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無限抱擁

1 名前: 投稿日:2000年07月30日(日)03時14分33秒
いちごま小説いきます。

前に書いた「蜻蛉」が結ばれない話だったんで、
今度は結ばれる話に・・・
でも甘いのではなく痛めで(苦笑)
2 名前: 投稿日:2000年07月30日(日)03時23分33秒
湿ったかび臭い部屋。
汚れた白い天井。
あたしに執拗に絡みつくヒト。
名前も知らない、オンナノヒト。

「それじゃあ・・ね・・お金置いとくから・・・」

ソノ人はコトが済むと、
サッサと着替えて部屋を出て行く。
あたしはしばらく動かずに
上を向いたまま静かに、静かに
口ずさむ。

君の好きなウタを

「独りにしないで
 独りにしないで
 出口はどこにあるか教えて
 どこまで行けばいいか教えて」

死にたい、なんて
泣きたい、なんて
大げさに捕らえたあたしを早く速く消して消して

「細い人が好き」

君の一言でココまで・・・

やっと手に入る・・・ソシタラ・・・

「2万ちょうどね。はい」
「どうも」

冷たい手から受け取る
マホウノクスリ。

「あー、あんたみたいな娘やったら、あたしが寝てやったのに」
「・・・・はは」
「なあ、これからどうや?お金は払うで?」
「帰ります」
「冷たいなぁ・・そこがいいんやけど♪アンタには特別に名前教えたるわ」

         「ユウコ」

「でも・・アンタやったら『裕ちゃん』て呼んでええよ。特別」
「覚えとき。何かの役に立つはずやから」

役に立つかな・・
小さく呟くと、乾いた声で笑った。

「M]というグループの頭、ゼロ。

彼女の素顔を垣間見た気がした。


        あたしね「ほそいひと」がすきなんだ。
3 名前:名無しさん 投稿日:2000年07月30日(日)20時09分34秒
あれ?これどっかで…
4 名前:名無しさん 投稿日:2000年07月31日(月)00時22分50秒
>3
きっとそれは突っ込んではいけないことだと……(ワラ
5 名前: 投稿日:2000年07月31日(月)03時36分57秒
>3
そ・・それは言わない方向で(笑)
6 名前: 投稿日:2000年07月31日(月)03時48分38秒
留守電の再生音声で目が覚めた。

「只今留守にしております。御用の方はピーという発信音の後に・・」

無機質な声。
でも、不思議に落ち着いてしまう。

「あ、なっち?矢口です。なっちのお母さんから電話があって・・
 なっちの家に居座っている子に心配しているそうです。
 連絡してあげて。それじゃ」

あたし、か。

あたしが居候しているこのマンションは
偶然知り合った人の家。
公園に独りでいたら、突然声を掛けてきたのがこの人で。
無一文で住む所に困っていると言ったら、
ウチにおいで、と誘ってくれた。

北海道から一人でこっちに来ているらしい。
バイトしながら、学校に通っているそうで。
ちょっと、尊敬・・なんてしてみたり。
独特の北海道訛りも、最初は違和感があったけど
今は、むしろ、心地いいくらい。

「ん・・起きてたの?いつ帰ってきたんだべ?」
「なっち・・」
「誰から?電話。紗耶香聞いてたんでしょ?」
「なっちのオトモダチから」
「んー・・誰?」
「なっちの家に住んでいる娘は誰ですか?心配です。矢口と母より」
「あははっ」
「あたし出てった方がいい?」
「全然オッケー。ココに居てよ」
「ありがと」

コーヒーを入れに台所に向かう。
これだけは暗黙の了解であたしがする事になっていた。

熱いコーヒーを入れてリビングに戻る。
さっきまであたしが座っていたソファになっちが座って
雑誌を読んでいる。

「はい、コーヒー」
「ありがと」

いつもと変わらないあたし達の日常。

「紗耶香」
「何?」
「紗耶香、少し痩せた?」
「少し、ね」

どうやらクスリの効果は確実に出てきているようだ。


      いちいちゃんのけーたいばんごうおしえてよ
      こんど、ぜったいでんわするから
7 名前:龍岩寺 投稿日:2000年07月31日(月)10時30分46秒
いいところで終わっていますね〜。
ここからどう繋がっていくか楽しみです。
頑張ってください。
8 名前: 投稿日:2000年08月02日(水)03時52分21秒
なっちがバイトに出かけて
あたしは一人になった。

「いってきます」とか「おかえり」とか
家族のようなヌクモリをあたしには求めていないみたい。
一見、誰とでも仲良くなれるタイプに見えるのに
何となく、人と深く接するのを避けて見える・・
でも、あの人は特別。

あの人だけは、なっちの心の深い所も知っている。

最近のヒトは皆どこか欠けてるし、間違ってる。
裕ちゃんも、なっちも、矢口って人も。みんな、みんな。
あ、あたしも、か。

正しいのは君だけ。

窓の外を見ながら、そんなコトを考えてみる。
久しぶりに見た太陽が眩しい。
ケータイ・・電話、かかってこないよ。
ケータイの液晶に目を落とす。

「なっちからの電話待ってんの?」
振り向くといつから居たのか、そこにはアノ人が、いた。

      「や・・ぐち・・・?」

「アナタ、なっちの何?何であたしの名前知ってんの?しかも呼び捨て」

早足であたしに迫ってくる。
逃げようとソファを立ち上がろうとしたけど、
矢口のほうが先にあたしを捕らえた。
冷たい手が、あたしの手首を捕まえる。痛い・・

「何って、居候してるだけじゃん」
「嘘だよ。なっちと寝てるんでしょ?」
「・・・部屋代だよ」
「ふーん・・じゃあ、あたしとも寝なきゃ・・だね」
「っ!!何でよ!!」
「なっちのモノは、あたしのモノだよ」


