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past days〜追憶
- 1 名前:誰かの言葉 投稿日:2000年08月10日(木)14時19分42秒
- 「時間っていうモノには限りがあるんだよ。
だから……だからこそ私達は強く生きなきゃならないんだと思う。」
- 2 名前:一人の少女の回想録 投稿日:2000年08月10日(木)14時20分23秒
- 彼女と私の関係とは一体なんだったのだろうか。
姉妹__?
親友__?
恋人__?
……どれも、少しだけ違うような気がした。
そばにいるだけでただ、
安心できる、幸せになれる、そんな存在だった……。
- 3 名前:一人の少女の回想録 投稿日:2000年08月10日(木)14時21分32秒
- 何年前だろうか。
うだるような暑さの夏の日。
私は、あの人と始めて出会った。
夏バテなのか少し疲れたような表情で、私を見つめるその目。
私は少し戸惑った。
ただでさえ、未知の世界へ飛び込もうという不安。
そんな私にとって、
先輩の目というモノが、どれだけ気になるものか。
……語らずとも判ってもらえるだろう。
見様によって、冷たくも暖かくも見られるあの人の瞳は、
私の不安を狩り立てた。
- 4 名前:一人の少女の回想録 投稿日:2000年08月10日(木)14時22分23秒
- あの人が私にとってかけがえのない存在となったのは、
いつの頃からだろうか。
実際、あまりよく覚えていない。
流れるような毎日を、
ずっと共に過ごしてきたのだ。
ある意味二人が惹かれ合うのは必然的であったようにも思えるし、
いちいちそんな事を意識する間もなかった。
- 5 名前:移りゆく季節の中を生きる人々。 投稿日:2000年08月10日(木)14時25分44秒
- 「どうしたの梨華?こんなところで。」
仙台市某所にあるホテルは、
屋上が開放されていた。
ツアーの遠征で仙台へと来ていたモーニング娘。
真夏の夜に暑苦しさを覚えた後藤はふと、
外の空気を吸いに屋上へとやってきた。
だが、先客がいた。
同じくモーニング娘。のメンバー、石川梨華が。
「別に……。ちょっと外の空気を吸いに来ただけ。」
石川はそう答えた。
「ふーん……。」
後藤はそう言うと、建てかけてある柵へと歩み寄る。
柵に手をかけ、そのまま夜空へと視線を移す後藤。
石川は石川で、そんな事お構いもせずに、
やはりどこか遠くを見つめている。
- 6 名前:移りゆく季節の中を生きる人々。 投稿日:2000年08月10日(木)14時26分57秒
- 「……淀んでるわね。」
石川が言った。
「……何が?」
後藤が尋ねる。
「……空気が、よ。
ここ数年で、空気は一気に淀んだ。
確かに昔から、それほどキレイな物ではなかったけどね。
私達が吸ってる空気は。」
「……なにそれ。」
後藤には、石川の言っていることが理解できなかった。
確かに、昔から変な事を言う人ではあったが。
ここのところは、それに輪をかけてきている。
意味不明な言動は、周囲の理解を超えてしまっている。
- 7 名前:移りゆく季節の中を生きる人々。 投稿日:2000年08月10日(木)14時28分45秒
- 市井紗耶香の脱退から2年。
巡り巡った末、
モーニング娘。はまだ在った。
だがその間に、
安倍、中澤、保田、吉澤が既にモーニング娘。を辞めていた。
そして、いまこの場にいる石川梨華も、
大学受験を期にモーニング娘。を脱退すると、
先日発表したばかりだった。
- 8 名前:移りゆく季節の中を生きる人々。 投稿日:2000年08月10日(木)14時31分12秒
- 実際吉澤の脱退を期に、
プッチモニは活動を停止していた。
モーニング娘。自体にメンバーは二人追加されていたが、
丁度うまい具合に年齢は21歳と11歳。
とてもプッチモニには入れられない。
だが、問題はそこにあったわけではなかった。
というのも、後藤にとっての同年代の、
いわゆる友人と呼べる人物が居なくなってしまったのである。
唯一残されたのが、石川梨華だった。
元々気が合うタイプではなかったが、
済崩し的に二人は仲良くなっていった。
だが、その石川ももうすぐ、
後藤とは遠いところへと行ってしまう。
- 9 名前:移りゆく季節の中を生きる人々。 投稿日:2000年08月10日(木)14時31分47秒
- 「私が入ってから、娘。を脱退する人、もう梨華で6人目なんだよね。」
「ふーん……。なら、もう慣れたでしょ。」
後藤の発言に、石川は冷たく切り返す。
確かに、もう慣れてしまったような気もする。
実際石川の脱退はそれほど応えるものではなかった。
保田、吉澤と、プッチモニの仲間が連続出脱退したショック、
一番の親友の吉澤ひとみの脱退のショック、
……そして、3年前の市井紗耶香の脱退のショックに比べれば。
- 10 名前:移りゆく季節の中を生きる人々。 投稿日:2000年08月10日(木)14時32分09秒
- 「もう……沢山だよ。
大好きな人たちと、離れ離れになるのは。」
後藤はボソッっと呟いた。
後藤自身が普段そんな事を強く思っているわけではないのだが、
先程チラッっと、市井、そして吉澤の脱退した時のことを思い出したら、
自然とそんなセリフが出てきた。
「だったら……アンタも辞めちゃえば?」
石川は不機嫌そうに説いた。
その言葉を聞いて、悲しそうに石川を見つめる後藤の目。
そこには、モーニング娘。加入の頃とは違う、
『大人』になった石川梨華が映っていた。
そして、石川も後藤を見つめ返した。
石川の瞳には、なんだかんだ言ってまだ『子供』に映る、
後藤の姿が映っていた。
- 11 名前:移りゆく季節の中を生きる人々。 投稿日:2000年08月10日(木)14時32分34秒
- (そういえば……。)
今になって思う。
脱退する直前の市井紗耶香は、
後藤の目には確かに『大人』に映っていた。
- 12 名前:吟遊詩人 投稿日:2000年08月10日(木)14時36分31秒
- どもども。
作者です。
これまで連載してたやつ(http://suika.he.net/~hokkaido/test/read.cgi?bbs=morning&key=962347858&ls=10)が、
哀しい事にdat逝きになっちゃった(http://saki.2ch.net/morning/dat2/962347858.dat)ので(泣)、
とりあえずあっちの方は一時中断です。
近いうちにどこかに引っ越して復帰しますが、
それまでの間にこんなものをちょいっと書いてみたくなったので書いちゃいます。
SAGA復帰したら、
ソレとコレ、平行でやってゆく予定です。
ちなみに、コレはSAGA程長くはならない予定(笑)。
では!よろしくおねがいします。
