短編集−君が好き−

1 名前: 投稿日:2007/06/10(日) 00:38
自分が読みたいCPを自己供給な短編集。
読みたい物がないなら自分で書けばいいじゃない精神です。
基本「もも×みや」気分でその他(ベリキュー)。
エロもあり。
ベリキュー系・エロどーんとこいな方、暇つぶしにどうぞ。

2 名前: 投稿日:2007/06/10(日) 00:41



   『 距 離 』



3 名前: 投稿日:2007/06/10(日) 00:45
あー、いきなりミスしました。
慌て者発動。……許してね。

タイトルは



『 告 白 』



エロあり。
4 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 00:46
ももは悪くない。
悪いのは絶対みーやんだ。

桃子は自分に言い聞かせる。
そう思わなければこんなことは出来なかった。


「……みーやんが悪いんだからね」


雅へ告げるためというよりは自分を正当化するための言葉を小さく呟くと、桃子は雅の唇を自分の唇で塞いだ。
5 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 00:48
****************************************


いつから雅が好きだったのか桃子ははっきりと覚えていない。
気がついたら雅に恋をしていた。
そして気がついてしまったその日から、桃子はその想いになるべく触れないように生活をしてきた。
それには理由があった。
桃子がなるべく見ないようにしていても、お互いに近い場所で活動をしているせいでどうしても目に入ってしまう雅の姿。
視界から外そうとしてもどうしても自分の視界へと入ってくる雅の視線を辿ると、そこにはいつも梨沙子がいた。


6 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 00:49
かないっこない。


雅はいつも梨沙子と一緒で梨沙子もそれを望んでいて、自分の入る隙間なんてこれっぽっちも見つからない。

だから桃子は自分の想いに触れないように、これ以上想いが大きくならないように生活してきたはずだった。


7 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 00:50
好きになったってどうしようもない。
叶わぬ恋なんて歌の中だけでいい。


どうせ恋をするなら幸せになりたかった。だから、叶わない想いのことなど早く忘れて幸せな恋をする予定だった。

けれど桃子の予定通りに事が進むわけもなく、予定通りどころか時がたてば立つ程に雅が好きになっていくだけ。
そして時間と共に増える雅との幸せな時間と不幸せな時間。

8 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 00:52
このままじゃおかしくなる。
どうしたらいいんだろう。
……そうか、こんな想い捨ててしまえばいいんだ。


桃子が考えた想いを捨てる方法
それは一番簡単でわかりやすい方法。


雅を呼び出してこの想いを告げて断られる。
当たって砕けてそれで全て終わり。

9 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 00:53
告白。


たった一つの言葉を口に出すだけでいい誰にでも出来るシンプルな方法。
雅に『好き』だと告げて振ってもらえばそれで済む。
失恋なんて趣味じゃないけれど、もともと終わりが見えていた恋だ。
雅が自分を好きではないことなんてはじめから知っている。
断られるとわかっているのだからショックは少ないはずだし、きっとこの想いを断ち切ることが出来るだろう。

10 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 00:54
都合の良いことに今日泊まっているホテルは一人部屋だ。
自分の部屋に雅を呼び出して、告白すればそれでこの苦しみから解放される。
桃子は少し迷ってから携帯で雅を自分の部屋に呼び出した。

やっぱりやめておこうかな。
なんて考える時間もなく、すぐに雅は桃子の部屋にやってきた。


告白なんて簡単だ。
叶わぬ恋をしているよりは。




11 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 00:55
****************************************


こんなことするはずじゃなかった。
こんなことになるはずじゃなかった。

強引にキスをした。
その時間が長いのか短いのか。
桃子にはわからなかった。


「……意味わかんないからっ」

12 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 00:56
桃子の唇から解放された雅は、本当にわけがわからないといった様子で桃子を睨み付けながらそう言った。

何故こんなことになってしまったのか。
告白をするだけだったはずなのに。
気がついた時には、ベッドに腰掛けていたはずの雅を押し倒しその上に馬乗りになるようにして桃子は雅を見下ろしていた。


13 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 00:58
「意味わかんなくてもいい。ももは悪くない。……悪いのはみーやんだ」
「誰が見たって悪いのは……」


雅の言葉をキスで遮る。
桃子に塞がれた唇を解放しようと雅は頭を振るが、桃子の手がそれを許さない。



そうだ。
悪いのはみーやんなんだ。
部屋に入るなり、梨沙子の話ばかりして。
話があるって呼び出したはずのももを無視して、梨沙子のことばかり。


14 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 00:59
『とりあえず先にうちの話聞いてよ』


呼び出した本人目の前にして、先に自分の話を聞けとかみーやんは色々間違ってる。
そりゃ、ももだって人の話無視して自分のことばかり話しちゃうことがあるけど。
でもよりにもよって今それをしなくたって。
そしてその話の内容が梨沙子の話だなんて。
みーやんは色々間違ってる。


嬉しそうに梨沙子の話をする雅。
そんな姿、見たくはなかった。
だから、告白して終わりにするはずがこんなことになってしまったのだ、と桃子は思う。


15 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 01:00
自分勝手。


そんなことはわかっている。
けれど、我慢することが出来なかった。
ここは桃子の部屋で、話があると呼び出したのも桃子なのだ。

この部屋に居るときぐらい自分を見て欲しい。

そんな自分の衝動を桃子は抑えることが出来なかった。


結果がこの現状だ。


16 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 01:01
桃子は雅の言葉を飲み込むように無理矢理キスで唇を塞ぎ、その身体を組み敷いている。
雅が言うようにどちらが悪いかなんて一目瞭然だった。

けれど、もう引き返すことは出来ない。

桃子は思い切って唇を開き、その先にある雅の唇を舌先で軽く舐めてみる。
そしてそのまま雅の口の中へ舌を入れてみようとするがうまくいかない。

自分がはじめてするキスだからなのか。
雅の抵抗が激しいからなのか。
……いや、多分両方だ。


17 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/10(日) 01:03
桃子はそれ以上のキスを諦めて唇を離し、軽くため息をついた。
そんな桃子の下で雅が低い声で不満の声をあげる。


「ももの言ってた話ってコレ?……頭おかしいんじゃないのっ!!」
「……ああ、呼び出したのは他に用があったからなんだけど。なんでだろうね、こんなことになっちゃった」
「他人事みたいに言ってるけど、自分のしてることわかってんの?」


初めは不満げな声を出していた雅だったが、桃子の淡々とした返事につられ呆れたような口調に変わっていく。


18 名前: 投稿日:2007/06/10(日) 01:05

とりあえず今日はココまでです。
続きは次回まとめて書きます。


19 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/10(日) 01:57
ここはキッズ板ではないので「ほいく」のほうに移動されたほうがいいんじゃないですか?
どうやら出すメンバーをキッズに限定してるみたいですし
板移動の申請をしてほいく板で改めて書かれる事をオススメします
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/10(日) 03:23
お、いい組み合わせですねw
ベリキューどんとこいなんで、楽しみに待ってます

>>19
自治スレ読みましょう
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/imp/1048246085/72
21 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:25
「うん、わかってやってるからいいの」
「こんなことしていいわけないでしょーがっ。……どいてよ」


現状に似合わない口調で会話する桃子に呆れつつも、雅は自分の上に馬乗りになっている桃子を排除したいという意志を示した。
けれど、桃子には雅の要求通りに動くつもりはなかった。

桃子は雅の両手首を掴みベッドへと押しつける。
そして雅の首筋にキスを落とす。

22 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:27
雅の髪の匂いがする。
その香りに桃子の罪悪感がくすぐられるが、それを無視して何度も首筋へキスをした。
予想外の行動に驚いた雅が身体を震わせて抵抗をするが、桃子はそれを封じ込めて新たな行動を起こす。
桃子は雅の右手首を掴んでいた手を離すとその手を雅の腹部へと移動させ、その手をそのまま雅のTシャツの中へと進入させると直接肌に触れた。
そのまま直に触れた腹のあたりを撫でていると、雅の自由になった右手が桃子の行動を阻む。


23 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:31
「やっ!……ももっ。……ちょっと!やめてよ!!」


低い不満そうな声でも呆れた声でもなく、いつもより少し高い声をあげながら雅が抵抗を続ける。
その声に雅の首筋から顔を上げ、桃子は答えた。


「……やめない」
「……どういうつもり?本当に意味わかんないから」


動こうとする桃子の手を押さえつけたまま雅が桃子に問いかけた。
その質問に答えることなく、桃子が雅に問い返す。


「意味?教えてほしい?」


桃子の下でコクリと雅がうなずいた。
24 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:32
「ねぇ、みーやん。知ってた?」
「何を?」
「ももね、みーやんがずっと好きだったんだよ」


自分でも驚く程の笑顔。
ばかみたいににっこりと笑いながら桃子は雅に告げた。


「そんなの嘘でしょ?好きな人にこんなことするわけないじゃん」


告白された人間が出すにしては不機嫌そうな声で雅が答えた。
しかし、桃子は気にせず笑顔を保ったまま雅の目を見つめる。


「ほんとだよ?……だからね、ももは悪くないの」


25 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:33
雅の返事を待たず桃子は素肌に触れている手を動かそうとするが、雅が思ったより強い力で桃子の手を握って離さないので動かすことが出来ない。
これ以上の努力は意味がないと悟った桃子はその手を動かすことを諦め、雅の耳たぶを軽く噛んでみる。


「んっ」


桃子の予想以上の反応。
今まで聞いたこともない雅の声に、行動を起こした桃子の方が驚く。


「みーやん、耳感じるの?」


耳元でそっと囁いてみると、雅が慌てたような声で反論してくる。


26 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:34
「ちがっ!」
「ほんとに?」


そう問いかけてから桃子は、雅の耳たぶをさっきよりも少しだけ強く噛む。そしてそのまま雅の耳に舌先を這わせる。


「ももっ。ちょ、や…だ。……んっっ」


桃子が聞いたことのない雅の湿った声は先程よりも確実に大きい。


……この声を梨沙子は聞いたことがあるのだろうか?


そんなことを目の前にいる雅に聞けるわけもなく、桃子は別の質問を口にした。


27 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:36

「違わないじゃん。もっとしてあげようか?」
「……やだっ…て…いって」
「ふーん」


桃子は気のない返事を雅に返すと、また耳に舌を這わせ耳たぶを噛む行為を再開する。


「や…だっ……あっ。……んんっっ。…もも、やだ」


桃子の動きにあわせるように雅の口から声が漏れる。


「みーやん。そんな声出してたら嫌そうに見えないよ」


28 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:37
そう言うと桃子は、Tシャツの中に潜り込ませている右手を動かし始める。
耳へと意識がいっているせいか、桃子の手を押さえつけていた雅の手に先程までの力はなく、Tシャツの中を自由に動かすことが出来た。
それまでずっと置いていた腹から手を動かしてみる。
触れるか触れないか。
微妙なタッチで何度も腹を撫で上げる。
桃子はそのたびに震える雅の身体を楽しみながら、お世辞にも大きいとは言えない胸まで手を移動させた。
その間に唇も耳から首筋、首筋から鎖骨へと移動させながら雅の身体にキスを降らせていく。


29 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:38
「んっ。……はぁっ」


桃子の先程の言葉のせいなのか、雅は唇を噛んで声を殺そうとするが完全に声を封じ込めることは出来ず、どうしても桃子の動きに反応して吐息のような声が漏れる。
そんな雅の姿に対応するように、桃子の息も少しだけ荒くなる。


「気持ちよかったら声出していいんだよ?」
「よく…なん……かない」


30 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:39
苦しそうな、しかし苦痛とは違う声で雅が答える。
その声に安心したように桃子は雅の胸の上に置いた手を動かそうとするが、胸を覆う物の存在に気がつく。
雅の小さな胸は下着で覆われていて、直接触ることが出来ない。
桃子は雅の肩を抱き背中を浮かせるとホックを片手で器用に外し、直接その手を胸の上へ置いた。
そして胸を揉むように桃子が手を動かした瞬間、雅が今までとはあきらかに違う大きな声を出してその手の動きを止めようとした。


「やだっ!……もも、もうやめてよ」


31 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:40
桃子は雅の顔を見なくても彼女が今どんな表情をしているか想像がついた。

今、雅は絶対に悲しそうな顔をしている。

雅の声が鼻にかかったような涙声になっていることが桃子にもわかった。


「もものばかっ。やめないと怒るよ!」


桃子は顔を上げずに答える。


32 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:40
「……もう怒ってるじゃん」
「怒るに決まってるじゃん。こんなことされて怒らないとかないでしょ!好きとか言えば、こういうことして許されるとか思ってるわけ?」
「別に許してくれなくていいから。……何度も言ってるけど、悪いのはみーやんなんだよ?」
「だから、それ意味わからないからっ!悪いのはももでしょ」



33 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:41
悪いのはもも。
でももっと悪いのはみーやん。
ももをこんな気持ちにさせて、ももにこんなひどいことさせて。
なのにもっとみーやんの声が聞きたいって思わせて。
でも、みーやんがいつも見ているのは梨沙子で。
ももじゃない。
ももはみーやんが好きだけど、みーやんはももを好きじゃない。
みーやんはももを見てくれない。
きっとこの先も、ももだけのみーやんになんかなってくれない。


……本当に悪いのが誰かなんて自分でもよくわかってる。


34 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:42
今、謝ればもしかしたら雅が許してくれるかもしれない、そんな考えが浮かぶがそれを頭から消し去る。
雅の鎖骨の上にキスを一回。
そして桃子は小さく呟いた。


「みーやんにはももの気持ち、きっとわからない」


もう一度鎖骨の上にキスをする。
今度はさっきよりも強く跡が残るようなキスをしてから、桃子は雅の身体から顔を上げた。


「……いいよ。もう帰って」


35 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:43
桃子は自分でも驚く程冷静にその言葉を雅に告げることが出来た。
雅の身体の上から降り、桃子は雅の乱れた衣服を直す。
泣く寸前、それでいて訳がわからず困ったような顔をしている雅に桃子は手を貸して身体を起こしてやる。


「今日のこと、謝らないから」


桃子はそう言ってから、雅の背中を扉の方へと押す。
雅はそのまま桃子の方を振り返らずに扉に手をかけるが、なかなか外へと出て行こうとはしなかった。
そんな雅の背中に桃子が声をかける。


36 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:44
「みーやん、好きだよ」
「……そんな言葉で今日のことがなかったことになったりしないから」


雅の乾いた声とともに扉がキィと鳴きながら閉まった。


先程まで自分以外の誰かがいたとは思えない。
寒い季節ではないのに、桃子には部屋の中が凍えるような温度に感じられた。




37 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:44
最低で最悪。
きっと嫌われた。
きっと傷つけた。

……いや、これでいいんだ。
告白して振られることが目的だったわけで。
嫌われることも傷つけることも目的ではなかったけれど、結果は似たようなものだ。
振られることとそう変わらない。


38 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:45
あとは忘れるだけだ。

この想いを。

柔らかな唇の感触を。

くらくらするようなあの声を。


桃子はさっきまで雅を押し倒していたベッドへと倒れ込む。
そこには雅の体温と匂いが残っていて、なんだか嬉しくなって、そんな自分が悲しくて桃子は声を出さずに泣いた。




39 名前:『 告 白 』 投稿日:2007/06/11(月) 00:46



『 告 白 』



- END -


40 名前: 投稿日:2007/06/11(月) 00:48

『告白』終了!

この先もこんな感じで短編がだらだらとアップされていく予定。
とりあえず次回も「桃×雅」の予定です。
41 名前: 投稿日:2007/06/11(月) 00:56

>>19 さん
スレ立て前に【小説板自治スレッド】に目を通したところ、ルール上問題ないようなのでこちらにスレを立てました。
ルール等変更になって問題が出てくるようでしたらそのルールに対応したいと思いますが、現在は問題ないようなのでこのままこちらで書かせてもらう予定です。


>>20 さん
フォローありがとうございます。
ベリキューどんとこいな人がいてよかったです♪
増えるといいな、ベリキューファン。
42 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/11(月) 19:57
ドキドキしました
43 名前: 投稿日:2007/06/13(水) 01:37



『 告 白 』 続編



44 名前: 投稿日:2007/06/13(水) 01:37




『 距 離 』




45 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/13(水) 01:41
桃子が雅を呼び出したあの日から、雅はあからさまに桃子を避けていた。
もちろん桃子の方からも積極的に避けているわけではないが、雅との接触をなるべく持たないようにしていたせいもある。
もともと桃子と雅の距離は近い方ではなかったが、そのせいで今の2人は以前よりも遠く離れた距離にいた。
必要な会話以外言葉を交わすこともなく、仕事以外で目をあわすこともない。
それでもメンバーに不自然だと思われない程度の距離感を保ってはいたが、今までのように二人きりになることはなかった。
そして、桃子と雅の距離が離れた分だけ雅と梨沙子の距離が近づいていた。


46 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/13(水) 01:42
当たり前の結果だよね。
あんなことしたんだし、それにこれは自分が望んでいた結果とそう変わらない状況だし。
胸の奥がチクチクと痛いような気がするけれど、きっとこれもすぐに消えてなくなるはず。


そう桃子は思っていた。
雅に拒絶されてしまえば雅を忘れることが出来る。
今すぐには無理でも時間と共にこの想いを消していくことが出来るだろう。

だが、それは甘い考えだった。
あれから3週間。
想いが消えるどころか、胸の奥の痛みは日増しに酷くなり、その痛みによって雅への想いの深さに気がつく。


47 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/13(水) 01:43
仕事上、仕方なくあわせる目。


桃子を見たくて見ているわけではない雅の無表情な瞳。
それさえも桃子を捉えて離さない。


雅から嫌われている事を認識した今でも消えることなく、心の中でくすぶり続ける感情。
桃子にはこの想いをどうすればいいのか見当もつかなかった。


楽屋の壁際に設置された椅子に座り込んで小さくため息をつく。
桃子の視線の端に、梨沙子と楽しそうに話し込む雅の姿が映る。


48 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/13(水) 01:44
「……ふぅ」


思わず小さく息を吐いた。
今さらどうにもなりはしない。
過去を消す事なんて出来やしない。
それにたとえあの過去を消すことが出来たとしても、今、雅の隣に座っている人間が自分になることなどありはしないのだ。

雅と梨沙子を視線の端から視線の中心へと移す。
もちろん雅を見つめるわけにもいかず、桃子は梨沙子を眺める。

49 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/13(水) 01:45
梨沙子のテンションは普段そう高くはない。
だが、雅といるときは他の誰といるときよりもテンションが高く楽しそうだ。
桃子の瞳に映っている梨沙子は、にこにこと雅を見つめ、楽しそうな笑い声をあげて会話を続けていた。

桃子の望んでも叶わない夢がそこにあった。


別に梨沙子が羨ましいわけではない。
そして梨沙子になりたいわけでもない。
ただこの現実が悲しいだけだ。


50 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/13(水) 01:46
今さらどうしようというのだ。
どうにも出来ないのに。
二人を見つめてどうなるというのだ。


この期に及んで未練たらしく二人を見ている自分に呆れて、桃子は梨沙子から視線を外そうとした。
だが、桃子の目に映っていたのは雅の瞳だった。

梨沙子を見ていたはずが、無意識のうちに雅を見つめていた。
外そうとする視線は外れるどころか、雅の瞳を見つめていた。

51 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/13(水) 01:47
桃子は予想以上に往生際の悪い自分に驚く。
そして絡んだ視線に困っている雅に向かって、にっこりと微笑んでから視線を外した。

絡んだ視線がもとに戻った瞬間、雅が立ち上がり桃子の方へと向かってくる。
なんだろう?と桃子が考える間もなく、雅は桃子の横をすり抜け扉に手をかけると廊下へと走り出す。


「ま、そうだよね」


52 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/13(水) 01:48
桃子は誰に言うわけでもなく呟いた。
桃子が座っている壁際。
そこは扉の近くでもあった。
当然、廊下へ出る為には桃子の側を通ることになる。
桃子に話しかける為に雅がきたわけではなく、廊下に出る為に仕方なく桃子の近くに来た。
期待したわけではないが、この事実に楽しい気分になったわけでもない。

そんなことを考えながら、桃子がぼうっと雅が出て行った扉を見つめていると誰かに話しかけられた。


53 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/13(水) 01:50
「もも〜、どうしたの?なんか最近、ぶりぶりアイドルしてない〜」


声に反応して視線を扉から声の主へと移すと、桃子の正面に梨沙子が立っていた。


「んー?そう?」


桃子は椅子に座ったまま梨沙子に、いかにもアイドルという笑顔で微笑みかけてやる。
ついでにマイクを持ったふりをして鼻歌も付けてやると、小指が立っていたらしく梨沙子に小指を折りたたまれた。


54 名前: 投稿日:2007/06/13(水) 01:51


本日の更新終了です。

55 名前: 投稿日:2007/06/13(水) 01:52
>>42 さん
ありがとうございます。
この先もドキドキするような展開に!
……なればいいな。
56 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/13(水) 22:07
次の展開が気になります!
梨沙子が絡んできてどうなるんでしょう?
みやびちゃんの真意も読めないですね
57 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:28
「ぶぅー」


小指を折りたたまれたことについて不満げな声を出してから、桃子は梨沙子を見上げた。
そして疑問の一つを声に出す。


「ねぇ、みーやんどこいったの?」
「トイレだって。走っていく程のことじゃないと思うけど」
「いつも元気だねぇ、みーやんは。……梨沙子もうるさいぐらい元気だけど」
「えー、うるさくなんかないよ。うるさいのはもも!……っていっても、最近静か?」
「ももはいつも静かなの!梨沙子はさっきからうるさーい。みーやんと騒ぎすぎだよぉ」


58 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:30
一番年下の梨沙子は鈍感なようでいて、結構するどいところがある。
いや、基本的にバカで鈍くて何も考えていない。なのに、一番気がついて欲しくない何かを感じ取ることが上手だ。
まぁ、バカといっても本当のバカではなく、また違った意味の愛すべきバカなのだが。


困ったな。


と桃子は思う。
今も梨沙子は桃子が一番気がついて欲しくない感情に近づいていた。
なるべく今までと同じ態度を取るように気をつけていたが、梨沙子はその偽った桃子になんとなく気がついている。


59 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:31
……梨沙子は基本的に鈍感だから、気がついていることに気がついていなさそうだけれど。


うまく丸め込んで雅のもとに行かせればきっと桃子の小さな異変など忘れてしまうはずだ。
そう思って、たわいのない会話を続けるのだが珍しく梨沙子がやけに絡んでくる。


「ももぉ、なんかあるの?」
「梨沙子にあげる食べ物ならなんにもないよ?」
「そうじゃなくって!」


60 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:33

何故、今日の梨沙子はこんなに食い下がってくるのか。

梨沙子が桃子より大きな身体を屈めて、桃子の瞳をのぞき込んでくる。
桃子は困ったように梨沙子の瞳を見つめ返してから、その頭を撫でてやる。


「よしよし」


オマケに子供にかけるような声もつけて頭を撫で続ける。
するとぷぅっと頬を膨らませた梨沙子が言った。


61 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:36
「……もぉ、すぐそうやって子供扱いするっ」
「しょーがないじゃん。梨沙子、子供だもん。で、ももは大人!」


梨沙子は不満げに頬を膨らませたままだが撫でられること自体は嫌な事ではないらしく、黙って桃子に頭を撫でられ続けている。
桃子はあの日の雅への償いにも似た似た気持ちで、梨沙子のさらさらとした髪を梳くように撫で続けた。
雅本人ではなく梨沙子に償うことがおかしいということはわかっている。
しかし、雅の想い人である梨沙子に償うなら雅に償ったも同然、という理論を押し通す。

62 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:37
桃子は気が済むまで梨沙子の頭を撫で続けてから、屈み込んでいる梨沙子の頭の上に自分の顎を乗せた。
すると梨沙子の髪からは雅とはまた違う香りがして、それが桃子の鼻をくすぐる。


「もも、なんかあったの?」


梨沙子が問いかけてくる。
だが、桃子はその問いかけを完全に無視して、違う話題を振った。


「みーやん、トイレにしては遅いねぇ。……梨沙子、見てくれば?」


63 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:39
トイレにしてはなかなか戻ってこない雅の話題にすり替えて梨沙子をかわす。
けれど、桃子の思惑通りに梨沙子は動かない。
仕方なく、なかなか動こうとしない梨沙子に桃子はもう一度声をかけた。


「心配だから様子見てきて、梨沙子」
「うーん、楽屋までの間で迷子になってるとか?……ってそんなわけないし、大丈夫じゃない?」
「ほら、でももしかしたらトイレで倒れてるかもよ?」
「……いちお、見てくる」


桃子が冗談めかして言った言葉に反応して、梨沙子は廊下へと走り出す。
ただ梨沙子には一つ忘れ物があった。
楽屋の扉を閉めるという行為。

64 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:40
桃子はのろのろと立ち上がり、梨沙子が開け放した扉を閉めようとする。
すると、そこには一番会いたくて会いたくない人物が立っていた。
駆けだした梨沙子と入れ違いになるようにして雅が開け放たれた扉の前に立っている。


なんてタイミングが悪いんだろう。
なにも二人きりになるタイミングで帰ってこなくても。


さすがに今、雅と二人きりにはなりたくない。
桃子はどうするべきか少し考えてから楽屋から出て行くことにする。

65 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:42
楽屋と廊下の境界線。
桃子がそれを跨いで廊下へと出ようとした瞬間、無言で差し出されるジュース。
雅の手にもう1本ジュースが握られているから、本来このジュースを貰うべき人物は梨沙子なのだろう。


「これ、もものじゃないでしょ?……梨沙子に買ってきたんじゃないの?」
「…………」


雅が無言のままジュースを桃子の胸に押しつける。
さらに押しつけたついでとばかり、桃子自体もジュースと一緒に雅に押される。
廊下と楽屋の境界線。
雅はそれを越えて楽屋側へとやってくる。当然、雅に押されている桃子も楽屋へと一緒に押し戻される。


66 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:43
パタン。


無機質な音を立てて楽屋の扉が閉まる。
桃子は仕方なく雅から押しつけられたジュースを受け取ると、オレンジと書かれた缶のプルタブを開けた。


「梨沙子、みーやんを探しに行ったよ。追いかければ?」
「すぐ戻ってくるでしょ」


桃子と雅は向き合ったままお互いを見ることなく言葉を交わすが、その言葉はすぐに途切れてしまう。

67 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:45
濁った空気。

息苦しくなって、桃子はオレンジジュースを口に含む。
それは必要以上に甘いオレンジの味がして、この空気を正常化する材料にはならなかった。
桃子と同じくこの空気から逃れるようにジュースを飲んでいた雅が口を開いた。


「……もも、うちに何か言うことないの?」
「何か言って欲しいことでもある?」
「……別に」


ゴクリ。
雅がジュースを飲み込む音だけが楽屋に響く。
だが、それは停滞した会話をより際だたせる役割にしかならない。


68 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:46
「他に聞きたいことは?」


ジュースの缶を両手の中で遊ばせながら桃子が問いかける。


「ねぇ、なんであんなことしたの?」
「理由ならあの時に言った通りだよ?……この前のことなら、もう話すことないから」


桃子はもう一度楽屋から出て行くことを試みる。
楽屋の扉へと手をかけ、その手に力を入れた。
けれど、その手の上に雅の手が置かれ扉を開けることが出来ない。


69 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:48
「ちゃんと話したい」
「ももは話すことないから」
「ホテルに帰ったら、ももの部屋行くから」
「そう。……この前の続きしたいんだ?」
「なんでそんなことばっかり!!」


ガンッ!!!


雅が持っていた缶ジュースが床に叩きつけられ、飲み残した液体が缶から流れだして床を汚す。

そしてあの日と同じ扉の鳴く音。
桃子が出て行くはずだった扉から雅が廊下へと飛び出す。

70 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:49
扉の鳴く音はあの日とは変わらないが、あの日とは違う点が一つあった。
あの日聞こえなかった足音。
薄い扉の向こうから雅が楽屋から立ち去る足音が廊下に響く。


素直になればよかったのだろうか。
いや、素直になれるものならもうすでに素直になっている。
これが自分なのだからしょうがない。

桃子は雅から貰ったジュースを喉の奥へ流し込んだ。
さっきまで確かにオレンジの味がしていたはずのジュースは、ただの甘ったるい砂糖水に変わっていた。




71 名前:『 距 離 』 投稿日:2007/06/14(木) 02:50



『 距 離 』



- END -



72 名前: 投稿日:2007/06/14(木) 02:52

『 距 離 』
終了。

……ですが、もう少しこのシリーズ続きます。


73 名前: 投稿日:2007/06/14(木) 02:55
>>56 さん
こんな展開になっちゃいました!
この後の桃子と雅の運命は!?
……もう少しこのお話しは続きますので、よろしくお願いします♪




74 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/14(木) 18:50
更新お疲れ様です。
このCP好きなんでうれしいです。
次回も楽しみに待ってます。
75 名前: 投稿日:2007/06/15(金) 01:12



『 距 離 』続編



*エロあり*
76 名前: 投稿日:2007/06/15(金) 01:12



『 言 葉 』



77 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:13
携帯が鳴った。


ホテルの机の上に投げ出された携帯がぶるぶると震えながらその存在を示す。
桃子は期待することもなく携帯のディスプレイに目をやった。


『夏焼雅』


ディスプレイには確かにそう書かれていた。
桃子の頭の中に数時間前の出来事が浮かぶ。


78 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:14
『ホテルに帰ったら、ももの部屋行くから』


雅は確かにそう言った。


まさか本当に?
大体、この部屋に本当に来るとしても一体何をしにくるというのだ。


そんなことを考えている間も携帯は机の上を小刻みに移動しながら鳴り続ける。
このまま無視してもいいのだけれど、誰に言うわけでもなく言い訳のように呟いてから桃子は携帯の通話ボタンを押した。


79 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:15
「もも、開けて。今、部屋の前にいるから」


電話の向こうで雅がそう言うと、部屋の扉が早く開けろと言わんばかりにコンコンとノックされる。
桃子が扉を開けることを一瞬ためらうと、それが雅に通じたのか携帯から雅が催促をしてきた。


「開けてよ」


どうぞ、と携帯に言葉を返しながら桃子が扉を開けると、扉が開いたと同時に雅が部屋へと入ってくる。


80 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:18
「みーやん、物好きだね。またももの部屋に来るなんて。……もも、この前の続き以外はしないよ?」


携帯を片づけながら桃子が呆れたように雅に話しかけると、雅がきつい目で桃子を睨み付けてくる。
そしてそのまま桃子を睨み付けながら机と対になっている椅子へと腰掛けた。
そんな雅を横目に桃子はベッドの縁に腰掛け、雅に向かって自分の隣をポンポンと叩く。


81 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:19
「こっちおいでよ」


雅は桃子の言葉に反応しない。
前回の事が頭にあるのだろう。
隣に移動するどころか椅子の背が机にぶつかって大きな音を立てる程ベッドから離れて桃子に近寄ろうともしない。
そのまま椅子に身体をピッタリと押しつけたまま雅が桃子に話しかける。


82 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:19
「あの日からもも、おかしい。……あの日だっておかしかったけど、もっとおかしくなった」
「おかしくなったとしたら、それみーやんのせいだから」
「だから、なんでそんなことばっかりいうの?」
「さぁ?きっとみーやんが好きだからじゃない?」
「……ももは嘘ばっかりだね」
「じゃあ、ほんとってなに?どうしたらほんとのことわかるの?みーやんは、ももが嫌いっていったらそれは信じるの?」


83 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:20
桃子はベッドから立ち上がると、言葉に詰まったまま椅子の上で困った顔をしている雅にあの日と同じようにキスをした。
けれど、雅があの日のように抵抗をする前に唇を離して一言告げる。


「みーやんなんか嫌い」


息が唇に触れる距離。
一瞬だけ唇を離して桃子はもう一度キスをした。

84 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:21
今、雅がどんな表情をしているかはわからない。
ただ、抵抗はしてこなかった。
無抵抗な雅の柔らかな唇を味わうように長いキスをする。


みーやんには好きのかわりに嫌いをあげる。
信じてもらえないなら好きも嫌いもかわんない。


信じてもらう方法なんて思い浮かばない。
それに信じてもらえたからといってそれが何になるのだ。
こんな酷いことばかりする自分に好きだと返してくれるとも思えない。


85 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:22
でも、何故こんな風にやけに自分に絡んでくるのか?


嫌いなら、好きになってくれないなら放っておいてくれればいいのに。
なんでこんな風に部屋に来たりするんだろう。
こんな風に2人きりになるから期待する。
だから、こんなことになるんだ。


86 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:23
桃子は長いキスを中断して、もう一度唇を少しだけ離した。
もう一度「キライ」と声に出す。
そしてそのまま唇を唇で塞ぐ。
触れているだけのキスでは物足りなくなって、桃子は軽く唇を開いて雅の口の中へと自分の舌を差し入れ、雅の舌を絡め取る。
この間とは違いスムーズに事が進む。
ただ、抵抗もないかわりに反応もなかった。

87 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:24
人形のようにそこにいる雅。
求めているのは自分だけだという現実を突きつけられたような気がした。
あまりの無反応さに桃子は自分のしていることが無意味な行為のような気がしてきて、キスをやめる。

桃子が唇を離し、顔を離す瞬間。
目をつぶったままの雅の顔が桃子の目に一瞬映る。
その顔は何故だか、悲しそうな表情に見えた。
でも、それは一瞬のことで雅が閉じていた目を開いた時には顔から表情は消えていた。


88 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:25

本日の更新終了です。

89 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/15(金) 01:29
>>74 さん
おお、もも×みや好きが♪
私の中でこのCPがイチオシです!
今、がんばって続きをザクザク書いてます。
90 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/15(金) 20:04
ますます雅さんの真意が読めませんね。
もう次回がすごく気になります。
頑張ってください。
91 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:30
悲しそうにみえたのは気のせいなのかもしれない。
たとえ悲しそうでも何を悲しんでいるかわからない。
もう何もわからない。
わかりたくない。


それでも一つだけ思い浮かんだ言葉があった。
それは一番考えたくない言葉。


92 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:31
『梨沙子』


梨沙子以外にこんな事をされるのが嫌であんな表情になったのかもしれない。


『みーやんは梨沙子が好きなの?』


桃子は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
あんなに止めを刺されたかったはずなのに、今は止めを刺されることに脅えている。
雅から決定的な言葉を聞きたくなかった。

93 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:32
桃子はいつまでも雅の顔を見ていると言いたくない言葉を言ってしまいそうで、視線を顔から下へとおろしていく。
視線が鎖骨のあたりまで来て、あの日つけたキスマークのことを思い出した。


「キスマーク消えちゃったね」


あれから3週間だ。
そんなに長い間キスマークがついているわけがない。
消えるのが当たり前だ。


94 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:33
『ずっと消えなければいいのに』


そんな風に思わずにはいられなかった。
その想いを本人に告げることなく、あの日つけたキスマークがあったはずの鎖骨の上を桃子は指でなぞる。
その指先に反応して雅が身体を震わせると小さな声をあげた。


95 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:35
「……んっ」


あの時と同じ雅の甘い声。
背中がぞくぞくするような不思議な感覚に桃子はとらわれる。
雅のその声が何かの合図だったかのように、桃子の指先が自由に動き出す。
指先を鎖骨の上で遊ばせてから、桃子は指先で触れた部分にキスを落としていく。
鎖骨から離れた桃子の手は雅の肩から腕へと移動して力の抜けた雅の手を掴む。
桃子は雅の手をぎゅっと握るとキスをやめ、掴んだ手に力を入れて雅を立ち上がらせる。
そしてそのままベッドへと雅を押し倒した。

96 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:37
ベッドの上で桃子は掴んだ雅の手を自分の胸元まで持ってくると、その指先に唇を押しつける。
不思議なことに雅は抵抗を一切しない。
そしてキスをしていた時の無反応さもない。
それどころか、手の甲、手の平、そして腕へとキスをしていく桃子の背に雅の方から腕を回してくる。


どうして?


けれど、雅の手が自分の背に回されている事実に戸惑うよりも、雅の声がもっと聞きたいという欲求に逆らえず、桃子は考えるより先にキスをする。
肩を経て桃子が辿り着くのは雅の耳。
自分が唯一知っている雅の感じる場所。
耳へ唇を押し当て、そのまま甘噛みする。


97 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:38
「あっ」


雅の高い掠れた声が聞こえた。
その声をもっと聞こうと同じ行為を何度も繰り返していると、雅の手が桃子の頭を捉えてその動きを静止させた。
雅が荒い息を整えるように何度か深呼吸をする。


「……もも、ほんとのこと教えてよ。なんでこんなことするの?」


探るような口調で雅に声をかけられ、桃子は雅から見つめられた。


98 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:39
逃れられないぐらい強い瞳。
だから、桃子は『キライ』ともう一度言えなかった。
けれど『好き』だとも言えなかった。
かわりに、あの日と同じようにTシャツの裾から手を中へと差し入れた。


「ん、あぁっ」


Tシャツの中を這い回る桃子の手。
それにあわせて押し殺したような、でも確実に感じていることを伝える声が雅から上がる。

99 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:41
腹から背中へ指先を走らせる。
浮いた背中をそっと撫で回し、空いている手で横腹に触れる。
そして横腹を撫で上げると同時にTシャツを胸元までまくり上げた。

露わになった素肌に唇を押しつけ、そのまま舌を出してペロリと雅のヘソのあたりを舐める。
新しい感触に雅がびくっと震えた。


「はっ、あっ…。もも、な…にして…るの?」
「……んー、味見」


桃子はにやり、と笑ってもう一度雅の素肌に舌を這わせた。


100 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:43
「ちょっ、ああっ」


小さな事にでも反応する雅に楽しくなって、桃子は色々な部分にキスをして、舌を這わせていく。
そのたびに震える雅の身体。
桃子の唇が、舌が、雅の素肌に触れる。
いちいちビクリと身体が跳ね上がり、息を荒くしている雅は背中に回された桃子の手が雅の胸を覆う下着をはぎ取っていることにすら気がつかない。

気がつけば雅の胸を覆う物は何もなくなっていて、直接桃子の手が雅の胸を覆っていた。
撫でるように優しく胸を揉み、そして敏感な部分の周りを舌で舐める。

101 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:45
途中で胸を愛撫されていることに雅も気がついたが、その時にはもう桃子の手を止められないところまできていた。
雅はただ声を上げることしか出来ない。


「……もも。んっ、はぁ…あっ…もも」
「みーやんの声、気持ちいい。もっと聞かせて?」
「やっ。もも、……やぁ」


102 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:46
声を聞かれるのが恥ずかしいのか雅が何度も「いや」と繰り返す。
だが、どんどん乱れていく呼吸がその「いや」という言葉を打ち消していく。
そして乱れた息の合間から聞こえる普段とは違う濡れた声。
そんな雅の声を聞いているだけで、自然と桃子の呼吸も荒くなっていく。
そのお互いの呼吸にあわせるようにして、余裕を持って動かしていたはずの桃子の手の動きも早まる。

優しく胸を撫でていたはずの手に力が入り、ぎゅっと胸を掴むようになってしまう。
微妙なタッチで舌先を這わせていたはずが、押しつけるように舐め上げる。
桃子が我慢できずに雅の胸の一番感じる部分に唇を押しつけ舐め上げると、雅が今まで以上に大きな声で喘いだ。
その声は想像以上にいやらしくて桃子の全てを虜にする。


103 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:47
雅の身体を支配しているのは自分のはずなのに。
捕らわれているのはどうみても自分。
雅の甘い声に絡め取られて身動きできなくなる。


104 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:47
首に胸に腹に。
雅のその全てに。
キスを降らせて支配していく。
そして雅に全てを奪い取られていく。


不思議な感覚。
でも、桃子にはそれが心地よかった。


105 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/16(土) 01:48

本日の更新終了です。

106 名前: 投稿日:2007/06/16(土) 01:52
>>90 さん
ありがとうございます、今日もがんばって更新しました!
雅ちゃんの真意はっ。
……どうするどうなる雅ちゃん!
107 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:29
「……ねぇ」
「な…に?」
「……なんでもない」
「気にな……ん、ああっ」


この間、拒絶されたのが嘘のようだ。
雅の身体が桃子に応えて声をあげる。
それはまるで恋人同士がする行為の時のように。
いや、それ以上にさえ感じられる。
だから思わず聞きそうになった。


108 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:31
『もものこと好き?』


半分口から出かかったこの言葉を飲み込んだのは、あの時のように拒絶されて雅の声が途切れてしまうことが怖かったから。
もっともっとこのとろけるような声を聞いていたい。

その欲求に従って、桃子の手は雅の下半身へと伸びていく。
そして、ためらうことなく雅のジーンズのボタンを外しジッパーを下げる。
脱がせやすくなったジーンズに手をかけ軽くずらしてから雅に声をかけた。


109 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:31
「みーやん、腰……」


最後まで言う前に、条件反射のように雅の腰が浮きジーンズを脱がせやすい体勢になる。
桃子はジーンズを一気に脱がせると下着に手をかけた。
すると今までなすがままになっていた雅が下着に手をかけた桃子の手を掴み首を振る。


「……まって」


掠れた声が小さく聞こえた。
だが、小さな声のわりには桃子の手を掴んでいる雅の手の力は強く、そのまま脱がすのもためらわれて桃子は雅をあやすように一つの事実を告げる。


110 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:32
「下着、汚れるよ?」


桃子がそう言っても雅は首を横に振る。
仕方なく、桃子は下着の上から指を這わすと目的の部分はもうすでに十分湿っていて、そんな心配をする必要もないようだった。


「……もう汚れちゃってるし関係ないか」


111 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:33
雅に告げるというよりは独り言のように呟いて、桃子は雅の下着に手をかけそのまま中へと入り込もうとする。
するとそれを阻止するように雅が言った。


「……やだ」


乱れた呼吸の合間からはっきりとした拒絶の言葉。


「嫌そうに見えない」


112 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:34
桃子が触れている雅の身体は信じられないぐらい熱くて、そこは確かに濡れているはずで、そして表情は嫌がっているようには見えない。
それでも無理矢理そこを触るのは悪いような気がして桃子は手を止めた。


「やめてもいいの?」
「…………」


雅からは肯定も否定もない。
ただ小さな声で何か他の事を言われたような気がした。


113 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:35
「みーやん、なに?」
「……何も言ってない」


聞こえたわけではない。
けれど、何を言えばいいのかわかった気がして桃子はその言葉を口にした。


「みーやん、好き」
「……ばか」
「それ、返事おかしい」


桃子が今まで何度か言った言葉。
けれど、今まで言ったどの「好き」よりもっと素直に告げた言葉。
それに対する雅の返事は予想外で桃子は思わず拗ねた口調になる。


114 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:36
「好きの返事は好きか嫌いかだよ」
「…………」
「……どっちなの?」
「好きじゃない人にこんなことされるわけないじゃん」


不思議と嫌いだと言われるとは思わなかった。
だけど、好きだと言われるとも思っていなくて。
でも、この返事って微妙じゃないの?