9 名前: 投稿日:2000年08月02日(水)03時57分06秒
ソファから床に押し倒される。
小柄なのに、やけに力が強い。
頭を強く打ったらしく、意識がはっきりしない。
ただ、身体の底から恐怖感だけが湧き上がる。

恐怖に負けないように、「あたし」を守るために
目の前の矢口から視線をずらし
天井を見つめる。
いつもと同じ。
名前も知らないヒトを「強姦ごっこ」をしてるだけ。
だから平気。
何も辛くないよ。


あれ?
天井がぼやけてる。

何で?
ねえ、本当に
何も辛くないよ・・・

      めつきがわるいでしょ、あたし。
      だからともだちすくないんだ。
      え?ともだちになってくれるの?ありがとう!!
        
10 名前:龍岩寺 投稿日:2000年08月02日(水)10時38分14秒
読んでいるこっちが、辛くなってきてしまいます。
でもこの切ない感じがすごくいい。
おもしろいです。
11 名前: 投稿日:2000年08月03日(木)03時38分24秒
確か君と出会ったのは3ヶ月前だったかな。
あたしのバイト先のコンビニによく、訳がわからないモノを
買いに来たよね。
ココアのモトでしょ、包丁でしょ、紙袋でしょ・・

「変わった娘」

それがあたしの君への第一印象。
一番驚いたのは手が血まみれでお菓子を山ほど買いに来た時。
あの時は思わず、声が震えたよ・・マジで・・
この娘強盗かーみたいな、ね。

でも何故か甘い匂いがするんだよね、君は

あたしの好奇心もピークに達して
話し掛けたんだ。

「何してる人なんですか?」

その時の君の驚いた顔!!
もーう・・今思い出しても大爆笑モノだね。

「・・学生なんですけど・・料理が趣味なんで・・」

ああ!だから甘い匂いがしたんだね。
手が血に染まってたのも、魚かなんかの血なんだ。

「すみません。でも大人っぽいですよね?」
「えー、違うよ。多分アナタの方が年上ですよ」
「あたし・・16ですよ?もうすぐ17だけど」
「あたし、15です!」

君みたいな大人っぽい中学生に出会うことなんて
あんまり無いだろうね。
それ以来、よくコンビニに来てくれて。
しかも客が居なくて、あたしがバイトに入ってる時間を見計らって。
んでさ、店長に怒られるまでよくレジで話しててさ。
アノ時に教えてもらった君の好きなウタ、CD買って覚えたりして。

あたし、すっごい楽しかった。

親の反対押し切って、コッチに1人で移ってきて
少し「縁切った」みたいになってたから。
やっぱ生活費稼ぐには、身体売ったりもするしかなくて。
オヤジ相手にするよりは
オンナノヒト相手にするほうが精神的にも楽だったし、金額も大きいし。
最初は気持ち悪くて吐き気がするほどだったけど。
今じゃ、自分の意識を亡くせるようになった。
そんなアタシだからソッチの世界ではちょっとした有名人。

毎晩、毎晩、毎晩

自分殺し

全部自分で、全部殺して
じゃないと、今にでも狂ってしまいそう。

そんな時に
君に出会って、なっちにも出会って
あたしの居場所を確認できそうでした。
12 名前: 投稿日:2000年08月03日(木)03時45分05秒
「市井ちゃんは、付き合ってる人いるの?」
「やー・・いない・・」

あたしのバイトが終わるのを待っていてくれた君。
一緒に並んで、途中のバス停まで行ったよね。

「そーなんだ。じゃあ、好きな人いるの?」

              「真希

・・・は好きな人いるの?」
「あたし?あたしはねー・・うーん・・」

何、その思わせぶりな態度は。
あたしは君のこと・・

「じゃあ、タイプの人とかは?」
「タイプ?・・あたしね、細い人が好きなんだ」

ほそいひと・・ね・・。

「ふーん・・」
「市井ちゃんは?」
「年下だけど、大人っぽい人。
 でも喋ってみると、子供みたいな人」

真希、君だよ。

「ほー・・あたしみたいな人だ。なーんてね」

うん、だから君なんだってば。

「あのねっ、真希・・」
「何?」

あたしを見上げる
その大好きな瞳が
あたしには綺麗過ぎて
汚れたあたしには綺麗過ぎて
13 名前:まいのすけ 投稿日:2000年08月03日(木)11時41分18秒
気になる、気になる。
面白い!!
14 名前:龍岩寺 投稿日:2000年08月03日(木)13時57分13秒
あぁ・・・切ない。
でもマジ面白いです。
15 名前: 投稿日:2000年08月05日(土)03時48分25秒
「瞳・・綺麗だよね・・」
「えーっ!!嘘だよ、ソレ・・目つき悪いでしょ、あたし
 だから友達少ないんだぁ」
「じゃあさ、友達になろうよ、ずっと・・さ・・」
「え?友達になってくれるの?」
「今までも仲良かったけどさ、今日からは特別な友達、ね?」
「ありがとう!!」

ココが限界。
綺麗な君と
汚いあたしのボーダーライン。

「市井ちゃんのケータイ番号教えてよ。
 今度絶対電話するから」
「うん・・090-・・」
「090-・・。よし!!覚えたよ・・あ、バス来た」
「あー、うん」
「じゃーねー」
「またね」

小走りでバスに乗り込む、真希。
窓側に座ってあたしに向かって手を振ってくれる。
こういうトコはやっぱ年下だな・・なんて。

ガチャン

「市井ちゃん」

窓を開けてあたしを呼ぶ。
バスは走り出す。

「なんか元気ないよ?元気出して!」

・・・・!

