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書き逃げプチ小説(笑)
- 1 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月23日(金)19時26分58秒
ずっとラブコメ調を書いてると、なんか行き詰まっちゃいました。
気分転換に、メロウなシーンをちゃっちゃーと書いてみました。
この設定では、小説になり得ないのは分かってるので、死蔵させておくつもり
だったんですけど、勿体ないので、ここにあげてみます。
- 2 名前:市井紗耶香(1) 投稿日:2000年06月23日(金)19時27分41秒
後藤の誕生日までに、帰国が間に合って良かった。
日本は、あいにくの天気だったけど、私の心は浮き立っていた。
宅急便の受け付けに、荷物を全部預ける。
(後藤、驚くだろうな)
ベリーショートの髪は、薄い茶色になるまで脱色してるし、身長もかなり伸びた。
つぎはぎだらけのジーンズと、髑髏がプリントされたパンクなTシャツ。シルバー
のカラコンに、ブルーのリップ。
絶対、私だって分かんないよ。
住所がしるされた、後藤からの絵はがきを手に、私はタクシーの中でニヤニヤ笑っていた。
花屋を見つけ、真っ赤なバラの花束を買う。きっと後藤のことだから、本当は、ケーキ
なんか方がいいんだろうけどね。うふふ。
ドキドキしながら、後藤の部屋のチャイムを鳴らす。
扉の向こうから、たたたた、と駆けてくる、後藤の足音。
- 3 名前:市井紗耶香(2) 投稿日:2000年06月23日(金)19時28分12秒
「どちらさまですかぁ」
少し舌っ足らずの、後藤の声。
にゅっ、とバラを突き出して、
「ハッピーバースディ、後藤っ!」
「市井、ちゃん?」
うっわ、私が驚いた。なんで分かっちゃったの?
「へへへ、帰ってきたよ〜」
後藤の顔が、くるっ、と笑顔になるシーンを想像して、こっちも満面の笑顔を用意する。
「……」
でも、後藤は、戸惑ったような表情で、私を見るだけだった。
急に、不安になった。
「……後藤?」
後藤は、私から目をうつむき加減にそらした。
それは、私がロンドンで何度も夢想した再会のシーンとはかけ離れていた。
- 4 名前:市井紗耶香(3) 投稿日:2000年06月23日(金)19時28分37秒
「お客さんなの――」
部屋の奥から顔を出したのは、圭織だった。
圭織の表情が凍り付いた。
後藤の、戸惑ったような顔。
そして、圭織の、悲しそうな顔。
すべてを理解した。
不思議と、ショックはなかった。
(3年、か……)
私は、そのとき初めて、流れていった時間の重さに気づいた。
外の雨は、まだ、降り止みそうにない。
- 5 名前:後藤真希(1) 投稿日:2000年06月23日(金)19時29分06秒
ドアを開けてしまってから、うかつだった、って思った。
目前に突きつけられた、真っ赤なバラ。
「ハッピーバースディ、後藤ッ」
パンクファッションに身を包んだ、背の高い男の子みたいな、モデル系の女の人。
初めは、ファンが家まで押し掛けてきたのかって思ったんだ。
懐かしい匂いがした。
私の大好きな匂い――ウルトラマリンの匂いが、私を包んだ。
「市井、ちゃん?」
考えるよりも、言葉が先に出た。
ぱあっ、と女の人は満面の笑顔になった。
それは、まぎれもなく、市井ちゃんだった。
(待ち疲れちゃうなんて、あのときは思いもしなかったんだ)
- 6 名前:後藤真希(3) 投稿日:2000年06月23日(金)19時29分29秒
私の戸惑いを、市井ちゃんは敏感に感じ取った。
「……後藤?」
市井ちゃんの声に、不安の色が混じる。
でも、私に、返すべき言葉は無かった。
「お客さんなの――」
圭織が、部屋の奥から出てきた。さっきまで、ケーキを焼こうと、小麦粉相手に2人
で格闘してたんだ。
圭織は、市井ちゃんが、好きだった。
私は、市井ちゃんを失うことに耐えられなかった。
お互いが、市井ちゃんの代わりを求めて、そして、一緒に住むようになった。
「あ……ゴメン。誕生日おめでとう。それだけ、いいたくて、さ」
渡されたバラの花束の赤が、目に染みた、
- 7 名前:後藤真希(3) 投稿日:2000年06月23日(金)19時30分07秒
「じゃ、ね」
市井ちゃんは、笑いながら、小さく手をバイバイさせて、帰っていった。
「ごっちん――」
圭織は、静かに言った。
「これまで、ありがとうね。かおりは、もういいよ。ごっちんにいっぱい、色んな
モノ貰ったから。紗耶香、追いかけてあげなよ」
お互いの結びつきが、愛情なんかじゃないことは分かってる。
でも、だからと言って、圭織と過ごした2年間を否定することも出来なかった。
私は、どうしようもなく、立ち尽くした。
外の雨は、まだ降り止みそうにない。
- 8 名前:飯田圭織(1) 投稿日:2000年06月23日(金)19時30分37秒
初め、ごっちんは、紗耶香の代わりだった。
ごっちんのしぐさの中に、時折、紗耶香の匂いが感じられて、だから、ごっちんと
一緒に暮らすようになった。
いつの頃からだろう。紗耶香よりも、ごっちんの方が、私の中で大きな存在になって
しまったのは。
ごっちんが、私に本気じゃないことは分かっていた。
紗耶香が帰ってくるまでの、紗耶香の代わり。
それでも、私は幸せだった。
だから、紗耶香が来たとき(ああ、今日がごっちんとお別れの日なんだ)って思った。
- 9 名前:飯田圭織(2) 投稿日:2000年06月23日(金)19時31分05秒
「あ……ゴメン。誕生日おめでとう。それだけ、いいたくて、さ」
紗耶香が手にしていた、悲しいまでの赤い色を、私は一生忘れないだろう。
「じゃ、ね」
紗耶香が、背を向けた。
ごっちんの気持ちは、私が一番分かってる。
だって、ずっと一緒に暮らしてきたんだから。
一緒に、泣いたり笑ったりした2年間が、私の宝物だよ。だから、悲しくなんかないよ。
「これまで、ありがとうね。かおりは、もういいよ。ごっちんにいっぱい、色んなモノ
貰ったから。紗耶香、追いかけてあげなよ」
ごっちんは、うつむいて、ぽたぽた涙を落とした。
紗耶香がいなくなってから、ごっちんは、声を出さずに泣くやり方を覚えた。
- 10 名前:飯田圭織(3) 投稿日:2000年06月23日(金)19時31分33秒
「今行かないと、後悔するよ。また紗耶香を失ってもいいの?」
私はズルいのかも知れない。
ごっちんに、捨ててもらおうと思っている。
(でも、私の手で、この恋を終わらせてしまうことなんて出来ないよ……)
「市井ちゃんは大好きな人。でも、香織も大事な人なんだ。私、どうしたらいいの?」
その問いに対する答えを、私は持っていなかった。
外の雨は、まだ降り止みそうにない。
- 11 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月23日(金)19時33分45秒
終わりです。
これ以上、物語は進みません。
書いてて、ゾクゾクしちゃった。気分転換、終了。
「後藤P」と「のの裕」の世界に戻ります。
ではでは。
※ウルトラマリンの下りは、は、まいのすけ氏のカキコをみて使わせて頂きました。
- 12 名前:会長@宇多田inMステを横目で見つつ 投稿日:2000年06月23日(金)20時39分05秒
- ここで終わらせるには、もったいない、、、
- 13 名前:002 投稿日:2000年06月23日(金)20時49分25秒
- こんないいところで終わらしたら
先が気になるじゃないっすか(笑)
- 14 名前:名無しさやりん 投稿日:2000年06月23日(金)20時56分19秒
- のの裕、後藤Pの、新さば移行後の掲載場所はどこですか>黄色い狛犬さま
- 15 名前:小板橋英一 投稿日:2000年06月23日(金)22時40分44秒
- いやあ、黄色い狛犬さんはすごいなあ。
尊敬します。(しみじみ
- 16 名前:小板橋英一 投稿日:2000年06月23日(金)22時41分04秒
- あ、ごめん、あげちゃいました(汗
- 17 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月24日(土)01時14分56秒
- とりあえず「のの裕」
http://suika.he.net/~hokkaido/test/read.cgi?bbs=morning&key=961773459&ls=5
「後藤P」
http://suika.he.net/~hokkaido/test/read.cgi?bbs=morning&key=961769078&ls=5
であります。
- 18 名前:名無しさやりん 投稿日:2000年06月24日(土)01時52分43秒
- これで終わるなんて悲しいっすよ。これで終わるから面白いのかもしれませんが・・
書く気が起こったら是非書いてくださいね。今は連載中の2作を楽しませて
もらってます。どっちもかなり面白いです。頑張って下さい。
- 19 名前:あぱっち 投稿日:2000年06月24日(土)06時35分17秒
- しまった・・・よんぢゃった
もう今日から気になって眠れないじゃないですか!(ワラ
とりあえず「のの裕」「後藤P」頑張ってください。
- 20 名前:あぱっち 投稿日:2000年06月24日(土)06時37分11秒
- あげてしまいました・・・
- 21 名前:まいのすけ 投稿日:2000年06月24日(土)14時00分03秒
- 何てトコで終わるんですか
続きが気になるぅぅぅ!
でもでも、今は「後藤P」の方が気になってたり・・・
お気の向くまま頑張ってください。
・・・なんとなしに市井がレオンに出てても不思議じゃない格好の様な気がするのですが(ワラ
- 22 名前:職無しさやりん 投稿日:2000年06月24日(土)15時09分16秒
- >まいのすけさん
雑談スレもよろしく!