- 13 名前:ち〜と 投稿日:2000年08月10日(木)15時10分40秒
- 引越し先が決まったらここで教えてくださいね。
- 14 名前:Hruso 投稿日:2000年08月10日(木)19時00分13秒
- いちごま?それとも、りかごま?どっちにしてもSAGAとともに期待してます。
- 15 名前:2003年8月8日午後8時 投稿日:2000年08月10日(木)19時35分34秒
- アナ 「ハイこんばんは。ミュージックステーションです。」
タモリ「GRAPEVINEさんこんばんは〜。」
田中 「こんばんは〜。」
タモリ「何ニヤけてんだよ」
田中 「え、えぇ……いえぇ。」
亀井 「市井!!市井!!」
タモリ「市井がどーしたっていうんだよ(笑)。
まぁいいや。GRAPEVINEさん1曲目なのでスタンバイお願いします。」
4人 「ハイ〜〜。」
(GRAPEVINEスタンバイへ)
- 16 名前:2003年8月8日午後8時 投稿日:2000年08月10日(木)19時36分03秒
- タモリ「はい次は……EARTHこんばんは〜。」
3人 「こんばんは〜。」
マヤ 「私髪切ったんですよ〜。久しぶりに。」
タモリ「ハハハ〜そうか〜(こいつの名前なんて言ったっけ……?)。」
アナ 「EARTHの皆さんまた後でお願いしまーす。」
3人 「お願いしまーす。」
- 17 名前:2003年8月8日午後8時 投稿日:2000年08月10日(木)19時36分34秒
- タモリ「えーと次は……小柳ゆきさん。久しぶりですねぇ。」
小柳 「そうですね。1年ぶりかな。」
タモリ「まぁ、話しは後で。お願いします。」
小柳 「お願いします。」
- 18 名前:2003年8月8日午後8時 投稿日:2000年08月10日(木)19時36分56秒
- タモリ「えーと次は……市井紗耶香さん。
それに中澤ゆうこさんよろしくおねがいします。」
市井 「よろしくお願いします。」
中澤 「よろしく。」
アナ 「元モーニング娘。のお二人、
同時にミュージックステーションに出るのは初めてになりますね。」
中澤 「そーですねー。しばらく見ないうちにこの娘も大きくなっちゃって……。」
市井 「別にデカくはなってないよー。それに三日前に会ったじゃない(笑)。」
中澤 「だっけ?」
タモリ「コラコラ二人の世界に入るな。」
市井 「すんまそん。」
タモリ「さっきのあのGRAPEVINEの田中の反応はなんなんだ?」
市井 「いやぁ〜〜。……怪文書ですかね。」
タモリ「なんじゃそりゃ。」
(中澤、何故か爆笑)
アナ 「ハイ、というわけで今日も沢山のゲストを招いたミュージックステーション。
1曲目はGRAPEVINEで、『幻想』。どうぞ。」
(カメラ切り替わる。GRAPEVINE演奏始める)
- 19 名前:今夜も只虚ろな瞳でTVshowを見つめる少女 投稿日:2000年08月10日(木)19時37分41秒
- あの人はTVの中で笑っている。
あの人はTVの中で唄っている。
あの人はTVの中でおどけている。
あの人はTVの中で飛び跳ねている。
そんなあの人を、私はTVを通して見ている。
あの人はあの人で、TVの中から私を見ている。
TVとは何なのだろう。
実際に、そこには存在しないモノを映し出す。
いわゆるひとつの、虚像を作り出す。
そんな虚像を作り出す仕事を、私はやっているのだ。
そして、あの人も。
作り出しているモノ、それは虚像。
虚像という名の、幻想。
見る人も、見られる人も、その事に気付いていないのだろうか。
自分が見ている映像は、作られたモノであるという事に。
TVshowの中で、真実は隠蔽されているという事に。
- 20 名前:終わり無き非日常 投稿日:2000年08月12日(土)14時26分37秒
- 梨華のラスト公演は大盛況のうちに終わった。
1度留年している梨華は、未だ高校三年生だが、
これからは大学受験へ向けて勉学へ励んでゆくのだろう。
大学受験へと向けて。
……私は、どうなのだろうか。
なんとか高校三年生まで順調に来れた。
私はどうするのか。
- 21 名前:終わり無き非日常 投稿日:2000年08月12日(土)14時27分11秒
- ……昔から大学受験などは考えていない。
私の通う立志社には、いくらかのコースがあるものの、
私は進学コースではない普通コースだ。
周りにも、大学受験をする人間などは殆どいない。
私は、このまま高校を卒業して名ばかりの高卒資格を得た後も、
「モーニング娘。」としての活動をしてゆくつもりだった。
- 22 名前:終わり無き非日常 投稿日:2000年08月12日(土)14時27分40秒
- 正直、今の「モーニング娘。」は落ち目である。
シングルを出せば、常にTOP10には入るものの、
私が入ったばかりの頃――LOVEマシーンなどをリリースした頃の、
どんな曲を出しても1位がとれていた頃とは程遠い。
年齢的にもつらくなってきた中澤さんは見切りをつけるように辞めていき、
そしてソロ活動に専念している。
人気が落ちてきたなっちさんは、
どこぞの誰かと電撃入籍して引退してしまった。
一番ショックだったのはヨッスィー。
モーニング娘。の人気低下につけ込み、
某大手レコード会社T社が引き抜きをかけて来てしまったのだ。
事務所にも、ヨッスィー本人にもかなりの待遇だった移籍金と契約金。
ヨッスィーは、ホイホイといってしまった。
圭ちゃんは圭ちゃんで、
いつかの市井ちゃんと同じように、
音楽の勉強をする!と言って辞めていってしまった。
市井ちゃんとは違い、地道に専門学校に通っているようだが。
- 23 名前:終わり無き非日常 投稿日:2000年08月12日(土)14時28分11秒
……忘れていた。
……市井ちゃん。
市井ちゃん。市井ちゃんはソロ歌手として活躍している。
脱退後、UFAと某大手A社が協力して市井ちゃんを海外へ送ると、
そのまま現地で英語と音楽の勉強をさせた。
一流の教育、のようなモノを受けた市井ちゃんは、
去年の末に日本へ帰りソロデビューした。
落ち目のモーニング娘。を差し置いて、
売上はリリースを重ねるごとに上昇。
今では、モーニング娘。よりも売れている。
- 24 名前:終わり無き非日常 投稿日:2000年08月12日(土)14時28分44秒
- ……市井ちゃんであれ中澤さんであれ、
とにかくみんな、自分の道を見つけて娘。を卒業していったのだ。
ソロ歌手……学生……主婦……みんな、それぞれの道を見つけて。
……そして誰もが、
少なくとも私から見れば幸せそうに見える。
……モーニング娘。として、
楽しくも無いのに笑って見せて、
消化不良の歌を歌いつづけている私に比べれば。
- 25 名前:終わり無き非日常 投稿日:2000年08月12日(土)14時29分27秒
- ……私は、どうすればいい?
