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◆ゲーム◆
- 1 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時08分36秒
- 今回、ブラックです。
こういう路線は初めてかなぁー。
まー取り合えず、読んでもらえたら嬉しいです〜。
よろしく。
- 2 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時09分18秒
- プルルルル プルルルル
あぁ 今日もあの音。あたしが大嫌いなこの時間に、あたしの大嫌いな音。
(いいかげんに・・・してよ!!!)
電話線を思いっきり引っこ抜いた。
ブチッ
「はぁ・・・はぁ・・・」
汗だくになったあたしは、電話のベルが鳴り終わった事を確認すると
布団に潜り込んだ。
- 3 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時09分52秒
- 今日家に帰って来た時は、留守電15件。
「真希ちゃん、何してる?お留守?あたしは、真希ちゃんのことを思いながら、
ゴハンを食べてるの。真希ちゃんを考えるだけでゴハン3杯は食べれるよ。」
ピー
「真希ちゃん、何してる?お留守?あたしは、真希ちゃんのことを思いながら、
絵をかいてるの。真希ちゃんを考えるだけですごく綺麗なヌードが書けちゃうよ。」
ピー
「真希ちゃん、何してる?お留守?あたしは、真希ちゃんのことを思いながら、
大事なところを触っているの。真希ちゃんをかんが・・」
「いやぁああああ!!!!!」
ガシャンッ
「誰よ・・・誰なのよぉっ・・・」
毎日毎日、執拗に真希を何者かが追う。はっきりわかっているのは、声からして若い女というコト。
それ以外何もわからない。誰が自分をこんな目に遭わせているのか。
誰が自分を思い浮かべて生活しているのか。
考えるだけでもゾっとする。
- 4 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時10分22秒
- 後藤真希、若い内から一人暮らしをしている。
はじめは、「憧れの一人暮らし」に胸を弾ませ、実家から少し離れた所の
アパートの1室を借りた。
自分の好みにあった家具を選び、カーテンはスヌーピー柄のものを買って、
食器は白で揃えた。
自分のお城が出来た。誰にも邪魔されないし、自分に一番あった環境にいられる。
夢のようだった。
そんな毎日は、いつかの留守電によって撃ち破られた。
一人暮らしを初めて、1ヶ月ちょっとの時だった。
すこし生活にも慣れて、さぁこれからだという時に事件は起こった。
学校から帰ってくると、留守電が。
ブレザーを脱ぎながらボタンを押した。
- 5 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時11分01秒
- ピー
「初めまして、真希ちゃん。学校から帰ってきたころかな?ふふっ。
いつも見てる。可愛い真希ちゃん。大好き真希ちゃん。」
一瞬真希は頭が真っ白になり、混乱した。
けれどはじめは、ただのイタズラだと思い、真希は放っておいた。
しかしそれは日増しにエスカレートしていった。
家に帰ってくるなり留守電はいっぱい。
携帯にも非通知で信じられない程沢山の着信。
今では学校で体操服がなくなっていたり、自分の顔の写真をヌード写真にコラージュ
してあるカラーコピーの紙が家に送られてきたり。
他にも、使用済のパンティーや、ストッキング、おまけにはナプキンなども
家に届く始末。
真希は実家に何度も帰ろうとした。
けれど帰れない理由があった。
一人暮らしをする時、「実家には転がりこまない」という約束と、
あと、もし実家に帰れば、両親達にも被害が及ぶかもしれないという心配。
だから当然、ストーカー行為されていることを親には打ち明けられなかった。
- 6 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時11分56秒
- 1人だけ、真希の良き理解者がいる。
市井紗耶香、ショートカットの元気な女の子。
その人物だけには、このコトを相談したりしている。
「後藤、おっはよ!」
登校中。
ポンッと真希の肩を叩く人。
真希は安心した顔つきになった。
「市井ちゃん・・・」
下向き加減で、少し顔色の悪い真希。
「・・・?ヤダ・・昨日もなんかあった・・?」
「ん・・・いつもの留守電・・・」
朝の太陽はさんさんと輝いているのに対して、真希の表情は
嵐が来る寸前のような顔だった。
「んん・・またかぁ。なにか手掛かり掴めた?」
「全然だよ・・ただ気持ち悪いだけ。」
「まぁ、夜以外はあたしがついてるから大丈夫。明るい顔してなって。」
「わかんないよ・・・こうやってる今でも見られてるかもしれないよ!?