- 23 名前:名無しさやりん 投稿日:2000年06月24日(土)15時21分44秒
- この終わり方は蛇の生殺し気分だ
- 24 名前:能無しさやりん 投稿日:2000年06月24日(土)15時33分55秒
- これ上げとかないと黄色い狛犬さんに申し訳ないな。(謎
- 25 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月25日(日)01時01分47秒
後藤Pは、本番やるような小説世界じゃないんですよね〜。
(無理にやると、世界観が壊れる)
本番まで行っちゃうのは、このスレみたいな小説だ!!(ドオオオン)
わはは、言うことがコロコロ変わる修羅場好きの狛犬がお送りする、第2章です。
- 26 名前:市井紗耶香(4) 投稿日:2000年06月25日(日)01時04分09秒
滞在先のシティホテルで、私は今日のことを思い出していた。
部屋の電話が鳴る。フロントからだ。私に、来客があるらしい。
淡い期待と共に、客の名を訊ねる。
「飯田圭織さまです」
ああ、と思う。
「通してください」
落胆が口調に出ないよう注意して、言う。
「紗耶香、久しぶりだね。さっきは、どもっ」
圭織は、不自然に明るかった。
三年の間に、私は、圭織よりも背が高くなっていた。
「あのさ、入って、いいかな?」
圭織を見つめる。
大理石のような肌、印象的な大きな瞳。夜のような黒髪。
圭織は、アイドルグループの一員、というよりは、ファッションモデルのようだった。
黙ったままの私に、圭織が何か言う前に、
「どうぞ、入って」
中へ、促した。
- 27 名前:市井紗耶香(5) 投稿日:2000年06月25日(日)01時05分03秒
三年の間に、圭織は、ずいぶん綺麗になった。
(後藤と一緒に暮らしていたから?)
この身体で、後藤を、どうやって愛したのだろう。
「それでさ、ごっちんのことなんだけど──」
ストレートな物言いは、変わっていない。
私は、生真面目に動く、圭織のふっくらとした唇を眺めていた。
(この唇は、後藤の身体に触れたんだろうか)
「後藤の話はやめて」
静かに、言う。
圭織は、びくっ、と自分を抱き締めて、言葉を止めた。
(後藤に触れた腕)
「でも……でも、さ。ごっちんは、今でも……」
圭織の、吸い込まれそうな、白い首。
(後藤は、その首筋に、キスしてくれた?)
- 28 名前:市井紗耶香(6) 投稿日:2000年06月25日(日)01時05分42秒
「圭織、昔、さ──」
行き場のない、残酷な衝動が、はけぐちを求めている。
「私に、キス、したよね?」
「それは……」
圭織は、戸惑ったように、私から目をそらした。
(後藤が触れた身体)
(後藤を抱いた身体)
許さない。
許さない。
「ダメっ、やめてよ紗耶香」
暗い欲望に、突き動かされるままに、
私は、あやまちを犯した。
「こんなの、こんなのイヤだよ……」
私と、圭織の吐息が混じり合う。
外は夜。
まだ、朝は来ない。
- 29 名前:飯田圭織(4) 投稿日:2000年06月25日(日)01時06分53秒
紗耶香が帰ってしまった、その日。
私は、一晩かかって、ようやく決心した。
きっと、どれだけ謝っても、紗耶香は私を、許してはくれないだろう。
でも、ごっちんを救うことが出来るのは、紗耶香だけなんだ。
初めから、後悔するための行動。
(ごっちん、大好きだよ。だから私は、きっと1人でも生きていけると思うんだ)
紗耶香に、ごっちんを返そう。
三年ぶりに見る紗耶香は、まるで背の高い少年モデルのようだった。身体の中から
わき出てくるかのようなエネルギーに、圧倒された。
「こんなの、こんなのイヤだよ……」
紗耶香が、私の唇に歯を立てる。
- 30 名前:飯田圭織(5) 投稿日:2000年06月25日(日)01時07分54秒
「圭織は、どうやって後藤を愛してるの?」
ブラウスのボタンを、紗耶香の指が外してゆく。
「そんなこと……」
言葉が、紗耶香の唇でふさがれる。
紗耶香に直接触れられた肌が、火のように熱い。
忘れていた想いが、私の中でくすぶり出す。
「圭織、私のこと、好きだったでしょう?」
紗耶香の指。
紗耶香の唇。
私は、抵抗出来なかった。
ごっちんの顔を思い浮かべながら、私は紗耶香に身体をゆだねた。
午前4時。
私は、逃げ出すように、シティホテルを後にした。
- 31 名前:飯田圭織(6) 投稿日:2000年06月25日(日)01時08分43秒
「……どこに行ってたの?」
まだ寝ていなかったみたいだ。
赤い目をしたごっちんが、私を出迎えた。
私は、ごっちんと目を合わせることが出来なかった。
「圭織……どうしたの?」
「ごっちん、ゴメン」
下を向いて、言った。
涙がこぼれた。
ごっちんは、何も言わずに、私のそばを通り過ぎて、外へ出ていった。
私に、ごっちんを引き留めることは出来なかった。
外は夜。
まだ、朝は来ない。
- 32 名前:後藤真希(4) 投稿日:2000年06月25日(日)01時09分46秒
結局、私は市井ちゃんを追いかけなかった。
でも、それは、単に私がどっちも選べなかっただけ。
優柔不断は罪だ。私は、罪に相応しい罰を受けることになった。
圭織は、夕御飯の時間になっても、帰って来なかった。
(多分……市井ちゃんに、会ってるんだろうな)
昨日、圭織はずっと考え込んでいるみたいだったから。
(ごめんね、圭織)
(ごめんね、市井ちゃん)
私のせいだね。私が、はっきりしなかったから、市井ちゃんも圭織も傷つけちゃったよね。
私、決めたよ。もう迷わないよ。
つらいけど、勇気を出すよ。
夜中になっても、圭織は戻って来なかった。
不安が、胸の中一杯に広がった。
午前4時。
ようやく、圭織は帰ってきた。
圭織は、私と目を合わさなかった。
- 33 名前:後藤真希(4) 投稿日:2000年06月25日(日)01時10分18秒
「圭織……どうしたの?」
「ごっちん、ゴメン」
泣きながら、圭織は言った。
その瞬間、悟った。
私は、大切な人と、大事な人、2人を同時に失ってしまったのだ、と。
私は、遅かったのだ。
一番の罪人は、私だ。
私は、多分、無表情だったと思う。
なにも感じなくなってしまっていたから。
(もう、ここに、私のいる場所はない)
玄関で、泣き続けている圭織のそばを通って、夜の中へ、歩き出した。
◇
- 34 名前:後藤真希(6) 投稿日:2000年06月25日(日)01時12分10秒
(私は、どこへ行けばいいんだろう)
まっすぐ歩くことさえ出来ない。
私の足は、フラフラと、一年前に娘。を辞めた女性のマンションへと向かっていた。
「真希、じゃん。久しぶり。どうしたの、こんな夜遅く」
圭ちゃんは、むしろ、娘。を辞めてから、生き生きしだしたような気がする。
今は、バンド活動がメインで、クラブハウスでのライブだといつでも満員にしてしまう、そうだ。
「今日、泊めてくれないかな?」
圭ちゃんは、目を丸くして、私を見た。
うーん、と悩むフリをしている。
私は、圭ちゃんの気持ちを知っていた。市井ちゃんのことがあるから、今までは身を引いていた、ってことも。
「泊めてもいいけどさ。もう真希も大人なんだからさ、はいお休みなさい、って訳にはいかないよ。そこんとこ、分かってるの?」
ニヤニヤ笑いながら、圭ちゃんは言った。
- 35 名前:後藤真希(7) 投稿日:2000年06月25日(日)01時13分30秒
(私は、市井ちゃんにとって、もうなんの価値もないんだ)
「……うん。分かってる」
私の返事が予想もしないことだったのか、圭ちゃんのニヤニヤ笑いはかき消えた。じゃあ中に入りなよ、と慌てた様子で言った。
圭ちゃんの開けてくれた扉をくぐる直前、後ろ髪を引かれる思いで、私は背後を振り返った。
当然、誰も、私を迎えに来てはくれない。
(さよなら、市井ちゃん)
私は、圭ちゃんに肩を抱かれて、部屋に入った。
外は夜。
まだ、朝は来ない。
- 36 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月25日(日)01時14分16秒
話の流れで、悪者になってしまった市井ちゃん。
圭ちゃんは、タナボタでごっちんを頂いてしまうのか?
第3章の公開予定は、結末を思いついたら、です。
- 37 名前:名無しさやりん 投稿日:2000年06月25日(日)02時13分44秒
- おもしろいです。
早く結末を思いつくよう祈ってます(笑)
- 38 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月25日(日)02時22分50秒
- そういえば、ずいぶんえっちいくなってしまった……。
あのネタから話引っ張ると、こーなっちゃうんだよなあ。
まあ、みんな大人だからいいか。
- 39 名前:職無しさやりん 投稿日:2000年06月25日(日)07時49分37秒
- 大人大人〜
もっとエロを〜(わら
ご苦労様です。
- 40 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月25日(日)23時19分45秒
「大人の小説」スレにようこそ!!
って言っても、アダルト小説、って意味ではないです。
どう物語が展開しようが、この話は、大人のいちごま小説です。
「好き」「私も好き」では割り切れない、大人の恋愛がテーマです。
(↑今、思いついた)
このメロウさに、子どもはついてこれないよ(笑)。
締めの言葉をシンクロさせるの、飽きたんでもうやめます。普通に書きます。
しっかし、娘。はみんなレズなのか?
……という疑問は、とりあえず、置いておいて下さい。お願いだから。
- 41 名前:保田圭(1) 投稿日:2000年06月25日(日)23時20分36秒
シャワーを浴びて出てくると、真希は、ベッドの中にいた。
「隣り、行くよ」
真希は、目を閉じて、動かない。
下着になって、隣りに滑り込む。
(……真希?)
小声で囁く。
(眠っているの?)