落ち目のアイドルグループの一番人気として、
このまま活動をダラダラ続けてゆくのだろうか。
仕事でも、勉強でも、恋愛でもいいから、
今はただ単に自分の道が欲しい。
……誰かに指し示してほしい。
……その誰かは……いるのだろうか?
- 26 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月12日(土)23時54分47秒
- 初めて見させていただきましたが、面白いです。
なんか新しい感じの作品ですね。
この視点は後藤でしょうか?
とりあえず期待してます。頑張ってください。
- 27 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月12日(土)23時59分07秒
- なんか、寂しいね
後藤はただじゃ沈まないと思うけどね
いずれにしても続き期待
- 28 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月15日(火)07時07分47秒
- めちゃおもしろいっス。
時間と共に変わった、関係やキャラクターの描写がうまいです。
- 29 名前:夏の終わりに 投稿日:2000年08月22日(火)23時06分09秒
- 「後藤!!久しぶりだね!!」
港区地下鉄外苑駅入口。
市井は後藤に駆け寄りながらそう言った。
市井のソロデビュー後、
始めてOFFが後藤と重なった日。
二人はショッピングへと出かける約束をしたのだ。
「市井ちゃん!!」
「うわ!!」
後藤は、何の前触れも無く突然市井に抱きついた。
- 30 名前:夏の終わりに 投稿日:2000年08月22日(火)23時07分01秒
- 「な、なにするんだよ後藤!!ビックリするなぁ……。」
「へへへ−。」
二人、互いに少し照れた笑いをしている。
「どこ行こっか?」
「とりあえずお昼にしよ!!」
「そうだね。どこにする?」
そんな事を言いながら二人は、
地下鉄駅へと降りていった。
- 31 名前:闇夜 投稿日:2000年08月26日(土)03時32分31秒
- 久しぶりの出会いだった。
残暑の風は、嫌に暑い。
しかしそんな事、市井も後藤もまったく気にしてはいなかった。
食事も買い物も、二人の立場上コソコソとしたものであったが、
それでも二人にとっては至福のひとときだった。
時はあっという間に流れた。
そして二人は、
デート(?)の最後に夜の港へとやってきた。
- 32 名前:闇夜 投稿日:2000年08月26日(土)03時33分15秒
- 「後藤。今日は楽しかった?」
「ウン!!」
「そう。良かった。」
そんな会話を交わしながら、
二人は夜の港を平行して歩いていた二人も、いつしか言葉を失っていた。
……星のキレイな夜である。
都内で、これほどのキレイな星空が見られる日は滅多に無いだろう。
- 33 名前:闇夜 投稿日:2000年08月26日(土)03時33分33秒
- しばらく、二人は港を歩き続けた。
この時の二人が、
一体何を考えていたのかは定かではない。
だが、おそらく何も考えていなかったのだろう。
キレイな景色に包まれた中で二人きりでいる時間。
その瞬間瞬間一つ一つに、
意識などというものは全く必要無かったと思われる。
- 34 名前:闇夜 投稿日:2000年08月26日(土)03時34分27秒
- 「……市井ちゃんは……すごいよね。
自分の夢、着実に叶えていってさ。
英語だって話せるようになっちゃって。
作詞も、作曲も自分でやって……。」
先に沈黙を破ったのは後藤の言葉だった。
- 35 名前:45番 投稿日:2000年08月27日(日)13時38分20秒
- がんばってください。
- 36 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月10日(日)08時13分06秒
- 続きは??
- 37 名前:闇夜 投稿日:2000年09月11日(月)19時50分56秒
- 先に沈黙を破ったのは後藤の言葉だった。
「ん?」
「それに比べて私はさ、
モーニング娘。の人気もどんどん落ちてきてるし、
いっつもいっつも同じ事の繰り返しみたいな毎日おくってさ……。
時間を無駄に過ごしてるよ……。」
「そう……。」
再び二人は黙り込んだ。
ただ、先程のような、想いに満ちた沈黙ではない。
何かしらの、思慮に満ちた沈黙―――。
- 38 名前:闇夜 投稿日:2000年09月11日(月)19時51分39秒
- 「後藤は―――さ。何か、自分の夢とかってあるの?」
今度の沈黙を破ったのは市井のほうだった。
……真剣な目つきで後藤を見つめる。
「ん。別に……。」
後藤は言った。
夢。自分の夢は、今だ探している途中。
誰かに押されてでも、自分の夢を見つけたい。
「じゃ、さ。何で後藤はモーニング娘。のメンバーになった?」
後藤の返答に対して切り替えられた質問。
自分が今、モーニング娘。でいること。
その理由。さして根本的なもの。
「ん……。なんでだろ……?」
- 39 名前:闇夜 投稿日:2000年09月11日(月)19時52分02秒
- ……深く考えた事が無かった。
何故、自分はこの世界に入ったのか。
そりゃ、芸能界に入れば憧れの芸能人に逢える―――とかそういう想いはあった。
だが、
4年前自分がモーニング娘。の追加メンバーオーディションに申し込んだ本当の理由。
それはどこか別の部分にあったはずだ。
……一体なんだったのだろうか。
歌が好きだったから?
金が欲しかったから?
憧れている人がいたから?
自分に自信があったから?
……一体……。
- 40 名前:闇夜 投稿日:2000年09月11日(月)19時52分37秒
- 「ま、わかんないならいいけどさ……。」
市井はそう言うと、やれやれといった感じで歩調を速め、
後藤の少し前に出てから振りかえり続けた。
「自分の過ごす日々に意味がないって感じちゃ駄目だんだよ。
もしそう感じてしまうなら、そこから何か変えていかなきゃならない。」
「……。」
黙り込む後藤。市井は構わずに続ける。
「石川、最近辞めたじゃん?」
「……うん。」
「大学受験だってね。
……後藤が入る前……明日香が辞めてった時も、
やっぱり理由は受験だったよ。大学じゃなく、高校だったけどね。」
「……。」
- 41 名前:闇夜 投稿日:2000年09月11日(月)19時53分08秒
- 「普通に、どうして学校に行かなきゃならないのかなんて言うのは、
人によっていろいろ理由が違う。
でもさ、例えばモーニング娘。の仕事、メチャメチャ忙しいじゃん?