市井ちゃんが危ないかもしれないよ!?」
紗耶香は少しムっとした表情をして、後ろを向いてしまった。
「何ぃ?あたしのこと信じてないわけ?あーそう。」
「ちょっ そうじゃなくてっ・・」
「プッ」
吹き出しながら真希の方に向き直し、真希の頭をポンッと優しく叩いた。
「大丈夫だよ、大丈夫。ネッ」
真希は安心した。肩がスっと落ちた。
「・・・うん」
作り笑いのようなぎこちない笑顔。精一杯だった。
- 7 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時12分44秒
- ふつうはみんな学校を嫌う。けれど真希にとっては学校だけが救いだった。
こんなに人が集る場所にいられるのは救い以外の何者でもない。
けれど、真希に執着する犯人が学校にいるかもしれない、という心配もあった。
真希だけ、盗難事件が多くかった。
金銭などは盗まないものの、化粧品、衣類、文房具などの実用品がなくなった。
時にはリコーダーのふき口だけがなくなっていることもあった。
今は学校側が盗難防止対策を熱心にしてくれていて、盗難は少ない。
けれど、毎日ではないが、しばしば「犯人」が学校内に来ていることはあったのだ
と真希は確信した。いや、もともと学校内の人物かもしれない・・。
けれど、ひとりでいることが少ない学校ではまだ安心。
盗難以外の「犯人」による行為は何もなかったから。
さっきもいった通り、「救い」だった。
だから、毎日家に帰るということが憂鬱でたまらなかった。
時には紗耶香の家に泊まりにいったりもした。
そうすると、紗耶香の家にイタズラ電話が来る。
そして自分が居ない間に自分の家に「犯人」が入るかもしれない。
そう思うと、最近は仕方なくも家にいるしかなかった。
それが犯人のペースにはまっていることもわかっていた。
「家にいろ」と言われているようなものだった。
- 8 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時13分36秒
- 今日も家に帰ると、怪し気な郵便物が3通。
開けずに外に放りなげた。
今日は電話線もきってある。携帯の電源も切った。
すこし安心だったが、なぜ見ず知らずの相手の為に自分の生活の一部を
制限しなければいけないかと考えると、真希はやるせなかった。
仕方がないともいえど、真希の生活を制限する権利は犯人には
少しもないのに。
(不条理だ、不条理だ、気持ちが悪い、気持ちが悪い・・)
- 9 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時14分21秒
- 真希は毎日のことが重なって、情緒不安定気味だった。
何も食べない。怪しいものが入っているかもしれないから。
誰とも電話しない。盗聴器がつけられているかもしれないから。
いっぱいいっぱいだった。
ストーカー行為が始まって、約2ヶ月半。
聞えは短いが、真希にとっては1年以上たっているような気がした。
逃げ場がない。あいつは追って来る。
逃げたく無い。あいつをとっちめる。
ああ怖いああ怖いああ怖い。
いいかげんにしてくれ
いいかげんにしてくれ
心の中で叫んだ。思いっきり叫んだ。時には口にも出した。
無意識に涙が出ることもあった。
けれど、逃げれば必ず追って来る。
真希は、もう死ぬしかないかもしれない と、薄々考え始めた。
(私が死んでしまえば、あいつはあたしを追って死ぬだろう。消えてしまえばいいことじゃないか?)