薄目が開いて、こちらを見て、また目を閉じる。
まるで、これから初めて経験する少女のような反応に、内心苦笑した。
Tシャツの上から、豊かなカーブを描く胸の稜線を人差し指で辿る。頂点で、
軽く爪を立てる。
真希は、ぶるっ、と身体を震わせる。
(真希……可愛いよ)
ようやく、真希のすべてを手に入れられる。
私は、優しく、真希を下着を脱がせていった。
- 42 名前:保田圭(2) 投稿日:2000年06月25日(日)23時21分15秒
三年前。
真希が、紗耶香を好きだったってことは、メンバーの中でも周知の事実だった。
紗耶香がいなくなって、私は、真希を意識するようになった。いや、真希に初
めて出会ったときから、心を奪われていたことに気付かなかっただけだ。
でも、真希は、同じく紗耶香を好きだった圭織と同棲を始めてしまった。私は、
真希への気持ちを抱えたまま、娘。を続けていくことは出来なかった。
(その真希が、今は、私の腕の中にいる)
私の心は逸っていた。
ついに、ここまで来た、という感慨と、
三年、歯がみして待たされた、という、残酷な気持ちと。
「痛っ」
真希が、小さく悲鳴を上げた。
(痛い?)
ぬるり、とした感触が、人差し指にあった。
暗闇の中、自分の手を見る。
(……血)
(そんなバカな。圭織と、2年も、同棲してたじゃない)
「真希、あなた……もしかして、初めて、だったの?」
真希は、うん、でもいいの。もう市井ちゃんを待たなくてもいいから、と呟いた。
私は、すべてを理解した。
- 43 名前:保田圭(3) 投稿日:2000年06月25日(日)23時21分45秒
圭織との同棲は、傷を慰め合うだけの場であったのだ、と。
2人は、おままごとのような同棲を続けながら、紗耶香を待ち続けていたのだ。
紗耶香が帰国していることは、聞いていた。
ならば、紗耶香との間で、なにか決定的な出来事が、起こったのだ。
(真希、あなたは、どれだけ傷ついて、私のところに来たの?)
(私なら、あなたを助けてあげられると思った? それとも、誰でもよかった?)
もしそうなら──ギリギリだった。
真希が、その瞬間、私を思いだしてくれて良かった。
私が、真希の傷を癒してあげるよ。
私は、真希を強く抱き締めた。
(もう離さないよ)
真希への気持ちがいっぱいになって、朝まで、真希を愛し続けた。
- 44 名前:保田圭(4) 投稿日:2000年06月25日(日)23時22分18秒
真希は、体調不良ということで、3日間の休養を貰った。
私も、3日間、仕事を休んだ。
毎日、真希を求めた。
真希も、次第に、私の行為に応えるようになってきた。
かたくなだった表情も、3日目には、たまに笑顔が覗くようになった。
(真希。私の真希)
「圭ちゃん、明日は仕事なの?」
「真希も、仕事に戻らないとね。私のマンションから通うといいよ。マネー
ジャーさんには、ここの住所、教えておいたから」
早朝。
チャイムが鳴った。
真希は、まだ眠り込んでいる。
私は、朝方の行為の余韻を引きずったまま、玄関へ向かった。きっと、真希の
マネージャーさんだろう。
始め、背の高い少年かと思った。綺麗な顔だった。
「真希に準備させますんで、もう少し、待って」
その少年を──いや、彼女を、私は知っていた。
「こんにちは。久しぶりね」
市井紗耶香が、そこに立っていた。
- 45 名前:市井紗耶香(7) 投稿日:2000年06月25日(日)23時23分02秒
圭織を抱いたのは、残酷な復讐心からだった。
圭織の身体に、後藤の匂いを求めたのだ。
でも、その行為は、間違いだったことに、すぐに気付いた。
圭織は、初めてだった。
後藤と圭織の同棲の意味に気付いた朝。
私は、いなくなった圭織を追って、あのマンションに戻った。
「ごっちんは、出ていっちゃった。止められなかったよ。……ごめんね」
足下から、地面が崩れていくような、絶望感。
私が犯した罪は、どれだけの罰によって、償われるのだろうか。
「私は、いいから。ごっちんを、助けてあげて」
ぽろぽろと涙を流す圭織。
(そう、私は、彼女にも償いをしなければならない)
圭織も、深く傷ついたのだろう。
それでも、こうやって、他人を思いやっている。
私は、知らない間に、汚れてしまったみたいだ。
こんな私を、後藤が許してくれるはずなんてない。
「私さ──もうホテル、チェックアウトしないといけないんだ。しばらくの間、
ここに居て、いいかな?」
- 46 名前:市井紗耶香(8) 投稿日:2000年06月25日(日)23時23分35秒
後藤の行方は、分からなくなっていた。
ただ、マネージャーに、3日ほど休養する、と連絡があっただけだった。
私と圭織の、共同生活が始まった。
圭織は、私との接触を、頑なに拒んだ。
手を触れることさえ、許さなかった。
圭織の、私に対する気持ちは知っている。
圭織は、後藤に義理立てているんだ。
3日目の夜遅く、圭織が仕事から戻って来た。
「マネージャーさんに、連絡があったそうです。ごっちんは今、圭ちゃんのところ
にいる、って」
私は、さっそくタクシーを呼ぼうと、受話器を取った。
「行っちゃうの?」
圭織は、両手を身体の前に、泣く寸前のような表情で言った。
「……うん。今日まで、ありがとうね」
- 47 名前:市井紗耶香(9) 投稿日:2000年06月25日(日)23時24分10秒
圭織は何かをいいたげに、口を開き、また閉じる。
圭織が何を言いたいのか、痛いほど分かった。
「でも、私、後藤が好きなんだ。ゴメンね」
圭織は涙をこぼしながら、
「最後に、一つだけ、お願いを聞いて。今夜だけでいいから、一緒に居て欲しいの」
この部屋に来て、初めて、圭織と一つのベッドで眠った。
明け方、出ていく支度をしている私を、圭織は背を向けて、見ないようにしていた。
「それじゃあ、行くよ」
圭織の頬を撫でる。もう、圭織は抵抗しない。
こちらを向かせて、そっと、唇をふさぐ。
圭織は、小声で、さよなら、と言った。
- 48 名前:市井紗耶香(10) 投稿日:2000年06月25日(日)23時25分08秒
「真希に準備させますんで、もう少し、待って」
三年の間に、保田圭は変わった。
目に力がある。自信が、彼女を成長させたのだろう。
私のことを認識したのか、挑戦的に睨み付けてきた。
「こんにちは。久しぶりね」
圭ちゃんの視線を、笑顔で返す。
「入っていいかな」
一歩、足を前に踏み出す。
圭ちゃんは、私の前に立ちふさがった。
「……それは、ダメってこと?」
「今更、なにをしに来たの」
私は、肩をすくめて、ため息をついてみせた。
「後藤を、引き取りに来たの」
「もう遅いよ」
圭ちゃんは、私に笑いかけた。その余裕が、私を不安にさせた。
- 49 名前:市井紗耶香(11) 投稿日:2000年06月25日(日)23時25分47秒
「私ね、真希を抱いたの。彼女、初めてだったよ」
一瞬、五感のすべてが閉ざされた。ごうごう、と風が耳元で鳴り響いた。
私の中で、後藤は三年前の後藤のままだった。それが裏切られた、とあの時思った。
でも、本当は違った。後藤は、後藤のままで、私を待ち続けていてくれたのだ。
すべてを壊したのは私だ。
私は、私を呪った。
世界の苦しみが、すべて私に降りかかればいい、そう強く願った。
「ここは、貴方の来る場所じゃないよ。もう帰りな」
圭ちゃんは、部屋の中に戻った。扉は、私の目前で閉ざされた。
この扉の向こうには、後藤がいる。
私は、しぱらくの間、そこから動けなかった。
- 50 名前:後藤真希(8) 投稿日:2000年06月25日(日)23時26分35秒
2時間ほど前の余韻を引きずる、けだるい朝。
市井ちゃんの声が聞こえたような気がして、目が覚めた。
(夢、見てたのかな)
実は、本当に、市井ちゃんが、私を探しに来てくれたりして。
まさか、そんなことは絶対にないんだけどね。
だって市井ちゃんは、圭織を選んだんだからさ。
圭織は、優しい子だから、きっと市井ちゃん、気に入ると思うよ。一緒に住んでいた
私が保証する。うん。
市井ちゃん、幸せになってくれるといいな。
ううん。ダメダメ。
市井ちゃんのことばかり考えてちゃ。
私はもう、圭ちゃんの女なんだから。圭ちゃんに、捧げちゃったんだから。
いっぱい、恥ずかしいことをされたし、いっぱい、いろんなことを覚えた。
もう、私は、昔みたいに、市井ちゃんの前には立てないよ。汚れちゃったからね。
なんて言うと、圭ちゃんに悪いか。はははっ。
- 51 名前:後藤真希(9) 投稿日:2000年06月25日(日)23時27分08秒
圭ちゃんが、部屋に戻ってきた。
マネージャーさんが来たの? と聞くと、まだみたい、って答えた。
真希、どうして泣いてるの。
そう聞かれて、初めて、自分が泣いていたことに気付いた。
ううん、分かんない。どうして涙が出て来ちゃうんだろうね。
(市井ちゃんの夢を見たからかな)
真希、まだ時間あるよね。
そう言って、圭ちゃんはまた、私を求めてきた。
私は、目を閉じて、圭ちゃんを受け入れた。
- 52 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月25日(日)23時27分48秒
※どう迷走しようが、これは、いちごま小説なんです。
ただ、結末が見えないだけで。
次はどうなるのか、いつ書くのか、すべては未定です。
- 53 名前:こども 投稿日:2000年06月25日(日)23時40分08秒
- うーむ・・・。
大人の世界はなんか大変だなぁ・・・。
ボク子供だから良く分かんないや。
ってのは嘘で、んがー!! 後藤、そこで受け入れちゃ駄目だってば!!(笑
俺ってすっかり黄色い狛犬さんの手のひらの上で踊らされてるような・・・。
- 54 名前:ななしさやりん 投稿日:2000年06月25日(日)23時56分10秒
- ああ、後藤、、市井、、 不器用すぎるよ、、
おとななせかいってかなしいね
- 55 名前:割りこみさやりん 投稿日:2000年06月26日(月)00時08分20秒
- 保田・・・こんちくしょー(笑
- 56 名前:雑談(黄色い狛犬) 投稿日:2000年06月26日(月)00時17分48秒
他に書いてた小説って、実際の話、すっげー反応が気になっちゃうんですよ。
みんなどう思うのかなって。
でも、この話に限り、ほっとんど気になりません。完璧に、自分の好みだけで
書いてるから。自分の文書、読み直してうっとりしてます。
表のテーマは「大人の小説」とか言ってますが、実は、裏のテーマがあります。
これをここに書いちゃうと、面白さ半減なんで書きませんけど。
(↑どうやって物語を組み立ててるか、バレちゃうの。「終わり」の後書きます)
2人の関係は迷走してますが、この裏テーマに沿ってどっしりと進んでいるので、
今後も、散漫な印象にはなりません。
最後まで書くことが出来たら、この小説も、ある意味、私の記念碑的なものになる
でしょう。多分。なので、もっとちゃんとした題、考えれば良かったな〜。
- 57 名前:割りこみさやりん 投稿日:2000年06月26日(月)00時23分29秒
- 今の所、題名は”書き逃げプチ小説”なんですか(笑)?