「そんなことないよ」
「絶対元気ないってー」

真希の笑い声が人気のない道路に響く。

頬をアタタカイ液体が流れ落ちる・・

消えて行くバス、真希の笑い声、あたしの存在理由。

いかないで
いかないで
いかないで

いか・・ない・・で・・

真希・・・
16 名前: 投稿日:2000年08月05日(土)03時58分23秒
「ねえ!ちょっと!!」
「ま・・き・・?」
「はあ?さっきから何言ってんの?」

意識が戻る。
そっか、矢口か・・

「アナタさあ、痩せすぎじゃないの?大丈夫?」
「・・・」
「・・なんか買ってきてあげるよ、食べ物」

矢口はあたしが起きる前に服を着ていたらしい。
既に手にもっている財布を弄びながら続ける。

「何が食べたい?」
「食べたくない」

だって今食べてしまったら、全部水の泡になりそうで。

「はあー・・んじゃ適当に買ってくるよ」

そう言うと玄関に向かって歩き出す。

「ねえっ・・」
「ん?食べたい物、あるの?」
「違う」
「はあ?んじゃ何?」
「なっちとは・・」
「あ、ちょっと待って」

手で、待てのポーズをすると
ポケットの中からケータイを取り出した。
どうやらバイブにしていたらしい。

「・・もしもし・・あ、裕ちゃん?うん、判ってるよ」

裕ちゃん・・?

「え?今?なっちの家。面白い子見つけたよ」

裕ちゃん・・って・・

「うん、じゃあ今から行くね。・・はいはーい・・」

あたしに向き直る矢口。

「と、言うワケだから。今から用事出来たから。
 コレで何か買って食べなよ。ちゃんと食べるんだよ?」

財布から2千円とりだすと、あたしに手渡す。
そして部屋から出て行こうとドアに手をかける。

「あ、そーだ」

ドアのほうを向いたまま、サッキより少し低い声で続ける。

「あたしとなっちの事に口出さないでね。
 アナタはなっちの傷を癒すだけでいいんだよ」

矢口の余りにも横暴な注文に反論せずにいられない。

「そんな事言われても・・事情聞かなきゃワカンナイじゃん!!」

「いいからっ!!」

バタン

ドアを閉める音が
また、この部屋であたしを独りにする。

なっちがドアを閉めたときみたいに。
17 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月05日(土)21時14分35秒
切り口が違ってて面白いです。
これからも頑張ってください。
18 名前:龍岩寺 投稿日:2000年08月06日(日)07時42分58秒
先が見えない。
でもそこが面白い・・・。
頑張ってください。
19 名前: 投稿日:2000年08月08日(火)04時17分43秒
何もワカンナイよ・・
だって、なっちも矢口も何も話してくれないんじゃん・・。
必要としているのはあたしの身体だけで・・

ヒツヨウトシテイルノハ、アタシノカラダダケデ
アタシデハナインデショウ?


「独りにしないで
 独りにしないで
 出口はどこにあるのか教えて
 どこまで行けばいいか教えて」


独りで居ることのほうが多いこの部屋。
でも、今日はなんか・・


乾いたはずの頬にアタタカイ液体が流れ落ちる。


じゃあ、真希・・

あたしはどこまで行けば君に会える?
20 名前: 投稿日:2000年08月08日(火)04時28分37秒
自分の肉体と神経が
どんどん離れていく気がする。
抱かれれば、抱かれるほどに。

シャワーを浴びて身体を落ち着かせる。
ああ・・あたしはもうダメかな・・
頭の中をグチャグチャに掻き混ぜたい。
今までのコト全部、消したい。
そしたら真希に近づけるから。

きっと・・


ジーパンを履いて
洗濯機の上にあったなっちのブラウスを羽織る。
このジーパン・・サイズピッタリだったはずなのに今はブカブカだ。
タオルで頭を拭きながら、台所へ向かう。
なっちの為に入れたコーヒーの匂いが
鼻の奥を刺激して涙が出そうになる。
コップに水を入れてソファに座る。

片手には  マホウノクスリ  。

今日で最後。
常習性は無い、と裕ちゃんは言ってたけど
コレを飲み始めてから情緒不安定なうえに
最近は全然見ていなかった夢を見るようになった。
手には赤と白のカプセルをおき、口に含むと
一気に水で流し込む。
だんだん、頭がクラクラしてくる。
まるで何日も寝ていないかのように
嫌な悪寒が体を襲う。

もうっ・・イヤ・・だっ・・

あたしは何のために

あたしは何のために

どーしてこんなにつらいおもいをしなくちゃいけないの?
どーしてこんなにあたまがいたいの?

