渡す。
ほら、やっぱりあの笑顔。
保健室を出てゆっくり歩きながらメールを作成する。
266 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:05
送る相手はまず『高橋愛』、演劇部部長。
『ゴメン。今日の部活休ませて(>人<)』


次に送るのは『亀井絵里』、隣の席の親友。
『掃除サボらせて(>人<)』


最後は『藤本美貴』、一番好きな人。
『うん、大丈夫。でも家まで送ってほしいな…?』


送信した瞬間にチャイムが鳴って、反対の校舎で皆が動き出す。
生物室に行くにはここを絶対通るから待ち伏せしてよう。
"なっち特製ティー・夏バージョン"のおかげかわからないけど、親友の言葉を借りて言うと俄然強めって感じ。


近くヒール音、響くリズム……胸の高鳴りが教えてくれる。
周りに他の音はない。
267 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:09
廊下の角から現れた人は携帯をピコピコしながら白衣を羽ばたかせて歩いて来た。
携帯に集中してるからか、いつもより歩くスピードがゆっくり。
黙っていたら気付かなそうだから声をかける。


「……ミキティ?」
「ぇっ…。ちょ、ちょっと大丈夫?」
「うん」
「……目、赤くない?」
「だって泣いたもん」「なんで?」


ーーあなたに泣かされたんです。


そんな事は言わないで部活で鍛えた演技で意地悪そうに笑ってみる。
部長には敵わないけどね。


「藤本先生、家まで送っていただけますか?」
「ぇ、ぁ、うん」
「ホームルーム終わったら車の前にいますね」
268 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:12
藤本先生を残して自分のクラスに戻る。
ビックリしてた。
そういえば、車に乗せてなんて言ったのは初めて。
クラスに入るとカメがニヤケながら近づいて来る。


「ガキさんに見せたかったなぁ。藤本先生、すっごいイライラしちゃって♪♪」


このこのと肘で突かれる。
私も昭和っぽいとか言われるけど、この子も負けてないと思う。


ホームルームが終わるまでただボーっとしていた。
何を、どんな言葉で伝えようか。
目を見ながらは到底出来そうにないけれど、ちゃんと否定してほしい。
私が納得するまでずっと証明してほしい。
269 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:15
見慣れたシルバーの車、バックミラーにぶら下がるぬいぐるみ。
見渡せば走ってる陸上部や泳いでる水泳部、耳をすませばボールの音や吹奏楽部の演奏や帰ってゆく声。
すぐ近くの車から鍵が開く音が聞こえて来て振り返ると、白衣から普通の服に着替えたあの人。
今日は朝会がないからスーツじゃないんだね。


やっぱり綺麗な人、端麗過ぎて冷たく見えるくらい。
三秒ぐらい目が合ったくらいでドキドキしてる。
ごまかしたくて無言で車の助手席に乗り込んで、別に用もない携帯に集中するフリをする。


今日は、今日だけは、おもいっきり困らせてみたい…。
270 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:19
教えなくても進む道、エンジン音しか聞こえない無言の車、隣に感じる困惑の気配。
エンジン音が止まった。


「…着いたよ?」
「……ちょっと待っててね」


カバンを置いたまま降りて、家の駐車場のシャッターを上げる。
なかなか動かない車にガソリンスタンドの誘導の真似をしてみた。
ガラスの向こうで笑ってるけど、しっかり誘導に従って駐車場に入ったのを確認してシャッターを下げた。


「お母さんは?」
「仕事だから八時まで帰って来ないよ」
「ねぇ、なんかあったの?」
「ちょっと、ね……」


カバンを受け取って、その手を引っ張ってリビングまで連れて行く。
271 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:22
リビングじゃなくて私の部屋でもよかったんだけど、ミキティの部屋に比べるとあんまり自慢がないから。
でもカメよりは絶対片付いてる自慢はある、あの子の部屋は……道がないもん。
同い年なのに妹って感じ。


久しぶりに来たからか、ミキティは立ったまま。
目を見ながらは無理だから、後ろから抱き着く。


「うわっ!!……どうしたの?今日、変」
「昨日、何してたの?」
「メールしたじゃん。飲みか
「飲み会は中止になったんでしょ?」
「えっ」
「……首のばんそうこは何ですか?」
「はぁ?」
「…浮気、しました?」
「はぁぁ!?何言ってんの!!」
272 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:25
「うわぁあ!!」
「ちょっと、ガキさん!!」