- 58 名前:職なし 投稿日:2000年06月26日(月)00時47分17秒
- >57
(笑)
>黄色い狛犬様
大丈夫、何があろうと私はあなたにどこまでもついていきます。
イチにつきまとうゴマのように。(←ストーカーか???(わら
- 59 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月26日(月)01時02分34秒
- 職なしさま、仕事、お疲れさまです。
割りこみさやりんさま、そうです。通称「書き逃げ」(笑)
- 60 名前:23 投稿日:2000年06月26日(月)18時12分47秒
- 三年たっても、後藤まだ17歳なんですねー。
なんかほんと、びびるんですけど・・
話しの骨おってもうしわけないです。物語り楽しみにまたせてもらいます。
- 61 名前:I&G 投稿日:2000年06月27日(火)02時36分36秒
- これを読んで一番始めに思ったこと、
「圭ちゃんのバカー」
でした。
市井x圭織 圭織x後藤 は楽しんで読めるけど、圭x後藤というのは
自分の中ではまだはいっていけない。
え〜ん。後藤の初はやはり市井ちゃんがよかったよー。
- 62 名前:職なし 投稿日:2000年06月27日(火)05時13分46秒
- え〜ん。市井の初はやはり後藤Pがよかったよー。
ラファエルに取られちゃったらどうするのさ〜。(爆
狛犬さんのばか〜。折角ゴムまで用意してたのに〜。
真似してごめんなさい。(笑
次回新作はぜひ「時を駆けるP」をお願いします。(笑
あとで死ぬほど後悔した後藤は今度こそ男の本懐を遂げるべく、
時を駆けるのだっ!!!
つーか、誰か2ちゃんに「後藤Pなのだ」(当然最中)を立ててくれ!(わら
- 63 名前:職なし 投稿日:2000年06月27日(火)05時15分03秒
- ごめん、上げちゃった。
軽くシャッフルします。
日課?(わら
- 64 名前:すねかじり 投稿日:2000年06月27日(火)13時48分25秒
- 面白い!!
こういう重〜いヤツって好きなんですよね。やっぱり、同じテイストで
書くよりも、懐が広い方が絶対にいいですね。個人的にはバッドエンド
でも、十分OKではないでしょうか。
新しいジャンル頑張ってください。
- 65 名前:職無し@自宅 投稿日:2000年06月27日(火)14時18分15秒
- 62のカキコはあくまでネタです。
この作品を茶化してるわけではありません。
黄色い狛犬さんの新機軸作品、続きを楽しみにしておりますです。
以上、念のため補足まで。(笑)
- 66 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月27日(火)23時26分20秒
こっそり、続き書き込みゴー!!
- 67 名前:飯田圭織(7) 投稿日:2000年06月27日(火)23時27分56秒
ねえ、ごっちん。かおりはね、本当は、卑怯な女なんだ。
ごっちんみたいなストレートな情熱はないし、紗耶香みたいに自分で
人生を切り開いていく力もない。
かおりは、ただ、提供するだけ。
弱くなっている心に(もっと楽なやり方があるよ)って囁くだけ。
3日前まで、ごっちんの中に紗耶香を残したまま、ズルズルと一緒に
暮らしていた。愛情よりも、惰性の方が強いってことを知っていた。
かおりのやり方はね、誰もが傷つかずにすむ方法なんだ。悲しいことも
つらいことも、時間が押し流してくれるから。無慈悲な忘却が、私の感情
を残らず消し去ってくれるのを、膝を抱えて待っていればいいんだ。
これまでも、そうやって生きてきたしね。
紗耶香とごっちんが一緒にいるのが、一番正しいんだ、ってことは、
痛いほど分かってる。
きっと、嫉妬していたんだよ。
いつも、2番目にしか愛されないかおりは、
お互いの存在のみが、世界で唯一無二の2人に。
それが、私の罪。
- 68 名前:飯田圭織(8) 投稿日:2000年06月27日(火)23時29分18秒
『私、遅かったみたい。きっと、罰が当たったんだ』
朝、別れたばかりの紗耶香からの電話。
圭ちゃんのところで、ごっちんは暮らすみたい、って紗耶香は言った。
そっか、ごっちんは、圭ちゃんにすがったんだ。
紗耶香は、ひどく打ちのめされているみたいだった。
再会したばかりの頃の、圧倒されるようなバイタリティはその声からは
感じられない。
(……ごめんね、ごっちん。紗耶香、私がもらうね)
紗耶香の心が見えた。
紗耶香は、癒やされたがっている。そして、私は、その場所を提供する
ことが出来る。
「紗耶香、相談する相手、間違ってない?」
詰問するような口調。
「かおりが、傷ついてないとでも思ってるの?」
「……」
紗耶香は黙っている。普段の紗耶香ならまだしも、今の紗耶香に抵抗する
力はない。
- 69 名前:飯田圭織(9) 投稿日:2000年06月27日(火)23時30分22秒
(結局、みんな流されていく。本当に大切なものから目をそらして)
「紗耶香には、責任があるんだよ。紗耶香は、かおりに償いをしないといけ
ないんだよ」
紗耶香は、3年で、すっごく変わったけど、紗耶香のままだったね。
責任感があって、まっすぐで、本当は、眩しくて正面から見られないくらい
なんだ。
「それは……」
私は、ズルイ。
「ウチに、帰っておいでよ。しばらくの間さ、ウチに居ればいいよ。今から、
かおりは仕事だけどさ、ごっちんと一緒だし」
人は、弱い生き物だ。
「今日のごっちんのこと、話してあげる。かおりと一緒にいれば、ごっちんの
こと、毎日分かるよ」
結局、なにも変わらない。
紗耶香の心の中にはごっちんがいて、私は2番目。
なにも……変わらない。
- 70 名前:4人(1) 投稿日:2000年06月27日(火)23時31分30秒
「ここ、静かでいい場所だね。真希、よくこんなところ知ってたね」
「うん。昔は、ここ、よく来てたんだ」
すれ違う学生たちが、驚きの表情で振り返る。
明らかに、一般人とは違うオーラを放つ2人連れ。
後藤真希と、保田圭だ。
「ここ、人が少なくて、落ち着けるんだ……あの丘から見える夕陽が、
すっごく綺麗だよ……」
後藤は、思い出にふけるように、潮風に目を閉じる。
保田はそんな後藤の横顔を盗み見て、ひそかにため息をつく。
海岸沿いに伸びる、公園。
芝生に挟まれた小道を上ると、小高い丘に出る。
「ふーん。……ね、真希、お腹すかない? 何か、食べてから帰ろっか」
「……」
「ね、真希ったら」
ふいに、現実に引き戻されたかのように、保田を振り向く後藤。
「う、うん。今日は楽しかったよ」
保田は、悲しそうな表情で、後藤を見る。
「うわ、海だよ」
ふと、後藤は先客の2人連れに気付く。
足を止める。
「どうしたの、真希?」
保田がいぶかしげに、目を細める。
- 71 名前:4人(2) 投稿日:2000年06月27日(火)23時33分58秒
「なんかさあ、今日は、一杯歩いて、疲れちゃったよ」
「トレーニング不足だよ」
「あー、ひっどーい」
長身の、2人組。
一見、モデルのカップルのように見える。
市井紗耶香と、飯田圭織である。
「ねえ、紗耶香、ここ、なんかノスタルジックな場所だね」
「……うん、思い出の場所なんだ」
紗耶香は、遠い目をする。
圭織は、紗耶香の横顔を眩しそうに見つめる。
「今日は、楽しかったよ。ありがとね、紗耶香」
紗耶香はぼんやりと空を眺めている。
「紗耶香ったらッ」
「え、ああ、なに食べたい?」
「もう」
拗ねたような表情で、圭織は小道を歩いた。
「ね、あの丘から海見えるかな?」
「うん。今の時間だと、夕陽が綺麗だよ、きっと」
丘に上がると、途端に視界が広がる。
ずっと高くに見える水平線に、沈んでゆく夕陽。
ふと、自分たちとは逆の道から誰かの声がする。
「うわ、海だよ」
「……どうしたの、真希」
紗耶香は、その2人連れを見、固まってしまう。
市井紗耶香。
後藤真希。
飯田圭織。
保田圭。
4人の時間と景色が、切り取られる。
- 72 名前:保田圭(5) 投稿日:2000年06月27日(火)23時36分55秒
真希の身体が、硬直するのを感じた。
紗耶香と圭織が、丘の上にいた。
2人が、一緒に住み始めた、って話は、真希から聞いた。
私は、その2人の行為を、節操のないものに感じた。
紗耶香は、笑って、
「元気だった?」
真希をまっすぐに見て言った。真希しか、見ていなかった。
「……」
真希は、黙って、私の後ろに隠れた。
紗耶香の顔に浮かんだ、淋しそうな表情にはなんだか同情させ
られたけど、でも、紗耶香にとして、それ自業自得なんだから。
現に、今も、圭織と行動を共にしているじゃない。
「行こう、真希」
真希の肩を抱いて、今来た道を引き返す。
真希は、鼻をすすって、涙をこぼし始めた。
一緒に暮らすようになってから、何度も見た、声を出さずに、
涙だけをを流す、真希の泣き方。
真希の涙の意味を思うたび、胸をかきむしられるような気持ちになる。
どうしようもない無力感に、打ちのめされる。
(私じゃ、真希の心に届かないの?)