口調はぶっきらぼう。
でも、桃子を見つめてくる雅の目は真剣でその瞳がその言葉の意味を教えてくれる。


115 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:37
微妙なはずの言葉、それでも雅が早口で言ったその言葉に桃子は自分の顔が赤くなるのがわかった。
赤い顔を見られたくなくて思わず雅の首筋に顔を埋める。
その時ちらりと見た雅の顔も赤かった気がした。


「あのさ、みーやん。……それって、ももの事が好きってこと?」


桃子が首筋にキスしながら聞いてみると雅から意外な返事が返ってきた。


「……続き、してよ」






116 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:38
雅の希望で部屋の電気は消した。
桃子が雅の下着を降ろすと雅に抱きつかれた。
あとは部屋に湿った声と音が響くだけになった。


「あっ、んっ」


桃子が指を動かすたびに雅が声をあげる。
桃子はわざと雅の一番敏感な部分を避けてそのまわりに指を這わせているはずなのに、雅は指が動くたびに桃子にぎゅっとしがみつき声を出す。
その反応があまりに可愛くて桃子はクスクスと笑いながら雅の耳元で囁いた。


117 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:40
「感じやすいんだね」
「そん、な…こと…ん、あぁっ」
「そんなこと、ある?」
「はあっ、あ!……ば…かっ!」


イカせてしまうのは簡単で。
でも、この時間を終わらせてしまうのは勿体ない。

身体の中で一番敏感なその部分を刺激して雅のとろけるような声をもっと聞きたい。
そんな欲求を抑えて桃子はゆっくりとその周りを愛撫する。

118 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:41
ぬるぬるとしたそこに指を滑らせ、指に絡みつくそれを雅のそこにすりつける。
そんないやらしい指先に応えるように雅の足の間から聞こえてくる水音。
雅の吐息とその身体から聞こえる水音、そして桃子の押さえきれない呼吸。


いつまでもこのままでいたいが、それは無理な相談だ。
高まってくる体温には逆らえない。
雅の腰が桃子の指にあわせて動き始めた頃、桃子は雅に意地悪な質問を投げかけた。


119 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:42
「……ねぇ、イキたい?」
「…………」
「ちゃんと好きだって言ってくれたら、そしたらイカせてあげる」
「言わなく…ても、わかっ……てる……くせ…に」


桃子の肩にしがみつくようにしながら、耳元で雅が答える。
けれど、そんな答えで桃子は納得するつもりはない。
言わないつもりなら、言いたくなるようにしてやればいい。


「……言ってくれないと、ももわからないよ?」


120 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:44
桃子は指先で雅の一番敏感な部分を軽く撫でた。
びくん、と大きく雅の腰が揺れる。


「はぁっ…やぁ……」
「みーやん、言って?」
「好き。……もも…が…好き」


甘い声で囁かれた。
荒い息を縫うようにして小さな声が桃子の耳元に届いた。
その言葉だけで、雅を責め立てているはずだった桃子の方が達しそうになるぐらい気持ちの良い言葉。


121 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:44
「みーやん、大好きだよ」


そう囁いて、少し前に軽く撫でたその部分を指先で強めに擦る。
長くは持たなかった。
すぐに雅の身体が強ばった。
そして、もう一度桃子の耳元に聞きたかった言葉が聞こえてきて、そのすぐ後に強ばった雅の身体の力が抜ける。


122 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:45
歌声よりもっと綺麗で誰にも聞かせたくない吐息混じりの声で囁かれる言葉。
それは何よりも欲しかった言葉。


「好き」


なんだかその言葉はくすぐったいけれど嬉しくて、その気持ちを雅に伝える為に桃子は今までで一番優しいキスをした。




123 名前:『 言 葉 』 投稿日:2007/06/17(日) 00:46



『 言 葉 』



- END -
124 名前: 投稿日:2007/06/17(日) 00:47

『 言 葉 』
終了です。


125 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/17(日) 20:51
ドキドキしました。
126 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/17(日) 21:21
うあ……ももみやにやられました。
すごくいいです!!
127 名前: 投稿日:2007/06/18(月) 01:14



『 告 白 』〜『 距 離 』
>>4-71



雅視点バージョンです。
128 名前: 投稿日:2007/06/18(月) 01:15



『 視 線 』



129 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:17
胸がぎゅっとつかまれるようなそんな気持ち。
これが何なのかわからない。
ただ誰にでも起こる現象ではなくて、特定の人物に見られていることを感じる時にだけ起こる。


その人の名は嗣永桃子。


本人に聞いたら、これが何なのか解決するのだろうか。
たとえ解決するとしても、本人にこんなことを聞けるわけがない。
見られている、と意識するだけで胸が苦しくなって立っていることも辛いのに。


130 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:18
だから、雅は桃子に見られていると思うといつも桃子とは違う誰かを見るようにしていた。
そしてそれは大体、いつも自分の隣にいる梨沙子だった。
雅を慕っていて、そして雅も妹のように思っている相手。
だから、梨沙子を見ると桃子を見るときのようなわけのわからない苦しさもなく、落ち着いた気分になれた。




131 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:20
************************************


あの日起こった出来事。
雅はそれを忘れたいのか、忘れたくないのかはっきりとわからなかった。
ただあの日の事を思い出すと、胸の中をグルグルと回って見えないままの気持ちが見えてしまいそうで怖かった。


桃子にキスをされた。
頭が真っ白になった。

桃子が肌に触れた。
その部分が熱くて火傷しそうなぐらいだった。

あのままどうにかなってしまいたかった。


132 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:21
……けれど。
桃子に好きだと言われた。
その言葉は信じられなかった。


順番を無視してキスをして身体に触れて。
それから最初に来るべき言葉を言われて。
何を信じろというのだ。


133 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:22
余裕の表情で自分に触れてくる桃子。
手慣れたようにキスをして、自分をおかしくさせて。
まるで誰かの変わりにでもされているのかと思えた。
好きだなんて言葉は自分を騙す為の道具で、意味なんてないとしか思えない。

どうやって桃子の言葉を信じればいいのか見当もつかなかった。
あの時、桃子の言葉を信じたいと思ったことは間違いない。
けれど、信じてしまったら自分がどうなってしまうのか。

今まで自分の中になかった感情。
それを認めるのは勇気がいることだった。

134 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:23
いや、本当は気がついていた。
あの日よりもっともっと前から知っている。
この想いの正体。
認めるのが怖いだけだ。
認識するのが怖いだけだ。


好きだと認めたらどうなる?


135 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:24
感情をコントロールすることが苦手な雅はその気持ちを認めた時に起こる変化が怖かった。
だから、あの日から雅は今まで以上に桃子を視界に入れないようにした。
避ける、という言葉がぴったりなぐらいに桃子を自分の中から消し去る。
かわりにその消し去った部分に梨沙子を入れる。
これが正しい方法だとは思わないが、これしか雅には思い浮かばなかった。


けれど、今までもそれほど桃子との距離が近い方ではなかったおかげか、雅が桃子を避けるようにしていてもメンバーに不審に思われることはなかった。
時々、メンバーが二人の間に小さな不信感を抱いても、すぐさま桃子が上手い具合にフォローを入れて二人の間に起こった何かを隠していた。
だが、こんなことが長く続くとは思えなかった。


136 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:25
いつまでもこんな不自然な状態を続けているわけにはいかない、と雅は思う。
自分の心の中に住んでいる何か。


それをどうにかしたいわけではないが、二人の関係をあの日以前のものに戻さないことにはどうにも活動がしにくかった。
しかし、桃子は一体何を考えているのか、あの日のことについて何か言ってくるどころか雅に近寄っても来ない。
そして今までのようにこちらを見つめてくることもなかった。


137 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:26
ももはどうしてうちを見てくれないんだろ?


……馬鹿げてる。
自分から避けておいてこちらを見て欲しいなんて。
どうかしてる。


こっちを見てくれれば、あの日のももの言葉も信じられるのに。


こんな風に少しでも思う自分が信じられない。
この胸の奥にある想いを認めてしまいたい自分がいることも確か。

138 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:27
こちらを見ることのない桃子。
それでも見られていないはずなのに、何故か見られているようなそんな気持ちになることがあった。
近くに桃子がいて、話し声が聞こえて。
そんなとき、見られているような気がする時がある。
でも、勇気を出して桃子の方を見ても、桃子が雅を見つめていることはなかった。


避けているのは自分なのに。
見てないことが悲しいなんて我が儘すぎる。
そんなことは自分でもよくわかっていた。

139 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:28
雅は目の前にいる人物を無視して考え込む。


「みーやっ!!」


突然の大声。
耳元で梨沙子に叫ばれて、雅は今ここが楽屋で隣にいるのが梨沙子だということを思い出す。


140 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/18(月) 01:29
「え?あ?……なんの話だっけ?」
「もー、全然人の話聞いてないじゃん!」
「聞いてるって。ほら、何だっけ。あー、洋服だ、洋服!!」
「……その話はさっき終わった〜。もー、今は今度のオフのはっなっしっ」
「そうだっけ?」
「そうなのっ」


不満げな顔をした梨沙子に軽く腕を叩かれた。
そして、そのまま梨沙子が雅の腕に絡みついてくる。


141 名前: 投稿日:2007/06/18(月) 01:30

本日の更新終了です。

142 名前: 投稿日:2007/06/18(月) 01:32
>>125 さん
ありがとうございます。
ドキドキしてもらえると嬉しいです♪

>>126 さん
ありがとうございます。
ももみや布教運動中ですw


143 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/18(月) 03:12
ベリにエロはキツイ!っと思ったけど良いな。
144 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:12
「いったいなー。もぉ〜!」
「みやが悪いんじゃん!」
「そーだけどさー」
「最近、ほんと人の話聞いてないよね。なんか元気ないしさ。……そういえば、ももも元気ないんだよね。一体なんなの、2人は?」
「なんなのって。なんでもないけど」
「そうかなぁ?」
「そうだって!」


145 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:13
思わず雅は大きな声を出す。
急に桃子の名前を出されて心臓が跳ね上がった。
突然ドキドキと激しく動き出した心臓に身体がついていかずに息苦しくなる。
そして、疑いの眼差しを向けてくる梨沙子をどうしていいかわからない。
困った顔をした雅を面白がっているのか、梨沙子はもっと身体をすり寄せてきて雅の表情を覗き込んできた。


146 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:14
「なんか嘘っぽいなぁ」
「嘘じゃないっての。……はい、暑いから離れて、離れて」


確かめるように覗き込まれて、まるで全てが見透かされているような気がした。
怖くなって、雅は自分の腕に絡みつく梨沙子を引きはがそうとする。


しまい込んだ想いに気がつかれるはずはない。
自分で気がつくことすら拒否して心の奥に押し込んであるのだから。


147 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:15
ぺったりと絡みついている梨沙子をなんとか引きはがして、一息つくと雅は誰かに見られているような気がしてドキリとする。
心臓を直接つかまれているような気がする程苦しくなる。
雅が視線を感じてこんな風になる相手はたった一人。


視線の先を確認しなくてもわかる。
きっと桃子がこちらを見ている。
そう考えるだけで背中がぞわぞわする。でもそれは嫌な気分ではなく、心地が良くてでも落ち着かなくてどうしていいかわからなくなるようなそんな気分。
雅は見る前からわかっている相手を確認する。


148 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:16
その先にいるのは桃子だった。
桃子は雅と目があう事を予測していなかったせいか少し驚いた表情をしている。


そんな桃子と視線が絡み合う。
何故かそらせない視線。
でも、そらしたい。
いや、もっと見つめていたい。


一瞬の間にぐるぐると色々な事が頭の中を駆けめぐる。
けれど、雅が答えを出す時間はなかった。
桃子が笑顔をこちらに向けたと思うと、すっと視線をそらしてしまったからだ。


149 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:17
ドキドキが止まらない。
桃子の笑顔を見た時間は1秒もなかった。
それでも桃子の笑顔が頭から離れない。
その笑顔にあの日の桃子が重なる。


『ももね、みーやんがずっと好きだったんだよ』


フラッシュバックする光景。
思い出したくなくて、でも思い出したいあの日の出来事。
キスの先の行為を思い出して勝手に血液が体中を駆けめぐる。
顔が赤くなってくるのが自分でもわかって雅は梨沙子に一言残して立ち上がる。


150 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:18
「梨沙子、ごめん。ちょっとトイレいってくる」
「へ?」


突然立ち上がった雅に驚いてぽかんとしている梨沙子を残して楽屋を飛び出る。
そして、雅は廊下を走る。
行き先は決まっていなかった。

よくわからないまま適当に廊下を走る。
気がつくと梨沙子に告げた場所、どこにあるトイレかはよくわからないがとにかくトイレへと辿り着いていた。


151 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:19
あーあ、ももも梨沙子も変に思ってるだろうなぁ。


あんなことを思い出す自分に耐えられなくて、思わず楽屋を飛び出した。
あの時の感覚まで思い出しそうになって頬が火照るのがわかって、心臓がドクドクと脈打つ音が身体の中に響いた。


心臓の音なんて誰にも聞こえやしないのに。
楽屋から逃げ出したら変に思われるだけなのに。


ため息をついてトイレの壁に背中をあずけた。
雅は無意識のうちに唇へ触れる。


152 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:20
初めてだったキス。


わけがわからないままキスされたが、それは嫌なことではなかった。
ただ、桃子の気持ちがどこにあるのかわからなかったことが悲しかっただけだ。
桃子が何を考えているのかわからない。
自分がどうしたいのかわからない。


でも、わからないまま流されるのは嫌だ。
わからないなら、聞いてみるしかない。


153 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:20
うまく聞けるかわからないがあの日のことを聞いてみるだけ聞いてみよう、そう決めて雅は楽屋へと歩き出す。
途中で突然放り出した梨沙子への詫びとしてジュースを買った。
逃げ出してきた時は随分長い時間走ったような気がする楽屋へあっという間に辿り着く。
扉は開けるまでもなく開いていた。
そして何故か雅の目の前に桃子が立っている。
ひょいと楽屋を覗くと梨沙子がいない。


154 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:21

戻ってきたら、そこには梨沙子はいなくて。
……二人だけとか。


タイミングがいいのか悪いのかわからない。
けれど、この間のことについて訪ねるには良い機会だった。
雅はとりあえず梨沙子の為に買ってきたジュースを桃子に押しつけて、楽屋の中へと入り込む。


どう切り出せばいいのか。
雅が悩んでいると桃子の方から声をかけられた。


155 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:22
「梨沙子、みーやんを探しに行ったよ。追いかければ?」
「すぐ戻ってくるでしょ」


続けようとしない会話はすぐに途切れてしまう。
勢いをつけて楽屋に戻ってきたまではいいが桃子を見る勇気もなく、桃子が今どんな表情をしているか雅にはわからない。
やっぱりやめようか、弱気な自分が顔を出す。
しかし、それでも雅はなんとか言葉を口にする。


156 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:23
「……もも、うちに何か言うことないの?」
「何か言って欲しいことでもある?」
「……別に」


言って欲しいことがあるわけではない。
ただ理由を聞きたいだけだ。
でもそれがうまく言葉に出来ないだけ。

雅は自分を落ち着かせるように買ってきたジュースを口に含む。
そのまま喉へと液体を流し込むと、静かな部屋に喉が鳴る音が響いた。
乾いた部屋の空気を変える為に雅はもう一度桃子に話しかけようとするが、桃子の言葉に遮られる。


157 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:24
「他に聞きたいことは?」


その声に雅が顔を上げると、両手でジュースの缶を玩具にしている桃子が映る。
雅の視線に気づいているのかいないのか、こちらを見ようとはしない。
雅はすっと息を吸ってから桃子に問いかけた。


「ねぇ、なんであんなことしたの?」
「理由ならあの時に言った通りだよ?……この前のことなら、もう話すことないから」


そう言うと桃子は立ち上がり楽屋から出て行こうとする。
逃げる、雅は何故だかそう思った。
表情は見えないが桃子がこの場から逃げようとしている、そんな気がして雅は楽屋の扉に手をかけている桃子の手を掴んだ。


158 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:25
「ちゃんと話したい」


桃子の背中に語りかけた。
一瞬の沈黙後、小さな声で桃子から返事が返ってくる。


「ももは話すことないから」
「ホテルに帰ったら、ももの部屋行くから」
「そう。……この前の続きしたいんだ?」
「なんでそんなことばっかり!!」


159 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:26
桃子の言葉に思わず大声が出た。
雅の問いかけに真剣に答えようとしない桃子に何を言っていいのかもうわからない。
これ以上、話していても意味がない気がした。


桃子からうまく答えを導き出せない。
自分が本当は何を聞きたいのかもはっきりしない。
なんだかイライラして雅は思わず手に持っていた缶ジュースを投げ捨てた。


160 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:27
ガンッ!!!


それは思ったより大きな音がして、雅はまた楽屋から駆けだしていた。
さっき飛び出た時と同じように廊下を走って、でも今度は建物の出口へ向かうというはっきりとした目的を持って廊下を走る。


投げつけた缶ジュースが気になる。
床に広がったであろうジュースをどうしたのか気になる。
くだらないことばかり気になる。


階段を駆け下り、外へ飛び出て雅は上がった息を整えて壁に手をついた。


161 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:28
あんなことを言われたのに。
たぶん、きっと間違いなく。
うちはももの部屋へ行く。


『……この前の続きしたいんだ?』


ドキっとした。
まるで胸の奥を見透かされたみたいで。
そんなことなど思っていなかったはずなのに、必要以上に驚いた自分にもっと驚いた。


162 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:30
期待しているわけじゃない、言い訳みたいに雅は心の中で呟く。
今まで認めることが出来なかったものを認めにいくだけだ。
それを認めた時、どうなってしまうのかは雅自身にもわからない。

ただ、認めないままこうして時間を過ごしていても、おかしくなってしまいそうな程胸が苦しいことに気がついた。
解決する方法は一つしか思い浮かばない。


今夜、きっと何かが終わって何かがはじまる。


そんな予感がした。



163 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:30




『 視 線 』



- END -

164 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:32

『 視 線 』
終了です。


これで『 告 白 』から続いたシリーズ終了です。

165 名前:『 視 線 』 投稿日:2007/06/19(火) 01:35
>>143 さん
気に入って頂けたみたいで嬉しいです。
私自身、最初はエロどころかキッズ小説に拒否反応を示していたはずなんですが……。
何故かこんなことになっていますw┐(´ー`)┌
166 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/19(火) 13:23
wonderful!!
次回更新も楽しみに待っています.
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/19(火) 20:31
シリーズ完結お疲れ様でした!
ほんとに毎回楽しませて頂きました。
作者さんのおかげでみやももにハマってしまいましたよ。
なにげに続編や番外編など期待しています。
もちろん次回作も楽しみにしていますよぉ!!
168 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/19(火) 21:30
更新お疲れ様です。
『言葉』の雅視点も読んでみたかったなぁ。
169 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/20(水) 02:57
お疲れ様でした、次回作も楽しみにしています。
170 名前: 投稿日:2007/06/21(木) 01:22



『 Love 』



微エロかも。
171 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:23
楽屋には舞美ちゃんと2人だけ。
他のみんなは撮影でしばらく戻ってこない。
今しかない。


言うべきか、言わざるべきか。
栞菜にはずっと迷っていた言葉があった。
迷っていたけれど、言うべきではない、という気持ちの方がずっと強かった。
けれど、言わないまま過ごす日々よりもっと先を望む気持ちが大きくなっていた。


172 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:24
うまくいかなくてもいい。
言うだけ言ってみよう。


チャンスは今だ、神様がそう言った気がした。


栞菜は勇気を出してのんきにお茶をすすっている舞美に話しかけてみる。


173 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:24
「舞美ちゃん!……あの」
「なーに、栞菜?」
「あ、あのね。あの、私ね」
「うん」


心臓の音がやけに大きく聞こえる。
大きく息を吸ってから、栞菜はずっと迷っていた言葉を舞美に告げた。


174 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:25
「……舞美ちゃんが好きなの」


告白。
けれど余韻を感じる時間もなく明るい声で即答された。


「うん、あたしも栞菜のこと好きだよ」


175 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:26
満面の笑み。
そういう言葉がぴったりな笑顔で舞美が栞菜を見ている。
栞菜はその笑顔に一瞬「ありがとう」と返しそうになるが、思いとどまってあきらかに意味を取り違えている舞美に説明を試みた。


「あ、いや。そうじゃなくて」
「ん?そうじゃなくて?」
「好きは好きなんだけど、そういう好きじゃなくて……」
「どういう?」


どういう?って聞かれても。
好きは好きで。
どうもこうもなくて。


176 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:27
目の前にはぽかんとした顔の舞美がいる。
だが、栞菜はうまく説明する方法が思いつかない。
だから、思わずキスをした。
時々ふざけてするようなキスではなく、唇へ。


「…………へ?」


背伸びをしてキスをした栞菜が目を開くと、そこにはまるで狐につままれたような顔をした舞美がいた。
驚いている顔ではない。
意味がわからない、そういった表情だ。


177 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:28
まだわからないとかそんなことはありえなくて。
……でも、舞美ちゃんわかってないよね?


ここまでしてわからない、という事実を信じられずにいる栞菜に舞美が不審そうに話しかけてくる。


「栞菜?」
「……舞美ちゃん、ほんとにわかってない?」
「…………」


178 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:28
栞菜の質問に無言で答える舞美の表情はあきらかに困ったような顔だった。
にぶい、では済まされない。
ここまでして何故意味がわからないのか、そちらの方が栞菜にはわからなかった。


「とりあえずそこ座って、舞美ちゃん」
「え???」


栞菜は疑問符だらけの舞美の腕を取ると、とりあえず椅子へと座らせる。

179 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:29
舞美が椅子に座ったことにより位置関係が変わり、自分より背の高い舞美を見下ろすことが出来るようになる。
これから栞菜がする行為。
それに丁度よい高さだ。


「……ごめんね?」
「なんで?」


質問へは答えない。
かわりに栞菜は舞美のブラウスに手をかける。
ボタンを3つ外して見えかけた胸の上の方へキスをした。


180 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:30
「ちょっと、栞菜っ!!」


舞美が大声を上げるがその声を無視して栞菜は腕を舞美の背中へと回す。
ブラウスの上から背骨にそって指を這わせて、耳へ軽く息を吹きかける。


「やめっ……。んっっ」


栞菜が身体に軽く触れるだけで、舞美が面白いように反応する。
唇が軽く耳に触れると舞美がびくんっと身体を震わせながら栞菜から逃げ出そうとする。
栞菜はそんな舞美の肩を押さえると頬にキスをして太ももを撫で上げた。


181 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:31
「誰か、きたら……」
「入れないよ」
「な…んで」
「……カギ、かけてある」


助けが来ないことを悟った舞美の顔は落胆したようだった。
そんな舞美の表情に栞菜は少し心が痛むが、今している行為をやめるつもりはない。
服の上から舞美の胸を触る。
そのまま指先で下着の線をなぞってからふいにその中心を軽く摘んだ。
舞美が小さな声を上げる。


182 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:32
「あぁっ」
「……舞美ちゃんはこういうことしたことある?」
「あるわけ……な…い」


栞菜の指先は胸の上からブラウスのボタンを辿り、開いた胸元へ侵入する。
舞美の素肌をなぞり肩に直接触れた。
その肩を柔らかく掴んで首筋にキスを落とすと舞美の顎が上がる。
栞菜は上を向いた顎にキスをすると、そのまま舞美の唇を唇で塞ぐ。
唇をそっと開いて舞美の唇を舌で味わい、そのまま舌先で舞美の唇をこじ開け中へと入り込む。
そして逃げる舞美の舌を追いかけ、捕らえると自分の舌を絡めてからすぐに離した。


183 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:33
「はあっ」


栞菜が唇を離すと、舞美が吐息にも似た声を漏らした。
その声が恥ずかしかったのか、舞美が栞菜から目をそらして下を向く。


「……どういう好きかわかった?」


栞菜は真っ赤な顔をして下を向いている舞美に問いかけた。


「ん、わかった」
「そっか」
「でも、あたし……」


184 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:34
困った顔をしてそう言いかけた舞美の言葉を栞菜は遮る。


「ねえ、舞美ちゃん。いつかあたしを好きになってくれたら教えて?」


今すぐ好きになってくれなんて思わない。
ゆっくり時間をかけてでいいから。
もしも好きになってくれたらこの続きをするから。


栞菜は楽屋のカギを開けると、舞美ににっこりと微笑みかけた。





185 名前:『 Love 』 投稿日:2007/06/21(木) 01:35



『 Love 』



- END -

186 名前: 投稿日:2007/06/21(木) 01:37

『 Love 』
サックリと終了。

187 名前: 投稿日:2007/06/21(木) 01:47
>>166 さん
ありがとうございます。
この先もちまちまと更新していくのでよろしくお願いします。


>>167 さん
無事完結しました。ありがとうございます。
みやもも布教活動が成功したようで嬉しいですw
今のところ続編・番外編の予定はありませんが、何か思いついたら書くかもしれません♪


>>168 さん
『 言葉 』の雅視点、書くことも考えたのですが……。
エロ部分をもう一度書くのは趣がなさそうなのでやめました(;´ー`)。


>>169 さん
ありがとうございます。
桃×雅以外にも色々書く予定なのでよろしくお願いします。


188 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/21(木) 12:46
鈍感すぎる舞美に乾杯w
どんだけぇ〜
189 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/06/22(金) 00:50
やじかんキター!!
次回作も楽しみにしてます
190 名前:168 投稿日:2007/06/22(金) 01:13
毎度、更新されるのを楽しみにしています。
今回のやじかんもすごくよかったです!

前回、わがまま言って申し訳ございませんでした。
エロが見たかったわけではなく(個人的には好きですが)、
雅の心理面的なものを読んでみたかったのですが、
ただのわがままみたいな感じになってしまいましたね。
本当に申し訳なかったです。

191 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/22(金) 01:51
新作も楽しみです!、やっとベリの顔と名前を覚えたばかりで℃-uteは??。
ググりながら読んでます。
192 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/06/22(金) 02:02
さすが短所が「あまりにも鈍感すぎる(笑)」なだけありますねw
193 名前: 投稿日:2007/06/23(土) 00:45



『 君とキス 』



194 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:47
「ももは誰が好きなの?」


もっと気の利いた聞き方があったのかもしれない。
だが、梨沙子には他の聞き方が思い浮かばなかった。


告白は自分からする方だ。
けれど、やっぱり何の確信もなく好きだと告げるのは少し怖い。
だから、梨沙子はある程度の情報が欲しかった。


195 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:47
「誰だと思う?」


質問したのはこちらのはずなのに逆に桃子から質問が返ってくる。
探るように言われて梨沙子はドキリとした。


「……あたし、とか?」
「そうだよ」


梨沙子は冗談で言ったつもりだった。
けれど桃子から返ってきた返事は肯定。
しかも、当然でしょ、と言わんばかりの顔で桃子が梨沙子を見ている。


196 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:49
「え?えっ???」


告白する前に桃子の方から告白された事実に梨沙子の頭が混乱する。
自分が思っていた展開とは違っていて、梨沙子はなんと答えていいのかよくわからない。


「梨沙子が好き。知らなかった?」


梨沙子を見上げてくる瞳。
桃子の目はいつものからかうような目ではなく、その瞳はいつになく真剣で梨沙子はその瞳に心臓が高鳴る。


197 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:51
「梨沙子は?」
「あ、えっと。その、あたしも……」
「あたしも?」
「……好き」


想像の中ではもっとさりげなく大人っぽい告白をしていた。
でも現実はそううまくいかない。
自分が主導権を握るはずが何故か桃子に握られていた。
桃子に促されるように好きだと言わされ、思っていたような大人っぽい展開とはかけ離れた現実。
大人になりたいわけではなかったが、桃子に子供っぽいと思われるのは嫌だった。

いつまでも桃子に主導権を渡していれば、もっと自分の子供っぽい部分が出てしまうことはわかっていた。
だから梨沙子は握られた主導権を取り戻す。


198 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:52
「もも」


梨沙子は名前を呼んで自分より小さな桃子を見つめる。
そして桃子の頬に手を添えた。
桃子に顔を近づけていく。
まだ目は閉じない。

何をされるのか悟った桃子が大人しく目を閉じるのが見えた。
桃子の目が完全に閉じるのを確認してから梨沙子は自分の目を閉じる。


199 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:52
キスをするはずだった。
大人のキスを。
けれど、唇が触れるより先に鼻が触れて桃子が笑ったような気がした。
それでも、そのままなんとか唇を桃子の唇へと押しつけてキスをする。
そして何かの本で読んだようにそのまま桃子の口の中へと舌を入れようとするが、何故か歯が当たってカチリと音がした。
キスをされたままの桃子が喉の奥で笑うのがわかった。


200 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:53
梨沙子が上手く出来なかったキスに落胆して唇を離すと、桃子の唇が笑った形になっているのが見える。
それでも声をあげて笑うのは悪いと思っているのか笑い声は聞こえない。
かわりに自由になった桃子の唇が梨沙子の名前を呼んだ。


「……梨沙子」
「…………なに?」
「へたっぴ」


桃子に下から覗き込まれて鼻をピンと人差し指で小突かれた。
自分でも確かに下手なキスだと思ったが、キスをした相手にはっきり言われるとさすがに傷つく。
うまくいかない告白に、キスに、その全てに誰から見てもわかるほどに梨沙子は肩をがっくりと落とす。


201 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:54
その様子にさすがに悪いことを言ったと思ったのか、桃子が可哀想な程にがっくりしている梨沙子に囁いた。


「……こうやるんだよ」


梨沙子の頬に桃子の手が添えられ、あっと思う間もなく背伸びをした桃子の顔が近づいてくる。
桃子の唇が触れて、その唇に梨沙子の唇が挟まれる。
柔らかな感触に思わず唇を開くと、桃子の舌に梨沙子の舌が絡め取られた。


202 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:55
どうしてこんな風に舌を動かせるんだろう。


そんな事を考えられたのは最初の数秒で後はもう何がどうなったのかわからなくなった。
巧みに動く桃子の舌が、梨沙子の歯を、舌を、唇を奪い取っていく。
それは頭がくらくらするようなキスで梨沙子は立っているのがやっとだった。


「ん、あっ」


唇が離れた瞬間、思いもよらない声が出た。
普段梨沙子が出す声とは少し違う吐息混じりの声。


203 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:56
「感じちゃった?」


いつも見るからかうような笑顔で聞いてくる桃子に梨沙子は顔が真っ赤になる。


「梨沙子、かわいい〜!」


ぶりっこ口調で桃子がそう言うと、梨沙子の髪をくしゃくしゃとしながら撫でてきた。
そのいかにも子供、という扱いに梨沙子は頬を膨らませて非難の声をあげる。


204 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:57
「うるさーいっ!ももが変なことするからっ」
「キスしただけなのになぁ〜」
「ももが変なキスするからだもん」
「変な、じゃなくて。上手なだよ」


そう言うと桃子が下から梨沙子の顔を覗き込んでくる。
桃子と目があうと頬がさらに赤くなるのがわかった。
梨沙子は桃子に子供扱いされることがなんだか悔しくて、桃子の瞳を見つめたまま宣言する。


「今度はもっとうまく出来るもんっ」
「へー。ほんとに?」
「……たぶん」


205 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:58
本当に、と聞かれると自信がない。
桃子がそんな梨沙子ににやりと笑って言った。


「梨沙子が上手くなってもさ。……それでも、ももの方がもっと上手くできるよ?」


桃子の指先が梨沙子の唇をなぞった。
今さっきしたばかりのキスの感覚が蘇る。


梨沙子は桃子がキスしやすいように屈むと、柔らかな唇が近づいてくるのを待った。




206 名前:『 君とキス 』 投稿日:2007/06/23(土) 00:58



『 君とキス 』



- END -

207 名前: 投稿日:2007/06/23(土) 00:59

『 君とキス 』
終わりです。

208 名前: 投稿日:2007/06/23(土) 01:07
>>188 さん
思いっきり鈍感にしてみましたw


>>189 さん
鈍感な舞美とちょっとエッチな栞菜、が私的にツボです(*´▽`)。


>>190 さん
ありがとうございます。
168の件については、わがままと受け取ってはいませんのでお気になさらずに〜。
色々な感想をもらえるのはとても嬉しいので(・∀・)


>>191 さん
今回はググる必要ナシです!w

>>192 さん
短所を忠実に表現!……とかいってw


209 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/23(土) 03:15
カワイイ話で良いね。
210 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/23(土) 23:51
桃子×梨沙子 かわいいいいいいいいいい〜。
211 名前: 投稿日:2007/06/25(月) 23:30



『 君に望むもの 』



212 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:31

熊井ちゃんから好きだって言ったんだよ。
あれは告白だよね?
だから、付き合ってるんだよね。
恋人同士なんだよね?うちら。


213 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:32
目の前には屋上の手すりにしがみつくようにして景色を眺めている友理奈の背中。
千奈美は子供ようにはしゃいでいる友理奈の背中を見つめながらため息を一つついた。


付き合う前となんら変わりがない。
ただ一つ変わったことがあるとすれば、寝る前の電話で友理奈が「好き」と言ってくれることだけだった。
最初はそれで嬉しかったし、眠れないようなドキドキした気分になれた。
お互いに「好き」だと言い合うだけで幸せだった。


214 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:32
あれから何ヶ月たったのだろう。
他のメンバーと自分の違い。
それは寝る前のたった一言。

もっと違った何かが欲しいと千奈美は思う。
自分が友理奈の恋人だと思えるようなこと。
そんな何かが欲しかった。


215 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:33
熊井ちゃんはどう思ってるんだろう。
恋人同士だって思ってたのは自分だけなのかな。
好きって付き合うってことじゃなかったのかな。


216 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:34
最近、ずっと千奈美を支配している気持ち。
元気ないね、と心配してくれる友理奈はその気持ちに気がついていない。
自分を気遣ってくれる友理奈の気持ちは嬉しい。
けれど、元気がない元凶は友理奈。
千奈美はもう一度小さくため息をつく。

同じ空間にいるはずなのに友理奈が何故か遠く感じられる。
手を伸ばせば触れられる距離にいるはずなのに、捕まえることが出来ない。
そんな気がした。
だからなのかもしれない。
見飽きた屋上の景色にさえはしゃぐ友理奈の背中を見つめながら、思わず昼のメロドラマみたいなセリフを言ってしまったのは。


217 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:35
「ねぇ、熊井ちゃん。あたしって、熊井ちゃんのなに?」
「え?ちぃはちぃだよ」


手すりにしがみついたままの友理奈から返事が返ってくる。
それはほぼ予想通りの返答だった。


「そりゃあたしはあたしだけどさ。なんかさー、もっとこうないの?」
「もっとって?」
「だからさ、ほら……」
「ほら?」


218 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:38
聞いてみたのはいいものの、いざこのような展開になると千奈美は言葉に詰まってしまい、思いつきでこんなことを聞いてしまった事を後悔する。
友理奈にこのようなことを聞いても思い通りの返事など返ってくるわけがない。

スタイルが良くて綺麗で大人っぽい。
けれど見かけと中身はかなり違っていて、中身は子供のよう。
そんな友理奈にこんなことを聞いていても無駄だ。
それならば何をどうすればいいのか。


219 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:38
「熊井ちゃん」


自分が何をしたいかを理解して千奈美は友理奈の名前を呼ぶ。


本当は千奈美が自分から言う前に友理奈にしてほしかったこと。
それを本人に言うのはとても恥ずかしくて言いにくい。
けれど、言わないことには友理奈には一生伝わらないだろう。


220 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:39
「……キス」
「え?」
「熊井ちゃんとキスしたい」
「ええっ???」


驚いてこちらを振り向いた友理奈に、だって恋人同士じゃん、という千奈美の呟きが聞こえたかはわからない。
けれど、千奈美は友理奈の返事を待たずに背伸びをして友理奈との身長差を縮める。
そして驚いて目を白黒させている友理奈の唇に唇で触れた。


221 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:39
柔らかな唇。
驚いた友理奈が目を閉じたかどうかもわからない。
驚いているのに逃げない友理奈がなんだか愛おしい。


もっと触れていたい、とも思ったがなんだか恥ずかしくて千奈美は軽く触れただけで唇を離した。
そして、短いキスが終わったと同時に顔を真っ赤に染めた友理奈が大声をあげた。


222 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:40
「ちょっ、ちぃ!なに、急にっ」
「だって、熊井ちゃんあたしに好きだって言ったじゃん。……うちら、付き合ってるんじゃないの?」
「そうだけど。……けど、付き合うってこういことなの?」
「そんなのわかんないけど。……でも、こういうこともっとしたいって思わない?」


唇が離れた瞬間、もう一度触れたいと思った。
何度でもキスしたいと思った。
でも、それは自分だけなのだろうか。


そんなことを考えた。
そして友理奈も同じ気持ちであって欲しいと願った。


223 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:41
けれど、友理奈は黙ったまま答えない。
その間に不安がどんどん大きくなり千奈美は友理奈の顔を見ていられなくなる。
なんだか辛くなって顔をそらそうとした時、友理奈が無言で頷いたのが見えた。
赤い顔のまま子供のように頷く友理奈が可愛くて、千奈美は嬉しくなって一つ提案する。


「……今度はさ、熊井ちゃんからしてよね」
「……うん」
「熊井ちゃんは大きいからさぁ〜。こっちからキスしにくいんだよね」


224 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:42
千奈美はにやりと笑って友理奈と自分の背を比べる真似をしてから駆けだした。


「むー!!ちぃ、ひっどーい!!」


気にしていることを言われた友理奈が大声をあげて逃げる千奈美を追いかけてくる。


225 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:43

……熊井ちゃん、捕まってあげるから。
あたしを捕まえたら約束通り、今度は熊井ちゃんからキスしてよね。



振り返るまでもなく、すぐそこまで友理奈が来ていることがわかる。
逃げる背中を捕まえて欲しくて千奈美は走る速度を落とした。




226 名前:『 君に望むもの 』 投稿日:2007/06/25(月) 23:43



『 君に望むもの 』



- END -

227 名前: 投稿日:2007/06/25(月) 23:44

『 君に望むもの 』
終わりです。

228 名前: 投稿日:2007/06/25(月) 23:48
>>209 さん
エロから少し離れて可愛いお話しを('-'*)


>>210 さん
私の中の梨沙子イメージ像です(´▽`)

229 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/26(火) 01:22
熊井ちゃんカワイイね、キレイなのに。
230 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/26(火) 23:40
いいですね。
次回も楽しみに待ってます。
231 名前: 投稿日:2007/06/27(水) 01:32



『 好きの境界 』



エロあり。
232 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:34

「んっ。もも、や…だっ。…あっ……あぁっ」


雅の口から押さえようとしても押さえきれない声が漏れる。


何度、身体を重ねたんだろう。


最初に桃子に言われた。
この行為は梨沙子のかわりだと。
桃子が梨沙子と付き合っているのは知っていた。そしてその身体に触れていないことも聞いていた。
だから雅はそれでよかったし、最初からそのつもりだった。


233 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:36
誘ったわけじゃなかった。
なんとなく。
わかりやすいきっかけがあったわけではなかったけれど、お互い欲求不満だったのかもしれない。


桃子は梨沙子に触れる事が出来なくて。
雅は桃子に触れる事が出来なくて。


お互いの不満がこういう形にかわったのだろう。
雅と桃子はお互いの不満を解消する為に、初めて抱き合った日からこの行為を何度も何度も続けていた。


234 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:36
ただ、雅が桃子を好きだ、ということを桃子は知らない。
……きっと、知らないはずだ。


知られたらどうなるんだろう?


雅は時々そんなことを考えて怖くなる。
この行為が終わりを告げるのか。
それとも変わらずに続いていくのか。
雅にはわからなかった。


235 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:37
「なに考えてるの?……あんまり気持ち良くないとか?」


雅の胸に顔を埋めたまま桃子がそう尋ねてきたが、返事をする事が出来なかった。
何故なら、桃子が雅の返事を待たずに胸の中心に歯を立てたからだ。


236 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:38
「ああっ!やぁっっ」


雅の口から自分の耳を塞ぎたくなるような高い声が出た。
桃子は雅の反応に満足したようで、歯を立てたまま舌先でその部分をコロコロと転がすように愛撫してくる。
それと同時に、桃子の手が雅の胸を撫で横腹、そして尻へと伸びていく。
その愛撫に雅の身体は自分の意志とは関係なく反応して声が止まらない。
押し殺すことの出来ない声が部屋に響き、ベッドの軋む音がやけに生々しく感じられる。


237 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:39
「……良くない、わけじゃないみたいだね」
「もも、もも……。もっと」


桃子の声に手に唇に反応して声が止まらない。
雅はもっとその感触が欲しくて桃子にねだった。


「みーやんのえっち」


238 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:40
耳元で桃子の声が聞こえた。
くすくすと笑いながら、桃子が雅の身体を抱き起こす。
雅がベッドの上に足を伸ばして座った格好になると、桃子が背後に回る。
そしてそのまま背中から抱きしめるようにすると、覆う物がない雅の身体の上にいやらしく手を這わせてくる。
背中にキスを何度もされ、上半身から下半身へ手慣れた指先が移動していく。


239 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:40
「あっ…はああっ」


雅の息がどんどん荒くなっていく。
自分でもどこから出しているのかわからないような普段とは違う声が出る。
聞きたくなくてもどうしても耳に入ってくる自分のいやらしい声に、身体の中から何かがあふれ出してくる。


240 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:41
……触って。


身体の中心が熱くて欲望が声に出そうになった。
けれど、それを直接桃子に伝えようとすることは理性が邪魔をする。
雅は声に出す変わりに自分の身体の上を動き回る桃子の手を握ると、その手にキスをした。


「ん?」
「……もも」
「……足、開いて」


焦らすように太ももを撫でていた桃子の手が止まり、雅の次の行動を待っている。


241 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:43
部屋の中には二人。
桃子以外に誰かが見ているわけではない。
けれど、なんとなく足を開くことがためらわれた。


「開かないと触れないよ?」


熱い吐息混じりの声で桃子に囁かれて耳にキスをされる。
足の付け根から膝にかけてゆっくりと桃子の指先が降りていき、膝の下に手が入り込む。
雅は膝を立てるようにして桃子に足を開かれた。
そして、太ももを撫でていたもう片方の手が足の間を割って、雅の一番敏感な部分へと入り込んでくる。


242 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:44
「んっ、あぁっ」


雅は待ち望んだ感覚に甘い声を上げた。

足の間に入り込んだ桃子の指が溢れ出た液体をすくい取る。
桃子に絡め取られた液体が音を立てて、雅は今自分がしていることを認識させられる。

ぬるぬるとしたそこを桃子の指が何度も往復し、そのたびに自分の口からいやらしい声が漏れる。
桃子に触れられた部分が熱を帯びて何も考えられない。


243 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/27(水) 01:46
「ももに触って欲しいのはココ?」


そっと桃子の指が雅の一番敏感な部分に触れる。
軽く触れられただけ、それなのに雅はそれだけで達しそうになる。


「はぁっ…んっ!だ…めっ」


身体を大きく震わせて喘ぎ声を上げる雅の後ろで桃子がクスリと笑う。


244 名前: 投稿日:2007/06/27(水) 01:49

本日の更新終了です。


今回の『 好きの境界 』は今まで書いた短編との繋がりはありません。
独立した別のお話になります。

245 名前: 投稿日:2007/06/27(水) 01:57
>>229 さん
熊井ちゃんの綺麗だけれど子供っぽいところが好きですw


>>230 さん
ありがとうございます。
今回は可愛いお話しから遠ざかりました(;´▽`)……。



えーと。
今回はちょっとお願いがありまして。
皆さんから感想貰えるのはとても嬉しくて励みになるのでレスウエルカム!!どんどんカモーンなんですが、書き込みの際はsageで書き込んで頂ければと思います。
バリバリ全開のエロが多いので、上がっているとちょっと書きにくいのです。
ご協力お願いいたしますm(__)m

246 名前: 投稿日:2007/06/27(水) 01:57




247 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/27(水) 18:51
そこで切っちゃうんですか!