そうするとさ、いくら仕事と勉強の両立……って言ったって限界がある。
だったら、やっぱりモーニング娘。の仕事をしながら受験勉強をしていたら、
どうやってもいい学校に進学するのは無理なんだよ。
それはわかるよね。」
「うん。」
「ただ、高卒の資格が得たいとか、大卒の資格が得たいとか言うんなら、
別にどこぞの三流学校にでも行けばいいんだよ。
受験勉強なんかしなくたっていけるんだから。
でも、明日香も石川もそうしなかったのは、
自分の行きたい学校へ行くことによって何かを得たかったからだと思うんだ。
学歴意外の何かをね。」
「……。」
「まぁ、圭ちゃんみたいに専門学校に行って、
本当に具体的な技術身に付ける、っていうのもアリだけどさ。
どちらにしろ、モーニング娘。よりも必要なものを、
モーニング娘。以外に見つけたから、私も、他の皆も辞めていったんだよ。」
「……。」
後藤としてはそんなことはわかっているつもりだった。
しかし……。
- 42 名前:闇夜 投稿日:2000年09月11日(月)19時53分24秒
- 「でも……私はどうすればいいの……?
私は何をすればいいの?どんな夢を見つければ……。
何て言ってモーニング娘。を辞めればいいの……?
私には夢なんて無いんだよ?
考えてみたこともないのに急にそんな……。」
その言葉を聞いて市井は少し戸惑った。
昔から、市井には夢があふれていた。
本当に小さな頃から、歌手になるのが夢だった。
モーニング娘。に入った時点で、
吉田美和のような歌手になりたいという具体的な目標があったのだ。
- 43 名前:闇夜 投稿日:2000年09月11日(月)19時53分46秒
- 「ま、まぁ……。今は別にそんな深く悩む必要はないと思うよ。
そういう事を、モーニング娘。をやりながらさがせばいいんだし……。」
考えた末の市井の返答がそれだった。
「ん……。そうだね……。」
後藤も市井も、心の中で納得できていなかった。
市井の場合、
自分とは違って夢を見付けられないでいる人間もいるんだという驚き。
後藤の場合、
やはり自分には夢が見付けられないという自分自身への不信感。
幸せに満ちていた二人の夜は、
嫌気を含む空気を含みつつ、何時の間にやら終わっていた。
- 44 名前:そこに何があるというのか 投稿日:2000年09月11日(月)19時54分09秒
- 私は何がしたいのだろう。
私は何を求めているのだろう。
あの人に会えば、きっとわかると思っていた。
あの人ならば、きっと教えてくれると思っていた。
しかし、それは違った。
私の夢は、あの人にもわからない。
私の夢は、私にもわからない。
私の夢は、あの人には説けなかった。
私の夢は、もちろん私にも説けなかった。
- 45 名前:吟遊詩人 投稿日:2000年09月11日(月)19時56分28秒
- まるでこのスレはSAGAが更新不能になると書き込まれるかのように(笑)。
でも、実際文章を書いたのは結構前なんですけどね。
キリが悪くて……。
とりあえず、今SAGAがDAT逝きなので、
http://www.geocities.co.jp/MusicHall/5606/
辺りでも見てやってください。
- 46 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月12日(火)10時39分53秒
- こっちが読めるんなら、dat逝きも悪くないかも?
ごめんなさい、SAGA読んでないもんで。
- 47 名前:酒の席 投稿日:2000年09月27日(水)07時06分38秒
- 例の夜から3ヶ月後。
後藤の自宅には、後藤のほかに何人も女がいた。
内訳、
後藤、市井、保田、吉澤、中澤、矢口。
モーニング娘。現メンと元メンが一堂に会す、
珍しい出来事であった。
後藤の提案で集まった6人は、
店のカウンターで
料理と酒に酔いしれていた。
- 48 名前:酒の席 投稿日:2000年09月27日(水)07時08分28秒
- 「圭ちゃん久しぶりだねー。勉強してた?」
「まぁね。紗耶香こそ、一人でもうやっていけてんの?」
「ヘッヘーあたしゃ今はモーニング娘。より売れてますよーキャハハ。」
「あー、紗耶香ひでー!!」
市井の暴言に矢口が突っ込むが、目は笑っている。
- 49 名前:酒の席 投稿日:2000年09月27日(水)07時08分49秒
- 「でもさー、本当に久しぶりだよねー。
こんなメンバーで集まるなんてー。」
「そうですよね。みんな今はバラバラに仕事しているわけですから、
なかなか都合つきませんもんね。」
「あたしと後藤は一緒だけどねー。」
「わーうらやましい。」
「アハハいみわかんねー。」
会場のテンションはやたら高い。
- 50 名前:YUKI 投稿日:2000年09月27日(水)21時45分53秒
- おもしろいっすねぇ、ここ。
>>23の“UFA”ってなんですか?