フラッシュバックする記憶。

「紗耶香、いつもこんなコトしてるの?」服を着ながら言うなっち。
何がそんなにオカシイのか、大笑いしてる真希。
少し寂しそうに見えた、矢口の背中。
放課後、好きなヒトに告白したこと。
裕ちゃんの苦笑い。
真希の時折見せる悲しそうな顔。
珍しく大笑いしているなっち。
真希の笑顔。
21 名前:まいのすけ 投稿日:2000年08月08日(火)13時31分08秒
市井・・・(泣
22 名前:龍岩寺 投稿日:2000年08月08日(火)14時46分43秒
後藤、市井ちゃんを救ってやって・・・。
23 名前: 投稿日:2000年08月09日(水)02時59分30秒
・・トゥルルル・・トゥルルル・・

・・電話?出なきゃ・・

目を開けてテーブルの上に光るケータイに手を伸ばす。
オレンジの光を点滅させる液晶を覗き込む。着信は非通知だ。
淡い期待を持って出れば、辛いかもしれない。
いっそのこと出ないほうがいいのかもしれない。
でも、今は誰でも良いから、傍に居て欲しかった。
あたしの身体だけが目当てだとしても。
その後に訪れる自己嫌悪に溺れると判ってても。

ピッ

「はい・・」
『・・覚えてる?あたしやけど』
「ドチラサマですか?」
『あー、やっぱそういうトコが好きやわ』
「裕ちゃん・・?」
『そうそう!覚えてくれてるんかぁ!』
「なんで、番号知ってんの?」
『え?ああ、ほら、矢口に聞いた』
「・・・・」
『あのさ〜、今から会わんか?』
「・・・」
『お金もキチンと払いますよ?』
「・・いらないよ」
『はぁ?お金いらんの?』
「何処に行けばいい?」
『・・クスリ渡したトコ。覚えてるやろ・・?』
「判った。30分後には行くから」

ピッ

きっと、あたしは裕ちゃんと寝て
きっと、あたしは真希を思い出し
きっと、泣き喚くのでしょう。

あたしはコートを上に着込むと
暮れ始めた外へと向かった。

早く夜が全てを飲み込めば良い。
そうすれば、あたしはあたしを見つけられなくなるから。
24 名前:龍岩寺 投稿日:2000年08月09日(水)13時18分10秒
切ないです。
市井ちゃんはこれからどうなるんだ?
25 名前: 投稿日:2000年08月10日(木)03時00分20秒
眠らない街の
創り出す雑音を
聞こえないフリをして歩いた。
コギャルのバカみたいな笑い声。
サラリーマンの愛想笑い。


黒い車が止まってる。
裕ちゃんの車。
あたしは運転席の窓ガラスを手で叩く。
鈍い音。
裕ちゃんの愛想笑いを絶やさない顔が見える。
何をしても、裕ちゃんはあたしなんかに本当に笑いはしないんだろう。
その作り笑いは裕ちゃんの仮面なんだ、きっと。
あたしがソレを剥がそうとしたら、裕ちゃんはどうするのかな?

「まあ、乗りや」

裕ちゃんの少し低い声は
ウザいこの街からあたしを救ってくれたような気がした・・。



「さて・・何処行こか?」
ずっと一直線の高速道路を黒い車は走っていた。
裕ちゃんはあたしのことを決して見ようとはしない。

「・・何処でも」
「ははっ・・アンタのそーいう冷めたトコ好きやわ」

どうして裕ちゃんはあたしにコダワルんだろう。
端整な顔立ちに、どこか寂しそうな目。
でも何処か笑っているような口元。
あたしなんかより、もっと良い相手なんて沢山いるでしょ?

「んー、どうしよかなぁ?」

あたしを見ようとしない目が、少し細くなる。
あたしは裕ちゃんの事を好きになってしまいそうな錯覚に溺れる。
綺麗で・・。でも、真希とは違う「キレイ」
本気になったら怖いから、あたしは口を開く。

「・・ホテルでいい」
「そういうと思ったわ」

唇をつり上げて言うと
ハンドルを出口のほうに向かってきった。

ホテルなら余計な感情は生まれないだろう。
いつもと同じに出来るはず。
後はただ、裕ちゃんに全てを任せるだけ――――


26 名前:龍岩寺 投稿日:2000年08月10日(木)13時37分59秒
あぅ・・・苦しい。
27 名前: 投稿日:2000年08月11日(金)03時56分11秒
シャワーなんて浴びさせてもらえなかった。
部屋に入るとすぐベッドに押し倒された。
まだ、お互い、服も脱いでない。

「ちょっ・・待ってよ」
「何や?」
「何って、あたしシャワー浴びたいんだけど」
「ええよ、そんなん」
「でもっ・・」

裕ちゃんが今日はじめてあたしを見る。
その寂しさを襲う目があたしを動けなくする。
な・・んで・・そんな目であたしを見る・・の?

