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Dear・・・

1 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時34分48秒
初めまして。尚と申します。
初投稿ですが、小説をやらせていただきます。
実はあまりない(?)飯田と辻の短めのやつです。1日でアップしちゃいます。
何しろ初めてなもんで、未熟な点は多々あると思われますが、
どうかご容赦下さい。
タイトルは別に飯田さんの「ディアー」とかかってるわけではなく(笑)、
僕の好きなバンドの曲名です。
では、始めます。
2 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時36分20秒
-1- 
 「ったくもう、大人は汚いよ」
 ここは、ハワイの某ホテルの一室である。
 モーニング娘。のメンバー、飯田圭織は、ここに来ている目的である番組の一日目の収録を終え、一人用にしては大きすぎるようにも思えるベッドに腰掛けて、髪を乾かしながら一人ごちていた。
 旅番組を作る、と言う名目で連れてこられ、楽しみにしていたハワイだったが、来てみればどうだ。「あか・青・黄大激突バトル」だなんて。しかも水着付き。
 (サービスカットは、写真集だけで十分だよぉ)
 とはいえ、日本から遠く離れた南の島に来ている開放感を多少なりとも味わえているのは事実であった。
 何と言っても、ここはハワイ。制作側の下心丸出しの企画旅行ではあっても、海外旅行は海外旅行。まだ入ったばかりの新メンバーとの親睦を深めるいい機会でもある。
3 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時37分42秒
-2-
 (・・・辻の水着姿がまた、可愛いんだよな〜・・・って、何考えてるんだろアタシ)
 飯田は自然と、自分が今度、教育係を務めることになった新メンバー、辻希美のことを考えていた。
 つんくさんの鶴の一声で急遽追加された彼女。「場の雰囲気を一瞬にして変えてしまう」とはよく言ったもので、本当に彼女の笑顔を見て、彼女の声を聞いていると、心が和む。というか、癒される。
 (たれぱんだも、坂本龍一の曲もメじゃないね。新世代の癒しキャラだね、辻は)
 自分が呼ぶとすぐに寄ってきて、ずっと付いてくる。言ったことには素直に従い、疑うことをしない。そんなどこまでも純粋な彼女に、飯田は妹にも似た親近感を覚えていた。いや、妹というのは適当でないかも知れない。あくまでも他人である上での親近感。後藤と、教育係であった市井との間に感じられた雰囲気にも似た・・・。
4 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時39分10秒
-3-
 (後藤と紗耶香・・・か)
 時にはもめ、そしてその何倍もの時間仲良く過ごしていた二人。市井が卒業する際、言葉にならないほど泣きじゃくった後藤。
 二人の関係は、飯田と辻との関係における飯田の目標であった。辻にとって、自分はそういう存在になれるだろうか。
 (後藤・・・といえば、辻は後藤を尊敬してるんだっけ)
 少し、気になっていたことであった。
 自分は、辻と師弟関係になれたことはとても嬉しく思っている。
 けれど、果たして辻はどうか。
 後藤は現在、加護の教育係を務めているが、ひょっとして辻は、その加護の立場を望んでいるのではないだろうか。
 そう考えると少し不安になると同時に、後藤に対する不満も多少沸いてくる。
 (アイツ、加護の教育ちゃんとやってんのかね〜・・・弟子は大切にしてやんないといけないっちゅーねん、紗耶香の恩を忘れたか?)