ぎゅっ、と真希を抱き締めることしか出来なかった。
私は、階段を長く伸びる、私と真希の黒い影を、なんともいえない気持ち
で眺めていた。
- 73 名前:飯田圭織(10) 投稿日:2000年06月27日(火)23時39分53秒
紗耶香の表情が、みるみる強ばった。
その視線を辿ると、圭ちゃんと──ごっちんが、いた。
私は、瞬間的に、目をそらした。
特に、ごっちんの目を見ることが出来なかった。
(私ね、一昨日、紗耶香に抱かれたんだ)
(誘ったのは、私。でも、紗耶香は、ごっちんの代わりに、
私を抱いたんだよね)
(分かってる。それは、私が望んだこと。私は、なに一つ、傷ついて
なんていない)
でも、ごっちんを見つめる、ごっちんしか見ていない紗耶香の横顔を見るのは、
つらい。
この気持ちは、なんだろうね。
私、紗耶香の一番になりたい、なんて思い始めている?
かおり、その望みは危険だよ。
心を、ズタズタにされちゃうよ。
(今のままでいい)
(今のままでいい)
紗耶香、でも、2人でいるときくらいは、かおりだけを見ててよ。
普段はごっちんのこと、考えてていいからさ。
お願いだよ、紗耶香……。
- 74 名前:市井紗耶香(12) 投稿日:2000年06月27日(火)23時41分10秒
信じられない気持ちだった。
後藤真希が、目の前に突然現れたのだ。
ここは、後藤との思い出の場所。
3年前、私の夢を初めて、他人に語った場所。
一瞬、何も変わってないんじゃないか、って思った。
後藤の教育係として、2人でダンスのレッスンをして、疲れた時に、
ここへ来て、また明日からは頑張ろうね、って後藤に笑いかけて、
(市井ちゃん、こんなんじゃ絶対ダメだよ。私、絶対、失敗しちゃうんだ)
(なに言ってんのよ。私が教育係を任されてる以上、後藤に失敗なんてさせないよ)
奇妙な違和感。
どうして、後藤は私の隣りにいないんだろう。
どうして、私の隣りにいるのは、後藤じゃないんだろう。
それは、まるで理不尽に感じられた。
「元気だった?」
後藤は、じっと私を見ていたクセに、声をかけた途端、圭ちゃんの後ろに
隠れてしまった。
ああ、ならば、これが現実なんだ。
- 75 名前:市井紗耶香(13) 投稿日:2000年06月27日(火)23時42分10秒
思えば、
どこで、間違ってしまったんだろう。
なんて遠くに来てしまったんだろう。
ロンドンで勉強していた時、後藤以外の未来なんて、考えてもみなかった。
それが今は、2人、別々の道を歩いている。
別々に、生きている。
「行こう、真希」
肩を抱かれて、歩いてゆく後藤を、追いかけたかった。
後藤が拒もうがどうしようが関係ない。
私は、後藤を、
2人の姿が、見えなくなる。
……。
深く、ため息をつく。
「ね、キスしてよ」
圭織が、私の服のすそを引っ張る。
圭織の孤独が、後藤への思いを留まらせる。
「……」
「……」
空が、高い。
- 76 名前:後藤真希(10) 投稿日:2000年06月27日(火)23時43分33秒
(市井ちゃんッ!)
叫んで、市井ちゃんに飛びつく。
市井ちゃんは、これまで何も無かったかのように、あのとびっきりの笑顔で、
私に笑いかけてくれるんだ。
そんな映像が、瞬間的に脳裏を走った。
でも、実際は、身体が硬直してしまって、動けなかった。
市井ちゃんが、いた。
真っ赤な夕陽を背景に、市井ちゃんが、そこに、いた。
ああ、涙が出てきそうだよ。
市井ちゃん、ここで、ぐわーっ、て私を横抱きにして、さらっていってよ。
そしたら、私はなんにも抵抗出来なくて、もう市井ちゃんにされるがままんだよ。
市井ちゃんは、私を見ていた。
私も、市井ちゃんしか、見えていなかった。
- 77 名前:後藤真希(11) 投稿日:2000年06月27日(火)23時44分32秒
市井ちゃんの唇が、ゆっくりと動いて、
「元気だった?」
って言った。
途端に、私は、恥ずかしくなった。
(私は、市井ちゃんにふさわしくない)
(今の私を、市井ちゃんに見られたくない)
思わず、圭ちゃんの後ろに隠れた。
私の身体を、市井ちゃんの視線にさらしたくなかった。
ガタガタと、身体が震えてきた。
これまでの3年間、市井ちゃんのことをずっと考えて生きてきた。
市井ちゃんとの未来を、いつも夢想していた。
どこで、間違ってしまったんだろう。
なんて遠くに来てしまったんだろう。
- 78 名前:後藤真希(12) 投稿日:2000年06月27日(火)23時45分44秒
「行こう、真希」
圭ちゃんに、肩を抱かれる。
そう、ここが、今の私の居場所なんだ。
無理やり、自分に納得させる。
涙が、止まらない。
歩きながら、ポロポロと涙を流した。
長い階段の手前で、圭ちゃんは、私をぎゅっ、と抱き締めてくれた。
心の痛みが、少しだけ癒されたような気がする。
圭ちゃんが、私のあごを持ち上げて、上を向かせる。
「んっ」
「……」
私は、
私は……。
- 79 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月27日(火)23時53分13秒
今回の分、おしまい。
自分で読み返して、自分でうっとり。
- 80 名前:小板橋英一009 投稿日:2000年06月27日(火)23時58分49秒
- うーん、とっても続きが楽しみ。
基本的には甘甘が好きなんだけど、
小説としてはいいなあ、こういうの。
- 81 名前:tide 投稿日:2000年06月28日(水)00時12分25秒
- 堪能いたしました。鳥肌ものです。
更新の度、頭から読み直さずにはいられません。
- 82 名前:職 投稿日:2000年06月28日(水)00時34分05秒
- のの裕から来ました。(笑)
今日の更新分、良いですねぇ。
いやー辛いですなぁ・・・。切ないですなぁ・・・。(涙)
なんか昔のすれ違っちゃった恋なんか思い出しちゃいましたよ。
- 83 名前:割りこみさやりん 投稿日:2000年06月28日(水)00時59分36秒
- 切ない・・・切ない・・・その一言につきます・・・
- 84 名前:名無しさやりん 投稿日:2000年06月28日(水)03時40分44秒
- 泣いちゃいました。痛いです。
- 85 名前:056 投稿日:2000年06月28日(水)19時43分09秒
- 一気に読みました‥‥‥つ、辛い(泣)
ほのぼのハッピーエンドも好きですが、こういうのイイですね。
期待してます。
- 86 名前:黄色い狛犬006 投稿日:2000年06月28日(水)20時12分58秒
- 市井ちゃん、ここで、ぐわーっ、て私を横抱きにして、さらっていってよ。
http://www.sol.dti.ne.jp/~yaska/index.htm
- 87 名前:さわやかな会員 投稿日:2000年06月28日(水)20時27分54秒
- 黄色い狛犬さん、画像いただきました、
文才に加えて絵心もあるとはうらやましい限りっす。
これからも妄想道に励んでください。
- 88 名前:002 投稿日:2000年06月28日(水)20時29分40秒
- あ、87=002っす。
- 89 名前:いちごまん 投稿日:2000年06月28日(水)21時29分08秒
- 86の画像かわいいっす。ありがとうございます。
きゅー(笑)
- 90 名前:職 投稿日:2000年06月28日(水)22時52分54秒
- >86
なんか規模の大きな自作自演?!(笑)
- 91 名前:かいちょ 投稿日:2000年06月28日(水)23時14分09秒
- 絵も描けるなんて凄すぎッス。
- 92 名前:メルボルン 投稿日:2000年06月29日(木)16時45分21秒
- いや〜、いつ呼んでも感動なのですよ。
は〜、尊敬。
- 93 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月29日(木)21時20分24秒
とにかくさ、これを書かないことには、他のことが書けないのよ。
書けないのさ。
いつも、彼女たちの行く末を思い描いちゃって。
なんで、もう終わらせます。
一気に書いた、27枚。
総ページ数、90枚。
全然プチじゃないじゃん、という、書き逃げプチ小説。
では、今日も、ひっそりとゴー!!!
- 94 名前:保田圭(6) 投稿日:2000年06月29日(木)21時22分20秒
真希は、行為の間、私の目を見ない。
虚ろな視線をさまよわせながら、なにかに耐えている。
罰を甘んじて受け入れている囚人のようでもあり、あえて汚されることを望
んでいる背教者のようでもあった。
でも、それは、私にとって、ひどい侮辱だった。
「あんまりさ、バカにしないでよね」
真希は、悪くない。
耐えきれなかったのは、私だ。
「ごめん、なさい」
真希の目に走る、怯えの色。
媚びる表情。
『見捨てられる』
『置いていかれる』
そんな恐怖感が、真希の心に刻印されてしまったのだろう。
その刻印には『市井紗耶香』と深く記されている。私は、紗耶香の幻想を、
真希から追い払うことは出来ないんだろうか?