目を瞑った。
ほら、早く「あたし」を殺さないと、じゃないと、あたしは

あたしは

まぶたの上に裕ちゃんの唇の冷たい感触がする。

「紗耶香、目ぇ開けてや」
「やだ。絶対やだ」
「ふーん・・そういえばあたし、紗耶香の事色々調べちゃった」

裕ちゃんのその言葉が、まるで呪文のようにあたしの目を開けさせる。
裕ちゃんはあたしの瞳を、心の中まで見ているように凝視していた。

「やっと、開いた。あたしな、アンタのその目、好きやわー」
「調べたって、何を!!」

知られて困ることなど無かったけど。
真希の事だけは、誰にも知られたくなかった。

「やっぱ気になる?」
「言ってよ!!」

あたしの腰の辺りに裕ちゃんが乗っているので
上手く身体を動かせない。
やたら柔らかいベッドが、動けば動くほど
あたしの身体をベッドに深く沈めていく。

「裕ちゃん!!」
「ウルサイなぁ・・」
「なら、教えてよ!そしたら何でも言うコト聞くから!!」

少し考える素振りを見せる裕ちゃん。

「アホやんな、紗耶香って」

あたしを馬鹿にしたように、カタコト喋りをする。

「ちゅうか、頭大丈夫か?」
「なっ・・」
「あんな娘の為に、痩せたいなんてなぁ」

頭の中が真っ白になった。
まさか、まさか・・

「聞きたいか?マキちゃんのコト?」


裕ちゃんが笑った。
28 名前:まいのすけ 投稿日:2000年08月11日(金)14時15分24秒
んん!!!
気になりますな。マキちゃんのコトもこの先の展開も。
29 名前:龍岩寺 投稿日:2000年08月11日(金)19時08分01秒
うわ〜、マジ気になるっす。
マキは一体何者なんですか?
市井ちゃんはどうなるんだ?
30 名前: 投稿日:2000年08月13日(日)02時20分47秒
あたしは今ほど自分の無力さを恨むことは無いだろう。
裕ちゃんの身体を振りほどきたい、ココから消えたい。
初めて裕ちゃんが本気で笑ったかと思うと
急にあたしを貪り始める。
さっきとは別人のように。
仕方なくあたしは、出来るだけ裕ちゃんから視線を外し
天井を見つめる。
どこかで見たような風景。
ずーっと前から知っているような、知らないような・・。

「紗耶香、マキチャンの事聞きたぁーい?」

ムカツクぐらい甘い声で、囁く。
いいよ、もう。どうせ傷つくあたしを見て楽しむんでしょ?

「聞きたくない」

「ええっ!でもマキチャンの事、本気なんやろ?」
「知らない」
「知らないって・・、そう、ならあたしも知らん事にしたる」

「なぁ・・今日は幾ら払えばええの?」

いらないって言ったけど
ココまであたしを動揺させたんだから
・・そう、あたしは商品だから・・

傷をつけたなら、弁償して下さい。

「4万・・かなっ」

笑いながら答えるあたしを抱きしめる。
その冷たい両腕があたしを強く、強く抱きしめる。
まるで、恋人、みたいに。

ねえ、悔しいよ。
ねえ、何故なの。

ねえ、何故、涙が出てくるの?


31 名前: 投稿日:2000年08月13日(日)02時25分36秒
「裕ちゃん・・!!」

行き場を失っていた両腕を裕ちゃんの背中に回す。
自分でも何が起きたのかわからない。
ただ、急に今まで、張り詰めてたモノが切れたみたいで。

「紗耶香」

その少し低い声が、あたしの名前を呼ぶのが嬉しい。
今、あたしはこの人に抱かれたい。
抱いて、欲しい。
もう、ずっとあたしの傍を離れないで。
誰か、あたしを・・愛して。


きっとクスリのせいなんだ。
さもなければ、これが裕ちゃんのやり方なんだ。
迫ってくる快楽に溺れながらうっすらを思う。
真希の顔がよぎる。
なんか、もう、どうでもいい。
腐ったあたしの気持ちなんて、最初から腐ってて
君とはつりあわないよね。

裕ちゃんの顔をずっと見ていた。
首筋に赤い痕があった。

ああ・・そっか・・
やっぱり、裕ちゃんも・・


遠くでケータイの着信音が聞こえた。

何故か、真希からのような、気がした・・。
32 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月13日(日)04時55分48秒
胸が詰まる……
たまんない展開です。
期待してます。
33 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月13日(日)05時39分15秒
いいっす・・・。
34 名前: 投稿日:2000年08月14日(月)02時42分47秒
マンションの前で下ろしてもらう。
夜が明けきってない肌寒い空気。
あたしは車から降りてドアを閉めようとする。

「なあ・・本当にあたしのにならんか?」
「ならないよ」

あたしはそう言って首筋に指を当てる。

「ココ、消しといた方がいいんじゃない?」

思い当たる節があるんだろう。
裕ちゃんは小さく動揺すると、またいつもの笑顔で微笑む。

「やっぱ、そういうトコ、好きやわ」


裕ちゃんを見送った後、
あたしはマンションにはすぐ戻らず、
近くの公園でボーっとする。
公園のベンチはまだ冷たくて、さっきまでのヌクモリが
遠い出来事みたいで、哀しくなる。

あたしはいつから、こんなに寂しがり屋になってしまったんだろう。
独りだと心細くて死にそうになる。
その時だけ、身体だけでもいいから必要とされたい。
誰かに、無限に抱擁されていたい。


昨日のケータイの着信。
真希からだ。
非通知じゃないし、家からの電話だったから
掛け直す気にはならなかった。
ただ、「真希から電話があった」と言うコトが無性に嬉しくて
液晶に表示される番号を見ながら、枯れた声を出して笑った。

このままでは全てダメになってしまう。
あたしも、アタシも・・。
35 名前:まいのすけ 投稿日:2000年08月14日(月)12時15分48秒
痛ぇ〜・・・
36 名前: 投稿日:2000年08月16日(水)02時48分14秒
「・・ただいま」

初めて呟いた言葉に返事など無く
もう、なっちが出かけてしまったことを知る。

一晩開けただけなのに
もう、何日も戻っていないような気がする
変わりの無いこの無機質な部屋が、いつも通りあたしを出迎える。

軽く朝食を摂ろうとして
台所に向かう。
コーヒーのいい匂いがする。
ふと、テーブルに目をやると
トーストが一枚、皿に置いてあった。
隣になんだか少し雑な字で書かれた紙切れを添えて。