どなたか教えてください。
- 51 名前:名無しさん 投稿日:2000年09月27日(水)23時53分21秒
- アップ・フロント・エージェンシーでございますね。
事務所の名前ですね。
- 52 名前:吟遊詩人 投稿日:2000年09月28日(木)03時05分45秒
- はい、UFAはアップフロントエージェンシーです。
大手A社は……ご想像にお任せします(笑)。
- 53 名前:YUKI 投稿日:2000年09月28日(木)07時03分30秒
- >名無しさんありがとうございます。
- 54 名前:酒の席 投稿日:2000年10月13日(金)18時06分03秒
- その夜、娘達は色々なことについて語り合った。
これまでに歩いてきた道。
これから目指す未来、夢。
しかし、後藤と市井はあまり直接言葉を交わさなかったのだが。
- 55 名前:酒の席 投稿日:2000年10月13日(金)18時06分33秒
- 「あ、わたしそろそろ帰らないと。明日プロモの収録あるし。」
市井は突如立ち上がりそういった。
「なんやー連れないなぁ。せっかくお持ち帰ろうと思うとったんに。」
中澤のお決まりのセリフ。
「コラー裕子ー!」
と、矢口のお決まりのつっこみが入る。
後藤、吉澤、保田はそれを見て微笑んでいる。
「ゴメンね、あまり付合えなくて。じゃあ。」
紗耶香はそう言うと、店を出ていった。
後藤の母が、また来て下さいねと声をかける。
紗耶香は軽く会釈をすると、店を出ていった。
後藤は、そんな様をじいっと見つめていた。
- 56 名前:酒の席 投稿日:2000年10月13日(金)18時07分30秒
- 「なんや?さみしいんか?」
中澤が声をかける。
「別に……そんなことないよ。」
後藤は言った。そんなことないはずもないのだが。
「ま、紗耶香にだって都合はあるさかいな。
それよりごっちんも、飲も飲も。」
中澤が酒を突き出す。
「裕ちゃん未成年にそんな……。」
保田が諌めるのも全く聞きはしない。
同じく未成年の吉澤も、
グビグビ飲んでいる。
後藤は、中澤に差し出されたおちょこの日本酒を、
グイッと一気に飲み干した。
「ははは、エエ飲みッぷりや……。」
中澤達の楽しそうな声が響く。
夜は、あっという間に更けていった……。
- 57 名前:FRIDAY9月26日号 投稿日:2000年10月13日(金)18時09分31秒
- なんといっても、市井紗耶香である。
今をときめくシンガーソングライターだ。
元モーニング娘。メンバーの彼女。
男女へだての無い人気はすざまじいもの。
8月27日にリリースされた1stアルバム、
『emotion』
は、音楽雑誌のチャートで初登場市井、もとい1位。
現在110万枚の大ヒット中である。
そんな彼女がこれまで5年間の芸能活動の中で、
ついに初めてのスキャンダルを漏らしてくれた。
なんと、今売り出し中のプロ野球選手、
千葉ロッテマリーンズの大西孝之選手(24歳、186cm、上智大)と、
朝まで同じ部屋で過ごしていたと言うのだ。
お相手の大西選手は2001年、ドラフト5位でマリーンズに入団、
シーズン途中から代打としてレギュラーに定着し……。
- 58 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月14日(土)01時03分30秒
- >>57
まじっすか?野球選手か……なんか悔しい(藁
- 59 名前:吟遊詩人 投稿日:2000年10月14日(土)21時55分04秒
- 訂正っす。
代打としてレギュラーに定着→代打として一軍に定着
です。ひどい間違いだ(藁
- 60 名前:『彼女に後悔の念などあると言うのか?』 投稿日:2000年10月17日(火)01時52分52秒
- 「ん?ごっちんか?
あぁ、FRIDAY?読んだ読んだ。
ビックリしたわー。
あれ、ウチらがごっちんの家に集まっていた日のことなんやろ?
ん?……泣いとるんか?
……。
……。
まぁ、しゃあないわ。
紗耶香だってもう19の女や。
男の一人や二人、……な?
もう泣くのやめや?
なぁごっちん。
あ……ちょっとどないしたん!!
あっ……!!」
ツー。
ツー。
ツー。
「……。」
- 61 名前:A HARD DAY'S NIGHT 投稿日:2000年10月17日(火)02時19分49秒
- 「タカ。優勝おめでと。」
都内某所。市井の部屋だ。
2003年、千葉ロッテマリーンズは2年連続のパ・リーグ優勝を果たしていた。
大西孝之――つまり市井の交際相手だ――は、
最終戦、打席に立つことはなかったものの、
胴上げ、祝勝会に参加し、
喜びに満たされていた。
そして、会を早めに切り上げると、
最愛の恋人の元へとやってきていたのであった。
- 62 名前: A HARD DAY'S NIGHT 投稿日:2000年10月17日(火)02時20分31秒
- 「ああ、ありがとな、紗耶香。」
大西は、ドサッとソファに腰を下ろす。
市井は、台所からビール瓶とグラスを2つ持ってくる。
それらをテーブルの上に置くと、
ドサッと隣に腰を下ろした。
ふと、市井の鼻はものすごい臭気に包まれる。
酒臭い。ビールかけだ。
とっても臭い。
「うわっ!ちょっとアンタ臭すぎ!
もうビールいらないんじゃないの!?」
市井の避難が上がる。
だが、顔は笑っている。
「もう酔いなんて抜けちまったしな。
飲みなおしだよ。」
大西の言い分。
- 63 名前:A HARD DAY'S NIGHT 投稿日:2000年10月17日(火)02時21分31秒
- 「まったく……。
とりあえずさっさとシャワーでも浴びてきてよ。
それから飲んだっていーでしょ?」
「あぁ、わかったわかった。」
大西は、シャツを脱ぎながらバスルームへと向う。
シャツの下の素肌は、
さすがプロ野球選手といったところか、ゴツい。
市井は、そんな恋人の体を微笑みながら見つめていた。
「いやぁ、今日は参ったよ。
マスコミのヤツらがさ、
優勝のインタビューにかこつけてお前の事色々探ってくるんだ。」
バスルームの中からの大西の声。
「はは、まぁ仕方ないよ。
記者なんてみんな、そんなもんでしょ。」
「確かに。」
……部屋には恋人達の幸せな時間が流れている。
- 64 名前:A HARD DAY'S NIGHT 投稿日:2000年10月17日(火)02時22分08秒
- 二人の交際が発覚した後の上の対応は、
まぁありきたりなものだった。
紗耶香の事務所からは、
『いいお付き合いをさせてもらっています。』
のFAX。
大西の方も似たようなコメント。
割と、上の人間の処置は寛大なものだった。
交際さえも、容認してくれた。
アイドルではなくアーティストだから、
とでもいった言い分だろうか。
ファンの反応もまちまちで、
まぁある程度予想がつく程度の騒ぎに留まっていた。
- 65 名前:A HARD DAY'S NIGHT 投稿日:2000年10月17日(火)02時22分45秒
- ピポパポー。ピポパーポーパポー。
部屋に、携帯の着信音が響く。
市井の携帯から、
DreamsComeTrueの、
『LAT45°N』
が流れている。
市井は携帯に手を伸ばすと、
ディスプレイに目をやった。
『後藤真希』
……。
市井が、今一番話したくない人間と言える。
市井は、少し深呼吸をした後、
意を決して受信を取った。
- 66 名前:吟遊詩人 投稿日:2000年10月17日(火)02時26分55秒
- 続きます。
- 67 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月17日(火)02時29分54秒
- 大西め〜!!(小説の登場人物にマジにむかついたり(ワラ
ガセネタだよーんって展開を期待してたが…
むぅ。後藤、どう出るか!?