(真希は、こんな目をする娘じゃなかった)
(私の愛した真希は、こんな娘じゃなかった)
私は、無力だ。
真希の中で、紗耶香は常に一番で、私はその代用品にしか過ぎない。真希を守ろ
うとすればするほど、無力感に、打ちのめされる。
- 95 名前:保田圭(7) 投稿日:2000年06月29日(木)21時22分54秒
(私が欲しかったのは、真希そのもの? それとも……)
もし、そうであるならば、私のとるべき行為は、
(紗耶香の元に、真希を……)
(イヤだ)
(真希は、私のモノだ)
3年、待った。
でも。
でも……
「今日は私、ソファーで寝るよ」
このまま一緒にいると、ひどい言葉で真希を傷つけてしまいそうだから。
「……」
この日の夜、真希は、一人でなにを考えていたんだろう。
結果として、私は、真希を追い込んでしまった。
真希と過ごした、最後の夜。
私の犯した、許し難い罪。
- 96 名前:飯田圭織(13) 投稿日:2000年06月29日(木)21時23分44秒
私の心の傷は、癒やされることなんてなかった。
紗耶香が私の身体を愛するとき、その傷はまるで、えぐられるように痛んだ。
今まで、二番でいいって思ってたじゃない。
傷つくのが、一番怖いんだよ。
「今日さ、ごっちんさ、新人にダンス教えてもらっちゃってたよ。どっちがお姉
さんなんだ、って感じ」
「ふーん、後藤らしいね」
心から嬉しそうに笑う紗耶香。
「実質、娘。は今は二班に別れてるからさ、明日は、かおり、帰ってくるの遅く
なるんだ」
「じゃあ、今日は後藤が遅いんだね」
「……うん。今頃、イベントライブの真っ最中だと思う」
ごっちんが、うらやましい。
かおりと一緒に暮らしていても、紗耶香の心はいつもごっちんのところにある。
昔、ごっちんと暮らしていたときも、同じようなことを考えた。
あの時は、うずくような鈍い痛みだった。
でも今は、キリキリと刺されるような、鋭い痛みだ。
- 97 名前:飯田圭織(14) 投稿日:2000年06月29日(木)21時24分12秒
(ごっちんよりも紗耶香が好きだ、っていうんじゃなくて)
(2人とそれぞれ同居したことで、2人がどれだけ強い想いでつながっていたの
か、そんな純粋な感情があるんだ、って知ってしまったからだ)
(そして、私は、何度でもひとりぼっちを痛感させられる)
どうすれば、私も彼女たちのようになれるのかな?
夕ごはんの時間。
「圭織、マヨネーズ取って」
「人参スティックに、マヨネーズつけるの? 醤油にしなよ。日本人なんだからさ」
「いいんだよ。ブリディッシュ風なんだから」
こりこりと、前歯で人参を食べる紗耶香。ウサギみたいで、可愛い。
私は、そのとき、本当の恋に落ちた。
「紗耶香」
「ん? なに?」
「明日、部屋を出てって」
紗耶香は、ぽかんと口をあけた。
「そんなに、マヨネーズはダメなの?」
- 98 名前:飯田圭織(15) 投稿日:2000年06月29日(木)21時24分45秒
私、決めたよ。
紗耶香の一番になりたい。
だから、
「いいから、もう、いいの。紗耶香のこと、大好きだよ。だから、ズルしたくない」
きっと、ごっちんには勝てないだろう。
いっぱい、傷ついちゃうんだろうなあって、思う。
でも、自分でも驚いてた。私の中に、こんな感情が隠れていたなんて。
こんなに誰かを好きになったことはなかった。
好きになって欲しい、って思ったことはなかった。
それは、安らぎなんかよりも、ずっと深くて、ずっと大切な気持ち。
みんな、紗耶香とごっちんに教えてもらったこと。
「紗耶香は、一度、ごっちんのところへ戻るの。そして、私は、それから、
紗耶香を奪いに行くの」
「……でもさ、肝心の後藤がさ……」
ちっちゃな男の子みたいに後込みする紗耶香。
紗耶香は、ごっちんに関してのみ、ひどく臆病だ。普段はあんなに自信
たっぷりなのに。
- 99 名前:飯田圭織(16) 投稿日:2000年06月29日(木)21時25分11秒
「そこが悪いのさ」
私は、大声で紗耶香に怒った。
「そんな弱気だから、ごっちんの方も、嫌われた、なんて思っちゃうのさ。
いいから、明日、ごっちんに電話してみな。絶対、喜んでくれるからさ」
「そっか……。うーん、そうかなあ……」
どこまでも、優柔不断な紗耶香。
「でも、分かったよ。明日、後藤に連絡する。じゃあ、今夜は圭織を抱き納めだな」
「やだよ。やらせてあげないよ」
……ごっちん以外には、こんなに自信満々なのにね。
- 100 名前:後藤真希(13) 投稿日:2000年06月29日(木)21時26分13秒
イベントライブ、開始10分前。
(市井ちゃん、今夜はなに食べてるのかなあ)
きっと、圭ちゃんにも嫌われてしまった。
私は、本当は、誰からも愛されない人間なんだ。そして、愛されない人間は、
生きている価値もないんだよね。
移動用の車の中で、夢を見た。
3年前の思い出だ。
(ホントは、今でもイヤなんだからね。――約束だよ。絶対に3年たったら、
帰ってきてよ、ずっと待ってるんだから)
(約束するよ。3年たったら、後藤を迎えにいくよ……だから、泣かないで……)
「市井ちゃんっ」
起きた。
寝言で、市井ちゃんの名まえを呼んじゃったみたい。
三年前の私たちは、なんて幼かったのだろう。
こんな日がくるなんて、思いもしなかった。
市井ちゃんと別れることになってしまった日のことは、もう思い出せない。
赤いバラと、冷たい雨だけを覚えている。
- 101 名前:後藤真希(14) 投稿日:2000年06月29日(木)21時26分49秒
(頭、痛いな)
ライブが始まった。
寝不足と体調不良でふらつく足を叱咤して、会場を走り回る。
ふと、
観客席に、市井ちゃんが見えたような気がした。
幻覚だってことは分かっている。
それは、3年前の市井ちゃんの姿だったから。
(市井ちゃんが、迎えに来てくれた!)
幻覚でもなんでも良かった。市井ちゃんが、約束を守ってくれたんだ。
足が、ふらふらと前に出た。
観客席に飛び込めば、市井ちゃんが受け止めてくれる。
私は、ステージを蹴って、観客席へ、身を投げた。
- 102 名前:市井紗耶香(14) 投稿日:2000年06月29日(木)21時27分22秒
その知らせは、夜遅く、届いた。
12時を過ぎてからの電話は、ドキッ、とする。
なにか悪い知らせなんじゃないかって。
圭織が、電話に出た。
私は、なんとなく、圭織の横顔を見ていた。
(悪イ知ラセ)
圭織が、何を言ったのか、覚えていない。
病院に向かうタクシーの中で、裕ちゃんに後藤の状態を詳しく聞いた。
真希は、本番中に、ふらふらと前に出て、
それが、故意なのか、事故なのかは分からないけど、
ステージから転落して、
打撲はまだいい、
脳内に広範囲の出血があって、
……。
- 103 名前:市井紗耶香(15) 投稿日:2000年06月29日(木)21時28分21秒
あれ、裕ちゃん? 今、なんて言ったの?
……。
聞こえないよ。
タスカラナイ。
え? なんだって?
後藤が、どうなのさ?
セキズイノ、ウラガワニ、シュッケツガ、アッテ、ソコニハ、テノイレヨウガ、
ナクテ、ダカラ、モウ、タスカラナイカモ、シレナイ。
脳が痺れている。
言葉が、理解出来ない。
- 104 名前:市井紗耶香(16) 投稿日:2000年06月29日(木)21時29分09秒
病院についた。
私は、一直線に、ICUを目指した。
途中で、圭ちゃんに会った。
「紗耶香、ゴメン。私が、悪いんだ。私が、後藤を追いつめなければ──」
「邪魔」
圭ちゃんを押しのけて、歩く。
これは、私と後藤だけ問題で、それ以外の人間には一切関わりのない話だ。
ICUの前には、懐かしい娘。のメンバーたちや、後藤のお母さん、そして、
医者がいた。
(なんで医者がここにいるの。後藤の側に常に張り付いてなきゃダメじゃ
ないのさッ)
ムカムカしながら、医者に文句を言おうとして、
「市井さんですね」
後藤のお母さんに話しかけられた。
「娘が、市井さんの名まえをずっとうわごとで呼んで……それで、夜遅く
ご迷惑でしょうけど、連絡させて頂きました」
「彼女の名まえを、呼んであげて下さい。肉親の人よりも、貴方の方が、
効果がある、とお母さんがおっしゃるので」
医者に言われて、不思議な気持ちがした。
まるで、後藤のことを、死ぬ人みたいに言ってるじゃないの。縁起悪い。
- 105 名前:市井紗耶香(17) 投稿日:2000年06月29日(木)21時29分45秒
白衣を着せられて、手術室に入る。
全身に、たくさんのコードをつながげられて、血で汚れた包帯で頭をグルグル
巻きにされた、後藤が、寝かされていた。
「ちょっと、これなによ。こんなにゴチャゴチャつないじゃって、後藤が
可哀想じゃない」
大声で言った。
看護婦が、なんだ、って顔で振り向いた。
「……市井、ちゃん?」
「意識が戻りました」
その看護婦が、大発見でもしたかのように叫んだ。
なに大げさなこと言ってるのよ。後藤は、ちょっと脳しんとうを起こした
だけで、大したことはないんだから。
「市井、ちゃん……どこ? 見えないよ……」
顔の上半分は、包帯で巻かれているから当然だ。
- 106 名前:市井紗耶香(18) 投稿日:2000年06月29日(木)21時31分01秒
「……ごめんね、市井ちゃん。……ホントにごめん」
「後藤さん、喋らないで下さい」
医者が、横から後藤の言葉を遮る。
構わず、後藤は言葉を続ける。
「私、……市井ちゃんに、いっぱい……ひどい、こと、しちゃったよ」
「喋らないで、後藤、喋っちゃだめ」
医者が、何かを怒鳴っている。看護婦が慌ただしく機材を持って、走り回る。
「……私、もう3年前の……私には、戻れないよ。……市井ちゃんに、私、
……なんにも、あげられない……」
何にも悪くない後藤は、声を震わせて、私に詫びた。
「お願いだから、今は、興奮しないで。あとで、いっくらでも話聞いて
あげるから」
包帯だらけの頭を弱々しく振って、私の声の方向に、顔を向ける。
「……ううん、私、分かる……の。市井、ちゃんが……来てくれる、まで、
……がんばったんだ……」
- 107 名前:市井紗耶香(19) 投稿日:2000年06月29日(木)21時32分29秒
後藤は、ゴロゴロと喉を鳴らして、痛みに耐えているかのように、歯を食い
しばった。
脳波を記すメーターの波が、大きく歪んだ。
「最後の……お願い、聞いて、欲しかった、から……」
後藤の声は、どんどん弱々しくなってゆく。
「最後なんかじゃないよ。なに、お願いってなにさ」
「……私に、私に、触って欲しい……の。……最後に、市井ちゃん……の、
あったかい……感触が、欲しいの。そしたら、満足して…………」
「そんなのダメだよ。私、触らないよ。後藤、元気になったら、いっくら
でも触ってやる。だから、最後だとか言わないの」
私は、後になってこの言葉を思い出すたび、劇的な後悔に襲われた。
後藤の口が、力無く動く。
「……私、やっぱり、汚れて、るんだ……ね。……市井ちゃん、そんな私に、
……触りたくなんてないよね。ゴメンね……信じて、あげられ、なく、て……」
かすれるような声。
ああ、胸が、張り裂けそうだ。
- 108 名前:市井紗耶香(20) 投稿日:2000年06月29日(木)21時34分09秒
「最後に、市井ちゃんの顔……見たかったな……」
しゅう、しゅう、と呼吸が激しくなる。
「後藤ッ――」
後藤の唇が、かすかに、開く。もう声は出ない。
ゆっくり上下する唇の動きが、言葉を綴る。
(いちい、ちゃん、だいすき、だったよ、ありがとう、……ばいばい)
全身の血が凍った。
「後藤、後藤ッ」
獣みたいに、叫んだ。
後藤の身体につながったケーブルを全部引きちぎって、後藤を揺さぶろうとして、
「きみ、何をやってる」
「ちょっと、この人を外へ」
「離せ、後藤が、後藤が――邪魔するな、みんなブチ殺すぞ、バカ野郎、離せっ
たらああああっ!」
- 109 名前:市井紗耶香(21) 投稿日:2000年06月29日(木)21時34分57秒
数人に、羽交い締めにされながら、手術室から引きずり出された。
壁だろうが人だろうが、お構いなく殴った。
圭ちゃんがすがってきて、それも思いっきり殴った。
手の皮が破れて、血が飛び散った。
悪魔よ、今だぞ。
私を呪うなら、今だ。
今なら、どんな取引にでも応じてやる。私の身体も命も1万回、売り渡してやる。
世界を引き替えにしたってかまうものか。後藤を、後藤を助けて、後藤が、後藤が、
後藤が、
(ああアあああああアアアあアっっっっ!!!!!)