「最近痩せすぎだから、ちゃんと食べなよ?」


震える手でトーストを持つ。
そっと口に含むと
もう、トーストは堅くなっていた。


他人の気持ちなんて
結局あたしには全然わかんなくて
いつも、どこか、すれ違う。


「まずいよ・・バカ」

緩みきった涙腺から
零れる涙をそのままにして
あたしはトーストを食べきった。
37 名前: 投稿日:2000年08月17日(木)03時38分14秒
真希の肩に触れないように慎重に歩く。


いつも通り真希はあたしのバイト先に遊びに来た。
最近入った、痛みきった髪の毛を茶色に染めている女子高生に
無理を言って、あたしの分の時間まで延長して勤務してもらう。
嫌そうな顔したけど、あたしはソレを伝えるとすぐ着替えて
店の外に出た。
裏口には真希が座って待っていた。

「昨日、電話したんだよ」
「あ。うん・・有難う」

楽しみなはずのこの時間が今は何故かとても苦しい。
続くはずの無い会話は途切れ途切れになる。
気まずい空気があたしの真希の間に生まれた。

「・・・」

沈黙が続く。
どちらとも口を開くタイミングにワザと気付かないフリをする。

真希は視線を落としながら前を向いて歩く。
端正な顔、よく知ってる顔。
あたしのこの歪んだ気持ちを知ったら、その顔は二度と微笑まない?
あたしの事を軽蔑する?


人に愛されたことが無いあたしに、人を愛する資格はあるの?
逃げる事しか知らないあたしに、冷たい現実を受け止めることは出来るの?
38 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月17日(木)18時54分45秒
できるぞ!
39 名前:ミラクルン 投稿日:2000年08月17日(木)19時34分08秒
っつーか、メチャ続きが気になる・・・。
結ばれるんですよね!? ね!!
40 名前: 投稿日:2000年08月18日(金)01時27分35秒
あー・・やたら長くてスミマセン。
でも、今でやっと半分くらい(苦笑)
もしよければ、もう少しお付き合いください。

>39さん
あ、大丈夫です。
ちゃんと結ばれます。結びます(謎)

では、今から続きいきます!
41 名前: 投稿日:2000年08月18日(金)01時31分38秒
「そういえば市井ちゃんさ、最近痩せたよね?」

・・だって、真希が痩せてる人が好きだって言うから。

「そっかな・・?」

「ちゃんと、ご飯食べてる?えーと・・一人暮らしなんだっけ?」
「うん、まぁ・・そんな感じ」

終わりがあるから始まりがある。
では、終わりがなければ始まりも無いの?

それでは「無限」は存在しない?

「ねえ、もし・・もしもだよ?」

それでは「無限」は存在しない?

        「市井ちゃんがよければ、一緒に住まない?」

あたしを見上げるその綺麗な瞳には

汚れたあたしが映っていた・・。
42 名前: 投稿日:2000年08月18日(金)01時40分50秒
「おかえり」

冷たい玄関でなっちの帰りを待っていた。
靴は脱がずに。

「何?どーしたの、こんなとこでさ」

もう、ココには居られなくなった。
だからその事を伝えなきゃいけない。

なのに

言葉が出てこない。

「用事なに・・?今日スゴイ疲れてるんだけど?」

どこか寂しげな瞳。時々見せる眩しいくらいの笑顔。

どれも大切ななっち。
こんな溝鼠のような汚れたあたしを抱きしめてくれた人。
大事にしてくれた人。

なのにあたしは、それを仇として返す。

「あのさ・・今までありがと・・・。住む場所、見つかったんだ・・」

やっと紡いだ言葉が痛いくらいに耳に響く。
まるで自分の声じゃないみたい。
なっちは微動だにせず靴を脱ぎ始めた。

「そう・・良かったね」

余りにもアッサリしていて
あたしは無意味な罪悪感に襲われる。
この罪の名は「偽善」。

「ちょ・・マジで。ホントに・・今までアリガト」

何も言わないでリビングに向かうなっち。
その背中は凄く弱々しい。

胸が痛い。
胸が痛い。
むねがいたい。

何回も呟いた。

「なっち・・」

リビングからは何も聞こえない。
こんな終わり方しか出来ないのかと自分を叱咤する。

拭っても拭っても
まるで罰のようにあたしの頬には冷たい液体が流れ落ちた。
アタタカイ、と感じることは出来なかった。

こんなにも人との別れが辛いなんて。

初めて会った日。
あたしに囁いた言葉が頭の中でリフレインする。
すごく嬉しい響きで。

   「紗耶香はさ、ずっと傍に居てよね」
43 名前:まいのすけ 投稿日:2000年08月18日(金)05時03分21秒
イタイなぁ・・・。
44 名前: 投稿日:2000年08月20日(日)01時45分55秒
冷たい扉を開けた。
何時もあたしがリビングから見ていた風景を
今はなっちが見てる。

踏出した足。

静かに閉めた扉。

あたしを好きでいてくれたその小さな身体。


瞬間。

閉めたドアの向こうから

耳を貫く大音量が聞こえ始めた。

あたしの大好きなCD。

なっちが出かけた後に独りで聞いていたCD。

「独りにしないで
 独りにしないで
 出口はどこにあるか教えて
 どこまでいけばいいか教えて」

恋人という関係じゃなく
家族という絆じゃなく
それはとても自慰行為な無様な関係。
それでも、アナタの傷を、あたしの傷を、お互いに舐めあえて
静かに夜を過ごせたなら
悪夢に魘されずに済んでいたなら