と言いつつ良かったです
雅ちゃんって妙にこういう役はまりますね
248 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/06/27(水) 23:57
やっぱ、みやももイイなぁ〜。
雅ちゃんって純粋なんだけどムッツリな感じですよねw
249 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/06/28(木) 00:59
可愛いお話もエロもいいですよね
ももXみや好きw

sage入れるの忘れました。
ごめんなさい。
250 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:20
触られたらおかしくなる。
でももっと触ってほしい。


駄目なのか、もっとして欲しいのか自分でもよくわからない。
けれど身体は正直で、一番敏感な部分に置かれた桃子の指に自分のそこを擦りつけるように雅の腰が動く。


251 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:21
「……ほんとやらしいなぁ、みーやんは」


からかうように桃子に言われた。
あらためて桃子に言われて自分の行動に顔が赤くなる。
恥ずかしいはずなのに、身体は桃子を求めていて止まらない。

桃子にもその欲求は伝わったようで、桃子の指がその部分を優しく転がすように撫でる。
その動きに雅は何度も達しそうになるが、そのたびに桃子に触る位置を少しずらされてしまう。


252 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:22
高まりきった身体。
身体の中に閉じこめられた熱。


どうしていいかわからなくて、雅はうわごとのように桃子の名前を呼ぶ。
何度その名前を呼んだのか。
吐息と桃子の名前が混じりあった頃、桃子に言われた。


253 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:24
「指、挿れるよ」


雅は桃子に身体の中心へ指を押し当てられると、勝手に背中がびくっと反り返り思わずシーツを掴む。
必要以上に身体が硬くなる。

何度も繰り返しているはずの行為なのに、雅は未だに桃子の指が自分の中に入ってくることに慣れることが出来ない。
梨沙子に対する罪悪感とこれから起こることに対する期待感がごちゃまぜになったような気持ちが身体を支配して落ち着かない。

254 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:25
そしてこんな時、桃子は身体を硬く強ばらせている雅の頬に優しくキスをしてくれる。
雅はそのキスが大好きだ。
もしかしたら、このキスをもらう為にこのような反応になってしまうのかもしれない、と雅は思う。
そしてそのキスには必ず先がある。
全てを忘れてしまうような快感がその先に待っている。


くちゅ、といういやらしい音が雅の足の間から聞こえる。
自分の身体の中に桃子が入り込む音。
期待していた身体から溢れ出る液体がその音を大きくする。


255 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:26
「やぁっ」


口を塞ぐのも間に合わず思わず甲高い声が出る。
身体の中心に埋め込まれた桃子の指がゆっくりと動き出す。
雅の身体の中を桃子の指が優しく何度も擦り上げる。


「みーやんのここ、すごくえっちだね」
「ちがっ……うっ」
「そう?ももの指、すごく締め付けてる」


256 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:28
わかっている。
そんなことはわかってはいるが雅の身体は自分の思うように動かず、桃子の指に絡みつく動きを止められない。
いやらしい自分の身体が恥ずかしくてどうにかなりそうで、それでも桃子の指がもっと欲しいと求めてしまう。


「……どうする?指、増やして欲しい?」


今、自分の身体の中に入っている桃子の指だけでも十分なはずなのに、そう聞かれると身体の中が条件反射のように反応して雅は桃子の指を今以上に濡らしてしまう。


257 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:29
桃子の指が埋め込まれているその部分から聞こえる水音。
桃子が溢れ出した液体を雅に教えるように指を動かしている。



わざとだ。
知っているのにももはいつも聞く。
そしてうちが答えるまでしてくれない。



「みーやん?」
「……うん」


コクリと頷いた雅の中から桃子の指が一度引き抜かれる。
引き抜かれる快感に一度、雅の身体が反応する。
そして次の瞬間、二本の指が雅の中へ押し込まれた。


258 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:31
「んっ、あぁっ!……ももっ!」


先程までのゆったりとした動きとは確実に違う動き。
増やされた指が中で暴れて耐えられない。
出し入れされる度に響くくちゅくちゅという水音が快感に拍車をかける。
自分の中で暴れる指が、ある部分を擦り上げた。


桃子の2本の指が雅の内壁を強く押してくる。
雅はその動きを止めるように桃子の指を締め付ける。
それでも桃子動きは止まらない。
今までよりもっと強く激しく雅の身体の中を擦り、奥へと進入していく。


259 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:32
シーツを掴んでいた手はいつのまにか桃子の腕を握りしめていた。
桃子の空いた手が雅の首筋を撫でる。
身体の中では相変わらず桃子の指が動き回っている。
掠れた高い声を止めることが出来ない。


もう耐えられなかった。
もっと長く桃子を感じていたかったが、雅はそれを我慢することが出来なかった。
体中を駆けめぐる痺れるような感覚。


「ももっ」


いつものように桃子の名を呼んだ。
弓なりにしなる背中。
気がついた時には体中の力が抜けていて、背中から桃子に抱きしめられていた。




260 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:33


誰にも言えない秘密の行為が終わった後は少しだけ幸せで悲しい。
終わってしまえば気だるい身体に残る桃子の香りが消えていくだけ。
桃子が雅のもとから去って梨沙子のもとに帰るだけ。

こんな時にいつも気になるのは梨沙子のことだった。
雅が欲しくても手に入れられないものを手に入れた梨沙子。
嫌いではない。むしろ大切な妹のような存在。
奪えるものならとっくに奪っていた。
けれど、桃子は大切な梨沙子の相手で奪えるわけがない。


261 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:34
なんで相手が梨沙子なんだろう。
どうして他の人じゃなかったんだろう。


考えても桃子が好きな相手が変わるわけではない。
雅は堂々巡りにも似たその想いをとりあえず胸の奥にしまい込んで、桃子と初めて身体を重ねたあの日以来聞いていない質問をしてみる。


262 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:36
「もう、梨沙子とは……。その、したの?」
「まだだよ。だって梨沙子は子供だし。……身体は大人だけど、心がね」


梨沙子がまだしていない行為をしているという事実。
それは背徳感と桃子を独占しているという優越感にも似た気持ちを雅に持たせる。
でもそれは長く続くものではない。
梨沙子もいつまでも子供のままではない。
そう遠くないいつか大人になる。


263 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:37
「……梨沙子が好きなの?」
「うん、好き」


当然だ。
梨沙子が好きなんてことは見ていればわかる。
雅はそんな当たり前の質問をした自分に軽く後悔して、本当に聞きたかったことを考えた。


『……あたしのことは?』


本当に聞きたいことは口には出せない。
だが、まるで雅の心の中を読んだかのように桃子が言葉を続けた。


264 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:39
「みーやんの身体も好きだよ」


クスクスと背後で笑いながら桃子が言った。


梨沙子への想いと自分への想い。
その境界線はどこなのだろう。
その境界がわかったら、桃子は自分を身体だけじゃなく好きになってくれるのだろうか。
そんなことを考えていると涙が出そうになってきて、雅はそれ以上考えることをやめた。


265 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:44
現実から逃れるようにして桃子へ向けていた背中に吐息を感じる
肩胛骨のあたりに押しつけられる唇。


さっき達したばかりの身体は敏感で、それだけで雅は声が漏れそうになる。
背中から伸ばされた桃子の腕は、雅の胸の下で交差してぎゅっと抱きしめられた。


「ねぇ、もう一回しよ?」


桃子の手は返事を待つたずに雅の感じる部分へと伸びていて、雅は返事のかわりに甘い声をあげた。





266 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:45


別に身体だけの関係だっていい。
少しでも長くいられればそれでいい。
ほんのひととき独占出来ればそれで幸せ。






267 名前:『 好きの境界 』 投稿日:2007/06/28(木) 01:45



『 好きの境界 』



- END -

268 名前: 投稿日:2007/06/28(木) 01:46

本日の更新終了です。

このお話しはもう少し続く予定です。

269 名前: 投稿日:2007/06/28(木) 01:52

>>247 さん
微妙なところで切ったので早めに更新しました!
私も雅ちゃんにはこういう感じが似合うかなぁ、と思い書いてみました('-'*)


>>248 さん
激しく同意!w
恥ずかしがり屋のムッツリさん萌え(*´▽`)


>>249 さん
桃×雅だとどうしてもエロに傾いてしまうわけですが……。何故なんだろうw
sageのことはお気になさらずに〜。



270 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/28(木) 02:38
エロエロだけど切ない話になりそうですね。
それにしても桃はどの話でもテクニシャンだなぁウラヤマシイw。
271 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/29(金) 00:08
やばい……。
エロ桃×雅最高です!!
272 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/30(土) 19:08
今までベリ工に全然興味なかったんですがこの話を読んでいたらベリ工が凄く気になり始めましたwwwww

なのでいつもは書き込んだりしないんですが今回、思わず書き込んじゃいましたw

すごく大好きです!
頑張ってくださいww
273 名前: 投稿日:2007/07/01(日) 00:47



『 現実と欲望 』



( 『 好きの境界 』の続きになります )
エロあり。

274 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 00:48
裸で抱き合う前。
いつもの行為をする前に言われた。


「昨日ね。もも、梨沙子としたの」


雅の目の前が真っ暗になった。
桃子の言葉を理解したくなかった。
けれど、すぐにその意味を理解してしまう自分がいた。


275 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 00:49
「それって。……もう、終わりにしたいってこと?」
「みーやんはどうしたい?」


すっぱりと自分を切ってくれれば楽になれたのに。
ぼんやりとした頭で雅は思った。
なのに何故、桃子は自分に選ばせるのか。



276 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 00:50

ももはずるい。
梨沙子の手を取ったままうちの心を縛りつける。
絡んだ鎖はもうほどけない程に絡まって逃げられないのに。
こんな鎖、ももから切ってくれればいいのに。



277 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 00:51
どうしたいかなんて答えは一つしか思い浮かばない。
選ぶ立場になったら答えは決まっている。
だから、雅は桃子に選んで欲しかった。


「……梨沙子の身体の方がよかった?」


何かの物語みたいな陳腐な言葉。
そんな言葉しか出てこなかった。

278 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 00:52
比べたいのは身体じゃない。
叶わない願いだけれど気持ちが欲しい。
でも、それは本当に叶うはずがない望みだから雅は口に出すのはやめた。

桃子から答えはなかなか返ってこなかった。
けれど、長いような短い時間がたった後に答えのかわりに聞かれた。


「ももとするの、いや?」


279 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 00:53
桃子の表情からは何を考えているのか読み取れなかった。
けれど、読み取れたところで意味もない。
どんな意味があろうと雅は『嫌だ』とは言えなかった。
いや、『嫌だ』なんて選択肢は思い浮かばなかった。
だから桃子に『ずるい』とは言えなかった。

かといって抱いてくれとも言えない。
雅は言えない言葉のかわりにいつものように桃子の手にキスをした。





280 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 00:55

始まりはいつもと同じ。
けれど、身体はいつも以上に桃子を欲しがっていた。

桃子を独占したいからなのか。
梨沙子への嫉妬からなのか。
理由はわからなかったし、知りたくもなかった。


お互いの素肌が擦れ合う。
それだけで雅の身体が熱くなる。
桃子の手がいやらしく雅の素肌の上を動き回る。
聞いていられないような声が自分の中から出てくる。


281 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 00:57
「みーやん、今日すごいね。……すごく濡れてる」


身体の中で一番敏感な部分。
雅の足の間に指を這わせている桃子に囁かれた。


雅は首を横に振って答えると、桃子がわざとその水音が聞こえるように指を動かした。


ぬるぬるとしたそこからいやらしい音が聞こえてくる。
そしてその音が聞こえなくなったと同時に、そこからすくい取った液体にまみれた指を桃子が口元に差し出してきた。


282 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 00:58
「舐めて」


桃子に言われるままに雅は差し出された指に舌を這わせた。


「ね?すごく濡れてるでしょ」


耳元で囁かれて、さっきまで桃子の指が置かれていたそこがもっと熱くなるのがわかる。
口元に差し出された桃子の指についた体液を綺麗に舐め取ると、指がまたその部分へ舞い戻ってきて雅は今まで以上に身体が熱くなる。
それが桃子にも伝わるのか、いつも以上に激しく指を動かされた。
桃子の濡れた指が絡みつくようにその部分を刺激する。
軽く弾かれては雅の身体が踊る。
意地悪な指が雅を責め立てる。


283 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 00:59
「どんどんえっちになってくね、みーやんは」
「やぁっ、言わ…な…い……はぁんっ」


耳元で桃子の低く掠れた声で煽られ、雅はもっとその指が欲しくなる。
言って欲しくない言葉を桃子に言われる程に快感が増していく。
何かを言われるたびにいやらしくなっていく自分がわかる。
自分の意志とは無関係に腰が動いていくことを止められない。
逃げる桃子の指を追いかけていく。
身体の奥がズキズキと痛い程に桃子を欲しがっている。

284 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 01:01
唇からは喘ぎ声だけ。
欲しい物を欲しいという声を出すことが出来ない。
けれど、踊るように動く指が雅の身体の中心に置かれた時、雅の身体が硬くなると同時にその部分がピクリと桃子の指に反応を返す。
声に出せない声を雅の身体が桃子に伝えていく。


「みーやんのココ、いつもよりももを欲しがってる」
「ちが…うっ」
「違わないよ。……ねぇ、ももが欲しいって言って?」


285 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/01(日) 01:02
そこに指を置いたまま、雅の返事を待つ桃子がキスを降らせていく。
唇に、耳に、肩に、首に、胸に。
身体中にキスを刻みつけられていく。
雅はそのキスで桃子も自分の身体を欲しがっていることがわかる。
求められていることが嬉しくて、雅がその感触に言葉を返すことすら忘れていると桃子に答えを催促された。


「みーやん、言って」
「……ほし…い。ももが、ほし…い」


286 名前: 投稿日:2007/07/01(日) 01:03

本日の更新終了です。

287 名前: 投稿日:2007/07/01(日) 01:04



288 名前: 投稿日:2007/07/01(日) 01:11

>>270 さん
桃子がテクニシャンになるのは仕様ですw

>>271 さん
今回もエロ桃になってしまいましたw

>>272 さん
ありがとうございます。
おお!ベリファン開拓の瞬間?w
なかなか面白いグループなのでさらなる興味を!(・∀・)


289 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/01(日) 03:10
桃が梨沙子とっ!
短編集なのに最初の話が印象的で…、
もも×みや以外のCPに若干の違和感を覚えるのは作者の術中に嵌ってるのか?。
290 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/01(日) 20:16
雰囲気がいつ読んでも良いですね。
続きが気になります!
291 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:39
自分の身体と桃子の言葉に逆らえず雅は言葉を返す。
その返事とほぼ同時に、押し当てられていた桃子の指が雅の身体の中に潜り込む。
いつもなら身体の中に指が入り込む感触に身体が硬くなる。
けれど、今日は身体が強ばるより先にその快感に耐えられず声が出た。


「あっ、はああっん」


指を入れられただけで身体がしなる。
唇から漏れるいやらしい声が抑えられない。
いつもより感じていることがわかる。
雅が自分でも驚くような身体の反応に桃子が心配そうにこちらを覗き込んでくる。


292 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:40
「……平気?」
「う…ん」


荒い息を整えてなんとか返事を返すと、桃子の指が身体の中で暴れ出す。
雅の身体を押し開くように桃子の指が動く。
そんな桃子の指を絡め取るように身体の中が伸縮する。


「はあっ、あっ」


息苦しい。
身体の奥が疼く。
いやらしく指を飲み込んで離さない。
もっと欲しくて誘うような声が止まらない。


293 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:41
「そんなに欲しかったんだ?」


身体を撫で上げられ、桃子に嬉しそうに囁かれた。
そんな桃子の声を聞くだけで強ばった身体が震えた。



欲しいのは指だけじゃない。
ももが欲しい。
ももの全てが欲しい。



叶わぬ願い。
それでも身体は求めることをやめない。


294 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:42
桃子の指を締め付け、何かをねだるように身体がしなる。
雅の中で桃子の指が動くたびに足の間から聞こえる音が大きくなるのがわかる。
次第に早くなっていく桃子の指の速度に追いつめられていく。
声を出すことも忘れて、息を吸う。
身体の奥まで入り込む指に期待する。
けれど、その指は雅の期待に反して急に動きを止めた。


「……指だけじゃ足りないみたいだね」


桃子に悪戯っぽい声で囁かれ、身体の奥まで埋め込まれていた指を引き抜かれる。
引き抜かれる感覚に身体が跳ねて、くちゅ、という音がやけに大きく聞こえた。
気がついた時には桃子の身体が雅の目の前から消えていた。


295 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:43
下半身に熱い吐息を感じる。
指とは違う感触に雅の身体が逃げようとする。
けれど、足の間に顔を埋めた桃子に腰を押さえられ動けない。
逃げる腰は固定され、そこに桃子が舌を這わせるのがわかった。


「やぁっ、んっ。だ…めっ!そこ……。恥ず…かし…い」


雅が声をあげても無駄だった。
桃子の舌が雅の身体から溢れ出た液体を舐め取る音しか聞こえない。


296 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:44
子猫がミルクを舐めるようなぴちゃぴちゃという音。
指とは違う柔らかな感触。
一番見られたくない部分を見られているという事実。


恥ずかしい、と思えば思う程、雅の身体が反応する。
そして反応すればするほど、下半身から聞こえる音が大きくなる。

舌で敏感な部分を舐め上げられ吸われる。
それだけで果てそうになるのに、そこを舌で転がされたまま桃子に指を奥まで押し込まれた。


297 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:45
「あっああっ」


一気にためらうことなく埋め込まれた指に雅の喘ぎ声が大きくなる。


身体が快感だけに支配される。
他のことが考えられない。
桃子以外わからなくなる。


298 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:45
「はぁっ、あっ。なん…か、変…になりそ…んっ」
「いいよ、なっても」


そう言った桃子の指が大きく動いた。
這い回る舌に耐えられない。
雅は逃れられない快感に身を任す。


「ん、あっ、ももっ!ももっ」


雅は何かにすがりたくて桃子の名前を呼んでシーツを掴んだ。
全てを桃子に絡め取られて頭が真っ白になった。





299 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:47

なんだかやけにいやらしくなった自分が恥ずかしくて桃子の顔がまともに見られない。
雅は赤い顔をシーツで隠してベッドに潜り込む。


「こういうみーやんもいいね」


笑い声で桃子が髪にキスしながらそう囁いた。
余計に恥ずかしくなって雅が頭までシーツにくるまると、そのシーツの端が引っ張られる。
シーツを掴む力を弱めるとゴソゴソと桃子が隣に入り込んできた。
そしてすぐに聞こえてくる寝息。
すやすやと眠っている桃子を見ながら雅は考える。


桃子と梨沙子に身体の関係が出来ても終わりは来なかった。
じゃあ、いつ終わりが来るんだろう。
考えてもわかるわけがなかった。


300 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:48
この関係。
この気持ち。
終わってしまえばいいのに。
何度もそう考えた。けれど、結局、自分で終わらせることは出来なかった。


触れられるだけで全てを忘れてしまう。
その体温に全てを溶かされる。


そんな相手との関係を断ち切る方法など思い浮かぶわけがなかった。
きっと続いていくことを一番望んでいるのは自分。
だから、この先何度もこんな夜を過ごすのだろう。




301 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:49

終わりの日を待ち望みながら夜を過ごす。
終わらない夜を待ち望みながら夜を過ごす。
朝になれば消えてしまう相手を思いながら夜を過ごす。


朝も昼も夜も。
一緒にいたい。


叶わない望みが支配する夜。
雅は眠れない夜を今日も過ごす。




302 名前:『 現実と欲望 』 投稿日:2007/07/02(月) 01:49



『 現実と欲望 』



- END -

303 名前: 投稿日:2007/07/02(月) 01:50

本日の更新終了です。

304 名前: 投稿日:2007/07/02(月) 01:50

305 名前: 投稿日:2007/07/02(月) 01:54

>>289 さん
……ふふふ。
桃×雅仕様の脳に洗脳完了!w
といいつつも、桃×梨も結構お気に入りだったりします。

>>290 さん
ありがとうございます。
もうしばらく続く予定なのでまったりお待ちください。

306 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/02(月) 13:27
雅がせつないです。
みーやん,頑張れ!
307 名前: 投稿日:2007/07/04(水) 01:55



『 H 』



>>211-226
『 君に望むもの 』 続編になります。
*微エロ


308 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 01:56

「ちぃ、ちょっと!!待ってってば!!」


慌てふためいた友理奈の声。
その声に千奈美の行動が止まる。




309 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 01:57

いつものように友理奈とキスをした。
友理奈は何度キスをしても慣れないらしく、いつも困ったような顔をしてキスをする。
もう何度したかわからない友理奈からのキス後、千奈美からキスを返した。
そして千奈美はそのまま友理奈を押し倒した。
ベッドのスプリングが軋む音がして、それがこれから自分がしようとすることを千奈美に意識させる。
千奈美の身体の下には何が起こったのかわからない、これから何が起こるのかもわからない顔をした友理奈がいた。


いつも友理奈からは行動を起こさない。
何かのきっかけを作るのはいつも千奈美だった。


キスから先。
慌てる程の事ではない。しかし、待っていても何も起こらないのはわかりきったことだ。
それなら、いつものように自分からきっかけを作ろうと思っただけのことだった。


310 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 01:58
だから、千奈美は押し倒した友理奈のブラウスのボタンを外した。
そしてそこで何をされるか理解した友理奈が予想通り大声を上げた。
別に驚くような展開ではなく予想の範囲内だったので、千奈美は冷静に言葉を返す。


「……なに?」
「ねえ、あのさ。やじゃないんだけど、ちぃならいいんだけど」
「あたしも熊井ちゃんならいい。熊井ちゃんとしたい」
「うん。でもね、こういうのってどうやってやるの?」
「え?」


友理奈から予想外の質問をされ、千奈美は思わず間抜けな声が出る。


311 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 01:59
これからすること。
予備知識はある。
大体どんなことをするのかはわかる。
けれど、それを説明するのは困る。


友理奈への返答をぐるぐると頭の中で考えていると、千奈美の考えていることとは違うことを友理奈が質問してくる。


312 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:00
「ちぃがしてくれるの?それともあたしがするのかな?」
「へっ?……わかんない」


思わずそう答えてから千奈美は考えた。
誰がするのか。
質問されてみて千奈美はそれについて考えていなかったことに気がつく。
考えていなかった、というより、きっかけを作ればあとはなんとなく流れでどちらがするか決まるだろうと思っていた。
行為をする前にどちらがするのかを決めるのは想定外だった。

そんなことを考えていると、千奈美の身体の下にいる友理奈が困った顔で口を開いた。


313 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:01
「あたしもわかんない」


一瞬の沈黙。
そして次に口を開いた時は二人同時だった。


「……ちぃ、どーすんの?」
「……どーしよ、熊井ちゃん」


314 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:02
千奈美はベッドの上で自分が押し倒した友理奈と見つめ合う。
急に静かになった部屋に時計の秒針がカチコチと鳴る音がやけに響く。
思考がまとまらない。
こんなとき普通ならどうするべきなのか千奈美が少ない知識を総動員して考えていると、先に考えをまとめたらしい友理奈から先に意見を述べられる。


「あのさ、やっぱ誘った方がするんじゃないの?」
「そういうもんなの?」
「わかんないけどそんな気がする。でも無理ならしなくても」
「やる」
「やるの?」
「上手くできないかもだけど……」


315 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:03
断言したはいいが、自信はない。
そしてムードもなかったが、千奈美は細かいことは気にしないことにする。
そして千奈美の下にいる友理奈もムードを気にしているようではない。


勢いとやる気。


それでなんとかなる気がする。
そしてそれでなんとかするのは間違っている気もするが、千奈美はあえてそこには目をつぶって先に進むことにする。


316 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:04
「熊井ちゃん。服、脱がすね」
「ちぃ、電気。なんか見られるの恥ずかしいから」
「うん」


千奈美は言われた通りに電気を消してから、友理奈の服に手をかけた。
急に暗くなった部屋に目が慣れない。
暗がりの中、手探りで服を脱がせる。
下着は外そうか迷って、それを取ってしまうと友理奈が恐がりそうで外さずにおく。

自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる。
ベッドの上に二人。
それは自体は珍しいことでもないが、片方が服を脱いでいる、しかもそれを脱がせたのは自分という事実がなんだか恥ずかしくて体温があがっていく気がする。

317 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:04
唇に唇で触れる。
いつもと変わらないキス。
けれどそれさえも身体を熱くする。


「……ちぃは脱がないの?」


お互いの緊張した唇が離れると友理奈が恥ずかしそうに千奈美を見上げてきた。


「脱いだほうがいい?」
「いいっていうか。……あたしだけ脱いでるのなんか、ほら」
「ん、じゃあ脱ぐ」


318 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:06
一瞬、服を脱ぐことに躊躇して、明かりが消えていることを思い出して一気に脱いだ。
友理奈と同じ下着姿になってから、友理奈の下着を脱がさずにおいてよかった、と自分も脱ぐことになった千奈美は安堵する。


問題はこの先。
何をどうすればいいかはわかる。
けれど、それがうまく出来るかはわからない。

迷いながら千奈美は友理奈の肩に触れる。
触れた友理奈の素肌も自分の手も熱い。
肩ぐらいよくステージ上やレッスンで直接触れている。
それなのに変に緊張して息苦しくなるほど心臓が痛い。
床に落ちた脱がせた服がやけに気になる。

千奈美と同じように緊張しているのか友理奈の肩に力が入っているのがわかる。
その手をすべらせて胸元まで持ってくると友理奈の身体がぴくんっと跳ねた。


319 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:07
「大丈夫?」
「うん」


お互いにうわずった声。
いつもなら笑ってしまうような緊張した声を笑い飛ばすことも出来ない。

千奈美は胸元に置いた手でそのまま友理奈の胸を包み込む。
その手を動かすのはためらわれて、胸元にキスを落とした。
いつもキスをする唇とは違う感触に頭がくらくらする。
その感触に千奈美はもっと友理奈に触れたくなって色々な場所へキスをする。そして指先で友理奈に触れていく。

千奈美がキスをして指先で触れるたび、友理奈の閉じていた口から息が吐き出され、その息が次第に色づいていくのがわかる。

320 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:10
肩胛骨を確かめるように触って、首筋に指を這わせる。
唇は脇腹に触れ、肋骨をなぞる。
友理奈の身体の確かめるように触れていた手で下着の上から胸を撫でた。
柔らかく何度も胸に触れていると、友理奈からはき出される甘い吐息が千奈美を誘うような声に聞こえてくる。


「はあっ……。あ、んっっ」
「……熊井ちゃん、かわいい」


ぎゅっとしがみつき、声をあげる友理奈が可愛くて千奈美は何度も耳元で「かわいい」と囁く。
千奈美にそう言われるたびに友理奈が子供のように首を横にふる。

友理奈の何もかもが愛おしくて身体に触れていた手の動きがかわる。
柔らかく友理奈の身体に触れていた千奈美の指先に自然と力が入り、その手の動きが次第にいやらしくなっていく。
その手の動きが自分でも自覚出来る程に激しくなった頃、友理奈が声を上げた。


321 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:12
「やぁ…ちぃ…待っ…て、ちょっと」
「なに?」
「だから…だ、めっ。…ちょっと……ちぃ。もう、やめて」
「……下手だから?」


止められる理由がわからない。
千奈美の下にある友理奈の身体は自分と同じぐらい熱くなっている。
乱れる呼吸が感じていることを知らせてくる。
甘い吐息が千奈美を誘ってくる。

理由が思いつかない。
だから千奈美はとりあえず思ったことを口に出した。
けれど、その理由は呼吸を整えた友理奈に否定された。


322 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:13
「違う。そうじゃなくて。無理、無理だよ。声止まらないし。……身体、変になる」


恥ずかしそうに顔を隠しながら友理奈が答えた。


変じゃない。
それでいいんだよ。


千奈美はそう言おうと思った。
でも、赤い顔をして懇願するような声で友理奈に頼まれた。


身体の変化についていけないなんて子供すぎる。


323 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:13
そう思ったが、口には出さない。
このまま先に進んでしまうのも悪くない。
でも、もう少しこうやって子供みたいに恥ずかしがる友理奈を見ているのもいい。


ゆっくりゆっくり。
千奈美は友理奈の歩く速度にあわせて歩こうと思う。。
急ぎたくなる日もあるけれど、そんな日は振り返って友理奈を待てばいい。
それぞれ歩む速度は違うけれど、歩調を合わせて歩こう。
いつか友理奈が自分に追いつく日までゆっくりと。


「わかった。……熊井ちゃん、続きはまた今度しようね」





324 名前:『 H 』 投稿日:2007/07/04(水) 02:14



『 H 』



- END -
325 名前: 投稿日:2007/07/04(水) 02:17
本日の更新終了です。

『好きの境界』シリーズの方が途中になっていますが、ちょっと気分を変えて違うものを。
書きたい物を順序関係なく書いているせいで、この先もシリーズの合間に色々なものが挟まると思います。
ちょっと読みにくいかもしれませんがよろしくお願いします。


326 名前: 投稿日:2007/07/04(水) 02:21
>>306
みーやんががんばるかどうかは今後のお楽しみなのです。
そして、雅が切ない想いをしている間に違う短編がはさまりました('-';)

327 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/04(水) 04:10
こっちの二人はのほほんとしてて可愛いなぁ
みやももも期待してます
328 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/04(水) 11:31
二人ともかわいくって魅力的ですねぇ。
桃×雅も楽しみにしてます
329 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/05(木) 02:38
この作品に影響されて最近のライブDVDをネットで(ゴメンね)見たよ、
熊井ちゃんはやっぱり一番の美人さんだったな、
あまり関心無かったちぃちゃんが写真よりずっとかわいくてチョットびっくり。
しかしここまで作者に毒されるとは…。
330 名前: 投稿日:2007/07/06(金) 01:19



『 Don't be shy 』



331 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:21
桃子から見えるのは雅の背中。
こちらを向いてくれと言えば向いてくれるが、すぐ目をそらされる。
手を握れば、身体を硬くして落ち着かない様子になる。


誰か他の人がいるときは普通。
けれど、二人きりになると雅はいつもこうだった。


好きだと言えば赤くなって、キスをすればもっと赤くなる。
それ以上の行為はそんな照れ屋な雅が倒れてしまいそうでまだ出来ない。

こんなに子供だとは思わなかった。
人は見かけじゃないというが、大人びた顔と雰囲気を持っているくせにこんなに子供だなんて詐欺なんじゃないだろうか。


332 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:22
「あのさ、壁見てて楽しい?」


身体は桃子の方を、顔は壁を。
桃子は不自然な体勢をしている雅に声をかける。
けれど、雅の返事はあきらかに適当でこちらを向く気配はない。


「せっかく二人なんだしこっち見てよ」
「あ、ほら、誰か帰ってくるかもしれないし」
「……みーやん、帰ってきても大丈夫だから。なんか変なことしてるわけでもないのに、そんな心配いらないと思う」


確かに楽屋は出入りが激しく、いつ誰が入ってくるかわからない。
だが、むしろそんな面白い格好で壁を見ている姿を見られることの方が問題だと桃子は思う。


333 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:23
はぁ、と思わず身体中の空気をはき出す。
どうしてこんなに照れるのか。
好きだからこそ照れるのだろうから、好かれているということに喜ぶべきだとは思うがこれはあんまりだとも思う。


「もぉ、みーやん。こっち向くのっ。で、もものこと見るっ!」


壁とにらめっこを続ける雅の頭に手をそえて自分の方を向かせる。
こちらを向いたその目を見つめる。
雅の手をぎゅっと握りしめる。
するといつものように雅の身体が硬くなるのがわかった。

そんな雅に苦笑しながら桃子は聞くまでもない質問をしてみる。


334 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:24
「……もものこと嫌なわけじゃないんだよね?」


雅がぶんぶんと首を縦にふって答えた。
けれど、肝心な言葉は出てこない。
だから、桃子からその言葉を伝える。


「好き。みーやんが好き」
「……うん」


335 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:25
桃子がその言葉を言った途端、雅の顔が面白いぐらい真っ赤になった。
そしていつも通りの反応。
好きだと言えばかならず赤くなって「うん」と返事をする。
桃子はそんな照れた雅の姿も大好きで、その反応に思わず口元がゆるみそうになるがぐっとこらえる。
そして桃子も雅へいつも通りの言葉を投げかけた。


「みーやんも言って?」
「…………」


困った目をしてすがるように桃子を見つめてくる。
これもまたいつも通りの反応。


336 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:26
そんな困った目でこちらを見られても困る。
可愛くてそれ以上何も言えなくなる。


結局、いつもと同じようにそれ以上言えなくなって、握った手をぎゅっと握りかえしてくる雅を見つめるしかない。
もうしばらくこのままでいる、というもの悪くはない。
無理強いをしても続くわけがない。
だが、やはりこの先へ進んでみたいのも事実だった。

この現状を打開するために、桃子は困って下を向いている雅に話しかける。


337 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:27
「みーやん、そろそろ慣れてね」
「何に?」
「ももといることに。……あと好きって言うこと」
「うっ。……わかった」


言葉に詰まってはいるが雅から一応返事が返ってくる。
今はまだあまり多くを求めても仕方がない。


「でも、なんでそんなに照れるんだか……」
「……だって」
「だって?」
「もも見てると、落ち着かない」


雅にぼそりと言われた。
そして続く言葉にドキリとした。


338 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:28
「……ドキドキしていろんなことうまくいかなくなる」


それはこちらも同じだ。
たった一つの仕草に勝手にドキドキして。
小さな言葉に捕らわれて。
いつもならもっと強引に出来ることが出来なくなる。
もう一歩が踏み出せない。


だが、桃子はそんな想いを口に出さずにおく。
かわりに自分の想いを口に出さずに伝えられる方法を一つ思いつく。


339 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:30
「しょーがないなぁ。……目、つぶって」
「なにするの?」
「そんなの決まってるよ。目をつぶったらキス!」
「えっ」


なかなか目を閉じようとしない雅の目を手の平で覆って閉じさせた。
そしてそのままキスをする。

雅とのキスは何度してもドキドキして息苦しくなる。
ドキドキするのは雅だけではないと伝えたかった行動。
けれど、雅にその気持ちが伝わる前に、雅の固く閉じた唇が緊張を伝えてきてなんだか笑いがこみ上げてくる。


340 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:31
唇を離してクスクスと笑っていると、雅が不審そうな顔で桃子を見ていた。
桃子は笑ったまま額を雅の額にコツンとぶつけて雅を見つめる。
頬を赤くそめた雅が今度は目をそらさずに見つめ返してきた。


「早く慣れてね」
「……うん」


本当に子供だ。
でも、そこが好きなんだと思う。




341 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:32

だからね、みーやん。
毎日好きって言うね。
みーやんが慣れるまでキスをたくさんしようよ。
そしたらもっと先のことしようね。




342 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:33



『 Don't be shy 』



- END -

343 名前:『 Don't be shy 』 投稿日:2007/07/06(金) 01:35

本日の更新終了です。

『好きの境界』シリーズは次回更新予定です。

344 名前: 投稿日:2007/07/06(金) 01:44
>>327 さん
とっくまはまったりほのぼのイメージ!
えっちもほのぼの(´▽`)

>>328 さん
私の中で熊井ちゃんが乙女なイメージなので、話にすると可愛い感じになります(´▽`)

>>329 さん
熊井ちゃんは美人だし、千奈美はスタイルいいし……。
ライブ映像で二人並ぶと絵になりますね!
というわけで、このまま毒におかされ続けてくださいw

345 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/06(金) 02:42
とっくまといいももみやといい…
なんすか今度はほのぼのキャンペーンですかw
しっかり楽しんでしまいましたよちくしょうめ
346 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/06(金) 03:33
こんな桃×雅も良い、雅のイメージ変るなぁ良い意味で。
347 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/07(土) 02:14
作者さんの書くももみやが大好きです。
いいお話をいつもありがとうです。
348 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/07(土) 21:37
ベリーは受け付けない体質だったはずなのに作者様に洗脳されてしまいました


  み  や  も  も  最  高  !!
349 名前: 投稿日:2007/07/08(日) 02:01



『 バランス 』



>>273-302
『 現実と欲望 』続編になります。

350 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/08(日) 02:02
あの日からだ。
梨沙子から時々、桃子の香りがするようになったのは。
オフ翌日の朝。
仕事の空き時間、ふらりといなくなった二人が戻ってきた時。
雅の側に寄ってくる梨沙子から桃子の匂いがする。

その理由は聞かなくてもわかる。
二人が何をしているのかわかりたくないのにわかってしまう。

二人は付き合っているのだから当たり前だ。
気にする方がおかしい。
そして気にしたところでどうにもなりはしない。
それでもどうにかしたいと思う自分がいるのも確かだった。


351 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/08(日) 02:03
撮影の合間、いつものように過ごす楽屋。
一人で座っているとろくな事を考えない。
意識の大半を支配するこの底なし沼のようなドロドロとした思考。
雅は自分をどこかに引き込むようなこの考えから抜け出そうと、楽屋にいる他のメンバーのところへと行こうとした。
しかし、立ち上がる前に楽屋へと戻ってきた梨沙子が当然のように雅の隣に座る。


「今まで何してたの?」


352 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/08(日) 02:04
雅は一人で楽屋に戻ってきた梨沙子に問いかけた。
この質問が意地悪だということはわかっている。
休憩に入る前、梨沙子は桃子と二人で撮影をしていた。
雅はその光景を見ていたくなくて休憩に入ると同時に楽屋に戻ってきた。
けれど、二人はなかなか戻ってこなかった。


「えっ?撮影だけど」
「ふーん。やけに長かったね」
「ちょっとね、あれから長くなった」


梨沙子は早口でそう言うと誤魔化すように雅に抱きついてきた。
それと同時に梨沙子から桃子の匂いがする。
そして梨沙子の頬が心なしか赤く見えた。
その匂い、その反応に雅は聞く前からわかっていたことが事実だとわかる。


353 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/08(日) 02:05
梨沙子と桃子の関係は雅以外誰も知らない。
そして、梨沙子は雅がその関係を知っていることを知らない。
だから赤くなった頬が何を示すのか雅がわからないと思っている。
雅と桃子だけが全てを知っていることに気がついていない。
もっと言えば、自分の想いに気がついていない桃子は全てを知っているとは言えないのかもしれない。
本当にその全てを知っているのは自分だけなのかもしれなかった。


354 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/08(日) 02:06
「そう。大変だったね」


雅は思っていることを口に出さない為に、思ってもいないことを口にした。
梨沙子は雅のその答えに安心したのかうんうんと頷き大変だったと繰り返す。
疑うことを知らない梨沙子は気づかれていないと思っている。

その純粋さに罪の意識を感じる。
そして嫉妬と優越感にも似た何かを感じる。

雅の中で理屈では処理しきれない想いが交錯する。
どうすることも出来ない思考を止める為に握った手が痛かった。


355 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/08(日) 02:07
「えー、すぐ終わってたじゃん」


手の平に食い込んだ爪が雅の肌を傷つける前に千奈美の声が聞こえてくる。
いつの間にそこに来たのか、別の場所で友理奈と話していたはずの千奈美が雅の後ろにいた。
そしてその千奈美の口からは梨沙子が言って欲しくないであろう言葉が次々と飛び出す。


「梨沙子の嘘つき〜。ももと二人でどっか行ったの、あたし見たもん」
「えっ、えっ。別にどこにも行ってないし何もしてないよ?」
「してないよ、って何するのさ。何を」
「えっ〜。えっと、なんだろ?」
「梨沙子、あやしい〜。なになに、ももとなんかあったの?……ねえ、みやもあやしいと思うよね?」
「いや、あやしいとか別にそういうことは」
「そうそう!みやも別にあやしくないって思うよね」


356 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/08(日) 02:07
槍玉に上げられているのは自分ではなく梨沙子だが、まずい展開になった、と雅は思う。
梨沙子は雅にとっては妹のような守るべき対象で、そのせいで何だかんだ言いつつも梨沙子が困っているのは放っておけない。
雅自身が梨沙子にちょっとした意地悪をするのはいい。だが、他の人間にそれをされたくない。
我が儘な自分に呆れながらも、雅が梨沙子をこの場からうまく助け出す方法を考えていると思わぬ人の声がした。


「ちぃ、何騒いでるの?」


いつも通りの騒がしい楽屋へ噂の対象である桃子が顔をしかめながら入ってくる。


357 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/08(日) 02:08
「あー、あやしい人が帰ってきた!梨沙子と何があったか教えてよ〜」
「なにって、なに?もも、何の話してるのかわからないんだけど」
「だからぁ、梨沙子と二人でどこに行ってたのかって話。なんかさー、梨沙子の態度があやしいんだよねぇ。……二人の間になんか面白いことあるわけ?」


358 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/08(日) 02:08
興味津々。

という言葉が雅の頭に浮かぶ。
千奈美のやけに楽しそうな今の状態を表す言葉はそれ以外思い浮かばない。
そして、こういう千奈美に絡まれるとろくなことにならない。
だが興味の対象である桃子は、千奈美とは対照的に落ち着いているように見える。
あのまま梨沙子が千奈美の興味の対象になっていると何か問題が起きそうな気がしたが、その対象が桃子なら問題はないだろう。

雅は千奈美の興味の対象が梨沙子ならば助けが必要だろうと思うが、桃子なら放っておいても自分でなんとかするはずだと思いこのまま成り行きを見守ることにする。
すると桃子ではなく梨沙子が声をあげた。
人が増えて騒がしくなった楽屋に梨沙子の声が響く。


359 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/08(日) 02:09
「ないってばっ」
「はいはい、梨沙子には聞いてないから。もも、何かあるのー?」
「もぉ、ちぃはそんなことばっかりだねぇ……」


千奈美が梨沙子に聞いても話にならないとばかりに梨沙子の声を軽く流して、桃子にまとわりつく。
しかし、桃子はあきれ顔で真面目に千奈美の相手をする気がないように見えた。


360 名前: 投稿日:2007/07/08(日) 02:10
本日の更新終了です。

361 名前: 投稿日:2007/07/08(日) 02:17
>>345 さん
楽しんで頂けたようで嬉しいです。
ほのぼのキャンペーンは定期的にやってくる予定ですw

>>346 さん
雅は大人っぽく見える時があったと思うと、すごく子供っぽい時があったりと見ていて面白いですね。

>>347 さん
ありがとうございます。
これからもガンガン更新しますのでよろしくです。

>>348 さん
受け付けないものを受け付けてしまったら、あとはもう堕ちていくしかありませんw




362 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/09(月) 00:03
もも-みや-梨沙子~~
おもしろいです!
この先の展開を楽しみにしてます。
363 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/09(月) 00:04
どう出るんだろうwktk
364 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:45
「あのね、梨沙子はももと二人でお菓子の買い出しに行ってただけ。……だったんだけどさ。梨沙子ったらひどいんだよ?荷物、ももに持たせて先に帰っちゃうんだもんっ」
「へっ?……あっ、えっと。あの、ごめんね。もも」


桃子が千奈美との会話を無理矢理終わらせる。
そしてあきれ顔のまま梨沙子の頭を小突いているのが見えた。
雅はいかにも嘘っぽい話だと思ったが、桃子の手にあるお菓子が詰まった袋によってその話は真実みを帯びていた。

365 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:47
桃子が取った無理矢理会話を終わらせる方法は一言で言えば強引だ。
でも、しっかりと梨沙子を興味の対象となることから守っていた。
桃子が梨沙子を守るのは当然だ。
今まで雅が守ってきた梨沙子だが、今、それをするべきは桃子だ。

そんな当たり前の出来事。
でも、そんな二人を見ていると落ち着かない自分がいることに雅はあらためて気がつく。

今までは自分が守っていた梨沙子を守るべきは桃子。
そして桃子からそうやって庇われるのが自分ではない事実。


366 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:48
……自分はどちらに寂しさを感じているのだろう。


きっとそれは両方だと思う。
だが、どちらが自分の気持ちの大半を占めているのかは考えたくなかった。
けれど、考えることを拒否した頭のかわりにちくちくと痛む胸の奥が答えを出しかけている。


367 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:49
「というわけで。みんな、お菓子食べる?」
「あー!お菓子、あたしもほしい〜」


雅が答えが出す前に桃子の声とみんなの嬉しそうな声が聞こえた。
少し離れた場所にいた友理奈もお菓子に反応してテーブルへやってくる。

お菓子という言葉は偉大で、さっきまで桃子に絡んでいた千奈美も問い詰めることに飽きたらしく、お菓子に飛びついているのが見えた。
急に先程以上に騒がしくなった楽屋に痛みを持っていた雅の胸の奥も落ち着いてくる。
普段通りの楽屋にゆっくり馴染もうとしていると急に桃子から話しかけられた。


368 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:50
「みーやんは食べないの?」
「え?あ、食べる」


返事を返すと同時に、桃子からクッキーが差し出された。
差し出された物に不満はなく、雅は当然のようにクッキーを受け取ろうとする。
だが、背後から差し出された桃子の手に握られているクッキーを受け取るより先に別の物に触れた。

雅の手が少しだけ桃子の手に触れる。

背後から差し出されたクッキーを受け取るときに桃子と手が触れた。
些細な事だ。
けれど、二人きり以外の場所で桃子に身体が触れると雅の心臓の音がいつもより大きくなる。


369 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:51
貰ったクッキー。
触れた手。
ドクドクと脈打つ心臓の音。
全てが気になって仕方がない。


考えるより先に桃子の手を掴んでいた。
そして雅の後から梨沙子の隣へと移動する桃子を捕まえて小声で聞いていた。


370 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:51
「……もも」
「なに?みーやん」
「二人で何してたの?」
「……なにを想像した?」
「…………」


答えるまでもない質問に桃子が答えるわけがなかった。


371 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:52

ももはいつも意地悪だ。
うちが何を想像したかなんてわかって聞いている。
そして返される質問に答えられないことも、それ以上聞くことが出来ないことも。
いつも上手い具合にあしらわれてそれ以上踏み込めない。



372 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:54
桃子にどんなに近づいても見えない壁があって捉えることが出来ない。
雅には逃げていく桃子の後ろ姿を見つけることが出来ない。
きっと、それを捕まえることが出来るのは梨沙子だけなのだろう。


梨沙子の隣に桃子が腰を下ろすのが見える。


「梨沙子、髪……」
「ありがと。もも」


梨沙子の乱れた髪を直す小さな手。
今はあの手を独占できる時間ではない。
それでも雅は今、あの手が欲しいと思う。


373 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:55
自分に懐いてくる梨沙子は可愛くて残酷だ。
大好きだけれど、時々その存在を消してしまい程苦しくなる。
雅の隣にいる梨沙子が桃子の存在を思い浮かばせる。