圧倒的な狂気が、私に降りてくる。
後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤後藤………………………………
無理やり、ベッドに押し倒される。
壁を蹴る。
腕を押さえつけられる。
何かに噛みつく。
右腕に、チクリ、とした痛み。
目の前の顔を殴る。
(後藤……)
私は、引きずり込まれるように、昏倒した。
強烈な鎮静剤を打たれたのだ。
- 110 名前:市井紗耶香(22) 投稿日:2000年06月29日(木)21時35分30秒
光の向こう。
――3年前の、私たちがいる。
(どうしたの、市井ちゃん。汗かいてるよ)
(……すっごい悪い夢見てた。ぶるぶる)
(ふん、私を置いていく罰だよ)
(まだ怒ってるの? 後藤って、執念深いんだなあ)
(ホントは、今でもイヤなんだからね。――約束だよ。絶対に3年たったら、
帰ってきてよ、ずっと待ってるんだから)
(約束するよ。3年たったら、後藤を迎えにいくよ……だから、泣かないで……)
3年たったら、後藤を迎えにいくよ……
だから……
- 111 名前:エピローグ(1) 投稿日:2000年06月29日(木)21時36分59秒
薄曇りの日。
霧のような、雨が降っている。
後藤、私さ、今日は、すっごいお洒落して来たよ。
赤いバラも買っちゃった。ふふふ、惚れ直してくれるかな。
ねえ、後藤。私たち、あの日からやり直そうね。
今日も外は雨みたい。
なんだか、おかしいね。
ねえ、後藤。
後藤……
(泣いちゃダメだよ、紗耶香)
うん。
笑顔で、後藤に会いにいかないと、それこそ後藤に怒られちゃうよ。
私が泣いたら、後藤も泣いちゃうよ。
あの子、泣き虫だからさ。
- 112 名前:エピローグ(2) 投稿日:2000年06月29日(木)21時38分03秒
ドアを開ける。
穏やかな表情で、目を閉じている、後藤。
いやに肌の白い、綺麗な後藤の横顔。
「後藤──」
話しかける。
ねえ、後藤、目を開けて。
市井が、来ちゃったよ。
早く目を開けないと、怒って、帰っちゃうよ。
後藤は、
ゆっくりと目を開いて、
「……市井ちゃん、帰っちゃヤダ」
拗ねたように、呟いた。
- 113 名前:エピローグ(3) 投稿日:2000年06月29日(木)21時38分37秒
流されて、流されて、やっとここに辿りついた。
もう、離さないよ。
どんな運命にも、引き離されたりしない。
後藤は、奇跡的に、一命を取り留めた。
障害は、残った。
腰から下の下半身不随。
足を触られても、なんにも分かんないよ、そう言って、後藤は笑った。
私は、きっともう、後藤の身体を愛することは出来ないだろう。
でも、そんな些細なことは、2人にとってどうでもいいことだった。
神さまに感謝した。
2人で寄り添って生きていく。こんなに私たちは幸せに満ちているのに、
これ以上望んだら、それこそバチが当たるよ。
そう言って、2人で笑いあった。
- 114 名前:エピローグ(4) 投稿日:2000年06月29日(木)21時39分09秒
「ん……市井ちゃん、バラ、買ってきて、くれたんだ」
「うん」
後藤に、バラを差し出す。
やっと、私は、帰ってきたよ。
3年前の約束、ようやく、果たせたよ。
万感の想いを込めて、言った。
「後藤、ただいま」
後藤は、満面の笑みで、答えた。
「おかえり、市井ちゃん」
(Fin)
- 115 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月29日(木)21時39分53秒
- エンディング、隠しかき込み
- 116 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月29日(木)21時40分26秒
- 書きながら、泣いちゃってね〜
- 117 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月29日(木)21時40分58秒
- まだまだ隠すぞ
- 118 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月29日(木)21時41分40秒
- 昔さ、げんこーりょー、原稿用紙、一枚千円だったんだね〜
- 119 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月29日(木)21時42分25秒
- パソコン代くらいにはなりました
- 120 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月29日(木)21時43分25秒
- まだ残ってるのか……
- 121 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月29日(木)21時43分42秒
- 抑圧と解放
- 122 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月29日(木)21時44分43秒
- 飯島愛のヌードには興味ないが、紗耶香の水着はすっごい貴重の法則
- 123 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月29日(木)21時45分07秒
- よっし、終わった。じゃ〜ね〜
- 124 名前:ごんた@会社 投稿日:2000年06月29日(木)22時52分23秒
- 周りに人がいるのに、泣きそうなのをグッと堪えてます。
いやー、せつなかった、痛かった。
笑いあえてよかったね。しあわせだね。
次回作にも期待します。
おつかれさまー。>黄色い狛犬さん
- 125 名前:職@うち 投稿日:2000年06月29日(木)23時11分52秒
- ありがと。
- 126 名前:056 投稿日:2000年06月29日(木)23時25分22秒
- 何て言えばいいのか‥‥‥
物語の終わりに一瞬何もかもが解らなくなりそうでした。
ああ、この話読めてよかった。感無量です。
本当に本当にありがとう。‥‥‥お疲れさまでした。
のの裕も楽しみにしてます(笑)
- 127 名前:切なの国 投稿日:2000年06月30日(金)00時11分18秒
- それぞれが自分の気持ちにけりをつけて、
前へ進めてよかった。
いや〜、しかしこんないいものを読ませていただいて、
ほんと感謝っす!すごく感動しました。
次回作も期待してます!