それもきっと「愛情」


階段を下りるあたしの足に
もう戸惑いは無かった。
45 名前: 投稿日:2000年08月21日(月)02時22分17秒
開けた水色のカーテンから零れる眩しい光線。

「ホントに大丈夫だった?」

振り向くとコーヒーを両手にもった真希が立っている。
差し出されたカップを受け取り、真希に向き直る。

「全然平気。それより真希のほうこそ大丈夫なの?」

なっちの部屋と似たような空気。
生活に不必要なモノは何一つ無く。
溢れ返る情報からの断絶を試みたよう。

「うん、大丈夫」


微笑む君を見ていた。
微笑む君を見ていた。


何も感じないように過ごす生活があたしには出来るのだろうか。
既に意識しすぎてるのに。
あたしにとっての真希への感情と
真希にとってのあたしへの感情

の、違い。

いつかすれ違いを生むのは目に見えていて。

「にしてもさー、ホント細いよねー」

カップを机に置いた真希が、あたしの手首を掴む。
握られた場所が、暖かい。

失いたくない、モノ。

このヌクモリを無限へと誰か導いて。

「ま・・き・・、あたし・・」

伝えたいのはこの気持ちで
それは「愛情」をいう終わりを示す記号。


汚れきったあたしに君は・・
46 名前: 投稿日:2000年08月21日(月)02時24分50秒
「お金稼ぐために、知らない人と寝てた・・」

          表面だけのヌクモリなんて要らない。

「細くなろうと思ってクスリもやってた」

          いつか裏切られて捨てられるのはもうイヤなんです。

「え・・」

          誰か、あたしを無限に抱擁してください。

「市井ちゃん・・?」


あたしの全てを許して。
あたしの存在を認めて。
あたしを独りにしないで。
あたしを「私」として必要として。
47 名前:まいのすけ 投稿日:2000年08月21日(月)15時30分43秒
ホントーにハッピーエンドになるのか、不安になってきましたわ・・・。
48 名前:龍岩寺 投稿日:2000年08月21日(月)20時56分52秒
うまくまとめてくれることを期待します。
49 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月23日(水)01時40分03秒
このお話、好きっちょ、好きっちょ、どうなっちょ?ってかんじっす。
がんばってください。。。
50 名前: 投稿日:2000年08月23日(水)01時47分39秒
「う・・嘘でしょ?何言ってるの、ねえ、市井ちゃん!!」

思い出していた。
初めて君と出会った日を。

否定を試みても、尋常ではないあたしの体型と、不規則な生活が
どれも全てを肯定している。

「ねぇ、嘘だよね。またいつもの冗談でしょ?」

握られた手首に力が込められた。
あたしを見ようとしないその瞳が余りに弱々しい。
捨てられたような子供のように震えるその身体。

「嘘・・じゃないよ」

身体が真空になったような錯覚が、あたしを襲う。

「ねぇ、真希。どう思った?汚いと思った?最低って思った?」

ここまでしないと、自分の気持ちを言えないなんて。
先に傷ついて、そのセイにしておく。

「でもね、あたし真希の事愛してるんだ」

          ループ それは無限へと繋がる階段。

さよなら自分、心の中で呟いた。
その行為に多分、意味は無い。

「あ・・え・・」

間抜けな声を出してその場に座り込む真希。
自分の手で自分を強く抱きしめている。
まるで自分の存在を確かめるように。

          しずかにじぶんをだきしめるきみは
          とても、とても
          なっちをまつあたしににている。

「真希・・?」

そしてあたしは気付いた。

あのウタの意味に――――。
51 名前:まいのすけ 投稿日:2000年08月23日(水)12時47分54秒
意味に・・・?
んん!気になる展開。
52 名前: 投稿日:2000年08月24日(木)03時14分51秒
「独りにしないで
 独りにしないで
 出口はどこにあるのか教えて
 どこまでいけばいいのか教えて」


それは、きっと、君への鎮魂歌。


同じ視点になるようにあたしも床に座る。
真希は目を瞑ったまま顔を自身の胸に埋めていた。
両手に入る力は尋常でないらしく
爪の先は赤く、指は白く。


「愛してるとか言わないで」

消え入りそうな声で呟いた。
あたしにしか届かない声で。

「好きとか、いつか終わってしまうことは言わないで」

知ってるよ。
あたしもそうだから。

             今夜は君を抱いて眠ろう。

「大丈夫、大丈夫。あたしは一生真希の傍で真希を愛しつづけるから」

そっと真希の髪を撫でる。
指に絡まる細い髪。

「触らないでよっ・・」

「汚いクセにっ・・」
「そうやって心にも無いことを言って、後でお金貰う気なんでしょ?」
「あたしも市井ちゃんのカモだったんでしょ?
 最悪、そういう人だったんだ?」