突然の大声にビックリして、背中から耳を離したら長い腕でミキティの前に引っ張られた。
ちょっと持たれてる腕が痛い。


「何の勘違いか知らないけど、浮気なんてしてない!!」
「じゃあ、首のは?」「蚊だし!!」


ばんそうこを剥がすと、明らかに虫に刺されたような赤い痕。
しかも×の模様まである。


「もしかして、これで泣いた訳?」
「………////」
「図星?」


愛ちゃんに負けないくらいの意地悪な顔。


「じゃあ、昨日は?飲み会が中止になったのに少し遅かったぁ!!」
「あー、コレ作ってて…さ」
273 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:29
ポケットの中から小さな包みを出して、差し出された。
意味もわからず開けてみると中には鍵が入ってた。


「ミキティ家の鍵?変えたの?」
「それ、生物準備室の」
「はぁい!?」
「……そこなら普通に会えるかなぁ、って」


鼻の頭をかきながら目線を泳がしてる。
少し耳が赤い。
嬉しい、すっごい嬉しい。
だけど。


「……生徒に鍵なんてあげていいの?」
「うーん。マズイんじゃない!?」
「うえぇ!!ダメじゃん!!」
「ま、バレたらガキさんも道連れね」
「あ、はい」


道連れだって。
あなたが連れてってくれるならどこでもいい。
ずっと側にいれるなら。
274 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:32
鍵を手で優しく包んでミキティに近づいたら、強く抱きしめてくれた。
照れがあるのか少し苦しいけど、それが嬉しい。
もっと味わいたいな、なんて思ってたら……


「うぇえー!!いきなり!?」
「ガキさんから誘って来たんじゃん」
「誘ってなぁーい!!」


下にはソファー、上にはミキティ。
そうです、押し倒されてます。
しかも毎日家族が座るソファーで。


「んぅ、はぁっ。ちょ、ちょっと待っ」
「嫌」
「汗かいて、ひゃ、だってばぁ」
「大丈夫」
「ひゃぁっ」


首元にあるミキティの頭をバシバシ叩く。
そっちがよくても、こっちがよくない!!
275 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:35
「痛っ」
「お風呂行かせて……すぐだからぁ///」
「まぁ、確かに制服だといけない事してる感じ」
「……実際にいけない事じゃん」


初めて会った時ですら、教師と生徒だったし。
家庭教師だけど……。


「んじゃ美貴も入る」
「……明日、体育あるんだけど」
「サボれば?」


この人は本当に教員免許を持っているのだろうか。
やっぱり見た目通り、学生時代は問題児だったのかな?


「デートを拒んだガキさんが悪い。結構傷ついたんだけど」
「だってぇー」


鼻唄なんて歌ってご機嫌な恋人に引っ張られてお風呂場へ。
困った顔のつもりが、鏡の自分は笑顔。
だって幸せだもん。
276 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:38
やっぱり次の日の体育はサボることになりました。
理由は全身(特に腰付近に)感じるだるさと、制服でも隠せるか心配になるくらいの場所に付けられたたくさんの赤い痕。
付けた本人いわく、「まだプールの授業あるの?夏休みまでだと思ってた」だって。
そのせいで絶対に知られたくない二人に見つかりました。


「もっと調子悪くなってどぉするのー?ガキさんのえっちvv」
「アヒャー♪♪あーしらが部活しとる時に何をしてたんよ、何をww」


二人揃ってニヤニヤする、恋人の従姉妹。


「う、うるさぁーい!!」
「「ほぉー」」
「っっ////」


ミキティのばかぁ!!!
277 名前:台風一家!?〜R.N〜 投稿日:2007/08/20(月) 08:40




【fin?】




278 名前:ピェロ 投稿日:2007/08/20(月) 08:43
>246様
書いてしまいました(--;)
ですが……、それぞれのキャラクターを壊していないか心配な所であります↓↓

今回は苦労人出ませんでした。
少々(?)お待ち下さい(__)


>247様
ピェロなりに頑張ってみました。。。
……どうでしょうか(>_<;)

ピェロ的にカプはなんでも大好きなので、妄想するのだけは困りませんのでww


>248様
『読みたい』のお言葉に「書きます!!」と叫びたいところですが……、バトルシーンが納得出来ず断念した話ですので。。。
本当に申し訳ありません↓↓↓


では次回に。
またお付き合いしてもらえると、嬉しいです。
279 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/21(火) 12:29
ピエロ様
更新お疲れ様です。
ガキミキにニヤニヤしますたw 
280 名前:名無しです 投稿日:2007/08/22(水) 00:31
おぉ…っ!!
んなんと萌えるんでしょうかっ!!
学校でニヤニヤしたんですけどw

苦労人ストーリー、待ってますw

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