- 128 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月30日(金)00時33分03秒
- 脱力中……
- 129 名前:後日談:市井紗耶香と保田圭 投稿日:2000年06月30日(金)00時56分30秒
今日も、朝から雨が降っていた。
「久しぶりだね、紗耶香」
「ん……あれから、一ヶ月ぶり、かな」
後藤をお見舞いに行った病院で、圭ちゃんに会った。
帰りに、カフェでお茶することになった。
圭ちゃんは、まだ、顔の真ん中に、ガーゼを当てている。
「あれから、会う機会なかったね。今謝っとくよ。鼻の骨、折っちゃって
ゴメン」
病室の大暴れで、圭ちゃんの顔の真ん中をブン殴ってしまったんだ。
「もういいよ。ホントはさ、これで、少しは救われたんだ。あのときの私って、
罪悪感の固まりだったからさ。紗耶香だって、指の骨、折っちゃったんでしょう?」
「こんなの、怪我のうちに入らないね」
私は、右手の包帯を見せて笑った。指の骨が複雑骨折しちゃっていて、しばらくの
間、日常生活にはすごく困った。
- 130 名前:後日談:市井紗耶香と保田圭 投稿日:2000年06月30日(金)00時57分50秒
「あれから、真希とはどうなの?」
「別に」
ふふん、と圭ちゃんは笑う。
「なんだよ」
「甘々なんでしょう。すっごいベタベタしてる、って看護婦さんから聞いたよ」
「そんなバカな」
肩で笑って、メンソールのタバコに火をつける。
「クールなフリしても、ごまかせないよ」
「フリなんかじゃないさ」
圭ちゃんは、しばらく黙って、
「真希ってさ、左の胸が、弱点なんだよね」
かっ、と頭に血が昇った。
左手で、圭ちゃんの胸ぐらをつかむ。
「わわわわわたしがまだ触れていない聖域を」
まだなんだ、って圭ちゃんは笑った。
もう一度、鼻の骨を折ってやろうか、と真剣に思った。
- 131 名前:後日談:市井紗耶香と保田圭 投稿日:2000年06月30日(金)01時02分10秒
「それくらい威勢が良くてこそ紗耶香だよ」
真希のことになると、平常でいられない。だから、安心して、
真希を託せるんだ、そう圭ちゃんは言った。
「あの子、本質的に寂しがり屋だからさ、大事にしてあげてよね……」
圭ちゃんの語尾が震える。
私のメンソールを抜き取って、
身体ごと、向こうをむいて、タバコをくわえる。
「当然だよ。なんかその後藤を知り尽くしてる風の物言いがムカつくけどね」
ふふふっ、と2人で、笑いあう。
窓の外を見る。
長かった雨も、ようやく、あがろうとしていた。
- 132 名前:後日談:後藤真希と飯田圭織 投稿日:2000年06月30日(金)01時03分07秒
「ごっちん、来たよ〜元気〜?」
圭織は、週に一回くらいのペースで、お見舞いに来てくれる。
いつも、沢山のお菓子を持ってきてくれるから、嬉しいんだ。
市井ちゃんは、太るからダメ、とか言って没収されちゃうから、いつもベッドの
下に隠しているんだ。
入院してから三ヶ月目。
手すりにつかまっての、歩行訓練まで、リハビリのステップは進んだ。
一生、下半身不随だ、って言われたけど、頑張ってここまで回復させたんだ。
市井ちゃんへの愛がなせる業なのさ。へへっ。
「さっき、先生に話、聞いたよ。もの凄い執念だ、って言ってた。かおりも鼻が
高いよ」
「圭織は関係ないじゃん」
なんだよ〜、と圭織は本気なのか冗談なのか分からない口調で言う。
- 133 名前:後日談:後藤真希と飯田圭織 投稿日:2000年06月30日(金)01時04分46秒
圭織が遊びに来ると、市井ちゃんは居心地悪そうになる。私がチクチク苛めて
あげるからだ。
今日も、散歩に行ってくる、とか言って、そそくさといなくなってしまった。
「紗耶香ってさ」
汗を拭いて、圭織の持ってきてくれたスポーツドリンクを飲みながら、話をする。
「紗耶香って、まるで旅人なんだよね。なんか、ふらっ、て、いなくなってしま
いそうなイメージなんだよ。ごっちん、紗耶香、しっかり捕まえときなよ」
「大丈夫だよ。なんかその、市井ちゃんを知り尽くしてる風の物言いがムカ
つくけどね」
圭織は意地悪な表情を浮かべて、
「ごっちんは、紗耶香に、愛されちゃってるもんねえ。リハビリ頑張れるのも、
下半身は特に大事だからかなあ〜」
意味ありげに笑う。
- 134 名前:後日談:後藤真希と飯田圭織 投稿日:2000年06月30日(金)01時06分32秒
「そ、それだけじゃないよ。それ以外にも、歩けたら便利だなー、とか」
「やっぱ、それがメインなんじゃんか〜」
圭織が、私の背中をバンバン叩く。痛いよ。
市井ちゃんは、私を消毒してあげよう、とかいって、身体じゅうをキスしてくる。
動かなかった足も、市井ちゃんにキスされたらそりゃあ感じちゃうさ。
その勢いで、つかまり立ち出来ちゃったもんね。
私は、市井ちゃんで満たされている。
市井ちゃん三昧で、毎日を暮らしている。
「ごっちん〜、なに妄想入ってんのさあ」
圭織のニヤニヤ笑い。
「市井ちゃんとの愛の日々さ」
笑顔で返した私に、負けないよ、ごっちんが退院したら、私も猛プッシュ
なんだから、と圭織は言う。
(市井ちゃん、なにげに、たらしの才能ありで怖いんだよね)
そもそも、市井ちゃんは、イギリスで経験済みなのか?
相手は、金髪美人なのか?
嫉妬のネタは尽きない。
- 135 名前:後日談:後藤真希と飯田圭織 投稿日:2000年06月30日(金)01時08分34秒
(まあいいや。市井ちゃんを信じることに決めたんだから)
私は、マジメな顔に戻って、
「あと、一ヶ月くらいで、娘。にも戻れると思うよ。コンサートとかはまだ
半年は無理だけどさ」
「うん。頑張ろうね」
「そうだね」
圭織と肩を並べて、窓の外の風景を見る。
長かった雨も、ようやく、あがろうとしていた。
- 136 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月30日(金)01時20分28秒
- ここまでで、本当の終わりです。
私が書く話には、悪人は出て来ませんが、罪を犯してしまう人は、沢山出ます。
そういった人たちに、相応しい罰を与え、その後、カタルシスへ向かう訳です。
この蛇足的ながら、後日談を入れることで、全員を救いました。
- 137 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月30日(金)01時23分01秒
ちょっと余韻を引っ張ってもらうために、後日談は遅らせてアップしました。
- 138 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年06月30日(金)01時28分25秒
今回の話を書くにあたって、常に脳裏に置いていた裏のテーマ
(というか、キーワード)は、
「汚濁の中をくぐり抜けて、それでいて清らかで高い」
です。
どんなすれ違いも、誤解も、あやまちも、本質を汚すことは出来ない。
なんっつったりして。(振り返りギコ猫ふう)
- 139 名前:23 投稿日:2000年06月30日(金)01時31分19秒
- なんか、感想かきこむのも、おこがましい。 でも、かいちゃうけど。
狛犬さん、子供はついてこれないとかいってたけど、ほんとそうですなぁ。
俺ついていけてるかぁ?
これ、いちごまとか関係ないですね。そんなのカンケーなしに読ませて
もらいました。お疲れさまでした。イエイ!!
- 140 名前:死亡・・・ 投稿日:2000年06月30日(金)01時42分21秒
- あ、後日談があったとは・・・。
- 141 名前:I&G 投稿日:2000年06月30日(金)02時28分27秒
- 後日談があってよかった。
なかったら悲しすぎるから。
134の後日談で書いてあるけど、自分も読んでいて市井の初は誰なんだ
と思っていました。後藤は保田、圭織は紗耶香、じゃー市井ちゃんは?
ちょこっと気になる・・・。
- 142 名前:やぐちおうじ 投稿日:2000年06月30日(金)04時17分06秒
- 板を飛び越えて来てしまいました。
ボキャが少ないので上手いこと言えません。
素晴らしいっす。 久々に感動しました。
はー。 お疲れ様でした・・・。
- 143 名前:tide 投稿日:2000年06月30日(金)04時41分55秒
- >黄色い狛犬さん@137
狙いに見事にはめられました。
これからもどんどん騙して下さい。
- 144 名前:小板橋英一 投稿日:2000年06月30日(金)05時18分40秒
- すいません、ホントに月並みになってしまいそうで多くは語りません。
だけど、こんな明け方にふと目が覚めて、寝ぼけながらに読んだこの
小説に、感動で涙を流しながらこの書き込みをしています。
黄色い狛犬さん、お疲れ様でした。これは、いちごまはおろか
モーニング娘。という枠をも越えた傑作だと思います。
- 145 名前:かいちょ 投稿日:2000年06月30日(金)08時23分09秒
- 泣いてしまいました。もう、ただ、それだけです。
あまり多くを語ると、せっかくの名作の雰囲気を壊してしまいそうなのと、
ボキャ貧なので、この程度の感想しか書けないことをお許しください。
最後に一言。みんなが救われる結末で本当に良かった!
- 146 名前:すねかじり 投稿日:2000年06月30日(金)10時14分26秒
- いやあ、面白い。
読み応え十分でしたね。こんなの読むと、書く気が失せます。
ある種、小説殺しですよ(ワラ
次回作も期待してしまうな〜。
- 147 名前:名無しさやりん 投稿日:2000年06月30日(金)16時45分41秒
- う〜ん後日談を見るまではハッピーエンドとは言えないなぁ・・・
と複雑な気分だったのですが、後日談のフォローで
ばっちりですね、いいモノを読ませてもらいました。
- 148 名前:23 投稿日:2000年06月30日(金)22時37分19秒
- 読み返してしまいました。飯田(14)のとこが得にすきです。
狛犬さんの頭のなかってどんなかんじなんだろう?
凄く興味あるんですけど。まぁ関係ないっすね。
- 149 名前:くれない 投稿日:2000年07月01日(土)03時51分45秒
- いま、ようやっと読まさせてもらいました。
重く切なく、そして美しい物語でしたね。
後日談でかなり救われました。良いものをありがとうございます。
- 150 名前:いちごまん 投稿日:2000年07月01日(土)04時01分39秒
- 筆舌に尽くし難い感情が、感動が私を襲う・・・
最高でした。
- 151 名前:黄色い狛犬 投稿日:2000年07月01日(土)11時35分55秒
誤字脱字を修正した、プレーンなバージョン。
ここにおいときます。(適当な時期に消します)
↓
http://www.sol.dti.ne.jp/~yaska/kakinige.htm
- 152 名前:名無しさやりん 投稿日:2000年07月01日(土)12時53分40秒
- きゅ〜ん、泣いちゃったよ〜 次作にも期待しています。ブラボー!
- 153 名前:職@うち 投稿日:2000年07月01日(土)15時31分30秒
- 黄色い狛犬様、
東京にいらしたらサイン下さいね!(マジ
- 154 名前:かいちょ 投稿日:2000年07月01日(土)18時01分55秒
- プレーンバージョンの、後藤飯田・後日談が、さりげにいちごま甘甘度がUPしていて
思わずニヤ〜としてしまいました。
- 155 名前:いちごまん 投稿日:2000年07月01日(土)18時30分13秒
- 私もニヤ〜としちゃったよ。
- 156 名前:メルボルン 投稿日:2000年07月01日(土)18時58分41秒
- >黄色い狛犬さん
後日談がたまんないっす。
時折見せる市井の弱い部分が
なんか、こう、きゅ〜んとなるのです。
- 157 名前:Yambo 投稿日:2000年07月01日(土)20時59分10秒
- いつもながら黄色い狛犬さんの文章力には頭が下がります。
私もプレーンバージョンの後日談はきゅきゅ〜んときちゃった。てへっ。
- 158 名前:名無しさやりん 投稿日:2000年07月06日(木)04時42分55秒
- 87 名前: fire7 投稿日: 2000/07/06(木) 04:37
更新用あぷろだ
http://www.musume2ch.f2s.com/up/upload.cgi
整形したものがあればこちらにUPしてくださいです。
というか、作者が直接やってくれると一番嬉しかったりする。
だそうです。名作集板にあるプレーンバージョンをあげればいいってことかな。
Converted by dat2html.pl 1.0