(いやだ、私はまだ死にたく無い。夢がある。友達がいる。家族もいる。まだ消えたくはない。)
毎日の葛藤。考えれば嫌になる。
考えなければ心配になる。
- 10 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時15分02秒
- 何日かが過ぎ、少し落ち着いて来た。
犯人の行動も読めるようになったし、すこしくらいならと思い、電話線を繋げてみた。
「どうかな・・・」
その瞬間だった。
プルルルルル・・・プルルルルル・・
「ひぃっ・・・」
真希は耳を塞いだ。
少しの間で忘れられたと思っていた電話のベルの音。
聞いた瞬間全てを思い出した。
けれど、犯人ではないかもしれない。
紗耶香かもしれないし、親かもしれない。
最近は家の電話が繋がらないからとよく親が心配している。
真希はおそるおそる受話器をゆっくりとあげた。
冷や汗をかきながら。
- 11 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時15分45秒
- カチャ・・・・
しばらく無言でいてみた。
すると向こうから喋りだした。
「もしもし・・真希ちゃん???」
あいつだ・・・あいつの声だ!!!
真希は怖くて声がでなかった。受話器をおろすことさえも。
体は恐怖で固まり、耳には「あいつ」の声が響く。
「今日は、お留守じゃなかったんだね。電話に出てくれるの、久し振りだね。」
向こうは真希が喋れないのを分かったように、とめどなくおしゃべりを続けた。
「そういえばね、真希ちゃんが欲しいっていってたワンピース、お揃いで買ったのね、
明日くらいにはおうちに届くと思うの。絶対に着てね。」
それから4分ほど、その女は喋り続けた。
すると真希は、だんだん気を落ち着かせることが出来てきて、口を開いた。
「・・・・れよ・・誰よ、あんた!!!」
声は震えている。
「誰って、わたしよ。そんなひどいこと言わないで。ねぇ。」
「あぁ・・あ、あたしあんたなんか知らないわよ!!名前いいなさいよ!」
「名前なんてどうでもいいのよ、わたしはわたし。あなたも知ってるでしょ?」
「な・・名前を・・いいなさいよ・・・」
女は少し黙った。
- 12 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時16分34秒
- 話をそらすかのように、女は喋り出した。
「ねぇ、紗耶香ちゃんと、仲いいよね。」
「あ・・あたりまえでしょ!あたしの一番の理解者よ、市井紗耶香は!」
真希の目には、今にもこぼれ落ちそうな涙がいっぱい。
悲しくもないのに。
ただ、怖い。それだけで目頭は熱くなった。
女はさっきよりも怖い声で言った。
「違うわ。」
「な・・にが違うのよ・・!?」
「真希ちゃんの一番の理解者はあたし。あたしよ。」
「?あ・・あたし、あなたのこと知らないわよ・・」
「いいえ、知っている。」
「知らないわよ!!!!」
「こんなに愛しあってるのに?」
真希は言葉が出なかった。このセリフを言った甘い声に、腰を抜かした。
「や・・・めて・・・」
「どうして?」
「やめ・・てよ・・も・・う」
「クスクス クスクス 真希ちゃん、どうしたの?ねぇ。」
「あんたなんか・・大嫌いよ!!!!!!!!!!!」
外にまで聞こえそうな大きな声で真希はそう言った。
下手にこいつを触ってはいけないと思いながらも、言ってしまった。
女は真希のその大声で言ったセリフの後、沈黙していた。
真希は怖くて怖くて、座り込んでいた。
汗でいっぱいの手で受話器を握っていた。
- 13 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時17分04秒
- そうしいてると女は喋った。
「・・今・・・なんていった?真希ちゃん。」
「だっ・・から・・大嫌いよ、あんたなんか!」
「紗耶香ちゃんと私、どっちが大事なの?」
「市井ちゃ・・紗耶香にきまってるでしょ!」
ブチッ
プープー・・・
その瞬間、電話は切れた。
「あいつ」が切ったのだ。
真希のいった言葉に怒りを覚え、あいつから電話を切ったのだ。
その後またかかってこないよう、電話線を抜き、携帯の電源も切った。
緊張がきれたのか、そのまま真希は気を失ったように寝入った。
- 14 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時17分48秒
- 次の日だった。真希が学校に来ると、紗耶香がまだ来ていなかった。
「あ・・れ・・市井ちゃんは?」
「・・・・後藤さん!」
クラスメイトが血相をかえて真希の所へ飛んで来た。
「後藤さん、聞いて無いの!?」
「え・・え・・何・・・」
教室内はどこかしら重たい雰囲気。
「後藤さん、今日学校には来ないと思ってたのに・・
市井さんの所いったんじゃなかったの?早く病院いってきなよ!