梨沙子に罪があるわけではない。
あるとしたら雅自身だ。

梨沙子を騙しているのは自分。
けれど、梨沙子の罪にしたいのも自分。


微妙なバランスで成り立っている。
崩れそうなバランスを無理矢理保って日々を過ごしている。
そして、このバランスが崩れる日がいつか必ず来ることを雅は知っている。




374 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:56
崩壊する日がいつかくる。
その日が遠い日でありますように。
罪を重ねることに後悔はないから。
罰を受けることは怖くないから。
だから壊れてしまう日までこの夢が続きますように。




375 名前:『 バランス 』 投稿日:2007/07/09(月) 01:57



『 バランス 』



- END -

376 名前: 投稿日:2007/07/09(月) 01:57

377 名前: 投稿日:2007/07/09(月) 02:01
>>362 さん
ありがとうございます。
少し長い話になってしまったので、もうしばらくこのシリーズは続きます。
さらに先の展開もお楽しみに♪

>>363 さん
こんな感じになりました〜。
そして話がなかなか終わりません(;´ー`)

378 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/09(月) 02:33
連日の更新ありがとうございますww
みーやに幸せは訪れるのでしょうか……
379 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/10(火) 00:40
ももは意地悪ですねww
みやの心を思えば胸が痛いです
380 名前: 投稿日:2007/07/10(火) 01:56



『終末の始まり』



>>349-375
『 バランス 』続編。
(時系列的には『 好きの境界 』の前になります)

381 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 01:58

きっかけなんていらなかった。
そこに桃子がいるだけでよかった。
はじまってしまえば後は終わるだけ。
二人の関係がかわってしまえば後は終わりが来ることに脅えるだけ。




382 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 01:59
最近、雅は桃子とよく話をするようになった。
以前からよく二人で話をしてはいたが、それ以上に親密になっていた。
梨沙子と付き合い始めた桃子が何かと雅に報告に来るようになったからだ。
桃子が他の誰でもなく雅に報告に来るようになった理由はとてもわかりやすいものだった。
梨沙子との会話の大半が雅の話で占められていたかららしい。

梨沙子がああでもないこうでもないと話す内容の大半が雅のことだったせいで、桃子が雅に愚痴を言いくるようになった。
それは雅にとって複雑な気持ちになるものだったが、桃子はそれに気がついていないようだった。

383 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 02:00
好きな相手が目の前にいて色々と話を出来ることは嬉しい。
けれど、その相手が自分を好きになることがないとわかりきっている状況は喜べたものではなかった。
それでも雅は二人で話す時間を手放したくなくてこの関係を壊すつもりにはなれない。


「梨沙子はいっつもみーやんの話ばっかりだよ」


今日もいつものように桃子がホテルの部屋に遊びに来ていた。

梨沙子は寝るのが早い。
だから、梨沙子が眠りについたあとに桃子が雅の部屋に遊びに来ることが多く、今日も梨沙子が眠ったあといつものように桃子が雅の部屋にやってきた。


384 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 02:02
「そりゃ、うちと梨沙子は仲良いしぃ〜。姉妹みたいなもんだからね」
「あーもぉー。妬けるなー」
「羨ましい?」
「べっつにぃ〜」


愚痴とも言えないようなたわいもない会話。
最近は特別な話があるというよりも、お互い眠くなるまでの暇な時間を潰すことが目的になっている。
梨沙子の話以外にも仕事の話や学校のこと、疲れて眠くなるまで色々な話をしていた。


385 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 02:03
雅はそんな風に二人で過ごす時間を短く感じる。
今日も話し始めてどれぐらいの時間がたったのかよくわからない。
なんとなく時間が気になって雅が時計に目をやると、桃子から小さなため息が聞こえた。


「早く大人になればいいのに」


桃子の今まで聞いたことのない言葉に雅は視線を時計から桃子に移す。
そして梨沙子に対しての素直な感想を桃子に告げた。


386 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 02:04
「梨沙子のこと?……いいじゃん。子供みたいなところが可愛いんだからさ」
「そりゃそこが可愛いとは思うけどさぁ。ももは早く大人になって欲しいの」
「なんで?」
「子供とじゃ出来ないことがあるってこと」
「なにそれ?」
「はぁぁ。もぉ、みーやんも子供だった」
「うちは梨沙子と違って大人だってばっ」
「そーかなー」


387 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 02:04
そういった桃子に探るように見つめられた。
その顔はいつもの笑顔ではなく、どこか大人っぽい表情で雅が初めて見る顔だった。
雅は桃子のその表情にドキドキして顔が赤くなるのがわかった。

ベッドに腰掛けていた桃子が立ち上がった。
そしてベッドに座ったまま動けない雅の前に立つ。
考える前に雅は目を閉じた。


388 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 02:05

何故、目を閉じてしまったんだろう。
これではまるで誘っているように思われる。
けれど、あんな顔で見つめられてしまったら逆らえない。



389 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 02:06
気がついた時にはキスされていた。
唇が触れたのは一瞬。
ほんの数秒だったはずなのに、それはとても長い時間に感じられた。

雅は突然の出来事に視線のやり場に困って顔を伏せた。
嘘みたいな現実に思わず桃子が触れた唇を自分の指先で触れてみる。
指先で触れる自分の唇にはもう桃子の唇が触れた温もりは残っていない。
かわりに頭の中で触れた唇の柔らかさが何度も思い出される。

うつむいた顔をあげてみると桃子の唇が見えた。
その唇に先程の桃子の言葉が思い出されて雅はあることに気がつく。


390 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 02:08
「……キス出来ないってこと?」
「違う、もっと先。……キスはもうした」
「それって」


雅は最後まで言うことが出来なかった。
途切れてしまった言葉のかわりにベッドの軋む音が聞こえた。
雅の目に天井と桃子の顔が映る。

押し倒された身体。
目の前には自分を押し倒した桃子。

もう一度桃子の顔が近づいてきてキスをされる。
すぐに離れた桃子の唇が不思議そうな声を出す。


391 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 02:08
「……なんで抵抗しないの?」
「そんなのわかんない」


わからないなんて嘘だった。
抵抗しない理由なんて一つだけしかない。
そしてそれを言うわけにはいかない。


392 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 02:09
「梨沙子のかわりだよ。それでもいいの?」
「……いいよ、別に。それでいい」


桃子が確認するように問いかけてきた。


それでいいわけがなかった。
でも、それでもいいと思った。
桃子が好きだから桃子と関係を持ちたいと思った。
ただそれだけだ。


393 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/10(火) 02:09
「知らないよ、この先どうなっても……」


悪いことだってわかっている。
きっと桃子も自分がしていることがどんなことかわかっているだろう。
お互い、これからすることが間違っていることに気がついている。

それでも今さらやめるつもりにはなれなかった。




394 名前: 投稿日:2007/07/10(火) 02:11

本日の更新終了です。

395 名前: 投稿日:2007/07/10(火) 02:14

396 名前: 投稿日:2007/07/10(火) 02:15
>>378 さん
雅が幸せになるかどうかは……。
秘密です('-';)

>>379 さん
私がちょっと意地悪な桃子が好きなせいでこんなことになってます┐(;´ー`)┌
雅にはがんばって欲しいなーと思っているんですが、なかなか……。

397 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/10(火) 02:51
うぅ〜、どこに話を落とすんだ?
ハッピーエンドはあり得なさそうな展開・゚・(ノД`)・゚・
398 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/10(火) 22:47
みやの心が知られればどうなるか
ドキドキします
399 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 01:55
部屋の明かりが消えて服を脱がされた。
桃子が服を脱ぐのがわかった。
二人の服が椅子の上で絡み合っているのが暗がりの中見えた。
裸で抱き合ったら、思っていた以上に温かくて驚いた。


ぎこちない指先に首筋を撫でられ雅の顎があがる。
あがった顎の下にキスされた。
そのまま慣れない唇が首筋を舐め、鎖骨へと降りていく。


肋骨の上を指先が走って、その指に胸の中心を撫でられると押さえきれない声が出た。


400 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 01:57
「あっ、んっ」


雅の耳に今まで聞いたことのない自分の声が聞こえてきて顔が赤くなるのがわかる。
当然、その声は桃子にも聞こえていて、雅は桃子に今出したばかりの声をもう一度認識させられた。


「みーやんってこういう声出すんだ」
「……そんなこと、わざわざ言わなくていいから」
「照れなくてもいいのに。いつもの声と違って色っぽい。……すごく良い声だから」


401 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 01:58
桃子の手が身体に触れているだけで恥ずかしい。
唇が肌に押しつけられるだけで息が止まりそうになる。
それなのにこんな風に言われたらもっと身体がおかしくなる。
聞かれたくないのに声が出てしまう。


「んっ、はあっ…。あっ」


身体に籠もる熱をはき出すような熱い吐息が漏れる。
最初ためらいがちに触れていた桃子の指先が、雅の声とともに遠慮のない動きになっていく。
桃子の指先が柔らかく胸の中心を撫でているせいで声が止まらない。
耳元で囁く桃子がはき出す息にさえ身体が震える。


402 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 01:59
「どこが感じるの?」


胸を優しく包み込んでから、桃子の探るような指先が身体を滑り落ちていく。
脇腹を通り背中を撫でる指先に背中が反り返る。
耳たぶを噛まれて濡れたような声が出る。

そんな雅の身体を観察するような桃子の視線を感じるがどうすることも出来ない。
桃子の動き回る手を捕まえる事も出来ず雅はシーツをぎゅっと掴んだ。


403 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 02:01
「みーやん、どこがいいの?」
「はぁあっ…ちょっ…恥ずか…しい…あっ」


桃子がもう一度聞いてくるが、雅は答えられない。
返事のかわりに喘ぎ声が桃子に答える。
身体がぴくんと震える。
そのたびに桃子に『ここがいいの?』と聞かれた。
けれど、恥ずかしくてその問いには答えられなかった。
そんな答えられない雅を面白がるかのように桃子の指先が身体の色々な場所に触れていく。
それでも答えない雅に桃子が焦れたように聞いてくる。


404 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 02:01
「みーやん、答えてよ」
「わかん…ない……よ」
「ちゃんと教えて」
「…………全部。……ももが…触ってるところ」


指先が触れる場所。
唇が触れる場所。
舌先が触れる場所。
桃子が触れる全てに身体が反応して止まらない。


だから雅は素直に答えた。
すると桃子に耳元でくすくすと笑われた。


405 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 02:02
「全部って。……みーやん、思ってたよりえっちだ」


桃子に悪戯な目で見つめられる。
えっち、という言葉と桃子の視線のせいで顔がどんどん赤くなっていくのが自分でもわかった。
それを隠すことが出来ないこともわかっていたが、雅はとりあえず言い返してみる。


「もも…だって……。えっちじゃん」
「ふーん?そういうこと言うと……」
「あっ、あぁっんっ。もも、やぁっ」


406 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 02:03
反撃したはずがすぐにそれはそのまま自分の身体に返ってきた。
桃子に胸を掴まれて、その中心を潰される。
急激な強い刺激に雅のシーツを掴んでいた手が反射的に桃子の手首を掴む。
それでも桃子の指先は止まらない。
指先でそこを摘むように刺激される。
桃子の手首を掴む雅の手にさらに力が入るが、すぐにその手をほどかれた。

大胆になった唇が胸を舐め、そのまま下へと降りていく。
肋骨の下を軽く噛まれて腰が跳ねた。
舌が身体を舐める感触と、時々強く身体にされるキスに声が出る。


407 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 02:05
「みーやんの肌、柔らかくて気持ちいい」


脇腹や腹に唇を這わせる桃子に言われた。
雅にその言葉に答える余裕などなかった。

腹部にキスを落とされ、下半身へと桃子の手が伸びるのがわかる。
太ももを撫でる桃子の手が、雅にこれから起こることを予想させる。
膝まで降りた桃子の手が上へと向かってくる。
その手がどこを目指しているのかわかって、何故だか不安になって雅は思わず足を閉じようとした。
けれど、足の間には桃子がいて閉じることは出来ない。
かわりに雅が何を考えているのか桃子に伝わってしまう。


408 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 02:06
「大丈夫だから……。ね?」


優しく桃子に囁かれてキスをされた。
そのキスに雅の身体の力が抜けると、足の間に桃子の手が入り込んでくる。
自分でもわかるぐらいに濡れているそこに桃子の手が触れた。
雅の反応を伺うように桃子の指先が軽くそこを刺激する。


「あっ、はぁあっ」


思ったよりも大きな声が出た。
桃子の指がそこを撫でるたびに自分の意志で止められない声が出る。

409 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 02:07
溢れ出る液体を押し広げるようにして桃子が指を這わせる。
一番敏感な部分には軽くしか触れてこない。


「……濡れてるね。みーやん、気持ちいい?」


雅は答えるかわりに桃子の首筋に顔を埋める。
ぎゅっと抱きつくと、身体の中心を触る桃子の指に力が入るのがわかった。

一番敏感な部分を指先で転がされる。
ゆっくりとした動きでそこを擦られると、雅はどうしていいのかわからない。
意識がそこにばかりいってしまう。
指にあわせてびくっと震える身体を止められない。


410 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 02:10
「もうイキたいの?」
「あっ、やあっ。んっ…もぉ…」
「いいよ。みーやんイカせてあげる」


雅の身体の変化を感じ取った桃子に問いかけられたが、雅はうまく返事を返すことは出来なかった。
だが、雅がどうして欲しいのかは伝わったらしく、桃子の指の動きが早まる。
強弱を付けてそこを触られるともう何も考えられなくなった。


「…だ…めっ!はっ…あっ」
「みーやん、可愛いね。すごく可愛い」


411 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/11(水) 02:12
聞くに堪えないような自分の声の合間に桃子が話しかけてくる声が聞こえる。
身体の中心に触れている指が滑らかに動いて敏感な部分を摘む。
雅の足先に力が入る。


「んっ、あっ、あぁっ!」


声を押し殺そうとしても無駄だった。
頭の中が真っ白になって、最後の瞬間に向かった身体が桃子をぎゅっと抱きしめる。
雅は自分の身体に起こったことを理解出来ないまま、身体から力が抜けるのがわかった。




412 名前: 投稿日:2007/07/11(水) 02:13

本日の更新終了です。

……事後報告ですが、エロありでした。
書いておくのすっかり忘れてました。

413 名前: 投稿日:2007/07/11(水) 02:13

414 名前: 投稿日:2007/07/11(水) 02:16
>>397 さん
話の着地点は秘密なのです(´▽`)

>>398 さん
もうしばらくドキドキしたままお待ちください(;´▽`)




415 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/11(水) 12:56
やっぱりtechnicialもも!ww
かっちょええ!
416 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/11(水) 13:02
>>415
sorry!
technicianです
417 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 01:58

シャワーを浴びて部屋に戻ると小さな照明の中、桃子がベッドの上に座っているのが見えた。
今さっきまでそのベッドの上でしていた行為を思い出して顔が火照るのがわかる。


こうなるとは思っていなかった。
でも、こうなることを望んでいた。
関係が変化することを望んでいた。
だからこうなってしまったことを悔やんではいない。


けれど、桃子がどう思っているのかはわからなかった。
小さな照明だけではベッドの上に座っている桃子の表情もよく見えない。
その顔を見たくて雅はベッドの上に座る桃子の隣に並んで座った。


418 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 01:59
「もも」
「あ、みーやん。もうシャワー終わったの?」
「うん」


いつもと変わらない桃子がそこにいるように見える。
表情も口調も変わらない。
そのことに雅は少しだけ落胆する。

先程の行為で何かが変わって欲しいと思っていたのかもしれない。
雅の中で何かが変わったように、桃子の中でも何かが変わればいいと自分でも気がつかないうちに願っていたのかもしれない。

419 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 02:00
変わった自分。
変わった関係。
変わらない桃子。

これでよかったんだろうかと後悔のようなものが雅の頭の中をぐるぐると回る。
けれど、すぐに後悔とは違う別の物に思考が乗っ取られる。
隣に座る桃子の香りに後悔はどこかに消えて他の事を考えられなくなる。


420 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 02:01
「さっき、みーやん可愛かった。ほんとすごく可愛かった」


乗っ取られた思考。
そんな頭をさらに混乱させる言葉を桃子に言われた。
先程の行為が鮮明に蘇る。
自分がどうな風になってしまったかを考えて、雅はそれを打ち消すように慌てて言った。


「もうっ。そういうこと言わなくていいから。……恥ずかしいからさ」
「そう?ほんとのことだし言ってもいいじゃん」
「よくないのっ」


421 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 02:03
雅が力を込めて言った言葉に桃子が面白そうに小さく笑う声が聞こえた。
このまま放っておけばこれをネタにして桃子に遊ばれるのは明白だ。
さすがにそれは遠慮をしておきたいことなので雅は話の流れを変えた。


「……あのさ、もも。誰かをかわりにするぐらい、……それぐらい梨沙子としたかったの?」


流れを変えると同時に聞きたかったことを桃子に尋ねてみる。
すぐに返事はなかった。
だが、少しの沈黙の後、桃子が考えながらゆっくりと雅の質問に答える。


422 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 02:04
「どうなんだろう?自分でもよくわかんないや。……けど、梨沙子としたいってずっと思ってた。いつでも触れたいって思う。独占したいって思う。……こんなのおかしいのかな」
「……おかしいかどうかなんて、うちにはわかんないよ」


触れたい。
独占したい。
それは雅も同じだ。

だが、それがおかしなことなのかどうかはわからない。
わかっていることは、それがたとえおかしなことだとしても止められないということだけだった。


423 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 02:05
「そっか。ももにもわかんない。……ねえ、みーやんはさ、好きな人いないの?」
「……いないよ」


ふいに聞かれたくないことを聞かれた。
胸が痛い。
好きな人が目の前にいるとは言えない。
選ぶべき答えは一つしかない。
だから雅は嘘をついた。


424 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 02:06
「ももとこんなことしていいの?」
「ももこそ、梨沙子がいるのにいいの?こんなことして」
「いいわけないけど。でも……。みーやんとしたいって思った」


思ったより真剣な声で桃子に言われた。
こんな些細な言葉で嬉しくなる自分に驚く。。
求められているものが身体だけだとわかってもそれでもいいと思う自分に驚いた。

少しの間黙っていた桃子が、雅に悪いと思ったのか少し心配そうな声で問いかけてきた。


「……みーやんはどう思ってる?」
「……ももならいいよ」



425 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 02:07

違う。
ももだからいいんだ。
いけないことだってわかっていても、それでもももだからいいんだ。




426 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 02:08
友達のままがよかったなんて思っていた過去は嘘だ。
友達から先に進むきっかけが欲しかったんだと思う。
この関係が正しくないことぐらいわかっている。
けれど、正しいだけの生活をしたいわけじゃない。
間違っていても友達以上の関係が欲しかった。


動き出した歯車は止められない。
もう走り出してしまった。
ただの友達に戻ることも恋人になることも出来ない関係。
雅の耳に終わりに向けて回る歯車の音が聞こえた。




427 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 02:09



『 終末の始まり 』



- END -

428 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 02:09

429 名前:『 終末の始まり 』 投稿日:2007/07/12(木) 02:12
>>415-416 さん
何故かテクニシャンになってしまう桃子(´ω`)
構想以上にテクニシャンになってしまうのは何故なんだろうw

430 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/12(木) 03:48
ガンバレ!みや・゚・(ノД`)・゚・
431 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/12(木) 18:49
毎日,更新されるのを楽しみにしています。
いけないことだってわかっていても、
ももが好きなみやの心が悲しいですね。
432 名前: 投稿日:2007/07/14(土) 02:56



『 アイスクリーム 』



433 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 02:59
目が覚めたら隣に桃子がいた。
歯を磨いて、お昼を食べて部屋に二人。
予定のない午後は退屈なようでいて幸せだった。


久々の休み。
桃子が雅の家へと泊まりにきている。
起きてから数時間。
二人はどこへ行くわけでもなく雅の部屋でゴロゴロとしていた。
出かけるわけでもないので部屋着のまま。
この季節にしては暑い午後。
それまで窓際にいた桃子が気だるそうにやってきて、雅の隣に座り込み抱きついてくる。


434 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:01
「みーやん、暑い〜」
「だぁー、なら抱きつくんじゃないっ」
「えー、離れてても暑いしさー。それならくっついてても一緒じゃん」
「一緒じゃないって」
「……みーやん、もものこと嫌いなの?」


桃子が上目遣いでじっと見つめてくる。
それは桃子が雅からある言葉を引き出す時の常套手段。
わかってはいるがつい雅は答えてしまう。


「好きだけど……」
「けど?」
「暑いのはキライ」


435 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:01
そう言って雅は首に回された桃子の腕をはがそうとするが、見かけより腕力のある桃子の腕を引きはがすことが出来ない。
それどころか、引きはがそうとすると桃子がもっと密着してきて暑いことこのうえなかった。
仕方なく雅は桃子の好きなようにさせておくことにする。


「あー、もう誰かさんのせいで余計に暑い〜」
「ひど〜いっ!……って、あっ!涼しくする方法思いついた。アイスたべよ」
「どこにあんの?」
「みーやんの家の冷蔵庫」
「自分で取ってくれば?」
「ももね、人の家の冷蔵庫あさるのはダメだと思う」
「はぁ。……取ってくればいーんでしょ」


436 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:02
確かにアイスは食べたい。
けれど取りに行くのはだるい。
だが、取りに行くまで桃子が諦めないことは目に見えている。


雅は、渋々と階段を降りて冷凍庫からバニラとストロベリーのアイスを2つ調達してくる。
部屋の扉を開けて、二つのアイスクリームのうち、ストロベリーをスプーンと一緒に桃子に放り投げた。


「わっ、投げないでよ」


スプーンだけキャッチした桃子が文句を言ってくるが、雅は気にせずアイスクリームを食べ始める。


437 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:03
「みーやん、ひどいよね。味、選ばせてくれないとか」
「バニラがよかったの?」
「ううん、ストロベリーでいい」
「……選ぶ必要ないじゃん」
「わかってないなぁ。選ばせてくれるっていう気持ちが大事なんだよ」


暑い午後。
二人でくだらない話をしながら食べるアイスクリームはやけに美味しくて。
離れて座ったはずなのに、また隣に桃子がやってきてべったりとくっついて来ていることも嬉しくて。


バニラアイスをのんびり食べながらそんなことを考えていると、隣に座っていた桃子が雅の腕を引っ張ってくる。


438 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:04
「一口ちょーだい」
「じゃあ、もものもちょうだい」
「もものもうないもん」


甘えた声でアイスクリームを催促されて、自分の分をあげるかわりに一口貰おうと雅が桃子のカップの中を確かめると確かに中身は空になっていた。
交換条件。
そんなものはなくともいいのだが、雅はなんとなく桃子に意地悪をしてみたくなる。


439 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:05
「えー?じゃあ、あげない」
「みーやんのけちぃー!!ちょーだいよぉ」
「あーげないっ」


雅のそこの声を聞くと同時に桃子が雅のカップめがけてスプーンをのばしてくる。
桃子の予想通りの反応に笑いがこみ上げてきて、雅は大笑いしながら桃子の攻撃をかわす。
雅は桃子と一つのアイスを取り合って激しい攻防を繰り広げる。


何分そんなことを続けただろうか。
気がついたら、ショートパンツをはいた雅の太ももの上にアイスクリームがぽとりと落ちていた。


440 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:06

「あ、落ちた」
「あーあ、もったいない」
「もも、ティッシュ取って」
「ん、ももが拭いてあげる」


そう言うと桃子はティッシュも持たずに雅の太ももへ顔を近づけてくる。
そしてそのまま桃子が雅の太ももに唇を押しつけた。


「な、なにやってんのっ」
「もったいないじゃん」


雅は桃子の予想外の行動に思わず声をあげるが、桃子の返事はまるであたりまえの行動だといわんばかりのものでそれ以上声をかけられない。


441 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:07
太ももに押しつけられた唇がやけに生々しく感じられる。


心臓がドクリと血液を送り出す音が聞こえた。
その音がどんどん早くなっていくのがわかった。


雅から見えるのは自分の太ももの上にある桃子の頭。
それを太ももの上から排除してしまうことは簡単だった。
けれど、それは何故かしたくなかった。
だから、雅はどうしていいかわからない手を桃子の頭の上に置いた。


静かで暑い部屋の中、桃子の頭が時折動いては雅の太ももに落ちたアイスクリームを舐め取っていく。



442 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:07

アイスが落ちたそこは冷たくて。
ももの舌が触れた部分は熱くて。
犬みたいにペロペロと太ももを舐めるももの舌が赤くて。
なんだかおかしくなる。



443 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:08
桃子の舌が太ももに触れるたびにそこが自分の身体じゃないような気分になった。
身体の中が熱くなる。
それはきっと外の暑さのせいじゃない。


何かいけないことをしているような気がして雅は桃子の名前を呼んだ。


「ももっ」
「んー?」


444 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:09
返ってきたのは返事だけ。
雅が名前を呼んでも返事だけで桃子が顔をあげることはなかった。
雅は背筋がぞわぞわするような気持ちになって、それをどうにかする為に桃子の髪を掴んだ。
それでも桃子は雅の太ももから離れない。
太ももにそえられていたはずの桃子の手はいつのまにか膝にあって、雅の膝を指先でをくるくるとなぞって遊んでいた。


『あぁっ』


思いもよらない声が出そうになった。
だから、雅はその声が出る前に慌てて桃子の名前をもう一度呼んだ。


445 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:11
「もも。……もも。ちょっと、もう」
「ん、なに?」
「もうやめてって」


桃子が顔をあげた。
そして雅の雅の言葉を聞いて名残惜しそうな顔をした桃子に、もう一度アイスクリームの残っていない太ももを舐められた。


「みーやん。……美味しかった」


桃子ににっこりと笑顔でそう言われて、まるで自分自身が美味しかった、と言われているようで勝手に頬が赤くなった。
そんな雅に気づいているのかいないのか、桃子が背中を雅にぴたりとくっつけてくる。


446 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:12
「ねぇ、みーやん。今日は暑いねぇ」
「うん、暑いね」


そう答えながら、雅は桃子を背中から抱きしめた。


離れていても側にいても暑い日。
身体の中まで熱くされたけれど。
ドキドキがまだ止まらないけれど。


雅はたまにはこんな風に暑い日を過ごすのも悪くないような気がした。




447 名前:『 アイスクリーム 』 投稿日:2007/07/14(土) 03:13



『 アイスクリーム 』



- END -
448 名前: 投稿日:2007/07/14(土) 03:14
今回はまたシリーズから離れたものです。

449 名前: 投稿日:2007/07/14(土) 03:20
>>430 さん
がんばってくれるといいなぁ、雅('-';)
とりあえずがんばって書きますw

>>431 さん
ありがとうございます。
わかっていてもやめられないことって色々ありますね。
雅はこれからどうなってしまうのか……。
雅以上にがんばって書きます!
450 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/14(土) 19:09
更新お疲れ様です。
やっぱいいなぁ,なんか暖かい感じ。
2人のやりとりが目に浮かんでくるようです。
451 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/07/14(土) 21:18
こう言うみやもももいいですねー。
桃子は幼さと大人っぽさを両方持ってるから、
こう言う小説でも「らしいなぁ〜」って思ってしまうw
452 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/15(日) 03:26
フゥ〜、別のお話でしたか、
何で二人がこんなに愛らしくなった?と思いながら読みました。
ホンワリ良い話でした。
453 名前: 投稿日:2007/07/16(月) 02:26



『 夢より優しく 』



454 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:29
更衣室には誰もいなかった。
だからそこにあったベンチに二人並んで座った。

梨沙子は桃子にもたれかかってその肩に頭を乗せる。
のせた頭をぐりぐりと動かすと桃子がくすぐったそうに笑った。
ガランとした更衣室にその笑い声がやけに響く。


455 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:31
好きだと言ったことはない。
そして好きだと言われたこともない。


けれど、二人で過ごす時間は確実に増えていた。
そして、その距離も近づいていた。
桃子から近づいてくることはそうなかったが、桃子が梨沙子から逃げることもなかった。
だから、梨沙子は桃子に遠慮無く近づきそして甘えていた。


456 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:32
「ももぉ、歌うたって」


静かな更衣室。
声が響く空間。
梨沙子はなんとなく歌が聴きたくなってそう言った。
だが、桃子に即答される。


「やだ」
「なんで?歌ってよ」
「タダじゃ歌わないんだよーだっ」
「けちっ!……じゃあ、膝枕して」
「やーだっ」
「ふーんだっ!勝手にしてもらうもーん」


457 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:34
梨沙子はべーっと舌を出して、太ももをガードしている桃子の腕を捕まえる。
けれど桃子も本気でガードしているわけではないようで、掴まれた腕をどうするわけでもなく梨沙子に太ももを明け渡す。
梨沙子はベンチにゴロリと横になると、明け渡された桃子の太ももの上に頭をのせた。


二人だけの更衣室。
桃子の膝枕。
そしていつのまにか撫でられていた髪。
梨沙子は全てが心地良くて瞼が重くなる。


458 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:34
「梨沙子、眠いんでしょ?」


桃子にそう言われて閉じかけた目を開く。
梨沙子は何故だか認めたくなくて桃子の言葉を否定した。


「ううん」
「目、半分閉じてる」
「眠くない。起きてる」
「でも、もうすぐ寝るんでしょ?」
「寝ない。だからもも、歌ってよ」
「もぉ〜」


459 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:36
梨沙子はもう開くことが出来ない程重くなった瞼と格闘しながら食い下がった。
何度か頼めば桃子は梨沙子の願いを聞き入れる。
梨沙子もそれを知っている。
だから、梨沙子はもう一度歌をねだった。


「歌聞きたい」
「しょうがないなぁ、もう」


やれやれ、といった心の声が聞こえてきそうな桃子の声がした。
そして渋々承諾した桃子から歌声が聞こえてくる。


460 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:37
普段歌うときより少し低い声。
みんなと歌う歌とは違う歌。
柔らかな歌声が耳に心地良い。


なんだかもっと眠くなる。


心地良い睡魔にまかせてこのまま眠ってしまおうかと思った。
けれど、一つの疑問が頭に浮かぶ。


461 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:39
「……ねぇ、他の人にもこうやって歌うの?」
「さあ?……どうだと思う?」


珍しく真剣な顔をした桃子に瞳を覗き込まれる。


みんなに歌うのはいい。
けれど、自分以外の誰か一人の為だけに歌うのは嫌だ。
たった一人になれるのは自分だけ。
この歌声を独占出来るのは自分だけ。


462 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:40
子供じみた独占欲。
そんなことは梨沙子自身わかっていたが嫌なものは仕方がない。
そしてそんな独占欲を隠す方法も知らない。
だから、梨沙子は素直に言った。


「あたしだけじゃなきゃやだ」
「梨沙子だけだよ」


即答する桃子の声が優しくて安心した。
そしてまた歌声が聞こえてくる。


眠りを誘う歌声と髪を撫でる手。
梨沙子は重い瞼を開く努力を放棄した。


463 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:40

「梨沙子、好きだよ」


うとうととした頃。
夢なのか現実なのかわからないタイミングで聞こえた声。
唇には柔らかい感触。




464 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:41

……夢じゃないよね。
ねぇ、もも。
ももの歌声が心地良いからここでしばらく眠らせて。
そして優しく起こしてよ。




歌声とキスは最高の子守歌。
夢から覚めたら夢より素敵な現実が待っている。




465 名前:『 夢より優しく 』 投稿日:2007/07/16(月) 02:42



『 夢より優しく 』



- END -
466 名前: 投稿日:2007/07/16(月) 02:42
次回予定はシリーズの続編です。
467 名前: 投稿日:2007/07/16(月) 02:50
>>450 さん
仲良くじゃれ合う二人が書きたいなー、ということで出来上がりました。
ほのぼの系をやたら書きたくなる周期があります(´▽`)

>>451 さん
私は桃子の大人っぽい部分が好きなんですが、子供っぽいというか幼い部分も面白いですね。
大人っぽい部分と幼い部分のバランスが良い(?)から小説に使いやすいですw

>>452 さん
シリーズから離れて別の話をアップしました。
ほのぼの系を書かないと、何故かシリーズが書き進められない病に(;´ー`)……。

468 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/16(月) 18:56
ものすごくよかった。
萌え萌えのももX梨沙子。
469 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/17(火) 01:49
もも×梨沙子も良いですね、ももは変幻自在だな。
470 名前: 投稿日:2007/07/18(水) 02:13



『 崩壊、または望み 』



>>380-427
『 終末の始まり 』の続編。エロあり。
(時系列的には『 バランス 』の後になります)
471 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:16
「旅行、どこ行ってたの?」
「んー、海」
「どこの?」
「さあ、どこだろ」


雅の耳に桃子の気のない返事が聞こえた。
突然やってきた桃子がまるで自分の家にいるかのように、部屋の床にごろりと横になってくつろいでいる。


472 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:18
夕方、携帯が鳴った。
相手は桃子だった。
そしてすぐに桃子が雅の部屋へやってきた。


オフを利用して梨沙子と旅行に出かけていた桃子から渡されたのは小さなお土産。
一度家には帰ったらしく、桃子が持っていた旅行の荷物はそれだけだった。
桃子はそれを雅に渡すと、役目を果たしたとばかりに床へ寝転がった。

雅が床でゴロゴロと横になっている桃子に近づくといつもとは違うシャンプーの匂いがする。
そしてそれはどこかで嗅いだことのある匂いだった。


473 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:19
「もも、シャンプー変えた?」
「ん?ああ、これ梨沙子のシャンプー」


その答えを聞いて雅は梨沙子のシャンプーの匂いを思い出す。
桃子からする香りは確かに梨沙子と同じ香りで雅の記憶と一致する。
同時に記憶の中から梨沙子からいつもする桃子の香りが思い出された。

桃子といるときに梨沙子の香りがしたという記憶はほとんどなかった。
そのせいなのか今日はやけにシャンプーの匂いが気になる。

別にシャンプーの貸し借りなんて大したことではない。
旅行に行っていたのだから、桃子から梨沙子の香りがしたところで不思議はない。
そもそも泊まりがけの旅行だ。
二人の間に何があったかなんて簡単に想像出来る。


474 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:21
それなのに何故こんなにイライラとした気持ちになるんだろう。
いつもなら簡単に押さえ込める気持ちのはずなのに、どうしてこんなに桃子を独占したいと思うんだろう。


隠しておきたい気持ちを隠せなくなるのは怖い。
押さえきれない気持ちを口にしてしまう前にどうにかしなくてはいけない。
いけないはずなのに、雅の口から出たのは八つ当たりじみた言葉でどう聞いても不機嫌そうな声。
何故こんな口調になってしまうんだろう、と考えても自分では止めることが出来なかった。


475 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:24
「なんでうちにきたの?梨沙子の家に泊まればよかったのに」
「梨沙子、疲れたからって」
「うちも疲れてるって言ったら?」
「みーやん、疲れてるの?それならもも帰るよ」


雅の不機嫌そうな声を疲れているせいだと受け取ったのか、桃子が身体を起こして心配そうな顔で雅を見ていた。
桃子は本当に帰るつもりでいるようで、放り出していた荷物を手に持っているのが見える。

帰って欲しいわけではなかった。
ただ桃子の言葉に噛みついてみただけだ。
だから、雅はすぐに桃子を引き留める。


476 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:25
「……ううん。いいよ、帰らなくて」
「ほんとに?」
「うん。別に何も用事ないし、疲れてるわけじゃないから」


雅の直らない不機嫌そうな声に桃子が様子を伺うような顔で雅を見続けていた。
雅はその表情に何を言えばいいのかわからない。
安心させるような言葉をかけるべきだとは思うが、そんな言葉も思い浮かばない。
桃子の方も黙ったまま話し出す気配はなかった。

477 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:26
部屋の中を沈黙が支配する。
その沈黙をどうすることも出来ずにいると、桃子の手が雅の髪に伸びてきてその髪を撫でてきた。
雅の正面に座った桃子が困ったような表情で髪を撫でている。
そんな桃子を見ていると雅はもっと困らせたくなって、いつもはあまり口にすることのない質問をした。


「旅行中、梨沙子としたんでしょ?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「聞かれるのいや?」
「いやって言うか。みーやん、普段そういうことあんまり聞かないから」
「……したの?」
「聞かなくてもわかってるくせに」


478 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:28
桃子の困惑した瞳が雅の目に映る。
髪を撫でていた手は遠ざかって、桃子と触れている部分はなかった。

いつもとは逆の立場だ。
普段なら雅が困った顔をして桃子を見つめている。

今日はどうしてこんなに桃子を困らせたいのか自分でもわからない。
一度、言ってしまった言葉はもう止まらなかった。
次から次へと言うべきではない言葉が出てくる。


479 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:29
「……梨沙子とはどんな風にするの?」
「みーやん、おかしいよ。今日」
「おかしくないよ、別に。ただ知りたいだけだよ」
「みーやん、やっぱりおかしい。いつもそんなこと言わないじゃん」
「知りたいって思ったらおかしい?ねえ、もも。教えてよ。……梨沙子と同じようにしてよ」
「絶対おかしいよ、今日のみーやん。なんで急にそんなこと言うの?……ごめん、今日はもも、帰る。」
「なんで帰るの?何もしないの?じゃあ、なにしにきたの?そういうことしようと思ってたんじゃないの?」
「…………」


480 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:30
こんなことを聞いても何の意味もない。
梨沙子と同じようにしてほしいなんて言ったところで、桃子がそんなことをするわけがない。
そもそも本当にそんな風にして欲しいのかもわからない。
けれど言葉は止まらない。


桃子に帰って欲しくない。
このままいつものように過ごしたい。
なのに、心の奥が痛くてその痛みが桃子を追いつめたがっている。

どうしていいかわからずに呟いた言葉は自分でも思っていないものだった。


481 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:31
「……もも、抱いてよ」


縋り付くように言った言葉は初めて雅が口にした言葉だった。
雅が今まで告げたことのなかった言葉に桃子が驚いた顔をしているのがわかった。

桃子の手が雅に向かって伸ばされる。
その手が一瞬だけ雅の頬に触れた。
でもそれはすぐに引っ込められる。
そして温もりのかわりに雅が聞きたくなかった言葉を桃子が口にした。


482 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:32
「みーやん。……もう、こんなことやめよう?ももにこんなこと言う資格ないけど、もうやめようよ」


いつか聞かなければいけなかった言葉が雅の胸を締め付ける。
どんなに胸が痛くてもその言葉を受け入れるべきだとずっと思っていた。
けれど、実際にその言葉を聞いてしまった今、それが出来るとは思えなかった。
受け入れられない言葉を受け入れる努力さえしたくない。


483 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:34
「なんで?やっぱり梨沙子の方がいいから?」
「そんなんじゃなくて。今さらだけどこんなの間違ってる。ずっともも達、間違ってた。こんなこといつまでも続けられないよ」
「知ってるよ、そんなこと。でも、もう昔には戻れない。今さら前みたいに戻ろうなんて言われても無理だよ。そんなことももだってわかってるでしょ」
「……みーやん」
「だから、抱いてよ。梨沙子にするみたいにしてよ」
「……無理だよ。みーやんと梨沙子は違う。だから同じになんか出来ない」


桃子が雅に背中を向けた。
そしてこの部屋に持ってきた鞄を拾い上げて扉の方へと足を踏み出す。


484 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:34
「もも、帰るの?」


桃子の背中に問いかけるが返事はなかった。
かわりに桃子が一歩扉へと近づいた。


485 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:34
「ねえ、帰らないでよ」


遠ざかる桃子の手首を掴んで言った。
桃子が振り向いた。


486 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:35
「もも、お願いだから抱いてよ」


その言葉に桃子が雅を見る。
雅は自分の方を向いたその小さな身体に抱きついた。


487 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:36
「泣かないでよ。……みーやん」


困ったように桃子に言われて自分でも驚いた。
気がつけば頬は涙で濡れていた。
桃子がその涙を拭うように頬へキスをしてくる。


「梨沙子と同じになんて出来ないよ。それでもいいなら……」


桃子に抱きしめられてキスをされた。
雅は子供のようにただ頷くしか出来ない。
隙間もないほどに抱きしめられているとシャンプーの香りも気にならなくて、どうしてあんなことで胸がざわついたのかもうわからない。


488 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:37
「こんなのダメなのに。でも、なんでやめられないんだろう。みーやん、どうしてもも達やめられないんだろう」


苦しそうな桃子の声が聞こえた。
桃子に抱きしめられていて雅から表情は見えなかった。
けれど、なんとなくどんな顔をしているのかわかる気がした。


489 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:38
『きっと、やめたくないって思ってるからだよ』


雅は返事をしなかった。
お互いこんなことは言わなくてもわかっている。
だから言う必要なんてなかった。




490 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/18(水) 02:38

491 名前: 投稿日:2007/07/18(水) 02:38

492 名前: 投稿日:2007/07/18(水) 02:40
>>468 さん
ありがとうございます。
桃×梨には萌えがあると思っています!