5 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時40分45秒
-4- 
 その時。ドアをノックする音がした。
 「はーい」
 返事をすると、ドアがかすかに開いた。
 「誰ぇ?」
 飯田はドライヤーとブラシを置いて、音の主を出迎えた。ドアを開くと、自分より二回りは小さい少女が立っていた。
 「辻」
 「ごめんなさい・・・遅くに」
 怯えているような、申し訳ないような、あるいはその両方のような表情である。
 「どうした」
 「・・・えと」
 飯田はしゃがんで目線を合わせ、頭を撫でながら訊いた。
 「誰かに叱られた?」
 「・・・そうじゃないんですけど・・・」
6 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時41分44秒
-5-
 赤いクマ柄のパジャマが似合いすぎるほど似合っている。これでクマのぬいぐるみでも抱いてたら完璧だな、などと考えてしまった。そのあまりにも少女チックな絵面から、何となくここに来た理由が推測できるような気がした。
 「・・・一人で部屋にいるのが、寂しかったとか?」
 「・・・はい」
 当たった。やっぱり。
 「あはははははは」
 「ごめんなさぁい」
 「ほ〜んとに甘えっ子だね、辻は」
 「ごめんなさい・・・」
 「いいよ、こっちおいで」
 真っ赤になっている辻の頭を軽く叩いて、部屋に迎え入れた。丁度自分も一人で退屈で、保田の部屋にでも押し掛けようかと思っていたところだったので、いい話し相手ができた。それも、今一番話したかった相手である。
7 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時42分49秒
-6-
 「座んな」
 「はい」
 辻をベッドに座らせ、自分も隣に腰掛けた。
 「オバケでも出た?」
 「出・・・そうな気がして、怖かったです」
 「ハワイのオバケって、どんなんだろうね。やっぱ外人かな」
 「でしょうねぇ」
 「外人だったら、英語で話してくるよ。『ハ〜〜ロ〜〜』とか言って」
 そう言って、飯田は両手を広げて辻を襲う真似をした。
 「やぁめてくださいよお〜!!」
 「ハ〜ロ〜〜〜、モ〜〜ニングう〜〜〜」
 「きゃはははははは」
 辻の脇腹をくすぐって、からかう。何だか、楽しくて仕方がない。
8 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時43分52秒
-7-
 自然と、話題は今日の出来事へと移っていった。
 「しかしさあ、ムカついたよねえ。ハワイ来ていきなり、あか・青・黄大激突バトル!とか言っちゃってさあ」
 「水着付き・・・」
 「水着付きだよ!?もー、やんなるよねえ」
 「飯田さんはスタイルいいからいいですよぉ、私なんて・・・おなか出すのもイヤなのに」
 「辻の水着、可愛かったじゃん」
 「そうですかぁ、てへへ」
 すっかり安心したように、満面の笑みを浮かべて笑う辻。思わず抱きしめてあげたくなるほど可愛い。
 (ホントに、この子の教育係になれて良かったよ・・・
  良かった・・・けど)
9 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時44分53秒
-8-
 さっきまで考えていたことが、再び頭に浮かんできた。
 今朝のチーム分けの時。
 結局辻は青に入ることになったが、辻の入りたかったチームは・・・。
 「・・・スーパー青色9,どう?」
 「面白いですよぉ。人数、多くていいときと悪いときがありますけど」
 ・・・言うべきか。言わざるべきか。
 下手に訊いて、今の関係が崩れてしまうのは怖い。けれど、訊いておかなければ、これから辻と付き合っていくに当たっての迷いが、いつまでも消えないような気がした。
10 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時45分48秒
-9-
 「・・・辻はさあ、本当はあかに入りたかったんでしょ」
 「え・・・でも」
 「裕ちゃんが『あか入りたい人〜』って言ってたとき、手ぇあげてたじゃん」
 「・・・はい」
 飯田は一息ついて、目線を少しずらしてこう言った。
 「後藤がいたから?」
 「・・・」
 辻の表情が暗くなった。
 辻も、飯田の質問の意味するところは理解しているのだろう。
 (まずい質問しちゃったな・・・)
 飯田に、大きな後悔の念が襲ってきた。
 (こんな質問したって、辻が困るだけじゃん・・・まさかあたしより後藤の方がいいなんて言えるわけないのに・・・)
 「・・・っ、ごめんね、変なこと訊いて。今のこと忘れて?ね?」
 飯田は必死で、気まずい空気を取り除こうとした。
 そして、自分の心境が、ただの教育係としてのものでなくなっているのに気づいた。
 (あたし・・・自分が辻の一番じゃなきゃ納得できなくなってる・・・
  ただの教育係なら、「後藤のことが好きで、あたしのことも次に好き」で十分なはずなのに、それじゃ納得できなくなっちゃってる・・・)