先生にはいっておいてあげるからさ!」
「な・・病・・い・・」
「本当に聞いてないの!?」
「え、だからなに・・・」
「市井さん、昨日刺されたのよ!!!!!」
バサバサッ!!
真希はカバンを落した。
教科書が出た。
目が点になった。
顔が真っ青になった。
「あいつだ・・・」
その時真希は思い出した。昨日、電話の線も携帯の電源も切った事を。
紗耶香の親はきっとどちらにもかけていたはず。
けれど、昨日の真希は音信不通だった。
階段を駆け降り、クラスメイトに聞いた病院へ向かった。
- 15 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時18分40秒
- 「市井ちゃん!!!!!」
バンッ
ものすごい勢いで、紗耶香の病室に飛び込んだ。
「・・・ご・・とう・・?」
「い・・ちー・・ちゃ・・」
真希は目が点のままだった。
ヘナっとそこに坐りこんでしまった。
「よかったぁ・・・来てくれたんだ・・」
傷は浅く、紗耶香の命に別状は無かった。
「昨日あんたさ、電話つながんなかったし・・って、無理もないか。」
紗耶香は真希を元気づけようとして明るく喋った。
真希は涙を流してしまった。
「ご・・・めん市井ちゃ・・あたしのせい・・・」
「・・・え?」
真希はそれから、紗耶香に昨日の電話のことを話した。
紗耶香は怒らなかった。
真希の頭をなでた。
- 16 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時20分07秒
- 「そっか・・・そんなことがあったんだ・・」
「ん・・ん・・だから、だからごめん、ごめん・・」
涙が止まらない真希を見て、紗耶香は微笑んだ。
「謝らなくていいよ、あたしを大事だっていってくれたんでしょ?嬉しいから。」
ぐっと堪えながら紗耶香の方を見る真希。
紗耶香は笑顔から真剣な顔付きになって言った。
「ってことはさ・・・あたしを刺したやつ・・・そいつだよね。
あたし人に恨まれる覚えなんて今回以外ないもん。
確かに若い女だった。フード付き着てたし、はっきりはわかんなかった
けど・・・軽いパーマかかってた・・電話と似た声だったよ、確か。
あいつつかまえたら警察につきだしてやろうよ。」
「な・・・なんて言ってたの、そいつ!!!」
「はっきり聞こえなかったけどさ、『お前が消えれば』とかなんとか言ってた
ような気がする。コンビニから帰っててね、あたし。いきなりナイフ持った
ヤツが出て来てびっくりさ・・へへ・・」
紗耶香は笑っていたが、とんでもなく怖かったのだろうという気持ちを
真希は察していた。それを思うと、ますます涙がとまらなくなった。
- 17 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時20分47秒
- 「これ以上何かされたらたまったもんじゃないね!」
紗耶香はそう言った後、両方のほっぺたをプクっと膨らませた。
「警察に・・言おうか・・」
真希は泣き声で言った。
「それもいいけどさ、動いてくれるかなぁ・・・同じような事件いっぱい
あるって聞いたし・・女からされてるなんて言ってもねぇ・・
少し様子みようよ。あたしも傷浅いし、すぐ治るよ、きっと。
あいつ思ったより力は弱かったよ。痛かったけど、思いきり突き飛ばしてやったら逃げてったし。」
真希は泣き顔。言葉もでないまま、じっと紗耶香を見つめていた。
「・・・だーいじょうぶだって、あたしは。ね?もうあたしに謝るの禁止ね?」
「や・・ごめ・・うっ・・うっ・・・」
「禁止だっつってんのにーあはは!」
紗耶香は真希に心配させまいと傷が痛むのを必死に隠しながら笑った。
- 18 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時21分30秒
- 不思議と、その日からイタズラ電話の回数も減った。
後ろめたかったのだろう。
少し頭がおかしい人間でも、罪悪感を絶対に感じないというワケでもない。
そう思ってやろうと思った。
が、留守電のメッセージは相当バカげたものだった。
ピー
「真希ちゃん?うふふ、ねぇ、ねぇ、紗耶香ちゃん見た?可哀想だよね、
フフフ、フフフ!」
- 19 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時22分09秒
- 真希はこのメッセージに唖然。
思わずポロっと本音が出た。
「こいつ・・・頭イっちゃったみたいだね・・・」
そうこぼした真希は、ベッドに横たわった。
「いいかげん・・やめてよ・・・」
小さく呟いたあと、頭に違和感を感じた。
何かが枕に乗っている。
「・・・?なんだ・・?」
ナイフだった。しかも、血がついた、ナイフ。
真希はその瞬間わかった。
(・・・・市井ちゃんを刺したナイフ・・・・・!?)