続き、気長〜に待ってます。
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月17日(火)03時02分30秒
- 大西にマジ嫉妬した俺って……
一辺氏んでこよう
- 69 名前:67 投稿日:2000年10月17日(火)03時38分14秒
- >68
同志よ!俺も氏ぬから安心しろ・・・
- 70 名前:A HARD DAY’S NIGHT 投稿日:2000年10月17日(火)05時13分07秒
- 「もしもし後藤?」
……返事はない。
「後藤?後藤なんでしょ?
ねぇ、何か言って!?」
少し、必死になっている紗耶香。
心配なのだろう。
「……ヨ……ナラ……。」
「え?」
かすかに聞こえる後藤の声。
しばらくの沈黙が続く。
やがて、受話器の向こうから、
スゥと軽く、しかし強く息をすい込む音が聞こえた。
その刹那!
「サヨナラ!!」
プチッ。
ツー。ツー。ツー。
後藤の大きな声と共に、電話は切れた。
「後藤……。」
市井は、自分の手の中のディスプレイを見つめた。
何も映っていない、
ただ真緑の画面があるばかりだった。
- 71 名前:A HARD DAY’S NIGHT 投稿日:2000年10月17日(火)05時14分00秒
- 「どうした?」
シャワーを終えた大西が、
タオルで頭を拭きながらやってきた。
軽い笑顔を浮かべている。
市井は、一瞬それを見たが、
すぐに目を背けた。
なんだか、心の中が壊れそうな気がした。
「……紗耶香?」
大西が不思議そうに市井の顔を覗きこむ。
「ンっ。」
紗耶香が、いやいやをして顔を背ける。
不機嫌そうな顔になる大西。
「なんだよ、一体どうし――。」
大西がそう、抗議を言いかけた時だった。
再び市井の携帯から、
着信音が流れる。
DreamsComeTrueの、
『LOVE LOVE LOVE』
だ。
電話の着信ではない。
メールの着信である。
- 72 名前:吟遊詩人 投稿日:2000年10月17日(火)05時15分43秒
- 訂正。
紗耶香が、いやいやをして→市井が、いやいやをして
- 73 名前:A HARD DAY’S NIGHT 投稿日:2000年10月17日(火)05時16分14秒
- 市井は、即座にそのメールに目をやった。
……後藤からだ。
本文に目をやった。
『いままでありがとう』
……ただ、それだけ書いてあった。
「誰からだ?」
大西が尋ねる。
しかし市井は反応を示さない。
「?」
不思議そうな顔をする大西。
「……!!」
市井は突然、携帯を明後日の方向へとぶん投げた。
すると突然、大西の体へとすがりつき、
体へとその顔をうずめた。
「お!おい!どうしたんだ!?」
困惑する大西。
……市井は、泣いていた。
声を押し殺して、泣いていた。
- 74 名前:A HARD DAY’S NIGHT 投稿日:2000年10月17日(火)05時16分52秒
- 「一体どうしたんだよ?」
大西が紗耶香に聞こうとする。
しかし市井の熱い涙が、大西のさらけだされた胸に伝った時、
大西はそれ以上の追求を止めた。
がっちりとしたその腕を、
市井の背中に回し、
ゆっくりと、優しく抱き寄せた。
声を殺してないていた市井は、
いつしか我慢する事ができなくなっていった。
クゥッっと声を出すようになったかと思うと、
やがてその声はだんだんと大きくなっていった。
やがて市井は大声で泣き出していた。
まるで、赤ん坊のように、
ただひたすら、大声で。
大西は、泣きじゃくる市井を、
ただ全身で受けとめるばかりだった。
- 75 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月17日(火)07時32分03秒
- は、はやく次のシーンにいこうよ・・・
いままでこういうシーン書く人いなかったからね。
本当は面白いんだけど、やっぱり動揺する(苦笑)
- 76 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月18日(水)02時02分55秒
- 大西逝ってよし!
と、マジで思った。はぁ〜、オレも氏のう。
- 77 名前:El Condor Pasa 投稿日:2000年10月18日(水)02時04分30秒
- 「市井ちゃん……。グスッ。」
後藤は、市井のマンションの前、
少し離れた所、自転車置き場に座りこんでいた。
そして、泣いていた。
何故、そんな所にいたのか、
自分でもわからない。
ただ、何か不思議な力、運命にも似たものに、
引き寄せられていた気がする。
- 78 名前:El Condor Pasa 投稿日:2000年10月18日(水)02時05分07秒
- 朝方、日が昇ってきた頃だ。
辺りは、少しずつ、明るくなってきていた。
街灯はまだ灯っているが、
それ無しでも十分視界は開けているだろう。
後藤は、虚ろな目で、
市井のマンションの入り口を見つめていた。
……すると中から、人が出てきた。
……大西だ。
……そしてその後ろには、市井が連れ添って歩いていた。
- 79 名前:El Condor Pasa 投稿日:2000年10月18日(水)02時05分43秒
- 「……!」
ショックな場面に出くわし、
思わず目を大きく見開く後藤。
まじまじと二人の様を見詰める。
二人の表情は、少し暗い。
しかし、後藤にとってそんなことはどうでもいいことだった。
(やっぱり本当だったんだ……。)
後藤は、脳天を勝ち割られたような錯覚に陥る。
自分の目で見るまでは、
やはり二人の交際をどこかで嘘だと疑っていた。
そう願っていた。
しかし、二人はやはり付き合っていたのである。
心が、また荒れてくる。
何が何だかわからなくなり、
世界がぐにゃあと歪み出す。
- 80 名前:El Condor Pasa 投稿日:2000年10月18日(水)02時06分03秒
- ふと、大西が市井のほうを振り帰った。
市井の両方に、自分の両手を当てて、強く掴む。
そして市井の顔をじいっと見ている。
市井も、同じように大西の顔を見ている。
遠くから見ている後藤にもわかる。
大西と市井はじいっと、じいっと見詰め合っている。
口元が何やらぶつぶつと動いている。
何を喋っているのかわからない。
しかし後藤の目は、その二人に釘付けになっていた。
- 81 名前:El Condor Pasa 投稿日:2000年10月18日(水)02時06分38秒
- 「……!!」
瞬間、大西と市井の体が重なり合った。
絶句する後藤。
……二人は、キスをしている。
濃厚に、互いの会いを確かめ会うように、
回りの目を気にすることも無く、大胆に。
「……。」
後藤は何もできずに、ただその様を見つめるばかりだった。