11 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時46分42秒
-10- 
 「ねえ、明日何あるんだろうね?」
 「私・・・」
 飯田の質問を遮るように、辻が言葉を発した。
 「え?」
 「私・・・は、後藤さん、尊敬してます・・・けど、」
 辻は慎重に言葉を選びながら話し始めた。飯田は申し訳ない気持ちで一杯になり、辻の頭を撫でながら制止した。
 「ごめんねっ、もういいからさ、そのことは・・・」
 「聞いてください・・・尊敬してますけど・・・
  でも、飯田さんは、誰よりも私を大切にしてくれます」
 「え?」
 はにかんだ顔で、辻が目を合わせた。
12 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時47分37秒
-11-
 「今朝、チーム分けの時、私はあかに入りたいって手ぇあげて・・・それは、後藤さんがいたからなんですけど・・・でも、青に入ることになって、行ったとき、飯田さん、迎えて、ぎゅってしてくれましたよね」
 そうだった。柔らかな笑顔を浮かべて歩いてくる辻が愛おしくなって、つい抱きしめてしまったこと。他の誰がチームに入ったときよりも嬉しかった、あの瞬間・・・。
 「ああ・・・」
 「・・・何かすっごく、あったかくて、嬉しかった・・・で、その時、思ったんです。『飯田さんは、誰よりも私を大切にしてくれる』って」
 「辻・・・」
 「そして、私も・・・飯田さんが大切なんだって。だから・・・
  私は、飯田さんが一番好きです」
13 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時48分29秒
-12- 
 辻の言葉の最後の一節が、何度も頭の中で回る。
 胸が、締め付けられるように切なくなり、体全体が痺れるように熱くなっていくのを感じた。
 飯田は、赤くなる顔を隠すように背けて、必死に平静を装った。
 「なあ〜に言ってんだよぉ、気ぃ使わなくていいんだぞ」
 「ホントですよぉ」
 そっと振り向いてみる。辻はもじもじと手を握り合わせ、足をばたばたさせている。
 「お前、顔真っ赤だぞー」
 「飯田さんも真っ赤ですよぉ」
 「ふふふふふふ」
 「きゃはははははは」
 二人は、何だかおかしくなって笑い合った。ひとしきり、叩き合ったり、くすぐり合ったりして、腹の底から笑い続けた。
14 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時49分22秒
-13-
 「ははは・・・そうか〜、飯田さんのこと好きか」
 「はい」
 「一番好きか!」
 「はい!」
 「大好きか!」
 「はいっ!」
 「オイラもお前が大好きだぁ〜!!」
 「きゃあっ」
 飯田は、たまらず抱きついた。辻は後ろに倒れ込み、まるで押し倒したような形になってしまった。
 「重いですよぉ」
 「失礼なこというなー」
 飯田の頬に、辻の頬が密着している。その柔らかい感触を確かめるように、何度も擦りつけてみる。
 「きゃははは」
 「・・・辻」
 「え?」
 飯田は、顔を少し浮かせるやいなや、すぐ横にある辻の唇に口づけた。
15 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時50分48秒
-14-
 「ん・・・」
 柔らかく、滑らかな唇。接点が溶け合い、一つになる様な気がした。実際には1,2秒の間だったが、この上もなく長い時間に思えた。
 唇を離し、目を合わせる。少し潤んだような辻の瞳が、真っ直ぐ飯田の瞳を見つめていた。
 「・・・」
 「・・・へへ、ファーストキス、いただき」
 「・・・ふあ〜」
 「放っといたら、裕ちゃんに取られちゃうからね」
 「恥ずかしい〜」
 どうしようもなく心臓がドキドキする。辻の上から体をどかし、辻の隣に寝転がって、大きく息をついた。
 辻の掌に、そっと自分の掌を重ねた。すると、辻がそれを握ってきた。
 飯田も、そっと辻の掌を握り返した。
 そのまま、数分。
16 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時51分46秒
-15-
 辻が、ゆっくりと体を起こした。
 合わせて、飯田も体を起こす。
 辻は振り返って、優しく笑った。
 「・・・私、もう大丈夫です。部屋、戻ります」
 「あ・・・そう」
 飯田は少し残念に感じながら、笑い返した。
 辻は立ち上がり、パジャマの裾を直しながら言った。
 「・・・飯田さんが教育係で、ホントに良かったです」
 少し落ち着き始めていた心臓の鼓動が、また速くなった。
 「・・・嬉しいこと、言ってくれるじゃないかぁ」
 「てへへ」
 飯田も立ち上がり、辻の方へ向き直ると、辻が少し含みのある口調で言った。
17 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時52分40秒
-16- 
 「・・・飯田さん、耳貸してください」
 (・・・二人しかいないのに、内緒話?)