>>469 さん
桃子はなんでもバッチコーイな感じで。
そんな勝手なイメージですw
493 名前:名無し飼育 投稿日:2007/07/18(水) 02:44
リアルタイム(・∀・)キタコレ

本当に切ないです。。
どうなるんだろ、この関係……
494 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/18(水) 13:07
更新お疲れ様です。
胸が締めつけられますね・・・
この次の更新を楽しみに待ってます。
みんなが幸せになれるように…
495 名前:名無飼育さ 投稿日:2007/07/19(木) 01:11
なんだかなー
泣けてきちゃいました
496 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/19(木) 01:52
そーかぁ、桃も苦しんでたのかぁ。
二人ともカワイイな
497 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:17

小さな明かりの下でゆっくりと服を脱がされた。
服と肌が擦れる音がいつもより大きく聞こえる。
一つ服を脱がせては桃子が雅の身体を確かめるように見つめる。
それだけで身体が熱くなる。
まるで服を脱がす行為自体が愛撫のように感じられて、身体が高ぶっていく。
全て脱がされてベッドに横になると、桃子が服を脱ぐのが見える。
見慣れたはずのその身体にドキドキする。


見つめられて目を閉じるとキスをされた。
すぐに閉じていた唇を舌にこじ開けられる。
口内に入り込んだ舌は遠慮無く動き回って雅の舌を絡め取る。
呼吸することを忘れそうな程のキスに息苦しくなって、酸素を求めて唇を離そうとした。
けれど桃子の唇が追いかけてきて息が出来ない。
空いた隙間を埋めるように唇を噛まれた。


498 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:18
「はぁっ」


長いキスが終わって唇が離れると呼吸が荒くなっているのがわかる。
それは桃子も同じようでお互いの呼吸音が部屋に響く。
けれど、呼吸が整う前に離れていた唇がすぐにまた雅の唇へと舞い戻ってきた。
唇を舐められ、舌を軽く噛まれて呼吸さえも奪い取られそうになった。


「もも、苦し……」


499 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:19
キスの合間に話す言葉さえ奪い取られる。
何度も深いキスをしてやっと解放された時には何も考えられなくなっていた。

雅が浅い呼吸を繰り返していると、同じように荒い息を整えきれない桃子に上半身を起こされた。
桃子が雅の足の間に身体を納めて、そのまま雅の身体を眺めてくる。
暗い、とは言えない部屋の中で桃子に黙ったままじっと見つめられて、雅は呼吸が荒くなるばかりで息苦しさが消えない。

雅を眺めていた桃子の指先が身体に触れてくる。
身体のラインを確かめるように桃子の指が頬から首筋へ、首筋から肩へと走っていく。
雅は肩から腕へと走り抜けた桃子の指先に手首を掴まれた。
そのまま抱き寄せられて肩を噛まれる。


500 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:20
「はっ、んんっっ」


たったそれだけで甘い声が漏れる。
桃子が触れた部分が熱くてそこばかりが気になった。

肩から唇が滑り落ちて、胸にキスをされた。
桃子の唇が雅を焦らすように胸を這い回るせいで、快感を求める背中が反り返ってバランスが保てない。
そんな崩れ落ちそうになる身体を桃子に支えられた。


501 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:22
「ね、みーやん。……好きな人は?」


雅の胸に刺激を与えていた桃子の舌先が急に止まったかと思うと、思ってもいないことを聞いてきて心臓が止まりそうになった。
そのせいで止めようがなかった喘ぎ声がぴたりと止まった。


もうわかってしまっていると思った。
桃子はもう自分の気持ちに気がついているに違いない。
けれど、自分の口からその気持ちを言えるわけがなかった。
だから雅は話をそらしたかったが、うまくそらす方法など思い浮かばなくて桃子に続きを促した。


502 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:23
「今、そんな話いいじゃん。もも、……してよ」
「……ん。ごめん」


耳元で謝られて唇に軽くキスをされる。
その唇はすぐに胸まで降りてきて、今度は胸の中心を口に含まれた。


「あっ、…あぁっ」


刺激に耐えられず掠れたような高い声が出た。
舌先でそこを転がすように刺激されて顎があがる。
軽くそこを噛まれて声が漏れる。
手が内腿を撫で上げてきて身体をよじった。

503 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:25
ゆっくりと身体を絡め取られていく。
触れられた部分全てが色付いていく。
無意識のうちに何度も桃子の名前を呼んでいた。
雅に名前を呼ばれるたびに桃子がキスを一つする。
快感に息が上がって名前を呼ぶことが出来なくなると、キスが止まって桃子に声をかけられた。


「みーやん、ごめんね」


どういうわけか桃子に何度も謝られる。
そして何度もキスをされた。
桃子の柔らかな優しい唇が顔中にキスを降らす。
その間も身体の上をいやらしい手が這い回っていて喘ぎ声が止まらない。


504 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:26
雅は謝られている意味がよくわからないが、キスはとても心地が良くて唇が触れるたびに思考が途切れる。
優しく撫でてくる手もどうしていいかわからないぐらい気持ちがいい。


「……どうし…て、優し…いの?」


返事はなかった。
かわりに桃子に抱きしめられた。
背中を撫で上げられて甘い声が漏れた。
桃子の指先が首筋を通って雅の髪を撫でる。
耳元に桃子の吐息を感じる。
耳にキスをする桃子に名前を呼ばれた。


505 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:28
「みーやん。……みーやん。」
「な…に?」
「もも、みーやんが…………。何でもない」


言いかけたままその後に続く桃子の言葉はどこかに消えてしまう。
もう一度聞き返そうと思った。
けれど聞き返す間もなく、いきなり二本の指が雅の身体の中に入り込んでくる。


ぐいぐいと身体の中を押し広げるようにして差し込まれた二本の指に思わず息が止まる。
身体が一瞬硬くなる。
でも、それは本当に一瞬で身体の奥から溢れ出る液体が桃子の指に絡みつき、すぐに動きが滑らかになった。
一度身体の奥まで達した桃子の指は雅を弄ぶように身体を少しずつ開いていく。


506 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:30
「あっ、はあぁっ。うっ…はっ…あんっ」


足の間から聞こえるいやらしい水音と唇から漏れる喘ぎ声。
もっと刺激が欲しくて身体が跳ねる。
そんな雅の声や表情で何をして欲しいかわかっているはずの桃子の指の動きは緩慢だった。

桃子の指はゆっくりと焦らすように雅の中を掻き回していて、それは雅が思っているような刺激から遠かった。
そして、雅の身体が跳ねるたび桃子はその手を止めてしまう。
求めているような刺激が得られなくて身体の奥が疼く。
身体の中に押し込まれた桃子の指を締め付けて離さない。
雅の身体と桃子の指との隙間を埋めるように身体の中が動くのがわかる。

507 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:31
もう限界だった。
これ以上焦らされることに身体が耐えられない。
早く達してしまいたくて雅は桃子に懇願する。


「あっ…おね…がい。はあっ…もう…イカせ…て」
「いいよ。みーやん、イッて」


桃子の指の動きが早くなる。
身体の中を二本の指が出入りする。
そのたびに聞こえる水音で今自分がどんな風になっているのかわかった。
中を強く何度も擦り上げられて身体がびくびくと痙攣する。
喘ぎ声が止まらなくて息が苦しい。
縋るように桃子の肩に抱きつくと、桃子の指が身体の奥まで入り込んできた。
突き上げるようなその快感に耐えきれなくなった雅の身体がベッドに崩れ落ちた。




508 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:32

結局、雅は終わりにすることが出来なかった。
断ち切られそうになった鎖を自分で引き寄せた。
隣で眠る桃子を手放したくなかった。


思ったよりも長い時間こうして過ごしてきたからなのか。
夜、桃子が隣にいることがとても自然で、桃子がいなくなってしまうことは考えられなかった。

傷が浅いうちにこの関係を終わらせておくべきだったのかもしれない。
けれど全てはもう手遅れだ。



509 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:33
気持ちを心の中に留めておくことが出来ない。
桃子がどこか別のところに行ってしまうのは嫌だ。
いつも側にいて欲しい。
終わりの言葉なんか聞きたくない。
かといって奪える程の勇気もなかった。


終わることを拒否して。
奪うことも出来ず。
この先どうしたいのかもわからない。
けれど一つだけ確かなこと。
桃子の中に少しの居場所が欲しかった。

510 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:34
全てが壊れてしまう日が近い。
押し留めていた想いが溢れ出す。
もう関係は壊れかけていて修復出来るはずもなかった。
でもそれを認めたくなかった。


優しくなんてしてくれなくていいから、少しでも長く側にいて欲しい。
望むことが許されるならば望みは一つ。
ほんの少しでも長く桃子と過ごしたい。
ただそれだけだった。




511 名前:『 崩壊、または望み 』 投稿日:2007/07/19(木) 02:35



『 崩壊、または望み 』



- END -
512 名前: 投稿日:2007/07/19(木) 02:37
書いても書いても終わらないのでもうしばらくこのシリーズは続きます。
……短編集なのにorz
まあ、一話完結になっているのでいいかと思いつつ書いています(;´Д`)

513 名前: 投稿日:2007/07/19(木) 02:45
>>493 さん
なかなか書き終わらないんですが、この関係をなんとかしたい今日この頃……。

>>494 さん
ありがとうございます。
書いている本人も、何か悪いことをしているような気がしております('-';)

>>495 さん
ちょっとブルーな関係が続いています。書いてる本人もちょっとブルーな気分に('-';)

>>496 さん
みんな苦しみながらがんばってます。
私もがんばろう。




514 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/19(木) 03:57
せつなすぎて涙が出てきます。。
ももは何を言いかけたんだろ
ももの真意はいったい……

続き、楽しみに待ってます
515 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/07/19(木) 18:31
二人の絡みは狂おしいほど切なくて悲しい・・・
でも梨沙子は純粋に桃子が好きなんだろうし・・・

・・・辛いなぁ
516 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/19(木) 18:55
>>515
まだ同日だから良かったけど今度からは上げないように気をつけましょう。
517 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/19(木) 21:32
切ないなぁ…。ほんと、切ない。
最初から読み直してみたけど、やっぱり切なかった。
もももみやの心が分かりますね。
ももみや,頑張れ! 作者さんも頑張れ!
518 名前:名無飼育さ 投稿日:2007/07/20(金) 00:14
何も知らない幸せな梨沙子のことを思うとまた泣いちゃいました
519 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/20(金) 02:30
桃の気持ちも微妙なようで・・・、
短編集なんて拘らずに書いちゃって下さい、どんな結末も受け入れる覚悟です。
520 名前: 投稿日:2007/07/21(土) 02:18



『 快楽と罪の意識 』



>>470-511
『 崩壊、または望み 』続編。エロあり。
(時系列→『 現実と欲望 』の前になります)
521 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/21(土) 02:20
仕事が終わり、ホテルに帰ってきて梨沙子の部屋に二人。
いつもすぐに寝てしまう梨沙子がなかなか眠らなかった。
だから桃子はいつもならたわいもない話をしているうちに、うとうとと寝入ってしまうはずの時間を過ぎても起きている梨沙子とたくさんのキスをした。
そして何度したのかわからない程繰り返した深いキスの後、不意に大人びた目をした梨沙子と視線が絡み合う。

欲望に耐えられなくなってその身体へ触れたら梨沙子に抱きつかれた。
少しの沈黙の後、梨沙子が桃子の耳元で囁いた。


522 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/21(土) 02:21
「……優しくしてよ?」
「どうしようかな」
「優しくしてくれないとやだからね」
「わかってる」


ずっと子供だと思っていたのに、いつの間にそんな風に人を誘う方法を覚えたんだろう。

子供だと思っていた梨沙子にこんな風に言われるとは思わなかった。
恥ずかしそうに囁いてきたその言葉が嬉しくて、桃子は少しだけ意地悪をしたくなった。
けれど、梨沙子が拗ねたように念を押してくるからすぐにその言葉はなかったことにした。


523 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/21(土) 02:22
初めての夜のせいか、少しだけ梨沙子が緊張しているように見える。
桃子はそんな梨沙子を安心させるように軽いキスをしてから、パジャマのボタンを外してそれを脱がせる。
そのままズボンと下着を脱がせて、肌が露わになった上半身に触れようとしたらそれは梨沙子によって制止された。

すぐに梨沙子の手が伸びてきて桃子のパジャマに触れた。
桃子の服に絡みついてくる梨沙子の手がボタンを外す。
ぎこちない指がボタンを全て外すとパジャマを脱がせてくる。
雅とは違うその行動に少し驚いたが、桃子は梨沙子の好きなようにさせる。
そのままパジャマのズボンを脱がされて、桃子は梨沙子に抱きつかれた。
暗がりの中、ぎゅっと抱きしめかえすと梨沙子が嬉しそうに呟いた。


524 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/21(土) 02:23

「ねえ、もも。こうやって抱き合うとさ。なんか気持ちいいね」
「うん。服着てるときより温かいし、気持ちいい」
「ちょっと恥ずかしいけど」
「これからもっと恥ずかしいことするんだけどね」
「……ばか」


525 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/21(土) 02:25
梨沙子に照れたように言われた。
けれど、その声を無視して桃子は身体に絡みついている梨沙子の腕をほどく。
梨沙子の耳にふっと息を吹きかけてから、舌先で耳をなぞる。
桃子の身体の下で梨沙子の身体がびくりと震えた。
絡みつこうとする腕に指を這わせて肩口まで撫で上げる。
そしてそのまま梨沙子の胸に触れた。

刺激に耐えかねて小さく暴れる梨沙子の身体を桃子はベッドへと押しつけた。
腕のやり場に困った梨沙子の指先が桃子の髪の間へと差し込まれる。
柔らかく胸を包んで軽く刺激する。
胸元にキスを落として、舌先で胸を舐め上げると梨沙子が声をあげた。


526 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/21(土) 02:26
「あっ、んっ。ももっ!……待って」


髪の間に入った梨沙子の指先に力が入って、桃子の動きを制止する。
桃子は梨沙子の胸から手を離し、自分の髪に触れている梨沙子の手を握った。
そのまま梨沙子の手を自分の顔の方へと引き寄せて指先にキスをする。
梨沙子の表情を見ると頬が赤く染まっているのがわかる。


「梨沙子、恥ずかしいの?それとも気持ちいいの?」
「……両方」
「可愛いね、梨沙子は。……恥ずかしくて気持ちいいことの続き、しよ?」


527 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/21(土) 02:27
赤い顔で梨沙子が頷くのが見えた。
握っていた梨沙子の手を離して、もう一度胸の上に置く。
そして先程と同じように胸に優しく触れる。
桃子は軽く手の平で梨沙子の胸を包んで何度も刺激を繰り返す。
胸の中心部分の周辺を舌先でなぞると、梨沙子が甘い声をあげる。


「はぁ…あっ、もも。あっ、ん…もっと」


小さく暴れていたはずの梨沙子の身体はいつの間にか桃子に絡みついていて、荒くなっていく呼吸の間にさらなる刺激を要求される。
桃子の髪にまた梨沙子の指が絡みつき、くしゃくしゃと柔らかく掴まれる。
誘われるように胸の中心に唇で触れると、髪に絡みつく指の力が強くなるのがわかった。
胸の柔らかな感触と誘うような声に桃子の体温も上がっていくが、不意にある事実に気がつく。


528 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/21(土) 02:28
触れる胸の感触がいつもと違うことに今さら気がついた。
そして気がついてしまうとそれがやけに気になる。
触れている梨沙子の胸は雅より大きくて、比べるつもりもないのについ比べてしまう。


柔らかな肌。
甘い声。
桃子を見つめる目。


その全てが雅とは違う。
桃子は当たり前のことに今さら驚く。
そして雅と梨沙子を比べている自分に驚いた。



529 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/21(土) 02:29

こんな時なのになんでみーやんを思い出すんだろう。
今、触れているのは梨沙子なのに。
みーやんと比べちゃ駄目なのに。



530 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/21(土) 02:30
梨沙子は初めての行為に恥ずかしがりながらも積極的に求めてくる。
それはやはり雅との夜とは違う。
初めての雅との行為とも違う。


梨沙子の胸に触れて、そこにキスをして、梨沙子の吐息を聞いているのに頭の中に違うことが思い浮かぶ。
胸の中心に舌を絡ませ、跳ねる身体を抱きしめているのに何故思い出すのか。


531 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/21(土) 02:31
今、梨沙子を目の前にしてこんなことを考えているべきではない。
それなのに雅と梨沙子の違いを見つけるたびに、雅のことを思い出してしまう。
だから桃子は、雅との夜を思い出さないように何度も梨沙子の名前を呼んだ。


「梨沙子。……梨沙子」
「んっ。ももぉ」


桃子が名前を呼ぶたびに梨沙子が甘い声で桃子の名前を呼ぶ。
心地良いその声に頭の中が痺れて、思い出してはいけない記憶は少しずつ封じられていく。


532 名前: 投稿日:2007/07/21(土) 02:32
本日の更新終了です。
533 名前: 投稿日:2007/07/21(土) 02:32

534 名前: 投稿日:2007/07/21(土) 02:40
>>514 さん
話が進むうちに桃子の真意が明らかに。……なるハズです('-';)

>>515 さん
今日は噂の梨沙子が登場です。

>>516 さん
ありがとうございますm(__)m

>>517 さん
ありがとうございます。がんばりました〜。
結構、時系列がバラバラに進んでいるのでわかりにくいこともあるかもしれませんが、読み直すと繋がるところもある、と思います('-';)

>>518 さん
知らない方がいいことも沢山あったり……。

>>519 さん
ありがとうございます。
もはや短編集という言葉は飾りですorz
終わりに向けて書き進めておりますので完結までぜひお付き合いをm(__)m


535 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/21(土) 18:12
桃子のやっちゃってることがうれしいような悲しいような
止めたいような進んでほしいような、複雑な気分です
536 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/21(土) 18:44
桃子視点ですね。
桃子の心は……?
積極的な梨沙子が可愛いです。
本当に毒されて小説が終わらないようにお願う位です。ww
537 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/22(日) 00:38
桃どうすんだよぅ、どっちか選べるのかぁ。
538 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/22(日) 01:05
作者さまの書く雅桃ヲタとしては雅桃になってほしかったりするんですが………梨沙子のことを考えると心が痛い。。

とりあえず……がんばれ!もも!!
539 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:16
桃子は何度も呼ばれる自分の名前を聞きながら、胸に触れていた手を滑らせて梨沙子の身体の色々な部分に触れる。。
白い透き通るような肌を探るように触れる桃子の手は、すぐに梨沙子が感じる部分を探し当てる。
そのたびに梨沙子が高い掠れた声をあげた。

その声をもっと聞きたくて、身体中に触れてキスをする。
唇にキスをすると梨沙子にねだるような目で見つめられてクラクラする。
離れようとすると抱きしめられて「もっとキスして」と囁かれる。
そのせいでどんどん大胆になっていく自分を止めることが出来なかった。

梨沙子の上半身のほとんどにキスをして、桃子は身体をずらして手を下半身へと伸ばす。
すると梨沙子の手が桃子の首に絡みついてきて、桃子は梨沙子の方へと引き寄せられた。


540 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:18
「なに?梨沙子」
「……もも、慣れてる?」
「そんなことないよ」


不審そうな梨沙子の声に桃子の心臓が止まりそうになる。
雅とのことがばれてしまうかと思った。
だから桃子は軽く笑って誤魔化すようにキスをした。

遠慮無く梨沙子の身体を貪る手。
その手は確かに梨沙子の言うとおり人の身体に触れることに慣れている。
雅と何度も繰り返した行為のせいで、今さら何もなかったように人の肌に触れる事など出来なかった。


541 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:20
梨沙子の疑問をこれ以上深めてはいけない。


桃子は梨沙子の思考を全て奪い取るように深いキスをする。
唇を塞ぎ、舌を絡め取って疑問の声をあげる余裕を与えない。
梨沙子の歯や歯茎に舌を這わせて唇を噛む。
長いキスの後は、荒い息づかいだけが部屋に響いた。


桃子はもう一度身体をずらして、梨沙子の脇腹へと唇を這わせる。
そのまま下の方へと唇を降ろして太ももに舌を這わせると梨沙子が声をあげた。
びくりと震える梨沙子の膝を立たせて内腿へキスをして、舌先で舐め上げる。
内腿にゆっくりと唇を這わせて、梨沙子の身体の中心へと近づく。
力の入っている足をさらに開かせると、桃子の目に梨沙子の濡れた部分が目に入った。


542 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:21
「……言ってもいい?」
「な…に?」
「梨沙子、すごく濡れてる」
「……それ、もものせいだもん。ちゃんと…責任とってよね」
「いいよ。触って欲しい?」
「そんなの……言わなくてもしてよ」


恥ずかしそうに催促する梨沙子が可愛くて、桃子は優しく濡れた部分に触れる。
小さな水音と共に指が梨沙子の体液に絡め取られる。
ゆっくりと指を這わせると梨沙子が今まで以上にいやらしい声をあげた。


543 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:23
「はあぁ…ももっ、んっ…気持ち、いい」


普段の声よりも高いその声は聞いているだけで、桃子自身がおかしくなりそうな程心地良い。
声を聞いているだけで身体が高ぶっていく。
そして隠さずに自分の気持ちを伝えてくる梨沙子を愛おしく感じる。

もっとその声が聞きたくて、その中心にある敏感な部分を強めに擦ると梨沙子がさらに甘い声をあげた。
その部分を押し広げるようにして、指を這わせて敏感な部分を小刻みに刺激する。
どれだけ濡れているかをわからせるように濡れた音を立てると、梨沙子の身体からもっと体液が溢れ出してぬるぬるとしてくる。
梨沙子の身体の中心が桃子を誘うように震えているのがわかる。

544 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:24
桃子が指を一本だけ梨沙子のその部分へ押し当てて中へ潜り込ませると、梨沙子の身体がしなった。
そして背中に回された梨沙子の指先が痛いぐらい肌に食い込んでくる。


「梨沙子、痛くない?」
「ん。……大丈夫」


心配になって尋ねた桃子に梨沙子が呼吸を整えてから返事を返してくる。
桃子は梨沙子の身体が落ち着くのを待ってから、梨沙子の中に挿れた指をそのままにして胸元にキスを落とした。
軽いキスを胸のあたりに何度も落としてから、その中心を唇で挟む。
梨沙子の身体の中が反応するのがわかる。
緩やかな愛撫をその部分に繰り返していると、少しずつ梨沙子の身体に指が馴染んでくる。


545 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:26
「動かすよ?」


梨沙子が浅い呼吸を繰り返しながら頷くのが見えた。
桃子はきつく締め付けられた指を慎重に動かす。
ゆっくりと痛みを与えないように指を出し入れすると、梨沙子から喘ぎ声が漏れる。


「あっ、はあっんっ」


梨沙子から甘い声があがるたびに桃子の指の動きがスムーズになっていく。
梨沙子の身体が桃子の指を受け入れて広がっていく。
絡みついた体液で濡れた指がいやらしい水音を立てる。

546 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:27
桃子は梨沙子の身体の変化にあわせて、中を探るように指を動かす。
掻き回すようにして中を擦っていく。
柔らかく押すようにして身体の中を刺激すると、ある部分で梨沙子が声をあげた。


「ももっ、そこっ」
「ここがいいの?」
「う…んっ」


梨沙子の腰が桃子に絡みついてくる。
腰を擦りつけるように動かして桃子を求めてくる。
要求通りにその部分を強めに擦ると、呼吸を整える余裕もない梨沙子の身体が桃子の指を締め付けてきた。


547 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:28
「梨沙子、好き。……大好き」


梨沙子の耳元で囁いてから、遠慮無く指を動かす。
その部分を小さく動かして強く擦ると梨沙子の身体が何度も震えた。
身体の中が妖しく蠢いて桃子の指にぎゅっと絡みつく。
桃子は指に絡みついてくる身体を振りほどいて、体液を掻き出すように動かし続ける。


548 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:29
「んっ、あっ。はあ…ああっ」


梨沙子の呼吸が苦しげなものに変わる。
桃子の背中に突き立てられた梨沙子の指が痛いぐらいに食い込んでくる。
甘い吐息の合間に何度も名前を呼ばれた。

桃子が最後の瞬間に向けてその部分を強く押すように擦り上げると、梨沙子の身体が強ばった。
一瞬、梨沙子の息が止まる。
桃子の指がぎゅっと締め付けられてから、梨沙子の身体から力が抜けるのがわかった。



549 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:31

自分の身体の下で荒い呼吸を整える梨沙子が見える。
快感に追いつめられることに疲れた梨沙子を抱きしめた。
抱きしめ返されるかわりに、好きだと言われた。


梨沙子の声や表情、その全てを独占したいという願い。
その願いは叶ったはずなのに、それなのにどこかで雅のことも気にしている。
どうしてこんな風になってしまったのか。

身体だけの関係。
それだけだったはずなのにどこから歯車が狂ってしまったんだろう。
今、抱きしめている梨沙子のことだけを考えていられる自分だったらどんなにいいだろう。
けれど、今ここにいるのはもう変わることの出来ない自分。
梨沙子を裏切っている事実に胸が痛かった。




550 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:32

行為が終わって抱き合っていると梨沙子はすぐに眠りについてしまった。
いつもとは逆だな、と桃子は思う。
終わったあとにすぐ眠ってしまうのは自分でいつも雅がいつ眠りについたのかわからない。
こんな風に誰かの寝顔を見ながら過ごす夜、雅はいつも何を考えていたんだろう。
そして自分は今、何を考えたいんだろう。



551 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:35
今日も抱き合う前に雅の話を聞かされていた。
つきあい始めたばかりの頃より雅の話をしなくなったとはいえ、一番話題にあがるのが雅のことだ。
こうやって何度も雅の話を聞かされているうちに、その存在が気になっていったのは確かだ。
大人気ないかもしれないが、梨沙子の口から毎日のように聞かされる雅に嫉妬していたのかもしれない。
だからだろうか、いつのまにか意識して雅を見るようになった。

深い意味はなかったが雅に近づいた。
近づいて今まで以上に親密に話すようになってみたら、その存在が思ったより心地良かった。
だが、それ以上踏み込むべきではなかった。


552 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:37
一回だけ。
一回だけのつもりだった。
けれど過ちは何度も繰り返されて、罪の意識さえ麻痺していた。
今では雅と身体を重ねることが当然のようにも思える。
梨沙子と雅、二人とも手放したくないなんてどうかしている。


いつか終わりにするべき日がくるはずなのに。
いつ終わりにするべきかわからない。
いつしか雅との関係が終わらなければいいのにと思うようになっていた。


553 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:38
雅の自分への想い。
最初は何も知らなかった。
だが、気がつかないままではいられなかった。
けれど、この関係を終わらせたくなくて気がつかないふりを続ける。
雅に全てを押しつけるようにしてこんなことを続ける自分を最低だと思う。
こんな自分の我が儘を雅はいつまで許してくれるのだろう。


きっと終わりを告げるべき日が近づいている。
梨沙子に雅との関係を知られる前に終わらせなければならない。
いつまでも雅の気持ちに甘えて、雅を傷つけ続けるわけにはいかない。
無理だとはわかっているが、誰も傷つかずに終わらせる方法があるのならば教えて欲しい。


554 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:39
桃子は隣で眠る梨沙子を見る。
すやすやと眠る梨沙子の横顔はとても幸せそうで、出来ることならこの幸せを壊さずにいたいと思う。

だが、こうなってしまった今、何も壊さずにいることは出来ないとわかっている。
けれど願わずにはいられない。
隣に眠る梨沙子の幸せを、そして雅との関係が続くことを。


梨沙子との恋と雅との関係。
その両方を望む自分。
罰せられる日がいつか来るだろう。
でも、その日が来るそれまではこの甘い罪に溺れていたい。




555 名前:『 快楽と罪の意識 』 投稿日:2007/07/22(日) 02:40



『 快楽と罪の意識 』



- END -
556 名前: 投稿日:2007/07/22(日) 02:40

557 名前: 投稿日:2007/07/22(日) 02:47
Buono!結成おめでとうヾ(*´∀`*)ノ
と、一言ゆいたいです。


>>535 さん
とりあえずこんな感じになりました('-';)

>>536 さん
今回は桃子視点で進めてみました。
とりあえずこのシリーズは終わりに向かっていますが、他にも色々書きたい物がありますのでながーく書き続けたいです(´▽`)

>>537 さん
桃子はどうするんでしょう(;´Д`)←他人事

>>538 さん
きっと、桃子なら!桃子ならやってくれる!!……と思っています('-';)


558 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/22(日) 03:23
桃子ぉ・・・悲しいなぁ・・・
梨沙子が可愛いですね
559 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/22(日) 23:27
桃子は全部分かっていましたよね。
梨沙子との恋と雅との関係……
どうなるか。
桃子の願いがかなってください。
Buono!結成おめでとう!
560 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/23(月) 01:05
まだまだ先は永いのですね、楽しみ。
作者様のほのぼの作品もお待ちしてます。
561 名前: 投稿日:2007/07/25(水) 02:34



『 いつでも一緒 』



562 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:35
仕事は終わった。
後は帰るだけだ。
だから、千奈美は友理奈に声をかけた。


「熊井ちゃん、帰ろー」
「ちぃ、ちょっと待ってて」
「熊井ちゃんっ」
「ごめん、すぐ行くから。……ねぇ、まあ〜」


千奈美の呼びかけに友理奈が元気よく答えた。
けれど、友理奈は千奈美の元へは来ない。
先程からのお喋りの相手、茉麻の元から離れない。



563 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:36

熊井ちゃんはまあに夢中だ。
いつもまあとばかりいる。
あたしといる時間よりももっとまあと二人でいるような気がする。
どうして熊井ちゃんはあたしを放っておいてまあとばかりいるんだろう。



564 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:37
千奈美は楽屋の壁を一回つま先で蹴った。
ガツンと思ったより大きな鈍い音が楽屋に響いた
だが、友理奈はその音にも気がつかない程、茉麻とのお喋りに夢中だ。
そのかわり、友理奈ではなくその音に気がついた茉麻が驚いたような顔でこちらを見ている。
その表情に千奈美は壁を蹴った事がとても大人気ないことに思えて、こちらを見ている茉麻に乾いた笑いを返した。


どれぐらいの時間がたったのかはわからない。
多分、思っている程長い時間ではない。
茉麻といる友理奈を見ているから長く感じられるのだろう。
壁を蹴ることを封じられた千奈美が足をパタパタと揺らして待っていると、友理奈が茉麻から離れてこちらに向かってくるのが見えた。


565 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:38
「ちぃ、おまたせー。ごめんね、遅くなっちゃった」
「熊井ちゃんのばかっ」


千奈美を拝むようにして、手を合わせながら自分の方へとやってくる友理奈に一言告げてから楽屋の扉を開けた。
わざと扉を友理奈が通る前に閉める。
後ろから「うわっ」という友理奈の驚いた声が聞こえた。
それでも足を止めずに千奈美は廊下を歩く。
すると廊下を走ってやってきた友理奈が千奈美の隣へとやってきた。


566 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:39
「ちぃ、ごめんってばっ。そんなに怒らないでよ。……遅くなってほんとごめん」


友理奈の申し訳なさそうな声が聞こえる。
隣を見ると、大きな身体を小さくして手を合わせて頭を下げている友理奈がいた。


友理奈はわかっていない。
何故自分がこんなに不機嫌なのか。
どうして友理奈を許さないのか。


千奈美に許してもらおうと謝る友理奈は案の定何もわかっていないようで、謝罪に対して何も言わない千奈美を不思議そうな顔で見つめている。
だから、千奈美は言った。


567 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:39
「違うっ」
「え?」
「そこじゃない」
「えっ?えっ?どこ?」
「もぉ、熊井ちゃんの鈍感っ!」
「ええーーーー!」


謝るべきところが間違っている。
そして友理奈はやはりそれに気がつかない。
当たり前すぎる展開。
いつも友理奈はこうだ。
素直で天然で子供で鈍感。
そこが可愛くもあり、憎らしいところでもある。


「あの、ね?なんで怒ってるのか教えて?」
「言わなきゃわかんない?」
「……ごめん」


568 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:40
怒られている理由がわからず友理奈が困った声でしょんぼりと言った。
千奈美はバカみたいに素直に謝る友理奈を可愛いと思う。
けれど、言わずにはいられなかった。

ずっと黙っていたこと。
それは言っても仕方がないと思っていたこと。
そしてそれを言ってしまうことは子供がすることだと思っていた。
でも、言わずにはいられない。


「熊井ちゃんは、まあ、まあって言い過ぎなのっ」
「へ???」


569 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:41
茉麻と仲が良いのは悪くない。
千奈美と付き合う前から友理奈と茉麻は仲が良かった。
だから、それは別に悪くない。
けれど、悪くないから許せるわけでもなかった。
毎日のように茉麻にべったりとくっついて懐いているところを見るのはやはり辛い。


「熊井ちゃん、誰と付き合ってるの?」
「え、えっと。……ちぃ、と」
「じゃあ、もっとあたしと一緒にいてよ。他の誰かといてもいいけど、もっと一緒にいてよ」
「うん。もっとちぃと一緒にいるようにするから。だから、ごめん。……許してくれる?」
「一応、許す」
「えー、一応なの?」


570 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:42
何か言い返されると思った。
しかし、友理奈は言い返すどころか千奈美に素直に頭を下げる。

だからこちらも素直に許すべきだ。
友理奈が素直に謝ってきたのだから、いつまでも怒っているのは大人気ない。
でも、なんとなく意地悪がしたくなって千奈美は友理奈を完全には許さないでおく。
すると友理奈が珍しく悪戯っぽい瞳で千奈美を覗き込んできた。


「じゃあ、こうしたらちゃんと許してくれる?」


友理奈が確認するように廊下の隅々にまで視線を走らせるのが見えた。
何だろうと疑問に思っている間に友理奈の顔が近づいてきて、千奈美は頬にキスをされる。

571 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:43
突然の出来事に千奈美は驚く。
自分からこういうことを滅多にしない友理奈にキスをされたという事実に顔が赤くなりそうになる。
けれど、千奈美は頬に血液を送り込む血管をなんとかなだめて平然とした顔を作る。


「……嬉しいけど。でも、こんなのどこで覚えてきたの?」
「え?」
「ごめんねのキスなんて、誰かから聞かなきゃ熊井ちゃんできないもん。絶対!!」
「ええっっ」
「……誰?」
「え、えっとぉ。……まあ?」
「もおおおおお、熊井ちゃんのばかっっっ」
「ええええっ、ちょっと。ちぃ!ねえ、ちぃってば。もう許してよ〜」


情けない声をあげた友理奈が千奈美の腕を掴む。
千奈美はそんな友理奈を引きずるようにしてドカドカと廊下を歩く。



572 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:44

本当はとっくに許してるんだけど。
まあとのことは妬けるけど。
キスが嬉しいのは事実だから許してあげる。
でも、困ってる熊井ちゃんが面白いからもう少しこのままでいようかな。



大きな身体を小さくして何度もごめんねと謝る友理奈を片腕に留まらせて、もうしばらくこのまま歩くのも悪くない。




573 名前:『 いつでも一緒 』 投稿日:2007/07/25(水) 02:45



『 いつでも一緒 』



- END -
574 名前: 投稿日:2007/07/25(水) 02:45

575 名前: 投稿日:2007/07/25(水) 02:50
>>558 さん
桃子には「哀」という字が似合う、とか勝手に思っています('-';)

>>559 さん
3人の関係、どう転ぶか……。只今、がんばって書いております。
果たして桃子の願いは叶うのでしょうか。

>>560 さん
今回は恒例(?)のほのぼのタイムです('▽')
576 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/25(水) 20:23
やばい超かわいいわー
特に>>571のとこで我慢する千奈美と素直すぎる熊井ちゃんが良すぎるわー
作者さんほのぼのありがとう
577 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/25(水) 21:34
鈍感な熊井ちゃんが可愛い〜
この二名の大人での成長を見ることも楽しさです。
3人の関係もお待ちしてます。
578 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/26(木) 00:59
ほのぼのありがとう、いつかは来ると思ってた「くまぁず」
でもやっぱりまぁのキャラはCPしにくいのかな?。
作者さんの熊井ちゃんはカワイすぎ〜!。
579 名前: 投稿日:2007/07/27(金) 02:19



『 優しさの上限 』



>>520-555
『 快楽と罪の意識 』 続編
(時系列→『 崩壊、または望み 』の後になります)
580 名前:『 優しさの上限 』 投稿日:2007/07/27(金) 02:21
雅が桃子に泣きついたあの日以来、桃子の態度が変わった。
雅にとって良い方向に。
そして悪い方向にも。
希望と絶望。
雅には桃子が何をしたいのかわからなかった。



581 名前:『 優しさの上限 』 投稿日:2007/07/27(金) 02:22
撮影の合間、木陰に桃子と二人。
今日はロケ日で他のメンバーはここから少し離れた場所で撮影中だ。
撮影のないメンバーもここから離れた場所にいる。

二人がいる場所は撮影をしている場所から死角になっているとはいえ、目に見える範囲に他のメンバーがいる。
それなのに桃子の手が雅の手に触れた。
次の瞬間、桃子に手を握られる。

最近こういうことが多かった。
以前なら夜と仕事以外で身体が触れあうことはほとんどなかった。
桃子は必要以上に雅に近づいてはこなかった。
それなのに最近はこうして桃子の方から雅に近づいてくることがある。


582 名前:『 優しさの上限 』 投稿日:2007/07/27(金) 02:23
「ねえ、もも。どうしたの?」
「なにが?」
「ん、なんか。……最近、今までと違う」
「変わらないよ、何も」


素朴な疑問。
桃子は明らかに以前とは違う。
雅はその理由が知りたかった。


変わらない。
桃子はそう言ってはいるが、実際は違った。
今まで以上に雅の身体を求めてくるようになった。
今まで以上に雅に優しくなった。
そして、梨沙子にはもっと優しくなった。
誰の目から見てもわかる程に梨沙子へ優しく接するようになっていた。


583 名前:『 優しさの上限 』 投稿日:2007/07/27(金) 02:24
梨沙子への優しさに絶望した。
けれど、自分への優しさに喜んだ。

当然、雅と梨沙子への優しさは違う。
梨沙子と自分を比べても仕方がないことだとわかっている。
だが、それまでと比べると過剰に自分を求めてくる桃子に、自分へ優しく接するその態度に舞い上がる。

ただ雅はその理由がわからない。
自分を放り出して梨沙子の元へ行かない理由がわからない。
聞いてもさっきのようにはぐらかされる。
もしかしたら答えは知らない方がいいのかもしれなかった。


584 名前:『 優しさの上限 』 投稿日:2007/07/27(金) 02:26
雅は握られた手をぎゅっと握りかえす。
急に力を入れたせいか桃子が雅の方を向く。

にっこりと桃子に微笑まれた。
遠くから梨沙子の明るい声が聞こえてくる。
桃子が手を握る力を強めたのがわかった。


「一緒に旅行、行きたいな」


自分でも意地悪だと思う。
答えなど聞く前からわかっている。
桃子が梨沙子と行った旅行のことを思い出して言ってみただけだ。
けれど、桃子から返ってきた返事は予想外のものだった。


585 名前:『 優しさの上限 』 投稿日:2007/07/27(金) 02:28
「……いいね」
「え?」
「どこに行きたい?」


木の葉の間から差し込む光に照らされている桃子は嘘を言っているようには見えない。
覗き込むように雅を見つめる瞳は真剣で嘘を言っているとは思えなかった。
思いがけない返事に何も答えることの出来ない雅を桃子が黙って見つめていた。


どこに行きたいかを考えるよりも、どうして肯定されたのか気になる。
だから、どこに行きたいかを答えることなど出来ない。


言葉を発することも出来ずに黙り込む雅に、桃子が焦れたように近づいてくるのがわかった。
下から覗き込むように見つめていた桃子の瞳が閉じられて、雅の頬に軽く唇が触れた。


586 名前:『 優しさの上限 』 投稿日:2007/07/27(金) 02:29
「ね、いつ行こうか?」


雅から身体を離した桃子が木に寄りかかりながら目を細める。
その様子をじっと見つめる雅に気がつくと桃子が優しげに笑った。

二人で旅行に行こうと言う桃子の心を読めない。
けれど、その心を知る必要はないのだと思う。



587 名前:『 優しさの上限 』 投稿日:2007/07/27(金) 02:30

ねえ、もも。
こんな風に優しくされたらどうしていいかわかんないよ。
ももがうちを好きなのかもしれないって誤解する。
こんな風に優しくされたらもう離れられなくなる。
終わりにするタイミングを逃してしまったから、もうどうしていいかわからない。
旅行に行ったらどうなってしまうんだろう。
……もも、うちらは一体どこへ行こうとしてるんだろう。



二人で旅行に行ってしまったら何かが終わるよう気がする。
それでも雅はどんな理由であれ桃子について行く以外の選択肢は思い浮かばなかった。




588 名前:『 優しさの上限 』 投稿日:2007/07/27(金) 02:31



『 優しさの上限 』



- END -
589 名前: 投稿日:2007/07/27(金) 02:31

590 名前: 投稿日:2007/07/27(金) 02:38
>>576 さん
可愛いとっくまが好きです(´▽`)
熊井ちゃんは見てると面白いですねw

>>577 さん
いつか大人になる日が来る!?・・・かな。
天然な熊井ちゃんが大人になる日をお待ちください。

>>578 さん
くまぁず自体は好きなんですが、茉麻を絡めるのは難しいですねぇ。
やっぱりお母さんなイメージが強くてCPの難易度が高いです('-';)

591 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/27(金) 23:36
優しいももは何か変ですね。
やっぱりももは意地悪が……w
旅行を行って何の事があるか?
ドキドキします。
592 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/28(土) 04:06
ももぉ〜頼むよ!みやを幸せにしてくれよぉ〜。
593 名前: 投稿日:2007/07/29(日) 01:57



『 終わらない夜 』



>>579-588
『 優しさの上限 』続編
(時系列→『 優しさの上限 』の後になります)
エロあり。
594 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 01:58
雅が海がいいと言ったのは梨沙子への小さな嫉妬心だったのかもしれない。
本当のところ場所なんてどこでもよかった。
ただ思い浮かんだ場所を言ったら海になっただけだ。
そして桃子がそれを受け入れた。
旅行に来ることを嫌だと言わずに、海へ来ることにも反対せず一緒に旅行にやってきた桃子は何を考えているのだろう。
桃子に旅行を承諾した理由を聞いても答えてはくれず、雅にはこうして二人で旅行に来ていることが不思議でならなかった。


595 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 01:59
海へ行くと決まった後、詳しい行き先やホテルは桃子が決めた。
もしかしたらここは梨沙子と来た海なのかもしれない。
でも、本当のことは聞けなかった。


電車に揺られて数時間。
着いた場所は予定通り海。
昼下がりの日差しがギラギラと眩しい。
避けようのない太陽の下を二人で歩いていると桃子が立ち止まった。


596 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:00
「ここ、夕日が綺麗なんだよ」
「へー、そうなんだ」
「昼でも十分綺麗だけどね」


その言葉に雅は海を見る。
桃子の言葉通り、夕方にはまだ遠い時間帯の今でも海は綺麗だった。
けれど昼下がりの太陽の下では夕日に照らされる景色を想像できない。


「でも、それなら夕方に来たかったなぁ」


知らなければ気にもならなっただろう夕方の景色。
しかし、聞いてしまったらそれを見たいと思うのが人間だ。
だが、雅の意見は桃子に受け入れられなかった。


597 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:02
「夕方来たらあぶないよ」
「そうなの?」
「うん、あぶない。変な人に声かけられて連れ去れるかも」
「どんな心配なんだか。……大体、そんなことあるわけないじゃん」
「あるよ。みーやんいなくなったら、もも困る」


最初は冗談めかした口調。
そしてそれは徐々に冗談とは離れた口調になっていく。

冗談とは思えない口調の桃子に拗ねたように「困る」と言われて、もっと困ったのは雅自身だった。
ありえない話を真面目に話されて拗ねられてもこちらが困る。
それを嬉しいと感じる自分にもっと困って、雅は桃子以上に冗談めかして答える。


598 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:03
「大丈夫だって。連れ去られる時はももも一緒だから」
「それはそれで嫌かもしれない」
「えー、ももヒドイ。一緒に連れ去られてくれてもいーじゃん」
「やーだ。もももみーやんも連れ去られたらダメだしっ」
「ま、確かに連れ去られたりしたくないけどさ」
「でしょ?だから昼に来て正解なんだよ」
「正解ねぇ。でも夕日見たかったなー」


結局どういう理屈かわからないが、桃子によるととにかく夕方は駄目らしい。
駄目だと言われるともっと見たくなる。
だから、雅はわざと残念そうな声で夕日を見たいと言ってみた。


599 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:04
「夕日に照らされるみーやんとか……」


桃子が途中まで言いかけて言葉を止める。
視線は雅の顔へと向いていた。
けれど、何かを言いたげな顔をしたまま桃子が雅から視線をそらした。
言葉の先が気になって雅は続きを桃子に促す。


「うちがどうかした?」
「どうもしない」
「なに?もも、最後まで言いなよ」
「……絶対、綺麗じゃん」
「へ?」


600 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:06
からかわれているのかと思った。
だが、桃子を見ると頬が薄く色付いていた。
その照れたような表情は雅をからかって遊んでいる時のものとは違う。

まるで恋人同士。
たわいもない馴れ合いが勘違いを産む。
今まで二人がしたこともないような会話が続いて怖くなる。
桃子が遠慮無く自分に向かってくるのが怖い。
望んでいたことのはずなのに、いざそうなるとどうしていいかわからない。
桃子がどこへ行こうとしているのか見当もつかない。


桃子の予想外の言葉に雅はなんと答えていいか思い浮かばなかった。
それでも何か答えなければと思い、やっと口にした言葉は馬鹿馬鹿しいものだった。


601 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:07
「……もも、何か悪い物でも食べた?」
「食べたかもしれない」
「何食べたの?」
「みーやん」


桃子の低く呟いた声が雅の耳に届く。
誘うようなその声に体温が上がる気がする。


602 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:09
真っ直ぐに見つめてくる桃子の目。
照りつける太陽。
二人以外誰もいない空間。
目の前には青い海と白い肌の桃子。


きっと太陽が眩しいせいだ。
さっきまで聞こえていた波の音が遠くなっていく。
思考が止まる。
雅の伸ばした右手が桃子の白い首筋に触れた。


603 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:10
「どうしたの?」


桃子が小さく首を傾げて問いかけてくる。
けれど雅は返事をしない。
かわりに左手を桃子の首筋へと伸ばした。
両手で桃子の首を軽く掴む。
桃子の細い首が両手の中に収まった。
その手に少し力を入れると桃子の表情が歪んで見えた。

それでも桃子は逃げない。
ゆっくりと桃子が目を閉じる。


604 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:10
「みーやん、どうしたいの?」


目を閉じたままの桃子が問いかけてくる。


どうしたい?
どうしたいんだろう。
何を望んでいるんだろう。


このまま桃子といたい。
このまま帰りたくない。
まるで恋人同士のような時間を終わらせたくない。
勘違いならそれでもいい。
夢を見たままでいたい。


わからない。
どうするべきなのか。


605 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:12
「このまま……」
「このまま?」
「このままこの手に力を入れたらどうなるんだろう」


きっとこの手に力を入れたら……。
全てを手に入れることが出来る。
全てを終わりにすることが出来る。
全てを消してしまえる。


馬鹿馬鹿しい考えだ。
そんなことを出来るわけがない。
それなのにこの手の力を抜くことが出来ない。


長いようで短い沈黙。
力を抜くことも、それ以上力を入れることも出来ないまま。
そんな雅の手に桃子の手が触れる。
どうしていいかわからないまま雅が桃子を見つめていると、桃子が目を開くのが見えた。


606 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:14
「みーやんにならいいかもね」
「……もも」
「でも、その後はどうするの?みーやんはどうなるの?」
「…………」
「一緒に来てくれるの?」


桃子が唇だけで微笑んだ。
薄い唇が誘うように笑う。
雅の手に触れている桃子の手は軽く触れたままで動かない。
桃子の瞳に海が映っている。


急に今まで遠ざかっていた波の音が聞こえてくる。
今までどうすることも出来なかった雅の手の力が抜けた。
雅は桃子の細い首から手を離して海を見る。
そして小さく呟いた。