- 82 名前:El Condor Pasa 投稿日:2000年10月18日(水)02時07分12秒
- どれぐらいの時が経ったのだろう。
それ程長くは無いはずだ。
市井と大西は、互いの顔を離した。
余韻にでも浸っているのだろうか、
二人は見詰め合ったまま、動かない。
後藤もそんな二人を見詰め合ったまま、動かない。
沈黙が続く。
果てしない沈黙。
- 83 名前:El Condor Pasa 投稿日:2000年10月18日(水)02時07分44秒
- ふと、大西が何かを口走り、
市井に背を向けて歩き出した。
市井も何やら喋る。
おそらく、「じゃあね」とか、
「ばいばい」だろう。
大西はゆっくりと、
その場を去って行った。
市井はそんな大西をずっと見つめていた。
後藤はそんな市井をずっと見つめていた。
- 84 名前:El Condor Pasa 投稿日:2000年10月18日(水)02時08分16秒
- やがて、市井は何も無かったかのようにすっと振り返り、
マンションの中へと戻って行った。
後藤は、そんな様子をずっと見届けた。
市井の姿が、完全に見えなくなっても、
虚ろな視点で、どこを見るとも無くぼうっとしていた。
- 85 名前:El Condor Pasa 投稿日:2000年10月18日(水)02時09分15秒
- 後藤の心中は、
意外に穏やかだった。
衝撃的なシーンを見たのだが、
それを自然に受け入れる余裕が、何故か在った。
数十分、市井のマンションの前でぼうっとしていた後藤。
やがて、完全に朝日が昇り、辺りは明るくなっていた。
まぶしい日差しに照らされた後藤は、そっと呟いたのだった
「市井ちゃんも、もう子供じゃないんだね……。」
- 86 名前:吟遊詩人 投稿日:2000年10月18日(水)02時16分02秒
- もうすぐラストです。
- 87 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月18日(水)02時16分11秒
- あう…苦しい…
何とかして欲しい…後藤があんまりだ…
- 88 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月18日(水)02時18分29秒
- >二人の表情は、少し暗い。
大西と別れ話をしたから、と思いたい自分、逝ってよし。
- 89 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月18日(水)02時25分07秒
- 俺も最後のキスをしたと思いたいぞ
そして市井は後藤の元へ
ちょっと逝って来る……
- 90 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月18日(水)02時32分18秒
- 昨日から読み返すたびに氏んでる自分も逝ってよっすぃ〜
- 91 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月18日(水)03時33分16秒
- >>90
俺は辛すぎて読み返す事が出来ない
マジレスですまん
- 92 名前:ミラクルン 投稿日:2000年10月18日(水)09時26分59秒
- わ〜〜〜〜!!
コレ、マジでイヤだぁ〜〜〜!!
いちーちゃんのバカァ!!
後藤を救って!!
- 93 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月18日(水)13時47分40秒
- いいですね、なんかこれまでに無かった感じで。
けど、これも結局最後は後藤のところへなんて事だったら
他のと大して変わらないから別な展開を期待したいところですが。
失恋の話だってたまにはいいんじゃないかな。
ま、そこは吟遊詩人さんの腕の見せ所か。
- 94 名前:ショック……!! 投稿日:2000年10月19日(木)17時06分12秒
- 投稿者:村上しんのすけ@まりっぺ 2003.10.25(土)04:33
真希ちゃん脱退だそうですね。
残念な事です。
彼女が娘。を脱退しちゃったら、
これからどうなって行ってしまうんでしょう?
やっぱり解散が近いのかなぁ……。
本当に残念ですよ。いつまでも娘。で頑張って欲しかったのに。
売上もかなり落ちちゃうんだろうなぁ。
一番人気があったわけですし。
はぁ……(泣)。悲しいです。
なんでも、シンガーソングライターを目指して、
海外留学するってことらしいですね。
いつかの、市井さんの時とおんなじなのかぁ……。
はぁ……。
でも!市井さんだって戻ってきてくれたわけですし、
きっと真希ちゃんも戻ってきてくれますよね!!
それまでの間、楽しみにして待っていたいと思います!!
あと、真希ちゃんが抜けたあとのメンバーも、
真希ちゃんが居る時以上に頑張ってくれるように、
自分は応援して行きたいと思います!!
- 95 名前:吟遊詩人 投稿日:2000年10月19日(木)17時07分11秒
- 次の更新で本編終わりです。
- 96 名前:私にサヨナラを 投稿日:2000年10月21日(土)01時20分11秒
- 11月も下旬のロンドン郊外。
外はもうすっかり冷え切って、
辺りには薄く雪が積もっている。
そして空からも、しんしんと雪が舞い降りてきている。
そんな街道に、何やら小さな店が在る。
その店から、両手に大きな紙袋を抱えた少女が出てきた。
後藤真希だ。
茶色い生地の大きなコート、手袋。
耳には耳あてをつけている。
持っている荷物が重いのか、
荒い息が口からハァハァこぼれている。
吐き出された息は、すぐに白くにごって空気に溶け、消える。
三つ編みに結わえられた長めの黒髪は、
冷えた空気の元、少し凍り付いている。
- 97 名前:私にサヨナラを 投稿日:2000年10月21日(土)01時20分50秒
- 後藤は、その荷物を抱えながら歩き出した。
コート無しでは外に出られない寒さの中、
後藤は重い荷物を抱えて歩いているのだ。
しかし、その瞳は輝きに満ち、
表情はとても楽しそうだ。
子供のように純粋な笑顔を浮かべている。
彼女が、もう何年も忘れて居たかのような純粋な笑顔。
- 98 名前:私にサヨナラを 投稿日:2000年10月21日(土)01時22分12秒
- 三ブロックほど歩いた時だ。
ふと、もう二つほど先の、右へ曲がる曲がり角に目が行く。
そこから、人が出てきた。
日本人の女だ。
女は、
紫色のコートに身を纏っている。
髪は短く、黒い。
ポケットに手を突っ込んだまま、
うつむきながら歩いてくる。
コートの上からでもわかる細い体。
整った美しい顔立ち。
……後藤の動きが一瞬止まる。
(……市井ちゃん!?)