また顔は真っ青になった。
同時に、家に入られたという恐怖。
「いやぁあ!!!!!!!!!」
真希は叫んだ。喉がカラカラになるほど叫んだ。
目は充血して、頭は真っ白。いや、真っ白というより真っ黒に近かった。
そのナイフを家の外に放り投げた。
家の戸締まりをして、うずくまって震えた。
ガタガタと真希は震えた。
- 20 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時22分56秒
- 電話のベルがなった。
プルルルルル・・プルルルルル・・・
指で耳を塞いで、まだ震えていた。
- 21 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時23分47秒
- その次の日だった。病院にいる紗耶香に電話がかかってきた。
「・・?はい。非通知?誰?」
「・・・・・・・・・」
紗耶香は困惑した表情で聞いた。
「ねぇ、ちょっと誰?」
「・・・・・」
イタズラだと判断し、切ろうとした。
「・・・切るよ。」
「わたし・・・」
ビクッ!!!
(あいつだ・・・!!!!)
「ちょっと、あんたねぇ・・・」
「紗耶香ちゃん。」
「・・・によ・・?」
「もう、わたしは消えるわ。」
「は?」
ブチッ
プープー・・・・
「・・・・消える・・そんな簡単にあいつが引き下がるわけ・・」
(!!!!!)
紗耶香の直感が走った。
「あ・・・いつ!!!」
紗耶香は病院を飛び出していった。まだ完治していない傷をおさえながら。
- 22 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時24分23秒
- 真希は昨日、震えたまま寝てしまっていた。
「ん・・・ふぁ・・」
起きた瞬間、昨日のことを思い出して、またうずくまった。
「やだ・・・やだ・・・」
その時だった。アパートの階段を一歩一歩登ってくる足音。
真希は勢い良くドアの方を見た。
タン・・・タン・・・タン・・・
ガチャ
- 23 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時25分00秒
- 真希の部屋の鍵が開いた。
真希は腰を抜かした。
合い鍵など作った相手はいない。
思い当たるといえば、勝手に家に入った「あいつ」だけだった。
ドアの向こうの光りが逆光でハッキリは見えなかったが、シルエットは
パーマのかかった女だった。
(こっちへくる、こっちへくる・・)
一秒が十秒の様に感じた。
「・・真希ちゃん・・・?」
一瞬すべてが止まったかと思った。
気付くと女のシルエットは消え、はっきりとその姿を見せていた。
その女は手には包丁を持ち、ニヤリと笑いながら真希のほうを見ていた。
- 24 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時25分39秒
- 「・・・・や・・・!!!!!!」
ブンっと包丁を振り回した。
空振りした。
真希は状況が飲み込めた。体を動かしよけた。
「真希ちゃん、一緒に消えよう。消えよう。もう辛い思いは沢山なんだ。」
「いや!!!!やめて!!!!!」
シュッ!!!!
真希の髪の毛をかすった。
綺麗な茶色の真希の髪が、パラパラとじゅうたんの上に散った。
「ひぃっ・・・」
実際に自分にかすった包丁を見て、真希は突然動けなくなった。
(もう・・・終りだ・・・)真希がそう思った時、女もいった。
「もう、終りだよ。」
ニヤリと笑った女は、真希に向かって包丁をおろした。
真希はグっと目をつぶった。
- 25 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時26分21秒
- 「・・・・あ・・れ?」
目をおそるおそる開け、見上げた。女は包丁を持ったまま誰かにつかまっている。
よく目をこらした。
「市井・・・・ちゃ・・・」
紗耶香は痛みを必死にこらえながら女のおさえ、押倒した。
「こ・・・のやろーーー!!!」
紗耶香は包丁を奪い、部屋の隅へ思いきり投げた。
ガシャンッ!