607 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:14
「……冗談だよ」


軽く笑う。
けれど、それは乾いた笑いにしかならない。
雅のその笑いに答えるように、桃子が小さく笑って言った。


「こういう終わり方も悪くなかったのに」
「え?」
「……冗談だよ」


桃子に同じ言葉を返された。
桃子の瞳は海に向かっていた。
結局、桃子が何を考えているのかはわからなかった。


608 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/29(日) 02:15

この後は何事もなかったように海で過ごした。
夕方になる前に手を繋いでホテルへと向かう。
まるでデートみたいだ、と思ったことは桃子には言わないでおいた。




609 名前: 投稿日:2007/07/29(日) 02:16
本日の更新終了です。
610 名前: 投稿日:2007/07/29(日) 02:16

611 名前: 投稿日:2007/07/29(日) 02:21
>>591 さん
桃子は小悪魔な感じで意地悪なのが似合いますねw
とりあえず二人は旅行にやってまいりました〜。
さてさてこれからどーなるんでしょう(;´▽`)

>>592 さん
頼まれちゃった桃子はこれからどーするんでしょう(;´Д`)

612 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/07/29(日) 03:16
「一緒に来てくれるの?」のセリフにドキッとした・・・
ていうか桃子の真意が掴めないなー
梨沙子はどうなっちゃうんだよぉ、桃子ー
613 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/29(日) 22:37
一番心の痛いのはももではないか……
ももは何を望んでいるか……
結末を見たかったり見たくなかったりします。(;´Д`)
でも期待しています。
614 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/29(日) 23:13
凄く文が綺麗ですね。
ドキドキしてきます…。
やっぱりいろんな人のとかを見て勉強してるんですか?
615 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/30(月) 01:19
この話のみやはカワイイくて好きだが、今回はももがカワイイなぁ。
なにも知らない梨沙子もかわいそうだし…、
いったい誰を応援したら良いのやら?。
616 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/30(月) 02:49

陽が落ちると夜が来るのはあっという間だった。
一人でいる時は時間が過ぎるのが遅いくせに、二人でいると時はやけに過ぎるのが早い。


お風呂上がりの香りが一緒だなんて小さな事に喜んで。
きっとすぐに来てしまう朝に今から悲しんで。
一泊なんてすぐだ。
残り時間は短い。


朝までの長くはない時間。
ベッドの上で桃子と一緒にゴロゴロと寝ころんで、昔のようにくだらない話をした。
まるで身体を重ねる前のように過ごす。
ただ以前とは違い、梨沙子の話はしなかった。
雅の口からも桃子の口からも梨沙子の名前は出なかった。
特定の話題を避けているとはいえ、尽きることのない話に時間はあっというまに過ぎていく。


617 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/30(月) 02:51
きっかけはキス。
途切れた会話の途中、雅の唇に桃子の唇が触れた。
すぐに唇が離れて、先に起きあがった桃子に横になった身体を起こされる。
もう一度唇が触れると、今度は桃子の舌が雅の唇を割って入り込んできた。
桃子の舌に自分の舌を絡ませると、まるでそれが合図だったかのように雅の身体に桃子の手が触れる。
何度も深いキスを繰り返す。
その間に急かされるようにパジャマを脱がされた。
キスに思考を奪われているうちに、気がつけば桃子も自分と同じように裸になっていた。

618 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/30(月) 02:52
桃子にベッドへと押し倒される。
見慣れた光景。
桃子の顔の向こうに天井が見える。
見上げる桃子の表情はいつもと変わらない。
見慣れているはずの薄く微笑む唇に見とれていると、桃子の唇が近づいてきてその唇が鎖骨に触れる。
それはいつもと変わらないように思えた。
でもそれは普段とは違っていて、いつもより余裕のない桃子の唇が雅の身体中にキスをする。
そのキスはいつもの柔らかなキスとは違う。
荒っぽい、とまではいかないが身体の色々な場所へ強引に触れる桃子の唇に雅は疑問の声をあげた。


619 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/30(月) 02:53
「んっ…ももっ、どう…したの?」
「すぐに朝になっちゃうから……」


言葉の続きは唇へのキス。
続きを聞く必要はない。
多分、きっと自分と同じ事を考えてくれている。
雅は桃子が同じ気持ちでいてくれることに驚いた。


昨日までと違うキス。
昨日までと違う言葉。
いつになく真っ直ぐに向かってくる桃子。
やっぱり夜になっても桃子の態度が変わらない。
雅が誤解したくなるようなことばかりが起こる。


620 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/30(月) 02:54
身体に触れる唇となぞるように触る手。
いつもとは違う強引に触れてくるその感触に普段よりも早く雅の息があがる。
快感に身体が桃子から逃げ出そうとするが、桃子の手が逃げる身体を捕まえてキスを落とす。
逃れられない快感に呼吸が荒くなって声が掠れる。


「んっ。……はぁっあっ」


はく息なのか喘ぎ声なのかわからない声が出る。
息苦しくて呼吸を整えようとするがうまくいかない。
身体からはき出される空気さえも桃子に捕らえられる。


621 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/30(月) 02:55
「……もも、…待って…よ」


次第に浅く短くなっていく呼吸に耐えられなくなって、桃子の名前を呼んだ。
雅の身体を絡め取る桃子を押し留めてその瞳を見つめる。
考える力が奪われる前に聞きたいことがあった。


昨日までとは違う今日の態度。
桃子が向かっている場所。
一体、何をどうしたいのか知りたかった。


だが、それを口に出す前に桃子から言葉が投げかけられる。


622 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/30(月) 02:56
「みーやん、何考えてるの?」


不満そうな声。
その理由は想像がついた。
桃子の身体の下にいる雅が今している行為から離れた何かを考えている、そのことがきっと不満なんだろう。

雅は素直に何を考えていたか話そうと考える。
けれどすぐに思い直し、それをやめて質問に質問を返す。


623 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/30(月) 02:57
「ももこそ何考えてるの?」
「みーやんのこと」
「嘘ばっかり」
「ほんとだよ。どうしたらみーやんを気持ちよくしてあげられるか考えてる」
「……変なこと考えなくていいから」
「でも、気持ちよくなりたいでしょ?」


聞かなければよかった、と思ったときには遅かった。
聞きたいことを素直に聞くタイミングが失われて、かわりに得た物は考える力が奪われる程の快感。


624 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/30(月) 02:58
「あっ、あぁ。……はぁっ」


唐突に胸の中心に歯を立てられて、湿った高い声が唇から漏れる。
痛いぐらいの刺激の後に、柔らかな唇と湿った舌が優しくその部分を這い回る。
時々、甘噛みされて身体が跳ねる。
唇で胸を刺激しながら、桃子の手が雅の身体を撫で上げていく。
腰のあたりをゆっくりと撫でられると、身体の中心が疼くのがわかった。

浅い呼吸の間に喘ぎ声が響く。
苦しくなって桃子の肩にしがみつくと、身体を撫でる手と胸に触れていた唇が離れた。
身体を追いつめていく刺激がなくなって呼吸が楽になる。
ゆっくりと息を吸い込んでいると桃子が雅の耳元へ悪戯っぽい声で問いかけてきた。


625 名前: 投稿日:2007/07/30(月) 02:59
本日の更新終了です。
626 名前: 投稿日:2007/07/30(月) 02:59

627 名前: 投稿日:2007/07/30(月) 03:08
>>612 さん
桃子は梨沙子をどうするつもりなんでしょう('-';)
……かなり他人事な私(;´Д`)

>>613 さん
ありがとうございます。
桃子もやっぱり色々と痛い思いをしてると思います。
みんな痛い感じになってしまいました。

>>614 さん
ありがとうございます。
勉強の為ではなく読むのが好きで、昔は色々な本を読んでいたんですが最近はサッパリ……。
今は書き殴ってばかりの日々です。

>>615 さん
ここは全員を応援するということで!

628 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/30(月) 21:25
えーーーいいところで!!気になって眠れませんw
629 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:29
「どんな風にして欲しい?」
「…………」
「みーやん?」


誘うような桃子の瞳。
答えを促すように耳元から顎のラインを指先でなぞられる。


「そんなの……。答えられないって知ってるくせに」
「答えて」


問いかけ、というよりは命令。
耳元で囁いた桃子に雅は耳たぶを噛まれる。
逃げ出すことは許されない。
だから雅は精一杯答えられる範囲の言葉を桃子に伝えた。


630 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:30
「……ももの好きにしていいから」
「みーやんのえっち」
「なんで?」
「だってもも、今すごくえっちなこと考えてる」
「えっ?」
「ももの好きにしていいんでしょ?だったら、みーやんはももと同じでえっちだよ」


その言葉に雅の顔が赤くなる。
その様子を見ていた桃子がくすくすと笑いながら身体を起こした。
起きあがった桃子が雅の手を取り、そのまま指先にキスをする。


631 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:30
「起きて」


桃子に掴まれた手を引っ張られた。
雅が桃子に引き寄せられるように身体を起こすと、桃子がするりと雅の背中へと回り込む。
背中に当たる柔らかな感触に気を取られていると、背中からぎゅっと抱きしめられた。

強く抱きしめられたのは一瞬。
温かな体温はすぐに背中から離れる。
そして髪をかき上げられうなじに唇を押しつけられる。
なんだかくすぐったくなって身体をよじると、その唇が背骨の上に触れた。
背骨を撫でるように舌で舐められ、雅の身体が軽くしなる。
肩口から肩胛骨へと桃子の指先が走る。
そのままその指が胸へと移動して、敏感な部分を指先で摘まれた。


632 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:31
「はあっ、あんっ。もも、…やぁ、んっ」


与えられる刺激に顎が上がって、声が掠れる。
喉に声が張り付いて上手く出すことが出来ない。
桃子の手を止めようとする雅の手は桃子に掴まれて動かせない。

いやらしく動き回る指先が胸から腹を撫でていく。
腰を通って、太ももを降りていく指先が辿り着いたのは膝。
膝を一度くるりと撫でてから、雅の閉じている足を開くように膝の下に桃子の手が入り込む。
膝下に入った桃子の手に力が入って、膝を立てさせられて足を開かされる。
そのまま内腿を軽く撫でられると身体がぴくりと小さく跳ねた。

633 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:32
内腿を指先がゆっくりと降りてくる。
何かを期待して心拍数があがる。
雅の首筋にキスをした桃子が小さく呟いた。


「こういう格好ってやらしいよね」


その言葉に雅は反射的に足を閉じようとするが、桃子の手によってそれは阻止された。
開かれた足の間に指先が入り込む。
桃子の指が触れて欲しかった部分に触れて声が出る。
身体の中が熱い。
くちゅ、という音が耳に聞こえてきてもっと熱くなる。
濡れたその部分をゆっくりと指先が滑り落ちていく。
溢れ出た体液がその指に絡みついていくのが時折聞こえる水音でわかる。


634 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:33
「みーやんのここ、どーなってるか教えてあげようか?」


楽しそうな声の桃子に言われた。
けれどわざわざ教えてもらわずとも、そこがどんなことになっているかは自分が一番よくわかる。
だから、雅は首を横に振って答えた。
だが、桃子に許してもらえるはずもなかった。

雅の足の間で遊んでいた桃子の指がそこを離れる。
桃子の濡れた指が雅の視界に飛び込んでくる。
その濡れた指先に今、自分がどういうことになっているかを改めて認識させられた。
恥ずかしくなって顔を背けると、桃子に「ちゃんと見なきゃダメだよ」と逃げることを拒否された。


635 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:35
「ももの指、こんなに汚して……。ねえ、みーやんなんで?」


追い打ちをかけられる。
嫌でも目に入ってくる濡れた指に恥ずかしいはずの身体の奥が疼く。
何もされていないのに呼吸が荒くなる。


「どうしてこんなに濡らしてるの?」


答えない雅にもう一度桃子が問いかける。
今度は答えないわけにはいかなかった。


「もも、……ももが」
「ももがどうしたの?」
「……ももが…変なこと……するから」
「変なことってこんなこと?」
「やぁっ」


636 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:36
視界から指が消える。
次の瞬間、身体の中心にある一番敏感な部分に指が触れて雅は声を上げた。
そこをしばらく軽く撫でられて、何度も声をあげさせられる。
もっと触れて欲しくて身体が動き出すとそこから指が離されて、口元に指を差し出される。


「どうすればいいかわかるよね」


雅はためらうことなく差し出された指に舌を這わせる。
ゆっくりと桃子の指についた自分の体液を舐め取っていく。

雅の唇に指が押しつけられる。
そのまま指が口内へと侵入してきて指先で口の中を掻き回された。


637 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:37
「みーやん、美味しい?」


質問というよりは確認に近かった。

恥ずかしい、と思うことをされるたびに身体が熱くなった。
桃子がしてくること全てが快感に繋がる。
頭がぼうっとして桃子以外の物を感じ取れない。
味なんてわかるわけがなかった。

だからよくわからないまま桃子の声に頷く。
するとまるで子供をあやすように「良い子だね」と囁かれて、口の中から指が引き抜かれた。
そして引き抜かれたその指はまたもとあった場所へと舞い戻る。

638 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:38
今度は強めにそこを擦られた。
硬くなったそこを指の腹で撫でられ、擦り上げられる。
ぬるぬるとした体液を指に絡ませるようにしてそこを刺激される。


「あ、あっ、はあっ」


身体の奥から溢れ出る体液と喉の奥から漏れる声。
身体の芯が痺れる。
それでも貪欲な身体がもっと刺激が欲しくて動き出す。
桃子の指が雅の身体に応えるように中へ潜り込もうとするのがわかった。
けれど、その指が奥まで入ってくることはなかった。
入り口で止まったまま動かない。
雅の身体が待ちきれなくて震える。


639 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:38
「ね?みーやん。どうしたらいい?」


優しく問いかけられた。
桃子の指は動かない。
でも、身体はそれを欲しがっていた。
それでも答えることは出来なかった。


「そんな…の、言え……ないよ。はあっ…ね、もも」
「ちゃんと言わなきゃダメだよ」


待つことに耐えられず雅の腰が動こうとする。
だが、腰に桃子の腕が絡みついて動けない。

息が苦しい。
身体の奥が桃子を欲しがっている。
どうすればいいか。
答えは一つだった。


640 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:40
「……挿れ…て」


小さな声で呟くと同時に、身体に桃子の指が二本入り込んでくる。
遠慮のない指が雅の身体を確かめるように奥へと突き進む。


「ふっ、あぁっっ」


もう声が止まらなかった。
途切れることなく甘い声が唇から漏れる。
身体の奥まで押し込まれた指がゆっくりと身体を押し広げるように蠢く。
雅の身体がその動きをとめようとするかのように指を締め付けていく。


641 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:41
隙間を埋めようとする身体と隙間を作ろうとする指。
違和感なく身体の中に入り込んでいる指。
その指を溶かすかのように熱い身体。

ゆっくりと動いていた指が小刻みなものへと変わる。
小さく早く身体の中を指先で擦っていく。
それにあわせて身体の奥が震え出す。


642 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/07/31(火) 02:42
「あっ、んっ。そ、こ、…やあっ。ももっ、あっあぁっ」


無意識のうちに目を瞑る。
桃子の身体を掴む。
どこを掴んだのかはもうわからなかった。
身体の芯が痺れるような感覚。
溢れ出る声が途切れて言葉にならない。
ぐっと力の入った指に身体の中を強く擦り上げられて、身体が強ばった。
苦しいぐらいの快感に一瞬息が止まって、身体の力が抜ける。
後ろへと崩れ落ちた雅の身体は桃子に抱きとめられた。





643 名前: 投稿日:2007/07/31(火) 02:42
本日の更新終了です。
644 名前: 投稿日:2007/07/31(火) 02:42

645 名前: 投稿日:2007/07/31(火) 02:43
>>628 さん
安眠をお届けします!
ということで、サックリ更新しましたw
646 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/01(水) 00:23
ありがとう。満足しましたw
この二名がずっと幸せにエロエロすれば良いだろう……
647 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/01(水) 02:20
ワルイももが帰ってキターー!
648 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/01(水) 02:44
ロリコンきんもーーーーー!
649 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/02(木) 00:01
りさこには悪いけどこのままみやもも期待!w
650 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/02(木) 00:42
俺的には梨沙子に幸せになって欲しいw
作者さん、勝手なことをスマン。
651 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:44

荒い息を整えることが出来ない。
雅はベッドに倒れ込むと、上手く呼吸が出来なくて何度も浅く息をはいた。

横になって静かにしているとゆっくりと呼吸が戻っていく。
力の抜けた身体に少しずつ力が戻り始める。
一緒にベッドへ横になった桃子が、雅を軽く抱きしめながら黙って背中を撫でていた。

次第に荒い呼吸は落ち着きを取り戻し、普段通りのものとなる。
それを待っていたかのように、それまで優しく雅を抱きしめていた桃子が耳元で囁いた。


652 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:46
「みーやん、ももにもして?」
「……うん」


雅は気だるさが残る身体を起こして桃子の身体の上になる。
さっきまで見上げていた桃子を上から見つめると、桃子の瞳が閉じられた。
薄く開いた唇にゆっくりとキスをする。


雅の頬に桃子の手が触れて、軽く引き寄せられる。
桃子に催促されるように唇を軽く噛まれて、雅は慌てたように舌を差し入れた。
すぐに桃子の舌が絡みついてくる。

自分からしたキスのはずが、いとも簡単に桃子に主導権を握られる。
しているはずのキスがまるでされているキスのようにかわって頭がクラクラする。

それ以上キスを続けていられなくなって雅は唇を桃子から離す。
目を開くと至近距離に桃子の顔があった。
あっと思う間もなく、桃子にキスをされる。
唇を割ってすぐに舌が入り込んでくる。


653 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:47
舌を絡め取られる前になんとかしなければ。


深いキスはすぐに思考を奪い取る。
だから、雅は考えることが出来なくなる前に桃子を引きはがした。


「もも、じっとして」


荒くなりかけた呼吸を整えながら桃子に頼む。
名残惜しそうな桃子の唇が一度軽く雅の唇に触れてすぐに離れた。
雅は桃子をベッドへと押さえつける。


654 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:48
雅は自分とは違う少し大きな桃子の胸に手を置いた。
その膨らみを柔らかく包み込むようにして軽く揉む。
くすぐったそうに薄く笑う桃子を見ながら、胸に触れている手を動かしていると少しずつ桃子の呼吸が早くなっていくのがわかる。
桃子の眉根が寄せられて表情が乱れる。

唇を胸の中心へと寄せ、雅はそこを口に含んで舌で転がした。
雅の身体の下にある桃子の身体に一瞬力が入る。


「はあっ、あっんっ」


桃子の甘い声と吐息。
雅の与える刺激で桃子がいつも聞く声とは違う声をあげる。
その声が耳に響いて、身体の奥が熱くなった。


655 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:50
初めてなわけじゃない。
何度もしている行為なのに。
今までに何度もこうして桃子の身体に触れた。
それなのにいつも桃子の声を聞いていると自分までおかしくなる。
さっき達したばかりなのにまた欲しくなって上手く出来ない。
それでも、もっと桃子の声を聞きたくて先を急いでしまう。


雅はまるで自分がされているかのように乱れていく呼吸をなんとか整えて、桃子の身体に口づけていく。
脇腹を舌で舐め上げて、臍のあたりにキスを落とす。
その感触に逃げ出そうとする身体を捕まえて、指先で胸に触れるとその手を掴まれた。
雅の手をぎゅっと掴むその指にキスをすると、桃子が掴んでいる手を離す。
そしてその手で雅の頭を掴むと髪の中へと指先を差し入れてくる。
自由になった手で桃子の胸の中心を押しつぶすように触ると、桃子が甲高い声をあげた。


656 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:51
「もも。ねえ、もも。……気持ちいい?」
「う、んっ」


尋ねる必要はない。
乱れた呼吸は確かに桃子が感じていることを伝えてきている。
それなのに何故か不安になって桃子に尋ねてしまうのはいつものことだった。
そして桃子がそんな雅を安心させるように、乱れた息の合間に返事を返すのもいつものことだ。
絶え間なくあがる桃子の喘ぎ声に指先が急ぎ出すのもまた普段と変わらない。


触れていた桃子の胸から指先を下へと滑らせる。
胸の下へとキスをして、急ぎ足になった指先が桃子の足の付け根へと向かう。
太ももを軽く撫でてから、足の間へと指を走らせると桃子が雅の耳元で囁いた。


657 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:52
「ゆっくり、ね。みーやん」


先を急ぐ指先に桃子がブレーキをかける。
桃子の手が雅の頬に触れて、下を向いていた顔を上げさせる。
軽く身体を起こした桃子に触れるだけのキスをされた。

桃子の誘うような瞳に見つめられる。
雅は桃子に言われた通りゆっくりと指先を足の間へと滑らせた。

指先に触れたそこはもう十分濡れていて、軽く指を動かすだけでくちゅりと音がする。
ゆっくりと何度も指を往復させると、桃子の身体の奥から溢れてくるぬるぬるとした液体に指が絡め取られていく。


658 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:53
桃子の体液に濡れた指先。
熱くてとろけそうになっているその部分。
もっと桃子の変化が見たくて、指先に触れる硬くなったそこを擦る。


「あっっ、はあっ」


色付いた声を桃子があげる。
もっと声が聞きたくて、何度もそこを擦ると桃子が雅の背中に腕を回してきてしがみつく。
荒い呼吸の合間に掠れた高い声が途切れて聞こえる。
桃子の呼吸が苦しそうなものにかわっていく。
雅は一度手を止めると、心配になって思わず問いかけた。


「大丈夫?」
「はっ、んっ。平気…だから、んっ…その…まま」


659 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:54
催促するように身体が擦りつけられた。
止めていた手をもう一度動かす。
指先に力を込めて、硬くなったそこを撫で上げると桃子の腰が跳ねる。
力を入れたり緩めたりを繰り返しながら刺激を続けると、桃子に名前を呼ばれる。


「……みーやん」
「もも?」
「もっ…と」
「うん」


吐息混じりに囁かれて、背中に回された腕に力を入れられた。
雅は桃子の期待に応えるように、指を桃子の身体の中へと差し入れる。



660 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:54

ももの声を聞いてるだけなのに。
なんでこんなに身体が熱くなるんだろう。
しているのはうちなのに、まるでももにされてるみたいな気分になる。



661 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:55
しがみついてくる腕の力に。
唇から漏れる湿った声に。
指に絡みつく身体に。
桃子に快感を与えているはずの自分の身体が痺れる。
聞こえてくる喘ぎ声が桃子のものなのか自分のものなのかわからなくなる。


誰のものかわからない混じり合った吐息にあわせて、雅は指を桃子の身体の奥まで入れた。
雅を締め付けてくる身体に負けないように指を強く動かす。
少しずつ指の動きを早める。
指先に入れる力を大きくしていく。


662 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:56
「あっ、あっっ。みーやんっ」


強く抱きしめられた。
とけそうなぐらい熱い身体の中が痙攣して指を今まで以上に締め付ける。
甘い声で名前を呼ばれて雅の頭の中が白くなる。
桃子の指先が痛いぐらい背中に食い込む。
耳元で聞こえる喘ぎ声が途切れると同時に桃子がベッドへ沈み込んだ。




663 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:57
夜の終わりが来るまで何度も抱き合った。
何度達したのかわからないぐらい抱き合った。
気がつけば夜明け前。


「朝なんて来なければいいのに」


うつ伏せになって枕を抱え込んだ桃子が気だるげに言った。
雅は横になったまま桃子の方を見る。


遠くを見るような瞳に表情はなかった。
唇は閉じられていて、それ以上何かを言う気配はない。

雅は桃子の方へ手を伸ばして前髪に触れる。
触れた桃子の前髪をかきあげてから雅は問いかけた。


664 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:58
「ねぇ、これからどうなるのかな」
「わかんない」
「どうして一緒に旅行にきたの?」
「わかんない」


問いかけに答える声は困ったような声。
雅はその声にそれ以上問いかけることが出来なくなる。
何度聞いても他の答えが返ってくるとも思えなかった。


665 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:58
結局、桃子が何を考えているのかはわからないまま。


雅はこれ以上、桃子に何を聞いていいのわからない。
沈黙の間に夜明けが迫る。
閉められたカーテンの向こうに太陽の気配を感じる。

夜明けを見たくなくて眠くもないのに目を閉じると、桃子に髪を引っ張られた。
雅が目を開けると、枕に片方の頬を押しつけた桃子が雅を見つめていた。


666 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 02:59
「……好きなのかもしれない」


小さな呟きが聞こえる。
雅の心臓がどくりと鳴った。


「誰を?」
「みーやん」


667 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 03:00
聞き返した言葉。
返された名前。
嘘を言っているようには見えなかった。

それは聞きたかった言葉。
そして聞きたくなかった言葉。
桃子と梨沙子と雅。
三人の関係が崩れる。

どう答えればいいのか考えつかない。
答えに困って黙っていると、伸びてきた桃子の手が雅の肩を掴んで次に唇同士が触れあった。
短いキス。
そのキスに雅は今まで言えなかった言葉を引き出される。


668 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 03:01
「……ずっとももが好きだった」
「うん、知ってた」


さらりと告白は受け流される。
やはり雅の気持ちは桃子に知られていた。

沈黙がやってくる。

けれど、すぐにその沈黙を雅が破る。


「どうするの?これから……」
「どうしたい?」
「わからない」
「もももわかんない」


669 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 03:01
誰も傷つかずに終わる時間はもう過ぎていた。
誰かが傷つかないと終わらない。

もうすぐ夜明けが来る。
夜が明ければ誰かが傷つく。
もうどうすることも出来ない。


好きだという気持ちが誰かを傷つけることを初めて知った。


670 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 03:02
これからのことはわからない。
お互い知りたくないだけなのかもしれない。
終わらない夜はない。
夜が明けるまでもうしばらくこのままでいたい。


夜が終わらないように。
朝が来ないように。
温もりが消えないように。


お互いに押さえられない気持ちを抱いて、側にいたいと願う罪はどんな罰を運んでくるんだろう。




671 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 03:02



『 終わらない夜 』



- END -

672 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 03:06
これで『 好きの境界 』から続いたシリーズ完結。
ということになります。
……ですが。
まだ補完(?)したい部分が少しあるので番外編的な何かをアップする予定です。
673 名前:『 終わらない夜 』 投稿日:2007/08/02(木) 03:11
>>646 さん
……幸せにエロエロΣ( ̄□ ̄;
かなり素敵な言葉ですねw

>>647 さん
悪い桃子は不滅です(´▽`)w

>>649 さん
うーむ。ご期待に添えたかどうか('-';)

>>650 さん
どんな意見もガーッと!w
ご期待に添えたかどうかは読んでからの('-';)……。
674 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/08/02(木) 03:19
うわぁ・・・涙出てきた・・・
梨沙子を思うと胸が痛い
でも、みやびちゃんと桃子の想いも考えるとすごく苦しい
救いなんてないのかなぁ

>好きだという気持ちが誰かを傷つけることを初めて知った。
この部分が胸にグっときました・・・
675 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/08/03(金) 00:24
「……好きなのかもしれない」
ももらしい告白ですね。
これからどうなるのかな……
3人の関係が本当に切ないです。
ただ好きな心ばかりなのに……
番外編も期待します。
昨者さんの小説は最高です!
676 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/03(金) 01:48
えっ、決着しないの?、ちょっと肩透かし食らった…、
まぁどう落としても誰かが不幸になるからこれで完結も良いのかな?。
と言いつつ番外編に期待!、
ベリ好きの作者さんにはキツイけど誰かを不幸にする決心がついたら続編も書いてください。
作者さんの作品はエロが目立つけど心理描写がとても好き!、勿論エロもOKです。
677 名前: 投稿日:2007/08/06(月) 02:47



『 どこにも行かずに抱きしめて 』



『 好きの境界 』シリーズ番外編
678 名前:『 どこにも行かずに抱きしめて 』 投稿日:2007/08/06(月) 02:49
短いシャワーの後、ベッドへ横になると瞼がすぐに重くなる。
梨沙子はもう少し起きていたくて眠い目を擦る。
眠気を覚ますために隣にいる桃子に抱きつこうとすると、急に桃子が起きあがった。
梨沙子が抱きつこうとしていたことに気がつかない桃子が、そのままゴソゴソと身体を動かしてベッドから抜け出そうとする。

桃子の腕を掴む。
梨沙子は自分をすり抜けて桃子がどこかに行ってしまいそうな気がして桃子の腕を引っ張った。
引っ張られた腕につられてこちらを向いた桃子に梨沙子は思わず尋ねる。


「もも、どこ行くの?」


679 名前:『 どこにも行かずに抱きしめて 』 投稿日:2007/08/06(月) 02:50
どこかへ行くわけがない。
行くとしてもバスルームぐらいのもので、こんな真夜中にどこかに行くはずがない。
けれど、梨沙子はベッドから抜け出した桃子がどこかに行ってしまいそうな気がして聞かずにはいられなかった。


「なに?急に。もも、どこにも行かないよ?」


ふわりと桃子に微笑まれる。
笑顔のまま桃子が梨沙子の頬を撫でた。
頬を撫でた手は梨沙子の肩を抱き、そのまま桃子に抱き寄せられた。
よほど梨沙子が不安そうな顔をしていたのか桃子が何度も耳元で囁く。


680 名前:『 どこにも行かずに抱きしめて 』 投稿日:2007/08/06(月) 02:52
「大丈夫だよ」


大丈夫。
何が大丈夫なのかはきっと桃子もわかっていない。
そして梨沙子にも何が大丈夫なのかわからない。
それでも繰り返しそう囁かれると気分が落ち着いてくる。


桃子はいつも優しい。
言葉に詰まれば、梨沙子から次の言葉をうまく引き出してくれる。
何をすればいいのかわからなくなれば、誰にも気づかれないように教えてくれる。
梨沙子が不安そうなそぶりを少しでも見せればすぐに側に来てくれる。
涙を流せば抱きしめてくれる。
最近はいつも以上に優しくて、周りにいるメンバーのことも気にせず梨沙子に接してくる。

681 名前:『 どこにも行かずに抱きしめて 』 投稿日:2007/08/06(月) 02:52

でも、優しくされればされる程不安になるのは何故だろう。


大切にされているのはわかる。
桃子が自分を好きだということもわかる。
でも、何故こんなに胸騒ぎがするのだろう。


682 名前:『 どこにも行かずに抱きしめて 』 投稿日:2007/08/06(月) 02:54
「もも、なんでこんなに優しくするの?」


梨沙子は優しく抱きしめられたまま桃子に問いかけた。
返事は待つこともなくすぐに返ってくる。


「梨沙子が好きだから」
「別にこんなに優しくなんかしてくれなくてもあたし、もものこと好きだよ?」
「いいの。優しくしたいんだから、させておけばいいの」
「ふーん。そんなもんなの?」
「そんなもんなの」


桃子から返ってきたのはわかったようなわからないような答え。


優しくされてもされなくても桃子が好きなことはかわらない。
それなのに桃子が優しくするから不安になるのだろうか。


683 名前:『 どこにも行かずに抱きしめて 』 投稿日:2007/08/06(月) 02:55
考えても結局よくわからない。
抱きしめてくる桃子の顔色を見てもいつもと何もかわらず、自分が出した答えがあっているのか確かめようもない。
深く考え込む前に追い払ったはずの睡魔がやってきて思考が途切れる。


桃子と触れている部分から感じる体温が心地良い。
梨沙子はもっと桃子に触れたくなって、今以上に桃子の身体に擦り寄る。
鼻先を桃子の顔に寄せて頬に擦りつけると、くすぐったそうに笑った桃子に鼻先へキスをされた。
梨沙子は自分の鼻にキスをした唇に唇を寄せる。
桃子の唇に短く触れてすぐに離れる。


こうして抱き合ってじゃれ合っている間にも瞼が少しずつ重たくなっていく。
思考が完全に途切れてしまう前に桃子の肩に頭を乗せる。



684 名前:『 どこにも行かずに抱きしめて 』 投稿日:2007/08/06(月) 02:56

あたしはすぐに眠たくなっていつもももより先に眠る。
あたしが眠った後、ももが何をしているかは知らない。
知りたいとも思わない。
ただずっと側にいて欲しくてももの手を握って眠る。



685 名前:『 どこにも行かずに抱きしめて 』 投稿日:2007/08/06(月) 02:58
しっかりと握られた手。
けれどそれは朝になる頃には離されている。
その手を梨沙子から離したのか、桃子から離したのかはわからない。
いつもではないけれど時々、朝の眩しさに目を覚ますと桃子が隣にいない。
寝たふりをした梨沙子の隣に、何事もなかったように桃子が潜り込むことを知っている。


今まで気にしたことはなかった。
けれど最近、それが気になり始めた。
今まで聞こうと思ったことはない。
そして気になり始めたこの先もきっと聞くことはない。


不安を消し去る言葉って何だろう。
誰かをつなぎ止めておける言葉って何だろう。
誰かを好きだって気持ちがこんなにも自分を不安にさせるなんて知らなかった。
不安になるほど好きだと気がついて、この不安から救ってくれるのも桃子だと気がついた。


686 名前:『 どこにも行かずに抱きしめて 』 投稿日:2007/08/06(月) 02:59
「……もも、キスして」


ざわざわとする胸の奥をなだめる方法はこれしか知らない。
触れる桃子の唇だけが落ち着かない気持ちを静めてくれる。
だから何度もキスをねだる。



何回キスをしたのかわからない程キスをする。
握った手が離れないようにしっかりと手を繋ぐ。
そして明日の朝までこの手が離れないようにと願う前に、梨沙子はいつものように睡魔に意識を絡め取られた。




687 名前:『 どこにも行かずに抱きしめて 』 投稿日:2007/08/06(月) 03:00



『 どこにも行かずに抱きしめて 』



- END -
688 名前: 投稿日:2007/08/06(月) 03:00

689 名前: 投稿日:2007/08/06(月) 03:02
>>674 さん
誰も傷つけずにすむならそれが一番ですが、なかなかそれは難しいですね(;´Д`)
人生って大変だっ。

>>675 さん
好きだけじゃなかなかうまくいかないわけで(;´ω`)
好きって難しいですねぇ。

>>676 さん
この終わり方についてはまあ、現時点での私の精一杯ということで。
続編は今のところ予定なしですが予定は未定です(´▽`)
690 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/08/06(月) 23:49
梨沙子の時点で見れば桃子が悪いが
でも桃子を憎むことができないです。
桃子は魅力的ですね。
番外編は続きますか?
691 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/07(火) 02:16
梨沙子視点も良いね、もっと無邪気かと思ったら案外大人だな。
692 名前: 投稿日:2007/08/08(水) 01:33



『 あの日の約束 』



『 好きの境界 』シリーズ番外編
693 名前:『 あの日の約束 』 投稿日:2007/08/08(水) 01:35
眠りに落ちた梨沙子の隣にいるのはいつも自分。
そしてそこから抜け出すのも自分だ。
繋いだ手を離して、また何事もなかったように戻ってくる。
こんなことを何度繰り返しただろう。



優しくすることはずるいこと。
誰にも優しいのは誰にも優しくない。
そんなことはずっと前から知っているのに、だけど二人に優しくするんだ。
自分をこれ以上傷つけないようにしたいだけ。
痛みから逃れたいだけ。
だから二人に優しくする。




694 名前:『 あの日の約束 』 投稿日:2007/08/08(水) 01:37
「梨沙子」


桃子は小さく名前を呼んでから、自分の隣で眠る梨沙子の頭を軽く撫でる。
深く眠り込んだ梨沙子はぴくりとも動かない。


優しくしたって罪は消えやしない。
消し去るどころかどんどん重くなって、いつか押し潰される気がする。
押し潰されるのが嫌で押し潰されないようにもっと優しくする。
その結果、もっと苦しくなる。
罪悪感を消すための行動が新しい罪悪感を産む。

繋がれた手が痛い。
握られる力以上に痛い。
痛い理由なんてわかっている。



695 名前:『 あの日の約束 』 投稿日:2007/08/08(水) 01:39
痛いぐらいに繋がれた手。
桃子は繋がれた梨沙子の手にキスを落とす。


眠る前の儀式のように、梨沙子は眠たくなるとキスをねだる。
今まではそんなことをしなくてもすぐに眠っていたが、最近は梨沙子が寝付くまでキスをするようになった。
そして梨沙子が眠りについた後も桃子は何度となくキスをする。

繰り返すキスは罪の意識を少しだけ和らげてくれる。
そして梨沙子の側にいたいと願わせてくれる。
けれど、コップに注がれていく水と油はその比率を変えていく。
溢れ出した想いはコップから流れ出してどこかへ消える。
後に残ったものは今までとはまったく変わってしまったコップの中身。


696 名前:『 あの日の約束 』 投稿日:2007/08/08(水) 01:40
それを認めたくなくてただ優しくしているだけ。
そんな気がする。
向けられる想いと自分との隙間を埋めるように抱きしめたところで、もうどうにもならないところまで来ているのかもしれない。
好きだという想いは形を変えていく。
その形を留めることは誰にも出来なくて、それでもその形を留めようとして無駄な努力を積み重ねている。
変えたくないものはたくさんあっても変わらないものなんてない。



697 名前:『 あの日の約束 』 投稿日:2007/08/08(水) 01:41
桃子は隣で寝息を立てている梨沙子を見る。
柔らかな輪郭が呼吸にあわせて上下する。


ずっと側にいると誓った日はいつだっただろう。
約束は守る為にある。
そして破る為にも。

どちらを選ぶべきかは知っている。
どちらを選んで欲しいかも知っている。
知っているけれど。


幸せそうに眠り続ける梨沙子のその眠りを壊さないように。
約束はきっと……。




698 名前:『 あの日の約束 』 投稿日:2007/08/08(水) 01:42



『 あの日の約束 』



- END -
699 名前: 投稿日:2007/08/08(水) 01:42

700 名前: 投稿日:2007/08/08(水) 01:46
番外編も終了!
これにてぐだぐだと続いた『 好きの境界 』シリーズは一応終了ということになります。


>>690 さん
番外編サックリ終わりました('-';)
これからまた普通の短編(?)に戻ります。

>>691 さん
どうしても子供と大人の狭間にいるような梨沙子を書きたくなるみたいで(;´Д`)
701 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/08/08(水) 22:50
完結お疲れ様です。
素敵な作品をありがとう。
心理描写がすぐれて本当に毒されます。
桃X雅がほしかったが結局梨が可哀想ですね。
他の短編も楽しみにしてます。
702 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/09(木) 01:55
完結お疲れさまでした、みや×ももの心の揺らぎが切くとても楽しめました。
短編も楽しみにしています。
全くベリに興味なかったのに作者さんのせいで…。
703 名前: 投稿日:2007/08/13(月) 02:39



『レッドカード』



エロあり。
704 名前: 投稿日:2007/08/13(月) 02:40
栞菜は目が覚める前に目を覚まされた。

隣で人がゴソゴソと動く音がした。
なんだか暖かいものが身体に触れた。
心地の良い夢の世界から引きずり出される。
夢と現実との狭間、目が覚めきる前。
頬に柔らかいものが触れる感触に目が覚めた。


眠たい目を開けば目の前には見慣れた顔。
一瞬、ここがどこだかわからない。
栞菜は寝ぼけた頭で記憶を辿る。


ふざけてじゃれ合って疲れて眠った家は間違いなく自分の家。
そして目の前にいるのは栞菜の家に遊びにきた舞美。



705 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/13(月) 02:41

舞美ちゃんが遊びに来て、騒いで盛り上がって気がついたらもう遅い時間で。
それで舞美ちゃんが泊まっていくことになったんだ。



706 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/13(月) 02:42
寝ぼけた頭の中で記憶が繋がる。
けれど、栞菜には今の状況が飲み込めなかった。
何故、泊まりに来ている舞美が自分にキスをするのか。
それだけはわからない。

ただそれが嫌なことではないことは確かだ。
むしろ望んでいたこと。


707 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/13(月) 02:43
「ん〜。えりぃ〜」


栞菜にキスをした相手である舞美が寝ぼけた声でよく知った人の名前を呼んだ。
しかも、完全に自分とその人を間違えているのか栞菜にすり寄ったままその名前を呼んだ。
栞菜の思考が絶たれる。
舞美はまだ夢と現実の間。
完全にこちらの世界へやってきていたわけではなかった。


もっと優しく起こしたかったがそれは無理な相談だった。
栞菜は布団から舞美を引きはがし叩き起こす。


708 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/13(月) 02:43
「さて、問題です。ここは誰の家でしょう?」
「へ?」


問答無用で叩き起こされた舞美の頭にはたくさんの疑問符が浮かんでいるように見える。
舞美は寝ぼけた頭で状況を理解しようとしているが、いまいちはっきりしないようでぼうっと栞菜を見つめていた。


「じゃあ、ヒント。ここはえりかちゃんの家じゃありません」
「……ごめん」


709 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/13(月) 02:45
栞菜が舞美を覗き込むようにして告げると即座に謝られた。
そして、栞菜は舞美の『ごめん』に自分が『えりか』と間違えられたことを再確認する。


舞美とえりかが仲が良いことは知っている。
しかし、一緒のベッドに寝てキスをする程仲が良いとは知らなかった。


頬にキスなんて別に怒る程の事ではない。
ただそれは相手を間違えなければ、の話だ。
えりかと間違えられてキスされることは栞菜にとって面白くはない。
好きな相手が自分と他の誰かを間違えてキスするなんてどこの誰が楽しいのか。

けれど、栞菜は自分の想いを舞美に伝えているわけではない。
だからこんなことで怒っても舞美にはきっと怒っている理由は伝わらないだろう。


710 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/13(月) 02:46
怒るなんて無意味なことだ。
こんなことで舞美を責めても意味がない。
だが、このまま黙ってこのキスをやり過ごすことも出来ない。


ほんの少しの仕返し。
自分を期待させた罰。
だから、意味がないことだとわかっていても栞菜は舞美に意地悪をする。
ベッドの上に座り込む舞美の隣で栞菜は真面目な顔で口を開く。


711 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/13(月) 02:46
「じゃあ、罰ゲームね」
「ええっ!?」


当然、驚いた声が舞美からあがるがそれは軽く流して栞菜は言葉を続けた。


「今からすること、絶対に嫌がっちゃダメ。いい?」
「う、うん。わかった」


712 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/13(月) 02:47
いつも通りどこにいても人の良い舞美が訳がわからないにもかかわらず頷くのが見えた。
舞美は罰ゲームを承諾したわけではないはずなのに、なんとなく栞菜に丸め込まれてしまっていることに気がついていない。
そして当然のことながらこれから何をされるのかまったくわかっていない。
そんな舞美が神妙な顔で栞菜を見つめている。
そのあまりに真面目な顔に栞菜はこれから自分が何をするのか忘れて笑ってしまいそうになるが、なんとか笑いをかみ殺して舞美をベッドに押し倒してキスをする。

触れるだけのキス。
栞菜は舞美の唇に軽く触れてすぐに離れる。
目を開くと少し不満そうな舞美の顔が見えた。


713 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/13(月) 02:48
「……これって、ちょっと反則じゃない?」
「罰ゲームに反則も何もないよ、舞美ちゃん」
「でも、反則っぽい気がする」
「じゃあ、これからすることは退場モノかも」
「え?……うわっ」


舞美の驚いた声が聞こえる。
けれど、それを無視して栞菜は舞美のパジャマの上着の裾から手を入れ肌に直接触れた。
そしてそのまま舞美の腹筋を撫で上げ、手を上へと移動させていく。


714 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/13(月) 02:49
「ま、待って。反則だって、これ。絶対に反則っ!」
「舞美ちゃん、絶対に嫌がっちゃダメっていうルールだから」
「そんなルール反対!って、あっ…ん」


舞美がベッドの上であたふたと慌てて暴れるが、栞菜が脇腹をすっと撫でるとそれだけで大人しくなった。
唇を耳に寄せて息を吹きかけただけで身体に力が入るのがわかる。
耳に舌を這わせて、軽く甘噛みすると舞美が声をあげる。


715 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/13(月) 02:51
「はぁっ……。かん…な、だめ」


はき出された甘い吐息に栞菜は自分を止めることが出来ない。
栞菜は甘い声に誘われるように舞美のたくし上げたパジャマをもとに戻すと、手早くボタンを外してその素肌を露わにする。
朝の明るい光の下、裸になった舞美の上半身が見えて、綺麗だな、と栞菜は思う。


「やっぱり舞美ちゃんは綺麗だ」


栞菜は舞美に告げるというよりは独り言のように呟いた。


716 名前: 投稿日:2007/08/13(月) 02:52
本日の更新終了です。
717 名前: 投稿日:2007/08/13(月) 03:00
ちょっとお知らせを……。

森板で新しく少しばかりまとまった話を書き始めました。
よろしければ暇つぶしにどうぞ〜。
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/wood/1186763350/