- 99 名前:私にサヨナラを 投稿日:2000年10月21日(土)01時22分48秒
- あの日の出来事があって以来、
後藤と市井は全く逢っていなかった。
電話での連絡も、
メールのやりとりも全くなかった。
二人は、特に意識するまでも無く、
ただ忙しさにかまけて、
お互いに係わり合いを持っていなかった。
- 100 名前:私にサヨナラを 投稿日:2000年10月21日(土)01時23分22秒
- そうこうしているうちに、
後藤の娘。脱退が決まる。
英語と音楽の勉強のため、
後藤は一人ロンドンへ来ていたのだった。
そんなロンドンへたまたま、
市井は新曲のPV撮影で来ていたのである。
ただ、市井も後藤も、
それぞれがロンドンへ来ていることは知りようも無いのだが。
- 101 名前:私にサヨナラを 投稿日:2000年10月21日(土)01時24分33秒
- (何で市井ちゃんが――?)
後藤の頭は混乱する。
1歩1歩歩く二人。
距離が少しづつ縮まってくる。
市井はまだ後藤に気付いていない。
後藤の視線は市井に釘づけになる。
(……市井ちゃん……。)
声をかけようか,一瞬戸惑った時、
市井が、ヌッと顔をあげた。
そして、後藤の方に顔を向ける。
市井も、後藤に気が付いたようだ、。
ふたりの距離は、2歩半ほど。
その一瞬、二人の目がビシッと合った。
時間が止まった。
- 102 名前:私にサヨナラを 投稿日:2000年10月21日(土)01時25分09秒
- 市井にも後藤にもその一瞬は、
非常に長いものだった。
そう、まるで永遠に続くかのような。
僅か、1秒にも満たない間に、
互いの頭の中には様様な思いが交錯する。
- 103 名前:私にサヨナラを 投稿日:2000年10月21日(土)01時29分42秒
- (なんでここに後藤が――?)
(そうか、海外留学ってロンドン来ていたのか――)
(全く、なんでもかんでも私の真似するんだから――)
(でも、それだけ私の事を思ってるってことか――)
(どうしよう。久しぶりに会ったんだし――)
(挨拶ぐらいした方がいいかな――?)
(それともいっそ、このままどこかにでも誘おうか――)
(でも、そんなことをしたら――)
(やっぱり変に希望を与えちゃうか――)
(いつまでも引きずらせたらこの娘のためにならない――)
(私達はもう離れたんだ――)
(このまま行こう――)
(でもやっぱり挨拶ぐらい――)
(いや、やめた。少し厳しくしないと――)
(後藤にも、自分にも、ね――)
- 104 名前:私にサヨナラを 投稿日:2000年10月21日(土)01時32分15秒
- (市井ちゃん――)
(どうしよう。やっぱり――)
(まだドキドキする――)
(もうこの人のことは諦めたはずなのに――)
(やっぱり、そう簡単には忘れられないか――)
(でも、もうダメだよ――)
(市井ちゃんには市井ちゃんの人生があるもんね――)
(サヨナラ、市井ちゃん――)
(でも、挨拶ぐらいいいかな――)
(いやダメだ、私が辛くなる――)
(このまま、行こう――)
- 105 名前:私にサヨナラを 投稿日:2000年10月21日(土)01時33分12秒
- そして二人はすれ違いざま、
互いに目をそらした……。
- 106 名前:私にサヨナラを 投稿日:2000年10月21日(土)01時33分46秒
- 二人は、ポツポツと、
それぞれのペースで、
通りを反対方向へ歩いて行く。
1歩1歩、二人の距離は遠くなる。
道には、二人の残した足音だけが残っていった。
そして二人はしばらく歩くと、
それぞれ別の横道へとそれて行った。
通りから、後藤真希と市井紗耶香の姿は完全に消える。
深深と降り積もる雪景色。
ロンドンの街並は、
何も気にせずにいつも通りの世界を描く。
人々は人々で、
相変わらずそれぞれの思いを巡らせ、
そしてそれぞれの日々を生きている。
後藤真希と市井紗耶香は、
やがてどのような思いを抱き、
そして生きて行くのかはわからない。
ただ、二人の残した足跡は、
降りしきる雪によって、
今にも消されようとされていた。
舞い落ちる雪の勢いは、
次第に強さを増していた……。
- 107 名前:吟遊詩人 投稿日:2000年10月21日(土)01時46分10秒
- いちおうこの話はこれで終わりとなります。
結局、かなりの数の読者の方の期待を裏切ってしまう結果となったかもしれません。
ただ、連載開始当初からこういう話の終わり方になることは決まっていたのです。
途中読者の方々からの反応を見て何度も、
「結末を変えよう」とか、
「救いのあるエピローグを付け足そう」
等は思ったのですが、
考えに考えた末、作品のコンセプトを考慮してそのまま行きました。
この作品のテーマは、
いちごまではなく後藤の成長なのです。
辛い恋を乗り越え、自分の道を見つけ出して行く後藤の姿を書きたくて、
自分は作品に手をつけました。
自分としてはある程度書きたかった事が書けて満足しています。
本当に、皆さんの期待を裏切る結末を書いたことは未だに辛いのですが、
それでも、
ここまで読んでくださった読者の方々には心からの感謝を申し上げたいと思います。
本当に、ご愛読ありがとうございました。
- 108 名前:BOOTLEG 投稿日:2000年10月21日(土)01時51分45秒
- リアル・タイムで読んでました!
読者を裏切る形かもしれませんけど、すごく面白かったです。
レスを読むたびに何とかしたいと思う気持ちはよく分かります。
でも、この終わり方でも俺は十分楽しめました。
次回作も期待しています!
- 109 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月21日(土)02時44分19秒
- 後藤の成長ですか。
この終わり方はすごく良いと思います。
「氏のう」とレスしてましたが、私は救われましたよ!
今後も頑張って下さい。
- 110 名前:作者様へ 投稿日:2000年10月21日(土)09時33分11秒
- 心が痛くなるね…
でもいちごまにはつらい恋や別れ話の方が似合うと思います。
サヤカが卒業を決断した時からそれは仕方ないね。
(だから甘いものを求めちゃうけど)
最後のシーンは映画の様で良かったです。最後に一言も交わさないって言うのが
二人の強すぎた関係、愛情を訴える様で泣けてきちゃいます。数年後すれ違う時は
笑ってすれ違える様にがんばるんだよ!後藤!そして次にがんばるのは私か〜
こんちくしょう(ワラ
度重なるdat逝きにもめげずSAGAもがんばって下さいね…
- 111 名前:名無しさん 投稿日:2000年10月22日(日)16時18分02秒
- いちごまって基本的に甘いのが好まれるみたいですけど
甘いばっかりじゃ面白くないですからね。
こういうのも有りなんでは。
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