「後藤、早く、警察に電話!!!!!!!!!」
「うっ・・うんっわかっ・・た・・」
気が動転していて、うまく行動出来ない。
「はやく!!!!!!」
「どきなさいよ、このバカ女!!あたしの真希ちゃんを奪ったくせに!!!」
女も叫んだ。
- 26 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時27分29秒
- 何分か後、女は警察に取り押さえられ、御用となった。
真希は警察に、今まであったことを全て話した。
ストーカー行為の内容から、紗耶香が刺されたことも全て。
女は「保田圭」という人間だった。
つかまった時からおかしく、落ち着いたら自供したらしい。
そして警察に、真希への思いをえんえんと語ったらしい。
- 27 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時28分05秒
- 1ヶ月がたった。
キーンコーンカーンコーン・・・
「いっちいちゃん!おべんとー食べよー!」
「うん、そうしよっか。」
この上ない平和が二人を包んでいた。
紗耶香の傷も完全に治り、「あの話」は二人の間でタブーとなった。
いや、どうでもよかったと言ったほうが近い。
ふつうの学生。大事な親友。何気ないお昼ゴハンの時間。
お互いを一番大切に出来ている今が、あれば。
その頃、真希の家には1本の電話が。
プルルルルル・・・プルルルルル・・・
ピー
「真希ちゃん、何してる?お留守?」
-終-
- 28 名前:蝉女 投稿日:2000年08月17日(木)09時29分55秒
- 27で、鳥肌がたってくれたら嬉しいです〜。
犯人は保田っていうのは、まぁオチです(笑)。
ブラックな話し、すごく勢いづいてかいてしまった・・・。
またいちごまです〜 クセになっちゃったし・・。
さて、次はなにかこう〜。
- 29 名前:読んでる人 投稿日:2000年08月17日(木)10時05分53秒
- ギャース!!恐いっす!!なんか紗耶香が刺されるのって
「紗耶香ともうひとりの紗耶香」とか「市井と後藤」を思い出した。
でも「市井と後藤」の場合は紗耶香死んじゃうけどね。
いやーでもハッピーエンドのようでそうでないような終わり方が
非常にドキッとしました。面白かったぁ〜。
- 30 名前:+クン 投稿日:2000年08月17日(木)21時41分54秒
- おもしろ〜い!怖〜い!27で鳥肌たった・・。
- 31 名前:名無しさん 投稿日:2000年08月20日(日)00時17分44秒
- すごい!!27でマジ鳥肌たちました。怖い・・・。
あの、「君が、くれた。」って言う小説は蝉女さんの作品ですよね。
どっかで続きやってるんですか?読みたいけどどこいったらいいかわかりません。
よかったら教えてください。
- 32 名前:蝉女 投稿日:2000年08月20日(日)03時12分06秒
- えっとですねぇ 更新せずにいたらスレ消えちゃって(爆)
今までの作品一気にどこかでアップしたいと思ってて、
その時にみれるとおもいますです。
読んでいただけてたなんてめちゃ嬉しいですぅう(;_q))クスン
ありがとうございます。
アップ処理、まだいつになるかわかりませんが
がんばってみます。お知らせもちゃんとしますね^^
- 33 名前:読んでる人 投稿日:2000年08月20日(日)14時42分19秒
- 「君がくれた」大好きなので楽しみにいつまでも待ってます。
あの歌詞にはすごく感動しました。他の小説共々頑張ってください。
- 34 名前:蝉女 投稿日:2000年08月22日(火)14時02分43秒
- http://morisouri.tripod.co.jp/
アップしました♪なんとか早くおわったんですが、「君が、くれた。」の
アップがまだです(iдi)ヴエ
まだ未完のうえに、長い・・・
取り合えず出来てる分だけ今日か明日中にはやっておきます。
掲示板もあるので、よかったらきてください♪
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