もう一つ。
もうすでに発見してくださっている方もいるようですが……。←ありがとうございます。
シリーズ物の合間に短編を情け容赦なくはさみまくったおかげで、シリーズの繋がりがわかりにくくなってしまった問題を解決するためにサイトを作りました。
ttp://burningglow.web.fc2.com/

ぐだぐだと今まで書いたものをまとめてあるのでよろしければどうぞ〜。
718 名前: 投稿日:2007/08/13(月) 03:05
>>701 さん
ありがとうございます。
桃×雅は本編に登場しまくりなので、桃×梨で攻めてみました。
短編、色々書きたいなと思うものがあるのでがんばります。

>>702 さん
ありがとうございます。
ベリの世界へようこそ!ヾ(*´∀`*)ノw
一緒にベリを応援しましょうw
719 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/08/13(月) 04:05
栞矢待ってました!
720 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/08/14(火) 01:07
新スレもサイトも短編も全部楽しみです。
これからもがんばってください。
桃X熊とか栞菜X愛理はどうですか?
721 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:42
ずっと綺麗だと思っていた。
今までこんなに綺麗な人を見たことがなくて、側にいるだけでドキドキしていた。
その唇にその肌にキスしたいと思っていた。


思った通り舞美の裸もやっぱり綺麗で栞菜の心拍数が跳ね上がる。
どんな運動をした時よりもドキドキとしている心臓をなんとか押さえつける。
そして、その身体に触れようとするが栞菜の指先が触れるより先に、舞美が露わになった胸を隠して身体をよじる。

栞菜は逃げる舞美の身体を捕まえて肩にキスをした。
そのまま腕へとキスを落としながら、聞きたかったことを聞いてみる。


722 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:43
「……えりかちゃんの夢見てたの?」


舞美が声を出さず頷くのが見えた。


「どんな夢だった?」
「そんな…の……、覚えて…ない…よ」


723 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:44
栞菜から舞美の表情は見えない。
けれど、見たいとも思わなかった。
ただ胸の奥が痛む。
夢の中身なんてどうでもよかった。
聞いたところで胸の痛みが大きくなるだけだ。
それなのに聞くことをやめられない。


724 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:44
「じゃあ、今日以外の夢は?他の日もえりかちゃんの夢見る?」
「う、うん」
「……えっちな夢、とかは?」
「そ、んな…のっ!……見な…い」
「ほんとに?」


725 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:46
栞菜は舞美が答える前に唇を塞ぐ。
油断した舞美の腕が緩んで、胸を隠していたはずの腕が軽くほどけた。
胸を露わにされ、キスをされたままの舞美が弱々しく抵抗しているのがわかるがキスをやめない。
舞美の唇をこじ開けて逃げる舌を捕まえて絡ませてから唇を離すと、お互い息が上がっていた。

何度か大きく息を吸って呼吸を整えてから、栞菜は薄く色づき始めた舞美の素肌にキスを落とす。
首筋から鎖骨へ、鎖骨から胸へと唇を滑らせる。
脇腹を撫でていた手は腹筋をなぞって、胸の上に置く。


726 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:47
「……ねぇ、舞美ちゃん。今度の夢はこういうえっちな夢もいいんじゃない?」


返事を待たずに胸の上に置いていた手を動かすと、舞美の身体が跳ねるのがわかった。
それと同時に舞美から甘い声があがる。


「んっ、あぁっっ」


舞美はもう弱々しい抵抗すらしない。
栞菜に触れられるままに声をあげて身体をよじっている。
その声に安心して栞菜が胸の中心を押しつぶすように刺激すると、舞美の声が一段と大きくなった。


727 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:48
「はっ、あっ…んっ。か…んな…」
「舞美ちゃんもこういう色っぽい声出すんだね」


栞菜は当たり前の事に感動する。

こういう事には関心がなさそうな舞美が出す掠れた高い声。
普段は『色っぽい』という言葉から遠い場所にいる舞美が、こんな色っぽい声を出すことを初めて知った。
もっと聞きたい、そう思わずにはいられなかった。
だから、栞菜は舞美の声をもっと聞く為に胸の中心に口づける。


728 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:51
「やっあっ、あっ」


舌でその部分に触れるたびに舞美が声をあげ、身体がびくりと反応する。
栞菜は唇はそのままに、胸に触れていた手を下へと移動させた。
腹を軽く撫でてから、滑らせるようにパジャマのズボンの中に手をいれた。
太ももの後ろを撫でると舞美の腰がぴくりと動くのがわかる。
舞美の手が栞菜の腕を軽く掴んでくるが、気にせずパジャマのズボンを軽くずらして下着に手をかけた。
舞美の栞菜の腕を掴む力が強くなる。
その腕を握る強さに下着をそのまま降ろしてしまうか悩んで、結局、下着の上から指先でそこに触れた。


729 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:52
「……も、やめてよ。栞菜。こんなのほんとに退場だよ」


栞菜が下着の上からそこを触ると吐息混じりの声で舞美が言った。
荒い息を整えもしないで言った舞美のその言葉は思ったより強い口調だった。



……嫌われた。



頭に浮かんだ言葉。
舞美の言葉に、やめなきゃダメだ、そう思ったはずなのに栞菜は手を止めることが出来ない。


730 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:54
「いいんだ、退場でも。だって、もう勝負する前から負けてるし」
「負けてるって?」
「……えりかちゃんに」


舞美の顔は見ない。
栞菜は下着に手をかけ、その手に力を入れる。


見たらダメだ。
見たらこれ以上出来なくなる。


そう思ったはずなのに見ずにはいられなかった。
栞菜の目に映ったのは泣きそうな舞美の顔。
その顔を見たらもうこれ以上のことが出来ない。

栞菜は舞美から身体を離して起きあがる。


731 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:56
「……舞美ちゃん、そんな顔したらこれ以上出来ないよ」
「ごめん」
「いや、舞美ちゃんが謝らなくても。むしろ謝るのはあたしの方だと思うし」
「でも、ごめん」


悪いことをしたのはこちらのはずなのに何故か謝る舞美に、なんだかおかしくなって今までしていた事が嘘みたいに感じられる。
舞美の表情をよく見ると本当に申し訳なさそうな顔をしていて、どちらが悪いことをしたのかわからない。

そんな舞美に栞菜は苦笑しながら、ベッドの下に落としたパジャマの上着を拾って舞美の肩にかけた。
そして小さく何度も謝る舞美に声をかける。


732 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:57
「あのさ……。えりかちゃんと付き合ってるの?」
「いや、そうじゃないんだけど」
「……やっぱり、えりかちゃんが好き?」


黙って舞美が頷いた。


「じゃあ、あたしにはチャンスないのかな」
「……わかんない」
「そっかぁ。でも、付き合ってないなら……」


733 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:58
悪いのは自分であって舞美ではない。
そして舞美がえりかを好きなことも何も悪い事じゃない。
なのに何故か栞菜より舞美の方が申し訳なさそうな顔をしている。

朝から沈んだ雰囲気になったこの部屋の空気を変えたくて、栞菜は明るい声で舞美に話しかける。


「チャンス、作っちゃおうかな」
「ええっ???」
「舞美ちゃん、隙ありすぎだもん。ほら、今だって」


冗談っぽく言って、そのまま舞美の肩にキスをした。
急に触れた唇に舞美が驚いていつものように言葉を噛みながら大声をあげる。


734 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 01:59
「ちょ、ちょっと!!栞菜っっっ!!!」


その反応に栞菜は、年上なのに可愛いなぁ、と思う。


綺麗で可愛くて素直。
こんな人、好きにならないわけがない。
好きな人がいるのは残念だけれど、まだ付き合っていないなら振り向かせるチャンスだってきっとある。


735 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 02:00
好きな人をもっと好きになる前に。
付き合ってしまう前に。
がんばってみるのも悪くない。


ちょっとした悪戯に面白いぐらいの反応を返す舞美に、栞菜はもう少しだけ意地悪な言葉を投げかけた。


「ウソウソ。でも、気をつけないとえりかちゃんと付き合う前に奪っちゃうかもよ〜」
「な、なにをっっ」
「さあ?何がいいかなー」


悪戯な栞菜の笑顔に舞美の顔が真っ赤に染まった。




736 名前:『 レッドカード 』 投稿日:2007/08/14(火) 02:00



『レッドカード』



- END -
737 名前: 投稿日:2007/08/14(火) 02:01

738 名前: 投稿日:2007/08/14(火) 02:08
>>719 さん
久々の栞菜×舞美です(*´▽`)

>>720 さん
ありがとうございます。
まだこのスレに出ていないCP関係も書き始めてはいるのですが、形にならずなかなかアップ出来ません(;´Д`)
なので、完成次第新しいCPもアップしますので気長にお待ちくださいm(__)m
739 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/14(火) 02:13
うわぁ〜リアルタイムだ!
勿論新スレ発見済みです、レス一番乗りしたよ。
740 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/08/14(火) 21:56
栞菜×舞美良かったです!
いつか両想いな二人も見てみたいですね
741 名前: 投稿日:2007/08/17(金) 03:20



『 歌声よりもっと 』



エロあり。
742 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:22
「歌詞、また間違えてる」
「う〜。なんでぇ〜」
「ももが聞きたいよ。なんで歌詞を見ながら歌ってるのに歌詞間違えるの?」
「……わかんない」
「あと、ここの音も違う」


743 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:24
居残り練習。
梨沙子は出来ればそんなものをしたくない。
けれど、なかなか覚えられない歌をこのまま放っておくわけにもいかなかった。
仕方がない、とレッスン室に残って一人で練習しようと思ったら何故か桃子が側にいた。


『教えてあげる』


そうにっこり微笑まれて断る理由はない。
自分一人でやったところで覚えられるとは思えなかったから、梨沙子は桃子の申し出を素直に受け入れた。


744 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:26
いつもふわふわとしている桃子も何かを教えてくれるときは真面目だ。
その桃子に応えるように梨沙子も真剣に話を聞く。
しかし、どうしても同じところで間違える。


「もう、やだっ」
「だーめ!覚えるまで帰さないよ」
「うう〜」


何度か練習を放り投げようとした。
けれど桃子は意外に厳しく、弱音を吐いても許してはくれない。


745 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:28
家に帰る為にはなんとかこの歌を仕上げてしまわねばならない。
仕上げないと朝まで監禁されるかもしれない。

逃げだそうとするとにっこり微笑んだ悪魔となって追いかけてくる桃子のせいで、変な強迫観念に捕らわれる。
しかし、そのおかげかなんとか歌がある程度の形になっていく。
梨沙子はそのある程度のレベルになった歌を聴いた桃子から、自分が欲しかった言葉を引き出すことに成功する。


「よく出来ました!」


その声に梨沙子は満面の笑みを浮かべると、楽譜を鞄にしまい込んだ。
そして満足げに大きく息を吐き出す。


746 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:29
「はぁぁぁっ。やっと帰れる〜!」


嬉しさがつい声に出る。
だが、それに水を差すような言葉が梨沙子の耳に入ってくる。


「ん?まだだよ」
「え?まだなんかあんの?」
「もも、梨沙子のもっと違う声も聞きたいし」
「へ?違う声?」
「そ、こんな声」


747 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:32
いきなり抱き寄せられる。
耳に息を吹きかけられ胸を触られた。
しかも、その手つきがいつもと違った。
普段、遊びの延長で冗談のように胸を触るものではなく、手つきがどことなくいやらしい。
梨沙子は思わず声をあげる。


「きゃーーー!!!」


こんな声を出す程ではなかったかもしれない。
けれど、いきなり抱き寄せられていやらしい手つきで胸を触られ、梨沙子は他に出す声も思い浮かばなかった。
そもそも他の言葉を考える余裕もない。
驚いて思わず逃げた背中は、レッスン室の壁にあたって梨沙子はそれ以上逃げることが出来ない。


748 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:33
「もも、ももっ。ちょっ……」
「うーん、かなり違うかも。もうちょっと色っぽい声希望なんだけど」
「ちょ、ちょっっ!もも、なんか間違ってるって」


焦る自分とは対照的に桃子は落ち着いていた。
しかも、桃子は梨沙子が嫌な予感以外感じようのない言葉をぶつぶつと呟いている。


「……こうやった方がよかった?」


749 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:34
桃子に悪戯っぽく微笑まれる。
逃げだそうとした梨沙子の背中は壁にこれ以上ないぐらい密着していた。
行き場のない梨沙子を追いつめるように桃子が近づいてきて、首筋を甘噛みされる。
そしてスカートの上から太ももを撫でられた。


「はっ、んっっ」


濡れたような高い声。
梨沙子は驚いた。
自分の口からこんな声が出ることに。


750 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:36
「歌声もいいけど……。今の声はもっといいね」
「やっ、もも。やめっ」


くすくすと笑いながら桃子が梨沙子の太ももからお尻へと手を伸ばす。
スカートの上からお尻を撫でられ、さらにもう片方の手はブラウスのボタンを外している。
首筋に触れていた唇はブラウスのボタンを一つ外すごとに下へと降りていく。
桃子に舌先で肌を舐められると、梨沙子の背筋に今まで感じたことのないぞくりとした何かが走る。


751 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:38
「もも、ずっと梨沙子の声聞いてみたかったんだ」
「な、んで……」
「だって、絶対に可愛い声で鳴くと思ったから」
「そん…な…声、ださ……な、あっんっ」
「ほら、鳴いた」


余裕のない自分とは対照的な涼しい顔をした桃子に耳元で囁かれた。
声をあげさせられている事実を再確認させられて、梨沙子の身体が熱くなる。


気がつけばブラウスのボタンは全て外されていた。
背中に回った手がホックを外していて下着をずらされた。
露わになった胸にキスをされる。
桃子の唇が胸に触れるたびに掠れたような声が出た。


752 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:39
「も…も、やめ、あっ、はぁ…あっ」


レッスン室に梨沙子の声が響く。
その声が塞ぎようのない耳から入り込んできて恥ずかしい。
けれど、その声を止める方法がわからない。
だから梨沙子は、歌声とはあきらかに違う声をあげ続けるしか出来なかった。


753 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/17(金) 03:40
本日の更新終了です。
754 名前: 投稿日:2007/08/17(金) 03:40

755 名前: 投稿日:2007/08/17(金) 03:42
>>739 さん
ありがとうございます。
あちらのスレもがんばります!

>>740 さん
ありがとうございます。
両思いの二人は、私もいつか書いてみたいと思っています('▽')

756 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/17(金) 23:54
更新お疲れ様です。
ももはエロおじさんみたいですねww
757 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:17
胸の一番敏感な部分を舐め上げる舌に甲高い声が出る。
脇腹を撫で上げられて身体をよじる。
桃子の指先や唇が今まで梨沙子が感じたことのない快感を与えてくる。
あがりっぱなしの声に息が苦しい。


「はあっ、んっ…あぁっ」


758 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:19
息を吸おうとしても喘ぎ声に邪魔をされる。
それでもなんとか荒い息を整えようと上下する梨沙子の背中に桃子の腕が回された。
その指先が首筋から腰へと一気に下がって、太ももに手を置かれた。
指先は一瞬止まってから、太ももを撫でるようにしてスカートをたくし上げる。
そしてスカートを捲り上げた手がそのまま下着の中へと入ってくる。
期待と不安で思わず梨沙子の身体が強ばった。
けれど、桃子の指先はためらうことなく濡れたその部分へと辿り着く。
そしてその指先が梨沙子の濡れたそこを確かめるように動き回る。


溢れ出る液体が足の間を濡らして気持ちが悪い。
動き回る指先がぬるぬるとしたそこを意識させて桃子の手から逃げられない。
足の間から聞こえる音が、今そこがどんな状態になっているのかを嫌でも気づかせる。


759 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:20
してはいけないことをしている。
それなのに身体はそれを許している。

何でこんなことをすることになったのか訳がわからない。
それなのに桃子を止めることも出来ずに、ただされるがままになっている。
こんな行為を許している自分をどうにかしたくて梨沙子は言った。


「こんな…の、だ…め……だよ」
「そう?こんなに感じてるのに?」


否定の言葉が否定にならない。
唇から漏れる吐息が否定を打ち壊す。
下着の中に入り込んだ桃子の指が梨沙子の嘘を暴いていく。


760 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:23
どんなに否定しても、梨沙子の身体から溢れ出た液体が桃子の指を汚していくのがわかる。
他の誰も触ったことのない場所に桃子が触れていることが恥ずかしくて、でも気持ちが良いと思う自分がいる。


止まらない声。
止まらない身体。
止めようと思わない気持ち。


けれど、焦らすように這い回る桃子の指は一番触ってほしい部分には触れてこない。
そして梨沙子自身、その部分がどこなのかよくわからない。
ただ今、桃子が触れているそこではない別のどこかに触れて欲しかった。
身体が熱くて、背中がぞくぞくする。
それなのにどうして欲しいかわからない。

梨沙子を急かすようにどこかが疼く。
身体の中に籠もっている熱が逃げ場を探している。


761 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:23
「ももっ、ももっ」


梨沙子はこの現象をどうにかして欲しくて桃子の名前を呼んだ。


「どうしたの?」


名前を呼ばれた桃子が梨沙子を見つめてくる。
梨沙子は名前を呼んだはいいが、どうしていいかわからず黙っているしか出来ない。
それでもこの何かに気がついて欲しくて梨沙子は桃子をじっと睨む。
だが、桃子はそれに怯むどころか余裕の表情で梨沙子を見つめ返してくる。


762 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:24
「触って欲しいならそう言えばいいのに」


くすりと笑った桃子がそう言った。
それと同時に桃子の指先がある部分に押し当てられる。


「あっ、はあっんっ」


自分でも驚く程身体が跳ねて、唇から飛び出た喘ぎ声がレッスン室に響いた。
それは多分、梨沙子が一番触れて欲しかった部分。
そこに押し当てられた指が動くたびにヒリヒリとしたような疼きが身体を走り抜ける。


763 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:25
壁に押しつけられた背中が痛い。
桃子にしがみつく腕に力が入らない。
梨沙子は快感に膝が崩れ落ちそうになって立っていられなくなる。


「んっ、あっ、あっっ。もう、立って…られ…」


膝が崩れ落ちる前に桃子にそう告げるとすぐに返事が返ってきた。


「いいよ、座って」


下着の中に入っていた桃子の手が抜き取られた。
桃子の手から解放された梨沙子はずるずると背中を壁につけたまま床に座り込む。


764 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:27
力なく床へ辿り着くと、ペタリと座り込んだ足の間に桃子が入り込んでいた。
ボタンを外されたブラウスは身体を覆う役割をせず、投げ出した足は開かれている。
淫らな格好をしている、そんな意識はあったがどうにも出来ない。
そんな自分の格好を桃子が見つめていた。
こちらを見つめている桃子を見つめ返すと、桃子の頬が上気しているのがわかった。
桃子に掠れた声で「かわいいね、梨沙子」と囁かれて、梨沙子の頬がもっと赤くなった。


投げ出した足の間に入り込んでいる桃子が膝をくるりと撫でる。
そんな些細な事にすら梨沙子の身体が反応する。
もう一度、下着の中に桃子の指が入り込んでくると、今度はすぐに一番敏感な部分に触れられた。
その部分を軽く撫でられ、そして擦られる。
指が動くたびに身体が反り返り、桃子の身体を掴む梨沙子の指先に力がはいる。

765 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:29
何度もその部分を触れられて、何も考えられない。
自分の意志に反して勝手に反応する梨沙子の身体を味わうように桃子が指を這わせていく。
そんな桃子の指先が少しずつ場所をかえて、ある部分で止まった。


身体の中心に桃子の指が押し当てられ、梨沙子の背筋がびくりと反応する。
驚いて足を閉じようとしたら、足の間にいる桃子をぎゅっと挟み込むことになった。
それでもその指はためらうことなく梨沙子の身体の中に入り込んでこようとする。
何をされるのか理解した梨沙子は思わず叫ぶ。


766 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:30
「ももっ!そこ…んっあっっ!だめっ」


その声に桃子の動きが止まる。
少し考えてから桃子が梨沙子に問いかけてきた。


「……ここ、まだしたことない?」


その問いかけに梨沙子が頷くと、桃子に優しい声で言われた。


「そっか、じゃあ……。しないかわりに、ももにもっと声聞かせて?」


767 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:32
押し当てられた桃子の指から力が抜けるのがわかった。
かわりに少し場所をかえた指がさっきより激しく動き出す。
敏感な部分を転がすように擦られた。
足の間から溢れ出る体液がいやらしい音を立てているのが聞こえてくる。
けれど、それ以上に梨沙子自身の口から出る声がいやらしくて耳を塞ぎたくなる。
桃子に触られている部分が熱い。
身体中に力が入るのがわかった。

そして、その後のことはよくわからなかった。




768 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:33

行為をしている最中は桃子も上気した頬をしていたはずなのに、今はもう涼しい顔でそこにいる。
自分だけ荒い息を整えることも出来ない。
そのせいか梨沙子は、桃子に恥ずかしい行為をさせられた、ということを感じずにはいられない。


乱れた服を直すことも出来ずにレッスン室の壁にもたれかかっていると、桃子が近づいてきた。
桃子の手がブラウスに触れた。
また何かされる、と思った身体が無意識のうちに桃子から逃げる。


769 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:35
「何もしないよ」
「……したくせに」
「今日はもうしないよ。……服、なおしたげる」


乱れた服を直されて、梨沙子は直してくれた桃子が服を乱した張本人だということを忘れて思わず、ありがとう、とお礼を言った。
そこで梨沙子はあることにはっと気がつく。


「ちょっと待って。今、今日はって言わなかった?」
「言ったよ?」
「それって、それって」
「うん、今日はもうしない。……けど、また今度するから」
「しない!しなくていいからっ!!」
「ほんとにしなくていいの?」
「…………」
「次はいつがいい?」


770 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:36
何故だか桃子は自信満々で。
断るなんて微塵も思っていないみたいで。
そして確かに梨沙子は断るつもりなどなくて。


どうしてだろう。
あんなに恥ずかしかったのに。


無意識のうちに桃子に聞いていた。


「……次はいつするの?」
「梨沙子はいつがいい?」


桃子の手が直したはずの梨沙子のブラウスに伸びてくる。
梨沙子はその手をぎゅっと握って言った。


771 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:37
「もちろん、今日以外」


今日はもうしない。
口にした言葉には責任を持つべきだ。
だから、約束の日は今日以外。


梨沙子は、うっ、と言葉に詰まった桃子に小さな声でもう一言付け足した。


「……今日以外ならいつでもいいよ」




772 名前:『 歌声よりもっと 』 投稿日:2007/08/18(土) 02:38



『 歌声よりもっと 』



- END -
773 名前: 投稿日:2007/08/18(土) 02:38

774 名前: 投稿日:2007/08/18(土) 02:41
>>756 さん
エロおじさんΣ( ̄□ ̄;
中身おっさんは雅ちゃんの専売特許なのにっw
……エロおじさんみたいにしてしまった桃子には謝っておくことにしますw
775 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/19(日) 00:54
やっぱりtechnicianももww
そんなももが好きですね
梨沙子はかわいい
776 名前: 投稿日:2007/08/20(月) 02:07



『 Start 』



777 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:09
「くまいちょー、恋って知ってる?」


友理奈の隣で黙って漫画を読んでいた桃子が唐突に聞いてきた。
その声は真剣というより何かアンケートでも取るような事務的なものだった。
もう読み終えてしまったのか、桃子がさっきまで読んでいた恋愛漫画はテーブルの上に置かれていた。
友理奈は別に真面目に答える程のこともないだろうと思い反対に聞き返す。


778 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:09
「なに急に。ももちはどーなの?」
「んー、ももは……。よくわかんない」


小首をかしげて人差し指は顎に。
わざとらしいぐらいのアイドルっぽい表情で桃子が答えた。
桃子が一体何を考えているのかはわからないが、それにいちいちツッコミをいれることも面倒で、軽くそれを流して聞かれたはずの友理奈がさらに桃子へ質問をする。


779 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:10
「好きな人とかいないの?」
「さあ、どうだろ。くまいちょーは誰かいる?」
「え?あ、いない。……と思う」
「ふーん。いないんだ」
「いなくてもいいじゃん」
「そうだけど。……あのさー、くまいちょー」
「なに?」


780 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:11
なんだか嫌な予感がする。
桃子がアイドルスマイル全開で友理奈を見ていた。
仕事以外で桃子がこんな表情をするときに良いことが起こった記憶がない。
むしろ悪い記憶しかない。
そんな悪い記憶を呼び覚まそうとするかのように桃子が立ち上がり、友理奈へと一歩近づいた。


「ももさ、くまいちょーが綺麗でカッコイイから好きになるかもしれない」


にっこり笑顔の桃子から飛び出たのは予想外の言葉。
だから、友理奈は思わず椅子から立ち上がって声をあげた。


781 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:12
「え?ええっーーー?」
「……って、言ったらどうする?」


友理奈の目の前には楽しそうにくすくすと笑う桃子。
その悪戯っぽい瞳に友理奈は自分が桃子に遊ばれているのではないかと今さら気がつく。


「……もしかして、あたしのことからかった?」
「んー、そういうわけでもないかも?」


782 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:13
桃子に手首を握られた。
その手に力が入って軽く引き寄せられる。
そして熱っぽい瞳に見つめられる。
いつもと桃子の雰囲気が違うのがわかる。
触れられた場所が熱い。
ドクドクと鳴る心臓の音が聞こえてくるような気がする。
友理奈は下から見上げてくる桃子の瞳を見つめ返せない。



783 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:13

なんだってこんなにドキドキするんだろう?
ももちに見つめられてドキドキするなんてありえないはずなのに。
それなのに心臓が痛いぐらい締め付けられる。



784 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:14
じっとこちらを見つめてくる瞳から目をそらし続けても、桃子は友理奈を見つめることをやめない。
だから、友理奈はもっとドキドキとして桃子から逃げるように背筋を伸ばした。
友理奈の手首を掴んでいる桃子の手にさっきよりも力が入るのがわかる。
そして困ったような口調で桃子が言った。


「あのさ、こういう時って、ちょっと小さくなるとかしてくれないと届かないんだけど……」
「届くって何が?」
「ほんっと、くまいちょーは……。まあ、いいや」


785 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:16
背伸びをした桃子に肩を掴まれた。
そのまま肩を引き寄せられて、バランスを崩した友理奈の身体が揺れて桃子の方へと傾く。
桃子に近づいた友理奈の首に桃子の腕が回される。
そのまま首をぐっと引き寄せられて頬にキスされた。


桃子に視線をあわせると上目遣いでこちらを見ていた。
友理奈の頬に触れた桃子の薄い唇は笑った形。



786 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:16

おかしい。
さっきより心臓がドクドクと鳴って止まらない。
もしかしてこういうのを恋っていうのかな?



787 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:17
なんだかわけがわからない。
こういうことを誰に聞いていいかもわからない。
だから、友理奈は自分をこんな風にさせた本人に問いかけた。


「ね、恋ってさ。ドキドキするものなのかな」
「……くまいちょー、ももになら恋していいよ」


思ったより真剣な顔をした桃子が友理奈の目に映る。


その真剣な顔に。
こちらを見つめてくる桃子の瞳に。
本当に恋しそうになったことはしばらく秘密にしておこうと友理奈は思った。




788 名前:『 Start 』 投稿日:2007/08/20(月) 02:18



『 Start 』



- END -
789 名前: 投稿日:2007/08/20(月) 02:19

790 名前: 投稿日:2007/08/20(月) 02:21
>>775 さん
梨沙子は可愛く。
桃子はエロく。
……もうそんなイメージでお願いします(;´▽`)
791 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/08/20(月) 14:17
ももくまももくま!
いやー、可愛いですね、熊井ちゃん
この二人大好き
792 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/20(月) 23:47
桃熊キタ━(゚∀゚)━ !!!!
ちょっと関係が進行されればいいですね。
793 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/21(火) 02:50
ついに熊井ちゃんが…もも手加減してくれ!
でもももぐらいじゃなきゃ熊井ちゃんは進まないのかな?
794 名前: 投稿日:2007/08/25(土) 00:07



『 記念日は1992年8月25日 』



795 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:09
「あ、0時過ぎてた」


間の抜けた桃子の声に雅が時計へ視線を移すと、確かに0時を過ぎていた。
最初は二人で緑色の文字が0時になるのを待っていたはずだった。

けれど二時間は長い。
22時からホテルの部屋で0時になるまでじっと時計を見続ける。
そんなことは当然出来るわけがない。
だらだらと話し込んでいるうちに気がつけば0時過ぎ。
当たり前と言えば当たり前の展開だった。

あまりにも予想通りの展開に呆れる。
どちらが悪いと言うわけでもなかったが、雅はとりあえず桃子にこの責任を押しつける。


796 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:11
「ほんとだ。ももヒドイ」
「みーやんだって気がつかなかったじゃん」
「こういうときはももの方が気をつけて時間見てるべきでしょー。大体、ももが日付が変わった瞬間におめでとうって言いたいって言い出したんじゃん」


雅はぷうっと頬を膨らませて抗議する。
誕生日。
年齢が一つ変わる瞬間。
その瞬間に『おめでとう』と言って欲しかったのは本当で、子供っぽくてもいいからこんな日ぐらいは思いっきり文句の一つでも言いたい。
けれど、そんな思いは部屋に響いたパチパチという乾いた音にかき消される。
音の出所は探るまでもない。
その音を出しているのは雅の目の前で手を叩いている桃子だ。
桃子は手を叩きながら、拗ねた雅を気にするわけでもなくいつもの調子で口を開く。


797 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:12
「まぁまぁ、気にしない気にしない。みーやん、お誕生日おめでとー!」
「もうっ。……ありがと」


桃子に膨らんだ頬を人差し指で突かれて口から空気が漏れる。
その空気と一緒に小さな不満も吐き出されて、雅は自然と笑顔になった。


「で、誕生日プレゼントは今日一緒に買いにいこっ。みーやんが欲しい物、ももがプレゼントするから」
「それなんでなの?」
「それって?」
「何で一緒に買いに行きたがるのかなーと思って。夏休みって忙しいしさ、一緒に買いに行くの大変じゃん。うちはももがくれるものなら何でもいいし、何でも大事にするよ?」


798 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:13
ずっと気になっていたこと。
誕生日がくるかなり前から、桃子は何故か一緒にプレゼントを買いに行くことにこだわっていた。
他のメンバーが、プレゼントは何がいい?と尋ねてくる中、桃子だけは一緒に買いに行こうと繰り返した。
雅は何度か桃子にそれは何故なのか尋ねたが、まともな返事が返ってきたことは一度もない。
だが、誕生日の今日ならば桃子も素直に答えてくれそうなそんな気がした。


799 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:14
「忙しいからこそ、かなぁ」


ベッドの上、足を投げ出したままの桃子が伸びをしながら言った。
ぐっと伸ばされた両腕がだらりと下がると同時に、桃子が嬉しそうな表情で話を続ける。


「一緒に買いに行くって言ったらみーやん忙しくてもさ、ももの為に時間あけてくれるもん。そしたら、デート出来るじゃん」
「それ、うちの為っていうかももの為じゃん」


800 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:15
思わず呆れた声が出た。
確かに雅も桃子とデートをできるということは嬉しい。
けれど、何度も繰り返す言葉にはもっと深い意味があるのかと思っていた。
まさかこんな単純な理由だとは思わなかった。

落胆とまではいかないが、少しばかり失望した色を滲ませた雅の言葉に桃子が反応する。
離れていた距離を桃子が詰めてくる。
触れるあう程ではないが、かなり近くまで桃子が雅に寄ってくる。
雅の真っ正面に座り込み、いつになく真面目な顔で話し出す。


801 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:17
「まあ、そうなんだけど。でもね、一緒にプレゼント買いにいったら……。思い出に残るでしょ?プレゼントだけじゃなくて、一緒に選んだ記憶とか。なんかそういうのって良いと思わない?プレゼントはいつか壊れちゃうかもしれないし、なくしちゃうかもしれないけど。でも、みーやんの記憶にはももと一緒に選んだ日のことがずーっと残るの。……そういうの良いなぁって」


同意を求めるように桃子が唇だけで笑った。
その瞳は雅からの答えを待っている。


珍しく真顔で語られてなんだか照れくさくなった。
桃子の言葉が嬉しくないわけじゃない。
そんな風に想われているのが嬉しくて、どうやって言葉を返していいのか思いつかないだけだ。
だから雅は言葉のかわりに手元にあった枕を桃子に投げつける。


802 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:18
「何買ってもらっても、なくさないし壊さないっての」


言葉や態度がぶっきらぼうになるのは照れ隠しだ。
そしていつもの桃子ならば、そんなことぐらいすぐに見抜いてしまう。
それなのに今日の桃子はからかうような言葉一つ投げかけてこなかった。
かわりに桃子の口から漏れたのは小さなため息。


「やっぱ、プレゼントの中身ってわからない方がいいのかなぁ」


雅に投げつけられた枕を抱えた桃子が独り言のように呟いた。
そこにいたのはどことなく悲しげな桃子で雅は思わず慌てる。


803 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:18
「え、いや。あの。……うちも、ももと一緒に買いに行く方が嬉しい」


何かに急かされるように言葉を繋いだ。
桃子に自分の態度を誤解されたままでいられるわけにはいかない。
気の利いた言葉は思い浮かばない。
かわりに素直な気持ちを小さな声で答えると、桃子が嬉しそうに微笑んだ。


「もももみーやんと買いに行けたら嬉しい」


804 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:19
雅と桃子の距離がさらに縮まる。
満面の笑みで近づいてきた桃子が背後に回る。
そのまま背中から抱きしめられて、額を擦りつけられる。

甘い時間。
けれどそれは一瞬。
何故か背後から回された桃子の手は雅の胸の上に置かれた。
そしてその手がもぞもぞと動き出す。


「……って、ももっ。ちょっとこの手どけて」
「うーん、良い雰囲気だし。記憶に残る誕生日第一弾みたいなものはいらない?」


805 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:21
よからぬ事を考えているとしか思えない。
動き回る手は次第に大胆になってパジャマのボタンを外そうとしている。
雅は桃子の手に自分の手を重ねてその動きを止めた。


「いらない。はい、もも。離れてね」


桃子の手を握ってその手を自分から引きはがそうとした。
だが、それはうまくいかない。
反対に桃子に手を取られ、握りしめられる。
耳に唇が這うのがわかった。
雅の身体がその刺激に反応しかける。
桃子が期待している声を出してしまう前に、雅は低い声で桃子を制止した。


806 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:21
「だから、ちょっと。ももっ」
「やなの?」
「やなの」
「ふーん」
「ちょ、あっ。だめだってば」
「ほんとにだめ?」


誘うように桃子の唇が雅の肌の上を動いた。
唇が耳の下から首筋を這って、肩を舐められる。
自分の手を握っていたはずの桃子の手が、また胸の上で動いていた。
高く掠れた声が出る前に、雅は条件反射のように「だめ」と桃子に告げる。
雅のその言葉に身体に触れる手の動きが止まって、試すような声で桃子が言った。


807 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:22
「じゃあ、そうだなぁ。……あっ、誕生日だし、みーやんの言うこと1つだけ聞いてあげる」


背後にいる桃子の表情は当然見えない。
だが、雅には桃子が今どんな顔をしているか想像できる。


きっと唇だけで薄く笑って、誘うような目をしている。


決められた答え。
それ以外は許されない。


808 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:23
「……なんでこのタイミング?」


無駄な抵抗だとはわかっていても雅は言わずにはいられない。
雅の答えなど口に出すまでもない。
その答えは桃子に決められた答え以外にはないし、それを桃子もわかっているはずだ。
だから、こんな日ぐらい言わずに終わらせてくれればいいのにと思う。


「別に深い意味はないけど?」
「……悪意を感じる」
「何でもいいんだよ?何でも1つ」
「うちの誕生日だからだよね?」
「もちろん」
「……どーせ、うちが何言うかわかって言ってるんでしょ。っていうか、ももが言わせたいだけでしょーがっ」
「もも、みーやんが何を言うかわかんない。だから何でもいいから言って?」
「誕生日なのに意地悪されるとか意味わかんない」


809 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:24
胸の上で止まっている手を雅はぎゅっと握りしめる。
それでも桃子は雅からの言葉を待ったままで動こうとしない。


言わなければ先に進まないことぐらいわかっている。
そしていつもならもうその言葉を口にしている。
でも、今日はいつもとは違う特別な日だ。
出来ればこのままその先へと進んで欲しかった。


けれど、やはり桃子は雅の期待通りには動かない。
雅の耳元にふっと息を吹きかけてから、笑いを含んだ声で桃子が言った。


810 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:26
「意地悪なんてしてないよぉ」
「じゃあ、言わなくてもいいじゃん」
「それって、ももが思ってることとみーやんが思ってること、一緒でいいってこと?」
「だーかーらー!そう言うところが意地悪だっていうの。一緒のこと考えるようにしてるくせに」


思い通りにいかないのなら。
そうやって意地悪ばかりするのなら。

雅は桃子の腕の中からするりと逃げ出す。
そして桃子の身体を押し倒した。


811 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:26
「うわっ。みーやん、重いっ。重いってばっ」
「ふっふっふっ」


急に押し倒された桃子が小さく抵抗をする。
雅はその肩を押さえつけた。


いつも桃子にされること。
それを雅は桃子に返す。


雅がわざとらしく芝居がかった笑い声をあげる。
すると桃子は雅が思っていたものとは違う行動に出た。


812 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:27
「もぉ!別にいいもーんだっ」
「え?ええっ?ももっ。やめ……」


にやりと笑った桃子が下から手を伸ばしてくる。
その手が雅の顔の輪郭を辿る。
ゆるやかに降りてくる手が雅の鎖骨を撫でて、パジャマのボタンを外した。
雅は慌てて枕元にあるスイッチで照明を落とす。


813 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:28
結局。
最後はいつも桃子が思った通りになる。
でも、それは嫌な事じゃない。
そしてそれは桃子も気がついている。
認めたくないけれど、こんな誕生日もそう悪くない。
色々言ったところで、こうされることをいつも望んでいるのだから。




814 名前:『 記念日は1992年8月25日 』 投稿日:2007/08/25(土) 00:29



『 記念日は1992年8月25日 』



- END -
815 名前: 投稿日:2007/08/25(土) 00:29

816 名前: 投稿日:2007/08/25(土) 00:36
お誕生日おめでとうなのです。
というわけで、今回はみやびちゃんおたおめ小説。


>>791 さん
凸凹コンビ(´▽`)
桃子といる熊井ちゃんはなんだか愛らしくて素敵だと思います。

>>792 さん
ちょっとどころかものすごい勢いで関係が進行されそうで怖いですw

>>793 さん
手加減ってΣ( ̄□ ̄;
桃子、悪の使者ですかw
桃子が相手だとどこまで進むんでしょうねぇ(;´▽`)←他人事
817 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/26(日) 14:46
やっぱいいですね。
なんか、目に浮かぶようです。
意地悪桃子もそんな桃子が好きな雅も本当に好きです。
818 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/08/28(火) 00:54
結局どうしても逆らえなくて、悔しくて、敵わなくて

それでも桃子が好きなみやびちゃんがかわいいですねw
819 名前: 投稿日:2007/08/29(水) 02:02



『 眠り姫 』



820 名前: 投稿日:2007/08/29(水) 02:04
「みーやっ」


突然、梨沙子がくるりと振り向き、雅のブラウスのボタンに手を伸ばしてきた。
甘えるような表情の梨沙子に雅はボタンを一つ外される。
まずい、と思う間もなく梨沙子の手は二つめのボタンを外しかけていた。


「ちょっと梨沙子。家に人いるからダメだって」


昼過ぎ、雅の家に梨沙子が突然押しかけてきた。
二人でゲームをしたり雑誌を見たり、たわいもないことをして時間を過ごした。
そして、今。
背中合わせで座ってくだらない話をしていると、梨沙子が急に振り向いて雅のブラウスに手をかけてきたのだ。

部屋には二人、だが家の中には二人以外にも人がいた。
だから、雅はブラウスのボタンを外す梨沙子の手を止めた。


821 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:05
「梨沙子」
「いいじゃん。みやが声出さなきゃバレないって」
「そういう問題じゃないって」
「そんなに大きい声だすつもりなの?」
「ちがーうっ!とにかく今はダメだってば」
「……いいでしょ?」


覗き込むようにして上目遣いで見つめられた。
駄目だと思う気持ちを上回るように胸が高鳴る。
ボタンを外す手を止められない。
気がつけば梨沙子の首に手を回していた。
これから起こることに期待している自分がいる。


822 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:06
「みや、静かにしててね?」


耳元でくすくすと笑いながら囁かれる。
全てのボタンを外されてしまったブラウスが肩から滑り落ちていく。
首筋にキスされただけで声が出そうになった。


「梨沙子、やっぱり。……やめよ?」


823 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:07
雅は身体にまとわりついてくる梨沙子の手を押し留める。
身体に一つキスされただけで声が出そうになるのに、静かにしているなんてことは不可能だ。
声を抑えられないことはわかりきっている。
そしてそれは梨沙子もわかっているはずだった。

それなのに梨沙子は止まらない。
梨沙子の身体を押し返そうとする雅の手を握って身体にキスを落とす。

座ったまま抱きしめられて、身体に触れられる。
唇が胸元を降りてきて、胸を覆う下着をずらされた。
そこを舌先で舐められる。
快感に上半身を支えられなくなっていく。
肩に軽く歯を立てられて思わず湿った声が出る。


824 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:09
「んっ、はあっ」


雅は慌てて口を押さえる。
漏れた声は小さなもので部屋の外に聞こえるはずがない。
それでも自分の口から漏れる息や声が気になって仕方がない。
雅は吐息を身体の中に留める無駄な努力を繰り返す。


けれど、そんな雅を弄ぶかのように柔らかな白い手が身体を這い回っていく。
背中を背骨にそって撫で下ろされて身体が崩れる。
雅のバランスを崩した身体は梨沙子に支えられ、そのまま床へと押し倒された。
素肌がフローリングに張り付く。
押し倒された床はひやりと冷たくて、熱を持った身体が少しだけ冷めたような気がした。
でも、それは短い時間だけですぐに身体が熱くなっていく。

腰のあたりを撫でていた梨沙子の手がその下へと伸びる。
梨沙子の身体が少しずれてスカートに触れるのがわかった。
裾を掴んだ手がするりと中へ侵入してきて、下着に手をかけられる。


825 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:10
「いいよね?」


下着に手をかけた梨沙子に問いかけられた。
聞かれるまでもなく答えは決まっている。
このままこの行為を続けられたら、絶対に声を抑えることが出来ない。
だから、雅は梨沙子の手を止める言葉を口にした。


「梨沙子、だめっ」
「ダメじゃない。みやの身体はいいって言ってるよ?」


確かめるように下着の上から身体の中心を触られた。


826 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:13
梨沙子の言葉に間違いはない。
雅の言葉が嘘だとすぐに梨沙子に伝わる。
言葉を身体が嘘にする。


けれど、やめて欲しいという言葉も本当だ。
でもそれ以上にそこに触れて欲しいと思っているのも本当で。
身体に裏切られた言葉を捕まえようとしても無駄だった。


口先だけの否定は梨沙子に届くことはなく、指先が下着の中へと侵入する。
そして遠慮なく足の間に入り込んでくる。
そこに指が触れる瞬間に備えて雅の身体が身構える。
濡れたそこに梨沙子の指が触れると身体が一瞬硬くなった。
そして身体の力が抜ける前にいきなり指先で強くそこを擦られて身体が跳ねる。


827 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:14

「やめ…あっ、はあっ、ん」
「みや、声」


強い刺激に驚いてあげた声に自然と濡れた吐息が混じった。
梨沙子が声を出さないようにと言葉をかけてくる。
そのくせ指の動きは止まらない。
だから、噛みしめる唇から漏れる出る声が止まらない。
梨沙子の指先は動き続けて雅を追いつめていく。
そこを撫でる梨沙子の指に雅の神経が集まる。

白い色が頭の中を覆っていく。
押さえていた声が少しずつ大きくなっていくのがわかった。
外の音から隔離されていく、その少し前。
雅の耳にトントンと誰かが階段をあがってくる音が聞こえた。

828 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:15
「はぁっ、ま、待って。誰か、くる」


身体の中心を這い回る止まらない手を押さえると、梨沙子にも扉の外の音が聞こえたようで指先の動きが止まる。
濡れたそこに触れていた指が下着の中から抜き取られた。


二人の動きは止まったまま。
乱れた空間が正常な空間へと変わっていく。
息を潜めていると、扉の外から声が聞こえた。


買い物に行く、という声と共にまた足音が遠ざかっていく。


829 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:16
「ふうっ……。もう、バレるかと思ったじゃん」