あたしに対する毒は早めに抜いておいて。
二人これから一緒に居るには、傷つくことも必要で。

             今夜は君を抱いて眠ろう。

あたし以上に悲しい君に。
同じ苦しみを伴ってきた同士。
同情ではなく、友情ではなく、愛情ではなく


無限な抱擁を。
53 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月24日(木)03時32分04秒
重い……悲しい……
結ばれるか心配になってきた……
54 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月24日(木)04時41分19秒
スゴイ…めちゃ好き、これ。
終わり…じゃないですよね?
なんか微妙なとこで終わってるんで心配になりました。
55 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月25日(金)00時12分28秒
せつねーなー。ほんまにちゃんと結ばれるんかー!!
56 名前:読んでる人 投稿日:2000年08月25日(金)00時36分01秒
この文章・・・はまるなあ・・・抜け出せないよ。
57 名前: 投稿日:2000年08月25日(金)03時54分24秒
独りにしない。
独りにしない。
出口はもうすぐなんです。
きっとそこには無限があるはずなんです。


「真希はあたしの事・・」
「好きだよ。好き・・だから・・」

真希は顔を上げる。
必要以上に現れる赤い毛細血管。
強い力を込められた指先は、力なく床に落ちる。

「だから・・言わないで・・」

判ってる。
言葉なんて曖昧なモノは、余分な期待しか生まない。
それはやがて嘘になり、お互いを傷つける。

それでも
このあたしの気持ちを伝えるには、やはり、言葉しかなくて
シンプルに純粋にストレートに
余分な脂肪はつけずに

 「好きです」


見開いた瞳。

「こんな汚れたあたしだけど、真希の事が、もう好きというか
 必要なんだ。生きていくために」


           なっちの傷を癒してればいいんだ。
           あたしのものにならんか?
           そう、よかったね


誰が嘘をついてる?
矢口も裕ちゃんもなっちもみんな自分にあたしを重ねる。
あたしを抱くことは、それは自慰行為に等しい。
誰が一番辛い?

「真希・・信じてもらえないかもしれないけど
 なんか、イヤかもしれないけど」

 「愛してます」

58 名前: 投稿日:2000年08月25日(金)03時58分26秒
性別とか関係なくて、
「真希」という存在が精神がたまらなく愛しくて
必要で。

手垢まみれになってた
あたしの本当の気持ちを
弱虫なあたしと君に・・


「市井ちゃん・・」

細すぎる腕で真希をそっと抱きしめる。
見た目以上に小さい真希はあたしの腕の中に綺麗に収まる。
まるでジグソーパズルのようにピッタリと。


もう彼女は泣いてはいなかった。


いつもの瞳であたしを見上げる。
その綺麗な瞳にはあたしが映る。
真希と同じ輝きを持つあたしが映る。


「ずっと・・一緒に・・永遠に・・」
59 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月25日(金)04時09分48秒
嫌な予感が……せつねぇよ……でも、おもしれーよ……
60 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月25日(金)11時40分40秒
いつも読んだ後、悲しすぎて、はまりすぎて、現実に戻れないんですが…
どうか結ばれますように…
61 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月25日(金)14時28分57秒
せつね〜。。。はまりまくり。
62 名前:読んでる人 投稿日:2000年08月25日(金)20時42分27秒
私も嫌な予感が・・・
63 名前:まいのすけ 投稿日:2000年08月26日(土)14時24分36秒
ふたりに、幸あれ。
64 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月27日(日)03時48分49秒
頼むから……頼むから……生きて幸せになってくれ!
65 名前: 投稿日:2000年08月27日(日)04時17分43秒
二人で過ごす初めての夜は
気遣いすぎて、神経がおかしくなりかける。
真希の息遣いが、あたしに安らぎを与え
あたしの愛撫が、真希に安らぎを与え
プラマイゼロの関係。
ただお互いを必要とし、ただお互いを癒そうとし
そうして朝を迎えた。


真希よりも早く目が覚めたあたし。
あたしはしばらく動かずに
上を向いたまま、静かに、静かに
口ずさむ。

君の好きなウタを


「独りにしないで
 独りにしないで
 出口はどこにあるのか教えて
 どこまでいけばいいのか教えて」


隣からは規則ただしい寝息が聞こえる。


大好きな君に
やっと出会えた君に
似たもの同士のあたし達に


同情ではなく、友情ではなく、愛情ではなく・・・


「おはよう・・・」

「おはよう」



 そんなあたし達の

 無限抱擁


[END]
66 名前: 投稿日:2000年08月27日(日)04時21分24秒
以上で、終わりになります。

長々と読んで下さった方、お疲れ様でした。
感想も嬉しかったです。

また機会があれば、書かせてもらおうかと
思ったりもします。
その時は、またよろしくお願いします。
67 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月27日(日)07時09分00秒
終わっちゃいましたか…
おもろかったっス
次回作書かれるんなら必ずまた読ましてもらいます。
お疲れ様でした。
68 名前:龍岩寺 投稿日:2000年08月27日(日)09時38分24秒
お疲れ様でした。
読み終わったあとジーンとしました。
次回作も頑張ってください。
69 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月27日(日)10時30分06秒
良かったです。
世界観が壊れないまま終わって、まだ浸ってます。
次回作楽しみにしてます。
70 名前:読んでる人 投稿日:2000年08月27日(日)14時23分34秒
深いですねぇ・・・ズッポリはまってしまいました。
お疲れ様でした。
71 名前:005 投稿日:2000年08月27日(日)20時58分24秒
面白かったです。はまりました。
上手いですね。
72 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月28日(月)04時19分24秒
よかった……ホントによかった……
嫌な予感が的中しなくて……
お疲れ様でした!
次回作にも期待しまくりです!
73 名前:ゆゆたん 投稿日:2000年11月12日(日)04時42分05秒
オモシロかった
74 名前:名無しさん 投稿日:2000年11月12日(日)04時53分57秒
>>73
だべ?

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