 飯田は、若干不思議に思いながら膝を曲げて、辻の方へ耳を向けた。
 辻の顔は、飯田の耳に少し近づいた後、方向転換して飯田の顔の正面に回った。飯田がそれに気づいた瞬間、辻の唇が飯田の唇に触れた。
 唇を離して、辻は悪戯っぽく笑った。
 「・・・このぉ」
 「えへへ・・・お返しです」
 「何がお返しだよっ」
 「きゃははは」
 軽く辻の肩をつつき、また笑い合った。
18 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時53分34秒
-17-
 二人は部屋の出口に向かった。ドアの前まで来たところで、辻が振り返った。
 「飯田さん」
 「何?」
 「明日も、頑張りましょうね」
 「おう」
 「100万円取りましょうね!」
 「おう!」
 「お休みなさーい!」
 「おう、お休みー!」
 そう言って、辻は飯田の部屋を後にした。
 閉じたドアの向こうにあるであろう辻の背中に向かって、飯田は心の中で呼びかけた。
 (お〜い、大好きだぞ〜)
 ベッドに戻り、大の字に寝転がって、天井をじっと見上げた。
 「ふふふ、はははは」
 思わず、笑いがこみ上げてきた。嬉しくて、恥ずかしくて、気持ちよくて・・・そんな気持ちを笑い声に込めて、布団にしがみついて笑い続けた。
19 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時54分42秒
-18-
 「一番好きです、だってさ」
 自分に言い聞かせるように、声に出して言ってみる。
 (くう〜、も〜、可愛すぎるよぉ〜)
 布団の中でじたばたする。
 「今日は、最高の日だよ」
 騙されてハワイに連れてこられたことなど、とうに忘れていた。
 この南の島で、辻と心が通じ合えた。それだけで飯田は、100万円にも勝る贈り物をもらったような気がしていた。
 (後藤と紗耶香の二人とうちらと、どっちが仲良しかな?
  ・・・うちらだよね、きっと。ね、辻)
 自分の唇に触れて、辻とのキスの感触を思い出してみる。
 二人の気持ちが一つになった、あの瞬間。
 「・・・寝よ」
 飯田は、早いうちに寝てしまおうと決めた。あの時の気持ち、キスの感触を忘れないうちに。
 (夢の中で逢おうね、辻)
 夢の中での逢瀬が成功したことは、言うまでもない。

 
 「・・・ようございま〜〜す、モ〜ニングクイズで〜〜す」
 「・・・・・・」
 ・・・目覚めは、最悪だった。

-FIN-
20 名前: 投稿日:2000年07月16日(日)17時56分01秒
以上でございます。
乱筆・乱文、お許し下さい。
どうも有り難うございました。
21 名前:名無しさん 投稿日:2000年07月16日(日)23時28分57秒
おもしろかったです
22 名前:名無しさん 投稿日:2000年07月17日(月)11時52分54秒
面白かったです。
甘甘のくだりも、ムズムズしてくるくらい良かったです(わら)
なんか、ののがいつもよりオトナに見えた。
新鮮なカップリングで、読み応えがありました。
23 名前:名無しさん 投稿日:2000年07月17日(月)15時45分36秒
♪My close friend You don’t cry
逢えない夜に凍えたら そっと瞳閉じて
同じ時を時代を過ごせる奇跡に 少しだけ気付いてくれ
I say its all right
24 名前: 投稿日:2000年07月17日(月)15時51分04秒
バレましたか。>23
25 名前:名無しさん 投稿日:2000年07月17日(月)15時56分20秒
>尚さん
おれもあのバンド大好きっす。
詞がストレートで心に染みるので素晴らしいです。
メロディーも素晴らしい。演奏も上手いし言うことなし!!
ってここはそういうスレじゃないか・・・
小説良かったっすよ。こういう甘いやつ大好きなんで。
またなんか思い立ったら書いてください。
26 名前: 投稿日:2000年07月17日(月)15時59分23秒
読んで下さった皆さん、どうも有り難うございました。

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