身体の中にある全ての酸素をはき出す。
梨沙子に触れられている時とはまた別の意味で雅の心臓がドキドキと鳴っていた。


踊る心臓を落ち着かせる為に何度か息を吸って吐く。
軽く深呼吸をして冷静になってみると、梨沙子がやけに静かなことに気がついた。
不審に思って身体の上に目をやると、床に押し倒された体勢のままでいる雅の上に梨沙子の身体が落ちてくる。
急に梨沙子に体重を預けられ、雅は思わず声をあげた。


830 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:17
「梨沙子?」


名前を呼ぶ。
だが返事はない。
覆い被さっている梨沙子の身体から徐々に力が抜けていくのがわかる。
力の抜けた梨沙子の身体を支えながら、雅はさらに何度か名前を呼ぶ。


831 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:18
「あれ?梨沙子、梨沙子っ」
「んー、みや。……ねむい」
「え?ちょっと、梨沙子!」
「ちょっと寝る」
「ちょ、なんで?梨沙子っ!……こんな中途半端な状態でどうして。ちょっと、梨沙子」


梨沙子が眠ると宣言をした後。
すぐに寝息が聞こえてくる。
だから雅の苦情が梨沙子に届くことはなかった。


「どーすればいいのさ、ばか梨沙子っ!」


832 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:20
雅は半ばやけになって梨沙子の名前を呼んだが、梨沙子が眠りから覚める様子はない。
聞こえてくるのは規則正しい呼吸音だけ。
力の抜けた身体が重く雅にのしかかる。

眠った人間を身体の上に乗せておくのはさすがに辛い。
雅は梨沙子の身体ごと上半身を起こして、なんとか眠っている梨沙子を自分の身体の隣へと移動させる。
そして軽くその頬を突いてみるがぴくりともしない。


途中で寝るなら。
だったら、初めからしなければいいのにと思う。
期待した身体をどうすればいいかわからない。
だからといって、梨沙子を起こすのも催促するようで恥ずかしい。


833 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:21
「はあ、もう。なんでこんなの好きになっちゃったんだろ」


誰に言うでもなく小さく呟いた。
雅の隣にはすやすやと寝息を立てて眠る梨沙子。
しばらくは起きそうもない。

梨沙子の投げ出された手が雅の太ももにある。
その手を取って、手の甲にキスをする。
身体の奥の痺れるような感覚がまだ抜けない。


834 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:22
「いつ起きるんだか……」


この痺れを収めることが出来るのは梨沙子だけ。
起こしはしないけれど、早く起きて欲しいと思う自分がいる。
起きたらきっと強引な手がまた雅に伸びてくる。
問題はそれまでをどう過ごすか。


小さなため息を一つ。
はき出す熱い息。
身体に籠もる熱は冷めそうになかった。




835 名前:『 眠り姫 』 投稿日:2007/08/29(水) 02:22



『 眠り姫 』



- END -
836 名前: 投稿日:2007/08/29(水) 02:22

837 名前: 投稿日:2007/08/29(水) 02:28
>>817 さん
雅は意地悪な桃子にずっと弄ばれればいいと思いますw
愛があればそれでいい(´▽`)

>>818 さん
雅は逆らおうとして返り討ちにされるべきですw
不憫なんだか幸せなんだかわからない感じで(´▽`)
838 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/29(水) 22:07
梨沙子も!!
雅はいつもこんな式ですねww
ちょっと可哀想だが可愛らしいです
839 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/29(水) 23:11
おぉ! りしゃみやで梨沙子攻め! しかも寸止め!
完璧に好み!w
840 名前:名無飼育さっ 投稿日:2007/08/30(木) 00:15
イイ!作者さんGJ!!
寝ちまうりさこと放置されるみやが素敵w
841 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/30(木) 01:46
みやりしゃ好きだけど妄想しにくかったんですが、
こういう関係性ならいくらでも妄想できそうですw

作者さんすげーw
842 名前: 投稿日:2007/09/03(月) 00:11



『 study 』



843 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:13
「勉強、つまんない」
「つまんないって……。ももが誘ったんじゃん」
「そうだけど、もう飽きたぁ〜」


844 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:14
開始三十分。
飽きるには確かにまだ早い。
けれど飽きたものは飽きたのだ。


桃子は手に持っていたペンをテーブルに転がして床にごろりと横になる。
久しぶりに入った雅の部屋。
見上げる天井も部屋の匂いもなにも変わらない。
そして桃子が勉強嫌いなことも変わらない。


威張れる事ではないが桃子は勉強が得意ではない。
多分、雅だって得意ではないだろう。
桃子は勉強などやらなくていいならならやりたくないと思う。
では何故、勉強会なんてものをすることにして雅を誘ったのか。
もちろん答えは一つだ。


845 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:14
大義名分。


雅を誘う理由が欲しかった。
それだけだ。


846 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:16
テストが近い、というまったくもって当たり前の理由で、桃子の誘いはことごとく断られていた。
断りの理由が『テストが終わるまでは遊ばない』という真面目なものの為、いくら桃子でも強引に雅を誘うわけにはいかなかった。
そもそも桃子自身もテストが近く、年下の雅から勉強をしろと散々注意をされていたところだ。

勉強をしなければいけないことはわかっているが、雅と会いたいのも事実だ。
会うだけなら仕事で頻繁に会ってはいる。
だが、プライベートと仕事は別だ。
テストが近くても会いたいのだから仕方がない。
けれど雅は頑固だ。
一度決めたらなかなか意見を変えない。


847 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:17
そんな雅を納得させることの出来る誘い文句。
それはこれしかなかった。


『じゃあ、一緒に勉強しよ?わからないところ教えるからさ』


桃子がそう言って誘った時、雅は不審そうな顔をして一瞬迷ってから承諾をした。
きっと今のような状態になることを予測していたからなのだろう。
桃子自身もすぐ飽きるということはやる前からわかっていたことなので、雅に予想されるのも無理はなかった。


848 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:18
「勉強教えてくれるって言ったよね?」
「わかんない」
「はあ?」
「もも、ばかだからわかんないもーん」


呆れた口調の雅に、桃子は床の上をゴロゴロと転がりながら答える。
その様子にこれ以上何を言っても無意味だと思ったのか、雅が突き放すように言った。


「……もも、休んでていいから。そのかわりうちの勉強、邪魔しないでよ?」


849 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:20
これ以上桃子の相手をしない。
そんな宣言と同等な雅の言葉に桃子が飛び起きると、向かい側から睨まれた。
けれど、睨まれたぐらいのことで怯む桃子ではない。
せっかく作った雅との時間。
桃子としてはこのまま突き放されては面白くない。


「みーやん、いつまで勉強するの?」
「んー、これ終わるまで」
「それっていつ?」
「さあ、いつだろ」
「もうさ、勉強やめない?」
「もうっ、ももうるさいっ!大体、勉強するって言って人の家に来ておいて、勉強の邪魔するとかありえないっ」


テーブルの上に顎を乗せ、不満げな声で矢継ぎ早に質問を投げかけてくる桃子がさすがに鬱陶しくなってきたのか雅が大きな声をあげた。
そして桃子を隔離するように教科書をテーブルの上に立てると、その影に隠れるようにして雅が勉強を開始する。


850 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:20
「みーやん。ねぇ、みーやん」


猫なで声で呼んでみる。
けれど、返事はない。
かわりにカリカリとペンを走らせる音が聞こえる。


「ふーん。いいけど、別に」


呼んでも無反応な雅への対抗手段。
桃子は雅の隣へ移動するとその教科書を無理矢理取り上げた。
そして雅の身体を隣から抱きしめる。


「ももぉ〜、ちゃんとやろうよ〜。勉強っ」


851 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:22
抱きしめられて悪い気はしないのか、雅の口調も柔らかいものに変わっている。
しかしやはり勉強が気になるらしく、桃子が取り上げた教科書に雅が手を伸ばしてきた。
けれど桃子が簡単に教科書を渡してしまうわけもなく、伸びてきた雅の手をかわすと教科書をぽいっと後ろに投げ捨てる。


「ちょっと、ももっ!」
「勉強はあとにしよ?」
「今!今やるのっ。今日は勉強会でしょ」
「今は勉強よりもっといいことしようよ」
「……なんかすごく聞きたくないけど、それってなに?」
「んー、想像通りで悪いんだけど……」


一旦言葉を止めて雅を見つめる。
雅は何かを想像しているらしく、腰が引けていて桃子と一定距離を取ろうとしていた。


852 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:22
バレないわけがない。
わざわざ雅にわからせるように言った。


桃子は雅が何を想像しているか十分わかった上で、雅の逃げる腰を抱き寄せ言った。


「えっち」


桃子は雅の耳元で囁いてそのままその耳へキスを落とす。
予想通り、雅の顔が耳まで赤くなるのが見える。


853 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:24
ばかっ、という声を唇で塞ぐ。
暴れる足に指先を這わせる。
力なく抵抗する身体を床へ押し倒す。

赤くなった耳へもう一度唇を押しつけ、首筋から胸にかけて指先を遊ばせると、それだけで息が上がってしまっている雅が自分の下にいた。


「だめ、だって……。ちゃんとしよ?」
「うん、ちゃんとしてあげるから大人しくして」


頬を染めて下から上目遣いで頼まれたら、それは逆効果になるとわかっていない。
濡れた声で頼まれたって誘われているとしか思えない。


だから、桃子は当然のように雅の言葉を別の意味に取る。
遊ばせていた指先を雅の胸の上まで移動させ、Tシャツの上から胸を撫でる。
そして首筋に唇を這わせた。


854 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:27
「やっ、ちょっと。ちがっ…ん、あっ。やめっ」
「大丈夫、これも勉強のうちだから」
「んっ。……こん…な、勉強…ない」
「あるじゃん。保健体育」


こんなのテストに出ない、と呟いた雅に非難めいた瞳で見つめられるが気にしない。
桃子は端正な雅の顔を撫でつつ、胸の上に置いていた手を動かす。
服の上に置いた手を桃子が少し動かしただけで雅の身体が硬くなる。
そのまま手を止めると、何か言いたげな顔をした雅が桃子を見つめてきた。


「……期待、してるでしょ?」


桃子が軽く笑いながらそう言うと、雅が赤い顔をさらに赤くして目をそらした。


気がついてないから面白い。
その行動の一つ一つが誘っているように見えるということに。



855 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/03(月) 00:27

ねぇ、みーやん。
そんな風に誘われたらもう止めることが出来ないって知ってる?



856 名前: 投稿日:2007/09/03(月) 00:28
本日の更新終了です。
857 名前: 投稿日:2007/09/03(月) 00:28

858 名前: 投稿日:2007/09/03(月) 00:35
>>838 さん
こんな雅が個人的に好きなので(;´▽`)
可哀想、でも愛らしい。
それが雅です、多分(←ヒドイ)

>>839 さん
寸止め、気に入って頂けたようでよかったですw

>>840 さん
私の中ですぐ寝るイメージ。
それが梨沙子ですw

>>841 さん
私もりしゃみやは妄想しにくかったです(;´▽`)
その中で、なんとなくピコーン!ときたのがこの話だったり。

859 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/03(月) 21:03
桃子に雅は勝つことができないですねww
エロ桃子も素直ではない雅も可愛い
ほのぼのいいです
860 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/04(火) 02:01
桃って案外頭良さそうな感じ…単なる妄想ですが
861 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:01
Tシャツの裾を胸の上までたくし上げて素肌に直接触れる。
脇腹に手を這わすと、雅が小さく声をあげた。
胸元にキスをして、下着をずらす。
露わになった胸を片手で包み込むようにして触れると雅の声が止まらなくなる。
雅が喘ぎ声の合間から形だけの抵抗をする。


「もも…あっ…んっ、…やめ…てよ」
「みーやん、そんな声でやめてとか言っても説得力ないよ。……ももには、もっとして欲しいって聞こえる」


桃子が返した言葉に雅が唇を噛み、声を殺そうとする。
けれど、それでも漏れる声や、桃子の背中に回された腕が雅が感じていることを伝えてくる。
形だけの抵抗は抵抗の意味を成さない。

862 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:04
雅の胸の一番感じる部分を押しつぶすように刺激して、もう片方を唇で挟み込む。
回された腕に力が入るのがわかる。
途切れることのない声が少し高くなった。
感じることに耐えられなくなった雅の足が桃子に絡みついてくる。


「もっと気持ちよくしてあげるね」


絡んだ足に指先を這わせて撫で上げてから、桃子は慣れた手つきでジーンズのボタンを外しジッパーを下げる。
そしてそのままいつものように下半身を覆う物を脱がせようとして雅に抵抗された。


863 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:06
「あ、はあっ……。だ…め…。まって」


ジーンズを半分脱がせたところで、目に涙を溜めた雅に懇願される。
とりあえずジーンズをそのままにして、桃子が下着の上から雅の一番敏感な部分を触ってみるとそこもう十分に濡れていた。
こんな状態になっているのに雅が拒否する理由。
桃子は何故、雅が嫌がるのか聞かなくてもわかっていたがあえて問いかける。


「なんで嫌なの?」
「だって、ここ……。明るい」


雅が桃子の手を止めるように握りながら、赤い顔で恥ずかしそうに言った。


864 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:08
いつもは暗い部屋でその行為をしていた。
雅が明るい場所ですることを恥ずかしがるので、今まで一度も桃子と雅は明るい場所でその行為をしたことがない。


夕方。
だが、まだ明るい時間。
外の光を遮るものはレースのカーテンだけで、それは太陽が地平線に近くなったとはいえ、まだ明るい外の光を遮るには不十分だった。

いつもなら雅の言い分を聞いて部屋を暗くする。
けれど、今日の桃子はそんな気分にならなかった。


いつもの薄暗い部屋で見る雅とは違って、明るい場所で見る雅はとても色っぽくて。
恥ずかしがる顔が可愛くて。
もっといじめてみたくなる。
もっとその表情を見たくなる。


865 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:08
だから桃子は交換条件を出した。
年下の雅が決して出来ることのない条件を出す。


「みーやんがももに勉強教えてくれるならやめてあげる」
「そ、んな……の…無理」
「じゃあ、ももも無理。やめない」


雅の目尻に溜まった涙にほんの少し罪悪感が生まれるが、今さら引き返す気にもなれなかった。
懇願する雅の瞳は桃子の身体を熱くさせる。
いけない、という気持ちすら消し去って桃子の気持ちを走り出させる。


866 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:10
赤く火照った雅の頬にキスをする。
そしてそのまま流れ落ちそうになっている涙を舌で舐め取った。
雅にぎゅっと肩を掴まれる。

自分の肩を掴む力。
その力はいつもより少し強いもので、桃子は雅の潤んだ瞳を覗き込むようにして確認する。
桃子が雅を見つめると、恥ずかしがった雅に視線をそらされた。

それでも。
本気で嫌がっているわけではない。
その瞳からそう読み取れるような気がした。


867 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:11
「……みーやん」


名前を呼んで安心させるようにキスをする。
最初は軽いキス。
けれど軽いキスはいつしか深いものになっていく。
触れた唇や絡んだ舌が雅にもっと触れたいと思わせる。


「ももにいつもとは違うみーやんを見せて?」


868 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:13
キスの合間に言葉をかける。
雅の返事はキスにかき消されてわからない。
吐息を交換するようなキスの中、雅の手が桃子の背中を掴んだ。
それが合図だったかのように、桃子が脱がせかけになっていたジーンズを脱がせる。
さすがに今、下着まで取ってしまうと雅が泣き出しそうな気がそれはしてやめた。
だから少し下着をずらしてその中へ手を入れる。

雅から溢れ出した液体が桃子の指を濡らしていく。
桃子が人差し指を軽く動かしただけで雅の身体がびくりと跳ねた。


869 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:14
「はっ、あっんっ」


小さな水音と雅の甲高い声が夕方の部屋に響いた。
けれど、雅からぎゅっとしがみつかれている桃子にはその表情は見えない。

下着の中で指を動かすたびに、雅の身体から溢れ出てくる液体がいやらしい音を立てて指に絡みついていく。
そして雅から溢れ出る体液が指に絡みつくたびに桃子の体温が上がっていく。
同時に雅の体温も上がっていくのがわかる。


870 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:14
押し殺した声。
きつく背中に食い込む指先。


今、雅はどんな表情をしているのだろう。


そんなことを考えると我慢が出来なくなった。
桃子は自分に抱きついている雅から身体を離す。
そしてその瞳を覗き込んだ。


871 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:16
「やぁっ、もも…み…ないで」
「いやだ。顔、もっと見せて」


桃子がじっと見つめると、雅が子供のように首を横に振って嫌がった。
それでもそんな雅の言葉とは対照的に、指先に反応する身体が、声が桃子を受け入れていることを教えてくれる。


872 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:17
潤んだ瞳。
赤く染まった頬。
額に張り付く髪。
乱れた服。


それは想像以上にいやらしくて、そしてとても綺麗でその全てが桃子を虜にする。
そんな雅がもっと見たくて桃子は雅の足の間にある指を動かし続ける。
ぬるぬるとしたそこは熱を帯びていて、動かすたびに吸いついてくるように桃子の指を絡め取っていく。
確実に感じているそこは普段よりも濡れていて、桃子は悪戯っぽく雅に囁いた。


873 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:18
「みーやん。えっちなところももに見られて感じてるでしょ?」
「ちがっ……んっっ。そん…な…こと、はぁ、あっ」
「嘘ばっかり。……なら、どうしていつもより濡れてるの?」


言葉に反応した雅の身体が大きく揺れた。
そしてぬるぬるとしたそこが今まで以上に湿り気を帯びる。
その反応に満足した桃子が、敏感な部分を転がすように撫でると雅が一際大きな声をあげた。


「あっ、んっっ」


874 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:20
明るい場所でこんなことをしている、という意識がそうさせるのか雅の声がいつもより大きかった。
その声は桃子の大好きな声で、その声を抑えて欲しいとも思わないし、それどころかもっと聞きたい声だった。
けれど、そうも言っていられない。
この家の中には二人の他にも人がいる。
さすがにその人に雅の声を聞かれるのはまずかった。


「みーやん。あんまり大きな声出すと聞こえる」


桃子は雅の唇の上に人差し指を置く。
そしてその指を雅の口の中へと入れた。


「噛んでいいよ」


875 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:22
指先にかかる力。
柔らかく指先を噛まれて桃子は思わず痛みとは違う声を小さくあげた。
けれど、その声は自分のことで精一杯になっている雅には聞こえていないようで桃子はほっとする。
それと同時に自分の身体におこった変化に気がつく。
しかし、今は自分の身体より雅の方が大事だ。
このまま雅の姿を見ていたかった。


『もっとみーやんのえっちなところ見せてよ』


声に出さずに心の奥で呟いて、雅の身体の中に指を押し込む。
桃子が身体の中に入れた指を動かすと雅が指を噛む力が強くなった。
だが、それでもくぐもった声が漏れて聞こえる。

桃子は雅の中へ入れた指を奥へ奥へと突き動かしていく。
桃子の指と雅の内壁が擦れ合う音が聞こえるたび、口の中に入れた指に力がかかるのがわかる。


876 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:24
雅を追いつめているはずなのに、噛まれた指が気になって落ち着かない。
だから、桃子は追いつめている事を確認するために雅に声をかける。


「ねぇ、こっち見て。……ももに見せて。みーやんのイクところ」


耳元で囁くと、雅が顔を逸らそうとした。
そんな雅に「逃げたらダメだよ」と小さく声をかける。
けれど、その声からも逃れようと雅が桃子から顔を背けようとする。


877 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:25
必死に押さえようとする声。
それでも噛んだ指の間から漏れてくる声。
それが今まで聞いたどんな声よりいやらしい声に聞こえる。

聞かれたら困る。
でも、声が聞きたい。
自分の指先によって声をあげる雅の姿を見ていると、そんな心の奥の欲求に逆らえなくなってくる。


「声、聞かせて」


結局、桃子はそんな自分の欲求に抵抗することをやめ、雅の口の中に入れていた指を引き抜いた。
それでも桃子以外の誰かに声を聞かれたらまずいという意識が働いているせいか、雅が声を押し殺しているのがわかる。


878 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:28
桃子は雅の声を聞く為に、身体の中に埋め込んだ指先に力を入れた。
雅の押し殺していた声が少しはっきりとした物になる。

相変わらず桃子の視線からから逃れようとし続ける雅の視線を捕まえる。
けれど、何度視線をあわせても雅はすぐに桃子から顔を背ける。
頬を押さえてこちらを向かせてやると、雅の喘ぐ声が大きくなった。


桃子は指の動きを少しずつ早めていく。
中を擦るように出し入れする。
雅が指を締め付けてくるが、それよりも強い力で内壁を擦り上げる。


甘い声をあげ続ける雅の顎があがるのが見えた。
それと同時に雅の中が痙攣する。


879 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:29
「ふっ、あっん。はあ、あっ。もも、もうっ」


雅がきつく目を閉じる。

ぎゅっと閉じられた雅の目は最後まで開くことはなく、雅が桃子の視線に気づくことはなかった。
だから、桃子は最後まで雅を見続けることが出来た。




880 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:30
「もものばかっ!最低っ!!」


予想通り。
いや、予想以上。
行為が終わった後の雅は、桃子の予想以上に怒っていてこちらを向いてもくれない。


「そりゃ、ももが悪かったよ?うん、悪いと思ってる。……でもさ、みーやんも感じてたじゃん」
「もぉー!そういうこと言わないでよっ!!ばかあああっ」


振り返った雅の手元からクッションが飛んできた。
桃子は慌ててそれを受け止める。
しかし、雅の顔は赤くはなっているけれど本気で怒っているわけではないようだった。


881 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:32
「悪かったってば。でもでも、しょうがなかったんだよ。みーやんが可愛くてやめられなかったんだもん」
「あーもー!うるさいっ!!それ以上言ったら許さないからね!」
「えー!……みーやん、ごめん。本当に謝るからさ、許してくれる?」


桃子は大げさに両手をあわせると拝むようにして雅に謝る。
けれど、雅から返事はない。
少しだけ不安になって、飛んできたクッションを抱きかかえていると雅から小さな声が聞こえた。


882 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:33
「……もう明るいところでしない?」
「え?」
「今度から。……恥ずかしいことしないって約束するなら許してあげてもいいよ」


くるりと背中を向けた雅がぼそっと呟いた。


そんな雅の丸めた背中が可愛くて、呟いた低い声が愛おしくて。
桃子は「わかった」と答えてから、次もどうなるかわからないな、と思ったことは黙っておくことにした。




883 名前:『 study 』 投稿日:2007/09/04(火) 02:34



『 study 』



- END -
884 名前: 投稿日:2007/09/04(火) 02:34

885 名前: 投稿日:2007/09/04(火) 02:40
>>859 さん
す、すみません(;´▽`)……。
ほのぼのじゃなくて、エロなんです。あはは……。
とりあえず雅が桃子に勝つことはないんじゃないかと思いますw

>>860 さん
私の中の勝手なイメージでは……。
桃子は勉強以外の頭が良さそうな感じですw
今回の桃子は雅をかまいたくてかまいたくてしょうがない、というイメージで書いたのでこんなことに('-';)
886 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/04(火) 19:31
桃子が雅をもうちょっと弄れれば良いと思う私も意地悪?ww
もも,頑張れ!
887 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/05(水) 01:16
絶対ももは又やるなw
888 名前: 投稿日:2007/09/07(金) 23:04



『 キャンディ 』



889 名前: 投稿日:2007/09/07(金) 23:06
>>432-447

『 アイスクリーム 』の続編になります。
890 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:07
目の前には飴玉が一つ。
部屋の中には二人。
公平な手段ならじゃんけん。
けれど手段を選ぶ前に選ばれた。


891 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:08
「もーらいっ!」


声と同時に桃子の手が見えた。
気がついたら、目の前にあった飴玉は消えていた。
そして、雅の目の前から消えた飴玉が包み紙だけになって戻ってくる。


「ももぉ〜!それ、うちも食べたかったのにっ!」
「早い物勝ちだよぉ〜」
「普通、じゃんけんとかで決めるでしょ〜」


満面の笑みで飴を頬張る桃子に、雅は思わず口を尖らせて反論した。
どうしても食べたいという程のこともなかったが、いざ桃子に断りなく食べられてしまうととても食べたかった物のような気がしてくる。
桃子がやけに美味しそうに飴を食べているのも原因の一つかもしれない。


892 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:09
「食べる?って聞いてくれる優しさが必要なんだよ。……いっつも誰かさんがそんなこというじゃん」
「さあ?誰だろ?そんなこと言うのは」
「うちの目の前にいる人以外いないでしょーがっ!あーあ、それ、うちが買ってきた飴なのに」
「弱肉強食!」
「へー、ももでもそれぐらいの四文字熟語なら言えるんだ?」
「……みーやん、もものことばかにしてるでしょ?」
「誰かさんが飴取ったからね」


雅はガラガラと音を立てて飴をなめる桃子に必要以上に絡む。
食べることが大好きな桃子に飴の一つや二つ譲るなんてことは当たり前のことで、今さらぶちぶちと文句を言うことではない。
けれど、こうやって桃子と二人でくだらない話をしながら過ごす時間が楽しくて、雅は言わなくても良い文句をいくつも並べる。


893 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:11
「うちの飴かえせ〜」


雅は冗談っぽくそう言ってから、桃子の左右の頬を摘んでピッと引っ張った。
むにゅとした頬が伸びると、桃子が頬を掴む雅の手を押さえて大げさに痛がる。


「うー、みーやん。いたーいっ」


痛がる桃子のぶすっとした顔が面白くて雅は声をあげて笑う。
一度笑い出すとなかなか笑いが止まらない。
雅は、桃子が不満そうな顔をして自分を見ていることに気がついてはいたが、止まらない笑いはどうにも出来ない。
そんなげらげらと笑いが止まらない雅をしばらく眺めていた桃子が口を開いた。


894 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:12
「もぉ〜。そんなに欲しいなら飴あげるよ」
「え?どうやって?」
「決まってるじゃん。……こうやって」


桃子が悪戯な笑顔を浮かべて言った。
思ってもいなかった展開に笑いがぴたりと止まった雅の顔に桃子の顔が近づいてくる。


肩には桃子の手。
目の前に迫ってくるのは桃子の唇。
逃げ出すことは簡単。
けれど、雅は逃げ出すことも出来ずに桃子の顔が近づいてくるのを待っていた。


895 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:13
キスされる。


そう思った。
だから、アップになる桃子の顔に雅はぎこちなく目を閉じた。
しかし現実はムードの欠片もない。


896 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:14
「なーんてね」


ガリッ。
桃子の口の中で何かが噛み砕かれる音がする。
その音に雅が閉じていた目を開くと、目の前には嬉しそうな桃子の顔があった。


「みーやん、なんで目瞑ったのかなー?」
「なっ、なんでって。なんでもないしっ!」


897 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:16
にやにやという単語がぴったりな表情で問いかけてくる桃子に雅の声が上擦る。
その声で雅が何故目を瞑ったかは確実に桃子にわかってしまったはずだ。
自分の行動に自然と雅の顔が赤くなる。


桃子が雅にからかわれたままでいるわけがなかった。
こんな風に桃子をからかって遊んだ後は、いつも形勢は逆転され自分がおもちゃになる。
だが、今回のような桃子の逆襲は予想外だった。


雅の反応を見ていつも以上に楽しそうにしている桃子の目は、まだ自分をからかって遊ぶ気が満々なようで一体何を言われるのか気になる。
赤い顔を見られたくなくて雅が顔をそらすと、桃子がその目を追いかけてきて覗き込む。


898 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:18
「やっぱり期待した?」
「期待?何それ」
「決まってるじゃん。今、みーやんが想像したことだよ」


目の前にあるテーブルに置かれた飴の包み紙を桃子が手に取るのが見えた。
桃子が手に取った包み紙がゆっくりと雅に近づいてくる。
その包み紙が雅の唇に触れると、そのまま軽く撫でられた。
何を想像していたか確認するような行為に雅の心拍数があがる。
その行為にやけにドキドキして雅は桃子が持っている包み紙を奪い取った。


899 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:19
「何も想像してないし、期待してないっ!」
「えー。今、期待したって顔した〜」
「してないっ」
「ねっねっ、みーやん。飴とキス、どっちに期待したの?」
「どっちにも期待してないっ!」
「えー、つまんない。期待してくれないの?」
「しないっ」
「ふーん。……ま、でもお裾分けね」


桃子が喉の奥でくすくすと笑いながら言った。
そしてその声とともにすっと桃子の顔が雅に近づいてくる。
身構える前に桃子の唇が雅の唇に触れる。
そしてそれがキスだとわかる前に唇が離れた。


900 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:21
それはほんの一瞬の出来事で、よく言うキスの味なんてわからなかった。
けれど、キスの味がわからないかわりに雅は身体がふわふわするような気分になった。


キスした瞬間はキャンディよりもっと甘い気持ち。


それは飴のせいじゃなく。
きっと桃子の唇が柔らかかったせいだと雅は思った。




901 名前:『 キャンディ 』 投稿日:2007/09/07(金) 23:22



『 キャンディ 』



- END -
902 名前: 投稿日:2007/09/07(金) 23:22

903 名前: 投稿日:2007/09/07(金) 23:25
>>886 さん
意地悪だと思います(´▽`)w
でも、もっと桃子をがんばらせても良いというお許しをもらったようで嬉しいですw

>>887 さん
またやってこそ、桃子!
だと思いますw
904 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/08(土) 00:35
『 アイスクリーム 』は作者さんのみやももの中でも可愛さ爆発でしたね、
今作もGJでした。
905 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/08(土) 19:36
甘い,本当に甘い!
この二名はもう始めですね。

「桃子が手に取った包み紙がゆっくりと雅に近づいてくる。
その包み紙が雅の唇に触れると、そのまま軽く撫でられた。」
ここが何かerotic感じですww
906 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/09(日) 15:36
905さん
本文をそのままこんなにたくさん引用するのはタブーですよ。
そういう時は898の5・6行目、などとという風にするべき。

作者さん、スレ汚しスマン。
ネタバレしすぎがどうしても気になってしまったので。
これからも楽しみにしています。
907 名前:905 投稿日:2007/09/10(月) 19:23
すみません。
分からなかったです。
これから気を付けます。
908 名前: 投稿日:2007/09/11(火) 23:27



『 ミネラルウォーター 』



>>888-901

『 キャンディ 』続編
909 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/11(火) 23:29
ベッドは二つある。
そして部屋の中にいる人間は二人。
言うまでもない。
こんな時は一つのベッドに一人が寝るべきだ。
それなのに何故、桃子は自分のベッドに潜り込んでくるのか。
一つのベッドに二人が入る。
それが雅には理解できない。
いや、理解したくなかった。



910 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/11(火) 23:29
「もものベッドはあっち!これはうちのベッド!」
「えー、一緒に寝ればいいじゃん」
「寝ないのっ。大体、二人で寝たら狭いっ」
「それがいいんじゃん」
「よくなーい!」


911 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/11(火) 23:30
一体何回この会話を繰り返したのだろう。
桃子は雅の言葉を聞く気がないらしく、雅のベッドの上から動こうとしない。
そして雅が諦めて『桃子のベッド』と定めたベッドの方へ移動しようとすると、桃子が雅にしがみついて離れない。


膠着状態。


そんな言葉が相応しい今のこの状況。
雅は頭を抱えたくなるような気分まま桃子と会話を続ける。


912 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/11(火) 23:31
「もも、いい加減寝ようよ」
「みーやんが諦めてくれたら今すぐにでも眠れると思う」
「どうしても隣で寝るの?」
「寝る。っていうか、何でそんなに隣で寝るのが嫌なのかわかんないんだけど?」
「うちもどうしてももがそんなに隣で寝たがるのかわかんないんだけど?」
「遠いより近い方がいいじゃん。せっかく二人きりなんだし、もも、みーやんの側がいい」
「そっちのベッドに寝ても近い」
「あのさ、一緒に寝たくない理由でもあるの?」
「ないけど……」


913 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/11(火) 23:32
ないけど、ある。
相反する言葉が雅の頭の中に浮かぶ。

過去を振り返れば、友達が家へ遊びに来た際に一つのベッドで眠ったことぐらいある。
そうして朝まで話し込んで寝不足になったこともある。
そして雅は人が隣に寝ていることはあまり気にならない。
だが、それは桃子以外の人間に限ってのこと。
隣に眠る相手が桃子ならば話は別だ。
友達と二人で眠るのとはわけが違う。
隣でなんて眠られたら眠れる気がしない。
大体、今こうしてベッドの上で二人、じゃれ合っていることでさえ雅の心臓を高鳴らせる。


914 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/11(火) 23:34
元はと言えば桃子が悪いのだ。
桃子がいらないことばかりするから。
いつも、つまらないことでからかってくるから、桃子が側にいると変に意識してしまう。
今だって、何かされやしないかと心臓がドキドキと鳴っている。
触れてくる桃子の身体が気になって仕方がない。


「……みーやんさー、むっつりすけべだよね」
「なっ!?急に何を言い出すのかと思えばなにそれっ。つか、なんでうちがっ」


ドクリと心臓が大きく鳴った気がした。
ぼそっと桃子が言った言葉がなんだか今の自分の状況に当てはまっている気がして、返事を返すために発した声が裏返りそうになった。
無意味に大きくなった声が桃子の言葉を肯定しているようで、慌てた声を出した自分に後悔する。


915 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/11(火) 23:35
「同じベッドに寝るってこと意識しすぎなんだってば」
「意識するわけないじゃん」
「あっ!じゃあ、一緒に寝てもいいんだ?」
「い、いいよ」


売り言葉に買い言葉。
雅は桃子に乗せられて、勢いで一緒のベッドに寝ることを承諾する。


照明は消され、枕元を照らす小さな明かりだけ。
思わず承諾した言葉を否定の言葉とすり替える前に桃子がベッドへ潜り込む。


916 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/11(火) 23:36
「みーやん」


桃子の嬉しそうな声が雅の名前を呼ぶ。
そしてベッドに潜り込んだ桃子が、自分の隣をぽんぽんと音を鳴らして叩いて雅に「ここに来い」と催促する。

雅が黙ってそこに入り込むと桃子がすぐに擦り寄ってきた。
桃子が隣のベッドから持ち込んだ枕をぐっと雅の方へ寄せてくる。
吐いた息がかかりそうなぐらいの距離まで桃子が近づいてくる。
頬が熱くなるのがわかる。
これ以上近い距離で見つめられることに耐えられない。
だから頬が赤く染まる前に雅は桃子に背を向けた。


917 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/11(火) 23:38
「おやすみ」


背中を向けたまま桃子に声をかけると、後ろから「おやすみ」という声が聞こえた。
そして部屋から人の声が消える。


一緒に寝ることを勢いで承諾したことを軽く悔やむ。
意識するわけがないなんて嘘で。
一つのベッドに二人でいるということがどんなことかを考えてしまう自分が嫌だ。
それでも近くに桃子がいることが嬉しいなんて思ってしまう自分を持て余す。


918 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/11(火) 23:39
聞こえてくるのは呼吸音だけ。
吸って吐く規則正しいその音を聞いていると、それがあまりに正確すぎてかえって自分の呼吸が乱れそうになる。
姿が見えないせいで、後ろにいる桃子が余計に気になった。

肩に軽く感じる桃子の手の感触。
うなじにかかる息。
二人分の体重に沈むベッド。


919 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/11(火) 23:39

意識したら駄目だ。
気にするから気になる。
早く眠らないと。



920 名前: 投稿日:2007/09/11(火) 23:40
本日の更新終了です。
921 名前: 投稿日:2007/09/11(火) 23:49
>>904 さん
たまにはこういう感じの可愛い二人もいいかな、と!
こういうのを書くのも楽しいです(*´▽`)

>>905 さん
今回はタイトル通りの甘い感じで!
そして桃子が相手なので少しばかりのエロもスパイスとして(´▽`)w

引用の件ですが、あまりお気になさらずに〜。
これから気をつけて頂ければ無問題です('▽')

>>906 さん
ありがとうございます。
ネタバレに関しては色々とあると思うので、今回のように言って頂けると助かります。
これからもがんばって書きますのでよろしくです!

922 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/12(水) 01:56
良い!このシリーズはカワイイ
しかしももはみやを丸め込むのがウマイなぁ
923 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/12(水) 20:51
もも,まさかそのまま寝るのではないでしょう?
期待しているんだよ。
924 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 00:52
目をぎゅっと瞑って意識を瞼の裏に広がる闇に集中させる。
外の世界を遮断する。
あとはゆっくりと眠るだけ。
それなのに何故か今、思い出したくない光景が瞼の裏に浮かぶ。


暑い午後に食べたアイスクリーム。
飴のかわりに触れた唇。
触れているところから伝わる体温。


眠ろうとしているはずなのに心臓が暴れ出す。
気にし始めるときりがない。
後ろに眠る桃子がまた何かしてくる気がする。
それを期待してるみたいに心臓の音が鳴りやまない。


925 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 00:53
「みーやん?」


小さく声をかけられた。
言葉と一緒に吐き出された息がうなじをくすぐる。


「寝たの?」


確かめるように問いかけられる。
それに返事を返さずにおいたら、背中に桃子の体温を感じた。


「……起きてるじゃん。心臓、ドキドキいってるの聞こえる」


926 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 00:55
背中に押しつけられたのはきっと桃子の耳。
雅はこれ以上心臓の音を聞かれたくなくて、ベッドから身体を起こした。
小さな明かりの下、桃子も同じように起きあがるのが見える。

身体を起こした今も鳴り響く心臓の音が止まらない。
そしてその音をさらに大きくするように桃子が雅の手を握る。


「もももドキドキしてるよ。ほら」
「うわっ」


握られた手は桃子の胸の上へ。
雅は桃子のドクドクと脈打つ心臓よりも、その柔らかな感触に驚く。
急に触れることになったその感触に思わず大きな声をあげると、桃子が不満げに言葉を返す。


927 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 00:55
「人の胸触って、うわ、ってなに。うわって」
「べっ、別に好きで触ったわけじゃないしっ。ももが触らせたんじゃん」
「……えっち」
「なんでっ」
「絶対えっちな事考えたから驚いたんだ。だってみーやん、顔赤いし。……やっぱりむっつりすけべだ」
「誰がっっっ」
「だから、みーやん」


928 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 00:58
どう考えても遊ばれている。
薄明かりの下、目に映る桃子の表情はにやにやと楽しそうなもので、雅の反応を見て楽しんでいるとしか思えなかった。

不純なことを考えていた頭の中を知られているみたいで落ち着かない。
嬉しそうな顔をして擦り寄ってくる桃子のせいで必要以上に頬が赤くなる。
このまま桃子の側にいれば、いつものように桃子のペースに巻き込まれてろくな事にならないことだけはわかる。
だから、雅は自分にべったりとくっついてくる桃子を引きはがした。


929 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:00
「だあっー。もう、ももうっさい」
「みーやんどこいくの?」
「飲み物取ってくるっ」


雅はまとわりついてくる桃子から逃げ出す。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して口に含むと、少しだけ気持ちが落ち着く。
喉から胃にかけてひんやりと冷たい水が広がっていき身体の中を冷やす。


930 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:00
「ももも飲みたい」


返事をする前に、雅が持っていたペットボトルは背後から伸びてきた手に奪われる。
振り向いた時には、桃子がペットボトルに口を付けてミネラルウォーターを喉へ流し込んでいた。
ゴクリと何度か喉を鳴らしてから桃子が楽しそうな声を出した。


「みーやんと間接キス、なんてね」


からかうような口調に雅は言葉を返すことも出来ない。
雅はペットボトルを軽く揺らしながらにこにこと見つめてくる桃子から、黙ってミネラルウォーターを奪い返す。
そのままペットボトルに口を付けると、桃子が覗き込むようにして雅を見つめてきた。


931 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:01
「みーやんもももと間接キスだね」


喉に流れ込んだミネラルウォーターが胃に届く前にそんな言葉を言われて、雅は思わず咳き込んだ。
間接キスなんて大したことでもないはずなのに頬に血液が集まる。


「あ、間接じゃなくてちゃんとしたキスの方がよかった?」


笑いを含んだ、でも誘うような声。
頬に桃子の手が触れる。
桃子の唇がゆっくりと近づいてくる。


932 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:02
キスされる。


嫌じゃない。
でも、このままキスしたら、それだけじゃ終わらないような気がする。
だから雅は桃子の肩を掴んで距離を取った。


「もうっ、いい加減寝なよ!」


乱暴に言い放ってベッドへと向かうと、後ろから桃子がぶすっとした声を出しながら追いかけてくる。


933 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:03
「みーやん、ムードなぁ〜い」
「そんなもんいらないから、いい加減寝てってばっ」
「みーやんが寝てから寝る」
「……わかった。もう寝る」
「あれ?ほんとに寝ちゃうの?」
「うちが寝たらももも寝るんでしょ?」


転がり込んだベッドの上でじゃれ合うように会話が続く。
眠りたい雅に眠りたくない桃子が言葉をかけ続ける。
平行する会話に終わりを作るため雅が目を閉じると、桃子に含みを持たせた言葉を囁かれた。


934 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:05
「……寝かせたくないなぁ、なんて言ったらどうする?」
「え?」


ドキリとして寝ころんだまま目を開けると、桃子がミネラルウォーターを口に含むのが見えた。
気がついたら、そのミネラルウォーターが自分の口に流れ込んでいた。
流れ込んできたミネラルウォーターを飲み込んでから、雅は初めて自分が何をされたのか気がついた。
口移しで飲まされたミネラルウォーターに驚いているうちに、桃子の手が雅の身体に触れてくる。
首筋に唇を押しつけられると背筋にビリビリとした何かが走った。


935 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:06
「ちょ、な、なにっ。もも、うわっ」


何度も場所を変えて触れてくる桃子の唇にどうしていいのかわからなくて、わけのわからない言葉が口から飛び出る。


「だから、うわっ、とか言わないの」


子供を叱るような目と声で桃子にたしなめられた。
けれど、こんな時に言うような言葉も思い浮かばなくて雅は桃子に尋ねる。


936 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:06
「うわ、じゃなかったらなんて言えば……」
「可愛い声で、あん、とか言って欲しかったり?」
「ばっかじゃないのっ」
「みーやん、顔赤い」
「あーもー、ももうるさいっ」


聞くんじゃなかった、そう思ったときにはもう遅かった。
悪戯な笑顔をした桃子に無理難題を押しつけられて、焦ったような声しか出せない。

逃げ出さない雅に安心したのか大胆になった桃子の手が身体中に触れてくる。
ゆっくりと降りてくる唇がくすぐったい。
舌先で肌を舐められて、予想しなかった声が自分から飛び出る。


937 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:09
「ね、もも。ちょっと。……はあっ、あっ」
「みーやんのそういう声、もっと聞きたいな」
「ばかっ」


雅は小さく呟いた。
けれど、そう言いながらも身体はすでに桃子を受け入れていて。
パジャマのボタンにかけられる手を止める気にもならない。
それなのに桃子が口にした言葉はとても意地悪なものだった。


938 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:10
「今日はもう寝る?」
「……寝かさないって言ったくせに」
「みーやんのすけべ〜」


口移しで飲まされるミネラルウォーターはちょっと温くて、そのせいか身体が熱くなる。


夜の残り時間はたくさんあるけれど。
きっと明日の朝は起きるのが辛いんだろうな。


繰り返されるキスの合間にそんなことを考えた。
桃子の心地良い重みを感じながら過ごす夜は思った以上に照れくさい。
それでも、この夜はきっとずっと忘れられない夜になる。




939 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:11



『 ミネラルウォーター 』



- END -
940 名前:『 ミネラルウォーター 』 投稿日:2007/09/13(木) 01:14
>>922 さん
たまには愛らしい感じの二人を(´▽`)w

>>923 さん
期待には応えられたでしょうか?w
941 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/13(木) 02:17
もう940ですね、作者さんの筆の速さとネタの豊富さには脱帽!。
長編・短編とも楽しみに読ませてもらってます。
このスレ読む以前はベリに興味無かったのにすっかり毒されましたw。
942 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/13(木) 22:29
本当に良かったっす!
二人ともかわい
943 名前: 投稿日:2007/09/17(月) 01:58
>>941 さん
ありがとうございます。
……ネタ切れに脅えながら書いています(;´▽`)w
このスレがきっかけでベリに興味を持って頂けたならとても嬉しいです(*´Д`*)

>>942さん
ありがとうございます。
スレの〆になる短編なので、可愛くなるようにしてみましたw
944 名前: 投稿日:2007/09/17(月) 02:01
さて。
スレも残り少なくなってきたのでサックリと新スレに移動したいと思います。
次スレも同じ夢板になります。

短編集2− love for love's sake −
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